竹本とはぐみが気になるなどの人歓迎です。
2 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 17:01:24 ID:VfN5SZgJ
2ゲト
エロか…読みたいような読みたくないような。
山田が真山で想像オナニーとかだったらいいかもしれんね
これは期待
職人さんは、ここにはこないのか
…前にスレあったよ、落ちたの?
SS書いたことあるんだけど。
書こうかと考えたけど、書けないなぁ。
正直な話、好きすぎてエロを読みたくない。
俺は、読みたい
前のスレに載せようと書いていたんだけれど、スレが落ちてしまって
お蔵入りになっていたのを投下します。
まさか日の目を見るとはw
原作漫画の完結後の設定で、エロではありません。
ドラマから入って結末を知りたくない人などはスルーしてください。
dat落ち防止の駄文ということで、一つよしなに。
11 :
後日談1:2008/02/25(月) 21:24:55 ID:p4MtoZTC
真山がアパートを引き払う日がやってきた。
「さ、ちゃっちゃとやっちゃうよ!先生と真山はダンボールを下に運んで、はぐちゃんと私で
雑巾がけ。いい?手際よくやりましょう」
空は抜けるような青空。絶好の引越し日和だ。
竹本くんと森田さんがいなくなってたった一人残った真山。スペインに行ったり
仕事場で寝泊りしたりして、ほとんど帰っていなかったのに、それでも出て行かなかった真山。
なのに、急に引っ越すことを決めた。
引越し先は、リカさんの部屋の隣。
二人がどういう道をたどってきたかは分からないけれど、やっと二人で生きていくことを
決めたのだろう。
辛いかと聞かれれば、まだ辛いと答えるだろう。
まだ心のどこかで真山を思っている。
だけどそれは昔のような暗く重く、先の見えないドロドロとした感情ではなくて。
小さい頃憧れていた、イトコのお兄ちゃんが結婚すると聞かされるような甘い痛み。
そんなふうに自分を冷静に見つめることができるようになったのは、きっとあの人のおかげだと思う。
「おーい真山!手伝いに来たぞ」
クラクションの音が響き、ドアが開いて山崎さんと野宮さんが顔を見せた。
「あー、申し訳ないっす!休みの日にわざわざ」
真山が軽く頭を下げると、野宮さんは軽く肩を叩いてから腕まくりをした。
視線が合う。
野宮さんは、なに、また泣いちゃってるの?という顔をする。
私は、泣いてませんっ!という顔をする。
二人にしか分からない、秘密の合図。なんだかくすぐったい。
「それにしても、ストーカーからパートナーに見事な出世だな」
手馴れた手つきでダンボールを梱包しながら、野宮さんが感慨深げにつぶやいた。
「どうせなら隣の部屋といわず、一緒に暮らせばいいのに」
「ああ、まぁ…。彼女には、まだ触れちゃいけないテリトリーというか、そゆのがあって」
照れながらも訥々と答える真山に、野宮さんが大げさに肩をすくめる。
「二人のペースでやっていけばいいさ。時間はたくさんあるんだから」
先生が笑って額の汗をぬぐう。真山がリカさんの救いになれたことが、本当に嬉しいみたいだ。
自分では救えなかった罪悪感が、きっとあるんだと思う。
12 :
後日談2:2008/02/25(月) 21:25:50 ID:p4MtoZTC
荷物を運び出して掃除をして、部屋の中は空っぽになった。真山が七年を過ごした部屋。
結局私は、引き払う時になって初めてそこに足を踏み入れたことになる。
ずっとずっと、見てみたいと思っていたこの人の部屋には、もう何も残っていない。
「このアパート、どうなっちゃうの?」
はぐちゃんが窓からの景色を見ながら聞いてきた。真山が出てしまえば、住人はいなくなる。
こんなぼろアパートじゃ、いまどきの学生は集まらないのかも知れない。
「取り壊して駐車場にでもなるのかなぁ。それかワンルームのマンションとか」
「思い出がなくなっていくのって、寂しいな」
しんみりと、真山が言う。すでに日が翳り始めていた。
外から先生がはぐちゃんを呼んで、彼女が出て行く。がらんとした部屋に、私と真山の二人きり。
長い影が部屋に伸びる。
「…私たちも、行こうか」
二人きりの空気が気まずくて、私は切り出した。と、背後から真山が腕をつかんできた。
「なんか…駄目だな、俺」
「真山?」
「俺は、竹本より森田さんより、先に進んでいるんだと思ってたんだ。卒業して、就職して
一人前になって、二人を待ってやってるんだ、って」
うつむく真山の声が震える。つかまれた手が痛い。
「でも、結局置いていかれたのは、俺のほうだった。二人とも自分の道を見つけて軽々と
この部屋を出て行った。」
「……」
「俺がこのアパートを出なかったのは、いつか二人が駄目になって帰ってきたときに、
帰ってくる場所を残しておいてやりたかっただけなんだ。馬鹿だよな…」
先日届いた竹本くんからの手紙を思い出す。真っ黒に日焼けして、職人さんの顔になっていた。
森田さんは新作映画のCG監督を任されたというニュースを見た。
「一番オトナぶってた俺が、一番この場所に固執してたなんて、お笑いだよな」
13 :
後日談3:2008/02/25(月) 21:26:14 ID:p4MtoZTC
かける言葉をなくして、私はただ立ち尽くすしかなかった。
「竹本も森田さんも、いつまでも頼りない後輩と先輩でいて欲しかったんだ。
世の中が変わっても、俺たちが大人になっても、変わらないでいて欲しかったんだ…」
なんだか、分かる気がした。
私たちはもう学生のままじゃいられない。お互いに自分の道を見つけて旅立たなくちゃいけない。
でも、どこかで飛び出すのを怖いと感じる。今までの暖かい場所から出たくないと思う。
誰よりも現実主義者で甘えを許さない真山だけど、その実一番情にもろいことを私は知っている。
「真山…」
私は真山の頭をなぜた。母親が子供をあやすように。
「思い出の場所がなくなったって、私たちが一緒にいた時間は消せないよ」
「山田…」
「私たちはずっと一緒だったし、離れてたって仲間だってことに変わりはないよ」
真山の手が、自然と私の背中に回された。彼は声を殺して泣いているようだった。
この抱擁をなんて表現したらいいのだろう。
あれほど焦がれた真山との抱擁。なのに胸が苦しいほどのときめきもなく、
心の芯が焼けるほどの喜びもない。
同じ思いを分かち合う仲間としての、抱擁。
回された腕から、触れる髪から真山の思いが伝わってくる。
「おーい、真山、そこに山田さ…」
そこに、野宮さんがやってきた。抱き合った私たちを見て息を呑む。われに返った真山が
私を突き飛ばすようにして飛びのいた。
「の、野宮さん、違うんです、俺…」
真山の言葉も聞かず、野宮さんは足早に部屋を出て行った。
私は真山よりも早く、出て行った野宮さんを追いかけた。
嫌だ。誤解して欲しくない。抱き合ったのは事実だけど、違うんだってこと、分かって欲しい。
「……」
そこまで考えて足を止める。
私、いつの間にか本当に野宮さんを…。
14 :
後日談4:2008/02/25(月) 21:26:43 ID:p4MtoZTC
駐車場の自分の車に寄りかかって、野宮さんはタバコをふかしていた。
声をかけようと一歩近づいて、近寄りがたいオーラに一歩引く。
怖い。絶対怒ってる。でも駄目だ。言わなくちゃ。分かってもらわなくちゃ。
「の、野宮さん」
「ああ、山田さん。悪いね、邪魔しちゃって。せっかく積年の思いが叶ったっていうのに」
そう言う野宮さんは、ものすごくいやみっぽく口の端を吊り上げて笑う。
「違うんです、今のは、別に私と真山はもう…」
「いいよ、言い訳なんて聞きたくない。君が真山を好きなのは知ってるし、止める権利もない」
「野宮さん、お願い、話を」
「いまさら何を聞くっていうの?のろけ話?そんなの勘弁し…」
「野宮さん!!」
私は野宮さんの胸倉をつかんだ。彼の背中が車に押し付けられ、鈍い音がした。
「話、聞いてください。私、私野宮さんには誤解されたくない…」
泣きそうになった。でも、泣くもんかと鼻をすすって野宮さんを見た。泣くのを我慢しているから、
きっと睨んでいるようなヒドイ顔をしてるだろう。
「今のは、友達同士の抱擁です。野宮さんだって、美和子さんが悲しんでいたら慰めるでしょう?
それと同じです。そりゃ、確かに真山のことは好きだったけど」
「……」
「野宮さん、あなたにとって私は、いつまでたっても真山を好きな女の子でしかないんですか?」
「山田さん…」
「抱き合ってみて分かったんです。私の、真山への思いがもう終わっていたことに」
我慢していたのに、涙がこぼれた。困ったような野宮さんの顔がぼやける。
「私がそんな気持ちになれたのは、野宮さんのおかげなのに…。分かってもらえないんですね」
胸倉をつかむ手を緩めた。私は涙を拭って、その場から離れようとした。
「山田さん」
が、後ろからふわりと抱きしめられた。
「ごめん、意地悪言った…」
振り返って顔を見たら、野宮さんの顔は真っ赤だった。夕日のせいだけじゃないと思う。
15 :
後日談5:2008/02/25(月) 21:27:44 ID:p4MtoZTC
「山田さんが俺に夢中なのは俺も分かってたんだけどね」
「む、夢中ではないですっ!普通です普通!」
真っ赤になって反論すると、ようやく野宮さんがいつもの笑顔になった。
「いやでも、俺も焦ったわけよ。年甲斐もなく」
「ふふっ。年甲斐だって。年寄りみたい」
「どうせオッサンだよ。もう、トシなんだからさ、あんまり驚かせないでくれよ」
ぎゅっと手を握る。大きくて暖かい手。私は、この手が大好きだ。
「分かってます。でも、野宮さんも、今度からは私のことを信じてくださいね」
ちょっとためらって、思い切って野宮さんのほっぺたにキスをした。
「山田さ…」
「ええと、これで、伝わらないですか?」
私の今の思いの全てを。私のあなたへの思いを。
野宮さんは私にもたれかかるように体重をかけ、そのまま背中に腕を回してきた。
「ど真ん中に来た…。俺、このまま死ぬかも」
「大げさなんだから」
野宮さん、私の大切な人。イジワルで優しくて、大人ぶっているのに子供っぽくて。
この人のことを、時間をかけて知って行きたい。この人が、私のことを時間をかけて
見守ってくれていたように。
「あゆー!みんな集まってるよー!」
駐車場の向こうから、はぐちゃんの元気な声がした。
野宮さんが手を差し出す。
「行こう、山田さん」
私は頷いて、差し出された手を握り返した。多分ずっと、傍らにあり続けるだろう
暖かいその手を。
おわり
以上です。
エロパロの本来の趣旨から離れてごめんなさい。
GJです
18 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 19:00:09 ID:4tb5lOeh
あ
sage
>>16 GJ!あゆかわいかった。
真山の「マイペースは崩されたくないくせに仲間はずれは嫌」って部分が
出てましたね。
また書いてください。
21 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 06:00:07 ID:SE+qa2ac
22 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 09:46:01 ID:aG1F/keQ
女性読者ってあゆ×飲み屋
のカップリングが異常に好きだよね
はぐはどうしても恋愛するとか誰かとカップルになるとか考えられない。
せいぜい森田と買い物に言ってそわそわしたりプリンが食べられなくなるくらい
の淡い初恋未満までだ。それ以上はあってもいいけど自分は萌えない。
ここの住人はドラマから入ってきた人が多いのかな?
自分はドラマ見てないんだけど、多分出てこないであろう
倉持くん×はぐとかでもOK?
いいんじゃね?
だけど、どんなSS書こうがそのカップリングでは、
キモイ
ってレスしかつけないけど。
野宮×あゆGJでした!! 野宮さんのあゆの前では大人になりきれない、青春スーツさがうまく表れていて素晴らしかったです!
27 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/05(水) 23:21:37 ID:dTklvSKc
hoshu
28 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 01:45:17 ID:7owTeoTH
落ちたスレ持ってる人いたら
どっかうpろだにあげてほしい
ハチクロでエロありって難しいよな
GJ!なんか雰囲気そのままで良かったー。やっぱりエロは考えられないなぁ。
ドラマと漫画じゃだいぶ雰囲気違うもんね。自分はドラマ見てないけど、別にどっち書いてもいいと思うよ。最初に注意書きとかすればいいんじゃない?
原作エンドのままで
はぐ×修 いきます。エロなしです。それでもいい、って方だけどうぞ。
二人が結婚すると報告した時
修の母親は驚愕したが、従兄弟であるはぐみの父はホっとした顔をして
修に「娘を頼みます」と頭を下げた。彼の心は成人した娘よりも
新しく生まれた小さな命に占められていて、「それでいい」修はそう思った。
はぐみは・・・まつげを伏せてただ一言「お父さん、ありがとう」と言った。
子供の頃から見てきたはぐみの心の内が修には手に取るようにわかったし
そしてはぐみも、修にどう思われているか知っていた。
「はぐ、メシでも食いに行くか」
「ごめん、修ちゃん、戻って描きたいの」
遠慮勝ちにでもキッパリと自分の意思を伝えるはぐみのいつものやり方も
修は慣れたものだった。
「いいよ、戻ろう。食事は俺が作るから」
新居は畑に囲まれた中にあるあっさりした一軒家で、玄関には「花本」の表札が掲げてある。
戻ると早速はぐみはアトリエにしてる奥の部屋へと入り
修は冷蔵庫を空け、使えそうな食材を見繕って
「よし、今日はシチューだな」とつぶやいた。
はぐみは創作シフトに入ると、不眠不休になってしまうが
今はまだ事故の後遺症が癒えておらず、かといって創作を禁止すると
彼女のメンタリティに影響があるので、修が怪我をしていない手
左手で描くことを勧めてみたら、はぐみは効き手ではないその手で
水彩絵の具を使って、明るいパステルの絵をいくつも描いていた。
鳩・鹿・猿、長野へ帰ってからはぐみは野生動物を題材にして描き
仕上がった何点かは、義母に、あゆみに、地元の小学校へ贈っていた。
画商はリハビリで描いたはぐみの絵をぜひビジネスにしたいと持ちかけてきたが
「練習で描いたものだから嫌」というはぐみの意志を修は尊重した。
一枚、キリマンジャロの山に豹が横たわる絵があった
豹の首にはネームプレートがつけられていてそこには「KH」という文字があった。
カオルとハグミ。
大学に入った頃、自己の才能の重さに慄然としていたはぐみが
修の部屋で一冊の小説を見つけ、創作の手を休めて読み感銘を受けたのは
「キリマンジャロの雪」だった。赤道直下のアフリカで雪が降るほどの標高にあるその山に
登ってきて凍死してしまった一匹の豹。彼にしか見えない何かに突き動かされたその豹が
見えない何かを遂に得たのか、得ないまま虚しく凍死したのかはわからないが、
この描写ははぐみの琴線に触れた。この豹のように、はぐみも森田も何かに突き動かされ
はるか高い頂を目指して歩みを進める戦いを続ける運命なのだった。
選ばれたものしか立ち入れない戦場にいるものだけができる相互理解は
「俺には終生手に入れられないな」その絵をアトリエで初めて見つけたとき
修は思った。修の目から隠すようにひっそりと大きなキャンパスの後ろに仕舞いはするが
その絵を森田に贈ろうとはしないはぐみの残酷さを修は知っていた。
「それでもかわいいから、仕方ないじゃないか」。シチューに添えるサラダを冷蔵庫に入れたところで
時計を見ると、東京へ戻るのにギリギリの時間だった。
修は卓上のメモに、来週末彼が戻るまで、創作に没頭はしても食事と睡眠を取ることを書き残し
アトリエのはぐみには声をかけずに自宅を出た。
東京で仕事をし、毎週末長野に戻り、はぐみの世話を焼く
これがはぐみを妻にした修の結婚生活だった。
世間一般にはない才能のはぐみと結婚した以上
世間並みの結婚生活は決して求めない、このルールを修は律儀に守っていた。
遠ざかっていくエンジン音を聞きながら、はぐみはKHのプレートを下げた豹の絵を
雨をたくさん降らせていた。凍てついた豹も包む雨。修を思いながら。
倉持くんとはぐを投下します。
ドラマしか見ていない人、ごめんなさい
(ドラマ見てないけど、出てないよね?)
原作が終了して4年後、という設定です。
エロはほぼ皆無なので、興味のない人はスル〜してください。
33 :
初恋のひと1:2008/03/17(月) 21:20:28 ID:Eo35Z40y
昼過ぎに美術館に到着すると、一時間待ちのプラカードを持った職員が立っていた。
やっぱり初日だからだろうな。朝一番に来ればよかったと思いながら、最後尾に並ぶ。
周囲は俺と同じ年くらいの女の子が多い。一人できている男なんて、俺くらいのものだ。
懐から封筒を取り出す。差出人の名前はなく、入っていたのはチケット一枚。
花本はぐみ凱旋記念展示会
チケットの端に、明らかな手書きで、小さな花火の絵が書いてあった。
もう四年前のことなのに、あの人は覚えていてくれたんだ。
あの夏、二人で手を繋いでみた花火を。
列は遅々として進まず、一時間半待って入り口でチケットを出す。
「まあお客さま、招待券をお持ちでしたら並ばずに入れましたのに」
受付の女性は、俺の差し出したチケットを見て気の毒そうに言った。
広い展示スペースは、絵画や彫刻など、ジャンルにとらわれない彼女の世界が広がっている。
芸術性が高いものから、一般に受けそうなものまで幅広い。
ホントに、すごい人だったんだな。
臆病で泣き虫で、大人の癖に子供みたいだったあの人は、もう俺の手の届かないところにいる。
「あの、お客さま?」
振り返ると、受付にいた女性が立っていた。
「こちらのチケット、お客さまがお持ちいただいたものですよね?」
切り取られた箇所に、花火の絵が書いてある。間違いなく俺のだ。
「主催者から、花火の絵の書いてあるチケットをお持ちになった人がいたら、お連れするように
仰せつかっているんです」
心臓が跳ねた。彼女は、俺に会いたがってくれているのか?
「分かりました」
俺はうなずいて、女性のあとについて言った。
34 :
初恋のひと2:2008/03/17(月) 21:21:18 ID:Eo35Z40y
関係者以外立ち入り禁止のドアを抜け、主催者控え室と書かれたドアをノックする。
「失礼します。お客さまをお連れしました」
どうぞ、と男の人の声がして、ゆっくりとドアを開けた。タバコをくわえた、30代後半の
男性の姿が目に入った。
「ん?君、どこの子だい?勝手に入ったらだめだよ」
「や、あの、俺…」
「倉持くん!」
仕切りのカーテンがあいて、光とともに一人の少女が飛び込んできた。
「倉持くんだ!うわー懐かしい、来てくれてありがとう」
「は、はぐ…先生」
俺が背が伸びたからだろうか、四年ぶりに会う彼女は、前にもまして小柄だった。
だけど、腕をつかむ手の力強さとか、瞳の奥の澄んだ眼差しは前よりも強い。四年の間に
彼女は自分の世界で戦っていたのだ。
「先生、個展の開催おめでとう」
カバンから花束を渡す。
「うれしい、ありがとう。倉持くんからお花もらうの、二度目よね。覚えてる?私が怪我して
入院したとき。倉持くん、泣きながら来てくれたのよね」
「あ、あの時は…」
カーッと顔が赤くなる。くそっ。
「あの時は、先生の手が使えなくなるって聞いて、それで…。それで、今は大丈夫なんだよね?」
「見て」
彼女が差し出した右手には、まだうっすらと手術の痕が残っていた。白く小さな手に、その傷跡が
痛々しい。
「ちゃんと動くようになるのには一年くらいかかったの。それからヨーロッパを見て回って、
いろいろ絵を描いたりして…」
天才芸術家として、その方面ではすでに有名人だった彼女を襲った四年前の悲劇。
右手を負傷し、芸術家としての道は絶たれたと思われたけれど、本人の強い意志と周りの
サポートで復帰したということを新聞で読んだ。
「はぐ、そんなところで立ち話しないで、座って話せばいいのに」
「あ、そっか。そだね修ちゃん。座って倉持くん。おいしいお菓子もあるよ?」
彼女が無邪気に俺の手を取る小さい手からぬくもりが伝わって、胸が熱くなった。
35 :
初恋のひと3:2008/03/17(月) 21:21:55 ID:Eo35Z40y
初恋は12歳の時だった。勉強漬けの毎日の中で出会った彼女。
大人の癖に泣き虫で、小さいけれど暖かい手を持つその人に、打ち明けられるはずもなかった。
会いたいのに会うのが照れくさく、次第に疎遠になっていった。
だけど先生、俺はあなたのことを忘れたことなんてないんだ。
「俺、タバコ買いに行ってくるわ」
修ちゃんと呼ばれた男性は、そういって部屋を出て行き、広い部屋には俺と彼女の
二人きりになった。
「倉持くんは?もう絵は描いていないの?」
ソファに並んで座ると、彼女は俺の顔をじっと見つめて聞いてきた。
「うん、今は学校の勉強で忙しくて…」
「そっかぁ。倉持くんは夢があったんだよね。宇宙飛行士になるって、今もそのために
がんばってるの?」
「うん、とりあえず英語と理数系を叩き込んで、あとは体力つけるのにマラソンと水泳とか、
とにかくいろいろ」
「そっかぁ、すごいね。宇宙から見た地球って、どんなのなんだろうね。私も見てみたいな」
彼女の頬が上気する。未知の世界に胸を躍らせる彼女の横顔は四年前と変わらず愛らしかった。
あの時俺は12のガキで。今でも16のガキだけど、あのときよりは大人になった。
そして、あのときよりも深く強く、この人を思っている。
「一緒に行こうよ」
手を握る。彼女が不思議そうな顔をして、小首をかしげる。
我慢できず、肩を抱いて引き寄せて、唇を重ねた。
「ん…!」
彼女は驚いて体を離そうと暴れたが、ねじ伏せるように力を込めて抱きしめた。
やがて抵抗はなくなり、彼女の手が俺の背中に回された。
「先生、俺…」
キスなんてしたのも初めてだったが、彼女の唇をなぞり、ついばみ、舌を差し込んで絡ませる。
誰に教わったわけでもなく、体が勝手に動いていた。
36 :
初恋のひと4:2008/03/17(月) 21:22:19 ID:Eo35Z40y
彼女の唇は甘く柔らかく、かすかに紅茶の味がした。いったん溢れた思いは止められなくて、
俺は無茶苦茶にキスをしながら強く抱きしめた。
彼女は俺の背中をポカポカと叩く。全く力なんて入っていなくて、笑っちゃうほどだ。
だけど…。
ふと唇を離して目を開けると、目の前の彼女は涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「そんなに…俺のこといや?」
なんだか幼い子を無理やり乱暴している気分になって、俺は一気に気分が削がれてしまった。
彼女は子供のようにしゃくりあげながら、何度も唇を手の甲で拭った。
「先生、恋人とかいるの?だからいやなの?」
「違うよ。恋人なんていない。私は…」
そのまましばらくヒックヒックと泣き続けた彼女は、五分ほどしてようやく落ち着きを取り戻した。
「私は、絵の神様に約束したの。他の全てを犠牲にしても絵を描かせてくださいって」
相手が彼女以外だったら、俺はその言葉を笑い飛ばしただろう。
だけど、俺は彼女の言葉に打ちのめされてしまった。
若き天才といわれ、一度はその才能を捨てるかもしれない悲劇に見舞われた彼女。
その才能を取り戻すために誓ったこと…。
絵のために、恋とか愛とかそういったものは切り捨てたんだ。
そのくらい、彼女の進む道は険しく細く、果てしないのだ。
…ったく、勝てねえよ。
俺は小さく笑って、ポケットからティッシュを取り出して彼女に渡した。
「先生、鼻、垂れてる」
「ええっ!」
「一応さ、先生は俺の初恋の人なんだからさ、小奇麗なカッコしててよね」
「…ご、ごめん」
37 :
初恋のひと5:2008/03/17(月) 21:22:49 ID:Eo35Z40y
廊下から賑やかな声と複数の足音が聞こえてきた。
「はぐちゃん!久しぶり〜!個展開催おめでとう!」
ドアから、花束を持った30歳前後の男女が数人入って来た。彼女の表情がパッと輝く。
「竹本くん、あゆ、みんな来てくれたんだ!」
「当たり前だよ!見たよ、凄かったね」
おそらく昔からの友達なのだろう。ここにはもう、俺の居場所はなかった。
「先生!俺帰るわ」
彼女がビックリしてこっちに向かってくる。
「倉持くん、ごめん、あの、私…」
「先生、俺謝らないよ。俺本気だったし。でも、俺先生と先生の絵が好きだから…」
よく見ると、周囲の人が俺たちを見ている。くそっ、衆人環視で玉砕かよ。
「だから、悔しいけど先生は絵の神様に譲るわ!」
振り返らずに、俺はドアを出た。16歳でこの物分りのよさってどうよ?
まったく、褒めて欲しいくらいだぜ。
「倉持くん!」
階段を駆け下りていると、踊り場から彼女の声がした。
「倉持くん、宇宙、行ってね。私信じてるよ!」
涙のあとが残る、それでも満面の笑顔だった。俺の大好きな、向日葵のような無邪気な笑顔。
俺は大きく頷いて、走り出した。立ち止まっている暇なんてない。俺も、俺ができることを
やらなくちゃ。
いつか宇宙からのメッセージを、彼女に届けるために。
おわり
以上です。
途中まではエロ書こうと思ったんだけど、断念したorz
39 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 00:08:28 ID:O2LIHgB0
ふむふむ
超GJ!
開始早々良作が二つも。良スレの予感
って日付見てなかった…
倉持くん相手だからレス少ないのかな、こういう淡いのなら読みたい
野宮×山田か真山→理花キボン
本編でヤってる描写あるのに
真山×理花って前スレでもほとんどなかったよな…
各職人さんGJです!
そろそろエロ投下もお願い致します。
45 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 23:28:03 ID:Sy9rqhWV
エロ鼬
46 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 23:16:09 ID:feAYav8S
あげ
47 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 14:19:22 ID:22xjQsVF
あげげ
倉持くん…(ノД`)
良作GJ!次回も期待してる
ハチクロでエロは作りづらいだろうな。
森田×ハグあたり特に。
ライオンの単独スレってあるんですかね?
零くんとあかりさんが萌えなんだが…。
あるよ。
それにヒナタンだろ・・・
みんなヒナタンがいいって言ってるよ。
あかりさん派は1人くらいしかいなくて他はみんなヒナタンLoveだぜ。
52 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 17:57:07 ID:E635XO39
職人さん期待age!
53 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/11(金) 18:18:59 ID:fcoWQ/cd
>>51 これ書いたの俺かなぁ・・・
なんか凄く俺の文っぽいんだけどこんなとこ書き込んだかなぁ・・・
55 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 15:18:02 ID:mMXYT9Mt
不細工石井智也w
四年後倉持×はぐに期待
職人さーん
57 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 00:54:38 ID:GRpJ1VCC
ほしゅあげ
58 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/30(水) 08:53:14 ID:7xDdFuXV
もっこり倉田健二w
59 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 19:09:31 ID:SPqJ5XFB
あげ
あゆ絡みならなんでもおkだ
あゆエロ可愛いよあゆ
61 :
SS保管人:2008/08/07(木) 02:31:59 ID:0R9Czh/B
どうぞー
63 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 13:23:29 ID:+pnIm5Si
OKですよ
64 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 14:49:51 ID:SiDCL383
ハチクロでエロとか想像もつかないだろ普通。本当キモイわお前ら
65 :
SS保管人:2008/08/10(日) 00:24:29 ID:wWiuyCLF
66 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/10(日) 12:51:36 ID:Xq1fuiF/
67 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 03:21:26 ID:sTZ3MTYB
乙
68 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 09:10:15 ID:BEw85ekw
付き合うようになってもあまりに無防備なあゆに我慢が出来なくなって襲いかかる野宮
69 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 18:05:12 ID:qaF+yZfi
しかし鉄人あゆに投げ飛ばされ未遂に終わる野宮
70 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 00:08:44 ID:+YHyL+DS
見てえw
71 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 00:17:32 ID:Bn/bdzTx
しかし諦め切れずに夜這いを仕掛ける野宮
真山みたいな野宮だなw
野宮も結構(山田に対してだけ)しつこいと思うのは俺だけか
めげずに何度も誘いそう
74 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 21:40:31 ID:Ajn3382p
保守age
75 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/26(火) 15:13:17 ID:4UsVU8rE
もっこり
76 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/31(日) 22:38:05 ID:AqM7Utao
過疎だな・・・
77 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/01(月) 22:30:36 ID:oEduhuCN
勅使河原さんとか美人だから良いと思うのに・・・
78 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/13(土) 13:53:07 ID:pMljj03s
瓊
79 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 12:28:57 ID:vWKumhpm
月曜に
NHK-BS2で映画やるよ
ハミチツとクロイバーとな?
なんて卑猥な!
82 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/11(火) 22:00:27 ID:rwP2WAhO
age
ハチミツとクローバーって話完結してんの?
小さい女の子が手怪我したぐらいまでしか見てないけど
近々、ライオンの新刊来るよね。
ライオンは色んなネタが楽しめそうなんだが。
ここはひとつ
零ひなを頼みます
零香子じゃろ