ああ・・・怖かった・・・ありがとう山岸君・・・。」
「ううん。もう平気だよ。立石さん。」
「早く家に帰って山岸君に電話しようと思ってたの。そしたら・・・。」
「今日みたいな夜は早く帰るに限るさ。」
「ん・・・そうね。・・・・・・そういえば、帰るといえば。」
「ん?」
「あたしね、時々夕方に、商店街とかで帰る山岸君見かけるのよ。」
「え。そうなの?声を掛けてくれれば・・・」
「・・・・・・可愛い生徒さんたちと和気藹々と帰ってるのに?」
「え゛???」
「山岸君って本当に人気あるわよね。九段先生は男女わけへだてなかったけど・・・」
「い、いや、違うよ!僕だって別に」
「山岸君は女 子 高 だもんねえ・・・」
「ひっ!」
キラリと光る双葉の眼鏡が山岸には刃物より怖ろしく見えた。
・1・
(良かった 助かって良かった。 あなたが生きてて本当に良かった。)
(ああ・・・そうなのか。 俺生きてて良かったのか・・・・・・。)
あのアウトサイダーの夜、俺は自分が生きていていい、という事を実感した。
いや、実感させてもらえた。
そっと自分の顔に触れる。
あの痩せていた顔は今では少しずつふっくらとしてきている。
毎日栄養のあるものを食べているからだ。
部屋を見回す。
散らかり放題だった部屋が今では花まで飾られている。
床に寝転ぶ。掃除をされた部屋は爽快だ。
ゴミひとつない。
ほんの少し前までは、毎晩、いや、昼といわず夜といわず、この部屋で自分を呪い続けてきた。
自分の顔を蔑み、今まで何も成し遂げられなかった人生をを悔やみ、生き方に失望し、他人を妬んでいた。
あの頃と比べると、今の自分の状態がまるで嘘のようだった。
なぜなら・・・
ぼんやりと天井を見つめていると、玄関の扉がガチャと開いた。
「あ、何してるの?入っちゃっていい??」
彼女だ。
俺を救ってくれた彼女。
俺に生きていて良かったと言ってくれた張本人。
そして、この夢のような現実をくれた張本人。
「ん・・・いいよ・・・」
のろのろと起き出す俺。
つい先日退院してきたばかりで、体がなまっている。
そんな俺を助けるべく、彼女は足しげく通ってくる。
いや、今に始まった事ではない
入院している最中も日を空けずに見舞いに来てくれた。
枕元で話をしたり、果物をむいたり、一緒にテレビを見たりした。
そしていつもいつも、俺に向かって「ありがとう」と言った。
彼女だけではない、彼女の両親もやってきて、彼女の命を(結果的に)救った俺に何度も礼を言った。
一度治療費その他にとお金を渡されそうになったが、俺は断った。
だって、俺はそんな事をしてもらえるほどの人間じゃないからだ。
彼女達は暖かい光の国の住人。
俺はアウトサイダーに足を突っ込んだ人間だ。
だから俺は断ったんだ。
ご両親は不満そうだった。
そして、彼女は、そんな俺をじっと見つめていた。
彼女は俺の部屋で、家事をやってくれる。
学校の帰りだとか、休みの日だとかにやってきて、嬉しそうに洗濯物をしたり(下着はいいって断ったけど)
ゆっくりゆっくりテーブルを拭いたり、時にはご飯まで作ってくれる。
でもそうして親切にしてくれればしてくれる程、なんだかとても心が苦しくなってくる。
だって
俺は
俺は本当は
「どうしたの?」
彼女が明るいまなざしで俺を見ていた。
「いや、あの。」
「?」
「あのさ、俺」
「なあに?」
「・・・・・・。」
いつもこうだ。言葉が出てこない。なんと切り出せばいいんだろう。
彼女はありがたい。
ありがたいけど、俺は彼女の善意を受け取れる人間じゃない。
彼女にしたって、責任感が強いから、そして俺を普通の人間だと思っているから、ここまでやってくれているんだ。
こんな男の部屋にあがりこむなんてご両親も許さないだろうし、彼女の為にもならないんだ。
それに、俺は君の事を最初は
・・・殺してしまおうなんて思っていたのに
俺はそんな事を考えてしまっていた人間なんだ。
君が来てくれると嬉しいけれど、君が帰った後、俺はいつも鏡に向かって自問してしまう。
「いいのか?お前みたいな人間がこんなに夢のような毎日を送って。だってお前は騙しているんだ。お前は酷い奴だ。
彼女の優しさにつけこんでいるんだろう?なんて奴だ。汚い奴だ。」
そう、わかってる。俺はこんなに優しくしてもらえる人間じゃないんだ。
だから
だからもう彼女を解放しなくては。
俺みたいな人間と一緒にいちゃいけないんだ。
ハッキリ言おう。断ろう。
言わなきゃと思ってた。
なんとか言わなきゃ・・・
もう、その、もういいよ。ここまでしてくれなくても。」
やっと言葉が出た。
「え?いいのよ。遠慮しないで。」
「いや、でもさ。別にそんな。」
「だって・・・アナタが私のことを助けてくれなかったら、私死んでたのよ?私は、お礼がしたいの。」
「でも、その、いいんだよもう、ここまでやってくれたんだから。」
彼女の顔が曇る。
ドキドキしてきた。ああ、どう思ってるんだろう?
どうしよう?
「・・・・・迷惑だった・・・・・・?」
「いや、そうじゃないんだ。でも、」
「じゃあ・・・!」
「おっ、俺には必要ないんだ!!」
大きな声が出た。自分でも驚いた。
彼女が吃驚して俺を見ている。
あ・・・・・・彼女の瞳・・・・
「な、泣くなよ!そ、その、俺には必要ないんだ!!だから、だからもういいって・・・・・!!」
体中から汗が噴出している。
彼女の瞳からは一筋、二筋と涙がこぼれおちる。
どうしていいのかわからない。
なんでわかってくれないんだ。
俺みたいな人間にはそんな優しさはいらないんだって
だって、だって、だって・・・・・!
・2・
「・・・・・・ごめんなさい。私・・・本当に・・・迷惑なんてかけるつもりじゃなかったんだけど・・・。」
こんなにいい子を泣かせてしまうなんて。ああ、どうしたらいいんだ。
この後どうしたらいいのか全く解らなくてうなだれて頭を抱えていると、彼女が鼻声のまま、ポツポツと話しかけてきた。
「・・・あたし、あたし、あなたの為になりたかったの。私を助けてくれた人に、私はこれ位しか出来ないし・・・」
「君は・・・・悪くないよ。有り難いとおもってるんだ・・・。でも・・・。」
彼女は座り込んだまま、スカートをぎゅっと握り締めている。
震えているみたいだ。ああ。
「ごめん・・・でももう・・・帰っていいよ。俺はもう大丈夫だから・・・。」
「・・・・・・ごめんなさい・・・。」
謝ってばかりだ。
気まずい雰囲気だ・・・。
早く帰ってくれないかな・・・。
そうしたら僕も君も、こんな苦しい状況から解放されるのに・・・
「でも、あの・・・・・。これだけは言わせて。」
彼女がキッとこちらを見た。涙と紅潮した頬が俺の心に飛び込んでくる。
「私、私、本当に感謝してるの。貴方が私の命をたすけてくれて・・・。」
「あ、あれは、その、何度も言うけど、偶然だよ。助けようとして助けたわけじゃ・・・。」
「でも、私を救ってくれたのは確かだわ。 私みたいな人間でも、生きていこうって思えたんだもの・・・。」
「え?」
私みたいな人間??
俺がしょっちゅう口にしていた言葉だ。驚いて彼女を眺めていると、すこしうつむいて彼女は語りだした。
・・・・・・私・・・・自分に自信なくて・・・それに、なんていうのかな、
殆ど毎日、何もかも上手くいかない、って感じがしてて・・・。
ごめんね、突然こんな事言い出して・・・でも私、あの時・・・本当にまいっていたの。」
え?え?
なんだって?
「・・・うちの家って、外側からは普通の家族に見えるでしょうけど・・・。
両親はずっといがみあってるし、お互いに自分自身のことしか興味ないの。
外面だけはいいけれど、家の中に入れば憎しみしかないわ。
顔をあわせれば欠点ばっかりあげつらって・・・。
あの人たちは自分の夢を私にただおしつけるだけ。
・・・・・・この間の事件の時だって、私自身の無事なんてちっとも喜んでなかった。
ぼんやり歩いてた私が悪い。もし何かあったら世間になんと言われるか。
・・・・・・それに、あなたがお金を受け取らなかった事を、散財せずに済んだって喜んでたのよ・・・。」
「そ。そんな!まさか!優しそうな人だったじゃないか!」
「あなたは知らないのよ。あの人達の事。」
彼女はそこで、何か遠くを見るような目つきで、少し笑った。
俺は口をポカンと開けて聞くしかなかった。
「誰も信用できなくて、学校でもうまくいかなくて・・・ずっとのけ者だった・・・」
そして、笑うような顔のまま、涙がボロボロと零れ落ち始めた。
「だから、私はもう、もうずっと、死んじゃいたいと思ってたの・・・」
泣く彼女を見ながら、俺は頭を殴られた気分で居た。
私みたいな人間?上手くいかない?死にたい?
激しい憎しみ。絶望、それは、俺がずっと抱えていたもののはずだ。
「あの夜・・・私は家に帰っていて・・・でも帰りたくなくて、いつ死んだらいいんだろう。どうやって死のう。
なんて思っていたの。そしたら、何か感じて、後ろを振り向いたら貴方がいて、その後ろからトラックが・・・。」
彼女の顔も、手も涙で濡れていた。
「トラックが来たあの瞬間、とても怖かった・・・。体中が恐怖で動かなかった。
あなたに助けられて、トラックが走り去ったら、私、自分が助かった事にホッとしてた。
正直言って、さっきまで死にたいって思ってたのが、一瞬でどこかに吹き飛んでしまってた。」
俺はあの夜の彼女を思い出していた。
驚いて・・・助かった後、彼女は俺に向かって紅潮した顔でお礼を言っていた。
「あなたがすぐに走り去ってしまったから、ちゃんとお礼を言おうと思って後を追ったわ。
追いながら、私気付いたの。『さっきまで私死にたがってたはずだわ。』って。
でも今では『助かって良かった。』って思ってる。その事にとても驚いたの。
私は今、生きていたいって心の底から感じてるんだって実感したの。
あなたを探し続けながら、死にたい気持ちは間違いだわって思ったわ。
だって私は生きていて嬉しいってあの瞬間ハッキリ感じたもの。
だったら、私、この感覚の方を大切にしたい。周りがどんな状態だって、私が生きていたいって思ってるなら、
そっちを完全に優先した方がいいに決まってるって!
そんな事を思いながら、貴方を探していたら・・・・・・。」
俺が倒れていたのか。
まさか、彼女がそんな事を考えていたなんて。そんな状態だったなんて。
知らなかった。
幸せに暮らしている女の子だとばかり思っていた。
彼女は一つ、大きく息をついて、そして微笑んで見せた。
「あなたが生きていてくれて良かった。そして、私を助けてくれてありがとう。
本当にこれが言いたかったの。・・・・・・でも、甘えちゃってた。ごめんなさい・・・。」
俺が口を開こうとするより先に、彼女はすっくと立ち上がり
ペコリと礼をして、玄関に向かって行った。
「それじゃ・・・」
彼女は靴を履きながら、冷蔵庫にタッパーに入った煮物がある事、タッパーは返さなくてもいい事
洗濯物を干したままにしてある・・・そんな事を話した。
バッグを肩にかけて、去り際にまた「ありがとう。」を口にした。
・3・
俺はといえば、「ああ」とか「うん」とかいいながら、玄関の側に所在無げに立ってるだけだった。
なんだが、体中がビリビリしているような。胸の辺りが重かった。
彼女は行ってしまう。
当たり前だ、俺が出て行けって言ったんだから。
なんだ、後悔してるのか?後悔するくらいならそんな事言わなきゃ良かった?
いや、違う。俺は彼女の側には居ちゃいけない。
アウトサイダーなんだ。
でも、彼女もまた、自分はのけ者だといっていた。
あれ?じゃあ?
考えがまとまらない。どうしたらいいんだろう?
ああ、いつもこうだ。また同じだ。
昔から何も変らない。また俺はダメだったんだ。
俺はまた昔に戻るのか?また後悔しつづけるのか?
折角あのアウトサイダーの夜から抜けたと思ったのに
馬鹿いうな。許されるもんか。人を殺そうと思ったのに。
俺はアウトサイダーなん・・・・・
「ありがとう。」
「えっ?あ、ああ・・・いやその・・・」
「じゃ・・・・・・。」
ゆっくりと扉が開いて、彼女は日が暮れた外へと出た。
夕闇の中で彼女は会釈をして、
去って行った。
なんだろう。心臓がドキドキしている。
俺って酷いことしてしまったんじゃ?
心苦しいからって、彼女をのけ者にするみたいに追い出して・・・
それに・・・
俺は、彼女みたいにありがとうって。言えていたんだろうか?
何度か口にはしたけれど、本当に彼女に伝えたろうか?
断るにしてもあんな言い方するんじゃなくて、ちゃんと伝えるべきなんじゃ?
俺が本当はどんな人間か、彼女の感謝を受ける立場に無い事を。
そして俺の方こそちゃんと、感謝を伝えるべきなんじゃ??
あの時「生きていてくれて良かった」って言ってくれた事が、どんなに嬉しかったか。
彼女は俺に、ちゃんと話してくれた。
ああ、でももう、彼女は街の中に溶け込んでいっている。
ここから先はもう俺には触れられない世界なんだ
彼女は元通りの世界の住人に・・・・・
元通り?彼女も?
街の暗闇はまるで彼女を覆うように広まっている。
こんなに街って暗かったろうか?
昼間はあんなに明るかったのに、なんでなんだ?
心臓がドキドキする。そうだ、あの夜。あの夜もこんな風にドキドキしていた。
俺は夜の支配者になって、全てを自由に出来ると思ったあの時も、
アレは興奮していたからなのか。それともこの夜のせいなのか
まさか、今日もあの夜と同じ、あの時の俺みたいな人間の為の夜なんだろうか???
月は輝いているのに、なんだかちっとも明るくない。
俺の腹の傷が痛んだ。
そうだ。あいつ。
あの犯人だって、捕まっていないんだ。
俺は思わず駆け出していた。
走りながらも、闇はべたべたと張り付いてくるみたいだった。
夜ってこうだったろうか?
俺はいままで、こんな夜の中を彼女を帰らせていたのか?
いや、今日は違う。今日の夜はいつもと違う。
今日はアウトサイダーの夜なんだ。
彼女が微笑んで帰るとき、俺が、俺がほんの少しの本音で「ありがとう。」と話していた間、
夜はこんなに重みを持って迫ってなんかこなかった。
そうだ、俺は本当は、もっと、もっと彼女に「ありがとう」って言いたかった。
そりゃ本音は、もっと一緒にいたかったけれど
俺には自信がなかった。全てを話す勇気も。
そうだ、せめてお別れを言うのなら、全てを話してしまおう。
そしてこんな夜に彼女を一人にしちゃいけない。
それがせめてもの俺からの恩返しだ。
彼女に全てを話して謝ろう。そしてちゃんとお礼をいおう。
彼女は暗い高架の真下にいた。
あんな所にいちゃいけない!
・4・
「きゃあっ!!」
後ろからの足音に振り向いた彼女の手を、俺はグッとつかんだ。
「あ、ああ・・・びっくりした・・・」
彼女の顔が驚いているけれど、俺もまた彼女の涙が乾いていなかった事に驚いた。
「あ、あの!」
「は、はい。」
「あっ・・・・あのお・・・っっ」
つ・・・続かない。走ってきたし、なんだか頭がクラクラして、言葉が出ない。
息継ぎだけで精一杯の俺に、彼女は狼狽しつつ背中をさすってくれた。
「ど・・・どうしたの?ちょ・・・ちょっと・・・」
「はーっはーっ・・・だ・・・だめだ。かっ・・・肩で息してて・・・言葉が・・・。
こ・・・んなに走ったの久しぶり・・・すぎ・・・・ちょ、ちょっと・・・まって・・・・はーっ」
俺はヘナヘナと座りこみながらまだ息を切らしている。
「だ、大丈夫?ほら、あそこ、もう少し行くとファミレスがあるわよ。そこで休みましょう。」
「ご、ごめ・・・」
なんてこった。
俺は格好悪く彼女に支えてもらいながら進んだ。
高架の隅で、何か動いたような気もしたが
もうそれどころではなかった。
ファミレスに入って、席に着いた。とりあえず水を飲み干していると、彼女がコーヒーを二つ注文した。
周りの客も俺がハアハア言いながらへたり込んでいるのを何事かと見ていた。
か、格好悪い。
俺たちの後に入ってきた男が、俺のすぐ後ろに座った。
ああ、これから大切な話をしなきゃいけないのに。聞こえちゃうだろうか。
しばらくすると、店員がコーヒーを二つ持ってきた。
砂糖を入れて、ミルクを足して・・・
ずっと沈黙が続いていた。俺は周りの客が俺たちの話しに聞き耳を立てているんじゃないかと思って
周りが少しずつ騒がしくなるまで待っていた。
彼女は黙って俺を見ていた。
ああ、ドキドキしてきた。
でも、いわなくちゃ。
外を見ると、闇が完全に街を覆っている。
こんな夜は明るい所に居た方がいい。
ここは明るい。アウトサイダーの夜とは関係が無い。
だから、今ココでいわなくちゃ。
「あの・・・」
「はい。」
「さっきはごめん・・・怒鳴ったりして。」
彼女は少しポカンとしていた。そして、マグカップを見ながら「ううん。」と呟いた。
「怒鳴るつもりじゃなかったんだ。ただ、その。君が色々とやってくれるのはありがたいんだけど」
「こっちこそ、ごめんね。気を使わせちゃって。いくらなんでも毎日のようにやってくるなんておかしいよね。」
「ちちちちち違う違う!」
え?と彼女は持ちかけたカップをテーブルに戻した。
「そうじゃ、そうじゃないんだ。本当に嬉しかったんだ。君が色々作ってくれるのも。洗濯してくれたり
花まで買ってきてくれるのも。」
言いながら自分の顔がどんな顔をしているのか気になった。
真っ赤なんだろうか。変だろうな。
「・・・・・・ただ、その。俺はそんな好意を受けていい人間じゃないんだ。本当は・・・。」
俺は少し小声になって話し始めた。
「あの夜・・・。」
「え?」
「あの、君を助けた夜。俺が何をしに街に出てたと思う?」
「え?・・・・それは、コンビニに行くためとか話してなかった?」
あ、そうか、そんな事を警察とかに話したんだっけ。
「違うんだ。俺は・・・・」
俺はおもわずテーブルに身を乗り出した。
そしてさらに小声で
「俺は・・・誰かを殺そうと思ってたんだ。」
「・・・・・・え・・・・・・。」
「信じられない?でも確かにそうなんだ。誰かを殺してやろうって思って、ナイフを持って街に出たんだ。」
「そんな。冗談でしょ?」
「冗談なんかじゃない。誰でもいい。殺したかったんだ。」
困惑している。当たり前だよな。
「でも、そんな。・・・でも、なんで・・・?」
彼女は俺の話についてこようとしていた。
ありがたい。俺の話を嘘だと決め付けないでいてくれる。
「俺は・・・完全にアウトサイダーだった。君には、両親もいない。一人暮らしで学校もほとんどいってない。っていったけど」
「ええ。」
「でもそれだけじゃない。俺はずっと、ずっと疎まれて生きてきたんだ。」
「・・・・・・。」
「君が綺麗にしてくれたあの部屋。最初は見れたもんじゃなかったろう?
俺はあの部屋の片隅で、毎日毎日、何もかも、俺の周りの全てを憎悪しながら生きていた。」
あの時の重たいモノが今も俺に覆いかぶさっている気がして、俺は頭を抱えてうつむいた。
俺は・・・ずっと人から疎まれてきた。誰からも拒否されてきた。
馬鹿にされ、蹴飛ばされ、俺はずっとそんな俺を憎んでいたんだ。
自分自身も大嫌いだったし、俺にそう思わせる社会も憎んだ。
俺は完全にアウトサイダーだった。人の形をした怪物だと思ってた。」
それからしばらくの間、彼女は俺の半生をただ黙って聞いていてくれた。
俺自身も、周りのことなんてほとんど気にしなくなっていた。
なぜなら、涙も出てきて、頭も体もどんどん熱を帯びていたからだ。
「俺は・・・俺は生きてちゃいけない怪物だったんだ。だから本当の怪物になって、世間をおそれさせてやると思った。
俺が世間を憎む。世間だって俺を憎む。そうすれば・・・。」
「そうすれば?」
「世間は俺を認めてくれる・・・・・・。」
知らない間に、テーブルの上に涙がこぼれていた。
顔が上げられない。
ああ、格好悪い。でももう止まらない。
「俺は死んでもいい人間だから、だから俺も誰かを傷つけてやろうと思ってた。
でも・・・・ははは。でもあの日・・・・。」
トラックが後ろからやってきて、俺はおもわず彼女を抱えて飛びのいたのだ。
「ハ・・・ははは。笑えるよな。だから、偶然なんだよ・・・。ほ・・・本当に。う・・・君を・・・おれ・・・」
何かが俺の中を駆け巡っている。
ずっと俺の中で飼っていた何かが、俺自身がそいつに注意を向けて、外に出そうとしているから
今まで隠れていたそいつが暴れだし、頭をガンガンと鳴らし、涙と嗚咽になって、外へ飛び出しているようだった。
「ごめ・・・ごめん・・・・!ごめんなさい・・・・!!おれ、俺は・・・君を・・・う・・・あの夜に・・・。」
この先どうしたらいいのか全くわからなかった。
店員が水を換えに来たので、その間だけ息を凝らした。
変に思われてるだろうな・・・でも・・・まあいいや。俺に必要なのは彼女に伝える事だから。
「ゆ、許してもらおうとは思わない・・・俺は君の善意を・・・受け取れる人間じゃないんだ。僕は感謝される人間じゃないんだよ・・・。」
158 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 01:20:51 ID:x7AQ0gkB
「でも・・・でも、信じられない・・・何も凶器なんて持っていなかったじゃない!・・・そんな・・・。」
「・・・持っていた。ナイフを。凄くよく切れるやつ・・・。
でも君を抱えて飛んだ時にどこかへ無くしちゃって・・・はは・・・信じられないよね。でも・・・本当だよ・・・。」
「そんな・・・ううん・・・やっぱり信じられないよ・・・。だって・・・助けてくれたのは事実だもの・・・」
しばらくの間、何かを考えるように沈黙していたが
ふと彼女も少し身を乗り出して、そして俺に向かって力強く告げた。
「そりゃあ、あの時貴方は、もしかしたら私を殺そうと思っていたかもしれないけど、
そうだとしても、トラックがやってきた時に貴方だって別の選択をしたんだわ!
私が死にたい気持ちから、生きていたいって気持ちに変ったように!
だから・・・そうよ、貴方は結局誰も殺さなかったわ。だから・・・」
彼女の声につられて俺も顔を上げた。
彼女は、不思議な表情をしていた。困っているような、でも力強い顔をしていた。
意志のある瞳から、涙が幾筋か頬に伝っていた。
俺の話を聞いて・・・泣いてくれてるのか・・・?
「誰も殺さなかった・・・。」
「そうよ、そうでしょ?誰も殺してなんか無いわ。むしろ助けて生かしてくれた。
あなたには不本意だったかもしれないけれど、でも結局真実はそうだわ。
だからお願い・・・もうそんな、自分を責めたりは・・・しないで。」
・5・
息を整えてから、涙を拭いた。
そして彼女に向き合った。
彼女の瞳が俺とぶつかる。
もう一度深呼吸をした。
「本当に・・・ごめん!でも、ありがとう。」
「ありがとう・・・?」
「あ・・・えと・・結果的には君をだましていたんだけど、俺も、その、やっぱり嬉しかった。
君が言ってくれたじゃないか。「生きていてくれて本当によかった」って。
俺は死んでいい人間だって思ってたから、そういってもらえた瞬間に、なんだか胸の辺りが軽くなったんだ。
そんなこと言ってもらえるなんて思いもしなかった。
だから、嬉しかったんだ・・・ありがとう。」
彼女は俺を見つめると、手元にあったスプーンを持って、コーヒーを混ぜ始めた。
店内に流れる曲だけが、しばらくの間俺と彼女の隙間を生めていた。
「おかしいね・・・。」
「え?」
「奇遇っていうのかな。」
彼女が少し微笑んでいた。
「だってつまり・・・殺したかった貴方と・・・死にたかった私があの夜に出会ってたのね。
そして、あなたは私を生き延びさせて、私は貴方に殺させなかった・・・。」
「・・・・・・そうだね・・・。」
「それで・・・貴方は、本当は私を殺そうとしてたから、私の恩返しはいらない、って・・・事?」
「ん・・・そうだね。」
「わかった・・・・・・。」
コツコツ。とカップの底をつついている音が聞こえる。
「君が・・・君がさっき自分の事を話してくれたじゃないか。俺はそれを聞いて驚いた。
だって、俺は君の事、本当に幸せそうな女の子だと思ってたから・・・。」
「それは私も同じだわ。私も貴方がそんなに苦しんでいた人だったなんて、知らなかったもの。」
彼女は背もたれに寄りかかると、ひとつ息をついた。
「お互い様よね・・・私たち勝手にお互いの事想像してたんだわ。」
「・・・・・・ちなみに・・・君は僕の事どう思ってたの・・・?」
「ん・・・大変な境遇にあるみたいだけど・・・でも一人で生きている凄い人・・・かな。」
「うわ・・・本当に?」
「本当よ!しかも突然現れて私を助けてくれたんだもの。名前も言わずに去っちゃうし。
お金も受け取らない。凄い人だわ。って思った。」
ムズムズする。本当に、俺も彼女もお互いの事を勝手に誤解してたのか。
「でも・・・。」
「でも?」
「確かに部屋は汚かったわ。」
「ブッ・・・ご、ごめん!」
飲もうとしたコーヒーを少しこぼした。
あっ大変、と彼女もおしぼりでテーブルを拭く。
彼女と目が合うと、お互い自然と笑いがこみ上げてきた。
背もたれにもたれて、笑っていると、腹の傷がいたんだ。
「アイテテテ・・・」
「だ、大丈夫?」
大丈夫、大丈夫、といいつつ、俺の目に外の景色が飛び込んできた。
月がぼんやりと輝いていて、星も見える。
まさかこんな事になるなんて思いもしなかった。
俺が他人と笑いあうなんて。
でも・・・
「あいつ・・・。」
「え?」
「俺を刺したあいつ。」
「え、ええ。まだ・・・捕まってないのよね。」
「あいつも・・・俺と同じだった。」
「え?」
「あいつの目・・俺と同じアウトサイダーの目だった。
世の中をうらんで、あいつも俺と同じだった・・・。」
「・・・・・・。」
「あいつも、きっと辛い事ばかりなんだろうな。それに・・・そんな自分を恨んで、そしてきっと、誤解してるんだ。
周りが敵ばかりだと思って、どんどん憎しみだけがのしかかってくるんだ。
俺にはわかるよ。俺も同じだったから。毎日毎日堂々めぐりの悪循環。何もかも、部屋の空気でさえも
俺を苛んで押しつぶそうとするみたいに感じてた。」
「・・・あたしにもなんとなく解る・・・。誰も味方が居なくって、自分が生まれてきた事を恨んでいたわ。
誰も守ってくれない。皆敵なんだ、って思ってた。」
「アイツも言ってたよ 『ざまあみろ。俺は怪物なんだ。みんなみんな俺の敵なんだ』・・・って。」
「・・・・・・結局3人で・・・似たもの同士だったのね。私たち。」
「俺はあいつのナイフが刺さって地面に倒れている間、アイツの事を許そうと思ったんだ。
俺も辛かったから、他人事だと思えなくて、刺されたのが俺で良かった、とも思った。
こういうと、おかしいって思われるだろうけど、あいつが憎しみでこの街をさまよっているなら、
俺がもう一度刺されてもいいや、って気もするんだ。」
「そんな・・・!」
「はは、そりゃあんな痛い思いはもう嫌だけど・・・誰か他の人があいつの憎しみを受けるより、
この俺が受けた方がきっと受け止められるな。なんて思っちゃうんだ。
だから俺だったらいいな。とか思っちゃうんだ。」
「やめて・・・。嫌だよそんなの・・・。折角助かったのに!」
「あ、ご、ごめん!」
少し涙目になっている彼女を見て、あわてて謝った。
「でもさ、あいつも・・・あいつも救われるといいな。」
涙をふきながら、彼女もうなずいていた。
ふと気付くと、店内にいたお客も随分減っていた。
真後ろの男もゴソゴソと動いて財布を出し、レジへと向かって行く。
残り少なくなったコーヒーを飲んだ。
こんなに美味いコーヒーは初めてだと思った。
二人は気付いていなかったが、その男性客は清算を終えると、
店のドアの前にたたずんだまま、二人を眺めていた。
その客もまだ若く、痩せていて落ち窪んだ目をしていた。
男はしばらく二人を見つめて、
やがて悲しそうな顔をしたと思うと
二人に向かって少し頭を下げ、ドアを開け出て行った。
「・・・なんなの?あの人。」
レジ係の店員がいぶかしげにその客を見送った。
・6・
「ア・・・やばい!もうこんな時間だよ!さすがにまずいよ、帰らなきゃご両親が・・・。」
俺は時計をみて飛び上がった。
「・・・・・・。」
彼女の顔がくもる。やっぱり家には帰りたくないらしい。
でも、帰らないわけにはいかない。
「俺、駅まで送るよ。」
「ん・・・うん・・・。」
「・・・・・・あの、あのさ、ご両親と一緒に居たくないのかもしれないけれど、
でも・・・ちゃんと両親がいるんなら、一緒にいれるときには一緒に居た方がいいと思うんだ。」
「うん・・・・・・。」
元気なく立ち上がる。
レジをすませて、駅まで歩いた。
怖ろしい夜だったはずだが、もう外の気配なんてどうでもよくなっていた。
ただ・・・、このまま駅でお別れすれば・・・本当にお別れになるんだ。
なんだか彼女との距離が縮まった感じがして、嬉しかったのに
でも、もうこなくていい、と言った手前言い直すことなんてできないし・・・
そんな事が頭の中をぐるぐるとまわって、ほとんど話す事なんて出来なかった。
本当のことは伝えた。
彼女との誤解も解けて、
・・・・・・・
できれば
本当はもっと一緒にいたいけど・・・
こういう時、なんていったらいいんだ???
駅に着いた。着いてしまった。
殆ど人はいなくて、彼女が切符を買うのを眺めながら俺はもじもじと動き回るしかなかった。
どうしよう?
いやしかし。
でもやっぱり
どうすれば??
いや、ここは・・・
おかしな言葉の断片だけが次々と俺の頭を駆け巡り、心臓がまたドキドキとなりだした。
のどが渇いてきて、つばだけをやたら飲み込んでいた。
自分が先に言った「もう来なくていい」を撤回するのに適当で説得力がある言葉を探し回ったけれども
結局はなにも思い浮かばない。
あ、彼女がこっちに戻ってきた。
あ、列車ももうすぐきちゃうのか。
うわ、ど、
あせりが最高潮になったその時
彼女が突然俺の顔を真正面からのぞきこんだ。
「あの・・その、私と会うのって、やっぱり迷惑かしら・・・。」
「え?」
えらく高くてマヌケな声が出た。
「もう、あなたが『どんな人間だったか』はわかったわ。だから、過去のせいで自分自身を
貶めるような事はもう言わないで欲しいの。」
「う・・・うん?」
「だから、その、私は別にあなたの昔は、別にかまわないから、その・・・」
彼女の顔がみるみる真っ赤になっていく。
そして
「・・・・・・ただ、仲良くしたいだけなんだけど、・・・・・・だめ??」
(エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ)
ななななな仲良くしたい?俺と?
いいの?だって俺は
だって俺は君のこ・・・・
いや、えと。
そうじゃない。
俺は今は
そうだ。
俺の今の気持ちは・・・・
「あ・・・・その・・・・もしそうなら・・・嬉しい・・・・」
うわあ、言ってしまった。
あれ、そうだ。俺の言いたかった事だ。
「俺はまた・・・会ってもらえるんなら・・・嬉しい・・・。」
「私も、嬉しい!」
彼女がパッと微笑む。
やばい。可愛い。言葉が出ない。
そうだ。この気持ちを大切にしよう。嬉しいって気持ちのほうを選ぼう。
彼女が言ってた「周りがどんなであろうと自分の生きたい気持ちの方を選ぶ」って。
ここから電車に乗って、彼女はまた苦しみの生活に戻っていくんだ。
俺と一緒にいて、嬉しいって言ってくれている。
彼女を守ってやりたい。彼女の生きていく力を応援してやりたい。
そのために・・・俺も彼女を守る事のできるように、生きていく事を選ぼう。
改札を通ろうとする彼女にもう一度ありがとうと言いたくて、手を握・・・・ることはできなかった。
エピローグ
駅前の派出所には、警官が2名ほど勤務していた。
そこへ一人の男が現れて、突然衣服の中から刃物を取り出した。
驚いた警官が取り押さえようとすると
男は少し抵抗したが、警官が腕をねじりあげ押さえつけると、「痛い、痛い、ハハハ・・・」と突然笑いだした。
しかしやがて大声で泣き出し、無抵抗になった。
その後も「失敗」とか「成功」等と呟いていたが、しばらくすると大人しくなった。
やがて男は自分が通り魔事件の犯人である事を告げ、凶器の刃物も没収された。
取調べで男はこう話したという。
「ずっとなにもかも恨んで生きてきた。自分を受け入れてくれるものなど何も無いと思っていた。
先日の犯行では男性を殺す事が出来なかったため、
それすらも出来ないのか、また『失敗』なのかと思った。
犯行後しばらく身を潜めていたが、あの夜はもうどうしてもたまらなくなり、
夕方近くより獲物をさがして徘徊していた。
男性で失敗したので女性を狙おうと思っていた。
一度暗い路地で女性に狙いを定めていたが、男性が側にいたのであきらめた。
気付くと高架橋の側に立っていた。
ぼんやりと暗闇に潜んでいると、女子学生が泣きながら近づいてきた。狙おうかと思ったが、
すぐに後ろから男がやってきたので再び断念した。
しかしその男性に見覚えがあったため、後をつけてレストランへ入店して
すぐ側に座って様子をうかがっていた。
すぐにその男が自分が先日加害した男性だと気付いたが、彼らの話を聞いているうちに、
もう何もかもどうでもよくなった。
何故なら、被害男性の人生があまりに自分自身とよく似ていたのだ。
さらにその被害男性が自分の事を認め、受け入れると話していたからだ。
もう一度刺されても良いとまで話していた。
自分自身はアウトサイダーで、他人から疎んじられる怪物だと思っていたのに
知らない間に他人の人生を結果的には幸せにしていたのだと思うと
あまりの数奇な縁に犯行の計画はどうでもよくなってしまった。
殺すことが出来なくて自分は『失敗』した。と思っていたのに実はそれが『成功』だった。
これ以上アウトサイダーでいる人生を、逃げ続け、自分と周りを憎む人生を選びたくない。
そう思って自首をしたのだ。
被害者の男性には大変申し訳ないことをしたと思っている。
そして俺も、いつか救われたい。と思っている。」
男の証言を二人が知るのは、後の事であった。
別のエピローグ
「ねえ双葉、もう機嫌直してよ」
「知らないわよ。山岸君は女子高生と仲良くしてればいいじゃない。」
(・・・・・・とか何とかいってちゃっかり僕のアパートには来るくせに(笑))
「なあに?何か言った?」
「別に〜。ほら、もう部屋に着くから、中に入って暖かいお茶でも・・・。」
「あら?アレ何かしら?」
「え?」
見ると山岸の部屋のドアノブにビニール袋が掛かっている。
「?なんだろう。」
二人で中を見ると、そこには見るからに手作りのクッキーが・・・・・・
しかも「おいしく食べてネ(はぁと)愛を込めて(ハート乱れ飛び)」のメモ付。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ななななななんじゃこりゃ??」
「・・・・・・・・・クッキーね。おいしそうだわ。手 作 り ね。」
「ちょちょちょ、双葉、これは違うよ、」
「誰からかしら〜?こんな嬉しい事してくれる人がいるんだ〜?」
「違うよオ!そそ、そうだ、これはほら、調理実習!調理実習でお菓子つくるって生徒が言ってたよ!」
「調理実習?」
「そう!そう!(大きくうなずきながら)違いないよ!僕にもくれるって言って・・・」
その時、二人の通ってきた通路を跳ね飛んできた影が一つ。
「やっほお〜!ヤマギシい〜!元気にしてた〜〜??!」
飛んできたのは神宮寺八千華。大人になって露出にも磨きのかかった衣服で山岸に抱きつく。
「ややややや八千華ーーーー!!!」
「そうだよ〜ん♪ねえ山岸!クッキーわかったあ?八千華ちゃんが焼いたんだぞお!
折角山岸と 二 人 っ き り で食べようと思ったのに、山岸帰ってくるの遅いんだモン。
ドアノブにかけて帰ろうとしてたの。でも下の方で山岸が帰ってくるの見えたから〜♪
走ってきちゃった!ねー山岸早く部屋に入ろうよオ、そして一緒にクッキー・・・・ってあら?双葉あんたいたの?」
山岸は凍りつく。山岸だけでなく通路も明かりも街路樹も
何もかもが凍りついたように見えた。
「・・・・・・・・・・へェ〜っ・・・調理実習・・・ねえ〜。」
何よりも冷たい双葉の眼鏡が光る。
「ち、ちが、違うよ。本当に生徒が・・・。」
「え〜?何?双葉何いってんの?」
「山岸君はこれは生徒さんからの差し入れだって言ってたのよ。」
「何いってんのアタシ以外なんて考えられないでしょお!」
「いや八千華、お前が作ったっていう方が考えられな・・・」
「山岸君」
「ハイッ」
「アタシ帰るわね(はぁと)」
「ええ〜ッちょっと待って・・・」
「いいじゃん山岸〜♪私と一緒にクッキー食べよう〜♪」
「こら八千華離れろよ、くっつくなっ・・・」
「わ〜♪照れてる可愛い〜♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「双葉あ〜〜〜ッ!!」
闇の中に声がこだまする。
しかしもう、あの妖しい夜ではなかった。
アウトサイダーの夜は、見守り続けている月の光を受け入れて、
ビル街をつつみこみ、優しく更けていった。
山岸にとっては、優しい夜ではなかったけれど・・・・。
以上。おそまつでした。
>>173 GJ!
感動したよ
なんか頑張ろうって気持ちになれた
175 :
125:2009/01/09(金) 21:28:37 ID:blqUlDWh
>>173 やべぇ涙と鼻水が止まらない。
まさか読めるとは思わず、とんでもなく素晴らしい作品、ありがとうございました!
ファミレスの一連が特に感動しました。
主人公のヘタレ具合も実にイイ!
文章の隅から隅までセンスが溢れてて大好きです!
GJでした…!
良スレ保守
177 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 00:25:51 ID:zI8pbuuf
保守
>>173 GJGJ!!
こっちまで励まされるすげーいいSSでした。
生きてて良かった!
気早いが、職人様方の神SSを埋もれさせんためにも
そろそろ保管庫作ろうと思ってるんだが・・・どうだろうか。
なにか要望や意見があったら聞かせてくれ
179 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 01:16:12 ID:HBlqfMD2
保管庫作ってくれると有難い!
特に要望とかは無いが・・・
ありがとう
>>178
180 :
178:2009/02/19(木) 22:17:20 ID:F1zbug4r
賛同ありがとう!SSはこのスレ住人の宝だと思ってる。
エロパロ保管庫の体裁は、定番の2パターンのうちどちらかで考えてます
@アダルト可の鯖を借りて保管庫を作成
→言い出しっぺな以上、保管庫を長期的に管理できる環境にはある。
が、管理人が不慮の事態で冥王星に迷い込んだ場合、更新が止まる
A@wikiで保管庫を作成
→もしも手伝い人が現れた場合、更新停止が回避される可能性は高い。
が、本来@wikiはアダルトコンテンツ禁止だ\(^o^)/
スレ住人の反応を見て、3月上旬〜中旬頃には作成に着手する予定です。
ご意見お待ちしてます
保管庫! それはすばらしい!
アダルト可で長期利用可のサーバーのが安心かな…。
複数人での管理、っての自体にも不安はあるし。
もし178さんに何かあったら保管庫が迷子になるけど、SSや職人同様に、
保管庫の管理人もまたこのスレの宝。なので可能な限りの支援はさせてもらいます!
99ですー
皆様感想ありがとうございます。
とても嬉しいです!
178さん、保管庫ありがとうございます。
自分も@がよいと思います。
ご苦労かけますが、よろしくお願いします。
183 :
178:2009/02/27(金) 23:06:33 ID:KZMoMKD0
中間報告。
>>181,
>>182 ご意見有難うございます!参考になりました。胸まで一杯になりました。
この一週間で結論出すのは早いかもしれないけど、
ひとまずサーバーを借りる方向で進めようと思います。
言う事なしなのは有料鯖ですが、少々無理なので無料鯖で探しました。すまないorz
『アダルト可・広告が少ない・比較的サーバーが安定している・他の保管庫さんも使っている』点から
@FC2のアダルトコンテンツ
ARibbonNetwork
のどちらかにするつもりでいます。
@はFC2へのリンク以外ほぼ広告無しでスッキリ見やすく、
更新の少ない保管庫さんでも続けていられるようなので、
今のところ@のサーバーを借りようかと思っています。
他にお勧めなどありましたら是非ご指南お願いします。
184 :
181:2009/03/02(月) 09:29:59 ID:hXGZxmSo
FC2の通常サーバーは使用したことがありますが、よかったですよ。
デザインもすっきりしてるし、いざというときの引継ぎも楽なので。
お手数おかけします。頑張って!
185 :
178:2009/03/04(水) 23:51:40 ID:uCFD85i2
>>181 FC2を借りることにしました。助言助かります、頑張ります!
保管庫は先月からチョコチョコと作っていたので、
今週末にはアップロードできそうです。
186 :
181:2009/03/05(木) 20:33:07 ID:iIe/Bfds
乙です!
期待してます。
187 :
178:2009/03/07(土) 00:00:30 ID:HKIvs0z+
保管庫できました⊃
ttp://yousukemugen.x.fc2.com/ PC用になります。
保管庫作りながら読み返す神々の作品が支えでした。
職人様、本当にありがとうございます・・・!
それと誠に勝手ながら夢幻魔実也のなりきり板の過去ログも載せました。
埋まったままにするには惜しい面白さだったので、
未読の方はよろしければ是非に。
保管庫おつです!
なりきり板のははじめて読む!GJ!
>>187 管理人様
綺麗なサイトで吃驚しました。
本当にお疲れ様です〜!
……魔実也氏が女体化したら、猫おばさん……。(ボソリ)
遅くなりましたが乙です! なりきり板まで…!
このご恩はいつか作品投下で還元します。
191 :
名無しさん@ピンキー:
保守!