【ずるいぜ】ブラックラグーンVOL.8【まったく】
ここまで鬱なのも才能っすねwGJ!
ラブラブバカップルでニヤニヤしたいっす
まさかエロパロで泣かされるとは・・・
そろそろ鬱じゃないバカップルな話も読みたいけれど、
設定付けるなら、隠れショタ好きのレヴィが若様をラグーン号で移動中に襲ってしまう話とか
港に到着するまでに若様の貞操はレヴィに・・・
ショタっ娘ラグーン
とびっきりの鬱、ご馳走様です
もう鬱はおなかいっぱい
次はほのぼのーな高校編でおながいします
こう、ヤンキーちゃんとマジメくんな、どっかのマガジンやサンデーで今連載されてるのくらいなノリのゆるーいのを……
今夜推敲終わったら落としてやるぜ!
アミーゴども!脱ぎ脱ぎして待ってな!
他作品で鬱なエロパロやってる人間だけど非常に刺激されたw
妊娠ネタは重いな…
>360
長作乙でしたー 欝耐性もレヴィたん虐め耐性もわりとあるけど
ネタがネタだけに時々キリキリしつつも読みいっていましたよ
あと……原作がああだし原作者も欝エンド確定みたいなことをほのめかしているしで
『こういう感じもアリかなぁ』とか、考えつつ……
あっさりロック無くしちゃうところか作品手法的にかなり好きなんですがw
ウワァンロックwwロック好きとしては複雑ww
…なんか反動でエロバカ路線の投下が期待できそうなので楽しみッスw
446 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/27(金) 23:42:27 ID:n/wOYrkr
えっ!!!!?鬱エンド確定みたいな話があるんですか!!!!?
俺を号泣させやがってこのやろう!!
畜生!GJ!ネ申!!クソッタレ!!
可哀相で痛々しいレヴィたんて何でこうも萌えるんだ・・・
でもちゃんと幸せになってほしいとも思ってるんだぜこれでもwサーセンw
沢山書き散らかしたこれよりもっとエグいやつが非常に気になりつつ、次はみんなと同じくラブ☆コメが見たいな。
『い』『へ』『と』辺りの。
・・・ああでも『ろ』もいいなw
360神の十八番って感じだしw
何はともあれ神作完結乙華麗(*´Д`)
今夜落そうとおもったけど、推敲終わらなかった。(´・ω・`)
ってかもう眠い。
限界。
お休みなさい。
ロック×レヴィです。
エロまでが長く、エロ自体もぬるいです。
レヴィが乙女思考で、ロックもウジウジしてます。
よろしければお付き合いください。タイトルは「恋とギャンブルとアロハ」です。
悪徳と背徳の花が咲く、ロアナプラの夜は長く、熱い。
南国の熱気は、生ぬるい夜風にすこしだけ緩められ、眩しい太陽が沈んだ後に
は、さらに目映いニセモノの太陽、ネオンがぎらぎらと輝き出す。
着飾った娼婦たちがストリートに溢れ、その華やかな仇花に群がるようにして、
男たちもまた夜の喧騒へと繰り出していった。
賑やかな通りの様子を見るともなく見ていたロックは、やがて小さなため息を
ついてデスクに向き直る。
今晩中に片付けないといけない仕事があるのだ。そうそうのんびりしてはいら
れない。
すっかり緩んだネクタイを締めなおすと、とたんにしゃきりとした気分になっ
た自分に苦笑しつつ、ロックは電卓を片手に書類との格闘を開始した。
***
ここ最近では、事務の一切の手続きを任されるようになったロックは、意外に
多忙である。
有事の際にしか仕事をしない乗組員と違って、毎日が仕事のようなものだから
だ。
元サラリーマンという、ここロアナプラでは異色中の異色の肩書きを持つロッ
クにとって、こうした事務処理はそれなりに得意の範疇に入るものだったから、
その手の書類仕事が苦手なラグーン商会の面々は気楽に彼に作業を押し付け―
―気付けば事務を一手に引き受けることになってしまった。
サラリーマン時代の癖で快く引き受けていた己の迂闊さを嘆いても、もう遅い。
なにしろここはロアナプラ、そして彼の務め先は悪名高いラグーン商会である。
いまさら、仕事を引き受けて欲しいと泣きついたところで、彼の同僚と雇用主
はあっさりと首を横に振ることだろう。
タフでインテリな雇用主、ダッチ辺りは何か気の利いた格言でも持ち出してく
るかもしれないが。
「どっちにしても、断られるよなあ」
がりがりと、出の悪いボールペンを質の悪い紙になすりつけるようにして書類
を書く。
やはり、日本の文具製品の品質はトップレベルだったのだ。会社にいたころは
何の気なく使っていたはずの筆記用具でさえ、この違い。
思えば遠くにきたもんだ、とふと遠くを見つめそうになるが、それをこらえて
ロックは小さく頭を振った。
「ま、今夜中には片付くな。……そしたらとにかく死ぬほど飲もう」
どうせ明日は休みで、他にすることもない。
ならばせめて、ここ数日のデスクワークから解放された打ち上げに、一人で痛
飲するのもいいだろう。
目的が出来ると俄然やる気がでる性質であるロックは、そう考えて唇を微かに
吊り上げた。
会社員時代には決してしなかった、薄い笑み。
ロアナプラで彼が身につけた、悪党の笑い方である。
***
いつものように、イエローフラッグに繰り出したレヴィは、しかし常の酒呑み
特有のハイなそぶりを見せず、淡々とテキーラの杯を重ねていた。
その珍しくも恐ろしい様子に、店主であるバオは、今度は一体何が起こるのか、
と戦々恐々としていた。
街中に悪名の響き渡る、トゥーハンドの似合わないアンニュイな様子は、彼の
恐怖心を煽るのに十分だったのである。
頼むから、店がちょこっと崩れるくらいで済んで欲しい。
切なる願いとともに、無言でグラスを差し出すレヴィにテキーラを注いでやり
ながら、バオは信じていない神に祈った。
その願いが通じたのか否か、これまた悪名高い暴力教会の名うてのガンマン、
シスターエダが、本当にシスターなのか疑わしくなるような露出度の高い衣装
で現れた。
豊満な乳房は、半ばチューブトップから押し出されるようにしてその見事な白
い膨らみを外気に晒している。
ストレッチ素材の濡れたように光るミニスカートから伸びる脚は、女らしい丸
みを帯びたラインで、実に目に楽しい。
「ヘーイ、ヘイヘイヘイ! なんだって、そんなシケた面してんだい、レヴィ?」
「うるせーよ、エダ。男漁りに来てんだろ、だったらとっとと引っ掛けてよろ
しくやってな」
いつもどおりに陽気にレヴィに話しかけたエダは、しかしそのどこか覇気のな
い返答に小首をかしげた。
考えるように顎に片手を当て、バオに横目で問いかける。無言で首を振った店
主を見て、エダは何かに納得したように、それでいて面白がるように唇を吊り
上げる。
赤い唇が、ロアナプラ住人特有の悪い笑みを作り上げると、エダはレヴィに圧
し掛かるようにして囁いた。
「冷たいじゃないのさア、似合わないアンニューイな二丁拳銃を心配してやっ
てのにィ」
「ハッ、いいか、エダ。てめーのケツと同じくらい軽いお頭でも分るように、
もっぺん言うぞ。とっとと失せろ」
やはり、いつもの覇気はなく、言葉ともに構えられた拳銃にも殺気が篭ってい
ない。
こんなんじゃ、怖くもなんともないぜ、レヴィ。だって当たる気がしねえから
な。
懸命にもその感想を口にしなかったエダは、とりあえずバオには感謝されるべ
きだ。言ったら最期、レヴィは確実に銃を乱射してバーカウンターの風どおり
を良くしていたことだろう。
ともかくも、エダの崇高なる忍耐によってイエローフラッグのバーカウンター
は救われた。
そのことを知るものはいなかったが。
「ヘイ、イキんなよ二丁拳銃。お優しいシスター、エダ様が主のお慈悲でアン
タの愚痴聞いてやろうってんだ。感謝はしても拳銃つきつけるってのはねえ道
理だぜ」
「善意の押し売りってんだ、それ。カルチャーセンターの婆みてえな戯言抜か
してる暇があったら、大好きなキリストあたりとファックしてこい」
「おいおい、マジで言ってんだぜ。なあ、何があったか話てみろよ。どうせ、
あの色男がらみだろ」
いつもどおりの問答は、エダの一言で打ち切られた。
レヴィの頬がひくりと引き攣り、一度収められた拳銃に再び手が掛かる。一触
即発の気配を感じ取り、店主のバオはちっゃかりとカウンターの下へと避難し
た。
その様を舌打ちとともに見やって、レヴィは注ぎ手のいなくなったテキーラの
瓶を手に取り、手酌でグラスに注ぐ。
――どうせ、あの色男がらみだろ。
エダの言葉は、まさしく真実だった。
あの日本人、ロックはこのところ書類の海で遭難中らしく、一週間ほどマトモ
な会話をしていない。いつのまにか隣にいることが自然になっていたロックの
不在は、レヴィを不機嫌に、そして不安にさせた。
しかし、その事実を素直に認めるレヴィではない。確信をついたエダの指摘を
受けた態度で、それはバレバレではあったが、やはり本人にとっては認めがた
い事実なのだ。
ラグーン商会の女ガンマン、レベッカ様が、たかが男のことで落ち込んでいる
などということは。
「なんだか面白そうな匂いがしてきたじゃないか。ちょっと話てごらんな。お
ねーさんが聞いてあげるからさァ」
「うっせぇな。違う。ロックのことじゃねえよ」
「じゃあ、尚更聞いときたいねえ。ちょいと、教会で飲みなおそうぜレヴィ。
主の足元で打ち明け話でもすりゃ、ちっとは気が楽になるだろうさ。葬式みて
えな面でテキーラ煽ってるよかずっといい」
レヴィの力ない反論を聞いて、エダは小さく喉を鳴らしながら言った。
サングラスの奥のアイスブルーの瞳には、獲物を捕らえた肉食獣のようなサデ
ィスティックな色が宿っている。
「……いい酒あんだろうな?」
「任しときな。ちょろまかしたウォッカにバーボン、テキーラまで選り取りみ
どりよ。もう少しで店開けそうだぜ」
「行く」
レヴィの胡乱気な眼差しをうけ、エダは胸を叩いてにやりと笑った。
シスター・ヨランダに聞かれたら銃殺されそうな言い分だが、抜け目ない彼女
のことだからきっと上手くやるのだろう。
ドジは踏むくせに、ギリギリのところで危機を回避するエダのやり口を知り尽
くしているレヴィは、気のない声を装いつつもタダ酒への期待に微かに語尾を
上ずらせた。
「よーしよし。いい子だレヴィ。んじゃ、とっとと行こうぜ」
「おうよ。バオ! ツケとけ! いいかげんカウンターから出ろよ!」
「またねー、バオ」
名高い馬鹿二人(本人に面と向かって言う馬鹿はいないが)は口々に喚きながら
連れたってイエローフラッグから立ち去っていく。
なんとか店の半壊、もしくは全壊から逃れたバオは、カウンターの下から這い
ずり出て小さくため息をついた。
――黙って突っ立ってりゃ、ただの別嬪ですむんだがなあ。
遠目から見ればひどく魅力的な、それぞれの魅力を振りまく美女二人の背中を
見つめ、バオはふたたび、今度は大きなため息をついて頬杖をつく。
金髪と黒髪の、ロアナプラでも上の部類に入る女たちは、バオの内心のぼやき
を露ほども感じていないように、足早に店を去っていった。
***
「あああ、やっと終わった!」
ようやっと書類仕事から解放されたロックは、デスクに広げられた書類の山を
見て、満足げに頷いた。大きく腕を伸ばして伸びをすると、強張っていた肩の
関節がゴキゴキと嫌な音を立てる。
「まさか、こっちでもサービス残業をやらされるとはね」
この街では無縁だと思っていた作業に、ロックは小さく笑いながら煙草に火を
つけた。
深々と煙を吸い込み、吐き出す。どんな仕事であっても、仕事のあとの一服の
美味さは変わらない。
書類をまとめ直し、小さくメモを載せて、分類を終えるとロックは立ち上がっ
て窓の外を見た。
日本人らしい几帳面さでそろえられた書類が、夜でも明るいロアナプラを背景
にガラスに映し出される。うんうん、と嬉しくなって何度も頷いたロックは、
ふいに予定を思い出して手早く事務所を片付け始めた。
薄暗い事務所の明かりを落とし、施錠をすると、むわりとした熱帯特有の空気
がロックの肌を包む。早くも汗ばんだ体が気持ち悪く、早いところ酒にありつ
きたい、とロックは急ぎ足でイエローフラッグへと向かった。
「よう、今日は千客万来だな。その席にはさっきまでレヴィが来てたぜ。その
前はダッチとベニーが飲んでた」
「へえ、ラグーン商会の指定席だったのか」
「ハッ、んな上等なもんじゃねえよ。第一、あのレヴィは客じゃねえ。ロクに
飲み代も払いやがらねえからな。そのくせ、店だけは盛大にぶっ壊しやがる」
「ハハハ、レヴィらしい」
らしいじゃねえよ、アンタからもなんとか言ってやってくれ、とぶちぶちと文
句を言いながらもバオはグラスを磨き始めた。
来て早々、店主の愚痴に付き合わされてしまったが、やはり仕事のあとの酒は
気分が良い。とくに、大仕事の後なら尚更だ。ロックが命の水を気分よく飲み
干していると、グラスを磨いていたバオがぽつりと言った。
「そういや、レヴィが拗ねてたぜ」
「そりゃまた。何があったんだろう」
ケッ、と舌打ちしたバオは、どうやら本気で分っていないらしいロックの恍け
た顔を見て苦虫を百匹ほど噛み潰したような顔をする。
いまやロアナプラ中が、ラグーン商会の女ガンマン、レヴィの色恋沙汰をネタ
にして、裏じゃ賭けまで始まっているというのに、この日本人は。
鈍いというか、呑気というか。生まれたところが違うだけで、人とはこうも違
うものか、とバオは半ば感心しながらため息をついた。
「気になるじゃないか。教えてくれよ」
「あのなあ、お前本気で分かってねえのか? アレだな。ハイスクールあたり
でいきなり女に殴られたことねえか?」
「そんな経験はないし、さっぱり見当もつかない。何か知ってるなら教えてく
れよ」
ロックの言葉に、バオは片手で顔を覆って天を仰いだ。
――ああ、信じてねえけど神様! とりあえずこのアホにだけドでかい鉄槌を
下してやってください!
今日は俺の神様が大忙しだな、と頭の隅で考えながらバオは祈りを捧げるのを
やめる。顔を覆った片手を外すと、そこにはきょとんとした顔のロックがこち
らを伺っていた。
東洋人は幼く見えるというが、その中でも特にロックは幼く見える。こういっ
た無防備で間の抜けた顔をすると、下手をしたらローティーンにすら見えかね
ない。
「あー、俺にゃ言えねえ。殺されちまうからな。本人に聞け」
「うーん。レヴィはもうこっち来たんだっけ?」
「いいや、暴力教会のエダが来て、連れてった。教会で飲むとか言って
たぜ」
じゃあ、行ってみようかな。ロックが思案顔で呟くのを見て、バオはとりあえ
ず賭けは倍率三倍の「二人がデキる」に賭けよう、と腹を決めた。
――まあ、レヴィを気にかける程度には、それなりの情がありそうだしな。
「おうよ、行って来い。ツケでいいぞ」
「んー、じゃあ行こうかな。……行ってくるよ、ご馳走様」
「気張れよ、日本人」
ロックの白いシャツに包まれた背中に、ぼそりと激励の言葉を投げかけて、バ
オは賭けに参加するためにカウンターの下の受話器を取り上げた。
***
教会は、薄暗い明かりを放つ蝋燭、そしてテーブルの上に無造作に置かれたラ
ンタンの明かりでぼんやりと照らし出されていた。
こちらを見下ろすように磔刑にされているキリストは、エダとレヴィの口論を
見守るかのように優しげな顔だちで、永遠に変わらない姿勢で佇んでいる。
「だっからさーア、なんでとっととヤっちまわないかね」
「てめえと一緒にすんじゃねえよ。年中盛ってるてめえと!」
「あーあー、あたしは年中盛ってるよ! おかげで生理もバッチリ予定通りだ!
ちったア、ヤることヤっとけ! この生理不順がッ!」
喚きあう二人の女は、相手に掴みかかる段になって、我にかえったように顔を
顰めた。
どちらからともなく、再び椅子に腰を下ろして、なみなみと酒の注がれたグラ
スを煽る。
ぐいぐいと飲み干されていく酒で、代わりに溜飲を下げようとしているのか、
二人のグラスはぴたりと同じタイミングで空になった。
「でさア、なんでとっととヤらないわけ? 好きだろ? 好きなんだろ? ロ
ックが。はやいとこ迫って、唾つけとかねえと掻っ攫われるぜ。アレに目えつ
けてる女、お前が考えてるより多いぞ」
「ケッ、アタシにケツ振って擦り寄れ? ファックミー、ってか。そんなんは
やりすぎてうんざりなんだぜコッチは」
「そういう意味じゃねえよ。大体、ロックの方だって気にかけてんじゃないの
ォ? あの色男、あたしの会って最初に言う台詞の第三位ぐらいが”レヴィは?
”だからねえ」
くすくすと笑ったエダは、しかしその言葉でかすかに瞳に光を灯したレヴィを
見て、押し黙る。
ああ、コイツはマジだ。あの日本人にマジでイカれてやがる。
あの二丁拳銃が、ここまで恋する乙女のような反応を示すとは。あからさま過
ぎて笑いもできない。エダは内心でため息をつきながら、グラスに酒を注ぎ足
した。
「でさあ、ヤんないの?」
「てめえは二言目にはそれだな。他に考えることねーのかよ」
「男と女がいて、惚れた腫れたやってんだから、次はヤるしかねえだろうよ。
なア、レヴィちゃん?」
「うっせえな。惚れてねえよ。アイツはそういうんじゃねえんだ」
そういうんじゃねえんだ、ただ――。
言いかけて、レヴィはふと口を噤む。まるっきり、鬱陶しい女の思考だ。
――アイツとファックはしてもいい。ただ、怖いんだ。自分が変わっちまいそ
うな気がして、ロックが変わっちまいそうな気がして、怖い。
セックスは、良くも悪くも人を変える。それもしごく簡単に変えてしまう魔力
を持っていることを、レヴィはその悲惨な性経験から知っていた。
ロックの純粋さを、自分には決してないものを、レヴィは守ってやりたかった。
――アタシが遠い昔に落っことしてきたものを、全部拾い上げてきたみてえに、
ロックはそっくり持っている。
これは、恋に似ていてまったく違うものなのかもしれない。レヴィは己の感情
を量りかねて、とりあえず注がれた酒を飲み干した。
喉を焼く酒が、食道から胃を滑り落ちて、レヴィの臓腑をえぐるようにカッと
熱く燃える。
くらりと酩酊する視界の中で、レヴィはロックの顔を見つけたような気がした。
***
教会へと足を運んだロックが見たものは、祭壇の前に置かれたテーブル、その
上と辺りに散らばる無数の酒瓶だった。酒豪二人は、随分と飲み明かしたらし
い。
沈没するようにテーブルに突っ伏したレヴィの頭が微かに揺れている。その手
前では、エダが陽気にロックに手を振っていた。
「ハーイ、色男。この馬鹿ならさっき潰れたとこだよ。なんか用なら、水でも
ぶっ掛けない限り起きないと思うね」
「いや、いいんだ。仕事じゃない。ちょっと、その……」
「ふふぅん、お安くないねえロック。コイツは持ってかえっていいからさ、首
尾は聞かせて頂戴よォ?」
何か誤解がありそうだ、とエダの言葉に眉を寄せたロックは、何度か瞬きを繰
り返した後、ようやくレヴィに歩み寄った。
安らかな息をして眠るレヴィの、傷だらけではあるが滑らかな肩の稜線が、蝋
燭の炎に照らされて奇妙に艶かしい。思わず息を詰めて見入ったロックは、一
瞬頭をよぎった不純な考えを振り払うかのように、ぶんぶんと頭をふって、レ
ヴィを担ぎ上げた。
この街で暮らすようになって、それなりに腕力のついたロックは、とりあえず
レヴィ一人を担ぐぶんにはさほど苦労はない。
さて、どうしたものか、とエダを振り返ると、彼女はなにやら意味深なにやに
や笑いを浮かべたまま、教会の扉を親指で示した。
――とっととどっか行けってことか。
神の御使いは、営業時間が終了しているらしく、ロックの苦悩を救ってはくれ
ない。
眉を寄せて、眠りこけているレヴィを何処に連れて行こうか迷いながら歩き出
したロックを、エダはただ薄い笑みを浮かべて見守っていた。
***
迷いに迷い――レヴィの家の鍵はあいにく持ち合わせていなかったし、かといっ
て彼女の懐を漁るのは問題だ。だがしかし、自分の家に連れ込むわけにもいか
ないだろう。相手は一応、これでも、きっと、レディであるからして――、結
局再び事務所へと舞い戻ったロックは、とりあえずレヴィをソファに横たえた。
ぐっすりと眠りこけるレヴィを、ため息交じりに見つめたあと、ロックはクー
ラーをつけ、スタンドの明かりを最小にしてから、煙草を取り出した。
ライターで火をつけると、薄暗い部屋の中に紫煙が立ち昇る。深々と一服して
から、ロックはふと考える。
――もしかして、これチャンスじゃないか?
眠り続けているレヴィには、起きる気配はない。ふ、と顔を近づけて煙を吹き
かけても、彼女はぴくりともせず、微かに睫毛を震わせただけで、全く起き上
がろうとしなかった。
――キス、くらい。いやいや、やっぱり女の子の寝込みを襲うのは
考え込んでいるうちに、煙草はすっかり根元まで灰になっていた。勿体ない、
と思いながらも、ロックはそれを灰皿に押し付けて潰す。
「レヴィ……」
囁きながら頬を撫でると、レヴィはくすぐったそうに身じろぎし、甘い寝息を
立てた。
――寝てると、普通の女の子なんだけどな。
二丁拳銃にはあるまじき、可愛らしい姿に苦笑しながら、ロックはもう一本取
り出した煙草を咥え、火をつける。
この、可愛らしくもとんでもなくおっかない、女海賊に思いを抱いてから、ど
れくらいになるだろう。
初めて会った海の上では、ただただ怯えて縮こまっていた。ラグーン商会の一
員になってからも、レヴィとはあの大喧嘩の日までなかなか打ち解けず――今
でも打ち解けているのかどうかは微妙だが――、けれど。
あの日。互いに互いの思ったことをぶつけ合い、自分たちの関係は確かに近づ
いたと思う。少なくとも、ビジネスパートナーくらいには。
そして、故郷である日本での旅路で、ロックはすこし変わった。己の場所を掴
みきれず、それ故に詰められなかったレヴィとの距離を測る術を手に入れたか
らだ。二人は次第に近づき――その距離はロックが精密機械のメンテナンス並
みに気を配って詰めていったものだが――やがて、隣にいるのが当たり前だと
言えるくらいになった。
――そう、俺にとっては。
けれど、レヴィはどう考えているのか。ロックの苦悩を露知らず、呑気に眠り
こけている、この物騒な女ガンマンは、一体自分のことをどう考えているのだ
ろう。
つんつん、とレヴィの白い頬をつつきながら、ロックはつらつらと考えた。
「なあ、レヴィ。俺のこと、ちょっとは大事だと思ってくれてるかい?」
――……あったりめえよ
なんて、答えてくれたらいいのに、とロックは自分の馬鹿な考えに苦笑した。
全くもって、ガラではない。この年まで色恋沙汰がなかったわけではないのに、
この年になってこんな高校生みたいな片思いをするとは思わなかった。
しかも、この背徳の街、ロアナプラで。
***
――恥ずかしいヤロウだ……
事務所のソファに寝かされてからこっち、どうにも起きるタイミングを逃して
いたレヴィは、ロックの百面相を薄目を開けて観察していた。
人が寝てる前で何やってやがる、と何度怒鳴りつけてやろうとしたが知れない
が、その度、レヴィは何も言わずに寝たフリを続けてしまう。目の前に広がる、
ロックの馬鹿正直な顔に浮かぶものが、確かに自分への恋情を感じさせるもの
だったからだ。
あげく、今の台詞である。
――大事かだって? このスカタン!
事実はその通りであるのに、心の中ですら素直になりきれないレヴィは、そう
悪態をつくと、ごろりと寝返りを打った。これ以上ロックと顔を合わせていた
ら、ついつい余計なことを口走ってしまいそうだ。
――バーカバーカ、てめえはのほほんとしてりゃいいんだよ! 間抜け面のド
阿呆が!
ロックの、苦しそうに吐き出した「自分が大事か」という言葉は、寝返りをうっ
て彼の顔が見えなくなっても、レヴィの胸を締め付けるようにして響いた。
***
「お休み、レヴィ」
寝返りをうった彼女に、そう囁いて、ロックは彼女の頬に口づけた。
これくらいなら、手間賃代わりに貰っておいてもかまわないだろう。勝手にそ
う判断して、ロックはレヴィの日焼けしてもまだ白い頬に優しく唇を落とす。
――と。
カッと頬を赤くして、レヴィが突如ハネ起き、おかげでバランスを崩したロッ
クは尻餅をついてへたりこんだ。気まずい沈黙が落ちる。
数秒が永遠にも感じられる中で、ロックはひたすら目を泳がせて自身の危機か
ら身を守る方法に考えを巡らした。名うてのガンマンの腕前のほどを熟知して
いるロックにとって、そしてレヴィがどれほど女扱いされるのを嫌がっている
か知り尽くしているロックにとって、この状況はまさしく生命の危機と言える。
「あ、あー……起きたなら、水でもいるかい?」
「……ああ」
薄闇のせいで、はっきりと顔色の分からないレヴィを見ながら、ロックは慎重
に話しかけた。どうやら、それほど気分を害してはいないようだ。
――寝起きで頭が回っていないだけかもしれない
この水で頭がすっきりしたところがズドン、という最悪のシナリオが頭を駆け
巡り、ロックは深く深呼吸をしながら水を注いだグラスをレヴィに恭しく差し
出した。
「ありがとよ。どこだここ?」
「うん。……え、えーっと、教会にいるっていうから行ってみたら、レヴィが
潰れてて。仕方ないから事務所に来たんだけど」
「そうか。……仕事、終わったんだな」
しどろもどろに答えるロックに顎をしゃくり、書類の山を示したレヴィは、小
さく笑った。
薄暗闇のなかでかすかに閃いたレヴィの笑みに、ロックは一瞬見惚れ、慌てて
目を逸らした。酒で焼けたハスキーな声が、ひどく扇情的にロックの耳に残る。
「あ、ああ。そういえば、レヴィ。なんか機嫌が悪かったって聞いたけど」
「……どこのどいつだ、んな与太話飛ばしやがったのは。エダか? エダだな
ッ!?」
「ちがうちがう」
起き抜けにカトラス片手に教会に襲撃をかけかねない勢いで尋ねるレヴィを宥
めるように、ロックは彼女の肩を叩いて言った。
「みんな言ってたよ。元気がないって」
そう実際に、バオ以外にもダッチやベニー、果ては張にまで、レヴィの最近の
不振ぶりは聞かされていたのだ。いったい何があったというのか、ここしばに
く彼女の傍から離れざるを得なかったロックとしては知りたいところである。
原因が自分自身であることなど露知らず、気遣うようにこちらを見上げるロッ
クに、レヴィは地団太を踏むような勢いで答えた。
「なんでもねえよッ!」
「……でも、」
「それよか、さっきのは一体なんの真似だ、ロック? 答えによっちゃ、テメ
エの身体の風通しがよくなるぜ?」
一転して、クールに冷酷な眼差しをしてロックを見つめたレヴィは、カトラス
を構えて薄く笑った。酷薄な笑みが、彼女の白い頬に鮮やかに描かれる。
「オーケー、オーケー。落ち着こう、レヴィ」
「何が落ち着こう、だ。この間抜け野郎ッ! 言ったよな? 淫売扱いされる
のは我慢がならねえって、言ったよな?」
カトラスの標準をゆっくりとロックに合わせて、レヴィは震える声で言った。
無論、レヴィとて本気でロックが自分のことを淫売扱いしているとは思ってい
ない。そんな男ではないことは、短いながらも濃い付き合いの中で分かってい
る。
――ただ。ただ、臆病なのだ。自分は、ロックが怖い。
ロックに好かれるのが怖い。嫌われるのはもっと怖い。そんな自分を認めたく
なくて、レヴィは半ば自棄になって安全装置を外した。がちゃり、と金属がこ
すれあう音が静かな室内に響く。
「違うんだ、レヴィ」
「人の寝込み襲っといて、何が違う?」
「それは……悪かった。だけど俺は、別にレヴィを淫売だなんて思ってない。
手軽にやれる女だと思ってる訳じゃないんだ。そんなつもりで、キスした訳じゃ
ない」
ロックの正直な告白に、レヴィの頬には再び血の気が戻った。徐々に赤味を帯
びていく頬を片手でおさえ、片手でカトラスを構え続けながら、レヴィは呻く
ように囁く。
「……だったら……だったら、どんなつもりでキスしたんだ? 答えろよベイ
ビー」
脅しているはずなのに、懇願に聞える。不思議な声色で問いかけるレヴィに、
ロックはつっかえながらも正直に語り始めた。
「最初は、隣に居れるようになりたかったんだ。……レヴィの隣にいられる男
になりたかった。けど、それだけじゃ満足できそうにないってことに気付いて
……だから……」
「ヘイ、あたしは気が短いんだ。とっとと結論だけ言いな、ベイビー」
戸惑いがちに話すロックの様子に、こりゃ長くなりそうだ、と判断したレヴィ
は、カトラスを振ってそう急かす。
「レヴィが好きなんだ」
「…………そうかよ」
結論だけ、と言われて、あっさりと結論だけ返してきたロックに、レヴィは頭
を抱えた。
カトラスの構えを解いて、額に押し付けて呻く。
――言いやがった、言いやがった、言いやがった、コイツ!
どうやら自分に心底惚れているらしい馬鹿の顔を眺めながら、レヴィは小さく
舌打ちした。まさか自分が、こんな真剣な、どこか平和な場所のティーンエイ
ジャーのような告白を受けるなんて、考えもしなかった。
少しだけ予感はしていたものの、改めてきっぱりと断言されると、動揺は抑え
切れない。
「レ――レヴィ? その……悪かった。忘れてくれ。さっきのは、本当にすま
なかった」
「忘れてくれ? ロック、ベイビー! お前の今のアレは、アタシに忘れても
らいたいようなもんなのかい?」
「いや……、忘れて欲しくない。答えも……できれば、欲しい。でも我ながら
さっきのは卑怯だと思うし、レヴィを困らせるつもりは無いんだ」
項垂れて、真剣に己の行いを悔いているらしいロックは、まるで裁きを待つ罪
人のようだ。
この街に、つくづく似合わない男だ、とレヴィは苦笑してカトラスをホルスター
にしまう。女の寝込みを襲うなんて日常茶飯事、むしろ寝込みを襲うぶん良心
的とすらいえるようなこの街で、たかが頬にキスしただけでここまで謝る男が、
一体どれだけいるだろうか。
――いや、ひとりもいねえな。この馬鹿以外
クク、と喉を鳴らしたレヴィは、未だに俯いているロックに歩み寄り、その頭
を胸に押し付けるようにして掻き抱いた。いきなりの行動に暴れるロックを押
さえ込み、レヴィは淡々と言う。
「なあ、ロック。怒っちゃいねえよ。お前がそういう類の男じゃねえことも知っ
てる。だけど、な。あたしには踏ん切りがつかねえんだ」
「踏ん切り、って何の?」
レヴィの、それなりに豊かな胸に窒息しそうになる、というロアナプラの住民
が知ったら卒倒するような事態に見舞われたロックは、ふがふがと息をしなが
ら尋ねた。
「あたしはな、ロック。怖えんだ、本当のこと言うと。お前と恋人になって、
ヤって。そしたら、なんかが変わっちまう気がして、怖えんだよ」
珍しく弱気なレヴィの言葉に、ロックはやっと気付いた。鈍い鈍いといわれ続
けた彼にも、ようやく事態が飲み込めたのである。
レヴィが怖れているのは、変化だ。この街で、そして彼女の世界で生きるため
に作り上げられた”レヴィ”という存在を変えられる。それは、彼女にとって
たしかに恐怖だろう。
ロックは小さく息を飲み、レヴィの腕から逃れて、彼女を今度は自分の腕の中
に閉じ込めた。戦闘のときにはあんなに大きく見えるレヴィの身体は、やはり
女のものだ。それは実に華奢で、小さく、頼りなく、ロックの腕の中にすっぽ
りと納まった。
「……俺も、怖いよ。でも、俺はレヴィと……したい」
「…………………」
「俺は、レヴィが好きだから、したい。ただヤリたい訳じゃない。レヴィとし
たい。レヴィは変わらなくていい。そのままのレヴィが、俺は好きだ。変わっ
てもいい。それでもきっと、俺は好きだ」
珍しく饒舌なロックと、珍しく無口なレヴィ、という世にも珍しい組み合わせ
のカップルは、抱き合ったまま身じろぎもせず、ただ互いの体温を頼りに夜の
静寂のなかで寄り添っている。
やがて、かすかにレヴィの頭がこくりと動き――二人の影は、ぴったりと重なっ
た。
***
ソファの下には、脱ぎ散らかされた衣服が散らばり、安物のソファからはひっ
きりなしにギシギシと危なげな音が響いている。
気持ちの通じ合った男女のすることは、いつの時代も一つだけだ。ロックとレ
ヴィも、その真理には逆らわず、身体を重ねあうことになった。
「んっ……ロックっ!……あァっ、あ、んっ」
「レヴィ、綺麗だ……」
とっくに快楽の海の沖へと漕ぎ出している二人は、波に揺られるように振動に
身を任せる。
初めて分け入ったレヴィのねっとりとひくつく襞は、ロックにたっぷりと絡み
つき、耐えず締め上げ、彼を追いたてた。内壁のマグマのような熱さに煽られ
るように、ロックは彼女を突き上げる。
「き、れいな、もんっ……かっ……間抜けなこと、言うんじゃねえよロック!
萎えるだろうがッ!」
「……ごめん」
うっとりと呟いたロックの戯言――少なくともレヴィにとってはそうとしか映
らないだろう――を聞きとがめ、彼の背中に爪を立てながら、レヴィは歯軋り
しそうな勢いで彼を罵った。
それに謝罪しながら、レヴィのゆるくうねる、細い腰を掴んで、ロックは更に
奥深くへと侵入を始める。東洋人特有の、熱く硬い性器の感触に、レヴィの口
からは熱いため息が漏れた。その甘いため息に、ロックは更に自身が硬く張り
詰めていくのを感じた。
「レヴィ、気持ちいい?」
「聞、くな。ンなこと」
どこまでも素っ気無いレヴィの返答に、ロックは眉尻を下げたが、彼女の顔に
目を向けた途端、それは一転する。
上気した頬に、かすかに潤んでいる瞳、しどけなく開かれた口元からは、押さ
えた嬌声が上がっていた。なんとも扇情的なその様子に、ロックはさらに激し
く腰を打ちつけ、彼女の揺れる乳房にむしゃぶりついた。腰を掴んだ指をピン
ク色の秘裂に向かわせ、ぷくりと膨らんだ小さな芽をなぞると、レヴィの身体
が大きく仰け反る。
「んッ……あ、ああっ! ロックっ! ……あ、あ、んっ……」
「レヴィ、レヴィ、レヴィ、」
まるで呪文のように自分の名前を呼び続ける男の背にしがみつき、レヴィはほ
ろりと一粒の涙を零した。
――誰かに抱かれて泣くなんて、初めてヤられた時以来だぜ
あの時は嫌悪と恐怖の涙だったが、では今のこれはなんだろう。ぼんやりと考
えているうちにも、ロックは優しく、しかし的確にレヴィの性感を高めていく。
次第にそれに溺れながら、レヴィは必死にロックの、傷一つなく滑らかな肩を、
跡が残るほどにきつく、きつく握り締めた。
「ロック!―――――っ!」
「…………レヴィ」
互いの名を呼び合い、二人は深い快楽の底へと落ちて行く。
落ちているのか、浮かんでいるのか、奇妙な浮遊感の中で、レヴィは何故か、
ロックと一番初めに出会ったあの日を思い出していた。
――まさか、こんなことになるとは、な。
幸せそうに自分を抱くロックを見ていると、まんざらでもない自分がいる。自
分もたいがい、この優柔不断で平和ボケした日本人のくせに妙に肝の据わった、
偶に馬鹿をやらかす、相棒に毒されているらしい。
くすりと笑い、レヴィはロックの肩に噛み付いた。
――これは、あたしの持ちモンだ。
物騒な所有の印から滴る血を舐めとって、レヴィはおおよそ抱かれる女には似
合わない、獰猛な笑みを浮かべた。
***
「アイタタタ……」
噛み付かれた傷口が引き攣って傷むが、気分は上々である。
思いは告げたし、どうやら思い自体も受け入れてもらえたようだし、思いも遂
げられたし。
ロアナプラに来て初めてといえるくらい、幸運だけがやってきた夜だった。口
笛でも吹きそうなくらい、軽い足取りで、ロックは露店をひやかして回る。
「買っていこうかな――――っ」
楽しげに品物を手に取ったロックは、突然肩を叩かれ、一瞬硬直した。
振り返ると、そこには昨晩の事がまるで都合の良い夢だったかのように、ふて
ぶてしく佇むレヴィの姿があった。
「よう、ロック。随分ご機嫌じゃねえか、え?」
「や、やあレヴィ。買出しかい?」
「ポーカーで負けた。……昨日さんざんやり倒しといて、随分ツレねえじゃね
えか。こっちは朝から頭は痛いわ腰は痛いわで、散々だぜ」
「……頭が痛いのは、飲みすぎだと思うよ」
レヴィが唇を尖らせて、拗ねたように囁く。ロックの言葉に、彼女は思い切り
機嫌を損ねたように、彼の脛を蹴り飛ばした。
痛みに蹲るロックに覆いかぶさるようにして、レヴィは耳元に息を吹きかける
ようにして言う。
「休みだってのに、ホワイトカラーかよ。あたしが買ってやったアロハ着ろ、
アロハ。――恋人のプレゼントは、大事に使うもんだぜハニー」
レヴィの甘い囁きに、一瞬時と場合を忘れてしまいそうになったロックは、し
かし言葉の意味に気付いて眉をしかめた。
――あの悪趣味なアロハ、休日の度に着ろってか。
しかし、囁かれたハニーという単語の甘い響きは、そんな不満すら吹き飛ばし
てしまうほどの威力がある。どうしたものか、と真剣に悩み始めたロックを見
て、ふんと鼻を鳴らしたレヴィは、勢い良く立ち上がった。
「決めた。今から休暇とる」
「ええっ!? 買出しは!?」
「知るか。食いたきゃ、てめえで買ってくりゃいいんだ。どうせ今日も仕事は
入りそうにねえしな。それよか、ロック。マーケット行って、そのクソ鬱陶し
いホワイトカラーの代わりに一式揃えるぞ」
「…………わかったよ」
したり顔でロックの答えに頷くと、レヴィは携帯を取り出して、事務所への連
絡を始めた。
どうやら、雇用主であるダッチよりも、昼食の買出しを頼んだベニーの方が問
題らしいが、なんとか丸め込んだようである。往来で口汚いスラングを一頻り
吐き終わると、レヴィはロックに向き直り、彼の腕を掴んだ。
「話はついたぜ。ほら、行くぞ」
「ええ、もうどこへなりとも」
すっかり諦めきった様子のロックが、レヴィに組まれた腕をそのままに、マー
ケットへと歩き出す。満足げに、ロックの腕にしがみついたレヴィは、すこし
だけ頬を緩めた。
――なんだ。なんもかわらねえ
何も変わらない。怖れていたことは、何一つとしてなかったのだ。
レヴィは何一つ失わなかったし、ロックも失わなかった。代わりに、一つ、互
いの隣にいる存在を得た。
白いシャツから透ける、昨晩自分がつけた噛み跡を見つけて、レヴィは笑った。
――そう、何も変わらない。……もしかしたら変わるかもしれねえが、その時
はその時だ。
ロアナプラの陽は今日も高く、空は青かった。
ひたすらに蒸す気候のせいでとてつもなく暑苦しく見えるロックのホワイトカ
ラーを剥いで、手始めにアロハを着せてやろう。
レヴィはにやにやと笑いながら、ロックの腕を強く掴んだ。
――まあ、これからあたし好みの男に仕立てるって手もあるしな。
***
「で、どうだよ」
バオがグラスを磨きながら、小さく笑ってスツールに腰掛けるシスター・エダ
に問いかけた。
「どうもこうもないよ。丸儲け」
「レヴィのネタで賭けの胴元なんかやってたってバレたら、殺されるよエダ」
エダの言葉を咎めるように、ベニーは眼鏡を神経質に弄ったが、彼の雇用主は
それを意に介さぬように豪快に笑った。
「面白えじゃねえか。俺たちは勝ったんだし、配当金はレヴィのやらかした修
繕費と無駄に喰いやがる弾代に当てるんだ。文句の出所がないだろう」
「ま、俺の配当金もアイツのツケの返済に回すしな」
にやにやと笑い合い、グラスをぶつけた店主とダッチは、一息に酒を飲み干し
てグラスを置く。
レヴィの色恋沙汰は、どうやら丸く収まったようだ。
今日一日休みにしてくれ、と言い出したレヴィが、マーケットでロックと腕を
組んで歩いていた、という目撃情報はそこら中に転がっている。
――まあ、いわゆるデートというヤツなのだろう。
二丁拳銃のレヴィにはとことん似合わない単語に、かすかに唇を歪めたダッチ
は、バオが注ぎ足した酒を煽った。
「しかしまあ、あのレヴィが、ねえ」
「みんな面白がって賭けてたけど、実際くっつくとは思わなかったなあ」
ベニーの嘆息に、エダがサングラスを反射させながら口元に笑みを閃かせる。
「そりゃそうさ。何しろ賭けの比率だって、最後まで”くっつかねえ”っての
が優勢だったしな」
「俺はもし賭けてたら、そっちに賭けてたな。何しろ、想像がつかない」
大げさに肩を竦めて、ベニーが呟くと、イエローフラッグのカウンターには賑
やかな笑い声が響いた。
終わりです。お付き合いありがとうございました。
↓以下おまけの小ネタです↓
***
「なあ、レヴィ。笑わないでくれ」
「事と次第によっちゃ笑うぜ」
「よし。それでも笑わないでくれ」
「いいから、とっとと出て来い! どこのお嬢さまだテメエは!」
試着室のカーテンをひっぱられ、しぶしぶ表に出てきたロックを、指差して笑っ
たレヴィに、彼女を愛し続ける自信を――ちょっぴりだけ――ロックは失った。
「に、似合わねえっ!」
「だから言っただろっ! 俺には無理があるんだよこの服はっ!」
ひどく悪趣味なアロハとハーフパンツを身に纏ったロックは、腹を抱えて笑い
続けるレヴィを見つめて、情けなく肩を落とした。
――なんで俺、レヴィが好きなんだろう
ここまでされておきながら、全ては惚れた弱みで流せてしまいそうな自分に、
ロックは深く、深くため息をついた。
自分の今の格好については、深く考えないことにして。
僕はッ!GJとッ!言わざるを得ないッ!!!!!!!
GJ!欝も大好物だがバカップルも好きなんだぜボーイ
デレヴィかわいいよデレヴィ
467 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:43:01 ID:/YaRSWvo
ども。
悪い癖か出まして、途中のアレは一時棚上げにして、
了解も得ずに「また」別の「何か」の続編だったりします。
+++
ロックが姿を消して十日ほど経ったある日。
ラグーン商会の事務所でレヴィがおよそ彼女らしくないモノを前に憮然とした顔で座っていた。
伝票類とノートパソコン。
『あのバカは、よくもまぁこんなことを嬉々としてやってやがったもんだ。』
別に嬉々としてやっていた訳では無いのだが、レヴィにはそう見えたのだろう。
ロックがラグーンに加わった当初、レヴィは自分の取り分が減ったことが不満だった。
全体のパイの大きさが変わらないのに、食い扶持が一人増えたのだから、
取り分が一人当たり1/4減るのは当然と言えば当然だった。
しかし、あの半人前にすらなら無いヤツとペイが同じってのは、
ドコをどう計算するとそういうコトになるんだよっ!
いくらそうやって文句垂れたところで、そういうコトになっていた。
やがて、この半人前以下野郎がとんでもないイカレ悪党予備軍と気づかされたのだが、
それはもう意味の無い話になってしまった。
むしろ今は目の前にある現実の方がはるかに大問題になっていた。
ロックの担当していた事務、経理、交渉、その他諸々の作業を、残された3人で分担する必要があった。
おかげで今更ながら彼の存在の大きさに気づかされた。
他所との交渉事は元々ダッチが管理していたので、あまり問題にはならなかったが、
ベニーはロックのおかげでデスクワークが大幅に軽減されていた。
おかげで愛して止まない機器達を思う様弄ることに専念できていたのだが、それが逆戻り。
そのせいか平素は温厚なはずの彼も、最近はどことなく機嫌が悪い。
勿論、彼とて仲間を失った事の方が精神的なダメージは遥かに大きいのだが。
ロックの参入で最も負担が減らなかったのがレヴィだったが、
逆に失うことで最も打撃を受けたのは彼女だった。
それなのに彼女にもデスクワークの分担が回ってきた。
468 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:43:59 ID:/YaRSWvo
人差し指の一本打ちでカチャ、カチャ、とまどろっこしい音が静かな室内に響く。
例によってダッチは船の、ベニーは機器のメンテに行っている。
自動的に手空きのレヴィがこの仕事ということになった。
畜生、あのバカはアタシのココロをブチ壊しにしただけではまだ足りず、
こんなことまでやらせやがって。
覚えてヤガレ、あの世でたっぷりこの利息を取り立ててやる。
ガキの世話も面倒なことは全部アイツにやらせてやる。
レヴィは自分の事ながら、作業のあまりの遅さ加減にブチ切れ寸前だった。
あと1分していたら重要なデータを収めた、ある意味ではロックの遺品とも言えた、
そのノートパソコンはレヴィの「相棒」によって鉛弾の洗礼を受けるところだった。
そうならなかったのは、不意に訪問者が現れたためだった。
「あれ、レヴィ何やってんの?」
「ウルセェ! テメエのせいでこうなったんだろうが!!」
「そう喧々するなよ、一休みしたら代わるから。」
「フザけんなっ! 直ぐ代われ!! 今直ぐ代われ!!! 直ちに代われっ!!!!」
「戻った早々酷い扱いだなぁ。わかったよ。」
「わかりゃイイんだよ。ハナっからそう言え…………ええええぇぇっっっ゛!!??%#※@」
「どうしたんだ? 変な顔して?」
レヴィは目の前に居る男を呆然と瞬きもしないでただ見つめていた。
コレは夢だ。ひどい悪夢だ。そうだ、そうに違いない。
だいたいアタシがデスクワークなんて反吐が出るようなコトやってる時点で気付くべきだった。
そんなコトがあるワケが無いじゃないか。
469 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:45:02 ID:/YaRSWvo
夢から覚めるにはどうする?
コレが一番だ!
無警戒に突っ立っていた男は、レヴィの右ストレートをモロに顔面に喰らった。
ズデンと不様に背中を壁に打ち付ける。
「痛ってぇ………な、何するんだよ、いきなり……。」
「痛てぇワケがあるか! 勝手に夢にまで出てきやがって!!」
「ユメ? 何言ってるのかわかんないんだけど………。」
「夢じゃねぇのか?」
「だから何言ってんだよ………。」
ヨロヨロと男が立ち上がった。
「なら迷ったな! とっとと、あの世逝ってガキの面倒見てろっ!!」
今度は左が炸裂した。
30分後、ドックから戻ったダッチとベニーは事務所の床に大の字になってノびている男を発見した。
両穴から鼻血を流し、口も切れているらしく血の混じった涎をだらしなく垂らし、顔中がアザとコブとキズだらけ。
恐らく上半身そこら中がアザだらけだろう。
そして、その男に膝立ちで跨ったまま、肩で息をしながら、顔を汗と涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃにしたレヴィ。
男は酷い御面相の上、見慣れたホワイトカラースタイルではなかったが、
間違いなく行方不明になっていたロックだった。
****
絆創膏だらけの顔の上に氷嚢を乗せ、鼻の穴は両方とも止血のガーゼで塞がれていた。
おまけに口の中は相変わらず血の味がする。
この状態で喋るのは相当難儀である。
しかし、連絡も寄越さずに十日も行方不明になっていたのだから、
理由を説明しないわけにもいかなかった。
ロックは手順を誤ったと後悔していたが、今更手遅れである。
あの日、海に転落したのは本当だった。
まったく我ながら情け無い水兵も居たものだ。
戦闘の真っ最中に海に転落したとは、いやはや。
470 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:45:54 ID:/YaRSWvo
追跡していた国境警備艇は、目標の船、ラグーン号を厳重に監視していた。
おかげでドジな海賊が一人、海に転落したこともしっかり把握していた。
拾い上げて逮捕し、ゲロさせれば、他も芋づる式に追い詰められる。
それから一時間も経たず、連絡を受けて幸い付近に居た別の警備艇がドジな海賊を確保した。
荒れ模様とはいえ、南の海だったこともロックにとって幸いした。
気象の厳しい北の冬の海だったら、水の中ではとてもじゃないがもたなかっただろう。
もう一つ、ロックのスラックスが役に立った。
海に落ちたロックは何度も溺れかけながら濡れたスラックスを苦心して脱ぎ、
両脚の裾に結び目をつけ、簡易救命胴着にすることに成功していた。
このおかげで、荒れた海で救助されるまでの一時間余り、命を繋ぐことができた。
さて、無事に海から拾い上げられてからは大悪党予備軍の舌の見せ所だった。
ロックは自分は海賊に拉致された日本人だと言い張った。
確かに日本人であることも拉致されたこともウソではない。
当初は胡散臭そうに聞いていた警備隊員達だったが、
拾い上げた時のロックのビジネススタイルは海賊らしからぬものだった。
直ちに外交ルートに顔写真を送ったりと確認の手続きが取られ、
二日後には死亡したと思われていた日本人だと判明する。
途端に事情聴取の扱いが丁寧になったのは苦笑ものであったが、別の問題が発生した。
当然、家族が迎えに来る。
どうする?
夕闇の世界からはオサラバして陽の当たる世界へ戻ろうか?
冗談じゃない。後悔はずっと前に済ませたし、忘れることも済ませたんだ。
今更何しに戻るんだ?
まして、自分を抹殺しようと謀った連中の下へ戻るなど真っ平だった。
家族には悪いと思う。でも、生きていることが確認できただけでも希望は持てるはずだ。
だけど、大切な彼女には何が残っている? また望んだものを失わせたままにするのか?
約束したんだ、彼女が望むものをこれ以上奪うなんて絶対に金輪際ゴメンだ。
ロックは決断した。もう一度自分は海賊に拉致されるんだと。
471 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:46:40 ID:/YaRSWvo
ロックはバンコクへ護送された。ご丁寧に護衛付きなので身動きがとれなかった。
バンコクに着いたのは夜半だった。
とりあえず在タイ大使館が用意したホテルで、対応にやって来た日本大使館員と名乗る人物と簡単な面接を済ませ、
最後に家族と電話するかと聞かれた。
ロックは時差の関係で日本は真夜中の筈ですからと言って丁寧に断った。
大使館員は今夜はゆっくり休んでくださいと告げ、いくらか現金も置いていった。
今夜が勝負だ。早ければ明日には家族が来訪する。
ロックは一人になると部屋を出てフロントに鍵を預けると、ちょっと寝酒を買ってくると告げて外へ出た。
ホテル側は客が夜の繁華街に出掛けるのを不振がる理由は無い。
ロックは尾行を警戒しながら、出来るだけ人の大勢居る店を選んで入り、
人に揉まれながらトイレに行くと、窓から外へ脱出した。
後は裏通りをジグザグに抜け、ラグーンと取引のある見知った裏業者の門を叩いた。
とにかく朝になれば、自分がまた行方不明になったことがバレる。
そうなれば警察が動く。
そうなる前に、出来るだけ遠くに移動しておきたい。
幸い、密輸品を運ぶ手漕ぎボートに便乗できた。
相手がラグーンの人間なので、運賃はツケにしてもらえたのも有難かった。
今後の交通費は出来るだけプールしておきたかったのだ。
着衣も現地の人間が着る様なラフなものに着替えさせてもらった。
長く海上生活をしてきたロックは、いい具合に日焼けしているので、
着ている物によっては、ちょっと目に現地の労働者と区別できない。
その後もロックは極度に尾行を警戒していた。
ひょっとすると、ワザと自分を泳がせている可能性を心配したためだ。
何度もラグーンに、と言うより彼女に電話しようともした。
だが、いつも寸前で断念したのは、盗聴の懸念がどうしても抜けないからだった。
こうして裏稼業で知っていたルートを選んで、水路と陸路をたどり、彼は帰ってきた。
彼の場所と、彼を必要とする仲間と、彼と大切な約束をした相手の元へ。
472 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:47:29 ID:/YaRSWvo
「………痛っ…てぇ………」
既にすっかり馴染んだモーテルのベッドの上で、ロックは全身を包む鈍痛に睥睨していた。
「まったくよぉ、せめて街に着いたところで連絡寄越せってんだ。」
「………………」
今のロックには返事をするのも億劫だ。
「おら、聞こえてんだろ。何とか言え、このアンポンタン。」
傍らで冷やしたタオルをあてたりして、余計な世話を焼いているレヴィ。
一通りの説明を終えたロックは、そのままに残されていた自分のヤサに運ばれた。
レヴィが駄々を捏ねてそのままにしておいたのだ。
「で、今度の休みは海へ行くんだよな? 潜るんだよな、え? ベイビー。」
冗談じゃない、この傷だらけの身体を塩水に浸けろってのか。
だいたい、溺れかかって一ヶ月も経っていないんだ。正直に言って今は海が怖い。
本当に勘弁して欲しい。
あれれ、ロックは何だか呼吸が苦しくなってきた。
腫れた目蓋をうっすら開くと、またレヴィが馬乗りになって、今度は首を絞めている。
「……ちょ………止めて……レヴィ………」
「テメエ、何とか言えよ……」
「…喋ると……口が……痛いんだって……」
「ウルセェ、そんなこと言って欲しいんじゃねェ。」
「……んなコト言われ…たって……」
「…………せめて、……コレだけは答えろ………」
「…………」
「……もう、二度と何処にも行くな、何処にも、…何処に…も………」
もうレヴィの手に力は入っていなかった。
代わりに、すがる様に顔をロックの胸に埋めて来て、低く嗚咽を始めた。
「行かないって。…約束したろ。…今度だって……ちゃんと…戻って来…………」
彼女の体重の掛かった肩や胸のアザが痛んだ。
痛いのは生きている証拠だ。
すぐそばに愛する者まで居る。温もりすら感じるほどに。
何の不満がある?
あるとしたら…………………
「………痛っ…てぇ………」
終わり
473 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:48:23 ID:/YaRSWvo
ども。
勝手にトンデモ喜劇にしちゃいました。申し訳ないです。
私事ですが、実はリアルで鬱の療養中でして。
はい? んなヤツが2chなんぞ入り浸るな? そうですね(自爆)
で、360氏の傑作、途中でヤバイなぁと思いつつ、氏の筆力に負けて完読してしまいました。
いやもう、本当に神作ですねぇ。
私も流すネタは考えたことあるのですが、ここまではとても書けません。
んで、鬱に負けっぱなしが悔しくなって、
一時間のやっつけ自家発電で書いたのがこの喜劇です。
本当にせっかくの傑作が台無しに <ぉぃ
相変わらずレヴィが乙女してるしwww
あと、途中の救命胴着ネタはかなり苦しいです。
あれ、一度水に浸かった後だと、相当経験が無いとかなり難しいはず。
それと荒れた海って本当にシャレになりません。
体力消耗しまくります。果たして素人のロックが一時間持つのかどうか?
それで無理矢理救命胴着ネタ入れたのです。どうかご勘弁を。
外交関係の部分も勝手な想像ですので、実態とはかけ離れていると思います。
最後にリクエストですけど、、、
ぬ、代わりに続き書いてくらはい <マテコラ
13辺りまで書いて頓挫していまふ、あははー、鬱だ orz
バカ氏の作品は嫌いじゃないのだけど、
聞いてもいないことをしゃべり過ぎるとか、自分語りが多いとか、語尾が不愉快とか
2ch上で嫌われる要素が結構多いので気をつけたほうがいいんじゃないかな
…って、大人しくヌルーすべきなのかな
>>463 GJすぎる。すげえツボだ。バカップルいいよバカップル。
>450
エロに至るまでのあれこれが超楽しかった!
脇役の行動とか思考とかも完全にブラクラ世界でもうGJ!
乙女レヴィと野暮天ロック美味しゅうございました、ありがとう神様!
なんか独白の匂いがするな
まあとりあえず乙
(´・ω・`)
そいでは、そろそろ投下するぜアミーゴ
湿度100%。
指先を動かすのも重いような空気が部屋の中まで侵食する。
窓から空を見上げれば、真っ黒に厚い雲が太陽を覆い隠し、降り出すタイミングを今か今かと見計らっ
ていた。
湿度が限界まで上がり、滝のようなスコールが降る、それを繰り返す今の季節はあの灰色の街では夏
の終わり。
昼は暑くても、朝や夜の寒さが来秋を告げる頃だ。
ここタイではあの街のように艶やかな四つの季節を感じることはできないが、こうしてスコールが降る雨
季と、雨を忘れてしまったかのような乾季とで時の移ろいを感じることはできた。
今回の仕事はベトナム軍の武器の横流し。
単純な輸送のみの仕事のはずが連絡がうまくいっておらず、持ち出しだけで丸二日かかり、今朝荷を
受け渡した頃には四人ともぐったりと疲れ切っていた。
港に着いた二人は事務所へも戻らず、スコールの隙間を縫って真っ直ぐにレヴィの部屋へやってきた。
「スコールが降る前にすましちまおうぜ」
そんな軽口を叩いたレヴィを玄関先で早速裸に剥いて、三日間触れることもできなかった彼女の身体
を楽しんだ。
とりあえず、の一度目のセックスを汗まみれで終えて、今、レヴィはシャワーを浴びている。
「あたしがシャワーから上がったら、直ぐ冷房だからな!」
じゃあ、今からかければいいじゃないか、と抗議すると、ここの部屋の主は自分だとばかりにリモコンを
シャワールームに持ち込んでしまった。
「あつ…」
一緒にシャワールームに行けばよかったのだろうが、なんだか疲れが出てしまい、ベッドの上でだらし
なく空を見上げながら一服。
煙の出て行く先には灰色というより真っ黒な空。
手持ち無沙汰でベッドの傍に転がっていたラジオをつけた。
日本語の番組だった。
リクエスト形式の音楽番組だ。
日本人なら誰でも知っている、世界中に放送している(という噂の)公共放送。
ロック自身もあまり聞かないそのチャンネルを、レヴィのラジオが流しているのはなんだか不思議な気
持ちがした。
『次のリクエストは、東京都在住、匿名希望の女の子、からです。今年の夏は…』
女性の軽快な声が、葉書に書かれているメッセージを読み上げる。
ロック自身は一度も葉書を出したことは無いが、受験勉強や試験勉強をしていた頃にはよくラジオのお
世話になったな、と今は懐かしき学生時代を思い出す。
真夜中一人で勉強していても、誰かが起きていることを感じられる、ちょっとした寂しさを音楽やおしゃ
べりで夜の闇にかき混ぜ消してくれるようで嫌いではなかった。
少し耳を傾けていると、シャワーの音が止まり、タオルで乱暴に髪を拭きながらレヴィが部屋へ戻って
きた。
下着は下だけ。
髪を拭くタオルに見え隠れする乳房が柔らかく揺れる。
ちゃんと身体を拭いてから来いと何度も言っているのに、また足元が水浸しだ。
「何だ?ラジオ?」
「ああ、日本の放送局だよ、コレ」
「…ふぅん」
何で日本語のチャンネルなんて聞いてたの?
と、そんな野暮なことを聞いてしまうのは勿体無い気がした。
どうせ聞いたところでまた「ああでもない、こうでもない」と言い訳をつけて逃げしまうのだ。
口元が緩んでしまう程に自分が喜んでいることに気づいたロックは、手元のタバコを消すことでその気
持ちを隠した。
「トークばっかりだな」
「リクエスト番組なんだよ、聴きたい曲をリクエストするんだ」
「その割には喋ってばっかじゃねーか」
「曲をリクエストするときに葉書にメッセージを書くんだ。それを読んでいるんだよ」
「ふぅん…」
気の無い返事をして、さっそくタバコに火をつける。
「シャワーあびてくるからさ、エアコン入れておいて」
ロックは宛がわれた新しいタオルを持って、シャワールームへ消えていった。
『もうひとり、リクエスト葉書読んじゃいましょう。神奈川県は…』
(何言ってんのかぜんっぜんワカンネェ…)
女の、少しだけ高め声。
ロックの言うように葉書を読んでいるのか、もう違う番組になってしまったのか、日本語の分からないレ
ヴィには区別がつかなかった。
別に日本語を勉強するとか、そんな殊勝な気持ちで聞いていたわけではなかった。
だいたいその必要は全く無い。
ロックは普段、殆ど誰とも英語のみで会話しているし、この街ではロック以外の日本人に会うことは滅
多に無いから、日本語を話したり聞いたりするほんのわずかなタイミングすらない。
そもそもこの街で日本語しか話せないようなニッポンジンがいるはずもなかった。
柔らかいトークが続く。
普段はタイの番組や、地元のジャンキーが趣味でやってる短波を聴く程度。
それが日本語のチャンネルになっていたのは、本当に偶然、たまたま仕事に出る前に聞いていたの
が、日本語の番組だっただけだった。
『他、たくさんの特に女の子たちからお葉書いただきました。それでは、リクエストをお送りしましょう。
曲はやました…』
(あれ、何で日本語の番組なんて聞いてたんだっけ?)
裸のまま、首にタオルをかけて、窓を閉めるためにベッドに上がる。
外はもう雨の予感に暗くなっている。
窓から見下ろした部屋の前の通りも、雨の気配を感じ取ってなのか人気が少ない。
野良犬が急いで走り抜けていくのを見送ると、ラジオから柔らかな日本語の曲が流れ始めた。
趣味じゃないと、ラジオのチューナーを回しかけたその時、
(そうだ、あの日、)
ふと思いだした。
今回の運び屋家業に出る前の晩、セックスの後ちょっとしたことでケンカをした。
ケンカの原因なんて覚えてはいない。
部屋が汚いとか、しつこく胸を触りすぎるとか、いつものちょっとした下らない内容だったのは、三日間
仕事に熱中しお互いそのことを口にすることすら忘れてしまったことからも間違いなかった。
ただ、あの晩は二人ともヒートアップしてしまい、
(ロックを追い出したんだった…)
一人になった部屋で、残っていたビールをあおってベッドに横になった。
静かになった部屋で、どうしてあんなことを言ってしまったのだろうか、いやあれはロックが悪いと自問
自答しているうちに、眠れなくなった。
いつもどおりの汚い部屋で、動く影は何も無い。
壁に貼りっぱなしのポスターはその気配を消して、いつも聞こえてくるはずの通りで騒ぐ男たちの声さえ
も聞こえない夜。
暗闇の中でラジオをつけて、偶然拾ったチャンネルが、日本語の番組だった。
(ちょっと声が似てた)
何を言っているのかは全く分からなかったけれど、曲と曲の合間に聞こえるDJの日本語は、ロックの
声に驚くほど似ていた。
それを聞きながら眠ったあの晩は、深く深く眠れた。
「何だ、まだエアコン入れてなかったの?」
シャワーを終えたロックが部屋に戻ってきた。
丁寧にパンツもシャツも着ていたが、タオルはレヴィと同じように首からかけていた。
しかしレヴィは、ベッドの上に膝立ちで立ったまま、ブラインドを下げようともせずに窓の外を見つめたま
ま動こうともしない。
ロックはそのまま近づき、上から包み込むように抱きしめた。
髪からは自分のと同じ香り。
「さっき流れてた曲ね、夏の終わりの曲なんだよ」
ラジオからは、今はレヴィの理解できない日本語のトークが流れていた。
「夏が終わって思い出になるけど、けして君を忘れないって意味…かな」
「ラブソングか」
「センチメンタルだろ?」
まるで子供をあやすようにつむじにキスを落すと、まるで見計らったように窓の外を雨が降り出した。
カーテンのようなスコールは、この世の全てからこの部屋を隔絶する。
もうこの世界に二人きり。
誰にも邪魔されない世界。
ロックが何度も繰り返しキスを落していると、その唇を押しのけて、腕の中のレヴィがくるりと振り向き、
長い腕をからめるようにしてベッドへ誘う。
体重をかけてベッドに身体を沈められながらも、レヴィは首を少し持ち上げ、自ら唇を重ねてきた。
普段のキスとはあまりに違うお淑やか感触に、余計に気持ちが高ぶりそうになるのを必死で抑える。
こんな風に優しいキスをねだるときは、時間をかけて目いっぱい愛してあげないといけない。
「俺たちには似合わない曲だね」
ロックは優しく笑って、もう一度深く口付けた。
おわり
(´・ω・`)
なんだけど、このままではエロなしなってしまうので、この続きを投下するぜ。
484 :
無題:2008/06/29(日) 00:53:46 ID:MHWbUNiJ
窓を閉めた部屋に聞こえるのは、窓の外の激しい雨音と、エアコンの無機質な作動音。
レヴィは自分の胸の上に甘えるように頭を乗せた男の髪に触れた。
最近下町で切ってきたばかりの髪は、ほんの一房だけ不恰好に伸びている部分があった。
後で切ってやろうと長さを確かめるようにその一房を引っ張ると、ロックはそれを合図にずっと手で触れているだけの乳房の下側に吸い付いた。
少し強めのキス。
赤い印がついてしまうと思ってはいるが、止めるつもりは無かった。
そのキスの場所から舌が一点に向かってチロチロと動き始める。
やがてその感触が乳首に触れようとしたとき、ふと離れ、もう一度舌が先ほどと同じ場所へ戻っていった。
もう片方の乳房は手のひらで優しく同じリズムで揉まれている。
あまりに穏やかな快感に、のぼせることもできずに徐々に羞恥がこみ上げる。
もう一度頂に向かって舌が近づく。
今度はそこまで達してほしい。
そう思って思わずロックの頭を抱える。
「どうしてほしい?」
息が、触れられずとも立ち上がってしまった乳首にかかる。
「いつもみたいに…しろよ、早く」
「だめ」
「つっこんで、終わり…でいいじゃねーか…」
「そういうのはさっきしただろ?今はもっと…」
そっと舌の先が乳首に触れる。
「隅々まで食べたい」
つん、つんと上からつつかれた瞬間、臍の辺りにピリッと電気が通ったかのような感覚が突き抜けた。
今度は舌で弾くように舐めあげる。
最初は優しく、何度も、何度も繰り返し徐々に強くしながら舌が往復するたびに、臍の下が疼いた。
思わず背筋に力が入る。
「腰が動いてるよ」
「うる…さい」
息が上がり始めた。
「吸ってほしいんだ?それとも噛んでほしい?」
返事をしたくないと顔を背け、しかし頭を抱える力を強めると、
「いい子だね」
と言って、ロックはようやく乳首を口に含んだ。
少し吸っては口の中で唾液と一緒に舌でこね回して、優しく噛む。
それを何度か繰り返した後、真っ赤になった乳首から唇を話し、手で愛撫を続けていたもう片方の乳首に吸い付いた。
そちらは乳房全体を手のひらで優しく揉んでいただけだというのに、その感触だけで乳首がぷっくりと立ち上がっていた。
そっちもまたさっきみたいにネチネチと焦らすようにするのだろうかと構えると、ロックの唇はその乳首を吸う力を徐々に強めた。
「あっ」
まるで引っ張るように強く吸い上げられる
「・・あぁっ」
痛い、と声を出す瞬間に、ちゅぱっというをさせてロックの唇が乳首から離れた。
触れられたら痛いほどに、乳首が赤く腫れている。
ロックは仕上げとばかりに両方の乳房を力を込めて掴むと、
「いやらしい色になってるよ」
と、満足げににやりと笑った。
485 :
無題:2008/06/29(日) 00:55:34 ID:MHWbUNiJ
柔らかい乳房から腰のラインに沿って、徐々に手を下へ下ろしていく。
右手をシーツとの隙間に入れ、背筋に指を這わすと、こちらの意図を読み、従うままに背中をこちらに
向けた。
身動きを封じるように覆いかぶさり、柔らかな尻の谷間に既にガチガチに硬くなった自分自身を押し付
ける。
こうしてしまえば二人の間に一ミリの隙間も無い。
「すげぇことになってる…」
「ああ、でももう少しガマンするよ」
「何でだよ…早くしろって…」
「こうしていたいんだよ。たまにはいいだろ?こうやっていちゃいちゃするのも」
「ふざけんな。ピロートークは終わってからするもんだ」
「ピロートーク…って、終わったらすぐ寝るくせに」
「うるせぇ黙れ。ってかさっさとう・ご・け!重いんだよお前」
しかたがないな、と首筋に口付け、身体を起こす。
そして、先ほど乳房にしたのと同じように、口と舌とを使って背骨に沿って這わせていく。
レヴィが腰を震わせた。
美しいライン。
腰を持ち上げ、尻たぶを手で広げると、レヴィは両膝を立ててそれを支えた。
秘密の場所が露になる。
赤くなった襞がめくれ、いやらしく滴る蜜を掬い取る。
「濡れてるよ、すごく」
「黙れって…」
「何だかおとなしいね。そんなに早くほしいの?」
横を向いたレヴィが、こちらをじっと睨み付ける。
いい加減にしろ、とでも言いたげだが、だからと言ってこっちのペースを崩すつもりはなかった。
「ねぇ、レヴィ、もっとお尻上げて」
素直に持ち上げられた腰。
赤い花びらが蜜に濡れているのが丸見えだった。
「いやらしいなぁ、丸見えだよ」
腰を抱えて、蜜壷に舌を押し付けた。
「あぁんっ、…あぁっ」
舌を差込み、出し入れする。
両脇の赤く腫れた淫靡な襞を吸い、片方の手を腰から放して指で軽く引っ張った。
充血した淫らで美しい花壷に指をそっと差し込む。
ズプッ
「あああっ」
もう一本、二本の指を簡単に飲み込んでいく。
指の付け根まで押し進めると、動かしてもいないというのに激しく蜜が滴り落ちた。
「全部入ったよ、レヴィ。全部飲み込んじゃった」
指をゆっくりと引き抜き、もう一度押し込む。
その動きに合わせて、レヴィの唇から声にならない声が零れる。
手が滴り落ちる愛液でビショビショに濡れている。
「あ、や…ロック…やめ…」
息が上がっている。
必死に快楽に耐えている。
「レヴィ、かわいいよ」
「うるさ…い、だめっ…、やめ…もっ」
やめてほしいの?
もっとほしいの?
早くしないとこっちだって持ちそうもない。
そう思いながらも愛液を掻き出すような動きを止めることができずに、何度も何度も徐々に激しく往復さ
せると、急に指を包む襞がうごめき、抱えていた腰から力が抜けた。
486 :
無題:2008/06/29(日) 00:57:27 ID:MHWbUNiJ
「ふぅん、黙ってイッちゃったんだ…」
身を捩ってロックを見ると、困った顔を「作って」さっきまでぐいぐいと突っ込んでいた指を舐めていた。
HENTAI。
おまえは正真正銘のHENTAIだ。
「やめろって言った」
「聞いてない」
「言った!」
「言ってないよ?聞いてない。もっと、ってお願いは聞いたけどね」
この嘘つきヤロウ。
口元が笑ってんだよ!
「んなこと言うかよ!こっちは勝手に指突っ込まれて、ナカ掻き回されて、イヤだからストップかけたって
のに、ふざけんな!」
と、喚いた自分の声が止まると奇妙な沈黙。
ロックの困った顔が、作られたそれから本当に困ったときの表情に変わった。
あれ?何か間違えたっけ?
「イヤだったの?痛くした?」
俯くな俯くな俯くな!
そいうい意味じゃなくて、そうじゃなくて、だから、
「一人で振り回されてバカみたいにアンアン言ってるのがイヤだったんだよ!お前ばっかり楽しそうにし
てて、くやし…」
あれ?また何か間違えたか?
っておいおいおいおい!
こいつベッドの縁に座って、パンツはきやがった。
「………楽しくないなら、本気でノーって言えばいいだろ?いつだってお前のノーは俺のイエスより強い
はずだ。それとも俺がレイプしたとでも言うつもりか?」
「んだよそれ、んだよそれ、あぁ!?んなこと誰が言ってんだよ!」
「お前が言ってるんだよ、「イヤ」で「楽しくない」ってな。俺は嫌がる女をレイプする趣味はないよ」
「何お上品ぶってんだよ!だいたいお前のはしつけーんだよ!ただのファックだろ!?ただのファックで
いいじゃねーか!裸んなって突っ込んで吐き出して、それで終わりでいいじゃねーかよ!」
「俺とのセックスがただのファックだって言うんなら、俺はもう二度とここへは来ない。俺はお前をファック
したいんじゃない。それすら分かっていなかったんなら、こういうことは何の意味も無い。明日からはた
だの同僚だ」
スラックスをはき、ベルトを締め、脱ぎ散らかしたシャツとワイシャツを手に立ち上がる。
「悪かったよ。今後このような間違いをしないように気をつける。じゃ、おやすみ」
背を向けてドアに向かうロックの背中に向けて、ベッドサイドに置いてあったラッキーストライクを投げつ
ける。
見事ストライクしても、この程度じゃ振り向こうともしない。
いつもそうだ。
まるでボタンを掛け間違えたシャツのように、自分の言葉が足りてなかったり、乱暴なもの言いが言葉
を真っ直ぐに受け取るこいつに誤解を与える。
そしてその誤解を解こうとして、また誤解を与える。
それの繰り返し。
いつまでたってもシャツ一枚満足に着れやしない。
「意味が無いって何だよ、間違いって何だよ…あたしとセックスするのは間違いかよ…」
ドアが閉まりきる前にようやく吐き出した言葉。
こんな言い訳はすがりつくみたいでみっともない。
「分かるだろ?分かってるんだろ?あたしは…」
ドアが開いて、ロックが部屋の中へ戻る。
腕を組んで立ってる男はまるで万引きしたあたしをとっ捕まえて、児童福祉センターに預けようとした警
官のようだった。
って、あたしは怒られているガキか?
それとも昼メロのヒロインよろしく、雨の中地べた這いずり回って名前を呼べっていうのかよ。
言いたくない、言いたくないんだよそんな恥ずかしいことは。
「一緒によくなりたいなんて言わせんな」
最後の一言は、殆ど蚊が鳴くような小ささだった。
487 :
無題:2008/06/29(日) 00:59:23 ID:MHWbUNiJ
ケンカするほど仲がいいと言うけれど、それはお互いが人間の場合に限るんじゃないだろうか。
人間だと思っていたこの女は時々山猫(ウミネコでは鳥になっちまう)に化けて、引っ掻いては爪が痛い
と泣き喚く。
可愛いとは、思うけれど、正直時々堪らない。
「俺が謝ったほうがいい?それともお前が謝る?」
「ごめん…」
そして今度は仔猫に化けて、この有様だ。
「気持ちよくないの?」
頭を横に振る。
「楽しくないの?」
振り続ける。
「ファックだと思う?」
首、痛くならない?
「じゃあちゃんと言ってよ、レヴィ」
ベッドに座り、肩に手を回して抱き寄せると、本当に素直に身を任せてきた。
素直なときも、素直じゃない部分も好きだし、二丁拳銃振り回してガンファイトこなす彼女を美しいと思う
のも、体の上で快楽に溺れている姿を美しいと思うのも、全て真実。
だが、二人きりの時間ぐらいはこんな感じにいつも素直でいてほしいと思ってしまうのは贅沢なのだろう
か。
(ツッこんでる最中は素直なのにな…。ってずっと入れっぱなしってわけにもいかないし)
「何言えばいいんだよ」
「俺とのセックスをどう思っているか、かな」
反抗的な目。
うっすらと染められた頬。
可愛い。
可愛すぎる。
どうせこれ以上何をしたってマトモな返事は戻ってこないのだから、と、ここは一度引いて、別の手段で
素直にさせる方法を選ぶことにした。
両手で頬を優しく包み、口付ける。
「第二ラウンド、…第三ラウンドかな?はじめよっか、レヴィ」
488 :
無題:2008/06/29(日) 01:00:33 ID:MHWbUNiJ
「ねぇ…レヴィ…気持ちいい?」
あたしの上で鼻息荒く、犬みたいにハァハァ言いながら突っ込んでるバカが、バカなことを聞いてきた。
気持ちよくなかったら、どうしてあたしがアンアン言ってると思ってんだよ、バカだこいつ。
「ねぇ、気持ちイイって…言ってよレヴィ」
可愛いハニーのおねだりに、口から出るのをどうにかマトモな言葉にしようと腹に力を込めるが、全く無
駄な努力だった。
言葉になんか、なりゃしない。
その上腹に力を込めたせいで、締まったアソコに突っ込むロックの動きが一瞬止まる。
汗かいて、目を閉じて、イクのをガマンしている顔だ。
前に一度、「ソーロー」って言って怒らせたことがあった。
意味は分からなかったけど、ローワンの店のアジア系の女から聞いたってエダが言ってた。
萎えさせるには一番だって。
案の定萎えて、その上涙目になったっけ。
それからコイツは時々、こんな風にガマンして、耐えるようになった。
かわいいな。
ホントこいつ、すげぇかわいい。
また動き出すロックの腰に足を絡めて、もっと奥まで突っ込めと足に力を込める。
なんだか呼吸ばかりが荒くなって、頭の中が真っ白になってくる。
どうしよう、言ってみようか、意味は分からないけれど。
この気持ちよさに頭がバカになる前に。
「んっ、ロック、…なぁ、ロック…」
「何、レヴィ?」
言ってみた。
「スキ」
こいつ、中に出しやがった…。
489 :
無題:
「くそったれ、くそったれ、くそったれ」
「ごめん、ホントごめん」
「おまえさっき言ったよな、黙ってイッたとか何とか。それであたしを責めたのにそれが今のは何だよ、
何もなしに勝手に出しやがってくそったれ」
乱暴な言葉をいくら投げつけられても、にやけた顔が元に戻らない。
反省しなければならないことは分かっている。
っていうか、レヴィは本気で怒っている。
分かってる。
でも、
「嬉しいんだ、レヴィ」
確かにさっきのは日本語だった。
英語でもセックスのときですら口にしてくれない「好き」という言葉。
それを日本語で囁いてくれたのが本当に嬉しかった。
一緒に日本へ行った時でさえ、全く興味を示さなかった日本語で。
俺の母国語で。
俺へだけの言葉で。
「好き」と言ってくれた。
どこで聞いてきたんだよまったく。
どうしてくれるんだ、顔がいつまで立っても元に戻らない。
「俺もだよ。「スキ」だよ、レヴィ。心から」
「意味わかんねーよ、どういう意味だよ」
……………え?
「エダがローワンの店の女から聞いたんだってよ。日本語なんだろ?これ」
え?
「ニホンジンの男を興奮させるには一番だって。意味教えろよ、どういう意味だよ」
はい?
「おまえ…意味知らないで言ったの?」
「知らねーよ、ニホンゴなんて。でも喜んだってことは悪い意味じゃねーんだろ?」
落された。
高いところまで登らされて思いっきり落された!
「お前はだいたいデリカシーがないんだよ!ソーローとか、変なニホンゴばっかり覚えやがって」
「何だよ何でいきなり怒んだよ!意味わかんねーよ」
「ニホンジンの男はナイーヴなんだよ!少しは気を使え!」
「あぁ!?ってか、うぜぇよおまえ。さっさと抜け!あっ…」
絶対もう一回言わせてやる。
「ばか、でかくすんな!」
もう一回言わせるまで絶対抜くもんか!