電脳コイルでエロパロ3

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311寸止め刑事
【アイ×P】その2 1/4

決死の覚悟の告白、そしてアイコちゃんからの交際の申し出。
一生分の運を使い果たしたのではないかと思える程の幸運であり、想定外の出来事でもあった。
実際しばらくは実感が湧かず、あれは夢だったのでは?と何度も頬をつねった。
翌日登校して来たアイコちゃんに会った時ですら

「あ、アレ? 冗談よジョーダン。まさか本気にしちゃった?」

なんて言われるんじゃないかと胸がきりきりと締め付けられる様に痛んだ。
アイコちゃんがそんなヒドい事をする訳は無い。
アイコちゃんに対しては絶大の信頼を置いている。
信用していないのはアイコちゃんの事ではない。他ならぬ私自身の事が信用出来ないでいるのだ。
アイコちゃんが言った事、した事を自分の都合の良い様にねじ曲げて受け取ってはいなかっただろうか。
「私たち、付き合っちゃおうか?」確かにアイコちゃんはそう言ったけれど
それは正しく私の耳に届いて、正しく脳に伝わったのだろうか。
そう思い始めるとどう考えても「そんなはずはない」としか思えなくなって来る。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、アイコちゃんは普段と何も変わらず
元気で、可愛くて、そして楽しそうだった。
唯一変わったのは、たまに眼が合った時ににっこり微笑みかけてくれる様になった事だ。
そしてそれに微笑み返す時の私の顔は、ぎこちなく強ばっているのだ。きっと。

たいした進展も無く、1学期最後の登校日を迎えた。
明日から夏休み。教室の中もなんだか浮き立つ様な雰囲気に包まれていた。

「Pちゃん。放課後、ちょっといい?」

担任が現れる少し前にアイコちゃんが私の机の所までやって来てそう言った。
私が慌ててガクガクと壊れた様に頷くと、いつも通りにっこり微笑んで自分の席へ戻って行く。
何だろう?放課後に何があるんだろう?そう考えて真っ先に思い浮かぶのが
「ゴメンね。やっぱり付き合うって話は無かった事に…」

あぁ嫌だ。こんな後ろ向きな発想しか出来ない自分を心底恨んだ。
アイコちゃんならきっともっと前向きな楽しい事を考えるに違いない。
私には想像も付かないが… 多分楽しい事だ、きっとそうだ。そう思う事に決めた。
でも何故か胃のあたりがしくしくと痛み続け、担任からの夏休みの注意事項は全く耳に入らなかった。
312寸止め刑事:2008/06/23(月) 19:10:12 ID:7SwIIgSR
【アイ×P】その2 2/4

「ゴメンね」

放課後、二人だけ残った教室内で開口早々アイコちゃんはそう言った。
膝の力が抜けてよろめいた。手近な机に手をついて転倒するのだけは免れたが
想像以上の破壊力に立っているのもやっとの状態になった。

「きゃぁ! 大丈夫!? Pちゃん!」
「だ、大丈夫…うん、自分でも薄々気付いてたから…覚悟はしてたし」
「何の話?」
「え?」

アイコちゃんは私の体を支える様にして椅子に座らせると、自分も前の席に後ろ向きに座った。
跨いだ背もたれの上に組んだ両腕を持たせ掛けているのでアイコちゃんの顔が私のすぐそばに来る。

「何を覚悟してたの?」

ちょっと首を傾げる様にして私の顔を覗き込み、アイコちゃんは問いかけて来た。
心の底から不思議に思っている。そんな顔だ。

「だって…ゴメンって事は付き合うの止めるって…」
「えー?Pちゃんもう別れる覚悟してたの? 気が早いわよ」
「え?」
「それともわたしの事キライになっちゃった?」
「そ、そんな事ない!」

ぶんぶんとメガネが飛びそうになる程勢い良く首を振って否定する。

「ゴメンねって言ったのはね、わたしの方から付き合おうって言ったのに何も出来なかったから」
「え? それじゃぁ…」
「他人の事には色々口出しするクセに自分の事になるとてんで駄目なのよねー」

そう言いながらアイコちゃんは手を伸ばして私のズレたメガネの位置を直してくれた。
私の普段かけているメガネは度の入った生眼鏡で、電脳メガネを使うときはこれに重ねて使っている。
位置を直してもらったお陰でアイコちゃんの姿がきちんと眼鏡のフレームの中心に収まった。
313寸止め刑事:2008/06/23(月) 19:13:20 ID:7SwIIgSR
【アイ×P】その2 3/4

「いざ交際を始めて見ると、何やっていいのかさっぱり分からないんだもん」
「うん…」
「授業中もなんだかソワソワしちゃうし、
 休み時間もちょっと照れくさくってPちゃんとゆっくり話も出来なかったし」
「うん…」
「だからこれが1つ目のゴメン」
「う…ぅん? …何個もあるの?」
「いや、2個。2個だけだから」

謝っている側でありながら、からからとアイコちゃんは笑った。
私の覚悟していた事に比べれば謝られるのも申し訳ない事だったので、私もつられて笑った。

「で、もう1つのゴメンなんだけど」
「うん」
「明日、夏祭りがあるでしょ?アレにずっと前からフミエ達に誘われててね。
 本当はPちゃんと一緒に行きたいんだけど…」
「なんだ、そんな事! 気にしないで楽しんで来て」
「ゴメンね… 一緒に来る?」
「ううん。生物部の集まりなんでしょ?」
「そう、それでお祭りの翌日は生物部の合宿があるの…」

別れ話どころかアイコちゃんは生物部の付き合いで私の相手が出来ない事を気に病んでいた。
思っていた通りにアイコちゃんは前向きで、私は果てしなく後ろ向きだった。
付き合い続ける方向で腐心するのと、別れる方向で思い悩むのとでは大きな隔たりがある。
なんて私は浅はかだったのだろう。
絶大の信頼を置いているなんて言いながら、一瞬でもアイコちゃんを疑ってしまった自分を呪った。

「アイコちゃん。謝るのは私の方だよ」
「え?何で?」
「私は自分に自信が無くて、すぐ振られちゃうんだろうってずっと思ってた」
「そんな事ないわよ」
「ありがとう。でもね、本当に自信が無いの。
 だから振られたらどうしよう、嫌われたらどうしようってそんな事ばっかり考えてて」
「うん」
「アイコちゃんも本気で私の事好きじゃないんじゃないかって…疑ったりして」
「あぁ、それでさっきの…」
「うん、だから御免なさい」
「いや、でもそれはわたしがモタモタして心配させちゃったからでしょ?」
「え? いや…」
「だからこれはお互いにアイコでおしまい!」
「アイコ?」
「そう、ジャンケンのアイコ。どっちも負けでどっちも勝ち」
314寸止め刑事:2008/06/23(月) 19:17:24 ID:7SwIIgSR
【アイ×P】その2 4/4

お互いに悪いと思った事をしたのでこれでチャラ。
アイコちゃんは自分の名前と同じアイコを使い最初から何も無かった事にしてしまった。
前向きで迷いが無くて、カッコいい。私が好きになっちゃうのも分かるでしょ?

「そうだ、Pちゃんに私の秘密教えてあげる」

突然何か思い付いた様に、アイコちゃんはTシャツ胸部分の両端をつまんで引っぱった。
ピンクの生地に淡いグリーンでプリントされた「5」の字が飛び出した様に見える。
このTシャツはよっぽどお気に入りの様で、頻繁に着ているのを目にする。
同じ柄で薄いパープル生地のものも見た事があるので、もしかしたら何着も持っているのかも知れない。

「どう?」
「どう…って… 5?」
「そう、5。わたしのラッキーナンバー」
「え? 5が?」
「多くもなく少なくもなく、丁度半分。ね?似てるでしょ? アイコと」
「あぁ!」
「勝ちでもなく負けでもなく、多くもなく少なくもなく。それがわたし」

そう言って笑いながらアイコちゃんが指を離すと、
Tシャツは弾かれた様に収縮し元通り形の良いバストをぴったりと覆った。
アイコちゃんは自分では丁度半分なんて言っているけれど、
私なんかじゃ測りきれないぐらい色んなものが山盛りいっぱいだよ。

「夏祭りに合宿かぁ…一緒にお泊まりいいなぁ」

謝罪大会も一段落した所で、愚痴にもならない事を呟いてみた。
今更アイコちゃん目当てで入部するのも不純な動機だし、入部したとして合宿に間に合うとも思えないが
一緒に合宿ができたらどんなに楽しかっただろうと思うと切なくなった。

「泊まりに来る?」
「え!? もう夏休みに入っちゃったから入部手続き出来ないよ?」
「違う違う、合宿が終わった後にウチに泊まりに来ない?って事」

夏祭りも合宿も吹っ飛んでしまうぐらいのサプライズ。
私には想像も付かない様な楽しい事を思い付く。流石はアイコちゃんだ。



━つづく━