丁度アリスの顔の位置から見えたので気付いたのだが、何かをこっそり本のページの隙間に隠しているようだ。
「何だろ?」
ひとまず取り出した辞書を床に置き、アリスはその冊子を引き抜いた。
「!!」
表紙を見てパチッと目を見開く。
これは……これは使えるかもしれない。
辞書なんて調べている場合じゃない。これこそが、アリスに今必要なお勉強ではないか。
アリスは夢中になってページをめくった。
ノックの音が勉強部屋に響く。
「アリス様、授業を始めます」
ガチャリ
戸を開けたエドガーがアリスを目にした瞬間、その鉄面皮が微かに崩れた。
「お帰りなさぁい。アリス、先生に会いたくて待ちくたびれちゃったぁ」
そこに待ち受けていたのは、満面の笑みのアリスだった。
上目使いにエドガーを見上げ、丸めた両手を顎につけてクネクネとしなを作っている。
怪し過ぎる。