電脳コイルでエロパロ3

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323寸止め刑事
【アイ×P】その3 1/3

「あら? Pちゃんって着痩せするタイプなのね」

更衣室から出て来るなりそう言ったアイコちゃんだったが、
当人のボリュームと比較されれば私の胸なんか可愛い部類に入る。
人より少しは大きいかなという自覚はあったが、ひょろりと細長い体に付くにはアンバランスで
みっともないと感じていた。
それに比べてアイコちゃんときたら、すらりとしていながらも付くべき所にはしっかり肉が付き
健康そのものといった美しいプロポーションだ。
その両の乳房は窮屈な水着の上からでも圧倒的な質量を感じさせ
むしろ普段のブラよりも柔軟な素材に包まれた事でその傍若無人さを増してさえいる。
並んで歩いていると隣からどいんばいんと音が聞こえて来そうな程だ。

今日は学校のプール解放日。
夏休みに入ってから一週間程が過ぎていた。
本当はすぐにでもアイコちゃんのお家にお泊まりしたかったのだが、
合宿のすぐ後にまたお泊まりではアイコちゃんも大変だろうという事で、
翌週の今日、プールの日にしましょうという事になった。
朝、学校で待ち合わせてしばらく泳いだ後、そのままアイコちゃんのお家にお邪魔する予定だ。
今日という日が来るのをどれだけ待ちわびた事か。
昨夜などは興奮してなかなか寝付けず、何度も何度も荷物を確認してしまったものだ。

消毒層を潜りやけに冷たいシャワーに悲鳴を上げるという恒例の儀式の後、
ざらざらした青塗りのプールサイドへとたどり着いた。
馬鹿みたいに晴れ渡った青空に切り抜いた様にくっきりと白い雲が浮かんでいる。絵に描いた様な夏の空だ。

「くらーっ! そこ飛び込まなーい!」

今日の当番らしい我がクラスの担任が笛を片手に怒鳴っている。
声を掛けると手にした名簿に私たち2人の名前を記入した。
帰る時にもう一度声を掛けると判子が押され、無事帰宅した証しとなるシステムだ。
電脳メガネで所在が分かるとはいえ、全員が防水型メガネを持っている訳ではないので
この様なアナログな作業が必要となる。
ついでに貴重品も預ける事になっているので、財布が入ったポーチと生眼鏡を預けた。
とたんに視界がぼやける。度入りのスイムグラスも持っているのだが、
あれは日焼け跡が非常にくっきり残るのでいざという時にしか使えない。
324寸止め刑事:2008/06/29(日) 07:10:09 ID:SoDolOvL
【アイ×P】その3 2/3

「見える?」

ぼんやりした景色の中でぼんやりしたアイコちゃんが尋ねる。

「なんとなく…」
「じゃあ泳ごう!」

急に手を引かれ、倒れ込む様にして2人一緒に冷たい水の中に飛び込んだ。
担任の笛が鳴り響くのを背後に聞きながら、アイコちゃんは楽しそうに声を上げて笑っている。
そしてあっという間に視界からアイコちゃんは消えてしまった。
笑い声を頼りに必死に水をかくが、元々そんなに泳ぐのが得意ではないので一向に追いつけず、
水音や周囲の嬌声にかき消されてアイコちゃんの笑い声も聞こえなくなってしまった。

「アイコちゃーん。何処なのー?」

不安になりプールの底に足を付いて立ち止まる。
こんなに天気が良くて太陽も眩しいのに。こんなに水が冷たくて心地良いのに。
急に取り残された様な悲しい気持ちになった。いつかきっとこんな風に、アイコちゃんと別れる時が来る。
胸の中で後ろ向きの私が顔を覗かせた。
アイコちゃんの様に明るく前向きに生きたい。そう願い、そう努力して来たつもりだったが
この後ろ向きの分身は長い間棲み慣れたねぐらからなかなか立ち退いてくれないでいる。
それどころかどっしり腰を据え、最初から無理だったんだよと囁く。
その声は弱々しく擦れているクセに、周囲の雑音に邪魔される事も無くやけにはっきりと私の耳に届くのだ。

「ばぁ!」

急に背後から抱きすくめられ、口から心臓が飛び出しそうな程に驚いた。
いつの間にか後ろに回り込んでいたアイコちゃんは、私のビックリした様子に満足そうに笑っている。

「これだけ近付けばよく見えるでしょ?」

ぼやけた景色をバックに、アイコちゃんの顔が大きくはっきりと見えた。
でもすぐにぐにゃぐにゃと形が崩れ、ピントが合ったまま歪んだ奇妙な光景に変わる。
何で私は泣いているんだろう? 大好きな人が目の前に居るというのに。
ビックリした所為でもプールの水が沁みた所為でもない。弱い自分に負けそうになったからだ。
幸い顔中濡れていたので泣いている事はアイコちゃんには知られずに済んだ。
それからアイコちゃんは私と手を繋いだまま泳いでくれた。
背泳ぎの格好で並んでぷかぷか浮きながら「うぁー眩しいねぇ」と呑気に言うアイコちゃんが
普段の活発な様子とあまりにもかけ離れていて、思わず吹き出してしまう。
笑えたお陰で元気になれた。この先もっと楽しい事が待っているのに、落ち込むなんて勿体ない。
弱い自分が居座るならばそれでもいい。強い自分をもっともっと強くしてやる。
こうやってアイコちゃんと手を繋いでいると、そう思えてしまうから不思議だ。
325寸止め刑事:2008/06/29(日) 07:10:54 ID:SoDolOvL
【アイ×P】その3 3/3

くたくたになるまで泳いだ。
水から上がってタオルを羽織る。
フェンスに掛けておいたタオルは陽を吸ってほかほかと暖かく、お日様の匂いがした。
預けてあった眼鏡を受け取ると、横からひょいと手が伸びてアイコちゃんにさらわれる。

「どう?」

そう言われても眼鏡無しでは何も見えないので、代わりにポーチから取り出した度入りスイムグラスを掛けて見る。
ラムネ色のプラスチックの視界の中で私の眼鏡を掛けたアイコちゃんが微笑んでいた。
普段はポニーテールに纏めてある長い髪が、しっとりと濡れて肩に掛かっていてる姿はいつにも増して大人っぽく見える
自分の物ながら垢抜けないフレームだと思っていたが、掛ける人によってはオシャレに見えるもんだなぁ。と、ちょっと嫉妬した。

「ずるいわ。アイコちゃんが掛けるとカワイイ…」
「そんな事無いわよ。Pちゃんだって似合ってるわよ?」

アイコちゃんは笑いながら眼鏡を返してくれた。
眼鏡のフレームで切り取られた景色と、活字を追う事で入国出来る物語の世界。
この二つが私にとって世界の全てだと、ずっと思っていた。
眼鏡を掛けなくても見えるもの、掛けないからこそよく見えるものがあるなんて思いもしなかった。
文字通り視野を広げてくれたアイコちゃんには感謝してもしきれない。

「あ」

更衣室のロッカーを開けて素っ頓狂な声を上げた私をアイコちゃんが不思議そうな顔で見ている。
まさか、そんな。あんなに何度も確認したのに。いや、何度も確認した所為で…?
しばらく考えてはっきりと思い出した。
荷物をなるべく減らそうと、水着は服の下に着てから家を出た。
替えの下着もきちんと用意していたが、
何度も確認しているうちに下着がお泊まり用の荷物とスイムバッグを行ったり来たりして
そのうち「あれ?水着着ていくからこっちの下着は要らないわよね」と…

「Pちゃん。まさか…」
「…そのまさかみたい…」

弱々しい私の返答にアイコちゃんはこらえきれずに吹き出した。
水から上がった時よりもずっしりと体が重く感じられた。



━つづく━