【妖精】ちっちゃい女の子でエロパロ【小人】2

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1名無しさん@ピンキー
妖精さんをはじめとする普通の女の子より身体の小さな女の子で
エロ妄想・萌え談義・小説創作を行うエロパロスレです。
妖精だけでなく、精霊、小人、人形、etc…。
身体が小さいという特徴を持っている女の子が出てくればOKです。

オリジナル、二次創作、エロ、ほんわか、鬼畜、何でもアリ!
てのひらサイズの小さな女の子を、愛でたり弄ったり嬲ったり苛めたり
色んな意味で可愛がってみませんか?
2名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 22:26:20 ID:JCBgZl4e
前スレ
【妖精】ちっちゃい女の子でエロパロ【小人】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1183026320/

関連スレ

半角二次元板 - 妖精・精霊総合スレC
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/ascii2d/1175782000/

キャラサロン - 【妖精】ちっちゃい女の子を愛でる館2【小人】
http://same.u.la/test/r.so/sakura02.bbspink.com/erochara/1127630363/

他にもあったら補完よろしく
3名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 22:33:13 ID:JCBgZl4e
スレ立てにさいしなにかしら考えてた人いたらスマン
4名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 22:43:11 ID:JCBgZl4e
それ以前に、次スレ誘導し忘れてることに気づいた。
少々勝手が過ぎてるか…。
申し訳ないです
5名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 13:08:46 ID:8S2M578t
      i\ /i   
   ,'\<〃 ゙̄ヽ/',
   i   彡ノルリル〉 i
   \ リ.il.゚ ー゚ノi/ 乙
     丶ハ lxl 〉
    / ∪  |J 、
   ∠___./,,,,,,,,,,,| ._ヽ
       しソ
6名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 15:31:48 ID:SQDVa0Tq
>>1


ところでキャンパスの人は帰ってくるのかな?
俺はあの人のが一番好きだったわ
7名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:54:51 ID:mOKcP50o
どうだろうな。前回と前々回の投下間隔からすればまだ来なくてもおかしくはないんだが…。
やっぱこればっかりはわからんやね。


さて、来ないなら来ないで好きに使わせてもらうよ。
前スレと同じくあらゆる批判は受け付けない。
まあ、ちゃんと他の作者さんが来れば消えるから安心してくれ
8名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 22:58:16 ID:mOKcP50o
--------------

「なにしてるの?」

ここは自宅の一室。
外はまだ明るいのだが中は閉め切っているため暗く、あまり健康的とはいえない雰囲気だ。
そんな空間の片隅に、ひとつの机が浮かび上げられていた。
その机の上には、それぞれ材質の違ういくつかの物が淡い光で机と俺を照らしており、俺はその机の前に座っている。
首からはいくつものストップウォッチをさげていて、いまはそのうちの二つを手に握って時間を計っているところだ。

「実験だよ。実験。さっきいっただろ?」
「だからなんの実験って…あ、えーと、魔法媒体の?」
「そのとおり」

ちなみに、魔法媒体というのは俺がつけた便宜的な呼称にすぎない。
どうもこの妖精、フィリーはそういう用語で魔法を覚えておらず、
どちらからというと勘と経験をもとに動く職人気質であったのため、こっちで適当につけさせてもらった次第だ。
そこらへんは俺の呼び名、タカキと同じ感じだな。いつの間にか呼び名の方が一般的な名称より定着してる辺りとか。

「いっぱい時計をもってるってことは、魔法をためられる時間でもはかってるの?」
「そんなとこだな。まあ、正確には相対的な時間を、だけど。」
「…んー。そっかぁ。それで何か収穫はあった?」
「まぁな」

魔法媒体自体についての説明は簡単だ。
魔法は物体に込められる。その性質を意識した物体の呼称が魔法媒体なのであって、
それ自体はそこらへんにある普通のものにすぎない。
げんに机の上で転がってるものは、化学っぼいものもあれば鉛筆やただの石ころなど日常的なものも多い。
今回はその魔法を込められる有効時間を、それぞれの質量を一定にして計ってみたわけだ。
その結果は現在進行形だが、いくつかの推測は立ってきている。

「言われてたことだけど、やっぱり魔法の込めやすさには違いがあるみたいだな。
 こいつらなんかはなかなか光らなかった。まあ、その分薄くだが今も光は続いてるけど」
「…んー。熱しやすく冷めやすいものと、熱しにくく冷めにくいものがあるってこと?」
「正解。多分だけどな」

魔法伝導率、みたいなものがあるんだと思う。
その原因となるものはまだ不明だけど、魔法を伝導するなにかの自由度が違いでもするのだろう。
しばらくは魔法伝導率のデータを集めて、そのあたりへの手の出し方を考えることにでもするかな。

「あと興味深いのは、いくつかの純物質を混ぜてその全体に魔法を込めたんだが、
その有効時間が、単純にそれぞれの純物質の有効時間を足した時間になってくれないってことだな。
遅くなることもあれば早くなることもある」
「うん、そーみたい。あれかな?団子しかなかったところに棒が現れて、四段消しが出来るようになったとか」
「…棒だけでも四段消しはできるぞ?」

不純物の作用が単純にいかないのはよくあることだが、その把握が難しいのもよくあること…。
ここらへんはじっくりと実験をかさねて、モデル作りを繰り返すしかない、か。
それまでは純物質を中心に、実用的な応用を考えたりするとしよう。

「ね、それでさ」
「ん。なんだ?」
「なにかいたずらに利用できそうなこと見つかった?」


「――――――――――さぁ?」
9名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:00:20 ID:mOKcP50o
「ちょっとぉっ!!」

俺の目の前に指を突き出し憤然と抗議の声を上げるフィリー。その高い声が耳にキンと響く。
そんなちっこい体と顔で怒られても正直効果はないと思うが、関係悪化を防ぐためにも真面目に考えねばならないだろう。
少々うかつな発言だったと軽く後悔しているが、前向きに対処したい。と誰かに決意表明しておく。

とりあえず、まあまあと手を軽くだして押しとどめ、少し距離をとることには成功した。
(いや、怒っただけでそんな目を潤ませて顔を赤くするのは止めなさいっての。お前の将来が少し心配になる)
以前そう言及したはずだがとくに改善はないみたいだな。まあ、癖を直すのはなかなか難しいものか。
その時はさらに顔を赤くしてたが…。あれは果たして恥ずかしがってたのか嬉しがってたのかさらに怒ってたのか。
なんにしても今それをいうのは状況が混乱するだけだな。昼飯どきも迫ってきてるし、早めに宥めおわっておきたい。

「少し落ち着け。別に何も考えてなかったわけじゃない。
…まあまず、魔法媒体というのは魔法を設置的に使えるのが特徴だな。
その効果が続く有効時間を予測することが、トラップ的いたずらに活用できることはうなずけると思う」
「んんー。まぁね」

不承不承という感じでこっくりと頷く。そんな人間味にあふれた目の前の妖精を見ると、
他の妖精も体の作り以外はほとんど人間に近いのではないのだろうか、とか思えてきてなぜかやるせなくなる。
まあ、それはいま本題じゃないから置いておこう。そろそろ集中しないとうっかり惨事になりかねない。

「そもそも、俺にとって魔法媒体の存在はけっこう重要でな。これがないと今のところ何もできそうにない」
「……え。そうなの?別にわざわざ魔法を媒体にいれて使う必要なんてないんだよ?」
「確かにそうなんだが…。俺が魔法を使うとき、自分で記憶をほとんど閉鎖してるだろ。
やっぱりどうしても柔軟な対応がとれなくてな。機械的なことしかできなくなる」
「…むー、そっかー。そんな状態じゃふそくのじたいに対応できないし…。なによりいたずらしてても楽しくないよね」

言ってることは一応全て本当のこと。あとあとつっこまれても困るからそこらへんは注意してる。
本気で怒らしたくはない存在のベスト3にフィリーは入ってるしな。色々反則的すぎるんだ。
まあ、一度入力すれば機械的な反応を返す魔法媒体は、実験するのにとても便利って側面もあるんだが今いうことではない。

さて、少し落ち着いてきたこの妖精兼魔法先生(マガ○ンの彼ではない)をさっさと宥めきらないとな。
10名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:02:49 ID:mOKcP50o
「まあ、そういうわけで、
魔法媒体の有効時間を計ることは俺の魔法使用全体に関わることであり、
当然魔法のいたずらにも関わることでもある。
別に約束をないがしろにしてるわけじゃないよ」
「むぅ…。でも、さっき"さぁ?"とか普通に言ってたよ?
もしかしてそれ、いまかんがえたことじゃないよね?」
「…あー、あれはつい、な。
まあ、たしかにさっきは考えてなかったけど、それ以前はちゃんと考えていたってことだ。もちろん今もな」

あのときは完全に今後の実験スケジュールしか頭になかったからまともに答えられなかったんだが、
たしかにあれはまずかった。
なにしろ、"フィリーと一緒に魔法でいたずらをするため"という名目で彼女から魔法を教わってるわけで、
彼女がそれなりに苦労し続けてくれる理由の一つは、その目的のためでもあるわけだから。
それを完全にアウトオブ眼中だと答えれば、彼女でなくても怒るのは当然といえよう。

正直底冷えするものを感じながら、それを押し込めて"どうだ?"とフィリーに目で尋ねる。
そうするとなんとか彼女も息を吐いて力を抜いてくれたようだった。

「…もう。ホントに実験が好きなんだから…。
あまりにさらっというから結構ショックだったんだからね?」「ま、許してくれ。そんな実験を潰してまでちゃんと付き合ったんだしな」
「へっ?…ぁあっ。ごめんっ! 実験の邪魔しちゃったっ!」

あー、俺の無思慮な言葉が原因だから気にすんな、といってポンポンとフィリーの頭をいたわりながら叩く。
既に淡い光は失われており、今ふたりを照らしているのは机に置いたライトスタンドの人工の光だけ。
よほど視野が狭まっていたのか、フィリーは光の変化にまったく気づかなかったようだ。

そのままサラサラとしたフィリーの髪を撫でていると、わりと気持ちいいみたいで、
少し気にしてそうだったその顔が、くすぐったそうに緩んできていた。
目を閉じて感触にひたってる姿から完全に落ち着きを取り戻してるのを見て取り、しばらく撫でたあと手をはなした。

まだ撫でてほしそうに細目を開けて見上げるフィリーを横目に苦笑し、
その流れで閉め切っていた窓を雨戸も含めて開け放つ。
 途端に窓のむこうから太陽の光が差し込み部屋を明るく染め上げた。
篭もっていた空気もわずかに流れだし僅かに汗をかいた肌が風を感じる。
いくぶん健康的になった部屋で伸びをすると、ちょうどよい空腹を感じ、意識が台所に向く。
ついでにした深呼吸には、心地よい花のような匂いがまじっていた。


「…さて、と。飯にしようか」
「―――――うんっ」
11名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:10:52 ID:f85fKTUs
このスレにおけるSS投稿一番乗り乙&GJ!
12名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:31:15 ID:mOKcP50o
そんな共犯系のテスト3。
てのつけ忘れた。ま、どうでもいいことだろうけどな


誤字訂正>>8
職人気質であったのため×
職人気質であったため○
>>10は改行ミスってたスマソ
13名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 23:38:44 ID:M7DWepdf
14名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 11:52:40 ID:FZM/9PE7
今日も今日とてポーカーフェイス常備の青年と科学知識にかぶれだした妖精がいるとある家の一室。
「タカキー」
「なんだ?」
「おり紙飛行機の限界スペック超えてない?」
「そうだな。そろそろ一時間になるか」
 部屋の中央で紙飛行機が円を描いてとんでいる。音はなく、その速度が衰退する気配もない。
「…器用貧乏」
「その四字熟語使ってみたかっただけだろ」
「ほんの少し風を起こしてるだけなのになぁ…」
「閉め切った場所でないと厳しいんだけどな」

「…あ、そういえばここ最近家にこもりすぎじゃない? たまには外にもでよーよ」
「そりゃ急激に進展したからだろ。 平日は朝7時から出かけてるはずだけど」
「通学は散歩とはいわない」
「ただの散歩でいいか?」
「んー、できればもう少し体動かしてほしいなぁ」
「贅肉は増えてないはず」
 筋肉はさほどついてないが、たしかに太ってるわけでもなければ華奢でもない。
「そういうの関係なしに、体を健康的に動かしていてもらいたいという…」
「えらく母親じみた考え方だな」
「う゛。そ、そんなはずは…」
「いつまでも 元気な姿を 見ていたい(季語なし)なんて」
「あぁあ…」ズーン
 その微妙な擬似俳句にわりと打ちのめされてる妖精。擬音付き。
「いつのまにわたしそんなオバサンじみた考え方に」
(歳自体はそこらのおばさんぶっちぎってるんだけどな)

「…あ、でもでもっ。それだけなら家族愛ということにも」
「いま過去を振り返ると少し感動できることに気づいた」
「…前ってそんなにひどかったっけ?」
「下等な人間風情が」
「ちょっ、そこまでひどくは」
「ひどくは?」
「――ごめん、反省してます。……タカキ限定で…」
まだ人間自体には思うところがあるのだろう。ボソッと付け足す。
「いまも『人間ごときが小賢しいっ』てのはデフォなのか」
「ソレどこの魔王? 少し底上げされてるとは思うんだけどね…」
「ま、無闇に人を信じるようになるってよりはいいけどな」
「そうそう。危ないひとは危ないし」
「妙な選民思想はちゃんと変えとけよ?」
「うっ。………はい」
 自覚させられることはあったのか。渋々ながらにもうなずいている。
「それじゃー、自然公園にでも出掛けるか」
「あ、うん!!」

 あの紙飛行機は今までずっと回ってました。


そんな共犯系のテスト4。
というわけでまた少し使用。てかなかなか来ないもんだな。
さて、野外授業はなにをすべきか。
15名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 18:25:06 ID:vhAoKonV
16名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 03:51:15 ID:MuqAgi7i
>>14 なんかほのぼの文章でいいなw
  それより妖精さんを口の中でハミハミしながら
  舌でペロペロするSSマダ〜?
17名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:23:54 ID:EEJH0Rz1
妖精には、この世界のもう一つの顔が見えているらしい。
その顔こそが魔法の存在を作るのだが…、私のような人間はそれに触れられる手を持ってるだけで、それを見通す瞳は持っていないというわけだ。
その違いは(中略)
そんな瞳でも、なぜか私の心は見通せないらしいが…。どれほど特殊な精神構造をしてるのか、正直自分でも気になっている。

(タカキのレポートより抜粋)

-----------
ところ変わってタカキの家から自然公園に行く途中の、散歩道でのひとコマ。

「よっす〜。 …あれお前イヌなんか飼ってたっけ」
「こんにちは山下くん。 犬の散歩とは精がでるね」
「こんにちは斎藤さん。 ちょっと知り合いのイヌを散歩させることになりまして」
『山下くんってダレ?』
(とりあえず俺の名前ではないな)
「俺の発言は当然のごとくスルー……いや…されてない!?」


ただの第三者から見ると普通の会話風景だが、メタな視点ではあきらかにカオスが発生しはじめている。
流そうと思う。
ここに出ている4人の内、無表情ぎみの青年とイタズラ好きの妖精については軽く割愛しよう。
残りの2人はタカキの友人で、ウルサいのがヤマト、カオスの素がアズサだ。
ヤマトはタカキと高校の元同級生。アズサはヤマトの妹で、その高校の生徒会長をやっている。とまでいえば大体の人間関係はつかめると思う。
なぜタカキがご近所さんちの小型犬(♀・2歳)を連れているかといえば、散歩と運動も兼ねられご近所付き合いもできるから。というだけのことらしい。やはり器用貧乏なのかもしれない。
そのイイトコ取りしたがる精神が微妙に貧乏くさいのだ。…それは割と普通の精神だし器用貧乏とは呼べないかもしれないが…。まあいい。

「うるさいぞ兄さん…。 振った話題を返してもらったのだから普通に会話したらどうだ」
「いやってかコイツ俺とはタメで話すから! 明らかに会話の矛先はオマエだろ!」
「カワイイ犬っころだな〜。 よしよしよしよし♪」
「自分から振ったのに聞いてすらいない!?」
「…やかましい人だな。 兄さんの助言に従って私が山下くんの話題に応えてるだけじゃないか」
『なにこの漫才』
(ツッコミの方がアホ)

タカキ達がしばらく漫談を聞く側に回っていると会話はふいに沈静化した。ヤマトがそばのベンチに腰掛けてなにやらもう空気扱いでいいからほっといてくれとかブツブツいっている。

「兄さんは気体の中でも一酸化炭素とかだし…」
「存在が有害!?」
『復活はやー』
「窒素扱いして欲しかったならもう少し反応性を落としたほうがいいな」
「ブルータス……お前もか…」『仲間いり?』
(つきあいも必要)
『…そうデスカ…』

ガクッと膝をついてうずくまっているヤマトを尻目に、突然ふるふると震え出すアズサ。整った顔がなぜかほのかに染まってるのはプラス得点だが、全体評価ははっきり言って奇怪極まりない。

「このスルドくも容赦ない毒舌……キミは、いや…アナタは、…山下くんではなくもしかして………」
 震える声でしゃべりだすアズサ。
『え、いまさら…?ていうか毒舌はあの娘の方がずっとスルドいし容赦ないと思うんだけど』
(全面的に同意だ)
 数瞬のタメの後アズサが口を開く。
「もしかして後藤さん!?」
『誰?』
(知らん)
18名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:28:38 ID:EEJH0Rz1
突然震えて叫び出す女性。男泣きに震えてうずくまる男性。どこの魔界だここは。
ヤマトがコンナコトになるのはいつものことだが、アズサまでこうなることはありえなかったはずなのだが…。最近までは。

(フィリー……女性の方の思考を読んでみてくれないか?)
『あっ、えーと。…かなり混乱しててウマく読み取れないんだけど……なんかすごいハズカシガってる』
((恥ずかしいならやるなよ))

先ほど以上に赤面してるのはどうも激しい羞恥を覚えているかららしい。手持ち無沙汰に服の裾をニギニギしてタカキの反応をうかがうようにしているのもその表れか。
まるで捨て身のギャグがスベって居たたまれなくなっているかのような感じに近い。というよりこれはまさに…
((自殺的ジョークにリアクションがなくて困ってる?))
『? なにか分かった?』
 返事を求めて問いかけてみる妖精。
(……アズサはかなりの近視で、メガネをしてないとほとんど人の顔の見分けがつかないんだ。とだけ言っておこう)
『そういう次元じゃないよ!?』
(…その辺が題材なんだろ)
『………?』

その間も混乱の渦中に居座るアズサ。いつもは生徒会長らしく凛としている表情がいまはなんだか泣きそうである。
斎藤兄妹のうち妹は一応マトモなはずだったのだが、最近はいつもどおりの兄妹ネタかと思いきやいつの間にか暴走していることが少なくない。タカキも気になって原因の目星をつけようとしているのだが、どうにも扱いに困っていた。

『というかこの人…前に家に来た人だよね……全然キャラが違うんですけど』
(徹夜でもしたんじゃないか?)
『……そろそろ再起動させない?』
(同感だが魔法で無理矢理直すなよ?原因はさぐりたいから)
『…なんかもうメンドクサイな……えぃっ』
(アホ)

妖精がその小さな指を突き出した直後。突如として大きな風が発生し、不自然なまでにアズサのスカートをめくり上げていった。意外にも可愛いらしい下着がいま白日のもとにさらされる。
近くには人がおらず、しゃがんで俯いていたヤマトはモロに目にゴミが入ってそれどころではなかったのが不幸中の幸いか。
混乱による忘我のなかの唐突な出来事に、なにもできず凍るアズサ。
スカートも元に戻って数秒後。

「っ、キャァァァァァアアアアア!」

と、なんとも普段のキャラから乖離したかわいらしい悲鳴を上げてタカキの目の前を走り抜けていった。
沸騰しかけた頭にこの珍事のショックは荷が重かったらしい。

「…ヤマト、出撃」
「了解。 …スマン。あとでフォローに手を貸してくれ」
「わかったからさっさと行ってやれ」

そう言われうずくまったままの体制を活かしたクラウチングスタートで駆け出していくヤマト。見送る青年と妖精。どことなく台風一過のような雰囲気がただよっている。

『やっぱり…マズかった…?』

そう思えるなら何故ためらいなくスカートめくりなどしたのかと小一時間(ry
何にしてもタカキの友人にああいうイタズラをしたことは一応気にしているらしい。
家を訪れる客人にああいうイタズラをすることも珍しくないはずなのだが…外と中の違いだろうか。

(…いや…本来なら収拾も大変そうだし注意するとこだけど……正直今回は助かったな)
『パンツ見れたから?』
(対応に困ってたからだよ)
『…ジョーダンだってば』
((アズサも冗談がいいたいならこのぐらいのものにしとけばいいものを))

何を無駄にはっちゃけてるんだか、と普段が理路整然としているだけにカオス化の目立つアズサに一言アドバイスを送りたいタカキである。
キャン、といままで黙っていた小型犬が散歩の再開を急かすように声を上げた。
知り合いがいなくなって初めて促すとはなんとも空気の読めるイヌだといえよう。怯えて動けなかったのかもしれないが。

…さて、立ち止まってても仕方ない状況ではある。しばし対応策を練っていたタカキだが、手に持つリードを握り直してふたたび歩き始めた。
19名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:31:44 ID:EEJH0Rz1
『結局なんだったの?いったい』
(休日に一緒に出掛ける仲のよい兄妹が、魔の世界に足を踏み入れた友人+αと遭遇する話)
『間違ってはいないはずなのにツッコミどころ満載な気がするよ…』

そんな会話をしながら、2人(見かけ上1人)と一匹は自然公園へと向かっていくのだった。

その一方、肩を落としてとぼとぼ歩いてたアズサにヤマトが追いつき今は並んで歩いている。補足目的のカメラワークだと思ってくれれば問題ない。
ちなみに今アズサはメガネ着用中だ。

「…はぁ……またウマくいかなかった…」
「下着も晒してたみたいだしなぁ」
「見ていないだろうな」
「あぁ…。残念なことにな……がはぁ!」
 左わき腹を貫通するような右拳にヤマトが撃沈しかかっている。
「…先輩は先輩で、視線をズラそうともしなかったのが少し複雑ではあったがな……見れたのに」
「げ、ほっ……女性の下着を見ようとすれば…面倒なことになるとわかってるからだろ…こんな、ふうに…」
「それがわかっていて何故兄さんは改善しない」
「…健康な、漢ですから…」
「理性が弱すぎるだけでは?」
「ひどっ!」
 追い込みの精神的ブローも入りついに倒れ臥すヤマト。
「ここは人通りもあるんだから倒れてるとジャマだぞ兄さん」
「フフっ…我が妹よ…とりあえず復活できたようで何より…でもこの扱いには遺憾の意を示したい!」
「残念だからなんだというのだ」
「…語意的ツッコミを受けると何も言えなくなるのですハイ」
「いつもいってるが、あまりすべてをノリでやり過ごせると思わない方がいい」
「…ワカリマシタ」
 いつの間にかの説教ムードだが、兄と妹の威厳関係が逆転してるのでとくに珍しいことではない。そんな感じで会話をしてく2人。
「しかしアズサ。さっきのドタバタはノリ以外の何物でもなかったんじゃないか?」
「いや……いつもの少し固い関係を脱するにはできるだけ突飛なもののボケがと…一応考えた結果なんだ…」
「あ、最近何回も変になってると思ったらそういうことか!」
「…まぁな。今回はどうも突飛すぎたようで見事にスベってしまったみたいだが」
 やる本人が無理を感じるようなものは失敗して当然でもある。というかミスっても立て直せないのだ。
「てかそういやなんでいまさら?」
「…まぁ…だいぶ親しくなってきたし。兄さんを挟まずジョークが言えるようになれたらな、と」
「あぁナルホド……だから速攻でオレを沈めたのか!?」
「別にそういう意図はなかった」
「あ〜そういやそれがいつも通りだもんなぁ……あれ?なんか目から涙が」
「ゴミでも入ったのか?」
「心の痛みがイタいんです!!」
「頭痛が痛いよりマズい気がするな…いや…まだ同レベル、か…?」
「もういっそケナしてくれ!」

 そしてまた倒れ伏すヤマトであった。
20名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 23:57:09 ID:EEJH0Rz1
そんな共犯系のテスト5。
あれ。過疎増してね?
ま、使い放題なのは有り難いんだが


>>16
それだけでいけそーなシチュエーションktkr!!
その発想力を活かして自分で書いてみたらどうだ?
21名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 00:20:22 ID:AV6GOrHO
次のパンツまだー(´д`)ー?
22名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 00:43:37 ID:hQ/612+l
誤字訂正>>19
突飛なもののボケがと…×
突飛なものの方がと…○

なんだこの誤字ありえねぇ…


>>21
次もパンツでいいのか?
23名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 07:12:10 ID:v5vELr/F
本当にカオスすぎて誰が何を喋っているのか解りにくいのが残念…。

でも、イタズラでスカートめくりってのは良いな。
そういった微笑ましい(?)いたずらをどんどんやって欲しいと思います
24名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 15:20:33 ID:MdXgGbCp
テスト
25名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 15:37:14 ID:MdXgGbCp
何で投稿できない?
26名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 18:33:10 ID:+QOg27Bv
>>25
 1レスあたりに、書き込める分量を超えている
 (1レス60行/文字数2048文字/バイト数4096以下)

 1行目が改行スペースで、22行以上のSSを投下しようとしている
 (1行目をどうしても空白にしたい場合は、全角スペース挿入)

 同じ記号を使い過ぎ
 (こまめに分割すれば、投下可能)
 
27妖精の種 20 1/3:2008/03/17(月) 19:14:25 ID:MdXgGbCp
投稿規定あったのか

 空気は暖かく、天気は晴れ。風は微風。
 カイはミドリと一緒にノノハ山へ続く道を歩いていた。

「風が気持ちいい」

 くるくると辺りを飛び回りながら、ミドリが嬉しそうに声を上げる。
 踏み固められた土の道。主要道路ではないので、舗装はされていないが、歩きにくいこ
とはない。人の姿はない。山に行くような人間は限られているためだ。
 周囲にはまばらに木の生えた草地が広がっている。
「カイ、山にはいつ頃着くの? もう沢山歩いてるような気がするけど」

 家を出てから三時間ほど歩いていた。しかし、まだ着く気配もない。乗合馬車では二時
間ほどで着くが、徒歩では六時間ほどかかる。

「昼過ぎには着くだろ。この右斜め前に見える山だよ」

 カイの指差す先には小さな山がひとつあった。
 後ろに見える山脈よりも低い山で、標高は五百メートルほど。元は火山だったらしく、
きれいな円錐型をしている。火山としての活動は既に終えていた。

「小さいね」

 山を見ながら、ミドリが正直な感想を漏らす。確かに小さい。
 カイは苦笑しながら指を振った。

「でも風景は面白いぞ。向こうの山脈も見えるし、街も見える。この辺りの草原も見える
し、地平線近くに見える湖もきれいだし」
「そうなの? なら私も見てみたい」

 ミドリの緑色の瞳が薄い好奇心に輝いている。
 最初に会った時は淡々としていたが、最近は好奇心や嬉しいなどの感情を見せるように
なっている。大袈裟な感情表現ではないものの、表情が豊かになっていた。
 その変化に、カイは満足げに口端を上げた。

「さて、休憩にするか」
「うん」
28妖精の種 20 2/3:2008/03/17(月) 19:14:59 ID:MdXgGbCp
 カイは足を止めて、近くの丸太に腰を下ろす。疲労は溜まっているが、困憊というこ
とはない。画家の仕事は体力勝負なので、一般人よりも鍛えられている自信はあった。
 荷物を下ろしていると、遅れて飛んできたミドリも丸太に腰を下ろす。

「水筒、と」

 カイは水筒を出した。金属製の一人用水筒。冷やしてないので、水は常温である。
 左手を持ち上げ、短い呪文を唱えた。

「氷よ」

 手の平に生まれた冷気を水筒に触れさせる。冷気は一瞬で水へと伝わっていく。音もな
く水の温度が下がった。魔術は色々と便利である。趣味で練習しているとはいえ、ひとつ
覚えるまで数ヶ月かかるのだが。
 水筒の蓋を取り、中身を一口。冷たい水が喉を潤す。

「はぁ、生き返る」

 カイは身体の力を抜いてから、ミドリのコップを取り出した。
 二センチほどの小さな木のコップ。以前時間が開いた時に作った物である。指先くらい
の小さなものだが、ミドリには少し大きい。もっとも、ミドリは水を沢山飲むのでこの大
きさで充分だった。
 水筒の水をコップに入れてから、ミドリに渡す。

「ありがとう、カイ」

 礼を言ってからミドリは水を口に含んだ。

「冷たくて美味しい」

 嬉しそうに水を飲むミドリを見てから、カイも水筒の水を喉に流し込んだ。
29妖精の種 20 3/3:2008/03/17(月) 19:15:19 ID:MdXgGbCp
以上です
30名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 19:53:56 ID:hQ/612+l
おお、久しぶりの投下GJ!!

このほのぼのまったり具合がやっぱいいっすわ〜
31名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 21:48:54 ID:+8k9tQv5
新スレ気付かなかったorz

種の人ぐっじょぶ
ちょうど春めいてきたトコだし、さわやかで良いなあー
32名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 23:31:10 ID:AV6GOrHO
種の人が来たのは嬉しいが共犯系書いてるパンツの人が>>7で「他の作者が来たら消える」って書いてるのが心配


パンツの人消えないで
33名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 01:36:45 ID:EP8m8HMm
前スレが落ちて新スレが立ってることに今さらながら気付いて慌ててやってきましたよ。
種の人GJ
34名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 16:34:48 ID:SmoKVbhK
>>32
それじゃまた作者さんが1,2週間ぐらい来なかったときにでも使わせてもらうかな

てか、あんな書き方変えまくりでほのぼののあとに躊躇いなくカオスを落とすSSを求めてくれる人がいるとはビックリd
35名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 21:03:19 ID:Lxva4UUd
このスレで、もはやいないものとされてそうな精霊や人形にあいの手を
36名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 02:57:26 ID:pKvSfuhy
では書いてくれ
37カイムと妖精 1:2008/03/20(木) 21:15:40 ID:BtThCL7k
妖精の種とは別のお話です。


「平穏って素晴らしい……」

 机に向かったまま、カイムは本を眺めていた。窓からは夕暮れの空が見える。
 ここしばらく論文制作に追われていたが、今日の午後に無事提出することができた。今
は、久しぶりの落ち着いた時間を堪能している。一時間ほど風呂とサウナで身体を休めて
から、果実酒を呑みつつ読書の時間。

「これでしばらくはゆっくり出来るね、マスター」

 赤い髪と赤い瞳、緑色の服を纏った妖精ミィ。
 積んである本に腰掛け、嬉しそうに足を動かしている。
 ここ数日、ミィに構っている時間もなかった。こうしてのんびと会話するのも、えらく
久しぶりに思える。

「そうだな。明後日当り、どこか出かけるかい? といっても妖精連れて街に出かけるわ
けにもいかないし、近くの人のいない場所にでも」
「月見山行こう」

 学院近くにある小高い丘。もしくは小さい山。標高二百メートルほどの山。正式な名前
があるが、みな月見山と呼んでいるため、正式名称は忘れられている。

「弁当持って出かけてみるか。誰か誘ってみる?」
「みんな、論文で忙しいよ。マスターは一番早く終ったけど、他の人は大変そう」
「だよねぇ」

 この時期は論文の提出期限が重なるため、皆忙しい。論文をすらすら書ける人間は、カ
イムを含めて十人にも満たないのだ。
 カイムはふっと短く息を吐き、

「なら、たまには二人で出かけよう」
「うん」

 嬉しそうに頷くミィ。
 カイムは読んでいた本に目を戻した。

「ねぇ、マスター」

 ミィが声を上げる。今までの無邪気な声とは少し違った、どこか甘えるような声。ミィ
がこのような声を出すのは珍しかった。

「一ヶ月前のこと覚えてる?」

 訊かれて、記憶を辿る。色々あったため、よく覚えていない。論文制作のために、小型
の飛行機を飛ばす実験を行っていたような記憶があった。
 だが、ミィの言いたいことではないだろう。
38カイムと妖精 2:2008/03/20(木) 21:16:06 ID:BtThCL7k
「何かあったっけ?」
「ほら、わたしが蜂蜜みたいな薬舐めちゃって」
「あー。そんなこともあったなぁ」

 頭を押さえて、呻く。思い出した。
 催淫効果の副作用のある薬を蜂蜜と間違えて舐めてしまい、大変なことになった。あの
時は平静を装っていたが、あれからしばらく凹んだと記憶している。

「そのことで相談なんだけど」

 もじもじと両手を動かしながら、ミィ。
 なんとなく嫌な予感を覚える。

「一昨日、蜂蜜バター塗ったパン食べたでしょ?」
「食べたね、確かに」

 カイムはこめかみを指で?いた。

「それで、一ヶ月前のことがフラッシュバックして、また妙な気分になってしまった――
とか言うんじゃないだろうね?」
「うん……」

 顔を真っ赤にして頷くミィ。
 カイムはため息をついく。催淫状態になっていた時の記憶が、蜂蜜を口に入れたという
ことを引き金に蘇り、再び発情してしまった。

「なるほど」
「だから、マスター。お願い……」

 頭から湯気を出しそうな勢いで、ミィが頼んでくる。本人は深刻なのだろうが、端から
見ているとどうにも滑稽でしかない。
 カイムは特に慌てもせずに、ミィの肩に指を置いた。

「念のため聞いておくけど、自分で慰めるってできない?」
「無理だよ」

 首を振る。

「我慢するとか?」
「それも無理みたい……、何か身体が熱いし、もう我慢できないかも……」

 カイムの手を掴み、ミィは呟いた。
 ふと自分は何でこんなことになっているのかと考える。自分が薬を冷蔵庫に放り込んだ
まま忘れていたせいだろう。ある意味では自業自得とも言える。

「マスター?」
39カイムと妖精 3:2008/03/20(木) 21:16:33 ID:BtThCL7k
 ミィの声に思考を戻し。
 カイムは左手を伸ばして、がっしとミィの身体を掴んだ。優しく、だが逃げられないよ
うにしっかりと。普段はミィの身体を掴むことはしない。

「え? えっと?」
「前も言ったけど……男にそういうこと頼むなら覚悟は決めろよ?」
「覚悟って?」

 訊いてくるミィに、カイムは苦笑を返した。

「ミィに自覚は無いかもしれないけど、可愛い女の子が男にそんなこと言ったら無茶苦茶
にされても文句は言えないよ。ミィの嫌がることをするつもりはないけど」

 右手の指でミィの眼前に印を書き上げる。輪郭の文字に魔力が通り、ミィの身体に吸い
込まれた。魔封じの魔術。妖精とはいえ魔力を込めた力は子供に匹敵する。この魔術で、
逃げられないようにしておくのだ。ついでに、飛べなくもなる。

「えっと……」

 戸惑うミィに構わず、カイムは親指と人差し指でお腹の辺りを押さえた。指先に魔力を
集めて、ミィの両足首を結ぶ。七センチほどの魔力の棒によって、足を開いた状態で固定
された。魔法が使えないので、外すことは出来ない。

「これで動けないだろ?」

 ミィが動けないのを確認してから、カイムは右手で緑色のワンピースをめくり上げた。
裾の奥にある白いショーツがあらわになる。

「うわ。待って、待って」

 慌てるミィ。足を閉じて隠そうとするが、無駄な努力だった。太股を必死に寄せながら、
両手でカイムの手をどかそうしている。
 だが、どうにもならない。

「妖精って着ているものは人間と変わらないんだよなぁ」

 素直な感想を漏らしながら、カイムは裾の中に人差し指を差し入れた。恥ずかしさに両
手で顔を隠すミィ。ショーツの上から秘部に指先を触れさせる。

「ん……」

 ミィの喉から細い息が漏れた。我慢するようにきつく口を閉じる。
 指先に感じる滑らかな布の感触。カイムはゆっくりと指を動かした。丁寧に優しく、傷
つけないようにそっと、大事な所を撫でていく。
 服の上から両手でカイムの指を押さえたまま、ミィが首を左右に動かした。

40カイムと妖精 4:2008/03/20(木) 21:16:55 ID:BtThCL7k
「マスター、駄目……」
「駄目って、ミィから頼んだんだろ?」
「うぅぅ」

 カイムの言葉にミィは不服の声をこぼす。
 そうしているうちに、指先に薄い湿り気を感じるようになっていた。指の動きに合わせ
て、ミィの身体が小さく震えている。感じているらしい。

「濡れてるみたいだけど、気持ちいいかい?」
「分からない」

 どこか艶っぽい声に、カイムは一度指を止める。
 ミィは身体から力を抜いて、息を吐いた。それで攻めは終わりと思って、安心したのだ
ろう。だが、安心するのは早い。これで終わるはずもない。
 その瞬間を狙って、カイムは素早く指を動かす。

「きゃッ」

 ミィの身体が二、三度跳ねた。油断したところへの強い刺激に面白いように反応する。
 カイムが指を放すと、赤い瞳に涙を浮かべて見上げてきた。

「あぅ。ひどいよぉ」
「いや、すまない」

 笑いながら謝り、左手をくるりと返す。仰向けに寝ていたミィを手の動きだけでうつ伏
せにする。左手の平の上に上体を乗せた状態。支えていない両足は、力なく下ろされてい
た。両足を閉じることはできない。

「じっとしててね」
「え、え?」

 カイムは再び指の魔力を通して、ミィの両手首を掴んだ。腰の後ろに回し、手首を魔力
で縛る。丁度後ろ手に拘束された形となった。
 両手両足を固定されて、これではまともに動けない。

「マスター、何する……の?」
「だから言ってるだろ? ぼくも男だからミィも覚悟決めろって。ミィが嫌がるようなこ
とはしないけど、好き勝手弄らせてもらうぞ」

 不安がるミィの頭を、カイムは優しく撫でた。
 右手の人差し指を、ミィの両足の間に差し入れる。

「え。何、なに?」

41カイムと妖精 5:2008/03/20(木) 21:17:24 ID:BtThCL7k
 戸惑うミィには構わず、ショーツの上から人差し指の横を秘部へと触れさせた。
 小さく身体が強張る。
 そのまま、カイムはゆっくりと指を前後に動かし始めた。力を入れず、早くもない。し
かし、指の動きは確実に快感を与えていく。

「あっ」

 ミィの口から吐息が漏れた。指から逃げるように身体を動かすが、それもままならない。
四肢を拘束され魔法を封じられ、飛ぶことも出来ないのだ。
 ぴんと伸びた羽が指の動きに合わせて、震えている。

「どうだ、気持ちいいかい?」
「分かん、ない」

 弱々しい答え。きつく目を瞑ったまま、頬を赤く染めている。
 カイムは止めることなく指を動かした。ショーツの上から丁寧に秘部を攻める。力は加
えず、緩急もなく単調な指の動き。だが、無視できない刺激。

「ん、ぁぁ……」

 ミィの口から零れる甘い声。
 指に感じる湿り気。さきほどよりも濡れているようだった。無意識なのだろう。指を捕
まえるように、両太股を閉じようとしている。

「ぅぁぁ、マスタぁ」

 何かを求めるように身体を反らすミィ。身体に快感を与えつつも、緩やかな指の動きで
は達するどの刺激にはならない。
 そこでカイムは指を引き抜いた。
 荒い息を繰り返すミィ。顔は紅潮し、赤い瞳も焦点が合っていない。

「あぅ、ふぁぁ」

 拘束している魔力に指を触れさせ、戒めを解く。
 左手を下ろしてミィを机に下ろした。だが、足腰に力が入らず立つことすら出来ない。
その場にぺたんと座り込んでいる。

「ミィ」
「な、に? マスター」

 肩で息をしながら、とろけたような視線を向けてくる。
 カイムはミィの目の前に伸ばした人差し指を差し出した。

「今度は自分でやってみて」
「自分で、って?」
42カイムと妖精 6:2008/03/20(木) 21:17:45 ID:BtThCL7k
 理解出来ないと言いたげなミィを左手で掴み上げ、人差し指の上に跨らせる。両足が机
につく高さなので、落ちるということはない。
 両手を親指の辺りに置かせると、腰を掴んで軽く前後に動かしてみる。

「んんっ」

 ミィは息を呑んだ。頭で理解したわけではないだろう。
 しかし、身体は理解していたようだった。
 カイムの指に大事な部分を擦りつけるように、腰を前後に動かし始める。最初はゆっく
りとした動きだったが、徐々に動きが速くなり始めた。

「待って、あれ? あぅぅ」

 腰を動かしながら、自分の身体の動きに戸惑うミィ。自分でも何が起っているか理解し
ていない。思考が半分以上溶けていた。
 ショーツの滑らかさと妖精の柔らかさ、溢れた密の暖かさが指に直接伝わってくる。

「気持ちいいか?」
「んんん、あぅ、んぁぁ」

 秘部を指に押しつけながら、甘い声を上げるミィ。
 もう何も聞こえていないようだった。きつく目を閉じて快感を拒否しながらも、理性を
吹き飛ばす衝動に逆らうことが出来ない。

「ダメ、あぁぁ、マスタァ……。わたし、駄目ダメ……!」

 何かを拒むように首を振るが、無駄な抵抗だった。未だ理解出来ない快楽、だが身体は
勝手にそれを求めている。
 恐怖と期待の入り交じった表情で、ミィは腰の動きを早めた。
 そして、絶頂を迎える――
 寸前に、カイムは指を引き抜いた。

「あ……」

 限界まで性感が高まったのに達することが出来ず、ミィは力無く腰を落とした。達する
寸前でイクのを止められた喪失感はどれほどだろうか。
 両手をぺたりと机について、涙の浮かんだ赤い瞳を向けてくる。

「マスター。ひどい、よ……」

 嗜虐心が疼くのを自覚しつつ、カイムはそっとミィを掴み上げた。

「もう少し遊ばせてくれ」

 ウインクとともに告げる。
43カイムと妖精 了:2008/03/20(木) 21:18:30 ID:BtThCL7k
以上です
続きは後日投下します。
44名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 16:15:24 ID:SRTEiQWm
45名無しさん@ピンキー:2008/03/21(金) 20:22:59 ID:lyd9ebAZ
あぁ 自分でさせるのが体格的に一番ちょうどよくはあるんだよな〜

後半期待
46名無しさん@ピンキー:2008/03/23(日) 17:21:17 ID:9q83tnGr
さがりっぱなしなので あげ
47名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 16:58:39 ID:L2AWYNJE
>>43
GJ!
妖精物は体格的な問題があるけどその分そういう要素に萌えれる

で、続きまだ−??
48名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 00:46:58 ID:YSP8THiD
>>47
他に書くモノあるから
一ヶ月後くらいかな?
49名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 08:47:30 ID:+2egpZ1I
誰か前スレ持ってない?
保存する前に落ちてしまったんで…
50名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 21:46:06 ID:70joCwR8
>>49
フィフニルと妖精の種は
作者サイトから見られるぞ
51名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 00:38:15 ID:zburnvID
千影とかキャンパスとかが読みたい
52名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 12:54:21 ID:zuJhYSRA
フィフニルが恋しい・・・
53名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 19:18:04 ID:C2pY5gaA
まあそれを言い出すにはまだ早いな
氏の一度に公表する文章量を考えると、あれでもそこそこ速い方だと思うぞ
1ヶ月に1、2話のペースだからな

続いてるのは確かだから気長に待とうぜ
54名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 20:36:22 ID:WNSlaRgX
千影の人はいまいずこ…?
55名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 00:53:22 ID:hGVtyzEK
しかし職人さん達の数自体が少ないな
やっぱり妖精とか小人ってマイナーな部類に入るからかな?
56前23:2008/04/02(水) 13:57:56 ID:9QzpiIoe
非常に遅くなりましたが、前スレで投稿した年末ネタの続きです。
そのうちHTMLで簡易保管庫を作るので、気長に待っていてください。

エロなしです。苦手な人は名前でNG登録してください。
57前23:2008/04/02(水) 13:59:28 ID:9QzpiIoe
「……寒そうだな、毛布でもかけてやるか」

 いくら暖かい地方とはいえ季節は冬だ。直前で風邪でもひかれたら俺が泣く。
偶然スーツに入りっぱなしだった千影サイズの毛布を雑魚寝している千影にかけてやる。

「……っ……あ、あったかい…………」
寝言か。毎日毎日嬉しそうな顔して、どんな夢見てるんだか。
上着を脱いで部屋着に着替えた直後に、ドアのチャイムが鳴る。

「どうも、宅配便ですー。ハンコください」「……はい。って、この名前──」
「お客さん千影さんって言うんですか。珍しい名前ですね」
苦笑いせざるを得ない。今年はこれで10回目くらいか。

 箱の中身が気になるところだが、他人の荷物を勝手に開梱するわけにはいかない。
千影の隣にでも置いておけば、勝手に気づくだろう。送り主は「○○無線」……

「やることもやったし、俺も寝るかな……」

バスの時間までおよそ6時間あるので、自分も布団に入って寝ることにした。
自分だけ布団でというのは少々癪だが、寝ている千影を起こすのは悪い。


 携帯の目覚ましが鳴る。もう時間か、ドラえもんののび太から学んだことは多い。
確か千影は居間のテーブルで寝ていたはずだ。もう起きているだろうが。

「おーい千影、準備できたか」
やっぱりテーブルにいた。携帯用の半田ごてを持って何かを作っている。
(携帯用とはいえ、千影からすれば大きいのだが……)
「ちょっと待っててください。完成するので……」
「何を作ってるんだ? 見た感じ、ヘッドホンみたいだけど……」
「ヘッドセットですよ。ヘッドホンとマイクを一つにまとめて、ご主人と気兼ねなく話せるようにと。
 ブルーなんとかっていう無線規格に準拠した部品を取ったので、専用のヘッドセットで話せますし
 携帯でも通話してるふりで会話できます。ご主人があの荷物受け取ってくれてから改造始めたんですよ。
 わたしが使えるように。でも、旅行の前に荷物が来たのは予想外でしたね」

とりあえず、携帯で話すふりをして千影と話せることはありがたいというのは分かった。
人前で会話する機会も増えるだろう。あの荷物の中身は無線ヘッドセットだったのか……

「それで、小さい再生機ってありますか? 音楽を聴けるようなもので」
「探せば出てくる。ちょっと待ってろ」
58前23:2008/04/02(水) 14:01:45 ID:9QzpiIoe
 寝室のベッドの下を探すと、昔河川敷で拾ったエロ本と一緒に出てきた。
確か一昨年の同窓会でプレゼント交換した時にもらったものだ。
俺は千影の作ったバイクの模型(隼とか言うらしい)を出して、メーカーの分からない512MBのMP3プレイヤーをもらった。
これ以外にある再生機はメタルテープ対応ウォークマンとCDプレイヤーだけ。両方とも千影には重すぎる。
 居間に戻ると、千影は今できたばかりのヘッドセットを耳につけて感触を確認していた。

「ちょっと大きいかもしれないが、人間サイズなら小さいブツだ」
「……これなら持てそうですね。ありがとうございます。
 ところで、曲ってどれくらい入ってるんですか?」
「すまん。俺、音楽聴かないんだよ。千影と話すのと、営業の電話だけで音楽聴く暇なんてないしな」
「そ、そうでしたよね……」

なんか態度がよそよそしい。何か隠しているだろうが、気にしないでおく。
……まだ時間はあるな。少しくらい千影とたわむれるのもいいかもしれない。

「なら話を変えよう。千影の羽ってたしか実体だよね?」
「ええ。実体じゃなきゃ飛べないので」
「……どっから、羽を通してるんだ?
 服には羽を通すような穴作ってないんだが」

実体と言いながら、千影の羽はちゃんと服の外に出ている。
すべてつながっているとしたら羽は外に出せないし、飛ぶこともできないだろう。

「結界の応用、ですね。
 「見えなくする」ことが可能なら「服を透過して羽の恩恵を得る」こともできるので。
 でも、結界内の空間元素を通して核とはつながっています」
「よくわかんないが、触られたらそれを感じ取ることはできるのか?」
「ま、まあ……一応、ですが……」

 つまり、分子的にはつながっているが透過している、ということだろう。
哲学的な体の造りだなーと思って千影をまじまじと眺めてみる。やっぱりかわいい。
胸の高さまで伸びた手触りサラサラの長い髪、人なんか目じゃないほどのきめ細やかな白い肌。
極めつけに、手のひらサイズの身長と体格。

「なんでニヤニヤして見つめてるんですか? あと、これ鳴ってますが」

 千影から渡された携帯を開く──つい最近、機種変更が安かった物に買い換えたばかり。
これでも、携帯を持ち始めたのは数年ほど前だ──
少年時代。まだデジタルが普及し始めで某・赤いマフラーのサイボーグ9人組がCMキャラだった頃を
過ごしたため、今時の若者のように一人一台の時代ではない。公衆電話で十分に連絡が取れた。

「もしもし?」
「お疲れさん。佐々木だ。そろそろ時間だが、忘れてないか?」
「おう。準備はできてる」
「例の場所で待ち合わせな。遅れるなよ」

電話が切れる。男の業務連絡に無駄はない。
CDプレイヤーとほんの少しの愛をバッグに詰めて千影と共に出かけた。
59前23:2008/04/02(水) 14:05:00 ID:9QzpiIoe
ここから先の記憶は非常に曖昧だ。
深夜発のバスに乗って大都会に行って、日の出から昼頃まで逆三角形の建物の前で待って、薄くて大きな本と聞いたことのない名前のアーティストのCDを買って。
本の9割は佐々木に頼まれたもので、残り1割は千影が欲しがったもの。CDに至っては10割が千影の指示で買いに行ったものだ。
たかが数時間で財布から10人の福沢諭吉──別の場所で両替したため、正しくは野口英世100人の英傑──が財布から姿を消した。
俺は午前中佐々木に頼まれた「壁」というところに並んで本一冊のために3時間待ったりもした。
寒さで倒れて動かなくなるなど阿鼻叫喚の列だったが、営業で身につけた忍耐強さで生き残ることに成功。
別行動の千影に購入できた旨を話すと次の場所を指示されて、また並んでの繰り返し。初めての亜空間でとまどう俺に対して千影は
 冷静さを欠かない指示を俺に送ってくれた。おかしい。千影に一人で長旅させた覚えはない。せいぜいお使いくらいだ。
佐々木には千影が見えていないはず。悪いことは吹き込まれないはずなのに……

財布からどんどんなくなっていく野口さんを見て、なんだかおかしくなったような気分を味わった。
千影はというと、俺のCDプレイヤーを勝手に操作して買ったばかりのCDやスペースの人にからCDを借りて試聴している姿が残っている。

千影の姿がはっきりしてきた。やっと記憶が晴れてきた。

「あの、つかぬことをお聞きしますが、この娘さんは……」
スペースにいる女性が千影を指さして問いかけてくる。おかしいな、確か千影は心の綺麗な人にしか見えないと言っていたはずだ。
その制約は非常に厳しく、職場の人間60人のうち俺ともう二人くらいしか見えていない。
しらを切り通すのも気分が悪い。問題の本人は音楽に夢中で何も聞こえないのだろう。ヘッドセットの先は3.5ミリプラグがついている。
「千影っていいます。見ての通り小型の有機アンドロイドです」
妖精です、と言って何人が信じるだろうか。取引先などでも同じ質問をされたことがここ3年で5回ほどあったので、
 その都度「当社の小型有機アンドロイド」と嘘をついた。半信半疑だったが、真っ向否定されるよりはわだかまりが少ない。

その後しばらく眺められた千影が気づき、何かを話し込んでいた。
内容は覚えていないが、興味津々になる理由も分からなくはない。
ただ、10年前の自分を見ているようなもどかしい気分を味わった。

残っている記憶はここまでだ。
あとは何かの雑念でかき消されている。
なんとか新幹線で帰らせてもらって、年明けは家で祝うことができた。

机の上に積まれた大量のCDをひとつひとつパソコンに取り込んでいる千影を見て可笑しくなった。
あけおめメールは一通も来ない。これはこれで悲しい。
年末番組もあまり面白いものがないため、千影を眺めている。

あの記憶が明瞭だったスペースの人のCDだけで5枚ほどある。しっかり全部サインが入ってるあたり、相当気に入ったのだろう。
そのほかに30枚。一部のタイトルは佐々木に貸すことになった。


「……」
遠くの街に行ったのに、思い出がないとは何事だ!

(終)
60名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 17:00:34 ID:iMuVyiQR
乙!
思い出すなあ…… 初参加の時のことを
自分の買い物より友人に頼まれた買い物の方が多いんだよなw

続き頑張ってくだせぃ
61名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 17:55:26 ID:/FcW+mhH

そしてお久
62名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 02:22:36 ID:p6idH+oV
フィフニル更新ktkr
63名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 18:39:29 ID:NTOwDv3g
乙です!千影の人久し振りにきたァ!
しかし半田ごてを使う千影がかわいすぎる
64名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 06:47:57 ID:5pzeUhaU
保守
65名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 11:40:51 ID:6fNZj2Fw
ゴールデンウィーク、人間と妖精の戦いが始まるらしい。
66名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 20:39:35 ID:IjGm5ZH4
>>65
もしかして「スパイダーウィックの謎」ってやつ?
ぶっちゃけ全然萌えない…

ヒトの形をした妖精希望
67名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 13:26:28 ID:95ARS3at
萌える妖精相手じゃ喧嘩できないだろ。
和平エンド以外有り得んぜ。
68名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 19:53:37 ID:2BLSzniQ
小説書きたちはどうしているだろう?
69名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 17:07:29 ID:LwmAecQO
>>66
あれは予告みて吹いたw
どっちかっていうとゴブリンとかだろw
たしかにゴブリンも妖精なんだが…ここの住人達が求めているのとは正反対だw

しかし前スレにも妖精映画の話が出てたな。どっちにしろ海の向こうとは感覚が違うみたいw
70名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 22:20:50 ID:hc5m7g9W
ミクロマン(ミクロレディ)はここだろうか?
71名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 09:57:05 ID:i8Zb0TMh
>>70
人間の女の子をそのまま縮めた感じのヤツだったら、アリかと
72名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 21:00:38 ID:pp3K5Yd5
>>70
ミクロマンとか、すげぇなつかしいw
小さな巨人ってフレーズがずっと頭に残ってるんだよなぁ
73名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 09:51:33 ID:Jnzy6CEW
見たことないからどんな設定のキャラなのか解らないんだけど
知っている人いたら教えて欲しいです
74名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 11:52:03 ID:lOGJO32w
新しいシリーズのミクロマンは、クオリティの高い漫画が玩具雑誌に連載されてたりした
顔も銀色じゃないし、スタイルも人間準拠
女の子キャラもたくさん出た
75名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 19:12:52 ID:ubzdHB2+
とにかくこのスレにはSSが必要だ!
76名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 19:58:48 ID:4Y/C/kOo
すまん、すっかり忘れてた
77妖精の種 21 1/2:2008/04/27(日) 01:38:26 ID:0V+OH2Vu
>>27の続き

 21話 にわか雨


 黒く染まった空から大粒の雨が降り注ぐ。

「おあー!」

 カイはミドリを抱えたまま、山小屋へと飛び込んだ。
 掘っ立て小屋のような家。厳密に言うと山道の途中にある休憩所。一部屋分くらいの広
さしかなく、置かれているものは長椅子がひとつだけだった。人通りの少ない山小屋に無

理も言えない。

「山の天気は変わりやすいっていうけど、まさか十分も経たずに土砂降りになるとは思わ
なかった。今は乾期だってのに、反則だろこれ」

 長椅子の埃を払ってから、腰に差していた剣を鞘ごと抜いて立てかける。
 山道を歩いていたら、雲行きが怪しくなり十分程度で空が真っ黒になった。まずい、と
思った時には小雨が降り出し、三十秒も経たずに一気に豪雨へと変化した。

「ミドリ、大丈夫か?」
「うん」

 抱えたミドリが力無く答える。
 日の光が差さなくなったことによって、天気と同じような勢いで元気を失っていた。夜
のように眠ってしまうことはないが、意識は朦朧としている。いつだったか雨の日の元気
のない様子を思い出した。

「晴れれば……元気になると、思う」

 雨を長めながら、ミドリは眠そうに答えた。魔術の灯りを渡しておけば元気になるだろ
うが、理由がない限りは自然の光に任すべきだろう。

「多分すぐに止むと思うけどな。何分くらい足止めされるだろ? 腹減った」
78妖精の種 21 2/2:2008/04/27(日) 01:39:02 ID:0V+OH2Vu
 ドアのない入り口から外を眺めて、カイは眉毛を傾けた。そろそろ昼の時間である。予
定ではあと三十分くらいで着くのだが、この雨の中を走って行く気にはなれない。

「それよりも、ミドリは……夕立に弱いのか」

 街中で降られれば、どこかに逃げる前に日の光が遮られて活動が鈍ってしまえば、豪雨
の中に置き去りにされるだろう。一人で出歩かせなければいいのだが。
 頭を振って髪から水気を飛ばしてから、ミドリを椅子に置く。

「しっかし、びしょ濡れだな。傘持ってくればよかった」

 カイは上着を脱いだ。
 雨の中を走ること五分。小雨程度ならどうということもないが、外の土砂降りはシャツ
まで濡らすのに十分の勢いだった。
 何度か上着を振ってから、近くに置いてあった棒に引っかける。
 両手でやや複雑な印を結んでから、両手を向かい合わせた。

「熱よ」

 手の中に現れる赤い灯り。強い熱を持った光を作り出す魔術である。服を乾かすための
魔術であるが、生地が傷む可能性もあるので滅多に使うものではない。
 灯りを上着に貼り付けてから、カイは椅子に座った。
 うとうとしているミドリを左手で拾い上げる。

「大丈夫か? 眠いなら、眠ってもいいぞ」
「うん」

 こくと頷いてから、カイの手の平に横になり、目を閉じる。ミドリは真っ暗にならない
と眠れないらしい。暗いとはいえ、雨天では眠れない。
 カイは右手でそっとミドリを撫でながら、外を眺めた。

「雨止まないかなぁ」



以上です
79名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 16:54:21 ID:KzxwFESl
GJ
しかしいつもこんな短い文章でエロもないのに
どうしてこんなにひきつけられるんだろう?
短い会話だけでも十分ニヤニヤしてくる
80名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 18:43:40 ID:G2CSnnmy
そのまま握り潰しちまえっ!
じれってえな・・・・
81名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 19:32:15 ID:XIY3q3n9
>>80
軽く握って怯えさすのはアリ
82名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 22:09:01 ID:1OdSeM65
ケータイ少女という作品のキャラクターグッズを買ってきた。
リンという妖精さんがポケットの中に入って外出に付いてくる、というシチュエーションのシャツ。

ttp://www.amiami.com/shop/ProductInfo/product_id/71357


さすがに、室内でしか着れないけどな。
83名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 23:09:17 ID:0V+OH2Vu
>>79
愛だよ、愛
84名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 23:11:54 ID:J/vP8NFW
>>80
握りつぶしちゃうってのもいいが、
そっと足元に下ろしてから、
じんわりと楽しみながら踏みつぶしてやるのも萌えだな。  
85名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 00:10:51 ID:Rg6ma+ts
なぜみんな鬼畜なんだw
86名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 09:57:10 ID:7NZZgKM2
ビンに入れてから見せつけるようにゆっくりと口を密封して観察するとかな
87名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 23:51:04 ID:2CGlEL2j
妖精さんをいじめるスレになっている
88名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 03:06:17 ID:Wlel/k6E
「くっ……また怪盗>>1か!どれだけ俺達を乙らせるつもりだ!!」

「仕方ないですよ、先輩。私達に出来るのは毎日スレを見ることだけです」
89名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 03:08:11 ID:Wlel/k6E

ごめん。完璧な誤爆。
スルーしてくれ(´A`)
90名無しさん@ピンキー:2008/04/29(火) 17:45:35 ID:9vrxFIIQ
>>87
たまにはそういうネタも悪くないかなと思ってる俺。
といっても殺傷系は嫌だけど。あくまでHに苛める方向で。
91名無しさん@ピンキー:2008/04/30(水) 01:31:30 ID:pyDapgG4
>>90
つまり綿棒で容赦なくぐりぐりするんだな
92名無しさん@ピンキー:2008/04/30(水) 01:43:10 ID:EMt9ePrQ
>>91
セロテープか何かで大の字に拘束して
身体中を1時間くらい撫で回し続けるとかやってみたい。
93名無しさん@ピンキー:2008/04/30(水) 18:05:05 ID:g8gSdZh0
俺はラブラブ物が好きだから殺傷系は嫌だなぁ…
94名無しさん@ピンキー:2008/04/30(水) 18:56:10 ID:dVHdNm3G
で誰か鬼畜系書いてくれる奇特な人はいるの?
95名無しさん@ピンキー:2008/05/01(木) 20:16:09 ID:NuLju7Ks
クソ!俺に少しでも文才があれば!!
96名無しさん@ピンキー:2008/05/01(木) 23:09:46 ID:S0Q36pTS
とりあえず書いてみないと何も始まらないぞ
97名無しさん@ピンキー:2008/05/02(金) 20:31:28 ID:1w2bs+n4
てかここに今どれくらい人いるのよ?
98名無しさん@ピンキー:2008/05/02(金) 23:17:46 ID:QORIjbIZ
おいおい、点呼かよ






99名無しさん@ピンキー:2008/05/02(金) 23:20:41 ID:qfcjvbBZ
100名無しさん@ピンキー:2008/05/02(金) 23:33:14 ID:ty+R5+Xn


 俺が点呼に対しておもむろに手をあげると、妖は真似をしてさっと手を挙げた。
「はーいはいはい、あたしもいるよー」
「はっはっは、妖は1人に入らないな、0.1人だな」
「なあに、それ!?」
 ぷいっと妖はそっぽを向く。小さな顔だから、怒っても迫力がゼロだ。
 俺はついからかいたくなって、
「ここが大きくなったら、0.2人位になるかもな」
と言って、服の上から妖の小さな小さな胸を、人差し指でやわやわと摩ってやった。
「はぁ!?ふざけ……って、あん、やだ」
 力を入れすぎず、あくまでそっと壊れ物を扱うように何度も何度も撫でつける。
「あ、ん、やだったら!」
 指の先に、小さな突起が引っかかった。
 こんなに小さくても立派に乳首は固くなるんだなと、いらぬ事に感心してしまう。

こんな日常こないかなと妄想しつつ、このスレに常駐。
101名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 06:59:03 ID:TUGL5yhJ
ノノノノ
102名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 15:02:31 ID:STeEo2If
GJ

103前23:2008/05/03(土) 21:24:40 ID:Ff32XfYK
お久しぶりです。
携帯で妄想を書き殴ったものを投下します。

GWの単発ネタ。

理屈的には妖精ですが、体格的にはちょっと小さい女の子です。
100cm以上は認めないだとか、エロないのが苦手な人は名前でNG登録してください。
体格差を考慮するとエロシーンが書きづらくなる……
104前23:2008/05/03(土) 21:33:10 ID:Ff32XfYK
5/3

5月が始まって少し経った頃のお話。
俺はとあるコネを使って、3泊4日・小旅行の計画を立てていた。

「なあ千影。GW暇か?」
「……ごーるでんうぃーく? なんですかそれ」
今日の千影はメイド服を模した衣装をまとっている。
特にフリルの部分は自信作だ。昭和の日を丸々使って作った甲斐があった。
昔交わした「千影は召使い」という約束を彷彿とさせる。

「今日から6日まで、一般人は連休なんだよ。だから、俺は旅行の計画を立てていた」
「でも、今日ってことはわたしの頭数考えてないです……よね?」
「そりゃ問題ない。妖精の姿なら運賃がかからないしな」

ほー、と感心する千影にチケットを渡す。
千影がこの旅行に興味を持つのは計算済み。

「今日のチケット。……だが、一つだけお願いを聞いてもらっていいか?」
「この背でできることならなんなりと」
「うむ、この旅行は10年以上の仲である千影と改めて親睦を深めようと思って……」

俺は言葉を続けた。

「千影には127cmくらいになって欲しいんだ。人前で堂々と会話したい」

「えっ……」
表情が曇る、というよりは驚きを隠せないでいる千影。
さすがに無理があるか……千影の身体のことをまとめるとこうだ。

千影の意志や記憶は一寸ほどの靄(もや)のようなものをまとった気体が持っている。人間界で魂と呼ばれているものだ。
そして、千影の魂――いや、千影そのものが創造された時に身体を与えられただけに過ぎない。
しかし、この身体を動かすためには活力が必要だ。人の血液にも活力があるらしい。
人は胎児の時点で血を通して母から活力を分け与えられ、以降は自分の身体で活力を増幅させる――のが昔住んでた街で聞いたことらしい。

そして常に千影は空気から生気を吸って活力としている。魂にも生気を吸える「限界」がある。
千影に与えられた身体もまた生気や活力を主にして形成されているため、容姿や身長が自由自在だそうだ。

ただし、身長を増やすということだけは体積が増えるため前述の「限界」が絡んでくる。
千影の吸える活力が増えた体積を動かすための活力を下回れば、千影の魂に蓄えられた活力を用いて維持される。
魂に蓄えられた活力が枯渇すれば魂自体が組成できなくなり、千影という存在が崩壊してしまう。

千影の今の身長ならば供給できる活力に6割ほど余裕があり、90cm以上になると魂を削らなければ体格を組成できないらしい。
つまり、120cm強というのは千影のレットゾーンを無視した希望であり……
105前23:2008/05/03(土) 21:34:00 ID:Ff32XfYK
「やっぱりダメ、だよな? 千影の命に関わってくるし……」
「……ご主人、無理な約束と思ってるなら話さないでくださいよ……
いくらわたしが身勝手な召使いでも、できないことがあります……」
千影は顔を落とす。なんてバカなことを言ってしまったんだ……

「――召使いは、身勝手な約束も果たさなければならないじゃないですか。
4日程度ならわたしは大丈夫です。死にはしませんが、この借りは重いですよ……」

頭を上げた千影は、笑顔に満ちていた。

「……ですが、二人きりの時は小さくなりますよ。無用な負荷はかけたくないので」
「無理言ってすまない」
「そういう時は「ありがとう」、ですよね。ご主人。ちょっと後ろ向いててください」

「――――っと」
ストッという音とともに、生まれたままの千影の姿が……
「あ、あれ? 服は?」

俺と頭二つ分違う体格、成長すら始まっていない平らな胸、羽はなくなっていた。
「ああ、さっきの服はテーブルの上に。……なんで顔真っ赤なんですか?」
「……服くらい着なさい。Tシャツとジーパン貸すから」
賢者だ、KENJAになれ俺……
こんな無垢な娘を汚したいなんて最悪じゃないか……

千影に小さめの服と俺サイズのコートを渡した後、一度トイレで事を済ませた。
裸が目に焼き付いていつ犯罪を起こすかわからなかったからだ。いくら千影でも……

そして、準備していた荷物を持ってバス停に向かい、バスに乗り込んだ。
あと17時間はバスに揺られることになる。つまり一日目は車中泊。

千影と人前で堂々と会話できるのが幸せで仕方なかった。
元々千影はいい話し相手だし、なにより長時間の旅の退屈さを楽しさに変えてくれた。
日が暮れ始めた頃から、隣の席に乗っていた女性と三人で話が盛り上がった。
彼女もまたオフを勝ち取り俺と同じ場所を目指している。
住む場所は違えど、すぐに打ち解けられたのは千影のおかげだ。
千影は俺の彼女――ではなく、従妹を演じてくれた。

そして、夜がふけた。
106前23:2008/05/03(土) 21:36:34 ID:Ff32XfYK
「……寒い、ですね」
「昼間は暑い暑い言ってたが、こうなるのは分かってたからな。それに千影は寒さに弱い」

深夜の時間調整を兼ねた休憩。
一時間ほど止まっていると聞いて、俺と千影は外に出た。

田舎独特の清々しい空気を一通り感じた後、サービスエリアの建物に入った。
さすがSA。深夜でもレストランが空いてるとは。「かけうどん」の食券を買った後。

「千影は何か食べないのか?」
「わたしはだいじょ……ごめんなさい、肉うどんでお願いします」
「なんだ、いつもなら大丈夫って言うのに」
「身体が大きいから比例して活力の消費が早いんです。魂で補いきれないなら……食べなきゃなりません」
「そっか、そうだよな。まあいいや、一緒に食えるなら何よりだ」

しばらく無言でうどんをすすった後、また外に出た。
……伝えておいたほうがいいだろう。この気持ちを。

「あの、お話ってなんですか?」
「ご、ごしゅじん!?」

無言で千影を抱きしめていた。心が幸福に支配されていく。

……やっぱり俺は、千影のことが好きだった。愛していた。
ずっと「妖精の千影」と否定していた感情が、「少しだけ背の低い千影」になったとたん爆発した。
一度爆発した感情は抑えることができない。

「……千影……ごめん……」
「……何を言ってるんですか……わたしは凄く嬉しいですよ……」
「な、なら……」
「え? あれ――んぐっ!?」

千影の頭を手で寄せて、唇を重ね合わせる。
舌を入れようとするが、歯で固く拒まれた。
……千影は恥ずかしいからこんなことしてるだけだ。間違いない。
A:「千影、緊張しなくても……」責めを続ける
B:「千影……?」口を離す

# 選択肢は両方とも書いてます
107名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 22:10:06 ID:ELogXDLn
これはこれはwktk
チキンな自分はBを選んでしまうのです。
108名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 22:33:44 ID:clkJuzd0
Bだな

Aは何か危険フラグを感じる
109名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 22:34:35 ID:AsLb7bcN
ハッピーエンドの方!

AかBを選べなんて書いていないから俺はこう答えるぜ!
110名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 22:52:46 ID:5NuKmbze
鬼畜系小説まだぁー??
111名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 01:07:51 ID:3Bn4/T1L
このスレには現在四人の書き手がいる
千影の人
種の人
フィフニルの人
共犯系の人
この面子に鬼畜系を書く人はいない
112前23:2008/05/04(日) 01:16:38 ID:GAJf5hQ/
Bの方が多かったのでBルートで行きます。
時間の関係で少なめ。5/3はこれで最後。
AはTrueなんですがそれはまとめにでも……

まったくもってエロなし。

>>111
戦わなくちゃ、現実と。
113前23:2008/05/04(日) 01:18:38 ID:GAJf5hQ/
B

「千影……」
反応がおかしい。
わずかに残っていた理性が俺をくい止めた。
唇を離し、千影の目を見る。

「……」

目が怖い。涙があふれ、恐怖に満ちた表情をしている。

「……まだ……わたしには……」

千影の手に風が集中する。
これは予想GUYだった。というか魔法じみたことなんて――

「早すぎますよーッ!! ご主人のバカーッ!!」

――やられないと思ったのに。
刹那、風が爆発し気がついたらバスの横っ腹に突っ込んでいた。
千影は、背中の焼けるような痛みで立ち上がれない俺の手を掴んで立たせてくれた。

「ご、ごめんなさい。手が滑ってしまって……
……ぎゅってするまでは、いいです……から、あんまり変なことしないでください。
この体組成、まだ安定してないので……」
「俺のほうこそごめん。キスしたことだって……」
「そういうのは気にしてませんから、大丈夫です。
(少しの間だけでいいので、わたしを従妹として……置いてください)」

千影が何かつぶやいたような気がしたが、気にしないことにする。
千影の小言は決まってパソコンか電子の話だ。聞いても何の話か分からない。

「さ、バスに戻りましょう」

幸い、俺の過ちをあまり気にしていないようだった。
傷つけてしまったらどうしようという心配は徒労に終わったらしい。



バスに戻ってからは異常なまでの疲労感に襲われ、すぐに意識を失ってしまった。
当たり前だ、背中は少しだけ治してもらっただけだからな。

日付が変わる。
明日はゆっくり観光……できるといいと思う。
114名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 01:40:45 ID:3Bn4/T1L
115名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 07:35:46 ID:fGIV8TSA
>>110
それはあれか?
ちっちゃいまんこにむりやりちんこを入れるとかか?
それともいっぱいの小人女の子たちがなんか目から鱗な方法で男を鬼畜攻めするのか?
116名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 13:24:26 ID:eKXNs0zy
>>112
GJ!
しかしこんなオチとは思わなかったwww
いや、しかし千影はホントかわいい…いやホントに…

Aルートの方も速く読みたいです
117前23:2008/05/04(日) 23:22:11 ID:GAJf5hQ/
GWネタ、5/4です。
エロなし、100cm以上が苦手な方は名前でNG登録してください。

話が脱線気味ですが、5/6には気合で元に戻します。
選択肢は明日の朝にでも…
118前23:2008/05/04(日) 23:23:31 ID:GAJf5hQ/
5/4

意識が戻ったのは日が出始めた頃、千影の手に頭を揺らされていた時。
駅でバスを降りた時には完全に日が上がっていた、午前5時頃のお話。

「……おはよう、です……」
「どうしたの千影ちゃん、まだ寝足りない?」
「正直そうですね。ただ、今寝たらご…お兄ちゃんの役に立てないので」
「お兄ちゃん想いなんだね千影ちゃんは。ちっちゃいのに偉いねぇー」

結局、バスで知り合った女性とはしばらく一緒に動くことになった。
白河と名乗った彼女は、GWを潰して「自分探しの旅」に来たらしい。
そのためなのかは知らないが明確なプランを立てておらず、一期一会の精神で千影を借りると言われてしまった。

……千影が他人に見えるのは仕様だ。
体格を大きくしてエネルギー消費が高まった結果、「他人に見えない」結界がなくなった。
だから人に見えていても問題ない。

そして、俺たちは今駅のホームにいる。
始発電車でとある観光地に向かうためだ。
だが、俺は白河さんと千影の話に混ざれていない。女性同士何か通じる点があるのだろう。
蚊帳の外でもイラッと来ないのは――昨日のアレのせいだ。
白河さんは寝ていたため、俺が大雪山おろしを食らったのは知らないと言った。

「――それでね千影ちゃん、お姉さんと仲良くなってくれたご褒美に何かおごってあげようと思うんだけど希望はある?」
「え、え、わたしは特にお気遣いは不要で……」
「まだ子供なんだから大人に甘えなさいっ」

……二人の協議の結果、朝食は喫茶店ということになった。
俺? 一人きりだよ?


喫茶店での打ち合わせの結果、14時までは千影は白河さんについて歩くことになった。
念のため連絡先を交換して、俺は俺のプランを実行することにした。

……ひとりきりで知らない土地の電車に乗ったのは久しぶりな気がする。
長旅になると千影がもれなくついてきたからな……
119前23:2008/05/04(日) 23:25:00 ID:GAJf5hQ/


「そういえば昨日、お兄ちゃんが――ぺちっ!」
「何それくしゃみ? 服のサイズ合ってないんじゃないの?」



桜はその姿を変え、桃色に近い花を散らし葉桜と化していた。
それは予想済みだったが、案外葉桜も綺麗なんじゃないかと感じた
……街路樹に感銘を受けるなんてどうかしてる。

人生において、たびたびこの街に来てみたくなったことがある。
爺臭いとか言われようと、変える気にはなれなかった。

この街には日本有数の規模のお寺がある。
営業という仕事柄、少しは会社のためになれば――というのが建前で、実際は縁起担ぎ。
千影はいっさい関係ない事項のため、正直千影と行動を共にしないのは嬉しい誤算だった。
千影に「おやじ臭いです」なんて言われたら半年くらい腰が上がらなくなる。

この急な階段も風流だな……



「ねえ、お兄ちゃんってどんな人なの?」
「すごく優しい人ですよ。捨て子だったわたしを拾ってくれて、11年もお世話になってます。
お仕事は営業で、暇があればいつでも連れ回してくれて……」
「なんか地雷踏んじゃった? ところで「暇があれば」っていうのは……」
「そのまんまです。わたしがスーツのポケットに入って――」
「――その話はもういいからーっ。でさ、この服はどうかな?」
「……この上下、似合ってるんでしょうか?」
「似合ってる似合ってる。似合わない服は選ばないから大丈夫」



「…………」

お賽銭入れて――などでは味気ないので、昔勉強していたとあることをした。
少しでも千影との仲を進展させることができるか……そんな願いを乗せて。

昨日、俺が千影にしたこと。しようとしたこと。
俺はあの一件だけで、10年近く培った「プラトニックな関係」を否定してしまった。
間違いなく、秘めていた恋愛感情が爆発した結果――それに伴う独占欲・破壊欲も爆発した。
早い話、人間の背になったことで持っても意味のなかった性欲に「意味」を与えてしまったのだ。

……当初の目的では、体格を大きくするのに恋愛感情は伴っていなかった。
いや、千影がサバサバしすぎてて……とりあえず、「千影ともっと話したい」程度のものだったはずだ。
千影は性欲を持ってないはずで、性欲がないことは即ち恋愛をしないことでもある。
つまり千影は愛していない男から迫られ唇を奪われ……自己嫌悪に走る大きな理由はこれだ。
「そういえば……お寺に来たのって仕事運アップのためじゃ……」
そう気づいた頃には、待ち合わせ場所に着いていた。
120前23:2008/05/04(日) 23:26:39 ID:GAJf5hQ/
「やほー。どれくらい待った?」
「17分くらいですよ。仕事人として、この程度は」
白河さんと千影は12分遅れで待ち合わせ場所に来た。
「そかそか。でさ、千影ちゃんに服買ってあげたんだけど、似合ってるかい?」

「うぅ……恥ずかしいですよぅ……」

千影は白いワンピースをまとっていた。
それだけならまだ可愛いで済むが、若干下着が透けている気がする。
俺にもメイドガイアイが備わったのか。ありがとうお寺。
……むぎわらに黒いリボンをあしらった帽子がしっくりきている。千影は非常に夏らしい活発そうな女の子になっていた。
腰のあたりまである黒髪とのコントラストがより引き立てている。

「似合ってる、というより、ちょっとこれは可愛過ぎやしませんか?」
「まー今日は夏みたいな暖かさだからさ。梅雨になるまでそれでいいんじゃない?」

道行く男たちの視線が千影の下半身に釘付けになっている。
どうやらメイドガイアイではなかったようだ。生地が薄すぎる。
これは目に毒すぎる。俺のカッターシャツを千影に着せてやった。

「白河さん……俺を変態に仕立て上げたいのか。」
「――この娘の貞操を奪おうとした人が……よく言うねぇ」
「な……何を!! あのことは言っちゃいけないって!!」
千影が叫ぶが、白河の口は止まらない。
「千影ちゃんがこのことは自分だけでなんとかする、って言ったけどね。
お節介なお姉さんとしてはあなたを警察に突き出したくてたまらないわけよ。
だから、最後くらいは晴れ姿を見せてあげようと思って」
「あ、あれは合意の上での――」
「――ガキが茶々入れるんじゃない。日本には児童ポルノ法というのがあって――」
「――わたし、(ピー)歳ですが……それでも児ポに引っかかるんですか?」
千影は言葉を続ける。ピーとは俺が無意識的にシャットアウトした情報で、数字は想像にお任せする。

「合意の上で、なおかつわたしが(ピー)歳。これで他人に茶々入れられるほうがおかしくないですか?」
「何を冗談を……なら、年を証明できるものを!」
「……少しチートしますね。おに――ご主人、身体を支えててください」

千影の手が白河の額に触れる。
刹那、千影の身体から力が抜けた。


「な…な……アレは……何?」
「わたしの経験をあなたの身体に直接流し込みました。
今思い出せる光景は念じれば簡単に消えますが、それでも年は信用できませんか?」
数分後、一仕事終えたような顔で淡々と話す千影。
俺はともかく他人にチートするなんて……何が気に障ったんだ?

「わかった! わかった! 信じるから……」
「……ごめんなさい、わたしも居候という身分なので……
お互い少し、頭を冷やしましょう。続きはメールで」
「……」
今度は白河が言葉を失っていた。


千影と一緒に歩くことになって数時間後。
俺は予約をとっていたホテルに千影を連れて、すぐに眠りについてしまった。
頭が痛くなるような出来事の嵐、万が一白河がマスコミなどにチクったら……など。
オーバーヒート寸前になった時に千影が同じ布団に入ってきて腕枕をしてくれたため、安らかに眠ることができたが……
話は先送りになったに過ぎない。
121名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 00:16:30 ID:0LoJiJA9
122名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 01:03:15 ID:sV6d59+C
GJ!
なんだこの急展開は…続きが気になるぜぃ!

しかし千影っていくつぐらいだっけ?
123前23:2008/05/05(月) 07:40:02 ID:xzV5mWp0
5/5

今日は非常に心地の良い目覚め方をした。
……目と鼻の先に規則正しい寝息を立てる少女――もとい、妖精。
彼女、千影の細い腕を枕として一晩借りていた。
俺がこれだけ寝ておいて、しびれたりしないんだろうか……

時計は3時を示していた。
俺と千影が別行動の間、白河に何を吹き込まれたのかは知ることができない。
――基本的に、人は不条理が重ならないと突然キレたりはしない。白河がキレるにも理由が……
その点を叩けば、何か掴めるかもしれない。白河を説得できるならしておいたほうが寝覚めはいい。
冷静に見れば「旅行先で知り合った小学生くらいの超しっかりした女の子と仲良くなって、
兄のことを少し問いつめたら頭をチートされました」――ということなのだから。

「……すぅ……すぅ……」

……そういえば、千影は寝なくても大丈夫なはずだよな?
体組成が変われば燃費も変わる。しかし、千影はこの体格で「夕食を食べていない」。
つまり、一般的成人の食事一食で一日を乗り切れる。
疲労度も多少は増えるはずだが、身体が大きくなった分等間隔に分散されるはず。
俺の野心がむくむくと大きくなる。問題ない、俺の息子は大人しくしている。

「……すぅ……っ?」
少し悪戯してもバチは当たらないはずだ。
とはいえ、額に「肉」と書くなどの悪戯ではない。
添い寝してるのに何もしないのもまた馬鹿な気がした。

……どうせ性欲がないなら、少しくらいその気にさせても大丈夫だよな……
ダメなら一昨日みたく場外ホームランされるだけだし……
俺の中に眠るクラウザーさんが覚醒する前に……

「……すぅ…っ……」
スカートをめくり上げ、右手を千影の太股に這わせる。
絹のようなきめ細かい肌は体組成が変わっても健在か。
これをすりすりしてるだけで良い眠りを得られそうだ。
しかし目標はここじゃない。右手をゆっくりと股間に近づける。

「……っ……ぁぅ……」
さっきまで規則正しかった呼吸が乱れ始める。小さく声を漏らしているが、まだ意識は夢の中にあるようだ。
左手も遊んでいたわけじゃない。わきから小振りとも言えない胸を、指先で堪能していた。
揉めるほどの大きさはないが、平べったいのはそれでいいかもしれない。
このわずかな反応と感触だけで俺の息子は盛大にエレクチオンしている……が、ここで抜くわけにはいかない。
千影の目が意識を取り戻そうとしている。
……このまま寝たふりをして誤魔化そう。秘部に手をつけるのはいくら俺でも魂を食われるかもしれない。
――寝たふりをしているうちに、本当に意識が暗黒面に落ちてしまった。
124前23:2008/05/05(月) 07:43:56 ID:xzV5mWp0


「(寝ました……よね?)」
……ご主人、この仕打ちはいくらなんでもひどすぎます。
まさか、太腿萌えなんて性癖に走ったんじゃ……
寝ながら太腿を撫でるだなんて。

わたしは性欲らしいものを持っていません。が、刺激されたら嫌でも身体が反応します。
勘違いしないでください。悪戯されたらわたしだって怒りますよ。

「……仕返しを……」
ガイアがわたしに囁いている。
――アリバイ作成のために、まずはご主人に眠りの活力を流し込んで……
……大丈夫、何をやってもこれで7時までは意識を取り戻さない。

少ししびれかけた左手を引き抜き、パジャマのズボンを脱がす。
下着の隙間から立派に成長したご主人のモノを握り、上下に動かす。
動きを早くしたり、握りを強くするとびくんと脈打つモノが可愛らしい。
……先から溢れてきた汁を吸い出すために、モノを頬張った。

「ぐぷっ、じゅっ……んっ……」

口を動かす度、隙間から唾液と汁の混じったものがあふれ落ちる。
どんどん硬さを増すモノ。ストロークを最大限にしたとたん、限界が来たらしい。

「……くっ!!」
「もごッ!?」
どくん、どくんと大きく脈打つ。ほんの数秒で何かが口の中を満たした。
口に入らなかった分、顔を汚される。

「(……ごくっ)」

……苦くはないけど、クセになりそうな味。
手で顔についた液体をすくい、舌で転がす。
全身でモノをさするよりは、よっぽど効率的だった。

時計は4時を指していた。
もう頃合いだろう。朝食の調達のため、身なりを整え部屋を出た。


「……」
時計は7時を指している。
……訂正しよう。今日は非常に心地悪い目覚め方をした。
目と鼻の先には誰もいない。腕枕も外されている。
心地悪い原因は……下半身の感覚にあった。

「……なんぞこれ」
言葉がそれしか出なかった。
自分の息子がポロリしてても嬉しくない。それに、息子の周りがベトベトになっている。
そして……頭が非常にすがすがしい。πの証明も2分でできそうだ。

結論はすでに出ていた。夢精したんだ。
……最低だ、俺……
だが、心の隅っこには夢の内容が気になっている俺がいた。
125前23:2008/05/05(月) 07:45:35 ID:xzV5mWp0

部屋に用意された簡易的な厨房に千影は立っていた。
機嫌がいいらしく、鼻歌を歌いながら鍋をおたまで混ぜている。

「……おはよう」
「おはようございます。初っぱなからこの世の終わりみたいな声出さないでくださいよ……」
千影はワンピースの上にエプロンをつけていた。
……従順だし気が利くし、こう見ると良妻賢母なんだけどなぁ……

「ごめん。ところで何作ってるの?」
「朝ご飯ですよ。今はもう7時ですから、わたしでも作れる簡単なお料理を……」
「千影の料理なんて初めてだな。そういや、その身長になってよかったこととかあった?」
「そうですね……やっぱり、ご主人に手伝わせずに何もかもできるのが嬉しいです。
朝ご飯の食材の調達にしても、「朝早くからお使いなんて偉いわねぇ」とか朝市のおばあさんに言われたり……
(一番は、ご主人が愛してくれるのが……)」
「すごく嬉しそうな顔だな。ご飯、楽しみにしてるよ」
「はいっ」

千影の消え入りそうな声は鍋の煮立つ音でかき消された。


数十分後、食事がテーブルに並んだ。
ご飯、鯖の塩焼き、じゃがいもと人参・ごぼうの入った味噌汁、温泉卵……
――非常に日本の朝食らしかった。見た目も香りも完璧だ。

「じゃ、いただきますっ」
「いただきます。ところでこの朝飯、作るのにどれくらいかかったんだ?」
「5時から立ちっぱだったので、そんなに難しい料理じゃないです……
味噌汁のダシをとるのにどうしても時間かかっちゃって。その間に鯖の骨は抜きました」
2時間もかかる料理なのだろうか。
とりあえず食べてみよう。割り箸を割って、まずは鯖から……

「むぐ」
こ、この味は……ッ!!

「ど、どうですか? やっぱりわたしの作る料理なんて……」
筆舌に尽くしたら非常にグロテスクな表現手法を大量に用いなければならない。
かいつまむと、まるで即売会で新刊が目の前で売り切れたような……まるで雷鳥アスロンにグリスを塗り忘れたまま立ち上げたような……
塩焼きでここまで複雑な味を引き出せるなんて……

「そ、そうだな……」

どーするよ! 俺!
A:まずい
B:まずい
C:まずい
126名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 09:55:23 ID:0LoJiJA9
おい! 全部マズイになってるぞ
127前23:2008/05/05(月) 19:12:04 ID:xzV5mWp0
まずい

ダメだ! そんなこと直球で言ったら誰だって傷つく!
料理に当てた時間と労力をその3文字で全否定しちゃいけない!

「これはこれで受けると思う。
けど、……できれば、次は違う味付けで食べたいと俺は思った」
「そうですか、やっぱり最初から完璧には作れないですよねっ」

結局、一時間かけて人外魔境の日本料理を完食した。
ごはんはベータマックスの終焉、味噌汁はレッドアリーマーのような味がした。


ご飯も食べ終わって、今日のプランを一緒に考えていた時のお話。
「ところで、白河に連絡しなくていいのか?」
「……相手からメールとか来てますか? 来てるなら返事しますが……」
「来てない」

ならいいじゃないですか、と切り捨てる千影。
表情が思わしくない。今は白河の話はしないほうがよさそうだ。
観光ガイドに視線を戻す。

「なあ、こことか――」
「せっかく大阪の近くまで来たんですし、日本橋行きましょうよ日本橋!」
「目を輝かさないでいい。日本橋は分かったから……」
昼間は美術館、夕から夜は日本橋か……
プランとしては悪くない。電車に揺られるのは嫌いじゃない。
しかしハードスケジュールになりそうだな……


――

「……あんな場所に美術館があるなんて思いませんでした」
「初めて来た奴は必ずそう言う。俺もそう言った」

美術館から駅に行くバスに乗り込んだ。時計は14時を指している。
この美術館というのが、車で行くのも少しおっくうな土地にあって……
しかし、山の中を開拓する形で造られた施設なので自然も豊富だ。
美術品はもとより、本館までの道に並ぶ四季の木々の話でも盛り上がれる。
……以前出張するとき、同期の奴に「中部行くならついでに寄ったほうがいい」とチケットを渡されたのがここを知ったきっかけだった。

今回は駅からバスで行くならアクセスもそこそこで、渋滞にも呑まれず千影も楽しそうだった。
……もともと、美術館とか退屈そうに見る子だったんだけどな。
これがきっかけで「そういうもの」に興味を持ってくれると話の種が増えて有り難い。
128前23:2008/05/05(月) 19:13:15 ID:xzV5mWp0
――

「千影、そろそろ日本橋だが……装備はそのままでいいの?」
「もちろんですよ。この大きさのほうが人付き合いしやすそうなので」

バスから電車に乗り換えて、日差しが低く傾いた頃。
千影の目は午前中より輝いていた。さっき考えていたことが杞憂に終わったのは間違いないが……

「財布渡そうか? たくさん買いたいものありそうだし」
「6千円くらいあればわたしの欲しいのは揃いそうです。
わざわざ財布を頂かなくても……」
「いや、俺がついていきたいだけ。
秋葉原も別れて見てたからさ」

それなら普通についてきてください、と千影は切り捨てた。
その言葉に乗ることにしよう。俺が千影を理解できない限り、千影は俺を理解してくれない。


「……ここが日本橋ですか……」
秋葉原ほどの規模ではないが、確かに電気街があった。
あの街に比べてサブカルに毒されていないのはいい点……かもしれない。

そして、数時間ほど千影のPCパーツ談義と買い物に付き合った。
6千円と言っていたが1万円飛んだのは言わないでおこう。


――

夜になった。
厨房にはエプロンをつけて何か料理を作っている千影。
今朝の発言を真に受けて「今朝のわたしは本気なんて出してませんよ♪」と、ノリノリで野菜を切り始めたのだ。
……今のうちにどくけしそうを用意しておきたい気分。


というわけで、部屋をこっそり出てコンビニで胃薬を調達した。
よし、これで安心して千影の料理を食べられる……
そう思い、部屋のドアを開いた。

「お帰りなさい、ご主人。
ご飯にします? お風呂にします? それとも……わたし?」
「……意味分かってるんだよな?風呂も準備したのか?」
「ええ。お風呂はちょっと火をダーンとして。ところで、どうしますか?」

今回は新婚夫婦ごっこに付き合わされるのか……

A:「ご飯」腹をくくって、危険なものに特攻することにした
B:「お風呂」俺はその後が怖くてベターな選択をした
C:「千影」せっかくだから俺は、本能のままに動くぜ!
129名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 19:46:57 ID:81KbmgKj
あえてA
130名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 21:48:57 ID:/8BEWBKs
愛しているなら
Aだろ
131名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 00:46:05 ID:YLBYtLnM
A&C.
せっかくだから裸エプロンであーんしてもらうぜ!
132前23:2008/05/06(火) 02:02:01 ID:1FmMG6Qt
A
「……じ、じゃあ、ご飯で」
「はいっ♪」

なんだこの猫なで声は。
千影、何に毒されたんだろうか……
さっきの選択肢といい、今までの千影ではありえない行動である。
……ただでさえ予想不可能な千影が、余計予想不可能に……

今日の夕食のメニューはこうだ。
ラーメン・餃子・チャーハンのシンプルな構成ながら、ラーメンはちゃんとスープを手製してある。餃子も手包みときた。
……普通なら高いポイントになるが、まったく期待できない。
――いや、逆の意味で期待できるのは千影ゆえにできることか。

「味見、したんだよな?」
「ええもちろん。そうしなきゃご主人に出すなんて真似できませんよ」
「餃子は焼き餃子だよな?『フライパン使った水餃子ですテヘ』なんてことないよな?」
「心配しすぎですよぅ……なんか否定された気分です……」
千影は左手に菜箸を持ち、餃子を掴んだ。
タレは最初からかけてあるらしい。
……つーか、こいつ左利きだったんだ。半田ごて持ってた手も左……

「はいっ、あーん」
頭の中でヘルニア持ちのDJの音楽がリピートする中で、千影に餃子を押しつけられる。
……漢なら腹をくくろうじゃないか。こんなに千影はかわいいんだ、
かわいい娘は料理もうまいと相場が決まってる。
今朝の選択肢だって超法規的処置に過ぎない。
口を開くと、口内にタレの味が広がった。

「むぐ」
第一印象、JTも生協も目じゃない。美味しいんだよ、美味しいんだけど……

「千影、油どれくらいひいた?」
「こう目分量でダーンッと」

厨房には空っぽになった油の容器。
諸氏なら分かるだろうが、6個程度の餃子を焼くときの油は大さじ2以上はくどくなるだけだ。
確かに少ないと焦げ付くが、この油の量で揚げ餃子にしない千影は何者なんだろうか。

「……」
確かに油や挽き肉の状態などには問題あるが、腹は痛くならなかった。
今朝よりはとんでもなく進歩している。レッドアリーマー味の味噌汁よりは……

「うん、悪くない。いくつか改善点はあるけど……」
「ありがとうございますっ、じゃあ次は……」
次点、ラーメン。このシンプルな醤油味に千影は何を隠したのだろうか。

「ずずず」
結論から言おう、めちゃくちゃ美味かった。
高い水準で味の整ったあっさりスープ、日本人好みの細麺……
千影は日本料理だけダメなのかもしれない。中華は餃子もだが、いい線を維持してる。
「あ、味は……」「文句なし」
「よかった、です……次は」

量が多かったものの1時間ほどで全て食べ終わった。
ずっと見ているだけで食べない千影が気がかりだったが……
133前23:2008/05/06(火) 02:02:39 ID:1FmMG6Qt
――

千影の料理を一通り食べ終え、風呂に入っている。
唐突に、関係にヒビを入れた時の記憶が……

何故だ?
忌まわしい記憶のはずなのに、息子はエレクチオンしている。
……体も暖まってきたというのに、抜いてから出なきゃならないのか……
まさか、勃ったままの姿を千影に見せるわけにはいかないからな…

「……」
あの時のことを思い出しながら、右手を動かす。
どんなエロ画像よりも興奮するおかずであることは間違いない。妄想なしでこれだ。
男が自慰にひたるところなんて描写する必要なかろう。
……限界が近い。頭の中で、千影が困惑している。

「ご主人、お湯加減は――」
「……っ!」

風呂は狭い。
千影の顔が目の前……いや、息子の前にあった。
そして、今はラストスパート。諸氏なら分かるだろうが、男は一定までエクスタシーを高めると自動的に射精してしまう。
それに2秒ほどのラグがあるのも……

「!!」
腰が抜けた。
千影の顔に押しつけられる息子。そして、放たれる精液。

「……ぁぅ……」
ほぼ無言で千影はそれを受け入れていた。

「な、なんで……」

そして、千影がつけたままだったパソコンから0時の時報が流れた。
134名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 10:53:01 ID:WPYei8nI
gj
135名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 15:31:00 ID:Bv13gTBI
いつもGJです!
だんだん危ない方向に進んで行ってるなー
ほのぼのした昔の頃に戻れず、ドロドロした展開になりそうだね…
136名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 21:23:37 ID:WPYei8nI
投下
いいかい?
137名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 22:57:39 ID:GiCb/ncg
同意を求めて1時間以上レスが付かなかったら
同意と見なして勝手にやっても十分許されるだろう常考
138名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 23:02:23 ID:WPYei8nI
すまん。
ちょっと手直ししてたらそのまますっかり忘れてた
139カイムと妖精2 後編 1/7:2008/05/06(火) 23:03:44 ID:WPYei8nI
>>37-43の続き

「今度は、何する……の?」
「痛いことはしないって」

 不安がるミィに、カイムは宥めるように笑いかけた。
 左手でそっとミィを掴んで、持ち上げる。紙細工のように軽い身体。同じ大きさの生物
に比べてもその重さは半分以下だった。赤い髪が下に流れる。
 カイムは人差し指を曲げて軽く肩を固定した。

「マスター?」

 潤んだ瞳で見上げてくるミィ。
 その平らな胸に優しく指先を当てる。なめらかな布の肌触り。服の上からなので直接肌
には触れていないが、それでも十分だった。

「ん」

 小さい息を漏らして、ミィは目を閉じて顔を横に向けた。
 指先に膨らみは感じられない。人形のような小さな身体で、外見年齢はせいぜい十二歳
くらい。辛うじて膨らみかけていることは感じられるが、胸の大きさは期待できない。

「でも、ないものは期待していないよ」

 独りごちてから、カイムは指を動かし始めた。
 決して力は込めず、優しく動く指先。緩い円を描くように、ミィの胸を撫でる。指に伝
わってくる生き物の暖かさと、女の子柔らかさ、妖精の儚さ。

「んん……」

 ミィが何かを拒むように、首を左右に動かす。
 赤い髪と緑色の帽子が微かに揺れた。羞恥心と興奮に頬が赤く染まっていて、呼吸も荒
いものになっている。一度達する寸前まで持ち上げられているのだ。少し撫でるだけであ
っという間に快感が湧き上がってくる。
140カイムと妖精2 後編 2/7:2008/05/06(火) 23:04:18 ID:WPYei8nI
「気持ちいいか?」

 声を掛けるが、ミィは答えない。
 カイムは指の動きを止めず、なだらかな胸を丁寧に刺激していく。指の動きに合わせて、
ミィが身体を動かす。拒否するような、期待するような、動き。

「んん、ふあぁ」

 このまま撫で続ければ、おそらく胸だけで達するだろう。
 カイムはミィの胸から指を放し、緑色のワンピーの中に指を差し入れた。指の腹がショー
ツの上から大事な部分へと触れる。
 さきほどから何度も撫でられ、じっとりと濡れていた。

「あ、マス、ター……。待っ、て」

 擦れ声でミィが制止するが、カイムは無視して指を動かした。微かな指のざらつきと凹凸
が、小さな秘部を刺激する。

「ん、ふああぁ……んんんンッ」

 甘い声とともに、ミィが身体を震わせた。
 さきほどは下から擦るような刺激。今は上から撫でるような刺激。大事な部分への刺激
に、胸を撫でていた時よりも大きな反応を見せる。

「ん、あぁ、おかしく……んんぅ。なっちゃ、うよ……あぁぁ」

 首を左右に振りながら、ミィは甘い悲鳴を上げていた。目元にはうっすらと涙が滲んで
いる。おそらくは許容できる限界近い気持ちよさなのだろう。
 カイムは苦笑しなががら、呟いた。

「可愛い声だなぁ」
「マスター、んんッ、言わない、でぇ……ふあぁ」

 ぱたぱたと抵抗するように足を動かすミィ。
141カイムと妖精2 後編 3/7:2008/05/06(火) 23:04:40 ID:WPYei8nI
「じゃ、もっと可愛い声出してみて」

 カイムは親指でミィの胸を撫で始めた。

「んん!」

 ミィの身体が大きく反応する。今までは一度に一ヶ所しか弄っていなかった。しかし、
同時に二ヶ所を攻められ快感が一気に増す。
 両手で別の動きを同時に行うのは難しいが、無理ではない。

「それ、は……駄目ッッ! 待って、マスター。待って……!」

 虚ろな赤い瞳と、荒い呼吸を繰り返す口、薄い唇から涎が零れていた。
 刺激が許容量を超えているのだろう。ミィは妖精の子供――だと思う。今まで性的快感
など知らなかったのだ。さほどの許容量があるとも思えない。
 ミィの身体が絶頂に向かって上り詰めていくのが手に取るように分かる。

「ふあぁ。ああっ、マスター。わたし、もう駄目……」

 だが、カイムは素早く指を止めた。
 イク寸前まで持ち上げられ、再びイクことも出来ず刺激を止められる。それが苦痛であ
ることは、ミィも理解していた。

「ますたぁ……」

 泣きそうな表情で見上げてくるミィ。
 えらく嗜虐心を刺激する姿であるが、出来るだけ平静を装って告げる。

「次はちゃんとイかせてあげるから」
「今度は、何する、の……?」

 不安げなミィの呟きを聞きながら、カイムは手の平を動かした。ミィの身体を起用にひっ
くり返す。前後が逆になり、背中の羽が天井を向く。
142カイムと妖精2 後編 4/7:2008/05/06(火) 23:05:08 ID:WPYei8nI
「え?」

 四枚の羽。ほんの微かに赤味を帯びた透明な羽。実体化した魔力の塊であり、背中から
服を突き抜けている。
 滅多に触らせてはくれないが、触られるとくすぐったいらしい。
 カイムは左上の羽の縁を指で撫でた。

「ひっ!」

 ミィの口から漏れる声。四枚の羽がぴくりと跳ねてから、ぴんと立って硬直する。見た
目は変わっていないが、羽の持つ雰囲気は変わっていた。
 出来上がった身体では、羽も十分な性感帯である。
 カイムは右上羽の中程を指で摘み、さするように動かした。

「ひぅ、ひぁ、ふぁ、あぁぁあ、マスター、羽は……羽は、ホントに駄目……!」

 今までの反応とは明らかに違う。指先に感じる妖精の羽。非常に薄く上質の絹のように
滑らかな手触り。何度触っても飽きない心地よさ。

「そう言われると、もっと弄りたくなる」

 カイムは右手の人差し指と中指、中指と薬指で上の羽二枚を挟み込んだ。ミィの話では、
羽は根元の方が敏感らしい。

「待って、マスター。お願い、待って……」

 次に来るだろう衝撃に、ミィが擦れた声で拒否を示す。
 だが無視して、根元から先端まで素早く指を動かした。

「ひゃぅ!」

 甘い悲鳴とともに、ミィが跳ねる。達したわけではないが、強い快感が身体を突き抜け
たようだった。やはり羽への刺激は、反応が違う。
 にやりと笑い、カイムは三本の指で下羽二枚を挟んだ。同じように、根元から先端まで素
早く扱いてやる。

「きゃン!」

 反応良好。
 カイムは同じ方法で、何度も羽を刺激する。
143カイムと妖精2 後編 5/7:2008/05/06(火) 23:05:30 ID:WPYei8nI
「きゃ、ふあぁ、ああっ! マスタぁぁ、ぅあっ、マスター……、遊ば、ふあぁ……! 
遊ばない、ああっ、遊ばない、で、んんん……ぅあぁ、お願い、いぃ」

 それぞれ五回づつ扱いてから手を止める。
 くったりと脱力しているミィ。まるで芯が融けてしまったような身体。全身が赤く染ま
り、微かな汗を滲ませている。虚ろな表情のまま、何も言わずに荒い呼吸を繰り返してい
た。思考もほとんど働いていない。
 今なら軽くショーツの上から撫でるだけで達するだろう。

「さて、これで終わりかな」

 カイムは羽の付け根の間へと指を触れさせた。

「!」

 ミィが身体を硬直させる。
 羽の付け根の間。そこが妖精の弱点らしい。ミィは時々羽を触らせてくれることはある
が、羽の付け根は絶対に触らせない。頼んでも断られる。魔力の羽を作り出す部位なので、
恐ろしく敏感なのだろう。

「マスター。駄目駄目、駄目……そこは、本当に――ふぁぁ……」

 指を動かすと、全身から力が抜ける。
 この部分を撫でられた妖精は、完全に脱力して動けなくなるらしい。どこかの本にそう
書いてあったが、どうやら本当のようだった。

「ますたぁ、そこは、あぁぁぁ……だめ、んんん、駄目だ、から、ますたぁ。うあぁぁ、からだ
が融け、ちゃう……。やめて、やめてぇ……」

 ミィは指一本動かすことも出来ずに、刺激を甘受している。力の入らないまま必死に歯
を噛み締めて耐えているが、そろそろ限界のようだった。許容量を超えた状態で達するこ
とが出来ず、意識が焼け付きかけている。
 カイムは背中から指を放した。
144カイムと妖精2 後編 6/7:2008/05/06(火) 23:05:51 ID:WPYei8nI
「ふぁ」

 息を吐き出すミィ。
 だが、休む暇は与えず、カイムは素早く三本の指で羽を挟んだ。二枚ではなく上下四枚を
まとめて。直後の衝撃を本能的に察し、全身を引きつらせるミィ。

「あぅ、壊れる、かも……」

 そんな呟きを聞きながら、カイムは素早く指を動かした。

「きゃゥ!」

 枷が外れて、ミィが身体を仰け反らせる。何度もイク寸前まで持ち上げられたところへ
のトドメの刺激。全身の筋肉を収縮させて、性的絶頂を迎える。
 だが、それで終らせない。
 カイムは再び付け根の間に指を触れさせ、やや強くそこを擦り始めた。

「ひぃ! ひぁっぁ、はぅぅ、ふああぁ」

 ミィが止まることなく痙攣する。一度イって神経が敏感になった所で、もっとも敏感な
部分を攻められているのだ。絶頂が収まらない。

「ああ、ああぅ、ふあぁ、マスター、壊れ、壊れる……壊れ、ちゃう!」

 意思とは関係なく身体を跳ねさせるミィ。
 全く力が入らず身体を硬直させて耐えることも出来ない。最も敏感な部分への攻めが圧
倒的快感となって、無防備となった神経へと襲いかかる。

「もう、駄目……、あぁ、ますたぁ、マスタァ、ああああぁぁぁ……!」

 悲鳴のような声を上げながら、激しく痙攣するミィ。
 そこで、カイムは指を放した。ミィは左手の上でぐったりとしていた。時々思い出したよ
うに、ぴくりと身体を震わせている。

「大丈夫か?」
「うん。何とか……」

 カイムの問いに、ミィは擦れ声で答えた。
145カイムと妖精2 後編 7/7:2008/05/06(火) 23:06:23 ID:WPYei8nI
「洗濯と乾燥終ったぞ」

 カイムは右手に持った服を机に置いた。
 折りたたまれた緑色の三角帽子とワンピース、ショーツ。ミィの着ていた服である。さ
きほどの情事で汚れてしまったので、洗濯してきたところだった。

「ありがと、マスター」

 ハンカチにくるまったミィが礼を言ってくる。
 右手を伸して置かれた服を掴むと、ハンカチの中に引き入れた。そのままもぞもぞと着
替えを始めた。

「さっきあんな事したんだから、いまさら恥ずかしがることもないと思うけど」
「へへ……」

 着替えを行いながら、ミィが照れたように笑う。
 カイムは大袈裟に吐息してから、告げた。

「でも、これっきりにしてくれよ。ぼくも酔っぱらってたとはいえ、かなり暴走してたから。
またこんなことはしたくない」
「分かった」

 ミィは素直に頷いた。
 ハンカチを落とすと着替えが終っている。

「でも……」
「でも?」

 不安を覚えて、カイムは訊き返す。
 ミィはその場に立ち上がってから、具合を確かめるように羽を動かし、カイムの顔のすぐ
隣まで飛んできた。耳元に囁きかけるように呟く。

「でも、羽触られたらまたエッチな気分になるかも」
「………」

 返答に戸惑うカイムの頬に、ミィは軽くキスをした。
146名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 23:06:44 ID:WPYei8nI
以上です
147名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 23:11:57 ID:GiCb/ncg
GJ
やはり妖精相手は間接に限るね
148前23:2008/05/06(火) 23:32:16 ID:1FmMG6Qt
GWネタ、完結編です。
帽子の人の後で非常に恐縮ですが……

全体的に荒削りなのは、携帯で書いてることとリアルタイム性による
推敲時間の低下によるものです。ごめんなさい。

エロなし、体格100cm超です。
苦手な人はNG登録してください。
149前23:2008/05/06(火) 23:33:25 ID:1FmMG6Qt
5/6

「――何をしていたんですか?」
数分の沈黙を千影自身が壊した。
整った顔に白濁がかかっていることも気にしていない、というような感じで。

「……」
「何か言ってください。何も言われなきゃわたしは何もわからないんですが……」
「……」
ぐうの音も出ない。
いくら賢者とてこの状況で適切な言い訳を述べるのは無理だ。
「――また駄々こねですか。仕方のないご主人ですね……
世話を焼く側の身にもなってくださいよ……」

呆れた顔で千影はつぶやき、風呂から出て行った。
すべてが崩壊していくような気分。状況の理解に時間はかからなかった。
少し時間を置いたほうがいい。萎えた息子に湯を浴びせた後、また湯船に戻った。

――

もう10年前、中学2年の頃の出来事になる。
千影と暮らし始めて7ヶ月、気心が知れてお互いに依存する日常ができあがっていた。
朝になれば千影に起こされ、学校の支度をして千影に留守番を頼んで……
帰ってきたら勉強して、飽きたら千影の服を縫って夜になったら寝る。それが日常だった。

「一人になりたいから」と選んだ、母との別居。
依存をしないために選んだのだが、結果的に千影に依存してしまった。

そんな中、今日と同じように風呂で物思いに耽っていた日。

当時、恋をしていた女の子がいた。
――今となっては名前は思い出せないが、マイペースで自分の道を切り開くタイプの子だった。
あまりクラスに馴染めていなかったのは俺と同じで、境遇が似ていたためとんとん拍子で仲良くなっていった。
――告白の前日、頭の中を整理するために……

要は風呂の中で致していたわけだ。

……片思いだったがな……

そして、今日のように……

「ご主人、お湯加減は――」
まったく同じシチュエーションだった。

「世話を焼くほうの身にもなってくださいよ……」
全身で白濁を浴びた千影は、平静を崩さずにそう言って風呂から出ていった。
翌朝には何もなかったかのように接してくれたが……

それ以降、千影を性的な目で見るようになった。
迫るのは根性が許さなかったため、性欲は衣装にそのまま反映されていた。
今現在千影の服は200着近くあるが、50着ほど外で着たらヤバいものもある。
逆に言えば、「プラトニックな関係」が壊れなかったのは衣装に情熱を当てていたからかもしれない。
150前23:2008/05/06(火) 23:38:21 ID:1FmMG6Qt
「(今となってはそれも形骸か……)」

俺はかなり悩んでいた。
千影に全てを捧げるか、一般人として生きていくか。

千影に想いの全てをさらけ出して、千影を「召使い」ではなく「彼女」としてそばにいてもらう。
俺は間違いなく幸せだが、千影はなんと思うか……
事実、千影は俺を好きではあるが愛してくれていない。
性的なことだって全て「ご主人が望んだから」やってくれただけとも取れる。

もう一つは千影のことをそういう目で見るのをやめる方法。
考えをあの日の直前に戻してしまう。
……そうしたほうが俺も真人間で生きていけるし、千影に無用な負担を強いずに済む。

「(……俺には、この選択しかないな……)」
風呂を出て、体を拭く。
千影の作ってくれたお茶を飲んでから、寝室に向かった。


「……落ち着きましたか?」
「ああ、その件に関してなんだが……伝えたいことがある」
「どうぞ」

後は言葉もなく、立っていた千影を抱きしめた。
――これが、俺の選択だ。

「また、わがまま、ですか……?」
「いや、これは俺の本心だ。
千影……昔からずっと好きだった」
「……はい」
返事で続きを促す千影。
「もちろん、今も好きだ。……結婚を前提に付き合って欲しい」

「……はいっ」

ベタなプロポーズだったな、と思う。
気持ちを率直に、となるとこの言葉しか浮かばなかった。
返事と同時に、千影の手が俺の後ろに回る。
151前23:2008/05/06(火) 23:38:55 ID:1FmMG6Qt
「……でも、わたし……人間と同じようにはなれないかもしれません。
わたしには「恋」というものが分からないんです。
ですから、ご主人に愛されてもわたしはそれに応えることができません……」
「それは薄々分かっていた」

千影は妖精だ。人間の三大欲求のうち二つ「食欲」「性欲」が欠落している。
食欲がないから味覚がおかしいのも頷ける。必要なのは魂の維持に若干の活力だけ。
食べる必要なんて最初からなかった。
恋とは性欲の表面でしかない。……物欲があるのは何故か分からないが。

「……だが、「恋」というのを一緒に覚えていけばいいんじゃないか?
千影が料理を用意してくれたのは、俺はすごく嬉しい思ったぞ」
「――そう、ですか……」
「だからさ、俺も千影と恋愛したい。……ダメか?」
薄々感づいていたが、自身の約束が縛っていただけで……
よく考えれば、プラトニックな関係とは恋愛をしないことじゃない。

「生活はいつも通りで構わない。
最初は料理を作ってくれるだけでいい……後は俺がなんとかする」
「……」
――ひとつだけ、希望はあった。
千影は自分なりの方法で俺との距離を縮めようとしていたフシがある。
そうでもなければ、生命を削るこのような真似はしない。
そこに、彼女の想いがあるならば――

「……じゃあ、ひとつ、わがまま言っても……いいですか?」
「言ってもらわないと困る。千影、何をして欲しい?」

もう一歩、あと一歩で……
沈んでいた千影の顔が離れる。

「――キス、してください……」

――

時計が6時を告げた。カーテン開ければ外はまっくら……とはいかない。
明るくなった空。……昨晩のことが正解だったのかは現状分からない。
しかし、千影は終始幸せそうな笑顔を崩さなかった。
目先のことだけを考えれば正解だったと思うのが適切か。
千影は俺の横で寝息を立てている。いつもの体格に戻ったのは疲れが出たからだろう。

――昨晩、何をしたかは察して欲しい。
断じて、千影の貞操を奪ったりはしていないが。

ホテルのチェックアウトは9時だ。
まだ時間はある。今度は俺が料理を作る番な気がした。
152前23:2008/05/06(火) 23:39:55 ID:1FmMG6Qt
――

「いただきまーす」
「……なんでお前がここにいるんだ?」
「まーツッコミはなしでさ。料理の腕は落ちてないの?」

7時には一通りの朝食ができた。
ホテルの1階にあるコンビニで食材を調達し、シチューとハンバーグを作った。
食パンにシチューをつけるのが漢の料理らしい所である。

……そして、俺の反対側に座っている白河。
朝のコンビニでばったり出くわした時は死を覚悟した。
しかし、白河が「反省してるからご飯おごって」と言い続けたため、根負けした格好である。
料理がシンプルめで量重視なのはその辺を考慮した結果だ。

「でさ、君は千影ちゃんのことどう思ってるの?
千影ちゃん従妹だし年齢はセーフだし、悪い娘じゃないと思うんさ」
「下手なこと言ったら警察に通報するつもりだな」
いつの間にかタメ口になっているのは警戒しているからだ。別に親しくなったわけじゃない。

「そんなこと思ってないよ。あの時はひどいこと言っちゃったけどさ……」
「――このことは口外するな。それを約束できるなら」
「大丈夫。言う相手いない」
「そうか、なら……」

千影はふとんの中で寝ている。
白河も千影がいないと思って話しているのだろう。

俺は白河を信じて、昨晩あった全てを白河に告げた。

「……恋を知らない女の子、ねぇ」
「そう。だから、一緒に覚えていこうかと」
「(いっちょまえに女の子エスコートしちゃって……)
うん。悪いとは思わないよ。ただ、千影ちゃんに何かあったら助けなきゃだめさよ」
「ありがとう。……ところで、なんでそんなに俺を寛容してるんだ?」
俺はこの後盛大なネタバレを受けることになる。

「ああ、昨晩千影ちゃんと電話してたんよ。
千影ちゃんの証言聞いてたら、実はすごいラブラブなんじゃないかと思い始めて……
で、きっかけが欲しいって言われたから風呂に特攻しなさいってさ。
だから、この進展は千影ちゃんからしたら悪くないかなって」
「全部白河の告げ口だったのか……」

もう白河を恨む必要はないだろう。あのことは白河が背中を押したことで相殺だ。
お互い飯も食べ終わったので、お開きにしよう。

「ごちそうさま」
「……ごちそうさま。」

厨房の流しで食器を洗う。
……おい、かぎかっこの終端に“。”をつけるのは邪道じゃないか。
そう突っ込もうとした時、白河は振り向いて――

「私のこと、覚えてないんだね」

と言い残して、部屋から去った。
親しい仲の奴で白河という奴は知らないし、高校の時教師にいたような気がするが男だ。
モヤッとボールを残して立ち去った白河のことを気にする暇はなかった。
直後に千影が起きたのだ。
153前23:2008/05/06(火) 23:43:33 ID:1FmMG6Qt
――

千影と朝飯を食べてゆるい観光を一通り楽しんだ後、新幹線の駅に向かった。
駅に着いた頃には夕方になっていた。これでも東京で乗り換えるため家に帰れるのは23時ギリになる。

「――すぐに過ぎちゃいましたが、楽しい旅行でしたね」
千影は俺の足を抱き、完全に惚けている。
もちろん背は120cm強に戻っているが……

「ああ、明日から仕事……」
「頑張ってください。お料理くらいはできますから」
この3日間を語っていた時、唐突に訪れたもの。

『まもなく、ひかり号東京行きが――』
「――千影ちゃん!!」
聞き覚えのある声。白河か。
こんな時に何をしに来たんだろうか。確か帰りもバスって……

『危ないですから、白線の内側に――』
「はぁ……間に合った……」
白河は息を切らしていた。
「な、何だよいきなり……」
「……ねえ、私の名前覚えてる?」
「当たり前だ。白河――
ちょっと待て、名前を聞いてなかった」

白河の顔が明るくなる。
「そう……ゆきって言えば分かるかな?」
「な……」

「昔、三沢結希だった人よ。 ――久しぶり、初恋さん」

白河は身体をこちらに向けて、そう言った。
三沢結希。
俺が中学の時に恋をしていた相手の名前。
しかし、今まで何故気づかなかったんだ……

「――ずいぶん変わったな。白河って名乗られてから気づかなかった」
「ひどいなぁ。あの時から髪型以外変えてなかったのに」
気がついたら、新幹線がホームに入っていた。
車両とホーム越しに話を続ける。

記憶よりかなり大人びていたため、顔が一致しなかったのが気づかなかった一因だ。
名字が白河になったのは親が離婚し旧姓になったから。
白河は最初から俺のことに気づいていたが、千影の存在が少し気に入らなかったらしい。
そこで、あのようなカマをかけたと。
154前23:2008/05/06(火) 23:45:43 ID:1FmMG6Qt
発車ベルが鳴る中、最後に強く手を握り、

「また、どこかで――」

と誓いを立てられて、電車のドアが閉まった。
白河は直前まで手を離さなかった。

――

「へぇ……クラスメイトだったんですか」
「ああ……名字が変わったのかあいつ……」

新幹線の中で、手短に白河――いや結希との関係を伝えた。
初恋の相手だったことは伏せたが。幸い、千影は結希が俺のことをなんと呼んだのか聞こえなかったらしい。

「――白河さんが悪い人に見えなかったのは、そういうことだったんでしょうか……」
「あいつ、ぶっきらぼうだが根はいい奴なんだよ」

思い出話をしてもあまり面白くないのは分かっていたが、口が止まらなかった。

――

新幹線の中で夜がふけて、俺は駅から家までタクシーで帰った。
タクシーに乗る直前に千影がダウンしたため、小さな千影を胸に入れて帰ったが……

そうして、GWの旅行は終わった。
……千影との関係が変わったのが唯一無尽のお土産で。

明日からまた日常に戻る。
白河にはたまにメールするようにしよう。
一度切れた縁がまた戻ったんだし……

「すぅ……すぅ……」
千影の眠る姿を見て、俺も同じ布団で眠ることにした。

――
GW一発ネタ Fin
155名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 22:28:39 ID:Bf3lQ5be
>>146
GJ!ハァハァしたよ。羽愛撫は妖精好きにとっては夢のシュチエーションだな
>>154
なんだか、三角関係な予感。GJ
156名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 00:32:48 ID:L8ay9Kgq
別に・・・この程度のエロ物語だったら妖精じゃなくても普通の人間の女でもいいじゃん。
妖精だからこそのシチュを希望したいんだが・・・
いわゆる小動物イジメ系。
さんざ弄んで、最後は潰し系とか・・・・
157名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 01:35:13 ID:vXNtoyyH
イジメとか潰しとかそんなん見ていても楽しくないしなぁ
158名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 02:42:49 ID:ijm7Qg0V
エロ系統でいじめるのは大好物であります!
159名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 06:29:55 ID:gm+E5Sc/
綿棒や小指で責めたり全身で奉仕させたり
そういうのは大歓迎。痛いのは妖精さんがかわいそうと思わんのか?
160名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 07:30:31 ID:hYIwbwOc
思わないね
懇願する姿とか泣き叫んで許しを乞う様とか
興奮を抑えきれない

拐ってきてご主人様の名前を呼び叫んでも、
今の主人は誰だ?と
俺には興奮材料にしかならない




と弁明してみたけど
俺自身が耐えられん
愛でるほうが性に合う

あとのフォローたのむ
161名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 07:36:12 ID:EXQvFNlO
そもそも鬼畜系書く人がいない。
162名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 13:34:31 ID:2juU3c9a
私は生命の妖精です。アナタの死が近づいている事をつげに来ました。
納得できない、そんな表情をしていますね。無理も無い話しです。アナタの本来の生命は、あと70年分は燃え続ける事が出来る筈ですから。
ですが、このままではアナタはあと1年も生きる事が出来ません。
アナタのお父様が私達妖精に行った行為。例え故意でなかったにせよ、許されるものではありません。
本来、生命を枯らすのはアナタのお父様です。ですが、アナタのお父様はソレを拒んだ。結界を晴れる人物を雇い、私達からの干渉を拒んでしまった。
あなたが死んでしまうのは、そのツケです。
大妖精様は言いました。ならばその血族の生命を代理として取り立てろと。
ですが、私にはそんな事出来ません。アナタのお父様が事を起こしたあの時、アナタは私達を助けてくれたから……。
大妖精様の命令は絶対です。私にはアナタを救う権限も、力も無い。ですが、方法が無い訳でもないんです。
……アナタには、まだ死ぬ事が出来ない理由があるはず。ええ、分かっています。ずっと、あの日から、見ていましたから……。
生命が涸れるのを防ぐ方法。簡単な事です。
生命の妖精は読んだ字の如く、生命の塊です。私を体内に取り込めば、少なくとも5年は、生きながらえる事が出来ます。
ソレが無理なら、せめて血液を。私の血を飲んでください。
アナタの未練がなくなるまで、私から、生命を絞り続けてください……。


いぢめてみる話を考えたが、やっぱ鬼畜は無理だわ。
163名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 14:49:00 ID:12WuXXQU
そのシチュエーションは鬼畜とは違うような気がしないでもない
164名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 19:38:44 ID:EXQvFNlO
妖精から血を貰いつつ一緒に生きる男の物語になるけど
鬼畜と言うよりはシリアス系
165名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 21:34:26 ID:2juU3c9a
>>163
鬼畜にしようとしてもココらへんが限度って(ry
166名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 21:47:01 ID:AMtfiheI
妖精よりも鬼畜の方が重要だというなら、鬼畜なエロ話を扱うスレでやればいいんじゃまいか?
167名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 21:49:50 ID:12WuXXQU
>妖精よりも鬼畜の方が重要
いやさすがに誰もそうは言ってないだろう
まあ書いてくれる人ありきだし、あんま鬼畜クレクレするのもどうかと思うけどね
168名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 06:17:21 ID:b46qW2uq
汚い妖精を見つけたので虐待することにした。
他人の目に触れるとまずいので家に連れ帰る事にする。
嫌がる妖精を風呂場に連れ込みお湯攻め。 充分お湯をかけた後は薬品を体中に塗りたくりゴシゴシする。
薬品で体中が汚染された事を確認し、再びお湯攻め。 お湯攻めの後は布でゴシゴシと体をこする。
風呂場での攻めの後は、全身にくまなく熱風をかける。 その後に、乾燥した不味そうな塊を食わせる事にする。
そして俺はとてもじゃないが飲めない白い飲み物を買ってきて飲ませる。
もちろん、温めた後にわざと冷やしてぬるくなったものをだ。
その後は棒の先端に無数の針状の突起が付いた物体を左右に振り回して 妖精の闘争本能を著しく刺激させ、体力を消耗させる。
ぐったりとした妖精をダンボールの中にタオルをしいただけの質素な入れ物に放り込み 寝るまで監視した後に就寝。
169名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 08:53:56 ID:4u5OEIfQ
>>168
なんという鬼畜w
170名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 10:06:04 ID:nWjem90o
>>168
ちょ、おま、それはw
171名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 16:21:18 ID:4OQitSup
懐かしいものをwww
172名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 01:27:33 ID:VjRQMSLP
続きのコピペはネコが息を引き取る様子だったような
173名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 22:27:49 ID:Z8ORwby2
しかしこのスレには職人の方が少ないよな・・・
もっとたくさん来て頂きたい
174名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 23:41:04 ID:qPqNUDY2
現在書き手は四人
175名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 04:23:25 ID:bcoWSEpK
前スレで投下した「キャンパスの妖精」の続きを投下します。
今回で最後です
176キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:24:07 ID:bcoWSEpK
 ページをめくる音や、ペンを走らせる音に囲まれた、学校の図書館内。
 空調の整った静かなこの場所は、読書をするのに最適な空間だった。
 そして、居眠りをするのにも…。

「んん…、ふあぁ…」
 閲覧用テーブルの上に尻を付き、うなだれるような形で眠っていたユリナは、目を覚ますとぼんやりと辺りを見回した。
(ここって…。あぁ、そうか。本読んでいる途中で寝ちゃったんだ、私…)
 油断すればまた眠りに落ちてしまいそうな瞼を強引に擦り、意識を現実に引き戻す。
 眠気が覚めたと同時に、彼女の口から落胆の溜め息が漏れた。
(そうだよね…。あんな都合の良いこと、起こるわけないもんね…)
 “あんな都合の良いこと”とは、ユリナが先程まで見ていた夢のことだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 夢の中で彼女は、人間と同じ大きさになっていた。
 そしてその隣には、ユリナが密かに想いを寄せる人間、レイジの姿があった。
 自分が人間サイズになっても、レイジとは頭一つ分程の身長差があったのだが、それでも妖精だった頃に比べ、レイジがとても小さく見えた。

 大きくなること…。それはユリナが今一番望んでいたことだった。
 レイジと釣り合えるだけの存在になることが、彼女の夢であった。

 ユリナは、迎え入れるように腕を広げるレイジの胸に、遠慮がちに飛び付いた。
 そしてその背中に腕を回し、力一杯抱きしめた。
 彼もそれに応えるように、ユリナを腕の中に包み込んだ。
 顔を上げれば、すぐそこにはレイジの顔がある。
 流石に正面からこんなに近く彼の顔を見るのは、初めてのことだった。

 見つめ合う2人…。静かに閉じられる瞳…。
 そして…。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 そんな、恋する乙女の妄想をふんだんに盛り込んだ夢の内容を回想し、ユリナは顔を赤くした。

(でも、良かったなぁ…。レイジに抱きつけたこと…。例え夢でも、すっごく嬉しい…)
 現実じゃ絶対に出来ないもんね、と心の中で付け足し、自嘲する。
 夢の中で自分のした行為は、妖精の身体では絶対に出来ないことだった。

(こんな本読んでたから、あんな夢見ちゃったんだ…)
 ユリナの目の前に置かれている、彼女からすれば巨大な本には、「変身魔法」についての記述が載っていた。

 自らの姿を、動物や他の種族のものに変えてしまうという「変身」。
 ユリナにとっては専門外であり興味も無かったが、最近になって積極的に調べるようになった。
 しかし、調べれば調べるほど、自分に不利な現実を突きつけられてしまう。

 記述によれば、変身しようとする者の質量より、大きな質量を持った姿に変身することは、とても困難らしい。
 人間を例に挙げるなら、犬や小鳥などに変身することは熟練者でなくても可能だが、人間より巨大な動物となると、
 相当な技量と経験を持った者でないと不可能ということだ。

 質量の小さな妖精は、変身魔法に最も不向きな種族といえる。
 妖精が人間に変身することは、人間がドラゴンか何かに変身することに値する。
 変身に成功した妖精は、未だかつて1人もいない。
177キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:25:24 ID:bcoWSEpK
「……」
 ユリナは力なく、重い本のページを閉じた。
 幾ら自分が望んでも、無理なものは無理だった。

 ――大きくなりたい…。 ――もし自分が人間だったら…。
 その想いは、日に日に強くなっていった。
「はぁ…、レイジ…」
 ふと、想い人の名を口にする。
 当人がすぐ近くに居ることに気付かずに。

「俺がどうかしましたか?」
「うひゃあぁ〜〜!?」
 図書館という場にそぐわない、大きな奇声を上げてしまう。周囲の視線が一斉に集まる。
「レ、レ、レイジ!?」
 振り向くと、彼女を悩ませている張本人が、自分を見下ろしていた。
「すみません…。まさかこんなに驚くとは思わなくて…」
 声を掛けた彼自身、ユリナの声に驚いているようだった。

 周りの目が痛い…。
 受付のテーブルからこちらを見ていた司書の女性が、怒気を帯びた表情でわざとらしく咳払いをした。




「ごめんね、レイジも一緒に追い出されちゃって…。何か用があったんでしょ?」
「いえ、別に急ぎの用事じゃなかったので、気にしないでください」
 途中まで、2人の帰り道は同じだった。
 ユリナは、レイジのすぐ隣を飛んでいた。

 空を見上げると、一面、灰色の雲に覆われていた。
 雨でも降るんじゃないか、そんな心配をしていたら、レイジから質問が飛んできた。
「ところで先輩、さっき変身に関する本を読んでいたみたいですけど、興味あるんですか?」
「え? え、えぇ、まぁ…」
 ユリナとしては、あまりレイジには知られたくなかったのだが…。

「ほ、ほら、やっぱり人間の街って、妖精にとっては大きすぎて不便だし。
 大きくなれば、後輩の子達におもちゃにされることもなくなるし…。
 だから私も、ちょっと人間になってみたいかなぁ、って…。
 イヤイヤイヤ解ってるんだよ? 妖精が変身魔法に向いてないこと位…。
 でもでも、想像するだけだったら個人の自由だよね!?」
「は、はぁ…」
 自分の気持ちを隠すためにと、聞かれてもいないことをペラペラと捲くし立てていた。

 本当はそんなことどうでも良かった。
 ただレイジと不釣り合いでなくなりたい為に、人間になりたかった。


 もうすぐ、分かれ道に着いてしまう。
「……」
 もう少しだけ、レイジと一緒に居たかった。
 折角偶然会えたのに、このまま別れてしまうのはもったいなく感じた。

 勇気を出して、しかしそれを悟られないように、ユリナはレイジに言った。
「ねぇ、レイジ…。久しぶりに、レイジのおうちに遊びに行っていいかな…?」
178キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:26:34 ID:bcoWSEpK
「お、おじゃましまーす…」

 レイジにとっては、友人を自宅に招きいれた位の感覚しかないだろう。
 だがユリナからすれば、異性の家に上がるという、特別な意味があった。
 そしてここは、レイジに対する想いが生まれたきっかけの場所でもあった。

 部屋の内装は、彼女が前回来たときとほとんど変わっていない。
 ただ一つ、この小さな部屋にはあまり似つかわしくない家具が追加されていた。
「どうしたの、これ? 前はこんなの無かったよね」
 それは、本革を用いた、いかにも高級そうな二人掛けのソファだった。
「ああ、これですか」
 レイジはソファの横に立つと、背もたれに手を置いた。
「店で見つけて、思わず買ってしまったんです。
 高いし、部屋に置くにはちょっと大きすぎるんですが、どうしても欲しくて。
 一目惚れ、ってやつですかね…」
 はにかみながら、ソファを買った経緯について説明する。
 高い買い物をしたことに、少し誇らしげのようだった。

(かわいい…)
 レイジもこういう表情するんだ…と、レイジの新鮮な一面を見て、ますます彼に対する想いが強まっていくのが解った。



 話している途中、ピンポーンという来客を伝えるチャイムが鳴り響いた。
「あれ? お客様?」
「いえ、きっと新聞か何かの勧誘だと思います。最近多いんです」
 ちょっと待っていてくださいと、ユリナに告げるとレイジは玄関に向かった。

「……」
 ユリナ1人になり、急に室内は静かになった。

 彼女は、ソファの上に降り立った。
「一目惚れ…か…。いいね、あなたは。レイジに気に入られて」
 物に嫉妬しても仕方がないが、“一目惚れ”という言葉を使われたのが、羨ましかった。

 ユリナは、ソファに腰を降ろしてみた。表面を撫でてみると、確かに肌触りは良かった。
 しかし、座り心地に関しては、良く解らない。
 無論、このソファは妖精が座ることを想定して作られていない。
 椅子に座っているというより、単に柔らかい物に乗っかっているという感じに過ぎなかった。
 それに…。
(どんな高級な椅子なんかより、レイジの肩の上が一番だよ…)

 レイジはまだ帰ってこない。
 静かな部屋に1人でいると、あれこれと考え事をしてしまい、気が滅入ってしまう。
(テレビでも付けようっと…)
 飛び上がり、テーブルの上に着地する。テーブルには、リモコンが2つ置かれていた。
 その内の1つの、電源と思われるボタンに体重を掛ける。
「えいっ。……。あれ?」
 テレビの電源が付かない。変わりに、テレビの真下に設置されていたDVDプレイヤーが、再生を開始した。
 リモコンを間違えたことに気付き、もう一つの方に駆け寄る。

 スイッチを押すと画面には、DVDの映像が映し出された。
「えっ…」
 映し出された映像に、ユリナは声を失う。
「これって…ひょっとして…」
 見てはいけないものだとは解っていても、そこから目を離すことができずにいた。
179キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:27:54 ID:bcoWSEpK
「すみません、遅くなって」

 今回の訪問販売はとにかくしつこく、一向に帰ろうとはしなかった。
 痺れを切らしたレイジは、最後には追い出すような形で販売員に引き取ってもらい、やっと部屋に戻ることが出来た。


 部屋の戸を開け、最初に聞こえてきたのは、女性の喘ぎ声だった。
「!?」
 見るとテレビには、裸の男性と女性が体を重ね合わせているシーンが映っていた。
 女性は身悶え、いやらしい鳴き声を上げている。
 そしてテーブルの上には、ユリナの姿があった。
 背を向けているため、こちらから表情を読み取ることはできない。

 友人から「絶対にオススメ!」と半ば無理矢理貸し出されたアダルトDVD。
 一度だけ使わせてもらったものの、後はDVDプレイヤーの中に放置したまま、今の今まで忘れていた。

「いやっ、これは…その…」
 彼にしては珍しく、うろたえていた。
 健全な男性なら所持していて当然のものではあるが、招いた女性に見られるというのは、矢張り気まずい。
 ユリナに幻滅されてしまったかもしれない。


 未だユリナは、黙ったまま背を向けている。
「あの、ユリナ先輩…」
 テーブルの脇に腰を降ろし、ユリナの顔を覗きこんだ。
「ユリ…」
 再び彼女の名を呼ぼうとしたが、思わず言葉を止めた。
 ユリナの瞳からは、大粒の涙がこぼれていた。


「うっ…、くっ…」
 俯き、静かにむせび泣くユリナ。
 袖で目を拭いても、こぼれ落ちる涙が止まる気配はなかった。
「くっ…ひっく…」

「……」
 そんなユリナに、レイジは何もすることができなかった。


 何より、涙の理由が解らない。このDVDが原因の1つには間違いなさそうだが。
 彼女が悲しんでいるのであれば、慰めの言葉を掛けてあげたいし、自分に非があったならば、謝りたかった。
 だが、今の彼女に掛ける言葉は、謝罪でも慰めでもないような気がした。
 彼はただ、ユリナの傍で、彼女が落ち着くのを静かに待つことにした。
(とりあえず、テレビの電源は切っておかなきゃな…)
180キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:28:49 ID:bcoWSEpK
 ユリナが落ち着きを取り戻したのは、それから十数分経った頃だった。

 彼女は俯いたまま、元気のない声で「ねぇ、レイジ…」と声を掛けた。
「やっぱり、レイジも…、ああいう…、えっちなことに、興味あるんだよね…」
 先程のアダルト映像のことを言っているのだろう。
 何故そのようなことを聞くのか、質問の意図が読めない。
 読めないが、彼女にとっては大事な意味のある質問であるということは解る。

「その…まあ、俺も男ですから…」
 思案した結果、一番無難と思われる受け答えをする。

「するんだったら…やっぱり…人間の女の子としたいよね…」
 そう言うとユリナは、下を向いていた顔を勢いよく上げ、レイジを見据えた。
 そして、先程とは打って変わった大きな声で、叫んだ。
「妖精なんかとじゃなくて、人間の女の子としたいよね!!」
 乾いていたはずの彼女の瞳から、再び涙が溢れ出す。

「どうしたんですか先輩!? ちょっと落ち着いて…」
 彼女の尋常ではない感情の高ぶりに、制止しようと思わず手が動いた。
 だが、彼女を抑えようとした手は、次のユリナの一言によってピタリと止まってしまう。
「好きなの!! レイジのことが!!」



「……」
 一瞬だけ、世界が止まったような気がした。
 ユリナの言葉を、最初は何かの聞き間違いではないかと思った。

 だが、ユリナの言葉は止まらない。
「ずっと前から好きだったの! レイジのことが…私…ずっと、ずっと…!
 ずっとこの想い伝えたいって思ってた!
 でも、私は妖精で…あなたは人間で…。
 こんなこと言ったら、レイジ、きっと困ると思って…。
 だから…ずっと…言えなくて…ずっと…」

 少しずつ、声のトーンが下がっていく。
 ユリナは再び俯いてしまうと、振るえ、搾り出すような声で、レイジに問いかけた。

「レイジは…レイジは私のこと、どう思ってる…?
 好き…? 嫌い…?」
181キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:29:45 ID:bcoWSEpK
 言った…。遂に言ってしまった…。
 胸の内に秘めていた想いを、吐き出してしまった。

 例えどんなに両者の想いが通じていようとも、人間と妖精とでは、体を重ね、一つになることはできない。
 妖精という、他種族より圧倒的に小さな身体が、並の性行為さえも不可能なものにしていた。
 そんなことは一目瞭然。考えなくても解っていることだった。
 それなのに、人間同士の性交を見て…受け入れたくない現実を目の当たりにしたことで、
 自分の小さな身体を恨めしく思ってしまった。
 悔しさや切なさが込み上げ、それが涙として現れた。

 そして、半ば自棄になって、レイジに告白をした。
 どんな状況であろうと告白は告白、好きだという気持ちを伝えたことに、変わりなかった。

 ――レイジは私のこと、どう思ってる…?

 今一番知りたかったこと。そのはずなのに、答えを知ってしまうのが怖かった。
 レイジからの返答を、ユリナは目を硬く瞑り、静かに待った。





 どの位の時間が経っただろうか。
 この部屋にある時計は、音が鳴らない。闇の中に視界を委ねている彼女に、時を知る術はなかった。
 唯一つ言えることは、レイジはすぐには答えを出さなかった、ということだ。



「…好きか嫌いかで言えば…好きです、ユリナ先輩のこと…。
 でもそれは、恋というより、尊敬の気持ちの方が強く…。
 だから…すみません…」
 じっくり時間を掛け、レイジの出した答えは、これだった。




 彼の言葉は、全て鮮明にユリナの耳に届いていた。
 そしてすぐに理解した。振られてしまったのだと。

 予測していたことだった。それでもショックを隠せなかった。
 これでもう、もしかしたら…という、自分にとって都合の良い甘い希望にすがることさえ、許されなくなった。
 それどころか、もう今までのような関係さえも続けることができないかもしれないと思うと、大きな後悔の念に駆られた。


 だがそれ以上に、ユリナの胸に広がっていく、別の感情があった。

 この感情を、言葉にして、レイジに伝えたかった。

 ユリナはその場に涙を拭きながら立ち上がり、申し訳なさそうにしているレイジの顔をまっすぐ見上げた。

「ありがとう…、レイジ…」
「えっ…?」
「ありがとう…私の言葉、ちゃんと受け止めてくれて…」
182キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:30:49 ID:bcoWSEpK
 ユリナが最も怖れていたこと。
 それは振られることではなく、決死の告白を蔑ろにされることだった。

 この小さな身体のお陰で、周囲の人間から子供のように扱われてしまうことも、少なくはなかった。
 それだけならまだ良い。妖精だからというだけで軽んじて見られ、プライドを傷つけられたこともあった。
 もし自分の想いがレイジに届かず、笑い飛ばされたり、冗談めかしく受け答えられたりしてしまったら、きっと立ち直れない…。

 だが、レイジはそうはしなかった。
 ユリナの告白を真面目に受け、真剣に考え、そして誠意を持って、断ってくれた。
 それでもう、十分すぎた。

 対するレイジは、ユリナからの告白を断ってしまったにも関わらず、感謝を述べられたことに、困惑しているようだった。
 そんな彼に、ユリナは違う質問を投げかけた。
 先程よりも、普段のものと近い調子の声が出た。

「もしも私が、妖精じゃなくて人間だったら…。
 レイジ、さっきの私の告白、受けてくれてた?」

 こんなことを聞いて、何になるのだろうか。
 返事がどちらであっても、自分が傷つくことは解りきっているのに。
 余計にレイジを困らせてしまうだけだ。
 だがそれでも、ユリナは聞いておきたかった。


 しばしの沈黙の末、レイジは答えを出した。
 しかしそれは、ユリナが予測していた返事の、どちらでもなかった。

「正直、想像できません…。先輩が人間だったら、なんて」
「…どうして?」
「先輩が人間だったら、俺達、こうして出会うこと無かったわけですよね。
 俺が先輩から、妖精の魔法理論を教わろうとしたのがきっかけなんですから。
 …俺は尊敬できる先輩に会えて、良かったと思っています。
 だから、ユリナ先輩が妖精だということに、感謝しています…」


 想像してみる。もし自分が人間だったら、ということを。
 きっと普通の、人並みの学生生活を送ることが出来ただろう。
 その代わり、果たしてレイジと巡り会うことができたかどうかは、解らない。
 同じキャンパスの中ですれ違ったとしても、お互い意識することなく、通り過ぎてしまっているかもしれない。
 それは、他種族の男性に恋してしまった為に、悩み、ときに苦しんでいる今の自分と比べ、どちらが幸せだろうか。
 …考えるまでもなかった。

(そっか…。私が妖精じゃなかったら、レイジに会えなかったかもしれないんだ…)
 今まで自分が妖精であるという事実を、足枷と考えることしかできなかったユリナに、その発想はなかった。


 ユリナの告白は、レイジには届かなかった。
 だが彼は、ユリナが妖精であるということを含め、彼女を受け入れてくれていた。
(やっぱり…レイジのことを好きになったの、間違いじゃなかった…)
 自分の想いに自信を持ち直すと同時に、より一層彼のことを愛おしく思えた。

 ユリナはテーブルから静かに飛び立つと、レイジの肩の上に座った。
 彼の首に体を寄りかからせ、手を添える。そして囁いた。
「私も…。私もあなたに会えて…よかったよ…」
183キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:32:06 ID:bcoWSEpK
 
 
 ユリナが帰宅し、一人となってしまった部屋で、レイジは今日のことを思い返していた。
 彼女が告白したときの姿が、頭から離れない。

(どうして先輩は、俺なんかを好きに…)
 彼女の恋愛の対象が自分……もとい、人間だということに、驚きを隠せずにいた。


 レイジは、種族の違いについて、寛容というよりも無関心であった。
 種族に関係なく、自分が尊敬できると思える人物には、素直にその意を示していた。
 無論、小さな妖精に対しても、妖精だからという理由で見下すなどという気は毛頭なかった。

 だが、そんな彼でも、妖精と人間が愛し合う、という構図を想像することはできなかった。


(先輩…)
 再び彼女の顔が浮かぶ。
 玄関の前でユリナを見送るとき、彼女はいつもと同じように振る舞うように努めていたが、心の中はどうだか解らない。
 彼女の告白は本気だった。彼女の想いを無下にしてしまった自分は、きっととても罪深い…。


「あっ」
 窓の外を見やると、小粒の雨がパラパラと降り注いでいることに気付いた。
 しばらくぼんやりしていたため、いつ頃降っていたかは解らないが、少なくともユリナを見送るときには降ってはいなかった。
 ユリナは雨具を持っていない。そうでなくても、妖精が雨の中一人で帰るのは、骨の折れることだった。
(先輩、大丈夫かな…)
 彼女が心配になり、外に出て追いかけようと思ったところで、玄関のチャイムが鳴った。

「うぅ…、レイジ〜…」
 扉を開けた向こうには、全身ずぶ濡れとなり戻ってきたユリナの姿があった。



「ど、どうかな…?」
 服を脱ぎ、体を乾かしたユリナは、レイジから受け取ったハンカチを身に纏った。
 忍びないが、レイジの部屋に妖精用の服などある筈もなかった。

 ユリナは、彼から借りた二枚のハンカチをツーピースのようにして着ていた。
 一枚目で上半身の前の部分を隠し、二枚目をスカートのようにして腰に巻いてある。
 羽を通す穴が無いため、肩と背中を大きく露出させている。
 横から覗いたら、乳房が見えてしまいそうだ。

「……」
 テーブルの上に立つ彼女を、レイジはじっと見つめていた。
 見つめ、そして想像してしまっていた。この布二枚の向こうにある、ユリナの裸体を。
 そんなことを想像するなど…彼女を性の対象として見ることなど、告白を受ける今日の今日まで、考えられないことであった。
184キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:33:11 ID:bcoWSEpK
「な、何か、恥ずかしいな…。あんまりジロジロ見ちゃ…」
 そう言いながら、ユリナはレイジに対し背を向けた。
 しかし背を向けたところで、隠す物が何もない背中を見せてしまうだけだった。

 そして、以前にレイジが綺麗だと言った、羽もそこには生えていた。
 以前に折れてしまっているのを見たことがあったが、随分前に完治し、傷跡も残っていなかった。
 何気なく、羽に薬を塗ったことのあるその指で、レイジは彼女の羽を撫でた。

「ひゃうんっ!?」
 瞬間、ユリナが短い奇声を発したため、レイジは咄嗟に手を引いた。

「…すみません。もしかして、まだ傷が…」
 痛むんじゃないか、そう繋げようとしたレイジだったが、身体を半分だけ横に捻り、彼を見上げるユリナの表情を見て、声を失ってしまう。
「ううん、違うの…。そうじゃ…なくて…」
 頬を赤らめた、切なげな表情を見て、ユリナが感じているということを、レイジは気付いてしまった。

(もしかして、あのときも?)
 あのとき…、羽に薬を塗ったあのときも、ユリナは今と同様、感じていたのだろうか。
 確かに、羽は妖精にとって大事な部分であるということは解ってはいたが…。
 知らずのうちしてしまった過去の行いに対し、レイジは急激に恥ずかしさが湧き出てきた。

「レイジ、覚えてる? 私が羽を怪我したときのこと…」
 ユリナも、彼と同じことを今考えていたようだ。レイジから視線を外し、ユリナは続けた。
「あのときね、レイジが私の羽褒めてくれたの、とっても嬉しかったんだ…。
 触られている間中、ずっと変な気持ちで…、もっともっと触って欲しいって思うようになっちゃって…。
 …夜、部屋で、自分の羽をいじくりながらその…1人で、えっちなこと、したこともあったんだ…。
 レイジのこと、考えながら…。それも一度や二度じゃなくて…。
 …見損なったよね…。いやらしい妖精だって、思うよね…」


 彼女が自分のことを、そういう目で見ていたなんて…。複雑な気分だった。

 ただ、こんなにも強く自分のことを想う彼女のことを、見損なうはずがなかった。
 代わりに、彼女に対する愛おしさが込み上げてきた。

「先輩の羽、もっと触らせてもらっていいですか?」
 本心から、その言葉が出た。

「ふえ…?」
 まさかまた直に触ってもらえるとは思っていなかったのか、ユリナは小さく驚いた声を上げた。
「え、えーと…。あの、いいよ…。
 ううん…、触って、欲しいな…」
185キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:34:14 ID:bcoWSEpK
 ユリナは、差し出されたレイジの手の上に座った。
 彼女の尻が、手の平に当たっている。

 レイジに背を向けていても、彼女が緊張しているのが解った。

 半透明で、余計な装飾の一切ないその羽が、レイジは好きだった。
 以前に綺麗と言ったのも嘘ではないが、今は「綺麗」という言葉が、昔以上に大きな意味を持つようになっていた。

 目でじっくりとユリナの羽を堪能した後、彼女を乗せていない手を伸ばし、そっと指先を這わせる。
 今回は、怪我をした一枚だけでなく、四枚全ての羽を平等に撫でていった。
 時折小さく震えるそれが、愛らしい。
 一通り撫で終わると、次は羽の一枚を軽く摘まみ、擦った。
「んん…ふあぁ…!」
 表と裏で異なる方向に指が動かされたことで、新しい快感を生んだようだ。

 軽く弾く。爪でなぞる。
 手を変えるたびに、ユリナは新しい声を聞かせてくれた。
 その妖艶な声を聞くたびにレイジは、自身の下半身のモノが硬くなっていくのを感じていた。
 もっと聞きたい…。彼女が乱れる姿を、もっと見たかった。


「……」
 レイジは、ユリナの持つ手を自身の顔の前まで移動させると、無言のまま、彼女の羽の付け根に口づけをした。
 それは、彼女への想いが高まる余り、半ば無意識にしてしまった行為だった。
「あっ…」
 一際切なげな声が、ユリナの口から漏れた。
「レイジ…。その…今…」
 指先ではない感触に気付いたのだろう。ユリナは振り返った。
 その顔は、どこか期待を帯びていた。

 一方レイジは、自分のしてしまった行いに驚き、後悔を感じていた。

 自分は一度、ユリナの告白を断っている。
 そんな自分に、彼女にキスをする資格など、あるはずが無かった。
 解っているはずなのに、いつしか歯止めが効かなくなっていた。

 見てみたい。触ってみたい。
 羽だけでなく、彼女の全てを。


「ユリナ…先輩…」
「レイジ…」
 見つめあい、名前を呼び合う。
 両者が、互いに相手を求めていることは、明らかだった。






 二人は、レイジの寝室に移動することにした。
186キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:35:11 ID:bcoWSEpK
 レイジは、ユリナを手に乗せたままベッドの上に腰掛けた。
 既にユリナはハンカチを取り払い、裸になっている。

 一糸纏わぬ姿となったユリナの身体の中で、最初に目に付いたのは、その胸だった。
 服の上からでは、身体全体のスケールの関係で気付きにくかったが、それは十分な大きさを持っていた。

「それじゃ…ど、どうぞ…」
 腕で胸を隠したいという気持ちを必死に抑え、全てを曝け出してくれるユリナのいじらしい姿が、堪らなかった。


 彼女の片方の乳房に人差し指を近づけ、そして軽く押し込んだ。
 小さいながらも確かな弾力を、指先に感じられる。
「んっ…」
 この行為だけで、ユリナは硬く瞳を閉じ、声を上げた。

 彼女の小さな両手が、レイジの人差し指を掴んだ。
「お願い…、動かして…」
 ユリナの言葉通り、指を上下に動かす。
 乳房を揉むように激しくではなく、先端の乳首に刺激を与えるように、軽く擦った。
「んっ…ふああぁ…」
 レイジの人差し指に彼女の爪が喰い込む。
 痛さは感じない。しかし、きちんと感じてくれているという反応が返ってくるのが嬉しかった。

 途中から中指も使い、空いている乳房も攻め立てた。
 同時に、愛撫の仕方も変えてみる。
 やや強めに押し付け、孤を描くように揉んだかと思えば、爪先だけで乳首を執拗に追い立てもした。
「やんっ、そこは…あぁんっ!」
 羽を撫でていたときと同じだった。彼女は色々な反応を示してくれる。

 胸だけでも、これだけ可愛らしい動きを見せてくれるのだ。
 それ以外の箇所にも触れたら、どうなるのか、非常に興味を掻き立てられた。


(あっ…)
 他の部分にも手を伸ばそうとしたとき、レイジは重大なことに気付いた。
 それは、己の股間辺りが窮屈に感じたことで、気付かされたことだった。

 彼女は全てを晒してくれたにも関わらず、自分は今服を着ている。

 ユリナを愛撫するだけなら、レイジが服を脱ぐ必要は全くない。
 だが一方が裸で、一方が着衣しているというこの状況が、彼にはどうにも許せなかった。
 ユリナと、同じでありたかった。


「どうしたの? レイジ…」
 指を止めたレイジに、ユリナが不安げに尋ねた。
 そんなユリナを、「ちょっと待っていてください」と言いベッドの上に乗せると、レイジは立ち上がり自身の服に手を掛けた。
「えっ…!? あの、レイジ?」

「イヤなんです。先輩だけ裸っていうのが。
 俺の裸なんか見ても仕方ないとは思いますが…我慢してください」
「あ…、いや…。別に、レイジの裸が見たくないわけじゃ…なくて…」
 動揺しつつもユリナの表情は、レイジが服を脱ぎ終わるのをどこか心待ちにしているようだった。
187キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:36:24 ID:bcoWSEpK
 レイジは服を全て脱ぎ終わると、ベッドに跨った。
 先程の続きをしようとユリナに手を伸ばそうとしたが…。

 ユリナは、すぐ目の前にあるレイジの股間のものに、視線が釘付けだった。
「うわぁ…。うわぁ…」
 何度も短い感嘆の溜め息を漏らし、目を離そうとはしなかった。
 偉そうにふんぞり返っているレイジのペニスを、興味津々といった面持ちで見つめていた。
「あの…」
「……」
 声を掛けてみても、相変わらずうっとりした表情のまま動かない。
 ユリナへの愛撫が目的のはずだったが、予定を変更せざるを得なかった。

「先輩、触って…みますか…?」
「う、うん…」
 その言葉を待っていたかのように、ゆっくりと頷いた。

 ユリナは、ペニスに向かって、ちょこちょことベッドの上を歩いていった。
「うわぁ…。これが、レイジの…」
 自分と同じ位の背丈のそれを前に、再びユリナは声を上げた。
 そっと腕を伸ばすと、亀頭の一部分に手を触れた。
「やっぱり、あったかいね…」
 その手を、ちょうどレイジがユリナの胸にしたように、優しく撫でた。
 こそばゆい微細な感触に、ペニスがびくんっと跳ねた。
 ユリナは驚き、手を引っ込めるが、今度は両手を使って、撫でる範囲を広げていった。

 ユリナと、自身のペニスが並ぶという光景を、レイジは奇妙に感じながらも、されるままにしていた。

 その内ユリナは、ペニスのカリ首に腕を回すと、そっと自分の方へ抱き寄せた。
 裏側に、彼女の柔らかい胸が当たっているのが解った。
「抱き心地、結構いいかも…」
 腕に力を込め、より一層ペニスを強く抱きしめる。
 そして目を瞑り、その先端に頬を寄せた。

 締め付ける力は僅かではあるが、大事なものを扱うようにペニスと接するユリナの佇まいに、胸が高鳴るのを感じた。
 彼のペニスも、彼女に与えられた愛情に応えるかのように、静かに脈打った。


「私、夢だったんだ…。あなたに、こうすることが…」
「えっ…? 俺の…こいつに、抱きつくことが、ですか?」
 こいつ、と言いながら、レイジはペニスを指差した。
 ユリナは慌てて顔を上げると、首を激しく横に振って否定した。
「ちっ、違う! おちんちんじゃなくて!」

 咳払いを一つすると、再び亀頭に頬を付け、言った。
「今日、図書館でうとうとしていたときにね、夢を見たの。
 私が、人間と同じ大きさになる夢…。
 私の隣にはレイジがいてね、私、レイジに抱きついたの。
 そしたらレイジも、私のこと抱き返してくれて…そのまま二人でぎゅ〜って。
 夢の中だけど、とっても、気持ちよかった…」
188キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:37:10 ID:bcoWSEpK
「もちろん、現実じゃそんなことできない…。
 妖精が、人間にそんなことしたいなんて、望んじゃいけないって思ってた。
 だからね、例えおちんちんでも…レイジのこと、体一杯使って抱きしめられるのが、すっごく、嬉しいの…」


 そんな小さなことを切実に望んでいたユリナが、今まで以上に愛おしく思えた。

 そして、一瞬だけ、彼女が人間の大きさになった姿を想像してしまった。
 人間サイズになった彼女と、抱き合いたいと思ってしまった。

 その考えを、すぐに棄却する。これ以上想像を続けることは、彼女のアイデンティティを否定することになる。

 “普通”に拘る必要はない。
 大きさが違うなら、違うなりのやり方をすれば良いだけのことだった。
 方法なら、幾らでもある。


 レイジは、股間に両腕を伸ばし、ユリナをペニスごと手の平で優しく包み込んだ。
「えっ…?」

「夢の中では、俺も先輩のこと、抱き返したんですよね?」
「!!」





 裸の男が、これまた裸の妖精を、自身のペニスと一緒に握り込んでいる。
 傍から見れば、とても滑稽でアブノーマルな画だろう。
 間違っても、抱き合っているようには見えない。

 しかし…。


「……。
 レイジのことを、抱きしめることが、できただけじゃなくて…、レイジからも、抱きしめてもらえるだなんて…。
 嬉しいよ…。ほんとの、ほんとに、うれし…」
 そこまで言うとユリナは、顔を亀頭に埋め、小さく嗚咽を漏らした。
 涙が出そうになる顔をレイジに見られまいと、顔を強く押し付けた。



「ありがとう、ありがとうね…。レイジ…」
 そのまましばらくの間、互いに抱き合い続けていた。
189キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:43:34 ID:bcoWSEpK
「このままずっとこうしていたいけど…。
 ねぇ、手、離して。私もおちんちんのこと、可愛がりたい。
 あなたが私に、してくれたみたいに…」

 彼女の言うとおり手を退け、行く末を見守ることにした。

「人間の女の子がするみたいに、気持ちよくできないかもしれないけど…。
 頑張るねっ」

 挨拶代わりに、亀頭に軽くキスをした。
 一旦唇を離すと、裏筋に顔を近づけ、透明な液体が染み出てくるペニスの先端まで一気に舐め上げた。
 それを何往復も繰り返す。
 途中で垂れてきた先走り汁さえも、同時に舐め取っていく。

「ふあっ」
 くすぐったさから、レイジの口から情けない声が出た。

 レイジの声が聞けて満足したのか、ユリナは次の愛撫に移行した。

 ユリナも、レイジの色々な声、様々な反応を見聞きしたいようだった。
 考えていることは、二人とも同じだった。

 次は何をするのかと見てみれば、ユリナは口を大きく開け、亀頭の一部分を含んだ。
「んっ…ちゅぱっ…」
 そして、唇を付けたところを、強く吸引した。
「くっ…!」
 予期せぬ刺激に、ペニスが激しく打ち震えた。
「きゃっ!? …もう、暴れすぎ」
 最初は驚いたものの、ユリナはその反応を見て、どこか楽しげだった。

「それじゃ、続けるね。あむっ…」
 ピンポイントで吸い付くなど、人間には絶対にできない芸当だった。
 全体を一思いに攻めてくれないというもどかしさはあるものの、繊細な感触を、長く楽しむことが出来た。
 そして、その歯がゆささえも、今は愛おしかった。
「むっ…むちゅ…。ぷはぁ」
 吸った部分が赤くなるまで愛撫すると、場所を変え、同じように攻め立てる。
 そうやって少しずつ、赤い箇所を増やしていった。

「! 今私のこと、蚊みたいだって思った?」
「いえ、少しも…」





(それにしても…)
 先程レイジが羽を愛撫したときといい、今ユリナにペニスを可愛がってもらっているときといい、
 一方がもう一方を感じさせているだけのように思えた。

 するのであれば、二人同時に気持ちよくなりたい…。
 レイジの頭の中に、ある一つの考えが浮かんでいた。
190キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:44:29 ID:bcoWSEpK
 レイジは、ユリナの脇の下に指を入れると、彼女の胴体を挟み込んでペニスから引き離した。
 ユリナの胸まで浸していた先走り汁が、彼女とペニスを繋ぐ透明な糸を引いた。
「あんっ、何するの?」
 愛撫を途中で止めさせられたユリナは、やや不満げだった。
 その言葉を一旦無視し、彼女の身体を裏返す。
 こちらに背を向けさせると、そこから生えている羽の付け根に、ペニスの先端をちょんとくっ付けた。
「んっ…。レ、レイジ…?」
「先輩の羽でイきたいんです。…いいですか?」

「えっ…?
 ……。
 うん、私も。
 私も羽で、イかせてほしい…」

 ユリナを手の平の上にうつ伏せに寝かせる。
 その背中の上に、太いペニスをのしかからせる。

 まずは手始めに、ゆっくりと上下に一往復させた。
「んあ…。あつ…」
 羽が震える。それがペニスを優しくくすぐった。

「大丈夫ですか? 羽、擦り切れたりするんじゃ…」
「ううん、平気…。妖精の羽は、そう簡単に千切れたりしないから…。
 それよりも、お願い…して…」



 彼女を持つ手を、最初はゆっくり、だんだんスピードを付けて、ペニスの裏側に擦り付けていった。
「んっ! あぁぁ」
 嬉しそうなユリナの悲鳴。それに呼応するように、彼女の羽も騒ぎ始める。
 胸や腹のように、柔らかい感触ではないが、羽がペニスにぶつかるのも、今までにない刺激を与えてくれた。

 先端から溢れ出す液体は、彼女の背や羽だけでなく、髪も、尻も、汚していった。
 染め上げたい…。手の中にいる小さな少女を、自分の色に、染め上げてしまいたい…。
 レイジの手は、ますます加速していった。
 ペニスと羽が擦り合う度に、くちゅくちゅと水音が響く。

「あっ、うっ、あああぁぁん!」
 ユリナは片手で、レイジの手の平を強く掴んだ。その感触は小さいながらも、力強かった。
 そしてもう一方の手は、彼女自身の股間へと伸びていた。
「んん、くっ…、レイジ…、レイジー…!」
 自分の中をかき混ぜながら、更にユリナは彼を求めた。


 いよいよレイジにも、限界が近づいてきた。
「くっ…先輩…!」
 ユリナをペニスから引き剥がし、発射口を羽の付け根に押し付けた。
「!!!」
 触れた瞬間、彼女の体は大きくのけぞった。

 そして、普段なら考えられない程の量の精液が、ゼロ距離からユリナの身体に放たれた。

「んあああぁぁぁ!!」
 熱い精液に打たれ、彼女も同時に絶頂を迎えた。
191キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:45:14 ID:bcoWSEpK
「うぅ…。羽、ねとねとする…」
「すみません、やりすぎました…」
 ベッドに降ろされたユリナは、白い粘液のへばり付いた羽を、重たそうに動かした。

 彼女の言うとおり、羽が切れるようなことにはならなかったが、背中自体は、擦れて少し赤くなっていた。
「そんな心配そうな顔しなくても、この位何でもないよ。
 それより…」

 自分の身体に付いた精液と、くたくたになったペニスを見て、ユリナは満足気な笑みを浮かべた。

「嬉しいよ。レイジが、私で気持ちよくなってくれて…。
 ねぇ、もっとしよ?
 まだ私、おちんちんのこと可愛がり足りないし、レイジにも、もっと可愛がってもらいたい」
192キャンパスの妖精:2008/05/13(火) 04:47:57 ID:bcoWSEpK
二人の触れ合いは、まだまだ続いた…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「んんっ…」
 窓から差し込む朝日に照らされ、最初に目が覚めたのは、ユリナだった。


 今の自分の状況を確認する。

 ユリナは、レイジの胸板の上でうつ伏せになって寝ていた。
 背中には、彼の手が布団のように覆いかぶさっている。

 大きな手から、もぞもぞと抜け出す。
 彼も、自分も、昨日と同じ裸のままだった。
 それは、昨日の出来事が夢ではなく現実だということの、何よりの証だった。

 そう、全て現実なのだ。
 彼と夢のような時間を過ごせたことも、彼に、振られたということも…。

(えっちしたからって、恋人になるってわけじゃないよね…)

 それでも、昨日の行為は、間違いなく性的な交わりだった。
 彼が少しでも、ほんの少しでも自分のことを異性として見てくれたのであれば、まだまだ自分にもチャンスはあった。



 まだ眠っている、レイジの顔の前まで飛んでいった。
 ふと、彼の唇が目に映った。
 昨日、あんなに激しいことをしていたのに、恐らく一番基本的と思われることを、まだしていなかったことに気付く。


 途中で起きだしたりしないか…、その緊張感や、恥ずかしさなどから顔を赤らめつつも、

「レイジ…、大好き…」

 レイジの唇に、そっと自身の唇を寄せた。







 いつかきっと、彼も夢中になるような素敵な女性になることを、その唇に誓った。
 もう「妖精だから」と、言い訳はしたくなかった。
193名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 04:49:47 ID:bcoWSEpK
以上で終了です。

では、失礼します
194名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 17:50:24 ID:2bffvdpE
お、あの時の続きか
GJ
195名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 18:22:59 ID:i44Lfz/9
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
キャンパスの人ずっと待ってました!
前スレからずっとその後の展開が気になってたんで
更新ホントうれしいです

しかしユリナ先輩とレイジが結ばれて良かった
先輩側の葛藤は王道で、まさしく俺の「こんな妖精物が読みたかった」っていう望みに答えてくれてます
先輩かわいいよ先輩
196名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 21:01:12 ID:wdUSAUlc
保守
197名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 14:09:15 ID:3XgoGXlb
GJ
知らない間に神が降りてきてたな
198妖精の種 1/2:2008/05/18(日) 16:51:47 ID:qk3k6qDt
>>77-78の続き
妖精分やや少なめ

22話 山頂の観測所


「こんにちはー」
「こんにちは」

 カイの挨拶に続いて、ミドリが挨拶をした。
 それなりに掃除された広間に脚を踏み入れる。ノノハ山山頂にある観測所。時々やって
来る人のために、旅館としても作られているが、実際は大きな山小屋だった。

「おーう。あんたがカイか、あとミドリちゃん」

 奥の部屋から、ひげ面の男が現れる。
 年齢四十ほどで、やたらと屈強な体躯。灰色の髪と灰色の髭。頭にバンダナを巻いて、
山岳迷彩の作業着を着崩している。絵に描いたような山男といった風貌。

「フェルさんから聞いてるよ。オレは山岳観測員のカルテ・リョウ。よろしくな」

 フェルの知り合いらしく、口も硬いのでミドリを見せても大丈夫らしい。

「はじめまして、カイです。これから三日間よろしくお願いします」

 カイは軽く一礼し、肩に掴まっているミドリを両手でそっと掴んだ。手の平を胸の辺り
まで持ち上げて、リョウに見せる。

「こっちが妖精のミドリです」
「よりしくお願いします」

 ミドリがぺこりと頭を下げた。
 リョウはちらりと窓の外を見やる。さきほどの土砂降りが嘘のように晴れた空。白い雲
がのんびりと流れていた。山の天気は本当に変わりやすい。

「さっきは通り雨降ってたけど、大丈夫だったか?」
「大分濡れましたけど、服は乾かしたし大丈夫ですよ」

 あれから二十分ほどで雨は止んだ。黒かった空があっという間に青空へと変わる。通り
雨の主である積乱雲が、ため息を付くほど雄大だった。思わずメモ帳にスケッチしてしま
ったくらいに。
199妖精の種 2/2:2008/05/18(日) 16:52:08 ID:qk3k6qDt
「それより、荷物はちゃんと届いていますか?」
「ああ、届いてるよ。でも、その前に少し休んだ方がいい。いくら体力あるからって、山
歩きはきついだろ。フェルさんみたいな化物だったら話は別だけど……」

 視線を逸らしてぶつぶつと付け足すリョウ。フェルの超人伝説はあちこちで聞く。
 気を取り直すように咳払いをしてから、

「とりあえず、座ってくれ。ジュース持って来る。昼間から酒は不謹慎だしな。そうそう、
ミドリちゃんは水しか飲めないんだってね」

 言われるままに、カイは椅子に座る。リョウが奥の部屋に消えた。
 ミドリをテーブルに置いてから、腰に差していた剣を外す。座る前に外すべきだが、手
順が逆になってしまった。ぐったりと脱力した。

「カイ、大丈夫?」

 見上げてくるミドリに、カイは苦笑を返す。

「あんまり……。体力には自信あるけど、さすがに徒歩でここまで来るのはきついな。は
しゃぎすぎたかな?」
「色々絵にしてたね。帰ったら絵に描くの?」

 ここまで来る最中、五回ほど立ち止まってメモ帳に下書きを描き込んでいた。立ち止ま
ったまま絵を描くのは疲れる。描いている最中に疲労感はないが、集中が切れた途端に一
気に襲ってくるのだ。

「一度見直してみて、合格がひとつ残れば及第点だろうな。今のところは、全部制作候補
だから。絵を描くって言うのも大変なんだよ」
「そうなんだ。カイって凄いね」

 素直に感心してくれるミドリ。

「ありがと」

 笑いながら、カイは答えた。
200名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 16:52:29 ID:qk3k6qDt
以上です
201名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 23:44:24 ID:gS4GC2hR
毎度GJです
202名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 18:41:12 ID:eN34KKiC
かなり和むな〜GJ
203名無しさん@ピンキー:2008/05/21(水) 00:08:49 ID:MsqnbS9V
毎回このほのぼのした感じがあるからこそ安心できるな
204名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 21:43:40 ID:eiUkXA4B
某氏のは起伏がある分安心しづらいんだよなw

愛のある強姦に萌えそうになったのは内緒だが
205名無しさん@ピンキー:2008/05/23(金) 00:56:09 ID:VvY9uZoY
千影の人の選択肢の違うバージョンが読みたいです
206名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 00:56:42 ID:RFJ67wNF
かなり昔に誰かが描いた絵
http://sukima.vip2ch.com/up/sukima090703.png

上は千影
下はカイムと妖精のミィ

また来ないかな?
207名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 10:07:41 ID:7DAFCO8/
戦闘妖精・雪風
208名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 10:34:09 ID:D5vg/4NF
>207 それは小さいのか? 小さいのか?!
209名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 15:16:16 ID:RFJ67wNF
確か戦闘機
210名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 17:54:22 ID:ibbzZpjX
>>206
いいな、コレ
ここ、挿絵とかもありなんかな?
211名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 19:50:53 ID:wPeeMFLe
<<撃てよ! 臆病物!!>>













ごめん、これは妖精だけど男だなorz
212名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 20:40:44 ID:RFJ67wNF
>>210
問題ない
213名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 20:52:52 ID:D5vg/4NF
>211 きさまぁぁぁぁ(?

<<>211 お前の基地はここじゃないだろう? なに 燃料切れ?>>
はい[><]
<<>211 なあに、JAMから救ってやったんだ。燃料は下にたっぷりあるんだし、嫌とは言わせないさ>>
<<さぁ、行くか!>>

という感じのを速攻でおもいついちゃったじゃないかっ!
214名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 21:15:17 ID:eV+kFhAA
<<実は俺、家に妖精がいるんですよ>>
<<で、帰ったらかわいがってあげるんで>>
<<えっちなこともしちゃったりして>>
215名無しさん@ピンキー:2008/05/26(月) 23:29:55 ID:/37ehPGr
妖精さんとのエロい日常と
妖精さんとのほのぼの日常
どっちが好き?
216名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 00:48:33 ID:IW3hk3SV
>>215
昼はほのぼの、夜はエロエロでひとつ。
217名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 19:37:44 ID:WhenNrRh
>>216
あんたよくわかってるじゃねえかw
218妖精の種 1/2:2008/05/28(水) 21:22:08 ID:+oP9BwXg
>>198-199の続き

23話 ノノハ山山頂

 観測小屋から歩いて五分の山頂。強い風が吹き抜け、カイの焦げ茶色の髪とジャケット
の裾を揺らす。

「うわ……」
 カイの手の平で、ミドリが感嘆の声を上げた。
 ノノハ山の頂上から見える風景。西を見れば雄大な銀嶺が並んでいる。東を見れば深緑
の森と、緑色の草原が広がっていた。草原の遠くに、キリュウ市の影が見える。さすがに
遠すぎて建物は見えない。南を見れば銀色の輝き。トウカ湖である。

「凄い、きれい……」
 カイは折畳み椅子の上にミドリを乗せた。雄大な風景に見入っていて、自分が椅子に移
されたことに気づいていない。惚けたような、ちょっと間の抜けた顔。

「オレも初めて来た時は三時間くらい見入ってたけどな」

 苦笑しながら、カイは背負っていた画架を地面に置いた。野外で絵を描くための携帯用
画架。美術委員会からの借り物。細い金属で組まれていて、携帯性と軽量性に優れる。脚
を広げてから、折畳式のキャンバス台を広げた。
 背中に背負っていたM10号の水彩用木綿キャンバスを台に乗せて固定する。

「この構図はなかなかいいな。いい絵が描けそうだ。ミドリ、動かないでくれよ?」

 カイはベルトの筆記用具ホルスターから鉛筆を取り出す。
 向いている方向は南西。湖と山脈を背景に、椅子に座って風景を眺めているミドリを含
める。キャンバスの左下からミドリが風景を眺めている構図。長い葉のような緑色の髪が
風になびいている。

「あの帽子、外れないよな。顎紐あるわけでもないのに」

 カイはぼんやりと独りごちた。
 ミドリの頭に乗った麦藁帽子。ボーダーハットと呼ばれる形状で、材質は非常に細い麦
藁っぽいもの。ただ頭に乗せているだけだが、風で飛んでいく気配もない。普通に外すこ
とは出来るのだが。

219妖精の種 2/2:2008/05/28(水) 21:22:54 ID:+oP9BwXg
「もしかしたら、身体の一部なのかもな」
「むぅ」

 小さく呻いて、ミドリは椅子から飛び上がった。今独り言に反応したわけではないだろ
う。カイの手元まで飛んでくると、差示唆だれた左手の平に降りた。両手で自分の身体を
抱き締めながら、一言もらす。

「寒い」
「そんな恰好じゃな。さすがに寒いだろ。山小屋に戻るっていうなら、連れて行くけど」

 初秋の山頂。風も強いので、さすがに寒い。カイはリョウから借りた長袖のジャケット
を着込んでいるが、ミドリは普段の緑色の半袖ワンピースだった。

「ううん、カイと一緒にいる」
「そうか。ならここに入ってろ、暖かいから」

 カイはミドリを懐に入れた。閉じたジャケットの胸元から、肩の上だけが出るように。
ミドリは両手で襟に掴まっている。これならば寒くないだろう。

「うん、暖かい。カイ、ありがとう」

 嬉しそうに応えてから、ミドリはふと白いキャンバスを見つめた。

「でも、わたしが椅子の上に座ってないと絵が描けないよね。カイはいつもわたしを風景
に入れて絵を描いているから。やっぱり戻ろうか?」
「大丈夫だ、さっきの構図は記憶してる」

 カイはくるりと鉛筆を回した。画家としての才能のひとつ、常人離れした記憶力。一度
目に焼き付けた風景ならば一ヶ月は忘れずにキャンバスに再現できる。
 ミドリが驚いたように見上げてくる。

「記憶……してるの?」
「まあ、見てろって」

 口端を持ち上げ、カイはキャンバスに鉛筆を走らせた。
220名無しさん@ピンキー:2008/05/28(水) 21:23:26 ID:+oP9BwXg
以上です

221名無しさん@ピンキー:2008/05/28(水) 22:36:10 ID:o7B4+BYp
GJ 毎度乙です
しかしカイの記憶力すげえ。さすが画家って感じだ
実際の画家の人も記憶力すごい人が多いんだっけ?
222名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 00:00:35 ID:QjrU8chR
222
223名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 00:10:53 ID:ikvZ/7WE
GJ!!最高だ!
224名無しさん@ピンキー:2008/05/29(木) 16:10:51 ID:XrgPYA+V
こんな妖精が欲しいです><
225名無しさん@ピンキー:2008/06/02(月) 22:20:04 ID:d/kNEvHU
妖精のちんちんで尿道犯されたいです><
226名無しさん@ピンキー:2008/06/02(月) 22:53:50 ID:C7BTZhD3
>>225
よし書いてくれ
227名無しさん@ピンキー:2008/06/03(火) 09:03:34 ID:/iCv46Ju
一度でいいからたくさんの妖精さんに体中舐められたい俺はM
228名無しさん@ピンキー:2008/06/04(水) 22:14:55 ID:ZwYPly4k
>>227
俺は一人の妖精さんにしてもらいたいな
229名無しさん@ピンキー:2008/06/04(水) 22:46:55 ID:SxtdMBx/
妖精さんをなめ回したい
230名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 02:28:11 ID:64n2dsfy
妖精と現代の日常を生きていきたいです
231名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 13:32:42 ID:32P5e/Ra
やっぱこのスレの住人は10〜20cm派と50〜60cm派に分かれるのか?
232名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 16:37:37 ID:yMs4ZqEs
どうだろう
俺はどっちでもいける派だけど
233名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 17:04:03 ID:cKgtcWkp
ストライクゾーンが広そうだけど妖精が前提だからむしろ狭い不思議!
234名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 17:54:18 ID:iiJ2iyRy
>>231
どっちも可
235名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 18:15:51 ID:OwhHtxT6
おれもどっちでも可
236名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 10:26:43 ID:V8149t+O
>>231
甘々なら10〜20cm
濃厚エロエロなら50〜60cmかな

どうみても影響受けすぎですね、本当に(

時におまいら
妖精さんとエロエロするならどこまでやるんだ?

俺は妖精さんの飲尿ぐらいはしてみたいぞ
237名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 11:21:19 ID:RYMSgpDi
手で愛撫するだけで十分だ
入れると痛いだろうし
238名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 15:14:29 ID:44SnHOew
愛撫からスカトロ含むSMまで一通りやってみたいな

ただし殺傷系だけは勘弁
239名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 15:43:11 ID:hYWLL/C3
ねこじゃらしまで
240名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 16:59:59 ID:FHe9PTvl
俺はエロエロよりほのぼのしたい
241名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 23:16:10 ID:CZEScOQR
>>231
25cm〜40cm派
やっぱり定規くらいの大きさのほうが妄想しやすい
無理をすれば挿入も出来る
242名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 23:39:19 ID:nWVTSMDQ
>>241
でもやっぱりそのサイズじゃ無理があるわな
やっぱり妖精さんのこと考えると60あたりに落ち着くんだな。それでもかなりきついがw
243名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 00:28:16 ID:k0qvDqJE
自分が小さくなれると考えれば万象OK
244名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 01:06:30 ID:cQ3nsBMs
20cmサイズかな。指挿れるとかより糸とか筆とかでいじくりたい
245名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 01:37:39 ID:YmSrL/rJ
そこは、とある企業の研究施設。
生物の細胞を調べるのが目的の、その一室。
大型の電子顕微鏡を覗く技師達が真剣な面もちで、研究にいそしんでいた。

「おい、これを見てみろ!」

一人の研究員が、驚いたように声を上げ、同僚達を呼び集めた。
そして促されるまま、他の研究員がその顕微鏡を覗いてみると・・・。


「・・・へぇ、これがあの子の新しい家かぁ。ステキねぇ」
「うん、私も新しい言え、欲しくなっちゃった♪」
「だったら、頼んでみようか、このメーカーに」


研究員がそこに見たもの。
それは、ごく微少な細胞の中にある『家』に、数人の妖精さんが訪れている光景だった。



「なんで、ダイワハウスなんだ?」




よし、とりあえずこのスレ最小の妖精さんを出してみたぞ!
246名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 10:42:39 ID:roOP91kq
80以下ならOK
ほのぼのしたりハードエロしたり両方してみたいぜ
247名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 11:44:33 ID:1Uj/9DWB
60cmってだいたいこのくらい
参考までに

世界で最も身長の低い14歳の少女
ttp://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080409_smallest_girl/
248名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 14:55:00 ID:JeXKyDqs
ここまでの話を総合すると
普段はほのぼの甘々、夜はエロエロ、ってことですね

・・・・・・あれ?

>>247
だいたい想像通り、太腿ぐらいまでの身長ってことか
参考thx

調べると、フィフニルの人も色々調べてるんだなというのが分かってくるな
ケルト系妖精のくだりとか
多分あの辺りなんだろう
249名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 15:22:31 ID:0IquV9g7
駄文ですが、書いてみたので、投下します。

250妖精の女王:2008/06/07(土) 15:24:58 ID:0IquV9g7
俺は妖精狩りの為、森の奥深くへ入っていた。
最近、妖精たちが人間に対して
不審な行動をとっているとの情報があり、
捕まえて情報をはかせようと考え、狩りに出掛けたのだ。

しかし、妖精の方が一枚上手だったようだ。
森の中には人間用?の罠が仕掛けられていて、
俺はまんまとその罠にかかってしまったのだ。

そして、俺は今、妖精の女王の前に鎖で四肢をつながれている。
周りには一回り小さな妖精たちがたくさんいて、女王を囲んでいる。
全く、どこから人間用の罠や鎖を持ってきたんだ?
何とかして、脱出できたらコイツら絶対許さねー!

そんな俺の考えをよそに、妖精たちは何かを始める準備をしていた。
女王が高らかに宣言する。
「これより、人間の精子を採取する!
 お前たち、この人間からしっかり無くなるまで搾るのだ!」
「わかりました、女王様ー!」
妖精たちが一斉に俺に向かって来る。
妖精たちは、俺の服を脱がし、いや、引き裂いて裸にし始めた。
たくさんの妖精の舌が俺の体を舐める。
うわ、やめろ、こそばゆい!
「女王様ー、ホントにコレも舐めるんですかー?」
一人の妖精が指差して聞いているのは俺の肉棒だ。
マジでそれを舐めるつもりか?
「だから人間の精子を採取すると言ったであろう! さっさとやれ!」
女王に命令され、しぶしぶ舐め始める複数の妖精。
こ、この舌の感触がたまらん。
俺の肉棒はすぐに立ち上がった。
「んー、でもなかなか出ないなー……」
「こうしたらいいかも♪」
251妖精の女王:2008/06/07(土) 15:26:56 ID:0IquV9g7
俺の肉棒を舐めていた妖精のひとりが小さなおっぱいを擦りつけ、
肉棒を抱くようにして上下に身体を動かす。
ちっちゃいけどパイずりかよ。
「こっちはどうかなー?」
別の妖精は俺の肉棒の穴を舐め始める。
うわ、やめろ、今にも出そうだ、出る!
俺の肉棒は白い液を勢いよく放った。
「はーい、まずは一発♪」
瓶を抱えた妖精がタイミング良く精液を瓶にキャッチする。
女王が叫ぶ。
「まだまだだ! もっとやれ!」
「はーい!」
今度は二人の妖精がパイずりを始める。
「脚でもこすってみよ♪」
小さなおっぱいと太ももで擦られ、俺の肉棒は再び立ち上がる。

くそ、やられてばかりでいられるかよ!
四肢はしびれ薬か何かで痺れているが、何とか動く。
手足をつないでいる鎖は妖精には重かったのか、かなり長さに余裕がある。
俺はゆっくりと手を伸ばして身体を舐めている妖精を捕まえると、
おっぱいをむしゃぶり始めた。
「あっ、イヤ! 助けて!」
捕まった妖精は他の妖精に助けを求めるが、
他の妖精たちは自分がやっていることに必死で、全く相手にしていない。
妖精のおっぱいは小さく、さくらんぼのようだ。
小さな乳首も丁寧に舐めまわしてやる。
「ふあ……あ……キモチイイです……」
恍惚とした表情を浮かべる妖精。
向きを変えて尻も舐めてやる。大きさからして、まんまマシュマロのようだ。
妖精はすっかり気持ち良くなったのか、脚を広げて、
ここも舐めてと言わんばかりのポーズになる。
それでは遠慮なく頂こう。
妖精の小さな割れ目からは既にいやらしい汁が溢れていた。
俺が割れ目からおっぱいまでを一気に舐め上げると、
声を上げて仰け反る妖精。
「ひあ……ああ……あぁん!」
妖精の小さな割れ目に俺の舌をねじ入れる。
「いや……あぁ……」
嫌と言いながらも股を閉じようとはしない妖精。
俺は妖精の割れ目の中をかき混ぜるように舌を動かす。
そして、突き上げるように舌を突っ込む。
「アァ! イッちゃう! イッちゃうー!」
妖精が果てると同時に、俺の肉棒も射精する。
「はーい、二発目♪」
「まだだ、もっと早くせんか!」
女王が罵声を浴びせる。
252妖精の女王:2008/06/07(土) 15:28:29 ID:0IquV9g7
ホントに女王様だな、コイツ。
しかし、俺はあと何回ヤらされるんだ?
俺がぼんやりそんなことを考えている間も妖精たちの採取は続く。
俺が妖精を嬲りながらも妖精たちは俺の愛撫を続け、
何度も射精させられた俺はいつしか気を失っていた。

 *****

俺が気が付いて、辺りを見ると、森の中はもう暗くなっていた。
昼間から暗い森なので、妖精たちは灯火を点けていたが、それももう消えている。
周りは精液まみれになった妖精たちが雑魚寝していた。
精液が溢れている瓶に持たれかかった妖精が寝言を言っている。
「むにゃ……もういっぱいです……」
顔も精液まみれだ。
さて…と、このままで済むかと思った俺は、こっそりと鎖を解いた。
こんなゆるい鎖に縛られてたかと思うと、なんだかバカバカしい。
自分が身につけていた道具などを探すと、すぐそばの木の下に放ってあった。
俺はその道具を取り出しながら、仕返しを考える。
女王を見ると、いつから飲んでいたのか、酒瓶を持って爆睡している。
俺は縄で女王の両手を縛り、更に左足を左手に、右足を右手に縄でつなぐ。
俺は女王の耳に囁いた。
「よう、女王様よ。よくも俺にこんなことをさせたな……。
 そんなヤツにはおしおきだ!」
まずは、俺の服を引き裂いたように、女王の服を引き裂く。
白い肌と背中から伸びる薄い羽が露わになる。
おっぱいは他のちび妖精に比べれば巨乳だ。
コイツ、妖精のくせに下着なんかつけてやがる。
下着の上から割れ目を指でなぞる。
「どうだい? 俺にやったように、女王様のココも気持ち良くしてやるよ」
指で何度も割れ目をこする。
「や、やめろ……」
女王の顔がだんだんと赤くなっていく。
「やめる? ここはそう言ってはないみたいだがな?」
女王の下着はシミを作り始めていた。
女王の下着をずり下ろし、膣に指を入れる。
「何をする! 止めないか……」
俺は指で中をかき回す。
このぐらいの大きさなら、入るかな……?
「やめろ……あぁっ……ひぁん」
次第に喘ぎ出す女王。
喘ぐ女王を見ていて、俺の方はすっかり準備が出来ていた。
俺はニヤリと笑うと、指を抜いた。それは愛液でヌラヌラとしていた。
「それじゃ、人間のモノをお見舞いしてやる!」
俺は肉棒を女王の小さな膣に突っ込んだ。
253妖精の女王:2008/06/07(土) 15:30:01 ID:0IquV9g7
「キャアアアァァ!!!」
女王の膣から鮮血が流れ出した。
処女だったのだ。
「おのれ……よくも……私の純潔を……」
苦痛と恥辱に歪む女王の顔。
「ああ、そりゃ悪かったね、ごちそーさん」
俺は女王の腰を掴み、ピストンの様に女王の中を突く。
「やめろ…離せ……私のあそこが裂ける!」
女王の中はキツかった。
いくら他の妖精に比べて大きいからと言って、人間の子どもぐらいでしかない。
それでも、女王の中は俺を包んで離さない。
何度も腰を動かして子宮の奥まで突き上げてやる。
「よーく繋がっている所を見ろよ?
 お前はさっきの俺にやったことをやられてるんだぜ?」
女王は恥辱の涙を浮かべて目をそらしている。
俺は片手で女王の頭を繋がっている所へ向かせた。
「あ……嫌……もう……私をめちゃくちゃにして……」
俺は一瞬意味がわからなかったが、どうやら、イキたいということらしい。
そろそろ、俺の方もキテる。
「それじゃ、ちょっと向きを変えて……」
俺は挿れたまま、女王の背中を自分の方に向けさせ、
おっぱいを掴みつつ身体を持って女王の体を支える。
「おらよ、イキな!」
女王の身体を揺らしながら、何度も突き上げ、そして、女王の中に俺の精を放った。
女王の絶頂の声が森に響き渡った。

 *****

女王は座り込んで、俺を下から睨みつけている。
「……お前、全て搾り取ったはずなのに、何故……」
「バーカ、時間が経てばまた溜まるんだよ」
女王が落胆した声で呟く。
「これで…私はもう女王ではいられない……」
「何でだよ」
「妖精の女王は純潔でなければならないのだ」
気付くと、女王の身体は他の妖精と変わらない大きさになっていた。
「ふん、そりゃ悪かったな。でも、これでこちらの用事は済んだぜ。
 女王がいなくなった今、妖精たちの統率をとるものはいないってことだからな!」
俺は持って来ていた着替えを身につけ、荷物を背負うと森を出ることにした。


……影でじっと女王が犯されるのを見ている者がいた。
採取に加わっていない、小さな妖精が。
「これで、女王の純潔は奪われたわ。
全て、私の計画どおりね。これで、次の女王の座は私」
全ては彼女が仕組んだこととは、
女王も、妖精たちも、もちろん彼も知る由もない。
おしまい
254名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 15:44:48 ID:YfPMwc4C
GJオチに驚いたわw
もちろんすべてを仕組んでた妖精さんの計画がばれて
エロエロな復讐をされる続編があるんですよね?

しかし男が精を絞りとられる時に
拘束→肛門に鉄の棒突っ込まれる
って展開じゃなくてよかったわw
255名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 02:59:01 ID:8DMqg6ut
乙!
女王か……
256oniki:2008/06/08(日) 22:35:06 ID:AQbZ7rvj
スレ違いかもしれないがサイトを作ったので宣伝させてくれ。いや、ください
http://fairy-succubus.sakura.ne.jp/01_Novel/01_Henshin_Sekai_Index.html
妖精さんが主人公の話。百合だけど
257名無しさん@ピンキー:2008/06/09(月) 00:24:46 ID:YQhydNMJ
>256 すでに一読者ですよ。
以前うpろだの方がここで紹介されてなかったかな…?

さっきゅばす等々楽しませていただいております。
258名無しさん@ピンキー:2008/06/09(月) 18:47:14 ID:uTj+MYvu
妖精で百合とは完璧じゃないか
259名無しさん@ピンキー:2008/06/09(月) 20:27:33 ID:Y2XgeaNW
>>256
自分は縮んだ女性より、もともと小さい女性の方が好きだけど、
その話はすごい感動しました!
260名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 21:53:32 ID:tAoZREJ6
サイズフェチで巨大娘も好きな奴いる?
261名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 22:57:51 ID:9j7EFDUq
いやぁ、残念ながら
262名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 23:02:58 ID:dMYeWwW9
>>260
ここにいるよ。
ちっちゃい女の子もおっきい女の子も大好きだ!

でも、このスレは大きさ云々よりも「妖精であるかどうか」の方が重要視されているみたいだから
サイズフェチとかの話はあまりしない方が良いと思う
263名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 22:41:31 ID:n/3GThON
>>262
小人派に対する宣戦布告と見なすが・・・よろしいか?w
ま、ほとんど妖精スレになっちゃってるが一応ちっちゃい女の子スレだしね・・・
264名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 23:24:56 ID:JR3FIVMu
ここって妖精スレから放り出されてできたんだよな
265名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 23:52:01 ID:I1K11NHe
>>263
そうだね。俺も小人さん好きだ

「ただ身体が小さいだけの女の子」ってのも、結構良いよな!
266名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 00:45:02 ID:pUs/yd5i
>>264
放り出された理由は「角煮にSSは板違いだから」じゃなかったっけ?
267名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 02:27:25 ID:X5KtfAPA
=====スレ1より=====
8 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/28(木) 21:40:44 ID:keyVK30a
よくわからんが、角煮の妖精スレでSS書いた香具師がいてゴタゴタした末にここが建てられたって事か?
とりあえずSSなり何なりが上がらないと話が進まんな……
=====

一年前なんだな。過ぎるのがはやすぎるぜ
268名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 05:54:24 ID:VSe544qI
千影の人と種の人は1スレできた頃から書いてたよな…
そう思うと長い付き合いに感じてくる
269名無しさん@ピンキー:2008/06/14(土) 00:08:52 ID:fHCYgqmp
書き続けるのは大変だ
270名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 02:16:59 ID:iIZf9xox
種の人は人外スレでキツネ娘の話書いてた
271名無しさん@ピンキー:2008/06/16(月) 22:37:11 ID:wcmSMdQE
飛翔
272 ◆U/2x01EMTM :2008/06/17(火) 20:15:54 ID:ASrkUstl
小ネタ投下します。

ハードではありませんが無理やりといえば無理やりなので
合意の上でないと絶対駄目だという方はトリをNGしてください。
273 ◆U/2x01EMTM :2008/06/17(火) 20:16:30 ID:ASrkUstl
さあ、次にご紹介するのが本日目玉の商品となります。
全国の妖精ファンの皆さんお待たせいたしました。
こちらが全自動型妖精捕獲装置――カメレオンです。
これは名前の通りカメレオンをモチーフにしており、稼動時は常に周囲の風景に溶け込むことで妖精さんにその存在を悟られません。
さらに頭部カメラには魔力検出用のフィルターを搭載し、妖精さん捕獲の最大の障害であった姿消しの魔法を無効化することが可能です。
では実際に妖精さんを捕獲している映像をご覧頂きましょう。

右側が通常のカメラ、左側がフィルター越しの映像になります。
あ、左側だけに光の玉が入ってきましたね。
これが妖精さんです。
この時点では魔力を検出しているだけのため容姿まではわかりませんが、果たしてどんな妖精さんなんでしょう。
実に楽しみですね。
さあ、ではお待ちかねの捕獲の瞬間です。
ここから先は実際には1秒にも満たない出来事のためスロー再生でお送りします。
このカメレオンは魔力反応を感知すると、これもまた本物のカメレオンのように粘着性の舌を射出して妖精さんを捕獲します。

3,2,1……やりました、命中です。
あ、ついに妖精さんの姿が露になりましたよ。
衝撃で精神集中が途切れたようですね。
今回はふわふわしたブロンドが可愛らしい妖精さんでした。
このまま一気に内部に引き込みます。
この間約0.1秒、まだ自分の身に何が起こったかすら理解できないうちに完全に飲み込んでしまいました。
当然、一度閉じた口は物理的な方法で中から開けることはできません。
ではここからは内部カメラに映像を切り替えましょう。
274 ◆U/2x01EMTM :2008/06/17(火) 20:17:21 ID:ASrkUstl
あ、ちょうど表情が驚きから焦燥に変わったところでしたね。
どうやらようやく状況が飲み込めたようです。
新たに魔法を使って脱出を試みているようですが、そうはいきません。
まずは全方位から特別な粘液を浴びせかけます。
ふわふわだった髪がべっとりと額やうなじに貼り付いてちょっと扇情的になりました。
ですがこの粘液の役目はそれだけではありません、
これは中で暴れられた際、内壁や妖精さん自身の体が傷つくのを防ぐと同時に、舌の持つ粘着力を中和する効果もあります。
ご覧ください、妖精さんの体から剥がれた舌が解けていきます。
実はこの舌、100本を越える極細触手をより合せた物だったんですね。
これらの触手はすぐさま妖精さんの全身に纏わり付き、魔法を使うための精神集中を許しません。
胸や股間などのわかりやすい性感帯はもちろん、その細さを生かし人間の指では困難な耳の穴や指の隙間まで責め立てていきます。
ただし皆さんの楽しみを奪わないよう、初期状態では直接的な挿入はしないよう設定されていますのでご安心ください。

と、挿入なしとはいえさすがに全身を一斉に責められては妖精さんもたまらないようですね。
小さな手のひらで必死に触手を掴み動きをとめようとしていますが、数の多さに加え表面を覆った粘液のせいで全く効果がありません。
そうこうしている内に声の感じが変わってきました。
どうやらこの妖精さんは特に背中が弱いようです。
カメレオンは内部に閉じ込めた妖精さんのリアクションをリアルタイムで観測し、弱点を割り出します。
このデータはもちろん後で自由に確認できますので、以降の調教にも役に立つこと請け合いです。
では、そろそろ本格的に追い詰めていきましょう。
得られたデータを元に触手の大半が背中に殺到していきます。
先端が吸盤になっているものは至るところに吸い付き、刷毛状になっているものは背筋をなぞり上げ、バイブを内蔵したものは肩甲骨に微弱な振動を送り込み始めました。
この波状攻撃に妖精さんはもう抵抗する気力を失い、顔を真っ赤にして恥ずかしさに打ち震えるだけになってしまいました。
口から漏れるのも完全に喘ぎ声になってしまっていますね。

そして――――あ、ついに全身を痙攣させてイッてしまいました。
おやおや、気持ちよさのあまりお漏らしまでしてしまったようです。
半開きの口元をわななかせて夢見心地の妖精さんですが、もちろん1度くらいで手を緩めません。
このまま10回ほどイカせて完全に快楽のとりこにしたところで解放しますので、そこからはお客様自身でお好きなようにお育てください。

さあ、いかがだったでしょうか。
一度快楽を覚えこんだ妖精さんは一生あなたのパートナーとしておそばを離れることはないでしょう。
夢にまで見た妖精さんとの生活が手に入るチャンス、絶対に見逃せません。
さらにさらに、今回はこの最新式の妖精捕獲装置に、新発売キャンペーンとして妖精さん飼育&調教セット(鬼畜編またはほのぼの編)をお付けしての提供です。
ご注文の際、オペレーターにどちらをご希望かお伝えください。
さて、そろそろ終了の時間が来てしまったようです。
それでは皆さんからのたくさんのお電話、お待ちしていまーす!
275 ◆U/2x01EMTM :2008/06/17(火) 20:18:10 ID:ASrkUstl
以上です
276名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 21:10:54 ID:adSFjdbF
で、お値段はいくらですか?
277名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 22:03:16 ID:EObJ+grs
くっ・・・快楽で妖精さんを無理矢理虜にするなんてそんなこと・・・!(電話しながら)
278名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 22:33:45 ID:adSFjdbF
そんなけしからん品を市場に出すわけには行かんな



在庫をありったけうちに送るんだ。
279名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 22:35:48 ID:oHpm49yj
とりあえず俺も注文するわ
280名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 22:36:43 ID:oHpm49yj
あげてしまったorz
281名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 00:34:21 ID:mwv9qVb9
そしてスレ住人により乱獲され始める妖精達

次第に追い詰められ絶望に飲まれそうなところで妖精の味方につく俺

妖精さんハーレムすばらしいです^q^
282一発ネタ23:2008/06/18(水) 00:50:11 ID:DIvwKDYz
「……という通販番組が深夜にやってたんだ。どう思う千影?」
「妖精を性のとりこにして支配する、ですか……」

昼間、先日の大地震で人外魔境と化した千影の部屋を一緒に片付けていたとき、
ふと口から漏れた話題。全貌を話した後、千影は顔を青ざめている。

徹夜の仕事中に聴いていたラジオで流れていた通販番組。
いくら最近賢者してないとは言え、思わず番号をプッシュしようとしたのは反省すべき点だ。

「ははは、私たち妖精にもいろいろ種類があるんですよ……
 確かにそういう「えっちなこと」で人格まで失っちゃう子もいますが……
 わたしは違いますよ、本当ですよ……
 (えっちなこと、えっちなこと……なんて……)」

自分サイズの小さな段ボールを持った千影が、太股をすり寄せている。
まさかな。こんな地震の直後に俺は発情なんてしない。
しかし、よく顔色の変わる奴だな。

「本当か? 千影はそんな「えっちなこと」で気持ちよくならないのか?
 快楽にのまれないか? マジだな?」

冷静に考えると、この世界に千影の他に妖精がいたことは初耳だった。
哲学的なことを思いながら、千影の身体を掴む。

「や、ご主人、何を……」
「気になったことをさせてもらう。身体触るのは前OKって言ったよな?」
「はい、ですが……今は……」

つい最近、おさわりOKを約束されたばかり。
ならば存分に触らせてもらおう。手の中で足を無理矢理こじ開け、布地の上から秘部をさする。
体長30cm程度の妖精だ。暴れたとしても痛くない。それ以前に千影は抵抗していない。

「ひうッ!?」
「いつも千影は可愛いが、悪戯するともっと可愛くなるな」
「や、やめて……」

抵抗しても無駄と知っているのか、あるいはまさか……
パンツをずらし、指の腹で直接湿ったそこを撫でる。

「はぁ……はぁ……変に、変になりそう……です……」
「そうか、それはよかった。もっと変になった千影が見たい。
 あの話を聞いただけでこんなにえっちになるとはなぁ。驚いたよ」
「ごしゅじん……いじわる……ですよぅ……」

息が途切れ途切れになっている。
これは近い。少し力を入れて、這わせていた小指で豆粒のような蕾をはじく。

「っ!!  ……ぅ……」
「気分はどうだ?」

千影の身体がびくんびくんと揺れる。
しばらく恍惚とした表情を見せた後、

「……変な気分です。責任取ってください」
と言われ、ズボンのベルトを外されてしまった。
トランクスの上から自己主張する股間。まさか挿入しろなんて……

「ここに、こすりつけて欲しい……です」
と、千影は自分の濡れそぼった秘所を指さし俺の息子を
(省略されました……続きを読むには好きな妖精さんの責め方を書き込んでください)
283名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 01:09:30 ID:RrZibIhm
妖精さんが全身を使って擦り付けてくればいいよ!
284名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 01:45:07 ID:zpuCgI74
なっ・・・省略だと!?
指に跨ってオナニーして貰うとかどうだろう
自分から擦り付けてもらうところがポイントだ
285名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 18:01:28 ID:58hrDiCN
俺も擦り付けてもらいたいな。
妖精とは性交よりも濃い目のスキンシップってイメージがあるなぁ
286名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 18:31:08 ID:EWUUhKQg
ぶっちゃけると…スマタ?
287名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 18:31:47 ID:58hrDiCN
むしろ全身が性器
288名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 20:28:45 ID:Q6e2kVMp
千影嬢ってどういう見た目だっけ?
289名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 22:49:03 ID:5lrCXway
スマタいいよね
290名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:11:25 ID:fVZKkgqj
個人的には強い息で愛撫して焦らす展開とかいいね

まにあっくですまん
291名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:16:08 ID:DIvwKDYz
>>288
俺も気になったから調べてみたら
・30cm or 110cm(5月)
・黒髪ロング
・黒く透き通った瞳 目の形の表記はなし
・半透明の羽
・ワンピースが部屋着
……が公式の見解らしい
千影の人、もっと地の文増やしておくれ……萌えることが出来ない
292名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:17:57 ID:Q6e2kVMp
>>291
サンクス
ついでにミドリ嬢ってどんな見た目だっけ?
293名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:18:57 ID:DIvwKDYz
ん?IDが青い……

すいません斬首してきますorz
話の続きは今仕上げます。一度文の内容でフルボッコされたかったんだ……
294名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:22:39 ID:zpuCgI74
求める気持ちは分かるがここでやったらスレの空気が悪くなってしまうぜ

それはそれとして評価が欲しい部分をもう少し限定するとコメントする側も言いやすい
単に「どう思う?」でなく 台詞回しはどうだろうとか、話の展開はどうだろうとか、ぶっちゃけエロい?とかそういう
295名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:25:15 ID:NJMxFJ3K
>>292


 ,'\ ,'\ ________  
 i   ____|ニニニニ|____
  \.  ノ ィルリル
   \ ノ! リ ゚.ーノ´)
     ノi ハ iXi 〉
    / リ∪  ヽ
=========ヽ,,,,,,,,,,|
         し'ノ
296名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:31:16 ID:ROZ8goed
ID変え忘れ?
297名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:33:57 ID:NJMxFJ3K
>>293
ジエン(・∀・)イクナイ
自己嫌悪に悶えながらしばらく反省汁
298名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:53:44 ID:DW6SP/a+
>>293
まぁ、自演はしない方がいいわな

だからちょっとカメレオンに捕まって妖精さんの気分を体験して来い
そうすりゃ落ち着くさ
299名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 23:56:00 ID:G/gA4kFU
まあ、人気ある書き手だから何やってもだいたい許されるだろうけど
300一発ネタ23:2008/06/19(木) 01:10:52 ID:T+hUxF42
「ここに、こすりつけて欲しい……です」
千影は服を脱ぎ、自分の濡れそぼった秘所を指さし俺の息子を足で挟んだ。
そのまま愛液で動きを加速する千影。亀頭は腹に押しつけられる形になっている。
ちょうど裏筋でこすってるような感じだ。

「くぅ……これは、なかなか……」
「気持ち、いい……ですか?」

この体勢になってから一分程度しか経っていないが、もう限界が見えてきた。
そんな中、ふと千影の処女を奪おうとする思考が浮かび、それが頭を支配してしまった。

挿入してしまいたい。どす黒い欲望をすべて受け入れてもらいたい。
「千影ッ!」


「ご、ご主人、そこには、入りませんよぅ……」
「だから俺のが入るように大きくする。問題あるまい」

息子を軽めに秘所に押しつけるが、やはり入らない。
しかし欲望は止まらなかった。理性で押さえつけるなんてできなかった。
腰に入る力が強くなると同時に、千影の表情に苦悶が表れてくる。

「痛い! 痛いですっ!  」
ミチミチという音を立て、千影の何かが少しずつ壊れていく。
結合部から血が出ているが、まだ亀頭の先しか入っていない。
が、それでも中は窮屈だ。もしこれで全て入れてしまったりしたら……
強い背徳感に苛まれ、息子の感覚が鋭くなる。

「千影……出すぞ」
完全には入っていないが、興奮は限界に着々と近づいていた。
千影の脚を息子に絡ませて、脚ごと息子を手で覆いしごく。
亀頭のみに感覚が集中していいたため竿が弱くなっていた息子が硬く張り詰める。
千影の顔は真っ赤になっていた。恍惚と苦悶が入り乱れ、歯を食いしばっている。

「これ以上、入れないで、くださいっ……壊れちゃいますっ」
硬く張り詰めた息子が震え始める。
何も考えずに、腰を力一杯押し進めた。


「っ!」

びゅる、びゅるるる……
亀頭が半分まで入った結合部で、真っ白な欲望を解き放った。
腰が折れそうな快感を味わいながら、精を千影に流し込んでいく。

「……な、なかに……ごしゅじんのが……いっぱい……」

息子を脚の呪縛から解いて引き抜くと、千影の秘部から大量の白濁が流れ落ちた。

──

「……すごく痛くて、怖かったんですけど……この落とし前、何でつけてもらいましょうか」
「ごめんなさいホントごめんなさいもうしません」
「仙台新港に沈めてもいいんですよ? 怖いご主人はもう嫌です。」

後片付けが終わった後、千影に説教されていた。
女の子に無理矢理なことするなだとか、しばらく痛いのをどうしてくれるとか。
だが、最後に千影はこう吐いてお開きにしてくれた。

「今度は……痛くないように、お願いします……」
301名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 01:27:01 ID:5RfqUSu0
>>300
はやく痛くないようにした時の話を書くんだ!
302名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 01:46:43 ID:MojuWBce
男が正座で説教されてる様子が目に浮かぶ
この流れで次は千影優位でとかどうだろう
303名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 07:40:35 ID:Lt1DuHXp
帽子猫の人も自演したことあるんだよな
勘弁してほしいね
304名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 08:01:45 ID:EehXa6Bv
もっと人いればなぁ
305名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 17:49:31 ID:QX5LS6to
千影って黒髪だったの?

これだと思ってたけど
http://sukima.vip2ch.com/up/sukima003069.png
306妖精の種 1/2:2008/06/19(木) 19:18:24 ID:ZB/PTS8q
>>218-219の続き

 24話 カイの提案

 日の入り二時間前に観測所に戻り、下書きの絵に布を掛けておく。
 描いた直後だと正確な評価ができない。この絵は街に戻ってから手直しすることになっ
ていた。明日は別の風景を描くつもりである。
 早めの夕食を食べ終わり、カイは寝室へと戻った。

「カイ、おかえり。ご飯美味しかった?」

 ミドリの声に視線を移す。
 西向き窓の近くに置かれた机の上。浅めの桶にお湯が張ってあり、ミドリはお湯に浸か
っていた。脱がれた服とハンカチ二枚が傍らに置いてある。
 カイは瞬きしてから、そちらへと歩いて行った。

「風呂……いつの間に用意したんだ?」
「さっきリョウさんに用意してもらった。カイもお風呂入ればいいのに」

 嬉しそうに答えてくるミドリ。夕食前にリョウが席を外していた記憶がある。トイレに
行ったと思っていたのだが、ミドリに風呂を用意していたらしい。

「いや、ここで風呂入るのは無理だよ。山の頂上で水は貴重だから、シャワーとかも無理
だし。俺も濡れタオルで拭いただけだったし」

 山では滅多に風呂に入れない。カイも戻った直後に濡れタオルと石鹸で身体を拭いただ
けである。下の方にある沢で水浴びという選択肢は残っていたが、それは拒否した。リョ
ウは時々やってるそうだが、一般人では風邪を引く。

「大変なんだ。じゃあ、後でリョウさんにお礼言っておかないと」

 納得したように頷くミドリ。
 桶の底に両足を伸ばし、背中を縁に預けている。お湯は肩の辺りまで。
 服も下着も全部脱いでいるため、隠すものは何もない。透き通った色白の肌にどこか華
奢な手足、女性特有の丸みを帯びた身体と適度に膨らんだ胸。長い木の葉を思わせる緑色
の髪の毛が、濡れて背中に張り付いていた。

「お前、意外と発育いいんだな……」

 言葉を選びつつ、カイは感想を口にする。
 ミドリの外見年齢は十六、七歳。言動が子供っぽいので幼い女の子と勘違いしてしまい
そうだが、身体はそれなりに大人である。
307妖精の種 2/2:2008/06/19(木) 19:18:55 ID:ZB/PTS8q
「むぅ」

 小さく呟いてから、ミドリは背中を向けた。

「すまん、すまん。風呂終ったら話があるから」

 苦笑を返してから、カイは手桶から離れた。スリッパを脱いでベッドに寝転がり、目を
閉じる。視界から消える光。意識をぼんやりと虚空に漂わせた。
 ほどなくミドリの着替える音が聞こえてくる。

「カイ、着替えたよ。話って何?」
「ああ」

 カイは目を開けて……目を点にした。
 ミドリの服装が変わっている。今までは緑色の膝丈ワンピースという恰好だった。しか
し、ワンピースの裾が太股丈まで短くなり、黄緑色のズボンと深緑色の長袖上着が追加さ
れていた。見たままを言うならば、冬服である。

「どうしたその服? いつの間に新しいの用意したんだ?」
「え、何かおかしい?」

 驚いたように、ミドリが自分服を見下ろしていた。しかし、服装が変化したという自覚
はないらしい。くるくるとその場で回っている。

「まあいいや。夜になったら星を見に行こう」

 早々に追求を諦め、カイは窓の外を指差した。日没と共に寝てしまうため、ミドリは星
を見たことがない。しかし、魔術の灯りを持たせていれば夜でも起きていられる。
 カイは山から見る星空をミドリに見せたいと思っていた。

「星?」

 そう呟いて、ミドリは窓の外の夕空を見つめる。
 一番星が輝いていた。
308名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 19:19:15 ID:ZB/PTS8q
以上です
309名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 19:41:10 ID:vAKN4Vvn
せっかく綺麗に締まってるところ悪いが、言わせてもらおう

その残り湯をよこせっっ!
310名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 20:43:54 ID:ZB/PTS8q
飲むのか?
311名無しさん@ピンキー:2008/06/19(木) 23:59:27 ID:GI8qa1kl
いつもながらGJです

>>309は落ち着けw
312 ◆U/2x01EMTM :2008/06/20(金) 19:53:49 ID:RmDLpzGD
再び小ネタ投下します。
無理やりがダメな人はNGお願いします。
313 ◆U/2x01EMTM :2008/06/20(金) 19:56:07 ID:RmDLpzGD
※これはご購入いただいたお客様からいただいた感想です。
 妖精さんには個人差があるため、商品の効果・効能を保障するものではありません。

――――

いやあ、本当に感謝しています。
今までにも何度か別の通販番組で妖精さんを間単に捕まえられるってのがウリの商品を買ってきたんですが全部外れ。
だから、どうせこのカメレオンとかいうのも景気がいいのは宣伝だけだろうなんて、そんな失礼なことを考えながら注文しました。
正直、すいませんでした!
届いた日に外に出しておいたら、翌朝にはもう妖精さんが捕まっていたんです。
粘液塗れで眠り続けるあの姿を見たときの感動は今でも忘れられません。

あと、こちらの素晴らしいところは捕まえた後のフォローもばっちりというところですね。
新発売キャンペーンということでセットでついてき妖精さん飼育&調教セット(もちろん鬼畜編を注文しました!)も、おまけとは思えない充実ぶりで大満足です。
まず説明書にしたがって魔法防止用スライムの準備から始めました。
カメレオンの中でよほどイキ疲れたのか、全然目を覚ます気配のない妖精さんの服を脱がせる時点で、もう私の心は背徳感でいっぱいです。
そんな高鳴る胸を無理やり押さえつけて、同梱されていたピンセットで秘唇を左右に広げてみました。
まさか自分の手で妖精さんのくぱぁができる日が来るなんて感無量。
きれいな薄桃色のあそこの上のほう、まだぷっくりと膨らんでいるクリトリスに豆粒より小さいスライムをそっと乗せます。
これだけで準備完了。
あとは妖精さんが自然と目を覚ますまで、コーヒーを飲みながらのんびり待つことにしました。
もちろんすぐにでも起こしてしまおうかとも思ったんですが、時間はまだまだたっぷりあるんです。
あんまりがっつくのもみっともないかなって(←ちょっと余裕見せすぎでしょうか)。
314 ◆U/2x01EMTM :2008/06/20(金) 19:57:16 ID:RmDLpzGD
それからしばらくして目を覚ました妖精さんは、最初状況がわからず混乱していたみたいですが、思ったよりすぐに立ち直ってこちらを睨みつけてきました。
そうです、金髪ツインテールという髪型から薄々そうなんじゃないかと思っていたんですが、この妖精さんは強気系の娘だったんです。
大人しい従順系も好きなんですけど、個人的にはこっちのほうがより好みだったので嬉しさもひとしお。
ともあれ、捕まったことを理解した妖精さんは眉を吊り上げて「こんなことして、ただじゃすまないんだから!」なんて言ったかと思うと、呪文を唱え始めました。
これに対し、こっちはもう笑いを堪えるのに必死です。
案の定、すぐにスライムが動き始めて呪文は悲鳴(というより嬌声?)に塗り替えられました。
一番敏感な場所でいきなりスライムが蠢きだしたんです。
とても魔法のための精神集中なんてできませんよね。
説明書によればスライムとしては定番の振動・吸引だけでなく、内部を一部分だけ硬化させて作った擬似的な歯で甘噛みまでするとのこと。
技術の進歩って本当にすごいですね。
その想像するだけでも恐ろしい責めを実際に受けている妖精さんは、もう魔法どころか立っていることすらできずに悶絶していました。
釣り上げられた魚みたいにバタバタと全身でのた打ち回りながら、必死に股間に手を伸ばしています。
でも一度吸い付いたスライムはそう簡単には外せません。
しばらくして、ようやく自力で取り外すのが無理だと理解したらしい妖精さんは、さっきの強気はどこへやら涙とよだれをまき散らしながら「止めて止めて」と懇願してきました。
とはいえ、ご存知の通り一度動き出すと妖精さんがイクまで止まらないのがこのスライムです。
そこで、ちょっと甘いかもしれませんが、私はせめて少しでも早くその責めを終わらせてあげることに決めました。
スライムをくっつける時に使ったピンセットで、平らな胸の真ん中でしこりたっている乳首を片方摘みあげてあげたんです。
そのままピンセットに内蔵されたバイブ機能をオンにすると、もうまともな言葉すら出せなくなった妖精さんは動物みたいに叫び声を上げながら強すぎる快感に翻弄されてしまいました。
それから数秒後、ついに背骨が折れてしまうんじゃないかと心配になるくらい体を反り返らせてイッてしまった妖精さん。
突き出された股間から透明な蜜を勢いよく吹き出しながらの絶頂は壮絶の一言でした。
けれど、最初はその光景をしっかりと堪能させてもらっていたんですが、すぐにそれどころではなくなってしまいました。
ここまで書けば、なんとなく予想できているかもしれませんね。
痙攣も治まり脱力した妖精さんの腰のまわりに薄黄色の水溜りが広がり始めたせいです。
本人は放心状態の後そのまま気を失ってしまったみたいなので何をしているかわかっていないようですが、次の課題はトイレのしつけみたいです。
もちろん、その際にはセットの中に入っていたアレを使わせていただくつもりです。


以上、長くなってしまいましたが、こうしてカメレオンのおかげで私は妖精さんと出会うことができました。
繰り返しになりますが、本当に素晴らしい商品をありがとうございます。
と、どうやら妖精さんが目を覚ましそうなのでこのあたりで筆をおかせていただきますね。
新商品にも期待しています。
それでは。
315 ◆U/2x01EMTM :2008/06/20(金) 19:57:48 ID:RmDLpzGD
以上です。
316名無しさん@ピンキー:2008/06/20(金) 20:58:56 ID:2+JOjPFl
お願いですので
もう少し読みやすくして下さい
317名無しさん@ピンキー:2008/06/20(金) 22:19:38 ID:zW7T0rui
>>315
注文したのに俺のところにはまだ届かないんですが・・・
318名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 02:47:56 ID:+paj7Vz6
>>315
なんて鬼畜なことを!ひどいじゃないか!





さて、電話番号は何番だったかな
319名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 20:59:50 ID:ejQW9AWG
類似詐欺にご注意ください。
ひっかかってしまったらしくうちには全然届きません。
320名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 23:25:26 ID:gQflWEAp
>>319
じゃあ俺も詐欺にひっかかったのか・・・orz
321名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 03:35:04 ID:tROX92TR
このシリーズ好きかもしれん
エロさは正直微妙だが、面白い
322名無しさん@ピンキー:2008/06/23(月) 00:46:16 ID:fOzC27/Y
>>315
GJ
シリーズ化してけれ
323名無しさん@ピンキー:2008/06/27(金) 00:30:29 ID:EFenZnSk
324名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 14:50:14 ID:NNcXDOZo
妖精をペットとかにして弄りたい欲求持ってる人間って
結構いそうな気がする
325名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 16:34:52 ID:0QhGNVJB
大きさにもよるな

妖精の種は20cm
フィフニルは60cm

それで扱いがかなり変わってくるし
326名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 18:31:59 ID:KMAQk2/Z
俺はペットよりはパートナーみたいなのが好きだな
精神面や知能面では人間となんら変わりないのに
体がちっちゃいというところに萌えるんだぜ




……え、鬼畜展開? 大好きです
327名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 20:31:40 ID:tmkf0ERe
>>326
一番最後の行さえなけりゃあ同志だったのにな
328名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 21:13:24 ID:6FBCdjBO
329名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 21:18:54 ID:0QhGNVJB
77 :名無しさん:2008/06/24(火) 00:43:53
昔スーパーマリオくんって漫画でマリオ達が
ゼルダの世界に飛ばされるお話があったが
ヨッシーは容赦無く妖精を食ってたな。


うわぁ。
330名無しさん@ピンキー:2008/06/28(土) 21:19:05 ID:4ppHEknE
>>327が鬼畜大好きになればオッケー
331名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 00:53:08 ID:4HbiJzMF
>>330
嫌だ!俺はラブラブ物好きでいたいんだ!!
332名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 02:36:55 ID:WxluPz4l
333名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 08:28:23 ID:79kCvqh9
>>332
鬼畜な話題は>>328のスレでやればいいんじゃないか?
334名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 10:43:51 ID:bj18/HHz
>327
俺が同士だ


> 精神面や知能面では人間となんら変わりないのに

↑この設定、超好き。
妖精って見た目よりも幼い性格や逸脱した設定が多いけど、
普通の女の子と同じような考えを持ったり、好みを持ったり、悩みを持ったりしてくれてると
俺的にストライクです
335名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 11:25:49 ID:vN/KaPTG
>>334
キャンパスの妖精とかよかったよな
336妖精の種 1/2:2008/06/29(日) 21:49:04 ID:BqSjyGhs
>>306-307の続き

25話 題名、星空

「おい、コレ持っていきな。寒いから」

 リョウが差し出してきたのは小さな茶色のボトルである。ラベルからするに強めの酒だ
ろう。山では身体を温めるために酒を飲むことが多いらしい。
 カイはボトルをコートのポケットに入れ、礼を言った。

「ありがとうございます」
「礼には及ばん。じゃ、オレは先に寝てるから」

 気楽に笑いながら、リョウは背中を向ける。現在夜の八時。山ではやることがないので、
早めに寝てしまうらしい。水汲みなどで朝も早いらしいが。
 コートの襟元から顔を覗かせたミドリが、声を上げた。

「おやすみなさい」
「おやすみ」

 軽く二度右手を振ってから、リョウは奥へと消える。
 それを見送ってから、カイは玄関に向き直った。

「じゃ、星見に行くか」
「うん」

 頷くミドリ。
 厚手のコートに手袋という防寒装備。襟元から顔を覗かせるミドリ。熱の魔術を込めた
術符と光の魔術を込めた術符を胸元に入れているため、ミドリも元気に活動できる。
 そして念のためということで、腰には剣を差していた。
 カイは玄関のドアを開けた。

「寒いな……」

 外から吹き込んでくる冷たい風。平地の初冬並の寒さである。
 しかし引き返すこともなく、カイは外へと出た。
 淡い月明かりに照らされた山道と生い茂る森。風に吹かれた木の葉の擦れる音だけが聞
こえる。街なら虫の鳴き声も聞こえるのだが、山頂では虫はほとんどいない。
337妖精の種 2/2:2008/06/29(日) 21:49:38 ID:BqSjyGhs
「これが夜なんだ……。真っ暗だね。それに何だか空気が冷たい」

 ミドリがどこか興奮したように呟く。日の出とともに起き、日没とともに眠ってしまう
生活。夜という時間をじっくりと見るのはこれが初めてだった。
 カイは観測所から少し歩いた所にある木の椅子に座る。リョウが日光浴用に作った椅子
だった。右手に持っていた剣を横に立てかけてから、

「星は上だよ」

 そう言いながら、背もたれに寄りかかる。背中に伝わってくる冷たい木の感触。ミドリ
の視線が自然と夜空を捉える。
 数秒の沈黙。そして。

「うわぁ……」

 ミドリの喉から漏れるの感嘆の声。
 雲ひとつつ無い漆黒の夜空。そこに浮かぶ無数の星々。平地よりも数倍の星が散らばっ
ているように見える。あまりの数のため、どれが星座を構成する星なのかも分かりにくい。
天球を東西に貫くように伸びる光の帯。西の空には月が浮かんでいた。
 視線を下ろすと、緑色の眼を見開いたまま星空を見上げているミドリ。完全に心を奪わ
れている。この状態では声を掛けても気づかないだろう。

「でも、芸術鑑賞中に声掛けるのは、無粋なことだ」

 声には出さずにそう言ってから、カイはそっとミドリの上に手を置いた。手の平に伝わっ
てくるほんのりしたぬくもり。術符に込められた熱の魔術。
 ポケットから取り出したボトルの蓋を開け、中身の酒を口に入れた。
 甘味とアルコールの刺激が口から胃まで流れていく。
 ボトルをポケットにしまってから、カイは誰へとなく呟いた。

「題名、星空……と」
338名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 21:50:13 ID:BqSjyGhs
以上です
339名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 22:15:50 ID:M7QnZ3Om
>>338
GJ いつもご苦労様です

読みやすさがイイな
エロはなくともほのぼのがあればいい俺にはちょうど良い
340名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 19:15:50 ID:ZhUKu9yf
>>338
毎回楽しみにしてます
341名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 23:28:12 ID:+dczXWGR
妖精の種

もう一年以上続いているんだな
342名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 01:24:57 ID:JFvrh2RG
ここの古参だよな
しかし同じシリーズを長く続けるのって相当労力がいるよな
やっぱ種の人すげえ
343名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 22:07:52 ID:pg6k8uwi
種の人…定期的に長編、安心してほのぼの可愛い
千影の人…不定期に短編、展開読めずたまにエロい

種の人は展開が安定し過ぎて面白味に欠けることがたまにあるし、千影の人はペース悪いのと読みづらいのが気にかかる
一発ネタでもいいからこのスレに投下してみたい
344名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 22:55:35 ID:qoICWOCd
>>343
種の人はたまに違うシリーズでエロ投下してくれるじゃない
345名無しさん@ピンキー:2008/07/01(火) 23:02:31 ID:TRKcTbhc
だが、カイムと妖精はネタ切れと言っている
346名無しさん@ピンキー:2008/07/02(水) 09:40:44 ID:GCJ1bMwe
カイムといえばシレーヌ
347名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 07:43:17 ID:1T9t4Hs6
シレーヌ、ケバい
348名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 08:07:37 ID:cUUVt34z
そういえば、共犯系の人は何しているだろう?
349名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 12:40:38 ID:D3dKfsqQ
>>348
妖精の国にでも行ったんじゃない?
350名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:15:24 ID:S74AGA5J
保守
351名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 02:51:38 ID:QhBkKA5k
ここは保管庫はまだないの?

連載を最初から読みたいんだけど
352名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 17:00:00 ID:URCOYN7K
保管庫っていう保管庫はない・・・・・よな?

妖精の種を書いてる人は自サイト持ってるからそこで読める
千影の人は分からん
変なのが暴れたせいか今はここには落としてないフィフニルの妖精達を書いてる人も自サイトを持ってる

ちなみにサイト名は
妖精の種の人は「どこまでも空っぽ本棚」
フィフニルの人は「幻想生物字典」
353名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 17:59:17 ID:PmtlatZj
夏前に宣伝するなよ!そっちに荒らす奴がいくだろうが!!!
354名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 19:02:03 ID:7jTUXjVA
たしか長いからよそでやれって言われたんだっけ?>フィフニル
355名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 19:33:30 ID:pWepI7i9
>354
そうそう
他にも、誰かが話を出す度に
「もう去ったんだからここで話するな」
「以後フィフニルの話禁止」
とか暴れる奴がいてな

まあ氏も長すぎて落とすの諦めたとか言ってたから
フィフニルは向こうで読んでくれってことだろうな

今度短編落とすとは言ってたから何気にわっふる
356名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 19:42:37 ID:AtQs6FB4
>>354
逆だ逆。
「スレに貼ってくれ」って言われてたのに作者が貼らなかったんだよ。

ブログで読めるから別に困らないだろうけど
357名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 20:14:59 ID:f1gzaw00
身勝手な読者か
358名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 23:49:09 ID:PmtlatZj
>355前後

前スレ>700あたりからの流れがおかしいな。
あきらかな(以降は妖精さんに検閲されました)
359名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 02:04:37 ID:OJCISXuE
>>358
前スレ700くらいに投下したものだが、ごめん、俺が荒らしだったか。
変な流れになってごめんよ。
360名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 18:47:17 ID:Cy9Y+bvr
>>359
ゆるさん!罰としてなにか書いて下さいお願いします
361名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 19:26:20 ID:I6vLhk2+
>>354
>>356
正確には両方いたんだよ
ブログじゃ読めないから張ってくれってのと
ブログあるんだからそっちでやってろってのとな

しかしなんでブログ開設したんだか
362名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 20:44:37 ID:d6daPIJl
自分の小説をまとめるためらしい
363名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 21:00:30 ID:ncZGH+Z7
それもあるだろうけど
時期を考えると、保管庫代わりだろうね

ほら、氏がBlog開設したのって、Pinkのセキュリティが落ちて派手に荒らされた直後のことだからさ
364名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 21:13:54 ID:NWUXX7eo
すくあらたんか
あれをネットの妖精と妄想してSSができあがったが、読めるものじゃない出来って気づいた…
さっき見返して布団に頭をドリル
365名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 21:34:33 ID:d6daPIJl
氏のブログのアクセス数は一日400前後
多いのか少ないのか分からん
366名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 22:39:28 ID:517u0lob
文章サイトとしては決して少なく無いとおもう
367名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 01:40:05 ID:1/ZoB4Mv
おれんところは50ちょっとだから、足下にもおよばんなー。
氏からすれば、「50ぅ? そんなクズホムペと俺のブログをくらべんなや!」と言われそーだ。
368名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:21:54 ID:8IUE1Xxn
なぜそこで悲観する・・・
うちは全部業者だぞ?

不幸自慢してどうするんだ
読者が居てくれるだけでも・・・


この幸せ者!!
369名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:40:52 ID:Xwxxog4J
種の人は600くらい
成長したなぁ
370名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:48:09 ID:2xhrVHrI
やっぱりHit数自慢の流れになったか…
371名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:52:09 ID:HBbry/nP
妖精さんの居住数だと思えば仕方のないこと

あと「自慢」って言い方だと自演認定エスパーに聞こえるぞw
372名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 07:54:40 ID:Xwxxog4J
だって投下ないんだもん
373名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 17:08:06 ID:nG9wttMF
PIXY<<投下 投下>>















ごめん
374名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 00:29:21 ID:qWrSzJ4P
投下がないから質問でも
みんなどんな妖精小説が読みたい?


奇特なSS書きが答えてくれることを祈って
375名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 01:59:43 ID:kTO1TyXS
>>374
前スレの小人の島に行ってしまうみたいな話とか戦う妖精さんの話
376名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 10:31:33 ID:4UFeOvoZ
前スレといえば…
最初の方に投下されてた「妖精と過ごす日常」が一番好きだった。
今でも続きを待ち続けている程に!

人間の男と生活することで、
今まで裸だったことを恥ずかしく感じるようになったり
「彼の役に立てない」と自分の小さな身体を悔しく思ったりと、
そういった妖精の設定や性格が、すごく俺の理想でした
377名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 23:35:34 ID:UbxGJqX0
>>376
あなたとは仲よくできそうだ
378名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 07:17:26 ID:Dc5LIs4k
昔ちらっと出た素手格闘専門な50cmの妖精のお話
379名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 18:16:38 ID:9xyGOx1l
>>378
でかいな、おいw
380名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 18:46:06 ID:Dc5LIs4k
エロパロスレのフィフニルの妖精が60cmだな
でかいけど慣れればそんなにでかくはない
381名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 19:10:33 ID:Dc5LIs4k
っと、ここがエロパロスレだった
半角二次と間違えた…
382名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 02:00:39 ID:57+lCWba
>>376
そんな素敵な物語があったのか。
最近来たから見られない…
383妖精の種 1/2:2008/07/13(日) 16:36:34 ID:3PUK6VgV
>>336-338の続き

第26話 登山終了

 三日の間に、カイは五枚の下書きを描き上げた。
 描いた絵は専用のホルダーに入れて背負っている。木枠のキャンバスは軽いものの、五
枚も詰めるとそれなりの重さになっていた。しかし、文句は言っていられない。

「それでは、お世話になりました」

 カイの言葉に、リョウは髭を撫でながら笑っている。

「ああ、三日間楽しかったぞ。また機会があったら来てくれよ。あと、下りは登りよりも
楽だけど、筋肉に掛かる負荷は意外と大きいから気をつけろよ」
「分かりました。それでは」

 再び一礼するカイ。

「リョウさん、さよなら」

 傍らに浮かんだミドリが手を左右に動かした。
 応じるようにリョウも右手を振る。
 軽く会釈をしてから、カイは歩き出した。持っているものはキャンバスと着替えなどの
荷物。登る時よりも重さは増えているが、山道はさほど長くないので大丈夫だろう。
 固く踏みしめられた道を歩いていく。
 傍らを同じ速さで飛んでいるミドリ。

「風景もきれいだったし、水も美味しかったし、星は凄くきれいだったし、風はちょっと
冷たかったけど、色々面白かったよ。また、一緒に来たいな」
「今度はいつ頃になるだろ?」

 カイは空を見上げた。
 白い鱗雲が浮かぶ青い空。これから気温が下がり冬になる。今は乾期なので雨期が始ま
る三月半ばまで長雨が降ったりすることはないが、稀に大雪が降ることはあった。
 視線を前に戻して続ける。

「また来年のこの時期か。これから冬になるから、この標高じゃ寒さはキツイの一言だし、
逆に雨期の間はミドリもろくに動けないだろうしな」
384妖精の種 2/2:2008/07/13(日) 16:36:55 ID:3PUK6VgV
「冬?」

 首を傾げるミドリ。生まれてから半年も経っていないため、冬という概念を持っていな
い。秋という季節しか知らないと表現するのが正しいだろうが。
 カイは軽く頷いて、

「冬、厳密な季節の境ってのはないけど、西の山から冷たい風が吹き始めたころから冬っ
て言われる。来月の終わりくらいだろうな」
「寒いのかな」

 不安げなミドリ。ちらりと自分の身体を見下ろす。
 初日の夕方には、いつの間にかに半袖ワンピースから、長袖ワンピースとズボン、上着
という恰好に変わっていた。おそらく動物の冬毛のようなものだろう。冬の寒さに耐えら
れる恰好への変化。

(やっぱり植物みたいだよな。妖精がこんな変化するとも思えないし)

 口には出さなかったものの、実はミドリが冬の寒さで死んでしまうかもしれないという
不安もあった。しかし、冬を凌ぐ準備をしているなら、しばらくは大丈夫だろう。
 そんな考えは顔に出さず、カイは笑いかけた。

「寒いには寒いけど、街の家には暖房設備も作られているし、厚着すれば寒さも防げる。
そんなにキツイものじゃないよ。ミドリが着られるコートも作ってみるし」
「わたしの服、作ってくれるの?」

 きょとんと呟きながら、ミドリはカイの肩へと掴まった。
 カイは数秒視線を泳がせてから、首を縦に動かす。

「ああ。手先の器用さには自信あるからな」
「ありがとう、カイ。わたし楽しみに待ってるから」

 嬉しそうに笑うミドリを見つめながら。
 カイは心中で自分の言葉に苦笑いをしていた。
385名無しさん@ピンキー:2008/07/13(日) 16:37:59 ID:3PUK6VgV
以上です

「カイムと妖精」の続きを思いついたので、
時期は未定ですが、そのうち投下します
386名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 00:06:37 ID:FE2nIRaJ
いつもGJ
ミドリの生態?みたいなのは今後関わってきたりとか??
387名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 11:10:33 ID:U5ZcLLS3
>>375
小人の島に行ってしまった人間に、何をしてほしい?
もしくは、そこに住んでいる小人に何をしてほしい?
388名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 20:01:06 ID:HXL8s1+d
>>385
続きもwktk
389名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 21:57:21 ID:PlKcksDz
>>387
小人少女と純愛or逆レだろ
390名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 18:29:31 ID:C68AgDlf
>>389
『小人少女と純愛or逆ギレだろ』って読み違えた
391名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 23:01:11 ID:m93VWSvm
いつの間にか書き手が一人だけになっちゃったな
392名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 23:19:39 ID:prLsoiGW
>>391が新しい書き手になるというフラグと受け取ってよろしいか?
393名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 01:57:53 ID:trPWtiY8
>>391
期待しています
394名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 15:09:43 ID:RBbhm7NY
>>391
wktk
395名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 01:46:38 ID:sDb/2uuW
最近妖精さんに会えるどころか、自分が妖精になりそうな勢いだぜw
396名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 09:07:10 ID:LKzZEmsT
都会に住む野良妖精達は毎日が戦争だ。
猫やカラスといった天敵に始まり、食料である花の蜜の確保の難易度。
空気の悪さが、それだけで妖精達の生命を削ってゆく。
しかし、自らの居住区である自然を奪われて尚、彼女達はこの劣悪な環境で日々を過ごしている。
なぜか?
それは、失われつつある自然の復興――すなわち彼女達の使命だからだ。
コンクリートに生える雑草、小さな花。ベランダのプランターに生えた、植えた覚えの無い植物。
それらは皆、野良妖精たちが命を懸けてコンクリートのジャングルに緑を蘇らそうとしているからなのだ。

(中略)

そして私はついに野良妖精の一体を捕獲に成功した。
淡く透明に輝く彼女を固定し、私は以前より纏めていた論文を確立させる為の実験を開始した。
その内容は「妖精が半精神体生命である事の証明」……すなわち、生命の源である精子のエネルギーだけで彼女を育成するというもの。
もし彼女がこのまま死んでしまえば私の論文はただの妄言、しかし、もし彼女が私の精子だけで生き続けたら……。
長年交わされた「妖精とは何か」という議論の決着に辿り着けるかもしれない。
高い知性が確認されているこの妖精は、果たして何処まで私の期待に応えてくれるのだろうか……?

(中略)

かゆ い
う ま





徹夜明けのボンヤリした頭で俺は何を書いているんだろうか保守
397名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 23:11:41 ID:R1jhIWQv
さあ、早く彼の研究室を探し出し給え
398名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 21:06:05 ID:8nXPwoHt
ふと質問

妖精の種はどの辺りで終らせたらいいだろうか?
終わりの場面を全く考えていないのだが
399名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 21:26:09 ID:123hIC/Q
ハッピーエンドで俺がうひょうひょしたらやめればいいと思う。
400名無しさん@ピンキー:2008/07/22(火) 23:58:37 ID:4Vw3IgWb
おれが本物の妖精さんと出会えたら終了しても問題あるマイ
401名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 01:28:12 ID:i5p+Da0a

・・・・あなた達、
みんな変態ですね。
人間の彼女とか居ないんでしょうね!
402名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 08:08:09 ID:RgrJCdRG
>>401
フッ…
403名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 15:43:45 ID:DQIMWuJi
二次元の方でも失恋してる俺って一体・・・
404名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 17:02:46 ID:IUSjX8HA
二次元でどうやって失恋できる?
405名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 20:21:15 ID:jpFz9TDc
>>401=妖精の女の子
406名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 21:36:21 ID:RgrJCdRG
妖精になれるのは
生涯真性童貞を貫き押した場合だっけ?
407名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 00:00:53 ID:k221ShCA
もしくは童貞軍で軍神になれるよ
408名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 18:43:04 ID:MlksQWi3
俺は妖精さんになりたいな。
可愛い女の子の妖精がいい。

35歳無職独身男みたいのはイヤ
409名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 21:02:43 ID:e1sRdzmm
>>408
独身はともかく無職は何とかしろw
410名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 21:30:02 ID:MlksQWi3
地図に関する知識が豊富で
金にうるさい35歳無職独身男…
411名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 01:04:38 ID:Tmf/M9M6
元が>>408なら
少しくらいいじめてもいいよね?
412名無しさん@ピンキー:2008/07/26(土) 07:36:57 ID:mzevJQ6R
>>411
あんた何年生きるつもりだ…
413名無しさん@ピンキー:2008/07/27(日) 15:46:56 ID:m2VegQmy
種の人
  人外スレで
    遊んでる
414名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 20:12:06 ID:4gsXwARv
妖精将官の呪文とかが書かれた魔導書がほしい
415名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 20:35:34 ID:pNMcZay2
妖精中将、妖精少将とか?
カッコいいな
416名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 22:38:51 ID:YfWxlv15
将官ともなると魔法の威力も桁違いなんだろうなぁ
カッコよくてもビンで捕獲とかできないのはいたい
417名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 22:45:57 ID:YfWxlv15
わるい。下げ忘れたorz
418名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 23:06:03 ID:j7IJanbZ
「今日から私が貴様らの上官だ!宜しく頼む!」
(うわぁ…妖精さんだ…)
(小さいなぁ…)
(可愛い…)
「貴様ら!何をボケッとしている!返事はどうした!」
「イエッサー!!」
(いいな…)
(怒った顔も可愛い…)
(ハァハァ…)




こんな光景が頭に浮かんだ
419名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 00:38:35 ID:ifFGcLwk
軍服着た妖精さんってなんか燃えるよね
将官じゃなけりゃボディアーマーとか迷彩服でも・・・
420名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 23:04:45 ID:yk7JfxAn
だれか前スレのログ持ってない?
421名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 01:14:51 ID:6OzEF8Vo
>>420
俺もほしいと思ってたとこだ
422名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 18:01:20 ID:dr1MvJ4G
ごめん… 前スレは>797までのログしかもってないんだ…orz
残念だ…
423名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 19:23:52 ID:HY3qRo7b
>>422
 ('A`)人('A`)ナカーマ

 自分が取得しているのは、500KBのところでぶち切れてる
 本当に残念だ……
424妖精の種:2008/07/31(木) 23:10:37 ID:sPvaPNwP
投下いいですか?
425妖精の種 1/2:2008/07/31(木) 23:18:07 ID:sPvaPNwP
>>383-385

第27話 冬の始まり

「よし、完成……」
 カイは満足げに声を出す。自宅の
 冬の寒さも近づいた日。ミドリのコートを作ると告げた言葉通り、カイは仕事の合間を
縫って裁縫にいそしんでいた。フェルに頼んで用意して貰った特殊な布と糸、裁縫道具。
それらを使って二週間掛けて作り上げる。
 窓辺で日光浴をしていたミドリが飛んできた。

「これが、わたしのコート?」

 机の上に置かれた緑色の服を見つめてた。
 足下まであるような緑色のコートとケープ。コートの背中は羽を通せるように大きく開
いていて、その部分を切れ目の付いたケープで覆うように作ってある。羽は自分の服
以外も透過できるが、根本を拘束されているようで違和感があるらしい。

「寸法通りに作ったけど、丈が合ってないと困るから、着てみてくれ。着方も分からない
かもしれなから、一度俺が着せてみるよ」
「うん」

 カイの言葉にミドリが机に降りた。左足の先を机に置いてから、羽をほんの少し動かし
て右足を付く。降りる直前に羽の力を止めているらしい。
 妖精の仕組みに感心しつつ、カイはコートを手に取った。
 非常に薄く頑丈な生地。折り目すら見えないほどのきめ細かなもの。妖精の身体では、
普通の布は荒すぎて着心地が悪いだろう。

「じゃ、まず右手を横に伸ばしてくれ」
「分かった、右手を横に……」

 言われた通りに右手を横に伸ばすミドリ。
 カイは袖をミドリの腕に通した。大きめに作ってあるため、上着の上からも着込むこと
ができる。袖が引っ掛かることもなく、背中の開いた部分のおかげでコートの生地が羽を
捕まえることもない。
 人形の着せ替えの錯覚を味わいながら、カイは左袖を掴んだ。

「じゃ、こっちに腕を通して」
426妖精の種 2/2:2008/07/31(木) 23:18:43 ID:sPvaPNwP
「こう、かな?」

 ミドリは言われるままに袖へと左腕を通す。
 前の部分に付けられた大きなボタン――カイの感覚では小さなボタンを四つ、順番に留
めていく。手先の器用さに自信のある自分ならともかく、普通の人間ならボタンを留める
ことはできないだろう。
 最後にケープを肩に巻く。首周りから肘下まですっぽりと覆う緑色の防寒具。

「サイズはぴったり。羽はどうだ?」

 問いかけられて、ミドリは首を後ろに向ける。ケープの切れ目から外に抜けている透明
な羽。具合を確認するように何度か動かしてから、机を軽く蹴った。
 身体が少し浮き上がった地点で羽に力を込めて、飛び上がる。羽の動きを確かめるよう
に部屋を一週してから、机に着地した。
 笑顔で頷く。

「うん、大丈夫だよ。いつも通り動くし、暖かいし。ありがと、カイ」
「そう言ってくれると嬉しいよ」

 微かに微笑みながら、カイはミドリを両手で持ち上げた。いつものように肩に乗せるこ
とはせず、左手に緩く握ったまま窓辺へと移る。
 窓を少し開けると、冷えた空気が流れ込んできた。首筋と耳を撫でる冬の風。それは左
手のミドリへとも流れていく。

「どうだ、寒いか?」
「ううん。カイが作ってくれた服のおかげで寒くないよ。でも家にいる時にずっとこの服
を着ていると、暑いかも……」

 ミドリは襟元を撫でた。

「その時は脱げばいい」
「うん」

 カイの言葉に素直に頷く。
 カイは短く息をつき、窓の外を見つめた。既に木々から葉は落ち、道ばたの雑草も冬越
え草を残してかれている。硬く冷たい空気。

「明日には冬が来るな……」
427名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 23:21:16 ID:sPvaPNwP
以上です。
続きはそのうち。


ところで、
他に書き手はいませんですかー?
前は他に三人もいたのに…
428名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 01:12:56 ID:DZlhpb2Z
>>427
GJ
いつもご苦労さんです。
しかし現実では暑くなる一方なので、
コートとかがものすごい暑そうに見えてしまうw
でも脱げばいいんですよねwww

自分も>>418読んで何か受信したんでSS書きたいなあって思ってるけど
どうも文章がうまく綴れない('A`)
429名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 01:24:56 ID:I03ApD0V
>428
422だけどなかーま

あと気がついた。500kbだってことは、前スレをフルでもってるってことじゃないか?>423
430名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 01:34:57 ID:qUohQz6Y
服贈っちゃったー..いや、そういうの関係なしで、この二人には
平穏無事に過ごしてほしいなぁ(書き手さんにおまかせだけど

個人的にはニンゲンから妖精さんに何か贈り物するシチュが好きなので、わっほうです

楽しく読ませてもらってます、ありがとう

>他に
半角の方もまったりしてるみたいだし、気を落とさずに頑張っておくれぃ
431名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 02:51:08 ID:ZPHd0axx
>>428
今あなたが使っているブラウザでこのスレを見て容量が230±2で
尚且つ前スレを上と同じブラウザで保存したのならば
高確率で500が最大だろう
今の容量が242±2ならば512が最大だろう同じブラウザを使っていないのなら流石に判らない
432名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 19:59:10 ID:I03ApD0V
>431 とりあえず問題なさそうなので(現230.93Kbとある)
斧小物 9149 パスなし(のはず)
問題あるなら即消す。>420-421よろしく頼む
433名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 20:39:10 ID:fB9I1p6e
>>432
よし、いっそのこと保管庫もつくっちまえ
434名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 01:26:07 ID:XakVsuP+
文体色々考えてみたが
結局、自分の思うとおりに書くという結論で落ち着いた
435名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 01:55:01 ID:zaEEPfVY
そんな、誰も聞いてないことをいちいち報告されても
436名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 02:00:46 ID:XakVsuP+
SS書きスレの誤爆、
すまん
437名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 08:19:17 ID:rv4wMtNc
幻想生物字典7/31更新
438名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 20:12:21 ID:2QpxjFg4
既にブクマ済
439名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 23:13:04 ID:C9oc65PR
ようせぃ
440名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 14:12:15 ID:jGxyHKo2
妖精さんのエロいSSのあるサイトで
どこかいい所はありませんか?
441名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 15:25:08 ID:NCea8CHF
俺が知ってるのはこのスレの作家のみ
442妖精の種 1/2:2008/08/07(木) 22:36:44 ID:2C9n4ml3
>>425-426の続き

第28話 初めての雪

 吹き抜ける冷たい風。目の前に小さな白い影が落ちていく。

「む」

 思わず足を止め、カイは短く声を漏らした。獣避けの鈴が微かな音を立てる。
 冬も進んだある日の街外れ。隣町へ出掛けた帰り道だった。コートを着込んでいるという
のに、背筋に染み込むような寒さがある。熱気の魔術を込めた術符を何枚か服の裏に貼り付
けているのである程度寒さは防げていた。
 コートの襟元からは眠そうなミドリが顔を覗かせている。

「とうとう降り出したか。もう少し遅いと思ってたのに」

 そらを見上げると、灰色の空が見えた。微かに舞い落ちる白い結晶。
 天気は昨日から曇り。この辺りの冬は一日中晴れていることが多い。だが、数年に一度天
候が崩れることがあり、その時は必ず大雪となる。

「何が降ってきたの? ……雨?」

 ミドリがぼんやりと声を上げる。日の光がないため、活動は鈍い。それでも雨天ではない
ので、ある程度は動けている。

「雪だ、雪」

 石畳の道の左右に広がる草原を眺めながら、カイは答えた。白い結晶が、枯れた草原に音
もなく落ちていく。どこか物悲しさを感じる風景。

「ゆき? 前言ってたね。空から落ちてくる氷の結晶って」

 ミドリが襟を掴んで、身体を外に持ち上げた。
 カイが右手を胸の前に差し出すと、そこへと飛び降りる。手の平に伝わってくる軽い衝撃
と、羽細工のようなミドリの重さ。

「雪……」
443妖精の種 2/2:2008/08/07(木) 22:37:10 ID:2C9n4ml3
 手の平に立ったまま、ミドリは両手を伸ばして空を見上げた。
 灰色の空から落ちてくる雪の結晶。まだちらほらと降るだけであるが、一時間も経てば本
降りになるだろう。一度降り出すと二日は止まないのがこの地方の雪だった。
 まるで呼ばれたように、ミドリの手に雪が落ちる。

「うぁ、冷たい」

 思わず呟くミドリ。体温に触れた雪が、水になって消える。
 濡れた手の平を見つめてから、ミドリは指を舐めてみた。それが水であるか確かめたのだ
ろう。なにやら神妙な面持ちで手を見つめ、首を縦に動かしている。
 それからカイを見上げた。緑色の瞳に映る期待の輝き。

「これ、積もるんでしょ?」
「積もるよ、沢山。前に降った時は、大体四十センチくらい積もった。雪の積もった街の風
景はきれいだよ、本当に。一面の銀世界だ」

 雪の風景を思い出しながら、カイは微笑んだ。街の全てが銀色の雪に覆われる風景。数年
に一度しか見られないが、それは美しいの一言だった。
 ミドリの瞳に好奇心の光が灯る。

「見てみたいなぁ。……クシュ」

 小さなくしゃみ。
 カイは襟元を広げてミドリを懐に戻した。

「あんまり寒さに当たってると風邪引くぞ」

 カイの作ったコートを着込んでいるとはいえ、生地の厚さは気休め程度。この寒さは身に
染みるだろう。妖精が風邪を引くのかは知らないが、寒さが平気とも思えない。

「やっぱり寒い」
「夜には氷点下になるな。寝るときは布団増やすか」

 カイは周りを眺めた。雪の勢いが僅かに増している。雪の落ちる角度が、垂直からやや斜
めになっていた。風が吹き始めているらしい。

「これは放っておくと大雪になるな。吹雪く前に帰るぞ」

 苦笑混じりに独りごちてから、カイは止めていた足を動かした。
444名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 22:38:56 ID:2C9n4ml3
以上です。

本当に書き手がいない…
これは人外スレに移るべきか?
445名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 23:06:33 ID:1Fdm6xpQ
あんたがいるかぎり俺はGJし続ける

俺もSS書こう
446名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 01:00:11 ID:xUegqiYA
ほす
447名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 00:17:59 ID:DS4HSw5M
保守
448名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 20:33:36 ID:3484lgrV
種の人のほのぼのとした内容が好きだ
449名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 21:43:26 ID:DUaVecdw
でも非エロ
だがそれがいい
450名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:41:08 ID:ofZS+w4G
非エロでもほのぼのの中に小さな萌えを見いだせる良作
451名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 21:26:46 ID:/AgZm3eo
この作者は微妙にトボけた登場人物を書く
452名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 00:21:06 ID:vlTV9UMF
フィフニルの作者はサイト作ってスレには戻ってこない
千影の人と共犯系の人は音信不通
453名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 00:55:25 ID:4AjpH61M
保守党
454名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 02:58:09 ID:a9SqcIV+
「これより飛行訓練を行う!」

「…よし、上出来だ。次!」
「ハイ!」
「…お前か。乗り込んだらベルトを着けずに待て」
「ハイ!」
「よし、乗り込んだら服の前を少し開けろ」
「え…ハ、ハイ!」
「よし。私も乗る」
「し、しかしこの機体には席は…」
「鈍いな。何故前を開けさせたか解らんか」
「まさか…」
「そのまさかだ」

「ほう…見掛けの割にはなかなか厚い胸板じゃないか」
(うわぁ…妖精さんと密着してる…なんかいい匂い…)
「あ、あの、何故自分なんでしょうか」
「愚問だな。ムサい男より好みの男の方が良い。それだけだ」
「……!」
「どうした、鼓動が早くなったぞ?…ふふっ」




こんなのが頭に浮かんだので書いた。
設定は>>418
455名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 14:20:04 ID:a5/9Jyhg
なんという強気系素直クール風味ようせいさん
たまんねぇ
456名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 15:17:20 ID:NjY98KoQ
>>454
彼女は片羽の妖精と呼ばれたエース・・・
457名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 23:52:33 ID:RQt67WL0
にやにやが止まらない
458名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 22:47:16 ID:FkvuiUfA
気の強い妖精さんは良い
459名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 01:06:20 ID:wen7wLLK
無邪気で素直な妖精さんもよい
460名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 15:55:53 ID:Fdu1W4r0
ちょっと世間知らずな妖精さんも良いな
461名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 19:20:38 ID:A/cBIlgd
お姉さんぶった妖精
462名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 20:33:46 ID:E4Ffl/1s
ディズニーで今度ティンカー・ベルっていう映画をやるらしいが・・・

ティンカー・ベルとピーターパンの関係って良いよな
463名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 00:47:19 ID:NEfg6qwO
種の人のサイト見てたら狐に目覚めた
どうしよう
464名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 02:03:06 ID:3D5OLw8v
>>463
妖怪スレにカモン
465名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 12:17:36 ID:8TLqwDdo
アンドロイド→フィギュア→小人→妖精→人外と趣味が増えていきました。
466名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 13:20:31 ID:pu9dJ37C
>>465
俺は逆に人外→妖精→小人の流れだったなあw
でも多分次のフィギュアには行かないと思う。無生物に萌えられる感性は持ってないし。
意思を持って動くフィギュアの話も色々あるけど、それだと実質小人と変わらないし。
467名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 01:05:26 ID:RdnndzcR
俺は
メカ娘→人外(人間成分多め)→妖精→人外(人外成分多め)→完全人外(人間成分皆無)
なのにケモノとかには手が出なかったなァ・・・
468名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 21:53:14 ID:1VVSkvnR
「一つ聞きたいのだが…君の仕事の中に、訓練生でも
出来るような簡単なものはあるか?」
「はい?…ああはいはい、そういうことですか。
それならいくつか見繕っておきますね」
「すまないな」
「いえいえ。…うふふ」

「本日の訓練を終了する!解散!…悪いがお前は
食事と入浴が終わったら私の事務室に来てくれ」
「あ、はい、わかりました」

「失礼します!」
「待っていたぞ。ある事情により、今日から
お前にやってもらいたい仕事がある」
「仕事…ですか?」
「ああ、簡単な仕事だ。私の書いた報告書を清書してほしい。
机はあれを使ってくれ。必要な道具は揃っている筈だ」
「しかし…何故清書が必要なんですか?」
「私のサイズの報告書は人間には読みづらかろう」
「あ…」
「では問題がなければ早速始めてくれ」

「あの…何故そんなところに…」
「今日の私の仕事は既に終わっている。
それにお前を監督するのは私の義務だ」
「しかし…」
「邪魔にならなければ何処にいようと問題あるまい。
例えお前が仕事をしている机の上であっても、な。…ふふっ」




人間と妖精が共存する世界ならこんな仕事もあるかもしれない
469名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 12:39:32 ID:IOjg6wAs
GJ
470名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 00:40:13 ID:PJC5qksj
てか妖精将官良いなw
471名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 00:07:53 ID:8xUFBg8j
書き手少ないな
唯一の長編の書き手も私生活忙しいらしいし
472名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 02:29:23 ID:Sh7XE8QJ
>>471
仕方ない、妖精だもの
473名無しさん@ピンキー:2008/08/27(水) 07:53:24 ID:bM+Qjv6l
あの作者妖精だったのか
474妖精の種 1/2:2008/08/28(木) 22:29:38 ID:Z8wX6nw8
>>442-443の続き

29話 雪の日の夜

 窓辺に置かれたカンテラ。
 中にあるのは油ではなく光石。水に濡らすことによって光る魔石の一種だった。以前フェルから
貰ったもの。カンテラよりも光量は強く長持ちする。まだ値段は高いものの、そう遠くない時期に普
及するだろう。

「きれい……」

 窓辺に座ったまま、ミドリが雪を眺めていた。コートを纏い熱の術を込めた術符を身体に巻き付
け、その上からハンカチをかぶっている。防寒装備は万全だった。

「滅多に見られない風景だよ。二年ぶりだ」

 外を眺めながらカイは言う。
 光石の明かりに浮き上がる白い雪。暗い夜の闇を背景に、白く輝く氷の結晶。風もあり雪は斜め
に落ちている。窓枠にはうっすらと雪が張り付いていた。
 窓ガラスの向こうには積雪が白く浮き出ている。すでに五センチほど積もっているだろう。明日に
は二十センチ以上の積雪になっているはずだ。

「何だか吸い込まれそう」

 どこか虚ろな緑色の瞳で呟くミドリ。雪に魅入っているようだった。
 ベッドの近くで熱魔石のストーブが暖気を放っているが、部屋は肌寒い。外の気温は氷点下を下
回っているだろう。さすがに外に出歩く気力はなかった。

「そうだな。でも、もう寝る時間だ」

 カイは時計に目を向ける。時間は夜の十時。
 ミドリが思わず振り向いてくる。
475妖精の種 2/2:2008/08/28(木) 22:30:09 ID:Z8wX6nw8
「え、もう寝るの? もっと雪見てたいのに」
「夜更かしは身体に悪いし、いつまでも起きてるわけにはいかないよ。明日は雪かきとかで早く起
きないといけないから。これで終わり」

 そう言うなり、カイはカンテラから光石を取り出した。
 一遍三センチほどの正方形の灰色の石。水から離れて発光を止める。表面の水分が付いてい
るため薄く光を残していたが、布で水気を拭き取ると薄明かりも消えた。
 光石を見つめたまま、ミドリは力なく声を出す。

「待って、カイ。もう少し……」

 身体に巻き付けていたハンカチを放り捨てて、ミドリは飛び上がった。床に落ちるハンカチと術符。
カイの右手の平に降りて、ただの石に戻った光石に触れる。
 しかし、水に触れていなければ光を放つこともない。

「うぅ……。もっと雪見てたかったのに。カイの意地悪……」

 眠たげな眼差しで見上げてくるミドリ。身体を照らす光がなくなれば、意志とは関係なく身体は休
眠状態へと移っていく。暗闇になれば二分ほどで眠ってしまうのは、経験から分かっていた。

「すまんな。でも、光がない雪景色もきれいだぞ?」

 苦笑いをしながら、カイは窓の外を示す。
 振り向くミドリ。

「え?」

 呆気に取られたような声。
 まどの外に広がる景色。空は雪雲に覆われているため、星も月も出ていない。しかし、微かな町
明かりに、積もった雪が白く浮かび上がっている。
 落ちかけた目蓋を持ち上げ、ミドリは緑色の瞳を大きく見開いた。
 十数秒、無言のまま外の風景を見つめてから、ふっと目を閉じて眠りにつく。

「おやすみ」

 カイは左手でミドリを支えて、静かに囁いた。
476名無しさん@ピンキー:2008/08/28(木) 22:31:34 ID:Z8wX6nw8
以上です
477名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 01:28:21 ID:ErSS3yhf
このスレの生命線きた!
やっぱり萌える
478名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 12:52:52 ID:pKUhjtk3
イイ。ファンタジックな情景が目に浮かぶようだ。
479名無しさん@ピンキー:2008/08/29(金) 21:34:54 ID:84OPV9Ig
フェアリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
480名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 21:57:32 ID:x/VpLnXV
ところで妖精ってどう殖えるんだろ?

人準拠?
それとも虫準拠?
481名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 22:14:33 ID:erh0TIvu
>>480
作者による、でいいんじゃない?

フィフニルは木から生まれてたな
482名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 22:58:49 ID:d5QkKDwE
種はタイトル通り種から生まれてる
作者曰くあの子は特殊、らしいけど
483名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 23:50:45 ID:PvCAKlws
>>480
気がついたら殖えてる
484名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 03:10:41 ID:WH4bnGPi
そしていつの間にか増える
485名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 11:08:05 ID:FwpGXF5O
♪そしてー食べーられるー
486名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 11:23:43 ID:FC+Los3i
性的な意味で
487名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 23:13:06 ID:e3Ff76Lw
妖精は工場で生産されています
488名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 23:23:44 ID:VVRujpNV
妖精の大量生産か・・・
489名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 23:47:16 ID:xmM5LhhY
一人貰おう。
ちょっとドジで真面目で従順な子頼む
490名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 00:56:53 ID:MgGcLDYf
メカフェアリー
491名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 01:16:06 ID:9cUVA7Uo
しかし、その工場は実はソイレントシステム。


 大空を煙で隠し、海を汚し、大地に毒を撒き続けながらも生き続ける人間。
 人が人である限りそれは変わらず、おそらくは人が世界と共に倒れるまで終わる事はないだろう。
 人々はあらゆる自然を食い潰しながら、自らの行いに憂慮していた。
 一部の人々により、秘かにある会議がもたれた。議題は単純にして明確。我々はどうすべきか。ありとあらゆる視点から、この問題が討議された。
 人口を意図的に減らすか。口減らしの戦争など不可能だ。
 自らの欲望を抑えるか。人の数からすればおよそ現実的ではない。
 地球と共倒れするまで今の道を歩み続けるか。それこそとうてい受け入れ難い。
 何十、何百という案が検討されては"不可"の判を押されて消えていく。"不可"の書類が峰を成すにつれ、次第に求められる結論への条件が緩くなっていった。
 そして、倫理の欠けた論理の果てに、ある結論が導き出された。
 人が人である故に自己の欲求を追い求め、結果として際限なく地球を汚す存在であるならば、人が人で在り続けなければ良い。ついに人間は文字通りの意味で自らの変革に取り掛かった。

 それがいつの頃からなのか。世界のどの辺りから始まったのか。
 誰もまともに覚えてはいないし、正確な記録も残っていない。
 ただ一つ確実なのは、世界のあちこちで妖精が見られるようになったという事だけだ。
 背にトンボのような透き通った羽根を持ち、愛らしい微笑を振りまきながら飛ぶ、小さな少女達。
 その笑顔はこの世のものとは思えないほど蟲惑的だった。
 可愛らしい美貌に。コケティッシュな仕草に。伸びやかな肢体に。次第に妖精に心を奪われ、魅了される人が現れ始めた。
 何事も最初はそうであるように、さして多くはない。傘をポツリポツリと打つ雨垂れのように。だが、その雨垂れがリズムを早め、ざぁざぁと降るようになるまで、さほど時間は要さなかった。
 妖精達はどこからともなく現れては、どこへともなく消えていく。
 彼女らの纏う人知を超えた妖しいまでの魅力に虜となった人もまた、彼女らと一緒にどこへともなく消えていく。
 そうして妖精に付いていった人達は、二度と戻ってはこなかった。

 次に妖精達が姿を現す時、消えた人間の数だけ、彼女らが増えていたのに気づいた人間は稀だった。
 その事実から推測される彼女らに隠された恐るべき意図に気づいた人もいたが、妖精の魅了の微笑みの前には無力だった。氷のような恐怖は春の陽光にあたったように溶け流され、心を喜びに満たされて妖精の後を追い、いずこかへと消えた。
 そうして妖精は次第に数を増していき、反対に人間はどんどんと数を減じていった。
 人の手が触れなくなった為にかつてはコンクリートのジャングルであった場所は本物の森林と化していき、その青々と茂る緑の中、無数の妖精達の楽しそうな声が風に流されていく。

 やがて地球は遥か太古にそうであったように自然豊かな、しかし静かな星へとなっていった。
 そこは妖精達の軽やかな笑い声で溢れ、人の成す音を聞く事は、もう出来そうになかった。


なぜか人類バッドエンドになってしまいました。
492名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 20:31:19 ID:xqntt0GW
>>491
ソイレントと聞いてスクウェアのゲームしか思い浮かばなかったぜ
493名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 21:57:54 ID:6/mFyLF2
妖精についていくと妖精になれるのか…
494名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 22:45:22 ID:jRQbAtOh
>>491
なんてすばらしい発明だ……
よし!俺も行ってくる
495名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 15:26:35 ID:X5S64xXG
フィフニルの妖精達、更新きたな
3P! 3P!

しっかしよくこれだけ書けるな
496名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 20:31:37 ID:Uy9YzkZL
毎日書く
そうすればかなりの量になる
497名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 22:21:45 ID:bJFrteQ9
いずれ全員でHという展開を見てみたいものだが、いかんせん、
フィフニルの主人公は絶倫というわけではないんだよな
498名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 22:32:41 ID:Uy9YzkZL
妖精6人に群がられてもな、
最近増えたから7人か


戻ってこないものかな…
499名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 23:29:13 ID:X5S64xXG
でもそのうち
緑の子の特別製薬品で絶倫化して8Pとかありそうだな

翌日死んでそうな気がするがw
500妖精がいる日常(加筆修正版):2008/09/04(木) 14:26:55 ID:TrsAM5Rr
 とある町の、とあるアパートの一室での話。
 夜が明け、東の空が白み始める頃、真木陽介は酷くうなだれた様子で帰宅した。
 玄関を抜け、廊下の先にあるキッチン兼リビングのテーブルに、帰宅途中のコンビニで買ってきた弁当とデザートを乱雑に放り投げる。元より食欲など無かった。
 ただ、友人に「何でも良いから、絶対に食事を取れ」と強引に買わされただけの事なのだ。
 陽介は濃紺のスーツを脱ぎ捨てて洗面所に行き、シャツの袖が濡れるのも構わず冷水で顔をザブザブと洗った。
 ボンヤリと空ろだった思考が少しだけハッキリし、鏡に映った、酷くやつれた男の顔が自分のものであると理解できるまでに回復する。

(――酷いものだ)

 陽介は自嘲的に笑った。彼女があんなに必至になって、自分の心配をしていた理由がようやく理解できた。
 未だに胸にポッカリと穴が開いてしまったような感覚は無くならず、食欲も無い。しかし、この時初めて、モノを口にしようという考えが陽介に浮かんだ。

「仕方ないな……」

 そう言いながら溜息を付く。
 おそらく殆ど喉を通らないであろうが、食事をしようという考えになれただけでも、今の陽介にしたら前進なのかもしれない。
 洗面所を後にしてリビングに戻ってきた所で、陽介は不可解なものを見た。
 先程陽介が放り投げた弁当を、何か妙な生き物が漁っている。
 全長およそ15センチメートル。虫にしては巨大過ぎ、小動物にしてはスマート過ぎる体系をしている。
 形容するならば、薄い絹のような布を纏った金髪の女の子のフィギュア……であろうか? つまり、人の形をしているのだ。
 長髪に隠れた背中からは、トンボの羽のような、薄く虹色に煌く二枚の羽が覗いている。

「――っ!!」

 陽介が唖然と見つめる中、その少女(?)は弁当から小さな唐揚げを抱え上げた所で陽介の存在に気が付いた。
 酷く驚いた様子で踵を返した少女は、背中の羽を広げて跳躍した。しかし、テーブルに置いていたマグカップを踏み台にして更に高く飛ぼうとした所で、大事に抱えていた唐揚げが災いしたらしくバランスを崩した。
 少女は大きく背後に体を仰け反らせる。必至に足先だけで踏ん張って持ち直し掛けるも、陽介の思ったとおり力尽きた。背後に倒れこんだ少女はそのまま、マグカップにお尻を突っ込む形でスッポリと収まってしまう。
 焦りを見せながら必至にマグカップから抜け出そうとするも、自力では抜け出せないと悟った少女が、ゆっくりと陽介に振り返った。

「あ、あの……助けてください」

 今までに見た事も聞いた事も無い生き物が言葉を話した事に対して、陽介はさほど驚かなかった。
 既に精神、肉体共に精も根も尽きた状態だった事もあるし、少女に恐怖感や嫌悪感を抱かず、むしろ懐かしさに似た不思議な感情を覚えていたからだ。
 恐る恐ると話しかけてくる少女に対し、陽介はやれやれと肩を落とすと、

「そんなに怯えなくても、唐揚げの一つ二つくらいあげるから、無茶するなよ」

 そう言って少女をマグカップから引き抜き、弱々しく微笑んだ。



 それが、真木陽介と妖精――レアとの始めての出会いであった。
501妖精がいる日常(加筆修正版):2008/09/04(木) 14:29:16 ID:TrsAM5Rr
身体測定

 陽介はテーブルに立つ裸のレアを前に、取り出した巻尺を手にしたまま小さく息を呑んだ。
 そんな自分に気が付き、陽介は慌てて頭を振る。身長僅か20センチメートルにも満たない、フィギュア同然の少女の裸体を前に、本気で恥ずかしがっている自分に活を入れる。
(な、何を恥ずかしがっているんだ。確かに、半裸のレアに動き回られるのは目の毒だという理由で、レアの服を作ると言い出したのは俺だ。
 だが、前の姿だって殆ど同じじゃないか。透けて見えるような薄い布を一枚纏っただけで、殆ど全裸だった。まさか、その布一枚が無くなっただけで……その……)

「陽介さん?」
「あ、いや、なんでもないんだ!」

 キョトンと首を傾げるレアに対し、陽介はガチガチに固まってしまっている。
 現在の陽介の主な収入は、ドールの衣装のオーダーメイドや舞台衣装の製作である。ことドールの衣装に関してはネット上ではちょっとした有名人であり、態々自分のドールを持参してまで依頼を持ってくる人まで居る。
 無論、ドールの衣装……しかもオーダーメイドともなれば、採寸をして丁寧な作業が必要になる。
 ドールの中には一見しただけでは人間と見紛う程精巧な物も多数含まれており、これまでも、そのような細部まで作りこまれた裸体のドールを採寸し、服を作ってきたが、陽介はこのような緊張を感じた事は一度たりとも無かった。
 当然、レアとそのようなドールは全くの別の存在だ。レアは生きており、意志がある。それだけ生々しく感じてしまい、陽介に照れが生じるのかもしれないが……。
(いかんいかん、思考が深みに嵌まっていっている)
 陽介は再度頭を振り、一度深呼吸をした。
 自分は今までに、人形の服を脱がせて照れていたか? ――否。
 人形の裸をマジマジと見て、顔を赤くしたことがあるか? ――否!!
 今回も、する事は以前と変わらない。そう。今までと変わらない。裁縫が趣味兼副業な自分にとって、この程度、今更、照れる様な事でもなければ、緊張する様な事でもないのだ。
 自分に強く言い聞かせ、レアを見る。
 白く、幻想的な美しさのある裸体だ。既に照れはなく、服のイメージに思考が回っている。
(よし、いつもの自分だ)
 普段のペースを取り戻し、陽介は頷いた。

「よ、陽介さん……」

 余りにも長い間レアを見つめていたからであろう。レアが何処か恥ずかしそうな素振りを見せながら声を上げた。
 頬を薄く紅く染め、若干身を縮める様にモジモジと足を動かしている。

「そ、その、早く測ってくれると……うれしいです」
「あ、わ、悪い! それじゃあ、腕を水平に上げて――」

 陽介の言葉に従い、レアは両手を水平に伸ばした。ふるんと柔らかそうな胸が揺る。途端に、先程までの緊張感は薄れてしまい、その重量感のある存在感に陽介は改めて目を奪われてしまった。
 ボンヤリとしていた事もあり、胸に回した巻尺に力が入る。握り締めて力を込めれば簡単に折れてしまいそうなほど細い体の割りに、ふくよかな胸に巻尺がキリリと食い込んだ。小さいながらも柔らかそうに歪む双丘に、陽介の胸はバクバクと激しく高鳴っていく。

「い、たい……」

 苦痛に顔を曇らせていたレアが小さく声を漏らす。同時に、陽介は我に返った。
 陽介は直ぐに巻尺を緩め、レアに謝った。

「すまない、大丈夫か?」
「はい」

 レアは胸を押さえ、少しばかり荒く息をついている。
502妖精がいる日常(加筆修正版):2008/09/04(木) 14:30:41 ID:TrsAM5Rr
 もうこのような失敗は許されない。陽介は軽く頬を叩き、思考を切り替える。照れるのは仕方ない、そう考える事にした。
 レアは人形ではない、人間ではないとは言え、一人の女の子だ。美しく、愛らしい少女の裸体を前に平然としていられるほどに自分はスレていない。
 先程のレアの苦痛の声が効いたのだろう。陽介の手捌きは素早く、的確なものに戻っていた。
 一度調子を取り戻せば慣れたもので、後は簡単なものだった。胸囲に始まり、肩幅や腰周りなど、レアのあらゆるサイズが調べ上げられてゆく。
 とはいえ、全てが順調に進む……という訳ではない。
 レアが裸な事に変わりはなく、その上、採寸の時に度々触れる陽介の指がくすぐったいのか、陽介が触れる度にレアが甘い声を上げるのだ。本人はそんな声に自覚が無いらしい。

「レア……その、余り声を上げないでくれ」
「え?」
「ああ、五月蝿いとか、そういうのじゃないから気を悪くしないでくれ。ただ、何ていうのか、さっきから……レアの声がな、その……」
「はぁ……?」

 言葉を濁しながら陽介が説明するも、レアには伝わらないらしく、首を傾げるばかりだ。

「だから、俺からするとレアの声が……恥ずかしいんだ」
「……(ヒクッ)!」

 仕方なくストレートに説明した途端、レアは小さくしゃっくりを上げ、見る見るうちに顔を真っ赤に染めた。
 何か言いたいのか、口をパクパクと開閉しては瞳を潤ませている。コレまでに見たことの無い恥ずかしがり方に、陽介は逆に驚きを感じる。
 出会ったばかり頃のレアには羞恥心というものが全く存在していなかった事を考えると、最近になってのレアの反応には確かに羞恥のモノが混ざっており人格に置いて「成長している」と言える。
 もっとも、羞恥心というもの事態が人間にしか存在しない感情であり、レアが陽介と生活する内に人間の在り方に染まって来ただけなのかもしれないが……。

「よ、陽介さん、ゴメンなさい!」

 必至に頭を下げるレア。

「わ、私、そんなつもりじゃなかったんです」
「分かってる、分かってるから。俺の方こそゴメンな、そもそも俺が上手く作業が出来たらこんな事には」
「いえ、そんな――」

 レアはフルフルと首を振った。陽介に非は無いと言いたいらしいのだが、その都度に自分の胸もまた揺れて居る事に本人は気付いていない。
 埒が明かないと思い、陽介はパンと手を叩いた。

「と、とりあえず! 採寸を終わらせてしまおう、な?」
「は、はい!」

 ワザとらしく咳払いをして、陽介は巻尺を手にした。
 声を出すまいと明らかな緊張をしているレアが多少不安ではあったが、兎に角、今は採寸を終わらせる事にする。
 しかし、股下を測ろうと陽介が巻尺をレアに伸ばしたところで、

「ふ、ぁん――」

 今までで一番扇情的な声がレアから漏れた。

「――っ!」

 慌てて口を押さえるレアであるが、出た声が引っ込む訳ではない。
 恐る恐る陽介を見上げてくるレアに対し、陽介は聞こえなかったフリをして採寸を続ける。
 しかし、動揺は隠し切れず、震える陽介の指先がレアの体を不用意になぞってしまい、レアがまた声を上げる。結局、採寸が終わるまでの間、この魔のループは延々と続いてしまった。
 互いにとっては悪夢のような時間が終わりを告げた。時間にしては採寸を始めてから10分足らずしか時間は経っていない。
 その頃には二人して顔を真っ赤にし、互いの顔を見れなくなってしまっていた。特にレアなど、過剰な緊張と恥ずかしさから疲労困憊し、熱い吐息を漏らしながら軽くへたり込んでいる。
503妖精がいる日常(加筆修正版):2008/09/04(木) 14:32:01 ID:TrsAM5Rr
「ともかく、無事にレアの寸法を測り終えた訳で、コレで幾らでもレアの好きな服を作ってやれるからな」
「あ、アリガトウございます」

 互いにそっぽを向いたままのやり取りは、ある意味滑稽に見える。
 レアはドキドキと高鳴っている自分の旨に手を当て、息を整えようと深呼吸をした。
 レアにとって、そのドキドキは不思議な感覚だった。
 今まで、そう、陽介と出会う前……森の奥深くで生活していた頃には、裸で居る事になんら抵抗は無く、むしろソレが当然であったというのに、陽介と出会い、生活をするようになってから、このような不思議な感覚を多々味わうようになっていた。
 最近は、羞恥の感情がその筆頭であろうか。
 そして、先程ソレを自覚した上で陽介に触れられたときの感覚……。アレは凄かった。くすぐったい様な、それでいて焼ける様な痛みにも似た、ビリビリとした熱い衝撃。あんな声を上げてしまった事などコレまでに無かった。
 しかし、あんなに恥ずかしい思いをしたというのに、不思議と嫌な気分はしていなかった。
 ドキドキと心臓が破裂してしまいそうな動悸の中に、まだ感じた事の無い、心地良さのようなものが含まれている。
 レアは理解し切れない自分の感情に軽く混乱しながらも、何処か夢心地でそれらの感覚を反芻していた。

「どうした? やっぱり、妖精には服は必要なかったか?」

 紅い顔をしてへたり込んだまま呆けているレアに気付き、陽介は少しばかり後悔の色を見せながら尋ねた。
 どうせ作るなら妥協の無い物を作りたい。それが陽介のポリシーである。
 精密な数字を取る為にと服を脱いだのはレア自身だが、服を作ろうと言い出したのは陽介であった。
 本来、今までレアが身に纏っていた(といってもほぼ体を隠す意味はなかったが)薄布越しに採寸をしても構わなかったのだし、そもそも、妖精に服を着る文化は無いらしい。
 まだ温かいとは言え、そろそろ訪れる冬に備えて温かい服を作ってあげたいという思いからの申し出であったのだが、それで彼女自身に不快な思いをさせてしまっては本末転倒だった。

「あ、いえ、そんな事無いです! 大丈夫です、別に、何も感じていないですから!!」

 レアは両手と首をブンブンと振り、紅い顔のまま必死に何かを否定する。少しばかり過剰な反応だったが、少なくとも、レアはそこまで嫌な思いをした訳ではないらしい。

「そうか? ならいいが……。まぁ、安心してくれ。こうやって詳しい数字を取った以上、もう採寸の必要は無いからな」
「え……?」

 陽介の言葉に、胸を撫で下ろしていたレアが顔を上げる。少しばかり意外そうな表情を浮かべていた。

「あれ? もしかして、毎回測ると思っていたのか?」
「え、あ、違うんですか?」
「俺は妖精がどういうモノかをまだよく知らないから、何とも言えないが。もしレアの体がそれ以上成長して、作った服が小さく感じるような事になればまた測り直すかもしれないな。まぁ、どちらにしろ当分は採寸しないだろうし、安心してくれ」
「は、はい……」

 何処か残念そうにレアは頷いた。
 そんなレアに気付かず、陽介は腕まくりをして「よし!」と気合を入れる。

「とりあえず、晩飯までに一着作り上げてみる事にするよ。相手をしてやれないが……」
「はい、大人しく待っています」
「ん、悪いな」

 陽介は頷き、笑顔で作業用の机に向かった。

 
504妖精がいる日常(加筆修正版):2008/09/04(木) 14:32:37 ID:TrsAM5Rr
 レアはそんな陽介の邪魔にならないようにとその場を離れ、ハンカチを体に巻いて窓辺に腰掛ける。

「……はぅ」

 そして、嘆息。
 ポカポカと温かい午後の日差しを一身に浴びながら、レアは陽介の横顔を眺める。
 作業をする陽介の顔は楽しそうで、魅力的だった。レアは陽介の事が好きであったが、それは好き嫌いの好きであり、異性としての好意ではない。しかし、ソコに感じる魅力には、まだレアが感じた事の無い感情が含まれている気がした。
(最近、こんな気持ちになってばかりだなぁ)
 胸を押さえ、陽介を見る。視線に気付いた陽介はレアに軽く微笑んで見せ、再び作業に戻る。

「また、だ」

 胸の奥を締め付けられるような、苦しいけど、嫌じゃない感覚。
 ドキドキは大分治まったが、それでも、陽介を見つめている限り完全には治まりそうにはない。

「成長……か」

 採寸されている時のドキドキを思い出し、レアは呟いた。

「私、最近成長していなかったけど……また成長したらいいなぁ」

 そうしたら、採寸をし直す事になる。また、あのドキドキを感じる事が出来る。
 その思いこそ、レアが性欲というものに目覚めた証拠でもあったのだが、本人はまだ、そんな事を知る由も無い――。



 レアが愛情という物に目覚めるのは、もう少し先の話……。
505名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 14:42:04 ID:TrsAM5Rr
以前書いていた話が途中のまま、かなりの間放置してしまったタメに、今更続きを書いても前の話がわかんないと思うので、
以前の投下分に修正加えて再投下します。

前回の続きも修正が終わり次第投下予定。
量が多くなりそうだから、また時間がかかるかもしれないけど、今回ほどの放置はしませんw……きっと。


>>376
こんな妄想垂れ流しを覚えていてくれて有難うw凄く嬉しかった。
修正で色々と変わってしまっているところがあるけど、良ければまた付き合ってやってください
506名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 17:57:05 ID:DUK0ioth
>>505
ああ・・・
長い間このスレに居続けた甲斐があったよ・・・
またあなたに会えるなんて
507名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 18:11:17 ID:25WVm3PG
うおおおおぉぉぉぉずっと張っていた甲斐があった!
ようやく…ようやく続きが読める…。
また書き始めようと思ってくれて、本当にありがとうございます!


「妖精を、1人の女の子として扱う人間」と
「だんだん女の子としての自覚を持つようになっていく妖精」っていうのが
本当に好きなんですよ。

前回は、次の話で止まったままになっていたので、続きもすごく楽しみに待っています
508名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 19:59:39 ID:mIBvpd2/
ようやく書き手が増えた
509名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 20:06:33 ID:fEdc9WHz
>>505
おかえりなさい
私もあなたの帰りを待っていた一人です
やっと続きが・・・!
510名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 21:52:43 ID:H0LZ4MmE
前スレを知らない新参者だが

はじめまして&GJ




暖かい空気を壊すようだが…身長約15cmということは
揺れるバストは8cm前後なのだろうか、と読んでて思った
511名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 22:41:53 ID:VQruHNW3
1/10だから人間サイズで80cmか
手頃だな
512名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 07:41:03 ID:UuxvcH1J
揺れるぐらいだから9cm近くあるのかもしれん
513名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 22:51:12 ID:huLB4g2+
>>505
GJ
レアかわいいよレア
続きも期待!
514名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 23:07:09 ID:X+1Kv6qN
>>509
この人妖精スレにいたっけ?
515名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 00:07:09 ID:5GVTfmTG
>>514
エロパロの初代スレに書いていてくれてた人だよ
516名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 00:25:16 ID:qorowG3m
あー。思い出した!
517名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 10:34:17 ID:BYopUogo
妖精の看病を書いていた人
518名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 13:10:45 ID:wlL3y4eT
加筆に伴い「一から出直す」って意気込みでタイトルも少し変えてみた前回だが、某モンス娘の神漫画とタイトルが被っている事に気付く。
コレはヤバイ。という訳で、何事も無かったかのようにタイトルを元に戻す。全く紛らわしい事この上ない。

胸についての具体的な数字は、皆の中にある。自分好みの大きさで補完がデフォ。
細かく容姿を表記してないのは、個人個人で微妙にイメージが変わって面白いだろうと思って。


あと、前スレから全く音沙汰なかったのに、当然のように戻ってきてごめんねw
519妖精と過ごす日常:2008/09/06(土) 13:12:39 ID:wlL3y4eT
 レアは携帯電話というものが今ひとつ好きになれないで居た。
 理由は二つある。突然声を上げて驚かせてくる事がその一つであり、もう一つは、携帯電話が鳴るとレアの行動に制限が掛けられるからだ。
 特に後者が好きになれない割合の大半を占めている。携帯電話が鳴ってしまえば、例えどんなに楽しく陽介と会話をしていようと、陽介は携帯の相手をしてしまい、その間、レアは物音を立てないようにただじっとしなくてはならない。
 それは仕方の無い事だとレア自身も理解している。
 陽介が携帯電話を使うのは大半が仕事の為であり、その仕事のお陰で、レアは陽介に好物の「唐揚げ」と「レアチーズケーキ」を食べさせてもらっているのだ。

 ちなみにレアの名前はレアチーズケーキから取られている。
 二人が初めて出会った日に陽介が買ってきていた物が「唐揚げ弁当」と「レアチーズケーキ」であり、レアはこれ等をとても気に入ったらしい。
 当時名前を持たなかったレアに対し、陽介が何と呼べばいいかに困った際に、美味しそうにケーキを頬張るレアを見て、レアチーズケーキのレアの部分を暫定的な呼び名として使うことにした。
 結果、レア自身も陽介のつけた名前ならソレで構わないと受け入れてしまい、そのまま現在に至る。
 そうなると、もしあの時に陽介がプリンを買っていたら彼女の名は「プリン」になったであろうし、そもそも弁当しか買っていなかったら「からあげ」になっていただろう。
 陽介はそう言った事にはあまり頓着の無い男であり、レアもまた、そう言う事には頓着が無い存在である。

 閑話休題。
 自分の好物に関係のある事でもあるし、何より陽介に迷惑をかけたくないというのがレアの本音だ。
 故に、携帯電話にお門違いの不満を持つ訳ではないが、陽介を取られる様な感覚がしてしまい、レアは携帯電話を好きになれないで居るのだ。
 そんなある日、レアはある事に気が付いた。同じ仕事に関する電話でも、陽介が特に親しげに話している人が居る。
 そして、そんな人に限って女の人の声だと判ると、レアの胸はまた強く締め付けられるのだった。



風邪の看病(前)

 レアが陽介と生活するようになって二月が立とうとしていた。
 レアにとっては新しい発見と驚きの毎日であり、同時に、陽介との触れ合っては、まだ知らない感情に胸をキュウと締め付けられている毎日でもある。
 朝。カーテンの隙間から差し込む光を全身に浴びて、レアは目を覚ました。
 小さく欠伸をしながら体を起こし、うんと背伸びをして立ち上がる。ビーズクッションのベッドから「よいしょ」と抜け出して、陽介の目覚まし時計に目を向ける。
 アナログな目覚ましの針はアラームが鳴る五分前を指していた。

「よしっ」

 ソレを見たレアは小さく頷くと、ビーズクッションの横に置いてある引き出しタイプの小物入れを開いた。中には陽介にコレまで作ってもらった色とりどりの服が綺麗に畳まれて収まっている。
 レアは軽くそれ等を見回し、その中から一着、白いチャイナドレスを取り出した。シンプルなデザインで動きやすく、陽介と出会う以前に身に纏っていた薄布に近い肌触りのこの服は、レアの今一番のお気に入りである。
 レアはそっとベッドを覗き、陽介が寝ているのを確認してから、静かに服を脱いだ。スルスルと足元に落ちていく寝巻きの下から、プルンとした柔らかそうな胸が顔を出す。
 流石の陽介もレアに合うサイズの(納得の行く出来の)下着を作ることは出来なかった為に、レアは基本的に下着を身に着けていない。
 とは言え、ついこの前まで衣服という文化を持たなかったレアはさほど気した様子もなく、(とりあえず何か身に着けていられれば恥ずかしく無いらしいので)問題は無いようだ。
 もし陽介が目を覚ましたらと考えると、仕切りも何も無い場所で裸になる事は恥ずかしかったが、仕切りを立ててまで着替える事はないとレアは考えている。
 陽介との繋がりを感じ、ソレを確かめる度に嬉しい気持ちになる今の生活がレアは好きだった。レアにしてみれば、仕切りという物はそんな繋がりを断ち切ってしまいそうなイメージが強かった。
 全裸になったレアは歯ブラシを加工して作ったレア専用のブラシで髪を梳かし、手早く纏めてポニーテールにする。
 チャイナドレスに袖を通してから手鏡の前で一回転し、何処にもおかしな所が無い事を確認して、レアの朝の身支度は完了した。
 レアは羽を広げると身軽な動作で飛び上がり、陽介の目覚まし時計の上に着地した。
 時間はアラームがなる丁度一分前。今日もぴったりのタイミングである。
520妖精と過ごす日常:2008/09/06(土) 13:13:41 ID:wlL3y4eT
「毎日お仕事を取っちゃってゴメンね」

 レアは目覚ましにそう囁くと、軽くキスをしてアラームを切った。目覚まし時計の代わりにレアが陽介を起こすのが、最近のレアの日課となっている。
 フワリと身を翻し、陽介の鼻先に滞空したレアは一旦深呼吸をする。小さく咳払いをしてから軽く発声練習をすると、「いざ!」と陽介を起こしにかかる。
 そこで、レアは初めて陽介の様子がおかしい事に気付いた。
 陽介の顔は茹で上がった様に赤くなっており、額からは玉の様な汗が無数に噴き出している。陽介の口から荒く吐き出される寝息は、思わず顔を背ける程に熱をもっていた。
 そんな陽介の容態が「風邪」に該当するものであるとレアは直ぐに理解できた。しかし、理解しているといっても、陽介と生活するようになってから得た知識にソレがあるだけで、漠然と「陽介が苦しんでいる」としかレアには分からない。
 動物とは少しばかり異なった生命体である妖精にとって、病気というものは基本的に無縁な存在なのだ。
 故に、どう対処すれば陽介を助ける事が出来るのか、レアには判断できずにいる。

「どうしよう……、どうしたらいいの?」

 頭を抱え、キョロキョロと視線を巡らせるレアの目に、陽介の机の上に置かれているノートパソコンに目が止まった。

「そういえば――」

 レアは呟き、パソコンに飛びついた。
 以前、パソコンでは様々な物事を調べる事が出来ると陽介に教えてもらった事がある。
 ならば、この状況を打開する策も調べたら見つかるのではないか? そう思い立ったのだ。
 レアはパソコンの電源を入れた。パソコンの使い方は、大雑把ながら知っている。
 どんな些細な物にでも興味を示しては陽介に訊ねていた頃の自分に、陽介は嫌な顔一つせず、その都度丁寧に、どんな事に使うか、どの様に使うかを説明してくれていた。
 そのお陰もあり、風邪についての情報は簡単に調べが付いた。
 病気の中ではポピュラーなもので、命に関わるという事も滅多にない軽いものらしい。栄養と休養を取ればすぐに回復するという事も分かり、想像していた最悪の事態は免れたとレアはホッと胸を撫で下ろす。
 しかし、陽介が高熱にうなされている事に変わりはない。
 そんな陽介を見て「何とかしたい」とレアは考える。
 本当なら薬を用意出来れば良かったのだが、レア一人で薬局へと買い物に行くなど不可能だ。
 レアの小さな体では、当然ながら陽介に食事を作ってあげる事も出来ない。
 何か自分にできる事は無いか?
 必至に看病の方法を探すレアの目に留まったものが、基本にして高い効果を持つという濡れタオルであった。

 しかし、実行に移す事で、レアは自分の考えが甘かった事を思い知らされた。
 たかが、濡れたタオルを絞るだけの簡単な作業。たったそれだけの事なのに、レアの体のサイズがソレを酷く難しいものにしているのだ。
 レアは氷水が張られた洗面器からハンドタオルを引きずり出し、水を絞る作業に躍起になっていた。
 両足でタオルの片側を踏んで固定して、上半身を使ってタオルをジワジワと絞ってゆく。半ばタオルに抱き付く形で絞っている為に、身を切るような痛みを感じるほど冷たい水が容赦なくレアの体を濡らしていく。
 最初の数回はまだ良かったが、五回ほどソレを繰り返した頃には、レアは立っているのもやっとな程に疲れ果てていた。
 全身をフルに使い、一絞り一絞りに全力を出さないとタオルは絞れない。そんな所に冷水を浴びせられるのだ。疲労は回を重ねるごとに雪達磨式に膨れ上がり、レアに重く圧し掛かっていた。
 何分もかけて絞ったタオルを、フラフラになりながらもベッドで寝込んでいる陽介の元へと運び、頭に乗せる。しかし、この様に苦労して用意した濡れタオルも、十分もしないうちにまた取り替えなければならない。
 レアからすれば、労多く、されどその労に見合うほどの解熱効果は無いという、悔しいばかりの看病であった。

「陽介さん……」

 大きく肩で息をしながら、レアはその場にへたり込んだ。
 その顔には疲労だけでなく、焦燥の色も浮かんでいた。
521妖精と過ごす日常:2008/09/06(土) 13:14:16 ID:wlL3y4eT
「……いけない! タオルを変えなくちゃ」

 自分がうたたねをしていた事に気がつき、レアはブンブンと頭を振った。
 既に温かくなってしまったタオルを取り、台所に用意している氷水を張った洗面器にソレを沈め、よく浸してから、またタオルを引き上げる。
 自分の体重の数倍もある濡れタオルを引き上げては絞るという作業は相当の重労働であり、苦痛だったが、レアはその行為を止めようとは一切思わなかった。
 何故かは上手く言葉に出来ない。
 しかし、それは当然だという感覚があった。
 その時のレアは自覚していなかったが、陽介に自分の全てを――命すらも捧げても構わないと、彼女は想っていた。それだけ、レアにとって陽介は特別な存在となり、大きくなっていた。

「あ――!」

 蓄積した疲労が吹き出したのだろう。一瞬全身の力が抜けたレアは、小さく声を上げた。バランスを崩したと理解した時には、ようやく半分引き上げたタオル共々、氷の浮かぶ水の中に引きずり込まれていた。
 一瞬で頭の先から足の先までがビシビシと悲鳴を上げる。少し遅れて冷たさと痛みが全身を包み込んだ。疲労で朦朧としていた意識は一気に覚醒したが、今度は余りの水の冷たさに意識を失いかけてしまう。
 レアはゆっくりと冷たい水の中から身を起こし、水中に佇んだまま悔しそうに水面を叩いた。
 ただコレだけの事すらも出来ない。そんな無力な自分が悔しくて、悲しくて、歯痒かった。

「タオル、絞らないと……」

 どれだけそうしていただろうか?
 レアは思い出したようにボンヤリと呟くと、氷水から抜け出した。服からボタボタと滴った冷水が、シンクに水溜りを作っていく。

「こんな姿で陽介さんの所まで飛んで行ったら、部屋中に雫を落としちゃうな……」

 少し恥ずかしくも思ったが、部屋を濡らしたくないし、今は陽介が見ている訳ではないので、レアは服を脱いで全裸になる事にした。
 大切な服を傷めないように丁寧に絞りつつ、これではまるで自分が濡れタオルではないか、と自嘲する。

「……あ!!」

 自分の言葉に、レアは小さく声を上げた。
 自分がしたいのは、陽介の熱を少しでも下げて楽にしてあげる事だ。
 冷やす事が目的であり、タオルは手段でしかない。何も無理をしてタオルに拘る必要は無かったのだ。
 ある考えが閃くなり、レアは再び氷水に飛び込んだ。全身がキンキンと軋み、冷たさが身に凍みる。氷水にたっぷりと肩まで浸かり、体が冷え切ったのを確認すると、レアはフラフラになりながらも洗面器から這い出した。
 素早く体の水気をふき取ると、一気に陽介の下へと飛んでゆく。裸のままで陽介と触れ合う事を想像すると胸がドキドキしたが、いまさら後に引く気はない。
 レアは体を大きく広げると、陽介の額を覆うようにうつ伏せた。
 陽介の額と自分の体に挟まれ、胸が潰れるのを感じる。自分の胸の鼓動に陽介が気づいて目を覚ますのではないか、そう思ってしまうほどに心臓がバクバクと跳ね上がる。

(今この時ばかりは、どうか陽介さんが目を覚ましませんように……)

 レアはソレばかりを内心で祈りながら、陽介から熱を奪うべく、さらに大胆に体を密着させてゆく。陽介の熱を全身に受け、冷えた体にはソレが特に心地良かった。
 しばらくして自分の体が温かくなって来たので、レアは再び体を冷やす為に陽介から身を離した。

「……あれ?」

 ふと、ソレを残念に感じてしまう自分に気づく。
 先程まであんなに恥ずかしと感じていたのに、今では陽介から離れる方が不安に感じてしまっている。
 再び冷水に身を沈め、再度陽介の額に自分の体を密着させると、今度は先程よりも恥ずかしく思わなかった。心地よい温かさが、レアに不思議な安心と高揚感を与えてくれる。

「陽介さん……」

 いまだ熱が下がる気配の無い陽介の高めの体温を、全身で感じながらレアは呟く。

「早く、良くなってくださいね……」

 濡れタオル絞りで疲れていた事に加え、自分の体で陽介を冷やすなどという無茶のせいもあるのだろう。
 体力の限界を超えていたレアは、陽介の体温を全身に感じながら、何時の間にか安らかな寝息を立てていた。
522妖精と過ごす日常:2008/09/06(土) 13:15:34 ID:wlL3y4eT
――……。
 来客用の呼び鈴が鳴らされた気がして、レアは目を覚ました。
――ピンポーン。
 思い過ごしではない、また鳴った。
 レアが時計を見ると時間は既に昼を回っていた。随分と眠ってしまっていたらしい。

「真木クン、居る? 大丈夫?」

 ドンドンと玄関の戸が叩かれ、ドア越しに若い女の人の声が聞こえる。
 レアはその声に聞き覚えがあった。確か、陽介がよく衣装製作の依頼を受ける劇団の団長の声であり、陽介の口調が特に親しげな人である。
 陽介と公私交えて電話で話しているのを、レアはよく耳にしていた。

(そう言えば……やっぱり)

 作業机に置かれているカレンダーを確認したレアは頷いた。カレンダーには「午前、安藤に納品」と簡潔に書かれている。今日は衣装の納期だ。
 おそらく、陽介がこんな時間まで連絡も寄越さないままに姿を現さない事を変に思い、わざわざ訊ねてきたのだろう。
 レアは困窮した。
 彼女を家に招き入れれば、陽介の容態が悪い事を知らせる事が出来る。
 しかし、そうする事で、恐らく自分の存在が陽介以外の人間に知らせてしまう事になる……。

「人間は、良い人ばかりではないよ……」

 以前陽介が苦笑混じりに言っていた言葉が思い出された。
 レア自身も、陽介は例外だが、人間は未だに少し恐いと思っている。
 万が一、他の人間に見つかる事で陽介と一緒に居ることが出来なくなってしまったら……。そう考えるだけで身震いしてしまう。

「でも……」

 現状を思い出し、レアは顔を伏せた。今の自分が、陽介に対して何を出来ているだろう?
 もし、本当に自分が陽介の身を第一に案じるなら――如何するべきなのだろう?

「…………」

 レアは覚悟を決めて玄関へと向かった。
523妖精と過ごす日常:2008/09/06(土) 13:16:22 ID:wlL3y4eT
 ふと、劇団長こと安藤香織は誰かに呼ばれた気がした。
 ソレが誰の声で、何処から聞こえたのかは判らなかったが、その声を聞いた時、今まで鍵が掛かっていたはずの玄関のドアは音も無く開いた。
 初めは陽介が鍵を開けてくれたのかとも思ったが、少し開いたドアからは誰の姿も認められなかった。

「真木くん? 入るよ?」

 香織は玄関を覗き込み、一言声を掛けた。
 案の定、返事はない。
 しかし、僅かに人の気配がある事は感じられたので、彼女は静かに部屋に入ってみた。
 玄関を抜け、廊下の先にあるキッチン兼リビングのの左手に居間兼寝室の広間がある。
 キッチンの流しには氷水が入った洗面器と濡れタオルが置かれており、広間では陽介が赤い顔をして寝込んでいた。

「やっぱり……思った通りだったか」

 陽介が熱を出していることを確認し、香織は小さく溜息を付いて苦笑した。
 出会った頃からの、一度作業に没頭すると食事や睡眠すら忘れてしまう陽介の悪い癖はまだ直っていないらしい。
 『あんな事』があり、一時は魂が抜けたようになっていた陽介だが、生活のスタイルは以前と変わっていない。その事が、香織にはとても嬉しかった。

「そして……」

 香織は部屋をざっと見回してみた。
 今は誰も居ないが、キッチンの氷水といい、部屋の「空気」といい、先ほどまで誰かが彼の看病をしていた事は間違いないらしい。

「ソレが誰で、今何処に居るのかは気になるけど……」

 香織はあえて声に出す。
 部屋には人が隠れるようなスペースはないし、そもそも、香織が陽介の部屋を訪ねたからといって、その様なことをする必要がない。
 よっぽど人見知りをする人か、あるいは、陽介と一緒にいる所を見られたら困る人か……。

(まさか、私に気を使ってる……なんて事はないわよね?)

 あんな事になってしまったが、香織は陽介に早く立ち直ってもらいたいと思っている。今、陽介が女の子と付き合っていようとも、香織はソレを非難するつもりはないし、むしろ喜んでいたかもしれない。
 馬鹿馬鹿しいと香織は呟いた。どうであれ、今考えるようなことではないと考える事をやめる。
 キッチンに置かれていた洗面器を手に陽介の傍に腰を下ろした香織は、タオルを絞って陽介の額に乗せた。
 本当は全身の汗を拭いたり、着替えさせたりするのが良いのだが、いくら親しい間柄とは言え、寝込んでいる異性に無断でソレをするのは憚られた。

「そう言えば、真木くんの部屋に入るのは二度目かぁ。最近は部屋が散らかってる……とかでお呼ばれしなかったけど、そんなに散らかってないじゃない」

 布団を掛けなおし、もう一度タオルを変えた香織は、改めて部屋を眺めながら呟いた。
 陽介の部屋は綺麗に片付いており、どちらかと言えば、一人暮らしの割には片付きすぎているのかも知れない。香織は陽介の寝顔を見つめ、くすりと微笑んだ。

 そんな様子をレアは静かに見守っていた。
 幸いな事に、レアが最も危惧していた「陽介以外の人間に見つかる」ということは無かった。
 鍵を開けてすぐ、玄関の天井の隅で息を殺していたレアに香織は気付くことなく奥の部屋へと向かい、直ぐに陽介の様子に気付いて看病をはじめてくれた。
 初めこそ心配そうであったが、次第に香織が嬉しそうに陽介の世話をするようになっていく様子は、レアの胸に小さく波を立てた。

(あの人も、陽介さんの事が好きなんだ……)

 その事に気付き、レアの胸はモヤモヤとした。胸が重く、何故かは分からないが嫌な気分になる。
 香織が風邪薬を用意し、陽介の額のタオルを取り替え、お粥を作る。それらの光景を、レアは身を隠したカーテンの隙間から眺めていた。
 レアが陽介にしてあげたかった事を、しようとしても出来なかった事を容易くこなしてゆく香織の姿は、レアにしてみれば複雑な物だった。

(何故、私は小さいんだろう?)

 その時初めて、レアは自分の体の大きさに苛立ちを感じた。
 サイズさえ違わなければ、こんなにも悔しい思いをせずにすんだ筈なのに。
 サイズさえ違わなければ、今、香織がいる場所には自分が居るはずなのに。
 サイズさえ違わなければ……。
 ドロドロとした自分の考えに嫌悪しながらも、レアは二人の様子から目を離す事無く、無言で見守り続けていた。
524名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 13:48:47 ID:BYopUogo
終わり?
525名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 15:56:36 ID:j6sJlN6/
レアって人外スレの妖精とは別?
526名無しさん@ピンキー:2008/09/06(土) 16:37:09 ID:CiKtHi4s
続ききてたーGJ
そういや前回は玄関のドアを開けるところぐらいで止まってたっけか
やっぱサイズで悩んじゃう妖精さんっていうシチュエーションは良いよな
527名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 00:20:07 ID:LNXJ9rMq
>>523
GJ
続きも期待
528名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 22:32:27 ID:4l1YY+U2
>>526
オレもそう思う!
最初は気にしていなかったのが、恋心を抱くと同時に悩み始める、というのがイイ!



続き、楽しみに待っとります
529名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 23:17:16 ID:ZN8PcR7U
>>525
それはエアじゃないかな?
530名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 23:55:14 ID:LgY/A+9X
そういえば、そうだった気がする。
531名無しさん@ピンキー:2008/09/08(月) 00:15:27 ID:2Ac8Ks+K
>>523
GJ
キャンパスの人といい帰ってきてくれる職人さんがまた現れたのは良いことだ
続き期待してますよー
532名無しさん@ピンキー:2008/09/08(月) 22:35:30 ID:6Kxd3qFL
妖精もいいけど小人もいいよね
533名無しさん@ピンキー:2008/09/09(火) 22:24:33 ID:XdUGWkwq
フェアリーAGE
534名無しさん@ピンキー:2008/09/10(水) 20:40:30 ID:N3EmqoWd
ほしゅ
535妖精の種:2008/09/10(水) 21:58:32 ID:rDYw76ul
投下します
536妖精の種 1/2:2008/09/10(水) 22:03:24 ID:rDYw76ul
>>474-475 の続き
30話 雪の日の朝


 部屋が冷たい。
 カイはもぞもぞと布団から起き出した。暖房は付けているものの、肌に突き刺さるよう
な空気の冷たさ。雪の朝では当然とも言える。
 暖房は夜通しで熱気を吐き出していた。

「寒い……」

 暖房から少し離れた場所に台が置かれ、その上のベッドでミドリが眠っていた。コート
は着せたままである。普段なら寝る時にコートは着せないのだが、今日は仕方ない。
 近くの時計を見ると朝の七時前だった。しかし、分厚い雪雲のせいで部屋は暗い。

「さすがに朝の散歩に行くわけにもいかないし。ま、文句は言わないでくれ」

 カイは近くに置かれたカンテラに手を伸ばした。
 小さな留め金を外してガラスを一枚開け、横に置いてあった小さな石を中の水皿に浸
す。水に触れて、石が白い光を放ち始めた。油を使わない分、かなり楽である。

「ん……」

 ほどなくミドリが目を覚ました。
 目蓋を持ち上げ、手の甲で目をこする。上半身を起こしてから緑色の瞳を辺りに向け、
大きく背伸びをした。カンテラの明かりを数秒見つめてから、顔を向けてくる。

「おはよう、カイ」
「おはよう」

 カイは挨拶を返した。
 ミドリはベッドから下りて靴を履き、枕元に置いてある帽子を頭に乗る。寝付きも早い
が、寝起きも早い。長い葉っぱのような緑色の髪を何度か指で梳いてから、羽を伸ば
して飛び上がった。羨ましいことに寝癖もできないらしい。
 台から少し浮き上がったところで時計を見やる。

「あれ、もう七時なの? 朝の散歩は?」
「雪降ってるから無理だよ」

 カイは窓を指差した。
537妖精の種 2/2:2008/09/10(水) 22:03:57 ID:rDYw76ul
「あ、雪……。忘れてた」

 昨日のことを思い出したらしい。ミドリは口をぽかんと開け、目を大きく開いている。
一度頷いてから、羽を動かし窓へと向き直った。驚いたように少し下がる。

「白い」

 感想は短かった。
 まさにその感想通り、窓から見える景色は白い。普段なら向かいの家の二階が見え
るのだが、雪のせいで真っ白に見える。滅多に見られない風景だった。
 ミドリは惹かれるように窓に近づいていき。
 少し飛んだ所へ止まった。背中を竦める。

「うぅ。寒い」
「雪降ってるから当たり前だって。この辺りで雪が降る時の朝の気温は氷点下だから。
出歩けば凍るよ。本当に。昼過ぎでも十度越えないけどね」

 カイは笑いながら、左手を前に出した。差し出された左手に下りるミドリ。そのまま、
寝間着の懐に入れる。これで寒さは大丈夫だろう。
 窓辺に近づくと、窓の外の光景が目に入ってくる

「うわぁ」

 ミドリの感嘆の声。
 勢いは減ったものの、まだ細雪程度に降っていた。外の道路や家の屋根には白い雪
が積もっている。積雪は二十五センチほどだろう。白っぽい灰色の空と積もった雪、そ
して白い家の壁。一面真っ白の世界。屋根の縁から、つららが伸びていた。
 ふと思いついたように、ミドリが言ってくる。

「外出てみたい」
「駄目。寒いから家で大人しくしてなさい」

 カイは迷い無く答えた。
538名無しさん@ピンキー:2008/09/10(水) 22:04:31 ID:rDYw76ul
以上です
539名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 01:07:05 ID:lZknsmOY
>>538
GJ

しかし妖精さんには雪は向かないよな。サイズ的に危険そうだ
雪の妖精とかなら大丈夫だけんど
540名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 02:56:11 ID:OJNMH9XE
SF(すこし不思議)パワーで何でもありさ!
541名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 19:43:10 ID:gR7I2rm7
SF(凄く不思議)
542名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 23:26:01 ID:Ipr77bFr
SF(スケベファック)
543名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 23:36:57 ID:5U8HXtys
SF(すごいフェアリー)
544名無しさん@ピンキー:2008/09/12(金) 19:48:44 ID:oVM3MqkQ
SF(スケベフェアリー)
545名無しさん@ピンキー:2008/09/12(金) 20:42:36 ID:uKVXTAzT
SF(素敵なフェアリー)
546名無しさん@ピンキー:2008/09/12(金) 21:07:22 ID:GL0ywwHL
SF(すきっ腹をすかせたフェアリー)
547名無しさん@ピンキー:2008/09/13(土) 06:44:04 ID:4Kx8Mwi9
SF(最強のフェアリー)
548名無しさん@ピンキー:2008/09/13(土) 07:13:28 ID:CbVBbb0j
藤子・F・不二雄先生がSF(すこし憤慨)しておられます
549名無しさん@ピンキー:2008/09/13(土) 09:15:48 ID:TsmznJhI
SF(空飛ぶ裸のフェアリー)
550名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 00:58:04 ID:sdlOlOIk
SF(そろそろ普通の流れに戻さないか?)
551名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 01:15:26 ID:/1Byi4kt
フィフニルの妖精たちが更新していた
今度は黒い子のお話らしい
5521/2:2008/09/14(日) 01:58:20 ID:tUtsc9IF

――妖精、フェアリー、エルフ、スプライト

どの呼び名が正しいのかは知らないが、まあとにかく、そういうファンタジー
的な代物が目の前にぽふ、と出現してきた。
俺の手のひらサイズの妖精――正式な種族とか名称とか、なんて呼んだらいい
のか分からないので便宜上そう呼ぶ。日本語は便利だ――はぱちくりと目を回
している。

ふんわりとした金髪の巻き毛は、切りそろえられた肩のあたりでくるくると遊
んでいる。
薔薇色の頬は柔らかそうで、すんなりと通った鼻がすこしだけ生意気そうだ。
目はパッチリと開いた青い瞳、濃い栗色の睫毛のびっしりとそのつぶらな瞳を
縁取っている。そして、赤味の強い薔薇色の頬。薄いピンク色の唇はつやつや
として、まるで果物みたいだ。

文句なく美少女と呼んで差し支えないだろう。通常の人間サイズで現れてくれ
れば、もう言うことナイくらいのべっぴんさんだ。しかもハーフ顔。大変好み
の顔立ちだ。
まあ、それも手のひらサイズともなれば喜びは十分の一程度になるんですがね。

喜び度数が目減りしたぶん、冷静に事態を見つめることができた俺は、とりあ
えず目の前のPCから出てきたとしか思えない妖精に問いかけた。

「なあ、アンタ何?」
「何ってちょっと失礼じゃない? 見てわかんないかなーあ? 妖精! よ・う・
せ・いさん! いかにもなこの羽! この服装! なんでわかんないのかな?
馬鹿なのかな? かな?」

――うわあ。ムカつく。
明らかに俺を小馬鹿にしきった様子の妖精さん(仕方ないから呼んでやろうじゃ
ねえか)は、ぱたぱたと羽を動かして俺の目の前を飛び回っている。ぶんぶん
という羽音が、まるで蝿のまとわりつかれているようで実に不愉快だ。仮にも
妖精さんだと名乗るのならば、もう少し神秘的に飛び回ってもらいたい。

「あーっ!! ちょっと何すんのよーう! やめてよねー!」

思わず手で払ってしまったのがマズかったのだろう。妖精さんはものの見事に
吹っ飛ばされた。風圧で飛ばされるあたり、やはり見た目どおり相当軽い存在
なのだろう。頭と一緒で。
5532/2:2008/09/14(日) 01:58:55 ID:tUtsc9IF

「あー、はいはい。で、いつ消えるの?」
「はあー? ていうか、ごめんなさいは? ごめんなさいは? だいたいなんで
そんなノーリアクションなのよ! 友達はみーんなっ! 人間に見つかったとき、
すっごく大事にしてもらったって言ってたのに!」

俺の気のないリアクションに憤慨したように、妖精さんはぱたぱたと羽を動か
した。きらきらとした燐粉が飛び散る。――蛾みたい。と思ったのが伝わった
のかどうか、妖精さんは俺にちっちゃい指を突きつけて言った。

「大体さ、普通もっと感動するでしょ? ほら、妖精だよ? 妖精さんなんだよ?
もっと、こう、さあ! あるでしょ?」

――ねーよ。どんなリアクション期待してたんだよ。
とは、言わない。なんか言ったら話が進まなそうだからな。今でも十分すぎる
くらい話が進まないんだから、これ以上停滞させることもあるまいて。

「……まあ、いいや。とりあえず、しばらくお世話になります」
「は?」

一頻り俺を罵った妖精さんは、なんかすっきりした顔で深々と頭を下げてきた。
なんでだよ。

「えっとねー、妖精界と人間界って普段あんま繋がらないのよ、そんでー、ど
うも入り口がアンタのその……何?」
「パソコン」
「ああそう。その……パ、パソコン? みたいなんだよね」

そう言ってパソコンを指差した妖精さんは、可愛らしい額を自分の指で小突き、
テヘ、と笑った。……くそ、可愛い。しかし可愛いとか思ったら負けな気がす
る。
ふわふわの蜂蜜の色の髪を揺らした妖精さんは、にこにこと俺に笑いかけたま
まだ。先ほどまでの罵倒を持ってしても突き崩せない、この魅力。……くそう。


「……あー、そう」
「うん、そう!」

――まあ、そういうわけで俺と妖精さんの共同生活は唐突に始まった。
554名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 02:03:39 ID:tUtsc9IF
普通の流れに戻すべくちょっくら書いてみた。
ツンデレ気味の生意気妖精さんって萌える。
555名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 02:30:10 ID:/1Byi4kt


続き待ってるぞー
556名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 10:39:43 ID:r0gCCMHA
これは続きが気になる展開じゃないか!
男がノーリアクションなのもおもしろかったw

ただパソコンから出てくるっていうので机の引き出しから出てくる青いロボットを思い出してしまった
557名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 16:27:12 ID:J5EHUCkf
俺は3M氏の、インターネットの妖精さんを思い出した
558名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 22:32:25 ID:o59Hn+0x
あれは面白かった
559名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 22:49:15 ID:CANHbpf0
それ知らないわ
kwsk
560名無しさん@ピンキー:2008/09/14(日) 23:16:27 ID:J5EHUCkf
>>559
ttp://boukenoh.h.fc2.com/mainpage.html

ここのオリジナル1に置いてある

まぁどれも面白いんで一通り目を通すことをお勧めする
561552続き 1/2:2008/09/15(月) 00:18:50 ID:kGuRri36

妖精さんが我が家にやってきて、三日目。そろそろ慣れてきた妖精さんとの共
同生活は、そこそこ順調だった。妖精さんは見た目を裏切らず甘党で、特にプ
リンがお気に入りらしい。
その日もプッチンプリンをちっちゃなスプーン(俺が買ってきた。成人男性が
玩具売り場をうろつくのは罰ゲームである)でほじくりながら、妖精さんはご
満悦だった。

「で、いつまでいんの?」
「んー、二百年くらい?」
「……は?」

さすが妖精さん、ケタが違うぜ。まさか二百年とはな。つーか二百年もパソコ
ンが持つのかどうか。
果てしなく疑問だったので、とりあえず聞いてみる事にした。

「俺のパソコンが入り口っつってたじゃん? 壊れたら帰れなくなるんじゃね?
お迎えっつーか……繋がるのが二百年後だったらお前もう帰れないの確定だ
と思うんですけど」
「ああ、それは大丈夫。昨日の夜一旦帰って、移動用のゲート……あ、こうい
う世界と世界の入り口を繋げる道具のことなんだけど。うん。これ持ってきた
からへーき」

なんか得意げにちっこい胸を反らした妖精さんは、これまたちっこい手にキラ
キラと光るなんか細かい細工のしてある鏡のようなものを握り締めている。俺
に見せ付けるように、力いっぱい前に突き出してほれほれ、と鏡を振る姿は可
愛らしい。が、光が反射して目に痛い。
って違うだろ俺。注目すべきは妖精さん自慢の小道具じゃねえ。今の発言だ。
――コイツ、今「昨日帰った」って言ったぞ?

「……帰れるようになったんなら、とっとと向こうに帰ればいいじゃねえかよ」

「えー、なにそれー!」
「なにそれじゃありません。いいから帰れほら」

ぱたぱたと羽を動かして抗議する妖精さんのなんかひらひらした服を片手でつ
まんでぶらぶらと揺する。

「ちょ、ちょっと! ていうか、ほんと信じらんなーい! なんなのよ、もう!」


どうやら俺のリアクションが予想外だったらしく、妖精さんは慌てたようにバ
タバタと暴れた。

「なんなのよ、っていうか……お前がなんなんだよ。お前が帰れないっつーか
ら俺はなあ!」
「だからー、もう帰れるけど帰らないっていうか。だからある意味帰れないっ
ていうか! だからここにいるの! いーでしょもう! わかった!?」

まったく分かりません。しかもなんか妖精さんがぶらぶら足を揺らして頬を膨
らませている。一緒にいるようになってそんなに経ってないけど、こうなった
妖精さんはとにかく自分の意見が通るまで梃子でも動かない。これぞ妖精さん
名物逆ギレである。
562552続き 2/2:2008/09/15(月) 00:19:32 ID:kGuRri36

妖精さんが我が家にやってきた初日に起こった、プリン強奪事件のときもそう
だった。
この妖精さんは冷蔵庫に入れてあった俺の風呂上りのお楽しみであるプリン様
を勝手にお召し上がりになりやがり、しかも開き直ってやっぱり逆ギレしやがっ
たのだ。
今現在と全く同じふてくされた態度で。

俺が胡乱な眼差しを注ぐと、妖精さんはその視線に気付いたのかふん、とそっ
ぽを向いた。
ふわふわの髪が揺れて、尖らせた口元に掛かる。薔薇色の頬はぱんぱんに膨れ
て、折角の整った造作が台無しになっている……といいたい所だが、何故か台
無しになっていない。むしろ可愛らしい。非常にムカつくことに超可愛い。

そして頑固一徹九州男児たる俺は、今日もまた、なし崩し的にこの妖精さんの
(あくまで見た目だけの)可愛さに絆されて、膨れる彼女にプリンを貢ぐのでし
た。まる。

「ほら、プリンもう一個やるから」
「……わーい! うれしーなー!」

案の定、妖精さんの機嫌はプリン一個で簡単に直った。安い女である。

結局、妖精さんのことは殆ど何一つ分からなかった。
人間界と妖精界とやらの繋ぎ目のはずのPCは結局どうなってんのか。そもそも
何故我が家に居座っているのか。あと本気で二百年もこっちで暮らす気なのか。
どれ一つとして、手がかりの欠片すらもない。

ただ一つ確かなのはこの妖精さんがたいそう根性悪でめちゃくちゃ可愛いとい
うことだけだ。くそう。逆ギレ系スイーツ(笑)のくせしやがって畜生。とろけ
るクリームonプリンのクリームだけ直接舐めるなよちょっと卑猥だから。やっ
ぱすげえ可愛いな。あとエロいな。

いらいらしながら(でも若干ムラムラしながら)妖精さんを眺めていたら、妖精
さんが食いかけのプリンをちっちゃいスプーン使って「はい、あーん」って俺
に食わしてくれたので、今は全てを水に流そうと思います。うん。今日のとこ
ろは誤魔化されてやるとしよう。これ毎回やってくれるんなら二三日は誤魔化
されてやってもいいぞ。 

やっぱりちょっと釈然としないけどな! 
563名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 00:37:02 ID:x7b2MWfE
この壊れた感じが好きだ
564名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 01:19:36 ID:Eqxmz68n
GJ
いいぞもっとやれ

クリームonプリンは甘すぎて食べにくい気がする
妖精さんならちょうどいいのか?
565名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 02:13:58 ID:BgvtZLlW
>>560
thx


>>562
gj
566名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 18:43:04 ID:Fy9TSqW2
>>564
妖精さんは甘党と相場が決まっている
567名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 20:43:25 ID:EFYMX56D
妖精さんのウンチも甘いだろうな
568名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 22:17:53 ID:NqRFuOgF
妖精さんはウンチなんかしない!
569名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 15:36:16 ID:9UtqH+W3
でも意外と大食い
570名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 15:52:30 ID:GUNWGYl+
妖精さんの胃袋はブラックホール
571名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 18:06:41 ID:ok2eMHF0
線のいい身体してるだろ?
特盛りフルーツパフェ10人前平らげたんだぜ、あれで・・・
572名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 20:57:11 ID:44ROfu+I
その子を両手で持ち上げても
重さは変わっていない妖精さんの不思議
573名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 22:51:41 ID:OP3pStf5
>>560
尿道プレイ、ゾクゾクきたw
574名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 22:52:54 ID:YreYM6Js
「お前って軽いよなぁ」
「うん。妖精仲間でも軽いんで有名だったよ」
「ほうほう」
「たったの10万tだもん」
「そうか、たったの……………え?」
575名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 00:48:17 ID:DZvpN8ml
>>574
まんが日本昔ばなしに出てきた「金食い虫」の話のように
ある日突然山のような大便を排泄してそうだな
576名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 00:58:15 ID:UPzfRrzo
妖精さんに向かって聞いてみた。
「ねえ君、食べたものは一体どこに行くの?」
「ふふ、内緒」
そういうと彼女は山盛りのシュークリームを平らげたのだった。





数ヶ月後、上空から大音声が。
「ねえ君、食べたものは…」
577名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 11:19:34 ID:3TY0+OIB
妖精さんのおしっこが極上の飲み物ってネタはたまに見るが
578名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 15:02:19 ID:HR2J7zHi
フェアリードロップなのよぅ
579名無しさん@ピンキー:2008/09/18(木) 21:05:56 ID:45OLetTF
>>578
それが尻の穴が出れば幻滅するか狂喜するかはその人次第だな
580名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 09:00:07 ID:18LxMv5x
小だろうが大だろうが、恥じらいがあれば大丈夫
恥じらいがないと多分萎える

妖精さんに見るなって言われてるのにおしっこをじっくり眺めてみたり
その後ぽかぽか殴って抗議してくる前で飲み干してみたり

こんな感じなら大歓迎です
581名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 14:39:23 ID:r9APYGU8
それは、逃げられるぞ…
582名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 16:01:35 ID:NjWiH4pu
妖精さんのおしっこが実は栄養たっぷりの甘露だったら


恥ずかしいと思っていても飲ませてと言われれば
嫌とは決して言えまい

もしくは風邪などで動けない男の口の上で
恥ずかしながらも男の為に放尿というシチュも
583馬鹿の二乗(>>552から続き):2008/09/20(土) 02:37:33 ID:VWTIO138

こんにちは、そろそろ妖精さんが我が家にいらしてから一週間が経過しようと
していますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。我が家はすでに妖精さんの支
配下にあります。そんで俺は下僕です。

もしかしたら俺は、プリンとかプリンとかたまにアイスとかを自動的に供給す
る便利な道具としてしか妖精さんには認識されていないんじゃないかと思う今
日この頃です。


「アイスー! 今日はアイス! それもイチゴアイスの気分ですー! 苺のアイ
ス食べたーいー! ピンクのやつ! ピンクくて冷たくてあまーいの!」

今日も妖精さんは元気かつ傍若無人である。読んで字の如く傍若無人。傍らに
人、無きが如し。俺の空気っぷりすごくね? 
ぱたぱた手足を動かす妖精さんは今日も理不尽に可愛い。すっげ癪だが、なま
ら可愛い。思わず道産子と化してしまうほど可愛い。

が、しかし! しかし! である。このままなし崩しに妖精さんのベリキュぶり
にでろでろと鼻の下を伸ばし、ホイホイと言う事を聞いていていいものだろう
か。いや、よくない。

俺の中の九州男児の血が、「男子、なんかそんなことじゃ駄目だよ」的な何か
を発してざわめいている。この熱き血潮の命ずるがまま、俺は今日この日、こ
の時から我が家の妖精さん独立政権に反旗を翻そうと思う!


「・・・・・・お前さ、いい加減わがまますぎ。俺もう付き合ってらんない」

第一段階はこの程度の軽いジャブで相手の出方を見るのが得策だろう。我なが
ら上々の初手である。

「なっ・・・・・・なによーう・・・・・・どうしたのよー・・・・・・」
「どうしたってお前、無意識かよ。自覚ないのかよ」
「だっ、だっ・・・・・・・だって、今までそんなこと言わなかったじゃない・・・・
・・」

おお、妖精さんがいつになく弱気だ。初めてパソコンから出てきて以来、俺が
初めて優勢なターンかもしれん。
このまま俺のペースに持っていければ、妖精さんが今までのワガママ三昧を悔
い改めるのもそう遠くないかもしれんぞ!

「なんで急に怒るのよー・・・・・・アンタ、ずっとにこにこしてたじゃない!
 い、言ってくれなきゃ、分かんないじゃん・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」


俯いた妖精さんのふわふわ髪のキューティクルが、心なしかくすんだ様に見え
る。ついでに言えば薔薇色の頬だってちょっぴり青褪めているみたいだし、ぷ
るぷるでぷにぷにの桜色の唇は妖精さんが噛み締めているせいですっかり色を
失っていた。
バチバチの長い睫毛はでっかい眼にちょっぴりだけ滲んでいる涙を吸い取って
しっとりしているし、ふりふりでふわふわのお洋服は妖精さんのちっちゃい手
でぎゅうぎゅうに握りしめられていて今にも裂けてしまいそうである。
584馬鹿の二乗(>>552から続き):2008/09/20(土) 02:38:07 ID:VWTIO138

うおおおおおお。可愛いぞ、妖精さん。いつにもまして、というか常日頃の逆
ギレ上等な態度から一転したこのしおらしさは、なんというか、そう、アレだ。
王道ともいえる王道、「ギャップ萌え」だ。
きゅんきゅんする胸を抑えつつ(ここで妖精さんを下手に慰めたり下手に出て
しまっては元の木阿弥である)、俺はあくまで冷淡に言い放つ。

「あのな、妖精さん。アンタのいた妖精界とやらじゃどうだったか知らないが
な。ここは人間界で、俺の家なんだ。家賃払ってんのも生活費出してんのも全
部俺なの」
「・・・・・・・・・うん」

妖精さんは、俺の言葉にやけに素直に頷くと、涙をいっぱい溜めた眼で俺を見
上げる。
ダイニングテーブル――というかちゃぶ台――の上で、真面目にも正座とかし
ちゃってる妖精さんの可愛さったらないが、まあとりあえず続きだ続き。

「確かに、俺もアンタを甘やかしちまったところはある。妖精なんて勝手が分
からないし、そもそもどういうもんかも分からなかったからな。でもな」

なにやらこくこくと頷く妖精さんの、ガラにもない殊勝さに、思わず今すぐイチ
ゴアイスを買いに奔ってしまいそうになったのは内緒である。

「でもな。ここが俺の家である以上、最低限のルールは守って欲しいわけだよ」

「・・・・・・ルール?」
「そう。ルール」


まあ、そんなかんじで俺が同居生活一週間目にして起こした「イチゴアイス
の乱」は、以下のルールを各自遵守することで決着することと相成った。

1 人にものを頼むときは、ちゃんとお願いする
2 どうしても駄目な時、駄々を捏ねずに諦める
3 何かしてもらったら、ちゃんとお礼を言うこと

なんつーか、人として当たり前の事なのだが、妖精さんはものすごく真面目に
聞いていた(ま、実際今まで出来てなかったわけだしな)。
そんでもって、我が家ルール(つか俺と妖精さんルール)をメモと鉛筆で書き取
りまでしていた。なんか読めない字(妖精語?)をでっかい鉛筆を使って書く妖
精さんの姿はものすごくシュール、かつ超絶可愛かった。

というわけで、俺の家の冷蔵庫にはそん時妖精さんが書いた妖精語メモがマグ
ネットで貼り付けられているわけです。ヘタった字すら可愛いとは、やるな妖
精さん。



あ、イチゴアイスですか? 買いに行きましたよ、もちろん。

ちょびっと涙目でピンク色のアイス食ってる妖精さんは、まじすっげ可愛かっ
たことは伝えねばなるまい。
585名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 02:39:27 ID:VWTIO138
馬鹿(主人公)×馬鹿(妖精さん)ってことで。
ツンデレのはずがツンバカに。
586名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 07:14:57 ID:E+LXou15
GJ
二人の掛合いが面白い
あと、妖精さんの容姿を詳しく
587名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 15:44:37 ID:hcPmNCrs
GJ
あまりの可愛さに頬が弛んだ


非常に些細なことだが、タイトルのカッコ部分は
562の続き、ではなかろうか
588名無しさん@ピンキー:2008/09/20(土) 22:09:46 ID:JAlTbN7h
GJ
この調子で頑張って書き続けてくれ
589名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 18:09:14 ID:klTKKMjI
バカっ子はいいなあ

ギャップ萌えと言えば、フィフニルの人が黒い子の話更新してたが
あれも妖精としてはギャップ系の萌えだよなw
590名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 16:37:16 ID:Ip1RNZNN
あそこの妖精さんはある意味ノーマルな妖精さんじゃないからな
591妖精の種:2008/09/24(水) 18:53:25 ID:noliX0sv
投下します
592妖精の種 1/2:2008/09/24(水) 18:55:03 ID:noliX0sv
>>536-537の続き

31話 春はいつ頃?

 既に雪は止み、空は薄曇り。明日になれば青空が戻ってくるだろう。まだ気温は低い
ものの、出歩くのがきついというほどでもない。

「凄かったね、副会長さんの雪の塔」

 コートの胸元から肩を出したミドリが、どこか興奮したように言っている。
 しかし、カイは素直に感心することができなかった。

「凄かったけど、何であんなものが作れるんだろ……」

 頭をかきつつ呟く。率直な疑問。
 さきほどミドリと一緒に美術館横の公園に出かけてきた。
 フェルが作った高さ十メートル弱の雪の塔が作られている。街の人も沢山見に来てい
て好評だった。だが、本人はあれを雪の降り始めから二日かけて一人で作ったと言っ
ている。本当なのだろう。人間業ではない。

「あの怪物じみた体力の出所が知りたい」

 それは正直な感想だった。
 カイの疑問に構わず、ミドリは道の左右を眺めていた。この辺りは街外れで人通りも
少なく、ミドリが人に見つかる可能性も薄い。

「もう雪溶けちゃうのかな?」

 ある程度片付けられた雪。道の左右に大きな雪の山がある。屋根の雪もあらかた下
ろされていた。初日の昼過ぎにカイも屋根の雪下ろしをやった。

「雪が降った後は少し暖かい空気が入ってくる。雪は早く溶けるよ。でも、石畳敷いてい
ない道はぬかるみで凄いことになるけど」

 足下の道路を眺める。
 石畳の敷かれた道。街の多くは石畳が敷かれているが、まだ敷かれていない場所も
ある。雪が溶けて乾くまでは土の道はぬかるみとなって歩くことも難しい。
 しばらくは朝の散歩コースを変えなければならない。
593妖精の種 2/2:2008/09/24(水) 18:55:37 ID:noliX0sv
「これからしばらくすると春が来るんだよね?」

 ミドリが空を見上げた。
 薄雲越しに白い太陽が見える。夕方になれば雲も消えて日差しも戻ってくるだろう。
明日から数日は暖かいものの、その後は再び冬の寒さが戻ってくる。
 カイは苦笑した。

「春はもう少し後だよ。あと一ヶ月くらいかな?」
「一ヶ月……。春ってどんな感じなんだろう?」

 考え込むように首を傾げるミドリ。まだミドリは春を体験したことはない。生まれてから
四ヶ月程度しか経っていないのだから。
 春という季節を思い返しながら、カイは腕組みをした。

「そうだな……。草木が芽吹き、空気が暖かくなる、始まりの季節。冬には冬の良さが
あるけど、やっぱり俺は春が好きだな。生き生きした絵がかけるから」
「わぁ。楽しみ」

 緑色の瞳を好奇心に輝かせているミドリ。以前見せた春の絵を思い出しているのだ
ろう。きれいな緑色の若葉と色とりどりの花の絵に見入っていたことを思い出す。
 しかし、カイは嘆息してから続けた。

「でも、立春から二ヶ月経つと雨期が来るんだよな。雨始めから五ヶ月くらい雨ばかり
降る季節だけど。絵の具の具合が悪いから雨は苦手だ……」
「そうかな? 毎日雨が降るのも面白そうだよ。わたしは雨だと動けないけど、明かり
石もあるし雨を眺めるのも楽しみ」

 嬉しそうに応えるミドリに。カイは正直な感想を漏らした。

「俺はどうにも雨は苦手だ……」
594名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 18:56:18 ID:noliX0sv
以上です
595名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 16:50:15 ID:l0ya3kkj
最近じゃ種の人の『投下します』見ただけで和みモード突入だ
596名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 02:39:24 ID:S7vuS/Sm
ほのぼの、だなぁ
597名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 01:07:20 ID:1nWeq+eu
「ちょっといいか?」
「はい!何でしょうか!」
「そう畏まるな。明日の予定は?」
「いえ、特に何もありませんが」
「よし、明日買い物に付き合え」
「……はい?」

「あの…その服は…?」
「見ての通り私の私服だが。何か?」
「あ、いえ。いつもとイメージが違うなと」
「ああ、わかっている。私にこんなフリルの
多い格好が似合わないことぐらいはな。
だがこんな服しか無いのだから仕方あるまい」
「いえ、お姫様みたいで可愛いですよ」
「……!」
「ところで、こんな服しか無い、
というのはどういうことですか?」
「あ、ああ。衣服を作っているのは主に人間だ。
勿論妖精にも作れる者はいるが、妖精の性質上、
それを商売にする者は稀だ。
更に言えばオーダーメイドの為、値が張る物が多い」
「だから人間が作った服を着る、と?」
「ああ。不思議なことに人間は好んでこういう服を作る。
それを好んで着る妖精が非常に多いから困るのだよ」
「利害…というより趣味や欲求の一致…ですかね」
「だが…お前が褒めてくれるのなら、こういう服を
着るのも悪くはないな。…ふふっ」




妖精さんの服事情
598名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 03:22:25 ID:kSobOadr
将官キタ!?
これで勝つる!
599名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 03:37:52 ID:UDxKJFW2
うぉぉおおおおおおおおおおおおおおっッ!
かわゆすぐる!
600妖精の種 :2008/09/30(火) 23:54:29 ID:7/xQV0Bi
投下します
601妖精の種 1/3:2008/09/30(火) 23:55:58 ID:7/xQV0Bi
>>592-593の続き

32話 春来たりて


「ふあぁ〜」

 畑の中の散歩道を歩きながら、カイは大欠伸をしていた。
 空気は冷えるものの、肌寒さの中には心地よい暖かさがある。初春の朝。晴れた空、
心地よい春の空気、辺りの土からは若草が芽吹いている。

「カイ、眠そうだね」

 肩に捕まったミドリが声をかけてきた。

「眠い……。この時期はいつも眠い」

 口元を押さえつつ答える。春は眠い季節だ。
 ミドリは肩から離れ、辺りを見回すようにカイの周りを一周する。嬉しそうな表情。

「でも、春って気持ちいいよ。何だか身体がぽかぽかする」
「春は始まりの季節、とも言うな」

 春に生まれた草は雨期と夏を経て大きくなり、雨期の終わり頃に花を咲かせ種を作
り、冬の始まりとともに枯れていく。季節の移り変わり。

「絵描きが詩的なこと考えてもな」

 苦笑しながら、カイは背筋を伸ばした。眠気を払うように首を振ってから、左手を差し
出す。手の平にミドリが下りた。微かな重さ。
 身長は二十センチ弱。外見年齢は十代後半に見えるが、性格はそれよりも幼い。麦
藁のボーダーハットと木の葉を思わせる長い緑色の髪、緑色の済んだ瞳。緑色の上着
とワンピース、ズボン。服装は冬服のままである。
 緑色の妖精だからミドリと名付けた。今から考えると安直だったと思う。

「そういえば、ミドリと一緒に暮らし始めてもう半年も経つんだよな……。特に派手なこと
はなかったけど、意外と早いな」
「もう半年なんだ……」

 頷いてから、ミドリは空を見上げた。雲の浮かぶ空。
 カイはふと視線を動かした。
 道ばたに咲いた黄色い花。オオツメマサと呼ばれる越冬草である。地面に広がるロ
ゼット葉の中央から茎を伸ばし、黄色い花を三つ咲かせていた。タンポポに似ているが
違う草である。この辺りによく生えている草だった
 その花を眺めながら、カイは口の端を持ち上げる。

「ミドリは植物みたいだから、春になったら花が咲くのかな? とも思ってたけど……。
さすがにそんなことはなかったよ」
「花?」

 きょとんとしたようなミドリの呟き。

「もしかして、これ?」
602妖精の種 2/3:2008/09/30(火) 23:56:29 ID:7/xQV0Bi
「え?」

 ミドリが帽子を取ると――
 頭の真上に白い花が乗っていた。

「………」

 何も言えぬまま、カイは動きを止めた。思考も止まる。
 大きさはは二センチくらいだろうか。菱形の白い花弁が五枚。花弁の根元は赤く、雄
しべや雌しべが見える。桜を思わせる、きれいな花。
 それがミドリの頭の上に乗っていた。

「え、え?」
「ふふ。冗談だよ、カイ」

 そう言うなり、ミドリは頭の花を右手で取った。あっさりと取れる花。
 ミドリはふわりと飛び上がり、カイの目の前まで移動した。

「これ、少し前に副会長さんに貰ったの。こうやったらカイが驚くから、やってみなさいっ
て言われた。言われた通りイタズラしてみた」
「そう、か……」

 緊張が解けて、カイはその場に腰を下ろした。座り込みはしなかったものの、しゃが
んだまま三回深呼吸をしてから起き上がる。今のは色々な意味で心臓に悪い。

「大丈夫?」

 花を右手に持ったまま、ミドリが訊いてくる。
 カイは額の汗を拭うような仕草をしてから、

「そういう冗談はやめてくれ」
「……ごめんなさい」

 素直に謝るミドリ。さすがにカイの反応は予想外だったようで、肩を落としている。反
省しているなら、それ以上言うこともない。

「とはいえ、この花は副会長が作ったのか。どうりで本物みたいなわけだ。しかし、相変
わらずよく分からない理由で自分の才能を使う人だよ……」

 ミドリから花を受け取り、カイはそれをじっと見つめていた。特殊な布で作られている
造花ようだが、本物の花と見間違えるほど精巧な造形である。こんなものを作れる物
好きは、そういないだろう。
 思いついて、カイはミドリを見つめた。

「これ、帽子に付けてみるか?」
「帽子に?」

 ミドリは自分の帽子を示した。非常に細い麦藁のような素材で作られたボーダーハッ
トで、赤い帯が巻かれている。装飾もなく、味気ないと思っていたところだ。
 カイは花をミドリに返してから、
603妖精の種 3/3:2008/09/30(火) 23:57:09 ID:7/xQV0Bi
「そんなに難しくはないと思う。帽子の飾りにするために、副会長もこの花飾りをミドリに
渡したんだろ。なら、上手く使うのが俺の仕事だ」
「そうなのかな? でも、ありがとう。カイ」

 花を抱きしめ、ミドリが笑う。
 音もなく滑るように空中を移動してから、カイの肩へと掴まった。肩に掛かるほんの微
かな重さ。もう馴れた妖精の軽さと儚さ。何故か肩にミドリが乗っていると安心する。
 カイは小さく呟いた。半分独り言のような呟き。

「これからもよろしくな、ミドリ」
「……?」

 一呼吸分の間を挟んでから、ミドリは応えるように微笑んだ。

「うん、よろしく。カイ」
604名無しさん@ピンキー:2008/09/30(火) 23:59:04 ID:7/xQV0Bi
以上です。

長々と一年以上続きましたが、
これ以上続けても逆に終れなくなってしまう可能性があるので
多少強引ですが、妖精の種はここで終わりにします。
605名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 02:18:45 ID:HaREC15q
ミドリ結婚してくれ!乙でした
606名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 18:50:21 ID:72vM7s/r
GJ&乙
このスレの古参SSであるだけに終了が惜しまれます……
というかこのスレの顔みたいな作品だったんで残念です
今まで有り難う御座いました
607名無しさん@ピンキー:2008/10/01(水) 19:38:40 ID:SgikbQJ/
乙!
608名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 00:14:05 ID:5bwW8Cl6
次回作の一話は既に書き上がってます
今日か明日の夜投下します
609一尺福ノ神:2008/10/02(木) 23:14:20 ID:/z8vMeZt
投下します
610一尺福ノ神 1/3:2008/10/02(木) 23:16:28 ID:/z8vMeZt
 1話 小さな女の子

「朝なのです。起きるのです!」

 朦朧とした頭に、声は突然飛び込んできた。
 聞き覚えのない女の子の声。

「うん?」

 一樹はぼんやりと目を開ける。秋の朝特有の肌寒さと明るい日差し。思考を空回りさせ
つつ、右手を伸ばす。ベッドの横に置かれていたケースを掴み、蓋を開けた。中身の眼鏡
を掛けると、視界の霞が取れる。

「朝っぱらから、何だ……?」

 わけが分からず、一樹は誰へとなく問いかけた。寝起きはいい方だが、無理に起こされ
るのは気持ちのいいものではない。上半身を起こして、欠伸をする。
 秋も半ばで空気は肌寒い。今日は日曜日。

「ようやく起きたのです」

 やはり聞き覚えのない声だった。テレビなどではない。
 一度欠伸をしてから、一樹は声のした方に目を向けて――

「……?」

 思考を止める。
 机の上に、それは佇んでいた。
 身長三十センチほどの小さな女の子。
 見た目の年齢は十四、五歳くらい。腰まで伸びた長い黒髪、気の強そうな顔立ちと黒い
瞳。服装は白衣に朱袴、そして足袋に草履、いわゆる巫女装束だった。そして、お守りをひ
とつ赤い紐で首から下げている。
 女の子は腰に両手を当て、自信に満ちた微笑みを浮かべて一樹を見据えていた。
 視線を合わせること数秒。

「夢か……。早く起きないと」

 至って冷静にそう結論付けると、一樹は眼鏡を外して布団にくるまった。布団のぬくもりと
ともに、意識が遠ざかっていく。

「なぜそこで寝るのですか! ワタシを無視しては駄目なのです。これは現実、夢ではない
のです。だから起きるのです!」
611一尺福ノ神 1/3:2008/10/02(木) 23:16:59 ID:/z8vMeZt
 ペチ。

 と鼻先を蹴られて、一樹は跳ね起きた。

「何だァ?」

 跳ねられた布団が落ちる。それほど痛くはないものの、指で弾かれたほどの痛みはあっ
た。痛みよりも実際に蹴られたという驚きの方が大きい。
 視線を落とすと、布団の上に立っている女の子。

「……夢じゃない?」
「夢じゃないのです。現実なのです」

 やたら堂々と断言してきた。
 常識とかそういうものは色々横に置いておいて、目の前で起こっていることを現実と認識
する。夢なら夢でよし、現実なら素直に認めよう。目の覚め具合からするに、夢ではなさそ
うだった。しかし、現実と認めるには躊躇がある。
 再び眼鏡を掛け、一樹は問いかけた。

「で、君何者?」
「よくぞ聞いてくれたのです」

 女の子は自分の胸に右手を当てて、ぐっと胸を張ってみせる。そこはかとなく膨らみが分
かるほどの控えめな胸板。音もなく揺れる黒髪。小動物的な可愛さ。

「ワタシは山神の仙治サマに作られた福の神、鈴音なのです。昨日の約束通りあなたに小
さな福を運ぶのです。というわけで、これからよろしくなのです」
「スズネ……。約束?」

 独りごち、一樹は思い返した。心当たりはある。
 昨夜遅く大学からの帰り道、泥酔していたおじさんを見つけた。本人曰く友人と呑んで羽
目を外しすぎてしまったらしい。交番まで連れて行ったら、お礼ということでお守りを貰った。
その後は気にせず帰宅し、眠ってしまったのだが――

「やっぱりこれだよな。信じられないけど」
612一尺福ノ神 3/3:2008/10/02(木) 23:17:30 ID:/z8vMeZt
 そのお守りが鈴音が首から下げているお守りだった。
 特別なものではない。神社で千円ほどで売っている普通のお守り。大きさは普通だが、
小さな鈴音に比べるとかなり大きい。神霊と書かれた白い布袋に収められている。それを
赤い紐で首から下げていた。
 常識では考えられないことを除けば、おおむね本当なのだろう。
 鈴音が見上げてくる。澄んだ黒色の瞳。

「ところで、あなたの名前を教えて欲しいのです。まだ聞いていないのです。一応ワタシの
新しい主様なのですから、名前を知っておく必要があるのです」
「……ぼくは小森一樹だけど」

 微妙に視線を逸らしつつ、一樹は答える。色々気になることはあったが、それを口に出す
ことはできなかった。
 それを聞いて、鈴音は満足げに首を動かす。

「一樹サマ。いい名前なのです」
「うん。じゃ、そういうことでお休み」

 一樹は迷わず布団に戻った。眼鏡を取って目を閉じる。今日は日曜日、普段なら九時頃
まで眠っているのだ。今はまだ七時過ぎ。起きるには早すぎる。もっとも、今回は現実逃避
とも言えるだろうが。
 だが、鈴音の声が眠りを妨げる。

「寝ては駄目なのです。早起きは三文の得なのです!」

 ぺしぺしと額を叩かれて、一樹は目を開いた。
 鈴音が目の前に立っている。頭を手で叩いたようだった。小さな身体で力も弱いため、叩
かれても痛くはない。しかし、眠りを妨げるのには十分である。

「寝かせてくれない?」
「駄目なのです」

 腕組みして即答する鈴音。
 現実逃避はさせてくれないようだった。
613名無しさん@ピンキー:2008/10/02(木) 23:18:04 ID:/z8vMeZt
以上です

続きはそのうち
614名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 12:39:08 ID:M5duEJoR
和風は初めて見るかも
我が強そうな鈴音の今後に期待
615名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 11:19:45 ID:FUSu1qUw
いいね
616名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 19:56:08 ID:26IF6CU6
種のヒト乙です,素敵な作品をありがとう
色々と想像ができて,とても楽しかったです

新作も楽しみにしてますよー
617名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 18:29:04 ID:hQWeikUJ
期待あげ
618名無しさん@ピンキー:2008/10/13(月) 19:26:32 ID:7B8j7ZOf
ふと思ったんだけど、妖精さんの服って
何で出来てるんだろう?
619名無しさん@ピンキー:2008/10/13(月) 21:51:59 ID:MVVqSS+S
ポリエステル   80%
綿                 20%

   Made in China
620名無しさん@ピンキー:2008/10/13(月) 22:30:03 ID:7yK07n3i
>>618
非常にきめ細かい繊維
じゃないとごわごわする
621名無しさん@ピンキー:2008/10/14(火) 10:55:23 ID:3Gk0pFpJ
綿や絹ならいいがポリは勘弁だなぁw
622名無しさん@ピンキー:2008/10/14(火) 23:39:59 ID:FvBI6tD0
天然物しか受け付けないだろうな
623名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 00:07:49 ID:gRdDUxe1
素材にこだわってたら
「妖精さんのために人形用の服を買ってあげる」っていうシチュが出来ないと思うんだ
624名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 00:32:14 ID:w+/emKQt
>>623
「何かゴワゴワする…」とか言う台詞もセットでお願いします
625名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 16:05:43 ID:NgDabSQV
>>623
着心地悪そうな服を健気に着る妖精さんを見て罪悪感にかられ
シルク等の着心地良さそうな服を探し回るという
シチュもいいかもしれない
626一尺福ノ神:2008/10/15(水) 22:40:37 ID:LAe31Mua
投下します
627一尺福ノ神 1/2:2008/10/15(水) 22:48:01 ID:LAe31Mua
>>610-612の続き

2話 一樹の疑問

 ベッドから起き上がり、一樹は背伸びをする。
 これから何をすればいいかは分からないが、寝かせては貰えない。ならば、大人しく起
きるしかないだろう。早起きしたと思えばいい。
 背中を何度か左右に捻ってから、眼鏡を外し、パジャマのボタンを外していく。

「待つのです」

 しかし、それを止める鈴音。巫女服の袖から伸びる右手でびしっと一樹を指差し、眉毛
を斜めにしていた。左手を腰に当て、声を上げる。

「一樹サマは女の子の前で着替えるというのですか! デリカシーがないのです」
「じゃ、外で待ってる?」

 一樹は部屋の入り口を指差した。ニスの塗られた茶色いドア。
 鈴音はドアを五秒ほど見つめた。外で待っている自分の姿を想像したのだろう。何かを
言いたげにもごもごと動く口元。くるりと背中を向けてから、

「あっち向いているから、その間に着替えるのです」
「はいはい」

 苦笑いを見せながら、一樹はパジャマの上下を脱いだ。痩せている、というか単純に細
い身体。服を着ていても細身なのは分かるが、脱ぐと余計に細さが際立つ。いくら食べて
も太らず、子供の頃から華奢な体躯だった。しかし、健康上の問題があることもなく、あま
り気にしてはいない。
 一樹はタンスから取り出したジーンズを穿き、白いシャツを着込む。

「終ったぞ」

 声を掛けると、鈴音が振り返ってきた。長い黒髪が微かに跳ねる。黒い瞳を大きく見開
いて一樹の姿を見つめてから、したり顔で腕組みをした。

「普通の格好なのです……」
「奇抜な服は持ってないからね」

 当たり障りのない答えを返す。
 頭に浮かぶことはいつくもあるが、何から尋ねていいのかは分からない。重要性はどれ
も変わらないだろう。適当に思いついたことから訊いてみた。
628一尺福ノ神 2/2:2008/10/15(水) 22:48:56 ID:LAe31Mua
「君は……福の神とか言ってたけど、ぼく以外の人間にも見えるの?」
「ふつーの人には見えないのです。声も聞こえないのです。でも、世の中にはワタシたち
人間じゃないモノが見える人も結構沢山いるのです。そういう人たちにはふつーに見える
し、声も聞こえるのです」

 人差し指を動かしながら、得意げに説明する。
 霊感――というものだろう。一樹はそう見当を付けた。霊感っぽいのを持っている人間
は何人か知っている。サークル内にも二人それっぽいのがいた。

「じゃ、うちの家族には見えないのか? 見えない方が気楽だけど」
「多分見えないのです。一樹サマがワタシを見えるのは、ワタシが一樹サマに憑いている
からなのです。福の神憑きは非常に縁起がいいのです」

 一樹の問いに鈴音が頷く。自慢げに胸を張ってみせた。
 憑いている、という意味がよく分からないが、鈴音の口振りからするに守護霊のようなも
のだろう。実害はないように思える。
 次の問を口にした。

「じゃあ、君は何食べるんだい?」
「ワタシには食事は必要ないのです。自然エネルギーを糧としていて、非常に環境に優し
く、高燃費なのです。だから食費の心配は無用なのです」

 自分の胸に右手を当てて、答えてくる。相変わらず自信に満ちた態度だった。しかし、
何も食べなくとも平気というのは有り難い。主に金銭的理由で、
 それから、鈴音は両手を持ち上げた。何かを催促するような表情で。

「……なに?」
「一樹サマにお願いがあるのです。ワタシはちっちゃいので移動が大変なのです。だから、
だっこして欲しいのです。見た目通り軽いから大丈夫なのです」

「そう、なのか?」

 腑に落ちないものを感じながら、一樹は鈴音の両脇に手を差し込んだ。そのまま、人形
を抱き上げるように持ち上げてみる。重さも抱き心地も人形のようであるが、生き物特有
の暖かさと柔らかさもある。正直、抱き心地はよい。そのことに感心しつつ、左腕で胸に
抱え込む。鈴音も一樹の腕に自分の腕を乗せていた。
 右手人差し指を前に向け、鈴音が元気よく声を上げる。

「さあ、出発なのです!」
「はいはい」

 一樹は鈴音を抱えたまま、ドアに向かった。
629名無しさん@ピンキー:2008/10/15(水) 22:51:18 ID:LAe31Mua
以上です
630名無しさん@ピンキー:2008/10/16(木) 00:34:24 ID:e/erhh8O
わむなぁ
631名無しさん@ピンキー:2008/10/17(金) 00:11:17 ID:ZkP6GsnC
ちまちまパペット(うろ覚)が思い浮かんだ
632名無しさん@ピンキー:2008/10/17(金) 19:07:07 ID:SoKUkdK2
GJなのです!
633名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 14:06:18 ID:h9wu9shG
>>628の抱き上げシーン、どういう持ち方しても胸が(ry
とか考えてしまう俺は不純なのだろうか…
634名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 16:34:34 ID:5MnU9W+j
>>633
あなたは正常です
635名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 19:56:19 ID:bMGTr5Wi
>>633
親指がコリコリと乳(ryとか考えてしまう俺より純粋だぜ
636名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 23:06:14 ID:BlFSVMqh
向き合った状態から脇の下に両手を差し入れ抱え上げる
そのまま左腕をお腹に回して抱える

こんな感じじゃないか?
637名無しさん@ピンキー:2008/10/19(日) 02:04:59 ID:MhpHRZ7r
一尺ってことはだいたい5分の1サイズか〜

仮に人間サイズでバスト70〜75とすると
胴回りは14〜15cmぐらいになるのかな
638一尺福ノ神:2008/10/22(水) 21:52:07 ID:5+5E460A
設定的に色々考えた結果、
鈴音の身長を約30cmから約40cmに変更させていただきます
設定の練り込みの甘さ、申し訳ありません
639名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 21:52:38 ID:5+5E460A
あと、sage忘れ
みみません
640名無しさん@ピンキー:2008/10/23(木) 22:21:06 ID:j7/roSCr
みみませんに誰も突っ込まない、心優しいスレ。
641名無しさん@ピンキー:2008/10/23(木) 22:31:47 ID:IC+1DlI+
過疎ってるし
642名無しさん@ピンキー:2008/10/24(金) 01:15:11 ID:dKdmjkrg
や、密かに萌えてたんだぜ
>みみません
643名無しさん@ピンキー:2008/10/25(土) 00:19:18 ID:sG4hgKYz
40センチの小人
抱き心地はどうかな?
644名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 22:13:36 ID:eXRaPSrR
645名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 22:19:51 ID:D+YF29Z5
キャラクターなんとか機製かいw
646名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 22:38:30 ID:eXRaPSrR
絵が描けないといつも愚痴ってる
647名無しさん@ピンキー:2008/10/28(火) 13:43:37 ID:l2hash+2
需要が在るか知らんがTFでTSなん貼ってみる
www.transfur.com/Gallery/ViewSequence.aspx?Sequence=3358
648名無しさん@ピンキー:2008/10/28(火) 15:15:20 ID:TqyIu5H0
>>647
英語読めないけど
何だか凄いのは分かった
649名無しさん@ピンキー:2008/10/28(火) 19:20:08 ID:1Lad53um
とりあえず、ここは妖精スレってわけじゃないから
等身大はスレ違いということで。
650一尺三寸福ノ神:2008/11/03(月) 21:38:03 ID:eNQK5zXr
投下します
651一尺三寸福ノ神 1/3:2008/11/03(月) 21:46:56 ID:eNQK5zXr
>>627-629の続き

第3話 鈴音の御利益

 左腕で鈴音を胸に抱えたまま、朝の街を歩いていく。ウインドブレーカーにチノパンとう
格好で、足は靴下とサンダル穿き。さすがにちょっと寒い。

「朝の空気は心地よいのです。やっぱり、朝の散歩は素晴らしいのです」

 左腕に捕まったまま、上機嫌に足を動かしている鈴音。
 あれから、人形の振りをさせて台所のテーブルに待機させてみたが、家族の誰も鈴音
に気づかなかった。今も、すれ違った人が視線を向けてくると言うことはなかった。本当に
一樹以外の人間には見えないようである。

「本当に、見えないんだな……」
「本当なのです。ワタシは人間じゃないのです。福の神なのです。普通の人間には見えな
いのです。一樹サマがワタシを抱えているのも、誰も気に留めないのです」

 得意げに指を動かし、鈴音が身体を捻って見上げてくる。透き通った黒い瞳が向けられ
ていた。何だかよく分からない自信を宿した澄んだ眼差し。
 それから、ふと思いついたように左右をみやった。左手を目の上にかざして、視線を動
かす。黒い髪がさらさらと揺れていた。

「ところで、一樹サマはこれからどこに行くつもりなのです?」
「君が『散歩は身体にいいのです』って言うから、散歩してるだけだけど。どこに行くかは
考えてないなぁ。三十分くらいぶらぶらしてから、帰る気だ」

 朝食の後、リビングでぼんやりとテレビを見ていたら鈴音に散歩に連れ出された。いつ
も寝ている時間なので、起きていてもやることがなかったので、鈴音を連れて散歩に出掛
けることになった。この時間の散歩は久しぶりである。

「一樹サマは計画性がないのです」
「散歩に計画性は必要ないって」
652一尺三寸福ノ神 2/3:2008/11/03(月) 21:47:27 ID:eNQK5zXr
 ぽんぽんと鈴音の頭を叩きながら、一樹は答えた。

「あ」

 鈴音が声を出す。
 訝るように眼鏡を動かしその視線を追うと、その先にあったのは自動販売機だった。本
屋の入り口近くに置いてある、自動販売機。まだ朝なので本屋は閉まったままである。
 自動販売機を指差しながら、鈴音が快活な声で急かす。

「ワタシの福の神の力を見せるのです」
「自信満々だな」

 鈴音の言いたいことを察し、一樹は苦笑しながら自動販売機へと足を進めた。
 赤い外観の自動販売機。携帯電話対応で、ルーレット式の当り機能がついている。並
んでいる飲み物の種類は普通だ。鈴音がじっと見ているのは当り機能。それを当てて、
自分の福の神としての力を証明する気だろう。

「頼りにしてるぞ?」
「任せるのです。ワタシは福の神なのです!」

 自信満々に言う鈴音を横に下ろし、一樹は財布から百二十円を取り出し、硬貨投入口
に入れた。並んでいる飲み物の半分ほどにランプが付き、購入可能を示す。
 オレンジジュースのボタンを押すと、機械音が響き、取出し口にオレンジジュースが落ち
てくる。と、同時にルーレットが回り始めた。
 オレンジジュースを取出しながら、一樹は鈴音を見やる。

「さて、どうなるかな?」
「ワタシの力を信じるのです!」

 そう断言しているが、頬に冷や汗が浮かんでいることには気づかないでおく。
 ピピピと小さな電子音とともに液晶画面で回転するルーレット。普段は気にも留めない

ルーレットを、じっと見つめること約三秒。

 パパーン。

 電子音のファンファーレとともに、当りに止まった。液晶画面からルーレットが消え『三十
秒以内にボタンを押して下さい』という文字が現れる。

「おお! 本当に当たったよ」
「えへん、なのです。これが福の神の御利益なのです」

 両手を腰に当てて、得意満面の笑みとともに胸を張る鈴音。こっそり安堵の息を吐いて
いることには気づかないでおく。意外と小心者なのかもしれない。
653一尺三寸福ノ神 3/3:2008/11/03(月) 21:49:31 ID:eNQK5zXr
「ありがとな」

 礼を言いながら、一樹はアイスココアのボタンを押し、出てきたココアを取り出す。
 嬉しそうな笑顔を見せる鈴音。

「どういたしましてなのです。ワタシは福の神なのです。主である一樹サマい小さな幸運を
運ぶのは、ワタシのお仕事なの――」

 パパーン。

 という音に、はっと自動販売機を見やる。ルーレットが再び当りを示していた。
 三十秒以内にボタンを押して下さい、という文字。さらにに減って行く数字。
 これは予想外だったのだろう。ぱたぱたと両腕を振って、鈴音が叫ぶ。

「か、一樹サマ! 三十秒以内なのです、早くボタンを押すのです!」
「う、うん」

 頷きつつも、三本目の事は考えてなかった。持っていたオレンジジュースとアイスココア
を鈴音に押しつけてから、自販機の商品をぐるりと見回す。
 ほとんど当てずっぽうでボタンを押した。

『濃厚豚骨拉麺スープ缶』

 押してから、商品名が目に入る。だが、手遅れだった。
 ガタン、と音を立てて落ちてくる豚骨拉麺スープ缶。取り出してみると、豚骨ラーメンの
の絵が描かれたホット缶だった。多分、お汁粉やコンソメスープなどの親戚だろう。ただ、
飲むのに躊躇する代物ではある。
 さすがに三度目の当りはなかったが、それはさておき。

「どうしよう、これ?」

 かなり本気で戸惑いながら、缶を鈴音に見せる。
 両手でジュースを抱えたまま、ぽかんとスープ缶を見つめる鈴音。頬を一筋の汗が流れ
落ちた。五秒ほど呆けた表情を見せてから、一度頷いて、きっぱりと言い切る。

「禍福はあざなえる縄のごとし、なのです!」

 一樹は鈴音の額に軽いデコピンを打ち込んだ。
654名無しさん@ピンキー:2008/11/03(月) 21:50:17 ID:eNQK5zXr
以上です
655名無しさん@ピンキー:2008/11/04(火) 23:24:21 ID:ZQC8+h/3
Gヽ(´ヮ`*)ノJ
656名無しさん@ピンキー:2008/11/05(水) 08:14:25 ID:x5DFZfYW
和むなぁ
657名無しさん@ピンキー:2008/11/05(水) 18:21:55 ID:UIwAuAZ2
(・∀・)イイッ!!
658名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 22:48:52 ID:yPdJV70b
で、ミドリと鈴音
どっちがいいんだ?
659名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 22:55:49 ID:t2h7WgcE
ミドリは部屋で遊びたい
鈴音は外に連れ回したい

そんな妄想が自分に渦巻いてます。
660名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 23:31:21 ID:wkcQ80Pk
フィフニル氏が更新していた

今書いてるのが終ったら
スレに戻ってこないかなー
661名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 00:36:35 ID:lsSgDRbO
他の描手は今いずこ?
662名無しさん@ピンキー:2008/11/18(火) 16:50:34 ID:ZYeMhz9L
描手が猫手に見えた。
663一尺三寸福ノ神:2008/11/20(木) 22:29:19 ID:Bh1E/m/D
投下します
664一尺三寸福ノ神 1/3:2008/11/20(木) 22:32:49 ID:Bh1E/m/D
>>651-653の続き

4話 アニメ鑑賞

 デスクトップパソコンのディスプレイに映るアニメ映像。そして、椅子の上に立ったまま、
アニメに見入っている鈴音。

「さあ、行くのです! エネルギー充填200%なのです! 世界を守るため、ついに決戦の
時は来たのです! 機動要塞グーゴル最終変形なのです!」

 右腕をぶんぶんと振り回して、飛び跳ねている。黒い髪が大きく跳ね、朱袴の裾が激し
く揺れ、時々生足が見えていた。太股辺りまで見えることはあるが、幸か不幸かそれより
上までは捲れていない。

「おおおー! 凄い、凄いのです! ロボットが大きなロボットに乗っているのです! これ
で、邪神は倒せるのです。さあ、行くのです証明者コーリ!」

 ビシッ、と音を立てて右手の人差し指を突き出す。
 枢愕者トリリオン。昔、深夜に一クール放送された有名なロボットアニメだった。今は最
終回後半。空中要塞グーゴルが変形した全長四キロの超巨大ロボット・グーゴルプレック
スに主人公機トリリオンが搭乗した場面だった。
 枢愕――スウガクというタイトル通り、作中の名前などは数学に因んでいる。

「何か琴線に触れたかな……?」

 ベッドに座って壁に背を預けつつ、一樹はちょっと引きながら呟いた。
 昼過ぎに暇という鈴音の意見に答え、パソコンHDDに保存してあったアニメを見せた。
そうしたら、完全に魅了されてしまった。特にロボットものが好きらしく、枢愕者トリリオンを
第一話から十三話まで休憩なしで見続けている。
 もう八時過ぎ。外は既に夜。初馬は夕食と風呂を済ませてしまった。少しだけ開いたカ

ーテンと窓の隙間から、黒い夜の闇が見える。

「ああっ、駄目なのです! 邪神なんかに負けちゃ駄目なのです、頑張るのです、トリリオ
ン! 頑張るので……。ッ、ついに来たのです! ついにグラハムの力が完全覚醒した
のです! これで逆転勝利決定なのです!」

 右腕を振り回しながら、興奮の絶叫を迸らせる鈴音。黒い髪が跳ねている。
 不定理の邪神との決闘は大気圏外へと移動していた。地球を背景に右腕を突き出すグ
ーゴルプレックス。白い輝きが右手から広がり、全身を包み込む。

「究極極限、我が力はグラハム枢の彼方まで――! 突き抜けろ、全ては我が力にて定
理となる。パーフェクト・プルーフゥゥゥゥゥゥゥ! なのです!」
665一尺三寸福ノ神 2/3:2008/11/20(木) 22:33:36 ID:Bh1E/m/D
 主人公の決め台詞と一緒に叫び、鈴音が右手を突き出す。
 最終必殺技が発動。閃光の槍と化したグーゴルプレックスが、邪神を一撃で貫き、続い
て押し寄せた光の奔流が、邪神の破片を跡形もなく消し飛ばす。さらには背後の月まで
突き刺さり、貫通していった。無駄に壮大な、だが魅力的な演出。

「完全勝利なのです!」

 左手を腰に当てて、高々と右腕を掲げている。
 画面が切り替わり、エンディングテーマ曲と一緒にエピローグが流れ始めた。

「本当にツボに嵌ったみたい……」

 画面に見入っている鈴音を眺めながら、一樹は眼鏡を動かす。
 鈴音の熱中度合いは普通ではない。枢愕者トリリオンは一種突き抜けた中毒性がある
ので、ハマる者は一発でハマってしまうようである。反面アンチも多いが。

「信者になったかも。うん、なったな」

 鈴音の反応を思い返しながら、一樹は冷めた気持ちで腕組みをした。ネット上で時々見
かける信者とアンチの激突を思い出しながら、鈴音が堕ちたことを確認する。
 エンディングを見終わってから、鈴音がくるりと振り返ってきた。

「一樹サマ」
「ダメ」

 内容も聞かずに、一樹は断る。次に何を言おうとしているのか、容易く想像できた。
 少しだけ開いた窓から、冷たい空気が流れてくる。
 鈴音は戸惑ったように左右を見やってから、小声で囁いた。

「ワタシ、まだ何も言ってないのです……」
「DVDボックス欲しいって言うんじゃない?」

 ぎくり、と鈴音の肩が跳ねる。図星だったらしい。福の神は人間の最新電気製品などを
知らないと思っていた。しかし、鈴音はDVDプレイヤーやパソコンなど、家電製品について
の基礎知識は持っているようである。
 考えを見透かされてたじろぎつつも、鈴音はぐっと手の平を握って主張した。

「大丈夫なのです。ワタシの力があれば、宝くじくらい当てられるのです! きっと」
666一尺三寸福ノ神 3/3:2008/11/20(木) 22:34:12 ID:Bh1E/m/D
「それは無理じゃないなか? 鈴音はそんな強い幸運を呼び込めるわけじゃないだろ。そ
れに、鈴音自身の意思で幸運を呼び込むと、妙な反動来るみたいだし……」

 眼鏡越しにジト目で見つめてみる。
 原理は知らないが、鈴音の意思で一樹に幸運を運ぶと、直後に何らかの反動が来るら
しい。朝の自動販売機の一件しか実例はないが、それだけで予想は付いた。

「それは……」

 自覚はあるらしい。鈴音は口元をもごもごと動かしつつ、視線を泳がせている。世の中
簡単に幸福が手に入るほど甘くはない。
 一樹はふっと短く嘆息し、両手を広げた。

「ぼくにもそんなお金ないし、諦めなさい」
「むー」

 頬を膨らませて、鈴音が不満を表現する。しかし、駄々を捏ねても意味がないことは理
解しているのだろう。我が儘っぽいが、聞き分けはいい。
 鈴音は拗ねたようにパソコンに向き直った。

「DVDボックスは諦めるのです。次のアニメを見せて欲しいのです……」
「ちょっと待ってくれ」

 一樹は手元のリモコンを持ち上げた。ボタン操作で保存ファイル一覧を表示させる。意
趣返しの意味ではないが、イタズラ心の赴くままにホラー調のアニメを選択する。

『蟲ガミ - 虚ろなるもの -』
「?」

 薄暗い画面に、鈴音が不思議そうに瞬きをしていた。
667名無しさん@ピンキー:2008/11/20(木) 22:39:18 ID:Bh1E/m/D
以上です

なお、作中のアニメの補足
トリリオン=trillion=1兆
グーゴル=googol=10^100
グーゴルプレックス=Googolplex=10^10^100
グラハム数:数学的に意味のある数で最も巨大な数字
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%8F%E3%83%A0%E6%95%B0
668名無しさん@ピンキー:2008/11/22(土) 18:24:09 ID:smrTz5eQ
本編よりも作中アニメに気合い入ってるな
669名無しさん@ピンキー:2008/11/25(火) 19:14:03 ID:/nxdsCCm
鈴音ってエルフ耳?
670名無しさん@ピンキー:2008/11/27(木) 23:34:55 ID:N1vfL4DF
エルフ耳は必須か否か?
671名無しさん@ピンキー:2008/11/28(金) 22:01:41 ID:ONSFCktr
点呼
あとこのスレに出てくる好きな子上げれ
672名無しさん@ピンキー:2008/11/28(金) 23:39:01 ID:3Ka6qggo
>>670
必須ではないけどあるとFB。
>>671
ノシ
好きな子…>>552の妖精さんも可愛いし、
レアも千影も可愛いし…迷うなw
673名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 17:31:00 ID:DnCJhNA4


敢えてミィを上げる
674名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 18:51:20 ID:9RHJbwO6

ユリナ先輩一筋!
675名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 20:46:41 ID:83DSrMnZ
まとめサイトはあるかな?
676名無しさん@ピンキー:2008/11/29(土) 21:41:37 ID:xZYLm8l2


シゥだな。フィフニルの。
677名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 00:20:05 ID:L3lnLidz
>>675
作者サイトはあるけどまとめサイトは無いっぽい
678名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 12:51:48 ID:i/8dvBvP
とりあえず、妖精エロSSを掲載してるサイトをまとめてみる?
次スレの>>2あたりにテンプレ追加してもいいかもしれん。
(あくまでもリンクフリーか、許可の取れたサイト限定で)
679名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 17:19:36 ID:L3lnLidz
>>678
2chに個人サイトを張るのはやめておいた方がいい。
リンクフリーとか言っても限度がある
680名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 04:09:42 ID:PjrflrxO
やるとしたら
「サイトマスターがこのスレッドに直接関わったことがあるサイト」
の中で許可の取れたサイトだけ乗せるとかだな
それでもちょっとあれだがまあマシにはなる
681名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 18:09:39 ID:BRDdatP6
ふたつしかないよな。
682名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 13:31:10 ID:DjNjcOmz
三つあったような気がしないでもない
683名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 22:10:58 ID:3B2JrfoE
どこ空
フィフニル

あとどこだろう?
684名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 21:50:40 ID:gR7Ym3yW
アドレスは貼らなくていいから、妖精ものを扱ってるHPを教えてほしい。
685名無しさん@ピンキー:2008/12/03(水) 22:05:01 ID:CcipaHou
このスレの住人系だと

空っぽ本棚
幻想字典

妖精を扱ってる文字系サイトだと

喫茶アルト(健全サイト)

俺が知ってるのはこれくらい
686名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 01:25:24 ID:/SFqKLih
3Mの宇宙人にもあるね。
687名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 11:17:52 ID:s/L21/9p
フィフニル更新されてた
688名無しさん@ピンキー:2008/12/05(金) 23:46:36 ID:GF5FF2fM
なんか、緑の子とばかり絡んでいるような気がする…
689名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 08:25:59 ID:n5CJisnN
緑の子はエロに対して積極的だからなぁ

他のももっと増やして、ってコメントにでも書けばいいんじゃね
690名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 13:55:06 ID:SoEaPUqS
そのうち赤い子の話も書くらしい
それよりちゃんと終わるのか
ちゃんと終われるのかが気になる

もう一人の書き手は自サイトの長編いつ終わるんだろ?
どっちが先に終わるか気になる
691名無しさん@ピンキー:2008/12/06(土) 18:26:12 ID:ZhQixfOY
>>685
喫茶アルト
けっこう面白かったよ。
紹介してくれてありがとう。


>>686
もうちょいヒント頼む。
692一尺三寸福ノ神:2008/12/07(日) 18:30:40 ID:E7w8Ksca
投下します
693一尺三寸福ノ神 1/3:2008/12/07(日) 18:31:43 ID:E7w8Ksca
>>664-666の続き

5話 おやすみの時間


 時間は夜の十一時前。
 就寝前のトイレを済ませて、一樹は自分の部屋へと戻った。見慣れた自分の部屋。鈴音
が来たこともあり、掃除をしておいたのできれいに片付いている。蛍光灯が部屋全体を白
く照らしていた。十月も半ばで空気は肌寒い。

「戻ったよ」
「一樹サマぁぁ……」

 布団から顔を出した鈴音が、情けない声を上げている。目元には涙が滲み、身体は震
えていて、誰が見ても怯えているのが分かった。

「一人は怖かったのですぅぅ」
「いや、ごめん。本当に。あんなに怖がるとは思わなかったから」

 苦笑しながら、一樹はそう言ってみる。興味本位でホラー系のアニメを見せてみたら、予
想以上に効いてしまった。それほど怖い展開ではないのだが、この怯えよう。見終わった
直後ほどではないものの、見ての通り今でも怖がっている。
 布団をかぶったまま、鈴音が怒ったように人差し指を向けてきた。

「一樹サマ! その言葉に全く反省の色を感じないのです! 笑いなら言っても説得力が
ないのです! いや、むしろワタシが怖がっているのを楽しんでいるのです。悪意を感じる
のです。あなたは、酷い人なの――」

 パッ。

 という音が部屋に響いた。木の爆ぜるような、ほんの微かな音。
 鈴音は無言のまま布団から飛び出し、転がるように床を走り抜ける。長い黒髪が尻尾の
ように揺れていた。そのまま跳び上がって、一樹の胸へとしがみつく。本人の主張とは反
対に、かなり機敏に動けるらしい。
 抱きついてきた鈴音が落ちないように、一樹は鈴音の背中を右腕で支える。人形のよう
に軽く小さく、しかし生き物の暖かさと柔らかさを持った身体。

「な、何なのですか! 今の音は……!」
「ただの家鳴りじゃない? そんなに怯えるとないと思うけど」

 冷静な意見を返しながら、一樹はベッドへと向かった。音からして普通の家鳴りだろう。
まるで見計らったように鳴るので怖いのだが、家鳴りというのはそんなものである。
694一尺三寸福ノ神 2/3:2008/12/07(日) 18:32:17 ID:E7w8Ksca
 ベッドに腰を下ろし、一樹は宥めるように鈴音の頭を撫でた。

「それより、鈴音も一応神様なんだし。何でお化けが怖いんだ? ぼくはそういう事はよく
知らないけど、祓ったりできるんじゃない?」
「ワタシは幽霊くらいは祓えるのです……。でも、怖いモノは怖いのです。生理的反応だか
ら仕方ないのです。そもそも、妖怪とか幽霊とかはあんな風に人を怖がらせたりしないの
です! 制作者はしっかりと情報収集をするべきなのです!」

 小さな手を握り締め、黒い眉毛をV字に傾け、半ばキレ気味に叫ぶ鈴音。恐怖を振り払
うために、アニメに八つ当たりしているらしい。気持ちは分からないでもない。
 だが、一樹はマイペースに鈴音をベッドに下ろしてから、立ち上がって右手を伸ばした。
蛍光灯から伸びる紐へと。

「じゃ、電気消すぞー」
「っ……待ってほしいのです。明かりはつけておいてほしいのです!」

 鈴音が挙手をしながら、要求を口にする。普段なら十時前には電気を消してしまうのだ
が、鈴音の頼みで就寝前の十一時まで付けっぱなしにいていた。

「駄目。それじゃ僕が眠れないって。明日は大学だから、十一時前には寝たいんだ。あん
まり我が儘言うなら、ぼくが眠れるまで怖い話呟き続けるけど……」
「それは嫌なのです! というか、何の嫌がらせなのですか!」

 一樹を指差しながら、鈴音が慌てる。頬を流れる一筋の汗。
 しかし、一樹は笑いながら言い返した。

「冗談だ。それより、ぼくと一緒に寝るってのは本気なのか? 他に寝るところもないし、鈴
音が寝られるような布団もないのは事実だけど」

 鈴音は一樹と一緒に寝ると昼間から言っている。主の側にいるのは守り神として義務ら
しい。追い払う理由もないので、何となく受け入れてしまった。
695一尺三寸福ノ神 3/3:2008/12/07(日) 18:33:06 ID:E7w8Ksca
「ワタシは一樹サマと一緒に寝るのです。でも、ワタシが寝ている時にえっちなことしようと
たら、厄招きをしてやるのです。ワタシの厄招きは強力なのです!」
「福の神が疫病神っぽい力を自慢するなって……」

 空笑いを浮かべながら、一樹は紐を引っ張った。蛍光灯の明かりが消え、部屋には豆
電球の明かりだけが残る。一気に暗くなったことで、びくりと身体を震わせる鈴音。

「あ、あの、一樹サマ……」

 鈴音が両手で自分の身体を抱き締めながら、肩を丸めて、暗くなった部屋にせわしなく
視線を向けていた。小動物を思わせる、どこかコミカルな仕草。

「寝る時はワタシをしっかり抱き締めていて欲しいのです。あと、お化けが出てきたらワタシ
の代わりに追い払って欲しいのです。普通の人間でも気合い入れて思い切り殴れば、幽
霊くらいは倒せるのです。だから大丈夫なのです」
「はいはい」

 一樹は頷きながら、左腕で鈴音を抱え上げた。右手で布団をどかしてからベッドの中へ
と潜り込み、布団を戻す。部屋の空気の肌寒さが消え、暖かな布団の温もりが身体を包
んだ。鈴音が潜っていたので、暖められているらしい。
 眼鏡を外して枕元に置いてから、鈴音を見やる。

「何だか抱き枕みたい」

 それは正直な感想だった。
 抱き枕としてはさすがに小さいし、無生物のように乱暴に扱えるものでもない。しかし、誰
かと一緒に寝ているという奇妙な安心感がある。
 見下ろすと、目を瞑った鈴音。一樹の呟きに反応することもなく、静かに寝息を立ててい
る。頬をつついてみても、反応がない。信じられない話だが、一分も経たずに寝入ってし
まった。寝付きは異様にいいらしい。

「ぼくも寝るか」

 一樹はそう独りごちて目蓋を下ろした。
696名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 18:35:23 ID:E7w8Ksca
以上です
697名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 20:39:02 ID:TqoCJGIy
>>696
Good job!
エロくは無いけどほのぼのしてて良い。
698名無しさん@ピンキー:2008/12/09(火) 06:23:56 ID:GurWwzpo
和む!、実に和む!
699名無しさん@ピンキー:2008/12/10(水) 11:40:36 ID:sGuZu+eH
わむ! みにわむ!
700名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 20:43:20 ID:Cmeab3aw
妖精を抱きしめて寝る
相手が人形サイズだから可能な芸当だな

この子は妖精じゃないけど
701名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 20:30:53 ID:6tjL+4sZ
鈴音に性的いたずらって展開は望めないかな
702名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 12:06:56 ID:jdEsWMed
保守

挙手
703名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 17:55:52 ID:YyR5SiMg
704名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 19:54:45 ID:tvNJTwiH
>>703
手がちっちゃいな。まさか・・・
705名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 22:24:53 ID:P8BEW0h8
ああ、ここにも妖精はいるんだよ……
706名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 12:38:57 ID:F9PJYOLJ
フィフニル更新きてたー
707名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 13:31:50 ID:0egwnEfx
もうこっちには戻ってこないのかな…?
あと>>552のシリーズ再開しないかな?
708名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 07:32:20 ID:8fxPWm6U
ほしゅ
709一尺三寸福ノ神 :2008/12/26(金) 23:55:27 ID:Vckfhlsd
投下します
710一尺三寸福ノ神 1/3:2008/12/26(金) 23:56:31 ID:Vckfhlsd
>>693-695の続き

6話 大学へ行こう


「大学は面白そうなのです〜」

 左腕に抱えた鈴音がゆらゆら両足を動かしている。
 朝八時半。涼しい空気が肌を撫でる。

「面白いかどうかは人によると思うよ。実習の入ってる講義は面白いけど二時間連続で数
学や物理の座学は……きついなぁ」

 一樹は空を見上げて苦笑した。
 青く晴れた空には、白い羽のような雲が浮かんでいる。絹雲とよばれる氷の結晶ででき
た雲。羽雲などと呼ばれることもあった。代表的な秋の雲である。

「難しそうなのです……。でも、一度見てみたいのです」

 講義内容を想像したのだろう。困惑と好奇心の混じった声音を口にする。しかし、好奇心
の方が勝っているだろう。
 鈴音の頭を撫でながら、一樹はぼんやりと独りごちた。

「でも、今日は珍しく電車の席に座れたなぁ。鈴音のおかげかな?」

 家から大学までは一時間弱。家から駅まで五分ほど。電車に乗って四十分。そこから、
大学まで徒歩で十分。朝の電車は混んでいて、座れる日は少ない。だが、今日はまるで用
意されたかのように空いた席があった。

「その通りなのです! 一樹サマに幸運を運ぶのは、ワタシのお仕事なのです!」

 自信たっぷりに言い切る鈴音。腕の中で胸を張っているのが分かる。
 一樹は眼鏡を直し、首を捻った。

「でも、あんまり反動来ないよね」

 鈴音が福を呼び込むと、直後に何かしらの反動がある。本人もそれは否定していない。
詳しいことはよく分からないが、不自然なことを行えば反動が来るのは当然らしい。
 しかし、電車に乗っている間も降りてからもおかしなことは無かった。
 得意げに鈴音が見上げてくる。

「一樹サマが電車の席に座ることは、不自然なことではないのです。だから、ワタシの福招
きで座ることができたのです。これが福の神の力なのです!」
711一尺三寸福ノ神 2/3:2008/12/26(金) 23:57:06 ID:Vckfhlsd
 指を動かしながら、黒い瞳に自信の光を灯していた。得意げに持ち上げられた口元。上
手く福を招け、しかもそのことを一樹に自慢できるので、上機嫌らしい。

「でも、毎日は無理なんだろ?」
「うー」

 得意げな顔を曇らせ、鈴音は眉を傾けた。予想通りである。毎日確実に座れるような状
況を作り出すことはできない。
 長い黒髪を指で弄りながら、言い訳っぽく口を動かす。

「……二日に一回くらいなら多分反動はないと思うのです」
「ふむ……」

 一樹は視線を持ち上げた。眼鏡の縁に屈折した光に、目蓋を少し下げる。
 自動販売機の当りは、機械差もあるがおおよそ1%前後。電車に座れる確率は大体25%。
1%の可能性を引き出した場合は1%の確率に相当する反動があり、25%では反動
が出ない。しかし、25%が二日連続では6%強。それには反動が現れる。

「何を考えてるのですか、一樹サマ?」
「ん?」

 一樹は鈴音に視線を戻した。
 抱きかかえられたまま、頬に冷や汗を垂らしながら鈴音が見上げてきている。なにやら
戦いたような感情が見て取れた。

「何だか凄い顔していたのです……」
「あ、ごめん」

 誤魔化すように笑いながら、一樹はぽんぽんと鈴音の頭の叩いた。

「ぼくって計算癖があるんだ。確率とか言われると、すぐに計算しちゃう……。数学系は滅
茶苦茶強いけどね。でも、計算中の顔は人に見られたくない……」

 反射的計算、と言うべきなのだろうか?
 今回のような簡単なものならさほどでもないが、複雑なものを言われるとその計算にの
めり込むように集中してしまう。その時の自分は殺気立っているらしい。怖いと言われたこ
とも何度かある。
 一樹は話題を変えるように咳払いをしてから、

「ところで、鈴音ってぼく以外の人に見えるかな? そういう人間じゃないのが見えるような
人に何人か心当たりあるんだけど」
「うーん」
712一尺三寸福ノ神 3/3:2008/12/26(金) 23:57:40 ID:Vckfhlsd
 鈴音は長い黒髪を指で梳いてから、

「普通の霊感持ちには見えないのです。でも、ワタシがここにいるという存在は感じ取られ
てしまうのです。でも、高位の守護霊が憑いているように見えるはずなのです。怪しいもの
には見えないはずなのです」
「一応、僕が人形みたいな女の子抱えてるってのはバレないってことか……」

 今のところは、一樹が鈴音を抱えていることに気づいている人はいない。すれ違う人も何
を気にするでもなく、通り過ぎていく。
 鈴音の姿は眼に入っていない。鈴音との会話も聞こえていない。一樹の姿は認識できて
いるようだが、傍目には大学生が歩いているようにしか見えていないようだった。

「でも、術師には見えるのです」

 鈴音が続ける。

「術師?」
「術が使える人間のことなのです……と、一般人の一樹サマにはあまり詳しく話してはいけ
ないのです。ごめんなさいなのです」

 一樹の問いに、鈴音は済まなそうに答えた。一般人には伝えてはいけないこともあるの
だろう。それを無理に聞くほど、無節操なわけではない。
 しかし、気になることはあった。術師。霊感持ちよりも上のような人間。

「もしかして……あの三人か?」
「三人?」

 訝る鈴音に、一樹は頷いた。

「いや、うちのサークル内に二人いるんだ、そういうの……。あと、一人いる。ぼくの見立て
じゃ、その三人がその術師だと思う。見つかったらどうしよう?」

 眉根を寄せながら、考える。仮に心当たりのある三人が術師としても、何かされるとは思
えない。だが、完全に無視してくれるとは思えない。
 しかし、鈴音は自信たっぷりに言い切った。

「大丈夫なのです。福の神のワタシを祓おうとする人間はいないと思うのです。いざとなっ
たらワタシが何とかするのです。だから、一樹サマが心配することではないのです」
「ありがと」

 一樹は苦笑いをしながら鈴音の頭を撫でた。
713名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 23:58:11 ID:Vckfhlsd
以上です
71435:2008/12/27(土) 07:20:00 ID:5stI3oQj
714
715名無しさん@ピンキー:2008/12/27(土) 13:12:19 ID:qQoiRPDK
>>713
いつもご苦労様ですGJ
716名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 02:04:07 ID:PYg11Wob
GJ
数学弱いんで確率の話はよくわからんかった
717名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 03:36:44 ID:9ZODR1YD
1/4 × 1/4 = 1/16 = 6.25%
718名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 17:13:21 ID:PYg11Wob
>>717
ありがとう
719名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 18:47:47 ID:JSEwa1O2
保守
720名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 20:36:41 ID:HWs3PgHP
「馬鹿の二乗」の続き来ないかなぁ
721前23:2009/01/06(火) 23:18:59 ID:R1F9F07O
ごぶさたです。
千影の年末年始の話を投下します。後半はそのうち投下の予定。

鬼畜とHP、少し進めています。
722千影 1/3:2009/01/06(火) 23:20:57 ID:R1F9F07O
「ごーしゅーじん! 起きてください!」
「……うぇ」

今回の年末年始休みは散々なものだった。

少し遅い御用納めをした帰り道、千影が「東京、行きましょうよ!」と言って渡してきた2枚の紙切れ。
行きは価格の安い、帰りは高級なバスのチケット。
それが既成事実となり、"逆三角形の建物に50万人近くの男女が集まる例のイベント"に付き合わされた。



千影は、その会場で結界をほどく。
本来常人には見えない千影の姿。結界がなくなるということは、千影は量子化され可視化される。
前回と違い、量子化された際に体格を130センチ近くまで膨らませることで"参加者"となったのだ。
千影自身、それを"再構成"と呼んでいたが、長い間大きな体格を保つことができなかった。
しかし再構成の不安定さを秋までに克服、今や2日間ぶっ通しでもため息一つつかずに体格を保つ妖精と化した。

ごっそり命を削った気がする。
……すし詰めの始発電車、男津波に素直におしゃべりできなくなり、スロープの下で夕方まで待ち続け、
翌日はシャッターの前で極寒に耐え、ようやく千影のスパルタメニューは終わりを告げた。
千影は"島中を回ってきた"と言うが、初日は「俺に丸投げしたしたのではないか」と疑っていた。

しかし最終日に合流した時、千影のボストンバッグは大きい千影よりも重くなっていた。
千影もまた、戦いだったことはその荷物が物語っていた。



「……寝ぼけてます?」
「昨日は笑っていけない何とかとアニソン何とかを同時に視聴して年越しただろうに……全身だるいんだよ……」
「じゃあ、治癒の術式でも書きましょうか?」
「……頼む」

術式ってなんだっけ、と思いながら空返事をした。
千影は小さな躰でボールペンを抱え、慣れた手つきでメモに文字を書き進める。
"高天原に神坐ります――"見慣れない言葉が踊るように並んでいた。

睡魔と戦いながら、千影の姿を見据えた。
相変わらず幼さしか感じない顔つき、気の弱そうな、おっとりとした瞳。
しっかり手入れされた黒く長い髪を二つに結っていた。
学校制服風のブレザー、そして短めのスカートとニーソックスの間から覗く絶対領域。
千影の服は端切れなどを使って俺が作るのだが、この制服上下は自分の制服を丸々1セット使って制作した。
ここまでで2週間を潰し、裏地を高級絹でごわつかないように補強してプラス4日、渾身の一作だ。

「――できました」
「で、この紙をどうするの?」
「書き込んだ言葉の言霊(ことたま)にわたしの術式で力を与えて、ご主人が力を受け取る。簡単ですよ。
今回書いたのは天津祝詞(あまつのりと)っていうものです」
「わかりづらい」
「つまりは書いた言葉にわたしの想いを乗せる……それが術式です」
「ほぅ」

なんとなくわかった。呪文を書いて詠唱してってことか。

「では――」

千影はしゃがんで、祝詞の書かれた紙に両手をついた。
ぽっ、と文字に光が宿る。少し、心がむずがゆい。
「(――――)」
7232/3:2009/01/06(火) 23:22:10 ID:R1F9F07O
何かを唱えているが、俺には聞き取れなかった。

「……5秒だけ、目をつむって下さい」

千影の言葉に促され、目を閉じる。
布団の温度以外の温もりを感じた。
内側から、身体が温められる――先ほどのむずがゆさはここから来ていたらしい。

「――終わりました」
「ありがとう……!?」

今まで起きられなかったのが嘘のようだった。
スッキリ目覚めた時の朝のような感覚。頭痛もだるさも、完全になくなっている。

「まあ、こんな感じです。キリストの"最後の審判"からゲームの歌まで、意味を持った詞は術式にできますよ」
「なんで、ああいう難しい詞を?」
「……術式は小さな小さな天変地異です。確かに詞なら大丈夫なんですが、
 何かの信仰に基づいたものならよりストレートな天変地異へのファクターになるので」
「じゃあ、例えば」

居間に置いてあるノートパソコンで、

"サンマ!サンマ!サンマ!サンマぁぁああああぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!サンマサンマサンマぁああぁあぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!サンマの焼けるにおいをクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! "

このような情熱的な羅列が15行ほど続く文章を千影に見せた。


「……な、なんですか、この"!"の多い文章は……」
「意味を持った詞なら、大丈夫と聞いたから」
「え、えーと、ですね、わたしにも、無理っていうものがありまして……」

いつもは感情を比較的表に出さない千影が、あたふたしている。
というか、なんで俺に蔑みの視線を向けるんだ。魚萌えが苦手なのか。

「どうして、できないのか。やろうとしないだけなんじゃないか?」
「いや、そうじゃ、なくて……術式は自分の想いを乗せられなければ、ほとんど効果を成さないんです」
「つまり、パッと見ただけの詞では意味がない、と」
「……そんな感じです」

……とりあえず、千影は術式という魔法じみたものを使用できる。

──

「そういえばさ、千影」
「はい?」
「なんで、朝起こしたの?」
「ああ、それは」

千影は先ほどのノートパソコンの上に座り、俺の親指サイズのおにぎりを食べつつネットサーフィンを楽しんでいた。
こっちの友達は少ないから、情報収集くらいしかやることがないらしい。

「初詣、ですよ」

振り向いて、PCの時計を指さし笑った千影に、心を奪われる。

「俺の友達にこんな時間に車を出してくれる奴はいないぞ」
「やだなぁ、人に頼ろうなんて思ってませんよ。ご主人、ちょっと耳貸してください」
7243/3:2009/01/06(火) 23:23:40 ID:R1F9F07O
「自転車で、ちょっとそこまでお願いできればと」

そう、艶めいた声で言われた。

千影は、ちょっとした外出も一苦労しているようだった。
近所のスーパーまでは一人で行けても、その先は俺の付き添いが必要になる。
いくら再構成があっても、再構成は魂の組成に影響するためにあまり使いたがらない。
冬の有明で無理をしたのは、何か理由があったのだろう。

「その辺って、どの辺? この辺、神社とかないよ」
「──まで乗せてくれれば、大丈夫ですから。日の出までに」
「間に合う、のか?」
「間に合わせてくださいっ♪」

自宅から40キロほど先に、確かに神社がある。
しかし、バイクは持ち合わせていない。あるのは自転車だけだ。
昔からのママチャリと、先々月結婚を理由に退職した後輩からもらった
「マウンテンバイク」というものだが、性能には不明な点が多い。

「大丈夫ですよ、後輩さんからもらった自転車、あれなら。
 間に合ったら、なんでも好きなことしていいですから」

千影がそういう時は、俺には無理なことだ。
昨年5月の出来事があってから、言葉で言えないような小さな壁が生まれている。

「わかったよ、行けばいんでしょ、行けば……」

主人と召使いの関係のはずなのに、時々主従が逆転する。
千影の願いをむげにするわけにはいかない、という考えが根底にあった。
重めのコートを着込み、懐に千影が入る。

「よろしく、です」

──
725名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 23:39:24 ID:flefdw7g
久しぶり〜

HP?
作るのか?
726名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 23:53:59 ID:X7vVVkq4
乙ー
続きが気になるし、後半にも期待

>振り向いて、PCの時計を指さし笑った千影
うん、なんか見えた 気がした
727名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 11:19:06 ID:9abbvlNM
GJ!久し振りですね
しかしサンマワロタw
728名無しさん@ピンキー:2009/01/07(水) 18:19:20 ID:6cK6KZd8
サンマコピペの全文が見たい
729一尺三寸福ノ神:2009/01/08(木) 23:43:48 ID:JSRsbBdi
投下します
730一尺三寸福ノ神 1/3:2009/01/08(木) 23:45:34 ID:JSRsbBdi
>>710-712の続き

7話 予感は的中する

「うー。あー」

 机の上に仰向けに寝転がった鈴音が、苦しげなうめき声を上げている。
 大学の図書館の隅っこ。鈴音を机に寝かせたまま、一樹はレポート用紙にシャーペンを
走らせていた。早めに食事を終わらせた昼休み。講義の宿題として出された計算問題を
片付けている最中である。宿題はその日のうちに片付けることにしていた。
 手を止めて、鈴音を見やる。顔色が悪く、目の焦点も合っていない。

「大丈夫か?」
「むー。多分、大丈夫なのです……。さっきよりは気分が落ち着いたのです……。でも、ま
だ気持ち悪いのです。あの先生の言っていることは意味不明なのです。知恵熱が出てしま
いそうなのです」

 ごろりと寝返りを打ち、うつ伏せになる鈴音。両手両足を机の上に投げ出し、脱力してい
る。まるで長距離マラソンをした後のように。しばらくはこのままだろう。
 一時限目、二時限目と続けて物理の講義だった。内容は熱力学。難解な講義内容に当
てられてしまったらしい。知恵熱の誤用には触れないでおく。

「まだ始まったばかりだから、そんなに難しいことは言ってないと思うけどね。絶対温度と体
積と圧力の関係式ボイル・シャルルの法則って基礎的な――」
「木犀型斬〈ブクティエール〉シュート !」

 ペシッ。

 と頬を蹴られて、一樹は口を閉じた。
 うつぶせの体勢から身体を跳ね上げ逆立ち。前進を伸ばして、一樹の顔面へと両足を
叩き付ける。今までぐったりしていたとは思えない挙動だった。

「白、か……」

 頬を撫でつつ、眼鏡を直す。スカートのような行灯袴でこのような蹴りを放つものではな
い。その場の勢いに任せて放ったので、本人に自覚はないようだが。

「なぜ、そこでワタシの頭痛の原因を思い返すのですか!」

 机の上に仁王立ちし、腰に左手を当て、右手の指先を一樹に向ける。目端をつり上げ、
額に怒りのマークを浮かべていた。鈴音にとって大学生レベルの物理はかなり苦痛のよう
である。最初は興味津々だったが、内容が分からず三十分でダウン。
731一尺三寸福ノ神 2/3:2009/01/08(木) 23:46:22 ID:JSRsbBdi
 しかし、一樹はレポート用紙を示しながら、

「面白いじゃない、物理って」
「あう〜」

 途端萎れたようにその場に崩れ落ち、机に突っ伏す。お守りが頭の傍らに落ちた。
 鈴音の頭は大体小学生高学年レベルのようである。ただ、勉強は苦手らしい。そこに大
学生レベルの熱力学、午前中の三時間。見ての通りの有様だった。

「小森」

 声をかけられ、視線を移す。
 見慣れた男が立っていた。身長百七十センチくらいの中肉中背。目付きはやや鋭いが、
そこはかとなく気の弱そうな面持ち。深緑のシャツに白いカーディガン、カーゴパンツと黒い
スニーカーという格好。普通の青年を装うことには成功している。

「樫切か。何か用? 図書館に来るなんて珍しいけど」

 漫研仲間の樫切浩介だった。ただ、昼休みは漫研の部室に居ることが多い。図書館に
入ってくるのは珍しいことである。

「用事、というか……。この子」

 と、浩介は迷うことなく鈴音を指差した。
 ぐったりしたままの鈴音。指を向けられたことに気づいて視線を上げる。
 目蓋を少し動かしてから、、一樹は浩介を見つめた。鈴音が言っていた術師である可能
性がある一人。特別驚くようなことではない。

「見えるのか、鈴音が?」
「ああ。身長四十センチくらいで、巫女装束着て首からお守り下げてる生意気そうな女の子。
アホ毛があって、もみあげに白い布巻いている。今は机に突っ伏してる。にしても、小さい相
棒連れ歩くの最近流行ってるのか……?」

 浩介は鈴音の特徴を正確に言い当てた。実際に見えているということを証明したのであ
る。鈴音が言っていた術師であることは確実だろう。
 鈴音が浩介を見上げたまま、訝しげに眉を傾けた。

「あなた、化生の類なのですか? 何だか人間とは――」
「お願いだから、俺の大学生生活を壊すようなことは言わないで」

 静かに、だが必死な声音で言葉を遮る浩介。口元がひきつっている。何か事情があるら
しい。本人は答えたくないようなので、訊くこももない。
732一尺三寸福ノ神 3/3:2009/01/08(木) 23:47:30 ID:JSRsbBdi
 眼鏡を動かし、一樹は第一に考えていた疑問をぶつけた。

「この子福の神って自称してるけど、何者か分かるか? 樫切は術師なんだろ?」
「いや、全然分からん。俺の家系、そっち系の仕事の下っ端だし、俺は血が薄れて一族か
ら外れちゃってるから、そういう詳しいことは全く分からん」

 ぶんぶんと右手を振る浩介。
 いくつか嘘をついている――。一樹は表情に出さず、そう判断した。もっとも、面倒事を
避けるために言っているようなので、追求しても意味はないだろう。
 鈴音がその場に起き上がり、机の上に腰を下ろした。胸元に落ちたお守りを直し、髪の
毛を梳いてから、茶色い瞳に好奇心を灯して浩介を見つめる。

「でも、あなたは結構強い力を感じるのです。それに力の質も高いのです。何か高貴な方
なのですか? 全くそうは見えないのですけど……。不思議な人なのです」
「頼むから、黙ってて。お願い。こっちに複雑な事情があるから」

 両手を顔の前で合わせ、必死に頭を下げる浩介。一樹には分からないが鈴音には分か
ることがある。それは、浩介にとってかなり触れて欲しくない事のようだった。
 その態度に、一樹は率直に結論を出す。

「樫切じゃ当てにならないってことかな?」
「うん。そういうこと」

 あっさり肯定する浩介。一樹から視線を逸らしつつ、間を取るようにやや長めの黒髪を
手で払う。一呼吸置いてから視線を戻し、訊いてきた。確認するように。

「お前のことだから術師の残りも見当付けてるだろ?」
「うん」

 一樹は頷いた。名前は出さない方がいいだろう。
 浩介は何度か首を縦に動かしてから、右手を横に振った。

「それは多分当りだ。そっちには話し付けとくから、詳しいことは向こうから聞いてくれ。俺
はこういうの苦手だから。じゃ、俺はここで。放課後、漫研でな〜」

 口早にそう言い終わるなり、踵を返して足早にその場を後にする。
 その後ろ姿を見ながら、鈴音が一言。

「変な人なのです」
733名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 23:49:28 ID:JSRsbBdi
以上です

HPに乗せてる小説から登場人物出すのは躊躇しましたが、
他に適役もいないのでご容赦下さい。

>>千影の人
お久しぶりです。
これで、スレに書き手が増えた…
他の人も戻って来ますように。
734前23:2009/01/09(金) 17:12:20 ID:mYC0Nj+j
年末ネタ後編、投下します。エロありません。
735千影 1/4:2009/01/09(金) 17:14:12 ID:mYC0Nj+j
夜空にはたくさんの星。
冬の星座も星の名前も知らないが、この空は気分を落ち着かせてくれる。

「ぜぇ……ぜぇ……間に合った……」
「リミットブレイクしてましたね……特にあの下り坂で」

ご主人は満身創痍というような感じでした。コートの中が熱くなり、ずっとハンドルについたカゴに座っていました。
坂で60キロ近いスピードを出した時はわたしも息ができなくなって。

「どうだ、日の出前に間に合ったぞ……」
「お、おつかれさまです。……ここ、人いないみたいなので、結界切っても大丈夫ですか」
「別に構わん」

ちょうどいいところに自販機があった気がします。そこで缶コーヒーでも差し入れましょう。

ご主人が自転車に鍵をかけている間に、ご主人の後ろに回り込んで懐から術式の書かれたメモ紙を取り出しました。
"Reconstruction"から始まる、核の再構成に必要な40行ほどの命令文がびっしり書かれたものです。

術式の力を高めるには信仰やそれに類するものが「感情」が強い分適していること、
力を安定させるにはプログラミング言語という英文のつづりを使ったほうが「律している」……
ということに秋頃気づき、核にかかる負担も減ってようやく寿命を削るというジレンマから解放された次第です。

「(とりあえず、129cmくらいで……)」

再構成を始める前に、使い捨ての仮結界を張ります。ご主人でも干渉ができなくなる、白色をしたベール。
開始。既存の躰を核に戻します。力が入りません。核の力関係を改竄して、骨組みをつくりました。
この骨組みなら安定すると思います。その上に躰を構築して、仮結界を破壊。
これで、再構成は終わりです。

仮結界を張るのは、核の状態で触れられたらその対象を飲み込んでしまうからです。
なにより、核が干渉されて不安定になればわたしの存在が危うくなってしまうので……

「(寒い……ですね)」

その上、羽がないわけで少し不便です。

「ご主人、そこの自販機まで行ってきます」
「助かる。俺は温かいコーヒーで──って」

この後、人前ではしたない姿をするな、とご主人にこっぴどくしかられた。

──

大きくなった千影にコートを着せる。結界解除が再構成のこととは思わなかった。
しかし、大きい千影の裸を初めて見た気がする。全裸はそそらない、半脱ぎがいちば……俺はロリコンじゃないぞ。

二人で、適当なベンチに腰掛ける。

「……あんま、無理するなよ」
「無理なんて、してませんから」

「寒くない?」
736千影 2/4:2009/01/09(金) 17:15:21 ID:mYC0Nj+j
「ちょっと、寒いです」
「これ飲んでも?」

飲みかけの缶コーヒーを千影に渡す。
間接キッス? ああ、そういえばそうだった。

「んぐっ……やっぱり、変わりません」

肩が、ふるふると震えている。
千影は寒さに弱い。夜明け前のこの寒さでは、身体に堪えるだろう。

「寒いの、苦手だよな?」
「ええ」
「何も用意せず再構成、自体が無理をしてるように思えるが」
「まあ、無理、には、なりますね。身体、冷えますから」
「俺としては、別に戻ってくれてもかまわん。俺自身、今は暑くてもそのうち寒くなる」
「短いスパンで再構成しちゃうと、せっかく安定させた組成がまた不安定になっちゃうんですよね」

説明口調の千影を見ると、何故か安心する。
俺自身が感情で走りやすいからなのかもしれないが、千影には常に感謝が絶えない。

「やっぱり、千影……妖精の身体って難儀なんだな」
「そのうち、マニュアルでも作りましょうか? わたしの種族のものを」
「頼む」

少しだけ、空が明るい。
日の出はもうすぐだ。このベンチは、ちゃんと沖合が見えるよう東向きに設置されている。


「はぁ……」

千影の出したため息が白く染まる。
無言で見つめ合う時間もいとおしい。どうして、世の中は妖精と結婚できないのか。

「えーと、ところで、なんですが」
「どうした慌てふためいて」
「わたし、なんでも好きなことしていいって、言いました」
「そういえば、そうだったな。間に合ったし」
「……どうぞ」

四肢から力を抜いた千影。
ふと、頭の中に選択肢が現れた。

rァ そう かんけいないね
   いうことをきいてくれ たのむ!
   SATSUGAIせよ

──
737千影 3/4:2009/01/09(金) 17:16:11 ID:mYC0Nj+j
「そう かんけいないね」
「!?」

「さっき、寒いって言ってただろ。それ以上、無理はよせ」
「じゃあ、他には……」
「ちっちゃい千影ならやりたいことは一杯あるんだが」
「なら、わたし、小さく」
「そんなに気を張るな」

「わっ」

コートごと、千影を抱き寄せた。
心なしか、千影の顔が赤らんでいるように見える。

「……こういうのって、まだ、恥ずかしいです。なんだか、胸の奥が、騒いじゃって」
「俺も、緊張してるんだよ。一応」
「そうには、見えないです」
「……これでも、信じない?」

千影の左手を、俺の胸に当てさせる。

「……どきどき、してるんですね」
「緊張、っていうやつだ。こんな大胆なこと、中々できない」
「でも、これ、安心します……わたしのも、さわって、みますか?」
「コートの下は裸じゃなかったのか?」
「ええ……それ以外、変なこと、しないでくれるって、約束してくれるなら」

無言でコートの中に手を入れ、胸に手を当てる。ひぅっ、という小さな叫びが漏れる。
とても温かい。変な気持ちなんて、起こらなかった。千影も、恍惚しきった顔をしている。

「……ご主人の手、つめたいですね」
「まあな。俺も寒い。特に指先なんて、すぐに冷えてしまう」
「人は、心臓から遠いところは、つめたい……」
「ひとつ聞きたい」
「なんですか?」

少し、手の感覚に違和感を感じた。
別に自分の手のことではない。千影の胸についてだ。
……平べったいのは昔から承知している。そうではなく……


「心拍が、ないぞ」
「……」

心が急に冷めていく。昔から承知していたのではなかったのか?
千影は妖精だ。大きくなろうとも、それは仮初めの姿でしかない。
人間と妖精には、大きな隔たりがある。

「……まあ、わたしの姿は核の上に組み立てられただけの、人形みたいな、ものです」
「じゃあ、胸の奥がどうこうとか、そういうのは……」
「全部、嘘です」

「わたしのこと、話すと嫌われそうですが……」
「今なら冷静に受け取れそうだ。頼む」
738千影 4/4:2009/01/09(金) 17:17:18 ID:mYC0Nj+j
「物体として、確かにわたしの躰は存在できています。
 ですが、それは人間と円滑なコミュニケーションをとれるように用意されただけに過ぎません。
 躰の中に核があって、その核が人間の全ての器官の役割をしてるんです。
 ただ、外見を作る器官と骨、筋肉、神経などは核から出ていて、それらは血をもとに動くのではなく
 核の作る”活力”をもとに動いているだけです。そして、核は安定した実体がありません。
 人の言う「心臓」の役割を核が担っているから、心拍がない──わたしの種族は、そんな感じです」

恋というものを知らない。のではなく、「躰の仕組み上、恋ができないから知らない」。

「核を潰されない限りは、生き続けられると」
「そういうことです。でも、核は自らをすり減らして役割を全うするので、当然ですが
 いつかは消えてなくなってしまいます。わたしでも、例外じゃないですよ」
「そう、なのか……」
「核を元に動くということは、踏みつぶされたりしても再生して生き続けられるってことです。
 でも、再生すると核には再構成の数倍以上の負荷がかかってしまって……
 寿命が、ごっそり半年くらい削れてしまうんです」

「でも、わたしには心があります。それだけは、絶対に嘘じゃないです。
 心があるからこそ、ご主人を慕って、時には怖くなって、時にはいとおしく、なれたんだと思います」

その後千影は、わたしもずっとご主人のことは好きです、いとしいです、と言ってくれた。

──

「そろそろ、日の出だな」
「……長かった、ですね」
「話してたら、もう1時間も経ったのか」

もう空は真っ赤になっている。あと数分も経てば太陽が昇る。

「ご主人、わたしの寿命、どれくらいに見えますか?」
「うーむ、それは難しい質問だ。千影の種族の場合、平均してどれくらいなんだ?」
「こっち換算で、120年くらいです」
「……なら、俺が死んだ後も生き続けるな」

「残念ですが、その答えは違います。
 わたしがご主人と出会うまで、結構長い間、旅をしてました」
「じゃあ、正解は……」
「短く見積もって、──」
「な……!?」


急に、目の前が暗くなる。

「でも、核が消えてなくなるだけ、ですから、弱るのは最期の3日くらいだけですよ」
「……」
「もっと早く、言った方がよかったかもしれません。
 でも、わたしは、最期まで、誠心誠意、召使いしますから」

上がってきた初日の出の色は、憂鬱な青色に見えた。

──年末ネタ おわり──
739前23:2009/01/09(金) 17:19:55 ID:mYC0Nj+j
以上です。
あと、誤字訂正を……orz

×年末
○年始
740名無しさん@ピンキー:2009/01/11(日) 09:21:28 ID:2PHZqd+p
両方GJ
741前23:2009/01/11(日) 23:24:14 ID:rzrXZ/mE
鬼畜ってどういうものかと考えてみて、試しに書いたものを投下します。
数行だけですが、猟奇的な表現があります。
千影のイメージを崩したくない方は「前23」でNG登録してください。
742前23 1/1:2009/01/11(日) 23:26:37 ID:rzrXZ/mE
「……ご主人なんて、大嫌い……です……」

吐き捨てられた言葉は、独り言のように思えた。
それでも、千影は俺のことをご主人と言う。

流れた涙で、いつものブレザーが濡れていた。

こうすれば、嫌われることはわかっていた。
もう、今までの関係には戻れない。

引きちぎった千影の羽が、俺の歪んだ欲望を浮き彫りにしていた。

-Wrong side-

「……」

俺だって、無為に千影を傷つけたかったわけではない。

社長直々にクビを言い渡された。とんでもない理由だった。
"酒を飲めない奴はうちの社員じゃない"と。

「……どうして、こんなこと、するんですか……
 わたし、ちょっと、わからないです」

酔った状態で自転車に乗ることはできない。
その上に、酒に弱い。一杯で吐くほどの下戸であることは説明していた。

「ああ、仕事がなくなったからな」

仕事がないなら、やることは千影と一緒にいるだけ。

「えっ!?」
「……千影は何も悪くないよ」
「じゃあ、どうして……」

"無性に千影を傷つけたいから"
という理由を言えるほど、悪い人間になることはできなかった。

「……」
「ご、ご主人、なにを……」

右手にはディスクグラインダー。
以前、金属の加工用に用意していたものだ。怯える千影を左手で制して、グラインダーのスイッチを入れる。
ギュイイイインという小型高トルクモーター独特の音で、部屋が満たされる。

「好きなだけ、嫌いになれ」
「い、いや、やめて、くだ──」


回転する砥石を千影の右肩にあてがう。
モーターの音が低くなる。皮膚の削れる柔らかい音が響く。

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

断末魔と同時に、左手の中でもがく千影。
ある程度まで深くなると、少し硬い物に当たる。

既に砥石が真っ赤に染まっていた。
硬い感覚も数秒でなくなり、機械音が再び高くなった。
743前23:2009/01/11(日) 23:29:58 ID:rzrXZ/mE
今のところはこれだけです。
胸が苦しくてまったく筆が進みません……orz

あと、サイトみたいな物作りました。
ttp://f903i.orz.hm/23/index.html 3-2以降は近いうちにまとめます。
744名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 17:42:00 ID:1/bELmYJ
モニタの前の俺の胸も苦しいから安心汁
745名無しさん@ピンキー:2009/01/12(月) 18:26:30 ID:kdIX7zvF
急激な鬱展開?
746名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 19:05:56 ID:wvCbjQsE
乙、というか千影死亡END!?
747名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 19:33:45 ID:Trt6Rj4G
試しにって書いてあるじゃない
748名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 20:15:37 ID:xFoiQNpF
読んでて辛くなった…
世知辛い今日この頃、エロパロくらいはハッピーエンドがいいな…
でも出来は流石!GJです。
749名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 22:27:29 ID:TpWXSAQt
一方相変わらずの脳天気な日常を突き進む福の神
750名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 10:24:26 ID:3ew2jyjn
>>747
いや、寿命云々の方の話
751名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 23:01:24 ID:RT7VE86c
某シス○リの千影を連想してしまう漏れ…

752名無しさん@ピンキー:2009/01/16(金) 23:09:48 ID:qH0EQKRm
>>751
かぶってる事に後から気づいた次第でございまして…ごめんなさい
753名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 01:42:16 ID:ZFNINqgQ
>>752
ぃぁ、あのキャラのままで子人&妖精化した姿を連想してるので…(汗

そんなのが一人欲しいと思ったのは秘m;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
754名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 07:58:01 ID:wpmLCSvN
兄くん、と呼んでくれる妖精か
それはそれでかなりOK
755名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 12:09:20 ID:rHMRaijP
14人(13妹+じいやさん)の妖精さん…
ハァハァ
756名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 22:54:50 ID:wpmLCSvN
大昔、12妹の動く小さな人形と一緒に暮らす男の話を書こうとしたことがある。
もう五年以上も昔の話だ
757名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 20:13:18 ID:gsbHuTg3
今書いちゃいなよ
758名無しさん@ピンキー:2009/01/19(月) 20:14:29 ID:iO54yosK
今書いてるのあるから無理
759一尺三寸福ノ神:2009/01/20(火) 22:46:30 ID:I9nHVOyd
こんばんは、投下します
760一尺三寸福ノ神 1/3:2009/01/20(火) 22:53:25 ID:I9nHVOyd
>>730-732の続き

8話 約束する二人

 鈴音は準五級位の福の神で、お守りを依代とした特殊な式神の一種らしい。
 もっとも、神としてのランクは低く、力は大したことない。しかし、幸運を運ぶ力は本物であ
り、強力な守護霊だと思えばおおむね正しい解釈だとか。大事に扱っていると、そのうち成
長して力も強くなるらしい。

「分かるような、分からないような……」

 眼鏡を動かし、視線を辺りに向ける。
 まばらに人が見える駅のホーム。一樹はホーム端のベンチに座ったまま、は言われたこ
とを思い返していた。いくつか腑に落ちない点はあったが、気にするほどでもない。鈴音の
正体が分かった事と昼間の預け先が出来た事、このふたつで十分な収穫である。
 詳しいことは後日話すので、今日は早めに帰れと言われた。六時前まで絵を描いていく
つもりだったが、言われた通り早めに帰宅している。
 一樹は視線を左に向けた。

「嗚呼、神様。ワタシは今とっても幸せなのです。このまま翼を生やしてお空の彼方まで飛
んでいきそうな気持ちなのです……。生きててよかったのです」

 プラスチックのケースを抱き締めたまま、鈴音が誰へと無く感謝の言葉を呟いている。目
が虚ろで、頬もほんのり赤い。頭の回りに花でも飛んでいそうな、恍惚の表情だった。どこ
の神様に感謝しているのかは考えないことにしておく。

「鈴音へのプレゼント、ねぇ……」

 抱き締めているのは、枢愕者トリリオンのトランプだった。キャラクターグッズである。帰り
際におみやげにと渡されたものだった。普通のカードにキャラクターを印刷したもので、価
格は千五百円。良心的かぼったくりかは人それぞれだろう。

「タダより高いものはない、なんて言うし。木之崎がタダで人に何かあげるっていうのも考え
づらい。明日は雪でも降るかな?」

 一樹は空を見上げた。夕焼け空にはまばらに羽雲が浮かんでいる。明日の天気は晴れ。
週間予報では明後日に雨が降るらしい。まだ十月半ばの関東地方。平野部では間違っ
ても雪が降ることはない。
 冗談はさておいて、一樹は再び鈴音に顔を向ける。左手を差し出し、

「ちょっと、そのトランプ見せてくれないかな?」
「む!」

 表情を引き締め、鈴音がトランプケースを強く抱き締めた。さらに庇うように一樹に背中
を向ける。どこか殺気めいた気迫とともに、言ってきた。

「盗ろうとしても無駄なのです」
「盗ったりしないって」

 力なく笑いながら、一樹は首を振った。
761一尺三寸福ノ神 2/3:2009/01/20(火) 22:53:56 ID:I9nHVOyd
 しかし、鈴音は折れない。

「それでも駄目なのです。落とされたり、汚されたりしたら嫌なのです。これは、ワタシの宝
物なのです。絶対に他人には触らせないのです!」
「なら、鈴音が欲しがってたトリリオンのDVDボックス買ってあげる――そのチャンスをあげ
よう。これでどうだい?」

 餌を付けた釣り針を垂らす心境でそんなことを口にしてみる。釣れるかどうかは分からな
いが、とりあえず垂らしてみた。そんなノリだったのだが。
 鈴音は即座にトランプケースを差し出してきた。

「どうぞ、なのです」
「物凄い早変わり……」

 呆れる以上に半ば本気で感心しつつ、一樹は手を伸ばす。しかし、ふと鈴音が勘違いを
しているという予感を覚えて、付け足した。

「言っておくけど、あくまで『買ってあげるチャンス』だから。必ず買うってわけじゃない。あく
までもチャンスだから」
「……何なのです? そのチャンスとは」
「今夜、簡単なカードゲームで僕に勝てたら買ってあげる」

 黒い瞳に疑問を映す鈴音に、一樹は告げた。
 その言葉に、鈴音が首を傾げる。長い黒髪が揺れた。

「……カードゲーム? まあ、いいのです。ワタシは福の神なのです」

 言いながら、トランプケースを差し出してくる。カードゲームに勝てる自信があるのだろう。
もっとも、運任せの勝負だったら鈴音に分がある。だが、それを知って勝負を言ったのだ
から、一樹にも確実な勝算があるということでもあった。
 それは顔に出さず、一樹はトランプケースを受け取った。
 蓋を開けて五十四枚のトランプを取り出し、両手で扇状に広げてみる。作中に登場する
キャラクターの描かれたカード。紙製ではなく、プラスチック製なのでかなり頑丈だ。ついで
に、値段が高いのも材質のせいである。

「物凄く手慣れてるのです……。一樹サマがなんかカッコよく見えるのです」

 椅子に両手を突き、鈴音は身を乗り出すようにカードを見つめていた。
 トランプをきれいに扇状に広げる。簡単そうに見えてかなり難しい技術だった。好奇心で
覚えようとして挫折するのがありふれたパターンだが、一樹は好奇心で練習してそのまま
技術として習得した。
762一尺三寸福ノ神 3/3:2009/01/20(火) 22:54:26 ID:I9nHVOyd
 とりあえず、カードから六枚見当を付けて引き抜く。主人公コーリ、コウシキ博士、鬼神タ
ンジェント、要塞グーゴル、グラハム枢、名も無き邪神。
 それをじっくり眺めてから、鈴音に見せた。予感は的中。

「鈴音。このトランプの黒い点みたいの何か分かるか?」

 六枚のトランプに共通するのは、細かな黒い色が入っていること。縞模様やチェック模様、
黒い文字など。そこに、小さな黒い点が紛れ込んでいる。
 鈴音は指でその黒い点を摘み取った。黒い小さな砂のようなもの。

「……これは、多分蟲妖なのです。ワタシの知っているものではないですけど、珍しい虫な
のです。ちっちゃいし、多分害は無いと思うのです」

 そう話しながら、鈴音はトランプに付いた蟲を摘んで横に捨てていた。腕を動かすたびに、
白衣の袖が揺れる。見たところ無害らしい。

「でも、何でこんな蟲が付いているのです……?」
「どこかで紛れ込んだんじゃないか? これも新品ってわけじゃないからね」

 不思議がる鈴音に適当な言葉を返してから、一樹はトランプを元の位置戻しケースに収
めた。この蟲の理由は見当が付くものの、口には出さない。

「うーん」

 差し出されたトランプを受け取りながら、鈴音が訝る。
 しかし、考えても答えは出ないと判断したのだろう。トランプを改めて抱き締めてから、黒
い眉毛を斜めにして、一樹を見上げる。

「とにかく、約束は守って貰うのです。ワタシが勝ったらトリリオンのDXDボックス、きっちり
買ってもらうのです」
「分かってるって。ただ――」

 一樹は口元に薄い笑みを浮かべた。静かな、だが妙な鋭さを持った微笑。眼鏡のレンズ
が夕日に照らされ、怪しく輝く。

「くせ者揃いの漫研でも、ぼくにカードゲームを本気で挑めるのは、部長くらいだよ」
「………」

 鈴音が無言のまま喉を動かすのが見えた。
763名無しさん@ピンキー:2009/01/20(火) 22:56:07 ID:I9nHVOyd
以上です

話しが脇道に逸れているような気がするので、
修正していこうと考えています
764名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 18:08:49 ID:yBxMQerZ
次回がまるまるカードバトルSSだったら、スルーさせていただきますので。
765名無しさん@ピンキー:2009/01/22(木) 21:11:14 ID:DM0IjfVA
それはそれで見てみたい
766一尺三寸福ノ神:2009/01/23(金) 07:44:37 ID:hsciW8bW
投下します
767一尺三寸福ノ神 1/3:2009/01/23(金) 07:45:18 ID:hsciW8bW
>>760-762の「続き

9話 Old Maid

 ババ抜き。英名 Old maid 意味は行後れ
 五十三枚のカードをプレイヤーに配り、一枚づつ手札を取りながら同じ数字となった手
札を捨てて行き、最後にジョーカーを持っている人間が負けとなる。非常に単純で、それ
でいて奥の深いカードゲームだ。
 一樹と鈴音は二人は部屋の中央に置かれた卓袱台で対峙していた。小さい鈴音は、
卓袱台の上に小さな座布団を敷いて、そこに正座している。

「うむむむむ……」

 眉間に皺を寄せて目を見開いて手札を見つめる鈴音。黒髪が何本か跳ねるように横
に飛び出している。その手には二枚のカード。どちらかがジョーカーで、どちらかがスペ
ードの6。一樹の手元にはハートの6が一枚。
 二人でやると確実にこの状況に陥る。そして、ここからが本当の勝負なのだが。
 一樹はおもむろに右手を伸ばし、右のカードを引き抜いた。スペードの6。ペアになった
二枚のカードを捨ててから、両手を広げて見せる。

「ぼくの勝ち」
「なーぜーなーのーでーすー!」

 鈴音は飛び跳ねるように立ち上がり、自分の手の中に残ったジョーカーを卓袱台に叩
き付けた。気持ちは分からなくもない。両手で頭を掻きむしり、ブリッヂでもしそうな勢い
で仰け反っている。黒髪が大きく乱れ、お守りが跳ねた。
 身体を起し、額に青筋を浮かべてジョーカーを指差す。

「おかしいのです、変なのです、不自然なのです! 納得いかないのです!」

 両目から涙を流しながら、震える声でそう叫んだ。掻きむしったせいで、黒髪がぼさぼ
さに跳ねている。しかし、気にせず魂の慟哭を続けた。

「なぜワタシが十一連敗もするのですか! 絶対にありえないのです、福の神であるワタシ
がババ抜きで一勝も出来ないなんて、明らかに変なのです! 理解不能なのです! きっ
と一樹サマはイカサマを使っているのです!」

 カードに向けていた指を、今度は一樹に向ける。
 ババ抜き五本勝負で三勝したらDVDボックスを買うという約束でゲームを始め、一切の
手加減なく五連勝。ストレート負けに怒り、鈴音の要求で普通のババ抜きを続け、さらに
駄目押しの五連勝。そして今、十一連勝目を叩き付けたところだった。

「イカサマじゃないよ」

 眼鏡を外して、何度か目をこすってから、一樹は答えた。集中力と視力の使いすぎで、
目が痛い。そろそろ最初の限界のようである。
768一尺三寸福ノ神 2/3:2009/01/23(金) 07:45:59 ID:hsciW8bW
「もうゲームは終わり」

 右手を振って、一樹はそう告げた。
 しかし、鈴音は引かない。散らばったカードを両手でかき集めていた。ばらばらのカード
を軽く卓袱台にぶつけて向きを整えてから、一樹の前に付き出してくる。

「もう一回勝負なのです! ワタシが勝つまで続けるのです」
「いや、もう無理……。ぼくが疲れてるから、おしまい。次は多分、勝率八十パーセントく
らいだし、これ以上続けても何も出ないから。DXDボックスも諦めなさい」

 一樹はぱたぱたと手を振った。
 九時過ぎから初めて、そろそろ十一時になる。ババ抜きで二時間近い集中力の持続
は正直かなり辛い。これ以上続けると、朝に響くだろう。明日もまた大学はあるのだ。勝
負は勝ち負け関わらず、引き時が肝心である。

「でも、ワタシは納得いかないのです!」
「分かった、種明かしするよ」

 引く気のない鈴音に、一樹はそう切り出した。
 鈴音の表情からふっと怒りが消える。代わりに浮かんできた感情は好奇心だった。トラ
ンプを傍らに置いて、乱れた黒髪や白衣を手早く整えてから、座布団の上にきちっと正
座する。感情の切り替えは早い。

「どうして、一樹サマはあんなに強いのです? 理由が知りたいのです」

 黒い瞳をきらきらと輝かせながら、鈴音が訊いてきた。やはり気になるのだろう。
 一樹は出来るだけ分かりやすく言葉を選びつつ、

「一対一でやるババ抜きは、実は運の要素はそんなに強くないんだよ。表情と仕草の読
み合いと駆け引き。いかにポーカーフェイスが作れるかが重要だ」

「分からないのです……」

 鈴音は眉をハの字に傾ける。
 一樹は鈴音の傍らのトランプを手に取り、十回ほど切ってから、鈴音の前に二枚のカ
ードを投げる。表向きになったスペードのAとジョーカー。

「鈴音がジョーカーを持っている時、ぼくは一度もジョーカーを引いていない」
「……あ」

 鈴音が小さく声を漏らす。今までの対戦を思い出し、理解したのだろう。
 鈴音が手札にジョーカーを持っている時、一樹はその枚数にかかわらず一度もジョー
カーを引いていない。鈴音の表情や仕草から、どれがジョーカーなのか分かっているか
らだ。そこに運の介入する余地はない。
769一尺三寸福ノ神 2/3:2009/01/23(金) 07:46:30 ID:hsciW8bW
 一樹は鈴音の前にあるカードを手元に寄せ、二枚のカードを加えて、シャッフル。それを
広げて差し出す。等間隔に広げられた四枚のカード。

「鈴音は考えてることがすぐ顔に出る。鈴音の手札にジョーカーがあればそれだけでぼく
は勝てる。だから、ぼくは鈴音にジョーカーを渡すことだけを考えればいい」

 鈴音が引いたのは右から二枚目。
 引いたジョーカーをじっと眺めてがら、鈴音は呆気に取られた言葉を口にする。

「何で、なのです?」
「鈴音は右から二番目のカードを引く癖がある。だから、そこにジョーカーを仕込んでおけ
ば、ほぼ確実に引いてくれる。これが大まかな仕掛け」

 鈴音の手からカードを取り、残りのカードに混ぜてケースにしまう。もっとも、これ以外に
も色々と観察や仕掛けはしているのだが、そこまで言う気はない。
 もみあげの髪飾りを弄りながら、鈴音が不服そうに口を尖らせている。

「何だか、ズルいのです……」
「そういうものだよ。言っただろ? ぼくは強いって」

 カードケースを机の引き出しにしまい、一樹はベッドへと向かった。
 ぱたぱたと床を走り抜け、鈴音はベッドの上に飛び乗る。今日も一緒に寝ると言ってい
た。布団に入る前に、腑に落ちないといった表情で見上げてくる。

「ところで、一樹サマ。さっき、ワタシの前にジョーカーを出せたのは何故なのです? 切っ
たカードから適当に二枚取って、そこにジョーカーが含まれてる確率は低いのです」

 さりげなく行った仕掛けだが、さすがに気づいたしい。鈴音の前に放った二枚のカード
は、偶然ではなく意図的に出したものだ。
 一樹は眼鏡を動かし、笑顔で白状する。

「うーん。トランプ手品のひとつに任意のカードを相手に配るってものがある。それの応用
かな。ババ抜きの一回目は鈴音にジョーカーを渡して、お互いに手札が多くなるようにし
た。鈴音の癖を見るためにね」
「やっぱり、イカサマなのです!」

 鈴音の足が一樹の顎に突き刺さった。
770名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 07:49:05 ID:hsciW8bW
以上です。
最後の2/3は3/3の間違いです。

次回からは普通の日常に戻ります
771名無しさん@ピンキー:2009/01/23(金) 17:30:54 ID:rrc2JRXB
GJ
あと18へぇ
772名無しさん@ピンキー:2009/01/25(日) 12:01:57 ID:oSVS1BkM
鈴音に蹴られたいと思う俺は異常ですか?
773名無しさん@ピンキー:2009/01/27(火) 21:29:20 ID:nq6rAkdx
保守
774名無しさん@ピンキー:2009/01/28(水) 23:28:38 ID:tMCF/SDU
そういえばかなり昔、
妖精になんて呼ばれたいという話になったな

775名無しさん@ピンキー:2009/01/29(木) 18:59:27 ID:gfmsnJ9T
ご主人様
776名無しさん@ピンキー:2009/01/29(木) 21:16:44 ID:N4AD0+9b
だーりん
777名無しさん@ピンキー:2009/01/30(金) 07:22:59 ID:s8hTzEaZ
先生
778名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 01:00:56 ID:mM1Jz823
ちゃっちい女の子でエロパロ
779名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 02:04:31 ID:oanCp9fr
>>778
不覚にも吹いた
780名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 23:55:13 ID:7NUPcl7V
質問、
SSの妖精の脳内CVってどうなってる?
781名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 00:07:32 ID:xu3XTEsr
斎藤千和
782名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 03:36:53 ID:haurp8TI
鈴音はシスプリの四葉の声で再生されてる
783名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 17:33:28 ID:qofXIWlg
誰もいない〜
784名無しさん@ピンキー:2009/02/04(水) 23:35:20 ID:gxgBdoW+
海〜
785名無しさん@ピンキー:2009/02/05(木) 17:42:55 ID:y9z3Sgnf
台詞の最後に独特の口癖を付けるってどうなんだ?
鈴音の「〜なのです」とか
どの辺りまで許容されるんだろう?
786一尺三寸福ノ神:2009/02/07(土) 23:26:27 ID:yvgpu57Q
投下します
787一尺三寸福ノ神 1/3:2009/02/07(土) 23:32:46 ID:yvgpu57Q
>>767-769の続き

10話 乙女心の5mm

 工作箱から取り出した五十センチのステンレス定規を持って一樹は机に戻った。

「一樹サマ、お願いしますのです」

 鈴音が気をつけの姿勢で机に立っている。
 真面目な――それでいてどこか滑稽な表情で、正面を見つめている。草履と足袋は脱
いで、裸足だった。白衣と朱袴はそのままである。

「動くなよ。動くと正確に測れないから」

 一樹は鈴音の背中に触れるように五十センチのステンレス製定規を立てて、頭にそっ
と下敷きを当てた。頭から跳ねたアホ毛が下敷きにくっついている。不安定な形状の物
の高さを測る方法だった。下敷きが示す定規の数値を読み上げる。

「三十九センチ五ミリ」
「うー」

 鈴音が唸った。背中を丸めて唇を曲げ、眉間にしわを寄せている。
 一樹は下敷きと定規を外して、机に置いた。

「やっぱり五ミリ足りないのです……」

 自分の頭を撫でながら、鈴音は恨めしげに定規を見つめている。
 机に腰を預けて、一樹は眼鏡を動かした。自然とため息が出る。
 身長を計って欲しい頼んできたのが、つい三分前だった。断る理由もなく、難しいことで
もないので定規と下敷きを取り出し測ったみたのだが、この反応である。鈴音の意図は
分からないが、自分の身長が気に入らないのは理解できた。
 窓の外の黄昏空をしばし眺めてから、鈴音に視線を戻した。

「何が足りないんだ? まさか人間くらいの身長が欲しいっていうわけじゃないし。別に今
のままでも構わないと思うけど、それじゃ不満なの?」
「不満なのです」

 鈴音はきっぱりと、そう断言した。

「ワタシの理想とする身長は四十センチなのです。その方が格好良くなるはずなのです。
でも、今の身長じゃ五ミリ足りないのです!」

 ぐっと拳を握り、瞳に熱い炎を灯す鈴音に。
 一樹は五秒ほど思考を空転させてから、思ったことを告げた。
788一尺三寸福ノ神 2/3:2009/02/07(土) 23:33:17 ID:yvgpu57Q
「五ミリ増えても、今と変わらないと思うけど……」
「変わるのです!」

 鈴音が跳んだ。机を蹴って飛び上がり、一樹の顔面めがけて右足を繰り出す。
 だが、一樹は身体を横に逸らしていた。攻撃のタイミングが分かっていれば、回避する
のはそれほど難しいことでもない。鈴音の右足が何もない空間を蹴り抜く。朱袴がめくれ
て、太股とその奥まで丸見えになった。それも一瞬。

「あぅ?」

 ゆっくりと流れる時間。
 避けられることは考えていなかったらしい。空振りで鈴音は体勢を崩す。
 しまった、と言いたげな表情が見えた。何も無い虚空を蹴り抜いてから、床に向かって
落下していく鈴音。黒髪を尾のようになびかながら。

 ぽふ。

 という気のない音とともに、床に落下した。
 うつ伏せのまま倒れている鈴音に、一樹は一言尋ねる。

「大丈夫か?」
「うぅ、痛いのです……」

 顔を上げて、鈴音が声を上げた。受け身も取らずに落下したようなので、痛いだろう。
しかし、それ以上の問題はないようで、両手を突いて起き上がっている。
 人間の感覚では身長の四倍以上の高さから落下したようなものだが、人形サイズで身
体も人形のように軽い鈴音にとっては、転んだ程度のことらしい。
 一樹は椅子を引いて腰を下ろし、服の埃を払っている鈴音を見下ろした。

「五ミリってそんなに気になるものなの?」
「身長三十センチ台と四十センチ台では雲泥の差があるのです。ワタシはあとちょっと大
きくなりたいのです! 欲を言えばあと一センチ大きくなりたいのです!」

 びしっと一樹を指さし、鈴音が言い切った。
 ダイエットを行う女の子が体重をグラム単位で気にすることに似ている。男なので正確
には理解できないが、乙女心というものだろう。鈴音の態度はそれとも違うようにも思え
るが、深くは考えないことにしておく。

「でも、鈴音って食事取らないし、成長もしないみたいだから、身長伸ばすのは無理じゃ
ない? 引っ張って伸びるとも思えないし」
「……うー、むー」

 鈴音が腕組みをして首を捻った。話によると鈴音の容姿は形状固定で、年月による変
化することはないらしい。福の神としての力は変化するようだが。
 ふと思いついて、一樹は言葉を続けた。
789一尺三寸福ノ神 3/3:2009/02/07(土) 23:33:49 ID:yvgpu57Q
「でも、鈴音をぼくに渡したおじさんなら、鈴音の身体を作り替えられるかもしれない。鈴
音を作ったのもその人だし、頼めば身長増やすくらいはできるんじゃないかな?」

 ぽんと手を打つ鈴音。頭に電球が浮かんだように見えた。
 胸元で両手を握り締め、鈴音が瞳を輝かせながら見上げてくる。

「一樹サマ、頭いいのです」
「でも、今どこにいるか知らないけど」

 一樹の台詞に、鈴音は前のめりにコケた。
 うつ伏せのまま顔を上げて言い返してくる。

「それじゃ意味ないのです……」

 鈴音と一緒に暮らすようになってから三日目。鈴音のお守りをくれた人にはまだ会って
いない。どこの誰かも分からないというのが本当の所である。
 小さく咳払いしてから、一樹は告げた。視線を逸らしつつ、

「あと、行灯袴のまま蹴らない方がいいよ。丸見えだから」
「ッ!」

 弾けるように起き上がり、鈴音は自分の朱袴を押さえる。今更押さえても意味はないだ
ろうが、恥ずかしい気持ちはあるようだった。今まで全く気にせず蹴っていたらしい。
 頬を真っ赤にしたまま、瞳にうっすらと涙を浮かべて見上げてくる。

「見たのです?」
「………。白だった」

 数秒の躊躇を置いて答える。何でこんなことを言っているのかと思いつつ。だが、いつ
かは言わなければならないことでもあった。
 鈴音は地面を蹴った。小動物じみた俊敏性で机の上まで駆け上り、一樹の眼前に人
差し指を突き付ける。怒りと羞恥で顔を真っ赤にして。

「一樹サマは変態なのです!」
「ぼくは何もしてないだろ……」

 一樹は軽いデコピンを鈴音の額へと打ち込んだ。
790名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 23:34:23 ID:yvgpu57Q
以上です
続きはそのうち
791名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 17:34:09 ID:EJUMt9//
保守
792名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 20:41:10 ID:98y50n1p
点呼
793名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 22:26:19 ID:MVVZQ4ZD
>>792
ノ < 2
794名無しさん@ピンキー:2009/02/12(木) 23:34:24 ID:tecPRDix
>>792
3
795名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 09:50:32 ID:czZaiGjU
、<ダーッ
796名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 13:59:03 ID:9CA59Abx
>>792
5
797名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 12:25:33 ID:HvBpWiN7
それじゃあお前らどんな妖精の話が読みたいんだよ
798名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 13:11:02 ID:UnScq8KT
妖精さんとのいちゃいちゃ日常
799前23:2009/02/15(日) 19:48:28 ID:iN74UnLC
千影のネタ、投下します。
一晩で書き上げたもので時期を逃してしまいましたが……
いちおう本編です。エロなしのため、苦手な方は前23でNG登録してください。
800前23 1/5:2009/02/15(日) 19:49:25 ID:iN74UnLC
──#6──

 2月のある日のお話。

「寒い中の営業、お疲れ様。ちょっとだけだが、飲み代にでも当ててくれ」

 外回りが終わった後、部長から茶封筒を渡される。意味ありげな重さ。
中身を覗いてみると、親愛なる将軍・諭吉様が10人ほどいらっしゃる。

「こ、こんなに頂いていいんですか?」
「君の業績が営業部トップだからな、臨時ボーナスというやつだ。遠慮はいらんよ」
「ありがとうございます」

 諭吉がいるならやることはひとつだけだ。
スキップでオフィスを出る。千影がポケットから顔を出した。

「何かいいことでもあったんですか?」
「聞いてなかったのか? 臨時ボーナスが出たんだよ。
 新しい洋服でも美味い飯でも、なんでも言ってみろ」
「なら……ひそひそ」

 千影から頼まれたものは、この時期男が一人で買うのは危険な代物だった。
だが、断ることはできず薬局で10枚ほど買ってしまうはめに……周囲の視線が痛い。

 今日は持ち込み残業もないので、帰って夕飯を食べたらすぐにベットに潜った。

 明日は久々に気持ちよく通勤できそうだ。 ……千影は居間でパソコンを使っていると思う。
 気になったが、寒中営業のおかげで疲れきった体に押し寄せる睡魔になすすべもなく眠りについた。

──

「おはよう……ってあれ?」

 千影がいない。
まだ起きていないのだろうか。起きてないなら留守番を任せることにしよう。

 スーツに着替えて昨日の夕飯の残りを平らげて、気づいたら会社にいた。
いつもとは違う、車での営業。結果はクライアント4件に対して、成立0件。
 今日は天気が悪かったから、仕方がないだろう。


「ただいまー」

 声はむなしく家の中にこだまする。
 おかしい。もう2日目だ。


「……」

 ベッドに飛び込んで、現状の整理をする。
寝室、風呂場、物置、書斎……捜せる場所は全て確認したが、千影はいなかった。
 手元の時計は23時を示していた。

「……ぅ」

 明日になれば、帰ってくるだろう。
ともかく、これ以上起きていては明日に響く。
801前23 2/5:2009/02/15(日) 19:50:31 ID:iN74UnLC
 心配しても、何も起こらない。
行動に起こさなければ、心配はただの心労だ。

──

『──』

 流れる曲が三倍の冷菓を宣言したあたりで、携帯の目覚ましを止める。


「……まだ、寒いな」

 お湯を沸かし、インスタントコーヒーを入れる。

 もう、二週間が経った。立春が過ぎ、ようやく寒さも一段落した。
その間、ずっと千影がいない──彼女の生きた形跡もなかった。
 千影の生きていた、証明となりうる物……工具、食器、それらも全てなくなっていた。
残っていたのは、俺が作った千影用の服。これも、半分ほどしか残っていない。

 そこで、俺は一つの結論に至ろうとしていた。
「千影」という存在は俺自身の作り出した幻影で、俺はずっと幻影を家族と勘違いして生活していた。
そう考えていけば、現実的に不条理な要素の塊である千影が「いない」ことの証明は容易だった。
 
「つまり、だ」

 夢を見ていた。
 そう考えるほかになかった。

──

「……」

 2月13日、いつも通りの日常。仕事はできている。営業のスコアも横ばいで、問題は起こっていない。
 営業では移動中の時間に、彼女を思い出すことがある。
名前は思い出せない。可愛げのある存在だったことは覚えている。

 仕事の終わった夜、立ち寄った店には「バレンタインデー特集」というコーナーがあった。
 今年も、義理チョコを配ってくれる同僚がいるだろう。どういうチョコだろうかと妄想を膨らませて、家路についた。

 何か、とても大切なものを忘れている気がする。
忘れてしまうと、立ち行かなくなってしまうものがある。

 それが何だったのか、思い出すことが出来ない。

──

 今日は始発列車で会社に向かった。年明けから年度末まで、土曜も出勤になる。
 デスクを片付けておきたかった。甘党の俺としては、この時期ほどありがたいものはない。
来月の財布がどうなろうとも、俺の知ったことではない。

「おはようございまーす」
「……おはよう。今日は早かったね」
「部長こそ」
「ともかく、なんで今日はこんな時間に?」
「デスクの片付けをしようかと思いまして」

 散らかった書類をクリアファイルケースに時系列でまとめ、机の中にしまう。
今、机上には文房具しかない状態だ。外回りの間、本命チョコが山積みされていても安心である。
802前23 3/5:2009/02/15(日) 19:51:23 ID:iN74UnLC
「ああ、今日はバレンタインだったか……」
「部長も、義理チョコ多すぎて食べられなくなった時は分けてくださいね?」
「……今日のスコアによる。9時に朝礼、9時半には出てもらうぞ」
「はいっ」

 このやりとりも、何回やったか覚えていない。
 ここに勤めて6年経つ。ずっと営業部なのは「人と話すのが好きだから」という理由だったと思う。
昇給の機会を蹴ってまで、営業を続けている。部長と顔を合わせるのももう6年になった。

──

「……ただいまー!」

 我が家よ、私は帰ってきた。
 右手を挙げ天に指さし、左手はおろしたままで足を前に踏み込む。
 同僚から、いくつか製品のチョコをもらった。本命はなかった。
部長から、山ほどのチョコレートをもらった。今夜は鼻血が止まらないサタデーナイトフィーバー。

 今日は得意先への営業だけだった。4件中成立2件、モノがモノ(いわば、汎用性のないブルーオーシャン)
で売れるのかという心配を部長と共に共有していたが、「あなたに免じて」というお得意様がいたのだ。
 後から社長に呼び出され、どういう話し方をしたのだと聞かれたが「ずっと、営業ですから」で白を切り通した。
人に教えられるほど、誇れるほどのスキルは持っていない。ただ、人と話すのが好きなだけ。
結局、今日の営業は俺以外にスコアを上げられなかったのである。

「?」

 どうして、人と話すのが好きになったんだろう。
中学、高校、どちらもずっといじめられ続けて不登校になっていたはずだ。
 妙にテンションが下がる。チョコレートを食べたいのは山々だが、もやもやしてても面白くない。

 そう、この性格を変えた、勇気をくれた誰かがいた。
先生でも、友達でも、家族でもない誰かが。

「……」

 その名前を思い出すことが出来ない。
結論の出ない問答をしてもしょうがないと、ニッカ宮城峡12年の封を切ろうとした瞬間、



「──おかえりなさい」

 聞き覚えのある、声が聞こえた。
 夢ではなかった。勇気をくれた、千影という少女がいた。
803前23 4/5:2009/02/15(日) 19:52:13 ID:iN74UnLC
──
「ハッピーマキアート」
──

「……うん、うまい」
「もっと、具体的な感想が欲しいですよぅ」
「うまいものはうまい! 間違っているか!」
「いやー、そう力説されても困ります……」

 彼女──千影は、両手でチョコレートの入った包みを持って寝室からやってきた。
被虐の視線で見つめられてしまい、思考を中断せざるを得なかった。
 そしてせがまれるがままに、チョコレートを頬張っているのである。
 今まで抱えていた不安は、全て吹っ飛んだように思えた。

「いつも食べてるものより、苦みが強いぞ。どういうチョコ使ったんだ?」
「変なものは、使ってませんよ。カカオから作りました」
「!?」
「量が足りなかったので、前買ってたチョコも溶かして投入しましたが」

 どおりで大きいわけだ。
デイリーなんとかというサイトでカカオからチョコを作る企画をやっていたのを昼休みに見た。

「千影、そういえばここ二週間ほど戻ってきてなかったみたいだけど」
「ちょっと、お休みいただいてました。お出かけです」
「どこ、行ってた?」
「この国に、もう一人わたしのような妖精がいたんです。
 名前は一条さんって言ってました。種族的には一条さんのほうが本流で、わたしが亜種です。
 少しだけ、つながりがあったので、気になって青春18きっぷで」

 楽しそうに話す千影に対し、気になったことが一つあった。

「……お金は?」
「ちょっと、本の間に挟んであった方を使いました。ごめんなさい」
「コミック、何って書いてあったかな? その本は」
「……エルオー、です」
「……ぐふ。お金必要なら、言ってくれればすぐ渡したのに……」
「ごめんなさい、急ぎの用事だったので……」

 自分の中で何かが頽れた気がする。
千影を咎める気はない。だが、その本がバレたことにショックを隠せずにいた。
 本人に悪気がないのだから、無理にでも話を曲げるべきだ。そうでもしないと俺が槍玉に挙げられる。

「それで、その一条さんと話すことはできたの?」
「ええ。とても。半月近い空白を空けただけの応酬はありました。カカオ豆ももらいましたし」
「青春18きっぷってことは、再構成した状態で行ったんだよね?
 期間が長かったわけだし、調子……」
「大丈夫ですよ。「おとまり会」とかやりましたし」

 「おとまり」……?

「一緒に寝たのは」
「一条さんとわたしだけです。寒かったので、お布団の中でくっついてました」
「……一条さんは、身長どれくらいなんだ? 性別は?」
「27センチです。わたしの種族とは少し違うので、再構成はできないって言ってました。
 もちろん、人間で言うところの女の子ですよ?」
804前23 5/5:2009/02/15(日) 19:53:12 ID:iN74UnLC
 27センチと30センチの妖精の女の子が、"お布団の中でくっついてました"。
 だめだ、想像するだけで言葉で言えない気持ちになる……これが「MOE」というやつか。
今まで、内側でため込んでいたもやもやとした感情が爆発する。

「きゃっほおっー! ニッカ山盛りだー!」
「……おみやげ話と、お酌でいいですか?」
「おう! ついて来い千影!」
「望むところですっ!」

 2月14日深夜。
 大量のチョコレート、ニッカ、千影の土産話によって二人だけの宴会は加速していった。

──

「……なあ、千影?」
「なんでしょうか?」
「酒が入ってるから聞き逃して欲しいことなんだが、俺は一時期千影を忘れかけていた。
 非現実的だと否定していた」
「……」
「幻滅、してるよな?」

 人差し指を唇に当てて、言葉を探るような表情の千影。

「わたしも、ウイスキーで酔っちゃいました。これは独り言です。
 ……核がすり減ってることは、前お話ししました。
 そして、核の摩耗は存在感の希薄化を起こすことがあるって一条さんが言ってたんです。
 つまりは、記憶に残らなくなるって。あわてて、戻ってきました」
「……」
「……」

「ひくっ」

 無言の中の、気まずい雰囲気を制したのは、千影のしゃっくりだった。

「くすっ、何言ったかもう覚えてないです……」
「そうだなー。もう、寝ようか」
「そうですね。わたしも長旅帰ってきた後すぐチョコ作りで、もうヘトヘトです」

 アルコールが入って赤面した千影は、いつものように笑っていた。
 いつものように、春が訪れようとしていた。

─#6「ハッピーマキアート」 おわり─
805前23:2009/02/15(日) 19:55:23 ID:iN74UnLC
以上です。サイトの方で色々おまけして補完します。
妖精とのほのぼのSSを書きたい……
806名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 19:56:09 ID:UnScq8KT
GJ
続き期待してるぞ
807名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 12:50:41 ID:LgU5aGtk
GJです。良いカップルだなあ。

そして三倍の冷菓に噴いた。
808一尺三寸福ノ神:2009/02/19(木) 23:57:45 ID:A7qQ/tbg
投下します
809一尺三寸福ノ神 1/3:2009/02/19(木) 23:59:55 ID:A7qQ/tbg
>>787-789の続き

「朝なのです! 大学へ行く時間なのです」

 寝ぼけた意識に、鈴音の声が飛び込んでくる。
 一樹はぼんやりと目を開けた。カーテンの開けられた窓から差し込んでくる日の光。鈴
音が開けたのだろう。いつも一樹が起きる前に起きだしてカーテンを開けている。本人の
話では朝一番の日の光を浴びるのは気持ちいいらしい。
 布団に潜ったまま眼鏡を掛けて視線を移すと、机の上に鈴音が仁王立ちしている。理
由は知らないが、机の上が気に入っているようだった。

「今日は休みだよ……」

 一樹は時計を眺めながら、呻くように答える。
 朝の七時が起床時間だった。それから一時間ほどで身支度を済ませ、八時前に家を
出て九時頃に大学に着く。それが、朝の日課だった。
 しかし、今日は土曜日で大学は休みである。
 鈴音は顎に手を当ててて、視線を斜め上に向けた。

「そういえば、昨日の夜にそんなことを言っていたような気がするのです……」

 覚えていないようである。昨日は夜の二時頃まで起きていて、鈴音には休み前だから
夜更かししていると言っている。だが、聞き流していたらしい。動画サイトで枢愕者トリリ
オンのMADに熱中していたので、当然とも言えるだろう。

「休みだから、あと二時間くらい寝かせてくれない?」

 寝ぼけ眼のまま、一樹は頼んだ。
 しかし、鈴音は窓の外を指差した。朝日が差し込む明るい休日の朝。とはいえ、夜中ま
で起きていた身体にとっては目に痛いだけでしかない。

「ワタシは朝のお散歩に行きたいのです。連れて行ってほしいのです」
「いつも思うけど、朝から元気だよね。鈴音って」

 眼鏡を外して定位置に戻しながら、一樹は少し捲れていた布団を直した。他人より痩
せている分、朝の肌寒さは人並み以上に身に染みる。

「ワタシは福の神なのです」

 自分の胸に右手を当てて、鈴音は得意げに背筋を逸らした。
 福の神であることは関係ないと思うけど――そう思ったのだが、一樹は何も言わなかっ
た。再びやって来た眠気に言う気力もない。
810一尺三寸福ノ神 2/3:2009/02/20(金) 00:00:26 ID:A7qQ/tbg
「でも、一樹サマは元気なさそうなのです」
「うん……、ぼくは人間だから」

 自分でもよく分からない論理の返答をしつつ、一樹は口をもごもごと動かした。口の中
が乾いていて気持ちが悪い。右手を伸ばし、近くに置いてあるストローの付いた水筒を
掴む。マラソンなどで使われる、スポーツボトルと呼ばれる水筒だった。
 一樹はストローから中身の水を吸い込み、口の渇きを潤す。

「そうなのですか」

 腕組みをして神妙な面持ちで頷いている鈴音。納得したらしい。納得するようなことで
はないが、本人が納得しているのなら口を挟むべきではないだろう。
 ぽんと手を打って訊いてくる。

「一樹サマ、問題なのです。235×23,4の、なのです」

 のろのろと水筒を定位置に戻してから、一樹は答えた。

「5499」
「早いのです……。即答なのです。ワタシには答えが正しいのか間違っているのかは分
からないのです。でも、多分間違っていないのです……」

 冷や汗を流しつつ、鈴音が腕組みをして頷いている。
 小学生の頃にソロバン塾に通っていたため、暗算は得意だった。多少難しい程度の計
算なら頭の中でソロバンを弾くことで答えを出せる。

「て、一樹サマ、やっぱり本当は起きているのではないのですか!」

 こちらを指差し、鈴音が声を上げた。

「いや、眠いから」

 しかし、一樹は寝返りを打って鈴音に背中を向ける。目を閉じると、自然と浮かんでくる
眠気に身を任せつつ、そのまま眠りの中に落ちようとして。

 ぽふ。

 と布団の上に衝撃があった。
 目を開けて視線を動かすと、布団の上に鈴音が飛び乗っている。

「起きるのです」
「んー……今日は図書館行く予定だからそれまで我慢してくれないか?」
811一尺三寸福ノ神 3/3:2009/02/20(金) 00:00:56 ID:A7qQ/tbg
 半分意識を眠らせつつ、一樹は答えた。どのみち今日は大学の課題を仕上げる予定
である。勉強をするために図書館に行くのは予定のうちだった。

「むぅ」

 しかし、鈴音は不満そうである。
 朝の散歩に行きたいのだろう。散歩といっても、鈴音はほとんど歩いていないのだが、
本人は楽しいらしい。それはさておいて。
 一樹は無造作に右手を伸ばして、鈴音の襟首を掴んだ。人形のように軽い身体があっ
さりと浮き上がる。左手で両足の草履を脱がせてから、布団の中へと引き込んだ。
 そのまま、両腕でしっかりと抱きかかえる。ほんのり暖かく手頃な大きさ。鈴音の抱き
心地は、癖になるほどよいものだった。

「一樹サマ?」
「さあ、ともに征こう二度寝の世界へ」

 意識の覚醒率を三割ほどまで下げつつ、一樹はそんな決め台詞を口にする。ちなみに、
トリリオンの主人公の決め台詞のパロディだった。
 しかし、鈴音は呆れながら、

「いえ、ワタシはお散歩に行きたいのです」
「ところで……」

 一樹は静かに口を開いた。

「ぼくのパソコンに、『ネットで集めたオカルト動画』っていうのがあるんだけど、鈴音はど
う思う? 面白いと思うんだけど、今夜一緒に見ない?」

 鈴音の身体が硬直するのがはっきりと分かった。
 数秒の沈黙を挟んで、おずおずと答えてくる。

「お休みなさい、なのです」
「おやすみ……」

 淡い勝利感を噛み締めながら、一樹の意識は眠りへと落ちていった。
812名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 00:01:41 ID:A7qQ/tbg
以上です

先日鈴音のイラストいただきました。
http://sukima.vip2ch.com/up/sukima026212.jpg

続きはそのうち
813名無しさん@ピンキー:2009/02/26(木) 17:47:37 ID:IAVi3T3/
遅くなったがイラストの絵師GJ!
814名無しさん@ピンキー:2009/02/26(木) 20:56:03 ID:jKSaWX5R
イラストかよっ!
815前23:2009/02/27(金) 02:24:18 ID:GuE0oIi2
前書いた、破壊表現ものの続きです。
ttp://f903i.2y.net/23/test2.txt
(最近ドメイン借りてるところが不安定なので、新しく増やしました。古いURLも使えます)

グロ注意。千影本編とは関係ありません。
これだけではあんまりなので、本編も投下します。
816前23 1/3:2009/02/27(金) 02:25:13 ID:GuE0oIi2
「ほへー」
「……今日は暖かいな」
「このまま寝てたいですー。いいでしょうかー」
「急に遠出しなければよし」
「ありがとうですー」

 3月が始まって間もない頃、妙に朝から暖かい日が続いた。

「あー、ご主人。
 今晩は早めに仕事切り上げてくれるとうれしいですー」
「どうして?」

ふらふらとした足つきだと思えば、そのまま寝転がってごろごろとして、

「いろんなこと、したいです……」

という、寝言なのかどうか分からない言葉を発した千影。

「……善処する」
「お友達、遊びに来ます」

友達というのが誰かは知らないが、数分で準備を終わらせ、ひとり会社に向かった。

──
#7 「センチメンタルストライカーズ」
──

「観念しろ、千影」
「……ご主人なんて、大嫌い……です……」

吐き捨てられた言葉は、独り言のように思えた。
それでも、千影は俺のことをご主人と言う。

流れた涙で、いつものブレザーが濡れていた。

こうすれば、嫌われることはわかっていた。
もう、今までの関係には戻れない。

"94点"

カラオケボックスで、俺が柑橘類の名前を連呼する曲を歌った後。
点数を見た千影の表情は、絶望だけを秘めていた。

千影の言った「いろんなこと」とは、カラオケだったらしい。

「わたしには、この曲が、あります……」
ピピピピピ。"予約 1曲"

昔、深夜に放送されたアニメの曲だった。たくさんゲームが発売された、青春もののシリーズだ。
4月の桜と学校の通学路をイメージした、安定した人気を持った曲である。
事実、あまりその界隈に踏み込んでいない俺もイントロは知っていた。

千影の持ち味は、その圧倒的な高音域の適正とビブラート・音程の安定感。
どんなに高いキーの曲を歌わせても、ピークが見えないほどのコントロール範囲を持つ。
反面、「声を張る」というのが苦手で、俺が歌ったような勢いに傾倒した曲はムラが出てくる。
817前23 2/3:2009/02/27(金) 02:26:41 ID:GuE0oIi2
"97点"
「……お粗末様でした」

あんぐり。

「アニメの曲、よくわかんない。本気で歌ってるのは分かったんだけど……」
「わたしには、いくつか隠し球がありますから。今歌ったのはまだ練習中の曲です」
「自信のある曲歌ってみてちょ」
「わ、変なしゃべり方……ほっぺ赤いですよ」
「俺にはこいつがあるからな」

ニッカ・宮城峡12年。俺のソウルメイト。
わざわざ、月に1回工場から送ってもらっている。

「適度に酔うと、気分が乗って楽しく歌える」
「わたしは飲まない派ですね。どうも声の伸びが悪くなるというか」
「ま、人それぞれだよ。じゃ、これ歌える?」
「サビだけはうろ覚えですが……」
「是非歌ってくれ──」

発した言葉は携帯のメロディに遮られた。

「もしもし御坂です」
『私、一条と申しますが……千影さん、いらっしゃいますか?』

どこかで聞いたことのある名前と、独特の抑揚がついた女性の声。
千影を知っている人間が、少しずつ増え始めている。

「ちょっと待ってください」

いったん受話部をふさいで、千影に聞いてみる。

「千影? 一条さんって人から、電話かかってきたけど」
「……メールで書いたお店の23号室にいるって、伝えてください」
「あいよ」

「もしもし、メールで書いたお店の23号室にいるそうです」
『……わかりました。すぐに行くと伝言お願いします』

そして、通話が切れた。

「一条さんって誰だっけ? 聞いたことあるんだけど……」
「以前、わたしが遊びに行った友達です」
「あー……どおりで名前だけうろ覚えだったわけか」

ピピピピピ。”予約 1曲”
818前23 3/3:2009/02/27(金) 02:27:09 ID:GuE0oIi2
「お、歌う気になったか。俺のリクエスト」
「電話来なければすぐ歌ってましたよ」

くすくすとはにかんだのち、表情が一変する。
分からない曲でも、最大限の力で歌おうとしていた。

俺のリクエストは、ワンコーラスは知っていた深夜アニメの曲だ。少し世代は古い。
天使の女の子が小学生の男の子のお母さんになって悪魔が出てきて……までしか、話は覚えてない。
同僚がやけに勧めてくるから見てみた。それで覚えていた。

「……おー、すげー」

カラオケの画面に歌詞とアニメの映像が流れている。深夜アニメはほとんど映像がなかったはずだ。
マイクを抱えながら頭を揺らす千影は、満身創痍という感じもあるのに、
ちゃんと音程を取って、声のバランスを取って歌っているという点もすごい。

「よくやったー! さすが千影だー!」
「これでも、あんまり覚えてなかったんですが……」

「失礼しまーす……」
「おー、盛り上がってんじゃん」

開かれた扉の向こうには、背の高い女。
女の肩に、金属の羽をつけた人形──いや、妖精がいた。
819前23:2009/02/27(金) 02:34:16 ID:GuE0oIi2
以上です。後編はそのうち。
820名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 07:13:39 ID:fQ3A+qaK

ぴたテンって朝やっていたような…
821名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 11:56:01 ID:oVpT84vg
>>820
うちの地域は夜だったわ…
822名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 19:05:49 ID:LmDckOdr
なんだこれは・・・!
新展開クルー!?
823名無しさん@ピンキー:2009/03/03(火) 17:51:20 ID:5+W3vv57
このスレも随分と過疎ったなぁ
824名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 00:57:45 ID:s1k3ZD2o
荒らされるよりいいよ
825名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 17:51:53 ID:aNoSfX/F
小森一樹の声が古泉一樹の声で再生される
826一尺三寸福ノ神:2009/03/07(土) 19:56:06 ID:1xIl80Wc
投下します
827一尺三寸福ノ神 1/3:2009/03/07(土) 19:56:43 ID:1xIl80Wc
>>809-811の続き

12話 一樹の苦悩


 図書館特有の空気。本の香りとでも言うのだろう。

「一樹サマ、大丈夫なのですか?」

 机の縁に腰を下ろした鈴音が、心配そうに声をかけてくる。少しだけ開いた窓から流
れてくる風が、黒髪を揺らしていた。

「何とか……」

 呻きながら、一樹は頭をかく。眼鏡を外して一度目をこすった。
 一樹が座っているのは、窓辺の読書席だった。四人掛けの机がいつつ置かれていて、
中央には仕切り用の半透明なアクリル板が立てられている。休日は大抵席が埋まっ
ているのだが、今日は空いていた。それが鈴音の幸運のおかげかは分からない。

「うー」

 机の上にはミニPCが置かれている。B5サイズよりも一回り小さいノートパソコンで、画
面が小さかったりキーボード間隔が狭かったりと不便は多いが、それでも携帯性と価格
は魅力だった。一ヶ月前に買ったものである。
 ディスプレイを見つめつつ、キーボードを打つ。
 文章作成ソフトに一行の文字が書き込まれた。一息ついて、視線を逸らす。意識がど
こかへ逃避しようになるのを必死に堪えつつ、

「難しい……。たったレポート用紙一枚の感想文だというのに、何故ぼくはこんなに苦労
しているのだろう? たった、たった原稿用紙三枚くらいの文章量なのに……」

 こめかみを押さえながら、沈痛な面持ちで呻く。
 木曜日の必修科目の課題だった。ビデオの感想をレポート用紙一枚にまとめてくる。
それだけの簡単なものだ。しかし、その簡単な課題をこなすことができない。小学生の
頃から作文は苦手だった。

「一樹サマって計算は物凄く早いのに、文章書くのは物凄く遅いです。一樹サマが完全
理系人間と言われていた意味も何となく分かるのです」

 鈴音は腕組みをしたまま、目を閉じて神妙に眉を寄せていた。
 数学や理科などの科目は得意なのに作文が呆れるほど苦手なため、昔から完全理
系人間と呼ばれていた。しかし、国語や社会の成績は普通である。苦手なのは作文だ
けだった。計算速度と作文速度の差からそう見えるのだろう。
828一尺三寸福ノ神 2/3:2009/03/07(土) 19:57:14 ID:1xIl80Wc
「小学生の頃から読書感想文が鬼門だったし、卒論が今から悩みの種だ……。この感
想文も必修科目だから、外すわけにもいかないし」

 ぶつぶつと呻く。愚痴っても現状は変わらない。
 三時間かけて半分ほど書き上げた。早い人ならば三十分もかからないだろうが、自分
ではそうもいかない。それが得手不得手というものだろう。

「一樹サマ。ワタシ、本が読みたいのです」
「よし行こう」

 鈴音の言葉に、一樹は即答してパソコンを閉じた。ディスプレイが閉じられたことで、
自動的にスリープモードに移る。キー操作が不要なのは楽だった。
 ミニノートをしまった鞄を肩にかけ、一樹は鈴音の身体に左手を回した。鈴音が両腕
で掴まるのを確認してから、腕を持ち上げ胸元に抱きかかえる。

「さて、何の本が読みたい?」

 椅子から立ち上がりながら、一樹は尋ねた。

「一樹サマ、現実逃避が露骨なのです」
「……息抜きさせてくれ」

 鈴音の的確な指摘に、ため息混じりの言い訳を返す。
 一樹は一度窓の外を眺めてから、並んだ本棚の間へと足を進めた。カーペット敷きの
床を歩きながら、左右に並んだ無数の本を眺める。この辺りには、古典文学などが置
かれていた。中央図書館のため、本の種類は豊富である。

「鈴音はどんな本が好きなんだ?」

 一樹は本棚の側面に貼ってある地図を示した。図書館のどこにどんな本が置かれて
いるか示した館内地図である。鈴音は一樹の腕の中で、その地図を眺めていた。

「ワタシはあんまり本を読んだことがないので、分からないのです。一樹サマのお勧めの
本を教えて欲しいのです」

 そう言いながら、見上げてくる。

「お勧めの本、といってもな……」

 本を読むのは苦手ではないのだが、鈴音に進めるような本が思いつかない。まさか物
理や宇宙関係の分厚い本を薦めるわけにもいかないだろう。鈴音は大量の文章を読む
のが苦手なようである。

「そうだな、うん」
829一尺三寸福ノ神 3/3:2009/03/07(土) 19:57:45 ID:1xIl80Wc
 ひとしきり考えてから、一樹は歩き出した。
 本棚の隙間を歩いてから、科学コーナーへとたどり着く。本棚に並ぶのは、いかにも
難しそうなタイトルの新書だった。人を威圧する空気がある。
 それらを眺めながら、鈴音が苦い顔をしていた。

「難しそうな本が沢山あるのです……。こういうのは苦手なのです」
「そういうのじゃないから、大丈夫」

 一樹は本棚を眺めながら、右手を伸ばして一冊の本を取り出す。
 さほど厚みのない新書だった。きれいな夜明けの写真が印刷された表紙には、簡素
に一言だけタイトルが書かれていた。

「雲の名前、なのですか?」

 鈴音がタイトルを読み上げる。

「風景写真集だよ。眺めてると息抜きになるから」

 言って、表紙を開く。黄昏色に染まった空と、空に見える茜色の羽雲の写真があった。
秋の夕暮れを撮ったものだろう。しかし、それは非現実的で幻想的な写真だった。

「きれいなのです」

 その写真をじっと見つめる鈴音。
 本全体のページは少ないが、ページは全てフルカラー写真と短い文章でで構成されて
いた。雲の名前、雨の名前、宙の名前など、シリーズ化された写真集である。この図書
館には五冊あるのだが、他のは貸出中のようだった。

「これでいいか? これなら読みやすいし、鈴音の趣味にも合うだろうし」
「はい。この本は面白そうなのです。さすが一樹サマなのです」

 閉じた本を両手で抱き締めながら、鈴音が尊敬の眼差しを向けてくる。
 性格が分かりやすいので、その好みも簡単に分かるのだ。鈴音にとっては、それが的
確に心を読んでいるように見えるらしい。

「ありがと」

 軽く頭を撫でながら、一樹は礼を言った。人に喜ばれることをした後は気分が良い。
 本を左手で抱えたまま、鈴音はびしっと窓辺を指差す。

「では、さっきの席に戻って読むのです。一樹サマも課題再開なのです。ワタシが本を読
んでいる間に終わるのです。頑張るのです」
「うん……」

 一樹は弱々しく頷いた。
830一尺三寸福ノ神 3/3:2009/03/07(土) 19:58:24 ID:1xIl80Wc
以上です。

質問。
今後の展開について
何かリクエストとかありませんか?
831名無しさん@ピンキー:2009/03/07(土) 19:59:09 ID:1xIl80Wc
タイトル消し忘れた…
832名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 08:00:08 ID:HKzxRXlR

すずねさんと合体とかないの?
833名無しさん@ピンキー:2009/03/08(日) 22:09:45 ID:BWscrtso
健全小説だからそれは無理だろ。
834名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 16:19:45 ID:rGfbcTSi
涼宮ハルヒちゃんの憂鬱の
ちっちゃな朝倉さんが可愛いんだが
835前23:2009/03/17(火) 14:18:45 ID:IbYlLGio
>>818の続きです。
836前23 1/5:2009/03/17(火) 14:20:04 ID:IbYlLGio
──

「……──」
「あ、そのまま歌い出した。ところで、ご用は?」
「(ほら、説明しないと……この人、たぶん何も知らない)」
「(分かったから、ちょっと待って)」

 部屋の扉が閉まり、薄暗い照明に二人の姿が照らされる。
 最初に片方を妖精と認識できたのは、視界が悪くとも美しく仕上げられた金属──鋼の羽が見えたからだ。
 そして、その主人に見覚えがあった。

「……えーと、もしかして、白河?」
「ご名答」
「なんで、妖精なんだ?」
「やー、前から飼ってたんだ」

 状況が飲み込めない。
 頭の中に「?」が生まれては消えて、もう、頭が沸騰してしまいそうだ。

「じゃ、改めて紹介するよ。
 あたしは白河、で、こっちが一条」
「よろしくお願いします、です」

 一条がこくり、と頭を下げる。
 まだ顔はよく見えないが、この雑味のない声なら期待してもいいだろう。

 順番に頭を整理していくことにする。
 まず、白河と名乗った女を知っている──信じられないと思うが、このやさぐれた女が初恋の相手だった。
 なんで妖精を知っているのか、千影とナチュラルに話しているのか。酒が回りすぎて、冷静になれない。
 確か、白河と去年の5月に旅行先で再会して、性犯罪者予備軍のレッテルを貼られたはずだ。

 そして、一条については千影が前に話していたのを覚えている。
 千影と裸で一夜を共にしたと言っていた妖精だ。千影づてに聞いていただけで、出会ったのは初めてだ。

「ちょっと待った、一条っていうのは苗字なのか?」
「違う違う。名前が一条なの」
「そうですー。主人様の元にたどり着く前、もらった名前なんです」
「大事な人からもらったんだって」
「……なんて呼べばいいかな?」
「呼び捨て、一条でいいですよ」

 一条は白河のことを「主人様」と呼んだ。千影は「ご主人」だし、普通にご主人様と呼ぶのは少数派なのだろうか。
 ともかく、白河と一条には深い繋がりがあるのは分かった。「たどり着いた」ということは同棲もしている。
 白河は、喋りながら左手でリモコンを握り、右手で目次本を斜め読みしていた。
 右手を止めずに番号を入れ、送信ボタンを押した。よく歌う曲の番号は暗記しているのだろう。

「……あたしは、こんなでいいかな」
「ちょっと待て。2曲目は歌なのか?」
「いちおう、十八番なんだけどな」

 昔流行ったJポップが2曲予約されていた。速度の異名を持つユニットがヒットさせた卒業ソングと、半分が語りに等しい港町の歌。
 仕組まれたようなタイミングで曲が終わり、千影がマイクを白河にバトンタッチした。
837前23 2/5:2009/03/17(火) 14:20:44 ID:IbYlLGio
「……すみません、来てたのは分かってたんですが、歌ってたもので」
「気にしなくていいよ。カラオケってこんなもんだし」
「拝聴させていただきました」
「曲、始まりますよ?」
「……」

 千影が一条の丁寧な言葉をスルーしたのは照れ隠しか、それとも。



「……千影さんって、歌うまいですね」
「そうですか? そんなに意識してないんですが……」
「私、あんまり歌得意じゃなくて……上手な人、うらやましいです」
「できないことを早々に切り捨てた結果です。
 一条さんはおしゃれだと思いますよ。どんな服でも、着こなせるスタイルじゃないですか。
 わたしは、それがうらやましいです」
「……」

 汗のかいたグラスが置かれたテーブル。グラスに背中を預け、千影と一条がガールズトークを展開していた。
 白河は歌に夢中になっている。3月だと、卒業ソングで泣きそうになる女性の気持ちが分かる。

 一条と名乗った妖精は、千影とは明らかに違う存在だった。
 身長は千影とより少し低い30cm弱。それでも、二人並べると違和感を感じる。
 髪の色から羽の形まで違う。橙色ですっきりまとめたツインテールに、少しだけ強気さを演出させるつり目。
 ただ、話し方からして気性が荒いわけではなく、誰にでも人当たりがよさそうな感じだった。

 黄色っぽいダッフルコートは相当使い込んでいるようで、袖先の色が白くあせている。
 予想通り、羽は綺麗に表面を仕上げた金属でできていた。千影のように、生理的に生えているわけではないらしい。

「……どうだ!」
"74点"

 千影と一条を眺めているうちに、白河が歌い終わった。
 女性が発するようなものではない、小節の入った歌い方が耳に残っていた。

「……結構、うまく歌えてたと思いますよ」
「上手です! いつもの主人様よりうまいです!」
「一条、それはフォローなのか?」
「いつもは60点さまよってるから、いい点数なほうよ」

 千影はちゃんと聞いていたようで、いつもの説明口調で感想を述べた。
 ……この狭い空間の中で、白河が一番男らしく見えたのは気のせいだろうか。
 そして、白河の歌声を初めて聴いた。感想は割愛する。
 なんなんだよ初恋、どうしたんだ俺。

 白河も、決して歌が下手なわけではない。
 俺が歌えば65点いかない曲を、白河はこの点数を叩き出した。
 しかし、この「下手ではないが普通」を、千影は良く思わなかったらしい。

「……本気、出してないですよね?」
「まあな。お嬢ちゃん、歌ってのは点数じゃないんだ」
「ええ、承知しています」

 二人の視線にスパークを感じた。
 何かにとりつかれたような千影の目を、久々に見た。
838前23 3/5:2009/03/17(火) 14:21:17 ID:IbYlLGio
「私も、混ぜてください」

 一条は周囲が熱くなると燃えてくるタイプのようだった。
 何をどう足掻いても、俺が歌えないのは既に決まっていた。

──

「……ところで」

 1時間後。どうしても聞きたいことがあった。
 一条が歌い終えた後、思い切って話を切り出す。

「その羽って、何でできてるの?」
「なーんて言えばいいんでしょう……確か"クロムなんとか"ってものだったと思うです。詳しいことは主人様に聞いてください」
「確か、鋼のひとつですよね」

 千影が突っ込みを入れたが、白河と目を合わせている。
 二つの会話を同時に聞けるあたり、千影には半導体が入っているのだろう。
 それほど高くない点数はすぐに消され、2曲目のイントロが始まる。曲と一緒に話が途切れたように思えた。

「そう、それそれ。じゃ、次の曲歌うから」
「マイクどうぞー」
「サンキュ」

 一条はマイクを白河に渡した後、ミニチュアのようなコートのボタンを外し、グラスのそばで膝をついて羽の動きを止めた。 

 前がはだけて、内側にシャツが見える。胸は普通の女性並に自己主張している点は、大平原の千影より見応えがある。
 見下ろす形になり、服の隙間からほんのちょっとだけ谷間が見えることは素晴らしいことだと思う。
 千影に大きめのシャツを着せると非常に低い確率でアレが見えてそれが至高と信じていたが、
 お互い違ってお互いよいというもの──WIN-WINがあるのだと再認識した。
 誤用なんて湿気たことは言わないでくれ。俺にはこの輝きこそが勝利の象徴なのだ。
 千影と長く暮らしていくうちに、数十センチの女の子に対し情熱的な感情を抱けるようになった。
 この点は、千影にいくら感謝してもし足りないほどだ。ちいちゃいことはいいことだ。
 去年春までの小児性愛はなくなっている。30cmも守備範囲に入る。

「……この人、いやらしい目つきをしてます」
「ご主人はこういう人です。アリスコンプレックスです」
「きれいよりかわいいの方が好きっていうことですよね?」
「人畜無害なのでご安心を。ずっと暮らしてますが、乱暴されたことはほとんどありません」
「ほとんど、ってことは……」
「まあ、男の子と女の子ですから……どうしても仕方のないことなので、気にしてないです。
 むしろ、犯罪が未然に防がれたと喜ぶべきだと思います」

 俺の一番隠したい性癖をあっさり言いやがって、この黒っ娘め……
 しかし、千影の言葉に反論できないのも事実。
 幸い白河が歌に夢中なのと距離が物理的に遠く、彼女には届いてないようだった。

「……千影がひどいこと言うよぉ……」
「あ、泣きました」
「……千影さん、曲終わりましたよ」
「白河さんお疲れ様ですー」

 点数評価画面の後に千影の予約していた曲が始まり、メロディに千影が声を重ねる。
 白河の合いの手のほうが大きくて、落ち着いて聴けやしない。

「……うぅ」
「……なぐさめて欲しいですか?」
「……」
839前23 4/5:2009/03/17(火) 14:21:51 ID:IbYlLGio
こくこく、と首を下げる。
第三者がいる時ほど精神的ダメージを与える発言をする千影。
悪意はないのだろうが、皮肉と直球の混ざり具合が髪と瞳の色によくマッチしていると言わざるを得ない。

「千影さんの主人さんってどんな人か気になってたんですが、こんなヘタレだったとは……」
「……言わないで」
「……でも、かわいいです……嫌いなタイプじゃありません」
「かわいいって言われるのは少し複雑だ」
「じゃあ、小動物っぽいっていうのはどうですか?」
「……そんなに弱そうに見える?」
「軽口を叩けるくらいの関係が理想的だと思いますよ。悪くは見えません」
「あ、ありがとう……」



 30分ほど経った。
 千影と白河で一つの固有結界らしきものが生まれている。
 採点機能で点数を争っているようだった。歌唱力で一歩先をゆく千影を、
 「点数じゃない」と言いつつシステムの裏をかいて地力を底上げしている白河。点数は五分五分というところ。
 しかし、選曲が理解の範疇を超えており、聞き入ることも難しい。

「触ってみていい?」
「どうぞ」

 そして、一条と俺が置いてけぼりにされて気まずい雰囲気になっていた。
 卓に座った一条と向き合って、ずっと目を合わせたまま二人で硬直していた。
 何か話題を話題を……と思って、この言葉が出たのだった。

「あ、固い」
「鋼ですし」

 ……千影は羽を触られるとくすぐったがっていた。
 一条はどうだろうという好奇心に手を貸したが、冷たいだけだった。
 夏場はひんやりしてうらやましいことになりそう。

「ふにふにできない」
「セクハラはなしです」
「お小遣いあげるから。ね?」
「しゅじんさま――」
「勘弁してください」

 ──時に、俺はこういう発作を起こす。
 非常識な言動を発した副作用か、反射的に頭が絨毯を削り始めた。
 千影は従順ではあるが、一部のことに限っては俺が絶対服従の立場に立たされている。
 人間相手でないため、命を守るために身体にすり込まれていたことだ。
 今の白河に油を差すのは自殺行為で、千影に至っては間違いなく殺される。

「いや、そんなにしなくても……」
「これが俺の反省です」
「……でも、何も話が浮かばないです。どうします?」

 部屋の中には4人いる。2人が妖精、残りが人間。
 千影、白河は歌に夢中。俺と一条が完全に空気。
 酒が回って思考が追いつかない。すべらない話題も提案できない。
840前23 5/5:2009/03/17(火) 14:22:36 ID:IbYlLGio
「……」
「……わっ」

 何もすることがない。会話も途切れた。
 退屈しのぎと思い一条の両脇をつまんで、掌にのせた。
 手が一条の髪に伸びる。髪を結っている二つのヘアバンドを外すと、
 後ろ髪が腰のくびれからやや上くらいの高さまではだけた。
 ここまで、抵抗も告げ口もされていない。自重という言葉は忘れた。

「さらさらー」
「急に持ち上げないでくださいよ……毎晩お手入れしてます」
「なでなでー」
「聞いてます?」
「聞いてない」
「……はぁ……」

 呆れたようなため息を漏らしたが、撫で続けたら許してくれた。
 昔、ウィスキーに耐性がなかった頃はよく酔いつぶれて千影を人形のように弄んでいた。
 今みたいに指で髪を梳いたり、そのついでに撫でてみたり、羽を軽くはじいてみたり。
 必要以上に暑くなった部屋で、かなり酔っているのかもしれない。明日が心配だ。

「幸せそうだな」
「誰だって、頭撫でられたらうれしいと思いますよ」
「うちの子は撫でると怒る」
「……かわいそう」

 そのまま、指の櫛を通し続ける。
 千影は羽をはじくと、とても気持ちよさそうだったことを覚えている。
 童話で羽は性感帯と聞いたが、実際そうだったのだろうか。
 純粋なスキンシップが拒まれている今、確認する術はない。
 それに、一条の羽をはじいても、爪が痛くなるだけで面白くない気がした。

「……言うなよ、結構気にしてるんだから」
「…………ふふ」
「……」

 指先で心地よいさらさら感を味わったあと、太股の上に俺の右手を置いた。
 意図を察したのか、肘を背もたれにして目を閉じる一条。

「……疲れました。休ませていただいてもいいですか?」
「夜が明けたら起こすよ」
「はい、です……うゅー……」

 この大音量の環境でよく眠れるな、と思った。試しに服の上から胸をつついてみても反応がない。寝た。
 妖精に不眠というものはないのだろうか。人間の抱えるメンタルの悩みとは無縁そうに見える。

「……」

 しかし、目をつむって本当に幸せそうな顔をしている。俺は他人のはずなのに、無防備に身をゆだねられているわけで。
 一条も生きている。そう実感できる。

  仕事の疲れと一条の眠った顔。睡魔にカモられるには最高のコンボだった。
  自然に、意識が遠のいていった。

─#7「センチメンタルストライカーズ」 おわり─
841前23:2009/03/17(火) 14:28:20 ID:IbYlLGio
以上です。
ほのぼのって難しいですね。
842名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 15:02:27 ID:iYm2bp/D
>>841
GJです!
このほのぼの感…素晴らしいと思いますよ。
読んでて癒されました。
843名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 20:54:28 ID:PAwH6qMJ
GJ
844一尺三寸福ノ神:2009/03/21(土) 01:44:55 ID:kivrKR64
投下します
845一尺三寸福ノ神 1/3:2009/03/21(土) 01:45:44 ID:kivrKR64
>>826-829の続き

第13話 好奇心の代償


「終わった。ようやく終わった……」

 印刷されたレポートを眺めながら、一樹は長々とした息を吐き出した。
 表紙を含めてたった二枚のレポート。これを作るのに午後をまるまる使ってしまった。
感想文系のレポートは今回だけなので、それは幸運なことだろう。

「一樹サマ、レポート完成おめでとうなのです。これで、ようやく安心して休日を過ごせる
のです。今日はゆっくりお休みするのです」

 机の上に立った鈴音が、声を掛けてくる。時計を見ると午後の八時だった。図書館か
ら帰宅後一時間ほど昼寝。それから夕食を取り、部屋に戻ってレポートを印刷した。
 晴れて自由な時間である。

「というわけで、お昼の約束通り、風景写真のサイトを見せて欲しいのです!」

 鈴音はびしっと一樹を指差した。朱袴に包まれた両足を左右に開き、左手を腰に当て、
白衣の袖を振る勢いで右手の人差し指を突き出す。理由は知らないが、鈴音の気に
入っているポーズだった。

「分かってるよ。待って」

 レポートをプリンタの横に置いてから、一樹は机へと歩いていく。
 図書館にいる間に、鈴音は風景写真集を読み終えてしまった。中身は写真なので読
み終わるのは早い。同じシリーズは貸し出し中で同じような写真集もなかったので、帰っ
てから、ネットで風景写真のサイトを見せる約束をしたのだ。
 一樹は椅子を引き、そこに腰を下ろす。パソコンの電源を入れる。立ち上がるまでは
一分ほど待たなければならない。プリンタとは、ミニPCから直接USBを繋いでいた。

「一樹サマ、ちょっと失礼しますなのです」

 鈴音が小さな座布団を一樹の膝に落とす。家にあった人形用の座布団で、鈴音に丁
度いい大きさだった。一樹が渡したものである。
 座布団に飛び降り、腰をを下ろす鈴音。机の上に両手を乗せる。

「何してるの?」
「机の上からパソコンを見るのは行儀が悪いのです」

 一樹の問いに、鈴音は当たり前とばかりに答えた。確かに机の上に乗ってパソコンを
見るのはあまり行儀のいい行為ではない。

「そうか」

 手短に納得し、一樹はディスプレイに目を移した。
 OSが立ち上がり、デスクトップ画面が表示される。アイコンや文字を邪魔しないような
簡素な壁紙と、必要最低限のアイコン。
846一尺三寸福ノ神 2/3:2009/03/21(土) 01:46:16 ID:kivrKR64
 マウスを動かし、インターネットエクスプローラを立ち上げる。画面に広がるブラウザ。
ブックマークの趣味2フォルダを開き、サイトを開く。

『不思議な世界の写真館』

 それは、有名な写真サイトだった。アマチュア写真家五人による共同管理で、様々な
写真が飾ってある。管理人の中にPC関係の仕事の人間がいるらしく、ホームページと
しても完成度は高い。
 インデックスにはメニューとともに、富士山の写真が飾られていた。富士山の上に掛か
る笠のような雲と左に見える大きな雲。
 鈴音が写真を指差し、訊いてくる。

「これは凄いのです。この雲は何という雲なのです?」
「笠雲とつるし雲だよ。山裾に沿って上昇した空気から雲が生まれる笠雲と、山を越えた
空気がまた浮き上がってできるつるし雲。こんなにきれいなのは滅多に見られないけど」
 一樹の解説に鈴音は数拍黙り込んでから。

「何だか分からないけど、凄いのです……」

 そう呟いた。


   ――――


 そうして一時間ほど写真について語り合っていただろうか。
 ぱたりと閉るドアを確認してから、鈴音は腰掛けていた机の縁から立ち上がった。身
体を後ろに引きつつ、両足を机に乗せ、立ち上がる。

「さて、一樹サマは行ってしまったのです。今ワタシは一人きりなのです」

 閉ったドアを見ながら、鈴音は何度か頷いた。胸元のお守りが揺れる。一樹はトイレ
に行った所だった。しばらくは戻ってこないだろう。時間は一分ほどか。
 一度時計を確認してから、鈴音はおもむろにパソコンに向き直った。

「ふっふっふっ。一樹サマ、ワタシを一人残してでかけた事を後悔させてあげるのです。
好奇心旺盛な女の子は、パソコンの側に一人にしてはいけないのです」

 鈴音は両手でマウスを掴み、カーソルをタスクバーのスタートに移動させる。一度クリ
ックすると、スタートメニューが現れた。その一番下にある検索欄に、カーソルを合わせ
てから、キーボードを眺めつつ簡単な文字を入力する。

「jpg検索……なので――」
「何してるんだ?」

 ぽんと頭に手を乗せられ、鈴音は動きを止めた。止めたと言うよりも、止まった。頭の
てっぺんから爪先まで、凍ったように動かなくなる。
 ギギギ、と軋んだ音を立てながら振り向くと、一樹が立っていた。光の反射のせいで、
眼鏡が白く光っている。表情を読むことは出来ない。

「おかえりなさい、なのです」
847一尺三寸福ノ神 3/3:2009/03/21(土) 01:46:49 ID:kivrKR64
「僕の持ってるjpg画像が見たいのか? 見たいなら見せるよ」

 一樹の左腕が鈴音を持ち上げ、がっちりと拘束する。そのまま椅子に座り、実行キー
を押した。ずらりと出てくる画像。そのひとつをクリック。
 画面に出てくる画像。緑色の球体の中に赤い球体が内側にくっつくように二つ縦に並
び、その首の部分を半径の違う青い球がネックレスのように巻き付いている。

「何なのです、これは……?」

 じっとりと背中に嫌な汗を流しながら、鈴音は尋ねてみた。答えを聞いてはいけないと
本能が告げているのに、条件反射的に口が動いてしまう。
 左手で鈴音を捕まえたまま、一樹が答えた。

「これはかなり有名な和算だ。緑の球内部に内接するふたつの赤い球、その首の周りを
取り囲む半径の異なる青い球。この青い球は赤い球と外の緑の急に外接している」

 にっこりと微笑みながら、見下ろしてくる。
 鈴音は何も言えぬまま一樹を見上げた。ぱくぱくと口が動くものの、何も言葉が出てこ
ない。何を言っているのか意味不明だった。思考の許容限界を二桁越えている。目元
に涙が浮かんでいるのが自分でも分かった。
 しかし、気にせず続ける一樹。楽しそうな声で解説してる。

「これはフレデリック・ソディーの六球連鎖の定理と同じものだ。日本じゃソディーの百年
も前に考えられてたんだから、面白いと思うよ。昔の日本人は暇だったんだなぁ」
「一樹サマアアアア!」

 鈴音は泣きながら、悲鳴を上げていた。
848名無しさん@ピンキー:2009/03/21(土) 01:48:30 ID:kivrKR64
以上です
続きはそのうち
849名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 13:14:46 ID:HA7iPiN+
保守
850名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 22:11:02 ID:JHnw42ox
投下乙
851名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 01:28:59 ID:9mXsfr5W
鈴音の言動すべてが俺のツボをついてくる・・・
これはGJすぎる
852名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 23:14:42 ID:/hVspqCH
GJ
853名無しさん@ピンキー:2009/03/29(日) 23:22:11 ID:etoNOGDA
掲載されて一週間過ぎてからGJ…
854名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 00:16:52 ID:TX0WZjS3
保守
855名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 12:32:28 ID:1ienAldX
保守
856名無しさん@ピンキー:2009/03/30(月) 19:30:47 ID:DlIipNLi
保守妖精っていないんだろうか?
857名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 10:47:59 ID:l1J/VIwE
・<ここにいますよ
858名無しさん@ピンキー:2009/03/31(火) 12:29:32 ID:FqWJ9OIk
ぷよ通か!
859名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 19:20:10 ID:GiOnlYG7
フィフニルの人のところでしっかりエイプリルフールネタやっててワロタw

でもわりとマジで作ってほしいな・・・・
860名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 20:45:21 ID:UkRvl16x
うそ〜ん
861一尺三寸福ノ神:2009/04/01(水) 23:14:26 ID:pcShQiWj
気にせず投下します
862一尺三寸福ノ神 1/3:2009/04/01(水) 23:15:08 ID:pcShQiWj
>>846-848の続き

14話 多分復活


 机の上に突っ伏している鈴音。

「うぅ……。か、かズき、サまァ……」

 両手両足を投げ出し、死にかけていた。凍えたように震える身体。光の消えた瞳から
は微かに涙を流している。その姿は燃え尽きた灰を連想させた。息を吹きかけたら、そ
のまま崩れてしまいそうなほどに。

「やり過ぎたかなぁ」

 ベッドに座ったまま、一樹は頭を掻く。
 マニアックな数学や物理の話を一時間ほど、数式や写真や図を交えて無理矢理聞か
せ続けたのだ。普通の大学生でも頭が痛くなるだろう。ましてや、鈴音は理系の話が苦
手。もはや精神的な拷問に近い。

「鈴音。……大丈夫か?」

 試しに声を掛けてみる。

「だいじょーぶなのです。サイン、コサイン、タンジェント〜♪ 人よ一夜にヒトミ頃〜♪ 
人並みに奢れ〜や♪ 富士山麓オオム泣く〜♪ スイヘーリーベ、僕のフネ〜。すーが
くは楽し〜いのですぅ……。あは、アはははハ……」

 虚ろな眼差しを空に向けたまま、鈴音は壊れた歌を唱っていた。痙攣しながら、乾い
た笑みを浮かべている。自分が何を言っているのかも理解していないだろう。
 一樹はかぶりを振った。さすがにやり過ぎたと反省する。回復しないことは無いだろう
が、しばらくはこのままだろう。
 それでも、興味本位で話しかけてみる。世間話でもするように。

「明日近所のホームセンターに買い物に行くんだけど、何か欲しいものある?」

 ピクッ。

 と鈴音の身体が跳ねた。震えが止まり、虚ろだった瞳に光が戻ってくる。どこかへ飛び
去っていた意識が戻ってくるのが目に見えて分かった。
 十五秒ほどしてから、鈴音はその場に起き上がる。
863一尺三寸福ノ神 2/3:2009/04/01(水) 23:15:38 ID:pcShQiWj
「ワタシのお社が欲しいのです」
「今ぼくは物凄く感心している――」

 皮肉でも冗談でもなく、一樹は本心からそう口にした。
 今までの瀕死の状態はどこへやら、机の上に立ったまま腕組みをする。神妙な面持ち
で、自分に言い聞かせるように口を動かした。

「やはり神様たるもの、自分のお社が欲しいのです。お社を持ってこそ、神は一人前な
のです。神社みたいな大きいのは無理なのは分かっているのです。だから、小さな神棚
が欲しいのです。ワタシの神棚なのです!」

 そう言ってからパンと自分の胸を叩く。
 どうやら、鈴音は祭られたいようだった。神のことは全く分からないのだが、そういうも
のなのかもしれない。本能、という言葉が頭に浮かぶ。

「神棚なら和室にあるけど」

 何となく言ってみる。一階の和室。丁度この部屋の真下辺りに神棚があった。家にあ
るものは、それだけである。あとは庭の隅に置いてある四角い石。親の話によると、そ
ちらは氏神らしい。

「あれは天照大神の神棚なのです。ワ、ワタシみたいな下っ端の神が一緒に祭られたら、
物凄いことになってしまうのです! それは絶対に嫌なのです」

 ぱたぱたと手を動かしながら、鈴音が騒いでいた。
 神棚にあるのは伊勢神宮の大麻である。神としてのレベルの違いなのだろう。思い返
してみると、鈴音は神棚のある和室には入ろうとしなかった。
 鈴音は自分の胸に手を当てて、

「ワタシが欲しいのはワタシだけのお社なのです。ちっちゃいのでも文句は言わないので
す。だから、ひとつ買って欲しいのです」
「でも、神棚って高いんだよな」

 一樹は眼鏡を動かし、ホームセンターの神棚置き場を思い出した。
 神具や仏具の類は総じて高い。どのように作られているかは知らないが、あまり使わ
れないものなので、単価は高くなるだろう。神棚の類は覚えている限りでは、安いもので
も五千円を越える。
 しかし、鈴音はぐっと拳を握り、

「ワタシの福招きと一樹サマの計算能力があれば、簡単に稼げるのです」

 黒い瞳を天井に向けて、言い切る。
 額を押さえてから、一樹は呻いた。
864一尺三寸福ノ神 3/3:2009/04/01(水) 23:16:21 ID:pcShQiWj
「ぼくはギャンブルやらないぞ……」
「それは残念なのです」

 肩を落として、両腕を垂らす鈴音。予想は的中だった。
 ギャンブルの才能があると言われることはある。だが、一樹自身は賭け事をする気は
無かった。九十九回勝ち続けても、最後の一敗で全てを失うような文字通りの賭けをす
る勇気はない。何も賭けないゲームは行うが。
 鈴音がぽんと手を打った。

「なら、ワタシの福招きでスピードクジを当ててみせるのです」

 駅前にある宝くじ売り場のことだろう。普通の宝くじやロト6などから、その場で最大十
万円の貰えるスピードクジまである。
 一樹は眉毛を下ろしながら、冷静に指摘した。

「それ、反動来るよね?」

 鈴音の福招きで、確率二割以下のことを引き寄せると、直後に反動がやってくる。今
まで何度か試した結果、福に見合った反動が来ることが分かった。鈴音の力でどこまで
大きな福を引き寄せられるかは不明だが、仮にスピードクジで一万円を引けば、一万円
分の損失が出るのは確実である。

「大丈夫なのです。損をするのは一樹サマであって、ワタシではないのです!」

 得意げな表情のまま、鈴音は胸を張って見せた。それが本音らしい。
 こめかみの辺りを指で掻いてから、一樹は口を開いた。

「巨大数表示のためのクヌースの矢印表記」
「はゥッ……!」

 ぽてりと倒れる鈴音。効果は抜群だ。
 満足げにその姿を眺めてから、一樹はベッドから起き上がった。

「水飲んで来よ」
865名無しさん@ピンキー:2009/04/01(水) 23:16:53 ID:pcShQiWj
以上です
866名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 12:52:38 ID:zORcaXoH
お疲れ様
867名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 10:56:08 ID:vcdVrxZF
GJ
なんとなく鈴音はいじめたくなる感がある
868名無しさん@ピンキー:2009/04/04(土) 17:06:22 ID:PYsFmNu/
良かったよGJ
869名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 02:17:52 ID:fDWRByRC
お疲れ様
面白かった
870名無しさん@ピンキー:2009/04/08(水) 03:50:55 ID:8MVMAWDC
871名無しさん@ピンキー:2009/04/11(土) 22:24:27 ID:tg9/HE6O
保守
872名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 18:43:11 ID:tdAiq+yA
誰もいない…

ぬるぽ
873名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 20:00:53 ID:bPkuYEnv
>>872
・<ガッ
874名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 20:07:56 ID:pTodIMLT
保守妖精さん乙w
875名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 16:20:12 ID:dVhlTBlR
・<保守
876名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 03:01:46 ID:WyoRLzcU
ちっちゃい女の子 って 機械生命とかでもOKなのかしら?
877名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 07:19:38 ID:VLFwBw7c
OKだろ
878名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 08:02:48 ID:WBMj3UwM
そろそろ投下しないとなー…
879名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 17:42:16 ID:RCjomrNK
保守
880一尺三寸福ノ神:2009/04/22(水) 23:20:35 ID:tqm6m84U
誰もいない…?

でも投下します
881一尺三寸福ノ神:2009/04/22(水) 23:21:18 ID:tqm6m84U
>>862-864の続き

第15話 神棚を買おう

 ホームセンターの一角にある神具売り場。家に置かれる神棚を中心として、それらの付
属品などが主に売られている。置かれているもののせいだろうか、そこだけ他とは違う空
気が漂っていた。

「お社が沢山あるのです」

 左腕で抱きかかえた鈴音が、飾られた神棚を眺めながら、両足を動かしている。緋色の
行灯袴が揺れていた。黒い瞳が好奇心に輝いている。

「……うん、予想していた通り高い」

 張られた値札を眺めながら、一樹は呻いた。
 右手に持った買い物かごには、自分で使うための文房具と親に頼まれた日用品が放り

込まれていた。合計で三千円ほどだろう。
「一樹サマ」

 言いながら、鈴音は右手を持ち上げる。腕を上げたせいで、白衣の袖が少しずり落ちた。
一切迷うことなく、人差し指を突き出す。その先には。

「ワタシはあの高級そうな神棚が欲しいのです」
「無理」

 即答する一樹。
 鈴音が指差したのは、売り場で一番大きな神棚だった。家にある神棚と同じ三社造り。
材質は檜製らしい。素人目にも分かるほど豪華なもので、金具などにもきれいな細工が施
してある。さらなが小さな神社だ。しかし、豪華というよりも派手という印象を受けた。
 榊なども置かれているが、それは別売りだろう。
 値札には『6万9千円税込み』と記されていた。

「なら、あっちの小さな神棚が欲しいのです」

 鈴音が指を移動させる。
 それは、一社造りの神棚だった。一番高いものよりもずいぶんとすっきりしている。こちら
は装飾なども少なく、質素な印象である。
 値段は1万円だった。

「どうなのです? 一樹サマ」

 右手を下ろし、鈴音が振り向いて見上げてくる。瞳に期待の光を点しながら。
 しかし、一樹は小さくため息をついた。持っていたカゴを近くの台の開いている所に置い
てから、右手で鈴音の頭を撫でる。柔らかな髪の毛の手触り。

「最初に無茶なものを提示して相手を驚かせてから、無難な本命を当てる。それはよくある
交渉術だけど、もう少し上手くやってくれない?」
「うぐ……」

 あからさまに狼狽える鈴音。身体の震えが腕に伝わってくる。
 どこかで覚えたのを実行してみたくなったのだろう。もっとも、この交渉術はお互いにある
程度の落とし所が無いと交渉決裂に至ることが多いらしい。

「な、ならば――なのです」

 鈴音は一樹の左腕を掴み、抱きかかえられた腕から身体を引っ張り出した。左の前腕に
両足をかけて跳び上がり、器用に近くの棚に飛び移る。
882一尺三寸福ノ神:2009/04/22(水) 23:21:54 ID:tqm6m84U
 それから、右手を白衣の袖の中に引っ込めた。

「?」

 一樹は疑問符を浮かべる。何をしようとしているのか分からない。
 袖の中から右手を取り出した。その手には、十センチほどのミシン糸で釣られた五円玉
が握られている。見た限り、そのままのようだった。
 それを左右に振りながら、鈴音は視線に力を込めた。

「一樹サマは、だんだん眠くな〜る。眠くなるので〜す」

 ぺし。

「はうっ」

 軽いデコピンを食らい、鈴音はひっくり返る。
 首から下げたお守りが跳ね、持っていた糸付き五円玉が宙を舞った。床に落ちて転がる
五円玉。白いひもが尻尾のように動いている。
 一樹は身体をかがめて五円玉を拾い、ポケットに入れた。
 視線を戻すと、鈴音が起き上がっている。両足を投げ出したまま両手を袴の上に置き、
不満そうに一樹を見つめていた。

「一樹サマ。意地悪なのです」
「いや、だって対応に困ったから。うん、ツッコミだね」

 眼鏡を動かし、一樹は答えた。口元に乾いた笑みが張り付いている。自分でも適切な答
えでないという自覚はあるが、他に答えようがない。
 こほんと咳払いをしてから、話を本筋に戻す。

「鈴音が神棚欲しいって言っても、別にそこに住むわけじゃないんだよね?」
「ワタシの依代であるこのお守り」

 と、いつも首から下げているお守りを見せた。
 白い高級そうな袋に入ったお守り。正確にはお守り袋。神霊という文字が刺繍されている。
普通のお守りの中身はお札の類らしいが、鈴音のお守りの中身は知らない。何度か尋
ねたことはあるが、秘密としか答えなかった。
 鈴音はその場に立ち上がり、お守りを掲げてみせる。

「このお守りを祭っておくのです。一樹サマが毎日拝んでくれたりすれば、ワタシも福の神と
してパワーアップできるのです! そうすれば、一樹サマへ導ける幸運もパワーアップでき
るのです! というわけで、立派なお社が欲しいので」
「なら――」

 と一樹は指を動かした。

「これでいいんじゃないか?」

 指差した先に飾ってあるのは、お守り用の神棚だった。
 四角い箱に屋根が付いただけの簡素な構造。文字通りの手乗りサイズの社で、お守りが
ひとつ入る大きさだった。値段も手頃な千五百円税別。

「何か、しょぼいのです……」
「贅沢言わない。これなら買ってあげるけど、どうする?」

 そう言って、一樹は鈴音を見つめる。
 十秒ほどの迷いの後、鈴音は頷いた。

「ちょっと小さいのですけど、仕方ないのです。これをお願いするのです」
883名無しさん@ピンキー:2009/04/22(水) 23:22:55 ID:tqm6m84U
以上です。
884848:2009/04/24(金) 23:44:11 ID:YVA2UjnN
884
885名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 00:12:21 ID:tnCr59jR
ああ、可愛らしい
GJであります
8861:2009/05/02(土) 07:06:24 ID:wpFr7aAi
887名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 22:00:21 ID:BTEZHsf/
この、まったり非日常なトコがなんとも良いなあ
そして神様にお願いされる一樹さんがシュールだ
888444:2009/05/04(月) 00:19:15 ID:/gN+n15d
888
889名無しさん@ピンキー:2009/05/04(月) 13:17:03 ID:CEJbX0IW
この数字は何の意味があるんだ?
890名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 19:51:39 ID:Bf+ZB7Gh
保守!
891一尺三寸福ノ神:2009/05/13(水) 20:30:50 ID:EfXkAhit
投下します
892一尺三寸福ノ神 1/3:2009/05/13(水) 20:35:04 ID:EfXkAhit
>>881-882の続き

16話 鈴音のリベンジ 前編

 一樹が一人で大学に出かけてから、三時間ほどが経つだろう。窓の外ではしとしとと秋
の雨が降っている。雨を理由に鈴音は家で待っていると言ったのだ。
 無論、それはフェイクである。

「ふっふっふ、今日こそ前回の雪辱を果たすのです」

 鈴音は小さな拳を握りしめ、誰へと無く呟いた。
 午前十一時過ぎ。場所は一樹の部屋。一樹には先日図書館で借りてきた本を読んで暇
を潰すと言ってあるが、本を読む気はなかった。

「こないだ変な公式とか図形の画像で頭痛が痛くなるまで苦しめられた時から、反撃の機
会を伺っていたのです。それこそ、今なのです」

 ベッドに仁王立ちした鈴音の前には、USB接続式外付けハードディスクドライブが置かれ
ている。ベッドの下に隠してあったもので、『バックアップ用』と書かれたシールが貼られて
いた。一樹が出かけてから部屋をガサ入れしていたのである。

「エッチな本とかも期待していたのですけど、見つからなかったのです。この部屋じゃない
所に隠しているのかもしれないのです」

 腕組みをして首を傾げる。
 三時間部屋を探しまくった結果、出てきたのはこのHDDひとつだけ。他にも色々出てくる
と思ったのだが、何も出てこなかった。ある意味予想はしていたが。
 口元に自然と不敵な笑みが浮かんでくる。

「しかし、バックアップ用のハードディスクなら、パソコン内の古いデータが入っているはず
なのです。ワタシが一樹サマの所に来る前のデータが入っているのです。そして、エッチな
画像を持っていない男の人は絶対にいないのです」

 HDDを両手で抱え上げ、鈴音はベッドから飛び降りた。行灯袴の裾がふわりと広がる。
足音もなく床に着地。人間で言うと自分の身長の高さから飛び降りたようなものだが、慣れ
ているため恐怖はない。
 置いてあった草履を履いてから、鈴音は部屋を駆け抜けた。

「とうッ!」
893一尺三寸福ノ神 2/3:2009/05/13(水) 20:35:36 ID:EfXkAhit
 床を蹴り、跳び上がる。机の横にあるスチールラックを右足で蹴り、三角蹴りの要領で机
の上に着地した。長い黒髪が背中に落ちる。普段ならそのまま机に駆け上がれるのだが、
HDDを抱えているので、そうもいかない。

「我ながら、猫並の機動力なのです」

 自分の身軽さに感心する。ついでに顎に手を当ててポーズを取ってみる。誰も見ていな
いが、それは気分の問題だった。誰かに見られていたら逆に困るが。
 自画自賛もそこそこに、鈴音はHDDから伸びるUSB端子をパソコンの端子に繋げた。こ
れはUSB電源タイプのようなので、電源コードは不要である。

「では、パソコン起動なのです!」

 電源ボタンを押すと、OSが立ち上がる。OS起動が終わるまでは四十秒ほど。その時間
を持て余すように鈴音は自分の胸元を撫でた。
 いつも下げているお守りはない。
 部屋の入り口近くの壁に掛けられたお守り用神棚。そこには自分の依代であるお守りが

飾ってあった。鈴音が部屋にいる時はここに飾っておくことになっている。

「福の神パワーよ、ワタシに幸運を運んでくるのです」

 自分でもよく分からないお祈りをしていると、パソコンが立ち上がり、デスクトップ画面が
表示された。白黒絵のシンプルな背景と小綺麗に整理されたアイコン。

「それでは、さっそく一樹サマの秘密を覗かせてもらうのです――」

 鈴音はマウスを両手で動かし、マイコンピューターを開く。
 そして、Dドライブの外部HDDをダブルクリック。

『データを読み込んでいます』

 という文字が表示され、ウインドウの中の青いバーが左から右に移動していく。HDD内部
の情報を読み取っているようだった。
 そうして二秒ほど。

『パスワードを入力してください』

「やっぱり来たのです」

 画面に現れたパスワード入力フォームを眺めながら、鈴音は静かに独りごちた。パスワ
ードを掛けてあることは予想していた。しかし、予想していた壁は容易く突破できる。
894一尺三寸福ノ神 3/3:2009/05/13(水) 20:36:17 ID:EfXkAhit
 鈴音はキーボードを叩いた。

『12345678』

「エンターなのです」

 パン、とエンターキーを押すと、

『パスワード承認』

 そんな文字が出てから、HDDの読み込みが再開される。一樹はパスワード入力の際はい
つもこの数字を入れていた。英字と数字混じりの際は最後にAを入れている。
 他人が触るものではないので、その辺りは適当らしい。もし一樹が手抜きでないパスワー
ドを組んでいたら自分の計画はここで終わっていただろう。

「随分と綱渡りな計画なのです……。でも結果オーライなのです」

 腕組みしながら、今更ながらそんなことを考える。
 しかし、現実はそう甘くないらしい。

『接続キー入力』

「へ?」

『500の立方根を 9桁まで 30秒以内に入力せよ』

 という文字とともに現れる入力フォーム。その横では一秒づつ減っていく数字。
 頭を真っ白にしたまま、鈴音はその画面を眺めていた。500の立方根、つまり三回掛け算
したら500になる数字のことである。分かるわけがない。
 結局何もできぬまま、三十秒が過ぎた。

『接続キー入力失敗 再入力しますか? はい いいえ』

 空っぽの思考のまま何となく『はい』をクリックしてみる。

『sin57.5°の数値を 9桁まで 30秒以内に入力せよ』

「こんなのできるかー! なのでーす!」

 鈴音は叫んでいた。
895名無しさん@ピンキー:2009/05/13(水) 20:37:02 ID:EfXkAhit
以上です
896名無しさん@ピンキー:2009/05/15(金) 00:07:46 ID:aldUxmO2
おつおつー
千影の人はまた長期休み?
897名無しさん@ピンキー:2009/05/16(土) 14:52:24 ID:vRZUlRLO
おつっす
しかし、中に鈴音サイズの女の子にひぎぃしてるエロ画像が
あったらどう反応してたのやら……
898名無しさん@ピンキー:2009/05/17(日) 13:29:32 ID:sTeZgx2k
500の立方根もsin57.5もぐぐれば一発で出て来るけど、30秒がクセモノだよなw
鈴音サイズだとキーボード叩いてる間に終わりそうだ。
899一尺三寸福ノ神:2009/05/21(木) 00:03:46 ID:NoqO2Tlo
投下します
900一尺三寸福ノ神 1/3:2009/05/21(木) 00:04:33 ID:NoqO2Tlo
17話 鈴音のリベンジ 後編


「イッツア、キーアイテームなのです……!」

 鈴音はベッドの傍らに置いてあった黒くて四角い板を頭上に掲げて見せた。
 大きさは手帳ほどだが、手帳ほど厚みもなく、材質はプラスチック製。かなり使い込まれ
ているのが、一目で分かった。

「関数電卓! これがあれば難しい計算もあっというまに解けるはずなのです。あってよか
った文明の利器なのです」

 きらりと黒い瞳を輝かせてから、鈴音は得意げに断言した。
 あれから何度か確認キー入力を試みてみたものの、出てくるのは不必要に手間のかか
る問題ばかり。最初は一樹が暗算で解いているのかとも考えてみたが、さすがにそれは無
理と判断。とりあえず、三十秒以内に答えを出す方法が無いものかと考え、関数電卓の存
在を思い出す。

「でも、もう四時半なのです……」

 この答えを閃くまで、現実逃避したり諦めて本を読んだりしている間に、随分と時間が経
ってしまった。それは仕方がないだろう。
 昼過ぎまで降っていた雨も上がり、今は薄日が差している。
 鈴音は布団の上に腰を下ろし、関数電卓を開いた。普通の電卓よりもキーの数が二倍
以上もある。以前、一樹に使い方を教えて貰っていたので、使えないことはない。

「確か、これがONで……。これがシフトで、ええと、ルートに二乗、三乗……。ふむふむ。そ
んなに難しい仕組みではないのです……」

 キーを押しながら、一樹に教えられた使い方を思い出してから、鈴音は力強く頷いた。黒
い髪が跳ねる。多分、大丈夫だろう。根拠は特に無いが。

「では、リベンジなのです」

 素早く立ち上がってから、関数電卓を脇に抱えたままベッドから飛び降り、置いてあった
草履に両足を通す。部屋を駆け抜けてから、強く床を蹴り込み、跳躍。空中で一回転して
から、一回で机の上に着地した。

「それでは、始めるのです」

 一度切っていた電源を再び入れ、パソコンが立ち上がるのを待つ。
 その間に関数電卓の電源を入れ、素早くキーを入力できる体勢を取った。脳内で動作の
イメージ練習をしておく。

「一樹サマは六時前に帰って来ると言ってたのです。一樹サマが帰って来るまでに、全部
元の場所に戻しておく必要があるのです。あんまりのんびりもしていられないのです」

 自分に言い聞かせるように独りごちてから、デスクトップのマイコンピュータをダブルクリ
ック。ウインドウが開いてからDドライブをダブルクリック。
901一尺三寸福ノ神 2/3:2009/05/21(木) 00:05:04 ID:NoqO2Tlo
『パスワードを入力してください』

 ほどなく出てくるパスワード確認画面。

「ここは大丈夫なのです」

『12345678』

 慣れた動きで鈴音は数字を入力した。

『パスワード承認』

 再び読み込み画面が動き出す。

「さあ、ここからが本番なのです」

 鈴音は関数電卓に伸ばした右手に力がこもる。おそらく一樹もこのようにしていたのだろ
う。問題に対して関数電卓で計算し、その数字を入力する。

『接続キー入力』

 何度も眼にした文字が表示され、続いて問題が表示される。

『9.5の立方根を 9桁まで 30秒以内に入力せよ』

「急ぐのです!」

 鈴音は素早く関数電卓に指を走らせていた。
 9.5を入力してから、シフトキーを一回押して√キーを押す。シフトキーを押してから√キー
を押すと立方根が表示される。十二桁までの電子数字。

『2.11791179212』

 数字を見ると残り十八秒。

「ふぅ。かなり、時間が余っているのです。これなら余裕なのです」

 気楽な笑みとともに、鈴音は関数電卓を持ったままキーボードで数字を入力していく。九
桁の数は面倒くさいが冷静に押せば間違えることもない。

 残り五秒を残して入力を終える。
 余裕たっぷりに鈴音はエンタキーを押した。

『接続キー承認』

「オッケイなのです!」

 両拳を握りしめてガッツポーズを取る。放り捨てた関数電卓が机に落ちて硬い音を立て
ていた。電卓は頑丈なので壊れたりはしないだろう。
902一尺三寸福ノ神 3/3:2009/05/21(木) 00:06:01 ID:BEimi5MU
 読み込み画面が消えて外付けHDD内部の情報が表示される。ぎっちりとデータが詰まっ
ていることも予想していたのだが、入っていたのはフォルダがひとつだけ。

『2006_6_12』

 そう記されたファイル。名前の通り、2006年の六月十二日に作ったバックアップデータ
なのだろう。古いファイルだが、目的のものは見つかった。

「それでは、一樹サマ。一樹サマの趣味をたっぷり見させてもらうのです」

 勝利の微笑みを浮かべながら、鈴音はマウスを動かした。カーソルをフォルダの上に移
動させてから、ダブルクリック。
 フォルダが展開され――なぜか、小さな黒いウインドウが表示された。

『おお ゆうしゃよ よくぞ ここまで たどりついた』

「え?」

 画面に現れた文字に、鈴音は疑問符を浮かべる。

『すずねへ たにんの ファイルを 盗み見るのは いけない』

「あぅ。一樹サマ……」

 呆然と、鈴音は呟いた。
 今更ながら理解する。最初から鈴音の行動は読まれていたらしい。外付けHDDを探して
それを開けることも予想していたのだろう。そこで、HDDを開けられないような複雑なパス
ワードを入れず、何とか突破できるようにした理由は?

 デデーン!

 どこかで聞いたことのある効果音が流れ、

『おしおき スタート』

 HDDの読み込み音が聞こえた。今になって表示されたウインドウが動画再生画面である
ことを理解する。しかし、既に手遅れだった。

「あああ、逃げるのです、ワタシ……。物凄い嫌な予感がするのです。これはとてつもなくマ
ズい状況なのです。これ以上ここにいてはダメなのです……。というか、次に起ることが手
に取るように分かるのです……! でも、身体が動かないのです……!」

 机の上で硬直したまま、鈴音は不安を吐き出すように独り言を続けた。嫌な汗が頬を流
れる。腰が抜け、膝が笑っていた。逃げなければいけないのに、身体が動かない。

『蟲ガミ - 虚ろなるもの -  OVA版』

 いつだったか見たホラーアニメのオープニングが始まる。

「一樹、サマぁ……」

 鈴音は硬直したまま、ディスプレイを凝視していた。
903名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 00:06:43 ID:NoqO2Tlo
以上です
904名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 21:39:57 ID:eIJIQDT3
乙です

まあ普通に考えて罠だよなあw
905名無しさん@ピンキー:2009/05/22(金) 05:21:53 ID:TXI32jZo
鈴音カワイソス
906名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 12:48:35 ID:LxQHprTQ
GJ!
907名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 23:13:32 ID:Y2jMCHuW
妖精と言うより妖怪や魔物チックな感じでもおk?
身長70cm 体型5.5頭身貧乳
耳が鰭状でトカゲっぽい尻尾が生えてて肌は緑、だけど鱗じゃない
それ以外は普通の女の子の外見
これ以上成長して外観が変わる事は無い

こんな女の子はこのスレ的には大丈夫っすか?
908名無しさん@ピンキー:2009/05/24(日) 23:52:47 ID:mtuNuyGi
OK
問題ない
909名無しさん@ピンキー:2009/05/25(月) 18:07:37 ID:UuQF5G1N
人外スレ向きかもしれない
910名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 21:54:57 ID:g21m0qlB
全く問題ない
9111:2009/05/28(木) 07:03:05 ID:fcv4U0nq
912845:2009/05/28(木) 12:09:58 ID:nR8g6NX8
913名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 15:03:38 ID:GfWhwV+1
保守
9141:2009/06/01(月) 16:52:56 ID:R1mVNFCo
>892
915名無しさん@ピンキー:2009/06/01(月) 23:04:04 ID:qa8z7Dko
この数字は何だろう…?
91625:2009/06/01(月) 23:47:18 ID:FTwadkdE
>9 >16
917893:2009/06/02(火) 00:13:06 ID:XTcFNlmv
918名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:14:39 ID:v3Sj6g0R
鈴音の逆襲キボンヌ
919名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 00:31:17 ID:5AeuJzC3
無理だろ。
頭の中身的に考えて
920名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 01:33:13 ID:gz3FDgae
問:下の【?????】に当てはまる鈴音の行動を挙げなさい。

第一段階.単純に好奇心から → 他にどんな画像を持っているのか調べようとした

           ↓

第二段階.健全な青少年ならエロ画像を持ってるはず → どこに隠してるのか探そうとした

           ↓

第三段階(予測).健全な青少年ならエロに興味があるはず → 【?????】
921名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 07:22:06 ID:yB0q5xNm
個人的には>897展開が望ましい。
が、それはこの世界観を壊しそうで心の底から願っては居ない。
922894:2009/06/02(火) 18:55:23 ID:lLarKyHm
>1
923名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 19:49:59 ID:AzDTYIvh
他の書き手帰ってこないかな。
共犯系のお話とか、バカの二乗とか。
924900:2009/06/03(水) 02:55:29 ID:sxzZQ21o
>30
92516:2009/06/03(水) 12:13:24 ID:9KLm5+iS
>9 >25
926名無しさん@ピンキー:2009/06/03(水) 17:25:12 ID:htB8EmOc
妖精さん可愛い
9273:2009/06/03(水) 23:42:28 ID:45wRUeDZ
>9 >27
928901:2009/06/04(木) 03:14:29 ID:bor75HLl
>1
929902:2009/06/04(木) 08:22:49 ID:DwczCKNn
930912:2009/06/04(木) 12:20:28 ID:fKs2Z8fS
残り70
9314:2009/06/04(木) 23:40:02 ID:Xww415xx
>5
932名無しさん@ピンキー:2009/06/04(木) 23:42:37 ID:KHCzEBiP
次スレにはまだまだかかるのかそれともここから一気にいくのか
9336:2009/06/05(金) 07:19:53 ID:iVPM4knH
>12
93411:2009/06/05(金) 12:14:00 ID:AwbhnMHm
>13
935一尺三寸福ノ神:2009/06/05(金) 20:48:29 ID:dXfC2wK4
投下します
936一尺三寸福ノ神 1/3:2009/06/05(金) 20:49:00 ID:dXfC2wK4
18話 一樹の優しさ?

 ガチャリ。

 いつも通りにドアを開け、一樹は部屋へと戻った。

「ん?」

 電気のスイッチを入れてから、パソコンを見つめる。USBに接続された外付けHDD。キー
ボードの横に置かれた関数電卓。ディスプレイではスクリーンセイバーが動いている。
 無言のまま視線を移すと、ベッドに乗った毛布が盛り上がっていた。
 荷物を机の横に置いてから、一樹はベッドに近づき、声を上げる。

「鈴音……。引っかかったね?」

 びくりと布団の盛り上がりが震えた。
 一樹は右手を伸ばして布団をめくる。

「うー……。一樹サマ……」

 ベッドの上に丸まったまま、鈴音が見上げてきた。両目に涙を溜めて、身体を震わせて
いる。今までずっと布団の中で怯えていたのだろう。
 一樹はベッドに腰を下ろし、宥めるように鈴音の頭を撫でる。滑らかな黒髪。撫でられる
ことで、いくらか恐怖が薄れるのが分かった。

「酷いって、他人のものを盗み見るのは自業自得じゃない」
「むー」

 気まずげに視線を反らしながら、鈴音は頬を膨らませる。

「一樹サマは酷いのです。あのトラップは反則なのです……。ワタシがHDDを発見してパス
ワードを開けるまで想定してあるなんて、卑怯なのです。極悪なのです」

 横を向いたままぶつぶつと愚痴っていた。確かに、部屋にひとつだけ置かれたHDD。解
きやすいパスワードと解きにくいパスワード。さらにそれを乗り越えた先にあるホラーアニメ。
これでもかというほど罠くさい。
 一樹は鈴音の頭から手を離し、眼鏡拭きを取った。眼鏡を外してからレンズを拭いて、再
びかける。首を左右に動かしてから、天井を見上げつつ、

「実を言うと、あれは面白半分に作ったもので、まさか本当に引っかかるとは思っていなか
った。思い切り罠っぽいし。わざと引っかかったわけじゃないよね?」

 見やると、鈴音は顔を伏せたまま、全身に影をまとっていた。
 影が見えるわけではない。しかし、、まるで身体を黒い影のようなものを包んでいるような
錯覚を受ける。それほど凹んでいるようだった。
937一尺三寸福ノ神 2/3:2009/06/05(金) 20:49:35 ID:dXfC2wK4
「うぅ、ワタシって一体……」
「そういうこともあるさ」

 鈴音の頭を撫でながら、努めて明るく言ってみる。
 が、効果はない。余計に影が濃くなったように見えた。
 頭を掻いてから、話題を変えるように一樹は窓に目を向ける。

「鈴音、カーテン締めてくれたんだ、ありがと」
「え?」

 はっとしたように鈴音が窓を見やった。跳ねる黒髪。
 緑色のカーテンはきちんと閉まっている。秋も遅いこの時期。日の入りは五時頃になって
いた。六時も過ぎればもう外は夜の闇である。
 鈴音がごくりと喉を鳴らした。

「ワタシ、カーテンは閉めていないのです。だって、ビデオ見てからずっと布団の中にいた
のです。閉めるはずがないのです……!」

 一樹はスクリーンセイバーの動いているディスプレイを見つめる。鈴音の性格から考える
と、逃げることも出来ずに全部見てしまったのだろう。見終わってからそのまま布団に潜り
込んで震えていた。昼間はカーテンは開けてある。
 一樹は小さく呟いた。陰をまとった声音で。

「まさか……出た?」
「ななな、何を言っているのですか! 一樹サマッ」

 その場に跳ね起き、鈴音が人差し指を向けてくる。その身体は一目で分かるほど震えて
いた。白衣の袖も揺れ、カチカチと歯の鳴る音が聞こえてくる。朱色の袴の上からも膝が
笑っているのが見て取れた。

「おおお、お化けや妖怪なんて非科学的でオカルトチックなものは――こ、この世には存在
しない、しないのです! 理系大好き人間の一樹サマも……お、オカシなことを言うのです
ね。ハハ、ハハハ……」

 擦れた声音で思い切り強がりを言っていた。頬には冷や汗が流れている。
 一樹は鈴音の頭をぽんぽんと叩きながら、

「非科学の権化みたいな鈴音が言っても説得力ないよ……」
「そそ、それでは、落ち着くのです。素数……は何かありきたりなので、円周率を数えて落
ち着くのです! というわけで、一樹サマ円周率を数えるのです」

 びしっと人差し指を向けてくる鈴音。

「円周率か。久しぶりだから、言えるかなぁ? ええと、3.1415926535 8979323846 2643383
279 5028841971 6939937510 5820974944……」

 眉間に指を当て、一樹はぶつぶつと暗唱していく。目を閉じた暗い視界の中に次々と浮
かんでくる数字。円周を直径で割ったという単純にして奥の深い数字。
938一尺三寸福ノ神 2/3:2009/06/05(金) 20:50:19 ID:dXfC2wK4
 鈴音の声がそれを中断させた。

「って、何でそんなに言えるのですかァ!」
「中学生の頃暇潰しに五百桁辺りまで暗記した」

 真顔で一樹は即答する。中学生の頃出来心で五百桁まで暗記したのだ。今でも二百桁
くらいまで言えるだろう。何度か一発芸として披露したことはあるのだが、反応は薄かった。
周率を興味本位で覚えても、せいぜい十桁程度。理解できる人は少ない。

「さすが、数学フェチなのです……」

 戦く鈴音。
 しかし、すぐさま今の状況を思い出し、周囲に視線を走らせた。左腕を真正面に突き出し、
肘を右に九十度折り曲げる。その左手首に伸ばした右手を乗せて、人差し指と中指を伸
ばした。何かを撃つような体勢。攻撃態勢らしい。

「こうなったらやってやるのです! 必殺の法力指弾なのです。お化けでも幽霊でも妖怪で
も神でも悪魔でも魔物だろうと人間だろうと、ぶっ倒してやるのでーす!」

 目を回しながら無茶苦茶なことを口走っていた。袴の裾がぱたぱたと跳ねている。
 ほどよく暴走してきた。そう判断して、一樹は立ち上がる。すたすたとカーテンの方へと歩
いて行き、カーテンレールの端に取り付けられた小さな箱を示した。

「実はカーテン自動開閉装置のせいなんだけどね」
「へ?」

 両手を下ろして呆気に取られた表情の鈴音。
 一樹は箱から伸びる透明な釣り糸を指で示した。釣り糸は反対側の小箱に伸びていて、
カーテンの先端にあるフックに繋いである。

「タイマーとモーターとテグスを組み合わせた簡単な機械で、日の出時刻になったら自動で
カーテンが開くようになっていて、逆に日の入り時刻になったら自動で閉じる仕組み。昔作っ
てみたんだけど、なかなか便利だよ」
「………」

 鈴音が黒い瞳を大きく開いて、装置を見つめる。目立たないように設置してあったので、
今まで気づかなかったのだろう。ほどなく納得したらしく、ぽんと拳を打った。

「本当にお化けだと思った?」

 笑顔で言い切った一樹の台詞に。

「なああああぁぁぁぁ!」

 鈴音が跳び上がった。怒りの叫びともに、冗談のような勢いで一樹に向かってくる。瞳に
怒りの炎を灯し、涙を流しながら、空中で器用に三回転。

「飛燕連天脚なのですッ!」
(これで、アニメのことは忘れたかな?)

 そんなことを考えながら一樹は横に移動し、飛んできた蹴りを躱した。
939名無しさん@ピンキー:2009/06/05(金) 20:50:55 ID:dXfC2wK4
以上です。

最後の2/3は3/3の誤字です。
940名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 00:26:22 ID:wl+NcR99
GJ、投下乙
出来心で円周率覚えるとかどんだけーw
しかし手が込みすぎた仕掛けだw
9414:2009/06/06(土) 00:39:55 ID:y5ECyIy2
>9 >36
942名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 00:43:45 ID:cJRKsWKH
出来心で文章内とほぼ同じ桁数暗記してる俺に彼を糾弾する権利はない
943名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 01:26:39 ID:Ht8ryfnT
>>942
円周率五百桁!?
944936:2009/06/06(土) 06:25:05 ID:CXV/ESjl
9455:2009/06/06(土) 08:13:57 ID:ZrgnkJbl
9 >45
946名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 08:24:32 ID:cJRKsWKH
>>943
いやいや丁度文中に書いてある分だけ、70桁弱。
947名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 11:17:29 ID:l1CykpiW
ギネス記録は10万桁を17時間で暗唱したんだっけ?
948937:2009/06/06(土) 12:21:23 ID:oEgZMi77
>15
949名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 16:57:22 ID:skeLBtnO
そろそろ次スレを
950名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 23:29:51 ID:rj3fyd/G
残り50
951938:2009/06/07(日) 00:29:43 ID:qXGxHHEK
>17
95218:2009/06/07(日) 08:54:08 ID:fG6ODMLu
>20
95326:2009/06/07(日) 13:38:19 ID:k++DYUVT
>28
9546:2009/06/07(日) 22:36:57 ID:X9UmovLj
9 >54
955名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 23:05:01 ID:0JFn4gir
ちび
956名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 03:03:33 ID:M5feljUy
957名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 03:15:37 ID:915qToP6
 
958名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 06:30:47 ID:ZAjdH4CC
959名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 12:15:21 ID:wlc8Omtk
960名無しさん@ピンキー:2009/06/08(月) 22:35:02 ID:K/Tjn5vx
なんか妙な人が沸いてるみたいなので、埋まる前に立てました。
移動お願いします。

【妖精】ちっちゃい女の子でエロパロ【小人】3
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1244467934/
9611:2009/06/08(月) 23:15:37 ID:1gtGRFtU
>22
96223:2009/06/08(月) 23:53:37 ID:zxAqFrO5
>24
9637:2009/06/09(火) 00:40:52 ID:zcMTslur
9 >63
964名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 02:03:18 ID:doXcVR4F
これは妖精の仕業ですね
96529:2009/06/09(火) 06:25:34 ID:u4hgah0m
>31
96633:2009/06/09(火) 12:07:29 ID:Y+TLwQ0l
>34
967名無しさん@ピンキー:2009/06/09(火) 12:15:26 ID:A1LxjR71
何がしたいの?
968176:2009/06/09(火) 23:25:18 ID:B7TyRcVh
>295
969500:2009/06/10(水) 00:39:48 ID:yIf5ZsTd
>553
970名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 01:33:44 ID:eLuR2aRX
>>946
3.141592653589793846264002884197

記憶分を頼りに書いてみた。多分間違ってる。
971610:2009/06/10(水) 06:48:40 ID:AknZtRr0
>37
972名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 07:06:09 ID:PyMUJJZL
>>970
俺の記憶だと3.14159265358979323846264338327510だった気がするが調べてないから間違ってるかも試練
973名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 11:52:31 ID:p841EKQ4
>>972
俺の記憶だと
3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209749445923078
だった気がする。憶えようとしてた中三のころの俺キメェw
974612:2009/06/10(水) 12:11:07 ID:CjnwDBY6
>38
975名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 13:47:52 ID:eLuR2aRX
産医師異国に向かう 産後薬無く 宮代に虫 お礼には早よいくな

だったっけ?
もはや覚え方すらおぼつかない(哀)
976627:2009/06/10(水) 17:03:10 ID:Nf6qn3aK
>39
977628:2009/06/10(水) 23:48:33 ID:Iz9M5+q4
>40
978564:2009/06/11(木) 00:25:42 ID:KecW7qH3
9 >78
979名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 01:57:30 ID:dw8oFZBa
こっちは埋めたほうがいいのかな?
980名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 04:19:30 ID:LdjQN4wz
ほっときゃ勝手に埋まるだろ
981名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 04:21:10 ID:D+qw3rNu
阪急梅田
982名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 07:11:27 ID:XpkQmiVM
残り18
983名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 08:19:26 ID:D+qw3rNu
埋め
984名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 12:15:54 ID:GKKSonsb
残り16
985名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 23:20:51 ID:Y+81byxN
残り15
986名無しさん@ピンキー:2009/06/11(木) 23:31:17 ID:D+qw3rNu
ゴルゴ13
987名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 00:33:08 ID:qG+TxAuK
うめえ
988名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 00:36:07 ID:9fn25Ozg
埋めランカー
989651:2009/06/12(金) 03:29:51 ID:Rx1VOJ16
>41
990名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 07:04:22 ID:1ApQV/Ya
残り10
991名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 12:11:23 ID:UmQXxsBd
992名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 13:14:49 ID:wZuOFpRp
梅田
993名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 13:55:24 ID:i8l3xyJC
梅田でたこやき食った思い出があるわ
994名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 17:31:46 ID:9fn25Ozg
梅干し
995名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 17:47:59 ID:WMkLqy8g
梅田地下オデッセイ

_ttp://www.jali.or.jp/hr/ume/ume_s-j.html
996名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 19:34:33 ID:wZuOFpRp
阪急梅田駅
997名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 19:57:03 ID:9fn25Ozg
埋め埋めパラダイス
998名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 20:27:18 ID:DEuqzVmA
   _,,,
  _/::o・ァ  
∈ミ;;;ノ,ノ  
  ヽヽ
999名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 20:28:29 ID:DEuqzVmA
999
1000名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 20:30:18 ID:DEuqzVmA
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