1 :
名無しさん@ピンキー:
アニメも好評のうちに終了し原作も大好評連載中、PS2版も絶賛発売中の「らき☆すた」でエロいの行ってみよ。
☆カップリングは自由
☆基本的に百合マンセー
☆801は禁止(と言っても男キャラあんまいねぇ)
☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること
※マナー等※
※割込みを防止するため、書き込みや投下の前等にリロードを。
※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
※グロやSMなどの過激な内容は断りを入れてから投稿する
※読者=主人公の作品(いわゆる俺キャラもの)についてはNGワード指定や断り文を確実に。
※480KBまたは950レスのどちらかに近づいたら、次スレの準備を。
■みゆきさんの一言メモ
投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
『sage』では有効になりませんので、全角・半角を確認してください
スレッドの閲覧・書き込みは、絶対ではありませんが専用ブラウザの使用を推奨します
これにより『人大杉』のエラーが回避できます
SS投下は、一度メモ帳やワードパッドなどで書き上げてからまとめて投下してください
投下間隔があくと、他の方がレスできなくなってしまいます
マターリはぁはぁしましょうか。
☆まとめサイト(管理人と職人に感謝!)(避難所の行方はここ参照)
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1.html ☆派生サイト:てけてけかなたさん伺か化計画
ttp://neo-experiment.hp.infoseek.co.jp/index.html 前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ42
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1206901482/
あーいまーい3センチ、そりゃ
>>1乙ってことかい? ちょっ!
>>1 乙彼様です。
投下準備をされる方がいないようでしたら、投下いたします。
「天使のような」
こなた&ゆたか
※注意事項
・一話完結もの(Elope関連)
・非エロ
長い冬の寒さに耐え抜いた全ての植物達が、一斉に自己の存在を誇示している4月初旬。
私とゆーちゃんは、満開近くまで開いた川沿いの桜並木を歩いていた。
堤防上の道をゆっくりと進んでいくと、多数の屋台が視界に入ってくる。
行き交う人の密度が急に濃くなり、同時に楽しげな喧騒が耳朶に届いてくる。
屋台に並んでいる品々を眺めていると、傍らを歩く少女が尋ねてきた。
「こなたお姉ちゃん。綿菓子、買ってもいい? 」
「いいよん」
綿菓子を嬉しそうに買っているゆーちゃんの後ろ姿は、どうみても小学生にしか見えなかったけれど、
本人には決して言うことはできない。
ゆーちゃんは、白いふわふわとした塊を、はふはふと言いながら食べ始める。
しかし、綿菓子は、彼女の小さな口と比べるといかにも大きかった。
「ゆーちゃん」
「なあに? こなたお姉ちゃん」
「顔に、ついているよ」
「え?、ええっ!? 」
慌てて首を左右に振るけれど、生憎、綿菓子と手提げ袋で、彼女の両手は塞がってしまっている。
「ちょっと、じっとしていてね」
私は、苦笑を浮かべながら近づいて、鼻の上にくっついていた白いかたまりを、口で掬い取ってあげた。
「とれたよ」
「あ、ありがとう 」
「ゆーちゃんはやっぱり萌えるねえ」
私は、ゆーちゃんの頭を撫でながら笑みをみせる。
「もう、子供扱いしないでよお」
頬を風船のように膨らませて、不満そうな声を出したけれども、どんな表情でも可愛らしく思えてしまう。
「綿菓子を鼻にくっつけている子が、大人って言ってもねえ」
「ううっ、お姉ちゃんのいじわるっ! 」
「ごめん、ごめん」
本当に子供っぽいのは、ゆーちゃんではなくて私の方かもしれなかった。
無音で舞う、無数の花びらが、春の日差しを浴びて輝きを放っている。
一年で今の時期しか見ることができない、美しくて儚い景色を眺めながら、
私達は、川沿いの道を上流に向かって歩いていく。
川幅はかなり狭くて、両岸から覆うように伸びた枝から咲いた花が、
水面上を覆い尽くしてしまい、幻想的な雰囲気が醸し出されている。
桜並木の半ばまで歩いた時に、私はゆーちゃんに声をかけた。
「そろそろ、お昼にしよっか」
「うん。こなたお姉ちゃん」
行き交う人の流れから外れて、二人はゆっくりと堤防を降りていき、水面にほど近い場所で
ビニールシートを広げる。
見上げると空は濃密な桃色で覆われており、暫し、圧倒されてしまう。
「お姉ちゃん。あーんして」
可愛らしい声に振り返ると、ゆーちゃんが満面の笑みを浮かべながら、玉子焼きを差し出していた。
反射的に開いた口の中に入れると、ほんのりした甘味がひろがってくる。
「美味しいよ。ゆーちゃん」
「ありがとう。こなたお姉ちゃん」
ゆーちゃんは、全てを魅了するような笑顔をみせてくれた。
最近、めきめきと料理の腕をあげたゆーちゃんが作ってくれたお弁当を、
胃袋に収めてから間もなく、眠気が襲ってくる。
昨日は、夜遅くまでバイトをしていたから、疲れが出たのだろう。
「どうしたの? お姉ちゃん? 」
ゆーちゃんは私の変化に敏感だ。
あくびを噛み殺し始めた私に向かって、心配そうな声をかけてくる。
「いや、ちょっと眠気がね…… 」
私は言葉を濁した。
デートの最中に眠ってしまうのは、いくらなんでもまずいだろうと思ったから。
「ごめんね。お姉ちゃん。疲れているのに無理に誘っちゃって」
ゆーちゃんは申し訳なさそうに謝ったが、却って罪悪感がわいてしまう。
「ううん。気にしないで」
「あの、それでね。こなたお姉ちゃん」
「なあに」
ゆーちゃんは少し恥ずかしそうにしながら、正座になって言葉を紡ぐ。
「もし、よかったら私の膝、つかって欲しいの」
「本当に良いの? 」
「うん。いいから」
「ありがと。ゆーちゃん」
私は、身体を横に倒してから、ゆーちゃんの膝の上に頭を乗せた。
スカートの布地越しに、ひんやりとした太腿の感触が頬に伝わり、とても心地良い。
見上げると、ゆーちゃんの髪とあどけない顔が間近に迫って鼓動が速くなってしまう。
「こなた…… お姉ちゃん? 」
「ゆーちゃんが可愛すぎて眠れない」
私は、何を言っているのだろう?
「え…… そんな」
戸惑っているゆーちゃんを気にせずに、私は頼みごとを口にする。
「良く眠れる『おまじない』してくれるかな? 」
「おまじない? 」
「そだよ」
ほんの少しだけ、ゆーちゃんは考え込んでいた。
しかし、程なく言葉の意図を察してくれて、木漏れ日のような微笑みを浮かべながら頷いてくれる。
「うん。いいよ」
「ありがと」
ゆっくりと瞼を閉じて数秒後……
温かくて柔らかい感触が、確かに私の口もとに伝わった。
(おしまい)
>>11 いいでござる、甘いGJ!(´・ω・`) b
こなゆたも、イイ!!
以上です。
前作につきまして、温かい感想を多数頂きまして、誠にありがとうございました。
最終的には、かなり控えめな結末に変更しており、甘くなってしまったのではないかと思います。
また、ダーク系の話が連続していると、自分の心までが暗黒面に支配されてしまう恐れがあり、
今回は、穏やかな話にいたしました。
では。
GJです
しかしまだ42スレ目に投下できるようですので、さきにそちらを埋めてしまってからこちらのスレに移行したほうがよいのでは
>14
どちらかというと即死回避的な意味合いで投下しております。
まあ、このスレでは不要なものですが。
かが×みな!!これッス!
これしか、こな×ゆたをマターリ展開にする方法はないッス!
これ宇宙の真理ッス!!
ツンデレクーデレの強力タッグ!クゥゥゥゥウゥ考えただけで
震えが止まらないッス!!!!!!
容量の関係でこちらに投下ということでよろしいでしょうか。
では参ります。
「女子高生四人がメジャーリーグにハマるまで」(中)の(前)
三部構成の予定だったものが、中編が思いの外長尺になってしまったため、これを前後に分け四部構成となってしまいます。
・七レス
・エロなし
・かがみがやや壊
とはいえ、何から手をつけたらいいものやら。
帰宅寸前だったので本屋に寄れなかったから、参考に出来そうな書籍はない。必要ならば、後ほど買
うなり借りるなりすればいいということにした。
「ゆきちゃんが貸してくれるよ、きっと」
「英語で書かれたものをたっぷりとね」
「……」
つかさ、大粒の汗を浮かべて固まる。
「がんばって訳すんだぞ〜」
「はうぅっ」
そんなわけで、行き着く先はPCの前ということになる。
定石通り「メジャーリーグ」で検索してみると、予想通りオンライン百科事典の項目がヒットした。
MLBの日本語公式ページも見つかったが、日本人選手が目当てではないので百科事典の方に挑むことに
した。きっとみゆきも利用したことだろう。
「30球団もあるんだ……」
球団の一覧表を見つけて、思わず呻く。
指名打者制度を採用し、ヤンキース、レッドソックス、マリナーズなどが名を連ねるアメリカンリー
グに14球団、投手が打席に入るナショナルリーグには、ドジャース、メッツ、カブスなど16球団。どち
らも西、中、東の3地区に分かれ、交流戦も含め各球団が基本的に引き分けなしで162試合を行い、各地
区の優勝チームと地区2位球団の最高勝率チームがプレーオフに進出する。
「どうして半分こにしないのかな」
つかさが首を傾げる。
「球団数が奇数だと、あぶれちゃうところが出るからよ。一つの試合は、対戦する二球団がないと成
立しないでしょ?」
「あ、そうか。さすがお姉ちゃん」
「当たり前でしょ、それくらい……」
かがみはひどく不機嫌そうな顔で答える。球団だって個人だって、あぶれたくないのは同じだ。
「でも、地区ではほとんど奇数なんだね」
一覧は地区ごとにまとめられていたが、つかさの言う通り、球団数が偶数なのはアメリカンリーグ西
地区(4球団)と、ナショナルリーグ中部地区(6球団)だけだった。
「これで成り立ってるって事は、逆説的に他の地区との対戦が常に行われているって事になるわね。
まあ、14も16も3で割り切れないから当然でしょ。各地区を6球団ずつ、両リーグ18球団ずつ、総数を
36にすればすっきりするんだろうけど……って、おーい。だいじょぶかー?」
つかさの頭から白煙が上がっていた。かがみからすれば何でもない推論だったが、つかさの頭の回路
はパンクしたようだ。鎮火に必要なのは水か、消火器か?
ま、ほっとけば直るわね。
そう思い、改めて一覧を眺める。チームが30なら球場も30ということになるだろう。みゆきはもう覚
えたと言っていたが、さすがに60個となると気が遠くなる。加えて英語の綴り覚えるとなれば全部で
120個だ。
「これ英語で書ける?」
つかさが元に戻ってたので(自然鎮火)、かがみは「ミルウォーキー」、「ヒューストン」、「フィ
ラデルフィア」など、ローマ字とは程遠い綴りの都市を指差して聞いてみた。
「う〜、『ニューヨーク』なら書けるけど……」
「『N.Y』って略さずに?」
「はうっ!」
誠に頼りない。
そこで二人は、一覧を見ながらその意味を当てていくという遊びをやってみた。英語の得意なかがみ
が最初に出題役を務める。
かがみはナショナルリーグ東地区の「アトランタ・ブレーブス」を選び、つかさから隠す格好でその
項目を開いてみる。その意味は見るまでもなく分かったが、本拠地のターナー・フィールドが、オリン
ピック施設を改装したものだとあったので、別のクイズも出してみる。
「アトランタってオリンピックが開かれた場所だけど、小さい頃見たの覚えてない?」
「え、そうだっけ?」
白煙が引いた頭から、今度は巨大な「?」が浮かび上がってくる。
「もの心はもうついてたわよ。それは何年?」
「え、え〜と……」
しばらくしてつかさの頭が再発火したので、考え方を披露する。
「次のオリンピックが今年・2008年でしょ。オリンピックは4年ごとに開かれるから、選択肢は2004
年、2000年、1996年、1992年で、1988年はまだ生まれてないから除外。1992年はもの心ついてるかどう
か怪しいし、2000年だともう小学生だから、物心がついてるかどうかは問題にならない。答えが2000年
という問題ならば、ヒントとしては『まだ小学生だった』、『まだ中学に入ってなかった』とかってす
るのが妥当でしょ。従って答えは……」
発言を促してみる。つかさは躊躇いがちに口を開き、
「……選択肢、忘れちゃった」
「さよか……」
頭を抱える。こなた以上に心配になってきた。
いや、起きてるように見えて、実はもう寝てるのかな。うん、きっとそうだ。
「じゃあ、『ブレーブス』の意味も分からないんだろうね……」
「うーん。あ、お姉ちゃんが読んでた本に、何かそういうのあったよね」
「『ブレイブ・ストーリー』のこと?」
「うん、それ。意味は〜、意味は〜〜、意味ぃ……」
火災警報発令! かがみは慌てて止めに入る。
「も、もういいから。寝ながら……じゃない、考えても分かるものじゃないから」
「ごめんね、お姉ちゃん。あ、でもこれなら分かるよ」
指差すは「シカゴ・ホワイトソックス」、「ボストン・レッドソックス」。
「じゃあ、『シカゴ』の綴りは?」
しまった。聞くべきじゃなかったかも。
「シカゴ? Si……あ、Shi……Ciかな??」
「全部も外れ。Chicagoよ。これで『チカゴ』にならないのは、一帯がかつてフランス領だったこと
と関係してるんでしょ」
「すごいねえ。お姉ちゃんがゆきちゃんに見えてきた」
つかさは目を輝かせる。
「いや、同じ授業を受けてるはずなんだから、分かってくれないと悲しい……ていうか、黒井先生が
悲しむ」
「うう……。じゃあ先生に謝っとかなきゃ」
藪蛇にならないことを祈ろう……。
「あれ? 向こうにもレッズがあるね」
つかさは「シンシナティ・レッズ」を指していた。埼玉県民ならずとも、「レッズ」で連想するのは
浦和の方だろう。浦和の方は「レッド・ダイヤモンズ」の略なので、シンシナティの方も何かの略称だ
ろういうことで項目を開いてみると、かつての球団名が「レッド・ストッキングス」だったと出ていた。
かがみはニヤリとする。
「ストッキングと聞いて、みゆきの脚を連想したでしょ?」
「え〜、何で分かるの〜!?」
初歩的な誘導尋問である。
「……やっぱりしたんだ。まあ、身近だもんね」
「うう……」
「でも勘違いしちゃダメだよ、つかさ。野球で使う靴下は、男物でもストッキングっていうんだから」
「へ〜。でもそれじゃ、『レッドソックス』とどう違うの?」
「それは……」
さすがのかがみも詰まる。
「後でゆきちゃんに聞いてみようか?」
「そうね」
話の種が出来たところで、攻め受……攻守交替。つかさが出題者となる。かがみ、張り切る。
デトロイト・タイガース……トラ
ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム……天使
ピッツバーグ・ハイレーツ……海賊
といった「こなたでも分かる(かがみ談)」のものはもとより、
シアトル・マリナーズ……船乗り
サンディエゴ・パドレス……神父
ミルウォーキー・ブルワーズ……ビール職人
といったやや難問までも連破。
ニューヨークの二球団では、得意科目=英語の面目躍如だった。。
「ヤンキースの『ヤンキー』は、誰が言うかによって意味が変わる言葉で、日本だと『不良少年』…
…あれ、『不良少女』も含まれるんだっけ? ま、だいたいそんな感じだけど、日本以外の外国人が言
うと蔑称的に『アメリカ人』、アメリカ南部の人が言うと『北部人』てなるわね。その中でも特に『ニ
ューヨークの人』を意味するから場合があるから、チーム名もそうなった。そんな感じじゃない?」
「だいたい正解みたい。お姉ちゃん、すごい……」
ヤンキーの綴りを教えてもらった上で英和辞書を開いていたつかさが、震えながら答えた。他にもニ
ューイングランド地方の人間という意味もあり、含包する意味がどんどん広がっている言葉だとあった。
「じゃあメッツの方は?」
「メッツ……綴りはMetsでいい?」
「うん」
だとすれば難問だ。meetの過去・過去分詞と同じ。名詞的な意味があるのだろうか?
炭酸飲料にメッツってあるけどあれはMetzだし、フランスの地名(Metz-メス。ドイツ語読みだとメ
ッツ)もなんとなく除外。
あれ、でも他にもMETってなかったっけ? 割と最近、上野だかどっかで展覧会があったような……。
そう、確かみゆきが、夏休みの旅行で両親と現地に行ったことを話してた。そう、その美術館の名前は……。
「メトロポリタンズ……都会人て意味かな」
「わ〜〜〜」
感激したつかさが抱きついてくる。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館も、METという愛称なのである。
「お姉ちゃんすごい! すごいすごい!」
抱き締めてダンス初心者のように振り回す。キスでもされそうなくらい色々と近い。
「ちょ、顔近いから……落ち着いてつかさ。それにこれも、みゆき畑の収穫物だし」
強いて種を蒔いたのは誰かと問えば、みゆきの両親となるだろうか。
「?? そうなんだ〜」
ニューヨーク・メッツを攻略したかがみであったが、年俸総額でメッツの7分の1程のフロリダ・マー
リンズにはあっさり敗れてしまった。
フロリダとの縁や所縁がわからないまま躊躇いがちに出した、「円卓の騎士の魔法使い?」という答
えに、「マカジキ」という正解が示された。魔法使いのマーリンはMerlinで、Marlinはフロリダ近海に
いる魚のマカジキだという。
かがみは相当悔しかったらしい。
「……後でお寿司屋に復讐に行こうか」
「う、うん……」
復讐を成し遂げた結果として、かがみの眼前に築かれた皿の山が今から見えるような気がして、つか
さは心の中で「どんだけ〜」と呟くのだった。
「なんだかんだで熱中しちゃったね」
主にお姉ちゃんがだけど。
なんて心の中で付け加えながら、つかさが笑う。
「うん。でもおかげで半分くらいは覚えられたかな」
「え〜。さすがお姉ちゃん」
苦笑するつかさの成果については、問わない方がよさそうだ。主につかさに名誉のために……。
「かがみ、つかさ、ごはんよ〜」
階下よりみきの声が聞こえてきた。
「はーい」
つかさが答える。
「行こ、お姉ちゃん」
PCの電源切ったら行く……と答えようとして、叶わなかった。
ミネソタ・ツインズ
一覧にあったこの九文字に、より厳密には後ろの四文字に目が釘付けになった。
ツインズ。
Twins?
アメリカンリーグ中部地区にカテゴラズされている、球団の名前。
双子、よね? 他の意味が、ひょっとしたらあるのかもしれないけど。
マーリンズの罠にかかったかがみは慎重になっていた。
私とつかさも双子……これに他の意味はない。うん、それだけ。
だからどうしたと斬って捨てるのは容易いけど、でも少なくとも私もつかさもトラじゃない。
巫女ではあるが、神父や天使じゃない。
船乗りや海賊でもない。ていうか、内陸に住んでいては、直に船を見る機会もろくにない。
アスレチック(運動選手)といえば日下部だし、レイ(エイ、または光線)といえば峰岸のおでこだ。
埼玉県北東部は首都圏かもしれないが、かといってその住民はメトロポリタンともいえない。
非行に走ってはいないし、日本人だからヤンキーでもない。
ただ双子だという事は確かだ。一卵性か二卵性かは置いといて。みゆきによれば、兄と弟、姉と妹の
決め方が今とは逆だった時代もあるというが、それも置いとこう。
「……」
別にアブナイ意味ではなく、呼ばれたような気がした。
「お姉ちゃ〜ん、冷めちゃうよ〜」
いや、確かに呼ばれた。
かがみはPCをスリープ状態にしてから、階下へと向かった。
食休みと称してテレビを見始めたつかさを尻目に、かがみは自室へ戻ると、寝かせておいたPCを起こ
す。つかさと違ってPCはすぐに起きてくれた。
ミネソタ・ツインズ
Minnesota Twins
チーム名の由来は、州都のセントポールとミシシッピ川を挟んで西岸のミネアポリスを、合わせて「
双子都市」と呼ぶ事から来ている。ドナウ川を挟んで、ブダとペストでブダペストとなったハンガリー
の首都と似たようなものだ。
……ブダとペストでブダペストって、何だかカプ名みたいだなあ……。
ブダ攻めでペスト受け……。
いかんいかん、コミケの後遺症が……。
ミシシッピ(Mississippi)の仰々しい綴りは、よくジョークや漫画のネタにされるんだっけ。まさ
かこれ、ミシとシッピでミシシッピだったりしないわよね?
それに「ミネア」とは。自分がビアンカ派なのはさておいて、ミシシッピ川の下流にニューオーリン
ズがあることからしても、どうにも第四章と無関係ではない気がしてくる。姉妹の父・エドガンも、由
来はミシガンかも、なんて……。
いかんいかんいかん、今はそんなことを考えてる場合じゃない。今のはこなたと話す時のネタにする
として……。
えーと、ツインズは前身をワシントン・セネタースとして1901年、アメリカンリーグ発足と同時に設
立。1961年にミネアポリスに移転しミネソタ・ツインズと改名。
セネタース時代の1924年と、87、91年にワールドシリーズ制覇か。107回で3回。すごいかどうか分か
らん……。あ、ワールドシリーズは1903年からだから、105回……。ん? 1904年はボイコット、1994
年ストライキで開催されてないから103回になるのか。ややこしいわね。
本拠地球場はメテオドーム……違う! メトロドームだ。隕石降らせたら人類が滅亡してしまう。
「お姉ちゃん」
目をしょぼつかせながらつかさが入って来た。もう眠いのだろう。
「お風呂、先に入っちうよ」
宿題は……なんて、聞くだけ無駄か。
「うん。溺れないようにね」
「う〜、平気〜」
すごく心配だ。
「あ、まだ見てるの〜」
つかさがふらふらと寄って来てモニターを覗き込む。そのままダイブしそうなので、肩を押さえて支
えてやる。
「ミネソタ・ツインズぅ……? ああ、お姉ちゃんの球団だね〜」
かがみはドキッとした。つかさも同じように感じたのだろうか。
「ちょっと気になっただけよ」
取り繕ってみるが、どうにも狼狽を隠しきれない。
「そうだよね〜」
つかさは垂れ落ちそうなほど頬と目を和ませ、言った。
「お姉ちゃん、ツインテールだもんね〜」
「……はい??」
「ツインズとツインテールで気になったんじゃないの〜?」
なるほど、「お姉ちゃんの」か……。
「いや、私のすぐ後に、あんたが生まれてきたから気になったんだけど……」
「そうなんだ〜」
ツインズ=双子という図式が、つかさの頭の中には確立してないらしい。
これは色んな意味でいい機会かもしれないと思った。
「ねえ、このチームから詳しく調べていってみようか」
球団名に何か縁を感じるし、二人で分担すれば効率もいい。ついでに、ツインズ=双子という図式を
つかさの頭の中に確立できれば一石二鳥だ。
つかさはコクンと肯いた。……いや、肯いたのだろうか? しっかりと目を瞑っているが、まあいい。
「じゃああんたが投手担当で、私が野手ね。野手の方が数が多いから大変だし……って、ちょ、つか
さ!? どこ行くの?」
つかさは立ち上がり、ふらふらと部屋から出て行ってしまった。
卑怯者! 敵前逃亡だ。軍法会議にかけてやる。弁護士から法務士官に鞍替えしてでも……。
「って、洒落てる場合じゃないわね」
このままではつかさは、本当に溺れてしまいかねない。湯船に顔を浸けたまま熟睡し、溺死する人が
本当にいるのだという。
一緒に入ってやるか……。
PCの電源を落とし立ち上がったところで、出て行った時と同様につかさがふらふらと戻ってきた。手
には何かを持っている。
「お姉ちゃん、これなんだけど……」
それはTV雑誌だった。TVを見ながら眺めていたのだろうか。つかさが指差すのは、番組表の国営衛星
放送の欄。
「!!」
かがみは慌ててページをめくり、翌日と翌々日の同じ部分に目を走らせ、そこに同じ文字を見つけた。
「でかした、つかさ」
「えへへへ、お姉ちゃんに褒められた〜」
その日の分も含め、そこにはこうあった。
11:00大リーグ
ツインズ×マリナーズ
それは明後日まで行われる三連戦を中継する事を告げていた。
百聞は一見にしかず。
それは第二次大戦中、ヨーロッパ戦線でアメリカ第3軍を率いたパットン将軍が、司令部で地図と睨
めっこしてばかりの部下を叱り飛ばす際に持ち出したほどの、日本の叡智。
ともあれ試合を「一見」すれば、実況や解説がそこに何聞も加えてくれて、理解が深まるに違いない。
この時は、ただ単純にそう思ったのだが……。
つづく
26 :
42-115:2008/04/12(土) 22:48:23 ID:dk7YKuE+
ありがとうございました。
柊ツインズ→ミネソタ・ツインズを予想した方もいたのでは?
多分に退屈な含蓄に明け暮れてしまったので、ちとおまけ(もっと退屈かも?)。
ツインズを調べるついでに、らき☆すた主要キャラと誕生日が同じな大リーガーを調べてみました(所属は調べなくても分かる人だけ)。
2/8(ななこ) フェリックス・パイ
5/24(ひより) バートロ・コロン(BOS マイナー) ジョー・ケネディ(07/12/23急死) ブラッド・ペニー(LAD) 徐在應(ソ・ジェウン)
5/28(こなた) ダニエル・カブレラ(BAL) ジョニー・ペラルタ(CLE)
7/7(柊姉妹) ブランドン・マッカーシー アンディ・グリーン ジョン・バック(KAN)
7/20(みさお) ベンジー・モリーナ
8/20(かなた) スコット・タイラー トッド・ヘルトン(COL) コーリー・サリヴァン ジョシュ・ブラス
8/21(そうじろう) クレイグ・カウンセル
9/12(みなみ) 森慎二 ショーン・バロウズ メイサー・ウィズトゥリス
10/25(みゆき) ペドロ・マルティネス(NYM) ジェレミー・ブラウン クリント・ネジョット
11/4(あやの) ジョン・グレイボウ エリック・スリーツ
12/20(ゆたか) デイヴィッド・ライト(NYM) ジェイミー・シールズ(TAM) デイヴィッド・デヘスース クリス・ナーヴァル ブライアン・ドピラーク
2006年版の選手年鑑を利用したため、メジャーからいなくなってる人もちらほら。ジョー・ケネディに至っては鬼籍に入り。
ジョン・バックはヒルマンさんとこのレギュラー捕手で、薮田・野茂の女房役。
ジョニー・ペラルタは打撃好調。
ブラッド・ペニーはドジャースのエース(今日登板し敗戦投手)。
ダニエル・カブレラは、多分明日登板。
徐在應はWBC韓国代表で、日本戦に勝利した際に、マウンドにフラグ(韓国国旗)を立てちゃった人。自重しないのは誕生日せいか?
27 :
前スレ344:2008/04/13(日) 00:45:37 ID:ZToKWm2R
>>26 こういうのも新鮮でよろしいのではないか!GJ!
かがみのはまり具合にシンクロするように
物語にひきよせられましたぞ!
さて、後々の方々の突っ込みを参考に、ちょっと344を改造してみた
==========================
糟日部ラッキー☆スターズ
投手 みさお ある作品のお陰で、もはや不動の先発投手
捕手 みゆき 知略に富み、そして眼鏡、これまた不動と思いませんか?w
一塁手 あやの 牽制球を受けると同時に投手を「牽制」する立場wwww
二塁手 かがみ こなたのためあらば動きます投げます抑えますwwwww
遊撃手 こなた アメリカではこの位置こそスターポジションだそうです。愛だよ!
三塁手 パティ やはり左翼との連携を希望www。そして打席ではボインスイングwwww
右翼手 こう つかさにイチローの立ち位置は無理と判断wwwww
中堅手 みなみ 走力、投球力、身長を考えると、この立ち位置も不動のように思えます。
左翼手 ひより 強打者。炸裂強肩カリスマペンwwwww
クローザー みのる みさおが疲労した時の全責任負担者。負けたらフルボッコwww
代走 あきら やっぱあれだよねー、暴走癖wwwww
代打 つかさ バルサミコスイングはこちらで生かすことにしますたwww
マスコット ゆたか みなみ「り……リスのぬいぐるみ……ぶばっ(鼻血)」
>>26 GJです
これを機に俺もメジャーリーグ見ようかな
何より森が気になった
今日のマリナーズは守備がヘボカスだった・・・・・・
30 :
42-115:2008/04/13(日) 08:32:08 ID:x12gW8lY
感想等等、ありがとうございます。
うっかり書き忘れたのですが、今年のマリナーズとツインズの対戦は8月に6試合あるだけで、
デーゲームもあるため、作中のよう3試合とも11:00開始という事にはなりません。
日程が力一杯フィクションですので、あしからず。
31 :
42-519:2008/04/13(日) 14:56:35 ID:Y8+NtzAr
7-896さんへ
初めて作品を読ませていただきました。シュール世界観になんとも笑ってしまいました。
乙ですー。
板汚しになってしまいますが、一応私も2レス物ですので新スレで時間を置いてから投稿しなおしますね。
32 :
7-896:2008/04/13(日) 15:00:50 ID:axF4zPWF
>>31 こちらこそ申し訳ありませんでした(´・ω・`)
埋めネタだからと間も空けずに投下してしまいました。
勢いで投下はいけませんね。
ごめんなさいです。
>>32 すなわち前スレ最後
ついに登場!こな以外のフェチでこれほどの爆笑!!
すばらしい!あなたはすばらしい!!
ついに皆を無敵ゾンビにしてしまった!超GJ!!
34 :
23-49:2008/04/13(日) 16:33:24 ID:D5chtFPk
どうもです
メドレーリレー・バーズデー第七話、上がりました
誕生パーティーのメインイベントとなるプレゼントタイム
各人の思惑確認も兼ねてますので視点切り替えが激しいです
七話なので七人分
他に予定されてる方がおられないようでしたら五分後ぐらいから投下させてください
・複数視点(みさお→パティ→あやの→ひより→みなみ→つかさ→みゆき)
・エロ無し
・10レス使用
【track 7 : 九つのプレゼントと宙を舞う烏龍茶】
「じゃあ、まず私からね」
プレゼントは、なんでか知んないけど名前の五十音順に渡すことになった。
トップバッターのあやのが取り出したのは、片手に収まるサイズの小さな箱。
水色の包装紙と白いリボンでラッピングされている。
「はい、岩崎ちゃん。あらためまして、お誕生日おめでとう」
「あ、ありがとうございます……」
緊張ぎみに受け取って、けど岩崎はそこで固まってしまった。
どうしたらいいのかわからない。
そんな顔だ。あやのがくすくすと笑った。
「開けてみて」
「え? あ、はい。……すみません」
「いいのよ。久しぶりなんだもんね、こういうの」
なるほど。馴れてねぇんだな。
対してあやのは、人を落ち着かせて誘導するのが上手い。一番手になったのは正解か。
……柊のことも、やっぱもう全部任せよう。
なんてことを改めて思っていると、たどたどしくも丁寧な手つきでリボンと包装が解かれて、
ガラスの小瓶が姿を現した。
逆台形をした縦長の容器。黄緑色の液体で満たされている。
「香水……ですか?」
「うん」
うなずいて、あやのが胸のポケットからハンカチを取り出す。
突然の動きに驚いたのか、岩崎の顔が少し強張ったように見えた。
「貸してみて?」
「……あ、はい」
受け取りなおした香水を、あやのは、
「映画で見たの」
言いながら手の中のハンカチにぽたぽたと数滴、そしてパッと広げて優雅な手つきでなびかせる。
こないだ一緒に見たやつかな。確かそんなシーンが、あったような、なかったような。
首をひねっていると……おお。
さっぱりとしたライムミントの香りが私のところまで漂ってきた。
他のやつらも鼻を鳴らしたり感心した顔になったりしてる。
あんなちょっとでこんだけ広がるのか。すげぇな香水。
「――どうかしら?」
「あ……ええと……素敵、です」
不器用っぽく、だけどたぶん本心でうなずく岩崎。
うむ。
香水とかそういうオシャレ系にど素人の私でも思うもんな、似合うって。
「そう? よかった」
にっこり笑うと、あやのは瓶を返してハンカチを仕舞う。
「今みたいに少しの量でも思った以上に香るから、くれぐれもつけすぎには注意してね?
それから、つける場所なんだけど……」
そして使い方とか保存するときの注意とかを説明していく。
岩崎は熱心に聞いてたけど、私は途中で聞くのを諦めた。
やっぱ無理だ。私にはあーゆーのは。
☆
「じゃ、次はかがみとつかさ、行ってみよー」
イツの間にか司会進行役に納まっているコナタが、spoon を mike 代わりに宣言シマス。
ツカサがキョトンとなりマシタ。
「え? お姉ちゃんの次はこなちゃんじゃないの?」
「いや、だって双子だし」
「……意味わからんわ」
柊カガミの溜息。双子は揃ってこそ萌えデアルと、理解できナイわけデモないデショウに。
ソレにコレは伏線にもナッテいるのデス。
「別にいいけどね……じゃあ、はいこれ。誕生日おめでとう」
「みなみちゃん、おめでと〜」
カガミは campus note ホドの青い紙袋。ツカサは、透明な wrapper sheet に包まれたヌイグルミ。
「ありがとうございます……これは、犬ですか……?」
それぞれ両手に受け取ったミナミは、まず見た目に分かりやすい方に反応しマシタ。
Football のような輪郭をした、白い何かの…… animal?
犬にも見えマスが、deformation が強すぎてイミフ。Polar bear や hamster にも見えマス。
「ううん。えっと……なんだっけ、お姉ちゃん」
「カピバラ、らしいわ。まぁ、私も詳しくは知らないんだけど」
Hum? なぜカガミが答えるのでショウ。
「かぴ、ばら……?」
「南米に棲息するネズミの一種ですね」
不思議そうにヌイグルミと見つめ合うミナミに、ミユキが解説を入れマス。
「げっ歯類の中では世界最大の種で、普通でも一メートル以上、大きなものでは一五〇センチ近くに
なることもあるそうです」
150 centimeter トいうト……オオヨソ 5 feets ほどデスか。
Wow! ユタカやコナタと同じ、もしくはソレ以上!
そんなネズミは Florida や California のアレぐらいカト…… オゥット、stop。Danger danger。
Grandma も言っていマシタ。ヤツラ――“D”ダケはネタにしてはイケナイと。
「へぇ〜。ゆきちゃん詳しいね」
「いえ、たまたまテレビで見たことがあるだけです」
「……ま、別にそのあたりのことは関係なくて、見た目でね。ほら、あの子。チェリーちゃんだっけ?
あの子に似てると思ったから」
Hum。言われてミレバ、似てマスね。Cherry もユタカやコナタより大きいデスし。
ッテユーカ、
「ソチラが、カガミからなのデスか?」
気になったコトを尋ねるト、カガミがコチラに向き直りマシタ。
「ああ、違う違う」
デスガ微妙に視線を合わせてくれマセン。
「つかさのよ。料理の方に専念してもらいたかったからね、私が代わりに買ったってだけ。あ、選んだ
のは私だけど、ぬいぐるみってリクエストしたのはちゃんとつかさだから」
言葉も早口デス。
……マダマダ危険な綱渡りが続きそうデスね。ヒヨリの life point は大丈夫デショウか。
モゥいっそ、逆にコナタとぶつけた方が丸く収まる気がシマスが……
「I see」
マ、我慢しまショウ。ヒヨリの選択ですカラね。
「私のは、そっち。――開けてみて?」
「はい」
ヌイグルミはひとまず近くの sofa に退避させラレ、カガミの紙袋から出てきたのハ、
「ブックカバー……」
「本、よく読むって聞いたから。一応文庫用と新書用のセットになってるの」
平凡デスネ。Design にも TSUKKOMI 要素がアリマセン。
もっとコゥ、TSUN-DERE らしさのアル item を期待シタのデスが……
「……ありがとう、ございます」
ミナミは喜んでイルようデスし、余計なコトは言わないでおきまショウ。
☆
「さぁて、次は私たちだね」
続いて泉ちゃん……私、たち?
あら、田村ちゃんとパトリシアちゃんも一緒に前に出た。三人で渡すのかしら。
「Yes! Jet Stream Attack を掛けマスよ!」
「……カブってなきゃいいっスけどね」
どうやらそうみたい。
三人とも同じようなサイズの、かなり大きな紙袋を手に、それぞれ見つめ合ってうなずく。
「そんじゃ、一斉に行くよ?」
「はいっス。では、いざ」
「ジンジョーに勝負デスっ!」
コンビネーション……いや、この場合はトリオネーションかな。
とにかく息ピッタリで、三人が同時に取り出したのは……制服?
泉ちゃんのは、水色のセーラー服。なぜか冬服で、こげ茶色のカーディガンが付いている。
パトリシアちゃんのはブレザータイプで、こちらはちゃんと夏服。色はくすんだブルーグリーン。
そして田村ちゃんのは、白のワイシャツと黒のプリーツスカートという、普段着にも使えそうなもの。
ただし、なぜが魔法使いが身につけるみたいな黒いマントと大きな杖がセットになっている。
「「「オォおぉOh〜〜〜〜!!!」」」
取り出したものをお互いに眺めながら、三人が歓声を上げる。
「すごい! 見事にバラバラ!」
「It's a Miracle!」
「絶対カブると思ってたっス!」
ええっと……
これは、いわゆる“コスプレ”の衣装、なのかな。
泉ちゃんたちのことだし、きっとそうね。さすがに何のキャラクターかまでは分からないけど。
「いやー、私としては長門が三つ揃うのを逆に期待してたんだけどね」
「ホゾン用とカンショウ用とフキョウ用デスネ?」
「いやいや、さすがにそれは。岩崎さんが三人いるならともかく」
疑問符で一杯になっているみんなを、岩崎ちゃんすらをも置き去りにして盛り上がる三人。
「……」
「……」
「……」
だけど私たちがまったくの無反応なのを不思議に思ったのか、これまた一斉に動きを止めて、
ソロリと周りを見回すと、ヒソヒソと話し始めた。
「来てるよ来てるよー? “ついていけないオーラ”がぶわっぶわ来てるよー?」
「しょーがないっスっ。私らアウトローが一般人を祝おうなんてしょせん無理な話だったんスっ」
「ヤパリ plug suit にスベキでしたカ……?」
「いやそーゆー問題じゃないから」
「むしろなお悪いから」
なんだろう。
ネガティブな内容のわりには、三人とも妙に楽しそう。
「こいつらは……」
救いがたい、とでも言いたげに柊が呻く。
みさちゃんと妹ちゃんと高良ちゃん、それとおばさまたちは、ただただ不思議そうな顔。
まあでも、あの三人らしいといえば、そうなのかな。
「……」
肝心の岩崎ちゃんが不安そうにしてるけど、無理やり着せることまではしないと思うし。
でも、ちょっと見てみたいかも。
他はともかく、魔法使い姿の岩崎ちゃんなら。
☆
「えー、でわ気を取り直しまして――次行ってみよう」
ドン底まで冷え込んだ空気にもめげず、泉先輩が引き続き場を促す。ツッコミ不在は辛いっス……
「よっしゃ、あたしだな」
ぱしん、手の平とこぶしを打ち合わせて、張り切った様子で進み出た日下部先輩は、
けれどやっぱり何も持っていない。
「って言っても、今は渡せないんだけどな」
「……?」
岩崎さんが首をかしげる。
「なんなんスか、結局?」
他の人は何も言わないし、泉先輩もニヤニヤするだけだしで仕方なく私が尋ねると、
日下部先輩はニッカリと笑った。
「靴だよ。こればっかりは本人がいなきゃ買えねーからな」
ああ、なるほど。
すごく納得。
この中で唯一運動部に入ってる日下部先輩ならではのセレクションっスね。
「だから都合のいいときに買いに行こーぜ。明日にでも」
「はぁ……」
しかし岩崎さんは困り顔。
そーいや日下部先輩、岩崎さんを勧誘してるんだっけ。
あの手この手で頑張るっスねぇ。小早川さんがいる限り無駄なのに。
「だぁいじょぶだってそんな顔しなくても。ソレ履いて陸上部で走れとかそんなこた別に言わねーから」
「しかしそれが逆に断りにくくなるという私の入れ知恵」
と、泉先輩が口を挟んだ。
「なっ!? おまっ、バラすなよっ」
「いやぁ、さすがにフェアじゃないっぽいしー」
「契約違反だぞっ! せっかく勉強教えてやったのにっ!」
そして何やら言い合いが始まった。
……嫌な予感。 、
「……日下部……」
うわぁやっぱり! かがみ先輩が低い声を発したっス!
「……なに、ひぃらぎ?」
「……」
訊き返されて、けれどかがみ先輩は少し押し黙って目を逸らした。そうしてから口を開く。
「いいかげんに、変に強引に誘うのはやめなさいよ。みなみちゃんに迷惑でしょ」
どこか無理のある声。
本心を――本当に言いたいことを、隠しているような。
高良先輩が眉をひそめた。ヤバイっス、まずいっス!
「「――あのっ」」
っと?
声が、重なった。
私と……岩崎さん?
「大丈夫です」
きっぱりと言い切る、凛とした声。
言われたかがみ先輩は――泉先輩も日下部先輩も、高良先輩も、そして私も。
あっけにとられた。
「日下部先輩」
「え? あ、な、なに?」
「……この際ですから、はっきりと言わせてください。私は陸上部へは入りません」
「え……」
表情を強張らせる日下部先輩。
それを見て岩崎さんは、微笑んだ。
「ですが……プレゼントの靴は、ありがたく受け取らせていただきます」
「あ……」
ゆっくりと。
「……わかった。諦める」
日下部先輩の表情が、解きほぐされる。
「それと、最高の選ばせてくれな! そんで、たまには走りやすい靴履いてさ、チェリーと一緒に
思いっきり走ってみるとか、してくれ!」
「……はい」
ええっと……
なんとなく茫然としていると、誰からともなく拍手が巻き起こった。慌てて私も倣う。
安堵の空気が広がっている。
だけどその中で、かがみ先輩だけが、なんとも言いようのない表情をうつむかせていた。
うぅ、心臓に悪いっス……
☆
「次は……みゆきさんか。みゆきさんは、みなみちゃんが着てるあの服ってことでいいんだよね?
他に何か隠し要素とかあったりする?」
「いいえ、服だけです。すみません、気が利かなくて」
泉先輩の問いかけに、みゆきさんは丁寧に頭を下げた。
「や、念のため確認しただけだって」
ということは、次はもうゆたかの番だ。
どうしよう。また緊張してきた。
「それにしても、ホントよく似合ってるよねぇ」
「そ、そんなこと……」
その上、泉先輩から改めて言われて、顔が熱くなる。
「ないことねーって。岩崎のイメージ変わったぜ。もちろん、良い方にな。フダンからそんなカッコ
すりゃいーのに」
「そうね。私ももっと見てみたいな」
「む、無理……です……」
さらに日下部先輩と峰岸先輩も加わって、もう、どうすればいいのか。パニックで何も考えられない。
「大丈夫よ。本当に、すっごく可愛いし、似合ってるから」
「だよな。あやのもそう思うよな」
「うん。――ねえ、高良ちゃん」
「はい、なんでしょう」
「もし良かったらなんだけど、今度みさちゃんのことも見立ててくれないかしら?」
「へ?」
うん?
「日下部さんを、ですか? ええ。私でよければ喜んで」
「え? ……なっ! ちょ、あやのっ! 何言い出すんだよいきなり!」
「だってみさちゃん、私がどんなの選んでもイヤだって言うんだもの」
「そりゃ、そんな――あやのがヘンなのばっか着せようとするからだろっ」
「うん。だから、ヘンじゃなくてちゃんと似合う服、高良ちゃんに選んでもらお?」
「んなっ!?」
あれ、なんだか風向きが変わり始めてる。
顔を上げると、日下部先輩が、たぶん私と同じぐらいに赤くなっている。
「む、ムリだよあたし、こんなの――」
戸惑いつつ眺めていると、日下部先輩から思いっきり指を指された。
「……こんなの……」
「わあっ! 違う! 岩崎のはちゃんと似合ってるってば! そじゃ、なくてだからそのっ! あたしと
岩崎とじゃハナシが違うってハナシだよ!」
「そんなことありませんよ。確かに、みなみさんとはタイプが少し違っておられますから、これとまったく
同じ服では合わないかも知れませんが……」
みゆきさんも乗り気だ。
「そうですね。日下部さんなら、カントリー調のエプロンドレスなどいかがでしょう?」
「わっ、すてき」
「おおー! いいねっ」
「え? ど、どんなだソレ? エプロン? ドレス?」
「さっすがみゆきさんだ。みさきちにスカートっていったら、私じゃテニスウェアぐらいしか出てこないよ」
「だからどんななんだよっ! すっげーヤな予感すんだけどっ! ちびっ子が喜んでるあたり特にっ!」
エプロンドレス……とりあえず思い浮かぶのは『不思議の国のアリス』でアリスが着ていたもの。
だけどカントリー調ということは、もう少し素朴にした感じだろうか。『若草物語』とか。
……ああ、似合うかも知れない。
次女のジョオと四女のエミリーを足せば、日下部先輩のイメージに近くなる。……気がする。
「見てみたい、かも……」
「なぁっ! 岩崎!?」
あ。
声に出してしまった。
「ほらほらみさきちー、本日の主役もご希望だよー?」
「うぬぬぬぬ……」
日下部先輩が頭を抱えてうずくまる。
どうしよう。悪いことをしてしまった。
と思ったら、がばり、身体を起こして、真っ赤な顔で泉先輩に人差し指を突きつける。
「わかったよ! その代わりちびっ子、お前もだ! お前もなんか着ろ!」
「私? おっけー。そんじゃ決まりだね」
そしてあっさりと親指を立てる泉先輩。
日下部先輩が愕然となる。
「なんでだよ! 嫌がれよ!」
「甘いネ、ミサオ。コナタは professional ダヨ?」
「バイトで慣れてるんスよねー、泉先輩」
パトリシアさんと田村さんも加わった。
ゆたかは……
「すぅ……はぁ……」
深呼吸をしている。
体調を崩したという感じではなさそう。彼女もまた緊張しているのだろうか。
とりあえず、そっとしておこう。
みゆきさんたちの方に目を戻す。
かがみ先輩とつかさ先輩も、いつの間にかそばに来ている。しかしなんとなく近くにいるというだけで、
会話には相槌程度でしか加わっていない。やはりまだ、完全に元気になれてはいないらしい。
「よし、それじゃついでにひよりんも行ってみよう」
「へ? ……はい!?」
「Nice idea、コナタ!」
「ちょ、まっ! なんでそうなるんスか! むっ、む無理! 無理っスよ私は!」
「だぁいじょーぶだぁいじょーぶ、みゆきさんに任せとけば。大船に乗った気持ちで」
「Nice boat、コナタ!」
「誰が上手いことを言えと言ったっスか!」
しかし、みんなが楽しそうにしているのを見ると、指摘するのはためらってしまう。
せっかく私のために集まってくれているのに、その私が雰囲気を壊すなんて、できるわけがない。
悔やまれる。
さっき外に出ていたときに、みゆきさんにもう少し詳しく言っておけばよかった。
かがみさんと遭ったということだけは話したが、それだけだ。
会話の内容や落ち込んでいた様子のことは、勝手に漏らすべきではないなどと思ってしまった。
今日、こんなことになると知っていれば……
いや、今さらそんなことを言っても始まらない。きっとまだ、機会はあるはずだ。
☆
そうして。
話はますます盛り上がって、最終的に、日下部さんとみなみちゃんが靴を選びに行くときに
ゆきちゃんやこなちゃんたちも付いていって、ついでに――といった感じでまとまった。
私とお姉ちゃんも誘われたけど、行ければ行くって答えたけど、たぶん行かないと思う。
少なくとも、お姉ちゃんが今のままでいる限りは。
もちろん、イヤだ。
でも今はどうしようもない。
何を考えてるのかわからない人だけど、峰岸さんの言うことは、間違ってはいないんだ。
今日は、パーティーが終わるまでは、みなみちゃんのことが最優先。
ってゆーか、勢いとはいえひどいこと言っちゃったよ、私。
やっぱりもう大人しくしとこう……
「――さて、脱線しちゃったけど、いよいよオーラス行ってみよっか。ゆーちゃん、ばっちり決めちゃって!」
「う、うンっ!」
こなちゃんに呼ばれて、ゆたかちゃんの声が少し裏返った。
なんだかかなり緊張してるみたい。大丈夫なのかな。
目を閉じて、もう一度短く深呼吸をして。
そして目を開けると、ゆたかちゃんはプレゼントを手に中央に進み出た。
「みなみちゃん」
「……うん」
「お誕生日、おめでとう」
「……ありがとう」
両手で捧げ持たれた大きな紙袋を、みなみちゃんは壊れ物を扱うように、そっと受け取った。
「あ、開けてみて」
こくり、うなずいて。
白いきれいな指が、袋の口を止めているリボンを外す。
「……」
出てきたのは、一抱えほどもある平らな直方体。
みなみちゃんが意外そうな顔になる。私も、お姉ちゃんも、他のみんなの反応も、だいたい同じ。
「い、いろいろ、考えたんだけど……やっぱりみんなで遊べるものがいいかな、って……」
自信なさげに説明するゆたかちゃん。
なるほど。
『モノポリー』のボードゲーム。
一瞬意外に思ったけど、考えてみれば確かにゆたかちゃんらしいチョイスだ。
みなみちゃんのことを本当に思ってるんだなぁってことが、顔だけ見てもよくわかるよ。
「もし、よかったら……あとでみんなで……とか、だめかな……?」
だからこそ、不安なんだね。
わかる。わかるよ、その気持ち。喜んでもらえなかったらどうしよう、って思っちゃうんだよね。
でも、大丈夫だよ。
その証拠に、ほら、みなみちゃんの顔がみるみる優しくなっていく。
「……うん」
そしてうなずいた。嬉しそうに。
「……やろう、ゆたか」
「あ――う、うんっ! ありがとうみなみちゃん!」
うつむかせていた顔を上げて、輝かせて、ゆたかちゃんも勢いよくうなずきを返す。
「ごフっ」
血を吐くような声がした。
――え?
振り返ると、魂の抜けたような顔のひよりちゃんの肩を、パティちゃんががくがくと揺さぶっていた。
「ヒヨリ! シッカリ! 傷は腐海デス!」
「ウフ、ウフフフフフフフフフフフフ……独占……やらないか……」
こなちゃんがため息をついた。
「いや、ひよりんマジ自重」
「お、お姉ちゃん? 田村さん、どうしたの……?」
ゆたかちゃんが訊くと、こなちゃんは肩をすくめた。
「さー? 唐揚げでも喉に詰まらせたかな?」
そんなふうにはとても見えないけど……
やっぱり、疲れてるのかな。
そうだよね。朝からずっと、お姉ちゃんとこなちゃんの間で頑張ってたもんね。
ここまで何ごともなく来られたのは、間違いなくひよりちゃんのおかげだよ。
……どっちかって言えば、できれば、二人がちゃんと話せる場を作って欲しかったけど、
時間的にもそんなのは無理だったし、そもそも何もしなかった私に言えることじゃない。
「田村さん、これ、お茶……」
と、みなみちゃんが素早く動いて、烏龍茶の入ったグラスを差し出した。
「ああ、岩崎さん……もったいなや、もったいなや……」
「モゥ、シカリするですヒヨリ」
視線や手元がおぼつかないひよりちゃんの代わりに、パティちゃんが手を伸ばす。
「さっすが保健委員」
こなちゃんが言って、
「――」
みなみちゃんは、動きを止めた。
目が見開かれて、全身が石像ように静止する。焦点を失った瞳に映りこむのは、恐怖の色。
恐怖?
「サ、ヒヨリ――」
パティちゃんは気付かず、グラスをひよりちゃんに渡そうとして、
「―― Wm?」
できなかった。
グラスはみなみちゃんの手を離れていなかった。
だけでなく、しっかりと握り締められている。指にかなりの力が込められているのがわかる。
まるで握りつぶそうとするかのように。
あるいは、決して渡すまいとするかのように。
「ミナミ?」
パティちゃんが呼びかける。
数瞬の間を置いて、みなみちゃんは弾かれるようにグラスから手を離した。
弾かれるように。
熱いものに触れてしまったときみたいに、腕がかなりの速さで後ろに向かって振り抜かれた。
人に当たったら怪我をする勢いだ。
さいわい誰にも当たらなかったけど、代わりに。
グラスが宙に浮いた。
液体を七割ほど注がれたガラスの容器が、誰の手からも離れて、ほんの一瞬、空中に静止した。
落ちる。
そう思うよりも、早く。
「にょわっ! ――っとぉー……」
持ち前の運動神経を発揮したこなちゃんがギリギリのところで受け止めた。
中身もほとんどこぼれていない。
ちょっと信じられない神業に、私は息を飲む。
そしてそれは、他のみんなも同じだったらしい。
「……」
「……」
「……」
空気が止まった。
「……」
「……」
「……」
「……え? なに?」
ひよりちゃんが我に帰ったみたい。
きょとんとした顔で疑問をもらすけど、当然のように誰も答えない。
訝しげになって、みんなを見渡して、
「――!」
彼女もまた、息を飲んだ。
その視線の先で。
みなみちゃんが真っ青になって震えていた。
限界まで目を見開いて、お化粧の上からでもわかるぐらいに顔を蒼白にして、凍えるように、カタカタと。
尋常じゃない。
「みなみ……ちゃん?」
むしろ場違いにも思える、呆けたような声。
びくり。
ひときわ大きく、みなみちゃんの肩が震えた。痙攣したと言ってもいい。
眼球がぎょろりと回って、声の主、ゆたかちゃんに向けられる。
さっきと同じ。
ううん、さっきよりも深い。
怯えの色。
まるで怪物でも見るみたいな、恐怖の眼差し。
それが、ゆたかちゃんに向けられている。
――なに?
何が、起こったの?
☆
迂闊でした。
今日のことを――昨日までの小早川さんたちのよそよそしさが、
内緒で誕生パーティーの準備をするためだったということを明かした時点で、
みなみさんの不安は全て解消されたものと思い込んでしまっていました。
詳しいことを知っているわけではありません。
ですが、今朝になっていきなりあんなことを言い出した、そのきっかけとなる出来事があったはず。
恐らくは、昨日。
その放課後の、帰り道で。
完全に……失念していました。
「……」
ちらりと窺い見てみると、しかし“その人”もまた、純粋な戸惑いを見せているだけでした。
もしかしたら、無関係なのでしょうか。
――いえ。
いずれにしても、彼女のことは後回しです。
「……みなみちゃん? どう、したの?」
目を戻すのとほぼ同時、小早川さんが再度の呼びかけをします。
ぎしり、と音が鳴るほどのぎこちなさで、みなみさんの唇がわななきました。
「ち……ちがう……」
蚊の鳴くよりも小さな声。
小早川さんが眉を寄せます。
「……え?」
混乱しきった顔。若干の怯えも見て取れます。
さすがに、無理でしたか。
みなみさんの感情を、場合によっては私以上に読むことのできる彼女なら或いは、と思ったのですが。
致し方ありませんね……
なるべく出しゃばりたくはなかったのですが……
「みなみさん」
声をかけると、再び痙攣するように長身を震わせて、彼女はこちらを振り返ります。
助けを求める目。
応じてあげたい。手を差し伸べてしまいたい。
ですが……
「……大丈夫です。話せば、ちゃんと伝わるはずです」
断腸の思いで突き放すと、みなみさんは絶望に顔を歪ませました。
「で、でも……」
「小早川さんのことが、信用できませんか?」
「そんなこと……!」
搾り出すような呻き声。
苦渋に満ちた顔。
ですが、手助けはできません。するわけにはいきません。
今日という日を親友たちとの良き思い出の日として心に残すためには、ここはあなた自身の力で
乗り越えなければならないのです。
他の人に助けられてしまえば、そこに成長はありません。
自分だけの力で、人に踏み込み、また踏み入らせなければ。
私は、来年もまた同じことをしたくはないのです。
「でしたら、ちゃんと説明して差し上げるべきです。たとえどれほど信頼していても――しあっていたと
しても、言葉にして話さなくては分からないことというのは、あるものなのですよ?」
偉そうなことを言って申し訳ありません。
ましてや、事情をよく知りもしないのに。
ですが、それは真理であるはず。
私もつい先日痛感したばかりのことですから。
「……」
みなみさんは、うつむいて、肩を震わせました。
そして――しかし。
予想よりも遥かに早い時間で顔を上げ、再び目だけで、続いて全身で、小早川さんに向き直ります。
「……ゆたか……」
それを受けて、小早川さんは、
「……うん」
小さく、ですがはっきりと頷きました。
「聞かせて」
……良いお友達を持ちましたね。
さあ、みなみさん。
次はあなたの番です。
もし、“あの人”が――かがみさんが関係しているのなら、そちらのフォローは私が引き受けます。
ですから、今、この場だけは。
どうか勇気を出してください。
45 :
23-49:2008/04/13(日) 16:49:51 ID:D5chtFPk
以上です
ありがとうございました
ママさんズがさらに空気
というかほぼ行方不明
もはやどうしようもない気がするのでこのままでいてもらいましょう
次回、ゆたみな決着
46 :
kt:2008/04/13(日) 18:00:03 ID:QSD4cTJK
どうも、
KYなktです
それでは
「鼻血)ry会5.5☆さんぽびより」
投下してもよろしいでしょうか?
・7レス
・みさお視点
・オリキャラあり
・前作「鼻血)ry会☆5.1☆栗色奮闘記」の裏の話です
・妄想屋(仮名)・7-896氏に感謝です!
今日はいー天気だ!
「あにき〜!そんじゃ〜今日はちびっ子の家に泊まっから〜」
「おお〜!」
鼻血)ry会5.5☆さんぽびより
「あ、あやの」
私が玄関を開けるとそこにはあやのが立っていた
「み、みさちゃんどうしたの?」
「今日さぁ兄貴どこにも行かねーんだってさ、疲れてるらしーからさ、、だからつまんねーからちびっ子の家に泊まんだ!」
でもなー…なんでそんな話になったか全然覚えてねーんだよな…なんでだろ?
どでかちちと会ってたのは覚えてんだけどなー…
「そうなんだ…」
「じゃ!兄貴と頑張れよ〜」
なんでか知らないけどそんな言葉が出た
……何を頑張るんだ?
何だろ…ん〜…
…ん〜…
…ま、いっか
家を出て少し歩いたとこの電柱の影にあやのっぽい人が立っていた
『あ、どうもっ』
「お、ど〜もー」
…この人すっげぇあやのに似てんなー、なんだっけこーいうの…
瓜二つってヤツ?
しばらく歩いて後ろの方を見るとあやのと兄貴は話し込んでいる様だった
ま、久しぶりだしなー…でも気になった事がある
あやの似の人が何故かその様子をモノ凄い勢いで見てたのだ
…見てるだけだし、、害はないよな?
私はそう思って先を急いだ
ちびっ子との待ち合わせ場所は、、ほらなんつーの?
…え〜と金八先生が始まる時に出てくるような土手だ
「おっ〜す!ちびっ子ぉ!」
「おはよ〜ぅ、みさきち」
ちびっ子の目じるしは青い髪だからすぐに見つけれた
そして出会って早々、疑問をぶつけてみた
「なぁ、今日どーして一緒に遊ぶって事になったんだっけ?」
「え、みさきち忘れたの?、、ほら…え〜と……あれ?…いつ約束したっけ?…ケータイにも登録してないし…」
どうやらちびっ子も覚えてないらしい
「お前もなのか?」
「ってみさきちも?」
「こーゆーこともあるもんなんだなぁ〜」
「むぅん…宇宙人が私たちの記憶をいぢくった、とか?」
「んなこといーじゃん!早く行こーよ!」
「…先に話題に出したのそっちじゃん」
あぁ、…そういえばそうだった
「じゃ、どこ行く〜?、ゲーセン?カラオケ?、そ・れ・と・も先に私の家?」
「見事にインドアばっかりだなー」
「悪かったね、どうせ私は引きこもりですよ…みさきちは何か案があるの?」
ん〜…、、お!これなんかどうだ
「じゃあ、この辺散歩しねぇ〜?」
「散歩〜? ダルいよ〜それにこの辺知ってるしさ」
「まぁまぁ!ちっと路地裏は入ったらけっこー知らねーもんがあるんだってヴぁ!、それに
ほら、天気いいしさ、絶好の散歩びよりだぜ?」
「そんなもんかねぇ?、、むぅ…じゃ、たまには散歩でもしますかネ」
そして私達は歩いて色々なところを散策した
「ホントに色々あるもんだねぇ…こんなとこにケーキ屋があるなんて知らなかったよ〜」
「そーだろ?、であっちの道を曲がるとラーメン屋があるんだってヴぁ、、結構うめーぞ!」
そう、私は普通車や自転車で行くよーな道の裏道を歩くのが趣味…みたいなとこがある
それは色々な発見があって面白いんだけど…いつも散策しに行く時に兄貴のヤツ
「お前…太ったのか?」とか女の子に向かって言うかな、、たくっ
…あやのは兄貴のこーゆーとこどう思ってんだろ?
「しかしみなみちゃん…どうしたのかな」
「ほぇ?」
「ほら、さ…また高良家に行ってパーティしたじゃん?…あの時のみなみちゃ―」
私はふと前の方を見る、するとまだ遠くの方だけどそこには…
「ちびっ子!前みろ、前」
「なん…おお!なんと奇遇な!」
前の方にはどでかちちとゆうきと犬、、えーとブロッサムだっけ?が歩いていた
「こんにちは〜みゆきさん、うーたん!、あとブっちん!」
「あらぁ、偶然ですね!こなたさん」
『お早うございます、こなたさん、みさおさん』
「おお!おっ〜す」
ちびっ子の方はというとブロッサムと話し込んでいるみたいだ
『ちゅーかブっちんって何や、ブっちんって』
「気に入らなかった?」
『まぁ、、ありがとな』
「にしても犬の癖にいい笑顔だよね、、ブっちん」
『そうか?…一応言っておくけどおいらは犬型のヒューマノイドなんやけども…』
その様子をゆうきがちらちらとみている、、会話に混ざりてーのか?
……それにしても、喋る犬・ついさっき会ったあやの似の人・あと今の状況
、、、これ兄貴とあやのに電話しねーとっ!
そう、私は珍しいことが起ったりすると兄貴やあやのに電話せずにはいられないたちなのだ
トゥルルルル…トゥルルルル…
コール音が耳に残る
…あやの出ねーな
「みさきち〜?どしたの?」
ちびっ子が私に話しかけてくる
私はリダイアルボタンを押す
「いや〜なんつーかこの状況って珍しいだろ?、だからあやのに電話しようと思ってさー」
「でも、あやのさんって確かみさきちと一緒にみゆきさん家に行ったよね?」
あ、
ああ〜…思い出した確かそうだったな…でも電話してるしなーどうすっかなー…
「みさきちって1回で出なかったら何度も電話するタイプなの?」
「ん〜、まぁ2回ぐらい電話して出なかったら、、そうだな〜家が近かったら行くかな」
「………」
ツっ…
という音がした
「も、もしもし」
お、あやのが出た
「お!あやのか〜?」
「どうしたの?」
「おお、今ちびっ子やどでかちちやゆうきと一緒でさ〜」
ふと前を見るとなぜかゆうきは『その間 わずか2秒!!』って叫んでて…
どでかちちはだばだばだば…と鼻血を流してて…
ちびっ子はちびっ子で犬と話してるし…なんだこれ?
「え!?、なっ…」
あやのがびっくりしたような声がした
「? どーかしたのか?」
「な、、、なんでも…ない、、よ?」
なんかあやの具合悪そうだな…風邪なのか?
「なぁ、ホントーに大丈夫なのか?」
「…どうし…た、の?」
こっちが「どうしたんだ」って言いたいんだけどなぁ…
「うん、大丈夫だから…お兄さんと…一緒だしっ」
あぁ、そうか兄貴がいるんだった、、兄貴なにしてんだろ?
「ん〜、兄貴は?」
「お兄さんは…今、、手が離せなくて…っぁ」
…おお?、、なるほど!そういうことか…謎は全て解けたぜ!
「もしかしてマッサージしてもらってるのか?」
「え、うん、、そうそう、それそれ!」
どうやらビンゴだったみてーだ!…ん〜我ながらナイスだってヴぁ!
「そっか、んじゃ〜な!」
これ以上具合が悪そうなあやのを喋らせちゃいけないと思って自分から電話を切った
…ってなんで電話をかけようなんて思ったんだっけ?
…ま、月曜にでも話せるかぁ
私達はどでかちちと別れたあと、
私オススメのラーメン屋『ぶらぶら坊主』、略して『ぶら坊』で昼メシを食べた
「ここのおすすめは塩ラーメンなんだぜ!すげーうめーぞ!」
「…それよりもお店の名前が気になるんだけど」
昼メシを食べたあと、ついさっきみつけたケーキ屋で食後のデザートを買ってちびっ子の家に向かった
あとちびっ子の家に行く途中でひぃらぎを見かけたんだけど…
2人組だったし、その相手がポニーテールの女の人で、その人ひぃらぎと似てたし
でも見間違いなんだろーな…ちびっ子も見てないって言うし
そうこうしてるうちにちびっ子の家に着いた
「ただいま〜お父さん」
「おかえり〜!こなた!」
ちびっ子の親父さんは帰ってくるのを待ちかねていたようなタイミングで飛び出してきた
…何か服、、ほこりかぶってるなー、ずっとここで待ってたとか?
「君がみさおちゃんかーこなたから話は聞いてるよ」
親父さん、、ちびっ子に似てねーんだな…、、母ちゃん似なのか?
…まぁ私も空気は読めるほうだし聞かないでおこう
「じゃ俺はお茶を注いでくるから、どうぞ中に入って!」
「あ、はい、おとこばに甘えて…」
「みさきち…“おことば“だよ」
「へ?どこが違うんだ?」
「いや、だから“おとこば“だとアーッ!な感じになるじゃん?」
「いやアーッ!って何だよ?」
「いや、、それは……あれ?ゆーちゃん帰って来てたんだ」
ちびっ子の視線の先を見るとちびっ子のちびっ子―ゆーちゃんだっけ?
がケータイを持ったまま廊下に立っていた
「むふぅ〜♪」
突然ちびっ子が変な声を出す
「…どーしたんだ?なんか悪いもんでも食ったのか?」
「まぁみててよ♪」
そう言ってちびっ子はゆーちゃんに近づいていく
「どぉ?みなみちゃんとのラヴラヴ新婚生活は―」
「………」
「…ゆーちゃん?」
ゆーちゃんはちびっ子の呼びかけにピクリとも反応しなかった
「ゆーちゃん、お〜い」
「…え?、、、あ、お姉ちゃん帰って来てたんだ」
「え?、あ、はい」
「…私…もう…寝るね……」
そう言ってゆーちゃんはおぼつかない足どりで自分の部屋に戻って行った
時刻は夜7時
私は夕食をごちそうになった
メニューは親子丼とみそ汁と漬物だ
うん、んまい!どうやって作ったんだろ?
夕食を食べているのは、私・ちびっ子・親父さんの3人…ゆーちゃんはお腹が空いてねーらしい
「ゆーちゃんだっけ?具合悪そうだったけど、どーしたんだ?」
「ん〜…朝帰ってきた時は元気だったんだけどな〜」
「じゃ、お父さんは頼りにならないしあとで私が聞いてくるよ」
「お〜!助かるよこなた〜!」
「…親父さん…今のツッコまなくていいのか?」
夕食を食べた後はデザートを食べたり・ちびっ子の部屋で漫画を読んだりして過ごした…だけど
ちびっ子がゆーちゃんの部屋に行ったっきり全然戻って来なかったから、代わりに親父さんの部屋に行ったりした
そういえば…兄貴やあやのは今どうしてるんだろう、とふと思った
―そして、月曜
学校再開日
PM12:01
「ん〜?同居人ってどこのどいつのことなんだ?」
私は今購買に向かっている、今日はお弁当を忘れたからだ
そしてお弁当以上に私の頭を悩ませているのは―あやのの同居人だ
「…ん〜?…兄貴も知ってるって言うし、、この学校の人なのか?」
同居人…
どうきょにん…
どーきょにん…
悩みながら購買に着くとそこにはゆうきがいた、なにやら真剣な顔をしている
…何悩んでんだ?
「お〜い!ゆうき〜!」
とりあえず声をかけてみた
『っと…ふぇ?』
どうやら私に気付いていなかったみてーだ
『え、と、みさおさん、どうかしたんですか?』
「購買に食うもん買いに来たんだ、ここの焼きそばパンすげーんだぞ?」
…そうだ!
ゆうきなら分かるかもしれない、ロボだし!
という根拠のない自信を持って聞いてみた
「なぁ?あやののきょーどーにんって知ってるか?」
『きょう…どう…?』
あれ?…間違えた?
「間違えた!どうきょうにんだ!」
『どうきょう?…同郷…ですか?』
また間違えちった…あーなんだっけ?…え〜と…
「…思い出した!…あれだよ、ほら!一緒に暮らすヤツ!」
『同居人ですか?』
「そうそう、それそれ!」
『それがいったい…』
ゆうきは首をかしげている
「いや、なんかさ…あやのん家で新しく一緒に暮らす人がいるらしーんだけど、知ってるか?」
『……』
なんでかゆうきは顔を赤くしている
「…お前何か知ってんのか?」
『い、いえ!何も!』
ん?…こいつの…ゆうきの赤面顔って―
「…けっこうかわいいな」
『ふぇ?』
「いや…お前の赤面顔ってかわいいなって」
『あ、や、、え、と…あの…その…』
ゆうきはおろおろしている
…少し兄貴の言ってたことが分かった気がした
うん、これからももっとこの顔をさせてやろっと
54 :
kt:2008/04/13(日) 18:11:26 ID:QSD4cTJK
ありがとうございました
なんだかみさおが…すごく…バカっぽいです…
次はみゆきさん視点です
「みなみちゃん」やら「高良家のパーティ」やらは一応今後の展開のものです
それにしても3-283氏の『おさんぽ日和』とタイトルとか若干被ってて吹いたw
>>45 すごい!なんというか、佳境パート1!
最初の決着、まずはみとどけましょうぞ!
でもかがみがとっても心配だよぉ〜(〒ω〒.)
>>54 いいなあ、どんどん広がる世界観と人間関係
そして拍車がかかるみさおのヴァカさ加減www
新たなえす☆えふ展開にこれまた目が離せないw
先を心待ちにするぜよ!
準備されている方がいなければ、投下をいたします。
「彼女の玩具」
・ゆたか×かがみ
注意事項
・エロあり
・SM要素あり
・ダーク
・ゆーちゃん注意
「ゆたかちゃん。話があるの」
「何ですか。かがみ先輩…… 」
放課後、私は1年D組に行って、2年下の後輩に声をかけた。
「あなたは分かっていると思うけれど、こなたのことよ」
ゆたかちゃんは小さなため息をつきながら答えた。
「いいですけど。明日、こなたお姉ちゃんの家に来て貰えませんか? 」
「こなたの家? 」
「落ち着いて、ゆっくり話をしたいですから」
ゆたかちゃんの提案に意表を突かれたけれども、断る理由も無い。
「分かったわ」
私は、こなたより更に小柄な少女に対して頷いた。
土曜日の午後1時、春のうららかな日差しが降り注ぐ中、私は泉家のチャイムを鳴らす。
すぐに、ゆたかちゃんがドアを開けてくれる。
「こんにちは。かがみ先輩」
「おじゃまします」
廊下に上がりながら、私は尋ねた。
「今日は、こなたはいないのね」
「ええ。こなたお姉ちゃんはバイトですし、おじさんは出版社に行っていますから」
「そう…… 」
私にとっても、ゆたかちゃんとサシで話したかったから、好都合ではあった。
こなたの部屋を通り過ぎて、ゆたかちゃんの部屋に入る。
目に付いたのは、しっぽだけしか付いていない奇妙な猫のぬいぐるみくらいで、特に変わったところはない。
ゆたかちゃんが暫くすると、紅茶とシュークリームを持って戻ってきた。
「どうぞ。かがみ先輩」
「あ、ありがとう」
ティータイムは静かに始まる。
穏やかな日差しが窓から差し込んでいて、微かな小鳥のさえずりが耳朶に届いていた。
「ところでお話って何ですか?」
暫く経ってから、ティーカップから唇を離した、ゆたかちゃんが尋ねてくる。
「そうね…… 」
私は、本題に入ることにした。
「ゆたかちゃん…… あなたと、こなたの関係について訊きたいの」
「私と、こなたお姉ちゃん?」
ゆかたちゃんは、小さく首を傾げている。
「単刀直入に訊くけど、こなたと付き合っているの? 」
ゆたかちゃんの顔が一瞬だけ固まる。
「何故、それをかがみ先輩に教えなくてはいけないのですか? 」
ゆたかちゃんは警戒するような表情になっている。
「そんなの決まっているじゃない。私が、こなたの事が好きだからよ」
「ふうん。意外ですね」
ゆたかちゃんは微かに笑った。
「かがみ先輩って、典型的なツンデレですから、あからさまな告白はしないと思っていましたけれど」
「ツンデレって…… 」
ゆたかちゃんが、こなたによって特殊な色に染められていることを、改めて思い知らされる。
「それで、こなたお姉ちゃんと付き合いたい訳ですか? 」
「当たり前よ」
私は、鼻を鳴らした。
こなたとは、高校に入ってからの友達だったけれど、彼女に会う度にどんどん好きになっていった。
こなたの笑顔、こなたの私を呼ぶ声、こなたがみせる仕草――
どれもたまらなく愛しくて、こなた無しの生活は、とても考えられなくなっていた。
私は泉こなたに恋していた。
「しかし、かがみ先輩が熱愛する『泉こなた』には、とんでもないお邪魔虫がいたのですね」
「先回りして言わないで! 」
私は声を荒げた。
こなたの顔をみる度に、激しい動揺を抑えきれなくなった頃、私は、こなたが妹のように可愛がっている、
小早川ゆたかちゃんを、強く意識するようになっていた。
ゆたかちゃんは、外見はとても可愛らしい。
第一印象としては、控え目で、素直で、純粋そうに見えた。
しかも、生まれつきなのかは知らないが病弱であり、庇護欲をそそられるには打ってつけの存在だった。
こなたがゆたかちゃんに向ける、限りなく優しい視線を投げかけたり、『ゆーちゃん』という
親しげな呼び名を耳にする度に、私は彼女に対する激しい嫉妬を懸命に抑えなくてはならなかった。
「それで、私は何をすれば良いのですか? 」
不思議な形をしたぬいぐるみを抱えながら、ゆたかちゃんは静かに尋ねた。
「こなたと別れて欲しいのよ」
「つまり、かがみ先輩は、私とこなたお姉ちゃんは恋人として、既に付き合っていると
考えているのですね? 」
「当たり前じゃない…… 」
こなたからは、ゆたかちゃんを恋人としている話を、明確に聞いている訳ではなかったけれど、
ゆたかちゃんに対する態度からみて、恋人以外の何物でもないと確信していた。
「ふうん」
ゆたかちゃんは暫く考えた後、興味深そうな表情を見せながら言った。
「かがみ先輩が、本当にこなたお姉ちゃんを想っているのなら、いいですよ」
「どういうことかしら? 」
「かがみ先輩は、エッチしたことあります? 」
「なっ! 」
ゆたかちゃんの口からとんでもない言葉が飛び出して、私の顔は火照るように熱くなる。
「そんなことある訳ないじゃない! 」
「ふふ。あまり興奮しないでくださいね」
ゆたかちゃんは、余裕のある態度をみせながら続けた。
「かがみ先輩の、こなたお姉ちゃんへの愛が本物ならば、お姉ちゃん以外の人に触られても『感じない』はずです」
「何がいいたいの? 」
私の質問に、ゆたかちゃんは間髪入れずに答える。
「かがみ先輩。私とエッチしてください」
「どうしてゆたかちゃんと、そんなコトをしなければいけないのよ! 」
私は、思わず怒鳴っていた。
「ですから落ち着いてください。先輩は私より年上なのですから、冷静に話ができるはずです」
「う…… 」
痛いところを突かれてしまい、恥ずかしくて顔が赤くなる。
「もし私とエッチをしても感じない、つまり、イかなければ、
かがみ先輩がこなたお姉ちゃんに向ける『愛』は本物だと思います。
その場合、私は静かに身をひきます。しかし―― 」
ゆたかちゃんは、一呼吸してから言葉を続ける。
「しかし、エッチの最中にイッてしまえば、こなたお姉ちゃんへの『愛』は偽者です。
その場合は、ペナルティとして私の玩具になっていただきます」
「な、何、バカなことを言っているのよ! 」
私は立ち上がって叫んだ。ゆたかちゃんの提案は尋常ではない。
はっきり言ってとても正気とは思えない。
「ですから、興奮しないでください。まともに話ができませんから」
ゆたかちゃんは、ため息をつきながら肩を竦めてみせる。
私は、怒りを十分に発散することができないまま、再び座り直すしかなかった。
「私の提示した条件を受け入れるか否かは、かがみ先輩の自由です。
もしどうしても嫌ということでしたら、そのままお帰りください。
もちろんその場合は、私がこなたお姉ちゃんから『手をひく』ということはありません」
「うっ…… 」
私は言葉につまった。
ゆたかちゃんの提案は滅茶苦茶だ。
しかし、このままでは、こなたを手に入れることはできそうにもない。
ヤケクソ気味になっていた私は、ゆたかちゃんに向けて言い放った。
「いいじゃないの。受けてあげるわ、ゆたかちゃん」
「素敵です。かがみ先輩」
「余裕綽々なのも今のうちね。負けて泣いても、こなたは返してあげないから」
「楽しみです…… ええ、とっても」
ゆたかちゃんは、あどけない顔立ちに妖艶ともいえる表情を垣間見せた。
「かがみ先輩。服を脱いだ方がいいですよ。かなり濡れますから」
「わ、わかっているわよ」
私は、上着とシャツを脱ぎ、躊躇い泣くスカートを脱ぐ。
白いブラと、下着だけになって、ベッドに寝転ぶ。
「さあ、どうぞ。ゆたかちゃん」
私は仰向けになった姿勢で、ゆたかちゃんを睨み付けた。
「慌てないでくださいね」
ゆたかちゃんも、パーカーを脱ぎ、スカートを下ろした。
幼児体形を他者の視線に晒しながら、私の隣にねそべり、ゆっくりと顔を近づけてくる。
「先輩。キス、しましょうね」
私は身体が震えてしまう。
こなたでない子と、口付けするのは勿論嫌だ。
しかし、今日ばかりは仕方がない。
キスをせずにエッチをするなんてありえないから。
「んっ…… 」
ゆたかちゃんの唇が触れる。とても柔らかくて、ぷにぷにとしている。
「ん、んくっ」
私は小さく喉を鳴らした。間髪入れずに舌がねじ込まれてくる。
「ん…… んんっ」
ゆたかちゃんの唾液が、私の口腔内に流れてくる。
同時に、背中に手が回され、ぎゅっと抱きしめられる。
「んんっ、んあっ…… 」
ゆたかちゃんの舌が動いて、頬の裏を丁寧に舐め取ってくる。
彼女の口付けはとても気持ち良い。
私とのキスを続けながら、ゆたかちゃんは密着しようと、両足を絡めてくる。
ゆたかちゃんの体温が太腿に伝わってきて、身体の奥が熱くなった。
「ぷはっ」
暫く続いたディープキスがようやく終わって、ゆたかちゃんの唇が離れる。
私は、大きく息を吐き出した。
「かがみ先輩のキスって、とても気持ちがいいですね」
鈴の鳴るような可憐な声で囁かれると、正直、悪い気分はしないと思ったところで、私は我に返った。
ゆたかちゃんとのえっちで感じてはいけないのだ。
「騙されないわよ。ゆたかちゃん」
私は、ゆたかちゃんの瞳をまっすぐにみながら強く言った。
「先輩って、本当に可愛いです」
しかし、ゆたかちゃんは小さく笑って、私を抱きしめてくる。
「莫迦にしないで」
「クスッ」
ゆたかちゃんは、私の身体に唇を這わせていく。
首筋から鎖骨、そして乳房の上に、唾液の跡をつける。
そして、ゆたかちゃんの指が私の背中に回されて、ブラのホックを外す。
私の乳房とピンク色をした乳首は、外気に晒された。
「んっ」
ゆたかちゃんの唇が、私の乳首に到達すると同時に、痺れるような快感に襲われる。
(やばっ)
アソコからとろりとした蜜が湧き出て溢れてしまう。
下腹部が急にむず痒くなって、私は太ももを何度も擦り合わせる。
「くちゅ、ちゅばっ…… くちゅ」
ゆたかちゃんの舌が執拗に這って、私の乳首を責めはじめる。
「ひゃ、ああ、あん…… んっ、んあ」
私は、小刻みに身体を震わせながら、絶え間なく襲ってくるじんわりとした快感に耐える。
しかし――
「ひゃうっ! 」
ゆたかちゃんに固くなった乳首を軽く噛まれて、私は裏返った声をあげた。
「嫌、いや、やめて、ゆたかちゃん!」
私は、身体を捩って苦痛から逃れようとするけれど、巧みに抑え込まれてしまって逃げることができない。
「いや、んあ、駄目、だめえ」
ぞくぞくする。本気で危ない。ゆたかちゃんの性技はとても巧みだ。
「あっ、あふう」
ゆたかちゃんの手が伸びて、既に愛液で濡れているショーツを脱がしてしまった。
乳首だけでさえこんなに刺激が強いのに、もっと敏感なアソコまで愛撫されたらと思うと背筋が凍りつく。
ど、どうしよう?
このままでは本当にイッてしまう。
ゆたかちゃんの愛撫は、自分でオナニーする時より、何十倍も気持ちいい。
「ふふ。かがみ先輩、大分いい具合になってきましたね」
「う、うるさい」
私は、含み笑いをしているゆたかちゃんから視線を逸らした。
「先輩。我慢は身体に良くないですよ」
ゆたかちゃんは、舌で乳首をいたぶりながら、指先で私の大切な場所を揉みしだいていく。
「ひゃ、いや、いやああ」
私は、何度も身体をくねらせて、快感から逃れようとするけれど全く効果がない。
「先輩。お豆さん膨らんでいますよ」
乳首から唇を離して、私の太ももの間に割り込むように覗いたゆたかちゃんが、イジワルそうに囁いた。
「ば、バカ、変なところ見ないでよ」
大切な部分を凝視されるのがあまりにも恥ずかしく、頭が沸騰してしまう。
「それに、トロトロですねし。どれだけ感じたら、こんなにねばねばのお汁が、たくさん出るのですか? 」
ゆたかちゃんの言葉責めはイヤらしい。
もしかして、ゆたかちゃんは、もうこなたとえっちをしているのだろうか。
「聞きたいですか? かがみ先輩」
ゆたかちゃんは、私のお豆をいじりながら、堕天使のような表情で囁いた。
「嫌、それは言わないで…… 」
もしゆたかちゃんが、こなたとあんなことや、こんなことをしているとしたら…… なんて
考えるのだけで怖気がする。絶対に聞きたくない。
「ふふ。私は構いませんが…… ところで、先輩のアソコのお汁はとても美味しそうですね」
あどけない顔をしながら、とんでもなく卑猥なコトを言って、ゆたかちゃんは私の股間にむしゃぶりついた。
「いや、ダメ…… そんなところ…… 舐めないでよ」
私は腰を振って逃れようとするが、全くと言っていい程力が入らない。
ただよがり狂っているようにしか見えない。
「かがみ先輩のあそこ、凄く綺麗です」
「んあ、ひゃあ、言わないで」
クリを舌先で突付かれた私は、甘ったるい悲鳴をあげる。
やだ、嫌だ。本当にイッてしまう。
「だめ、だめ、イカセないで…… お願いだから、イキたくない」
私は瞼に涙をためながら、長い髪を振り乱して哀願する。
「かがみ先輩。すぐに逆のコトをお願いするようになりますから」
しかし、ゆたかちゃんは、冷ややかな表情をみせるだけだ。
「くちゅ、ちゅば、くぅ…… くちゅっ」
ゆたかちゃんがアソコのひだを丹念に舐め取っているイヤラシイ音が、耳に届いてしまう。
「はあ、だめ、や、んはっ…… ダメ、やだ、嫌だよっ」
ゆたかちゃんの愛撫はとても荒々しく、私はとても耐えられそうになかった。
でも、絶頂を迎えてしまったら、こなたをあきらめなくてはいけない。
絶対に、絶対に嫌だ!
「ちゅ…… ちゅぶっ、ちゅば……く、くぅ」
「はぁ、はあっ…… ひゃ、ひゃああああ」
ゆたかちゃんの舌が、膣の奥に差し込まれる。
「やだ、そんなとこ…… んああああ、駄目、だめええっ」
私はテールを振り回し、双眸から流した涙を頬につたわせながら叫ぶ。
「先輩、あきらめた方がいいと思いますよ」
「や、嫌。絶対に、こなたは渡さないっ」
私は、玉のような汗を全身に噴き出しながらも、いやらしく責めまくる、ゆたかちゃんに向かって叫んだ。
「じゃあ、イカないんですね」
ゆたかちゃんの舌が、わたしの、クリを押しつぶす。
「そうよ…… んあ…… 私が、へたな、ゆたかちゃん、あぅ、なんかに…… くぅ、感じること……
なんか、んあっ、ぜんぜん、ないっ」
両脚をバタバタとさせながら、よがり狂っている私の精一杯な強がりなんて、
ゆたかちゃんが見抜けないはずもない。しかし――
「ふうん。下手ですか…… 」
「んん、そ、そうよ。んあ、くぅん、よ、よわすぎて、ああぅ…… か、感じないんだから…… ひゃあああ」
もう限界に近いけれども、私は、必死で虚勢を張る。
「ごめんなさい。かがみ先輩」
ゆたかちゃんは、薄気味悪いほど素直に謝って、私のアソコから唇を離してしまう。
そして、ベッドから立ち上がって、机の引き出しから袋を取り出して、すぐに戻ってくる。
「ゆたかちゃん? 」
「かがみ先輩の期待には、応えなくてはいけませんから」
ゆたかちゃんは作った笑顔をみせて、机から取り出してきた、端にコードを付けた
桃色の卵型をした玩具を、私の目の前にかざした。
「ゆ、ゆたか…… ちゃん。あなた、何をっ」
私はひどく動揺した。
「ただのピンクローターです。私のクラスでは、オナニー用として使っている子は何人もいますよ」
とんでもないことを、ごくあっさりと言うゆたかちゃんがとても怖い。
「や、嫌。絶対に、やだっ」
私は、ゆたかちゃんの持つローターから逃れようと、じりじりとあとずさるが、
彼女の執拗な愛撫によって、さんざんによがりまくったせいで、体力のほとんどは失われており、
ろくな抵抗ができない。
ゆたかちゃんは、私の手をバンザイさせるように頭の上に持っていって、、
両手首を一緒にして紐で縛ってしまう。更に、ひもを伸ばしてベッドの柱にくくりつける。
「な、何するのよ。ゆたかちゃん! 」
「かがみ先輩が暴れると、抑えるのが大変ですから、縛らせていただきますね」
ゆたかちゃんが額の汗をぬぐいながら言うと、私の足首も別々に縛って、ベッドの逆側の柱に結びつける。
こなたの部屋に積まれていた18禁ゲームの、卑猥な格好をした女の子と一緒の体勢だ。
「何するのよ! この変態! 」
羞恥に我を忘れて、酷い言葉を口に出してしまい、愕然となる。
「かがみ先輩の罵声は最高ですね」
ゆたかちゃんは、うっとりとした表情を浮かべたまま、袋からローターを取り出した。
私の眼前まで持ってきて、スイッチをONにすると、プラスチック製の玩具はぷるぷると震えた。
「可愛い動きでしょう。かがみ先輩」
「どこがっ」
脅える私を愉悦の表情でながめながら、ゆたかちゃんは一旦、ローターのスイッチを切った。
そして、微笑みを浮かべたまま、大人のオモチャを私のアソコへあてがう。
「嫌、やだ、そんなの、やめて、お願いだから」
必死に懇願するけれども、ゆたかちゃんは私の言葉を聞いてくれない。
「やめてっ」
ゆたかちゃんの手によって、ローターが私の膣の中に埋め込まれる。股間から伸びた白いコードが、
とてもイヤラシクみえてしまう。
「先輩はこんな玩具でイクことなんてありませんよね」
コードの先にある、スイッチを弄びながら、ゆたかちゃんは囁いた。
「あ、あたり前でしょ」
恐怖で震える身体を懸命に抑えながら、精一杯の虚勢を張る。
しかし、こんな卑劣な道具で弄ばれたら、私の身体がどうなってしまうのか分からない。
「いつまで強気でいられるか、とても楽しみです」
ゆたかちゃんは楽しそうに言ってから、ちらりと机の上に置かれた時計を見た。そして――
「そろそろスイッチをいれますね。先輩」
ゆたかちゃんはスイッチを、OFFからONに変えた。
「や、やだ、ひゃあう、あああ、ああああああうっ」
人を絶頂に導かせる為だけに作られた玩具の、無情な機械の振動が、
アソコにダイレクトにつたわり、私は拘束された身体を激しくよじらせる。
「やだ、あああっ、んあああ、ひゃあああ」
何度もよがり声をあげながら、必死でローターから逃れようと暴れるけれど、
膣に埋め込まれた卵型をした性玩具は外に出てくれない。
「あう、強すぎ、お願い、やめ、やめてっ」
ゆたかちゃんの愛撫が、優しく思えてしまうくらい、強烈な刺激に耐えることができずに、
あっという間に、絶頂のすぐ傍にまで到達してしまう。
「いっちゃう。やだ、わたし、いっちゃう。あっ、ああああ」
私は頂きを迎えようと、激しい嬌声をあげた時――
唐突にローターが動きを止める。
「あれ…… どうして? 」
私は、絶頂へ達する寸前でとまったローターと、操り主の笑顔を交互に見る。
熱くなった身体が少しずつ冷えてくる。
呆然となっていた私が、ようやく安堵のため息を吐き出した時、ローターが再び蠢動する。
「や、あ、ああああっ、やだっ」
まさか。
「ふふ…… 先輩、気がつきました? 」
「こ、このっ、悪魔! 」
天使のように可憐な少女に、これほどの罵声を浴びせたのは私が初めてだと思う。
しかし、ゆたかちゃん責めは本当にえげつない。
「あっ、あくぅ、やだ、いく、もう、あああっ、だめ」
一度退いた悦楽の波は、軽い刺激によってすぐに戻ってきて、熱く火照った身体は
欲情の噴き出し口を求めて激しく跳ねる。
「もう、駄目っ、やだ、イッチャウ、いっちゃうよう」
私は切なそうな瞳を、ゆたかちゃんに向ける。しかし――
「あっ…… 」
絶頂の寸前でまたもやローターが静止する。
そして、身体の熱がほんの少し退いたところで、狙ったようにローターが動く。
身体が冷めることもないし、絶頂に達することもない。
永遠に続く生殺しだ。
地獄のような責めを、十回以上繰り返された時には、私はひたすらイクことしか考えられなくなっていた。
「お願い、イかせて、お願いですから。ゆたかちゃん。お願いっ」
両手両足を紐で縛られて、股間にはローターを埋め込まれてよがり狂いながら、私は必死の形相で叫ぶ。
今まで、ゆたかちゃんは普段と変わらない笑顔を浮かべたまま、私の醜態を見物していたけれど、
私が精神的に堕ちたことを悟ったのか、ようやく声をかけてくる。
「かがみ先輩。本当にいきたいですか? 」
汗と愛液で白いシーツをぐっしょりと濡らしながら、私は泣き叫ぶ。
「いきたい。おねがい…… 私、いきたいっ」
「こなたお姉ちゃんの事、あきらめますか? 」
私は一瞬、言葉につまる。
(こなた…… 私…… )
「駄目ですか。残念ですね…… 」
ローターが無情にも止まる。
「やだあ。とめないで。わかったわ。あきらめるから。こなたはゆたかちゃんのものだから」
「かがみ先輩は私のおもちゃになるんですよ」
「オモチャになるから、何でもゆたかちゃんの言うとおりにするから、イカセテっ、お願いっ」
なりふり変わらず、愛撫を乞う私に、憐れむような表情を一瞬だけひらめかせて、
ゆたかちゃんはローターを私の膣から引き抜いてしまう。同時に両手、両足の拘束も解かれる。
「えっ…… 」
イカせて欲しいって言ったのに。
「かがみ先輩、大好きですよ」
涙と唾液でぐしょぐしょになった私の顔を、舌を使って丁寧に舐めとってからキスをする。
「んっ、んんっ、くちゅ、あぅ」
濃厚な口付けをしながら、ゆたかちゃんの手が伸びて、私のアソコを愛撫し始める。
もっと強く、お願い……
私は腰を振ってアピールする。
「んくぅ、ちゅば、あぅ、んんくぅ…… 」
ゆたかちゃんは気づいてくれたようで、秘所への愛撫は少しずつ激しさを増していく。
「くちゅっ、くちゃ、ぐちゃ」
ゆたかちゃんの指先が、私のアソコを滅茶苦茶にかき回す音が卑猥に響く。
「あっ、んああ、あぅ、はうん、ひゃああっ」
彼女の指が激しく振動する度に、部屋中に響き渡るような嬌声をあげる。
「もう…… ダメ、ゆ、ゆたかちゃん、わ、私、いっちゃうよお」
「先輩。いっちゃえ! 」
「わ、私、イクノ、いっちゃうの、だから、もっと強く。強くしてっ」
必死の形相で抱きつきながら、私は、腰を激しく振ってよがる。
ゆたかちゃんの指先の動きは、更に激しさを増していく。
「くちゅ、ちゅば、ぐちゅ、ぐちゅ…… 」
「んああ、んあっ、私、あああっ…… んあああああっ」
激しく髪を振り乱しながら、大声で叫んで、頂に向かってひたすら駆け上がる。
「やだ、あ、ああっ、んんああっ、んあああああ、ああああああ! 」
全てを吐き出すような嬌声をあげて、私はゆたかちゃんの身体を抱きしめながら盛大に達した。
一週間後の夜。
私は、ゆたかちゃんの指示通りの格好で、こなたの前に姿をあらわした。
「え…… かがみ? 」
こなたの顔が驚きのあまり歪んでいる。
私は小学生用のスクール水着を限界まで引き伸ばして着ており、乳房の半ばは、外にはみ出てしまっている。
四つん這いの格好になっている私の首輪から伸びた太いリードは、ご主人様となった
ゆたかちゃんにしっかりと握られていた。
(終)
以上です。
読んでくれた方、ありがとです。
ゆーちゃんとかがみの組み合わせは、個人的には、結構、つぼに嵌っています。
もっとも、こなたを巡る争いがあるとすれば、かがみは一歩も退かないとは思いますが。
では。
黒い…黒いよゆーちゃん
リアルタイムGJ!
黒ゆーちゃんはエロパロが生んだSっ子の極みダナー
>>71 黒いゆーちゃんも、相変わらずツンデレなかがみも、ダイレクトなエロ描写も最高ッス!!
>>45 続きktkr
次回辺りまた新たな動きがあるのか?
期待しつつGJ
>>45 GJ !!
あんたの作品大好きだ
続きも楽しみに待ってる !
>>71 うむ、ではその「こなたを巡って一歩も引き下がらずに争うかがみ」とやらのSSを全裸待機して
楽しみにしておくw
77 :
42-519:2008/04/13(日) 22:13:49 ID:Y8+NtzAr
前スレで投稿しようと思ったものを投稿しますね。
42-519の続きというか、同じ時間の流れです。
2レス消費、愛(相)変わらず起伏のない、まったりしたこなた×かがみです。
あれはあれ、これはこれなの。
私の恋人。好きな人、夢にも出てきた人。それは、こなた。
調子に乗って玉砕しようとした日から、私とこなたの恋人になった。
「…ん」
こなたの部屋。私は学校帰りに、こなたの家によっていった。こなたは帰るなり「徹夜あけなのだよ〜」といって、布団に入った。
私一人、こうしている。
「…んふぅ、かがみん、ゲームでえ、Dカップだとお?」
「…何を言っているんだこいつは」
「私に半分よこせ〜〜〜この爆乳っ」
殴っても、いいだろうか。
でも、あげられるものなら、あげてみたいと思う。私自身は胸なんてどうでもいいし、こなたが喜ぶなら――そんな方法があれば、だけど。
それに、胸の大きいこなたを想像すると、わたしは微笑んでしまう。かわいいというか、なんていうか。
こうして一人でいるのは少し寂しい気がしたけど、こなたの寝顔はかわいい。よく整えられた前髪がこなたのまつげにかかる。寝相はおせじにもいいとはいえないし、寝言もつぶやいているけど、私はそんなこなたが好き。
「もう、何しているんだか」と、悪態をついて苦笑する。
――そんな時間が幸せなのだ。
「寝顔、かわいいな」
微笑ながら、こなたの小さい肢体を上から下まで眺めてみる。布団がみだれていて、制服の下まで見えていた。スカートからは太ももが見える。それに、こうしたことを思うのは恥ずかしいのだけど、白いパンツが見えていた。
「キス、しちゃうよ」
そう呟いてみる。反応はない。本当に寝ているのかな。
どきどきと、はやる心臓は、行為への抑止とはならなかった。私はこなたのスースーっと定期的な寝息を聞き、息を呑む。ゆっくりと私は顔を落とし、こなたに顔を近づけた。
ツインテールの片方が、私の目にかかった。うっとうしく、丁寧にそれをどける。こなたの顔は、ぼやけるくらいまでに近かった。
――こなたの味。背徳やら後悔やらで満たされた、血と血の交わり。
非生産的な愛の証が、今はたまらなく気持ちよかった。
・
・
・
「ふわあああ…ん、なんでかがみがいるの?―――ああ、私が呼んだんだっけ。ごめんねかがみ。寝ちゃって」
「ううん、いいよ。こなたの寝顔、堪能したし」
「む〜、なんか損した気分。私にも寝顔見せろ〜」
「まあ、私の部屋にきて、私が寝ている間なら」
「よ〜し、かがみん寝顔計画を発動する! …つかさにも協力してもらおうっと」
「なによ、それ――それとそんなことしてつかさに知られたらどうするのよ」
「それはそれでいいんじゃないの?」
いいわけあるか、と私は赤くなりながら否定する。
「どうして?」
「普通、嫌でしょ。私達、女の子同士だよ。そりゃあ、私が望んだことだけど…」
こなたはベッドからちょこんと座りなおして、笑いながら言った。
「つかさって、かがみの妹でしょ? かがみが幸せなら、つかさはきっと喜ぶよ?
私から見ても、二人って本当に仲がいいと思うし。それくらいは、信用してあげたら?」
「そっかな」
私の妹。小さいころから、いつも一緒にいた可愛い妹。私が必死にお姉ちゃんぶっていたのもつかさのためだし、つかさに慕われることは嬉しい。
確かに、こなたの言うとおりかもしれない。
「そだね」
つかさは、私とこなたの関係をしってもきっと今までどおりでいてくれると思う。
家族に親友という言葉はおかしいけれども、つかさとはそれ以上の関係なんだと思う。こなた、とも。
「趣味と友情は別なのだよ。かがみはかがみ。つかさだって、わかってくれるよ」
「…うん」
「それとさ、かがみ」
こなたは私の方を向いて、小悪魔的な笑顔を見せる。私はなによ、と身構えた。
「かがみって結構積極的なんだね。寝ている私に、キスするなんて。かがみのはあはあ、と緊張で喘ぐ音、私までドキドキものだったよ。ばれたら、さすがに後が怖いし」
「――なっ、おまっ、こなた、あんた起きていたのか!」
狸寝入り? なんて失敗を私はしてしまったんだ。こなたのことだから、ありえなくいことではないのに。
「いや〜〜想像していた人も多いんじゃないかな〜?」
「じゃあなんで、答えなかったのよ」
こなたを正視することができない私は、そっぽを向きながら答えた。やっぱりこなたはいじわるだ。最低の、私の一番好きな人だ。
「いや、空気ぐらいは読むよ私も? あの場面で起きてたら、それこそKYじゃない?――いまどきの女子高校生風にしてみました」
「…馬鹿」
「それとね、かがみん」
指で体を一歩前に動かす。よいしょと小さい声を漏らした。私とこなたの位置、それは50センチもなかった。恥ずかしさを我慢して、こなたに向き合う。それだけの対価が、この距離にはあった。
「嫌じゃないから、拒まなかったんだよ」
…これだから、こなたは。
「あー、この返しはツンデレかがみの専売特権かな? よし私風に――嬉しかったよ、かがみ。ギャルゲーだったら即エンディングだよ」
――だから私は、こなたのことが好きなんだ。
80 :
42-519:2008/04/13(日) 22:21:12 ID:Y8+NtzAr
起伏のない話ですが、以上です。
少しだけ、仲が進展しました。
映画行って飲んで帰ってきたら何このクライマックス。
野球に鼻血みゆきにメドレーリレーにとどめの黒ゆーちゃん、各人各様ぐっじょぶでした。
>>80 うっわ、間一髪。危ないところで失礼。
なんて素敵な殺し文句、何よりの酔い覚ましになりました。ぐっじょぶ。
>>80 GJダゼ!でも・・・・
学校でニヤニヤしてしまったではないか!
どーしてくれる
誰もいないようでしたら、三分後に投下したいと思います。
85 :
36-273:2008/04/14(月) 11:08:19 ID:gdvxIZTd
では、投下いたします。
・こなた&かがみ
・一話完結
・非エロ
86 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:08:59 ID:gdvxIZTd
「突然だけど、今日は、みんなにお土産があってねー」
三年生になってから、間もない、4月14日。
私、柊かがみは、いつもどおり、親友のこなた、つかさ、みゆきが在籍する三年B組で、前述した三人とお昼を食べるところだった。
さっきのセリフを言ったのは、泉こなた。私たちが、お弁当を食べ始めようとした矢先のことである。
「お土産? あんた、どっか行ってたわけ?」
誰も質問しないので、仕方なく、質問する。
すると、こなたは、ニヤニヤしながら、
「いやー、昨日、伊勢丹に行ってねー。そこで、買ってきたわけですよ」
といって、こなたは、鞄から風呂敷を出して、その風呂敷を開けた。
その中に入っていたのは、みかん。…いや、違う。オレンジだ。…何で、伊勢丹でオレンジを買う必要があるんだ?
「何で、オレンジなわけよ」
こなたがオレンジを配付し終わってから、私は聞いた。
こなたは、得意げな顔で、
「今日、4月14日は、オレンジデーらしいよ。伊勢丹でそのフェアをやっていたからさ」
「オレンジデー? 知ってた?」
私は、つかさとみゆきの顔を見ながら言った。二人とも、首をかしげて、
「えーと、私は知らないかな?」
「すみません、私も存じ上げませんね」
誰も知らない。
オレンジデーなんて本当にあるのか? こいつのことだから、何か企んで、私たちを謀ろうとしている可能性も否めない。
「あー、嘘だって思ってるね?」
何で分かんのよ。
「目を見れば分かるよー。だって、私とかがみは、ずーっと一緒だったじゃん」
薄い胸を精一杯に張って、こなたは言った。
それはいいが、後半のセリフは誤解を生みかねないから、やめろっての。
「目で通じ合えるなんて、凄いですね。お二人が、固い絆で結ばれている証拠です。ふふ、うらやましいですね」
待て、待て、みゆき。何故、そういうことを言う。
「わ〜。凄いね〜」
こらこら。つかさまで何を言うか。
「まあまあ、かがみんも、満更でもないでしょ?」
「満更だ」
「ありゃりゃ」
妙に芝居がかった仕草で、こなたは頭に手をやる。
何だか、今日は、妙に調子が狂わされる。気に食わん。
「で、結局、オレンジデーって、何の日なのよ?」
私は、話を戻そうとするが、
「……さあ」
こなたに首をひねられながら、会話が終了されてしまった。一体、何だというのよ…。
87 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:09:27 ID:gdvxIZTd
「一体、何がしたいのよ」
私がそう聞くと、こなたは顔をニヤニヤさせて、
「ふっふっふ。これは、長い前フリに過ぎんのだよ」
「また、何かのネタか?」
私がそう聞くと、こなたは、顔をニヤニヤさせるだけで、何も言わなかった。
全く、こなたの考えが読めない。一体、何がしたいのよ?
謎は解けぬまま、私たちは、お弁当を食べ始め、いつもの日常が再開された。何となく、腑に落ちないけど、すぐに忘れることにした。こなたの気まぐれなんて、今に始まったことではない。
しかし、後で、このこなたのセリフが、本当であったことが証明される。そう、これは長い前フリに過ぎなかったのだ。
―――
「おーい、かがみーん。帰ろー!」
放課後、鞄に荷物を詰めていると、聞き覚えのある声がした。相手なんて決まっている。こなただ。
声のしたほうを向くと、案の定、こなたが手をぶんぶんと振って、三年C組の前に立っていた。
「だから、かがみんって呼ぶなっつうの…」
そんな事を独りごちてから、こなたの方へ向かう。
かがみんなんて呼ばれ始めたのはいつ頃だろうか。思い出せないほど、随分前のことか。かがみ様なんて言われたこともあったっけ。どちらにせよ、言うのをやめろと言ったが、両方とも時折、使われる。
だから、私は今更、やめろなどといわないことにした。こいつはそういう人間だ。それが、結論である。
そんな事を考えながら、廊下に出ると、私はあることに気付いた。
「…あれ? つかさとみゆきは?」
当然、いるだろうと思っていた人物が、こなたの後ろにいなかったのだ。
こなたは、頭をポリポリと掻き、
「それが、二人とも、用事があるらしくてねえ…。先に帰っちゃった」
「はあ?」
私は不審に思った。まあ、みゆきは、これまでも用事があるといって、先に帰ったり、学校に残ったりして、一緒に帰れないことは多々あった。それは、学級委員長だったりするわけだから仕方ない。無理強いするわけにもいかないしね。
だけど、つかさは、私の妹であり、ほとんどの行動を共にしている。当然、互いの用事なども、ほとんどを把握している。だが、今日、つかさに早々と帰るべき用はないはずだった。
それに、みゆきだって、一緒に帰れない日は、事前にその旨を告げていた。でも、今日はそれが無い。あのみゆきの性格からして、そんなことありえない。
何かおかしい―――。疑惑が私の頭をもたげてきた。そうだ、そもそも、昼から何かがおかしい。
何の脈絡もなく、渡されたオレンジ。謎の記念日、オレンジデー。そして、つかさとみゆきの早帰り。導き出される結論はただ一つだ。
88 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:09:58 ID:gdvxIZTd
「こなた」
「んん?」
相変わらず、能天気そうな顔で返してくる。まあ、そんなのはいいとして。
「何を企んでいるのよ」
「別に企んでないよ?」
即答か。
「私はさあ…かがみんと、帰りたいだけだよ?」
「なっ…!」
絶句した。
みるみる自分の顔が紅潮していくのが分かる。どうして、どうして、こいつは、軽々しくとこういう冗談を口に出来るのだろう。
そして、何故、冗談だと分かっていて、私は、こうして顔が赤くなってしまうのだろう。自分自身が情けない。私は、世界一の馬鹿だ。
「やだなあ。そんなに驚かなくてもいいじゃーん。本当に、かわいいなあ、かがみんは」
ニヤニヤしながら、こなたは、私の頭を撫でようと手を伸ばしてくる。
私は、とっさにその手を振り払い、
「ほ、ほら、さっさと行くわよ!」
一人でつかつかと、歩き出した。
素直に返せない私が恨めしい。しかし、こうするほか無い。そうでなければ、私の気持ちが、想いが、爆発する。そんな気がしてならなかった。
だから、これが、せめてもの抵抗だった。私が、常人である為に。
「ああー、待ってぇー、かがみーん」
えーい、その猫なで声をやめろと言いたい。
―――
89 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:10:33 ID:gdvxIZTd
私が、こなたに恋心を抱くようになったのはいつ頃だろうか。二年生の中ごろには、もうあったような気がする。
いや……これが恋心といっていいのか分からない。単なる友情の延長線上にあるだけのものかもしれない。
高校三年生とはいえ、私はまだ17年と数ヶ月しか生きていない身だ。世間一般から見れば、人生経験は、乏しいに違いない。そんな私が、友情と同性愛の違いを理解できるだろうか?
だからこそ、私は余計に苦しむのだ。この感情が友情か、恋情か、それが分からないこそ、苦しんでいる。
もし、恋情だったとしたら、どうすればいいのだろう。同性愛が、世間一般から見て、アブノーマルであることは、火を見るよりも明らかだ。だったとして、このことを墓場まで持っていく秘密に出来るだろうか。
横を歩いているこなたを、ちらりと見やる。相変わらず、眠そうな目で歩いている。こうしてみると、よくもまあ、この泉こなたという人間に、この良く分からない感情を抱いたものだと思う。
おたく、一夜漬けでしか勉強できない、自堕落…などと、欠点はいくらでも挙げられる。文字だけで見れば、友人にしたくないタイプだと思う。
しかし、実際は違う。認めたくない事実かもしれないが、私は、こいつといて、非常に楽しい。勿論、つかさとみゆきをないがしろにするつもりは無い。二人とも、こなたと同じで、かけがえの無い友人だ。…まあ、つかさは妹だけど。
だが、問題はそこではない。つかさ、みゆき、この二人と一緒にいるときとは、絶対的に違う安心感が、このこなたにはあった。決して、手放したくないような感覚だった。それが、この友情か、恋情か、良く分からない感情を形成した一因にあるのは間違いない。
いっそのこと、この心情をこなたに吐露してみるか? ……いや、出来ない。出来るはずがない。
つまらないプライドだとは思う。だが、私は、自分の秘密を話す事は、からきし苦手だった。ましてや、相手はあのこなたである。これが、こなたに「ツンデレ」といわれる所以だろうか。
もう一つ、理由がある。『ある一人の人間のそばにいると、他の人間の存在など全く問題でなくなることがある。それが恋というものである』。……これは、ドイツの小説家、ツルゲーネフの言葉だ。
この言葉の通り、こなたとの関係に一歩踏み出せば、私、こなた、つかさ、みゆき、この四人の関係にズレが生じて、軋轢するのじゃないかと、私は危惧しているのだ。あの二人なら、笑って許してくれそうな気もする。
でも、それは私の甘えに過ぎないかもしれない。完全な保証は無いのだ。
そうして考えた結果、現状維持を私は決め込んだ。何だかんだで、こうした毎日の日常が、私は楽しかった。無駄な行動を起こして、ズレを生じさせるより、この心地よい毎日を享受するほうが幸せなのだ。私は、自分にそう言い聞かせていた。
何故かと誰かに聞かれたら、私はこう答えるだろう。自分自身以上に愛するものが存在してしまったら、人は本当に傷つくから、だと。
90 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:11:27 ID:gdvxIZTd
「ねえ、かがみ」
「ん?」
今まで黙っていたこなたが、口を開いた。最初こそ、こなたは積極的に話しかけてきたが、私は、考え事に耽っていた為、生返事をすることしか出来なかった。それを察したのか、こなたは、次第に話しかけてこなくなったのだった。…私のせいよね、ごめん。
「今、話していい?」
何よ、何よ。あんたが気遣いなんて珍しいじゃない。似合わないからやめなさいよ。…なんて思ったけど、そのまま口に出すのはやめた。何となく、真剣な話のような気がしたからだ。
「…ええ、いいわよ」
「じゃあさ、オレンジデーって何の日か教えようか?」
「何だ、知らなかったんじゃないの?」
すると、こなたは、息を吸ってから、
「前言撤回、だよ」
そう言って、こなたが私に向けたのは、今までに見たことも無い顔だった。口元は笑っていたけど、目が真剣だった。思わず、私は唾をのむ。何だ、何だ、この展開は。
「2月14日のバレンタインデー、3月14日のホワイトデー、14日ってさ、恋人同士のイベントが多いよね」
こなたは、ぽつりぽつりと一言一言を、静かに話す。
「…そうね」
いかん、心臓の鼓動が早くなっている。口で平静を装うのがやっとだった。
待て、落ち着け、私。クールになるんだ。そうだ、落ち着くのよ…。相手は…相手は…こなたなのよ?
私は一体、何を期待している。何も期待すべきことなど、ないはずだ。
「バレンタインデーは、一方から一方に贈り物を贈って、ホワイトデーは贈られたほうが贈ったほうにお返しするよね」
「…その通りよ」
「じゃあ、4月14日は? 答えは、恋人同士、二人の愛を確かめ合う日なんだよ」
「……」
このとき、私はどんな顔をしていたのだろう。ともかく、呆けていた。いつものこなただったら、私の事を真っ先に茶化しただろう。
でも、茶化されることはなかった。目の前のこなたは、真剣だった。今までに見たことがない真摯な態度だった。
こなたは、歩くのをやめて、言葉を続ける。
「唐突だと思うかもしれない。だけど、聞いて。私はね、かがみと愛を確かめ合いたい。……ダメかな」
そうして向けられた、緑色の瞳は、今にも私を吸い取ってしまうかのようなきれいな瞳だった。私は…それに見惚れていた。こんなに、こなたの目は綺麗だったっけ……。
心の中で、何かが爆発したような……そんな衝撃に私はかられていた。衝撃が強すぎて、私は、動くことが出来なかった。
こなたは、答えを待っているのか、私の事をじっと見つめていた。…ああ、もう、見つめないでよ。変になりそうじゃない…。
今更、質問の意味を問うほど、私は愚かではない。三段論法を使えば、誰にだってこの質問の意味は分かる。ならば、私が答えるべき答えは、一つしかないはずだ。
でも、本当にいいのだろうか? 私は、さっきまで、こなたと結ばれることをあんなに怖がっていたじゃないか。
……いや、冷静に考えれば、愛する対象が男か女なのかなんて関係ない。女を愛してはならないと、誰が言った?
誰が誰を愛そうと、何人も、それを拒む権利など無い。そうだ、今は、つまらぬことを振り返るより、前に見えている道を進むべきなんだ。
愛することによって失うものは何もない。しかし、愛することを怖がっていたら、何も得られない。……ならば、私は愛することをはじめよう。そうだ、私は……泉こなたが好きなんだ。
91 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:12:07 ID:gdvxIZTd
「私も……確かめ合いたい」
「……かがみぃ…」
こなたは、目に涙を浮かべながら、私に抱きついてくる。……相変わらず背も胸も小さいな。…ってそうじゃない!
「ちょ、ちょっとこなた! 街中で何してんのよ!」
慌てて、私は両肩をつかんで、こなたを引き剥がす。それから、周りをきょろきょろと見回した。
い、いくらなんでも、人の目がつくところで……な、何事にも、順序というものがあるのを知らないのかしら。
「え、えー、いいじゃん、こ、これくらい。どうせ、小学生の妹がお姉ちゃんに泣きついている風にしか見えないって」
上目遣いで、私の事を見上げてきながら、こなたが言った。
くっ……。その顔は反則よ。全く、どうして、あんたは、そうやってコロコロと顔を変えられるの? そして、どうして、私の心をつかめるの? …本当にかなわない。
でも、今は、何もかもが愛おしかった。そう思うと、私は、急に、こなたを抱きしめたくなった。やりかたやハウツーなんてない。ただ愛することによってしか、愛し方なんてわからないのよ。
……その気にさせたのは、こなたなんだからね。責任なんて持たないわよ。
私は、もう一度こなたを抱きしめ、
「…ったく、都合のいいときだけは、その小ささを有効活用するのね」
更に、ギュッと抱く力を強くさせる。
こなたの体温が、ぬくもりが、肌を通して伝わってくる。私は、その喜びに酔いしれていた。愛する人と結ばれることが、こんなに素晴らしいことだったなんて知らなかった。
私は、ここが公共の場であることも忘れ、この心地よさに身を委ねた。
「んん…。かがみん、痛いよ…」
胸から顔を上げて、こなたが言う。
「あ…ご、ごめん」
私は、力を緩める。
「…いや、でもうれしいよ。だから…もう少しだけ、こうさせていて」
あー、もう、そういうセリフ言わないでよ。もう、鼻血が出ちゃうじゃない。…それは、別の作品か。
何というべきか迷っていると、こなたは無言の肯定と受け取ったのか、私に抱きつく力を強める。
さっきは、私に痛いと言ったくせに、何という意地悪なやつだろう。……でも、それが何ともこなたらしかった。
そして、それから、どれくらい、抱き合っていただろう。私は、時間の感覚が完全に麻痺していた。三十分くらい経ったようにも思えたけど、もしかしたら、五分ぐらいしか経っていなかったかもしれない。
ともかく、暫くたってから、私の方から身体を離した。何となく後ろ髪を引かれる思いだったけど、急に恥ずかしくなってきたのだ。
92 :
オレンジデー:2008/04/14(月) 11:12:29 ID:gdvxIZTd
「……もう少しいたかったかな」
「いつまでもいたら、いつまでも帰れないでしょ。あー、もう、そういうこと言われると困るから、言わないでくれる?」
「あはは、そうだね。……あ、そうだ」
こなたは、そう言って、鞄からオレンジを出した。…またか。
「改めて、あげる」
「ん、ありがとう」
「ねえ、かがみ。オレンジの花言葉って知ってる?」
「いや、知らないけど」
私は、オレンジを鞄に入れながら答える。
「花嫁の喜び、だよ」
また、私は呆気に取られてしまった。
オレンジを入れた鞄からこなたに目を移すと、こなたは、そっぽを向いて、顔を赤くしていた。それが、何ともおかしくて、私は思わず吹き出してしまった。
いつもは、飄々としているくせに、こういうときは、恥ずかしいのね。
「ふふ、いつものあんたらしくないわね」
私はそう言って、ポンと掌をこなたの頭に置く。
「……だって、恥ずかしいじゃん。笑わないでよー」
……やれやれ、本当に可愛いやつだな。私は、わしわしと、こなたの頭を撫でてやった。
まあ、そういうこなたの言い分も分かる。私だって、こんなことを言う立場になったら、今のこなたと同じ状態だっただろう。それ以前に、言えるかどうかさえ疑われるけど。
……もしかして、私たちって似たもの同士なのかもね。
「本当はね、昼までに渡しておきたかったんだよ。でも、全然チャンスが無くて。あるだろう、あるだろうってずっと思ってたらもう放課後。最後のチャンスと思って、つかさとみゆきさんには、先に帰ってもらったんだよ。…悪いことしたね」
「何だ、やっぱり、そうだったのね。……まあ、そういうわけなら、あんたには罪滅ぼしをしてもらわないとね」
「え?」
「当然でしょ? つかさとみゆきには、あんたのわがままを聞いてもらったんだし、それに、私を惚れさせたのは、相当の罪に値するでしょ?」
「えー、かがみん、それはちょっとぉ〜……」
こなたは、必死に何かを訴えたがっていたが、
「だーめっ。今度の日曜、たーっぷりこなたには、罪滅ぼししてもらわないとね!」
私は、こなたの手を引き、走り出した。何となく、走りたくなったのだ。
「あ〜っ、かがみん。ちょっと急に走らないでよ〜」
目的を達した今となってみれば、悩みなんて何でもなかったんだ。私は、泉こなたのことが好きだった。そして、それに罪悪感を抱くことも無かった。
誰もが誰もを愛する権利がある。それは、何人にも侵されぬ正当な権利だ。
そして、二人の関係に進歩があろうと、いつもの日常は変わらないに違いない。いや、変わらせないようにすればいい話だ。変わろうとするならば、私が変わらないように努力すればいい。
今度の日曜は、きっと楽しくなるに違いない。いつもどおり、こなたがオタクの話で盛り上がり、私はそれにつっこみ、つかさはケーキを作って、みゆきは頭に詰め込まれた知識をひけらかす。
いつもどおり、何も変わらない、いつも楽しいカルテット。
そのときは、こなた。あんたには、たっぷりと罪滅ぼしをしてもらわないとねっ!
(終)
93 :
36-273:2008/04/14(月) 11:13:17 ID:gdvxIZTd
オレンジデーという記念日があることを知っている人は、これを見ている人の中にどれくらいいるでしょうか。
限りなく少ない、或いは、誰も知らないかもしれません。私でさえ、ニュースで「三越でオレンジデーフェアを行っている」というのを見なければ、一生知らなかったかもしれません。
で、このオレンジデーがどんな日かというと、劇中のこなたが言ったとおり、「二人の愛を確かめ合う日」だそうです。欧米では、オレンジは、多産であることから、繁栄のシンボルとなっており、新婚夫婦に贈られるそうです。
これに目をつけた、愛媛県の柑橘類農家が記念日協会に登録を行った、とのことです。そして、更に目をつけた、三越伊勢丹が、共同でフェアを行っている、とのことでした。
ちなみに、四月十四日は、タイタニック号が沈没した日でもあるそうです。
というわけで、今回は、オレンジデーを題材にしましたが、ちょっと中途半端な小説になったかもしれません。
友情を描いているのか、愛情を描いているのか、実に曖昧な小説になってしまったので、反省しています。
次回は、もっと文章力が上がればいいなと祈りつつ、今回はこれにて失礼致します。
>>93 ぐっじょ!
なるほど、女が男に、男が女に愛を告げる日があれば、そういう日があってもおかしくないわけか。
……てか、商魂たくましいなあみんなw
>>93 GJ!オレンジデーってなんとなく聴いたような覚えはあったけど、
そういう日だったのか・・・一つ賢く?なれた気がする
おーれんじのかほーりー ほーのかにぞかおーりーGJ!!
>>80 GJなんだぜ
寝込みを襲うかがみ萌えw
>>93 オレンジデーは初めて知った
なんという初恋青春ストーリー ! GJ !
照れるこなたが新鮮だった
ちなみに隣の国では同じ日にブラックデーという行事があります。
黒井さんがこの日の存在を知って……とかいうSSを書いてみればよかったかな
>>97 こなたが恥ずかしがってるところにつけこんで活き活きするかがみもいいなぁ
逆にかがみが恥ずかしがってたらこなたが活き活きするところが目に浮かんでくる
これからSSを投下させていただきます。
・あきら×白石
・エロあり
・たぶん6レス
「おはらっきー! らっきー☆ちゃんねるナビゲーターの小神あきらです♪」
「同じくアシスタントの白石みのるです」
番組開始の挨拶とともに笑顔を振りまくあきらと軽く会釈する白石。
「では早速お便りです」
白石はそのハガキの内容を読み上げる。
「『あきら様はSですか? ドSですか?』ちなみに僕はドSだと思います」
白石が付け加えた余計な一言に反応し、あきらが凶悪な顔つきで灰皿を投げつけた。見事に
白石の頭部に命中し、床に転がってカラカラと余韻の残る音を立てる。
「あきらイジメなんかきらいっ。ファンのみんなとも仲良くできるといいな」
一瞬にしてぶりっ子モードに転じる。潤んだ瞳の上目遣いは、見た目だけなら可愛い。
「で、では次のお便りは……」
灰皿のダメージから立ち直りきれず、少しふらつきながらも番組を進行する。
「『あきら様はツンデレだと思いますが、ヤンデレの素質もあると思います。』ヤンデレという
言葉を知らない人のために説明しておきますと、精神的に病んでいるキャラがデレ状態にある
とか病的なほど誰かにデレであるとかいうことを指します。この状態のキャラは得てして過激
な行動に及ぶことが多いようですが、あきら様は――」
「さっきから聞いてれば人のことを散々言ってくれるじゃないの」
ヤンデレの説明の間、刻々とあきらの表情が不機嫌になっていることに気付いていなかった
のが白石の運の尽き。気付いていたとしても番組の進行の上で止められるものではなかったが。
とにかく、その表情と声はとっくに黒くなっている。もちろん色彩としてではなく比喩表現
としての黒である。
「いえ、これはヤンデレという言葉を説明してあきら様はどうですかと訊こうと」
対して白石は青くなっていた。こちらは比喩ではなく。
「第一誰がデレよ誰が! あたしがいつあんたにデレたって?」
「は、ハガキに書いてあったんです!」
視聴者は自分に火の粉が降りかからないのである程度踏み込んだ質問もできるし、そういう
ハガキを採用するのはディレクターや構成作家なので白石に責任はないのだが、あきらの怒り
の矛先になるのは決まって白石である。あきらのツンギレがこの番組の基本的な要素であり、
視聴者にとってこの番組の最も面白いとされる部分であった。
毎週同じパターンのやり取りを繰り返し、しかしファンを飽きさせない二人もそれなりの
人気を博している。
男女のコンビで一つの番組のレギュラーを勤めるとよくあることだが、ファンが彼らなり
に想像を巡らせる事柄がある。
つまり、この二人はどんな関係なのかと。
特にらっきー☆ちゃんねるの場合は、白石があきらにマジギレしたうえに暴走し、セット
を破壊するという暴挙に出たことがある。先輩に(威圧的に)仲を取り持って貰ったとはいえ
いつの間にか元の鞘に収まりその後も普通に番組を続けているという事態が、彼らの妄想に
拍車をかけている。
ある者は、二人の関係は番組そのままだという。
ある者は、二人の仲は険悪だが仕事のために共演を続けているという。
ある者は、二人は恋人関係であり、番組での掛け合いはポーズだという。
ある者は、所詮は芸能人、番組は番組でプライベートでは何ともないという。
ある者は、白石の反逆そのものが番組を盛り上げるための演出であったという。
二人を直接見るスタッフでさえ何もわからず、最後の説を否定する以外には一般のファンと
二人を見る目に違いはなかった。
真実を知るのは、当の二人だけである。
「あんた、わかってんでしょーね」
その日の収録後も、白石はあきらの楽屋に呼び出された。
「座んなさい」
白石が楽屋に入るなり命令され、それに大人しく従って正座した。いくらあきらが小柄とは
いえ、床に正座する白石の前に仁王立ちすればあきらが見下ろす形になる。
「あたしがツンデレ? ふざけるのも大概にしなさい」
「いえ、あれは」
あきらの威圧的な物言いと視線に、白石の身が竦んだ。正しく蛇に睨まれた蛙である。二人
の間には絶対に覆せない上下関係があった。
「へえ、あんたはあたしに口答えできるほど偉くなったのね」
「そ、そのようなことは」
番組内では白石にもある程度の弁解をさせていたが、ここではそれすら許していない。
「あたしに逆らうな。いつもいつも言ってるわよね」
「はい……」
今回のことは番組の進行上仕方なかった、という反論を白石はしなかった。反論しても火に
油を注ぐだけだからである。
「毎回毎回、あたしが教育してやってるのにまだわかんないのかしら」
「うっ……」
あきらが爪先で白石の股間を突くと、そこは既に固くなっていた。
「ここは、ちゃんとわかってんのに」
それは毎週行われる『教育』の成果だった。あきらが白石を楽屋に呼び出した時点で、こう
なることは二人ともわかっているのだ。
あきらが固くなっている部分を爪先でなぞると白石は小さく身悶える。
「あたしがたてろって言わなくてもたってんのよ。あんたもこのくらい気を利かせなさい」
「これは勝手になって――」
あきらが一睨みしただけで、白石の口は止まってしまった。
「言わないとわかんないのかしら? 脱ぎなさいよ」
「は、はいっ!」
あきらの言い分は、毎回同じことをやってるんだから流れを読め。下僕は命令する前に実行
するのが当然。
白石の言い分は、言われずに分かるわけがない。
もちろん、白石がそれを口にすることはない。
「なにチンタラやってんのよ」
いくら回数を重ねたとはいえ女性の目の前で服を脱ぐのは気恥ずかしさがあり、手の動きも
躊躇いがあるのだが、そのせいでベルトを緩めるのに手間取ってしまった。あきらに急かされ
てピッチを上げる。
果たして、彼の反り立ったものが露になった。
「あたしに脱がせてもらおうなんて百年早いのよ」
「そんな期待をしていたわけではないのですが」
あきらがまた睨むと、そのまま白石を突き飛ばした。白石はとっさに足を後退させること
ができず、尻餅をついてしまう。
「やることはわかってんでしょ。学習しなさい」
あきらはドスを利かせた声で言い、白石の前に膝をついて座り、頭を下げる。その動作の
まま、あきらは白石のモノを口に含んだ。
「んむっ、ちゅっ……んんっ、ん」
「あ、あきら様……」
フェラチオは男性だけが一方的に快感を得る行為であること、必ず男性が女性を見下ろす
体位になることから、一般的には女性から男性への奉仕や従属を表す行為とされる。
その一方で、男性器を他人の口内に晒すのは非常に危険な行為であり、これによって相手
の男性を支配下に置いていると捉えることもできる。
解釈は自由として、そのどちらのつもりでやっているのかは本人しか知らない。
「あっ、あきら様」
あきらの舌が白石の肉棒をねぶり、唇が柔らかく締め付ける。その度に唾液が淫らな音を
立てて二人を興奮させる。
「んちゅぅ……んふぅ……」
白石は全く抵抗していない。白石にとってあきらを振りほどくことは、物理的には容易で
ある。しかし、性格が悪いとはいえ掛け値なしの美少女が自分のものを咥えて快感を与えて
くれているという誘惑に抗うには、彼は若過ぎた。
「ううっ……んっ……な、なんでそんなに上手いんですか」
暖かく柔らかい刺激に、白石は思わず喘ぎ声をあげてしまった。あきらの舌が白石の一番
好きな部分を的確に攻めてくる。上目遣いで白石の反応を窺いつつ、駆け引きなどなくただ
ストレートにそこを攻め続ける。
仮にこれが愛情表現であるとするならば、言葉に置き換えてただ『好き』とだけ言うような、
そんな真っ直ぐさだった。
それはあくまで例え話であって、当のあきらは何も言わず一心不乱に舌で舐り続ける。もし
今すぐ口を利けるならそれは愛の告白なのではないかと思えるほどに。
十四歳の女の子の技巧に屈して、白石に射精感がこみ上げてきた。
「あきら様、なんでこんなこと……」
思わず口をついて出た疑問に、あきらは顔を上げて白石を見やる。自分の質問がもたらした
結果に、白石は複雑な表情をした。
「なんでって決まってるじゃない」
あきらは白石の前に再び仁王立ちになる。
「あんたみたいな三下はあたしに逆らえないの。それを教えてやるためよ」
あきらは自分のスカートをめくり上げて白石に見せる。その下には何も穿いていなかった。
「あたしの番組で白石なんかに楯突かれたとあっちゃ、あたしの沽券に関わるのよ」
あきらは自分の指で秘唇を広げて見せた。その部分は既に液体に濡れて艶を帯びている。
「言いなさい。僕はあきら様のものです。二度と歯向かいませんって」
微笑に善悪があるとすれば、それは間違いなく悪だった。それも、美しさを備えた悪だった。
「…………」
白石は答えられずに口をぱくぱくさせている。
「何度もあたしとヤっておきながら、まだあたしのものになってないつもりだったの? あたしの
初めてを奪っておきながら後はしらんぷりとでも言うのかしらねー」
「それは――」
白石は二の句を継げなかった。
番組本番中に大暴れして以来、二人は絶縁状態だった。その態度は仕事にも表れ、人気は
低下していった。番組関係者が打ち切りを考えるようになった頃、あきらは白石を襲った。
その美貌で誘惑し、衣服を剥ぎ取り、手や口やあらゆる部分で愛撫し、自らを貫かせた。
あきらが何度も繰り返すように、白石は逆らえなかった。あきらが流した涙と破瓜の血を
彼は忘れられなかった。
無理矢理奪ったのはあきらの方だ。だが、いくら理屈ではそうであっても、男としてそれ
を主張することなど出来るはずも無い。誘惑に抗えなかったのは事実なのだから。
結局、この出来事が二人の関係を決定付けた。毎回、収録後にはスタッフに見つからない
ようにどちらかの楽屋に出入りするようになり、一時期落ち込んでいた人気は回復の兆しを
見せ、安定した人気を誇る番組となった。
「アンタはホントはあたしとヤりたいって思ってんのよ。これがその証拠」
あきらの視線の先には、白石の男の象徴。早くしたいと、懸命に自己主張している。
「ですからこれは自然と」
「そうよ。あんたはあたしに従うのが自然なのよ」
あきらの主張は一貫してそれだった。白石の意思など関係ない。
あきらはそれだけ言って白石の男根に腰を落とし、そのまま挿入させた。座位の形で二人
は繋がり、十センチもない間隔で見詰め合った。
「んっ……あたしが、ツンデレなわけっ……ないじゃない」
「あきら様、なんで、そんな……」
始めはきつく当たっていた白石に、もしあきらが惚れているのだとすれば、あきらはツン
デレであるということになる。あくまで理論上はそうなるというだけの話だ。
「ツンデレとか、んぅっ……ヤンデレとか……ふざけるんじゃないわよっ……あんたはあたし
のものなのよ。ただそれだけなのよ!」
あきらは頑として譲らない。病的なまでにそれを繰り返し、その結果として男を犯すという
行為にまで及んでいる。もしこれが白石への好意に基づくものであるとするならば、あきらは
ヤンデレであるということになる。あくまで理論上はそうなるというだけの話だ。
あきらは何一つ肯定しない。ただ、白石の上で腰を振るだけだ。
「あんたなんかっ……あたしにすぐイかされちゃうだけの男なんだから!」
前後に腰を振って、その度に喘ぎ声をあげる。
「ほら……あっ、あぅっ……き、気持ちいいんでしょ?」
「は、はいっ」
白石は初めて素直に肯定した。あきらの膣内はそれほどまでに良かった。
それだけでなく、あきらも自分の中の感じる部分を白石に刺激されていた。座位という体位
を活かして、体重をのせて深く挿入させていた。
「あぁっ、ふぁっ、あ、あたしで、感じてるんでしょ?」
「あ、あきら様も」
これだけ近づけば、互いが深い吐息をついていること、その原因が快感であることもすぐ
に分かってしまう。
「みのる……あっ、あぁん、あたしを抱きしめなさい」
白石が抱きしめる前に、あきらが自ら白石に身体を寄せ、その背中に手を回した。すぐに
白石も従い、二人は抱き合う形になった。
「も、もっと強く、だきしめなさい」
白石との身長差から、あきらは相手の胸に顔を埋めている。なので白石からは見えないが、
その目はとろんとしていて、口はだらしなく半開きになっていた。呼吸が乱れていることだけ
は、白石にも感じとることができた。
「あっ、うぅ……絶対に、離さないでっ」
「わっ、わかりました……」
それを告げると同時に、あきらも白石を強く抱きしめる。
「わかったら、あたしの、んっ……中にっ……出しなさい……あんたは、あたしの……もの、
なんだからねっ……」
あんたはあたしのもの。その言葉を繰り返す度に、腰を擦り付けるように前後させ、自分の
中に白石を招き入れる。そうすれば、白石はあきらのものになると言わんばかりに。
「あたしだって、ああぁっ……他のやつには、こんなこと」
自分の身体の深い部分を貫かせる。それは確かに、互いの所有権を主張する行為であった。
「あたしの中でイきなさいっ……あたしの中に出しなさい……っ」
この体勢では、あきらが退かない限り逃れることはできない。しかし、白石には逃れよう
という気は既になかった。
「あきら様、もう、いっちゃいそうです!」
「出しなさいっ、あんたのものは……ぁあっ……全部、んっ、あたしのっ」
あきらは更に腰を激しく動かす。その度に、あきら自身も高まっていった。
白石はあきらの中に、あきらは自分の中に白石が入っていることに酔いしれていた。互いの
こと以外何も考えられなくなるほどに心が昂ぶり、それは頂点に達しようとしていた。
「あきら様、あきら様っ」
「あぁっ、あたしの、ものっ……ぜったい、はなさない……んっ、ぁっ、ああああぁぁぁ!」
あきらの中が白石のものを急激に締め付け、白石はあきらの中の深くに射精した。
「はぁっ……はぁっ……」
「あきら様……」
同時に絶頂に達した二人は、荒い呼吸のまましばらく抱き合っていた。
白石が後始末を終えて気だるい雰囲気の中、あきらは鞄の中のタバコを探し始めた。一本
取り出して咥え、ライターはどこだったかと再び鞄の中を探る。
「あきら様、何してるんですか」
「何ってタバコに決まってんでしょ。ヤった後にタバコって定番じゃない」
何の悪気もなく、さも当然のようにあきらは言ってのける。
「ダメですよ、匂いは残りますから。タバコ一本でもスキャンダルですよ」
そうなると、白石と番組が出来なくなるわけで……。
「仕方ないわね」
タバコを鞄の奥深くに仕舞った。白石はキョトンとした顔であきらを見つめる。
「あんたに従ったわけじゃないわよ。ただ私がそうしたかっただけ」
今度は事も無げに白石を押し倒し、そのまま抱きついて強制的に添い寝した。
「あ、あきら様!?」
「あたしのイメージはヤった後はタバコを吸うか相手に抱きつくかなのよ。タバコがダメなら
こうするしかないじゃないの」
「そんな無茶苦茶な……」
意味不明の理屈に、結局白石は流される。
「あきら様」
「あ?」
「どうしてこんなことしようって思いついたんですか?」
「あー、事務所の先輩から『男なんてヤらせてやればみんな言うことをきく』って言われてね」
「……そこまででいいです」
思わぬスキャンダルのネタを掴みそうになって、話をやめてもらう。
寄り添いながら交わした言葉は、睦言と呼べるような内容ではなかった。
今回も、好きだとか愛してるとか、僕はあなたのものですだとか、決定的な一言はどちらも
発しなかった。ただ片方が強制し、もう片方がそれに流されただけだ。
そしてそれは、その次の週も繰り返される。
「おはらっきー! らっきー☆ちゃんねるナビゲーターの小神あきらです♪」
「アシスタントの白石みのるです」
白石がいつものように会釈する前に。
「白石ぃ? あんたは『下っ端』で十分でしょ」
「え゙……一応、白石という名前がありますので」
「そんなのどーでもいいの。あたしが下っ端って言ったら下っ端。わかった?」
「しかし番組の進行上それでは」
「あたしはこの業界で十年以上もやってんのよ。そのあたしに逆らうとでも?」
「そんな、滅相もございません!」
白石は冷や汗をたらし身体を硬直させ、そのまま動かなくなった。
「今日もみんなのアイドル小神あきらが笑顔をお届け! らっきー☆ちゃんねる始まるよ!」
今日もあきらは淀みなく番組を進行する。
ツンデレだかヤンデレだか、あるいはそのどちらでもない本音を隠し、ある意味ファンの
妄想通りの、ある意味全く的外れな関係を保ちながら。
−終わり−
105 :
3-283:2008/04/14(月) 20:23:02 ID:syS6Oz7n
ヤンデレっていうのがよくわかんないなーって思ったことから作ってみたネタです。
これを読んだ人がどのように解釈するのかはわかりませんが。
というわけで、読んでくださった皆様、ありがとうございました。
なんというヤンデレ…
GJだったぜ!
GJ
これはツンデレな気がするw
やってることはツンデレであるという。
近からず遠からず、微妙な緊張感漂う関係にぐっじょぶ。
109 :
42-519:2008/04/14(月) 21:32:06 ID:8+4YMLUI
読んでいただいたかた、感想いただいたかた、ありがとうございます。
>>83 ニヤニヤして頂いたら本望ですっ
>93
かがみかわいくて萌えた。
>>105 ヤンツンデレってことで…
>>105 おぉめずらしく大好きな2人がきた!
やっぱり主導権はあきら様がとるべきですよねー
白石はそれに従うしかない、って。
とにかくGJなんだからっ
そろそろみさ×かがの1つや2つが出てきてもいいと思うんだ
で、いくら払えば譲ってくれるかね
konata
kawaee yo
そういえば明日4月16日はパティの誕生日だね、一日早いがHAPPY BIRTHDAY。
こんどコソ、こんどこソ……
ハンバーグじゃないパティ☆ふぇちを……
ミナさんの熱いアモーレを……
一身に受ける日が来るのデス……
そうですネ?そうですヨネ?ミナサン……(´・ω・`)
>>112 あんた絵だけじゃなくてフィギュアもドンと来いなのかw
GJ楽しませてもらったw
パティ誕生日おめでとーーー!!!
一日早いがってつけるのわすれてた
パティおめでとーう!!
今からパティSS書いて今日中に投下できるように頑張るぜ!
投下よろしいでしょうか。
щ(゚Д゚щ)カモォォォン!!!
123 :
42−115:2008/04/16(水) 00:26:42 ID:ttB4eO7W
では、いきます。
パティは出てこないけど、アメリカの野球のお話。
『女子高生四人がメジャーリーグにハマるまで』(中)の(後)
・五レス
・エロなし
二日後。
昼休み。
3年B組にて。
泉こなたは呆然とする時、目を海苔のようにし、口を三角形開く人間である。
そして今、泉こなたは目を海苔のようにし、口を三角形に開けて、眼前の光景を呆然と眺めていた。
「ツインズの課題は、やはり投手ですね」
みゆきが言う。それは別にいい。メジャーリーグに興味を持ったのだし、右に出る者のいない調べ魔
にして歩く萌え要素。―最後の部分は別に関係ないかもしれないが、とにかくこれくらいの発言をして
も不思議ではない。むしろ必然なくらいだ。
それはいい。それはいいんだけど……。
「ヨハン・サンタナの移籍でしょ、それに故障からの復帰を目指していたフランシスコ・リリアーノ
が、開幕直前に再発しちゃったんだよね」
と、何故にかがみが受けるのか??
いやまあ、たしかにかがみは受け体質だけど、ツインズだ投手だ、サンタだリリーだと攻めるもんじ
ゃあない。
ああ、かがみん、目がマジだよ……。ツインズ繋がりでおねツイのこと持ち出しても、スルーされる
だけだよね……。
なんて思っていると、つかさまで口を出す。
「シルバって人も、抜けちゃったんだよねぇ」
つかさのくせに話に加わるか……。え、シルバ? あの濃ゆい女性歌手……じゃないよねぇ。
「あれ? カルロス・シルバって、昨日のマリナーズの先発じゃなかった?」
「FAでマリナーズに移ったんですよ」
「へえ、裏切り者ってわけね」
どこのどなたか知りませんがシルバさん、あなたかがみ様を敵に回してしまいましたよ……。 話に
加われない自分と同じくらい、気の毒になってくる。
「いいえ、かがみさん。選手個々にとって野球はビジネスですから、それを責めるべきではありませ
ん。財政面で弱者であるツインズが、サンタナにシルバ、それにトリー・ハンターの年俸を払いきれな
くなったのは事実のようですが、昨年のFA市場では、広島FAの黒田投手を獲得できなかった際の保険と
いうのがシルバの位置付けでしたから。マリナーズにとっては、あくまで『二番目』だったんですから」
「そうなると、ちょっとかわいそうかもね」
「だからビジネスなんですよ。もし黒田投手がマリナーズに入っていれば、シルバはドジャースと契
約したでしょうから」
二人のビジネス談義はとどまるところを知らず、サンタナを交換要員としたメッツとのトレードで、
ツインズのフロントがやらかした大ポカに話題を移していった。
「ちょっと、つかさ。投手はあんたの担当でしょ」
ふと我に帰ったかがみが、つかさに話に加わるよう促す。元々は、つかさとみゆきの間の話題づくり
が目的だったのだ。
「う、うん……。でも、お姉ちゃんには敵いそうにないから……」
苦笑い。
「そう?」
かがみはみゆきとつかさ、最後にちょっとだけこなたを見てから、
「じゃあ、しばらくみゆきを借りちゃうわよ」
ビジネス談義再開。つかさは聞いているだけだったが、話の内容はだいたい理解しているようだった。
時々肯いたりしている。
「あの……」
つかさは空いている様なので、警官に道を尋ねるおのぼりさんよろしく、こうなった顛末を聞いてみ
る。
つかさ曰く。
ゆきちゃんと野球のお話がしたくて、ツインズのファンになってみたの。
「ナルホドー、タシカニついんずダモンネー」
こなた、超棒読み。
「んで?」
昨日も学校があったので、午前11時からシアトルのセーフコ・フィールドで行われたツインズvsマリ
ナーズ戦は録画し、結果等の情報をシャットアウトした上で観戦したという。
ゲマズに誘ったのだが、かがみはポイントのつかない普通の本屋に行く事を固持した。そして立ち読
み限定を決め込んだこなたを尻目に、なにやらスポーツ関係の書籍や雑誌を物色している様子だった。
ダイエットに関係のあるものでも探しているんだろうと気にも留めなかったが、よもやそんなウラがあ
ったとは……。
頼んだわけではないが、つかさがその試合について語りだした。試合はマリナーズが序盤にリードし
たが、ツインズが徐々に追い上げていったという。
一気に追いつけないもどかしさ、迫る終盤、捨てられない希望、切ない祈り……。
つかさの素朴な語り口は、いつしかビジネス談義に夢中だった二人をも引き込み、3年B組の教室を前
日のセーフコ・フィールドに変えてしまった。つかさがマリナーズにあまり詳しくないため、「イチロ
ー」と「イチローじゃない選手」、それに「ジョージ・マッケンジー」という謎の選手しか出てこない
のが玉に瑕だったが。
ああ、これぞ東洋の神秘か。二人の巫女の祈りが通じ、ツインズはついに9回の表に勝ち越しに成功
した。そして9回裏、マウンドにはツインズの守護神ジョー・ネイサンが上がる。
「ネイサンていっても、男の人だよ」
「それ、お約束すぎるから」
「今期のツインズは再建期と目されてますが、それでも600万ドルで確保したクローザーですね」
マリナーズの攻撃は5番からだったが、ネイサンは簡単にツーアウトを取った。しかし7番の「ジョー
ジ・マッケンジー」は、最後の打者となることを拒否しヒットで出塁した。
「ちょっと、つかさ。その人、日本人」
「えーっ、そうなの? 顔も名前も外人さんだと思ってた」
「福岡時代も間違えられたそうですよ」
「ホークスがやわらか銀行になった時は、ショックだったネ……」(2巻005頁)
どうにか食いついたこなただが、すぐに引き離されてしまう。
マリナーズの8番・9番打者、「イチローじゃない選手」の二人も続きツーアウト満塁になった。みゆ
きによる、「ネイサンは下位打線に弱く、特に9番打者には三割打たれているというデータもあります」
という解説を経て、打席には1番に帰ってイチロー。
速度・コース・そして多分球種も異なる変化球でファールを二つ取り、カウント0-2(メジャーでは
ボールが先)。追い込んだ形になったのだが、かがみによると、「タイミングが合ってるような、なん
か嫌な感じだった」そうだ。
バッテリーは定石どおり外角に見せ球を放り、四球目、内角低めへの96マイル(155キロ)の直球で
勝負に出た。イチローのバットが止まる。判定はボール。
「ストライクかと思って、思わず手を挙げちゃったね」
「ね〜」
不利なカウントではないが、追い込まれる格好になったバッテリーが次に選んだのは、縦の変化の高
速スライダーだった。だが制球の難しいこの球は、打席前でワンバウンドした。捕手のジョー・マウア
ーはどうにかこれを止めた。
フルカウントとなり、セーフコ・フィールドと柊家の居間が異様な空気に包まれる。
運命の六球目。バッテリーはこの危険極まる相手に対し、常軌を逸した攻め方を選択した。敢えて五
球目と同じ高速スライダーを放ったのだ。そしてボールは同じコースを辿る。
押し出しで同点……とはならなかった。打者までもが常識外れの反応を示した。
同じコースの同じ球に、イチローのバットが反応した。日本でも、黒井先生のご贔屓との試合で見せたワンバン打ち。すくい上げられた打球は一塁後方へ。
柊家の父と母と長女と次女は、悲鳴を聞き居間に急行したという。
追いすがる一塁手。落ちれば同点……いや、フルカウントの為スタートを切っていた二塁ランナーが還って逆転サヨナラ……。
背面からの打球に一塁手がダイブ。だが無情にも、ボールは空中でファーストミットに弾かれる。
万事休す。
そう思った瞬間、まるで急場にギリギリで駆け付けるヒーローのように、画面上側から右翼手が現れダイブ。一塁手との激突こそ免れたが、そのグラブは一塁手の陰に隠れて見えなくなった。
一塁塁審が駆け寄る何秒かが、永遠のように感じられる。やがてその右手が上がった。
3アウト。
Game is over.
勝利を喜ぶツインズナインを映し出すテレビの前で、柊ツインズが腰を抜かしていた。
「ど、どんだけ〜」
それは試合に対してであり、自分たち二人についた「観客」の多さに対してである。両親に加え、二階から二人の姉までやってきて、動物園の来園者よろしく遠巻きに二人を見ていた。でもそんなの関係ねえ。
「なんて幕切れよ……」
毎回こんな試合展開なら、簡単に痩せられそうだなんて思ってしまう。
「でも勝ったよ……」
「勝ったね……」
私たちのツインズ
球場とチームとの一体感から出た、ごく自然な感情。
ツインズの本拠地、ミネアポリスからアメリカ本土の半分と太平洋を隔てた極東の島国に、若く愛らしい双子のツインズファンが生まれた瞬間だった。
「いつの間にかツインズ・フラグが立っていたとは……」
相変わらずの海苔目・三角口でこなたが呻く。
「ほんとすごかったわ! 赤い洗面器を頭に被った男が―なんてレベルじゃなかったんだから!」
「いや、それ見てないから分からないんだけど、私……」
かがみがネタ話をして、私が答えに窮するとは……恐るべし、ツインズ。
「ヘルメットや帽子が、赤い洗面器に見えちゃったよね〜」
「?? 両球団とも、チームカラーは赤じゃないはずですが……」
実質こなた抜きで盛り上がる三人の会話は、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地球場名に移っていった。07年のオールスターで、イチローがランニングホームランを放った場所であるが、2000年開場の新しい球場であるにも拘らず、すでに名前が二度変わっているという。
「現在はAT&Tパークというんですが、これは携帯電話の基礎技術を開発した会社なんですね」
へ〜、と柊姉妹は感心する。
球場名がパークじゃなくてフィールド、AT&Tフィールドだったら、色んな解釈を加えらるのに……なんて、こなたは思った。
「ジャイアンツって、日本にもあるよね」
つかさが聞く。
「ええ、韓国にもありますよ」
みゆき牛は合衆国に飽き足らず、韓国まで耕し始めたか……。
「その名もロッテ・ジャイアンツというんですが……」
四人は教室内を見回し、廊下の方も見たが、3年B組の担任で、ロッテという言葉に反応するはずの女世界史教師に姿はなかった。声の届く範囲にはいないらしい。
「そのジャイアンツと命名された経緯なのですが……」
みゆきの話は1934年の日米野球へ、そこで沢村栄治がベーブ・ルースから三振を奪った事へ、そのルースが714本のホームランを打つ傍ら、投手として94勝もしていることへと、千変万化の様相を呈してきた。
一方、こなたの思考は全然別の場所へと沈んでいった。
―ちっ、ジャイアンツか。深夜アニメの天敵め……。一番アニメの題材にされた球団がジャイアンツというのも、なんか腹立たしいなあ。
それにしても、「かり●げクン」の初期の方にあったジャイアンツ混同ネタの意味がやっと分かったよ。植田ま●し、時代を先取りしすぎたねえ。
「か●あげクン」て言えば、私らが生まれた頃アニメ化されてるけど、第二期は……ないよなぁ。引退しちゃった中の人もいるし、四コマ原作のアニメ化って、色々難しいモノがあるんだよねえ。うんうん。
でもあのOPテーマは、アニソン史上に残る快挙だよ。デュエットってだけで十分アレなのに、銀座で男女が「イク」だの「イカない」だの……。だからあの部分は二番なのか。そりゃそーだ。
わりと最近もア●キとし●こたんが歌ったっていうけど、しょ●たんはリアルタイム派なのかな? いやー、さすがに再放送かな……。
四コマ原作の第二期といえば「らk―
あれ? 私最初何について考えてたんだっけ??
まあいいや。コロネ食べよっと。
ふと我に帰ると、みゆきの話は、現役選手を対象とした「ルール5ドラフト」の複雑怪奇なシステムへと移っていた。
かがみは聞き入っていた。
つかさは目を回していた。
こなたはといえば、少し寂しかった。
放課後。
柊姉妹は糟日部駅でこなたと別れた。会話もあったが、いつもより口数の少なかったこなたは、一旦上り民となり、東京方面に向かうという。バイトかあるいは買い物か。みゆきは委員会があるので、一人で行く事になる。特に理由は問わなかった。
「いいの、お姉ちゃん?」
動き出した下り列車の中で、少し不安げにつかさが尋ねる。
「フォローは明日ね」
寄り道ならどこでも付き合い、何かおごってあげよう。宿題があれば気前良く見せてあげよう(気味悪がられるかもしれないが)。
だから今日は、今日くらいは溜飲を下げよう。
フォローは明日、そう、明日……。
かがみの目論見は成功したかに見えた。こなたを懲らしめ、やり込めることが出来たのだから。
そこには誤算もあった。
一つは、寂しそうにしているこなたを見て、不覚にも胸が痛んだこと。
一つは、彼女が妹ともどもツインズにハマってしまったこと。
もう一つは、こなたがこれくらいでめげる人間ではないということを、見誤った点である。
つづく
129 :
42−115:2008/04/16(水) 00:33:31 ID:ttB4eO7W
ありがとうございました。
書いてる最中にリリアーノが復帰して焦りました。
次で最後です。
一度でいいから見てみたい
セクソンの名前を見た時の女子高生
リアルタイム乙であります
>>129乙!!
野球嫌いのこなたには地獄ですなwwww
俺?BS1でMLB、JスポやGAORAあたりで虚塵以外のNPB見るのはデフォとして
首都圏5球場でデジイチ片手にマターリ生観戦したり。
松井がヤンキースに移籍する直前の日米野球見に逝った事もあったな・・・・・・。
残念ながら今年のMLB開幕戦@闘強導夢は逝けませんでしたがorz
>>129 夜のg(ryってカバーされてたん?
マジで?
五分後に投下を開始しますが、よろしいでしょうか?
135 :
ふた☆自重:2008/04/16(水) 18:06:12 ID:G2V14CdY
よしゃーっ
では投下を開始します。相変わらずのふたSSです。
■注意事項
・エロ有り(みなみ←ふた○り)
・みなゆた(多分)
・淫語はやや自重
・M字
・7〜8レス使わせて頂きます
「だから、ね……みなみちゃん……私と、せっくすしよ……?」
☆
お互いに着ていた服を脱がせ合い、ベッドの上ではだかんぼになったみなみとゆたかは――お互いに膝立ちの姿勢で腰に手を回し、口唇の睦み合いの虜となっていた。
「ちゅっ……ちゅうっ……んくっ……んむっ……んん……」
「ちゅく……ちゅむ……ちゅうっ……んふ……んむ……」
薄膜が角度を変えてたわむたび、二人の間で愛おしさがふわふわと膨らみ、ほこほことした幸せな気持ちがほんのりと肌を火照らせていく。
「んちゅ……ちゅっ、ちゅうう……んくっ……ぢゅ、ぢゅるっ……ぢゅるる……」
「ちゅむ、ちゅぷ……っん、こく……んん……ぢゅくっ、ぢゅっ、ぢゅうう……」
唾液にまみれた舌を絡め合い、撹拌し合い――ブレンドされ、口腔にたまった唾液を咽下し合う。
飽きる事ない唇同士の愛撫に、二人の顔はすっかりとろけきっていた。
「――ぷはぁ……んっ……えへへ、みなみちゃん……お顔が真っ赤……」
「――んぷ……あ……はあ……ゆたかこそ、真っ赤っか……」
みなみとゆたかは朱に染まった相手の頬に、そっと手を添える。
そしてそこからもう一度唇を触れ合うと、ゆたかは目を細めてはにかんだ。
「じゃあ、しよ……?」
ふた☆みな 〜ゆたか2〜
ゆたかをそっと横たえると、みなみは四つん這いになり、キスの攻撃を次々と見舞っていった。
耳たぶを食み、頬を伝い……首筋に吸い付き、鎖骨のくぼみを丹念になぞる。
次いで、肩から二の腕、二の腕からわきの下……時にはうっすらと浮かぶ汗を舐め取っていく。
ゆたかの肌をくまなく這いずるみなみの舌は、さながらアイスキャンディーのように、ゆたかの全身を舐め溶かしてしまう勢いだ。
「ふぁ……あん……みなみちゃんのキス……気持ち良い……」
熱に浮かされたように呟き、されるがままのゆたかは、その舌技にぞくぞくと身悶える。
やがてその舌は緩慢な動きで胸元に辿り着く――と、そこでみなみは一旦、頭を起こした。
「…………」
――ゆたかの、胸……。
さすが、同じユニットを組むメンバーだけあって、ゆたかの胸は見事なまでにぺったんこだ。
まるで淡いピンク色の乳輪と乳首だけが、
「ここはおっぱいですよー」
……と、必死になってその存在を訴えかけている。
「…………」
「……どうしたの?じっと見つめて……」
「……あ、いや……別に……」
「あ、あはは……ごめんね?ぺったんこで……」
申し訳なさそうに照れた笑みを浮かべるゆたかに、みなみはううん、と首を横に振った。
「私は好き……ゆたかの、胸……」
それは偽りのない本音。
大きさに関係なく、みなみはゆたかの胸が好きなのだ。
その事を伝えようと、みなみは早速ゆたかのわきから柔肉を寄せ――小さく盛り上がった乳房を、円を描くように丹念に揉みしだく。
そのまま寄せ上げた乳房の頂上……つつましく載った乳首にキスをすると、唇に挟んだ。
「んん……ちゅっ……ちゅっ……可愛くて……あむあむあむ……んふ、んふ……柔らかい……」
「あん……あん……ああっ……あっ……はあんっ……みなみちゃん……」
胸の先端からくるくすぐったい刺激に、ゆたかは鼻を鳴らしてむずがる。
乳輪を舌でぐるぐると舐め回し、乳首を唇で揉みこね、小さく噛んで、くいくいと引っ張ったり……と、さらなる愛撫を続け、ゆたかの胸をたっぷりと楽しんだ。
「ん、ちゅ……ぷあ……」
唇を離すと、硬くとがった乳首が姿を現す。
「……勃起しちゃったね……」
「やぁん……みなみちゃんのいじわるぅ……」
ゆたかは悩ましげな視線をみなみに向け、甘えるような声を出す。
みなみはすかさず反対側の乳首にしゃぶりつき、すっかり硬くなった乳首は手による愛撫を続行する。
「ちゅっ……ちゅっ……ちゅく……んんっ、んちゅっ……んん……」
「あっ……あん……ああん……はあ、ああん……」
勃起した乳首は、親指と人差し指の腹で押しつぶす様にこねられ――口に含まれた乳首は、舌の腹で押し転がされ、歯によって甘噛みされ……硬さを帯び始めてきている。
「ああん……みなみちゃん……みなみちゃぁん……」
硬い乳房は心地良くほぐされ、柔らかな性感が胸いっぱいに拡がる。
みなみの丁寧で優しい愛撫によって、ゆたかはすっかり発情していた。
☆
「んちゅ……んむ……すふ、すふ……ちゅ……ちゅう……」
ゆたかの乳房を思うさまいじくったみなみは、キス攻撃を再開する。
胸の真ん中を伝い……肋骨が確認できるほどのなめらかなわき腹。
すべすべのお腹に、ぽつんと穿たれた可愛らしいへそを下り……薄い性毛の生える恥丘へ。
それら全てに、みなみはキスを杭打ち機よろしく撃ち込んでいった。
「んん……くふぅ……あん……ふぁ……」
柔らかなみなみの唇が柔肌をすべる感触に、ゆたかはむずがるような声を上げる。
「ゆたか……ちょっと、脚開いて……」
「うん……」
浅く開いたゆたかの股間に移動すると、みなみは腹這いの姿勢をとり、顔を近付けた。
濃桃色の、ぽってりとした恥丘。
その、幼いまろみを帯びた外側の肉を両手で割り開くと――桃色の膣縁が左右にくつろぎ、小さなや尿道口や膣口、ぷっくりとしたクリトリスがむき出しになった。
ゆたかと同じ、ちんまりとした可愛らしい女性器に、みなみは、こく……っとツバを飲み込む。
いつもクンニリングスでたっぷりと愛しているものの、今回は目的がまるきり違うためか、普段よりもじっと覗き込んでしまう。
――こんな小さな穴に、入れるのか……いや、入るのかな……?
「……や、やだ、みなみちゃん……そんなに見つめないで……」
「え……?あ、ああ……ごめん……」
ゆたかの消え入りそうな声に、みなみは謝ると――改めて、愛液でつやめく膣縁に唇を寄せる。
「ぷちゅっ、ちゅぢゅっ、かにゅっ、かにゅ……れろれろれろれろ……」
「あん、あっ、あうん……あ、はあ……あん……くぅん……」
しびれるような刺激に身悶え、うわずった声を上げるゆたか。
みなみの舌先が膣縁をなぞるたび、または唇がつんつんのクリトリスを食むたび……ゆたかは恥じらいながらも腰を震わせ、膣口から新鮮な愛液を噴き出した。
みなみはゆたかの腰を抱え込むと、秘裂に鼻面を押し当て、思い切りすすり上げた。
「ぢゅるるるっ、ぢゅううっ、ぢゅっ、ぢゅううううううう……っ!」
「あっ、あああっ!ああっ、あっ!そんなっ、音立てて吸っちゃやあああっ!」
ゆたかは激しくかぶりを振り、一段と大きく腰を跳ねる。
こぼれ落ちる愛液を、肛門の方から舐め上げてすくい取り――あるいは舌先を膣口に突っ込んで、あふれる愛液をせわしなく掻き出す。
みなみの口やあごはすっかり愛液にまみれたが、お構いなしにゆたかの秘裂を味わった。
「あーっ、はあーっ、はっ……みなみちゃん……もう、平気だから……」
息も絶え絶えにゆたかが呟くと、みなみはようやく顔を上げた。
「……ん、しょ…………は、はい……」
ゆたかは羞恥で顔を真っ赤にしながらも、自分で両ひざを抱えると、M字開脚の姿勢をとる――そして差し出すかのように、自らの割れ目に指を這わせ、むにぃ……と左右に拡げた。
「ど、どうぞ……みなみちゃん……」
クリトリスが震えるたびに膣口の奥から愛液がにじみ、お尻のすぼまりへと流れてゆく。
自分の全てをさらけ出す格好のゆたかに、みなみはいっそう愛おしさを募らせた。
「……うん……」
みなみは頷くと肉棒を掴み、ゆたかの股間に腰を寄せ――唾液と愛液にまみれた秘裂にあてがう。
ひゅくひゅくとたわむ小さな膣口に亀頭を浅く潜らせ、わずかに腰を押しやると、間もなく……亀頭の先端にわずかな抵抗がかかった。
――あ……これが……ゆたかの……
「……ゆたか……」
「……お願い、みなみちゃん……」
みなみはしばし逡巡したものの……ゆたかの哀願に意を決すると、腰に力を込め――。
――ぷつ、ん――
膨張した赤黒い亀頭で――処女膜――ゆたかの純潔の証を切り裂いた。
「んいいいいい……っ!」
痛みに備えていたものの、破瓜の想像以上の激痛に――ゆたかは眉間に深いしわを刻み、愛らしい顔を辛そうに歪める。
「ごめん……ゆたかにだけ、痛い思いをさせて……ごめん……」
ゆたかの苦痛を身代わりになってあげられない歯痒さに、みなみは唇を強く噛む。
愛する人を傷つけている。
そんな良心の呵責にさいなまれつつ、みなみは腰を進め……熱くみなぎる肉の杭を、小さな膣口にずっぽりと埋めていく。
「いいいい……ひいいいい……っ!」
ぽろぽろと涙をこぼしながらも、ゆたかは心配をかけまいと唇をかみ締め、もれる悲鳴を懸命に押しとどめる。
シーツを精一杯の力で掴んでいた指先は、血の気を失い白くなっていた。
「もう少し……もう少し……」
小さな子をあやすようにゆたかに語りかけながら、みなみはじっくりと時間をかけ、亀頭を子宮口へと潜り込ませていく。
太ましいペニスはそのまま膣壁を分け入って奥まで進み――弾力のある行き止まりを軽く押しやると……その全長が、ずっぽりと窮屈な膣内に収まる。
これでゆたかの処女は、ついにみなみによって散華されたのだった。
膣口からは破瓜の血がにじみ、根元付近の竿をわずかに赤く濡らしている。
「ゆたか……全部、入ったよ……」
「……う、ん……」
「…………」
「…………」
「…………落ち着いた……?もう少し、待つ……?」
「…………だい、じょ、ぶ………」
いたわりの言葉をかけるみなみに、ゆたかはぶんぶんとかぶりを振る。
「…………っはああああーーー……っ」
みなみのペニスを自分の最奥……一番大切な場所の入り口まで迎え入れると――ゆたかはようやく詰めていた息を大きく吐き出し、枕に頭を落とした。
「はあっ……はあ……みなみちゃんのおちんちん、全部入っちゃった……」
荒い息の中、ゆたかは自分の腹を撫でさすりながら、満足げに呟く――その表情は、どこか誇らしげだ。
「……うん……頑張った……」
みなみも優しく微笑み、脂汗で張り付いたゆたかの前髪を丁寧に掻き分ける。
その仕草に、照れ臭そうにはにかむゆたか。
「ふふ……私のアソコ……これで、みなみちゃんのおちんちんのサイズ、覚えちゃった……」
「――あ、う……!」
その口から紡ぎ出された、無邪気ながらも淫猥な台詞に、みなみの顔はたちまち真っ赤になった。
「えへへっ。みなみちゃん、かわいっ♪」
みなみの可愛らしい反応に、ゆたかはぺろりと舌を出す。
「……もう……っ!」
拗ねたように口を尖らすと、みなみはゆたかに覆いかぶさった。
「ゆたかは、えっち……すごくえっちだ……」
「ふふっ♪私をえっちにさせたのは……みなみちゃんですよーだ」
「わ、私は……えっちになんてさせてない……ゆたかが、元からえっちだったんだ……」
「違うもん。みなみちゃんのえっちが、私にうつったのっ」
「…………」
「…………」
「……くすっ」
「……にへへっ」
鼻先をつつき合わせながら睦言を交わし……みなみとゆたかは、申し合わせたようにキスをした。
「ちゅ……ちゅぴっ、ちゅむ……ちゅるる……」
「ちゅく、ちゅ……んちゅ……ちゅううう……」
「んくっ、んぅ……ぢゅちゅっ、ぢゅっ、ぢゅるるる……っ」
「っん、こくっ……ぢゅぶっ、ぢゅるるっ、ぢゅちゅ……っ」
じゃれつくようにお互いの唇をついばみ、角度を変えてたわませ、唾液を啜り合う。
「ん、ちゅ……ぷあっ……みなみちゃん……」
「っぷ、あ、はあっ……はあ……ゆたか……」
絡ませた舌をほどくと、二人は幸福感に火照る頬をすり合わせた。
「……みなみちゃん……私、みなみちゃんになら……何をされても、平気だよ?だから……」
「……うん……分かった……辛くした分、いっぱい、ゆたかを気持ち良くしてあげるから……」
「……んーん。違うよ……一緒に、気持ち良くなるの」
「……うん……じゃあ……一緒に、気持ち良くなろう……」
みなみはそのままの姿勢でゆたかの肩を抱きすくめると、ゆるゆると遠慮がちに腰を動かし始めた。
ぬぶ……ぬぶ……ぬぶ……ぬぶ……
硬さの残る膣内を、慎重に慎重に往復させる。
「ゆたか……まだ、痛む……?」
「うん……痛い、けど……我慢できるから、だいじょう、ぶ……っ!」
心配させまいと、気丈に呟くゆたか。
だが、時おり走る鋭い痛みに顔をわずかにしかめ、眉を小さくたわませる。
その痛みを、せめて少しでも和らげようと……みなみはゆたかの耳たぶを食み、紅潮した頬や首筋に何度もキスを撃った。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅ……はむはむ……かにゅ、かにゅ……ちゅっ、ちゅっ……」
「ん、ん……んう……すふ、すふ……ん、く……ん……っ」
くすぐったさに、ゆたかはむずがるように鼻声を鳴らす。
しかし、太々としたペニスが膣壁をこする度、破瓜の痛みが呼び戻される。
なかなかに、ままならなかったが……しばらくすると抽送に呼吸を揃える事で、痛みが和らぐ事に気が付いた。
「んっ、んうっ、んんっ、んくぅ……っ」
それを確かめるようにピストン運動に呼吸を合わているうち、やがて――唐突に、今まで感じた事のない刺激がゆたかを襲う。
「んくっ、んうっ、うっ――う――――――あ……?」
それは自慰行為やみなみのクンニで感じる、じんじんとした刺激よりも大きなうねり。
まるで、ペニスの抽送になじむ様に、雌としての本能が、身体中の細胞が組みかえたかのような感覚。
いくぶん和らいだとはいえ、いまだに残る破瓜の痛みを、完全に覆い尽くすかのように――へその裏側からの甘やかな刺激が、波紋のように全身に広がっていく。
「……どうしたの、ゆたか……?」
「っう、うんっ……あっ、あのね……だんだん、気持ち良くなってきたみたい……」
その言葉を裏付けるように、すでにゆたかの膣の奥からは愛液がこんこんと湧き出し、膣全体を潤い始めていた。
「無理、してない……?」
「うん……ホントに、良くなってるから……だからみなみちゃんも、気持ち良くなって……?」
瞳を潤ませ、甘えるような声色でピストンの催促をするゆたか――その顔には、わずかな苦痛と快楽がない交ぜになった表情が浮かんでいる。
「……うん……一緒に、最後までイこう……」
みなみは頷くとゆっくり上体を起こし……ゆたかの脚を抱きかかえると、腰の動きに集中した。
腰を引いては、亀頭の根元が膣口からのぞくまでペニスを抜き……突き出しては、膣の一番奥まで押し込んでいく。
そのつど、亀頭のくびれがゴリゴリと背の高い膣ひだを削ぎ、膣壁がじゅるじゅると亀頭と竿の境目をしゃぶり回す。
――すごい、すごい……どんどん気持ち良くなるぅ……っ!
愛する人に抱かれている幸福感を改めて感じると――引きつる様な痛みも、今や、みなみがもたらす優しいぬくもりの中に、完全に溶けて消え失せていた。
たくましいピストン運動に、ゆたかは嬌声を上げて身悶える。
にゅるっ、ぬるっ、ぬぐっ、にゅぶっ
「あんっ、ああんっ、あっ、あんっ……みなみちゃん、みなみちゃん……っ!」
痛みが落ち着いてしまえば、ペニスが与える刺激は素晴らしいものであった。
膣口から子宮口にかけての全長を使ったストローク。
膣壁をこね回す、緩急をつけた円運動。
子宮口にキスをするような、小刻みな亀頭の押圧。
ゆたかは、ペニスから送り込まれる性感を余す事無く受け入れていった。
「はあっ……はあっ……ゆたか……ゆたか……っ!」
一方のみなみも、膣内からもたらされる快感に酔いしれる。
ぬるぬるの愛液に潤う、プリプリとした膣ひだの群れ。
小さな膣口が繰り返す、キツキツの締め付け。
勃起しきりのペニスを、やわやわと包み込むぬくもり。
どれをとっても、ゆたかの膣内は、まさに名器と呼ぶに相応しいほどの格別さであった。
いつまでも、この居心地の良い空間に留まり続けたいと思いつつ――しかし、回避不可の射精欲は、否応なしに高まっていく。
みなみはそれに追い立てられるように、腰の動きを少しずつ加速していく他なかった。
「はあ、はあ……はあ……ごめん、ゆたか……早く、するね……?」
「あんっ、はんっ、うんっ、い、いいよ……あんっ、み、みなみちゃんの、好きなように動いて……っ!」
「……ありがとう、ゆたか……」
――愛するゆたかの中で、思い切り果てたい……。
そんな衝動にかられたみなみの荒々しいグラインドに、ゆたかの身体は、されるがままにガクガクと揺さぶられた。
「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あん!あん!あん!みなみちゃ、み、みなみちゃあん……っ!」
「ふっ、ふっ、んんっ……ゆたか……ゆたか……あんっ、はんっ、んっ、んんん……っ!」
ぼちゅっ、ぼちゅっ、ぶちゅっ、ずちゅっ
肉棒と膣肉の濃密な摩擦はぬかるむ水音を盛大に奏で、肌と肌が打ち合う音はさらなる性の悦びへと欲張りにさせる。
身を焦がすほどに、狂おしいほどに――放出に向けてペニスは痛いくらいに怒張を極め、膣ひだはねっとりと絡みつき、促すようにきゅうきゅうと締め付けた。
「ゆたか、私……もう……っ!」
「あんっ!あっ!いっ……イキ、そう……?イキそうなの、みなみちゃん……?」
「うんっ、うん……!だ、出していい?ゆたかの中……出して、いい……?」
「いい、よぉ……!みなみちゃんのせーしっ、私の、なかにぃ……っ!」
迫りくる絶頂の予感に、みなみとゆたかは互いに無我夢中で叫び合う。
丸々と張りつめた亀頭が生硬い子宮口を突きまわす度……二人の理性は、抗えない愛欲の泥沼に、どこまでも呑み込まれていった。
「はあっ!はあっ!はっ!ゆたか、ゆたか、ゆたか……っ!イッ、イク、イクぅ……っ!」
「あんっ!あんっ!あっ!みなみちゃ……来てえっ!わたっ、私の奥っ……奥の方に、みなみちゃんの、男の子みるくぅ……っ!」
そして射精のタイミングは、唐突に――気まぐれに訪れる。
勃起しきりのみなみのペニスが、ゆたかの子宮口を散々に突き上げた――次の瞬間。
「……んんんうっ!」
びゅうううううーーーーーーっ!!
ペニスは最大最後の膨張をみせ――爆ぜるように、その膣内で精液を噴出させた。
「んあああああーーーーーーっ!」
生まれて初めての膣内射精に、ゆたかはひときわ高い鳴き声を上げる。
「ゆたか……もっとイッて……もっと……っ!」
みなみは腰をさらに振り立て、自らの精液をゆたかの最奥へと流し込んでいく。
びゅぶっ!どびゅっ!びゅぶぶぶっ!
「あーっ、ああーっ!あひっ、ひいっ、あいいいいっ!」
濃厚な白濁液を次々と子宮口に浴びせられ、ゆたかは歓喜に身体を震わせた。
びゅぐっ、びゅぶっ、びゅ……っ!
間断なく脈動する肉棒は精液をとめどなく吐き続け、子宮口周りをたっぷりと満たし――収まりきれなかった分は膣と亀頭のわずかな隙間を巡って、竿の方へと逆流していく。
「――あ、ああ――っあ――は、はあっ――あー……っ」
呆けた表情で唇からよだれをこぼしながら、甘い荒息を繰り返す。
――これが、イクって事なんだぁ……。
ぬるま湯につかったような夢心地の中、ぼんやりとした意識でゆたかは思った。
「んっ――はあ……っ」
めくるめく開放感に陶然自失となっていたみなみも、意識を取り戻し、恍惚の溜息を深々とつく。
本懐を遂げたペニスも、全ての精を出し尽くし、緩慢とした脈動をするのみ。
――胸のすくような思いって……きっとこういう事なんだ……。
射精の快感に酔いしれ――みなみはいつしか、両の瞳からぽろぽろと涙をこぼしていた。
「……みなみちゃん、泣いてるの……?」
みなみの頬を流れる涙を、ゆたかはいたわる様にそっと指先でぬぐう。
――こんな時まで、この子は自分よりも先に、相手を気にかけるのか……。
ゆたかの心配りにみなみは微笑み、頬に触れる彼女の手に……そっと、自分の手を重ねる。
「これは、嬉し涙……ゆたかの中……気持ち良かったから……」
もちろん、ゆたかの膣中に射精しただけが良かったわけではない。
優しくささやき合った睦言も、照れながらもねだり合う愛撫も――そして今や、疲労感や倦怠感でさえも。
その全てが、甘美な余韻としてみなみを包み込んでいた。
「ゆたかも……泣いてるよ……」
「……うん……これも、嬉し涙……みなみちゃんが、優しくしてくれたから……」
みなみのささやき声に、ゆたかも瞳から大粒の涙をあふれさせながら頷く。
それはキスも、愛撫も、セックスも――その全てがみなみの手によって優しく導かれ、それら全てを甘受した結果。
ゆたかの身体はいまだ熱く火照り、ふわふわとした浮遊感のただなかにあった。
「そっか……ん……」
満足げに目を細めるみなみは、やおらペニスの根元を押さえ、膣内から全長を引き抜いていく。
ぬるるる……ぽぶっ
空気の漏れる音とともに亀頭が抜け落ちると――やんわりとほころんだ小さな膣口から、ピンク色の混じった精液が、ぷくぷくと泡立ちながらシーツにあふれ出た。
「うわあ……いっぱい出てきたよぅ」
自分の膣口からこぼれ落ちる精液のその量に、上体を起こしたゆたかは思わず目を丸くする。
「あ、う……」
幼さの残る少女の狭い膣内に、自分は一体どれだけの量を注いだのか。
訳のわからない罪悪感に襲われ、みなみは恥じ入るように、正座の姿勢で顔を伏せた。
「ご、ごめん……その……」
「んもぅ……別にみなみちゃんを責めてるわけじゃないよ?」
苦笑しながらゆたかはみなみに抱きつくと、首に手を回し、すりすりと頬ずりを繰り出した。
「最初は痛かったけど……ホントに気持ち良くなれて、私、嬉しかったんだから……だから、謝らなくていいんだよ」
「あ……ごめん……」
「ほら、また……んもぅ……」
謝罪に謝罪を重ねるみなみの口を、ゆたかはキスで塞ぐ。
唇を奪われた形のみなみは、驚きに目を見開いたが――ゆたかの唇の感触に、うっとりと目を細めた。
「ちゅ、ちゅ……ん、ちゅ……みなみちゃん……これからもっと、いっぱい色んな事を覚えて、二人でたくさん気持ち良くなろうね?」
「ちゅ、ちゅく……ん、ぷぁ……やっぱりゆたかは、えっちだ……」
「ち、違いますぅ!みなみちゃんが、私をえっちにさせたのっ」
「違わない……元から、ゆたかの方がえっちで……んううーっ!?」
みなみの口が、赤くなったゆたかのキスで再び塞がれ――そしてそのまま、せがみ、せがまれ……いつしか二人は、ねっとりとした濃密なキスに耽る。
胸が張り裂けそうな愛おしさは微熱となって薄膜を伝わり、互いの中枢にじんわりと染み渡っていく。
終わる事のない悦びの海に、みなみとゆたかはどこまでも溺れていった。
〜完〜
145 :
ふた☆自重:2008/04/16(水) 18:19:01 ID:G2V14CdY
以上です。相変わらず長くてごめんなさい。
もうちょっと簡潔に書けないのか自分・・・orz
他の方のみなゆたSSで十分萌えてから、お使い頂くと効果的かもしれません。何という他人任せ。
次はつかゆきですか・・・
なんか眠くなってきたよパト○ッシュ・・・もうエロい文章が思いつかないよ・・・
ふた☆つか 〜みゆき〜
つかさ「うひひひ。ゆきちゃんを今からアヘアヘ言わせてやるうにょーんっ」
みゆき「いや、あんあんあんあん。つかささん、私、いっちゃいますーっ」
つかさ「出すよゆきちゃん。 ど っ こ い し ょ う い ち ー っ 」
どぷどぷどぷーっ
みゆき「アッー」
つかさ「はあはあ……良かったよゆきちゃん」
みゆき「はあはあ……nice penis」
〜完〜
これでいいでしょ、もうw
ダメですかやっぱり
>>145 GJ……と言いたいところだが、最後のそれで余韻が台無しになったぞ!www
つーか腹いてぇwww むしろそっちにGJ!w
いや、何も無理に書かんでも(汗
>>145 笑わせるなwww
罰として、ちゃんとしたつか×ゆきを書いてくれw
むしろ最後まで書かないとコレでバルサミコす〜♪
おお、これはまた期待だなww
>>145 いやもう、充分萌えるし充分おっきしました。ぐっじょぶ。
ていうか貴方のエロ描写のセンスにうらやましいをつきぬけてむしろ抱いてくれ。
俺も見習わなくっては。
つかゆき編も心待ちにしております。いや、nice(略)でなくて。
大丈夫、貴方ならきっと書ける。
>>145 飲みかけだったドクターペッパーが台無しです(´・ω・`)
それでもGJ!
つかこなONLYで見てたけど、色んな組み合わせがあるって新鮮でいーわー
153 :
42-519:2008/04/16(水) 23:50:10 ID:6bcQ1emW
12時に投稿してみますね。
・非エロです。
・みゆきさん×つかさ
時間軸的に「ふれんち、キス」と同じで背景にこなたとかがみが付き合っているというものがありますー。
夏休みも中ごろに差し掛かり、かがみさん達に送った暑中見舞いも、改めて私は残暑見舞いとして、遅らせていただきました。
泉さんからは手紙の返事がありませんでしたが、何か事故でもあったのかと思うと、少し心配です。
夕方ごろになるとひぐらしのカナカナカナと甲高い鳴き声声が、私にも聞こえてきます。
「みゆき、今日も歯の検診でしょう?」
朝食時、お母さんは私に言いました。
「…え、そうでしたっけ」
「何言っているのよ、歯は早く治療しないとだめよ
「でも、先日もいきましたが…」
「先生がね、『できるだけ次回の検診は早く来てください』って言うもんだから、私は『あら〜みゆきはいつでも大丈夫ですわ』っていったら、なりゆきで、明日になったのよ」
「…」
「それと明日は一日中でかけているけど、戸締りはきちんと頼むわね」
そうして私は今日も歯科医に診てもらうことになりました。
くすん。
・
・
・
「あれ、ゆきちゃんだー、奇遇だねえ」
熱中症避けのつばの丸い帽子をかぶり、私は定期に乗ってかかりつけの病院にいきました。
熱中症は軽く見られがちですが、死にも至る病気です。似たようなものに熱射病というものがありますが、こちらは熱中症の症状の一部です。熱失神、 熱疲労、熱痙攣、熱射病が主な分類です。熱射病は体温が40度近くまで上昇し、生命の危険にさらされるそうです。
めいいっぱいあの、きゅい〜〜〜〜んと高速回転するドリルにおびえて、痛さのあまり右手を上げました。「は〜い、痛いですね〜、頑張ってください〜」といわれ、結局やめてもらえませんでした。
歯医者さんには二度と行きたくないです、と私は辟易します。
くすんくすん。
その帰り道、つかささんと会いました。
つかささんは「暑いね〜」といいながら、服の裾を持ち上げてパタパタしています。
額からは汗がだらだらと、流れていました。
「ええ、本当に奇遇ですね。今日はどうしたんですか?」
「ううん、なんとなく、遊びにきただけなんだ…ゆきちゃんは?」
「私は歯医者の通院です…」
「そっかあ…ゆきちゃん、歯医者嫌いだもんね」
「ええ、本当に、もう、あの匂いから空気まで」
そういったつかささんは、どこか意気消沈しているようでした。いつもの明るさが、ほんの少し影を潜めているように思います。
その笑顔も、どこか私には寂しげに感じました。
それにどこか、私には違和感が感じられたのです。
その違和感はすぐに気づきました。
「今日はかがみさんと一緒でいらっしゃらないんですね」
「え!? う、うん…」
図星、なのかもしれません。これがつかささんを悩ましている原因なのでしょうか?
つかささんと目が合いました。つかささんはあいまいに笑い、えへへといいます。
「かがみさんと何かあったんですか?」
「ううん、何にも…」
かがみさんの名前を出すとつかささんは明らかに声のトーンが下がります。
「つかささん、私でよければ相談に乗りますよ。一人で悩まないでください。私達、友達ですから」
―――数分後、つかささんは泣いていました。激しいかんしゃくではありません。思い出すかのように目を閉じ、回想。それから「ごめんね…ゆきちゃん」と呟きました。それでも、つかささんは泣いていました。
・
・
・
感情の爆発が収まるのをまちました。いつまでも、永久に。
喫茶店に移動し、私はコーヒーを頼みました。つかささんにはメロンソーダと、ケーキをオーダーしました。
室内は冷房が良く通っていて快適です。私は帽子を脱ぎ、静かに見守っていました。
「あのね、ゆきちゃん」
「ええ、何でしょうか」
「お姉ちゃんが、最近冷たいの」
「かがみさんが、ですが?――正直、想像できませんが」
やはりでてきた名前はかがみさんでした。かがみさんは、つかささんの双子の姉です。
「うーん、ちょっと言い方が変かな? ごめんね、私、うまくしゃべるのへたくそで」
私は全然気にしないでいいですよと、答えました。
つかささんは運ばれてきたメロンソーダをストローを通し一気飲みしようとし、咽せた後言いました。
「最近、お姉ちゃん、どこかよそよそしいというか、一人で出かけたりしてるんだ」
「かがみさんにも、私的な用があるとは思いますが」
「ううん 違うの!――ごめん、ゆきちゃん」
「いえ、気になさらいでください」
「ありがとう、ゆきちゃん。
最近お姉ちゃんね、朝からでかけて夜まで帰らないことあるんだ…私に何も言わないで…
宿題を見せてと頼むとやっぱりお姉ちゃんは見せてくれるけど、それに対しておねえちゃんは何も言わなかった。
どこかいくの、と聞いてみたら「うん、ちょっとね」といって何にも教えてくれなかった!
今日も、今日もお姉ちゃんは私が寝ている間に一人ででかけてた!
――前はそんなことなかったのに。いつもお姉ちゃんは、私のことを心配してくれたのに。
ねえゆきちゃん。
私、お姉ちゃんに嫌われちゃったかなあ?
…私がどじで、いつも迷惑をかけているから。お姉ちゃん、愛想をつかしちゃったのかなあ?
お姉ちゃんに嫌われるの――うう、嫌だよお、お姉ちゃん――私、嫌だよ……っ!」
私はどうしていいのか、黙り込んでしまいました。
何か言わないといけません。どんな言葉でもいいから、つかささんを安心させないといけません。
それなのに言葉が出てきませんでした。
でも、私には確信していることがあります。
何を根拠にその結論を導いたかはわかりません。それでも、間違ってはいない、それだけは自信がありました。
「大丈夫ですよ、つかささん」
「え…?」
「かがみさんが、つかささんを嫌う理由なんてありません」
そう、これは事実。疑いようのない事実だと、私は思います。
「でも、でも」
「かがみさん、いつもいってらっしゃいましたよ。『つかさ、どうしているのかなあ』とか『つかさならきっとこうなるわよね』とか『つかさと今日は一緒に帰れないか…』って。かがみさんは、いつもつかささんのことを心配、いえ大切に思っています。
そんなかがみさんが、つかささんを嫌っているなんてありえません」
「お姉ちゃんが?」
「ええ、ここ最近かがみさんと電話したときも、つかささんの話題がでなかったことはありませんよ」
「そうだったら、嬉しいな」
つかささんは私は出したハンカチで涙を拭いていました。まだ目は赤く純血していましたが、落ち着きを取り戻していました。
えへへ、とはにかみながらつかささんは私に笑いかけました。
――あれ。
ど、どうしたことでしょう? な、なんだかつかささんがとても可愛らしく思えてしまいます。
小さな唇や、半袖のために外気にさらされている細い腕。私から見れば羨ましい、控えめな胸。そして今私に見せている笑顔。
ああ、なんてかわいいのでしょう。
「ゆきちゃん、ありがとう。私すっごく安心したよ。やっぱりゆきちゃんって物知りですね」
「…え? い、いえ、そんなことありませんよ。私の知識なんて、本当に役に立ちませんし」
「ううん、私、ゆきちゃんが親友でよかったよ。こういう話題はこなちゃんには相談できないし、きっと私、ひとりで悩んでいたんだと思う。
それにこの年にもなってお姉ちゃんのことで泣いたなんて、私って、やっぱり子供だね」
「誰かのために泣くことができるのは、素敵なことです」
「そうかな?」
「ええ」
「やっぱりゆきちゃんは優しいな。 私、ゆきちゃんのこと、大好き」
ああ、もう、我慢できません――。
「つかささん、すみません!」
「え?」
私はテーブルに手をつけて、前のめりになります。つかささんの顔が目の前にありました。その顔は驚きと、少しの期待が見え隠れしていた――というのは、私のうぬぼれでしょうか。どうであれ、我慢はできそうにありませんでした。
いいよ、ゆきちゃん。
空耳だと思います。でも確かにこんな言葉を聴いた気がしました。
つかささんのかわいらしい瞳は、すでに閉じられていました。
「ん…あ、くふぅ」
喘ぎ声にも似たため息がつかささんから漏れました。普段のつかささんからは想像できないような甘美で、艶のある声。
唇と唇が交わります。私はその瞬間に目を閉じました。
視界という情報が遮断された空間の中で、私とつかさんがひとつになりました。温かくて、優しくて、甘い甘い、キスの味がしました。
・
・
・
え、えーと。
これからどうすればいいのでしょう。
私とつかささんはキスをしています。人がまばらの時間帯ですし、従業員さんもこちらのほうには来ていませんから、気づかれてはいないと思います。
問題があるとすれば。
女の子通しであること。
それと、もう3分くらいはたっていること、です。
ど、どうすればいいんでしょう?
前かがみ気味になっている体勢は体に良くはありません。
――つかささんと目があいました。
異常に長いキス。その原因は単純です。いつ離せばいいのかお互いにわからない。きっとそれだけなんだと思います。
目と目で、会話をしました。
(すみません、つかささん…その、変なことをしてしまって)
(ううん、嬉しかったよ、でも…)
(でも…)
((ど、どうしようっか?))
本当にそんな会話をしたかは、私もわかりませんが、つかささんもこの状況に対する具体的な解決案をだせないでいるのは確かのようです。
結局私は意を決して、つかささんと離れました。
唇がクーラーで冷やされた外気に晒されます。
名残惜しいような不思議な感覚が、確かにそこにありました。
・
・
・
「え、えっと、その、申し訳ありません! 本当に申し訳ありません! その、魔がさしたというか衝動にかられたというか――」」
「気にしないで、ゆきちゃん」
それからぎくしゃくと二人は会話をしていました。
運ばれたケーキをつかささんが食べ終えた後、私は耐え切れずさっきのことを話題にしてひたすら平謝りをしました。
「いえ、私ったらなんてことを…熱射病で気が狂っていたんでしょうか?」
熱射病対策は万全です。そんなことありえませんと、私の中の人が否定していました。ああ、否定も許されませんか…」
「もう、ゆきちゃん、私気にしていないから、ね」
「いえいえ、その…」
呟きかけた言葉は、つかささんの唇によって封印されてしまいました。
甘くて、ふんわりした、きすの味。初体験から二度目は、もっと糖分が増しているように思いました。
…これで歯医者に行くことになる羽目には、なりませんよね?
「私、嬉しかったんだ。お姉ちゃんのことで、悲しくて悲しくて――どうしたらいいか、わからなかった。
そんなときにゆきちゃんと出会って、相談に乗ってもらって。
ちょっとびっくりしたけど、ゆきちゃんとのキ、キ、キキースね、とっても嬉しかった」
そういうつかささんはニコニコとした屈託のない笑顔でした。
私は、つかささんのことが好きになってしまったのかもしれません。
「つかささん」
「なに、ゆきちゃん?」
「今日、私の部屋にいきませんか?」
「うん、いいよ」
即答。
もうひとつ、私は聞いてみます。
「私と、友達以上の関係として、付き合い始めてみませんか?」
「――うん、よろしくね、ゆきちゃん」
くすんくすんくすん。
――つかささんは泣いていました。でもきっと、悲しみの涙ではないのだと、私は思うのです。
・
・
・
残暑が厳しい夏。
受験生として、一番大切な次期。
暑さの為した技なのか、さまざまな偶然が重なり合った結果なのか。
母のいない家に、自室につかささんを連れ込んだとき。つかささんが曖昧に微笑み、息を呑んだとき。
私はもう戻れない階段を上っていることに気づいた。
クーラーが作動し風を送る音が嫌に響いた。
「ゆきちゃん…私は、大丈夫だからね。ゆきちゃんとなら、怖くないもん」
「ええ、つかささん。一緒に楽しみましょうね――」
本で読んだだけの知識。想像するだけだった知識。
ベッドにつかささんを寝かし、つかささんのあそこに触れながら、胸をもみほぐした。
私の無駄に大きすぎる胸が、つかささんにあたりぷにゅっとへこむ。
―――愛撫する指に、背徳と興奮を感じながら、私は部屋の電気を落とした。
つかささんの喘ぎ声が、暗室に響きわたった。
161 :
42-519:2008/04/17(木) 00:11:05 ID:Il5zq7pC
以上です。
長くなりすぎてしまったのと実力不足のために続きを断念しましたorz
キキースシーンの二人の硬直が頭に浮かんでしまったのでssにしてみました。
GJ!
ついでにキキースシンね。
キキースシン
これがみゆ×つかの常套句なのですね
ちぃおぼえた
お二人がキキースシン以上のことをしている時、
こな×かがは、きっとそれ以上のことを( ;´Д`)ハァハァ
>>161 GJ!
みゆきさん大胆っ!
こうしてみゆきさんとつかさが付き合い始めたその裏で
こなたとかがみもそれはそれは仲良くしていることでしょう。いろんな意味で。
>>161 ラストの一節だけモノローグがである調になってるところが、みゆきさんの心理状態を
うまく暗示してるなあと思った。GJ!
もし、こなた達が学園祭で演じるのがダンスではなく時代劇だったら…
天下御免の大ツンデレ・柊かがみ
かがみ「はーっはっはっはーっ! これは大ふへんものと読むのよ! この柊かがみに釣り合う猛者が居ないから不便で不便でたまらないんだから!
これこそ、天下無双の大ツンデレ、柊かがみの朱柄の槍にてござ候! べ、別に構ってほしくて傾いてる訳じゃないんだから!」
裸眼のおっとり娘・高良みゆき
みゆき「かがみさん…私の裸眼は…物がほとんど見えません…ですが…人の心が見えますっ!
…私が…高良みゆきですっ! あらっ? も、申し訳ありません! 人違いで…」
一本気女将・峰岸あやのあやの「いいっ!? 友達以上恋人未満の関係では、言っていい事と悪い事があるのっ!
それを言ってしまったら…引き返す事なんてっ、出来なくなっちゃうんだから! …大好きっ!」
莫逆の友・泉こなた
こなた「かがみん…デレるなら、デレ抜き通してッ!
デレてる事を隠すのもまた、ツンデレにござる。ツンデレかがみん萌え!」
裂帛の気迫・柊つかさ
つかさ「こ、この喧嘩…私が買うよ!
上杉の心意気を…もののふの心意気を忘れて…利いたふうなくちをたたくなぁ〜〜!
おうぎ、バルサミコ大旋風〜〜」
エロ? 萌え? オチ? ごめん。無い
暴れん坊ツンデレ将軍とか、こな太郎侍とか、銭形みゆきとか・・・
>>167 >銭形みゆき
「ま、待ってくださぁーい、ルパンさぁ〜〜ん……あぁ痛っ!(←コケた)」
こちらを先に連想した俺は、まちがいなくアニメ脳。orz
糟日部黄門
♪じ〜んせ〜い〜らっく〜あ〜りゃ(ry
8:45
渥美こな之進「控えい!控えーい!このツインテールが目に入らぬか!」
ドォォ-ン(あのSE)
白石「そ、それは!?」
佐々ひよ三郎「こちらにおわすお方をどなたと心得る!
恐れ多くも先のツンデレ将軍、糟日部かがみ公にあらせられるッスよ!」
パァーーラーラーラー(あのBGM)
白石「ま、まさか……!」
こな之進「皆の者!御老公の御前である!
頭が高い!控えおろーう!」
白石「は、はは〜〜〜〜っ!!」
「なんてのはどうかな?」
「知るか!あと勝手に『御老公』にするな!」
うっかりつかさと風車のみさお。そしてお色気担当のかげろうみゆき(毎回入浴シーン有)
>>167 じゃああの名シーンは
「こなちゃんは―後略―」
「いえ、彼女はとんでもないものを盗んでいきました。……私の理性です(だばだばだば)」
というシーンに生まれ変わるわけか
かがみ「みゆきが鼻血を垂れ流す展開は変わんないのかよ」
こなた「私に抱きついてすりすりさわさわくんかくんかするかがみもね……」
174 :
42-519:2008/04/17(木) 20:50:56 ID:Il5zq7pC
>>161です。感想&お読みいただいてありがとうございました。
確かに確認したらキキースシンでしたorz ご指摘ありがとうございます。50回位無駄に聞いたんだけどなあ…
>>173 ああん、そのシーンが頭の中で再生されたよ
セクースシンだね
がばるね
>>161 ナイスみゆつかハアハアGJ !!
みゆつか分が不足している自分にはいい栄養になった
が、しかし ! いいところで幕引きとなっ !?
続きを所望する
>>177 アップローダーの上部がねんどろテックに占拠されてて笑ってしまった。
それにしても、よく作りましたねえ。
びっくり顔の為にスクラッチしたその行動力に乾杯。
久しぶりにSSDBを見に行ったけど、ずっと止まりっぱなしだなあ。
後で少し登録しに行こうかな。
>>177 なんであなたはそんなに色々出来るんだ…どれか一つでいいから分けてほしいwww
>>177 > 一発ネタのためだけにびっくり顔とサイコガンをわざわざスクラッチする俺バカス。
だが、それがいい、ていうか人たるものかくあるべし、と言いたい
>>177 ♪それは まぎれもなく ヤツさ
「ノックをすべきだったかな?」
「いいわ。あんたと私の中だもの」
「中とはまた大胆だね」
「そそそそっちの意味にとるなあっ!」
萌義賊こなた小僧VS女岡っ引かがみとゆうのは需要あるかな。
需要は作り出すものなんだぜ?
供給があれば需要は生まれてくる
ってばっちゃが生前言ってた
めぞんらき☆すた アパート幸運館の管理人をやってるかなたさん。代わりに旦那さんが故人に・・・
>>186 こなたはそうじろうの影響でオタになったらしい
つまりそれはこなた非オタフラグだ
>>187 そのパターンで、こなたじゃなくかがみがオタというのはどうだろう?
実はかなたさんが真性の腐女子でこなたも・・・と予想
190 :
ふた☆自重:2008/04/18(金) 17:15:33 ID:a6wfdN+g
時代劇ものってのは良さげですな〜。
こなた=女ねずみ小僧(江戸を賑わす大義賊)
ゆたか・みなみ=子ねずみ(こなたの子分)
かがり=火付け盗賊改メ(こなたの幼馴染)
つかさ=同心
みさお=岡っ引き
ざっと思い浮かんだキャスティングーググー。
女なのに小僧とはこれ如何にって感じですが・・・ぺったんこだし、いいかなと(うぉい
何という大地真央。
遅ればせながら、僕のSSにレスを付けて下さった皆様、有難うございました。
>>181 かなたさんの墓の下に、「トータス号」ならぬ「(貧乳は)ステータス号」が隠してあるわけか。
193 :
ふた☆自重:2008/04/18(金) 18:18:42 ID:a6wfdN+g
>>191 ちょ、待っw もう少しお待ちになって。
パン工場〜ってな感じで練りに練られたSSを、それこそ毎日でも投下したいのはやまやまですけど。
さすがに、ねえ・・・こればっかりはエロの神様が降りてこないと書けませんから・・・語彙が貧弱で俺涙目。
ごめんなさいね。
アッー!nice p(ry
ってな感じのやつでよければ、毎日投下できますがw
195 :
ふた☆自重:2008/04/18(金) 21:51:50 ID:w07tr2L2
>>195 こ れ は い い
あ な た が 神 か
>>195 postkeyはこの板のURLにある、半角英字7文字です
確か33か34スレ目あたりで告知されていたような……
198 :
ふた☆自重:2008/04/18(金) 22:18:40 ID:w07tr2L2
>>197 確認しました。有難うございます。
早速上げてきましたっ。
199 :
ふた☆自重:2008/04/18(金) 22:44:47 ID:w07tr2L2
あっ、
>>195←こちらに上げたやつは削除済みです。あしからず・・・。
>>195を見に行っちゃって、長門の顔面が出てきたから何事かとオモタw
momoiroって削除すると、次の絵が同じURL使うのかな。
>>195 ちょっと大人っぽい?
それがまた独特のエロティックと雰囲気を出していますね。
初スキャンという事は、普段はアナログオンリーorペンタブ直描きなんですかね。
このスレはあれか?
ふたなりモノ書ける人は画力までデフォで装備されてるのか?
ふた氏しかり、ぶーわ氏しかり、7-896氏しかり・・・
お願いだからどっちか才能譲ってくださいorz
さりげなく絵と文の両方をやっている人は多いかもしれませんねー
そういえば少し前のスレで、絵を一枚だけ専用ロダに上げていた作者さんがいたけど
見ようとしたら消してあって見れなかったのがあったなあ。
あれ以来絵の方は投下していないみたいだし、ちょっと見たかったかも。
何にしても、両方描ける人が羨ましいですね…
自分自身は絵が壊滅的に駄目なので、尚更そう思いますわ。
204 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 07:36:48 ID:BwG2iYtY
>>202 俺たちはとんでもない思い違いをしていたようだ…
ふたなりモノ書いてるといつの間にか画力が備わるんだよ!(くわっ)
俺だって…sage忘れる事くらいある…
ほう
な、なんだってー!
208 :
23-49:2008/04/19(土) 15:07:46 ID:BJdHDwcc
どうもです
メドレーリレー・バースデーの続き、第八話、上がりました
他に予定されてる方がいらっしゃらないようでしたら五分後ぐらいから投下させてください
・ゆたか視点
・エロ無し
・5レス使用
セミの声。
夏のまぶしい太陽と、それを遮る街路樹の枝葉。
バス停のベンチの平らな感触。
スポーツドリンクの冷たい喉越し。
どうして、今、こんなことを思い出すんだろう。
心を満たす、フラットで不思議な感覚。
それをくれた、先輩の笑顔。
あのときの、あの人も、こんな気持ちだったんだろうか。
【track 8 : あの日の記憶と二つの告白】
結論から言うと、拍子抜けだった。
なんて言ったら、悪いかな?
とにかく。
要約すると、こうだ。
みなみちゃんは昨日、学校の帰りにある人物と出会ったらしい。
名前は言わなかったけど、同じ学校の人だったようだ。
そして、目元を腫らしてベンチに座り込んでいたその人に、ハンカチを貸してあげた、と。
……それだけ。
ただ、その行為が、私と初めて会ったときにしてくれたのとまったく同じだってことを
気にしているみたい。
そして保健委員を続ける以上、今後も同じようなことをしていかざるを得ないということも。
「……ごめん」
話を終えたみなみちゃんは、最後に小さく、そう言った。
顔は伏せられていて、目線は下を向いている。
そんなみなみちゃんの姿が、横方向にスライドして、消える。
私の視線が勝手に動いた。
入れ替わって目に入ったのは、日下部先輩。
不思議そうな顔をしている。
でも、私には笑っているように見えた。ニコニコと、嬉しそうに。
……違う。
思い出したんだ。
蝉時雨の降り注ぐバス停。
フラットで不思議な感覚と、それをくれた先輩の笑顔を。
あのときの先輩もこんな気持ちだったのだろうか。
だとしたら……ううん。そうじゃなかったとしても、私の言うことは、決まってる。
目を戻す。
「……そっか」
私はうなずいた。
笑顔で。
日下部先輩のあの笑顔にはとても敵わないけど。
「みなみちゃんは、優しいね」
敵わなくても。
そうしたいから。
「え……」
顔が上がる。
驚いたような表情。
「私は嬉しいよ? みなみちゃんが、その人のことを見捨てないでくれて」
「で、でも……私は……」
「うん。……ほんと言うと、ちょっとだけ複雑な気分もあるけど……でも、他の人にしないで欲しいなんて
言わないし、みなみちゃんはそんなことしないって、信じてる」
「……」
あ、ちょっと泣きそうな顔。
でも、どうしてだろう。
そんな反応が、なぜか嬉しい。
「だって最初に私に声かけてくれたとき、みなみちゃん、別に保健委員じゃなかったでしょ?」
「――!」
戸惑いに揺れていた目が、大きく見開かれる。
なんだか不思議だ。
どうして私の周りの人たちは、自分の長所というか魅力というか、そういうものに気付かないんだろう。
「仕事とか義務とかじゃなくて、みなみちゃんだから。みなみちゃんが、そういう優しい人だから、
私のこともその人のことも助けてくれたんだよね?」
「……それは……」
戸惑い。
そして、うなずき。
「うん。そんなみなみちゃんだから、私は大好きになったんだし、こうして友だちになれてよかったって
思うんだよ? それに――」
調子よく出ていた声が、止まる。
どうしよう。勢いで口走りそうになっちゃったけど、けっこう恥ずかしいセリフかも。
周りにはみんなもいるし。
「……?」
って、ダメだ。みなみちゃんが不安そうな顔になっちゃった。
高良先輩も言ってた。
言うべきことはちゃんと言わないと、って。
「え、えと、その……そんなに悩むってことは、あのときのことを、それだけ大切に思ってくれてるって、
ことなんだよね? ……私も同じだから、その……嬉しい」
また尻すぼみな喋りになっちゃった。
頬がどんどん熱くなってきて、思わず顔を伏せかけたけど、慌てて上げる。
みなみちゃんは、
「……」
ほとんど無反応。
茫然としているのか、それともただの無表情なのか――どうしよう。わからない。
急に不安になる。
「あ……えと、それとも、別にそういうことじゃなかった……かな……」
ってゆーか、そうだよね。
何言ってるんだろう、私。
「ち――違うっ!」
え?
「……みなみちゃん?」
「じゃ、じゃなくて――違わ、なくて、だから、その……」
あれ?
みなみちゃん、真っ赤だ。
視線と手先を泳がせて、口を開いたり閉じたりして。日下部先輩の流儀で言えば、「パニくってる」。
「だから――だから、つまり、その……」
同じような切れ切れの繰り返しが、しばらく続く。
私は口を挟まなかった。
周りの、他のみんなも。
「……私は……わたし、も――」
そうして、みなみちゃんは、とうとうそれを口にした。
「――私も……私も、同じだから。……ゆたかと」
「……」
ゆっくりと。
意味が沁み込んでくる。
同時にどんどん顔が熱くなっていく。さっきまでも熱かったけど、さらに。
まるでみなみちゃんの言葉がそのまま温度に変わってしまったみたいに。
なんで?
さっき自分で言ったときは、ただ嬉しかっただけなのに。
ううん、今も嬉しいけど。
でも、それと同じぐらい、恥ずかしい。
「――え、えと、ええっと……あ、ありがと……」
「……私、こそ……」
みなみちゃんもますます真っ赤だ。
急に周りが気になって、見回した。
高良先輩とそのお母さん、みなみちゃんのお母さん、峰岸先輩はにこにこ笑っている。
日下部先輩とつかささんは、感心したような顔。かがみさんはなんとなく複雑そう。
そしてお姉ちゃんとパティちゃんはニヤニヤしていて……
「……何してるの?」
なぜか二人がかりで田村さんを羽交い絞めにしている。
その田村さんは、窮屈そうな体勢ながらも、何か満ち足りたような笑顔。
もう思い残すことはないっす、とか呟いてたり。
「気にしないで、ゆーちゃん。必要な措置なんだよ」
「That's Light。ヒヨリはワタシたちに任せて、サァ、続けてクダサイ」
「続けて、って……」
みなみちゃんに向き直る。
続けろって言われても……もう言うことは全部言ったと思うし…………あ。
そうだ。
「みなみちゃん。一つだけ、訊いてもいいかな?」
「……なに?」
「えっと、ダメならダメでいいんだけど……昨日、ハンカチを貸した人って、誰かなー、って」
軽い気持ちだった。
ちょっと話題を変えようと思っただけで、最初から気になってはいたけど、
どうしても知りたかったってわけでもない。
だけどみなみちゃんは、ぎくり、と顔を強張らせて、思わずといった感じで横方向に視線を投げた。
反射的に目で追いかけてしまう。
その先にいたのは、
「……」
他の人たちから微妙に離れた位置で、辛そうに眉をしかめて、私たちを見つめていたのは、
私と同じ髪型の、少し特徴的なシルエット。
え?
じゃあ――
「あっ……」
しまった、みたいな声。みなみちゃん。
だけど遅い。
もう全員の目が向けられた。
「へ?」
「そなの?」
日下部先輩と、お姉ちゃん。
二人から短く問いかけられて、十一人分の視線を受けて、
「……ええ」
かがみさんは、ため息をつくようにうなずいた。
「ええ、そうよ。今の話の、みなみちゃんにハンカチを借りたっていうのは、私」
お姉ちゃんと日下部先輩、そしてつかささんが目を丸くする。
私も同じ思いだ。
「……ごめんね、みなみちゃん。余計なこと言っちゃったのね、私」
「……い、いえ……」
それはつまり、かがみさんは泣いていたということに他ならない。少なくとも落ち込んでいた、と。
どうして?
かがみさんは、男の子から告白されて、それで悩んでたんだよね?
振られたというのならわかるけど、告白されて、どうしてそんなことになるの?
疑問を込めて視線を向けると――峰岸先輩は、無表情だった。
「……」
たぶん、初めて見る。
いつもにこやかなあの人から、笑顔が消えている。
少し怖くさえある、一切の感情が見えない面持ちで、私の視線にも気付かない様子で、
峰岸先輩はかがみさんを見据えていた。
どういう反応なのかはわからない。
でも、先輩がウソをついたとも思えない。
だったら――単純に、それとは別の何かがあった?
「――かがみさん」
高良先輩が一歩、前に出た。
「名乗り出てくださったということは、話していただけると思っていいんですね?」
質問というよりは確認。
「やっ! っちょ、ま……!」
そこに入る、待ったの声。
いつの間にか元に戻っていたみたい。
「なんですか、田村さん」
応じる高良先輩の声は、強く厳しい。
「い……いえ、その…………」
「いいのよ」
そして言葉に詰まった田村さんを、かがみさんは自ら遮った。
「説明する。……ごめんね、田村さん。いろいろ気を使わせたみたいで。――みんなも」
もう一つ、ため息。
あちこちから、「いや……」とか、「別に……」とか、中途半端な声が上がった。
それらを受けて、かがみさんはリビングの出口方向へと向かう。
「かがみ?」
「……ちょっと待ってて。すぐ戻るから」
お姉ちゃんの声も半ば無視して、そのまま出て行ってしまった。
「……」
「……」
「……」
微妙な空気。
沈黙は降りていない。
「……どーなってるっスか。どーすりゃいいんスか……」
「…… Wmm ……モハヤ、説明してもらうシカないと思いマス……」
うろたえる田村さんと、それをなだめるパティちゃん。
「……あやの……」
「……うん……」
「……ゆきちゃん……」
「……待ちましょう」
不安そうな日下部先輩とつかささんに、それぞれ静かに寄り添う峰岸先輩と高良先輩。
「……」
悔やんだ顔で押し黙るみなみちゃん。
そして、
「……」
ポケットから取り出した携帯電話を、お姉ちゃんは助けを求めるように見下ろしていた。
「お待たせ」
言葉どおりすぐに戻ってきたかがみさんは、手に何かを持っていた。
「ええと、みなみちゃん」
「あ……はい」
「とりあえず、先にこれ、返しとくわね。ありがとう」
「……いえ……」
一つはハンカチ。
どうやらみんなの荷物を置いてある部屋に行っていたらしい。
そしてもう一つは、何かの紙切れ――官製はがきぐらいの大きさの、白い封筒。
一見したところ何も書かれていない。
あれって……
「なんだそれ、ひぃらぎ?」
日下部先輩の質問に、かがみさんの答えは簡潔だった。
「ラブレター」
あ、そうなんだ。
こなたお姉ちゃんが峰岸先輩たちにって言ってた招待状かと思った。同じ封筒だから。
でも、普通の文房具屋さんとか、あとコンビニなんかでも売ってるものだし、
そもそもかがみさんが持ってるわけはないよね。
と、
「えっと……ソレはもしかして、私にくれるのカナ? ……カナ」
引きつったような笑みを浮かべながら、お姉ちゃん。
「いやいやいや、あたしだろ。だよなひぃらぎ?」
日下部先輩が続く。
「……んなわけないでしょ。もらったのよ、私が」
「……」
「……」
「「「――ええええぇえぇえぇぇぇぇえぇえぇぇええええっっ!?!!?」」」
「っ!?」
――びっくりしたぁ。
お姉ちゃんと日下部先輩と、あと田村さんとつかささんが、ほとんど絶叫した。
他のみんなも少なからず驚いている。
私以外は。
だって私は事前に聞かされて知っていたから……って、
あれ?
ふと見ると、峰岸先輩も、目を見開いてかがみさんを凝視していた。
さっきの無表情よりもなお珍しい。この人があんなにもはっきりと驚愕をあらわにするなんて。
でも、どうして?
かがみさんが男の子から告白されたらしい、と。
まだパーティーの準備をしていたときに、そう教えてくれたのは、峰岸先輩だったのに。
214 :
23-49:2008/04/19(土) 15:18:19 ID:BJdHDwcc
以上です
ありがとうございました
ゆーちゃんの包容力は異常
この続きが早く読みたさは異常ぐっじょぶ
これで解決の方向にいくのか、もう一山あるのか
複雑に絡み合う伏線が素晴らしい…続き期待してますよっ!
続きが気になりすぎて倒れそうです
218 :
ふた☆自重:2008/04/19(土) 21:20:10 ID:qrCiLRjm
>>218 ほんとにあんたって人は…毎度毎度なんて物を描くんだ(褒め言葉)
>>195 こなた「んふ〜最高だねぇ〜たまらないね〜(=ω=.)」
かがみ「……(興奮中一MAJIでこなたに襲い掛かる5秒前)」
>>218 ゆたか「すてき……絵柄もいいけど、体格が少し大人な所もいいよね……」
みなみ「だめ……もう我慢できない……(け○っぐこん○)」
みゆき「これはもう、私たちも描いて頂かなければなりませんね」
つかさ「股間がばるさみこす〜」
みゆき「ああっ!つかささん(鼻血)」
>>214 おおお続きが気になるぜ !
あやののびっくりした顔が想像できないw あの糸目がカッっと見開かれるのだろうか? w
しかしウソから出た真、本当にかがみがラブレターをもらっていたとは・・・
どうなっていくのかwktkが止まらない
>>218 うわ、なんてもの描くんですか貴方。
性欲を持て余して実にスネーク。保存、保存しなきゃっ!
223 :
42-519:2008/04/19(土) 23:49:28 ID:VRSGAY83
誰もいませんようでしたら55分にssを投稿してみます。
>>161の「みゆつかの夏休み」で続き希望の方がいらっしゃいましたので文章力ないのに書いてみました。
自重もののへたくそさですが、一応投稿してみます。注意事項として
・みゆつかの夏休みの続きです
・エロより萌えに重きがあるかもしれません。
もしよろしかったら、お付き合いお願いします。
「ん…あ、ああっ!」
つかささんを下にして、私は乗りかかります。クーラーの設定温度は25度。標準設定温度よりも低めに設定したありますのに、温室のようにむあっとしています。
つかささんのあそこに這わす私の手が震えています。緊張しきった顔に、時折表れる恍惚とした表情。
かわいい割れ目に撫でるようにいやらしく手を動かし、優しく触ります。
私はつかささんにキスをしました。
「あっん、くふ…」
舌と舌が絡み合う濃厚なキス、愛の営み。
唇から感じられるぬくもりに、私の体全体がほてってきます。
「はあ…はあ」
離れた唇からは、細い線の糸が引いていました。その糸が途切れ、私の手に落ちます。私はそれを口に運びました。むせてしまうような味。それでも、喉を通ったとき、精神的な快楽を感じました。
つかささんが私の唇、ほほ、首筋までなめてきます。唾液のべたべたした感触が顔全体に広がります。「ああ、ああ」と声をもらしながら、つかささんの舌が這うさまを快楽の園に落ちながら感受していました。
「こうしたキスは…お嫌ですか?」
呼吸がいまだ収まらないつかささんに聞いて見ます
つかささんは、夢を見るような表情で「ううん」と答えました。
「違うんだ、ゆきちゃん」
「違う…とは?」
「恥ずかしいんだけど…でぃーぷきす、ていうんだよね? 私、初めてで」
えへへと、私に笑いかけます。
「…もちろん、私もですよ」
「そ、そうだよね。でもゆきちゃん、上手だよね」
「そういっていただけると光栄です」
「本をよく読んでいるからかな? それともやっぱり、慣れているから?」
「――えっと、その、慣れている…とは?」
「なんていえばいいのかな、うーん、難しいよ」
「…自慰、のことですか?」
「じい?」
「改めて繰り返されると、とても恥ずかしいのですが…」
「うーん、やっぱりわからないな。ねえゆきちゃん、やってみてよ」
「ええ。ええええええええええええ!?」
つかささんは下から、物欲しそうな顔で見つめてきます。だめです、理性のたががはがれそうなくらい愛しい…
とはいえ、恥ずかしいのも事実です。
それなのに、すぐさま私は折れてしまいました。
「あ、あの! 決して笑わないでくださいね」
「大丈夫だよ〜」
私はつかささんから、ベッドから降りて床にお姉さん座りをしました。
つかささんが起き上がり、私の方に見つめてきます。
私のあそこが、じゅっと濡れてきているのが下着ごしに感じました。つかささんに見られるのか、見せ付けるのか。
めがねが曇って、よく見えません。
・
・
・
「ああ…ああっ!」
胸を乳首をもてあそぶ様に撫でつけ、胸全体を揉み解します。泉さんにからかわれてしまうような、走ればたゆんたゆんとゆれてしまいそうな胸をいつものように――時折にしか、やってません!――愛撫。
左手は下着の中に、汗やら別の汁で濡れた下着の中に、手を入れてくちゅくちゅと左手を動かします。
つかささんが、驚きやら羞恥やら、そんな好奇心を持った目で私を視姦してきます。その目がわたしの淫猥な顔から、胸、あそこに移ったとき、よりいっそうの快感を私は感じるのでした。
・
・
・
「こ、こんな、感じです、はい…」
そのまま続けたいのを精一杯、できるかぎりの理性で押さえつけました。
つかささんの顔をまともに見ることができません。私は目をそらしながら、消え入りそうな声を搾り出しました。
「それが、じい、っていうんだ」
「は、はい…つかささんは、経験ないんですか?」
「うーん、角に執拗に、そこをこすったことはあるけど、ゆきちゃんみたいのはないかな?」
「えっと、それは俗に言う角――」
「え?」
「い、いえ! なんでもありません!」
「あ、でも!」
つかささんが思い出したように言います。
「でも…とは?」
「お姉ちゃんがそうやっているの、見たことあるかも。ちょっと扉が開いていたから、ノックし忘れて、入ろうとしたんだけど、怖くて入れなかったんだんだあ」
「そ、そうですか…」
かがみさん…ご愁傷様です。
ドイツ語で言うおなにいを、鍵も閉めずに行うのは無用心だと思いますが…「あれ」のときは頭が回らないものですね。
私は一人っ子とはいえ、気をつけませんと。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないありません」
「???」
・
・
・
体位反対、とでも言うのでしょうが、私の上につかささんが乗りかかるような形になります。
つかささんは不思議そうに私の胸を見て「やっぱしゆきちゃん大きいね〜、私もまだ伸びるかな」と呟きました。「その、恥ずかしいです」と、爆発しそうな胸を一瞥し、私は顔を背けていいました。
ここになって初めて私とつかささんは、お互いに上着を脱ぎました。かわいらしいつかささんの胸の乳首はすでに勃っていました。
私の視線がそこにいったのを知り「あはは…恥ずかしいね」と遠慮がちに微笑みました。
私の胸も、つかさささんと同じです。
「じゃあ、いくね…」
つかささんがおそるおそる、私の胸に腕を落とす。乳首をつぶすように、押したり引いたりします。乳房全体を強くもまれます。
ああ、ああ…何よりもつかささんに胸をもまれているという行為に、私は激しく興奮してしまいます。
胸への愛撫、べろが私の胸全体を優しく撫でます。
「つ、つかささん、お上手ですね」
「そ、そうかな」
吸ったり、嘗めまわす。つかささんのぎこちない動きが、私にはたまらない刺激に感じます。ああ、ああ、と喘ぎを隠せません。
慣れてきたのか、つかささんは意を決して私の大切なところに顔をうずめ、舌を這わします。
「ああああっ!!!」
懸命につかささんは嘗め回します。つかささんのはあはあと喘ぐ音。こらえきれない喘ぎ声。私はびくんびくんと体を震わせ、くねらせます。
「そこ、そこです!」
「う、うん!」
つかささんが俗に言う――存在については諸説あるそうですが、私はあると思います――Gスポットを撫でます。
びくっ!
快感の波がより一層に激しくなります。私は「ああ、あああ!!」と、体を湾曲させよじります。
つかささんの撫で回す舌がクリトリスを優しく愛撫するとき、私の興奮は絶頂に達します。
「ああああああああっ!!!」
胸をたゆんたゆんと揺らしながら、私は、私は――
・
・
・
「ゆきちゃん、すごい色っぽいねー」
「お、お恥ずかしい限りです…」
理性の復興。私は異常に火照った顔を背けながら、答えました。
「本当にゆきちゃんって、彼氏いないの?」
「ええ、残念ながら――でも」
「でも?」
「その代わり、こうしてつかささんと一緒にいられるのですから、素敵なことかもしれませんね」
「私も、そう、なのかな。どちらにしても、ゆきちゃんと友達、ううん、恋人――だよね? になれてよかった」
ええ、そうですね、と私は呟きます。
何よりも嬉しかったのは、望んでいたのは私ですから。
「私も、ちょっと我慢できないかも――ねえゆきちゃん、”えっち”、してくれる?」
「ええ、もちろんです」
つかささんが私からどき、私がごろんと場所をゆずります、つかささんはゆっくりと、慎重に仰向けになります。
私のあそこあたりは既に濡れていて、しみになっていました。
「私、どうしたらいいか、心配で心配で!…そうしてゆきちゃんにであって」
私は何も返さず、相槌を打ちました
「なんだかお姉ちゃんの気持ちがわかった気がするんだ。お姉ちゃんも、こなちゃんとこんな感じなのかな、って」
「えっと、それは…」
「ううん、こなちゃん達が『そう』しているかはわからないけど、二人ってとっても仲いいよね」
「そう、ですね」
「友達と一緒にいるって、こういうことなのかな。一緒に幸せになるということ」
「わかりません、わかりませんけど、私もそう思います」
つかささんの胸を撫でながら。私は言いました。
激しい呼吸の乱れが、きっと答えなんだと思います。
「それにね、ゆきちゃん」
はあはあと、呼吸の合間につかささんは囁くようにいいました。愛撫をやめ、私は耳を傾けます。
「こうして、二人で秘密を共有しているって、なんだか嬉しいな」
「そうですね。そうですけど――つかささんだと、ちょっとだけ心配です。
…あ。も、申し訳ありません! いえ、本当にたいした意味では」
「あー、ゆきちゃんひどい…」
「いえ! 本当に信頼はしているんです! その、言葉のあやというか」
私はしどろもどろに自分の言葉を否定します。いえ決してつかささんの口が軽いとかそういうことをいいたかったわけではなく――。
「ううん、いいよゆきちゃん。ゆきちゃんが酷いこと、言うわけないもん」
「…申し訳ありませんん」
「じゃあ代わりにね」
つかささんは、呼吸を整えようと努力し、なんどもせわしく息をしていました。
一瞬の空白。それを名残惜しむかのように、泣き笑いとも取れる笑顔をみせて。
「一緒に楽しもう――ね?」
「は、はい!」
そうして私はつかささんの頬に接吻をしました。
クーラーの作動する音。設定温度、壊れているのでしょうか。
私は上記して上からの汗、下からの汗をかきながら、そんなことを思ったのです。
でも、そんなことはどうでもいいです。今はそう、つかささんと一緒にいられれば、それだけで私は幸せだと思いました。
つかささんの言う通り。恋人通しって、こういうものなんだと、私は思ったのでした。
229 :
42-519:2008/04/20(日) 00:02:48 ID:VRSGAY83
以上でした。
えっちシーンて難しいんですね…書けるかた、本当に尊敬していますです。
えっち描写どころかエロゲーすらやったことないのに無茶をしましたorz
ちょっと勉強してきます。
GJ!エロいだけじゃなくて、二人がすごく可愛いかったです!!
みゆつからしさがにじみ出たSSだな。GJ!
232 :
9-727:2008/04/20(日) 16:09:37 ID:XinbcT8t
亀です。
亀なんです。
パティの誕生日記念SSなんです。4日遅れってさすがに駄目すぎですね…orz
さらにパティの記念SSとかいいつつ誕生日全然関係ありません。しかもひよりん視点です。
エロ有り(パティ×ひよりん)で、4レスお借りします。
「Good morning,ヒーヨリ♪」
チュッ。
「ふぇっ?」
今、「チュッ」っていった?
で、今、唇に何か触れなかった?
ということはもしかして、いや、もしかしなくても……
「えっ、ええええええええええ!!!!?」
「ナニ大きな声を出しテるんでスか、ヒヨリ?」
「い、いいいいいやいや、今パティ、私に、き、キスしなかった?」
「Yes,タシかにkissしましたが……イケませんでしタか?」
パティはいかにも不思議そうな顔で私を見ている。
そんな顔をされたら何かこっちが間違ってるような気がしてきたけど、そんなことはなかったっス!
「いけないもなにも、人前でいきなりキスなんてされたらそりゃ大声も出すって!」
「Mmm...軽いアイサツのつもりだったのでスが……それはSorryでしタ」
ありゃ、悪いことしちゃったかな……。
そんなに落ち込むとは思ってなかったんだけど……。
「いや、ま、まぁさ、こっちもびっくりしちゃっただけだから」
意外なほどしょげている様子のパティに、私は咄嗟にフォローの言葉をかけた。
「デモ、嫌だったんでスよネ?」
「えっ? う、うーん、嫌かどうかって言われたら、嫌じゃなかったけど……」
「ソウでスか、それは安心しましたネ!」
途端にパッと顔を明るくさせたパティを見て、私はしまった、と思った。
「デハ、ヒヨリにはこれからアイサツのトキ、kissするようにしまスね♪」
「だ、だだだ駄目だめっ!! それとこれとは別っ!!」
「嫌じゃないなら、ソレはOKのシルシでス」
はぁ、まんまとパティにしてやられちゃった。
パティは何だかんだでちゃっかりしているところがある。
それは分かってたはずなのに、何で私はいっつもこうなるかなぁっ。(とほほ)
「明日カラが楽しみでスね、ヒヨリ♪」
それにしてもパティ、そんなに私とキスがしたかったのかな?
そんなわけでその日以来、私は挨拶のときにパティにキスされるようになった。
私の注意もあってか、人が見ているときにはしなかったり、それかほっぺにしたりするんだけど、
人がいないときには自重ゼロで唇にしてくるもんだから、私もすっかりパティの唇の味を覚えてしまった。
嫌じゃないのは本当だし、これがパティなりの挨拶みたいだからキスされるのはいいんだけど、
キスするときのパティがやけに楽しそうに見えるのは私だけ?
「ヒヨリ?」
「ん?」
「kissしてもいいでスか?」
パティとのキスが当たり前になってきたある休日、
私の部屋で一緒に漫画を読んでいたパティに突然そう聞かれた。
「ま、また? さっきもしたばっかでしょ?」
実はこの日、玄関ですでにおはようのキスはされている。
基本的に挨拶のとき意外はパティもしないから、今日はもうさよならのキスだけだと思ってたんだけど……。
って、何だおはようのキスって。何ださよならのキスって。
はぁ、私もすっかりこの生活になれちゃってるなぁ……。
「ていうかパティ、前々から聞こうと思ってたんだけど、何で小早川さん達にはキスしないのさ」
そう、パティは小早川さんや岩崎さんにはこんなことをしたりはしない。
最近では何回か二人にキスの現場を見られていることもあって、
なんだか温かい視線を送られているような気がする。
「Hmm,もしユタカにkissしたら、ミナミにNice boat.サレてしまいまスからネ」
「いやいやいや、岩崎さんはそんな人じゃないから」
「そしてミナミにkissして、もしユタカがshockを受けて倒れてしまったらセキニンを取ることがデキませんネ」
「ま、まぁ確かに分からなくもないけどさ……
って、これは二人が付き合ってたらっていう妄想の下での話でしょうが!」
「ではヒヨリは、アノ二人の間に割って入るユウキがアリまスか?」
「う……それは確かに出来ない……」
「デショデショ? ということデ、ヒヨリ、kissしーてっ、kissしてっシテっ♪」
「それとこれとは関係ないからっ!」
「やっぱり、嫌だったんですネ……?」
「うぅ、だから、その、嫌なわけじゃないから……ね?」
そういい終わった後で、はっと気付く。
「デハ、OKとイウことですネ?」
またやられた。
「パティ、それはずる……」
最後の言葉を言い切る前に、私はパティに口を塞がれた。
今度のキスはいつもと違って、パティの口はなかなか離れていかなかった。
まるで恋人同士がするみたいな、長いキス。
首の後ろあたりにまわされた手が温かくて、何かに包まれているみたいで、心地よかった。
パティは最後に私の唇を軽く舐め、口を離した。「ふぇ……」と情けない声が出る。
ニコりと笑い、そしてまたパティは私と唇を重ねた。
両手で抱きしめられ、私達はさっきよりも密になった。
しばらくするとするりと生温かなものが口の中に滑り込んできて、
それは私の口の中を乱し、そしてうすぼんやりとしていた意識をさらにぐら付かせた。
「ん……あぅ、ふ……ちゅく」
パティは上手だった。
このまま全部もってかれてもいいって思うくらいに。
ディープキスなんて漫画でしか見たことはなかったけど、
こんなに気持ちがいいものだってことを、初めて知った。
きっとパティに抱かれていなかったら、足から崩れてへたりこんでいたと思う。
「くちゅ……んぅ、んんん……」
喘ぎにも似た声が勝手に口から出て、私の中ともパティの中ともつかない場所でそれが響く。
パティの舌のどうしようもない気持ちよさと生々しい水音は確かに私の体を疼かせて、
段々と私の頭から思考を削いでいった。
「ヒヨリ……」
パティは不意に口を離した。
目を開けたそこにいたのは、今までに見たことのない表情のパティだった。
自分から仕掛けたはずなのに、いつもの人を振り回すくらいの余裕が無くなるまでキスに熱中して。
そんな顔だったら、考えていることが全部分かっちゃうよ。
だって、そんなに切なそうで、真剣で、それで女の子な顔、
それはきっと、「好きな人」に向ける顔だから。
「あの……」
その口元は何を躊躇っているんだろう。
大丈夫、きっと何を言われても、私はパティを受け入れるから。
「あの、ワタシ……」
「パティ――私は」
パティに言われた言葉が頭を駆け巡る。
「私は、『嫌』じゃないからね――?」
嫌じゃないなら、それはOKのしるし。
今まで気付かなかったなんて、馬鹿みたいだ。
「ヒヨリ……」
ぎゅっと、パティに抱きしめられる。
「大好きでス」
「私も、だよ」
顔の見えなくなったパティの言葉を、私は目を閉じて聞いた。
「愛してまス……世界で一番、ヒヨリのコトが大切でス……!」
落ち着きを取り戻しかけていた心臓が、パティの言葉を受けて大きく脈打つ。
まるで私の心が、パティの心と共鳴しあったことを示すかのように。
「もう離さないでス、ヒヨリ……」
何回目かも分からないキスの味は、今までで一番気持ちよかった。
「キレイですヨ、ヒヨリ」
パティの前で裸になるのは、不思議と恥ずかしくなかった。
「何言ってんの、パティのほうが大きいでしょ」
「小ぶりなホウが、可愛いでスよ」
「もうっ、パティまでっ」
「フフ、たくさんシてあげるからネ、ヒヨリ♪」
パティはキスしながら、私をベッドに押し倒した。
もちろん不安なんて感じない。
重なる唇も、胸を触る手も、その全てが愛おしかった。
こんな気持ち、初めてかも。
「ん……ふ、あっ、ああっ……」
体が熱い。胸がドキドキする。
触られているところがじんじんして、すごく気持ちいい。
「大丈夫でスか、ヒヨリ?」
「う、ん……あぅ、気持ちいっ、いいよ、ふぁあ……」
口と手の愛撫によって私の体は否応なしに感じさせられ、
ぐちゅぐちゅと音を立てるそこはさっきから体中の水分を
全部出してるんじゃないかと思うほど、ぐしょぐしょに濡れていた。
「あ、あ、ふぁ、んっ、んん、気持ちい……おかしくなりそぅ……」
一人でするときでは味わうことのない、圧倒的な快感。
それが津波となり私を飲みこんで、元のところへは戻れないような奥底まで引きずり込む。
私はそれにあがなうことなく、ただ身をまかせ、
体がぐちゃぐちゃになってもそれすら厭わず、
ただ身を委ねることだけに代えようのない安堵を感じている。
「んぅ、あっ、ああ、あああぅぅ、ん、ぅんんっ」
壊れたCDプレイヤーは停止ボタンを押しても音楽を止めることはない。
音量を絞ろうとしてもそれすらできず、ただ可愛げもないよがり声を部屋に響かせる。
けれど、それでいい。
きっとそれは、答えだから。
パティが私を「大好き」と言ってくれたことへの回答だから。
パティの愛情、私を大切に思ってくれる心、
それが今、パティの中でどんどん増幅していって、溢れたそれが口や手を通って私の中に入ってきて、
優しく、温かく、私を包み込んでくれている。私の全てを受け入れてくれている。
そんなパティの気持ちに対する私の答えが、この声なんだ。
それは不恰好で、恥ずかしいものなのかもしれない。
けれど、それは着飾ることのない、ありのままの私の声。
惜しげもなく、私なんかに全ての愛情を向けてくれたパティと同じ。
全てをさらけだせる、そんな関係でいられることがこの上なく嬉しいんだ。
「はぁあっ、あっ、あ、だめっ、パティ、あぁっ」
「イキそう、でスか?」
パティの問いに、私はコクコクと頭を振る。
ふつふつと確実に高まっていた絶頂感は、もう少しで爆発しそうだった。
「んっ、あっ、パティ、はや、だめ、そんな、んんんっ」
パティはラストスパートとばかりに手を速める。
ぴちゃぴちゃと音をたて、溢れ出た愛液が飛び散っている。
「あ、ああああっ、耐えらんな、いよっ……!! うああぁっ」
片手でクリと中を攻められ、片手で胸を撫でられ、
そして口でいろんなところにキスされて、私はもう喘ぐことしか出来なくなっていた。
「う、ああぁあっ、い、くぅっ……あ、ああ、ああああああっ」
ごぷ、と中からどんどん大量の愛液が分泌され、
溢れたそれはパティの指の下を通って、お尻のほうに流れていった。
半分力の抜けた手で、シーツをぎゅっと掴み、これから来る絶頂に備えた。
「あ、あ、うあっ、ああぁあっ、あああああっ!!!」
パティの激しい愛撫で普段の何倍にも膨れ上がった快感が一気に押し寄せ、
私は大きく声を張り上げて絶頂に達した。
正直普段のそれとは比較にならないほどの快感で、一瞬だけ意識が飛んでしまった。
「う、あ、ああっ、んんっ!! あぁっ!!」
体がびくびくと痙攣する度に、一人でするときのような普通レベルの絶頂感が襲ってきて、
それだけで私はまた軽くイッてしまう。
「ふ、あっ、ふぇ……、あっ、ふあぁ……!」
何度も何度もその循環を繰り返し、やっと体が落ち着きかけたころに、
また秘部に指先が触れる感覚がした。
「だ、だめだって、ああっ、パティ、これ以上、はっ……!」
パティはいつもの茶目っ気のある笑顔で私を見て、
「ヒヨリの可愛いトコロ、もっと見たいでスから♪」
と言って、私の制止も聞かずにまた愛撫を始めた。
「ん、あ、ああっ、パティ、も、ホントに、駄目っ……」
声を出すのも精一杯の私は賢明にパティを止めようとしたけれど、
手も上手く動かせない今の状況では、それは無理らしかった。
「あ、ああああっ、また、イ、きそ……ふぁあぁっ」
敏感になっていた私の体はたった数秒触られただけですぐに達してしまいそうだった。
中がきゅうぅと何度も締め付けられ、緩む度にまた枯れることのない泉から愛液が溢れてくる。
頭がぐらぐらして、自分がどこにいるかも分からなくなってきて、
よく意識が飛ばないな、と自分でも不思議に思っていたけれど、
「んっ、んんっ、ああっ、うあああっ、パティ、だめ、ぅああああっ!!」
と、大きく喘いだあたりで、、二回目の絶頂を待たずして私の頭の回路はショートした。
意識が戻った後、パティに再三謝られ、私は膨れながらもパティをしぶしぶ許した振りをした。
しかし本心では、「強引にされるのも『嫌』じゃないかも」何て思ったりするのだった。
237 :
9-727:2008/04/20(日) 16:16:14 ID:XinbcT8t
これで終わりです。最初はエロ無しの予定だったのですが、やっぱり書いてしまいました。
やっぱりMなひよりんは受けですね!
それにしても読めば読むほどパティの誕生日関係ないですね。
でも最近ぱてひよモノが無かったので、パティへのプレゼントということでここは一つ…。
読んでくださった方、ありがとうございました。誤字等ありましたらすみません。
>>232 亀がしゃべったーーーーー!!
てか、パティが「Kissっ娘でネっ!」しとるw
GJ!!
>>229 おおおっ・・・みゆつか萌えるわぁ・・・GJ !
>>237 ひよりんはこれをネタに同人誌描くと予想w GJ !
準備されている方がいなければ、投下させていただきます。
「Escape 第1話」 (Elopeの続き)
こなた、ゆたか、かがみ、みなみ、つかさ
※注意事項
・非エロ
・続き物
・シリアス
ソメイヨシノが盛んに舞い散る季節に、私は大学の門をくぐった。
全国で行われた受験戦争の結果としては至極上々で、第一志望の大学に合格することができた。
入学してからは、大学の講義を受けたり、星の数ほどあるサークルの見学をしたり、
授業が無い時間や休日を使って自動車学校に通ったりして、表面上は慌しいスケジュールをこなしていた。
しかし、私の内心は酷く空虚なままだ。
何をするにしても全く味のない食事をとっているようで、感慨や喜びといった類のものが沸いてこない。
強い憤りや、怒りというマイナス方向の感情もわきあがってこない。
焦燥感に苛まれたまま、酷く薄めた粥を飲むような、淡々と消化していくだけの
味気ない日常が傍らを通り過ぎていくだけだ。
そして、肌にまとわり付く空気に、湿った暑さを感じるようになる、5月下旬の深夜。
私は、風呂上りの濡れた髪を乾かせながら、ぼんやりと深夜番組を見ていた。
売り出し中の芸能人が、様々なサブカルチャーを紹介する番組で、今日はメイドカフェの特集だった。
こなたがバイトしていたコスプレ喫茶を思い出して、唇だけで薄く笑う。
俗っぽいことしかできない平凡な宣伝番組…… おそらく視聴率は1%もないであろう。
しかし、単に時間を潰すために見ていたテレビ番組に、私の人生は大きく変えられることになった。
リポーターにマイクを向けられた、メイド服を着た二人の少女を、私はよく知っていた。
「こなた! 」
こなた…… と、小早川ゆたかちゃん。
輝くような笑顔でリポーターの質問に答えている。
しばらく、私は、呆然と二人の少女をみつめていたが、リポーターが店の所在地を紹介する時に、
弾けるように立ち上がってペンをとった。
そして、店の名前と所在地を辛うじて書き写してから、大きく息を吐き出しながら呟いた。
「こなたがいた」
あらゆる感情が同時にわきあがる。
強い愛情と同じくらいの憎悪という、焼け付くような激しい想いが燃え上がり、身を焦がす。
「会いたい…… 」
半ば無意識に立ち上がって、勉強机の上に置かれているPCの電源を入れる。
検索サイトを使って、メイドカフェの所在地を調べると、あっさりと店のHPが判明する。
店の名前は『アルテナ』、所在地は名古屋市中区某所。
インターネットの便利さと怖さを痛感しながら、HPを印刷する。
それから、物置から旅行鞄を引っ張り出し、何かに取り付かれるようにして、着替えを鞄にしまっていく。
「おねえちゃん…… 何をやっているの? 」
気づくと、いつの間にか扉が開けられていて、双子の妹であるつかさが青ざめた顔で立ちすくんでいる。
「明日から旅行にいくわ」
私は、後ろを振り返らない。
「お姉ちゃん…… もしかして、また名古屋に」
普段はのんびりしている癖に、変なところで勘が鋭い。
「そうよ」
不機嫌な声を出して、私は、荷物を入れる作業を再開しようと下着を掴む。
「でも、今更どうして…… もしかして、こなちゃん達の居場所がわかったの? 」
つかさに嘘はつけない。
私は、不承不承ながらも頷かざるを得なかった。
「だ、駄目だよ。お姉ちゃん。こなちゃんとゆたかちゃんは…… 」
「何よ。私はこなたにとっての邪魔者だというの! 」
私は、妹に向けて怒鳴った。
「ち、違うよ、私、そんなこと…… 」
つかさが、オロオロしながら数歩後ろに下がる。
「そうよね。私、おかしいわよね」
泣き出しそうになるつかさを見て、私は、一転して自嘲めいた呟きを漏らした。
「お姉ちゃん…… 」
「笑ってもいいわよ。つかさ。未だにこなたの事が忘れられないの」
どーもでつ(´・ω・`)ノ
久しぶりにSSを投下させてくだしあ。
前回
>>465のいのみきSS「愛に勝ってしまう愛」の続編になりまつ(´・ω・`)
回想シーンの挿絵も一枚用意してきますた。
多分17レス使用すると思い松(´・ω・`)
問題なければ15分後位に投下始めさせてくらはい(´・ω・`)
こなたが駆け落ちしてから、既に4ヶ月以上が経っているのに、未だに、
こなたの事を思い出として消化することができない。
こなたのアンニュイな含み笑い、こなたの小さな掌の感触、こなたのところどころに乱れた長い髪……
何もかもが眩しくて愛しい。
こなたのいない日常なんて、生きているのか、死んでいるのかすらも分からない、無味乾燥な日々でしかない。
「お姉ちゃん。でも、こなちゃんは…… 」
しかし、私の大好きだったこなたは、小早川ゆたかちゃんと、二人だけの世界に閉じこもってしまった。
まるで恋愛小説の主人公みたいに、禁断の恋を理解しない周囲から逃げるように、
遥か遠い場所まで逃げてしまった。
「私は、許さないから…… 」
私の心を奪っておいて、二人だけで安穏な楽園を築いているなんて…… 絶対に許せない。
傍からみると、酷く滑稽で無様なことは分かっているけれど、胸の奥からわきあがる
ドロドロとしたどす黒い感情を抑えることはできない。
暗い情念に取り付かれてしまった姉の姿を、つかさは狼狽しながら見つめている。
「つかさ…… あんたはどうするの? 」
「えっ、私? 」
つかさは、口ごもった。
「留守番をしていてもいいわよ」
妹に対する口調は、酷く冷たい。
しかし、覚悟の無い人間に同行してもらっても足手まといになるだけだ。
「ううん」
つかさは首を振った。
「私だってこなちゃんの事好きだもん。こんな別れ方なんていやだよ…… 」
つかさは、ぎゅっと掌を握り締めながら、きっぱりと言った。
「私も行くよ。お姉ちゃん」
「分かったわ。それならば準備しなさい。でもね」
私は、つかさに向けて指をさしながら、はっきりと言った。
「帰りたかったら、いつでも帰りなさい。私はこなたを連れ戻すまでは決して戻らないから」
「う、うん。お姉ちゃん」
つかさは気圧されながらも、こくんと頷いた。
何か重なってしまったみたいなんで時間おきますすいません(´・ω・`)
妹が去ってから、私は荷物をまとめる手を止めた。
1日や2日では難しいが、ミスさえ犯さなければ、ふたりの住んでいる場所は容易に判明することはできる。
問題はその後だ。
「情けは無用よ」
私は、心の中にある甘い感情を切り捨てるように呟いた。
こなたを連れ戻す方法を、努めて冷静になって考える。
「やっぱり、ゆたかちゃん…… かな」
この一点が頭に浮かんでくるだけで、私の地獄行きは確定している。
格闘技の経験者で、運動神経抜群のこなたを直接狙うのではなくて、
身体の弱いゆたかちゃんをターゲットにするのだ。
しかし、決して油断することはできない。
ゆたかちゃんは、単なる病弱な少女ではない。
前回の追跡劇の苦い結末が脳裏に蘇る。
昨年の12月、せっかくゆたかちゃんを手中に収めながらも、岩崎みなみちゃんは、己の欲情を抑えられずに、
本能のままに押し倒した挙句、眠っている間に、まんまと脱出されてしまった。
しかし、私は、みなみちゃんを笑うことはできない。
殊勝に反省した態度をみせていた、狡猾極まりないゆたかちゃんに、すっかりと油断させられていたのは、
私も同様だった。
そして、ゆたかちゃんのいないベッドで、世界を喪ったような表情をしていたみなみちゃんを見て、
私は奪還劇の終幕を悟った。
無理をすれば、もう一日くらいは名古屋市内を駆け回ることはできただろうが、
メンバーの誰もが意欲を失っていた。
結局、私達は、何ら得るところもなく、帰ることしかできなかった。
今回は、前みたいな愚かしいミスを犯さないようにしないといけない。
特に、ゆたかちゃんを捕まえた後が重要だ。
「絶対に逃がさないわよ」
私は呟きながら、携帯のボタンを押す。
『もしもし…… どなたですか』
どこか擦れた低い声が鼓膜に伝わる。
不機嫌そうなのは深夜だからというだけではないはずだ。
「もしもし、柊よ。姉の方」
『あっ…… かがみ先輩…… 』
一瞬の間をおいた後、私ははっきりと伝えた。
「ゆたかちゃんの居場所がわかったわよ」
『どこ、何処です! 』
「落ち着いて」
ひどく興奮する、みなみちゃんをたしなめてから、冷静な口調で続ける。
「名古屋市内の『アルテナ』という名前のメイドカフェよ。こなたとゆたかちゃんはそこで働いているわ」
『メイド…… カフェ? 』
みなみちゃんの怪訝そうな声が聞こえる。
「メイドのコスプレをしている喫茶店よ。とにかく、私とつかさは明日にでも名古屋にいくわ」
『私も行きます! 』
みなみちゃんの切羽詰った声が聞こえる。
「みなみちゃん。あなた、覚悟はあるの? 」
私は、敢えて疑わしそうな声で尋ねる。
『どういう…… 意味ですか? 』
「例えゆたかちゃんを取り返しても、彼女の心は決して戻らないわ」
『えっ? 』
ゆたかちゃんとこなたにとっては、私とみなみちゃんは、二人の中を壊そうとした不倶戴天の敵だ。
決して許そうとはしないだろう。
「甘い期待を抱くのは、金輪際やめなさい。あなた、ゆたかちゃんとベッドを共にしたからと言って油断して、
逃げられた事をもう忘れたの? 」
『そ、それは…… 』
「ゆたかちゃんは、あなたが思っているよりずっと頭が良くて、こなたのことが好きなのよ」
冷徹極まりない物言いだが、仕方が無い。
単なる狂気だけでは、愛する者を奪うことなどできやしない。
「もし、それでも良いならば、明日、私の家に来なさい」
『かがみ先輩の家? 』
彼女は不審そうな声を出したが、構わず言葉を続ける。
「ええ。場所はもう分かっているわね。明日の午後1時に旅の用意をして…… 来て」
『分かりました』
返事を聞いてから携帯を切る。
時計を見上げると、既に深夜の1時を回っている。
「さてと、忙しくなったわね」
小さく呟いてから部屋の電気を消し、ベッドに入る。
私は、メイド姿のこなたを思い浮かべながら瞼を閉じた。
読んでくれた方ありがとう。
スピード感のある話が書ければと思います。
>243
イクシジャヌン氏
お気になさらず。
失礼しました。お名前を間違えてしまいました。
イクシキャヌン氏。ご容赦を。
>>248 乙
かがみ黒いよかがみ
ゆーちゃんとの黒対決にwktk
これは血の雨も覚悟せねばならぬか?
>>248 まさか、まさか続編が読めるとは! そしてこなかが相打ちそうな予感にガクブルです。
みゆきさんの動きも気になるし……凄まじく心配しつつも、ぐっじょぶでした。
>>248 黒モノは慣れないのでつが、一から読んでみるとストーリーに引き込まれていった感じでつ。
何か、単なる狂気という物では無いのがまた味があるというか・・・これは、GJ(´・ω・`)
>>248 GJすぐる
まさかの続編にwktkという表現では表しきれないほど興奮している
先ほどかぶってしまいましたので、今から15分後位に投下をさせてくだしあ
基本的な注意点は
若干オリジナル要素があることと、オリキャラ(主にいのりの同僚)などが出ます。
といっても重要な役割という訳ではないですが。
問題なければ30分頃始めさせていただきたいと思いまつ(´・ω・`)
一回書きましたが前回の続編でつ。
それから三日。
家の中ではまるで変わらない私達、当たり前だけど。
私は比較的空いてる車両に立って、携帯を取り出した。
うん、いつもより早めに出た甲斐あって今日は余裕で間に合いそうだ。
ついでにいつもより人ごみも少ない。
課長、時間にうっさいからなー。
もちろん出勤前はお母さんに見送られた、ただそれだけだが、私にはそれだけでウィ○ーINゼリー10個分のエネルギー補充に匹敵する。
今日もなるべく早めに帰る様にしてお母さんとの時間を一分一秒でも長く作らな……。
そこまで考えていた時、急に臀部に不快な感触を覚えた。
触られている。
首だけを動かして後ろを見ると、若干頭の薄そうな小太りのオヤジが、私の尻を撫でている。
触り方といい、体の隠し方といい、恐らく昨日今日に初めて痴漢を犯したという訳では無いだろう、ほぼ間違いなく常習……。
こういうの相手に泣き寝入りしなきゃならない女ってのも辛いわね、今までそんな女を見つけては痴漢を繰り返していたのだろうか。
だが私は当然容赦する気など無い、特に、こういう男には――――。
今は離れている手を、再び私の尻に伸びるまで待った。
私が一回目で何の反応も起こさなかった事から既に泣き寝入りするものとタカをくくっているんだろう。
だから、近いうちにまた―――。
読みどおりだった、再びオヤジに手が私の尻に伸び、接触。
その瞬間、私はその手を掴んだ。
「……!!」
オヤジの顔が明らかに動揺する。
そして私は勢いよく後ろを振り返り、憎々しい痴漢オヤジの顔を見つめるとニコッと微笑を投げかけ……。
「オジサマ、私と一緒に次の駅で降りましょーか?」
会社は遅刻するだろうが、もはやそんなの関係無い。
オヤジの顔に焦りが出た、私を力でふってもぎ放とうとするオヤジの手を離さぬまま、腕を逆の方に捻り上げてやった。
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
声にならない悲鳴をあげるオヤジ、それでも抵抗しようとするオヤジに対して今度は鳩尾に突きを入れて黙らせた。
ナメんじゃないわよ、これでも空手の段位取ってんのよ。
そのまま次の駅でオヤジを強制的に電車から出し、歩かせる。
そこでオヤジは女々しく言い訳を始め、更には財布を出し諭吉を五枚取り出して示談金だの何だのとぬかしてきた。
更に頭に来た私は、その金をはたき落とし、更なるスピードでオヤジを連行していく。
そして、駅事務所に文字通り「蹴りこんで」やった。
「このオジサマ痴漢の恐らく常習犯ですので、よろしくお願いしますね?」
常習だろうがそうでなかろうが知った事か、私が痴漢された事実に変わりはないのだから。
呆気に取られる事務員を残し、再び私はホームに戻った。
「柊〜〜?」
課長のいがらな声、言うまでも無いが、遅刻。
「すみません課長、ちょっと電車の中で一悶着ありまして」
「っかぁ〜〜、まぁ取り合えず座っていい」
半ば呆れたような顔をしながら課長が手を振る、私は言われた通りに席に座った。
「ちょっといのり、どしたのォ?」
同僚仲間のサエがイスを近づけて寄ってきた。
「今回私は本当に被害者だもん」
そう言って私は机にうなだれる、それを横目に苦笑する友人。
「柊、お前は少し遅刻が多いのをなんとかしろ、それさえ除けば優秀なんだぞ?」
課長は会社の成績の事を言ってるのだろうが、正直私はあまし興味が無い。
ただやれと言われた事をこなしてるだけの話、それで順位が上と言われても何の執着も持てない。
「いのり、前回何位だっけ?」
サエは私とは違って成績を気にするタイプなのか、たまにこういう事を聞いてくる。
「三位だったと思うわ」
言い捨てる様に答える、そんな数字の順位だけで、サエから見れば私は尊敬の対象になるらしい。
単純というか何と言うか……まぁ私も悪い気は全くしないのだが。
「今回の売上目標は600、少しでもこの数字に近づける様に誠心誠意……」
部長の退屈なミーティングを聞き流しながら、私は今日の予定を頭の中で整理する。
仕事終わったら取り合えず夕食の買出しして、でーお母さんに……。
「ねぇいのり」
思考中に横からサエの言葉が割り込む。
「どしたのサエ」
一時思考を中断し、サエに振り向く。
「坂上さん、何か昼休みにいのりを昼食に誘うみたいよ」
「はぁ?」
坂上君、成績優秀でルックスも良く、女性社員からも人気が高い。
私も彼とは仲は良い方で、よく昼食を共に食べたりするものだ。
「そんなのいつもの事じゃない、それがどうしたの?」
「何ていうのかな、いつもと空気違うのよ、思いつめてる感じ?何かそんな、う〜〜ん」
何だかよくわからないが、要するにいつもと違うらしい、悩み事でもあるのかもしれない。
「ま、昼食の時にでもわかるでしょ」
「で?何悩んでんの?」
私は坂上君と食堂に来ていた。
「今日は俺が奢るよ」とか言って、随分気前いいわね、もちろん訳ありなんでしょうけど。
「悩んでるって……俺が?」
「他に誰がいんの?そんな顔してたら私じゃなくたってわかるでしょうに」
本当は前もってサエから聞いていただけなんだけど、さっさと話を進める為にこう言った。
「何か、お前には隠し事できないな……」
観念したように坂上君が呟く。
くどいようだが、私はただ単にサエから聞いていただけの話だが。
「なぁ、柊……」
坂上君がそこまで口にした所で、何を言いたいのか、何となくわかった気がした。
――――私が好きだとか言うんじゃ……。
もしハズレたらすごい恥ずかしい事になりそうだが、やはりと言うべきか、その通りだった。
「いま付き合ってる男、いるのか……?」
付き合ってる男は、いない。
男は、ね。
「俺と付き合って欲しいんだ、駄目か?」
私は彼の目を見た。
一部の心無い妬み男からは顔だけだの節操無しだの言われてる彼だが、実際はピュアな所がよく目立つ。
こうやって私の答えを待っている今も、その様子はまるで初めて告白をした中学生のような感じ……。
対照的に私は、顔色一つ変えていない無表情のままだった、こう言うと変な自慢に聞こえるかも知れないが、男に告白されたのは別段初めてではない。
もちろん、すぐに玉砕させていたのだが……。
坂上君、私は彼が好きだった、ルックスがいいだけあって初めて見た時はそれなりに胸もはずんだ。
実際に友達になってみて楽しかった。
だが、それ以上の感慨はまるで無かった。
いくら「好き」と言っても所詮は友人レベルの「好き」である。
私がお母さんに抱いている「それ」と比べれば、文字通り雲泥の差であった。
私は彼と友人ではいたいが、恋人にはなれない、もう私の心は一人に占領された状態なのだから。
だから彼の為にも私の為にも、私は考える素振りも見せずにこう言い切った。
「ごめんね坂上君、私にはもう「いる」から」
「……」
彼が少し目を見開く、そんなに意外だったのかしら……私に断られるのが。
少しして、彼が無理に笑顔を作った。
「そっか、いや、ごめんな、そうだよな」
上手く繕えてないみたいだ、断られたのが意外だったからなのか、それとも、もしかして本当に初めての失恋だったからなのか、私にはわからない。
彼とは最近よく二人で飲みに行った事もあったし、私が好意を持っていると誤解されても仕方が無かったのかもしれないが……。
「だから、今まで通り「友達」としてやっていこう?っていうのは、虫がいいのかな?」
「ごめんな、告った手前、今すぐ元通りに取り繕える程器用な性格してないから……」
彼は下を向きながら告げた。
そういうもん、なのかしら、彼の気持ちがわからなかった、ったく、こんな事なら学生時代にまともな恋の一つでもしとくんだった。
「坂上君なら、私なんかよりよほど釣り合った女、いっぱい見つかるわよきっと」
もちろん、慰めにも何にもならない上目目線の台詞かもしれないが、そう言うしかなかった。
「ハハ……」
ただただ、寂しげな視線を含んで笑う彼の目をこれ以上直視できずに顔をそむけた。
結局私はその場で坂上君と別れ、自分が食べた分を清算してその場を後にした。
正直、彼からの告白が嬉しくなかったという訳ではない。
その事「自体」は嬉しいのだ。
だから私は自問自答してみる。
仮に私が迫ったあの夜、お母さんに完全拒絶され、今の関係が無かったら……この場で坂上君を受け入れていたのだろうか?と。
アンサーはすぐに出た、答えは……否。
女々しくも、それでもお母さんを愛していた筈だ、理屈じゃくて単純な結論、自分の事は自分が一番理解している。
だから、お母さんとの今の関係が成立した時の至上の喜びも……全く忘れてはいない。
私はその時の出来事に記憶を走らせた。
そして記憶は飛ぶ、私が無理やりに近い形で初めてお母さんと関係を持った日から一週間後位の話……。
その一週間、お母さんは表面上、まるで変わった素振りを見せなかった、まるであの夜の事をまるっきり覚えていないかのように。
ただし、一つ、違った点があった。
……私と目を合わそうとしなかった事だ。
お母さんのその仕草で、私は今更ながら自分の犯したものの大きさに気づいた。
ほんと、遅すぎる、今思い返しても。
その時の私の中には絶望しか残っていなかった。
だが、所詮は自業自得、お母さんに目も合わせてもらえない、その原因を作ったのは誰だ?私だ。
私はここである事を決めた……もうこの家にいられない、家族関係を崩壊させる基盤を作った私には……ここにいる資格すら無い。
それに、ここに残っててはまたお母さんに同じ仕打ちをしてしまうとも限らない、今の私の理性には「もうしません」という自信がない。
かと言ってこっそり出て行ってから連絡無しではいくら何でも心配かけるだけだ、最悪警察に捜索願届けを出されるなんて事もあり得る。
だから、部屋に置手紙を置き、出て行った後に会社から手紙とメールを送る方法を取るつもりでいた。
卑怯なやり方かもしれないが、家族皆の前で「家を出ます」とは言えそうに無かった。
間違いなく、私の決心は折れてしまうだろう、あの暖かい光景の前では……。
そこから更に二日間、、家族にはバレない様に部屋の中でトランクケースに必要分な荷物だけ積める。
他の物はこの家に全部残していくつもりだった。
何かに活用してくれるなら良し、邪魔と処分されるならそれも良し……着替え一式、会社の書類道具、あとは……。
写真、お母さんとのツーショットの写真、これだけは処分されては困る。
これは自分で持つ、自分の住む所が決まるまではサエの部屋に居候させてもらう事になった。
最後に、泣きべそタイムだ。
誰にもバレない様に、部屋の隅で静かに泣いた。
こうして決行の日、私は表面上普通通りに家族と接した。
普通に妹達としゃべり、普通に夕飯の手伝いをし、普通に皆とテレビを見、普通におやすみの言葉を交わした。
深夜2時、まつり、そしてかがみやつかさの部屋を覗く。
電気は消えており、暗い部屋の向こうに寝静まっている妹達。
静かに謝罪の言葉と別れの言葉を告げて、トランクを持って下へおりる。
部屋の明かりは皆消えている、もう暫くはここには戻ってこれない、だから少しでもこの家を目に刻んでおきたかった。
そうして、私は玄関へ出る。
外へ出て神社を一瞥、神職の娘でありながら随分罰当たりな事をしたもんだわ……と今更ながらに思った。
最後に、家と神社に向かって深くお辞儀をした、それから神社に背を向け、夜の外へ―――――。
『いのり……こんな遅くに何処へいくの?』
―――――最後の最後で、引き止められた。
そして私は、深夜の町をお母さんと肩を並べて歩いていた。
『少し、散歩でもしましょうか』
その言葉に従ったからだ。
歩いている最中、お母さんはやはり一言も言葉を口にはしなかった。
何も聞こうとはしない、何も答えようとはしない。
ただ、お母さんは少し肌寒そうにしていた、だから私は静かに、着ていたコートをお母さんにかけた。
そう、今思えば三日前にマフラーをかけてあげたあのシーンと酷似している。
そして……。
『ねぇ……』
指さされた建物、それは、ラブホテル。
『ここに、入らない?』
この誘いも、今思えばやはり三日前と重なっていた。
――――――誘った人物が私ではなくお母さんであった事を除けば。
これもまた今にして思ってみれば、私はこの時、お母さんに試されていたんじゃないか、と思った。
ホテルに入ろうというお母さんの誘いを私が拒否していれば、あの夜の事は一夜の過ちとして片付ける事が出来るかもしれない、と。
そして、元の家族に戻れるかもしれない。
お母さんは優しいから、私がそれを望めば、元に戻ってくれたのかもしれない、あの時のいのりはどうかしていたのよ、と。
では、私が誘いに乗ったら?
……もちろん私の答えは後者だった。
二人で部屋に入る。
お母さんは何も言わない。
私は何故誘ったのかの真意を問いただすことも出来ない。
そこまでの理性が残されていなかったからかも知れない。
だから私は、
『何で……』
そこまで口にするのが手一杯だった。
『いのりが今どうしたいかを知りたかったの、それと、私自身の……』
お母さん自身の答えはわからない、でも私がどうしたいのかと問われれば、
そんな事、決まりきっている。
『言っていいの?』
『言って頂戴、いのりが直接』
お母さんに、同じ仕打ちをしてはいけない、その一身で家を出る決意までしたというのに……。
私の抑えはあっけなく崩壊してしまった。
結局、もう収まりがつかない所まで来てしまった。
『抱かせて、お母さん、お願い』
まるでオブラートに包まぬ私の願いを聞き、お母さんはゆっくりとベッドに横になった。
『後はいのりの好きにして頂戴、今日はただ、全部いのりに任せるから』
その後は理性がもたず、よく覚えていない。
ただひたすら、お母さんを抱いた、それだけ。
お母さんを隅々まで感じた、その時の私はもう人間ですらなかった。
行為の最中、私は何度もうわ言の様に呟いた。
『おかあさん、私もう、死んじゃう、もう、おかあさん』
そんな私と一緒に、堕ちてくれたお母さん。
朝になっても、裸のまま抱き合ってた。
お母さんは寝息をたてていたが、私はずっとその顔に見入っていた。
『出ていかないで、いのり』
その言葉が寝言だったのか、それとも、私に言ってくれた言葉だったのか。
だが、そんな事はどうでもいい事だった。
もう私はその言葉を聞いただけで、この上ない幸福感に浸れていたのだから。
『私、あそこにいてもいい?』
寝息をたてるお母さんの髪を梳きながら呟いた、文字通り、もう死ぬ程お母さんが愛しい。
こんな都合の良い展開、こんな罰当たりに許されるのか。
それも、もうどうでもいい、確かに私が今一番欲しかったものは、この手にある。
これでもう、欲しいものが無くなってしまったな―――――。
――――それから私はお母さんと一緒に家に戻り、トランクからまた荷物を元に戻した、もちろん自分の部屋でこっそりと。
泣き笑いしながら、はたから見ると気持ち悪く映ったかもしれない。
お父さんやまつり達にいつもと同じ様に「おはよう」の挨拶を交わしている光景を不思議に感じながらも……。
私は欲しかった「幸せ」を手にした事を実感していた。
……それから、今のお母さんと私の関係が継続しているに至っている。
――――私は回想を打ち切り、時間を見る。
……既に昼休みは終わろうとしていた。
全く休みをとった気がしなかった。
人間の体とは不便に出来ているもので、もう休み時間が無いとわかった途端、軽い眠気に襲われる。
私はトイレに寄り、顔に軽く冷水をうたせてから、職場に戻った。
席につくと、サエがイスを動かしてこっちに近づいてくる。
「ねぇねぇ、坂上さん何だって?ひょっとして恋愛相談とかそんなやつ?」
自分が告白された、とは言わなかった。
そんな事言いふらす趣味は無いし、坂上君の事も考えた上で、
「そんなとこね」
とだけ答えた、恋愛相談という点に関しては本当でもあるのだから嘘は言ってないだろう、と心の中で遠まわしな言い訳をしながら。
「へぇ〜〜、ね、ね、相手誰だか聞いた?」
嬉々としてそんな事を聞いてくる、好奇心旺盛というか何と言うか……。
でも私は彼女のこういう屈託の無い所が嫌いではない、苦笑いを浮かべながら彼女に視線を移し、
「残念だけど、相手までは聞いてないわ」
と言っておいた、サエは「な〜んだ」と言わんばかりに頬を膨らませる、ひょっとして坂上君に気があったりするのかしら。
そうであればもちろん喜んで応援させてもらうのだが、ついさっき当の本人をフったばかりの私がそういう行動に出れば、嫌味と捕えられかねない。
だから私はこれ以上何も言わずにPCに目を移した。
「坂上さんの好きな人かぁ、私だったりしないかなぁ……」
そのサエの呟きを聞いてしまい、申し訳ない気分とも、何ともいえない心境になったのを表には出さずに仕事に没頭する事にした。
ふ……ぅ。
退勤まであと十分、でもこの十分が意外と長い。
入念に見直しをする
「いのり、何か食べてく?」
「ん〜……」
夕食の買い物は……後でもいいかな。
既に私のお腹は軽い悲鳴をあげていたからだ。
昼はロクに食べなかったからなー、坂上君のせいで。
「そうね、軽く食べていこっか」
「じゃー決まり!私ロッカールームで待ってるから」
そんなサエに頷いて、私は何気なく窓から下を覗き見る。
―――――瞬間。
ガタンッ
「ごめんサエ、やっぱ私帰るわ」
「え?、ちょっといきなり何で!?いのりい〜〜!?」
嘆き叫ぶサエをシカトしてとっととタイムカードを押し、足早にロッカールームへ。
その時私の着替えの早さは入社以来最速タイムでは無いかと思う程早く……。
まるでショットガンの様にロッカールームを飛び出し。
別段早く来る様になる訳でも無いのに、意味無くエレベーターの↓ボタンを連打する。
着いたエレベーターに飛び乗りまたもや1Fボタンを連打。
エレベーターが開き、走って出口へ、そこには……。
「お母さん、どうしてここいるの?」
「たまには一緒に帰ろうかと思って」
そう言って子供の様に微笑む母を軽く抱きしめたくなる衝動に駆られるも、流石に人前で自重する程度の理性は持ち合わせていた。
ああもう私これでお腹いっぱい。
文字通り私のお腹はもう鳴らなくなっていた、何て現金な……。
「一緒に、買物いきましょう」
そう言って私の手を取るお母さん。
「ちょ、お母さん」
流石に人前で手をつなぐのは……しかも会社の前で、サエあたりに見られでもしたら……。
「?」
だが首をかしげるお母さんの仕草に私はすぐさま敗北し、そのまま駅へと二人で歩いていった、もちろん手は繋いだまま。
「ただいまー」
「あ、おかえりー、お母さんとお姉ちゃん帰ってきたよ」
最初に出迎えてくれたのはつかさだった、それからかがみとまつりが出てきた。
「さ、皆もう居間に集まってて、すぐにご飯の準備しちゃうから」
お母さんがそう声をかけると素直に従う妹達。
だが、そんな中、まつりの目の色が、というより私を見る目がいつもと違った様に見えたのは気のせいだったのだろうか。
「「「「いただきます」」」」
そして夕食タイム、やはりまつりだけは、何処と無く思いつめたような表情をしていた。
……何か、あったのだろうか。
夕食を終えると、私は部屋に戻り、買ってきたばかりの小説を取り出した。
今度ドラマ化もされるらしいが、そっちにはあんまり興味無い、多分ドラマだとまるきり別の代物になっているに違いない。
だが、袋を開けた所でドアを叩く音があった。
「どうぞー」
私がそう言うと、ドアがガチャリと開く、立っていたのはまつりだった。
「姉さん、今いい?」
「いいわよ、座んな」
まつりはいつもの明るさを隠した表情で、私の横に腰掛ける。
何かの相談事だろうか、ずっと考え込んでいた様だし、
「どうしたのまつり、何かあった?」
私がそう聞くと、まつりは視線をこちらに向け。
「何かあったのは……姉さん達の方でしょ?」
そこまで言われ、私は急に言葉に表せないような不安を覚えた。
姉さん「達」……?
まさか……。
「ねぇ、お母さんと何があったの?」
その不安が音をたてて大きくなった。
「……何のこと?」
私は内なる動揺を決して表には出さぬ様にし、さも今初めて聞きましたと言ったような表情を作ってみせた。
歴とした証拠をつきつけられぬ限り、私は最後までとぼけ抜くつもりでいた。
が……。
「私、見たんだ、姉さんとお母さんが、その……」
その先を聞きたくなかった、だがまつりは言葉を下した。
「―――二人で、ホテルに入っていくところ」
一度はまぬがれたと思っていた絶望が、再び私の上に重くのしかかった。
もう、言い逃れはきかない。
私一人だけならともかく、この場合お母さんも責められる対象になる。
せめてそれだけは避けなければと必死に頭を振り絞る。
絶望の淵にたたされた私にまつりは、
「ごめん、最近お母さんと姉さん、二人でよく深夜に出かけてたでしょ、だから、おかしいなって思って」
「気づいてたのね……」
「うん……それで、後を尾けたら……」
その先の言葉は不要だった、その時に「見た」のだろう。
私は、口をつぐんで黙っている。
そんな私にまつりは決して先を即そうとはせず、黙って私を見ていた。
「……」
私は何度も何度も息を整えて……。
握り締めた手のひらが汗でベトベトになっているのを感じながら……。
静かに、口を開いた。
「……うん、そう、愛してるのよ私、お母さんを……」
それを聞いたまつりの表情は見えない、見れない。
次に紡がれるまつりの言葉が怖かった、何を言われてしまうのか。
ただ私が罵倒されるだけならまだいい、だが、最悪は……。
考えたくない、耳を塞いでしまいたかった。
「そっ……か」
まつりは深い息と共にそう呟いた。
私が恐る恐るまつりの方を向くと、表面上、変わった様子は見せていない。
どころか……まるで、いつもの表情に戻ったような、つっかえが取れたような、そんな顔をしていた。
私が都合よくそう思い込みたかっただけかもしれないが……。
「やっぱりそうだったんだ」
「ごめんね……」
「んーん、姉さんの口から直に聞きたかっただけだから」
そう言ったまつりの表情に侮蔑の色は見られない。
「何とも、思わないの?」
思わずそう聞いた私に、まつりは、
「思うわよ」
とはっきり言った、当たり前だけど。
母娘で同姓なんて、どう考えても普通では無い、流石にそれ位わかってるつもりだ、だけど……。
「でもきっと理屈じゃないのよね……そういうのって」
もっと動揺するかと思っていたまつりはずっと冷静で、遂には達観したような台詞を吐いた。
「もっと、驚くと思ってた、普通は驚くもんじゃないの?」
そう聞いた私に、まつりは意外な答えを返した。
「まぁ、前例があるっていうか、その、妹達がさ……」
妹達、かがみとつかさが?
「まさか、あの二人が?」
「別にあの二人がどうこうってんじゃなくて、こなたちゃんの方かな」
「こなたちゃんと、かがみ達が、つまりそういう……?」
「かがみはどうだかわかんないけど、少なくともつかさとこなたちゃんはそうね、部屋の中でやたらとキスしてるの見るし」
「……」
今度は私が驚愕する番だった、仲がいいとは思っていたけど、まさかそういう関係とは……。
「何か家の家系って同姓好む体質でもあんのかしら」
まつりが場を明るくしようとしてか、急にジョーク(でもないが)を言った。
「まつりはどうなの?」
「まさか、私はノーマルよ、ってごめん、これは差別な言い方ね」
「気にしなくていいわよ、私もそれ位自覚してるから」
そう返してみたものの、私は自分が女性を好む性癖なんて持ってないと思うし、今でもそう思ってる。
お母さんを一番愛してる=女性を好む、なのか?それは違う。
仮に、悪魔で仮にお母さんじゃなかったら他の女性を好きになったか?当然違う。
お母さんが存在していなかったら、私は普通に男性と恋に落ち、結婚し、子供を産んでいたんじゃないか、とさえ思う。
というよりお母さんが存在していない事など、頭で考えても想像できないのでよくはわからないが。
最終的な結論として私はただ単に、お母さんに「惚れた」ということになるのだろうか?
それもまた、軽く聞こえるような気がする、言葉って難しい。
もちろん、無理に納得させようなどとは思っちゃいないが……。
「まつりは、この事知っても、今まで通り私たちと接せる?」
「言ったでしょ?今の問題と家族との事は無関係よ」
……。
何ていうかな、まつりは甘すぎるんじゃないか?
嬉しさのあまり、ついまつりに憎まれ事を思い描いてしまう。
ありがたいくせに、嬉しいくせに。
これ以上無い位に自分の思い願った通りに事が運んだ事に、心の中で涙を流して喜んでるくせに。
「そ」
それでも私は自分の本心を欺けるポーカーフェイスの出来にある意味関心した。
ひょっとして私、役者向いてるかしらね。
「でもさ、これから現実的に、どうすんの?」
と、まつりが再び真剣な表情に戻して尋ねてきた。
「どう……って」
「まさか、ずっとこの関係を隠せると思ってるわけじゃないでしょ?お父さんにも、かがみ達にも、いつかはボロが出るかもしれない」
私が最初に気づいた位なんだから、と付け加えてまつりは私を直視してきた。
「……」
答えられない、答えられる訳もない。
開き直る?お母さんを連れて駆け落ちでもする?それとも元に戻る?
どんな選択を取ろうが、もう、柊家が今まで通りでは無くなる選択肢しかない。
「今すぐ答えろって訳じゃないんだよ」
黙り込む私に、まつりは悪魔でも優しく返事を保留にしてくれた。
こんなんじゃ、どっちが上なんだかわかんないな。
「ただ、いつ答えを強制されるような自体になるかはわからないと思う、だから、姉さんとお母さんで――――」
みんなの前で言える答え、見つけないと―――、と、まつりは私を励ます様に言葉を繋いだ。
「皆が、もし、お父さんやかがみ達が姉さん達を責める側に回ったとしても、私は姉さんの味方でいるから―――――」
最後まで言わせずに、私は思わずまつりを抱きよせていた。
「ごめんなさい、まつり、ありがとう―――」
「ううん、別に、ただ」
一息。
「―――どっちも愛してるなら、引き離されるのはきっとキツいよね」
「……」
「姉さんもこれ以上無い位険しい道選んじゃったもんだねぇ」
「自分でもそう思うわ、でも」
一旦言葉を区切り。
「幸せ、こんな風にお母さんを愛してるって実感できるから」
いちいち聞こえる心臓の鼓動さえお母さんへの想いを訴えている位に。
私は、お母さんが――――。
「皆には、上手く言っておくね、姉さん達のこと」
……。
え?
「皆、姉さんとお母さんの様子が少し変だって事にもう気づいてるんだよ、私みたく確信してる訳ではないみたいだけど」
「……本当?」
「大マジよ、だからこうやって私が一足先に聞きに来たんじゃない、もしかして姉さん達に何かあったのかって」
……上手くやっていたつもりでいたのは、私たちだけだった、という事なのだろうか……。
何か、それはそれでむなしい……。
「今日、姉さんの気持ち聞けて良かった、これで私も堂々と姉さんの援護出来ると思うわ」
どう言葉を返していいのかわからない、が……。
少なくともまつりが、私達を手助けしてくれようとしている事だけは理解できた。
これほど、私達にとって頼もしい味方がいるだろうか?
「さ、これで今日のところの話はまとまったわね、あとは姉さんたちで決めて頂戴」
まつりはスッとベッドから立ち上がった。
そんな頼もしい妹を前にして、一番しっかりしてなくてはならない筈の長女、つまり私は、ボロボロと涙を流していた。
「姉さん、泣かないでよ」
「泣かせたのまつりじゃない」
震える声で抗議、袖で目から出る水を拭いながら。
「はいはい、ごめんね泣かしちゃって」
ニカっと笑ってまつりがハンカチを差し出す、私はそれを受け取ってチーンと鼻をかんだ。
「ゆっくり寝て、姉さん」
「ありがと、まつり」
もう、それしか言葉が無い、まつり。
こんなバカ姉でごめんなさい、こんな……。
……でも、そうとわかっていても、それでも自分でもどうしようも出来ない位、
お母さんを愛してるの――――――
携帯のアラームが鳴る。
今の時間は朝の七時……眠い目をこすりながら、アラームをストップする。
今日は休みなのに……どうやらいつも通りにセットしてしまっていたようだ。
こうなると、もう一度寝ようにも変に目が冴えてしまい、起きるしかなくなってしまう。
ベッドから出て、部屋を出る。
そして台所に向かう、そこには、
「いのり?おはよう」
お母さんが食器を洗っている。
「おはよう、お母さん」
「いのり、今日は休みでしょう?めずらしいわね」
「何か、目が覚めちゃったのよね」
思わず変な見栄をはってしまった、意味は無いのに。
「そう、じゃあいのりも朝ご飯食べなさい」
出してあった皿をもう一枚増やすお母さん、私は素直に従ってイスに座った。
「あ……何か手伝おうか?」
「いいのよ、いのりは座ってて」
暫くしてお母さんはベーコンと目玉焼きを乗せた皿を私の前へ運んできた。
そして、その姿勢のまま私の顔を至近距離から凝視してくる。
「ど、どうしたの?」
思わず上ずる私の声。
お母さんはそのままの体勢でふわっと微笑んで言った。
「目の保養しておこうかな、って思ったの」
……。
「お母さん……やめてよ、私朝っぱらから理性飛ぶわよ?」
それはジョークでも何でもない本当の事だった、というかもう既に飛びかけている。
「そうなの?」
「そうよ」
そう言いながら、私はお母さんの顔に手を添え、唇を押し付けた。
結構強引な口付けではあったが、しょうがない、これでも極限まで抑えているんだから。
やがて顔を離すと、お母さんは照れくさそうに笑った。
「本当はまだ足りないんだけど、朝っぱらだしこの位にしておくわ」
お母さんにそう告げて私も笑う、全く、私も少し自粛しろと自分に言い聞かせた。
その時、向こうからトントントン……と誰かが降りてくる音が聞こえた。
そうか、私と違ってかがみとつかさは学校あるものね、まつりはもう出てしまったみたいだし。
となると、かがみかつかさか、恐らく……。
「おはよ……って姉さん起きてたんだ、今日休みでしょ?」
やっぱりかがみの方だった、つかさは多分まだ寝てるわよね。
「たまにはね」
「おはようかがみ、朝食の用意出来てるから食べちゃいなさい」
「はーい」
私の向かいに座るかがみ、目玉焼きに醤油をかけ、トーストにかぶりつく様を、私は微笑ましそうに眺めていた。
「?どしたの姉さん」
「何でもないのよ、ただ、こうやって改めて見ると大きくなったわねかがみ、って思っただけ」
「んぐっ、な、何よ急に」
私の追突も無い言葉にかがみはパンをつまらせる。
変な話だが、妹達の中で私に一番甘えてきたのは、他ならぬかがみだった。
つかさはかがみに甘えているのだろうし、まつりはそういうタイプじゃないし。
かがみも一見しっかりしてる様に見えるけど、それは一種の使命感みたいなもんから無理に取り繕っている面もあるのを私は知っている。
つかさの前では立派なお姉さんでいなきゃいけないし、家族の前でもしっかり者の位置づけを担っている以上、それを崩せないでいるかがみ。
そうなれば、影で甘えさせてくれる人物が必要になってくるのはある意味当然の事と言える。
つかさ、お父さんやお母さん相手に面と向かって甘える事が出来ないでいるのは仕方の無い事かもしれない、まつり相手などにはもってのほかだ。
そうなると、私しかいないのである。
今でこそ少なくなったものの、こっそり私の部屋を尋ねてきては、よく私に泣きついてきたかがみを思い出す。
その度に胸を貸して頭を撫でてあげていたものだ。
今でも露骨では無くなったにせよ、周りには打ち明けられない悩みや相談事は、私にこっそり打ち明けたりするものだ。
その度に私はかがみに必要とされているのだと思うと、嬉しくてつい相談事に熱くなり過ぎてしまい会社を遅刻なんて事もあったっけね。
「急に変な事言わないでよもう……」
口では軽く毒づきながらも、満更でもないとかがみの表情が語っていた。
つい私はいたずら心から、かがみの頬に指を持っていき、ついていたパンの食べかすを取ってやる。
そして、自分の口に運んだ。
「……!ちょ、姉さ」
動揺して若干顔を赤くするかがみ、初々しいというか何と言うか、やっぱりいくつになっても可愛いものだ。
だからこそからかい甲斐もあるのだが。
「あははははっ、かがみ、まだまだそういう所は子供のまんまよね」
「急にあんな事されれば動揺するっつうの」
「ごめんごめん、でもそういう所見ちゃうと、まだまだかがみには大人になってほしくないかな」
そんなやり取りをお母さんは微笑ましそうに見ていたが、やがてお母さんも近づいてきて、かがみの頬に指を持っていく。
だが既に何もついていないかがみの頬に、ただ指をくっつけて、そして舐めた。
その行動に私は軽く吹きだして笑った。
お母さんも釣られて笑う。
「二人して何よぉ……」
二回も慌てさせられたかがみは流石におもしろくないのか、軽く拗ねる様に口をとがらせた。
「おふぁいあよ〜〜〜……」
これでもかという欠伸をかましながらつかさがリビングに下りてきた、朝ごはん食べる時間あるのかしら?
「あ、ほらつかさ、早く座って食べちゃいなさい」
まるで私たちから逃げる様にしてかがみがつかさを即す、そんなかがみの行動がまたおかしさを買った。
私はこの光景を見て、再び誓いを立てる。
壊す訳にはいかない、この家庭を、だが、お母さんを手放す気になどなれる訳もない。
だから、考えよう、都合がいいかもしれないが、どちらも両立させられる方法を。
それが叶うのであれば私は、文字通り何を投げうっても一向に惜しくは無かった。
「「いってきまーす」」
「いってらっしゃい」
かがみとつかさが二人で家を出る。
「今日は予定あるの?」
開口一番、お母さんは私にそう聞いてくる。
「無いわよ」
私はそう言った、というよりもお母さんからの誘いであれば、先約があったとしても答えは同じである。
「今日一日、いのりの時間、頂戴」
天使の微笑みにその台詞は反則だ。
もちろん断る理由も無く、すぐさまOKを出す私の口。
お父さんを始めとする家族皆の事もある故に、私がお母さんと逢引する時は深夜が常、たまに夜と相場が決まっていた。
だから真昼間からデートというのはかなりめずらしい。
それに……今日は「あれ」を受け取りに行く日でもあったから、丁度よくもあった。
一旦部屋に戻って、軽く化粧を施し、着替えをすませるとリビングへ戻る。
「お母さん?」
お母さんはもう支度を整えていた、手には二枚のチケット。
「今流行ってるんですって……いのり、知ってる?」
手に持っているチケットを見せてもらうと、どうやらSF映画らしい。
「聞いた事がある位ね、これ、見にいくの?」
頷くお母さん、どうやらこの映画うんぬんというより、SFというジャンルが珍しいらしい。
「OK,じゃ行きましょう?」
私は別段好きなジャンルの映画ではないが、何でも良かった。
どんな映画だろうとお母さんが隣にいるというだけで、どうせ集中して見れる訳ないのだから。
実際中に入って周りを見渡しても、真面目にスクリーンに見入ってる人は思いのほか少なかった。
イチャつくカップル、わざわざ金払って何をしに来ているのかとさえ思う。
……もちろん私も人の事などまるで言えないのだが。
墨の目立たない所にお母さんと座り、お母さんが抵抗しないのをいい事に体を抱き寄せ、密着させた。
その温もりに思わず恍惚の息を漏らし、しかもそのまま私は寝入ってしまったのだから、正しく私こそ何をしにここに来たのか、となってしまう。
目を覚ませば既にクライマックスらしく、最初に見ていた時よりやたらと騒がしい。
お母さんはというと、どうやら真剣にスクリーンに見入っているらしい。
そんなにおもしろいの?コレ。
やがて、エンドロールが流れ始めると、お母さんはふう、とため息をついた。
「これ、おもしろかった?」
私がそう聞くと、お母さんは、
「よくわからなかったわ、でも人気あるらしいからおもしろいんでしょうね、きっと」
やはり、よくわからなかったらしい。
私などは途中から見てすらいなかったのだから解説など出来る筈もない。
お母さんはゆっくり座席から立ち上がった。
「このあとは、どうする?」
もちろん私はここでお母さんとの時間を終わらせる気など毛頭無かったが、あえてお母さんに話をふった。
「お昼にしましょ」
「何処で食べるか決めてあるの?」
お母さんはハンドブックらしき物を取り出してみせた、ひょっとして、今日のプランを既に決めてあるのかもしれない。
嬉々としてその本を見て店選びをしているお母さんを見て、私は思わず顔が綻んだ。
「あ、ここよ、ここ、最近この近くに出来たらしいの」
「パスタか、いいんじゃないかしら?」
ぶっちゃけお母さんさえいるなら何でも良いんだけどね……。
なんて台詞を表に出す事は無く、二人で映画館を出る。
人前で手をつなぐのは、最初こそ恥ずかしさはあるものの、慣れれば後は暖かいだけ。
食べ終わった後のお母さんの口を自分が持ってきたハンカチで拭った、大して汚れてなどいなかったが、ただ拭きたかっただけである。
(もちろん自分の口もお母さんの口を拭った部分で拭いた、こっそりと)
後はお馴染みのコース。
二人でデパートに寄り、新しい服を見て周る。
お母さんが食器を見ている間、私は一度お母さんから離れ、ジュエリーショップに寄った。
私が2週間前に注文していた「あれ」を取りにきたのだ。
「いらっしゃいませ」
私は店主に領収書を見せた。
「柊です、注文したもの出来上がってますか?」
「ああ、柊様、出来上がっております、さ、こちらへ」
私は携帯で連絡を取り、お母さんと合流した。
お母さんの手には買ったばかりの品物があった、新しい食器に食材だろう。
「持つわ」
「平気よ」
「じゃあせめて半分ちょうだい」
強引にお母さんから荷物を半分取った。
しばらく歩いて、途中途中でパークショップやアクセサリーショップなどにも寄ったりしてお母さんとウォークデートを楽しんだ。
「今日はありがとうね、いのり」
「ううん、すごく楽しかったわ」
すっかり暗くなっている、私とお母さんは公園のベンチに腰掛けていた。
私はここである物を用意してある、今この場で言葉と共に送るつもりだった。
古いやり方かもしれないが、私にはこれ以外の方法は思い浮かばなかった。
最初の頃に犯してしまった仕打ちも含め、謝罪の気持ち。
家族として、私のお母さんへの気持ち。
それとは別に、どうあっても抑えるのは不可能な、私の気持ち。
全てを込めて、お母さんを想う気持ちを形にしてしらしめたくて、ここまでお母さんを連れてきたのだから。
これが私なりのけじめだ、そして、これからお母さんとの関係をどうしたいのか、それの答えだ。
「ねぇ、お母さん」
「?」
私は一息おき、
そして、言い放った。
「私と結婚してくれない?」
「……」
お母さんの表情は変わらない。
「いや、もちろん法的にとか、そういう意味じゃないのよ、第一そんなの不可能だし」
私は少し慌てて言葉のフォローに入る。
「そうじゃなくて誓約っていうのかしら、それをお母さんに言いたかったの、これが私の嘘偽りない気持ち」
「……」
「無理にとはもちろん言わないわ、お母さんの気持ち、もう一度だけ聞かせて」
お母さんを見る、私がこんな事を言ったにも関わらず、その顔は相変わらず綺麗な微笑に彩られていて……。
「〜〜♪……〜〜♪」
お母さんが急に鼻歌を口ずさみ始めた、そのメロディーはまぎれもなく結婚行進曲、結婚式の定番ソングだった。
楽しげに口ずさむ声、私は思わずお母さんの手を取っていた。
やがて、ゆっくりとお母さんがメロディーを止める。
そして……。
私の肩に手をおき、唇が静かに重なった。
普段の私なら暴走しかねないのだが、この時ばかりは唯々お母さんのされるがままになっていた。
唇から伝わるお母さんの答えを感じ、最高の幸福を噛みしめながら。
「お母さん、渡したい物あるの」
ゆっくりお母さんの手を置き、私は内ポケットから細長い箱を取り出した。
それを開けて、お母さんに見せる。
「……」
「流石に指輪っていう訳にはいかなかったから、これ……」
先ほどジュエリーショップから受け取ってきたばかりの物。
緑柱石が散りばめられた、オーダーメイドのペンダント型シルバーネックレス、値は大分はったがそんなの関係なかった。
ペンダントの蓋を開ける、そこにはお母さんの名前「MIKI」と彫られており、その下には、
「Mon amour」(私の愛しい人)と彫られた文字。
「受け取って欲しいの、お母さんに」
「……」
ネックレスを手に取り、しばしそれを見つめているお母さん、言葉も発しない。
私も、お母さんを見たまま言葉を発しなかった。
やがて……。
「……ありがとう、いのり、本当に嬉しい」
両端に湛えた涙を軽く拭いながら、お母さんが私を見て喜びの言葉を伝えてくれた。
それで感極まったのは私も同じだった、お母さんを自分の腕の中に収めて、再度キスを交わした。
「……ね、いのり」
「何?」
「つけてくれる?」
私にネックレスを差し出す。
「わかったわ、後ろ向いて」
素直に後ろを向くお母さん。
私は前に手をやってネックレスを通す、そしてお母さんはこっちをむいた。
……お母さんは何をつけても似合うな。
本心からそう思った。
「私、なんか貰ってばっかりね……」
お母さんが嬉しそうに、そしてすまなそうに言う。
そんな訳ない、貰ってばかりなのはこちらの方だというのに。
「今日は最高の一日だったわ、お母さん」
心からの一言、お母さんはまた嬉しそうに笑った。
お母さんを抱く、ずっとこうしててもキリはない、でも決して飽きはしない。
――――幸せってきっと、そういうものでしょう?
私は今お母さんと結婚式でもあげているような気分で時計を見る。
…………。
……。
…。
「あ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
思わず私は叫んでいた。
「え……どうしたのいのり?」
「お母さん!もうあんな時間!!夕食!!」
「え?……あっ……!」
つい時間を忘れて二人の世界に浸りこんでしまっていた。
家で夜ご飯をおあずけされているお父さんとまつり達を思い浮かべる。
慌てて携帯を見ると、不在着信履歴に4人全員の名前が代わるがわる入っていた、うわ〜〜マナーモード解除すんの忘れてた……。
お母さんもどうやら同じ状態のようだ、携帯のディスプレイを見て、慌てて電話をかけている。
「お母さん、早く帰ろ」
「そうね、急がないと」
急いで荷物を持ち、お母さんと一緒に小走りで家を目指す。
手はもちろん、繋がれたまま。
今日の出来事で、私にはもう怖いものは無くなった。
覚悟は決まった、まつりを始め心強い味方もいる。
家族とお母さん、両立させる方法が無いなら作ればいい。
考える時間だったらあるんだから。
さあ、帰ろう、自分の思い描いた結末を目指して。
この暖かい手を、永遠に勝ち取る為に。
いつになく軽い足取りでお母さんの手を引く。
私達は、ずっと終わる事は無いのだから。
FIN
273 :
あ:2008/04/21(月) 00:12:58 ID:QNqPIncL
つかかがは?
>>272 次は柊家内の修羅場編ですねわかります
つかこなも期待してますよGJです
>>273 「かかがは?」ってなんなんだと思った。
>>272 いいねいいねGJ!ストーリー素敵。
この組み合わせもアリですねこれは、続きも期待してます。
>272
流れるような綺麗な文章が素敵です。
それにしても…… 険しい恋ですねえ。同性かつ近親とは……
成就したところで、行き着く先は家庭崩壊でしかないところが辛いですね。
次回作も楽しみにお待ちしております。
現在もイイ感じにスレが進んでますな。
えー、前スレでは俺の好きなこなかが、みたゆな成分を大量に補給され、かつ萌やされつつ、
なんか久々にこのスレで大量のエロSSを見た気がしつつ、(ふたなり属性付いたw)非常ーぅに楽しまさせて頂きました。
このスレでは初期の頃からいるけど、前スレは特に今までの中でも至高のSSラッシュであったと思います。
自分でも現在、3つのネタのストックがありますが、文の推敲に酷く時間がかかります。
とりわけエロSSは作成中にムラムラしてしまい、なかなか筆が進まないヘタレです。
末筆ながら、貴殿らとこのスレの尚一層の発展を心より祈念申しあげます。
あらあらうふふ。
もとい。あらあらかしこ。
最近、まとまった休みがとれて、ようやく現スレに読むの追い付いた。
リアルタイムでGJできないからせめて、一言言いたかったのでつ(´・ω・`)
279 :
26-598:2008/04/21(月) 01:59:40 ID:l9a9zRdo
どうも、26-598です。
久しぶりにssが完成したので、投下します。
もちろんこなかがものです。
280 :
こなたの逆襲:2008/04/21(月) 02:00:39 ID:l9a9zRdo
私はうなされていた。
それが夢だと知りながらも、うなされていた。
「こなたああああああああああああああ!」
「か、かがみっ、やめ…うにゃああああああああああ!?」
ガバッ
「また、あの夢か…」
そう呟いた後、時計を見てみるとまだ午前4時半。
明らかに睡眠時間は足りていないが、もう眠る気にはなれない。
私はマジックを手に取り、壁に×の字を刻んだ。
×の数は…これで、五個目。
ついに来るべき時が来た。
私はニヤリと笑い、これからすべきことを考え始めた。
私は最近、毎日同じ夢を見る。
その内容とは、愛しのかがみんが暴走して私に襲い掛かるというものだ(もちろん性的な意味で)。
最初は夢にもかがみが現れたことが嬉しかったけど、毎日となると不気味だ。
かがみの暴走もどんどんひどくなっていくし…。
そして私はあることに気づいた。
これは、いわゆる予知夢ではないかと。
つまり、このままでは私はかがみに襲われ、今話題の『こなた総受け』の状態になってしまう…。
そんなことは認められない!
こなた攻め、かがみ受け!これこそが不変の真理なのだよ!
そう考えた私は、夢を見る度に壁に印をつけることにした。
もし印が5個になったら、その時は…!
私はもう一度壁を見た。
そこに5個の×印があるのを確認すると、私は決心した。
「待ってろよ、かがみん…!犯られる前に、犯ってやる!」
281 :
こなたの逆襲:2008/04/21(月) 02:01:26 ID:l9a9zRdo
「お〜す、来たわよ〜」
「お〜、かがみんいらっしゃ〜い♪」
決意の朝からあっという間に時間が経ち、昼休みになった。
いつものようにかがみがやって来て、私もいつものように話す。
だけど、私は気づいてるんだよ、かがみん…!
かがみが私に向ける目の中には、隙あらば襲い掛かろうとする捕食者の光が宿っているということに…!
でもね、かがみ…私があっさりと食べられると思ったら、大間違いだヨ…?
「ふっふっふっふっふ…」
「ねえつかさ…。なんでこなたは、机の上で四つん這いになって変な笑いを漏らしてるの?」
「さあ〜?こなちゃん今日はずっとあんな調子だから…」
「一体どうなさったんでしょうか…」
「まあいいわ。こなたが変なのは今に始まったことじゃないし。お弁当食べましょ」
ふふ、いつも通りにしようとしているね…。
計画もある事だし、今はそれに乗ってあげるよ。
「今日もつかさが寝坊しちゃって、遅刻寸前だったのよねえ…」
「はうう…。そ、それは春だから、その、なんだか眠くって…」
「そもそも春に眠くなると言われているのは(ry」
のんびりとした昼食風景。
私は会話には参加せず、計画を実行に移せるタイミングを計っていた。
「春だからって…。あんたはいつも眠いって言ってる気がするけど?」
「だ、だからその…、と、特に眠いんだよ!うん!」
「…以上の点から、やはり気温が上がったことが原因のようです。さらに(ry」
むう…。慌てるつかさを見てると癒されるね。
やはりかなりの萌えキャラ…いやいや、今はこんなことを考えてる場合じゃない。
「はあ…。まあいいけどね。ほどほどにしときなさいよ?」
「う、うん。ありがとうお姉ちゃん!」
「春眠暁を覚えずというように(ry」
!会話が切れた、ここだ!
「ねえかがみん、今日かがみん家に遊びに行ってもいいかな?」
「は?…べ、別にいいけど、随分脈絡なく言うわね?」
「まあまあ。じゃ、よろしくね〜♪」
「…というわけです。あ、あれ?聞いてました?」
よし、上手くいった!
私はそれからかがみと喋りつつ、昼休みを過ごした。
「しくしくしく…」
何故かみゆきさんが泣いていたけど、今はそれどころではないので放っておくことにする。
282 :
こなたの逆襲:2008/04/21(月) 02:02:14 ID:l9a9zRdo
「お邪魔しま〜す♪」
またまた時は流れて放課後。
私はかがみの家にやって来た。
ご都合主義により、家族は誰もいない。
「じゃあ私は、クッキーでも焼いて持っていくね♪こなちゃんとお姉ちゃんはくつろいでて♪」
「ほ〜い、よろしく〜」
つかさは台所へ。私とかがみは当然二人きりになる。
ふふ、計画発動といこうかね…!
「ん〜、こなた、何する?格ゲーでも…」
「かがみ」
かがみの言葉を遮り、ゆっくりとかがみに近づく。
「な、なによ?あんた今日、ちょっとおかしいわよ…きゃあっ!?」
かがみとの距離をゼロにすると、一気に押し倒した。
「こ、ここここ、こなたあ!?あんた何して、んむっ!?」
「んん、ちゅう…」
いきなりキスをする。
かがみにはとにかく主導権は渡さない!
「んっ、こなたあ…」
「かがみ…ちゅっ、んう…」
舌を入れ、さらにかがみの抵抗を奪っていく。
かがみは顔を真っ赤にして、私のキスを受け続けている。
ん、そろそろいいかな。
283 :
こなたの逆襲:2008/04/21(月) 02:02:38 ID:l9a9zRdo
「はあ、はあ…」
私は勝利を確信し、唇を離した。
「かがみ…。好きだよ…」
荒く息を吐くかがみに、とどめをさす私。
顔をさらに赤くし、俯くかがみ。
…勝った!このまま一気に、こなた攻めかがみ受けを確立する!
そう思い、かがみの服を脱がそうとしたその瞬間!
ふっ、と。
私はかがみに馬乗りのような状態にされていた。
…。って、ええええええええええええええええええ?
格闘技経験を生かして、完璧に押さえ込んでたのに!?
い、一瞬でひっくり返されるなんて…!
ていうかかがみってこんなに力強かったっけ!?ビクともしないんですけど!
「こなた…。まさか、あんたの方から言ってきてくれるなんて…」
パニックになってる私に、かがみはゆっくりと語りかける。
「私、こなたに迷惑掛けたくなかったから、この気持ちは抑えようと思ってたんだけど…。こなたも同じ気持ちなら、別にいいわよね♪」
あ、あれ…?私のやったことって、もしかしなくても逆効果だった?
「お、落ち着いてかがみん。気持ちが通じ合ったことだし、どっちが攻めかはゆっくり話し合」
「こなたああああああああああああああああああっ!」
「うにゃああああああああああああああああああっ!?」
結局私は、問答無用で襲い掛かられた。
うう、なんでこうなっちゃったんだろ…?
っていうか、つかさはどこに…?止めてくれるのを期待してたのに…。
この時私は、眠っているかがみに抱きしめられていたため、こっそりと様子を伺っていたつかさに気づかなかった。
そして、後日つかさにも襲い掛かられるんだけど…。
それはまた、別の話。
284 :
26-598:2008/04/21(月) 02:09:27 ID:l9a9zRdo
以上です。
相変わらずの支離滅裂な話の上、誤字・脱字もあると思いますが、ご容赦を。
神作品を次々と投下される方々が羨ましい…。
ではまた。
>>284 乙ですー
テンポのよい話、こなた受け展開に萌えた
>248
>(Elopeの続き)
これ見た瞬間一気に目が覚めました
期待しております
>>248 〜しゃれになんないよ、な〜んないよ悪い夢ならば…
「みなりん相変わらずマキハラ上手いっすけど、何なんすかね、
この鬼気迫る表情は……」
「さ…さあ…なんか最近、トラウマになりかけた流れが
復活してるとか何とかで…全くみなみちゃんてば…」
〜なーみーだが〜でて〜きた……
今僕を笑うやつはきっとケガをする!!
「うひぇええええぇえぇええみなみさん!
その顔やめてッス!その怖くて涙目な顔を今すぐやめてッスゥ;;;;;」
「(みなみちゃん、まだ調教が足りてないのかな……クス……)」
>>248 まさかの続編とは…
これもただでは終わらない気配が既にヒシヒシと伝わってきますね
二人の間に割って入ることになるからなぁ・・・また怖いことになりそう・・・
>>284 GJ!
あーあぁ…結果として逆効果かぁ・・・w
ある意味こなたらしいっちゃらしいかも。
面白かったッス!
>284
GJ!
あなたの作品も充分神作品です。
他とベクトルが違うだけで。
次はどんな、理不尽受けになるか期待しています。
>>284 うにゃあああああの人キター! 相変わらず面白いですね。
つかさに襲いかかられる編も是非に。
>>248 まさかの続編!?オラwktkしてきたぞ!
>>272 期待のカップリング再び…続き待ってますよっ
>>284 nice megante
よし!シリアス分やらダーク分やら背徳分やら暴走分を大量摂取したお陰で創作意欲満開DA!
292 :
嘘映画予告編:2008/04/21(月) 12:58:55 ID:+3FSxVNW
「どんな死に方がいい…っスか?、、ん〜…そうっスねぇ、巨大なおにゃのこ
に踏まれて死ねるのなら万々歳っスよ!パンツ観えるし」
それはある1人の少女の戯言が引き起こした物語である…
(BGM:なんかやけに壮大な音楽)
「というわけで開発しました、巨大化薬です」
「なんですと!」
「お姉ちゃんが…お姉ちゃんがぁ!」
ある日突然、、、
かがみんが○ジラ並みにでっかくなっちゃった!
「かーがみ〜ん!パンツ丸見えだよぉ〜!」
その一言を発端にかがみは暴走し街を破壊し始める
笑いあり、涙あり、そして…
「おいデ、遊んでアゲるワ、デカブツ女!」
ばちんっ!
「あぁ!パティがかがみんのデコピンで吹っ飛んだーー!」
…アクション…あり?
人類はかがみの前に平伏してしまうのか!?
「事件は家で起こってるんじゃない!現場で起こってるんだ!!」
「ったり前だ!」
「あぁ!かがみさんのツッコミで起きた突風で街が!」
『彼女がおっきくなったなら』
3×××年×月×日 放映開始
「…かがみんは…私が……」
「やめてっ!こなたお姉ちゃ〜〜〜〜んっ!!」
さいたまが、泣いた
同時上映『名探偵バルサミコ酢』
放映開始まで誰が主役で誰が犯人か分からない!
クイズに答えて豪華な賞品を貰っちゃおう!
「私が誰だか分かったら、劇場でバルサミコ酢とバルサミコ酢ストラップを
プレゼントしちゃうんだって〜、すごいね〜お姉ちゃん!」
(CV:謎の女<キャスト・年齢・中の人未公表>)
「…あやの〜、これバレバレなんじゃね?」
「…まぁまぁ」
293 :
kt:2008/04/21(月) 13:00:09 ID:+3FSxVNW
なんでパンツまで大きくなるの〜とか言っちゃいけないんだろうな・・・
>>293 オキシジェン=デストロイヤーならぬ、ツンデレ=デストロイヤーを抱えて最後の戦いを挑む、
平田博士ならぬ、こなた博士を幻視した
>>295 それむしろ、ツンデレに萌え萌えなこなたじゃあ
逆にデストロイされるんじゃね?w
ちょっとこんな電波を受信してしまったので地の文無しで投下してみる。
「こんにちわ…」
「おーみなみちゃんいらっしゃー上がって上がって」
「あの…ゆたかは…?」
「あーごめんねぇ。実は今日呼び出したの私なんだよ」
「え…?」
「いやー最近私とみなみちゃん、とあるSSで険悪な流れになってるらしいからちょっとここらで歩み寄ろうかなと思ったのだよ」
〜間〜
「そーいえばみなみちゃん、胸がないのを悩んでいるんだって?」
「…い…いえ…そんなこと…」
「まーまー、病まない病まない。そうだ、そんなみなみちゃんを元気付けるためにこの言葉を贈ろうではないか」
「………?」
「貧乳はステータスだ、希少価値だ!」
「『貧乳』ですらない私は…っ…」
「お姉ちゃん?みなみちゃんに何をしたのっ?」
「い…いやー人を選ぶ言葉ってあるもんだなぁーと…ごめんねぇみなみちゃん…泣かない泣かない」
「泉先輩ヒドイです…」
「…ってことがあってだねー…あの後みなみちゃんは泣き出しちゃうしゆーちゃんにはかつてないほど物凄く怒られたし…」
「そりゃ全面的にあんたが悪いだろ」
「かがみん冷たいー」
「当たり前だ」
…ってあれ?こなたとみなみをちょっとは寄り合わせようと思っていたのに何故こんなネタに…
もういっそ無乳はステータスだ!希少価値だ!でいいんじゃね?
ん?向こうからなn(ドッジボールが顔面にめり込む)
>>297 そこデっ! そこで「こな×みな」デスヨっ!!
攻めは腹黒コナタ!受けはヘタレミナミ!! これネ!
ゆたか「何寝言いってるのかなパティちゃん(わきわき)」
かがみ「パティさんも言うようになったわねえ(ばきぼき)」
>>284 笑ったwww GJ !
想い余ってかがみ暴走はもはやデフォだなw
まあ、なんだ、こなたの望んでいた通り両想いになれたんだから、贅沢言わずに押し倒されてしまえw
ある放課後、こなた達はななこに呼び出され、旧校舎へ集まっていた。
しかし、そこに集まったのはクラスも、学年も異なる面々。
一体、なんの用なのだろう?
だが、こなたの心を不思議な不安が包んでいた。
ななこ「おーし、皆集まったなー? ええかー? 今からお前達にド突きあいをしてもらうでー」
突然の言葉。ざわめく教室。
ななこ「突然の事やからワケわからないと思う。でもな、これは国の定めた新しい法律……ガチンコ法のためや」
ガチンコ法――日本政府が新たに制定したこの法律はかつてのやまとなでしこを復活させるのが目的の一つ。
腐りきった日本の政府は少女達のガチバトルを放映する事でもう一度国庫を富ませる事が最大の目的なのだ。
そして年端も行かぬ少女達がド突き合いをするその様はあまりにも陰惨で。しかし、何よりもすばらしかった。
だが、普通ならそうも簡単にド突き合いをするはずがない。
そこで、日本政府は餌で少女達を釣るのだ。
そう。優勝者には、一つだけ願いをかなえると偽って。
ななこ「ええか? 武器の使用も認められとるけどなー……出来る限り素手でやりあえー? そっちのほうがええ」
否応なく戦いの渦に巻き込まれた少女達……目隠しをされた後首輪が付けられ、全員がばらばらに連れて行かれる。
誰かが、泣いている。
そんな声を首輪に付けられたマイクが拾っていた。
「……まったく……ド突き合いなんてやってらんねーっス」
ぼりぼりと頭を掻きながら田村ゆかりは薄暗い廊下を一人歩く。
彼女はヲタクだった。もとい、彼女は平和主義者だった。
そもそも、あのメンバーならド突き合いも何もないだろう。
そう――思っていた……
バ ル ッ !!
「……っ!?」
突然放たれた何か。
くらくらする頭で、必死に何がおきているのか考える。
――殴られ、そうだった?
「わぁ。凄いね田村さん。私のバルサミコフリッカージャブを避けるなんて」
そこには、暗い笑顔でたたずむ柊先輩の妹さんが立っていた。
その構えは見た事がある。そう――ボクシングスタイル。
「田村さん、今こう思ってるでしょ? ボクシングだって……」
見透かされている――? いつもはいい人で、どこか抜けた彼女が今は途方もなく恐ろしい存在に見えた。
「でもね? これはボクシングじゃないんだ……これは……バルサ巫女シング!!」
バルッ!! バルルルッ!!
ヒットマンスタイルからピーカブーにチェンジしたつかさがダッキングとウィービングを交えながら迫る。
――もう、駄目だ。ひよりの脳裏を絶望が覆う。
せめて、最後に――BL同人を買いあさりたかった。
「みゅ……うぅ……」
ボロボロになって必死に教室から這い出そうとするみさおの目に、親友の姿が映る。
峰岸あやの――日下部みさおの親友。
皆を見つけて、一緒に政府と戦おう。そう、言いに行ったみさおを待っていたのは、冷徹になった親友。
圧倒的に彼女は強かった。みさおも必死にあやのを止めようと試みたのだ。
しかし、それは激流の中ゆらゆらと漂う木の葉に等しい。
「――っ!? 日下部! ちょっと、しっかりしなさい!」
「ひ……ぃらぎ?」
そこに駆けつけたのは、柊かがみ。みさおがあやのと共に絶対の信頼を置く少女。
「まさか……峰岸! あんた……あんた、政府の腐ったイベントに参加するつもり!?」
「……ええ。私はこのイベント、乗るわ」
二人の視線が交錯する。
「――ここで優勝してね? 庭付きの、真っ白い一戸建てを貰うの。そこで……大きな犬を飼って、ダーリンと一緒に住むのよ……ずっと、一緒に」
その目には本気の光と狂気の炎。かがみは、もう彼女が止まらない事を悟ってしまった。
「……なら、アタシは全力で日下部の仇を取るわ」
「……全力で来て? 柊ちゃん。私も……本気で、行くから」
二人が構える。
「……柊神託流、柊かがみ」
「グラップラー峰岸あやの」
「「いざっ!!」」
「っ!?」
「ゆたかっ……! 見ちゃ、だめっ」
ゆたかとみなみが入った教室で、二人はとんでもないものを見てしまった。
ぼろぼろに、まるで陵辱を受けたかのようなひよりとパティ、そしてつかさの姿。
「これは……なんで、こんな事に」
「あら……みなみちゃんにゆたかさん。どうかしましたか?」
みなみは生きてきた中で最大の恐怖を味わった。そこに居たのは確かに高良みゆきだ。
だが、何かが違う。そう、それはみゆきの皮を被った別の何かのように見える。
「お恥ずかしながら……三人とも、あまり私を楽しませてくださらなかったので……こうやって少し遊ばせていただいていたのですが――」
コワレテシマイマシタ。
と、声を出さずに、口の動きだけで語る。
三日月のように口を歪め、ふっくらした唇の上を赤い舌がぬめりと滑る。
みなみは覚悟した。 刺し違えてでも、ゆたかを護る。
すぐそばにあったモップを手に取ると、すっと上段の構えを取るみなみ。
「確か、その構えは……そう。ツルペタイ捨流、でしたね?」
――ぴくり、とみなみがその言葉に反応する。
「……ツルペタイ捨流。無乳一の太刀を初めとした一刀必殺を掲げた流派ですね」
嫌な汗。なぜ、この人がそんな事を――
心に浮かんだ不安を振り払い、きっとみゆきを睨みつける。
「ああ、それと――もし、貴女が負けたら……貴女と小早川さんを徹底的に陵辱します」
ぞわり、とみなみの体をドス黒い何かが駆け抜ける。
「ですから――全力で、抵抗してくださいね? うふふふふ」
みなみの心に灯が灯る。初めて、人を倒したいと思った。 初めて、彼女を越えたいと思った。
「――貴女を、殺します」
「うふふふふ……困りましたね」
二頭の美しい獣が奔る。
数刻の後――世界はまた静まり返った。
最後に、勝利を掴むのは誰か。
「――貴女が来てくださると……信じていましたよ?」
「ええ。私も、貴女が残ると信じてたわ。高良ちゃん」
「ふふ。愛のために修羅道に落ちた貴女も……素敵です」
「自らのエゴの為に羅刹になった貴女を……私は倒します」
修羅と羅刹の死の舞踏。
「皆! 戦う事なんてないんだヨ!」
こなたの想いは?
バトル・らきすた・ロイヤル
今夏・上映予定
こなつー「勝ったら願いかなうと聞いてやってきますた
身代わりの立場から開放してください」
かなた「同じくやってきますた。生き返りを!だめならせめて反魂を!」
全員「「「「「「「カエレ」」」」」」」
こなた「勝ったら……フェチから開放してマヂデorz」
「泉ー、今の小早川とのバトルよかったで、これで15%確実やな」
「先生、これってヤラセだよね」
「何いうてんや、これは演出、今度試験に出すから覚えときや」
ガチンコと聞いてこんな光景が頭に浮かんだ
>>272 遅レスだけど、続編GJ!
「目の保養しておこうかな」・・・って、みきさんそれ読み手の理性まで吹っ飛ぶわw
良作すぎて俺の中のいのみき属性がどんどん開発されていく気がする・・・
また続き読ましてください
なんと言う神SSの嵐!
まとめてで申し訳ないけど、皆様GJデス♪
新ジャンル(?)「いのみき」に「うにゃあああああ!」に『Elope』の続編……
皆の文才を少しづつでも分けて欲しいものです。
それはそれとして、SS1本書き上がったので投下しようと思います。
5分ほどして他の方の投下宣言がなければ行かせてもらいます。
311 :
LD:2008/04/22(火) 13:16:58 ID:X2+EN3/7
そろそろGW。皆様旅行の予定などありますか?
私は……がんばってお仕事です><
さて「こなた&ゆたか」シリーズの番外編みなみSSが書き上がったので投下します。
『夏の夜の約束』後の話――かがみSS『変わるもの、変わらないもの』のみなみVer.――です。
・「みなみ→ゆたか」(「こなた&ゆたか」前提)
・4レス+後書き1レス使用予定
・シリアス
・エロ無し
では始めます!
>>310 かもおおおおおおん!
……俺も模型ばっか作ってる場合じゃないなこりゃ
2学期も始まり、9月もそろそろ終わりに近づいてきました。
私とこなたお姉ちゃんは夏休みに付き合っている事を皆に伝え、一騒動ありましたけどみなみちゃんとにもかがみ先輩にも認めてもらう事が出来ました。
おかげで私達はこれまで通りに仲のいい友達でいられます。
ただ、残った夏休みの間かがみ先輩はどこかぎこちなかったんですが、新学期が始まってしばらくすると晴れやかな笑顔を見せる事が増え、女の子の私から見てもとても素敵に見えました。
みなみちゃんは特にそうした様子もなく、今までと同じように私の事を助けてくれるのですが、やっぱり私の中ではみなみちゃん達に無理をさせてるんじゃないかな?と不安に思う気持ちもあります。
そんなある日の放課後……
最近は体調もよく保健室のお世話になる事も減っていたのですが、午後の体育の授業中にちょっと油断してしまい、結局保健室へ行くことになってしまいました。
次の授業には間に合ったんですが保健室にタオルを忘れてしまい、HRが終わってから取りに行く事になりました。
みなみちゃん達も来てくれて、そのまま一緒に帰る事になり、私達はおしゃべりしながら保健室へ向かいました。
教室でしばらくお話していたので、廊下には人はあまり多くなく、私達の他にはほとんどいませんでした。
もう少しで保健室という所で不意に後ろから
「あれ〜? ゆーちゃん達どしたの〜〜?」
聞き間違える事のない声が掛けられて、私は嬉しさを感じながら振り向いて、
「こなたお姉ちゃーん」
と大好きな人の名前を呼びながら手を振ろうとした時に、うっかり足をもつれさせてしまいその場で転んでしまいました。
「ゆーちゃん?!」「っ! ゆたか!」
まだ離れたところにいたお姉ちゃんと、すぐ横にいたみなみちゃんの声が重なり、私は大丈夫だとアピールする為にすぐ立ち上がろうとしたのですが……右足首に鋭い傷みを感じて、そのままうずくまってしまいました。
駆け寄ってくるお姉ちゃんの足音を聞いていると、急に体がふわりと浮く感じがして、お姉ちゃんは唖然とした顔で途中で立ち止まってしまいました。
一緒にいた田村さんは表現の難しい呻きを上げ、パティちゃんは歓声を上げています……
「ゆたか、保健室はすぐそこだから……ちょっと我慢して」
いつもより近いところからみなみちゃんの声が聞こえ、自分の状況を理解しました……みなみちゃんに『お姫様抱っこ』をされていました……
「ふぇっ? み、みなみちゃん?! だ、大丈夫だから!」
「だめ。この方が足に負担がかからない……田村さん、保健室のドアを開けてくれる?」
「り、りょーかいっス!」
恥ずかしがる私を無視して田村さんに声を掛けると、みなみちゃんはスタスタと保健室へ向かい、その後をお姉ちゃんとパティちゃんが何か話しながら付いて来るという感じです。
「失礼します。足を捻ってしまったんですが……」
「あら、じゃあすぐこっちに座らせてあげて。えっと、小早川さん。足を出しておいてくれるかしら?」
そんなやり取りがあり、みなみちゃんは私を椅子に座らせると、捻った右足から靴と靴下を脱がせてくれました。
「じゃあ具合を見るから。少し痛むかもしれないけれど我慢してね」
天原先生が私の足に触れて少し捻ったりして容態を確認すると、用意してあった湿布を張って包帯で固定して、
「はい、お終い。そんなにひどくはないみたいね。でも今日は安静にしておく事。いいわね?」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ、それと忘れ物よ。はい」
「あ。どうもすみません」
「さて、私はこれから職員室に行かなきゃいけないのだけれど。よければ少し休んでいく? 帰る時にこの札を掛けておいてくれればいいから」
「えっと……」
「それではお言葉に甘えます。ゆたか、その方がいいよ」
「あらあら、すっかり保護者みたいね。誰かさんも岩崎さんのしっかりしたところを見習ってほしいのだけれど。皆も中に入っていいわよ。今は他に誰もいないから。じゃあ岩崎さん、後はよろしくね?」
「はい、わかりました」
そう言って出て行く天原先生と入れ違いにお姉ちゃん達3人が入ってきました。
「ゆーちゃん、大丈夫?」
ベッドに腰を掛けたおねえちゃんが、何故か申し訳なさそうに尋ねてきました。
「うん、少し痛むけど歩けないほどじゃないよ。先生がちゃんと手当てしてくれたしね」
「ならいいんだけど。私が声掛けたタイミングが悪かったみたいだしさ」
「そ、そんな事ないよっ! 私がうっかりしちゃっただけだから」
慌てて手を振ってお姉ちゃんの心配を否定するとほっとした表情になり、
「そう? あ、みなみちゃんもありがとね。すぐゆーちゃんを助けてくれて」
「気にしないでください、泉先輩。友達なら当然です」
「いつも迷惑掛けちゃってごめんね、みなみちゃん……」
「謝らなくていいよ、ゆたか。先輩にも言ったけど、友達なら当然の事」
「友達なら……」
その言葉に私は胸が熱くなりました。
あんな事があったのにここまではっきりと言ってくれるなんて、私ならきっと無理です。
その強さをと羨ましく思うと同時に、みなみちゃんが友達でいてくれる事がとても誇らしく思えました。
思わず泣きそうになったその時に、田村さんとパティちゃんがこんな事を言い出しました。
「いやぁ、それにしてもいいもの見せてもらったっス。あんな所でお姫様抱っこなんて、みなみちゃんもずいぶん大胆ッスよね」
「Yes! コナタには悪いデスガ、とってもお似合いデシタヨ」
「た、田村さんにパティちゃん! 恥ずかしいよ……」
「いや〜、確かにあれは私じゃ絵にならないね。衣装をきちんとしたら、お姫様とその騎士、って感じだね」
「お、お姉ちゃん!」
3人がからかうので、私は顔が赤くなるのがわかりました。みなみちゃんを見ると、やっぱり顔を赤くして俯いちゃってます。
「そんな……すぐに運べて、負担が少ない方法をしただけです……」
「その割にはちらっと見えたけど、なんだか口元が緩んでたッスよ?」
「っ! そ、それは……」
「あれあれ〜? もっともらしい事言ってたけど、実はみなみちゃん役得だとか思ってたんじゃないかな?」
「……ええ、そうです。大好きで大切なゆたかに、ああいう風に出来るのは私だけですから」
……今、すごい事を言われた気がします。お姉ちゃん達も固まっちゃっていて、
「……あ、あれ? ここは真っ赤になって否定するところじゃないッスか?」
「ミナミ大胆ネ! 夏に言っていたのは本気だったデスカ?!」
「ゆ、ゆーちゃんは渡さないよっ!」
お姉ちゃんが私を抱きしめて、みなみちゃんを威嚇してます。なんだか本当に猫みたい。
その様子を見ていたみなみちゃんは……くすりと笑うと、
「心配しなくても、取ったりしませんよ。泉先輩」
「ふえっ?」
「さっき言ったのは本当です。ゆたかは私にとって一番の親友。だから大好きで大切。ゆたかがいなかったら、こうして田村さんやパティ、先輩達と親しくなることもなかったでしょう。
でも、だからこそ。無理矢理ゆたかを奪う事で、ゆたかを、皆を傷つけたくない。裏切りたくはないです」
「みなみちゃん……」
「でも、あの時も言ったように、先輩がゆたかを悲しませたり傷つけたりしたら、その時は先輩からゆたかをさらうかも知れませんが」
「……大丈夫。絶対、そんな事はしないよ。私だってゆーちゃんとの事を認めてくれた皆を裏切りたくない。
想いに答えなかった私達を、それでも友達だと言ってくれるみなみちゃんとかがみに、私達を好きになった事を誇ってもらえるようにしたいからね」
「私も、みなみちゃん達の想いを裏切ったり悲しませたりしないよ!」
「うん。これからもすっと友達だよ」
「ありがとう、みなみちゃん!」
私は嬉しくてみなみちゃんにぎゅっと抱きついてしまいました。足の痛みなんか全然気になりませんでした。
一方その頃……
(ねぇパティ。お邪魔虫は退散すべきだったかな?)
(イヤイヤ、ヒヨリ。まずはそのカバンに伸びる手をドーニカシマショウ)
(え?あ、あははは……もちろんスケブなんか取り出したりしませんとも)
(ヤレヤレ、困った性分デスネ……)
しばらく私達5人は、いつの間にかパティちゃん達が買ってきてくれたジュースを飲みながらおしゃべりして……主に私とみなみちゃんがからかわれて、ですが、結局天原先生が戻ってくるまで保健室に残ってました。
天原先生は呆れてましたが特に咎められる事もなく、お礼を言って保健室を出るとお姉ちゃんがおんぶしてくれました……恥ずかしいから断ったんだけど聞いてくれませんでしたが。
皆と別れて家へ向かう道で、お姉ちゃんの押す自転車に乗りながら、お姉ちゃんがこんな事を言ってきました。
「かがみといい、みなみちゃんといい。本当にいい子だよね」
「うん。私、みなみちゃんに会えて本当によかったよ」
「がんばらないとね、私達。あの2人が……皆が自慢出来る友達でいられるようにね」
「うん!」
317 :
LD:2008/04/22(火) 13:19:59 ID:X2+EN3/7
以上です。
相変わらず『Elope』や『Escape』(by 23-251氏)の真逆を行く展開ですが、お楽しみ頂ければこれに勝る喜びはありません。
とりあえずこれで一区切り付いた感じです……卒業式をどうするか考え中ですけどね。
それにしても自宅じゃほとんど筆(?)が進まないのに、ネカフェだとスイスイ進むこの不思議w
>>317 読了…… あれ、なんだろう?
目から水が……
Elopeと紙一重違っただけで起こりうる結末。
胸が熱くなりました。
GJ!
>>317 GJ!
明るい展開のこなゆたもイイですなー
卒業式までの流れに期待age
>ネカフェだとスイスイ進むこの不思議
自宅だとニコニコの作業用動画開く→作業www無理wwwとか
息抜きにネトゲでも…→あれ?もう出勤時間?いつの間に5時間も…?
とかあるからネ!(それなんて俺)
320 :
42-415:2008/04/22(火) 14:55:06 ID:EbqNlHmt
えーっと。他に投下する方が居なければ3時から投下させていただきます〜。
・ひよりメインの連作予定
・ふたなり注意報
・多分4レス(と、後書き1レス)消費
・自慰
…ぴちゃ…んちゅ……んっ…ふう……
ヴァーミリオンに染まった放課後の教室に淫靡な音が響く
『ん…かはっ…も…らめぇ…』
『ん?もうなの?意外に早いんだね』
私の股間に顔を埋めた――が言う。
『だって…こんなの…耐えられにゃいのぉおおっ』
『ふっふっふ…いやしかしひよりんにこんなゴツイのが生えてくるとはねぇー』
行為を中断して――が喋る。
『可愛いひよりん…いっぱい出しちゃいなよ…あむ…んうんっ…』
そういって――は再び私自身に口付けた。
―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!?」
おおよそ人間には理解不可能な叫び声を上げて私は飛び起きた。
「はぁーっ…はぁーっ…ふぅぅ〜…」
大きく吸って、吐いて。呼吸を整える。
そして現在自分の置かれている状況…ベットの上に居て、寝巻きを着て、布団を被っていた事を
確認して出た結論を簡潔に言葉にして現す。
「…なんだ夢か。」
そこ、ズッコケない。精神安定の為に一番重要な事なのだよこれは。
「しっかし我ながら酷い夢を見たもんだよ…極限状態って奴かな?かな?」
まぁ自分の股間にいきなりゴッツイのが生えてて、それを誰かがしゃぶってるとかそんな夢見たら
誰だってそう思うって。まぁ現実にありえないシチュだしさー。
そんな事を考えていたら下半身に違和感を感じた。なんかショーツの中がべとべとする。
(あー。濡れちゃったかな?履き替えないといけないな…てかシャワー浴びるべきか?)
時計を見るとまだ登校までは大分時間がある。変な夢を見た性で寝汗もすごい。
(うん。シャワー浴びとこう。)
そしてべとべとした下着の嫌な感触に顔をしかめながら、着替えの下着を持って脱衣所まで行き
パジャマのズボンごとショーツを下ろした時。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:☆?%?♀♂??―――ッ!!!!??」
私は、近所迷惑そのものな奇声を張り上げた。
/:::::.:.:.:.u . . : : : :.::.:.u:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
:::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:`:.、 私は今、非現実というものをほんのちょっぴりだが体験した
::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:し.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:;、_:.:.:`; い…いや…体験したというよりは全く理解を超えていたのだが…
::::.:.:.:し':.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:..// |: . . .! あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,イ.:.:.:// .|::.:.:.:.| 『私はふたなりになってしゃぶられてる
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.U:.:.:.:.:.:.:./ |:.:.∧ : : ;'::.:.:.:.:| 夢を見たと思ったら本当にふたなりになっていた』
.:.:.:.:.:.:.:.:U.::.:.:::::!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:;': :.|:./: : ヽ/::::::i:.:.;' な…何を言っているのかわからねーと思うが
.:.:.:.:.:.:.:.:.:::.:.:.:::::|.:.:.:.:.:.:.u:./: : .j/ : : : /:::::::'|.:/ 私も何が起きたのかわからなかった…
.:.:.:.:.:u.::::/´⌒ヾ.:u.:.:.:.:.:.' し : /: : /::::::/.j/ 頭がどうにかなりそうだった…
.:.:.:.:.:.:::::.{ |.:.:.:.:.:.:.:.i: : : /: : :、イ:::::/ スレの魔力だとか開発中の新薬だとか
.:.:u.:.:::::::::>、 |.:.:.:.:.:.:.:.! : : {: : : :/:::::;′ そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
/.::::::::::::/\ ` !.:.:.u:.:.:.| ー 'i:::::/ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
.::::::::::::/ ´ ̄`ヽ.:.:.:..:.:|ヽ , イ:::/
:::::::::i/ _, -ー ハ.:.:.:.:.|¨ ´|:::::::/
:::::::::| '´ i.:.:.:.:| l:::::;′
:::::::::| |.:.:.:.:!. |::/
うん。まずは現状を把握しよう。
@エロ夢を見てショーツがぐっしょりだった。
…まぁ、これは一度や二度ではない。同人作家たるもの夢を含み、日常が妄想で出来ているものだ
A寝汗も酷かったのでシャワーを浴びようと脱いだら生えていた。
……とりあえずここがおかしいんだって。ありえないからこんなの。
Bショーツがやたら青臭い。
えと、これは…アレかな?その…む、夢精?…と、とりあえずズボンごと速攻で洗濯機にGOッ!
Cそんなことを考えていたらギンギンに勃って来た。
………。
あれだ。とりあえずシャワー浴びよう。
(このニオイがイケナイんだ。青臭さと酸っぱさの交じり合ったこのイヤラシイニオイのせいだ)
そう思い、当初の目的どおりシャワーを浴びる事にする。
髪を洗い終わり、体を洗い始めて上半身を白い泡に包まれた頃ふと疑問に思う。
(…『コレ』どうやって洗うんだろう?)
『コレ』とはもちろん股間から伸び上がるこのペニスである。無論、昨日まで存在しなかったそれの
洗い方など知るはずも無い。
(スポンジで擦ったらダメだよね…?)
ナイロンタオルよりはいいだろうが、それでも刺激が強すぎるだろう。
(じゃ、じゃあ手で洗うのかな…中を洗うみたいに…?)
一瞬、躊躇する。そして羞恥で顔が赤く染まるのが自分でも分かる。
しかし洗わなければきつい匂いが出ると聞いた事もあるし、洗わないわけには行かない。
なぜなら、あと二時間ぐらいで私は学校に向かわなければならないのだ。
私は意を決し、股間のそれを観察する。良く見ると少し皮が亀頭に被っている。仮性包茎って奴かな?
頭の中で『ひとつ上野〜』というフレーズが通り過ぎたが忘れておく。
とりあえず洗わないと…。そう思い、サオを軽く握る。…熱い。それになんかビクンビクンしてる。
私はそれをあまり意識しないようにしながら皮を根元のほうに引っ張る。
被っていた皮が剥かれ、亀頭が完全に姿を現す。パンパンに充血して赤黒くなったそれは、結構グロい。
(無修正の実物は初めて見るっスけど…エロゲのキャラみたいに「意外と可愛いかも」とかは
言えないっスねこりゃ…)
少なくとも私にはコレを咥えたり舐めたりするような勇気は無い。
(っと。観察してないで洗わないと)
本来の目的を思い出し、泡を手に取り剥き出しになった亀頭に泡を塗りつけ…
「ひぅっ!?」
その瞬間、電流が走ったような刺激が脳まで突き抜ける。
(え…ちょ、これってこんなに感度いいの!?)
クリと同じくらい感度がいいのではないのだろーか。そう思いながら続けて洗っていく。
「ん…ぅんっ……あ……」
撫でるように軽く、亀頭とサオに泡を塗りつけていく。
「…んっ……ぁ…くぅ……ふぁっ」
亀頭とサオの間の段差―カリだっけ?―にも指を這わせ、清めていく。
(あ…これ…なんか変な感じ…)
気がつくと私は泡に包まれ、滑りのよくなった肉棒をごしごしとしごいていた。
「…んぁ…はぁっ…ん……ふぅん……」
(ダメ…これ…気持ちよすぎる…っ!)
親指で亀頭をこねくりながら、サオを擦り続ける。そして限界まで充血した怒張は、その行為に応じて
ドクドクと激しく脈打っている。
そして――
「んぁっ…あっ…あぁぁーーーっ!!」
脳がショートするかのような激しい快感とともに、私は大きく背を仰け反らせ、果てた。
反動で椅子から落ち、尻餅をつく。タイルの冷たさをお尻に感じた所で、私の意識は白く染まっていった。
「あ…くはっ…はぁ…はぁ……ふぅ………うわっ!」
少しして、ようやく正気を取り戻した私は目の前の惨状に驚愕した。
風呂場の壁が、自らの放った白濁液でドロドロになっていたのだ。そして鼻を刺すような青匂がする。
(うわぁ…これ、出すぎでしょちょっと…ていうか壁、洗わないと…)
そう思い、立ち上がろうとした。が、しかし
(あ、あれ?力が入らない…もしかして今ので腰抜けちゃった?)
初めての激しい快感の性で、私は腰を抜かしてしまったようだ。
325 :
42-415:2008/04/22(火) 15:03:37 ID:EbqNlHmt
以上です。
ふたなりひよりんがこの後どうなるのか…それは作者にもわからないッ!
そしてッ!ひよりんと違って私は自重しないぃッ!
326 :
ふた☆自重:2008/04/22(火) 16:45:43 ID:RdNGFAUs
もっとやれ!w
ふたSS、GJでしたっ!
それにしてもすげえSSの嵐だぜ・・・!こうしちゃいられないや!
あっ専務、そういうわけで今日はもう早退しm(ry
>>325 いやー、ふたなりって本当にいいものですね。(水野的スマイル
そして冒頭の夢も、是非正夢にしていただきたく。ぐっじょぶでした。
>>325はこんなSSはけしからんのでもっとやれ。
すなわちGJ!
つーか壁一面に…ってどんだけ…いやーこれが若さか…
329 :
42-415:2008/04/22(火) 18:47:20 ID:EbqNlHmt
皆さん感想ありがとうっス!
所でふと気になった事があるんスけど、ひよりんの登校手段って
原作(及びアニメ)で明確な描写あったっスか?
無いなら勝手に定義してしまうっス!では仕事しつつ次回作のネタを考えて来るっスよ〜!
ないと思うけど、夏に花火に行く回に「どうぶつこうえん」駅
(リアルでは東武動物公園駅)でこなゆたと待ち合わせをしていたことを考えると、
それ以北の駅からの電車通学の可能性が高いかな? 待ち合わせのために
わざわざ進行方向の逆にある駅にはいかないと思うし
あの駅以北でかがみ側の日光線とこなた側の伊勢崎線に分かれるので、
自分の中では日光線沿いだという捏造設定をしてる
こなたの方程式にはぜひこういう情報こそほしかった
>>329 とりあえず3巻の100Pに
「通学中に自転車パンクして修理代〜(ry」
ってセリフがありますが、これってトリビアに(ry
>>332 ふつうにパーク&ライドじゃないかなと。
力も男並に強くなって、ドッジボールでみなみに逆襲(あくまでも無邪気に)を試みるひよりん、
しかし、みなみはひよりんの攻撃をヒラヒラとかわし、ついにボールが股間を直撃w、返り討ちに。
気が付くと保健室、目の前には、心配そうなゆたかとみなみ。
そんな二人の目の前で、ひよりんのそれは雄々しくそそり立ち始め、
うわなんだなにをするやめ
パティ「No!
>>333さんは白羽の矢を立てる相手が違いマス!」
俺「そうだねえ、やっぱここは色黒の先輩にいたずらな笑みを浮かべられ
漫画のネタにとたっぷりねっちょりと……」
パティ「GODDEM!!SH○T!!DAMMIT!!」
俺「いやあ蓋ってほんっといいもので……
ハハハハパティさん暴れない暴れない少し落ち着いtひでぶ」
>>334 するとなにか、ぱてーさんはそのひよりんのごーちょくがほしーともーしたか
あべし
>>317 GJ! GJ!! ぐっじょおおおおおぶ!!!!! こういう全員が幸せな
「こな&ゆた」ものこそ俺が望んでいたものぉぉぉぉぉっ!!!!!
是非とも、卒業式に止まらず末永く2人…と、みんなの
幸せな光景を書き続けて欲しいと切実に願ってますっ!!!!!
>>333 さあ、いますぐそれをSS化する作業に入るんだ !
今から拘束ネタ4レス+オマケ別話2レス投下してみます。
露骨な性描写は避けてるけどエロあり判定?w
「こ〜なちゃん♪」
「つ〜かさ♪」
双子以外は全員出かけてる柊家にお邪魔して、ベットの上でいつもの様につかさとニャンニャン戯れるこなた。
本当のエッチまではしない物の、こうやってギュ〜〜〜っとかしあうのが二人のお気に入りになってる。
そうしてる内にこなたに抱っこされたり頭を撫でられたりするのがよっぽど気持ちよかったのか
つかさはスッカリ眠りこけてしまう。
「Zzz…」
「つかさ、可愛いなぁ…」
そんなつかさに寄り添って、最初のうちは頭を撫でたりしてたこなただが
段々を悪戯心がわいて来て太ももを撫でたり脇をくすぐったりしだす。
「つかさ……私もう我慢できないよ……」
しまいには服を脱がせて胸を触ろうとすると…
「あんた…無防備な女の子に何やってるのよ!」
様子を見に来たかがみに怒られてしまった。
「い、いやぁ〜 つかさと愛のあるスキンシップをね…」
「合意の上ならともかくつかさは眠ってるじゃない! 女の子同士とはいえさすがに今のはやりすぎよ!」
妹に度を越えた悪戯をしようとしてたせいでかがみは流石におかんむりみたいだ。
「…ごめん……」
「今から志望校の事で学校に行かなくちゃいけないんだけど
これじゃ眠ってるつかさと二人っきりにさせるのが心配でおちおち出かけれないわよ」
つかさの服をしっかり着せ直した後、布団を掛けてあげながらそう言うかがみ。
「うぅ…寝てるつかさを一人にするのは気が引けるけど、今日はもう帰った方がいいのかな…」
「あんたが変な事出来ないのなら安心なんだけどね…あ、そうだ!」
何か良からぬ事を思いついたらしいかがみは意味ありげな笑みを浮かべながら部屋を出て行った。
そしてロープを片手に持ってくる。
「こなた、ちょっと腕を後ろに回して」
「あ…あの…かがみ様?」
「あ、トイレとか行きたいのなら今のうちに済ませてきなさいね」
「そ、それは大丈夫だけど…一体何を…」
「あんたも薄々気づいてるんでしょ?こうするのよ!」
かがみはそう言いながらこなたの腕を掴むとあっという間にこなたを後ろ手に厳重に縛り上げてしまった。
手首だけじゃなくてご丁寧に胸縄もされて、二の腕もしっかりと胴体に密着させられる。
「ちょっ! かがみ何するのさ! これ解いてよ!」
「ダ〜メ つかさに悪戯をしようとした罰よ。こうしておけばつかさに変な事は出来ないし安心して出かけられるしね」
そう言いそそくさと出かける準備をするかがみ。
「あとそれ荷造り用の大事なロープだからハサミとかで切ったりはするんじゃないわよ」
「じ、じゃあどうするればいいのさ! 一人じゃ解けないよぉ〜!」
「つかさが起きたら解いて貰いなさい。だけどその前に自分のしようとした事を正直に告白するのよ。
それでも解いてくれるかどうかはつかさ次第ね」
そう言いながらこなたの口に猿轡を噛ませるかがみ。
「む、むぐぅ!?」
「あんたの事だから手が使えなくてもキスとかしそうだから、これもはめておきなさいね。
それじゃあ言ってくるわね〜」
「む、むぐぅ〜!(か、かがみ! 置いてかないでー!)」
こなたの心の叫びもむなしくかがみは出て行ってしまい、
家にはベットでスヤスヤ眠ってるつかさと縛られたこなただけが残った。
(つかさ…)
この状態ではつかさが起きるまで他の事をして時間をつぶす事も出来ない。
やる事の無いこなたは改めてつかさに歩み寄る。
(よいしょっと…)
そして靴下のせいで挟みにくい足の指で何とか何とか布団を剥ぎ取るとベットに座ってつかさを見下ろした。
「すー……すー……」
(やっぱり…つかさは可愛いな…)
かがみに怒られたばかりだけどまた悪戯したくなってしまう物のこんな状態ではそれも叶わない。
目の前に愛する人が無防備な格好でいるのに何も出来ないのが凄くもどかしかった。
(ひぐっ…つかさぁ〜)
抱きしめたい衝動に駆られるがそれも叶わず、思わず自分の体も横に寝かせて芋虫の様にスリスリし始める。
「む、むふぅ…(つかさ、起きてよぉ〜)」
早くつかさに起きて貰ってこの拘束を解いてもらいたい反面、
せっかく気持ち良さそうに眠ってるつかさを自分の都合で起こしたくない。
そんな中途半端な気持ちが、全力で体を押し付けて起こすわけでもなく何もしないでいる訳でもなく
小さなうめき声を上げながら体をスリスリこすり付ける微妙な行為をさせる。
すると…
「う、う〜ん…あれ……? こなちゃん……って、どうしたのその格好!?」
今一番起こって欲しい事が起こってくれた。
最初は虚ろな表情をしていたつかさだったがこなたが縛られているのを見て一気に目を覚ます。
「えっと……ちょっと待ってね」
慣れない手つきで猿轡を外してくれるつかさ。
「ひぐっ……つかさぁっ〜〜!」
こなたは思わずつかさの胸に頭から飛び込んだ。
「こ、こなちゃんどうして縛られてるの!? 悪い人とかにやられちゃったの!?」
「ううん……逆に私が悪い子だったから、悪い事を出来ない様にされちゃったのかな…」
「ど…どういう事…?」
そこでこなたは今までの経緯を全て話した。
「そうだったんだ……これはお姉ちゃんのお仕置きだったんだね……」
「あの…それでつかさ……これを解いて欲しいだけど…」
そう言って回れ右をしてつかさに縄を向けるけど、つかさは何か考え込んでる様子で
解こうとする気配が無い。
「……つかさ?」
不思議に思って振り返ったこなたが見た物は、自分を縛ってる縄を
やや興奮した様子で眺めて来ているつかさだった。
「私、縛られてる人なんて実際には初めて見たよ…」
そう言って興味津々にこなたの縄をグイグイと触ってくるつかさ。
「つかさ〜、お願いだから焦らすのは止めてよ〜」
「……こなちゃんは眠ってる私に悪戯しちゃってたんだよね〜」
「うぅ……本当にごめん…謝るから…」
「ダメ〜、罰として解いてあげな〜い♪ このままでさっきの続きをやろう♪」
つかさはそう言うとこなたにギュっとしがみ付いてきた。
さっきまでと違い体の自由が効かないこなたは一方的にされるがままだ。
「ちょっとつかさ! これ本当に辛いんだってば! つかさに何もしてあげれなくてもどかしいんだよ!」
つかさが強く抱きしめれば抱きしめるほど、それに対して何も出来ないもどかしさが込みあがってくる。
「大丈夫だよ、こなちゃんの分まで私が沢山抱きしめてあげるから。
出来るだけ優しくしてあげるし怖がらなくていいよ」
物理的にこなたより優位に立ててるせいか、つかさのテンションはいつもより結構高めだ。
「なんか縛られて何もでないでいるこなちゃんを見てるとドキドキしてきちゃうよ〜」
「や…つかさ、どこ触ってるの!? ヒャン!」
「私をギュって抱きしめてくれたら止めてあげるよ?」
「こ、これじゃ無理だよぉ〜」
「じゃあ止めない〜♪」
……こうして、無防備なつかさに度を過ぎたスキンシップしたばかりに、お仕置きとして
今度は自分が無防備にされて、時間、内容共にさっきの数十倍はある
一方的なスキンシップをされるこなたであった。
こなたが泊まりに来たので、いつもの様につかさも入れて3人でエッチな事をした次の日の朝。
「う〜ん……もう朝か…」
変な体制で寝てたせいで体の節々が少し痛むのを感じながら私は目を覚ました。
「お姉ちゃん、起きた?」
そこへタイミングよくつかさが訪れる。
「こなたは?」
「こなちゃんは随分前に帰ったよ。今日は用事あるって」
「全く…昨晩は散々だったわよ…」
昨晩は私が責められ役だったのはいいのだけど
「かがみは強暴だから」
っと言うこなたに通販で買った手枷を後ろ手に掛けられて、
無抵抗な状態で二人に嫌というほど責められてしまったのだった。
「えへへ、お姉ちゃん可愛かったよ。思わず何度もキスしちゃった」
「うるさいわね…今度する時は私が攻める側になってこなたと一緒に
存分に可愛がってあげるから覚悟しなさい」
そう言って布団から起き上がろうとすると…
ガチャン!
腕が何かに引っ張られる感じがして体勢を崩してしまった。
「ちょっと…これ…」
かがみは恐る恐る腕にある感触を確かめる
「ちょっと! 何よこれ! 何でまだ手枷はめたままなのよ!」
「はうぅっ! 本当だ… てっきりこなちゃんが外したと思ってたけど、お布団被ってたせいで気づかなかったよぅ」
「しょうがないわね…つかさ、悪いけど外してくれない?」
「えっと…鍵は多分こなちゃんが持って帰ってしまったと思うよ…?」
「………はい?」
******
「ちょっとこなた!一体どういう事よ」
つかさに携帯電話を耳元に当てて貰いながらありったけの声で怒鳴り散らす。
「いやぁ〜ごめんごめん。昨晩は3人ともあのまま果ててしまってたし、
今朝は慌てて帰ったせいで完全に忘れてたよー」
「いいから早く鍵持ってきなさいよ!」
「それが今、家族みんなでゆい姉さんの所に来てるからすぐには戻って来れないんだよね〜」
「はぁ?」
「夕方までには帰ってくるからそれまで我慢してくれないかな?あ、お父さんが呼んでる、それじゃあね〜」
そう言って一方的に電話を切られる。
「はぁ…この状態でどうしようって言うのよ……食事やトイレさえも満足に出来ないじゃないの」
「だ、大丈夫だよ! お姉ちゃんのお世話は私がするから!」
「なんだが凄く屈辱的だけどこの状況じゃ頼らざる終えないか…よろしく頼むわ」
「うん♪」
こうしてつかさに介護される1日が始まった。
家族はみんな出かけていたのが幸いで
つかさに歯磨きや髪の手入れをしてもらう所から始まり
食事も「はい、お姉ちゃん、アーン」っと、一口一口食べさせて貰った。
服は幸いワイシャツを着ていたのでその上からジャンパースカートを着せて貰ったら
問題なかった。
そしてトイレ…
「お姉ちゃん、おしっこ全部出た?それじゃあ拭くね」
そう言ってティッシュで綺麗にしてもらってパンツを上げて貰ってる私。
裸で抱き合う様な関係じゃなかったら恥ずかしくて気が狂いそうよ…
「何だか今日のお姉ちゃんって本当に一人じゃ何も出来なくて赤ちゃんみたい〜」
「くっ…今までに無い屈辱だわ」
そうしてるうちに午後の昼下がりになり、私は何をする訳でもなくつかさと一緒に部屋でぼーっとしていた。
こんな状態ではラノベも読めないし勉強も出来ない。
テレビなら見れるかもしれないけど居間にいるといきなり家族が帰ってきて見られる可能性があるから
部屋に閉じこもるしかなかった。
そうしてると…
「お姉ちゃん…暇だったらこなちゃんが来るまで少しやらない?」
「やるって何を…」
「昨日の続き〜」
そこまで言っていきなり抱きついてくるつかさ。
「や、ちょっとっ」
「一杯可愛がってあげるね〜」
つかさはすっかりその気になってるみたいで今の私に抵抗する手段は無い。
「つかさぁー!! 次エッチする時は覚悟しておきなさいよ!!」
そう言いながらもこなたが来るまでたっぷりと弄られてしまう私だった。
以上です。
2つ同時だと読みくかったかもしれませんが申し訳ないです。
これをベースにSM物書いてみようかな…?
つかさ攻めでw
スタッふぅ〜!!
>>345さんに鷄☆ガラ☆スープ!
かがみのトイレシーンを妄想して……いや、なんでもない
また待ってるんだぜ
347 :
ふた☆自重:2008/04/22(火) 22:17:08 ID:RdNGFAUs
なんという介護プレイ。GJ!
ソフトSMなら僕的に需要ありますぜ〜
>>317 いいなぁこういうほのぼのとした話…Elopeシリーズも楽しんで読ませてもらってるけどこっちのが好きだなぁ。
いやあっちの話を貶めるんじゃなしにね…
こういう展開なら297のネタも遠慮無しにいけるな…あ・実は297を投下した阿呆です。俺。
>>345 やはりつかさは攻めですなぁ。反論は数多いだろうが。まぁいろんな事言いたいがとりあえず言えることは唯一つ…
GJ!!
やはり他人の作品というものは面白いわ。
>>345 えす☆えむ来たー!
縛られたこなたを見ると、その、なんですか。おっきしますな。
長編化も全力でお待ちしてます、ぐっじょぶ。
投下という方向で。
>>345 私の息子を大きくした罰として
続きを書きなさい
352 :
42-115:2008/04/23(水) 00:37:39 ID:90kFeqzb
では。
「女子高生四人がメジャーリーグにハマるまで」(後)
・11〜12レス
・エロなし でもセクソンあり
・完結編
「みゆきさ〜ん」
翌日。金曜日。
放課を告げるチャイムが鳴るや、こなたはみゆきの席へと走った。
黒井先生とチャイムのモーションを盗んだといってもいい、完璧なスタートだった。
その姿はまさに青い稲妻。教室の盗塁王。
……余談、いや実は余談でもないのだが、かり●げクンによると、バレないように居眠りをすること
を「盗眠」と言うそうだ。そしてこなたは教室の盗眠王でもあり、その日もばっちりと盗眠を決めてい
た。
「今日は暇?」
「ええ……委員会はないですし、私用もこれといって。強いて言えば宿題がありますが、明日明後日
と休みですから、急ぎではありませんね」
「ふむふむ、じゃあウチに来ない? いっそお泊りで」
「よろしいのですか?」
みゆき、とても嬉しそう。
「前の時は用事で来られなかったからね。次は是非と言ったのは、みゆきさんだよ」
「そうでしたね。じゃあ、お邪魔させていただきます」
「ふっふ〜♪」
こなた、得たりと笑う。
「そ・こ・で、大提案! 夜は長いからねえ」
「宿題ですか?」
「―も、あるんだけど。せっかくの泊まりだし、いつになく長時間一緒にいられるんだし、一晩かけて……や ら な い か?」
「スト〜〜〜ップ!!」
紫の電(いなづま)が教室を走る。
ボギー・6オクロック・レベル
(敵戦闘機 6時方向 同高度)
いや、身長差からいえば6オクロック・ハイだろうか。
かがみは「パウケパウケ」とも、「帝国軍人を舐めるな!」とも言わなかったが、後ろからこなたの肩を掴み、みゆきから引き剥がし代わりにこう言った。
「みゆきを変な世界に引き込もうとしてんじゃないわよ!」
「おぉ、かがみ。いつもにも増しておっかない顔」
「あんたのせいよ!」
鬼のような形相なのにはわけがある。
というのもかがみ、昨日つかさに話したところの「フォロー」を実行すべく、再三こなたに誘いをか
けたのだが、答えは「用事がある」の一点張り。ならばその用事ごと付き合ってしまおうと思ったのに、
それがみゆきを泊まりに誘うことだったとなれば、心穏やかでいられるはずもない。
「でもね、かがみん」
かがみの真剣さ・深刻さをものともせず、こなたはへらへらと言う。
「重爆の弱点は、上部銃座の死角である真上だそうだよ」
そういう漫画も読んでいたのか……ではなくて。
「ほう、じゃあ逆落としで一撃食らいたかったと?」
握り締めた拳が震える。怯えたみゆきが一歩、体を後ろに引いた。
「なんと!? かがみは逆落としで、私の胸に飛び込みたいとな?」
熱唱中のオペラ歌手のように、大げさに両腕を広げるこなた。かがみは、萎えそうな怒気を奮い立た
せて言う。
「いや、平べったすぎて、胸だか背中だか区別がつかん。ていうか、その貧相なカラダのどこが重爆だ?」
みゆきがみWikiを発動するかもしれないから、「そもそも重爆ってなんだ?」とは言わない。でかく
てゴツくて、ノーズアートがセクシーダイナマイツな飛行機ということにしておく。これもまあアレだ。
処世術みたいなものだ、とかがみは思っている。
「うぅ……かがみは毒舌と凶視線だけで、撃墜王になれるね。エリア88のスカウトに紹介しとくよ」
「いくらもらってるか知らないが、UFOが出そうな場所に売り飛ばすのはやめてくれ」
それはエリア51……と言いかけて、かがみに睨まれて、みゆきは慌てて口をつぐむ。
そんなことより……である。
こなたは一本のゲームソフトを手にしていた。東京方面に足を運んだ理由は、これを入手するためだ
ったのであり、「や ら な い か?」とは、これをプレイしないかという意味である。これがギャ
ルゲやエロゲの類なら、かがみの批判も的を射たものとなるのだが……。
「ツインズのユニフォームだね」
パッケージに灰色のピンストライプを発見したつかさが、声を上げた。そのまま専門誌の表紙にでも
出来そうなデザインだった。
「野球のゲームですか?」
とみゆき。
「うん。監督兼GMになってワールドシリーズ制覇を目指すも良し、一選手となって殿堂入りを目指す
も良し。色んなモードが搭載されたスグレモノなのだよ。おかげで徹ゲーしちゃった」
そして今日も、盗眠王のタイトルを獲得した。
「面白そうですね」
「でしょでしょ。二人プレイもあるから、一緒にやろ」
「ええ、是非」
「こなちゃん、私も」
「おお、つかさも来い来い」
そして三対の視線がかがみに突き刺さる。こなたも含め、参加表明を期待するおめめたち。
「ふーん」
内心かなり動揺しているが、表向き邪悪な人を装い、小馬鹿にしたようにゲームのパッケージを裏表
して品定め。そんなかがみを見かねてこなたは、
「この期に及んで、まだツンかね、さびしんぼかがみんは?」
哀れむように言った。すでに自分の勝ちだと言わんばかりに。
「う、うっさいわね。そう言うあんたはどうなの? 野球嫌いなくせに、こんなの買っちゃって」
「野球が嫌いだなんて、言ったことがあったっけ? つまらないとは言ったけど」
「へ??」
「後番組に犠牲を強いるから、野球中継は大っ嫌いなんだけどねぇ。野球自体が嫌いというわけじゃ
ないんだよ」
黒井先生とあっちでよく話すから、ロッテのチーム状態や成績についてはむしろ精通している方だし、
優勝セールの利用価値もあるから、後番組に犠牲を強いない分には別に嫌いじゃない、と言う。
「そういう迷惑するのって、別に野球だけじゃないんだよね。たまにボクシングとかプロレス、あと
オリンピックやサッカーの代表戦、選挙なんかでも普段と放送時間が変わっちゃったりすることがある
から、私の中では同罪なんだよ。野球中継はシーズン中、あまりに常習犯過ぎるから特にダメの子なん
だけど」
「あっそ……」
拘れば拘れるものだ、とかがみは思った。
「その点メジャーリーグは、生ならそういう心配のないお昼時とか早朝とかにやるし、録画中継も多
いでしょ。チャンネルだって、元々見ないような衛星放送か国営の地上波だし、延長だって最近はまず
しないからさ。なんて言うのかな。わりと上手くすり抜けて行ってくれてる感じで、健気というか好感
が持てるんだよね」
「ソウデスカ……」
「何よりも、私にも応援する大リーグ球団が出来たのだよ」
「「「え!?」」」
これに驚いたのがかがみだけではないのは、無理もないことだろう。そして、ある淡い期待に身を預
け、胸が疼いたのがかがみだけなのも、また無理がないことだった。
ツインズかな。
「ど、どこよ?」
分かりやすいほど期待と不安を顔いっぱいに貼り付けて、かがみが聞く。
「シアトル・マリナーズ」
「そう……」
そして落胆も隠せない。よくある、期待した私がナントヤラ。
「典型的なミーハーね」
にわかファンにはお似合いの球団だ、というニュアンス。
「いやいや、優勝セールでゲームが安くなったりすれば、かがみだって嬉しいんじゃない? 本体、
ソフトとも」
「なるほど」
みゆきが肯いた。こなたが言う意味がすぐに分かったようだ。
「泉さんらしい動機ですね」
「らしくないよりよっぽどいいって、ラインハルト陛下も言ってるよ」
「そうですね……お恥ずかしながら、それがどなたかは存じませんが」
「ちょ、どういうことよ?」
かがみ、大いに困惑。
「ん〜、かがみは読んでないの? 回廊でヤンにフルボッコされたビッテンに、ハルトちゃんが―」
「それは知ってるわよ!」
「おぅ、かがみオタクぅ」
「うるさい! そうじゃなくて、どうして優勝セールとゲームが一緒に出てくるの?」
「かがみんもゲームやるでしょ」
こなたがしらばっくれたので、かがみは助けを求めるようにみゆきを見る。みゆきは、こなたが説明
すべきことと心得てしばし黙していたが、だからこそこなたが黙していると気付くと、説明してあげた。
「マリナーズの親会社が任天堂なんですよ」
「あ……」
かがみは呆然とする。確かにおととい・昨日と見たツインズvsマリナーズ戦。セーフコ・フィールド
の打席後方のフェンスは、日本語の広告がやけに目立った。試合にのめりこむあまり、気にもしなかっ
たが。
「イチロー選手の獲得も、親会社の意向だったそうですよ」
「WiiやDSや萌えドリルがバカ売れする前から、先見の明があったんだね」
こなたは我が事の様にしたり顔。
「マリナーズの今年が気になるんだけど、優勝できそう?」
なるほど、とかがみは思う。自分で調べるのではなく、みゆきに聞く。つかさに勧めたことを、こな
たが実に上手に実践してしまっているには、悪い意味で感心する。宿題と同じ構図だ。
「そうですね……」
みゆきは言葉を慎重に選ぶ顔になる。
「いきなり希望を壊しそうな雰囲気が身近に」
こなたは海苔目・への字口で表情を曇らせる。ツインズファンには立ち入れない絶対不可侵領域が形
成され、つかさは居たたまれなくなりかがみの横に遁走した。
「あ、いえいえ、打線にその潜在力はあるとは思います。ですが投手に関しては、かなりギャンブル
性の強いトレードを敢行したかと……」
07年のマリナーズは9連敗が1回、7連敗が2回、6連敗が1回と、負けだしたら坂道を下る一輪車の様に
止まらないチームだった。そこで連敗ストッパーとなりうる先発投手の獲得を模索し、オリオールズの
エリック・ビダードに白羽の矢を立てた。
マリナーズは若手選手で手を打とうとしたが、オリオールズはジョージ・シェリルを要求し、マリナ
ーズは泣く泣くそれを呑んだ。
「シェリル!?」
こなたが大げさに驚くと、アホ毛が裏返りそうなほど跳ね上がった。
「マリナーズの中継ぎエースですね」
「ふ〜ん、シェリルなんだ……。それで?」
「ギャンブル性というのは、故障開けのビダードが期待通りに活躍できるかどうか。そしてシェリル
の抜けた穴を、若手が埋められるかどうかです。昨年、岡島投手がレッドソックスで果たした役割を考
えると、中継ぎエース放出のリスクは計り知れません。マリナーズは4月上旬にオリオールズに4連敗を
喫しましたが、新天地でクローザーとなっていたシェリルに3セーブを献上したのは、トレードの結果
が端的に現れてしまったとも言えますね」
こなたの顔が青ざめ、どよーんとした何か雨雲みたいな物が顔の周りを漂う。いつだったか、風邪と
インフルエンザは違うと言われた時のようだ。
「ら……来年があるよね。うん、来年来年」
「諦めるの早っ!」
本能的にツッコんでしまった。業が深いのか、何なのか?
「実は、任天堂がマリナーズの株式を取得する際にも、興味深い裏話があったそうなのですが……」
「それはウチでゆっくり聞くよ」
「そうしましょうか」
「じゃあ行こう」
こなたはみゆきとつかさの手を引いて、教室から出ようとする。端から見れば一見かがみをほったら
かしのようでいて、内々にはかがみを意識しまくっていることが、例えばつかさにもみゆきにも見え見
えだった。
「ちょ、待ちなさいよ」
期待通りにかがみが呼び止める。そうしなければ、仲間はずれと引き換えに、こなたの目論見は失敗
しただろうに。
「何?」
こなたが振り返る。その顔は、ツンデレに餓えたネコ科の、いや猫口のイキモノ。うずうずが止まら
ない。
「わ……私も……」
かがみとてそれを分かりきっているものだから、俯き、目を逸らし、ツインテールの片翼を弄びなが
ら、真っ赤になってしどろもどろにならずにはいられない。
「なにカナカナ?」
「混ぜなさいよ……私も」
「ほっほ〜」
かがみの回りをこなたが跳ね回る。極上の食材を手に入れた料理人てこんな感じかな、とつかさは思
った。
「さみしんぼさんだねえ、うさちゃんだねえ」
こなたは背伸びして、ツインテールをウサギの耳に見立てていじくる。かがみは暗い表情で、される
がまま。一方こなたは、風流の微粒子も感じられない句を読む。
「寂しくて 混ぜてほしいよ お泊り会」
「そんなんじゃないという点と、字余りだということのどっちに突っ込めばいいの?」
「またまた。素直じゃないのもツンデレのステータスだけどね。今さら言い逃れは出来ないと思うよ」
「……でも、するし」
「ほよ? どういう言い分で?」
「それは……その……」
後につかさが語ったところによると、「あのときのお姉ちゃんは、爆発寸前に見えた」という。
「……ゲーム慣れしてないつかさやみゆきに、あんたの相手役が務まるわけないでしょ」
言っちゃった……。
意図的に誤解を招きそうな奴に、誤解を招きそうな事を、言っちゃった……。
今の、「ゲーム慣れしない」を抜いたら、どういう意味になる? そもそも、そんなことを意識する
方がおかし―
「―い!?」
こなたの顔が、文字通り目の前にあった。背伸びして顔を寄せ、息がかかるほどの至近距離。四角ば
った緑色の瞳が、不可思議な吸引力で以ってかがみの視線を一呑みにしていた。
「『ゲーム慣れしてない』を抜いたら、すごい誤解を招きそうな殺し文句だね」
ほれ見ろ!
「殺し文句じゃない! 勝手に死ぬな」
そもそも殺し文句のつもりが誤解されたら、逆の意味にならないか? いや、そんな事はどうでもよ
くて……。
「そうやって最後までツンを通すかがみん萌え」
「……はあ?」
やっと顔が離れる。
「いや、今のはデレかな? 裏を返せば『あんたの為なんだからね』ってことだもんね。どっちだっ
たの?」
「知らないわよ」
「え〜、無責任アリス〜」
「誰がアリスだ? それに私はツンデレじゃないの。誰のためと言えば、みゆきとつかさのためよ」
「お〜、デレたデレた」
「るっさい!」
置いてけぼりという名の堀に生き埋め状態のみゆきとつかさは、ただ突っ立って見ていた。
「まあ、こうなりますよね」
「そだね〜」
メインとなる対戦カードも決まったようだ。
「ところでゆきちゃん」
「何でしょう?」
「球場で食べる軽食って、どんなのがあるの?」
「スタジアム・フードですか? やはり、ポップコーンが定番でしょうか。『私を野球に連れてって』
という歌にも、クラッカージャックというポップコーンが出てきますし」
「ポップコーンかぁ」
つかさは夢見るような目になる。その手は、しかるべき物さえ揃えば、夢を現出させることの出来る
魔法の手。それを見たかがみが、みゆきのそばに寄って来て脇腹を突く。
もっとけしかけろ。何か食わせろ。
その目は、口ほどにそう主張していた。
「え、えーと、他にもホットドッグも定番でしょうか」
「ホットドッグ?」
「ええ。あちらでは、スタジアム・フードのホットドッグやそれにかける秘伝のソースを目当てに、
球場まで足を運ぶ人もいるそうですよ」
「秘伝のソースかぁ」
つかさの頭は、新聞をする輪転機もびっくりな勢いで回転する。
チーン
やがて三人は、そんな音を聞いた様な気がした。教室に電子レンジなんてないのに……。
「出来たみたいだね、レシピ」
とこなた。
「うん、ばっちり」
つかさ、笑顔。
「楽しい野球観戦が出来そうですね」
とはみゆき。
「ダメよ、みゆき。まずは操作法とか覚えるために、私と練習試合をするんだから」
かがみ、宣戦布告(?)。
「わ、私とですか?」
「……ここ何日か、みゆきさんの取り合いだよね」
「うん、ゆきちゃんモテモテ」
「オープン戦ていうの、そういうの?」
「いえ、そんな……あ、あちらではエキシビジョン・ゲームと呼びます。他にも用法の異なる野球用
語はいくつもありまして……」
「そしたら勝負よ」
「いいよ」
「例えばクリーンアップですが、単数形ということからも分かるとおり……」
「マイクロ●フトとスターバ●クスとボーイ●グしかないような街の球団には、負けないわ」
「それだけあればご立派かと……」
「あちらでは四番打者のみを……いえ、ボーイン●の本社はもうシカゴに……」
「クリーンもアップも卵料理みたいだね。クリーンエッグ(温泉卵)にサニーサイドアップ(目玉焼
き)……ああ、そういえば東京ドームも、ビッグエッグって言うんじゃ……」
かくして四人は征く。
とめどない会話を纏いながら。
「見ろよ、あやの」
その様子を廊下で目撃することとなったみさおが、相棒のあやのに向かって言う。
「柊と不愉快な仲間たちが行くぜ」
「みさちゃん……」
不愉快なのはみさちゃんにとってでしょ。柊ちゃんにとっては大切なお友達なんだから、そんなこと
言うもんじゃないわ。
とかなんとか、たしなめるべきだとは思ったが、今はそれ以上に気がかりなことがあった。
「本当に柊ちゃん奪回作戦を発動するの? 廊下で待ち伏せして、って言ってたけど」
「う〜、そうなんだけどよお……あいつら付け入る隙がないぜ」
「ないわね〜」
四人は、二人などまるで背景の一部だと言わんばかりのガン無視で、通り過ぎて行ってしまった。会
話の端々から、「マイケル」という単語が漏れ聞こえて来た。
あやのとしてはホッとする反面、やはり寂しい。
「仲いいよね。全然違う者同士に見えるけど……」
四人を結び付けている物は何なのか?
「マイケル・ジャクソンのファンにでもなったんじゃねーの?」
みさおは、もうどーでもいいやとばかりに言い放つ。
「そうなのかな……?」
無論それはハズれていた。
そのとき話題の中心にいたのは、北海道日本ハムファイターズのクローザーにして、ミネソタ・ツイ
ンズに所属した唯一の「日本人選手」であるマイケル中村だったのである。
両チーム3勝3敗で迎えたミネソタ・ツインズvsシアトル・マリナーズによるALCS(アメリカンリーグ・
チャンピオンシップ・シリーズ)第七戦は、スコアボードにすでに11個の「0」が並ぶ緊迫した投手
戦の様相を呈していた。
6回の裏、マリナーズの攻撃。
ツーアウトながら三塁にイチローを置き、迎えるバッターは四番のリッチー・セクソン。好投を続け
るツインズ先発リバン・ヘルナンデスが投じた三球目。打球はライトへ。
「あーあ……」
「よし!」
浅いフライがツインズの右翼手・カダイアのグラブの収まると、こなたがセーフコ・フィールドの溜
息を代弁し、かがみがコントローラーを握ったままガッツポーズ。
「名前からして、ヤッてくれると思ったんだけどなあ……」
マリナーズの指揮官であるこなたが悔しがる。
「何よ名前って。あ、いい。言わなくていい。碌な事じゃなさそうだから」
ツインズ指揮官のかがみは、蛇のいる藪に突っ込みかけた片足を慌てて引き抜く。
「お気持ちは分かりますが、地名にもけっこうそういうのありますよ。でも、意識する人が多いので
しょうか。最近では、『性別』の事を『ジェンダー(gender)』と言い表す例が増えているように感じ
られます」
事も無げに応じたのがみゆきだった。彼女は数学の宿題に取り組みながら、試合のスコアブックをつ
けるという荒業を、これまた事も無げにこなしている。
ALCSに先立ち、みゆきはかがみとの練習試合に臨んだ。かがみは当然ツインズ、みゆきは迷いながら
ロベルト・クレメンテの所属したピッツバーグ・パイレーツを選択した。
「さすがみゆきさん」
「ど、どういう意味でしょう?」
「みゆきさんにぴったりなチームだな、って」
「そ、そんな……」
パイレーツという球団名の由来を知っているみゆきは、大いに困惑した。
「あ〜、いいのよ気にしなくて。どうせ変な意味だから。需要があるとか何とかいいながら、実はや
っかんでるんでしょ」
「うぅ……でも、嬉しくないです」
球場も自由に選べるということで、打撃戦の方が面白いというかがみの要望で、ダイヤモンドバック
スのチェース・フィールドが選ばれた。ロッキーズのクアーズ・フィールドに次いで高い標高にあるた
め打球の飛距離が伸びる上、地形の関係でライト方向への打球に強い追い風が吹くのである。ダイヤモ
ンドバックスに移籍した途端、HRが激増した左打者も少なくないと、みゆきは解説した。
試合は操作に慣れないことも手伝って、両チームとも無駄な失点を重ねたが、先にコツを掴んだかが
みのツインズが、20−12という違う競技みたいなスコアで試合を制した。
ALCS第一戦の開始直前、つかさのスタジアム・フード第一号が届けられた。泉家の台所を借りて作っ
ていたクラッカージャック―糖蜜で固めたポップコーン―である。そうじろうおじさんとゆたかちゃん
にも好評だったという。
こなたとかがみは、そのままつかさを始球式に駆り出した。エプロン姿のまま白球を投じる真似をす
ると、四人が万雷の拍手を送る。
四人……ドアの外で覗いていたそうじろうを含めてである。
泉親子曰く。
エプロンで始球式は萌え萌えだ←結論
なお、クラッカージャックはあまりに美味だったため、半分くらいがかがみのお腹に納まってしまった。
試合はマリナーズが5−3で勝った。
スタジアムフード第二弾は、ALCS第三戦の最中に届けられた。
ホットドッグ・つかさ秘伝ソース付き。
会心の出来だったようで、製法は早くも企業秘密となった。自分のお店を持つまでは封印するかも、
という。まあ、知ったところで再現や模倣は困難を極めるだろう。
あまりに美味だったため、半分くらいがかがみのお腹に収まってしまった。
「かがみ……」
「い、いいじゃない。お金出したの私なんだし」
「ああ、まあ……その限りでは、ね」
こなたが知る由もなく、また言えるはずもないが、こうして「フォロー」を実行したかがみだった。
試合はホットドッグにパワーを得たツインズが、逆転勝利を収めた。
マリナーズが三勝目を挙げ、王手をかけた第五戦の後に夕食。メニューは、つかさが腕を振るったキ
ムチもつ鍋。
ツインズがタイに持ち込んだ第六戦の試合中から、試合後にかけて順次入浴と相成り、迎えた第七戦。
スコアボードが12個目の「0」をコレクションすると、こなたがタイムをかける。一つは、好投なが
ら球数の増えた先発のジャロッド・ワッシュバーンを諦め、二番手投手にスイッチするため。もう一つ
は、スタジアム・フード第三弾が到着したためである。
「わー、美味しそうですね」
「すっごい甘そうだけど?」
「つかさ、これ……」
「お夜食でーす。めしあがれ〜」
登場したのはバナナズフォスタというスイーツだった。縦に二等分し軽く煮たバナナにカラメルをか
け、バニラアイスを添えミントの葉を飾ってある。
「未成年だから、ラム酒とバナナリキュールが使えない―というか買えなかったんだけど、どう?」
「美味しいです」
「夜食としてはどうかと思うけど、すごくイケるね」
こなたとみゆきは賞賛するが、かがみの表情が冴えない。
「つかさ、さあ……。私、今マリナーズを敵にして戦ってる最中なの」
こなたとみゆきが頭から「?」を射出した。
「空気を読もうよ、っていうか、こなたの肩を持ってるように思えてならないんだけど」
「どゆこと?」
「キムチもつ鍋もそうだったけど、これイチローが正月番組で作ってた物なのよ」
途中から見たつかさが普通の料理番組だと思って録画していたものを、泉家への出発寸前にチェック
し、泉家で再現したのだった。
「ちょうどいい機会かなって思って」
つかさ、照れ笑い。
「かがみ、要らないの?」
「んな事言ってないでしょ!」
「じゃあ食べるんだ……」
何だかんだ言って、バナナズフォスタも半分くらいはかがみのお腹に収まってしまった。
みゆきのスコアブックには、「バナナズフォスタにより中断」と記された。
9回の裏、ジョー・ネイサンがマリナーズ打線を三者凡退に抑えると、試合は0−0のまま延長戦に突
入した。9回の表には、こなたもクローザーのJ.J.プッツを投入していた。みゆきから、延長戦は実質
的に9回から始まっているという衝撃的なアドバイスを受けたためである。
「8回の裏を同点で終えた場合、相手に一点もやれないという状態は9回から生じます。ですから、勝
つ可能性を高めるには、信頼の置ける投手から順にマウンドに送るというのが基本となりますね」
リードしている試合では一番最後に投げるクローザーが、同点の9回以降は一番最初に出て行くこと
になる、というわけだ。
「延長戦の認識がちょっと変わったわね」
と、かがみは感想を漏らした。
「どっちみち9回に投げるから『9ローザー』か……」
そう言ったのがこなたである。かがみは、はい面白い面白い、と言ってくれた。
延長戦の認識が変わったといえば、こなたにとってはむしろ10回だった。プッツを続投させるべきか
どうかを考える振りをしながら、ある感慨に耽っていた。
あれほど憎らしかった野球の延長が、今はなんかこう……。何なんだろう、この感覚?
手持ち無沙汰のかがみは、つかさを見た。スコアブックを見ながらじっと試合再開を待つみゆきの膝
枕の上で、すでに寝息を立てていた。彼女的にはもうおねむの時間なのである。
「この子ったらね」
不意にかがみが、苦笑いを浮かべながら口を開く。みゆきが顔を上げることで少し揺れた膝枕の上で、
つかさがムニャと言った。
「メトロドームでお店を開くのもありかな、なんて言い出したのよ」
「あらあら……」
みゆきも苦笑いである。
こなたはそんな二人に、ちょっとした反感にも似た違和感を抱く。
「二人とも反対なの?」
「反対と言うか……ねえ?」
みゆきは肯く。
「ツインズの本拠地のメトロドーム……正式名称、ヒューバート・H・ハンフリー・メトロドームを
ツインズが使用するのは、2009年一杯までなんです」
「てことは、陵桜卒業と同時に渡米!?」
「メトロドームにはNFLのバイキングスが残りますが、それも2011年までですね」
「だから、新球場の方を勧めたわ。もちろん志には共感するけど、この子は思いつきでモノを言うと
事があるから、ね。犬飼おうとか」
「ふーん……」
こなたは画面に目を戻す。
「シアトルまで行って野球見たら、いくらくらいかかるんだろうね」
起きている二人は、驚いたようにこなたを見た。夜の静寂をそのまま宿したかのような横顔が、ただ
一途に画面を、またはその先にあるものを見つめていた。二人はそれを、きれいだなと思った。
「さあね」
かがみが答える。
「私としては、ミネアポリスまでがいくらくらいか知りたいところだけど。ていうか、直行便あるの
かしら?」
海外旅行慣れしたみゆきなら、相場も知ってるだろう。だが彼女はそれには言及せずに、慎ましくこ
う言っただけだった。
「行けるといいですね、いつか」
「「「うん……」」」
肯く二人の監督の声に、たまたま寝言を言ったつかさの声が重なった。
「じゃあ決定だね」
二人の美少女をしてきれいだと思わしめた横顔に、なにやら不穏な表情が急浮上する。
「な、何よ?」
かがみが身構える。
「この勝負、マリナーズが勝ったら行き先はシアトル、ツインズが勝ったらミネアポリスね」
「何を言い出すかと思えば……」
とはいえかがみ、元来勝負事を嫌いとする方ではない。そうでなければ成績上位者に名を連ねること
も、体育祭であれほど張り切ることもなかっただろう。
「いいわ、受けて立つ」
「むひょひょひょひょ」
こなたは怪しく笑った。かかったな、と言わんばかりだが特に意味はない。
「ボーイ●グが去った街に、ボ●イングの飛行機で行くつもりなんかないんだから」
「それはもういいから……」
かがみさんはエ●バスの機体がお好きなのでしょうか、とみゆきは思ったが、試合が再開したので言
葉には出さなかった。
打席にはツインズの主砲にして06年のアメリカンリーグMVP、ジャスティン・モルノーが入った。左
打者だが、こなたはプッツの続投を決めた。
ゲームの中のマリナーズのクローザーは、将来四人の観光客をシアトルに呼べるかどうかを賭け、
10回表のマウンドへと上がって行った。
おわり
364 :
42-115:2008/04/23(水) 00:54:02 ID:90kFeqzb
以上となります。
おつきあいいただき、ありがとうございました。
>>364 そうか、ゲームならこなたのフィールドだった!
そして画面の向こう側を見つめるこなたにかがみ&みゆきさんならずとも見とれます。
案外あの子達のことだから、ほんとにかの地で4人そろったりなんかして?
完結お疲れ様でした、ぐっじょぶ。
>>364 これはすばらしい!
いつもどおりの4人がいつもどおりのノリで
いつもどおりとはちょっと違う雰囲気を漂わせ
1つのものにはまっていく過程を
メジャーリーグの薀蓄と4人の心理動向をシンクロさせつつ
描写しきる!最後まで引き込まれますた!
そんな中でも、いつもどおりな輝きを失わない4人に
ひたすら心中「グッ」っときますたぞ!
GJの代わりにコレを言わせてもらおう!
鳥 羽 イ チ ロ ー G O !!
>>364 野球は興味無いが、らき☆すたとスポーツって組み合わせも面白いなw
D1ネタは・・・もう無理っぽいorz
卓球ネタは一応形が見えてきたが筆が進まんw
ミニ四駆やってる場合じゃねぇなw
369 :
久留里:2008/04/23(水) 01:47:53 ID:/k/rmJ4Y
みなさん投下GJ!!
(後でゆっくり読みます)
久し振りに現れたワケですが、例のやつの展開が明後日の方向に行ってしまい、ただいま修正中。
どんどん鬱展開になっていく一方なので、何とかしようかと思ってます。
で、こんな電波を受信した↓
ひかげ「お姉ちゃん、この漫画にある『おかしなこと』って、なぁに?」
ひなた「それはそれは『おかしなこと』なのよ、ふふふ」
ひかげ「? えっ? ちょ、ま、待って、え、う、わっ」
ドサッ
ひかげ「アッ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
ので、仕込んできます。
>>367 らき☆すたとスポーツの組み合わせは面白い、か
小生それでサッカーを考えたことがあるのだが
必要人数が多すぎて断念wwwww
371 :
ふた☆自重:2008/04/23(水) 07:12:50 ID:c4WOfLdU
昨夜、夢に見た映画の予告なんぞを……
――コン○ティーク創刊○周年記念作品
大ヒットテレビアニメ、待望の映画化――。
陵桜学園の生徒を狙った、謎の暴力事件が連続発生。被害者は放送委員長、保健委員長、風紀委員長、3−A学級委員長……。
いずれの犯行現場にも不可解な記号が残されていた。
ななこ「『サ1/11』、次は『2/11』、ほんで『3/11』ときて……今度は『ニチ4/11』、か……」
捜査を進めるうち、学園の裏サイトの存在が浮上……そこに書き込まれた――。
かがみ「『私刑リスト』……?」
みゆき「暴力行為をゲームのように楽しんでいるのだとすれば――到底許される事ではありません」
進展しない捜査をあざ笑うかのように次々と起こる暴力事件。そしてついに――。
こなた「う、ぐ……ゆ、ゆーちゃん……ゆーちゃん……!」
ゆい「ゆたか……面会謝絶だって……絶対安静だって……!」
パティ「ユタカが危険な目にあったのに、このままlook onシテロト!?」
やがて浮かび上がる、一人の生徒の死――。
みゆき「復讐の対象は……2年前、1人の生徒を見殺しにした、この学園の生徒、全てだったんです」
現場に残された記号の意味は?犯人の真の狙いは?
高良みゆきは、犯人の次のターゲットが、ある大会へ向けられているとにらむ。
ひより「2日後って……まさか」
つかさ「陵桜マラソン大会……」
陵桜学園の全生徒と観客が危機にさらされている。
ゆたか「これ以上……傷つく人を増やしたくないよ……」
みなみ「――大丈夫。必ず犯人を捕まえて……ちゃんとゆたかに謝らせるから――」
学園史上最大最悪の事件が、ついにカウントダウンを開始する。
あやの「――ねえ。この記号って……」
みさお「あやのが! あやのがどこにもいねーんだっ!」
みゆき「泉さん、急いで向かって下さい!!」
こなた「かがみ……かがみ……っ!」
果たして彼女達は、学園を、大切な人達を、この未曾有の危機から救う事ができるのか――?
――劇場版らき☆すた 〜絶体絶命!陵桜マラソン大会〜
みゆき「……あなたの選んだ方法は、間違っています……!」
20×8年5月1日 GW Roadshow――
かがみ「こなた……? こなたぁあああああああっ!!」
はい、元ネタ元ネタ
つ
ttp://www.aibou-movie.jp/# 自分に書けるのはここまで。後は誰か書いて下さい(おい
相棒観に行くよw
あれ香田殺害事件が本ネタにあるみたいだね予告からするに
>あれ香田殺害事件が本ネタにあるみたいだね予告からするに
おいwWWWWW
>>364 GJっしたー。
うーん、なんというか。野球にはあまり興味がなくて、まして大リーグなんて
「なんかやってるな」という程度なんだけど、興味深く読んでしまったのはなぜだろう。
アニメ板死んだ?
>>371 うむ、さっそくそれをSS化する作業に入 (ry
こんな電波を受信したので、投下する。
※※※
修学旅行の一日目の夜のこと、泉こなた、柊かがみ、柊つかさ、高良みゆきの四人は大浴場で湯を楽しんでいた。
「きゃあっ! こ、こなたさん、や、やめてくださいっ」
「ははは、よいではないか、よいではないか〜」
目の前で、こなたがみゆきの胸を揉んでいる。いくら友達とはいえ、それはないんじゃないの、全く……。
「こなたっ! みゆきが嫌がってるじゃないの、やめなさい」
「ええ〜っ、いいじゃ〜ん。これくらい〜」
「あほか、お前は。いくら同性の友達とはいえ、常識ってもんが…」
と、もっともなことを私が説いていると、急にこなたが顔をにんまりさせて、
「あ、わかった〜」
「は? 何が?」
「かがみんも、みゆきさんの胸を揉みたいんでしょ〜?」
そうそう、私も…ってあほかっ!
「な、何言ってんのよ! あほじゃないの!」
「またまた〜」
「あ、あの…」
私が何かを返そうとしていると、今までずっと、こなたに気圧されていたみゆきがおずおずとしながら、
「か、かがみさんになら……揉まれても良いですよ」
「……は? …………はーっっ!?」
私は、何が何だか分からなかった。
そ、そりゃ、その大きな胸は魅力的だし、みゆきのことは友達として好きだけど…ちょ、ちょっとそれは違うでしょ…!
すると、こなたが目の色を変えて、
「だ、だめだよ、みゆきさんっ! 冗談を本気にしちゃダメ! かがみの最初のパイタッチは私なんだからっ!」
「い、いいえ、私です!」
「だ、だめだよ、こなちゃん、ゆきちゃん! お姉ちゃんは、私だけのものなんだから!」
何が何だか分からない。どこからともなく、つかさまでこの口げんかに参戦している。
誇れるべき親友であったと思っていた三人が、私を巡って喧嘩している…?
そ、そんな馬鹿な…ことが…あっていいの? わ、私はノーマルなはず…!
「……そうだ! 元はといえば、ヘタレのかがみんが悪いんだ!」
……は?
「そ、その通りです! かがみさん! さあ、選んでください!」
……え?
「お姉ちゃん! 選んで!」
そう言って、私の前に突き出された三つの胸……。
も、もう、何が何だか分からない……。
バッシャーン!
「お、お姉ちゃーん!」
「かがみさんっ!?」
三人は、気絶して浴場に突っ伏してしまったかがみに駆け寄る。
「かがみーん! ……むう。冗談とはいえ、やりすぎたかな」
「後で謝らなければいけませんね……」
「うわーん、お姉ちゃーん」
その後、三人は、ぷかぷかと浮かぶかがみを救出し、部屋に寝かせた。
そして、意識が戻ったかがみにこっぴどく怒られたのはいうまでもない。
※※※
生まれてきてごめんなさい
大変GJだが
この状況ならみさおとあやのもいるべきだと思うんだ
そして5人がかりで
>>377 なるほど!三段πか!!(゚∀゚)
こ の 発 想 は な か っ た
神 降 臨
>生まれてきてごめんなさい
許してもらいたかったらこのネタで突き進んだ一作を書くんだ(゚∀゚)9m
なるほどなるほど
で、続きはいつ読めるのかな?
381 :
36-273:2008/04/23(水) 23:05:41 ID:nbJdyQia
まずい、名前欄を書き忘れた…。
というわけで、
>>377の作者は私です。皆様、ご感想ありがとうございました。
急に頭の中にポーンと浮かび上がってきた、本当に馬鹿らしい小ネタだと思うのですが、皆さんのお暇潰しにでもなれば幸いです。
えー、これの続きですが…いつか、書く機会があるかもしれません。あまり期待しないほうが良いとは思いますが。
それでは、また。
>>381 いやばかばかしくてもいいからめっさ期待して待ってますわ。
だが断る、期待する
構想5分、執筆10分。プチネタいきます。異色のカップリング。
----------------------------------
――――――――――――――――
ふたりの現実主義者(リアリスト)
――――――――――――――――
「ファンタジーは『幻を想う』と書くのよ。……夢見がちなのもいいけど、もういい年なんだからほどほどにしときなさい」
柊かがみは、現実主義者(リアリスト)である。
幼くして姉の矜持に目覚めた彼女は、つかさにとっての「いい姉」であるべく努力を重ねた。
その甲斐あって、彼女は幼い頃からしっかりとした価値観やものの見方を身につけた。
しかしそれは、少女が持ってしかるべき憧れや無邪気さを、彼女自身をして抑え込ませてしまうことになっていた。
「サンタクロースですか? ……そうですね、幼稚園の年長組になった頃までは信じていましたけれど……」
高良ゆかりは、現実主義者(リアリスト)である。
幼くして知識欲に目覚めた彼女は、中学校に上がる頃には、大人も舌を巻くいっぱしの博識少女となっていた。
しかしそれは、少女が持ってしかるべき夢や幻想を、容赦なく打ち砕いてしまうことになっていた。
ふたりは、現実主義者(リアリスト)である。
この世界は、悪意に満ちているということを。
ファンタジーなど、所詮絵空事に過ぎないということを。
奇跡など、決して起こりえないということを。
……ふたりは、若くして悟っている。
「ん……んふっ……みゆき……」
「ふぅ……、んっ…… ……かがみさん……」
人気もなく静まり返った、美術準備室。
夕陽に染め上げられた、暖かいオレンジ色の中で、
今日もふたりは、身体を合わせる。
「……かがみさん……かがみさん……」
「……みゆき……かがみって呼んで……」
ふたりは、現実主義者(リアリスト)である。
……だからこそ、ふたりは知っているのだ。
「あぁっ……好きです、かがみ……かがみぃ……」
「……私もよ……好きよ、みゆき……」
この想いは、幻想でも奇跡でもない……
――まぎれもない、真実なのだと。
― Fin. ―
>>384 かなり乙!約15分で完成乙!!GJ!!!
で、続きは?
gjでござる
ただ
>>高良ゆかりは、現実主義者(リアリスト)である
みゆきでは?
>>384 GJ
>高良ゆかりは、現実主義者(リアリスト)である。
誤植とはいえ、激しく吹いたwww
>>364 素晴らしい! 待っていた甲斐がありました
それにしても、大リーグと航空兵力とらき☆すたに詳しいってどういう組み合わせなんだw
>>381 続きを期待せざるを得ない。というか続きをおながいします
390 :
42-519:2008/04/24(木) 01:46:20 ID:cqVlbVou
なんだか一レスでスピード感のあるネタがブームになりつつあるような気がしましたので私もかいてみました。
他の方と違ってへたっぴいですが、それはさておき…。
>>371 続きが気になりますのでぜひとも(ry
>>377 みゆきさん萌えっ!
>>384 簡潔な文章にエロスと萌え――。
曖昧に笑うしかない、柊かがみはそう思った。放課後の教室。こなたの机を前にして行われるとりとめのない話が続いている。
これが日常なら良かった、いつものように喜怒哀楽をはっきりしてかがみは突っ込んだり笑ったりすればよいだけなのだから。
でも、この状況。非日常的な日常――言葉まで曖昧になった。
「これ…どうすればいいんだ?」
「だーかーらー、かがみんは私の嫁なの!」
「うるせえちびっこ! 柊はうちんだ!」
「違うよ〜お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなの!」
「あの…間をとって私ということで、よろしい……とか?」
きっと三人の目が高良みゆき――今世紀最大のKY発言――のほうに向く。
目が本気である。殺意が見え隠れしていて、獲物を狩るときのような危険さを孕んでいた。
「「「それはない!」」」
は、はう…
この中で一番押しの弱いみゆきはうな垂れて声を萎ませた。
三人は向かい合い、それぞれが「かがみは私のもの!」と出張した。
一人脱落。早すぎる出番の終了はまさに原作準拠――おっとそれ以上は禁句だ。
「てゆーかだいたいちびっこは高校からの付き合いだろ〜私なんて五年だぜ!」
中一からと勘違いしている読者諸君もいるかもしれないが、柊かがみと、こなた達とかがみ争奪戦を繰り広げている日下部みさおは中2からの付き合いである。
「そのわりには『日下部』ってみさきちは苗字で呼ばれているみたいだけどね〜
私なんて『こなた』だし、時には『あなた』って呼ばれてるんだぞ」
「よんでないって!」
事態の収拾を諦めて、とりあえず静観を決め込むことにしたかがみが絶好の突っ込み機を捉えてかがみ砲を発射する。
こなたはそれを予想していたのか「――ほらみろみさきち。私とかがみんはこーんなに息があうのだよ〜」
「く…あやの〜、なんとかしてくれよー」
同じく事態に苦笑しながら、みさおの背後で微笑んでいるあやのに問いかける。あやのは「ふふ…頑張ってねみさちゃん」とだけ言うのだった。
てゆーかみさちゃんは私のものだし。柊ちゃんにも渡さないんだよ。
あやのは曖昧な笑顔でみさおの嘆願を一蹴した。
「はいはい仲の悪いみさきちは退却退却。 しっしっ!」
「うう〜、覚えていろよちびっこ!」
第二ラウンド、こなたの勝利。
RPGで言う雑魚的が吐くような捨て台詞を残してみさおはあやのに引きずられて退散した。
「残りはつかさだけか」
「お、お姉ちゃんは私のなんだから…」
こなたに見つめられてつかさはびくっと身構える。
こなたはどんな言葉を発して論破しようか考えをめぐらす。つかさは、えっとあっとその、と言葉に詰まっていた
「て、ゆーか、さあ」
「「なに!?」」
「あ、いや、その…」
放課後の教室。雨がしんしんと降り注ぐ6月のごろのひと時である。
鬱陶しいような湿度でかがみ達の額からはうっすらと汗がにじみでていた。
柊かがみは二人の剣幕に気落ちしながらも、なんとか言葉を搾り出した。
「て、ゆーか…私があんた達のものっていうのは、決定事項なの?」
「てゆーか私の嫁でしょ? 結婚届も出しているし」とこなたが即答。「ううん、私の!」とつかさ。
堂々巡りであった。
「あ、そ、そうですか…はい」
ため息を深くつく。
二人は向き合って、お互いに自己出張を開始した。
肝心の本人を蚊帳の外において話し合う二人横目に、かがみは高校生活を振り返る。
こなたがみさおと不本意ながら「嫁合戦」は見慣れた風景になりつつあったし、かがみも今更止めようとは思っていなかった。それがエスカレートして、いつの間にかみゆきやらつかさやらまで参加している。
――それでも、かがみはなんとなく思った。
それでも、好かれているということは幸せなのかもしれない。
どうしてこうなったのかと、時には辟易もしたが、それでもこんな日常が幸せなのだと思う。
「私の嫁だ〜」という言葉に、かがみは顔を赤らめながらも不思議と微笑んでしまうのであった。
・
・
・
「私のなんだからね! だって私なんておねえちゃんの大事なところも洗ったことあるし、胸の大きさとか使っている下着の色とか――」
「私なんてかがみんの盗撮――おっと、データフォルダはかがみ様でいっぱいなんだぞ。愛情の深さが違うよ〜」
ガタンっ。椅子とワックスできれいになった床に無造作に倒れる。
その音に驚き、威圧感を感じた方向に二人が振り向く。
「てゆーかお前らだまれええええええええええ!!!!!!」
ここは学校だああああああああああああああああああ、と叫びながら鉄拳制裁を加える。
ごつんっ!と威勢のいい音が響き渡る。
――前言撤回よ!
ぷんぷんと怒りながら、かがみはそっぽを向く。
それでも口元が緩んでしまうことは我慢できなかったのは、みゆきのこともかがみのこともつかさのことも大好きだからだ。
日下部のことはどうなんだろ? 今日はどちらと帰るんだろうと、そう思いながらかがみはふんっと鼻を鳴らすのであった。
393 :
42-519:2008/04/24(木) 01:58:48 ID:cqVlbVou
以上です。なんという定番ネタ…。
こなかがネタを書き終えて、時にはシリアスorダークを書こうとしてもペンが進まず。
スプラッターで血飛沫が画面いっぱいに飛び散るような、嫉妬や裏切りが織り成すダークが書ければっ!
なんて思いつつ、素直にこめでぃを書いてみました。
>>384 こんな物をどうやって15分で!?あんたの創造力は底なしかァッ!!
その才能、耳かき人掬い分でいいから分けて貰いたい思いです、GJ!!
>>390-393 賑やかなのに和んだッス、この子達ってドタバタしててもとっても平和ないい関係ですね〜と言いつつダークの方にも期待……
GJ!!
何がいけなかったんだろう。
みゆきは必死になって原因を考える。
突然母がお酒を飲みたい、などと言ったからか? 素面のような様子で久しぶりにお風呂に入ろうと言われたからか?
原因はいまいち良くわからない。
わかる事はただ一つ。
と、下半身を走る快感にみゆきは思わず弓なりになる。
ごん! としたたかに頭を打って涙ぐむみゆき。
「あらぁ〜? みゆきはここが弱いの?」
のぽーんとした雰囲気は変わらない。ただ、珍しく開かれた眼だけはらんらんと情欲で輝いている。
「お…母さん…っ! やめっ!?」
口を大きく開き、ちゅうぅっと内股を吸われる。そこから広がるむず痒い快感がみゆきの体をはい回った。
――気持ち良い。
こんなにも気持ち良いものがあったのだろうか?
「…みゆき…気持ち良い?」
「は…い…とろけて、しまいそうです…」
しかし、ゆかりは知っている。
いくら気持ち良いと言っても、その実満たされていない事を。
雌という生き物は…このしとどに濡れた秘裂を目茶苦茶にされない限り、満たされない事を。
「…可愛い、みゆき…お母さん、みゆきの体全部にキスしちゃう」
キスと言うにはあまりにもエロチックだ。
吸い付き、僅かに盛り上がった肌をチロチロと舐め、ぽんっと離れる。
キスされた箇所がじんじんと疼き、秘裂が口を開けてしまう。
「…大きな胸ね? うふふ、きっと男の子のオカズにされてるわ」
聞き慣れた単語のはずなのに、まったく別の意味の言葉。
「きっと、みゆきの胸を目茶苦茶にする事を想像しながら…チンポセンズリしてるのね〜」
「い、やぁ…え、えっちな事言わないでくださいっ…」
男子が、医学書でしか見た事のないペニスを必死に扱く。
みゆきはそんな男子の為に卑猥なポーズをとって…
「ひ…ぃん!」
想像と、ゆかりの生み出す快感でみゆきは軽い絶頂を迎えた。
「…素敵よみゆき…流石私の娘ね…」
今度はゆかりが頬に優しくついばむようにキスをする。
「でも…まだ、燻っているでしょう?」
耳たぶをチロチロ舐められ、みゆきがぶるっと震えた。
だらし無く開かれた口が微かに動く。
「…気持ち良くしてほしかったら…」
ゆかりが耳元で呟く。その言葉にみゆきは戸惑い…
「やっぱり良く似合ってるわ♪ おっぱいがだらし無いくらい搾り出されて…」
みゆきの首には赤い首輪。
「ここの毛はふさふさね? あん、恥ずかしがっちゃ駄目よ…今日からみゆきは家の中ではずっとコレなんだから」
きゅっと乳首が抓られる。
「は…い…ご主人、様…」
いつもの知的な輝きでは無い、淫蕩な火を宿したみゆき。
満足そうにゆかりは頷くと、みゆきの秘裂にそっと指を這わせた…
こなた「…いや、かがみん? これはラノベであってだね?」
かがみ「何か言い残した事は?」
こなた「…出来心だったんです」
かがみ「却下。峰岸、やって良し」
あやの「うふふ…えっちな子にはお仕置きよ♪」
こなた「ちょ、ま、なんか本気」
あやの「のーざんらいと☆すーぷれっくす♪」
こなた「げぅっ」
みゆき「みなさん、仲良しですねぇ」
つかさ「あれ? ゆきちゃん首どうしたの?」
みゆき「あ、虫に挿されたかもしれませんね」(もう、お母さんったら…後でお仕置きです♪)
こなた「…エロ系創作物は…身内ばれするとキツイよね…がくっ」
396 :
おでこさん:2008/04/24(木) 09:04:15 ID:xCgJJnmO
いつの間にか私、プロレスキャラで定着しちゃった・・・orz
GJ!次は是非コブラツイストで
>>395 現実と妄想で攻め受け逆なのに噴きました。ぐっじょぶ。
投下しても大丈夫ですか?
では・・・
どうも!力技に定評がある23-308です。今回は敢えて大がかりなパロネタを封印してみました。
文は拙いですが、読んでいただけたら幸いです。
・前に書いた小ネタのリメイク版
・懐かしいネタ
・もちろんエロ無し
・続き物
・独自設定アリ
・2レスお借りします
「ちょっと!23-308!テキストみせなさいよ!」
「ああ・・・」
「何よこれ・・・執筆が固まってるじゃない!」
バキっ!
「ぶべらーっ!!」
らき☆すたもしもシリーズif NO.002-1 泉そうじろう編
〜もしもそうじろうがミニ四駆をやってたら〜 prologue
「WAWAWA探し物〜」
私は物置で探し物をしていた。
探し物は何ですかって?見つけにくい物じゃないよ。
!
「あった!レーサーズボックス!」
もうお分かりだろう、20代前半の方なら確実に知っている事で定評があるホビー「ミニ四駆」だ。
なんでこんなもん引っ張り出してんのかというと・・・
-約30分前-
シャッ!カカッ!
学校から帰って来たらお父さんの部屋から変な音が聞こえたので覗いてみた。ら・・・
「お父さん、何やってんの?」
「おう!こなた、お帰り。見てわかんないか?ミニ四駆だよ」
と、部屋いっぱいにコースを拡げてお父さんが宣った。
話によると、作家仲間の間で今、ミニ四駆が流行っているそうで、今度の走行会のために調整してるのだとのこと。
まあ、私も小さい頃にやっていたわけで、こんなのみたら懐かしくなるじゃん?で、昔使っていたマシンを引っ張り出したというわけ。
これでも公式大会で準決勝くらいにいったこともあるんだよ!ボックスの埃を拭き取り、お父さんの部屋に持っていく。
「お父さん、走らせていい?」
「また古いの引っ張り出したな。いいぞ〜」
と、いうわけでボックスの中から一台出す。
確か、町内の大会で勝った事があるやつだったと思う。
具体的なセッティングは以下の通り。
ファイターマグナムVFX
レブチューンモーター
超速ギヤ
ナローワンウェイにレストンスポンジタイヤ
フロントにアルミ可変ダウンスラスト、19ミリアルミベアリングローラー
リアにアルミステー、二段で19ミリアルミベアリングローラー
サイドにスタビポール
ゴールドターミナルと六角ベアリングももちろん付けている。
電池をお父さんから借りてミニ四駆に入れスイッチオン!
ヒュイイイイ
ミニ四駆をコースに放つと走りだして3レーンのコースを駆け抜ける。
懐かしい。 何周かさせた後ミニ四駆をコースから取った。
「いやー懐かしいね!」
「昔は夢中だったからな。よし!レースするか!」
と笑いながらお父さんは自分のミニ四駆を取り出し電池を入れる。
なんか私が知ってるような改造じゃないし、知らないパーツも付いてるけどまあ、いいや。
ボディにハルヒが描いてあるけどま(ry
カチッ ヒュイイイ
スイッチを入れた。ウホッ!いい男 もとい、いい音。
「こなた、はじめに言っておくがオレはこれはバトルだとは思っちゃいない。
ただ走らせるだけのミニ四駆と勝つためのミニ四駆は何がちがうのかを教える。これは講習会(セミナー)だ。」
「お父さん?何言ってんの?」
「よし!いっくぞ!」
シャアアッ!カカッ!シャアアッ!
「ちょwwwww速いんですけど!パチモンのモーター使ってない?四駆竜とかサンダーボルトとか!」
「いや?ちゃんと公式に出れるアトミックチューンだよ。シャーシやらタイヤやらだいぶいじってるけどな」
と、しれっと言いおった!アトミックでこれですか!?(この間0.7秒)
そして・・・私が2周目を終えないうちにお父さんのミニ四駆に後ろを突かれてレース終了。
見事なまでのフルボッコだった。
「うー・・・お父さんひどい〜」
「悪い悪い、じゃあ、こうしよう!これなら勝てるってマシンを作って来い!そしたらまたレースしよう!」
「えーめんどくさーい」
「もし勝ったらPS3の60Gを買ってやるよ!どうだ?」
『勝ったらPS3!?この条件はめちゃくちゃぐらっとくるぜ・・(byこなた)っていうか、60Gってもう売って無い気が・・・ま、いっか。』
「その賭け乗った!」
こうして私は期間限定でミニ四駆に復帰することになった。
つづく
以上です
やっちゃった・・・なんかスミマセン・・・
うーん・・・キャラ掴みきれてないし、無理矢理な展開だなぁ・・・
俺もつい最近復帰して今度のゴールデンウイークの大会に備えて調整中です。
NO.002-1じゃねぇ!NO.003-1だ!訂正お願いします・・・
>>403 なんかめちゃくちゃ懐かしい!
ほぼ全てのパーツが思い浮かばれるww
スーパーレーサーズボックス引っ張り出して爆走兄弟レッツ&ゴー!!また見たくなってきたw
そんな私は第2次ミニ四駆ブームの渦中にあった人 GJでした!
かがみ「マグナムトルネーーード(性的な意味で)」
こなた「アッー!!!!!!!!!!!」
ってのが思い浮かびましたよ。
即ちGJでう!!
GJ!ミニ四ファイターが国民的スターだったあの頃を思い出しましたよ。
しかしメジャーリーグといいミニ四駆といい、こなたやかがみが何かにハマるネタってのは面白いですな
〜。
408 :
ふた☆自重:2008/04/24(木) 16:12:11 ID:XIFOo/jr
うぎょうざああああああんっ!!
そんなわけで、例によってふたSSを投下します。
つかみゆ編書いてるんですけど、なんか煮詰まった感があるので、ちょいと息抜きしたいと思いまして……
42レス目の埋めネタで投下したやつを、ちょっと書き直して再投下します。
いやあ、
>>321のひよりんSSに触発されましてね。やはり、ふた○りものは良いものです。
――下半身の違和感に、私は目を覚ます。
ゆっくりと首を曲げ、ベッド脇に置かれた目覚まし時計を見る。
時刻は現在、午前8時54分。
確かネトゲで落ちたのが、えーと……午前5時30分過ぎた頃だったから……うわ、3時間ちょいしか寝てないや。
カーテンの隙間から窓の外を見ると、澄み渡るような青空が広がっている――外出には最適な休日日和だ。
これなら、ランランルー♪とか口ずさんで、気分良くお洗濯物を干せそうだ。
……なんて、他の事に意識を向けても、股間の何かが張ってる感は紛れるはずもなく。
意を決して、私は現状を確認する事にした。
せん☆ずり 〜こなた〜
布団をめくり、自分の下半身を見下ろす。
股間の部分が、明らかに盛り上がっている。
そっと、パジャマのズボンのゴムを持ち上げ、中身を確認する。
あり得ないくらい山のように張ったショーツが、私の目の前に飛び込んできた。
「…………………………」
ズボンのゴムから指を離し……ばふっ、と枕に頭を落とす。
――OK、生えてる………… あ き ら か に 生 え て る 。
無修正の本物です。
本当にありがt(ry
(=ω=. ):ちょwwww今さらパニクッてるとかwwwwww
(=ω=. ):いやいや。心はオヤジでも、娘十八番茶も出花。泉こなたは花も恥らう女子高生なわけですよ。
(=ω=. ):おまwwwwwエロゲで耐性ができてるだろ。
(=ω=. ):朝起きたら、イキナリおちんちんが生えて御覧なさい。マジびびるって。
(=ω=. ):ねーよwwww大体ふたなりなんて、よくある設定ジャマイカ。
(=ω=. ):家中に響く悲鳴を上げないだけでも、大勲章モンよ。
なんて、天井を見つめながら脳内会議(チャット形式)をする。
もちつけ、こなた――原作第1巻の頃の、クールな自分を思い出すんだ。
…………とりあえず、股間の違和感は時間が経っても消える様子が無い。
「………………ふううううううーーーーーーーーっ」
私は長〜い溜息を吐くと、再びズボンのゴムに手を掛け、すねの方までずり下ろした。
女物の下着がこんもり膨れているという、かなり異様な光景。
私はズボン同様、ショーツもずり下ろそうとする――が、許容範囲を超えたサイズなのか、ふちに引っかかって……ん、んしょ………………脱ぎにくい。
「……男と女で、脱ぎ方が違うのかな?出っ張ってるし……」
そう考え、今度は少しゴムを浮かせながら下ろしてみる。
と――
ぼろんっ!
……という音が聞こえてきそうな勢いで、半勃起状態のおちんちんが飛び出した。
410 :
ふた☆自重:2008/04/24(木) 16:17:17 ID:XIFOo/jr
ごめんなさい。注意事項を書いてませんでした。
■注意事項
・エロ有り(こなた←ふた○り)
・自慰
・2レス使います
「おわっ」
いきなり登場したおちんちんに、私は思わず声を上げてしまった。
っていうかコレ、ふた握りくらいあるんですけど……どんだけ巨根なんだよ自分……。
「お、おおぅ……これがいわゆる、朝立ちってやつ……?」
誰に聞かせるわけでもなく、私は呟きながら上体を起こした。
そしてあぐらを掻いて、改めておちんちんのまじまじと観察をする。
うーん……ふにゃふにゃ状態のは、小さい頃にお風呂でお父さんのを見た事があったけど、勃起したやつは初めて見るなー。
「ふーむ、これは仮性包茎ってやつなのかな?」
雑誌で見かける『タートルネックで目元まで隠した兄ちゃん』を思い浮かべながら、皮で半分顔を出している亀頭をつまむ。
そしてぷにぷにしてみる――赤黒いそれは、竿の部分よりも柔らかい。
お尻に力を込めてみると、半勃起のそれは、ゆいんゆいんと前後に揺れた。
あ、意識を集中させたからか、なんか硬さが増してきたぞ。
つまんでいた指で輪っかを作り、そのままサオを握る。
「ん……っ」
その輪っかをゆっくりと根元まで引き下ろすと……被っていた皮が剝かれ、亀頭部分が完全に姿を現す。
つまんでいた時とは違い、力を込めているせいか、パンパンに充血して赤黒くなったそれは結構グロテスク。
ううむ……確かにコレは、見慣れないとちょっと怖いな。
コレをくわえるって結構な勇気がいるよね?
「………………」
試しに思い切り背中を丸め、亀頭に口を付けようと思ったけど……やっぱり届かなかった。
っていうか、男の子ってどうやってオナるんだっけ……?
確か、前にプレイしたエロゲで、ドMの主人公にドSのヒロインが強制オナニーさせていたシーンがあったっけ……あの時、主人公は確か……
「竿の部分ををごしごしと……」
いったん手を離し、今度は筒状にしておちんちんを握る。
どくどくと脈動する肉棒の熱が、手のひら越しに伝わってきた。
ゆるゆると手の筒を上下させてみる……が、思っていたほどの刺激を得られない。
……あー、想像していた以上に強めに握らなくちゃダメなのかな?
握り潰すほど……とまでは大げさだけど、それくらいの握力でサオを握り――皮を巻き込みつつ、ごしごしと何度か往復させてみる。
「お、おおぅ……こ、これは……!」
皮が亀頭に擦れる度に、さきほどより明らかに鮮明な刺激が、ジンジンと腰に伝わる。
……いいかもしんない。
ダイレクトな感じが、何とも分かりやすいというか、男って単純なんだな、とか。
だ が 、 そ れ が い い
「…………」
コホン。
……まあ、せっかく生えてるんだし? にぎにぎしてたら、何か悶々としてきちゃったし?
男の子のオナニーを本格的に試してみるのは、まあ――自然の摂理ってもんでしょ?
……そういえば昨夜、CGコンプしたエロゲがあったっけ。結構エロシーンに力が入ってたから、なかなか満足できる内容だった。
よし、オカズはそれでいこう。よ〜し、オラ、何かwktkしてきたぞ!
善(?)は急げ。私はさっそくベッドから降りると、PCを立ち上げ、ゲームのDVDを取り出してトレイに突っ込んだ。
続きます。
注意事項の件はホントすいませんでした……。
>>411 下半身に圧倒されまくりなんですが…(ゆり☆すた的な意味で)
続き待ってますねー
>>411 続きを裸で正座して期待してるっスよ!
――さて、俺も早くふたひよの続きを書かなければ…。自分の筆の遅さが憎いっス!
あれ…以前に同じのを見たような…気のせい?
あぁ注意事項見てなかった、すまん
続きwktkしてますぜ
>>411 ウェイク・アップ!(ぴーひょろりーひょろー♪)
いやーもう、埋めネタのときに輪をかけて生々しい描写が大好きです。
片足立ちで空高くジャンプしながら続きもお待ちしてます。ぐっじょぶ。
>>411 どきどき……
早く続き、こないかな……
べ、別に、私を襲う所までたどり着いてなんて
思っちゃいないんだからねっ!!
>>411 GJ
この後、かがみをオカズにしそうだなw
つかみゆ編待ってるよ〜
419 :
ふた☆自重:2008/04/24(木) 22:00:42 ID:XIFOo/jr
>>419 く
わ
え
た
い
超
G
J
!
!
こなた「か……かがみが壊れた……」
>>411 すばらしすGJ!
これは続きがwktk・・・(´・ω・`)
>>419 この体との不釣り合いさがなんとも・・・
GJ!続きも期待!!
>>419 なんかこれ体丸めれば普通にとどきそうな気がうわなにをするやm
>>423 届きそうな気はするが、絵的にも精神的にもあまりよろしくないような気がするぞw
>>419 世界には届く人もいるみたいだね(軟体的な意味で
「こんなんだったら子供の頃にバレエとかやっとけばよかったヨ」
「こんなんってどんなよ……」
>>411 これはまた、まさにど真ん中を突き進む話ですね!
さあ、これからこなたはどうするのか…
さて、私も一つ投下したいと思います。
他に投下する方がいなければ、開始しますねー
>>425 届く人もいるってか…実際俺届くぜ
一回でやめたけど
428 :
25-176:2008/04/25(金) 00:17:57 ID:xTzfjRhB
それでは、投下開始致します。
以下注意事項。
■ゆたか&ゆい
■20レス程使用
■非エロ
■少しだけ出血表現があります
それでは、よろしくお願い致しますー
「やっほー、遊びに来たよー」
「あ、ゆい姉さんいらっしゃいー」
一月真ん中のある休日、泉家にこなたの従姉妹であるゆいが遊びに来た。
相変わらずのテンションで一気にその場が明るくなる。
『明るい人』という言葉は、まさにゆいの為にあるようなものだろう。
と、その時こなたがある事に気付く。
「…あれ、ゆい姉さん。
肩に付いてるのって…雪?」
「え、そうだけど…今日は朝から降ってるじゃない。
こなた、まさか雪が降ってる事知らなかったの?」
「い、いやー、だって今日は寒いじゃん?
こういう日は、やっぱり炬燵でぬくぬくが一番だと思って…」
こたつむりになりながら答えるこなた。
こう答えるところをみると、今日は起きてからずっと炬燵に入りながらゲームでもしていたのだろう。
それを見て、ゆいがやれやれといった感じでこなたに話しかける。
「いかんよー、こなた?
まだ十八才だというのに、そんな炬燵の虫になっていたんじゃ。
ゆたかだって炬燵に入っていな…って、そういえばゆたかは?」
「あ、ゆーちゃんならみなみちゃんの家に遊びに行ってるよ。
皆で集まって、勉強会をやるんだって」
「こなたも少しはゆたかを見習ったら?
ゆたかより健康なこなたが、こんなこたつむり状態になってるとか…
大体もう受験前だっていうのに、そんなので大丈夫なの?」
「うっ…そ、それとこれとは別という事で…」
いつものやり取り、いつもの風景。
だが、今日はいつもと少し違った。
ゆいがカーテンを閉められている窓に視線を向け、何かを思い出したように呟いたのだ。
「…雪、かあ。
そういえば、ゆたかが一時的に大変な事になっていたのもこの時期だったよね。
今のゆたかを見ると、あの時の事が夢だったんじゃないかって思えるよ」
「え、何それ?
ゆーちゃんが大変なことになっていたなんて知らないよ、そんな事」
ゆたかが病弱な体質だという事はこなたも知っている。
だが、そこまで重い状態になったという事は聞いたことがなかった。
一体昔、何がゆたかの身に起きていたのだろうか?
興味津々に見つめるこなたの視線に気付いたゆいは、意外そうな表情になる。
「あれ、こなたは知らなかったっけ?
…そうか、あの時は親戚に迷惑かけないようにって秘密にしていたんだっけ」
「何があったの?
何かそう言われちゃうと、気になっちゃうよ…」
その言葉を受け、ゆいは少し上を見るように顔を上げる。
それは遠い場所を見るような…普段のゆいからは想像できないような表情をしていた。
「そうだね、こなたには教えておこうかな。
幸いゆたかも今いないし、外も丁度雪だし…話すにはぴったりかもね」
雪がうっすらと付いている上着をハンガーにかけ、炬燵の中へと入る。
そしてゆっくりと、その昔ゆたかに起きた事を話し始めるゆい。
それは、こなたが全く予想していなかった内容だった。
◆
今から八年前。
一月もあと一週を残すのみとなった日曜日、関東ほぼ全域に雪が降った。
そんな中、小早川家では雪を見たゆたかが庭ではしゃいでいた。
「あっ、お姉ちゃんきてきて!
雪だよ、雪がいっぱい積もってるよー!」
「ゆたか、はしゃぎすぎて転ばないようにしなよー」
当時小学二年生だったゆたか。
この時既に体が弱かったのだが、子供の好奇心はどうやら全てに勝るらしい。
普段だったら寒さに負けてすぐに家へと避難しているのだが、今日はまるで関係なく遊んでいる。
「ゆーきやこんこ、あーられーやこんこ…」
歌まで歌いながら、庭を走り回るゆたか。
こうして年相応に動き回るゆたかは、家族であるゆいにとっても新鮮に見えた。
(いつもこんな感じだったら良いのにねえ…)
ゆいにとって大事な妹のゆたか。
いつも一緒に遊びたいと思っているのだが、ゆたかの体調不良が続くので遊べる日が少ない。
できるなら、常にこの位の元気さがゆたかに宿ってほしい。
いつかそんな日が来る筈だと信じているのだが、そう願い通りにはいかないもの。
しかし…
(今日だけは、その願いが叶ったのかな)
普段では絶対に見る事ができない光景を、ゆいは今見ている。
雪が降りしきる中、ゆたかが歌いながら嬉しそうに遊んでいる…
せっかくのチャンス、この日を逃すわけにはいかない。
ゆいはすぐに庭へ飛び出し、ゆたかの元へと駆けつけた。
「よしゆたか、一緒に遊ぼう!
これだけ積もっているんだし、せっかくだから雪だるま作ろうよ!」
「わあ、いいねー!
それじゃ、私は頭を作るねー」
「了解、それじゃ私は胴だねっ」
早速作業を始めるゆいとゆたか。
それぞれ雪玉をごろごろと転がして、どんどん大きくしていく。
二人共に、満面の笑顔で作業を進めていた。
やはり姉妹揃って遊ぶという事が、楽しくて仕方がないのだろう。
ゆたかはゆっくりとしたペースで転がしていたので、作業量が多いはずのゆいが先に終了した。
「ゆたか、あともうちょっとだよー、ファイト!」
「うん、待っててお姉ちゃんー
…いーぬはよろこびにわかけまわり、ねーこはこたつでまるくなるー…」
余程楽しいのか、また歌いながらの作業をしている。
段々と大きくなる雪玉を、ゆっくりと転がしていくゆたか。
…だが、後もう少しだけ転がせば完成という時にそれは起こった。
「…あれ、ゆたか?」
雪玉を転がしていたゆたかの動きが急に止まる。
そして手を雪玉にのせたまま、息を荒げ始めた。
ゆたかが、疲れ等からこうして急に体調を崩すことは珍しくない。
…だが、それはいつもと少し違う様子だった。
「どうしたのゆたか、疲れちゃった?」
ゆいが聞いたその時だった。
ゆたかに今までに無い異変が起きた。
「ケホッ…ゴホゴホゲホッ……ゲホッゴホッ…!」
「ゆ、ゆたか!?」
急に激しく咳き込み始めたゆたか。
この寒さで体調が悪化したのかと思い、急いで家に連れて戻ろうとするゆい。
ところが、ゆたかの肩に手をかけたその瞬間…
「ゲホゴホ………ゴフッ…ガハッ…!」
「…!!!」
何と、ゆたかが吐血した。
雪玉の上に広がる赤い液体。
ゆたかの口からは、少量ではあるが血が流れ続けていた。
「ゆたか、ゆたか!?大丈夫、ゆたか!?」
「……ぉ…ねえ……ちゃ…………」
力なくゆいを見上げるゆたか。
その目に力は宿っておらず、虚ろな状態になっていた。
ゆたかは何とかゆいに掴まろうと、雪玉に乗せていた手を動かすが…
その直後、ゆたかは雪玉の上に顔を突っ伏し動かなくなってしまった。
焦ったゆいは、必死に母であるゆきを呼んだ。
「お…お母さん早く来て!ゆたかが、ゆたかがああぁぁぁっ!」
「何、どうし……ゆ、ゆたか!?」
今までに無かった異常事態。
これまでは眩暈や吐き気を起こしたり、風邪にすぐかかる程度で済んでいた。
だが、今回はこれまでのケースと全く違った。
急に吐血をし、そのまま動かなくなってしまうというのは初めてのケースだった。
「ゆたか、私がわかる!?ゆたか!?」
「……痛い………い…たい……よ………お……ね…ぇ……」
顔を突っ伏したまま痛いと連呼するゆたか。
吐血したという事は、消化器系か気管支系に何か異常が起こったのだろうか。
もしそうなら、すぐに病院で検査を受けなければいけないのだが…
運が悪いことに、この日は父親が用事でどこかに行っている為、家に車が無い。
ゆいはゆたかを担ぎ、急いで家の中へと入る。
母のゆきはすぐに救急車を呼び、ゆたかを上半身を起こした状態で安静にさせる。
「ゆたか、もう少しだけ我慢してね。
もう少ししたら、救急車が来るから…!」
「………ぃ…っ………」
ゆたかは声を殆ど発しなくなってしまった。
そんな様子を見て、ゆいとゆきの二人は救急車が早く到着する事を祈る事しかできなかった。
…そして、電話をしてから五分後。
ようやく来た救急車によって、ゆたかは病院へと搬送されていった。
◆
病院に搬送されたゆたかは、そのまま検査を受けることになった。
救急車に同乗してきたゆいとゆきであったが、二人共全く落ち着くことができなかった。
何せ、今回は今までに無い事態が起きてしまった。
ゆたかにどのような結果が出るのか、不安で仕方がなかったのだ。
検査が終わるまでの時間が、果てしなく長く感じる。
ゆたかの検査結果が出るまで、精神をじわじわと削られる厳しい時間が続いた。
…そしてしばらくした後、担当医が二人の前に現れた。
「お待たせしました、検査の結果が出ましたので報告します」
「それで…あの……ゆたかは、一体…?」
「はい、お子さんの症状ですが…」
担当医から告げられた、ゆたかの症状。
それは、二人が予想していたものとは違うものだった。
「症状の様子からして喀血(かっけつ=呼吸器系の損傷から来る吐血)の可能性が非常に高いと踏んでいたのですが…
今回のケースは非常に珍しく、食道から喉にかけての部分に傷が入っていました。
通常で考えれば、こんな位置に傷が入る事はまず無い筈なんですけどね…
恐らく何らかの原因で口内に異物が入り、喉の奥で筋肉を切ってしまったんでしょう」
呼吸器系の損傷が原因で起きる喀血の場合、完全治癒の為には傷を埋める為の手術が必要となる。
だが、今回のゆたかの場合はそれとは違うものだった。
考えられる最悪の事態ではないとわかり、一旦二人は胸を撫で下ろす。
しかしその後、担当医が思いがけない言葉を発した。
「それともう一つなんですが…お子さんの声帯に、傷が入っている事が確認されました」
「…声帯…ですか?」
これはゆいとゆきにとって、全く予想していない事だった。
声帯といえば、声を出す為に必要な器官。
もしかしたら声にも障害が出てしまうのではないだろうか…
そんな不安が二人の頭をよぎった。
担当医は、更に話を続けていく。
「傷といっても非常に小さいものですので、大声を出したりしなければ自然に治るものです。
その事にだけ気をつけていれば特に問題はありませんので、御心配なさらなくても大丈夫です。
今回は食道付近の傷を治す為の処置を行いますので、治療が終わって一〜二週間したら退院できますよ」
「あ、やはり入院は必要なんですね…わかりました、お任せいたします」
しかし、その心配はすぐに氷解した。
声を出す事に全く問題が無いとすれば、後の心配は食道付近の傷だけ。
とはいえ、食道付近と声帯に『同時に』傷がついた事に少し心配した二人だったが、今は病院の治療を待つしかない。
その後すぐにゆたかは治療室へと運ばれていき、医者も治療室へと入っていった。
その間にゆきは入院の手続きをし、一旦家へと戻ってゆたかの着替え等を用意する事にした。
バスで家に戻り、早速必要な物を袋に詰め込む二人。
ゆたかの寝巻きや普段着、お風呂用のタオル…
そして、入院していても退屈しないように雑誌や単行本等を数冊ほど袋の中へと入れる。
そんな作業をしている最中、ゆいがふと言葉を漏らした。
「…ゆたか、血を吐いたときは驚いたけど…何とか無事に治りそうで良かった…」
その言葉からは、ゆたかの事を本気で心配している事が伝わってくる。
少しの安心と不安の色が入り混じった表情のゆいを見て、ゆきが言葉をかけた。
「もちろんよ、ゆたかは体が弱いけど『芯』はとても強いから…
明日には元気な姿をちゃんと見せてくれるわよ」
「…うん、そうかもね」
「いつものゆいらしくないわね、こういう時こそあなたが元気を出さなくてどうするのよ。
そんな調子じゃ、ゆたかの所へ行っても場を暗くしちゃうだけよ?」
「…うん…そうだね、いつも通りの私でいかないと。
ゆたかの気持ちを無理矢理上げちゃうくらいの勢いでいかないとね!」
「ふふ、その調子よ」
普段元気印のゆいが、このような状態になるのは珍しかった。
やはり、ゆたかの事でショックが大きかったのだろう。
逆に言えば、それだけゆいはゆたかを大事に思っているのだ。
常に一緒に行動していた二人の事を考えれば当然の事かもしれない。
一通りの支度を終えて、再び病院へと戻る二人。
だが、そこで二人は信じたくない現実を目の当たりにする事となる…
◆
病院に戻った二人は、ゆたかが入っている病室へと入った。
そこにはゆたかの他に担当医、そして看護士が二人待っていた。
ゆたかは目を閉じたままベッドに横たわっており、安定した様子を見せている。
しかし、それを見つめる担当医の表情はどこか暗いものだった。
(…あれ?お医者さん、何だか妙な表情をしているけど…どうしたんだろう?)
何かあったのだろうか…得体の知れない不安感が、ゆい達を包む。
その直後、ゆたかの横に立っている担当医がゆっくりと口を開いた。
「食道付近の傷は塞がりました。こちらは経過観察をして、特に問題が無ければ大丈夫です。
…ですが、一つ予想外な事が起きてしまいまして…」
「予想外…何ですか、それは…?
まさか、ゆたかの体に何か別の症状が…?」
焦りの表情を隠せない、ゆきとゆいの二人。
そんな二人を見ながら、担当医は気まずそうにゆっくりと言葉を発した。
「…お子さんの声が全く出なくなってしまったんですよ…」
「…えっ!?」
それは、全く予想さえしていなかった症状。
最初の説明の時、声帯の傷は問題の無い傷だと言われた。
しかし、現実には発声をする事が不可能になってしまったという。
この担当医の言葉は、二人に大きなショックを与えた。
担当医はそのまま説明を続けていく。
「先程も言いましたが声帯の傷は非常に微小なもので、発声するだけなら全く問題は無いんです。
ですので、声が出せないという事はありえない筈なのですが…
現実的に全く声が出ないので、これは声帯の問題ではなく精神面の問題の可能性が高いです」
「精神面の問題…ですか?」
精神というものは不思議なもので、心だけでなく身体への影響も大きい。
例えば普通なら何でもない事なのに、『それは出来ない』と強く思い込んでしまうと本当に出来なくなる場合がある。
これは、精神が身体能力に影響を及ぼした例の一つといえる。
今回のゆたかのケースは、精神面に来たショックから発声機能が失われてしまった可能性が高いというのだ。
これは思い込みとは別のケースであり、心のショックから身体へと影響が移ってしまった状態である。
どちらの場合でも精神面からの症状というのは、ふとしたきっかけで一気に治ってしまう事もあるが…
殆どの場合、それらの症状を長期的に引きずってしまう。
「声を出す器官に異常が見られない以上、まず精神面の問題と見て間違いないでしょう。
多分、吐血と痛みのショックから無意識的に起きてしまった症状だと思いますが…
あまりこの状態が長く続く場合、『こころのリハビリ』が必要になりますね。
その場合は精神科医のケアも必要になりますので、これについてもご了承願えますでしょうか」
「…はい、わかりました。どうかよろしくお願い致します」
「ただし、本当に大切なのはご家族からの心のケアです。
私達も最善を尽くしますが、心への一番の薬は『家族の心の暖かさ』ですからね。
是非ともお子さんとしっかりしたコミュニケーションをとってあげてください」
「はい…」
傷の治療等の負担からか、ぐっすりと眠っているゆたか。
そんなゆたかを見て、ゆいは一つの決心をした。
またゆたかとお喋りをしたい、ゆたかの声を聞きたい…
その為に、『自分がゆたかにしてやれること』を精一杯するという事。
大事な妹の為に手助けをしたい、そんな思いでゆいの心は一杯になっていた。
◆
次の日、ゆいはゆたかの病室へと駆けつけた。
ゆいの心には少しの不安が渦巻いていたが、それを悟られないよう普段通りのテンションで病室へと入った。
「やっほーゆたか、来たよー!」
「………」
返事は当然返ってこない。
だがそこには、いつも通りの優しい笑顔をしたゆたかがいた。
その表情から、ゆいの心が安堵で満たされる。
しかし、ゆたか本人は何とかして声を出そうと口を動かし続けていた。
その様子を見て、たまらずゆいは声をかけた。
「無理しないでゆたか、ノートと鉛筆を持ってきたから…これに書いて教えて」
こくりと頷いたゆたかは、ゆいからノートと筆記用具を受け取り、文字を書き始めた。
ゆっくりと、しかし丁寧に字を書いていくゆたか。
その様子は普段と全く変わらない、いつも通りの姿だった。
字を書き終えたゆたかは、ゆいに向かってノートを見せる。
『お姉ちゃん、来てくれてありがとう。
こんなことになっちゃったけど、ぜったいになおってみせるから、まっててね』
そこには、不安や悲しさの表現は全く書かれていなかった。
いきなり声が出なくなってしまったとなれば、大多数の人は不安に襲われるだろう。
しかし、ゆたかは違った。
その『言葉』からも、表情からも悲しみや不安の色は出ていなかった。
ゆたかの性格は熟知していたつもりのゆいだったが、ここに来てゆたかの新たな『強さ』を認識した。
「おお、そんな力強い言葉が返ってくるとは思わなかったよー
この分なら、本当にすぐ治っちゃいそうだね!」
思った以上に覇気のあるゆたかを見て安心したゆい。
しかし、その姿を見てもう一つの疑問が浮かんできた。
それは『何故精神的障害から声が出なくなってしまったのか』という事だった。
見た感じ、そして話した感じでは『こころ』に異常は見られない。
ならば一体どの出来事から、発声を抑制する心理的原因が出来てしまったのだろうか?
だが、それを今のゆたかに問い質す事は早すぎるかもしれない。
そんな事を考えながら、ゆいはゆたかの傍で雑談をし続けた。
…今はゆたかと少しでもコミュニケーションを取りたい。
その気持ちが、今のゆいの心の中を大きく占めていた。
◆
それからというもの、ゆいはほぼ毎日ゆたかの元へと通い続けた。
今までとは筆談という違いがあるものの、コミュニケーションは全く問題が無かった。
いつものように生活の中で面白かった話や、趣味の話題。
声での伝達が出来ない事などまるで関係ないかの様に、二人は楽しく話し続けていた。
食道の傷の経過も順調で、このままなら近日中に間違い無く退院できると主治医からも言われた。
…しかし、ゆたかの声は一向に治らないままだった。
ゆいから見たゆたかは、入院前と全く変わっていないように見えている。
だが『声が出なくなった原因』は必ずあり、それはゆたかの中に確実にある。
あれからそろそろ一週間の時が経つ。
ゆいはゆたかに一つの質問をする事にした。
「ねえゆたか、一つ聞きたいことがあるんだけど…
声が出なくなった原因に、何か心当たりは無いの?」
そのゆいの言葉に、全く反応しないゆたか。
しかし、ゆいは続けてゆたかに言葉を投げかける。
「ゆたかの声が出ないのは、精神的な…あ、心の問題が絡んでいるってお医者さんが言ってたんだ。
もしかしたら、あの時までに何か辛い事でもあったんじゃないかと思って…
もしそういう事があるんだったら、お姉ちゃんに教えてくれないかな?
何でも相談に乗るよ?」
ゆいが言葉を言い切ったとき、ゆたかの目に涙が浮かびはじめた。
急な表情の変化に驚いたゆいだが、驚く暇も無くゆたかはゆいの胸元へと顔をうずめた。
呼吸の音だけの嗚咽。
ここまで泣きじゃくるゆたかを久しぶりに見たゆいは、多少戸惑いながらもゆたかをなだめた。
ゆたかはそのまま数分間泣き続け、その後震える手でノートに文字を書き始めた。
少し長い文を書いた後、ゆたかはゆいにノートを渡す。
そこには、ゆいの予想の範囲外だった言葉が書き綴られていた。
『ちがうの、お姉ちゃん。
学校やお家でつらいことは何もないんだけど…
じつは声を出そうとしても、なんだかこわくなっちゃって声を出せないの』
声を出そうとすると怖さを感じてしまう…
それは、ゆいが全く予想さえしていなかった内容だった。
驚きつつも、そのまま更に文を読み進めていくゆい。
そこには今まで他人…そして親にさえに話せなかった、ゆたかの複雑な心中が綴られていた。
『さいしょにここで気がついたとき、おいしゃさんに話しかけられたんだけど、
へんじをしようとしたら、きゅうに雪あそびしていた時のことが頭にうかんできて…
口からたくさん、ちが出てきたことで頭がいっぱいになっちゃって。
そしたら、声を出すのがとてもこわいことみたいにかんじちゃって、声がどうしても出せないの。
でも、なんでこんなにこわくなるのか、自分でもよくわからないの』
どうやらゆたかは声を出そうとすると、一週間前の雪遊びで倒れた時の事を思い出してしまうらしい。
自分の吐血によって目の前の雪玉が赤く染まっていく光景は、まだ精神的に未熟なゆたかにはショックだった筈。
それが声を出すことへの恐怖へと繋がっている…とゆたかは言っているのだった。
しかし、これを読んだゆいの頭に一つの疑問が残った。
確かに自分自身が吐血し、目の前に血の跡が広く残っていくのを見たことは大きなショックだろう。
だが、何故それが声が出せない事…発声が恐怖になる事と繋がってしまったのだろうか。
ゆいは、当日の事を思い返しながら考えてみた。
(あの時、ゆたかは私と一緒に雪だるまを作っていて…頭の部分が出来上がる寸前で倒れちゃったんだよね。
その時ゆたかは、どういう状態だったっけ…?
庭をぐるっと一周して、こっちに戻ってきたところで…倒れ…)
その時、ゆいはある事を思い出した。
あの時ゆたかは、久しぶりの大雪で大はしゃぎをしていた。
一緒に遊び始めたゆたかは、いつも以上の元気さで雪遊びを楽しんでいた。
その遊んでいる最中、そして雪玉を転がしている時…ある共通する事をゆたかはしていた。
それは…
(…そうだ、あの時ゆたかはずっと歌いながら遊んでいたんだった…)
更にゆいは、倒れた時の出来事を克明に思い出していく。
ゆたかは歌いながら遊んでいたが、突如激しく咳き込んで吐血し倒れた。
そしてその時、喉の部分を押さえながら『痛い』と訴え続けていたのだった。
この事から考えたゆいは、一つの仮定を立てた。
(もしかして、大きな声で歌っている時に喉の奥が切れちゃったから…
無意識に『大声を出したから喉が壊れた』って頭に刷り込んじゃったんじゃ…?)
ゆいの考えは、そう大きく外れてはいなかった。
今回のゆたかの場合は出血箇所が喉であり、しかも出血したタイミングが悪すぎた。
それに加えて、喉の強い痛みから来る発声困難状態が追い討ちをかけてしまった。
これらの精神的ダメージは瞬間的にゆたかの心に大きなショックとして刷り込まれ、無意識に『発声』を押さえ込んでしまったのだ。
些細なきっかけでも、時としてそれは大きなダメージへと繋がる事が多々ある。
様々な偶然が重なり合い、結果としてゆたかは精神に深い傷を刻み込まれてしまったのだ。
(でも…どうすればいいんだろう?
心の傷なんて、そう簡単に治せるものじゃないし…それに、もしも…)
もし治し方を誤ったら、ゆたかは一生このままかも…という考えがゆいの脳裏に一瞬浮かんだ。
だがそれは、最も考えたくない最悪の事態。
ゆいはすぐに頭からその考えを振り払い、一つの事だけを見据えた。
何としても心を治し、ゆたかの声を取り戻す…ただそれだけを。
(私に出来る事がどれだけのものなのか、それはわからないけど…
絶対にゆたかの心を治したい。
またいつもみたいに、ゆたかと楽しく…話したい)
ゆいはゆたかの手を取り、優しく言葉をかけた。
いつものような楽しい明るい顔ではなく、『ゆたかの姉』としての優しい笑顔で。
「ゆたか、ゆっくり治していこうよ。
ゆたかの心は『とても強い』んだから、こんな心の傷は絶対治せるよ。
でもまだ傷口が大きい状態だから、ゆっくり時間をかけないとね。
お姉ちゃんも協力するから…一緒に治していこう」
真剣な眼差しを受けたゆたかは、その言葉にゆっくりと頷く。
街中では、一週間前の雪が溶けきろうとしていた。
だが、ゆたかの心には『固まってしまった雪』がまだ残っている。
ゆたかの中にある『重く赤い雪』は、いつ溶けるのだろうか。
小学三年生を目前に控えた、ゆたかの一月が終わろうとしていた。
◆
二月に入ってから、ゆたかとゆいは様々な事を試していた。
あれから退院はできたものの、未だゆたかの声は出ないまま。
ゆいは心療に関する様々な本を読み漁り、何か効果的なものは無いかと模索し続けていた。
ゆたかも何とかして自身のトラウマを打破しようと、思いつく限りの事を試していた。
精神科医にも何度かアドバイスを貰いにいったが、依然として効果は出ていない。
もちろん、二人共そんなに早く治ると思ってはいないのだが…
それでも進展が全く見えない事に、二人は不安を徐々に感じるようになってきたのだ。
試行錯誤を繰り返し、様々な心療方法を試す毎日。
気がつけば、二月も真ん中まで過ぎていた…
「ゆたか、どう? 少しは良くなった感じ…ある?」
ゆいがゆたかに、いつものように問いかける。
だが、返ってくる返事はいつも通り首を左右に振るだけ…
それはつまり、改善の兆しが見えていないという事。
その様子を見て、益々ゆいの中に焦りが生まれる。
だが焦りがつのるゆいに対し、当事者であるゆたかは逆に落ち着いていた。
家族や医者から『そうそう簡単に治るものではない』と何度も聞かされていた為、逆に長く付き合うという覚悟が決まっていたからだった。
得てして当事者より周りの人間の方がパニック状態に陥りやすいという事例があるが、まさにその状況だった。
そんなゆいの心情を察したのか、ゆたかはゆいの傍へ行き、背中へと抱きついた。
不意なゆたかの行動に驚き、顔だけ振り返ったゆい。
そこには、優しい笑顔をしたゆたかがいた。
「…ゆたか?」
少し戸惑い気味なゆいに、ゆたかは小さな紙を手渡した。
そこには、一つの文章が書かれていた。
『お姉ちゃん、わたしはだいじょうぶ。
お姉ちゃんのきもちはわかるけど、このままだとお姉ちゃんの方がつかれちゃうよ。
ゆっくりなおそうってやくそくしたんだし、あせらないでいこうよ』
そこには、ゆたかの心療の為に奔走していたゆいを気遣う言葉が綴られていた。
確かにゆいはこの数週間、学校以外の『自分の時間』をゆたかの為に使っていた。
もちろんゆたかの事を思っての行動だったのだが、その分心身ともに疲労していたのも事実。
自分は少し焦りすぎていたのかもしれない…
その事を他ならぬゆたかから指摘されたゆいは、少し気恥ずかしくなった。
「…ありがとう、ゆたか。
私、少しでも早くゆたかの声が元通り出せるようにしたいと思ってて…
でも、焦りすぎても良くないんだよね。
…ゆたかと違って、私にはまだ『覚悟』が足りていなかったのかも…」
落ち着いたゆいを見て、ゆたかはにっこりと微笑んだ。
本来ならケア側に回るべきである自分が、ゆたかに励まされた。
如何に自分が焦りすぎていたのか、ゆいはようやく気が付いたのだった。
(いくら焦ったって『確実に治癒速度が早くなる』訳じゃないんだよね…
ゆたかの言うとおり、確実にゆっくりと治していかなきゃ。
…それにしても、ゆたかに心配かけちゃうなんて…お姉さん失格だなあ)
初めてぶつかる、心という箇所の傷。
何もかもが不明な状態からのスタートであり、ゴールが果てしなく遠く見える。
しかし一歩ずつ歩みを進めていけば、必ず辿り着ける距離。
不可能ではない…そんな気持ちを新たに持ち、ゆいは改めてゆたかの為に頑張ろうと決めた。
と、その直後にゆたかがゆいの服を引っ張り、紙を渡してきた。
『でも、声が出なくなっちゃってさみしいのは、うたがうたえないことかな。
すきなうたや、学校でおぼえたものもいっぱいあるのに…』
当時、ゆたかはよく歌を歌っていた。
テレビから流れてきた流行歌や、親が聞いていたCDを聴くたびに一緒に口ずさむ程だった。
しかし声が出なくなってしまった今、以前のように歌って楽しむことが出来ない。
仕方が無い事とはいえ、ゆたかにとっての楽しみが一つ消えてしまったのは事実。
これを読み終わったゆいがゆたかの顔を見ると、心なしか少し残念そうな表情をしていた。
だが、こればかりはゆいにも何も出来ない。
この時ゆいは、ゆたかに対して慰めの言葉をかける事しか出来なかった…
◆
二月も半ばになったある日曜日、ゆいとゆたかはリビングでくつろいでいた。
いつも通りこたつに入り、筆談を交えながら楽しく話している二人。
話がそれなりに盛り上がってきたとき、ゆたかがふと『あるもの』に反応した。
「……!」
「…んぅ?どうしたの、ゆたか?」
ゆたかの目線は、ゆいの後ろにある窓へと向けられていた。
それに気付いたゆいが後ろを向くと…
「…あ、雪だ…」
外には、約一ヶ月ぶりの雪が降っていた。
先月より降る勢いはゆるいが、その分雪の形がはっきりと見えて、二人の目に綺麗に映っていた。
しかし、雪はゆたかにとって良い思い出が無いもの。
心配してすぐに振り返ったゆいだったが…ゆたかは先程と変わらない、優しい表情のままだった。
それどころか、ゆたかはすぐにゆいに文を書いたノートを渡してきたのだった。
『やっぱり雪ってきれいだね。
この前はつもった後だったけど、わたしはこうやってふっているのを見るのが好きだなあ』
ゆたかは雪に対してトラウマを抱えている筈…とゆいは思っていたが、取り越し苦労だったようだ。
しかし見る分には大丈夫かもしれないが、実際に遊ぶのはどうなのだろうか。
そこで、ゆいはある一つの事をゆたかに問いかけた。
「ねえゆたか、もし積もったら…また遊びたい?」
ゆいは、ゆたかの今の心がどういうものかを知りたかった。
だからこそ、あえてストレートな疑問をぶつけたのだが…
ゆたかは少し考えた後、一つの文章を返してきた。
『ごめんなさい、雪を見るだけならだいじょうぶなんだけど…
雪であそぶのは、まだちょっとこわい。
やっぱり、あの時のことを思い出しちゃうから…』
やはり、まだ雪を使って遊ぶのは駄目なようだった。
申し訳なさそうな顔をしているゆたかを見て、ゆいはすぐに声をかけた。
「気にしないでいいって、あんな事があったんだから仕方が無いよ。
その怖さも、時間が経てば薄れていっちゃうよ!
ゆっくりでいいから、少しずつ慣れていこう」
持ち前の明るさで、ゆたかを引っ張るゆい。
その明るさと勢いは、下向きになったゆたかの気持ちを即座に引っ張り上げる。
ゆたかは明るい笑顔で、ゆいに向かって大きく頷いた。
笑顔に戻ったゆたかを見て安心したゆいは、一旦こたつから出て台所へ向かい、みかんが入った籠を持ってきた。
「雪が降ったら、やっぱりこれが無いとねえ!」
そう言いながら籠をこたつの上に置き、改めて座るゆい。
こたつにみかん、そして外は雪。
王道の日本の冬スタイルが出来上がり、二人は一時の幸福を味わった。
それから十数分後、ゆたかはノートを取り出して文章を書き、ゆいに手渡した。
そこにはゆたかの『あるお願い』が書かれていた。
『お姉ちゃん、あの「ゆきやこんこ」ってうた…うたってくれないかな』
ノートを受け取ったゆいは、その予想外のお願いに驚きを隠せなかった。
この『雪』という歌は、ゆたかが倒れた時に歌っていた曲。
あの強烈な出来事と非常に密接な歌なだけに、これを歌ってほしいというのは意外だった。
「…なんでこの歌を?
それにゆたか、この歌を聴いたら…その…思い出しちゃったりしないの…?」
その言葉に、ゆたかは首を横に振った。
それと同時にゆいの手元にあったノートに、さらに文を書き足した。
『このうた、わたしすきなんだ。
冬らしくて、うたのかしもやさしいかんじだし。
もしかしたら、あの事をおもいだしちゃうかもしれないけど、そんな事できらいになりたくないから。
それにじつは、さっき雪を見た時にうたいたいなっておもったんだよ。
でも、今のわたしはうたえないから…せめてうたをききたいなって』
歌う事が大好きだった。
そして、冬を感じるこの歌が好きだった。
今この場所で、その歌を歌いたかった。
しかし、一つの出来事が彼女の『好きな事』を奪ってしまった。
今、自身が出来る事は『聴く事』だけ。
ゆたかがゆいに対して発した『お願い』…それは、彼女なりの決意とささやかな望みが含まれていた。
そんな彼女の心境を察したゆいは、そのお願いを聞き入れる事にした。
「…わかったよ、ゆたか。
それじゃあ歌うから…聴いてね」
そしてゆいが歌おうとした直前…ゆたかが急に焦った顔でゆいに対して制止する動きをした。
その直後、ゆたかはノートへ文章を更に書き足し、もう一度差し出してきた。
その内容は…
『ごめんなさい、もう一つおねがい。
わたしもいっしょにうたいたいんだ。
こえは出ないけど、お姉ちゃんといっしょにうたってみたい。
ちょっとおそかったかもしれないけど、いちどお姉ちゃんといっしょにうたってみたかったから』
この申し出に、ゆいが断る理由は無かった。
むしろ、逆にゆいが望んでいた事だったからだ。
声が出ていなくても、一緒に『歌う』事はできる。
厳密にいえば歌えていないだろうが、少なくともゆいはそう思わなかった。
歌というものは『声だけでつくられるもの』ではない…そう考えていたからだ。
「…了解! それじゃあ、タイミングを合わせていくよー」
ゆいがカウントを始め、ゆたかがそれに乗る。
…そして、ゆたかとゆいは歌い始めた。
「ゆーきーやこんこ、あーられーやこんこ
降ってーは降ってーはずんずん積もるー
やーまも野原もわーたぼうしかーぶーり
かーれき残らず花がー咲くー」
部屋に響くのは、ゆいの声だけ。
ゆたかはその震えぬ声帯で、音を表現しようと一生懸命に歌っていた。
傍目から見れば、ゆいに合わせてゆたかが口パクで付いていっているようにしか見えないだろう。
しかし、二人は確かに『歌って』いた。
お互いの呼吸を合わせ、高らかに歌い上げる二人。
それぞれの顔は、笑顔に満ち溢れていた。
…だが二番に入ろうとした時、ゆたかの表情に変化が起きた。
その眼に、涙が溜まり始めていたのだ。
(…お姉ちゃんと一緒に歌えてよかった…
でも…でも、やっぱり私も声を出して歌いたい…
ちゃんと…お姉ちゃんと……お姉ちゃんと一緒に…!)
二番を開始した直後、ゆたかの眼から少しずつ涙が溢れ始めた。
ゆいもゆたかの変化に気が付いたが、あえてそのまま歌い続ける。
最後まできちんと歌ってから…そう思ったからだった。
「ゆーきーやこんこ、あーられーやこんこ」
(皆とお喋りしたいよ…お父さんやお母さん、お姉ちゃんとお喋りしたいよ…!)
「降ってーも降ってーもまーだふーりやまぬー」
(もう一回、声を出して歌いたいよ…! お姉ちゃんと…皆と……また……!!)
「いーぬはよろこーびにーわかーけまわりー」
(……『治りたい』……!)
『…ねーこはこたつーでまーるくーなるー』
…歌い終わった瞬間、ゆいはある変化に気がついた。
最後の一節だけ…何かが違った。
そこまでは、確かにゆいの声だけだった。
しかし、最後の一節だけ…ゆいの声だけではなく、別の声が重なっていた。
それはゆいにとって聞き馴染んだ、しかし久しぶりに聞いた声。
その声の持ち主は…
「…ゆたか…? 今、もしかして…声…」
「え? ………えっ…あ……!」
止まっていた時が、再び動き出した瞬間だった。
急に復活した声に対し、戸惑っているゆたか。
それに対し、ゆいはゆたかの声が治った事に驚きを隠せなかった。
歌を歌っただけ、本当にそれだけの事をしただけだった。
しかし今、ゆたかは声をはっきりと出している。
「ゆたか…ゆたかああぁぁっっ!!!」
こたつから飛び出し、ゆたかの傍へ駆け寄ったゆいは彼女を抱きしめた。
しばらく戸惑っていたゆたかも、ようやく自分の声が出た事を認識し、喜びの声を上げた。
「お、お姉ちゃん…私の声…ちゃんと出てる…よね…!」
「大丈夫だよ、しっかり出てるから……良かった…本当に…!」
喜びに包まれる二人。
気が付けば、ゆいの眼からも涙が流れ出していた。
早期完治は諦め、ゆっくり長く付き合っていくべき…と考えを改めたばかりのゆいにとって、これほどの奇跡は無かっただろう。
「でも、どうして…歌っただけなのに、何で急に声が戻ったんだろう?」
「私もよくわからないんだけど…
皆とまたお喋りしたい、お姉ちゃんと一緒に声を出して歌いたいって思ったら…急に…」
そのゆたかの言葉を聞いた時、ゆいはある事を思い出した。
精神というものは、本人の気持ちの持ち方次第でいくらでも変化する可能性があるという事を。
また、『こころ』はふとしたきっかけで改善される事もあるという。
ゆたかの場合、自らが声を出せない状況であえて一緒に歌唱するという行動に出た。
その結果、ゆたかの心に一つの強い思いが生まれた。
それは、今までに無い程の『治りたい』という強い気持ち。
その爆発的な思いがきっかけとなり、今まで無意識に抑止していた力が解除されたのだった。
「今まで心配かけてごめんね、お姉ちゃん。
…それから、色々してくれて本当にありがとう」
「気にしないで、可愛い我が妹の為だもん…当然じゃない」
改めてお互いの顔を見つめ、笑いあう二人。
今までの緊張感から解き放たれ、安心感に包まれた二人の表情は満面の笑みに包まれていた。
まるで、止められていた一ヶ月の時間を埋めるかのように。
…その直後、ゆいはゆたかに一つの提案を出した。
「…それじゃあゆたか、もう一度歌う?
さっきは最後しか合わせられなかったし、今度は最初からきっちり合わせようよ」
「うん!」
そして、ゆいとゆたかの二人は改めて『雪』を歌った。
リビングに二人の歌声が響き渡り、外では雪が柔らかく降り続いている。
庭にある数本の落葉した木には雪が積もり、『雪の花』が開いていた。
その雪の花は、まるで声を取り戻したゆたかを祝うかのように輝いていた…
◆
「…ゆーちゃん、声を無くしていた時期があったんだ…」
「あの時は本当にびっくりしたけど、本当に治ってよかったよ。
今考えると、あの事は夢だったんじゃないかって思う位だね…」
ゆたかの意外な過去を聞き、ショックを受けたこなた。
こなたは、泉家に来てからのゆたかを思い出した。
笑ったり泣いたり、落ち込んだり、大声で反論したり…
こなたの記憶にあるゆたかは、かつて声を失うほどのダメージを心に受けたようには見えなかった。
「…ゆーちゃんさ、もうその時のトラウマは克服しているの?」
「そうみたいだねー
私の知らない間に、いつの間にか雪遊びも平気になっていたし。
多分、あれから一人で克服しようと頑張ったんだろうね。
…お母さんの言っていた通りだったよ、『ゆたかは心の芯がとても強い』ってね…」
「………」
ゆたかの話を聞き終わったこなたは、ゆっくりと炬燵から出て立ち上がった。
一旦全身を伸ばし、自分の顔を叩いて気を引き締める。
「姉さんごめん、せっかく来てくれたのに悪いけど…今日の宿題を片付けてくるよ。
私も少しは頑張っておかないと、ゆーちゃんにちょっと顔合わせできないや」
「いいよ、こっちは気にしないで。
それより宿題頑張りなー! こっちは適当にごろごろしてるからさっ!」
「あはは、やっぱりそうしている方が姉さんらしいね。
それじゃあ、ちょっとだけ失礼しまーす」
こなたは居間を出て行き、自分の部屋へと戻っていった。
居間に一人残されたゆいは、すぐそばにあるカーテンを開けて窓の外を眺めた。
雪は相変わらず降り続けており、地面はうっすらと白くなっている。
「…止む気配が無いし、こりゃ今日は綺麗に積もりそうだねー
帰りはスリップしないように気をつけないとなあ…
電車も心配だし、ゆたかに帰りが遅くならないようメールしておくかな」
しんしんと降る雪は、埼玉の地を白く染めていく。
明日になれば、外は子供達の遊ぶ声で一杯になるだろう。
雪は人に楽しみを与え、時には苦しみまでも与える存在。
そして神秘的であり、不思議なもの…
どこかで聞いた言葉を思い出しながら、ゆいはゆたかにメールを送信した。
「…明日も、遊びに来ようかな」
そんな言葉を呟き、ゆいは携帯電話をそっとしまった。
449 :
42-115:2008/04/25(金) 00:41:33 ID:2CD0eY5G
色々、諸々、どもです。
>>132 愛知での国際的な某イベントでデュエットしたもよう。
>>388 戦争モノも構想中ですよん。狙撃手とか、魔女飛行隊とか。
でも、女性が最前線に出るとなるとソ連軍しかないので、できれば自重したいな……。
>>419 世にも珍しい左利きの二塁手GJ!
ふたで野球をやるときは、カップをお忘れなく。
そして本日(もう昨日か)の自重しない人たち@セーフコ・フィールド
オリオールズ3−2マリナーズ
W:ダニエル・カブレラ (松井秀の股間付近に当てた5月28日生まれ)
L:ライアン・ローランドスミス (名前の長いオーストラリア人)
S:ジョージ・シェリル(7S 内マリナーズから4Sの古巣殺し)
(=ω=. ) ゆ、優勝セールがぁ……。
450 :
25-176:2008/04/25(金) 00:42:57 ID:xTzfjRhB
451 :
42-115:2008/04/25(金) 00:44:55 ID:2CD0eY5G
すみません……やっちまいました。
>>450 GJ!
ゆーちゃんは強い子だなぁ
>>451 あんたの作風とは違うなぁと(
>>449の名前欄を見て)思ったらそういうことかw
まぁドンマイ
戦争ものも楽しみにしています
最近は戦国大名が女子高生だったりする時代なのでソ連軍に拘らなくてもおk
453 :
42-519:2008/04/25(金) 02:02:30 ID:1xky/qVa
>>229、
>>393をあわせて、お読みいただきいた方&感想ありがとうございます。
某所で書いたもののリメイクになってしまいますが、次はつかかがで相変わらずの百合でもなんて思いながら…
>>403 ミニ四区懐かしすぎて萌えました。そのときというと小学生か…orz
>>450 ぬおおぉぉ…なんともうしましょうか…ちょっと切なくて、とっても温かくて……
だめだ!もぉ言葉にならない!
とにかく素晴らしい作品を見せていただきました!!!
>>450 イイハナシダナー(AA略
GJでした!
>>450 おかげで素敵な朝になりますた(´・ω・`)
ほんまGJ
こなた「素敵な朝、フヘヘヘヘヘ、ヘハハハハハハ」
かがみ「何?また何かのネタか?」
こなた「あー犯しハッハッハッ!!(ルパンダイブ)」
かがみ「オ○ン○ハズカシーーー!!」
こなた「(事後、シガレットチョコをくわえながら)
やっぱりかがみだって解ってんじゃんwwww」
かがみ「…………………………ぅるさぃ…………」
>>450 すんばらしいSSをありがとうございました!
かがみ&つかさにも負けない美しい姉妹愛…最高です。
>>419 ひよりんの表情が(・∀・)イイ!!
いちひよりんファンとしてこれはGJさせてもらいますね。
>>458 いちひよりん
にひよりん
さんひよりん
>>459 いちたすにーたす いちたすにーたす さーんひーよりーん♪
ひとひよ巫女すりサンポール
463 :
36-273:2008/04/25(金) 22:01:07 ID:8h3rgWXj
今は誰もいらっしゃらないでしょうか?
いらっしゃないようでしたら、投下いたします。
注意
・ただお&みき
・非エロ
・5レス程度
464 :
お神酒徳利:2008/04/25(金) 22:02:04 ID:8h3rgWXj
「…あら?」
午前零時を回ってから程無いころ、柊みきはふと目を覚まし、隣にいつも一緒に寝ているはずの柊ただおがいないことに気付いた。
こんな夜更けに、部屋を抜け出す特別の事情など、ないはずだった。
「一体、どうしたのかしら…?」
少々の不安に顔を曇らしながら、みきは自室を抜け出し、そして安堵した。
居間から、少々の明かりがもれていたのである。
みきが居間の扉を開けると、案の定、ただおがこちらに背を向けた格好で座っていた。みきはくすりと笑い、
「どうしたの?」
と、声をかけた。
その声にただおは、ゆっくりとこちらを振り向き、そして目を細めて、
「……みきか。いや、眠れなくてね」
といい、穏やかに笑った。どことなく、疲れているように感じ取れる笑いだった。
みきも釣られて笑い、
「私も同じ。お茶でも飲む?」
「…ああ、いただこうかな。悪いね」
「いえいえ」
みきは言うやいなや、台所へ移動し、湯を沸かし、湧くまでの間に湯飲みと茶葉を用意する。
程なくして、湯が沸き、手馴れた手つきでお茶を淹れると、みきは居間へと、二人分の湯飲みを持っていく。
「どうぞ」
「ありがとう」
みきから湯飲みを受け取ると、ただおは受け取ったお茶を一口すすった。
みきも、自分の分のお茶を一口すすり、しばし、二人分のお茶をすする音が部屋にこだまする。
二人とも、身体と心があったかくなるのを感じて、自然と顔もゆるんでくる。
暫くたってから、ただおが湯飲みをテーブルに置くと、みきが話の口火を切った。
「……やっぱり、明日のこと?」
言葉の終わりが省略されているが、眠れない原因を聞かれていると、ただおはすぐに分かった。
ただおは咳払いしてから、
「……まあ、多分、そうだろうと思うよ。何といっても、明日はかがみとつかさの晴れの舞台なんだ。親の私としても感慨深いよ。こないだ入学したと思ったのに…もう卒業なんだと思うとね」
ただおの言うとおり、明日は、かがみとつかさの卒業式が行われる予定となっていた。明日と言っても、既に十二時を回っているので、今日のことになる。
何となく、ただおの弱々しげな様子に、みきは艶笑すると、
「あらあら。いつになく弱気ね」
それに対し、ただおは肩をすくめ、
「何となく寂しくてね。つかさはともかく、かがみは東京に出て一人暮らしをしたいと、常々言っていたからね。
確かに、十八歳は未成年だけど、今は、十八歳をもって成年とすべきという意見もあるんだ。私は、二人とももう立派な大人なんじゃないかなと思っている。だからこそ……」
「寂しい?」
「うん。何か急に、親元を離れていくような気がしてね。あんなに手をかけたかがみたちが、子供じゃないんだなと思うと、ね……」
465 :
お神酒徳利:2008/04/25(金) 22:03:18 ID:8h3rgWXj
いのりやまつりが高校を卒業するときのただおは、こんなに弱々しげな様子を見せなかった。ただお自身は、それを、もう手をかける子供がいないせいだと思っていた。
これまでは、いのりやまつりが卒業しても、手のかかるかがみたちがいた。だから、寂しさをそれで紛らわすことが出来た。しかし、そのかがみたちも、もう高校を卒業する。
もはや、二人は手のかかる子供ではないのだ。これからは、親の力を借りずに、世間の荒い波を乗り越えなくてはならない。
ただおは、それが一番不安だったのだ。立派な大人だと認めている一方で、まだまだ未熟なところもあると、ただおは思っていた。矛盾するようだが、そう思っているのだから仕方ない。世間の荒い波を乗り越え、生きていけるかどうか、それが親として一番不安であった。
いのりやまつりがきちんと生活していることで、これが杞憂に過ぎないということを、ただおは分かっていた。しかし、そうは思っていても、やはり不安になってしまうのだった。
みきもどことなく寂しげな表情を見せながら、
「確かにそうね。でも、この三年間で、二人とも随分成長したわ。見かけでは、分からないけど……精神的に物凄く成長したわよ。この長いようで短い三年間、とても楽しかったでしょうね」
「だろうね。学校のことを話す二人は、とても楽しそうだったよ。毎日が楽しくて仕方がない……そんな顔だったな」
「そうだったわね。本当に……楽しそうだった。私たちもそうだったわよね?」
自らの高校時代のことを聞かれ、ただおは苦笑いしてから、
「あの時は、色々あったね。……私たちが、高校を卒業してからもう何年になる?」
ただおの質問に対し、みきは、少し考え込むと、
「そうね……三十年近くじゃない?」
「そうか。もう、そんなになるのか。……光陰矢のごとしとはよく言ったものだよ。私たちの三十年間も、かがみたちの三年間も、あっという間に過ぎてしまった」
「でも、充実した三十年間、三年間だったじゃない。私たちも子供たちも、これまで矢のごとし日々を生きてきて、そしてその間、とっても充実した日々だったじゃない。ならば、そんな後悔したような口ぶりはすべきじゃないと思うけど」
「はは……。みきには敵わないな。そう、いつでも……」
ただおは、何気なしに天井を見上げ、自らの青春時代を回想する。
466 :
お神酒徳利:2008/04/25(金) 22:04:06 ID:8h3rgWXj
ただおとみきは、小中高を共にした、いわば幼馴染みの関係である。しかも、家族ぐるみで、二人は仲が良かったのだった。
いつも一緒にいる仲のよい二人を、周囲の人々はお神酒徳利と密かに呼んだ。お神酒徳利とは、酒を入れて神前に供える一対の徳利で、一対であることから、いつも一緒にいる仲のよい二人を指すことがあった。
そんな二人であったが、若い頃の主導権は常に、みきが握っていた。昔のただおはどこか抜けたところがあり、しっかり者のみきがそれを正すことが多かったのだ。そんな関係は、およそ高校卒業まで続いた。
そして、高校生活の途上で、二人は恋に落ちた。その原因が何だったかは、今は二人とも覚えていないし、また思い出す必要も無かった。二人にとっては、恋に落ち、そして現在も良好な関係を保っているという事実さえあればそれで満足だった。
それはともかくとして、最初、二人は大いに悩んだ。これまで、恋愛関係などを超越した信頼関係を、二人は幼馴染みという環境の中で構築していた。それが、いつしか、急に恋愛感情というものへと変貌を遂げた。
おかしなことに、このとき、二人とも「相手を恋愛の対象と見ていいのかどうか」という同じことを悩んでいたらしい。しかし、ここでただおは、友人の後押しを受け、みきに告白する。みきも、それを受けた瞬間、悩みが吹っ切れて、喜んでそれを受諾したのだった。
こうして晴れて恋が成就した二人は、後々のことを考え、早々と両家の家族に報告する。つまりは、将来の結婚を前提とした付き合いであることを報告するのだった。これに、両家とも好意的な反応を示したが、みきの家族はそうした反応を示しながらも、条件を出したのである。
みきの家は、由緒正しき関東最古の大社を守る一家である。当然の事ながら、後年、宮司を任せるべき人物が必要であった。そして、みきの家族は封建的な家であり、宮司には男子をもってあてるしかないと考えていた。しかし、みきに兄弟はいなかったのだ。
そこで、みきの家族は、結婚の条件として、ただおが神職の資格を取得し、鷹宮神社の宮司としてふさわしき人物になる、というのを出してきたのである。ただおは、新たな悩み事に頭を痛めた。神社の仕事など務まるだろうか、と。
しかし、最終的に、ただおは、その条件を呑むことに決めた。決めた要因は色々あるが、やはりといっていいのか、みきの力が大きかった。みきの精力的な後押しによって、ただおは神職になる決意を固めたのである。
そうして、ただおは、神職過程のある大学を卒業し、資格を取得すると、みきの父親の下で修行を積み、遂に一人前と認められたのである。
このとき、ただお、みきは二十四歳。こうして、晴れて二人は結婚を認められ、そして結婚したのだった。
「あの頃の私たちは、若かったな。今の子供たちのように、活き活きとしていた」
しみじみとした喋りに、思わずみきは吹き出してしまう。
「ふふっ……。何だか、年寄りみたいよ?」
「……そうかな。私も年なのかもしれない。いつ死んでもおかしくないよ」
「あら、そんなこといわないでよ。あなたに先立たれるなんて縁起でもないわ」
「……いや、すまない。縁起でもなかったな。だが……」
と、ただおは、そこで言葉を切る。何やら、思わせぶりだった。
「だが……? 続きは何?」
「……いや、私が死ぬなんて縁起でもない、と、君は言ってくれた。だから、妻に大切にされている私は幸せ者だと思ってね。……それとも、私の愚かな勘違いかな?」
その言葉に、みきは、思わず赤面する。愛する夫に自分も愛されているという事実に、心の底で密かに喜んだのだ。何か、熱いものが胸にこみ上げてくるようだった。
そして、心の底で、ただおの妻でよかったと再認識するのだった。
467 :
お神酒徳利:2008/04/25(金) 22:04:32 ID:8h3rgWXj
「ありがとう」
「……ん?」
「あなたの勘違いなんかじゃないわ。私は、あなたの事を愛しているし、あなたは私の事を愛してくれている。私たちって、本当に幸せ者だわ。子供たちはすくすく育って、一人前の大人になろうとしている。これ以上の幸せが、果たしてあるかしら?」
「さあ、私には分からない。だが、私たちの愛が昔から続いているということは、確認できたよ」
「ふふ。あなたったら……」
全く、ただおの言うとおりだった。二人は、倦怠期などを知らない、模範的な中年夫婦だった。それは、子宝にも恵まれたことが証明してくれるだろう。
今でこそ、落ち着いた雰囲気の二人だが、昔はやはり若く、一日に何回も情を交わしたものだった。特に、いつもは穏やかなただおが唯一、強気になる瞬間であり、みきはそのギャップも楽しんでいた。二人の緊密な関係は、お神酒徳利の名にふさわしいものだった。
ただおは、そのことをも回想する。みきの身体は若く、実に魅力的だった。そしてそれを独り占めしているという、支配的な喜びと相まって、二人の性生活は激しいもので、点火した男の欲望に対し、みきは全面的な協力をもって応対していたのだ。
最後に情を交わしたのはいつであろうか、とただおは考える。今でも枕を並べて寝てはいるが、その回数は激減していた。
しかし、精神的なつながりは、ちっとも希薄ではなかった。恐らく、互いを求め合わなくとも、二人の心は通じ合っており、それで満足しているからだろうと、ただおは考えていた。
「……ねえ」
みきは、あたりをはばかるような小声で、言った。実際は、はばかる必要は無いほど、あたりは静穏であったが。
「ん?」
「何か、いやらしいことを考えていたでしょう。あなたがいやらしいことを考えているときは、いつもその目をしているわ」
それを聞き、ただおは慌てて顔をそらす。その動きのおかしさに、みきはまた吹き出した。
「……やっぱり、みきには敵わないよ。本当に、素晴らしいよ。私なんかの妻で、実に勿体無い」
「何を言うのよ。あなたこそ、私なんかの夫で実に勿体無いと思うわ。もっと、自分を高く評価したほうがいいわよ?」
「はは……。そういうところが敵わないんだよ……」
そして、二人は双方のおかしさに、笑いあった。
その後も、二人の会話はずっと続いた。時が過ぎるのを忘れた二人は、子供の高校卒業直前という時期とも相まって、話題が尽きることは無かった。
468 :
お神酒徳利:2008/04/25(金) 22:05:02 ID:8h3rgWXj
「……今は何時かな?」
長い時間が経ってから、ただおは、ちらりと壁の時計を見やった。時刻は、既に午前一時半に近かった。
「……私はそろそろ寝ようと思うんだが、ちっとも眠気が無い。みきはどうだ?」
「私も全然ないのよ。目が冴えちゃって……困っちゃうわね」
「ならば、私に名案があるんだ」
「眠気が出る方法の?」
「その通り。ただ、この方法を実行するに当たっては、細心の注意を払う必要があるんだよ。まず聞くが、今は疲れていないか?」
「いいえ、疲れていないわよ」
このとき、みきはまだ質問の意図が良く分からなかった。
「もう一問質問しよう。今から、少し騒いでも子供たちは起きないかな?」
ここまできて、みきは、ただおの言わんとすることがようやく分かった。
こんな機会は、今では、非常に稀である。そして、ただおがそれを望むなら、こちらも誠意ある対応をしなければならない、とみきは思った。
みきは艶やかに笑い、
「勿論よ」
といった。夫を魅了するような笑いだった。
そして、みきは、内心、これを喜んでいた。それを見抜いたただおは、やはり、若干、欲求不満であったのかもしれない、と、思った。勝手な推測だから、真実は問わないことにしたが。
ただおは、しばしみきの顔に見とれてから、頭を振ると、
「では、行こうか」
言いながら立ち上がり、みきを寝室にいざなった。
みきも立ち上がって、
「ええ。……何ヶ月かあとに、兄弟が出来るといったら、子供たちは喜ぶかしら?」
「さあ、どうだろう。そもそも、出来るかどうかさえわからないけどね」
ただおはそう言って、柔和な笑顔を返した。みきも笑顔を返す。二人の心が、間違いなく通じ合っているということは、誰が見ても明らかであろう。
その後、二人の姿は、寝室へと消え、その夜、寝室の電気が消されることはなく、その夜のお神酒徳利は、まるで自らに入れられた酒に酔うように、乱れていたという。
469 :
36-273:2008/04/25(金) 22:08:31 ID:8h3rgWXj
私は、生まれつきマイナーなキャラを好きになる性質なのか、しばしばマイナーなキャラを好きになる傾向があります。
柊夫妻も私の好きなキャラの一つに挙げられるのですが、恐らく私と同じような人はそうそういないかと思います。
それでも、この二人はどうしても書いてみたかったのです。やはり、子供の数からして、昔はお盛んであったのだろうと思いまして……。
最後、エロまで持ち込めなかったのは、私の力不足です。申し訳ありません。
エロはどうしても苦手でして、現在、練習中なのですが……十分に精進を重ねてから挑戦してみようと思います。
それに後から見ると、捏造設定ばかりですね。すみません。
私としては、ただおさんが唯一、神事と関係ない名前だということから、婿養子だと思ったのですが、本当はどうなのでしょう…?
話は変わりますが、昨日の
>>377は保管庫に保管したほうがよろしいのでしょうか。
こんなに短いわけですから、保管していいのかと迷いまして。皆さんのご意見をお聞きしたく存じます。
それでは、今日はこのあたりで。次回は、
>>377の続編と共にお会いできればうれしいなと思います。
>>468 GJ ! 柊夫妻のSSは少ないから新鮮だった
ここはエロパロ板だけど、気にせず自分の好きな作風で書いてくれ
GJです
婿入りする(神主になる)ために神道文化学部で勉強するただおさん……
想像してみると真面目そうなただおさんならありえそうな気がしてきますね
>>377の件については、「小ネタ枠で保管してもらう」という選択肢もありじゃないでしょうか
>>450 心優しい姉妹の話にGJ!
ゆーちゃんは強い子だよねっ
>>469 GJ!
みきさんとただおさんの雰囲気が、とっても良かったです
いい話が続いてる中に、投下するのもためらわれますが
よろしければ、5分ほど後より投下したいと思います
>>469 GJ!
こうゆう展開の話なら、無理にエロに持ち込むことはないかと。
それでも二人の情事が気になってしまうのは男の性ですがw
あとは、おまけみたいな感じで、
いのり「全く」
まつり「お父さんたちも」
かがみ「まだまだ」
つかさ「若いよねー」
とかw
475 :
28-538:2008/04/25(金) 23:23:08 ID:yeGpgK7b
最近、思考が変な方向にばっかり飛んでる28-538です
進歩のない文章で申し訳ないですが、投下させてもらいます
タイトルは ”本当は、甘えん坊?”
こなた&かがみ
7レス
ちょいエロあり?
「ね、かがみ。ぎゅってしてー」
そう言いながら、私はかがみの胸に顔をうずめる。
かがみに包まれる気がして落ち着くから。
それに、素肌で感じる温かさが心地いい。
「もう、本当にこなたは甘えん坊よね」
やれやれ、といった感じで言いながらも、かがみは抱きしめてくれる。
「そうだよー。私は甘えん坊さんなんだよ」
顔をちょっとかがみに向けた後、私は赤ちゃんのようにおっぱいに吸い付いた。
私はお母さんに甘えたことが無い。
だから、全てを包んでくれる、優しいかがみに甘えるんだと思う。
「ちょっ、やめっ。今日はもう駄目だって」
「むぅ。じゃあさ、一緒にお風呂に入ろう。汗いっぱいかいちゃったし」
「そうね。でも、もうちょっとこのままでいたいかな」
かがみは、私を抱きしめる力をちょっとだけ強くした。
私も、かがみをしっかりと抱きしめる。
「あのさ、かがみ……」
「なに」
「かがみも私に甘えて良いんだよ?」
かがみは、しっかりとしたお姉ちゃんでいようと頑張っていた、って言ってたよね。
だから、誰かに甘えることが無かったんじゃないか。
私と同じで、誰かに甘えたいんじゃないかな。
「なっ、なによ。いきなり…… あれ、どうしてだろ……」
顔を上げると、かがみが泣いていた。
「か、かがみ。私なんか悪いこと言った? ごめんね」
「あんたは悪く無いわよ。自分でも、なんで泣いてるのかわかんない」
私は体を動かし、かがみの頭を胸に抱きしめた。
そして、かがみの頭を優しく撫でる。
「泣きたいときは、私が胸貸したげるよ。あんまり無いけどね」
「ば、ばかっ」
かがみは、しばらく私の胸で泣き続けたあと、眠りについた。
「ねぇねぇってば〜」
体を揺すられ目を覚ますと、窓から差し込む朝日が目にしみる。
ところで、かがみってこんな喋りかたしたっけ?
「おはよー、かがみ。相変わらず早起きだねー」
上半身を起こし、腕を突き上げ背中を伸ばす。
声のした方に目を向けると、かがみが裸のまま立っていた。
そっか。昨日、あのまま眠っちゃったんだっけ。
とりあえず、シャワー浴びてから――
「お姉ちゃん誰?ここどこ?」
えと、空耳かな。
まだ寝ぼけてるみたいだね、私。
「かがみ、シャワー浴びよっか」
そうすれば、目もちゃんと覚めるよね。
「なんで私の名前知ってるの?」
あー、さっきのは空耳じゃなかったんだ。
それにしても、かがみったら冗談にも程があるよ。
「ちょっと、かがみー。いいかげ――」
「う……」
う?
「うぁーーん。おうちかえるーっ」
えっ?えっ?どうなってんの?
目の前のかがみは、間違いなく昨日一夜をともにしたかがみだよ。
で、そのかがみが裸で…… と、これはどうでも良いか。
いや、だから、本当の子供みたいに泣き出しちゃったよ。
お、落ち着け、私。
まずは、泣いているかがみを何とかなだめよう。
でないと近所の人に、お父さんが白い目で見られるようになるっ。
「えと、かがみちゃん? お姉ちゃんは、こなただよ。泉こなた」
こんなとき、どんな表情したら良いんだろう。
笑えば良いと思うよ……
うん、ベタだけどそうだよね。
笑顔笑顔っ。
「ぅぇ、ひっく。こなた、お姉ちゃん?」
とりあえず、返事してくれたよ。
さて、どうしたもんかねー。
「そうだよ。そして、ここは私の家」
「どうして、私ここにいるの?」
小首をかしげるかがみの仕草は、本当に小さな女の子みたいだよ。
正直、可愛すぎる。
「うんとね。かがみちゃんは昨日から家にお泊りに来てたんだよ」
「ん〜、そうだっけ。ね、つかさは〜」
「そっ、それよりさ。お風呂入ろう、お風呂。いつまでも裸でいると風邪引いちゃうぞー」
ごまかせるのか、こんなことで……
今の―― 高校生のかがみなら「な〜にごまかしてんのよっ」とか言われそうだけど……
「うん、はいるーっ」
はぁぁ、よかった。
少しは時間が稼げるな。
お風呂に入る前にみゆきさんに電話して、家に来てもらおう。
どう見ても、かがみがふざけてるようにも見えないし。
みゆきさんなら、きっと何か分かるよね。
「それじゃ、頭洗うよー」
「う…… うん」
あれ。かがみ、どうしたのかな。
なんだか緊張してるみたいだけど。
「どうしたのかな。かがみちゃん」
「あのね、シャンプーハットつけて欲しいの」
最後は、消え入りそうなくらい小さな声だ。
顔も赤くなってるし、恥ずかしいと思ってるのかなぁ。
「おけおけ」
お父さんが使うから、普通においてあるんだよね。
なんか、そのことの方が恥ずかしい気がする。
頭を洗い始めると、かがみがなんか歌いだした。
どっかで聞いたことあるような気がする。
えーと、いつだっけ…… そうだ、みんなで始めてカラオケ行ったときだよ。
確か「I'm proud」とかいう歌だよね。
「かがみちゃん。その歌好きなの?」
「うんっ、大好きっ。泣きたくなったりしても、この歌、歌うと元気が出るの」
「今、泣きたいの?」
「ううん、楽しいよ。でも、何でか歌いたくなったの」
そう言うと、かがみはまた歌いだした。
だけど、どうしてこんなことになったんだろう。
心が子供に戻っちゃってるんだよね?
なんて言うんだっけ、こういうの。
かがみの体を洗い終えて、自分の体を洗ってるときまで考えてたけど、結局分からなかった。
「あーっ!」
「こなたお姉ちゃん、どうしたの」
突然声を上げた私に驚いて、かがみは心配したような表情で声を掛けてきた。
「な、なんでもないよ。もうちょっとで洗い終わるからね」
しまったー…… かがみの体洗わせてもらったこと無かったんだよ。
貴重な体験だったのに、考え事してたから全然覚えてない。
泉こなた、一生の不覚だ。
体を洗い終わると、湯船に浸かっていたかがみが足をまげて、背中側を大きく開けた。
これは、かがみの後ろに私が入れってことかな。
私のほうが小っちゃいから、本当はかがみが後ろの方が楽なんだけどね。
「お邪魔しまーす」
私が後ろに入ると、かがみは私の太もも辺りに座ってきた。
かがみの体重を感じていると、自然と笑みがこぼれる。
手を回して、おなかの辺りを抱いてあげる。
身長差があって、上からは抱けなかったんだよ。
「えへへー」
そうすると、かがみは嬉しそうに笑った。
「かがみちゃん、どうしたの」
その笑顔が、すごく嬉しそうなのが気になって、私はかがみに聞いてみた。
「うん。いっつもね、私が後ろだから、前に座ってみたかったんだー」
そっか。つかさと一緒に入ると、がかがみが後ろだったんだね。
やっぱり、かがみも誰かに甘えたかったのかな。
お風呂から上がって、かがみの髪を乾かしてあげると、自分で器用にツインテールを作ってた。
今は、着替えも終わって私を待っている。
私が髪を乾かし終えると、かがみがとてとてと近付いてきた。
「こなたお姉ちゃん、ちょっといいかな」
そう言って、私の髪にリボンを結ぶ。
かがみは手馴れた手つきで、私の髪をツインテールにしてしまった。
「お揃いだよっ」
かがみの笑顔がすごく嬉しそうだから、今日はこのままの髪型でいよう。
それに、今のかがみにはそれが必要な気もするしね。
「ありがとう、かがみちゃん」
私もとびっきりの笑顔を返してあげた。
「くぅ〜〜っ」
その時、かがみのお腹から可愛い音がした。
かがみは顔を真っ赤にして、お腹を押さえる。
「お腹すいたね。何が食べたい?」
「うんと、スパゲッティミートソース」
えーっと、ミートソースは缶詰があったはずだから。
うん、大丈夫。
「よーっし。それじゃあ、スパゲッティにしよう」
「やったーっ」
ちょっと遅めの朝ごはんを食べた後、部屋でゲームをしていると呼び鈴が鳴らされた。
「はーい。今出ますよー」
かがみを残して玄関に向かう。
扉を開けると、待ち焦がれていたみゆきさんの姿があった。
「こんにちは。泉さん」
「やふー、待ってたよー。大体は電話で話した通りなんだけどさ」
「ええ。おそらくは幼児後退ではないかと」
「で、どうやったら元に戻るの?」
「あの、泉さん……」
みゆきさんの視線は、私の後方へと向けられている。
その視線を追っていくと、かがみが部屋から顔だけを覗かせていた。
「ま、ここで立ち話もなんだから、部屋に行こっか」
部屋に入ると、お互いの自己紹介。
朝、私のことを分からなかったみたいだから、みゆきさんのことも分からないだろうしね。
「かがみちゃん。私の友達のみゆきさん」
「こんにちは、かがみさん」
「こ、こんにちは」
かがみは恥ずかしそうに、みゆきさんに挨拶を返した。
「かがみさんは、今何歳なのですか?」
「8歳。小学2年生」
あ、そっか。年齢聞けばよかったんだよね。
さっすが、みゆきさんだね。
今、かがみは躊躇なく返事したよね。
ってことは、やっぱり心が若返ってるのか。
「ね、かがみちゃん。ちょっとみゆきさんと話してきていいかな」
「うん……」
寂しそうな表情を一瞬見せたけど、かがみはすぐに笑顔になった。
この頃から、我慢することを覚えてたんだ。
なんか気が引けるけど、かがみの前で話すことじゃないもんね。
「すぐ戻るからねー」
リビングに移動して、みゆきさんに事の成り行きを説明した。
電話では、かがみの様子だけしか伝えてなかったからね。
「そうですね。やっぱり幼児後退だと思います」
「さっきも言ってたけど、なんなのそれ」
「見ての通り、精神が幼児期に戻ることですよ」
「で、どうやったら元に戻るのかな。みゆきさん」
今のかがみも可愛くて良いんだけど、さすがにこのままって訳にはいかないよ。
「泉さんの話を聞く限り、小さい頃に人に甘えていないことが原因ではないかと思います――」
みゆきさんの話では、幼児後退は過度のストレスなんかで起こる。
他には、小さい頃にできなかったことを体験しようとして、起こることもあるらしい。
かがみの場合は後者ではないか。
きっかけは、私が「甘えてもいい」と言ったことじゃないか、とのことだ。
「ってことは、思いっきり甘えさせてやれば、元に戻るってことでいいのかな」
「確証はありませんが、おそらくは。病院に行って診て貰う方が良いと思うんですが」
「うん。夕方まで私がやってみるよ。で、駄目だったらかがみの家に連絡する……」
本当はすぐにでも連絡した方が良いんだろうけど、私の言葉が原因なら、私が治してあげたい。
それに、かがみも他の人に、こんな状態を見られたく無いだろうし。
「そうですか。それでは、私は失礼しますね」
「うん。ありがとう、みゆきさん。それと、このことは内緒にしといてね」
「ええ、心得てますよ」
みゆきさんを見送ってから部屋に戻ると、かがみはゲームをやっていた。
だけど、楽しんでる感じじゃないね。
「おまたせ。ごめんね、かがみちゃん」
声を掛けると、かがみはゲームを放り出し、私に抱きついてきた。
瞳がわずかに潤んでいる。
「ごめんね、寂しい思いさせちゃって」
かがみを抱きしめ、頭を優しく撫でてやる。
かがみは、ずっと我慢してたのかな。
誰かに甘える姿を見られないように。
しっかりしたお姉ちゃんである為に。
私の前では、そんな事しなくていいんだよ。
私がかがみに甘えるように、かがみも私に甘えてほしいよ。
「ね、かがみちゃん。今から何しよっか? 今日は一日やりたい事やろうね」
「お姉ちゃんと一緒に、お昼寝したい」
間髪いれずにそう言ったかがみは、顔を真っ赤にして恥ずかしそう俯いていた。
「じゃあ、今からお昼寝だね」
「うん、一緒に寝てくれるの?」
「もちろんだよ。でもその前に、着替えようね。服にしわが付いちゃうから」
「うんっ」
パジャマに着替えて、ベッドに二人で横になる。
昨日と同じように、私の胸にかがみの頭を抱きしめながら。
昨日と違ったのは、かがみが嬉しそうにしていること。
かがみは私の胸で、安らかな寝息を立てている。
それを見ながら私も眠りについた。
起きたときには、かがみが元に戻ってることを祈りながら。
どれくらい眠っていたんだろう。
私は胸に違和感を覚えて目を覚ました。
まだはっきりとしない意識で視線を胸元にやる。
パジャマの前が開けられ、かがみが私の胸を吸っていた。
「ちょっ、かがみちゃんっ」
私の声に反応して、かがみが視線を上げる。
「どうしたの?こなたお姉ちゃん」
なぜ驚いているのか分からない、と言った表情を見せると、再び私の胸に吸い付くかがみ。
私の祈りは届かなかったらしい。
かがみはまだ、元に戻ってないみたいだね。
「ん、なんでもないよ。かがみちゃん」
目の前の菫色の髪を撫でながら、これからのすべきことを考える。
まずは、かがみの家に連絡。
それからのことは、なるようにしかならないよね。
多分、かがみは病院に行って、検査を受けることになるだろう。
そうなったら、私はできるだけかがみの傍に居よう。
「ね、こなたお姉ちゃん。ぎゅ、って抱きしめて」
かがみに目を向けると、照れくさそうに私から視線を外す。
私は、抱きしめている力をちょっとだけ強める。
「しかたないなぁ。かがみちゃんは甘えん坊さんだね」
「そうよ。ずっと、こうして誰かに甘えたかったのよ」
「そっかー…… って、かがみ?」
かがみの肩に手をやり、顔が見えるように少しだけ体を離す。
「やっ…… こなた、抱きしめてて」
私は言われた通りに、かがみを抱きしめなおす。
抱きしめている力を、ちょっとだけ強める。
「ありがとう、こなた」
そう言ったかがみの声は涙声だった。
483 :
28-538:2008/04/25(金) 23:31:53 ID:yeGpgK7b
以上です
すんません
相変わらず、タイトル思い浮かばないです
バシッと決まるタイトルを付けてみたいっ
かがみを甘えさせてやりたいなぁ、と思って書いてみたけど……
普通の状態じゃ、絶対にかがみは素直に甘えないよなぁ
なんて考えてたら、結局こんなことになってしまいました
いつものごとく、勢いで書いたことを反省してます
|ω・`)ノシ
>>483 乙です。
こうした形のこなかがも燃えますね。
>>483 幼児退行か……うん、アリだなw
GJ!
>>483 かがみの幼児退後は演技なのか?最終(ry
やはり俺の中で甘いこなかがはジャスティス!
GJ
>>483 GJ!
甘々、甘々ですなあ……
「かがみの幼児退行は本当だったのか?」とか、
いろいろ考える余地があるのもいいですねえ。
次の作品もお待ちしてますよ!
>>469 いい話だなー。
マイナーキャラいいではないか!満遍なく愛を捧ぐその姿勢こそ高く評価されるべき!
つまりはGJ!
ただおさんもまだまだ若いってことか…
>>473は本当にありえそうで噴いた。
誰が一番最初に見ちゃうんだろう。
>>483 非常に甘い!納豆に砂糖たっぷりぶっかけて食わされるような甘さだ…
勢いでこれほどのネタを展開できる貴方の才をわけてくれ、ださい。
これから投下しても大丈夫ですか?
では・・・
ども!勢いだけで突っ走ってる23-308です!初の続きものなのでちゃんとできてるか心配です
・懐かしいネタ
・続きもの
・衝撃の事実あり
・新しいパーツがかなり出ます
・オリキャラ
・もち非エロ
二次ブームのイメージが強い人はショックを受けるかもしれません。それでも大丈夫なら・・・
GO!バックブレーダーァァァァ!!
忘れてましたが、3レスくらいお借りします
らき☆すたもしもシリーズif NO.003-2 泉そうじろう編
〜もしもそうじろうがミニ四駆をやっ(ry
お父さんにフルボッコされた後、とりあえずミニ四駆の現状を調べるためパソコンを立ち上げた。
まずはミニ四駆で検索して、タミヤの公式サイトに行く。ミニ四駆オンラインとかいうページがあって
「ミニ四駆PRO?何だろ」
と、思い不思議な単語が書かれているバナーをクリックした。
詳しく調べるとミニ四駆PROとは最新のシリーズで、大きな特徴はモーターがシャーシの前でも後ろでもなく真ん中に置いてあるMSシャーシというのが使われている事。
モーターも両方から軸が出ていて直接動力を伝えていてプロペラシャフトも無くなっているらしい。
時代も進んだね〜パーツも種類が増えていたし進化していた。
でもこれだけだとまだ情報が足りないみたいなので検索結果で公式サイトの下にあったページを見てみる。
そこはこのSSを見てる人には多分お馴染みであろう掲示板であまりいいイメージが無いかな〜って人もいるだろう板のミニ四駆スレのwikiで、実戦から得た改造法が結構載っていた。
そのwikiでは、今はフロント一段、リア二段、ローラー幅は規定いっぱいというローラーセッティングが主流であること、
実は六角ベアリングは性能が悪い事、ファイターが引退していた事(←重要!)等がわかった。
(作者注)
現在、主に使われているシャーシを書いておく。
MSシャーシ
最新のシャーシ。
先の説明の通りシャーシ中心にモーターがあり、プロペラシャフトが無いためノーマルでの圧倒的な駆動効率と速さを誇る。
また、シャーシを前中後の3ユニットに分割されていて、(タミヤ曰く)簡単にセッティングが切り替えられるようになっている。
ユニット間の連結がボックス構造になってるので強度もあるが、構造の関係で重量が重くなっている。
VSシャーシ
MSが出るまで主流だったシャーシ。
と、いっても現在も第一線で活躍している。テクニカルコース向け。
スーパー1シャーシのコンパクトな設計にスーパーXシャーシで採用されたアイデアが取りこまれている。
フロントバンパーの強度が弱いのがネック
スーパーXシャーシ
二次ブームが下火になりかけた頃に出たシャーシ。
高い剛性と駆動系の優秀さに定評がある。
ワイドトレッド、ロングホイールベースのため小回りが効かないのと620ベアリング(後述)を使うのが難しいのが欠点。
前後を逆転させたFMXという改造シャーシもある。
カーボン入りナイロンを使ったXシャーシはその性能の良さと希少性から定価の3倍以上で取引される事もある。
スーパーTZシャーシ、スーパーTZ-Xシャーシ
スーパー1より高剛性になり、スーパー1の短所である「フロントバンパーの脆さ」を克服した。
後部には申し訳程度のデフューザーが標準装備されている。ホイールベースもS1より長くなり、より直進安定性が高くなった。
スーパーXには劣るがフロントバンパーの強度がある。
駆動系はあまり良くなくギアの噛み合わせの悪さからくる爆音に定評がある。
スーパーTZ-XシャーシはTZシャーシのマイナーチェンジ版。
フロントローラーのスラスト角が変更され、パーツ取付け穴が追加されてXシャーシ用のパーツが使えるようになっている。
因みにスーパーTZ-Xシャーシは作者の使用シャーシ。
スーパー1シャーシ
恐らく二次ブームにミニ四駆をやっていたなら誰もが使った事があるだろうシャーシ。
軽量で旋回性が高いがフロントバンパーの強度が悪く、超速ギヤ使用時に専用ギヤカバーを装着する必要がある。
(今まで生産停止になっていたが、最近再販された。)
他にもスーパーFMシャーシ等も使われているが、競技ベースとしては上記の6種類がメインである。
「なんか天の声が聞こえたけど気のせい?」
それは置いといて、他にもサイトを回って色々調べて大体買うものは決まった。
明日 バイト無いから学校帰りに模型屋に寄るとしますか。
「さってと!ネトゲーやろうっと!」
翌日、案の定授業中に爆睡して黒井先生から鉄拳制裁を喰らい、かがみ達とダベりながら帰るという日常を過ごした後、
地元の駅に降りた私は真っすぐ家に向かわずにある店に向かった。
駅から5分くらいのところにあるその店は小学生の頃小遣い握りしめて通った模型店である。まだ健在のようだ。
「おばちゃん、ばんわー」
「あら!久しぶり。大きくなったね〜で、どうしたの?」
「ちょっとミニ四駆買いに来たんだ」
「こなたちゃんも?」
「どゆこと?」
「お父さんも来てるのよ。」
「お父さんここで買ってたんだ・・・」
そんな感じでおばちゃんと話しながらパーツや本体を物色していた。
ここは小さいながらも品揃えが良く、AOパーツまで置いていた。
私が買ったのは以下の通り
レイホーク・ガンマ 630円
スーパーTZ-Xシャーシ(ホワイト)315円
アトミックチューンモーター 300円
スプリントダッシュモーター 350円
スーパーXシャーシ FRPマルチ強化プレート 150円
スーパーXシャーシ FRPリヤーローラーステー 180円
ミニ四駆PRO FRPワイドプレートセット×2 200円×2
620ベアリング×3 500円×3
ローラー用9mmボールベアリングセット×3 420円×3
スーパーXシャーシ用超速ギヤ 105円
ラジ四駆 72mm強化シャフト 150円
大径ライトウエイトホイール×2 105円×2
大径ナローライトウェイトホイール(バレルタイヤ付) 300円
1.4mm中空軽量プロペラシャフト 105円
ゴールドターミナルB 120円
スペシャルロングビス・ロックナットセット×2 252円×2
ダンガンレーサー スタビフィン&ガード 263円
ショートスタビローラー 263円
合計7105円
店は2割引きなので5684円
お父さんとの思い出 priceless
我ながら買い過ぎだと思う。本やゲームなら少なく思うのに・・・
TZ-Xにした理由?小学生の時最後に使ったのが確かTZのバスターソニックだったから何となく・・・かな?
軸受けは本当はダンガン用のHGベアリングにしたかったんだけど出回ってないんだって。
実際店にも無かった。620ベアリングは性能は最強なんだけど少し手間がかかるから本当は素人が手を出すべき代物ではないらしい。
あと100円ショップとかで必要な物を買い集めてついでに今日の晩御飯の食材を買って家に帰った。
荷物が重い・・・組み立ては休みの日にやろう。
ってか会話文が少ないね〜このSS。
「ただいま〜」
「お帰りお姉ちゃん!遅かったね。」
「ごめんね、ゆーちゃん。ちょっと寄るところがあってね〜すぐ支度するね。」
と、まあいつものように夕飯の支度して家族3人で夕飯を食べた後、廊下に置いていた戦利品を入れた紙袋を部屋に持って行こうとしたとき・・・
「おっ!買ってきたのか?」
お父さんがニヤついた顔で
「あんな事言われたらね〜お父さん、負けるつもりはないから!」
「おう!」
なんか柄にもなく熱くなっているのが自分でもわかった。
つづく
以上です。結局1レス増えやがった・・・
それと投下後の緊張感は慣れないな・・・
模型店は実在していませんが、俺がお世話になっている模型店がモデルになっています。
こなたにTZ-Xを使わせた本当の理由は俺がTZ系しかわからないからですorz
基本構造は変わんないと思うんですが・・・
次回は組み立て編です
次は29日の大会が終わってからになりそうなので結構空くかもしれません
最後に・・・・
なんかスミマセン!
GJであります。
小学生の頃ミニ四駆やってたの思い出すわぁ。また、やりたくなってきた…。
って、
ファイター引退してたのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!
ミニ四駆といえばホットショットJr'とかスーパードラゴンJr'とかが主流だったなー俺の時代は・・・・
ええ、当時小学校高学年〜リアル厨房でしたが何か?
高尾山と都立大くらいしかもう売ってないよな(´・ω・`)
ちょっと西川口にナックルブレイカー買いに行ってくる
480KB超えてるようなのでそろそろ次スレ立てチャレンジしてみますね
502 :
42-519:2008/04/26(土) 14:11:37 ID:R+HuSaoC
誰もいなかったら投稿してきますね。
・非エロです。読んだことはない人が多いと思いますが、一応リメイク物です。
・つかかがです。
最近毎日が楽しい。
こなたと一緒に学校にいったり、ゲームをしたりした当たり前の日常に幸せを感じていると思う。強引にアニメイトやらとらのあなやら秋葉原につれていかれて、どんどんオタク化していく私は、どうなんだとも思うけど。
このところ気温が低い。埼玉の冬は日本海側と違ってほとんど雪が積もることも雨が降ることもない。天気事態は良好だが空気は乾燥しているし北風は厳しいのだ。
雨戸を閉めているせいで晴れか曇りかの判断は困難だが、湿気があまりないことから今日もピーカンなのだと思った。
「7時か。つかさ、起こしに行かないと」
目覚ましがけたましく鳴り響く。それを手探りでボタンを押す。
五分後にまたなる。スヌース機能が憎らしい。
私は暖房をつけようとベッドから立ち上がる。
――っ!
目の前の世界がぐるぐると回っている。。数歩でたどり着くはずのドアが私の視界から逃げるように消えていく。
起き上がって気づいた。体が重い。鉛を背負っているような感覚。体の制御がきかない。
まるで、私の体がのっとられかけているような――これは、私? 幾度となく目にしたはずの自室は、一種のゲシュタルト崩壊を起こしているのか無機質な、自室によく似た別部屋とすりかえられたような錯覚に陥る。
私の部屋だ。違うことは回転式扉、あるいはメリーゴーランドのように部屋が廻っているだけだ。。それって、「いつも」と言えるのか? 私は冷静だ。あるいは、狂った平静。狂気を正気と思える、そんな壊れた理性でいる。
――あ。
「てゆーか、単に熱なだけよね」
頭が覚醒してくる。同時に私は常識的な判断を下せるまでになった。
私、なんか変なことを考えていなかったか? いけないいけない。こなたと同類になったら、人として問題があるじゃないか! って、いくらなんでもこなたに失礼か。私はそんなこなたが好きなわけだし。
小さいころに間違ってお酒を飲んで経験した二日酔いのような、不思議な感覚がある。とにかく、つかさを起こしにいこう。回転している、狂っているのは自室ではなく、私のほうだ。頭の回転をさせないと…とにかく、まっすぐ歩けば扉まではたどり着けるはず。
やっとの思いで私は扉を開けた。つかさの部屋まで、一歩一歩、歩く。健康の喜びを実感するのは、病気のとき。換言すれば、人間、失ってはじめて気づくのだ。後悔は先にたたないものだけど。
あとちょっと。あと一歩。
「おーい、つか――」
ばたっ
あ、れ……?
視界がフェードアウトしていく。連続的であるはずの時間は、今この時点において、確実に切断された。
そんな思考も、数秒のうちに消えうせる。
今日学校行けるかな、とかすれゆく記憶にお祈りをした。こなたに会えるかなという祈祷はしかし、絶望的だった。
もう何も見えない。何も聞こえない――。
「あれー、外で大きな音がしたような…
ふわああっ…眠いよう。でももう7時過ぎてるし、起きないと。
あれ?
いつもならお姉ちゃんが起こしにくる時間なんだけど、もしかしたらお姉ちゃん、寝坊かな?
――もう、仕方ないなあお姉ちゃんは。
もし本当に私がお姉ちゃんだったら――ほらきょうちゃん、朝だよお。ねえ、起きてよう――わあ、すごいことになってるよう!」
つかさは、眠たい眼をごしごしと手でぬぐいながら、扉をあけた。
そこで立ち尽くす。
「え、えええええええええええ?」
つかさは目をぱちくりして、そこで倒れているかがみをみかけた。
「お、お姉ちゃん?」
よく事情を飲み込めないつかさは、ためしに話しかけてみた。かがみからの反応はない。
かがみを持ち上げて、意識がないことを確認する。
―――お、お姉ちゃん?
頭の中で反芻した後、つかさは事態を飲み込む。次にすべきことは。!
「お、お母さああん!
お姉ちゃんが、お姉ちゃんがあ!」
間違いなく、非日常。
つかさはばたばたと階段を駆け下りて、母であるみきのもとへ急いだ。
階段で数回蹴躓いたことは、殊更話題にすることでもなかった。
「――38度4分! お姉ちゃん、大丈夫?」
かがみの熱っぽい顔を見て、つかさは心配そうに尋ねる。体温計は平時とは比べものならない体温を示した。体温計が四十二度までということは、それ以上はたんぱく質に異変をおこし、生命維持が極めて困難になるからである。
最初はおろおろと、どうすればいいかわからなかったつかさも、かがみが単に熱をだしただけだとわかると、幾分落ち着きを取り戻し、他の姉に協力してもらい、かがみをベッドに寝かした。
学校には完全に遅刻だ。
でもそんなことはどうでもいい、とつかさは思う。学校の勉強だってお姉ちゃんがいないと楽しくなんてない。お姉ちゃんが苦しんでいるのに私だけ楽しむわけにもいかない。
「つかさ、後は私がやっとくから」というみきの言葉に、強情に「お姉ちゃんが起きるまでは、そばにいるもん!」と否定した。みきもすぐに折れた。
仕方ないわね…と苦笑した後、「黒井先生と桜庭先生に、かがみの欠席と、つかさの遅刻を連絡しておくわね――起きるまで、かがみのことよろしくね」とつかさに頼み、かがみの部屋からでた。
母親として、つかさとかがみが特別仲がいいことも理解していたし、つかさの心配そうな顔を見たら、どうせ学校の勉強も身にはいらないだろう…と思った。
みきは、時々はかがみの様子を確認しようとは思ったけど、できるかぎりつかさに任せようと思った。かがみもそれを望んでいると、どことなくみきは思うのだ。
それにつかさだって高校三年生だ。みきも信頼はしている。父親であるただおにその旨を説明する。神主であり、世間一般的にも人格者であるただおは「うん…何かあったら連絡して」とだけ言って、みきの判断に肯定した。
――柊家の電話は黒電話である。
かがみが目を覚ましたのは、それから二時間もたった10時ごろであった。
「…なんだ、38度か」
計測完了の音を確認したかがみは、脇から体温計を取り出して、見た。「分」の部分はあえて繰り返さなかった。
「なんだって、なんだじゃないよお姉ちゃん! 38度だよ!? 普通より2度も高いんだよ!」
「大丈夫よつかさ、それほど辛くはないわ」
そういって無理やりかがみは立ち上がろうとする。しかし、一歩歩く前に足はふらつき、倒れそうになる。
それをつかさが「お姉ちゃん、危ない!」といってかがみが倒れる前に支え、半ば強引にベッドに寝かした。
普段のつかさからは想像できないような、必死の思いでつかさは叫んだ。
「もうお姉ちゃん! 今日は寝てなきゃだめだよ! それにもう先生は欠席の連絡したから! お姉ちゃんが倒れたら、私…、わたし!」
「――ごめん、強情だった」
38度4分が普通でないことくらい、かがみだってわかっていた。
それでも、学校に行きたかった。こなたに会いたかったし、壊れてしまいそうな日常を精一杯楽しんでみたいと、自己中心的な態度をとってしまったのだ。
そんな感情も、かさの目を見て、気持ちを感じて、すぐに萎えた。次に湧き上がってきた感情はどうしようもない罪悪感だった。
絶対にかがみを学校に行かせないという毅然とした態度よりかは、懇願に近い感情でつかさは訴えた。その瞳から、涙が洪水のように流れていた。
「うう…嫌だよう。お姉ちゃんがいなくなったら、嫌だよう」
大粒の涙がかがみの寝具にこぼれて滲む。
「…ごめん。
――つかさの言うとおりにする。心配かけて、ごめん」
「ううん。私こそごめんね。泣いちゃって」
その言葉が痛い。小さいころ「つかさを泣かすのは許さない!」とできるかぎりお姉ちゃんでいようと勤めてきたのに、その私が――私のせいで――つかさを泣かしてしまった。
そしてつかさに「泣いちゃってごめん」なんていわせるなんて、私、どうかしてる。
いや、そんな生易しい言葉で自分を庇護してもしかたないとかがみは思った。
私は最低だ。
「本当にごめんね、つかさ。もう大丈夫だから、心配しないで。今日は休む」
「うん…それがいいよお姉ちゃん」
「ほら、涙、拭いて」
そういってかがみは自分の指先をつかさの目じりまでよせる。そうしてつかさの涙をぬぐった。
「えへへ…なんか不思議な気持ち」
ぬぐった涙をかがみは、舌で舐めた
つかさは「お姉ちゃん…?」とその行動を不思議に見つめていた。
――しょっぱい。この痛みは、忘れないようにしようとかがみは深く思った。
「え、今日休むの?」
つかさは、かがみの体調を確認しにきた、みきに伝えた。
「お願い、お母さん」
「…仕方ないわね」
つかさの切実な思いを感じ、またも慈愛に満ちた判断を下す。それが正しいかはわからないが、少なくてもみきは今はそうでもいい、と思った。
「――でも、黒井先生にはつかさから連絡しなさいよ。それくらいはできるよね」
「う…うん、わかった」
「つかさ、本当に休むの? つかさは学校にいっていいんだよ?」
かがみが心配そうにたずねる。熱のせいかいつもの覇気はなく、どことなく弱々しげだった。
「うん。今日はお姉ちゃんと一緒にいる。ううん、一緒にいたいの」
かがみの部屋から廊下にでた。その足取りは少し重い。
もう、ばか…とかがみの部屋から聞こえた。
――黒井先生に電話かあ、なんていえばいいんだろう。風邪…かな? お母さんは特に病状を言わず「遅刻していきます」と告げただけらしいから、それでいこう。
「つかさ、かがみ。泉さんたちがお見舞いにきたわよ」
午後6時。黒井先生に欠席の連絡を伝えてから、つかさずっとかがみの部屋にいた。
お姉ちゃんの看病は私がするんだから、と意気込んでいたが、其のうちの半分はかがみのベッドにもたれかかって、寝てしまっていた。
寝言で「うう…お姉ちゃん、大丈夫?」と呟くつかさを見て、かがみはつかさの髪を優しく梳きながら人知れず枕をぬらした。
「ありがとうね、つかさ」
――どたどたと、階段を上る音がする。その音は複数ある。きっといつものメンバーがやってくるのだろう。
嬉しさや期待と、二人だけの空間が壊されることに少しだけ残念だった。
私とつかさ。双子の空間に。
「やっほーかがみ、あれ、起きていいの?」
こなたが私に話しかける。私はうん、昼間、眠ってたからさと答える。
「ちぇえ、またかがみの寝言を堪能しようと思ったのになあ」
こなたは私がおきていることにがっかりしたのか、口をとんがらしていった。
「宿題がどうのとかいったら、殴るからな」
「はいはいわかってますよ。私だって賞味期限の切れたネタはつかわないよ。でも本当に寝てなくていいの?」
こなたは気を取り直して私の体を心配してくれる。私は「うん、つかさが看病してくれたから」と素直に言った。
「そのわりには寝てるみたいだけど?」
私のべっどに寄りかかって寝ているつかさを見て話しかける。
「そ、それだけ、私のために看病してくれたってことよ。つかさの悪口いったら、許さないんだからね!」
「んー、今日のかがみんはなんか怖いなあ」
「あ、ごめんこなた。わざわざお見舞いにきてもらったのに」
「いーよー別に。それはそれでツンデレで萌えるし♪ 私とかがみんの仲じゃないか〜――てゆーかつかさも風邪じゃなかったの?」
ぎくっ、と私は狼狽する。
つかさは黒井先生に風邪と偽って連絡したらしい。いまさら隠すことでもないし、親友に嘘をいってもしかたない。
「あれ、仮病よ。つかさのやつ、馬鹿だからさ――私の看病するって聞かなくて」
そういう私は、こなたに指摘されないでも赤くなっていると思う。熱で赤いのか、それとも恥ずかしくて真っ赤なのか…。
そんな心地が私は幸せだった。
「それにしてもかがみさんとつかささんが元気そうで安心しました。これ、お見舞いと今日のノートのコピーです。お二人の分ですが、かがみさんに渡しておきますね」
みゆきはそういって、紙とお花を手渡し、言葉を続ける。。
「かがみさんのノートは、峰岸さんからお借りしました」
「うん、みゆき、ありがと」
みゆきは本当にお体は大事にしてくださいねと、微笑みかけてくれた。こなたはこなたなりに私を心配してくれる。
たまには風邪を引くのもいいのかな、なんて思ってしまう。
「でも本当にかがみんも頼むよ〜。かがみがいないと学校つまらないんだからさ」
「そうですね…今日の泉さんはとても落ち込んでいらっしゃいました」
「そ、そうなの?」
こなたのことだから私のことなんて気にせず今日もいつもの調子だと思った。
こなたは心外といった風に私を見つめ返してくる。
「あのさかがみん。つかさも休みだったんだよ? 二人がいないのに楽しいわけなんてないじゃん」
「そ、そっか…あ、ありがとっていえばいいのかな?」
いつものようにツンデレかがみ萌え! と抱きつこうとする。私は風邪だからといって振りほどく。こなたは不満そうに、それでも「とにかくお大事にね」といってくれた。
「――ねえかがみ」
みゆきがお手洗いにいっている間、小声で私に話しかけてきた。私は何よと、顔をあげた。
「キス、してよ」
「は、はあ?」
「私達、恋人だよね。さっきはみゆきさんのいる手前ああいったけど、私だって本当は、本当に寂しかったんだからね。かがみ携帯にも連絡してくれなかったし」
「こなた…」
そういえば朝から携帯には一度も触っていない。つかさが一緒にいてくれるのに携帯を使うのは不謹慎だと思ったし、必要もなかった。
そう、私とこなたは付き合っている。
私はこなたのことが好き。こなたと一緒にいたいいから学校に行きたい。
脆弱な日常。壊れてしまいそうな平穏。それを必死にしがみつきたいから私は登校する。
そうして、女の子を泣かした。
私は自分自身のけじめとして「うん…治ったらでいい?」というのだった。
こなたは「むう…」と納得のいかない顔だったが「でもまあ、かがみのことだし、何か理由があるんだろうしね」といってその場を取り繕う曖昧な笑いを見せた。
それから、これくらいはいいよねといって、私の指をとって、こなたがふんわりとキスをした。
ごめんね、こなた。
今日だけは、つかさのお姉ちゃんでありたいんだ。
・
・
・
「ふわああああ、あれ、朝?」
つかさが目をさめるなりつぶやいた。時刻は8時。こなた達も帰っていたころである。かがみは「よく寝られた?」とつかさにたずねる。
つかさは「あ、あはは…私、寝ちゃってた。ごめんね、お姉ちゃん」と苦笑気味に言う。
「ううん、馴れないことして、疲れたのよ。もう、学校まで休んで、何やっているんだか」
「あはは…お姉ちゃん、風邪は大丈夫?」
「まだ熱はあるけど、だいぶ楽になったわ」
「よかった〜」
「あしたは、学校いきなさいよね。私はまだちょっと、無理そうだけど」
「うん、わかってる。お姉ちゃんも元気なってきて、私も安心したし」
――違う。
そんなことじゃなくて、私がいま、言わなければいけないこと。朝から切実に感じてきた、私の思い。
「あ、あ、あのね、つかさ」
「? なあに?」
かがみは一呼吸置く。恥ずかしくてしどろもどろ。黙ってしまう。
かがみはもう一度つかさの顔をみた。不思議な顔をしてかがみの顔を見つめてくる。言おう。かがみは心の中で強く決意して拳を握った。
「つかさ、今日は本当にありがとう! 迷惑かけてごめん! でもね、でもね…
つかさ、大好き!」
つかさは驚いた顔をみせたが、すぐに泣いているのような笑っているような、そんな幸せな顔を見せた。
瞳からにじみ出てきた涙を手で拭う。
「うん、お姉ちゃん。私も、お姉ちゃんのこと大好きだよ。だから、早く元気になって、また遊ぼうね。私、いつもお姉ちゃんに助けてもらったから――こんなときでしか、お礼ができないけど――私も、お姉ちゃん、いつもありがとう」
もう我慢しなくてもいいや、とかがみは思った。
涙腺が決壊してぽろぽろと涙が流れる。幸せと涙のカタルシス。
おろおろとするつかさの顔が妙にいじらしくて、「大好き」とだけいった。
―ー38度4分の体が火照っている。
つかさの優しさが暖かくて、ぽかぽかだ。
ありがとう、つかさ。
元気になったら、一緒にでかけようね。
509 :
42-519:2008/04/26(土) 14:29:45 ID:R+HuSaoC
以上でした。あう、ぎりぎり…。
桜藤祭用に書いたものをリメイク。華麗にスルーされたものです。
GJですb
姉のピンチに覚醒つかさイイ!
こういう何かあった時に優しくしてくれる家族や友達がいるのは素晴らしいですね。
自分も昔ふたごスレに同じ様なシチュのSS投下したことあるんだけど
病気でクラクラしてる描写が自分よりかなり上手くて羨ましいw
>>509 治りかけの熱でこっちまでぽかぽかしました。
良いなあ、姉妹愛良いなあ。ぐっじょぶ。
512 :
42-415:2008/04/27(日) 05:14:14 ID:sI//F4UL
埋めネタ行きマース
ある休みの日、パティから掛かってきた電話。
『Oh!ヒヨリ、忙しい所済まないケドBig Newsデス!』
『何?また無茶言うんじゃないでしょうね…』
この一本の電話が、ひよりの人生を左右する事になるとは…今はまだ、誰も知らない。
MeganeMoeSolid
→START
CONTINUE
「で、渡したいものって?」
パティの部屋に招待された私は、しばらく他愛の無い雑談をした後、そう尋ねた。
「Oh!うっかりワスれる所デシタ」
「…メインの用事忘れてどうするっスか」
「ヒヨリがCute過ぎるのがいけないのデス。…ちょっと待ってクダサイ」
そう言ってパティは何かを探し始めた。何か妙な事をいわれた気がするけどあえてスルーしておこう。
暫くするとパティは一つの大きい段ボール箱を持ってきた。
「ヒヨリにこれを渡したかったデス」
「…メガネ?」
パティが箱から取り出したのはメガネとコントローラーのようなもの、そして全身タイツだった…
514 :
42-415:2008/04/27(日) 05:15:56 ID:sI//F4UL
以上です。お楽しみに!
>>514 では、なりきり感想をまねさせていただくとして。(オリジナルの方、勝手に拝借失礼
「ワッフルワッフル! ワッフルワッフル!」
「泉先輩、そろそろ勘弁してほしいっス……」
「田村さん、これからどうなっちゃうのかなあ。でもちょっとわくわくするかも」
「ソレハ次回ノお楽しみでスヨ、ユタカ♪」
「タイツのようなもの……そういえば、前に見たテレビで似たような服を見たような」
「モーションキャプチャーですね。身体の動きを解析することでスポーツや医学に役立てたり、
映画やテレビゲームなどにも使われているんですよ。そもそもモーションキャプチャーには
光学式、機械式、赤外線式などの方式が……」
「ゆきちゃん、すごーい」
「って、本筋からそれてるじゃない。ほらみんな、締めるわよ。せーの」
『ぐっじょぶでしたっ!』
お粗末。
次スレ:
らき☆すたの女の子でエロパロ44
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1209171600/ |ヽ ___
| \__/ /
ゝ、_ノ--←ー‐z‐
/: :|彳 :i: :ハ、:-、ヽ:\
/: :. :i|レ' / |:ハ \l、:ヽ :\
f: |: : : :|| :/_=|' ヽ ィぅ、: :|:.l、ヽ
|: :|: : : :||ィ'う:ヽ ト:::リJV \i
|:. :|: : : :||代::::j 丶' {|: |
. V ヽ: :. :ヘ. ` ′ _ ' ノ: :|
Vト、: :. :ヽ_ ‐'.ィf :ハ |
ヽ、l\ヽィ ̄tヽレ∨ `'
ヽ ハlヽ_.} \
/、 ヾ | //i
fミミ丶、 V/// }
{ `丶ミミ彡' yヽ
/ Y /`^ \ノ