619 :
寸止め刑事:
【アイ×P】その10 1/9
「もう落ち着いた?」
そう声を掛けられ、アイコちゃんを見上げた。
私は布団の上に投げ出されたアイコちゃんの太腿にうつ伏せの格好で膝枕されている。
帯を解かれてはだけた胸元を月の青白い光が照らし、
豊かな胸に持ち上げられた浴衣が黒々とした影を落としていた。
「うん…もう大丈夫…」
アイコちゃんは私を膝枕したまま団扇でゆっくりと扇いでくれている。
そのリズムに合わせる様に私の背中を優しくぽんぽんと叩きながら。
子守唄でも歌われたらそのまま眠りに落ちてしまいそうな心地好さだった。
ポニーテールを解いて柔らかな長い髪を下ろしたアイコちゃんは普段よりずっと大人びていて
なんだかお母さんに寝かしつけられている様な錯覚を覚える。
私のお母さんとちっとも似てないのに。
その穏やかな表情を見つめるうちに覚悟を決めた。
もうこれ以上自分が思い悩んでいる理由をアイコちゃんに隠してはいられない。
「私達… 相性ばっちりなのよね?」
「そうよ…だから何も心配しなくていいの」
「でも… やっぱりまだ怖いわ…」
「怖い? わたしが?」
「ううん… アイコちゃんと一緒に居ると楽しくて、嬉しくて…」
「わたしもよ」
「でも… 私達女同士だから… その…」
「女同士だと好き合っちゃいけないの?」
「そんな事無い! ただ… この国では生き辛いわ…」
「ずいぶんスケールが大きくなったわね」
「私、アイコちゃんの事を好きになってから色々メガネで調べたの
同性で愛し合う世界がある事、同性でも結婚出来る国がある事…」
「それで?」
「…この国ではまだまだそこまで理解されてないと言う事、
そしてその事で苦労している人達が居る事も…」
アイコちゃんは何も答えず、私の背中を叩いていた掌を頭に乗せて優しく撫でてくれた。
「アイコちゃんにそんな辛い思いをさせるなんて、私には出来ない…」
「ありがとう… 優しいのね」
「ううん、違うの、私はそんな優しくなんかないの!」
620 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:36:13 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 2/9
突然声を荒げた私にびっくりした様にアイコちゃんの手が止まる。
私は起き上がると、アイコちゃんに向き合う様に座り直した。
「アイコちゃんに辛い思いをさせたくないのに、それでも好きな気持ちを押さえられない。
アイコちゃんと別れる事が怖くて怖くてしょうがない臆病者なの」
私はアイコちゃんの眼を見据えて言った。
アイコちゃんは何故だか少し寂しそうに笑って、私を抱き寄せる。
「ごめんなさい」
「え?」
「P… いえ、りんに辛い思いをさせてたのはわたしの方だわ。気付かないでゴメンね」
「そんな…」
アイコちゃんは私の手を取ると自分のはだけた胸の中心にひたりと押し当てた。
柔らかな皮膚を通して熱い血が通う肉の感触。そしてその最深部で脈打つ鼓動を感じる。
「どう? 分かる?」
「ど、ドキドキしてる…」
「りんと一緒に居る間ずっと鼓動が速くなってるの。こんなの初めて」
アイコちゃんは自分の胸から頬へと私の掌を移動させ、頬擦りする様に押し当てた。
「りんがどう思おうと、もう遅いわ。私だってこんなにりんの事が好き」
「アイコちゃん…」
「辛い事なんて全然平気よ。だから別れるなんて悲しい事言わないで」
再びアイコちゃんの腕に抱き寄せられてぎゅーっと抱き締められた。
目頭が熱くなってまた涙が溢れそうになったが、これ以上アイコちゃんを心配させまいと必死で耐える。
「女同士の恋愛が上手く行かないなんて誰が言ったの? そんな事言ったら男女の恋愛だって同じじゃない?
どんなカップルにだって辛い事や悲しい事は起こる筈よ」
「それはそうだけど…」
「第一、相手の事を思って別れるなんてフェアじゃないわ」
「ふぇ…フェア?」
「だって、辛い事が起きて一緒に立ち向かってそれで負けたんならしょうがないけど、
まだ辛い事なんかこれっぽっちも起きてないのよ? 敵が誰だか知らないけど不戦勝なんて許さないわ」
やっぱりアイコちゃんはアイコちゃんだった。
私なんかが思っている以上にずっとずっと前向きで頼もしくて、そして優しい。
621 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:37:13 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 3/9
「りん」
ふと、名前を呼ばれた。
アイコちゃんが私の掌を頬に当てたまま顔を近付けて来る。
「好きよ」
目の前に迫った唇がそう呟き、私の唇に重ねられた。
押し付けられた唇は尚も前進を続け、そのまま押し倒される様にして背後の布団に倒れ込む。
アイコちゃんが素早く私の首の後ろに手を挿し入れて頭を打たない様に支えてくれた。
すっと唇が解放され、アイコちゃんが覆い被さる様に私を見下ろしている。
「りんの事好きだから…わたしのものにしちゃっていいよね?」
「…うん…」
「ありがとう」
再び唇を重ねられ強く吸われた。
挿し入れられた舌を吸って私もそれに応える。
両腕をアイコちゃんの背中に回してキツく抱き締め、息が苦しくなる程にお互いの舌を吸い合った。
抱き合ってただ舌を絡めているだけなのに、頭の芯がとろける様に痺れてくる。
なんて心地好いのだろう。なんて切ないのだろう…。
「アイコちゃん…私を…アイコちゃんのものにしてください」
荒くなった呼吸を整える為に離した唇からそんな言葉が自然に漏れた。
アイコちゃんが私の事を好きだと言ってくれた瞬間から、いや、もっとずっと以前から
私の心も体もとっくにアイコちゃんのものだった。
だけどきちんと自分の口から伝えたくて、そうお願いした。
「アイコ…って呼んで」
「…アイコ…私はアイコのもの…だからアイコの好きにして」
「りん…わたしも全部りんにあげる。わたしはりんのもの」
それから何度もキスをした。
唇から頬、頬から首筋。首筋から胸元へとお互いの体を唇で吸い、
体の位置を入れ替えながら隅々にまで舌を這わせる。
敏感な部分を舐められると思わず切ない声が漏れた。
啼かされた同じ場所を今度は舐めて仕返しをする。
そうやってお互いの弱い部分を何度も責め合ううちに体中から汗が噴き出し、その汗すらも舐め合った。
622 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:38:04 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 4/9
「下着…汚れちゃう前に脱いじゃおうか?」
アイコが私の大事な部分を申し訳程度に覆っているTバックの紐を摘んでぺちっと弾いた。
もう手遅れになってやしないかな? と思える程に頭の芯はとろけて体もすっかり火照っている。
自分で脱ごうと腰を浮かせたとたんアイコの手が伸び、するりと小さな布を引き下ろした。
あっ! と思ったがもう遅い。
横になっている自分からは見えないが、
下腹部に張り付いていた布が湿った音を立てて剥がされる感触はしっかりと感じ取れた。
いやらしく糸を引く様がありありと想像出来る。
「あら、遅かったみたい…」
「嫌ぁっ!見ちゃ駄目ぇ!」
「なんで? 可愛いわよ?」
制止するヒマも与えずアイコは私の股間に顔を埋め、最深部をちゅっと吸った。
「だ、駄目っ…ふンうぅ…っ!」
逃げようともがくが、
膝まで降ろされたショーツをアイコがしっかり握っているので脚を閉じる事も開く事も出来ない。
アイコの頭を押し退けようと両手で突っ張ってみても力が入らず、
それどころかアイコがぺちゃぺちゃと音を立てて舌を動かす度に背筋を甘い電流が這い昇り脳が痺れた。
力の入らない両腕とは対照的に両脚は攣りそうになる程に突っ張り伸び切っている。
「あぁあ…ぁ…だ、だめぇえ…」
口から勝手に声が漏れた。
お風呂で体を洗い合った時にも同じ場所に触れられた。指で何度もなぞる様に愛撫もされた。
でもその刺激は石けんの泡によって随分とマイルドなものにされていたのだろう。
アイコに間近で凝視されながら熱い舌にねぶられる刺激は強烈過ぎる。
「んっ…うぅ…」
頭の中心で閃光が瞬くと同時に全身が硬直し数回びくびくと痙攣した。
「わっ!?」
驚いてアイコが身を離したとたん、全身の硬直が解けて一気に弛緩した。
体中から力が抜けて死んだ様にだらんと両手両脚を投げ出し、そのくせ呼吸だけは荒く激しく胸を上下させている。
「もしかして…いっちゃった?」
「…アイコのいじわる…」
「なによー舐めただけじゃない」
「恥ずかしいから嫌って言ったのに…」
623 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:39:55 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 5/9
私のささやかな抗議も意に介さないかの様に、
アイコは私の両脚から布切れを引き抜くと小さく丸めて枕元に放り投げる。
そうして立ち上がって自分の下着も勢い良く脱ぎ捨て、投げ出された私の右腕を跨ぐ様にぺたんと腰を降ろした。
「触って…」
そう言って私の手を取ると自分の股間へと導く。
ひたっと指先が濡れた柔らかな皮膚に触れた。
「りん…ごめんね。でもりんの恥ずかしい姿見てこんなになっちゃった。もっと恥ずかしいわね」
「あ…いや、その…」
アイコの方へ向き直ろうと、体の位置を動かした弾みで指先が濡れた部分へと強くし当てられた。
「んっ!」
「あっ!ご、ごめんなさい!」
「ううん、大丈夫。もっと…触って…」
「え…いいの?…」
「うん。わたしはりんのものだから」
言われるままに指を動かした。
濡れた襞に指の腹を滑らせるとねっとりと絡み付く様に吸い付いて来る。
見上げるとアイコは何かに耐える様に眉を歪め、小さく開いた唇から甘い声を漏らしていた。
その苦悶に歪む表情は頭がくらくらする程可愛らしくて
先ほど収まった筈の加虐心が再びむくむくと身をもたげ始める。
もっと切ない顔にさせてあげる。もっと可愛い鳴き声を上げさせてあげる。
指の動きを速めながら上体を起こしてお互いの顔を近付けた。
月明かりの中、間近で見るアイコの顔は桜色に上気していてうっすらと汗ばんでいる。
「…キス…して…」
辛そうな吐息の間から絞り出す様にそう呟く唇を、私の唇で塞いだ。
吹き込まれて来る熱い息を肺一杯に吸い込む。
アイコは片手で私を抱き締め、空いた手を私の両脚の付け根へと伸ばして来た。
ぴくんと軽く仰け反り、思わず眼を閉じてしまう。
今、きっと私もアイコと同じ表情をしているに違いない。
月明かりで青白く染まった室内に、指を蠢かせ舌を啜り合うくちゅくちゅと濡れた音だけが響いている。
もう辛抱堪らなくなったと言う感じでアイコが唇を離し呟く。
「も…もう駄目…りんの指…」
「挿れてほしいの?…アイコ」
「…うん…一緒に…嫌?…」
「私も…アイコの指が欲しい…」
再び唇を重ね、お互いの中指を立てて躯の最深部へ向けて狙いを定める。
ゆっくりと力を込め熱く濡れた隙間へと指先を挿し入れて行く。
「んぅっ!…」
二人の呻き声が混ざり合い、重ねた唇の隙間から漏れた。
624 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:42:04 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 6/9
ちゅんちゅんという鳥の声で目が覚めた。
差し込む眩い陽光に眼を細めながら庭を見ると、物干竿にとまった瑠璃色の小鳥が忙しそうに首を巡らしている。
なんという名の鳥だろう?
そう思う間もなく青い小鳥は何処かへ飛び去ってしまった。
むくりと体を起こし、枕元のメガネを掛けて時刻を確認する。もうほぼ正午に近い。
寝過ぎだ。
隣を見るとアイコちゃんは既に起きているのか、寝ていた布団が畳まれていた。
自分の体を見下ろすと浴衣をきちんと着ていて帯もしっかり結ばれている。
昨夜の事は夢だったのだろうか?
浴衣の裾から手を挿し入れて下着に触れてみた。体液に塗れて乾いた跡の様に微かにカサカサになっている。
これが昨夜の行為による物なのか、それとも淫靡な夢を見た所為なのか判じることが出来ない。
そもそも夢だったとして、どの時点からだったのかすら判然としない。
とりあえず立ち上がると自分の寝ていた布団を抱えて庭に出る。
寝汗を乾かす為に物干竿に掛けて干す。何度か往復してアイコちゃんの分の布団も干し終えた頃に声を掛けられた。
「あら、干してくれたの? 放っといても良かったのに」
草木染めの浴衣の上に割烹着にも似た可愛らしいエプロンを着けたアイコちゃんが姿を現した。
私が寝ている間にまたも何やら家事を済ませていたらしい。
「朝ご飯、ってもう昼だから朝昼兼用だけど。昨日のカレーでいいわよね?」
「起こしてくれれば手伝ったのに」
「カレー温め直すだけなのに2人分も手は要らないわよぅ」
くすくすと笑い合いながらダイニングへと並んで歩く。
向かい合ってテーブルに着くと昨日のカレーとサラダの残りを一緒に食べる。
生クリームを足したと言うカレーはクリーミーでとても美味しかった。
「寝苦しくなかった?」
「ううん、風が通って涼しかったわ」
「でも汗かいたでしょ。帰る前に一緒にシャワー浴びましょ」
「あ、それはいいかも…」
そこでやっと何かがおかしい事に気付いた。
アイコちゃんが今着ている浴衣は山桃の草木染め、私が着ているのは西洋茜。
山桃って言うわりには黄色いのよねー。そう、その黄色い浴衣は元々自分が着ていたはず。
「あ…アイコ…」
「ん? なぁに? りん」
「浴衣…逆になってない?」
「あらやだ、気付かなかったわ。ふふっ。月明かりで着付けたから間違えたのね」
625 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:44:38 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 7/9
お互いの浴衣が入れ替わったと言う事は、その間にお互いが全裸になったという事。
「なによ顔紅くして。昨日の事思い出しちゃったの?」
「いえ…その…夢だと思ってたから」
「ひどーい! あんなに愛し合ったのに!」
「あ、愛し合っただなんて…」
「とっても素敵だったわよ… りん」
「いやー! そんな事言わないでー!」
ますます顔が紅く染まるのが自分でも分かる。
誤摩化す様に無茶苦茶にスプーンを動かしカレーを頬張った。
そんな私の姿をにこにこと微笑みながらアイコは眺めている。
そうか、あれは夢ではなかったんだ。
スプーンを持つ指先に熱く湿った感触が甦る。
カレーを咀嚼する舌先に絡め合ったアイコの舌の柔らかさを思い出す。
だめだ、食事中に思い出す様な事ではない。鼻血が出そうだ…
注がれた麦茶を勢いよく飲んでやっと一息ついた。
「…夢じゃなかったけど…夢みたい」
食後に手分けして二人分の食器を洗うと一緒にシャワーを浴びた。
冷水を浴びながら抱き合い口付けをしたが、また汗をかいては意味が無いのでそれ以上の事はせず
洗面器に張った温水でお互いの汚れた下着を揉み洗いした。
たった2枚で洗濯機や乾燥機を回してもらうのは忍びない。
持参した着替えを身に着け、アイコも普段着に着替えた。
干された布団の横に並べて干された2枚のTバックを眺めながら縁側に腰を降ろす。
当然乾くまでの間私はノーパンなのだが、わたしも付き合う!と言ってアイコも下着を履かずに居る。
「な、なによ…私だってスカートぐらい持ってるわよ」
そう恥ずかしそうに言うアイコは珍しくパンツ姿ではなく、太腿半分ぐらいの丈のデニムのスカートを履いていた。
「ううん、とっても似合ってて可愛いわ」
「そう? でもやっぱりスカートって無防備ね。なんだか凄く心細いわ…」
「それは下着履いてないから…」
無意識のうちに手が伸び、スカートの裾から覗くアイコの内腿に掌を当てた。
「ひゃっ…り、りん?」
「あ、ごめんなさい。嫌?」
「嫌じゃないけど… なんだか大胆になってない?」
「なってるかも…でも、それはきっとアイコの所為…」
「バカ…」
626 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:48:06 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 8/9
どちらからともなく唇を重ねた。
私の掌は更に奥へと進み、むっちりと合わさった太腿を掻き分ける。
アイコがその侵入を許可する様に両膝を軽く開いた。
「アイコ…もう一度シャワー浴びなきゃいけなくなるけど…」
「いいんじゃない? 夏休みなんだし…時間はたっぷりあるわ」
「最後の夏休みだけど…ね」
「まーたそんな事言ってる。夏なんて放っといても律儀に毎年来るわよ」
「そういう考え方出来るアイコが好き!」
再び唇を重ねるとアイコの手も私のスカートの中へと伸びて来た。
抱き合ったまま縁側の板張りの上に横になる。
真上から降り注ぐ陽光に炙られあっという間に全身から汗が噴き出す。
もどかしく脱ぎ捨てた服をシーツ代わりに、汗まみれのお互いの躯を絡め合った。
「ふふっ 結局洗濯機回すはめになりそうね」
「この縁側も拭き上げなきゃ」
「そうだ…」
急に何かを思い付いた様にアイコが立ち上がった。
手を引かれ私も起こされると、そのまま引っぱられて裸足のまま庭へと飛び出す。
「え? えぇー?!」
戸惑う私を気にも止めず、ぐいぐいと引っぱってアイコは庭の真ん中へとたどり着く。
そこでくるりと向き合うと綺麗に刈り込まれた芝生の上に仰向けに横たわった。
「来て」
濃い緑の芝生にくっきりと白い肌を縁取られ、陽光にきらきらと汗の粒を煌めかせたアイコが手を広げて誘う。
戸惑うよりも先に体が動き、吸い寄せられる様にしてアイコの躯に自分の躯を重ねた。
噎せ返る様な草いきれと土の匂いが鼻を突く。そして微かにアイコから立ちのぼる汗の香り…
もうそれだけで頭がクラクラした。瞬間的に熱中症にでもなったかの様だ。
「ここならいくら汚しても平気よ。セキュリティーのカメラも外向きだから安心して」
アイコは私を抱き締めながらそう呟く。そんな些細な事はどうでも良かった。
むしゃぶりつく様にしてアイコの体を貪った。
お互いの汗が混じり合いぬるぬると滑る躯を絡め合い、舌を吸い、指で愛しい部分を弄ぶ。
ときには互い違いに抱き合って指で掻き出した蜜を舌で啜ったりもした。
何度も高みに昇り詰めては果て、果ててはまた昇ってを繰り返す。
二人同時に達した時には周囲を憚らずにあられもない嬌声を上げ合った。
あぁ…これも夢ではない。だけどやっぱり夢の様…
627 :
寸止め刑事:2008/10/07(火) 09:51:13 ID:JasrrQk9
【アイ×P】その10 9/9
「また遊びに来てくれる?」
アイコは門を出てからしばらく手を繋いで歩いてくれていたが、四つ辻に出た所で歩みを止めてそう呟いた。
見送りはここまで。この先自宅まで一人で帰る事を思うと涙が出そうな程寂しかった。
「アイコさえ良ければいつでも。…うちにも遊びに来てね?」
「うん! 是非!」
ぐったりと体が動かなくなるまで芝生の上で戯れ合った後、庭の散水用のホースで水浴びをした。
まだ少し体が怠かったが、心は来た時以上に満たされている。
たとえ今死んでしまったとしても悔いは無い程の思い出をアイコに貰った。
本当に楽しかった。嬉しかった。その思いが今この別れを一層辛い物にしている。
会おうと思えばいつでも会える。声を聞きたければ指電話でいつでも話せる。
でもやっぱりさよならを言うのは辛い。
「じゃぁ、またね」
アイコが先にそう言った。
そうか。さよならじゃなくてもいいんだ。
「うん、また!」
繋いだ手をぶんぶんと振った後、アイコは私の頬へちゅっとキスをした。
だ、誰かに見られたらどうするの!?
「誰も見てないわよ。車に気を付けてね!」
そう言ってアイコはまだアタフタしている私の背を押した。
何度も振り返りながら歩き出す。振り返る度に手を振るアイコが段々と小さくなっていく。
角を曲がって見えなくなるまでアイコは手を振ってくれていた。
そこから先は真っすぐ前を見て心持ち歩みを速めて帰路を進む。
色々な事があって長かった様な短かった様な、充実した一日だった。
ぐずぐずして泣いたり、アイコを悲しませてしまったりもしたけど
最後は気持ちよく送り出してくれたアイコ。
やっぱり私はアイコが好き。どうしようもなく好き。
この先も色んな事があるだろう。ケンカしたり、悲しい目に遭ったりするかもしれない。
でもどんな事があっても負けない様、アイコにもらった強い自分をもっともっと鍛えて
もっとずっと強くなろう。そう心に誓った。
そんな事は起こって欲しくはないけれど、たとえ二人が別れる事になったとしても
笑って「ありがとう」と言える様に。
学校の前を通り過ぎ、通い慣れた道を進む。見慣れた景色が昨日までと違って新鮮に眼に映る。
今朝見た青い鳥が塀に止まって私を見下ろしていた。
ありがとう。でも私は今十分に幸せよ? ううん、きっとこれから先もずっと…
最後の曲がり角を曲がるとその先に小さく懐かしい我が家が見えた。
あ。
玄関先に立っているのはお母さん。
豆粒の様に小さくしか見えないのに心配そうにきょろきょろしている様子が分かる。
思わず私は走り出した。
一秒でも早くたどり着いて笑ってただいま!と言うために。
そしてどれだけ楽しかったかをたっぷりと聞かせてあげるために。
END