【Wizardry】ウィザードリィのエロパロ7【総合】

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694ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2008/06/29(日) 23:53:03 ID:Zb5sVrPd
「――ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」
手をわきわきさせながら近寄ってくる存在に、僕は半ば恐怖しながら叫んだ。
本能の為せる業か。
いや、本能と言うより、理性だ。
だって、そうだろう。
出合って三分の年下の女の子が、いきなり求婚してきたら、誰だって焦る。
ましてや、妙なオーラを背負って、性交を要求してきたらなおさらだ。
こんな状況、生殖本能が許しても、理性と知性が許さない。
僕は、本家に呼び戻される前は、司教になろうと修道院で修行していたんだ。
今は、転職して忍者になっているけど。
……忍者。
──そうだ、落ち着け、ステファン。
こういう時、忍者は、特に司令官を勤める<上忍>は冷静でなければならない。
まずは観察だ。
僕の目の前にいる<マスター・エル>、不確定名:忍者装束の女の子は、
身長、僕より低い。
体重、僕より軽い。
スピード、僕よりはるかに速い。
戦闘力……おそらくは話にならないくらい強い。
天井から下がっているときには長いかと思った黒髪は、
こうして意外と短めだけど、漆を塗ったように艶やかだ。
色白の顔は幼いけど、すごく整っていて、まるでヒノモト人形のようだ。
もう少ししたら、ものすごい美人になりそう──そうじゃなくて!!
「待て、落ち着いて、マスター・エル、君も指揮官なら、
今の<ペリカン騎士団>の状況を考えたまえ!
そんなこと言っている場合じゃないだろう!?」
「え、何、<ペリカン騎士団>の状況って?」
エルが首をかしげる。
説得の糸口になるだろうか。
僕は勢い込んでことばを続けた。
695ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2008/06/29(日) 23:53:45 ID:Zb5sVrPd
「ぼ、僕らは<ペリカン騎士団>を再建する使命を帯びてるんだよ!?
僕らは今二人だけで、メンバーもそろってないじゃないか!」
そう。
<ペリカン騎士団>の定員は六名。
伝統的に、男女二人の指揮官<マスター>と、四人の<くの一>で構成される。
メンバーが揃わなければ、訓練も、任務もこなせない。
公爵様は、何年、何十年かけても、最高のメンバーを集めろ、とおっしゃったけど、
先代に匹敵するだけの隊員を集めるのに、どれだけの時間と労力がかかるのだろうか。
僕は、昨日の晩、生涯をかけてもと覚悟した使命を思い出した。
そして、その使命を分かち合う相手は──。
「――ああ、それなら大丈夫だよ! ボクの家系、女腹だから!」
と言って、日向で大輪の花が咲くような笑顔を見せた。
「……はい?」
僕は思わず聞き返した。
「あ、女腹ってことば、わからない?
ボクの家、女の子ができやすい家系なんだよ!
僕のお祖母ちゃんも、曾お祖母ちゃんも、お母さんも、本家の先代も、
ここ百年くらい女しか生まれてないんだ。
たぶん、ボクも、女の子しかできないんじゃないかなー。
だから、くの一四人なんて簡単、簡単!!」
「ちょ、ちょっと待って、君はいったい何を言っているんだ?」
正確に言うと、僕はエルが言っていることがわかりかけていたけど、
脳がそれを理解する事を拒否していた。
なのに、エルはにこやかに笑って、詳しく説明しはじめてくれた。
「だからー、ボクが君の赤ちゃん四人産めば、
10年くらいで超一流の<くの一>が揃うってコト!
ボク、9歳でマスターレベルになったから、ボクの娘もそれくらいできっとなれるよ!
これが一番確実に<ペリカン騎士団>を再建する近道だよ!?」
ぱん、と引き締まったお腹を叩いて晴れやかに笑う女の子を見て、
僕は──回れ右をして駆け出した。
696ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2008/06/29(日) 23:54:11 ID:Zb5sVrPd
冗談じゃない。
なんで、たった今出会ったばかりの女の子と結婚しなきゃならないんだ?!
しかも、子作りなんて、こんな歳で父親に?!
いったい、なんでこんなことに?
エレベータの前まで全速力で走る。
とにかく、下に逃げないと。
「だって、ボク、君に一目惚れしちゃったんだもんっ!」
……エレベータの扉の前に、マスターエルが待っていた。
いつ、どうやって追い越しされたのか、見当も付かない。
「君を見た瞬間、ティルトウェイト受けたくらいに直感が「来」ちゃった。
君がボクのお婿さんになる人だって!」
「……」
理解できない相手のことばを受けて、僕は回れ右をした。
廊下を逆戻りする。
たしか、この間増築された棟に階段があったはずだ。
「どこ行くのー? あ、冒険者の宿? いやーん、まだ日が高いよっ!!」
曲がりなりにも忍者の称号を得ている僕の全力疾走に
天井を併走しながら軽々とついてくる上に、
赤く染まった頬に両手を当てて照れる、という芸当を見せるマスターエルに、
僕の精神は、自分でもはっきりわかるくらいに恐慌をきたした。
「ご、ご、ごめんっ!!」
それでも一言謝って、両手で印を結ぶ。
目標は、壁。
「メリトっ!!」
叫び声――というよりほとんど悲鳴、とともに、閃光が飛び散る。
「きゃんっ!!」
低レベルの魔術と法術くらいなら、使える。
不意を討っても、高レベル忍者に通じはしないけど、目くらましくらいにはなる。
階段を飛び降り、街を駆け抜け、「そこ」へ向かう。

なぜ、「そこ」に向かったのかは分からない。
本能の恐怖に突き動かされ、逃げられそうな場所を選んだだけだ。
でなければ、いくら女主人が永久に消え去り、安全になってきたとはいえ、
<メイルシュトロームの大迷宮>に飛び込むような真似はしなかったはずだ。
ましてや、こんなささやき声を耳にしながら。
「君、魔法使えるの!? ますます惚れ直しちゃった!」
身の危険と貞操の危険、どっちがどっちなのか、もうほとんどわからない状態で、
奇声を上げながら、僕は迷宮に飛び込んだ。


                      ここまで
697名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 00:04:29 ID:E2b6D4/X
リアルタイムで拝見!
GJであります!
体育すわりで待ってます。
698名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 00:27:33 ID:Ok9ok7+7
GJ!
ボクっ娘忍者かわいい。まさか5を絡めてくるとは・・・今後の展開が楽しみ
アリソンとミッチェルも元気そうで何より
699名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 09:00:54 ID:Ahc1EDyi
GJでした。
他のメンバー、アラビス、ジャエラ、アリソン、アンがどんな形で登場し仲間になるか楽しみです。
次に投下される続編では忍者の裸体が拝見できるのにも期待してます。
では連載頑張ってください。
700名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 12:29:25 ID:naIBKyp+
GJ!
ワードナ復活に続く第二の連載、がんばってくだされ
しかしこのボクっ娘忍者エルちゃん、この調子だといくら子作りしようと言っ
ても拒み続けるステファンに対して、忍者本来の姿、裸になって誘惑しつつ迫
りそうなのが否定できなくて困る
701名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 22:10:31 ID:dH8qy7O/
>>699
>>700
冒頭で出てこないって書かれた以上、
同様に冒頭で出ますって宣言されない限り出ないんだろうから自重しる
702名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 22:34:26 ID:5uTHI1Qb
まあ、忍者の話なんだから忍者の話が出るのは当然なんだろうが……
作者が出ないちゅーとるんだから

> 次に投下される続編では忍者の裸体が拝見できるのにも期待してます

> ても拒み続けるステファンに対して、忍者本来の姿、裸になって誘惑しつつ迫
> りそうなのが否定できなくて困る

とかわざわざ書く必要はなかろうよ。
703名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 00:11:13 ID:fpa3r/JJ
まあまあ、気持ちはわかるが細かく突っ込むのはここらでやめておくべき。
ここでスルーしないと次にまた自称自治厨を名乗る奴がこの機に便乗して荒らしてくるかもしれない。
それに裸忍者派も長い間忍者のネタを書き込むのを自粛させられてたんだから大目に見てやろうよ。
他にも作者の話に出てくる忍者は全裸(例外としてアイリアンだけ下半身裸)だったからそれも影響しているんじゃないか?
とにかくこれ以上こじらせたくないのでこの話は終わりとして、ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6様、今更ですけどGJでした。
704名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 00:40:24 ID:L/8T9nYm
つーかさ、否定派も肯定派もなんでそこまで拘るのよ。
忍者だろうがそうでなかろうが、エロパロである以上
大抵の奴は裸になるんだからどっちでもいいじゃんw
705名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 00:45:43 ID:lR6Xd+uP
お久しぶりの人多いなぁ・・・GJですお

あと
>>704がそこはかとなくいいことをいった希ガス
706名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 00:58:33 ID:6zHJ19sO
作者サイトまで押しかけて裸忍者裸忍者騒いでる連中。
常識とか良識ってものがないのか、お前らは。
第三者(俺)の目で見ると、もう一般的な感想や要望の域を超えてるぞ、あれは。

つーか、どうしても騒ぎたいんなら、せめてこっちで騒げよ。
個人サイトにまで迷惑かけるな。

と自治厨が申しております。
707名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 01:24:15 ID:fpa3r/JJ
ほら来たよ……自称自治厨。
また余計な荒れの原因を……サイトの問題は作者自身がウザイと思えば削除できるんだし、
それにこのスレとの具体的な関連性を立証できてないんだから、こっちのスレまで持ち込まないでくれ。
というかさ、煽るなって何度も言ってるだろ?
むしろそうなった原因作ったのは自治厨を名乗るアンチ派じゃないのかと思えてくるよ。
だってこのスレで事実上裸忍者の話題を禁止したせいでそのサイトのほうに流れたとも解釈できる。
自治厨が申しております。って言うんならそのまま黙って口を閉じてて事態の鎮静化に尽くしてほしい。
頼むからこれ以上過剰反応するのも、荒れの火種を飛び散らせるのもヤメにしてくれ。
最後に一言、自治厨自重しろ、他サイトの問題を持ち込んでくるな……。
708名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 01:25:17 ID:p9AFuPFP
わかったもういい
こういう埒もあかない議論の繰り返しで廃れ果てたんじゃないか

ここは一つ気分を変えて野グソの話しようぜ
709名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 01:40:22 ID:bIVI/cuu
いやいや、そこはむしろSSの話をしようぜ。このシリーズ好きなんだよ。

たぶん強制結婚&子沢山は新生リルガミンの国策なんだな。
他の騎士団はどうなんだろ。前作のバラの貴婦人たちのエロさは異常だったが。
710名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 01:53:19 ID:fpa3r/JJ
生めよ増やせよ政策なのは確かなはず。
復活した狂王のせいで人的資源へのダメージは大きかっただろうし。
他の騎士団は、女が全くいないのが多いみたいだし見合い結婚がほとんど?
711名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 03:03:13 ID:VlSKqhF/
女ロードの衆人環視の中の羞恥脱糞に期待
712名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 11:04:15 ID:xgBZF81+
>>707
いいな。野糞w

しかし、スカトロ紳士の俺としては>>711のシチュエーションや
初心者PTが調子こいて2Fとか潜っちゃって一気に壊滅→生き残ったおにゃのこ(普段強気)
が命乞いしながら恐怖による失禁脱糞とかが非常にツボにくるんだぜ

我ながら変態だがw
713名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 00:30:30 ID:BwV1uk0s
ほす
714名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 19:49:05 ID:3ZdgfyXb
女ロード&3馬鹿の人また書いてくれないかな
ガチエロよりギャグエロの方が好きな俺は間違えなくムーク
715BENT STAFF:2008/07/07(月) 21:06:25 ID:7/7w+0JL
エロ無し小ネタ

 * * *

 床には幾体ものオークロードの屍が転がっている。
 今しがた激しい戦闘が繰り広げられたばかりだというのに、室内は早くも
静寂を取り戻していた。その戦闘を生き残った四人の冒険者たちには、もはや
緊張の影も見えない。この階層の魔物程度では、彼らのような手練れの相手を
するには不足であった。

「……我々ってロストしたんじゃなかったんですか?」
「世の中には『神秘的な石』というものがあってだな……」

 侍と司教が他愛もない会話を交わす。女君主はというと、彼らからは少し
離れたところで、魔物の死体に向かって何かの作業に没頭していた。どうやら
愛剣にこびり付いた血糊と脂をこそげ落とそうと躍起になっているようだった。 

「侍、司教。ちょっと来い」

 二人に押し殺した声がかかる。
 見れば、先刻から一人宝箱の罠と格闘していた忍者が、こちらを振り返り手招き
をしていた。思わず「なんだ?」と答えそうになって口を噤む。忍者は、作業に
夢中で彼らのやりとりに気付いていない女君主を横目に、口元に人差し指をあてて
『沈黙』の指示を出していたからである。
 玄室に据えつけられた長大な宝箱の蓋は開いており、罠を発動させてしまった
というわけでもなさそうである。二人はいぶかしみながらも忍者の元へ近づき、
宝箱の中を覗きこんだ。

「こ、これは……」「……随分立派ですねえ」

 二人の口から感嘆の囁きが漏れる。
 宝箱の中に入っていたのは、なんとも奇妙な形状の木の棒であった。
 長さはおよそ肘から指先程度。片手で掴むとやや余るほどの太さ。先端に行くほど
徐々に細まるかに見えたが、途中で大きくエラのようなものが張り出し、先端部分は
歪な半球状に膨らんでいる。早い話が男性器の形状――つまりは張り型であった。
 ただそれは、張り型と呼ぶには余りに大きく、太く、硬く、凶悪過ぎた。
 随所に鋲打ったような突起が付いている時点で、もはや正常の男性器を模している
とは言い難い。

「もしかして『ねじれたつえ』か……?」
「確かにねじれている……というか、むしろ反り返っているが……」
「BENT STAFF……この場合むしろ『性的に倒錯した棒』と訳すべきでしょうか?」
716BENT STAFF:2008/07/07(月) 21:06:54 ID:7/7w+0JL
 同じ器官を所有するものとしての「畏れ」にも似た感情が三人の口から漏れる。

「凄い……よな?」
「ああ、凄い『武器』だ」
「こんなものを一体どんな相手に……?」

「そうか?大して威力がありそうにも思えないが」

 突然、三人の後ろから呆れたような声がかかる。

「女君主!?」

 『それ』に見入る余り、もう一人の仲間の接近に気付かなかった三人は、揃って
驚きの声を上げた。

「お前……これを見て何も感じないのかッ!?」

 忍者が悲鳴にも似た叫びを上げた。

「何もって……スタッフというよりメイス……いやクラブかな。
 いずれにせよ鈍器の類だろうが、木製だし大して重量もなさそうだ」

 淡々と答える女君主に三人は小声で囁き交わす。

「お、おい、わかってないようだぞ」
「ええ、初心だ初心だとは思ってましたが……本当にソッチの知識がないんですね」
「まさかアレの形がわからんとはな……って、いつもモロ出しの俺の立場は?」
「ま、貴方のは少し……その、被ってますからね。大丈夫、私もそうです」

「? 何を小声で話してるんだ? 感じが悪いぞ」

 女君主は三人の会話にさして興味もなさそうに、宝箱の中から『それ』を掴み出した。

「あっ! それは呪わ……ムグ」

 咄嗟に警告を発しようとした司教の口を侍が塞ぐ。

「……れてはいないから安心して触れていいそうだ」

 忍者が何食わぬ顔で後を継いだ。
 女君主は腑に落ちなそうな表情をしつつ、『それ』を利き手に握って軽く素振りをする。

「……持ちにくい」
「もっと上を持つんじゃないか?」
「こうか?」
「いや、すまん。もっと下だ」
「こう?」
「違う違う。もっと……」

 忍者に言われるままに、女君主は持ち手を上下させる。武骨な小手に包まれた女君主の
右手が、『それ』の竿にあたる部分をゆるくしごくような恰好になった。忍者は恍惚の
表情を浮かべつつその様を眺める。
717BENT STAFF:2008/07/07(月) 21:07:16 ID:7/7w+0JL
 一方で、部屋の隅まで引っ張られていった司教は侍に問うた。

「いいんですか? 呪われちゃいますよ、あれ」
「あれに呪われたら、どうなると思う?」
「そりゃ、あれが手放せなくなるんでしょう……え」

 自分の口にした言葉の意味に気付いた司教がそっと侍の顔を伺う。

「まあ、形から察してもその手の呪いがかけられているんだろうな」
「な、なんて恐ろしいことを考える人たちだ……」
「反対か?」

 ごくり。我知らず司教の喉が鳴った。
 内心の迷いが表れて司教の瞳が宙をさまよう。ロミルワの逆光で侍の表情は窺い知れ
なかったが、彼もまた、同じような迷いの表情を浮かべていたのかもしれなかった。
 一瞬の沈黙が二人の間に落ちる。だが、結局司教も自分の好奇心を抑えられなかった。

「ひ、一晩だけ……様子を見てみましょうか……」

 * * *

 結局、問題の品物は女君主の背嚢に突っ込まれたままでその日の探索は終わった。
 司教が体調不良を訴えたことによって宝物の鑑定は翌日に持ち越され、獲得した戦利品
はそれぞれが一晩保管することとなった。
 夜半。馬小屋で雑魚寝をしていた侍、忍者、司教の三人は、ほとんど同時に目を覚ました。
 そして夜陰に乗じて冒険者の宿の廊下を忍び歩く。
 目的地はロイヤル・スイート・ルーム。

「……あれを使っていると思うか? 本来の用途で」
「武器か何かだと思ってるみたいだったがな」
「あの杖の呪いの力が強ければ……そういう気分になるはずです」

 期待と罪悪感のせめぎ合う気持ちを誤魔化すように言葉を交わしながら、彼らはとある
一室の前で立ち止まった。そここそは彼らにとって絶対不可侵の領域。女君主の寝室で
あった。普段なら、ロイヤル・スイート・ルームのある階で目撃されただけで惨殺は免れない。
例えば着替えや湯浴みを覗くためだけなら余りに大きすぎる代償である。だから、近寄らない。
しかし、今夜は誘惑が大きすぎた。
 三人は瀟洒な作りの木扉に張り付くと、そっと耳を当てる。

(……ん……ああ……)

 室内からはか細く、妙に艶めいた声が漏れてきた。三人は顔を見合わせる。

(ふ、太くて……硬い……)

(く!……手が……手が、止まらな、い)

(!?……うっ!!)

(はあ、はあ……まだ、おさまらない……もっと)

 息を潜め、耳をそばだてて一部始終を聞き取る。
 もはや室内で何が行われているかは明らかだった。
 『ねじれたつえ』と戯れる女君主の痴態が脳裏に浮かび、三人に残された僅かな理性を
容赦なく削り取る。想像以上の事態に彼らの興奮が頂点に達したときである。
718BENT STAFF:2008/07/07(月) 21:07:46 ID:7/7w+0JL
 忍者が呟いた。

「今ならやれるんじゃね?」

 その言葉の意味が場に浸透するまでに裕に一呼吸の間があった。

「そ、それだけはダメだ!まずい!やりすぎだ!」
「流石にその一線だけは!パーティーを解散されてしまいますよ!」
「ば、馬鹿、俺も言ってみただけだよッ!」

「……と、とにかく」

 場を収拾したのは侍だった。

「今回は少し、やりすぎたかもわからん。今のあれは聞かなかったことにして……
 この場は大人しく馬小屋に戻って、明日ボルタックに連れて行こう」
「そ、そうだな」
「ええ、そうしましょう」

 侍の提案に、二人が賛同する。
 だが、誰も動き出そうとはしなかった。
 一瞬、三人の間に沈黙が落ちる。

「……おい、この場は大人しく馬小屋に戻るんじゃなかったのかッ?」
「も、もちろんですよ。お先にどうぞ」
「ふ、二人が先に行けば……その、なんだ。俺も後から行く。心配だからな」
「な……お前こそその手はなんだッ!」
「わわわ、わ、ダメです! ダメですよっ!」
「ちょ、や、まずい、二人ともやめ……!」

 三つの手が同時に扉の取っ手に伸び、六本の脚がもつれあって同時にバランスを崩した。
 繊細な造りのロイヤルスイートの扉では、三人の大の男たちの体重は支えられない。
 木材の軋む音と共に扉が外れ、三人はもんどりうって室内に雪崩れ込んだ。
719BENT STAFF:2008/07/07(月) 21:08:09 ID:7/7w+0JL
「誰だ!」

 女君主の厳しい誰何の声が飛ぶ。

「すまん!出来心だ!すぐ出て行く!」
「な、何も聞いてません!見てません!」
「俺は止めようと……ん?」

 折り重なったまま慌てて三者三様の言い訳を口にする中、忍者の鋭敏な嗅覚が嗅ぎ慣れた
『におい』を感じ取る。それはむっと鼻をつくような、栗の花のような、要するに男なら誰でも
嗅いだ覚えのある自分の子種のにおいであった。

「お前たちか……いいところに来たな」

 呟きながら女君主がゆらりと立ち上がった。焦点を結んでいない両の瞳からは、『ねじれた
つえ』の呪いの影響下にあることが明らかに見て取れる。見慣れぬ部屋着姿は不思議と乱れて
おらず、麻のズボンをしっかりと履いているように見える。
 だが異様なのは、本来女君主には用がないはずのズボンの股間の合わせから、凶悪な何かが
顔を出している点であった。胸のあたりまで隆々と反り返ったそれに三人の目が釘付けになる。

「なんたる一物……」
「いや、『ねじれたつえ』ですよ、あれ」
「……くっついてやがる……」

 女君主は自分の股間から生えた『それ』――木製のはずが、なぜが脈打ち、先端からは
さきほどまでの自慰の名残を吹き上げているようにも見える――をゆっくりとしごきながら、
倒れたまま腰を抜かしている三人の前で仁王立ちになった。

「私の……<サックス>の……昂ぶりがおさまらないんだ」

「自分で装備しちゃったんですね……」
「ト、トレボー化してないか?」
「おい、なんか滾った目でこっち見てるぞ!」

「ま た や っ て く れ た な。
 ……なんでもいいから突っ込みたくてたまらない気分だ。
 責任は、取ってもらうぞ?」

「まずい!逃げろ!」

 侍が叫ぶ。が、自身も逃げ出そうとしたところで、扉の残骸に足がもつれてしまう。
 逃げ遅れた侍に忍者と司教が手を伸ばすが、時既に遅し。女君主の手が侍の足首をむんずと
捕まえていた。

「ま……待て……そんな馬鹿デカいもの……入るわけがな」
「知ったことかっ!」

「アッーーー」

 ・
 ・
 ・
 ・

* さむらい にんじゃ しきょう は ぢ になりました *

(END)
720BENT STAFF:2008/07/07(月) 21:08:26 ID:7/7w+0JL
・無事に帰還された保管庫の管理人様へ
GARB of LORDS、BROKEN Bikini-PLATE、このBENT STAFFと一応続き物なので
6-830のところにまとめて保管してもらえるとありがたいです。
その都度の申告なしでお手数をおかけしてしまい本当にすみません。

・ゲーパロ専用◆0q9CaywhJ6様へ
勝手ながら少しだけパロディに使用させていただきました。感謝。
721名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 21:09:44 ID:4FVBeC/w
またこのいつもの4人かw
リアルタイムで読めたぜごっそうさんw
722名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 21:42:20 ID:lcEec17V
これはなんというトレボー・サックスww
723名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 22:02:49 ID:je0tXubK
ベントスタッフとは洒落が利いてるな。
724名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 23:37:24 ID:fiD3aAGh
725名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:20:17 ID:AeFm2NJr
相変わらず馬鹿野郎どもだぜぇw
726名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 05:04:53 ID:8cRdGrgy
フタナリ女君主を
「解呪のためにはこの聖なるオナホで24時間以内に100回ヌかないとダメ」
と騙して「気持ちいいけど…100回はムリよぉ…」とアヘ顔で一日中オナニーしながら
グロッキーになってるとこが見たい(;´Д`)ハァハァ
727名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 05:05:15 ID:plwuEOPd
gggj!
728名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 21:20:25 ID:kPbwZvj9
gj.

こうなると極上の鎧に妙な期待をしてしまう。
だって *極上*だぜ?
729保管庫:2008/07/11(金) 13:01:46 ID:vYE56LmS
>>720
「帰って参りました…恥ずかしながら、生き永らえて帰って参りました!」
…ってネタは程々にして、保管庫管理を再開します。お待たせしました。
ご指定の3作品とも、6-830様のところにまとめさせて頂きました。
後から申告頂いても全然支障ありません、お気遣いありがとうございます。
730名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 15:44:33 ID:4ZLoD3GM
otu
731名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 21:38:26 ID:kR5Zf381
>>729
いつもいつも乙です
732名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 21:07:44 ID:uWUXUj5Q
一本書いたが、残り容量におさまんなそうだ。
埋まってしまったら、自分で新スレ立てて続き投下でいいのかな。
グロありで人を選ぶものだから、正直新スレの頭に来るのは気が引けるんだが。
733名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 22:21:25 ID:5oe2NF+x
あんまり酷いグロは論争を呼びそうだから、そういう部分はうまくごまかしたほうがよさそう。
734名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 22:34:02 ID:P6afNKU3
グロ表現のある部分(レス番)にだけ、名前欄に「ここだけグロ」
って書けば良くね?
735名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 22:46:31 ID:uWUXUj5Q
おk。一応一通り見返して、「あんまり酷い」ってことはないかと思ったが
自己判断はアテにならないので初めに注意書き+>>734も採用で。

NG要素はグロ描写・陵辱。作品自体はIDで回避を。
特にグロ部分には「※グロ」をタイトル欄に加えるので、ちょっと見てみたいけど
グロ部分は勘弁って場合は↑で回避を。

自分なりにウィズへの愛は込めたつもり。ので、不快に思う人もスルーでお願いします。

たぶんスレ埋まるので新スレは俺が立てる。時間かかるかも。では↓
736* みすぼらしいおとこ *:2008/07/14(月) 22:47:33 ID:uWUXUj5Q
 木の扉が閉まる重い音が響き、やつらが玄室を後にしたのを確認してからも、
俺と相棒はしばらくは暗闇の中でじっと息を潜めていた。あの豚面の化物どもが
何かの気まぐれで戻ってきたりしたら、丸腰の俺たちはろくな抵抗もできずに
嬲り殺されてしまうだろう。だから安全が確信できるまで身を隠していたのだ。
 利口な判断だ。大丈夫。決して、目の前で繰り広げられた惨劇に腰を抜かして
いたわけではない。

「いくぜ」
 俺は自分自身に言い聞かせるように呟く。隣でがたがたと震えていた相棒は
その一言でようやく呪縛を解かれたように、のそりと顔を上げた。
 玄室の片隅の暗闇から、不確かな灯りに照らされた中央へと、俺たちは一歩を
踏み出した。ただそれだけで、鼻腔を突く悪臭――むせ返るような血の臭いと、
あの不潔な化物どものオスの臭い――が一気に濃度を増したように感じられる。
「……こいつは、ひでえな」
 部屋の中央には六人の冒険者の骸が転がっている。ついさっきまで生きていた。
生きて、凶悪なオークどもの群れに、おそらくは生まれて初めて握ったであろう
剣を振るっていた。
 まず目に飛び込んだのは顔面を叩き潰されたドワーフの戦士の死体だ。一部
始終を見ていた俺には、このドワーフの断末魔の叫びまで思い出すことができる。
初手で正面から一撃、朦朧としたところで、後頭部にさらに一撃。踏み潰された
ヒキガエルのような呻きを上げたかと思うと、前のめりに倒れ、それで終わり
だった。
「……うっ、ぷ、げえええええ」
 別の死体を覗き込んでいた相棒のマウザーが、うずくまって胃の物を吐き出し
始めた。マウザーの前にあるのは、鎖帷子を買う金をケチったせいで腸を撒き
散らすハメになった僧侶の死体だった。
 軟弱な奴だ。内心毒づいて虚勢を張ろうとするが、俺自身どうしても胃のあたり
に居座る不快感を抑えられなかった。

 俺は腹を手で押さえながら、他とは少し離れた場所に転がる、最も無惨な死体
へと近づく。
 この戦士は、最後まで一人生き残って奮戦していた。だが、いかんせん多勢に
無勢。三匹ものオークに囲まれて、脇腹を錆びた短剣で貫かれた。そのとき、
戦士の兜の奥から漏れ出たのは、かすれた、芯のある、しかし間違いなく、女の
呻き声だった。
 驚いたのは息を潜めていた俺たちだけではなかった。目の前の戦士が女だと
気付いたときの、あのオークどもの表情。知性など感じられない豚面が、あの
瞬間、確かに笑いを浮かべていた。下衆な期待を込めて、醜悪な面を更に醜く
歪めていたのだ。

 後は、凄惨、の一言に尽きる。
 崩れ落ちる女戦士に、豚面どもが一斉に襲い掛かる。新品の胸当てが、厚手の
鎧下が、容赦なく引き剥がされる。鎧の下に隠されていた大ぶりの胸がさらけ
出され、女戦士が絶望の叫びを上げる。恐慌に手足をばたつかせようとするが、
このときばかりは統率された一団と化したオークどもが、ある者は両手を踏み、
ある者は両脚を押さえつけ、身じろぎ一つままならない。そうしている内に、
最も大柄の一匹が女戦士の股に割り入った。
 そいつが腰を突き上げる。女戦士の口から絶叫が迸る。何が可笑しいのか、
群がるオークどもが「オ、オ、オ」と不快な笑い声を上げて囃し立てる。ほんの
二、三突きほどで最初の一匹が達すると、待ち構えていた次の者が突き入れ、
そして不浄の液体を女戦士の体内に吐き出す。次から次へ、入れ替わり立ち代り。
豚面どもはこぞって早漏で、二刺し三刺しで必ず達する。だが、底なしだった。
おそらくは奴らの中の厳格なルールに則って定められた順番通り、何周でも何周
でも繰り返す。女戦士が呻きすら上げなくなり、時折、力なく伸ばされた生足が
断続的に痙攣するだけになっても、まるで意に介さず繰り返す。
 女戦士が豚どもの腹の下で事切れ、何の反応も返さなくなった頃には、膣内から
溢れ出た豚どもの種と女戦士の体液で、石床にちょっとした水溜りができていた。
737* みすぼらしいおとこ *:2008/07/14(月) 22:48:19 ID:uWUXUj5Q
いきなりゴメン。上は「※グロ」
738* みすぼらしいおとこ * ※グロ:2008/07/14(月) 22:49:02 ID:uWUXUj5Q
 目の前の女戦士の死体には、その悪夢のような陵辱劇の痕跡がはっきりと残って
いた。
 肉付きの良い裸体は無惨にも剥き出しにされ、僅かな間にぼろ布のようになって
しまった服の残骸が、辛うじて四肢にまとわりついているばかり。黄色く腐臭を
放つ豚どもの精液が体中を覆う。ところどころの痣や浅い噛み痕の他は、目だった
外傷は脇腹の創傷だけだった。虚空を見つめる顔には目を背けたくなるような
表情が浮かんでいたが、それでもその女戦士が器量良しだったのは窺い知れる。
険のある面立ちで愛嬌溢れるというわけにはいかないが、戦士らしく散切りに
切られた短髪はよく似合っていた。
 どんな理由があって、あたら若い娘がこの地下迷宮に潜ったのかはわからない。
もう、知る術もない。だが、地下の闇に潜む死の運命は、老若も、美醜も、考慮
してはくれないのだ。

 助けるという選択肢は初めからなかった。
 それでも、惨劇の一部始終を暗闇から食い入るように見つめてしまったのはなぜ
だろう。本当にこいつらを憐れむなら、黙って目を背けるという選択肢はなかった
のか。
 胃のあたりが酷く重い。だが同時に、俺の股間は硬く張り詰めていた。初めて
目にした『全滅』の様子は、余りにも衝撃的過ぎて、俺には、自分がそれを目の
当たりにして、一体何を感じたのかすら、よくわかってはいなかった。

「……グレイ、グレイよう。ダメだ。あいつら根こそぎ持って行きやがった」
 マウザーの声に、ようやく現実に引き戻される。
 そうだ。俺たちには目的がある。
 俺は女戦士や、その他の死体をもう一度一瞥する。剣や盾の類は豚どもが戦利品
として持ち去ってしまっていた。鎧はどれも破損がひどく、売り物になりそうにない。
「こっちもダメだ」
 俺は言葉少なにマウザーに答えた。
 俺たちの目的は、つまり冒険者の死体を漁ることだ。まだ使える物、金目の物
ならなんでもいい。いずれ死者にはもう用のないものだから。自分にそう言い
聞かせる。死者の装備を漁るなんて卑しい真似をしちゃあいるが、自分はあの豚面
どもとは違う。まだ迷宮の闇の『こちら側』の住人のはずだ。俺だって、できれば
こんなことはしたくないのだ。ただ、もう、なりふりを構っていられなかった。

 * * *

「悪く思わないでね」

 ホビットの少女に連れて来られた裏路地の奥まった一角。待ち受けていたのは
五人の武装した男たちだった。どういうことかと尋ねようとする顔に、無言の拳が
飛んでくれば、どんな間抜けでも事態を悟らないわけにはいかない。俺は自分の
迂闊さを呪った。
 一際体格の良い男に金属靴で腹を蹴られ、俺は石畳にうずくまった。
 痛い。顔中からどっと嫌な汗が吹き出る。ついでに涙も出た。痛くて泣くなんて
何年ぶりか。これから荒事で身を立てていこうという男が情けないことといったら
ない。だがそうしてる間も男たちは容赦をしない。複数の靴底が俺の背中を踏み
つける。
 俺は救いの手を探す。苦痛に歪んだ顔を持ち上げて、あたりを見回す。男たちの
他に人影はない。衛兵はこんなところまで来ない。目の前には、俺をはめたホビット
の少女が立つ。
 小さな体躯に相応の、ひどくあどけない造りの顔。だがその辺の人間のガキとは
違い、くっきりとした目鼻立ちには妙に色気が漂う。非の打ち所のない美少女
といった風貌に騙された。ホビットだけは、見た目で判断してはいけないという
のに。
739* みすぼらしいおとこ *:2008/07/14(月) 22:49:36 ID:uWUXUj5Q
 血迷った俺は縋る様な目で少女を見上げた。無言で殴りかかってきた男たちと
比べれば、ついさっきまで親しげに会話を交わしたこの少女の方が、まだしも
許しを請う相手としてマシな気がしたのだ。
「た……た、す、け、て、く……れ」
 自尊心をかなぐり捨てて、同情を引けるようになるべく憐れっぽく言葉を絞り
出す。
「んー……」
 ホビットの少女は小さく首をかしげた。額にかかった亜麻色の短い癖毛が、
それにつられてぴょこんと跳ねる。わざとらしい逡巡の演技。薔薇色の唇が開く。

「だ、め」

 一音一音を区切るように、きっぱりと言い放つ。そしてひどく酷薄な笑みを
浮かべた。
「あはは、ごめんねえ? あたしらの手持ちだけじゃ、前衛の鎧揃えるのに、
ちょおっと足りなくてさあ。ま、命までは取らないから。運がなかったと思って
諦めてよ」
 そう言ってころころと笑う少女。その笑い声と同時に、もたげた頭の側面を重い
一撃が襲う。ごすん。嫌な音がする。首がもげるのではないかというくらい勢い
よく、俺の頭が反対方向にふっ飛ぶ。そこで意識が途絶えた。

 * * *

 一攫千金を夢見てトレボーの城塞都市にやってきた。
 意気揚々と訓練場に向かい登録を済ませる。それだけで冒険者の仲間入りをした
気分でいた。職業は盗賊。盗賊ならば戦わなくても済むと聞いたからだ。罠を
外したことも、錠前を開けたこともなかったが、まあ、手先の器用さには多少
自信はあった。
 そして、仲間を募ろうと酒場に来たところで、目の醒めるような美少女に声を
かけられたのである。

「あたしらのパーティーに入らない?」

 新品の革鎧に身を包んだホビットの少女。俺と同じく、城塞都市に来たての
新参者に見える。まあ最初の仲間だ。多くは望むまい。これも何かの縁という
思いと……多少の下心が、なかったといったら嘘になる。
 馬鹿だった。どう見ても盗賊に見える少女が、同じ盗賊の俺に声をかけてきた
時点でおかしいと気付くべきだったのだ。盗賊が二人も必要なパーティーなんて
あるわけがない。
 路地裏に連れて行かれ、少女の仲間たちにボロ雑巾のようにされ、意識を取り
戻した時には身包み剥がされていた。武器や防具を揃え、あるいは仲間を募るのに
使うべき虎の子の金貨が、一枚残らず奪い去られていた。

 屈辱のあまり悔し涙が零れた。
 絶望的な気分。腕っ節と頭の回転だけが物を言う冒険者の世界だ。騙された
間抜けが悪い。だが、あいつらは、どう見ても俺と同じ、まだ一度も地下に潜った
こともないような新参者だった。ただ俺よりほんの少しだけ早くこの街に辿り
着き、ほんの少しだけ先にこの街のルールを学んだに過ぎないではないか。そんな
奴らにカモにされた。顔の形が変わるほど殴られ、貴重な金貨を奪われたのである。
 せめて一対一だったら。あいつらへのどす黒い怒りが湧き上がる。だが、ここで
躍起になってあいつらを探し出したところで、徒党を組んで武器を持った奴ら
相手に丸腰の俺一人では、返り討ちにされるのが関の山だ。
740* みすぼらしいおとこ *:2008/07/14(月) 22:50:01 ID:uWUXUj5Q
 そんなことよりもこれからどうするかを考えなくてはならない。
 無一文で、どうやって装備を揃える?どうやって仲間を募る?それ以前に、
どうやってこの城塞都市で生きていく?
 節々が痛む重い体を引き摺って、俺はとにかくも冒険者の宿に転がり込んだ。
登録を済ませた冒険者であることを証明する割符を見せて、馬小屋へと向かう。
今後どうするにせよ、こんなざまでは何もできはしない。痛みが引くまではどこか
で体を休めなければならなかった。
 「割符があれば馬小屋にだけは無料で泊まれる」。訓練場でそれを聞いたときは、
馬小屋なんて誰が使うものかと思ったが、無一文の今となっては本当にありがた
かった。

 馬など一頭もいはしないのに、畜舎に特有の不衛生な臭いが充満したそこは、
お世辞にも快適とは言いがたかったが、今は贅沢は言えなかった。
 日も高い頃合であった。馬小屋なんて、他には野宿しかないような輩が、夜露を
しのぐためだけに利用する施設だ。まだ人はいるまいと思っていた。ところが、
何人かの先客が寝藁の上を占領していた。皆一様に陰鬱な表情を浮かべ、途方に
暮れている。その惨めな様子を見て、そいつらがどういう境遇の人間か、俺には
おおよそ察しがついた。つまり、俺同様『追い剥ぎ』にあった間抜けどもという
わけだろう。
 俺は比較的新しい藁が盛られた一角に向かい、どうにか寝床を確保する。
 すると、すぐ近くに腰を下ろしていた男が近寄ってきた。
「へ、へへへ……あ、あんたも『追い剥ぎ』にあったのかい?」
 話しかけてきたのは頬に生々しい蒼痣を残した小男だった。
 卑屈な態度で馴れ馴れしい笑みを向けてくる。それがマウザーとの出会いだった。

 * * *

 意気揚々と登録したところで同じ冒険者に襲われ、一文無し。どんな人間でも、
途方に暮れるところだ。なんの解決にならなくてもいいから、誰かと話をしたい。
同病相哀れむわけではないが、同じ目線で話せる人間が欲しい。情けないが、その
気持ちは俺にも痛いほどわかった。
 だが、擦り寄ってくるマウザーに応じたのは、何も傷を舐めあうためだけではない。
 無一文のこの状況を脱し、冒険者として再起を図るための腹案が、俺にはあった。
そのためにも仲間を集める必要があったのである。俺はまだ、冒険者になることを
諦めてはいなかった。
 丸腰で地下に潜ろうというわけではない。武装は絶対に必要だ。だから、金が
ないならどこかから奪い取るしかない。そう、『奪い取る』のだ。あのホビット娘が
俺にしたように、俺も俺より遅れてくる新参連中をカモにして『追い剥ぎ』をする。
強者が弱者から奪うのがこの街の法だというのなら、俺もまたそのルールに従って、
奪われたものの埋め合わせをするだけの話だ。幸い、この城塞都市には食い詰めた
若者がいくらでも流れ込んでくる。俺自身がそうだったように。
 そのためには仲間を集める必要がある。それも、俺と同じ境遇の人間が望ましい。
無一文の人間が他に相手にされるとは思えないというのもあるが、一度奪われた人間は
他人から奪うことも躊躇しないだろうと思えたからだ。

 しかし、俺の提案にマウザーはひどく曖昧な顔を返すだけだった。
「俺には冒険者稼業は向いてなかったってことさ。……明日、訓練場に言って登録を
取消してもらおうと思ってるんだ」
 登録を取消せば、保証金を払い戻してもらえる。それを旅銀の足しにして、
すごすごと故郷に逃げ帰るつもりなのだという。
741* みすぼらしいおとこ *:2008/07/14(月) 22:50:30 ID:uWUXUj5Q
 保証金とは、俺たちのような素性の不確かな人間が『冒険者』としてこの街に
受け入れてもらうために訓練場に供託する、ある程度まとまった額の金のことだ。
 その冒険者が何か問題を起こした際に生じる費用、刃傷沙汰で市民を傷つけた場合の
見舞金や、市の財産に損害を与えた場合の補償金、その他罰金はすべてこの保証金から
思弁される。
 冒険者などといっても、要は身元不詳の流れ者、荒くれ者だ。いつなんどき問題を
起こすか知れない。そして、問題が起こった時に責任を取らせようとしても、大抵の
冒険者は満足な資力を持たない。そこで事前にある程度の金を預かっておけば、市は
冒険者の尻拭いをする費用の引当てを確保することができるし、そもそも冒険者も
保証金を没収されぬよう迂闊な行為は慎むから、多少の予防効果が期待できるという
わけだ。
 もちろん問題を起こさない限りはこの保証金は預けられた金に過ぎないから、
登録を抹消し市を立ち去る場合には丸々還付される。剣も鎧も揃えねばならぬ中で、
少なからず無理をして工面した貴重な金だった。

 登録を取消せば、確かに今の無一文の状態は解消される。だが、もともと自分の
金であるものを取り戻すに過ぎない。しかも、それは同時に『冒険者』たる資格を
失うということであって、この城塞都市から所払いされるということでもある。
 俺はなんとかマウザーの気を変えようとあれこれ説得を試みた。そんな負け犬の
ような選択をしてどうなる? そもそも他所で生きる術を失ったから、俺たちは
こうしてこの城塞都市に来たのではなかったのか。なんとか地下に潜って財宝を
手にする以外に、道は残されていないはずではないのか。矢継ぎ早にそんな言葉を
投げかけた。
 別にマウザーを『追い剥ぎ』仲間にすることにこだわったわけではない。こいつが
駄目なら他をあたればいいだけの話だ。だだ、ここでマウザーを引き止められ
なければ、「奪われたままでこの街を去る」という選択肢を認めることになる気が
したのだ。
 だが、マウザーは頑なだった。この街の手荒い洗礼を受けて、すっかり萎縮して
しまっていたようだった。結局、俺はマウザーを説得することもできず、傷の痛みに
耐えながら不潔な藁の上でまどろみに落ちるしかなかった。

 翌朝、俺とマウザーは訓練場へと向かった。俺まで同行したのは、怯えきった
マウザーに一緒に来てくれるよう頼まれたからでもあるが、この優柔不断な男が
土壇場で翻意することに期待したからでもある。
 しかし、訓練場では更に容赦のない現実が俺たちを待ち受けていた。
 俺たちの冒険者登録は、既に抹消されていたのである。当然、保証金も残って
いなかった。
 登録したばかりの昨日の今日で、勝手に登録が消されているなんて馬鹿げた話だ。
俺もマウザーも気色を露にして役人に食ってかかった。
 だが、役人はこちらが何を言っても、木で鼻をくくったような対応で取り合わない。
悪意すら感じるその対応に、俺の頭に一つの推測が浮かんだ。つまり、こいつもあの
ホビット娘たちとつるんでやがるのだ。身包みを剥がれ、無一文で、仲間もいない。
そんな鼻糞みたいな新参者の登録を無断で抹消する。そして、保証金は話を持ちかけた
冒険者と不正に関わった役人で山分けにする。歯向かう力のない奴からは徹底して
搾り取る。わかり易い構図だ。はめられる奴が悪い。俺だってそう考えただろう。
自分がその当事者でさえなければ。
 身包みを剥がされた上、存在まで消される。そんな無法が許されるものか。いや、
許される。ここはそういう街で、俺たちは冒険者だからだ。
 怒りよりも、足下を崩されたような不安感が先に立った。金は無い。保証金すら
返してもらえない。それどころか、今日からはこの街にいることすら許されない。
冒険者でないなら、あの馬糞臭い馬小屋に泊まることすらできないのだ。冒険者では
ないただの流れ者。衛兵に見つかれば槍で追われる立場。おめおめとこの街を去ろう
にも、旅銀すらなければそれも叶わない。それこそ、街外れで物乞いでもして生きて
いくしかない状況だった。
742* みすぼらしいおとこ *:2008/07/14(月) 22:50:57 ID:uWUXUj5Q
 いや、一箇所だけある。
 最低限の風雨がしのげて、どんな境遇の人間でも受け入れを拒まない場所が。
 馬小屋よりも不潔だが、金も資格もいらない。求められる代価は命の危険だけ。
街外れにぽっかりと穴を開けるワードナの地下迷宮。どこへも行けず、どうすることも
できず、俺とマウザーは半ば追い立てられるようにして、地下迷宮へ下りる階段を
踏みしめるはめになったのだった。

 * * *

「ひっ! ……グ、グレイよう。今なんか音がしなかったか?」

 後ろを歩くマウザーが情けない悲鳴をあげた。
 耳を澄ますと、遥か彼方で何かが這いずり回る音が聞こえた。
 俺は密かに舌打ちする。これくらい音が遠ければ当面危険はないはずだった。何か
物音がしただけでいちいちびくついていては、魑魅魍魎の跋扈するこの地下迷宮の
探索など覚束ない。……まったく、うだつのあがらない奴だ。

 地下迷宮に降り立った当初は、俺も何かささやかな変化――小さな物音や、影の
ゆらめきを知覚する度に肝を冷やしていた。ほんの3フィート先も見通せないような
重たい暗闇の中に、恐ろしい魔物が潜んでじっとこちらを伺っているのではないか……
そんな根拠のない恐怖を拭いきれなかった。
 だが、現実の化物との際どい接触を繰り返す中で、一つだけ学んだことがある。
確かに迷宮の闇は恐るべき襲撃者の姿を隠してしまうが、同時に、魔物たちからも、
獲物である俺たちの姿を覆い隠してくれる。直ぐ側で魔物の荒い息遣いを聞いても、
慌てず騒がずにじっと息を潜めさえすれば、上手くやり過ごすことができるのだ。
待ち伏せの危険がある玄室の扉を開ける時だけ、最大限の注意を払えばそれで足りる。
万一、魔物と遭遇してしまっても……こちらはハナから戦闘するつもりはないの
だから、一目散に逃げ出せばよいのだ。その心がけさえ徹底していれば、地下迷宮も
存外危険な場所ではない。
 泥水をすすり、闇に紛れるようにして地下をさまよい続けてもうどれくらい時間が
経過しただろう。迷宮の汚わいにもすっかり慣れた。本能的な恐怖を喚起する闇。
何かが腐ったようなすえた臭い。地虫の這い回る不快な音。五感を刺激するこうした
不快で不潔な要素にも、それが俺たちの気配を消し去ってくれているのだと思えば、
何か奇妙な安らぎさえ感じる。

 もっとも、出来うる限り早くこの状況を抜け出して、陽光の射すあの城塞都市の
街路に戻りたいという思いは、変わらない。当然だ。別にこの闇の世界の住人として
適応するために地下迷宮を徘徊しているわけではない。俺たちには目的があった。

 冒険者ではなくなり、街に滞在する資格を失った俺たちには、『追い剥ぎ』すら
ままならない。少なくとももう一度登録するための保証金の額くらいは用立てねば
なるまい。そのために思いついたのが、迷宮で力尽きた死者の装備を漁るということ
だった。
 この街に集まってくる『冒険者』の大半は、迷宮の探索の専門家でもなんでもない、
ついこの間まで剣の握り方も知らなかったようなただの食い詰め者に過ぎない。
 だから、武装を整えてパーティーを組み、意気揚々と地下に降り立って、ほんの
入り口近くでの最初の戦闘で命を落とす者も少なくないと聞く。そういう連中の死体
からうまく金目のものを回収することができれば、宿に泊まる金すらない今の状況を
脱却できるのではないか。そう、考えたのである。
743* みすぼらしいおとこ *
 なんともぞっとしない思い付きではある。
 実際、迷宮をうろつく危険を差し引いても、無惨な冒険者の腐乱しかかった死体を
探ると言うのは、それだけで十分腰が引ける――胸がむかつくような行為だった。
頭をかち割られた死体を見ては明日の自分を重ね、放置されてバブリースライムの
餌となった成れの果てに出くわしては吐き気を催す。だが、人間どんなことにも慣れ
てしまえるものだ。
 最初に目の当たりにしたあの全滅の光景――豚面どもに輪姦される女戦士。あれが
強烈過ぎたのかもしれない。あれで、自分の中のある感覚が麻痺してしまった気が
する。
 迷宮の暗がりで肉の腐った臭いを嗅ぎ分けては、そのもとに近づいて金品を漁る。
そこにはもう躊躇や嫌悪感はない。まるで、そうすることを生業としてこの迷宮の
闇に湧いた、不潔で醜悪な生き物に変わり果ててしまったような錯覚さえ感じる……。

 俺はまだびくついているマウザーをみやった。
 暗がりの中でははっきりと相棒の顔を見分けることはできないが、蜘蛛の巣や
粘菌や腐汁にまみれてひどくみすぼらしい有様だった。きっと俺も似たような状況に
違いない。こんな姿を他の冒険者に見られたら、魔物か何かと勘違いされていきなり
切りかかられても文句は言えない。
 なんてざまだ。醜い。薄汚い。みすぼらしい。あのホビット女さえいなければ、
こんなことにはならなかったというのに。少し物思いにふけると、必ずここに行き
着く。悔恨と憎悪、怒り。……よくないな。こんな不健全なことをしているせいで、
考えまで後ろ向きになっちまう。

 頭を振って、不快な感情を振り払う。
 そこへ、新しい物音が響いてきた。
 金属と金属が打ち合う甲高い音。明らかな戦闘の気配だった。しかも、そう遠く
ない。俺はマウザーを顔を見合わせた。
 足音を忍ばせ、音の源へ向けて移動を開始する。目的地に近づいているという
確信がいまいち持てないのがもどかしい。そうこうしている内に、激しい剣戟の
音は鳴り止んでしまった。
 俺たちははやる気持ちを抑えながら、闇から闇へと忍び寄る。
 すると、何者かが近づいてくる気配がした。
 豚面や犬頭のようなけたたましい音を立てていなかったから、ぎりぎりまで気付け
なかった。俺はマウザーの腕を引いてそっと回廊の隅の柱の影に身を寄せる。
 間を置かず、回廊の奥から気配の主が現れた。
 錆び付いた剣と盾を構えた、白骨死体。ただし首の上に乗っかっているのは、
人間のしゃれこうべではなく扁平な形の獣の頭骨だ。それが四体もいる。およそ
生き物らしからぬ無機質な動きで、規則正しく列をなして石床の上を歩いてくる。
見れば白骨のところどころが破損し、武器にはべっとりと血糊が付いていた。
「……アンデッドコボルトだ」
 マウザーが耳元で囁く。
 そう、現れたのはこの地下第一層でも屈指の難敵であった。
「あいつらには、倒した相手の装備を剥ぎ取るような知恵はねえ」
 髑髏の一団を上手くやり過ごした後で、俺はマウザーにそう言った。
 さっきの剣戟の一方の主があいつらなら、もう一方は死体となっているはずである。
アンデッドコボルトは自分か相手が動かなくなるまで戦闘を止めないからだ。そして、
奴らは豚面や犬頭と違って死体漁りをしないから、その死体は装備を奪われていない、
金目のものを持った状態で転がっているということになる。
 俺と相棒は目を期待にぎらつかせて、髑髏どもがやってきた回廊を奥へと進んだ。
俺たちは、あいつらと戦った冒険者たちが全滅していることを内心期待していたの
である。