それいつよ?どんくらいスレ二つ状態にしとくわけ?
わけて投下でもよかったような
SSは本当にすごいし長編乙だけど
できれば他住人意見もあるし一日くらいは様子見してほしかった
695 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:14:48 ID:+PdEC5lj
長女・沙耶
次女・麻耶
三女・亜矢
この三姉妹を加えて、あさぎ荘はずいぶんとにぎやかになった。
特に、二人の幼い妹を背負って立つ沙耶のがんばりはかなりのものだ。
朝一番に起きると、真っ先に厨房で朝飯を支度し、割烹着姿でぞろぞろと起きてきた面々を迎える。
今まで少年がやっていた料理番はすべて彼女が担当するようになった。
事実、少年並みに彼女の料理はおいしいらしく、ずぼらなアイカが毎食部屋から降りてくるようになったほどだ。
私服がないために以前通っていた高校の制服姿に割烹着という、なかなかマニアックないでたちだったが、少年はほとんど何もしなくてもよくなってしまった。
大家としての決定が必要なときくらいしか仕事がない。
さて、こうなったら経営や簿記について本格的に勉強でもしようかな、と参考書を買ってきはじめた頃だった。
「あ、雨月さん」
「アイカ姉」
「アイ姉ちゃん……」
酒井三姉妹が脱衣所に入ると、アイカがちょうど服を脱いでいるところだった。
「おう」
すっかり懐いてしまった妹たちがアイカの足にくっつくと、彼女は優しげな手つきで頭をなでた。
妹たちと一緒に風呂へやってきた沙耶は、アイカの隣で同じく服を脱ぐ。
ちらりと沙耶はアイカの豊満な体つきを盗み見た。
同性の彼女からみても、アイカの身体は芸術作品のように美しい。
それに比べて私は、とションボリとした気分になりそうだ。
と、アイカが視線に気づいたのかこちらを見ている。
696 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:16:01 ID:+PdEC5lj
線に気づいたのかこちらを見ている。
「なあ、沙耶ちゃん」
「はい、なんですかぁ?」
アイカは沙耶の服を凝視した。
同時に、胸元も一瞥する。
ジロジロと見てしまったのだろうか、何かいけないことをしてしまったのだろうか。
沙耶が焦りを感じ始める。
「……ひょっとしてブラしてないの?」
「えっ ええ!?」
予想外の言葉に、思わず沙耶が後退った。
・
・
・
「ちょっといーか?」
ノックもせずにアイカが少年を訪ねた。
「なんですか?」
そろそろアイカの性格に慣れ始めた少年は、よっこらしょと新しく買った事務机から離れ、イスに座ったまま彼女の方へ向いた。
697 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:16:56 ID:+PdEC5lj
一階にある旧当直室、現管理人部屋は今はエアコンも完備され、その恩恵を受けられない外へは出たくなかったが、わざわざアイカが部屋を昼下がりに降りてくるのだから相応の理由があるのだろう。
そして少しばかりの期待もあった。
三姉妹の入居の前後、忙しかったのと第三者の視線があったためにアイカとはあの公園での一件以来関係を持っていなかったからだ。
今は三姉妹は入用になった日用品などを支度金≠ニして渡したお金でスーパーに買いに行っている。
この支度金≠渡すよう少年を説得したのもアイカであった。
少年にはなぜかははっきりわからなかったが、彼女があの娘たちに特別な感情を抱いているのはなんとなく理解できた。
彼女の性格からして、そろそろ何かあるんじゃないかと、やや冷静に少年は考えていたのだが、予想が当たったようだ。
「こんなんがポストに入ってたんだ」
彼女がひょいと一枚のチラシを寄越した。
少年が腑に落ちない感覚でそれを確認すると、そこには新しく完成したホテルの宣伝が載っていた。
【ブティックホテルルージュ=@今月オープン】
それがいわゆるラブホテルなのだと理解するのにそう時間はかからなかった。
普通、こんなものがポストに入っていたらクシャクシャにしてゴミ箱行きなのだろうが、今回に関してはそうでなかった。
住所を確認すると、このあさげ荘から歩いていける場所だった。
698 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:17:37 ID:+PdEC5lj
「今夜、アタシ外泊するかもしれないから、とりあえず伝えにきたんだ」
含んだ笑みを浮かべてアイカはゆっくりと少年に近づいた。
そっと座ったままの彼に手を回して耳元で囁く。
「たぶん、夜七時くらいに噴水前に行ったらアタシに似た人がいるかもしれないよん」
独り言だけどさ、と彼女は付け加えると、多くは語らずにその場を去っていった。
彼女のほのかな香りだけが室内に残っている。
はぁー
少年が頭を抱えた。
悲しいことに、たったあれだけで彼の股間は反応してしまっていた。
・
・
・
夜七時。
少年はわざわざ十分前に噴水前に着いていた。
待つこと二十分。十分遅刻してアイカがやってきた。
時間差で外出することで三姉妹に不審に思われないようにしたようだ。
699 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:18:49 ID:+PdEC5lj
「あっ、やっぱり来たな。このスケベ」
「返す言葉もないです……」
敗北感のようなものを少年は抱き、情けない笑みを浮かべる。
一方で、アイカとの関係を楽しんでいるような期待も見え隠れしている。そんな複雑な表情だった。
少年はそこまで感じて、これがおそらくアイカとの微妙な関係のせいであることに気づいた。
アイカとは恋人ではないが、まったく感情のない関係ではないし、一つ屋根の下で暮らしていることもあって同居人や友人としての仲もある。
そしてそれは、彼女が自分と身体を重ねる対価として金銭を受けることで成り立ってきたのだ。
一番近い関係にあてはめるとしたら、それはセックスフレンドに近いのかもしれない。
「いーんだよ、アタシ、あの娘たちのことでいろいろと無理頼んじゃったしさ」
彼女が少し申し訳なさそうに手を合わせ、片目をつむるジェスチャーをした。
なんとなく予想はしていたが、やはり彼女なりの礼だったようだ。
見た目に反して、というと偏見じみているが、彼女はかなり義理堅い人なのが窺い知れる。
不思議な人だ、と少年は改めて感じた。
「だから、今日はお金要らないよ」
彼女の自分へ向けられた笑顔が、少しだけ心に痛かった。
なぜかはよくわからなかった。
と、アイカは少し『しまった』といった顔になると、もう一度手を合わせて申し訳なさげに言った。
700 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:20:09 ID:+PdEC5lj
「……あ」
「どうしたんですか?」
「ホテル代は払ってくれるよね?」
「はいはいそんなことだろうと思いましたよ」
苦笑いすると、アイカがにっこりと笑みを浮かべて彼の腕に手を回した。
わざとだろうか、胸を押し付けるような体勢だった。
「じゃ、行こっか」
女性と外で腕を組むのが初めてだった少年が頬を赤らめる。
それを知ってか知らずか、彼女はまるで恋人同士のように振舞った。
道中、少年は落ちつかない気持ちでアイカの横顔をちらちらと盗み見た。
本来なら自分には見向きもしないような美女の顔がそこにある。
時折、道行く人が男女問わず振り返るのがわかった。
それはそうだ、と少年は思う。
……僕じゃあ釣り合わなすぎだもんなぁ。
自虐的な考えが脳裏をよぎった。
701 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:22:06 ID:+PdEC5lj
「そういえば」
そんな気分を払いのけるように、少年は口を開いた。
「なんだ?」
「どうして酒井さんたちの世話を焼くんです?」
「あー、まあ、それなんだけどな」
アイカは少しだけ居心地の悪そうな表情をみせた。
「なんていうか、他人事じゃないっちゅうか……」
煮え切らない断片的な言葉だったが、ある程度の推測はできた。
アイカ自身、三姉妹に何かしらの共感ができる過去があったのだろう。
「ホント、ハルちゃんには感謝してるからね、とにかく」
話を濁したものの、アイカはさっきよりも強く腕を組む力を入れた。
なぜか、少年にはそれが彼女が不安がっているのだと理解できた。
少年自身にある秘密のように、彼女にも話したくないことがあるのだ。
それだけは確かだった。
702 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:23:27 ID:+PdEC5lj
「あ、着いた」
彼女があるビルを見上げた。
チラシの写真と同じ建物だ。
ライトアップされ、概観はいかにも怪しいラブホテルといった感じだった。
ここは繁華街ということもなく、人気もあまりない区域だ。
自転車でときどき通ることがあったが、あのとき建設中だったのはこれだったのか、と少年は合点がいく。
ひとつだけライトアップされたビルは、かなり目立つ。
「は、早く入ろうよ」
「あ、うん」
さすがのアイカも恥ずかしかったのか、人目につかないようにそそくさと入り口へ向かった。
ロビーへ入ると、部屋の写真を貼ったボードがあった。
暗くなっている写真が今使用中ということなのだろう。
新築のホテルだけあってどれも内装は綺麗だ。
「で、どれにする?」
初めてラブホに入る少年を試すように、アイカがにっと歯をみせてたずねる。
不思議なもので、ラブホテルに入った時点で少年の理性は破綻しそうになっていた。
大人の世界とばかり思っていたこの場所に、アイカという美女を伴ってやってきた。
ある種の達成感のようなものが無意味にあったのだ。
703 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:24:35 ID:+PdEC5lj
「せっかくだから、これいきましょう」
驚くアイカを横目に、一番高い部屋を選択する。
鍵を受け取ってエレベーターに乗り、二人は最上階の一室へ向かった。
・
・
・
食堂として利用されている昔の小宴会場で、三姉妹は家族団欒の夕食をとっていた。
なんといっても今日は気分が浮かれていた。
それもそのはず、昨日はアイカに連れられてデパートにショッピングに出かけたからだ。
アイカは女の子なんだから身だしなみには気をつけないとダメ≠ニ言って三人に一通りの服を買ってやったのだ。
結構な金額になるはずで、手放しで喜ぶ下の妹たちとは違い沙耶は恐縮しきっていた。
特に、沙耶に関しては女性用の下着も買ったので、気がひけてしょうがなかった。
だが、アイカは自己満足でやってることだからと飄々としたままだった。
「アタシ、最近絵≠ェ売れて金が余ってたから調度よかったんだよ」
そんな売れてたのかな、あの露店、と沙耶は茶碗に米をよそいながら思った。
昨日買った下着はもう身に着けていた。着心地はよかったが、どこか腑に落ちない感覚が彼女にはあった。
704 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:25:24 ID:+PdEC5lj
ただ、ひとつだけ確かなのは、ここに住んでいる人たちがみんないい人だということだ。
明後日は給料日で、妹たちにも何か買ってやれるかもしれない。
大家の神楽坂は自分と年齢的にも近く、とても話しやすい。
ここなら、長くやっていけるかもしれない。なにより、屋根のある生活はかけがえのないものだ。
「おねーちゃんおかわりっ!」
「お、おかわり…」
妹たちの笑顔をみていると、些細なことはまあいいか、と思えてきた。
温かいごはんをよそいながら、沙耶は久々の安息の日々をかみ締めた。
・
・
・
シャワーを浴びて出てきたアイカは、バスタオルを身体に巻いただけの姿だった。
「じゃーん」
はらり、と彼女はその一枚の布をはだける。
しっとりと風呂上りの光沢を放つ褐色の裸体がそこにあった。
濡れたままの髪と、ツンと立った淡い色あいの乳首が、まるでオスを誘うかのような淫らな印象を見るものに与える。
少年も下着だけで待っていたが、彼女の扇情的な姿を前に我慢できずに全裸になる。
二人はどちらが言うでもなくベッドに倒れこむと、互いに唇を重ね、舌を絡めあった。
705 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:26:37 ID:+PdEC5lj
「ん……ちゅ……ちゅる……んむ……」
落としめの照明と、大きなダブルベッドに浮きあがる二つの裸体。
互いに肌を密着させ、粘膜を味わって性感をむさぼっている。
少年は片手を彼女の茂みに伸ばし、キスしながらの愛撫をする。
あふれてくる愛液の感触と、絡めあった舌の感触、そして重ねあった彼女の柔肌の感触。
主導権を握ろうと必死の少年だったが、彼自身も先走りの汁をにじませたものをもてあましていた。
「ぷは……」
アイカが唇を離すと、彼のペニスにそっと手を這わせた。
彼女の手に包まれ、ペニスがぴくんと反応する。
そして、少年の上にのしかかると、尻を彼の鼻先に差し出す。
それが69の体勢なのは理解できた。
すかさず彼女の膣内へ舌を侵入させる。
アイカもペニスを口にくわえ、そっと舌で亀頭をなめまわした。
二人は互いに愛撫を与えあい、時折刺激に反応して身体を振るわせる。
パリッ
かすかに音がしたので、舌を膣内から抜いて股間を見やる。
アイカがコンドームの封を切って目の前のペニスにかぶせていた。
挿入を求める合図だ。
706 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:28:05 ID:+PdEC5lj
「よっ」
「あんっ!?」
アイカが前回のように騎乗位で挿入を図ろうとするのを制して、少年が体を起こした。
短い悲鳴を上げてアイカがシーツに押し倒される。
「どうしたの?」
アイカがきょとんとした表情で尋ねるのに、少年は気恥ずかしさを感じながらも答えた。
「そ、その、正常位でやってみたくて……」
少年の顔がすぐ近くにある。表情は真剣そのものだった。
「ちょっ そんなマジな顔しなくても」
アイカがその顔を見てクスクスと笑う。
「ん…いいよ」
ややあって、彼女もこうしてじっくりと男と行為に及ぶのが久しぶりなのか、少年と同じように恥ずかしげな顔になる。
ホテルという場所と、いつものような獣じみただけの一方的な行為でないのが、アイカにも新鮮な感覚を与えているようだ。
アイカは自らその花弁に手を伸ばすと、蜜に溢れた膣口をそっと開いた。
「……きて」
少年がゆっくりと腰を入れていく。
707 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:29:36 ID:+PdEC5lj
ぬめった膣肉をかきわける感触に快感を覚えずにはいられない。
「ん……んん…」
きゅっ、とアイカはシーツを握る。
いつもとは違っておとなしく、むしろ少女のような反応が新鮮だ。
正常位はなんとなく、少年の考えの中では『恋人っぽい』体位だった。
それを素直に受け入れてくれるアイカに、形容しがたい愛しさを覚える。
むろん、この行いすべてがアイカの演技という可能性もあるのだが、少年にとってそれは問題ではなかった。
奥まで挿入しきると、今度は力を加えて腰を振る運動へ移る。
「あっあっあぁっ! ああっ! い、いいっ!」
ベッドがギシギシと音を立てて二人の行為に旋律を添え、腰をしっかりと保持して突いていた少年の手はやがて女の乳房をもみしだく。
突くたびに愛液と絡み合う粘着質な音が股間に起こる。それさえも淫らな感覚を昂ぶらせるかのように少年には思えた。
青い情動で彼は腰を打ち付け、絶頂へ高めていく。
「くっ!」
短いうめき声を上げ、アイカの膣奥にペニスを押しつける。
そして、目の前の美巨乳を形が変わるほどに強く鷲づかみにした。
腰を激しく仰け反らせ、最後の一突きを送り込む。
その瞬間、駆け上ってきた精液が放たれた。
708 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:30:50 ID:+PdEC5lj
「ぁっ!」
アイカもその乱暴な刺激に達していた。
嬌声をあげることもなく、ぐっと自らの膣内へ注ぎ込まれる精を受け止めている。
正常位で組み敷かれる被虐的な行為に背徳的な快楽を覚えたのかもしれない。
少年は彼女としばらくの間繋がったまま、小刻みに射精を続けた。
やがて、最後の一滴を注ぎ終わると、脱力して彼女と重なり合った。
「はー…はー…」
しばしの間、二人は行為後の余韻を楽しんだ。
・
・
・
早朝のまだ暗い時刻、沙耶は作業着と化した制服姿のまま新聞配達のバイトに取りかかっていた。
華奢な身体で大量の新聞紙をカゴに乗せた自転車をこぐ。
管理人やアイカの好意によって三人の生活はかなりマシになったものの、沙耶にはまだやりたいことがあったのだ。
それは妹たちを学校へやってやることだった。
せめて高校までは二人をやってやりたい。そのためにはまだ金が必要だった。
709 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:32:04 ID:+PdEC5lj
(もうこれ以上、管理人さんやアイカさんに頼っちゃいけないんだ!)
ガコン、と新聞受けに新聞を入れながら、彼女は強くそう感じる。
配達が終わりに近づいてくると、空はもう明るみ始めていた。
と、その中で一際目立つ外観をした建物の近くへ配達へ訪れる。
このあたりはいわゆるラブホテル街で、配達をやりたがらない人が多かったこともあって彼女の担当になったのである。
(こ、こういう場所は不潔な人がいくところなんだよね。お、お母さん、そういってたもん)
できるだけ周囲を気にしないようにして、彼女は残りの新聞を配ることにする。
と、
「ふぁ〜あ……ハルちゃん激しすぎ。結局朝帰りになったじゃん」
「う、面目ない……」
「あはは、いやいいよ、なんかまた金もらっちゃったしさ」
聞き覚えのある声が、沙耶の耳に飛び込んでくる。
動物的勘に近い動作で、沙耶は自転車をとっさに路地裏に寄せた。
710 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:33:15 ID:+PdEC5lj
「あ、あれって……!?」
電信柱の陰から盗みみると、ホテルの中から二人の男女が出てくるのが見える。
間違いない、神楽坂春と雨月アイカだった。
(ど、どうして!?)
思考回路がパニックを起こしたようだった。
ラブホテルがどういった行為をする場所なのか、漠然とではあるが彼女とて知っている。
その中から、彼女がもっとも恩義を感じている二人の姿が現れた。
沙耶すっかり新聞配達など忘れ、二人の楽しげな姿を見つめていた。
<続く?>
711 :
らぶマネ!:2008/11/25(火) 01:34:38 ID:+PdEC5lj
>>696の最初は前の最後の行と重複ですねサーセンw
まあ埋めがてらにうpしてみました。
>>711 GJ!
あさぎ荘がにぎやかになってきたと思ったら、雲行きが怪しくなってきましたね。
続きが気になる・・・。
この板でスレ落ちすんのって500KBか980レス以上だっけ?
まだまだ先は長いな
んじゃ、埋めるために。
とはいえまだ全然「金の力で困ってる女の子を助ける」ところまでいってないけど。
寒空の下、なんで親子三人公園のベンチに集合しているのだろう、と父の顔をじっと見つめる。
父はにこやかに言った。
「松下家、解散」
「は!?」
兄ちゃんと私の声が重なる。
「解散って、ちょっと。何ですか。今流行だからと思って笑いが取れるとか思ってますか」
人はうろたえると敬語になるんだろうか。
兄ちゃんの問いに父はにこやかな笑顔を情けなく歪めた。
「いや、本当に。君たちには申し訳ないけど解散です。父さんは行方をくらませます。
ついでに言っておくと、もしも風の便りで父さんが死んだことがわかったら、相続は放棄しなさい。借金しかないから」
なんだそりゃ。
昨夜父は、明日の午後1時にこの公園に集合、と言い置いて仕事に行った。
午後1時といえば父の仕事が終わってちょうど家に帰ってくるくらいの頃合いで、
それなら家にいたっていいじゃないか、と思っていたのだが、父は集合の際の注意事項を言っていた。
持てるだけでいいから当座の着替えや現金を絶対持ち出してくること。
朝帰りをしてきた兄ちゃん――こっちは違う石けんのにおいをさせて帰ってきた。
仕事じゃなく遊びだ――にも伝え、二人してスポーツバッグやリュックにぎゅうぎゅう荷物を詰め込んで公園に行った。
「まるで夜逃げだよ」
「今、昼間だよ」
そう言って兄ちゃんと笑いあいながらやって来たのに。
「借金がふくれ上がって、あの家は担保で取られることになった」
それって明け渡しまでにもう少し猶予とかがあるものじゃないんですか。
「和樹はもう就職しているし、無理をして一人暮らしができないこともないだろう。問題は結衣。おまえだ」
大問題だ。十七歳の女子を、あと一週間で十八になるとはいえ、
二日前に高校の卒業式は済んだとはいえ、十七歳の女子を「解散」の一言で放り出して、
それで父親の監督責任は果たされるとでも思うのか。
「おまえは――ものすごく父さんに似てしまったからな」
そこか!
まずそこから入るのか!
そう。私、松下結衣は大変にこの、目の前でしょぼくれている父親に似ている。
女の子は男親に似る、逆に男の子は女親に似る、とよく言われるが、
私たち兄妹は実に忠実にそれぞれに似た。
兄が色白で華奢で、黒目がちの大きな目に影を作るほどまつげを密集させているのに対し、
私は色も浅黒く骨太だ。眼や鼻のパーツがそう悪いわけではないが、眉毛が薄い。
父がしょぼくれて見えるのも、私が中途半端に薄幸そうなのもこの眉が原因だ。
そして胸にも尻にも肉がない。
「だから、女の子が手っ取り早く稼ぐ方法がおまえには使えない」
そして父さんは、すまん、と謝った。
そこで謝るな!
女としての私を全否定か!
「なんとかしてくれ。以上。解散!」
そう叫ぶと父は脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ! ちょ!」
私も兄ちゃんもまったく反応できなかった。
きっとこの公園を集合場所と決めたときから父さんは逃走経路のシミュレーションをしていたんだろう。
もしかしたら逃走のことしか頭になくて、それで思いつくままに「解散」と言ったのかもしれない。
なにしろ流行だし。
はあ、と溜息をつくと、隣で兄ちゃんは携帯を取り出した。
「あー、もしもし? 高明? あのさー、同棲しない?」
飲み物も何も持っていないのに私はぶはっと吹き出しそうになった。
今聞こえたのは男性名だったような。
確かに兄ちゃんの顔は整っている。私のクラスメートなんかはあからさまに
そういう方向の萌え対象として兄ちゃんを紹介して欲しがったりした。
私もちょっと疑ったことはある。
けどまさか。
30分後。
兄ちゃんの隣にはガタイのいい、短髪黒髪の目の鋭い男性が立っていた。
「兄ちゃん? あのー?」
恋人、って聞いていいものなんだろうか。
聞いて、うん、と肯定されたとしてどんな反応をすればいいんだろうか。
「なんだ? 兄ちゃんってことは和樹の妹なのか? 似てねえな」
すごみのある声で言われた。
泣かない。
似てないのは一目瞭然だ。
「妹だよ。あのさー、俺らオヤジに捨てられちゃったんだよ」
「はあ?」
兄ちゃんは、さっきのあまりに適当な父さんの様子を説明する。
「ああ、なるほどな。で、同棲。バカか、おまえは」
この人をなんて呼んだらいいんだろう。彼は兄ちゃんの頭をゲンコツで軽く叩いた。
「そういうのはな、独り立ちできるまで居候させてください、っつーんだ」
「俺、同棲でもいいもん」
どっち!?
どっちなの、この二人!?
私の混乱をよそに、なんだか妙にいちゃいちゃして見える二人だったが、
そのうち兄ちゃんじゃない方が私に目を向けた。
「妹。おまえはどうするんだ」
「どう、と言われましても」
高校卒業したての十七歳。しかも保護者無し。
仕事も住む場所も一人で見つけられるとは思えない。
だが、この二人を邪魔してはいけないような気がする。
というか。
邪魔するな、とこの人の目は言っている。正直ちょっと怖い。
「学校に行ってみます」
「おまえ一昨日だったか卒業式じゃなかった?」
「うん。進路やなんかは学校に報告しろ、って言われてるし。ある意味進路でしょ。
それにもしかしたら進路指導室に何か手があるかもしれないし」
これでいいですか?
「でもよー。なあ、高明。おまえんとこ……」
「おまえが来るなら妹は無理」
「なんで」
「おまえ、妹にあんな時の声を聞かせたいか?」
「なんだよ、あんな時って」
うわああああ。やっぱりそうなのか!
私はじりじりと後ずさった。
「善は急げって言うからさ! 兄ちゃんアディオス! またな! 私は学校に行くよ!」
そうして私も父さんの後をなぞるように脱兎のごとく公園から、というか、兄とその恋人から逃げ出したのだった。
とはいえ。
学校に過度の期待をするのは禁物だ。
「失礼しまーす」
がらがらと引き戸を開ける。職員室にはちょうどいいことに一昨日まで担任だった先生もいた。
「松下か。どうした。どっか結果でも出たか?」
入試結果は学校にも連絡が行くはずだが、個人で連絡に来る者もいる。
「いやー。あの、すごいことになっちゃって」
ぺたぺたと裏の薄いスリッパを慣らしながら先生の席まで行く。
「実は家無しになっちゃいまして」
てへ、っと笑ってみる。
先生は
「は?」
と言ったきり動かなくなった。
「あのですね。父が出て行きまして、家は私にはよくわからないんですが
担保に取られたとかでもう帰れなくて」
この説明でいいのだろうか。
「で、進路っていうかですね。たとえ合格してても、私、もうどこへも入学できないんですよ。
入学金とか払えないから。だから就職を」
「そりゃ無理だわ」
即答だ。
「おまえ、3月に入ってから就職って、そりゃどこも締め切ってるわ。高卒とる会社なんて
そんなもんだよ。早いところはもう社内研修始まってるよ。求人票ももう無いよ」
「やっぱり」
どちらにしても。
就職する際の保証人さえいないのだ。
兄ちゃん、という手もあるが、兄ちゃんだって社会人3年目だ。保証人として妥当なのかどうか私にはわからない。
「おまえ、確かG大合格してたよな」
「してましたよ。でもこの様子だと多分入学申込金を払ってないです」
そんなお金は無かっただろう。
ああ、母さん。なんであなたはあんなぼんくらな父さんと、兄ちゃんと私を残して
お星様になっちゃったんですか。あなたがいればもうちょっと何とかなったような気がする。
「奨学金がもらえるほど――」
「まぐれ合格に何言ってんですか」
先生と二人、がっくりと肩を落として溜息をつく。
「バイトは?」
「してません。今から探そうにも、住むところがまず無いんですよ」
先生は、うー、とか、あー、とか呻った。
「そりゃ参ったなあ」
学校には手だてはない。
私は立ち上がって、荷物を抱えた。
今となってはこのスポーツバッグとリュックが私の全財産だ。
「どうもお世話になりました。何か進展があったらまた来ます」
「う、あ。力になれなくてすまん」
いや。想定外ですよね、こんなの。
声に出すのははばかられたので、苦笑混じりに会釈して私は職員室を出た。
行くあてがない。
3月に入ったばかりだ。外はまだ寒い。野宿、というわけにもいかないだろう。
でもお金はない。
「父さんも父さんだ。服だけじゃなく缶詰とか長期保存ができそうな食べ物も一緒に持ち出せ、くらいのことは言っても……」
そんなものは家に無かったが。
愚痴を言って、ふらふらと歩き出す。
学校にいても仕方がない。
学校の宿直室に泊めてもらうわけにもいかない。
「なんだかなあ」
こういう時に一泊くらいさせてくれるような友達さえいないことに気が付いて、ちょっと情けなくなった。
本当なら4月からは大学生だったのだ。
私は通うはずだった校舎を見上げた。
ふらふらと歩く内に唯一合格通知をくれた大学まで来ていた。
「大学生になってからだったら、こんなに困らなかったのになあ」
せめて自分の所属がはっきりしてからだったら、こんなに不安にならなかったのではないかと思う。
今の私は何でもない。
高校生ではなくなった。
大学生にはなれなかった。
ただの十七歳、もうすぐ十八の、何の取り柄もない、容姿もぱっとしない女子だ。
ふらふらと学内に入っていく。
部外者お断り、って立て看板があったけど、別に誰からも咎められない。
咎められたって構わない。
そう思って相変わらずふらふらと歩いていて気が付いた。
咎められるもなにも、まず人がいない。
学部数も多いマンモス校なのに、受験者だけでもそうとうな数がいたのに不思議なこともあるものだ、
と思いながら掲示板でふと目を留めた。
バイト募集、の文字が躍る。
これだ! と思った。
大学生向けのバイト募集のチラシが所狭しと貼ってある。
家庭教師なんかはごまかしもきかないし、住むところの確保もできないが、探せば何かあるかもしれない。
春から学生なんです、今はまだ学生証が無いです、でせめて働き口だけでも確保できないだろうか。
私は掲示板にはりついた。
「きみ。ちょっとよけてくれる?」
後ろから柔らかい声がかかった。
「え? あ、すみません」
慌てて避ける。
白衣だ。
大学の中にはほんとうに白衣を着てうろうろする人がいるんだ。
ぽかん、と見つめていると
「きみ、学部は? 何年?」
と聞かれた。
「え? あ、え、えと……」
その人はくすりと笑った。黒縁めがねの奥の目が細くなる。
「やっぱり学生じゃないね。春休みに出てくる学生はいないから、こんなところでバイトを探しても何もないよ」
「あ!」
そんな落とし穴があったとは。
だから人が少なかったのか。
「で、きみはここで何をしてるの?」
その人は掲示板に貼られた「バイト募集」の紙をべりべりと剥がしていく。
「それは?」
「ん? 募集期限終了。決まったのもあるしそうじゃないのもあるし。基本的にここのは
理学部の学生対象だから、きみが行けそうなのはないんじゃないかな。たとえ詐称しても」
お見通しだ。
「そうですか……」
ほんとにどこに行けばいいのやら。
ネカフェ難民が問題になっている、なんて聞くけど、今の私にはネカフェに行くお金さえ無い。
この寒いのに、温かい缶コーヒー一本買えやしない。
「すごい荷物だな」
「全財産です……」
二度と会うことはないだろう人に何を言っているんだろう。
同情して欲しいのかな、私は。
憐れんでほしいのかもしれない。
せめて缶コーヒー。いや、チロルチョコ一個でもいいです。恵んでもらえないですか。
「なんで全財産持って移動してるの。ちょっとおいで。話を聞こう」
背負っていたリュックをぐい、と引っ張られ、私は後ろ向きに連れて行かれた。
なんだかよくわからない機械類がごちゃごちゃと置いてある部屋だ。
その部屋の一番奥にある大きな机に座ると彼は言った。
「名前、年、住所」
「は? あ、松下結衣と言います。十七です。住所は、つい数時間前に不定になりました」
そうか、私住所不定だ。
口に出してみたら妙に可笑しかった。
「いきさつを聞いてもいいかな」
「今流行のホームレスなんとか、ってやつですね。あ、私は中学生じゃないですけど。
父が突然家族の前で解散宣言をしていなくなりました。それがその数時間前のことです」
なんてばかばかしい話だろう。
自分で言っていても現実味がない。
「あそこにいたのは? やっぱりバイト探し?」
「はい。一文無しなので」
金目の物も持っていないので。
ついでに言うと、父から見ても私には女としての値打ちが無いようなので。
ふうん、と彼は言うと、じっと私を見た。
居心地の悪さに、下を向く。
「お金、必要なんだ」
その声はまったく感情を含んでいないように聞こえた。
こういう時、多少人は意地悪な気分になると思う。
欲しい物があって、財布を覗いたらほんの少しだけ手持ちが足りなかった。
一緒にいた友人に明日には返すから貸してもらえないかな、と頼むと
その友人はほんの少しの優越感をにじませた目をして、どうしてもっていうなら貸すけど、なんて言う。
金の貸し借りをする時点で友人じゃない、と言ってしまえばそれまでだけど、
ほんの少しの金額でも融通するときっていうのは、上下関係が生まれてしまう。
そんな気がする。
なのにこの人にはそれが無かった。
ただ事実だけをぽつりと言っただけに聞こえた。
問いかけでさえなかった。
だから、私も返事をしていいものかどうか迷って結局、下を向いた。
「いくらあればいいの?」
「へ?」
「お金。いくらあればきみは困らないの?」
「わ、わかりません」
私はぶんぶんと首を振った。
本当に、わからない。
いくらあれば住むところを確保できるんだろう。働き口を見つけて、
そこからお給料をもらえるようになるまで、いくらあれば生活できるんだろう。
ただお金だけあっても、私の後ろ盾になってくれる人がいなければ、
住居も就職口もどうにもならないんじゃないだろうか。
だからそれを正直に言った。
「あればあるだけ、だと思います。でもお金があっても、私の身元を保証してくれる人がいないと
私一人ではどうにもならないことがあります」
兄ちゃん。
なんで兄ちゃんは、私を放りだして男の恋人と行ってしまったんだ。
ぎゅっと拳を握る。
彼はまた、ふうん、と言った。
「じゃあ、うちに住む?」
「はい!?」
「ただし、きみがバイトするなら」
彼はにっこりと笑った。
ああ。仏様に見えるよ。
「うちに住んで、うちの中のものなら自由に使っていい。食事も保証しましょう。
あ、家財道具を勝手に売り払うとかはしないでね」
「しません。で、私は何をすればいいんですか」
「ん? ちょっとあやしいバイト」
まだ彼は笑っている。
前言撤回。仏様じゃないです。なんか怖い人に見えます。
兄ちゃん。ああ、くそ。兄ちゃんには助けを求めないぞ。
父さんなんかもってのほかだ。
うわー、誰なら助けてくれるんだー。
「まあ、詳しいことはうちで話をしようか。僕は川島義章。この研究室の責任者です」
「研究室?」
「なんだと思ってたの」
くすくすと彼は笑いながら白衣を脱いだ。
ぽい、と机の上に放り投げて私の側まで来る。
「腐っても大学職員なんで、あんまりへんな事はしないはずです。行こうか、結衣ちゃん」
付いていっていいのか? 本当にいいのか?
でも行く場所はどこにもない。
彼はお金を出してくれる。
住むところを提供してくれる。
それは、3月上旬の寒空に放り出され、一文無しになった、十七歳――くどいようだが
もうすぐ十八歳――女子にはとても辛いことで、なにより朝から何も食べていない腹が不平の大合唱で、
私はあしもとに置いていた荷物を抱え上げると、川島義章という名前しか知らない男に付いていくことにしたのだった。
意外に埋まらんなあ。
おお、らぶマネ!
そろそろ続き来ないかな〜と思ってましたよ。
相変わらずGJです。
722 :
721:2008/11/25(火) 07:28:16 ID:ibvdWTZU
>>720 スルーしてスンマセン。
GJです、続き期待してます。
お二方、GJです。
らぶマネは長女いいですね〜。しかし、三女の漢字が違うのが想像をかきたてられます…
〉〉720
今後の展開に大期待です! 怪しげな実験? モルモット?
女としての私を全否定か!吹いたw
>>720 でもかなり埋まったよ
職人さんお二人乙そして良SS投下GJ
らぶマネ!の続きと新たな期待作が一気にキタ!
どちらも面白い! GJ!!
こんばんは。
幸福姉妹物語のショートエピソードを投下します。
前編エロです。
私の名前は香田文。お姉ちゃんの香田清香と一緒に旦那さまの奴隷をやっている。
色々と不幸な私たち姉妹は、色々なことがあって奴隷として引き取られることになった。
最初は「なんて私たちは不幸なんだろう!」と、お姉ちゃんと2人で泣いたのだが、私たちのご主人さまである三田敦という人は、変に優しい人で、美味しいご馳走やお洋服も買ってもらったし、お部屋や暖かいベッドも貰った。
寒くて暗い屋根裏部屋で、ぼろ雑巾のように扱われる… そんな私の想像はあっさり覆された。単純に嬉しかった。
けれども、やっぱりそれだけでは終わらなかった。最初の標的はお姉ちゃんだった。
お姉ちゃんがいつ手を出されたのかは分からない。けど、気付いたときには、もう、私の知っているお姉ちゃんではなかった。
おまたから卵を産んで痙攣する(後で知ったが、あれがイクということらしい)姉は、ひどくイヤらしくて、美しかった。
屋敷に来てから(旦那さまの屋敷は凄い豪邸だ!)2週間が経って、姉の処女が奪われた。私はその時気絶していたのでよく知らない。けど、目覚めたときの姉の悦びの叫びは一生忘れることが出来ないだろう。そして私は、半狂乱になって叫ぶ姉に、はっきり嫉妬していた。
多分、その時から、私は旦那さまに恋していたんだろう…
プールに連れて行ってもらったその日の夜。私たちは地下室に呼ばれた。
私とお姉ちゃんは、全裸でご挨拶をした。
「…旦那さま、卑しい奴隷の清香です。これから旦那さまにご奉仕させていただきます。どうか、このいやらしい身体を存分にお使いください」
お姉ちゃんはつっかえずにすらすら言うと、丁寧におじぎした。
この辺、我が姉ながら凄いと思う所であり、私にとってコンプレックスな所だ。私も2年後には、ああやって何でもソツ無くこなせるようになってるのだろうか…?
「文…」
お姉ちゃんに小突かれて、はっ、と我に返ると、私は慌てておじぎをして叫んだ。
「だ、旦那さま! いやらしい奴隷の文です。いじめて、可愛がってください! いたぁ!」
痛い… 勢いを付けすぎて頭を床にぶつけちゃった… あ、お姉ちゃん笑ってる。
「…気をつけろ」
呆れたのか、旦那さまはそれだけ言うと革ベッドに腰を降ろした。
「さあ、ご奉仕だ。2人でやってみろ」
旦那さまが言うと、私は俄然燃えた!
(良くは知らないけど、お姉ちゃんはお口でご奉仕した事はほとんど無いはず! この勝負、私の有利だ!)
密かに気合を込めて、小さくガッツポーズしていると、お姉ちゃんが、するする、と四つん這いで近づいて、「ご奉仕いたします…」と言うと、あっさり旦那さまのズボンを降ろした。かなり焦る。
「あ、文もご奉仕します!」
慌てて言うと、私は旦那さまに突撃した。奪い取るように旦那さまのおちんちんを咥えると、喉奥まで一気に咥え込んだ。
「んぐぅ! んん〜…」
えずく喉を何とか抑えて、もごもごと口を動かす。幸い、旦那さまのおちんちんはまだ柔らかく、そこまで辛くは無かった。
「文… そんなにがっつくな。歯を当てたら承知しないぞ」
こくこくと頷くと、私はいっそう舌を激しく動かした。お口のご奉仕はもう四回目だ。どのあたりが気持ち良いのか、だいたいは見当付いている。
(ここかな? ここかな…? このくびれのあたりが良いんだよね…)
一生懸命ご奉仕してると、旦那さまが「清香…」となにやらお姉ちゃんに合図した。私はそれどころじゃなかったので、無視してご奉仕していると…
「文ちゃん… ごめんなさい…」
突然謝ったお姉ちゃんが、背後から私の乳首を、きゅっ、と掴んだ。
「んごっ! んぐっ!」
驚いて身体を離そうとした私だが、予想していたのだろう、旦那さまに頭をしっかりと押さえられてしまった!
「こら、暴れるな」
低い声で旦那さまが呟く。その言葉に、私の身体は大人しくなってしまった。
(あぁん… 旦那さまのおちんちんが喉ちんこに当たってる…)
それだけで、私は感じちゃう。おまんこが、じゅん、と温かくなって、子宮が切なそうに疼く。
(…今日こそは、おちんちんを入れてもらうんだ)
私は決意を再確認した。今、この人に、処女を捧げたかった。
「…おい、清香。もっと力いっぱいつねろ」
旦那さまがぼそりと言った。遠慮しているのか、お姉ちゃんの指使いは、優しいけれど少し物足りなかった。
「で、でも…」
「何なら私がするか? ただ、私は加減が分からないから、傷痕をつけてしまうかもしれないぞ?」
実を言えば、そっちの方が嬉しくて「おお〜、おお〜」と肯定の意味で呻いたのだが、お姉ちゃんは私が悲鳴を上げていると勘違いしたらしく、
「いいえ、私がやりま! ごめんね、ごめんね、文…」
と、何度も謝って、両乳首を、ぎゅっ、と抓った。
「おっお〜!」
「ああ、ごめんなさい!」
(いや、お姉ちゃん、『もっと〜』って言ってるんだけど…)
私の呻き声をことごとく勘違いして、お姉ちゃんは、ぎりぎりっ、と私の乳首を捻り上げた。
…ごめんなさい、と言っている割には、結構容赦が無い。
(あぅ〜、乳首が千切れそう… お姉ちゃんスイッチ入ってない…?)
最近気付いた事だが、我が姉は頭の変なスイッチが入ると、欲望に歯止めが効かなくなる。そしてその欲望の対象は、だいたい私だったりする。
「ああ、文ちゃんごめんなさい… ごめんなさい… おっきい…」
(あ、今本音が入った)
と、いったん冷静になった私だが、お姉ちゃんが爪を立て始めて、いよいよ余裕がなくなってきた…!
「おっぱい… 文ちゃんのおっぱい可愛い… 食べちゃいたいくらいに可愛い…」
完全にスイッチが入った。こうなるともう止まらない。
「清香、噛んでもいいぞ…」
旦那さまが言った。私は驚いて目線を上げた。視界に外れて旦那さまの顔は見えなかったけど、多分、笑ってるのだろうと思った。
「か、噛む、んですか?」
お姉ちゃんが流石に心配そうだ。だけど、旦那さまの許可は命令だし、命令は絶対だ。
私の顔を覗き込むお姉ちゃんに、了解の意味を込めてウインクすると、お姉ちゃんは私の下に潜り込んでまずは乳首を咥えて優しく転がした。
「おお〜、ん〜…」
気持ちよくって、声が漏れちゃう。だけど…
「文、いくよ…」
ちゅぽん、とお姉ちゃんが乳首を話すとそう言った。そして、かりっ、と乳首に噛み付いた!
「おごあぁぁぁぁ!!」
目の前で火花が散った! 激痛は脳に直撃するとあっさり快楽に変わり、おまんこから、ぷしゃ、と愛液が飛び散るのを感じた。
(痛い、痛い! もっと、もっと痛いの… もっと痛いの欲しい…!)
私もスイッチが入った。こうなると、私も止まれない。
私は両手をおっぱいに添えると、空いているほうの乳首も、搾り出すようにお姉ちゃんに差し出した。お姉ちゃんはすぐに意味を理解すると、乳首に爪を立てて捻り上げた。
「んあぁぁぁぁ!!」
私は甲高い悲鳴を上げた。もう限界が近かい…
「清香、クリトリスもだ。イカせてやれ…」
旦那さまが、悪魔のような命令をだした。だけど、私にはそんなものを判断する意識は残っていない。「おっお〜! おっお〜!」と呻くだけだ。
お姉ちゃんももう止まらないのか、噛んでいた乳首を吐き出すと、両手で乳首を抓りながらお口を私の股間に近づけた。
はぁはぁ、とお姉ちゃんの息がおまんこにかかる… そして…
がりっ!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
クリトリスを噛まれて私は盛大にイッた。おまんこから吹き出た愛液がお姉ちゃんの顔に掛かる。
頭の中が真っ白… 私は、意識が遠くなるのを感じた…
ふと気が付くと、私はお姉ちゃんに背後からだっこするように抱きしめられて、ベッドの背もたれに2人して背を預けていた。
お口のおちんちんはもうない。どうやら、旦那さまはお口では出さなかったみたいだ。
「ん、気が付いたか… さて、どうする…?」
旦那さまが、全裸で私たちの前にいた。おちんちんは… わあ、すごく大きい…
「なにをですか…?」
ぼやけた頭で聞き返すと、お姉ちゃんが私のおまんこに手をそえて、「ここよ… 文ちゃん…」と耳元で囁いた。
私の沈んだ頭に、いっぺんに火が灯った!
「おまんこ! おちんちん入れて欲しいです…」
「だったら、ちゃんとお願いしないと… ね?」
お姉ちゃんはそう言うと、両手で私の太ももを持って、脚を限界まで開いた。
私は、蕩けた頭をフル回転させようとした、けど、口は勝手に想いを告げていた…
「旦那さま… いやらしい文のおまんこは、旦那さまのおちんちんが欲しくてたまりません… どうか、旦那さまのおちんちんで、文の処女膜を破ってください… お願いします」
そう言って、私はおまんこに両手をそえて、くぱぁ、と開いた。
「いいぞ、百点だ…」
旦那さまが優しく私の頭を撫でた…
(幸せ… 文は幸せです…)
旦那さまはおちんちんを私のおまんこに当てると、一気に腰を進めた!
「いっ!! イタ、い…!?」
予想外の痛みが私を貫いた! もちろん覚悟していた、けど、この痛みは…
「痛い… 痛い…!」
「あ、文ちゃん、我慢して…!」
じたばたと暴れる私を、お姉ちゃんが必死に押さえ付けた。
「ち、違うの! 痛いの! 痛い!」
それは、純粋な痛み… ただ、痛い… 決して快楽になど変わってくれない、肉体が上げた悲鳴だった。
「…ん?」
私の異変に気付いたのか、旦那さまが腰を止めた。そして、
「ふむ」
と確認するように頷くと、ずるずるとおちんちんを私のおまんこから引きずり出した。
「無理だな」
それは、残酷だった…
「もともと身体のサイズが小さい。受け入れるには早いのだろう。ふん、収まりがつかんな。清香、後ろを向け」
「え? で、でも… きゃっ!」
旦那さまは、お姉ちゃんを無理やり後ろ向かせると、一気に挿入した。
おちんちんには… おちんちんには… 私の破瓜の血が付いているのに…!
「あぁ! 旦那さま! そんな、いきなり… あぁん…」
私を責めて濡らしていたのか、お姉ちゃんはまったく痛がらなかった。むしろ、怒涛の快楽に必死で耐えている様だった。
「ほら、妹のおまんこを舐めてきれいにしてやれ。痛そうだ」
「ああ、文… ごめんなさい、ごめんなさい…」
お姉ちゃんは謝りながら、私のおまんこを舐め始めたけど、旦那さまに突かれるたびに、舌の動きは止まった。
「ごめん、なさい… イクぅ…」
押し殺した声を上げて、お姉ちゃんはあっさりとイッた。
「ふん、相変わらずだな… 時間が無い、手加減せんぞ」
旦那さまは、前と同じようにお姉ちゃんの両手を掴み、力強く腰を打ちつけ始めた!
「やぁぁぁぁ!! それ!! それされたらっ!! すぐにイッちゃ… あ、イクーーー!!」
髪をぶんぶん振り回し、お姉ちゃんは半狂乱になって叫んだ。それでも、旦那さまは腰の動きを止めない…!
「イッちゃう…! イッちゃう…!」
ビクンビクンと、お姉ちゃんは跳ねた。この前は遠目だったが、間近で見るとものすごいド迫力だ!
「よし、出すぞ! 受け止めろ!」
一際激しく腰を打ち付けると、旦那さまは低く呻いた。膣内出ししてる… お姉ちゃんに膣内出ししてる…
「ヒッ… あ…」
お姉ちゃんは顎を、くっ、と反らして、あっさり気絶した。旦那さまが手を離すと、どさりと私の脚の間に倒れこんだ。
(今日は私が貰うはずだったのに…)
なんとも言えないもやもやを、私は強引に押さえ込んだ…
「そんなに膨れるな」
気絶したお姉ちゃんをベッドの端に移して、旦那さまは頬を膨らませて体育座りしている私に声を掛けた。
「だってぇ… 今日は私に注いでもらうはずだったのに… お姉ちゃんばっかり…」
「お前は身体が小さい。無理なものは無理だ」
きっぱりと言って、旦那さまはペットボトルの水を飲むと、ベッドを降りてSM道具が入っている棚を開いた。
「さて、と。お前には私を満足させることが出来なかった罰を受けてもらう」
「えっ!」
どうして私が罰を…? と驚いたけど、スイッチの入った私の身体は、罰という言葉を聞いただけで、きゅん、と感じてしまう。
(罰… どんな罰だろう)
物欲しそうな眼をしていたのだろうか? 旦那さまは珍しくニヤリと笑い、SM道具を一つ一つ手に取って見せてくれた。
「何が良い? 鞭で背中を叩かれるのが良いか? 蝋燭の蝋を垂らされるのがいいか? このたくさんの針を、お前のおっぱいに全部刺してやろうか?」
恥ずかしい… 旦那さまが説明するたびに、どんどんと私の中の期待が膨らんでいく…!
「それとも、このパドルでお尻を散々叩いてやろうか?」
「あっ…」
旦那さまが、革製の団扇のような物を手に取った瞬間、私は思わず声を出していた。
お尻を叩かれる… 幼い頃、いたずらをしてお姉ちゃんに叩かれたことを思い出した。
「ふん、これが良いか」
旦那さまが、革製の団扇―パドル―をひゅんひゅん振り回しながらベッドに座った。
「腹ばいになれ…」
冷たい声で命令される。ぞくぞくする…
「はい、旦那さま…」
ぶるぶると震える身体をなんとか操って、私は旦那さまの膝の上に腹ばいになった。
「だ、旦那さま… 文はおまんこで旦那さまを満足させられませんでした… 奴隷失格の文に、お仕置きをしてください…」
そう言うと、旦那さまは褒めるように私の頭をぽんぽんと叩いた。そして、「数えろ…」と呟くと、パドルをひゅんと振り上げた。
パシィ!
「あん! い、いっかい…」
お尻から痺れるような痛みが拡がった。この痛みは、気持ちいい痛みだ…!
パシィ! パシィ!
「あぁ、にかい… さん、かい…!」
旦那さまは容赦なかった。休む間もなくパドルを打ち付ける。乾いた音が10回を超えたとき、旦那さまは一度動きを止めた。
「じゅ、じゅっかい… ああ、ふぅ…」
私が息を吐いていると、突然おまんこに旦那さまの指が挿入された!
「やぁん!」
「ほら、見てみろ…」
目の前に差し出された旦那さまの指を見ると、それはヌラヌラと光り輝いていた。
「ケツを叩かれてるんだぞ? どうしてこんなに濡らしている?」
「そ、それは…」
自分でも答えが分からない。
「教えてやるよ。それはお前が虐められて悦ぶマゾだからだ」
「ま、ぞ…?」
(ああ、そうか… こういう身体、気持ちをマゾっていうんだ…)
ようやく納得できた私は、深いため息を吐いた。
「旦那さまは、マゾが嫌いですか?」
「いいや」
「好き、ですか…?」
「私に従順なマゾは好きだ」
その言葉に、私は深く安心した。
「じゃあ、文はマゾがいいです… 旦那さま、文を、もっといじめてください…」
「ああ、しっかり開発してやるよ…」
旦那さまはそう言うと、私の顔を上に向けて優しくキスをしてくれた…
「さあ、続けるぞ。イクまで叩いてやる…!」
「あぁん、おねがいします…」
再び始まった歓喜の痛みを数えながら、私はしっかりと自分の役割を確認した。
(おまんこが無理なら、この身体で旦那さまに尽くそう…)
不本意な結果に終わった、それが私の破瓜の思い出だった…
以上です。
埋まらんかったな〜。
GJ!!!本編の方も期待してますぜ旦那。
GJ!! マゾ、いいなあ。文かわいい。
>>714-720です。
埋めることに意識がいきすぎて、らぶマネ!作者さんの投下時刻も確認せず
勢いだけで落としてしまいました。
他にもたくさん感想を付けたい方がいらっしゃったと思うのに
間に入ってしまってすみませんでした。囲碁気を付けます。
ちょ、またやった。
×囲碁
○以後
なんでこんなに誤変換が多いのか
文タンドM娘過ぎるw
マジ萌える
GJです!
保管庫欲しいね…。
Gj!!
これからデレると分かってるからニタニタできるw
残り5KB。落としに来ました。
狭いけど、というセリフが謙遜ではなくそのまんまだったのは初めてだ。
学生か単身者向けだろう1Kのマンションは、オートロックも付いていたし、エントランスも広かった。
彼の、川島さんの部屋の玄関の前までは本当にごく普通の、いや、
ちょっとこの人ほんとに結構お金持ち? と思っちゃうような作りだと思ったのだ。
まずドアを開けた玄関のたたきに靴が散乱していた。
「あの……」
「ん?」
その靴を蹴って場所を空けながら彼は自分の靴を脱いだ。
「どなたかがいらっしゃるのでは……」
少なく見積もっても七、八人くらい。
1Kに?
ありえない。
「いないよ。ああ、これね。全部僕の靴。適当によけて」
真っ暗な中で靴を履いたら、左右違う組み合わせで靴を履く。絶対間違って履く。
私は出来るだけ靴を踏まないように、蹴らないように、隅っこで靴を脱いで上がった。
それでも何か踏んだような気はしたけど。
廊下にもごちゃごちゃと物が置いてある。
古新聞、古雑誌、資源ゴミに出そうと思ったのだろうかペットボトルやアルミ缶も
それぞれ分別はしてあるのに、ゴミ出しの時間に間に合わなかったのか
そのままここで待機してます、って感じだ。
積み上げた新聞や雑誌の下の方はなんだか変色しているし、
ペットボトルやアルミ缶を入れたビニールも埃が積もってカサカサした感じになっている。
「川島さん、掃除嫌いですか?」
「なんで?」
すたすたと短い廊下の先にある台所へ入っていった彼はポットに湯を沸かし、
インスタントコーヒーの瓶を手に取っていた。
「いや、あれ」
台所の入り口、ってほどの入り口はないけど、そこに立って私は廊下を指さした。
「掃除したからゴミが出たんだよ」
真理だ……。
彼は鼻歌を歌いながらカップを出す。
「ただ、ゴミ捨て場まで持っていけないだけ」
はあ、と返事をして部屋へ目を移して、また驚いた。
「やっぱり掃除嫌いなんでしょう!?」
本で埋まっている。
おそらく彼の定位置なんだろう、パソコンが置いてある小さなテーブルの前だけ
ぽっかりと空白があり、あとは本棚と、本棚に収まりきれないのだろう本が壁のように積まれている。
本の壁の延長上にベッドがある――ように見えるけど、
もしかしてベッドだと思っているのは本の上に布団を置いているだけかも知れない。
「だから嫌いじゃないって」
彼はそう言って手招きした。
部屋でコーヒーを飲むのは無理だから、だそうだ。
流しに向かって二人で並んで立ち飲みだ。この人、確か食事は保証するって言ったよね。
「僕の所有物がこの部屋の収納の限界を超えたの。それだけ」
こともなげに言うけど、すっごく言い訳くさい。
「私、本当にここに住んでいいんですか?」
人間が住めるとは思えないんだけど。
「いいよ。もちろん。実験に付き合ってもらわないといけないし」
「実験!?」
「ここに住む条件だったでしょ。きみがするバイト」
「あ、ああ」
そうでした。なんかあやしいバイト、とか言われました。
しかしこの本しかない部屋でなんの実験ができると言うんでしょう。
むしろまだ、この部屋の掃除とか家事全般とか言われた方がよかった。
「夢を見てほしいんだ」
「夢? 夢ってあの、寝てるときに見るあれですか?」
「うん。寝てから見てください。起きたまま見られるとちょっと困る」
この人どっかずれてる。
「でも、ただ夢を見られても困るのね」
彼は空のカップを流しにおいて水を張った。
コーヒー染みをつけないように、か。
優しげな喋り言葉といい、わりと細かく気を配る感じといい、
悪い人には思えないんだけどとにかくわけがわかんない。
「薬を飲んでから寝てほしい」
「薬? なんの?」
「まだ名前は付いてない。開発コードしか」
あの大学、薬学部ってあったかー!?
っていうか、あの研究室、みょうな機械はいっぱいあったけど、
ビーカーも三角フラスコもアルコールランプも無かったぞ!
私の、化学に対するイメージはすごく貧困だ、と自分で思った。
「危険は無い、と思う。マウスでの実験は済んでる。
マウスは今も元気だ。どこにも異常は見あたらない。ただ――」
「ただ?」
ごくり、と喉が動く。
口の中がからからに乾いてくる。
コーヒー……。あ、全部飲んでた。
「彼らは喋らないからね」
彼は苦笑した。
それが何かをごまかしているように見えたのは、絶対、私の気のせいじゃない。
「それ以上はどうしても人に頼らざるを得ない。本来は学生の有志を募るんだけど、
あそこでも言ったように春休みに入ってしまって、学生は通学してこない。
新学期になるまで待つしかないかな、と思っていたんだ」
気のせいじゃない。
胸がどきどきする。
心臓が喉までせり上がってる感じがする。
首の後ろのあたりがぞわぞわする。
断った方がいい。
逃げた方がいい。
たとえまだ夜は時々氷点下になりますよ、な気候でもここで寝ちゃいけない。
「他に質問は?」
頭の中は危険を知らせるなにかでいっぱいなのに。
そう言って、ちょっと首をかしげるようにして笑った川島さんの顔に見とれた。
こう言っちゃなんだけど、私の兄は美形の部類に入る。そりゃもう、男の恋人がいるくらいさ。あんまり関係ないか。
母も綺麗な人だった。
そんな家庭環境で毎朝毎晩自分の顔を鏡で見てると心底思うのだ。
人間はやっぱり見てくれだ。
見た目で第一印象が決まる。
綺麗な人は何かにつけて有利だ。
川島さんは、綺麗、とは違うと思う。
それでもちょっと長い黒い髪がふとした拍子にさらりと額にかかる様子だとか、
それを長い指がかき上げるのとか、細身の黒縁めがねの奥の一重の目が
野暮ったいどころかきりりと涼しげに見えちゃうのとか。
まだほんの数時間しか一緒にいない人の、こんなちょっとしたところに目を奪われてしまう。
身の危険を感じているのに、身体が動かない。
もしかしてこれは話に聞く吊り橋効果ってやつですか。
私はなんかよくわかんないうちに、これは恋かも、なんて思っちゃってるんですか。
そ、そ、そ、そんなわけないだろー!
「質問がなければさっそく……」
「あ、あの、バイト代は」
さっそく実験、と言われるのが怖くて咄嗟に口に出した質問が金だった。
屋根のある場所に寝かせてもらえるだけでもありがたいのに、
まだバイト代を要求する気なのか、私は。どんだけ図々しいんだ。
言ったとたんに急速に恥ずかしくなって下を向いた。
「ああ、じゃあまず契約書にサインしてもらって」
「契約書!?」
「無認可の薬物を摂取してもらうので、不慮の場合に備えて一応。
ムリヤリ飲まされたりしたわけじゃないです、ってのがいるんだよ」
なにそれ!?
そのそこはかとなく怖い言葉はなに!?
でもお金がないって言うのはそういう事なんだ。
父さん。
私、女としては値段が付かないかも知れないけど、人類としては値段が付くみたいだよ。
ちきしょう。
今度生まれてくるときは、もしも家族が解散しても身体で食っていけるくらいの容姿に生まれたい。
家族解散前提か。
なんだかすごく捨て鉢な気分で、川島さんの差し出してきた紙にサインをした。