◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆

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610名無しさん@ピンキー:2010/02/04(木) 07:56:33 ID:QDsv0FBj
女は筋肉!
611かたわの槍姫様 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/05(金) 01:48:02 ID:SNCf4fmO
投下します。
とりあえず今回はプロローグだけです。
6121/3 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/05(金) 01:52:01 ID:SNCf4fmO
***

 怒号、怒号、怒号。
 大気そのものが震えているような錯覚すら覚える戦場で、返り血で化粧をした天使が走
っていた。いや彼女は天使ではない。その証拠に彼女が発する音は、天使の羽根の羽ばた
きの音などではなく、武骨な槍で風を切り裂いている音なのだから。
 なるほどあれがイエスド王国の自慢のお姫様か……。目の前にいる兵たちを軽く薙ぎ払
っているその姿を見るに、どうやら数々の噂は本当のことらしい。
 俺が可憐な姫の槍さばきに見とれていると、豚のような顔の指揮官が大声で喚きだした。
どうやら俺たちに殿(しんがり)をさせて逃げる気らしい。最早大勢は決まった。あと十分
もせずにこの本陣へと敵が押し寄せてくるだろう。俺たちクルーの民を前線にでも置け
ば違っていただろうが、この無能な指揮官は俺たちを手元に置いておかなければ何をする
かわからないとでも思っているのだろう。
「若、お逃げください」
 そっと耳元でそう囁いた女がいた。女はクエルと言う。かつてわが国では剣において無
双を誇った女傑である。
「いや、俺は兵三十を率いて殿を務める」
 俺が言葉を発すると釣り目がちな彼女の目が一層釣り上がった気がした。
「若、あのような下種のために!」
「そしてクエル、お前は残ったわが民を率いて、どさくさに紛れてこの戦場を脱出しろ」
「いけません!その役目は私がいたします。ですから若は……」
「いや、俺が消えては後になってレーネン国は血眼になって捜すだろう」
「しかし……」
「クエル、これは命令だ」
 俺がそう言うと彼女は顔を伏せ、押し殺すような声で一言呟くように言った。
「……ご武運を」
 彼女が去っていく。黒い兜と鎧に包まれた後ろ姿は凛とした美しさを持っていた。幼少
のころからずっと一緒だった御転婆が、いつの間にかあんなに大きくなっていたのだなと、
ふと思わずにいられなかった。
「というわけだ、ヴォル。酔狂な連中を三十人ばかし集めてくれ」
「御意」
 深々と頭を下げたのはクエルの父であるヴォルだった。髭の似合う眼帯の男だった。
かつてはもっと歳のわりに若い印象を受けたこの男も、ここ数年の出来事で髪も自慢の
髭も真っ白に染まっていた。
「最後まで世話をかける」
 赤黒く染まる戦場を見据えて言った。
「地獄の底までもお供いたします」

6132/3 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/05(金) 01:54:09 ID:SNCf4fmO
***


 弓が降り注ぎ、槍が迫りくる戦場の中、兵士が作る肉の壁を切り裂いて進む。
 勇猛に戦う戦士たち。
 しかし数というものは何物にも勝る力である。仲間が一人一人と殺され、ついにヴォル
までも俺の盾となって死んだ。
 そこで出会ったのが例のお姫様だった。周りには360度敵だらけ、そして正面には俺
 では到底敵いそうもない一人の騎士。こんな状況でなぜか無性にうれしくなったのを感
 じた。多分俺はその時になって初めて自らの死を認めたのだろう。
 俺は駆けた。
 目標はただ一人、そうあのお姫様だ。
 俺の動きに呼応するように横から矢が放たれる。
 鎧の隙間から刺さる矢、そんなものを無視して足を動かす。
 姫は馬上、普通にやったらただ殺されるだけ。
 姫が槍を構える。
 目が合った。
 姫の瞳は夏の葉のように美しい緑色だった。
 あと三歩、二歩、一歩!
 姫の槍が迫る。
 風すら悲鳴を上げているのだろう。
 ヴォンという音とともに繰り出される姫の薙ぎ払い。
 ここだ!
 さきほどまで戦場を眺めていて気付いたこと。
 それはこの姫は正面の敵に対して槍を突き刺すのではなく、薙ぎ払うのだ。
 自ら先頭に立ち、一対多の戦闘に馴れたせいだろうか、それとも自らの槍を振るう速さ
によほど自信があるのか、いわんやその両方か。
 しかし、それがこの瞬間、決定的な隙となった。
 俺はその槍を左手に持った剣で受け止める。
 いや胴体を輪切りにされないように剣を盾にすると言うのが正しい。
 そもそもこの槍を左手一本で受け止めるというのが無理なのだ。
 この手は十中八九死ぬ。
 だが、それでいい。
 俺が欲しかったのはこの距離で自由に動く右手。
 通常戦闘において一番必要なものはリーチである。
 元々俺の剣では馬上の姫の槍には絶対に届かない。
 ではどうするか?
 答えは簡単だ。
「……っ!」
 俺は姫の槍に薙ぎ払われながら球状の物体を投げつけた。
 槍よりもリーチの長い武器を使えばいいのだ。
 その瞬間、不思議とまた姫と目が合った。
 姫の目は戦場のそれとは似つかない、まるで知らない玩具を見る子どものような目をしていた。
「綺麗だな」
 気付いたらそう呟いていた。
 しかしその呟きは余韻を味わうことなく鼓膜を破らんとするがごとき轟音に掻き消された。
 そう、俺が投げたのは火薬玉だった。
 元々俺の国では戦場で狼煙を使い合図を送る。それを少し応用しただけのちんけなものだ。
多分これでは鎧を纏った彼女を殺せはしないだろう。それでよかったのかもしれない。
あんなにも美しい瞳を持つ女はそうはいない。
 そんな相手と最期に死合うことができてよかった。
 そんなことを考えながら俺は意識を手放した。

614 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/05(金) 01:55:17 ID:SNCf4fmO
***



 俺は生きていた。
 気がつくと見たことのない場所で眠らされていた。
 起きようとするとわき腹が尋常じゃないくらい痛かった。
 それと左腕がなかった。
 全身包帯まみれでアルコールの消毒液の臭いが堪らなく臭かった。
「起きましたね」
 そして何故か金髪の美人さんがベットの横で林檎を剥いていた。
「ここはどこですか?」
 笑顔を作り、なるべく紳士的に尋ねてみた。
「はい、ここはイエスド王国軍のテントの中ですよ」
 にっこりと微笑んで答える美女。彼女は衛生兵かなにかだろうか?
「では、なんで俺は生きているんだ?」
 俺は敵陣のど真ん中で倒れたはずだ。死ぬどころか、この手厚い処置はなんなのだろうか?
「はい、私が助けるように部下に言いました」
「はあ?」
 彼女の言葉に思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
 そして彼女は剥き終えた林檎を右手首ごと俺に渡してきた。
「おわ!」
 びっくりした。いきなり手を渡されてビビらない人間はいないと思う。
「これは義手?」
「はい、あなたが奪った右手です」
 そう言う彼女は右手は手首から先が無かった。
「初めまして、というのも変ですね。私はエリス、皆からは槍姫と呼ばれています。以後お見知りおきを」
 目と目が合う。
 緑色の瞳がキラキラと輝いている。
 そのとき俺はすべてを理解した。
(これは死んだな)
 身体中が傷んでもう溜息すら出なかった。

615 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/05(金) 01:56:56 ID:SNCf4fmO
 以上です。
 勢いだけで書いた。反省はしていない。
616名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 18:21:58 ID:DjE2ICD3
>>615
反省してないってことは、もちろん続きを書いてもらえるんだよな?

期待して待ってます。
617名無しさん@ピンキー:2010/02/05(金) 23:41:12 ID:SAxMLlqj
>>615

すごく好みなシチュだ
続き楽しみにしてます
618かたわの槍姫様_第二話 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/10(水) 20:38:50 ID:736Tyxc7
投下します。
619 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/10(水) 20:41:13 ID:736Tyxc7
 ***

 あれから半月が経った。俺は生きていた、それも尋問もされずに。
 てっきり俺を生かしたのは情報を吐かせるとか、そういった理由からだと思ったのだが、
どうやら違うようだ。
 あのお姫様は俺を自軍に引き入れたいそうだ。
 なんでも「これからは私の失った右手の変わりとなって働いてもらいます」だとか。
 正直俺はこの酔狂なお姫様に興味を持った。普通ならば自分を傷つけた人間を引き込ん
だりしないだろう。高名な人物や確かな腕を持った者ならともかく、今の俺は左腕を無く
し、両手のころだってそれほど腕が立つわけではない。なによりも祖国の滅亡とともに
俺の本当の名前を知る人間は数えるほどしかいないのだ。そういったもろもろの理由から
彼女にとって俺は必要な人材とは言いがたいだろう。
 しかし今はイエスド王国軍の中のごく一部だけではあるが、自由に歩かせてもらえている。
もっともあまり居心地のいい場所ではないが。
 当たり前だ。俺はイエスド王国の英雄たる槍姫様の傷つけた人間なのだ。俺が通りかか
るだけで、すれ違う兵士たちが殺気を帯びた視線を向けてくるのが常だった。それでも誰も
手を出してこないのは、お姫様が俺に手を出さないように厳命を出したからに他ならない。
まったく、あのお姫様は何を考えているかわからない。
 俺がそんなことを考えているとテントの中に食事が運ばれてきた。二人の給仕から運ば
れてきたそれは、とても捕虜の食事などではなく、貴族士官が食べるような豪華なものだ
った。最初にこの食事が運ばれてきたときは毒殺されるものだと思い、手をつけなかったが、
その知らせを聞いたお姫様が、「どうして信じてくれないんですか?」と言って、俺の目の
前でその食事を涙目ですべて平らげた、なんてことがあってから残さず食べるようにしている。

620 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/10(水) 20:42:38 ID:736Tyxc7
 そして、毎日食事が終わったころ彼女がやってくる。
「カロさん、元気にしてましたか?」
 そう、お姫様だ。それも丸腰で笑顔をこちらに向けて毎日やってくるのだ。ちなみにカロ
というのは俺の偽名である。
「ええ、おかげさまで」
 それに笑顔で答える。俺がここまで生きてこれたのは彼女の気まぐれのおかげなのだ。
変に刺激して自らの首を絞めるわけにはいかないのだ。
「そうですか、それはよかったです」
 ベッドの横にある椅子に腰かけるお姫様。俺は彼女をじっと見つめた。戦場では兜の中
に隠れていた金髪は、今はランプの灯を受け、琥珀のような透明な美しさを見せている。
口元は笑顔を浮かべ、紅一つ塗っていないはずの唇は瑞々しい果実のごとく煌めいている。
そして何よりもエメラルドをそのまま埋め込んでしまったような、光を集め反射させ光る
緑色の瞳には絶対の“美”が存在していた。
「それで仕官の話は考えていただけたでしょうか」
 彼女はここに来るたびに俺に部下にならないかと誘ってくる。俺はこれまでその答えを
はぐらかしてきた。何故ならここで簡単にイエスとでも答えたなら簡単に寝返るやつだと
いう印象を与えかねないだろうし、何よりもイエスド王国に味方してしまえばクルーの民
に刃を向けることになってしまう。クルーの国はもうない、しかしレーネン国に支配され
た後も民は生き続けるのだ。そんな彼らと戦うことはできなかったからだ。
 しかし――
「はい、少し条件さえ飲んで頂ければこの身お預け致しましょう」
 今日の俺はお姫様にそう言った。
「何ですか?」
 初めて色よい返事を貰った姫様はものすごく上機嫌に聞いてきた。
「はい、先日の戦闘に生き残ったクルーの民のことです。彼らは今レーネン国に敵前逃亡
の罪で追われております。彼らを救い出すことができればこの小さな身など幾らでも差し
出しましょう」
 そう、俺が逃がしたクルーの民は撤退した後、敗北の理由を押しつけられ追われている
のだ。クエルが上手くやったようで今はどこかに逃げ延びたようだが、捕まるのは時間の
問題だろう。今はイエスド王国との戦争に集中すべき時期であるはずなのに……。この時
ほどレーネン国の無能さを呪ったことはなかった。この話はイエスド王国の兵士たちが話
しているのを聞いて知った。俺が嫌な視線に耐えてイエスド王国軍の中を歩き回っていた
のは、クルーの民の情報を少しでも集めるためだったのだ。
「クルーの民……あの亡国の民ですね。あなたはクルーの民の出なのですか?」
 凛とした声が通る。彼女の真剣な目がこちらを見据えている。
「……はい」
 彼女と目が合う。言葉を噛みしめるように肯定した。
「わかりました。この私の槍に誓ってその約束を守りましょう」
 椅子から立ち上がり、堂々と胸を張って言うその様は、槍も持たず、鎧も身につけてい
ないはずであったが、俺の目には何者よりも勇ましく見えたのだった。

621 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/10(水) 20:43:53 ID:736Tyxc7


***

 イエスド王国軍上層部が一堂に会したテントの中、これからの行われる戦についての軍
議が行われていた。そこで俺は何故かエリス将軍の側近として彼女の後ろに控えさせられ
ていた。ちなみにエリス将軍という呼び方は、お姫様に名前で呼ぶように命令されたからだ。
「申し上げます。対レーネン国軍最終拠点、首都ワルーシャについて間諜から詳細が届き
ました」
 あの約束からもう半月の時間が経過していた。クルーの民はなんとかまだ捕まらずにい
るようだ。まあ、これについてはイエスド王国の弩濤の攻勢のおかげだろう。この戦での
イエスド王国の勝利はほぼ揺るぎないだろう。そして、今士官の一人が情報を読み上げて
いるところだった。
 主な情報はイエスド王国軍の兵力が3万なのに対し、敵方はせいぜい1万5千程度であ
ること。戦場となるであろう場所は城下町の前である見晴らしのいい平地であり、特にこ
れといった障害物がないことなどである。
 軍議が進み、作戦の話になった。ここではどうやらいいとこの貴族様の子息であろう見
目麗しい美青年が立案した四つの部隊における包囲殲滅作戦にほぼ決まりかけていたとき
だった。それまで特に声さえ出さなかったエリス将軍は俺に聞いてきた。
「カロ、あなたはどう思います?この作戦」
 テントの中の空気が止まった気がした。遅れてここにいるすべての人間の視線がこちら
に向いた。その目には好意など映っておらず、まるでゴミでも見るかのような視線だった。
「そうですね、元々数で勝っていますし、わざわざこのような作戦をとるメリットはあり
ません。こちら側は3万の兵力ですが4分割した場合ひとつおよそ7500となります。
ここで敵がほぼ全兵力をもってして確固撃破しに来た場合、最悪敗北もありえるでしょう」
 だが俺は彼らの視線などどこ吹く風といったように、堂々と自分の意見を述べた。俺に
とったらこのような敵意や侮蔑など、何度経験したか数えるのも億劫になるくらいなのだ。
「戯言をぬかすな!この臆病者の裏切り者め!」
 そうテントの外に漏れるぐらいの大声で俺を罵った女がいた。マリアンヌ将軍である。
マリアンヌ将軍は弓兵隊を率いる若き将軍で、エリス将軍とはお互いに「エリー」、「マリ
ー」という風に呼び合うほど仲が良かったらしい。しかし彼女の右手を奪った俺を引き入
れると聞くとエリスに猛反対して、それ以来少し疎遠になっているそうだ。

622 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/10(水) 20:44:41 ID:736Tyxc7


「確かに少し臆病かもしれませんね。しかし私がこのようなことをいうのには三つほど理
由がございます」
 俺は彼女の恫喝にも似た大声にひるむことなく言ってのけた。
「一つ、敵は主力である騎兵隊をいまだに多く有してあり、対してこちらは多くの戦力は
歩兵であります。二つ、戦場がその騎兵隊を十二分に活用できる地形であること。三つ、
おそらくこの戦でレーネン国はスレイド将軍を出してくる恐れがあるからです」
 スレイド将軍とはレーネン国が誇る名将である。四十をこえたばかりの男ざかりだが、
レーネン国の王位継承権をめぐっての政治闘争に敗れ、今では城の中で幽閉されていると
いう。
「馬鹿な!確証もなしに、それも高々一将軍に怯えるなど!貴様のやっていることは我々
の指揮を下げることにほかならない!!よもやここで我らの腰を引かせることが目的では
あるまいな!」
 マリアンヌ将軍が鼻息荒く、血走った眼でこちらを睨んでくる。これではいくら言って
も駄目だな。彼女は理論ではなく感情でものを言っている。こういった者を従わせるのは
ほぼ不可能なのだ。
「……」
「なにか言うことはあるのか!」
 俺が呆れて黙っている時も、彼女は相変わらずこちらを親の敵のように睨んでいる。
「マリアンヌ将軍、少し黙っていてください。彼の話が聞けません」
 そんな今にも殴りかかってきそうなマリアンヌ将軍を尻目に、エリス将軍が冷たく言い
放った。
「続けなさい、カロ」
「……」
「続けなさい」
 もう一度俺に言うエリス将軍、俺は彼女の考えが時々わからなくなる。多分これはこの
テントの中のすべての人がそうだろう。
「いや、結構だエリス将軍。ここは勇猛なイエスド王国軍人が集う場所だ。決して彼の演
説を聞く場所ではない」
 俺がそんなことを考えていると、一人の初老の男性が声をあげた。彼はこのイエスド王
国軍の最高権威を持つ白龍騎士団の団長である。小太りの白髪混じりの金髪男は不快そう
に俺を見て、退出するように命じた。俺は黙ってその命令に従った。退出する際、エリス
将軍とマリアンヌ将軍と目が合った。マリアンヌ将軍が勝ち誇ったような目で、エリス将
軍はすまなそうな視線をこちらに向けていた。

 結局、例の4隊に分かれての包囲殲滅作戦が採用された。
(まいったな。敵は追い詰められて必死に戦う。一方こっちは揺るぎない勝利に安心しき
っている。ここで本当にスレイド将軍率いる騎馬隊が押し寄せたら……)
 スレイド将軍、彼は数少ないクルーの民を平等に扱う将軍だった。人望にも機知にも富
んだ彼の存在は、追い詰められたレーネン国軍を奮い立たせるに十分な人物だ。
(なにもなければいいが……)
 そう思う俺の頬を撫でたのはこの季節とは思えない冷たい風だった。

623 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/10(水) 20:50:03 ID:736Tyxc7
以上です。
て言うか人いないね。

あと前回の投稿でちょっとミスった。
>>612
最後の最後に

「地獄の底までもお供いたします」

という台詞のあとに

 ヴォルの低音の声が俺の耳を撫でる。ここはあまりにも血の臭いがきつすぎる。

という地の文が一行入ります。
まあ脳内補完よろ
624名無しさん@ピンキー:2010/02/10(水) 21:04:08 ID:5daMFSpn
乙かれさん


なんか、規制また厳しくなったらしいよ。過疎ってるのもそのせいかも
625名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 02:13:34 ID:201JnnbX
乙。

ところでこれは壮大な前戯だと期待していいんだよな?
626名無しさん@ピンキー:2010/02/11(木) 08:00:13 ID:7u6NA3x3
乙彼。
指揮→士気のtypo?
627名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 16:04:51 ID:8TlpvzTj
>>623
亀ですが、続き楽しみにしてます!!
628名無しさん@ピンキー:2010/02/15(月) 22:46:17 ID:98MduOdP
主人公のセリフの
「こちら側は3万の兵力ですが4分割した場合ひとつおよそ7500となります」
で銀英伝連想したのは俺だけか?(笑
続き楽しみにしています
629かたわの槍姫様_第三話 ◆AHN19iJ8Is :2010/02/17(水) 23:32:57 ID:SvhB9rLG
投下します。
630名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 23:34:00 ID:SvhB9rLG

 ***

 スレイド将軍は祖国が滅亡寸前の状態にも関わらず、ゆったりと風呂に入り、髭をそり、
髪を整えていた。それを部屋の隅で見守る女中は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
何故ならばスレイド将軍は先ほど国王に呼び出されていたからだ。通常国王に会うに身嗜
みを整えるのは普通のことである。しかし彼が呼び出されてもう彼是三時間以上の時が過
ぎ去っていたのだ。あの気まぐれで傲慢な国王の性格を見れば、なんと叱責されるかわか
ったものではない。
「あの……そろそろ……」
 これでこの女中がスレイドをせかす言葉をかけるのは七度目となった。過去六度はいず
れの言葉も受け流されてしまっていた。
「ああ……そうだね」
 そう言ってスレイド将軍はアイロンがかけられたばかりの軍服に袖を通した。
「行きますか」
 そう言って悪戯小僧のようなニッと白い歯を彼女に見せて、彼は部屋から出て行った。
その時女中は、彼が自分の顔色を見て面白がっていたのだということを知った。

 スレイドが王の間にたどり着くと、彼を迎えたのはヒキガエルのよりも醜い声だった。
「遅い遅いぞ!今の今まで何をしておった!」
 王を震える手でワイングラスを持ちながらスレイドを睨んでいる。周りは人の影は三人
の護衛の兵士と二人の文官だけだった。おそらくその国の滅亡を悟り、ほとんどの高官た
ちは逃げだしたのだろう。
「いえね、ずっと臭い場所に押し込められていたので臭いが移ってしまいまして、そのま
までは陛下に失礼だと思いまして風呂に入っていました」
 スレイドはたっぷりと皮肉の音を込めて言った。それを聞いた王はスレイドにワイング
ラスをその中身ごと投げつけた。スレイドはそれを避けもせずただ黙って右手で受け止めた。
しかしグラスの中の液体まではそうはいかず、白シャツはワインで赤く染まってしまった。
「もうよい!貴様はこれからわが軍を率いて敵と戦え!」
 王が吐き捨てるように言った。
(なんと傲慢な王だろう。これではレーネン国は滅びるはずだ。ここでこの王の首を取り
敵の差し出してみてはどうだろうか、……なんてな)
 スレイドは自笑気味に笑った。
(そのようなことは私の性に合わないな。まあこんな場所にいるよりも、戦場を駆けまわ
った方が気分が良いに決まっている)
「わかりました」
 そう言って礼もせずままスレイドは王の元を去って行った。王はそれを見て顔を歪め、
新しい酒を持ってくるように命令した。

631名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 23:34:34 ID:SvhB9rLG

 ***

 イエスド王国軍右翼、7,500の内1,500の騎兵隊を率いるのが槍姫ことエリス将軍だった。
俺は今彼女の後方についている。
 やがて戦いは始まった。敵は中央に向かってきた。俺たちは彼らを包囲すべく陣形を変
えていく。
 しかしどうも敵兵の様子がおかしい。敵があまりにも速すぎるのだ。敵は一切止まるこ
となく中央右側に押し寄せた。この速さでは右翼と左翼とで挟み撃ちに浴びせるはずだっ
た弓が届かない。今撃つと味方にも当たってしまう。
 敵軍の真ん中へと突っ込むほど今のレーネン国には士気はなかったはずだ。やはりこれ
は彼がこの戦場にいるということなのだろう。そうなればもう中央右の軍は救援に向かっ
たところで無駄足になるだけだろう。
「カロ、どうやら敵が中央を破るのは時間の問題のようです。あなただったらどうします?」
 あえて中央右でなく中央と言ったのは、おそらく私と同じ考えだからだからだろう。
(中央右の次は中央左の軍が食い破られる。ここで中央左の軍が左翼と合流してくれれば
問題ないのだが……)
 中央左の司令官は軍議で俺を不快そうに退出させた例の白龍騎士団の団長なのである。
ああいった手合いは目の前の味方を良いようにされて黙っている性分ではない。
「手は二つあります。ひとつは一刻も早く左翼の軍隊と合流し、数の上で五分の勝負に持
ち込むこと、そしてもうひとつは……」


 ***

 馬に乗って戦場を駆ける。私たちはついに敵中央の両陣を破ることに成功した。次は左
翼と右翼だ。この二つの距離はかなりある。そうそう合流などできまい。つまりこの戦は
ほぼレーネン国の勝利だ。スレイド将軍についてきて本当に良かった。そう一兵卒の俺が
思っていると、仲間たちが突然騒ぎだした。
「城が……!城が……!」
 見るとワルーシャの城には我らのレーネン国のではなく、敵側のイエスド王国の旗が靡
いていたからである。

632名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 23:35:28 ID:SvhB9rLG

 ***

 戦いは終わった。タネを明かしてみれば簡単なことだ。敵がこちらの中央に気を取られ
ているうちに、エリス将軍率いる騎兵隊が敵の城を落としたのだ。
 右翼と左翼が合流するには時間がかかり過ぎる、かと言って味方の救援に向かっては確
固撃破されるだけ、ならば敵の戦う理由を奪ってやればよい。つまり守るべき城さえどう
にか出来ればもうこの戦いは終わったも同然なのだ。この状況で居残りをさせられている
守兵ではエリス将軍率いる騎馬隊は止められるはずもなく、城はあっけなく落ちた。
 そして、城が落ちたのをみとめた後、スレイド将軍は少し寂しそうな表情を浮かべ、イ
エスド軍に投降した。
 このようにしてイエスド王国はレーネン国との戦争に勝利した。

 ***

 ワルーシャの城では連日戦勝パーティが開催されていた。
 俺もエリス将軍に引っ張られるような形で無理矢理参加させられていた。もっとも俺を
連れてきた本人は様々な人物から社交辞令のあいさつを交わされ、ダンスを申し込まれと
目も回るほど忙しいようだ。俺はひとりバルコニーでパーティの様子を、ワインを傾けな
がら見ていた。
「おい、貴様」
 そうしているとおもむろに声をかけてくる女がいた。知らない女だった。
「カロと言うらしいな……その、なんだ……」
 女は桃色のドレスを纏い、頬を染めて言い淀んでいた。化粧はあまりしていない褐色の
肌に、白く美しい髪が映える。
「その……この間はすまなかった。もし貴様がいなかったら我々は負けていた」
 この間、この間……? ああ、なるほど。ようやく目の前の女性が誰であるかわかった。
「いえ、気にしてませんよマリアンヌ将軍」
 目の前にいたのは軍議で俺のことをずっと睨んでいたマリアンヌ将軍だった。
「そうか……」
 そう言うと彼女はずっと黙ったまま俺の隣に立ち続けた。やがてパーティも終わりに近
づき最後のダンスとなった。その時マリアンヌ将軍が絞り出すような声を出した。
「私と踊ってくれないか?」
 彼女は俺の前に手を差し出す。彼女は耳まで真っ赤にしていた。
「その、この間の謝罪も兼ねてだ」
 そして取り繕うように言う。
「ええ、喜んで」
 俺は少し考えた後彼女の手を取った。ここで断ったら彼女に失礼だと思ったからだ。

 ゆったりとした音楽と共に男女が回っている。
 マリアンヌはこういったことにあまり馴れていないようだ。動きがいちいちぎこちない。
「マリアンヌ将軍、もう少し肩の力を抜いてください。ダンスなんて所詮遊びですよ」
 俺は彼女の耳元でそう言う。
「ああ、わかった」
 そう言うが彼女の動きは一向に良くならない。
「ほらほら、もっと笑ってください。せっかくの綺麗な顔が台無しですよ」
「―――ッ!」
 俺がそう言うと彼女は更に身体を固くして、俺の足を思いっきり踏んでしまった。
 結局俺はこのダンスが終わるまで彼女に三度も足を踏まれるのだった。

 皆が楽しそうにダンスに興じている中、その様子を憎々しげに見つめている一人の女がいた。女の左手は強く握り過ぎたために血が滴っている。
「それは私のだ」
 女の口から呪詛のような響きが漏れた。その言葉を知る者は誰もいない。
「私のだ!」
 彼女の眼は魔物のように緑色に光っていた。
633名無しさん@ピンキー:2010/02/17(水) 23:38:28 ID:SvhB9rLG
以上です。
てか最後にまた改行ミスりましたね。

>>626さんの言うとおり前回のも変換ミスです。

まあ脳内補完なりしてください。
634名無しさん@ピンキー:2010/02/18(木) 23:47:48 ID:nopzZ1z9
>>633
GJ!
635名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 01:15:12 ID:9buJXRAL
good job!
面白かったよ
636名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 07:06:43 ID:ltTqROJJ
エロパロじゃないならそういうスレに投下すれば?と思う俺ガイル
637名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 00:50:00 ID:VnSQj47P
>>633
投下乙&GJ
638名無しさん@ピンキー:2010/03/01(月) 12:05:09 ID:PC30MYRl
保守
639名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 04:16:04 ID:G5FBOkRf
続きまってるぜ
640投下準備 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:37:04 ID:Gk9bmizr
 トリップ変わってますが、以前副長シリーズを書いていた者です。保守がてらに小品を書いてみました。
 女同士メイン、しかしレズとも百合とも言い難い何か。今回のエロに直接副長や男は絡みません。
 今回の投下分と直接的に時系列で繋がっている二年前の前回投下分は、保管庫に個別の形では収録されておりません。
http://vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/female_soldier/05-2.html
の314から入っておりますので、よろしければこちらを参照してご確認ください。
641副長の日々3.5前編 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:39:21 ID:Gk9bmizr
○1
「旗印が見えたぞ!」
 物見櫓に立つ歩哨の叫びが、砦の空気をわっと沸かせた。たちまち手すきの兵士たちが戦友の無事をこの目で確かめんと、一斉に城壁へ駆け上がる。
 出撃した守備隊主力不在時の留守を預かる副長、ユアン・ランパートもその人の流れの中にいた。さっとに手をかざすと、木々の合間の地平線から現れてくる友軍の姿を確認する。
 威風堂々と凱旋してくるその兵士らの隊列に欠けがないこと、そして何よりも一隊の長たる女騎士の姿に異常がないことを確認して、ほっと副長は息を吐く。
 しかしすかさず身を翻し、彼は命令を飛ばしはじめた。
「主力が戻ったぞ! 築城作業も訓練もいったん中止、すぐに食事と手当の用意だ。酒に包帯と薬草に軟膏、ああ、それから湯桶は足りているな? すぐに沸かせ!」
 後方を預かる守備隊の古兵たち、そして周辺から徴用された男女が慌ただしく動き始める。帰還する主力部隊の受け入れ準備を指折り数えながら階段を下りるユアンは、駆け上がってきた小柄な兵士と肩をぶつけた。
「おわっとぉぉ!?」
「あ、すいません副長」
 狭い石段の上でたたらを踏んでようやくこらえるユアンを後目に、細身の軽装兵は風のように彼の脇を駆け抜けていく。
 砦に残された守備隊最年少の少女弓兵、ハンナ・グレアムだった。少年のように短く切った黒髪を揺らし、城壁から身を乗り出して、帰着してくる出撃部隊を目を皿のようにして観察する。
「ハ、ハンナ! 君は本当になぁっ!」
「だから、すいませんって言ってるじゃないですか――隊長、ご無事で!」
 小さく、しかし精一杯に鋭い調子で抗議するユアンの相手もそこそこに、14歳の少女兵は悪びれた様子も見せずに黒い両瞳を輝かせ、何度もいっぱいに両腕を振ってみせる。
 城壁から細くしなやかな、それでも革鎧の束縛の下に確かな甘みの存在を感じさせる少女の影が、逆光の中に浮かび上がる。その健やかな美しさが青年の記憶を刺激して、ユアンをその場で口ごもらせた。
 ついほんの先日、ユアンが王国軍の軍需倉庫から物資を受領する輜重隊を指揮した際、ハンナはその指揮下で魔物による待ち伏せの兆候を発見した。
 しかし輜重隊指揮官たるユアンの能力を信用せず、手柄を欲して逸るハンナは独断専行した。そして単身で魔物の群れへ潜入して指揮官格の暗殺を狙うが、失敗。逆に捕虜にされてしまう。
 虜とした美少女の肉体に欲情した魔物たちは、どこからか手に入れた媚薬まで用いてハンナを手込めにしようとしたが、輜重隊を部下に任せて密かに単身追及してきていたユアンの奇襲で大損害を受け、ハンナはその混乱の中で救出される。
 そして二人だけでの逃避行のさなか、魔物たちに使われた媚薬の効果でハンナは欲情し、ユアンを組み敷いて襲った。そしてユアンはハンナの処女を貫き散らし、その最奥でたっぷりと自らの精を撃ち放った――。
 あの雨の夜、洞窟で味わった少女の肢体は、今もユアンの意識から消えてはいなかった。
 しかし正直、今もあれが現実の出来事だったとは考えられない。
 あれほど熱く切なげにユアンの雄を懇願し、激しく腰を打ち付けてその精までも自らの内へ搾り取った少女はあれ以来、一言もその件に触れようとすることはなかった。
 そのあっけらかんとした、時に反抗的な態度は、あの二人にとって不本意だった情事の前後で変わりない。
「まったく、女は分からない……」
 首を振りながら地面へ降り立ち、ユアンは再び指示と命令を飛ばしはじめた。
642副長の日々3.5前編 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:41:06 ID:Gk9bmizr
○2
「小鬼26に蜥蜴人15を討伐して戦死者無し。我が方の被害は重傷者2、軽傷者5。大戦果でしたな、従姉妹殿」
 傷つきながらもどうにか本拠地まで帰り着いた、その7人の負傷者への本格的な手当が始まるのを見届けながら、ユアンは馬上の騎士へ語りかけた。
「――7人もやられた。不覚だった」
「死なせたわけではありますまい」
 面頬を下ろしたままの兜の奥から漏れ聞こえるのは、若い女のそれだった。女騎士は面頬を跳ね上げて兜を脱ぐやそのまま、背まで届く燃え立つような赤い長髪をばっと散らして一気に下馬した。
 長身の端麗なる戦女神のごとき守備隊長、フレア・ランパートは今日もひどく不機嫌だった。
 その全身は特に胸と腰とで女を強く感じさせる、優美で鮮やかな曲線を描く鋼鉄の甲冑によって包まれている。しかし今はそのところどころに傷と返り血が散り、激戦の様を物語っていた。
「私とライナ軍曹の二人が直接率いてこのざまではな。王都が援軍を寄越す前に、擦り切れてしまわねばよいが……」
「援軍の督促は繰り返し送ってあります。それに今回は、よい知らせも――」
 最寄りの城塞まで、王国軍増援部隊の先鋒が到着したらしいことをユアンは告げた。先ほど伝令を受けて知ったことだった。
「従姉妹殿が今なされるべきことは、とにかく疲れを癒し、次の戦いに備えられることですよ。後のことは、万事お任せを」
「うむ、しかし従兄弟殿――」
「隊長殿!」
 そのとき明るく弾んだ声が、二人の間へ割り入ってきた。視線を向ければ、健康的に焼けた頬を紅潮させたハンナが飛び込んできて、ひざまずきながらフレアへ熱い視線を向けるところだった。
「隊長殿っ。ご無事の凱旋、まことにおめでとうございます!」
「……ああ。ありがとう、ハンナ」
「次は――次の出撃はこのハンナめを、ぜひ隊長殿の戦列へ! 隊長殿の指揮下ならばこのハンナ、十人力の働きをご覧に入れます!」
「…………」
「おい、ハンナ……」
 黙りこくったフレアの脇から口を挟もうとするユアンなど見えてもいないかのように、ハンナは熱のこもった真摯な瞳で、憧れの女騎士をじっと見つめ続けている。
643副長の日々3.5前編 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:41:37 ID:Gk9bmizr
 しかし長引く沈黙にユアンも口ごもり、さすがに気まずさを感じ始めたころ、誰かが不意にハンナの襟首を掴み上げた。
「うにゃっ!?」
「ああ、はいはい。どうもその辺に見えないと思ったら、こんなところにいたかバカ娘」
 頭頂部近くで一筋に結んだ黒髪を流し、フレアのそれにも勝るほどの豊かな曲線で打たれた胴鎧を身につけた女兵士が、猫でもつまみ上げるようにハンナを一気に宙吊りにしていた。
 そして彼女はハンナに対してのぞんざいな口調が嘘のような、丁寧な口調でフレアに話しかける。
「副長殿のおっしゃるとおりですよ、隊長殿。ここは私らに任せて、どうかすぐにでもお休みください」
「いや、しかしライナ軍曹。指揮官たる者が真っ先に休むわけには――」
「しかしもかかしもありませんよ、隊長殿。お偉い方がいつまでもそこでそうしておられると、せっかくここまで着いたってのに、下の者だっておちおち休んでいられないんです」
「む……」
「私も副長殿に引き継ぎを済ませたら、すぐに参りますから。隊長殿、どうかお早くお休みください」
 少女のような魅惑的な微笑みとともに片目を瞑り、まるで姉のようにフレアを扱うこの女軍曹こそが、この守備隊の屋台骨、ライナ・グレアム軍曹だった。
 斧槍の名手であり、少女時代には傭兵として各地の戦場を転戦、その豊富な実戦経験に裏打ちされた戦闘能力と指揮能力は、誰もが評価するところだった。
 同時にこの守備隊では数少ない女同士の気安さか、フレアとの間には身分を超えた戦友関係のようなものを共有してもいるようだった。
「お、お母さん……おかあさ……くる、しっ……」
 そして、紅潮していた頬も順調に青ざめさせつつある少女を素知らぬ顔で吊し続ける彼女は、そのハンナの母親でもある。
 一人娘をそのたわわな乳房で育て、その後も長年戦場にあり続けてなお衰えぬその豊潤な美貌のほどはユアンも先日、この砦の薄暗い倉の一つで存分に味わっていた。
 そんな彼女が、ユアンへ片目で軽く目配せくれて、思わず彼は苦笑した。娘同様にその思考はまったく読みがたいが、それでもユアンはライナが寄越してくれたこの好機を無駄にする気はなかった。すかさず口を挟む。
「従姉妹殿、湯浴みの準備が出来ております。いつものように、村の女衆に手伝わせますか?」
「…………」
 そんな三人の姿をしばらくの間、フレアはいつも通りの他人に感情を悟らせない、冷たさすら感じさせる表情で見据えていた。今度こそ、重たい沈黙が彼女たちの間を通り抜けるかにも思えた。
 だが、フレアは不意に口を開く。
「従兄弟殿。ハンナは今、手は空いているのだな?」
「は? 何かの作業に使おうかとは思っておりましたが、今のところは、まあ――」
「ふむ。ではハンナ、私の沐浴を手伝え。来い」
「けほっ!?」
 途端にライナの握力から解放され、ハンナの身体が地面へ落ちる。
 涙を浮かべながら必死に呼吸を貪るハンナはしばらく、言われたことを理解できていない様子だった。しかしフレアの瞳を見つめ返してその色合いを読みとり、やがて言葉の意味が腑に落ちると、ハンナはその場で直立不動の姿勢を取って叫んだ。
「は、は、はっ――はい! ハンナ・グレアム、隊長殿の沐浴、お手伝いさせていただきますっ!」
「そんな大声で復唱しなくていい」
644副長の日々3.5前編 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:42:14 ID:Gk9bmizr
○3
「た、隊長殿っ……、ど、どうぞ、こちらへ!」
「うむ」
 砦の奥へ続く石組みの通路へと、ぎこちない調子で左右の手足を繰り出しながら、ハンナはフレアを砦の浴室へ導いた。
 決して大きな浴室ではない。それでも戦時には手術室としても用いられるここは、二人の娘がその身を包む甲冑を脱ぎ、その裸身を清めていくには十分すぎる広さがあった。
 すでに外の竈で十分に湯が沸きたっていることを確認すると、ハンナはフレアの後ろへ立った。フレアの身の丈は、ハンナのそれより頭半分以上ほども高い。
 憧れの凛々しき美少女騎士の甲冑と衣服を、直接この手で解ける。倒錯した熱が少女の内側で不意に高まり、小さな胸の内側を激しく打ち鳴らした。
 喉が鳴る。上擦る声で申し出た。
「……し、し、失礼しますっ……」
「うむ」
 震える指をそっと長い赤髪の中へと伸ばし、ハンナはフレアとともに、少女騎士を包む甲冑を留める革紐を一つ、また一つと解いていく。
 籠手と腕甲、脚甲を外すだけで、鎧下から装甲の内部に封じられていた汗の香りが漂い、ハンナは逃すまいと深く息を吸い込んだ。
 続けて、胴回りの足掻きを良くするように一枚板でなく、何枚もの板金を綴って形作られた胴鎧に掛かる。ハンナが背当を下ろしフレアが胸当を下ろすと、ハンナはたまらず息をついた。
 凛々しい少女騎士の鍛えられたしなやかな肢体にありながら、その二点ばかりにはしたたかに脂肪を蓄えて左右とも、すこぶる豊かに実ったフレアの乳房。
 その双乳の有り余る質量が、鎧下をなす厚い布地すらも形良く天突くように押し上げて、傲慢に自らの存在を主張していた。
 傍らへ裏返しで置かれた胸当へ目をやれば、全体にやや下方へ撓みながら前へ突き出す二つの半球を象った空間がしっとりと塗れて、いくつも汗の玉を滴らせている。
 フレアの胸周りを守るその部位だけが、そのすぐ下に綴られた胴回りの板金よりも新しく見えるのは、今年十七を迎えたその若くみずみずしい乳房の著しい成長に応じて、その部分だけが幾度も打ち直されてきたからだろうか。
 その深く円い左右の空洞を窮屈そうにたっぷりと満たし、戦いの中ではその鋼の器へ自らをぴったりと収めることで、その身が繰り出される度に主の意志へ逆らおうとする、無駄な弾みを戒められていた二つの乳房。
「んっ……」
 フレアはそれら左右の隆起へと、汗に濡れそぼってまとわりついたままの布地の感触に、疎ましげな吐息を漏らす。
 その胸当の裏側に象られるように、見事な巨乳の輪郭をくっきり残した鎧下を、乳房が突き上げているその下側を摘んでいささか乱暴に引きおろし、鎧下の形を崩してのける。抗議するように、柔らかそうに双乳が弾んだ。
 その鎧下も継ぎ目を解き、肌着のシャツも脱がせると、いよいよ鍛え抜かれた白い腹筋が露わになる。
 そしてそのすぐ上では、乳房の重さと輪郭を直に包んで支えながら、両肩にその重みを分散させて支える革の胸当が露わになった。
「い、……いっ、行きますよ!」
 奇妙なほどに張り切った宣言とともに、白い素肌へ汗で張り付く布地との間へ、ハンナは肩紐を外しながら指を滑らせる。茹でた卵の滑らかな白身から殻を剥くようにして、ハンナはついにフレアの乳房を剥き出した。
「うわあ……っ」
 その内側から溢れ出さんばかりのみなぎる精気に押し出されるようにして、剥き下ろされていく肌着の締め付けから逃れるかのごとく、フレアの乳房は弾けるように飛び出す。
 若干十四歳にして自在に長弓を操るハンナの掌をもってしても、その掌全体で包もうとしても包みきれないだけの白いまろやかな乳肉を蓄えた巨塊がふたつ、ぼるんっ、とすこぶる重たげに、すべての守りを解かれてまろび落ちた。
 戦いの中でその乳房を守り抜くとともに、捉えて支える甲冑も、革で補強された胸当の肌着も失ってなお、少女騎士の胸で豊かに実った二つの果実。
 ハンナの掌、巨乳を包む肌着からこぼれ落ちてその真っ白な柔肉を弾ませると、薄桃色の上品というほかない清純な乳首に大きく頭を振らせ、そして数度の振動ののちにツンと天突くように静止した。
645副長の日々3.5前編 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:42:55 ID:Gk9bmizr
(あ、ああ……すごい……母さんのオッパイにも負けないくらい大きくて……それなのに白くて、柔らかくて、みずみずしくて、きれいで、張りがあって……フレア隊長のオッパイ、やっぱり、すごいよ……)
 ついに眼前へ現れたその白い芳醇な美の結晶に、ハンナは声をなくして息をついた。その右手は無意識に、自らの右乳房へと向かう。
 十四歳にしては早熟かつ、すでに子を産み育てるにも十分なだけの大きさを備えた、しかしフレアの美しい巨乳の前では二周りも小さく感じられる、弓弦からそこを守る革の胸当の下の乳房を掴み、乳肉を集めるように揉みしごいていく。
 そして左手は、はしたなくもすでに下着の内側で濡れそぼった、ハンナの花芯をそっと撫で回さずにはいられなくなっていたのだった。
「……ハンナ。まず髪から流してもらう」
「あっ……は、はいっ!」
 そんな少女の痴態に気づいてか否か、気づけばじっと彼女を見つめていたフレアの声でハンナはようやく我に返った。浴槽から手桶で湯を掬い取ると、それをフレアの頭上から流していく。
 腰まで届いている長い赤髪から、戦場の埃や汗の残滓が洗い落とされていく。何度も湯桶の往復を繰り返しながら、ハンナは半ば陶然と、フレアの赤髪に指を通した。
「ああ……」
 湯に洗われる度、指からこぼれ落ちるようなみずみずしさと、燃えるように鮮やかな色彩を取り戻していく赤髪。その後ろに覗く、しなやかに筋肉をまとい、引き締まった背中を見つめるだけで、ハンナは忘我の境地に達してしまいそうになっていた。
「ん……髪はもういい。次は背中だ、ハンナ」
「……は、はいっ」
 赤髪を頭頂にまとめ上げて布で巻くと、垢を擦り落とす目の粗い布地で編まれた手ぬぐいを片手に、ハンナは少女騎士の無防備な背中へ直接に触れた。
「隊長……隊長……」
 白く磨かれた乙女の肌の下で息づく、強靱でありながら柔軟な筋肉が返してくる布地越しの手触りは、熱い湯気の揺らめきの中で次第に少女の理性を薄れさせていく。
 そして背中の中心を流し終え、脇に手ぬぐいを回そうとしたとき、ハンナは思わずそれを取り落とし――自由になった両掌に、フレアの左右の乳房を握りこんでいた。
「?」
「はあ、はあ、はああぁ……っ! 隊長、隊長……っ! わたし、わたし、もうこれ以上は……こんなのこれ以上、我慢できません……っ!」
 鍛えられた少女騎士の胸に実った白い果実は、揉めば指に吸いつく柔らかさと、掌を跳ね返してくる弾力を同時に併せ持っていた。
 すこぶるつきの大きさを誇るフレアの巨乳は、やはりハンナの掌だけでは底包みきれない圧倒的な質量があった。
 重力との戦いでわずかに下垂した乳房が作る胸との重なり、その下側から指先を差し入れつつ一気に両乳房全体すくい上げたハンナは、薄桃色の甘い輝きを放つ宝珠のような乳首を探して、食い込んでくる手指を退けようと抗う巨乳を、さらに激しく揉み込んでいく。
「あああ……っ!」
 夢にまで見た、憧れの少女騎士の乳房が今、この手の中にある。握力を加える度に隊長のみずみずしい乳房が変形し、この掌へ温もりと感触を伝えてくる。
 ハンナはそのままフレアの背中へ抱きつき、少女騎士のそれと比べればまだ小さくとも、それでも自分自身の掌を満足させる程度の大きさは備える早熟な乳房を押しつけた。
 尖り勃った乳首がフレアの背筋を穿とうとして果たせず、跳ね返されて、潰れていく自らの若い乳房の中へと埋もれていく。
「隊長――隊長の裸、すごく、すごくきれいですっ……。だからわたし、私、もう……っ、ああ、あああああっ……!」
「……!」
 掌に収まりきらないフレアの巨乳を荒々しく蹂躙するハンナの手指が、躍動の中でその頂に息づく乳首を弾くと、少女騎士は初めてわずかな身じろぎを見せた。
 このまま斬られてもいい、もう死んでもいい――淫らな熱に駆りたてられるようにしてフレアを襲うハンナは、理性のくびきをかなぐり捨てて思うがままに少女騎士の肉体をまさぐっている。
 しかし、そんな熱に冒されて淫蕩に荒れ狂う少女の頭上に、平板な声が掛けられた。
「……ハンナ。私は以前から、君に聞いておかなければならないことがあったのだが……」
「あああああ……はっ……はい……?」
「この機会に聞いておこう。以前に輜重隊を護衛した際――あの脱出行の夜、君は副長と――私の従兄弟殿と、何かあったのかね?」
 自らの乳房を激しく両手で揉みしごかれながらなお、その唐突な愛撫の嵐にもまるで揺るぎを見せない少女騎士の怜悧な瞳が、ハンナの熱に蕩けきった瞳と交わった。
646投下終了 ◆REMNL/JIG6 :2010/03/21(日) 11:43:24 ID:Gk9bmizr
今回は以上です。
647名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 18:49:26 ID:/PEeiQ3T
GJ!果てしなくGJ!

待っていました。ハンナはレズじゃないか疑惑を書き込んだ当人として
続きこないので心配してました。

続き期待しております
648名無しさん@ピンキー:2010/03/23(火) 21:07:01 ID:WOKPpUk0
GJ
しかし何年振りだろうw
個人的に好きなSSだったから復活はすごくうれしい
しかしこのハンナバレたら殺されるんじゃね?
649名無しさん@ピンキー:2010/03/25(木) 03:04:39 ID:nnJDpjf0
GJ!!!!
隊長はある意味苦労してんね
650名無しさん@ピンキー:2010/03/26(金) 03:25:35 ID:Fe22kCpU
GJ

続き読めるなんて幸せ
651保守小話2前書き:2010/03/29(月) 13:21:49 ID:NUy8akRe
てす
652保守小話2@:2010/03/29(月) 13:25:12 ID:NUy8akRe
「……マイク、この酒を飲み干したらどうなると思う」
「……今度は樽ごと持ってこられるんじゃないか?」
「ああ……、私もそう思う」
「…………飲まなきゃいいじゃないか」
「……お前が杯を置いたらな」
「ばっ。……できると思うか?」
2人は揃って深々とため息を吐くと、お互いをちらりと見やり一気に自らの杯を仰ぎ飲んだ。


軍の問題児として、戦後復興の名の下に僻地へと追いやられたモニカとマイクの2人は、
その働きから徐々に地元住民に受け入れられていた。
一目で余所者とわかる肌や髪、服装も、日に焼け、現地の装束を身につけることで緩和した。
一番大きかったのは、モニカが積極的に行った『御用聞き』であろう。
現地の若い男性を簡単な通訳とし、村長(むらおさ)から子どもまで、
あらゆる年代の男女に不便なところや欲しいものを聞いていった。
もちろん全てができた訳ではない。何しろたった2人で遠征してきて、定期的な補給も間遠になりがち。
しかし、その姿勢は確実に実を結んだ。
尻を叩かれながら――むしろ蹴られながら――手伝っていたマイクも、
地元の女性たちの人気が得、かつ酒の強さで男たちからも認められるようになると、
積極的に働きはじめるようになった。

というわけで。
月を信仰するこの村の祭りに招かれた2人は、今宵新月に主賓として上座に座っていた。
普段はタブーの酒も、新月で神が眠っている間は無礼講。飲み放題である。
酒に滅法強いため、誰一人つぶれない。しかも、飲み干すとすぐさま酒を注がれる。
そして、注がれた酒を一向に飲まないのは相手に失礼だときている。
東洋のそば文化もびっくりのハイペースである。

酒に強いモニカとマイクも、さすがに酔いが回り始めている。
新しい酒樽が運ばれ、つやつやの頬に素晴らしい笑顔の女性が豪快に蓋を叩き割った。
「……後でまた飲む気はないみたいだな」
「ああ。これからあれを飲み干すようだ」
武者震いするモニカとマイクはそれでも、意外にもそのすぐ後に酒宴から解放された。
しかも1日の休み付きである。
全て理解することはできなかったが、どうやら今回は彼らの歓迎の意もあったらしい。
伝えてくれた青年に感謝と精一杯の笑顔で応えると、2人はふらふらと仮住まいに戻った。
653保守小話2A:2010/03/29(月) 13:26:08 ID:NUy8akRe
「……体だけでも拭く」
万年床に倒れ込んだ後、だらだらと起き上がったのはモニカであった。
簡易洗面所で汲み置きの水にタオルを数枚浸し、上半身裸になる。
脇や首筋など中心に簡単に拭っていく。
ふらつきながら新しい下着を手に取ったところで後ろから衝撃がきた。
「うわぁああ」
「おっとっと、とぉ」
バランスを崩してへたり込むと、ますます背中のマイクはモニカに体重をかけていった。
「あ、危ないだろぅ!」
「いーや、モニカ。お前こそ今襲撃があったら一発で死んでたぞー」
呂律が回らないなりにしっかりしているモニカとは対照的に、マイクの口調はいつもより少し幼い。
いや、幼さを装っているだけの気がするが。
最初もこれにやられたのだ、と苦々しく思うも、相手は自重の全てを預けてきている。動けない。
「っつ、うわ、お前どこ触って……、んぁ、やめろっ」
「馬鹿ヤロー。目の前に至福の乳があったら揉む、これが常識」
やけにきっぱり宣言すると、マイクは両脇から強引にモニカの乳房を攻め始めた。
屈んで下を向いても失わない張りと、手に余る量感を楽しむように。
音にすればほよほよと震えそうなそれには、中心で小さくも固く主張するものがある。
手のひらの中心でころころと転がしながら全体をも揉み込む様にすると、
モニカは背筋を震わすような甘い呻きをあげた。
「……ぁ、ああっ、……ふ、ぅんんんっ」
逃れようと動いていた手はいつの間にか崩れ落ちそうな自分を支える為になっていて、
今ではそれすらも出来ずに辛うじて頭を地面に着けないようにしているだけだ。
比例して持ち上げられた尻に高ぶりを食い込ませると、更に潰れ落ちた。
「あー……。ははっ、かなり酒が回ってんなぁ」
その様子に無性に愛しさを感じてしまい、マイクは小さく苦笑を漏らした。
首筋を甘噛みしべろりと舐め上げると、くぅんと鼻にかかった声が聞こえた。
くたくたのモニカを抱え込んで胡座をかいた己の上に載せる。
しなだれかかってくる体重に緩む口元をそのままにして、ゆっくりと背中を撫でてやった。
すべすべとした肌触りを楽しんでいると、モニカも腕を回してインナー一枚のマイクの背を撫で回し始めた。
腰の辺りを何回か探るとごそごそと裾から手を差し込み、素肌に触れたところでモニカはほっとため息を吐いた。
「――ふーん。そんなに脱いでほしいのか?」
さすがに睨みの一つは投げられるだろうと思ったのに、素直に頷かれてマイクは目を白黒させた。
「寂しい」
「は、はぁっ?」
「せっかくならちゃんとくっつきたい。……わ、私だけか?」
654保守小話2B:2010/03/29(月) 13:27:51 ID:NUy8akRe
「…………………………」
「…………なんか言え、このバカ」
混乱の極地にいるマイクをじっと見つめるモニカの頬が僅かに赤い。
酒の力がいつもより彼女を素直にさせているものの、それでも恥ずかしいようだ。
その顔をじっと見つめたあと、マイクは大きく長く息を吐いた。
反射的にその身を離そうとしたモニカを、背を撫でていた手に力を込めてなだめ、もう片方で頭を支えて深く唇を合わせた。
しかしすぐに余裕はなくなり、技巧も何もない勢いだけのキスになる。
モニカも懸命にそれに応えようと積極的に舌と唇を動かす。
お互いの顔がべとべとになり、向きを変える度につながる銀糸は粘度を増していった。
いつの間にかインナーは胸まで捲れ上がっていて、気づいてそのまま脱ぎ捨てた。
ずれた顔を追いかけて腰が上がったのをいいことに、モニカのズボンを脱がしてしまう。
悲鳴を無視して最後の一枚に手をかけようとしたところで、本気の抵抗が来たので身を離した。
性差があるとはいえ、一定量の訓練とテストをくぐり抜けてきた軍人だ。一歩間違えれば大怪我になる。
「なんだよ。場所が不満か? それとももうびしょびしょで恥ずかしいっつうなら、気に――」
「違うっ! 黙れ変態!」
「…………」
その変態に気持ち良くされているのはどこの誰だと問い詰めたいが、
とりあえず目の前で揺れる双丘をすくうように揉みあげ、その先端を口に含んでモニカの反応を伺ってみる。
655保守小話2C:2010/03/29(月) 13:28:50 ID:NUy8akRe
「んっ……、あ、あのな。まだ上しか綺麗にしてないから、だからもうちょっと後で……っつひゃああっ!」
ごちゃごちゃとうるさいままでは進むものも進まなくなる。
なにやら抗議する口を塞ぐ意味で、マイクは手を伸ばして水に沈むタオルを掴む。
色気もへったくれもない灰色の綿のショーツを勢いよく引きずり下ろすと、
片手でいい加減に絞ったタオルで強引にモニカの股間を拭った。
本格的にあがった悲鳴をそのままに身を屈めて繁みに顔を埋めると、
自分で言っておきながらその濡れ具合に一瞬舌が止まった。
また揶揄したくなるのをぐっと堪え舌をねじ込む。
柔らかくきつい締め付けに腰の強ばりがうずいた。

「や…っ、もうやめ、あっ、あ、やぁああっ!」
もはや酒に酔っているのかこの空気に酔っているのかわからない。
そのまま全体を吸い込むように愛撫し、肉芽を舌先でちろちろと嬲る。
触覚だけにも関わらず、ぷっくりと腫れ上がった様子がわかる。
「んんっ……、そこは、っ、だめ、て……」
「……ああ。ここは噛むのがいいんだっけな」
「ぇ、あっ、あぁっ――――――」
声にならない悲鳴が、モニカが絶頂に達したことを示した。
最後にひと啜りすると、マイクはひとつ息を吐いて上体を起こした。
「んぅっ……、はぁ、ああ……っ」
弛緩し体を震わせるモニカのそばににじりよりその頬をべろんと舐める。
「っ、ひゃうぅ……」
「――赤くなりすぎ」
片膝の裏を掴んで脚の間に腰をねじ込む。取り出しておいた屹立は十分すぎる硬さと角度で、
手で調整しながらマイクはゆっくりと中に押し込んだ。
「は――っ、ふっ、んんん――――…」
「ほれ、こっちに腕回しな」
「…ん。――んんっ」
ふにゃふにゃとマイクの首に手を回したモニカをしっかり抱き、そのまま座位の形に持っていく。
もう一度深く中を穿つと、耐えられないようにマイクに抱きついたモニカは、
膣内の存在に声を漏らしながらもそれでもさらに密着をはかる。
「……背中痛くないか?」
「ああ…、だいじょうぶ」
念のため背中に軽く触れる。傷はついてないようだった。
「ふぁ……っ」
しばらく互いに相手の体温に身を委ねていたのだが、
ふと身じろいだ拍子に互いの胸の突起が触れ合った。
マイクがそのままゆらゆらと軽く揺すって刺激を与え、頃合いをみて動きを止めると、
モニカは不満そうに顔をしかめ、すぐにそんな自分に気づいて顔を赤らめた。
マイクがにやにやと見つめながら催促するようにもう一度体を揺らす。
「うぅ……っ、このっ、変態っ……ん!」
一度得た快感を恐る恐る再現すれば、あっという間に籠絡されてしまう。
一生懸命体を揺らすモニカのことなどお構いなしに
マイクが下から持ち上げたりはみ出た部分を撫でさすったりと好き勝手に楽しむ。
このはみ出た乳房のつるつるとしてハリのある感じがマイクは一番好きなのだが、
しかし、下半身から伝わる直接的な刺激にはやはり勝てない。
モニカの太腿から腰をなで上げ膝を立てさせる。肩に手をついたモニカが顔を赤くした。
「マ、マイク……?」
「そのまま、気持ちいいように動いて」
「動くって、そんな……」
戸惑うモニカは可愛い。
いつもは怒鳴ったり呆れたり、肩に力を入れて任務遂行を至上にしているのに、
この時だけは、頬を淡く染めてマイクの腕の中に収まってしまうのだ。
「ほら、腰を動かして」
「ううぅ……」
656保守小話2D:2010/03/29(月) 13:32:13 ID:NUy8akRe
一度二度、前後に軽く腰を揺すった後、モニカはゆっくりと上下に動き始めた。
もう一段階踏んでから、と思っていた動きをされてマイクも下から突き上げたくなるが、
このまま乱れていくモニカも見てみたい。
苦渋の決断だった。
「はんっ、ふ、う……、んあ、はぁ…、あ、ああっ」
すぐに腰砕けになるかと思いきや、モニカは徐々にコツを掴みリズミカルに動き始めた。
目線を下にやると、てらてらと光りながら出入りする自分自身が見える。
気づいたモニカがその視線を辿りその光景を見た瞬間、悲鳴を上げてマイクに抱きついた。
「ば、かぁ……」
気持ちいいくせに。
抱きついてきたモニカの胸に埋もれそうになりながら心の中で呟くに留める。
きゅん、と膣内が締まったのはモニカにもわかっているはずだ。
ただ、マイク自身もまた、一層力がこもったのもモニカにはわかっているだろうが。
「あ、あ、ああっ……、ひゃあんっ、や、だ、めぇ……、もぉ、んんっ」
そろそろ主導権を取り戻そうと、マイクもモニカの動きに合わせて腰を動かし始める。
タイミングを合わせたりわざとずらしたり。
そのたびに悩ましげに漏れる吐息は熱さを増し、絶頂が近いのか狭く柔らかい肉壁が、
我慢できないとざわざわうごめく。
「もっと」
「ぇ、え……?」
「ほら。言えよ」
酒のせいだろう。今日はマイク自身いつもより感覚が鈍く、まだ達することはできそうになかった。
「言わないならこのまま……」
「ひっ!」
がっちりと両手でモニカの腰を掴み強引に動きを止める。
自身は思わせぶりに軽く揺するのみ。
「だめっ……」
「んー?」
何回も息を吸い込み、戸惑いながら耳元で小さく小さく囁かれた言葉にニヤリと笑みが零れた。
657保守小話2E:2010/03/29(月) 13:33:34 ID:NUy8akRe
「やっ、すごっ、……っき、い……」
もう一度モニカを仰向けに寝かせ、相手を気持ち良くさせるために動く。
マイクに全てを委ね、ひたすら己の快楽を貪る姿は見ていてなんとも言えずいい気分である。
処女を抱くのはもちろん、ひとりの女を抱き続けるのも自分には無理だと思っていたのに
なぜか続いているのは、この姿があるからかもしれないと頭のどこか冷静な部分で考える。
どこか達観したように淡々と受け入れたり、自分の魅力を最大限に生かして誘惑したりすることなく、
いつでも精一杯マイクを受け止めようとする。
自分好みに教え込むのはもちろんだが、このごろは最中になると甘えてくるようになってきた。
事後に少し照れて乱暴な口調になるのもまたいい。
「……イっていいぞ」
「んっ、ふぅ……っん、イっちゃうぅ……っ!」
「……っ、くぅ――――」
全身が大きく震えてモニカの中が搾り取るように絡みついた。
流されないように堪え、モニカの全身が弛緩してからもマイクはしっかり抱え直し、
その場でしばし余韻を味わっていた。

そのあと場所を簡易ベッドに移し、マイクもようやく欲望を解放した。
モニカは2度達していた。
一人で寝るのに精一杯なスペースに二人並ぶことは叶わず、事が終わったあとは
ベッドを背に、巻きつけた毛布に二人くるまる。
「――そんな心配しなくても、訓練でもうとっくにボロボロだって」
マイクに俯せるようにもたれかかったモニカは声に笑みを滲ませた。
「いやー……、そういう訳じゃないけど」
口ではそう言いつつ労るように背中を撫でる手は止まらない。
でも、とモニカは呟いて小さくふふふとはにかんだ。
「……なに考えてんだか」
と、間髪入れずに鼻で笑いつつマイクも腕に込める力を増やす。


しこたま酒を煽ったあとではあるが、お互いかなり正気が残った上での出来事だった。
明日からもまた任務の日々。
酒は明日に残さなくても、この日の感情はたぶんこの先また顔を覗かせ、
思わぬ甘いひと時をもたらしてくれるに違いない。



658保守小話2:2010/03/29(月) 13:39:02 ID:NUy8akRe
保守というより埋めネタになってしまった。
エロの練習に書いているので読みづらいかも。申し訳ない。

前回感想くれた人ありがとう。
感謝。
では。
659名無しさん@ピンキー

まあ488kbだからもう少しだね