怪盗が捕まってあんな事こんな事・・・第4夜

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607名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 13:47:37 ID:BMrTzNIg
凄まじい過疎
60838 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:43:20 ID:B52nXY+F
ようやく書き上がったので投下します。

……考えてみれば、こうやって普通に投下するの久し振りだな……。
60938 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:43:53 ID:B52nXY+F
「警視! どうして何もしようとしないんですか!?」
「……」

じっと腕を組み、目を閉じたままの涼人に、シャルルは涼人の胸倉を掴まんばかりの勢いで詰め寄る。
日本に来てから1週間、涼人は一美から事情を聞く以外の事は何もしていなかった。

「はい、そこまでだよ、シャルルん」
「マリアンヌ先輩!?」

すると、そんなシャルルを後ろからマリアンヌが抱き付くように引き離す。
そして、怒りに満ちた顔色で振り向いたシャルルに向かって口を開いた。

「焦るのは分かるよ? 人質を取った後は何の連絡も無い。
これじゃあ、人質の安否は全然分からないもんね」
「先輩も分かっていらっしゃるのでしたら……っ!」

そのマリアンヌの言葉にさらに激昂するシャルル。
そんなシャルルに、マリアンヌはゆっくりと言い聞かせるように口を開いた。

「シャルルん、落ち着いて、よーく考えて? りょーとが焦ってないと思ってるの?
……自分の娘を人質に取られて、りょーとが焦ってないって、本当に思ってるの?」
「っ!?」

そう言われて、シャルルは我に返ると、慌てて涼人の方を振り向く。
良く見れば、涼人の拳は痛い程に握り締められていて。

「……今は、待つしかない、それしかないよ、シャルル君。
大山のおじさんがアジトを探してくれている。それが見つかるか、向こうが動くまでは、ね」

そう涼人に言われて、シャルルは何も言えなくなる。
涼人の声色が、まるで血を吐きそうな程悲痛なそれであると気付いたから。

「……動く……必ず動くはずなんだ。僕は今まで向こうの狙い通り特に何もしていない。
それなら、向こうは必ず動く。そうすれば、必ず尻尾を出すはずなんだ……!」

そう、呟くように言われて、シャルルは今度こそ反論する気を無くす。
すると、そんな涼人の元へと大山が走り寄り、口を開いた。

「涼人! ……やったぞ! 見付けた、奴らのアジトを!」
「っ!」

そう言われ、涼人は閉じていた目を見開いた。
61038 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:44:22 ID:B52nXY+F
「涼人。……どうする?」
「……決まってるでしょう? すぐにでも突っ込んで人質を奪還し、『組織』を今度こそ殲滅します」

そう大山から声をかけられ、涼人は一瞬も迷う事無くそう言い返す。
その言葉ににやり、と笑って頷いた大山に、涼人は聞いた。

「……それで? 『組織』のアジトって、何処にあるんですか?」
「ああ、それはな……、ここだ」

そう涼人が大山に聞くと、大山は地図をテーブルの上に広げ、ある一点を指す。
その場所を覗き込んで、涼人は1つ頷いた。

「……成る程、灯台下暗しって、奴ですか」
「ああ。てっきり全く別の場所にアジトを構えていると思い込んでいたよ」

そう言って頷き合う涼人と大山に、シャルルとマリアンヌは首を傾げる。
すると、涼人がそんな2人に向き直って、口を開いた。

「奴らがアジトにしてるこの場所はね、以前『組織』の首魁だった高橋父娘……。
その2人の家だったんだ。まさか、単純にそのままそこをアジトにするとは思わなかったけどね」

呆れた風にそう言う涼人に、シャルルとマリアンヌは思わず顔を見合わせる。
そして、揃って涼人の方を見直すと、口を開いた。

「一刻も早く行きましょう、警視!」
「急いで、りょーとの娘さん助けよー?」

そうシャルルとマリアンヌに言われ、涼人はこくり、と1つ頷く。
そして、今までとはまるで違う、力強さに満ち溢れた声で口を開いた。

「……大山のおじさん、出来るだけ最速で捜査礼状を貰って来てください」
「ああ、分かっている。今部下に取らせてる所だから、明日の朝一番には手に入るはずだ」

その涼人の言葉に、大山は真剣な表情を浮かべたままでそう答える。
そんな大山の答えを聞いて、涼人は軽く頷くと、鋭い目付きで部屋にいる刑事達を見回した。

「明日、それが『組織』の最後の日です。みなさんの奮闘を期待します!」
『了解!』

そして、そう涼人が叫ぶと、刑事達は一斉にそう叫んで敬礼した。
61138 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:44:47 ID:B52nXY+F
その後、涼人は捜査本部を抜け出すと、人気の無い場所まで行き、里緒に電話をかける。

『明日……動くんだね?』
「うん、だから……」

そう、電話の向こうの里緒に聞かれ、涼人は頷いて何かを言おうとする。
そんな涼人を制すように、里緒は口を開いた。

『分かってる。私が渚緒を助け出すチャンスは、今日の夜しかないんだね?』
「うん。……里緒、僕はもう止めない。でも、気を付けてね?」

そう言った涼人の声色には、明らかに里緒を心配する色があって。
そんな涼人に、里緒はくすっ、と笑って、殊更明るく口を開いた。

『大丈夫だよ、涼人。私は、『レインボーキャット』。いくらずっと現場から離れてたからって、そう簡単に捕まる訳が無いでしょ?』
「……そう、だね……」

その里緒の言葉に、涼人もやっと微かに微笑みを声色に滲ませる。
そんな涼人の言葉を聞いて、里緒は囁きかけるように言った。

『……じゃ、行って来るね』
「……うん、頑張って」

そう言って里緒は電話を切り、涼人は電話を手に持ったまま少しの間固まる。
そして、手にした電話を握り潰さんばかりに手に力を込めると、そのまま膝に手を叩き付けた。

「……くそっ……! 何で、こんな時に僕は里緒を助けに行けないんだ……!」

そう呟くように言う涼人。その顔には、焦りと、憤りが入り混じっていて。

「急がなきゃ、急がなきゃいけないのに、何で明日にならないと踏み込めないんだよ!」

涼人は吠えるようにそう叫ぶと、いらいらと頭を掻き毟る。
そんな涼人の肩を、急に誰かの手が叩いた。

「〜っ!?」

急に肩を叩かれ、涼人は慌てて後ろを振り向く。
すると、そこには大山が心配そうな表情を浮かべて立っていた。
61238 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:45:13 ID:B52nXY+F
「……大山のおじさん……」
「……大丈夫か? 涼人」

肩を叩いたのが大山である事に気付き、涼人は安堵と驚きが入り混じったような表情を浮かべる。
そんな涼人に、大山は心配そうに声をかけると、続けて口を開いた。

「里緒ちゃんが、どうかしたのか? 助けに行くとかどうとか……」
「っ……!」

そう大山に聞かれ、涼人は思わず何も言えなくなって口篭る。
そんな涼人を見て、大山ははぁ、と大きく溜息を吐くと、口を開いた。

「……まあ、全く予想してなかったかとなると嘘になるな。娘を攫われて、助けに行こうとしない親はいない。
……『レインボーキャット』が復活する。そう言う事だろう?」
「……」

そう大山に言われて、涼人は俯いて押し黙る。
そして、しばらくして涼人は諦めたような表情を浮かべて顔を上げ、口を開いた。

「……大山のおじさんには敵いませんね……」
「……止めなかったのか?」

明らかな苦笑を浮かべてそう大山に言う涼人。
そんな涼人に大山が聞くと、涼人はさらに苦笑の色を濃くした。

「止めようとしましたよ? いろいろと、ここじゃ言えない手を使って。
……でも、駄目でした。絶対に渚緒を助け出す、そう里緒は心に誓ってたんです。止めようがありませんでした」
「……どんな手を使ったのかは聞かないでおいてやる」

そう言った涼人に、涼人がどんな手を使ったのかを察した大山は、微かに冷汗を流しながらそう言う。
そして、1つ溜息を吐くと、口を開いた。

「お前がぶち切れるぐらいだ、あの子もぶち切れる。そう考えていたのは正しかった、と言う事か……」
「……ええ。里緒は、僕なんです。性格は、性別は違っていても、考え方は変わらない。
だから、僕は里緒に惹かれたし、里緒も僕の事を好きになってくれたんです」

その大山の言葉に、涼人は軽く微笑んでそう言う。
そのまま軽く惚気出した涼人に、大山は大きく溜息を吐くと、口を開いた。

「……で、涼人。これからどうする気だ?」
「どうする、ですか……」

そう大山に聞かれ、涼人は軽く唇に人差し指を当てて考える仕草をする。
そして、大山に向かって微笑みかけると、口を開いた。

「……とりあえず、捜査本部のメンバー全員に法律違反をさせてみようかなと思います」
61338 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:45:39 ID:B52nXY+F
「……は?」

その涼人の言葉に、大山は思わず呆気に取られる。
そんな大山を見ているのか見ていないのか、くすくすと笑いながら涼人は続けた。

「……なので、もう一度捜査本部のみなさんを呼び戻してくれませんか?」
「いや、待て待て待て!」

そう涼人から言われ、大山はようやく我に返って叫ぶ。
そして、涼人の胸倉を掴むと、怒鳴り付けた。

「涼人! 何を考えている! 全員だと!? 全員に、一体何をさせる気だ!」
「……落ち着いてください、大山のおじさん。僕は別にみなさんにこれから強盗をしてもらおうとか、そんな事を言っている訳じゃありません」
「当たり前だ!」

激昂する大山を宥めるように涼人が言うが、それでも大山は怒りを納めない。
そんな大山に胸倉をつかまれたまま、涼人は口を開いた。

「……今すぐに、高橋邸に踏み込みます」
「……何?」

その涼人の言葉に、大山は呆気に取られ、涼人の胸倉を掴んでいた手を離す。
そして、軽く服装を正しながら、涼人は続けた。

「今すぐに高橋邸に向かい、『組織』を一網打尽にし、渚緒を助け出します」
「い、今すぐに……だと?」

そう涼人が言うと、大山は驚愕を顔に貼り付けたままで聞き返す。
その大山の言葉に、涼人はこくり、と1つ大きく頷いた。

「ええ。今すぐに、です。だから、法律違反なんですよ」
「礼状も取らずに踏み込むと言うのか……!」

そう続けた涼人に、大山は目を見開く。
礼状も取らずに踏み込めば、それは確かに不法侵入と同義なのだから。

「……責任は、全部僕が持ちます。ですから、お願いします、大山のおじさん」

そんな大山に、涼人はそう言って頭を下げた。
61438 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:46:21 ID:B52nXY+F
「……はぁ」

その涼人の行動を見て、大山は一度盛大に溜息を吐く。
そして、涼人の脳天に何の手加減も無く拳を落とした。

「〜っ!?」
「馬鹿か、お前は」

急に殴られ、涼人は頭を抱え、涙目になってぷるぷる震える。
そんな涼人に、心底呆れたような表情を浮かべながら大山は口を開いた。

「お前が馬鹿だから言っているんだ。俺は今までずっと独身で、当然だが子供もいない。
でもな、親が何としてでもわが子を助け出したいと願う気持ちぐらいは理解出来るつもりだ。
……そして、『組織』は俺の後輩で、親友を殺した相手だぞ? ……手伝わせろよ」
「……大山の、おじさん……」

その大山の言葉に、涼人は呆気に取られて大山の名を呟く。
そんな涼人の頭に手を乗せて、大山は口を開いた。

「……責任は、全部俺が持つ。好きなだけ、やって来い!」
「え……? で、でも、それじゃあ大山のおじさんが!」

そう言った大山に、涼人は一瞬だけ呆然とし、すぐに大山に向かって叫ぶ。
それは、全ての罪を大山がかぶると言う事、大山が警察を退職覚悟であると言う事。
それを理解して叫んだ涼人に、大山はくすり、と軽く笑って、口を開いた。

「……涼人、俺はな、恭一と亜紀君が死んでから今まで、ずっと涼人の親代わりをやって来たと思っている。
……もし、同じ事になっていたら、亜紀君はこうしていたさ、それが親と言う物だ。
さあ、行け。子供は、親の好意には素直に甘える物だぞ?」

そう大山に言われて、涼人は一瞬その場に立ち尽くす。
しかし、すぐに気を取り直すと、大山に向かって満面の笑みを浮かべた。

「……ありがとう、大山のおじさん」

そう言うと、涼人は車椅子を回転させ、捜査本部へ戻った。

「……ありがとう、父さん!」

……去り際に、大山にそう叫んで。
61538 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/03/18(水) 17:49:35 ID:B52nXY+F
これで終わりです。

……題名忘れてたorz
恋するキャットシーフFinal〜猫は、もう一度〜第7話です。

今回は決戦前の警察側の動き、それと大山と涼人の絆がメインですかね。
と、言うか最後の最後で大山が凄く格好いい方向に暴走してくれましたw
616名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 09:08:24 ID:GilcZ5Fb
GJ!次回が楽しみですね。
617名無しさん@ピンキー:2009/03/22(日) 23:12:57 ID:kMqizOqx
あーなんだっけ三人組のあれ
ずっと投下されてないけどスランプとやらは随分長いようだが
618名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 02:08:37 ID:88fjrSAA
トライアングルムーンか?
まあ職人さんにも都合はあるんだし、そんな嫌味っぽく言わなくても。
619名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 04:35:24 ID:0VTlpyZD
本職の都合とかもあるだろうし
ましてやこのスレ専従ってわけでもないしね
個人的にはアクアメロディのあれのおかげで後半年は戦える
620名無しさん@ピンキー:2009/03/23(月) 09:32:29 ID:2LzoD9xM
未完のまま終わるなんて、この板ではよくあること
それくらいの気持ちでいないと
621名無しさん@ピンキー:2009/03/26(木) 12:55:34 ID:Wp2fgBNG
我慢我慢
トライアングルムーンでは最後三人まとめての処女散華とかやるのかな?
622名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 16:48:27 ID:IU72mTxh
唐突ですが貼ってみます。
このスレはこれまでずっとROM専で、他スレにて処女(作)を捧げたばかりのド素人ですが、枯れ木も山のにぎわいといいますから――
タイトルは「怪盗十六夜(いざよい)」
623怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:49:06 ID:IU72mTxh
月と約束した町――中央ヨーロッパの山地の一角に、そんな幻想的な名を付けられた町がある。
天頂にはまるで手が届かんばかりの質感のある月がめぐり、ある晩は山地の清浄な空気が、またある晩には近くの清流から立ち上る薄い霧が、またある晩には群れをはぐれた狼の悲しげな遠吠えが彩る。
特に満月の光景はあらゆる詩人に天啓を与え、あらゆる芸術家に秘められた感情を呼び覚ますとまで語られる。

そして、今この街をさらに幻想的にしているもの。それは怪盗の少女の存在だった。
あらゆる警報装置をも潜り抜け、いかなる警備員をもかわし、月下すべてが己の庭であるかのように自由自在に街を闊歩する謎の少女。
普通の泥棒と違うのは、なにも盗まないということ。彼女は忍び込んだ屋敷に、ただ一枚のカードを残すのみだった。
『我が欲するこの世に二つとない宝、ここにあらず 怪盗十六夜』――と。
そして、もし侵入した屋敷の主が悪事を働いていた場合、まるで立ち去りぎわのついでとばかりに悪事の証拠を暴きたてて行ってしまう。
そのため警察の方も、怪盗少女をというよりもむしろ彼女に悪事を暴かれた屋敷の当主の方を逮捕するといったありさまだった。
その不可思議なメッセージと、悪事を見逃さない清廉なふるまい、そして数少ない目撃例の全てが語る麗しい少女の姿。この街の住人は、二人集まれば必ず怪盗少女の噂をすると言ってもよかった。
そして、その町のとあるカフェでも、また。

「怪盗イザヨイ、また現る! しかし望みの宝は得られなかった模様、ね――」

二人がけの席に新聞や雑誌を並べて、カップを手にした少女がゆっくりと午後のひと時を楽しんでいる。
紙面に躍るのはどれも怪盗十六夜に関する情報だ。どれもこの国の言葉で書かれているが、少女が呟いているのは日本語だった。
ただでさえヨーロッパの小国に東洋人がいるのは目立つ。しかも彼女の格好は、日本の高校の学生服。傍目ではそこまでわからなくても、たった一人でカフェを楽しむには無理のある装いだ。
だが、少女の姿は、この『月と約束した町』の一角に自然と溶け込むほどに、優美であり幻想的だった。
すらりと伸びた手足と整った姿勢、そして女性らしい丸みと膨らみを帯び始めた若々しくも華奢な肢体。穏やかな微笑を口の端に浮かべ、整った美貌を艶やかな長い黒髪が彩っていた。
手に持つカップに口を付ける動作は優雅そのものだったが、思わぬ熱さにびっくりして可愛らしい表情を見せることもあった。カップの中のカフェオレは湯気がかなり薄くなるくらいぬるい様子だが、少女はたいそうな猫舌のようだ。
そんな少女を眺めているだけで、午後のひと時を幸福に過ごせそうな、存在そのものが芸術品であるかのような少女だった。
624怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:49:38 ID:IU72mTxh
「いったいイザヨイの目的は何なのか。この世に二つとない宝とは何を意味するか……」

雑誌の読者投稿欄には、彼女が求めているのは理想の恋人だとか高名な詩人の遺作だとかいろいろと推理が載せられている。
それらを斜め読みしていた少女の背後に、無作法に近寄る影。

「姉ちゃん、怪盗イザヨイに興味があるのかい?」

無防備な仕草で少女が振り向くと、背後には近寄られただけで威圧されそうないかつい男が立っていた。少女を姉ちゃんと呼んでいるが、どう見ても男の方が年も体重も倍以上はありそうだ。

「俺がいろいろ教えてやってもいいぜ?」
「ノーサンキューですよ、お兄さん」
「その可愛い顔に傷をつけられたくないだろう?」

猫なで声をあっさり捨てて、男が少女の肩に手を置いた。その無骨な拳にかかれば、少女の華奢な肩など一息で砕け散りそうではある。
はあ、と少女がため息をついた。

月と約束した町……その幻想的な町には、非常に生々しいというか、うんざりするような問題がある。
幻想的な月夜の光景を守るため、州が『夜間の照明を制限する条例』『煙を出す器具の利用を制限する条例』『そもそも電気を使わなきゃいいじゃん条例』を次々に制定。
その結果、確かに月夜は中世のころと同じような素晴らしい光景を保ったが、町の明るさと治安も中世に逆戻り。
屋内での娯楽をほぼ完全に制限された若者が夜の町に大挙して繰り出すという事態に。
闇に包まれた夜を女性が歩けば、強姦される確率は500パーセント……一晩で五回犯されるという意味で……という、先進国としてありえない事態に発展。
しかも、条例に守られた暗闇を利用してマフィアなどの犯罪組織が街に集結、そして潜伏。特に人身売買の一大マーケットに。
この街の最大の収入源たる観光客が来なくなることを警戒したこの街は、治安が最悪であることを必死で隠蔽する一方で、有力者たちでとある会議を組織した。
裏社会に通じた者だけが知っている。この街の混沌とした犯罪の坩堝という現状と、この街を支配する一つの組織の名を。そしてそれは、ヨーロッパ最大の人身売買組織の名前でもあった。
その名は……

「私みたいな観光客に手を出そうなんて、あなたは『満月会議』のひとさらいですか?」
「ゲッ、グッ」

少女がその名を出した瞬間、男は顔中を蒼白にして奇声を発した。

「……その名前を気安く口にするんじゃねえ。翌朝には豚小屋で種付けされてることになるぞ」

などと、その他にも口汚い罵り言葉をぼそぼそと呟き、男はその場を立ち去ってしまった。
少女はもはや男のことなど忘れたように、再びぬるいカフェに恐る恐る口を付ける。

「……お嬢ちゃん、さっきの男の言ったことは本当だ。その名前は二度と口にしない方がいい」

カウンターで飲んでいた老人が声をかけてきた。その声には偽りのない心配の響きがある。

「記事を見ろ、怪盗イザヨイは多くの悪事を暴いてきたが、その中に人身売買は一つも入っていない。それはつまり、あの怪盗の娘っ子すら、満月会議には怖くて手が出せないってことだ」
「それは怖いですね」

どこまで本気なのか、少女が相槌を打った。

「そういえばつい先日も、日本から来た修学旅行の高校生たちの中で、少女が二人さらわれたって聞く。この街で観光客に手を出して無事に済むのは満月会議の人間だけだ。そうなりたくないのなら、おとなしくしてさっさと帰りな」
「まあ、そんなことが。行方不明になった少女の名前はご存知ですか?」
「んん? いや、わざわざ覚えているわけじゃないが」

少女は雑誌の背の閉じる部分を指先でもてあそびつつ、優しい微笑を見せた。

「行方不明になった少女の名前は、高良唯。それを探している私の名は、望月陽炎と申しますの」
「……まさか……!? お前さんは、行方不明になった二人の娘っ子の一人……!?」

老人が愕然となる。だがその時、少女の机の上に並べられていた雑誌のページが一斉に宙を舞った。少女が指先で装丁をなでた時に、本を閉じる糸がやんわりと引き抜かれていたのだった。
舞ったページがカーテンのように少女の姿を隠し、そして舞い落ちた時には、少女の姿はどこにもなかった。
ただ、机の上に、どうやら猫舌のせいで飲み切れなかったらしいカフェオレのカップと代金の小銭が残っていただけだった。
625怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:51:47 ID:IU72mTxh
その日の晩――満月から一日だけ進んだ月夜、その欠落の生む暗闇を舞うように、黒く塗りつぶされた小型の風船が『月と約束した町』の上空を飛んでいた。
そして驚くべきことに、一人の少女までもその風船にぶら下がるように空を飛んでいた。
人間を支えられるようには見えない小型気球で夜闇を飛ぶのは、カフェで望月陽炎と名乗った少女だった。小さな気球で体を浮かべる姿は、陽炎という名の通りの幻影であるかのようだ。
彼女の着ている衣服は、カフェでの学生服からかなり様変わりしている。
東洋の着物に似たデザインながら、肩と腿でばっさりと切り落とされて健康的な手足を見せる黒衣。剥き出しの白い腕と足には同じく黒い布で作られたウォーマーが肘と膝を覆っている。
足につけているのも黒い足袋だった。腰に差した脇差サイズの直刀すらも黒で塗りつぶされている。
彼女を下から見上げる者がいたとしても、変わった形の雲か鳥としか思わないだろう。だがその姿を日本通の人間、あるいはアニメや漫画を趣味にするものが見たとすれば真っ先に『ニンジャ』、もっと詳しいものなら『クノイチ』を連想するはずだ。
決して卑猥でも扇情的でもなく、最終的な露出度で言えば決して高くはないが、剥き出しの二の腕や腿、帯で締められた腰、胸元を押し上げるふくらみはたいへんに刺激的だった。
黒い布を目元に巻いただけの簡素な覆面で顔を隠し、さらには長い布を首元にひるがえしてマフラーのように口元を隠しているが、美しい顔立ちのラインは隠しようがない。
カフェではいかにも落ち着き払った令嬢といった風情だったが、腰まで届く長い髪を後ろでまとめて流しているせいか、瑞々しい生気に満ちた様子だった。
怪盗十六夜。それが、今の望月陽炎の名前だ。

「風向き、よし。誰にも気づかれた気配は無し……」

すぐに、彼女が目的とする建物が見えてきた。
広い敷地と広い庭に囲まれた豪勢な屋敷。観光地として土地の値段が高いこの街ではそれだけで富豪であることを意味する。
その屋敷が通常の豪邸と違う点は、庭に動き回る無数の犬の存在だった。
この屋敷の主は軍用犬の調教で名をなした人物であり、屋敷の一切は……警備はもちろん家事に至るまで、すべてを犬がこなしている。
逆に言えば、屋敷の中に主人以外の人間がいないということ。人身売買の中継地点としてこれほどふさわしい場所もなかった。なにせ、秘密をもらす可能性のある人間がいないのだから。

「ユイ。必ず助けてあげるからね」

高良唯、文学部の才媛にして陽炎の大親友。修学旅行でこの街に来た時には、あらゆる詩人を追体験できると舞い上がっていた愛しい少女。
そして、迂闊にも夜中に出歩いてしまい、そのまま消息を絶ってしまった。その時に一緒にいなかったことを陽炎は今でも悔やんでいる。
この街での人身売買は、すべて『満月会議』がとりしきっている。そのことを知った陽炎は、帰りの飛行機から一人抜け出し、町に舞い戻って怪盗となった。
親友が誰によって拉致され、いまどこに監禁されているかを知るために、満月会議を敵に回して一人闘う怪盗十六夜として生きることを決めたのだ。

「使用人が一人もいない屋敷。ここに拉致された人たちが監禁されていても不思議じゃない」

庭を歩きまわっている犬たちを眼下に眺めながら、陽炎の気球はゆっくりと屋敷の屋上に近づいていく。どれだけ犬が庭を警戒しようと、飛び越えてしまえば意味はない。
だが、その時、屋上の一角に何かの気配を感じて陽炎は動きを止めた。

「んん……?」

目を凝らすと、これまで屋上にべたりと伏せていた漆黒の犬がふに立ち上がって猛然と彼女に向かって走り寄って来た。
それも一頭ではなく、三頭もの黒犬が、一直線に並んで陽炎へと駆けて来た。恐怖で怪盗少女の顔が青ざめた。

(しまった、屋上にも待機していたの!?)
626怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:52:29 ID:IU72mTxh
もちろん下調べは入念に行った。だが、屋上にべたりと伏せた黒犬は遠距離からでは発見のしようもなかった。
逆に言えば、それだけ静謐な待機を犬に科すほどこの館の主人は優れた調教師であるといえる。
とっさに陽炎は気球を操って上昇し、犬の跳躍でも飛び付けない高度へと退避する。
だが、次の瞬間、先頭の犬がばっとうずくまり、二頭目の犬が一頭目の背中を踏んで真上に飛ぶや、三頭目の犬が二頭目の背中をさらに踏み台にして高く跳躍した。
まるで犬の組体操、あるいは戦隊ヒーローの合体技。さらに例えるならば、踏み台にする動作を取り入れたジェットストリームアタックと呼ぶべきか。
犬の常識をはるかに超えた大ジャンプを見せた黒犬は、流星のように気球へと迫った。がうっと開いた口に鋭い牙が並ぶ。
安全だと思っていた場所に飛びつかれた陽炎はなすすべとてなく、恐怖で体をすくませた。

「ひっ!」

思わず悲鳴をあげてしまった少女ではなく、その体を支える気球を犬の牙は引き裂いた。流星のごとく飛び去った犬の口元には渋い笑みが浮かんでいた。

「あ……」

引き裂かれた気球はすでにボロ布に等しく、地上二十メートルほどの高さで上空に放り出された陽炎は庭の中央に向けて落下を始めた。
しかし、ここからが陽炎の怪盗としての意地の見せどころだった。空中で自由落下しながらボロ布と化した気球を正確に解体し、風呂敷のように両手の間に広げたのだ。
それは、いわゆるムササビの術の変則版とも言うべきものだった。かろうじて空気を捕らえた少女は減速しつつも地面に結構な勢いでたたきつけられたかに見えたが、巧妙な受け身で地面を転がった少女には目立った負傷はない。
しかし、無事に着地できた陽炎に休む余裕はなかった。
庭で待機していた十数頭もの犬が、彼女を完全に包囲していた。いずれも鍛え上げられた犬の獰猛な唸りをあげており、逃げようとするそぶりを見せれば即座に噛み殺されそうだった。

『どうかね、私の犬は?』
「まあ正直、世界一の調教師を自負するだけのことはあるわね」

唐突に聞こえた声に、陽炎は動揺を抑えながら答えた。
この屋敷の主人、軍用犬調教師の声に間違いなかった。重々しくもしっかりとした口調には不快感は感じなかったが、それだけに恐ろしさを覚える。
声のした方を見れば、包囲から離れた所にいる一頭の犬の首輪にスピーカーのようなものがついている。まるで犬がしゃべっているかのようだが、実際にその犬が指揮官であるようだ。
屋敷の主人の勝ち誇った声を聞き、彼女の周囲を取り囲む犬の群れが歓喜の咆哮をあげた。実際、これだけの犬に囲まれては身じろぎの一つもできなかった。

『君も私の犬にしたい』
「最悪……」

あまりにも直接的な言葉を受けて、少女がげんなりする。

『抵抗しなければ痛くはしない。さあ私のかわいい犬たちよ、あたらしい仲間をここに連れて来ておくれ』
「遠慮するわ」

一言で切り捨てると、陽炎は自分の口元を覆い隠すマフラーを解いた。
ほっそりとしたあごのラインと可憐な桜色の唇が月下に露わになり、犬たちがなぜか興奮して唸り声をあげた。

『自ら素顔を見せてくれるのかね?』
「十六夜忍法、水月」

嬉々とした声にはこたえもせず、陽炎は解いたマフラーを束ねると口元に寄せ、ふっ……と自らの甘い呼気を閉じ込めるように吹き込んだ。
627怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:53:26 ID:IU72mTxh
『かかれ!』

陽炎の動作に危険を感じた調教師が指令を下し、十数匹の犬が一斉に陽炎に跳びかかった。
犬たちはまず陽炎の髪を咥えて地面に引きずり倒すと、その手と言わず足と言わずいたるところにかぶりついた。
だが、次の瞬間、犬たちは自分がくわえているのが少女ではなく少女の残したマフラーだけであるということに気付いた。そして、マフラーから転がり出たお手玉から噴き上がる無臭の催眠ガスをまともに嗅いで、次々にその場に昏倒した。

「あなたたちが見たのは水面に映る月。どれほど手を伸ばしても天の月には触れられない」

包囲を脱した地点で、陽炎は静かに解説した。いわゆる空蝉の術の亜種と言おうか、マフラーを自分に見せかけて犬たちを引き付けたのだ。
彼女を包囲していた十数匹の犬たちはすべて昏倒し、唯一無事だった調教師のスピーカーを付けた犬と怪盗十六夜は向かい合った。

『見事な手並みだ。君はいい雌犬になれるだろう』
「あなたなりの褒め言葉だとしても、素直に受け取れません」

余裕で言葉を交わす陽炎だったが、内心ではかなり焦っていた。
マフラーを失って顔の下半分が丸見えになっているのも誤算なら、催眠ガスの詰まったお手玉も彼女の切り札の一つだった。それをここで失ったのは正直痛い。

『ぜひとも屋敷に招待したい。君のために日本から伝統的なドッグフードを取り寄せてある』
「ドッグフード?」
『主食となる米を皿に盛り、味噌を使ったスープをかけたものだ』
「それって、犬まんま……ですか?」
『試しに食してみたところ、なかなかの美味だった。君も満足できるだろう』
「食べたんですか」

あきれ顔で陽炎は突っ込んだ。調教師の口調は真剣であるだけに力が抜ける。

「私にはこのまま逃げ帰るという選択肢もあるんですけどね」

力が抜けた陽炎は、ついぽろりと内心を零してしまった。次々に誤算に襲われて思考が後ろ向きになっていることを知られてしまったと、口にした後で後悔する。
それでも彼女の発言は事実だった。目の前の犬をかわして屋敷から逃げ去ることは、それほど難しくはない。
そんな彼女の内心を見透かしたかのように、調教師は決定的な一言を口にした。

『だが君にはまだ、世界に二頭といない犬を見せていないのだが』
628怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:55:01 ID:IU72mTxh
「……! まさか、唯がそこにいるの?」

陽炎の顔がこわばる。世界に二つとない宝、怪盗十六夜の目的、それがあると調教師は言った。

『世にも素晴らしい日本の雌犬だ。だが一頭ではさびしそうなのでね。君が仲間に加わってくれたら彼女もさぞ喜ぶだろう』
「唯を……犬呼ばわりするなッ!」

始めて感情をあらわにして、陽炎は激昂をそのままに叫んだ。

『私にとっては最大級の賛辞なのだが……これ以上どう褒めればいいか見当もつかないほどに』

弁解がましい口調と、同じく言い訳するような表情の犬を睨みつけ、陽炎は唇をかむ。

(ここに唯がいるなら、逃げるわけにはいかない。どんなひどい目に遭っているかわからないんだから)

調教師に犬扱いされている大親友の痴態が脳の片隅で繰り広げられるも、渾身の気力でそれを無視。

「いいわ。その挑発に乗ってあげる」

彼女は言い捨てると、眼前の犬に向かって疾風の如く駆けた。
犬が反射的に彼女に跳びかかるが、その一瞬前に幻の如く跳躍した陽炎は、なんと向かってくる犬の頭に跳び乗ってもう一段の跳躍を見せた。
踏み台にされた犬自身もまるで羽にふれられたかのようにしか感じられない、体重を全く感じさせない動きだった。
その人類の常識を超えた跳躍で二階の窓に飛びついた時には、陽炎が腰から抜いた短刀が窓ガラスに亀裂も入れずに貫き、閂を正確に切り落としている。

『招待すると言っておるのに』
「玄関からは入らない主義なの」

そう言い返して、怪盗十六夜は窓をからりとあけると幻のように部屋の中へと飛び込んだ。

<つづく>
629怪盗十六夜:2009/03/27(金) 16:56:03 ID:IU72mTxh
……くのいちスレよりもこっちであってますよね?
自分にはあまり深い設定を作る力量がないのでオーソドックスにくのいちですが、一応いろいろ書いておきます。

・望月陽炎 17歳 身長164cm B85/W54/H82
怪盗十六夜として『月と約束した町』を騒がせている少女。容姿は優美にして可憐そのもの。
勉強でも運動でも、さらには芸術に至るまで、ほとんど努力もなく高いレベルに達している天才。ただしその分努力による伸びしろが少ないため、本気で努力をしている人間にはいずれ負けるのではないかと常に不安に思っている。
彼女の生まれた望月家は「欠けた月の闇に潜む」と恐れられた十六夜忍者一族の末裔。
ただし、十六夜一族は江戸時代の半ばあたりで忍者を廃業し、その後は「もはや満月に影はいらぬ」ということで望月と改名してしまっている。
陽炎の家族も、自分の先祖が忍者だったなんてことは知らない一般人。
しかし十六夜一族の忍術を書き記した書物が古い倉の片隅に残っており、子供のころにそれを見つけた陽炎は、『面白そうだから』というそれだけの理屈で自主トレーニングを始め、高校生の半ばまでに天賦の才覚でいくつかの忍術を習得している。
しかし血筋と天才だよりの忍術には努力と修練による裏付けがなく、せいぜいがパーティーで余興に使える程度である。
しかも彼女が『面白そう』と感じたものだけを覚えたため、女の体を性的に利用する術は全く覚えていない(というより、古文書に何が書いてあるかわからなかった)。
前述のとおり運動能力は抜群であり、外国の言語もたやすく習得するほどの才女であるが、努力の裏付けがない能力の脆弱さを本人が誰よりも理解しているために下調べと事前準備を決して怠ることはない。
『満月会議』にさらわれた親友の高良唯を百合疑惑が囁かれるほど溺愛しているが、それは心を許した相手にはついついべったりしてしまう彼女の甘えん坊の一面からである。
また精神的に成長する必要がほとんどなかったため意外と本質は幼く、男女の恋愛などもファンタジーとしてしか認識していない。

さて、次回は怪盗十六夜と調教師の対決となります。
少女怪盗がエロい目に遭うのは当然として、ちょっと『痛い目』に遭ってしまうのはこのスレ的にOKですか?
もちろんグロとか流血とかじゃなく、普通の戦闘や尋問の範囲内でですが……
630名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 18:44:45 ID:AfBWfVvi
まったくもって問題なし。むしろウェルカム
631名無しさん@ピンキー:2009/03/27(金) 23:46:05 ID:aC3myOLW
おおおおおおおおおおおお
GJです
632名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 01:09:00 ID:sdmvidLY
ヒャッハー!新作ktkr
633名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 03:11:59 ID:DlBU6nJc
新作キター!
そういえば魔法や科学を使う怪盗はいるけど忍者型はいなかったな…これは期待。
痛い目に関しては、グロやエロに差し支えるレベルでなければ問題ないかと。
634名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 11:03:52 ID:v4/mATBp
GJ!
続きが楽しみだ
635名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 07:09:42 ID:JU2Gpk5+
>>629
エロ尋問OK
636名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 22:38:07 ID:ju58vTSS
敏腕女刑事野上冴子が怪盗キャッツアイの長女・来生泪を捕らえてレズ拷問
637名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 10:09:44 ID:QyrlbigK
>>629
うおーっGJ!
なんか久々の対決モノのような気がして期待が高まるな
クノイチってのはポイント高い
好きに書いて欲しいです苦痛描写バチコイ!
638名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 17:50:17 ID:frCTrcoO
続きマダー?
639名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 00:57:10 ID:hBPqQAU9
書き手様は本業に必死なんです><
640名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 08:37:25 ID:kZEgxQzF
怪盗も普段は女子高生だったりアイドルだったり教師だったり人妻だったりするからねw
64138 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/04/08(水) 19:21:57 ID:Y2ubrIYi
その人妻怪盗がぐちゃぐちゃにされる(と、言っても今回は触り程度だが)話書けましたw
では、次より投下します。
「……よい、しょっと……」

高橋邸の塀の上に上ると、里緒はふぅ、と1つ溜息を吐く。
そして、里緒はそのまま高橋邸を睨み付けた。

「ここに、渚緒が……」

そう呟くと、里緒は塀から身を躍らせる。
そして、音も無く着地すると、身体を確かめるように軽く手足をぶらつかせ、呟いた。

「……うん、身体もまだなまってないみたいだし……、行ける、かな?」

そう自分に言い聞かせるように言うと、里緒は走り出す。
その瞬間、ボディースーツの電磁パルス機能が働いて、里緒の身体は疾風となった。

「……よっ、と。
やっぱり、外の防備は手薄だね……」

塀から建物までの数十メートルを一息で駆け抜けると、里緒はそう1人ごちる。
所有権こそずっと高橋天山が持っていたものの、表向きは家の主が逮捕されてから今までずっと空家なのだ。
そんな家の敷地内とは言え庭にそんな防備を敷くのは、周りの住民に疑ってくれと言うような物で。

「その分、中の防備はしっかり固められてるんだろうなぁ……」

今までの『レインボーキャット』としての経験からそう考える里緒。
この考えは絶対に間違ってないだろうと言う確信もあって。

「……でも、行かなきゃ。行って、早く渚緒を助け出さなきゃ!」

そう、自分を鼓舞するように叫ぶと、里緒は屋敷への進入口を探す。
そして、近くの窓が割れているのを見付けると、そこから中に忍び込んだ。
……そんな里緒の表情からは、余裕が完全に抜け落ちていた。

「……渚緒、待っててね。お母さんが必ず助け出してあげるからね……!」

……その姿は、外見こそ往年の『レインボーキャット』だったが、中身はそれとはまるで違った……。
一方、その頃。

「……入って来ましたぜ、お嬢!」
「そう、それならただ待ってれば向こうから勝手に入ってくるわね。……猫の終焉地に」

そう、部下からの報告を聞いてにやり、と笑う絢音。
……しかし。

「おねーたん、あそおー!」
「……あーもう! 少しは静かにしなさい!」
「きゃははっ、きゃはははっ♪」

……にこにこと本当に楽しそうに笑う渚緒に纏わり付かれていたらさっぱり決まらなくて。
たまらず絢音は渚緒に向かって怒鳴り付けるが、渚緒はそれでも楽しそうに笑っていて。

「……に、しても、何て人見知りしない子なんだよあの子……」
「だよなぁ。俺があの子の年で今のあの子の状況になってたら間違い無く泣き叫んでるぜ……」

そんな絢音と渚緒を見ながら、『組織』のメンバー2人はひそひそ話をする。
その内容は、誘拐犯に速攻でなついた渚緒に呆れながら感心するのが半分。
そして、もう半分は、

「に、しても……くくっ」
「振り回されるお嬢が見れるとはな……ぷっ」
「そこっ、黙れーっ!」

いつも自分達を振り回す絢音が完全に渚緒に振り回されている姿を見物する2人。
思いっ切り見世物にされ、あまつさえ笑われ、絢音は真っ赤になってその2人に怒鳴りつける。
しかし、2人はそれでもにやにや笑いながらじっと絢音と渚緒を見詰めていて。

「くくく……」
「ぷくく……」
「うがーっ!」

そんな果てしなくぐだぐだな空気の中、脱力しかけながらもモニターを見詰めていた男が突然声を上げた。

「例の部屋の中、入りましたぜ!」
「「「っ!」」」

その瞬間、場の空気は瞬時に引き締まった。
「……どういう……こと……?」

ゆっくりと高橋邸の廊下を歩きながら、里緒は思わず首を傾げる。
家の中は明らかに誰かが暮らしているような気配があったが、ただそれだけで。

「ここまで、何も無いなんで……」

明らかに人が暮らしている形跡があるのに誰にも出会わないこの状況に首を傾げつつ、里緒は近くの扉を開け、中に入る。
その瞬間。

「っ!?」

急に暗かった部屋の中が明るくなり、里緒は思わず目を覆う。
明るさに目が慣れ、里緒が目を開けると、そこは妙に広い部屋であった。

「……ここは……?」
『来たわね!』

壁をいくつかぶち抜いて作ったらしき部屋を里緒が見回していると、突然声が聞こえる。
里緒が上を見上げると、そこにはスピーカーが吊るされていた。

「……うん、来たよ。渚緒を助けに、盗み出しに」
『……安心しなさい、あなたの娘は無事よ。
……ただし、娘が無事でもあなたが無事で居られるかどうかは分からないけどねぇ!』

そう絢音が叫ぶと、里緒が居る場所の正反対の位置にあったドアが開き、男達がぞろぞろ出て来る。
そして、絢音は高らかに笑いながら口を開いた。

『12人ぐらい、1人ずつならあなたは倒せるでしょうね。
でも、逃げ道を塞がれて、12人に一斉に襲われたら、あなたは倒せるのかしら?』
「―――っ!」

そういわれて、里緒は後ろ手でドアノブを回すが、オートロックになっていたのかドアが開かない。
思わず里緒が焦りの表情を浮かべると、男達の先頭にいた天山がにやつきながら口を開いた。

「……さて、覚悟してもらおうか」
『ちょっと、父さんがするのは私が終わってからなんだからね?』
「分かっているさ。私だって自分の精液を娘に触られたくは無い」

そう天山が言うと、スピーカーから絢音の声が降って来る。
それに答える天山を見ながら、里緒はロッドとスタンガンを構えた。
「っ!」
「おっと」

突きかかって来た里緒を軽くかわして、天山は部下達に合図を送る。
そして、里緒を包囲するように動いていた男達に向かって、ニヤニヤ笑いながら口を開いた。

「お前ら、遅くとも明日の昼には警察が来るんだ。
少しでも長く楽しみたいなら、少しでも早くとっ捕まえやがれ!」
『うおおおお!』
「くっ!」

天山の叫びを聞いて突っ込んで来る男達の頭上を、里緒はとんぼ返りで飛び越える。
そしてたたらを踏んだ1番近い男の首筋にスタンガンを押し付けた。

「てぇいっ!」
「がっ!」

たまらず崩れ落ちるその男を見て、里緒は2人目を目掛けて駆け出す。
そして、その男が反応するよりも早く里緒は懐に飛び込み、脇腹をロッドで存分に抉っていた。

「ぐは……っ」
「これで……2人!」

ロッドを大きく振り、里緒は男達を睨み付ける。
そんな里緒に男の1人が掴みかかるが、

「てめっ……!」
「きゃっ!」

その男を見て里緒がバックステップをすると、その身体は数メートル後ろに下がっていた。

「ボ、ボス……!」
「落ち着け! ただ速いだけだ!」

思わずたじろぐ男達に、天山はそう怒鳴り付ける。
そして、男達を落ち着かせるように声を張り上げた。

「いいか、あいつは確かに速いが所詮ただの女だ!
……もう一度囲んじまえ!」
その天山の指示を聞いて、男達はもう一度里緒の事を囲みに行く。
そして、囲み終わったのを確認すると、天山は声を張り上げた。

「よーし、半分だけ突っ込んで、残りは待機! 飛び越えた時に備えな!」
「っ!」

その天山の言葉を聞いて、里緒は表情を強張らせる。
飛び越える事が出来ない以上、力尽くで突破する以外方法は無くて。

「ええーいっ!」
「ってぇっ!?」

正面の男にロッドを叩き付けると、その男が怯んだ隙を付いて里緒は包囲から脱出する。
しかし、今殴られた男は殴られた箇所を押さえながらもしっかりと立っていて。

「痛ってーな、てめぇ!」
「―――っ!」

痛みに顔を顰めながらもまだ戦闘力を残している様子の男を見て、里緒は歯を食い縛る。
不意を付くか、スピードを乗せれば里緒の力でも男は気絶させられるが、単純な力のみでは少し苦しくて。

「よし……! そのまま追い込んじまえ!
……殴られた礼は、捕まえた後にたっぷりしてやればいいんだからよ!」
「違えねぇ、どうせ俺らは抵抗しようとしまいとやっちまうんだからなぁ!」

そんな里緒を見てげらげらと笑う天山と男達。
そんな男達を睨みつけながら、里緒はせわしなく頭脳を回転させた。

「(……また包囲されたら、今度は突破出来るか分からない……。
なら、囲ませずに、ヒット&アウェイに徹すれば……!)」

幸いにも部屋はその戦法が取れるくらいの広さがある。
それを確認すると、里緒は天山達に気付かれないように少しずつ後ろに下がってゆき……、

「―――っ!?」

……突然、その足が何かに固定されたかのように動かなくなった。
慌てて里緒が下を向くと、いつの間に目を覚ましたのか、さっきロッドで沈められた男が里緒の足を掴んでいた。

「っ! は、離して!」
「ぐほっ!」

慌てて里緒はその男を蹴り飛ばし、その男はもう一度気絶する。
それを見て里緒がほっと安堵の息を吐くと。

「……ひっ!?」
「捕まえたぜ!」

……その瞬間、里緒は男に抱きすくめられて悲鳴を上げる。
里緒が見上げると、その男の瞳には紛れも無く好色そうな色が浮かんでいて。

「や、やぁっ! 離して! 離してぇっ!」
「っと、暴れんなっての!」

すぐに里緒はじたばたと暴れるが、力では大の男には敵わない。
そうこうしているうちに他の男も里緒を取り押さえて。
里緒はたちまち首から下はまともに身動きする事も出来なくされた。

「い、嫌っ! 嫌ぁっ!」
「やっぱ胸でけーなー、こいつ」

ぶんぶんと首を横に振る里緒の胸に、男の1人が手を伸ばし、揉みしだく。
普通なら、快感どころか痛みしか感じない程の力で揉んでいるのだが。

「ひっう……んんっ……!」
「ん? 何だ? もう感じてんのか?」

ふるふると微かに身体を震わせる里緒を見て、男はあざけるような笑みを浮かべる。
と、天山がこれもまたあざけるような笑みを浮かべたままで口を開いた。

「5年前に盛ったのは20人分の媚薬だからなぁ、後遺症ぐらい残って当然だろうよ」
「―――っ!」

そう天山に言われ、里緒は天山を睨み付ける。
すると天山はボディースーツに覆われた里緒の秘所に手を伸ばした。
「きゃひぃっ!?」
『ちょっと、父さん! 私が先だって言ってたはずよ!』

その瞬間、里緒はびくり、と身体を跳ねさせ、絢音が天山に文句を言う。
しかし、天山は自分の娘からのその文句にも軽く首を横に振るだけで。

「……絢音、これだけ暴れてたら運ぶに運べないんだよ。
警察が来る前に出来るだけヤってトンズラするつもり何だから、睡眠薬も使えないしな。
……それなら、1回イかせて脱力させた方が速いって、ただそれだけだっつーの」
『……本当でしょうね?』

その天山の言葉に、絢音は心底不審そうな声色で聞き返す。
そんな絢音に、天山はふぅ、と1つ大きく溜息を吐いて、答えた。

「心配しなくても、今は愛撫だけでそれ以上はしねーし、させねーよ。
……それに、時間もそんなにはかからないと思うし、なっ!」
「ひあぁぁっ!」

その言葉の最後にボディースーツ越しに里緒のクリトリスを探り当てて摘み上げると、里緒は頤を反らせる。
そんな里緒を見て、天山はニヤニヤ笑いながらさらに続けた。

「この感じ具合なら、3分かかんねぇよ」
『……そう。じゃあ待ってるわ』

その天山の言葉に、絢音はそう答えると、スピーカーのスイッチが切られた音がする。
その音を聞いて、天山はやれやれ、と首を振ると、部下の男達に向かって言った。

「……さて、どうやらうちのお姫様がお待ちかねのようだ。とっとととどめ刺しちまえ!」
『ういーっす』
「ひあぁぁぁーっ! うあぁーっ!」

そう天山が言うと、男達は次々と里緒の性感帯を責め立て出す。
20の手にそれぞれ別の場所を責め立てられ、里緒は見る見るうちに追い詰められる。

……そして、絶頂に達して脱力した里緒を男達が別室に運び込むまで、予告通り3分かからなかった。
これで終わりです。
……やっとこのスレの趣旨に合った話が書けてるな……。
それと、最初の方の絢音のターンは……、うん、凄くキャラが暴走したんだw
65038 ◆KHEtQ2j5Nc :2009/04/08(水) 19:38:09 ID:Y2ubrIYi
投下した後に見たら494KBになってたので新スレ立てました。
第5夜
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1239186929/
651名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 20:41:55 ID:Gz7rmQQ2
>>650
合わせ技GJ!
652名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 01:58:58 ID:VdddAQzY
>>650
やっと来てくれたか
春先でも全裸待機はキツイ
ともかくGJ
653名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 11:49:27 ID:RiqDlD0p
О2華麗
654名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 17:33:40 ID:kwjzcBCt
gj&乙彼
百合に期待。
655名無しさん@ピンキー:2009/04/09(木) 19:01:12 ID:0tnzJrfU
発情ボディを多人数で弄ってイカせるっていうシチュがツボった
できればそこんとこをもっと分量を使って欲しかったけど作者さんの得手不得手もあるよね
GJ!
656名無しさん@ピンキー
>>655
お前は俺か
細かく描写して欲しかったが、まあ足りない部分は脳内補完で