【ずるいぜ】ブラックラグーンVOL.8【まったく】
新スレ乙!
スレたて乙
このスレも、神作が沢山投下されますように
前スレも無事1000いきました、と。
>>1乙
南米組物、キリのいいとこまで書いたんだが、スレスト怖いんで、20レス過ぎまで投下は控える
前スレのロクレヴィ学パロの続きwktk
10 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:11:57 ID:bNmEuzgj
1はバンダイのプラモデル
>>1さん乙です。
>>6さんの南米モノが読みたいので犬も喰わないような話で20前後までちゃっちゃと進めてしまうことにします。
若干オリキャラありなので嫌な方はスルー推奨。
エロは若干あるが色気は無い。てか皆無。
「死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 死ね。 お前なんか死んじまえ。」
「…………………………………レヴィ――あのさ。」
「口を開くな!!口からクソを垂れ流すな、黙ってろ!!!……ぁあ?何だその目は。畜生の分際で何か言いてぇのか?
生憎とてめぇの口が並べる御託を有難がって頂戴するような可愛げなんかこれっぽっちも持ち合わせちゃいねぇんだよ、バ〜カ!
ぉう?おぅおぅ、なぁんだってんだよ、そのため息はよぉ。死ぬか?殺して差し上げましょうか!???
ああ!そうだ。折角バンコクにいるんだ、シリラートのミュージアムに並ぶってのもオツなもんだぜ?
さぁさぁ皆様!どうぞどうぞご覧下さい!こちら日本人の大海賊ロック様ですってな!!傑作だぜ!?」
首都バンコクの路上。トゥクトゥクの車内。
針の筵(むしろ)のような空気の中、レヴィの口汚い罵倒を一身に受けロックは諦めにも似たため息を押し殺していた。
カンボジア国境の街への銃器輸送の依頼を終え、3日後に別の依頼品を受領するべく昨夜2人は陸路でバンコク入りした。
(違法船であるラグーン号のバンコクの港への入港は難しいのだ)
受領次第、近郊の田舎町の船着場でダッチやベニーと落ち合う手筈となっており、それまではほぼフリー。
そんなわけで、久々の都会で、何か珍しいものでもないかとマーケットをあれこれ物色していたワケである。
バンコク市内を移動するにあたり、いつもの調子で両脇にカトラスをぶら下げて歩くワケにも行かないレヴィのため、ガータータイプの
ガンホルダーとロングスカートを用意し、それを身に着けていた。
だが、マーケットを歩くロックの目に、一枚のスカートが留まる。「こっちの方がいざと言う時に動きやすい」だの言い包めて購入。
その場で着替えさせた。
そうなると、男のエゴか哀しい性か。スカートに合うキャミソールに、アクセサリーその他諸々。
店員の意見も交えながら、要求は増えていき、レヴィは着せ替え人形よろしく、彼好みの服装へとみるみる変貌していく。
レヴィもブツブツと悪態をつきながらも基本的には「自分の懐が痛まないなら」と、日本での時のように彼の好きにさせていた。
普段の服装にしても、単に「動き易いから」、というだけで特に拘りがあるわけではないのだ。
さて、夕刻になりあとは食事をして宿に戻ろうかという時分。
小用に向かったレヴィを河畔で涼みながら待つロックの耳に、久しく聞いていない母国語が飛び込む。
「緑郎?緑郎でしょ!!」
捨てて久しいとは言え、忘れる筈もない自分の本名。
「…!??」
振り返ると、日本人らしき女が近寄って来る(タイでやたらと脳天気に着飾って観光しているのなどほぼ間違い無く日本人だ)。
「ちょっと、やだぁ。久しぶり!何コレすっごい偶然!そんなカッコってことは仕事?元気にしてるの??」
近くで顔を見て思い出す。
彼が高校時代に半年間だけ付き合っていた女性だった。
内心面倒に思いながらも適当に相槌を打つ。
「緑郎ったら同窓会にも来ないじゃない?旭日重工に就職したって聞いたけど?やっぱり忙しいの?」
彼女に別の想い人が出来て、二股。そのまま自然消滅。他に特筆するならば。
―――彼にとって初めての女性でもあった。
「すごいよね、旭日なんて大手じゃない?もしかして世界中飛び回ったりなんかしてるワケ??」
卒業後は連絡を取ることも、顔を合わせることも無かった。そんなヒト。
「………………旭日は辞めたんだ。ここにいるのは、仕事だけどね」
余所行きの笑顔で答える。
「え?何で?勿体無い!旭日なんてエリートサラリーマンじゃないの!もっといい仕事でもあったの?」
詮索無用のロアナプラの流儀に慣れ親しんでいるためか、そんな世間話の範疇の好奇心にすら少し苛々して下に目を逸らす。
目に入るのはワイン色の透けるコットンを重ねたふんわりしたスカート。両サイドにはギャザー。裾にはビーズと刺繍。
彼がレヴィに買い与えたものと、よく似ている。
「ねぇ、まだ仕事?せっかくなんだし食事にでも行かない?友達にも紹介する」
彼女はロックの腕に自らのそれを絡ませて誘う。
ああ、連休を利用し友人と旅行に来ているとか言っていたな…。
興味も無く聞き流していたことを思い出す。
「いや、悪いけどまだ用事があるから…」
レヴィとはぐれるわけにはいかない彼は、この場を離れられない。
(早く何処かへ行け!)
そう念じながら彼女の知る「人がよく、押しに弱い岡島緑郎」そのままにやんわりと断りを入れる。
「えー。1時間位いいじゃない!久しぶりなんだし」
腕に彼女の薄着の胸が押し付けられる。
そろそろレヴィが戻ってくる。
「人と会う約束をしてるんだ」
腕を振りほどいて改めて断る。
再度彼女を見ると、キャミソールも同系統の色。
ああ、確かこの色は店員に薦められた。きっとこういうコーディネートが流行なのだろう。
こんなに似ているのに、何故彼女に声を掛けられた時点で服装の類似に気づかなかったのか。
上の空で彼はそんなどうでもいいことを考えていた。
目の前の女のグロスまみれの唇は、今は関西に住んでいる」とか「連絡先を教えて」とか、しきりに動き続ける。
いい加減に迷惑であることを伝えるべく顔を上げた彼の眼に入ったのは、先程から気に掛けていたレヴィの姿。
その顔に、怒りが浮かんでいるのなら、まだいい。
いや、全く良くは無いが、極めて健全と言える。だがしかし。
今の彼女は怖い位の無表情。
死んだ魚のような、目。
目が合った瞬間、彼女の右手が薄手のスカート越しに銃を握り締める。
銃を握る手は、震えていた。
彼はそんなレヴィから目を逸らすことが出来ない。
そして気づいた。どうして、服装に気づかなかったのかを。
喋り続ける目の前の女を無視してレヴィに向かって足を進める。
自らを全く眼中に入れないその態度に「ちょっと!何よ、ろくろう???」という苦情の声が耳に入る。
そして、悪いことに女は後を追ってきた。
(………面倒だ。)
「 う る さ い ・・・・・・ だ ま れ 。」
出来うる限りの冷たい声と目線をくれてやる。
彼とて暗黒街でただぼんやりとレヴィに守られているだけではない。
平和ボケした日本人を威嚇し、黙らせる程度の殺気を醸す。そんなはったりのような処世術は海賊稼業の中自然と身に着けている。
普段、恫喝はレヴィの仕事であるため、銃を持たない彼がその手段を用いるなんてまず無いのだが。
女は一瞬で変わった空気にたじろぎ、立ち竦む。
彼女の知る彼は、いつも優柔不断な笑みを浮かた人畜無害なお人よしであるからして、今のようにドスを利かせて凄まれるなど
想像出来よう筈もない。
きっと彼女の帰国後、あること無いこと噂になるのだろう。家族の耳にも入るかもしれない。
そう考えるも、今更知ったことではなかった。
レヴィの眼前で立ち止まる。銃を握り締め震える彼女の視点も挙動も変化しない。
そのまま震える右手を手に取り、一度両手で握り締めてから一言。
「お帰り。」
反応は、無い。
「腹減らないか?折角だからいいモノでも食って帰ろう?」
努めていつも通りを装う。
「川を渡った所に美味いイタリア料理の店があるらしいよ、ピザ好きだろ?」
彼は彼女の手を引き歩き出した。
「…いらねぇ、一人で勝手に食って来いよ。帰る」
彼女は彼の手を振りほどき一人歩き出す。
彼はそんな彼女の態度も何処吹く風で追いかける。
「着いて来んな、この豚野郎」
先ほど彼が日本人の女にくれてやったよりも更に冷ややかに凄み、睨み付けるレヴィ。
だが、この期に及んでそれに怯むようならば彼もとっくに日本へと尻尾を巻いて帰っている。全く意に介さず隣で足を進めた。
「一人で食ってもつまらない。一緒に食いに行こう」
「………………。」
何も言わずに殺気を強める彼女の歩調が速まる。
当然のことながら、彼の歩調も速くなる。どうやら何が何でも分かれて行動する気はないようだ。
尚も一人喋り続けるロックを無視し、レヴィは大股で大通りを目指す。
―――レヴィの心に一瞬、「また裏切られるのか」という恐怖は浮かんだ。
両親や仲間。信頼していた人に裏切られるなど、N.Y.では日常だったから。
しかし。
一方で彼の迷惑そうな態度にも気づいていた。
離れたところにいたし、日本語だったので何を話していたかなんて解らない。
彼のことを「ロクロー」と呼び腕を絡ませるなど、やけに親しげにしていたので、それなりの関係だったのかもしれないと
勘づいてはいるが、過去を詮索しても意味はない。
そして。彼は女を振り切って彼女の元へ戻って来た。
だから。彼女のそんな恐怖は本当に一瞬だった。
気に入らないのは、彼女が彼に買い与えられた服。
薄い柔らかな生地をふんだんに使い、刺繍とビーズがあしらわれた、女らしい清楚なデザイン。
似たようなデザインの服を着た人間がすれ違うなど、大量生産されている定番デザインではよくあることだ。
ましてやタイはそういった商品の主要生産国だ。マーケットの向こう10件で同じ商品が並ぶこともよくあること。
だから、誰が同じ服を着ていようと、そんなの気にしても詮無きこと。
それなのに、ワケもわからず酷く苛々した。
辺りはそろそろ夜。
ネオンが光り出し、道端では屋台の準備が始まりだした。
売春宿の客引きが怪しげな日本語で話しかけてくる。
コンビニ前の地面に直に座り込んで酒盛りを始める若者達。ジャスミンのブーケを手に観光客を練り歩くホームレスの幼い少年。
レヴィにぶつかられた男が、中指を立てて後ろから何か叫ぶ。
そんな、人々で溢れかえる雑踏を早足ですり抜けて二人は大通りに辿りついた。
高速で車が行きかうそこを、そのまま信号無視して渡ったレヴィは、反対車線で雇ったトゥクトゥクドライバーに行き先を告げる。
その隣に、信号を渡って追いついたロックが当然の如く乗り込む。
「……誰の許しを得て乗ってんだよ、さっさと降りろ、カス」
「二人一緒に移動した方が安上がりだろ。どうせ行き先は同じなんだ」
「行き先が同じで安上がりなら、殺る気満々のテロリストや、ヤる気満々のゲイの車にも乗り込むってか?」
「………ゲイって…どこからそんな発想が出てくるんだよ…。第一、元々一緒に行動してたワケだしさぁ」
「はっ。だから何だってんだよ、アタシは今アンタのツラなんざ見たくねぇ。あんたが降りねぇならアタシが降りるだけだ」
「…レヴィ。いい加減可愛げがないぞ。」
「…っ!面白くもねぇ冗談だ、ロック。アタシに可愛げなんてモンが備わってたコトなんざ過去一度だって無ぇんだよ、寝言は寝て言え。
……ドライバー、止まってくれ」
そう言ってトゥクトゥクを止め、降りようとするレヴィの腕をロックは掴んで座席に引き戻す。
「ああ、気にしないで。目的地まで頼むよ」
片言のタイ語でドライバーに伝える。
「てめぇ、いてぇんだよ!離せ!いつまでもふざけたことやってっと、そのどてっ腹にケツの穴拵えることになるぞ」
「レヴィ。まずは話をしよう。彼女は―――」
「ああああああああああ、うるせぇ。んなモン誰も聞いちゃいねぇ、興味もねぇ!!死ね!死ね!」
そして……至る、冒頭。
レヴィはロックに喋らせるつもりは無いらしい。
それならば、彼女の気が済むまで罵倒されるしかないのだろう。ロックは諦めた。
何より、こうして怒りをぶつけてくる分、先程より余程健全だ。
彼女はウルトラ短気なキレ易い性質ではあるが、その分済んだことをいつまでも引きずるタイプでもない。
まずは沸騰させ切ってしまうのが一番無難だ。限界まで熱くなってしまえばあとは冷めるだけなのだから。
自分の命と堪忍袋の心配は…危機に見舞われた時にでもすればいい。
渋滞の街の中、開放的なトゥクトゥクでの会話は周りに筒抜け。
開け放たれたバスの窓から、立ち並ぶ屋台から、二人乗りのバイクから、雑踏から、好奇の目線が向けられる。
まだ暑さの残るバンコクの夜空に、アメリカ訛りの口汚いスラングが響き渡る…。
好奇の目線に耐えながら走ること1時間弱。目的地である宿の前に到着。
ロックがドライバーに礼を言うと、彼は心底同情した眼でロックを一瞥し、「Good luck」と片言の英語で言い残し去って行った。
受付でさっさと鍵を受け取ったレヴィを追って、急いで宿の階段を上ると、ドアは閉まる寸前。
尚、余談だがダッチから一応二部屋分の経費は受け取ってはいる。
だが「どうせ同じ部屋で呑んだくれて寝るのだからその分旨い酒でも飲もう」と、部屋はツイン一部屋しか取っていない。
つまりは彼女に部屋に入れて貰わないことには、彼は寝床すら無い。
ロックは慌てて足を滑り込ませ…。
そして、ドアと壁に思いっきり挟まれる、革靴に包まれた彼の足。
「いったぁっ!レヴィ!足痛い!痛い!開けてくれ」
「ぅるせぇ、てめぇが好き好んで挟まれたんだろうがよ、痛けりゃ抜きな、アホんだら」
部屋の内と外。両方から押される安作りのドア。
「こんなにがっちり挟まれたら抜けるものも抜けないよ!開けてくれ!」
「知るか!そんなに抜きたきゃ足に鉛玉くれてやろうか、ズッタズッタに砕けるまで何発でもなぁっっ!!!!」
一層の力を掛けるレヴィ。体重は劣るが腰を入れて押せる分だけ若干彼女が有利である。
「待って!ホント、ヤバいってぇえええぇぇぁぁぁぁあああああああ あ あ あ!!!」
流石に尋常ではない彼の悲鳴に、一瞬レヴィの力が緩む。その隙をついてロックは一気に体重を掛け部屋の中へと進入した。
「なっ…てめっ!!きったね!なに古典的なことしてんだよ」
「レヴィ。そろそろ話をしよう。あのな、彼女はハイスクールの頃の同級生だ。短い期間だが付き合ってもいたけれども、それだけで――」
「さっきも言ったはずだぜ、ロック。そんなコト聞いちゃいないし興味も――」
そう彼の言葉を遮って言う彼女を更に遮ってロックは低い声で言葉を重ねる
「レヴィ。俺が黙ってればいつまでもグダグダ五月蝿ぇ…。いいから黙って聞けよ。」
「…っ!!!!」
「彼女とは浅からない関係があった、それは認める。けどそんなの過去の話であって今ここで蒸し返す気は更々無い。
……そんなコト…お前だって解ってる筈だ」
「はっ、とんだお笑いだな。そんな下らねぇコトで腹を立てるように見られてたってか?ナメんのもいい加減にしやがれクソジャップ。」
彼女はガタンと音を立てて椅子に座る。
「…じゃあ、その服か。そんなの単なる偶然だってことが解らないお前じゃないだろ、流行りの服を着ればよくあることだ」
「ぁ ぁ あ あ あ あ!?お前大概にしねぇと本当に黙らすぞ、んなワケあるか、どこまでアタシを安く見やがる、胸糞わりぃ!!!
ああ、ああ、ああ、ああ!ああ!!ああ!!!がっかりだ!本当にがっかりだよロック!!もう喋るな、しゃ・べ・る・な!!」
ロックは自分の中で何かがプツンと切れる音を聞いた。
「いい加減にしろよ…っ!!」
壁を思う様叩きつける。
突然の剣幕に硬直するレヴィ。
「今まで俺がお前のコトを安く見たコトがあったか!?言いたいコトがあるなら言えばいいだろ」
一歩。更に一歩。彼女に近づく。狭い安宿。既に彼女を威圧し、見下ろす位置だ。
「俺にお前の考えてることが仔細解るワケねぇ!前にも言ったがなぁ、俺はお前じゃないんだ!!…何度も言わせんなっ…!!!」
彼女の座る椅子の脚を力任せに蹴りつけ怒鳴り散らす。
「お前の方こそ、こっちが何も言わねぇのをいいことにワケも言わずに男に当り散らしてよぉ」
彼は彼女の髪を鷲掴み、力任せに後ろへ引く
そして、強制的に上を向く形となった彼女の顔を見下ろし嘲るように言葉を重ねる。
「ワケを聞いたら『アタシのコト何も解ってない!』ってか!?」
わざとシナを作って女々しさを印象付ける言い方をした。
彼女の顔は引き攣っている。頬の肉がピクピクと痙攣し、顔面は蒼白。
髪を乱暴に引き摺り、側のベッドへ引き倒す。
彼女の眼に薄く涙が浮かぶのをこれ見よがしに鼻で笑い、馬乗りになって圧し掛かり、触れ合うギリギリまで顔を近づける。
そして…低い声で言い聞かせるように、ゆっくりと吐き捨てた。
「ああ、つまらねぇ…ほんとうにつまらねぇ…!!笑わせんな、安い女にも程がある…!!」
再度力任せ且つ乱暴に彼女の髪を左右に振り回し、彼女の頭をマットに叩きつける。
暫く天井を眺めた後、彼は自身の髪を苛立たしげに何度も何度も掻き毟ると
「ああああああクソっ!!何だってんだ!!面白くねぇ!畜生!!畜生!!」
と何やら日本語でブツブツと吐き捨て、彼女に一瞥もくれずに外に出るべく歩き出す。
彼がドアノブに手をかけようとすると…。
銃声。
耳のすぐ横を何かが超高速で通過する気配。目の前の扉に突如現れた弾痕。
立ち込める硝煙の香り。
振り返ると髪を乱れさせたレヴィが銃を右手にベッドに腰掛け項垂れている。
彼女の混乱を示すように、投げ出された右手の、引き金に掛かったままの指が震えていた。
自らを隠すように左手で覆われた顔からは嗚咽を堪えるような、引き攣ったような、明らかに尋常ではない痛々しい吐息。
一気に頭が冴える。
(俺は一体何をした!?)
彼は冷静に直前の出来事を反芻し、そして後悔する。
彼とて決して…彼女を追い詰めたかったわけではない。
「………あ………その………レヴィ。ごめん。………俺もかなり熱くなって…いくら何でもやり過ぎた…謝るよ。」
ロックは再度彼女に向き直り、静かに近づく。
床に膝をつき、項垂れて低くなった頭を肩に抱き寄せる。
銃は…これが彼女の最後の砦なのだとしたら、今はまだ取り上げない方がいいのだろう。
「お互い…そう……もう少しだけクールにいこう。反省すべきは反省しよう。」
(静かに)
(こいつにだけ聞こえるように)
(どんなにもどかしくても声を荒げてはいけない)
そう言い聞かせる。
(…でも…)
「…でもさ、黙ってても…解らないんだ」
そう呟いて。
ロックは苦しげに呼吸するレヴィの顔を覆う左手を握ると自らの肩に乗せた頭を一層強く押し付るように彼女の肩を抱きしめる。
――気がついたら発砲していた。
何が起きたか解らない。ただ、言葉に出来ない苛立ちの正体を問い詰められて酷く混乱したのは確か。
頭では無意味だと理解している子供じみた不安。焦燥感。
頭で無意味と理解しているからこそ、馬鹿馬鹿しくて言語化しにくい。
そこから派生する新たな苛立ち。
それら全てを目の前の男に八つ当たりしていただけ。
(一番安っぽいのはアタシだってのに…。ガキかよ、クソくだらネェ…)
そして…その結果によるところの彼の剣幕に、彼女は酷く怯えざるを得ないこととなってしまった。
一度手にした、この男の「隣」という居場所を失うかもしれない、そんな恐怖。
自分自身の死を怖いと思ったことなど、彼女には久しく無い。
なのに、この男を失うのはとてつもなく怖いのだ。それが死であれ心の離別であれ。
彼の発作的な暴力を受けながら、そんな離別を予感した。
その瞬間、昂ぶり、あふれ出る様々な情動。
溢れ出そうな涙と嗚咽を堪えようと何度も深呼吸し、軽い過換気に陥る。
それを治めるべく必死になっていると、生理的なものか心理的なものかもわからぬ涙が止まらない。
どうすればいいのか解らない。
(出て行んじゃねぇよ、イヤだ。イヤだ。イヤだ。アタシが悪かったんだ、だから…行かないでロック)
声に出そうとしても、息が出来ない。
こんなに叫んでいるのに、彼には届かない。
―――彼との間にある壁を壊したかったのかもしれない。
とにかく彼女は無意識のうちに彼に向け引き金を引き、そのことによって更にパニックに陥った。
レヴィは自らがどうするべきなのか解らない。
(解らない。 解らない。 解らない。 解らない。 解らないんだ、ロック――――――)
―――いつの間にか、先程から必死に名前を呼び続けていた男に抱きしめられていた。
涙腺は勿論、呼吸困難の鼻と口からもだらしなく体液が流れ出て、目の前のシャツを汚している。
(…いつからアタシは男の腕の中で泣きじゃくるような無様な女になった?…最悪だ。)
朦朧とした意識の片隅で考える。
(コイツがキレんのも当然だってのに、正論言われて逆ギレかよ、ダセェ…。)
それでも、安心感からか、顔を押し付けれれているための二酸化炭素濃度の上昇からか、呼吸は出来るようになっていた。
鼻をすすり上げると鼻腔にロックの体臭が広がる。
昔奪われた行きずりの男、金のために身体を開いた男、身体目当てに寄ってくる蛆虫共。
他人の体臭なんて、不快なだけで、時に吐き気さえ覚えるものでしかないのに。
口には出さないが、ダッチやベニーのそれだって、正直得意ではない。
(なのに、こいつのだけ、どうしてこんなに安心するのだろう。)
先程力任せに引き回された髪に酷く絡まった髪留めが丁寧に解かれ、そこを慈しむように撫でられる。
(いいや、理由なんかどうだっていい…)
レヴィは静かに瞳を閉じた。
「レヴィ…何か言ってくれよ…」
興奮状態が落ち着いた後も沈黙を続けるレヴィに。
独り言のように。
懇願するように。
ロックが呟く。
その声に応えるように、自分の左手を握る彼の手に指を絡ませる。
目立った傷も無い、自分より綺麗な手。だけど、自分よりずっと大きい。
背中に縋り付きたくて。
右手を上げると、重いものが床に落ちる気配。
(ああ、まだカトラスを握り締めてたんだ…。)
ロックのシャツの背中側を、皺になるほど握り締めながら一つだけ深呼吸した。
「ごめん」
レヴィの耳元に謝罪の言葉。
いよいよ自分が口を開かなくてはこの状況は動かない。
ロックの腕の中、レヴィは伝えるべき言葉を必死に練り上げる。
でも、声にしようとすると喉元で張付いて止まってしまうのだ。
そんなことを何度か繰り返し…
「………ゎ…か…んね…んだよ」
やっとのことで、声を絞りだす。
「…ん?なに?」
あまりにも小さなその声に、ロックが聞きなおした。
「…はっきりとは…わかん…ねぇ。……お前が言ってるようなコトでは…多分これと言って怒ってねぇ。流石に…愉快ではねぇけどよ…。
きっと…もっと馬鹿馬鹿しくってガキみてぇな、呆れるくらいに安っぽい理由だったんだ。」
「うん」
ロックはレヴィの顔を見ようと身体を離そうとするも、彼女はいっそう強く彼の身体に顔を押し付け抵抗する。
「…………………お前、あいつのコト好きだったのか?」
「え!?ぁ……う〜ん…どうなんだろ。当時は当時なりに好きだったんだろうとは思うけどね。
ただ…今みたいに不機嫌なお姫様に跪いて無様に許しを請おうと思ったことはないかな」
そんな彼の軽口に少しだけ気が楽になる気がした。
「何だそれ」
クスっと、彼女が本当にほんの少しだけ笑う気配。ああ、良かった。彼は心からそう思う。
彼女の言葉は続く。
「あーでも。多分……そういうコトじゃなくて、だな……そうだな…言い方を変える…とよ。
ああいう…女らしく着飾ってるようなのが好きなのか?…………お前が買った服が似合うような……」
「……ぁぁ……そう…嫌い、ではないね。というか、まぁ……好きだからあれこれ買ったんだろうけど……」
彼にも何となくながら彼女の言わんとすることが読めて来る。
「でも、アタシには…こういうのは似合わないんだよ」
「似合ってないってコトは無いと思う…。可愛いし」
ロックは彼女の髪を弄び、口付ける。
「可愛くねぇよ、こんな清楚でお上品なお洋服。」
「卑下するなよ。レヴィは十分可愛い。……それにこれは言う程清楚でも上品でもない」
事実、この類のスカートは日本では雑貨屋に安価で大量に並ぶ定番商品で、決してレヴィが言うような大層なものではない。
「そう言うけどよ、普段アタシはこんなの着ねぇ…。お前アタシにこれが似合う女になることを望まなかったか?
無意識に昔の女の面影やお前の求める理想の女ってヤツを、似合いもしない服に託してアタシに求めなかったか?
………お笑いだろ、お前に買って貰った服が、お前の昔の女の方がお似合いだったってだけで…八つ当たりしたんだ…多分だけどな。」
レヴィは言いながら、あまりの馬鹿馬鹿しさに改めて泣けてきて、鼻をすする。
一方ロックも、そんな子供染みた事情で小一時間罵倒され続けていたことに心底泣けてきたが、それと同時にそんな彼女が可愛くて仕方ない。
(俺、もう駄目だ、末期だ…。)
そう諦めにも似た気持ちを胸に、どうしようも無く可愛い小悪魔を腕に抱き、小汚い天井を見上げる。
やり場のない微妙な気持ちを抱きながら言葉をかける。
「…比べた所で仕方ないよ。俺はレヴィにあそこまでの厚い化粧も、頭の痛くなるような香水も、派手にデコレーションされた爪も望んじゃいない。」
「…………………………。」
改めてそう言われると、何だか女扱いされていないようで心中複雑になるレヴィ。
「さっき彼女と会った時、服にはすぐに気付かなかったんだ。一言で言えば『どうでもいい』んだよ、他人がどんなナリをしていようと」
「そんなモンか?」
「そんなモンだよ。まぁ、レヴィが何着てようとそれもそれで『どうでもいい』んだけどね」
「……は?」
レヴィは思わず気の抜けた疑問符を投げかける。
「何を着ててもレヴィが隣にいればそれでいい。たださ、一緒にいる時間も大事だから、その時間がもっと楽しければそれにこしたことはないだろ。
普段と気分や雰囲気が違えばそれだけで楽しいってこと、無い?そのための小道具でしかないんだよ。
それに場所やモノってさ、記憶を焼き付けたり、引き出したりするのに役立つんだ。一年後この服を見れば、きっと『下らないケンカしたな』って思い出す」
「…まぁ、そうだろうな…思い出したくもねぇけどよ」
「きっとそれだって時間が経てば懐かしいよ。それにさ、レヴィは似合わないっていうけど十分可愛い。改めて望むまでも無く似合ってる。
似合わないと思う服なんか最初からプレゼントしない。今回は、何かややこしいことになっちまったけど…」
「………。」
さっきから絡ませていたレヴィの左手がロックの首に廻され、ぎゅっとしがみついてくる。
「まぁ、レヴィが普段と違って見えることを望まないわけじゃなかったし、レヴィが言うのもあながち間違いでは無いんだろうけどね」
「……」
「なぁ、レヴィ。顔上げろよ。」
「…やだ。見れたモンじゃねぇ…」
そう言ってレヴィはふるふると首を横に振る
「…じゃあずっとこのままか?俺そろそろ膝限界なんだけど……この床固いんだ。そろそろ許してくれないか?」
そう言って身体を離す剥がすと俯いたままの彼女。
よっこらせ、と日本語で呟きながら立ち上がり、隣に腰掛ける。
腰を落ち着けるなり
「……悪かった…。」
ぽつりと、呟くレヴィの声。
聞こえていたが、このままでは何となく割が合わない。自分のしたコトは棚に上げロックは敢えて聞きなおす。
「え?なに?」
「…悪かった。」
「聞こえないよ?」
「アタシが悪かったって言ってんだろ!!!このスカタン!!お前の顔についてるこの2つのお耳はお飾りか!?ぁあ??」
顔を上げて声を張り上げるレヴィ。
ロックの顔を見ると、何かに気付いた様子の彼は真顔でゴソゴソとスラックスの尻ポケットを漁り…。
「あのさ、これ…取り敢えず…使いなよ」
そう言ってティッシュを渡して来る。
あ、これ日本に行った時に「タダだから」と、道ばたの若い男から大量にかっぱらってきたヤツだ。
やっぱ日本はすっげーなーと思ったモンだぜ…。
などと、明らかにどうでもいいことを思い出しながら、目の前のそれを奪い取り、ロックに背を向け鼻をかむ。
「だからイヤだって……最悪だ。嫌いだ、お前なんか嫌いだ…ああ、もう…だせぇ…最悪だ…」
耳まで真っ赤にし、鼻をすすりながら顔を擦り上げるレヴィ。ブツブツと何かを呟いている。
そんなレヴィを後ろから抱きすくめ
「……なぁ、レヴィ。今日のことはこれでチャラ、お終いだ。異存は?」
耳元で囁く。
「あんたがそれでいいなら、アタシに異存なんてモンは無ぇよ」
レヴィは尚もティッシュで鼻を擦りながら承諾する。
「O.K.…O.K.…じゃあ、レヴィ、次だ。男が服をプレゼントする時ってさ―――」
「『ベッドの上で脱がせたい』ってか?オヤジか??お前さっきから随分と古典的だな」
やれやれとため息交じりに返す。
「…それが真理だからだよ。」
「真理?そんな大層なモンかよ、ただのスケベ野郎の下心だ。どうせあの女にも同じようなコト言ってコマしてたんだろ?」
ニタリ笑って顔だけ振り返り「ぉぃ、どうなんだよ」と詰問するレヴィ。
「って…!!いやいやいや、あの頃はまだ…そんな…ねぇ?」
ロックは思いがけない問いに狼狽し、言葉を濁す。
「ふんふん…エテ公みてぇに目の前の穴に突っ込むコトしか考えてませんでしたってか??」
レヴィはいかにも楽しげに彼の膝に跨り、耳たぶを噛む。
「…ぃっ…あー……その……若かったんだ……」
彼も特に否定もせずに目の前の首筋に唇を寄せ、軽く食む。
「…んっ……あーそうかそうか、…チェリーだったか…」
「………っ……悪いかよ…日本では平均的なハズだ……ていうか、レヴィ、さっき今日のコトはチャラって…」
「ぁあ?そりゃ、アタシの八つ当たりとお前のDVのコトだろうが」
そんなことを言っているうちに、首筋ではロックの舌が這い、キャミソールとスカートの裾からはそれぞれ腕が
潜り込み、肌を直にまさぐっている。
「それで?他に質問は?」
「あ?んー…そうだな、…いや、いい。やめとく」
「そう?…じゃあさ、そろそろ脱がせてもいい?」
彼女の髪に頬ずりし、甘えるようにねだる。
「……もう脱がせに掛 か っ て る じ ゃ ね ぇ か ! て め ぇ は よ ぉ ! !」
レヴィは彼の耳を引っ張り、語気荒くねめつける。
「痛っ!痛いって!!レヴィさんのおっしゃる通りです!!相違ありません!」
ロックは笑いながらオーバーリアクション気味にホールドアップの体勢を取り、肯定する。
「ふん!」と鼻息荒い彼女に「許して?」と触れる程度のキスを頬と唇に落とし、シーツへ押し倒す。
彼女の眼前には薄く微笑む情人の顔。
既に胸の上までたくし上げられているキャミソール。
余裕溢れる表情のようで、いつもよりがっついているような気がしないでもない。
下半身を弄る手も既にショーツの上から秘所をなぞっている。
気付くと彼のペースに乗せられてしまっている事が何となく悔しい。
彼女の胸を堪能すべく離れていく彼の頭をネクタイを掴んで引っ張り寄せると、噛み付くように唇を重ねた。
彼の首に両の腕を廻し、お互いの唾液を混ぜあいながら、次はどう意趣返しをしてやろうかと考える。
夜は長い。この調子ではどうせ今夜はずっとヤり通しだ、ゆっくり考えればいい。
あ、そうだメシ喰い損ねた…。冷蔵庫に昨夜のビールが残ってるハズ、それでいいか、仕方ねぇ。いざとなりゃ、近所にコンビニがあったハズだ…。
いつからか、彼とこうして身体を重ねることが日常生活の一部となっている。
それを示すように、同じく日常の一部である彼をちょっとだけ困らせる悪巧みや食事などの生活感溢れることを考えながらレヴィは快楽の海へと沈んでいく。
目の前の男に心も身体も全てを委ねるような、心底安心した顔を浮かべて。
部屋に備え付けられた安物のブックライトの灯りの元、身体を繋げ、再び緩やかに高まっていく体温。
下半身からのねちゃねちゃという湿った音と、苦しげで甘やかな嬌声が響く室内。
床には無造作に脱ぎ散らかされた男女の下着はじめ、それまでの情事の名残とも呼べる紙くずや、それに無造作に包まれた破られた避妊具の包装と使用済みの中身が散乱する。
壁には舟を漕ぐように揺れるハダカの女の影。
「ん………ぁん………ぅ…ぁあっ………はぁっ…」
「…レ…ヴィっ…………はぁ………んぅ………」
お互いこれといった言葉も交わさず、与えられる快楽を貪ることにのみ集中する。
そんな中、ロックに跨り豊かに身体を揺らすレヴィが、ふいににやりと不適な笑みを浮かべ口を開く
「…なぁ…っ…ロック…さっきの話…だけどよ…」
「な…に…」
ロックがレヴィを見上げ、声が聞こえるよう少し首を起こすと、彼女は彼の頭の両脇に手を突き、顔を寄せる。
そのままキスをするべくレヴィの後頭部に手を差し入れ引き寄せる彼に、彼女が囁いた。
「お前…帰ったら…はぁっ……アロハ…着ろよな…」
「……え……」
唇を引き寄せる彼の腕が硬直する。
「さいっ…こうに…イカして…るだろ?着ればっ…気分も、雰囲気も…変わるぜっ…、きっと…ハッピーだ」
下半身の揺らぎはそのままに、シニカルに笑んだ口から紡がれるのは、喘ぎ声とロックにとってある意味では人生最大の危機を意味するセリフ。
一気に全身の血の気が引く。勿論、彼女と繋がっている箇所だって…例外ではない…。
「……えっと……」
「あっ…おま、縮んでねぇか!?」
膝立で腰を浮かせ、濡れそぼる結合部を覗き込むレヴィ。
「ぁ…気の…せいだよ。それより!覗くな!」
「いや、萎んだね、ヒャ〜!情けネェな、見ろよ!ふにゃってるぜぇ、ゴム緩くなってるんじゃねぇか?ケケケ」
「レヴィ!!!」
腰を浮かせた事により抜けた分の数センチが覗く、レヴィを貫くロック自身と、それに被さるスキンを指先で摘みながら笑う。
下を向くレヴィの髪がロックの胸元をくすぐった。
ロックは慌てて彼女の肩を掴み、上を向かせる。
「ん?何だ?んなキレんなよ、思い出作りを兼ねてアタシからのプ・レ・ゼ・ン・トを着てくれって言ってるダケじゃねぇか、なぁ?ハニー」
顔を上げ、"プレゼント"をやけに強調しながら、何かを強請るように身をくねらせるレヴィ。
ロックの体躯に自らの身体を密着させ、首筋に唇を寄せると鼻から胸いっぱいに息を吸う。
熱帯を一日中歩き回った彼の体臭に、彼女の身体の奥がずきんと疼く。
中にいるロックにも伝わった筈だ。その証拠に彼女の腹の中で少しだけ硬度を回復する彼自身。
そんなお互いのあからさまで生々しい身体の反応を自らの身の内で実感し、今更のように内心動揺する。
照れ隠しのように、彼女は吸った息を彼の耳に吹きかけた。
「ぃっ…あ…そ…そんなこと言ったってさぁ……………あー……部屋の中だけなら…」
ロックもロックで、妥協案を提示するも、受け入れられない事を承知しているためか徐々に声が小さくなる。
「だ〜め〜だ!!」
予定調和。レヴィは口を尖らせ身を起こす。
拗ねたような、幼い表情を浮かべる顔の下には、出るところが出て引っ込むべきところはしっかり引っ込んだ、しなやかで筋肉質な身体。
そんなどこかアンバランスさを感じさせる彼女に改めてそそられる。
彼女に合わせてロックも身を起こすと正面から抱き締め、一言。
「じゃあさ、また別の服をあげるからそれ着てよ、それを着て一緒に歩いてくれるなら………………考える」
決して「着る」という言質を取られまいとする無駄な抵抗。そんな浅はかな抵抗などお見通しとばかりに
「考えるだけかよ?だからジャップはダメなんだ、白黒つけやがらねぇ!…まあいいさ、忘れるな、絶 対 着 せ て や る か ら な 。
……んで?ロック、お前次はどんな着せ替え遊びをするつもりだ?」
と、勝ち誇った顔で宣言した後、問い掛ける。
その問いが、自らにとって地雷となることも知らずに。
「う〜ん」と考える素振りをしながらレヴィの体を押し倒し、正常位に雪崩れ込むとロックもまたニヤリと笑う。
「これもまた古典的だけど、バニーガールとか、どう?バドガールでもいいけどね…。
あー…ハリウッドの女優顔負けのセクシードレスもいいかもね。でも腰までスリット入った際どいチャイニーズドレスも捨て難い…」
「!!!!???ロック!てめー!そりゃ何のペナルティだ、随分と見下げたヤローだぜ、このド変態が!!」
口をパクパクさせながら抗議する彼女を無視し、身体をぴったりと密着させると、
「ああ、ミニスカートのっ…ジャパニーズメイド…スタイルはっ……どうだい?…色んな意味でっ…ロアナプラ中が……大騒ぎっ…だっ!!」
などと彼女の股間に腰を叩きつけながら一人勝手に喋り続ける。
「うるせぇ!!このマザーファッカー!!ファッキン!シット!シット!シ……ぁあっ…ん…」
レヴィも手足をバタつかせて抵抗するも、既にロックのペース。
意趣返しをした筈が、またしても彼のペースに乗せられてしまうこととなったレヴィ。
結局、高まる愉悦の中でバドガールに扮して給仕することを承諾してしまったような気もするが、それはまた別の話。
おわり
そんなワケで
>>6さんお待ち申しております
>>21 うひゃあ超GJ!
まさかしょっぱなからこんな素晴らしい作品が拝めるとは!
レヴィの喜怒哀楽がものすごくよく描写されていて萌えた!
テメェ、なんて物を見せるんだYO!
……バドガール編を見たくなってきたじゃないか!
双子かわいいよ双子
なんという夫婦喧嘩
これはGJせざるを得ない
26 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 17:27:24 ID:sDjS1QWs
GJGJGJGJGJGJGGJJGJGJGJGGJJG
GJ!!!
GOODじゃなくてGODクラスだな
台詞廻しがタマラン
セリフが冗長すぎる気もしたけどグッジョブ
早々の神降臨、幸先良いね! ぐじょぶ!
女の子してるレヴィ可愛いぜ
原作のセリフも冗長だからね
ともかくGJ
GJ!!!!!
ツンデレヴィたんカワユスなぁツンデレヴィたん(*´д`;)ハァハァ
これがツンとデレのふり幅ってやつか…
GJだっ
なんつーか今月のロットン、前に投下されてたシェンホア×ロットンSSそのまんまで笑った。
やったのはソーヤーだったが。
次号は若様がロベルタに犯されます
>>33 どれだったっけな〜保管庫には入ってないよな
自分が覚えてるssの六トンはシェンホアアドバイスに従って口上はやめてたけど
本編は高いところには登りたがるのは相変わらずだしw
04-629
シェンホア独白、クロスSS、その後
37 :
あの件:2008/02/22(金) 21:42:18 ID:0Y7xDcMj
途中ですが、長くなりそうなんで投下します
ファビオラ一人称
ガルシア×ロベルタ
ロアナプラ関係は、基本的に出ない予定です
********************************************
「へえ
なんだ、秘密ってわけかい?」
「……君にも、ロベルタは素性を隠してたんじゃないのかい?」
「………………
鋭いですね。
ですが、
あの件に関しては、あまり語りたくありません」
「楽園……か」
アタシは、御屋敷を見上げ、そう呟いた
自分の世界とあまりに違う、美しい世界を目の当たりにして、思わず漏らした感想
整えられた庭園は、色とりどりの花が溢れ、白い噴水から涼しげに輝く水が噴き出す
自分たちが潜り込むトタン板のあばら家と、御主人様の住まう御屋敷では、空の色まで違う気がした
茫然と眺めているアタシに
「ファビオラさん」
穏やかな叱責の声が響く
「何ですか?ロベリアさん」
「いかがなさいました
婦長さま、です」
不意を突かれたアタシが、ポロリと漏らした言葉を、この女は即座に訂正した
「言葉遣いに注意なさい
ファビオラさん」
『ウルセエなぁ』
腹のうちに地を隠し、明日のオマンマの為に詫びる
「すみません」
「申し訳ありません
婦長さま、です」
造り笑顔の頬が、ピクピクと引き攣るのを感じた
「すいませんねえ
なんせ育ちが悪いもんですから」
「それは関係ありません
貴女はこのお屋敷の使用人になるのです
貴女の不始末は、そのままご主人様の恥となるのですから」
しつこい指摘に切れかけたアタシに対し、なまっちろい顔色一つ変えず、冷静に対応した
「テメ「ロベルタ〜」」
空気を読まない暢気な声が、暴れかけたアタシの出鼻をくじく
見れば、白い大きな犬を連れた、小綺麗な小僧だ
「いかがなさいました?
若様」
その瞬間、この女はアタシのことなど居ないかのようにガキに向きあった
若様ってことは、この家のお坊ちゃんか?
「うん、ロベリアが誰か連れているみたいだったから」
「はい、この者は新しいメイド見習い候補予定者です
ご挨拶なさい」
新しいメイド『見習い』『候補』『予定』ねぇ……
よほど信用おけないらしい
わからないでもないが、思惑に乗るのも不愉快だ
38 :
あの件:2008/02/22(金) 21:56:50 ID:0Y7xDcMj
「ファビオラと申します
農場でお世話になっている遠縁の者の紹介で伺いました」
取りあえず、暗記させられていたご挨拶とやらをかます
「はい、僕はこの家の長男のガルシアです
いろいろとお世話になると思うけど、よろしくね」
へっ?長男
ってことは、跡取りの次期御当主様かよ
使用人候補のスラムのガキに、腰の低いこった
ちょいと呆れていると
ゾクッ
背筋に一瞬、凄まじい殺気を感じた
体を硬直させ、辺りの気配を探るアタシをよそに
「若様
使用人によろしくなんて、おっしゃってはなりません」
偉い婦長さまが、もっとお偉い坊ちゃまを叱り始める
「若様はご主人様なのですから、使用人とは一線を隔てて、毅然とした態度を示していただかないと」
「だって、家には3人しか居ないんだよ
その子にも家族になって貰いたいな」
穏やかに見えて、結構ガンコなガキだ
あの鉄面皮に、平気で口応えしている
「いけません。若様
これからご当家は、さらに大きくなるでしょう
使用人には分をわきまえさせないと、世間に笑われます」
「ふ〜ん、じゃあ僕もロベルタなんて呼んじゃいけないね
婦・長・さ・ま」
「若様!」
ゲッ!信じられねえ
あの張り付いたみてえな無表情が、真っ赤になってうろたえてやがる
「わ、私だって婦長なんて分不相応だと思っておりますが、御当主様のご指示で……」
「ふ〜ん
ロベルタは、父様の指示は間違いだと言うんだ」
「そ、そのようなことは……」
「だからさ、僕だってロベルタが使用人だなんて嫌だし、その子だけ仲間ハズレなんて可哀相だよ」
どうみてもガキの、幼いとも言える面に、ふてぶてしいまでの意志を隠して、己が意見を通す
これが育ちってもんかね
「余所の人がいるときはともかく、家の中ではいつも通りでいいでしょ
それとも、これからは僕もロベルタのこと『婦長さま』って呼ばなきゃならないの?」
「わ、若様!おたわむれを」
39 :
あの件:2008/02/22(金) 22:02:19 ID:0Y7xDcMj
坊ちゃまは、メイドに鮮やかなチェックメイトを決めた
「決まりだね
家では、いつも通りでいこう
その方が楽しいよ
きっと」
言いたいことをいうと、坊ちゃんはわんコロと一緒に、サッサと行ってしまう
微妙な雰囲気の中、取り残された婦長とアタシ
「ファビオラさん」
気を取り直したか、婦長が呼びかけてきた
「若様のお達しです
御屋敷内では細かいことは申しません
ですが、対外的にはちゃんとした対応が出来るよう、礼儀はしっかりと身につけるように」
なんか勝手な言い草だ
アタシが欲しいのは、単なる働き口である
もっと率直に言えば、金だ
こちとら家族なんざ、売るほど有り余っている
実際、アタシだって売られたようなもんだ
金持ちの家族ゴッコに付き合わされるのは、御免被りたい
幸いこの女も、坊ちゃまの道楽に付き合う気はなさそうだ
坦々と仕事の段取りを説明していく
しかし……
「出来るか!こんなん」
その夜、疲労困憊の状態で宛てがわれた部屋のベッドに転がりながら、一人ボヤいた
聞き流していた坊ちゃまの発言には、重要な事実が隠されていたのだった
つまり、このクソ馬鹿デカイ御屋敷には、人手が全くないということだ
膨大な数の部屋の掃除から庭の手入れ
炊事洗濯をこなしつつ、合間々々にこれまた多い来客の接待
果ては御当主様のお茶に付き合い、坊ちゃまの遊び相手まで……
婦長は、このとんでもない仕事量を、不器用ながらも信じがたい体力で、平然と片付けていく
アタシとて、バリオ暮らしでキツイ仕事には馴れていたはずなのに、一日でケツを割りたくなった程だ
「呑まなきゃやってられねぇ」
厨房からくすねたビールを煽りながら、愚痴を垂れるが
ズズッ
「チッ、もう切れちまった」
まだまだ呑みたりない
追加を求め、薄暗い廊下に出る
40 :
あの件:2008/02/22(金) 22:08:23 ID:0Y7xDcMj
『ンッ?』
厨房への途中、明かりが漏れている部屋があった
他にも何か漏れてくる
「……ッ、クウッ」
押し殺した喘ぎ声
さいわい経験はまだないが、 狭っ苦しいバリオではガキが遊んでる隣で売ったり買ったり、プライベートで楽しんだり、強引に使われたり等、普通にあった
したがって、そういう状況に、たいして怯むこともない
酔いも手伝ってなんとなく、中を覗いてみた
「……クッ!フウッ
お、お許し下さい」
「ダメ
まだまだ許してあげない」
異様なような、よくあるような光景が繰り広げられていた
パンッ
ベッドに手を付き、尻を突き出して平手で叩かれる、子供へのお仕置き
異様なのは、それを執行する方とされる方だ
「あんなに話しあったのに、まだ分かってくれなかったんだね
ロベルタ」
「も、申し訳ございません
若様」
尻を剥き出しにして、仕置きを受けているのが婦長
あの女は、長いメイド服のスカートを捲り上げ、ショーツを膝まで下げている
屈辱的な姿を維持したまま、逆らう様子もない
その横に立ち、冷徹に打擲しているのが坊ちゃんだ
「……でも」
パンッ
「クウッ!」
反論も許されない
「でも、なにかな?」
「アアッ!」
ツツーー
坊ちゃんは、剥き出しの尻をただ叩くだけではない
叩いた尻からすぐには手を離さず、ユックリ撫で回していく
幾つもの小さな手形が朱く染みついた、白い白い尻
しっかりその感触を楽しむかのように、引き締まった尻たぶを揉み込んだ
「わ、若様!ダメです」
婦長が慌てた声をあげた
「なんで?」
平然と聞き返す坊ちゃん
「そっ、その……」
「お尻が広がって、奥までまる見えになるから?
それとも、広がると蜜が溢れ出してきちゃうからかな?」
グイッ!
「アアッ!そんなっ!!」
41 :
あの件:2008/02/22(金) 22:16:20 ID:0Y7xDcMj
婦長が悲鳴をあげる
坊ちゃんは婦長の尻たぶに両手をかけ、遠慮なく割り開いた
「イヤッ!若様
お止め下さい!!」
婦長は涙声で訴えるが、決して振りほどこうとはしない
ただ、幼い主人に哀願するのみだった
しかし、坊ちゃんは一切聞く耳を持たない
「アハッ
やっぱりビショビショだぁ
駄目だよ、ロベルタ
これじゃ、お仕置きにならないじゃないか」
「申し訳ございません、若様」
理不尽な叱責にも、従順に詫びを入れる婦長
なんでそんなに……
昼間の鉄面皮の印象とあまりの違いに、アタシの頭はは激しく混乱した
坊ちゃんの悪さは、さらに続く
「このままだと僕は手が使えないなぁ
ロベルタ、悪いけど自分で開いててくれない?
ついでに服も脱いじゃってよ」
「そ、そんな!」
「嫌?」
「…………いえ」
恥辱に震えながらも、決して逆らおうとはしない
婦長は、足元をふらつかせながら立ち上がり、ユルユルと服を脱ぎ捨てていく
その身に纏う物は、古臭い形の眼鏡のみ
素晴らしくめりはりのついた肢体が、坊ちゃんの前に晒される
全体的に引き締まっていながら、胸と尻は大きく張り出し女を主張してた
婦長は、ベッドに俯せにつっぷして、しっかりと膝を立てる
グッ
坊ちゃんに、捧げるように突き出した尻に、自らの手をかけて割り開いた
クパッ
羞恥に全身を朱らめながら、一切ごまかそうとせずに、思い切り開き続ける
アナルがあらわになるどころか、ヴァギナもパックリと口を開いた
ツツッーー
途端に、溜まっていた熱いジュースが、白い内股を伝い膝まで零れる
「いい眺めだよ、ロベルタ」
「……ゥゥッ」
からかう坊ちゃんに、返事も出来ない状態の婦長
ツプッ
「アアッ?!イヤッ若様!
イヤーーーー!!」
突如、取り乱した悲鳴をあげた
42 :
あの件:2008/02/22(金) 22:33:58 ID:0Y7xDcMj
キュッと引き締まった、小さなアナルに指を挿入されている
「ダメ、ダメです
若様ァ……」
涙声で制止するが
「駄目なの?ロベルタ」
ツプッ、ツプッ……
一切、手を止めずに、平然と聞き返す坊ちゃん
「…………ッ!」
婦長は、言葉を返せない
シーツをくわえ、必死に声を殺している
「じゃあ、こっちにしようかな」
ピチャ
「アアッ!」
ダラダラと蜜を溢れさすヴァギナに、坊ちゃんは口を付けた
「イケマセン、若様ァ
ダメなんです……」
うわごとのように拒否し続ける
しかし、それはもはや淫声だった
そんな状態でもあの女は、頭をシーツに擦り付け、高く捧げた尻を自ら割り開いた、ぶざまな姿勢を崩さない
ツプツプ……
ピチャピチャ……
アナルを指でほぐし、内股に流れるジュースを啜り、、膨らんだ淫核を摘み、肉壷に舌を押し込む
坊ちゃんは楽しげに愛撫を続けていた
「……ダメです
若様が汚れてしまいます」
婦長がうわごとのように呟くまでは……
豹変とはこの事だろう
顔の作りが変わったわけではない
しかし、間違いなく形相が一変している
「……まだ」
絞り出すような重い声が
「まだそんなこと!!」
爆発した
パアン!
坊ちゃんの平手が、婦長の尻に炸裂する
「アアッ!」
パンッ
「まだっ!」
パンッ
「そんなこと!」
パンッ
「言うのかっ!!」
パンッ……
年齢も身長も間違いなく上の者に、容赦ない打擲をあたえ続けた
『なんで逆らわないんだ』
いくら女とはいえ、坊ちゃんはまだまだガキだ
体格差を考えれば、間違いなく振りほどけるはず
本当はわかっている謎を、アタシは何故か認めたくなかった
激しい殴打に白い肌が、朱に染まっていく
「…………ッ!」
婦長は一言の呻き声すら発しない
ただ、息をも殺し耐えている
「ロベルタ!」
グイッ
坊ちゃんが、婦長のおさげ髪を掴み引きずり倒す
四つん這いの姿勢から、仰向けに変わった
そして
「アヒイッッ!」
耐えかねたかの様な、悲鳴があがる
43 :
あの件:2008/02/22(金) 22:42:00 ID:0Y7xDcMj
婦長は、坊ちゃんのペニスに貫かれてた
体格に相応しく、それなりのサイズのモノなのに、婦長の反応は凄まじい
「ヒイッ、ダメッ!
ダメです
お許し下さい、若様!!」悲鳴のようにあげる拒絶の声
しかし、隠し切れない快楽の色が混ざっていた
さっきまでの、楽しげに余裕をもって弄り回していた愛撫ではない
坊ちゃんの怒りを叩きつけるような、単調ながらも激しい腰使い
「アアッ!」
ビクビクッ
すぐに達してしまった
坊ちゃんも、それに婦長も……
坊ちゃんは、荒い息をつきながら、婦長の身体に突っ伏せる
豊かな胸に埋まる様に……
婦長の腕があがりかけ、止まり、降ろされた
すがりつく子を抱く手を、寸前で控えた
アタシにはそんな風にみえた
「……ロベルタ」
顔をあげた坊ちゃんが、婦長の口元に伸び上がる
ツイッ
さりげなく、婦長は顔を逸らした
「これ以上は……」
婦長は冷然と拒否した
昼間見た能面のような、表情に戻っている
眼鏡が外れた素顔の目が、一層硬く見えた
「まだ駄目なの」
坊ちゃんは先程とは違い、悲しげに問う
「汚れます」
キッパリと、突き放すかのように答えた
「わかってくれないんだね」
「………………」
返事を返さない婦長
無視してるのでは無い
返事出来ないのが、部外者のアタシにもハッキリわかった
悲しげな空気が二人を包む
「……ロベルタ
ロベルタのジュースでベタベタだよ
奇麗にして」
自分の口元を示しながら、坊ちゃんが言った
婦長は、躊躇うように動かない
坊ちゃんも引こうとはしなかった
ピチャッ……
やがて、婦長はオズオズと舌を出し、坊ちゃんの口元を舐め始めた
ユックリと丁寧に……
自分の汚汁を拭うため
坊ちゃんを奇麗にするため
明らかな言い訳を盾にするしか、禁忌を侵せない哀しみが、婦長の背中に見えた
44 :
あの件:2008/02/22(金) 22:52:25 ID:0Y7xDcMj
キスをも拒否された、坊ちゃんの哀しみもヒシヒシと感じられた
主人として弄ぶことは出来ても、口付けは禁忌とされる
わからない
どう見ても、二人とも想い合っている
これが、主人と使用人の身分の差ってやつなのか
アタシは、わかったような、わからないような考えに悩んだ
「……あの娘」
ビクン
心臓が跳ね上がる
「あの娘、どうするの?」
不意に坊ちゃんが、アタシのことを口に出した
「…………」
「ロベルタが探してきたんだよね?」
はぁ、アタシを?
「僕は許さないよ
ロベルタの後釜なんて」
何だって!後釜!?
なんのことだ
まさか、アタシもあんなこと……
「お家には必要なことなのです」
「ロベルタがいるじゃないか!
僕だって父様だって……」
言い争う声を背に、アタシは暗い廊下を駆け出していった
ただ、何かから逃げ出すために……
続く
************************************************
次はファビオラが餌食になる予定
ファビの口調が変ですが、教育前ということで……
早めに書きたいと思います
ぐっっっじょぶ!!!
次回も期待しております><
>>36 d。
知らない間に保管庫更新されてたんだな
確かにこんなだったなw
>44
GJなんだが、序盤、ひょっとしてキャラ名打ち間違えてね?
ロベルタはテロ時代は完全無表情の不感症だったのに
若様には触られただけでアアン。な感じだな、
弾劾やってた頃ちょうど就活しててさ…
「最近の気になるニュースを教えて下さい」に
「韓国大統領の弾劾です」
と答えて不思議そうな顔をされた、そんな思い出。
誤爆…スマソ
今更書いてみた。
海が…綺麗だ。
どうしてだ?もう見慣れた南国の、ロアナプラの海じゃないか。
静かだ…波の音、風、ここは日陰のおかげで、風がとても気持ちいい。よく眠れそうだ。
なんでこんな所に…?
「すぅ…」
「…うん?」
僕の体の上で平然と寝息を立てていた。
小さな体、白い肌、この南国の景色にはとても似合わない黒の服。
人形のような、それでいて人間らしい幼さと無邪気さを感じる顔。
「ん…」
「君は…」
「…先に起きたの?お兄さん…」
思い出した。約束を果たしに来てたんだ。ランチを持って、二人だけでどこかに行こうと。硝煙や血のにおいのしない、静かな所に行こうと、約束を果たしに来たんだった。
「退屈じゃないかい?」
「いいの。お兄さんと一緒にこうしてられるだけで、幸せ」
「そうか…」
「ね?お兄さん?」
「ん?」
「もっとぎゅっとしてて。せっかく怖いあの人達も居ないんだもの…」
「…ああ。解った」
彼女の前の方まで、手は簡単に届いた。柔らかい手応え。
「きゃっ!」
「え?」
「お、お兄さん…そこ触っちゃだめ…」
「ご、ごめん…」
武器が無かったら、ただの少女と変わらない。もしかしたら僕でも組み伏せられるかも知れない。
少なくとも今の彼女は、僕から見てそういう風にしか映っていない。
「…お兄さん?」
「うん?」
「お腹空いちゃった…」
「…ああ、そうだった」
「いい匂いがするわ」
僕は今、フライパンと向き合っている。ソテーしているパスタと具材。思いつく料理はこれくらいしか無かった。
「…もしかして何かリクエストがあったのかい?」
「ううん。お兄さんが作る物なら何でも良いわ」
約束を守る事に意味があると、彼女はそう言っている気がした。無邪気な顔が、僕の手元を覗く。
「お兄さん、いい旦那さんに慣れるわね?」
「はは…良い人がいたらね…」
「居るわよ。居なかったら私がなるわ」
「そしたら捕まっちゃうな」
「もうしてるじゃない。捕まっちゃうような悪い事」
「…それもそうだ」
この笑顔が心の底からなのか、どうなのかが解らない。とにかく綺麗な顔だと、このまま行くと将来はとてつもない美人になると思うだけだった。
「おいしい…」
「良かった」
不意にフォークが止まった。もう半分は平らげられている。
そろそろだとは、思っていた。
「…お兄さん」
「うん?」
「…気づいてるの?」
「…うん」
大きな瞳の雰囲気が、もう違っていた。無邪気さが、何も、ない。
「…そう」
解っていて思ってしまった。将来、なんて言葉は生まれてはいけなかった。
彼女の時は、約束は、永遠に止まったままで進む事は無い。
本当に生を得ていた時、彼女達は暗闇を走りつづけていた。信頼したのは自分だけ。自分にとてもよく似た、自分だけ。末路は、彼女達では無く僕に見えていた。
酷い言い方をすれば「ロクな死に方をしない」
その、最後の瞬間を僕は見ている。
「っ…」
彼女は静かに泣いていた。生前聞けなかった声で。泣き顔を隠す様に、伏せていた。
二回に分けて位で…また失礼…
これは期待
54 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 22:03:51 ID:kmTO9NMY
なかなか
レヴィたんを虐めてみたくて書いてみた。
ロック×レヴィ前提の、不特定×レヴィ。
そう大したコトは無いが、痛そうなのと陵辱モノ嫌いな人は要注意。
窓のカタチに切り抜かれた、ソラ。
反吐が出る程青かった。
そんな青さに途方に暮れた夏の日。
裏通りにある最下層の売春窟を早足で歩いていた。
別に用があったワケじゃない。
近道だったんだ。
細いその道には、そこらの窓から投げ捨てたんだろう。無造作にゴミが散乱する。
決して愉快では無い、そんなようなアレやコレ。
こんなモノで動揺する程初心には出来ちゃいないのだがしかし、好んで見たいとも思わねぇ…。
それに加えて、クセェ…兎に角クセェ!!
小便、ザーメン、血液、生ゴミ、カビ、埃。
それらが混ざり合い、何とも言えねぇ腐臭を醸しだす。
不愉快な匂いの見本市のような、そんな路地裏。
息をするのもイヤだ。
ああ、マズった。
こっち来るんじゃなかったぜ。
「チッ…」
舌打ちして何の気無しに上を見上げた。
何処を見ても気が滅入るようなゴミ屑ばかりだからだ、大した理由はねぇ。
薄暗い路地から急に視線を移したモンだから、正直目が眩む。
立ち止まって数度瞼を瞬かせると、屋根の間から直線的に切り取られた澄み渡った空が見えた。
そして。
無機質に並ぶ窓からこっちを見ている一人のガキが目に入る。
現地のガキだろう、少し浅黒い肌。
酷く殴られたような痣がいくつか残るツラは、まるで感情が無いかのように無表情だ。
そんな無表情なツラしてやがるクセに、何故だか泣いているような気がした。
涙も流しちゃいねぇのによ。
目が合っていた(ような気がする)のは時間にすれば精々3〜4秒。
「……チッ…」
再度盛大に舌打ちし、アタシは前を向き直り歩みを再開する。
この街じゃ、親に売られたり、どこぞから攫われりしたガキが客を取らされるなんて、何も珍しいこっちゃねぇ。
内臓売られなかっただけマシってモンだ……どっちがマシかなんて知ったことじゃねぇケドよ。
それより2時までに事務所に戻らねぇとダッチに大目玉だ。
リミットまでは精々あと10分ってトコだろう。
「やっべ…」
視線を元に戻すと、先程よりもペースを上げて歩き始めた。
「クソガキ!暴れんじゃねぇ!…っ!痛ぇ!おい、腕押さえとけ」
――イヤだ。
「見ろよ、コイツ鼻水垂らしてるぜ、汚ぇ…」
――イヤだ。イヤだ。
「おい、もっと口に何か詰めとけよ」
「ほい、パンツ。コレでいいだろ。って、おいおい、こいつまだ毛ぇ生えてねぇよ」
「おじょうちゃ〜ん、なんちゃいでちゅかぁぁ???ひゃひゃひゃ」
――イヤだ。イヤだ!ヤメて!怖い。イヤだ。
「入っかな?」
「入るんじゃね?」
「んー。指でもキッツイぜ?」
――イヤだ!痛い!痛い!助けて……誰か!!!
「大丈夫だって、挿れりゃスベりもよくなるって」
「なー誰から?」
「最近お前らばっかだからよ、たまには俺から犯らせろ」
「じゃ、俺の番までに適当に穴拡げといてよ」
――イヤだ。イヤだ。イヤだ。イヤだ。イヤだ。イヤだ。イヤだ。イヤだ!!!
「おら、脚拡げろ。コレまじ入んねぇって…ん…クソ…ムリ…超キツキツ…」
――痛い痛い痛い痛いイヤだ痛い痛いイヤだイヤだ痛い!!!!
動かないで!痛いの!イヤだイヤだイヤだイヤだ!!!!
助けて…いいコにするから!もう盗みなんかしないから………神様……!!!
「―――………っっ!!!」
目が覚めた。
点けっぱなしのテレビに映るのは砂嵐。
ごろりと仰向けに転がると、見慣れた天井。
夏のニューヨークの廃屋ではない。
ロアナプラの自分の部屋。
寝ていた筈なのに、酷い疲労感。
喉が渇く。背中に嫌な汗がにじむ。
「…Shit!」
八つ当たり気味にテレビを消すと、頭を掻き毟りながら冷蔵庫に向かった。
戸を開け広がるオレンジの光。
暗闇の中、そこだけが浮かび上がるように明るい。
光の中に無造作に投げ込まれているビールを取るべく手を伸ばすが、寸でで止まる。
「あの時」。
連中が呑んでいたのと同じ銘柄。
酒盛りをしながら。
昨晩のTVショウの話をしながら。
ハイスクールのムカつく先公の話をしながら。
流行の曲の話をしながら。
あいつらは愉快に笑いながら、代わる代わる、繰り返し、目の前の黄色いメスガキを嬲り続けた。
もう何年も記憶の引き出しに仕舞い込んでいた出来事。
今更それが引き摺りだされて来やがった。
理由なんかどうせ単純明快だ。
昼間見たメスガキ。
年の頃は丁度あの頃だった。
面構えまで似てやがる。
あの時。
まだ神ってヤツを健気に信じてたクソガキは、あの仕打ちを悪事を働いた罰なんだって本気で信じていやがった。
あれから暫く、「神様に嫌われるから」ナンてほざいてよ、ホントに盗みをやめた。
感情を殺してイケ好かねぇホワイトカラー共の靴を磨いてパンを手に入れて。
警官にボコられて目が醒めるまで、本当におめでてぇ馬鹿なガキだった。
ドアポケットに鎮座するバカルディを手に取ると直接喉に流し込む。
冷えてはいるが、渇ききった喉が焼けるようで少し咳き込む。
口の端から零れるそれを手の甲で拭って、ため息と共にその場に蹲った。
いつかのゴス女みてぇ…。そうは思うが、今は何か…動きたくねぇ。
「……気持ちわりぃ…」
オレンジの光が半身を照らす。
昔のコトだ。
それにファックなんざ大したことじゃねぇ。
誰とやろうと同じだ。
問題になんかなりゃしねぇ。
どうってことはない。
唇を噛みながら膝を抱えた。
「時間無ぇからな、さっさと脱げよ」
言われて全裸で横たわる。
天井を睨んでいると、下半身を露わにした男が圧し掛かってきた。
うわ、垢だらけじゃねぇか、汚ねぇ…。
イキナリ左右に割り開かれ、晒されるアタシの股間。
欠片も濡れていないソコに不満そうに舌打ちすると、男は自らの唾液を手に垂らしてそれを塗り込んで来た。
臭ぇ唾液に濡れた汚れまみれのザラザラした指がアタシの腹の中を擦り上げる。
股のあたりに生ぬるい液体が落ちる感触。目を遣ると口から股に直接ヨダレを垂らしてやがる。
逃げ出したくてたまらない。思わず不快感に顔が歪む。
何回かそれを繰り返すと、刺激されたことによるアタシ自身の体液も若干加わり、取り敢えずの滑りは良くなったらしい。
何の予告も無く一気に侵入してきた。突き上げられる子宮。
唇を噛みながら、相変わらず天井を睨む。
ギシギシと音を立てる安い寝台。激しく上下に揺れる視界。
全然キモチ良くなんか無い筈なのに、遠慮の無い激しいファックに少しずつ高まる身体の感度。
「ハァ……ハァ……んっ……ハァ……」
「レヴィっ…お前、意外と…締りいいな…!!たまんねぇ…!」
「うるせぇ、黙って…ファックしてれば…いいんだよ、クソボケっ…ハァ…」
機械的に腰を振りながら目の前で腐ったような口臭を撒き散らす男。
何年歯を磨いて無ぇんだよ、吐き気がする。
「そんなコト言っていいのか?イカせてやんねぇぜ?」
そうナメたことを抜かして、男は腰の動きを止める。
穴に突っ込んだままアタシの胸を両手で痛い程鷲掴み、右の乳首を引きちぎらんばかりに強く吸い上げる。
「跡なんか付けやがっ…たら、ブチ殺すからな」
「コエぇなぁ…プッシーはヨダレ垂らして俺のを悦んで咥えてるってのによぉ…ウマいよなぁ、オレのはよぉ」
そう言って大きく腰を廻すと、両の乳房全体が唾液でぬめる程、時間をかけて執拗にしゃぶりつく。
アタシは天井を眺めて遣り過ごし、いつまでも終わらないそれに舌打ちをする。
そんなアタシの態度を見た男は上へ上へ舌を這わせながら、脂と垢の浮かぶ無精ひげだらけのツラを寄せてきた。
思わず目を閉じ、顔を背ける。
鎖骨、首筋、耳の順でねっとりと舐め上げる、生ぬるく、ザラザラした厚ぼったい舌の感触。
全身が総毛立つ。
いつの間にか再開される抽送。
ヤツの手がアタシの顔を上向かせると、次は唇を嘗め回す。
唇をこじ開けるべく舌をねじ込ませて来るが、歯を食い縛り抵抗する。
頬の肉を力任せに両方から押され、歪んだ唇に隙間が出来るとそこから舌を挿し入れ、歯列と頬の内側を舐め回して来やがった。
口内に溜まるファック野郎の唾液。
飲み込むまいとするものの、息が荒くなる度に喉奥へと流れ込んでいく。
……大したことはない。
そう。大したことはないのだ、目を閉じて耐えてさえいればあと数分でこいつは間抜け面とともに射精する。
口ん中がこいつのヨダレで満タンで、耳にはコイツの鼻息と腰のぶつかる音と股間からの粘着質な水音。
腹の中で出たり入ったりを繰り返す、腐れ棒。
言葉にすればただそれだけのことだ。
一通りアタシの口を舐め終えたコイツは、次は口からクソを垂れ流す。
「ケケ…溜まってたのか?……日本人とは…ヤってねぇのかよ」
「…ハァ…ハァ…ハァ……」
「それとも…アイツのコックじゃ…満足出来なかっ…たってか??」
「…黙…れ…」
「俺は…またいつでも…歓迎だぜっ…いつもあそこで、立ちんぼして…ん…のか?……」
「…ハァ…ハァ…ふ…んっ…あ…ハァ…」
自分の吐息と部屋に響く音が短間隔になるのを他人事のように聴く。
暗闇に耐えられずに目を開く。
そこに居るのは休みごとに身体を重ねている見慣れた男ではなく、道端で買われてやった糞ディック。
醜いツラを更に醜く歪めながら、こいつは更に腰の動きを激しく加速させる。
「…くっ!……あああ、お…お…イく!!!」
だらしなく開かれた口からは相変わらず腐臭。
ブルっと身体を震わせ、満足げなため息と共に射精した。
腹の奥に染み渡る不快な温度。
残滓まで吐き出すようにしつこく腰をこねくり回す男。
アタシのカラダは、それを一滴残さず搾り出すかのように浅ましく内壁を轟かせる。
この穴は、咥えているのが誰のイチモツだろうと関係無いのだ。
・・・書き込み出来ない・・・
…気持ちわりぃ…。
野郎は思う様吐き出すと「まだ時間がある」とか抜かして、ブツを抜かずにもう一度犯した。
呆然と半開きになった口に、ここぞとばかりに舌を突っ込む。
奥深く、喉の手前にまで舌を伸ばして口内を犯す。
口の中がたちまち生臭くなり、嘔吐き、咳込む。
2度目の行為は長かった。時間ギリギリまでねっとりと身体に絡みつく。
目を閉じてロックとしている時のことを思い出す。
アイツの手がアタシの髪を撫でて、啄ばむように唇が顔中に降って来る。
アイツのコックがアタシの腹の中をかき回して、アタシは脚をアイツの腰に廻してもっととせがむ。
必死に思い出そうとするが無駄だった。
髪は顔を上向かせるために鷲掴みされているだけだし、顔はヤツの興奮を高めるためだけに無遠慮に舐め回されているだけ。
腹ん中だけは誰であろうと関係無ぇ、大量にヨダレを垂らしヒクヒクと震えながら二度目の射精を促してる。
次々とアソコから湧き出す泡立った汁で尻までびしょ濡れ。
あーあ。早く終わんねぇかな…。あ、部屋30分余計に取っといてよかったぜ。
それから間もなくしてヤツは達したワケだが、2度目は射精も長かった。
長文受け付けてくれない…
時間ギリギリまでアタシを犯しつくした男はいそいそと服を着てサイドテーブルに金を置く。
色んな汁にまみれた股をおっ拡げたまま、口から二人分の唾液を垂らして虚ろに天井を眺めるアタシをニヤニヤと覗き込む。
そして思わせぶりな口調で「いずれな」と言い残すと、最後にもう一度アタシの唇を舐めて足早に出て行った。
ほ〜らな。
何てことねぇよ。
こんなの大したことじゃねぇ。
値段にすれば1時間の場所代込み50ドルの、小事だ。
……あとはシャワー浴びて帰るだけじゃねぇか。
のそのそと立ち上るとドロリと股から溢れるアタシと野郎の体液がグチャグチャに混ざった汁。
見ないようにしてシャワールームへ向かう。
頭から湯を被りながら俯くと、尚も股間から大量の白くてネバネバした体液が零れ落ちているのが目に入る。
………………イヤだ…!!イヤだ!!!イヤだイヤだ!!!!
目視した瞬間爆発する嫌悪感。
穴に指を突っ込み、湯を流し込み、内壁の粘膜ごと外に出すかのように…何度も何度も擦り切れるほど爪をたててほじくり返す。
ロックにだって中で吐き出されたコトはない。
身の内で男の体液を受け止める時、決まって泣いて叫びたくなる。
だから、見ないようにしていたのに。
けれど、ここまでの拒否反応は初めてだ。何なんだよ。クソ!奥に届かない…!
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ―――………
…何分そうしていただろう、流れる水が血で紅い。
握り締められている血まみれの歯ブラシ。
「……何やってんだ、アタシ。」
鏡に映るのは泣きそうに顔を歪ませた惨めな女。
壁に背を預けて、そのまま床にへたり込む。
何故だか涙は出なかった。
翌朝事務所に出向くと既にロックがソファで電卓と書類片手に帳簿と格闘していた。
顔も上げずに「レヴィ?おはよう」と声をかけて来る。
「ああ」
一言。
そう答えてダッチとベニーの所在を訊く。
「ダッチは三合会に来週の仕事の打ち合わせ。ベニーは船。新しいソフトを入れるためにマシーンの増強をするって張り切ってた」
そう言うと、顔を上げ「レヴィ、朝食は?残りで良ければソムタムとパッタイがある」と冷蔵庫を指差す。
「いらね。」
ロックの顔をまともに見ることが出来ない。
なのに二人きりかよ、ツイてねぇ。
向かいのソファの端に脚を組んで座り、ヤツとは逆方向に視点を定める。
「珍しいな。食って来たのか?」
「……アタシだって食欲ねぇ時位ある」
「飲みすぎた次の日とか?」
「……そんなんじゃねぇよ…」
ヤツの軽口に、知らず口調は苛立つ。
「…何か怒ってる?」
「…別に。」
「なら、何でずっとこっち見ないのさ」
「……別に。見ないようにしてるつもりなんかねぇよ、この姿勢が具合がいいだけだ」
ヤツはため息を一つ吐いて「そうですか。」と呟くと、作業を再開する。
何故だか鼻の奥がツンと痛んだ。
二人だけの室内に、事務作業の淡々とした音と、ブツブツと書類を読み上げるロックの声だけが響く。
鼻腔には嗅ぎ慣れたヤツのタバコの香り。
さっきまで逆立っていた神経があっという間に静まっていき、10分もしないうちに昨晩目が覚めて以降ずっと忘れていた睡魔がアタシを侵略し始める。
抗戦すること数回。
このまま陥落してしまおうかと思いを巡らせていると、何者かが肩に触れる気配。
「イヤ!!」
そう小さく叫ぶと、大袈裟な位に身体を大きく震わせ跳ね起きる。
相手を見定めるべく顔を上げると、広げたタオルケットを手に、驚愕の面持ちのロック。
「あ…ゴメン。起こした?」
状況を理解すると同時に安堵にも似たため息が零れる。
「いや、オーライだ、ウトウトはしてたが寝ちゃいなかった」
言いながら目を背ける。
「レヴィ?やっぱ何かおかしいぞ。」
「何がだよ。何もかもがいつも通りさ、おかしいことなんざ何も無い」
努めて明るく。
『いつも通り』に皮肉に笑いながらヤツの顔を見ると射抜くような目でアタシを見てやがる、何だってんだ。
「そ?ならどうしてさっきからずっと怯えたような顔してんだよ」
「…怯える?誰が?何に?張の旦那だってもちょっとマシな冗談言うぜ」
「なら、泣きそうな顔って言った方がいいか?」
一瞬、右の頬が引き攣る。
全てを見透かされているような気がする。
「図星?それに隈が酷い」
目の下にヤツの指が触れてきた。
「……寝不足なんだよ」
どうせ隠したって無駄だ。そこは素直に認めることにする。
「そう。なら寝るといいよ。夕方から一件、簡単だけど仕事が入ってる。」
「あぁ…」
「オレは事務作業と納品があるから留守番だけどさ、今は側にいるから」
「……別にいなくたって良いっつの」
「そういうコトは、泣きそうな顔をしながら言うモンじゃない」
言いながらアタシの頭をわしゃわしゃと撫で回すと、一度立ち上がり書類をクリップボードに挟んで戻って来る。
1メートル位離れた所に腰を下ろすと、こっちに腕を伸ばしてアタシの上半身を引き倒す。
頭がコイツの脚に乗るよう微調整され……って、膝枕かよ。
バカじゃねぇのか、そう言ってやりたい気もしたが、もう一人の自分がこのままがいい、とそれに抗い……後者が勝利。
ヤツの身体側に顔を落ち着け掛布の中で身体を丸めると、目の前のシャツのボタンを睨みながら苦し紛れに抗弁する。
「泣きそうな顔なんかしてねぇ」
「うん。」
「別に怯えてもいねぇ…」
「うん。」
ロックの手がアタシの顔にかかる髪を後頭部に向けて払う。
一定のリズムで撫でられる髪。
意識はどんどん混濁する。
耳の後ろのあたりを掻き分けた時、こいつの手が止まる。
寝惚けながらもねだるように手に擦り寄ると再開される慰撫。
但し、耳の後ろを親指で何度もなぞるものに変わっていたのだが。
その心地よさに意識を陥落させつつあるアタシは理由なんか考えもしなかったし、こいつこそが泣きそうなツラ晒してたなんて気付く筈も無かった。
仕事を終えて戻って来たのは2日後の朝。
仕事自体は何の問題も無い。
どこぞの金持ちの依頼で、条約違反の保護動物の剥製をいくつか運ぶだけの仕事。
ただ船に揺られるだけ。
何もすることが無い退屈な仕事だが、金払いは割と良かったようだ。
普段なら、デッキにパラソル広げてビール飲んでご機嫌に昼寝でもするところだが、そんな気にもなれずにただぼんやりと海と空を眺めて過ごした。
クソ生意気な双子の片割れが、死の間際にお空がキレイなんてほざいていやがったコトを思い出す。
ああ、そうだな。綺麗だ。ムカつく程にな。
穢れなんか知らない、みてぇなその有様に、自分が嘲笑われているように思えて気が滅入る。
目を閉じると瞼の裏に、昨晩船に揺られながら新たに見た夢の情景が思い出される。
抵抗を諦めた後もサンドバッグにされた。
まだ男を受け入れるよう出来ていなかったアタシのヴァギナは裂傷で血まみれで、それを連中は「滑りが良くなった」と喜んだ。
血液が固まっては裂け、固まっては裂けを繰り返したソコ。
ベタベタの血餅が大量にこびり付いて徐々に使い物にならなくなると、連中は性器を使うのを諦めた。
刃物で脅し、アタシの血がこびり付いた全員のアレをしゃぶり、アスまで舐めるよう命じてきた。
イチモツにしゃぶりつくアタシの目の前で、殺すか否かを話し合う野郎共。
このまま殺されるのだと思っていた。
だから、何度目かの失神から目覚めた時に誰もいなくなったのを知って、神の慈悲だと思ったのだ。
アホくせ。
アイツ等にゃホームレスのガキ一人殺す程の度胸も覚悟も無かっただけじゃねぇか。
思い出したくもない連中の歪んだ笑い顔が次々浮かび、身体を這い回る手やこすり付けられるイチモツの感触まで蘇る気がした。
眠るとロクでも無い夢を見るモンで、ロックの膝の上で3時間程眠って以降、睡眠と呼べるものは殆ど取れていない。
南国の強すぎる日差しの下、日射病になりかけたところをベニーに発見されるまでアタシは目を見開き目に見えない何かに向かいブツブツと呟いていたらしい。
ダッチに放り込まれた海から恨めしげに船を見上げると、「ついにクスリに走ったか」という野郎二人の疑惑の目。
「だれがクスリなんか」と言いながら、それでこのやり場の無い苛立ちから楽になるんだろうか、何てロクでも無いことをが頭を掠める。
その後は「使えない」だの「ジャンキー」だの散々言われ、船内で武器の整備と点検でもしていろと命じられる。
そんなの仕事の前に終わってる、と言っても聞き入れられず、海水に晒され激痛の走る股間を庇って身体を丸め、縋るものを探す。
「いてぇ…クソっ…いてぇ、いてぇ…いてぇ……」
ガキん頃はカミサマだった。
今のアタシの頭に真っ先に浮かんだのは、ここにはいない男。
「ああ、もう、だっせぇ!だっせ、だっせ、だっせ…―――」
意味も無く笑えて来た。腹が引き攣り股間も痛む。
船倉で腹を抱えて大笑いするアタシのジャンキー疑惑が更に深まったことは言うまでもない。
港についたアタシ達をロックが出迎える。
無意識に顔を凝視していたのか、「何?どうかした?」と首を傾げて尋ねられた。
「何でもねぇよ」と顔を逸らすと、ヤツの口から小さくため息。
引継ぎを終えると「ジャンキーはさっさと帰って寝ちまいな」と帰宅を促される。
「ジャンキーじゃねぇ!!糞ダッチ!」
悪態を吐くも、無理矢理事務所を追い出されヨロヨロと自室へと足を向ける。
ドアが閉まる寸前、ナンとも情けない顔でこっちを見ているロックの姿が見えた。
…本当は一人にはなりたくなかった。
でもそんなコト言えるワケもねぇ。
自室のドアを開けると、そこは天地がひっくり返ったのかと思われる程の酷い有様。
あの野郎に犯され帰宅した後、無償にムシャクシャして目に付くものを片っ端から床にぶちまけたのだった。
あの夜の空気を色濃く残すこの部屋にはいたくない。
部屋に入らずそのままドアを閉め、行き先を考える。
事務所に行ったところで、何と言えばいい。
今日は日曜でエダは礼拝だ。ああ、そうだ、尼さん相手に懺悔でもしてみっか?…うわ…冗談じゃねぇ。
バオんトコもまだ開いてねぇし。
あーどうすっかなー。
あー、考えんのメンドくせ。もう誰んトコでもいいや。
アタシはフラフラと、澄み渡る灼熱の青空の下に足を踏み出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
この後の展開。
1.このままのノリでレヴィたんを完膚なきまでにボロボロにする。
2.嫉妬に狂った誰かさんに完膚なきまでにボロボロにされる。
3.超ベタベタな展開で誰かさんに癒して貰う。
4.このまま終わる。
※著者の嗜虐趣味により、「完膚無い」とは本当に完膚無い。
3
怖いもの見たさで、おっかなびっくり1
迷うなぁー・・・
2で!
(0゚・∀・) + ワクテカ +
5 完膚なきまでにぼろぼろにされるが、途中で自分をさいなんでいるのが誰かさんの仕込みだと知って
よけいに壊れるレヴィたん で、ひとつ。
3だろ、ここは。
そりゃ3だろ
でも折角だから、もちっとレヴィたん虐めてからでもいいか
とにかく、GJ!
しかし、新スレ早々4本目か
豊作だなぁ
72 :
65の中の人:2008/03/01(土) 22:43:55 ID:n/8PVBii
レヴィたんを虐めてもいいという、いい具合に頭湧いてる人が意外に多くて嬉しい次第です。
特に
>>69、悪い人ですね…。
その発想は無かった。
まぁ、どうするかは、これからちまちま考えます。
>>73 AZASUKEのやつよかったんだけどさー、やっぱりこう真実を知ってレヴィたんがショックを受けるところ
までやってみるのもおもしろいと思うんだよねえ。
ずぶずぶにはまりこんでから、とか、シチュエーション次第で色々面白くできそうだと思うんですが、ど
うだろうね。
いや、あんまりひどいのはみんなひいちゃうかね。
2→3のコンボで
>>75 ナルホドその手があったか。
2と3で禿しく迷ったけど1や2だけだと本当に救いのないまま終わっちゃうのかなー?とか色々考えちまったり。
何はともあれどの展開に動くのか楽しみGJ!
1→>>->>
2→>>->>
3→>>->>
4→>>->>
こういう選択もありかなと思う今日この頃・・
2→3だろ、常考
とりあえず、クライマックスを完全無欠のハッピーエンドにしてくだしあ
陵辱モノはほとんど投下されないんで
1みたいな展開が読みたいなー
でもそのままじゃ可哀想なんで1→3の展開で締めるとか
まぁどっちにせよ3は絶対だね
いずれにせよ期待期待。
83 :
65の中の人:2008/03/04(火) 02:39:23 ID:LBnwtJPo
こっちが恐縮するほどレス有難う御座います。
ご意見を拝見しつつ書いてみました。
……
…………
………………てぇ
……ぃ…ぇ…いてぇよ……
下半身の激痛で目が醒めた。
「!!!」
次に認識したのは、自らに圧し掛かる体重。
揺れる身体。
身体を揺らされる度に身体が引きちぎられるような痛みが走る。
何者かに奪われているのは瞬時に理解できた。
叫ぼうと息を吸うと、気管に上手く空気が流れない。
口にはご丁寧にも顎が外れんばかりのボロ布が詰め込まれていた。
更にご丁寧なことに目隠しまでされている、今が昼なのか夜なのかも解らない。
「んーーー…!!」
声にならない悲鳴を上げ、そこから逃れようとがむしゃらに暴れる。
強打される頬。上方から押さえつけられる腕。
『あの時』と同じ。
血の気が引き、青ざめていくのが自分でも解る。
幼い頃刷り込まれた恐怖に全身が震える。
「処女みてぇに震えてるぜ?」
「アソコも血まみれだし、まさか本当に処女じゃねぇだろうな」
「馬鹿か、ちげーよ。突っ込む前からだからこりゃ病気だ、何かの。変な汁も出てるし」
「こえー、じゃあ俺ぁアスにしとくか」
「何ならゴムあんぜ?」
「んーどーしよ、病気だよな、やっぱ」
声から、最低でも3人いると知れた。
「俺らもよぉ、長生きしてぇからなぁ。あんたに顔見られるワケにはいかねぇんだわ。」
違う、4人だ。
「その代わり殺さないでいてやるからよ。ちょっとばかし我慢して大人しく其処で股ぁ開いて寝ててくれや、トゥーハンドのお姉ちゃん」
―――イヤだ、もうイヤだ!イヤだイヤだ!!抜けよ!ブッ殺すぞテメェ!!痛ぇんだ!イヤ!!もうヤだ!!頼むからやめてくれ!!離せ!!
喉が潰れんばかりに声らしきものを捻り出して叫ぶ。
だが、当然のことながら声になどなろう筈も無い。
ただの呻き声だ。
84 :
65の中の人:2008/03/04(火) 02:40:43 ID:LBnwtJPo
喉にゴツゴツした手のひらが押し当てられ、そのまま絞め上げられる。
「大人しく寝てれば殺さねぇって言ったよな、姉ちゃん」
息が出来ない。
目からは生理的な涙が溢れ、目を覆う布を濡らす。
口を塞がれているため、咳すら上手く出来ずに全身が痙攣を起こす。
激しく痙攣を起こした膣の筋肉に締め上げられた野郎のイチモツがそのまま達したらしいのを、会話で微かに認識。
「汚ねぇ!!!」
一際大声で叫ぶ声。
わき腹を蹴り付けられる。
意識を失いながら、どうしてこんなことになったのかを考えた。
ああ、そうだ。
道端でぶっ倒れたんだ。
特に行くアテがあるわけでもなく、炎天下を歩き回っていた。
喉が渇く。視界が霞む。
何も考えずに出てきたため財布には僅かばかりの金しか無かった。
ビールくらいなら買える金。
小金を迷わず、普段小便と同じと言って憚らないそれに換え、喉に流し込んだ。
今思えば、前の日も何も食ってなかった。
その上極度の睡眠不足だ。
身体は相当参ってた筈。
熱だってあったかもしれない。
程なくして回る視界。
覚束ない足取りで日陰である路地裏へと場所を移すも、そこで意識が途絶えてしまった。
85 :
65の中の人:2008/03/04(火) 02:41:29 ID:LBnwtJPo
頬を殴打されて目を覚ます。
「てめぇ…小便引っ掛けやがって!!」
言って更に殴られる。
どうやら失禁しちまったようで、目隠しの向こうで、男がいきり立っている。
ゲラゲラ笑うその他の声。
ああ、『あの時』と一緒だ。
アタシの覚醒を確認すると間も無く、新たに犯された。
痛みしか感じないソコ。
もう、痛いのか熱いのかすら解らない。
こんな屑ばっかの街で、女が路地裏で伸びてりゃマワされるのは道理だ。
何もかも自業自得じゃねぇかよ、馬っ鹿じゃねぇか?
アタマで何となくそれを理解したところで身体の震えが止まる筈もなく、相変らずアタシの身体の反応は無様な有様。
小難しい言葉は大嫌いだが、コレが『トラウマ』ってヤツなんだろう、どうにもコントロール出来ない恐怖に震えるしか出来ない。
口のボロ布は既にヨダレでベトベトで、行き場の無い唾液が喉へと落ちて来る。
しかし、開いたままの口では嚥下出来ない。
鼻だって詰まって通らない。
緩やかに、緩やかに窒息していく。
―――…苦しい…痛い…痛い…痛い痛いよ、ロック…痛いし苦しいんだ…。
身体の突き上げが激しくなる。
ああ、そろそろか。
腹の底から湧き上がる不快感。憂鬱。怖れ。
目隠しの中で更にキツく目を閉じ、眉根を寄せる。
身体を竦ませ、震えながらも備えていると、またしても首を絞められる。
溢れる涙。
再び痙攣する四肢。
「やっべ、マジ締まる」
「だろ?クセになるって、コレ」
どうやら、ド変態共は首絞めプレイをお気に召したご様子だ。
―――イヤだ…苦しい…助けて…!!助けて…ロック…苦しい…!!
涙と鼻水を垂れ流しながら、アタシよりも遥かに貧弱で力も無い男へ助けを求める。
再び薄れる意識、だが意識を失う寸前で喉が解放され、気付けに水を浴びせられる。
だが、一時的に意識は回復しても呼吸は相変らず出来ねぇ。
―――苦しい…苦しい…取って!!息が出来ねぇ!!!
どこにそんな力が残っていたのか。
腕を押さえつける野郎の手を振り払い、口の布を取り払うべく手を遣る。
苦しい…けど痙攣して上手く出来ねぇ。
―――取って…!!!取って…!!!
震える手を必死で操り、口が解放される。
「ハッ…ゼェハァハァハァハァ…ゲホッ…ゲェ…ハァ…」
逆流する胃液。
口から黄色い胃液を吐き出しながら、酸素を取り込もうと必死に息を吸う。
……アタシってこんなに生き意地汚かったっけか……。
それともこれが本能か?
どっちにしても超だせぇ。
再度押さえつけられる腕。
相変らず犯され続けてるボロボロの性器。
絶望感に埋め尽くされる。
ああ、どこまでも『あの時』のまんまだ。
死んだ方がマシだ…そう思っても舌を噛み切る力も残っていなかった。
86 :
65の中の人:2008/03/04(火) 02:43:23 ID:LBnwtJPo
気付けば誰もいなかった。
その後何回犯されたかなんざ覚えてねぇ。
また仲間が増えて、アスと口にも何発かぶち込まれた。
犯される度に首を絞められ、解放されて、叩き起こされまた絞められて。
ぶっ掛けられる水を貪り、僅かばかりの水分を補った。
あまりの渇きに、無意識のうちにあいつらの小便すら舐め、ゲラゲラ笑われた。
消耗によって弛緩する身体に、アイツ等もどんどん本気で首を絞めるようになって、
「死ぬ時が一番よく締まる」と、誰が試すかで盛り上がっていやがった。
だから多分最後は殺すつもりだったハズ。
何故だかしぶとく生きてやがるがな。
目隠しを外すと目の前には窓があった。
窓の外には青空。
切り抜いたみてぇな直線的で四角い青空。
あー、これも一緒だ。
ならばあの時と同じように、今はただそれを眺めて途方に暮れながら横たわっていよう。
運がよければあの時のように助かるかもしれない。
それに……疲れた。
動きたくねぇ。
あーあ。
何だかな…。
会いてぇな…。
死ぬのかな、このまま。
…こんな死体、見たら…どんなツラすっかな…見ものだな…
あ、死んだら、見れねぇんだ…ち…くしょ…
最期に会いてぇ…会いてぇよ……
会って、抱き締めてくれさえすりゃ…それで死んでもいい……
……あ…れ?…誰に…会いてぇ…んだ…け?
……もう、何か…ぃぃ…ゃ…どう…でも……
…何も…考えたく……
……
意識が朦朧とし、薄れていった。
87 :
65の中の人:2008/03/04(火) 02:44:24 ID:LBnwtJPo
次に気付い時、霞む視界の先にあったのは見慣れた天井だった。
あれ。何処だっけ。よく知っているのに思い出せねぇ…。
………そうだ、ロックの部屋の天井だ…。
水場でバタバタしている気配。
目を遣ると、桶を抱えたアイツが近づいて来る。
「レヴィ!!」
目が合った瞬間、中の水を溢さんばかりに駆け寄って来た。
アタシの手を握り、頬摺りすると
「今拭いてあげてるから。済んだら病院に行こう、ちゃんとした街のだ。」
そう言って、上半身を抱え上げ、何だか微かに塩辛い砂糖水らしきものを含んだガーゼをアタシの口に入れ口腔を潤す。
それを身体に取り込むべく無意識に口が動く。
「ゆっくりだ」と言われながら何度かそれを繰り返すと、「あとこれだけだから」と話しかけながらタオルで背中を擦る。
…さっきから震えが止まらない。
何が起こっているのか解らない。
あの時は、雨水と、あいつ等の食べ残しを漁って這うだけの体力を回復した。
拾ったのは巡回中の福祉センター。
なのに、どうして今アタシはコイツの部屋でコイツに身体を拭かれてる?
どうしてあの時と違うんだろう。
そして、どうしてこんなに……
「……さ、む…ぃ…。」
度重なる絞首と胃酸による爛れで痛む喉から、どうにかそれだけ絞りだす。
本当に寒くて仕方ない。
「熱、上がってるね……でも冷房切ってるから、ここ30度はあるよ…?」
必死に頭を振る、此処が何度だろうと関係ない。
「…さむ…い…んだ…」
震えでガチガチと歯の根が合わない。
「…待ってろ。」
ヤツはそう言ってクローゼットを漁るも、この熱帯の街で毛布などある筈もなく。
シャツや綿のパンツを何枚も着せた上から日本に行った時に着ていた冬用のジャケットとコートとあらん限りの布を巻きつけると、
用意していたらしきクーラーボックスとアタシを肩に担ぎ上げた。
酷ぇ。荷物と一緒か、アタシは。ここは両腕で抱き上げるトコだろ。ホントに貧弱なヤツ。
88 :
65の中の人:2008/03/04(火) 02:44:58 ID:LBnwtJPo
車では何故だかベニーが運転席にいて、アタシ達は後部シートに納まった。
いつかのように膝枕される。動き出す車。
「どうしたの、ソレ」
「寒いんだって。かなり震えてる。熱も上がって来たよ」
額に、濡れたタオルのひんやりした感触。
「うわぁ…まずいねぇ……」
「うん。悠長に身体拭いてる場合じゃなかった。だから急いで貰っていいかな」
「了解。」
頭上で交わされる会話。
何がまずいのかとか、そんなこたぁどうでもいい。
また会えたコトが嬉しい。
落ちるところまで落ちた体力を振り絞って、腕を上げる。
「何?」と顔を寄せるコイツに口の動きだけで「抱き締めろ」と伝えると、膝に座らされ肩を抱かれる。
ガタガタ激しく揺れる車内。身体がずり落ちそうになるのを、両手で支えてくれた。
コイツの肩に頭を寄せ、至近距離で顔を眺める。
こいつはまた例の変な味のする砂糖水を繰り返し口に運び、アタシはそれをピチャピチャと貪る。
「…さ、むい…んだ。」
「うん。」
身体をさすってくれる。
「あのときも…お…なじ、だ…たんだ」
「なに?」
「イタくて、くる…しくて…たすけてくれって…ずっと、よんでた…こわいって…だき、しめてっ…て…」
「うん。」
うわ言のようなアタシの呟き。
ロックはアタシの口に耳を寄せて聞き逃すまいとする。
「…ロッ…ク……ロック……ロッ……ク………らくに、なりたか…った、ん…だ…」
何から?と問うヤツの声を聞きながら、またしても意識は沈んでいった。
それからは何度か極短時間の意識の浮上と沈下を繰り返した。
ある時は、髪を撫でるロックの手を感じた。
ある時は、またガーゼで口の中を潤わされていた。
ある時は、ロックが包んでくれた布から引きはがされ、裸にされた。寒くてアイツの名前を呼んだ。
ある時は、腕に針を刺されて「いてぇ」と呟いた。
意識の回復と呼べるものをした時、知らない建物の廊下で毛布に包まれてた。
何か、腕にはやたら針と管が繋がってる。
看護婦がやって来て寝台を押す。
アタシと目が合うと、タイの言葉で無愛想に何か言った。
全く働かない思考で、耳に入った言葉を咀嚼し、英語に翻訳する。
「今説明を聞いている」多分こんなような意味だ。
まぁ取り敢えず視線だけで聞きたいコトは伝わったらしい。
そのまま大人数が集まる雑居部屋に移された。
一応女ばっかの部屋。
周りから聞こえるのはタイ語ばかり。
いかにも死にぞこないの新入りに向かって何か話しかけて来るが、疲れるので聴かないことにする。
ロックは普段英語をこんな風に聞いているんだろうか…?
…いや、喧嘩できるし…もっとマシか。
程なくして、誰かが足元辺りに腰掛ける気配。重い瞼を上げると、傍らからこちらを覗き込むロック。
座っていたのはベニーだった。
「レヴィ?寒くない?」
耳元で問う声。
目線で頷き、寒気は無いことを伝える。
「心配した」
「……そう…か。」
瞼が重い。
「ロック、僕は一回戻る。ダッチに報告もあるしね。君はどうする?」
「ああ、まだいるよ。必要ならタクシーで帰る。ありがとう、ベニー」
そんな二人の会話を意識の狭間で聞く。
ベニーはアタシの側に寄ると「レヴィ?」と彼を見るように促し、ニィっと笑って「心配ない」とだけ言って帰って行った。
再び瞼を下ろすとアタシの頬に貼られたガーゼを撫でる手。
でも、もう瞼が上がらない。
瞼を震わせながら睡魔と闘っていると、両方の瞼に唇の感触。
寝る前の挨拶。
寝ろってコトか。
周りの女共が何やら冷やかしている。
南国の女ってのは…うるせぇ…お前等病人じゃねぇのかよ。
瞼に続いて、渇いた唇に降りてきたそれ。
自らの潤いを分け与えるかのように何度も何度もそこを啄ばんだ。
人前でのその行為を珍しいとは思いつつも、やっと手に入れた安息の時間は手放しがたく。
アタシは赤ん坊が乳を強請るように、上下の唇を舐めたり動かしたりすることで『もっとして』と強請ると、そのまま眠りに落ちていった。
抗生物質が効いてアタシの容態がある程度安定した時点で我が侭を言って病院は引き上げた。
通院はしなけりゃいけねぇが、長居したい場所じゃねぇし、周りに人が居ても独りだからな。
敗血症を起こしかけてたと聞いた。
肋骨2本にヒビ。アソコは化膿したり、組織が変に癒着した後に剥離したりで、なかなかアレなカンジだったとか。
そして、あと少しで子供を絶対に産めなくなっていたとも。
現状でも、正常な妊娠は難しいとか何とか…?…ま、どうでもいいけど。
「ガキなんざ要らネェし、どうせなら産めねぇ位で丁度良かったんじゃねぇの?中で出し放題じゃん?」と笑いながら言ったら怒られた。もの凄く。
病院を逃げ出してからは、ロックの部屋でまどろんで過ごした。
アイツはアタシが訊いたことに、色々答えてくれた。
アタシが事務所を出てから、3人でアタシのコトを話したこと。
昼過ぎに様子を見に行くと鍵が開いている上に中が滅茶苦茶だったこと。
丸一日探し回ったこと。
酒場で、酔っ払いが道でノビてた女をマワした話をしていたという噂を聞いたこと。
思わせぶりな態度から有名人だと知れたということ。
酒場の近くを虱潰しに探し回ったこと。
ロックはアタシに何も訊かなかった。
朝二人でメシを食って、病院に送られ、夕方迎えに来たコイツとコイツの部屋に帰って、二人でコイツの作ったメシ食って、TVを見て、キスをして。
ベッドに入って、服を着たまま身体を絡ませ、じゃれ合う。そして暗闇を好まなくなったアタシのためにロックが買ってきた間接照明を点して眠る。
毎日大体そんなカンジだ。
アタシの不安は未だに燻ってる。
楽になりたいのに、その方法が解らない。
今はロックの部屋で、ロックの部屋着に身を包み、ロックの庇護の下で息が出来ている。
けれど…。
退院してから暫く、ロックはアタシの傷や痣を撫でたり舐めたりしたがった。
喉首の絞め跡が一番多かったが、耳の後ろもよく舐め回した。
事務所でずっとなぞってた場所。
堪らなく泣きたくなる。
そもそも、コイツは言わないが、あんな短時間でアソコが癒着したり化膿したり、敗血症を起こしたりする筈が無い。
間違いなくコイツはマワされる前のコトにも気付いてる。
アタシを抱き枕にして寝息を立てるコイツ。
この場所は好きだ。
でも、いつ追い出されるかと不安でならない。
淫売を手元に置いたっていいコトなんざありゃしない。
「レヴィ。」
突然名前を呼ばれる。
「起きてるだろ。」
イキナリ断定か。いや、実際起きてるんだけどよ。
「ああ」
嘘を吐いても仕方ないので肯定してみることにした。
「俺も、ずっと起きてた」
「嘘吐け。スヤスヤ寝息立ててただろ、お前」
「寝たフリしながらずっと考えてた」
「…………。」
何を、なんて訊ける筈も無い。
それを知っていて敢えて、のコトだろう。
コイツは問うて来る。
「何を?って、訊かないのか?」
「……訊いて、欲しいのか?」
声は震えていないだろうか。
「レヴィ。俺、知ってるんだよ…」
そう、搾り出すように告げるロック。
………何を、なんて聞きたくねぇ。
アタシはこのまま心ん中で燻ったままの不安要素を引き出しに押し込むなり、免疫を付けるなりして気にならなくなればそれでいい。
でもソレはアタシん中の話であってコイツには関係の無い話。
だから。
「何も言うな。」
そう言ってロックの唇を塞ぐ。
わかっていたことだが、ロックはキス程度で懐柔されるつもりは更々無いらしい。
しつこく唇に吸い付くアタシを引き剥がしてベッドに縫い付ける。
「ロック、肩が痛ぇ。離してくれ」
「どこぞのジャンキーが言い触らしてる。トゥーハンドを買ったって」
血の気が引き思考が停止する。
世界中から売女だと蔑まされている気がした。
「ただ、コレに関しちゃ今のところ誰も信じちゃいない。ヤク中の妄言扱いだ」
「…………。」
「でも時期は一致するんだ。レヴィが不自然な痣を付けて怯え始めた日と、ソイツが『妄言』を吐き始めた日」
イヤだ。
ヤメろ。
これ以上コイツの口からこんな話聞きたくない。
コイツに淫売の烙印押されれるなんて耐えられない。
コイツに押されるくらいなら、自分自身で押してやる。
「だから…だから…何だって?アタシが何処でどんな理由で誰と寝ようとアンタには関係の無い話だ。つべこべ言われる筋合いなんか無ぇ…!!
アンタはアタシの何だ?恋人か?まさか!!アタシとアンタの間に何がある?愛情?違う。
お互いがお互いにとって低リスクで性欲を処理出来る都合のいい道具のハズで、お互いの間にあるのは利害関係のハズだ…」
ロックは傷ついた顔でアタシを見下ろす。胸が痛むがアタシは一度吐き始めた嘘を止めることができない。
「だからよ、低リスクの野郎が居りゃたまには違うブツも味わってみてぇと思ったって悪いこっちゃねぇ。
そしたらちょうど丸腰のジャンキーが看板に話掛けてやがったからよ、看板に成り代わってやったんだ。途中でシラフに戻りやがったがな」
「レヴィ。」
ロックは『もう黙れ』と言いたげに首を振る。黙るなんて恐ろしいことが出来るハズねぇ。喋り続けていねぇとおかしくなりそうだ。
「だから……だからよ、その…、そう!だから!無駄な詮索は今の好都合な利害関係を壊すだけだ、アタシは少なくともアンタとの関係が気に入ってる。
今は、アンタに頼りっぱなしだからよ、その…あ…アンタがその…こ、こ…こんな負債ばっかの女もう要らねぇってなら……仕方ねぇけど…」
「……レヴィ。もういいから。そういう話は泣きながらするモンじゃない」
思わず目に手を遣るが、アタシの目は何処も濡れちゃいなかった。
「誰が泣いてんだよ、いつも通りだ」
「泣いてる。」
「泣いてねぇ。」
「泣いてる。泣きたいって顔してる。なぁ、レヴィ。俺があの日から考えてるのはさ、どうすれば本当のコトを言ってくれるか、ってコトなんだよ」
「今のが真実だ、認めろ、ボーイ。あとやっぱ泣いてねぇし」
「今のハナシで本当なのは『看板に成り代わった』と『俺との関係が気に入ってる』だけだ。」
大当たりだよ、おめでとう!心の中で銃弾の祝砲をプレゼント。
唇を噛んで射殺さんばかりに睨みつける。
「レヴィ。鏡見せてやろうか?俺のこと睨んでるつもりだろ、全然怖くもナンともねぇ。顔が『助けて』って縋ってるんだよ。
お前を買ったジャンキーが何て言ってるか教えてやろうか、『初めてみたいに震えてた』、だ。お前をマワした輩も同じようなことを言ってたって」
あんなおツムの壊れたヤク中にまで見透かされてやがった。
気丈にしてたつもりなのに。
「……あ…ぁ…ぁ、あの野郎殺してやる!!!殺してやる!!!離せ!!離せぇぇぇぇっぁぁぁああぁあああっ!!!!殺してやるっっ!」
治りかけの喉を酷使し、金切り声で叫ぶ。ロックの下から抜け出しベッドを降りると、腕を掴まれ引き戻される。
「落ち着けって。誰も信じちゃいない。クールに考えろ」
ヤツの正面に無理やり座らされ、頭からすっぽりシーツで包まれた。まるっきり猛獣扱いだ。
なけなしの体力を使ってシーツの中で喚き暴れるアタシを宥めると、コイツは続ける。
「何もなけりゃ鼻で笑って終わりの話だ。わざわざ尾鰭や信憑性をくれてやることは無い。
けど、このまま俺にすら本当のコトも言わねぇで、いつまでもビクビクし続けるつもりなら、それはそれで信憑性が付加されるだろうな」
言葉が出てこない。
「…俺もさ、レヴィとの関係は割と気に入ってる。お前がお互いを性欲処理の道具だっていうならそれはそれでいい。」
…………全くもって良くねぇよ。少し傷ついた。思っても自分からそう言った手前、逆立ちしたって言えねぇが。
相手に言われると、正直キツい。
「だから、関係を維持するために…いや、違う。そうじゃない、違う…」
言葉を捜してブツブツと逡巡し始めるロック。
そして、混乱した口調で捲くし立てる。
「……そう、そうだ…レヴィ。残酷だ。とてもとても残酷だ。」
そして、全く意味が解らない。
「…ずっと一人で考えてた。いつどうやって話を切り出すべきか。話を切り出すのも怖くて怖くて堪らなかった。今も怖い。」
「……。」
「お前は事務所で眠った時からずっと、腕の中でも、病院でも、食事の時も、抱き合う時も、…ずっとずっと縋るような目で俺を見るクセに!」
興奮しているのか、どんどん感情的になっていく声。
「楽になりたいって…そう…言った、のに…なのに何処から…救い出せばいいの、かも…教えてくれない…ッ…」
……泣いてる……。
コイツは甘ったれだが、泣くなんてことはそう滅多にない。
会社に捨てられた時も泣いてはいなかったよな。
シーツの中から、声を掛けた。
「野郎が泣くなよ。」
「泣い、て…ない。」
「泣いてるだろ。」
「泣いてない!…見え、て…ない…だろ?」
確認するかのように、言う。
「…………あぁ。そうだな。何も見てない」
だから、肯定する。
「だから…さ、レヴィがッ泣いても…俺、には見え…ない」
そう涙声で言ってシーツごと脚と腕で抱え込まれる。
…コイツの言うとおりなんだと思う。
アタシはずっとずっとずっとずっとずっと無言で縋ってたんだろう。
そして、コイツはその度に傷ついて、最終的にガキみてぇにベソかく位それを溜め込んだ。
コイツへの贖罪はするべきだ。否。しなければならない。
贖罪の方法も知っている。
でも。
その前に、少しの間だけ泣くコトにした。
二人分の嗚咽が部屋を埋めていく。
シーツに匿われたアタシは、思いつくままに口にした。
ニューヨークではいわゆるストリートチルドレンだったこと。
ねぐらで眠っていると、裕福なガキ共が入ってきて、物のように殴られ、犯されたこと。
年端もいかねぇガキにとって、それがとてつもなく痛くて怖かったこと。
そいつらが、怯えるガキを指差して楽しそうに笑ってたこと。
犯されながら目に入った窓の外が青空で、それが嫌味な位綺麗だったこと。
最後は涙も出なかったこと。
それでも馬鹿ガキは健気に神を信じてたこと。
自分によく似たガキを見たこと。
纏わりつく記憶から、何でもいいから楽になりたかったこと。
楽になろうとして、あろうことか身体を売ったこと。
そこから、ロクでも無い方向に転がってしまったこと。
支離滅裂でブツ切れの言葉の羅列を、時折相槌を交えながらロックは辛抱強く聴いていた。
「気持ち悪かった。」
「うん。」
「野郎がイった瞬間、汁が腹ん中で広がるんだ」
「…うん。」
「いつもそうなんだ、その瞬間が一番嫌いだ」
「…。」
「身体の髄から汚された気がする。なのに穴は悦ぶみてぇにヒクヒク震えるんだ」
アタシは、重苦しい空気から逃げ出したい一心で少し饒舌になる。
「だから掻き出したんだ。あんな穴いらなかった、何でも突っ込まれりゃ悦びやがって…どんな野郎のモノでも受け入れやがる」
興奮し、語気と呼吸が荒くなる。
ロックは『落ち着け』とでも言うように、アタシの背中を叩いた。
「でもいくら爪をたててほじくっても届かないところでどんどん沁み込んでく気がして、歯ブラシ使って奥まで擦ったんだ。」
「……は…歯ブラシ?」
「安モンだから硬くてよ。気付いたらアソコが血まみれだった。生娘でも無ぇのによ、ハハ、ハ」
「…。」
「…おぃ、どうした笑うとこだぞ…。」
「……悪いけど、とてもじゃないが笑えない。」
ロックは痛い位にアタシを引き寄せ、日本語でブツブツと「ナキソウダ」とか「バカヤロウ」とか「メマイガスル」とか何とかほざいてやがる。
……重苦しい空気が軽くなることは無かった。せめて喋るなら英語で喋りやがれ。
「お前が気に病むようなコトじゃない。アタシのやりたいようにやった結果だ、全てアタシの自業自得ってヤツだ。」
「レヴィ。」
「ナンだ?」
「俺、もうナンか、ハゲそう…」
シーツ越しのアタシの顔にグリグリと頬ずりして来る。
「何だよ、イキナリ」
「それか総白髪だ…」
「……続き聞くか?」
何か、もう、色んな意味で参ってる様子のコイツに一応聞いてみる。
「…他にあるなら……」
相変らずグリグリしてる。
「つっても…後は知っての通りだよ、道で倒れて、何度もマワされて殴られて首絞められて、半殺しにされた。」
「…やっぱ、ハゲる」
脱力しながらぼやく。
「何だよ、だから聞くか?って訊いたじゃねぇか」
そんなアタシの突っ込みを無視して尚もぼやくロック。
「何で何も言わなかったかなぁ…俺も、ダッチも。ベニーだって、お前の話を聴く気がない程ケツの穴が小さいワケじゃない」
「知ってる。そんなコト。」
そう、知ってるのだ。何だかんだ言ってアタシの雇用主と同僚達は面倒見がいい。
「ダッチなんてお前には『休みの間のペイは無い』とか何とか言ってるけど、ヘコんでる」
あ、やっぱ無いんだ…つーか初耳だ、直接言いに来いよ。
「『海にブチ込まなければ』とか『無理矢理帰さなければ』とか、IFの話ばかりだ」
「結果論じゃねぇか、ソレ」
「そ。今回のコトで悪いのはお前。なのに全員で肝を冷やして、今も全員IFの話ばかりしてる。」
何だよ、人の居ねぇトコで野郎3人何の話してんだ…。
「で、俺も含めお前に怒ってる。お前の行動如何で回避する方法は幾らでもあったってな」
「…ど…どうしていいか解んなかったんだよ!!」
思わず声を荒げる。
「終わったことを今更責めるつもりは無いんだ。床にぶちまけちまったミルクを今更嘆いたところで仕方ない。
ただ、生きていてくれて良かった。間に合って良かった。それだけだ。
……でも……でもさ…、こんなのは二度と御免被りたいんだ。俺はまだ白髪にもハゲにもなりたくない。頼むよ」
ロックはそう懇願すると、子供をあやすようにシーツに簀巻きにしたアタシごと身体を揺らす。
アタシはぴったりとコイツの身体に寄りかかる。
しばらくはそんな風に揺れながら、何もせずに、何も言わずに過ごした。
「それで。これから先、楽になるにはどうすればいいと思う?」
そんな心地よい沈黙を破ってロックが問う。
「……わかんね。でもよ、大の男に『俺はまだハゲたくねぇ』ってベソかかれるのは御免だからな、数こなして馴れてくってのはやめとく」
「………ぁ、有難いよ……」
「でも、泣いてゲロって大分スッキリした。」
「それは良かった。」
「…一人じゃ泣けないんだけどな」
「その時はまた一緒に泣こうか」
返事の代わりに甘えるように身体を摺り寄せる。
スッキリしたのは本当だ。
だが何よりコイツに受容され、安心した。
コイツの傍だと、怖くない。
口に出しては言わないが。
その代わり、さっきからずっと引っかかっていることを訊いてみることにする。
「なあ。」
「ん?」
「ホントに性欲処理の道具だと思ってるのか?」
「…レヴィが先に言ったんだろ」
「ああ、だからどうした?アタシはお前がどう思ってるのか訊いたんだ」
「うわ、何だそれ…訊くなよ、そんなコト…」
不機嫌に大きくため息を吐く気配。
やっぱ面倒なコトを訊いた…不安と後悔が募る。
「普通さ、ダッチワイフの為にみっともなく泣いたりはしないだろ。大事で大事で仕方ないんだ。口に出して言ったことは無かったけど。」
そう言って、シーツからアタシの顔を覗かせると、耳元でこっそりと「I love you」と囁いた。
続いて落ちてくるキス。
何だよ、このベタベタなC級映画みたいな展開は!柄じゃ無ぇんだよ!
自分で話を振っておいて、アタシは赤面したまま二の句を継げない。
こいつはそんなアタシを嬉しそうに眺めながら、更にとんでもないことを抜かしやがった。
「何か、ウェディングドレスのヴェールみたいだね」
こいつ頭湧いてる。間違い無い。こいつこそクスリやってるに違いない。
そう思ってるのに、口を吐くのは別の言葉。
「……こんな男物の部屋着着た花嫁があるかよ」
「じゃあホンモノ着る?」
「…冗談じゃねぇ…。誰が着るか馬〜鹿!!」
暫くして、仕事に復帰した。
アタシの身体が本調子になるまで、撃ち合いになりかねない金になる依頼は断った、あの雇用主様は。
やれと言われりゃ何だってやってやるんだから、仕事選ぶことは無いってのによ。
それでも足手まといならアタシに留守番させりゃいいだけの話。
今まで何となく役割が決まっていたが、操縦ならベニーが出来る、撃ち合いならダッチが出来る。
ロックだって海図やレーダーくらい読めるようになっているのだから、問題無いのだ。
だから、アタシが休んでる間は、そんな類の依頼も普通に受けていた。
……つまりは、役立たずでも働いていたという実績があればペイが出せる、そういうコト。
変なところでアタシに甘い。
そんなワケで、この間のラグーンは本当にただの運送屋だった。
ロックもロックで、傷が治るまで、どんなに迫っても絶対にアタシを抱かなかった。
そのクセ完治のお墨付きが出た途端、お預け喰らってた犬みてぇにハァハァがっついて来て、何か笑えた。
でも、ずっと我慢してたんだ、と思うと愛おしくて仕方なかった。
アタシは、生身で抱き合ってみたくてロックにせがんだが、ヤってみるとやっぱ気持悪くて仕方なかった。
刷り込みってヤツだ。
中に出された不快感を隠しもせず、顔を顰めて「キショクわりぃ」とか「うわぁ…」とか呻くアタシに真剣にヘコむロック。
何かの冗談のような光景。
何度かヤってみたが、どうも毎回そんなカンジだった。
それでも、それがアイツのものだと心の底から納得出来てしまえば…まぁ、何とかなりそうだ。
だから、そのうちにまた試してみるのも悪くは無いと思ってる。
そして、一つ。
つい考えてしまうこと。
ガキは出来にくいらしいが、もしも何かの間違いで出来ちまったら。
この街でどんなツラしてどんな風に育つのか。
昔のアタシや、あのガキみてぇに可愛げの無いツラしてるんだろうか。
それともあの双子みてぇになるのだろうか。
アタシはちゃんと親になれるんだろうか。
でもロックは…ソツなくこなしそうだよな。
あ!アイツに育てられたら南米のお坊ちゃんみてぇになりそうだよな、それも困る。
何にせよ、周りは意外と面倒見のいいヤツばっかだし、それなりに育つだろ。
何だ、案外何とかなるじゃねぇか、うん、大丈夫だ。
…………………って…ま、試してみる気なんか無ぇんだけどよ。
例のガキだが。
次会った時には偉そうに人生の教訓の一つでも垂れてやろうかと密かに思っていたのに、あれ以降二度と見ることは無かった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暇に任せてやっつけ仕事です。
何か、やっぱ3って人が多いみたいなので、完膚無くではないものの虐めてオッケー派も汲みつつ、
「レヴィたんをもうちょびっとだけ虐めてから〜」ルートを取ってみた。
お陰で無駄に長い。
しかも無駄に乙女。誰コレ。
色んな意味でドン引きされない最低ラインを意識したのですが、ドン引きさせたならごめんなさい。
ツンデレ分が足りない。
中田氏は嫌いなのに試してみたいレヴィたん。
家族計画妄想しておいて試す気無いとか否定するレヴィたん。
そんな解説が必要な不完全なツンデレ。つまりデレてるだけ。
暇人の遊びにお付き合いいただき有難う御座いました。
くそ、65の中の人め!!
ロックじゃないが、禿げ上がるほどにGJなものを見せやがって!!
お前なんか神だ!!
中の人よ、なんということをしてくれたんだ!
こんなもん投下して、GJとでも言って欲しいのか!!!
……畜生!GJだ!!!
なんだ、これは
ひどいSSだな……
ひどいSSだ
実にひどい。
こんなひどいSSで
抜かれる奴の気持ちを考えたことはあるか?
(読、読、読)
おや、
なかなか悪くないな、
このSSは
>>97 ぐぐぐぐぐぐGJ!!!!!!
&乙!
これが所謂 ネ申 というやつか!!
ありがたやありがたや
サラっとプロポーズをスルーされてる・・・?
カワイソス…
ようやく学園ロクレヴィ続きです。
思いっきり少女マンガみたいにしよーと思ったんだけど、なってるでしょうか?
あとちょっとオリキャラ出てきます。苦手なヒトはスルーで
<レヴィ>
「ひゃっ!」
突然横から出てきた、片目だけ腫上がった着物姿の女を見て、あたしは思わず声をあげてしまった。
そんなあたしの姿を見て、ロックがこらえきれずに笑い出す。
──う、うるせえな。これで何度目だ?
もう言い訳出来ないくらいに声をあげてしまっている。
「に、日本のお化けってなんでこんな意味のないことをやるヤツが多いんだよ!
そろって恨めしそうな顔するだけで、追いかけてくるようなこともないし!」
笑われたままでは悔しいので、そう主張してやる。
あたしに問われて先生が苦笑する。
「どうといわれても……確かに西洋のものと違ってあまり積極的には見えないけど、たとえば赤い服の女の子の話とかはのろい──」
「だーっ! ん、んな話しどうでもいいんだよ!!」
大絶叫で話を速攻で中断させる。
「はいはい、ほら行くよ」
再び手を引かれて薄暗い墓場を進んでいく。
ガキの頃に聞いた、日本の怖い話のせいですっかりあたしはこういうものが苦手になってしまった。
それにどうしててこう日本のお化け屋敷つーのは、こんなに意味のないことを繰り返すヤツが多いんだ?
井戸から出てきた女が皿を数えるのを横目で見ながら、あたしは思わずにはいられなかった。
なかなか良くできてるなあ、と感心した声を上げるロックとは対照的にあたしはなるべく脇をみないようにしながら暗くて不気味な場所を歩いていた。
青と緑の光が辺りをかすかに照らし、不気味な演出をさらに不気味なものにしている。
別にこんなもんは怖くなんかない。怖くなんかない。
……なんか気持ち悪いだけだ。
横をどういう仕掛けかわからないが、火の玉らしきものが通っていく。
そのたびにあたしの身体はびくりと震える。
ロックは苦笑して軽くあたしの肩を叩くと、掴まれていた手を繋ぎ直して、またゆっくりと歩きだす。
その子供を宥めるような仕草にあたしは安心すると同時に、小さな失望を覚えた。
──こいつにとってあたしはそこらのガキと同じなんだろうか? もしくは妹みたいなもんだと思ってんのか……?
「……ずるい……」
思わず声が漏れる。ひらひらしたレースをつまんでみる。
あたしはこいつのせいでこんなもんまで着るハメになったのに。
先を歩くロックの背中を見つめる。
あたしの呟きは聞こえなかったらしい。
小さく溜息をつく。
こいつは少しはあたしのことを気に掛けていてくれてるんだろうか?
生徒じゃなくて……女として。
──さっきの頬についてるものを拭ったのもそうだけど、こいつにとってあたしは女じゃなくてガキだから、気にせずにああいうことが出来たんじゃないか?
ぐるぐると思考が嫌な方へ向かっていく。
──もしかしたら、もう女がいるとか……?
その考えに辿り着いたときに、身体が硬直してしまった。
身体が小刻みに震えてくる。
あたしの変化に気づいたのか、ロックが振り向いた。
「──レヴィ、どうしたんだ? もう少しで出口だと思うから頑張って──」
「──先生」
気遣うような台詞を遮り、握った手に力を込める。
顔を上げると、戸惑ったような表情のロックがいる。
「……あの……な……あたし……」
声が震えてる。
ガラじゃねえのに。
でも。こいつを誰か他の女に奪われるのは嫌だった。
この薄暗い中でもはっきりと、先生が息を飲むのがわかる。
「……あたし先生が──」
「先生!!」
唐突に女の声が響いた。
──あたしの決意に割り込んだヤツはどいつだ……?
後方を睨みつける。
と、そこに見知らぬ制服姿の女が立っていた。
……お化け役の誰かか?
邪魔した覚悟は出来てんだろうな?
きつく睨みつけるが女はあたしになど目もくれず、まっすぐこっちに向かってきた。
「先生」
ロックの正面に立ち、もう一度確認するように呟く。
そして──そのままロックに抱きついた!
──ブチッ!
……今、確かに自分の血管が切れる音を聞いた気がする。
ロックは一瞬、自分の状況が理解出来てない様子だったが、すぐに慌ててその女を引き剥がそうとした。
だが、女はロックにしっかりしがみつき離れない。
「──き、きみ誰かと勘違いしてないか?」
「私が先生を間違えるはずありません!!」
即座に言い返し、絡めた腕に女が力を込めた。
シャツにますます皺が寄るのに比例して、あたしの眉間にも皺が出来る。
とっくに我慢の限界は超えていた。
──許さねえ!
「てめえな──」
ともかくその女をロックから離そうと、あたしが動いたときやっと女がこちらを見た。
その目がすっと細くなる。
闇と同じその色に、何故かぞっとした。
──そんなものは見慣れているはずなのに。
女がうるさそうにあたしに向かって手を払うような仕草をする。
馬鹿にされたような気がして、あたしは掴みかかろうと腕を振り上げた──つもりだった。
──なんだ? 身体が動かねえ。
この女に飛び掛かれと、いくら身体に命令してもぴくりとも動きやしねえ。
どうなっていやがる?
その間にも女はロックに迫っていく。
混乱したロックの首に腕を回し、身体を摺り寄せ迫っていく。
ロックは目を白黒させて、離れようと必死になっている。
「先生、私ずっと待っていたんですよ」
ロックの目を見つめる女の潤んだ瞳。
それを見てしまったせいか、ロックの動きが止まってしまう。
──なにしてやがる!
その僅かな瞬間を狙って、女の顔がロックの顔に近づきそのまま唇を重ねた。
──!!!
ロックの目が見開かれる。
と、同時にその瞳から急速に光が失われていく。
──……なんだ……?
抵抗していた腕が一度、下ろされ──ゆっくりとその手が女を引き寄せる。
女が幸せそうに胸に顔を埋めた。
──……イヤだ……ヤメロ……!!
そんな女を大切そうに、違う誰かを──あたし以外の女を抱くなんてイヤだ!!
あたしの心の叫びは音にならず、口からは息が僅かに漏れただけだった。
女が顔を上げ、ロックを見つめなおす。
その顔をロックの手が優しく包む。
女が微笑む。ロックが口を開いた。
──ヤダヤダヤダ! 先生!!
「──レヴィ」
──……え……?
女の表情が固まる。
その瞳に透明な液体が溜まっていく。
その液体が流れ落ちる前に、ドンっとロックを突き飛ばすと、女は走り去っていた。
すぐにその白い姿は闇の中に呑まれていってしまう。
ロックは衝撃をモロに受けたらしく、床に座り込んでしまっていた。
今の女はなんだったんだ?
「──ろ、先生!!」
先生の元へ走り出す。
いつの間にか身体は自由に動けるようになっていた。
ロックの傍にしゃがむと、どこかぼんやりとした視線を返される。
「先生、大丈夫か──わっ!」
急に腕を勢いよく引っ張られ、不安定な姿勢もあってそのまま抱き寄せられる。
さっきまであの女を抱いていた胸の中に。
ぎゅうっと強く抱きしめられる。
驚きよりも幸福感が胸を満たす。
大きく息を吸い込む。
──ロックの匂いだ。
胸に顔を摺り寄せる。
柔らかく頭を撫でられて、そのまま手が頬に滑ってくる。
顔を上げるとロックと目が合う。顔が近づいてくる。
他の誰かじゃなく、ちゃんとあたしを見ている。
──コイツはあたしんだ。誰にもやんねえ。
キスを受けながら、首に腕を回す。
ロックが胸のリボンを外す。
少しは慌ててもいい気がしたが、このときは何故か自然なことだと思えた。
緩んだ胸元を下に下ろされると、下着が見える。
──エダもたまにはいいこというじゃねえか。
出てきたのはいつものスポーツブラではなく、ピンクを基調としたものに黒のレースをしたもの。
エダが『いつどーなるかわかんないんだから、下着はいいもん着けておけ』とか言われたのがようやく役にたった。
ロックがあたしの胸にキスを優しく繰り返す。
「──ん、ああっ!」
バカみたいに甘い声が出てくる。
ロックの手がスカートの中に入ってくる。
少し冷たい手があたしの太ももの辺りを這う。
「──ふ、ひあっ、あ!」
もう一度、唇にキスをされる。
今度は深めのヤツを。ここがどこかも忘れて、貪る。
それから──
教室に着くと、扉には休憩中というプレートが掛かっていた。
──なんかあったのか?
あけようと扉に手をかけたとき、ちょうど雪緒の声がした。
「え、まきちゃん。それ本当?」
「本当ですよ。確かにレヴィ先輩と岡島先生は2階の和風のお化け屋敷に入っていきましたよ」
──あ? まきって、確か雪緒とよくいる後輩だよな。
……みられたのか?
「変ねえ。確かお化け屋敷って3階の音楽室の隣の教室でやってるハズなんだけど。
それに西洋のドラキュラとかをメインにしたものだったと思ったけど」
……へ……?
隣にいるロックを見ると、きょとんとした顔をしている。
「あー。雪ちゃんそれって、例のあの話じゃない?」
「ああ、あの話だね」
他にもいるらしく、会話に加わってくる。
これは確か雪緒と同じ図書委員のやつらだったか……?
「あの話? もしかしてあの?」
「そうそう。昔、ここの先生と女生徒が恋に落ちたんだけど、あるとき女生徒が重い病に掛かって、先生は彼女に会いに行く途中事故にあって、二人ともそのまま会えずに終わったって話でしょ」
悲劇よねー、とか言う声がどこか遠くに聞こえる。
この扉を開いて話を中断させたいのだが、何故か身体は動かない。
「あとその話の続きで、毎年この時期になると女生徒と先生が交代でお互いを捜しにくるらしーよ。なんか話によると2階の資料室でよく見かけるとか。
そこが二人の逢瀬の場所だったんだって」
……汗が滝のように流れているのがわかる。
──いや違うだろ。絶対違う。違う違うちがう!!
「何してるね、ボンクラとアバズレ」
「あ、シェンホア先生」
ロックが後ろを振り向いて確認するのが見えたが、あたしは固まったままだった。
「入るなら、入らないと通行人の邪魔なるね」
「それが、レヴィの様子がおかしくて……良かったら診てくれませんか?」
シェンホアが疲れたような表情であたしを見る。
「またね。今日は何故か保健室くる人間やたら多いね」
「え? そんなに具合が悪いヒトが多いんですか?」
シェンホアは固まってるあたしを脇に避け、扉を開ける。
「男のほうが倒れて運びこまれることが多いね。
あとさっき妙に顔色の悪い男子生徒が運ばれてきて、そいつが『幽霊が幽霊が』とかうわ言みたいに繰り返してたね」
まったく迷惑な話ね。
最後のセリフを聞く前に、あたしの意識は急速に闇に落ちていった。
「レヴィ!」
ロックの腕があたしを支える。
ばたばたと皆がこっちに近寄ってくるのがわかる。
「先生! 運ぶときはぜひともお姫様抱っこで!!」
……てめーは何いってやがんだ……雪緒……。
ちょい長くなりました。
かなり乙女なレヴィでしたが、どうでしょう?
次はシェンホアいきます
なんというホラー落ちw
GJを贈らせてもらおう。
面白かったです。
まだまだ続くんですよね?
期待してます
>97
読んだ。グッジョブ以外の何を言えばいいのか分からん。
ロックだけでなくてダッチやベニーもレヴィに優しいあたり和んだ。
完膚無きアレな展開も好きな自分は次回作にも期待してます神
>108
ラブコメたまらん、もっとやれもっとやれ
テカテカしながら待ってる
神降臨しまくりで幸せすぐる
112 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 05:13:14 ID:8sNalBiy
原作でのツンデレ不足のせいか、このスレに来ると何故だか満足している俺がいる(・∀・)ニヤニヤ
ぶっちゃけロベルタ編飽きたから新章に行ってくれ>NY編
レヴィたん孕ませSS希望…どなたか…
こんにちは、相変らず暇な65の人です。
学園モノに触発され、浮気(?)なロックに嫉妬レヴィたんと、エダとレヴィたんのガールズトークを書いてみたくなんかしたり。
スレ私物化してんじゃないかとビクビクっす…そろそろ自重します。ごめんなさい。んでは、途中までですが、投下します。
・・・・・・・・・・・・・
女は目の前の光景に立ち尽くすしか出来なかった。
今日、同僚の男は非番。
定時なんか決められてもいないながらも仕事を終え、酒場で悪友と飲んだくれて。
彼の部屋で飲み直すべく酒を抱えて扉を開けた。
いつものように、無遠慮に、断りもなく。
酒場に姿を見せなかったということは自室にいるであろうという確信はあった。
どうせいつものようにTVでも眺めるか、面白くもねぇ本でも読んでいる。
そして、不躾な彼女の振る舞いに呆れた顔をしながらも、迎え入れてくれる筈。
そう思っていた。なのに。
扉の向こうにあったのは、驚いたような彼の顔。
それはいつも通り。違うのは…。
灯りが彼女の背後の廊下と、ベッド際の窓から入り込むそれのみということ。
部屋の中は真っ暗だ。
そして、男は裸だった。
裸でベッドに乗り、見も知らぬ裸の女と身体を絡ませ、キスをしていた。
掛布も掛けずに勤しんでいるため、二人がコトの真っ最中である事がよく判る。
唇を離してこちらを向く二人の間を銀の糸が繋ぐ。
…恋人だろうか…? 否。
知っている顔なら兎も角、プライベートでも一緒にいることの多い自分ですら知らない女だ。
恐らくそれは無い…と思われる。……多分。
男がこの街に居ついて一年以上。
彼だって健康な男だ、性欲くらいはあるはずだ。
今までだって、どこかで発散していたに違いない。
そんな当たり前のコトに今更気付かされる。
なのに、何故自分は身動きが取れなくなる程に動揺しているのか。
彼女は、答えなどとうに解りきっている自問自答を繰り返す。
顔の筋肉が痙攣するのがわかる。
眉間にも皺が寄っていることだろう。
目の前の光景が信じられない。信じたくない。
だが、彼女にはこの場でその憤りを発憤する理由などありはしない。
彼女と彼はただの同僚。
仕事の上でのパートナーでしかないのだから。
この絶対零度に凍りついた空気を動かしたのは…彼女が手にしていた、酒が詰まった袋が床に落ちる音。
割れはしなかったが、場の空気を動かすには十分たる威力を持っていた。
彼女は目を泳がせながら早口で捲くし立てる。
「…ぁ………その、あー…おまぇ…鍵くらい閉めとけよな、ったくよぉ…あー…悪かったな、お楽しみのところ」
「あの…レヴィ…」
男も我に返り、睦み合いの相手に密着させていた身体を起こす。
動いたことにより二人を繋ぐ箇所から聞こえる水音、女の鼻に掛かったため息。
彼女は目と耳を塞いでしまいたくて仕方ない。
「ぁ……酒、いるか?これ、終わった後に飲め、な?……女に興味の無ぇインポ野郎かと思ってりゃ、ヤる事ヤってんじゃねぇか」
彼女は後ずさりながら喋り続ける。もうこれ以上はここに居たくはなかった。
「ちょっと待って、レヴィ、その…」
彼は慌てて前を隠しながら床に放り投げられている下着へと身体を伸ばす。
彼がその布切れを掴むのと、彼女が捨て科白を吐くのとはほぼ同時。
「じゃ!明日は仕事だ、程々にしとけよ?」
「待って!!」
バタン
再び暗闇に包まれる室内。
足早に立ち去る彼女の軍靴の音。
残ったのは、自らの下着を手に呆然と言葉を失う部屋の主と、そんな彼にどう言葉を掛けるべきか考えあぐねる黒髪の女。
街の外れの教会。
宿舎の自室で眠りを貪るべくベッドに入ったブロンドの尼は、外で何やらガタガタ鳴り響く音に怪訝な顔を浮かべる。
この街で、この教会に押し込み強盗に入る命知らずがいるとは思えない。
ならば余所者?それにしたって、コソコソする気も感じられない程、夜空に響き渡っている。
何だか、ガチャガチャと瓶がぶつかるような音もする。
しかも、この部屋のすぐ下で、だ。
部屋の明かりを点け、愛銃を手に窓を開けた。
音の出所を探るまでもなく、それは彼女の部屋の窓のすぐ下にあった。
納屋の横に放っておいたハシゴ。
そして、銃口を向けた先から現れたのは…彼女がよく見知った女。
女は、銃口をものともせず、何事も無いように言い放った。
「よう、エダ。飲み直すぞ」
と。
窓際での押し問答の末、まんまと部屋に入り込んだ女――レヴィは、何も言わずに酒を煽り始めた。
「おいおい、ナンだよ。人の寝入り邪魔しといて愛想も無ぇってか。大体お前ロックと飲むっつってただろうがよ」
「おい、エダ、お前も飲め」
彼女を無視して差し出されるグラス。
「暴力教会のクソ尼」として考える。
彼女が酒持参でやってきたというコトは奢りだろう、タダ酒は飲める時に飲むべし。
「彼女」の信じる神様の教えにだってあるではないか。
取りあえず、彼女の振舞いに関しての彼是は後回しにし、エダは一緒になって酒を煽ることにした。
飲みながら、目の前の招かれざる客を観察する。
まず、不機嫌であることは間違い無い。
大いにむくれた感のあるその顔は、唇が引き結ばれ、心なしか目が潤んでいる。
訪ねて行った先で何やらあったのだろう、わかり易い女だ。
偽りだらけの彼女にとっては、ある意味羨ましくもあったが。
それにしたって、お互いだんまりでは決まりが悪い。
取り敢えず有り得なさそうな冗談でも飛ばして会話の糸口くらいは見つけたいところだ。
「ヘイヘイ、どうしたよ。まさか色男が女連れ込んでたってか??」
カラカラと笑いながら冗談めかしてエダは言う。
目の前の酔っ払いは、ピクっと顔を引き攣らせ一気に酒を煽ると、乱暴に酒を注ぎ、ガンっと盛大に音を立てて瓶を置いた。
そして、グラスを手にそのまま固まる。
おいおいおいおいおい、図星ってか。
本当に、つくづくわかり易い女……。
一方、今を遡ること1時間前。
真っ暗闇の男の部屋。
空調が効いたこの部屋に響くのは男女の荒い吐息。
そして。
「レヴィ、レヴィ、レヴィ…」と取り憑かれたように別の女の名前を呼び続ける男の声。
二人がこうして関係を持つのは初めてでは無かった。
プロである女は、自分が誰かの身代わりとして抱かれようと、そんなことは知ったことではない。
ただ、相手の女のコトは知っていた。
何せ有名人だ。
初めて関係を持った日、他の女が声を掛けても素っ気無かったクセに自分が声を掛けた瞬間態度が変わった。
だが正直彼女には、彼が名前を呼び続ける女と自分とが似ているとは思えない。
だから、何回目かの逢瀬の際に訊いた。
理由を。
「……髪の長さが…同じなんだ。色も暗いところでは似て見える。あと、声もどことなく…」
決まり悪そうに彼は答えた。
声か。
なるほど。
女は妙に納得し、そして彼に乞われるまま彼のことをロックと呼ぶようになった。
馬鹿な男と内心哀れみながらも少し歪んだ擬似的な関係を続けていた、そんな中での今日の出来事。
「……ま、こんなコトもあるわよ」
だから気を落とすなと女は言う。
これが落ち込まずにいられようか、彼は力無く応える。
「ごめん、放っておいてくれ…」
そんな彼に、女は確認する、…一応。答えは想定出来てはいたのだが、「一応」だ。
「続きは…どうする?」
「……No thank you…」
想定内の答えを聞き、女は立ち上がり服を着る。報酬は既に受け取っている。あとは黙って帰るのみだ。
黙って帰るのみなのだが、ドアを開け、項垂れる彼に一応言っておく。彼は一応お得意様である。
…所謂、お節介というヤツだ。
「そんなに好きなら、押し倒しちゃえばいいのよ。馬鹿ね。」
彼が彼女を押し倒してしまえばもうお得意様ではなくなるか、そんなことを考えながら女は部屋を後にした。
エダは考えあぐねいていた。
どうやら、とてつもなくどデカい地雷を踏んだらしい。
目の前で目を赤くして微動だにしない酔っ払い。
少しばかり頬を膨らませ、部屋の隅の一点を睨みつけている。
下手に突ついたならば…大噴火を起こすか、泣き出すか…後者はあまりに想像がつかないが。
何にせよここで余計なコトを言って撃ち殺されたのでは、あまりにアホ臭くて死んでも死に切れない。
この凶暴な爆弾女が、あの平和ボケがイマイチ抜け切らないヘタレの日本人に、頭の天辺からつま先まで骨抜きにされているのは公然の事実なのだから。
自ら更にデカい地雷を踏みに行くことなどない。
…………だから…………。
「まぁ、レヴィ。飲め。飲め、なぁっ??」
取り敢えず、飲ませてみることにした。
レヴィ自らが何か喋れば、自分にも返す言葉がある…かもしれない。
まずはコイツの口を割ろう。エダはそう決めた。
ズビズビと音を立ててラムを啜るレヴィ。
「ん?どーしたよ、何か言いたいコトがあったからわざわざ押し込み強盗みてぇなコトして飲んでんだろ?広〜〜〜い心で聴いてやる、言ってみ?」
何となく…ハイスクールの頃を思い出し、……哀しくなる。
今時ローティーンでもこんな会話しねぇ…。
この歳で、こんなゴミ屑だらけの街で、名うての女海賊様相手に、こんな青臭い「恋の悩み相談」に乗るハメになろうとは。
だが、レヴィにお帰り頂かないことには自分が寝れない、それは困る。
「言いたいコトなんざ何もねぇよ。飲み直しに来たんだ」
しかも、この天邪鬼はこんな可愛げの無いことを抜かしやがる。
過去のクラスメイトの方が、訊きもしないコトまでベラベラ勝手に喋ってくれるだけ自分に正直だった。
それがいいか悪いかは別として。
この女にしても、基本的に欲望に忠実だ。
一つ、意中の男に関することに関しては守りに入りたがる傾向にある。
「だ〜ったらよぉ。あたしゃ眠いんだ、お帰り頂きたいところだね。明日も朝からカミサマにご奉仕しなきゃなんねぇ、一人で飲みな」
だから、「帰れ」と揺さぶりを掛ける。彼女から返ってきたのは…なんとも頓珍漢な答え。
「……あたしだって、朝から仕事だ…」
ダメだ。自分からは口を割らない。そしてどうやら帰る気も無い。
ならば、尋問していくしかないのか???
何で自分がここまでしてこの女の話を聴いてやらねばならんのか。
いや、口を割らないから「聴いている」ワケすらない、「訊いている」んだ。
エダには今の自分の境遇がとてつもなく不思議に思えてならない。
「か〜〜〜!!だから何だってんだ…ったくよぉ……。で?どうしたって?ロックが女連れ込んでたって?」
仕方なく、尋問を開始する。
「……。」
頬を膨らませるレヴィ。
そうか、これは間違い無いか。
「で、何してた?まさか仲良く酒でも飲みながら、ウォールストリートの情勢でも話し込んでたワケじゃぁあるめぇよな?」
「んなワケあるかよ」
そうか、これは違うか。
「じゃー、何か?ヨロシクやらかしてましたってか?ヤツのベッドの上でよぉ…IN&OUT…IN&OUT…IN&OUT…ハァハァハァてよ」
唇を噛むレヴィ。
「あ"ー!!!もうっ!!!面白くねぇ面白くねぇ!!!何だってんだ!!クソっ!……おら、飲むぞ」
そして、ガシガシと床を蹴りながら喚き散らし、杯を煽る。
……マジっすか。
それにしても、いっそ清々しいほどにわかり易い女だ。
さぁて、ここからどう突いていくべきか。彼女は考えを巡らせる。
「へぇ…トゥーハンドの目を盗んで浮気とは…命知らずだねぇ、色男も。オメー、アレだ。ガバガバなんじゃねぇの?ヒヒヒ」
取り敢えず軽口を叩いて様子を見ることにした。
レヴィは相変らず頬を膨らませたまま、何やらボソリと吐き捨てた。
「……な…じゃね…よ」
「はぁ?ぁんだって?」
「アイツとはそんなんじゃねぇよ…」
次はエダにもハッキリと聞こえた。だが、全く意味を理解出来ない。
「へ?そんなんじゃないって?」
「別にアイツはあたしの何ってワケでも無ぇからよ……誰と寝ようとアイツの勝手だ」
ようやく口を割り始めたレヴィが語るのは、全くもって予想外の言葉。
そこはかとなく嫌な予感を胸に抱きつつ、念のため確認する。
「ヘイヘイ、レヴィ。おめーよ、アイツと毎日ズッコンバッコンよろしくヤってんだよな…??」
「………………………一度もねぇよ。」
舌打ちと共にレヴィが吐き出したのは…嫌な予感を裏付ける、あまりに衝撃的な事実。
いつだか、この女に「おぼこを気取るな」などと言ったことを思い出す。
まさか、本当におぼ…いや、流石にそれはあるまい。多分。
それにしたって……ええええ???
返すべき言葉もすぐには見当たらず、エダは暫し言葉を失った。
渦中の男は頭を抱えていた。
最悪だ、いっそ誰か殺してくれ…。
引き攣った彼女の顔が瞼の裏から離れない。よりによってレヴィに見られるとは。
彼の部屋に断りも無く侵入する人間などレヴィ以外では空き巣や押し込み強盗くらいしかいないのだから「よりによって」も何もないのだが、
そんなことは今は棚に上げる。
何故鍵を閉めなかったのか、何故部屋を取らずに女を自室に招き入れてしまったのか、そもそも何故自分はあのような歪んだ行為に及んだのか…。
考え始めるとキリが無い。
あの時、自分は何か口走っていなかっただろうか。
彼女の名前を呼びながら別の女を抱いていたなど知られてはならない、絶対に。
ふと、先程抱いた女の去り際の台詞を思い出す。
―――押し倒してしまえばいい。
彼とて、彼女を前に善からぬことを考えなかったワケではない。
折れてしまう位に抱き締め、唇を奪って、息も出来ない位に貪って。
彼女の匂いを嗅ぎ、体中に舌を這わせて味わって、喘ぎを聴き、姿態に酔い、彼女の肌で溺れたい。
彼女を犯して、泣かして、汚して。自分のこと以外見えなくなる位に隷従させたい。
だが、自分の前でだけは害の無い笑顔を浮かべる彼女を見ると、罪悪感が前面に出てしまう。
彼女が過去に、荒んだ生活を送って来たことは想像に難くない。
性体験にもいい思い出など無いに等しいだろう。
一度、肩を抱いたことがあった。
抵抗らしきものは無かったが、身を硬くし、何をするのかと不安そうな眼で見られると何もできない。
彼女を滅茶苦茶に犯したいという想いも本当だが、二人きりの時にだけ見ることのできる「無防備な彼女」を庇護したいという想いもまた偽り無いのだ。
臆病者の詭弁だとは解っている。
けれど…。
「……出来ればこんなに悩むかよ…」
・・・・・
とりあえずここまで。
中学生カップルみてぇ…。
ガールズトーク、これから頑張ります、需要があるかはわかりませんけど、エロよりそっちメインのつもりで。
あまりに暇なので思いつきのみで明日から東南アジア(つーかバンコク)へ行ってくることにしました。
次回は作中南国の空気も一緒にお届けできればと…そんな力量無いかもしれませんが。
120 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 01:37:22 ID:Qgt4EWaM
GJすぎる。
自重する必要はまったく感じられませんぞw
本当に面倒くさいことになってるエダに祈りをw
なんでちょっぴり命の危機を味わいつつ、気ぃ使いながらツンデレ相手に恋愛相談してるんだw
122 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 13:29:27 ID:Qgt4EWaM
レヴィかわええw
続き期待。
GJ
前回のハードなのも良かったし、今回のも上手い!どんどん書いてほしいよ
神様仕事早ぇ! 眼福眼福
エダの安否を気遣いつつ、初々しいレヴィに萌え。
旅行いてらし お帰りお待ちしてます
俺の心までバンコクに持っていくつもりか
戻り次第返してくれ、利率は高いぞ
レヴィ&エダのコンビが好きな俺には超ストライク!!
続き待ってます!旅行楽しんできて下さいね!
127 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 05:38:49 ID:QbeJ8BcM
エダ難儀だなw
レヴィのお姉さんだよね(・∀・)ニヤニヤ
128 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 17:41:42 ID:5JJ5gpOm
旅行の帰りはまだかーーーー!!
ほ
そろそろ帰って来るころじゃね?
続きといっしょにお土産話もぷりーず
他の職人さんも投下歓迎だぜ
ブラクラの話書きたくても、あの独自のアメリカンテイストの
会話が思い浮かばないのがネック…
本当に簡単でいいから、英語に翻訳してから日本語にすればいいんでない?
もしくは、「こんな構文あったよなー」くらいで
まさか旅先でロックみたいな目に遭っt(ry
>会話
B級映画をみまくるといいかもしれないw
海外ドラマとか。
ユーモア系のドラマでばかにされてるような会話をちょっと抑え目にするくらいとか工夫
をすればいいんでないかね。
エディ・マーフィの会話を少しブラックにしたら近い感じかも
>>134 遭ってないヨ…大丈夫ですだよ、事故無く帰国してるネ。
ちゃっちゃと書くるますから、もう2〜3日お待ち下され。
138 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 02:33:04 ID:FzgtkorY
>>134 ほんとだ同じタイだw
・・・あれ、ロアナプラって一応タイにあるって設定だよな?
>>137 期待しております。
139 :
134:2008/03/18(火) 12:54:19 ID:tjlzcqYr
>>137 無事で良かったwなぜにシェンホア風?
とにかくエダ好きな俺は楽しみにしてます!
141 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 17:56:23 ID:FzgtkorY
137「あっあっあっ」
ヘンゼル「はぁっはぁっはぁっ」
グレーテル「兄様気持ちよさそう・・・137の中って気持ちいいのね、天使でも住んでるのかしら」
バラライカ(幼女)のSSってないんかなあ
バラライカの煙草ってプレジデント?
エロパロより本スレで聞いた方がいいんでない?
どっかで見たなー・・・ラッキーストライクだったような・・・
そんなことより、姉御の自慰物が読みたいものだな同志諸君。
パーラメントだったと思う
ラッキーは違う
確認したらパーラメントだった
考えたら姉御が米のタバコなんか吸うわけないな
まあ、なんだ、タイ旅行帰りの神をまたーりまたーり待とうじゃないか
初めてロベルタがエロいと思った
ラッキーストライクはレヴィだな
>>148 自分は六トン×ですだよとかが読みたいであります大尉殿!!
なんかもうこの二人はエロとか通り越してほのぼの夫婦なイメージ
ソーヤーは子供にしちゃデカ過ぎだけどもう三人家族みたいな
155 :
暇人:2008/03/22(土) 01:59:40 ID:RpcJik57
タイで双子に掘られたことになってるらしい、帰国した暇な人です。
個人的には双子よりも姉御に足蹴にされ、罵倒されたた方が…。
そんなワケで遅くなりましたが続きを書いてみました。
++++++
ここは、この二人の有り得ない関係に疑問を呈するべきだろうか、それとも笑い飛ばして馬鹿にするべきか??エダは悩む。
今すぐに馬鹿にすると何が起きるか予測がつかない。それに馬鹿にするだけなら後からでも出来る。
ならば今は彼女の話を聴くのが先と判断する。
彼女は心底面倒に思いながらも、貴重な睡眠時間確保のために聞いてみた。
何せ起床時間までには4時間を切っている。
「…おめーらよ、暇さえありゃ、どっちかの部屋に入り浸ってるだろ。………何してたワケ??」
レヴィは背もたれに肘をつき、相変らず部屋の隅を睨みながら鬱陶しそうに吐き捨てる。
「………………だから、何もしてねぇっての。
飲んで、駄弁って、テレビ見て、雑誌読んで、ハラ減ったらアイツが飯作って、あたしが銃をバラしてる時はアイツは何か読んでて、眠くなったら寝る」
………………ジーザス!!
エダは心の中で神に叫ぶ。
アスピリンは残っていただろうか。頭が痛くて仕方ない。
「ちょい待ち…寝る時はおめー、何処で寝るんだよ。まさか二人並んで仲良くお寝んねってワケでもあるめーしよ」
「……………並んでっつーか、あー…まー…ほら、壁に寄っ掛かったり…身体丸めたり…ほら、…―――。」
何やらよく解らないが、寝方をあれこれ解説するレヴィ。
そーなのか、何を言いたいのかはよく解らんが、添い寝に近いのか。
エダはまともに聞く気も起こらず、手酌で酒を煽る。
くたばれ。
死んでしまえばいい。
聖職者にあるまじき罵詈雑言を胸の内で吐き捨てながら…。
これはどっちが悪いのか、その判断はいまだ出来ない。
だが、色男はこの生殺しの状態に魔がさしたのではないかと当たりをつける。
彼がどこまで生殺しなのか、何となく気になり探りを入れた。
「おめーらよ、その…、あー…その状況で今まで何も無ぇって異常だろ、明らかに。まさか手を握ったこともチューしたコトも無ぇとか言わねぇよな?」
「…………うっせぇ。」
どうやら無いらしい。
もういい。
笑う。
嗤ってやる。
彼女は決めた。
「ふ…ふふ…ふはははは………」
…駄目だ!笑えない。
哄笑すら出来ない、アホ臭過ぎて……。
力の抜けたエダに対し、補足するようにレヴィは重ねる。
「……デ…デコになら…一回だけ…あと、アタシが寝てる時とかにはよく…………」
口ごもって、黙り込む。
おめーは寝てるのに何で知ってんだよ…とか、結局何されてるんだよ、とか。彼女の胸の内に突っ込みは絶えない…。
だがどうせ聞いても聞かなくても大したことはない。
想像はつく。
どう考えても狸寝入りだ、そして軽〜いキスがいいトコだろう。
それ以上はレヴィが起きるリスクを伴う。
それにしても言うに事欠いてデコちゅーと寝込み…。
盛大かつこれ見よがしにため息を吐いてやると、レヴィは居づらそうにグラスを揺らした。
あーあー、溢すなよ…。
ただ、エダにはこの補足で判ったことがあった。
取りあえず、相手の男は目の前の女をコマしたがっていると判断して間違いないのだろう、多分。
それにしたってアイツは今まで何をしていた、ヘタレにも程がある。
コイツが起きてる時にゃデコちゅー一回かましただけ。
街中からデキてると思われている二人が、何を考えて「清い関係」とやらを保っているのだか、今に到ってもさっぱり理解できなかった。
別の女とファックかましてたってことはインポってワケでもあるまい。
……その、起きている時にデコちゅーしかしたコトないというのなら、逆にその時に何かあったのではないか。
あくまで彼女の勘だが、そんな気がした。
「……レヴィ、そのデコちゅー、どんな状況だったか言ってみろよ」
まずは、引き続き尋問するエダ。
『言わなければ良かった』と苦虫を噛み潰したが如き表情のレヴィは、ぶつぶつと悪態を垂れながらも説明した。
いわく、二人で並んでテレビを見ていたところ、突然肩を抱き込まれ、顔が近づいてきたが、至近距離での暫しの睨み合いの末にデコに口付けられたとか何とか。
彼女の言う睨み合いがどんなモノかは不明だ。
だが、…それであのヘタレが怯んだ可能性は大いにある。
胆が据わってるんだか据わってないんだか解らない男である。
レヴィもレヴィで、心底どうしようも無い。
エダは次第にイライラしてくる。
「一つ聞きたいんだがよ、お前アイツとどうしたい?アイツが盛れば睨み付けてるクセに寝たフリしてまでキスされんの待ってんだろ?」
「……別に待ってねぇよ……!!」
やっぱキスで正解か。
エダは、予想の正解に内心ほくそ笑む。
「じゃあ、何で寝ねぇで『寝たフリ』なんだよ」
「………寝たフリなんかしてねぇ……。」
上目遣いでエダを睨みつけるレヴィ。
真っ赤な顔では迫力の欠片も無い。
「あのよーアイツがインポじゃねぇのは既に証明済なんだわ。コソコソおめーにキスするってコトはどうにかしたいとも思ってんだろーよ、多分。」
「でも…」
「聞け。要はお前がアイツの前で股ぁ開いて腰振る覚悟あるかどうかだと思うんだがよ。つーか、おめーがそんなんだから寝取られんだよ」
レヴィは考えるかのように暫し黙り込む。そして、ポツリポツリと喋り始めた。
「………ぁー………別に嫌なワケじゃ…ない。…その…ファック…は……あんま好きじゃねぇっつーか…。
…でも、あいつとするのが嫌なワケじゃなくだな…あいつとなら、多分我慢できる…つーか…してみるのも悪くねぇっつーか…
それに…あいつは『睨むな』っつったけどよ……あたしとしては予想外だっただけで別に睨んでるつもりも拒否するつもりも無かったんだ。」
ようやく素直になって来たレヴィ。
多分これは本当なのだろうとエダは思う。
何せ『我慢する』と来たモンだ。いままで余程ロクでも無い経験しかないのだろう。
それにしても、真っ赤になってモジモジするこの女のこの様を、あの男に見せてやりたい。
そんな、『好きで好きでたまらねーアイツと今すぐヤリてぇ!』みてぇなツラで何が『我慢する』だ。死ねばいい。
「あー、イライラする!埒があかねーから、もうおめーから誘え。
男なんてなぁ、今のお前みてーな物欲しそうな顔で跨って身体こすりつければ簡単に誘いに乗って来るぜ??」
『物欲しそうな顔』に反応したのか、レヴィは急に表情を引き締め、不服そうに呟く。
「……それじゃ…淫売と一緒じゃねぇか。……………1年前な…らデキただろーけどよ…」
…可愛いヤツ。
エダは不覚にも思う。
近くなりすぎて身動きが取れなくなっている。
「よぉ、おめー自分でどう思う?あの時目ェ潤ませて抱きついて唇吸ってりゃ、今こんなコトにならなかったとか思わねぇか?」
「……しるかよ…もしものハナシなんざイミねぇ…」
ため息と共に突っ伏し、「あー」とか「うー」とか言葉にならない呻き声を発した後に更にぼやき始めるレヴィ。
「…イヤだなんて言ってねぇ…シなくてもたのしかっただけだ……アイツはアタシんだ…アイツにさわっていいのはアタシだけだ…となりにいていいのもアタシだけだ…
……なのに………ちくしょ…くそジャップ………………」
そろそろ酔いが回っているようだ、口調が怪しい上に訊いていないことまでベラベラ喋り始めている。
それも、独占欲の塊だ。
…そんなに好きか、あの日本人が…。
確かに今まで彼女の周囲に居なかったタイプであるのは間違いないだろうが。
それにしても……こんな風に男に振り回され悶絶している姿を見ると、この殺人マシーンも歳相応の娘なのだと思う。
まともな環境に生まれてさえいれば、皆に好かれる、明るく好い娘になったことだろう。
こんな街ですら、年長者にはそこそこ可愛がられている。
まぁ、それこそ…こんな「もしも」は、考えても詮無いのだが。
考え込んで会話が途切れる。
ふと視線を上げると、椅子の上で眠りを貪るべく頭の置き場所を探っているレヴィが眼に入る。
ていうか、寝るな、帰れ!!
叩き起こすべくエダが立ち上がると、突然頭を上げ、呂律の回らない口調で捲くし立てた。
「でもよぉ…アイツは…もーべつのおんなのほぉがいいんだろぉ?アタシなんざよぉ〜いろけもねぇしよ、かわいげもねぇしぃ、きんにくばっかでカラダもかてぇしぃ、
ヤニくせぇしぃ…ひとごろししかとりえがねぇ……あいつだってよぉ、ほそくてよぉ、いいにおいのするやさしいおんなのほぉがぁぁぁいい〜んだろぉっ??」
駄目だ、完全に暴走し始めた。
「……アホかてめーは。そうやってむくれて欲しいもんが手に入るワケでもねぇだろうが。」
「……わかってんだよ、タコ!タ〜コ!!!」
取り敢えず、あのヘタレはレヴィにとって『欲しいもの』ではあるらしい。
彼女自身に再確認させるため、問いかける。
「欲しいか?あいつが」
「……………………ほしい」
「なら、本人にそう言えばいい」
「………ん〜…………やだ」
「何でだよ」
「…………………きらわれたくな…い…」
「おぼこ気取んなつっただろ、おめーがそんなタマかよ、ロックだってお前にそんなしおらしさは期待してねぇ筈だ」
「…………………………………ん〜…」
「それによ、アイツだって案外お前に嫌われたくねぇだけカモしれねぇぜ?」
「…………………ん…」
「レヴィ?聴いてっか?」
「……………………ん?……………」
「起きてっか〜〜〜?」
「……………………………………………………」
返事の代わりに健やかな寝息。
コイツ、ホントに寝やがった、死ね。
実際のところレヴィがここで寝ようと起きて帰ろうと彼女の知ったことではないが、夜中に椅子からひっくり返られたのでは堪らない。
これ以上安眠妨害されてたまるか。
「ほ〜ら、レヴィ〜?こんなトコで寝たら危ねぇだろ〜?さっさと立ちな、このスカタン!!」
そう言ってレヴィを後ろから羽交い絞めにし、椅子から引き摺り下ろすと、そのまま床に放り投げる。
ドスっという鈍い音と共に板張りの床に転がるレヴィを確認し、彼女自身も自らのベッドに入る。
起床時間まであと3時間。
本業柄、睡眠を取らずとも、数日間は活動出来るだけの訓練は受けている。
だが、それとこれとはハナシが別だ。
「眠らなくても平気」というだけの話で、彼女だって、眠りを貪ることに人並みの幸せは感じている。
ああ、やっと眠れる、今日はナンだかロクでもない。
目が醒めた彼女の眼に入ったのは、見慣れないベッドの脚とひっくり返った酒瓶。
起き上がると身体が痛い。
床で寝ていたようだ。
ここはどこだと昨晩のことに思いを巡らせ、蘇るあの男の睦み合いとエダとの酒盛り。
気分は最低最悪。
「…チッ…」
そういえば今何時だ、そう思い時計を探すと昼近い。
「やっべ!!」
確か、午前中に積荷を載せて正午には出発だ。
窓から外を覗くと確かに日は高い。そしてハシゴは昨晩のままだった。
それを使って慌てて車に向かう。
ドアを開けると身体に纏わりつく熱気。
只でさえ憂鬱であるのに、輪をかけて気分は急降下。
顔をしかめて運転席に座ろうとすると、そこに鎮座するパンパンに膨れた大き目の紙袋。
エダのものと思われる整った字で『コレやるから二度と来るな』と書かれているそれ。
何はともあれ、最優先事項は出勤である。キーを回してボロ車を発車。
運転しながら窓を全開にし、件の袋の中身をのぞき…絶句する。
中身は、大きく2つ。
まずは2組の下着。
小花柄にアクセント程度にレースのついたシンプルなデザインと、黒地に赤レースのケバケバしいデザイン。
後者に到ってはショーツは透けている上に殆ど紐。
『ヤツにどっちがいいか選ばせろ。どっち選んだかも教えろよ』
とのメモ付きだ。
あの尼、何でこんな両極端なモン持ってんだよ…相手によって使い分けてんのか?と頭痛がする。
まぁ、それはいい。…いや、良くはないが。
問題なのは、何年分だよ、と思わず突っ込まずにはいられない……………大量の……スキン。
何でアイツ、袋一杯になるほどこんなモン持ってんだ…??
感染症予防と知識啓蒙のためにNGOが置いて行ったものなのだが、レヴィがそんなコト知る由もなく。
「どんだけ男漁ってんだか…。」
誤解とため息と共に、エダのお節介が詰まった紙袋は助手席へと放り出された。
ドックまではあと5分。
出航時刻が近づいても現れない女に、男は焦燥感と安堵という相反する感情を同時に持て余していた。
事務所の車が無いということは、近くにはいないのかもしれない。
大男のボスに命じられるまま、念のために彼女の部屋へ赴くも、不在。
彼女の不在にどこか安堵する自分が情けない。
けれど、彼女の顔をまともに見ることが出来る自信はない。
…あれからずっと考えたが、今更どんな顔をして彼女と過ごせばいい。
想いを遂げるなど、更に出来ようはずもない。
今彼女を抱こうとすれば、それはただ無節操なだけではないか。
ドックへ戻るため、市場を抜ける。
昼が近いため、方々の屋台からそれぞれの惣菜の匂いが漂う。
香草と香辛料、そしてこの国独特の様々な調味料の香りが立ち込めている。
最初は臭くて堪らなかったこの匂いも、生活の匂いとしてすっかり馴れたもの。
そして、自分を誘拐し、殺害しようとまでした女と二人、並んで食事をするのも日常で。
そう云えば。
一癖も二癖もある市場の面々に自分をそれとなく紹介し、顔を通してくれたのも彼女だった。
そう思い出す。
文字通り、彼女に生かされて来た。
そして、この先も彼女無しで生きていくことなど出来はしないのだろう。
そんなことは無いと解っているが、このまま彼女が現れなかったら…。
……耐えられない。
遠からず命を落とすことになるだろうが、そんなことよりもまず…彼女の不在など自分自身が耐えられそうに無い。
彼女がどう思っていようと、彼は彼女の隣に在り続けたかった。
……少しずつでいい、彼女に触れられるように。
身動きが取れなくなってしまった関係を解きほぐして行こう。
彼女との日常が詰まったこの通りで、彼は彼女との関係の前進を人知れず決意する。
ドックまでは直線であと500メートルというところ。
前方をフラフラと歩く間抜けな後姿が眼に入る。
どうしようかと一瞬逡巡し、避けるのも不自然であろうと、ピックアップすべくクラクションを鳴らす。
振り返り、驚いた顔を浮かべる男。
額の汗を拭いながらこちらを見つめる男のすぐ横に車をつけると、「よぉ、昨日は楽しんだか?」などと軽口をたたき、顎をしゃくって助手席へ乗るように促す。
「どこ行ってたんだよ」
そう言ってドアを開け、乗り込もうとする男の動きが止まる。
座席に鎮座する袋。
開いたままの口から覗く、下着の紐と、売るほど詰まった大量の避妊具。
「ぃっ!!!!」
それに気付いたレヴィは、一瞬のうちに袋を掻っ攫い、口を閉じ、自らの座席脇に押しやる。
「……あー…ボサっとしてねぇでさっさと乗れっ!」
「ぁ、あぁ………レヴィ、今のな…」
「あー、コレなー?エダんとこ行ってよぉ、おめーのコト話したら、『ビョーキ伝染されんなよぉ』って、おめーにって預かって来た!!」
よし、咄嗟についたとはいえ、いい言い訳だ、これで取り敢えずコイツに渡せる、グッジョブ自分!
レヴィは内心でガッツポーズをとり、そして渡せることを喜ぶ自分に「まるで彼とヤリたくて仕方ないようではないか」と、異様なまでの羞恥を覚える。
だが。
「え?あ…そう。……ぁ…あ…あり…が…とう…??…あー…じゃあ、その……それ以外は…?」
下着のことだ。咄嗟に言い訳が浮かばない。苦し紛れに吐いた言葉は…。
「……ぁあ?……プレイにでも使えってコトじゃね?」
車はもうドックについている。
エンジンを切り、ドアを開ける。
そして…思い出した。
袋には彼女のメッセージが書き込まれ、中には別途メモも入っている。
ああは言ったものの、このまま渡すワケにはいかない。
自分の大間抜けっぷりに反吐が出る。
ていうか、エダのヤツ余計なコトしやがって!!
彼女の怒りは自分のみならずエダへも向かった。
そもそも、これを渡して本当にヤツが別の女と使ったらどうすればいい。
本末転倒である、そうなれば自分は相手共々アイツを殺してしまうかもしれない。
いつまでも車を降りずに何やら考え込む彼女に気付き、ロックは怪訝な顔を浮かべ、問いかける。
「レヴィ?すぐ出航するけど…どうかした?」
「…先に行けよ、すぐ行くからよ」
そう鋭く睨みつけられる。
時間も無いし、今は反論しない方が得策だ。
そう思い、早く来るようにとだけ伝え、彼女に背を向け歩き出す。
一方レヴィは、昨夜の悪友との会話を反芻していた。
あたしはアイツが欲しい。
アレを渡したってあたしから誘わなければ、きっと何も起こらない。
それどころか、このままでは別の女に盗られてしまう。
そんなのはイヤだ。
だから。
先を歩く男を小走りで追いかけ、シャツの裾を掴む。
「なに?」
そう振り返る彼の腕を掴み、周辺からの死角に引っ張り込むと、彼の首に腕を廻し口付けた。
拒絶されたらどうしよう、そう思わないでは無かったが、このままむざむざと盗られてしまうのは更に耐えられない。
瞳を閉じていても眩しい、真上から降り注ぐ陽光。
正に真昼間。
何やってんだか、これから仕事だってのに…。
彼の唇を舌でこじ開けながら自嘲する。
舌を侵入させると、それまで木偶の坊のように呆然と突っ立っていたロックが腰と肩に両腕を廻し、痛い程に抱き寄せて来た。
互いの意思を以って、互いの口腔を貪る。歓喜で背中にぞくりと快感が走った。
ロックの少し汗ばんだ掌が、露出した腰を這い回る。
ピチャピチャという湿った音と、次第に荒くなる呼気、高まる熱、汗ばむ肌。
何も考えられなくなりそうだ。
「レ…ヴィ………レヴィ……」
呼吸の合間にロックの口から紡がれる彼女の名前。
今はあたしのことだけを見ている。
彼女にはそれだけで十分だった。
空気を震わす船のエンジン音に二人同時に我に返り、合わせた唇を離す。
ハァハァと重なる二つの吐息。
お互いの口の端から伝う唾液。
二人とも、何を言えばいいのかの皆目見当がつかなかった。
今の行為に到るまでに、想いを口にしたワケでも、何らかの意思の確認があったワケでもない。
「ぇ…と……、ほら、さっさと行くぞ!」
件の紙袋を手にレヴィが走り去る。
ロックには何が起こったのか解らなかった。
自らの唇に手を当て、彼女の唾液で湿ったそこを指の腹でなぞる。
天から降って来たかのような幸運に、思わず夢中になってしまったが…。
現実的な話として、今から仕事だ。
なのに、夢から醒めても尚臨戦態勢に入ったままの自分の身体。
どうしようかと考えたところでどうしようもない。
言葉に出来ない情けなさを噛締めながら、彼もまたヨロヨロと船へと向かった。
彼が船に乗り込むとすぐに陸を離れた。
船内で仕事の打ち合わせを終え、ダッチの小言を聞いたレヴィがデッキに出ると、すでにロックがタバコを燻らせていた。
彼のすぐ隣に腰を下ろし自らもタバコに火をつける。
さて、何を言うべきか。改めて考える。
先程の熱も激情も、既に過ぎ去った。
今思うと、あの行為に意味はあったのか、そんな気すらして来る。
昨夜彼女が部屋を訪れた時、あの女とも唇が滑る程に深く口付けていたではないか。
考える程悲観的になる。
先程の多幸感を少しでも繋ぎとめたい。レヴィはロックの指に自らの指を絡める。
ロックもそれに応えて、彼女の手を確かめるように指の一本一本を何度もなぞった。
掌だけで互いの交感をし、二人無言で空を眺めて風を浴びる。
タバコはとっくに灰になっていた。
「レヴィ?」
エンジン音にかき消されてしまいそうな声で、ロックが呼びかけた。
「ぁあ?」
「あの…あんなところを見られた後で言葉を弄しても…うそ臭いのは解ってるんだけどさ…」
無意識か否か。彼女は絡めた手をぎゅうっと握る。
何を言われるのかと不安で鼓動が高鳴る。
「今幸せなんだ。ずっとこうしたかった、レヴィと。」
そう言いながら彼女の手を引き寄せ、手袋を脱がすと掌と手の甲、指の先まで口付ける。
レヴィは、浮かれそうになる心を制し、男の真意を推し量る。
このまま流されるには昨夜の情景は強烈過ぎた。あの女にも同じコトを抜かしてたのではないか?
暫し考え込んだ後に愛撫される掌を振り払い、ロックを睨みつける。
「……ぁ、あたしと?ナメんなファッカー。てめーは穴さえ開いてりゃ誰でもいいんだろ?」
「信じられないのは解るよ、全く以ってうそ臭い。けど本当なんだ、レヴィ以外じゃだめだ。空しいだけで。
けど、今は…指を絡ませるだけで幸せだ」
「だったら…だったら何であたしにシたいって言わねぇでわざわざ別の穴使ってんだよ、言えばいつだって使わせてやるんだよ」
ロックの襟元を掴み上げ、眼光鋭く低い声で吐き捨てる。
脅しているようで、その実言っていることは独占欲剥き出しの告白であることに当の本人のみ気付かない。
「ごめん……レヴィが不安そうな目で俺を見るから…。けど一度触れたら我慢ができない。………好きじゃないだろ?セックス」
でなければ、身体の一部を切り離して『穴』だの『使う』だの、そんな道具のような言い方はしない。
大事にしたかった筈の彼女にそんなことを言わせてしまったことが、とてつもなく悲しい。
ロックが自身を掴み上げる手を愛しげに撫でると、レヴィは俯き手を離す。
彼女は、彼が自分に変な気を遣っているのには薄々気付いてた。
気付いていたが、そんな優しさなど望んではいない。
「ファックなんか大嫌いだ。けど、……お前には一度もイヤだなんて言ってねぇ」
またしても彼女の口から告げられる遠まわしな好意。
恐らく自分の言葉の威力に気付いていないあたり、実に彼女らしいと思う。
「……そうだったね」
特に否定するべきことも無いから肯定する。寧ろ彼女の言う通りだ。
だが。
「…お前はあたしのモノだ」
予想外にストレートな物言いに、ロックは目を見開く。
だめだ、目の前の女が欲しくて堪らない。
自分が彼女の所有物になることで彼女を抱き締められるならば…自分は彼女の望むままに。
彼は目を細め、薄く笑みすら浮かべてそれを伝える。
「レヴィがそう望んでくれるなら…。……ねぇ、抱き締めてもいいかな、そろそろ我慢できない」
思わず頬が緩みそうになるのを諌める。寧ろ自分から男に抱きつきたくて仕方ない。
だが、残念ながらそんな可愛げなど持ち合わせてはいないから、男に倣ってこう言ってやる。
「………お前が望むなら……」
ロックは目の前にあるレヴィの肩を引き寄せ、膝に座らせると両腕ごと強く抱きすくめる。
彼女の髪に顔を埋め、息を吸い込む。
甘やかな香水の香りなんかしない。
昨日から蓄積された潮と、雑踏の食べ物と、排ガスと、煙草と、酒と……皮脂と汗の匂い。
女性としての色気なんか微塵もない筈なのに、もっと欲しいと望む。
無造作に髪を束ねるゴムを外し、髪を掬い上げ口付けていると、大人しく身を寄せていた彼女が顔を上げこちらを見つめている。
頬に触れると閉じられる瞳。半開きの唇。誘うように傾げられる首。
二度目のキスは、まるで何年も前からそうして来たかのように自然に出来た。
果たして船が陸に戻るまでの3日間、生殺しもいいところであった。
一度感情の堰を切ってしまうと、今まで我慢出来ていたのが不思議な位に相手を欲してしまう一方。
だが狭い船内でボスと同僚の目を盗んでコトに及ぶ程に開き直ることも出来ず、高揚し過ぎない程度のじゃれ合いで飢餓感を誤魔化した。
特にロックからしてみれば拷問のような時間であったのだが、
自らを穴と称し、使うの使わないので語ってしまうような彼女を、処理するかのような方法では抱くのは避けたかった。
それならば、一人で処理した方がマシだということで、侘しさを感じながらもそれなりにコントロールした。
だから、久々に陸に戻って来た日、まだ陽も落ちていないというのに二人は彼女の部屋のベッドにいた。
彼女の部屋にいる理由だって至極単純だ。こちらの方が近かった。
レヴィは自分でも信じられない程に緊張していた。
命の獲り合いをしているときよりも心臓がうるさい。
彼女の肌を隠すのはエダに押し付けられた下着のみ。
どっちがいいと訊くレヴィに真顔で「両方」と応えたロック。どうにか選ばせた小花柄のそれ。
エダのものであるためワンサイズ大きい。目の前でシャツを肌蹴て心底嬉しそうに自分を見下ろす男。
どこを見ていいのか解らず顔ごと視線を逸らすと、手を取り指を絡められ逆の手では宥めるように髪を撫でられた。
反射的にヤツの手を握ると、名前が呼ばれ、首筋のタトゥーを舌が這う。
ヤバぃ、今更だが…こういう時どうすればいいのかが解らない。
今まではただ寝転がって股開いてりゃ勝手に突っ込んで勝手に動いて勝手に出して終わり。
男の捌け口。穴以外を求められたことがない。
こんな風に指を絡めたことも髪を撫でられたこともない。
彼女という人格を求められたことも無ければ、彼女自身も相手に人格を求めたことなど無い。
彼女に覆いかぶさる男は下着の上から彼女の胸を揉み、息を荒げてアホのように彼女の名前を繰り返しながら耳やら髪やら瞼やらに口付けている。
何ヶ月か前、夜中に見た映画のワンシーンを思い出してみる。
女は確か男の首に腕を廻して愛の言葉を囁いていた。
そう思い、取り敢えずあいている方の腕でロックの首にしがみ付く。
あとは愛の言葉…?愛…???……つーか、そもそもあたしはコイツのコト愛してんのか?わかんね。
一つ確かなのは、映画の男は初っ端からこんな風にハァハァ言って無かったということだ。
ナンだ、いきなりイレギュラーじゃねぇか。まぁ、あの映画が普通なのかどうかは知ったコトではないが。
ならば、こっちも思うさま振舞おう。
「おい」
口を尖らせ、自分の上で一人で勝手に盛り上がっている男に声をかける。
それはもう…剣呑に。
「…ん?…何?」
ロックは少し身体を起こして顔を覗き込み、首を傾げる。
彼女の不機嫌な様子に、内心は怒らせたかと戦々恐々である。
「一人でサカってんじゃねーよ、タコ」
レヴィはそう言い、絡める手を振り払い両腕で抱きつくと、頭を起こし男に口付ける。
ずっとこうして欲しかった。
彼女が不機嫌な理由が『キスして欲しかった』からだと気付き、ロックは身の内が熱くなる。
無理だ、もうこれ以上の我慢なんて出来っこない。左手を彼女の背中に、右手を脚の付け根に差し入れる。
真新しい下着の上から形をなぞるように何度も何度も撫で回すと、じわりと湿り気が広がった。
下着の脇から指を挿し入れると、とろりとした液が指にまとわりつく。
彼の指から逃れるように脚を摺り合わせ後ずさろうとする彼女を許さず、クチャクチャとかき混ぜると合わせられた唇から漏れる甘やかな吐息。
彼女の挙動の全てによって熱を注ぎ込まれる気がした。
唇を離し、情けなくも我慢の限界であることを告げる。
彼女からの注文は一つだった。
曰く、「だったらさっさとお前も脱げ」と。
だが、いざ中に入ろうというとき、彼女は耐えるように眉根を寄せ、眼を固く閉じ、息を止めていた。
全身こんなにガチガチになっていたのでは辛いだろうに…いつもこうなのかと少々哀れに思う。
逸る心を押さえ、あれやこれやとリラックスさせてようやく身体を重ねた時、ため息と共に彼女の口から聞かれたのは「あれ、あんま痛くねぇ…」という台詞。
やっぱりなぁいつも痛かったのか、と思いながら彼が頬擦りすると、「濡れてたからかな?」と問う声。
緩やかに律動を開始しながら「いつも濡れてなかったの?」と問うと、「ローションがあれば使ってたけど、大抵は無理矢理捩じ込んでた」とのことで。
「濡れてないのに、あんなに…ガチガチになってたら…辛く、なかった?」キスをしながら問う。
彼女の手がロックの手を握る。今日の彼女が異様に可愛いのは、ベッドの上での錯覚だろうか。とにかく何をしてもツボにハマる。
「ん?すっげー痛かっ…た…ハァ…初めてでも、無いのに…何でだろっていつも思ってた…ぁ……ぁ……!!」
じわじわと高まっているのか、一際強く握られる掌。少し鼻にかかった、控えめな嬌声。こちらを見つめる潤んだ双眸…。
そして。
「ロッ…ク…!!…ロック…!!!」
求めるように呼ばれる自分の名前。
あとはあっという間だった。
元々限界に近かったのだ、という言い訳をするのもアホ臭くなる位に。
彼女に奉仕しようとか、気持ちよくなって貰おうとか、思っていた筈なのに。
自分を呼ぶ彼女の声に一気に臨界を越えた。
情けない顔で彼女を伺うと、盛大に笑われた。
気にするなと言われたが、言われる程に情けない。
「笑うなよ」と彼女に抱きつき、甘えるように肩に顔を埋めると、クスクスと笑いながらも背中に回される腕。
繋がったまま狭いベッドを器用に転がり、彼女を上に乗せると、そのままぴったりと抱き合う。
そのまま他愛も無い話で笑い合い、もう一度抱き合いリベンジを果たし、ハダカでごろごろとTVを見て、眠って。
その間ベッドの中で見せられた彼女の顔は、彼が何を賭しても手放し難かった、どこまでも無防備なそれだった。
その後、レヴィはエダにしつこく経過を詰問されることとなったのだが、のらりくらりとはぐらかした。
「吐かないなら、くれてやったものを返せ」と抜かすエダ。
そして、「OK」と即答出来なかった時点で使ったことの肯定になることに気付き、コイツ相当の策士であることを確認。眩暈がした。
そう言えば、押しかけた時も何だかんだと上手いこと情報を引き出してやがった、このクソ尼は。
エダが尋問のプロフェッショナルであることを知らぬレヴィは、今後エダと話す時は常にトラップを意識しなければ…と、無駄な決意を胸に抱く。
結局その後も、彼女の誘導尋問に地団太を踏むこととなったのだが……。
…エダの尋問スキルは大きな問題ではなく、単にレヴィの反応が解りやすく、カマをかけやすいだけであることに当の本人のみ気付かない。
end
何か知らんけど、自分が書くとレヴィたんがやたらと乙女。
エダ姐さんとの絡みと、遠まわしに独占欲丸出しのデレヴィたんをノリノリで書いた時点でかーなーりー満足し、
本題である筈のエロが何となくどうでもよくなり、何となく筆が進まなかったです、エロパロ板なのに。
機会があればハードボイルドな正統派のレヴィたんを書きたいです。
そろそろ「暇だ暇だ」とも言っていられないのですけれども。
以下チラ裏…明らかにスレ違いなので読みたい人だけどうぞ。
<チラ裏>
旅行は雑踏を目的も無く歩き、毒蛇や死体をダラダラと見て回りました。
コミュニケーション(英語)は気合で何とかなりますが、展示物の解説となると、半分も理解出来なかったです。
取りあえず、毒蛇に噛まれると身体凄いコトになるなぁ蛇毒怖いよ蛇毒…とか、この人頭抉れてるのに笑ってるよ、即死だよ、銃怖いよ銃…とか。
交通事故怖いよ、寄生虫怖いよ、でも一番怖いのは人間だよ、とか。直感だけを大事に…ダメダメです。
アクセサリー屋でモデルみたいに細くて脚の長い綺麗な姉ちゃんが店番してると思ったら、話してみると実は元兄ちゃんだったり。
バンコクはいろんな意味でカオス。楽しいっす。そして何より、女の子が滅茶苦茶可愛い!!オカマさんも超美人!!眼の保養。
一人で旅行に行く度に思うのですが、一人旅は興味の赴くままに歩き回れるのはいいのですが、食べたいものを食べられないのは残念です。
だって、食事の回数と胃袋の容量は限られますから。大人数ならシェア出来るのに。
夏バテも加わったためトムヤンクンも蟹玉カレーもランブータンも食べられなかった。なのに川カニ入りソムタム食って腹ブっ壊しました。
何か色々食べ足りないので、スーパーで大量の調味料を買い込みましたとさ。
因みに各所で度々話題になるあの方のあの服装ですが、スーツは、まー、アリとしてもコートとマフラーとか、狂気の沙汰です。
特にこれから始まる暑期では、あの格好で外を歩くと冗談抜きで脱水症状で死ぬと思われます。
あの方はクソ暑い外なんて歩かないのかもしれないですけど。
そして、暑さよりも何よりも、洗濯機で気軽にジャブジャブ洗濯出来るもの着ないと、香草とスパイスとニンニクと強烈な発酵調味料共の匂いが染み込んでエラいことに。
お洒落にアルマーニなんぞ着てた日にゃ、毎日欠かさずクリーニングに出さんと、クローゼット中が臭くなるし、そんなくっせーモン着ると全然お洒落じゃない。
帰国してお気に入りのショールが臭くて泣きそうになりましたさー、生地が繊細過ぎてクリーニング断られたさー、ファブリーズじゃ太刀打ちできないさー。
</チラ裏>
そんなワケで、ご心配の声・ご感想含めレス有難う御座いました。
ダラダラ見れるくらい毒蛇と死体が多いとこなのかYO。
>>165 言葉が足りんかったね。ごめんなさい。
蛇は赤十字のスネイクファーム、死体は死体博物館(シリラート病院医学標本博物館)です。
毒蛇は見ごたえあったけど、死体博物館は殺人被害者の死体と死刑囚ミイラの晒し上げが行われている以外は
日本国内の医学部の病理学標本館とあんま大差無いカンジでした。
ソンクランでは抗争抜きで街挙げて水鉄砲で打ち合いだろうな、楽しそうだ
とりあえず……尻が無事なようで何よりだ!
>>164 けしからん!まっことけしからん!朝からニヤニヤが止まらないじゃないか。
この絶妙なかゆうま感。たまらんね。自分の持ってるレヴィ像と
まるで重なってて好きだ。…もしかして同性かな?
>>164 素晴らしい作品をありがとうございます。GJ!
自分も前に一度タイにいきましたが、「毒蛇博物館」とかいうところがありました。
まさかそこに行ったんですか?
>>164 GJすぐる!!!!!!!
エダとレヴィの掛合いがいいわー
もうこのまんまの夢が見られそうだ
>>164GJ!!!
GJ! 無事ご帰国おめでとう!
パクチー食って、ケツノ穴がひりひりしたでしょ?
174 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 21:37:29 ID:sQXQxuTb
>>164 GJ!!!でした。
レヴィとエダのガールトークカワユスなぁwww
エダの「死ねばいい」が好きwエダいいなぁ!
>>169 性別…。ロックに共感出来ないけど姉御にもなかなか共感出来ない性です。
>>169 同じトコかはわかりませんが、シーロムとかルンピニの近くの赤十字とWHOの蛇研究機関の付属博物館です。
200バーツというボッタクリ入場料を取りやがりました。
ニシキヘビに頬ずり&キスできたので大満足でしたが(別の日本人客ドン引き)。
「まさか」ってコトは、もっと違うトコかもしれませんけど。
>>173 胃が痛くなるほど唐辛子食ってケツ穴痛くなったけど、パクチーのせいかは解らんっす。
パクチーは好きだけど、こいつのせいでショールが駄目になった。
みんなケツ穴好きだね。
ケツ穴SSって需要ありますか?
それにしても、寝惚けて投下したら、酷いSSですね…orz
早漏が一人で大満足。
あ、2番目のレス
>>170さんの間違いです…
その他レス恐縮です、当分消えます
>>175 >ケツ穴SSって需要ありますか?
あるぜ!
少なくとも俺は好きだw
酒瓶入れたら、顰蹙かったが……
GJ! あと帰国早々お疲れ様。待ってましたよ。
デレデレレヴィかわええ(*´▽`*) エロ少なくても大満足です!
ケツ穴? 全然OK!むしろAFネタ大好物。
ケツはやだな
姐御でもヌコには勝てない
おまいらが尻ケツ言ってるからオカマ掘られたぬこが…
オカマ違い
姉御がぬこになれば最強という事か……
nuko
元暇人です
2年ぶりにサラリーマンというものを始め、いい加減暇じゃない筈なのに30分で書いてみた四月馬鹿小ネタ。
しかも古典的、てかお約束ってか、ベタベタっていうか。
+++
暑期に入り始めたタイの南部、とある背徳の街の昼下がり。
とある運送屋の事務所。
テーブルに広げた日本語の書類を英語に翻訳する、この街に似つかわしくない上に暑苦しいことこの上ないビジネススーツの男。
その様子をソファで寝転びながらジーっと眺めるのは、彼とは対照的に大胆に肌を露出させた刺青の女。
暇そうに欠伸をかみ殺し、何の気なしにカレンダーを見る。
そして、今日が何の日かを思い出した。
にやり笑うと、さり気なさを装いつつ声をかける。
「なーロックー」
「なに?」
「妊娠した」
男はきっと驚くに違いない。
何と言うだろうか、きっと慌てふためくことだろう。
狼狽する様を想像し、内心ニヤニヤしながら反応を待つ。
しかし、返って来たのは彼女の想像を遥かに凌駕する一言。
「……ぇっと…その………誰の子?」
「………………。」
お前以外に誰が居る!?
そう怒鳴って胸倉を掴み上げたいのに声が出ない。
身体だって動かない。
胃のあたりがキュっと締め付けられるような、息苦しさ。
そして足がすくむ感覚、こんな感覚ガキの頃以来だ。
目の前の男は、人畜無害な顔でアタシを見て首を傾げ、更に追い討ちをかけるように言葉を放つ。
「レヴィ、もしかして相手に心当たりが無いのか?」
こいつはあたしのことを、そんな風に見ていたのか。
こいつとの関係に意味を見出していたのはあたしだけだったのか?
あんまりな現実に、思考回路は完全に停止した。
「冗談だよ。そんな顔するなって…」
いつのまにやら目の前に男の顔。ソファの背もたれの側から身を乗り出しあたしの顔を覗き込んでいる。
「じょ…ぉ…だん…?」
掠れた声で、問いかける。
「そう、冗談。嘘。悪かった。それで?レヴィの方は?本当に 俺 の 子供ができたの?」
俺の、をヤケに強調しながら視線を合わせて来る。
「ほ…本当だって言ったらどうするんだよ」
先程の衝撃を引き摺り、疑心暗鬼になりながら探りを入れる。
「ん?この街で子供育てるのは無理だから、街から少し離れたところに家でも建てて暮らす?通勤出来れば問題無いだろ」
「それも冗談か?」
「これは割と本気。…それで、本当?」
「……嘘だ。つーかてめぇ最初っから嘘だって解ってんだろ?」
舌打ちと共に吐き捨てる。
「唐突過ぎたからね。レヴィは嘘には向いて無いんだよ。」
そう薄く笑って鼻をつままれた。
+++
既出カマネタ、振っておいてアレですがどうやら自分にそれほどケツ属性が無いらしく、なかなか難しいですね
まぁ、筆が進むようであればそのうちに…
よし、期待してずっと待っていよう。
そして小ネタGJ!
194 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 17:43:30 ID:c2iIVy7w
レヴィかわいいよレヴィ
>>192 こういうヘタレヴィみたいの大好きw
仕事の合間にまた書いて欲しいっす。
もしゅ
suru
よ
職人さん待ち
朝。一応独り身じゃあなく別居してる訳でも無いのに僕は、自分で朝食を作らないと行けない。
亭主関白に拘ってる訳じゃない。けど彼女は流石に働かなさすぎだと思う。
「なぁー…ロックー?」
「んー?」
「もう少し寝ていけよ?あたし達は新婚さんなんだぜー?」
…寝ぼけてる。話し方でもう解る。誘いの言葉が嬉しく無いわけじゃないけど、構ってたらキリが無い。
「メシ作る暇があったらあたしに構…」
「また夜ね」
「…チッ」
煙草の匂いがしてきた。ここからじゃ見えないけど、さっきの今だからきっとあられもない姿で吸ってるだろう。
そのままの姿で此処まで来るのだけは止めて欲しい。なんだかんだ言って僕も若い男だ。体力に余裕があれば気持ちが傾く危険もある。
「あたしの分も頼むぜ?」
「ああ、解った」
どうやら諦めてくれたみたいだ。
「行ってきまーす!」
「あ、待て」
「?」
「新妻は旦那の愛が無くなるとすぐに浮気しちまうんだぞ?」
「愛?」
「そうだ」
「…うーん」
…ベタだけどこれで良いのかなぁ…
「…んっ」
こうしてるだけなら文句なしに可愛いと思うし、僕には勿体無いくらいの美人なのに…
「へへ…解ってるじゃねえか」
「じゃあ、行ってくるよ」
「ああ」
元気にはなるけど、逆に家が恋しくなっちゃうよ。早く帰ってやらないとな。
「朝からってのは…本気だったのにな…」
今のはきっと空耳だ。
まだ正式に籍を入れて三日間しか経ってない。付き合った期間を入れても半年くらいの筈だ。
きっかけは会社に入って何をやっても上手く出来ない彼女を、僕が付きっきりで助けてやった事。実は最初から僕には下心があった。多分一目惚れに近い。
教えて貰ってる立場なのに凄まじい彼女の暴言は何故か聞き覚えがあって、変に心地良かった。逆に告白した時が妙に素直に返されて、戸惑ったくらいだ。それからあっと言う間に時間が過ぎて、すぐに彼女は会社を辞めて…それから今に至る。
今でも覚えてる。僕が真っ赤になって見た彼女の辞表。そこには一身上の都合みたいな定型文は一言も無しに、
「ロックの嫁になる」
と一文書いてあっただけだった。部長には今でも散々からかわれている。
…それにしても多国籍な会社だ。人種、肌の色だけではココが一体ドコの国か解らない。
同僚、特に親しい連中も日本人離れした奴らが多かった。まだ平の僕と、天才的なパソコンスキルを持つ営業嫌いのベニー。熟練で場数を踏んでて、頼りになるけど何故か謝るのが上手いダッチ部長。
…そして問題人物その一、一応上司で、一番油断ならない人間の一人。別の部署なのによく遊びに来ていた。
因みに部署は人事。…彼女の名前は…
背中に柔らかい物が当たった。レヴィには負けるけど油断出来ない感覚。
…見た目以上にボリュームがあるんだよな…この人…
「上司とイケない関係なんてどうだ?」
「…すいません。怒られます」
「減るもんじゃねぇだろ?それにアイツを孕ませた時アタシが居れば…」
「まだそんな予定は無いですよ!」
…人事のエダさん。
ネタで時々来るかも…趣味で悪い
... damn dirty bastard ...
For Christ's sake ...
204 :
バカるでい:2008/04/09(水) 02:35:20 ID:Wp5nA5TD
お初です。
コチラは傑作揃いなのでお恥ずかしいデキですが、
エダに押し倒されたロックで小ネタ
人事のエダさんがかぶったのは偶然ですw
+++
まったく神業としか言いようが無かった。いや、むしろ悪魔のソレかもしれない。
暴力教会のクソ尼の異名取るシスター・エダは、まるで魔法でも使ったかのように
ロックのワイシャツとスラックスを剥ぎ取り、ベッドの上に押し倒していた。
ロックには金髪のエダがまるで獲物を捕えた雌ライオンのように見えた。
雌ライオンは群れで狩りをするが、この際そんなことは関係ない。
押さえ込んだ獲物をじっくりと賞味するかのような声でエダが問いかける。
「さてロックぅ〜、ルカの福音書 第六章に何とあるか知ってる?」
「オ、オレはキリスト教徒ではないので……」
「それじゃあ教えてあげるわね。」
よりにもよって、この状態で聖書の講釈を受けるハメになるとは。
「そこにはね、『汝の頬を打つ者にはほかの頬も向けてやり、………」
「そ、それなら知っているよ。でもこんな風に全身を晒せとは、か、書いて無いと思うけど。」
下着姿で必死に無駄な抵抗を試みるロック。
「なぁんだ、知っているなら話が早いじゃないのよぉ。その続きは?」
「へ? 続き?」
「そうよ、つ・づ・き。知らないのぉ?」
是非知りたくないというのが今のロックの本音だが…。
「その後はね『汝の上着を奪い取るものには下着をも拒むな。』と続くってコト。」
すでにエダの手はロックのトランクスにかかっていた。
ロックは心中で「そう書いてあったとしても、この解釈は絶対に間違っている!」と叫んでいた。
なんという嫁レヴィと駄目シスターwww
ちょwエダwww
その続きが気になるんだぜ?
わっふるわっふるわわっふる
保守
ほ
細切れ過ぎると正直コメントに困る…
211 :
バカるでい:2008/04/14(月) 21:35:52 ID:vYJMKTXj
ども
やっとこさインxウェブのアク禁が解除されやんした。
204は一回限りの小ネタで、
続きは皆々様の妄想におまかせのツモリでしたが、
福音書の続きが気になるという信心深いかたがいらっしゃるようなのでw
予定外ですが無節操に続きを書いてみました。
+++
なんとしてもこれ以上状況を進展、というか悪化させるわけるにはいかない。
この際、恥も外聞もない。ウソでも何でもいい、とにかくこの場を切り抜けることが最優先だ。
そう決心したロックは
「あ、あのさ、もしオレはこういうの経験が無いと言ったらど……んぐ…ぐ…」
エダは皆まで言わせず、人差し指でロックの唇を封じる。
「ロックぅ、主の御言葉は最後までお聞きなさい。
『…汝に求める者には与えてやり、汝のモノを奪う者からは取り戻そうとしてはならない。』
…ほら、アタシの言いたいコトわかるでしょ〜う。」
「な、何が?」
「とぼけてもダメよぉ。求められたら与えなさい、ア・ナ・タのモ・ノもね。」
エダはおもむろにサングラスをはずした。
美しい碧眼がロックの視線に絡みつき、逸らそうとしても射竦められて動けない。
平素の荒事を考えたら意外なくらい細く繊細なエダの指が、
ロックの唇から頬を伝い、首筋へと流れる。
へぇ、普段は気が付かなかったけど素顔は結構美人なんだ。
ロックは迂闊にも思考がアッチへ外れかかった。
今、自分の目の前にあるのは……
パツキン + 美形 + ナイスバディ + 尼僧服 …
212 :
バカるでい:2008/04/14(月) 21:37:08 ID:vYJMKTXj
ヤバイっ!
四肢はしびれて動かないのに、どうしてアレだけは自分の意思に反して怒張する!?
とにかく神学論争でも何でもいい。喋り続けて気を逸らし時間を稼ぐんだ。
「ちょっと待った『汝、姦淫するなかれ』って…」
「あらぁ、モーセなんて、よく知ってンじゃないの。」
「ほら、だからさ、こんなこと止めようよ。」
すーっと、エダが顔を近づけてくる。
それと同時進行でロックの全身に冷たいのか熱いのかわからない緊張が駆け回る。
耳元をくすぐる様なエダの囁きが聞こえてきた。
「もう手遅れよロック。マタイの福音書 第五章に主曰く
『情欲をいだいて女を見る者は、心の中で既に姦淫している。』
さぁどうなのォ? この色男。」
「オ、オレは別にそんなコト…」
「へェ〜それにしては随分と元気そうじゃないのォ? コレ。」
うわっ、ヘンなところを微妙な触り方しないでくれっ!
ダメだダメだ。読んだことも無い聖書で太刀打ちできるはずもない。
クソ尼呼ばわりされていても、さすがは修道士(シスター)だ。
って、感心している場合ではないだろ!
ではどうする? 色即是空、空即是色、煩悩退散、般若心経で対抗するか?
んなの、輪をかけて知らないってば。
ああ、何故こんな日にかぎってオレは一人でココ(教会)に来てしまったのだろう。
ロックは今日何度目かの後悔に頭を抱えていた。
213 :
バカるでい:2008/04/14(月) 21:38:23 ID:vYJMKTXj
ロックがロアナプラの武器売買を一手に引き受ける通称「暴力教会」に来たのは初めてではない。
だが、一人で来たのは今日が初めてだった。
今日の用件は火器の注文と、発注済みの弾薬の受領だった。
弾薬入荷の連絡があったので、ボスのダッチに言われてロックが一人で出掛けたのである。
発注だけなら電話なりFAXなりでも済むのだが、受け取りのブツがある場合はどうせ出向く必要がある。
明日は沖で仕事の予定が入っている。空いている今日中にさっさと受け取ってしまった方が都合がよい。
普段ならレヴィが一人で行くか、さもなければ護衛役の名目でロックにくっついて行くのだが、
たまたま彼女は雑貨の買出しで留守だった。
受領の品は主として大量の9mm拳銃弾。あとはcal.50弾と40mm擲弾の補充がいくらか。
擲弾はともかく、拳銃弾くらいロアナプラの街中でも入手できないわけではない。
ところが、ラグーン商会の場合は誰かさんの弾丸消費量がケタ外れな上、
その誰かさんが使っている銃が一品モノのカスタム品で、使う弾薬に神経質という問題があった。
安価なリロード弾でも使おうものなら、たちまち送弾詰り・排莢不良とトラブル続発なのだ。
そんなわけで、どうせ量も多いからと火器類のついでに正規品の弾丸を教会からまとめ買いすることが多かった。
件のトリガーハッピーなご本人は普段からタマ代が高いと文句タラタラなのだが、自業自得である。
事務所の車で教会に出向いたロックをエダは愛想良く迎えた。
「いらっしゃぁ〜い色男。ありゃ、今日は一人? エテ公のヤツはどうしたい、生理休暇か?」
「あ? ああ、レヴィのこと? 彼女たまたま出掛けて不在だったのでね。」
「へぇー珍しいねぇ、あのイノシシ女が付いて来ないなんてさ。ヒヒヒ。」
ロックは苦笑いとともに注文書を渡す。
南国の昼下がり。
強烈な日差しの下では、荷物の積み込みはちょっとした労働だ。
拳銃弾一発当りの重さなどたかが知れているが、こう大量になるとバカにならない。
ロックが汗だくになって積み込みを終えたところへ、エダが声をかけてきた。
「よう、お疲れ。ちょっと一休みに一杯付き合わない?」
「いや、時間はまだあるけど危険物積んでこれから運転だから。」
「相変わらず真面目だねぇ。そんじゃあエアコン効いた部屋で汗引っ込めて、お茶なんてどうよ。
今日はシスター(ヨランダ)が留守だけどね、いいリーフ(茶葉)が入ったんだ。」
ロックにとってこの誘いはモロにツボを突かれた。
普段ロアナプラではロクな紅茶にお目にかかれない。
色の付いた湯を飲まされるのが関の山だ。
サータナム・ストリートにあるサンカン・パレスの喫茶店にでも行けば話は別だろうが、そういった店は客層が自分とは違う。
こうしてロックはいそいそと自ら雌ライオンの口に片足を突っ込んだのであった。
214 :
バカるでい:2008/04/14(月) 21:41:25 ID:vYJMKTXj
教会の応接間。
ロックとエダが差し向かいで紅茶をやりながら世間話に花を咲かせる。
最近の商売、街の様子、そしてこれは主にエダからだが、ここに来ていない誰かさんの噂話。
迂闊に同意すると後が怖いので、ロックは冷や汗かきながら引きつった笑顔で適当に聞き流していた。
2杯目の紅茶を堪能していたロックは不意に体の変調に気づいた。
指先が痺れてティーカップをうまく支えられない。
両手を使ってかろうじて溢さずにカップを下ろしたが、段々と腕まで動かなくなってきた。
ロックの変調にエダが気づいた。
「ヘイヘイ、ロックどうした? アル中じゃあるまいし、手が震えてるぞ。」
「あ、いや、ちょっと気分が悪い…のかな?」
「何だよ何だよ、炎天下から急に体冷やして調子狂ったか? しゃーないねぇ、ベッド貸してやるから一休みしていきな。」
ところが、腕どころか足腰も立たない。
「まぁったく世話の焼ける色男だよ。」
ぶつぶつ言いながら、エダはロックを羽交い絞めにすると寝室までズルズル引きずって行った。
ソファーでかまわないというロックを無視して。
エダの寝室まで引きずり込まれたところで、ロックはイヤなことに気がついた。
日射病や熱中症にしては意識がはっきりしているし、吐き気もなければ頭痛もしない。
なんで四肢だけ痺れて自由にならないんだ?
ひょっとして、ひょっとすると………
「あ、あのさ、エダ。オレの勘違いかも知れないから気を悪くして欲しくないんだけど、……」
「あーん?」
「さっきのお茶にさ、何か入れた?」
「はぁ? なぁ〜に言ってんのさ。アタシが一服盛ったとでも思ってんのぉ?」
「………ぁ…そのぉ。」
「よっこらせ(とロックをベッドに座らせ)同じティーポットから注いだの忘れたかぃ?」
そう言われればそうだ。二つあるティーカップから自分のを選んだのもロック自身だ。
「あー、そ、そうだよね。ご、ごめん。疑ったりして。本当にごめん。」
不意にエダの表情が変わった。
怒らせた? いや、これは怒っている表情ではない。
今までにも何度か見た表情、自分の仕掛けにまんまと獲物がかかった時に見せるあの表情。
「ま、自分から飲むのは止めなかったけどねぇ、ウヒヒヒ。」
????!!!
しまった、シュガーポットだ!
疲れていたロックは、糖分が欲しくて砂糖(と思われるもの)を少し多めに入れた。
エダは「あたしゃコッチ。」などと言いながらブランデーを入れていた。
この街では場所によっては粉末状の物体に注意が必要だった。
普段ならシスター・ヨランダが居て仕込みはできない。その調子ですっかり油断していた。
「まー、あの量だと一時間くらいはゆっくりできるわよン。」
かくして冒頭の事態に至るのである。
+++
さて、続きをどうするか、
ロック並に苦悩している作者でしたwww
>>214 続きサンクス!!どうも、信仰深いかたですw
エダの巧みなトークいいね!
ロックとのやり取りは新鮮で面白いんだけど、なかなか話が進まないな。
やっぱりツンデレヴィの出番なんだろうか?w
個人的にはエダをもっと見たんだけど
ようやく規制解除だー
職人さん乙です!
続きキタ――(゚∀゚)――!!乙!
エダロクなのも楽しい要因なんだけど、
話に織り込まれてる聖書ネタとかなんか博識だ
レヴィは大好きなんだけど個人的にはエロありでもなしでも
エダロクで通してほしいですw
続きwktk!
グレーテルでしか萌えられない俺は変態ですか。
いえ、前からわかってましたけどね。
219 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 16:45:29 ID:8zxxpyng
変態仲間
おや、坊ちゃん。来ていたのかい。
ようこそ、教会へ。
エダの出した紅茶はどうだったい、飲んで少しは落ち着いたかい。
そう、「また」なんだがね。相済まないね。
いずれ審判の日がやってくる。今ここで許しを請おうとは思っちゃいないよ。
でも、ここの納屋とクリーニング品を見たとき、坊ちゃんは、きっと言葉では言い表せない
「カマかけのタイミング」みたいなものを感じ取ってくれたと思うんだよ。
殺伐としたロアナプラで、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って
今日は招待したんだよ。
それじゃあ、ズボンを脱いでおくれな。
おや、エダも手回しがいいね。もう脱がしておいたのかい。
ロック「嘘でしょぉぉぉぉぉぉ!!!」
+++
by バカるでい
すみません、エダロックの続きに煮詰まって、人様のネタを流用したギャグに逃避しましたw
マトモな続きは鋭意(?)執筆中ですので、気を長ぁ〜くしてお待ちを。
>>220 おれそのシェンフォア書いたやつだけど・・・
そんなおれでも
世乱打
はまったく頭になかったよ。
脱帽するぜ。OTL..・・・・・・・
今月のロベルタの「見ないで」が寝取られ後の台詞にしか見えないというか。
自失状態のガルシアぼっちゃん性別間違えたんじゃないかってくらい可愛いんだが。
今月号のガルシアきゅんを見て不覚にも勃起した・・・
224 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:34:54 ID:mUKq1KUS
マトモ(?)な続きです。
+++
エダはおもむろにヴェールを外すと、目を閉じて頭を一振り。
ブロンドのロングヘアーが綺麗になびく。
あらためてロックを見据えると、本格的に圧し掛かってきた。
ロングの髪の先がロックの顔をくすぐり、彼女の両手が頬を撫でる。
首からぶら下がったロザリオが、胸に当りひんやり冷たい感触を、
そしてそのやや下に何とも形容し難い母のぬくもりが二つ、体と理性を圧迫にかかる。
まずい、まずい、いよいよ血流が下腹部に集中している感覚がロックを襲う。
この際(レヴィ評するところサムい)ジョークでも連発してエダを脱力させ、粘ってみるか?
しかし、あまり効果的な策とも思えない。
過去の経験から、エダがかなり話術に長けているのは承知している。
逆に丸め込まれるのがオチだ。
実際のところ、もう緊張のせいでロクに喋ることもできやしないのだが。
ええい、この際だ、いっそ開き直って頂戴してしまおうか?
据え膳据えられて食わぬは男の恥、満更知らない仲でもない。
しかし、この場合はどう見ても膳の上に並べられているのは自分の方だよなぁ。
そう気が付いてロックはトホホな気分になる。
よりにもよって教会で貞操の危機に見舞われるとは。
それにしても………、
ロックは、ふと自分の気持ちに疑問を感じた。
なぜこうも罪悪感が先に立つのか? 必死になって抵抗しようとするのか?
この背徳の街、ロアナプラで暮らすようになってもうそれなりに月日が経つ。
元々住んでいた世界の建前や奇麗事など、半分以上はダストシュートに落っことした気でいた。
毎日のように街のあちこちで経済行為として消費されるセックス。
げっぷが出るほど見聞きしてきたjuiceとsemenとspitの饗宴。
今更誰に対して、何に対して貞操にこだわっているんだ?
その時、不意にロックの脳裏に彼女の面影が浮かんだ。
「………レヴィ…?…」
225 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:36:06 ID:mUKq1KUS
や、やばっ! うっかり声に出してしまった!
ロックはとんでもない失敗を犯してしまったと後悔したが、もはや手遅れだ。
もちろん、エダが聞き逃すはずが無い。
「あららぁ〜、ひょっとして今のは愛するハズの名前?」
ハズって、それじゃあオレの方がワイフかよ。
ロックは何となく納得したような、しないような、複雑な気持ちはとりあえず置いておいて弁解にまわる。
「…ぇ、ぇーっと…その…別にレヴィとはそういう関係ってワケではなくて…その……」
「あらぁ〜ん、あのエテ公はやっぱりアナタの好みじゃないってワケぇ?」
「そんなことは無いけど…あっ!ぃゃ、その、彼女はあくまで、何と言うか、あー、ほら、仕事仲間だし…………」
「ふんふん、仕事仲間ねぇ。んで、プライベートではどうなのよン。よろしくしっぽりヤってんでしょう?」
「いや、…だから…そういう関係は…その…一切無くて…」
エダは心の中で盛大に溜息をつく。
やれやれ、この耳まで真っ赤っ赤になった慌てっぷりから見て、コイツはあの二丁拳銃に気があるのは間違いあるまい。
しかし、このヘタレホワイトカラーは未だ”清い仲”から先に進めないらしい。
半ば以上予想していたとはいえ、
ローティーンかお前らわっ!
まあ、ヒン剥いてみたところ不能ってワケではないことはきっちり確認できた。
それならばもう一押し。
「はっきりしなさいよぉ、この色男がぁ。
せっかくアタシがイイコトしましょって誘っているってのに、さっきからえらくつれないじゃないのよぉ。
てぇことはぁ〜だ、ビジネスライクな関係だけとかなんとか言っておいてさぁ、
実のところ愛しの二丁拳銃様にペネローペの如く貞淑を守ろうとしているってコトじゃないのぉ?」
聖書の次はオデッセイですか。
しかもやっぱりオレが方が妻役なのね。
トホホな気分が上積みされたロックは、とりあえず平素からダッチに戒められている言葉を口にする。
「仕事の上でさ、個人的な感情が入り込むと色々と不都合…」
エダはちょっとイライラしてきた。
「ん〜なコト聞いているんじゃ無いっつってるでしょーがぁ。
どうなの、二丁拳銃のコト好いてんの、Yes or No !!?」
ずいぶんイロっぽい山下将軍だなぁ、なんて言ったら絞め殺されるだろうか。
ロックは返事に窮して、もはやスッとぼけたことしか頭に浮かばない。
226 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:37:06 ID:mUKq1KUS
ロックがぐずぐずと返答に躊躇していると、エダの口から最後通牒が発せられた。
「返答がNoであれば、あのイノシシ女の代わりにココでアタシがたぁっぷり可愛がってあげるわよン。」
ちょっと待て。それって事実上返答に選択肢が無いのと同じではないのか。
それにYesと答えても開放される保証は無い。
「あ、あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、これって……」
…エダとどうゆう関係があるんだよ、と逆襲に転じようとしたロックだったが、
エダの視線に気づいて震え上がった。
これはマジな視線だ。
からかっているわけでも、剥き出しの好奇心でも無い。真剣に刺すような鋭い視線。
何故?
筋金入りの悪友で知られたエダとレヴィだが、
本気で彼女のことを心配して、オレをワナに嵌めてまで関係を問い正そうとしているのか?
「ロックぅ?」
「…ぁ、確かに、正直に言って……、レヴィのことは、その、好き…なんだ。………だけどさ……」
「けど? けど、何なのよ?」
「…ぁー、ぇと、うまく…言えないんだけど、……
…オレは…レヴィには不似合いって言うか……、不釣合いって言うか……、
いつも助けられてばかりだし、……オレは、その、銃を持たないから……、
何て言うか……、いつも汚れ役はレヴィにさせてしまって、オレは………、
彼女には何もしてやれなくて………」
ロックは何だか懺悔でもしているような気分になってきた。
ああ、ココは一応教会で、相手はこれでも聖職者か。
けどなぁ、素っ裸にされて懺悔てのはどうなんだ。包み隠さずって意味か?
一方のこれでも聖職者なヒトは、ようやくゲロさせた自白を分析する。
ははぁ、なるほど、愛しの姫君に対してちょっと後ろめたいところがあるのか。
まぁ、気持ちはわかるけどね。
けどなぁ、その理屈で言うとあの破壊魔の二丁拳銃と釣り合う相手っていったい誰だよ。
フン族アッチラ大王でも連れて来いってか?
せめてジョージ・ケリーあたりにしといてくれ。
227 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:38:04 ID:mUKq1KUS
ちょっと沈黙して何やら考えていたエダが口を開く。
「ヨハネの福音書 第八章にこんな話があってねぇ…」
あちゃー、また講釈が始まっちゃったよ。
とりあえず時間は稼げるな、ロックは前向きに捉えることにする。
「…
『捕えられた罪人の女がイエスの前に引き出された。
律法に基づき石で打ち殺そうと主張する人々にイエスは言われた
”あなたがたの中で罪の無い者が、まずこの女に石を投げつけるがよい”
人々は一人、二人と去って行き、結局イエスと女だけが残された。
イエスは女に言われた”あなたを罰するものはなかったのか。”
女は言った”主よ、だれもございません。”
イエスは言われた”わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。”』
…
さてロックぅ、このオリブ山ならぬロアナプラで石を投げられるヤツは果たして居るかしらぁ?」
「ぁと、えーと…?」
「ふふん、罪を被せているなんてカッコつけてないで、
むしろ身近に居て罪を分かち合ってやったらどうよ?
ルカによる福音書 第六章に主曰く
『罪人でさえ、自分を愛してくれる者を愛している。』
ヒヒヒ、結局ね、自分からアプローチかけなきゃ何事も始まらないのよ。」
「はぁ。」
そこまで言うと、エダはひょいっとベットから飛び降り、ベールを被りなおした。
サングラスをかけ、いつもの暴力教会のクソ尼スタイルに戻ると、
「あたしゃこれから神様にオツトメの時間なんでね、ちょっと中座するよ。
アタシとイイコトの続きがしたかったら、ココで待っててねン。」
あっけに取られているロックに投げキスすると、エダはさっさと部屋から出て行ってしまった。
228 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:39:03 ID:mUKq1KUS
何なんだ、いったい?
とにかく脱出のチャンスだ。手足の感覚も少し戻ってきている。
ロックは数分間の悪戦苦闘の末、ベッドの上から床への転落に成功する。
その代償として額と肩に痣をこさえてしまった。
痛みをこらえて、床の上を匍匐前進で机の下まで移動すると、まだフラフラな手足を駆使してどうにか立ち上がった。
衣服は机の上に綺麗に畳んで置いてある。
やれやれ、エダもヘンなところで丁寧だな。
その時、廊下からバタバタと派手な足音が響いてきた。
げ! エダがもう戻ってきたか? とロックが身構えると、バーン! と勢いよく扉が開いた。
「おいロック! 大丈b ……ぁ?え゛!っ!」
闖入者は途中まで言いかけて固まった。
一方、素っ裸に痣までつけてフラフラ状態のロックも相手の正体を認識して唖然となった。
永遠とも思える、わずか数秒間の沈黙。
「こ、こ、このバカ野郎!!! さっさとその貧相なモノしまえっ!!」
「レヴィ!? 何でココに……」
ロックが言い終わる前に扉がバターン! と閉められた。
「外の車で待ってる! さっさとしねえと、その格好のまんま街ンなか引き摺り回すぞ!」
扉の向こうから怒鳴り声が聞こえ、またバタバタと遠ざかる足音が続いた。
数分後、どうにか服を着てヨロヨロと外に出たロックを、車に寄りかかってタバコを咥えたレヴィが待ち構えていた。
車のキーはロックが持っている。車の外で待つしかなかったのだ。
「暑いんだから、さっさとキー寄こせ!」
レヴィはキーを取り上げると無造作に車に乗り込み、さっさとスタートさせる。
慌ててロックは助手席に飛び込み、かろうじて置いてけぼりにさけることは避けられた。
229 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:39:57 ID:mUKq1KUS
そろそろ日が傾きはじめた中、ひたすら走る車。
車中は紫煙とともに、ヒジョぉーに気まずい空気で充満していた。
ステアリングを握ったまま、既に火の消えたシケモクを咥えたまま、ムスッと前方を凝視しているレヴィ。
エダの色気責めから開放されたのもつかの間、今度は針の筵のロック。
ロックはチラチラと横目でレヴィの様子を伺う。
そうとうご立腹なのは間違いない。
何ともみっともない格好を見せたのだから無理もないが、この雰囲気には耐えられない。
だいたいオレのせいじゃないぞ……と、言ってみても無駄だろう。
とにかく会話の取っ掛かりが欲しい。
確実に反応が得られるのは、………こちらから何か尋ねて返事を待つ手でいくか。
「…ぁ、あのさ、レヴィ? …今日は何で教会まで迎えに来てくれたんだい?」
「……………」
やっぱり無視か。
さらにトホホに磨きがかかったロックだったが、ワンテンポ遅れて反応が返ってきた。
「……エダのヤツから電話があったんだよ。オメエがダウンしちまったから引取りに来てくれってな。」
???
エダが電話したぁ? ロックは何がどうなっているのか理解できずに混乱する。
ま、ここはとりあえず礼を言っておこう。
「あ、そうだったんだ、ありが……」
「教会までかかったタクシー代はテメエのペイから差っぴくからな、そのつもりでいろよ!」
レヴィはロックに皆まで言わせず怒鳴り返してきた。
どうやら電話を受けてすぐにスッとんで来てくれたらしい。それについてはロックは涙が出るほど嬉しい。
しかし素っ裸見せられたからってそんなに噛み付かなくてもいいではないかと思う。お互いの立場が逆ならまだわかるけど。
ひょっとして照れ隠しで怒っているのかな?
230 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:40:49 ID:mUKq1KUS
「なぁレヴィ、何をそんなに怒ってんだい?」
ロックはわりと軽い調子で聞いてみた。
この一言が致命傷になるとも知らずに。
「ふざけんな!
ヒトが心配して駆け付けてみりゃあ、よりにもよってあの色魔とよろしくヤってやがっんだろうが!
何がダウンしただ! 足腰ヨタヨタになるまで可愛がってもらったんだろうが!!」
「な!、ちょっと、それは誤解だよ!」
「誤解だぁ? ベッドルームでスッポンポン、ご丁寧にデコにしっかり刻印まで押してもらって、
それで何もございませんてか!?
どのツラ下げてヌかしてやがる!!
デタラメ吐くなら、ちっとはテレーズ・ドリニャックでも見習いやがれ!」
「いゃ、だから額のコレは……」
「うるせぇ! 黙ってろ!
これ以上何か喋りやがったら、あのクソ尼と二度と離れずに済むように十字架で串刺しにしてやっぞ!!」
これはだめだ。何を言っても無駄だろう。
ロックとしても、たとえ真実を話しても信じてもらえるとは思えない。
いったいエダは何が目的でレヴィとの関係を問い質したのか?
あの最後の謎かけには何の意味があるのか?
レヴィを呼び出した理由は?
さっぱりワケがわからない。
「恨むよ、エダ……」
ロックはボソッと呟いた。
231 :
バカるでい:2008/04/21(月) 01:41:45 ID:mUKq1KUS
さて、そのエダは走り去る車を見送っていた。
二丁拳銃を呼び出して、色男のホワイトカラーと二人っきりにしたんだから、
いくらヘタレでも後はなんとかするだろう。
あそこまでゲロさせて、けしかけてやったんだし。
なんだったら、あのまま寝室を貸してやってもよかったのだが。
(その場合は当然盗撮対象となる。)
結局、エダが苦心の仕込が全くの逆効果にしかならなかったと知ったのは、
数日後のイエローフラッグだった。
さぞノロケが聞けると期待して出掛けて行ったエダは、
レヴィから猛烈な殺気を浴びて、失敗を悟ったのだった。
「もう知らん! 勝手にしろ!!」
終
+++
ども、もともと福音書の一節からの小ネタだったので、
とりあえずお話にしましたが、かなり無理ありましたね。
ツメの甘いエダさん、ツンのままレヴィ、朴念仁ロックと
エロ無しのラブ米になってしまいました。エロパロ板なのに…。
リアルタイムktkr!お疲れさまー!
策士策に溺れるというか、色恋沙汰はお仕事の範囲外なのかw
どうにもムズ痒いねw
>>231乙です!!
ラブコメも好きだよ!
レヴィはツンだけですかorz
心配して駆けつけるところがデレかw
なんだかんだでレヴィに優しい?エダいいね
234 :
バカるでい:2008/04/23(水) 18:55:06 ID:F0qhMCjf
ども
ご感想いただき、ありがとうございます。
>レヴィに優しい?エダ
明らかに164の中の方の傑作「ガールズトーク編」の影響ですねぇwww
ところで、同じ方の、同じく傑作「陵辱編」を拝借して、続編みたいな形で
レヴィの浮気話なんて妄想中なんですが、そんなの了承&需要いただけます?
あーあ、オリジナル書けない情け無いワタシ orz
>>234 書いた人的には許可の必要も無く、どうぞどうぞご自由にってなモンです
楽しみにしてます
236 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 13:00:18 ID:Ob5uXoBs
今月のGXを読んだら、何故かロベルタ×ガルシアが読みたくなった・・・
今号で、やっぱり若様はエロカワイイのだということを再認識した
238 :
拘束:2008/04/26(土) 14:02:31 ID:s/WaOlpL
>>175さんじゃないが、アナル物目指して書いてみた
ロック×レヴィ
微スカ?
微SM
************************************************
『なにやってんだろ
アタシは……』
狭っ苦しいバスに併設されたトイレに腰掛けながら、少しだけ残った冷静な部分が問い掛けた
「ホラ、もうちょっと足を開いて」
レヴィの葛藤とは裏腹に、呑気に作業に没頭するロック
その手には先日ベニーから買ったとか言うビデオカメラが構えられていた
「いいよレヴィ
出しちゃって」
『何が「いいよ」だ』
勝手な言い草に呆れながらも、身体は従順に反応した
股間の力を入れるような抜くような、何時も考えもせずしている行為を、妙に意識して行う
ショ〜〜〜……
ジョボジョボ……
今まで気にしたこともない排泄音が、やけに大きく感じた
恥辱に顔を赤らめ、真っ赤な顔を俯けるレヴィ
しかし……
「こっち向いて、レヴィ」
平然とロックは要求した
キッ!
レヴィは、せめてもの抵抗を見せるかのように、鋭く睨みつける
だが、決して逆らえない自分に気付いていなかった
「アハッ
怒った顔もレヴィらしくて可愛いよ
オシッコの姿とアンバランスで面白いし」
ロックの言葉に逆らう気力も失い、ふて腐れるようにソッポを向く
調子にのったロックが股間に近付き、ドアップの接写に切り替えた辺りで、やっと排泄は止まった
カラカラ……
「……今度は何するつもりだよ」
わかりきっていることを、敢えて確かめる
「その格好じゃ自分で拭けないだろ」
ホルダーからペーパーを巻き取り、股間に手を伸ばす
「テメエのコーディネートだろうが」
レヴィは、吐き捨てるように言った
服自体は、何時ものタンクトップとカットジーンズだ
ただし無理やり引き下ろし、大きな胸をさらけ出したまま、二の腕を拘束している
趣味の悪いことに、ガンベルトを付けたまま
レヴィの代名詞たる二丁のガンもそのまま
下も完全には剥いでいない
239 :
拘束:2008/04/26(土) 14:08:20 ID:s/WaOlpL
ずり下げたパンツを足首に纏わせ、自由を奪っている
レヴィの服でない物は一つだけ
ロックのネクタイ
それがレヴィの手首に絡まり、後ろ手に拘束していた
とはいえ、解けないような縛り方ではない
輪のまま緩めたネクタイを、そのまま絞っただけ
引けば簡単に緩む
他の拘束も、纏わり付いているだけだ
むしろ、解けないよう気を使っている
結局の所、捕われているのは身体ではないのだ
拘束のもと、レヴィはロックに従うことが出来る
ロックはレヴィを、思う存分自由に出来る
不器用な二人の、言わば暗黙のルールだった
カサッ
几帳面に折り畳まれれたペーパーで、丁寧にレヴィの股間を拭う
いつものSEXの後の行為と同じ筈だが、何となく違う気分
レヴィはつい漏れそうになった声を必死に抑えた
「綺麗になったかな?」
そんな様子を、ロックは目敏く見抜く
「なっ、何を……」
ペロッ
止める間もなく、舌が這わされた
「やっ、止めろバカ
キタネェ!!」
「気にしない」
「ふざけんな
バカヤロウ!」
必死で足を閉じようとするが、執拗な舌の動きに翻弄され力が出せない
逃げようとする腰を、いつの間にか廻されていた腕が押さえた
「ヤッ、ヤメろ
ヤメろよぉ……」
腰を引くことも出来ないまま、その部分を排泄器から性器に変えられていく
いつの間にか、別の液体が溢れ出してきた
ジュル……
ロックは、わざと大きな音をたて、啜るように責め立てる
慣れきった愛撫に耐えられず、レヴィの抵抗が止まっていった
制止の声も、意味をなさない淫声に変わる
「アアッ、そんなの
そんなの……」
「おかしいなぁ
拭いても拭いても零れてくる」
カアッ
卑俗なからかいに、レヴィは瞬時に全身を紅潮させた
飛びかけた理性が、羞恥に我に返る
240 :
拘束:2008/04/26(土) 14:13:12 ID:s/WaOlpL
完全に落ちる前に、次の責めに移行
目覚め始めたロックの、常套手段だった
「お尻の方までグショグショだよ、まったく!」
「ゴ、ゴメン」
なじるような口調に釣られ、つい子供のように謝ってしまうレヴィ
「ホラ、拭いてあげるからお尻をあげて」
ロックは、当たり前の口調で酷い命令を出した
フラフラと覚束ない腰つきで立ち上がり、魅入られたように従ってしまう
冷たいタイルに膝を落とし、便器に上体を突っ伏し、尻を捧げるように突き上げた
引き締まった細い腰から、しっかりと張った尻のラインが強調される
「いい格好だね、レヴィ」
再度、撮影を始めながら、ロックは白磁のような肌に手を伸ばした
「ヒャンッ」
触れるか触れないか、ギリギリのところを滑らした掌に、レヴィは激しく反応した
「どうしたの、レヴィ?」
他人事のように、平然と尋ねる
ロックは、ユルユルと愛撫ともつかない接触を続けながら、一部始終をカメラに収めていった
「クッ、フウッ」
ジンジンと弱火で熔かされていくような快感の波に襲われながらも、決して達することの出来ないようコントールされる
狂いそうな焦燥感に、レヴィはモゾモゾと腰をうごめかした
「欲しくなっちゃったかな?」
「…………」
プライドを保つ為か、恥辱に耐える為か、息も絶え絶えになりながらも応えようとしないレヴィ
それとてロックには、楽しみが長引くだけであった
「フーン
口を閉じちゃったか
でも……」
ツプッ
「ひぃゃあっ!」
「こっちの口は何か言いたそうだよ」
レヴィが思わずあげた悲鳴にも、一切かまわず指をうごめかす
「そっ、そっち……
違っ……」
「違わないよ
ヒクヒク動いて誘ってたじゃないか」
ロックの指は、引き締まったレヴィのアナルに埋め込まれていた
241 :
拘束:2008/04/26(土) 14:19:25 ID:s/WaOlpL
「イヤだ、ヤだよぅ」
譫言のように、拒絶を繰り返す
しかしその声の中にも、隠しきれない媚態がまじり始めていた
「痛くはないよね
ちょうど零れたジュースでビチャビチャだったし」
ロックも無理はしない
だが、埋め込んた指を常に微妙にうごめかし、責めたてることを止めなかった
「どうする?
本当に嫌なら止めるよ」
「嫌に決まっ……」
「レヴィが嫌がるなら、金輪際、二度としないから
俺は」
ロックは譲歩を装った脅迫で、レヴィの答を遮る
レヴィとて、アブノーマルなプレイには、羞恥の気持ちから抵抗感は大きい
とはいえ、『二度としない』とまで宣言されると、やはり躊躇してしまう
ロックに二度と『してもらえない』事がある
それ以上に、ロックに二度と『させて上げられない』事が出来るのが耐え難かった
「レヴィ?」
レヴィの葛藤を知らぬ顔で無視して、返答を迫るロック
「……じゃない」
「ん?」
「嫌じゃないっていってんだろ!
お前がしたいなら、好きにしろよ!!」
レヴィは、ヤケ気味に叫んだ
チュポッ
「ウッ」
差し込まれていたロックの指が、引き抜かれる
「ど、どうして?」
突然の開放に、レヴィは戸惑った
あんなに嫌だったのに
あんなに強烈な違和感を感じていたのに
今では、大事なものを失くしたような寂寥感さえ感じた
カチッ
ライターをつける音
ロックは背後から離れて、煙草を燻らしている
「ロ、ロック……」
意図が掴めず、レヴィは恐る恐る声をかけた
「ん?」
「何してんだよ」
「煙草吸ってる」
ロックは、当たり前のように応えた
「何言って……」
「好きにしてるんだよ
それともレヴィ、何かして欲しいことでも?」
ロックの企みを知り、愕然とするレヴィ
『コイツは、アタシの最後の一欠けらのプライドまで奪う気だ』
242 :
拘束:2008/04/26(土) 14:24:45 ID:s/WaOlpL
ロックの余りの悪辣さに、眩暈を感じた
ふと、今だ両脇に下げられた、物言わぬ相棒に気が向く
『もう、いいや』
内なるレヴィの囁き
コレさえ使えば、全て終わる
グダグダつまらない事で悩まずにすむ
後は、ゴスロリにでも電話するだけ
無敵のレヴィ様の復活だ
また、穏やかなクソだめ生活に戻る
昼飯に何を喰うか決めたような気軽さで、下らない関係に終止符を打つ事を選択した
シュル……
「!」
しかし、選んだ筈の決断は、呆気なくひっくり返される
手首のネクタイが、解けそうになったから
レヴィは、瞬時に動きを止めた
「……レヴィ」
「ちっ、違うんだ、ロック
これは……」
本気の怒りを滲ませたロックの低い恫喝に、レヴィは慌てて言い訳する
ギリッ
「アウッ!」
苦痛の呻き声を漏らすレヴィに、一切聞く耳持たず腕を捩り上げ、ギチギチに縛り上げた
言い訳の為の緩やかな拘束
何時でも解くことの出来る自由
『嘘っぱちだ』
偶然でも、レヴィを手離すことなど出来ない
例え、コイツの意志や自由を無視しても……
パァン
「ヒャウッ!」
パンパンパン……
レヴィの白い尻に、狂ったように打擲を与え続けるロック
「アアッ!」
レヴィの悲鳴と乾いた炸裂音が響く
痛みを通り越して熱を感じはじめた頃、不意に打擲が止んだ
ハァハァッ……
二人のつく荒い息だけが、狭いバスの中を支配する
ガバッ
苦痛から解放されヘタリ込んでいたレヴィは、不意に新たな拘束を受けた
突き出した腰にしがみつかれている
押し付けられた肌が、熱を持った尻にヒンヤリと気持ち良かった
「……ゴメンな」
ゾクゾクッ
力無いロックの一言
それだけで、痺れるほどの喜びに魂が揺さぶられる
『これだよ……』
今までの、苦痛も屈辱も一切忘れ去られた
243 :
拘束:2008/04/26(土) 14:39:17 ID:s/WaOlpL
『アホか、アタシゃぁ……』
外からみれば、そんな自分に呆れ果てるのだろう
ロックが性格破綻者であることは分かっていた
常日頃の穏やかな表情に隠された、非常時の狂気
そんな異常者だからこそ、この街の実力者達に、妙な信用を得ているのだ
そして、それは女に対しても向けられていた
異常なまでに犯しぬき、あらゆる慮辱を重ね、徹底的に支配する
その反面、そんな自分を嫌悪し、許しを求め縋り付く
女を食い物にするダニどもの常套手段だが、ロックは天然でこなしている
『問題は、わかっていてハマっちまうアタシのほうか……』
腰に縋り付き、グジグジと詫び続けるロックが、堪らなく愛しい
「ヒャンッ!」
しかし当人は、しおらしく詫びてると思えば、性懲りもなく吸い付いてきた
朱く腫れた尻たぶを撫で廻しながら、舌先でアナルのシワをなぞるように舐め解す
指をヴァギナに突っ込み、ユルユルと掻き回す
「おっ、おい!ロック」
「ホントにゴメン
ガマン出来なくて……」
謝りながらも手は止めない
指を湿らせた蜜を、今度はアナルに塗り込む
「だから、なんでそっちなんだよ」
執拗に尻に執着するロックに、自分の身体に飽きてきたのかと不安になった
「レヴィの全てが欲しいんだ」
ロックの支配欲の強さにもまた、強烈に惹かれている事を自覚している
レヴィは、その白い尻をいっそう高く突き上げていった
「いいよ、ロック……
アタシのアスを使ってくれ」
ズブッ
「アアッ!」
間髪いれず、ロックのものが突き込まれる
余裕があるそぶりなど、結局ポーズだ
ロックとて据え膳前に、焦らされきっていた
解されていたとはいえ、ロックの猛烈な勢いに、レヴィは悲鳴をあげる
「ロック、ロッ……ク
お……願い
も、もう少……しだけ、ゆっくり……」
息も絶え絶えのなかレヴィは哀訴した
244 :
拘束:2008/04/26(土) 14:52:49 ID:s/WaOlpL
「ゴ……、ゴメン」
微かに残ったロックの理性が反応し、レヴィを気遣うため勢いを緩める
少しの間だけ……
ほんのチョッぴり生じた余裕が、レヴィの失言を呼び込んでしまったのだ
「こっちは初めてなんだからな」
キレた
レヴィの悲鳴も一切無視し、ロックは削岩機のような勢いで腰を振り続けた……
二人重なったまま、ぐったり突っ伏す
一度も抜かないまま、二度、三度と出し続けたロックのものも、やっと半勃ち程度に治まった
それでもそれは、レヴィの中にしっかりと埋め込まれたままだった
ロックをくわえ込んだアナルは朱く腫れ、隙間からとトロトロと白い精液が零れ出していた
息も絶え絶えの中、ロックがようやく抱擁をとこうとする
「イヤッ!」
レヴィは全身で拒絶した
「離さないで……」
懇願に近い口調で求める
ロックは、慌てて抱き直しながら説得を試みた
「あっ、あのね、レヴィ
このままじゃ風邪ひいちゃうし……」
「ロックが暖めて」
素直なレヴィに、性懲りもなく倅が反応しかける
流石に、これ以上は生命の危機を感じたロックは、話題を下世話な方に持っていった
「ほら、俺も小便したいんだ
レヴィがそこに居たんじゃ出来ないし、ベッドの方に移って……」
「ロック」
抗弁も途中で遮られる
「そのまま、アタシを便所にして……」
イッてしまった女と狂った男は、更なる深淵に臨んでいった
終
グーググーググーGJ!!!!!!
久々に萌え痺れた・・・
オカジマスター鬼畜だ…GJ!
なんという鬼ロック……
GJ!!!
エ…エロい…。
これをGJと呼ばずにおけるだろうか…
ピピッ…
渇いた電子音が室内に響く。
音の出所には、ベッドの上に四肢を力なく投げ出した女。
泣く子も黙る女海賊。
今、そんな彼女がするべきこと。
右手を上げ、自らの口に突っ込まれた機械を引き抜き、目を開けてそこに記された数字を読む…。
それだけ。
要は「体温の確認」だ。
どんな脳タリンにも容易に出来るどうということは無い作業。
なのに、それが今の彼女には億劫で仕方ない。
そして何よりも、この体たらくではどうせロクでも無い体温だ。
それこそ、見るだけで具合が悪くなるような…。
(いいや、このまま放っときゃアイツが勝手に読むだろ…。)
自らの任務を向こうで何やら作業している男に託してさっさと放棄し、睡眠という従来任務に戻ることをあっさり決断する女。
どうせすぐにこちらに来る。
額のタオルが温くて気持ち悪い。
頭痛が酷くて吐きそうだ。
畜生。早く戻って来い、糞ロック。
レヴィが無断欠勤した。
別に出勤時間が決まっているワケでも無く、事務作業を請け負うワケでも無いレヴィが二日酔いで自主的に自宅待機することは極稀にあるのであるが、
昨日から全く顔を見せない。
今日、昼を過ぎても出勤しない彼女を訝しみ、ボスの意向込みで部屋を訪ねた。
死体になっているのではないか…そんな事務所での軽口を思い出しながらドアを開けると、床で死体よろしく横たわる部屋の主の姿。
(うわ。本当に死んでる…)
自分でも驚くほど冷静に彼女に近づいて肌に触れると、…とりあえず生きてはいた。
だが、冗談では無く熱い身体。
「…馬鹿は風邪ひかないんじゃないのかよ…??」
レヴィが聞けば風穴をプレゼントされそうな母国の格言を母国の言葉で呟き、取り敢えず目の前の死体もどきをベッドに寝かし付けるべく声を掛ける。
薄く眼を開けたレヴィに起きられるか尋ねるも、荒い息を返すだけで反応が芳しくない。
仕方なしに両腕で抱え上げる。
それにしても。
弛緩しきった身体というのはどうしてこうも重いのか…。
落とさないよう強く抱き締めると、むずがるように呻く声。
そして、首筋に掛かる熱い吐息。
静かに頭を擡げる劣情に気付かない振りをしてベッドに横たえ顔を見ると、こちらを見るレヴィと目が合う。
「……のど、かわいた…みず…」
礼や謝罪より先に、要求。
元よりレヴィからの殊勝な言葉など期待してはいないとは言え、そのあまりの「らしさ」に苦笑せざるを得ない。
ロックは冷蔵庫を物色し、レヴィを抱き起こして水を飲ませると、腕の中の彼女にダメ元で尋ねる。
薬と体温計の有無を。
薬は昨晩呑み尽くしたそうだ。何でも、アスピリン1シートを蒸留酒で流しこんだそうで。
今の状態の遠因はそれにもあるのでは無いかと邪推するも、今更それを言っても仕方が無い。黙っていることにした。
しかし、何故か体温計はあった、封を切っていない状態で。
1年程前に常備薬を纏め買いした際について来たのだとか…。
が、単位が何故か華氏温度…しかも旧式なので測定に15分かかるが…この際あるだけ上等というものだ
(タイで使いモノにならないために、アメリカ人であるレヴィに不良在庫を押し付けたのだろうが)。
そんな奇跡的なシロモノを半死人の口に突っ込み何をしようか考える。
ここ1ヶ月で東南アジア一円でウィルス性の熱病が猛威を奮っている。
影響は過小評価されるようなものではなく、体力の無い幼児や高齢者、貧困層を中心に命すら奪って広がりを見せている。
とは言え、彼女のように標準かそれ以上の体力のあるものにとっては過大評価するようなものでもない。
数日の発熱と悪寒と頭痛と倦怠感さえガマンすれば、心配するようなことは何も無いのだ。
そんなワケでロックは特別慌てるワケでも無く、彼女をスウェットへ着替えさせ、表の電話からボスに連絡を取り事情を説明、買い物リストも纏めた。
そして目の前でぐったりと横たわる女をを見下ろし、口から体温計を引っこ抜く。
体温計が知らせる彼女の体温は【102.1゚F】。
摂氏にすると何度なんだよ…だからアメリカ人は嫌いなんだ…自分たちがスタンダードだと信じて世界標準に合わせようとしやがらない。
彼女に全く以って罪が無いのは知っているが、愚痴くらい零したくもなる。
やはり後で新しい体温計を買おう、買い物リストに体温計を追加することを決定しつつ紙にペンを走らせ計算をする。
はじき出された温度は約39℃。
体温計を信頼するならば…まだ死ぬまい。多分。
苦しそうに眠りこける女の額に即席の氷嚢を置き、髪を梳きながら声を掛けると、甘えるような目で見返して、「つめてぇ」と氷で冷えた彼の手に顔を擦り寄せる。
いつになく殊勝で子供っぽい様子に、彼は少し気を良くし、殊更優しい声で冷たいものなら食べられるかと尋ねた。
レヴィは少し考えると、照れを隠すように目を閉じ眉を寄せ一言、「食わせろ。それなら食ってやる…」と呟いた。
そんな彼女の様子に彼が更に気を良くしたのは言うまでも無い。
「…はぁ…」
買出しを終えて足早に女の部屋へと戻った男は、荷物を眺め盛大にため息を吐く。
中身は、アイスクリームやヨーグルト、ゼリー、フルーツなどの高カロリーかつ冷たいもの。
そして電解質飲料と氷とビタミン剤と体温計と…。
解熱薬。
「…無いの?」
この街では珍しく合法的な薬 も 扱う雑貨店の店先で、彼は老齢の女店主に呆然と問いかける。
「ああ、売り切れだよ」
彼女は事も無げに言い放つ。曰く、解熱薬は売り切れだと。
「何で…?」
「流行りだからねぇ…元々が売れないモンだから、在庫もそんなに無いんだわ。」
「この街の人間は普段熱を出すことも無ければ頭病みもしないのか?」
「合法なモン使おうという頭も無ければ、そんなモン効かない連中ばっかなだけさね」
「…なるほど」
悔しいが、妙に納得する。
「期限切れたのなら奥にあるよ」
「いつの?」
「んー…確か10年位前かね」
「冗談を…」
「多分大丈夫だと思うんだけどねぇ」
大丈夫じゃないだろ…全然。
ロックが顔を引き攣らせていると、店主は何かを思い出したのかのように立ち上がり、店の奥に向かう。
「あー、そうだそうだ。コレでよけりゃあるよ…病院の横流し。まぁこっちの方が効くさね」
そう言われて冷蔵庫から出されたのが…コレだった。
用意した薬を手に彼はため息をつく。
(とりあえず…、何か食わせるか…。)
レヴィに声をかけて起こすと、彼女も不機嫌そうにため息をついた。
「食欲は?」
「……あるように見えるなら医者行って来い」
「医者に行くべきは俺じゃないと思うよ。食欲無くても少しは食えよ。どうせ昨日も食ってないだろ」
「食ったけど吐いたんだよ。だから食いたくねぇ」。
「俺が食わせるなら食べるって言ったのはこの口だろ…」
鬱陶しそうに目を瞑るレヴィの頬を軽く摘み窘めながら、何を食べたのかと彼が尋ねると…一言、「……ピザ」との回答。
「………………。あー、アイス食べようか。ヨーグルトとゼリーもあるぞ、どれがいい?」
突っ込むのも馬鹿馬鹿しく、有無を言わせず彼女に選択を迫る。
「……アイス……」
少し尖らせた口から、一言返って来た。
果たして、腕の中でアイスをパクつくレヴィを見ていると、小動物の餌付けでもしているような気になって来た。
普段肉食獣のように凶暴な女に小動物の姿を見るのも可笑しな話だが、上目遣いで口を開けてスプーンを待ち受ける様も、
差し出されたそれを目を細めて頬張る様も、まるっきり小動物。
……百歩譲っても幼い子供の仕種だ。
そのクセ、気怠げな動作も潤んだ瞳も上気した頬も酷く扇情的で…そそられる。
ヤバいな。
そう思いながら彼女の口の端に付く溶けたアイスに手を遣り唇に塗りつけると、それをペロリと舐める赤い舌。
レヴィに他意なんか無い。
そんなコト彼にだって解っている。
だが…。
男の纏う空気が庇護者のものから、別の何かに換わったことにレヴィは気付いていた。
病気を理由に甘えられる今の状況そのものは好ましく思うが、これ以上はシャレにならない、本当に。ていうかふざけるな。
「…もういい…頭ん中で割れ鐘が鳴って辛抱ならねぇ…。横にならせてくれ」
目を反らし、身をよじって視線から逃れると、もう少し食べろと耳元で囁く声。
閉じた唇に押し付けられるスプーン。
顔を逸らすも尚もグイと押し付けられる。
溶けて皮膚を伝う甘く冷たい乳液が気持ち悪い。
ダラダラと流れるそれに根負けし、渋々口を開いてスプーンの上の氷菓子を飲み込むと、男は嬉しそうに「なんかヤらしい」と笑う。
「ザケんな、死ね」
そう睨みつけるレヴィを尚も嬉しそうに見つめる男にこの上ないタチの悪さを感じ、苛々する。
だが…今は言い争うのすら億劫で仕方ない。
「……吐きそうなんだよ、アタマ痛くて。」
だから寝かせてくれと頼む彼女をシーツに押し倒し、唇から首筋へと伝う甘い汁に沿ってねっとりと舌を這わせる男。
「…ヤだ…今は……」
のしかかる男の身体を押し返しながら自分でも信じられない程に怯えたか細い声で拒絶の意志を伝えるが、男はピチャピチャと皮膚を舐め続ける。
「…ヤメ…頼むから…ヤメろよぉ……」
心なしか、皮膚に当たる彼の息も熱く速くなっている。
一方のレヴィの鼓動は恐怖心からか強く速くなり、その度頭の痛みは酷くなる。
「頭が痛いって言ってるだろ、聞いてんのか…?」
目の前の肩を掴んで抗議するが全く聞き入れて貰えない。
それどころか、シャツの上から胸に手を這わせている。
「…………何でだよ…ヤだって…ヤだぁ……やめて……」
次第に懇願に変わる拒絶の声。
こんなにイヤなのに。
イヤだと言っているのに何故男は聞きいれてくれないのかと、レヴィは絶望にも似た気持ちで唇を噛み目を閉じた。
自分に馬乗りで覆いかぶさる男が目に入らなければ、相手がただの他人だと思えば諦めがつく。
そうだ、どうせならこのまま眠ってしまえないだろうか、寝ている間に全て終わってしまえば多分彼を許せる。
相手を許すことを前提の思考に自分らしくもないと自嘲しながらも、眠りにつくべく目下の懸案から意識をそらして睡魔に集中し、ゆっくりと息をついた。
だが。
諦める決意をしたはずなのに何故だか目の裏が熱い。
どうしたってロックにだけは最後まで抗うことの出来ないコトがレヴィには悔しくて仕方なかった。
「レヴィ…いくら何でも今はシないって」
そう言う男の声と共に目尻を拭われる。
目を開けると涙で霞む視界の先に彼女を窺うように覗き込むロックの顔。
彼女が事態を飲み込めずに呆然としていると、相変わらず馬乗りの男は身体を伸ばして枕元のタオルと汗をかいた氷嚢を手に取り額に乗せる。
「……嘘だ、あたしのことレイプする気満々だったろ…」
「レっ…!?…いや………その…冗談のつも――」
「どう見たって発情してたじゃねーか」
「……発情は…してたかも…」
ただの戯れで始めた行為に弱々しく抵抗を見せた女の姿と、病人独特の酸いた汗の匂いに倒錯した興奮を覚えたのは確かだった。
やめなければと頭の片隅で思っておきながら、その実離れ難くて仕方なかったのだ。
正直、彼女の耐えるような泣き顔にすら興奮した。
「…ヤりてぇんだろ?」
「…………うん、流れによっては…したくて仕方ない…かな…ごめん」
「流れによってはじゃねーよボケ。
頭イテぇつってんだろ…てめーが頭痛の種を増やしやがったお陰で、あたしのアタマはハンマーでぶん殴られたみてーに割れそうだ。
だからさっさと薬寄越せ…。」
「それなんだけど――」
力なく捲くし立てる彼女に、返事をしようとする彼の言葉を遮り彼女はとんでもない言葉を口にする。
「薬で眠りこけてる間なら余程手酷くヤらねぇ限りは犯そうと何しようと気付きゃしないぜ」
何を思ったか、自分に跨がったままの男に薬を要求するついでに意識が無ければ好きにしてもいいとのお墨付きを与える女。
結局のところ、ロックが望むのであればレヴィにNOという選択肢が残ることは無い、紆余曲折の後にYESのみが残る。
だが。
「…何馬鹿言ってんだよ…、さっきは悪かったって。」
一度煮えた彼の思考は、とっくに本来あるべき温度であるべきところに戻っていた。
「…薬はさ、あるんだけど、ちょっと強いからもう一回熱測ってからな」
「ザケんな、強くたって死にゃしねーよ。さっさと寄越せ」
「昨日みたいに熱を下げすぎてウィルスに蜂の巣にされた揚句に長引いてもいいならね。痛みが我慢出来ないなら他の薬探すけど…?」
病気が彼に甘える口実となるのなら、長引くのも悪くない。
だが、そう言っていられる程彼等の職場は人材に富んでいるワケでもない。
とは言え、強情に薬を要求して彼がまた出掛けてしまうのも面白くはない。
痛む頭でそれだけ考え、結論を出す。
「……此処にいろよ」
熱で赤らむ顔を更に朱に染め、ボソっと呟くと、
「オーライ。熱測りながら添い寝してやろうか?」と調子に乗って笑う男。
「…イラネ…。てめぇこそ下らねぇこと抜かしてねぇでさっさと降りろ、重いんだよ。この強姦魔」
「…………………………ハイ…。」
まだ根に持っているらしき彼女に言い返すのは当分控えて、ベッドから下りる彼の背中に続けざまにまた一言。
「あー、あと水寄越せ、このままじゃ干からびちまう」
日本式の腋下で熱を測っていると口が開いているためかレヴィは彼に矢鱈と絡んで来た。
アイスを食べたせいで寒い(寒くなる程食べてもいない上に熱いスープなんか食べないクセに)だの、
お前のせいで頭が痛い(悪かったとは思うが因果関係など分かったモノではない)だの。
子供のようなその様子に、風邪をひいたときだけは母親が我が侭を聞いてくたこと。
何となく独占出来た気になって少しだけ嬉しかったこと…そんな昔話を聞かせた。
そんな彼に「ママが恋しいか?」といつもの軽口を叩きつつ、「そんな思い出なんざ一つも無い」と口元だけで笑う彼女。
だから今、こうして自分が世話を焼いているのだとロックが笑う。
「テメェがあたしのママってか?一体何の冗談だ。それともついに玉無しになっちまったか?」
彼女はそう憎まれ口を叩くも、その顔は少しだけはにかんでいてどこと無く嬉しそうだった。
「ママにはなれないけど、パパにならなれるかな。今だけ、だけど」
誰に聞かれるワケでも無いそんな会話を、頬を合わせて密やかに交わす。
「……あたしのオヤジはロクでも無かった。毎日殴られて何度も殺されかけた」
父親の話題が出た瞬間、彼女の纏う空気が凍る。
「怖かった?」
体温計が計測の終了を告げる。
「…忘れた」
数字を確認すべく身体を起こす男。
レヴィは朦朧とする意識を繋ぎ止めながらロックに伝える。
「親父に…その日殺されねぇようにって以上の何かを望んだことなんざ一度も無ぇんだ。…だからお前はお前でいいや」
「…そう。俺には何か望んでくれるのかい?」
考え込む様子の彼女を横目に体温計を手に取り表示に目を遣ると41℃を超えている。流石にこれ以上は可哀相だ。
労るように親指の腹で汗を拭いてやると、「…たくさんあるけど、いまのまんまでいい…」と譫言のような声。
矛盾してるがそれを言うのも野暮であろう。
それに、話し込み過ぎた。
早く寝かせてやらなければ。
だが、その前に…薬だ。
「レヴィ?辛いだろ、薬使おうな?」
朦朧とするレヴィの意識の外でそんな声がする。
返事が面倒で軽く頷くことで是との意思を伝えると、一瞬の沈黙の後「あー…その…座薬、自分で入れられる?」と問う声。
(座薬?座薬買って来たのか?最悪だ…)
レヴィは今、指の一本たりとも動かしたくはない。
だが、出来ないと言えば、彼が入れるのだろう…と思い到る。
全く以って冗談ではない。
「……自分でやる…」
掠れる声でそれだけ伝えた。
だが。
レヴィは知らなかった。
この手の薬が一定以上の熱で容易に溶けてしまうことを。
彼に手渡された薬をしっかりと握り締めたまま、酷くだるい身体を動かすべく何度も逡巡した。
そして、いざ銀色の外装を破るとそこにあったのは原型を留めぬほどにドロドロに溶けた残骸。
そういえば彼はこれを冷蔵庫から取り出していた。
「ちゃんと言えよな、糞ロック」
こんなこともまともに出来ない自分が赦せない。
ドロドロのそれを外装ごと床に放り投げると掛布を頭まで引き上げてふて寝を決め込む。
程なくして外をフラついていたロックが帰って来ると、床の残骸を拾い「あーぁ…」と零している。
彼女が無性な悔しさに唇を噛むと、傍らに腰掛けた男に名前を呼ばれた。
「溶けるなんて言わなかった」
不機嫌丸だしで呟くと「全くだ、ごめんな。まだ2つあるから…」 と謝罪の声。
そして、躊躇いがちに手伝いを申し出る。
「わざと言わなかったワケじゃねぇだろーな」
「まさか、信用出来ないのも解るけど…」
「………………」
ガキや片輪でもあるまいし、何が悲しくて惚れた男に尻の面倒まで見てもらわないといけないのかと情けなくて涙が込み上げる。
病気になると気が滅入って良くない。込み上げる涙を堪えて鼻を啜り上げると
「お前は悪くないよな。身体が楽になれば気も楽になるだろ?」
そう言って丸めた背中を撫でる彼の掌。
「……余計なコトすんなよ…」
「しないよ。……ねぇ、クリームか何か持ってる?身体に塗るヤツ」
「…クリーム?」
「その…滑りが…塗ったほうがすぐ終わるしね…」
「…箱…ベッドの下…」
レヴィに示された箱(随分と埃を被っていた)を空けるとクリームのみならず、様々な化粧の道具。
「こんなに色々持ってたの?」
「うっせ…昔バイトした時のだよ」
「SM?」
「………」
一番触れられたくない相手に、触れられたくない過去を口にされ、黙り込む。
「今度化粧してよ、俺のために」
そんなレヴィに気付いているのかいないのか、男は手を洗いながら脳天気にそんなことを語り出す。
「……ヤだ」
ロックのために何かをすること自体はやぶさかではないレヴィではあるが、何となくバツが悪くわざと拒否の言葉を口にする。
彼はクスリと笑いながら彼女の側へと戻ると、尻を出すように言いながら下半身に布をかけ直す。
尻の穴など何度も見ているだろうに、布の下手探りで作業するあたり、一応気を遣ってくれてはいるのだ。
箱で眠っていたシアバターを薄く塗ると「少し冷たいよ」と、薬ともに指を侵入させる。
異物感に顔をしかめると、穴に指を挿しいれたまま「両方メチャウマなんだっけ?」などと尚も無駄口を叩く。
「…………もう終わったなら指離せよ」
話を逸らすべく、剣呑に言う。
だが、何よりも恥ずかしくて仕方ない。
「いや、ヒクヒクしててカワイイな、と思って…」
なのに返って来るのはレヴィの羞恥を更に煽る言葉。
彼としても、滅多に見ることのできないレヴィの赤く恥らう顔を、少しでも楽しみたかった。
「っ……てめ…余計なコトすんなって言っただろ…が…」
「…冗談だよ、薬が出てこないように気をつけろよ?」
指を抜いた男はこれ見よがしにそれを舐める。
「…きったね…な…」
レヴィが嫌そうに顔を背けると「そう?」と悪びれもせず言い放つ。
「……ド変態」
「どーも…っとっ…」
苦笑いしながら着衣を整えられる、…完全に片輪の世話だ。
「そのうち少しは楽になるよ…そろそろ寝ろ」
「…ああ。頭が痛くて死にそうだ。……おぃ、あたしは寝るからよ、ヤリてぇなら勝手にヤってもいいんだぞ。」
「…まだ言うか…」
苦笑いながら彼の手がレヴィの眼を覆い隠す。
視界が閉ざされると同時に、彼の体温が氷で冷やされた眼に心地よく、一瞬で眠気が増す。
「帰んなよ」
「ああ」
「ここにいろよ」
「はいはい。おやすみ」
レヴィが眠ったのを確認するとレヴィの目から掌を離し、さてどうするかと思案する。
部屋の片付けなどを始めてみるが、本格的に掃除したのでは起こしてしまいかねず、すぐに手持ち無沙汰となる。
映画雑誌を見つけ、パラパラと捲ると美しく着飾った女優の写真が並ぶ。
いずれもが隙無く化粧を施されていた。
先程の箱を開け改めて覗き込むと、男の彼から見ても上等と思われる品々が一式揃っている。
悪戯心と嫉妬心。
何処の馬の骨とも知れぬ男共が彼の知らないレヴィを好色の眼で見ていたのだと思うと、酷く許せない。
女の化粧のことなど何一つわからないが、雑誌を参考に見よう見まねで目の前で眠る女の顔にそれを施す。
顔に粉を叩き、目尻にラインを引く。
薬が効いているのか一向に目覚める様子も無くスヤスヤと眠る女。
瞼に色を乗せ、頬と唇に紅を入れる。
上手とは言えないが、それなりにはなったと思う。
いつもと様子の違うレヴィに独占欲を少しばかり満足させ、顔を眺める。
薬が効いているのか先程までの苦しげな様子とは違う、安らかな表情。
客の前ではどんな顔をしていたのだろう。
加虐側の顔は他人の前でも容易に作ることが出来るのだろう。容易に想像が付く。
では被虐の顔は?
微笑んでいた?淫蕩に耽った顔?屈辱と苦痛に歪んだ顔?それとも泣いていた?
「彼」が望めばレヴィはどんな苦痛も甘受するであろう事には彼自身も気が付いている。
幼い頃からの虐待も影響しているのだろうか。彼に対する被支配願望を、最近では隠そうともしなくなった。
先程レヴィは、父親と彼は違うと主張したが、父親に愛されることを望まなかった筈が無い。
愛される手段が相手への服従だったとしたら、彼に服従したがるレヴィの振舞いも腑に落ちる。
無意識の自分を犯しても良いなどという提案だって、彼の期待に応えようとしてのことだろう。
どんな苦痛も羞恥も屈辱も、彼が望めば受け入れる筈だ。
だが、それは彼の前での話。
『シバくのもシバかれるのも二度とご免』
いつだかレヴィは確かこういった。
不特定の男の前で何をされて、どんな顔をしていた?
鞭で打たれただけ?あの店の客がそれだけで満足する輩とは思えない。
以前バイトでチェックしたビデオのSMでは、女は鞭で打たれるだけではなく同時に目隠しをされ道具で尻と性器を犯されていた。
あの女のように顔を歪ませ、あの女のような声で啼いていたのだろうか?
瞼の裏で妄想ばかりが膨らみ、一度小さくなった筈の独占欲の火が一気に燃え盛る。
この口はどのように啼いていたのだろう、そう思うと理由も無く怒りが湧いた。
衝動に逆らわず、レヴィの半開きの唇を塞ぐ。
いつもならば巻きついて来る腕も、誘うように開かれる唇も無反応だ。
つい先程は同じ事をされて泣き出したというのに。
レヴィの泣き顔を思い出す、客の前でもあんな風に泣いたのか?
両手でレヴィの頬を包み、自分のものであることを確かめるように何度も何度も指を這わす。
そう言えばあの店の女は皆胸を露出した半裸の姿で客の前に出ていた。
ということはレヴィも…?晒したのは胸だけ?それともやはり犯されたのだろうか。
起こさぬよう慎重にシャツをたくし上げ、胸を晒す。
この胸だって見られていたに違い無いのだ、自分のものだと胸の内で叫びながらいつもしているように顔を埋め頬擦りする。
レヴィの心臓は、情事の時に比べ穏やかなリズムを刻む。
レヴィに知られることなく密やかに進む彼の行為。
酷く卑劣な行いとの自覚はあるが、背徳感からの言いようの無い興奮を抑えきれなくなってきた。
本当にこのまま犯してしまおうか?
気付いた時、どのような顔をするだろう。
羞恥に顔を染めるだろうか、呆れ果てるだろうか、それとも怒り出すか。
だが……泣き顔が見たい。
レヴィの顔が羞恥と屈辱の涙で濡れる様を見たい。
レヴィの笑顔が見たい反面、そのような歪んだ願望を持っていたのだと初めて気付いたが、それを自覚した瞬間に彼の腹は決まった。
彼女の身体をうつ伏せに転がし、お互いの下半身を露わにすると彼女の尻に先程のクリームをたっぷりと塗りたくる。
そして、滑る彼女の肛門に自らを宛がうとゆっくりと身を沈めていった。
いつもと違う穴の感覚に初めは戸惑う。
膣と違い全体を締め付けるのではなく入り口がキュっと締まるのだ。
これはこれで悪くは無いが、感覚だけならば膣の方がいい。
彼個人としては、肉体的な快楽というよりも、『病』で『無意識』の『大切な女』を『屈辱的な方法』で犯しているという精神的な愉悦の方が魅力的だった。
彼女の背中に身体を密着させ、背後から胸を撫で回す。
熱を下げているとはいえ、いつもよりも随分と体温が高い。
静かにゆっくりと揺さぶられる彼女の体。
「…んっ…」
身じろぎと共に彼女の口からうめき声が漏れる。
そろそろ起きてしまうだろうか。
早く気付いて顔を見せて欲しい気もするが、今はまだこの言いようの無い背徳的な興奮を味わっていたい。
ロックは動きを止めて彼女の髪を優しく撫でる。
こうしてやると寝つきが良いのだ。
彼女の寝息が再度深いものとなったことを確認し、行為を再開する。
彼の中の冷静な自分が何度も何度も彼女に謝っている。
もう止めろと。
心の一部は罪悪感で一杯なのに止めることが出来ない。
されるがままの人形のような彼女に、彼のどす黒い支配欲が満たされていく。
そう、彼女は今、人ではなく意思を持たない人形…つまり「物」なのだ。
「物」「物体」、そして「道具」。
ThingでありObjectであり、…Toy…Doll…Tool…
思いつく単語を挙げる
総じて【 It 】という一語に収束する。
Sheではなく【 It 】…レヴィでも彼女でもなく【コレ】。
潜水艦で彼女に諭され、反発を覚えた思想。
まるっきり同じどころかそれよりも遥かに酷い歪んだ結論に満足感が一気に高まる。
こんなに屈辱的な扱いをされているのに、無防備な寝顔を晒しているレヴィ。
そんな彼女が心の底から愛おしい。
愛する【ソレ】を激しく揺さぶり、そして中に吐き出した。
彼一人の荒い息が部屋に響く中、彼の下の彼女は眉を寄せて身じろぎしている。
早く起きて。
顔を見せてくれ。
彼女の肩のトライバルにキスを落とす。
「ん…ぁ…ロック…?」
「レヴィ…」
意識を戻しつつある彼女の名前を呼びながらうなじを強く吸い、キスを繰り返すと、状況を認識したらしい彼女の呼吸が止まる。
驚いたように目を見開き、そして「ぁ…あ…ぇ…?…な、んで…」と真っ当な疑問符を搾り出す。
彼女が完全に覚醒したことを確認し、再び吐き出すべく律動を開始する。
もう起こさぬようにと気を遣う必要も無い。
彼の下から這い出そうともがく彼女を背後から押さえつけ乱暴に身体を打ち付ける。
「やめろ…イヤだ…何で…だよ…」
彼女の拒絶と疑問に応じることなく自分勝手に腰を振りながら、彼女に問いを返す。
「レヴィ?ローワンの店ではどんな風に啼いた?」
「何言って…」
「どんな風に客にサービスした?どんな顔で?」
「イヤ…だ…」
彼女は枕に顔を埋め、耳を塞ぐ。
何をしていたかなんて、彼に知られるのだけはイヤだった。
「ふ〜ん…そんな風に耳を塞いで怯えてたの?でもそれじゃぁ『メチャウマ』じゃないよね?」
彼女に聞こえるよう、耳元に口を寄せ尚も問いかける。
「犯されたの?沢山の男の前で…股を広げて…腰を振ったの?」
「……ちが…ぅっ…」
枕に突っ伏したまま首を振るレヴィ。
「なら何をしたんだよ!言えよ!!」
一際強く腰を打ちつけると、声を荒げて髪を引く。
「ゃあっ!!!!ぁ…はぁ…ゃだ…おぼえて…ねぇ…」
「さっき『違う』って言ったよね?」
「…………ぁ…ぁあ…どうして…?」
混乱し、顔を伏せたまま同じ疑問符を繰り返すレヴィ。
ああ、これでは泣き顔が見えないではないか、困った。
ロックは行為を中断し、髪にキスをしながら身体を優しく撫でる。
「レヴィ?大丈夫だよ。だから顔を見せて」
そっと彼女の上半身を捩じらせ上向かせると抵抗は無い。
だが、そこにあったのは涙で顔を濡らしたまま力なく彼を見つめる瞳。
否、焦点が定まっていないので彼を見ているわけでもあるまい。
身体はぐったりと弛緩して、まるで元の【 It 】だ。
そんな痛々しい様にすらゾクゾクとした興奮を覚えるロック。
いつか自分が彼女を殺してしまうのではないか、そんな危惧を覚えながらも止めることが出来ない。
「なぁ…レヴィ。聞いたからって嫌いになったりしないさ。嫉妬してるんだ、俺の知らないお前を知ってる客にな」
レヴィの意識に直接語りかけるよう耳に口を付けてゆっくりと言葉を紡ぐと、抱き締めながら涙に沿って優しげに頬に口付ける。
彼女は瞳を閉じて涙を流しながら、消え入りそうな声で告白を始めた。
「……目隠し…して天井から…つるされて………」
「どんな風に?」
「客に…股が…見えるように…開いて…」
「ふ〜ん……で?」
「ぁ…アスに…ローター…突っ込んで……金を払った客がスイッチを弄るんだ…」
「へぇ…それで?」
「…客が…ッシー…に、…あ…グラスの…氷や…食い物を入れて直接食ったり…コック以外なら何を突っ込んでもいいんだ……」
「それだけ?」
「水が…垂れると…シバかれ…て…、けどボタボタ垂れて…また入れられて…」
「うん。ソレで、レヴィはそれで感じてたの?どんな顔してたの?」
「だんだん…寒くなって…震えが止まらなくて…許して…頼む…許して…」
何に対して許しを乞うているのか、彼女自身も解っていないに違いない。
体力を消耗した様子の彼女を揺さぶりながら唇にキスをする。
続きを強請るように伸ばされる舌に自らのそれを絡めて最後へと向かう。
一度も触っていない彼女の性器から体液が溢れシーツを濡らしているのに気付き、それを伝える。
羞恥からか、叱られた子供のように指を咥えて彼を見上げる彼女。
新しい顔だ…ようやく独占欲をから解放された彼は同時に彼女の尻の中へと自身を解放する。
嗚咽が止まらぬ彼女を宥めながら後始末をし、抱き締めて眠る。
果たして、次起きたときには何を言われるだろう、蹴りと銃弾の何発か貰うことになるかと彼は覚悟を決める、
夜中に目覚めた彼女は、暫く彼とは目も合わさず天井を眺めていたが、突然彼を側へ呼びつけると
「ド変態、ファザーファッカー!尻が好きならバンコクでオカマのケツ掘って来い、アホンダラ」
「怒ってる?」
「寝惚けたコト抜かすんじゃねぇ、何が『怒ってる?』だ!怒ってねぇ筈ねぇだろ!」
相変らず目を合わせずに捲くし立てる。
「何をすれば許してくれるかな…?」
恐る恐る聞いてみる。彼の思い上がった予想に反し、このままでは当分怒りは収まりそうにない。
「………尻でしてもいいけどよ、それだけじゃイヤだ…」
「…了解」
そう。結局彼女は彼への服従を選ぶ。
「ああ、それと。お前それ何年前の化粧品だと思う?尻の周りがかぶれて痒くて仕方ネェ…自分だけシャワー浴びやがって。
あたしがシャワー浴びてる間に塗り薬買って来い。それとマンゴーが食いたい。ココナッツミルク掛けたヤツな」
「シャワーはまだ止めた方が…フラついてるし。それに買って来いって言っても今、夜中…マンゴーはともかく薬は…」
「 買 っ て キ ヤ ガ レ 」
「……ハイ…」
彼もまた、然り。
++++++++
ケツ穴属性欠如してるなりに書いてみたケツ穴話。相変らずエロ以外が無駄に長い。
体温計とかオヤジの話とか日常描写とか看病描写とか無駄な会話とかいらねーよ、とか思いつつ書きたくて…すいません。
238氏の素敵エロエロSSの後に出すのは憚られたのですが、出来かけてたので。お目汚しすいません。
ケツっつーと、やっぱプレイがアブノーマルになっちまいます、つーかコレ準強姦つーか…その後も完全にごうk…。
あと許されるなら、同じ設定でまた何か書くかもです
大越●太郎漫画みたいな変態屍姦プレイが書きたい。ケツかどうかは解りませんけど。
GJ、良いエロスだったぜ
アナル分が補給されますた!GJ!!!
ちょっと衝動にかられて書いてみました。
壊れたガル×ロベです。
******************************
「だめだよ、だめ、だめ・・・だめだったら」
消え入りそうな声とは裏腹に、白い顔に張り付いているのは危うげな笑み。
ガルシアは遠くを見つめたまま、ただだめ、だめ、と繰り返し、手にした鎖を
強く引いた。
鈍色の鎖の先に繋がっているのは赤い首輪、そして・・・
「ぼくのロベルタ・・・」
うわ言のように呟いて、目の前の長い髪を鎖ごと掴んで、引きずり倒す。
「うぅ・・・」
苦しげに呻き声を漏らすロベルタの唇は猿轡がはめられ、唾液に濡れて口紅を刷いたように赤い。
白い身体に垂らされた蝋が、まるで血を浴びた後のようだった。
「だめだよ、だめじゃないか・・・」
クスクス笑いながら、手にしたスイッチを弄る。
暗い部屋に断続的に響くモーター音。
ロベルタの尻から生えた尻尾が、正確には犬の尻尾を模した玩具が、
腰の動きにあわせてしきりに動き回る。
「ん、ふっ・・・」
人工的な音に混ざる、水音と荒い息遣い。
「そんなに尻尾振って・・・お尻気持ちいいの?」
「・・・・ッ」
「お仕置きなのに、気持ちいいんだ。」
小さな主人はあくまで冷淡で。
「昔もこういうこといっぱいされて悦んでたのかな?
だってロベルタ、犬だもんね。
あれ、水溜りまでつくっちゃって・・・お漏らししちゃったの?
しょうがないなあ・・・・だめじゃないか」
尻尾の付け根に赤い蝋が垂らされる。
「はぁあ!」
痛みと羞恥のあまり、耳まで赤くして顔を背けるロベルタ。
浅い呼吸に合わせて上下する背中に、汗の粒がいくつも浮いている。
だが、首輪以外の拘束は一切されていないというのに、少しも抵抗せずに理不尽な責めを受け入れる。
「まだまだ許さないよ、ロベルタがまた前みたいに笑って、
若様って呼んでくれて、腕相撲して、一緒に紅茶飲んで・・・
そんな、そんなふうに、前みたいに、一緒に、いっしょにくらせるように、ように、
なる、まで・・・・ゆるさ、ない、から・・・・」
壊れた口調にうつろな笑顔、ふらつく足。
もうすでに、穢れのない天使のような、以前のガルシアはいない。
そして、首輪から繋がった鎖が容赦なく振り下ろされる。
「だめなんだ、だめだよ、だめなんだ、ロベルタ。」
壊れてしまった。
そう、許されることなんてないのだ。
全部私の所為だわたしがあんなことをしたから
ごとうしゅさまも、わたしのせいで・・・
そして、だいすきな、わかさま、も・・・・
頭の中で奴が囁く。
「君はもう元には戻れない。若君もだ、君は取り返しのつかないことをしたのだ」、と。
若様がこの部屋を訪れる時以外は、手足を拘束されて動けない。
薬は何日も飲んでいない。
限界はとうに超えている。
ガルシアの声と頭の中の声が重なって、もう何もわからない。
腕に顔を埋めてロベルタは静かに泣いた。
******************************
なんか空気を読まない上にやたら暗くて申し訳ありません
ロックによるレヴィ責めもこの上なく大好きです。
>>261 おぅ!?
久しぶりに見たら良いのが投下されてた
こういう壊れ系のSS好きだなぁ
GJ!!
なんというSM……
こ・・これは・・先取りwwGJです
ロベルタやめて…
やめてやめて、
ロベルタやめて
やめて
ロベルタ、
駄目だ
だめだだめだ
だめだよもうだめ
いやだ
いや
いや
いやだよう、
いや━━━━━━…
もうらめええええええええ━━━━━━!!!!!
来月はロベにやられちゃうんですね。
おまえのいうことはうそっぱちだ。
おまえも、
わかさまも、
だれもいない。
いまそれを
たしかめてみせてやる。
蒸し暑い部屋の中には生臭い血と硝煙の臭いがまるで汚泥のように充満し
ロベルタの両腕は今しがた叩き潰した男の血と脳漿で滴り落ちほどにどす黒く染まっていた。
そしてロベルタにしか見えない日本人が部屋の隅でじっと立っていた。
うふ。うふふふ。
馬鹿な亡霊め、いや、幻。
そう、そうよここにはだあれもいないの。
ごつん。ロベルタの足もとにはガルシアが虚空を見つめていた。
その瞳にはかつての輝きは消え、ぼやけた濁りが覆っていた。
こんなはずがない。
あの若様がこんなことになるわけがない。
これはニセモノ。わたしの若様は幸せに笑っていないと。
ごつん。
だめ、だめだ、だめだめ、ロベルタだめ。
消え入りそうな声で繰り返すガルシアをロベルタは氷の様な目で見下ろす。
ニセモノめ、若様と同じ声で、若様と同じ顔でそんなことを言うな、
ドガッ!!
ロベルタはガルシアの腹を蹴り飛ばす。グギャ!
「ガハッ、ハッ、」
「はは!ほうらやっぱりニセモノだ。蹴った感覚なんてないじゃない」
ロベルタはガルシアの髪をつかむとその虚ろな顔を覗きこんだ。
「…だめ、だめ、だめ」
「ニセモノさん。ニセモノさん。わたしのわかさまはね、そんな酷い顔なんてしないのよ
お前がニセモノだってことあそこに立ってる日本人にも解らしてあげないとね
さあ、どう料理してくれようかしら?どんな拷問がいい?舌を引き抜いてあげようか?
目玉を抜いてあげようか?それとも…そうね、さっきの雄犬みたいに下半身をぶち抜くのもいいわね
わたしの性欲処理に使ってその後ゴミクズみたいに捨ててあげる。それほどまでにお前の罪は重いの、解る?」
「ロベ…ルタ…だ…め」
黒く病んだロベルタにはガルシアの声はもう届かなかった。
こうですか?わかりません><
こういうの嫌いじゃない自分がクヤシイ・・・ビクビクッ
なんかロベルタ見てると、とある歌手の「この子の七つのお祝いに」って歌が・・・
関係なくてすまん。
>>267 GJ!!
壊れたロベすごくいいです。
ロベルト見てるとセーラームーンぐらいしか思い浮かべない
南葛のサッカーのコーチがどうしたって?
ここも過疎り気味だなぁ…
何故か百合は繁盛してると言うのに
何故だ
この程度で過疎っていわれてもなあ。
しばらく前のスレに比べたらSS投下されてるんだから文句は言えないなあ。
275 :
蒼空の朝01:2008/05/13(火) 23:33:33 ID:oV/o3ezP
ども、バカるでい にございます。
スレの流れを無限大に無視して、97の方の「陵辱編」設定拝借、続編の形でレヴィの浮気話、いってみます。
オリキャラ出まくり。チョイ役ではなく結構重要ポストで出演しますので、苦手な方はスルーしておくんなませ。
レヴィ一人称。うまく書けたかなぁ?
+++
…痛い痛い痛いイヤぁっ! 痛い痛いイヤだイヤだ、神、様、助けて、痛いぃぃ!!!!
…痛てぇ!!ブッ殺すぞテメェ!痛ぇんだ!!頼むからやめろぉ!離しやがれぇ!!!!
「!!つ!ぁぁぁっ!!」
叫びながら跳び起きた。
呼吸が荒い、オマケに汗びっしょりだ。
ココはドコだ?
N.Y.の廃屋ではない、どこかの路地裏の空き部屋でもない。
アパートの自室のベッドの上。夢か……。
そこまで認識したら、一気に全身がぐったりと来ちまって、またベッドに倒れこんだ。
畜生、よりにもよって悪夢がダブルのフルコースかよ。
サッシの隙間から漏れてくる朝日がまぶしい。右腕で両目を覆った。
例によってヒトを馬鹿にしたように澄んだ青空が、アタシの神経に更に追い討ちをかけやがる。
あの事件の後、仕事に復帰して暫く経っていた。
昨夜は久しぶりでアパートに戻って一人で寝たんだ。
その途端このザマだ。何てこった。
アイツと一緒にいないとマトモに眠ることも出来なくなっちまったのかよ、アタシは。
だらしねェ……
体の中でドス黒いモヤモヤしたものが渦巻いている。一生逃げることの出来ない記憶。
だんだん寝汗で張り付いた下着とシーツのベタベタ感が不快になり始めた。
シャワーに行こうとノロノロと床に降りた。
この糞っタレな記憶までいっしょに洗い流せたらどんなにスッキリすることか、と思いながら。
頭から熱いシャワーを浴びた。
ひどい倦怠感のせいでがっくりと下を向いていると、何とは無しに流れ去る湯に目が行った。
股間からあの忌まわしい自分以外のものが吐き出した白い体液が流れ出ているような錯覚に襲われた。
「ええぃっ!チックショっう!!」
ガンッ! と壁のタイルを殴りつけた。馬鹿馬鹿しい、テメエの拳が痛くなっただけだ。
それでもシャワーで少しは頭がシャッキリした。
だが、とても朝飯食える気分じゃない。
ビール飲もうと冷蔵庫を開けたが、またイヤなことを思い出して止めた。
代わりにミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、そのままアオる。
冷水で胃の中から急速に冷やされる体。
さぁ、今日は仕事で事務所に行かなきゃならねぇ。
重い体に鞭打って身支度を整える。
…それにしても我ながらトッ散らかってやがるな、この部屋は。
またアイツに掃除させるか。
276 :
蒼空の朝02:2008/05/13(火) 23:34:59 ID:oV/o3ezP
ラグーンの事務所。
鉛を呑んだみてえに重い体を引き摺って、やっとこさたどり着いた。
ガタガタ
ドアノブが動かねぇ。チッ、昨夜自分で鍵かけたんじゃねぇか。
ゴソゴソとポケット探って鍵を取り出そうとするが、こういう時に限ってどっかに引っかかりやがって出てこねぇ。
Shit!、この上イライラのタネを増やすんじゃねぇ!
からまった糸だか繊維だかを無理矢理引きちぎり、やっと出てきた鍵で扉を開けて中に入る。
薄暗い室内にムッとした空気が充満していた。
たまらずに空調のスイッチを入れると、そのままソファに寝転んだ。
静かだ。誰もいない。
当たり前だ、アタシを除いたメンバー全員、昨日から海の上だ。
アタシが残ったのは電話番のためだ。
昨日、急の仕事の依頼があったんだ。
ところがタイミングが悪いコトに、今日はクライアントから重要な電話が3件入る予定になっていた。
普段なら電話番にはロックが残るところだが、オメエは調子がまだ怪しいっつって、ダッチの旦那はアタシに残れと命じた。
アタシは駄々っ子よろしく、ちょっとばかりブー垂れてやったんだが、まあ結果的に残されたのは正解だった。
ロックが陸(おか)に残ればアタシは船でやっぱり一人寝だ。
船の上であの悪夢にやられていたら最悪だっただろう。
………けっ、また思い出しちまった。
こびり付いてアタシを放そうとしない黒いモヤモヤした不快な記憶。
えぇぃ! 畜生!!
今朝から何回目だよ、悪態ついてるのは。
たまらずにソファから起き上がって事務所の冷蔵庫まで行く。
頭の中で、アタシを犯した連中がニヤニヤ嘲笑いながらラインダンス踊ってやがる!
待ってやがれ、アルコールで分解消毒してやらぁ!
だけど扉を開ける寸前で自分の中の何人かが待ったをかけた。
一人目、仕事中だろ。テメエはヨッパで客の電話出る気か?
二人目、こないだあんな目にあったばかりじゃねえか。テメエには学習能力ってモンが無いのか、このタコ。
三人目、今朝は水で目的果たせただろうが。その歳で健忘症か?
四人目、…
はいはい、わーったよ。ガマンすりゃイイんだろ。クソッタれ。
反吐が出そうなラインダンスに強引に幕を引き、
回れ右すると、コーヒーメーカーの前まで行った。
数分間そこで阿呆みてえに突っ立ってるアタシ。
………これ、使い方わかんねぇ。
277 :
蒼空の朝03:2008/05/13(火) 23:36:11 ID:oV/o3ezP
電話の方は昼過ぎまでに3件とも片付いた。
まあ、アタシにしちゃ愛想良く応対できた方だと思う。
連絡事項をメモとホワイトボードに記入して、今日の仕事は終わり。
さて、これからどうすっかな。
ここで留守番しててもイイんだが……
レヴィ姉さん特製、下水をブレンドしたみてぇなコーヒーモドキを飲むのは、もうゴメンだ。
あれじゃあレーションのインスタントコーヒーの方がよっぽどマシだ。
アイツが戻ったら真っ先に使い方説明させると決心する。
その辺にうっちゃった雑誌の類は、もう暗記するほど読んじまって手に取る気もしねぇ。
ここに居てもやる事は無ぇか。
エダんトコにでも行くかな?
ただ車が無えんだよなぁ。昨日3人がドックまで乗って行っちまったから。
……
………っ。
チっキショ、じっとしてるとまたドス黒いモンが頭をもたげてくる。
じわじわと精神を締め上げられていく。頭がおかしくなりそうだ。
予定じゃ船は明日の昼まで戻らない。つまりアイツもそれまでは戻ってこない。
それまでアタシの神経が持つのか不安になる。
今は無性に会いたい。隣に居てくれるだけでいい。
なんだよ、アイツはアタシの精神安定剤かよ。
まったく、ダッセ、我ながらダッセぇ…。
そういえば今朝から何も食ってないことを思い出した。
口にしたのは水と自家製黒っぽい湯。
相変わらず食欲なんざ地の果てまでスっ飛んじまってる気分だが、
またフラフラになってそこらでブッ倒れるのもゴメンだ。
ピザの出前でも頼むか?
いや、届くの待ってる間ココでじっとしてるのもたまんねぇ。
ココにいると無意識にいつもは居るはずのアイツを探してしまう。
そして居ないことを再認識して、またアタシを犯した連中の嘲笑責めだ。
それでアタシは腹ごしらえに市場まで出掛けることにした。
何だったらメシ食った後、ドックまで足伸ばして車拾ってきてもいい。
とにかく動いていないと、どうかなっちまいそうだ。
278 :
蒼空の朝04:2008/05/13(火) 23:37:13 ID:oV/o3ezP
事務所出て3分と経たずに、アタシは出掛けたことを後悔した。
暑いんだっての。
あったり前だ、昼過ぎだぞ。
一日のうちで一番暑い時間帯じゃねぇか。
いくら無学なアタシだって、そんくらい知ってら。
暑いってより「熱い」だ。畜生!
ギラギラした太陽を見上げて、思わずカトラスに手が伸びる。
できるモンなら撃ち落としてやりてぇ。
ブツブツ文句垂れながら日陰を選んで市場を徘徊する。
昼飯時から少し遅れたおかけで人は少ねぇな。
ま、神経が高ぶっているから、その方がありがてぇや。
大体、ただでさえ暑いんだ、人が多いと熱気でたまったもんじゃねぇ。
ヘタすりゃカトラスで数人減らしちまおうなんて考えかねない。今のアタシじゃ。
ドコでメシ食うかな? ぶらぶらしていたら、ある店が目に留まった。
あー、いつだったかアイツと大喧嘩した店だ。
思い出したら、なんだか苦笑しちまった。
あの時に結局食い損なったフォー(※)を注文する。
店番の兄ちゃん、アタシを見るなり露骨に嫌な顔しやがった。
あの騒ぎで暫くの間は客足が減ったんだろう。一時サツが封鎖したしな。
悪かったよ、今日は喧嘩相手は居ねぇから安心しな。
※作者能書き
フォー(Pho)はベトナム麺の料理だそうです。
アニメの片渕監督のブログでは、7話で食っていたのはフォーだそうなので、それに合わせました。
ロアナプラはタイという設定だそうですが、ベトナムからの流入者が多いようで。
バオもその一人か。
279 :
蒼空の朝05:2008/05/13(火) 23:38:18 ID:oV/o3ezP
「ええぃ! このヤロウ!」
周囲に人が少ないのを良い事に、声を出して悪態をつく。
まったく今朝からロクな事が無ぇ。
アタシは食事に悪戦苦闘していた。何故かって? 食器だよ、食器!
この、何つったけ? ロックはhashiとか呼んでいやがったな。
日本に行った時は散々お目にかかったが、なんでこんな2本の棒切れで汁に浸かった麺(ヌードル)なんかが食えるんだよ!
フォークぐらい用意しとけってんだ。
って、アタシも東洋系の血統じゃねえのかよ、ったく。
ガキの頃にはこんな道具は見たことも聞いたことも無かったけどな。
文句言いながらそこらの野良犬みてえにズルズルすすりこみ、口中や舌に火傷をこさえながらなんとか三分の二ほど平らげた。
まぁ、それでなんか満足しちまった。
香辛料がイイ具合に効いて玉のように汗が流れ出るが、不快な汗ではない。
あーあ、この未だにくすぶってる黒いモヤモヤも一緒に出ちまってくれねぇもんかな。
何だってこんなに後引くのかね……。あぁ考えるの止めろ!、食ったもの吐いちまう。
ボールの底に溜まった麺と汁との残りを棒切れで突っつきながら、アイツのことだけを考える。
今頃、何やってんだろう。
そう言えば、アイツに向けて本気で鉛弾ブッ放したのはあの喧嘩の時だけだな。
あの時、本当にブッ殺していたら、今頃アタシはどうなっていただろう。
別に変わんねーかな。代わりに大事なモン取り損なったコトにも気が付かずに。
その時だった。
アタシのオツムん中で長年かけて磨き上げた赤ランプが点滅した。
何だ? 視線? 殺気? どっかから狙われている? ラグーンのトゥーハンドと殺り合おうって馬鹿か? イイ度胸だ。
慎重に棒切れを左手に持ち替え、ボールを突っつき続ける。
空いた右手は腕を組む振りをして左脇の銃把(グリップ)を握る。
幸い今日は出掛けに薬室(チャンバー)に初弾を装填したままだ。このままダブルアクションでお見舞いできる。
不自然にならない程度に首を巡らし、周囲をスキャンする。
幸い他の客は少ない。
一つ一つ周りのテーブルをチェックする。……クリア。
屋台の店番。……クリア。
路地の陰。……クリア。
周囲の建屋の窓。……クリア。
畜生、気配を消しやがったな。
コッチが気づいたことに気づかれたか?
神経がささくれ立っているから、気のせいだったのかもしれない。
だが、長年のカンを無視する理由も無い。イイ緊張感じゃねぇか。
こうなりゃ根競べだ。もう一度スキャン開始。
ん?
隅のテーブルに座った客に、何か引っ掛かるものを感じた。
280 :
蒼空の朝06:2008/05/13(火) 23:39:30 ID:oV/o3ezP
天幕の下で日陰になったテーブルで、塀を背にして座るオッサン。
さっきは新聞を広げていたんで顔やら風体やら見えなかったが、座る向きを変えやがったので今はこっちからも見える。
どうにも場違いな、着古してくたびれたスーツ姿。
どっかの誰かと同じ、典型的間抜けホワイトカラースタイル。
いや、アイツより上行ってるな。ご丁寧にこの炎天下に上着まで着てやがる。
首からはカメラ下げて、念の入ったことにツラには眼鏡付き。
椅子の下には無警戒にボストンバッグが放り出してある。
ほれ見ろ、10ヤードほど離れたところから、置き引きがアンタの大事なバッグを狙ってスキを伺ってるぜ。
これが昔噂に聞いたジャップのノーキョー御一行様の片割れか?
まさかな、この街に何の観光だ?
犯罪見学ツアー?、むしろ被害者体験ツアーだな。運が良ければ殺人の被害者も体験できますってか。
それにしても、何でこんなヤツが気に掛かるんだ?
ロックに近いモンがあるから? よせやい、冗談じゃねぇ。ツラは似ても似つかねぇオッサンだぞ。
もう少し観察する。
貧相な痩せ型、30歳過ぎくらいか。
ちょいと口髭を生やしている。いや、どっちかっつーと放ったらかしの無精ヒゲって感じだな。ベニーほどじゃないが。
やや大きめのカメラ。Nikonのロゴ。フリーの報道カメラマンか何かか?
?
ダメだ。頭の中では盛んに警報が鳴り響いているが、その正体がわからねぇ。
やっぱり神経がまいっていやがるのかと、溜息が出た。
ヤツが新聞をめくって、また座る向きを変えやがった。忙しい野郎だな。
その時だ、それまでカメラで隠れていたヤツの左脇がチラッとだけ見えた。
ブルッと緊張が走った。間違いない、ガンホルスターだ。ポッケに入るようなチンケな護身用じゃねぇ。
あえて上着を着ているのはあれを隠すためか?
しかも、コイツ新聞なんぞロクに読んでねぇ。それまで死角だった方向に視線を巡らせて警戒してやがる。
めくるフリして角度を変えて周囲を警戒。新聞はある意味目隠しか。
よくよく見てみりゃ、足元のカバンもショルダーベルトを片足に絡ませてある。
どおりで置き引き野郎が簡単に手出しできないワケだ。ひったくったらヤツの足ごと引き摺るハメになる。
……間違いない、コイツ堅気じゃねぇ。さっき感じたのはコイツの視線だったのか?
え? あ、やべぇ! 目が合っちまった!
281 :
蒼空の朝07:2008/05/13(火) 23:40:39 ID:oV/o3ezP
数秒間の睨み合い。
アドレナリンが全身を駆け巡る。
下手に動いて見やがれ、1秒の暇も与えず叩き込んでやる。
いや、後で考えてみたら、睨んでいたのはアタシの方だけで、ヤツはむしろキョトンとしてた。
ヤツもコッチにちょっとばかり注目して、それでアタシの臨戦態勢に気づいたのだろう。
いきなり撃たれちゃかなわんとばかりに、ワザとらしい程ゆっくりした動きで新聞を畳み、
立ち上がってカバンを抱えると歩いてこちらに近づいてきた。
何だと?
テーブルを挟んで向こう側まで来たヤツは無遠慮に聞いてきた。
「えーと、ひょっとして、ラグーン商会のレヴェッカ嬢?」
警戒は解かずに聞き返す。
「アンタは?」
「おっとっと、こりゃ失礼いたしまし。イクヤ・オカジマといいます。」
オカジマ?
どっかで聞いたな。って、ロックのラストネームじゃねぇか。
そう言えばアイツ、故郷(くに)に兄貴が居るって言っていたな。まさかコイツが?
「ラグーンとは何度が取引させてもらったシー・ホース・トレーディングのモンです。」
裏稼業の同業者だ。ロックとは無関係か。
「そいつらなら知ってるけどな、つい最近、海上警察とハデにやらかして全滅したと聞いたぜ。」
「あん、フネは今頃海の底で魚の別荘、乗ってた仲間は全員フカの胃袋に収まっちまった。」
言い方はフザけちゃいるが、ちょっと表情が歪んだように見えた。
しかし、どうも胡散臭い。
「アンタだけ何で助かった?」
「座ってもいいスかね?」
黙って頷いた。
コイツの話によると、普段から陸(おか)で専ら事務やら折衝やらを担当していて、めったに海には出ていなかったと。
どうりで見ないツラなわけだ。
その日も陸に居て、仲間から無線で非常を知らされ、サツの手入れが来る前に身一つで何とか逃げ出したらしい。
あちこち逃げ回って昨日この街へ潜り込んだと。
確かに、この街は逃げ込むにはうってつけかもな。
282 :
蒼空の朝08:2008/05/13(火) 23:41:50 ID:oV/o3ezP
「もう一つ質問だ。なんでアタシがラグーンのレヴェッカだと思う?」
「ロアナプラの二挺拳銃(トゥーハンド)の噂は、仲間から散々聞かされててね。
シルバーのカスタムベレッタを両脇に下げ、髪を束ねて、右肩から上腕に刺青のある中国系アメリカンの若い美人。」
「最後のは余計だ。」
「だっけどね、私にゃ最後のが一番重要なポイントなんすけど。」
「けっ、このスケベ野郎が。」
「お褒めに預かりまして光栄。」
ケロっとした顔で抜かしやがった。口の減らねぇ野郎だ。
「で、アンタの言うところの美人さんに何の用だ? デートのお誘いか?」
「当り(ビンゴ)。」
ズッこけたよ、正直言って。
まあ要するに、新参者なので街を案内してくれと、そういうことだった。
ヤサもまだ確保してないと言う。
コッチはドコのウマの骨とも知れない野郎の面倒なんざ見る気はサラサラ無いんだが、
案内してくれるなら、と言ってこの野郎は輪ゴムで束ねた札束をよこした。
額面がバラバラの紙幣が全部で1000ドル弱といったところ。
正味半日、経費はかからず、命の心配の無いバイト料としてはまあ悪くない。それでもアタシがジト目で睨んでいると。
「交通費は当然こっち持ち。プラス今夜一杯おごるってところでどう?」と来やがった。
フン、どうせヒマだし付き合ってやるか。
「言っとくが、ボディーガードまではやらねぇぞ。トラブル起したらほっとくからな。」
「勿論。」
もっとも派手に撃ち合いにでもなったら、喜んで割り込むツモリだけどな。
この野郎は自前の足として何とも不恰好なバイクを持っていた。
いろんなメーカーのパーツの集合体。それが奇妙なバランスで成り立っていた。
おそらくカッパラったブツから使える部品を取っ払い、それを組み合わせて修理したもんなんだろう。
283 :
蒼空の朝09:2008/05/13(火) 23:42:49 ID:oV/o3ezP
野郎の後ろに跨る。
コッチは背後に居るんだ、妙なマネしやがったら即ズドン。わかっちゃいるだろうがな。
今にも停まっちまいそうな爆音を挙げてポンコツバイクが走り出した。
この炎天下でも、走って風を受けりゃそれなりに爽快だ。
流石にハーレーみたいな乗り心地、というワケにはいかないけどな。
先ずは腰を落ち着ける先ということで、マダム・ラケタのモーテルに連れてった。
このマダム、本業は売春の斡旋なんだが、副業でモーテルを経営している。
ぶっちゃけて言うと、本業の客にヤる場所を提供しているんだがな。
おかげで格安の宿賃で、ベッド・エアコン・シャワー・トイレ付きの個室にありつけるって次第。
「ちょいとレヴィ、『素泊まり』の客は迷惑なんだけどねぇ。」
案の定、マダムの口から苦情が湧いて出たけどアタシの知ったこっちゃねぇ。
そしたら野郎、自分で交渉しやがった。
「ほんではマダム、宿代は一ヶ月前払いたしましょ。
それと、もし寝台の『隙間』が気になったらソッチの『補修』も頼むと思うけど、こんなトコでどないで?」
……こンの野郎、本当に口が達者だよ。
この街じゃ新参者は3日持てばイイ方だ。大概はそれまでに港の埋め立てかサツの死体置き場(モルグ)行きだ。
一ヶ月分取っておけば損は無い。くたばっちまえば、それ以降に別の客を入れようが文句は出ない。
オマケに本業の方の客にもなる可能性を匂わせて心象を良くしてやがる。
案の定、マダムは即決OKしやがったよ。
「失業中にしちゃ羽振りがイイじゃねぇか。」
ポンコツに跨って街を巡りながら野郎の背中に話しかけた。
「はぃぃ?」
「とぼけんなよ。アタシに払ったバイト料に一ヶ月分の家賃。」
「おかげでそろそろスッカラカン。」
「今夜の件、忘れてねぇだろうなぁ?」
「美人との約束は破らない主義でね。」
まったく、イイ心掛けしてるぜ。
284 :
蒼空の朝10:2008/05/13(火) 23:43:54 ID:oV/o3ezP
ロアナプラはそんなにデカイ街じゃない。
案内するのに大して時間はかからなかった。
ロシア人と香港系には注意しな、とだけ追加でレクチャーしといた。
後は自分で学習するだろ。ズブのシロウトじゃないようだし。
で、最後にシッタラードの幹線を飛ばして港へ向かい、まだちょっと早かったがイエロー・フラッグへ乗り込んだ。
着いた時にはポンコツのおかげでケツが割れちまいそうに痛かったよ。ちくそ。
戸口に[CLOSED]の札が下がっていたが、無視してカウンターへ直行する。
バオの奴はグラスを磨いているトコだった。
迷惑そうなツラを上げて何か言おうとした
「まだ開……なんでぇレヴィか。」
「こんな時間に休業か? 客が来なくなっちまうぞ。」
「うるせえよ。真昼間から一騒動あってな、やっと片付けたとこなんだよ。」
「相変わらずドンパチか? 苦労が絶えねぇなぁ、同情するぜ。」
「へっ、てめえにだけには言われたかねぇがな。……ところで、そっちの兄ちゃんは誰だい?」
型通りの紹介をしておいた。新入りにはバオの存在は何かと便利だろう。
バオはある意味この街の裏稼業については生き字引だ。
なにせその手の客しか来ねぇからな、この店は。
さて、アタシはタダ酒が飲めるワケで、ご機嫌でいつものBACARDI。
野郎は、何だよション便臭いヤツかよ。
ふふん、アタシはグイッと一杯乾すと、野郎に勧めた。これ、アイツと初めて飲んだ時にもやったな。
ところが、この野郎は酒についてはアイツと違ってかなりのヘタレだった。
二口ほど飲むと、降参とばかりにグラス置いて肩をすくめやがった。
「やぁ〜れやれ、だらしねぇヤツだなぁ。
酒場よりダンスパーティーの方がお似合いじゃねぇのか? 綺麗なおリボンでもつけてよ。」
なんか、コレも似たような事をアイツに言ったよな。
そうしたら野郎、胸元からゴソゴソ何か出そうとした。
何だぁ? ヤろうってのか?
バオの顔が引き攣った。
ところが出てきたのは獲物(ハジキ)ならぬ市街戦ででも使いそうな折り畳み式の手鏡。
この野郎、それでまじまじと自分のツラを眺めてやがる。ナルシスかテメエは!?、気色悪いんだよ。
更に鏡をカウンターに置いてコッチ向くと「何色のおリボンが似合うかしら?」と来やがった。
「知るかっ! マジなツラして聞くなっ!!」
285 :
蒼空の朝11:2008/05/13(火) 23:44:54 ID:oV/o3ezP
その時だった。本日二度目の赤ランプ点滅。
カウンターに置かれた野郎の鏡に、戸口に立った若造が写って見えた。
こっちに拳銃を向けてやがる!
反射的に勝手に体が動いて、カウンターの中に飛び込んだ。こうなると、もう癖だな。
次の瞬間、立て続けに銃声。
バオご自慢の防弾板にガン、ガン、ガン、ガンと鈍い音が4発。
他に2発が頭上を越えて、棚に並んだバオの財産が2本粉微塵になった。もったいねぇ。
戸口の方で空薬莢がまとめて落ちる音がした。6発ってことはリボルバーらしいな。
ガチャッと再装填したらしい音がすると、怒声が飛んで来やがった。
「出て来やがれトゥーハンドぉ! 勝負しろぉ!」
おいおい、若造。声が裏返ってるぞ。
だいたい背中からいきなり撃ちかかっといて、そのセリフもどうかと思うぞ。
「レヴィ! テメエの客だろ! テメエで対応しろ!」
「知らねぇよ、あんなヤツ。」
バオと毎度お約束のやり取り。これで何回目だ?
やれやれ、あんな三流以下のガキ相手せにゃならんとはな。
「ちょっと待てや、坊や。」
あれ? イクヤの野郎の声だ。そう言えば忘れていたけど、野郎どうなった?
覗いてみると、椅子から降りてカウンターに寄りかかって戸口のほうを向いてる。
何か面白いコトになってきた。
「クソオヤジど、どいてろ! テメエなんかに用は無え!」
若造、相変わらず声が裏返ってやがるなぁ。
「ソッチに用無くても、コッチにゃあるのよぉ〜だ。
チミのヘタクソな射的で一張羅に穴開いちまったじゃないの。繕ってくれるんだっしょ?」
「ヘン! ならついでにお前の脳天にも穴開けてやろうか!?」
「綺麗なおリボン通す穴なら是非開けて、お願いプリーズ。」
「ふざけろ!!」
ほぼ同時に鳴り響く銃声。
286 :
蒼空の朝12:2008/05/13(火) 23:45:51 ID:oV/o3ezP
ドサッと湿った音がしたのはカウンター側だった。
ナンだよ、あっけなくリボン通す穴開けられちまったのかよ。
きっちり貫通したのか、ついでにバオの売りモンがもう1瓶砕け散った。
おいおい、そうベソかくなよバオ。酒瓶の仇はとってやるって。
それじゃ真打登場といきますか。
アタシはカトラスの撃鉄(ハンマー)を起すと、カウンターの上に飛び出した。
ありゃ?
戸口で若造が右腕から血ぃ流してうずくまってやがる。
カウンターの上から左下を覗き込んだら、イクヤの野郎は寝そべった格好で銃を構えてやがって、銃口からは硝煙が昇ってる。
横っ跳びで抜き撃ちやったらしい。
「あー、テメエ、アタシの獲物横取りしやがったな。」
「いんやぁ、まんだ生きてるんでないの?」
跳んだせいでズレちまったらしい眼鏡を直しながら、野郎がのたまう。
とたんに「ヒィ!」と悲鳴を上げて、若造の奴は脱兎の如く逃げちまった。なんだよ、ありゃあ。
トゥーハンド相手にするにゃ百年早いっての。
そんなわけで本日のイエロー・フラッグの営業再開時間は更に遅れることになった。
バオはブツブツ言いながらパーになっちまった売り物の片付け。
イクヤの野郎はバオから突きつけられた箒とモップ手にして、あの若造が床に撒いてったタマと薬莢と血の掃除。
タマはともかく血は自分が撃ったせいで汚したんだ。責任持ってキレイにしろよ。
アタシ? カウンターで一人よろしく飲んでましたよ。何か問題ある?
結局イクヤの野郎は、若造がゴミにしちまった酒瓶の分までバオに払ってやってた。
買ったのは割れた酒瓶じゃなくて、バオの歓心かもしれねぇけどな。
287 :
蒼空の朝13:2008/05/13(火) 23:46:52 ID:oV/o3ezP
ナンでこうなっちまったんだ?
アタシは今シャワーを浴びている。それはいい。
今日は炎天下あちこち歩き回ったり、香辛料で血流上げたり、いい具合に酔ったりで汗まみれだ。
シャワー浴びてスッキリする。大いに結構。
問題なのは、ここはアタシのアパートのシャワールームじゃねぇってこと。
マダム・ラケタのモーテルの一室、今日からイクヤの野郎のヤサになった場所だってことだ。
別に野郎に誘われたわけじゃあねぇ。
もしそんな淫売扱いしてきやがったら、一発ブチ込んでタマ1個増やしてやるところだ。
アルコールですっかりイイ気分に出来上がったアタシを、イクヤの野郎は例のポンコツで送ってくれた。
ところがアタシは自分のアパートの場所を頑として教えず、野郎の背中にしなだれかかり、首には両腕をからめ、
ガキみてえに押し黙ってイヤイヤと首振って、とうとうココに押しかけちまった。
アイツにだってこんな甘え方したことは無かった……よな。
イクヤの野郎、かなり困ったツラしてやがって、何か笑えた。
ところが今度はアタシが困ってる番だ。これからどうするつもりだよ?
シャワー貸してくれてあんがとさん、それじゃあばよ……ってツモリでココに来たわけじゃねぇ……。
『……数こなして馴れてくってのはやめとく。』
アイツとの約束が頭の中でプレイバックする。
……、
…………違う、違うんだ、違うんだよ……。
この段になって急に怖くなっちまったんだ、アタシの中に取り憑いて渦巻いてるドス黒いもの。
イクヤの野郎と居ることであの不快な記憶が収まるのか、それはわからない。
かえってキズを増やしちまうかもしれない。
ただ、その、一人になるのがたまらなくイヤなんだ。
鏡を覗くと、情け無い顔をした女がいた。
クソッ、あんな風来坊に何を期待しているんだ。
今迄にだって何度もヤって来たコトじゃねぇか。
…………………アイツと出会うまでは。
288 :
蒼空の朝14:2008/05/13(火) 23:47:53 ID:oV/o3ezP
とにかく、今更後には引けねぇんだよ。
ハラ括って野郎の相手をする決心をする。
で、だ、当面の課題として………
どんな格好して野郎の待ってる部屋へ行く?
これまでだったら、ベッドの上でさっさと脱いで股開いてりゃそれで良かったんだけど……ちょっとなぁ。
自分でもよくわからない感情。……あー、ったくめんどくせぇ。
かくして鏡とニラメッコしながら、我ながら馬鹿馬鹿しい検討会が始まった。
とりあえず下だけ下着を穿いてみた。うーん、いくらなんでもこれだけじゃあなぁ、なんつーか、アレだろ。
普段のスタイルでタオルを首から引っかけて胸を隠してみる。
なんか、コレって改めて見るとオッサンの風呂上りスタイルだよな。
それではと、ためしにバスタオルを広げて体に巻いてみた。
……ぉぃ、これ、アタシか? 妙な気恥ずかしさでカーっと全身が赤くなる錯覚に襲われる。
と言って、他に妙案が思い浮かぶでもなく、この格好で覚悟を決めた。
慣れないせいかバスタオルがすぐにズリ落ちそうになる。片手で押さえてなきゃならねぇ。
さて、バスルームの扉をこそーっと開けて、部屋に居る野郎の様子を伺う。
あれ? なんか嗅ぎ慣れたガンオイルの臭いがした。
………あ、あンの野郎、人が散々悩んでいる最中に、呑気にビール飲みながら自分の拳銃の手入れなんぞしてやがる!
ブチっと何かが切れたアタシは、
わざと大股で派手に足音立てて部屋へ入ると「お先」と剣呑に告げ、ベッドにドカッと座った。
ところがこの野郎、「ぁーん…」と空気の抜けたみてえな反応を返して机の上を片付けると、
知らん顔のまま立ち上がり、入れ替わりにバスルームに行っちまった。
289 :
蒼空の朝15:2008/05/13(火) 23:49:54 ID:oV/o3ezP
……なんか馬鹿にされた気分。
ま、脱いだ服はともかくガンベルトなんぞ片手に提げてりゃ、どんな格好していようが色気もヘッタクレも無いか……。
溜息とともに、なんか虚しくなっちまった。
とりあえず自分の荷物はベッドサイドに放り出し、またズリ落ちかかったバスタオルを引っ張り上げる。
畜生、面倒くせえ格好を選んじまったと後悔したよ。
とりあえずタバコを点ける。やれやれ、ちょっと落ち着いた。
ここに来る途中でバドの6缶パック買ったんだよな。どこだ?
机の上にはバドの空き缶、ガンオイルのスプレー缶、銃身清掃用のブラシ、オイル染みのあるボロ切れ、
それに野郎の拳銃。
無用心な野郎だな。アタシが絶対に撃たねぇと思ってるのか?
ガチャッとバスルームの扉が開く音がしたので振り返ると、イクヤの野郎、首だけ出してこっち見ていた。
「レヴェッカ、ビールは冷蔵庫に入れといた。それとな……………」
「ナンだよ。」
「綺麗だぜ。」
空き缶ブン投げてやったが、扉が閉まる方が早かった。
チッ!
あのスケベ野郎めが!!
+++
ここまで読ませてしいましぇん、一回切ります。
無駄に長げぇ〜、展開遅杉ぃ〜、と自分でも思ってます、ハイ。
次回、辺りから、やっとエロっちくなる、ハズ、です、たぶん。
いつになるか未定ですがwww
290 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 23:01:29 ID:KndkMgdt
>>289 (*´Д`)ハァハァ/|ァ/|ァ/ヽァ/ヽァノ \ァノ \ァ/ \ア/ \ア
>>289 GJ!
なんだかぁゃしぃ展開に…
オカジマンピンチ!
292 :
蒼空の朝16:2008/05/18(日) 02:09:11 ID:VrPULdNI
続きでございます。
異様に乙女でウブで敏感なレヴィになっちまいましたwww
+++
アタシがタバコやりながらバド缶1本干したあたりで、野郎がバスルームから出てきた。
トランクスいっちょに首からタオル引っ掛けたスタイル。
あー、あの格好は止めといて正解だったな。
ハンガーにスーツの上着が掛かっている。裾(すそ)には例の若造に開けてもらった穴つき。
野郎はそこに脱いだスラックスを引っ掛けた。
チラッと見えるが、ちゃっかりハイスタ・デリンジャーと小型ナイフをベルトに差してやがった。
けっ、銃ほったらかしにしといて丸腰なのかと思ったら、やっぱり油断のならねぇ野郎だ。
ベッドに近づくとアタシの右、約1フィートのところにドテッと座る。
このぉぉ、微妙な距離を空けやがって。
アタシは心拍数が急上昇しちまったのに気づかれないように、とりあえずタバコを消していつでもどーぞの体勢に入る。
何か気まずい沈黙。おい、フツーは男から声かけるもんじゃねぇの?
「なぁ、レヴェッカ…」
「レヴィでいい。」
「あぁ、…レ…ヴィ?」
「何だ?」
「観光案内の特別延長サービス頼んだ覚えは無いんだけどなァ。」
「安心しな、アタシも頼まれた覚えは無えよ。」
「あっそう。ほんじゃ何でこういう状況になっちゃったワケぇ?」
「…別に。……まぁ新入り歓迎の…その…なんつーか、……どうでもイイだろ!」
「……………」
「…………何とか言えよ……」
「おっかねぇんだよなァ…」
「何が?」
「朝になったら死体にされてました、なんてなりそうで。」
「ナンだよそれ。アタシがオマエを殺(や)る理由なんざ無えよ。」
「あのさぁ、場合によってはこれからその理由作っちまうコトになんない?」
「……ぁ、そりゃ…何だ……」
モゴモゴと口ごもっていたら、すっと肩を抱かれた。
あ、理由作る気になりやがったのか?
293 :
蒼空の朝17:2008/05/18(日) 02:11:29 ID:VrPULdNI
アタシの左肩に触れているコイツの左手。
しばらくはそのまま肩を撫でているだけだったが、ゆっくりと抱き寄せられた。
おかげで右に傾斜した状態にされたアタシは、バスタオルがズリ落ちそうで両手で必死に前を押さえなきゃならねぇ。
それにしても動悸うるさい! 静かにしろっての!
また暫くはそのままだった。
おかげで少し落ち着いて来たんで、コイツの左肩にトテッと頭を預けてみた。
それに反応したように肩を抱いていた手が首筋へ、そして頬を伝い耳朶へ。
うわ、くすぐってぇ。
「…や、やめろ…よ……」
どうにもガマンできずに首をすくめて逃げたら、コイツの左手はアタシの肩へ戻った。
代わりに右手が伸びてきて顎を捕まれると、クイっと顔を持ち上げられた。
げ、超至近距離で視線が合った。
いつの間にか眼鏡外してやがって。
なんだコイツ、なんてぇ澄んだ目をしていやがる。瞳にとまどったアタシの顔が映ってる。
えーと、こういう場合はアタシが目を閉じるモンか? あぁぁ、いちいち考えるのメンドクセ。
うだうだしているうちにコイツは先に目を閉じると有無を言わせず唇を重ねて来た。
舌を突っ込んで来るでも無く、表面が触れる程度の軽い口付け。
ん、目閉じよう。
……
………
…………って、おぃ、いつまでこんなガキみてえなキス続けてるツモリだぁ?
こっちから抱き着いて押し倒してやろうか?、あ゛手放すとバスタオル落ちるんだった…。
イイカゲン酸素不足になっちまうって。なんか全身からフラァ〜と力が抜けてきた。
反転攻勢するのに躊躇してたら先手を取られた。
スッと唇が離れたと思ったら、肩と顎つかまれたまま、うつ伏せに倒された。
顔はボフっと枕の上。
あわてて手をついたからバスタオルもスルッと取り上げられた。うつ伏せだから前は見せてねぇけど。
294 :
蒼空の朝18:2008/05/18(日) 02:12:45 ID:VrPULdNI
お次は何だよと思ったら、背後から両肩掴まれて、うなじから腰まで背筋をキス責めにされた。
「…お、おぃ……くすぐってぇっての………背骨フェチかテメエは……」
「あれ、痛い方がお好み?」
「馬…ぁ鹿野郎……」
反撃しようにも、うつ伏せじゃ足をバタつかせるくらいで何もできねぇ。
相変わらず舌を使わずに唇の粘膜だけでソフトに刺激しやがる。
ベタベタ唾液つけないから気色悪くもねぇし、冷えたりもしない。イクヤの体温だけが愛撫の余韻として残る。
何となくファックとは違う穏やかな快感。
あーダメだ、なんか妙にキモチ良くてどんどん意識が沈じまう。
ボヤぁ〜とした感覚の中で慰撫されるのを楽しんでいたら、イクヤの野郎が体を離した。
あ、オイ、イイところで止めるなよ、と思ったら部屋の照明を落としやがった。
「……なんだよ、…今更恥ずかしいのか?」
「こう見えてロマンチストなんで。」
「言ってろ、バカ。」
薄暗くなった中、左手を絡めるように掴まれた。自然に指が絡み合う。
イクヤの右手がアタシの頭を優しく撫でる。
さらに髪を伝って右肩へ。
フッとコイツはひょっとしてロックじゃないのか? と頓珍漢なことが脳裏に浮かんだ。
直ちにバカな考えを頭から追い出す。そんなわけ無いだろうがっ。
左手を絡めたまま右肩を起され、横臥の姿勢にされた。
相変わらずイクヤはアタシの背中側にいて、肩から首筋にかけてタトゥーをなぞるように愛撫する。
「……ぁぅ…」
あ、チクショ! うっかり軽く仰け反って声上げちまった。
295 :
蒼空の朝19:2008/05/18(日) 02:14:00 ID:VrPULdNI
冷やかされるかと覚悟したが、イクヤは黙ったまま右手をアタシの左頬まで滑り込ませると、そのまま引き寄せる。
また至近距離でご対面だ。今度は声を上げちまったのが照れ臭くてさっさと目を閉じた。
頬やら目蓋やら鼻先やらに落ちてくるイクヤの唇。
時々コイツの吐息が顔にかかる。
「なぁ、オマエ何か口臭剤使ってんのか?」
「ありゃ? 悪ィ、息が臭かった?」
「いや、そうじゃねぇ。ただ何か…」
「さっき風呂場で歯磨いてきた。」
「…あぁ、そういうことか。」
直前までよろしくタバコとビールやってたアタシは、この話題は打ち切りにした。
イクヤは何も言わなかったけど、臭せえのガマンしていたのかな?
コイツのキスはソフトな代わりにヤタラと長いんだよ。
首を向けてるのがしんどくなって、体も仰向けに倒した。
左手を放してくれねぇもんだから、止む無く自分の左腕は自分の背中の下敷きに。
右腕はイクヤの背中側に回した。
あれ? ちょい待てよ? て、ことはいきなり胸丸出しぃ!?
冗談じゃねぇ、と体勢を戻そうとしたが遅かった。
イクヤが圧し掛かって唇を重ねてきた。
少しもがいてみたが無駄だった。体重かけて押さえ込まれ、またアタシが脱力するまで唇を放そうとしねぇ。
こんにゃろう、悔しいが一方的にイイようにされちまってる。
それまで頬を撫でていたイクヤの右手が、喉を伝って胸の谷間をたどる。
少し顔を背けて、キスを止めさせると「背骨の次は胸骨かよ。」と照れ隠しに憎まれ口を叩く。
「いやぁ、そのちょい両側を。」
「なんだぁ、ママのが恋しくなったか?」
コイツ、クスリと笑うと「ま、そんなとこか?」と言いながら右手で左胸の麓(ふもと)を撫で始めた。
麓なんだよ。それも揉むではなく撫でるだけ。
同じコトを唇使って右胸にも始めやがった。
なんだこりゃあ?
どうせ両手が封じられてコッチは何もできねェから、好きにさせておく。
296 :
蒼空の朝20:2008/05/18(日) 02:15:20 ID:VrPULdNI
…………な、な、なんなんだよ、この焦らしプレイわっ!
麓からジリジリと愛撫の対象が頂上へ向けて登って来るんだが、
アタシがガマンできずにちょっと体をよじると、また下へ戻ってやり直し。
ジッとしてろってことかい。
冗談じゃねぇ、この繰り返しで、アタシの乳首(ニップル)はコリッコリで痛いくらいなんだ。
どうせ吸い付きたいんだろう?、頼むからサッサと触れやがれっての。
とても声に出して言えねぇけど。
コイツ後で覚えてやがれ、とハラの中で悪態をつくと、歯を食いしばり頭を反らして体が動かないように踏ん張る。
じわじわと刺激が先端に近づいてくる。
それと同時に胸から今まで感じたことの無い愉悦が湧き上がってくる。
指先と唇で乳房と乳輪の境をゆっくりと輪を描くように愛撫された。
「…!!」
声こそ上げずにすんだが、ビクッと上体が仰け反った。
そのまま2周、3周……
「…ァ……くぅぅ………」
とうとうガマンできずに声が出ちまった。
すかさず愛撫の対象が乳首のすぐ脇にまで達する。
オマケに左胸は緩く揉まれ始めた。
コノ野郎、あくまでアタシの突端の感度を最高潮まで引き上げる気だ。
もうダメだ、快感に抵抗できない。
「…さっ…さとイかせろ……よ……」
「うん? ここだけでイけるか?」
「…うる…せぇよ……そのつもりで…ァゥ……やってるんじゃねェの……か……ぁぁ…」
ギリギリまで触れなかった先端部に刺激を受けた。
文字通り雷管(ニップル)に点火して爆発した感覚。
上体が仰け反り、もっと求めるかのように胸を突き出す。
強過ぎず、弱過ぎもしない、微妙な刺激を与え続けられた。
そのままあっさりイかされちまったよ。
297 :
蒼空の朝21:2008/05/18(日) 02:16:54 ID:VrPULdNI
仰け反っていた上体がいきなり弛緩したんで、イクヤにもイったことはバレバレだろう。
しばらくは頭ン中真っ白だ。
アタシとしたことが、よもやバスト・オーガズムでイかされちまうとはね。
絶頂の余韻でまだ身動きできないうちに、次の愛撫を始めやがった。
やっと左手を放してくれたが、今度は両手がアタシの腰に回り、右胸担当だった唇がヘソの辺りに移った。
「……ぉい……少しは…インターバル……空けろ………」
アタシの息絶え絶えの抗議はあっさり無視され、愛撫は次第に下腹部へ降りて行く。
はいはい、次のお目当てはそっちの穴ですね。
一度イかしてくれたんだ、礼に好きに使わせてやるよ。
腰に回ったイクヤの両手が下着とケツの間に滑り込み、そのままズルズル引き摺り下ろされる。
下ろし易いように少し腰を上げてやった。
ところがだ、イクヤはアソコを無視してアタシの足元まで上体を引き、えらく丁寧に両足から下着を脱がす。
そして右足の爪先を手に取ると、そっと口付けた。
予想外の展開にアタシは混乱した。
「!? テメっ……何……して…やがる?」
返事は無い。
そのまま唇は脛(すね)へと少しずつ進み、両手でふくらはぎを撫でさする。
よっぽど左足で蹴飛ばしてやろうかと思ったが、扱いが丁寧なのに免じて好きにさせた。
こういうのが足フェチってのか?
右ひざまで到達したところで、愛撫の対象が左足の爪先に移った。
律儀なヤツだよ。
くすぐったいのやら、快感なのやら、嫌悪なのやらさっぱりわかんね。
左ひざまで到達したところで、今度はそのまま内股へと愛撫が進んだ。
え? ちょい待てよ、このままジリジリ進むと、その先は………
しまった、冗談じゃねぇぞ、コイツさっきのプレイの下半身版をやる気か?
298 :
蒼空の朝22:2008/05/18(日) 02:18:06 ID:VrPULdNI
そう何度も好きにされてたまるかっての。
足でヘッドロックきめてやろうと、右ひざで何度がイクヤの上体を挟もうとしたが、
コイツはアタシの反応をとっくに予見していたらしい。
逆に右足の内股まで撫でさすられて、あっさり制圧されちまった。
今度はコッチの両手は自由なんだ。いつまでも調子にノってんじゃねぇと一発ブン殴ってやるか?
そんな考えがチラッと頭をかすめたんだが、そうはいかなかった。
淫売な穴の奴め、アタシの意思を拒否するかのように淫靡な汁を溢れさせ、垂れ流し始めやがった。
おかげで抵抗する気が失せちまったよ。
まったく、相変わらず野郎なら何だって受け入れやがって……
こうなりゃ開き直って、キモチイイコトの方に意識を集中させる。
愛撫は左足の付け根まで達して、際どい所をなぞって行く。
さっきと同じだ。敏感なところをワザと外してやがる。
またガマン大会になるな。アタシは横向いて顔を半分枕に沈め、両手は枕の隅を握り締めて準備を済ませる。
割れ目のすぐ左横を叢(くさむら)の方へと刺激が進み、叢を丁寧に撫で付けられ、今度は右横を下へ向けて愛撫される。
ときどき腰が勝手にビクッと反応しやがる。
ぐるりと一周した後に、会陰の辺りを撫でられた。溢れた汁でベタベタだってのに……。
「…よせよ、キタネエ……」
「そんなこと言うなよ、汚いことなんざないさ…」
暗がりから聞こえて来るコイツの優しい声が、アタシの思考を麻痺させる。
何なんだよ、言っとくけどテメエとは今夜限りだぞ、次なんて無ぇんだからな。
さっさと突っ込んで出しちまえばイイじゃねぇか、何を好き好んで優しく愛撫ばかり続けてやがる。
インポか?っての。
……なぜだか声に出して言えなかった。
会陰から指で拭い取られた自前の潤滑油をたっぷりと塗られながら、ビラビラを挟むように撫でられた。
ガクガクと体が震えが止まらねぇ。
そのまま包皮の上から敏感なトコロを軽くグリグリされる。
「……く…ぅ………」
とうとう声が漏れちまう。
299 :
蒼空の朝23:2008/05/18(日) 02:19:15 ID:VrPULdNI
「…ぃ……いつま…で……いじくってりゃ…気が済む……んだよ…ぅ……テメエは…」
「そう連れないコト言いなさんな。」
「………ウルセェ……スケベ野郎め……」
「…なぁ、……もうちっときれいなフルートの音色が聞きかせてくんない?……」
フルートだぁ?? 何ワケのわかんねぇことを……
アソコのビラビラをそっと指で押し広げられた。
穴の周りから指先で粘液をすくうと、ションベンの出口辺りまで押し広げながらヌルヌルさすりやがる。
それにつれて包皮が剥けて肉芽が露出したらしい。
コイツ、露出したソコへキスしやがった。
「はぅ!…バカッ……止め…ろ……」
口では拒否してるが、淫売なアソコはヒクヒクと震えてもっとシてくれと求めてる。
ビクッとアソコから電撃が走ったような感覚が伝わってきた。
コイツ初めて舌を使って愛撫しやがった、よりにもよって一番敏感になった肉芽に。
指先も相変わらずゆっくりと穴の周りを撫でることを止めない。
「…ぁ……あぅ……ヒィッ……ぁぁ………」
喘ぎ声が止まらねぇ。
あぁ、これがコイツの言うフルートかよ。とんでもないモンを奏でやがって、このスケベ野郎。
アタシの口からまるで音階になってねぇ音が出始めると、今度は穴に指を入れやがった。
クリックリッと筋を撫でながらゆっくりと奥へ入ってくる。
ちょうど芽の裏側辺りまで指が達すると、表裏同時に刺激がかかる。
お、おい止めろ、意識が飛んじまう!
アタシは枕が破けちまうんじゃねぇかと心配になるほどギュウギュウ握り締め、
イっちまいそうなのを必死にこらえていた。
薄暗く静かな部屋に自分の発する嬌声(フルート)だけが低く響いている。
皮肉にも、その声がますますアタシを快楽の沼に引きずり込んでいく。
もうダメだ………。
アタシは僅かに残っていた理性も吹っ飛ばされて、悦楽の中に沈んだ。
300 :
蒼空の朝24:2008/05/18(日) 02:20:27 ID:VrPULdNI
暫くはぐったりして半分意識が無かった。
あれ? スケベ野郎どうした?
意識が朦朧としたまま、暗がりの中を目を凝らしてみるとアタシの傍らに座って何かゴソゴソやってやがる。
…ああ、スキンはめてたのか。どうやら一応勃つらしいな。
両脚を大きく開かされて、アソコに先端を当てがわれた。
普段なら力んじまうところなんだが、イかされて間もないもんでアタシはまるで力が入らず、
抵抗出来なくてコイツの好きにされっぱなし、まるで人形みてぇ。
完全に弛緩しちまってる上にグズグズに濡れていたおかげで、
腰を抱かれ、ゆっくりと入って来られた時もアタシにゃ珍しく痛くなかった。
「……ぃゃ………」
へ?!! な、な、な、な、なに、い、い、今のあ、あ、アタシが発した声かぁぁっ???
スっ飛んでいたはずの理性と羞恥が一気に戻って来ちまった。
イったばかりで瞬く間にスイッチの入ったアタシは、体を仰け反し、また枕の世話になるハメになった。
畜生! 入れる時まで焦らしプレイか、コノ野郎は!
じわじわとじっくり時間かけて奥の奥へと侵入して来やがる。
「……止め……ぁ……あぁ………ぁぅ…ぅ………」
しっかり腰を抱かれちまって逃げられない。
いったいドコまで入り続けるのかと思うほどの時間をかけて、やっとイクヤの動きが止まった。
少し突き上げられるような感覚と共に、やっと結合が完了したらしい。
コイツ、今度は奥まで結合したままアタシの腰と背中に手を回して上体をそっと抱きしめた。
頬同士が軽く触れ、全身の皮膚からコイツの体温と鼓動が伝わってきた。
暫くそのまま抱かれていた。
301 :
蒼空の朝25:2008/05/18(日) 02:22:23 ID:VrPULdNI
やがて、イクヤはゆっくりと後退し始めた。
なぜか切ない気持ちになった。もう暫くジッと抱き締めていて欲しい、そんな感じ。
入ってきた時と違うのは、抱き締めたまま全身が触れ合ってること。
そのせいで、穴の中だけでなく体の表面まで擦れ合う。
もう外れちまうんじゃないかと思うほど後退したところで再突入がかかった。
相変わらずゆっくりと、アソコだけでなく全身を絡めて。
全身で感じてしまってる感覚に捕らわれる。
ヤバイ、このままじゃ本当にコイツに溺れちまう。
「…おい、……ダメ…だ………」
「…何…が……?」
「……優しく…ぁ……すんな………」
「…ぅん?」
「…アタシに………優しくしてイイのは…ぁぁ………一人だけ……なんだ…ぁあぅ……」
「………今更…ハァ……遅いって…」
「…ャメ……ロ………あぁ……ぁ………」
アタシの抗議は無視され、そのまま少しずつペースを上げながら体の交感が続いた。
頭の中で拒否しなければという気持ちと、このまま放して欲しくないという気持ちがせめぎ合う。
ペースが上がるに連れて、後者の気持ちがじわじわとアタシを支配していく。
どういうわけか目から熱いものが溢れてきた。
いったいどのくらいの時間、行為が続いたのだろう。
もう限界が近かった。このまま何もかも忘れて愉悦にどっぷり浸かってしまいたかった。
「……ハァ……ハァ……もう……イかせろよ……」
「…あぁ…イける?……」
アタシは枕の上で頭を振り乱して「……限…界……あぁぁ…」と半分泣きながら訴える。
そうしたら、突然コイツは動きを止めた。
302 :
蒼空の朝26:2008/05/18(日) 02:23:36 ID:VrPULdNI
この期に及んでイクヤの野郎、アタシから枕を取り上げやがった。
ちょっ、それがないと手のやり場が無くなっちまうっての。
取り上げられた枕はアタシの腰にあてがわれ、楽に仰け反った姿勢にされた。
更に、それまではアタシがイクヤの腰を両脚で挟んでいたんだが、
逆にアタシの膝を閉じさせると、コイツがアタシに跨った。
そのまま覆い被さるように、両腕ごとアタシをしっかり抱き締めてきやがる。
なんとこの状態で、行為が再開された。
アタシは仰け反らされた上に、両脚まで突っ張った状態だ。
おかげで、小休止あったにもかかわらず、たちまちのうちに上り詰めて行く。
「…ヤメロ……アゥ……おかしく……ぁ……なっちまぅ……あぁぁぁぁ!!」
体の内部と外皮で触れ合い、容赦なく擦れ合わされる全身の肉体。
コイツの温もりが全身から染み込んで来る
尻の辺りのシーツを握り締めて、アタシはそのまま悶絶させられちまった。
****
どのくらい気絶していたのか、
気が付いたら、アタシはベッドにぐったり横たわりバスタオルを被っていた。
股間に何か感じる。重い目蓋をこじ開けると、
イクヤがアソコを拭いてくれていて、拭き終わるとアソコにもタオルを掛けてくれた。
拭いてたティッシュを丸め、ゴミ箱へ投げ捨てたがうまく入らなかったらしい。
チッと軽く舌打ちする声がしてベッドを降りると、拾いに行った。
アタシがまだオネンネしていると気遣ったのか、ベッドが振動しないようにそっと横に寝そべった。
どうしようかと一瞬迷ったが、とりあえずコイツの肩に抱き着くことにした。
303 :
蒼空の朝27:2008/05/18(日) 02:24:53 ID:VrPULdNI
ヤられっ放しがちょっと悔しかったので、コイツのモノに手を伸ばしてみたが、あっさり払われちまった。
「…もう、…カンベン。…タマ切れです。」
「ウソこけ。どうせ一発で治まるタマじゃねぇんだろ、テメエは?」
「レヴェ…っと、レヴィ、…こちとらアンタと違って獲物はポンコツ一挺きり、
オマケに単列弾倉(シングルカラム)なんでそんなに連射がききまへん。」
「何言ってやがる。……散々人を弄びやがって。」
「悦んでもらえるように努力したツモリなんすが。」
「ウルセェ。……ったくよ、これまで何人オンナ泣かせて来たんだ?」
「………一人。」
「…おぃ、ちょっとナイフ貸せ。」
「あのぉー、何なさるおつもりで……」
「そのウソ吐きな口、ざっくり裂いてヤル。」
「ちょ、ちょい待ち、ウソじゃないっての。…まぁ一夜限りとかはカウントに入ってないのは認めるけど。」
「けっ。」
つまりアタシもカウント外ってことか。ま、イイけどよ。
「んで、その一人ってのは誰さんよ?」
「………カミさん。」
「へぇ、結婚してたのか。」
「これでも四十過ぎだよ、私ゃ。」
げっ、十歳も若く見てた。そんならタマ切れも認めてやるか……。
「カミさん、今どうしてんだ?」
「………死んだ。……嬲り殺しにされちまってな………
まったく情け無いハナシさ、愛した女一人守ってやることも出来なかった……………」
「…………悪いこと聞いちまったな……」
「いいさ、過去は変えられないからな。過去を改変するのは政治屋と後ろ暗い金持ちだけさ……」
過去は変えられない………
アタシを苦しめる過去がまた頭をもたげてきた。
304 :
蒼空の朝28:2008/05/18(日) 02:26:02 ID:VrPULdNI
暫しの沈黙。
アタシが肩をつかむ手にギュウッと力が入ったためか、イクヤが腕を回して頭を撫でた。
「レヴェ…っとっと、レヴィ、私からも一つ聞いていいか?」
「………ナンだよ…」
「大切な男(ヒト)が居るんだろう? 何でこんなオヤジの相手なんかしたんだ?」
「……大切って、……どういう意味だよ……」
「気になったんだよ。『優しくしてイイのは一人』って。」
「……………」
黙っているか、話してみるか、話すにしてもどう話すか、かなり迷った。
イクヤがあまり愉快とは言えない過去を話してくれたことが、アタシの口を軽くしたかもしれない。
かなり端折った、たぶん分かり難い言葉でポツポツしゃべった。
ガキの頃、ストリート・チルドレンで、輪姦(マワ)されてたまらなく辛かったこと。
海賊稼業で『大切な男』とたまたま出会えたこと。
なのに過去から逃げようとして売春(ウリ)やったあげく、輪姦され殺されかかったこと。
『大切な男』と仲間のおかげで生き延びたこと。
そして……それなのに……また過去から逃げようとして……
「…今夜は、…アンタがまぁ紳士的で助かったけどな………」
イクヤはずっとアタシの頭を撫でていた。
「……シンドイ話だな…………
人生ってヤツは苦痛と恐怖に満ちてやがる。
そのクセ、人間てのは人生を愛して止まないんだな。
何故かって言えば、人間には等しく、ありとあらゆる希望を持つ自由があるからさ。」
「……クセェ科白だな。パンドラが壷を開けちまった言い訳かよ?」
「うんにゃ、確か……ドストエフスキーだったかな?」
「………どっちでも関係ねぇ………」
「そうでも無いだろ。」
「………………?」
「子供の時、とりあえず神様に希望をつないだら、命は助かったろ? だから今がある。」
「………………」
「半殺しにされたときは、『大切な男』が頭の中に居ただろ? それが希望ってヤツさ。
ま、希望のせいで生き意地キタネエことにもなりがちだけどな………………」
「………………」
アタシは頭撫でられてたせいで意識が沈んじまって、そのまま眠っちまったらしい。
305 :
蒼空の朝29:2008/05/18(日) 02:27:09 ID:VrPULdNI
また夢を見た。例の悪夢だ。
もうガキの時のと、この間半殺しにされたのがゴッチャだった。
ただ、全身をボロボロにされて放り出された後、あの青空が見えた。
『ありとあらゆる希望を持つ自由があるからさ。』
あのバカにしたように澄み切った青空が希望の象徴だってのか?
馬鹿馬鹿しい………でも、まぁ、そう思えばこの景色も悪かねぇか。
カーテンの隙間から漏れる朝日で目が覚めた。
例によって抜けるような蒼空。
けれど、昨日みたいな不快感は不思議と起こらなかった。
それにしても腰がイテェ。イクヤの野郎、ずっと正常位のままでヤりやがって……
あれ? あの野郎、居ねぇや。
テーブルに書置きがあった。
『昨夜はSpl.サービスありがとさん。 この礼はいずれ精神的に。
マダムには話しておくので、鍵は出る時に預けておいてくれ。
P.S.
ラグーンのお仲間と“大切な男”にヨロシク。』
最後までクセェ野郎………………。
306 :
蒼空の朝30:2008/05/18(日) 02:28:38 ID:VrPULdNI
昼過ぎ、予定通りに3人が事務所にドヤドヤ戻ってきた。
「お帰り。ちょうどピザが届いたところだぜ。
あと、ポテトサラダがある。ただしアタシの手製だから味は保証しねぇけど。」
「えらく気が利いてるじゃねぇかよ、レヴィ。」
へへん、まあね。
「へぇ〜、珍しいこともあるもんだね。夕方から雪かな?」
ベニー、テメエは壁に向かって手ぇ着け。
「俺、サラダは止めとく…」
ロォォック、テメエは教会の十字架に磔な。と、その前に………
「ロック、コーヒー淹れてやるからコイツの使い方教えろ。」
「コーヒーだったら俺が淹れ………」
「いいから、とっとと教えヤガレ!」
「…はぃ。」
昨日の電話の内容をダッチ親分に説明して、仕事終わり。
夕方から四人揃ってイエロー・フラッグに繰り出して盛り上がった。
帰り際、ロックが何やら意味有り気にアプローチして来たが、適当にあしらってやった。
ちょっと悪いかなとも思ったんだが、一人で寝てみたかったんだ。
それから一週間ほどして、マダム・ラケタのモーテルを訪ねてみた。
イクヤの野郎は留守だった。
マダムの話だと、忙しいらしくて、あまり部屋に戻ってこないらしい。
ま、忙しくしているなら、何とかやっているんだろう。
縁があれば、また会うこともあるだろうさ。
そう、希望があればな。
終
+++
ども、タオル巻レヴィと悶絶レヴィが書きたかったわけでは、、、あるかなwww
当初予定ではもっとドロドロ話だったんですけどね。
ただ、このところ二発続けて尻掘られたレヴィが可愛そうなんで、癒し系の話に進路修正しました。
浮気相手も色々検討したんですが・・・
1.張の旦那(立場的に難しそう)
2.ロットン(シェンフォアがからんでギャグになりそう)
3.バオ(想像できねぇ〜)
4.ベニー(輪を掛けて想像できねぇ〜)
で、本編に影響しない様なオリキャラで誤魔化しました。
さてと、次はどないしましょ。
GJでした
ああヤバい、レヴィ可愛さ爆発
GJ!この作品好きだな
ガールズトーク編も好きだし
自分は乙女レヴィが好みらしいw
309 :
97の人:2008/05/19(月) 17:39:08 ID:FEMlMwhu
あああ、何か拙作に味付けして下さって有難うございます、GJ
寝取られた事に気付かない暢気な岡島さんに幸アレ。
>>308 ガールズトーク、何か後半グダグダだったのにそう言ってくれて有難うございます
ところで前にコレ書いた時に完膚無くてもいーよ、と言って下さった方がいらしたのですが、ホントにいいですか?
…何かこう、マニアックプレイが書きたい。
乙女なにこにこレヴィたんも、殺戮レヴィたんも好きなのですが、そんなレヴィたんを泣かせたい。
310 :
バカるでい:2008/05/19(月) 20:21:33 ID:fIW6S/pQ
ども。
例によって感想頂きましてありがとうございます。
反応いただけると、また書きたくなるモンですね。
あー泥沼だわwww
ところで「可愛そう」じゃなくて「可哀想」でしょーが>自分
>>309 いや、もう、何味にしようとしたんだか、途中で自分でもワカンなくなりました。
せっかくの元傑作がパーにならないように、と気を付けたつもりでしたが、GJ頂けて恐縮です。
>マニアックプレイ
海上で正体不明の軟体触手生物に襲われて、アンなこととか、ソンなことされ・・・はスレ違かwww
>寝取られオカジマ一号
実は、コレをネタにして更なる続きを妄想中。
311 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 11:13:12 ID:F8OduUqm
ファビがイエローフラッグの客たちに輪姦されまくるSS希望
ブラクラ登場人物ふたり一組でアメリカ横断キャノンボールラン大会
セクロスありアクションあり、ラストはNY帰郷篇…これでタノム
組み分けがくじ引きでカオスになったりしてw
ロベルタ&ロック
レヴィ&ロットン
張さん&ソーヤ
みたいな
314 :
バカるでい:2008/05/20(火) 21:04:41 ID:TW+Vv4Ex
A組
兄さま「おばさん、遅いなぁ」
バラ姐「ひ・ざ・ま・ず・け」
B組
姉さま「あなたは私と同じモノよ」
レヴィ「ウルセェ、それ以上不愉快なコト言ったらコロス」
C組
ダッチ「陳の野郎に乗せられたな、神が憐れむ低脳ぶりだぜ」
ルアク「1パイントも鉛を食らえば屁に似た寝言も出なくなるだろうよ」
D組
シェンホア「捕まえた、ですだよ。」
エダ「アホめ、地獄の直行便は足が早えんだ。」
E組
ファビオラ「とにかく、空振りではすまされません、私一人でも…」
グスターボ「まだ、終わってねぇぞ! このクソガキィ!」
どの組ぢゃなくて、各組どっちが生き残るかのチキンレースw
A組
張兄貴「まいったな、お穣ちゃん、いい加減睨むのはよしてくれないか」
ファビオラ「まだ貴方を信用したわけではありませんから」
B組
シェンホア「おーどうしてそんなに離れるか?危険いっぱいね、もっとくっつくといいですだよ」
若様「な、なんかいろいろあたってるんだけど…ロベルター助けてー!!」
C組
バオ「あ、あの…ロベルタさん、なんで俺の体にパイナップルをくくりつけてるんで?」
ロベルタ「若様に危害を加えそうな奴を見つけたら投げつける為ですわ。」
バオ「ですよねー」
D組
インド娘「なんでよりによって一番弱っちいあんたなのよ!」
ロック「それはこっちのセリフだ!!」
E組
雪雄「…」
レヴィ「…」
天敵コンビ
禿しく出遅れてしまったが、バカるでい氏超GJ!超サイコー!泥沼サイコー!
完結乙でした。次回作あるなら是非ともwww
というわけで97氏の完膚無きマニアックプレーに大期待(゚∀゚)
デフォでくじ引きのときエダがイカサマすんだろ。問題はパートナー誰選ぶか…
精神病院カチコんでストレッチャーと911の救急車ごとレガーチさん強奪しそうw
>>317 最強ドライバーのレガーチと組めば優勝間違いなし
薬がきれなければなw
320 :
バカるでい:2008/05/21(水) 08:17:38 ID:EN+8ynzm
ガンセキ・オープン
ロベルタとファビオラ(棍棒の代わりに各種獲物)
ヒュードロクーペ
双子(不気味ってことで)
マジック・スリー
ベニー(技術屋ってことで)
クロイツェルスポーツ
ダッチ(何となく)
プシー・キャット
エダ(色気担当)
タンクGT
バラ姐とボリス軍曹(本当は軍曹と新兵の筈ですが…)
ギャング7
三合会一同(格好と言い、人数と言い、ぴったりだっしょ)
ポッポSL
レガーチとロック(速い時は速いんだが)
ハンサムV9
ロットン(キザトト君は彼にしかできん)
トロッコスペシャル
ソーヤとシェンホア(刃物つながり)
00マシン
広江礼○氏とレヴィ(ちょっとマテ)
チキチキ・ラグーンてすたwww
配役がイマイチ・・・って朝から何やってんだ>自分www
元ネタが全くさっぱりわからん
チキチキマシーンを知らない世代か……
まあ、エロパロでやるネタではないかもしれながw
エダロックに目覚めた
324 :
バカるでい:2008/05/21(水) 14:20:51 ID:brGqdglw
そこでSDガンダムレースしか見たことのない俺が参上。
……テキトーに作ったらそっくりになり過ぎたってんで、DVDだと欠番らしいね、あれ。
>>324 一応20過ぎたし昭和世代なんですがね。
そんなことよりチキチキなんとかより次の作品に期待してるよ
そりゃ、20すぎてなきゃこの板にいちゃいけないw
離しぶった切るが、dat落ちした過去ログの需要ってある?
欲しい人がいればdatかテキストでうpするけど…
天使の寝顔で寝ている若様の上でオナニーするロベルタのSS希望。
マジ希望。 俺SSとか書けないので。
すやすや眠ってる若様の部屋にこっそりロベルタが入ってきてさ、
「若様…」とかつぶやきながらスカートめくるともちろんノーパンでぐちゃぐちゃにもう濡れてんの。
んで若様の横でオナニーし始めて指を一本一本増やしながらぐっちゃぐっちゃ膣ん中
かき回してもう手がべとべとにぬるぬるになってそのうち興奮してきて
若様のベットの上に乗って横にならぶと若様が「ううん」とか言うのに一瞬どっきりするけど
再びすやすや寝息をたてるの聞いて安心するけど体はますます興奮してあそこがキュウキュウ指を締め付け
るもんだからたまんなくなって今度は若様の顔をまたいでもう指は3本までずっぽずっぽ
入れまくっても物足りないもんだから、若様の机の上にあった極太マジックを突っ込んで
愛液が滴るぐらいに激しく出し入れして「あああっつ若様!こんな私を許して下さい!」
ってな感じのSS誰か書いてくれー
バカるでい氏お疲れ様ー!
乙女レヴィ萌えー。オリキャラも良い味で好きだなあ。
>309
完膚無いの待ってる! 正座してテカテカしながら待ってる!
331 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 01:32:26 ID:aPRTCzIZ
時間も暇もないのに、突発的にエダロクを書いてみたくなった。
長くてエロもないんだが許して
「――ったっ」
短いうめき声を上げて、ロックは硬い礼拝堂の床に押し倒された。
といっても色っぽいシチュエーションではない。
何しろ今自分は額に銃を押し付けられているのだから。
月明かりが僅かに差し込んでいる礼拝堂は、静謐な静けさに満ちている。
彼の頭上では、キリストが自分を見下ろしている。
それをなんとはなしに見回してから、ロックは自分に銃を突きつけている人物に目をやった。
いつものシスターの格好だが、ベールを脱いで豊かな金色の髪が零れ落ちている。
ときおりその髪が自分の顔に触れるのがくすぐったい。
サングラスも外され、知性を秘めた青い瞳がこちらを見据えている。
暴力教会のシスターエダは仮面を脱ぎ捨て、CIAのエダとしての素顔をさらしていた。
月に照らされているその姿は、今の自分の状況を差し引いても鑑賞するに値するものだと思う。
「――ロック?」
「――あ? ああ、なに、エダ?」
いつもと変わらぬ様子で答える彼を不審に思ったのか、エダは手の中の銃を強めに押し付ける。彼の今の状況を思い出させるために。
「あなた、今の自分の状況をわかっているの?」
「ああ、うん。銃を押し付けられてるよね」
あっさりとロックが答えると、ますますエダは眉根を寄せた。
彼女の戸惑いに、彼は付け加える。
「三度目だから、こういう状況」
「は?」
仮面のような顔立ちが、ほんの少し人間に戻った気がする。
「一度目はレヴィを怒らせて、二度目はバラライカさんに余計なことを言ったから」
そして三度目は目の前の彼女の正体に気づいてしまったから。
それがこの物騒な状況を招いてしまった。
ただ何度か似たような状況があったせいか、どうにもロックには緊張感というものがわいてこない。
人間は慣れる生き物だが、自分はこんなことにも慣れてしまったらしい。
彼が疲れたような溜息をつくのをみて、エダは気を取り直して表情を引き締める。
雰囲気が変わったのを察して、ロックはエダと視線を合わせた。
「――ロック、あなた何故わざわざリヴァイアサンを覗き込んだの?
覗いたら最後、こうなることはわかったでしょうに」
より強く押し付けられる硬い感触に、ロックは自嘲気味に笑う。
332 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 01:35:50 ID:aPRTCzIZ
いつの間にかつけられていた、手首を拘束する鎖が合わせて音を立てた。
「そうだね。口は災いの元だ。
まあ、気づいたところで俺にとって君がなんであろうとどうでも良かったんだけど」
「どうでもいい?」
「ああ。知ったところで、どうこうしようとするわけじゃないし。
――さて、俺は殺されるのかな?
だとしたら、ひとつだけお願いがあるんだけど」
「……何を……?」
死を前にしてここまで落ち着いているこの男の願いとは、なんなのだろう?
答えがわからないまま、エダは訊ねた。
しっかりとこちらを見据えるロックの瞳に強い光が宿っている。
「俺を殺したのが、君だとばれないようにして」
「――は?」
思わず頓狂な声を出すエダ。
ロックはかまわず言葉を続ける。
それはさらにエダの思考を混乱させた。
「俺を殺したのが、君だとわかるとレヴィが傷つくから」
「なにを……」
馬鹿なことをと続けようとしたが、その台詞はロックの真剣な表情に遮られてしまった。
「頼むよ、エダ」
この男は本気でいっているのだろう。
死を前にして、それでも浮かんでくることはあの二挺拳銃のことなのか?
「ふ、は、ははははははははははははは!」
ふいに笑い出したエダに、今度はロックが呆気にとられたような表情をする。
それを見て、エダは少しだけ胸がすくような気がした。
自分だけ不意をつかれるのは癪に障る。
殺すのはやめた。この男は殺すには惜しすぎる。
ついでに以前から試してみたかったことがある。
笑いを止めて、突きつけていた銃を下ろしてやる。
ロックが驚いたようにエダを見つめた。
「そうね、ロック。あなたは言わないというなら絶対に言わないでしょうね」
「……それはもちろん」
「でも、それだけじゃ私も安心できないの。だから――」
エダの白い手が伸ばされ、ロックのネクタイを緩める。
「お互いにもう少しわかりあいましょう。手始めに身体を使って」
「は? な、んん!」
意味を理解する前に、ロックの唇をエダの唇が塞ぐ。
情報収集も兼ねて、磨かれた技をここぞとばかりに披露してやる。
舌を絡め、歯列をなぞり、息をつかせんばかりの深いキスを繰り返す。
その間に、ネクタイを外しワイシャツのボタンを素早く外す。
が、少し手元が狂ってボタンがついたままシャツを引っ張ってしまったらしい。
何個かボタンが弾けて散ってしまった。
唇を離すと、酸欠でか、少し潤んだ黒い瞳と目が合った。
男にしてはきめ細やかな白い肌が月に照らされている。
これでは男女としての立場が逆だが、なかなか刺激的だ。
先刻の毅然とした彼とは対照的に、混乱している表情の彼はとても可愛いと思う。
彼女は彼に静かに告げてやる。
「夜は長いのよ、ロック。たっぷり分かり合いましょう」
エダは静かにロックに身体を重ねると、ゆっくりと手を進めていった。
ロクレヴィ前提のエダロクはいいと思います。」
続きが読みたいとかいう奇特な人がいたら、書くかもしれません。
なんとなく勢いで書いてしまいました。すみません
ちょwなんという ネ申
ロクエダ大好物ですだよ
俺もロクエダ読みたい(;´Д`)ハァハァ
>>332 君がッ!
続きを書くまでッ!
全裸正座待機をやめないッッ!
336 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 23:05:47 ID:Zb1Ab6mF
全裸正座待機までしてくれる方が現れたので、ちょっと調子にのって書いてみた。
「――エダ! やめっ、ちょ!」
エダの白い冷たい手が、ロックの肌を丁寧に撫でていく。
銃を突きつけられていたときにはまったく動揺しなかった彼が、うろたえる様は見ていてとても楽しい。
「やめろと言われてやめる馬鹿なんていないわよ」
金属音を立てて、ベルトが外されていく。
それを止める術はロックにはない。
必死に抵抗を試みるが、エダに乗られているうえ手の自由はまったく利かないため、ほとんど彼女の行動を邪魔することはできなかった。
「あら、なんだかんだいいつつ感じてるじゃない」
彼のものが勃ちはじめているのを見て、満足そうにエダは微笑んだ。
一方ロックは、混乱している自分の頭を鎮めようと努力していた。
が、そんな努力はこの状況の中ではほとん役に立っていなかった。
敏感な部分をわざと外して焦らすように撫ぜられる。
「――ん、ちょ、エ、エダ!」
彼の制止を無視して、顔を身体に近づけ今度は舌で肌を舐めはじめる。
今までとは違う感触に、顔を上げるロック。
すぐにそれを後悔する。
赤い舌が自分の肌をなぞり、淫靡としか言いようのない表情の金髪碧眼の美女がそこにいた。
否応なしに、身体は反応する。
「あら、感じたの?」
337 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 23:08:39 ID:Zb1Ab6mF
面白そうに訊ねられて、ロックの顔が赤くなった。
その顔がもっとみたくて、彼女は肌に吸い付いてやる。
「――っつ!」
少し長めに吸って痕をつけてやる。
そこに赤い花が咲いたのを見て、エダは満足そうにそれを撫でた。
「ほら、ロック。二挺拳銃以外の痕がついたわよ」
その言葉にロックの顔が一瞬、硬直した。
それには構わずエダは顔を首筋に移動させる。
耳に息を吹きかけ、そのまま丁寧に舐めてやる。
くちゅくちゅと耳に響く音。最後に耳たぶを軽く噛まれる。
「前にレヴィと呑んでいたときに珍しく、あの娘がのろけたのよ。
『あいつ以外とのセックスなんてクズだ』って」
驚きにロックの目が見開かれる。
その驚きが喜びに変わる前に、エダの手がロックの顔を包み込む。
「だから、あの二挺拳銃をそこまで溺れさせたあなたの技で私も溺れさせて」
そうしたら、放してあげる。
妖艶な笑みを浮かべたまま告げられる。
その台詞にロックの思考は今度こそ完璧に凍りついた。
338 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 23:12:27 ID:Zb1Ab6mF
短くてすみません
でも、これやっぱりロクエダじゃなくて、いまんとこエダロクですね。
どうやって立場逆転させよう?
乙そしてGJ
風邪ひいちゃうとこだったぜ
>>338 いやこれはこれで良いと思う!続きwktk
嬲られるロクたんハァハァ(異
このスレの神降臨度は異常、全裸待機のままGJ!!
百合スレといいエダ頑張ってるなw
今月のエダが大変よかった
これはセニョール・ロック。
ようこそ番地も無いような貧民街(バリオ)へ。
まさかいらっしゃるとは思いもよりませんでしたので。
我流ではございますが、このカポエイラをどうぞ(ガンッ!)
はい、「また」そういう余計なことをおっしゃるからです。
玄人なら加減が利きますので、鍛えるのに値するものだと思いました。
ですが、この足技を見たとき、セニョールは、きっと言葉では言い表せない
「たまにはいいわよね、こんなのも…」みたいなものを感じてくださったと思います。
バカと屑が多うございますので、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って
プールに引き摺り落とした次第です。
それでは、ズボンをお脱ぎください。
若様から伺ったところ、散弾より擲弾がお好みとの由(ガシャッ)
ロック「女の子相手なのに、どうしてこうなるんだぁぁぁぁぁ!!!」
+++
by バカるでい
346 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 23:58:51 ID:Dj8EKzj+
時間がないので短いのですが、区切りがいいので
>>337の続きです
「あら、そんなにいやなの?」
硬直してしまったロックの頬を軽く指で撫でる。
ぴくりとも反応しない。
……そこまでイヤなのか……?
ここまで過敏な反応をされると、女としてのプライドが少し傷つく。
まあ、この男の生真面目ともいえる性格からして、浮気などというものを軽く考えないのだろうが。
――この背徳の町で珍しい……この性格だからこそあの二挺拳銃の信頼を得ているのだろう。
が、どうにも気に食わない。
ここは背徳の町、ロアナプラ。
どんなことも、どんなものも禁じられていない。
――愛する女の友人と寝ることも。
なら、彼のためらいを消し去ってやればいい。
「いや、エダこういうのはちょっと――」
「――ロック」
なにやら言いかけた彼の唇をその形の良い指で、そっと塞ぐ。
「あなたの気持ちは十分にわかったわ」
「えと、だったら――」
いまだ半分固まりかけているが、笑顔になるロックに艶やかに微笑んでやる。
その笑顔は美しいが、肉食獣が獲物を前にして舌なめずりしているようにも見える。
自分のこめかみの辺りから汗が流れたような気がする。
ロックは後ずさりしたい気持ちでいっぱいだったが、下は床で上はエダに未だに馬乗りにされている状態で逃げ出すのは不可能に等しかった。
「今からあなたの迷いをなくしてあげる」
347 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/26(月) 00:01:12 ID:Dj8EKzj+
笑顔のまま何かを取り出す。
銀色に光る細いものが先端についている。
注射器だ。中身はなにやら透明な液体で満たされている。
「え、エダそれ――」
「大丈夫よ、人体に残るような危険なものじゃないから。ただ――」
「――た、ただ?」
「今、この時間を楽しむだけのものよ」
中身は催淫剤と幻覚剤がブレンドされた特性のものだ。
「じゃあ、改めて楽しみましょうね、ロック」
腕にちくりとした痛みを感じる。すぐあとに目の前のものがぼやけ始める。
ふわふわと漂うような浮遊感は、気持ちがいいと思うと同時に眩暈にも似て。
チャラチャラとした音が遠くで聞こえるような気がする。
エダがロックの鎖を外したのだ。
彼はそれには気づくことなく、何か身体の中で沸き起こる奇妙なそれでいて熱い感覚を鎮めることに必死だった。
ぺろりとエダがロックの唇を舐める。
それが合図だったかのように、ロックの思考が溶け出していく。
最後に浮かんだのは、泣きそうな顔の愛しい女の顔だった。
作中の薬の効果とかは適当ですので。
まだ続いてしまう。すみません
ちょwwwそんな引っ張られたらwktkしすぎて禿げ上がっちゃうんだぜ
薬物にNTRとか大好物すぐるww
レヴィたんピンチですおww
前から思ってたんだけど、エダの口調に違和感があるんだが俺だけ?
エダの口調は特に難しいんだよ
シスター、ビッチ、ラングレーといろいろ使い分けてるから
352 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 21:50:33 ID:DWSTYB8W
いつもの時間、いつもの場所にロックはいた。2丁拳銃と呼ばれる女と飲む為だ、
しかし、いつまでたってもその女は来ない、いやこういうことは今日はじまった事ではない。
いつも気まぐれなその女にとって最初から約束自体存在してなかったのかもしれない。
だが普段のロックならそのまま一人酒を喰らい、中途半端な酔いで宿に帰るもんだが
今日のロックはそういうわけには行かなかった。
353 :
352:2008/05/27(火) 22:04:19 ID:DWSTYB8W
なぜならロックにとって今日の仕事は、ラグーン商会の荒事の分野の仕事に
手を染めてしまったからだ。
今まで脇で見て来たにせよ実際、自分がやってみるとあまりの異質さに自分自身
が壊れてしまった。ロアナプラでは日常的に行われてる事にせよ、自分がこれまで
アイデンティティーにしてきた事を自分自身で否定してしまったのだから。
カウンターで一人虚ろになりながら飲んでいると後ろから自分の名前が呼ばれた。
振り向くと、薔薇のタトゥーを腕に入れた、金髪女、暴力教会のエダであった。
354 :
352:2008/05/27(火) 22:13:06 ID:DWSTYB8W
最初、エダの方がからかう感じであったが、段々とロックの方が今日の事もありエダに絡んでいった。
普段のロックなら口が裂けても言わないであろう卑猥な事を平然とエダに浴びせかけ彼女の方が面食らって
いた。
しかし、エダのほうも負けじとその卑猥な話に卑猥な言葉を返して応戦してヒートアップしていた。
「やらせろよ」
ロックがストレートにエダに言った。エダは酒こそ飲んでるものの意識ははっきりしてる。
その後、ロックはその場で崩れ落ちてしまった。どうしようもない、急性アル中である。
エダはロックをタクシ−で彼の宿へ連れていった。
355 :
352:2008/05/27(火) 22:20:08 ID:DWSTYB8W
ロックをベッドに寝かせたエダは冷蔵庫から酒を取り出し、自分も
酔えなかった分をそこで取り戻そうとしてロックの寝顔を見ながら酒を
飲んだ。
「さっきの言葉といい、今日のロックはどうしたんだ・・・」
今日のロックが普通でない事を気にかけたエダであはあった。
「うーっ、うー」
ロックは寝ながらも苦しんでいた。
>>352さんをぶった切っていいのか迷いつつ書きたいと言ってたマニアックプレイ
前に書いたケツ(
>>249-258)から微妙に繋がってたり無かったり
前回の反省を踏まえ、ほぼエロしか無い仕様です
ド変態フェチ漫画大好きな人が書いているので人を選ぶと思います、ご注意。
・・・
「じゃあ、1時間後に行くから」
「あぁ…わかった。」
「リクエストは?」
「いつもと一緒だよ、最後まで面倒ミロ」
「あ、そうだレヴィ」
「んだよ」
「化粧…して?」
チッと舌打ちをし、女は酒場からの家路を一人歩く。
足取りは…重い。
「何やってんだかな…」
一人ぼやく。
家に着き、する事。
引き出しに丁寧に仕舞われた何種類かの錠剤を酒で流し込む。
いずれも睡眠導入剤。
作用時間は違うが、いずれも重度の睡眠障害を持つもの向けの違法スレスレの…この街ではこういったしょうもないシロモノには事欠かない。
シャワーを浴びると柄にも無く鏡の前で化粧をする。
とは言っても10分で済んでしまうようなおざなりなものだが、…男はいつも大層喜んだ。
ベッドの脇に、使われたためしの無い避妊具を置くとそのまま横たわる。
あとは寝るだけ、起きた頃には終わってる。
きっかけは、男の不作法。
熱で眠りこける彼女の、よりによって肛門を姦淫した。
それについてネチネチと問い詰める過程で、相手が人形…つきつめれば死体のような自分の姿に酷く興奮していたのだと知った。
あまりに歪んだ情欲に呆れ果てつつも、それならばと気まぐれで彼の悪趣味に付き合い、月に1〜2回のペースで何となくそんな悪ふざけが続いている。
正直気は乗らない。
が、別段強制されているワケでもない。
それどころか、誘うのはいつも彼女の側だった。
このごっこ遊びを始めてから彼の態度が変わったわけでは無い。
真っ当に身体を重ねる頻度が落ちたわけでもない。
別に何かに不満があるワケでもない。
寧ろこの屍姦ごっこの次の日は、体中が痛く、副作用で起き上がれないコトすらあるのだから、やらない方がいいに決まっている。
なのに。
「何でだろーな…」
アルコールも手伝い、次第に頭がクラクラし天井が回る。
吐き気すら伴いながら、強制的に意識を底へと引きずり込まれる感覚。
(死ぬ時ってこんなかな…?)
漠然とそんな事を考えながら、見えざる手に逆らわずに目を閉じた。
願わくば。
明日もまた目覚めた時に、彼が嬉しそうに抱きしめてくれますように。
男は死んだように眠る女の顔を、飽きもせず眺めていた。
顔を寄せなければ息をしているか否かの確認も出来ないほどに、生気の無い顔。
化粧を施しているためか、いつもより陰影が濃く、元の器量の良さも相俟って人形めいた美しさを湛えている。
こんなにも無防備な姿を自分の前に晒してくれることがとてつもなく心地良い。
そう…無防備だ。
今の彼女は、赤子にすら殺されてしまいかねない。
いつまでこんなコトを続けるつもりだろう、自分も、彼女も。
もう止めよう、そう考えないではない。
だが思う様独占欲を満たす事の出来るこの行為を止められない。
彼女が誘うから…なんて、理由にならない。
自分だって望んでいるのだ。
「……………ごめん。始めるよ、レヴィ」
聞く者のない開始の合図。
ゆっくりと彼女に口付けた。
意識の疎通が全く無い行為。
力無く横たわる彼女の衣服の一切を丁寧に取り去ると、打って変わって乳房を痣になる程に強く握りしめる。
どんなに苦痛を与えたところで、身じろぎや僅かな意識の浮上はあっても完全に目を醒ます事は、まず無い。
今も彼の手から逃れるような動きを見せたが、それ以上は…無い。
ギリギリと音がしそうな程に絞り上げた末に、その柔らかな温もりに顔を埋める。
普段露出の激しい彼女にあって、滅多なことでは人目に触れる事の無い場所。
故に彼は常日頃からそこに執着するきらいがあった。
チュパチュパと音を立てて乳飲み子のように頂きに吸い付くと、続けてうっすらと残る前回の痕跡の上に、日焼けの無い白い皮膚の上に…次々紅い痕をつける。
いつもなら。
そう、いつもならば乳房を愛おしめば彼女の指が彼の髪に絡み、口からは甘いため息が漏れ、程なくしてもどかしげに腰が揺らめく。
今、目の前にあるのは何の反応も返さぬ人形のような女の身体。
意志の光の宿らぬそれを物として扱い、傷つけ、汚し抜くことに彼はこの上無い恍惚を見る。
対象が他の誰であっても、こうは興奮しないだろう。
他の誰よりも大切なものだからこそ、彼の思う様蹂躙できる『所有物』との実感が欲しい。
だからこうしてレヴィを犯す時、ロックは意図して彼女を虐げるような真似をした。
彼女が目覚めた後もそれを誇示できるように、だ。
一方的なこの行為において、彼の残す痕跡と痛みが唯一のコミュニケーションとなっていた。
そう。
突き詰めればただの独占欲なのだ。
レヴィの全てを自分の元に束縛したいが、意思の宿る彼女はいつだって奔放でそんなコトは叶わない。
だが、こうして意思の宿らぬ抜け殻の間だけは、レヴィの身体は彼女自身のものですらなく…彼のもの。
ロックは自らのネクタイでレヴィの両腕をきつく拘束すると、彼女愛用の鉄棒に縛り付けて吊す。
足が床についているとは言え、身体を支えることはなく膝はくたりと折れている。
手首で全体重を支え、力無くうなだれるレヴィ。
(関節外れるかな…)
ベッドに腰掛けそんな事を心配しつつも、その痛々しい美しさに欲望にのみ従うことにする。
「綺麗だよ、レヴィ」そう声をかけながら再び彼女へと近づき、両手で顔を包んで上向かせると唇から首筋にかけて口付ける。
頸動脈の拍動を感じ、そこに歯を立てじわり…じわりと力を篭めると、プツリと皮膚の破れる感触と口に広がる鉄錆の味。
更に強く噛み付けば、彼女は死んでしまうだろうか?
力を篭めもせず、緩めもせずに存分に彼女の鼓動の感触と生命の味を愉しむ。
彼女を殺したいわけではない。
だが、彼女の死はある日突然、何処の誰とも知れぬ他人によってもたらされるのだろう。
他の誰がに奪われる位ならばいっそ自分の手で殺してしまおうか、過去何度か繰り返した自問自答。
(…馬鹿馬鹿しい)
自嘲しながら喉から離れ、彼の唾液でぬめった傷口に血が滲むのを凝視する。
歯の痕の血の玉が次第に大きく膨らみ、自重に耐えられずに首筋を伝う。
彼は下からそれを舐め上げ、うなだれたままの女にそのまま口付けると口腔を貪った。
こんな実りのない行為に興奮し、息が粗くなる自分を狂っているとは思えど行為を続けることしか衝動を収める術は見当たらない。
弛緩した頼りない身体を掻き抱き、彼女の顔に頬と唇を擦り付けると肩、胸、腹へとその対象を移動する。
下腹部に何度も頬を擦り寄せ、両手で尻を撫で回しながら固く閉じられた箇所へと中指と人差し指を挿し入れる。
乾いたソコを解すように指を動かす。
多少すべりはよくなるが、起きている時のように濡れてくることはない。
彼女の片脚を自らの肩に乗せ、股間に鼻先を埋めると指に代わって舌を捩込みしゃぶりついた。
鼻を付く生臭さに余計に興奮は高まり、身体も限界に近づく。
ロックは彼女の股間を舐め回しながら自らも着衣を下ろすと、いそいそと立ち上がり背後から自らを突き挿れた。
受け容れる準備の無いままの彼女のソコは、キツイくらいによく締まった。
身体を抱き寄せ首筋に顔を埋めたままひたすらに突き上げる。
ギシギシと音を立てる鉄棒。
力無くうなだれる彼女の頭が同じリズムで振られる。
鉄棒の結び目が解けそうなのに気付き背後から更にしっかりと抱きすくめ、尚も一方的に責め立てる。
喘ぐことも自分の名前を呼ぶこともしない彼女の口。
好きな女の尊厳をまるで無視する時間。
彼女に対し後ろめたい気持ちが増すほどに興奮の度合いも正比例して増していく。
自分だけのレヴィ。
この…彼女が物となる時間だけは彼女の全て…髪の毛一本まで自分の所有物だ。
この女をこんな風に犯すことが出来るのは自分だけ。
彼女の体重を支えていた拘束が解け、彼の腕へと身体が委ねられる。
筋肉質の身体は引き締まった見た目以上に重い。
不自然な体勢からバランスを崩さぬよう慎重に床へと倒れ込むと、一度自らを抜いた後に正面から改めて犯す。
彼が身体を揺らすとそれに合わせて波打つ痣だらけの胸と、頭の上に投げ出された拘束されたままの手首。
首筋には自分の歯型。
彼の唇の軌跡をなぞるように乱れた化粧…特に半開きの唇からはみ出た口紅の赤が酷く卑猥に見える。
(…何かレイプしてるみたいだよな…)
内心苦笑し、はたと思う。
果たしてこれは和姦なのだろうか。
彼女がどんな意図をもってこんなことを許しているのかは知らない。
以前感じたように、相手に服従することでしか愛される方法を知らないのかもしれない。
そんなレヴィにつけこんで前後不覚の彼女を嬲りながら犯しているのだからどう見ても強姦だろう。
だが、今はそんなことはどうだっていい。
目の前でされるがままになっている女をどんなに犯してもまだ足りない。
もっと欲しい。
レヴィの唇に自分のそれを押し付け舐めとらんばかりに貪ると、身体もぴったりと密着させ終わりに向けて彼女を激しく揺さぶる。
苦しいのかむずがるように顔を背る仕種を見せるも、許さずに隙間無く唇を塞ぎ、そのまま彼女の中で果てた。
その後も名残惜し気にしつこく唇を貪った末に身体を離した彼の目に入るのは硬い床の上に倒れた痛々しい姿のレヴィ。
可哀相に。
自分の行為のもたらした結果にも関わらず、他人事のようにそう思う。
固く結ばれたネクタイを解いて抱き上げると、そっとベッドに横たえた。
そして「痛かったな」「ごめんな」などと話しかけながら、乱れてほつれてしまった髪を丁寧に梳いてやる。
狭いベッドの上で並んで横になると彼女を抱き寄せる。
顔を眺めているとまたしても彼女を欲してしまい…犯し、また抱きしめる…そんなことを繰り返した。
レヴィが意識を戻した時、初めに認識したのは身体を包む他人の素肌の感触と、嗅ぎ慣れた体臭。
「……ロック?」
目が開かぬまま名前を呼ぶと、彼は彼女の名を呼びながら顔を覗き込むべく身体を離す。
彼女は上を向いて顔を見せると今は何時かと尋ねた。
「昼を過ぎた位かな」
ロックはレヴィのいまだ開かないままの瞼をなぞりながら、彼女が人形から人間へと戻りつつあることへの歓喜を噛み締める。
眠そうに身体を擦り寄せる彼女を思う様抱きしめて、髪の毛に顔を埋めながら何度も名前を呼び続ける。
夢うつつを漂う彼女も眠る直前の重苦しい不安感から解き放たれるのを感じていた。
「ロック…キスしたい」
うっすらと目を開き、ぼんやりした顔で彼を見上げる。
レヴィに請われるままに唇を重ね、身体を組み敷き舌を挿し入れる。
彼女が意思をもって彼の舌に応じるのが何とも嬉しくて仕方が無い。
しばらくはそうして舌と指を絡ませあいながら先刻までとは全く違う興奮に酔いしれるも、ロックはそれだけでは満足し切れなくなりつつあった。
「……ハァ…レヴィ……シていい?」
唇を触れ合わせたまま…問いかける。
返事は彼の予想通り…「…ヤなこったッ…ぁ…」という拒絶の言葉。
「シた…い…」
「ん…気分が最悪だっ…酒と…薬がまだ…残ってやがるッ…」
「どうしても?」
唇を一旦離し、額同士を合わせながら首を傾げてねだる…が、ロックの淡い期待に反してレヴィは少々うんざりしたように言葉を返す。
「しつけーな、てめーも。イヤだっつったらイヤなんだよ」
「……残念だよ」
「てめぇは散々ヤったんだろーが」
少々呆れた様子でレヴィは苦笑する。
「起きてる時とは違うよ…どっちも興奮するけど…」
「…変態」
「…知らなかった?」
「知らないと思うか?」
一瞬の後、二人同時に吹き出し、笑いながら再び唇を重ねた。
夜になり、体調が上向いた頃に酷く痛む身体をロックと交えた。
達した後、彼女を抱き締め「今夜も泊まって行く」と言う男を「ゆっくり休みたい」と無理矢理追い出した。
火の点いていないを咥え、ボケっと天井を眺める。
身体の感覚が戻るにつれ、昨夜の行為を思い知らされた。
腕と背中が酷く痛い。
手首には拘束の痕。
身体に残る歯型と赤い痣。
揚句、便所に行った時には掻き出しきれなかった彼の体液が股ぐらから流れ出て来た。
自分のあずかり知らぬところで彼の思うがままにされていたのだと思うと、どんな風に犯されていたのかと妄想ばかりが膨らむ…。
目覚めた時の抱擁の安堵感のみならず、そんな高揚感と彼の支配に服従する恍惚感を楽しんでいるのも確かだ。
普段、自分本位に彼女を抱くことはあっても暴力を奮うなどの傷がつくような真似はしない男が、相手の意識が無いとこのような痕跡を残すことが
不思議でもあり面白かった。
「見えるトコに跡付けるなよ…」
露出部にまで点在する痣や噛み疵を撫でながら一人ごちる。
首筋の跡に触れると、鈍く痛む。
彼の歯が皮膚を貫いたのだと思うと背中にぞくりとした何かが走った。
ガバリと起き上がり、シャツを捲くり上げて胸元を覗き込む。
乳房に手を遣るとずきりと鈍く痛む。
そこにあるのは彼の指の形の痣と…何度見ても呆れる程に散らばる大小のマーキング。
ひとつ、ふたつ…と数えるも、背中にも続くそれに途中で諦める。
彼の指や唇が身体を這い回り、自らを痛め付ける様を妄想し、下腹部が疼く。
ゆるゆると下着越しに指を宛てると、再び湿り始めたソコ。
暫くはそのまま撫で擦りながら慰めるも、どうにももどかしく下着を下ろして直接触れる。
脚を開き、指を差し入れると身体の奥から溢れ出す自らの体液に混ざって流れ出る…男が吐き出した欲望の証。
先刻の行為でも、彼は躊躇うことなく彼女の身体の奥へと放ったのだ。
(…ピルは調子悪くなんだよな…。何のためにわざわざスキン用意してると思ってんだ?)
一度釘を刺さなければ…。
そんなことを頭の片隅で考えながらも、その実、腹の奥まで彼に蹂躙されているという実感に一層興奮は高まる。
「…ん…ぁ………ロッ…ク……はぁ…ひぁ……」
手首を鋭角に曲げると酷く痛い。
逃げるはずもない自分を拘束するのは何故だろう。
彼が自分を束縛したがっていることの顕れなのだとしたら、これ以上の恍惚は無い。
じわじわと高みに昇る身体。
爪で突起を刺激すると強烈な快感に脚が跳ねる。
だが…もっと刺激が欲しい。
やはり帰さなければ良かった。
疲れて眠ってしまうまで、ダラダラと…とめどなく終わり無く身体を重ね合うのも…そう悪くはないではないか。
……だが、そんなコトはいつだって出来るし、している。
このえもいわれぬ高揚感は、この時しか味わえ無い。
「ん…ふぁ……ぁあぁぁ…ぁッ…」
室内に響き渡る、くちゃくちゃという水音と…嬌声。
レヴィは身体に残る傷と痛みに神経を集中させると、その有様に歓喜し快楽へと変換する。
「…ロッ…ク……ロック…ロック……ロッ…ク………ロック」
彼女の密やかなる愉悦はこの後も続いた。
・・・
まだ続けるべきか否か…迷うところですが、まだレヴィたん泣かしてない…
そもそもどうやって泣かすかまだ考えてないというヘタレっぷり
どうすればいいと思います?
つーか、結局どっちもヤってることは相手の身体を使ったオナヌー…
GJ
>356がレヴィたんをむせび泣かせるまで
俺は!全裸でスクワットをやめないッ!!
362 :
バカるでい:2008/05/28(水) 01:54:03 ID:qm9G5qjf
ども、投下乙でございます。
屍姦プレイってどうするかと思っていたのですが、
こりゃまた、強烈 (;^^)
>泣かし方
うーむ、このプレイするつもりでクスリで寝る。
んで翌朝、気が付いたら、ロックがボコボコに半殺しされていて、
そんな彼の見ている前で拘束されたままマワされる。
ロックが部屋をロックし忘れれたという駄洒落オチ
流れをぶった切るようだけど、子供時代のシェンホアでエロってどうよ
ちょww芋くさすぎるだr…ってそれがいいのか?
>356
毎度ぐっじょぶ。疑似屍姦プレイとは倒錯してていいわいいわー。
レヴィを泣かせて、かつ幸せエンドに持ってくのは大変そうだ。
いっそ疑似じゃない方向d…うわなにをするやm(カトラス乱れ撃ち
なんか良いSSサイトあったら教えてくれ〜
マイナージャンルでサイトが見つからないなら自家発電するしかないよ?
とりあえずここのまとめサイト行けば暫くは楽しめそうだけど
自家発電できない俺は
>>356氏やバカるでい氏の神SSをわっふるする。
ですだよ・ジャンキーで自家発電、エロ無、陰気臭い。
+++++
小雨の降る曇り空。どこにでもある路地裏。傘を差して歩く女。
突き当りの病院。そう大きくはない建物。薄汚れた硝子扉を押し開ける。
「こにちは」
窓のない建物の内部は人工の照明に照らされて、白く鈍く薄暗い。
受付の小窓越しに笑顔で挨拶。受付の娘はいつも通りの無愛想。
狭い階段を上がって少し進むと、見知った部屋へと辿り着く。
内側からは開けられない頑丈な外鍵を外して、彼女は部屋の中へ。
壁際にベッドが一つ置かれているだけの、限りなく殺風景な部屋。
窓さえも無い、その部屋に彼はいた。
「やー。久しぶりね」
声をかけるが、相手は全く反応しない。
「元気してるますか?」
笑んで彼女は彼の顔を覗き込んだ。
「レガーチ」
かつての相棒の名を呼んで、指先で頬のこけた彼の顔の輪郭をなぞる。
つと進んだ指が荒れた唇に触れて、彼女は彼に口付けた。
呼気が肌に触れるほどの間近に寄っても、相変わらず彼は無反応。
虚ろな眼差しは何も見てはおらず、此処ではない世界を眺めたままだ。
此処を訪れる度に、火星から人類が帰還するのはとても困難なのだと知る。
外の雨音も聞こえない部屋で、彼女の溜息が緩く零れる。
抜け殻の横たわる寝台に彼女も腰掛け、傷だらけの彼の身体を見下ろす。
蟻走感から掻き毟られた腕の傷痕は、今はただの無数の紅い線でしかない。
けれど、彼女がとうとう頭の壊れた彼を見つけた時、それはまだ傷痕ではなく。
血の流れる傷口を、ただ無心に抉るように掻き毟る姿に彼女は一瞬立ち止まった。
それなりに腕のいい相棒ではあった。
薬で頭が火星に飛んでても、運転だけはミスしない。
彼の価値は何かと問われれば間違いなく、その運転技術だと言える。
ではそれが失われたら?
なんの取り柄もないこの男に、何の価値が?
他人への優しさなどこの街では邪魔なものでしかない。
そんなことは彼女にも分かり切っていた。明かりも点かない暗闇の中、存在しない寄生虫を
皮膚の下から抉り出そうと躍起になる相棒を放っておくことも、確かに出来た。
けれど彼女はそうしなかった。
知り合いのツテから病院を手配し、意味不明の言葉を口走り暴れる彼を捕まえて
診察を受けさせ入院の手続きをし必要な経費を払い――
いったい自分のどこにそんなことをしてやる義理があるのだろう。
自分でも分らなかった。
恋人ではない、愛しているかと訊かれればきっと自分はNOと答える。
如何に生きようがどうやって死のうが本人の自由だ。
いつ死ぬのかは死神だけが知っている。
知ったことではないはずの他人の生死に、何故自分は関わってしまったのだろう。
何処を見ているのか、ただ茫然と天井を眺めているだけの彼の肩口に額を寄せて、
彼女は眼を閉じた。
少し速い脈拍と、いつか抱かれた汗の匂い。
ぼんやりと瞼を開けば、腕と同じ傷痕が幾重にも走る首筋が目に入る。
指先でそれを辿り、後を追うように口付けていく。ゆっくりと優しく、いつかのように。
最後にもう一度唇にキスをして、彼女は立ち上がった。
感傷は死を呼ぶと知っている。なのに自分はここへ来る。
「まったく、どうかしてるね」
ひとりごちて、苦笑する。こんなことを続けていたら、きっといつか破滅する。
「人の事言えないね、私も……」
やめたくてもやめられない薬漬けの相棒を、どうやら自分は笑えないらしい。
「じゃあ、ね。元気……は無理、でも次来るまで、ちゃんと生きてるますよ?」
そう言ったところで彼はただ虚空を見ているだけなのだけれども。
返事のないことが分かっていて、それでもそれを待つように。
ほんの少しだけ扉の前に立ち止まってから、彼女は部屋を後にする。
色の無い建物から、小雨の降る路地裏へ。
鮮やかな色合いの傘が、揺れる黒髪とともに路地を去ってしまった随分後――
「――――シェ、……ン、ホア……?」
虚ろな男の唇から洩れた言葉は、誰にも届くこともなく、無色の虚空に溶けていく。
+++++
六dもソーヤーも好きだけどやっぱですだよの相棒はジャンキーが好きなんだ。
仲間いなそうだけどな。まとめサイトにもないし。
おお、エロ無しでもなんかこういう雰囲気のは好きだ!
思い浮かんだものでいいから是非また投下してくれ
なんていうかキュンときた
あの作品はまだまだ使えるキャラをバッサバッサと戦線離脱させるからな
レガーチもそうだけど、カウボーイとかも嫌いじゃなかったんだが
>372
俺も嫌いじゃないぜ。良い雰囲気だ、GJ。
運転専門のキャラって見せ場が限られるからなァ。
分かる奴にだけ分かる例えで言えば、ガンドッグのパイロットとか……
そこでなぜブリッツさんが出ない!
枝緑続きマダー?(ry
378 :
バカるでい:2008/06/04(水) 23:13:41 ID:jrrvHsgU
ども、
エダロクとかロクエダとかレヴィのオナヌーとか色々進行中ではありますが、
保守を兼ねて投下します。
例の続編なんですが、書いていたら例によって例のごとく無駄に長くなりつつあり、
収拾がつかなくなってますw
しかーし、ここはエロパロ板だっつーの、
ということで急遽、前座として冒頭にエロシーンを無理矢理挿入してみました。
それにしても、私が書くとどーしてもレヴィが乙女ちっくになりますにゃあwww
乙女ついでに泣いてもらうことにしました。<ぉぃ
ロックは狼狽していた。
とにかく今夜はこれまで経験したことの無い事態が次々に展開され、
いったいどうしたらいいのか、すっかり困惑の態だ。
今、自分はベッドの上にいて立ち膝の姿勢。ちなみに全裸で。
目の前にいる、と言うより自分が跨っている女性、当然こちらも全裸。
その女性はうつ伏せ、正確には少しだけ左半身を上げて斜めの横臥。
両手を尻に当てている。
と言っても尻たぶを開けっ拡げて誘っているわけではない。
逆だ。膝を閉じ、排泄器とおぼしき辺りに両手の甲を当て、たぶんギュッと括約筋を締めている。
『ソッチはイヤ』
言葉にこそ出していないが、全身で必死にそう懇願している。
二人の間で、“後門”の方での経験が無いわけではない。
彼女はよほど意識を飛ばさない限りあまり歓迎はしなかったが、それでも被虐の快楽を求めないわけではない。
いつもなら、やれ「変態」だの「くたばれ」だの「後ろが良けりゃオカマ掘ってろ」だの、
罵詈雑言のオンパレードで抵抗して来るのだが、結局最後は受け入れてくれる。
それが、今夜の抵抗の仕方は尋常ではなかった。
口をキュッとつむり、少し震えている。それどころかロックから視線を外した瞳は明らかに濡れている。
彼女、レヴィは怖かった。
別に後ろでされるのが怖いわけではない。そんなことは今まで散々経験済みだ。
何しろこの男、オツムのどっかのネジが抜けると欲望の趣くままヤリ放題、
あの手この手であらゆるプレイを強要して来る。
そんな野郎に惚れたのが、自分のウンのツキ。別に今更気にしちゃいない。
せいぜいこの変態ジャップのイチモツを、こっちの『ウン』付きにしてやる。
まあ、彼のためなら大概のことは受け入れる覚悟があるし、
自分の中で否定してはいるが、何のかんの言ったところで、結局はいつも悦ばされてしまっているのだ。
だけど……………
とにかく今夜はイヤだった。優しくして欲しい、普通に愛して欲しい。
ただそれだけだった。自分でも理由はよく分からない。
じゃあ何が怖いというのか。
それは拒否することで彼に捨てられることだった。これは今の彼女にとっては致命的だった。
だから言葉で明確に拒否できないでいる。
そのクセ、彼女のプライドは「優しくして」等と甘ったるい言葉を口にすることを許さず、
その結果どうしたら良いのか自分でも理解できず、体を硬直させ、ただ枕を濡らすしかなかった。
レヴィ一人を残した沖仕事から戻った日の晩、ロックは彼女を自分のモーテルに誘った。
建前としては、例の“事件”の後遺症を心配して引き続き彼女を庇護するためだが、
本音を言えば海上で溜まってしまった3日分のナニを処理したいのだ。
果たして本音の方を見透かされてしまったのか、
「アタシは大丈夫だっての。ガキじゃあるまいし、いつまでも添い寝してもらわなくたってよ。」
てな感じであっさりフられてしまった。
メゲずに、もう少しあれこれ誘いをかけてみたが、結局レヴィは自分のアパートに一人で戻ってしまった。
ロックは、ぽっかりと心に穴でも空いたような虚しさを感じながら自分のヤサに戻ると、
一人寂しくヤケ酒を呷り、アルコールの勢いでやっとこさ就寝にこぎつけた。
ところがその翌日、仕事を終えると今度はレヴィの方から酒瓶抱えて押しかけてきた。
天にも昇る気持ちとでも言うのだろうか、ロックは飢えた犬コロ状態(通称ハァハァ)になってしまった。
しかし、困ったことに明日は早朝から仕事の予定が入っているので、あまりアッチの方にばかり励むワケにもいかない。
その辺りはレヴィも心得たもので、持って来たのはラム1本だけ。
つまり、さっさと飲んでさっさとヤることヤって一緒に寝ようという意思表示、とロックは勝手に解釈した。
ロックは、レヴィが呆れるほどのハイピッチでとっととラムを片付けた。
「飲み足りないか?」
真面目に心配そうなレヴィだったが、ロックの方はもう我慢の限界だった。
「レヴィっっ!!」
彼女の名前を叫びながら有無を言わせず跳びかかった。
が、彼女はひょいと避けると
「フザけんな、このアホ!、いきなり何シヤガル!」
「オ、オレはフザけてなんかない! 本気なんだぁ!」
性懲りも無く再度跳びかかったロックだったが、
レヴィは今度は避けるどころか鳩尾(みぞおち)に膝蹴りをお見舞いして来た。
「ぐげぼぉっ」
胃への直撃は回避されたのでラムの逆噴射はやらずに済んだが、その場に崩れ落ちるには十分な打撃だった。
「…痛ぅ………な、何すんだよ……」
その場にうずくまったロックは、何とかそれだけの声を絞り出した。
レヴィは無様な相手を見下ろして
「テメエはなぁ、ちったぁロマンスってモンがねぇのかよっ?!」
???
ロックは鈍い腹痛と予想だにしなかったレヴィの言葉の相乗効果で目を白黒させていた。
何言ってんだ、レヴィは?
このトリガーハッピーな破壊神の口からよりにもよって『ロマンス』だってぇ???
過去に「アタシをそこらの淫売(ビッチ)と一緒にするな」と憤慨されたこともあった。
「……ただの性欲処理の道具だと思ってるのか?」と聞かれた時は即否定した。
しかし、ヤり方についてこれほどの実力行使で拒否食らったのは初めてだ。
「先にシャワー借りるぞ。」
そう言って、無様に悶絶しているロックを放り出したまま、レヴィはバスルームに行ってしまった。
?!!
ここはいつまでもノびている場合ではない。ハダカに触れ……、じゃなくて体を洗って差し上げなければ。
まだ残る腹痛を堪えて、あくまで懲りないロックはバスルームの戸口に向かった。
ところがどっこい、これも過去に例が無いことに、しっかり中から錠がされていて中への侵入は不可能だった。
シャワーへ行ったということは、プレイのお相手はして頂けるのだろう。
こうなれば諦めて大人しく待つしかない。
数分後、出てきたレヴィの格好にロックは再度唖然として目を白黒させた。
大き目のバスタオルを体に巻いて肩を露出したスタイル。片手で胸の辺りを押さえている。
プレイ前の女性の格好としては、まあ一つの典型的パターンだろう。
しかし、ここに居るのはロアナプラの二挺拳銃ことレヴィだぞ?
今日はいったい何が起きたんだ? 恐怖の大王でも降ってきたか?
「あ、あのさレヴィ……」
先程までの激情は何処へやら、ロックには事態が飲み込めずにいた。
「何ボサッとしてんだよ、テメエもさっさと体洗ってキレイにして来い。」
これまた予想外の展開だ。
いつもなら酒の勢いでそのままベッドになだれ込むことが多いというのに。
ロックは、今度はお預け喰らって「お手」だのなんだのとやらされるワンコの気持ちが痛いほど理解できた。
とりあえず、まだ鈍痛の残る腹をさすりながらバスルームに向かうロックの背中に、
更にもう一発、困惑の弾丸が撃ち込まれた。
「歯ぁ磨いて来いよ。夕食何食ったか知らねぇけど、酒と混じって息が臭せえぞ。」
ベッドの縁に並んで座っている二人。
ロックは、とにかく言われた通りに体と口を念入りに磨き上げてきた。
考えてみれば世界で一番大切に思っている相手に直接触れるのだ、当然と言えば当然のこと。
そこには何の異論も無い。
ところがどうもいつもと勝手が違うせいで、この状態からうまく先に進めない。
チラリと横目でレヴィの様子を伺う。
少しうつむいて、口を真一文字に結んでいる。頑として先に声を掛ける気は無いらしい。
『弱ったな……』
とにかく普段と様子が違う。
かと言って、ロック自身の我慢もいつまで持のやら、我ながら懸念している。
しかも、明日の仕事のこともある。今夜はあまり遅くまで起きていられない。
……とりあえず、ここは丁寧に行こう。
ゆっくりとレヴィを抱き抱えると、そのままベッドに横にする。
彼女も特に抵抗しない。
いきなり圧し掛からず、横から顔を近づけ、頬を撫でながら軽く口付ける。
最初は唇だけで互いについばむように交感し、次いで舌先でそっと彼女の唇をたどる。
『最近はいきなりグチャグチャと舌突っ込んでばっかりだったなぁ…』
ロックはキスに没頭しつつ、頭の中では過去の彼女の言葉を反芻していた
『ファックなんか大嫌いだ。けど、……』
『……あんな穴いらなかった、何でも突っ込まれりゃ悦びやがって…』
『…一人じゃ泣けないんだけどな』
少なくとも、昨日戻ってから今日までの様子を見る限り、何か泣きたいコトがあったワケではないだろう。
と、なると、問題なのはやっぱり“事件”の後遺症か、さもなければ最近の自分の態度だろうか?
確かに身に覚えがある、と言うかあり過ぎだろう。
このところ、すっかりここ(ロアナプラ)の流儀に染まってしまって、世間一般の善悪の区別が利かなくなりつつある。
快感さえ得られれば何も問題無し(ノープロブレム)。だけど………
あれほどセックスに嫌悪感を抱いていたレヴィ。
それなのに最近の自分ときたら……
互いの舌を絡め終え、ロックはスッと顔を離す。
お互いの口が、銀の糸で繋がっていた。
「…どうかしたのか? 今夜は随分と焦らすじゃねぇか……」
『どうかしたのか聞きたいのはコッチなんだけどな。』
とは言え、心当たりのあるロックはとりあえず沈黙していた。
返事の代わりにもう一度唇を軽く交わすと、胸元を押さえていたレヴィの手を取り、指を絡める。
そして、まるで果実の皮を剥くように、双丘を覆っていたバスタオルを引っ張って取り払おうとした。
ところが引っ張られたバスタオルに合わせてレヴィの身体も半回転して、うつ伏せになってしまった。
そう簡単には果実に触れさせないつもりか。
『焦らしているのはどっちだよ!』
レヴィには焦らすツモリなど毛頭無く、たまたまそうなっただけなのだが。
一方、僅か数秒前まで近来の行いを反省していたはずのロックは、暴走モードにスイッチが入ってしまった。
前がダメなら後ろだっ!
形の良い尻にむしゃぶりつくと、舐めたり噛んだりヤりたい放題し始めた。
レヴィはずっと黙ってヤりたいようにさせていた。
『自分から誘っておいて、どういう態度だよ! 何とか言えよっ!』
自分勝手なもので、彼女の態度が益々ロックの暴走に拍車を掛ける。
舌を強引に尻の谷間に捻じ込み、押し広げる。
そのまま穴へ突入を図ろうとしたが、そこでまた事態が急変した。
ロックはいきなり頬を叩かれた。
手で叩かれたわけではない。
それまで後ろの裂け目に顔を埋めていたのだが、その尻がいきなり力任せに左右へ往復したのだ。
その結果、尻たぶに両頬を引っ叩かされた格好になってしまった。
びっくりして我に返ったロックは、上体を起すとと共に冒頭の光景を目にすることになった。
自ら濡らした枕にしがみついている彼女。
「…レヴィ………」
「…どうしたんだよ…ゥッ……続けろよ……グス………」
ロックに続けられる訳が無い。
「今夜は……もう…止めよう、レヴィ……。」
「……なんでだよ…ゥゥ……」
「………………」
とにかく泣き止んで欲しい。こんなレヴィは見ていられない。ロックはその一心で彼女の髪を優しく撫でた。
「……本当にシねぇツモリかよ……ック…ウッ………」
「………………」
掛ける言葉を見つける事が出来ず、
困惑した、そして許しを請うような、そんな目でロックはただレヴィを見つめていた。
やっと少し落ち着いて来たレヴィは、蚊の鳴くような声で訊いてきた。
「…それじゃあ……アタシが……上じゃイヤか?」
「え……いゃ、そんなことはないけど………」
「そうか……」
レヴィはノロノロと体を起すと、先ずロックのモノを口に咥え込むことから始めた。
「ちょっ! レヴィ、無理してないよね!?」
いきなりだったのと、未だ泣き腫らした目のまま無表情にフェラするレヴィに驚いて、ロックは本気で心配した。
先日の“事件”のこともある。
シてくれるのは嬉しいが、無理矢理は絶対ダメだ。ロックもそんなのはゴメンだった。
親の心子知らず。ロックのそんな気持におかまいなく、彼の愚息はたちまち元気一杯になる。
『昨日からお預け喰っているといってもなぁ……』
我ながら情けない。
起立を確認したレヴィは、まだ啜(すす)り上げながら、ロックに跨りいきなり受け入れた。
「…痛ッェ……っく……」
ほとんど濡れていないうちに自ら受け入れたレヴィは、少し顔をしかめて苦痛を洩らした。
「レヴィっ、そんな無理しちゃダメ……」
ロックの心配を余所に、レヴィはロックのモノを奥まで迎え入れると、そのまま上体も合わせて来た。
そして困惑気味のロックをギュッと抱き締め、放そうとしない。
最初は狼狽していたロックだったが、必死に抱きついている彼女が愛しくなって来て、両手を背中に回して抱き返した。
暫く繋がったまま抱き合う二人。
お互いに全身で相手の温もりを受け止め、まるで脈拍までが一つに溶け合っているかのような錯覚に陥る。
このまま永遠に時間が止まってくれたら………
ロックの上に乗ったレヴィが、ゆっくりと律動し始めた。
相変わらず、しっかりと抱き締めたまま。
ロックは下半身のみならず、胸元にも心地よい双つの刺激を受け、たちまち登り切ってしまいそうになる。
「レ、レヴィっ、ちょっ、スキンしてない………」
「……何も言うな……ぁ………」
「…あ、………う、うん………」
ロックはあっという間にレヴィの中に吐き出してしまったが、彼女はお構い無しに律動を続ける。
しかも次第に動きが激しくなり、レヴィとロックの分泌物が交じり合いグチャグチャと音を立て、刺激が更に高まる。
おかげでロックのムスコは萎えるヒマもなく、蜜壷の内壁を擦り続ける。
「…あぅ、……グス………ック、……ぁ……」
レヴィはまだ泣いていた。
「……ハァ…ハァ………レ…ヴィ………辛いなら…止めょ…」
「……ぁ、ウルセェ、……だ…黙ってろって……ぁぅ……言ったろ……」
髪を振り乱し、ギュウギュウと痛いほどロックを抱き締める。
「…今…は……オマエだけ……ぁ……感じていたいん……ぅ…だ………あぁぁぁ……」
レヴィの言葉が益々ロックの神経に刺激を与えた。
****
「…悪かったな……好き勝手にヤっちまって…………」
間もなくイった二人は、並んで寄り添うように横になっていた。
「俺こそ悪かったよ。ロマンスもへったくれも無く、いきなり無茶しようとして………」
「何言ってヤガル。何時もはあのまんまツっ込んで来るクセしやがって。……ったく。」
「…ゴメン。」
「…………やっぱダメだ………」
「え?」
「中にされるとキッショイ。」
「……だから言ったのに………」
「るっせぇ……」
+++
01に続く・・・かも知れないw
GJ!
ぶった切って悪いが
バラライカさん受けの話て無いかね
相手は張兄貴?
>386
まとめサイトにいくつかないか?
>379
乙女レヴィ堪能した!
いつもの二丁拳銃とのギャップに戸惑う岡島さんにモエス。
なんかもーこの二人はセットで可愛いっつーかロクレヴィ万歳。
バラ姐!バラ姐!
バラ姐とダッチの絡みが見たいですヨランダ先生!
>>385 いーねーイーネーGJ!!!
レヴィたんの乙女部分や弱い部分に萌の自分にはゴチ(*´Д`)
続きの01も待ってる。
全裸で。
最近は黒ロックが流行ってるなぁ(・∀・)ニヤニヤ
バカップルみたいな話も読んでみたいですw
黒すぎだよ!!wと思う時もあるが実際本編でも黒さに磨きがかかってるからなあ
さすがレヴィたんが惚れた男(^ω^)
今じゃ立派な悪党だぜ
なんたってあのバラ姐のお墨付きなんだからなw
まあ、黒いだけで終わらせるヤツは殆どいないし
大抵、ベタ甘も併発してるようだぞ
ども、
恒例、保守兼ねて続きを投下します。
ただし無駄に長いつーか、今回投下分はエロ無し、色気無し、ラブ米ですら無し。
+++
このところ、ロックはひどく悩んでいた。
ラグーン商会の事務所。
ロックはテーブルに紙の伝票を広げてノートパソコンに打ち込む作業をしていた。
そのテーブルを挟んだ向こう側のソファには、
一人の女が寝転んで缶ビール片手に映画雑誌を読み耽(ふけ)っている。
言ってみれば彼女の定位置、珍しくも無い光景。
ビッグボスとマッドエンジニアはドックで船の手入れと機材のメンテに行っているはず。
だからココにはロックと彼女の二人だけ。
ワザと二人きりになるように仕向けられている面が無きにしも非ずだったが。
ロックの悩みの原因は仕事ではない。彼女にあった。
いつもなら二人きりで過ごす時間というのは決して悪いものではない。
別に何をするでも無く、会話を交わすわけでも無く、ただ二人きりで穏やかに時間が過ぎて行く。
それだけでも不思議と幸福感と言うか、満たされたものを感じることが出来た。
だがこの数日は違っていた。何と言うか、ある理由のせいで彼女と居るのが気まずいのだ。
打ち込み作業を終えると、いよいよロックはすることが無くなってしまった。
ノートパソコンを閉じ、紙をファイリングし、片付ける。
ソファに戻ると、机の上にはロックの既に冷めたコーヒーが入ったマグカップ、あとは彼女の缶ビールがあるだけ。
その向こうには寝転んだ彼女と雑誌しか居ない。
『さぁ、どうする。』
ロックは自問自答を繰り返す。
実はどうしても彼女に聞きたい事、聞かなければならない事がある。
二人きりというのは絶好のチャンスだった。
だが喉まで出かかった問いを、どうしても口の先へ吐き出すことが出来ない。
この状態がロックを鬱々とさせていた。
こういう時に限って、どうして顧客から電話の一本も掛かってこないのか。
普段だと、せっかく二人きりの時に電話なんぞ掛かって来るとムカッとくる。
幸福感に水を差され、その憤懣から対応する口調にトゲが出ないよう苦労するところなのだ。
まったく我ながら身勝手なモノである。
ロックの苦悩の大元は、このところ街に流れている妙な噂話である。
曰く、ラグーンの二挺拳銃が見かけない男と街中をバイクで爆走して回っていた。
曰く、その男は新手の組織(カルテル)が寄こした斥候で、二挺拳銃はそいつらに雇われたんだ。
曰く、新手の組織は二挺拳銃を案内役に仕立てて既存の組織(モスクワ・トライアド)と対決し、街を戦場にするつもりだ。
曰く、その男と二挺拳銃が組んで、街の若手のガンマンを蜂の巣にした。
曰く、二挺拳銃はぐでんぐでんに酔わされた挙句、その男にどこぞに連れ込まれ、レイプされたらしい。
曰く、いや、むしろ二挺拳銃の方が頼りにならない相棒を見限って新しい相手をナンパしたんだ。
曰く、イエロー・フラッグのカウンターで、その男にストリップを見せたそうだ。
曰く、いやいやそうではなく、昔とった杵柄(きねづか)でSMショーをやって見せたに違いない。
ロックにしてみたら、まったく何が本当で何がデタラメなのか、まったく眩暈がする思いだ。
いっそ、全て根も葉もない妄言ということにでもして欲しい。
こう言っては何だが、この街(ロアナプラ)が戦場になろうがどうなろうが、この際知ったこっちゃない。
問題なのは、男がらみという点。
そこが一番気になる。
嫉妬、は勿論ある。
自分が居るのに、という思いはある。
勝手な独占欲とは思うが、やはり自分は彼女にとって少しは特別な存在じゃなかったのか?
ただ、あの“事件”のことが気になっているのも確かだ。
先日、一人で街に残された彼女がまた情緒不安定になり、何か仕出かしてしまった可能性はある。
だとしたら自分に出来ることなら何でもしてやりたいし、何でもする覚悟はあるつもりだ。
ところが当の御本人は、あの日以来えらくご機嫌麗しく、心身ともに絶好調らしい。
普段の生活に限れば、あの“事件”の後遺症をすっかり払拭してしまった感さえある。
特にここに戻った、あの日の昼のサービス振りは何だ?
昼食は用意してあるは、自らコーヒー淹れるは、片付けまでやってのけた。
ベニーは気味悪がってあんまり食事に手を出せず青い顔していたし、ダッチはマジで妙なクスリか病気の心配をした。
あの後、ダッチの奢りでイエロー・フラッグに繰り出したのも、慰労以外に探りを入れる意味もあった。
結果は空振り。
彼女はいつもと変わった様子も見せず、愉快そうに喋りながら杯を重ねていた。
まぁ、強いて妙とも言えるのは、珍しくロックとの二次会を断ってさっさと自分のアパートへ帰ったことくらいだ。
彼女にはナイショにしているが、実は本当にアパートへ帰ったのか、後を付けて確認までした。
男の噂を耳にしたのはその数日後のことではあったが、勿論あの晩に後を付けた時も男の影は一切無かった。
男の噂にしても、実際のトコロ確証が全くと言っていいほど無い。
少なくとも逢引なんて不可能な筈だ。
普段は仕事でほとんど誰かしらメンバーと顔を会わせているし、ナイショ電話している気配すら無い。
彼女のことだ、メールなんぞ使っているとも思えない。
彼女が一人で買出し等に出た時に、もっともらしい理由をつけて事務所を抜け出し、後を付けてみたことも数度に及んだ。
ロックの尾行が下手と言われればそれまでだが、何回かは付けているのが彼女にバレた。
もっとも、それに気付いた彼女から文句が出たり不機嫌になったりすることも無かった。
逆に好都合とばかりに荷運び役を仰せつかるハメになった。
夜は夜で別段変わった様子も無いし、どこかへ行方不明になることもない。
彼女の方からロックのモーテルに転がりこんでも来たし、
ロックが不意に彼女のアパートへ押しかけても、別に拒否はされたり迷惑な顔されたりするわけではない。
さすがに仕事で疲れているとプレイ拒否のこともあるが、それはお互い様だ。
今のところ、いつだったかロックが見られてしまったような、
他の誰かさんとの真っ最中に遭遇なんて最悪な事態には出くわしていない。
あえて気になることを挙げるのならば、先日の如くアブノーマルなプレイをひどく嫌がるようになった。
口にこそ出さないものの、とにかく優しくして欲しいとせがむ。
まあ、これにしたって、あの“事件”のこともあるので、特段不思議とも思えない。
ロックが独占欲から暴走カマして無茶苦茶な嗜虐癖さえ出さなければOKだ。
彼の側に多少欲求不満が無いワケではないが、こんなことは彼女に辛い思いをさせるくらいなら屁でもない。
といった具合で、別段仕事に支障が出ている訳でもないし、
問題無い(ノープロブレム)と言ってしまえばそれまでだか、どうにも居心地が悪い。
この際、最悪のケースを考えてみる。
もしも本当に誰かに誑かされていて、街を転覆させる陰謀に知らず加担したとしたら、
早く手を打っておかないと自分達全員が街中を敵に回すことになる。
ダッチやベニーも同じことが気になるらしい。
「アイツのメンタルヘルスは、ロック、お前の担当だな。」
「まぁ、とにかく事情だけでも探ってよ。ざっくばらんにプライベートな話が出来るのは君だけなんだからさ。」
こう仲間から言われ、一応の配慮として二人だけの時間を多めに取れるようにされたものの、
正直なところ、ロックはどうすることもできずに途方に暮れていた。
問い質(ただ)すったって、何て尋ねりゃいいんだよ。
タダでさえ詮索屋は嫌われるってのに、他にオトコでも出来たか? って?
だいたい最近も "Make Love" している相手に面と向かって聞けることじゃないよな……
ロックが事務所で孤独に煩悶を繰り返していた頃、イエロー・フラッグに二人の男が訪れた。
ドックへ行ったことになっているダッチとベニー。
とにかく、今回の噂話にこの酒場が絡んでいるのは間違いなさそうだ。
ところが、現場を直接見ている客が今のところ一人も居ないという摩訶不思議なことになっている。
ならば店主のバオが何か知っているはずだ。
そう踏んだ二人は直接確かめるべく、昼間の客の少ない時間を選んで乗り込んで来たのだ。
「よぉ、お二人さん、珍しい顔触れだな。『Face man』と『Howlin' mad』はどうしたい?」
「おぃおぃ、その『チーム』に例えるってのは無いぜ、バオ。
『色男』の方はともかく『マードック』が聞いたら店の全壊記録を更新しに来かねないぜ。」
「メカ担当の僕が『コング』かい? 僕はあんなに体格良くないよ。」
「ま、いいさ。ところで何の用だ? まさか女中(メイド)の募集に来たわけじゃあんめェな。」
「冗談キツイな。そんなに女中分隊(キリングマシーン・プラトゥーン)大歓迎か? ここは?」
軽く一杯引っ掛けると、二人は本題について尋ねた。
近頃街で評判になってる噂の真偽を。
「それだったら『Howlin' mad』に直接聞いたらイイだろ。何しろご本人だろうが。」
「それが出来てりゃ、ココには来てねぇよ。」
「正直言って、ウルトラ短気が落ち着いているのでありがたいんだけどね、返ってそれが不気味でさぁ…」
「しっかしなぁ、はっきり言って、特別たいした事は何も無かったんだがなァ。」
「とにかく、何でもいい。あった事を正確に話してくれ。」
「いくらヒマな時間帯つっても、面白くもねェコト話す身にもなってくれ……。」
ダッチは黙って煙草の包をバオに手渡す。中に100ドル紙幣が入った特製煙草だ。
バオは包を受け取ると、記憶を手繰る様にして話し始めた。
「えーと、あの日は確か昼間に一騒ぎあってな、午後は片付けで臨時休業にしていたなぁ。
1630頃だったかなぁ、お宅の『Howlin' mad』が来たのは。」
「一人で?」
「いんにゃ、男連れだった。」
「「男連れ……」」
顔を見合わせるダッチとベニー。
「……それで、その『男』の背後関係は何も無いんだな、同志軍曹。」
「はい、『男』と繋がりのある者はおりません。強いて言えば街中で同行していた『彼女』だけでしょう。」
「情報の信用性は?」
「『男』の身元を洗いました。出身は日本で、これは在日大使館筋より確認の連絡を受けています。
ビジネスの赴任先で配偶者を殺害され、その後、現地の運び屋に加わっております。
配偶者の死亡に関する現地警察の記録は当地の署長(ワトサップ)経由で、
戸籍の死亡手続きについてはやはり在日情報により確認されており、
こちらも偽装を疑う余地はありません。
私見になりますが、何等かの国家・組織の関係者を疑うには、
経歴の偽装が凝り過ぎているものと考えます。」
「ふむ……で、『転職』後も特に目立った動きは無いのだな?」
「今のところ『特別な』場所乃至人物への接触は一切確認されていません。」
「となると、さしずめロックの先輩といったところか。もっとも小物のようだが。」
「ただ……」
「ただ?、ただ、何だ同志軍曹。」
「現地警察の網の目を潜り抜けた点は、無視して良い能力を超えているとも考えられます。」
「…ふふん、成る程な………少々お手並みを拝見してみるのも一興か……。」
「はっ、直ちに仕込みを手配いたします、大尉殿。」
「ただの野良犬か、飢えた一匹狼か、これは見ものだな。同志軍曹。」
ほんの数日前、"BOUGAINVILLEA TRADE co. ltd." と看板を掲げたオフィスでの遣り取り。
噂はこの街でも、ある意味でトップクラスのオフィスさえ動かしたようである。
結果、その『男』は少々面倒な仕事で忙しくなったのだが、それはまた別の話。
※作者能書き
能書きとゆーか、疑問。
コミック7巻のP.118なんすが、バラ姐のトコの看板がありますよねぇ。
ロシア語(キリル文字)はサッパリなんすが、下段のアルファベットが
"BUGAINVILLEA" になっていて、花のブーゲンビリアの英語綴りとちゃうのですが、
(2文字目の“O(オー)”が無い)あれ、ワザとなんでせうか?
つーか、英語じゃないのかな?
再び数日後のイエロー・フラッグ。
「バオ、その男どんな野郎だった?」
「どんな、って言われてもなぁ……眼鏡掛けた風采の上がらない典型的東洋人ってくらいで、
そこら辺にゴロゴロ居そうな奴だったとしか言いようがねェよ。
このクソ暑い中グレーのスーツの上下着込んで、地味なネクタイしたドブネズミスタイルだったな。」
やれやれ、これじゃあ特売品のワゴンセールで無造作に並んでる代物みたいな野郎だな。
探そうにも当たりを引くまでに一苦労ってパターンだ。
ダッチはウィスキーのグラスを指で突付きながらハラの中で舌打していた。
「名前は?」
「えーと、なんつったかなァ……確かラスト・ネームがお宅の『Face man』と同じだったぜ」
「ベニー、ロックのラスト・ネームなんだった?」
「えーと、ちょっと待ってくれよ、……確か『オカ…』なんとか……」
「ああそれだ、思い出したぜ、『オカジマ』、『イクヤ・オカジマ』っつった。」
『ロックと同姓ね…………。』
二人は、それぞれ腹に一物感じていた。
「二人で飲んでたのか。」
「まぁ、あの野郎の方はあんまり飲んでなかったけどな。」
「酔う訳にはいかねぇ理由でもありそうだったか?」
「いやぁ、俺の見たところ単純に酒があんまり強くないだけだな、ありゃあ。」
この商売の長いバオの観察だ、まずそう考えて良いだろう。
「ただ飲んでただけか? 他に何かあったんだろう?」
「ああ、昼に続いてまた一騒動になっちまって、えらい迷惑だったぜ。…………」
バオは無鉄砲な若者の件を手短に話した。
「横っ飛びで撃って正確に腕を狙ったとしたら、たいした手練だな。」
「腕に当たったのは、まぐれって気もするがなァ。」
「そう言やぁ、アイツちょいちょいココに顔出すぜ。」
「レヴィと、か?」
「いやァ、お宅の『Howlin' mad』と来たのは最初の時だけだな。」
「いい加減さぁ、その呼び方止めない?」
「まあイイさベニー。
で、何しにココへ来るんだ? 酒好きでも無い野郎が、まさか『射的』に来てるワケじゃなかろう。」
「ンな事しに来やがったら、とっくに出入り禁止にしてヤらァ。
大人しいもんだぜ、ビール一杯と軽食とって、情報漁りに来るだけだ。」
「情報?」
「何処ソコの店は『モスクワ』の系列なのか、とか、誰ソレは何者か、とか、
ま、新参者らしく何てことのない街中のハナシさ。」
「ビール代が高そうだな。」
「俺の方からタカっちゃいねぇよ。確かに金放れのイイ野郎なんで、ちょっとしたお得意様だがな。」
バオはさっきダッチから受け取ったスペシャルな煙草をかざして、
『アイツ』が情報料も支払ってくれていることを暗示していた。
****
「さて、どう見たベニーボーイ。」
事務所へ戻る車中、ダッチからベニーに話しかけた。
「さぁて、何とも……と言うのが本音だけどね。
街の仕組みを探っているとしたら、ちょっと怪しいと言えるけど。」
「本気で探りなんて入れていたら、今頃は港の桟橋あたりに浮いている頃合かもしれねぇ。」
「確かに、探られる側がロシア人や三合会となるとね。」
「コソコソ探られて気づかないほど間抜けじゃあない。バラライカにしろ、張にしろ、な。
だいたいバオは本職の情報屋じゃあない。
アイツから聞ける程度の話じゃあ、街の既得権益組に特に害は無いだろう。」
「となると、いよいよ分からない。いったい何者だろう?」
「ロックと同姓ってのが、ちょいと引っかかる。」
「家族か親戚が探しに来た?」
「その可能性も否定はできんが、
だとしたらサツにも行かず無関係な街の情報を漁っている、その辺りの理由が分からねェ。
ま、これはロック本人に訊けば自ずとハッキリするからイイだろう。」
「あとはレヴィとの関係だね。」
「それはロックのカウンセリング次第なんだが、コッチの方はあまりアテにできんだろうな。」
「ロックは何も聞き出せない、に10ドルでどう。」
「賭けにならねぇよ、ベニー。何か聞き出すどころか、何も話せないに30だ。」
「あはは、そりゃ違いない。」
「お帰りぃ…」
「……お疲れさま、…あー、…コーヒー淹れるよ……。」
二人が事務所に戻ると、残しておいた二人からそれぞれ反応が返ってきた。
片方はいつも通り、寝転んだまま気だるい声。
もう片方は、ホッとしたような、戻った二人から逃げるような、何とも複雑な表情と声。
あまりにも予想通りの反応に顔を見合わせて苦笑するダッチとベニー。
さて、ロックがコーヒーを入れたマグカップを配り終えると、それを啜りながらダッチは本題に入る。
「ロック、お前の親戚に『イクヤ』って野郎はいるか?」
いきなりの問いに、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔のロックだったが、
「いや、心当りはないけど、何で???」
「ダッチ、そりゃぁ『イクヤ・オカジマ』の野郎のことかぁ?」
訊かれもしないうちにレヴィから反応が返って来たのは、ダッチもベニーも予想外だった。
いや、二人にとっては予想外で済んだが、一人取り残された格好のロック。
「レヴィ、奴を知ってるのか?」
「元シー・ホースんトコの事務屋だよ。『オカジマ』ってェ一族はソッチの才に恵まれてンのかね?」
ケタケタと笑うレヴィ。
自分にも関係ありそうな話題になっているにもかかわらず、相変わらず一人だけ蚊帳の外のロック。
「あそこの連中は海上警察にヤられたんだよね? それが何でこの街に?」
今度はベニーが問う。誰もロックに状況を説明してくれない。
「事務屋なんで陸(おか)に居たんだとさ。
船ごと仲間を一網打尽にヤられたんで、一人でココ(ロアナプラ)まで逃げて来たらしい。
バイクに乗ってやがるんだが、マックイーンよりは手際が良かったんだろうな、
鉄条網に引っかからずに済んだらしいぜ。」
「ずいぶん事情に詳しいじゃねぇか、レヴィ。奴と何かあったのか?」
「別にぃ。あの野郎から声かけて来やがったんで、街を案内がてら聞いた話さ。
それより、アイツがどうかしたのか?
どっかの組織(カルテル)と揉め事(トラブル)でも起して、とうとう死体にされちまったか?」
「いや、帰りがけにたまたまバオと会って聞いただけだよ。」
ベニーも結構調子がいい。
「なんでぇ、つまんねぇの………」
レヴィはこれで話題終了モード。
相変わらず孤立した人、若干一名。
「ああ、そうだ。
ロック、クルマに積んだ荷物の片付けを手伝ってくれないか?」
ベニーがダッチにそれとなく目配せしながら言った。
察したダッチは黙って頷く。
話題から仲間外れのままのロックは、こうして釈然としないまま外に連れ出された。
****
「……………、
という具合で、どうやら深刻な事態にはなって無い様だよ。」
停車したままの車の中。
それぞれシートに座り、ベニーがロックにバオから仕入れた情報を説明した。
「……ぅん…。」
とりあえず、先程のレヴィの話と合わせて考えてみれば、
ベニーの言うようにラグーン商会としては気にするような問題は無さそうだ。
しかし、ロックにとって一番の問題がまだはっきりしていない。
「……それで、………イエロー・フラッグを出てから……どうしたんだろう………」
「んん〜まぁ、そこんところはだね、ロック、君が自分で訊くしかないだろうね。
何しろ当事者以外は知りようが無い。」
「……そう……なんだ……よね………」
それが出来てりゃこんなに深刻にはならずに済んでいる。
だからと言って、ダッチやベニーに愚痴る問題でもない。
結局、ロックの苦悩のタネはせいぜい数パーセントほど軽減されたに過ぎない。
ダッチもベニーもこれ以上はこの件にかかわる理由は無い。
無いと思われた。
ましてベニーは、自分がもう一人のオカジマと直接差し向かいで話をすることになろうとは、
予想だにしていなかった。
+++
えーと、本当にエロ無しでスミマセン。
全裸待機された方、風邪ひいてません?(爆)
一応最後はレヴィXロックの予定なんですけどぉ・・・
どーやってエロ話に持っていくか、全然考えて無いwww
てことで、スレ落ち前までには続く・・・と思います、たぶん。
投稿乙です。
こちらの体の心配までして貰ってすいません(笑)
続き待ってますね。
>そんなに女中分隊(キリングマシーン・プラトゥーン)大歓迎か?
プラトーンは小隊では?
と野暮なつっこみをしてみる
406 :
バカるでい:2008/06/19(木) 00:55:37 ID:ltN+yR/e
うぎゃ、ご指摘感謝。
何せバカなもんで<ぉぃ
分隊はスクワッドだね。
409 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 13:13:45 ID:C3vsq8js
あげ
屍姦の人です、こんにちは
何か、続きらしきものを書いたはいいのですけど、あまりにカオス且つ明後日の方向に話が進み、何を目指してたのか自分でもよく解らなくなりました
その上無駄に長いしエロ分大分薄まってるしレヴィたん不幸なコだし(ほら、容赦ないの好きだから)
というわけで、落とすべきか躊躇
どっかの鯖にテキストファイルだけうpして「あと自己責任でヨロ」にするかどうか検討中なんですけれど…どないしましょ?
カモオォォン(AA略
せっかく書いたのにお蔵入りとは勿体ない!
容赦ないのをむしろ待ってる変態がここに! ここに!
嫌いなら見なければいいだけだしな。
俺は・・・疲れてなかったらみる。
疲れてるときに見ると欝になりそうじゃん。
名前欄に屍姦モノってかいてけばとりあえず苦手な奴は少しは回避できるから
そうして投下すれば良くね?
不幸なレヴィたん好物だから気になるぜ。焦らさないでくれ(;´Д`)ハァハァ
便宜上屍姦の人って名乗ったのですが、何かもう屍姦してないっつーか何つーか…
変態プレイですらなく、単にレヴィたんを可哀想な娘に仕立ててるだけっつーか
ともあれ、皆さんスルースキル上級者のようなので、
明日会社から帰って来てから少し推敲してマイルドにしたのを落とせたらと思います
マイルドにする必要ない。まったくない。
帰宅マダー?(チンチン
418 :
360:2008/06/26(木) 00:33:47 ID:ZfOYjqMh
カオスです。こんにちは。
レヴィたんをどうガチ泣きさせようかと右往左往するうちに、なんかエラいことに。
某様同様に長いです、無駄に(ああ、「無駄」なのはこちらだけですが)。
この先、非常にカオスです。
とは言え、内容としては大抵の方には何てことはないのだろうと思います。
が、ある特定の経験をした方には読むに耐えないかもしれない表現が散見しますので、大分毒気を中和しました。
それでも、読むに従いご自身にとっての地雷であると勘付かれた方は、360をNGワードにしてその時点で読むのを止めることをお勧めします。
++++
「レヴィ、タバコ」
「んぁ?」
「タバコ。灰が落ちる。ていうか、もうフィルターまで来てる。吸わないの?」
さっきまで……明日の仕事の依頼品の数量を確認していたはず。
ああ、…意識が飛んでいた。
言われて気付き、指に挟んだそれを床の灰皿でもみ消す。
新しいタバコに火を点け一口吸い込むが、痺れるような嫌らしい苦味だけが舌と喉に纏わりつき…美味くない。
薬を飲んだ後は、いつも味覚がおかしくなる。
2日経つのに、まだおかしいとは何事だ…面白くない。
「美味くねぇ」
舌を出して苦い顔を浮かべる。
「まだ味覚おかしい?」
窺うように尋ねるロックにしばし考えてから答える。
「つーよりダルい」
「熱は?」
彼は掌を額につけると「微熱かな」と呟き、あとは自分がするからと寝るように促す。
そう言われると何となく眠いような気がして掛布を取ると、髪を解いて船に備え付けの狭いベッドでぐったりと丸くなった。
そんな彼女を見つめ、思う。
ここまで影響が出るのならば、あの不健全な行為もそろそろ潮時だ。
大きな仕事の予定が無い時を選んでいるとは言え、飛び入りだって珍しくは無い。
「仕事」中にこんなことになればただではすまない。
「なぁ、もうやめよう?俺もどうも最近やり過ぎるし」
ロックはその傍らに腰掛けると、「何を」とは言わずに話し掛ける。
「んー。あたしは別に構わないぜ、今日が特別チョーシ悪いだけだしよ」
身体が具合良く収まる位置を探してもぞもぞとうごめきながら気にするなと言ってやる。
「そういう問題じゃないよ」
「飽きたか??」
彼の膝に頭を乗せ、真下から見上げて尋ねる。
男は心底困ったような顔を浮かべて、「そうじゃないって…」と少し顔色の悪い彼女の頬を撫でた。
「飽きたんじゃなけりゃ別にいいじゃねぇか、あたしは別に気にしてねぇんだしよ」
真下から彼の顎をなぞりそう言った彼女の顔は…………情事の時にみせるような淫蕩にふやけ切った笑み…。
その時…初めて理解した。
彼女があの狂った行為に彼を誘うのは彼のためのみならず、彼女自信が行為に溺れてしまっているからだと。
自分のみならず彼女も後戻り出来なくなりつつあるのだと。
やめなければ。
彼女にその気が無いのなら自分が決断しなければ戻れなくなる。
そんな義務感のような想い。
「レヴィ?何かあってからじゃ遅いだろ、いつかはやめないと」
レヴィはロックの言葉に不満を隠しもせずに食ってかかる。
「何でだよ」
「そうでないといつかお前を殺しちまうかも…そうなれば元も子も無い」
危機感を滲ませて伝えてやるも、彼の予想通りと言うべきか、そんなことで心変わりはしなかった。
「商売敵に殺られるかお前に殺られるかの違いだろ?あたしはお前がいい」
「俺がイヤだ、何と言われようとイヤだ。」
まっすぐ見上げてくる彼女の顔をなぞり、ゆっくりと首をふる。
レヴィは心底面白くなさそうな顔を浮かべて一言「玉無し野郎」と吐き捨てるも、彼も彼女を黙らせる方法はある程度心得ていた。
いわく…。
「何とでも。お前は俺が腹上死したいと言ったらセックスの最中に殺してくれるのか?」
どんなに馬鹿げているかを再認識させる、それだけ。
当然ながら心底嫌そうに顔を歪ませ身体を捩ると、彼の膝に顔を埋める。
「……冗談じゃねぇ……」
「俺だって冗談じゃない、その代わり沢山シよう?それじゃだめ?」
レヴィはしばし考えた末に、ダルそうにのろのろと起き上がると、人差し指を彼の鼻先に突き立て眉をしかめて不服を申し立てた。
「…………ていうか別にあたしがクスリ飲みたいワケじゃねぇぞ、お前がああいうのが好きだってから…―――」
――付き合ってやったんだ…ロックはそう言おうとする彼女の、自分に突き立てられた手を取って肩を抱き寄せるとそこに額を埋める。
「…今まで、ごめんな?」
かろうじて聞き取れる程度の…力無い謝罪の言葉。
「…………ぁ…謝んなよ…」
「うん。でも……やっぱりごめん。早く終わらすからさ、一緒に帰ろう?送って行く」
彼の言葉の意味するところを察しまんざらでも無い気分となるが、一言釘を刺す。
「ダルいんだってばよ」
「別に、フラフラだから送って行くと言っただけだよ。そりゃメシくらいは用意するけど、何もしないさ、今日は」
「はぁ…ぁんっ…」
結局何もせずに終わる筈も無く。
食欲がわかないと散々駄々をこねた後、レヴィは自分を寝かし付けようとするロックをそのままベッドに引きずり込んだ。
自分の膝に跨る彼女の乳房に吸い付いた彼の肩を掴み、耐えるようにため息を漏らす。
「お前…ホント胸好きだよな…」
「ん?……あー…、別に胸ばかりに執着してるつもりも無いんだけど…別のトコがイイか?」
顔を上げて尋ねて来る男の髪に手を遣り、指に絡ませると近寄ってくる顔。
彼とこうして毎日のように触れ合うことが出来るのなら、相手がどこに執着していても構わなかった。
どこに触れられても結局は満たされるのだから。
そのまま軽く唇を重ね、答えてやる。
「別に…あんたの好きなようにすりゃいいさ。ただよ、見えるトコにはあんまつけるな、この間エダにからかわれた」
エダだけではない。
口にこそ出さないが会う者皆が彼女の身体に残るあからさまな情事の痕跡に意味ありげな視線を遣り、彼女に睨まれ気まずげに視線を反らす。
「ぁ…ごめん、気をつけてはいるんだけどさ、夢中になるとどうも抑えがきかなくて」
そう言って額を合わせる男に内心やれやれと思う一方で、自制が効かなくなるほど求められていることがとてつもなく…嬉しい。
飽きられてしまうよりも余程マシではないか。
「…気をつけてんならそれでいいさ、でも身体中痣だらけなのは…ん…ちょっと勘弁してくれ」
彼の耳元に舌を這わせながら言ってやる。
「ん、善処する…」
指を絡めてキス。
腿のあたりに触れる、硬くなった彼のモノ。
目の前の男の、髪も唇も瞳も指も背中も性器も…何もかもが欲しくてたまらなかった。
…こんなにも男に溺れる自分を昔の自分が見たら鼻で笑うに違いない。
硬いソレにカラダを擦り付けながら「久々に口でしてやろうか?」と提案すると、少し考えた後に甘えるように頬を擦り寄せる男。
しかし。
「んー…体調悪いなら別にいいよ、…吐かれるのも後味悪いし。今はこうしてる方がいいしさ」
そう応えて彼女の下唇を親指でなぞりながら、自らの唇を重ねる。
「甘えたいんだ」
唇を軽く触れ合わせながら、囁かれる言葉。
そんな彼の指を口に含んで形を確かめるように舌で舐めまわす。
せっかく誘ってやったのににべもなく断った甲斐性無しを、超至近距離で挑発するようにじっと見つめてやる。
彼も視線を反らさず彼女を見据えながら…でも少し困ったような顔を浮かべて「レヴィ、それじゃキスが出来ない」と不平を垂らす。
「ぅりゅへぇ…」
口に指を含ませたまま言外に「好きにさせろ」と言い咎める。
軽く噛んだり吸ったり舌を絡めたり…いつもは唇同士を重ねて行われるそれが自分の指に行われていることを、何となく不思議な気分でロックは眺める。
依然視線は真っすぐに絡めたまま…。
次第に潤み始める彼女の瞳、指に纏わり付く彼女の唾液と熱、時折姿を見せる真っ赤な舌。
そして…熱くなる吐息と、彼の腿を濡らすほどに溢れ始める愛液。
「レヴィ、俺の指しゃぶって感じてるの?」
爪で口の内壁を擦ってやると、大きく吐息が漏れる。
「…いやらしいね」
正面から瞳を見据えて言ってやると彼の下半身に伸びる手。
そのまま彼女の指が絡み付き、上下に刺激される。
彼女の見せる淫靡な有様にも脳髄を刺激され、これ以上は耐えられそうにはなかった。
「……限界…です」
一言そう言うと、彼女の好きにさせていた指を口から引き抜き、目の前の身体をシーツに押し付けた。
ロックの首に腕を回すと腰を引き付けられ、彼女の性器に擦り付けられる彼の性器。
誘うように彼女が腰を揺らめかせると、濡れたソコに先端を宛てがわれる。
ふとスキンのことを言おうかと思ったが、空気や呼吸…そういった流れのようなものが行為の中断を何となく拒んでいるような気がして、
後でいいやとそのまま身を任せた。
だがしかし。
ロックに貫かれ、ゆっくりと揺らされ、喘ぎながら、レヴィは少しばかりの後悔をしていた。
何となくまたなし崩しで行為に至ってしまったが、何度このパターンを繰り返せばいいのだろうかと。
だが、冷静にリスクを回避しなければと考えるアタマとは裏腹にカラダが彼の全てを貪欲に欲しているのが解った。
うわ言のように彼を呼びながら喘ぐ自分の声をどこか遠くに聞く。
彼女の体調を気遣ってか、後ろめたさからか、今夜の彼は殊更に優しかった。
優しくされるのは嬉しい。
それは間違いない。
だが、今日は優しくされればされるほど、何というか、虚しかった。
別個の人間として尊重されるほど、彼は彼であり自分は自分でしかないと…思い知らされたのだ。
何回キスをして、身体を繋いだところで、お互いの体液を交ぜて交換することしか出来ない。
所詮別者にしかなれないのならば、物として彼の所有物となり、彼の好きなように蹂躙されるのも悪くは無かったのだと…。
彼のモノ、ロックのモノ。
そんな響きに多幸感を覚えていた。
彼女の意思が介在しないとき、彼は彼の意識の底の欲求をそのまま体現していた。
彼女は自分のモノだと。彼女自身のものですらなく、自分のものだ…と。
認めたくなかったが…彼女はそれで満足だったし、興奮していた。
彼の所有物であることすら否定された今、彼女は身に染みてそう思う。
…そして、ふと気付く。
目下の懸案を彼に話せば、彼女の希望通りにしてくれるのだろうが、それではお互いの体液すら混ざり合うことが許されない。
身体の奥で直接触れ合うことも叶わない。
そんなのはイヤだ、直接彼を感じたい……。
彼女は思う。
………肉体が液体ならば、ドロドロに混ざり合うことが出来るのに…と。
骨も、血も、肉も、髪の毛も。
ロックと混ざって一個のものになりたい…混ざり合って融合して、離れることのないものに。
なれないだろうか、一緒に死んで一緒に腐ればいいだろうか。
…アホ臭い、死んだらそれでお終いだ。
そう、一緒に死ぬなんてことありはしない、彼のことは自分が守る。
だが、自分が先に死んだ時に、彼は何度も繰り返したあの行為のように、この身体を愛してくれるだろうか。
……愛して。抱き締めて。忘れないで。
――――だが。
いつか忘れられてしまうのだ。血の通わない身体も…すぐに腐って人のカタチをやめて石の下。
それでも一個のものになれば、そんな忘却にも怯えなくていい。
だって、あたしであってこいつであってとけてひとつになってずっといっしょで……………………………………ああ、それって…
…………………………………………………………………………それって、ガキじゃん。
頭をよぎった結論と、それにこの上なく恍惚を感じた自分に背筋が凍る。
気が付くと自分に覆いかぶさる男は行為の終わりに向けて律動を速めている。
「ヤだ…ぁっ」
互いに絡めていた指を振り払って、彼から逃れるように身体をよじる。
「え?」
それまで、恍惚とした表情で腕の中に納まっていたレヴィの、突然の拒絶と抵抗の素振りに、ロックは面食らった。
「…ヤメろっ……はぁ…イヤだって………」
「…………な、に?……どう…し………っ!」
とりあえずは彼女の意図を確認すべく問い掛けるも、身体の生理反応は止まらずにそのまま彼女の中で達してしまった。
荒い呼吸のみが響く室内で、しばらくは二人呆然と黙り込む。
どうにか先に口を開いたのはロックだった。
涙の浮かぶ虚ろな瞳に向かって名前を呼ぶと、レヴィは突然ポロポロと涙を流す。
その様に内心激しく動揺したが、それを表にだせば事態が混乱するだけと、平静を装いつつ改めて名前を呼ぶ。
「レヴィ……どうした?何か嫌なことを思い出したか?」
レヴィはグスグスと鼻を啜り上げるだけで何も言わない。
「それとも俺が何かしたか?」
「……………………ぁっ……………ぁ……あ…あたしは…………」
「ん?」
「………………あたしは……ガキなんかいらねぇんだ…!!!」
「え?」
予想外で突然の一言に、彼は唖然とする。
確かに…言われても仕方の無いことはしたが…何故今更?
「ガ…ガキなんざいらねぇんだよ!人の腹ん中に寄生して養分吸ってデカくなってよ、何の冗談だ?…エイリアンか?化け物か!?
得体の知れねぇモン飼って膨れていくてめぇの腹に毎日泣いて怯えてよ、出て来る時にゃ痛くて痛くて…赤くてブヨブヨしてて……っ…」
一気にまくし立て、言葉半ばで再び咽び泣き始めるレヴィ。
そのあまりに実感の篭った感情的な物言いに…ロックは自分の顔が引き攣っていくのを如実に感じていた。
「ぁ…レヴィ…何の話だ??というより、その…誰の話?」
恐る恐る尋ねるも、彼女は嗚咽を繰り返すだけで答えない。
そして突然彼を睨みつけると、身体を押し退けようともがき、ヒステリックに怒鳴り散らす。
「てめぇ、いつまで突っ込んでんだよ、抜けよ!畜生!抜けって!!」
まるで会話にならなかった。
彼女に言われるまま身を離し、シーツの上に座り込むと、そのまま自らの頭を抱える。
落ち着こうと大きくため息を吐き、ちらりと彼女を窺うと、生々しい情事の痕跡を晒したまましゃくり上げる姿。
彼の目に入る彼女の股間は、直前まで男を受け入れていたことが一目で判る有様で……。
彼女を犯したのは自分なのだが、先程の彼女の言動からある仮説を導き出した彼は、別の相手に彼女を犯されてしまったような錯覚を覚える。
所詮は妄想でしかないのだが、その『妄想』にやり場の無い嫉妬心のような…・・・言葉に出来ない苛立ちを覚え始めていた。
もう、動揺するなという方が無理だった。
どうにか残っている最後の理性を総動員し、彼女の身体にシーツを掛けてやる。
詰め寄って問い詰めたくて仕方ないが、この状態の彼女からはまともに話も聞けないだろう…。
何度もそう言い聞かせ、シーツの上から震える肩を擦って落ち着くのを待つ。
だが、暫くしてどうにか平常心を取り戻した彼女の第一声は「ワリぃ、今日は…帰ってくれ」だった。
423 :
360:2008/06/26(木) 00:38:17 ID:ZfOYjqMh
帰ってくれと懇願するレヴィと、今の状態の彼女を置いて帰れるはずがないと食い下がるロック。
しばしの押し問答の末に、部屋の鍵を閉めないこと、彼が彼女の部屋の前で夜を明かすこと、だが決して中には入らないことで双方妥協し、決着した。
ロックは彼女の部屋のドアのそばに座り込み、タバコに火を点けると深く吸い込み、ため息をつくようにゆっくりと吐き出す。
彼女の部屋も涼しいとは言えないものの、空調から隔絶された空間はやたらと蒸した。
そういえばさっき雨が降っていたと、ぼんやりと思い出す。
それにしても…いまだに頭の中は軽いパニックから抜け出せない。
まるで自身の経験のように、取り乱しながら懐妊を拒んだ彼女。
二人の行為の結果で彼女が孕んだとして、それを厭う理由も無いが、それが目的というわけでは無いため拒まれたこと自体は問題ではない。
問題なのは…そう、何故突然あそこまで取り乱したのかという一点。
今まで…彼女自らがスキンを用意し見える場所に置いていたことにも、中に入る直前にそちらに目を泳がせることが多いことにも気付いていたが…無視してきた。
その方が快感を得られる、というのも勿論あるが、それ以上に二人の間を遮るものの存在が許せなかったし、自分自身の独占欲を満足させたかった。
それが彼女を追い詰めていたのだろうか…?
それにしても、普段ものごとを比喩で煙に撒く彼女にしてはやたらと具体的な物言いだった。
過去において彼女がどのような経験をしていても…ショックを受けることはあれど驚くことはない。
過去のことで責めるような真似は二度とするまいとも思っている。
だが。
彼女が過去に自分以外の男の子供を宿したのかもしれないと思うと、不安と嫉妬で狂いそうだった。
二人の間の行為において、これ以上彼女に負担をかけるような真似はするまいと誓ったのは今日の昼間。
…真っ当に抱き合えばいいではないかと、そう思った。
彼女が自分しか見ていないと知っていたからだ。
今この瞬間とこの先、あの女の心も身体も自分のものだと、迷うことなく言い切ることが出来たからだ。
今だって…。
そう、今だって彼女が事情を話してくれさえすれば受け入れる心の準備は出来ている。
なのに彼女は「帰ってくれ」の一点張り。
「一度一人で冷静になりたい」と言われてしまったら何も言えない。
「俺のモノなんだ、レヴィ…俺のモノだ、俺のレヴィ………」
自分自身に言い聞かせるかのように、日本語でブツブツと呟き続ける。
気付くと…大きく腹を膨らませた彼女の姿を夢想する。
二人の分身は、彼女がその身に宿している時のみならず、産み落とされた後も彼女が彼のものであると誇示してくれる。
存在そのものが彼女に対する束縛。独占する口実。
そう思うと。
先程まで露ほども考えていなかった存在について現実に則して考え始め…。
「俺、何考えてんだ…」
軽く自己嫌悪に陥る。
望むべくもない。
そもそも彼女が望んでなどいない。
だが、彼の勝手な妄想は、小さく形を潜めた独占欲を再び肥大させ始めていた。
一人になった部屋で、レヴィは煮えた頭をどうにかするべくまずはぬる目のシャワーを浴びることにした。
先程は急激に高ぶった感情でひどくパニックに陥っていたが…。
自分の曝した醜態を思い出し、頭を抱えて「うー」とか「あー」とか、とにかく意味を成さないうめきを繰り返す。
彼は大きく勘違いをしたようだったが、それを正すと何を口走るかわかったものではなく、結局そのままだ。
(あーあ、アイツ勘違いしてっかなぁ…してるよなぁ…つーより、するよな、普通。しないワケねぇよなぁ。メンドくせぇなぁ…)
何となく自分の腹を見下ろし下腹部を撫でると、先程感じた恍惚を思い出し、身体の奥がツキリと痛む。
そんなカラダの反応に自嘲めいて笑み、そして顔が歪む。
―――レヴェッカ、赤ちゃんは好きな人と作らないとダメなんだってさ…。
顔も思い出せない少女が呟いたセリフを思い出す。
424 :
360:2008/06/26(木) 00:39:24 ID:ZfOYjqMh
昔、レヴィには「友達」がいた。
何歳の頃だったかは覚えていない。
当時自分が何歳かを教えてもらったこともないのだから当たり前だが……多分4歳か5歳か…そんなモノだったと彼女は認識している。
彼女の「友達」は多分12とか13とかそんなモノで、病気で母親が死んでから一人で暮らしていた。
「彼女」は、レヴィと同じアパートメントの5軒隣の部屋に住んでいて、父親に殴られて部屋から放り出される度に廊下で膝を抱える彼女を部屋に招き入れ、
飢えた幼いレヴィのために粗末なパンを分け与えてくれた。
冬の寒い日は同じベッドで眠った。
服を買い与えて貰えないレヴィに、自分の古着を与えてもくれた。
彼女がどう食いつないでいたか……今思えばペドを相手に身体を売っていたのだろうと思う。
知らない男が彼女の部屋から出るのを何度も目にしたし、そんな日の彼女は塞ぎ込んで酷く無口だった。
とにかく「彼女」は幼くして妊娠し、貧しさと無知故にどうすることも出来ずに…毎日泣きながら安い合成酒を飲み、ある日流産してそのまま死んだ。
レヴィは毎日彼女の部屋の隅に座り、ずっと彼女を見ていた。
そして、幼さ故の感受性で彼女に起こった出来事を、自分の身に起きたことのように捉え、怯えた。
「彼女」が死んだ日、涙を流しながら腹痛を訴える「彼女」の隣で何も出来ずにいた。
便所から明らかに異常な悲鳴が聞こえて恐る恐るドアを開くと、股ぐらから血を流し、臍の緒が繋がった赤黒い未熟児をぶら下げた少女の姿があった。
たかだか5歳かそこらのガキに何がわかり、何が出来るだろう。
ただ彼女の隣でベソをかくしか出来ることなどなかった。
はじめはモゾモゾと動いていた嬰児もやがて動かなくなり、そして大人達が発見した頃には「彼女」もまた冷たくなっていた。
あの少女と自分は違う、そんなことレヴィにだって解る。
自分はもう彼女より遥かに歳を重ねている上に、彼女のいうところの「好きな人」…こっ恥ずかしいが、つまりは惚れた男と身体を重ねているのだから、
身体に棲み付くエイリアンに食い殺される恐怖に怯える必要もない、と。
頭では解るが、実際問題として、あの瞬間まで自分が孕むことなんてホンキで考えたこともなかった、だからこそ狼狽したのだ。
そう、突然の衝動だったのだ。
彼の子供をこの身に宿したいなどという、ふざけた妄想。
……自分は子供を産み育てるなんてガラじゃない。
ガラでもないことはするべきではない。
だが、それを言ったならばたった一人の男に溺れて何もかもを差し出すつもりの今の自分だってガラではないのだが…。
必死に自分に芽生えた感情を打ち消す理由と、それを更に否定するための言い訳を考える自分が滑稽だった。
「馬鹿みてぇ…」
どうかしている。
こんな、不摂生で不道徳な女がそんなことを望むべきではないし、望むべくもない。
…どうだ、これには言い訳できまい。
そう……どんなに考えても、否定出来なかった。
それが全て。
「ほらみろ、わかってたじゃねぇか…」
(そう……わかってただろ、レヴェッカ、あんなのはガキの理屈だ、どんなに惚れてようとナンだろうと、クズからはクズしか産まれねぇんだよ。
お前が正にその見本じゃねぇか、お笑いだぜ。大体お前、自分が孕めると思ってるのかよ、不出来の片輪のクセしてよ)
そう、彼女だって根拠もなく自分は孕まないと思っていたわけではない。
生理もまともに来ない不具の女が孕むわけがない、そう思っている。
2ヶ月来なかったり、2週間で来たり…1日で終わったり、1週間以上続いたり…今だって2ヶ月無い。
……………2ヶ月?
ちょっと待て、彼女ははたと思い直す。
最後はいつだったか。
425 :
360:2008/06/26(木) 00:41:49 ID:ZfOYjqMh
……確か…新種とかいう麻薬をマレー沖まで運んだ時だ。
あの時は腹痛で国境警察とのドンパチがキツくて、帰りは起き上がるのも億劫になり…ずっとベッドで丸くなっていた。
アレは確か新しいランチャーを買って最初の仕事で、(鬱憤晴らしも兼ねて)試しに使いと言ったらダッチに嫌味を言われたのだ。
ランチャーを買ってから………………3ヶ月??
いや、もっと前…だ、4ヶ月にはなってない。
「…………最悪だ…。」
(いやいやいや、酷い時は最長4ヶ月来なかったことがある。って、4ヶ月ってビョーキだよな、我ながら。
あの時も肝を冷やしたけど結局来たじゃねぇか。
早く来いよ、いや、来んな…って、来なきゃ困るだろ、あたし。
ほら、最近ロクでもない薬飲んでカラダおかしいんだって、……って、大丈夫かよ薬飲んで…!
いやいや、何の心配してんだ???違うに決まってんだろが…。いや、あたしが片輪でもあんだけ毎日ヤリまくってりゃ……)
一人で悶々と考えながら部屋に戻り、ベッドに腰掛けタバコに火を点ける。
一口吸い込み、何となくそのまま揉み消した。
もみ消した後に何で火ぃ消してんだと自問自答し、改めてライターを手に取り…、結局やめて…。
「…不味いんだよ」
腹を見下ろし、自分に言い訳するように呟いた。
朝、ドアを開けると部屋の前で座り込んでいた男と目が合う。
慌てて立ち上がる男に無表情な一瞥と舌打ちをくれてやると、そのまま何も言わずに階段へ向かう。
「レヴィ、話し合いたい」
そう追い縋る男をひたすら無視し、足早に事務所を目指す。
彼に文句があるわけでも怒っているわけでもない。
だが、漠然とした不安で押し潰されそうな今、口を開けば昨夜とは違う意味で何を口走るかわからない。
「悪かった」
(確かにな、お前も相当悪い)
「今までお前に甘え過ぎてた」
(…あんたに必要とされるなら大概のコトはしてやるさ)
「怒るのも当然だと思う、腹が立つなら殴られてもいい」
(別に…怒ってねぇってばよ…バーカ…)
「話をしたい、思ってることをちゃんと話そう、……話したいことがあるんだ」
(……………………あたしも。)
結局。
事務所でも海上でもまともに目を合わせないどころか、あからさまにロック(…というよりもクルーの面々)を避ける彼女。
必要な時に呼べば話には加わるため(とは言え終わればまた一人になりたがるのだが)、仕事に支障が出るというレベルでも無く…。
彼ら二人の間のことは仕事中に話す内容でもないからと酒に誘うも、迷う素振りすら見せずに即…断られた。
どんなに誘っても行かないの一点張り。
そんな彼女に、「仕事中にまであのような態度を取るからには何か気に入らないことがあるのだろう」と問い質しても、黙って目を反らすだけだった。
彼女としては、彼等のそばにいるとタバコに手が伸びるために避けていただけなのだが…。
彼個人に対する態度にしても、自分自身でも確信の持てない出来事をどう処理していいかが解らないだけで何かにムカついているわけではない。
しかし、そんな彼女の態度がロックの抱く疑惑を確信にかえる。
つまりは、ふいに引きずり出された過去の自らの経験…彼の思うところは妊娠…を後ろめたく思い、また、リスクを伴う行為を重ねた彼に内心は怒り心頭なのだろう、と。
そのまま一週間、身動きの取れぬままに、二人の間の空気は交錯する様々な感情で相手の姿が見えなくなるほどに混濁し…いびつになっていった。
426 :
360:2008/06/26(木) 00:45:12 ID:ZfOYjqMh
レヴィは、自身の疑惑を抱いて以降ずっと自問自答してきた。
万一のことがあった場合、果たして自分はどうするべきなのかと。
どんなに想像を巡らせたところで、自分の子供という存在など想像もつかなかったが、それ以上に彼の子供を殺めるという行為も想像出来なかった。
酒とタバコと彼とのセックスを我慢しながら、これではまるで彼の子供を望んでいるようではないかと何度も顔を歪める。
彼女が一人悶々と考え続けて一週間、考えれば考えるほどに結論を出すことが怖くなり、事実を確認出来ずにいた。
すでに何が怖いのかすら解らない。
未知のものが身体の中で育っているかもしれないことだろうか。
それに歓喜するかもしれない自分自身だろうか。
それとも全て自分の思い違いであることか。
……あるいは…彼に拒絶されてしまうことか。
全てかもしれないし、どれでもないのかもしれない。
一つ解ってきたのは……予感が黒だったならば、その存在を守りたがっている自分がいるということ。
それを確信した時に腹は決まった。
……十分だ、上等だ、なるようになるさ、今までだってそうだった。
まずは確認して、大当りならばアイツに言おう、そしてアイツが何と言おうと自分自身の思った通りにするんだ。
大丈夫、きっと大丈夫だ、彼はきっと拒まない。
いちど覚悟を決めてしまうと自分でも不思議な位に穏やかな気持ちになった。
「おい、いるのか?いるよな?つーかそこに居やがれ…。んで、覚悟して待ってろ、ぜってー守ってやっからよ」
腹を数回叩いて不敵で穏やかな微笑を浮かべた。
ロックは苛立っていた。
この一週間、レヴィと話どころかまともに顔を合わせることも出来ない。
仕事が無ければ事務所にすら顔を見せずに自室に引きこもっているし、訪ねて行っても「時間が欲しい」の一点張りでドアすら開けない。
仕事にしたって、昨日など連絡も寄越さずサボタージュ。
今日はダッチに呼び出されて賜ったお小言に「レヴェッカ姉さんの出る幕は無かったろ?」と悪びれもせずに言い放つと、
「眠いから帰る」と自分の巣へとさっさと戻って行った。
当然のことながら、男衆は唖然とし、何があったのかとロックに尋ねるも、自分達のセックスライフも自分の憶測も、
他人に言って聞かせるような類の話ではない。
曖昧に言葉を濁すと「棄てられたのではないか」「飽きられたんじゃない?」「元々は頼りがいのある男が好きだった」などとからかわれた。
愛想を尽かされる原因に多々心当たりのある彼は気が気でなく、はっきりとものを言わない彼女への憤りが募るばかり。
自分だけのレヴィ。
彼女は自分のもの。
そう思っていた筈なのに。
過去に何があろうとも、今の彼女を独占出来るのならばどんなことも取るに足らないと、そう言い聞かせて来たのに。
彼女が自分以外の男の下で喘ぎ、孕まされたという妄想は、いつしか彼の中で事実として存在するようになり、身勝手な怒りとなって彼を侵食する。
加えて、彼女が自分の元を離れてしまうかもしれないという不安は、踏み止まっていた歪んだ独占欲の最後の堰を突き崩すには十分で…。
彼女の態度が豹変したのは彼があの行為の終わりを宣言してから。
それならば…。
(そんなに酷くされるのが好きなら、…してやるさ)
昏い瞳で部屋を出る。
427 :
360:2008/06/26(木) 00:46:55 ID:ZfOYjqMh
一方のレヴィは浮足立っていた。
ようやく決心が付き、数日前から用意していた紙切れを手に小用をたしたのは5分前。
紙切れに印されているのは自分の予感を裏付ける結果で…。
予想していた事とは言え、口からは「どうしよう」という言葉ばかりが繰り返される。
今からアイツのヤサに殴り込むか?
でもどうやって言おう、普通に言ってもつまんねぇし。
ああ、どうしよう、アイツのガキを孕んでる、アイツに孕まされた。
名実共に彼のものになった。
今あたしのハラの中にいるのは、あたしとアイツが抱き合って出来たもの、あたしとアイツを合わせて一つにしたもの、最高だ。
我ながら現金なものだと彼女は自嘲する。
一度腹を括るとこんなにも喜んでいる。
こんなにも嬉しくて嬉しくてたまらない。
「あの」レヴィ様がだぜ、とんだ喜劇だ。
ましてやこんな街だ。
誰が見たって指差して笑うに違いない。
ああ、それでも。
早くアイツに教えたい、話したいことが一杯ある。
小細工なんて必要ない、嬉しいのだと伝えよう。
まずは会いに行かないと!
そわそわと狭い部屋の中を行ったり来たりぐるぐる回る彼女の耳にノックの音が飛び込む。
等間隔に3回、何度も聞いたリズム。
間違えるはずが無い。
ロックだ。
428 :
360:2008/06/26(木) 00:49:38 ID:ZfOYjqMh
会いに行こうとしているのを知っていたかのようなタイミングに驚きながらもドアを開けると、出会いがしらに腕ごと抱きすくめられる。
「愛してる…愛してるんだよ、…自分でもどうかしてると思うくらいだ。」
挨拶も無しにいきなりそんなことを呟く男に戸惑いながらも、満面の笑みで話しかける。
「よぉ。どうしたんだ、奇遇だな、あたしも今からそっちにい…こ………ロッ…ク?」
後ろ手に手錠を掛けられる感覚。
「なのにレヴェッカ、お前は俺の元を去るんだね、こんなに愛してるのに。俺のモノだと思ってたのに…」
珍しく本名で呼ばれたと思えば、意味不明なことを一人勝手に喋り続ける彼。
「おい、お前何言って…っ」
彼女が身を捩って抗議すると、信じられないことに…突然猿轡を噛ませられる。
「拒絶の言葉なんかききたくない」
ロックは驚愕で目を丸くする彼女の腕を引いてそのままベッドに放り投げ、下肢の衣類を引き摺り下ろす。
腹筋を使って起き上がる彼女の上半身を再び乱暴にマットに押し付け、自らのネクタイを彼女の首に巻くと、犬よろしくベッドに縛り付けた。
それでもじたばた暴れる彼女を無視し、全身でのしかかると、優しく頬を撫でる。
「なぁ、レヴィ。俺は別に構わなかったんだ、お前が過去に誰の子供を孕もうと」
(…マズった…、テメェの事で頭が一杯でコイツに何も説明してなかった。よりによって…勘違いしたまんまかよ…)
ロックは彼女の腹を撫で摩りながら、相変わらず勝手に喋り続ける。
「今と…この先のお前が俺のものでさえあればそれで構わなかったよ、お前が嫌だと言うなら、嫌がることはしないって、そう思ってたんだ。
別に欲しくてシてたわけではないけど、子供がいれば最高だとも思う。けど、お前が嫌なら敢えて望みはしない、お前さえいればいい」
レヴィは、この状況にありながら少し安堵する。
よかった、彼は歓迎してくれる…!!
一度か二度、大人しく犯されてやれば気も済むだろう、そしたら教えてやればいい。
お前のガキを孕んでる、嬉しくてたまらない…と。
ロックは許しを請うように縋り付きながらレヴィを犯した。
彼女の顔中に口付けしながら名前を呼び続ける彼を抱きしめたいと願う。
だが、当の彼によって施された拘束でそれも叶わない。
(あーあ…馬鹿ロック。別に拒絶なんかしねぇから口外せよ、ホント馬鹿なヤツ。
ファックなんざいつでも出来るっつーの…神も驚きのビッグニュースがあるってのによ。
そーいやファックってしていいのか?でも腹ぼての淫売が仕事してるんだから、大丈夫だよな。
ま、この間まで普通にヤってたしな。つーか産まれるまで出来ねぇんじゃ欲求不満で死んじまう…)
早く彼に伝えたくて仕方ないレヴィは、上の空だった。これからのことで頭が一杯だ。
いつもであれば名残惜しくて仕方の無い行為も、早く終わらせてくれないかと、そればかり考える。
だから、彼がどんなに責め立ててもいつもより反応は小さく、しつこく奥を突き上げればこんなにして大丈夫かと嫌そうに眉をしかめる。
いつもならば、嬲るほどに淫らに乱れる彼女のそんな態度に、彼は苛立ちを強くする。
苛立ちのままに乱暴に彼女の股間に腰を打ちつけ、彼女の腹の奥に放つと、無造作に結合を解く。
彼の不満もいざ知らず、行為の終了にあからさまに嬉しそうな目をするレヴィ。
だが、彼はまたしても一方的に喋り始める。
「レヴィ、お前が悪いんだ、俺は何度も話し合おうと言ったんだ、なのにお前は何も言わずに俺を棄てた、そうだろ?」
どうやら拘束を解いてはくれないらしい彼の様子に、少しの落胆。そして。
(ていうか………さっきから何言ってんだ?こいつ)
「意識の無いお前を抱きながら何度も考えたよ、いつか他の誰かに殺されちまうくらいなら、俺の手で奪っちまおうか…ってな」
そう言って腹の上に馬乗りになる。
(クソバカ!!よりによって…!)
「でも、前も言ったけどさぁ、俺にお前を殺せるわけない、当たり前だろ?愛してるんだ」
彼は彼女の頬を撫で、首を拘束したまま髪を掴み上げる。
締め上げられる喉。
レヴィは、自身の喉にかかる負荷を、重心を上にすることでやりすごそうとする。
…………先程からずっと、彼の体重に堪えるために無意識に腹に力をこめ続けていた。
喜劇にはオチがつくもの。
クズにはクズに見合った落着、それが相応しい。
今まで感じた事のない種類の痛みが腹に走った。
429 :
360:2008/06/26(木) 01:01:16 ID:ZfOYjqMh
「あんたが父親かい?」
屋台と雑貨屋の傍ら闇医者を営む(或いはその逆かもしれない)インド人の女に開口一番そう言われ、ロックは意味が解らず思考が停止する。
「最初に言っとくけど、助からなかったよ」
(父親…?助からないって、何が?レヴィが?何故?今も啜り泣く声が聞こえているのに?意味が解らない)
「今…何て…?ど…ういう…意味…?」
顔面を蒼白にし、完全に凍り付いた様子のロックに、彼女は「おや?」という顔で「あの娘から何も聞いてないのか」と問う。
彼はただ頷くしか出来なかった。
突然尋常ではない様子で泣き始めたレヴィの様子に我に返った彼が拘束を解くと、彼女は蚊の鳴くような声で医者に連れて行ってと懇願した。
その後息を殺して口をつぐんでしまった彼女を抱え上げ、一番近所、かつ祖国でライセンスを持つこの女の下に転がり込んだのだ。
それからずっと、扉の向こうの彼女の嗚咽と慟哭の声を聞き続けることとなる。
女からレヴィの身に起こった事、レヴィ自身の話の断片から流産を繰り返している様子は無いことを聞き、腹の底から込み上げるような吐き気に襲われる。
子供を望んでいないのではなかったのか?とか、結局誰の話だったのか、とか。
疑問符が浮かばないわけではないが、それよりも彼女があんなに激しく泣いていたということの方が余程重要で。
自分が部屋に行った時、彼女はどんな顔で何と言おうとしていた?
犯されている時だって…迷惑そうにはしていたが、嫌悪の顔ではなかった。
彼女があんなに泣いていたのは自分のせい。
自分が彼女のサインを無視せず拾っていれば、今頃彼女と二人で喜びに胸を躍らせて今後について話していたはず。
啜り泣く声はいつの間にか消えている。
彼女に懺悔しなければならない、赦しなんか求めてはいないが。
ふらふらと立ち上がる彼に、インド女の口から紡がれたのは、この街に住む者に相応しい言葉。
「病気じゃないんだから連れて帰りな、胎盤も綺麗に剥がれてるし」
そして。
「ガキの死骸は?こっちで棄てとくかい?」
『棄てる』。
ゴミ扱いだ。
解ってる。
彼女に他意などない。
この街に限らず、貧しい土地ではありふれたこと。
理解は出来るが納得は出来ず、ムッとしながら「一緒に帰りますよ」と応じる。
だが、彼女は「言い方が悪かったね、別にゴミに出すわけじゃない」、「後悔はしないか」などと食い下がる。
「何と言われようと連れて帰ります」
そう言い置いて目の前の部屋の戸を開ける。
そこには家主に宛がわれたらしきゆったりとしたワンピースを纏い、身体を起こして虚空を眺めるレヴィがいた。
430 :
360:2008/06/26(木) 01:04:58 ID:ZfOYjqMh
レヴィは、ロックが部屋に入ると彼を一瞥し、一瞬哀しげに顔を歪めると必死に表情を繕う。
彼が近づくと彼女は笑顔を作って「久々に酒飲みたい。奢れ。あとヤニ。寄越せ」と言葉少なに要求する。
…つまりは、今まで我慢していたということか、確かに酒に誘っても応じなかったし、喫煙もしていなかった気がする。
ということは、あの夜の時点で彼女は気付いていなかったのだろう、検品しながら吸っていたし、行為の前にビールも飲んでいた。
彼の銘柄で構わないという彼女に自分のそれを分け与えると、さして美味くもなさそうにぼんやりと味わう。
彼をなじりもしない彼女に、たまらず頭を抱き寄せると何度も繰り返し謝った。
何度も何度も謝って、何度目かも分からぬ謝罪を口にすると、ようやくボソッと、
「クソバカが。てめぇが悪いコトなんざわかり切ってんだっつーの………あたしが惨めになるだけだから馬鹿みてぇに謝んな」
と力無く不平を口にする。
思わずごめんと口に出しそうになるのを堪えて、「ありがとう」と感謝を伝えた。
「……はぁっ?何がだよ」
「産んでくれるつもりだったんだろ?」
「つもりだけじゃ意味ねぇっつの」
「…うん。だから、次があった時にこうならないように、部屋に帰ってちゃんと話し合おう。」
レヴィはしばらくの間彼の服の裾をぎゅっと握り何やら考え込むと、「ほら、帰るぞ、あのババァはコエぇんだ」とふっ切るように立ち上がった。
夜も更けた道を二人とぼとぼと歩いて帰った。
インド人から受け取った箱は両の掌に納まるほど小さかった。
受け取りながらボソリと「嬉しかったんだ」と呟いて以降、レヴィは会話には応じるが自ら口を開かない。
本当は目の前の男に100万個ケツ穴作ってやったところでまだ足りない。
だが。
自分からこの男を取ったら後に何が残るだろう、何一つ残らない。
彼と出会う前の、酒とヤニと銃火があれば全て満たされたつもりでいた女海賊様だって戻りはしないのだ。
彼の部屋で、向かい合って腰掛け、ラムをすする。
言葉少なに話し合い、夜が明ける頃に浜辺で焼いて海に流そうと決めた。
自分達が死ぬのは、きっと海だ。
レヴィはずっと不機嫌な顔をしていた。
悲しそうな顔をしない事が彼から見て余計に痛々しく、胸が詰まる
さっきはああ言ったが、こうなった原因など今更話し合わずともお互いに解っていた、彼が悪いが彼女にだって少しばかりの非はあった。
だから敢えて口には出さずに酒の量だけ増えていく。
酔わないと箱の中など直視出来そうにもない。
死体の山を築くことばかりに長けた人間のくせにと、笑いが込み上げる。
他人の死体は物と一緒でも、ヒトにすら満たない我が子の死体は例外…などと都合のいいコトを言うつもりはない。
大丈夫だ、もう落ち着いた、さっきのように泣いたりしない。
そう、大丈夫、中にあるのはただの「物」だろ。
「It」だ。
惚れた男と自分の子供なんかではない。
人の出来損ない。
売春窟の路地に転がって犬に食われてるアレの更に出来損ないだ。
さあ、レヴェッカ、開けてみろ。
きっとどうってことはない。
開 け ろ 。
431 :
360:2008/06/26(木) 01:07:12 ID:ZfOYjqMh
ゆるゆると箱に手を伸ばすレヴィに気付いてロックも箱を覗き込むべく彼女の横に立つ。
インド人の店の売り物なのだろう、細かい模様の施された箱を開けると白い小花に埋もれて半透明の小さな小さな手が見えた。
そこらに生えている木に、当たり前に咲いている花ではある。
しかし、彼女なりの弔いの気持ちが伝わり、金を払いに行った時に改めて礼を言わなければと彼は思う。
「ちぃせぇクセにちゃんと手の形してんだな…」
感情の読めない声音で呟くレヴィ。
路地に転がってる胎児の死体などまともに見たことも無かった。
けど、ほら、大丈夫だ、こんなに落ち着いて見ていられる。
……触ったっていいだろ?
あたしだって、物への愛着ぐらい持っている。
あと何時間かで、「これ」は影も形もなくなってしまうのだから。
人差し指で触れると、それだけで潰れてしまいそうな程に小さかった。
自分の掌よりも小さな半透明の身体を頭から順にゆっくりゆっくりなぞる。
指先で感じるのっぺりとした身体。
ナンだよ、ホントに映画で見たエイリアンみてぇ。
頭。
肩。
腕。
尻。
脚。
顔が下を向いて見えなかった。
今まで山ほどの死体を見てきたが、顔なんてまじまじと見たコトなど無かったとふと思う。
小さな身体を両手で丁寧に返した。
喜劇の本当の落着は、コレだった。
「見ろよロック!傑作だぜ!!!!ゴミ屑からはゴミ屑しか生まれねぇんだとよ!!!!」
432 :
360:2008/06/26(木) 01:16:54 ID:ZfOYjqMh
沢山の花で隠されるように埋もれていた顔は……目も鼻も口も……人のそれの形をしていなかった。
「ひゃはははは!お前さっき『次』とか言ってたよな!?『次』なんざ無ぇよ!あってたまるか!!どうせ『次』も化け物しか産まれてこねぇ!
そりゃそうだよな!?あたしの腹から出て来るんだからよぉ??傑作だ、どんなジョークよりもよっぽどセンスがいいぜ?何ボーっとしてんだよ!笑えよ!!」
笑い続けるレヴィを前にロックは言葉が出ない。
彼女の見開かれた目からは涙が溢れ続けていた。
「ひゃはっ!ふっははっ…お前上手いコトやったよ、腹にいるうちに殺っちまえば面倒も無いもんなぁっ!?
はぁっ…ははは…策士だよ、やっぱ、たいしたモンさ、全くっ…うっ…」
彼女の視界から隠すように目の前の箱の蓋を閉める。
引き攣った笑い声はまだ続いていた。
「…く…ふ…ふはっ……こ…こ、これから先、こいつの事を思い出す度に真っ先に浮かぶのはこの顔なんだよっ、喜劇だろ。
はしゃいで浮かれてよ、守ってやるって約束した時にはこいつはもう『こう』だったんだよ、何が『守る』だよ、馬鹿みてぇだ!道化もいいトコだろ?」
笑い続けるレヴィの頭を抱き寄せると、笑い声は嗚咽に変わり、「何とか言えよ」と泣きじゃくる声。
「……………薬、飲んだだろ?レヴィのせいでこうなったわけじゃない。…俺が負うべき責任の方が遥かに大きいと思わないか?」
ようやく彼が口にしたのは、何の慰めにもならない無意味な言葉。
「だから!!そんなことは解り切ってんだよ、誰が悪いかじゃねぇ、ゴミには何が相応しいかって話だ。
いつもこうだよ、ずっと欲しかったモンが手の届くトコに来たと思えば、掻っ攫われるんだよ、目前で!」
彼の腕から逃れ、わめき散らすのを黙って聞く。
彼への罵倒だろうとナンだろうと、まずは思っていることを吐き出させてやらないとそのうちにぽっきりと折れてしまうだろう。
「けどよっ…く…屑にはそれがお似合いだろっ?
クソつまんねぇドラマや映画でっ…ガキのった…為に、仕事してっ…ガキに振り回されて、そ…そ、それ…でもっ、ヘラヘラ脳天気に笑ってるヤツらっ見てるとよ、
それが『普通』だってならっ、クソ下らねぇ人生だって、そう思っ…てた。
普通にすらなれねぇのにだぜ?あんな風にヘラヘラ笑ったこともなければ、真似して笑う方法だって知らねぇのに。」
涙でぐちゃぐちゃに濡れている顔をティッシュで拭ってやる。
「…うっ…ずっ…と欲しかったんだ、似合いもしねぇのに。
てめぇと…イカレた出会いをして、イカレた日常でイカレたファックして…で…出来たっ…ガキなのに、普通の生き方の猿まね出来るって勘違いしたんだ。
『つまんねぇ』、『ムカつく』ってウダウダ言いながら…、てめぇのガキにメシ食わせて、髪の毛洗って、手ェ繋いでブラブラ歩いてぇ…っ、
クリスマスやバースデーにケーキ食って、一緒に寝てっ……似合いもしないことのまね事をしてみたかった。そんなガラじゃねぇのによ!
…………ガラじゃねぇモンは……………手に入らないように出来てんのに」
彼女はそうやって色々なものに失望し、諦めてきたのだろう。
彼女が憧れ続けていたささやかで普通の幸福を与えてやれなかったことが歯がゆい。
レヴィは泣きながら「…クソだせぇ…」と俯いてしまった。
グスグスと鼻を啜りながら下を向く彼女の頭を、子供にするようによしよしと撫でる。
「レヴィ、初めて会った日にお前が言ったんだ、人生は楽しまなきゃ損だって。全くその通りさ、だから普通のこともイカレたことも一緒に楽しめばいい。
『次』がやって来たらさ、きっと楽しいよ。3人で馬鹿みたいにヘラヘラ笑うんだ。『次』の『次』があってもいい。
欲しかったものは力ずくで手に入れるんだ、海賊だろ?俺達。掻っ攫われたら奪い返せばいいんだよ、違うか?」
彼女は俯いたままと頭を横に振る。
「掻っ攫われる度に後悔するのはもう嫌なんだよ、期待しなければ後悔もしねぇ。イカレた生き方しか知らねぇんだ」
「『普通』の生き方なら俺が知ってる。それで十分だろ…?」
「…あのよ…知ってるか?ウチの事務所で一番イカレてるのお前だぜ?」
上目遣いで彼を見上げ、少し呆れたように軽口で応じてくる彼女。
「それでも、『普通』ってものは知ってる。笑い方も沢山見てきた。」
欲しいもの。一番欲しいもの。
ロックがいればいい。それでいい。
コイツが掻っ攫われたらどうすりゃいい?急に不安になる。
「……お前、何処にも行くなよ…」
彼のシャツを幼子のようにぎゅっと掴む。
「行かないよ?レヴィを置いて何処に行くのさ」
433 :
360:2008/06/26(木) 01:20:48 ID:ZfOYjqMh
『次』は永遠に来なかった。
彼女が子供を流した半月後、ロックが居なくなった。
海上で国境警備隊との抗戦中に海に落ちた。
多分。
落ちた瞬間は誰も見ていない。
巡視艇から逃げおおせて、振り返った時には船に居なかったのだ。
風が強く、波も高かった。
島なんか何処にも無い、そんな海域。
サメだっている。
彼女には「物」になった彼の抜け殻も、彼の子供も残らなかった。
やはり自分にはこれがお似合いなんだと彼女は思う。
「…誰から奪い返せばいいんだよ…結局無理だったんだよ、普通に笑うなんて」
話したいことが沢山あった。
もっと抱き締めて欲しかった。
一緒に食事をして、酒を飲んで、キスをして、身体を重ねて、眠って。
次の休みには、一緒に潜りに行こうと約束していた。
海で遊ぼうと。
自分を置いていかないと言った筈の愛する男は、舌の根の乾かぬうちに愛する筈だった我が子が眠る海の底に一人でいってしまった。
彼の部屋で彼の匂いの薄くなった彼のベッドに顔を埋めて、これからどうやって生きていこうかと途方に暮れる。
彼女の喜悲劇は、まだ続いていた。
終わり
++++++
レヴィたん孕ませて、というレスが上の方にあったので…(多分こんなのは望んでない)
やっぱあそこで書くの止めておけばよかったと思ったり思わなかったり。
投下するにあたり多少マイルドにしてみました、ネタが身近なので辛い想いをしたことのある方も当然読む可能性ありますもんで。
これよりもっとエグいことを沢山書き散らかしてたし。
あと、何か一応…。
基本当方の駄文は過去スレ含め、断りが無い限りそれぞれに関連性皆無です。
割と可哀想なカンジのレヴィたんを可哀想なカンジでオカズにしていることだけが共通項。
あっちのレヴィたんがああだったり、こっちがこうだったり、どれも脳内設定違うので、まぁ、何つーか、別物っつーことで深く考えんでください。
レヴィたんって野菜摂ってなさそうだから葉酸不足してそう
それに加えて酒もタバコも(拙作では)薬物濫用もしてるし、何か空気悪そうな街だし、まともなガキが生まれる筈も無かろう。
妊娠検査薬があんな風に無駄にゴツくて高価なのしかないのは日本だけ。
大体は適当なカンジのアルミ(?)の袋に個別包装された紙で出来た二束三文の棒切れです。
んで、仕事とプライベートのストレス解消でまたちまちま書いたり書かなかったり
次は長々書かずシンプルに纏めたカンジで。
い.迷惑バカップル(ただひたすらいちゃこくだけ)
ろ.マスター真っ黒で愛の欠片も無い打算のみのセクロス(ロク←レヴィ)
は.毎度お馴染みのレヴィたん陵辱(相手未定。でもそろお腹一杯になってきた方も多そうなレヴィたん泣かすだけのネタ)
に.ちゃんと産ませてやる(何か、もう、書く人がコレなので多分色んな意味でありえない出来になること間違いなし)
ほ.遭難→無人島でサバイバル(ぶっちゃけ暢気にヤってる場合じゃない気がする。)
へ.高校パラレル(優等生の岡島くんと問題児のレヴェッカちゃんの裸部米)
と.ラジカル☆レヴィたん(ヘストン。多分全然エロくない)
ち.その他(ネタくれ)
り.キチガイはもう来んな
レヴィたんにしか萌えられないのは仕様
(´;ω;`)ロックの
くーーーーーーーーそーーーーーーーばーーーーーーーーーーーかーーーーーーーーーー!!!!!!
子供殺してどうすんだよ!
自分死んでどうするんだよ!
レヴィ一人にしてどうするつもりだってんだよっ!!!
だいたいなぁ、ブラクラで妊娠ネタは安直で嫌いなんだよ!!!
ハラボテレヴィは妄想範囲外だし、ハッピーになるには安直ネタで嫌いなのに。。。。
嫌いなのにぃいいいいいいっ!!!!!
まさかエロパロで号泣する羽目になるとはっ思っても見なかったぜアミーゴ!!!
ってなわけで、ファッキン乙っ!!!!!!
リアルタイムで泣かせてもらったぜ!
(´・ω・`)
もう一回読み直したけど、鬱になりそうなので、次回は「い」でお願いします。
愛あるやつを一発。
いや、一発といわず何度でもplz
なんだよ、これ…こんなの…鬱すぎるだろ……いろんな意味でキたわ…。
…でもGJすぎる…!普段ROM宣なのに書き込みしちゃう程にな!
願わくば次は い、ほ、へ 辺りでハッピーになりたいです、神よ。
救いのない展開もここまで来るといっそ気持ちいい! どうも、Мです。
ラストのロックの退場の仕方とか、淡々というかあっけないのが逆にキツイよなあ…
完結お疲れ様でした!
自作はヘストンに一票入れときます
鬱から馬鹿で超展開でぶっちぎりなテンションに飛ぶのがまた堪らんの
どうも、変態です。
これ酷すぎるだろ
ロックはなんぼ殺してもかまわんが、レヴィたんを最後まで泣かしてはイカン
とにかくGJ
次もたっぷり苛めて
(´・ω・`)
>>438 ロックはなんぼ殺してもかまわんが、
ワロタ
かわいそすぎロック
ここまで鬱なのも才能っすねwGJ!
ラブラブバカップルでニヤニヤしたいっす
まさかエロパロで泣かされるとは・・・
そろそろ鬱じゃないバカップルな話も読みたいけれど、
設定付けるなら、隠れショタ好きのレヴィが若様をラグーン号で移動中に襲ってしまう話とか
港に到着するまでに若様の貞操はレヴィに・・・
ショタっ娘ラグーン
とびっきりの鬱、ご馳走様です
もう鬱はおなかいっぱい
次はほのぼのーな高校編でおながいします
こう、ヤンキーちゃんとマジメくんな、どっかのマガジンやサンデーで今連載されてるのくらいなノリのゆるーいのを……
今夜推敲終わったら落としてやるぜ!
アミーゴども!脱ぎ脱ぎして待ってな!
他作品で鬱なエロパロやってる人間だけど非常に刺激されたw
妊娠ネタは重いな…
>360
長作乙でしたー 欝耐性もレヴィたん虐め耐性もわりとあるけど
ネタがネタだけに時々キリキリしつつも読みいっていましたよ
あと……原作がああだし原作者も欝エンド確定みたいなことをほのめかしているしで
『こういう感じもアリかなぁ』とか、考えつつ……
あっさりロック無くしちゃうところか作品手法的にかなり好きなんですがw
ウワァンロックwwロック好きとしては複雑ww
…なんか反動でエロバカ路線の投下が期待できそうなので楽しみッスw
446 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/27(金) 23:42:27 ID:n/wOYrkr
えっ!!!!?鬱エンド確定みたいな話があるんですか!!!!?
俺を号泣させやがってこのやろう!!
畜生!GJ!ネ申!!クソッタレ!!
可哀相で痛々しいレヴィたんて何でこうも萌えるんだ・・・
でもちゃんと幸せになってほしいとも思ってるんだぜこれでもwサーセンw
沢山書き散らかしたこれよりもっとエグいやつが非常に気になりつつ、次はみんなと同じくラブ☆コメが見たいな。
『い』『へ』『と』辺りの。
・・・ああでも『ろ』もいいなw
360神の十八番って感じだしw
何はともあれ神作完結乙華麗(*´Д`)
今夜落そうとおもったけど、推敲終わらなかった。(´・ω・`)
ってかもう眠い。
限界。
お休みなさい。
ロック×レヴィです。
エロまでが長く、エロ自体もぬるいです。
レヴィが乙女思考で、ロックもウジウジしてます。
よろしければお付き合いください。タイトルは「恋とギャンブルとアロハ」です。
悪徳と背徳の花が咲く、ロアナプラの夜は長く、熱い。
南国の熱気は、生ぬるい夜風にすこしだけ緩められ、眩しい太陽が沈んだ後に
は、さらに目映いニセモノの太陽、ネオンがぎらぎらと輝き出す。
着飾った娼婦たちがストリートに溢れ、その華やかな仇花に群がるようにして、
男たちもまた夜の喧騒へと繰り出していった。
賑やかな通りの様子を見るともなく見ていたロックは、やがて小さなため息を
ついてデスクに向き直る。
今晩中に片付けないといけない仕事があるのだ。そうそうのんびりしてはいら
れない。
すっかり緩んだネクタイを締めなおすと、とたんにしゃきりとした気分になっ
た自分に苦笑しつつ、ロックは電卓を片手に書類との格闘を開始した。
***
ここ最近では、事務の一切の手続きを任されるようになったロックは、意外に
多忙である。
有事の際にしか仕事をしない乗組員と違って、毎日が仕事のようなものだから
だ。
元サラリーマンという、ここロアナプラでは異色中の異色の肩書きを持つロッ
クにとって、こうした事務処理はそれなりに得意の範疇に入るものだったから、
その手の書類仕事が苦手なラグーン商会の面々は気楽に彼に作業を押し付け―
―気付けば事務を一手に引き受けることになってしまった。
サラリーマン時代の癖で快く引き受けていた己の迂闊さを嘆いても、もう遅い。
なにしろここはロアナプラ、そして彼の務め先は悪名高いラグーン商会である。
いまさら、仕事を引き受けて欲しいと泣きついたところで、彼の同僚と雇用主
はあっさりと首を横に振ることだろう。
タフでインテリな雇用主、ダッチ辺りは何か気の利いた格言でも持ち出してく
るかもしれないが。
「どっちにしても、断られるよなあ」
がりがりと、出の悪いボールペンを質の悪い紙になすりつけるようにして書類
を書く。
やはり、日本の文具製品の品質はトップレベルだったのだ。会社にいたころは
何の気なく使っていたはずの筆記用具でさえ、この違い。
思えば遠くにきたもんだ、とふと遠くを見つめそうになるが、それをこらえて
ロックは小さく頭を振った。
「ま、今夜中には片付くな。……そしたらとにかく死ぬほど飲もう」
どうせ明日は休みで、他にすることもない。
ならばせめて、ここ数日のデスクワークから解放された打ち上げに、一人で痛
飲するのもいいだろう。
目的が出来ると俄然やる気がでる性質であるロックは、そう考えて唇を微かに
吊り上げた。
会社員時代には決してしなかった、薄い笑み。
ロアナプラで彼が身につけた、悪党の笑い方である。
***
いつものように、イエローフラッグに繰り出したレヴィは、しかし常の酒呑み
特有のハイなそぶりを見せず、淡々とテキーラの杯を重ねていた。
その珍しくも恐ろしい様子に、店主であるバオは、今度は一体何が起こるのか、
と戦々恐々としていた。
街中に悪名の響き渡る、トゥーハンドの似合わないアンニュイな様子は、彼の
恐怖心を煽るのに十分だったのである。
頼むから、店がちょこっと崩れるくらいで済んで欲しい。
切なる願いとともに、無言でグラスを差し出すレヴィにテキーラを注いでやり
ながら、バオは信じていない神に祈った。
その願いが通じたのか否か、これまた悪名高い暴力教会の名うてのガンマン、
シスターエダが、本当にシスターなのか疑わしくなるような露出度の高い衣装
で現れた。
豊満な乳房は、半ばチューブトップから押し出されるようにしてその見事な白
い膨らみを外気に晒している。
ストレッチ素材の濡れたように光るミニスカートから伸びる脚は、女らしい丸
みを帯びたラインで、実に目に楽しい。
「ヘーイ、ヘイヘイヘイ! なんだって、そんなシケた面してんだい、レヴィ?」
「うるせーよ、エダ。男漁りに来てんだろ、だったらとっとと引っ掛けてよろ
しくやってな」
いつもどおりに陽気にレヴィに話しかけたエダは、しかしそのどこか覇気のな
い返答に小首をかしげた。
考えるように顎に片手を当て、バオに横目で問いかける。無言で首を振った店
主を見て、エダは何かに納得したように、それでいて面白がるように唇を吊り
上げる。
赤い唇が、ロアナプラ住人特有の悪い笑みを作り上げると、エダはレヴィに圧
し掛かるようにして囁いた。
「冷たいじゃないのさア、似合わないアンニューイな二丁拳銃を心配してやっ
てのにィ」
「ハッ、いいか、エダ。てめーのケツと同じくらい軽いお頭でも分るように、
もっぺん言うぞ。とっとと失せろ」
やはり、いつもの覇気はなく、言葉ともに構えられた拳銃にも殺気が篭ってい
ない。
こんなんじゃ、怖くもなんともないぜ、レヴィ。だって当たる気がしねえから
な。
懸命にもその感想を口にしなかったエダは、とりあえずバオには感謝されるべ
きだ。言ったら最期、レヴィは確実に銃を乱射してバーカウンターの風どおり
を良くしていたことだろう。
ともかくも、エダの崇高なる忍耐によってイエローフラッグのバーカウンター
は救われた。
そのことを知るものはいなかったが。
「ヘイ、イキんなよ二丁拳銃。お優しいシスター、エダ様が主のお慈悲でアン
タの愚痴聞いてやろうってんだ。感謝はしても拳銃つきつけるってのはねえ道
理だぜ」
「善意の押し売りってんだ、それ。カルチャーセンターの婆みてえな戯言抜か
してる暇があったら、大好きなキリストあたりとファックしてこい」
「おいおい、マジで言ってんだぜ。なあ、何があったか話てみろよ。どうせ、
あの色男がらみだろ」
いつもどおりの問答は、エダの一言で打ち切られた。
レヴィの頬がひくりと引き攣り、一度収められた拳銃に再び手が掛かる。一触
即発の気配を感じ取り、店主のバオはちっゃかりとカウンターの下へと避難し
た。
その様を舌打ちとともに見やって、レヴィは注ぎ手のいなくなったテキーラの
瓶を手に取り、手酌でグラスに注ぐ。
――どうせ、あの色男がらみだろ。
エダの言葉は、まさしく真実だった。
あの日本人、ロックはこのところ書類の海で遭難中らしく、一週間ほどマトモ
な会話をしていない。いつのまにか隣にいることが自然になっていたロックの
不在は、レヴィを不機嫌に、そして不安にさせた。
しかし、その事実を素直に認めるレヴィではない。確信をついたエダの指摘を
受けた態度で、それはバレバレではあったが、やはり本人にとっては認めがた
い事実なのだ。
ラグーン商会の女ガンマン、レベッカ様が、たかが男のことで落ち込んでいる
などということは。
「なんだか面白そうな匂いがしてきたじゃないか。ちょっと話てごらんな。お
ねーさんが聞いてあげるからさァ」
「うっせぇな。違う。ロックのことじゃねえよ」
「じゃあ、尚更聞いときたいねえ。ちょいと、教会で飲みなおそうぜレヴィ。
主の足元で打ち明け話でもすりゃ、ちっとは気が楽になるだろうさ。葬式みて
えな面でテキーラ煽ってるよかずっといい」
レヴィの力ない反論を聞いて、エダは小さく喉を鳴らしながら言った。
サングラスの奥のアイスブルーの瞳には、獲物を捕らえた肉食獣のようなサデ
ィスティックな色が宿っている。
「……いい酒あんだろうな?」
「任しときな。ちょろまかしたウォッカにバーボン、テキーラまで選り取りみ
どりよ。もう少しで店開けそうだぜ」
「行く」
レヴィの胡乱気な眼差しをうけ、エダは胸を叩いてにやりと笑った。
シスター・ヨランダに聞かれたら銃殺されそうな言い分だが、抜け目ない彼女
のことだからきっと上手くやるのだろう。
ドジは踏むくせに、ギリギリのところで危機を回避するエダのやり口を知り尽
くしているレヴィは、気のない声を装いつつもタダ酒への期待に微かに語尾を
上ずらせた。
「よーしよし。いい子だレヴィ。んじゃ、とっとと行こうぜ」
「おうよ。バオ! ツケとけ! いいかげんカウンターから出ろよ!」
「またねー、バオ」
名高い馬鹿二人(本人に面と向かって言う馬鹿はいないが)は口々に喚きながら
連れたってイエローフラッグから立ち去っていく。
なんとか店の半壊、もしくは全壊から逃れたバオは、カウンターの下から這い
ずり出て小さくため息をついた。
――黙って突っ立ってりゃ、ただの別嬪ですむんだがなあ。
遠目から見ればひどく魅力的な、それぞれの魅力を振りまく美女二人の背中を
見つめ、バオはふたたび、今度は大きなため息をついて頬杖をつく。
金髪と黒髪の、ロアナプラでも上の部類に入る女たちは、バオの内心のぼやき
を露ほども感じていないように、足早に店を去っていった。
***
「あああ、やっと終わった!」
ようやっと書類仕事から解放されたロックは、デスクに広げられた書類の山を
見て、満足げに頷いた。大きく腕を伸ばして伸びをすると、強張っていた肩の
関節がゴキゴキと嫌な音を立てる。
「まさか、こっちでもサービス残業をやらされるとはね」
この街では無縁だと思っていた作業に、ロックは小さく笑いながら煙草に火を
つけた。
深々と煙を吸い込み、吐き出す。どんな仕事であっても、仕事のあとの一服の
美味さは変わらない。
書類をまとめ直し、小さくメモを載せて、分類を終えるとロックは立ち上がっ
て窓の外を見た。
日本人らしい几帳面さでそろえられた書類が、夜でも明るいロアナプラを背景
にガラスに映し出される。うんうん、と嬉しくなって何度も頷いたロックは、
ふいに予定を思い出して手早く事務所を片付け始めた。
薄暗い事務所の明かりを落とし、施錠をすると、むわりとした熱帯特有の空気
がロックの肌を包む。早くも汗ばんだ体が気持ち悪く、早いところ酒にありつ
きたい、とロックは急ぎ足でイエローフラッグへと向かった。
「よう、今日は千客万来だな。その席にはさっきまでレヴィが来てたぜ。その
前はダッチとベニーが飲んでた」
「へえ、ラグーン商会の指定席だったのか」
「ハッ、んな上等なもんじゃねえよ。第一、あのレヴィは客じゃねえ。ロクに
飲み代も払いやがらねえからな。そのくせ、店だけは盛大にぶっ壊しやがる」
「ハハハ、レヴィらしい」
らしいじゃねえよ、アンタからもなんとか言ってやってくれ、とぶちぶちと文
句を言いながらもバオはグラスを磨き始めた。
来て早々、店主の愚痴に付き合わされてしまったが、やはり仕事のあとの酒は
気分が良い。とくに、大仕事の後なら尚更だ。ロックが命の水を気分よく飲み
干していると、グラスを磨いていたバオがぽつりと言った。
「そういや、レヴィが拗ねてたぜ」
「そりゃまた。何があったんだろう」
ケッ、と舌打ちしたバオは、どうやら本気で分っていないらしいロックの恍け
た顔を見て苦虫を百匹ほど噛み潰したような顔をする。
いまやロアナプラ中が、ラグーン商会の女ガンマン、レヴィの色恋沙汰をネタ
にして、裏じゃ賭けまで始まっているというのに、この日本人は。
鈍いというか、呑気というか。生まれたところが違うだけで、人とはこうも違
うものか、とバオは半ば感心しながらため息をついた。
「気になるじゃないか。教えてくれよ」
「あのなあ、お前本気で分かってねえのか? アレだな。ハイスクールあたり
でいきなり女に殴られたことねえか?」
「そんな経験はないし、さっぱり見当もつかない。何か知ってるなら教えてく
れよ」
ロックの言葉に、バオは片手で顔を覆って天を仰いだ。
――ああ、信じてねえけど神様! とりあえずこのアホにだけドでかい鉄槌を
下してやってください!
今日は俺の神様が大忙しだな、と頭の隅で考えながらバオは祈りを捧げるのを
やめる。顔を覆った片手を外すと、そこにはきょとんとした顔のロックがこち
らを伺っていた。
東洋人は幼く見えるというが、その中でも特にロックは幼く見える。こういっ
た無防備で間の抜けた顔をすると、下手をしたらローティーンにすら見えかね
ない。
「あー、俺にゃ言えねえ。殺されちまうからな。本人に聞け」
「うーん。レヴィはもうこっち来たんだっけ?」
「いいや、暴力教会のエダが来て、連れてった。教会で飲むとか言って
たぜ」
じゃあ、行ってみようかな。ロックが思案顔で呟くのを見て、バオはとりあえ
ず賭けは倍率三倍の「二人がデキる」に賭けよう、と腹を決めた。
――まあ、レヴィを気にかける程度には、それなりの情がありそうだしな。
「おうよ、行って来い。ツケでいいぞ」
「んー、じゃあ行こうかな。……行ってくるよ、ご馳走様」
「気張れよ、日本人」
ロックの白いシャツに包まれた背中に、ぼそりと激励の言葉を投げかけて、バ
オは賭けに参加するためにカウンターの下の受話器を取り上げた。
***
教会は、薄暗い明かりを放つ蝋燭、そしてテーブルの上に無造作に置かれたラ
ンタンの明かりでぼんやりと照らし出されていた。
こちらを見下ろすように磔刑にされているキリストは、エダとレヴィの口論を
見守るかのように優しげな顔だちで、永遠に変わらない姿勢で佇んでいる。
「だっからさーア、なんでとっととヤっちまわないかね」
「てめえと一緒にすんじゃねえよ。年中盛ってるてめえと!」
「あーあー、あたしは年中盛ってるよ! おかげで生理もバッチリ予定通りだ!
ちったア、ヤることヤっとけ! この生理不順がッ!」
喚きあう二人の女は、相手に掴みかかる段になって、我にかえったように顔を
顰めた。
どちらからともなく、再び椅子に腰を下ろして、なみなみと酒の注がれたグラ
スを煽る。
ぐいぐいと飲み干されていく酒で、代わりに溜飲を下げようとしているのか、
二人のグラスはぴたりと同じタイミングで空になった。
「でさア、なんでとっととヤらないわけ? 好きだろ? 好きなんだろ? ロ
ックが。はやいとこ迫って、唾つけとかねえと掻っ攫われるぜ。アレに目えつ
けてる女、お前が考えてるより多いぞ」
「ケッ、アタシにケツ振って擦り寄れ? ファックミー、ってか。そんなんは
やりすぎてうんざりなんだぜコッチは」
「そういう意味じゃねえよ。大体、ロックの方だって気にかけてんじゃないの
ォ? あの色男、あたしの会って最初に言う台詞の第三位ぐらいが”レヴィは?
”だからねえ」
くすくすと笑ったエダは、しかしその言葉でかすかに瞳に光を灯したレヴィを
見て、押し黙る。
ああ、コイツはマジだ。あの日本人にマジでイカれてやがる。
あの二丁拳銃が、ここまで恋する乙女のような反応を示すとは。あからさま過
ぎて笑いもできない。エダは内心でため息をつきながら、グラスに酒を注ぎ足
した。
「でさあ、ヤんないの?」
「てめえは二言目にはそれだな。他に考えることねーのかよ」
「男と女がいて、惚れた腫れたやってんだから、次はヤるしかねえだろうよ。
なア、レヴィちゃん?」
「うっせえな。惚れてねえよ。アイツはそういうんじゃねえんだ」
そういうんじゃねえんだ、ただ――。
言いかけて、レヴィはふと口を噤む。まるっきり、鬱陶しい女の思考だ。
――アイツとファックはしてもいい。ただ、怖いんだ。自分が変わっちまいそ
うな気がして、ロックが変わっちまいそうな気がして、怖い。
セックスは、良くも悪くも人を変える。それもしごく簡単に変えてしまう魔力
を持っていることを、レヴィはその悲惨な性経験から知っていた。
ロックの純粋さを、自分には決してないものを、レヴィは守ってやりたかった。
――アタシが遠い昔に落っことしてきたものを、全部拾い上げてきたみてえに、
ロックはそっくり持っている。
これは、恋に似ていてまったく違うものなのかもしれない。レヴィは己の感情
を量りかねて、とりあえず注がれた酒を飲み干した。
喉を焼く酒が、食道から胃を滑り落ちて、レヴィの臓腑をえぐるようにカッと
熱く燃える。
くらりと酩酊する視界の中で、レヴィはロックの顔を見つけたような気がした。
***
教会へと足を運んだロックが見たものは、祭壇の前に置かれたテーブル、その
上と辺りに散らばる無数の酒瓶だった。酒豪二人は、随分と飲み明かしたらし
い。
沈没するようにテーブルに突っ伏したレヴィの頭が微かに揺れている。その手
前では、エダが陽気にロックに手を振っていた。
「ハーイ、色男。この馬鹿ならさっき潰れたとこだよ。なんか用なら、水でも
ぶっ掛けない限り起きないと思うね」
「いや、いいんだ。仕事じゃない。ちょっと、その……」
「ふふぅん、お安くないねえロック。コイツは持ってかえっていいからさ、首
尾は聞かせて頂戴よォ?」
何か誤解がありそうだ、とエダの言葉に眉を寄せたロックは、何度か瞬きを繰
り返した後、ようやくレヴィに歩み寄った。
安らかな息をして眠るレヴィの、傷だらけではあるが滑らかな肩の稜線が、蝋
燭の炎に照らされて奇妙に艶かしい。思わず息を詰めて見入ったロックは、一
瞬頭をよぎった不純な考えを振り払うかのように、ぶんぶんと頭をふって、レ
ヴィを担ぎ上げた。
この街で暮らすようになって、それなりに腕力のついたロックは、とりあえず
レヴィ一人を担ぐぶんにはさほど苦労はない。
さて、どうしたものか、とエダを振り返ると、彼女はなにやら意味深なにやに
や笑いを浮かべたまま、教会の扉を親指で示した。
――とっととどっか行けってことか。
神の御使いは、営業時間が終了しているらしく、ロックの苦悩を救ってはくれ
ない。
眉を寄せて、眠りこけているレヴィを何処に連れて行こうか迷いながら歩き出
したロックを、エダはただ薄い笑みを浮かべて見守っていた。
***
迷いに迷い――レヴィの家の鍵はあいにく持ち合わせていなかったし、かといっ
て彼女の懐を漁るのは問題だ。だがしかし、自分の家に連れ込むわけにもいか
ないだろう。相手は一応、これでも、きっと、レディであるからして――、結
局再び事務所へと舞い戻ったロックは、とりあえずレヴィをソファに横たえた。
ぐっすりと眠りこけるレヴィを、ため息交じりに見つめたあと、ロックはクー
ラーをつけ、スタンドの明かりを最小にしてから、煙草を取り出した。
ライターで火をつけると、薄暗い部屋の中に紫煙が立ち昇る。深々と一服して
から、ロックはふと考える。
――もしかして、これチャンスじゃないか?
眠り続けているレヴィには、起きる気配はない。ふ、と顔を近づけて煙を吹き
かけても、彼女はぴくりともせず、微かに睫毛を震わせただけで、全く起き上
がろうとしなかった。
――キス、くらい。いやいや、やっぱり女の子の寝込みを襲うのは
考え込んでいるうちに、煙草はすっかり根元まで灰になっていた。勿体ない、
と思いながらも、ロックはそれを灰皿に押し付けて潰す。
「レヴィ……」
囁きながら頬を撫でると、レヴィはくすぐったそうに身じろぎし、甘い寝息を
立てた。
――寝てると、普通の女の子なんだけどな。
二丁拳銃にはあるまじき、可愛らしい姿に苦笑しながら、ロックはもう一本取
り出した煙草を咥え、火をつける。
この、可愛らしくもとんでもなくおっかない、女海賊に思いを抱いてから、ど
れくらいになるだろう。
初めて会った海の上では、ただただ怯えて縮こまっていた。ラグーン商会の一
員になってからも、レヴィとはあの大喧嘩の日までなかなか打ち解けず――今
でも打ち解けているのかどうかは微妙だが――、けれど。
あの日。互いに互いの思ったことをぶつけ合い、自分たちの関係は確かに近づ
いたと思う。少なくとも、ビジネスパートナーくらいには。
そして、故郷である日本での旅路で、ロックはすこし変わった。己の場所を掴
みきれず、それ故に詰められなかったレヴィとの距離を測る術を手に入れたか
らだ。二人は次第に近づき――その距離はロックが精密機械のメンテナンス並
みに気を配って詰めていったものだが――やがて、隣にいるのが当たり前だと
言えるくらいになった。
――そう、俺にとっては。
けれど、レヴィはどう考えているのか。ロックの苦悩を露知らず、呑気に眠り
こけている、この物騒な女ガンマンは、一体自分のことをどう考えているのだ
ろう。
つんつん、とレヴィの白い頬をつつきながら、ロックはつらつらと考えた。
「なあ、レヴィ。俺のこと、ちょっとは大事だと思ってくれてるかい?」
――……あったりめえよ
なんて、答えてくれたらいいのに、とロックは自分の馬鹿な考えに苦笑した。
全くもって、ガラではない。この年まで色恋沙汰がなかったわけではないのに、
この年になってこんな高校生みたいな片思いをするとは思わなかった。
しかも、この背徳の街、ロアナプラで。
***
――恥ずかしいヤロウだ……
事務所のソファに寝かされてからこっち、どうにも起きるタイミングを逃して
いたレヴィは、ロックの百面相を薄目を開けて観察していた。
人が寝てる前で何やってやがる、と何度怒鳴りつけてやろうとしたが知れない
が、その度、レヴィは何も言わずに寝たフリを続けてしまう。目の前に広がる、
ロックの馬鹿正直な顔に浮かぶものが、確かに自分への恋情を感じさせるもの
だったからだ。
あげく、今の台詞である。
――大事かだって? このスカタン!
事実はその通りであるのに、心の中ですら素直になりきれないレヴィは、そう
悪態をつくと、ごろりと寝返りを打った。これ以上ロックと顔を合わせていた
ら、ついつい余計なことを口走ってしまいそうだ。
――バーカバーカ、てめえはのほほんとしてりゃいいんだよ! 間抜け面のド
阿呆が!
ロックの、苦しそうに吐き出した「自分が大事か」という言葉は、寝返りをうっ
て彼の顔が見えなくなっても、レヴィの胸を締め付けるようにして響いた。
***
「お休み、レヴィ」
寝返りをうった彼女に、そう囁いて、ロックは彼女の頬に口づけた。
これくらいなら、手間賃代わりに貰っておいてもかまわないだろう。勝手にそ
う判断して、ロックはレヴィの日焼けしてもまだ白い頬に優しく唇を落とす。
――と。
カッと頬を赤くして、レヴィが突如ハネ起き、おかげでバランスを崩したロッ
クは尻餅をついてへたりこんだ。気まずい沈黙が落ちる。
数秒が永遠にも感じられる中で、ロックはひたすら目を泳がせて自身の危機か
ら身を守る方法に考えを巡らした。名うてのガンマンの腕前のほどを熟知して
いるロックにとって、そしてレヴィがどれほど女扱いされるのを嫌がっている
か知り尽くしているロックにとって、この状況はまさしく生命の危機と言える。
「あ、あー……起きたなら、水でもいるかい?」
「……ああ」
薄闇のせいで、はっきりと顔色の分からないレヴィを見ながら、ロックは慎重
に話しかけた。どうやら、それほど気分を害してはいないようだ。
――寝起きで頭が回っていないだけかもしれない
この水で頭がすっきりしたところがズドン、という最悪のシナリオが頭を駆け
巡り、ロックは深く深呼吸をしながら水を注いだグラスをレヴィに恭しく差し
出した。
「ありがとよ。どこだここ?」
「うん。……え、えーっと、教会にいるっていうから行ってみたら、レヴィが
潰れてて。仕方ないから事務所に来たんだけど」
「そうか。……仕事、終わったんだな」
しどろもどろに答えるロックに顎をしゃくり、書類の山を示したレヴィは、小
さく笑った。
薄暗闇のなかでかすかに閃いたレヴィの笑みに、ロックは一瞬見惚れ、慌てて
目を逸らした。酒で焼けたハスキーな声が、ひどく扇情的にロックの耳に残る。
「あ、ああ。そういえば、レヴィ。なんか機嫌が悪かったって聞いたけど」
「……どこのどいつだ、んな与太話飛ばしやがったのは。エダか? エダだな
ッ!?」
「ちがうちがう」
起き抜けにカトラス片手に教会に襲撃をかけかねない勢いで尋ねるレヴィを宥
めるように、ロックは彼女の肩を叩いて言った。
「みんな言ってたよ。元気がないって」
そう実際に、バオ以外にもダッチやベニー、果ては張にまで、レヴィの最近の
不振ぶりは聞かされていたのだ。いったい何があったというのか、ここしばに
く彼女の傍から離れざるを得なかったロックとしては知りたいところである。
原因が自分自身であることなど露知らず、気遣うようにこちらを見上げるロッ
クに、レヴィは地団太を踏むような勢いで答えた。
「なんでもねえよッ!」
「……でも、」
「それよか、さっきのは一体なんの真似だ、ロック? 答えによっちゃ、テメ
エの身体の風通しがよくなるぜ?」
一転して、クールに冷酷な眼差しをしてロックを見つめたレヴィは、カトラス
を構えて薄く笑った。酷薄な笑みが、彼女の白い頬に鮮やかに描かれる。
「オーケー、オーケー。落ち着こう、レヴィ」
「何が落ち着こう、だ。この間抜け野郎ッ! 言ったよな? 淫売扱いされる
のは我慢がならねえって、言ったよな?」
カトラスの標準をゆっくりとロックに合わせて、レヴィは震える声で言った。
無論、レヴィとて本気でロックが自分のことを淫売扱いしているとは思ってい
ない。そんな男ではないことは、短いながらも濃い付き合いの中で分かってい
る。
――ただ。ただ、臆病なのだ。自分は、ロックが怖い。
ロックに好かれるのが怖い。嫌われるのはもっと怖い。そんな自分を認めたく
なくて、レヴィは半ば自棄になって安全装置を外した。がちゃり、と金属がこ
すれあう音が静かな室内に響く。
「違うんだ、レヴィ」
「人の寝込み襲っといて、何が違う?」
「それは……悪かった。だけど俺は、別にレヴィを淫売だなんて思ってない。
手軽にやれる女だと思ってる訳じゃないんだ。そんなつもりで、キスした訳じゃ
ない」
ロックの正直な告白に、レヴィの頬には再び血の気が戻った。徐々に赤味を帯
びていく頬を片手でおさえ、片手でカトラスを構え続けながら、レヴィは呻く
ように囁く。
「……だったら……だったら、どんなつもりでキスしたんだ? 答えろよベイ
ビー」
脅しているはずなのに、懇願に聞える。不思議な声色で問いかけるレヴィに、
ロックはつっかえながらも正直に語り始めた。
「最初は、隣に居れるようになりたかったんだ。……レヴィの隣にいられる男
になりたかった。けど、それだけじゃ満足できそうにないってことに気付いて
……だから……」
「ヘイ、あたしは気が短いんだ。とっとと結論だけ言いな、ベイビー」
戸惑いがちに話すロックの様子に、こりゃ長くなりそうだ、と判断したレヴィ
は、カトラスを振ってそう急かす。
「レヴィが好きなんだ」
「…………そうかよ」
結論だけ、と言われて、あっさりと結論だけ返してきたロックに、レヴィは頭
を抱えた。
カトラスの構えを解いて、額に押し付けて呻く。
――言いやがった、言いやがった、言いやがった、コイツ!
どうやら自分に心底惚れているらしい馬鹿の顔を眺めながら、レヴィは小さく
舌打ちした。まさか自分が、こんな真剣な、どこか平和な場所のティーンエイ
ジャーのような告白を受けるなんて、考えもしなかった。
少しだけ予感はしていたものの、改めてきっぱりと断言されると、動揺は抑え
切れない。
「レ――レヴィ? その……悪かった。忘れてくれ。さっきのは、本当にすま
なかった」
「忘れてくれ? ロック、ベイビー! お前の今のアレは、アタシに忘れても
らいたいようなもんなのかい?」
「いや……、忘れて欲しくない。答えも……できれば、欲しい。でも我ながら
さっきのは卑怯だと思うし、レヴィを困らせるつもりは無いんだ」
項垂れて、真剣に己の行いを悔いているらしいロックは、まるで裁きを待つ罪
人のようだ。
この街に、つくづく似合わない男だ、とレヴィは苦笑してカトラスをホルスター
にしまう。女の寝込みを襲うなんて日常茶飯事、むしろ寝込みを襲うぶん良心
的とすらいえるようなこの街で、たかが頬にキスしただけでここまで謝る男が、
一体どれだけいるだろうか。
――いや、ひとりもいねえな。この馬鹿以外
クク、と喉を鳴らしたレヴィは、未だに俯いているロックに歩み寄り、その頭
を胸に押し付けるようにして掻き抱いた。いきなりの行動に暴れるロックを押
さえ込み、レヴィは淡々と言う。
「なあ、ロック。怒っちゃいねえよ。お前がそういう類の男じゃねえことも知っ
てる。だけど、な。あたしには踏ん切りがつかねえんだ」
「踏ん切り、って何の?」
レヴィの、それなりに豊かな胸に窒息しそうになる、というロアナプラの住民
が知ったら卒倒するような事態に見舞われたロックは、ふがふがと息をしなが
ら尋ねた。
「あたしはな、ロック。怖えんだ、本当のこと言うと。お前と恋人になって、
ヤって。そしたら、なんかが変わっちまう気がして、怖えんだよ」
珍しく弱気なレヴィの言葉に、ロックはやっと気付いた。鈍い鈍いといわれ続
けた彼にも、ようやく事態が飲み込めたのである。
レヴィが怖れているのは、変化だ。この街で、そして彼女の世界で生きるため
に作り上げられた”レヴィ”という存在を変えられる。それは、彼女にとって
たしかに恐怖だろう。
ロックは小さく息を飲み、レヴィの腕から逃れて、彼女を今度は自分の腕の中
に閉じ込めた。戦闘のときにはあんなに大きく見えるレヴィの身体は、やはり
女のものだ。それは実に華奢で、小さく、頼りなく、ロックの腕の中にすっぽ
りと納まった。
「……俺も、怖いよ。でも、俺はレヴィと……したい」
「…………………」
「俺は、レヴィが好きだから、したい。ただヤリたい訳じゃない。レヴィとし
たい。レヴィは変わらなくていい。そのままのレヴィが、俺は好きだ。変わっ
てもいい。それでもきっと、俺は好きだ」
珍しく饒舌なロックと、珍しく無口なレヴィ、という世にも珍しい組み合わせ
のカップルは、抱き合ったまま身じろぎもせず、ただ互いの体温を頼りに夜の
静寂のなかで寄り添っている。
やがて、かすかにレヴィの頭がこくりと動き――二人の影は、ぴったりと重なっ
た。
***
ソファの下には、脱ぎ散らかされた衣服が散らばり、安物のソファからはひっ
きりなしにギシギシと危なげな音が響いている。
気持ちの通じ合った男女のすることは、いつの時代も一つだけだ。ロックとレ
ヴィも、その真理には逆らわず、身体を重ねあうことになった。
「んっ……ロックっ!……あァっ、あ、んっ」
「レヴィ、綺麗だ……」
とっくに快楽の海の沖へと漕ぎ出している二人は、波に揺られるように振動に
身を任せる。
初めて分け入ったレヴィのねっとりとひくつく襞は、ロックにたっぷりと絡み
つき、耐えず締め上げ、彼を追いたてた。内壁のマグマのような熱さに煽られ
るように、ロックは彼女を突き上げる。
「き、れいな、もんっ……かっ……間抜けなこと、言うんじゃねえよロック!
萎えるだろうがッ!」
「……ごめん」
うっとりと呟いたロックの戯言――少なくともレヴィにとってはそうとしか映
らないだろう――を聞きとがめ、彼の背中に爪を立てながら、レヴィは歯軋り
しそうな勢いで彼を罵った。
それに謝罪しながら、レヴィのゆるくうねる、細い腰を掴んで、ロックは更に
奥深くへと侵入を始める。東洋人特有の、熱く硬い性器の感触に、レヴィの口
からは熱いため息が漏れた。その甘いため息に、ロックは更に自身が硬く張り
詰めていくのを感じた。
「レヴィ、気持ちいい?」
「聞、くな。ンなこと」
どこまでも素っ気無いレヴィの返答に、ロックは眉尻を下げたが、彼女の顔に
目を向けた途端、それは一転する。
上気した頬に、かすかに潤んでいる瞳、しどけなく開かれた口元からは、押さ
えた嬌声が上がっていた。なんとも扇情的なその様子に、ロックはさらに激し
く腰を打ちつけ、彼女の揺れる乳房にむしゃぶりついた。腰を掴んだ指をピン
ク色の秘裂に向かわせ、ぷくりと膨らんだ小さな芽をなぞると、レヴィの身体
が大きく仰け反る。
「んッ……あ、ああっ! ロックっ! ……あ、あ、んっ……」
「レヴィ、レヴィ、レヴィ、」
まるで呪文のように自分の名前を呼び続ける男の背にしがみつき、レヴィはほ
ろりと一粒の涙を零した。
――誰かに抱かれて泣くなんて、初めてヤられた時以来だぜ
あの時は嫌悪と恐怖の涙だったが、では今のこれはなんだろう。ぼんやりと考
えているうちにも、ロックは優しく、しかし的確にレヴィの性感を高めていく。
次第にそれに溺れながら、レヴィは必死にロックの、傷一つなく滑らかな肩を、
跡が残るほどにきつく、きつく握り締めた。
「ロック!―――――っ!」
「…………レヴィ」
互いの名を呼び合い、二人は深い快楽の底へと落ちて行く。
落ちているのか、浮かんでいるのか、奇妙な浮遊感の中で、レヴィは何故か、
ロックと一番初めに出会ったあの日を思い出していた。
――まさか、こんなことになるとは、な。
幸せそうに自分を抱くロックを見ていると、まんざらでもない自分がいる。自
分もたいがい、この優柔不断で平和ボケした日本人のくせに妙に肝の据わった、
偶に馬鹿をやらかす、相棒に毒されているらしい。
くすりと笑い、レヴィはロックの肩に噛み付いた。
――これは、あたしの持ちモンだ。
物騒な所有の印から滴る血を舐めとって、レヴィはおおよそ抱かれる女には似
合わない、獰猛な笑みを浮かべた。
***
「アイタタタ……」
噛み付かれた傷口が引き攣って傷むが、気分は上々である。
思いは告げたし、どうやら思い自体も受け入れてもらえたようだし、思いも遂
げられたし。
ロアナプラに来て初めてといえるくらい、幸運だけがやってきた夜だった。口
笛でも吹きそうなくらい、軽い足取りで、ロックは露店をひやかして回る。
「買っていこうかな――――っ」
楽しげに品物を手に取ったロックは、突然肩を叩かれ、一瞬硬直した。
振り返ると、そこには昨晩の事がまるで都合の良い夢だったかのように、ふて
ぶてしく佇むレヴィの姿があった。
「よう、ロック。随分ご機嫌じゃねえか、え?」
「や、やあレヴィ。買出しかい?」
「ポーカーで負けた。……昨日さんざんやり倒しといて、随分ツレねえじゃね
えか。こっちは朝から頭は痛いわ腰は痛いわで、散々だぜ」
「……頭が痛いのは、飲みすぎだと思うよ」
レヴィが唇を尖らせて、拗ねたように囁く。ロックの言葉に、彼女は思い切り
機嫌を損ねたように、彼の脛を蹴り飛ばした。
痛みに蹲るロックに覆いかぶさるようにして、レヴィは耳元に息を吹きかける
ようにして言う。
「休みだってのに、ホワイトカラーかよ。あたしが買ってやったアロハ着ろ、
アロハ。――恋人のプレゼントは、大事に使うもんだぜハニー」
レヴィの甘い囁きに、一瞬時と場合を忘れてしまいそうになったロックは、し
かし言葉の意味に気付いて眉をしかめた。
――あの悪趣味なアロハ、休日の度に着ろってか。
しかし、囁かれたハニーという単語の甘い響きは、そんな不満すら吹き飛ばし
てしまうほどの威力がある。どうしたものか、と真剣に悩み始めたロックを見
て、ふんと鼻を鳴らしたレヴィは、勢い良く立ち上がった。
「決めた。今から休暇とる」
「ええっ!? 買出しは!?」
「知るか。食いたきゃ、てめえで買ってくりゃいいんだ。どうせ今日も仕事は
入りそうにねえしな。それよか、ロック。マーケット行って、そのクソ鬱陶し
いホワイトカラーの代わりに一式揃えるぞ」
「…………わかったよ」
したり顔でロックの答えに頷くと、レヴィは携帯を取り出して、事務所への連
絡を始めた。
どうやら、雇用主であるダッチよりも、昼食の買出しを頼んだベニーの方が問
題らしいが、なんとか丸め込んだようである。往来で口汚いスラングを一頻り
吐き終わると、レヴィはロックに向き直り、彼の腕を掴んだ。
「話はついたぜ。ほら、行くぞ」
「ええ、もうどこへなりとも」
すっかり諦めきった様子のロックが、レヴィに組まれた腕をそのままに、マー
ケットへと歩き出す。満足げに、ロックの腕にしがみついたレヴィは、すこし
だけ頬を緩めた。
――なんだ。なんもかわらねえ
何も変わらない。怖れていたことは、何一つとしてなかったのだ。
レヴィは何一つ失わなかったし、ロックも失わなかった。代わりに、一つ、互
いの隣にいる存在を得た。
白いシャツから透ける、昨晩自分がつけた噛み跡を見つけて、レヴィは笑った。
――そう、何も変わらない。……もしかしたら変わるかもしれねえが、その時
はその時だ。
ロアナプラの陽は今日も高く、空は青かった。
ひたすらに蒸す気候のせいでとてつもなく暑苦しく見えるロックのホワイトカ
ラーを剥いで、手始めにアロハを着せてやろう。
レヴィはにやにやと笑いながら、ロックの腕を強く掴んだ。
――まあ、これからあたし好みの男に仕立てるって手もあるしな。
***
「で、どうだよ」
バオがグラスを磨きながら、小さく笑ってスツールに腰掛けるシスター・エダ
に問いかけた。
「どうもこうもないよ。丸儲け」
「レヴィのネタで賭けの胴元なんかやってたってバレたら、殺されるよエダ」
エダの言葉を咎めるように、ベニーは眼鏡を神経質に弄ったが、彼の雇用主は
それを意に介さぬように豪快に笑った。
「面白えじゃねえか。俺たちは勝ったんだし、配当金はレヴィのやらかした修
繕費と無駄に喰いやがる弾代に当てるんだ。文句の出所がないだろう」
「ま、俺の配当金もアイツのツケの返済に回すしな」
にやにやと笑い合い、グラスをぶつけた店主とダッチは、一息に酒を飲み干し
てグラスを置く。
レヴィの色恋沙汰は、どうやら丸く収まったようだ。
今日一日休みにしてくれ、と言い出したレヴィが、マーケットでロックと腕を
組んで歩いていた、という目撃情報はそこら中に転がっている。
――まあ、いわゆるデートというヤツなのだろう。
二丁拳銃のレヴィにはとことん似合わない単語に、かすかに唇を歪めたダッチ
は、バオが注ぎ足した酒を煽った。
「しかしまあ、あのレヴィが、ねえ」
「みんな面白がって賭けてたけど、実際くっつくとは思わなかったなあ」
ベニーの嘆息に、エダがサングラスを反射させながら口元に笑みを閃かせる。
「そりゃそうさ。何しろ賭けの比率だって、最後まで”くっつかねえ”っての
が優勢だったしな」
「俺はもし賭けてたら、そっちに賭けてたな。何しろ、想像がつかない」
大げさに肩を竦めて、ベニーが呟くと、イエローフラッグのカウンターには賑
やかな笑い声が響いた。
終わりです。お付き合いありがとうございました。
↓以下おまけの小ネタです↓
***
「なあ、レヴィ。笑わないでくれ」
「事と次第によっちゃ笑うぜ」
「よし。それでも笑わないでくれ」
「いいから、とっとと出て来い! どこのお嬢さまだテメエは!」
試着室のカーテンをひっぱられ、しぶしぶ表に出てきたロックを、指差して笑っ
たレヴィに、彼女を愛し続ける自信を――ちょっぴりだけ――ロックは失った。
「に、似合わねえっ!」
「だから言っただろっ! 俺には無理があるんだよこの服はっ!」
ひどく悪趣味なアロハとハーフパンツを身に纏ったロックは、腹を抱えて笑い
続けるレヴィを見つめて、情けなく肩を落とした。
――なんで俺、レヴィが好きなんだろう
ここまでされておきながら、全ては惚れた弱みで流せてしまいそうな自分に、
ロックは深く、深くため息をついた。
自分の今の格好については、深く考えないことにして。
僕はッ!GJとッ!言わざるを得ないッ!!!!!!!
GJ!欝も大好物だがバカップルも好きなんだぜボーイ
デレヴィかわいいよデレヴィ
467 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:43:01 ID:/YaRSWvo
ども。
悪い癖か出まして、途中のアレは一時棚上げにして、
了解も得ずに「また」別の「何か」の続編だったりします。
+++
ロックが姿を消して十日ほど経ったある日。
ラグーン商会の事務所でレヴィがおよそ彼女らしくないモノを前に憮然とした顔で座っていた。
伝票類とノートパソコン。
『あのバカは、よくもまぁこんなことを嬉々としてやってやがったもんだ。』
別に嬉々としてやっていた訳では無いのだが、レヴィにはそう見えたのだろう。
ロックがラグーンに加わった当初、レヴィは自分の取り分が減ったことが不満だった。
全体のパイの大きさが変わらないのに、食い扶持が一人増えたのだから、
取り分が一人当たり1/4減るのは当然と言えば当然だった。
しかし、あの半人前にすらなら無いヤツとペイが同じってのは、
ドコをどう計算するとそういうコトになるんだよっ!
いくらそうやって文句垂れたところで、そういうコトになっていた。
やがて、この半人前以下野郎がとんでもないイカレ悪党予備軍と気づかされたのだが、
それはもう意味の無い話になってしまった。
むしろ今は目の前にある現実の方がはるかに大問題になっていた。
ロックの担当していた事務、経理、交渉、その他諸々の作業を、残された3人で分担する必要があった。
おかげで今更ながら彼の存在の大きさに気づかされた。
他所との交渉事は元々ダッチが管理していたので、あまり問題にはならなかったが、
ベニーはロックのおかげでデスクワークが大幅に軽減されていた。
おかげで愛して止まない機器達を思う様弄ることに専念できていたのだが、それが逆戻り。
そのせいか平素は温厚なはずの彼も、最近はどことなく機嫌が悪い。
勿論、彼とて仲間を失った事の方が精神的なダメージは遥かに大きいのだが。
ロックの参入で最も負担が減らなかったのがレヴィだったが、
逆に失うことで最も打撃を受けたのは彼女だった。
それなのに彼女にもデスクワークの分担が回ってきた。
468 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:43:59 ID:/YaRSWvo
人差し指の一本打ちでカチャ、カチャ、とまどろっこしい音が静かな室内に響く。
例によってダッチは船の、ベニーは機器のメンテに行っている。
自動的に手空きのレヴィがこの仕事ということになった。
畜生、あのバカはアタシのココロをブチ壊しにしただけではまだ足りず、
こんなことまでやらせやがって。
覚えてヤガレ、あの世でたっぷりこの利息を取り立ててやる。
ガキの世話も面倒なことは全部アイツにやらせてやる。
レヴィは自分の事ながら、作業のあまりの遅さ加減にブチ切れ寸前だった。
あと1分していたら重要なデータを収めた、ある意味ではロックの遺品とも言えた、
そのノートパソコンはレヴィの「相棒」によって鉛弾の洗礼を受けるところだった。
そうならなかったのは、不意に訪問者が現れたためだった。
「あれ、レヴィ何やってんの?」
「ウルセェ! テメエのせいでこうなったんだろうが!!」
「そう喧々するなよ、一休みしたら代わるから。」
「フザけんなっ! 直ぐ代われ!! 今直ぐ代われ!!! 直ちに代われっ!!!!」
「戻った早々酷い扱いだなぁ。わかったよ。」
「わかりゃイイんだよ。ハナっからそう言え…………ええええぇぇっっっ゛!!??%#※@」
「どうしたんだ? 変な顔して?」
レヴィは目の前に居る男を呆然と瞬きもしないでただ見つめていた。
コレは夢だ。ひどい悪夢だ。そうだ、そうに違いない。
だいたいアタシがデスクワークなんて反吐が出るようなコトやってる時点で気付くべきだった。
そんなコトがあるワケが無いじゃないか。
469 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:45:02 ID:/YaRSWvo
夢から覚めるにはどうする?
コレが一番だ!
無警戒に突っ立っていた男は、レヴィの右ストレートをモロに顔面に喰らった。
ズデンと不様に背中を壁に打ち付ける。
「痛ってぇ………な、何するんだよ、いきなり……。」
「痛てぇワケがあるか! 勝手に夢にまで出てきやがって!!」
「ユメ? 何言ってるのかわかんないんだけど………。」
「夢じゃねぇのか?」
「だから何言ってんだよ………。」
ヨロヨロと男が立ち上がった。
「なら迷ったな! とっとと、あの世逝ってガキの面倒見てろっ!!」
今度は左が炸裂した。
30分後、ドックから戻ったダッチとベニーは事務所の床に大の字になってノびている男を発見した。
両穴から鼻血を流し、口も切れているらしく血の混じった涎をだらしなく垂らし、顔中がアザとコブとキズだらけ。
恐らく上半身そこら中がアザだらけだろう。
そして、その男に膝立ちで跨ったまま、肩で息をしながら、顔を汗と涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃにしたレヴィ。
男は酷い御面相の上、見慣れたホワイトカラースタイルではなかったが、
間違いなく行方不明になっていたロックだった。
****
絆創膏だらけの顔の上に氷嚢を乗せ、鼻の穴は両方とも止血のガーゼで塞がれていた。
おまけに口の中は相変わらず血の味がする。
この状態で喋るのは相当難儀である。
しかし、連絡も寄越さずに十日も行方不明になっていたのだから、
理由を説明しないわけにもいかなかった。
ロックは手順を誤ったと後悔していたが、今更手遅れである。
あの日、海に転落したのは本当だった。
まったく我ながら情け無い水兵も居たものだ。
戦闘の真っ最中に海に転落したとは、いやはや。
470 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:45:54 ID:/YaRSWvo
追跡していた国境警備艇は、目標の船、ラグーン号を厳重に監視していた。
おかげでドジな海賊が一人、海に転落したこともしっかり把握していた。
拾い上げて逮捕し、ゲロさせれば、他も芋づる式に追い詰められる。
それから一時間も経たず、連絡を受けて幸い付近に居た別の警備艇がドジな海賊を確保した。
荒れ模様とはいえ、南の海だったこともロックにとって幸いした。
気象の厳しい北の冬の海だったら、水の中ではとてもじゃないがもたなかっただろう。
もう一つ、ロックのスラックスが役に立った。
海に落ちたロックは何度も溺れかけながら濡れたスラックスを苦心して脱ぎ、
両脚の裾に結び目をつけ、簡易救命胴着にすることに成功していた。
このおかげで、荒れた海で救助されるまでの一時間余り、命を繋ぐことができた。
さて、無事に海から拾い上げられてからは大悪党予備軍の舌の見せ所だった。
ロックは自分は海賊に拉致された日本人だと言い張った。
確かに日本人であることも拉致されたこともウソではない。
当初は胡散臭そうに聞いていた警備隊員達だったが、
拾い上げた時のロックのビジネススタイルは海賊らしからぬものだった。
直ちに外交ルートに顔写真を送ったりと確認の手続きが取られ、
二日後には死亡したと思われていた日本人だと判明する。
途端に事情聴取の扱いが丁寧になったのは苦笑ものであったが、別の問題が発生した。
当然、家族が迎えに来る。
どうする?
夕闇の世界からはオサラバして陽の当たる世界へ戻ろうか?
冗談じゃない。後悔はずっと前に済ませたし、忘れることも済ませたんだ。
今更何しに戻るんだ?
まして、自分を抹殺しようと謀った連中の下へ戻るなど真っ平だった。
家族には悪いと思う。でも、生きていることが確認できただけでも希望は持てるはずだ。
だけど、大切な彼女には何が残っている? また望んだものを失わせたままにするのか?
約束したんだ、彼女が望むものをこれ以上奪うなんて絶対に金輪際ゴメンだ。
ロックは決断した。もう一度自分は海賊に拉致されるんだと。
471 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:46:40 ID:/YaRSWvo
ロックはバンコクへ護送された。ご丁寧に護衛付きなので身動きがとれなかった。
バンコクに着いたのは夜半だった。
とりあえず在タイ大使館が用意したホテルで、対応にやって来た日本大使館員と名乗る人物と簡単な面接を済ませ、
最後に家族と電話するかと聞かれた。
ロックは時差の関係で日本は真夜中の筈ですからと言って丁寧に断った。
大使館員は今夜はゆっくり休んでくださいと告げ、いくらか現金も置いていった。
今夜が勝負だ。早ければ明日には家族が来訪する。
ロックは一人になると部屋を出てフロントに鍵を預けると、ちょっと寝酒を買ってくると告げて外へ出た。
ホテル側は客が夜の繁華街に出掛けるのを不振がる理由は無い。
ロックは尾行を警戒しながら、出来るだけ人の大勢居る店を選んで入り、
人に揉まれながらトイレに行くと、窓から外へ脱出した。
後は裏通りをジグザグに抜け、ラグーンと取引のある見知った裏業者の門を叩いた。
とにかく朝になれば、自分がまた行方不明になったことがバレる。
そうなれば警察が動く。
そうなる前に、出来るだけ遠くに移動しておきたい。
幸い、密輸品を運ぶ手漕ぎボートに便乗できた。
相手がラグーンの人間なので、運賃はツケにしてもらえたのも有難かった。
今後の交通費は出来るだけプールしておきたかったのだ。
着衣も現地の人間が着る様なラフなものに着替えさせてもらった。
長く海上生活をしてきたロックは、いい具合に日焼けしているので、
着ている物によっては、ちょっと目に現地の労働者と区別できない。
その後もロックは極度に尾行を警戒していた。
ひょっとすると、ワザと自分を泳がせている可能性を心配したためだ。
何度もラグーンに、と言うより彼女に電話しようともした。
だが、いつも寸前で断念したのは、盗聴の懸念がどうしても抜けないからだった。
こうして裏稼業で知っていたルートを選んで、水路と陸路をたどり、彼は帰ってきた。
彼の場所と、彼を必要とする仲間と、彼と大切な約束をした相手の元へ。
472 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:47:29 ID:/YaRSWvo
「………痛っ…てぇ………」
既にすっかり馴染んだモーテルのベッドの上で、ロックは全身を包む鈍痛に睥睨していた。
「まったくよぉ、せめて街に着いたところで連絡寄越せってんだ。」
「………………」
今のロックには返事をするのも億劫だ。
「おら、聞こえてんだろ。何とか言え、このアンポンタン。」
傍らで冷やしたタオルをあてたりして、余計な世話を焼いているレヴィ。
一通りの説明を終えたロックは、そのままに残されていた自分のヤサに運ばれた。
レヴィが駄々を捏ねてそのままにしておいたのだ。
「で、今度の休みは海へ行くんだよな? 潜るんだよな、え? ベイビー。」
冗談じゃない、この傷だらけの身体を塩水に浸けろってのか。
だいたい、溺れかかって一ヶ月も経っていないんだ。正直に言って今は海が怖い。
本当に勘弁して欲しい。
あれれ、ロックは何だか呼吸が苦しくなってきた。
腫れた目蓋をうっすら開くと、またレヴィが馬乗りになって、今度は首を絞めている。
「……ちょ………止めて……レヴィ………」
「テメエ、何とか言えよ……」
「…喋ると……口が……痛いんだって……」
「ウルセェ、そんなこと言って欲しいんじゃねェ。」
「……んなコト言われ…たって……」
「…………せめて、……コレだけは答えろ………」
「…………」
「……もう、二度と何処にも行くな、何処にも、…何処に…も………」
もうレヴィの手に力は入っていなかった。
代わりに、すがる様に顔をロックの胸に埋めて来て、低く嗚咽を始めた。
「行かないって。…約束したろ。…今度だって……ちゃんと…戻って来…………」
彼女の体重の掛かった肩や胸のアザが痛んだ。
痛いのは生きている証拠だ。
すぐそばに愛する者まで居る。温もりすら感じるほどに。
何の不満がある?
あるとしたら…………………
「………痛っ…てぇ………」
終わり
473 :
バカるでい:2008/06/28(土) 13:48:23 ID:/YaRSWvo
ども。
勝手にトンデモ喜劇にしちゃいました。申し訳ないです。
私事ですが、実はリアルで鬱の療養中でして。
はい? んなヤツが2chなんぞ入り浸るな? そうですね(自爆)
で、360氏の傑作、途中でヤバイなぁと思いつつ、氏の筆力に負けて完読してしまいました。
いやもう、本当に神作ですねぇ。
私も流すネタは考えたことあるのですが、ここまではとても書けません。
んで、鬱に負けっぱなしが悔しくなって、
一時間のやっつけ自家発電で書いたのがこの喜劇です。
本当にせっかくの傑作が台無しに <ぉぃ
相変わらずレヴィが乙女してるしwww
あと、途中の救命胴着ネタはかなり苦しいです。
あれ、一度水に浸かった後だと、相当経験が無いとかなり難しいはず。
それと荒れた海って本当にシャレになりません。
体力消耗しまくります。果たして素人のロックが一時間持つのかどうか?
それで無理矢理救命胴着ネタ入れたのです。どうかご勘弁を。
外交関係の部分も勝手な想像ですので、実態とはかけ離れていると思います。
最後にリクエストですけど、、、
ぬ、代わりに続き書いてくらはい <マテコラ
13辺りまで書いて頓挫していまふ、あははー、鬱だ orz
バカ氏の作品は嫌いじゃないのだけど、
聞いてもいないことをしゃべり過ぎるとか、自分語りが多いとか、語尾が不愉快とか
2ch上で嫌われる要素が結構多いので気をつけたほうがいいんじゃないかな
…って、大人しくヌルーすべきなのかな
>>463 GJすぎる。すげえツボだ。バカップルいいよバカップル。
>450
エロに至るまでのあれこれが超楽しかった!
脇役の行動とか思考とかも完全にブラクラ世界でもうGJ!
乙女レヴィと野暮天ロック美味しゅうございました、ありがとう神様!
なんか独白の匂いがするな
まあとりあえず乙
(´・ω・`)
そいでは、そろそろ投下するぜアミーゴ
湿度100%。
指先を動かすのも重いような空気が部屋の中まで侵食する。
窓から空を見上げれば、真っ黒に厚い雲が太陽を覆い隠し、降り出すタイミングを今か今かと見計らっ
ていた。
湿度が限界まで上がり、滝のようなスコールが降る、それを繰り返す今の季節はあの灰色の街では夏
の終わり。
昼は暑くても、朝や夜の寒さが来秋を告げる頃だ。
ここタイではあの街のように艶やかな四つの季節を感じることはできないが、こうしてスコールが降る雨
季と、雨を忘れてしまったかのような乾季とで時の移ろいを感じることはできた。
今回の仕事はベトナム軍の武器の横流し。
単純な輸送のみの仕事のはずが連絡がうまくいっておらず、持ち出しだけで丸二日かかり、今朝荷を
受け渡した頃には四人ともぐったりと疲れ切っていた。
港に着いた二人は事務所へも戻らず、スコールの隙間を縫って真っ直ぐにレヴィの部屋へやってきた。
「スコールが降る前にすましちまおうぜ」
そんな軽口を叩いたレヴィを玄関先で早速裸に剥いて、三日間触れることもできなかった彼女の身体
を楽しんだ。
とりあえず、の一度目のセックスを汗まみれで終えて、今、レヴィはシャワーを浴びている。
「あたしがシャワーから上がったら、直ぐ冷房だからな!」
じゃあ、今からかければいいじゃないか、と抗議すると、ここの部屋の主は自分だとばかりにリモコンを
シャワールームに持ち込んでしまった。
「あつ…」
一緒にシャワールームに行けばよかったのだろうが、なんだか疲れが出てしまい、ベッドの上でだらし
なく空を見上げながら一服。
煙の出て行く先には灰色というより真っ黒な空。
手持ち無沙汰でベッドの傍に転がっていたラジオをつけた。
日本語の番組だった。
リクエスト形式の音楽番組だ。
日本人なら誰でも知っている、世界中に放送している(という噂の)公共放送。
ロック自身もあまり聞かないそのチャンネルを、レヴィのラジオが流しているのはなんだか不思議な気
持ちがした。
『次のリクエストは、東京都在住、匿名希望の女の子、からです。今年の夏は…』
女性の軽快な声が、葉書に書かれているメッセージを読み上げる。
ロック自身は一度も葉書を出したことは無いが、受験勉強や試験勉強をしていた頃にはよくラジオのお
世話になったな、と今は懐かしき学生時代を思い出す。
真夜中一人で勉強していても、誰かが起きていることを感じられる、ちょっとした寂しさを音楽やおしゃ
べりで夜の闇にかき混ぜ消してくれるようで嫌いではなかった。
少し耳を傾けていると、シャワーの音が止まり、タオルで乱暴に髪を拭きながらレヴィが部屋へ戻って
きた。
下着は下だけ。
髪を拭くタオルに見え隠れする乳房が柔らかく揺れる。
ちゃんと身体を拭いてから来いと何度も言っているのに、また足元が水浸しだ。
「何だ?ラジオ?」
「ああ、日本の放送局だよ、コレ」
「…ふぅん」
何で日本語のチャンネルなんて聞いてたの?
と、そんな野暮なことを聞いてしまうのは勿体無い気がした。
どうせ聞いたところでまた「ああでもない、こうでもない」と言い訳をつけて逃げしまうのだ。
口元が緩んでしまう程に自分が喜んでいることに気づいたロックは、手元のタバコを消すことでその気
持ちを隠した。
「トークばっかりだな」
「リクエスト番組なんだよ、聴きたい曲をリクエストするんだ」
「その割には喋ってばっかじゃねーか」
「曲をリクエストするときに葉書にメッセージを書くんだ。それを読んでいるんだよ」
「ふぅん…」
気の無い返事をして、さっそくタバコに火をつける。
「シャワーあびてくるからさ、エアコン入れておいて」
ロックは宛がわれた新しいタオルを持って、シャワールームへ消えていった。
『もうひとり、リクエスト葉書読んじゃいましょう。神奈川県は…』
(何言ってんのかぜんっぜんワカンネェ…)
女の、少しだけ高め声。
ロックの言うように葉書を読んでいるのか、もう違う番組になってしまったのか、日本語の分からないレ
ヴィには区別がつかなかった。
別に日本語を勉強するとか、そんな殊勝な気持ちで聞いていたわけではなかった。
だいたいその必要は全く無い。
ロックは普段、殆ど誰とも英語のみで会話しているし、この街ではロック以外の日本人に会うことは滅
多に無いから、日本語を話したり聞いたりするほんのわずかなタイミングすらない。
そもそもこの街で日本語しか話せないようなニッポンジンがいるはずもなかった。
柔らかいトークが続く。
普段はタイの番組や、地元のジャンキーが趣味でやってる短波を聴く程度。
それが日本語のチャンネルになっていたのは、本当に偶然、たまたま仕事に出る前に聞いていたの
が、日本語の番組だっただけだった。
『他、たくさんの特に女の子たちからお葉書いただきました。それでは、リクエストをお送りしましょう。
曲はやました…』
(あれ、何で日本語の番組なんて聞いてたんだっけ?)
裸のまま、首にタオルをかけて、窓を閉めるためにベッドに上がる。
外はもう雨の予感に暗くなっている。
窓から見下ろした部屋の前の通りも、雨の気配を感じ取ってなのか人気が少ない。
野良犬が急いで走り抜けていくのを見送ると、ラジオから柔らかな日本語の曲が流れ始めた。
趣味じゃないと、ラジオのチューナーを回しかけたその時、
(そうだ、あの日、)
ふと思いだした。
今回の運び屋家業に出る前の晩、セックスの後ちょっとしたことでケンカをした。
ケンカの原因なんて覚えてはいない。
部屋が汚いとか、しつこく胸を触りすぎるとか、いつものちょっとした下らない内容だったのは、三日間
仕事に熱中しお互いそのことを口にすることすら忘れてしまったことからも間違いなかった。
ただ、あの晩は二人ともヒートアップしてしまい、
(ロックを追い出したんだった…)
一人になった部屋で、残っていたビールをあおってベッドに横になった。
静かになった部屋で、どうしてあんなことを言ってしまったのだろうか、いやあれはロックが悪いと自問
自答しているうちに、眠れなくなった。
いつもどおりの汚い部屋で、動く影は何も無い。
壁に貼りっぱなしのポスターはその気配を消して、いつも聞こえてくるはずの通りで騒ぐ男たちの声さえ
も聞こえない夜。
暗闇の中でラジオをつけて、偶然拾ったチャンネルが、日本語の番組だった。
(ちょっと声が似てた)
何を言っているのかは全く分からなかったけれど、曲と曲の合間に聞こえるDJの日本語は、ロックの
声に驚くほど似ていた。
それを聞きながら眠ったあの晩は、深く深く眠れた。
「何だ、まだエアコン入れてなかったの?」
シャワーを終えたロックが部屋に戻ってきた。
丁寧にパンツもシャツも着ていたが、タオルはレヴィと同じように首からかけていた。
しかしレヴィは、ベッドの上に膝立ちで立ったまま、ブラインドを下げようともせずに窓の外を見つめたま
ま動こうともしない。
ロックはそのまま近づき、上から包み込むように抱きしめた。
髪からは自分のと同じ香り。
「さっき流れてた曲ね、夏の終わりの曲なんだよ」
ラジオからは、今はレヴィの理解できない日本語のトークが流れていた。
「夏が終わって思い出になるけど、けして君を忘れないって意味…かな」
「ラブソングか」
「センチメンタルだろ?」
まるで子供をあやすようにつむじにキスを落すと、まるで見計らったように窓の外を雨が降り出した。
カーテンのようなスコールは、この世の全てからこの部屋を隔絶する。
もうこの世界に二人きり。
誰にも邪魔されない世界。
ロックが何度も繰り返しキスを落していると、その唇を押しのけて、腕の中のレヴィがくるりと振り向き、
長い腕をからめるようにしてベッドへ誘う。
体重をかけてベッドに身体を沈められながらも、レヴィは首を少し持ち上げ、自ら唇を重ねてきた。
普段のキスとはあまりに違うお淑やか感触に、余計に気持ちが高ぶりそうになるのを必死で抑える。
こんな風に優しいキスをねだるときは、時間をかけて目いっぱい愛してあげないといけない。
「俺たちには似合わない曲だね」
ロックは優しく笑って、もう一度深く口付けた。
おわり
(´・ω・`)
なんだけど、このままではエロなしなってしまうので、この続きを投下するぜ。
484 :
無題:2008/06/29(日) 00:53:46 ID:MHWbUNiJ
窓を閉めた部屋に聞こえるのは、窓の外の激しい雨音と、エアコンの無機質な作動音。
レヴィは自分の胸の上に甘えるように頭を乗せた男の髪に触れた。
最近下町で切ってきたばかりの髪は、ほんの一房だけ不恰好に伸びている部分があった。
後で切ってやろうと長さを確かめるようにその一房を引っ張ると、ロックはそれを合図にずっと手で触れているだけの乳房の下側に吸い付いた。
少し強めのキス。
赤い印がついてしまうと思ってはいるが、止めるつもりは無かった。
そのキスの場所から舌が一点に向かってチロチロと動き始める。
やがてその感触が乳首に触れようとしたとき、ふと離れ、もう一度舌が先ほどと同じ場所へ戻っていった。
もう片方の乳房は手のひらで優しく同じリズムで揉まれている。
あまりに穏やかな快感に、のぼせることもできずに徐々に羞恥がこみ上げる。
もう一度頂に向かって舌が近づく。
今度はそこまで達してほしい。
そう思って思わずロックの頭を抱える。
「どうしてほしい?」
息が、触れられずとも立ち上がってしまった乳首にかかる。
「いつもみたいに…しろよ、早く」
「だめ」
「つっこんで、終わり…でいいじゃねーか…」
「そういうのはさっきしただろ?今はもっと…」
そっと舌の先が乳首に触れる。
「隅々まで食べたい」
つん、つんと上からつつかれた瞬間、臍の辺りにピリッと電気が通ったかのような感覚が突き抜けた。
今度は舌で弾くように舐めあげる。
最初は優しく、何度も、何度も繰り返し徐々に強くしながら舌が往復するたびに、臍の下が疼いた。
思わず背筋に力が入る。
「腰が動いてるよ」
「うる…さい」
息が上がり始めた。
「吸ってほしいんだ?それとも噛んでほしい?」
返事をしたくないと顔を背け、しかし頭を抱える力を強めると、
「いい子だね」
と言って、ロックはようやく乳首を口に含んだ。
少し吸っては口の中で唾液と一緒に舌でこね回して、優しく噛む。
それを何度か繰り返した後、真っ赤になった乳首から唇を話し、手で愛撫を続けていたもう片方の乳首に吸い付いた。
そちらは乳房全体を手のひらで優しく揉んでいただけだというのに、その感触だけで乳首がぷっくりと立ち上がっていた。
そっちもまたさっきみたいにネチネチと焦らすようにするのだろうかと構えると、ロックの唇はその乳首を吸う力を徐々に強めた。
「あっ」
まるで引っ張るように強く吸い上げられる
「・・あぁっ」
痛い、と声を出す瞬間に、ちゅぱっというをさせてロックの唇が乳首から離れた。
触れられたら痛いほどに、乳首が赤く腫れている。
ロックは仕上げとばかりに両方の乳房を力を込めて掴むと、
「いやらしい色になってるよ」
と、満足げににやりと笑った。
485 :
無題:2008/06/29(日) 00:55:34 ID:MHWbUNiJ
柔らかい乳房から腰のラインに沿って、徐々に手を下へ下ろしていく。
右手をシーツとの隙間に入れ、背筋に指を這わすと、こちらの意図を読み、従うままに背中をこちらに
向けた。
身動きを封じるように覆いかぶさり、柔らかな尻の谷間に既にガチガチに硬くなった自分自身を押し付
ける。
こうしてしまえば二人の間に一ミリの隙間も無い。
「すげぇことになってる…」
「ああ、でももう少しガマンするよ」
「何でだよ…早くしろって…」
「こうしていたいんだよ。たまにはいいだろ?こうやっていちゃいちゃするのも」
「ふざけんな。ピロートークは終わってからするもんだ」
「ピロートーク…って、終わったらすぐ寝るくせに」
「うるせぇ黙れ。ってかさっさとう・ご・け!重いんだよお前」
しかたがないな、と首筋に口付け、身体を起こす。
そして、先ほど乳房にしたのと同じように、口と舌とを使って背骨に沿って這わせていく。
レヴィが腰を震わせた。
美しいライン。
腰を持ち上げ、尻たぶを手で広げると、レヴィは両膝を立ててそれを支えた。
秘密の場所が露になる。
赤くなった襞がめくれ、いやらしく滴る蜜を掬い取る。
「濡れてるよ、すごく」
「黙れって…」
「何だかおとなしいね。そんなに早くほしいの?」
横を向いたレヴィが、こちらをじっと睨み付ける。
いい加減にしろ、とでも言いたげだが、だからと言ってこっちのペースを崩すつもりはなかった。
「ねぇ、レヴィ、もっとお尻上げて」
素直に持ち上げられた腰。
赤い花びらが蜜に濡れているのが丸見えだった。
「いやらしいなぁ、丸見えだよ」
腰を抱えて、蜜壷に舌を押し付けた。
「あぁんっ、…あぁっ」
舌を差込み、出し入れする。
両脇の赤く腫れた淫靡な襞を吸い、片方の手を腰から放して指で軽く引っ張った。
充血した淫らで美しい花壷に指をそっと差し込む。
ズプッ
「あああっ」
もう一本、二本の指を簡単に飲み込んでいく。
指の付け根まで押し進めると、動かしてもいないというのに激しく蜜が滴り落ちた。
「全部入ったよ、レヴィ。全部飲み込んじゃった」
指をゆっくりと引き抜き、もう一度押し込む。
その動きに合わせて、レヴィの唇から声にならない声が零れる。
手が滴り落ちる愛液でビショビショに濡れている。
「あ、や…ロック…やめ…」
息が上がっている。
必死に快楽に耐えている。
「レヴィ、かわいいよ」
「うるさ…い、だめっ…、やめ…もっ」
やめてほしいの?
もっとほしいの?
早くしないとこっちだって持ちそうもない。
そう思いながらも愛液を掻き出すような動きを止めることができずに、何度も何度も徐々に激しく往復さ
せると、急に指を包む襞がうごめき、抱えていた腰から力が抜けた。
486 :
無題:2008/06/29(日) 00:57:27 ID:MHWbUNiJ
「ふぅん、黙ってイッちゃったんだ…」
身を捩ってロックを見ると、困った顔を「作って」さっきまでぐいぐいと突っ込んでいた指を舐めていた。
HENTAI。
おまえは正真正銘のHENTAIだ。
「やめろって言った」
「聞いてない」
「言った!」
「言ってないよ?聞いてない。もっと、ってお願いは聞いたけどね」
この嘘つきヤロウ。
口元が笑ってんだよ!
「んなこと言うかよ!こっちは勝手に指突っ込まれて、ナカ掻き回されて、イヤだからストップかけたって
のに、ふざけんな!」
と、喚いた自分の声が止まると奇妙な沈黙。
ロックの困った顔が、作られたそれから本当に困ったときの表情に変わった。
あれ?何か間違えたっけ?
「イヤだったの?痛くした?」
俯くな俯くな俯くな!
そいうい意味じゃなくて、そうじゃなくて、だから、
「一人で振り回されてバカみたいにアンアン言ってるのがイヤだったんだよ!お前ばっかり楽しそうにし
てて、くやし…」
あれ?また何か間違えたか?
っておいおいおいおい!
こいつベッドの縁に座って、パンツはきやがった。
「………楽しくないなら、本気でノーって言えばいいだろ?いつだってお前のノーは俺のイエスより強い
はずだ。それとも俺がレイプしたとでも言うつもりか?」
「んだよそれ、んだよそれ、あぁ!?んなこと誰が言ってんだよ!」
「お前が言ってるんだよ、「イヤ」で「楽しくない」ってな。俺は嫌がる女をレイプする趣味はないよ」
「何お上品ぶってんだよ!だいたいお前のはしつけーんだよ!ただのファックだろ!?ただのファックで
いいじゃねーか!裸んなって突っ込んで吐き出して、それで終わりでいいじゃねーかよ!」
「俺とのセックスがただのファックだって言うんなら、俺はもう二度とここへは来ない。俺はお前をファック
したいんじゃない。それすら分かっていなかったんなら、こういうことは何の意味も無い。明日からはた
だの同僚だ」
スラックスをはき、ベルトを締め、脱ぎ散らかしたシャツとワイシャツを手に立ち上がる。
「悪かったよ。今後このような間違いをしないように気をつける。じゃ、おやすみ」
背を向けてドアに向かうロックの背中に向けて、ベッドサイドに置いてあったラッキーストライクを投げつ
ける。
見事ストライクしても、この程度じゃ振り向こうともしない。
いつもそうだ。
まるでボタンを掛け間違えたシャツのように、自分の言葉が足りてなかったり、乱暴なもの言いが言葉
を真っ直ぐに受け取るこいつに誤解を与える。
そしてその誤解を解こうとして、また誤解を与える。
それの繰り返し。
いつまでたってもシャツ一枚満足に着れやしない。
「意味が無いって何だよ、間違いって何だよ…あたしとセックスするのは間違いかよ…」
ドアが閉まりきる前にようやく吐き出した言葉。
こんな言い訳はすがりつくみたいでみっともない。
「分かるだろ?分かってるんだろ?あたしは…」
ドアが開いて、ロックが部屋の中へ戻る。
腕を組んで立ってる男はまるで万引きしたあたしをとっ捕まえて、児童福祉センターに預けようとした警
官のようだった。
って、あたしは怒られているガキか?
それとも昼メロのヒロインよろしく、雨の中地べた這いずり回って名前を呼べっていうのかよ。
言いたくない、言いたくないんだよそんな恥ずかしいことは。
「一緒によくなりたいなんて言わせんな」
最後の一言は、殆ど蚊が鳴くような小ささだった。
487 :
無題:2008/06/29(日) 00:59:23 ID:MHWbUNiJ
ケンカするほど仲がいいと言うけれど、それはお互いが人間の場合に限るんじゃないだろうか。
人間だと思っていたこの女は時々山猫(ウミネコでは鳥になっちまう)に化けて、引っ掻いては爪が痛い
と泣き喚く。
可愛いとは、思うけれど、正直時々堪らない。
「俺が謝ったほうがいい?それともお前が謝る?」
「ごめん…」
そして今度は仔猫に化けて、この有様だ。
「気持ちよくないの?」
頭を横に振る。
「楽しくないの?」
振り続ける。
「ファックだと思う?」
首、痛くならない?
「じゃあちゃんと言ってよ、レヴィ」
ベッドに座り、肩に手を回して抱き寄せると、本当に素直に身を任せてきた。
素直なときも、素直じゃない部分も好きだし、二丁拳銃振り回してガンファイトこなす彼女を美しいと思う
のも、体の上で快楽に溺れている姿を美しいと思うのも、全て真実。
だが、二人きりの時間ぐらいはこんな感じにいつも素直でいてほしいと思ってしまうのは贅沢なのだろう
か。
(ツッこんでる最中は素直なのにな…。ってずっと入れっぱなしってわけにもいかないし)
「何言えばいいんだよ」
「俺とのセックスをどう思っているか、かな」
反抗的な目。
うっすらと染められた頬。
可愛い。
可愛すぎる。
どうせこれ以上何をしたってマトモな返事は戻ってこないのだから、と、ここは一度引いて、別の手段で
素直にさせる方法を選ぶことにした。
両手で頬を優しく包み、口付ける。
「第二ラウンド、…第三ラウンドかな?はじめよっか、レヴィ」
488 :
無題:2008/06/29(日) 01:00:33 ID:MHWbUNiJ
「ねぇ…レヴィ…気持ちいい?」
あたしの上で鼻息荒く、犬みたいにハァハァ言いながら突っ込んでるバカが、バカなことを聞いてきた。
気持ちよくなかったら、どうしてあたしがアンアン言ってると思ってんだよ、バカだこいつ。
「ねぇ、気持ちイイって…言ってよレヴィ」
可愛いハニーのおねだりに、口から出るのをどうにかマトモな言葉にしようと腹に力を込めるが、全く無
駄な努力だった。
言葉になんか、なりゃしない。
その上腹に力を込めたせいで、締まったアソコに突っ込むロックの動きが一瞬止まる。
汗かいて、目を閉じて、イクのをガマンしている顔だ。
前に一度、「ソーロー」って言って怒らせたことがあった。
意味は分からなかったけど、ローワンの店のアジア系の女から聞いたってエダが言ってた。
萎えさせるには一番だって。
案の定萎えて、その上涙目になったっけ。
それからコイツは時々、こんな風にガマンして、耐えるようになった。
かわいいな。
ホントこいつ、すげぇかわいい。
また動き出すロックの腰に足を絡めて、もっと奥まで突っ込めと足に力を込める。
なんだか呼吸ばかりが荒くなって、頭の中が真っ白になってくる。
どうしよう、言ってみようか、意味は分からないけれど。
この気持ちよさに頭がバカになる前に。
「んっ、ロック、…なぁ、ロック…」
「何、レヴィ?」
言ってみた。
「スキ」
こいつ、中に出しやがった…。
489 :
無題:
「くそったれ、くそったれ、くそったれ」
「ごめん、ホントごめん」
「おまえさっき言ったよな、黙ってイッたとか何とか。それであたしを責めたのにそれが今のは何だよ、
何もなしに勝手に出しやがってくそったれ」
乱暴な言葉をいくら投げつけられても、にやけた顔が元に戻らない。
反省しなければならないことは分かっている。
っていうか、レヴィは本気で怒っている。
分かってる。
でも、
「嬉しいんだ、レヴィ」
確かにさっきのは日本語だった。
英語でもセックスのときですら口にしてくれない「好き」という言葉。
それを日本語で囁いてくれたのが本当に嬉しかった。
一緒に日本へ行った時でさえ、全く興味を示さなかった日本語で。
俺の母国語で。
俺へだけの言葉で。
「好き」と言ってくれた。
どこで聞いてきたんだよまったく。
どうしてくれるんだ、顔がいつまで立っても元に戻らない。
「俺もだよ。「スキ」だよ、レヴィ。心から」
「意味わかんねーよ、どういう意味だよ」
……………え?
「エダがローワンの店の女から聞いたんだってよ。日本語なんだろ?これ」
え?
「ニホンジンの男を興奮させるには一番だって。意味教えろよ、どういう意味だよ」
はい?
「おまえ…意味知らないで言ったの?」
「知らねーよ、ニホンゴなんて。でも喜んだってことは悪い意味じゃねーんだろ?」
落された。
高いところまで登らされて思いっきり落された!
「お前はだいたいデリカシーがないんだよ!ソーローとか、変なニホンゴばっかり覚えやがって」
「何だよ何でいきなり怒んだよ!意味わかんねーよ」
「ニホンジンの男はナイーヴなんだよ!少しは気を使え!」
「あぁ!?ってか、うぜぇよおまえ。さっさと抜け!あっ…」
絶対もう一回言わせてやる。
「ばか、でかくすんな!」
もう一回言わせるまで絶対抜くもんか!