スクールデイズの分岐ルートを考えるスレ part3
いたるの引越しの続編です。
いたるの誕生日。
誠と言葉のマンションにて。
「いたるちゃんおめでとう。」
いたると言葉と誠と心が祝杯を挙げていた。
今日はいたるの誕生日、同級生からは夕方カラオケ屋で祝ってもらったらしく
いたるにとって今日二回目のパーティだった。
「これは俺と言葉からだ。」
「これは私から。」
それぞれプレゼントをいたるに渡した。
誠と言葉からは服の仕立券で心からはネックレスだった。
「みんなありがとう。」
いたるはすごく嬉しそうだ。
こうして大好きな人達に囲まれて何の心配もなく誕生日を過ごせるのは
両親が離婚して以来初めてだったからだ。
「いたる、お前の好きなハンバーグだぞどんどん食べろよ。」
「うん、ありがとうお兄ちゃん。」
今日の料理もケーキも全て誠が張り切って作ったものだ。
桃パフェも手作りでとても美味しそうだった。
桂家と関りを持つようになってご馳走を食べる機会は増えたけれど
いたるは今でも誠の料理が大好きだ。
いたるにとって誠の料理が普通の人が感じる母の味に当たるのだ。
『子供の頃は”おにーちゃのハンバーグ♪”なんて言いながら食べたっけ。』
あの頃のいたると違うのは誠以外にも
一緒に食べてくれる大好きな人が増えた事だ。
今日の料理は心も言葉も一緒に喜んで食べてくれている。
いたるはどんなプレゼントよりもそれが一番嬉しかった。
いたるが周りを見回すといつの間にか心が席を外していていた。
暫くして戻ってきた心は一冊のアルバムを抱えていた。
「誠お兄ちゃん、このアルバムってお姉ちゃんとの思い出?」
「それはいたるが小さい頃の写真だな。」
「じゃあ見よう。」
「心、人のアルバム勝手に見るもんじゃ・・」
言葉が言い終わるより早く心はアルバムを開いた。
「うわー、いたるちゃん可愛い。」
子供の頃のいたるが手や顔を汚しながら大喜びで
ハンバーグを食べている様子が写っていた。
「もう!恥かしいよ心お姉ちゃん!」
アルバムは楽しそうないたるでいっぱいだったけれど
一枚だけ寂しそうないたるが写っていた。
それは誠と手を繋いだいたるが駅を背景にして写っていたものだった。
『この頃もそうだったし、ついこの間まで私はこんな顔をしてたんだろうなあ。
お兄ちゃんやお姉さん達と楽しく過ごしても
家に帰るのが嫌で本当に辛かったよ。』
いたるの楽しい時間は子供の頃から本当に短かった。
だから誠達と一緒に過ごした時間が楽しければ楽しいほど
別れる時の辛さもひとしおだった。
家に帰ればあの親父がいてずっと身の危険を感じながら過ごす必要があった。
だから小さい頃は帰りの電車の中で何度も泣いたし
家に着いてもなかなか誠を離さなかった。
そんな日々に耐えられずよく家出をしたし
母と誠と一緒に暮らしたいと訴えた。
でも両親の離婚時の取り決めでそれは叶わなかった。
自分のそんな立場を何度も呪ったし理不尽さも感じていた。
そんな時に優しい言葉や心と出会い兄以外にも頼れる人がいる事がわかった。
もしこの出会いがなかったらいたるはとんでもない非行に走ったかもしれないし
精神を病んだかもしれない。
でもそれはあくまで事態の軽減であって根本的な解決ではなかった。
最近まで誠や言葉達との別れ際はとても辛かったのだ。
でも今は桂家に引っ越してそんな心配は要らなくなった。
そしてこれからもそんな日々が続く。
いたるはそんな日常にすごく感謝したい気持ちになった。
美味しいご飯を作ってくれる兄にも。
いつも優しい言葉や心にも。
本当の娘のように可愛がってくれる桂夫妻にも。
「おにいちゃん、お姉さん、心お姉ちゃん本当にありがとう。
これからもよろしくね。」
End