FantasyEarth ファンタジーアースでエロパロ 4dead

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437名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 15:56:24 ID:LQJBw3ik
保守。
暇になったらなんか書くかな・・・  
438名無しさん@ピンキー:2009/02/21(土) 14:22:49 ID:IXR76A0q
439名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 17:34:45 ID:xDceRBG4
投下したいんだけど、ちょっと長くなっちゃって、容量とかって大丈夫なのかな。
このスレのdatと上げようとしてるテキストのサイズ合計が512kにならないようにすりゃいいの?
440名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 17:43:46 ID:5jCg8yhc
俺携帯だから残りどれくらいか分からないけど、
投下するならどんどんやってくれ!
つーかどうか投下お願いします。
441名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 18:21:12 ID:xDceRBG4
うーん大丈夫なのかな。
書き上げた直後だから、ジャンプ読んで推敲したら投下するわ。
442名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:05:35 ID:CEt0pOZF
1/13
「ライサラ家は、まだ何も?」
 ジャンヌ屋敷の一室。いれたての茶を楽しんでいたジャンヌの姫君は、少し茶で湿った吐息と
共に、自分付きの侍女――自らを姫の『犬』だと定めた娘――に、そう訊いた。犬がウェイトレ
ス衣装のフリルを揺らしながら大きく頷いたのを見て、今度は重たいため息をつく。
「三男は結局家に戻ってはいないようだが……それで終結とはいくまいな」
「いずれは……」
 ライサラ家、とりわけその三男とジャンヌ家とのいさかいは、他ならぬこの犬と三男との政略
結婚に端を発している。ライサラ家にしてみれば、一度結ばれた婚姻が姫の一存で解消された形
であり、その婚姻を両国同盟の足がかりにしようという目論見を一方的に砕かれたことにもなる。
 にも関わらず、姫がジャンヌ家の家督を相続して以来、ライサラ家からは何の音沙汰もない。
再び犬と共に暮らしていけることは喜ばしいが、ライサラ家のこの静けさは不気味だった。
「姫様、そんな物憂げなお顔をしないで下さいまし」
 犬が、姫の座っているソファーの肘置きに腰かけてくる。自然、犬がわずかに姫を見下ろす形
になる。犬だからこそ許される、主人への気安い仕草だった。
「だがな犬、私はもうジャンヌ家の主なんだ。いろんなことを憂えなきゃならない」
「ですけど! 今は、だって……寸の間、戦争も何もない静かな日じゃありませんか……」
 見下ろす犬の瞳が潤んでいる。
(ああ、それもそうだ。せっかく犬との日々が戻ってきたのに――)
 二人は息の詰まる毎日ばかり送ってきた。外を向けば戦争や他家との交流、相続に関する幾多
の手続き。中を向けば意外と火の車な家計に、人手不足による家事一切の繁忙化……そんな予定
の隙間を縫って、今日と言う寸暇が巡ってきた。
「姫様」
 瞳を熱っぽくきらめかせて、犬が顔を寄せてくる。姫は瞳を閉じ、少し顎を上向けて、まだ湿
っぽい唇を差し出した。
「んっ……」
 唇にやわらかい感触が重なる。鼻先をかすり合わせ、静かに互いの熱を感じあう。やがて犬の
手が姫の肩に伸び、そして、舌が姫の口の中へと伸びてくる。
 茶の香が残る姫の口中を犬の舌が這い回る。頬に流れ着く犬のかすかな鼻息がくすぐったい。
久々の口づけだったが、犬はいつもと変わらぬ貪欲さで姫の唾液をむさぼってくる。
 主従はあっという間に逆転していた。姫は今、もう、犬がもたらすであろう快楽に焦がれるみ
だらな雌になりつつあった。
443名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:06:44 ID:CEt0pOZF
2/13
「んん……んっ?」
 吐息と衣擦れの音に混じって別の音が響いた。わずかに残っていた理性が、いったん犬を押し
返そうとする。だがそれより早く、犬の手が姫の乳房に降りた。
「ま、待て。ぁっだめ……」
 戦にも着て行く伝統の青装束の上から触れられただけなのに、全身の湿度が凄まじい速度で増
していく。どろどろの粘液のようになってしまった肉体が犬の指先を求めはじめるのを感じる。
脂肪をこねられるだけでは足りない。乳頭に血が集中しはじめ、下着の内から恋しげに主張をは
じめる。乳頭だけではない、もっといろんな所をいじって欲しい……
「ふふ……」
 犬が妖しく笑みながら、チェストのボタンに手を伸ばす。ああ、あの指が素肌に触れるときが
来る。逆らえない、姫はただただ熱い吐息をついて、無垢にその快楽を迎え入れようとした。
 しかし、それはついに訪れなかった。蠢く犬の手を、別の小さな手がつかんだためだ。
「あ、あなた……!」
 犬は、はじめてその少女に気づいたようにぱっと身を引いた。
 少女は少し唇を尖らせて犬をにらんでいる。
「ななっなんですのその眼はー! ハイドでこっそり忍び寄っておいて……」
「待て、犬。その子は……猫はちゃんとノックをして、普通に入ってきた」
「う、うそ……」
 猫と名乗るワイルドキャット装備のスカウトの少女は、最初からハイドなどしていなかった。
この異様に気配の薄い少女を、なぜか姫だけが鮮明に認識することができる。事実、犬は猫に触
れられる瞬間まで、その接近に気づかなかった。
「むぅー」
 猫が不機嫌なのは、犬が自分に気づかないこと、犬が姫をもてあそぼうとしていた(ように見
えた)こと、犬が真っ向からにらみ返してくること……つまるところ、犬の存在が原因だった。
猫が屋敷にいついてからしばらく経っているが、この二人はソリが合わないらしい。
「……それで猫。何かあったのか」
 まだぼうっとする頭を振りながら姫が訊くと、猫はインベントリから一通の書状を差し出して
きた。きちんと封印のなされた正式な書状に見える。
「そうか……ついに来たか」
 ライサラ家からの書状に違いなかった。にらみ合いを続ける犬と猫を手で制し、そのまま猫か
ら短刀を受け取り、封を切ろうとする。
「あれっ!?」
 封の表面に刻まれた印をみて思わず声が漏れた。とにかく封を切り、素早く書状に眼を通す。
 そして姫は、その差出人との間に結んだまま、すっかり忘れていた約束を思い出した。
「縦ロールからだ。ウォーロック古戦場での約束を果たせと――」
444名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:08:57 ID:CEt0pOZF
3/13
「イイ! イイよぉプリンセス! その装束は本当に戦着なのかい? とてもそうは思えないセ
クシーなラインだネェ!」
 ローグローブ台地の一角で、少し低い女の声に連動して、クリスタルのフラッシュが瞬く。錬
金術によって編み出された、視界を画像として記録するSSの撮影だった。
 小さな滝のある一角に簡易テーブルとチェアを置いた縦ロールの女は、ぶ厚い眼鏡にフラッシ
ュを反射させながら、満足げに口元を吊り上げている。
 ライサラ家との一件で協力を求める際、この縦ロールの商家の娘が提示した条件が『姫のセク
シーな写真を撮って売る』というものだった。一見ぽやんとした縦ロールの頭脳は今めまぐるし
く回転し、商品展開についての算段をいくつも立てているに違いない。
「よっし小休止! できた画を縦ロールとチェックするから少し時間をくんな」
 撮影者が離れると、姫はがっくりと肩を落とした。撮影者の指示でポーズを取って、表情も整
えて……モデルがこんなに疲れるとは思わなかった。
「姫様、汗を……」
 犬が姫の頭からキャップを外し、少し蒸れた髪や額をやさしくふいていく。犬にとっては何げ
ない手つきなのだろうが、どうしてもあの魔性の手さばきを意識して、なんだか額までジンジン
としびれたようになるのが気恥ずかしかった。
「お顔が真っ赤です。もう2時間にもなるのに、まだ続けるのでしょうか」
「ああ。だがあの女……パツキンといったか。大した腕だ。彼女が何を撮ろうとしているのか、
また、私がどのように撮られているのか、クリスタルを通して伝わってくる」
 縦ロールが連れてきた撮影者は、幼なじみだという長身の女性だった。メルファリアでは珍し
い金色の長髪をまっすぐにおろし、パツキンと名乗った。
「姫様……あの、なんだか楽しそうですけど……」
 鋭く言われて、姫は苦笑する。
「わかるか。なんだかな。パツキンの腕だろうか。ひととき別の自分になっているような不思議
な感じだ。ジャンヌ家の主ではない、身一つで奔放に各地を歩く女になったような」
「……イヤです。お一人でどこかへ行かれては」
 不安げに眉をよせた犬の頬に手を添える。
「はは。例え話だし、今日限りの仕事だよ。それに多分、次が最後の撮影だろう。なんとなく、
あのパツキンがどういう構成で私を画にしようとしているのかわかるんだ」
 少し離れた木陰にも目配せする。第三者に覗き見などされないよう、縦ロールにも秘密で猫を
見張りにあたらせたのだ。もとの気配の薄さもあって、縦ロール側の二人はハイドをした猫の存
在に気づいていない。
(猫も退屈させたな。もうすぐ終わる。そうしたら、三人で……)
 寸暇の残り時間をどう使おうかと姫が考えようとしたとき、パツキンのからっとした声が撮影
の再開を告げた。
「ここまではオッケーだプリンセス! さあ、いよいよ大詰めだよ――『袋とじ』部分の撮影だ」
445名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:11:05 ID:CEt0pOZF
4/13
「だだだめェー! こんな姿の姫様を衆目にさらすなんて、許せませんわー!」
 犬は撮影の中止を主張しながら、半狂乱の体で、姫の姿を隠すように取りすがった。
「しつっこいネェ! こちとらコレで飯食ってんだ、そのあたしが必要だって言ったら、絶対に
そのプリンセスの画が必要なんだよ!」
 パツキンも退かない。
「で、でもでも! さっきまでの姫様だって十分素敵……素敵でしたわ! このわたしが認めま
す! 今までのでも十分……」
「わかってないネェ! あんなのはしょせん前座なんだ。いいか? これまでのプリンセスの画
はね、いわば夢の時間なんだ。男達は凛としてカッコイイプリンセスに憧れ、惚れ込み、『ああ
こんなネェチャンと恋人同士になれたらなぁ』って切ない想いを募らせるためのもんだ。普通恋
人同士になったらどうする!? お互い見つめあうままじゃあ何も始まらないだろ!」
「こっこここ、恋人ぉ!?」
「そうさ! 恋人同士仲良くなって睦まじくなったら残ってる現実なんて一つっきゃない! ドえ
れぇコーマンぶちかますしかないんだ! それでようやく、プリンセスは男どものなかで現実に
なるのさ! 右手は恋人って言葉を甘く見るんじゃないよ!」
「なっなっ、こー……なぁ!?」
 屋敷暮らしでは耳にするはずもない下劣な単語の連発に、さすがの犬も切り返す術を失ってし
まった。姫自身、パツキンの言っているのが具体的に何を指しているのかはおぼろげにしかわか
らない。だがとにかく、彼女の言いたいことは理解できたつもりだった。
「心配するなパツキン。つまりその、私をこの姿で写してこそ、お前の作りたいものが完成する
ということだろう。例えどんな内容でも……その道で生きる芸術家が、この私を題材に作品を創
造しようとしている。中途で投げては、ジャンヌの名折れ……!」
 硬直した犬をそっとよけて、姫はその姿を白日のもとに晒した。
 上半身こそ普段と変わらぬ青いジャンヌの戦装束。だがその実、姫は下着を着装していない。
ライサラ家から犬を救い出したあのときのように、硬い布地が過敏な部位を刺激し、それだけで
頭をもっていかれそうになる。だがそれ以上に、下半身に鎮座する輝きが姫を昂ぶらせていた。
 純白に輝くビスチェの一部――ウェスタレギングスとグリーヴスだった。大胆に切れ込んだハイ
レグは、実に局部以外のほぼ全部を露出させている。年相応の肉おきに加え日々の鍛錬で磨き
上げられた姫の太腿が、歩みとともに躍動する。
「いっ、いけません姫様! そんな下をはき忘れたみたいなあられもないお姿を晒しては……!」
「……犬」
 姫は犬に背を向けて、首だけで振り返った。
「私は見て欲しいのだ。私の中に、私の知らぬ私がいる。こんな気持ちははじめてだ……私は世
に見せつけたい。ジャンヌの主ではない、ただの奔放な女の私を世にひけらかしたい。今だけの
私を、誰よりお前達に……」
「いいネェプリンセス、そういう変態的なあんたをアタシが切り抜いて永遠にしてやるよ。水場
に降りな! 野郎どもが泣いてヌかせて下さいって頼み込むようなアンタを引き出すからね!」
 パツキンの指示に従って小川のせせらぎに降りていく。
「ああ姫様……んもう! こうなっては……!」
 犬が大慌てで縦ロールに突っ込んでいくのを、完全な被写体となった姫は気づかなかった。
446名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:12:20 ID:CEt0pOZF
5/13
「そう、もっと足ひらいて! 右足は手で押し開くように! 左手は伸ばした左足に添えな!
肌にからむ滴が野郎のドロドロした汁だと思うんだよ!」
 小さな滝の横で、しぶきに晒されながら撮影は続けられていた。姫はパツキンの指示に従順に
従い、時には川にアヒル座りで腰までを水につけ、時には壁に手をついてビスチェの食い込んだ
尻を揺らした。フラッシュが目を焼くたびに体温があがり、水と素肌の温度差が脳髄を痺れさせ
る。呼吸が荒れる。
「イイネェそう! そのエロ顔いただいたよ! だが本番はここからだ、プリンセス! アンタ
の顔は今から首の上じゃなくそのビスチェの下でぷっくり膨らんでるコーマンだからね! イイ
ね、コーマンが顔だと思うんだよ!」
(ここが……私の、顔?)
 馬鹿なことを、と笑う気にはならなかった。それどころか自然と、その手が『顔』に降りて行
く。自らの体の上を蛇が這うように、つ、つ、と、下へ、下へ……。
 指先が、水に濡れたビスチェ越しに『顔』に触れる。と言っても、ほんの少しビスチェの表面
に触れただけだ。まだ、なんの感触もやってこない。
(もっと強く触れたら……この顔をやさしく撫で回してみたら……)
 唇を噛み、沸きあがる欲求を抑える。そこまでいっては、これは芸術ではなくなる――
「シてもいいんだよ」
「パツキン!? だが……」
 思いがけぬ撮影者の許可。かろうじて躊躇してみせた声に期待が混じっているのを自分でも感
じる。
「いいんだよ。野郎どもがヌかせてくれと頼み込むくらいの画にするって言ったろ。それなら、
まあちょっと違うけど、アンタがヌいてるくらいの画でいいのさ。安心しな、下は写しやしない、
乱れてるあんたの顔をきっちり収めとくからネェ」
 唾液が音を立てて、カラカラの喉にからみついた。この渇きを癒せるのか? この渇きを、こ
の行為で癒すことができるのか? 答えを探るように、姫の指に力がこもる。
「そこまでです!」
 突然の犬の声に姫の行為は中断させられた。いや、声だけだったら姫は構わずに行為に没入し
たろう。指を動かすことができなくなったのは、その目に衝撃的な姿が飛び込んできたからだ。
「犬! その服は……」
 躊躇なく水辺に降りた犬は、いつものウェイトレス姿ではなかった。肩口と腹部を切り抜いた
ハイレグスーツ。頭には猫のそれを模したと思しきとがった耳、尻には同じく尻尾、そして線の
一つ一つがかすかに肉に沈んだ、網目のタイツ。
「ミーア装備……です。縦ロールさんに頼んで、この姿でなら被写体の交代を許していただきま
した。だから姫様、もうどうか、そんな……あっ」
447名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:15:16 ID:CEt0pOZF
6/13
 犬の言葉など半分も耳に届いていなかった。もうその頭脳を回転させることもできない。姫を
突き動かしたのは、一種のインスピレーションと言うしかなかった。
 犬の手を取り、強引に抱き寄せる。
「あんっ」
 右腕で背中を抱き、戦装束の下で張り詰めていた乳房に、犬の乳房を押し当てる。脂肪がゆが
み、乳首がつぶれ、それだけで腰が抜けそうになる。だから左の手で、網タイツの網目からガー
ドニーの内側に指をもぐりこませる。犬の尻を包むガードニーの布地に、尻たぶをつかんだ姫の
指が浮かび上がる。
「……こうだな、パツキン?」
 呆けていたパツキンが、姫の呼びかけで芸術家の目を取り戻した。これまで以上のペースでフ
ラッシュが連続する。姫のインスピレーションは、この芸術家の歯車を回転させた。
「ひ、姫様、もうおよしになっ」
 犬の唇をふさいで言葉を奪う。右手の爪が露出している背中の素肌を愛撫し、左手は尻尾のは
えた尻をこね回す。触れあい歪みあう乳房から、犬の体がこらえきれずに打ち震えるのが伝わっ
て来る。
 舌も絡めずに唇を離したとき、犬の呼吸はもうすっかり蕩けきっていた。
 こういう時、姫を良いように弄べる手管を誇る犬が、互いに装いを変えたこの場では、姫の拙
く荒々しい手管におぼれようとしている。その事実が姫の衝動を押し上げて行く。
「可愛いぞ、犬」
 犬を滝の流れる岩場に押し付ける。流れ落ちる水が犬の右肩をかすかに濡らしていく。
「舌を寄越せ」
「あっ……」
「早く」
 犬は、姫を制止する力も自分がこの場に割って入った意味も失くして、命令どおりに紅くぬめ
った舌を外気にさらした。それを、ハンドスキンを脱ぎ捨てた姫の指がつかむ。
「もっとだ。お前のだらしなく長い舌を全部だせ」
「えぐぅっ」
 舌を無理やり引っ張られて犬がうめく。愛しい娘が間抜けに大口を開き、舌を引っ張り出され、
目の淵にうっすらと涙をためている……沸きあがるインスピレーションの源泉が嗜虐心であるこ
とに、姫は気づかない。
「そうだ、そのままだ。少しも戻すな。がんばってそのまま舌を突き出していろ」
 手を離すと、必死に突き出された舌先が揺れはじめる。その懸命さがいじらしい。と同時に、
あさましい食欲にも似た衝動が頭をもたげる。
 姫は舌なめずりを一つ。唾液でねばる口を開き、硬く震える犬の舌を一気にくわえ込んだ――
448名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:16:24 ID:CEt0pOZF
――パツキンは夢中でSSを撮り続けた。被写体に過ぎなかった姫が、今やパツキンの想像を超
えた偶像となりつつある。はじめこそ意欲を刺激されなかったお付きの娘も、豹変した姫と絡み合
うことで被虐の花が開いた。生涯最高の作品を作り上げられるかもしれない。
(けど、まだ足りないネェ。プリンセス達じゃない……きっとアタシに)
「縦ローーールッ!」
 テーブルで出来上がった画の構成に腐心していた幼なじみが、呼び声にこたえてやってくる。
「なんでーすのー。あたしぃ、いーそがしいんだけーどー……お姫さんたーち、なんかすごいー
ことになってなーい?」
「アタシもシたくなっちゃった」
「ハァッ!?」
「プリンセス達ァとんでもないネェ。このままじゃアタシのクリスタルに収めきれない……だか
らアタシもあの二人と同じように高まらないと写しきれないんだよ」
「どーういう理屈ー?」
「いいから早くシておくれよ! 最高の一瞬がこうしてる間にも蒸発していっちまってる!」
「あんまーり過激すーぎるとー、出版禁止かかっちゃうかもーなんだーけどー」
「そしたらアタシが自腹切って出版費用もつから! だから早くゥ!」
 金の話をした途端、縦ロールの眼鏡が光った。恐らく一瞬で損得勘定を終えたのだろう。パツ
キンは作品の完成を確信した。
「でーどうすれーばいいのー」
「……イジメて欲しい」
「えぇ〜。あれめーんどくさいからイヤーだー。わたしぃがネコじゃーだめー?」
「ダメだ! 詳しく説明してる暇ははいんだよ、頼む! はやく! シてぇぇぇっ!」
「……色情狂」
「はうっ! い、今の一言良かった、凄く! はじまってる!? もうはじまってる!?」
 背後でため息が聞こえる。視線は蠱惑的な躍動を続ける姫らから外すわけにはいかないので顔
は見えないが、縦ロールはさぞあきれた表情をしているだろう。だが、それも一瞬だ。
「じゃあ、すーわってー」
「いや、今の角度が最高なんだ。なんとかこのまま」
「座れ」
 言葉と共に縦ロールの手が肩に触れた。途端、抗い難い重圧を背中に感じ、ほとんど落ちるよ
うに、パツキンはせせらぎの中に座りこむ。
(た、縦ロール……本気だ!)
 襲ってきた震えは、下半身を濡らす水のためではない。幼なじみは本気で自分をイジメるつも
りだ、姫があのお付きにしているように。その予感が、パツキンの長身を震えさせた。
449名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:23:08 ID:CEt0pOZF
8/13
 縦ロールが、濡れることもいとわずパツキンの背中側に腰を下ろす。脇から差し込まれた手が
あれよあれよと言う間にシャツをはだけていく。下着も取り払われ、うっすら肋骨の浮いたパツ
キンの素肌が露にされる。
「いっ!」
 胸元に激痛が二つ。薄い乳房のてっぺんを、縦ロールの指が力いっぱいつまみあげた。思わず
視線を外しかけたが、行為をエスカレートさせていく姫らの姿を一瞬たりとも見逃すわけにはい
かない。奇しくも、姫がお付きの屹立した乳首をこねくりまわす瞬間をフラッシュが捉えた。
「た、縦ロール。ダメ、もっとやさしいぎっ!!」
 縦ロールは言葉もなく、今度は爪さえたてて、何の力も持たない小さな果実を虐待する。激痛
が神経を駆け上り、脳髄の中で跳ね回る。それでも芸術家の意地が、フラッシュを姫らに注ぐ。
「あぎぃっ……いだっ、いだいぃ」
 声が漏れ、涙がにじむ。視界を保つためにこらえればこらえるほど、刺激を重ねられた乳首に
血液が集中し、かたくかたく張り詰めていく。血のもたらす熱が、痛みのもたらす熱が、混ざり
合っていく。
 首筋に縦ロールの吐息が触れる。その指先と打って変わって、うぶ毛をそっとなぜていく優し
い空気の愛撫。脳へ駆け上る激痛とは逆に、そのくすぐったいような感触はしたへしたへ、ゆっ
くりと滴り落ちていく。
(あっ……)
 優しい感触が背中を下り、痛みの源泉と交差した瞬間、高まり、張り詰めた熱が、これまでと
違う感触を脳に伝えた。情報量が、脳の処理できる限界を上回っていく。
(あたまン中、ぐじゃぐじゃになってく……!)
 痺れる、痺れる。痛みを痛みと認識できない。水に浸った下半身に、吐息の余韻が到達する。
「あっ……んンッ!」
 嗚咽が嬌声に変わったのを感じる。下半身を流れていく水、首筋に当たる吐息、すべてが極上
の快感として処理されていく。肉体のほんのほんの一部を責めあげられているだけなのに、全身
が直前までのパツキンとは別の存在に変容している。
「縦ろーるゥ……胸だけ、やだァ、ひんっ」
 懇願はなおも入力される刺激にかき消された。突起をちぎり取らんばかりに苛まれているのに、
今やそこは痛みを享受し、なおも貪欲に張り詰めている。
「やっ、やだぁ。頼む、このままじゃアタシ……アタシぃ、胸だけで……」
「いいーじゃないー。気持ちーいいんでしょうー」
 やっと縦ロールの声が聞けた。けれどその声は、あの吐息のようには優しくない。
「もっと、もっと他のトコもぉ」
「他って〜?」
「下……シタだよ! シタぁっ!」
「わかんーなーい。もうやめーたー」
「えっ……」
450名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:25:26 ID:CEt0pOZF
9/13
 押し寄せていた波がさっと引いていく。縦ロールの手が離れたのだ。達しきっていない脳の熱
が、急速に逃げていく。
「パツキンーやだやだとーかわかんないことーばっかり言うんだーもんー。どこーをどうして欲
しいのーか、はっきり教えてーくんなきゃわかんなーい」
「だっだからァ、下だよ、シタァ! 下を……ほらっ。わかるだろ!? わかってよぅ!」
 必死だった。このまま熱が引いてしまえば、もうあの快感は永遠に味わえない。それは即ち、
作品を永遠に完成させられないことにつながる。
 すでに姫たち二人の行為は大詰めを迎えている。互いに衣服をはだけて乳房をこね合わせ、肉厚
な太腿を相手の局部に押しつけ、夢中で腰を振っている。嬌声があがらないのは、姫が相変わらず
お付きの舌をむさぼっているからだ。
 幾度も吸い上げられて普段よりはるかに充血した舌。しなやかな二人の顎のラインに唾液がまと
わりつく官能的な輝き。互いの肉に押され、ぐねぐねと衣服の内で変形する局部。ビスチェを食い
込ませてゆれる尻肉。こんなにも素材は揃っているのに……!
「頼むっ縦ロール! アタシの、アタシの……コ……を……」
 言葉が出そうで出ない。つい先ほどまであんなに連呼していた言葉が、どうしても出てこない。
「きこえーないー」
「ふぁっ!?」
 かすかな感触が脇にうずくまる。縦ロールの指が、パツキンの浮き出た肋骨の隙間をなぞってい
る。子が母親の髪をすくように繊細に。
 引こうとしていた熱がそこで留まる。沈殿し、わだかまる。いっそ狂ってしまえた方が楽なほど
の切なさがそこから這い出してくる。
「だから……コ……だからぁぁ……!」
「だからぁ……?」
 縦ロールは未だに動かない。パツキンはギュッと目を閉じた。もう限界だった。理性を手放す覚
悟を決める。だが……手遅れだった。
 やわらかく動いていた縦ロールの手が、突如雷光のように疾走し、パツキンの乳首を熱した。
「んぎゃぁぁぁーっ!」
 閉じた目が開ききって、眼球がぐるりと回る。悲鳴に引きずられるようにして、舌が口からこぼ
れた。
 焦がれに焦がれたところへ、いきなり最大級の熱を押し付けられたのだ。その落差はパツキンの
全部を壊滅させた。
「まぁーったくぅ! コーマンでーしょぉぉー! どえーれぇコーマンかーますんでしょぉー!
人にーはぁあんなにコーマンーコーマン言って、自分のこーとになったら恥ずかーしくって言えな
いんだぁー。そんな卑怯なブタ娘さんーはぁ、ここだけでどこまーでもイッちゃえー!」
「はぐぅっ、ご、ごめんなざ――やッやぁぁぁーッ!」
 これまでの触れ方と明らかに違う。なぶるのではない、優しいのでもない。硬くしこった果実を
親指と人差し指がしごきあげる。指が一往復するだけで脳と下半身の両方で大量の液体が分泌され
ていくのがわかる。わかりながら脳が燃えていく。摩擦で削れていく。
「ほーらぁ、プロなんでーしょぉ? 芸術家なーんでしょぉ? アヘってないーで、ちゃんとちゃ
んーと写しなさーいよー」
「そんなぁッァッあッ、こんなッごんなぁッあぐぅぅッ!!」
 フラッシュを焚く。もう表現もなにもあったものではない。パツキンはただそういうシステムで
あるかのようにクリスタルを光らせた――
451名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:27:07 ID:CEt0pOZF
10/13
(――みんな……みんな……ズルい)
 ワイルドキャット装備でおさえこんだ胸がジンと熱い。猫は姫たちから少し離れた木陰にハイド
で潜んだまま、もうずっとこうやって、手に余る量の乳肉をいじっていた。
(ズルい……ひいさまにあんなに……可愛がられて……)
 透き通った目がミーア装備の犬に据えられる。自分が姫にしてもらいたいことの全部を、今あの
犬がされている。嫉妬がわきあがり、今すぐ引き剥がしたい衝動に駆られている。けれど、ここに
隠れて周囲を見張るよう、姫に頼まれたのだ。
 命令ではない。お願いされたのだ。だから猫は絶対に姿を現すわけにはいかない。
 燃え上がるような嫉妬は、犬と自分とを置き変えてからだを慰めることで和らげた。猫なりに必
死な自慰だった。
 そこにきて、あのパツキンと縦ロールまでがコトに及びはじめた。自分がこんなにがんばってい
るのに、そもそも姫を呼びつけた側が嬌声を上げている。怒ったものやら、笑ったものやら、もう
わけがわからない。
(もっと……気持ちよく……いいよね……誰かきたら、ちゃんとやるから……ちょっとだけ……)
 我慢の限界だった。
 猫は愛用の短剣を抜くと、大体の高さの見当をつけて、木の幹に力いっぱい突き刺す。そのまま
短剣をまたぎ、自分に突き立つ形の柄に腰を下ろしていく。
 乳房と同様、ワイルドキャットの窮屈なレザーに押えつけられた局部の肉が、柄に当たる。
 少し体重をかけて、しっかり刺さっているかどうか確かめる。その際にも少し肉がゆがみ、ツン、
ツンと脊髄をつつかれるような感覚が走る。
(ひいさま……もっと……)
 この柄は姫の手、姫の唇、姫の舌……なんでもいい。姫に気持ちよくしてもらうのだ。ガニ股で
下品な格好だけど、どうせハイドで誰の目にも止まらない。猫はそのまま、全体重を柄に預けた。
「……ッ!」
 どんな快感が襲ってきても声を上げてはならない。乳房をもてあそんでいた両手を口に当てる。
柄に押されたショウスのレザーがわずかに猫の中に食い入ってくる。
(もっと……!)
 腰をグラインドさせ、もっと深く刺さるように動く。一突きごとにレザーが肉の裂け目に押しこ
まれ、尻に食い込んでいた部分が引っ張られて、肉の丘陵に沈んで行く。
(ひいさま、わかりますか……あたし、こんなやらしいこと、下品なこと、してます……)
452名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:28:50 ID:CEt0pOZF
11/13
 背中に姫の存在感を感じる。姫が自分をちゃんと認識してくれていることを感じる。姿は姫にも
見えていないだろう。けれど姫は、猫が姫を想って乱れていることをちゃんと感じ取ってくれてい
る。それが背中越しにわかる。
(もっと、もっと……!)
 一度柄を抜いた猫は、今度は避け目ではなくその入り口、レザーの上にも形の浮き出てしまって
いる核に、柄を押し当てた。
「――――ッ!!」
 ひしゃげた核が快感を起爆する。じわじわと広がるようなそれまでの快感とは違う、もっと暴力
的で鋭利な快感。固く閉じた目の淵から涙が溢れるのを感じる。姫を想うだけでこんなに気持ち良
い。その姫が今自分以外の女に夢中になっているのがたまらなく悔しい。犬が何年姫のそばにいよ
うと関係無い、やっと、やっと、自分のことに気づいてくれる人が現れたのに……!
 嫉妬さえも快楽に変わる。変えなくては壊れてしまう。
 腰が勝手に動く。乳房の頂点がぴくぴくと物欲しそうに蠢いている。尻の穴が開いている。裂け
目から乱れ出る粘液が柄に絡んで小さく音を立てている。そんないやらしい猫全部が、もう姫のも
のなのに。
(ダメ、ダメェ。きもちい……こんなじゃすぐ……あ……? ひいさまも、もうすぐイっちゃいそ
う……あの犬と一緒に、イクんだ)
 知らず知らず、猫の腰の動きが速度を増していく。もっと乱暴に核をつぶすように。姫と一緒に
絶頂を迎えられるように。
(ひいさま。ひいさま。あたしと……いっしょに!)
 自分は今姫とつながっている。犬がではない。姫とつながっているのは猫だ。姫は猫を求めてい
るのだ。
 ごまかしと妄想の助けを借りた、すすり泣くような自慰。たった一つ頼れる現実は、股間から突
き上がってくる快感の槍だけだ。か細い自分の体をその快感が貫いてくれるように、腰を動かす。
(ひいさま! ひいさまっ! あたし……もうダメェ)
 嫉妬も渇望もなにもかもを塗りつぶして、真っ白な快感が下腹部で充満していく――
453名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:31:35 ID:CEt0pOZF
12/13
――結局、撮影会を終えた姫たちは、疲れきってそのまま寝入ってしまった。寸暇はこうして消費
され、再び雑事に忙殺される毎日がやってくる。忙しさのなかで、姫らは撮影のことなどすぐに忘
れてしまった。
 しばらくして相続にまつわる手続きが一通りすんでくると、やっと少し骨休めできる時間がめぐ
ってくるようになった。ライサラ家からの沙汰もなく、相変わらず犬と猫は仲が悪いが、姫が幸福
を感じるには十分なゆとりがやってきたのだ。
「にゃん……ひいさまぁ」
 姫は自室のベッドに腰を降ろし、膝に寝転んだ猫の髪をなでていた。
 目標戦はまだ遠く、相続に関する儀礼での出費がなくなったことで家計も大分落ち着いてきた。
何の憂いもなく予定もない、気だるい休日の午後。
「こうなると少し、あの多忙な日々が恋しくもなるな」
 つぶやきながら、猫の白い喉を指先でくすぐる。窓から射し込む陽光のもと、猫は幸せそうに笑
い、姫に抱きついてくる。
 巨大と言ってもいいほどの乳房が姫の体に沿って形を変える。思わずつばを呑み込んでしまった
が、今はそういう時間ではない、のどかなひとときだ。姫は純粋な母性から、猫の背を抱いた。
「こらっ姫様にひっつくのはおやめなさいな! しっしっ」
 犬が、わざと大きな音をたてて扉を開き入ってくる。幸せな時間を邪魔された猫が、犬に敵意い
っぱいの眼差しを向けるところまで含めて、もうこの屋敷の決まりごとのようになっていた。
 猫を無理やり押しのけて姫の隣に陣取ると、満面の笑みを浮かべる犬。
「姫様! 縦ロールさんとこから戦争用の物資が色々届きましたわ。これで、次の目標戦を終える
まで、我が家は戦い続けられることでしょう!」
 縦ロールの商家は、ジャンヌ家の御用達となっていた。無論、縦ロールにしてみれば無数にある
取引相手の一つに過ぎないだろうが、財政に関わるあれこれの相談に親身に乗ってくれ、大いに助
けられてきたのも事実である。
「順風満帆だな。行方の知れぬ父上にも、今の状態をお知らせしたいところだ」
「はい、それはもう……ところで『おまけ』とやらで、こんなものも頂きましたわ。中身はなにや
ら書物のようですが……」
 犬が、包装されたままの『書物』を差し出してくる。経験の密書か、報酬の密書か……いずれに
せよありがたい。子供っぽくわくわくと包装を解いていった姫だったが、その中身が明らかになる
につれて、頭にかっと熱がきざしてくるのを感じた。
454名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:34:28 ID:CEt0pOZF
13/13
「こ、れ、は……」
 その名も『ザ・ジャンヌ』。目を細めてめちゃくちゃカッコつけた姫の姿が表紙にでかでかと印
刷された写真誌――失われた記憶が、今呼び覚まされた。
「ままままさか!」
 大慌てでページを繰ると、出るわ出るわ、様々なポーズとシチュエーションを振りまく、奔放な
女のあで姿……
「姫様、これって……」
「猫っ、剣を!」
 顔面を蒼白とさせた犬を気遣ってやる余裕はなかった。猫の短剣を半ばもぎとり、誌面の中ほど
にある袋とじをさっと切り開く。
 開いて、絶句した。
 下半身をウェスタ装備に着替えた痴女のごとき姫と、扇情のみを追求されたであろう猫姿の犬、
そしてその絡み……
「ななななんで私が犬の舌を舐めまわしているんだ!? 犬! おい! なんでお前、こんなに私に
されるがままに……! いや、そうじゃない、私はこんな姿を人目にさらすことになるのか!?」
「だってだって、あのときの姫様ってばなんだか凄くって、わたしとても逆らえず……」
「猫! 猫!! お前見ていたよな!? こ、これは本当に私なのか!? あれっ猫? 猫、どこ行った!」
 あのとき一種のトリップ状態にあった姫は、猫がハイドしたまま自慰に耽っていることに、確か
に感づいていた。しかしトリップから抜けきった今、そんなことを思い出せるはずもない。猫が、
自制しきれなかった自分を恥じて姿を隠したことにも気づけない。
「姫様、こんなやらしいお姿をわたし以外の……衆目に……おいたわしや……」
 犬もまた、姫の素肌が人目に触れる悲しみと気まずさに耐えかねてか、部屋を飛び出していく。
 残された姫は、犬が放り出していった写真誌を恐る恐る拾い、もう一度一ページ一ページ確認し
ていく。姫と同じ顔をした奔放な女は、さも当然のように、紙の上で己の姿を誇示している。
「パツキン……やはり大した芸術家だった……ああ! 素晴らしいさ、素晴らしい画になっている!
だが……だが……」
(な、なんなんだ!? この異様な恥ずかしさは!!)
 それ以上直視できなかった。写真誌を放り投げ、ベッドに飛び込んで枕に顔をうずめる。
「う……う……うぉおおおおおおー!」
 姫はそのまましばらく、じたばたとベッドの上を泳ぎ続けた。

――この雑誌はこの後、男性はおろか女性読者までも広く獲得し歴史的な売り上げを記録。様々
なルートから他国へも流れ、高額で取引される伝説の雑誌となる――

<おしまい>
455名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 21:43:01 ID:CEt0pOZF
なんかID変わってるけど>>439です
容量オーヴァーにならなくてよかったぜ
このスレの上の方で短エロがどうのこうの言ってたけど
スマン、ありゃウソだった

あとマジ容量計算? とかそういうのどうしたらいいか教えて
一応このスレのdat見たりはしたんだけどそれでいんだよね? ね?
456名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 04:52:13 ID:qFrNZ1rx
去年の2月以来か、1年ぶり乙
前回の寸止めっぷりと打って変わって全開だなw
次あたりにライサラとハイドラの馴れ初め期待

とりあえず俺のブラウザだと容量421KBになってるな
まぁ多少ずれはあるから450KB前後になったら次スレ考えた方がいいと思う
うっかり容量忘れて落ちることも多々あるしな
457名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 05:09:13 ID:lIrsqNN/
もう1年も経ったのか・・・
458名無しさん@ピンキー:2009/03/04(水) 17:40:59 ID:2zZqp2j4
保守
459名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:05:42 ID:wL/91w2X
今423KBらしいですが、投下物はびっくりの43KB。エロさ微妙なのにね!
足して512にならないから大丈夫だと思うけど、途中でレスできなくなったらぶってください。
つよくぶってください……!
460名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:06:30 ID:wL/91w2X
ハイドラとライサラ=ウォス最低だなのなれそめ

1/19
 薄明かりの下で褐色の肢体が蹂躙されている。
「くっ……くぅんん……!」
 甘く色づいた喘ぎは、切なげに押し殺されている。誰にはばかっているのでもない、彼女の性
質だった。
 声とは裏腹に、肉を割って出入りする快楽の熱を求めて尻を掲げる。ベッドに押し付けられた
上半身は我知らず、すがりつくものを求めてシーツをかき抱いた。一突きごとに重圧でひしゃげ
る乳房も、その都度、先端から射るような快感を彼女に与える。
「くぁっ! そ……っちはぁ!」
 少年の手が彼女の性器に分け入ってくる。内壁に触れる指先からジンと快感がしみこんで、大
量の液体が分泌されていく。肉のぶつかる音に、粘質の水音が加わった。
「君のココ、ぐちゃぐちゃになってる。『五十人斬り』が僕ので……」
「ばか……そんな、したら……くっ、ぁっ」
 四つん這いの身体を引き起こされ、背面騎乗の形でなおも突き上げられる。彼女もまた、張り
詰めて暴れる乳房に手を置きながら、腰を上下させた。動きに合わせて金の髪が揺れ、引き結ば
れた口から唾液がこぼれていく。男のものが狭い穴に押し入り、抜けていくたび、肛門がきゅん
きゅんと悦んでいる。
 その間も少年の手は彼女の亀裂を愛撫し続けている。二つの刺激が互いに絡みついて脊髄を駆
け上ってくる。
「ね、僕、もう……」
「っ……いい、ぞ……! きて……」
「前に、出したい」
「えっ……」
「ちゃんとつながりたい……君の……君のナカにちゃんと……!」
「…………!」
「うあっ……! そん、な急に激し……」
 彼女は前のめりになり、乳をおさえていた手をベッドについて、四足の雌のように腰を激しく
上下させた。切なげな表情は獣じみた形相に取って変わり、肛姦の快楽をむさぼりにかかってい
る。
「あっあぁ、だめ! も、出る……!」
 絶頂に達する直前、少年は孔から己のものを引き抜き、彼女を押し倒した。
 自分より一回り立派な肢体を精一杯抱き締め、その唇にしゃぶりつく。
 たどたどしい口づけを受け入れながら、彼女は少年の怒張したものをやさしく愛撫して頂きへ
と誘う。
 やがて絶頂――広がった鈴口から粘質の白汁がほとばしり、鍛えられた褐色の腹筋にねっとり
と広がっていく。
「……熱い、な」
 ねばりついた精液を指にからめ、キスを終えた舌で舐め取る。
 恋人の子種の熱を愛おしく味わう間、彼女はあいた手で、あえぐ少年の頭をそっとなでていた。
461名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:07:34 ID:wL/91w2X
2/19
「んっ……ぷぁ」
 少年をベッドに座らせると、彼女は両足の間に跪いて、奉仕をはじめた。それが自分のきたな
らしい部分に入っていたことなど気にもせずに舐めまわす。
 射精を終えたばかりのものは、ぬめった愛撫の前に屹立することなく、唾液で清められていく。
「ねぇ……どうして前でさせてくれないの」
 跪いて奉仕する彼女に、少年は息が詰まりそうな声で問うた。
 彼女は即答せず、わざと醜い音を立てて奉仕を続けた。
「僕じゃ、君のはじめてにはふさわしくない?」
 ぷはっ、と一息ついて、十分に唾液のからんだものにそっと手を添え、上下させる。
「膜になど、執着はない」
 愛撫したままそっと唇を重ねる。それで後戯は終わりだった。
 彼女は少年からはなれ、脱ぎ捨てた下着を拾って身につける。振り向いてみると、少年はまだ
うつむいて何か考え込んでいた。
「……子宮が許してくれぬのだ」
「え?」
「私の身体でお前に許していない場所などない。膣も、乳房も、汚らわしい方の孔もな。子宮だ
けが、別の生き物のようだ」
 愛用のゲイター装備を装着していく。まだ火照りを残した指先に、金属の冷気が心地よい。
「僕が弱いから……?」
「馬鹿な。この私にはじめて土をつけたのは、お前なのだぞ」
「だけどレイスでだ。レイスが歩兵より強いのは当たり前で……」
 意固地ですらある少年に微笑んでみせる。
「レイスなど関係ない、お前は本物だ。『五十人斬り』が保証する」
 微笑をヘルムに隠して宿を出た。そのまま首都を出て、国内でももっとも獰猛なモンスターが
徘徊するエリアへと向かった。
 道すがら、昔のことを思い出した。少年と出会って間もない頃の会話だ。
『ねえ、君はどうして戦うの?』
『……得意だったからだ。政変で主家が没し、私の中には武力以外の寄る辺もなく、戦う以外の
生き方など選べなかった。そういうお前はどうなのだ? 得意には見えぬがな』
『僕? 僕は……わかんないや。だから戦っているんだと思う』
『なんだ、それは』
(あの時は笑い話だった。お前と時を重ねた今なら、その答えに惹かれた意味がわかる)
 エリアのキャッスルから離れるにつれて、モンスターの視線が殺意を帯びてくる。縄張りを侵
した者に、彼らは容赦しない。
 オーク族とハーピー族の縄張りの境目を歩く。二つの勢力が不届き者を八つ裂きにするべく尖
兵を送り出す。彼女は愛用の三日月斧バルディッシュを構え、群がる白と緑の殺意に対峙した。
(お前のそれは挑戦だ。未知を既知にするための、自分にできる以上のことをしようとする挑戦
だ。己にできることしか選べなかった私とは違う)
 バルディッシュを大上段に振り上げ、押し寄せる波濤のど真ん中めがけて、彼女は跳んだ。
(戦う理由を見いだせたとき、お前はきっと私を越える。そうしたら――)
462名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:08:44 ID:wL/91w2X
3/19
 日の低い内から日の沈むまで、半日以上をモンスター狩りに費やしてから宿へと戻る。
 フロントで、モンスター狩りの報償から長期の宿泊費を先払いし、すっかり使い慣れてしまっ
た個室へあがる。
 部屋にはすでに少年がいて、がっくり肩を落としてベッドにうずくまっている。この日も思う
ように戦功をあげられなかったのだろう。自己嫌悪の空気が、落ちた肩からにじんでいた。
「今日も、全戦で歩兵を?」
 装備をはずしながら訊ねる。沈黙がこたえだった。
「なぜレイスにならん? お前がレイスになれば敵などいないはずだ」
「そんなの当たり前だろ!?」
 少年がいきなり、怒声を張り上げた。
「レイスが強いのなんて当然じゃないか! 誰だってレイスになれば強くなれるんだ! 君の言
う『ホンモノ』はそんな仮初めの力で満足するのか!?」
「……どうした? なにがあった」
「えっ……」
「なにかあったから荒れているのだろう」
「…………」
 少年は話そうとしない。
 彼女はため息を小さくついて、脱ぎ捨てた鎧を部屋にすみに追いやると、少年の隣に腰を下ろ
した。
「なあ。お前はなぜ、レイスになった途端、見違えたように動きがよくなる?」
「……だって、視界は広くなるし、使いやすい能力も手にはいるし……レイスくらい強ければ、
歩兵になんて負けないのが普通で……」
「そこだ。その認識だ」
「認識……?」
「歩兵に遅れをとるはずのないレイス。その認識が、お前の中から不安を取り除く。自信は視野
を拡大し、思考も最適化される。おそらく神経も鋭敏になっていよう」
「だからそんなの、誰だって……むぐ」
 反論しようとする少年の口に、指を置いて遮る。
「私はお前に惹かれたのだ……自信さえ抱ければ、お前はもっと先へ進める」
 少年はそれきり言葉を失って、握り拳を震わせていた。
 彼女は毛布をうまく動かしてベッドのなかに潜り込む。
「ここのところ、狩りにいそしみすぎた。今日は休む。お前のせいで二人寝に慣れてしまった。
次の夜は、甘えさせてくれ――」
 背中にそっとつぶやいて瞳を閉じた。
 次に目を覚ましたとき、室内に少年の姿はなかった。
 ただ、脱ぎ捨ててあった彼女のゲイター装備が机の上にきれいに並べられている。
 軽く身支度を整えてから改めて見ると、並んだ鎧の脇に一通の書き置きを見つける。少年の字
で、こう書いてあった。
『ガタがきてたから直しました。無理をしすぎないように』
 ヘルムを確認してみると、ゆるんでいた鋲やすり減っていた部分が丁寧に直されている。彼女
が寝入った後、起こさないように静かに作業をしていった少年を想い、ヘルムを抱きしめた。
「お前は私にないものをたくさん持っている――」
 恋人の手が入った鎧を装着し、朝の空気を胸いっぱいに吸い込む。今日は一段と、モンスター
狩りの技が冴え渡りそうだった。
 
 その日を境に、少年は部屋に戻らなくなった。
463名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:09:48 ID:wL/91w2X
4/19
「そしたら、これは今日の分ゆうことで、いただいときます」
 首都の片隅。
 集めた品をなじみの女商人に手渡し、取引を終える。渡したのは一見ガラクタにしか見えない
ものばかりだったが、うまくすればこれが代え難い逸品に化けるかもしれなかった。
「なにやら浮かない顔ですなぁ。悪しうことでもありましたえ?」
 妙ななまりの女だったが、商売柄表情を読むのに長けているのか、こちらが悩みを抱えている
ことを察したらしい。流し見るような視線でこちらを観察している。
「……貴様には縁のないことだ」
「さいですか? みたとこ……待ち人探し人ゆうとこやと思いますけど」
 正確な見立てである。いまだに、戻らない少年の足取りをつかめていない。
「だからどうしたと? 情報なら買わぬぞ。あいつは……自分の意思で戻らぬのだ」
「へえ、そしたらよござんすけど。なんでもどこぞに、えらい剣呑な魔物が沸いて出たとかで、
ようさん手にかかった人もあるゆうことです。心配と違うのかしらと、思いまして」
「……手にかかったといえ、所詮死の痛みに苦しむだけだ。クリスタルの加護あらば傷は癒えよ
う。加護を得られぬ者はそもそもそんな危険には近づかぬ。心配するだけ、詮無い」
「へえ……正鵠、正鵠。取引も終わっとることやし、退散さしてもらいますわ」
 愛想笑いを一つ残して、商人は雑踏の中に踏み出していく。その途中、ぽつりと漏らした。
「あなたさんはお得意さまやから、老婆心ながら……案外人の噂が集まるところに、影がさして
たりするかもしれませんえ」
「……なんだと?」
 聞き返す頃には、女の後ろ姿は行き交う人並みに紛れている。
(噂の集まるところ……)
 一カ所思い当たって、彼女は早足で動き始めた。
 行き着いたのは、首都に設けられた公式の掲示板。誰しもが匿名での書き込みを許されている
板には、あれやこれやの記事が張り付けられている。
 それらしい文字列はすぐに見つかった。『五十人斬り』と銘打たれた書き込み記事の束。すぐ
に板からはずし、内容に目を通す。
『やっぱあのゲイター女強いわ、滅多に戦争こないけど他とは桁が違う』
『レアポップだけどそこまでじゃないよ正直。タイミングわかってるだけ』
『タイミングだけで五十人斬りは無理だろ』
 書き込みの傾向は、賞賛とやっかみが半々といったところだ。風評など気にしたこともないの
で、それはいい。ある時点から書き込みの方向性に変化が現れ、それが彼女にとって重要だった。
464名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:10:47 ID:wL/91w2X
5/19
『五十人斬り、ちょっと前からどっかのヘタレヲリと直結してる模様』
『そいつヘタレじゃねーぞ。レイスだったけど五十人斬りとタイマンで勝利してた』
『レイスでタイマンとか工作員じゃねーか。つかレイスなら勝って当然だろ』
『そのヲリ歩兵だとマジ工作員。突っかけるタイミングもわからないでウロチョロ』
『よっぽど下半身の相性がいいんだろうな、他に付き合う理由がない』
 数日おきに一つ二つの書き込みがつく程度だった彼女の記事に少年の影がさした途端、おびた
だしい量の書き込みがなされている。少年に肯定的な書き込みは一割にも満たなかった。
「見たのだな、これを……」
 数日前の夜、珍しく声を荒げた少年のことを思い出す。もとより自信に乏しい少年は、第三者
の屈折した意見を真に受けて荒れたのだ。
(だが、戻らぬのはどういうわけだ?)
『五十人斬り』の記事を板に戻し、他をチェックする。板を利用しにきた者が疑わしげな視線を
投げかけてくることもあったが構わなかった。ほんの少しでも、恋人の足取りをつかみたかった。
(……! これか?)
『今日の戦犯』と銘打たれた記事に、その書き込みはなされていた。三日前の日付だった。
『某五十人斬りの直結相手がクノーラ来てたんでヲチしたが酷い。飛び込んで蒸発の繰り返し』
『今までおっかなびっくりついてくるだけだったんだが、マイナス方面に成長しちゃったな』
『最後にレイスやってたけどすぐ戦争終了でどっか消えちゃったぞ。恥ずかしかったのか』
 思わず、深いため息がこぼれ出た。
「無事で、いるのだな」
 顔がほころぶのがわかった。
 けして名誉な書き込みではなかったが、彼女はそこから、少年の意気込みをくみ取ることがで
きた。
(しゃにむに前に進もうとしている。いつか、殻を破るときがくるだろう)
 彼女は記事を戻し、幾人かの視線を後目にして、掲示板を後にする。ヘルムからのぞく紅い口
元に、熱っぽい微笑を乗せて。
「待っている……お前が迎えに来てくれるのを」
465名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:11:48 ID:wL/91w2X
6/19
 さらに数日が過ぎた。
 相変わらず、少年は戻らない。
 けれど彼女の心はうきうきと高鳴っていた。我知らずにやけていたのに気づいて、一人背筋を
のばし直すくらいに。
 だから、例の女商人にもすぐに見抜かれたのだろう。
「なんや嬉しそうですなぁ」
「……貴様には……」
「はいはいわかりよした、関係ございませんっと。ところでこれ、いただいた今日の分やけど、
お返しすることになりますわ」
 商人が、さっき渡した包みを突っ返してくる。
「それでは……」
「へえ。ようがんばりましたなぁ。ここに来る前に送っときましたよって、見たってつかさい」
「……感謝する」
「も少し喜ばれると思ったのに」
 少し意外そうに言われて、彼女は苦笑した。
「……渡す相手が戻らぬのでな」
「はれ。仲直りできて嬉しいのかと思いましたえ」
 女は少し誤解しているようだ。いつもなら気にせず取引を終えるところだったが、かねてから
の上機嫌と、これまで取引に応じ続けてくれた商人を労う気持ちから、話す気になった。
「もとより、諍いなど起こしていない。あいつは……そう、男を上げにいったのだ。いずれ戻る」
「へえ……そらまた難儀ですなぁ。男上げるゆうたら、やっぱりあれに挑みなさるのえ?」
「何の話だ」
「はれ、違いました? ほらほら、前に剣呑なんが沸いて出た言いましたよし」
 確かにこの前、この商人と取引した時にそんな話を聞いた覚えがあった。今の今まで気にもと
めていなかったことである。
「なんでも、めっぽう強力な野良レイスて聞いてます」
「……野良レイス?」
「血の気の多い人らは、それを退治して名を上げよう思ってるみたいですえ」
「馬鹿な。レイスなど、異界の魔物だぞ。誰かが呼び出さねば現れぬ。まして、戦争を終えれば
ハデス門は力を失う。レイスのままでいられるはずが……」
「さあ……でも、おるのは確かみたいですえ。クノーラ雪原で見たゆう人がようさんあるし」
 礼もそこそこにその場を離れると、人々を押しのけるようにして、掲示板へと向かった。
 すぐに『今日の戦犯』記事を確認する。クノーラ雪原以降、少年の目撃情報はない。
(これが、偶然か……?)
 全身のうぶ毛がざわつきはじめる。
 這い寄る予感から目を背けるようにして、彼女は別の記事を探した。
『謎の野良レイス出現』と銘打たれた記事を見つけ、その日付を確認する。
 そして――彼女は走り出した。全速力で走り出した。
 記されていた日付は、少年が最後に目撃された直後のものだった。
466名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:13:46 ID:wL/91w2X
7/19
 一人のソーサラーが雪の上を駆けてゆく。
 口からは間断なく白い息が漏れ、額には多量の汗が浮いている。
 ソーサラーは時折背後を確認し、そのたびに喉をならして、なおも駆けてゆく。
「なんなんだ……あんなのレイスじゃない! それともあれが、本当の……?」
 真っ黒な巨影がソーサラーの背後から迫っていた。足跡に沿って、静かな羽音が確実にソーサ
ラーを追いつめていく。
 降りしきる雪を突き抜けて、青白い冷気の塊が走った。疾走していたソーサラーに命中した塊
は、弾け、そのままその身にまとわりつく。
「畜生……畜生!」
 いずれ追いつかれることを確信したソーサラーは、覚悟を決めて振り向いた。まだ詠唱状態は
続いている。杖にパワーを送り、振るう。
 影の直上に小さな閃光が巻き起こるや、サンダーボルトの雷光が地面に突き刺さる。爆ぜた地
面が落雷の威力を物語ったが、命中しなければ無意味だった。
「くそ! 当たれよ! くそぉ!」
 じりじりと後退しながら、なおも落雷を繰り出す。
 そのすべてが際どいところで命中に至らない。影の動きを見越した偏差を試みても、紙一重の
地点でわずかに進路を変える。
「避けてやがるのか!? その図体で!」
 影が、相手を覆い尽くさんばかりの距離にまで接近する。
 最後の力を振り絞って、ソーサラーが杖を振るう。
 落雷ではない。全身から、氷結した波が噴き上げた。
 フリージングウェイブが空気を叩いた時、巨影は悠然と空を舞い、獲物を睥睨していた。
「あっ……」
『ぎぇあっ!』
 影の着地と同時に紫電が一閃し、技の発動体勢にあったソーサラーの肉体を薙ぎ払った。
 意識を失い、弛緩して崩れ落ちたソーサラーを前に、影は不気味に揺らいでいる。
 その様はまるで笑っているようにも見えた。
 やがてソーサラーの骸がクリスタルの力で薄れはじめても、影はその場で揺らぎ続けた。
 猛然と駆け寄る足音が響くまでは。
467名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:15:09 ID:wL/91w2X
8/19
(見つけた……!)
 ここまで一気に走り抜けた助走を利用して、彼女は跳んだ。
 直後、雪の中で不動を維持していたレイスが、振り返るや否やギロチンソードを打ち込んでく
る。発射された衝撃波が、つま先をわずかにかすめて空を裂いてゆく。
 空中で大上段に振り上げたバルディッシュを、渾身の力で地面にうち下ろす。激突点を中心に
衝撃波が立ち上り、剣を振るったレイスの身を叩いた。
 彼女は攻撃の手を休めない。身を起こし、すかさず突き上げるようにしてバルディッシュを打
ち込むが、ギロチンの剣身に阻まれる。
 冷気の集束を感じ、すかさずステップを踏む。蹴った地点に、間髪いれずにアイスバインドが
着弾。
 際どい攻防はなおも続く。
 隙と見て打ち込んでも、変幻自在に動くギロチンソードがそれを防ぎ、距離をとれば冷気の弾
幕が襲ってくる。
 互いに互いの動きを読み切って動いているのがわかる。果てしない攻防を経て、誤差のような
一撃がようやくかすめる程度だった。
(ああ、同じだ。間合いも、太刀筋も……なにもかもが、はじめて見えたあの時と)
 一手二手と攻防を重ねるごとに、どうしようもない確信が彼女の中に積み上がっていく。
(なぜだ――)
 襲い来る斬撃をスマッシュで叩き落とすと、彼女は足を止めた。
 相手の力量は自分と伯仲している。致命的と言ってもよい停滞だったが、それでも彼女は、問
いかけずにはいられなかった。
「なぜだ」
 追撃に出んとしていたレイスが、すんでのところで動きを止めた。
 レイスもまた、この激戦の最中、相手の言葉に耳を傾けることを選んだのだ。
「なぜだ……私は、お前を待っていたのだぞ」
 レイスはこたえなかった。彼女の言葉は止まらない。
「なぜそんな力に堕した!? なぜ私を迎えに来てくれぬのだ!? なぜ――」
『やあ、久しぶり』
 ぞっ、とするような凍てついた声。もう、人のそれとはかけはなれていたが、それでもその声
は、彼女の耳にいくばくかの懐かしさを喚起する。
 暗いフードの奥に、笑顔めいた不可思議な歪みが現れていた。まるで、彼女の存在にはじめて
気づいたかのように。
「お前……お前は!」
 認めなくてはならない時が来ていた。
 目の前の魔物こそが、彼女の待ちこがれた少年なのだと。
「……!?」
 雪面にうっすらと張りついたレイスの影から、黒い縄のようなものが伸びて彼女の手足に巻き
ついてくる。
 瞬く間に手首をひねり上げられ、バルディッシュが雪に落ちた。影ばかりではない、静かに羽
ばたいていた翼の縁までもが、家屋にからみつく蔦のように伸びて、彼女の全身を戒めていく。
 ゲイター装備と素肌の間を、無数の触手が這い回っている。おぞましい触感に総毛がたつ。
 やがて十分に張り巡った触手が、にわかにその動きを止めた。直後、彼女の装着した鎧が、い
びつな金属的悲鳴をあげはじめる。
「……! やめっ」
 懇願する間とてない。アーマーの表面に亀裂が走ったかと思うや、次の瞬間には、金属の鎧は
内側から食い破られるようにして弾けとんでいった。
 下着も裂かれ、降りしきる雪の中に、小麦色の色彩が露わにされる。
 邪魔にならないと判断されたのか、ヘルムだけが手つかずで残されて、ひどく不格好だ。
 だが、真に重要なのは姿ではなかった。
 目は、飛散していく鎧のかけらの一つ一つを追いかけている。恋人が直し、そして破壊してい
った、そのかけらを。
 レイスはそんな彼女を掲げ上げ、満足げに空気を振動させた。
『すごい力だろう? 僕はホンモノになったよ』
468名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:16:20 ID:wL/91w2X
9/19
「んぐぅっ」
 呆然と開いた口から喉の奥まで、真っ黒な触手が乗り込んでくる。
 言葉を奪われ、さらには自由にならない両脚を左右に押し開かれる。
 レイスの意図に思い至るのと同時に、触手の表面から粘質の液体が分泌されはじめた。肌に触
れると焼けるような熱を発する。レイスの魔力が形を変えて噴出しているのだ。無論、喉の奥も
同じものに焼かれていく。
『ずっと一人で寝させてごめんね』
 やさしい声に気が狂いそうになる。
 なんとかして別人だと思いこもうとするのを、そのやさしさは許してくれないのだ。
(なぜ……なぜ……!)
 頭の中で無数の疑問符が回っている。
 そしてその疑問符も、やがて来る肉体の感覚に焼き尽くされていく。
 喉の奥や素肌から粘液が体内に染み込んでくるのがわかる。全身を焼かれているかのような苦
痛が襲い、しかし絶叫することさえできない。
 どこからか糸のように細い触手が何本も伸びて、むき出しにされた乳房を優しく包み込む。そ
の先端に粘液を塗り込めるように、執拗にこねくり回す。
 たちまち張りつめた乳首から、痛みとは違う、甘い感覚が泉のように沸き上がる。
 やがて、吸盤の様に変形した触手が、濃く色づいた乳房の先端に吸い付いてくる。赤子のよう
に吸い付かれたところから、乳を吸い出されるように、快感の波を吸い上げられていく。
 全身を呵む苦痛はなおも高まり、高まって、痛みを越えた快感として認識されはじめる。
 刺激の量と鋭さが尋常ではない。人の神経には荷が重すぎる。いっそ発狂してしまえれば楽に
なれるはずなのに、魔力に焼かれているためかそれさえもかなわない。
 レイスの冷たい手が、彼女の腰のくびれを強固に掴み、さらなる行為の進行を告げた。
 その目が信じられないものを見いだした。
 レイスの下腹部に、不気味に揺らぎながら屹立しているものがある。
 その欲望が、魔力が、そこに凝縮されて、人だった頃の意識にしたがって成形されたのだ。
 光線をゆがめるほどの魔力。全身に染み込む粘液など比較にならない密度だ。
 それをどうするのか嫌でも考えて、無意識のうちに首を振り、許しを求めた。
 レイスの顔面に虚ろに穿たれた眼が、にたり、とゆがむ。
 固く閉じた後ろの孔に、欲望の塊が一気に突き込まれた。
469名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:17:08 ID:wL/91w2X
10/19
「おごっ、ごぉっ……」
 喉が震える、腰が跳ねる。
 全身に伝播した波が、激痛なのか快感なのかまるでわからない。ただ、圧倒的な刺激を打ち込
まれて、体が反応していた。
 押し広げられた肉壁が焼かれていく。体の内側、中心へ、得体の知れない感覚が上ってくる。
 身をよじって逃れようとしても、全身を戒める触手と、剣さえ離して彼女を抱え込む手に支配
されてどうすることもできない。
 逆にもがけばもがくほど、それは鋭く深く突き刺さる。
 一突きごとに前の裂け目から噴き出る液が垂れ、雪を溶かしていく。
 認識しきれない快感に、それでも体は反応しているのか。一突きごとに、絶頂に誘われている
のか。
(融ける……私が……融けていく……)
 自分の体が、心が、遠くへ離れていく感覚。
 彼女の精神が完全に弛緩したことを感じたのか、喉を陵辱していた触手が離れていく。
「ひっ……ぐひっ……ひっ……」
 自由になった口から漏れるのは、生理的な空気の音だけ。言葉も絶叫も既に枯れ果てている。
 抵抗することもなく、眠るようにして、己のすべてを投げ出していた。虚ろな瞳は、もうなに
も映さない。
 そこまでしてのけた異界の魔物は、尻に突き立てていたものをゆっくりと抜き出し、ひくひく
と痙攣を繰り返す前の穴にあてがう。
『ずっとこうしたかった。君とちゃんとつながりたかった』
 言葉は聞こえている。聞こえているが、彼女の脳はそれを理解しようとしない。
 そして魔物も、ここに至って躊躇することはなかった。
 胎内に、はじめての一撃が打ち込まれた。
 多量に分泌された液体がその侵入を歓迎する。純潔の証は、欲望と力の前に陥落した。
(……痛い)
 だがそれを、確かな痛みとして認識する。
『すごいや。ぎゅぎゅってからみついてくるよ……気持ち……イイイイイーッ!』
 触手の動きとともに肉体が上下し、粘膜と魔力の塊とを摩擦させる。
 分泌される粘液に紅いものが混じりはじめ、直下の雪を染めていく。
 口から涎を垂れ流して、されるがままだった。座っていない首が、上下運動にあわせてがくが
くと揺れている。
『僕が! 君の! はじめての……!』
 魔物の歓喜が雪の中に吸い込まれていく。
(私の……はじめての……)
『ああ、すごいぞ、ココはすごいぞ……! こんなんじゃ、もっ、だめ、すぐに……!』
(すぐに……?)
『ああ! 出るっ、出るゥッ……』
(出る……なにが……どこに……?)
 己が望みの頂に手をかけたと思ったのか。全身を戒めていた魔者の触手がゆるんだ。
(どこに――?)
 その時、光を見た。働きを停止していた眼が、風景を認識した。
 体が動いた。生い茂る触手の波間から腕を伸ばす。
 指先に触れたそれが、何であるか確かめることもなく、腕力だけで振り上げた。
 一連の動きに明確な意識は介在していなかった。
『あっ……?』
 レイスの肩口に、ギロチンソードの切っ先がめり込んでいた。
470名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:17:59 ID:wL/91w2X
11/19
 全霊を込めてたった一人の女を犯し抜いていたレイスの体から、魔力の輝きが散っていく。
 刃は、吸い込まれるようにしてレイスの虚ろな身体に潜り込んでいく。
 やがて、体重を支えきれなくなった触手が次々と千切れ、彼女の体が破瓜の血の上に落ちた。
「く――」
 褐色の肢体が雪原に立つ。
 真っ白な呼気とともに、彼女の両手に得物が現れる。
『……まっ、て。もうちょっとで……』
 彼女はもう待たなかった。
 青白い軌跡が、崩れかかった異形の魔物を撃つ。
 吹き飛ばされる魔物の下腹から、凝縮された魔力が安定を失ってほとばしった。
 かつて魔物が人だった頃にそうしたように、漆黒の精が彼女の顔に、肌に、張り付いていく。
 彼女は、その異質な射精を受け入れた。
 超濃度の魔力に肌を焼かれながら、地に堕ちた魔物を見下ろす。
『ヴリトラ……つくったんだ……』
 レイスは己にとどめを刺した刃を見上げていた。真紅の三日月斧を。
「……これが、幾ばくかでも、お前の自信に、つながればと、願った」
 まだ完全に覚醒したわけではなかった。体内を焼くような感覚は残っている。
 それでも、一言一言を強く放つ。
『君に認められたかった。君の全部がほしかった』
 黒い羽根や、ぼろ切れのような衣服、骨のような体の表面に、雪がほの白くつもっていく。
「言ったはずだ。膜になど執着はない。子宮だけが、別の生き物のようだと」
 ヴリトラをインベントリに戻し、跪いて、朽ちようとしているレイスの顔に手を添えた。
「結局……我が子宮はお前の到達を許さなかったな」
『…………』
「私は待てたのだ……いつかお前が迎えに来ることを想って、幾日でも待てたのだ! お前、な
ぜ急いだ……」
『わかんないや』
 レイスの体が粒子になって消えていく。クリスタルの加護ではない。雪が融けて水になり、地
にしみていくように、ただ、融けていく。
『ごめんよ、わかんないんだ――』
 蒸気となって立ち上っていく体が、最後に拠り所を求めるように、長大な剣にまとわりついた。
 けれど、やがてその儚い動きも薄れ、空にほどけていく。
 地に突き立ったギロチンソードだけが、そこに残っていた。
 最後までその顔に触れていた手を、剣身に移してみる。吸い付くような冷気を感じたのも束の
間、剣は弾け、闇の粒子となって、顔や肌に刻まれたドス黒い染みに吸い込まれていった。
「…………」
 思い人の痕跡がその場から完全に失せてしまうと、他に術もなくて、仕方なく立ち上がり、歩
いた。
 どの程度歩けたか。体内を焼く魔力の熱と、焼かれた肌の痛み、疲弊。そして絶望。様々なも
のが、彼女の足を崩し、雪の上に引きずりおろした。
 冷たくなっていく意識の中で、遠くに聞いた会話が最後の記憶だった。

「……! これ、人間ですよ」
「おやまあ。なんでこんな寒い中全裸で……」
「女の人ですよ! あっち向いてください!」
「待て待て。こりゃ……たまに噂になる『五十人斬り』の人じゃないの」
「有名な人なんですか?」
「そうだね……うん、いや間違いないよ。戦ったのかな、『野良レイス』と」
「さ、さあ?」
「いずれにせよ、遊山どころじゃないな。運べる?」
「お館へ? では……兎瑠鹿! 日座巻! 出てきてください。この方を――」
471名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:19:11 ID:wL/91w2X
12/19
 目覚めたとき、周囲は冷気ではなく、暖かい空気に包まれていた。
 しっかりした造りの部屋に、上品そうな家具。暖炉にくべられた火は、心地よい熱気を室内に
放出している。
 ゆっくりと身を起こしてみる。これも上質そうな布団をのけて体に目を落とすと、柔らかい生
地の寝衣が身を包んでいる。
 最後の記憶からあまりにかけ離れた状況から、自分が誰かに保護され、手厚く看病されたのだ
とわかった。
 ある程度状況を把握した頃、少し離れた位置から自分を観察している、派手な赤い衣服を身に
つけた女に気がついた。出自はよくわからないが、確かテンブとかいう装束だったはずだ。
「……ここは?」
 女が一向に話を切りだしてこないので、仕方なく問いかけてみた。すると女も、安堵したよう
なため息を一つついて、人懐っこい笑顔を向けてくる。
「ライサラ家のお屋敷です……っと、正確には離れなんですけど」
 その家名には覚えがあった。主家が没落する以前、かつての主人から、その名を聞かされたこ
とがあった。
「私は……助けられたのか」
「はい、雪原に出られたお館様が、行き倒れているあなたを見つけて、こちらに保護しました。
二日ほど前のことです」
「二日……」
 二日間、この女はつきっきりで看病してくれていたのだろうか。
 そんな風に考えながら見つめていると、女は「ああ」と何かを思いだしたように手を叩いた。
「自分、胆露っていいます。お館様……あ、もちろんライサラ家ご当主様ですけど……の、なん
だろ、付き人? みたいなものですー」
 自分とそれほど年が違うようにも見えないが、女はにこにこと少女のように朗らかな表情をす
る。最初、いささかの警戒心を抱いていたものの、その笑顔にほだされて、肩の力が抜けていく。
「ところで体におかしなこととか、欲しいものとかありますか?」
「いや……」
 純粋な好意で訊いてくれたのだとわかったが、目覚めたばかりで、自分の体がどうなっている
のか、なにが必要なのかわからないというのが正直なところだった。顔の皮が変に突っ張るので
火傷の傷を思い出したが、もう痛みもない。
「じゃ、これを飲んでもう少し休んでください。今はお館様も出ていますし」
 ベッド脇のテーブルの上に茶瓶が置かれている。胆露はその中味を椀についで差し出してきた。
 言われたとおりに注がれた湯を飲み下し、熱を逃がさないように布団をかぶって瞳を閉じる。
すぐにでも微睡みに落ちそうだったが、ふと思い出して、口を開いた。
「一つだけ、頼みたい――」
472名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:20:06 ID:wL/91w2X
13/19
 ライサラ家で起居するようになってから、さらに三日が経った。
 もう立ち歩いても子細ないほどに回復していたが、こうなると逆に、体を動かしたくてたまら
なくなってくる。
 胆露に「外に出たい」と掛け合ってみると、この朗らかな女性には珍しく、少し困惑気味の顔
が返ってきた。
「うーん。できればこの離れに留まっていてもらいたいんですよぅー」
「ほう?」
「えーっと、そのー」
「……困らせたいわけではない。都合があるならば、重んじよう」
「うーん。言っちゃってもいいかしら……うん、いいよね」
 ライサラ家や胆露に大恩ある身なのはわきまえている。故にそれ以上の追求は避けたのだが、
胆露は、なにやら一人で合点してしまったようだった。
「えっと、実はですね。あなたを当家で召し抱えたいって、お館様は考えているんです」
「私を?」
「かの『五十人斬り』様ですから。それでその、お館様にもいろいろ考えがあって、はっきりす
るまで、なるたけあなたを人目につけたくないというか……」
「なるほど。どう転ぶかわからぬ私に、屋敷内の有様を見聞されるのは良い気分ではなかろうな」
「とんでもない、そういうお話ではなくてですねぇ……うーん」
 あわてて取り繕う胆露だったが、続く言葉を濁したことで、半分肯定しているようなものだった。
「……すまぬ。庇護にありながら出過ぎた物言いだった、外出の要求も含め、忘れてくれ」
「そんなに気にしなくても……」
「しかし、我が武力を見込んでの話とあらば……こう動けぬと体も錆びる。いっそ、お前が相手
をしてくれてもいいのだが」
「ふえっ!? 自分ですかぁ!?」
「何日も立ち居振る舞いを見ているのだ、生なかの使い手でないこと、私にはわかる」
「…………」
 沈黙した胆露を取り巻く空気が、にわかに鋭いものを宿した。が、それも一瞬のこと、すぐに
あの笑顔が現れる。
「どうせならお互い、心身ともに気兼ねのないときにしましょう。ねっ?」
 上辺だけではない、少女のようなまぶしいくらいの笑顔でこう言われては、苦笑で返すしかな
かった。
473名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:21:35 ID:wL/91w2X
14/19
 そして、さらに二日が経った頃、本館から戻った胆露は、状況の変化を告げた。
「明日、お館様のご子息様らを見ていただきます」
「見る? 会うのではなく?」
「それは明日になったらわかると思うので、ご安心を。またこれから準備に行かなくちゃなので、
一応ご報告まで。それと……以前頼まれていた件ですけど」
 しばらく言いにくそうに逡巡していた胆露だったが、やがて少し気の毒そうに、口を開いた。
「……例の男性は、この数日間調べる限り、メルファリアのどこにも見かけられてないみたいで
す。それとクノーラ雪原のレイスも、あなたがいらした日を境に現れなくなったと」
「……そうか」
 胆露が去り、部屋に一人、ベッドに腰掛ける。
 ゆっくりと動いた手が求めたのは、枕元に出してもらっていたゲイターヘルム。
 たまらないような気持ちに突き動かされて、それを抱きしめた。
 同時に、それまで存在を主張することもなかった顔の火傷跡が、今更になって疼きはじめる。
 胆露の報告は考えてみれば当然のものだった。
 クリスタルの力を借りて呼び出した魔物を、己の焦燥に負けて我が身に取り込んだのだ。クリ
スタルを冒涜した少年が、加護の下に帰ってくるはずがなかった。
 メルファリアでは極めて希有な『死』という現象が、いまはじめて、彼女の中に実感となって
現れていた。
 それなのに。
「笑え……涙の一つも出てこぬよ。所詮、私たちの関係など、その程度のものだったのだ……あ
あ、その程度の。は、はは、は――」
 笑いはとめどなく、いつまでもいつまでも溢れてきた。
 必死になって笑い続けた。
474名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:23:00 ID:wL/91w2X
15/19
「眠れなかったんですか?」
 胆露と顔を合わせるや否やの発言だった。
 眠れなかったのは確かだが、そればかりでなく、報告を聞いてからどうやって過ごしたかの記
憶さえ曖昧で、加えて人と接するのも億劫なほど、活力が失われていた。
「……会見の際は顔を隠しても良いか」
 本館の廊下を案内されながら、かすれた喉を震わせてやっとのことで口にする。
「大丈夫ですよ。そんな堅苦しいものじゃないですから」
 その言葉とは裏腹に、今日の正装として与えられたのは、最新のハイドラ装備一式だった。あ
くまで仮に貸し与えるという話ではあったが、意気込みがこもっているようで、重い。せめて愛
用のヘルムをかぶることで気を紛らわせる。
 やがて招き入れられたのは、奥行きのある縦長の部屋。前面がガラス張りで、隣の部屋の様子
がわかるようになっている。
 ガラスを挟んだ対岸に、屋敷の長らしい恰幅のいい男と三人の青年が向かい合って座っている
のが見えた。いや、一人は青年と言うより、少年といった方が正しそうだ。子息らに違いない。
「ハイドを応用した鏡で、こっちだけ向こうの様子がわかります。声もこっちにだけ聞こえるよ
うになってます」
「……のぞき見、盗み聞きをしろと?」
「やり取りを見聞きして、誰に仕えるか考えてみて欲しいとのことです。もちろん、意に添う方
がいなければ、無理は言いません。ちなみにお三方は、自分たちの方が選ぶ立場だと思って話し
ています。その方が人となりが出るでしょうから」
「わかった……ひとときとはいえ、養われていた身だ」
 著しく気乗りしない。だが断るにしろ、ここまで用意が調っているものを一蹴するわけにもい
かない。かろうじて湧いて出た配慮に従い、落ちるようにして、椅子に腰掛けた。
「私は反対です。誰に付けるなどという話ではない。父上には悪いが、そのような素性の知れな
い者を家に入れること自体反対だ。我が家の財にすり寄ってきた野良犬かもしれぬ」
 なかなかに強硬な意志を示したのは、長男らしい大柄の青年。名家の長男として、たゆまぬ生
活を送ってきたのだろう。使命感の強さと、いささかの頑迷さを感じさせる男だった。
「まあま、兄上。仮に野良犬だとて、首輪をつけて、餌をあげればなついてくれる。それに、そ
の牙がとびきり鋭いとなれば、躾次第では大きな利になるかもしれない。是非私がもらいたいね」
 次男らしい青年は、いかにも世故に長けていそうな、愛想笑いの張り付いた顔をしている。ツ
テを元に足場を築いていくタイプだ。そして、本心では自分以外の誰も信用していないタイプだ。
 そうして好き放題並べ立てる兄たちに比べて、三男らしい少年は覇気がない。当主が兄たちを
制して水を向けるまで、隅で小さくなっていた。体だけではない、年も、兄たちに比べて二回り、
彼女の前から去ったあの少年と比べてもさらに一回りは幼い。
「……僕、選ぶのいやだな」
「ウォス。父上の御前ぞ。言葉を改めよ」
 口を開くや否や、長兄に咎められ、ますます縮こまってしまう。次兄はそんな弟をかばうでも
なく、侮蔑たっぷりのにやけ面をさらしていた。
 三男は三男で、この場に臨んでおきながらこれでは――そう思ったときだった。
「ぼ……私は、その方に自分で選んでもら……いただきたいと思います」
 なぜ、と聞き返されて、三男は即答した。
「強い方は、生き方を選んでいいと思うんです。選べないことが多すぎる世の中だから……」
 その後はとりとめもない、そこそこに仲の悪い、親子と兄弟の会話だった。それでもたっぷり
時間をとられたところをみると、ライサラ家としてはそちらの方を重視させたかったらしい。
 一通りの会話がすんだころ、外に控えていた胆露が戻ってきて耳打ちした。
「お一人かお二人なら、お話できる時間をとれるみたいです。話したい方はいますか?」
475名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:23:46 ID:wL/91w2X
16/19
 ライサラ家の中庭は、思ったより狭いものだった。回の字に建てられた屋敷の中央に、ぽつん
と草花が茂り、小さな泉から水が湧きだし、滑り込んでくる陽光を反射している。
(きっかけがつかめぬ)
 ライサラ家の三男と会合してから、既に数分が、互いに無言のまま過ぎ去っていた。
 三男はソーサラーの適正を持つらしく、見習いがよく着る鍔広帽とマントを着込んでいた。そ
の帽子の下に表情を隠して、なかなか顔を見せようとしない。
 もっとも顔を隠しているという意味では、彼女も同じだったが。
 そのうち沈黙にも飽きてしまって、庭に招かれた時の扉に視線を泳がせた。見張りというわけ
でもないだろうが、扉の横には胆露が控えている。こちらを気にしている素振りもない。
(だが、いるな。タンロ以外にも二人。ウルカにヒザマキというのはこいつらか。かろうじて気
配は読めるが……大したものだ。この狭い庭園内、どこに潜んでいるか掴めぬ)
「あのう」
「はっ!?」
 全神経を傾けて周囲の気配を探っていたところ、いきなり声をかけられたので、少し驚いた。
 三男は三男で、それなりに勇気を振り絞って声を出したのだろう。見上げる瞳に、必死めいた
色が浮かんでいる。
「なにゆえ、私などと話そうと思われたのですか?」
「説明するためには、あなたに謝らねばならぬことがあります」
 先ほどの親兄弟の会話を陰から見聞きしていたことを明かして、まず頭を下げた。
「よいのです。父上には、そういうところがおありになる。貴殿が謝ることなどないのです」
 一つ一つの言葉を選びながら、必死に格式ばった口調を作っていた。貴い家に生まれたことが
気の毒に思えるほど、三男は世故というものから遠くにいた。
 深呼吸を一つ。本来の目的を果たすために膝を折り、三男の目線に合わせて告げる。
「先だっての会話で、貴君は私を強いと評した。ですが……私はそのような評価に値しませぬ」
「どうして。戦争で大活躍する、『五十人斬り』なのでしょう?」
「私は選べなかったのです。何一つ。誰一人。恐らくこれからもずっと」
「…………」
「貴君にはまだ、多くの時と機会が残されている。その手で一つでも多くの事物を選び抜かれる
こと、願っております」
 片膝立ちで頭を下げ、それでこの場を去るつもりだった。背を向けて進もうとしたその手に、
小さな手がすがりついてくる。
「待ってください。あなたの力は本物だと聞いています。だからどうか、そんな風に諦めないで」
「なんと……?」
「あなたほどの人でさえ選ぶ手を持てないんじゃ……僕はこの先何一つ選べない。だからどうか、
諦めないで」
「もったいのうございます」
(この人も、己にできる以上のことをしようとして……無理をなさる)
 その焦りを取り除きたいと思ってこの場に来た。けれど、このまま長居を続ければかえって悪
いことになる。少しだけ名残惜しい気持ちを、すがってくる手と共に振り払い、歩を進める。
476名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:24:39 ID:wL/91w2X
17/19
「あの、最後に顔だけでも見せてください」
「我が顔面は戦友の呪いに汚れております。どうかお許しください」
「お願いです……ぼ、私にあんなことを言ってくれるのは、もうあなただけです。そんな人の顔
も思い出せないのは、つらい……」
 今にも泣き出しそうな声に、決意が折れた。
 ゆっくりとヘルムを外し、三男に見返る。きっとひどく醜い顔になっているだろう。せめて良
い思い出になればと、持てる力のすべてを結集して、笑顔を生み出す努力をする。
 陽の光の中で、二つの小さな瞳が、慣れない笑顔を見つめている。
 数秒。折良く陽がかげったところで、三男に背を向ける。儀式は終わったのだ。
「お見苦しきを、お許しください」
 三男はもう呼び止めなかった。草花を踏まないように気をつけながら扉に向かう。気づいた胆
露が扉に手をかける。
「見苦しくなんかないよ!」
 三男の声が足を止めさせる。胆露も、白々しく視線を逸らして、会合の延長を容認した。
「君は笑ってくれた。そんなにツラそうなのにだよ。強いよ、君はやっぱりすごく強い。僕の知
ってる誰よりずっと」
「……もったいのうございます」
「呪いだってなんだって関係ない。キレイだった。僕は好きだ。その顔が僕は好きだよ」
「もったい、のう、ございま……っ」
 胸の奥からこみ上げるものをこらえることができなかった。うつむき、表情を隠すが、そんな
ことではどうにもできない。無礼を承知で、再びヘルムをかぶって顔を覆う。
(私たちは)
 ヘルムの内側の頬を、熱いものが伝う。
 体の奥底に潜むものが、ほんの少しだけ、きゅんとときめいたのを感じる。
 三男の最後に口にした言葉が、記憶の中を駆けめぐる。
 自分の口からも、恋人の口からも、そのたった二字の言葉の記憶が出てこない。
(ああ、私たちは……)
 異変に気づいた胆露が数歩近寄ってくるが、その途中で異変の正体に気づき、また、視線をは
ずした。
 三男は三男で、不意に立ち止まった彼女の背中を不思議そうに見つめている。
(どちらかからでもその言葉を口にできていたら、私たちは……)
「あの、どうか……?」
 駆け寄ろうとする三男を後ろ手で制する。逆の手で、幾度もこみ上げてくる嗚咽を抑えこむ。
「ああ――」
 そうして、そのままその場に立ちつくした。
 誰にも見せない涙が止まるまで、ずっと立ちつくしていた。
477名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:26:05 ID:wL/91w2X

18/19
 薪木の弾ける音がおぼろげな意識を叩き起こした。
 いつから微睡んでいたのか。辺りはまだ暗いままで、たき火の光がぼんやりと闇に抗っている。
「起こした? ごめん、休んでていいよ。番は僕がやる」
 少し前に寝入ったはずの主君――ライサラ家の三男、ウォス――が、自分の代わりに寝ず番を
している。従者として許されない不覚だった。
「申し訳ありませぬ。進んで買って出たものを……」
「いいんだ。ハイドラ、ほとんど休んでないだろう? 僕だって野営のコツはつかめてきた。火
の番もね。君にばかり苦労はさせられない」
「……もったいのうございます」
 ウォスが、小さく苦笑しながら寄り添ってくる。
「久しぶりだな、ハイドラの『もったいのうございます』。会ったばかりの頃はよくその台詞を
耳にしたけれど」
 火が映すウォスの横顔が、苦笑から自嘲へと変わってゆく。
「もったいないのは、君の方だ。君はもっといろんなことができたはずだ。それが僕についてき
たせいで、今や敵国の大陸だ。君にはわがままを聞いてもらってばっかりで、報いられるものが
なにもない」
「若……」
 どういえばいいものか。言葉を探しながら、かすかに寝乱れた髪を整える。普段頭を守ってい
るヘルムは、今は傍らに置かれて火の光を照り返している。
 思い出の中にあったくすんだ緑のヘルムではない、出立の日、主君から授かった真の兜だ。
「私は……満ち足りております。あなたが子宮を叩いてくれたあの時からこれまで、ほんの一瞬
たりとも例外なく、です」
「しきゅ……えっ?」
「!」
 きょとんとするウォスを突き飛ばし、闇に向かって飛び込む。空中で取り出したヴリトラを、
逆立ちした振り子のように振るって飛翔のベクトルに加算する。
 着地とともにうち下ろした刃が、骨肉をつぶす音と手応えを返してくる。
「追っ手が!?」
 ウォスがたき火を拾い、闇を照らした。
478名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 02:28:03 ID:wL/91w2X
19/19
 ハイドラの一撃に潰れたのは、人間ほどの大きさはあろうかという野犬だった。
 追っ手ではなかった――思わず、大きなため息が漏れた。
「ねぇハイドラ。三度目の追っ手を追い返してから、なんだか少し緊張しすぎじゃない?」
「……最初はお屋敷つきの番兵たち。次は、ご本家つきの兵士たち。そして、先日打倒したのは、
金で雇われたのであろう正規兵たちでした」
「うん。どうしても僕らを連れ戻したいんだ。そりゃ、黙って出てきたのは悪いけど……なんだ
か必死すぎる」
「次か、その次か……いずれにせよ近い内に、恐らくタンロが来ます」
「父さんの付き人の? あのお姉さんって、戦えたの!?」
「刃を交えたことこそありませぬが、わかるのです。あの女は強い。あなたの元奥方や、ジャン
ヌの姫君より、更にです」
 誇張ではない。初めて会った時点から既に途方もない使い手だった。あれから数年が経ってい
る。いざ対峙したときどのような結果が生まれるか、予想することさえできない。
(それに十中八九、ウルカとヒザマキも来る。あの三人を相手に、私一人でどこまでやれる……?)
 武器を握りしめたままの手に、そっとウォスの手が重なってきた。
「ハイドラ、僕もいる。誰が来ても、何人来ても、一緒なら切り抜けられる。大丈夫!」
 言葉とは裏腹に、ウォスの手はかすかに震えていた。自分が脅威を感じるほどの相手なのだ。
ウォスにとっては、もっととてつもない脅威だろう。
 それでも、若き主君は従者の前で、大丈夫だと強く言ったのだ。
 その言葉が、ハイドラの中から笑顔をすくい上げる。
「若……もったいのう、ございます」
 顔を伏せるとたき火の光が目にはいる。体内に定着した熱が、顔に張り付いた火傷の跡が、か
すかに疼いた。
(見ているか……? またお前の力を借りることになりそうだ。許せよ、まだ会いに行くわけに
はいかぬのだ、我が戦友よ――)
 火傷の跡がほのかに青白い光を放った。それは赤々とした火の光に塗りつぶされて、ウォスの
目には見えなかったろう。
 けれどハイドラは、刻み込まれた熱に彼の面影を思うことができた。
 かつて愛し、雪のように融けて去っていった男の、儚い面影を。

<おしまい>
479名無しさん@ピンキー:2009/03/11(水) 12:12:19 ID:7hBtCJen
燃えつつも萌えた。ハイドラさーん!
480名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 03:05:39 ID:e6RMsmNW
ジャンヌ家いいな
481名無しさん@ピンキー:2009/03/12(木) 08:54:03 ID:dNmZNq1a
まとめスレに保管してもらったほうが良くね?このスレ
482名無しさん@ピンキー:2009/03/14(土) 00:17:27 ID:MFt4ANsn
そろそろ次スレ?
483名無しさん@ピンキー:2009/03/17(火) 05:28:33 ID:f+tKx3nH
保管庫さんに最新作が保管されたら立てた方がいいかもな

それにしてもハイドラさんが強者設定なのに乙女すぎて胸が熱い
職人GJ!!
484名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 09:49:52 ID:Pw5d6Rik
保守age
485名無しさん@ピンキー:2009/04/21(火) 07:47:18 ID:YLZsTSk9
486名無しさん@ピンキー
「うー、キマブラキマブラ…」
 今、キマブラを求めて全力疾走している僕は、ネツァワルに通うごく普通のスカウト。
 しいて違うところをあげるとしたら、ハイブリッド(ふたなり)ってところかナー。名前はブリス。
 そんなわけで、アンちゃんのいる軍管区へとやってきたのだ。
 ふと見ると、ベンチに一人の若いソーサラーが座っていた。
「うほっ、いい♂…」
 そう思っていると、突然その男が僕の見ている目の前で中部隊服のホックをはずしたのだ!
「訓練(や)らないか」
 そういえば、この軍管区はハッテン場の訓練場があることで有名なところだった。
 いい♂に弱い僕は、誘われるままホイホイと訓練場について行っちゃったのだv
 彼…ちょっと無課金っぽいジャッジ持ちソーサラーで、ライサラオスと名乗った。
 タイマンもやりなれているらしく、訓練場に入るなり、僕はサンダーボルトで吹き飛ばされてしまった。
「よかったのか、ホイホイついてきて。俺は不利キャラだって構わないで食っちまう人間なんだぜ」
「こんなこと初めてだけどいいんです…。僕…ライサラオスさんみたいな人、好きですから…」
「うれしいこと言ってくれるじゃないの。それじゃあとことんハメてやるからな」
 言葉どおりに、彼はすばらしいテクニシャンだった。
 僕はというと、ステップに重ねられるライトニングの波に、身をふるわせてもだえていた。
 しかし、その時、予期せぬでき事が…
「ううっ…ブルブルッ…でっでそう」
「ん? もうかい? 意外に早いんだな」
「ち、ちがう…実は、さっきから持ち替えステップがしたかったんです。弓を持ってるのもそのためで…」
「そうか…いいこと思いついた。お前、俺のケツの中で蜘蛛矢しろ」
「ええっ…おしりの中へですかァ?」
「スカウトは度胸! なんでも試してみるのさ。きっと気持ちいいぞ。ほら、遠慮しないで撃ってみろ」
 彼はそう言うと、素肌にまとった中部隊服を脱ぎ捨て、逞しい尻を僕の前に突き出した。
 自分の取柄であるリーチを捨てるなんてなんて人なんだろう…。
 しかし、彼の堅く引き締まったヒップを見ているうちにそんな変態じみたことをためしてみたい欲望が…。
「それじゃあ…やります。は、入りました」
「ああ…次はフルブレイクだ」
「それじゃあ…出します」
「いいぞ。俺のHPがどんどん減っていくのがわかるよ。しっかりベーコンを食っとかないとな」
「くうっ! 気持ちいい…!」
 この初めての体験はスタンにオナニーブレイクでは知ることのなかった絶頂間を僕にもたらした。
 あまりに激しい快感にブレイクを出しきると同時に僕のクヴェーラはブレイクの海の中であっけなく耐久0になってしまった。
「ああーっ!!」
「このぶんだと相当がまんしてたみたいだな。状態異常アイコンがパンパンだぜ。どうしたい」
「あんまり気持ちよくて…こんなことしたの初めてだから…」
「だろうな…俺も初めてだよ。ところで俺のウシャスを見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく…赤いです…」
「赤いのはいいからさ。このままじゃ収まりがつかないんだよな。今度は俺の番だろ?」
「ああっ!!」
「いいぞ…よくのけぞってビクンビクンしてやがる…!」
「で…出る…」
「なんだ? 今出したばかりなのにまた出すってのか? 精力絶倫なんだな」
「ちっちがう…!」


「なにィ? 今度はパニィ? お前、俺をスカフォードと間違えてんじゃねえのか!?」
「しーましェーン!!」