らき☆すたの女の子でエロパロ33

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1名無しさん@ピンキー
アニメも好評のうちに終了し原作も大好評連載中、PS2版も08年1月発売予定の「らき☆すた」でエロいの行ってみよ。



☆カップリングは自由
☆基本的に百合マンセー
☆801は禁止(と言っても男キャラあんまいねぇ)
☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること



※マナー等※
※割込みを防止するため、書き込みや投下の前等にリロードを。
※荒らしや煽り、気に入らない人・作品等はスルーで。
※グロやSM、鬱モノなどの過激な内容は断りを入れてから投稿する
※読者=主人公の作品(いわゆる俺キャラもの)についてはNGワード指定や断り文を確実に。
※480KBまたは950レスのどちらかに近づいたら、次スレの準備を。



■みゆきさんの一言メモ

・投稿の際に、メール欄に半角英数でsageと入力すると、スレッドを上げずに書き込めます
 『sage』では有効になりませんので、全角・半角を確認してください

・スレッドの閲覧・書き込みは、絶対ではありませんが専用ブラウザの使用を推奨します
 これにより『人大杉』のエラーが回避できます

・SS投下は、一度メモ帳やワードパッドなどで書き上げてからまとめて投下してください
 投下間隔があくと、他の方がレスできなくなってしまいます



マターリはぁはぁしましょうか。



☆まとめサイト(管理人と職人に感謝!)(避難所の行方はここ参照)
ttp://www33.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1.html
☆派生サイト:てけてけかなたさん伺か化計画
ttp://neo-experiment.hp.infoseek.co.jp/index.html
☆前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ33
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199857229/
2名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 16:44:36 ID:vZRgexVT
>>1

さあ今回もエロにシリアスにほのぼのにギャグに…とにかく色々始まるざますよ?
3名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 16:53:20 ID:yrHqCJFE
い、>>1乙でがんす?
4名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 16:53:48 ID:ogle0LEV
>>1乙でガンス
5名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 16:54:03 ID:1PDHSEGi
>>1
ふ、ふんがー?
6名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 16:55:31 ID:ogle0LEV
かぶったorz
鼻血で溺れてきますだばだば。
7名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:07:52 ID:6xQkC/cy
まともに>>1乙りなさいよ!
8名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:11:59 ID:ei6sv6UD
>>6
だばだばはいいからまともに>>1乙りなさいよ!!
9名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:35:25 ID:e12hvSy0
このスレはゴッドかなたさんによって見守られています
10名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 18:01:29 ID:JWDTAIp8
☆前スレ
らき☆すたの女の子でエロパロ32
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199857229/
11名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 19:26:31 ID:CLnET/Yn
>>1
久しぶりに言わせてもらう
>1乙 !
12名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 20:33:17 ID:6PFtD7m5
>1
乙です。
投下を予定される方がいなければ、投下いたします。
1323-251:2008/01/14(月) 20:37:48 ID:6PFtD7m5
「予兆」

・みなみ×ゆたか (みなみ視点)
・一話完結もの
・シリアス
・非エロ
14予兆 1/4:2008/01/14(月) 20:39:54 ID:6PFtD7m5
 体育祭が終わった、翌日の夕方。
「みなみちゃん。帰ろうっ」
 振り向くと、いつものように小柄な少女が私を呼んでいた。
「うん。ゆたか」
 私は小さく頷いてから、カバンを取り出し、彼女と一緒に教室を出る。

 ゆたかとは、今年の春、高校受験の当日に知り合った。
 洗面所で苦しげに呻いているゆたかの姿は、今でもはっきりと覚えている。
 ゆたかは、ハンカチを差し出したことを私よりも覚えており、制服採寸で
再び声をかけられた。そして、始業式で同じクラスになると、すぐに親しくなった。
 彼女自身は、自分の性格は引っ込み思案だと思っているけど、本当に内気な
私からみたら凄く人懐っこくて、あっという間に親友と呼ばれる間柄になった。

 ゆたかは、時々体調を崩すことがあり、保健委員の私はよく保健室に連れて行く。
 それでも、中学時代よりは体調は良好とのことらしい。
 私は、今まで病気らしい病気に罹ったことがないから、常に体調に不安を持ちながら
生活することの大変さを、頭で想像することしかできなかった。

 ゆたかの一番素敵なところは、やっぱり笑顔だと思う。
 愛くるしい顔から、たんぽぽのような微笑をみせられると、胸のあたりが
とても苦しくなってしまう。
 ゆたかに対する想いが、友人としての『好き』から、恋愛対象としての『好き』に
変わるまでは、大して時間はかからなかった。
15予兆 2/4:2008/01/14(月) 20:40:59 ID:6PFtD7m5
 10月も半ばに差しかかると、夕暮れ時には冷気が忍び寄るようになってくる。
 コートが必要になるには、もう少し時間がかかるけど、昼の長さはかなり短くなってきて
5時を過ぎると、西の空は茜色に染まる。
 ゆっくりと沈んでいく夕陽を眺めながら、駅へと続く通学路を一緒に歩く時間はとても貴重だ。
 何気ない雑談でも、ゆたかと過ごすひとときは、どんな宝石より価値がある。

「それでね…… みなみちゃん」
 ゆたかが話を振って、私が頷いたり答えたりするパターンが多い。
 私は口下手で、率先して話題を振ることが今でも苦手だ。
「うん」
「こなたお姉ちゃんが、昨日、私の事をね」

 ずきっ―― 

 リアルな音が、胸に突き刺さる…… 気がした。
「泉先輩が? 」
 酷く乾いた口から辛うじて言葉が出る。
「『ゆーちゃんもよく眠るけど育ってないよね』っていうんだよ。
胸の事、気にしているのにっ」
 ぷうっと頬を膨らませる。可愛い。目の前がくらくらする程かわいいけど。
「あの、ゆたか? 」
「えっ…… なあに。みなみちゃん」
 ゆたかがきょとん、とした顔を向けてくる。

「泉先輩ってどんな人かな? 」
 私は、思い切って尋ねてみることにした。
「こなたお姉ちゃん? 」
「う…… うん 」
 ゆたかは柔らかそうな唇に人差し指をあてながら、暫し考え込んだ。
16予兆 3/4:2008/01/14(月) 20:42:22 ID:6PFtD7m5
「憧れ、かなあ」
「あこがれって? 」
 胸がずきんと痛む。でも、続きを聞かずにはいられない。
「うん。こなたお姉ちゃんはとっても優しいし、それに、何でもできちゃう人だから」
「そ、そう…… 」
 昨日、行われた体育祭で、クラス対抗リレーのアンカーとして出場した泉先輩が、
なみいる陸上部員をごぼう抜きにして、見事1位になったシーンは鮮明に覚えている。
 あの小さい身体の何処にパワーが隠されているのだろうか。
 私は、ぼんやりと考えこみながら歩いていた時。
「みなみちゃん! 」
 急に腕をひかれて立ち止まり、次の瞬間――

 けたたましいクラクションを鳴らしながら、眼前を白い車が通り過ぎていった。

「みなみちゃん。大丈夫!? 」
 ゆたかの声がやけに遠い。
 目の前が真っ白になった私は、よろめくように後退して、歩道に植えられた
花壇の端に崩れるように座る。
 
「あっ…… 私…… 」
「みなみちゃん、危ないよ。赤信号だよ」
 心配げに差し出されたハンカチを受け取る。額に白い布を当てると
ぐっしょりと濡れている。
 これは交通事故に遭いそうになった為の汗だけか、それとも?

「少し、休んでいこうか。みなみちゃん」
「あ…… うん」
 私は、呆けたように座って、帰路を急ぐ生徒たちや、行き交う車を眺めている。
 ほどなくゆたかが戻ってきて、缶ジュースを差し出してくる。
「みなみちゃん。飲んで」
「う、うん」
 半ば反射的に受け取って、粒入りのオレンジジュースを喉に流し込む。
 甘味が口の中に拡がって、私は大きく息を吐き出した。
17予兆 4/4:2008/01/14(月) 20:44:12 ID:6PFtD7m5
「ゆたか…… ありがと」
 もし、ゆたかが助けてくれなかったらと思うとぞっとする。
 死の顎をを辛うじて逃れえたことに、今更ながらに気づかされた。

「くすっ」
 しかし、ゆたかは小さく笑っている。
「なに? 」
「私、いつも助けられたり、守られたりばかりだから、みなみちゃんを
助けることができて、とても嬉しいんだ」
「ゆたか…… 」
 私は、愛しい人の名前を呼んで、ぎゅっと抱きしめた。
「み、みなみちゃん…… どうしたの? 」
 私の胸元に引き寄せたゆたかの体温が伝わって、とても温かい。
 それなのに、何故か瞼が熱くなってしまう。

「ゆたか。ごめん…… 」
「気にしないで。みなみちゃん」
 感情が昂ぶって、不安定になっている私を、ゆたかは優しく受けとめてくれた。

 暫くゆたかを抱きしめていると、ようやく普段の自分が戻ってくる。
「ありがとう。ゆたか」
「どういたしまして」
 無垢な微笑をみながら、ゆっくりと身体を離して、非日常から日常へと引き戻される。

 いつもと同じように、駅の構内で行き先が違うゆたかとは別れることになる。
「バイバイ、みなみちゃん」
「じゃあ」
 片手を振って、去っていく後姿を、見えなくなるまで眺めてから、私は歩き出した。
 電車に揺られている間、先程の出来事が脳裏に蘇る。

 泉先輩の存在が気にかかって、車に轢かれそうになって、ゆたかに救われた。

 私の心にわき上がった不安は、杞憂なんだろう。
 まさか、ゆたかが泉先輩を恋人として『好き』になるような事なんて、ありえないと思う。

 (了)
1823-251:2008/01/14(月) 20:48:27 ID:6PFtD7m5
以上です。
読んでくれた方、ありがとうございます。

素直な展開ではありませんが、一応、みなゆたです。
みなみ視点は、比較的書きやすいかもしれません。
19名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 20:59:10 ID:yrHqCJFE
>>18
リアルタイムで読了。


嗚呼……あなたの書く話書く話みーんなElopeにつながってるような気がして、せつなさがまず先に立ちます。
ラスト一行なんか特に。フラグを! フラグを立てるんだみなみちゃん!


それはさておいてもぐっじょぶ。
20名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 22:09:44 ID:e12hvSy0
>>1
乙ー
まだ追い付いてないのにとうとうスレが埋まってしまった! なんという速度!
昨日のラッシュで一気に埋まったね、さすが成人の日
21名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 22:21:09 ID:umZq8UQX
あんたの場合
成人式っていうより七五三って感じよねー

…ごめん、なんでもない
22名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 22:30:33 ID:eOrJIEZj
>>1
スレ立て乙です。

>>18
正直言ってElopeから先に読んでも伏線回収ルートから先に読んでも
凄くてなんか一言しか浮かびません。

GJという一言しか。

>>20
しかも恐ろしいのがスレ容量と同じ501で終わったということ。
そのうち500切って終わりそうで怖い。
2329スレ19-24の人:2008/01/14(月) 22:32:50 ID:w4HoAUsA
ヴァー・・・・・全部読み切らない&こっちのSSが書き上がらないうちに新スレですかー・・・・・・

職場の人間に不幸があって弔問に逝ってる間に投下ラッシュとは・・・・・・
ちょっち前スレ戻ってじっくり読んで来ますわ。

って俺もさっさと書き上げないとorz
24名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 22:43:50 ID:e12hvSy0
やっとおす☆かがまで読めた

そして前スレの最後がぶーわ氏だと分かってちょっとテンション上がった
これは早く読み進めなくては!

TSものが大好きな俺は異常なのか?
さながらおす☆フェチか
25名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 22:51:25 ID:svjLhCnN
>>24
よう俺
26名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 23:00:15 ID:tnH07w0Z
>>18
GJ
切なさがとても表れてて素晴らしいです
俺もこういう作品が書けるようになりたいもの

さて、予定されている方がいなければ
投下させて頂きますよ
2726-485:2008/01/14(月) 23:05:27 ID:tnH07w0Z
・「気持ちの欠片」の続編
・かがみ×こなた
・6スレ拝借
・シリアス気味

今回は物語の展開上こなかがのような気もしますが……
とりあえずいきます
28君の隣で(1/6):2008/01/14(月) 23:05:57 ID:tnH07w0Z
 寒さに悲鳴を上げる私の身体をこなたは優しく抱き締めてくれた。
 最初で最後のこなたからの抱擁。
 胸に苦しみを感じながら、私はそれを受け止めてしまっていた。





 君の隣で





 寒い。この単語以外に今の私の状態を表すのに適した言葉があるだろうか。
 長時間冷たい雨に打たれ風に吹かれていたのだから身体的な感覚もそうだが、それよりも精神的な冷感の方が私には堪えた。
 こなたの後姿を見送った後も、私は動力源を失った機械のようにただ立ち尽くすばかりだった。完全にその姿が見えなくなっても、私は微動だにしようとしなかった。
 見えない蔓に心が縛られて動けなかったのかもしれない。
「こなた……」
 自ら別れを選んだくせに、私は未練がましく最愛の人の名前を呟いた。
 私は先程からある疑問を胸に抱えている。
 何故こなたは、去り際に私を抱き締めたのだろうか。
 私はてっきり殴られるものばかりだと思っていた。怒りに歯を食い縛るような表情が目に飛び込んできた時にそうだと確信し、訪れるであろう痛みに備えて腹を括った。
 だが、実際は違った。
 私を迎え入れたものは、温かな感触だった。
 こなたは私に対して、弱音を吐くなとかふざけるなとか思わなかったのだろうか。
 大分機能が麻痺しているであろう脳で悩んでも、満足のいく答えは得られない。そう判断した私は一旦思考を中止させ、瞼を落とした。
 目を閉じれば億千の想い出が、鮮やかな色彩をもって蘇る。
 これからは心の中に仕舞っておかなければならない、こなたと過ごした日の記憶が。
 笑い合ったりふざけ合ったりして楽しく日々を送ってきた。充実した毎日は、私にいっぱいの幸せをくれた。
 そんな日が続いていくと、信じていたのに。
 私は自らそれを手放した。
 ―――だが、これで良いのだ。
 今が幸せでも、未来はきっとそうじゃないから。
 溢れ出す気持ちがこなたを、周りの人達を壊してしまうから。
 だから、これで良い。
 一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、それだけ辛い思いをする事になる。
 これ以上こなたが苦しむ顔は見たくない。
 だから私は、自分の気持ちを封じ込める。
 これで良かったんだと、必死に言い聞かす。
 既に頭の中では整理が出来ている事柄なのに、自分が選んだ道なのに、私は今更何を言っているのだろうか、何を考えているのだろうか。自身に冷ややかな目を向け少しだけ自嘲する。
 こなたも私の思惑を知った上でかは分からないが、私との決別を選んでくれた。お互いが望んだ事に何の支障が生じるというのだろうか。
 そう、考えて導き出した結果には何の問題もない。
 これで……良かった。
 理解しているのに何度も繰り返す理由は考えない事にした。
29君の隣で(2/6):2008/01/14(月) 23:06:28 ID:tnH07w0Z
「さむっ……」
 今更のように率直な感想を漏らしながら、悴む手に白い息を吐きかける。この程度では大した効果は得られないとも思ったが、何もしないでただ凍えるよりは幾分かマシだ。
 目の前にかざした寒さに震える左手の薬指には、白銀の光沢を放つ誓いの指輪。
 それは悪天候の中でも、私とこなたが付き合っていた時期を象徴するように、やけに輝いて見えた。目の錯覚かと疑りもしたが、もはやどうでも良い事だ。
 もう私にこれを身に着ける資格はないのだから。
 煩く響く、雨水が地を打ちつける音を背に私は目を細めて、ぼやけた視界のまま手の平ごと指輪を捉えた。
 右手の親指と中指を使って、ゆっくり引き抜いていく。中節、続いて基節と通過していく様を、私はまるで他人事のようにぼんやりと眺めていた。
 想いが詰まった記念の指輪を抜き取り終えた私は、それを手の平に乗せてみる。何処か焦点がずれているような目で眺めていると、自然と思い出されるあの日の出来事。
 二人で一緒の敷布を頭から掛け、約束を形として交わした夜。
 優しくかつ情熱的な口づけで、一つのベッドで寄り添って眠って。
 これでもかってほど感じた温もり、愛おしさ。
 ―――もう私のものではない。
 幾ら欲しいと願っても決して届かない、幾らそうしたいと思っても決して叶わない。
 俯いた気持ちを前に向かせると、私は手を握り締めた。目をしっかりと開いて、公園の隅に身体を向ける。
 そこに設置されている、塗装が剥げかけた深い青みの屑篭。
 誓いを破った私にこれをいつまでも所有する権利などありはしない。それに別れた思い人がくれたものなど、取っておいても見る度に胸が痛むだけだ。
 意を決して、指輪を握った手を振り被る。
 ―――その瞬間、私の脳内を数多の記憶が駆け巡った。
 鮮やかで明らかな幾つもの想い出。場面や時期はそれぞれ異なれど―――
 全てに、こなたがいた。
「……っ」
 捨てられるはずがなかった。
 視界が潤む。雨の所為ではない。
 腕が震える。寒さの所為ではない。
「うっ……」
 掠れた声と共に切ない気持ちが漏れた。精気を吸い尽くされたかのように、足を折りその場に膝から崩れる。
 地面に手を着くと、更に涙腺が緩んだ。
「うあっ……こなたっ……!」
 隠してきた気持ちは露呈してしまい、戻るべき場所を失ってしまった。
 それが引き金となったのか、ずっと溜め込まれていた嗚咽が自制する手立てをなくして出てきた。
 あんなに後悔しないと誓ったのに―――
 離れてから気づいた、当たり前で大切な事。
 幾ら悔やんでも、幾ら呪っても、もう元には戻れない。
「こなた……こなたぁ!」
 私が選択しなかった事なのだから。
30君の隣で(3/6):2008/01/14(月) 23:06:59 ID:tnH07w0Z
 風邪でも引いたのだろうか、酷い頭痛を伴って頭が朦朧とする。
 馬鹿は風邪引かないって言うのにな……心の中で軽く自分を毒づいて立ち上がる。
 これ以上外にいたら症状が益々悪化してしまいそうだ。私は重い身体を動かして家へと向かう。
 此処から自宅まではかなりの距離があるが、この状態で電車やタクシーを利用するわけにもいかない。
 服の袖を指で摘み上げる。水分を含んで地肌に張り付くブラウスがやけに重たい。
 歩いて帰るしかないか。私は溜め息を吐きながら歩みを進め始めた。
 朝から変化なく暗雲に包まれる、暗い空を見上げる。雨は大分緩やかにはなってきたが、止む気配は一向に見せなかった。
 私の心に降る涙雨も止みはしないのだろうか。
 時間が経てば晴れ間を見せてくれるのだろうか。
 明日になれば太陽が顔を出すかもしれない。
 私の心とは違って、限りなく広いこの大空には。
 私にとっての太陽は、もう、掴めない。
 底抜けに明るいあの笑顔は、もう、拝めない。
 天から降ってきた、無数の水滴の内の一つが私の瞳を目掛けた。中に入り込まれる前に瞼を下ろし侵入を許可しない。
 それでもしかし、私の目は濡れていた。
 いつまでも呆けているわけにもいかない。私は目線を進行方向に戻し再び歩き始めた。
 街道の辺りまで出てくると流石に人気が多くなる。傍を通り抜ける人間は、大抵私を一瞥して驚きや哀れみに似た類の目線を向けてくる。
 非常に心地が悪かったが、走る気にもなれなかった私は、歩調を変えずにただ一つの目的地を目指し続けた。
「あー、雨降ってるよぉ。傘持ってきてないのにぃ」
 痛い視線にも少しは慣れてきた頃、近くの店の扉付近から女の子の声が聞こえた。別に知り合いでもないのに、何故か私はその方を向く。
「私持ってるよ。一緒に入ろっか」
 その子の背後から黄緑色の傘を手に持った、恐らくは友達であろう女の子が顔を出す。
 二人は楽しそうに笑い合いながら、一つの雨具に身体を寄せ合った。
 本当に、楽しそうに。
 二人が視線に気づかないのを良い事に、私が一方的に目線を送っていると―――
「きゃっ!」
 近くを通った車が水溜りの泥水を撥ね上げた。故意ではないだろうが、それは狙い澄ましたかのように私に飛び散る。
「ったく、ちょっとは気をつけ……」
 眉を吊り上げ顔を顰めた、その時やっと重大な失態に気がついた。
 指輪が―――なくなっている。
 瞬く間に顔が青ざめた。
 私は慌てて目を凝らした。先程の反動で近くに落としたのではないかと直感が感じ取ったからだ。
 しかし何処にもなかった。
「そんな……」
 心理的衝撃が疲労や愁嘆と相まって私に更なる追い討ちを放つ。
 崩れかける私を何とか支えたのは、咄嗟に思い浮かんだ儚い希望だった。
 私は確かに指輪を指から抜き取り手の平に包んだ。
 そして後悔に項垂れた私は、ほぼ泥に近い地面に手を着いた。
「公園かっ」
 その可能性が高いとは言い難かったが、現状他に頼るものがない事もあって私はすぐに踵を返した。
 一度は捨てようとしたのに―――
 あれは私が所持すべきものではないのに―――
 正しい理屈にも、今の私を鎮める事は不可能だった。
31君の隣で(4/6):2008/01/14(月) 23:07:34 ID:tnH07w0Z
 地を蹴り出した足が雨水を巻き上げる。
 関節の節々がこれ以上走る事を拒絶するように痛みを発したが、ボーダーソックスや靴に次々とこびりつく汚れと一緒に無視をする。
 思えばこなたの唇を初めて奪った後も、激しい雨天の中私は走っていた。
 けどあの時とは違って逃げているのではない。
 追い求めているのだ。
 どうして気がつかなかったのだろうか。
 離れてからやっと分かったんだ。
 私にとってこなたが、どれだけ大きな存在だったか。
 どれだけ大事な存在だったか。
 どれだけ愛しい存在だったか。
「はあっ……はあっ……」
 呼吸は荒くなり、肺は焼け付くように苦しい。
 だが、こなたが味わった苦しみに比べれば大した事はないのだろう。
 従姉妹からの突然の告白、不安定の情緒のまま繰り広げた傷を残し合う口論。
 そして、恋人の別れ話。
 立て続けに起こった出来事でこなたの心はとても深い傷を負っただろう。
「それに、比べたら……」
 わざわざ口に出したのは、自身を奮い立たせる為。
「この程度……」
 音がするほど歯を噛み合わせる。疲労感が全て消え去るわけはなかったが、まだ走れる。
 こなたの気持ちも考えずに、私は勝手に大事な選択を一人でしてしまった。
 二人で困難を乗り越えなければいけないのに。
 辛い時こそ助け合わないといけないのに。
 ―――こんな私をこなたは許してくれるかな。
 私の大好きなあのあどけない笑顔をまた見せてくれるかな。
 また私を抱き締めてくれるかな―――
 ふらつく足、速い脈動、渇いた喉。ボロボロになりながらも、私は二つの傘が転がっている公園に戻ってきた。その光景は先程出た状況と同じだから、その間誰も訪れていないのだろう。
 それは些細な事で、この場所に指輪が落ちている可能性を大いに引き上げるには至らない。人が来たとしても私の落し物に目がつく事は皆無に等しいのだから、この公園にある確立に殆ど変動はないだろう。
 それでも信じるしかなかった。私は目を皿のようにしてくまなく公園を見渡した。
 かつて自分がいた付近を重点的に探す。何かの弾みで飛んでいったのかもしれないから、離れた場所も徹底的に探る。
 目の色を変え、地面に顔をつける勢いで探した。泥まみれになりながら、あるかどうかすら分からないものを。
 ―――見つからなかった。
「うそ……なくしちゃったの……?」
 決して嘘ではない、紛れもない事実をぽつりと呟く。
 途端に力が抜け、私は支えを失った。
「はは……そりゃそうよね」
 おかしくもないのに笑いが込み上げてくる。他の人からすれば、今の私の姿は無様で滑稽かもしれないが。
 冷静に第三者の視点から物事を考えている辺り、すっかり情熱は冷めてしまったのだろうか。
「見つかるわけないよね……私があれを持つ資格なんてないんだもん」
 自虐するようにあざけ笑う。打ちつける雨も、吹きつける風も、へばりつく泥も、身の回りのもの全てが、不格好な私を蔑んでいるようだった。
「何やってんだろ、私……」
 多量の水分でべたつく地べたに座り込む。服が汚れるがどうでも良い。
 悩んだ挙句この選択をしたのに、私は他に何を望めるだろうか。
 自ら手放したものなのに、私は今更何を思い残しやっているのだろうか。
 もう私に、こなたを愛する資格はとうになくなっているというのに。
「っは……っはは……」
 自分の愚かさを嘲るような笑い声が漏れる。
「は……」
 涙は流れなかったが、笑っているのか泣いているのか、自分でも分からなかった。
「ざまぁないわね……」
 己の身形を見て、再び皮肉の声が自然と出る。
 正確な時間は分からなかったが、もう大分時間は経っているだろう。そろそろ帰らないと遅くなりそうだ。
 そう思ったが動かなかった。
 正しく言うと動けなかった、かもしれない。
 もう私には何もなかった。
 大切な事はもう失ってしまった。
 もう、こなたは―――
32君の隣で(5/6):2008/01/14(月) 23:08:10 ID:tnH07w0Z
「探し物は……これかな?」
「っ!?」
 私の負の思考の連鎖をぶった切ったのは、背後から掛けられた聞き慣れた声。
 そして、私が一番聞きたかった声。
 振り返るとそこには、開いた手の平に銀の指輪を乗っけたこなたが立っていた。
 傘も差さずに蒼い長髪を雨風に好き勝手させていた、今私が最も会いたくて、けれども会ってはいけない人。
「こなた……」
「これはかがみのだよ」
 立ち上がって向き直り、名前を呼ぶとこなたは真剣な、それでいて穏やかな目つきで私を見据えて右手を差し出してきた。
 その上には、弱々しくも輝きを放つ、少し汚れた指輪。
 しかし私はそれを受け取ろうとはしなかった。
 感謝や愛しさよりも、罪悪感が優った。
 私は震える身体に必死で命令し、この場から走り去った。
「!かがみっ!」
 すぐにこなたが反応して私を追いかける。
 元々の身体能力の差もあって、私は公園の門柱を潜る前にこなたに追いつかれた。
 別れを告げた時と同じように、手首を捕まれる。
「どうしてっ……追いかけてきたのっ」
 こなたの顔を見れずに、叫ぶように聞いた。
「かがみが……好きだから」
 その言葉は私に酷く突き刺さった。
 私だって、そうだ。
「だけどっ……!」
 入り混じる多様な感情で滅茶苦茶な事になっているであろう自分の顔を見せたくなくて、私はこなたに背を向けたまま声を張り上げる。
「私が、こなたやゆたかちゃんに迷惑を掛けてるんだよ?関係ない人達を巻き込んで……」
 動悸が激しい。胸が、苦しい。
「かがみは、この関係を止めたいの?」
「だって……」
「じゃあどうしてっ」
 御託を並べる私を遮るように声を荒げて、こなたは私を引き寄せた。
 潤んだ瞳のこなたと目が合う。
「かがみは泣いてるの?」
 何かが、砕けた。
 泣いてなどいない、つもりだった。
 ただそれは表面上の事で、心の中の事を言われたのかもしれない。
「確かにかがみの言ってる事は正しいよ。きっと誰も傷つかないわけじゃない」
 真摯な眼差しが私を逃さない。
「でも、それでも私には……かがみが必要なんだよっ」
 私達の涙腺が我慢の限界を迎えたのは、ほぼ同時。
 言葉だけでは伝えきれなくて、強く抱き締め合う。
 お互いの存在を確かめるように。
「う……うあぁぁぁぁ……こなたぁ……」
「かがみっ……かがみっ……うあ……」
 もうこなたしか見えない。こなたの声しか聞こえない。こなたの温もりしか感じない。
「ごめんなさい……ごめんねこなたっ……!」
「私こそっ……一人で全部抱え込ませちゃって、ごめんっ……!」
 溢れる気持ちを止める必要は、最初からなかったのだ。
 私もこなたがいないとダメなのだから。
 本当に大切なものは、今なのだから。
「もうっ……絶対に、離さない……からね……!」
「うんっ……かがみ、大好きっ……!」
 お互いに謝り合って、正直な気持ちをぶつけ合う。
 しとしと降り続く雨も、今は私達を祝福しているようだった。

 一方私の心は晴れ模様―――こなたという恒久の太陽を取り戻した。
3326-485:2008/01/14(月) 23:10:30 ID:tnH07w0Z
5スレで入りきっちゃったorz
最近こういうミス多いなぁ本当にすみません
その上皆様のご期待に沿えた結末だったかは微妙で
多少無理がある展開だったかもしれませんが……
次回、完結します
34名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 23:23:44 ID:e12hvSy0
>>25
何ていうんだろうな
同姓のあのほんわかも堪らなく好きだか異性特有のあの雰囲気をらき☆すたでやってくれるのが嬉しい

今のところ3つぐらい?
書く人氏を最近見ないな・・・続きが気になってるのに

でも久々のおす☆かがとこっちが恥ずかしくなる少女漫画乙女のこなたでまた戦えるぜ

しかしあいかわらずぶーわ氏は少女漫画読みすぎだww
35名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 23:35:46 ID:6PFtD7m5
>>33
GJ!
かがみが雨中を駆ける描写に、緊迫感が伝わってきました。
それが、指輪を拾ったこなたと会うシーンを、ぐっと惹き立てていたと思います。
次回の完結編を楽しみに待っています。

36名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 23:37:19 ID:yrHqCJFE
>>33
ほぼリアルタイムにて読了。そうじろうさんの男前DNAは確かにこなたに受け継がれておりましたか。
完結編も楽しみにお待ちしてます。ぐっじょぶ。
37名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 00:12:08 ID:+NCFBIqI
>>33
GJです。
何というか…雨中のドラマは来るものがありますなあ。

最初題名を「君の隣"に"」と間違えて読んでしまい、「脳味噌筋肉!?」とか思ったのは内緒。
38前スレ梅ネタの人:2008/01/15(火) 00:32:46 ID:IzQ8VoA6
何気にいつもの調子でネタぶっこいたら
なんと501で終了とか!!
素で気づかんかったorz
このスレどんだけやねん!!!
801ならぬ501だよ!永遠に801不可能っぽいよひよりん!

>>33
GJでござる!
かがみの痛いほどの想いをこれでもかと叩きつけ、
そしてこなたとのカタルシススタートをああいう感じで始めるとか
もう心憎いといわざるを得ない。
大団円、楽しみにまっております(・∀・)b
39妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/01/15(火) 00:49:34 ID:mPPIOD6S
スレが変わったとたんに、いきなり良SSが連投される恐ろしいスレはここですか?(゚Д゚)


ぶーわさんと7-896氏のやりとりに触発されて、SS書きを中断して久々に一枚描いてたら、
日が変わるわ次スレに移行するわえらいことになっていた件について。

ちょっとマジ入った感じに描いてみた、ゴッドかなたさん&てけてけかなたさん。
題して、『TWIN GODDESS』。


つ【ttp://poya.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/img-box/img20080115004530.jpg

かなたさんの目の辺りの演出が見えなかったんで、こちら大サイズ。
つ【ttp://hammer.prohosting.com/~gaketsu/Temp/TWIN%20GODDESS_large.jpg


かかりっきりで6時間。もっと早く描けるようにならないとなあ。
40名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 01:04:35 ID:w0zEVyU9
>>39
ゴッドかなたさん! ゴッドかなたさん!

前スレが501で終わったのもSSが多いのも全部ゴッドかなたさんの思し召し!

かみ☆フェチをそろそろ本気で期待
とにかくGJっした!
41名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 01:10:49 ID:IzQ8VoA6
>>39
( =ω=.)o彡゜ゴッド!!ゴッド!!

最近このスレ自体の作品ラッシュもさることながら
ゴッドラッシュも、ものすごい勢いだ。
かなた教が蔓延しつつある今日この頃だ!

栄えあるかみ☆フェチ第一号は誰になるや・・・(・∀・)
42名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 03:35:01 ID:VQiu7lhY
お、新スレになってる!
まずは>>1乙!

>>18
なんつかもう、最後の一文のせいでElopeに関係する話ではないかと思わせられる。
実はそれを狙ってたりしません?w
こっち側の深読みしすぎならそれでいいのですけども。

>>33
うあぁぁ・・・中盤までのかがみの気持ちが切なくて辛い
そしてこなたが現れてからの展開でマジ涙。
作中ずっと脳内で雨の音が聞こえてた気がする…最後、期待してます!!
43久留里:2008/01/15(火) 04:55:25 ID:d+8nWTwe
お早う御座います。
投下前の仕上げ作業をやってたらこんな時間になってしまったorz

>>18
GJです!!
てか、Elopeと繋がっているような繋がっていないような……。
>>33
GJです!!
最終回、全裸待機してますよ(=ω=.)

さて、私も「カケラ」の続きを投下させて頂きます。

・つかさ視点/みさお兄視点
・非エロ
・8レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/鬱展開あり
・オリジナルキャラが登場します。
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
44カケラ 8-1/6:2008/01/15(火) 04:56:08 ID:d+8nWTwe
8.

「赤の7」
「はい、ドロー4」
「えーっ、また?」
「ささ、早く取る取る」
「ふぇええ、これで3回目だよぉ」

ガラガラで静かな特急列車の中、
私とあゆちゃんはボックスシートで向かい合わせになって「UNO」というカードゲームで遊んでいた。
列車の案内によると、私達が降りる小倉駅までは6時間ほど掛かるという。
聞くだけでもウンザリする時間だけど、私が背負っていたナップザックに丁度UNOが入っていたので、
それで時間潰しをしようと提案したのだ。
あゆちゃんもさっきから周り警戒をしている一方で、小さなバッグからトランプを取り出した。
UNOの方は初めて見るようで、興味津々だった。

慌てて乗った列車は特急「有明」号は、クリーム地に紺色の帯を纏った大柄な電車で、車内もそれに応じて広々としている。
客室は全部ボックスシートで、背もたれを倒したり、向きを変えることは出来ない。テーブルもオマケでちょこんと付いている程度。
どことなく、旅行番組で観た外国の列車に似ている。
完全な個室じゃないので一人では乗りづらいけど、こうやってグループで乗るにはちょうど良いかも知れない。
天井が高い割には窓は小さい。窓にはカーテンが無く、ブラインドが付いていた。
右上のハンドルをくるくると回すとアルミの薄板が何枚も下がってきた。
天井の両側は全体に渡って変な蓋が張り出している。中には何が入っているのだろう?
変な蓋が左右一列に並んでいるせいで、照明は中央に追いやられて、エアコンの吹き出し口と交互に並んでいる。
窓も照明も小さく、しかも照明の位置が高いので、車内はそれほど明るくない。
リゾートホテルの部屋みたいに、わざと暗くしてる訳ではなさそうだ。
車両の端の方はデッキとなっていて、片方はお客さんが乗り降りする扉、もう片方は洗面所だった。
洗面台は何故か3つ並んでおり、その間には何に使うのか良く分からない「穴」が開いている。
通路を挟んだ向かい側はトイレ。何故か2つもある。冷水器まである。

変な電車。

他にめぼしい所は見付からず、あるとすれば製造銘板とおぼしきプレートと、「3号車」「指定席」と書いてある案内板、
そして、「モハネ580-11」と書かれた謎のプレートが「適当に並べてある」だけだった。

変な電車。

封筒に入っていた切符は、4席分座席指定されてあった。
つまり、このボックスは私とあゆちゃんとの2人で占領出来る。
荷物棚は何処か頼りなさそうだったので、私とあゆちゃんの隣には、それぞれの荷物が座っている。
45カケラ 8-2/6:2008/01/15(火) 04:56:31 ID:d+8nWTwe
「はい、赤と青と黄色の3」
「ずるい! なんで3枚も出すのよ?」
「同じ数字の時は何枚も出せるんだよ」
「じゃあ、私も出すね。はい、コレとコレとコレ」
「えぇぇぇ!! 何でDraw Twoを3枚も持ってるの?!」

あゆちゃんが出したのは「+2」と書かれたカード。誰もが仕返しに使う、Draw Twoのカードだ。
泣く泣く窓側のミニテーブルに積んであるカードを6枚引く。
たちまち私の手札は20枚を越えてしまった。
あゆちゃんの方は残り3枚。

このカードゲーム、地域や学校によってルールが違うらしい。
また、それぞれが自分で決めたルールを作っていたりするので、場合によってはゲーム中にルールの事で揉めることも多い。
私の知っているルールはこんなカンジ。
・同じ数字や絵文字のカードは複数出せる。(WildとDraw 4は1枚だけ)
・手持ちの色や数字が無い場合は、その色または数字が出るまで延々と山札を引き続ける。
・Draw Fourが出せるだけ出せる。
・前の人がDraw 2を出せば、次の人がDraw 4を出すことも出来る(但し1枚だけ)
・数字以外の札では「UNO!」を宣言出来ず、1枚余分にカードを引く。
運が悪い人は両手で持ちきれないほどカードだらけになてしまう。
簡単だけど、恐ろしいゲーム。それが「UNO」だ。
後は他の地域と同じだと思う。

「黄色のゼロ」
「黄色の5」
「………うーん、カードが無い。残念」
あゆちゃんは残念そうな顔をして、山札に手を延ばす。
電車の振動でたまに崩れるので、その時は一旦山札を集めてカードを切り直す。
1枚目で黄色の9が出たのでそれを山札の隣に積む。
あゆちゃん、残り2枚。

「あゆちゃん?」
「なに?」
「ごめんね♪」
わざとにこりと笑って、徐に裏にしたままカードを出して、意地悪く裏返す。
「えっ……………」
私が出したのは、ドロー2が5枚。
「……………」
あ、ちょっと意地悪が過ぎたかなぁ…。
ちょっとからかうつもりだったんだけど………。
しばらくの間。
電車がカタンカタンとジョイント音を打つ。2度目のジョイント音であゆちゃんがニヤリと笑う。

「残念でした」
わざと意地悪く言って、あゆちゃんが出したのは…。
「ま、またぁ??!!」
Draw 4だった。
「ついでに『うの!!』」
え…………。
「で、色は緑」
ニヤニヤしてる。

最後の1枚になった人は、『UNO!』と宣言する。これを言わなくてもいい地域もあるらしい。
言い忘れると余分にカードを引くことになる。
46カケラ 8-3/6:2008/01/15(火) 04:56:52 ID:d+8nWTwe
山札から14枚のカードを引く。ついに両手で持つのが大変になった。
あゆちゃんは残り1枚。Wild Draw 4で『緑』を選んだので、今持っているのは緑の札だろう。
カードだらけの私の手元には、0から9まで見事に数字が揃い、5は4色ある。
Wildも持ってるけど、Draw 4の次にWildは出せない(ことになっている)し、色を変えてまた色を変えるのも芸がない。

「ふっふっふー。これで私が勝てば、つかさは5連敗ね」
「う、運が悪かっただけだもん!!」
「ほぉら、早く出しなさいよ」
いくら年下とは言え、ここで負けるのは何だか悔しい。
ちょっとムキになってしまう私。
「緑と黄色と赤の3」
「ちょっと、出せないじゃないの!!
 ………………えっと、赤の4」
「赤と緑のスキップ」
「ぶー。」
「緑と赤と青の2」
「お、大人気ないぞー!! また増えた…黄色の2」

(30分経過…………)

「はぁ、はぁ、今回は手強いわね……。青の4と2、『うの』!!」
「あ、あゆちゃんこそ……はぁ、はぁ 黄色の2」
「いい加減負けなさいよ………って増やすなー!! 1・2・3……緑の2」
「はぁ、はぁ、ご、5連敗は嫌だもん!! ワイルドで赤!!」
「お、大人気ないぞー。ちぇー。赤の1」
「赤の9」
「緑の9」
「黄色の9 『UNO』!!」
29枚のカードが遂に1枚になった。
「黄色の4『うの』!!」
対するあゆちゃんも何度目かの『UNO』宣言。
「うー、出せない。1・2……青の4」
「つかさ、これで終わりよ」
あゆちゃんが5度目の勝利を宣言する。
や、やっぱり負けちゃうの? 私。
「青の7。あっがりー!! やったー!! 5連勝!! いえーい!!」
あゆちゃんは満面の笑顔で私にVサインを送る。
座席の上でぴょんぴょん跳ねながら喜んでいる。
「うぅ、まさかの5連敗……」
「じゃあ、もう1回やる?」
「ちょ、ちょっと休憩………」
第5回戦は長時間にわたる攻防戦が続いたので、私はヘトヘトだった。
あゆちゃんも疲れていた筈だったのに、まだ余裕があるみたい。
そにしても本当に嬉しそう。
なんか、こう、可愛いな。
もし私に妹がいたら、こんな感じだったんだろうなぁ。
47カケラ 8-4/6:2008/01/15(火) 04:58:21 ID:d+8nWTwe
「何よ?」
「い、いや、べ、べべべべ別に………な、何でもないよ」
彼女をじーっと見ていたらしい。あゆちゃんの笑顔が焦りの顔に変わる。
無愛想だと思ってたけど、結構表情が豊かな子だなぁ。
「あ……そう」
「ただ………」
「ただ?」
あゆちゃんの丸い顔が迫る。
「妹みたいで………可愛いなって」
うわぁぁああ、言っちゃったよぉ。
「ちょ………ばっ……!! お、お、女の子にか、か、『可愛い』なんてい、い、言われても、う、う、嬉しくなんかないっ!!!!」
「ちょっとおマセさんだけどね」
「うるさいうるさいうるさい!! べ、別にいいもん!! べーっだ」
顔を真っ赤にしてアカンベーをされちゃった。
やっと子供っぽい所を見せてくれて私はちょっと安心した。

あ、言っておくけど、私はサディストじゃないよ?
あゆちゃんをちょっとからかっただけだよ?


UNOをやる前は2人で色々とお話をしようとした。
でも、私が話下手なせいか、あゆちゃんがあまり話したがらないせいか、思う様に進まず、沈黙が続いていた。
電車のモータとジョイント音のBGMを聞きつつ、頑張って話そうとしたんだけど、滑りに滑ってどんどん空気が重くなってしまった。

私はあゆちゃんの事が知りたくて、まず自分の住んでいる所や学校や家族、友達の話をした。
一番知りたかったのは、あゆちゃんがこの時代の人間なのかどうかだったんだけど、
あゆちゃんは自分が今12歳であること以外は話してくれなかった。
いや、話したがらなかった。
特に家族の話と学校の話は嫌だったみたい。
私が自分の事を話しても面白く無さそうだったし、私があゆちゃんに、
「あゆちゃんのお母さんやお父さんって、どんな感じなの?」
の様に訊くと、下を向いたまま黙ってしまった。
私は何か特別な事情があると察して、これ以上追求するのはやめにした。私の性に合わないしね。

もし、ナップザックの中にUNOが入っていなければ、6時間耐久の我慢大会が続いていたことだろう。
その後は、ある程度話が弾んだ。
でも、やっぱりあゆちゃんは、家族や学校の話になると下を向いてしまった。
48カケラ 8-5/6:2008/01/15(火) 04:58:44 ID:d+8nWTwe
「つかさっていいな」
「何が?」
「色んな事知っててるし、ゲームとかも一緒にやってくれるし、面白いし、料理も出来るみたいだし、それに………」
「そんなこと無いよ」
「え?」
「私、おバカだし、弱虫だし。話すのが下手だし、人見知り激しいから友達も少ないし………」
「一番凄いなって思うのはね」
「うん」
「『前向き』だなってトコ……かな?」
「前向き………かぁ」

『前向き』英語で言えば『ポジティブ』
1年生の頃、同じ事をこなちゃんにも言われたことがある。
こなちゃんと友達になって、初めて言われた言葉。
私はあまり自覚していない。
でも、途中で諦たりするのは嫌で、何とか最後までやり遂げたいとはよく思うし、何とかしようと考える。
パニックになるとそのまま泣き出しちゃうことも多いけど、ね。
あと、宿題だけは睡魔に負けて、終わる前に寝ちゃう事が多い……。

「ちょっと…………照れるカモ…」
「な…何照れてんのよ」
「ううん、別に。でも、そう言われると嬉しいな。『有り難う』」
「……………ありがとう、か」
鸚鵡返しのようにつぶやく。両手を前に広げて。
そして、顔を上げて、顔を真っ赤に染めて、ゆっくりと言うお礼の言葉。
「ど、どういたしまして」
「ふふふ、あゆちゃん、真っ赤だー!!」
「うるさいうるさいうるさい!!」

「ふふふふ、やっぱり可愛い」
「ぷーっ。つかさには敵わないや」
そして、2人で笑い合う。電車の中だけど。
49カケラ 8-6/6:2008/01/15(火) 04:59:10 ID:d+8nWTwe
電車に揺られること3時間。
曇り空の下、特急「有明」号は順調に八代海沿岸を走る。
カーブが多いのか、あまりスピードは出ていないみたい。
NHKでやっていたけど、現在の九州新幹線は鹿児島中央駅と新八代駅との間を40分足らずで走ってしまうという。
新幹線ってやっぱり速いんだなぁ。


「つかさ、起きて」
あゆちゃんが小声で私を起こす。
「ごめん、寝ちゃってた?」
「うん。ちょっとだけ」
あゆちゃんの顔には笑顔も恥じらいも無く、代わりにあるのは緊張をともなう警戒の色。
「それより、私の言うとおりにして」
「ふぇ?」
「しーっ」
左手人差し指を唇に当てて、それから周囲をぐるりと見回して、それから私の顔を睨み付ける。
何だか胸騒ぎがする。その、何というか、『とても嫌な予感』がする。
「私、今からトイレ行ってくる」
「トイレに?」
「そう。その間、荷物をまとめて何時でも降りられる様にして」
「………」
「大丈夫、つかさは死なせないし、一人にするつもりは無いから」
『つかさは死なせない』
つまり、私は命を狙われている事になる。
急に恐くなった。
「いい? とにかく、つかさはずっとここに居て。何かあったら次の駅でダッシュで降りて」
「で、でも……」
「だから大丈夫」
「『約束』だよ?」
「うん、『約束』する」
緊張が高まる中、お互いに笑顔を送る。
「じゃ、行ってくるからそこで大人しくしてて」
「う、うん。分かった。『絶対』帰ってきてね」

あゆちゃんは笑顔で返し、それからゆっくりと立ち上がって客室の外の洗面所へと向かった。
私は拡げていたUNOもトランプも全部回収し、2人分の荷物を一つに纏め、ゴミ袋もナップザックに詰める。
ゴミは後で捨てればいいや。

先ほどから周囲の目線が気になる。
私とあゆちゃんが座っていたボックスに、『嫌な』視線が槍の様にグサグサと突き刺さる。

間違いない。
これは、非常事態だ。

彼女の事が心配になってきた。
刹那、洗面所の方から「ドカン」という何かが壊れる音と共に悲鳴が聞こえた。
「!!!!!」
私は思わず立ち上がる。でも、洗面所へ向かう事は出来なかった。



「動くな」


複数の『銃口』が、『私』に向けられていた。



50カケラ 間-1/2:2008/01/15(火) 04:59:38 ID:d+8nWTwe
間.

車を適当な所に停めて貰い、2人で綾瀬川沿いの堤防を歩く。
サイクリングロードとして知られるこの堤防も、今はおれの様な野次馬や報道陣、遺族と思われる人々が、
史上最悪の鉄道事故の現場をただただ眺めていた。

事故現場は想像以上に悲惨だった。
団地の5階ほどある高さの高架橋が『そこ』だけ無惨に崩壊して、民家『だった』場所からは今も煙が出ている。
事故が起きたのは、昨日の18時頃。ちょうど夕食の支度をしていた頃だったのだろう。
高架橋で押し潰され、火事が起きて、そこに住んでいた人は逃げる事も出来ず、そして───────。
「…………………」
電車の方も酷かった。
8両編成の日比谷線直通列車と、反対側を走っていた10両編成の急行列車が折り重なる様に崩れ、
編成の半分が川に沈んでいた。
車体はどれも解体現場の様に原型を留めておらず、生存者が居る事に驚くほどだ。
今朝の報道で、376名と予想された犠牲者の数だが、今朝になって公式な数値が発表された。
実際の死者は284名、重体・重傷者はおよそ500〜600名、その他は奇跡的に軽傷だったという。

おれは夕べ、該当列車の定員を調べていた。
先に結論を述べると、かがみちゃん達は『事故に遭った普通列車に乗っていた』。

ニュースでヘリから撮られた車両を元に、百科事典サイトや鉄道車両に詳しいサイトで形式を調べる。
すると、該当したのは普通列車が東武鉄道の「20050系」という電車で、急行列車が東急の「5000系」という電車だと判明した。
列車の定員は東武20050系が1,050名(1両あたり131.25名)、東急5000系が1,488名(同148.8名)。
定員通りに乗っていたとすると、車内には2,538人が乗っていたことになる。
ただし、時間の掛かる普通列車は、休日の東武線内はガラガラであり、たとえ夕方でも席が全部埋まる程度である。
ざっと計算して500名程度だろう。
一方の急行は上りも下りも混雑するので、定員通り約1,500名乗っていたとする。
よって、全体の被害者は2,000人くらいとなる。

該当した車両形式と事故発生時刻を元に、この2つの列車の時間を調べたところ、
普通列車は東京メトロ日比谷線の中目黒駅を17時4分に発車し、終点の東武動物公園駅には18時46分に到着する列車で、「B1731T」という便だった。
詳しい発生時刻は不明だが、おそらくこの列車で間違いない。
因みにこの列車、18時11分には新田駅を出ており、次の蒲生駅にはわずか1分で到達する。
同じく急行列車は南栗橋駅を17時31分に発車し、終点の東急田園都市線長津田駅には19時29分に到着する列車で、「C1716K」という便だった。
こちらは新田・蒲生の駅には停まらないので、新越谷駅の発車時刻と前後の列車を調べた上で判断した。
念のため東武好きの同僚に訊いてみたところ、「間違いない」とのこと。
奴は謎のグラフらしき運用表まで自作した奴だから、信用しても良いだろう。

余談だが、あやのとその姉が乗っていた「1本後の列車」とは、事故に遭ったB1731T列車の1本後である急行列車の事で、
草加駅でB1731T列車を追い越している。
そして、18時24分に無事春日部駅に到着したという訳だ。
51カケラ 間-2/2:2008/01/15(火) 05:05:06 ID:d+8nWTwe
昨日来た柊さん(かがみちゃんの母親)によると、かがみちゃんが「今から帰る」と連絡したのが17時30分。
彼女は妹のつかさちゃん、それに2人の友達である泉こなたちゃんと一緒に秋葉原に出掛けていたらしい。
そして、彼女らは『今も』家には帰っていない。
ニュースでは次々と怪我人や犠牲者が発見されたと報道しているが、あまりにも数が多いので誰が誰かは推測すら難しい。
いや、もしかしたらとっくに見付かって病院に運ばれているのかも知れないが、
今朝電話した時点で病院や警察からの連絡は一つも無いという。
逆に病院へ電話を掛けようとしたらしいが、訊いてもすぐに答えは出ないと説得され、泣く泣く断念したらしい。


ところで、おれ達が何故事故現場へ向かったかと言うと、彼女らを捜しに行ったという訳ではない。
電車が落ちたのは川の上だが、その前後の区間も崩壊しており、蒲生・新田両駅のホーム端を境にプッツリと切れている。
寝る前に観たニュースで気になったのだが、崩壊した橋の南寄り、つまり、新田駅寄りで不可解な『穴』らしきモノがテレビに映し出されていた。
上空からの映像とはいえ、その穴はやけに目立った。相当大きな穴である。
この『穴』に関する情報は今のところ皆無で、この手の話に敏感な大型掲示板の住民も、おれが発言して初めて反応したくらいだ。
ところが、そのスレッドは大して延びず、やがて消されてしまった。
それは、あまりにも不自然だった。
確定ではないが、『誰か』が『意図的』に消した様な感じだった。
今朝のニュースでも、その『穴』に関する報道は一切無かった。新聞にも載っていなかった。
『何か』が引っ掛かる。
『何か』が。
もしかしたら、この『謎の穴』が事故と関連しているのかも知れない。
だから、おれは行ってみることにしたのだ。


「……本当に行くのね」
「ああ。だが峰岸、お前は車に戻ってもいいぞ」
相変わらず姉だけは苗字で呼んでいる。
「大丈夫。アンタ1人だと色々首突っ込んで心配だから」
「それは親切にどうも。だが、おれが今向かっているのは事故現場だ。何があっても知らんぞ」
本当に何があるかは分からない。
「構わない。私は勝手にアンタの後をついているだけなんだから」
「……………………好きにしろ」
「そうする」
彼女はニコリと笑った。
「なに?」
「いや、みさおやあやのには迷惑掛けるなぁって」
「そうね。あやのはしっかりしているけれど、もし私達が居なくなったらやっぱり心配ね」
「………………ああ」

おれ達は住宅街の裏道を使って、こっそりと事故現場の立ち入り禁止区域へと侵入した。
何かが『引っ掛かる』からだ。
52カケラ 8 by 久留里:2008/01/15(火) 05:08:23 ID:d+8nWTwe
以上でございます。
途中で規制喰らったorz


あゆみがどういう子かは、まぁ、ひかげみたいな子です。
声はDS版のひかげに良く似ています。
53名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 07:56:34 ID:p9dr4DqF
>>39
ついんごっです……PSの実写格ゲー!?
というか可愛さも二倍どころか二乗というか。そしてほんとに姉妹みたいに見えるのが面白いとこです。ぐっじょぶ。

>>52
あ、あゆみちゃーん!?
なんかえらいことになってきましたね……こなかがつかあゆの無事を祈りつつぐっじょぶ。
マルコは割りとどうでも良いですけど(待て
54名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 10:19:16 ID:/Wi7fCRu
>>53

>ついんごっです……PSの実写格ゲー!?

そういえばあったな、そーゆーのw

ネトゲー世界から出られなくなったこなたが、かなたさんに似た二人の少女(w)に導かれ
仲間とともに悪の魔王を倒す物語を想像してしまった。
もちろん、少女の正体はかなたさん&ゴッドかなたさん。

それなんてイース1/2?(ちょっと違うか)
55名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 10:23:41 ID:/Wi7fCRu
>マルコは割りとどうでも良いですけど(待て

バカマルコ「バカマルコなんてあんまりじゃねーか、もうちょっと気の利いた名前考えてくれよ〜」
かがみ「はいはい、わかったわよ。……じゃあ……『丸越満太』、これでいいでしょ?」
満太「ワタシヲ信用シテホシー!」


かがみ「……YMOの『SERVICE』ネタは、さすがに古かったかしらね」
マルちゃん「だな」
56ぶーわ:2008/01/15(火) 11:21:00 ID:F1Ieo3Ke
ども、おす☆かがで話に出してもらってさらに狂喜乱ぶーわです!
18-19氏に感謝! 礼には礼を
ttp://www.geocities.jp/je104049/osukami.PNG【TS注意】 かがみキm!
出してくれたので神様と コラボさせてみました かがみkm!

続きに 期待してます!
57名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 11:44:44 ID:1+NHi+oB
>>55
「次の日本語を英文に訳しなさい『これは、2本のペンです』」
「…『This is a a pen』…」
「さっすがかがみん、素人じゃないね」
「や…やかましいっ!」
「『犬も歩けば猫も歩く』『逃した魚は泳いでる』諺的には確かに
 コメディですが、これらって、よく考えるとなかなか哲学的ですよね…」
「そう思えるみゆきさんって、やっぱり一味違うっ…」

>>56
「わ…私はそんなに色目なキャラじゃないっ!
     それはみゆきの専売特許じゃないの!」
「まあかがみさんってば私を普段どのような目でだばだば」
「発作起こすな!ほらこなたならそこにアッーーー!」
「さっすがかがみ、ついに正体を表したか(=ω=.)
 そんなぞくぞくしちゃいそうなかがみを書いたぶーわ氏ぐじょお!
 うんうん、おかーさんもかぁいいねえ…」
『こ…こなたっ!?』
58名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 11:52:22 ID:DA813sWM
いつの間にか新スレになっててびっくりだ!
それでは、自分も久しぶりに作品を投下させていただきます。

●短編8レスほど投下させていただきます。
●非エロ。そうじろう&かなた&こなたのお話。
●泉家の過去のお話。少々独自設定があるかもしれません。
59愛は静かな場所へ降りてくる (1/8):2008/01/15(火) 11:53:23 ID:DA813sWM
 パソコンの電源も、灯りも消えた真っ暗な部屋。
「んー」
 頭から布団を被っていた私は、寝返りを打ちながら小さくうめいた。
 ベッドに入る前までヒーターをつけてたし、布団もぽっかぽかで気持ちいい。あとは、
このまま眠れればいいんだけど……
「……眠れない」
 そうため息をついちゃうぐらい、見事に目が冴えている。
 かれこれ一時間ぐらいこうしてるけど、目はぱっちりと覚めたまま。
 うとうとどころか、眠気のカケラさえありゃしない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 愛は静かな場所へ降りてくる
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「昼寝がまずかったかなぁ」
 心当たりを思い出すとすると、だいたいそのぐらいしかない。
 冬休み中ネトゲ三昧で寝不足だったから、昼寝で睡眠時間を稼ごうと思ってたんだけどなー。
ホント、なかなか上手く行かないもんやね。
 あまりにも寝付けなくて、ベッドサイドに置いておいたケータイで時間を確認……って、
もう二時過ぎてるじゃん。明日は日曜だからいいけど、もう学校も始まってるからさすがに
寝ないとヤバいんだけどな。
「はぁ」
 そう思えば思うほど、出てくるのは眠気じゃなくてため息ばかり。呪うなら私の普段の
行いを呪えってコトですか。ま、気にしててもしょうがない。
「んしょっと」
 身体を起こして、軽く伸びをしてから椅子に掛けた半纏を手にする。
 ――牛乳があったから、それでも温めて飲もっと。
 眠れないときはホットミルク。みゆきさんに教えてもらった豆知識をを思い出しながら、
私はドアを開けた。
 部屋から一歩出ると、空気はガラッと変わってとにかく寒い。廊下も真っ暗だから
ますます寒く感じるけど、灯りを点けるとほんの心持ち暖かく感じられた。
 早く台所に行きたい気持ちを抑えて、隣の部屋にいるゆーちゃんを起こさないようそーっと歩く。
 足音を立てずに、時間をかけてキッチン前へ。あとは入ってホットミルクを作るだけ……
と、思ったんだけど、
「ん?」
 ダイニングのドアから、灯りが少し漏れ出ていた。
 灯りの消し忘れはいつも口酸っぱく言われてるから、お父さんがまだ仕事中なのか、
それともそのまま寝ちゃったのかのどっちか。まあ、どっちにしても、
「まったく、お父さんってば」
 そんな感想しか出てこないわけで。もう若くないのにさ。そろそろ、夜更かしとか
徹夜とかは自重してほしいもんだよ。
 苦笑いしながら、キッチンのほうのドアをゆっくり開けると……あー、やっぱり。
「…………」
 キッチンを背にして、お父さんがダイニングのイスに腰掛けてるのが見えた。
 中に入れば、伝わってくるのはストーブの温もり。キータイプの音とかは聞こえて
こないけど、突っ伏したりしてないってことは起きているみたい。
 でも、やっぱり時間が時間。締め切りもまだって言ってたんだし、そろそろ寝ないと。
「おとーさん」
 しょうがないなって感じで声を掛けてみたけど、お父さんの反応は無い。
「おーい、おとーさーん」
 もう一度呼んでみたけど、やっぱり返事は無し。イヤホンとかつけてるわけでもないから、
フツーは気付くはずなのに。
「お父さんってば」
 しびれを切らした私が、お父さんに近寄って肩に手を置くと、
「ん……? あ、こなたか」
60愛は静かな場所へ降りてくる (3/8):2008/01/15(火) 11:54:36 ID:DA813sWM
「あ、じゃないってば」
 もうっ、やっと気付いてくれた。
 振り返ったお父さんの表情はどことなくぼーっとしていて、眠そうにも見える。
「もう二時過ぎてるよ。そろそろ寝ないと、身体に毒じゃない?」
「ああ、もうこんな時間なんだ。こなたこそ、こんな時間まで起きてて大丈夫なのか?」
「なかなか寝付けなくてね。ホットミルク作ろうとしたら、お父さんがまだ起きてたってわけ」
「お、ホットミルクか。俺にも一杯頼むよ」
「それ飲んだら眠るって言うならいいよ」
「うむ。眠れたら寝る」
「お父さんってば、いつもそう言って仕事してるよね」
 私はまた苦笑いしつつ、キッチンに向かった。
 冷蔵庫から牛乳のパックを手にして、ついでにハチミツのチューブも取り出す。
それを水で少し濡らしたお鍋に注ぎ入れて、最後にバニラエッセンスを一滴。あとは、
コンロを弱火に調節して……ん、このくらいかな。あとは、温まるまで鍋をまわすように
すればいいんだっけ。
 バイト先のチーフから受けたレッスンを思い出しながら、鍋の取っ手を手にする。
「こんな時間まで起きてるなんて……また、ネタが浮かばないとか?」
「ちょっと資料探しをしてたら、こんな時間になってさ」
「お父さん、そういうのに没頭しやすいもんね」
 鍋をくるくる回しながら、いつものようなやりとり。
 徹夜明けだったり疲れているときなんかは、こうやって何か作ってあげたりすることが多い。
いつからこうしてたかは思い出せないけど、今じゃ私たちにとっては当たり前のこと。
 少し振り返ると、お父さんは椅子の背に頬杖をつきながらこっちを見ていた。
「ん? どしたの?」
「いや、なんとなく見てるだけ」
「ふうん」
 どことなくぼーっとした表情は、最初に声をかけたときから変わらないまま。実は、
相当眠かったりして……我慢も程ほどにしたほうがいいと思うんだけどなぁ。
 視線を戻して、お鍋をくるくる回し続ける。少し湯気が立ってくれば、出来上がりのしるし。
「んしょっと」
 火を止めて、二つのマグカップに注いだら完成っと。
「はい、出来たよー」
「ありがとな」
 ダイニングに戻った私は、お父さんにマグカップを一つ手渡して、向かいのイスに腰掛けた。
 そして、テーブルにマグカップを置いたその時、
「……ん?」
 裏返しにされた写真の束が、お父さんの前に置かれているのが見えた。
「それ、資料の写真?」
「ああ。昔、昔のな」
 ホットミルクを口にして、お父さんがしみじみといった感じでつぶやく。
「ふうん」
 それにならって、ホットミルクを口にする私。
 牛乳の甘さと温かさが、ハチミツとバニラの香りといっしょに身体に伝わっていく。
「今度の作品は、昔が舞台とか?」
「だいたいそんな感じだ」
「ここ最近は現代モノばっかりだったもんね」
 あまり文章には触れない私でも、お父さんの作品に関してはほんのちょっと別。ストーリーを
聞いたり、お願いされたらチェックもする。サンプルを一冊くれて本棚にもちゃんと
置いてるけど、活字になるとさすがに苦手で……ええ、親不孝な娘デスヨ。ダメだって
わかってるけど、無理なものは無理なんです。
「たまには、気分転換になっていいんじゃない?」
「ああ。まあ、な」
「……?」
 何故か、言葉を詰まらせるお父さん。しかも、写真の束と私の顔を見比べてるってことは
……ははーん、さては、実は見られちゃマズい写真だとか?
61愛は静かな場所へ降りてくる (3/8):2008/01/15(火) 11:55:31 ID:DA813sWM
「ねえ、お父さん。その写真、ちょっと見せてくれる?」
「えっ?!」
 予想通り、お父さんの反応は戸惑ったもの。
「……んー」
 だけど、何故か慌てたりはしない。むしろ、考え込んでるとかそういった感じで、
「まあ、いいか」
「へっ?」
 最後には、予想とは全く違った答えが返ってきた。
「い、いいの?」
「いいのって、こなたの方から見たいって言ってきたんだろ?」
「ま、まあ、ねえ」
 からかって言ったはずなのに、まさかの答えでビックリしまくりですよ。ええ。
「それに、お前ももう十八歳になったんだ」
「ちょ、ちょっと、お父さん?」
 私が十八歳になったからってゆーことは、もしかして、その、あの、アレ、アレな写真も
オッケーとかそーゆーことじゃないでしょーねぇ!?
「あー、勘違いしないしない。そういうことじゃなくてだな」
 苦笑いしながら、手をひらひらと振るお父さん。
 その表情は、すぐに引き締まったものへと変わっていった。
「お前もそろそろ大人だから、昔の話をしてもいいかと思ってな」
「昔の話?」
 そう言われて、思い当たる節は一つしかない。
「それって……お母さんのこと?」
「ああ、そうだ」
 私がそう言うと、お父さんはきっぱりとうなずいて見せた。
「…………」
 あまりにもはっきりとした答えに、返事ができない。
 お父さんも、同じように私の表情を見たまま黙り込んでしまった。
 聞こえてくるのは、ストーブの上にかけられたヤカンがコトコトと鳴る音ぐらい。
しんと静まりかえったダイニングで、私たちはただ見つめ合っていた。
 しばらくして、乾いてきたくちびるをホットミルクで潤す。
「その写真も……お母さんの写真?」
 ようやくそう言葉にできたのは、ホットミルクを飲み込んで少し経ってからだった。
「でも、お母さんの写真ってアルバムに入ってたよね?」
 確か、去年かがみやつかさと見たアルバムにはお母さんが写った写真がたくさんあったはず。
でも、ここにある写真の束は数枚や十数枚じゃなく、もっとあるように見えた。
「現像してすぐしまっておいた写真ってのが、結構あってさ。久しぶりに古い本棚を漁ってたら、
奥の方から出てきたんだよ」
「それがこんなにあったってわけ?」
「そういうこと。もう二十年近く見てなかったから、つい懐かしくてな」
「だから、この時間まで起きてたんだ」
「ああ」
 だったら、わかる。ずっとしまってあった大切なものが出てきたら、夢中になって見ちゃうもん。
「だけどさ」
「うん?」
「現像してすぐしまってあったって、それまたどうして?」
「……色々、あったからな」
「あっ」
 お父さんの表情がかげったのを見て、今のが失言だとすぐに悟る。
「いや、いいんだ。俺がただ、ずっと直視できてなかっただけだ」
 そう言って首を振るお父さんだったけど、やっぱり今のは軽率だった。
 昔の写真をしまっておいた理由は、それしか無いはずだったから。
「お前も健やかに育ってくれて、もう十八だ。いつまでも昔のことから目を背けてたら、
かなたに怒られる。それに、かなたのことをちゃんとお前に伝えておかないと」
 私が口をつぐんでいると、お父さんは写真の束を軽く整えながら優しい口調で話し始めた。
62愛は静かな場所へ降りてくる (4/8):2008/01/15(火) 11:56:23 ID:DA813sWM
「この写真は、かなたがお前を身ごもってから、産んだ直後までのものなんだよ」
「私が産まれるまでの?」
 その問いに、お父さんが小さくうなずく。
「妊娠がわかってすぐ、かなたと『記録を残しておこう』って話になって、カメラを
新調までしてな。そりゃもう二人して大ハリキリってなもんだ」
「お母さん、そういうことには乗り気だったんだ」
「身ごもったと知った時に、俺以上に喜んでたぐらいなんだぞ。ほら、この写真なんていい例だ」
 笑いながら、お父さんは写真の束から一枚抜いて私に差し出した。
「うわっ、Vサインって!」
 その写真には、満面の笑顔でVサインしてるお母さんの姿。
「カメラを買って、最初に撮った写真がそれでな。組み立て終わってすぐ、かなたに
せがまれて撮ったんだ」
「へえ」
 それにしても、この夫妻ノリノリである。
「それだけ、かなたもお前を身ごもったってことが嬉しかったんだよ」
「うん、よくわかる」
 よく見ていた写真の中では、いつも儚げに見えたお母さん。けれど、この写真のお母さんは
とても嬉しそうで、とてもいきいきとしている。なんだか、見てるうちに私まで嬉しく
なってきちゃったよ。
「他には、どんな写真があるの?」
「他だと……ああ、こういうのが」
 そう言って、またお父さんが私に写真を二枚ほど差し出す。
「おー、こりゃまた日常の一コマって感じだね」
 そこに写ってたのは、育児雑誌を読みふけっているお母さんと、小さなミシンで何かを
作ってるお母さんの姿。
「フィルムを買い込んだから、もうどんどん撮ろうってことになって」
「だからって、わざわざお料理してる姿まで撮るのはどうよ」
「なんか、それまでは見ていて『お嫁さん』って感じだったんだけど『お母さん』に
なったなあって思うようになってさ」
「そういうものなのかね?」
「ああ、そういうものだ。さっきお前がホットミルクを作ってたときの姿を見てたけど、
やっぱり一緒に暮らし始めた頃のかなたのほうとそっくりだったし」
「それで、さっき私をじっと見てたんだ」
「いやぁ、ついつい」
「この母娘スキスキおとーさんめ」
 はぁ……どおりでお父さんの視線が気になったわけだ。
「でも、私ってばそんなにお母さんに似てきた?」
「見た目はな。内面で言えばかなたはかなた、こなたはこなた。やっぱり、そこは違う」
「そっか」
「今もかなたが生きていたら、入れ替わって高校に行く遊びとかが出来たかもなー。
もしくは、同じ制服を着て登校して周囲を混乱させるとか」
「ちょ、お、お父さん、私だってまだ成長する余地はあるかもしれないんだよ?」
「心配するな。かなたもずーっとそうだったんだから、お前もきっとずーっとそうだ」
「は、はっきり言わないで欲しいなぁ……」
 そうは言ってみたものの、確かにこの写真を見てるとお母さんもずーっとちっちゃいまま
みたいだし……このままでも別にいいんだけど、ちょっとフクザツな気分。
「そう考えると、お前の家事姿を見てたらかなたの娘だなって実感するよ」
「家事をしてたらって、それまたどうして?」
「さっきも言ったろ。こなたが家事をしてるときの仕草って、一緒になった頃のかなた
そっくりなんだ。台所に立ってるときの佇まいとか、つまみ食いをした時に、まとめた
髪で手をしばかれたりとか」
「おとーさん、そういうやんちゃなトコ、ずっと変わってないんだね……」
「俺は生涯現役だぞ。あらゆる意味で」
「はいはい」
 お父さん、そりゃコドモって言うんだよ。コドモ。
63愛は静かな場所へ降りてくる (5/8):2008/01/15(火) 11:57:58 ID:DA813sWM
「で、あとはどんな写真があるの?」
「おお、あとはだなー……お、こういうのもあったな」
 また、お父さんが写真を一枚選んで私に手渡してくる……って、これまたアツアツな。
「あのー、コレって膝枕?」
 そこには、少しお腹が膨らんだお母さんの膝に頬を寄せるお父さんの姿。まったく、
二人とも幸せそうな顔しちゃって。
「いいや。お腹の中にいたお前が動いたって言ったから、ついつい耳を当てたらそんな写真が」
「わざわざ、セルフタイマーでこういうの撮る?」
「それが、遊びに来てたゆきがいきなり撮りやがってさ。かなたは恥ずかしがってたけど、
俺は大歓迎。そう言ったら、ゆきの奴ドン引きしてたなー」
「そりゃドン引きするって」
 ホントにフリーダムすぎだよ、このおとーさん。
「そうか? 俺はこういう写真もいいと思うんだけどな。『ああ、ちゃんと子供が育ってるんだな。
このまま健やかに産まれてきてくれればいいな』って思ってたし、よくゆきが残してくれた
って感謝してるよ」
「言われてみれば、このお父さんの笑顔ってそんな感じかも」
 写真の中で、お母さんのお腹に耳を寄せて微笑んでいるお父さん。それは、いつも私に
向けてくれる優しい笑顔と同じだった。
「お前の成長は、俺にとってもかなたにとっても日々の楽しみだったんだぞ」
「今も、お父さんはそういう風に笑ってくれるし」
「当たり前じゃないか」
 私の言葉に、当然と言いたげに深くうなずくお父さん。
「今だって変わらない。お前が元気に成長してることが、俺にとっての一番の喜びだ。
かなたもきっと、お前のことを見守って喜んでるはずだ」
 その返事は、お父さんがお母さんと私を愛してくれている証し。
 こうきっぱり言ってくれると、私まで嬉しくなって来ちゃうってば。
「でもさー、オタ方面への成長ってどうなんだろ」
「うっ……そ、それは絶対怒られる」
「だよねー」
 ついつい、照れ隠しで意地悪く言ってみた私。
 お父さんの愛情表現ってストレートすぎるから、たまにこうしないと恥ずかしいよ。
「で、他にはどんな写真が?」
「他だと、かなたが撮った写真ってのもあるな」
「お母さんが?」
「ああ」
 写真の束から、お父さんがまた何枚か抜いて差し出してくる。
「……こりゃまた色気のない写真で」
 その写真に写っていたのは、若い頃のお父さんの寝顔やエプロン姿。
「とゆーか、隙だらけやね。お父さん」
 寝顔はだらしないし、エプロン姿はフライパン片手にあわてふためいてるし。
「仕方ないだろ、その頃はかなたを休ませるために俺が家事してたんだし」
「もしかして、この頃から家事するようになったの?」
「少しでもかなたの負担を減らそうと思ってやってたんだが、最初の頃はおかゆを作る
だけで鍋を焦がしてダメにするぐらいでさ。何度もかなたに教わって、本末転倒だったよ」
「今でこそ上手だけど、そんな頃もあったんやね」
「まあな」
 ちょっと照れくさそうに笑いながら、お父さんが頬をかく。
 私は小さい頃からお父さんの料理を食べていたけど、この頃からずっと努力してたんだ。
お母さんに教わってたなら上手くなって当然だと思うけど、私もその技術を受け継いでる
わけで……それって、とっても素敵なことかも。
「よかったら、その写真の束見せてくれる?」
 お父さんやお母さんとの繋がりをもっと見たくて、私はお父さんにせがんでみた。
「ああ、いいぞ。ちゃんと丁寧に扱ってくれよ」
「わかってるって」
64愛は静かな場所へ降りてくる (6/8):2008/01/15(火) 11:59:21 ID:DA813sWM
 しっかりと返事して、お父さんから写真の束を受け取る。それは数十枚の紙のはずなのに、
私の手はずっしりとした重みを感じていた。
「ありがと」
 お礼を言ってから、受け取った写真を一枚一枚見ていく。
 心配しているゆきおばさんと、恥ずかしそうに笑っているお母さんの写真。
 ベビー服を二つ手にして、カメラに向かって「どっちがいい?」って感じで首を傾げて
いるお母さんの写真。
 台所に立って料理をしている、お父さんとお母さんの後ろ姿の写真。
 お茶碗によそったおかゆを、もきゅもきゅと食べてるお母さんの写真。
 揺り椅子に座って、愛おしそうに少し出てきたお腹に手を当てているお母さんの写真。
 どの写真にも、写ったり撮ったりしているお父さんやお母さん、ゆきおばさんの存在を
感じる。それに……
「まるで、私たちの家族写真みたいだね。この写真」
「えっ? 俺とかなたと、ゆきの写真がか?」
「もう、やだなー」
 お父さんの軽い言葉に、ちょっぴりほっぺたを膨らませる。
「お母さんのお腹の中に、私がいるじゃん」
「おお、そういうことか」
 やっとこ合点が行ったって感じで、お父さんは手をぽんっと叩いた。
「確かに、言われてみれば家族写真だな」
「でしょ?」
 この中に、私の姿が無いのはちょっぴり寂しい。だけど、確かに私はこの時お母さんの
お腹の中にいた。
 そう思うだけで、私の心が嬉しさでぽっかぽかに暖まっていく。
「そっか……そう言ってくれるのなら、見せておいてたほうが良かったのかな」
「えっ?」
 写真から顔を上げると、お父さんはバツが悪そうに苦笑いしていた。
「この写真をしまっておいたのは、色々あったからって言っただろ?」
「そういえば……それって、お母さんが亡くなったからなの?」
「確かに、それもある」
 うなずいて、ホットミルクを一口飲むお父さん。
 私もそれにならって飲むと、ホットミルクはすっかりぬるくなっていた。
「あと一つは……怖かったんだ」
「怖かった?」
「ああ」
 マグカップを置きながら、お父さんが小さく息をつく。
「その写真を見たこなたが、どんな感情を抱くかがわからなかったんだよ」
「わ、私が?」
 ど、どうして私の名前が出てくるのかな?
「もしかしたら、今は無いかなたの存在を求めてしまうかもしれない。もしかしたら、
産まれたことを気に病むかもしれない。そう葛藤していくうちに、なかなか写真を
出すことが出来なくなってさ」
「だけど、そんな風に思うならどうして今になって?」
「本当なら、久しぶりにちょっと見て戻すはずだった。まさか、お前が起きて来ると
思わなくて……でも、さっきも言ったとおりお前も十八だから、そろそろ見せても
いい頃かって思ったんだ。ごめんな、ずっと隠してしまって」
 お父さんはそう言うと、私に向けて深々と頭を下げた。
 確かに、お父さんの気持ちもわかる。
 今でこそこうやって愛おしく写真を見られるけど、小さい頃の私がこの写真を見たら
どう思うか……もしかしたら、お父さんの言うとおりになったかもしれないから。
 でも、お父さんがこうして私に隠し事をしていたのも事実。
 だから――
「もう、お父さんってばズルいなぁ」
「えっ?」
 正直な気持ちを、言葉にしてみた。
65愛は静かな場所へ降りてくる (7/8):2008/01/15(火) 12:00:15 ID:DA813sWM
「こんなとっておきの想い出をしまっておくなんて。まあ、ちゃんと見せてくれたから
チャラにしてもいいけどさ」
「こなた……?」
「だって、お父さんはこの写真をずっと捨てずにとっておいたんでしょ? それって、
お母さんのことをずっと愛してるって現れだもん。私はそれがとっても嬉しいし、私を
心配してくれたってことも嬉しい。ただ、この期に及んでもまだ隠そうとしたのは、
ちょっとズルいなーって思っただけ」
 ちょっぴり言葉にすると恥ずかしいけど、これが私の正直な気持ち。
 お父さんは私を愛してくれて、お母さんもちゃんと愛し続けていてくれていたんだもんね。
「謝ることはないよ、お父さん。むしろ、私こそ見せてくれてありがとうって言わせて」
 だから、私もちゃんとお礼をしなくちゃ。
「こなた……ああ、そう言ってくれると、俺も嬉しいよ」
「あははっ」
 ようやく笑ったお父さんは、テーブルから少し乗り出して私の頭を優しく撫でてくれた。
やっぱり、私たちはこういう笑顔が一番だよね。
「あー、となると……そーゆーことか」
「ん?」
「よくわかったよ。お父さんがよく写真を撮ってる理由」
「ん? どういうことだ?」
 首を傾げるお父さんに、私は人差し指をピンと立てながら口を開いた。
「資料用ってのはタテマエで、私やお母さんとの想い出をとっておきたかったんでしょ」
「なっ!」
 おやおや、どうやら図星なようで。お父さんの顔、いきなりボンッと赤くなっちゃったよ。
「そ……そ、そうだぞー」
「くふふっ、やっぱりね」
 かがみたちにも見せたように、私の家にはアルバムが多くある。お父さんとお母さんの
写真がいっぱい入ったアルバムから、私の成長を記録したアルバムまで、お父さんがいっぱい
撮った写真でほとんど埋められていた。
 お盆のときに新しいカメラを買って妙にはしゃいでいたけど、これで合点が行ったよ。
「わ、悪いか?」
「んにゃ、全然。そのおかげで、こうして私もお母さんの想い出に触れられてるんだから、
感謝、感謝」
 それに、お父さんのかわいげのあるところも見られたし。
「小さい頃、親父がよく写真を撮ってくれててさ。かなたとは近所の幼なじみってこともあって、
一緒に写ることが多かったんだ。だんだん、カメラとかにも興味を持つようになって」
「それが、いつの間にかお父さんの趣味になったと」
「ああ。中学の頃に親父にカメラを譲ってもらって、高校とか大学とかでもかなたとの
写真をよく撮ってた」
「お母さん、照れたりしてなかった?」
「んー、最初は照れてたけど、プロポーズしてからはよく自分からせがんでたな。さっきの写真みたいに」
「そういえば、アルバムにもあったね。白い帽子を被って、砂浜で微笑んでる写真とか」
 ふと、お父さんが大事にしてるアルバムの最初のページにあった写真が思い浮かぶ。
「俺がプロポーズして、初めて出掛けたときのだな。かなたも『そう君との想い出、
いっぱい作りたい』って言ってくれてさ」
 懐かしそうに、しみじみと言うお父さん。
「想い出、かぁ」
 そんなお父さんの表情を見てて、嬉しく感じるのと同時に、ちょっぴり寂しい気持ちが湧いてくる。
 ――私も、お母さんとの想い出を作りたかったな。
「確か、もう一枚かなたにせがまれたのがあったな」
「もう一枚?」
 暗い思考に陥りかけたそのとき、お父さんが思い出したように声をかけてきた。
「一番後ろにある写真がそうなんだが、さっきこなたが言ってたのにぴったりかもしれん」
 言われて、一番後ろにあった写真を抜き出してみる。
「あっ」
 確かに……確かに、これは私が言ってた写真。
66愛は静かな場所へ降りてくる (8/8):2008/01/15(火) 12:02:23 ID:uRMd9qOs
「お前が産んでから、かなたに一緒に撮りましょうって言われて撮った写真だよ」
 そこには、ベッドの中で起きているお母さんと、その肩を抱いているお母さん。そして――
「この赤ちゃんって……私?」
 お母さんの腕に抱かれた、小さな赤ちゃんの姿があった。
「ああ。たった一枚になってしまったけど、ゆきが撮ってくれた俺たちの家族写真だ」
 小さな腕の中で、すやすや眠っているもっと小さな私。もちろん、私にその時の記憶は無いけど、
まるで本当に抱っこしてもらっていたような感触が、この写真から思い浮かぶ。
「きっと、早くこなたとの想い出が欲しかったんだな。産後の疲れから目が覚めて、
少し話をしたら写真を撮りたがってたよ」
「そうなんだ……」
 写真の中で、私を抱っこして笑っているお母さん。
 その隣にいるお父さんも、お母さんに頬を寄せて嬉しそうに笑っていた。
 たとえ言葉で聞くことが出来なくても、お父さんとお母さんは私が産まれたときに
喜んでくれた……そう思えるほど、とっても優しい二人の笑顔。
「あの、さ」
 私は顔を上げて、お父さんの目を真っ直ぐに見つめた。
「うん?」
「この写真を見て、お母さんは喜んでた?」
 これは質問っていうよりも確認の意味。
 どうしても、それだけは知りたかった。
「もちろん」
 すぐさま、お父さんが満面の笑顔を浮かべてうなずいてくれる。
「急いで現像してもらって、かなたに見せに行ったらすぐに飾ってたよ」
「そっか……そうなんだぁ」
 なーんだ、ちゃんとあったんじゃん……私と、お母さんの想い出。
 そう思ったら、さっきの寂しさはどっかに吹き飛んじゃった。
「今でも、こなたの写真を撮るたびに『かなたが見たら喜ぶだろうな』って思うんだ」
 ふと、お父さんが居間の仏壇に目を向ける。
 そこは、お母さんの魂が年に一回帰ってくる場所。
「かなたも、こなたの成長した姿を見たがってる。そんな気がしてさ」
「お母さんが……」
 夏頃に帰ってきて、私たちの姿を見てくれるかもしれないお母さん。
 たとえ私たちには見ることが出来なくても、ずっと見守ってくれたとしたら……
「だったら、私も嬉しいな」
「だろ?」
「んじゃ、これからはもっともっと撮ろっか」
「おお、さすがこなた。そう来なくっちゃ」
 私たち笑い合いながら、お互いの顔を見合わせた。
 お母さんが見て喜んでくれるような女の子になれてるかは、ちょっと自信が無いけど……
元気な姿なら、とっても自信があるから。
 
「ねえ、お父さん。他の写真のことも色々教えてくれる?」
 そんなお母さんとお父さんのことがもっと知りたくて、久しぶりにおねだりしてみる。
「ああ、いいとも。今夜はとことん付き合ってやるさ」
 お父さんも、私のおねだりを嬉しそうに聞いてくれた。

 静かで寒い、冬の真夜中。
 普段は眠ってるこんな時間だけど、今更眠る気にはならない。

「あっ、さっきの焦げ焦げのお鍋ってこの写真のこと?」
「ん? ああ、それそれ。かなたが困ってるのがまた可愛くてさあ」
「おとーさんってばどこのガキですか」
「だって、こーゆーシチュってギャルゲとかで萌えないか?」
「うっ……言われてみると、確かにそうかも」

 だって、夜はまだこれから。
 お父さんたちの愛をもっと感じたくて、私は二人のお話を聞かせてもらうことにした。

 ほんのちょっぴり、子供の頃に戻ったような気分で。
 
67 ◆cj23Vc.0u. :2008/01/15(火) 12:03:50 ID:uRMd9qOs
 というわけで「愛は静かな場所へ降りてくる」をお送りしました。
 今回は原作第5巻「ここにある彼方」及びキャラソンCDVol.11のジャケット・
インレイが原案です。
 今はこの世にいない人でも、その人との想い出が全部無くなるわけじゃない。
ここ最近色々ありまして、そういう風に思いながらこのお話を書いてみました。

「HOME」「穫れたてを、あなたにも。」「古祀」「懐想譜」「小さき祈り」
そしてこのお話をもちまして、かなたさんとの想い出を辿るというお話は
ひとまずおしまいとなります。
 また、今度は違った形でかなたさんのお話が書ければなと。

 お楽しみ頂けましたら、幸いです。
 
68名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 12:10:46 ID:p9dr4DqF
>>67
時系列が原作準拠のかなたさん話でもしやと思いましたが、やはり貴方でしたか!
リアルタイム拝読中、脳内再生されっぱなしでした。Good Jobでございました!
69名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 12:16:32 ID:F1Ieo3Ke
>>67
キタアアアアアアアアアアアアアアア!!!
ちょっと目を離してる間になんてものを投下してくれるんだあんたって人はGJ!!!!!
やっぱかなたさんといえば 貴方ですよね!
次回作にも期待しております!!
70名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 13:44:16 ID:Zhp3YLF6
>>67
あなたの作品を読んでいる時は笑いやニヤニヤではなくて、笑顔というか微笑みというか…そんな少し違う顔になってしまいます…
そうじろうさんの想い、こなたの想い、そしてかなたさんとの想い出をしっかり堪能させていただきました。

次の作品もお待ちしております。

最後に、本当にGJ!
71名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 13:49:06 ID:8bSMSrvx
「ほんと、あんたんとこって、…そういう…環境なのににぎやかよね。」
「気使わんでいいよかがみ。まあ、お父さんで2人分にぎやかだし、
 ゆうちゃんもいるし、私も負けないようにぎやかにするしね(=ω=.)」
「あんたのその強さ、時々マジで尊敬するわ…一体どっからくるもんだか」
「んー、やっぱヲタエリート教育の賜物ってやつ?」
「ああ…まあ確かに、おかげさまで悲愴感が削げてくわ…
 お母さんは頭抱えるだろうけど…」
「うるさいよ(=ω=.)。それに今は、かがみん」
「え…」
「…や、つかさや、みゆきさん、他にも色々、仲よくしてくれる人いるしね」
「そ…そう、よかったじゃない…な、何ニヤニヤしてんのよ…
 そ、それにしても>>67はGJね。ホットミルクのちょっとしたレシピは参考になったし、
 なにより、こなたんとこの意外な一面を見れたしね、
 その描き方がまた、上手いというかね、
 こう、微笑ましいていうか、胸があったまるっていうか…ちょ…
 さっきから何よその笑みは…もう…」
「(ほんとかがみは分かりやすくてかわいーなーwww)」
7218-19:2008/01/15(火) 15:15:58 ID:Tm9aTDpB
>>56
うっひょおありがとうございます!
2分ほど狂喜乱舞してやっと落ち着いてこの文章打ってます!

でもなぁ、うちのかがみくんはそんなにかっこよくないはずなんだ、ただのエロゲの主人公だかr……
あれ?それじゃそのイラストにぴったりな気がしてきましたよ?
そう思うとそれ、入ってる気もしてきましたよ
てゆーか入ってるねそれ!

つかさルートを攻略したら……まさかの神ルート?
アリっちゃアリだね!
73名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 15:33:11 ID:VQiu7lhY
>>67
ほわぁぁ・・・なんか胸いっぱい。体は寒いけど心はホカホカ。
そんな気持ちになれました。後書きで挙げた作品であなた様か!と気付くあたり遅いな俺。
心温まる作品をありがとうございますです!
74名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 16:54:47 ID:z9CntuKc
>>67
GJです、久しぶりにまともなwかなたさんを見た気がします

>>72
あなたとぶーわさんのコラボはちょっと凄まじいものがっ

ところで…霊媒体質設定の別スレってのは、VIPですか?
75名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 17:47:03 ID:+NCFBIqI
>>67
うーん、暖かい話ですね。
やはり貴方の書く話は温もりがあります。

写真・かなたとの思い出…という点で、別の方の作品だけど「幸せの記録」も思い出しましたよ。
あの話も個人的に好きだったなあ。
76久留里:2008/01/15(火) 22:36:50 ID:d+8nWTwe
>>67
GJです!!
貴方に泣かせられました。


あと先に謝っておきます。
拙作の次の話にかなたさんが…………いや何でもない。
ちゃんと自分で考えたストーリーですのでお許しを。
77名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 00:38:22 ID:amofHnde
投下しようかな…
78名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 00:38:54 ID:nMgV6QGK
>>77
よし、やっちまえ!
79名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 00:39:18 ID:ntjMsrPO
投下すればいいとおもうよ
8014-319:2008/01/16(水) 00:42:33 ID:amofHnde
それでは、投下しますか


以下、注意とか
4レス使用?
CPは〜…特になし?強いて言えばかがつか?
他は特になしです
81気になること:2008/01/16(水) 00:44:10 ID:amofHnde
「おーいかがみ〜んみんみんみんみんみ〜ん」
 三時限目終了の合図のチャイムと共に自重しない声が聞こえてきた。
「なによ、そのセミみたいな呼び方」
 特徴的な青いアホ毛がぴょこんぴょこん動きながらこっちへ向かってきた。
「いや〜、ちょっとなんとなくね」
 なんとなくで済むものなのか。
 …うん、なんとなくで済むんだろうね。こなた的には。

「で、なんか用?」
「昼休みさ、聞きたい事あるから今日そっちで食べていい?」
「別にいいけど…でも、私がそっちのクラスに行って弁当を食べながらの方がいいんじゃないの?」
「まぁそうなんだけどさ、宗教上の理由で…じゃ、また昼休みで〜」
 こなたの聞きたい事がなんなのかがよく分からなかった。
 それにまだこっちは疑問に残る所があったのにすぐに向こうへ戻ってしまった。
 一体なんなのか…突然やってきてすぐに戻る…この教室に一分もいなかったんじゃないかしら。
 そして…なんなのよ宗教上の理由って……。ったく…。

「柊ちゃん最近向こうに顔出してないから心配してるのかな?」
「いや、それはないと思う…って峰岸いつのまに…」
「私も忘れるなよ〜…」
 気付かぬうちに私の横に日下部と峰岸がいた。

「まぁ、あやのの言うとおりなんじゃねーノ?あのちびっ子、柊のこと心配してたりして」
「向こうに行かない理由話してないんでしょ?妹ちゃんにも」
「…そうだけど、つかさに話したら情報がこなたに筒抜けになるからね」
「でも柊さ、肝心の私達にも話してくれないよな」
「そこは…まぁいいじゃない。気にしない気にしない。それに昼休みにこなたが来るからそこで分かると思うわ」
「少し騒がしいお昼になりそうね」
「いやー、今から楽しみになってきたな!」

 多分…というか絶対、昼…弁当の時間にこなたはこっちのクラスへなんでこないのかと聞いてきそうだった。
 おそらくあの雰囲気的に考えて。

 それより、時が経つのは早いもんで既に四時限目の開始のチャイムが鳴っていた。


82気になること:2008/01/16(水) 00:45:24 ID:amofHnde
 授業が終了を告げて周りのみんなに釣られて自分も弁当箱を用意する。
 その後に峰岸と日下部が私の机の周りに集まってきた。
「さぁて…どんな理由か楽しみだな…」
「ふふっ、そうね」
 …二人共どうやら楽しみにしているようだった。どんな理由かを。

「やっほー、来たよー」
 ここでこなたが登場。そして、さっきまで疑問だったことを一つ。
「つかさとみゆきは?」
「一応誘おうとしたんだけどね…みゆきさんはなんだかすぐに教室出て行っちゃって…。
 それでつかさは曖昧な返事の後に遠慮するねって言われて断られたんだよね…」
 
 やっぱりまだつかさは慣れてないのね…。
 昔からつかさはこっちのクラスに来ようとはしなかった。
 おそらくつかさは日下部、峰岸とは片方の手の指だけで数えられるほどしか会った事ないじゃないんだろうか。

「ひいらぎ〜?」
「かがみ〜ん?」
「柊ちゃ〜ん?」

「「「どうしたの?」」」

「なによ?つーか三人で声合わせるな」
「偶然だよ偶然。それで、どうしたの?」
「ちょっとした考え事よ。考え事。それよりこなた、話しあるんでしょ?」
「うん、そだよ〜。そのために来たんだからね」
「ちびっ子、どんな話しだ?」
「みさきちも聞きたい?峰岸さんも?」
「うん、まぁ…ね」
「じゃあ言うよ」

 こなたの話す質問は分かりきっているのに、なぜか私の心臓はドキドキ鳴っていた。
「それはズバリね…」
「もったいぶらないで早く話しなさいよ」
「こういうのは間が大切なのだよ」
 そんなものどうでもいいからさっさと話して欲しかった。

「………」
 私の耳にはまるで一人で居る部屋のようになにも音がしなくなっていた。

「…」
 あーもう…はやく…しなさいよ。

「なぁ、ちびっ子ぉ…」
 日下部が我慢出来ない子供のように呟いた。

「もうちょっと待ってね、みさきち…」
 まだ待たせる気か…。
 私も我慢出来ないんだけど。
83気になること:2008/01/16(水) 00:47:29 ID:amofHnde
「かがみんがツインテールにした理由だよ」
 と思った矢先にすぐ言い出した。いつもの調子の声で。
 って……え?なに?もう一回頼みます。
「なんつった?」
「だから、いまここにいる柊かがみさんがその髪形、ツインテールにした理由を聞きに来ました」
「な…なんだぁ…」
「ちびっ子、びっくりさせんなよな…」
 二人とも拍子抜けをしたようだった。無論、私もだけど。
 つーか、いちいち丁寧に話すな。

「ねぇ、こなた」
「ん〜?」
「前にも話さなかったっけ?」
「いや〜まあ…なんだけど、見事に忘れちゃってね…」
「でも、私達が考えてたこととは違ったけど私もそれ、知りたいな」
「そうだなぁ…ついでに柊がなぜ凶暴になったかも知りたいけどな」
 一人変なことを言っているが気にしないで話を進める。
「まぁ、別にいいけど…。少し長くなるかもよ?」
「よし、やっちまえ」
「そう…」
 返事をして口を動かした。



「まぁ幼稚園のころの話に戻るんだけどね…。その時つかさと比べて私が周りから言われてた事は、
 『しっかりしてる』とか『行儀がいい』とか、そういう事しか言われなかったの。
 かわいいってことは全然聞かなかったわね。赤ちゃんのころは言われてたかもしれないけど。
 だから、そのなんていうか……そういう周りのプレッシャーとか姉の威厳…とか
 そん時からそんな事考えてしまっていて、ずっと『行儀よく』、『しっかり』し続けていた。
 でもその反対につかさはその人に懐いたときとか慣れたときに見せる『笑顔』でかわいいって言われ続けてたわ。
 私?私は……幼い頃に笑ったことはあまり無い気がするわね……。
 そんなことがあったからなのかいつからか、かわいいって言われたい気持ちも出てきて………なにか考えてる時にね――
 『なにか』って何?って?忘れたわ。
 続けるわよ。えっとそこで……かわいい髪飾りを見つけたのよ。
 その髪飾りをお母さんのとこに持って行って結んで貰ったの。
 そして結んでもらって出来た結果がこの髪型よ。
 あー、もう、だから黙ってなさいよ、そこ!
 あともうちょっとだから我慢しなさい。その後でいくらでも質問受け付けるから。
 ご飯で口塞ぎながら聞いてなさいよ。
 …でね、結んでもらった後つかさに見せに行ったのよ。
 見せた後に言ってくれた言葉がね、『可愛い』だったのよ。
 それまで私のことを話す時は『優しくて頼れるお姉ちゃん』って言ってたのが――

 ………話すのやめていい?

 なら静かにしてて欲しいんだけどなぁ。
 そう、峰岸。その調子でどんどん怒っていいから。

 どこまで話したっけ?
 うん、そこね。じゃあ続けるわよ。でも、もう終わるけど。

 と、言われていたのが『優しくて可愛くて頼れるお姉ちゃん』になったのよ。
 恥ずかしくもあったけどそれ以上にとても嬉しかったからかな……。

84気になること:2008/01/16(水) 00:48:55 ID:amofHnde
「ま、そんな感じよ」
 …
 三人が一緒にヘンな空気を出している。
「な、なによ?」
「「「かわいいなぁ…って」」」
「うっ…うるさいっ……」

 終







「ちょっとまったぁ!」
「なによ急に?はやく終わらせなさいよ…ったく」
「いやぁ、ね、まだまだ聞きたい事あるから明後日の日曜日かがみの家に行く事にしたから。峰岸さんもみさきちも来るよね?」
「え、いいの?じゃあお邪魔させてもらおうかな…」
「もちろんいくぜ!」
「じゃ、かがみん、そゆことだから」
「ちょっと、勝手に決めないでよ」
「息抜きにはちょうどいいじゃん。ね」
「そうだろー、柊ぃ。少しぐらい。な」
「はぁ……」

 続く
85名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 00:50:18 ID:amofHnde
以上です。ありがとうございました。
ごらんの通り続きがあります
86名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 00:52:38 ID:ODXfJBE3
リアルタイム遭遇!!
投下乙!
続きを全裸で待ってます。
87名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 01:09:16 ID:thNtPQDr
>85
ぐっじょぶ!
ほのぼので、まったりな感じがいいなあ。
続きを楽しみに待っていますですよ。

>43
いつも、ハラハラしながら読んでいます。
UNOのまったりむーどから、いきなり銃口に囲まれたつかさ!
そして、通常世界の路線事故がどう絡むのか。
wktkがとまりません。
88久留里:2008/01/16(水) 01:59:41 ID:6yUCqo23
>>85
GJですぜ!!
続きが気になる。

「ヒーヒャッハッハッ、カガミも案外可愛いとこあんだなー。
 いい話聞かせて貰ったぜー、ヒャハッヒャハッヒャハッ………げほげほ」
「いい加減黙らないと今度こそ潰すわよ」
「おー? いいぜー? 潰してみなー? ヒヒャッ!!」
ドス!!
「げほっげほっげほっ………はぁ、はぁ、私が馬鹿だったわ」
「ギヒャーハハッハヒャッハヒャッハヒャッ!!!
 こりゃ傑作だぜ!! 俺のことぶっ叩こうとして自分のペタンコな胸叩いてむせてやらぁ
 うわなにをするやめろqあwせdrftgyふじこ(ry」
ざばぁぁぁぁ(トイレの水を流す音)
「ふぅー、やっと静かになったわね」

>>87
有り難う御座います。
次回はこなた視点で進めさせていただきます。
時系列的にかがみが一番遅れている件……。
89名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 02:17:58 ID:tHp5p1dC
かみかなた様に続く新ジャンルキャラ『ばかまるこ』が
確立されそうな勢いです。

あゆ「ま・・・まけてらんない!」
つかさ「ふぁ・・・ファイトっ!」
90名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 02:31:49 ID:JRJblmMD
さっき更新された保管庫を眺めてたら今さらTSが書きたくなっております
まずは寝よう…
91名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 03:13:12 ID:3zWfD/Zn
>>90
よし、起きたらやっちまえ
92名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 06:09:03 ID:W7X9KcKZ
>>90
楽しみにしながら仕事にいってきます。
93名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 08:21:03 ID:gb+SBVAy
おかしいなぁ、TSに抵抗のあったはずなのに今ではぶーわ氏級の乙女チックなこなたを期待してしまう俺がいる
少女漫画展開に大分毒されてきたのかもしれない
94名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 09:28:06 ID:1h4aydEz
>>93
俺はあの形式が好きだな
コロコロ視点が変わるのは少し苦手だからああやってはっきり分けてくれると読みやすい
かがみのほうはエロゲ風 こなたのほうは少女漫画風って感じ?

そして最近になって少女漫画も読み出した俺キモすぎる
新ジャンルこな☆おとの確立ですねこれは
95名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 10:42:19 ID:JRJblmMD
TSもの投下宣言してしまった17-234です。
ということで慣れないながらも久々に書いてみました。題名のあるSS。
ちょっとリハビリも入ってます(笑)

ということでTSもの
あきら様(男)×白石(女)
エロなし
3レス+後書き1レス使用

「らっきー☆ちゃんねるの裏(TS編)」


上記が嫌いな方はスルーお願いします。
9617-234「らっきー☆ちゃんねるの裏」1/3:2008/01/16(水) 10:44:34 ID:JRJblmMD
ここに、14歳と18歳の男女がいる。
14歳は、小神あきらという少年だ。
ピンク髪のショートカット、ぴん、と伸びたアホ毛が特徴だ。
18歳なのは、小神あきらのアシスタント、白石みのる。少女…という歳ではないだろう。
茶髪の…いや、ここからは想像にお任せしよう。
決して考えるのが面倒なわけではない。

さて、この二人には「らっきー☆ちゃんねる」という番組がある。
もう番組開始してから1年たち、二人はすっかり番組のふいん

「説明がなげぇぇ!!」
「ひいっ!」

失礼しました。今の?
いえ、なんでもないですよ?ただの、ただの

「いちいち説明がうぜぇぇぇ!!!」
「ご、ごめんなさいすいませんあきら様っ!!!」

ふと見ると、部屋の隅っこに、何を勘違いしたのか、ひまわりをつけたツインテールっこが、わなわなと震えながら座り込んでいた。
……決して私のせいではなかろう。
「お前だよ!」
そうですか……。
9717-234「らっきー☆ちゃんねるの裏」2/3:2008/01/16(水) 10:47:54 ID:JRJblmMD
「なぁ白石」
「は、はいっ、あきら様っ!」

白石と呼ばれた女の子はものすごいスピードで、あきら様の前にやってきた。
やはり白石の顔は青ざめている。
いつものことだ、仕方ない。

「今日の収録のことは、頭に入ってんだろうな。」
「は、はい…もちろん、です…」

あきら様は学ランと同じ色のズボンのポケットに親指だけ突っ込み、白石との距離を1歩ずつ詰める。
距離が縮まる度に、白石の顔がひきつっていく。
壁際に追い詰められ、身動きのとれない白石の震えが止まらない。

「とちったり噛んだりしたら……どうなるかわかってる、よな、白石さん♪」
「ひっ…!」

あごをちょい、と持ち上げて視線をあわせる。
普通なら恋人同士がすると絵になるこの動作も、この二人がすると、単なる恐喝かなにかに見える。
9817-234「らっきー☆ちゃんねるの裏」3/3:2008/01/16(水) 10:50:55 ID:JRJblmMD
「ん…?」
「……?」

なにかに気付いたのか、あきら様の動きが止まる。
白石は、自分の顔の直ぐ前にあきら様の顔があるせいか、息をとめたまま、じっとしている。

「あ、あの、あきら様…?」
「お前さ、今日俺があげた香水つけてるだろ。」
「………!!」

かぁっ、という音が聞こえるのではないかと思うくらい、白石の顔がクレヨンで塗ったみたいに赤くなる。

「良い匂いする。」
「ちょっ、あ、あきら様っ?…く…くすぐったい…っ」

あきら様が、白石の肩に鼻をくっつける。
しかし匂いの元はそこではないらしく、鼻をむき出しの鎖骨にくっつけたり、首筋に、頬に、と移動する。

「ここか。」
「んっ……」

耳にたどり着いたとき、低い声で囁いた。
また白石の耳に鼻をくっつける。

と。

「ひゃんっ!」
「あ、すまん。」

勢い余ってその耳を舐めてしまったあきら様に、白石の驚く声が響く。

「耳の裏は止めたほう良いらしいぜ?」
「え…?」
「直射日光があたって、そこがしみになるかもしれないしな。」
「そ、そうなんですか…?」

ぽかん、と口をあけたままの白石が感心したように頷く。
もうちょっと他のとこに驚こうよ…

「やべ、時間だ、行くぞ、白石!」
「あ、はいっ!頑張りましょ♪」
「おう!」

ぱたぱたと駆ける二人のあとに、
微かに香水の残り香があった。
9917-234「らっきー☆ちゃんねるの裏」後書き:2008/01/16(水) 10:53:30 ID:JRJblmMD
終了\(^o^)/

携帯使いづらい!
あと、あんまりTSっぽくないと思われるとおもいますが、
あきら様なら暴力ふるいそうで止めました。


個人的にちょっとトラウマあるのでorz


読んでくださった方、ありがとうございました!
100名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 11:01:22 ID:1h4aydEz
>>99
ぐじょーぶ!!!
ぜひ ベッドシーンもどうかお願いします
もちろん攻めは あきら様で!
101名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 13:15:59 ID:gb+SBVAy
>>99
GJ!
ショタあきら様がいい味出してますね!

同じくベッドシーン希望
あきら様に鬼畜責めしてもらいたいぜ!
102名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 15:29:02 ID:7Ka3usfZ
>>99
ぐっじょ!!
では俺も便乗してベッドシーン希望


みのるんは7-896氏の描いた、あのみのるんで決まりとして
あきら君はどんな感じなのだろうか?
とか言っておけば誰か描いてくれそうだw
言わなくても描いてくれるかもしれんけど


そして、久しぶりに見てみようと思って行ってみたら、みのるん画像が保管所から消えてて、なんか(・ω・`)ってなった
103名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 15:36:39 ID:7B+fuoAx
職人さんたちGJです!

俺も仕事中にこんな電波を受信しました。
※TS注意!ラフですまん(´・ω・`)
ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03993.jpg

かがみ♂化はあるけど、こなた♂化はwikiに一個しかないのかな?
SS読んで色々妄想してたら、手が勝手に落書きしてました。
10426-369:2008/01/16(水) 15:53:58 ID:N7IOHe5d
保管庫見たら、前の絵も保管していただいてたようなので、
>>103は26-369が描きました。ってことで、連投失礼。

ちなみに、カップリングは趣味なのであまり気にしないでください(´・ω・`)
105みゆつか愛してる:2008/01/16(水) 17:00:37 ID:OlI+3+zr
新スレ乙です!&みなさんGJです!
読むのが少しばかり遅れてしまっていますけれど……。

>>103
これは……私もこなたの胸板に身体あずけてぇー!

というわけで誰も投下宣言がなければ投下させていただきたいと思います。

・ひより×男(非百合注意)
・前後編予定
・8〜9レス拝借

それでは他の宣言がなければ投下します。
106恋するひより前編・1:2008/01/16(水) 17:03:59 ID:OlI+3+zr
「あー……ごめん……」
それは私が中学生の頃だった。日の沈みかけた校舎の裏で、私はある男子生徒と向かい合って立っていた。
その人は申し訳なさそうな顔を私に見せ、ばつが悪そうに視線を斜めに落としている。
やっぱりダメだったかー……ある程度予想していたとはいえ、その回答は少しばかり、私の胸を抉る。
「田村さんの気持ちは嬉しいんだけど……俺もうちょっと活発っていうか、今っぽい感じっていうか、
 そんな女の子がタイプで、田村さんみたいなオタクっぽい子はちょっとっていうか、うーん……。
 田村さんは別に内気でも大人しくもないし、悪い人じゃないんけれど、俺の好みから外れるんだよね」
もうそれ以上言わなくて良いのに。必要以上のことをウダウダと……ダメならダメだけでいいのに。
一世一代の決心で告白した私からすれば、そんなのパンチのシャワーを受けているようなものなのに。
「だからさ、田村さんとは付き合えないんだ。本当にごめんね」
「あっ……うん、いいよ。こっちこそごめんね。迷惑かけちゃって……」
私は精一杯の笑顔をその人に返す。大丈夫、まだしっかり笑えているはず。
「あっ、それとさ、田村さん」
「な、なあに?」
「できれば……どうしても必要なとき以外はもう、俺に話しかけないでほしいんだ」
「どうして? やっぱり私みたいなオタクに話しかけられると……」
「それは……あるっていえばちょっとはあるんだけど、ここに呼び出されたときもみんなに冷やかされてさ、
 なんとなく噂になったり、またみんなから変な目で見られたりしたら、ちょっと面倒くさいっていうか」
あーヤバい……パンチのシャワーに飽き足らず、今度は延髄蹴りをまともにくらったような衝撃。
拒絶もここまでくると、私のアイデンティティの崩壊だった。気持ちはわかったから、言葉を選んでおくれ……。
「だからさ、ごめんね」
「ううん! 気にしないで、こっちこそごめんね。でも、クラスメートとしては、これからもよろしくね」
「うん……あっ、俺もう行かないといけないからさ。じゃあね、田村さん」
言うだけ言うと彼は私の前から去った。言うだけ言ったのは私も同じなんだけれど。一人取り残される私。
フラれるショックは遅効性らしい。今になって、彼の言葉から受けた傷は私の全身を這ってズキズキと痛み出す。
「やっぱりオタクはダメかあー、ダメだよねぇ〜……そりゃ、休み時間に漫画読んだり描いたりするような娘より、
 楽しいおしゃべりが大好きで、化粧も似合っておしゃれで、流行に敏感で、色恋の話に夢中な女の子が可愛いよね〜。
 私だってそんな女の子を主役に漫画を描きたいものだしねー、オタクなんてこう、萌えとしての魅力に欠いてるし……」
周りに聞こえるか聞こえないかほどの声で独り言を口にする私。あ、今の私は最高にオタクっぽい。
告白するまでの間、私は自慢の妄想癖で、彼と付き合ったらどんなデートをするんだろう、彼はどんな顔を見せてくれるんだろう、
暢気にも都合よく、そんな幸せな未来をただただ考えていた。その分、今の自分の姿に死ぬほどの恥ずかしさを感じている。
「よーし、今日から二次元に生きるぞ! あっ、このフラれかたは今度のネタに使えるかもしれない!
 スポーツ少年に片思いするオタク少年、このBLは絶対に受ける! でもハッピーエンドにしなきゃ……」
少しばかり声が震えていたのは気にしない。今の自分を納得させるつもりで、口にするしかなかった言葉だから。
私の恋は見事に散って、それは私の妄想癖を尚更強くさせることになった。妄想はいい。傷付かないし、楽だから。
もうしばらく恋愛はないな、と考えた。今までもなかったんだけど。私は恋愛なんて、他人で妄想しておけばいいのだ。

******
107恋するひより前編・2:2008/01/16(水) 17:06:12 ID:OlI+3+zr
「田村さーん、迎えにきたよ」
アニ研部室の扉が開いて、そこに現われたのは二人の女の子。私の友達の小早川ゆたかと岩崎みなみだった。
今日は三人で変える予定を組んでいたため、二人は私を迎えに来たのだった。時刻は五時半を差している。
「おい、ひよりん。友達が迎えにきたよ。さっさとその原稿、ベタ塗っちゃえよ。あともうちょっとでしょ?」
「……」
「聞いてんの、ひよりん。ボーっとするなって。ひよりん、ひよりーん、ひーよーりーん」
「あっ……はい!」
遠くにあった意識が引き戻される。同時に、私の身体がびくんとはねて、その拍子で肘がインクにぶつかってしまい……。
「てっ……ぎゃー!」
「うわ、原稿が!」
「大丈夫? 田村さん!」
「……いえ、ゲームオーバーデス」
ベタ塗りとトーン貼りを残すだけだった私の原稿は、こぼれたインクによってただの黒い紙へと変貌していた。
小早川さんと岩崎さんが、床と机にこぼれたインクの処理を手伝ってくれた。私は原型なき原稿を泣く泣く捨てる。
「これは……やっちゃったな、ひよりん」
「わ、私の1ヶ月の努力の結晶が……」
「描き直すしかないね。しかも三日で。ストーリーもコマ割も覚えているんでしょ? 寝ないでやればなんとかなる」
「うう……また健康に悪い生活が始まるんですね」
「同人誌描きなんて元々健康に悪いだろ。それよりもひよりん。さいきんちょっと気が抜けてるんじゃないの」
「そ、そんなことはないですよ。きちんと寝てないからかな?」
「それで原稿が進んでいるなら別にかまわないんだけど、今回はいいペースだったのにこれで全部振り出し」
「す、すみません」
「やっぱり最近、気が抜けてるよね。なんか悩みでもあるんじゃない?」
「そういえば田村さん、最近教室でもぼーっとしてること多いよ?」
口を挟んできたのは小早川さんだ。どうやら呆けた私を見られていたらしい。岩崎さんもうんうんと頷く。
「悩みがあるというか……なにかずっと、別の考え事をしているというか……思いつめた感じじゃなくて」
さすがは岩崎さんだ。能面の割には鋭い。頼れる友達ではあるんだろう。
「それは、ネタについて考えているんスよ〜」
「完成間近の漫画描きながら考えているんだ? ひよりんはいつからそんなに器用になったのかな?」
私の煮え切らない返答に、八坂先輩が少しイラついている。
しかし、言えるはずかない。私のその頭の中を、最近ずっと占領しているものの正体など……。
「田村さん……何か悩みがあるんだったら、私達に話してほしいな? 力になれないかもしれないケド」
「私も……力になりたい」
「みなみちゃんは頼り甲斐があるから、私もついつい甘えちゃうんだよね。ちょっとわきまえないとって思うんだけど」
「そんなことない……ゆたかが甘えたいなら、私はいつでもそうしてほしい」
「ほ、ほんと? えへへ……ありがとう、みなみちゃん」
「ほら、ひよりんの大好きな百合の花が今まさに咲き乱れてますぞ? 妄想が止ま……ら……ひよりん?」
「……ふぇっ? あ、はい」
「こりゃダメだ……」
私はまた、忘却の彼方にいたらしい。目の前には飽きれた様子の八坂先輩と、にこやかな百合カップル。
心配してくれるのは本当に有難いのだけれど、おそらく相談しても埒があかない。私がそう判断してるだけなんだけど。
こんな私がどう口に出来るんだろう。『実は片思いをしてるんです』だなんて。

******
108恋するひより前編・3:2008/01/16(水) 17:09:20 ID:OlI+3+zr
(うー……なんでこんなときに始まっちゃうかなあ……)
今から1ヶ月前の放課後。窓から差す西日を浴びながら、私はトイレから教室へと戻るところだった。
今日は部活があるから、と小早川さんと岩崎さんが二人で帰っていくのを見送った私は、そのまま部室へ。
部活動が終わり、誰もいない教室に戻ったんだけれど、そのときふっと、原稿のいいアイデアが思いついた。
(これは……忘れないうちに描き止めておかなければ!)
次のイベントで出展する予定の、深夜アニメのBL本のアイデアだった。
美少年二人が出てくるその深夜アニメはロボットやら戦争やらの要素も含まれていて、オタク界隈で絶大な人気があった。
私もご多分に漏れずハマッてしまい、しかも即原稿にしようといきり立っていて、少しばかり無理な酢ケージュールを組み、
睡眠時間は極僅か、食事も非常にバランスが悪く、いつものことながらここ半月は不健康極まりない生活を送っていた。
そのせいで今に至る。私以外に人気が無い教室でノートに向かい必死に筆を走らせていると、下腹部に急激な鈍痛。
(ここんところずっと不摂生が続いていたから、ホルモンバランス崩れちゃったんだなー……)
いつもとはだいぶずれた周期で、生理が始まってしまった。筆を止めて、私は急いでトイレへと駆け出した。
こういうこともあると、ナプキンを常備していてよかった。その道の先輩達から常々聞かされていた話だった。
用を済ませた私は廊下を歩く。本当は走りたいのだけれど、そんなわけにもいかない。
(鞄もノートも全部、教室に置いたままだ……それを取ったら今日は大人しく家に帰って……ん? ノート?)
そこで、私の顔面が蒼白する。トイレに向かおうと思ったときの私の姿が、脳内でプレイバックされた。
(……ノート開きっぱなしで、そのままだー!!!!!!!!)
私は焦りを隠せずに、走るべしと足を前に出した。しかし鈍痛を受けてすぐにぴたりと止まってしまった。
(ヤバい! あれを誰かに見られたら恥ずかしすぎて死ぬ! しかもよりによって激しいセクロスシーンだし!
 オタク仲間に見られるならいいけど、クラスメートはみんなパンピーだし……頼むから誰も教室にいませんように!)
身体の不調とすぐに教室に向かいたい焦りとで、私の身体と心が格闘している。気持ちだけ足早に現場へと向かう。
教室まであと数メートル。耳にこだまするのは校庭で汗を流す野球部員の声。それに紛れて聞こえるのは……。
誰かいる。私は教室には入らず、扉に背をつけたまま、聞き耳を立てる。
「でさー、あれがめっちゃ臭いんだよ」
クラスの男子の声だ。声の数からすると、4〜5人はいる。しかもこの声は、クラスでもちょっと問題のある者達だ。
「それは臭そうだなー……って、あれ? これなんだ?」
「田村の机にノートが……なんか描いてあんぜ。あれ、これ絵じゃね?」
私の身体に電流のような衝撃が走る。……見られた! よりによって一番最悪なところを。クラスの男子に。
「えっ、マジ? 田村っていっつも何か描いてんだよな。アニメっぽいの。いわゆるオタクってやつ?」
「あーあー、でも何描いてるのかわかんないんだよな。あれじゃん、萌え〜とか、そういうの」
「でもあれって男とかそういうのがやるんだろ? 女がやるのかな?」
「あれだよ、なんか『ふじょし』とかなんとか。女のオタクってやつ。テレビでやってたんだけど」
「お前詳しいな〜、本当はオタクなんじゃん?」
「バカ、それよりもこの絵、ちょっと見てみろよ」
やめて……! そこまで喉に出かかっていたけれど、私は身がすくんで何もできなかった。
どういう精神をしてるんだろう。いくら開きっぱなしだとはいえ、人のノートを勝手に見るだなんて。
いや、開きっぱなしのまま放置していた私も十分悪いんだけれど……いや、責任の所在はこの際どうでもよかった。
「これ……男だよな。男同士でやってんだよな?」
「うえっ、マジかよ! 気持ち悪いな! 田村こんなの描いてんの!?」
羞恥が私を襲う。その場から逃げ出したかったけれど、どこかに隠れたいままの身体は震えるだけで動かない。
確か割と頭の良い学校のはずだった。なのにどうしてこんなに品性のない生徒がいるんだろうか。
109恋するひより前編・4:2008/01/16(水) 17:12:17 ID:OlI+3+zr
自分の頭を掴み、ただ必死に時が過ぎるのを待った。その間にも、男子達の容赦無い言葉は続く。
「このページなんかすげえぞ。男二人で丸出し。キスまでしやがってる」
「うわー、キッツいな〜。田村って生で実物見たことあるんじゃないの」
「まさか、田村だぜ? それにしたってなにが面白いのかな、こんなの」
「ほんとほんと。キモいだけだよな」
キモいと言われるのは仕方なかった。私もこの道に走るまではそう思っていたクチで、初めて読んだ時もそうだったし、
むしろ普通の感性ならそう思って当たり前なわけで……。それも、男子とBLは非常に相性が悪い。
「でも、田村のやつこんなのを毎日描いてたのかよ」
「しかも描いてる間、たまにニヤニヤしたり、怒ったような顔したりするんだよな」
「おいおい、田村ってちょっと……キモくないか?」
脳天を金槌で殴られたような衝撃だった。私も女の子なんだし、作品がキモいと言われるのは我慢できるけれど、
自分がキモいと言われる事は我慢できるはずがない。たしかにこの道を歩いていれば、幾度となくそういう事態はある。
でもやっぱり、慣れなかった。しかもクラスの男子に、複数に、笑われながら言われたとなると殊更に響く。
私は下唇を噛んだ。もうこれ以上はどう笑われても一緒。お願いだから、時間よ早く過ぎてと祈るしかできなかった。
「おい、そろそろ6時超えるぞ」
「マジで? 超ヤベェじゃん。早くゲーセンいかなきゃ」
もう教室から聞こえる会話が、私には聞こえていなかった。何を話していたかわからない。
ただ男子達が教室から出る音がしたから、私はさっと身を隠した。ようやく嵐は過ぎ去ってくれたのだ。
(やっぱり……リアルの男子なんて最低っスね……)
私は目尻にわずかに浮かんだ涙を拭くと、教室へと足を踏み入れた。ようやく、誰もいなくなった教室……のはずだった。
教室の真中には、ひとりの男子が立っていた。私は思わず声をあげそうになったけれど、なんとか堪えてみせる。
「あ、田村さん……」
(なっ、なんで!? なんで人がいるの!? たしか彼は――)
混乱で一瞬迷ったけれど、名前はきちんと思い出せた。たしか成績は上位の真面目な男子だ。さっきの奴等とは違う。
不意打ちだった。完全に気が緩んでいた。私はあの男子達が出てすぐに教室に入ったから、彼は最初からずっといたんだろう。
「田村さん……もしかしてさっきのやつらの話、聞いてた?」
「へ……ううん! 聞いてないよ! 全っ然聞いてない!」
心配そうに聞いてくる彼に、私は必死な形相で返した。かえって怪しまれたかもしれない。
「そ、それよりどうしてこんなところに……」
「え……忘れ物を取りに来ただけなんだけど……」
「あっ、そ、そうだよねー。私も忘れ物取りに来たんだ」
「それって、これのこと……」
「えっ、あ……!」
差し出された彼の手には、私のノートがあった。見慣れたピンクの表紙にはしっかりと『田村ひより』。
私はそれを奪い取るように取ると、急いで鞄にしまった。焦りのせいで、少しばかりまごついてしまったけれど。
「あ、あの……中、見た?」
「う、うん……あっ、実際に手にとって見たんじゃなくて、見えちゃったっていうか……。開きっぱなしだから……。
 あいつら、そのノート見た後に教卓の上に投げ出していったから、田村さんが来る前に机に戻そうかと思って……」
やっぱり真面目な人だった。さっきの奴等とは違うらしい。見えちゃったのは私の責任だし、それは仕方ない。
どのみち見られていなくても、あの男子達の会話を聞いていれば、ノートの中身は彼に知られているところだし……。
それよりも、こんな羞恥責めはもう終わったものだと思ったのに、こんな真面目な人にすら見られてしまうなんて……。
110恋するひより前編・5:2008/01/16(水) 17:16:21 ID:OlI+3+zr
「そ、その……田村さんって、ああいう絵を描いていたんだね。ちょっと気になってたんだ」
「う、うん。あはは、気持ち悪いよね。ごめんね、お見苦しいものを見せちゃって」
できればそれには触れず、もう私を放置してもらいたいものだった。彼はそんな私の気持ちに気付いていない。
「たしかにちょっとびっくりしちゃったかな……ああいうのがあったなんて知らなかったし。でも、いいんじゃないかな」
「えっ?」
彼はその場を繕うようなものじゃない笑顔で、そう答えた。拒絶されるものだと思っていたので、その返答には私は虚を突かれた。
「で、でも、気持ち悪くない?」
「絵を描いてるときの田村さんって、すごく楽しそうだし。僕にはわからない世界だけど、楽しいならそれでいいしね。
 それに、たまに田村さんの表情がコロコロ変わるのが面白いっていうか……あっ、そんなこと言われても困っちゃうか」
私はしばらく反応に困り、少しの沈黙のあとに顔を赤面させた。それは、さっきとは種類の違う恥ずかしさだった。
「そ、そんなに顔変えちゃってるかなー……これまたお恥ずかしい……」
「結構変えちゃってるよ。そんなに楽しいのかな、何を描いてるのかなって前から知りたかったんだ。聞くには気が引けちゃうし。
 あ、そんなにじろじろ田村さんの顔を見ちゃってるわけじゃないよ! ただ、楽しそうな田村さんは見てて和むっていうか……」
そんな彼の様子を見ていて、気がつけば私はクスッと笑っていた。彼もまた、恥ずかしそうな顔をしている。
彼は言い訳をするたびに、その弁明に言い訳をする。私を見てて和む? たしか絵を描いている間は百面相だけど……。
ただひとつわかるのは、彼の話を聞いているうちに、さっきまでの沈んだ気持ちが少しづつ和らいでいったことだった。
異性と話をして、こんなに楽しいのは久しぶりだった。たいていはオタクっていうだけで、同性からも拒絶されることもある。
「まあ私の絵なんて、人様に簡単に見せちゃっていい種類じゃないからね。あっ、決して偉そうな意味じゃないよ?」
本当は本になって何百人の人に読まれちゃってます、なんて言わない。彼の常識の世界では、非常にややこしくなるから。
「そうだね……あっと、さっきのノートに描いてあった絵だけどさ。あれってもしかして深夜にやってるアニメのキャラ?」
「そ、そうだけど……知ってるの?」
「うん。こないだ夜更かししたときにたまたまテレビでやってるのを見たんだけど……ストーリーが面白くて、つい毎週ね。
 アニメなんてディ○ニーとかジ○リぐらいしか知らないけど、あれは面白いよね。話がよく練り込んであって。
 キャラクターは名前が長くて、ちょっと覚えきれないんだけど……ルルーシュなんとかとか、田村さんもあれ、好きなんだ?」
好きなんてものじゃありません。今一番愛してます。
「そうだよね! やっぱり面白いよね! 私も放送前からすっごい期待してたんだけど、キャラデザの人がすっごい好きで、
 声優が発表されたときは結構テンションあがっちゃって、あーでも、設定とかちょっと釣ってるなって気がしたんだけど、
 でもサントラとかドラマCD聴いてるとそんなことどうでもよくなっちゃって、男キャラだけじゃなく女の子も可愛いし、
 こないだの回なんかめっちゃ熱かったっスよね! 勢いで録画したやつそのまますぐ見返しちゃったりして……って……」
はっと我に気付いたときは、ちょっと戸惑っている彼の顔。自分の気持ちいい話に熱くなるのが、いつの時代もオタクの性分。
やっちまったー!!!!!!!!!!と思った私は、パンピーとの壁を痛感しつつ、自身のKYっぷりを呪った。
「ご、ごめんね……ひとりで熱くなっちゃって……」
「ううん……やっぱり田村さんって面白いね」
「お、面白い? 私が?」
見世物的な意味?
「絵を描いてるときもそうだけど、田村さんは好きなことをしてるときの顔が一番かわ……イキイキしてるよ」
顔が熱い。男子からそんな臭いセリフを言われた事なんかなかった。言った側もちょっと恥ずかしそうだし。何この甘い空気。
私は口に出して「あうあう」とか言いそうになった。そんな萌えっ娘的なセリフ、私が言っちゃダメだ! ていうかリアルで言うな!
「その……田村さんが描いている絵って、全部ああいう種類なの?」
「ううん! もっと色々、女の子とか、動物(ケモショタ)とか、ロボット(メイド)とかも描いてるよ。あとは風景(背景)とか」
「へえ、そうなんだ。あの……田村さんさえよかったら、今度別のを見せてくれないかな?」
「べ、別の!?」
111恋するひより前編・6:2008/01/16(水) 17:19:38 ID:OlI+3+zr
「あ、田村さんさえよかったらなんだけど……や、やっぱりダメだよね。ごめんね」
「う、ううん! あんまり見ても面白くないと思うケド……明日、明日持ってくるね」
どのみち色んな人に見せてきたのだから、いまさら一人増えたって問題は無かった。だけど、なぜかしら恥ずかしい。
でもそれ以上の戸惑いは、彼がそのとき見せてくれた笑顔が、その日一日中忘れられなかったことだった。
翌日、ノーマルな方に見せても大丈夫なイラストだけを厳選して彼に見せた。周りから好奇の目で見られたくないから、こっそり渡す。
たしかに私はいままでたくさんのイラストを描いて、たくさんの本を読まれて、その度に読み手の反応を伺ってきたんだけれど。
なぜ今日はこんなに、相手の反応が気になるんだろう。相手の評価が気になるんだろう。ここまでの緊張は久しぶりだった。
何より、彼に絵を見てもらうことがすごく嬉しかった。大丈夫な絵を選んでいるとはいえ、もっと見てほしい気持ちが生まれる。
その日の放課後、彼は絵を私に返すと、「すっごく上手だし、すっごく可愛かったよ」と言ってくれた。見せたのは女の子のイラスト。
他のサークルの絵師さんから言われるよりも、八坂先輩から太鼓判を押されるよりも、シンプルなのに遥かに嬉しい言葉だった。
絵の詳細を聞かれると、また私は元の作品について暴走気味に語りだし、自己嫌悪になる。微笑む彼はそのあと、こう口にした。
「田村さん……今日、一緒に帰らない?」

******

「こうして田村さんと一緒に帰るの、久しぶりだねー」
小早川さんがそう言うと、岩崎さんはうんうんと頷く。私は三人肩をならべて、通学路を歩いている。
ここのところほぼ毎日、私は部活が長引く日と原稿に切羽詰っている日を除いて、あの彼と二人で帰っていた。
二人きりの帰り道で話すのは、世間話とアニメの話、彼は時々ついてこれなくなるけど、私がなんとか簡単に説明する。
オタク用語までは間違っても口にはしないけど、彼もそれなりの知識が付いてきているようだった。私が彼を染めていくのかな……。
そのため彼は私が本を出していることも知っていたし、実際に読ませたこともあった。もちろんノーマルな作品なんだけれど。
もしかして無理に付き合わせちゃっているのかな?とも思ったけれど、彼が私の話に相槌を打つ姿を見るのは止められない。
オタク仲間の間でしか通じなかった私の話に、彼が微笑むたびに私の胸がズキンと疼く。アニメキャラへの萌えとは違う情熱。
(ああ……私、この人のこと好きなんだぁ……)
そう気付いたのに時間はかからなかった。彼のことを思い出すたびに、原稿を描く手が止まり、八坂先輩に怒られる。
まさか自分がまた、こんな風に恋をするとは思ってなかった。中学の失恋は、私が能動的なオタクでいることに拍車をかけた。
下手に隠すよりは露骨にしていた方が、誰かに気味悪がられずに済むし、失恋の痛手を忘れるのも早くなるからだった。
気味悪がられないなんてことはなかったんだけど、少なくとも傷付く事はぐっと少なくなった。開き直ればいいこともある。
ただ、オープンにすればする分に、色恋からは遠ざかる。受け入れてくれる相手というのは、なかなか難しいものだった。
私は出来る限り、自分の行為を彼に悟られない様に気をつけた。そのためにちょっと過剰にオタクらしさをみせることもあった。
オタクであることを受け入れてくれるのと、好きでいてくれるのは違う。私はただ、彼と歩きながら話せるだけで十分だったから。
今日だって、彼が家の用事があると言わなければ、きっと二人で帰っていた。小早川さん岩崎さんと帰ったのはたまたまだった。
それが、二人に対して申し訳無かった。こうして大切な友達と笑いながら話してる今でも、私は彼のことを考えているから……。
「田村さん、最近忙しいからねー。漫画の方は順調なの?」
「えっ、うん……と言いたいけど、今日はあの惨事なもので」
いつもの十字路で、私達は別れた。二人とも、私と離れた途端手なんか繋いでやがる。あそこまで仲良かったっけ? 萌え死ぬけど。
ひとりで家に向かう路、彼のことを考えた。できればああして私も、手なんか繋ぎたい。それはやっぱり難しいのかな?

******
112恋するひより前編・7:2008/01/16(水) 17:22:49 ID:OlI+3+zr
翌日、私は家で超特急で原稿を仕上げないといけないというのに、その誘惑に耐えきれず、またも彼と二人で帰った。
私達は、というか私が、出来る限り人気を避けた道を通るように歩こうとしていた。誰かに見られて噂になりたくないからだった。
それは私のためではなく、彼のためなんだけれど。私と噂になって彼が困る姿を、自分のためにも見たくないしね……。
「田村さん、原稿は大丈夫なの?」
「うん、実は結構余裕できちゃって。いつもは追い詰められちゃってるんだけどね」
嘘です。本当は1日だって余裕はありません。八坂先輩ごめんなさい。
「それならよかった……今度はどんな作品なの?」
「えと……あの深夜アニメのやつだよ。その……あのノートの中身みたいな……」
「そ、そうなんだ……」
ちょっとだけ気まずくなる。だけど、決して居心地の悪い気まずさではなかった。彼はどう思っているかわからないけど。
気まずいのも楽しいだなんて、私はつくづくこの人が好きなんだなーと思う。どんなキャラにもここまで熱くなったことはない。
そもそもアニメキャラと彼を比べる事自体間違いだとは思うけどね。でも、私が骨抜きになってしまうなんて……。
なんだろう、別に好きな属性にあてはまるわけでも、タイプの男の子なわけでもないのに、ていうか私が三次元相手に。
「で、でもー……その手のものも慣れちゃえば案外抵抗無くなっちゃうんだよね。ホラー映画みたいなもの……って、違うね。
 私も昔は読む事だって恥ずかしかったけど、今じゃすっかり描いちゃう立場だし。朱に交われば赤くなるっていうか」
そういって私は、ペンを動かすジェスチャーをする。彼はそれを見てピンときたようだった。
「前から思ってたんだけど……田村さんって左利き?」
「ん? そうだよー。ていうか全体的にこの漫画のキャラは左利き多いよね」
「この漫画?」
「いや、忘れて。この左手はねー、何よりも大事な左手なんだよね。神の左手、とかいって。ペンだこだらけだけどね」
そういって私は左の手のひらを広げて彼に見せる。小さなペンだこが二つ三つと姿を見せる。
途端、自分の失策に気付いた。しまった、私は女の子なんだから、逆に手が綺麗なところを見せるべきじゃなかったのか!
何を簡単にペンだこなんか見せているのか……女であることを忘れてたか……私はさっと左手を引こうとした。
すると、彼の手が私のペンだこに触れていた。彼の行動に、私の身体は硬直する。彼の手が、私の手に触れて……!
「へえ、ぺんだこって結構固いんだね。これは、田村さんの勲章みたいなものだね」
「く、勲章……? た、ただの汚いぺんだこっスよ……? ていうか、手……」
「あっ、ご、ごめん……」
彼もまた私と同じように、さっと手を引いた。しばらく二人は沈黙していたけれど、やがて彼が口を開いた。
「神の左手に、簡単に触っちゃったね……」
「えっ、うん。でも……あなたなら……」
「うん?」
「な、何でもないっス……」
手に残る彼の感触を思い出すように、私は自分の手に触れた。細い指に不似合いな固い突起。
私のペンだこ、彼は褒めてくれた。どうみてもただの汚いペンだこなのに……。
「田村さんは、どうして僕と一緒に帰ってくれるの?」
「うーん……だって、楽しいし……今こうしてるのが、し」
「し?」
「幸せだから……?}
バカか私は。何を自然に恥ずかしい会話をしてるんだか。私は今ロマンティックな漫画でも描いているのか?
「田村さん」
「は、はい」
「今から真剣な話をするから、落ち着いて聞いてくれる?」
彼は足を止めて、私の肩を掴む。「う、うん……」と答えると、私はピンと背を伸ばした。彼の目が、私を見つめる。
「僕、田村さんのこと好きなんだ。よかったら、僕と付き合ってくれないかな――」
113みゆつか愛してる:2008/01/16(水) 17:27:08 ID:OlI+3+zr
今回は以上です。読んでくださった方ありがとうございます。
後編は近日投下します。誤字脱字ありましたら申し訳ありません。

ひよりSS書いてたらひより熱が上昇してたまりませんな……。
ひよりで百合するといったらやはり相手はこうでしょうか……。
114名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 18:11:20 ID:IwbWdFjA
>>113
おお、ひよりんが乙女してる〜GJ
なんか新鮮な感じで良いです
後編を楽しみに待ってます
はたして、ひよりんに春は来るのか来ないのか?

>>108
>酢ケージュール
って、バルサミコ酢〜
>>112
>「幸せだから……?}
カッコが、あれ?
115名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 18:14:13 ID:1h4aydEz
>>113
GJ!!
乙女成分をたっぷり補給しました、これで後編まで戦えます!
ひよりんにはゆたかでもいいんじゃないかと思います。ダメですか?
11631-207:2008/01/16(水) 18:24:07 ID:JQBmiFU/
>>113
GJ!!

さて、自分も今から1作品投下しようと思います。

・チアのメンバーでの話
・ひより視点
・特定のカプなし
・エロなし
・そのほか、特に注意することはないと思います
 
117練習後のチアメンバーたち 1:2008/01/16(水) 18:24:56 ID:JQBmiFU/
 
 チアの練習の後、先輩たちとおしゃべりをしているとき。
「そういえば、このメンバーって昔から仲が良くて姉妹みたい、っていう組合わせが多いよね」
 そう言ったのは、小早川さんだ。


 〜練習後のチアメンバーたち〜


「姉妹みたい?」
 小早川さんの言葉に、私はキョトンとする。
「うん。だって、かがみ先輩とつかさ先輩は本当の姉妹だし、私は陵桜に入学してからはこなたお姉ちゃんと
 ずっと一緒にいるから、本当のお姉ちゃんみたいだって思っているんだもん。
 それに、みなみちゃんもこの前、高良先輩とは昔から仲が良かったって言ってたよね」
 そういえば岩崎さん、高良先輩のことは名前で呼んでるよね。
「うん。みゆきさんとは向かい同士で、昔から一緒に遊んでもらってたから。
 それに、みゆきさんとは姉妹みたいね、ってお母さんによく言われていた」
「そういえば岩崎さん、高良先輩のことは名前で呼んでるものね。
 それじゃあさ、高良先輩のことを『みゆきお姉ちゃん』って呼んだりすることもあるの?」
「『お姉ちゃん』って呼んだことはないけど……でも、小さい頃はいつも一緒に遊んでいたから、
  姉妹みたいって」
 まあ、岩崎さんが『お姉ちゃん』と言うと、少し違和感があるかもしれない。
 どちらかというと、『みゆきお姉さん』のほうが合っていると思う。
 でも、岩崎さんが『お姉ちゃ〜ん』とか言うのも、少し見てみたい気もする。

「じゃさ、今ここでみゆきさんのこと、『お姉ちゃん』って呼んでみてよ?」
 泉先輩がそう言うと、
「そうですね。小早川さんやつかささんが、泉さんやかがみさんのことを『お姉ちゃん』と呼ぶのを聞いていて、
 私もみなみさんに『お姉ちゃん』と呼ばれてみたいと思ったことがあるんですよ。一度、そう呼んでみてくれますか?」
 と、高良先輩が言った。先輩たち、少しからかってるんすかね。岩崎さんが、少し赤くなってるッスよ。

「えっと……みゆきお姉ちゃん?」
 赤くなりながらも、そう呼ぶ岩崎さん。
 その反応をみて、もっとからかってみたくなったんですかね。
 高良先輩が、
「お姉ちゃん、と呼ばれるのもいいものですね。みなみさん、今度からそう呼んでくれますか?」
 なんて言うから、岩崎さんがますます赤くなったッスよ。

「そ、それは少し、恥ずかしいような……」
 そう言った岩崎さんは、しばらく赤いままだった。
 
 
118練習後のチアメンバーたち 2:2008/01/16(水) 18:25:44 ID:JQBmiFU/
 
「昔から仲が良くて、姉妹みたい、かあ。それなら、私とあやのも小さい頃からすっと一緒だったんだぜ」
 そう言って話を始めたのは日下部先輩。
「へぇ〜。それじゃあ、先輩たちも昔からの仲なんですね」
 そう言う小早川さん。
「そうね。みさちゃんとは家も近かったし、学校もずっと一緒だったからね」
「それじゃあ、先輩たちも小早川さんの言った『姉妹みたい』ってことになるんっすかね」
 それに対し、
「でも、峰岸は日下部の姉というよりは、日下部の保護者っていう感じよね」
 と言うかがみ先輩。

「む〜。あ、でもあやのと兄貴は将来結ばれるんだろ?そうすればあやのと本当の姉妹になるんだぜ」
「ち、ちょっと、みさちゃん!!」
 日下部先輩の言葉に顔を真っ赤にする峰岸先輩。
 峰岸先輩、付き合ってる人がいたんですね。
 
「峰岸先輩、付き合ってる人がいるんですね。応援しますよ、先輩!」
「先輩、ファイトっす!」
「……がんばってください」
「センパイ、カオがマッカデスヨ?」
 そう言う私たち一年生組。
「よかったなー、あやの。一年生たちもみんな応援してくれてるぜ」
「もう、みんなってば!!」
 そう言う峰岸先輩。顔はさっきから真っ赤なままだ。
 先輩の顔もしばらくはこのままだった。
 
 
119練習後のチアメンバーたち 3:2008/01/16(水) 18:26:16 ID:JQBmiFU/
 
「でも、昔からいつも一緒っていう組が、10人中4組もいるんだね」
 そう言うつかさ先輩。
 小早川さんは最初、泉先輩と小早川さん、かがみ先輩とつかさ先輩、岩崎さんと高良先輩の
 3組を指して言っていたけど、峰岸先輩と日下部先輩もそういう組み合わせということになる。
「ジャア、ヒヨリがワタシのおネエさんにナレバ、チョウド5クミになりマスネ」
 と、唐突にパティが言ってきた。
「わ、私がお姉さん?」
「そうデスよ。ヒヨリおネエサマ♪」
 いやいや、何で私がお姉さんなのさ。
 スタイルとかから考えると、私なんかより発育が良いパティの方がお姉さんでしょ。
 っていうか、なんで『お姉さま』?

「そういえば、ゆたかちゃんの言ったような組み合わせだと、お姉ちゃんっていう方はみんな髪が長いよね」
 そういうつかさ先輩。
 そういえばそうスね。泉先輩にかがみ先輩、高良先輩、そして峰岸先輩。
 みんな髪が長いという共通点があるッスね。
 …っていうかつかさ先輩、何でこういうタイミングでそんなどうでもいいことに気付くッスか。
「Oh、タシカにそうデスネ。ソレジャアやっぱりヒヨリがおネエサマデスネ」
 そう言うと、パティが私に抱きついてきた。

「な、何してるッスか、パティ!」
「おネエサマに、アマエてるだけデスヨ。ダイスキデスヨ、おネエサマ♪」
 目を輝かせるパティ。
「お、落ち着くッスよ!」
「イイジャないデスカ。キョウはズットおネエサマにアマエているのデスカラ♪」
 私が解放されるのは、しばらくたったあとになるのだった。





 もうそろそろ帰る時間になり、先輩たちと話をしながら学校を出る。

「みなみちゃんが『お姉ちゃん』って言ったの、すごく可愛かったヨ?」
「そうですね。私もそう思いますよ」
「いや、あれは……」
「みんなの前であんなこと言わないでよ、みさちゃん!」
「あのときのあやの、顔真っ赤だったもんなー」
「いいじゃないですか、峰岸先輩。応援してますよ!」
「あのトキのヒヨリ、トテモカワイかったデスヨ。またアマエてもイイデスカ、ヒヨリ?」
「もう勘弁してよ、パティ。それよりもつかさ先輩、あのタイミングであんなこと言わないでくださいよ」
「ほぇ?なんのこと?」
「まったく、つかさはいつもこうなんだから」

 そんな会話を楽しむチアのメンバーたち。チアのメンバーに参加して、本当に良かったと思う。
 こうしてみんなで何かをするのって、すごく楽しい。
 先輩たちとも親しくなれたし、こうして会話を楽しむこともできる。
 本番まであと少し。がんばりましょうね、みんな!
 
 〜Fin〜
 
120練習後のチアメンバーたち  おまけ:2008/01/16(水) 18:26:57 ID:JQBmiFU/
 
 〜おまけ〜

 このお話を読んでくれた方への、おまけのコーナー。
 今回のおまけは、心理テストともおみくじともつかないようなもの。
 それでは、さっそく開始!



 あなたは今、このお話の世界にいます。
 チアのメンバーたちが会話を楽しんでいる、そんな世界に。
 あなたは、それを眺めています。
 すると、向こうから神様がやってきました。いたずら好きな神様が。
 その神様は、何かたくさんのキラキラしたものを持っています。
 透き通るようなガラスでできた小瓶です。
 そして、その小瓶にはひとつひとつ顔が描かれています。
 こなたの顔。つかさの顔―――このお話に出てくる、みんなの顔が描かれています。
 その神様は、それをくれると言います。
 しかし、一度に二つ以上は危険だから、ひとつだけだと言います。
 神様がくれる、不思議な小瓶。
 あなたが選ぶのは、どの小瓶ですか?
 
 
 
 結果発表!


 こなたの小瓶を選んだ方。
  その中身をばら撒いてみましょう。そうすれば、こなたがみんなに狙われるという
  壊れネタの元祖が見られることでしょう。
  また、その際に年齢退行や増殖といった現象も見られるかもしれません。

 ひよりの小瓶を選んだ方。
  ここは、チアの練習が終わったあとのステージ。
  当然、ここには隠れるためのダンボールなどありません。
  その小瓶の中身をばら撒けば、ひよりの苦難を見ることができるでしょう。

 かがみの小瓶、つかさの小瓶を選んだ方。
  その中身を今ここでばら撒くか、それとも柊家内にばら撒くか。
  それが悩みどころです。よく考えましょう。
  あるいは、元旦に巫女服で働く際にばら撒くのも良いかもしれません。

 みゆきの小瓶、みさおの小瓶、パティの小瓶を選んだ方。
  いつかの小ネタであっただろうか、どこかで見た覚えのある彼女たちの壊れネタ。
  しかし、今はあの時よりも多くのの友人に囲まれています。
  その小瓶の中身をばら撒けば、あの時以上の壊れネタが見られるでしょう。

 あやのの小瓶、ゆたかの小瓶、みなみの小瓶を選んだ方。
  その小瓶の中身をばら撒いてみましょう。
  今までにはない壊れネタを見ることになるでしょう。
  その小瓶に描かれた人物に対し、みんなはどのように壊れるのでしょうか。



 以上で終了です。
 いたずら好きな神様がくれる、不思議な小瓶。
 あなたが選んだのは、どの小瓶でしたか?


 〜Fin〜
 
12231-207:2008/01/16(水) 18:28:46 ID:JQBmiFU/
以上です。
一年生と三年生の両方を出そうとしてできた作品です。
前回同様、おまけは壊れネタ関係ということで。
フェチウイルス詰め合わせは、たいへん危険な代物です。
用法、用量を読み正しくご使用ください。
特に、一度に二つ以上の使用は絶対にしないでください。
123名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 19:16:21 ID:y29nbhZH
予告
「泉こなたを公衆便所にさせる方法」
つかさ、みゆきの陰謀がこなたを追いつめていく。
ついにはクラスの男子を巻き込んで、こなたを公衆便所化にする。
近日投下予定
124名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 19:25:25 ID:tHp5p1dC
>>113
何と言うドッキドキひより
あまりの甘酸っぱい展開のため俺もひよりのペンだこを触りたくなってしまった。
このSSは間違いなく・・・GJ!
後編期待します、ええもう間違いなく(゚∀゚)
でも願わくば・・・彼がめでたく○○君に続く形となる、そんな展開、
要するにハッピーエンドであればいーなー、なんてね(´∀`)
「た、たむらけ?」

>>122
極めてらきすたらしい作品GJ!
確かに御指摘通り、姉の立場=長髪ですな
ひよりはまあさておくとしてw
>一度に2つ以上は絶対に
例外があるぞ



こな×かがフェチ(゚∀゚)9m

>>103
ようもあんたは!俺の欲望を具現化してくれたな!
責任とりやがれ!ヽ(`Д´)ノグッジョダウワアアアアン
1257-896:2008/01/16(水) 21:16:53 ID:A2QYfaYG
>>113
乙女なひよりんがかわいいw
気持ちの浮き沈みがうまく書かれていて面白かったです。
続きが気になります!

>>122
ほのぼのらきすた世界が原作っぽくていいですw
久しぶりに和ませてもらいました。
こういうタイプの作品をひより視点でかくというのも珍しいですね。
取り敢えず自分はこなたの小瓶をもらいますね。

>>102 >>99
せっかくなのでリメイクして、更にせっかくなので>>99さんの設定をお借りして
乙女みのるんにしました。

ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro03996.jpg
126名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 21:27:50 ID:WIvjolP+
>>125
乙女みのるwww
別人っぽいなw だがそれがいい
127名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 21:28:35 ID:gb+SBVAy
ぬおお乙女みのるん見たいのに携帯からだとでかくてみれねぇぇぇグスン

にしても乙女チックブームだなw
火付け役は誰だろ?
128久留里:2008/01/16(水) 21:31:40 ID:6yUCqo23
>>113
ひよりんの可愛さに何故か嫉妬した!!
拙作を書く事に専念するつもりが、全部読んでしまったではないか!!
何てことをしてくれる?
つまりGJ!!

>>122
そしてらき☆すたらしいほんぼのとした作品にGJ!!
こっちも最後まで読んでしまったんだぜ。



で、誤変換を何カ所か発見。
 変える→帰る
 飽きれる→呆れる
 書き止める→書き留める

保管庫に上がったら、修正することをオススメします。
自分で書いた奴は気付かないのに、人の作品のは良く気が付くものなんですねぇ。

マルコ「おめー(=久留里)の場合、そもそも日本語が怪しいけどな!! ヒッヒッ」
129名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 21:37:46 ID:JRJblmMD
>>125
やぁぁったあぁああ!!!


すいません、ありがとうございます!
130新フェチシリーズ『ペンだこ☆フェチ』:2008/01/16(水) 21:39:42 ID:tHp5p1dC
「さわさわ(=ω=.)σ」
「手触り、よくないこともないわね・・・」
「たこうにょーん」
「さわさわだばだば」
「さわさわだぜぇ」
「さわさわクスクス」
「これ、結構きもちーねみなみちゃん」
「・・・同感・・・」
「Oh、ウットリシチャイマース」

「みなさん・・・私の手に指でさわさわって・・・これ何の拷問ッスか・・・;;」




なんか色々スマナンダorz
131名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 21:51:32 ID:7Ka3usfZ
>>125
うはwwwwwwww
キタ!!!!!!!

かわえぇのぉ(..´∀`)
もう女みのるんはこの子で決定だな

ところで氏の女体化みのるのSSはどうなったのですかぃ?
132名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:14:06 ID:kUOYfEv0
>>125
乙女みのる、不覚にも萌えましたwww

さて、亀速な俺がようやくSS完成させました。
投下しておkでしょうか?
他に誰もいらっしゃらないようでしたら数分後投下したいと思います。
133名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:16:07 ID:ODXfJBE3
投下キタァ!
YOUやっちゃいなYO!
134名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:21:37 ID:kUOYfEv0
>>133
ありがとうございます。
鬱作品投下にビビってる俺ですorz

それでは…改めまして、こんばんわ。
投下される方いないみたいなんで、投下します。

遥か昔(2ヵ月前くらい?)に投下した『黄昏な貴女』の鬱Ver.最終話です。
携帯からなので保管所に誘導できないことをお許し下さい。

タイトル『月夜と私』
かが×こな←つかさ
非エロ
5スレお借りします。

*注意*
死人・流血表現がありますので苦手な方はスルーでお願いします。
あと、つかさがヤンデレなのは許せん!!!と言う方もスルー推奨です。

それでは行きます。
135月夜と私:2008/01/16(水) 22:23:10 ID:kUOYfEv0
どうしようもなく好きだった。
それこそ理由なんていらないくらい。
たとえ、その人が他の人を…
私のお姉ちゃんを、好きだとしても。



―――月夜と私―――



さっきまであんなに輝きを放っていた夕日は、すっかりと西の空へと沈んでゆき…
代わりに訪れたのは、真っ暗な暗闇と静寂だけ。

「…っ」
私に責めるような目線を向けているお姉ちゃんが何か言おうとして口を開いたけど、まだ事態を把握しきれてないのか、開かれた口からは言葉は発せられなかった。
ギュッとこなちゃんを抱き締めるお姉ちゃんの手を見つめながら、今度は私が口を開いた。

「お姉ちゃん、私ね……
こなちゃんが好きなの。」

ニコッと作ったお菓子を食べて貰う時みたく、笑顔でお姉ちゃんに話し掛ける。
お姉ちゃんは一瞬唖然とした表情で私を見上げていたけど、私の言葉の意味を理解したらしく目を見開いて「えっ…」と呟いた。

…いつものお姉ちゃんらしくないなぁ。

「つ、かさ…?」
何かを懇願するように私を見上げるお姉ちゃん。

ダメだよ、お姉ちゃん。
そんな顔したって…
聞こえなかったふりしたって…

「こなちゃんが、好きなの。」
もう一度同じ言葉をお姉ちゃんに向けると、お姉ちゃんの瞳が揺れるのが見えた。
その私と同じ色の瞳をじっと見つめながら、私はゆっくりと双子の片割れの方へと近づく。

一歩、一歩…
足の裏にいつも踏みしめているアスファルトとは違う、ひんやりとした感覚を感じる。
この感覚は確か…そうだ。
お姉ちゃんがこなちゃんのことを嬉しそうに話しているときに似ている。
背中がムズムズして、胸の奥がザワザワして…
衝動的に動いてしまう体を、理性という名の感情で抑え込んでいたときの…


はげしい、嫉妬心。


136月夜と私:2008/01/16(水) 22:23:53 ID:kUOYfEv0
『それでね、こなたのやつがね…』
『来週の土曜、こなたの家に泊まりに行くことに…』
『今度つかさも一緒に行こ』

幸せそうにこなちゃんのことを話すお姉ちゃん。

『かがみがさー…』
『これかがみに似合うかな?…』
『つかさは私の最高の友達だよ〜』

幸せそうにお姉ちゃんに笑顔を向けるこなちゃん。


じゃあ………私は?

私は幸せ、なのかな。
目の前で地面に崩れ混んでいるこなちゃんを一瞥する。
あれ、なんでこなちゃん…そんなとこで座ってるの?

あぁ、そうだ。
思い出した。
私、我慢できなくて…
お姉ちゃんを見て嬉しそうに笑うこなちゃんを見たくなくて、お姉ちゃんの名前を呼ぶその口を…

先ほどまで触れていた唇の感触を思い出して、自然と笑みが零れる。
私……こなちゃんにキス、したんだ。
大好きなこなちゃんとのキス。
暖かかったなぁ、こなちゃんの唇。

「だ、から…って…」
虫の音に書き消されるくらい小さい呟きが聞こえて、こなちゃんのすぐ傍に座り込んでいるお姉ちゃんに目を向ける。

「こんな、こと…」
目尻に涙を浮かべてこなちゃんを抱きかかえるように背中に回したお姉ちゃんの手が小刻みに震えていた。

「こなたに…謝りなさいっ…!」
「なんで?」
キリッと睨むような視線を向けるお姉ちゃんを私は一蹴する。
だってそうでしょ?
私はずっと前からこなちゃんが好きだった。
いや、現在進行形で好きだと言える。
お姉ちゃんがこなちゃんと付き合う前から…
お姉ちゃんがこなちゃんを好きになる前から…
こなちゃんがお姉ちゃんに告白する前から…
こなちゃんがお姉ちゃんを好きになる前から…

ずっとずっとずっと、好き。
なのに………
私の思いを踏みにじったのは、そう…



お姉ちゃんだよ?



137月夜と私:2008/01/16(水) 22:24:43 ID:kUOYfEv0
「…も、い……よ…」
私にキスされてからずっと地面に伏していたこなちゃんから、この暗闇から今にも消えてしまいそうな小さな呟きが発せられた。

「こなた?」
「………」
心配そうに顔を覗きこむお姉ちゃんと、ただただその光景を見下ろしている私を一見して、おずおずとこなちゃんが口を開いた。

「私は…ずっと、つかさを苦しめてたん、だね」
「こなたっ…!」

うるさい。

「…なのに、私は…自分の事ばっかで…」
「違うっ…こなたっ!…アンタは何も悪くない」

うるさい、うるさい、うるさい。

「……ごめんね、つかさ…」
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。

私の欲しいものは、そんなこと言わない。
私の欲しいものは、そんな表情で私を見たりしない。
私の欲しいものは……

こんなこなちゃんじゃない。

「………」

「……つかさ?」

私が何も言わないのを不思議に思ったのか、こなちゃん…違う、偽物のこなちゃんが私の名前を呼んだ。

こなちゃん、なんで偽物になっちゃったの?
私の知ってるこなちゃんはいっつも笑っていて猫口でチョココロネを頬張って目を細めて表情がコロコロ漫画みたいに変わって…

「こなた、もういいわよ…」
呆れたような蔑むような瞳で私を見つめるのは…

そっか…
やっぱりお姉ちゃんのせいなんだね。

私からこなちゃんを奪ったのも…
こなちゃんを偽物に変えたのも…


全部、全部、全部…
お姉ちゃんのせい。


138月夜と私:2008/01/16(水) 22:25:28 ID:kUOYfEv0
「…お姉ちゃん。
本物のこなちゃんをどこに隠しちゃったの?」

ゆっくりとデニムのポケットに手を入れて、そっとソレを確認する。

「はぁ?ちょっとアンタいい加減に…」

冷たいソレの感覚を指先に感じて、ゆっくりとソレを引き抜く。
そして…



「っ…!かがみっ…!!!」
「なっ…つか」
ミシッと私の手に感じたのは、肉を切り裂くような感触と…生暖かい液体。
グッとソレに力を入れると、ソレが刺さってる所から噴水みたいに暖かい液体が吹き出る。

本物のこなちゃんを隠しちゃったお姉ちゃんなんて、死んじゃえ。
私からこなちゃんを奪って、彼女になっちゃうお姉ちゃんなんて、死んじゃえ。

「ゴホッ…っあぅ…」
「かがみっ!かがみっ…!!」
お姉ちゃんに刺さっていたナイフを思いっきり引き抜くと、口からいっぱい赤黒い血を吐いたお姉ちゃんがグシャッと地面に崩れ落ちた。

「つ、かっ…なん、で…」

なんで?
お姉ちゃんが悪いんだよ?
私がずっとずっと大切にしてたこなちゃんを独り占めして、こなちゃんと幸せに笑い合うなんて…

私は絶対に許さない。

「かが…かがみっ…、かがみぃぃ…」
ヒュウヒュウと途切れ途切れの呼吸しか出来なくなったお姉ちゃんに抱き付いて、必死にお姉ちゃんの名前を呼ぶこなちゃん。

「なん、で…なんで…」
ドクドクと流れる血が、だんだん光を失っている瞳も、横たえる姉の姿も、私には何も興味がなかった。
こなちゃんが抱き締めていたお姉ちゃんが苦痛に顔を歪めながら、そっとこなちゃんの耳に呟いたみたいだけど…そんな事も私には関係ない。

「ひっく…か……がみ?かがみっ…!かがみぃっ!!」
ガクッと首が座っていない赤ん坊みたいにお姉ちゃんの首が支えていたこなちゃんの腕から垂れ下がった。

139月夜と私:2008/01/16(水) 22:27:42 ID:kUOYfEv0
「………」
泣きじゃくってお姉ちゃんの名前を呼び続けるこなちゃんをどこか他人事のように見つめながら、私はゆっくりとこなちゃんの方に近付いた。

「ひっ…!!」
それに気付いたこなちゃんがギュッとお姉ちゃんの肩を握りしめて、私から遠ざけようと後づさりをする。

大丈夫だよ、こなちゃん。
もうお姉ちゃんはいない。
私達の邪魔する人は、もういないんだよ?

「……こなちゃん」
自分の語尾が震えていることに少し驚いたけど、ニコッと微笑みかけて愛しいこなちゃんに手を差し延べる。

「んくっ……い、いや…」
「なんで?こなちゃん…ほら…」
「やっ…やだぁ…いやぁぁぁ…」
ブンブンと首を振るこなちゃん。
どうしたのかな?こなちゃん。
あ、そっか…
私の手についたお姉ちゃんの血が嫌なんだね。
大丈夫、今…綺麗にするから。

グッと手に持っていたナイフを握り直し、それを自分の左手に押し付けた。

「……っ!!」
ドクドクと流れる私の血液。
それを見てこなちゃんは小さな悲鳴をあげていた。
大丈夫だよ、こなちゃん…
なんかね、自然と痛みは感じないの。だから、ほら。
恐怖と驚愕に支配されてるこなちゃんに見せつけるように、何度も何度も同じようにナイフを左手に刺す。

ほら、こなちゃん…
お姉ちゃんの血は、私の血で隠したよ。
これで、もう怖くないよね?
グチャグチャに刺したナイフを数秒前まで左手だった肉の塊から引き抜いて、その手とは逆の手をこなちゃんに伸ばす。

「こなちゃん…」
「も、もぅ…ひっく…やめっ、つか、さ…」
「大好きだよ、こなちゃん」
私がちゃんと本物のこなちゃんに戻してあげる。
私だけが本物のこなちゃんを見つけることができる。
だから、ね?
安心して、こなちゃん。

涙なのか鼻水なのか分からない程、顔を歪めるこなちゃんをそっと抱き締める。

「こなちゃん…」
何度も願ってきたように、私の腕の中にいる最愛の女の子。
こなちゃん、こなちゃん、こなちゃん…
カタカタと小刻みに揺れているのは、きっとこなちゃんも私と一緒で嬉しいんだよね。
大丈夫、私もすっごく嬉しいよ。
ほら、こんなに…
こんなに目の前が真っ赤になるくらい…


ア イ シ テ ル 。


140月夜と私:2008/01/16(水) 22:30:42 ID:kUOYfEv0
「やっ…、いやぁっ…!!!」
ドンッと抱き締めていたこなちゃんに肩を押され、その反動で私は地面に倒された。

「もぉ…もぅ、や…つかさ………お願いだから、もぉ…」
ヒックヒックと泣きながら話すこなちゃん。
あぁ、そうか…
このこなちゃんは偽物だったんだ…。
だから私を傷付ける。
だから私を狂わせる。

大丈夫だよ、こなちゃん。
今、私が…

助けにいくから…。

倒れていた体を起こし、少し離れたところに転がっていた血まみれのナイフを手にとる。

お姉ちゃんの血と、私の血。
足りないのは…
こなちゃんの血、だよ?

あぁ、そんなに怯えないで。
大丈夫、この偽物のこなちゃんの中に…
本物のこなちゃんがいるんだよね?
分かってるよ、私には分かるもん…
だから、ちょっと壊しちゃうけど…


我 慢 し テ ね 。





どうしようもなく好きだった。
理由なんて、きっかけなんていらない。
私だけに向ける笑顔と、
私だけを見る貴方が…
とても好きだったから。

だから、ね?
これでずっとずっと一緒にいれる。
本物のこなちゃんはまだ見つからないけど…
こなちゃんの体はちゃんと私が守るから、誰にも触れさせないよ?


だって、私達は……


月夜に映えるのは真紅の証。
誰にも邪魔されない、月下の光に照らされながら…
私はただひたすらその月を眺めていた。
14118-490:2008/01/16(水) 22:34:02 ID:kUOYfEv0
以上です。
……ほんとすいませんっ!!!
最近ヤンデレに萌え始めて、つい書いちまいましたorz

ハッピーエンドVer.見たい方は保管所の『月夜の貴女』(かがみend)でお願いします。←何気に宣伝www

それでは、読んでくださった皆さん。ありがとうございました。
142名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:39:53 ID:kUOYfEv0
すんません、訂正です。
>>134
『黄昏な貴女』→『黄昏の君』

>>141
『月夜の貴女』→『月夜の君』
でした。
自分の作品名間違えてどうすんだよ、俺orz
143名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:41:41 ID:ODXfJBE3
リアルタイムGJ!
闇つかさ良いねぇ。
そういえば闇こなたって見ないよね?
144名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:42:23 ID:ODXfJBE3
>>142
どどんまい
145名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:45:40 ID:tHp5p1dC
>>143

このスレでは惚れられ対象としての位置づけが強く、
しかもこのスレでは受けキャラとしての地位を確立しているため、
闇&黒設定にすると、とたんに扱いづらくなる、というのが、
このスレ民での見解。

ゆえに、このスレでの黒こなたはあまりみない。
146145:2008/01/16(水) 22:48:19 ID:tHp5p1dC
追加。
しかも、基本的に飄々としているキャラクターは
黒くするとヤンデレとは違った方向に向かってしまうのも
原因の一つだろう。

それこそ、物語を1つ、全く新しく作れるようでないと。
黒こなたは難しい。
147名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:50:09 ID:qECQ1R03
なんというヤンデレ
某S県月宮を思い出させてもらったぜ
148143:2008/01/16(水) 22:55:05 ID:ODXfJBE3
>>146
マジレス dクス

つまり病もうが全員こな☆フェチ ←結論
149名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 22:57:43 ID:OSNJDhBu
>>128
( ´ω`)人(´ω` )ナカーマ
自分の書いたのは気付きにくいですよね
でも、ほかの人の作品はなぜだかよく気付く

>>141
ここに来てからヤンデレもありと思った俺
つかさの壊れ方がなんかすっげーGJ

ましまろ氏、wikiの更新おつかれっした
150名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 23:01:46 ID:91hZdAr2
>>147
>某S県月宮
ちょwww
合○所スレ関連思い出すからやめれwwww
151名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 23:03:57 ID:mG1U9Gyr
みゆつか愛してる氏の「こなたの胸板に身体あずけたい」が気になるけどとりあえず


み ん な G J ! !
152150:2008/01/16(水) 23:07:51 ID:91hZdAr2
>>141
あれだけではなんなのでw

鬱ものが苦手なのに最後まで読みきることができたよ。
ここまで凄いと感覚が麻痺しちゃうのかな。
らき☆すたとはもっともかけ離れた話なのに、
それでもらき☆すたらしさを感じた。
キャラクター描写がしっかりしているおかげなんだろうね。

長々書いたけど、この一言に尽きると思う。
GJ!
153名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 23:26:32 ID:QuMqHYTe
>>146
アー確かにそれはあるなぁ。
俺の場合、こなたでヤンデレ書こうとすると
なんでかヤサグレになる理由はそれだったのか…。
154名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 23:45:28 ID:tHp5p1dC
しかも、あきら様とはちがったヤサグレなw
これは難しいぞw
155名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 23:57:28 ID:X4VuYxQT
むしろ全員ヤンデレのこな☆フェチの方がよほど想像しやすいような気がする
156名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 23:59:59 ID:tHp5p1dC
こなたの鳴く夜に
157名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:17:14 ID:YwMhzQAC
>>140
乗り遅れてGJ!
読み手しかできないが見守ってる俺が泣いた
158名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:36:31 ID:8n+1q9z4
「こなちゃんどいて!そいつ殺せない」
159名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:39:32 ID:OoLg6l/K
>>158
もっと詳しく!!
160名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:39:59 ID:d+0hquNf
「なさすんだこん!でてえあんたなんがさ殺される理由なんがねわよ!あったま来た!」

ツンデレ☆ラリアットォ♪

☆バルサミコッ!☆ ドサ・・・




かがみん怖い…(((゚Д゚;))))
161名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:44:36 ID:OoLg6l/K
>>160
ちょwww
> ツンデレ☆ラリアットォ♪

> ☆バルサミコッ!☆ ドサ・・・

俺のおいしい牛乳を返せw
162名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:54:36 ID:o1FPXyeu
お姉ちゃんに殺される!!助けてこなちゃん!!
163名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 01:09:24 ID:d+0hquNf
こなた「助けて欲しいのは私だって・゚・(ノД`)・゚・。 」

かがみ「ほたぁ〜〜るのひか〜〜り〜〜」
164名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 01:16:36 ID:KhNcK+eD
黒こなた…Elopeのこなたが近いかな?
まぁ、あの作品の場合黒キャラ保有率高で濃厚な鬱だから
あまり目立ってないのかもしれんが
165名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 01:32:02 ID:1s0d5xFp
欝こなたを徹底的に犯すのはどうですか?
166名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 01:34:08 ID:d+0hquNf
>>164
そう、他の黒に隠れちゃって
目立たなくなるってのが最大の問題。
通常の黒でこなたを描いたんじゃ
「これ、他のキャラでもいんでね?」ってなっちゃう。

こなたで黒やるからには、なにかこう、
一味違うことさせないと。

とりあえず有利になりそうなフラグメントは・・・
・勉強はからきしだが、それ以外で知性や教養を発揮。
・意外に心理戦も心得、営業顔切り替え、泣き落とし等が出来る。
・何があってもすぐポジテヴシンキン
・ヲタ性は完全に男ディープヲタ
・足が速く瞬発力抜群
・拳法(合気道)の心得あり


う〜む・・・黒に転換できる要素少な・・・
167久留里:2008/01/17(木) 02:30:50 ID:Dyw7BGI4
さて、空気スキャナが故障してKY化した私が話の流れをブッた斬って投下します。

「カケラ」
・こなた視点/みさお兄視点
・非エロ
・7レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/鬱展開(死者)あり
・オリジナルキャラが登場します。
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。
168カケラ 9-(1/5):2008/01/17(木) 02:31:53 ID:Dyw7BGI4
9.

ひっく………ぐすっ………ひっく……………

洗面所で何度も何度も顔を洗う。備え付けの石鹸は一回り小さくなってしまった。
文字通りの「冷水」で顔を洗って、ようやく私は落ち着いた。
側にあった冷水器で水を飲む。

「いつまでも泣いてたらお母さんに笑われる。頑張って現代に帰らなきゃ」
タオルで顔を拭きながら、自分にそう言い聞かせて客室へと戻る。

客室に入る。
私の席の隣に誰か座っている。
女の人だ。
歳は……………私より年下? 少なくとも同い年みたい。

「あ」
目が合った。

客室内の奥へ進むにつれ、一番奥から3番目の列に座っている『彼女』のディテールが段々と明確になっていく………。
(ま、まさか?!)
わずかな期待と戸惑いを同時に抱く。
段々段々胸がドキドキしてくる。
そして、遂に私の席の前へ着いてしまった。

私と同じくらいの背丈。
華奢でか細い体つき。
白く滑らかな肌。
同じ蒼のロングヘア。
エメラルドグリーンの瞳。

再び、目が合う。
私の座席は窓側で、彼女は通路側に座っている。
「すみません」
と声を掛けると、彼女は席を立って私を通してくれた。
私がショボい割にどっしりとした座席に腰を落ち着けると、隣の女性は私に予想外の言葉を放った。

「『泉、こなた』さん、ですか?」

私の名前を知っている?
彼女を改めて見る。

私と同じくらいの背丈。
華奢でか細い体つき。
白く滑らかな肌。
同じ蒼のロングヘア。
エメラルドグリーンの瞳。

(ま、まさか………)
「おかあ………さん?」
「分かってくれたのね? 嬉しいわ」
隣の女性は開いた口が塞がらない私の顔を見て、ふふっと頬笑んだ。

………
……………
…………………
169カケラ 9-(2/5):2008/01/17(木) 02:37:49 ID:Dyw7BGI4
私の中には『お母さん』の記憶は全くない。
お母さんに対する嫌な思い出があった訳ではない。
私の場合、物心が付いた頃から『お母さん』という存在を知らずに18年間育ってきた。
つまり、私のお母さんは、私が物心のつく前に亡くなっているということだ。
お母さんが亡くなったのは今から18年前。そう、私が生まれてすぐの事だった。

今はちっとも寂しくないけれど、時々、お母さんの事を考えることがある。

お母さんはどういう気持ちで私を生んだのだろうか?

お父さんの話によると、お母さんが身籠もったのはお母さんが余命宣告を受けた後の事だったらしい。
お母さんの病気は子供、つまり私には先天性の障害を持つといった病的な悪影響は非常に小さいとのことだったが、
代わりにお母さんが出産時に力尽きてしまう危険性が非常に高かった。
それでも「一人でもいいから子供を残したい」というお母さんの強い希望によって、私を産む事を決意したらしい。

成人した人間の場合、一般に3歳以前の『記憶』は一切無いと言う。
余命2年と宣告されたお母さんは私を産んだ3箇月後、予定よりも1年半早く天国に行った。
記憶が無いので、お母さんが死んだショックは全くなかった。
ただ、私が生まれて来なければ、お母さんはあと1年半生きられたんだなぁと思うと何だか胸が痛む。
「かなたはお前を産んで本当に良かったと言って最期を迎えた。産んでなかったもっと後悔していたかも、って言ってたぞ」
そう言ってくれたのはお父さんだった。
普段は優しくてちょっと変なお父さんだけど、時には厳しく叱られたし、特にしつけに関しては親戚よりも厳しかった。
一時期はいじめを理由に荒れていた時もあったけど、それでもお父さんはお母さんの分まで愛してくれた。
だから、『母親の愛情』を知らなくても、それなりに幸せだった。

でも、一度だけでいいから、お母さんに会ってみたかった。

訂正。
『母親の愛情』を全く知らない訳ではない。
お母さんの一番の愛情は、私を生んでくれたことだ。
お母さんが私を産まなかったら、私はこの世に存在していなかった。

…………………
……………
………


「──た、こなた」
「…………??」
つん。
誰かが私の左頬を突く。
「ふぉわ!!」
「大丈夫? ずっとぼうっとしていたけど」

意識が戻った。
どうやら私は『お母さん』の事を想うあまり、魂がふらふらと抜けてしまった。
「い、いやぁ………あの………その…………、ちょ、ちょっと、昔のことを思い出しちゃって………」

私の隣の席に座っているのは『本物の』お母さんらしい。
いや、この当時はまだ結婚していないから、お母さんではない。
ややこしいのでここでは『かなたさん』と呼ぶことにしよう。
先ほど自己紹介をしたけれど、今私の隣に居る女性(ひと)は、お母さんの旧姓と一致する。
能登半島の矢波という集落の出身であること、私の父・そうじろうを知っていることから、
隣にいる『かなたさん』イコール『私のお母さん』で正しいだろう。

あまりにも信じがたい『偶然』に、私はただただ驚いていた。
170カケラ 9-(3/5):2008/01/17(木) 02:41:27 ID:Dyw7BGI4
「この世(ヨ)にはね、『偶然(グウゼン)』というものは存在(ソンザイ)しないの。有(ア)るのは全て『必然(ヒツゼン)』」
どっかの酒好き魔術師と同じ事を言うかなたさん。
言葉の一つ一つに片仮名のヨミが振ってある……様な気がする。
「じゃあ、私が『貴方』とも出会うのも………」
「そう、私と『こなた』がここで逢うのも必然。理由は何であれ、私とこなたはここで逢う必要があったの。
 今まで起きた事(コト)、今起きている事、これから起こること、それぞれには全て意味(イミ)があるのよ」

お母さんが今生きているとしたら40代後半。計算すると、この時代のかなたさんは私と同じ18歳となる。
意外と年増に思えるのは、多分、ゆきおばさんが16歳でゆい姉さんを産んでいるせいだろう。
あの時は親戚じゅうで大騒ぎになったらしい。

「どうして、私に逢う事が分かったの?」
初対面の人には敬語を使いなさい、とお父さんに躾けられたけど、ここでは敢えて普通に話す。
同い年だし。
「それはね、私が数年後の将来、貴方の母親になるからよ」
「はぁ…………」
長門有希よろしく電波話を続けるかなたさんに、開いた口が塞ぐ気配すらない。喉が渇いてきた。
「夕べね、夢を見たの。
 神さまがね、私に言ったの。
 『貴方は明日、未来から来た自分の子供に会うでしょう』って。
 最初は吃驚しちゃった。
 だって、結婚どころか、好きな人は………」
少しの間。かなたさんは言葉を選んで、続ける。
「……まぁ居るけど、まだ男の人と付き合うことすら考えた事の無い私に、
 将来生まれる子供と逢う事になるんですもの。
 本当に逢って驚いちゃった」

これは夢かまぼろしか?
私は昭和50年代に飛ばされた『夢』を見ているのか?

いや、今起こっている事は、全て『事実』だ。



それから私は、自分の事を色々と話した。
と言っても、『現代』でしか通じない話題……特に自分の趣味の事に関してはなるべく言わない様にした。
前者は、まぁ、『場の空気』を読んだ結果で、後者は、ちょっと恥ずかしかったから。
でも……、
「私も漫画、大好きよ? テレビアニメも、あまり観させて貰えないけれど、結構好き。
 そうね、今は『キャプテンハーロック』とか、『銀河鉄道999』とか、『ガッチャマンII』とか、
 男の子が好きそうなモノが多いかも。一番好きなのは『未来少年コナン』かな?
 後は『ヤッターマン』とか『ペリーヌ物語』、『ルパン三世』も観るわ」
懐かしいタイトルが出てくる出てくる。てか、コナンは『バーロー』方じゃないのか。
『999』や『ヤマト』は今でも人気があるし、主題歌もよく耳にする。
ルパン三世は今年も金曜ロードショーでやってたしね。

何よりも驚いたのは、お母さんが大のアニメ好きだった事だ。
これはお父さんからも聴いていない。というか、お父さんの方がハマっているので気付かなんだ。
結局、私とかなたさんの『超濃厚なアニメ&漫画トーク』は終点の新潟駅まで続いた。

窓の向こうは無彩色の雪景色。その先に広がるのは鉛色の日本海。
見てるだけで背筋が凍る程寒い雪の日だったけれども、私達の心はぽかぽかと暖かかった。
171カケラ 9-(4/5):2008/01/17(木) 02:43:25 ID:Dyw7BGI4
特急「いなほ」号は始終大雪だったにも拘わらず、5分遅れただけで新潟駅に到着した。
東武だとちょっと積もっただけで全線ストップするのとは対照的だ。
やっぱり、雪国を走る列車は雪に強い。当たり前田のクラッカーだけど、関心した。感動した。

『新潟ー新潟ー、何方様もお忘れ物御座いません様お気を付け下さい。
 長岡より直江津、糸魚川、富山方面、金沢行き特急「北越」号は─────』

「よっと」
ヒータで熱せられたステップに火傷しない様に注意しながら、新潟駅の低いプラットホームに降りる。

『───番のりばへお越し下さい。
 長岡より越後湯沢、水上、高崎、大宮方面、上野行きエル特急「とき」号は………』

新幹線もまだ開業していない新潟駅。
ここもまた、深い雪に閉ざされていた。
ホームは地方都市のターミナル駅らしい賑わいを見せる。
今日は平日だけど、多くの人が大きな荷物を持って歩き回っていた。
雪の灯りが眩しすぎて、屋根の下のホームはとても暗く感じる。
目の前では「ブーン」という電車の送風機の音、向こうのホームでは「ガラガラガラ」というディーゼルエンジンの音が静かに響く。
先ほど、隣のホームに居た赤と黄色の電車が発車する。
昔野田線で走っていた、やたらと喧しい電車と同じ音がした。
懐かしいような懐かしくないような……。

階段を上って、私達は一旦改札を出る。
「途中下車します」と言うと降りられる事を知ったのは、以前みゆきさんからうんちくを聞いたから。
切符そのものも有効期間が長く、途中で泊まるために改札を出る人も多いらしい。

それはさておき、私達はお腹が空いた。
改札の外で一軒の蕎麦屋さんを見付けたので、そこで腹ごしらえをすることに2人で決めた。

かなたさんは金沢へ向かうとのことで、次に乗る列車も同じ「北越」号とのこと。
私も3駅手前の富山まで行くので、お昼は一緒に食べることに決めたからだ。
駅で蕎麦屋さんと言えば大抵「立ち食い」なのだが、ここのお店はテーブル席もあるので有り難い。
「月見蕎麦2つ」
「まいど」
威勢の良いおじさんは、すぐに麺を湯がく。あの道具って何て名前だったっけ? ウチには無いから分かんないや。
手際よく盛り付け(といっても蕎麦の上につゆをかけて、ネギと卵を載せただけだけど)られた月見蕎麦は、
あっと言う間に完成した。
「へいお待ち」
2人前の月見蕎麦をトレイごと受け取って奥のテーブル席へ。場所はかなたさんに確保して貰っていた。
172カケラ 9-(5/5):2008/01/17(木) 02:47:34 ID:Dyw7BGI4
じゅるじゅるじゅる─────

つるっとした喉越し。うーん、旨い!
ここの蕎麦屋さんの出汁は関東とも関西とも微妙に違う、独特な味わいだった。
これが新潟の蕎麦なのかな? 今度再現してみるか。
蕎麦そのものはコシの強いやたらと歯応えのあるもので、『喉で食べる』らしい生粋の江戸っ子は喉を詰まらせてしまうかも知れない。
因みにウチの場合はお父さんの口に合わせているので、市販の関西出汁に鰹節と味醂を加えている。

美味しい蕎麦はあっと言う間に食べ終わってしまった。
食べている間、私とかなたさんの間に会話は一切無かった。
ただ単に食べていることに夢中だったからだったりする。

「ごちそうさまー」
「ご馳走様です」

店を出る間際、厨房のおじさんに「姉妹で仲良しでいいねぇ」と声を掛けられた。
私とかなたさん、お互い顔を合わせてクスリと照れ笑い。

さて、駅蕎麦で腹ごしらえをした私達は、いよいよ「北越」号に乗車。
指定された座席は偶然なのか、やっぱり必然なのか、お隣同士だった。

「北越」号の車両は「いなほ」号と色は同じで、先頭車の形が違っていた。
「北越」号は私が『現代』で何度か乗ったことのある「能登」号と良く似た車両で、前が出っ張っているやつだ。
座席は「またグリーン車かな?」と少し期待していたのだが、残念、特急券は普通車指定席だった。
車内は「能登」号そのものである。何だか矢波の親戚の家に行くような気分だなぁ。
お父さんも、ゆきおばさんも、おじさんも、ゆい姉さんも、ゆーちゃんも居ないけどね。


さて、富山まではまだまだ時間が掛かる。
私は座席を倒して寛ぐことにした……………のだが!!

「何でこの電車、リクライニングしないの?」

何と「北越」号の普通車は、ただ座席の向きが変わるだけのお粗末仕様だった……。
何だか先行きが不安になって来たよ…。とほほ。
173カケラ 間-(1/3):2008/01/17(木) 02:48:06 ID:Dyw7BGI4
間.

その『穴』は直径10メートル程もある大きな穴だった。
峰岸のエスティマなら楽に入れる大きさだ。
「試しに入れてみようか」と冗談で言ってみたところ、彼女は何も答えずに『穴』を指さし、
「まずアンタが入れ」と冷たく答えた。コイツには『ボケとツッコミ』の概念が無いようだ。
面白くない奴だな。たまには妹を見習え。

穴はコンパスで描いた様な綺麗な円形であり、その縁は巨大なカッターナイフで切ったかの様に綺麗なエッジを形成している。
試しにそこらに転がっている石を投げ入れる。相当深い穴の様で、石が下に落ちる音がするまでに数秒を要した。
当然ながら、おれが持ってきた超大光量懐中電灯で照らしても「底」は見られなかった。
おっと、この電灯は電気を喰いまくるため30分で電池が切れる。

おれが『穴』について調べている間、峰岸には見張りを頼んでいた。
と言っても、周囲にはフェンスと橋脚しか無いので、誰か(特に警察)来てもすぐに隠れることは難しそうだ。

一応、何枚か写真を撮っておく。
朝は晴れていた空は次第に曇り始め、今にも雨が降りそうだ。
高架橋の春日部側は重機が橋を崩す音と、自衛隊の叫び声が聞こえる。
おれと峰岸は現場から200メートルほど離れた位置に居るが、それらの音が良く聞こえる。
それ位、辺りは静まりかえっていた。

おれは改めて『穴』を覗き込む。
冗談みたいな正円からは、微かに冷気を感じる。
そんなおれに、峰岸が後を向いたまま声を掛ける。

「どう? 何か分かった?」
「いや、さっぱり。『穴』の形が妙に綺麗で、えらい深さがありそうな事くらいだな。

 事故との関連性は……今のところ無いかも」
本当に分からない。
一体誰が、何のために、こんな所へ『穴』を開けたのか?
謎だ。謎過ぎる。
特にこの上を鉄板や何かで塞いだ痕跡も無いし、最近になって穴を掘った気配は無い。
今立っている所は土で出来ているが、おれらが立ち入るまでは殆ど無かった。
夕べ東武鉄道のサイトで見た高架橋の検査結果報告書(の抜粋)にもこの『穴』の報告は一切無い。
検査報告書がサイトにアップされたのは先月なので、この穴は11月半ばから昨日夕方までの間に開けられたものと考えられる。

「こりゃちょっと調べるのに時間が掛かりそうだ。雨も降りそうだし、今日はここで引き揚げるか」
「そうね。そろそろあやの達も下校時刻だから、迎えに行かなくちゃ」
そうだった。今日は午前授業だったんだ。
収穫は少なかったけれども、『穴』の情報が幾らか手に入ったからまあ良しとしよう。

おれと峰岸は誰も居ない事を確認して、裏道を遠回りして車の方へと戻った。
174カケラ 間-(2/3):2008/01/17(木) 02:48:26 ID:Dyw7BGI4
おれを乗せた峰岸の車は、一旦稜桜高校へ行ってみさお達を乗せる。
ついでに同じ方面で最近みさおが泉こなたちゃん経由で知り合ったらしい3人の子も送っていく事にした。
2列目に座っているのはみさおとあやの。みさおは朝からずっと元気が無い。あやのはそんなみさおをずっと気に掛けている様子。
3列目に座っているのは1年生の子達で、名前は小早川ゆたか・田村ひより・パトリシア=マーティンという名前だった。
小早川ゆたかちゃんは泉こなたちゃんの従妹だそうで、幸手市に住んでいるとのこと。
留学生のパティは姫宮、田村ひよりちゃんは杉戸町で、それぞれの距離は比較的近い。

さて、

「みさお、どうだった?」
「ん? ………………ああ」
みさおはゆっくりと顔を上げて中途半端に返事をしたが、すぐに黙ってしまい、下を向いてしまった。
無理もない。自分の大切な友達が事故に巻き込まれた『かも知れない』のだから。
あやのが代わりに答える。
「柊ちゃん、今日、学校に来てなかったの。今朝、おばさんが連絡を入れたみたいで、柊ちゃんも妹ちゃんも全然連絡が取れないって……。
 ゆたかちゃんにも訊いてみたんだけど、泉ちゃん、昨日から家に帰っていないって…………。
 それと────」
「────緊急の全校集会があって、その時に三郷が死んだって連絡が入った。
 他に8人が行方不明…………」
みさおがやっと、重い口を開いた。『三郷』とは、みさおの陸上部の友達である。
目元が潤んでいるのがバックミラーごしで確認出来る。みさおは一生懸命堪えているけれど、今にも泣き出してしまいそうだ。
「学校でも亡くなった生徒が5人ほど居て、行方の分からない生徒も何人かいるみたいっス」
「お姉ちゃん…………お姉ちゃん…………ぐすっ」
「ダ……大丈夫デスヨ。きっと今頃アキb……コナタはスグに帰って来マスって」
「ほら、泣かない泣かない。先輩達、すぐに帰って来るよ」
「みさちゃん、………ほらっ、泣いちゃだめ………っ……うっ…………ね」
「わ…………分かってるよ……………でも……でも………………」
遂にみさおが泣き出してしまった。あやのの涙腺も崩れてしまった。
帰りの車の中は、とても重い重い空気で包まれた。
175カケラ 間-(3/3):2008/01/17(木) 02:48:52 ID:Dyw7BGI4
おれはさっきから他人事のように話しているが、決して無関係ではない。
実は先ほど、携帯電話にメールが入り、やはり、社内でも事故に巻き込まれた人が居たらしい。
特に親しかった同僚は今、病院の集中治療室で治療を受けているとのことだが、意識はまだ戻っていないという。
おれの家族と峰岸の家族が無事だった。それだけでもラッキーだったと思う。
残念ながらみさおの友達が1人亡くなってしまった。妹が世話になった。

おれの中に怒りがこみ上げてきた。
一体何故、事故が起きたのか?
どうして、橋が崩れたのか?
もしかすると、『誰か』が橋を破壊したのか?
おれは専門家ではない。しかし、この事故の『鍵』は何処かにある筈だ。
怪しいのは…………例の『穴』。
もしかしたら、あの『穴』に今回の事故の『鍵』が隠されているのかも知れない。


最後にわし宮団地第3街区の前でおれとみさおを降ろして貰い、おれはみさおの手を引いて帰宅した。
昼飯を食べた後、おれは急いパソコンを持って役場の近くにある町立図書館へと向かう。
「兄貴ぃ……」
「ちょっと、図書館へ行ってくる。すぐ帰ってくるから留守を頼む」
両親は今、共に働きに出ている。
「行かないで…………」
上着の裾を引っ張る我が妹。気持ちは分かるが、これは『事故』(or事件)のためでもある。
「すぐ帰るから。な」
「嫌だ」
「ほら、もう行くから、ごめんな。すぐ帰るから、な」
裾を引っ張る手をちょっと強引に引き剥がし、おれは家を出た。
外は生憎の雨。仕方ない。歩いていくか。



この時、おれは全く『予想』をしていなかった。
まさか、自分の妹が……………………………、
176カケラ 9 by 久留里:2008/01/17(木) 02:51:21 ID:Dyw7BGI4
以上でございます。
読んで下さった方、本当に有り難う御座います。

拙い文章で恐縮ですが、まだまだ続きます。
177名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 02:56:46 ID:Pow67TA4
リアルタイムGJ!

まさかのかなたさんktkr!
電車内で死者に会うなんて、銀河鉄道の夜ちっくだなぁやっぱ死にそうなのかなぁ、
と思ったけどそういやかなたさんも生きてる時代でしたね。
妙にかっこいいみさお兄もけっこうツボです!

続きが気になって仕方ありません!
178名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 03:02:28 ID:d+0hquNf
かなた「セキタンブクロヘヨウコソ、ココガホントウノテンジョウダヨ」
こなた「お・・・お母さんっ!?」
かなた「なーんて嘘よ、ウフフッ」
こなた「(冗談になりにくい冗談はやめていただきたいっ!)」

>>176
なんというGJ!
ついにかなたさん登場!
そして相変わらず放出されるフラグメント
そして現代にも何かが!
どういう絡み合いをしていくのか、もはや予想がつかない!
それにしても、こいつは引き込まれるぜ・・・。
179名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 03:15:13 ID:OoLg6l/K
>>176
ふおおおっ!GJ! GJっ!!

続きが気になって目が冴えました。
180名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 03:20:17 ID:zPkOS30W
リアルタイムからちょい遅れてGJ!
てつぶん!!てつぶん!!

ずっと思ってましたけど、久留里氏、恐ろしく鉄分濃いですね。
何種類も列車出して車両・列車名ともにミス無しとは…。凄いの一言に尽きます。
181名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 04:04:02 ID:S1g8Vg5+
GJ!!

ただ、重箱の隅をつつくようなことになるのですが
昭和5X年(作中のキーワードから昭和53年と思われる)
の時代設定にしてはおやっ?と思う点が少々あります。
上野発青森行き「ゆうづる2号」とか青森発「新潟行き」いなほ号とか……

まぁ、いわゆる脳内補間で読み飛ばしていますが……。




とにかく続きが気になる点は間違いないと言うことで。
18218-19:2008/01/17(木) 04:33:42 ID:Pow67TA4
そろそろ朝です、どうも僕です。

さて、おす☆かがの続きが今回はやたら早く書き上がったんで、いっちゃいます
あんまり間が開いてなくて恐縮ですが……ごめんなさいっ


やっべえつかさルート楽しいです
筆が止まんねぇ!


◆TSモノ注意!
注意事項はいつもどおりそんだけ、苦手な人はスルーしてね

4レスほど借ります!
183おす☆かが かえすよ!べんとーばこ:2008/01/17(木) 04:35:18 ID:Pow67TA4
「……私、初めて見たよ。つかさのあんな顔」

 右隣のこなたが、俺を眠そうな目で見上げながらチョココロネをもそもそと食んでいる。
 正面の高良さんも、豪勢なお弁当をゆっくり、あまり美味しくなさそうに口に運ぶ。
どこか居心地悪そうなのはクラス中からの視線のおかげだろう。その視線が突き刺さっているのは
俺達、特に俺、な訳で、その俺はこれ以上ないくらいに居心地が悪い。

「なぁ、俺はどうするべきだ?」
「そりゃ、つかさを追って教室を飛び出すべきだったよねぇ」
 なんで普通にお弁当食べてるかなぁ、と続けるこなた。
……ジト目の理由がやっとわかったよ、でもそんなタイミングは遥か昔に置いてきちまったしなぁ。

 つかさが教室を飛び出した、まさにその時、俺は。
 情けない事に、まさにお手本のように……呆気にとられちまってて。
 何故なのか、と考えていると、つかさを追うなんて選択肢は出てこなかった。

 何故なのか。
 なんで。
 なんでつかさは……

 久々のマジギレを、よりによって教室なんかでやらかしちまったんだ?


─ おす☆かが かえすよ!べんとーばこ ─


184おす☆かが かえすよ!べんとーばこ:2008/01/17(木) 04:37:18 ID:Pow67TA4
 まずその原因を突き止めよう、物事は順序ってもんが重要だからな。うん。
「そんなの簡単じゃん」
 こなたはそう言って、指先を俺の座っている机の上に向ける。
「いや……今はあっち、かな」
そして黒板の方を指差す。……そっちはC組、俺のクラスの方向か。

「なんなんだよ?」
「わっかんないかなぁ、お弁当だよ」

 ……お弁当。
 そういやそうだ。今日の弁当箱が違う理由、それを説明した途端、つかさのあの怒号が聞こえたんだったな。
でも……そんなに本気で怒るような事なのか? 弁当の交換が?

 こなたと高良さんは、揃って大きな溜め息をひとつ。
「今朝、つかさ言ってたじゃん。『お弁当作るのが楽しい』って。
 そう思えるのって、かがみの為に作ってるからじゃないのかな」

 そんなもんなのか? たかが弁当じゃねぇか。

「たかがお弁当、なんて言わないでください」
 と、僅かに語尾を荒げる高良さん。……すみません。

「私だって、想い人の為に作ったお弁当をそんなふうに扱われたら、少し……いえ、かなり傷付きます」
 そういうもんですか。……いやそんなことより、想い人って! 俺らは兄妹ですよ?

 高良さんが、ありえなくはないですよ、と呟く。おいおいマジかよ。
「私だって幼い頃、親戚の兄に似たような感情を抱いた事がありますし」
「もしかしたらそれ、かもねぇ。そうだとするとあの反応にも」
合点がいく、か。

 とするとなんだ、つまりつかさのバカは、よりにもよって実の兄であるこの俺に……

「恋をしてるね」

 ……マジかよ。

 谷口の弁当箱の中からミニハンバーグを摘まみ出し、口に運ぶ。
……冷凍食品だな、間違いない。これに比べて、つかさの作る弁当の、なんと手の込んだこと。

 あれは全部……俺の為に?

「………」
 俺がした事が、なんだかかなり酷い事のように思えてきた。
 いや、実際かなり、めちゃくちゃ、非道い。
 俺はつかさの気持ちを……踏みにじったも同然、なのかもしれない。

 だとしたら。俺が今、やるべき事は……

「つかさ、探してくる」

 ほとんど中身が減ってない弁当箱の蓋を閉め、席を立つ。
 教室を出るときにふと振り返ると、親指を立てたこなたと、真剣な眼差しの高良さんが無言で見送ってくれた。

185おす☆かが かえすよ!べんとーばこ:2008/01/17(木) 04:40:13 ID:Pow67TA4
 ……っと、その前に、この弁当箱を谷口に返してやらねばならない。えーいまどろっこしい。
 すぐ隣のC組の扉を開く。谷口は日下部、峰岸と一緒に弁当を囲んでいた。

「柊、早いじゃねーか」
「ちょっとな。これ返すよ」
 弁当箱を受け取った谷口は、なにやら訝しむ表情を見せる。
「なんだ柊、食ってねぇのか」
 ちょっとヤボ用ができてなぁ。食ってる暇ねぇんだよ。

「5限、体育だよ。お昼食べなくてだいじょうぶなの?」と峰岸。
う゛、忘れてた……。きっついなぁ畜生。

「なんだひいらぎ、ダイエット中かぁ?」
悪いな日下部。ツッコミ入れてる暇もねぇんだよ。
 踵を返そうとした矢先、はたと思い出す。
……日下部。そういやこいつ、兄がいたっけな。

「なあ、日下部」
 肩を掴み、早口で喋る。
日下部はなんだかフリーズしちまってるが気にしない。
 単刀直入に訊こう、時間の限られた昼休みは有効に使わねば。

「おまえ、恋してるか?」

 我ながら意味不明だ。
 目の前の日下部はフリーズ状態から回復、どういう訳かキョドり始め、下を向いて30秒ほど沈黙し……
ええい、その時間がもったいない!

 こっちがびっくりするほど真っ赤な顔で、そっぽを向いたまま
「し、……
186おす☆かが かえすよ!べんとーばこ:2008/01/17(木) 04:41:55 ID:Pow67TA4
そっぽを向いたまま
「し、……してる、けど」
と答えた。
 それを答えるだけなのに忙しい奴だな、と思うが気にしちゃいられない。本題に入ろう。

「それ、相手、兄貴か?」

 それを聞いて、峰岸が表情を変えた。真っ青だ。血の気が失せちまっている。
真っ赤な日下部と真っ青な峰岸。信号みたいだなぁおまえら。

 日下部は今度は素早く反応した。何故だか峰岸に目線を送りながら、
「ちがう、全っ然違うかんな!」
と全力で首を左右に振る。

 そうか、もしかしたらいい相談相手になるかと思ったんだが。
そりゃなかなかいないよな、兄に恋する妹なんて。

「悪い、変なこと訊いたな。すまん」
 そう言い残して、扉に向かう。暗い表情のままの峰岸が気になったがスルーだ。
 日下部は峰岸に、あーだこーだと弁解めいた事を早口で喋っていた。訳のわからん奴らだ。

 教室を出る時、「エノラゲイかよお前! 超弩級の爆弾投下していきやがって!」
という日下部の非難と共に、谷口の声が聞こえた。

「柊つかさの弁当、うまいぞー」と。

 ……知ってるよ、馬鹿野郎。


187おす☆かが かえすよ!べんとーばこ:2008/01/17(木) 04:43:47 ID:Pow67TA4
 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ……いない。どこにも。

 俺は図書室前の廊下にへたりこみ、壁に背中を預けた。
「はあ、はあ……」
 自分の呼吸の音が煩い。心臓が全力でレッドアラートを打ち鳴らしている。
……運動不足だ。畜生、次は体育だってのに。

「……つかさ、どこ行っちまったんだ」

 保健室、中庭、屋上、その他いろんな特別教室。
 校舎内を走り回って捜したそれらのどこにも、つかさはいなかった。

「捜してないのは、あと……」
 山ほど。

 げんなりする。15分ほどかけて走り回った校舎も東側、全体の三分の一ほどだ。
……でかすぎんだよこの学校!
なんで体育館が2つもあんの? 必要なの?

 ポケットから携帯を取り出す。発信履歴の「つかさ」の文字が痛々しく連なっている。
あいつはそのことごとくを無視しやがった。……まあ、俺が悪いんだけどな。

 液晶画面の右上に目をやる。思わず溜め息が漏れた。
その理由? んなもんすぐにわかるさ。

 キーン、コーン……

 間抜けな音が廊下の隅のスピーカーから聞こえてくる。
 予鈴。……タイム・リミット。

 昼メシも食ってない、全力疾走した後という最悪のコンディションの中、体育に赴かなければならない。
それもつかさの行方を気にかけながら。

 授業なんか無視してつかさ捜しを続けてもいいのだが……それは多分、きっと、体育よりも、きつい。

「やれやれ……」

 5限は体育と捜索、どちらにしようかと考えながら腰を上げると、目の前の図書室の扉が開いて、
……なんてこった。
左手に文庫本を持ったつかさが、図書室から出てきた。

 思わず、唇を噛む。活字は睡眠導入剤だと認識しているつかさがまさか図書室なんかにいるわけねえ、
と思っていた事を恨む。くそ、裏をかかれた。


「つかさ……」
 つかさは暗い顔を上げた。目の前にいるのが俺だと認識し、一瞬、驚いたような顔を見せたが、

「おい、つかさ!」
俺の呼びかけに応える事はなく、すぐさま走り去ってしまって。

 それを追うだけの体力や気力は、今の俺には残されていなかった。


(つづく)
18818-19:2008/01/17(木) 04:46:24 ID:Pow67TA4
以上です。
書き込みミスで5レスになっちゃった
なんでいつも宣言どおりのレス数にならないかなぁ……

続きます
次くらいに仲直りしてくれるのかな?
こなたルートはかなり後になりそうです、、、その前にm(ry

ところで、こなたの方程式やっと手にいれました
けっこういいですこれ、ぼーっと眺めてるだけで電波が3本ほど飛んできましたよ
ひゃっほーどうしよ!
189名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 08:10:22 ID:8AR3XgAl
GJ!
これはイイ!
190名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 08:11:43 ID:d+0hquNf
なんというか、このキョン風の鈍感っぷりに腹立ちすら起こる
今回にGJ。それが狙いだよねっ?ねっ?w
さあ、つかさへの男のフォロー、期待します。
ここでフォローできるようでないと、
こなたとも上手くいくはずないと思うしな。
何より、怒ったみゆきは怖いだろうし・・・w
191名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 10:20:03 ID:YWMl6awz
>>188
続きキタ!!! GJしった!
いやー鈍感キョンはいい
こなたルートの前に全員攻略して欲しいですね!
192ぶーわ:2008/01/17(木) 10:26:15 ID:YWMl6awz
>>102 >>99
亀レスですが 便乗して描いてみました
後ろにいるのは7-896氏のみのるちゃんを 妄想してください。十秒で描いたやっつけです
ttp://www.geocities.jp/je104049/akisira.PNG
ってゆーか あきら様が学生服着ただけじゃん? って突っ込みは ナシの方向で
193名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 10:32:22 ID:j93rV6eg
うぐはっ!
なんだこの「この際男でもいいっ!」と思わせるあきら君は!
ズキュウウウウウンときちまったぜ・・・
そして後ろのみのる子にワロタw
超GJ!
19417-234:2008/01/17(木) 11:11:34 ID:YjUvY4qp
あきら「うぐはっ!
ま、まさか、まさかぶーわさんに描いてもらえるとは思ってなかったです!
ありがとうございます!
やったじゃん、白石さんも描いてもらえたじゃんっ!」
みのる「え、えっと…あたし……」
あきら「白石?不満でもあるわけ?」
みのる「あ、あたしやっぱり線画なんですね(しくしく)あ、でもツインテールだ!」
あきら「描いてもらえるだけ有難いと思え!!」
みのる「と、とにかく、描いていただいてありがとうございましたっ♪」

あきら「さてと白石」
みのる「…なんでしょう?」
あきら「確かリク来てたよな」
みのる「へっ?え、なんの」
あきら「鬼 畜 責 め」
みのる「い、いや、だめぇぇぇぇ!!」

ばたんっ
195名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 11:44:19 ID:pcLGdNW5
>>188
GJ!!
関係ないけど、こういう鈍感キャラってよくいるが鈍感ってそんなに罪なのか?
オレの過去を思い出してみると、けっこう色んな女性からフラグ立てられてたけど、フラグと気付かずに全部叩き折ってた記憶がある
だから、>>188の主人公が鈍感とやたら言われてるけどオレはそう思わなかった
オレや>>188の主人公って罪人なのか?
196ぶーわ:2008/01/17(木) 11:52:59 ID:YWMl6awz
すんません、>>192でTS注意って入れるのを忘れてました
うっかり見て気を悪くした人がいたらごめんなさい
197久留里:2008/01/17(木) 12:35:51 ID:TtOnrTU+
>>177
こなた「勝手に学生時代のお母さんを殺さないでおくれ」

>>178
作者もこの先どういう展開になるか分かっていない件。

>>180
当時の列車は毎回調べていますが、中々見つからないので苦労しています。
先に種明かしをすると、いくつか独自の設定を追加しています。
特に駅の方は、地方の無人駅でも改装が進んでいるので、大半がオリジナルだったりします。
従って、当時を知る人には「あれ?」と思う所が多々あると思いますが、「雰囲気として」楽しんで頂ければと思います。

ていうか、話の中心は鉄道ではなく、30年前に飛ばされた3人なんですけどねww

>>181
確かに昭和53年10月10日のダイヤ改正「ゴーサントオ」で、特急列車の番号の振り方が現代と同じになっていますね……。
これには気付かなんだorz

みゆき
「現代の特急列車の号数は、運行番号のルールに合わせて『下りは奇数』『上りは偶数』を原則としていますが、
 昭和53年10月10日のダイヤ改正、通称「ゴーサントオ」が実施される以前は、
 上り・下りの区別なく発車順に『1号・2号・…』と号数を振っていました。
 1977年に発売された狩人の歌謡曲『あずさ2号』に登場する特急「あずさ2号」も、新宿発の下り列車で、
 現在は特急「スーパーあずさ5号」として運転されております」

ちなみにこなたの青森→新潟のルートは現在の時刻を基準にしており、「北越」号の発車時刻を勝手にずらしていたりしています。
198名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 13:01:44 ID:4gtj7hX3
>>188
GJ!
谷口馴染みすぎで一見普通のらきすたキャラじゃないかw

で、仲直りっつったらこの板的に考えると、アレですよね?
超期待
199ぶーわ:2008/01/17(木) 13:33:59 ID:YWMl6awz
ども、ぶーわです
前スレで話してた『人として袖が触れている』の番外編的なものが書き上がったので投下させてもらいます
うすうす感じてる人も居るでしょうが、わざわざこれの番外編ってことで平安時代編です

・TS注意(みさお男性化) 平安パラレル注意
・平安時代なので苗字で呼ぶ習慣はありません(苗字がほとんど同じのため)
・序章です 6レスほど拝借します
200俗・人として袖が触れている-序章-(1/6):2008/01/17(木) 13:36:05 ID:YWMl6awz
 季節は夏。
 熱い日差しが坪四桁は超えようという雄大な建物を照りつける。
 檜皮葺(ひわだぶき)の屋根に、趣のある木造住宅。
 庭にある池には釣殿(つりどの)も悠然と立ち並び、一目見ただけでそれらが上流階級のものであるのが窺える。
 その屋敷の一室に『彼』……みさおは居た。
 日差しの熱と気温に負けて体を仰け反らせながら、みさおは削り氷(けずりひ:かき氷)の皿を顔に押し当てる。
 冷たいそれが脳を弛緩していく快楽に身を預けながら、彼の口から溜息が漏れた。
 それが部屋に控えていた女房(にょうぼう:小間使い)の耳にも届き、「またか」と同じく溜息を漏らす。
 それをみさおの耳には届かないようにするのが女房の嗜みだ。
 そのまま彼のの溜息も聞き流し、顔を笑顔に戻す。
「春宮(はるのみや)様、削り氷のおかわりは?」
「ん、頼むわ」
 トプン、と皿に水の波打つ音がする。
 顔の熱で溶けた氷も、大分熱を持ってきた頃合。
 春宮……帝の第一子であるみさおには、悩みがあった。
 とうとう彼にも譲位の日、つまり帝になる日が近づいている。
 陰陽道(おんようどう:占い)で決まったその日を後は待つだけなのだが、その前に一つ重要な行事が待っていた。
「とうとう明日ですね」
 女房が代わりの皿を差し出し、声をかける。
 それを受け取ると、また顔に押し付けて熱を発散する。
「ああ、だな」
 投げやりに彼が返事をして、また体を地面に投げる。
 別に暑いわけではない。
 いや、暑いという語彙が不適切なだけ……彼の顔は、『熱い』のだ。
 それも全て、その女房の言う『明日』の行事の所為で。
「……別に、気にする程じゃないけどさ」
「? 何か?」
 みさおの口から洩れたボソボソという小さい声が僅かに耳に届き、女房が思わず尋ねる。
「何でも!」
 しかしそれに該当する返事はなく、代わりに大声が返ってくる始末。
 このままでは八つ当たられると素早く察し、そのまま一礼して部屋を出て行く女房。
 彼女の蔀戸(しとみど)を閉める音と氷が皿の中で溶けてぶつかる音が、重なる。
 その衝撃がみさおの頭から脳に貫通し、それと共に何かを思い出す。
 皿を持つ手とは逆の空いた手で、耳を擦る。
 何か聞こえてくるわけではなく、そこにあった感触を思い出そうとしているだけ。
 もちろんそこが、突然千切れんばかりに引っ張られることなどそうそうない。
 いや、あるはずがなかったのだ。
「……ぷっ」
 あははっ、と一人になった部屋にみさおの笑い声が響く。
 彼の人生は特に障害があるわけではなかった。
 恵まれた環境、安定した生活、不安のない将来。
 だから彼には考えた事もなかった。
 自分がこんな感情を持つなんて。
 まさか自分の耳を引き千切らんばかりに引っ張るような人が居るなんて。
 その痛みが脳まで劈いたのを思い出して、また笑う。
 そしてその空笑いも弱まっていき、もう一度溜息。
201俗・人として袖が触れている-序章-(2/6):2008/01/17(木) 13:37:23 ID:YWMl6awz
 それから皿に入った氷を口に一気に口に流し込む。
 襲ってくる頭痛は凝り固まった彼の脳みそには丁度良かったらしく、そのまま立ち上がり蔀戸を蹴り開ける。
 そして庭や廊下を伺い、適当に何かを探し歩く。
「おい、そこの」
「はい?」
 門まで来たとこでようやく目的のものを見つけ、声をかける。
 帯刀(たいとう:警備兵)の彼も春宮に気がつき、慌てて背筋を伸ばす。
「ちょっと来て」
 と、手招きするみさお。
 もちろん一般の帯刀の彼に断れるはずもなく、素早く彼の後についていく。。
 そのまま先程の寝室にまで連れられ、押し込められる。
「いいか? 誰が来ても入れないよーに」
「へっ? えっ……へぇっ!?」
 訳も分からず困惑する帯刀を背に、みさおが蔀戸を固く閉める。
 これが彼のいつものやり方。
 所謂影武者だが、これがなかなかに効果的だ。
 用立てなければ女房も入って来ないし、緊急の用事なんてそうそうない。
 そのまま彼は庭に飛び降り、帯刀の居なくなった門から悠々と外に出た。
 みさお、18歳。
 明日に結婚を控えた日の事だった。




 結婚。
 誰もが憧れるその言葉に、みさおは少しうんざりしていた。
 当今(とうぎん:天皇)の父からは毎日のように夫としての嗜みを教え込まれる。
 正室である母がそれを助けてくれるわけもなく、更衣他は見て見ぬふり。
 それを毎日のように繰り返され、鬱憤は溜まるばかりというわけだ。
 だが何もそれが我慢出来ないということではない。
 こうやって逃げ出してストレス発散すればすぐにでも忘れるような簡単なもの。
 それに彼の大雑把な性格は、それぐらいの悩みなどはあまり気にも留めない。
 だから日ごろの溜息の原因は、もっと彼にはどうしようもできないところにあった。
「んんーっ」
 人々が行き交う東の市で、体を伸ばす。
 狩衣(かりぎぬ)に身を包んだその姿を見て、誰も彼を春宮と気がつく人はいない。
 公の場ではほとんど顔を出す機会もないので、それも当然といえば当然だ。
 そのまま気長に市を歩きながら、目的の場所を目指す。
 手狭に押し込まれた宮廷に居るよりはまだ気は晴れるというもの。
 騒がしい雑踏や芳しい汗臭さが、彼にとっては至福らしい。
 しかしその眼に、あるものが映った。
 それを眼にしてから、進めていた足を数歩戻す。
 市に売っているような、安物の小物入れ。
 それを見てまた、彼の頭に一人の少女が過ぎった。
 それと一緒に耳に痛みが走った気がした。
「……ふむ」
 勢いで買ったそれを見ながら、また足を進める。
 色鮮やかな女物のそれを、彼が身につけるはずもない。
 それを身に着けた少女の姿を思い描くだけで、彼の顔が緩む。
202俗・人として袖が触れている-序章-(3/6):2008/01/17(木) 13:38:20 ID:YWMl6awz
「喜んでくれっかなぁ……『かがみ』」
 少女の名前が口から漏れ、彼の頬が熱を持つ。
 その少女こそが、彼の悩みの一端。
 この浮かれっぷりを見れば分かるとおり、彼の所謂……想い人。
 ちなみに告白もすでに済ませており、見事に砕け散っている。
 その返事によっては彼の悩みも、もう少し軽くなったのかもしれない。
 それを思い出したのか、熱を持った顔からまた溜息。
『ごめん』
 ただの三文字の言葉がみさおの胸に突き刺さる。
 何度租借しても、飲み込めないその単語。
 それは拒絶という、彼の告白への返事。
 それを思い出し、落ち込む。
 確かに彼にも自惚れている所はあった。
 自分でも男前だと自負もしているし、何より春宮という位。
 それを知って断る女性が居るとは、考えてもいなかった。
 それの所為かは分からない。
 だが日に日に淡かった気持ちが次第に色濃くなっていくのを、彼が一番噛み締めていた。
 彼にだって分かっていた。
 これは、馬鹿げた気持ちだと。
 いくら想っても、相手は女房。
 自分の身分との間には、壁があることくらい。
 だから分かっていた。
 自分の女々しさも、醜い嫉妬も全部……意味のないものだと。
 この贈り物も、いつも買ったところで終わる。
 渡しに行く勇気がないわけじゃない。
 彼は怖かったのだ……彼女に会う事が。
 彼女に、軽蔑の言葉を吐き捨てられるのが。
 それほどの事を彼はやってしまった。
 それこそが彼の……本当の悩みだった。




「ぅおーッス、あやのー」
「あ、みさちゃん。いらっしゃい」
 女房に連れられて入った部屋で彼を待っていたのは女性。
 彼の幼馴染であり、内大臣正室のあやの。
 そのまま適当にみさおは腰を下ろすと、案内していた女房も席を外す。
 この邸ではもう見慣れた光景のため、誰も気にしないというわけだ。
「とうとう明日だね」
「んがっ」
 幼馴染の言葉がいきなり尾てい骨に直撃し、みさおがばつの悪そうな顔をする。
 それを察したのか、あやのがみさおに聞こえるように溜息を漏らす。
 彼の前でこの溜息が漏らせるのも、幼馴染の彼女ぐらいなもの。
「……みさちゃん、まだ踏ん切りつかないの?」
 彼女にはもちろん全部分かっている。
 何が彼を悩ませ、何に間誤付いているのかも。
「だ、だってなぁ……」
「大納言家の一人娘に、文句でもあるの?」
203俗・人として袖が触れている-序章-(4/6):2008/01/17(木) 13:39:37 ID:YWMl6awz
 結婚には、身分というものがつきまとう。
 春宮のみさおにとってはそれも例外でなく、当然高貴な人間が選ばれる。
 そしてその白羽の矢に立ったのが、大納言家の令嬢。
 もちろん、春宮の相手としては十分な身分を持っている。
「そういうわけじゃ……ないけどさ」
 みさおの語尾が下がっていくのを察し、あやのがもう一度溜息をつく。
 そして、確信をみさおに突き付ける。
「……まだ、好きなの? あの女房の子」
「んなぁ!」
 それが強制的に頭に入り、奇声。
 それから沸騰して、爆発した。
 もちろんそれが、図星だから。
「やっ、だ、だから『かがみ』は、そっ、そんなんじゃなくてだなぁっ」
「はぁ……」
 間誤付き狼狽するみさおに、あやのが呆れる。
 そして溜息をつきながらみさおを諭す。
「いい? みさちゃん……もう全部段取りは進んでるの。日にちだって明日を延ばせば次は半年後なんでしょ?」
 結婚の日取りもまた陰陽道で決まる。
 それによると明日は吉日。
 しかも三日続けて物忌み(外に出てはいけない)も方違え(住む場所を変えなくてはいけない)もない日が続くもってこいの日。
 その三日間男性は女性の下に通い、三日連続で一夜を共にする。
 それを済ませ、三日夜の餅を一緒に食べて露顕(ところあらわし:披露宴)をすませれば晴れて婚約成立となる。
 明日はその、初日というわけだ。
 それはまぁいい。
 相手も大納言家の令嬢だ、問題はない。
 だけどそこにみさおの想い人が絡むと……いささか事情がややしくなる。
「自分で文を送って、返歌も貰って……全部段取りもすんでるの。わがまま言っちゃ駄目だよ」
「わ、わがままってわけじゃ」
「だってようは遠慮してるんでしょ? かがみちゃんだっけ?」
「……」
 幼馴染に悩みを全て見抜かれ、沈黙するみさお。
 それが彼を悩ませてる種。
 彼が恋文を送った相手。
 つまり彼の婚約者こそ、彼の想いを寄せる少女の……想い人。
 その自己嫌悪が棘になって、彼の胸を締め付ける。
 決められた結婚ならば良かった。
 自分の意思じゃない、と大義名分もあるだろう。
 ……それも格好が付くわけではないが、今回は別。
 わざわざ手紙をしたためて、送ってしまったのだ。
 恋文を、しかも直接。
「最低、だよなぁ……」
「うん」
 声に出して肯定され、みさおの中でさらに自己嫌悪が溜まっていく。
 あやのも知っていた。
 彼が自分を『最低』という理由も。
 何故恋文が、その大納言家の少女の元に送られたのかも。
204俗・人として袖が触れている-序章-(5/6):2008/01/17(木) 13:40:43 ID:YWMl6awz
「だって、知っててやったんだもんね」
 わざと強い口調で、あやのが彼の行為を戒める。
 彼にとっては、軽い仕返しのつもりだった。
 恋文を受け取ってもらえなかった、腹いせだった。
 少し懲らしめてやろうと思っただけだった。
 自分の方を少しだけでも、見てほしかった。
 そして彼は選んでしまった……最悪の選択肢を。
「し、知らなかったんだよ。あいつがそんなにあのちびっ子の事……好きなんて」
 それを思い知らされたのは、もう数ヶ月の前の事だ。
 婚約者となる女性に文を送ったあの日。
 彼の想い人は泣いていた……彼の、腕の中で。
 ……憧れのようなものだと、みさおは思っていた。
 想いを寄せる彼女は大納言家の女房。
 だから彼女の想いは、彼女の主人に対する忠誠心みたいなもの。
 まさかそれが自分と同じ愛情だと、思いもしなかった。
 その、溢れる涙を見るまでは。
 その時……全ては遅かったのに。
「……じゃあいっそ、本人に会ってきたら?」
「ふぇ?」
 言い訳しか口に出さないみさおにとうとう愛想が尽きたのか、あやのが立ち上がる。
「今日ね、実はその大納言家に呼ばれてるの。みさちゃんも行くでしょ?」
 あやのと大納言家の一人娘に、それほどの縁があるわけではなかった。
 だが時を遡って数か月前、牛車(ぎっしゃ)の事故で大納言家に世話になって以来文を交わす間柄になっていた。
 それで結婚前日の今日になって、何故か遊びに来てほしいという文が来ていたのだ。
 その理由も、あやのには大体検討がついているらしいが。
「あ、会え……って? かがみ、に?」
 みさおの心臓が跳ねて暴れる。
 その文を送った日以来……つまり泣き叫ぶ彼女を抱きしめたあの日以来、その彼女には会っていない。
 なぜなら彼女にとってみさおは、大事な人を奪う相手。
 遭えばきっと、非難をされるだろう。
 いいや、相手をしてくれるのはまだましかもしれない。
 相手にすらされなかった時のことを考えると、みさおの足はなかなか前には進んでくれなかった。
「会って、踏ん切りつけないとね」
 あやのから笑顔が返ってくる。
 それに幼馴染の直感が働き、考えた言い訳が口から出ていかない。
 本能が悟ったらしい……これは逆らえない、と。
 穏やかな表情をしているがその下の鬼面を幼馴染の彼は知っていた。
205俗・人として袖が触れている-序章-(6/6):2008/01/17(木) 13:42:37 ID:YWMl6awz
「……でっ、でもだなぁ。そういうのは、こうなんていうか準備というか心構えというか……」
「みさちゃん」
 やっと口から出た優柔不断な言い訳も、その一声と威圧感に一蹴される。
 まだ踏ん切りのつかないみさおに、冷たい視線が突き刺さる。
 柔らかい笑顔。
 なのにそこから滲み出る迫力を前に、常人が耐えられる術はない。
「男の子なら、ちゃんとしようね?」
「……はい」
 その言葉に。
 その氷の微笑に、みさおは頷く事しか出来なかった。




 これはすでに、終わったはずの物語。
 もう紐解かれる事のなかったはずの物語。
 だけれどここに、燻った火種が一つ。
 一人の青年の、心に残った僅かな蛍火。
 その最後の残り火をどうか、ご賞味ください。




(続)
206ぶーわ:2008/01/17(木) 13:43:35 ID:YWMl6awz
続きます
というわけで久々の人袖は、どうだったでしょうか
みさ男がメインではありますが、珍しく三人称にしてみました。お見苦しいところがあったら申し訳ありません
いつもグダグダと長く書いちゃいますが今回は短めで終わらせる予定です つっても続きものなのには変わりませんが!
しかもパラレル+TSもの なんと読者を選ぶことか! 自分そんなんばっかじゃん!
207名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 13:56:01 ID:JWT45OZp
>>206
リアルタイム読了っ。グッジョーーブ
すっげー続きが気になる
そうだよなあ、その問題が残ってたよっ
続きwktkです
208名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 14:25:58 ID:wzuUh/TV
久々のプリンスみさお来たー!
奇跡の裏側で揺れ動くみさこなかが(?)、引き続きワクテカでお待ちします。ぐっじょぶ。
209名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 14:43:32 ID:j1dPX1Nv
キタコレ!(゚∀゚)
あの時希望してよかったw
ぶーわ氏の連載物全てにwktkしてる自分がいますw
210みゆつか愛してる:2008/01/17(木) 14:46:31 ID:6BoyuSUu
>>192
これはいいあきらきゅん……今すぐ服をはぎt(ry

そして人袖番外編キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!」
全裸で待ってたかいがありました!GJです!
続き、再び全裸で待っています!

そして、恋ひよに感想くださった方ありがとうございます。
誤字脱字多かったですね……しっかり確認してるんですけれど……。
保管の際に修正し様¥ようと思います。ご指摘ありがとうございます。
>>115
ゆたか×ひよりんのだとゆたか小悪魔責めで
戸惑うひよりんと気が気でないみなみ……というのも悪くないですね。

と、いうわけで、ぶーわさんのすぐ後で申し訳ないのですが
ひよりんものの続きを投下したいと思います。
前後編にするつもりが長くなって前中後編になってしまいました。
長くなりますがお付き合いください。

・男×ひより(非百合注意)
>>106-112の続き
・8〜9レス拝借

それでは、投下宣言がほかに無いようでしたらいきます
211恋するひより中編・1:2008/01/17(木) 14:50:32 ID:6BoyuSUu
生まれて初めての告白を受けたその日の晩、私は原稿に向かっていたけれど、筆は全く進まなかった。
さあ、描こうと思い筆に力を入れると、その度に彼の言葉がフラッシュバックして、また力が抜けていく。
嬉しかった。嬉しい出来事のはずなので、嬉しいと考えるのは何も間違いじゃなかった。
私達は両想いで、彼は私の趣味を理解してくれる理想の恋人で、何も不満はないはずだった。
『ごめん……今すぐは返事できないカモ……もうちょっと、待っててくれる?』
彼は私の言葉に頷いて、私達は別れた。それから私の頭はずっと、彼の存在でいっぱいだった。
「はあ〜……でもねー……」
10時半を差した時計を見て、私は深くため息を付いて机へと倒れ込んだ。
(これって、受け入れていいのかな……もし、途中で私のことイヤになったりしたらどうするのかな)
机の抽斗に手をかけて、中を開けるとそこから出てくるのは、彼にはとても見せられない本やイラストの数々。
初めての接触があのハードなBLだったとはいっても、これらはやっぱりまだ、彼に理解してもらえる自信が無い。
私の趣味にはまだ、彼の知らない領域があって、私のその趣味に関する考え方や行動も、パンピーには未知の領域。
(もしこんな趣味達のことを知って、彼が私を拒絶するようになったら……)
彼からの拒絶は考えたくもない話だった。彼のいない寂しさは、友達と一緒にいてもしみじみ感じるほどになっている。
もしかすると彼は私の事を理解して、受け入れてくれているから、その珍しさに私は安心しているだけなのかもしれないし、
それを恋愛感情と勘違いしてるのかもしれない。私には恋愛経験がないので、自分の本心がわからなかった。
(こんなことなら二次元に逃げてないで、しっかり恋愛しておくべきだったっス)
時刻は十一時。彼のことをぼんやりと考えているだけで、原稿を描いているときに1分でも惜しい時間は急速に過ぎる。
(彼のことが好きだから、こんなに怖がっているんスかね。それとも、そこまでは彼に求めていないから?
 彼に恋人らしい事を求めてる? オタクの馴れ合いの延長みたいなものじゃなくて? 単なる居心地の良さ以上に?
 私は彼とデートがしたいのかな。私は彼と手を繋いだり、キスをしたり……そういうことを本当にしたいのかな?)
考えれば考えるほどにわからなくなっていった。彼の拒絶を恐れているから、私は自分を言い潤めようとしている?
(彼に理解を求めようとしたらどうかな。自分の世界を全部見せて、理解してって言ったら、彼は受け入れてくれるかな。
 彼のことだからきっと、理解してくれそう。そんな一縷の望みに託してみる? 理解しても受け入れるとは限らないし。
 もし嫌われたらどうしよう。どのみち、男受けはそんなに良くないケド……ああ、三次元って面倒っスね。自分のことだとなお)
十一時半。もう筆を握る事も止めてしまっていた。このままではどう頑張っても、原稿は完成されそうもなかった。
携帯が震える。八坂先輩からの着信だった。私は通話ボタンを押す。
『おー、ひよりん。どう? 原稿ははかどってる? 明日には完成させなきゃいけないんだよ』
無理です。下書きすら半分も終わってませんし、何よりまったくモチベーションがあがりません。
何よりも優先させなければならないことができたっスよ、先輩。残念ながら今回は……。
「すみません。原稿、今回は落させてください」
『はあ? 何あきらめてんだよ、ひよりん。どうしても難しそうなら、明日私も手伝ってあげるから』
「無理です。ごめんなさいっス」
『ひよりん、あのね』
「無理なんです」
『……何かあった?』
「……明日、相談に乗ってほしいことがあるんです」
『わかった。今日はもう寝なよ。明日話は聞いてあげるから。念のため原稿は持ってきなよ』
さすが厳しいけど、世話好きの頼れる先輩。私は通話をきるとベッドに倒れた。でも、寝つくのは難しかった。

******
212恋するひより中編・2:2008/01/17(木) 14:53:09 ID:6BoyuSUu
教室で彼と目を合わせたとき、彼は少し恥ずかしそうにしつつも、私に向かって微笑んでくれた。
私もそれなりのリアクションで対応すべきだったのかもしれなかったけど、ただ俯くしかできなかった。
(だって、恥ずかしくてこれ以上目を合わせられないっスよ……)
彼に不安を与えてしまったのかもしれなかった。でも、私には彼を喜ばせるような器用さは備わっていない。
授業中も、まるで内容が頭に入らなかった。ただ機械的にノートを写しているだけで、頭は全く働いていなかった。
小早川さんに話しかけられても、私は上の空だった。以前からその節があったと指摘されていたとはいえ、
今回はより重症だったらしく、小早川さんと岩崎さんに余計な心配をかけさせてしまった。
「田村さん、大丈夫? 具合悪いの?」
失礼かもしれないけれど、小早川さんに体調を心配される日がくるとは思わなかった。これはシュール。
「私と一緒に保健室にいこうか? 今日は体育もあるし、休んだ方がいい」
それは保健委員としての意見じゃなくて、友達として心配してくれたうえでの言葉なのかも。だからこそ、申し訳ない。
「私は大丈夫……心配してくれてありがとうね」
「何かあったら、本当にいつでも言ってね?」
小早川さんの言葉に、頷く岩崎さん。なんて優しい人達を友達に持ったんだろう。元々は蜜に近付く蝶だった私。
本当にこの二人には、和ませてもらっている。できれば百合的な意味で幸せになってほしい二人ではあった。
……でも、恋愛ってそんな簡単に妄想したりしてしまっていいものなのかな? たとえそれが友達であっても。
私の考えている事は、二人にはとてつもなく失礼な事なのかもしれない。自分が恋愛に迷う立場にあって、そう考える。
あくまで想像は想像で楽しんで、リアルな世界の観念だけは持ち出さないのが、オタクの幸せな妄想のルールのはずだけど。
「小早川さん、岩崎さん」
「なあに?」
「今からすげー変な事聞くけど、ちょっと覚悟してね」
「うん」
「二人が付き合ってる、なんてことないよね?」
私がそう言うと、二人の顔色が急激に変わった。小早川さんは呆気に取られたように、岩崎さんは警戒するように。
「えっ! 田村さん、どうしてわかっ」
「しっ! ゆたかはちょっと黙ってて」
驚くだろうなとは思っていたけれど、ここまで驚いてしまうとは思わなかった。むしろ私が驚いた。
「……田村さん、どうしてそう思ったの?」
岩崎さんが、いつものポーカーフェイスで聞いてきた。そんなに地雷踏むような質問しちゃったけか、私は。
「え……いや、ただなんとなく。二人はすごく仲良しだし、手繋ぐし、まあ私の妄想によるところも……いやいや。
 それはともかく、変な質問しちゃってごめんねー。二人は友達だし女の子同士だし、そんなことないのにね」
すると、岩崎さんは私に目線を合わせてかがみ込むように覗いてきた。怒ってないのはわかるけど、ちょっと怖い。
「田村さん……答えは保留していい?」
「べ、別にいいけど。なんで保留?」
始業のベルが鳴って、みんなが席につき始めた。なぜ否定しない。保留ってことは、認めちゃってるってことっスか?
いつもなら百合萌えで鼻血のひとつでも出すところだけど、今の私はそこまでデリカシーのない人間ではなかった。
なるほど。恋愛っていうものに真剣に取り組むようになると、人の色恋を安易な目でみることはできなくなるということですか。
それを自分の問題になって初めて理解できるだなんて……小早川さんと岩崎さんには申し訳無い事をした。これからもするケド。
携帯が震えた。

******
213恋するひより中編・3:2008/01/17(木) 14:56:09 ID:6BoyuSUu
お昼休み。八坂先輩に呼ばれて、私はお弁当を持ったままアニ研部室へと向かった。念のため原稿も。
「おお、来たな。ひよりん」
八坂先輩は先にお昼ご飯をいただいていた。学校の売店で売ってあるお弁当だった。
「原稿は持ってきたみたいだね。昨日でどこまで進んだの?」
「……し、下書きを三割ほど」
「絶望的だな……」
完成は半ば諦めていた。今は原稿よりもカタをつけなくちゃならないことがあるんだし。
八坂先輩も、その可能性は考えているところだと思う。この人は原稿に厳しいけど、優先順位を間違えない人だから。
「……で、ひよりんのスランプの原因はなんだい?」
「この頼れる先輩達に話してごらんヨ」
「ありがとうございます、八坂先輩、泉先輩。実は……って、泉先輩いつの間に!」
「うわ、ゲーセンのアレ!」
「やあやあ、ひよりん。もう原稿が出来てるかなーと思って、一部もらいにきたんだヨ」
「まだ出来てないっスよ……ていうか、今回の本はBLっス」
「えー、興味なーい」
「もらいに来ておいてその言い草はなんだ、このアホ毛!」
「八坂先輩、曲がりなりにも泉先輩は三年生っスよ」
「まあ、その原稿はまだ仕上がってないんだけどね。残念だったねアホ毛」
「ひよりん、また落したの?」
「失礼な! 毎回ギリギリだけど落したことなんかないっスよ!」
「でも落とす予定なんでしょ? 下書き三割しかできてないし」
「う……もう、何の話をしてたっスかね」
私ははあっとため息を吐くと、椅子に座って二人の先輩を見た。八坂先輩は少し不安そうに、泉先輩は能天気な顔。
「泉先輩に聞いても、わかんなさそうっスね」
「何を! 私だって人並みに恋愛してるし、恋人もいるんだヨ? 相手女だけど」
「ちょっと待てアホ毛。恋愛ってなんだよ。ていうか女ってなんだよ」
「泉先輩……どうして私の悩み……知ってるんですか?」
八坂先輩が私に視線を投げる。
「さあ、悩みの内容までは知らないケド。ひよりん見た瞬間ビビッときたよ。これは色恋の悩みだってネ」
さりげない泉先輩の千里眼に、私は驚きを隠せなかった。それは八坂先輩も同じで、私と泉先輩を見比べている。
泉先輩はいつものネコ口で、私を見てはニヤニヤとしていた。この人、本当はすごい人なのかな……?
「他ならぬひよりんの悩みだし、ひよりんの本が読めないのはイヤだし、何でも話してごらんヨ?
 私達にどこまで助けられるかわかんないけどネ。ひよりんが一人で抱え込む必要はないってこと」
そう言うと泉先輩は、どこからから持ち出したチョココロネをもぎゅもぎゅと食べ出した。
「本当は本もらってすぐ、かがみ達のところに帰る予定だったんだけどネ〜」とか言いながら。
小早川さんや岩崎さん、二人の先輩といい、私は本当に恵まれているのかもしれなかった。
「……で、ひよりんは恋愛沙汰で悩んでいるわけだね?」
「はい。実は……」
そういうわけで私は、彼との馴れ初めとそれまでのこと、そして昨日の事を二人の先輩に話した。
二人とも、真剣に私の話を聞いてくれて……話すだけでも少し、気持ちが楽になったような気がした。

******
214恋するひより中編・4:2008/01/17(木) 14:59:04 ID:6BoyuSUu
「で、ひよりんはどうしたいわけ?」
八坂先輩は真剣な目つきで、私にその問いを投げかけた。シンプルな追求に、私はついたじろいちゃって……。
「ど、どうしたいって言われても……」
「両想いなわけでしょ? 拒絶されるかもって思ってるみたいだけど、もうあんなイラスト見られてるわけだし。
 正直、ひよりんが心配性になっているだけだと思うんだけどね。いいじゃん、受け入れちゃえば。幸せになりなよ」
「か、簡単に言ってくれるっスけどね……」
「ひよりんはその男子のこと、好きなんでしょ?」
「す……好きっていうか……その……それに私、不器用だし、原稿と恋愛を両立させる自信がないっていうか」
「おうわー。ひよりんが赤くなっちゃってるヨ、かあーいーネー」
「真剣なんだから冷やかすなよ……原稿はいつでも描けるけど、この恋愛は今しか出来ないでしょ?」
私は赤面したまま俯いて、ロングヘアの毛先をくるくると指でいじる。好きと考えられても、口に出すことは恥ずかしい。
「しかし、ひよりんもやっぱり女の子だネ。人並みに恋をするんだ。オタクだって恋するんだヨ?」
「知ってるよ私にふるなよ」
「いつもはキスだってなんの躊躇いもなく描いちゃうひよりんがって考えると、ちょっと面白いネ」
「まあ、やるほうと描く方では全然違……」
「わ、私キスなんか描いてないっスよ!!!!!!」
「「……は?」」
私の突然の大声に、というかその大声の内容に、二人の先輩はそろえて素っ頓狂な声を出した。
「何を言ってるんだいひよりん。前の新刊、すっごい見開き使って濃密なキスシーンを」
「そ、そんな恥ずかしいもの描いてないっすよ! 何を言ってるんスか!! キ、キキ、キスだなんて!!」
「……じゃあ、こないだの夏コミのあれ。すっごいがっつりしたセクロスシーンが」
「ぎゃー!!! セッ、セクロ……! 泉先輩、いやらしいっスよ! エッチな台詞禁止っス!」
私は何かから逃げるように、鞄に頭をぶつけていた。二人の先輩は哀れむような顔で見ている。
「……こりゃ重症だね」
ガンガンと鞄に自慢のおでこをぶつける私。泉先輩はふうっと息を吐くと、
「ひよりんは不安でたまらないわけなんだよね。でもね、本気で恋してるなら、みんなそうなんだヨ?」
「へっ?」
泉先輩の急にまともな発言に、私は間抜けな声を出した。それでも、泉先輩のネコ口は変わらない。
「自分が本当に、恋愛感情で好きなのかもわからないって言ったけどさ。本当に好きじゃなきゃここまで考えないよ。
 ただそばにいてほしい存在っていうのは色々あるけど、ここまで不安になっちゃうんならそれは恋愛感情で好きなんだよ。
 だって、ゆーちゃんやみなみちゃんといるときだって、彼のことを考えるんでしょ? きっと今だってそうだろうし。
 一緒にいて心地良い存在の二人より、ずっと相手のことを求めているんなら、もう言い訳できないくらい好きなんじゃん」
はっきりと『好きなんじゃん』と指摘されて、口篭もってしまった。人の気持ちをそんなあけっぴろげに……。
「誰だって、好きな人に嫌われたくないって思って当たり前だよ。好き好きって思う気持ちが強ければ強いほどネ。
 だけど、本当に嫌われずにすむかどうかなんて付き合ってみなくちゃわからない。それは当たり前だよね。
 ひよりんはそのチャンス、捨てちゃう? ただひとつ明らかなのは、『ひよりんは彼のことが好き』ってことだけなのに」
「わ、わかりましたから!」
私は泉先輩の言葉を制止した。そんなに何度も好き好き言われなくても、もう自分の気持ちには気付いてしまいましたって。
「……今日、頑張ってきますから。そのかわり、原稿は完成できなさそうですケド……」
泉先輩と八坂先輩は、目を合わせるとお互いに向かって親指を立てる。実は仲良しだ、この。

******
215恋するひより中編・5:2008/01/17(木) 15:02:37 ID:6BoyuSUu
ホームルーム前の女子トイレで、私は鏡に映る自分と対決していた。
目の前に自分に、決意表明をするためだった。そうでもしないと、緊張でガタガタになってしまうんだけれど。
私は、彼をある場所に呼び出す予定だった。そこで、私の本当の気持ちを告白するつもりだった。
そして、彼の気持ちを喜んで受け入れる事を。携帯を取り出すと、メール入力画面を開いて文章を入力する。
『午後六時に、○○公園に来てください』
非常にシンプルなメールを恐る恐る彼に送る。メルアドを知ってはいたけれど、送ったことは数えるほどしかない。
送信完了の画面を確認すると、私は大きく息を吐いた。鏡に映る私は、大分疲れた顔をしている。
こんなんじゃダメ……いくらオタクとはいえ、女の子ならもっと可愛くしていなければ。
鞄を開くと、そこには二度と完成しないであろう原稿。女の子の鞄の中身なのに、なんとも色気がない……。
「あれ、これは……」
ふと、鞄の底にある小さなものに目が飛び込んだ。眼鏡ケースの陰に隠れて、しばらく見なかった小さなケース。
「これ、コンタクトだ……そうだ、目にゴミが入ってからずっとつけてないんだっけ」
それを手に取り、私は眼鏡を外して再び鏡を睨んだ。ぼんやりしてて、どんなものかは良くわからなかったんだけど。
眼鏡よりコンタクトにしたほうが、ちょっとは可愛く見えるかな? 彼は喜んでくれるかな? 眼鏡っ娘萌えとかじゃないよね?
彼の顔が脳裏をかすめて、私の胸がキュンと疼いた。漫画で何度も描いたとはいえ、我ながらベタなときめき方をしているもの。
(保健室にたしか、コンロがあったよね。お願いして、煮沸消毒させてもらおっと……)
やがて、私の携帯が震えた。この着信音は、彼からのメールだった。好きなアニメの主題歌であることはまだ教えていない。
『必ずくるから、待っててね』
メールを確認したあとの、鏡に映った私の顔は……殴りたくなるくらいニヤニヤしていて、自分でも恥ずかしかった。
(なんつーアホ面してるんスか……私って、こんなんだったんスねー……)
絵を描いているときも、こんなアホ面でニヤニヤしていたのかな……それを、彼はずっと見ていたってことで……。
『絵を描いてるときもそうだけど、田村さんは好きなことをしてるときの顔が一番かわ……イキイキしてるよ』
彼の言葉が思い出される。ということは私は、たとえメールでも彼と接しているときが楽しいということかい。
「めっちゃ……甘々っスね、私ってば」
そう言って、私は自分の口を抑えた。もうひとつ気をつけなければならないところを発見したからだった。
「『ス』はいけないっスね……うう、また言っちゃった。もっと可愛い言葉遣いにしなければ……」
こういうとき、私は自分の女の子としてのステイタスの低さを呪う。眼鏡で、おでこで、胸は小さくて、内に篭もりがちで。
高良先輩のようにスタイルがよかったら、パティみたいに元気なら、小早川さんみたいに可愛かったら……ちょっとヤバイか。
「あ、もうすぐホームルームっスね……もうすぐホームルームですわね……もうすぐホームルームだよお〜☆」
正解がわからない。まあ、普通に喋ればいいだけだったんだけど。私は教室へと急いだ。

******

(うう……また始まっちゃった……)
よりによってホームルームのときに運悪く、私はまたもや生理にぶつかってしまった。
ホームルームの終了と同時にトイレに入り、それなりの処置もすませ、私は今再び教室に戻ろうとしていた。
時刻は午後五時。約束の時間までは一時間。まだ余裕で間に合う。それにしても、人の告白を目の前に始まらなくても……。
窓から軽く西日が差して、私はその光景にデジャヴを感じた。ああ、これは。
(彼と初めて話した日と一緒だ……)
違うとすれば、机の上にノートを忘れてこなかった事だった。あのときは本当に、焦りと羞恥で死ぬかと思った。
でも、あの忘れ物があったから彼と出会うことができたのだと考えたら、あの恥ずかしさは尊い犠牲だったと考えられるね。
216恋するひより中編・6:2008/01/17(木) 15:07:19 ID:6BoyuSUu
「でさー、あれってめっちゃ臭いよな」
教室に入ろうとしてその声が聞こえた瞬間、私は以前のときのように背中を扉につけて隠れてしまった。
この声は……そうだ、こないだの問題児ども。私のノートを見て、好き勝手言ってた連中だ。
(あれ……私、隠れる必要どこにもないのに……)
それでも、教室からその声が漏れているというだけで、私の身体はあのときのショックを思い出して拒絶反応を起こす。
身体は動かない。それでもしっかりと聞き耳だけは立てる。別に私の話をするわけじゃないのに、それでも恐怖が蘇る。
「あーあー、めっちゃ臭いよな。臭い界のアカデミー賞だよな」
声を聞くと、教室には彼らしかいないように思えた。そういえば私はなぜ教室に入ろうとしたんだっけ。
ああ、忘れたプリントを机から取るためだったね。つまり、さっと教室に入って、さっと取って、さっと去ればいいんだね。
私は深呼吸をする。別に彼らのことが大嫌いというわけじゃないけれど、この感情はわかってほしいんです。
「あ、おーい。ちょっと待てよ」
「ん……何?」
一瞬動きかけた私の足が、ピタリと止まった。苦手な声の中に混じった、その声の主は……。
(嘘……あの人いるの!? でも、どうして……)
以前のあのときと同じ状況だった。教室には彼と苦手な男子達、ドアに背中をつけて聞き耳を立てる私。
元々彼はこの時間帯に帰る人間だった。いつも一緒に帰っていたんだから、わかっててもよかったんだけど……。
「お前にちょっと聞きたいことあったんだけどさ」
「何……今日はちょっと急いでるから、早めにね」
「わかってるって、時間は取らせないよ。お前さ、最近田村と仲良いよな?」
突然出てきた私の名前。息が詰まりそうになるのを感じた。
お願いだから、余計なことは言ってくれるな。お願いだから、彼に嫌われそうなことは言わないで。
「うん、仲良くさせてもらってるけど……それがどうかしたの?」
「いやー、仲良くさせてもらってるなんて次元じゃないだろ。ほとんど毎日一緒に帰ってるじゃん」
気付かれないようにしてきたつもりだったけど、バレバレだったんだ……それは彼らにだけ?
小早川さんや岩崎さんが知らないということは、クラス中には知られてはいないっていうことだけれど……。
「別にいいだろ……それがなんか関係あるの?」
「そんなにつっかかるなよ。誰も悪いだなんて言ってないんだから」
「じゃあ、もういいよね。帰るよ」
そうだ! こんな人達放っておいて、帰ったほうがいいっスよ! そんなことより私との約束っス!
「ちょっと待てって……なあ、お前田村のこと好きなの?」
「……」
こら、余計なこと聞くなっス! そんなこと言って、彼が馬鹿正直に答えてくれるわけないでしょうに。
そんなに知りたいなら教えてあげるケド、彼は私が大好きなんスよ! ざまあみろっス!
「なあ、どうなんだよ」
「うん、好きだよ。田村さんの事」
彼の言葉を聞いたとき、私の胸がドクンと高鳴り、腰が崩れそうになった。
また、そんな堂々と言わなくてもいいじゃないっスか。しかも人前で。嬉しいけれど、は、恥ずかしい……。
男子達から、冷やかすような嬌声が響く。そんな品のない行動で、彼を困らせないでほしいんだけど。
「うわーやっぱりかよ。お前もスキモノだな〜」
「……何」
「いや、冗談だよ。でもよ、よく考えてみろよ。田村だぜ?」
「だから何が言いたいんだよ」
217恋するひより中編・7:2008/01/17(木) 15:09:17 ID:6BoyuSUu
彼の声に怒気が込められる。いつも柔らかい口調で話す人だったから、それはとても意外な響きだった。
「言いたい事があるんなら、言えばいいだろ」
「ほら、田村ってさ、ちょっとオタク入ってんじゃん」
ちょっとどころじゃないんだけどね……もう何年も、肩までどっぷり浸かってるんだけど……。
本当に何が言いたいんだか。私のほうも少しイラついてきた。私のことを否定したい? またキモいって言う?
言いたいなら言えばいい。彼は、そんな私を受け入れてくれたんだから。何を言われても、今更痛くも痒くもない。
「それがどうかしたの?」
「お前知ってて付き合ってるんだよな? こないだノート見たときも、お前教室にいたもんな」
「……」
「考えてみろよ。いくら人の趣味に口を出しちゃいけないって言っても、アレはないんじゃないか?」
「別に……僕も田村さんも、何を好きになろうが自由だし」
「じゃあさ、お前こういうの知ってるか? ああいうのが好きな奴をいわゆる『腐女子』っていうらしいんだよ。
 腐女子ってさ、クラスの男子でまでああいう妄想したりするんだぜ。酷いものだと、自分の恋人でするんだとよ」
おいおい、ちょっと待ってくださいっスよ……! いくら私でも、クラスの男子でそんな妄想なんかしないって!
そもそもクラスメートでそんな失礼な妄想を……そんな失礼な……し……失礼な……。
していた。私の頭によぎるのは、友達の小早川さんと岩崎さん。ああ、そういえば私は友達で妄想する女だった。
「……そんなどっからか適当に聞いたような眉唾な話、よく堂々と言えるよね」
「いや、本当なんだって。俺の姉ちゃんの友達が軽く腐女子入ってんだけど、もうそんな妄想がバリバリらしいぜ」
「だからって、田村さんがそうだとは限らないだろ」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……! 弁明してくれるのは嬉しいけど、私はそういう女なんです……。
私は少なくとも彼を妄想の材料にしたことはなかった。別に自分からセーブしたわけじゃなくて、自然にしなかった。
でも、これから先もそうだと誓う事が、私にはできる? これからも、彼でよからぬ妄想をめぐらさないと自信が?
「でもさ〜お前ってイケメンとは言わないまでも、顔は悪くない方だろ? 腐女子って、アニメとかだけじゃなくて、
 芸能人とか、そのあたりも妄想の道具にしちゃうらしいし、田村がお前に近付いたのも割とその辺の考えがあるかもな」
こいつは何を言ってるんスか? 私がそんな理由で、彼に近付いたって? いや、そもそも近付いたのは私からじゃないし。
あんまり適当なことを言って、彼を惑わそうとしないで。ただでさえ私は、後ろめたい事が多い上で彼と一緒にいるんだから。
「……推測だけなら誰だって言えるよ。お前達に田村さんの何がわかるんだよ。僕は顔もそんなによくない」
彼の言葉が嬉しかった。最後まで私のことを信用してくれて、いつもの優しさを隠して怒ってくれている彼の言葉が。
「お前、田村には告白したの?」
「……したよ。返事はまだもらってないけど」
「それっておかしくないか? 毎日一緒に帰るような関係なのに、どうして田村はすぐにOK出さないんだよ」
「誰だって、急に告白なんかされたらすぐに返事なんてできないだろ」
「だって田村はみたところ、お前以外に男の影が見えないし、まああれじゃあ男ができそうな感じでもなさそうだけど、
 それに男に耐性無さそうだし、ちょっと顔のいいお前とあれだけ仲良くなって、告白までされて、OK出さないかな?」
「今日返事を聞くんだ」
「たぶん絶望的だと思うぜ。だって、あれだけ男に縁遠い趣味の女がお前にすぐにOK出さないって、絶対別の目的があるよ」
「……」
あれ? なんで何も答えてくれないっスか? そいつの言ってることは単なる言いがかり、憶測なんですけど……。
「なあ、考え直した方がいいかもよ。俺はあんまりオススメしないなあ。オタクって何考えているかわかんないし。
 まあ誰と付き合うかは個人の自由だけどさ。田村も案外、お前に告白されて困ってるかもしれないんだぜ」
「……」
218恋するひより中編・8:2008/01/17(木) 15:11:16 ID:6BoyuSUu
お願いだから、何か言ってよ……私はそんなことを強く祈った。さっきまでのように、そいつの言う事を否定してよ。
そいつの言ってる事は全部でたらめなのに、なんで何も言い返してくれないんだろう。私は最悪の想像をせざるを得なかった。
ふと、向かいの教室の時計に目が移る。五時四十分。そろそろ公園に向かわないと、私の方が時間に間に合わなくなる。
(……私、信じてるから。貴方が私の事、信じてるって。絶対、公園に来てくれるって)
私はそっと扉から背を離すと、学校を出るべく校門へと向かった。半ば、その場から逃げるように。

******

季節は冬に近付いていて、太陽が沈むともう肌寒い季節だった。私はコートを羽織ったまま、公園に佇んでいる。
六時五分。私も公園に到着したのが六時ギリギリだった。彼はあの人達に足止めされているから、もうちょっとかかる。
私は鞄から手鏡を取り出すと、髪型、コンタクト、初めて塗ったグロス、それらでルックスの最終確認を始めた。
コンタクト、彼は驚くかな。気付かれなかったらどうしよう。可愛いって言ってくれるかな。喜んでくれるといいけどね。
六時半。やっぱり寒いっスね。外はもう暗くなり始めて、私は鞄からグロスを取って、クリーム代わりに再度塗った。
ちょっと遅いね……あの人達、いつまで彼を足止めしてるんだろう。今ごろ、ここに向かって走ってきてるかな。
七時。外はすっかり暗くなって、目に見える民家の明かりはすべて灯りきっていた。公園の自販機で、コーヒーを買った。
(私、信じてるからね)
七時半。手袋を忘れていた事を後悔した。元々、夜以外では必要もなかったんだけど。私は冷えた手を擦り合わせる。
ふと、自分の指のペンだこに触れる。彼が勲章だと褒めてくれたペンだこ。それだけで少しだけ愛らしくなった。
それにしても遅い。彼の身になにか起こったのかな……メールを打って確認しようかな。『今どこにいるの?』って。
本当に、何かの事故に巻き込まれたからと思っている? 本当は彼が来ないかもしれないって思ってない?
いや、私が彼を信じなくてどうするんだろう。私は携帯をポケットにしまった。
八時。携帯のメールを確認する。私はたしかに、六時に公園でと送っているし、彼は確かに返信を送っている。
コンタクトだと目が乾いてしまう。私は眼鏡っ娘脱却を諦めて、コンタクトを外し眼鏡を再び装着した。
九時。我慢できずに、彼にメールを送った。九時半になっても、返信はこなかった。身体は芯まで冷えていた。
十時。母親からメールが入った。『すぐ帰るから、心配しないで』と送った。夜の公園は危険が多いとはいえ、ここはまだ安全。
十一時。コーヒーの缶が四本目に突入して、私は寒空に光る星に祈った。あの人は必ず来てくれる。
でも、もしこれないとしても、どうしてメールを返してくれないんだろう。もしかして、私のこと本当に……。
(お願いだから……お願いだから来て)
私の願いは叶わず、ついに時刻が十二時を回った。メールの返事は、ついに1通も返ってこなかった。
「あー……またフラレちゃったかあ……」
私は携帯をしまうと、砂場の砂を意味も無く蹴ってみたりした。肌はもう、冷風を浴びすぎてカサカサに乾いてる。
「やっぱり私に恋愛は向いてないんだねー。中学のときに気付いていたはずなんだけどねー」
公園を出ると、街灯のない家路はとても暗く、私は親を心配させぬべく、でもゆっくりと歩き始めた。
「このフラレ方は漫画のネタに活かせるっスね! 久しく描いてなかったから、百合ネタなんか最高っスよね。
 寒空の下大好きな女の子を待ち続けて、身体中を冷やした少女。もう帰ろうとしたときに、相手登場!
 そっと後ろから抱き締めて、『ごめんね、身体冷やしちゃったね』とか言って、それから、それから……」
私はずいぶんと大きな声で独り言を口にしていた。私以外誰もいない静かな道に、私の声だけが響く。
漫画のネタ? 彼のことを考えると、集中線の一本も引けないくらい集中力が切れるくせに。筆だって、満足に持てないくせに。
新刊だって、彼のことを思いすぎるあまり落としてしまったし。三日もあれば、全部描きなおすのも不可能じゃなかったのに。
漫画も彼も、私は最後までやりきることができなかった。声を殺して泣いたのは、きっとそれが悔しかったからに違いない。
219みゆつか愛してる:2008/01/17(木) 15:13:28 ID:6BoyuSUu
投下は以上です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
誤字脱字ありましたら申し訳ありません。今回はないはず……。
それと、一度の投下に8〜9レスと多めに拝借して申し訳ありませんorz

では、他職人さんのSSを舐めるように読む作業に戻ります〜。
220名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 15:22:57 ID:lmOyl4I+
>>206
まってましたGJ!
本家ゴッドかなたさんの出番はありますか?!
あとショタあきらさまもGJっした!

そしてまたHPのトップにやられた・・・あんたって人はなんてものを!
221名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 15:33:46 ID:AhEFkOr/
>>206
番外編きたー!また期待が溢れそうな感覚がひしひしと。
まずはのんびり待つことにしますぜ
222名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 15:47:33 ID:pcLGdNW5
GJ!!
恋愛描写のひとつひとつが細かくて能力の高さを感じます
SS描くほうもちょっとやってる、みたいなレベルのオレじゃ絶対できそうにもないわ…
なにより、ひよりん好きのオレにはたまらない作品であります!!
早く続きが読みたいけど、ひよりんのSSって少ないからまだまだ続けてほしいっス!!
223名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 17:22:12 ID:HNaAdOJb
>>206
またこの世界の話を垣間見ることが出来て嬉しい限りです。
一年生ズも出てきたら嬉しいな、なんて……とりあえず全裸待機しときますね><

>>219
ひよりんだけじゃなくって、周りのキャラ達もいい味出してますね。
超絶GJです!続きが気になる!
224名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 18:59:46 ID:NWD8PqTs
>>219
あああああ
胸が痛い胸が痛いッスよ!!
続き心待ちにしてまッス
225名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 20:00:11 ID:HI1H3cCD
これから投下させていただきます。
連投規制にかからないかどうか心配ですが……

・非エロ。ややシリアス
・重要キャラではないがオリキャラあり。
・11レス。
226先生という仕事:2008/01/17(木) 20:00:47 ID:HI1H3cCD
「黒井先生……私はどうすればいいんでしょうか」
「どう……って言われてもな」
 斜陽が差し込む進路指導室。二人しかいない室内で二人ともが黙れば、そこには静寂が
訪れる。
「自分がどうするかが決まらんと、ウチも何も言いようがないで」
 進路指導室はその名の通り生徒の進路指導のために用いられる部屋であり、黒井ななこ
はこの年、進路指導の教官という肩書きを背負わされ、それを全うするためにこの場所に
いた。要するにななこは現在進路指導の面談の真っ最中である。
「なあ、浅野……自分は何がしたいんや?」
 問われた女生徒は俯いたまま。僅かに覗けるはずの表情も、彼女のセミロングの髪が覆
い隠してしまっている。
 再び沈黙。
「あんなぁ……」
 ななこも暇人ではない。このまま座禅もどきを続けていられるほど気長な性格でもない。
 本当は、ななこは彼女が何故黙っているのかを知っていた。ななこの誘導尋問ではなく、
本人の口から答えて欲しいと思っていた。彼女が進もうとしている道は、強い意志がなけ
れば歩むことができないものだから。
「昔、三年の秋になっても志望が決まらんちゅうやつがおったんやけどな」
 その生徒とは、プライベートでも友人と言える間柄だった。ゲームの貸し借りを当たり
前にやっていたし、保護者代わりに旅行に同行したこともある。その頃一緒にやっていた
ネットゲームはもう何年もログインしていないが……。
「あんたはそいつとは違って、やりたいことがあるように見えるんやけどな」
 彼女の沈黙は、言うべきことがないからではなく、言いたいことが言えないから。そん
なふうに、ななこには見えた。そして、彼女は演劇部に所属している。
 ならば、答えは一つしかない。
「はい……私、芝居がやりたいって思っているんです」
 震える声で、初めて彼女は自分の気持ちを伝えてくれた。
「親御さんには話したんか?」
「……反対されました」
 そらそうやな、と心中で呟いた。かつて、教え子の泉こなたから声優として成功するこ
とがいかに狭き門かを聞かされたことがある。それは俳優でも同じことだし、ななこ自身、
十年前に第一線で活躍した女優の名前を思い出すことができない。
 彼女が選ぼうとしているのは、そういう道なのだ。ななこも自分が親だったら反対する
だろうと思った。
「芝居なんかより真面目に働いたほうがずっと幸せになれる……とかそんな感じに言われ
たんやな」
「……はい」
 大体予想通りである。
「そうやな。芝居やって成功できるのなんてほんの一握りや。そこそこ有名になっても、
どっかでバイトせなあかんって奴もおる」
「……はい」
 だから彼女の親の言うことは正しい。……正しいのだが……。
「自分、それでも芝居やりたいんか?」
 みたび、沈黙。
 おそらく、彼女は両親から頑なに反対されたのだろう。彼女自身の口から『諦めます』
と言い出すまで徹底的に。そのことが、彼女を沈黙させてしまっているのだ。
 だが、今度こそ彼女自身の口から意志を確かめなければならない。その意志が沈黙を破
れるほどの強さを持っているか否かを。
 もしそれだけの意志を持っているのなら、できるだけ彼女の力になってやりたい。自分
が出会った生徒全てに対してそう思いながら、ななこはずっと教師を続けてきたのだ。
「……やりたいです」
 やっとこっちを見てくれた。ななこは微笑みでそれに応える。
「……そっか」
「親は、大学に行って勉強しろって言うんですけど……」
 ならそうするべきだ、と言うのが教師として正しい仕事かもしれない。
「役者やるんなら何でも経験しとくべきやで。大学行くってのも悪くない選択肢や。大学
とは別にそれ系の学校行くってのもありっちゃありや」
 それなのに、自分の生徒に茨の道を歩めと言っているのだ。
 自分のしていることが先生として正しいのかどうか、それを悩んでいることは目の前の
生徒には懸命に隠していた。進路指導はまだ始まったばかりなのだ。
227先生という仕事:2008/01/17(木) 20:01:31 ID:HI1H3cCD
「柊先生、お願いします!」
 向日葵を模ったバッジをつけたかがみに、かがみより五歳から十歳は年上と思われる女
性が頭を下げた。
「どうか、どうかあの子を取り戻して下さい!」
 まるで子供を誘拐されたかのような言い方だが、もちろんそんなことはない。誘拐事件
が発生していれば、頼るべきは弁護士の柊かがみではなく警察である。
「あのですね……まずは頭を上げて……それから落ち着いてください」
 依頼者はかがみに促されて頭を上げたものの、落ち着いているようには見えなかった。
「ええと、伊藤さん……あなたはこれから離婚裁判を行うわけですが」
 離婚の方法と手続きに関してはいくつかの種類がある。協議離婚は両者の合意の上で離
婚するもの。役所に書類を提出するだけの簡単な方法。調停離婚は家庭裁判所の調停によ
って実行する離婚であり、これで決まらないようでは事態は泥沼化する。ここで離婚時の
条件に合意できない場合は家庭裁判所が強制力をもって審判離婚させることもできる。
 以上の条件で事態が解決できない場合は裁判に持ち込むことになる。離婚するかどうか
を裁判で決めるという現実に、かがみは少なからず戸惑いを覚えた。
 訴訟するためには相応な理由が必要とされるが、これがまた酷いものだった。彼女の夫
はとんでもない女ったらしでそれに耐えられなかった彼女が離婚を申し出たのだが、夫は
格式のある家柄らしく体面を考えて離婚に応じない。更に跡継ぎが必要だからと言って子
どもの親権を彼女に渡す気はないのだそうだ。あちら側は財力にものを言わせてやり手の
弁護士を雇ったらしい。
「あなたにとっての最優先は、子どもの親権なんですね?」
「私、あの子がいないと……絶対、あんな男には渡さないで下さい!」
 それから彼女は、憎しみを込めた罵声で、いかにその男が下劣であるかを語った。あの
男に育てられれば子どもは必ず不幸になると説き、親権は自分に相応しいと訴えた。
 ため息の出る思いだった。自称格式のある家の男は品性の低い素行で妻に愛想を尽かさ
れ、妻のことを自分の服飾品としか考えていない。そんな男のいる家に何の格式があると
いうのか。妻も妻で、愛する子どもの父親を憎しみの対象としか見ていない。資料によれ
ば、二人は結婚前に子どもができていたとはいえ、恋愛結婚だったのだ。
 かつては愛した人をそこまで憎める――それが、かがみの目の前の現実。
 法律を正しく行使し、依頼人の利益を確保することが弁護士の務めである。正義の味方
を気取るつもりはなかったが、それでも『正しい』ことをするのが仕事なのだという誇り
があった。
 だが、この仕事をしていると、人間の醜さに直面することが度々ある。離婚裁判のどこ
に正義があるというのか。この二人の子どもは十歳に満たず、一番大事な子どもの意見は
優先事項ではないのだ。両親が争っているという現実は最も子どもを傷つけること。その
子どもをケアしてあげることが『正しい』ことではないのか。かがみのやろうとしている
ことは、その争いを激化させることなのだ。
 かがみの依頼人も、傷つかずに済む保証はない。おそらく相手の弁護士は、夫が他の女
性に目を向けるのは妻に女としての魅力がないからだとか、人を侮辱するようなことを平
気で言ってくるだろう。弁護士とは、それができる職業なのだ。否、やらなければならな
い職業である。依頼人の利益のためならば。そして、かがみも同じことをすることになる。
かがみにとっての頼みの綱は、彼女が必死に訴えるところの男の下劣さなのだから。
 その上で親権も勝ち取らなければならない。こちらは子どもの年齢を考えればそう難し
いことではないだろうが。
 結局のところ、かがみの仕事が『正しい』という保証はどこにもない。離婚して親権が
欲しいというのが依頼人の願いだが、子どものことを考えれば離婚するべきではないし、
男の方だって子どもを愛しているかもしれないのだ。
 この裁判が終わったら全てがうまくいくという保証はどこにもない。
「お願いします! 先生しか頼れる人がいないんです!」
 目の前の女性が自分のことを先生と呼んで縋ることが、かがみには重荷だった。
228先生という仕事:2008/01/17(木) 20:02:17 ID:HI1H3cCD
「高良先生、お疲れさまです」
「ありがとうございます」
 みゆきは女性看護師から差し出されたお茶をお礼をいいながら受け取った。それを一口
飲み、時計を確認する。昔のみゆきならとっくに寝ている時間である。
「なんとか一息つきましたね」
 みゆきが、ではなく仕事が、である。この時間に来院していた患者を一通り診察し、そ
の全てを大事なく終えることができた。
「ただの風邪くらいならこの時間に来るべきじゃないんですけどね」
「仕方ないですよ。お母様たちもお子さんが可愛いのでしょう」
 みゆきはその一言で片付けたが、医師たちにとっては深刻な問題である。
 みゆきは志望どおり医師となり、研修医として現場にいるうちに、小児科の医師不足の
深刻さを知り、自ら小児科を選択した。みゆきの人の良さゆえの決断だった。
 みゆきが勤務しているのは、みゆきを含め六人の医師と十数人の看護師が勤める小規模
な小児科の病院。腕のいい医師やスタッフが揃っており、評判の良い病院だった。
 その規模にしては珍しく、休日や夜間も診療を行っている。患者にとってはありがたい
ことだが、数の不足もあって医師にとっては負担である。みゆきのような自己犠牲の精神
が小児科医の間では当たり前になっており、その上になんとか経営が成り立っているのが
小児科の現状である。この病院はみゆきが来たことでまだマシになったほうだった。
 本来、夜間や休日は平日の診察が待てない緊急の場合にのみ来院するべきなのだが、親
のほうはそう考えていない。それこそただの風邪程度でも医者を頼って来るのだ。この日
の夜勤も、そんな患者の対応に追われた。
 だが、みゆきはそれを疎ましいと思うことはなかった。
 熱と咳に苛まれ、自分の身体がままならないあの苦しみを、みゆきは覚えている。
 何一つ理解できないまま、ひたすら痛みに耐え続けたあの辛さを、みゆきは覚えている。
 今ここに医者がいてくれたら、と思ったことが何度もあった。
 自分はそんな人たちの力になってやりたい。それだけのことだ。
「あんまり来られると、本当に緊急を要する患者が来たときに対応できなくなるんですけ
どね。高良先生、人が良いから『あなたは後にさせてください』って言えなさそうで」
「言えると思いますが……私ってそんなイメージでしたでしょうか?」
 医師としては一番の若年者だったので無意識のうちに遠慮があったのかもしれない。
「医者は目上の人が相手でも、言うべきことはきちんと言わなければなりませんから……
今後注意いたします」
「まあ、それは――」
「高良先生!」
 受付の声と共に、子供を抱えた女性が現れた。
「先生、なんとかしてください!」
 患者の五歳ほどの少年の顔には見覚えがあったが、その顔は紫に変色していた。
「落ち着いてください。何があったのですか?」
 見ただけである程度のことはわかるが、もっと情報が必要だった。泣き叫ぶ母親から、
なんとか話を聞かなければならない。
「私が悪いんです! 私が目を離したせいで」
「何があってこうなったのかを教えてください」
 自分自身が焦ってしまいそうだったが、逸る気持ちをなんとか抑える。
「お餅を食べてたんです! それで」
「分かりました。吸引の準備をお願いします!」
 餅を喉に詰まらせ、呼吸困難に陥ったことによるチアノーゼ。みゆきはそう判断した。
 スタッフに指示を出してから、みゆきは小さなミスに気付いた。『吸引』だけでは何を
吸引したいのかわからない。
 幸い、彼女たちはその指示を的確に理解して、みゆきの意図した通りの準備をしてくれ
た。彼女たちなりに状況判断してくれた結果だ。運が悪ければ、この些細なミスが命取り
になるかもしれないところだった。もっと言うなら患者を見た瞬間、呼吸が苦しいことと
原因は食べ物であろうことを推測するべきだった。みゆきの理想は、それほどに高い。
 みゆきにはそれを悔やむ暇はない。この処置は患者を傷つける危険を孕んでおり、ミス
は許されない。かといって過剰に慎重にやるわけにもいかない。今こうしている間にも、
子供は苦しんでいるのだ。一分間息を止めるだけでも辛いのだから、この子供の苦しみは
その遥か上をゆくだろう。事実、患者の子供は少しも暴れていない。
「先生、お願いします!」
 取り乱している母親に一度だけ肯いて、みゆきは患者を寝かせたベッドに赴いた。
 いくら若輩だろうと、みゆきは医師であり先生と呼ばれる人間なのだ。
 そのプレッシャーと戦いながら、みゆきはスタッフから器具を受け取った。
229先生という仕事:2008/01/17(木) 20:02:54 ID:HI1H3cCD
「柊先生、こんなの覚えて役にたつんですかぁ?」
 つかさの授業を聞く十数人の生徒の中の紅一点。年の頃十八から十九あたり、その彼女
が気だるそうに質問してきた。
「役に立ちます。ちゃんと覚えないと先生の説明を聞いてもわからないでしょ」
 白板に何も知らない者には訳の分からないカタカナを書き連ねて、解説を加える。
「アルティ、じゃなくて、アリュメットはマッチ棒くらいの太さに切ることで、バトネは
バトンっぽく切ったもの、ブリュノワーズは1、2ミリくらいの角切り、ペイジャンヌ、
じゃなくてペイザンヌは厚さ1ミリ、角は1センチくらいの角切りです」
 フランス料理における、切り方の用語である。日本語でも呼び名はあるが、人によって
はこのフランス語のほうを使ってくるので、正しく覚えなければ後の授業に差支えがある。
 つかさは調理師専門学校を卒業して、小さなフランス料理店で働いていた。数年が経ち
シェフにも一人前と認められるようになった頃、かつて通っていた専門学校から講師をし
てみないかという打診が来た。いつかは自分の店を持ちたいと思っていたつかさは、教え
ることで得るものもあるだろうと考え、掛け持ちでこの仕事を引き受けた。
 講義といっても実際に料理を作ることばかりではなく、料理の理論やテーブルマナーに
関する授業も行っている。現在は調理室兼教室でフランス料理の簡単な用語とその実践に
ついて教えているところだった。
 その授業が、つかさには上手くこなせなかった。正しく知識を持っていて何と伝えれば
いいかもわかっているが、人前ということもあり、思ったとおりに口が動いてくれない。
「よくわからないんですけどぉ」
「これから実際にやってもらいます……」
 ただでさえ紛らわしい用語の数々だが、つかさの説明が要領を得ないせいで余計に覚え
づらいのも事実である。
 とはいえ、これだけ突っかかってくるのも奇妙であった。このつかさの授業が始まって
から一事が万事この調子で、小学校のクラスに一人はいる悪ガキのような態度であった。
他の生徒たちは一様に不快そうな顔をしている。せっかく志を持って入学してきたという
のに、場の雰囲気を読まずにこれだけ喚きたてていれば不愉快なのも当たり前である。
 そしてその責任は彼女を止められないつかさにもある。
「なんでこんなややこしい名前つけるの。覚えるほうの身になれっての」
「あ、あの、それはね……」
 ややこしいように思える用語が存在するのは、あった方が便利だからだ。どんな食材を
どんな目的で調理するか、その指針がはっきりしているとき、どんな切り方をするべきか
一言で説明できるようにするためだ。
 そう言ってやればいいとわかっているのに、できなかった。
 次に言葉を発すれば、彼女はまた何か反抗してくるのではないか。何を言っても、彼女
はわかってくれないのではないか。
「先生、ボケっとして怪我しそう」
 そんなことはない。包丁は正しく扱える。そう言い返せばいいのに……。
 情けなくて涙が出そうだった。幼い頃は、男の子にいじめられた時のことを思い出した。
そんな時はいつもかがみが守ってくれたのだが……。
「大体、料理人ってのは偉そうなんですよ。専門用語を使うのってそうゆうことでしょ。
こんなのやってて何が楽しいんだか」
 彼女のその言い方に、つかさは引っかかるものがあった。
 数学や歴史を習っても役に立たないと主張する学生はたくさんいる。だが、調理師専門
学校に来て料理用語にいちゃもんをつけるのは不可解だった。好きなことならどんなに辛
くても頑張れるものなのだ。
 つかさはこの女生徒の一連の行動から気付いた。
 この子は、料理が好きではない。それなのに今ここにいるという矛盾に彼女自身も憤り
を感じていて、その矛先をつかさに向けているのだ。
 結局のところ、彼女は子供なのだ。ただ喚くだけでしか反抗できない。そんな子が何故
調理師専門学校に入ったのか、つかさには知る由もない。それでも。
「椿さん」
「なんですか」
 彼女を見据え、その名を呼ぶ。
 生徒たちの視線が痛かった。その視線には、つかさへの不信感が込められているように
つかさには思えた。辞めてしまいたいと思った。ここから早く立ち去りたいと思った。
 それでも。
「これから先生がやってみてます。よく見ていてください」
 自分に先生と呼ばれる資格があるとしたら、料理を教えることだけしかない。
 だから、先生であるために、つかさは包丁を手に取った。
230先生という仕事:2008/01/17(木) 20:03:37 ID:HI1H3cCD
『先生、原稿はまだですか!?』
「今やってるところです。締め切りまでにはなんとか」
 先生と呼ばれた女性――泉こなたは電話の相手に頭を下げた。相手はここに居ないから
意味がないと、かつてかがみに指摘したことがあったが、分かっていても無意識にやって
しまうものなのだ。
『締め切りは明日ですよ! わかってますよね』
「完成度は80%です」
 頭を下げたいという気持ちに嘘はないが、台詞の方は大嘘だった。本当はまだ一文字も
書いていない。
『ネタはいいですから、お願いしますよ』
 巫山戯てないで原稿を書いてくれという意味なのか、こなたの嘘を見抜いての返しなの
か、こなたには判別できなかったが、とりあえずネタが理解して貰えたことに小さな満足
を覚えた。編集とのお決まりのやりとりを一通りこなして電話を切ると、作家・泉こなた
はパソコンとの睨めっこを再開した。
 内容が決まってないわけではない。完結までのプロットは既に出来上がっている。
 夢も目標もなく漫然と日々を過ごしていた女子高生が、ある切欠で小説家になることを
志すという物語。――それは、こなた自身をモデルにしたものだった。
 高校を卒業してから作家になるまでに、それなりに苦労を重ねてきたが、それはまた別
の話。あくまで主人公の少女が何を思いどう変わっていくかを描いた物語である。
 あの頃の気持ちを思い出しながらキーボードに手を置き、何文字か、あるいは数ページ
分の会話文を打ってはこれは違うと感じ、バックスペースでそれを消す。身体に疲れを感
じたら背もたれに寄り掛かって伸びをして、画面とキーボードに視線を戻す。十五分の周
期でそれを繰り返し、筆は遅々として進まない。勿論、筆というのは比喩表現だが。
 ある雑誌で十二回に亘って連載されるうちの第七回。これからこなた、もとい主人公は
先生に決意を打ち明けることになる。先生は主人公に目標が出来たことを喜びながらも、
主人公が作家になろうと考えた理由を尋ね、進路相談の現実的な話を交えながら理由を語
ってゆく。主人公は活字嫌いだったうえに成績も芳しくなく、そんな理由から自ら諦めか
けていた選択を先生は真剣に後押ししてくれるのだ。
 そんな話になることは既に決定しているのだが、頭の中に文字が浮かんでこない。調子
のいい時はどんな言葉を使えば自分が伝えたいことを表現できるのかが自然に閃くのだが。
 自分自身のことならば、大抵のことはすらすら書ける。だが、ななこ、もとい先生の事
をどう書けばいいのかがわからなかった。この先生は生徒にフレンドリーな態度で接する
人物として設定されているのだが、それがこなたには巧く表現できなかった。それらしき
人物を書いてみても、それは単なる気さくな人間でしかなかった。こなたが今も先生と呼
んで慕っている黒井ななことは全くの別人になってしまう。
 夢と現実の板挟みに悩んでいたこなたを導いてくれたななこ。こなたは、彼女に習った
生徒たちがどんなに先生を慕っているかをも同時に表現したかった。
「ま、同じ先生でも大違いだよネ」
 ななこに比べてみれば、一遍の小説さえ碌に書けずに編集さんを困らせてばかりの自分
のどこが先生なのか。自嘲の笑みを漏らす。
 作家になったのは、書きたいことがあったからだ。無論、ただ書きたいだけなら同人誌
でもなんでも方法はいくらでもある。それでも、こなたはプロとして書くことに拘った。
拘るだけの理由が、こなたにはあった。
 今回の作品は、自分にそれを書くだけの力があるかどうかを示す試金石になると考えて
いた。この作品が好評で迎えられるならば、自分は小説家として一人前だと。
 それ以前に、完成さえできないようでは……。
 スランプに陥ったことは何度もあったが、今回は深刻だった。自分自身の小説家として
の原点に関わる問題なのだ。十年前のあの日、もしこのことを小説に書くことがあるとし
たら必ずななこに読んでもらおうと、密かに決意していたのだから。
 そう、高校を卒業してからもうすぐ十年が経とうとしている。先生は、あの頃の友達は、
元気にやっているだろうか。かがみは弁護士に、つかさは料理店に勤めながら調理師専門
学校の講師に、みゆきは小児科医になった。どの職業も並みの苦労では勤まらないことは
わかっている。干渉しすぎるのも悪いかと思い、あまり連絡はとっていない。
 もしかしたら、不調の原因は懐旧の情かもしれない。そんなことも考え始めた。
「気分転換、気分転換」
 自分に言い訳をしながら、こなたは作家になってからは手離さなくなった携帯電話の画
面に見知った番号を表示させた。
231先生という仕事:2008/01/17(木) 20:04:20 ID:HI1H3cCD
『おう、泉。また急に電話寄越したもんやな』
 十数秒の間を開けて、ななこの声が聞こえてきた。
「電話を予告することなんてできないじゃないですか」
『はは。ま、そらそうやな。もうネトゲもチャットもやっとらんし』
 ななこの軽い笑い声。電話の向こうにその存在を感じる。
「先生は迷惑でしたか?」
『なんや泉らしゅうないな。うちらはもうそんな関係やないやんか』
「でも、先生は先生ですから」
『……悩みでもあるんか?』
 ななこがどうやってこなたの心境を察したのか、こなたにはわからなかった。知らない
うちに声のトーンが低くなっていたか、話の脈絡がおかしいと感じたのか、それとも電話
をかけてくること自体が変だと思ったのか。
 どうやって話を切り出そうか、少し悩んだ。そもそも先生と何を話したかったのかすら
決めていない。ななこに言わせれば、もう先生と呼ぶような関係ではないらしいが――
「先生って何なんでしょうね」
 思わず口をついて出た疑問。
「何をやってれば先生なんでしょうか」
『言葉の定義ならお前の方が専門やろ。……まあ、教師とか塾講師なんかは先生やな』
 電話を持っていないほうの手で指折りして数える。数えても特に意味はないのだが。
「インストラクターとか、教える仕事はみんなそうですね。……つかさも」
 学校で料理を教えるつかさのことを思い浮かべる。生徒にバカにされてないか、多少の
不安がある。
『医者とか弁護士とか』
「専門知識が必要で、敬うべき相手として接する職業……みゆきさんとかがみもそうだ」
 お人良しのみゆきは必要以上に気負っていないか、真面目なかがみが理不尽な現実を目
の当たりにしてどう思うのか、やはり心配だ。
『あとは創作する仕事やな……作家みたいにな』
「……先生って何なんでしょう」
 もう一度、疑問を繰り返す。
「職業だけで先生って呼んでもらえるわけじゃないですよね」
 もしこなたが筆を折ったら誰も先生と呼んでくれないだろうが、ななこが教師の職を辞
したとしてもこなたは先生と呼び続けるだろう。
「未だに私が先生だなんて思えないんです」
 電話越しにななこの溜息が聞こえた。ななこにも思うところがあるのかもしれない。
『まあ、作家は他の先生と違うて資格のいらん仕事やからなぁ』
 作家は名乗った者勝ちと言われる。評価がどうあれ、名乗ってしまえば作家なのだ。
 実際には、それなりの条件を満たさなければプロとは呼ばれないのだが。
『そうやな……ウチの考えるに、先生っちゅうもんはな――』

232先生という仕事:2008/01/17(木) 20:05:07 ID:HI1H3cCD
「はぁ」
 かがみは裁判に関わる書類を全て片付け、深くため息をついた。その理由は二つ、疲れ
と安堵。
 裁判の結果、依頼人と男性との離婚が成立し、親権を勝ち取ることができた。相手方の
弁護士の活躍のために、慰謝料と養育費についてはかなり減らされてしまった。
 目的は達成したので勝利といえば勝利である。だが、かがみはこの勝敗という考え方が
嫌いだった。裁判は決してゲームではないのだ。
 後味の悪い裁判だった。依頼人と元夫がしていたであろう争いを、裁判所に場を移して
かがみと相手の弁護士が繰り返す。そこにあるのは人間の醜さの極みだった。
 相手の弁護士が戯言で男の人格を虚飾し、かがみは男の愛人に接触して証言を迫る。口
を閉ざした女もいたが、金でも掴まされていたのかもしれない。
 依頼人も無傷では済まなかった。公式の場で男の不貞は彼女にも原因があると罵られて
平気でいられるはずがない。
 相手の弁護士は悪い人間ではなかった。彼はただ自分の仕事をこなしただけだ。こんな
不利な条件の弁護を引き受けたのは馬鹿なのか生真面目なのか、義理でもあったからなの
か、かがみにはわからなかったが、悪人でない者と争うのは心が痛む。
 一番気がかりなのは、依頼人の彼女がこの後幸せになれる保証はないということだ。
 親権は勝ち取ったとはいえ、まず離婚したこと自体が不幸だ。かがみの力量が足りなか
ったせいで新しい生活を始めるために先立つものも少ない。しかし、ここから先はかがみ
が踏み入るべき領分ではない。
 とにかく、後味の悪さだけが残っている。もっとも、後味の良い裁判などありはしない。
むしろ今回の事例は生ぬるいと言っていい。
「柊先生、お客様です」
 事務員の声を聞き、今は相談を受ける時間ではないはずだと思いながら、案内されてき
た客を見た。部屋の入り口に立っていた女性は、依頼人の元伊藤夫人だった。
「伊藤さん……って今は違いますね」
 彼女の現在の苗字は何だったか、記憶の引き出しを探し回る。
「冬木でございます。先生には本当にお世話になりまして」
 彼女は丁寧な物腰でお辞儀をして、持参してきた菓子折りをかがみに手渡した。
「そんな、ここまでしていただくほどのことでは……」
「今の生活があるのは先生のおかげです。いくらお礼をしても足りないくらいです」
 彼女は現在は実家で子どもと両親と共に暮らしており、少し田舎ではあるけれど、今の
生活にはとても満足していると教えてくれた。その言葉遣いや仕草はとても丁寧で、元夫
のことを必死に罵倒していた彼女と同一人物とは思えない程だった。こちらが本来の彼女
の性質なのだろう。
 瞳を潤ませながら何度も何度も頭を下げて、かがみにお礼の言葉を述べた。
「わ、私は自分の仕事をしただけですから」
 直球で誉められるとどうにも照れくさく、思わず赤くなって目線を逸らしてしまった。
「裁判は辛いこともありましたけど、先生が何があっても私は味方だと仰ってくださった
から諦めずに最後まで続けられたんです……先生を選んでよかったと思ってます」
「え、まあ、それはどうも……」
 こういう時こそ事務的に対応していれば恰好付くのだろうが、感情の抑制が苦手なとこ
ろは昔から変わらない。
「先生には感謝しています。本当にありがとうございました」
 彼女は最後にそう述べて退室していった。しばらくの間、一人でその言葉を反芻する。
「ありがとうございます、か……」
 自分の胸の向日葵のバッジに視線を落とした。かがみが先生と呼ばれる根拠たるもの。
少しでも人の役に立てたというのならば。
「ま、悪くないわね」
 もうすぐ、かがみの元に取材がやってくる予定だ。懐かしい取材者に今の仕事に満足し
ているかと聞かれたら、はいと答えようと決めていた。
233先生という仕事:2008/01/17(木) 20:05:53 ID:HI1H3cCD
「先生、大丈夫なんでしょうか」
「当院の施設だけでは十分な検査はできません。精密検査の必要がありますのでそちらへ
の車を手配致します」
 みゆきは暗い顔で患者の母親に告げた。
 彼女の子供は階段から転げ落ちて頭を打ってしまったという。直ちに外科に行って欲し
いところだったが、気が動転していたのか病院がすぐ近くにあったからなのか、小児科で
あるこの病院に来てしまった。みゆきが診た限りは深刻な異状はなさそうだったが、頭部
の怪我は油断できない。結局、精密な検査のできる大病院に後を託すしかなかった。
 取り越し苦労で終わるならそれでいい。もし、そうでなかった場合は……。
 事実がどうであろうと、もはやみゆきの力が及ぶ領域を超えてしまっている。小児科の
病院が不足している地域で働いて貢献したいと思う一方で、そういった病院では出来るこ
とに自ずと限界が生じてくる。自分の関わった患者は最後まで責任を持って診てやりたい
と思っても、都合が許さない。そんなとき、いつもみゆきは自分の無力さを感じる。
 医師は偉大な力を持っていると同時に、無力でもある。全ての患者を救うことなど出来
はしないのだ。科が科だけに患者の死に立ち会ったことのないみゆきはまだ幸運と言える。
 例えばの話、自分の親友が患者としてやってきたら冷静に対応できるかどうか、みゆき
には自信がなかった。いつかの未来、親友の子供を診察することがあるかもしれない。歳
をとっても子供にしか見えない親友とその子供が来てくれたら面白いかもしれないけれど
……仕事の最中なので夢想はそこまでにしておいた。
「車が来たようなので、あとはあちらの指示に従ってください」
 これが医師として正しい判断なのかどうかはわからない。正しいと信じるべきなのかも
しれないが、そうだとしたらあの子供は深刻な状態なわけで、そうなって欲しくはない。
かといって自分の判断が正しくないと信じるのは医者としての信念にもとる。
 もやもやした気持ちを抱えたまま、次の患者が呼び出された。カルテによれば、その子
は呼吸器が弱く、その関連で何度か通院している。
 母親に連れられて現れたのは、いつかの夜、餅を喉に詰まらせてしまった子供だった。
見覚えがあったのも当たり前で、みゆき自身もその子を診察したことがあったのだ。この
ことを覚えていたら、あの時、もっと手早く処置できたかもしれなかった。みゆきの目標
は、まだまだ遥か上にある。
「ええと、今回は軽く喘息気味ということだそうですが……」
 子供は何度も激しい咳を繰り返し、いかにも苦しそうだった。これでもまだ軽い方だ。
 母親から症状を聞き、気管支炎の薬を噴霧して吸引させ、適量の薬を処方する。一通り
の診療をつつがなく終えることができた。
「お大事にしてください」
 患者に別れの挨拶を告げ、しかし当の患者は思い出したようにみゆきに向き直った。
「せんせー、ありがとう」
「どういたしまして」
 笑顔をくれた子供に、みゆきもにこやかな笑顔で返礼する。
「死んじゃうっておもったけど、せんせーのおかげでくるしくなくなったよ」
 子供が何のことを言っているのか、みゆきはすぐに思い当たった。この子が前回ここに
来たときのことだ。覚えてくれていたのかと、みゆきは少し驚いていた。
「あの、すいません、あの時は取り乱してしまいまして……」
 思い出したように母親も追従した。意外としっかり者の子供のせいで、少し決まりが悪
かったが。
「先生、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」
 みゆきは自分の救える人しか救えない。それでもこうして笑顔を向けてもらえるなら、
医者でいてよかったと思う。
(でも、あまりよろしくされてはいけませんよね……)
 ちょっとした失言に気付いたときには親子はもういない。速やかにカルテを書き終え、
次の患者を迎えた。自分の仕事に満足できるように精進しようと誓いながら。
234先生という仕事:2008/01/17(木) 20:06:37 ID:HI1H3cCD
「つかさ先生、美味しいですか?」
 つかさの表情を窺うのは、椿めぐみという名の生徒。つかさが教える生徒の中では唯一
の女性である。
「うん、美味しいよ。よくできてる」
「よかったぁ」
 つかさは笑顔で答え、それを見た女生徒も思わず笑みがこぼれる。つかさが笑ったのは
料理が美味しかったから。彼女が笑ったのは、料理を誉めてもらえたから。そこに嘘偽り
は微塵もない。
 彼女が授業の課題として作ったのは、牛フィレ肉のトュルヌド・アンリ4世風と呼ばれ
る料理。一言でいえばグリルで焼いて網目の焼き色をつけた料理である。適当に焼いて、
表面をそれっぽく処理すれば見た目だけは誤魔化せるかもしれないが、美味しいものを作
ろうと思えばそうはいかない。焼き料理というものは、すべからく焼き加減が美味しさを
決めるものであり、手抜きでは決して巧く仕上がらない。アンリ4世風という名を冠する
のはあるソースを使うからだが、フランス料理においてソースは最重要課題である。それ
を含めて彼女の料理はよくできていた。
 つまり、料理が美味しかったのは彼女が調理に一切手を抜かなかったからだ。
 彼女だけではなく、生徒たちはみんな真剣だった。始めはつかさを不信の目で見ていた
生徒たちも、つかさの包丁裁きを見てつかさが作った料理を食べると、態度が一変した。
普段が鈍くさいだけにギャップが大きかったというのもある。
 そのうちにつかさも地が出てきて、生徒を君またはちゃん付けで呼ぶだけでなく、仇名
で呼ぶようにもなった。
「めぐちゃんも上手になったよ。みんなに負けてない」
「あたしって才能あるかな?」
 おどけた彼女は、何歳分か幼く見えた。なんとなく高校時代の親友を思い出す。
「才能はよくわからないけど、頑張った結果だと思うよ」
「にぶちんでも料理が巧くなれるっていう実例が目の前にいるからね」
 そういう意味では、つかさは先生に向いているのかもしれない。
「めぐちゃん、それひどいよぉ」
「そりゃ、おめぇに言われたくねえわな」
「別にいいじゃん。過ぎた話なんだし」
 別の男子生徒が彼女にツッコミを入れ、彼女は軽く受け流す。
 親しくなるうちに話を聞いたところによれば、高校三年のときに付き合っていた料理好
きの彼氏についていくために調理師学校への進学を決めたものの、入学の直前に別れてし
まい、それでも学校には通わざるをえなくなって不貞腐れていたのだとか。
『ひどい話だと思いません!?』
 彼女はそう言って同意を求めてきたが、どちらかといえばそんな動機で進路を決める方
が酷い話ではある。
 そんな彼女もつかさの料理を食べると態度が一気に変わって、熱心に授業に取り組み、
つかさを慕うようになってきた。熱し易い性格なのかもしれないが、あまりの変貌ぶりに
つかさが戸惑ったほどだ。
 つかさが思ったのは、彼女は精神的に子供だということだ。それはこれから変わってく
れればいいと、つかさは考えている。彼女は成長できる人間なのだから。
「あんなことはあったけど、おかげで先生に会えたからよかったって思ってる。自分の作
った料理で喜んでもらうのがこんなに嬉しいって、先生が教えてくれたんだよ」
 彼女の笑顔を見て、つかさは遠い昔に抱いた感情を思い出した。初めて作った料理を、
お母さんが美味しいと誉めてくれたときの感情。
「……教えてくれたのは、めぐちゃんもだよ」
「へ?」
「私ね、勉強も運動も、特技とか何もなくて……料理を好きになったのは、食べた人が喜
んでくれるのが嬉しかったからなんだ。この仕事を始めたとき、ちゃんと教えなくちゃっ
て、それしか考えてなかった。でも、私の料理をみんなが美味しいって言ってくれて……
初心を思い出したような気がしたんだ」
 一秒の沈黙の後、つかさの話を聞いた生徒たちから喝采と拍手が巻き起こる。
「え、あれ、どうしたの?」
 誉められることに慣れていないせいで、つかさは一瞬にしてパニックに陥ってしまった。
「え、えーっと、今日はこれまで! 授業終わりです!」
『ありがとうございました!』
 生徒たちの唱和は、つかさが立派に先生をやり遂げたことの証明。
 つかさは心の底から、先生をやってて良かったと思った。
235先生という仕事:2008/01/17(木) 20:07:20 ID:HI1H3cCD
「今回は……OKですよね?」
 こなたは祈るような気持ちで電話の向こうの編集さんに問いかけた。既に三回も原稿を
出しては没にされている。
『はい、OKです。先生、お疲れ様でした』
 それを聞いて、受話器を通して聞こえるくらいに盛大に溜息を吐いた。新連載の第一回
だから重要なのはわかるが、もう一回は流石に勘弁してもらいたい所であった。
『次回は早めにお願いしますよ。法廷ものとなると資料集めも手間でしょうし』
「大丈夫です。多分。きっと。おそらく。もしかしたら」
『段々灰色な表現になっていくのはやめてください』
 作家と編集はボケとツッコミ。作家にとっては笑えない展開になるが。
 かつての自分自身をモデルにした、作家を目指す女子高生の物語は締め切りに追われな
がらも無事に完結した。その次の月、その小説は若干の修正を加えて文庫化された。読者
の反応は、まだ聞かされていない。
 小説を書いていると、どうしようもなく不安になることがある。恐らく、創作をする者
は多かれ少なかれそんな感情を抱えているはずだ。すなわち、自分の作品は気に入って貰
えたのかどうか。全身全霊を傾けた作品がつまらないの一言で一蹴される可能性だってあ
るのだ。
 特に、一番この作品を読んで貰いたかった人――ななこはどう思うのか。読んでもらう
からには自分でその本を贈るべきなのだが、まだそれが出来ないでいた。あまりに自分の
内面を曝け出してしまった内容だったから。知りもしない相手に読まれるのは構わないが、
顔を知ってる相手に読まれるのはどうにも恥ずかしい。
 そんな感慨に耽る間もなく、あっという間に次の連載である。
『とにかく、よろしくお願いしますよ。……あ、先生にファンレターが届いてたので郵送
しました。中身はチェックしてあるので大丈夫ですよ』
「ファンレター? 私に?」
『はい、今時手紙なんて珍しいですけどね』
 丁度話を聞いていたそうじろうが、郵便受けから持ってきたと思しき封筒をちらつかせ
て見せてくれた。
『先生の作品を待ってる人がいるんですから、締め切りは守って下さいね』
 最後にしっかり釘を刺してくれた編集との話を終えて電話を切ると、そうじろうから封
筒を受け取った。差出人はこなたの知らない名前で、学生時代の親友や直接の知人などで
はなく、れっきとした読者のようだった。
 自分は女優になることを夢見ている高校三年生で、学校の先生から勧められてこの作品
を読んだこと、これを読んで自分も目標に向かって努力する決意を固めたこと、そして、
こなたの作品に感銘を受けて、これからも応援することが綴られていた。
「よかったな、こなた。嬉しいもんだろ?」
「……うん」
 自分の作品を好きだと言って貰えれば嬉しい。素人だろうとプロだろうと、それは変わ
らない。それでも、プロとしてファンができたことは特別に感慨深いものだ。
「大御所作家でもファンレターって嬉しいもんなの?」
「オレはそんな大したもんじゃないって。たまたま当たっただけだから」
 笑って誤魔化すそうじろうだが、それがまぐれで書けるような作品でないことはこなた
がよく知っていた。
「ところで、この主人公のモデルってこなたなんだよな? 読書好きの友達に感化されて
作家を目指すってやつ」
「お、お父さん読んだの!? あれだけ読むなって言ったじゃん」
「世間に発表された小説なんだから誰が読んだっていいだろ。お父さんだってこなたの書
いたものを読みたいんだよ」
「……そんなこと言われても恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ」
 膨れっ面で拗ねてみせるこなたは、まるで子供のようだった。とっくに母よりも年上に
なってしまったが、母譲りの幼い外見は変わりはしない。
「はは、今日はお祝いだ。寿司でも食べるか」
 父が機嫌をとってくれるなら断る理由はない。出前の電話をするために部屋を出ようと
したそうじろうに、一言だけ告げる。
「私も今から電話するけど、今度は絶対に聞かないでネ。聞いたらもうお父さんの前じゃ
エプロンつけて料理しないから」
「気をつけるよ。割烹着じゃ今一萌えないからな……いや、一概には言えないか……」
 この歳で親子でこの会話もどうかと思われるが、兎にも角にもこなたはそうじろうを部
屋から追い出し、携帯電話を手に取った。
236先生という仕事:2008/01/17(木) 20:12:18 ID:HI1H3cCD
『おう、泉か』
 通話の相手――ななこはすぐに応答してくれた。
 この用件を直接告げるのは、少しの勇気が要る。だが、あのファンレターがその勇気を
与えてくれた。躊躇うことはない。
「先生……最近、私と先生をモデルにした小説を書いたんです。もしよければ先生にも読
んでもらいたいと思いまして」
『ああ、あれな。読んだわ』
「あれ? 読んだんですか?」
 いきなりのことに面食らった。こなたのペンネーム以外は何も教えていなかったのだ。
頼みもしないのに読んでくれているとは思わなかった。
『やっぱ泉とウチやったか、あれ。泉が作家になろうと思う動機が違っとったけどな』
「別に、何から何まで私と同じじゃなくたっていいじゃないですか。それに……」
『泉とウチだけの秘密、やろ? いい話なんやから喋ってもええと思うんやけどなぁ』
「ダメなものはダメです」
 言えるはずがない。小説家になろうと志した理由が、不覚にも父が書いた小説に感動し
てしまったからだなんて。その小説には、父からの娘と亡き妻への愛が綴られていた。父
が書いた作品は世間に感動を与え、大ヒットとなった。だが、こなたにとってその作品は
それ以上の意味がある。
 読書など大嫌いなこなただったが、いつしか父のような作品を書きたいと思うようにな
っていった。いつか、自分も同じように父への愛を作品で表現したいと。自分がどんなに
家族を想っているかを形に残しておきたいと。
 そのためには、作家という肩書きが何よりも重要なのだ。
『秘密はちゃんと守っとるよ。生徒にも読ませたけど、それはかまへんよな?』
「まあ、いいですけど……」
 何を思ってそんなものを読ませたのか、少し気になった。
『それでな、泉』
 ななこの声のトーンが変わった。張り詰めた空気が受話器越しに伝わってきた気がした。
『泉は、今の道を選んでよかったと思っとるか?』
 こなたは両親と同じ大学の文学部に進学した。成績的に当時のこなたにはかなり厳しい
選択だったが、こなたの努力とななこの後押しでどうにか合格した。小説でも似たような
経緯が綴られている。
「何かあったんですか?」
『詳しいことは言えんけどな、ウチの生徒で女優になりたいって奴がおったんや。親御さ
んにも反対されたんやけど、それでもって。結局、大学に行きながら芝居の勉強しろって
言ったんやけど』
「妥当な案じゃないですか」
 十分詳しい情報を喋っていますよ、と突っ込むのはやめておいた。
『せやけど、学校行きながら他の勉強するってきついやろ? スパッと諦めさせたほうが
良かったんやないかって思ったりしてな』
「先生も悩むことあるんですね」
『他人の人生かかっとるからな』
 ななこも苦労しているのかもしれない。そう思ったからこそ、こなたはかつてななこに
言われた言葉を思い出した。
 ――先生っちゅうもんはな、先生って呼ばれるだけの仕事をせなあかんのや。それがで
きとったら、勝手に先生って呼んでくれる。
 こなたの胸に残る言葉だった。相応の肩書きを持っていれば、先生と呼んでもらうこと
はできる。だが、心を込めて先生と呼んでもらうのは誰にでも出来ることではない。
 先生と呼ばれる人は、みんな先生として努力しているのだ。
「十年後も先生って呼んでくれるんだったら、その子は先生に感謝してますよ」
『なんやそれ。十年も待たなあかんのか』
「はい。……だからそれまで元気でいてくださいね、先生」
『……まあ、お前も頑張れや。泉センセ』
 弾むような声で、先生と呼びかけてくれた。こなたもそれに答える。
「ありがとうございます、黒井先生」
 今こうしていられるのは、お互いが先生という仕事を全うしたから。
 法廷ものを書くという理由でかがみに取材のアポを取ってある。医者や料理人を主人公
にした話も構想を練っていて、いずれみゆきやつかさに取材をしたいと思っている。親友
たちが立派に先生をやっているところを、作品で表現したいと思った。
 自分の中にある愛や価値観、思い出、心の中にあるものを物語として伝えるのが作家と
いう仕事なのだから。
2373-283:2008/01/17(木) 20:14:31 ID:HI1H3cCD
そういえばかがみとみゆきは「先生」って呼ばれるんだよなぁと
いうことから思いついた話です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
1レス1レスが行数、容量制限との戦いでした。
238名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 20:58:03 ID:1EHEUJJC
>>237
いつしか貴方のようなSSを書きたいと思うようになっていった。
その位惹き込まれた。
god job!
239名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 21:18:02 ID:HH3J/TmP
ええ話や……
こういう「原作のその後」みたいな話は書くのが難しいけど、やっぱいいねえ。
240名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 21:23:31 ID:wzuUh/TV
>>237
あなたのその才能に嫉妬しつつも、GJと言わざるを得ない。


そして黒井先生、苗字が変わってないってことは40目前でまだ独身ですk
241名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 21:49:48 ID:d+0hquNf
>>237
先生!GJっす!

成長し、みんな相応の努力をし、相応の職についている
4人+oneの人間模様を、
各職業のディテールとそれに絡み合う人たちとともに
見事に描ききってると思います。
そして、クライマックスがかっこいいぜ、ななこめ(・∀・)9m


他にも、先生と呼ばれそうな人は・・・
ゆたか、ひよりは確率が高そうだ(両方作家になるだろうからw)
ほかは、うーん
みさおは家業継ぎ、
あやのは専業主婦に落ち着きそうだし、
のこるはみなみ、パティか、うーーん。


>>240
それは、言うたらあかんことなんや、言うたらあかんことなんや・・・
242名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 21:54:42 ID:rjjO+74j
>>237でいい話だなーと感動したものの>>240でそれとは別の涙が出てきた…

いや!先生は結婚しても苗字はそのままでええ、って言う人なんだ!…と信じたい…
243名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:19:34 ID:q9KCYqzn
>>240
・夫のほうが苗字が変わった
・その頃には夫婦別姓が認められている
あたりの可能性がないわけではないぜ
244名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:20:27 ID:d+0hquNf
>>243
ようは、『くろいけ』ってことだな、だな
245名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:26:58 ID:S1EctlSL
>>237
GJだってヴぁ!

客観視点の文章構成綴るのってすごく頭使うけど
それの持ち味を壊さず
ここまで緻密にかつ深みのある作品に仕上げてるのは、毎度毎度マジで尊敬します

師匠と呼ばせてくれ
246名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:27:23 ID:epldqVsv
>>237
もう一言だけですね
GJ!
>自分の中にある愛や価値観、思い出、心の中にあるものを物語として伝えるのが作家と
いう仕事なのだから。

この一文はすごい…イロイロトカンガエサセラレタ
そして、感動をくれたあなたに乾杯っ

さて、書いてるSS見直して落ち込んでこようw
オレダッテイツカハキット
2477-896:2008/01/17(木) 22:34:33 ID:tDFqr1FY
>>237
文章がうまい。見習いたいくらいです。
それぞれのキャラたちの掛け合いが綺麗にまとまってて読みやすかったです。
らきすたの将来の話はいくつかありますが
ここまで引き込まれたのは初めてでした。
ありがとうございました。

>>219
心臓が……心臓が痛いです。
これはひよりん苦しいですよね(´・ω・`)
それにしても心情表現がうまいです。

>>206
みさこなかがで三つ巴ですか?
ぶーわさん、続編3つ持ちで大変かもしれませんががんばってくださいw
そして神様の再登場を祈って、勝手ながら神様の仕事風景をどうぞ

ttp://momoiro.s4.dxbeat.com/up/img/momoiro04022.jpg
(頭身上げたせいで神様に見えないかもしれないorz)
でっかいですね
これでも半分以下にしたんです。
元は3MB……
そんなわけで続きを楽しみにしています!!


それにしても、そろそろ本当にSS仕上げないと怒られそう。
SS遅い!! 絵ばっかり描いてんじゃねぇ!! って……
248名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:40:31 ID:d+0hquNf
>>247
なんとも素敵で幻想的なかなたさん。
地球は、かなたさんに見守られて、日々を過ごします'`ァ(*´Д`) '`ァ





しかし、この大小比較、見ようによっては
『かなたさんのドジで人類滅亡!(ドリフBGM)』
ってことになりゃしませんかっ!

↓コメント
「かなた・・・またお前か?」
「またお母さんか・・・」
「またかなたおばさんなの?」

『みんなー!某動画サイト見すぎよーーー;;』
249名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:44:02 ID:pcLGdNW5
なんつうか、黒井先生の話は考えさせられた
高校時代はオレにもやりたいことあったんだけど、親に反対されてやりたくもない仕事選んじゃって


親戚の子が高3で夢を諦めて大学行くらしくて、諦めた理由聞いたら「もう夢を追う時代じゃない」って言われて
そんなことはない、って言いたかったけど自分もそんな感じだからなにも言えなくて
なんか寂しく感じるよ


話は逸れたけど、GJ!!
250名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:46:35 ID:D3bQiLd6
>>237氏、ホントにGJですよ
まだ見えない将来なはずなのに、彼女たちらしさがよく出てます

もうなんというか、このスレ凄いな。というか恐ろしいw
量もさることながら質もいいし。ただ追いつきにくいのが難点だ!
251名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:49:26 ID:pAC5rRzq
旦那もたまたま同姓だったとかもありうるぞ。
252名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:50:21 ID:TZS/HXXg
ここまで百合説無し
253名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:51:10 ID:wFZaYtws
久し振りに覗いてみたら…俺は運が良いらしいな。
なんつうか、気持ちがほっこりしてきたよ。GJ!
254名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 22:57:46 ID:lmOyl4I+
>>247
ゴッドかなたさん! ゴッドかなたさん!

雰囲気もさることながらこの巫女服がまたエロ可愛い
氏が描いたということはかみ☆フェチは公認ですか!?
255名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 23:10:17 ID:/T6lV0nx
一日来なかっただけでこの進みよう
まとめてですみませんがGJ

投下予定されている方がいなければ投下したいのですが
25626-485:2008/01/17(木) 23:15:57 ID:/T6lV0nx
いらっしゃらないようなのでいかせて頂きます

・「君の隣で」の続編
・かがみ×こなた
・リバシ&エロ有り

9スレほどお借りしますね
257今が何よりも輝いて(1/9):2008/01/17(木) 23:16:29 ID:/T6lV0nx
 揺れる感情、募る愛しさ。
 私達は一度別れて、再び一つになった。
 今だから分かったこの気持ちを、私は絶対に忘れない。





 今が何よりも輝いて





 先程までの集中的な豪雨は幻だったのだろうか。そんな事を思ってしまうぐらい今は澄みきった青空が果てしなく広がっている。
 だが水をたっぷり染み込み、所々泥で汚れた形跡が見られる私達の衣服が現実だと再認識させる。
「かがみ、家来なよ。そのままじゃ気持ち悪いでしょ」
 此処からかがみの家までは随分距離があるから、ずぶ濡れ泥んこ状態のかがみをこのまま帰すわけにはいかなかった。
 少しでも長くかがみと一緒にいたいという私情もあったけど、口には出さない。かがみだって同じ事を思っているはずだ。
「悪いわね、お言葉に甘えるわ」
 かがみは力なく微笑んで答える。
「じゃ、行こう……」
 そう言って踵を返しかけた私だったが、ある事を思い出して再びかがみに向き直る。案の定かがみは私の行動の理由が分からないといった感じで、困惑した表情を見せた。
「どうしたの?」
 私はかがみを追いかける際にポケットの中に捻じ込んだ指輪を取り出した。
「あ……」
 かがみも思い出したように声を漏らす。
「私が……嵌めさせても良い?」
 頷いて左手を差し出してくるかがみ。その前に少し手を払っていたが、付着した汚れが完全に取れるわけはなくまだ薄く残っていた。
 あの悪天候の中、必死になって探してくれたという情報が私の中に流れ込んでくる。
 それはかがみが私の事をずっと好きでいてくれたって示す、何よりの証拠。
 嬉しくなった私はかがみの手に優しく自分の手を添えて引き寄せる。
 細く綺麗な薬指に、愛し合う証が通された。
 柔らかく手を包んだまま、かがみと見つめ合うと、自然と優しい笑みが零れた。
「……ふふっ、行こうか」
「うん」
 笑顔を交わして、私達は歩き出した。
 だが程なくして、かがみが不意にバランスを崩した。
「かがみっ!?」
 私は慌てて倒れそうになるかがみの身体を抱き止める。
「あー、結構走ったからかな……力が入んないや」
 情けないといった感じでかがみが現在の調子を呟く。自己嫌悪と申し訳なさが混同したかがみの顔を見て、私はかなり焦った。
 大雨の中かなり無茶をしたのだろう。もしかしたら風邪を引いているのかもしれない。
「かがみ、しっかりして!」
 しかし私の声には応答せず、苦しそうに呼吸を乱すかがみ。
「我ながら情けないわね……」
 自らを皮肉るかがみに、私の頭が混乱し始めたその時―――
「こなた、こっちだ!」
 私を呼ぶ聞きなれた男の人。その声の発信源を見ると、お父さんが公園の出入口に車を止めていた。
「お父さんグッジョッ!」
 私は疲れきっているかがみを急いで背に乗せると、お父さんの元へと一心不乱に走り出した。
258今が何よりも輝いて(2/9):2008/01/17(木) 23:16:59 ID:/T6lV0nx
「熱は……ないみたい」
 停車したままの車内で、自分の額とかがみの額を重ね合わせて体温の確認をする。伝わってくる感覚からして、私の心配は杞憂に終わったようだ。
 かなりの時間戸外で雨に降られて冷えたはずだが、風邪と見られる症状は見当たらなかった。
「愛の力だな」
 お父さんが笑って私の方を振り返った。
「かもね」
 私が健康なのもかがみのその力のおかげなのかもしれない。
 そうだったら良いなと思いながら、横たわって規則正しい寝息を立てているかがみを見た。
「疲れてるんだろうね、大分無理させちゃったから」
「取り敢えず濡れた身体を拭いてやれよ」
 お父さんはもっともな事を言って助手席に積んでいた白色のタオルを差し出してきた。
「そうだね」
 私はそれを受け取ってかがみに向き直り、思い立って再びお父さんの方を向く。
「こっち見ないでよ」
「こなた、車にはバックミラーというものがあってだな」
「こっち見んな」
「はい」
 私に背を向けたお父さんとその目線の先に後写鏡がない事を確認して、私は手に持った木綿の布でかがみの髪を拭き始めた。
 途中でやや癖のあるライトパープルの髪を結っていたリボンを外す。水に滴る長髪はとても綺麗で水滴が光を反射して煌いていた。
 丁寧に水分を拭き取り再びお父さんの向きを確認、私はかがみの顔に作業の手を移した。自然と手つきが更に慎重になる。
 露出している部分は全て終了した。さて次は……服を脱がさなければならない。
 淡い黄色のブラウスに手を掛ける、その前に三度お父さんの動向をチェック。何かうんうん唸ってるけど、しっかり前を向いてくれている。
 ちょっとは見直したんだけどな……私はそう思いつつボタンを一つ一つ外していく。
 インナーウェアとして着用していたキャミソールの肩紐を解くと、既に透けて見えていたブラが形の整った乳房を支えている光景が目に飛び込んできた。
 肌蹴た衣服、所々濡れている身体。私はごくりと喉を鳴らした。
「う、うーん……」
 目の前に広がるかがみの妖艶な姿に目を奪われていると、かがみは小さく唸って眉を動かした。
「あれ、こなた……?」
 目を開けて意識を取り戻したかがみは、まだ完全に開ききっていない目で私を見つめる。
「お目覚めかな?」
 目を何度も瞬く、今一状況を理解出来ていない素振りを見せるかがみに私は簡潔に経緯を話した。
「そうだったの……おじさん、有り難う御座います」
「いやいや良いさ」
 お父さんは片手を上げて応答する。私の目線を感じ取ったのか自分で抑制しているのか、取り敢えず此方を向きさえしなければどちらでも良かった。
 事情を知らないかがみはお父さんの反応を不可思議に思ったのだろう、半ばきょとんとした顔で口を半開きにしている。眼前の相手に素っ気ない態度を取られたら、そういう反応をまずする人間が大半だろう。
「かがみ、取り敢えず身体拭いてあげるよ」
「へ……?っておわあああぁぁ!!」
 ようやく自分の服装に気が回ったらしいかがみは素っ頓狂な叫び声を上げ顔を真っ赤にする。私はお父さんが『何事だ!?』とか言ってどさくさに紛れて私達を見ないように迎撃準備。
 ―――どうやら取り越し苦労に終わったようだ。私は改めてかがみの方を向く。
「さ、かがみは寝てて良いよ」
「ねねね寝れるわけないでしょっ!ていうか自分でやるわよっ!」
 面白いぐらい取り乱して私から強引に濡れかけのタオルを奪い取るかがみ。
「その前にあんたは自分の身体を拭きなさいよ」
 顔が真っ赤なかがみに指摘されて、私はかがみを気遣うあまり自分の身体がびしょ濡れのままだという事に気づいた。
「ほら、そんな狭い場所に収まってないで」
 かがみは右にずれて私が座れる分のスペースを確保してくれた。
259今が何よりも輝いて(3/9):2008/01/17(木) 23:17:30 ID:/T6lV0nx
 私が出来た空白に腰を下ろすとかがみは目を逸らした。私が服を脱がした事が恥ずかしかったのか、一人で座席を占有していた事に責任を感じたのか。
 そんなに気にしなくて良いのにね。そう思いながら私はお父さんの隣の席に置いてあるタオルを一枚取る。
「あ、お父さん、勝手に娘の箪笥漁ったんだ」
「着替えを持ってきた、と言ってくれないか?それに選んでくれたのはゆーちゃんだ」
 その際近くに畳まれ置いてあった私の服に目がいって、そう聞くと不機嫌そうな声で返事が聞こえた。
 まぁそれぐらいの配慮はするか。下着まである事だし、お父さんの言う事を信じよう。
「二着あるのは……」
「ああ、かがみちゃんの分だろうな」
 入るかどうかは分からんが、とお父さんが苦笑した。私も少し笑ってそれに同意する。
「さて、男は外で待つとするかな」
 おもむろに呟いてドアを開けて外に出るお父さん。さっきから度々送っていた私の目線が刺々しかったのかな。でもこの方が私達は気にする事なく着替えが出来る。あまりにも機嫌を損ねているようなら後で謝っておこう。
「かがみ、これ着替えと代えのタオル」
 念の為ドアの鍵を閉め、私は二人分の衣服と新しい身体を拭く布地を手に取って後部座席に持ってくる。
「おお、さんきゅ……ってそれあんたのよね?」
 上半身だけ下着姿になっていたかがみは、私のパンダがワンポイントでプリントされているトレーナーを見て言った。
「そうだよ。きついかもしんないけど我慢してね」
「分かった……何とか我慢するわ」
 かがみの表情はまるで迫り来る何かに構えているようで、真剣そのものだった。
 かがみが言った我慢と私が言った我慢は何か違う気がしたが、追及は止めておく。
「私も着替えよっと」
 呟いて多量の水を吸い込んだ服を取り去る。その勢いに任せて同じくずぶ濡れの下着も外して、お父さんかゆーちゃんのどちらかが気を利かせて持ってきてくれた大きめの袋に放り込む。
「もう全裸かよ。早いわね」
 そんな私の様子を見てかがみが呆れたように言ってくる。
「さっさと着替えた方が良いと思ってね」
 風邪引いたら困るし、と私は付け加え身体の至る所で存在を主張する水滴を拭っていった。別に日常の一コマであってもでもとっとと着替えるわけだけど。
「もうちょっとファッションに気を遣ってみたら?」
 スカートを両足から抜きながらかがみが提案してくる。
「うーん、でも私拘りとかないし良く分かんないしなぁ」
「私も手伝ってあげるわよ」
 そういった会話を交わしながらタオルを持った手を動かす。お風呂に入ったり身体を重ねるわけでもないのに、お互い裸でいるのは何だか不思議な感覚だった。
「じゃあ……今度お願いしようかな」
「任せなさい」
 力強く胸を張るかがみ。
 頑張れば私も、もっと可愛くなれるかな。
 かがみの為にも……少しでも可愛くなりたいな。
 恋愛ってこんなにも人を変えるものなのだろうか―――
 そんな事を考えながら、私は長袖でニットのシャツに腕を通した。
260今が何よりも輝いて(4/9):2008/01/17(木) 23:18:00 ID:/T6lV0nx
「お父さん、もう良いよ」
 私達が着替えている間、多分自主的に車外で待機していたお父さんに出発の準備が完了した事を告げる。
「おお、終わったか」
 ドアが開き、お父さんと共に冷たい風が入り込んできた。呼んでもないのにやって来た寒風は私の身体を震わせる。
「さむ〜い」
 感じたままの感覚を小さくうずくまりながら呟く。言葉にしたからといって特に変化があるわけではないのだが、どうしても言ってしまうものなのだろう。
「かがみ、大丈夫?」
 人間の性について考えていた思考を中断し、かがみに尋ねる。
 しかしかがみは私の声が届いていないらしく、服を摘んで俯き何かをぼやいていた。
「ねぇこなた。私の服、今は着れない状態よね?」
 何を言っているのだろうかと見ていると、不意にかがみが私の質問には答えずに聞き返してきた。
「へ?あ、うん、まだ濡れてるからね」
 恐らく別の事に考えを巡らしていて耳に入ってこなかったのだろう、少し反応に遅れたが私は無視された事を気にせず、かがみの確認のような問い掛けに答えた。
「じゃあこれは私が着て帰って良いのね?」
 グレーのトレーナーを指し示すかがみの目は何故かとても輝いていた。
「うん、良いけど……」
 雰囲気に押されてか、ガッツポーズをしている理由は聞けなかった。
「でもそれ、小さくない?」
 ぴちぴちの私の服が明らかにきつそうなかがみの装いから湧き上がった疑問をぶつける。
「平気よ、ちょっと寒いけど」
 肌が露出する面積が普段より広いからだろう。かがみは正直に言って鼻を鳴らした。
「そうだ。家で風呂に入っていくか?」
 お父さんがエンジンをかけ車を発進させると同時に提案した。
「お湯を張ってきてるからすぐ入れるぞ」
 エネルギーが転換される音とお父さんの声が車内に響く。私達が濡れる事を予測して気を配ってくれていたようだ。
「だって。かがみ、どうする?」
「じゃあお言葉に甘えて……」
 お父さんの好意を無駄にするわけにもいかないし、私達は見合った後に即決した。
「では我家へと一直線だな」
 アクセルが深く踏み込まれ、ハンドルが切られた。お父さんの操作する自家用車は唸りを上げ、自宅への距離をどんどん縮めていく。
「ねぇかがみ……」
 見覚えのある景色が絶え間なく動く中、私はかがみの名前を呼んだ。
「何?こなた」
 呼び返された私の名はとても柔らかい響きを持っていた。
 お互いに名前を呼び交わす―――
 何気ない日常が、どんなに幸せな事か。
「一緒にお風呂入ろっか」
「うんっ」
 かがみの満面の笑顔が、どんなに大切な事か。
 私はもう、決して手放したりしない。
 決して忘れない。
 移りゆく情景の中、私は固く心に誓った。
261今が何よりも輝いて(5/9):2008/01/17(木) 23:18:31 ID:/T6lV0nx
 車に揺られる事数十分。
「ほい、到着だ」
 徐々に速度を落とし、門柱の手前で車は完全に停止した。
「有り難う御座いました」
 律儀に重ね重ね感謝の意を伝えるかがみを横目に、私は使用済みの衣服等を纏めていた。
「ああ、早く温まると良い」
 にこやかに返すお父さんに、かがみは何度も頭を下げてから外に出た。
「お父さん」
 その一部始終を見届けてから、私は何処か遠くを眺めているような様子のお父さんに声を掛けた。
「お父さんは、全部……知ってたの?」
 私達を優しく、時には厳しく、背中を押してくれたり色々な場面で助けてくれたお父さん。
「さぁな……」
 そんな幾ら感謝しても足りないぐらいの、いざという時頼りになる肉親は、目を閉じて微かに白い歯を見せた。
 真相は教えてくれなかったが、最初からそれを追求する気はなかった。
 お父さんが私を助けてくれた事実は変わらないのだから。
「ありがとう、お父さん」
 等身大の気持ちを父の横顔に送って、私は荷物を持ってドアを押し開けた。
 とても優しげな表情が、私の脳裏に焼き付いていた。

 車から出て、かがみが先に向かっているはずの家の扉を開く。
 玄関にはかがみの後姿が、その奥にはゆーちゃんの後姿が見えた。
「ゆーちゃんと何話してたの?」
 場の空気からして何か会話を交わしていた事は明白だった。佇むかがみに聞くと、かがみは私の方を振り返って答える。
「お姉ちゃんをよろしくお願いします。お姉ちゃんの笑顔を引き出せるのはあなただけですから……だって」
 足音を立てて階段を上がっていく従姉妹の姿は、既に二階へと消えていた。
「ゆーちゃんにも……感謝しないとね」
 私が忘れかけていた事を思い出させて後押ししてくれた、今は見えぬゆーちゃんを頭の中に思い描く。
 今回の一件で、私達は身の回りの人に多大な迷惑を掛けてしまった。
 だからこそ私は、かがみと一緒に幸せ者になろうと思う。
 皆が優しく背中を押してくれたり、大事な事を教えてくれたり。
 多くの人の支えがあったから、私達は今こうしていられる。
 ―――だからその分、私達が幸せにならなくちゃ。
「こなた……」
 かがみが物欲しそうに目を細めて、私の頬にそっと手を添えた。
 早速かがみが幸せを分かち合おうとしている。
「良いよ、かがみ……」
 私はそう囁いて、ゆっくりと目を瞑った。何も見えなくなった世界で、かがみだけを感じる。
 私が微かに唇を開くと、熱を持ったかがみの舌が形成された空白を更に広げた。すぐに忍び込んでくる舌をすんなりと受け入れる。
 かがみに応えようと私も舌を伸ばすと、すぐにそれらはお互いが必要とし合ったかのように存在を見つけ、唾液にまみれながら絡み合う。
 かなり間が空いていたわけでもないのに、私を襲う感覚は久方振りのようであっという間に私を支配していった。
「んふぅ……」
 もう少し目眩がしそうなほど熱い感覚に酔い痴れていたかったが、かがみはそっと唇を離す。
「続きは……お風呂の中でね」
 代わりに額を重ねられた私は、顔を赤くするしかなかった。
262今が何よりも輝いて(6/9):2008/01/17(木) 23:19:03 ID:/T6lV0nx
「かがみ、身体の方は大丈夫?」
「うん、自分でも風邪引くかと思ったけど案外平気なものだわ」
 私達は脱衣所でそんな会話をしながら、新しく着直したばかりの服と下着を籠に投げ入れた。素っ裸になった途端に寒気が到来し、私は急いで浴室へと続く扉を掴む。
 浴槽にはお父さんの言った通り、冷えた身体を温めるのに十分な温度を保ったお湯が既に張られていた。
「う〜、温まるねぇ」
 軽く掛け湯をしながらしみじみ呟く。自分でも親父みたいな発言だとは思ったが気にしない。
「あ、ちょっと待ってこなた」
 溜められたお湯に浸かろうとする私をかがみが引き止めた。
「どしたの?」
「えっと、この前さ、私の足の間に収まるようにして一緒に入ったじゃない?」
 大切な部分を手で隠して恥ずかしそうに呟くかがみの声を聞き取るのは結構大変だった。それでも私は神経を集中させ、かがみの台詞から前一緒にお風呂に入った時の事を思い出す。
「うん、そうだったね」
「それでその……今度は立場を逆にして貰えたらなぁ、なんて……」
 ついにかがみは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
「なぁんだ、勿論良いよ」
「ほ、本当?」
 軽い調子で手をパタパタと振る私の仕草と返答に、かがみは潤んだ瞳のまま明るい声を出して顔を上げた。
「当たり前だよ。私達付き合ってるんだから」
 私はそう返して一足先に温まるべく身体をお湯に浸した。浴槽の中からかがみを手招きする。
「らしくないね。恋人同士なんだから遠慮しなくて良いって言ったのはかがみだよ?」
「……うん、そうだったね」
 笑顔を取り戻したかがみは、喜び勇んで開いた足の間に身体を入り込ませた。
「ちょ、ちょっときついね……」
 しかし流石に体格差を実感せざるを得ない。本来は大きい方が下になるべきなのだから、かがみより小柄な私がこのポジションに位置すれば当然こうなるだろう。
「だ、大丈夫?」
「うん……かがみこそちょっと狭そうだけど……」
 身体を目一杯折り畳んでいるかがみは何処からどう見ても無理していた。
「良いの良いの。私がしたくてやってるんだから」
 かがみはそう言って体重の一部を私にあずけてきた。此方からは窺えないが、安らぎの表情を浮かべている事だろう。
 私もかがみの背中に顔を摺り寄せた。かがみの香りに包まれて非常に心地が良い。
 かがみとくっついていると、色々な感情が私を満たしていく。
 一緒にいれば楽しくなれるし、安心出来る。
「私さ、今日お風呂二回目なんだ」
 夢心地に目を閉じてかがみに語りかける。
「一回目入った時ね、もうかがみと一緒に入れないって思っちゃったの」
 かがみは何の反応も示さなかったが、沈黙は私の次の言葉を待っていると勝手に解釈し、気持ちを言葉にして紡いでいく。
「でもこんなに早くまた一緒に入れて……本当に嬉しい」
「私もあの雨の中、同じような事考えてたわ」
 素直な気持ちを口にすると、かがみも私がいない時の事を話し始めた。
「もうこなたと会えないんじゃないか、みたいなね」
 かがみが天井を見上げる。私もそれに倣うように目線を移した。
「こなたの言う通り、私はうさちゃんなのかもしれないわね」
 いつの日か交わした、皆を動物に例えた時の会話。二人で物思いに耽りその情景を思い出す。
「寂しくされると死んじゃう。私も誰かに甘えたかったのかもしれないなぁ」
 普段は真面目でしっかり者みたいな印象が強いかがみ。姉としての自覚を持っているから大っぴらに甘えたりするなんて、気づいたら出来なくなっていたのだろう。
 本当はとても寂しがり屋で甘えん坊な女の子なのに。
 そんな強気なかがみが、私の前ではこんなにも素の自分を見せてくれる。
 それがとても愛しかった。
263今が何よりも輝いて(7/9):2008/01/17(木) 23:19:33 ID:/T6lV0nx
 触れ合う肌、感じる息遣い、高まる鼓動。
「かがみ……」
 私はとうとう我慢が出来なくなり、目の前の恋人の名前を呼んだ。
「こなた……」
 かがみは広くない湯船の中で何とか向きを変えて、私と見つめ合う体勢になった。
 そして、どちらからともなく引き合った唇が重なった。
 唇、次いで口内に潜り込んできたかがみの舌に歯茎と堪能される。先程は存分に味わえなかった分を埋め合わせるかのように私を求めるそれに、物足りなさを感じていた私の心も次第に満たされていった。
 奥で縮こまっていた自分の舌を引き出して、熱い感覚を弄っていたかがみの舌に触れ合わせる。
「んんっ……」
 私から積極的に舌を伸ばした事に驚いたのだろうか。かがみは一瞬目を見開いて声を漏らし、静かに瞼を落とした。
「んむぅ……」
 負けじと舌を絡ませてくるかがみの顔は仄かに赤らんでいた。
 全身を駆け巡る甘美な痺れ。身体が火照っているのは、浴室の温度が高いからというわけだけではないだろう。
「んっ……」
 快楽の呼び水となるように、淫らな水音が脳内に響いた。
 かがみが開眼したのを機に接合部をゆっくりと離すと妖艶な無色の糸が、私達が口づけを交わした事を表すかのように光っていた。
「かがみ……今日は思いっきり私に甘えて良いよ」
 かがみの耳元で囁くと、すっと手の平を胸部に宛がう。
「ん……」
 柔らかな乳房が私の手の中で形を変える度にうっとりとした声が聞こえた。何処かに切なげな響きも持ち合わせたそれは、私の理性を急速に削っていく。
 逸る気持ちを抑えて、硬直して頭をもたげている乳首を指でつついた。
「んはぁ……」
 更に硬さを増す、薄いピンク色の突起に刺激を与えていく。
 摘む、弾く、撫でる。ありとあらゆる愛情表現の方法を不定期に繰り返しながら、私は頃合いを見計らってなだらかな丘の頂点に顔を近づけた。
「ひゃっ!」
 唾液をたっぷりと乗せて、己の存在を強く主張するように突き出た部分を舌で転がす。
「あふぅ……」
 悩ましげに身体を反らすかがみ。
 私が愛撫する側の立場に立つ事はそう多くない。いつもかがみが頑張って私を気持ち良くさせてくれていた。
 本当はもっとこうしたかったし、かがみも口には出さないけれど望んでいたんじゃないかと思う。
 だから折角のこの機会を生かしたい。
 かがみにも存分に絶頂を感じて貰いたい。
「あぁ……こなたぁ……」
 なおも愛撫の手を休めない、そんな私の思惑を知ってかかがみは脳が蕩けてしまいそうな声で私を呼ぶ。
「そろそろ、攻守交代よっ……」
 かがみは乱れるかがみの様を見て私が興奮を覚えてきた事を見抜いているのだろうか。現に私の大切な箇所はお湯とは違う液体で濡れている。
 でもまだかがみをイかせてないしな……
「ほわっ!?」
 私が渋っていると、かがみは待ちかねたのか湿った私の秘所に手を伸ばしてきた。
「遅いわよ」
 かがみは笑いながらそう言うと、私の身体を横方向に回転させた。
264今が何よりも輝いて(8/9):2008/01/17(木) 23:20:04 ID:/T6lV0nx
 狭い浴槽の中となると身体を重ねる体位は限られてくる。
「ん〜、やっぱりこの体勢が一番好きかな?」
 私のほぼ頭上で呟くかがみ。最終的に私達は、かがみの足の間に私が収まるといった状態に落ち着いていた。
 私もこの体勢は好きだ。かがみに包まれているような感覚になれるから。
「かがみって意外と世話好きだからじゃない?」
 細かい所まで気が配れて、色々と私の事を心配してくれる心優しいかがみ。
「相手がこなただからよ」
 擁護するような感じなのかなと思いかがみに聞いてみると、嬉しい答えが返ってきた。
「ん……」
 それと同時に、微小な電流が私に快感を伝える。
「こなただから触りたいって思えるんだから……」
 かがみは囁くように言うと、私の長い髪を掻き分けうなじに唇をつけた。
 左の手は私の盛り上がりの少ない裸体を胸の辺りを中心に、右の手はお湯の中でもはっきりと分かるほどぬるぬるした粘液が湧き出す割れ目を、激しい動きで刺激していく。
「んんっ……ふあっ……」
 上向きの乳首を捻り上げられ、湿った秘裂を掻き回され、汗ばんだ首筋に舌が這わされる。
 同時に三点を責められ、私は別に逃げたくもないのに迫り来る淫靡な感覚から逃れたいかのように身じろぎをした。
 これではそう長く持たないかもしれない。
「んんっ!」
 裂け目から奥へ奥へと突き進んでくるかがみの指が与える感覚に、私は直感的にそう思った。漏らす嬌声の音量も段々上がってきている。
 ―――まだ私はかがみを満足させてあげられてない。
 思い残す事がないように、あまりにも早く絶頂の時を迎えてしまわないように、私は自分を律してかがみの秘所に腕を滑り込ませた。
「そう言えばかがみのあそこ触ってなかったよね」
 背中と胸板が完全に密着していないのが幸いだった。私は必死で平静を装いながら、手探りで愛液が溢れる場所を探る。
「ひあっ」
 どうやら的中したらしい。かがみが短く声を上げた。
 私はかがみの愛撫に対抗するように、見えないままでも懸命に指を動かす。割れ目に沿って移動するかがみの指は、それを感じ取って呼応するかのようだった。
「う……ん……」
「こなた、凄い濡れてるわよ」
 かがみが手を止める事なく呟いた。少しいやらしく発せられた言葉通り私の秘所から溢れ出す愛液の量は格段に増えていた。
「かがみだってぇ……ほら」
 事実を誇示するかのように、私はようやく慣れてきた手つきでかがみの秘裂を左右に割る。
「そ、そうね……」
 朱に染まった顔で認めるかがみがとても可愛らしくて、もっと見たくなって私は膣内への侵入を試みる。割れ目は何の躊躇いもなく私の指を沈み込ませていった。
「んんっ!あっ!」
 かがみは喘ぎながらも、私の大切な部分から指を抜き差しする。
「ああっ!あんっ!」
 指が根元まで肉壁に包まれた。かがみの中はとても熱く、私を迎え入れるように収縮を始める。指を動かせば動かすほど、お湯の中に多量の愛液が滲み出てきた。
「んっ……かがみっ……!」
「こなたっ……最後は一緒にっ……!」
 私達の高ぶりに順応するように、ゆっくりだったペースが加速する。
 引き抜き押し戻した指が強烈な力で締めつけられた、その瞬間―――
「ああ……あぁん!あっ、ああっ!」
「んっ……あ……ふあああああっ!」
 電撃が流れたかのように、私達は全身を震わせた。
 心地良い脱力感と達成感、お互いを求め合った証が身体に残った。
265今が何よりも輝いて(9/9):2008/01/17(木) 23:21:08 ID:/T6lV0nx
「すっかり長湯しちゃったわね」
 入浴を済ませた私達は、夕食までまだ暫く時間があるとの事で家の外を散歩していた。流れ的にかがみは家に泊まっていく事になるだろう。
「そだねぇ」
 私が作るつもりだったのだが、今日はお父さんとゆーちゃんがやると言って聞かなかったので、素直に二人の好意に甘える事にした。
「もうすぐ卒業かぁ、早いもんよね」
 一人ひそかに夜の出来事に期待を寄せていると、隣を歩くかがみが呟いた。私達三年生は今春、色々な思い出を作った母校を離れそれぞれの進路に向かわなければならないのだ。
「あんた将来の事考えてるの?」
「ぜーんぜん」
 平坦な胸を張って言いきる。予想通りかがみは溜め息をついていた。
「あ」
 ふと思って、足を止める。
「どうしたの?」
 数歩先行した後にかがみが振り返る。
「一つだけ、決まってるよ。将来の事」
「何?」
 首を傾げる少し前に位置するかがみに近寄って、精一杯の笑顔で教えてあげる。
「毎日かがみといるの」
 頬が赤く染まるのは、寒さの所為ではないだろう。
「そうね、それだけ決めてれば十分ね」
 かがみはにこりと笑って―――
「さ、そろそろ帰りましょ」
 私の手を握った。
 風が、吹き抜ける。
「誰かに見られるかもよ?」
 以前、そういった理由で近所では恋人らしい素振りをしないと約束した事を思い出して、わざと言ってみた。
 冷え込む夕空の下、温もりが心に染み渡る。
「良いのよ。これからは皆に認めてもらえるよう頑張るんだから」
 かがみの諭すような口調に、分かってるよと心の中で呟きながら―――
「うん、そうだよねっ」
 満面の笑顔で答える私は、きっと世界一の果報者だろう。




                                  〜Fin〜
26626-485:2008/01/17(木) 23:23:44 ID:/T6lV0nx
長かったこの物語もこれで終了
ここまで続けられたのはひとえに
皆様の温かい応援のおかげです
最終話ということで糖分大量投下を目指したのですが
どうだったでしょうか
稚拙な描写になっていなければ良いのですが……

ここまでお付き合いしてくださった方々に
心から感謝の気持ちを
267名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 23:27:31 ID:1EHEUJJC
>>266
⊂⌒~⊃。Д。)⊃


残されたのは「GJ!」という(鼻)血文字だけであった……
268名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 23:47:20 ID:j1dPX1Nv
>>266
だ…駄目だ…鼻血の海に溺れる…っ
心からのGJを贈らせて頂ききます!
なんか久しぶりにこなかがエロを見れて幸せw

>>267
なんか同じスレを見てそうな悪寒w
269名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 00:13:24 ID:CmUO1y+y
>>266
とてもGJ

糖分はしっかり大量に含まれてますが、
後味のいい爽やかな甘さだと思いました。

>「こなた、車にはバックミラーというものがあってだな」
>「こっち見んな」
これに思わず吹いたw
270名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 00:18:35 ID:FyDuVAwr
>>237
なんかみんな[先生]してるなー。
こなたの「先生ってなんだろう?」に対する黒井先生の返答がなんとも。GJ!!

>>266
完結お疲れ様〜。GJ!!
二人ともー。家にはおやじもゆーちゃんもいるでしょ!ナニやってんのww
糖分たっぷりで最高でしたけど。
二人の未来に幸せが溢れていることを祈るばかり。
271名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 00:21:10 ID:W6+9A33i
>>266
オヤジ!最後まであなたは美味しい所もってきやがってえ!

つうわけで久しぶりの王道甘甘こなかがGJだぜ!


「こればすばばしいカップルです至上の愛ですだばだば」
「あまりの愛にばるさみこすふいたー(気絶)」
「おきがえ・・・おきがえ・・・くすくす」
「2人とも・・・拉致・・・」
このすばらしきこなかがに4名ともフェチっております。
272名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 02:28:49 ID:BHmBhey8
やっと前スレ読み終わった…
いつになったらリアルタイムに追いつけるのだろうか?
273名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 04:20:32 ID:9l/k9o7v
>>272
リアルタイムはなんか凄い事なってるよ
ひよりんは乙女だったり皆のその後が語られたり噂のあれが最終回だったりゴッドかなたさんだったりショタあきらさまだったりキョンつかだったり黒井先生が独身だったり他もろもろ!
個人的には人袖の復活が嬉しい
しかし一夜をともにするのが結婚って事はもしかしてみさこなのセクロスシーンが? やべぇ超期待
274名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 08:00:28 ID:ByUdr/mx
>>266
まずはシリーズ完結お疲れ様でした。
くっついて離れて戻って確かめ合えて、波乱万丈の道行きをくぐり抜けたこなかがに幸あれ。

さ、俺も鼻と口からガムシロップ噴いてくるか(だばだば
275名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 12:31:08 ID:CGgQ06uJ
今何故か『魔法少女リリカルつかさ』という電波を受信してしまった…
276名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 12:42:54 ID:wJuqs8VX
「萌える吸血鬼・ツカサ=エルキュール=ド=バルサミコス」
なら、仕掛かりがHDDに。

かが×こな話で、つかさほとんど出てこないけどw
277名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 12:56:25 ID:x3itYfwT

          ...__、r-==-/⌒} :‐-、
         , イ   >‐v'   /: : : : :ヽ
       /    __ ..イー|  /== |: : : ::i
     厶 -…/¨ 从: .: :.|  .' : : : |:.|: : ::ハ
           /, /, '/彡/:.| .ム、 : : |:.|: : : :|  
        |!〃'{_{:ノ  ?ーヽ--v: : : :|  
         レ!小l ●   ●  |:、.|:ノ:.:|
         i ::|l|ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃ !ノ|:.:./
         i:|:.|》:/⌒l,、 __, イァ:.|/
.           ヽ:/  /::|三/:://  ヽ
             |  l ヾ∨:::/ ヒ::::彡|
おかしいなぁ…どうしちゃったのかな
がんばってるのわかるけど、らきすたはこな×かがだけじゃないんだよ
スレの流れのときだけ盛り上がってるふりで、SSで私を無視するなら
ネタ出しの意味、ないじゃない ちゃんと、ネタの通りやろうよ
ねぇ、私の言ってること
私とこなちゃん、そんなにカプ的に合わないかな?
少し、頭冷やそうか……
278名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:00:54 ID:+Bep0Ku1
>>276
つかさ涙目wwwww

つかさ「ウェイクアップ!」
かがみ「ちょっと、キョン役と言えば私でしょ?」
こなた「行くよ、かがット!」
つかさ「ちょwwwwwおまwwwwww」
279名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:06:37 ID:FZtB+sY8
「今のはバルサミコ酢ではない…鼻血だ…」
「魔王は魔王でも、大魔王ッ……!?」
280名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:17:53 ID:d/AY9pCn
つかささん・・・私というものがありながら・・・
281名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:21:24 ID:ByUdr/mx
>>277
待て、つかさはむしろ頭を冷やされる方だ(ドラマCD&萌えドリル参照)。
282名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:38:00 ID:NNoKriEa
つかさはみゆきの嫁
283名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:40:54 ID:u+As5Wgr
本屋で「柊ゆたか」という作者名を見つけたせいで「柊姉妹のどちらか×ゆたか」というネタが浮かんでしまったwwww
「かが×ゆた」「ゆた×かが」「つか×ゆた」「ゆた×つか」のどれでいくところから考えてみることにするwwww

かなり悩みそうなネタなので、ちょっと時間がかかると思うが必ず投下したいと思う。
284名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:44:30 ID:bItvgfXs
>>277
ちゅかさ?

「ねぇこなちゃん、こなちゃん
 こな×つかのお話、あるかなっ」
「ググれ」
「うにょーん」
285名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:51:48 ID:/Uw41NuZ
>>277
こなちゃんこなちゃん!
バルサミコ酢はあるにょろか?

「ねーよ」

うにょーん↓
286名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 13:57:05 ID:d/AY9pCn
ちゅかさちゃん×みしゃおちゃん


・・・という意味不明な怪電波が
287名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 14:12:20 ID:Lh18AEi4
>>286

「〜だZE☆」と言えずに「〜だJE☆」になると申したか
288名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 14:27:16 ID:YiPvSggv
ふえの練習れんしゅー…
ぴーろりーびびゅーぴーぼー

笛「吹き込みがなっちゃいねえっ!」

「うにょーん」
289名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 14:45:11 ID:FyDuVAwr
既にちゅかさの4コマが明確に浮かんでくる・・・w
絵にはできないけど。
2904-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/18(金) 15:11:25 ID:0VG41n7k
ちょっと仕事で忙しかったら2スレも進んでるという不思議…

>>278
かがっト商品化きぼん(´・ω・)ノシ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/kiba_tsukasa.jpg
291名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 15:25:37 ID:aPUaiFYi
>>290
ちょww
かがっトうめぇww GJ
292名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 16:11:03 ID:+Bep0Ku1
>>290
ちょwwwww
GJすぐるwwww
293久留里:2008/01/18(金) 19:40:25 ID:kYmal+Wd
>>237
GJ!!
10年後の「先生」になった姿かぁ。
ありきたりな表現しか思い浮かばないのが悔しいが、なんか、凄く良かったです。

「先生」と言えば夏目漱石の『こころ』
(よし、こうやって餌を置いておけば誰かがSS化するだろう。くっくっく)

>>266
お疲れ様でした。
まさかこのスレでエロシーンがあるとは思いませんでしたよ。
………あ、ここは「エロ」パロスレか。

>>290
wwwwwwwwwwww
ほ、本当はGJ!って言うつもりなんか無かったんだからねっ。

294名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 20:55:33 ID:W6+9A33i
'`ァ(*´Д`) '`ァ、ベルトのかがっとがあまりにも可愛すぎて
フェチりそうな自分がやばい'`ァ(*´Д`) '`ァ

一家に一台、カガット!!

「べ…別にアンタのために変身を承認するわけじゃないんだからね!」
295名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:05:26 ID:NNoKriEa
今夜は投下無しか(´・ω・`)
296名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:06:12 ID:5nJd7V+P
なんだ今日の静けさは
297名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:11:15 ID:K5hD71ck
今日投下しそこなった人が通りますね…


うまくまとまらなかったんだよ…
298名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:13:59 ID:tNQE8hT9
ヒント:嵐の前の…
299名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:15:11 ID:9l/k9o7v
分かってたら今日投下したのにな

投下しようってときに限って他の人とかぶるんだよな
300名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:24:23 ID:T5iCyEWv
プロローグでも投下しちゃえばいいんですかねっ!?


しかし、あまり関係ないけどファミ通の情報はやっぱ信用ならないなぁ……
301名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 23:21:20 ID:5nJd7V+P
あれはどう考えてもひどすぎるwwww

がゲームやればSS作る上でもネタやらになりそうだし楽しみだが
302名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 23:21:49 ID:oZ1EhkXn
突然だが保管庫のましまろさんはすごい
この大量の作品を手伝いがあるとはいえ初期の頃からずっと保管し続けてる、保管ペースも速い
本当にお疲れ様。
303名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:16:10 ID:+Iqt2ByZ
保管庫の投票フォームでジャンル的に苦手でスルーしてたのが票稼いでたりするから迷うんだよな
誰か俺にTSものの魅力を教えてください
未だに抵抗があって読めないんだが
304名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:19:00 ID:c9mLMxoh
>>303
ヒント:好みは人それぞれ

というわけで見るかどうかは人それぞれの判断でいいと思うよ。
305名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:31:08 ID:O9UtXcTF
どれどれ、って感じに見に行ったら『◆体◆』にめっさ票が入ってて吹いた
このスレにはふたなりスキーがいっぱいいるようだw
いや俺もだが
306名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:40:32 ID:jpZRDQYm
>>303
基本的にTSは
・突然性別が変わったことに対する戸惑い
・それによる生活の変化(女体化なら下着購入とか)
・(本来は)同性の相手に惹かれていく過程
なんかが見所になるジャンルかな。
…なので正直「おす☆かが」とかはTSと呼んでいいのか微妙な気がする。
(あの作品自体は好きなんだけど)
307名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:42:35 ID:+Iqt2ByZ
>>304
ごめん否定的な意味じゃないんだ
一票や二票なら気にしなかったんだがぶーわ氏のとか二十票とか入ってるからさ
さすがに内容が気になるけどいまいち踏ん切りがつかなかっただけなんだ
308名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:46:46 ID:bL4j7lpt
モバ名サァカ@です
http://mbga.jp/AFmbb.aFzg4d4312
モバゲーでらきすたパロ小説書いてます、感想ください^^;
一応15禁です

309名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:48:20 ID:LUVxCwWC
死ね
310名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:49:14 ID:e1dqcJod
めんどいから直接このスレに投下してくれ
311名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:51:56 ID:/41aCDmb
>>306
まー文句ではないけど男体化というよりは男化だよなぁ
精神も男になってるのは
312名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:02:48 ID:+Iqt2ByZ
このスレでももうTSは男化ってことで浸透してるよな
まぁTSは性転換って意味だからまちがってないけど
313名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:05:55 ID:a4QjwIO0
性別だけが変わるのと、性格も変わるのは違うかな。
好き嫌い以前に、TSとは何かがよく分かっていない。
314名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:09:46 ID:Muya9SwH
定義なんか大雑把でいいと思うよ
面白くて萌えがあればそれでおっけー。
315名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:12:09 ID:x9I/oLOj
>>303
ドリフのもしものコーナーの中の一だと思うとすんなり入れるかも
「もしも〇〇の性別が換わっていたら」みたいに
316名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:12:43 ID:c9mLMxoh
>>307
ああ、俺もそういうことで言ったんじゃなくてやっぱりこういうのって人それぞれだなーと思ったもんで。
気を悪くしたのならスマソ。

>>312
たった一つ、そうじろうが女体化したSSが頭から妙にこびりついて離れない。

そうだ、誰かただおさんを(ry
317名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:13:49 ID:Ce0QUHwO
男キャラ化の魅力は俺もよくわからないけど、例えば朝起きたら股間に見慣れないモノが生えててうろたえたり
キョドったりするらき☆すたーズ(=中身は女)は見て見たい気がするw
318名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:16:28 ID:Ce0QUHwO
>>315
お前天才だな!

…でもスナックのママを演じる志村しか浮かんでこない俺涙目orz
319名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:16:45 ID:x9I/oLOj
>>317
こなたはすぐに慣れてナニを悪用しそうだ
ひよりはスケッチ開始して参考資料として……
320名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:18:54 ID:+Iqt2ByZ
おっけなんとなくだが批判を受けやすいジャンルだってのは分かったわ
しかしそれで二十票もかせぐとはぶーわ氏は凄いな
321名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:19:40 ID:/41aCDmb
まぁ、オリキャラに近いものがあるからその辺で抵抗はあるんだろうな

>>317
普通のかがみん → なんなのよコレ!?ど、どうしよう…
覚醒かがみん → よっしゃ!これで…!
322名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:20:46 ID:jpZRDQYm
>>311
んー…精神も変わってる、というのはそれほど重要でないんだよ。
実際精神も変化するTSものもあるしね。(Xchangeとか)
ただ、TSの基本は女性だった人が『作品中で』男性に変化する(あるいはその逆)ものなんで
「おす☆かが」みたいに『その作品では最初から男性』というのはあまりTSとは呼ばないと思うな。
ジャンル的には「かなた生存」のようなパラレルの一種だと思う。

一応ちょっと気になったんで説明したけど、
「男性化」と言った方が分かりやすいんで別にいいかな。
323名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:22:20 ID:qL7mCGDD
ケータイサイトと聞くとどうしても昨年末の悪夢を思い出す俺
324名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:24:32 ID:idzK2zyM
今TS書いてる人がきましたよ。
転換させたらきっとこんな性格になっちゃうだろう、みたいな感じで書いてるですよ。
でも無理なものを好きと言わなくて良いと思うのだ。

今書いてる人たちはなんとなく難しい…
325名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:24:34 ID:ivinsfro
>>321
皆がその状態でフェチ発動したら恐ろしいことに。。。

>>322
TS本家(?)の例を挙げるなら、
異性の体への変身、異性との入れ替わりとかだろうか。
326名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:29:00 ID:+Iqt2ByZ
誰が最初に男性化って書いたんだっけ? おす☆かが?
327名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:32:26 ID:zmDU8B8F
全員男でBLものっていうのを(ひよりが描いた漫画っていう設定で)
書いてみたいけど、自分がBL好きじゃないせいでネタが思いつかない
それを書くためだけにBLものを読み漁るっていうのもアレだし
328名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:34:03 ID:+Iqt2ByZ
>>324
ごめん俺の読解力がないだけかもしれないが最後の一文がよく分からないんだが
329名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:34:20 ID:O9UtXcTF
>>322
なるほど、知らなかった。勉強になったよ、サンクス
途中から性別反転するのをTSっていうのか……
そうなると確かに、おす☆かがとか遷移状態は別のジャンルになるのか
じゃあTS作品を上げると、昔のこなた男体化とか白石女体化がそうなるのかな

>>325
こなた逃げてええええええええええええええええええええええええええええ!!
330名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:35:06 ID:jpZRDQYm
>>326
9スレ目の「泉こなたは大変なフラグを立てていきました」とか、結構前からあるな意外とw
331名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:38:43 ID:idzK2zyM
>>328
いや、書き方がおかしいのですすいません

今自分が書いてる、あの二人の話を書くのは難しいということですorz
332名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:40:19 ID:/41aCDmb
>>322
そうなのか
なかなか深いんだな
>>325
こなた逃げてー

しかしTSパティは…
ガイルみたいなガタイの良い兄ちゃんしか想像出来んぜ
ステーキなら一口で食べるレベル
333名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:49:52 ID:+Iqt2ByZ
でも確か遷移状態のタイトルって、TSものにひっかけてるようなこと言ってなかったっけ?
今更どうしようもないがww
334名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:57:55 ID:RLTBmi/M
>>319
こなたがソレを有効活用する同人が一体何冊描かれてきたことかw
335名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 02:04:35 ID:jpZRDQYm
>>334
ハルヒがAVを撮る話と同じぐらいあるんじゃないか?w
336名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 02:18:32 ID:+Iqt2ByZ
>>322を責めるわけじゃないが、知ってた人はもう少し早く言及すべきだったかもね
もう男性化パラレルとTSがごっちゃになった今じゃ言わないほうがよかったかも

というか俺の記憶では凄い前にスレで誰かがパラレルって男性化したキャラを出したらTS表記しろって叩かれてたような記憶がある
もう本当曖昧だけど
337名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 02:22:15 ID:Ce0QUHwO
>>336
いや、別に言及する程の事じゃないと思うが…
ホントに詳しく知りたい人は自分で調べるだろうし
338名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 02:27:15 ID:jpZRDQYm
>>336
最近スレあまり見てなくて保管庫でまとめ読みしてたから…申し訳ない。
表記を変えろなんて言うつもりはないし、
特に問題があるわけでもないから今までどおりでいいと思うよ。
(さっきも言ったが、男性化と書いた方が分かりやすいしね)
339名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 02:43:03 ID:ZgjQLzKY
TSと男体化(女体化)パラレルではそもそも楽しむポイントが違うと思うのさ

TSってのは>>306とかで挙げられてるように、倒錯的なシチュエーションを楽しむものだけど
男体化(女体化)パラレルはむしろ逆で、同性愛が苦手な人が感情移入しやすくするために使われることが多い…と思う
340割って入るこなた:2008/01/19(土) 03:51:13 ID:+yatb8uf
んーふっふ〜、『生』な会話だねぇみなさん
341名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 04:40:16 ID:h3JCJCGb
そっそういうあんたはどうなのよ?
ハッまさか…(もう生えてるんじゃ…)
342割って入るこなた:2008/01/19(土) 04:50:31 ID:q8WrcILq
(くふふふ…)じゃ〜ん♪

私のドリルは天を突くドリルだっ!
343名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 05:13:20 ID:TTeAqxKG
どこの馬の骨ともしれんオリキャラとか俺×こなたとか俺×かがみよりは
TSの展開がいいなぁ

こな×かが、かが×こな好きな一意見だけど
かがみとかこなたが男体化したのには珍妙なカップリングより安心感があって
微笑ましいな
344TSネタ:2008/01/19(土) 06:14:41 ID:FAuCSOKN
少し書いてみた。続きは、きっとない(´・ω・`)
※以降、TSかもしれないので注意!
=======
《ジリリリリリリッ!!!》
パシッ! カチッ!
一連の擬音は、私が目覚まし時計を止めた音。
目覚ましを止めるために布団から出した片手を振り子のように使って、上半身だけ起こす。
身体の覚醒を促す為に上半身だけで伸びをすると、ピキピキっと気持ちいい音を立てて背筋が伸びていった。

身体の状態を確認する。
遅くまで勉強してたこともあり、瞼が少し重い。
それと下半身がちょっとだけ熱を持っている気がするけど、総合的にみれば身体の方は好調のようだ。
あえて睡魔に負けそうな瞼だけ擦って、布団から抜け出す。
…ん?
ベッドから下ろした足に、視線を合わせると、いつもと違う気がした。
なんだろう…つま先から頭までの距離感が違うのか、いつもよりつま先が遠い。
はて?まだ寝ぼけているのだろうかと、無意識のうちに後頭部に片手をやった。
……あれ?
背中に掛かるくらい長い髪の毛が、何故か後頭部で終ってる。
言い知れぬ不安に焦る気持ちを抑えて、後頭部から背中へ手をスライドさせていく。
どうやっても、そこにあるはずの髪の毛がない。
……お、落ち着け私。
手を戻して、大きく深呼吸をして。
覚悟を決めて、ガバッと振り返って枕元を見た。
髪の毛は──そこにはない。
抜け落ちたかと最悪な状況を想定してた分、その点では安心した私がいる。
……で、どういうことなの…?
先程産声をあげたばかりの不安は消えたものの、新たな疑問が思い浮かぶ。
完全覚醒には程遠い頭は中々働いてくれず、自分が置かれてる状況がよく解らないまま、数分間、胸元で腕を組んで考え込んでいた。

……
………えええええええぇぇぇ!?
“胸元に腕を組んで考え込んでいた”私は、髪の毛以外にあるべきはずのものがないことに気づく。
改めて、両手で掴んで確認すると、あるのは妙に堅い胸板だけ。
仮にあったとしても、みゆきには劣るが、こなたには勝り…つかさとはどうなんだろう…比べた事ないや。…って、そうじゃなくて!
むむ、胸が!胸が!!!
なななななな、無くなってる!!!?
気づいたら、ベッドどころじゃなくて。
部屋から抜け出し、洗面所に走っていた。
=======
こうですか!わかりません!
345名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 06:18:36 ID:zHLZCe8v
たしかに男体化してもかがみなら安心してこなたを任せられるなぁ
346名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 07:34:23 ID:08GKTjDL
>>343
個人的な意見になるかもしれないけど
俺は男オリキャラの方が受け入れられるんだよなぁ

らき☆すたの世界は別に女性だけで構成されているわけではないし、
男が存在し作品に登場しても違和感はないけど
かがみやこなたが男になって登場するのは少し違和感を感じる
なぜならかがみやこなたは「女の子」であるからかがみやこなたのストーリーになるからであって
「男の子」であるとそれはもはや別キャラがメインのストーリーになってしまう…気がする


…すいません、独断と偏見だけの意見なのでこのレスはできればスルーしてください

何が言いたいかというと、男オリキャラも需要があるってことです!
347名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 07:50:08 ID:78VAhTRO
>>343
やあ、私

個人的にはこなた男体化でかがみを(性的な意味で)振り回すと萌え
348名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 08:06:15 ID:F9ju4xoP
TSも男化もオリキャラ男もゲーム版もまだ原作に出てない男もこなかがもパラレルワールドも過去も電車も
少し苦手でなかなか一歩踏み外す勇気が持てなく読むもの無いのにまだスレに残っているオレが通りますよっと
やっぱ百合が好きです

あと本当に保管庫の管理人さんいつもお疲れさまです
34923-49:2008/01/19(土) 10:01:39 ID:aGbnIYYm
どうもです
投下無しなのに名有りで失礼します
流れに便乗してるようで微妙に無関係な相談がありまして

構想中の話の中で男子生徒のモブが数名必要になったのですが
自分の書く名無し顔無し男子はどうしてもDQNになってしまうんです
そこで、おすかが、おすつか、おすゆき(っぽい性格のヤツラ)を
特別出演させたいんですが、アリですかね?
350名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 11:59:58 ID:LUVxCwWC
おすゆきがいるならあり
351名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 12:01:41 ID:+Iqt2ByZ
>>348
少しってレベルじゃねーぞw
もう33スレ目ともなれば仕方がないさ、普通のこなかがだって何番煎じか分かんないしな
書き手としては新しいのを模索した一つの結果なのかも
他人とは違うものを作りたいってのもあるだろうしね
352名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 12:05:57 ID:YWBthjzy
もう33なんだよな・・・33って聞くと失敗作なイメージがある(GT-R的な意味で)
353名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 12:16:04 ID:+Iqt2ByZ
>>349
ぶーわ氏のようなリビドーをくすぐるおすゆきを期待してます
354名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 12:33:08 ID:+Iqt2ByZ
投下なしで名有りってなんか問題あるの?気にしてなかったけどたまに居るよね
355名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 12:38:15 ID:mUgGTIG/
カップリング別に作品数の上位をまとめてみた。

こなた&かがみ 369作品(非エロ261作品 エロ108作品)
ゆたか&みなみ 69作品(非エロ45作品 エロ24作品)
かがみ&つかさ 58作品(非エロ34作品 エロ24作品)
あきら&みのる 51作品(非エロ41作品 エロ10作品)
こなた&ゆたか 48作品(非エロ43作品 エロ5作品
こなた&つかさ 37作品(非エロ23作品 エロ14作品
つかさ&みゆき 23作品(非エロ8作品 エロ15作品)
こなた&みゆき 16作品(非エロ9作品 エロ7作品)
そうじろう&かなた 13作品(非エロ12作品 エロ1作品)
こなた&ななこ 11作品(非エロ7作品 エロ4作品)

5倍差ということに激しくビックリしたw
356名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 12:43:47 ID:LUVxCwWC
かがみの性欲は異常ってことか
357名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:15:10 ID:9KIO/4KC
それでみると、つかさかみゆきがメインになっている作品のエロ率が高いな……ゴクリ
358名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:26:08 ID:TixFoxUb
主人公格4人のうち かがゆき が無いのに気づいた。
気になるが私に文才は無いorzorzorz
359名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:27:07 ID:O9UtXcTF
つまり柊家はエロぃということですね
360名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:28:25 ID:LUVxCwWC
親からして四人も子供作るくらいだし
361名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:32:37 ID:Ce0QUHwO
>>344
イイ!(*・∀・)=3


>>355提供資料における「作品数に占めるエロ傾向」ランキング
1. つかさ&みゆき 65.2%
2. こなた&みゆき 43.8%
3. かがみ&つかさ 41.4%
4. こなた&つかさ 37.8%
5. こなた&ななこ 36.4%
6. ゆたか&みなみ 34.8%
7. こなた&かがみ 29.3%
8. あきら&みのる 19.6%
9. こなた&ゆたか 10.4%
10. そうじろう&かなた 7.7%

なんとみゆきが1・2フィニッシュを決めておりますだばだば
362名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:34:38 ID:O9UtXcTF
みゆきさんもか……こなた大変だな
363ただお:2008/01/19(土) 13:35:12 ID:Ce0QUHwO
>>360
やー、下二人は双子だったし、実質3回分なんですよ´_ゝ`)
364割って入るこなた:2008/01/19(土) 13:41:58 ID:+yatb8uf
>>361
このランキング、あくまで割合だよねー
数にすると、やっぱりかがみんが圧倒的だよねー

やっぱり、柊家って・・・(=ω=.)

「その数に貢献しているあんただって立派にエロじゃないの
 まーだ調教がたりてないみたいねこなた」

ちょwwwまwwwwかがみwwwwアッーーー!
365名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:52:17 ID:vFxFIfG3
ふと、各キャラの攻め率、受け率というものが気になり始めた

・・・集計めんどいorz
36623-49:2008/01/19(土) 14:46:39 ID:aGbnIYYm
>>350,353
どうもです
最低限イメージを崩さないように頑張ってみます

>>354
いえ、前に余所でやって怒られたことがあるもので
余計なこと言いました
367みゆつか愛してる:2008/01/19(土) 14:56:40 ID:FqpiWP4v
>>355
みゆつかはもっと多くてもいいと思うんだ
増やさせていただきます

>>366
みゆつか一位ktkr!
やはりゆきちゃんのいやらしい身体は性の対象になりがちのようですね……。

前回のひよりものにコメントをくださった方、ありがとうございます。
昼間ではありますが『恋するひより(後編)』を投下したいと思います。

・男×ひより(非百合注意)
>>211-218の続き
・9〜10レス拝借

もし他に投下宣言がないようでしたら、投下させていただきたいと思います。
368恋するひより・後編1:2008/01/19(土) 15:00:02 ID:FqpiWP4v
「休む」
私がそう口にしたのは朝の7時半。自室のベットで布団に潜り込んだ状態だった。
朝食の準備ができてもリビングに降りてこない私を心配したお母さんが部屋へとやってきて……私はそう言った。
「体調悪いの?」
「ちょっと、ね」
嘘じゃなかった。目が覚めてからずっと、喉に違和感があった。それに少し身体がだるい。完全に風邪をひいている。
お母さんが持ってきた体温計で熱を測ると、37度9分の発熱。
「今日は学校休みなさい。まったく……昨日あれだけ寒かったのに、何の準備もせず夜遊びするからよ」
「夜遊びなんかじゃないよ……」
お母さんの視線を避けるように布団を頭からかぶると、私は小さくため息を吐いた。
夜遊びなんかじゃないよ。私は今までで一番真剣な気持ちで、あの公園に6時間もいたんだから。
「学校にはお母さんが連絡いれておくから、きちんと暖かくして寝ているのよ」
お母さんが出ていったのを確認して、私は携帯を確認した。電源が入っていない。
それはそうだ。私が昨日、眠る前に自分で切ったんだから。今ごろメールやら不在着信やら来ているのかな。
私には電源を入れてそれを確認するまでの勇気が無かった。彼はあれから私にメールしたのかな。
(するはずないよね。私からのメールも返さなかったし、あれだけ待っても来なかったんだから)
しかし、あんな寒空の下で女の子を6時間待たせますか。そして私も、なんでバカみたいに待ってたんだろう。
(非常識っスよ。男に二言はないはずっス)
必ず来ると書いてあった彼のメールを確認したときの喜びを思い出して、それは一層の切なさになって、胸に襲いかかって、
私は昨日流しきったと思っていた涙を、また零そうとしていた。枕に顔を埋めて、必死に耐えようとする。
なんとか彼を責めようとしてみたけれど、彼のせいにして気を紛らわそうとしたけれど、ついに私にはできなかった。
(全部私が悪いんだ……こんな趣味を持ってるから、全部受け入れてくれるとか甘い夢見てたからいけなかったんだ)
彼と初めて会話したあの日、クラスの男子から言われた私を深く傷付けた『キモい』という言葉。
昨日、彼も同じ事を私に思ったのだとしたら。彼の中でも、私は近寄ってはいけない存在に映ったんだとしたら。
(そっか……私って、『キモい』んだ……)
あれだけ優しくて、私を好きだと言ってくれた彼に拒絶されるくらいなんだから、私はきっと世界一キモい女なんだ。
考えれば考えるほど、私は自分を責め抜きたくなった。この趣味に目覚めてから、後悔する事なんて一度だってなかった。
今までの自分の行動の全てが憎らしくなってきた。自分の描いてきた原稿を、集めたグッズを、全部壊したくなる衝動。
(私ってキモいんだ、私ってキモいんだ、なんで私はこんなにキモい女になっちゃったの、なんで私は……)
枕を握る私の手に力が込もる。暴力的なまでに自分への嫌悪感が、風邪で弱った身体の中で暴れている。
(どうしよう、彼に嫌われちゃった。私がこんなんだから、彼の気持ちを裏切るような人間だったから。
 彼に謝りたい。嫌わないでって言いたい。彼に許してもらえるなら、こんな趣味いつだってやめてやる。
 でもきっと彼はもう、私と関わってくれない。私への不安が彼の中に生まれたから。もうお喋りもできない。
 一緒に帰ることも、他愛のない世間話や、アニメの話で盛りあがることも、私に微笑みかけることもないんだ)
原稿を描く時間があったら、メイクを勉強すればよかった。アニソンを聴いてる時間があったら、ファッション雑誌でも……。
そんなどうしようもない後悔だけが、私の中で次々と生まれてくる。どうして自分はこういう方向にいっちゃったんだろう。
決して広い理解をもらえる人種ではないと、常々理解していたつもりでも、やっぱり否定っていうのはとても恐ろしい。
(八坂先輩、泉先輩、頑張れなくてごめんなさい。それと、もう二度と私は……)
原稿を描きません、と思っているうちに、私は二度目の眠りに落ちていった。

******
369恋するひより・後編2:2008/01/19(土) 15:01:15 ID:FqpiWP4v
「……より、ひ……り! ……ひより!」
眠りの底から私を引きずり上げたのは、お母さんの声だった。勢いで上半身を起こす。
「あ、お母さん……今何時?」
「12時半。おかゆ作ったから、食べなさい。それと、お友達が来てるわよ」
「えっ?」
おかゆの入った小さな土鍋を持っているお母さんの後ろからひょこっと顔を出したのは、八坂先輩。
それに倣って次々と姿を見せたのは、小早川さんと岩崎さんだ。三人とも、心配そうな顔をしてくれていた。
「こんにちわ、田村さん」
「ひよりん、体調はどう?」
「あ、おかげさまで……って、今お昼だよね? 学校は?」
「この時間はいつも昼休みだって、ひよりんだって知ってるだろ」
「それで、私達心配になってきちゃったんだ」
小早川さんの言葉に、岩崎さんは小さく頷いた。短いお昼休みをお見舞いに費やしてくれるなんて。
私は本当に、人間関係に恵まれていた。この運の良さでどうして、恋人には恵まれないんだろう。
「ありがとー……でも、どうしてお昼休みに?」
「だってひよりん、連絡とれないんだもん。昨日の結果、聞こうと思ったのに」
八坂先輩のその言葉に、私の胸がズキンと疼く。残念ながら、私のせいで期待には添えませんでした。
「私も、先生から田村さんが風邪で休んだって聞いて、心配になってメールしたんだけど返ってこなくて。
 メールできないほど体調が悪いのかな、もしかして寝てるのかもって思って、迷惑かもと思ったけど電話して、
 携帯の電源そのものが切られてたみたいだから、どうしようかってみなみちゃんと相談して、じゃあ行こうってなって」
「……その途中で、八坂先輩に会った。八坂先輩は先生から、田村さんが欠席したのを聞いて心配していたらしくて、
 田村さんの昨日のことは……私達もさっき、八坂先輩から聞いていて。それでなにかあったのかなって思ったんだ」
ということは小早川さんも岩崎さんも、私が告白されたこと、それを受け入れるために公園に行ったことは知ってるんだ。
「二人には思わず話しちゃったけど、昨日のことがあって今日のこれだから。二人とも相当心配していたみたいだし、
 ひよりんのためにも知っておいてもらう必要があると思ってね。こんなに心配してもらえるなんて、ひよりんは幸せだね」
友情に関しては本当に、私は幸せ者です。八坂先輩の世話好きも、ここに極まれりって感じだけど……。
私は自分が嬉しくて堪らないのを感じていた。三人の情が胸に熱い。失恋の痛みを、少しだけ忘れさせてくれた。
でも私は、それにお返しできるような返答を持ち合わせていなかった。
「で、ひよりん。その様子だと……ダメだったみたいだね」
「えっ……は、はい」
私はまだ何も言ってないのに、八坂先輩は結果を見抜いていた。部屋中に重い空気が立ち込める。
「そりゃおかしいよ。だって告白してきたのはあいつなんでしょ?」
「いえ、いいんです……」
「いいって、でも、田村さんもその人のこと……」
「好き同士だったからといって、うまくいくとは限らないよ。人の気持ちなんてすぐ変わっちゃうし」
「そんな……」
私は痛々しそうな顔をする三人、特に今にも泣き出しそうな小早川さんに対して、少しだけ微笑んだ。
これ以上こんなに優しい三人に、心配はかけたくない。今の私にできる、精一杯の笑みだった。
「みんな、そんなに心配する必要ないっスよ。私なら全然元気っス! やっぱりこの喋り方が私らしいっスね!
 私だって高校生の女の子だし、失恋のひとつやふたつするもんっスよ! たいした問題じゃないってこと」
ああ……今の私ってすごい痛々しいんだろうな。だって私以外、誰も笑ってないんだもん。ドツボにはまってる。
370恋するひより・後編3:2008/01/19(土) 15:02:18 ID:FqpiWP4v
「それより、三人ともお昼まだっスよね?」
「……うん。ご飯よりも先に、ひよりんが心配だったしね」
「嬉しいデスね〜。お弁当は持ってきました? ない人はうちで何か食べていってくださいっスよ。
 時間も無いし、簡単なものしかないですケド……それとも、そろそろ学校に戻って学食でも……」
「……それは大丈夫だけど、ひよりんは誰かそばにいなくていいのか?」
それはどういう意味だろう。今の私はそんなに、寂しそうに見える? 三人の目には人恋しそうに映っている?
でも、八坂先輩の言葉はあながち間違っていない。ひとりになるとまた泣いてしまいそうだったから。
今は三人の優しさに甘えて、自分を慰めるのもいいかもしれない。絵に描いたように失恋した女の子だった。
「じゃあ、そばにいてください。ひとりだと心許なくて〜……」
「時間いっぱいまでは、田村さんの話し相手になってあげるね」
「……体調がすぐれないときは、いつでも言って」
「これがお見舞いの本領っスよね……けふんけふん」
堰は出てしまったけれど、暖かくして寝ていたためか朝と比べればずいぶんと体調が良くなっていた。
簡単な風邪だけですんで本当によかった。明日からまたいつもの私で学校に通えるか、自信はなかったケド……。
「まあ色々あったけど、これでひよりんも原稿に集中できるんじゃない? 今回は落としちゃったけどさ」
きっと八坂先輩にとっては何気ない言葉だったんだろう。でも私には、その言葉はちょっとした恐怖だった。
「あ……あっ、あの、八坂先輩」
「きっと今ごろ印刷所やコンビニのコピー機前は戦場だぞ〜」
「あっ、そういえば田村さん新しい本描いてたよね? インクこぼしちゃったケド」
「あ、あのね。先輩、私」
「結局あれ、完成しなかったんだよ」
「えー! そうなんですか?」
「……手伝ってあげればよかったかな」
「いいんだいいんだ、自己責任だし。ただし、今度のイベントはその分厳しいからね? 絶対新刊出させるよ?」
「せ、先輩っ」
三人の会話を止める、私の声。不思議そうに私を見つめる六つの目。
「どうしたの、ひよりん」
「わ、私、その……」
それを言ってしまうべきかどうか、少しばかり躊躇してしまった。けれど、私はもう誓ってしまったんだ。
その言葉は、八坂先輩を失望させるに違いないし、怒らせてしまうかもしれない。こんなに優しくしてくれているのに。
けれど、もうどうしようもなかった。今の私には、これしか自分を変えるための手っ取り早い方法がなかったから。
「私……もう原稿は描きません」
「それはダメ」
即答だった。きっと、私がフラレたんだとわかった時点で、どんなことを考えているか予想がついてたんだ。
しかし、いくら八坂先輩にダメだと言われても私はその決意を揺るがせるわけにはいかなかった。
もう二次元に逃げるだとか、妄想に逃げるだとか、そんな逃げ道を作るより普通の女の子のままでいたい。
「先輩。本当に申し訳なんですケド、私はもう描きません。サークルも解散します」
「……」
八坂先輩がふぅっと息を吐く。小早川さんと岩崎さんは、そんな私達を見比べて、戸惑ったような顔をしている。
また迷惑かけちゃってごめんね。でも、私には八坂先輩を説得させないといけない必要があるんだよね。
371恋するひより・後編4:2008/01/19(土) 15:03:28 ID:FqpiWP4v
「ひよりん。いくら私だって風邪が治ったらすぐに原稿に取りかかれとか、そんな残酷な事までは言わないよ。
 今のひよりんの状況をきちんと理解してる。だから今は時間を置く必要があるんだよ。それはわかるよね?
 自棄になってそんなこと言ったってしょうがないよ。趣味のせいで嫌われたからやめるとか、考えたらいけないぞ」
「自棄なんかじゃないっス」
私の声に力が込められる。柔らかく説得するつもりだったのに、どうして攻撃的になっちゃったんだろう。
「いいや、自棄になってる。いつものひよりんなら、間違っても原稿やめるだとか言わないでしょ」
「いつもの私ってなんですか。私はいつも原稿のことばっか考えてるような面白みのないやつですか」
「田村さん、落ち着いて……」
岩崎さんが私の肩に手をかけようとする。小早川さんは怯えるように小さく震えていた。
「だって、原稿だとか、そんなこと気持ち悪いことやってたからあの人に嫌われたんですよ!?」
「気持ち悪いって……何が気持ち悪いんだよ。ひよりんは自分の趣味をそんな風に考えてんの?
 誰になんて言われようが、そんなの無視すりゃいいじゃん。自分が楽しいと思う事、やって何が悪いんだ」
「八坂先輩はわからないんですよ! 『キモい』だなんて言われた事ないから!」
一瞬、部屋の空気が凍った。私以外三人揃って目を見開いて、ああ……私はなんて友達不幸なやつなんだろう。
「た、田村さん……今……」
「それは……あいつが言ったの?」
「……違います。でも、私はクラスの男子が私の事を、はっきり『キモい』って言っちゃったのを聞いたんです。
 彼は、そんな彼らから私の話を聞いているうちに……昨日来てくれなかったのは、彼もきっと同じ事を思ったから」
「ひよりん、それは」
「もうイヤなんです! 中学のときもそうだった。こんな暗い趣味に走ってるから、好きな人に嫌われる。
 キモいって言われて、嬉しい人なんていないっスよ! 私だって女なんだから、泣きたくなるくらい辛いっス!
 しかも好きな人にまでそんな風に思われて、これから先どうしたら原稿なんて描けるんですか? 私にはもう無理っス!」
小早川さんは泣いていた。私の悲しい気持ちを察してくれたのかな。岩崎さんはそんな小早川さんを労る様に抱いていた。
「何を言ってんの? ひよりんの左手は、ひよりんを悲しませるためにあるものじゃないでしょ」
左手――……そうだ。ペンだこだらけの私の左手。彼が褒めてくれた私の左手。勲章だと言ってくれた私の左手。
……今の私を苦しめている、ペンだこだらけで汚いだけの罪深い左手。
「そう……この手のせいっスよ。何が神の左手っスか。バカみたいに後生大事にして、私を苦しめてきたくせに!」
私は傍らにあった目覚まし時計を取った……右手で。それをそのまま、自分の左手めがけて振り落とす。
「バカっ、ひより――」
小早川さんはとっさに目を覆い、岩崎さんは身を乗り出す。バキッという鈍い音が、部屋中に響いた。

******

「さてさて、九死に一生を得たところで……ひよりんや、それはないんじゃないの?」
ベットの傍らに転がるのは、粉々になった目覚まし時計。私の神の左手がこんな姿にしたわけじゃない。
目覚まし時計破壊の犯人……泉先輩は私に向かって、いつものネコ口を見せていた。けれど、瞳はどこか真剣だった。
私の左手に時計がぶつかる瞬間、どこからか突然現われた泉先輩は手刀をもって私の右手から時計を弾き飛ばした。
壁に衝突した時計は大破。「私も昨日のことでひよりんが心配になってネ〜」とは泉先輩の弁。
「……なんで邪魔するんですか。こんな左手、使えなくなった……ほうがっ……マシ……」
私は嗚咽を漏らし、そのまま大粒の涙をぽろぽろとこぼし始めた。私はどれほど泣けば、いい加減気が済むんだろう。
「ひよりんの本が読めなくなるのは困るよ〜。それ以上に、ひよりんが今以上悲しまないといけなくなるのが困る」
「こんな手、使えなくっ、なったってっ、別に悲しくないっス……」
岩崎さんがハンカチを差し出してくれた。八坂先輩は自分が私を追い詰めたと思っているのか、深く肩を落としている。
372恋するひより・後編5:2008/01/19(土) 15:04:46 ID:FqpiWP4v
「こんな手があるから、私はキモいだなんて言われるんですよ? だから私は嫌われて」
「そんなことでキモいって言われて、何か思いつめる必要はあるの?」
まるで私の悩みがたいしたことないかのような表情で、泉先輩はしれっと言葉を返した。
「誰がキモいって言ったの? その男子達? じゃあその男子達がキモいって言ったら、ひよりんはキモいの?
 私のうち誰かひとりでも、ひよりんのことキモいって言ったことある? そもそもキモいことの基準って何?」
「そ、そんな屁理屈を聞きたいんじゃないっス! 私は、好きな人に、彼にキモいって……」
「言われたの?」
泉先輩の言葉、力は込められていないはずなのに、なんだか有無を言わせぬエネルギーが……。私は身をすくめた。
「言われてないですケド……」
「ひよりんが原稿を描いた事で、誰か迷惑してる? ひよりんの左手は、誰かを傷付けたことはある? 多分ないよね。
 ひよりんの事をキモいって言った人以上に、ひよりんの本をいつも楽しみにして、それを読んで楽しむ人がいるんだヨ?
 こんなに誰かに自慢できる左手、そう転がってないよ。だって、彼が褒めてくれた勲章がたくさん付いてるんでしょ?」
勲章……私はそっとペンだこに触れて、あのときの彼の言葉を思い出す。私のペンだこは、勲章……。
淡々とした口調で次々と言葉を発していく泉先輩。ネコ口なのに、なんでこんなに私の中に響いてくるんだろう。
「ひよりんの左手の偉大さを知らない人間が何を言おうが、放っておけばいいよ。傷付くこともあるだろうけどさ。
 無知な人間が遠くから飛ばす野次ほど情けないものはないしね。ただ、私達はひよりんの原稿を読み続けたいんだ。
 彼は本当にひよりんをキモいと思ったか、彼に聞かないまま終わっちゃう? ひよりんはまだ何も終わってないよ。
 聞いてみる価値はあるんじゃない? 万が一そいつがキモいって言ったら、私とこうがボッコボコにしてやんよ〜」 
「ちょっと待って。なんで私まで」
ストレートパンチをシュシュシュと繰り出す泉先輩。私が死ぬほど悩みぬいたことをなぜこうも簡単な話のように……。
「わ、私は……」
突然口を開いたのは小早川さんだった。袖で涙を拭って、いつもの愛くるしい笑顔を私に見せてくれている。
「田村さんの手、好きだな〜……だって、面白い漫画描いてくれるし、描いてるときの田村さん、すごく幸せそうだし」
「私も……田村さんの手がダメになるなんて、悲しい。もっと、その手を誇ってもいいと思う」
次いで、岩崎さんの言葉。なんの飾りもないそのまっすぐな二人の言葉は、まっすぐな分だけ私の胸に突き刺さる。
私はなんていうことをそしようとしていたんだろう。こんな二人の目の前で、自分の手を壊そうとしていたなんて。
そうだ。私の手は……私と彼を放したわけじゃない。私と彼を引き合わせた手のはずだった。どうして忘れていたんだろう。
岩崎さんが小早川さんに、何か耳打ちしていた。小早川さんは驚いた顔を見せると、顔を赤くしながら小さく頷いた。
「泉先輩、八坂先輩。すみませんが、席を外していただけませんか?」
「ん、いいよ」
岩崎さんの要望を受けて、二人は部屋を出た。岩崎さんと小早川さんは姿勢を正して、真剣な目で私を見つめる。
「田村さん。こんなときに田村さんに言っていいかわからないケド……後で答えるって約束したから言うね」
「う、うん」
「私とゆたかは……付き合ってるんだ」
まあ以前話したときにある程度わかっていたようなものだったけど、それでも私の脳天にハンマーのような衝撃。
「えっ、や、やっぱり……いや、そうじゃなくて……で、でも、それを私に言っちゃっていいの?」
「うん。ゆたかもいいって言ってくれたし……今の田村さんには聞いてもらいたいから」
小早川さんは頭のてっぺんまで真っ赤にしている。同時に、不安そうな顔で私を上目遣いで覗きこむ。
「たぶん、田村さんには女の子同士で気持ち悪いって思われるかもしれないけど」
「お、思わないよ全然! そんなこと……むしろ嬉し、げふんげふん」
「ありがとう……でも、私達はきっと色んな人から、奇異な目で見られることがあると思う」
「ん……まあ、そうだよね。決して大勢からは簡単に歓迎されるようなものじゃないし」
373恋するひより・後編6:2008/01/19(土) 15:06:09 ID:FqpiWP4v
「でも、私達からすればそんなことはどうでもいい。私はゆたかのことが好きだから。私達は守り合うって誓ったから。
 本当に好きなものを守り通したいときは、周りよりも自分のことを信じるしかない。それがたとえやせ我慢でも。
 私は……田村さんにもそうしてほしい。本当に正しい事を知ってるのは、幸せになる道を知ってるのは自分だけだから」
小早川さんの手を固く握ったまま、射抜くような目で私を見る岩崎さん。決意と勇気に満ちた、勇ましい瞳だった。
幸せになる道……原稿が完成したとき、誰かに読まれたとき、たとえ苦しい過程があっても、私は幸せだった。
彼と話しながら帰る家路、彼と盛り上がったお喋り、いや、彼と居るだけで、それも私には幸せだった。
どうしてそのどっちも、私は手放そうなどと考えていたんだろう。まだ何も、自分のことを信じきれていないのに。
「……ありがとう、岩崎さん。小早川さん」
私の目を見た岩崎さんは、クスっと微笑んだ。彼女は鋭い人だから、きっとすぐに気付けたに違いない。
……私が、最後まで自分を信じぬく決意を、そして彼を信じぬく決意をひっそりとしていたことに。
小早川さんはやがてまた、いつもの笑顔を見せてくれた。あっ、目の前にすごい百合! これは鼻血ものっスね!
「でも、私はどうすればいいんだろう。明日顔を合わせるだけでも、ちょっと精一杯かな……」
そんなことを自嘲気味に言ってみる。二人は頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
「そういえば、その人ってどんな人なの?」
「二人は……相手のことは八坂先輩から聞いてないんだ?」
「うん……同じ学校の人としか」
二人はクラスメートだとは知らないみたい。教えない方がいいかもしれない。妙に意識させるのもあれだし。
「たぶんそのうちわかると思う……そういえば、もうお昼休みが終わる時間きてるね」
「あ、本当だ……学校終わったら、ノート持ってくるね」
「ありがとう。本当にいい友達もっちゃったな〜」
「今日は田村さん以外にも欠席者が出ちゃったんだけど、それがわけありで授業がちょっとだけ潰れちゃったんだ」
「へー? 誰が欠席したの?」
「えっとね、男子の人なんだけど……」
小早川さんの口からその名前が出たとき、私の全身は急激に凍ったように強張った。
「……えっ? 小早川さん、今なんて……」
「あのね、昨日の放課後なんだけど……クラスの男子同士で掴み合いのケンカがあったみたいで。みんなが帰ってから。
 そのときに相手に倒されてから頭をぶつけて気絶したみたいで……たしかすぐに病院に運ばれたんだって。
 ケンカの原因はよくわかってないみたいなんだケド、気絶したのすごく真面目な男子だからみんなビックリして。
 とてもケンカなんかするような人じゃなかったから……たしか今も病院に寝ているはずだけど……って、田村さん?」
小早川さんの言葉が言い終わるか終わらないかのうちに、私は切りっぱなしにしていた携帯の電源を入れた。
学校の番号を押しているうちに表示される、メールの通知と不在着信。私は神の左手でナンバーを押していく。
『はい、陵桜学園事務室です』
「すみません! 田村というものですが、○○先生に繋いでください!」
「た、田村さん……どうしたの?」
『……はい、代わりました。田村さん、体調は大丈夫なの?』
「私の体調はどうでもいいんです! 先生、教えて欲しいことがあるんですけど……!」
それから私は戸惑う先生から強引に引き出すようにして、欠席している男子の眠る病院の名前を聞き出した。
「どうしたの、ひよりん」
泉先輩と八坂先輩が、何事かと部屋へと入ってきた。私は何も答えず、というか答えられず、ベットから飛び起きた。
「それが田村さん……急におかしくなっちゃって」
私は携帯と財布、眼鏡を手に取ると、パジャマ姿のまま部屋を飛び出した。呆気に取られる四人を部屋に残して。
「……お姉ちゃん。田村さん、あれでよかったのかな?」
「いいんだヨ。やっと、最良の選択ができたみたいだしネ」

******
374恋するひより・後編7:2008/01/19(土) 15:07:55 ID:FqpiWP4v
糟日部病院までの道のり20Km。私はタクシーの運ちゃんに向かって、もっととばすように指示した。
今週末のイベントで使うはずだった、お小遣いはタクシー代に当てた。というか、お釣りをもらう余裕はなかった。
迷惑承知で病院のロビーを走ると、受付の看護師に食いつくように詰問する。彼の寝ている病室の場所を。
「はや、早く教えてくださいっス! 彼が、彼が、怪我をしているっスよ!」
「お、落ち着いてください。怪我をしてるのは知っています。ご家族の方ですか?」
「わ、私は……恋人です!」
その大声はロビーに響き渡った。パジャマ姿で半狂乱の女の子が病院で叫ぶ。我ながらサイコ野郎っスね。
「はい、恋人さんですね……ああ、昨日運ばれた人ですね。たしかもう集中治療は終わって、今は安静にしているはずです」
よかった……命に別状はないみたい。私は焦りながらも、心の底から安堵を吐いた。
「でも、困るんですよね。意識が戻って身体が動くからといって、その患者さん、病院から何度も脱走しようとするんです」
「だ、脱走ですか?」
「はい。今朝からもう四回も。公園にいかなきゃとか、田村さんに会わなきゃとか、そういって聞かないんですよ」
公園――彼は、私の約束を破ったわけじゃなかったんだ。彼は、私に会いに来ようとしてくれていたんだ。
思わぬアクシデントに邪魔されちゃったけれど、彼は私から離れたわけじゃないんだ。嫌いになったわけじゃないんだ。
「病室は305号室ですね。もう面会は大丈夫のはずですよ。あ、ところでお名前は」
「田村っス!」
「はい、田村さん……えっ?」
おでこが光る。私はコミケ会場でお目当ての同人誌を見つけたときよりも素早く、その場から駆け出した。
305、305……! 階段を8段飛ばしくらいで駆け上がる。風邪のせいか不思議と身体が軽い。
(305……あった!)
個室だった。病室の扉を開けて、私は突入した。
広く静かな病室。窓には曇天模様。その部屋の隅に設置されたパイプベッドには、頭に包帯を巻いた愛しい人の姿。
「た、田村さん……?」
「……なっ、なにをしようとしてるの?」
「……脱走」
彼は患者用のパジャマの上からジャケットを羽織って、ベッドから降りようとしていた。私は私で息も切れ切れだ。
「気持ちは嬉しいけど……脱走はダメっスよ」
「田村さん、走ってきたの? 汗がすごいけど……」
そのうえ風邪までひいてます、とは言えなかった。彼を余計に心配させるわけにはいかなかったから。
「安静にしてなきゃダメだよ……頭、怪我しちゃってるんだし」
「う、うん……あっ、田村さん……昨日はごめん!」
彼は包帯に包まれた頭を思いきり下げた。その振動で痛みが走ったらしく、「痛っ!」と叫ぶおまけ付き。
「だ、大丈夫?」
「うん……昨日は本当にごめん。こんなことさえなかったら、公園に行くつもりだったんだけど」
「もういい……もういいんだよ?」
ごく自然な動作だった。自分でもなぜ、そうしたのかわからなかった。でもたぶん、一番したかったことだったから。
気が付けば私は、彼の胸に頭を寄りかからせるようにして抱きついた。突然の行動に、彼の身体が硬直した。
あ、心臓が高鳴ってるのわかる……昨日からずっと寂しかったんだし、彼に触れたかったんだし、別にいいよね……?
「田村さん……」
「私、昨日ね。あなたの気持ちにOKを出すつもりだった。もちろん今でも、あなたさえよければ」
「……本当?」
「で、でなきゃ、こんなことできないっスよ〜……」
自分のやっていることに気付いて、急に恥ずかしくなってきた。でも、離れようとは思わなかった。
すると彼の両手が、私の頭を抱きかかえるように回ってきた。苦しくない程度に、私をぎゅっと包んで。
375恋するひより・後編8:2008/01/19(土) 15:09:39 ID:FqpiWP4v
「嬉しい……ありがとう、田村さん」
「その……ひとつ聞いていい?」
「何?」
「どうして、ケンカなんかしちゃったの?」
「……」
彼は急に黙った。それだけで、私は彼のケンカの原因がわかった。私のことだ。それであの男子達と衝突したんだ。
それを口にすれば、私が申し訳ないという気持ちを持つと知っているから、彼は黙っている。胸が張り裂けるほど嬉しい。
「私のことでしょ?」
「……!」
「昨日、途中まで聞いちゃってたんだ。あなたと男子達の話。途中で逃げちゃったけど……あれで嫌われたと思ってた。
 でも違ってたんだね。あなたは、最後まで私のために怒って、闘ってくれてたんだね。なのに私は……本当にごめんね」
「……ケンカなんて、本当はしたくなかった。誰かの胸倉を掴んだ事なんて、今まで一度も無かった。
 でも、田村さんを悪く言われるのだけは耐えられなくて、最初は無視するつもりだったけど、気が付いたら」
「うん……ありがとう」
今度は私が彼を慰めるように、優しいトーンで彼に言葉をかける。
あのときの彼の無言は、男子達に言い返せなくなったんじゃなくて、ただ無視をしただけだったんだ。
「……ね?」
「なに、田村さん」
「もしかしたら私の趣味のことで……あなたに引かれちゃう気がくるかもしれないんだよね」
「うん」
「それで……あなたに嫌われちゃうかもしれないし、それに」
「ならないよ、嫌いになんか」
「……うん」
ああ、良かった。この人を信じて。自分を信じて。今日はちょっと私から裏切りかけちゃったんだけど。
「田村さん」
「なに?」
彼は私の頭を自分の胸から引き離すと、私の目を見つめてきた。私は全身が真っ赤になるのを感じた。
「目、閉じて」
「目って……うえええええええ!!!!」
彼の言葉の意味を汲み取って、私は目こそ閉じたものの頭は思いっきり俯いていた。上がりすぎた体温で爆発しそうだ。
(ち、ちょっと待ってくださいっスよ! 目を閉じてって、目を閉じてって、いわゆるアレっスよね!? ね!?
 そんな恋愛漫画じゃないんですから、私なんかが主人公でいいわけなくて、私は読み手というか描き手というか、
 そ、そりゃ何度もそういうシーンは描いてきたっスけど、もう普段はパパッと描いちゃうわけなんですケド、
 もっとそういうのは美少女というか美少年というか美少女同士というか美少年同士というか、いやいやいや、
 はははははははははは恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしいっスよおおおおおお!!!!!!!)
「田村さん、顔上げて」
「ええええ、ああああ、あっ! く、唇はダメっス!」
「……田村さん?」
「その……風邪うつしちゃうから……」
376恋するひより・後編9:2008/01/19(土) 15:11:04 ID:FqpiWP4v
俯いたまま私は答えた。彼のために頭を上げようとしても、まるで錆びた機械のように私の首は動かない。
「風邪、引いてるの?」
「えっ、あっ、ちょっとだけ……あ、でも全然、走ったら治る人だし」
自分でも何を言ってるのかわからなかった。ただひとつわかったのは、彼がくすっと笑ったこと。
私は固く目を閉じたまま、決心したように頭を上げていく。唇にしないとわかったら、少し余裕ができた。
自分の心音が聞こえる。これまでにないほどの早鐘を打っている。こんなに恥ずかしがり屋だったなんて。
やがて、おでこに柔らかな感触がするのを感じた。それだけで、その部分からまるで電流が走ったかのようだった。
甘い電流は私の全身を一瞬だけ走って、彼の唇の触れた場所から、何かが身体を満たしていくようだった。
(ま、とりあえず……今のうちはこれだけでいいっスよね?)
私は固く閉じていた目を、そっと開いた。彼はまだ、私をまっすぐに見詰めている。
「お、おでこにキスされるのも、結構悪くな……むぅっ」
言い終わる前に唇は塞がれていて、彼に抱き寄せられていた私は今度は固くではなく、ゆっくりと目を閉じて、
彼の腕の力と唇の感触に身体も心も預けきっていた。そうでもしないと、この身体はすぐにでも崩れ落ちそうだった。
(どうしよう……いつもの私なら、これは漫画のネタに使えるぞとか、そんなことを考えるのに……)
彼が唇を離すと、私はやっぱり彼を直視する事ができずに、顔を真っ赤にしたまま俯いていた。
(今だけは……もうこの人のことしか考えられないっス……)

******

アニ研部室は修羅場と化していた。原稿を落とした私は次のイベントまでに新刊を三冊も仕上げないとならないようで。
なぜそんな荒行を八坂先輩が私に課したかというと、『幸せになったんだからこのくらい当然だよな』とのこと。
さっぱり意味がわかんないんスけど……そういうわけで私は放課後に部室で原稿用紙と格闘の真っ最中です。
「うう、本当なら今ごろあの人と一緒に帰って、家でゆっくりネームでも考えてるところっスよ……」
「ひよりん、愚痴垂れる前に手を動かそうか」
「八坂先輩だって、彼氏でもできれば私の気持ちがわかるはずっス」
「なんだとこの野郎」
「こんにちは。田村さんいますか」
部室の扉が開いて、姿を見せたのは彼だった。あれから幾度も、ここに足を運ぶようになった。
「あっ、もう少しで一区切りつくからもうちょっと待っ……あっ」
机から身を乗り出した瞬間、私の肘がインクのビンを倒した。無論、黒い悪魔が原稿用紙を侵食して……。
「ぎゃー!!!!! 原稿がー!!!!!!」
「田村さん、大丈夫!?」
私と彼と先輩とで、布巾を取り出したりででんやわんや。彼は無事な方の原稿を拾うと、
「これは……なんていう作品?」
「ああ、これはつい最近始まった深夜の萌えアニメで、メインの女の子キャラ四人が可愛くて」
「へえー……田村さんのオススメなら、僕も見てみようかな。まだこういうの、全然詳しくないけどさ」
「あなたもすぐに、いやでも詳しくなっちゃうっス、よ、じゃ、なくて……」
私は頭をぶるぶると振ると、軽く息を整えた。いつも通りのこんな口調じゃダメだ。もっと女の子らしく。
「あなたもすぐに、詳しくなる……よ!」
その言葉を聞いた彼はしばらくぽかーんとしていたけれど、やがていつものように微笑んで、
「僕も早く『ひより』さんに近付きたいっ『ス』」
……私の耳元で囁いた。
「わ、私の領域までくるのは厳しいっスよ! えと……その……」
私は初めて彼のことを下の名前で呼んだ。八坂先輩の「けっ!」という声が、アニ研部室に響いた。
377みゆつか愛してる:2008/01/19(土) 15:12:24 ID:FqpiWP4v
というわけで投下終了です。
『恋するひより』はこれにて終了です。
他職人さんが糖分多めということで、
こちらは対抗して乙女分を大増量しました。
読んでくださった方々、ありがとうございました。
誤字脱字ありましたら申し訳ありません。
それと、エロ無しですみませんorz

次回は久々にみゆつかを投下させていただきたいと思います。
ではでは〜。
378名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 15:22:17 ID:i9ZsZ7Ls
GJ!
気持ちの描写が素晴らしいwww胸をかきむしりたくなるような気恥ずかしさがwwww

しかし、ひよりが自棄になって左手を壊してしまう鬱展開も見たいと思ってしまうのは俺だけだろうか
379名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 15:28:37 ID:nJY6JR5G
>>377
ひよりん幸せすぎ〜GJ
乙女なひよりんかわいいよっ
そして、こなたかっこいいよっ

>>372
>私のうち誰かひとりでも
は、「私達のうち〜」ですかね?
380名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 15:37:11 ID:+yatb8uf
1日半ぶりの作品が、すばらしきハッピーエンドGJ!
ひよりの一人相撲っぷりと、仲直りへの展開っぷりに
引き込まれて最後までいっちまったぜ!
そして、こなたの達人アドバイザー的活躍も見逃せない。
デモできれば、その後の男×ひよりのエロいやつもみたかったなー

「と・・・とんでもないッス!私なんか描いたって全然・・・」
「田村さん・・・この期に及んでなんてこというの・・・」
「ここまで描かれておいて・・・Hから逃げとか・・・往生際悪すぎる・・・」
「これはもう体に教えなきゃだめみたいだねぇひよりん(=ω=.)b」
「ヒヨリン!ワタシトイウモノガアリナガラ!!」

「ちょwwwwまwwwwみなおちつけッスwwww●●君助けて・・・・アッーーー!!」
381名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 16:04:12 ID:YWBthjzy
>>377
うおー!!甘いぜ!胸がムカムカするくらい甘いぜ!あったまきた!ちょっくらE-KK3で峠攻めてくる!!
GJ!
382名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 16:29:40 ID:amw/491M
>>377
あまぁぁぁあああああ!!!GJ!!!!
あなたはなんて作品を書いてしまったんだ…すばらしすぎてもう、鼻血も出ないです…
男くんがいいキャラすぎて、オリキャラなのにすごく好きになれました。
その後の男×ひよりんも期待!(勝手に)
383名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 16:39:45 ID:idzK2zyM
>>377
さ、さっきから鼻血がでてくるんですが
しかも鼻血が、あま、あまぁぁぁい

ぐっじょ…ぶ…ぱたりこ
384名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 17:00:27 ID:FAuCSOKN
>>377
GJ!!こうしてひよりんは、最強の武器を手に入れた訳ですね…!
それにしても、鼻からの出血が酷くて困る…なん、だ…これ…バタッ
385名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 17:35:37 ID:P15EkHlf
>>377
ちょっと俺の鼻血でわたあめ作ってくるわ。
うわ…砂吐いてた…掃除掃除…

要するにGJ!
38629スレ19-24の人:2008/01/19(土) 18:19:58 ID:ERH+9NYf
>>377乙!!

この後ひよりんはカラオケ逝ってアクエリオン絶唱するわけですな・・・・・

♪いちおくとぉにせんねんたってもあぁぁいいぃぃしぃぃてぇぇぇるぅぅぅぅぅぅッッッッ!!!

サビの部分はもはや歌うと言うよりも愛を叫ぶって感じで。
387久留里:2008/01/19(土) 18:53:09 ID:8NQ+n1rS
久留里です。
予定よりも24時間遅れで続きをお送りします。

・つかさ視点/みさお兄視点
・今のところ非エロ
・5レスほど使用
・シリアス/タイムリープ/平行世界/鬱展開/戦闘シーン
・オリジナルキャラが登場します。
・オリジナル設定が多いのは仕様です。
・物語の性格上、鉄分が濃いです。

誰も居なければ19時頃に発車致します。
388名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 18:58:20 ID:ocE2HUQN
戦闘シーンとな…!?
これは期待!
389カケラ 10-1/3:2008/01/19(土) 19:00:05 ID:8NQ+n1rS
10.

「そのまま窓の方を向け!!」

4人組のうちの1人がショットガンを向けたまま、ほぼ脅しに近い指示をする。

(殺される)

死に怯えるあまりに膝がカクカクと震える。悲鳴をあげるように。
今立っているのがやっとで、力が抜けて倒れてしまいそう。
「早くしろ!!」
「ひぃっ!!」
私は低く響いた脅し声に吃驚し、慌てて身体の向きを180度変える。
この電車の窓は小振りで取付位置が低いので、私の頭が斜めの出っ張りにぶつかる。

それにしても、さっきの悲鳴は何だったんだろう?
あゆちゃんはトイレに行くと言って洗面所に行ったけど、そこで何があったんだろう?
私は意外と冷静だった。私の真後ろ、数センチ離れた所にショットガンの口がある。
自分がいつ撃たれるか分からないというのに、他人の心配をする余裕があるのだから。
いや、あゆちゃんはもう『他人』ではない。私の『旅』の大切なパートナーでもあるし、
私の『友達』でもある。ちょっとおマセさんだけど。

───そんな事を考えている私って、やっぱりおバカさんなのかな。
自分の『命』が狙われているというのに。
でもね、何となくだけど、大丈夫なような気がするの。
きっと、何とかなるよ。そう、『絶対、大丈夫』。

その時だった………。
 ドカン!!
二度目の破壊音。そして、もう一度。
 バガン!!
「ぎゃああああああ!!!」
客室の扉が吹っ飛んだ………音がした。

私は窓(というか壁)の方を向いているので本当に扉が吹っ飛んだのかどうかは分からない。
悲鳴も一緒に飛び込んできた。
でも、それはあゆちゃんの声ではなく、明らかに男の人のものだった。
「お、お前………『星のチカラ』の使い手か、ぐはっ」
『星のチカラ』?? 聞き慣れない単語が私を無意識に回れ右しようとする。
しかし………、
「……………っ!!」
後頭部に激痛が走る。
「動くなと言ってるだろう?」
グリグリグリ、と、確かに銃口が後頭部に食い込む音がした。
斜めに張り出した出っ張りと、真後ろの食い込む銃口、双方から圧力が掛かる。
今にも、
今にも、押し潰されそう。
でも、何となくだけど、私に銃口を向けている人の声が揺れている……ような気がする。
同じく私に銃口を向ける他の3人も、何となくだけど、気配に『焦り』を感じる。

ドサッ、とその男の人が倒れる音がした。直後、燐光が走る。
「うわぁぁぁぁあああああああああああああぁぁぁぁ………………」
相当ダメージを受けていたのだろう。男の人の叫び声が客室内に響く。
その叫び声は何故か途中で途切れ、もう一度光って、そして、彼の『気配』が消えた。

「ふぅ。邪魔しないでよね。本当にトイレ行きたかったのに」
あゆちゃんの声が、確かに聞こえた。
390カケラ 10-2/3:2008/01/19(土) 19:02:21 ID:8NQ+n1rS
「あゆちゃん!!」
「う動くなと言ってるだろ!!」
「っあ!!」
銃口が更に食い込む。今にも頭蓋骨が潰れてしまいそう!!
刹那─────、

「つかさから離れろォォォオオ!!!!」
凄まじい叫び声と共にまばゆい空色の火の『弾』が数発放たれる……様な気がした。
その弾は私を囲む4人に命中したようで、後頭部に強くかかっていた圧力が、すっと抜ける。
突然後からの荷重が抜けたので、私はバランスを崩し、そのまま後向きに倒れる。
下に銃口を向けていた男の人がクッションになってくれたので、床に頭をぶつけずに済んだ。
臭かったから全然嬉しくないけれど。

すぐに立ち上がり、あゆちゃんの声のする方を見る。
そこには、『少女』が立っていた。
「あゆ、ちゃん?」
が、私の知っている、さっきまでUNOに夢中になっていたあゆちゃんの面影は無かった。
「へへ、お待たせ」
人差し指で鼻をこすり、照れ隠しのような笑み。
『まるで別人のよう』という程じゃないけれども、あの『可愛い』あゆちゃんではなかった。
そこに立っているのは、『恰好良い』あゆちゃんだった。
身体の周りは水色の炎のようなもので包まれ───スーパーサイヤ人の様に───、背中には光で出来た鷹の羽根。
その様子はあまりにも不思議で私は驚きを隠せないまま、ただただ見とれていた。
私は、通路に出た。が、
「伏せて!!」
「へっ?!」
突然、あゆちゃんに怒鳴られる。
後から『誰か』が迫ってくる気配がした。
あゆちゃんの左耳の方から『何か』が光った。
その瞬間に下に降ろした両手から、先ほどと同じ空色の光の『弾』が現れる。
そして、その両手を私……いや、私の後にいる『誰か』に向ける。光の『弾』が合わさって大きな弾となった。
………って!!
慌てて伏せる。『アレ』に当たったらさっきの男の人達みたいに消されてしまう。
光の『弾』が放たれた。バレーボールのボールと同じくらいの大きさの『炎弾』が。
後の『誰か』が『何か』を振り下ろす。
『何か』が私の頭上数センチの所まで迫るが、私は間一髪でその攻撃を免れた。
「うゎぁぁぁあああああ!!!!!!!」
背後の『誰か』がドサッと倒れる。振り返ると、「如何にも」な恰好をした男の人が倒れていた。
そして、光と共に消える。血が出たり、身体の一部が千切れたりする訳ではないので、その様子を見て気持ち悪くなる事は無い。

この一連の流れが、わずか数秒でなされた。
391カケラ 10-2b/3:2008/01/19(土) 19:03:53 ID:8NQ+n1rS
「怪我」
「怪我?」
「してない?」
「う……うん、全然大丈夫」
後頭部がまだジンジン痛むけど。
「良かった」
「あゆちゃんは?」
「大丈夫」
「そっか、良かった」
「さ、早く降りましょ」
「え?」
「いいからいいから。ほら、さっさと行くわよ」
まるで遠足で目的地に着いて一番乗りを目指す子どもの様な笑顔で私の手を引いてデッキへと向かう。
「う、うん……、あ、ちょ、ちょっと待って!!」
あゆちゃんを包んでいた炎も、背中に生えている(様に見えた)光で出来た鷹の羽根も、いつの間にか消えていた。


「有明」号は、さっきの騒動がまるで無かったかのように、発車して灰色の空の中に消えていってしまった。
私は直前の出来事による驚きで全身に鳥肌が立っていて、胸がドキドキする。
そう、私は恐かったのだ。
自分の命が狙われたこと、そして、

あゆちゃんが常人が持たない不思議な『チカラ』を持っていたこと。
392カケラ 10-3/3:2008/01/19(土) 19:05:36 ID:8NQ+n1rS
熊本駅の周辺は意外とさっぱりしていた。
駅が市街地から離れているのだろう。とても県庁所在地とは思えぬほどの寂れっぷりだった。
「バレちゃったね」
「うん。でも、格好良かったよ」
ちょっと恐かったけど。
「まあね」
短いやりとり。すっかり姉妹の様になってしまった私達。
(そう思っているのは私だけなのかも知れないけど)

私とあゆちゃんは、市内電車に乗って市街地へ移動する。
あゆちゃんの話によると、この周辺で『鍵』の気配がするのだという。
「……やっぱり、分からないんだよね」
「うん」
その『鍵』とは、私が『現代』に帰るためのキーワードのようなモノらしいけど、それが一体何なのかは、あゆちゃんは知らないという。
あゆちゃんは『星のチカラ』という、不思議なチカラを持っていた。
『鍵』の気配が察知出来るのも、このチカラによるものだと言う。
ただ、あゆちゃん『自身』はそのチカラを使う事が出来ない。
そこで、その不思議なチカラを込めたサファイアとエメラルドのピアスで、チカラの発動と制御を行っているらしい。
車内であゆちゃんが空色の炎弾を放つ時に光っていた2色の光は、左耳に並んだピアスだったのだ。
でも、あゆちゃんがピアスを2つも付けていた事に気付かなかったのは何故だろう。
あと、私が持ってる磁石のやつとは違って、何だか痛そう。

「それで、『鍵』の気配はどう?」
「うん、近付いてる」
熊本駅を出た路面電車は、車と一緒に道路の上をのろのろと走っている。
普通の電車と違って、駅が無くても赤信号で止まったり、舗装が悪いのか、予想以上にがったんがったん揺れる。
あと、電車に乗る時、床がやたらと高くて乗るのが大変だった。
電車は狭い市街地を2回ほど方向転換しながら、大通りに入る。
「次で降りるわよ」
熊本城と思われる建物が近付いてきた。あゆちゃんによると、『鍵』は熊本城の周辺にあるという。
降車ボタンを押して、「熊本城前」電停で降りる。運賃は私が2人分払った。
肩まで降ろした縹(はなだ)色の髪を揺らし、二段式ステップをぴょんと飛び降りる。
特別なチカラを持っているとは言え、中身は普通の可愛い女の子なんだな、と思った。

「さって、さっさと行くわよ!!」
「うん!!」

私達は、廐橋(うまやばし)を渡り、熊本城へと入城した。
393カケラ 間-1/2:2008/01/19(土) 19:06:24 ID:8NQ+n1rS
間.

ライトグレーの空の下降りしきる雨は、まるで事故で亡くなった人達の涙のようだ。
ジトジトしていて、重たい雨。
安物の蝙蝠傘に穴が開かないかと心配した程だ。

中途半端に整備された駅前のロータリを通り過ぎ、青毛堀川に架かる橋を渡って鷲宮駅に入る。
一旦階段を上がってまた降りる。
鷲宮駅が高架駅だったらわざわざ階段を上り下りする必要は無いのだが、町の財政を考えると高架化は無理そうだ。
「高架駅、か………」
鷲宮駅高架化妄想をしていると、午前中の謎の大穴と、未だに沈んだままの妹の事を思い出す。
駅員以外誰も居ない改札口をちらっと眺めて西口の階段を降りる。
西口は西口で寂れている。無理矢理作ったロータリもどきと、数年前からずっとテナントの入っていない店舗の跡が寂しい。
図書館へは駅前から延びる県道を真っ直ぐ歩き、信号のある四つ辻を右折、後はそこから500mほど歩けば着く。
遠くもなく、近くもない。散歩だと思えば気軽に歩けるほどほどの距離だ。
んで、四つ辻を左折して行き止まりまで歩くと、関東最古の由緒正しい鷲宮神社へ到着する。
「そうだ」
ついでだから鷲宮神社に行こう。かがみちゃんの無事を祈るんだ。
ああ、みさおを連れて行くべきだった。今更後悔しても遅いが。

平日の神社はいたって静か。
大きな鳥居をくぐり、参道の石畳を歩く。正月はテキ屋さんの屋台が連なるが、今日は誰も居ない。
やっぱりこういう静かな方が心が落ち着くね。あんまり騒がしいと神さまも難儀するだろう。
さて、拝殿まで歩き、賽銭を投げ入れ、手を合わす。
(皆が無事でありますように)
『皆』とは、現在行方不明になっているみさおの友達、柊かがみちゃんと妹のつかさちゃん、それに彼女らの親友である泉こなたちゃんの事である。
おれの場合、特にこれと言った信仰は持っていないし、これは一部を除く日本人に共通することだが、
神社に参拝しに行く回数は人よりも多いと思う。
特に鷲宮神社の場合、ほぼ毎週行ってる様な気がする。
べ、別に可愛い巫女さん目当てではないぞ。
394カケラ 間-2/2:2008/01/19(土) 19:06:50 ID:8NQ+n1rS
さて、図書館へ行くとしよう。
おれは荷物を持って神社を出ようとしたが、その途中で宮司さんにお会いした。
「おや、日下部さんかい?」
「あ、はい、こんにちは。妹がお世話になっております」
宮司さんとおれを知っているのは、宮司である柊ただおさんがかがみちゃんの親御さんだからだ。
みさおが中学に上がるまでは、柊さんの家に遊びに行くと夜まで帰ってこないので、母親に頼まれてよく迎えに行ったものだ。
やはり、奥さん同様に昨日から行方不明の娘を心配しているのだろう。
柊さんはすっかりやつれてしまっていて、今にも玉砂利の上に倒れそう。
いつも穏やかで落ち着いた人なだけに、『最悪の結果』が訪れたら、大病を患ってしまいそうだ。
「おいおい、私はそんなに弱くはないよ。体だけは健康さ。
 確かに少しだけ疲れているけれど、それはちょっとした『儀式』を行っている最中だったからさ」
だから、か。
柊さんの右手には、鞘に収められた見るからに古そうな刀がある。
小学生の背丈ほどもあるその大太刀は、おそらくこの神社の奉納品だろう。

「ところで、君はこれから何処へ行こうとしているんだい?」
「今から町立図書館へ行くところです。ちょっと、気になる事がありまして……」
柊さんはおれの顔を穏やかだが怪訝な顔を浮かべる。
「気になる事?」
「はい。昨日、伊勢崎線の高架橋が崩壊した事故が遭った事をご存知ですよね?」
ここで『いいえ』と答えたら、かがみちゃん達は今頃学校から帰って勉強をしているだろう。
「ええ。かがみ達が巻き込まれたのではないかと今でも心配しているよ」
予想通りの答えで良かった。
おれはテレビの映像で見付け、実際に行って調べてきた『穴』の事を話した。
柊さんも多分知らないだろうという事で話したのだが……、
「ああ、その『穴』の事なら私も気付いたよ」
何と、柊さんも知っていた。
「ちょっと、時間有るかい?」
おれは時間が余ってるから図書館へ行くつもりだった。
「ええ、有ります。良かった、知っている人が居て」
「いや、私は別に現場に行って見た訳ではないよ」
え?
情報を知っていそうな人を見付けたおれの歓喜の笑顔は、わずか10秒で疑問の顔に変わった。
「立ち話もなんだから、私の家に来なさい」
「あ、はい。ご迷惑お掛けします」
「ああ、構わんよ。私もこの件に関しては興味があってね」

おれは急遽予定を変更し、柊さん宅へお邪魔することにした。


やっぱり、みさおも連れて行くべきだったかなぁ。
395カケラ 10 by 久留里:2008/01/19(土) 19:08:19 ID:8NQ+n1rS
以上でございます。

戦闘シーンと行っても大したこと無かったのは、これから…………いや何でもない。
次回はこなたサイドでお送りします。




てか、こなたが意外と動かしづらい件。
396名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 19:13:45 ID:+yatb8uf
「つかさのことかあああああーーーーーっ」
「ちょwwww私を勝手に殺さないでwwwwwバルサミコッwwww」

なんという超展開。超能力者と謎の連中。
そして相変わらず読めない先。
鍵とは何なのか?
彼女たちが実現しなければならない出来事とは?
そして謎の連中の目的とは?

ちょっとこれ・・・マジで演繹法でやってるすか?スゴスwwwww→>>395
397名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 19:18:57 ID:oLXp/Lja
>>395
タイムリープものと思っていたら魔人学園であったか!
実は能力者ですかあゆみちゃんとか、なんか知ってそうなただおパパとか、相変わらず急展開ですな、もっとやれ。

続きも楽しみにしてます。
398久留里:2008/01/19(土) 19:30:47 ID:8NQ+n1rS
おまけ。

●こなた
???→(ゆうづる)→青森→(いなほ)→新潟→(北越)→富山(予定)

●かがみ(with お喋りペンダント)
小田原→(大垣夜行)→名古屋→(東海道本線)→米原→(???)

●つかさ(with あゆみ)
霧島西口(現:霧島温泉)→(肥薩線)→隼人→(鹿児島本線)→西鹿児島(現:鹿児島中央)→(有明)→熊本
399久留里:2008/01/19(土) 20:19:34 ID:8NQ+n1rS
読了。

>>377 GJ!!
ひよりんのピュアっぷりは異常!!
彼もGJ!!
そして糖分摂りすぎた漏れは糖尿病の診断を受けに病院へ……。

*****

↓おまけのおまけ

夏のとある日のこと。
「ゆたかが『最近はボーイッシュな恰好が流行っている』と言ってたから、試してみよう」
黒のTシャツにちょっとだけダボダボしているジーンズ、腕にはリストバンド。
こういう恰好をしていると、『私の場合』は……、
「そこのお兄さ〜ん!!」
男だと思われてしまいそうだから、このような恰好はした事がなかった。
ん? 今私を呼んだ?
ぱたぱたと走り寄ってきたのは小学校高学年くらいの女の子。身長はゆたかよりも少し大きいくらい。
縹色のやや癖のある髪を肩まで真っ直ぐに伸ばしている。
よく見ると彼女は左右で瞳の色が違う。耳には(多分マグネット式だろうが)ピアスが2個付いてる。
私と同じくボーイッシュな恰好の彼女だが………………、

(私は小学生にまで負けたのか…………………)

最近(みゆきさんの世代)の小学生は発育が良いとは言うが、例外的に殆ど育っていない私は、
この子の僅かに膨らむ双丘(そうきゅう)を見て、ガックリと凹んでしまった。

「? お兄さん、どうしたの?」
女の子が首を傾げる。
「私…………女だから…………。頼むから………『お兄さん』って呼ばないで」
「でも『無い』じゃん」
ストレートに言ってしまった。

この子は悪気があって言った訳では無いと思うが、私にとってこの一言は、
真っ平らな胸の奥の奥の奥深くまで突き刺さった。「かえし」が付いているようで、中々抜けない。

***

「みなみちゃん、今日はボーイッシュな服装にチャレンジしてみるんじゃなかったの?」
「うん…………でも、『色々あって』結局ワンピースにした」
「? 何かあったの?」

「………………お察し下さい」
「み、みなみちゃん、顔青いよ? 何処か具合でも悪いの??」

***

「あの人、何で急に顔青くして走って行っちゃったのかしら?」
40017-234:2008/01/19(土) 20:27:29 ID:PlUygWHZ
どうも皆さんこんばんは17-234です。
TSをかいてたらなぜかながーくなってしまいまして、
前半部分を投下したいと思いますが大丈夫でしょうか?
投下予定の方がいらっしゃらなかったら行きたいと思います。
401名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 20:40:27 ID:PlUygWHZ
投下された方、乙です。
しかしまだ読んでませんごめんなさい。

17-234「好きなのに、愛されない」(前編)
>>96-98の続き

*TSもの
*あきら様(男)×白石(女)
*エロあり
*8レス+後書き1レス使用
*3レス目に若干出血表現があります。

以上のことがおkな方は、どうぞ。
40217-234「好きなのに、愛されない」1/8:2008/01/19(土) 20:45:41 ID:PlUygWHZ
「おわったぁ…おつかれさまでした〜」

番組の収録が終了した帰り道。
ふとあきら様が白石を見ていった。

「白石、ちょっとさー、晩飯作って。」
「うえっ?!」

二歩後ずさりする白石に、
畳み掛けるようにあきら様は質問する。

「白石ー、晩御飯作って。」
「…わ、わかりました…うぅ…」
「じゃ、仕方ないから一緒に帰ろうぜ」
「は、はい…」

肩を掴む手の強さに違和感を覚える白石。
にやにやと顔を近づけるあきら様。
顔が近いことに、白石の心臓がおかしくなりそうな音を立てる。

「ちょ、ちょっと、あの、お手洗い行って来ます!」
「おぉ?いってらっしゃい…」

白石は女子トイレに駆け込む。
思いっきりドアを閉めて、ドアに背中を預ける。

「……な、なんで…?」

家に彼が来るなんて思ってもいなかったらしく、
相当動揺しているようだ。
動揺しているのはいいのだが。

「やばっ…い、よっ…」

とりあえず髪を整える。
さらさらな髪は、撫で付けるだけで
するり、癖がなくなった。
とりあえず、胸に手をあててみる。
心拍数が異様だ。

で、だ。
何すればいいのかということを考えていた。
晩御飯?晩御飯作るの?
白石は頭を抱えながら、髪をまたぐしゃぐしゃとしていた。

「晩御飯…カレーにしよっかな…」
40317-234「好きなのに、愛されない」2/8:2008/01/19(土) 20:46:26 ID:PlUygWHZ
---------

「あの、散らかってますけど、気にしないでくださいね?」
「気にする。」

たまねぎを購入してから白石はあきら様を連れて帰る。
確か…鶏肉があったはずだから、それでカレーを作れば良い。
ご飯はあるのだろうか。

「はい、到着…チキンカレーですが、食べられます?」
「あぁ、大丈夫。」

好き嫌いを心配した白石。
そんな心配は要らなかったようだ。

「あ、あの、私、着替えてきてもいいですか?」
「どぞー」

ぱたん、と戸が閉まり、2分後に出てきたのは、
長袖・半ジャージにエプロンをした女の子だった。

「さてと、作りますか…」
「なんだっけ、何作るんだ?」
「チキンカレーですってば!!」

--------

「なぁ白石。」
「な、なんでしょうか?」
「お前…、にんじんでかくないか?」
「そうですか?!」

白石の肩に顔を乗っけるあきら様。
あきら様は、まな板の上の野菜たちを見て、ちょっとため息をつく。
肩に体重をかけつつ、腕をゆっくりと白石の腰にまわす。
びく、と白石の体が震える。

「お前さぁ、」
「は、はい?」
「なんで、俺のこと、家に入れたの?」
「なんでって…ご飯…」

握っていた包丁をまな板の上に落とし、体を強張らせる。
後ろから抱きしめられたことなんて、なかったのだから。
なんでって?
その先を、想像してしまうから。
40417-234:2008/01/19(土) 20:50:19 ID:PlUygWHZ
なぜか投下がうまくいかないので
今日はここで切らせてくださいごめんなさい…

投下できない!なぜ!!
405名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 21:00:49 ID:8NQ+n1rS
>>404
PINKちゃんねるの鯖に嫌われたとか。

Yahoo!BBの漏れは9レス以上投下すると規制喰らうから、少し間を置いて投下させて貰ってる。
406名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 21:05:38 ID:+Iqt2ByZ
予想だけど、一行目を改行してるんじゃないかと

もしそうなら一行目に全角スペース入れば投下できるはず
407名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 21:07:32 ID:F9ju4xoP
前にも言ったけど一行目空行だと書き込みが反映されない場合がある
もしかしたらそれが原因かね(一行目に全角スペースで回避)

ちなみに連投規制として板全体の最新書き込み10件中8件以上の書き込みをすると規制(注意)される
40817-234:2008/01/19(土) 21:10:34 ID:idzK2zyM
>>406
それです!
なんと初歩的なことだったか…

今もう拗ねてパソを切ってしまったので、明日以降投下し直します…
凹むわぁ…

教えて下さりありがとうございます(ぺこり
409名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 21:12:53 ID:x9I/oLOj
PCから投稿できるようならそちらに変えてみるのはいかが
規制されるのは携帯だから

■ もちつけ2.0 第二回もちつき大会
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/operate/1198669847/
410名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 21:57:19 ID:e1dqcJod
>>395
おつかれGJ!
俺の脳内だとあゆちゃんがどうしてもひかげの姿になってしまう……
411名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 22:07:10 ID:R6wZygXd
>>344
TS好きな俺が遅ればせながら参上しましたよ
続き期待っス!

その状態のままこなたにいつも通り接したら
不審者と思われて撃退されちゃったりするんだろうか。
その前に家族にどう説明するかだろうけど・・・
41226-215:2008/01/19(土) 22:24:57 ID:bH2EwPrq
 
 皆さんこんばんわ、26-215です。
 相変わらずペースが速く、良作が多いですね。
 さて、「こなゆたシリーズ」の続きが書き上がったので投下しようと思います。
 しばしの間、お付き合いの程よろしくお願いしますm(_ _)m
・ゆたか&つかさ&かがみ(ゆたか視点)
・ほのぼの。エロ無し
・3レス使用予定

 さて、今回は上手く投下出来るでしょうか……?

※この書き込みが他の方と重なったら、こちらは後で投下します
413聖戦へのカウントダウン(1):2008/01/19(土) 22:27:30 ID:bH2EwPrq
 
 3学期も始まり、お正月気分もすっかり抜けた1月のある晩の事。
『はぁい、柊です。』
「こんばんわ、小早川です。夜分遅くにすみません、つかさ先輩。」
『あれ、ゆたかちゃん?珍しいね、ゆたかちゃんから電話が来るなんてね。どうしたのかな?』
「はい、ちょっとお願いがあるんですけど……近いうちに2、3日ほどお時間いただけませんか?」
『ん〜っと、ちょっと待ってね。手帳手帳、っと……うん、大丈夫。放課後なら来週まで時間は取れそうだよ。』
「そうですか、よかった。じゃあ急で申し訳ないんですが、明日の放課後にお会いできますか?」
『うん、おっけーだよ。でもお願いって何かな?勉強の事なら私よりもお姉ちゃんとかゆきちゃんに聞いた方がいいけど……』
「えっと、実は……」

 翌日の放課後。
 今日はこなたお姉ちゃんはバイトに行く日で、かがみ先輩も一緒に秋葉原へ行くとのことで、今つかさ先輩のお家へ向かうのはつかさ先輩と私の2人だけです。
「ゆたかちゃんと2人で、っていうのは珍しいよね〜。」
「そうですね。いつもならお姉ちゃんやかがみ先輩がいたり、みんな一緒だったりしましたから。」
「それにしても急にお菓子作りを教えて欲しいなんて、どうしたの?」
「えっと……来月はバレンタインデーがあるから、その……」
「そっか、こなちゃんに手作りのお菓子をあげたいんだ。」
「……はい。普通のお料理は少しは出来るんですけど、お菓子は作った事がなくて。身近でそういうのに詳しいのってつかさ先輩しか知りませんから。」
「なんかそう言われると照れちゃうな……でも特別な事なんてしてないよ?普段からの積み重ねと、食べる人に喜んでもらいたいっていう気持ちがあれば誰にでも出来る事だしね。だからゆたかちゃんも出来るよ、きっと。」
「はい、がんばります!」
 そんな風に話しているうちにつかさ先輩のお家に到着します。

「ただいま〜。」「お邪魔しまーす。」
 それぞれ挨拶をして上がると居間へ通されます。
「じゃあ着替えてくるからちょっと待っててね。」
「はい、わかりました。」
 鞄からお菓子作りの本を出して眺めていると、数分でつかさ先輩がお茶を淹れて戻ってきました。
「お待たせ〜。はい、外寒かったでしょ。」
「ありがとうございます。ごちそうになりますね。」
「さて、と。ゆたかちゃんはどんなお菓子を作るつもりなの?」
「あ、はい。いくつかあるんですけど……」
 そう言いながら付箋をつけたページを示すと、
「どれどれ?あ、これか〜。うん、これなら割と簡単に出来るね。特別な容器とかも使わないし……こっちのはちょっとコツがいるかな?それから……」
 名前と写真をちょっと見ただけでどんなものかわかるみたいです。失礼だと思いますが、普段ののんびりとした先輩からは想像もつかない……でもその横顔はとても頼りになる真剣なものでした。
「よし、じゃあ今日はこの2つをやってみようか。これならお家でも練習できると思うしね。」
「わかりました。今日はよろしくお願いします、つかさ先生!」
「あははは。何だかくすぐったいね、その呼ばれ方は。じゃあ一緒にがんばろー!」
414聖戦へのカウントダウン(2):2008/01/19(土) 22:28:17 ID:bH2EwPrq
 
 今日作るのはクッキー数種類とパウンドケーキです。。
 つかさ先輩の教え方は本当にわかりやすくて、初めての私でもほとんど大きな失敗をする事なく作り上げる事が出来ました。
「あとは焼き上がるのを待つだけですね。」
「そうだよ。準備と手順をしっかりしておけば簡単でしょ?」
「つかさ先輩がきちんと教えてくれたからですよ。家で本を読んでおいたんですけど、ずっとわかりやすかったです。先輩ってお料理を作るのも教えるのも上手なんですね。」
「そう言ってくれると嬉しいな。でもね、上手に出来たのはゆたかちゃんのやる気がしっかりしてたからでもあるんだよ。」
 と、つかさ先輩は色々とメモを書き込んだ本を指差してにっこりと笑います。
「こうしておけば忘れませんから。それに、家で作る時も今日の事を思い出しながら出来そうな気がして……」
「大丈夫、ゆたかちゃんなら出来るよ。わからなくなっても、電話くれればすぐに教えてあげるしね。」
「はい、その時はよろしくお願いします。」
「さて、そろそろ焼き上がるかな?熱いから気をつけてね。」
「はーい。」
 ちゃんとミトンをつけて、ゆっくりオーブンから取り出します。焼き色は良さそうですね。あとは冷めるのを待って型から抜けば完成です。
「せっかくだし、お茶の淹れ方も教えちゃおうかな。冷めるまで時間があるしね。」
「わ、いいんですか?」
「うん。普段でも淹れる機会があるでしょ。一緒に覚えておけば役に立つかなぁ、なんてね。」
「そうですよね。今この時期は寒いですし、あったかいお茶が恋しくなりますから。」
 そんな風におしゃべりしながらお茶を淹れていると、玄関の方から『ただいまー』と聞き覚えのある声がします。
「お姉ちゃんが帰ってきたみたい。ねぇ、ゆたかちゃん。お姉ちゃんにも食べてもらう?」
「いいですけど……普段からつかさ先輩のお菓子を食べ慣れてるんですよね。すごく厳しく採点されそうです……」
「大丈夫だよ、きっと。」
「ここにいたんだ……ってあれ、ゆたかちゃん?」
「お帰りなさい、かがみ先輩。それとお邪魔してます。」
「いらっしゃい。それにしても珍しいわね〜、こなたがいないのに……ところでいい香りがしてるけど、ケーキでも焼いてたの?」
「そだよ〜。ゆたかちゃんが教えて欲しいって言うから。お菓子作りなら私にも教えられるしね。それでね、よかったらお姉ちゃんも一緒にどう?ちょうど今から切り分けるんだけど。」
「なるほどね……ってあれ、いいの?他に食べさせる相手がいるんじゃない?」
 かがみ先輩がニヤニヤ笑いながら尋ねてきます。
「あぅ……これはまだ練習用ですし……」
「つまり私は実験台ってところかしらね。」
「あっ、いえ。そういうつもりじゃないですよっ!」
「お姉ちゃん、からかうのはそのくらいにしてあげなよ。」
「わかってるって。本番は来月なんでしょ。それまでに1人で出来るようにしたい、そんなところかしら?」
 ……全くもってその通りです。どこまでお見通しなんでしょうか?
「いいわよ。せっかくのお誘いを断るのも勿体無いし、つかさ以外の手作りお菓子なんて滅多に食べる機会もないからね。」
「お、お手柔らかにお願いしますね。かがみ先輩……」
「さ、それじゃあ切り分けようか。お姉ちゃんは着替えてきたら?戻る頃には準備も終わるから。」
「そうね、そうさせてもらうわ。それじゃあゆたかちゃん、楽しみにしてるわよ。」
 そう言ってかがみ先輩が台所を後にすると、焼き上がったケーキを切り分け、お茶を淹れて居間に運びます。
415聖戦へのカウントダウン(3):2008/01/19(土) 22:29:04 ID:bH2EwPrq
 
 少しして着替えたかがみ先輩がやって来ると試食会の始まりです。
「それじゃいただきます。」
 かがみ先輩がケーキを口に運び、ゆっくりと咀嚼し……
「うん、美味しいわよ、ゆたかちゃん。よく出来てるじゃない。」
「ほ、本当ですか?」
「嘘なんかついてないわよ。信じられないなら自分でも食べてみなさいって。ほらつかさも食べなさいよ。」
「それじゃいただきまーす。……ん、本当に美味しいよ。ゆたかちゃん。」
「よかったぁ……」
「あとは本番に向けて練習あるのみ、かな?」
「はいっ!」
「機会があればまたいくつか教えてあげるよ。それに道具とかも必要なら貸してあげるから、いつでも言ってね。」
「えっ、いいんですか?……本当にありがとうございます。」
「ところで、この事は内緒にしておいた方がいいかしらね?」
「んーっと、そうですね。近いうちにお菓子作りを習ってる事だけは自分で話しますから。」
「りょーかい。つかさもいいわね?」
「うん、わかったよ。」

「それじゃ今日は本当にありがとうございました。」
 試食も無事終了し、後片付けを済ませるとそろそろ7時になろうかと言う時間です。
 こなたお姉ちゃんを交えないで柊先輩達とお話するのは滅多にありませんから、ついつい長居してしまいました。早くおじさんに連絡しないとダメですね。
「もう暗いし、駅まで送っていくわよ。つかさもどう?」
「うん、一緒に行こっ。」
「え?そんな、いいですよ。もう遅いですし。」
「だから尚更でしょ?ゆたかちゃんは可愛いんだし。誰かに襲われたりしたらこなたやおじさんに申し訳が立たないでしょ。」
「それにもうちょっとお話したいしね。」
「じゃあ、お願いします……実を言うと少し怖かったんですよ。」
「こういう時には思いっきり甘えちゃいなよ。これでも私たちは年上なんだから。」
「そうそう。こんな時でないとお姉さんぶったり出来ないものね、つかさは。」
「あ〜っ、お姉ちゃんひどいよぅ!」
「ふふふっ。それじゃゆたかちゃん、つかさ。行きましょ?」

 駅へ向かう間も私達3人は色んなお話をしました。私の知らないお姉ちゃんの事も少し聞けてとても楽しかったです。
「わざわざ送ってもらって本当にありがとうございました!」
「気にしなくていいってば。お家でのこなちゃんのことを聞けて面白かったしね。」
「そうねー。ちょっと意外なところもあってビックリもしたけどね。」
「あ、あの!私が言ったって、内緒にして下さいね?!」
「大丈夫よ。言ったりしないから安心していいわよ。」
「じゃあ私達が言った事も秘密だよ?」
「はい、もちろんです。」
「じゃあそろそろ電車も来るみたいだし、ここらでお別れかしら?」
「あ、本当だ。それじゃあ、おやすみなさい。」
「うん、おやすみー。」
「風邪や怪我には気をつけるのよ。」
「はいっ!」
 そう言って手を振りながらお二人と別れて電車に乗ります。
 お2人とも本当にいい人です。こんな人達に囲まれて私やこなたお姉ちゃんは本当に幸せだな、そんな事を考えながら、夜の空気は冷たいけど心はポカポカでした。
41626-215:2008/01/19(土) 22:31:15 ID:bH2EwPrq
 
 以上で終了です。
 相変わらず会話シーンが多い気もしますね。
 ともあれ、誤字脱字などの指摘や感想などあればよろしくお願いします。

 シリアスな話が思いつきません……なので、ほのぼのまったり街道を突っ走りますよー
417名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 22:59:07 ID:JeqcloqZ
>>416
いや、ほのぼのは最高なのですよ。
ともあれ、ゆったりと読むことができるお話でした。
まさに日常の1コマですなあ。

自分も適度に話を書いていかないと。
カラーが違う二つの話を同時製作してるから、気持ちの切り替えが(略
418久留里:2008/01/19(土) 23:00:37 ID:8NQ+n1rS
>>416
リアルタイムGJ!!

自分で言うのもアレだが、「カケラ」はらき☆すたの世界からかなり逸脱してますね。
昔に飛ばされるわ犠牲者は出るわペンダントが喋るわ超常現象起こす女の子は出るわ原作に出たことすら無い奴が主役になってるわ…………。

最後まで書きますけどね。
419名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 23:08:03 ID:a4QjwIO0
>416
つかさとゆーちゃんの組み合わせは珍しいですね。
ほのぼのとしていて、こころが温まるようなお話だと思います。

投下を準備されている方がいらっしゃらなければ、日付の変わった頃に
投下いたします。
420名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 23:33:56 ID:LUVxCwWC
無性にひよりのセクロスが読みたい
421名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 23:36:46 ID:e1dqcJod
つかさとゆーちゃん…なんというらき☆すたの癒し系コンビ…GJ!
422名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 23:43:27 ID:+yatb8uf
>>420に激しく同意。
というわけで、>>377は責任重大wwwwww
ここは後日談Hに突入すべきだだだだだ

「ゆ、ゆうちゃん、みなみちゃん、泉先輩・・・
 目の色が違うッス・・・え?素直にならないなら素直にさせるって・・・
 ちょwwwwwwまたこれッスかww●●君ごめんなさいwww
 ひよりは一足先にけがれmアッーーーー!」
42323-251:2008/01/19(土) 23:59:29 ID:a4QjwIO0
では、そろそろ投下します。

「ガラスの壁」 第8話

こなた×ゆたか(ゆたか視点)

注意事項
・エロあり
・続き物
・シリアス
424ガラスの壁 1/10:2008/01/20(日) 00:00:48 ID:a4QjwIO0
 8.
 
 ホテルに入ってから、事前にインターネットで調べたとおりに、狭い通路を進む。
 暫くすると、カラオケ屋さんみたいに、各部屋の写真が壁のパネルに表示されている、
受付のような場所に到着する。
 ここで、使用する部屋を選択することになる。
 各部屋毎に付いている設備は異なっていて、回転ベッドや、ジャグジーが
付いている豪勢な部屋もある。
 中には、『三角木馬』と書かれている器具が置いてある部屋がある。
 どうやって使うのかな?

 もっとも、高校生の身分では、お金に余裕があるはずはないので、
リーズナブルな部屋を選択することになる。
 それでも、全額を一人で支払えば、1ヶ月分の小遣いが吹き飛んでしまう。

 実は昨日の夜、ホテルにいくことが決まった時に、こなたお姉ちゃんは『私が払うよ』
と、いってくれた。
 しかし、私のわがままなのに、お姉ちゃんに払ってもらう訳にはいかない。
 この点ではお姉ちゃんも頑固だったから、珍しく言い合いになったけれど、
結局、半分ずつ出すことで、折り合いをつけることになった。

 空いている部屋の一つを選択してボタンを押すと、廊下のランプが点灯して、
私たちを導いてくれる。
 廊下を何度か曲がるとエレベーターに突き当たる。
 4階までのぼり、さらに誘導に従って進むと、選択した部屋があらわれた。
 既に扉は空いていて、こなたお姉ちゃんと私が中に入り、扉を閉めるとオートロックがかかる。
 コトが終わったら、外に出て精算する仕組みだ。
425ガラスの壁 2/10:2008/01/20(日) 00:01:30 ID:g3Mk8u1G
 最も料金が安い部屋を選んだにも関わらず、十分に広くて中央には大きなベッドが置いてある。
 脇には大きなテレビがあり、カラオケとゲーム機もついている。
「ゆーちゃん。シャワー浴びてきてよ」
「あっ、うん」
 早くもベッドに寝転んだお姉ちゃんに返事をしてから、私はバスルームに入った。

 服を脱いで裸になり、鏡に映った自分の姿を見て、深いため息をつく。
「なんで、こんなに幼児体型なんだろう」
 お姉ちゃんのせいなのかな…… 
 ちょっといけない事を考えながら身体を丁寧に洗っていく。
 こなたお姉ちゃんには、なるべく綺麗な『私』を抱いて欲しいから。

 シャワーを浴びてから下着を穿いて、バスロープを羽織り部屋に戻る。
「お姉ちゃん。どうぞ」
「了解」
 アニメを見ていたお姉ちゃんは、私と入れ替わりに浴室に入った。

 付けっ放しになっているテレビを何気なく眺めると、女の人が、これまた女のひとと
えっちな事をしている。
 こなたお姉ちゃん…… 何をみているの?
 でも……
 凄く綺麗な声をした人で、切ない喘ぎ声を聞いていると太腿の間が熱くなてしまう。
 こういう番組に出ている声優さんって、本当にえっちな事をしながら録音しているのかな?
426ガラスの壁 3/10:2008/01/20(日) 00:02:06 ID:a4QjwIO0
「おっ、ゆーちゃん。気にいったの? 」
「え、あ、それは…… 」
 浴室から出て、濡れた髪にタオルをあてて乾かしている、お姉ちゃんはニヤニヤとしながら言った。
「これは、18禁ものの百合アニメなんだけどね…… 見てると『気分が出る』から」
「そ、そうなんだ」
 私は、顔を真っ赤にしながら頷く。確かに、激しいエッチシーンから目を離せない。
「ゆーちゃん。そっち方面に興味があるんなら、PCとDVD貸してあげるよ」
「う、うん」

 リモコンに手を伸ばしてテレビを消すと、お姉ちゃんが私の隣に座り、肩に腕を回してくる。
「そろそろ…… ヤラナイカ? 」
「は、はい」
 おじさんの家でのエッチとも、学校の講堂でする交わりとも違って、本格的にセックスをする為の
部屋だから、妙に緊張してしまう。

「ゆーちゃん。もう少し身体を楽にしてね」
「あ…… うん」
 緊張を解こうとしている間に、首の後ろに手が回されて唇が触れる。
 お姉ちゃんの髪に残った、シャンプーの香りが鼻腔を心地よくくすぐった。

「ん…… 」
 こなたお姉ちゃんのキスはとても優しい。
 折れそうなくらいに弱い、私の心と身体を柔らかく包んで癒してくれる。
「んんっ…… 」
 唇の感触を少し楽しんだ後、お姉ちゃんの舌が中に入ってくる。
「んむぅっ」
 小さくえづいてから、お姉ちゃんを受け入れる。
 刺激を受けて大量に分泌された唾液が、口の端から漏れてしまい頬に跡をつたう。

「あっ!? 」
 お姉ちゃんは深い口付けを続けながら、手を伸ばして、私のバスローブを脱がしていく。
 下着姿になると、子供っぽいラインが露になってしまい、恥ずかしくなって頬が熱くなる。
 しかし、お姉ちゃんは、自分が着ているバスロープをさっさと脱いでしまう。
427ガラスの壁 4/10:2008/01/20(日) 00:02:44 ID:isqP6njb
 こなたお姉ちゃんの肢体は、病弱な私と違って、柔らかさの他に、鍛えられた強さと、
弾力性があるようにみえる。
「ゆーちゃん。甘い香りがする」
 一旦、唇を離してから、お姉ちゃんが呟いた。
「さっき、髪を洗ったから…… 」
「シャンプーは一緒なのに、私と同じ匂いがしないところが不思議だね」
 こなたお姉ちゃんは言いながら、私のブラを外していく。
「恥ずかしいよ…… 」
 視線から逃れるために小さなふくらみを隠したけれど、お姉ちゃんの手は、
隠された胸を素通りして、白いショーツをなぞってしまう。

「ゆーちゃん。もう濡れているよ」
「えっ!? 」
 悪戯そうな笑みを浮かべながら、お姉ちゃんは小さく舌を出している。
 こなたお姉ちゃんの指先の巧みな愛撫によって、未成熟な私の大切な部分が、
じっとりと濡れてしまっている。
「おねえちゃん。あついよっ」
 下半身の疼きに耐えられなくなって、大きく息を吐きながら身体を捩る。
 ショーツの上から指を擦られるだけで、染みは拡がっていく。

 じかに触られたら、どうなっちゃうんだろう?

 7割の不安と、3割の期待がこもった目で見上げると、お姉ちゃんは少しだけ笑った。
「ゆーちゃん。もう待ちきれないんだね」
 お姉ちゃんは微笑んでから両手を伸ばして、飾り気のないショーツを脱がしていく。

「はうっ…… はずかしいよ」
 紅潮した顔を両手で隠しながら、指の隙間から覗く。
 こなたおねえちゃんは、脱がした下着をベッドの脇においてしまう。
 一糸纏わぬ姿をじっと見られるのは、酷く恥ずかしい。
428ガラスの壁 5/10:2008/01/20(日) 00:03:23 ID:isqP6njb
 一方、お姉ちゃんは、さっさと下着を脱いでいく。
 躊躇のない脱ぎっぷりを見ていると、どうして、私だけ真っ赤になって
しまうんだろうと、情けなく思えてしまう。
「なーに考えているの? ゆーちゃん」
「う、ううん。なんでもないよ」
「う・そ」
 耳元に軽く息を吹きかけられて、私は悲鳴をあげて身体を震わせた。
「本当の事、いってごらん」
 背中をなぞられながら、お姉ちゃんは含み笑いを浮かべる。
 とてもくすぐったくって、背中を捩って避けようとするけど、お姉ちゃんは逃がしてくれない。

「あはっ…… や、許してっ…… いうからっ、いいますから」
 あっという間に堪えきれなくなくなって、口を割ってしまう。
「お姉ちゃんは、脱いでも恥ずかしくないのかなって…… 」
 しかし、こなたお姉ちゃんはきょとんとした後、私に向かって言った。
「ゆーちゃんだから、全然、恥ずかしくないんだよ」

「えっ…… えっと? 」
 良く分からなくて、クエスチョンマークを頭上に飛ばす。
「ゆーちゃんだから、私の全てを見てもらいたいの」
「あっ…… 」
 お姉ちゃんの話したいことが、少し分かったような気がする。
 私だから、妙に隠したりしないんだ。
 でも、私は…… お姉ちゃんのように割り切ることができない。

「ゆーちゃんはそのままでいいのだよ」
「えっ、どうして? 」
 首をかしげる私を、優しく抱きしめながら続ける。
「恥じらう、ゆーちゃんには萌えるからね」
 真っ赤になって、もじもじしている私を愛しそうに眺める。
「お姉ちゃんの…… ばか」
 小さく呟いて、私はこなたお姉ちゃんの肩に顔を埋めた。
429ガラスの壁 6/10:2008/01/20(日) 00:03:59 ID:a4QjwIO0
「ゆーちゃん。好きだよ」
「あの、お姉ちゃん 」
 私は、ふくらみはじめた乳房をもまれながら、躊躇いがちに尋ねた。
「好きってどういうことなの? 」
「ほえ? 」
 こなたお姉ちゃんは奇妙な声をあげて、言葉を続ける。
「難しいねえ」
 乳房をいじっていたお姉ちゃんは、利き手で再び下腹部をまさぐりながら話す。
「んあっ…… 」
 アソコをなぞられて、私は快楽に震える。
「うーん。あらためて聞くけど。ゆーちゃんって、私の事好きなの? 」
「…… んんっ、えっと、お姉ちゃん。大好き…… んあっ 」
 お豆の部分を擦るように巧みに刺激され、途切れ途切れになりながら答える。
「もしかして、ゆーちゃんは『好き』の意味を分かっていないで言っているのカナ? 」

 こなたお姉ちゃんは、少し皮肉っぽい口調に変わっており、私は、
あたふたしながら言い訳をしてしまう。
「あ、あの…… それは…… 本当の好きって何なのか分からなくって」
 何を言っているんだろう。頭が酷く混乱している。
「もしかして、『好き』の定義が知りたいの? 」
 首筋を舐めながら、お姉ちゃんは真剣な表情で尋ねる。
「ううん、違うの! 」
 私は、襲われた不安から逃れるように叫んだ。
「あのっ、私と今まで仲良くしてくれた人が、急に酷いことをいってきたりするから、
ひとの気持ちってすぐに変わっちゃうのかなって思ったの。
それで、私の気持ちも、いつか動いちゃうのかなって思うと、とっても怖いの」
430ガラスの壁 7/10:2008/01/20(日) 00:04:35 ID:a4QjwIO0
「ゆーちゃんは、不安なんだね」
 お姉ちゃんの表情は、とても優しいものに変わっている。
「うっ、うん」
 私はとても恥ずかしい気持ちになった。
 えっちの最中にこんなことを言うなんて、本当にどうかしてる。

「大丈夫だよ。ゆーちゃんが私のコトを嫌いになっても、私はゆーちゃんのコトが好きだから」
 こなたお姉ちゃんは少しだけ低い声でいった。
「ありがとう。おねえちゃん」
「だから、今は何も考えなくていいんだよ。ゆーちゃん」
「あっ、うん」
 私の返事と同時に、お姉ちゃんは愛撫を再開した。
 既に、十分に濡れているアソコからは、はしたない液体が溢れて、白いシーツを汚してゆく。
「ん…… んはっ」
 私だって、おねえちゃんの大事なところに手を伸ばしているんだけど、受けている
刺激が強すぎて、ほとんど動かせることができない。

「ゆーちゃんって、本当にかわいいね」
 お姉ちゃんが唄うように囁きながら、お豆を揉みしだいていく。
「だめっ、お姉ちゃん! 」
 急激に高まる快楽に耐えようと、懸命にお姉ちゃんにすがりつく。
「んあっ…… ふあっ」
 私のあそこを指で擦りながら、硬くなった乳首を甘噛みする。
 強烈な刺激が脳に伝わり、悲鳴をあげてしまう。
「んああっ…… あふぅ」
 お姉ちゃんの指は魔法のように動いて、私の大事な部分を快楽に導いていく。
431ガラスの壁 8/10:2008/01/20(日) 00:05:11 ID:g3Mk8u1G
「ゆーちゃん。ちょうだい」
 お姉ちゃんは危ない発言をしてから、長い髪を揺らしながら位置を変えて、再び口付けをする。
「ん…… んああっ」
 下腹部への熱い刺激に加えて、柔らかい舌が口の奥に入り込んで、蕩けそうになってしまう。
「んん…… んむぅ」
 お姉ちゃんが、深く差し込んでいた唇を離してから、私に囁いた。

「ゆーちゃん。そろそろ限界だね」
「お姉ちゃん。お願い。イかせて…… 」
 お姉ちゃんのあそこへの愛撫は、私がいきそうになると弱められて、
静まりそうになると再び激しくなる。
 もう少しで絶頂なのに、というところで引き返された時の失望感は堪らない。

「もう…… いいかな」
 お姉ちゃんは呟くと、指の動きが突然速くなった。
 私のアソコからびしゃびしゃと卑猥な音がして、半透明な液体が飛び始める。
「だめ、いっちゃう。いっちゃうのっ! 」
 長い時間をかけて、ゆっくりと育った快感が遂に弾ける。
「おねえ…… ちゃん。いくの、ああっ、んああああ! 」
 ひときわ大きな嬌声をあげて、私は一気に絶頂に達し――
同時に、大量の潮が噴き出された。
432ガラスの壁 9/10:2008/01/20(日) 00:05:41 ID:a4QjwIO0
「はあっ、はあっ…… 」
 ゆっくりと退いていく快楽の名残を味わいながら、私は荒い息をついている。
「ゆーちゃん。激しかったよ」
 お姉ちゃんは、満足げに頷いてから起き上がり、私を持ち上げてしまう。
「えっ…… お姉ちゃん? 」
 お姫様抱っこをされた私は、ベッドの隣にあるソファーにそっと横たえられた。

「少し待っててね」
 お姉ちゃんは、浴室からタオルを持ってくると、濡れたベッドを吹き始めた。
「わ、わたし、お漏らししちゃったんだ」
 深い穴に入って、今すぐ潜り込みたい気分だったけど、お姉ちゃんにそのまま
横になっているように命令されてしまった。

「なんとか、目立たなくなったカナ」
 お姉ちゃんは言うと、もう一度私をだっこして、大きなベッドの濡れていない部分に運ばれる。
「ゆーちゃん。疲れたでしょ」
「う、うん」
 正直、疲労感はかなり大きい。体育の授業よりは数段激しい運動だ。
「だから、残りの時間はお休みしようね」
 理由は分かるけど、子供扱いされたようでちょっと悔しい。
「うー おねえちゃん。ひどいよ」
 布団をかぶりながら、こなたお姉ちゃんを睨む。
 本当はお姉ちゃんにも気持ち良くなってほしかったのに。
「あせっちゃ駄目だよ。ゆーちゃん」
 こなたお姉ちゃんは苦笑してから、私の横のスペースに潜り込んだ。

「おねむの前にキスしよっか」
 心持ち顔をあげると、お姉ちゃんは優しく唇をあわせてくれた。
 疲労と眠気が同時におそいかかり、私はすぐに闇の世界へと落ちていった。
433ガラスの壁 10/10:2008/01/20(日) 00:06:50 ID:isqP6njb
「ゆーちゃん。ゆーちゃん」
 ほとんど夢をみることはなく、こなたお姉ちゃんに起こされる。
 私は、眠そうに瞼を擦りつけながら身体を起こした。
 ぼんやりとした景色が、徐々に明瞭になってくる。
「わ、わたし…… 」
「そろそろ時間だから」
「う、うん」
 のろのろと立ち上がって、下着が置いてある場所まで歩く。
「シャワーは帰ってからね。風邪をひくから」
「あ、そうだね」
 ショーツを穿き、ブラをつけると、やっぱりほっとしてしまう。
 スカートとブラウス、セーターを身に着けると、現実世界に戻ってきたような気がする。

「お姉ちゃん。準備できたよ」
「忘れ物ないかな。ゆーちゃん」
「うん」
 周囲を注意深く確認してから、私は返事をした。

 部屋を出てすぐの場所で精算を行う。
 もちろん、ホテルの従業員と顔を合わせることはない。
 受付の人と繋がるマイクに向かって声をかけると、プラスチック制の容器が、
炭酸が入った缶ジュースのタブを開けたような音と共に運ばれてくる。
 お姉ちゃんがお金を入れて、容器の蓋を閉めて所定の位置に置いてから、
ボタンを押す。
 容器は、細長い管の中を飛んでいき、1分もたたないうちに戻ってくる。

 円筒状になっている容器の端を捻って取り出してみると、レシートと割引券が入っていた。
「今年中に、また来て下さいってことかな」
 有効期限が年末までとなっている割引券を見て、お姉ちゃんは苦笑した。

 ホテルの外に出ると、強い冷気が襲ってきて体が震える。
「さ、寒い」
 悲鳴をあげると、こなたお姉ちゃんが掌を握ってくれた。
「少しは温かい? 」
「うん。お姉ちゃん」
 お姉ちゃんのぬくもりが伝わってきて、私は笑顔で答えた。

 しかし、ホテルから出て裏通りに入ろうとした時、とんでもない人が出現して、金切り声をあげる。
「こなたっ、ゆたかちゃん。なんて事してるのよっ! 」
 柊かがみ先輩が自転車に跨ったまま、私たちを睨みつけていた。
43423-251:2008/01/20(日) 00:08:59 ID:isqP6njb
以上です。
読んでくれた人ありがとうございます。

久しぶりにエロを書いたような気がします。
最後に修羅場となるのは、えっと…… 仕様です。
435名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 00:26:43 ID:bABT4KcS
>>377
甘いぃいいいいぁぁぉぇ!
ひよりんの甘い初Hをどうか

どうかぁ!
436名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 00:39:16 ID:tqayPee4
 
437名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 00:44:09 ID:cdQUjBed
>>434
いつもながら、GJ
かがみに目撃されてたのか
この後の展開にwktkしつつ、全裸…は風邪ひいてるから無理だけど、待機しておきますね
4384-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/20(日) 00:54:14 ID:zKHtTDu1
今日もみなさんGJ!

>>399
ボーイッシュみなみな電波を受信したので描いてみました(´・ω・)ノシ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/boy_minami.jpg
439名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 00:55:19 ID:tqayPee4

 
440名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 00:59:21 ID:bABT4KcS
>>438
相変わらず仕事早いぜGJ!!!
441名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:09:27 ID:tqayPee4

 
442名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:14:13 ID:cdQUjBed
>>438
これは、可愛いみなみですね〜GJ
速攻保存させていただきますたっ
443名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:25:51 ID:bABT4KcS
さっきから空欄多くね?
444久留里:2008/01/20(日) 01:28:55 ID:tvXt3qy0
>>438
GJ!!
特急有明号の速さで保存した。
445名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:31:21 ID:zKHtTDu1
>>440,442
GJありがd ノシ

>>443
1行目改行で投稿できるかどうか試してると思われ
446名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:33:20 ID:zKHtTDu1
>>444
こちらこそ電波ありがd!!
有明号の速さがイマイチ判らない道民なおいらでした(´・ω・`)
447久留里:2008/01/20(日) 01:34:39 ID:tvXt3qy0
>>446
「スーパーカムイ」と同じ速さ
448寸足らずの病弱娘:2008/01/20(日) 01:38:50 ID:hc3HT8TT
>>438
すてき・・・惚れ直しそう・・・
449名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:43:37 ID:bABT4KcS
>>445
ぜひ、氏のゴッドかなたさん(2008)が 見てみたいです!
いやなんか最近色んな人が描いてるから、見てみたいなと思って
450名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 01:47:28 ID:9EFBq/ML
>>438
R34 VspecUNurの速さで保存した
451名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 02:47:38 ID:s/HDpCz3
まずい、みゆつか愛してる氏に触発されてからというもの、
男くん×ひよりんの妄想が止まらないっ…!
いっそ書いてしまいたいけれど、もし氏が書くならカブってしまっては迷惑だし、
なによりスレのみなさんは氏の書くおと×ひよ希望しているので、すごく申し訳ない!

こういう場合って、どうなんでしょう。
もしみゆつか愛してる氏、そしてスレのみなさんがよろしければ
私もおと×ひよを書きたいのですが…(もちろん独自設定で)
452名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 02:52:36 ID:isqP6njb
>451
カップリングについては、>1であげられた以外は制限はないから、
問題はないと思いますけど。
453名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 02:54:30 ID:cdQUjBed
>>451
個人的な意見として、完全にオリジナル(と言って良いのか?)の男×ひよなら問題ないかと思う
もし、みゆつか愛してる氏の男×ひよの流れを引き継ぐってんなら当然許可待ちじゃね
CPに関しては、誰が書いても自由でしょ
でも、他の人が書いた設定とかを使うのは許可が必要と考えるがいかに?
454名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 03:18:52 ID:s/HDpCz3
>>452,453
そうですかね><
でも個人的には優しい、ひよりをいたわるような男にしたいと思ってて、
しかも初体験モノが頭の中にあり、いくら別設定とはいっても
ほとんどカブってしまっていると考えていいと思ったので、
やっぱり許可がいるかなぁと思ったんです。説明不足でした、すみません。
それでも書きたいのは…書き手の性でしょうかねー。
455こなたのバイト先の杉田常連:2008/01/20(日) 03:21:00 ID:hc3HT8TT
よし、やっちまえ!
456みゆつか愛してる:2008/01/20(日) 03:30:12 ID:guci+qQQ
>>454
いちひよりすととしては別の職人さんのおと×ひよが読めることは
むしろお願いしますと全裸土下座で頼みたいぐらいです
>>452-453に書いてある通りですし
何より私の作品に触発されたということが 嬉 し す ぎ る

ちなみに私もおと×ひよの続編をもう一本書かせていただく予定です
要望がありましたのでエロありでイキます
内容が多少被ることは必死かもしれませんが、書きたい気持ちは誰にも制限できませんね
その前にみゆつかの続編を完成させるです
私信でした
457名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 03:35:51 ID:cdQUjBed
>>454
気になるならちゃんと問い合わせて、みゆつか愛してる氏の返事を待てば?
後は、注意書きにみゆつか愛してる氏のSSに触発されて書きました的なことを書けばどうかな
とっ、俺の意見だけじゃしょうがねえよな。しかも俺、28スレからの新参だしw

みゆ&かがを書きたいんだけど、みゆきが動いてくれねぇ
無理やり動かそうとすると、俺があんまり好きじゃないほうに話が進むし…orz

って、書いてる間にみゆつか愛してる氏の書き込みがあるし…
と、言うわけで>>454は書くことが決定したわけだよ
そしてみゆつか愛してる氏も書いてくれると言うことなので、Wで期待してます

さ、仕事に戻ろうっとw
458名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 03:41:30 ID:pu5ayvPf
>457
5分遅いぞw
459名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 03:46:56 ID:cdQUjBed
>>458
いや、仕事中だからこっそりとしてるんすよっ
周り気にしながら書いてるし、リロードする間隔も長くなるわけで
って、このレスも結構時間たってたりするんだよなw
じゃ、マジで仕事戻るわ
460名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 03:50:46 ID:s/HDpCz3
>>みゆつか愛してる氏
ありがとうございます!
ひよりんは一番好きなキャラですので、全身全霊を捧げて書きますね。
なるべく差別化もはかりたいと思います。
うおおおっ、氏の続編も楽しみだ!

457氏もありがとうございます!他のみなさんもありがとう!
ホントに優しい方ばかりの良いスレです。
期待を裏切ることのないよう、頑張らせていただきます。

>>455
「所要時間は…多分結構かかる…」
「やれやれ」
461名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 03:52:22 ID:LGCZCPf3
こなフェチなんて何人に書かれたことかw
ちゃんと前置きで本家に断りいれてるけどね



なんて書いてたら、病が再発してまいりました。
壊れネタが ホシイ……


いちど サイハツする と トまら な


こなた うま
462ひよりん:2008/01/20(日) 04:01:08 ID:hc3HT8TT
や・・・やっと逃げてきたっす・・・

は・・・派手にいじりまわされてきたッス・・・
これはもう・・・●●君に・・・癒してもらうしか・・・ないッス・・・
>>みゆつか愛してる氏と>>460氏に、期待してるッス・・・


「あー!田村さんいたよー!」
「調教は・・・まだすんでない・・・」
「オウ!ヒヨリ!ワタシニフリムカセテミセマース;;」
「おーおー、●●君に求めるようになったとか、
 ひよりんも分かってきたみたいだネ(=ω=.)b」
「というか、原稿まだ半分も済んでないのに
 初夜とか何考えてんだひよりんwwwwww」

ひえええええ!もう追っ手とかwwwwwwwwww
あwwwwだめwwww嫁入り前の体にwwwwアッーーー!!
4634-243 ◆X9xLTlcDnY :2008/01/20(日) 04:15:00 ID:zKHtTDu1
ひよりんに注意が逸れている今なら置けるッッ!

>>449
(´・ω・)コソーリ
http://www.geocities.jp/extream_noise/rakisutaep/img/kanyata.jpg


あああっ石投げないで…orz
464名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 04:35:58 ID:Y8XTMFOn
ちょwwwwwww仕事ハヤスwwwwwww

「ぇと・・・た・・・たぴおかぱん?」
「(お母さん・・・あなたってひとは・・・みゆきさんと
 双璧をなす卑怯なボケっぷりだ・・・)」
465名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 04:36:32 ID:1SssSH19
>>463
ちょw 俺のポンジュース返してwww
もうアンタは色々自重しろw(最大限のGJ的な意味で)
466449:2008/01/20(日) 07:01:14 ID:bABT4KcS
>>463
うぉおおおおぁああありがとぐっじょぶぅうううう

ゴッドかなたさん!ゴッドかなたさん!


さて、これでらき☆すたエロパロスレ四大巨頭のゴッドかなたさんが揃ったわけですね
新年早々縁起がいいぜ!

あいかわらずこの衣裳がそそる

もっかいGJあじゅじゅした!
467名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 07:10:46 ID:P397m0VX
>>463
玄米茶吹いたwww
ごっどかにゃたさん可愛すぎるよごっどかにゃたさん



……前々から思ってたんだが、ゴッド(ゴッデス?)かなたさんって、かなたさんより胸大k(神の力によりこの先は読めない
468名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 07:20:23 ID:bci5zok/
なんだ、単なる神か…
469名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 07:31:58 ID:bABT4KcS
「これからも見守っていますよ、皆さん」
「衣裳も去ることながら天然だとはずっこいね」
「ええ、許しがだばだばいですね」
「私より衣裳こってる・・・こなちゃんのお母さんのくせにこなちゃんのお母さんのくせに」
「あいかわらずカオスね、まったく」
「か、かがみ?そう言いながら鼻血出まくってるんだけど」
「親子丼か、そういうのもおつよね」
「ちょ、私まで飛び火!?」
「それはいけませんね、体がもつでしょうか(主に泉さん親子の)」
「あ、あのそろそろ膝まで鼻血のほうが」
「大丈夫よ、女の子は月一でこれくらいだすから」
「下ネタうにょーん」
470名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 07:32:57 ID:k6qCoiLA
神は原型をこえねばならぬのです。
471名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 07:35:11 ID:bABT4KcS
>>467
それぱっd
47226-485:2008/01/20(日) 09:03:16 ID:iXDsH2le
投下される方がいなければ投下します

・ゆたか→みなみ
・4スレ拝借
・ゆたか視点
473伝わらない想い(1/4):2008/01/20(日) 09:06:25 ID:iXDsH2le
 生まれつき身体が弱い私は学校を休む事も少なくない。
 でも高校生になってからは出来るだけしないようにしている。
 少しでも一緒にいたいって思える人がいるから。





 伝わらない想い





「はぁ……」
 静寂が包む自室に息を吐き出す音だけが響く。
 平日の昼下がり、普通高校生は学校で勉学に励んでいる時間帯だが、私は一人ベッドに横たわり何度目か分からない溜め息をついていた。
 昨夜から体調を崩し今朝になっても熱が引かなかった為、私は学校を欠席する事になっていた。薬を飲んで睡眠を取ったからもう大分良くなったのだが、その分暇を持て余す結果となってしまった。
 傍らに置いてある体温計を取って体温を確かめる。頭痛や咳といった風邪と見受けられる症状はもうなくなったけど、念の為だ。上半身だけ起こしてケースを開けて中身を取り出す。
 ただでさえ暇なのに一分間待たされるのは何だかつまらない。何もしないでいる時間を物凄く長く感じるのは私だけじゃないだろう。
 でもボーっとしているよりはマシかな?でもこれって何かしている内に入るのかな?私は脇を押さえているだけだし……時間潰しにはなってないよね。
 色々と考えていたらまた頭が痛くなってきた。大人しく待っていようと私が苦笑い混じりに目を閉じると、丁度体温計が仕事を終えた事を知らせる電子音が聞こえた。
「三十六度九分か……」
 ディスプレイに表示されている数字を何となく読んでみる。何とも微妙な数値だろうか。
「ぶり返すといけないし……寝よう」
 誰にともなく呟いて、私は起こしていた上半身を倒して横になった。
 嫌でも私の視界を占領する、もう見慣れた天井の模様。鮮やかな白の輝きを放ち続ける電灯も幼少の頃からずっと見続けてきた。
 私は深い眠りに落ちるまで考え事をする習慣がある。一人で布団の中にいる事が多かったからだろう、他にする事もないし、思考することは夢の世界へと誘われるまでの繋ぎみたいな感じになっていた。
 今の時間だと……私のクラスは国語の授業の最中だろう。枕元の時計に目をやり、本日の日課を思い浮かべる。
 それからこの前、病床に就いた作者が家族の人に何度も降り積もった雪の深さを尋ねる、という内容の俳句を授業で習った事を思い出す。ちょっぴり状況が自分と似てるなと考えたので印象に残っていた。
 もっとも私の場合は人に何かを聞く事は滅多になく、考え事をするだけなのだけど。
 みなみちゃんや田村さん、パティちゃんは何してるかな。いや、授業を受けているだろうけど。
 休み時間に交わす、楽しい会話の風景を脳内に思い描く。
「学校行きたいなぁ……」
 明日になれば行けるだろうか。
 友達と話せる事を願いながら、私は瞼を落とした。
474伝わらない想い(2/4):2008/01/20(日) 09:06:59 ID:iXDsH2le
 目を覚ますと時刻は夕暮れ、世界が麗しい紅色に染められる時だった。
「んん〜……」
 身体を起こして伸びをする。結構な時間寝ていたからか体調はすこぶる快調、昨晩の苦しみが嘘のようだった。
 そろそろお姉ちゃんも帰っている頃だろうか。私はベッドから降りて一階へと降りるべく部屋を後にする。
 一定の歩調で階段を下りリビングへ続く扉を引くと、食欲をそそる匂いが台所の方から漂ってきた。どうやらもう帰宅済みのようだ。
「お姉ちゃんお帰りなさい」
「おおゆーちゃん、ただいま」
 野菜を刻む包丁を持った手を止めて、お姉ちゃんが私の声に振り返った。
「具合は良くなったの?」
「うん、もう大丈夫だよ」
 元気になった事をアピールするように笑って力強く答える。
「もうちょっとで出来るから待っててね」
「うんっ」
 私が頷くと、お姉ちゃんはそれを見届けてから再び作業に戻った。邪魔になるといけないから、私は席について夕食を待つ事にする。
「おおゆーちゃん、もう身体の方は良くなったか?」
 それとほぼ同時におじさんが居間に姿を現した。入ってくるなり私を見て気遣いの台詞を掛けてくれる。お姉ちゃんと同じような反応に、やっぱり親子なんだなと思う。
「はい、もう大丈夫です」
 にこやかに答えるとおじさんは満足した様子で笑い返してくれた。そして私の向かい側の席に腰を下ろす。
「あ、そうだ、ゆーちゃん」
 湯気が立ち込める作業場からお姉ちゃんの声が飛んでくる。
「何?」
「プリント預かってきてるから私の鞄の中から取ってくれる?」
 火を使っていて目が離せないのか、背を此方に向けたまま私に伝えるお姉ちゃん。
「はーい」
 私はお姉ちゃんに聞こえるように返事をして、席を立つ。ソファーに置いてあった薄い鞄を開いてクリアファイルを手に取って、それから更に私のものと思われる書類を抜き取る。
 その弾みで中に入っていた紙切れがひらひらと宙を舞い地面に落ちた。
「あれ……?」
 見たところメモ帳を一枚ちぎった感じの紙だった。お姉ちゃんのものかとも思ったが、私はそれを拾い上げて表を見た。
 そこには綺麗な字でこう書かれてあった。
「ゆたかへ。泉先輩に今日配られたプリントを渡しておきました。本当は私が届けるつもりだったのだけれど、今日は用事があったからごめんなさい。また明日学校で。岩崎みなみ」
 記された文字が書き手の声となって脳内で再生される。
 私は頬が熱くなる感覚を覚えながら、プリントに目を通す。
 しかし内容は殆ど入ってはこなかった。
 私の頭は先程のみなみちゃんからの伝言の事でいっぱいだった。
 風邪は治ったはずなのに、何だか熱い。
「ご飯出来たよー」
「うひゃぁい!」
 不意に掛けられたお姉ちゃんの声に過剰反応してしまう。食卓を囲んでいる二人に少し変な目で見られたが、笑って誤魔化して私もその輪の中に入る。
「いただきまーす」
 揃って唱和したところで夕食が開始、私達はそれぞれの箸を持って食べ物を口へと運び始めた。
「ゆーちゃん、みなみちゃんからのメッセージ見た?」
 私がお肉を口内へ放り込もうとしたその時、お姉ちゃんが言った。
「うん、見たよ」
 私はなるべく平然を繕って答える。
 その言伝を見た時から、私は動悸が激しくなっているのを感じていた。
 嬉しさとは明らかに違う感情が私を支配する。
 心臓が脈打つ速度はとても速く、熱があるわけでもないのに上気する感じ。
 理由は多分、とっくの昔から私の中にあったんだと思う。
 それが、みなみちゃんの優しさに触れて表に出ようとしているだけ。
475伝わらない想い(3/4):2008/01/20(日) 09:07:32 ID:iXDsH2le
 夕食と入浴を済ませた私は、昼間もお世話になった自分用のベッドに身をあずける。
 仰向けになって目線の先にみなみちゃんからのメモを掲げる。
「みなみちゃん……」
 その名前を呼んでみても何が起こるというわけではなかった。強いて言えば、静かな室内に私の声が木霊するだけ。
 私が高校生になって初めて出来た一番のお友達。自分の事の表現が苦手だけれど、本当はとても心優しい恥ずかしがり屋な女の子。
 短く切り揃えたミントグリーンの髪、中性的な整った顔立ち、物静かな雰囲気。
 そのどれもが私には魅力的に映った。
 そうして時を重ねて、いつしかみなみちゃんに抱く感情は憧れや親しさといったものから、愛しさへと変わっていった。
 でもそれを知ったら、みなみちゃんはどう思うだろうか。
 女の子が女の子に恋愛感情を持つなんて普通はない事だ。
 だから私は知らず知らずの内にこの感情を心の中に封印していたのかもしれない。
 みなみちゃんに拒絶されるのが怖いから。
 でも、私は自覚してしまった。
 ―――この気持ちを隠し通せるだろうか。
 ―――それとも伝えるべきなのだろうか。
 私は部屋を出てお姉ちゃんの部屋に向かった。何となくだけど力になってくれそうな気がする。
「ドアが開いてる……」
 私が独り言を漏らしたとおり、お姉ちゃんの部屋のドアは開け放されていた。
 中を覗いてみると、お姉ちゃんの姿は何処にも見えなかった。
 悪いと思ったけど勝手に入らせて貰う。電気とパソコンがついたままの室内は、お姉ちゃんは恐らくお風呂に入っているのだろうと私に思わせた。私が上がってから大して時間も経ってないし、多分そうなのだろう。
「少し待ってみようかな……」
 そう呟きながら辺りを見回すと、私は机の上に放置してある本に目が留まった。単行本にしては大きいし雑誌にしては薄すぎる。
 見た事もない形の本に私は関心を惹かれて、ぱらぱらと頁を捲った。
「……!こ、これって……」
 繊細なタッチで描かれている二人の女の子が、抱き合ったりキスしたりしていた。
「う、うわぁ……!」
 話が進むにつれて、段々とエスカレートしていく二人。
「女の子同士の恋愛ってこんな感じなのかな……?」
 頬を真っ赤にしながら、私は当初の目的をすっかり忘れて読み耽っていた。
 そして私はいつの間にか、作中の人物を自分とみなみちゃんに置き換えていた。
 恥ずかしい台詞を囁く脳内の私とみなみちゃん。
「私とみなみちゃんはこんな関係じゃ……」
 口に出して否定してみるものの、私の手は止まらなかった。
 結局、私は登場人物を変更したまま最後まで読んでしまった。
 みなみちゃんの気持ちを無視しているって分かってても、自制出来なかった。
「こ、こんな事しちゃダメ……でも、ちょっと続きが気になるかも……」
「あ〜、それはまだ続きが出てないから、次のコミケまで我慢だね」
「そ、そっか……って……」
 私のぼやきに丁寧に対応してくれた聞き覚えのある声。
「気に入ったかな?それ」
 恐る恐る振り向くと、口元をいつにも増して緩ませたお姉ちゃんの姿。
「お、お姉ちゃん……これは、その……」
 その場を何とか取り繕おうとする私に、お姉ちゃんは更ににやける。
「ゆーちゃんももう十六歳、こういうのにも興味を持ち始めるお年頃だもんね」
 私とは対照的ににこにこ笑っているお姉ちゃん。
「貸してあげようか?」
476伝わらない想い(4/4):2008/01/20(日) 09:08:26 ID:iXDsH2le
「借りてきちゃった……同人誌、って言うんだったっけ……」
 自分の机の椅子に腰掛け、お姉ちゃんから借りた同人誌の表紙に目をやる。
「結局目的は果たせなかったし……」
 呟き改めて見ると、表紙の絵も私の年齢で見てはいけない感じになっている。
 あの時気づけなかった事を感謝すべきか、悔やむべきか。
 ちょっとだけ感謝している自分がいた。
「でもこういうの読んだらいけないんだよね……何でお姉ちゃん持ってるんだろう」
 疑問は多々あるものの、考えたところで解消しそうにもなかったので、私はその事について思考を巡らせる事を中断する。
「……そうだよ!こういうの読んだらいけないんだよ!」
 数秒前何気なく言った自分の言葉でようやく気づく。偶然手に入れた事に感謝している自分を取り消すように頭を激しく左右に振る。
「ダメなんだよこんな事したら……」
 頭では理解しているのに、どうしても意識が本の内容に傾いてしまう。
 視界の両端には、ベッドと同人誌。このまま何もなかったかのように床に就いて明日の朝を迎えるか、もう一度読み返してみるか。
 散々迷った挙句、私は後者を選んでしまった。
「一回見たんだから、何回見てもいけない事には変わりないよね……」
 だったら読んでしまおうと、私の中の悪魔が理性を破壊した。
 人間の三大欲求の中にも優先順位があるのかな。そんなくだらない事を思いながら、私は禁断の世界へと再び足を踏み入れた。
 この話は、子供の頃から仲が良かった二人の女の子の内一人が、相手に抱く感情が友情以上のものだと悟って、勇気を出して告白したら相手も同じように想っていた、という筋道だった。
 それから身体を交えるシーンに移行するのだが、心理の描写がとても上手く私は一気に引き込まれてしまった。
 自分とみなみちゃんを重ねたのも、想いが通じ合う二人が羨ましかったからかもしれない。
 しかしこの世の中にどれほどの同性愛者がいるだろう。
 そしてみなみちゃんがその一握りの人種に入っていて、なおかつその相手が私である可能性は、果たしてあるのだろうか。
 一概にないとは言えないが、ないに等しいと言っても過言ではないだろう。
 その可能性は限りなく零に近いのだ。
 だったら私の胸に秘めているこの気持ちは、伝えない方が良い。
 受け入れられなかった気持ちが暴走し出すかもしれない。みなみちゃんが拒否するかもしれない。
 どういった形になるかは分からないけど、確実に今の関係を壊してしまう。
 それでみなみちゃんと離れ離れになるくらいなら、今のままで良い。
 私はパタンと本を閉じて、机の上に置いた。
 叶わない理想にこれ以上自分と思い人を重ねても、虚しくなるだけだった。
「寝よう……」
 ベッドに潜り布団を被る。
 しかし、身体を寒さから守る事は出来ても、心を守る事は出来なかった。
 抑えようと思っても溢れ出してしまうほど、みなみちゃんが好きになっていたから。
「みなみちゃん……大好きだよ……」
 でも、みなみちゃんは―――
 この恋は、きっと私からの片道で終わるのだろう。
 好きになるのは簡単なのに、好きになって貰うのはこんなにも難しい。
 全て諦めてしまった方が楽なのかもしれない。無駄に傷つかなくて済むかもしれない。
 色々な事考えると諦めたい、けどそれと同じくらい諦めたくない。
 臆病で弱気な私は、思考の迷宮にありもしない出口を見出そうとしていた。
 最も簡単で、誰も傷を受けない選択肢が目の前にあるのに。
 告白する勇気もないくせに、私はそれを選ぼうとはしなかった。
47726-485:2008/01/20(日) 09:11:39 ID:iXDsH2le
ゆたかの自慰にシーンを移そうとも考えたのですが
何かみなゆた物のエロってちょい抵抗があって……
おそらくこれからもエロなしでいきます
新連載スタート、拙い文章ですがお付き合い願えたら幸いです
次回、みなみ視点に続きます
478名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 09:24:13 ID:bABT4KcS
>>470
胸は詐称らしい(ぶーわ氏の日記より
479名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 10:28:45 ID:Y3gEbR0f
>>463
Ievan Polkkaが聞こえてきそうです。(笑
さて、そろそろコミトレに行ってこよう…
480名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 11:40:54 ID:RVTC0Hx2
>>477
GJっす、
うーん、みなゆたはなんか切ない感じにさせられるのはなんでなんでしょうか。
切ないのが書きたいけどそんな力量がありませんorz

さてどなたもいらっしゃらなければ投下したいと思います。
48117-234:2008/01/20(日) 11:47:26 ID:RVTC0Hx2
>>402-403の投下失敗を今でも引きずってます…
おはようございます17-234です。

「好きなのに、愛されない」(前編)
*TSもの
*あきら様(男)×白石(女)
*エロあり
*6レス+後書き1レス使用
*1レス目に若干出血表現があります。

話があれなので整理すると
>>96-98の続き
投下失敗した>>402-403のつづきです
中途半端なところから始まりますすいません。

以上のことがおkな方は、どうぞ。
482「好きなのに、愛されない」1/6:2008/01/20(日) 11:48:54 ID:RVTC0Hx2
するする、と手が胸に上がってくる。
むにむに、とその手が動く。

「あ、んっ…あ、あきら様っ…」
「ずっとこうして欲しかったんだろ?」
「ちが、うっ…あっ…」
「ジャージの上からでもわかるくらいになってるじゃねぇか。」
「そ、それはっ!や、やめてくださいっ!」

ぱん、と音が鳴る。
あきら様の手を白石の手が払う。
ちっ、と舌打ち一つしてから、

「俺に、刃向かうつもりか?」
「……!」

白石が置いた包丁は、あきら様の手に握られていた。
そしてその刃先は、白石に向けられていた。

「や、やだ、あきら様……?」
「お前、本当に俺が飯食べにきたとだけ思ってるわけ?」
「えっ?違うんですか?!」

包丁を持っていないほうの手で、
白石の胸を揉みしだく。

「や、んっ…」
「お前ノーブラか?やけに柔らかいな。」
「や、だ、やめて、下さい…」
「お前、分かってたんじゃねぇのか?何も分かってないで男を部屋に入れるなんて、お前もアホだなぁ…」
「や、ダメ…です、離してっ!!」

白石の白い手が、自分の胸を掴む手を払うと同時に、刃先が、白石の手を擦る。
赤い血が滲み、ゆっくりと痛みを覚えさせる。

「いたっ……!」
「まだ、俺に従わないつもりか?」

ドスのきいた声。
静止する二人をよそに、炊飯器が、自分の仕事を終えたことを主張した。
それが合図だったのか、あきら様の声の調子が180度変わる。

「あーあ、俺に逆らうから切れちまってんじゃねぇか。舐めてやるよ…ほら、貸しな?」
「……い、いや…っ」

傷ついた右手の甲を、赤い舌が這う。

「俺、知ってるんだぜ?」
「なに、を…?」

あきら様はにやにやしながら、右手の甲を舐め続ける。
ふと離して言った言葉に、白石は凍り付く。

「お前、スタジオのトイレで俺の名前呼びながらオナニーしたことあるだろ。」
「………!!」
483「好きなのに、愛されない」2/6:2008/01/20(日) 11:52:02 ID:RVTC0Hx2
緑色の目が見開かれる。
確かに、何度か…何度もしたことのあることをズバリ言われ、冷や汗が白石の頬を伝う。
「どうして……」
「だから、お前の望みを適えに来てやった、ってわけ。有難いと思えよ?」
「や、あっ…」
首筋をそっと舐めながら、また胸を揉む。
そして、硬くなった乳首をぎゅ、と摘む。
「ひあっ!」
「どうしたー?これか?」
台所に手を着いて身をよじらせる。
ふと、そんな中、白石は考えたことがあった。


「あの、あきら様…」
「ん?」
「あきら様は、私のこと、どう思ってるんですか…」
「どう?」
あきら様は不思議そうな顔をして白石を覗く。
「お前は俺のアシスタントだろ?」
「え?えぇ…」
「だから、お前は俺の言うことだけ聞いてりゃ良いんだよ。」
白石の口が開く。
呆然とするしかなかった。
「誰かにこのこと、告げ口してみ?お前の首、飛ばしてやるから。」
右手の指先で、白石の首を、横になぞる。
「こう、なりたくないなら…俺の言うこと、よーく聞けよ?」
「……でも、これだけは言わせて下さい…」
「んだ?」

白石はゆっくり、呟くように言った。
少し、声がうわずっている。
「私、あきら様のこと、大好きです。」
「はぁ?」
「一人の人として、好きなんです…」
精一杯の言葉だった。
本当はこんなことは言いたくなかったのだろう、
まさか、単なるアシスタントとでしかみられてなかったなぞ、考えてもいなかったのだろう。
「でも…もう、諦めました…」
ふふ、と、悲しそうに、白石は笑った。
しかし、冷たい声が、耳を通り抜ける。
「所詮、お前は俺のアシスタントだからな。」
「そう…でしょうね…」

声が震える。
たまらなくなって、堪えきれず、白い頬に一粒、また一粒と、涙が落ちる。
「っく…ひっく…」
「白石?」
泣いてる意味が理解出来ず、あきら様はただ、白石の震える肩を眺めた。
「なんでも、ないですっ…ひっく…」
好きだから、するものだと思っていたのに。
好きでもないのに、されることを思うと、胸が痛くなった。
愛されないことを知った女は、目に涙をためて。

「あきら様…」

まな板の上の野菜たちをぼんやり眺めながら、こう言った。
「もう、私のこと、好きにしてください…」
484「好きなのに、愛されない」3/6:2008/01/20(日) 11:53:57 ID:RVTC0Hx2
「お前、先にカレー作れよ。」
「えっ?」
もう来るかと思って身構えた白石だったが、意味がなかったらしい。
先にカレーを作れと。
きょとん、とするしかない白石に、あきら様は繰り返した。
「カレー。」
「は、はい…」
「ただし。」
とんでもない命令を突き付けた。
「裸エプロンでな。」
「はえっ?!」
「今ここで脱げ。」
「…………」
「さっさとしろ!」
「………はい」
エプロンを外し、椅子の背にかける。
あきら様に背をむけ、上のジャージを脱ぐ。
下も、下着ごと、一気に脱ぐ。
エプロンを持った瞬間。
「白石、こっち向かないのか?」
「……!」
14歳の子に、まだ見せたことのない裸を見せるなんて、思ってもみなかった。
白石は、エプロンを胸と下半身にあて、くるり、とあきら様に見せる。
「そのエプロンが邪魔なんだけどなー」
さっきとまた声の調子を変えた。
優しい声と、その内容のギャップに、白石は戸惑いを隠せないでいた。
エプロンを右手にまとめて持つと、観念したように、緑の目を閉じた。
「うん、可愛い可愛い。恥じらう感じが、また良いんだよなぁ…」
本当は怖くて仕方なかったが、恐る恐る白石は目をあける。
目の前のあきら様は、よしよし、と白石の頭を撫でた。
「可愛いよ、みのる…ほら、エプロンつけてあげようか?」
「………はいっ」
恥ずかしさで白い頬が赤くなった白石に、ピンクのエプロンをつける。
あきら様は何故か上機嫌で、にこにこしながらエプロンの紐を結ぶ。
「さてと、ほら、みのる、カレー作って♪」
「あ、はい…」
裸エプロンをした白石の腰に両手をまわすあきら様。
そして、あきら様はねちねちと責めることを開始した。
「みのるって、うなじ白いよな」
「えっ…あ、んんっ…!」
鍋のなかに収まった肉をしゃもじでつついていた白石の手が止まる。
後ろからうなじに吸い付かれ、胸をやんわりと揉まれては、そんな声しか出ない
だろう。
「あ、あきら様っ…ん…」
胸をなでまわしながら、耳にかじりつく。
声を出すのも我慢したくても出てしまう。
「白石、手、止まってるぞ?」
「あ、んっ、すいません…」
急いで肉をかき混ぜ、野菜を投入する。
肉がこんがり焼けてしまっていた。
「なぁみのる〜」
「…はい」
「お前の手が止まると、カレーが美味しくなくなるんだぞ?」
「ご、ごめんなさい…」
「みのるには、お仕置きが必要かな…」
あきら様はにやり、と笑うと、白石のおしりを撫でる。
その感覚を楽しみながら、ぽつりとつぶやいた。
白石は嫌な予感がしながらも、野菜を炒め、水とルーとスパイスを入れた。
あとは煮込めば完成だ。
その間、ずっと抱きついていたあきら様もどうかと思うのだが。
485「好きなのに、愛されない」4/6:2008/01/20(日) 11:55:07 ID:RVTC0Hx2
------

「で、できましたよ?あきら様っ…あのぉぉ…」
「ん?」
「カレー…」
「ん、お疲れ。」

さ、食うか、と準備をし始めるあきら様。
慣れない手つきでよそおっているのを見て、
白石はくすりと笑った。

「あ、たれた!って白石!なに笑ってんだよ!」
「はいはい」

-------------

「ごちそうさまー」
「おくちにあいましたか…?」
「おぉ、うまかったぜ!さすがみのる〜…あ。」
「?」

白石の顔をまじまじと見るあきら様。
みられている訳がわからず、きょとん、とする白石に、
ずい、と顔を近づける。

「おまえ、ご飯粒ついてるぞ?」
「え?」

ぺろり、と赤い舌が、ピンクの唇を掠める。
白いご飯粒を、攫っていった。

--------
486「好きなのに、愛されない」5/6:2008/01/20(日) 11:57:23 ID:RVTC0Hx2
あきら様は壁を背にして座り込む。
おいで、と自分の間に白石を座らせ、後ろから抱きしめる。
「あったかい…」
「お前服着てないしな…もうちょっとあったかくしてやるよ。」
あきら様は自分の足で、白石の体を挟む。
白い脚の間に自分の足を突っ込み、白石の脚を開かせる。
「や、え?あきら様…?や、離してぇ!!」
動こうにも、力の差で動くことは到底できない。
小さな体がもがく間に、あきら様の手が、するりするりと下へ降りていく。
エプロンをめくると、太ももまで濡れていた。
「すっげぇ濡らしてんじゃんか…」
「やだぁっ…い、言わないで、ください…」
すべすべの太ももをなぞり、洪水を起こしているそこを、
そぉっと、指先が触れる。
ゆっくりなぞられる度に、声が漏れる。
「あ、あう…やぁっ…」
「ここが、やっぱり良いのか?」
「あぁっ!!」
目を瞑り、頭を振り乱す。
焦らされ、しかししっかりとポイントを責められる。
白石は恥ずかしさに耐えられそうになかった。
「ほら、顔見せろよ。」
強引に顔を正面に向かせる。
カラン、という金属音とともに髪留めが落ち、白石の顔を半分隠す。
そこにあったのは、姿見だった。
「エロいな、これ。」
汗ばむ額に髪が張り付き、目に茶髪がかかっている。
髪に隠れた目が、見開かれ、直ぐにぎゅっと瞑られる。
「お前、俺のこと考えてこうやってたんだろ…」
「いやっ、ち、違うっ…ん…」
「それとも、こう?」
「ひ、ひあぁぁ!」
突然、一番弱いところをひっかかれ、
今までにない位の声を上げる白石。
指の腹で押しつぶしては、爪でひっかかれる。
好きな人の声が、耳元で鳴り続ける。
「ずっとこうやってオナニーしてたんだろ?」
「や、言っちゃ、ダメぇ、あ、ひあぁあ!」
「俺に、クリトリスをいじって欲しかったんだろ?」
「あきら様ぁ…あ、あんっ…気持ち良いっ…」
「もう指だけでやばいのか?」
「言っちゃ、や、だっ…」
エプロンの中に手を滑り込ませ、柔らかい胸を鷲掴みするあきら様。
「俺に、こうして欲しかった?」
「ん、んっ…」
「俺、何て言ってた?」
心の中を読まれているようで、白石は怖くなった。
まさかこの次に言われることをも読まれているとは、
思っていなかった。

「この変態が、って?」
「ひああああぁぁ!!」
クリトリスと乳首を一気につままれ、
今までにない、高い、大きな声をあげる。
じたばたと暴れる体を押さえつけるあきら様の顔は、なんとなく楽しそうだった。
「ほら見ろよ、鏡の中のお前、良い顔してるぜ?」
「や、やぁっ!!見ないで!見ないでぇ!!」
「イカせて欲しい?」
「あ、ぅ…」
「イかせて欲しいなら、俺に頼みなよ。」
487「好きなのに、愛されない」6/6:2008/01/20(日) 11:59:26 ID:RVTC0Hx2
指が止まる。
はぁ、はぁ、と今まで叫んでいた分の空気を補給する音。

「私のこと…指で…」
「もっと大きな声で。」
「あ…あきら様の指で…イかせて下さい…!」
「だめ。俺のことおかずにしてるんだったら、それ先に謝ってもらわなきゃね。」

びく、と白石の体が震える。
しかし意を決したように、小声でつぶやく。
下を向いたまま、現実を見ないように。

「あきら様の指で…イカせてもらうこと、毎日考えてる変態で…ごめんなさい…」
「お前本当、淫乱だな。」
「あ、、ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!!あぁぁっ!」

また指が動く。
ちゅく、ちゅぷ、といやらしい音をさせて、
そこに水溜りを作っていく。
「や、やだぁ…ひぃん…!」
「ほらみのる、見てごらん?みのるのいやらしい汁で水溜りができちゃってるぞ?」
「や、あ、あきら様、あたしっ…もう、あぁ…」
「いっちゃいそうなんだ?」

こく、と小さくうなずく。

「じゃ、みのるのイく時の顔、堪能させてもらうよ…」
「っ…みちゃ、やだ…だめ、だめぇぇっ!」

あきら様は鏡の中を凝視する。
その中に映る、自分の名前を叫ぶ人を見つめていた。

「いっちゃ、う…あ、あきら様ぁ…っ!!!」

びくん、と一度大きく痙攣して、
小さな体は、その腕の中で力を失った。
48817-234後書き:2008/01/20(日) 12:01:49 ID:RVTC0Hx2
終了です。
寒くて手が動かない!
前書きが長すぎですみません…

後編もがんばらなきゃぁうぅぅぅ
読んでくださった方ありがとうございます!
では!風邪引かないように!
489名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 12:02:33 ID:9EFBq/ML
>>488
リアルタイムGJ!
あきら様えげつねぇwww
490名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 12:13:53 ID:vaOBa1w6
>>477
黒くないゆーちゃんもやはりいいものだなぁ
しかし、微不幸属性が似合うと個人的に思ってるので今後の苦悩に期待だぜ、GJ!

>>488
なんという外道。しかしこの傍若無人っぷりは間違いなくあきら様
このまま白石を利用してこなたたちもその毒牙にかけて欲しいと思うのは俺だけだろうか
491名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 12:50:13 ID:hc3HT8TT
>>490
過去のどの作品だったか・・・
みなみ→ゆたかで目いっぱい苦悩しまくって結ばれる王道を、
今度はゆたか→みなみでやってほしいなー。
あの病弱で繊細で微妙に黒はいりかねないゆたかが
どんな一人相撲を演じるのか楽しみではある。
492名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 12:54:30 ID:uxSYaB2l
>>491
多分◆cj23Vc.0u.氏の「プリンセス・ブライド」じゃないか?
みなみ視点でゆたかを好きになるという話だと。
493名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 13:09:26 ID:Ker0Bka3
天使なゆーちゃんと、悪魔なゆーちゃんに分岐する話がいいな。

>477
ゆーちゃんの深い悩みが、じんわりと伝わってくる感じがします。
続きに期待。
494名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 13:20:29 ID:J0w/vHPE
>>477
高い志と誠実さに溢れた素敵な文章だと思いました
性的マイノリティに対する考え方にシンパシーを感じます

特に問題なければ、5分後くらいに投下します
49516-187 ◆Del8eQRZLk :2008/01/20(日) 13:27:47 ID:J0w/vHPE
ごきげんよう。
それでは投下させていただきます。
『4seasons』の続きです。

■かが→こな
■努シリアスな感じです 
■エロなしです

9レスになります。
496夏/窓枠の花(第五話)2/9:2008/01/20(日) 13:28:21 ID:J0w/vHPE
§6

 ガラリと窓を開けると、途端に蝉の声が飛び込んできて驚いた。夏のさかりであるから
には蝉が鳴いていて当たり前なのだけれど、伏せっているときにはこんな大音声すら耳に
入っていなかったのだ。
 遠く雲雀の啼く声が聞こえる。一体どの辺りを飛んでいるのだろう。見つけようと思って
青い空を探してみたけれど、さんさんと輝く太陽が眩しくて眼を開けていられなかった。
 どこにでもある、夏の朝の風景だった。
 蝉も、鳥も、空も、雲も。私があんな状態であっても我関せずと、いつも通りの日々を
変わらず過ごしていたのだろう。
 それは、不思議と好ましいことに思えた。
 病床で自分のことばかり考えながら過ごしていると、自分とそれ以外との境界がわかり
づらくなる。こんな風に自分と関わりなく回っている世界を見て、私はやっと日常に帰れた
気がした。
 うーんと大きく伸びをすると、身体がばきばきと音を立てる。
 眩暈がするほど気持ちよくて、自然と吐息が漏れだした。
「やっぱり健康っていいなー……」
 声に出して云うと、一層強くそう思えるのだった。

 一階に降りると、なぜか居間に家族が勢揃いしていた。
 お母さん、お父さん、まつりお姉ちゃん、いのりお姉ちゃん、そしてつかさ。
「あれ? みんなどうしたのよ。雁首そろえて集まっちゃって」
 私がそう云うと、お母さんが呆れたように云った。
「あなたねぇ。どうしたのじゃないわよ。やっと本調子になったみたいだから、ちゃんと
あなたの顔を見ておこうと集まってるんじゃない」
「えー、何よそれ、たかが夏風邪で大げさなんじゃない?」
「あら、それもそうかもしれないわね。じゃあ、快気祝いで買っておいたこれ、かがみは
いらない、と……」
 意地悪くそう云っていのりお姉ちゃんがテーブルに置いたものは、一玉五千円はしそうな
大きなマスクメロンだった。
“みんなで食べちゃおっか”なんてニヤニヤ笑いながら云ういのりお姉ちゃんに、私は
持ち合わせがある限りの白旗を揚げまくったのだ。

「なんかまつりお姉ちゃんの分だけ大きくない?」
「細かいこと云うなって。大体これ、私もお金出したんだからいいんだよ」
「はぁ? お金出したからいいって、それじゃ私の快気祝いになってないじゃないのよ」
「こらこら二人とも、喧嘩はよしなさい。お父さんのあげるから、な?」
「もう、あなた……どうせじゃれあってるだけなんですから」
「なんで私がかがみとじゃれあわないといけないのよ。じゃれあうっていうのは、かがみと
つかさみたいなのを云うんだよ?」
「え、えへへ…」
「つかさって云えば、かがみはちゃんとつかさにお礼云った? この子、ずっとつきっきりで
看病してたのよ」
 いのりお姉ちゃんがそう云ったとき、幸せそうにメロンを咀嚼していたつかさが少しだけ
哀しそうな顔をした。
 恐らく誰も気づいてはいないはずだ。その表情の変化に気づけるのは、双子として共に
生きてきた私だけ。
「うん、ちゃんと云ったわよ、ね、つかさ?」
「うん! それにね、わたしずっとお姉ちゃんにお世話になりっぱなしだったから、少しだけ
恩返しできて嬉しいんだよー」
「そうかそうか」
 お父さんもお母さんもいのりお姉ちゃんも、つかさを見て楽しそうに笑っている。いつも
にこにこと無邪気なつかさは我が家のアイドルで、特にいのりお姉ちゃんは、歳の離れた
妹が可愛いと云って溺愛しているのだ。もっとも、歳の離れた妹なら私も同じはずなの
だけれど。
 そんな即座に自分にダメージが跳ね返ってくるだろう無粋なつっこみは、しないほうが
いいのだろう。

497夏/窓枠の花(第五話)2/9:2008/01/20(日) 13:28:53 ID:J0w/vHPE
 まつりお姉ちゃんは、私とつかさを不思議そうに見て、それでも何も云わなかった。

 今はその気遣いがありがたい。
 あんな状態の私を拾って世話を焼いてくれたのに、何も訊かないでいてくれている。
 正直なところ、私はまつりお姉ちゃんのことがあまり好きじゃない。
 他人の心情に無頓着で、思ったことをすぐに口に出す。好意のつもりで自分の好みを押し
つける。そのくせ短気で、思い通りにいかないとすぐにぶすっとする。
 それでもこんなときには、私たちは否応なく家族なのだと思い知らされるのだ。好きとか
嫌いとか、馬が合うとか合わないとか、人間同士だからそれはあるけれど。
 そんなことを全部吹っ飛ばして、私たちは家族なのだ。
 だから誰かの危機だと思えば骨身を惜しまず助けるし、何も訊かずに夜通し面倒を見たりも
するのだろう。
 思い出す。
 去年の暮れ、まつりお姉ちゃんがぐでんぐでんに酔いつぶれて帰宅したときのこと。
口が開いたショルダーバッグを引きずって、片方のヒールが折れたまま。
 なにがあったのかはわからない。それでもそれはいつものまつりお姉ちゃんではありえなかった。
 起きていたのは私だけで、下手にみんなに知られたくはないだろうからと。
 吐瀉物で窒息しないように落ち着くまでみていたし、処理もした。財布を捜しに駅まで
歩いていったりもした。嫌だったけれど、それをしないという選択肢は頭によぎったことも
なかった。
 同じようなことがまたあったら、私は迷いもせずに手助けをするのだろうし、きっとまつり
お姉ちゃんにしてもそうだろう。
 そんな想いを込めて見ていたら、何を勘違いしたのかまつりお姉ちゃんは。
「そんな眼で見ても上げないわよ。メロン、もう食べちゃったもん」
 なんて云って、メロンの皮をひらひらと振った。馬鹿かこの人は。

 ――前言撤回。少しは迷うと思う。


 やがてそんな家族たちも一人減り二人減りしていった。仕事に、ゼミに、遊びにでかけて
いって、居間に残ったのは私とつかさだけだった。
 ふうわりと風が吹き寄せる度に、風鈴がチリンチリンと高い音を立てて踊る。張られた
すだれが漂うように揺れて、横たわったつかさの肌に複雑な影を落としていた。それは
水面下に差し込む光の紋様にも似ていて、まるで海の底にいるみたいだった。
 ジーワジーワと蝉が鳴いている。潮騒のように鳴いている。
 つかさは畳の一点を見つめて動かない。
 云わないといけないこと、話さないといけないことはたくさんあるけれど、たくさんありすぎて
何から話せばいいのかわからなかった。
 だから私も畳にべったりと寝そべりながら、肘をついて庭を眺めている。
 築山泉水庭園の池で、錦鯉が泳いでいた。ぱしゃりと跳ねると、強い陽射しに水しぶきが
きらきらと輝いた。
 その音に、つかさも池の方を見たかなと思って振り向くと、つかさはいつの間にかじっと
私を見つめていた。

「……ごめんね」

498夏/窓枠の花(第五話)3/9:2008/01/20(日) 13:29:38 ID:J0w/vHPE
 その顔をみた途端、私の口からは考えるより先に言葉が漏れ出した。
 心配かけてごめんね。
 迷惑かけてごめんね。
 今まで黙っててごめんね。
 こなたのこと、好きになっちゃってごめんね。
 云ってみて初めて、それこそ私が云いたかった言葉なのだと気がついた。
「……なんで謝るの? お姉ちゃん、謝らないといけないようなこと、なにもしてないもん」
 横たわったまま。両手を力なく投げ出して、眼だけは私を見つめながらつかさは云う。
「……それでも、ごめんね。こなたは、つかさが最初に仲良くなった子なのに……なんか、さ」
「……そんなの……。こなちゃんのことは大好きだけど、わたしはそんな気持ちになれないし……」
「そう……そうだよね……」
 私が呟くと、つかさは急に上体を起こして私のほうににじり寄ってきた。
 じっと私を見つめるつかさの眼が大きくて綺麗で、思わず知らず惹きこまれそうになる。
桔梗色の瞳に同じ色の私の瞳が映っていた。無限の合わせ鏡のように映る双子の瞳。
「……不思議だね。お姉ちゃんとわたし、同じお腹からでてきて、同じものを見てきて、
ずっと一緒に生きてきたのに。お姉ちゃんは女の子を好きになれる人で、わたしはそうじゃない……」
 つかさは小首を傾げて本当に不思議そうに云う。
 まるで今日始めてあった人を見るような眼をしていた。
「ついこの間まで、わたし、お姉ちゃんとわたしの二人で一人だって、ずっと思ってた。
……なんか上手く云えないけど……お姉ちゃんだけは、お姉ちゃんじゃなくって、“わたし”
なんだって……」
「……わかるよ。云わなくってもわかるよ。――私も、同じだったから」
 いつからだろう。
 いつから、私たちは分かれてしまったのだろう。
 同じ子宮で一つの胎盤を共有した。同じ血を、栄養を、ホルモンを、酸素を二人で分けあった。
 同じ時に産まれ、同じ産湯に浸かり、同じ母乳を吸って、同じように大きくなって、同じ
言葉を喋って。
 初めて立ち上がったとき、私たちはお互いを支え合っていた。
 私の視界から、片時もつかさが離れたことはなかった。つかさの視界から、片時も私が
離れたことはなかった。
 そうだ、いつでも一緒だったのだ。
 二人で過ごしてきた膨大な時間。それが自然と思い浮かんでくる。思い出にある情景は、
その一つ一つが雪のように朧気で。
 海底のようなこの部屋に、思い出がマリンスノーみたいに降り注ぐ。

 ふわふわ。
 ふわふわ。

 思い出が舞い落ちてきて、降り積もる。
 二人で過ごした時が降り積もる。

499夏/窓枠の花(第五話)4/9:2008/01/20(日) 13:30:09 ID:J0w/vHPE
 小学校の入学式、別のクラスに引き離されて泣き出した。
 赤い夕焼けが怖くって、二人で手を繋いで走って帰った。
 私が自転車とぶつかって鎖骨を折ったとき、つかさは自分で自分の骨も折ろうとした。
 図工の時間、みんなが両親の絵を描いていた中、私とつかさだけはお互いのことを描いていた。
 林間学校、つかさはこっそり私の布団に忍び込んできて、朝になってクラス中からからかわれた。
 つかさの悪口を云った男子に殴りかかったけれど、それで一番傷ついたのがつかさなのだと
その夜に気がついた。
 私がもらったラブレター、つかさが勝手に捨ててしまって、しばらく口を利かなかった。
 大晦日に二人で徹夜をして、なんだか大人になれた気がした。
 こっそりお酒を飲んでみた日、二人で折り重なってぶっ倒れた。
 陵桜の合格通知が届いたとき、つかさは安堵のあまり泣き崩れた。
 権現道の桜並木を一緒に歩いた。

 そしてこなたと出会った。
 そしてみゆきと出会った。

 私の人生の中で、あらゆる場面につかさがいたのに。
 それは半身のようにいつでもそこにあったのに。

 私たちは、いつの間にか違ってしまったのだ。

 つかさはもう、私の半身ではありえなかった。
 私たちはまるでお互いの性格を補うように、正反対の性格に育った。
 細かくて理知的で気むずかしい私と、大らかで情緒的でおだやかなつかさ。それはまるで、
互いが互いの周囲を回り一つの重力場を作り出す、二重連星の恒星のように。
 けれどそのバランスは壊滅的に崩れ、もはや元の関係には戻れない。
 私はつかさの身体にすら欲情することができる。けれどつかさはそうじゃない。
 それはもう、同じ人間ではありえない。
 つかさはもう、私とは違う別の個人だ。大事な大事な、可愛い妹だ。

 二人の道が一本に交わることは、もう、二度とない。

「明日、こなたに会いに行こうと思うんだ」
 私がそういうと、つかさは静かにうなずいた。

 ――大学に受かったら、一人暮らしをしよう。
 そう、思った。


500夏/窓枠の花(第五話)5/9:2008/01/20(日) 13:30:41 ID:J0w/vHPE
§7

 この家にくるのも久しぶりだ。
 といっても精々一ヶ月半来ていないくらいでそう感じるのだから、いかに私が泉家に入り浸って
いたのかがわかるというものだ。
 思えば去年の秋口まで一度も来たことがないことを不思議に思うほど、泉家の空気は私に
しっくり合っていた。
 勝手口の脇に自転車を止めて、玄関に向かう。
 呼び鈴の下に相変わらず“犬”のマークが張られたままになっているのを見て、思わず
口元がほころんだ。
 それはこなたが中二の冬に亡くしてしまったという、犬の“惣一郎さん”の忘れ形見だ。
 そのことを教えてくれたときのこなたの寂しそうな顔を思い出す。
 こなたはあまり家のことや昔のことを話す子ではなかったから、こなたがそんな顔をしている
というのに、私は少しだけ嬉しかった。
 一年生のころもそれとなく家族構成のことを訊ねたし、家に行ってみたいそぶりもみせたのだ。
けれどこなたはその度にはぐらかしていたから、あまり家族のことに触れて欲しくはないのだと
思っていた。
 けれど二年生になってしばらくしてから、こなたは色々なことを話してくれるようになった。
 お母さんのこと、お父さんのこと、家のこと、子供の頃のこと。
 それはきっと、一年つきあってきてやっと私たちに気を許してくれたからだと、そう思っている。
 こなたはいつも明るくてハイテンションで飄々としているから、みんなは脳天気な子だと
誤解しているけれど。
 本当は誰よりも繊細で優しくて、そして人間関係に臆病なのだと、私は知っている。

 震える指で呼び鈴を押すと、チャイムの音が響き渡る。

 私はここに決着をつけにやってきた。

 思い出す。風邪で寝込んだ私にこなたが会いに来てくれた日のことを。私が寝ぼけて抱きついて
しまった日のことを。
 あのとき、私は混乱していてそのことに思い至らなかったけれど、後で冷静になってから
気づいたことがある。

 やはり、こなたが私に性的な関心を抱いていることはありえないのだと。
 
 あのときのこなたの反応。突然私に抱きすくめられて、こなたは照れるでもなく慌てるでもなく、
ただ困惑していた。
 強く抱き締める私に対して、ただ痛いから離してくれと云った。
 なんでこんなことをするのかわからない、そういう顔をして。
 もしこなたが女性性に対して性的指向を持っていたら、そういう反応をするはずがないと思った。
 それは最初からわかっていたことだった。
 こなたが同性愛者/両性愛者だったら、普段からあんなに気軽にスキンシップをしてくる
はずもない。あんな風に無邪気に触れられるのは、相手に性的な関心がないからに他ならない。
 わかっていたことだけれど、改めてその事実を突きつけられると、やはり酷く落ち込んだ。

501夏/窓枠の花(第五話)6/9:2008/01/20(日) 13:31:27 ID:J0w/vHPE
 ドアが開いて、こなたが顔を出した。
「……や、久しぶり」
「……四日前に会ったばっかだろ」
「あはっ、そいえばそうだっけー。なんか随分会ってない気がしてたよ」
 招かれるままこなたの部屋に入ると、その匂いにくらりとする。忘れていた、この部屋は
こんなにもこなたの匂いでいっぱいだったのだ。
 それは別に体臭や香水の匂いではないし、ことさらに強い香りというわけでもなかったけれど。
それでもそれは明確にこなたの匂いなのだ。
 この部屋はこなたがずっと暮らしてきた空間で、隅々にまでこなたの意志が働いている。
 なんだかこなたの胎内に取り込まれたような気持ちになった。今までの私は、よくこんな
部屋で安らぐことができたものだ。あの頃からは随分遠いところにきたと思った。
 小さなノックのあと、ゆたかちゃんが部屋に入ってきた。
「かがみ先輩、いらっしゃい」
 そう云って、持ってきた麦茶をテーブルに置いてくれた。お礼を云う私に微笑むけど、
なんだか少し緊張しているようにみえる。
 こなたは私とのことをどの程度話しているのだろう。それが気になったけれども、訊いて
どうなるものでもなかった。

 ゆたかちゃんが出て行くと、部屋に沈黙が訪れる。こなたはベッドに寄りかかって、
ちびちびと麦茶を舐めていた。
 つかさのときと違って、この沈黙は気詰まりだ。
「……こなた、その、色々とごめん!」
 私はがばりと手をついて謝った。
「やめてよ。かがみはきっと、謝らないといけないようなこと、なんもしてないよ」
 まるでつかさみたいなことを云う。
「そんなことない! 実際あんたが云ったみたいに、このところあんたのこと避けてたのは
確かだし、会わないようにしてたのも本当だもの。……それに、お見舞いに来てくれた日
だって……」
「うん、まあ……」
 こなたは口ごもってもごもごしたあと、雰囲気を変えるようにことさら明るく云った。
「あー、まあ、あんときはへこんだよね。わたしだって勇気出して会いに行ったのに、
追い返されるとはねー」
「……う、ごめん…」
「それに、寝ぼけて抱きしめられるとは思わなかったよ。ぬふふ、やっぱりあれ、オトコが
出てくるエッチな夢でもみてたのかな?」
 いつもの猫口になった口元に手を当てて、意地悪そうに笑う。

 私はそれに顔を赤らめてそっぽを向いた。
 今まで何度も繰りかえしてきたように。
 こなたにからかわれる度に見せてきた反応を思い出して。

 大丈夫、きっと上手くやれている。

「あー、やっぱりオトコなんだぁー! 誰かな? 誰かな? かがみんの想い人は一体誰かな?」
「う、うるさい、うるさーい! 真面目な話してるときにちゃかすなよ!」
 嬉しそうに頬をつついてくるこなたを振り払って叫んだ。

 頬はきっと赤いだろうけれど、心はどこまでも醒めている。

「あ、あれはその……。そういうこともちょっとはあったけど……」
 言葉を濁し、小声で云う。
「それより、風邪じゃなくてインフルエンザだったから、あんたに移しはしないかって心配
だったし……、喧嘩したばっかだったし、お風呂入れてなくて自分の臭いとか凄い気に
なってて……で、なんか色々混乱しちゃってね……本当、ごめん」
 神妙に見えるように、顔を伏せた。

502夏/窓枠の花(第五話)7/9:2008/01/20(日) 13:32:04 ID:J0w/vHPE
 それは全て用意してきた言葉だ。
 多少のイレギュラーはあったけれど、上手くやれていると思う。

 上手に嘘を吐くコツは、変にディティールを作らず本当の中に織り交ぜることだ。

「そっか……うん、わかる、かな……」
「……ほんとは、来てくれて嬉しかったんだからね」
 こなたの手に触れて、軽く握った。
 普通の、同性の友達同士でするような触れ方で。
 自然で、当たり前であるかのような握り方で。

 ざわめく劣情は心の中で何重にも封をして。
 それが漏れないように、決して溢れないように。

「そ、そっか……。やー、なんかこういうの照れるねー」
 桜色に染まった頬を空いている方の手で掻きながら、こなたが云う。
「おいおい、普段ツンデレツンデレ云っといて、いざデレたらあんたが照れんのかよ」
「む……むう」
「それでさ、そもそもの発端。なんで私があんたのこと避けようとしてたのか、聞きたい
でしょ?」
「うん、聞かせて」

 ――私は語った。私は騙った。

 進路のことで迷っていたこと。みゆきに差をつけられて焦っていたこと。伸びない成績に
悩んでいたこと。
 それなのにこなたがのほほんとしているから。本当はやればできるのにやらないで遊ん
でいるから。
 将来のこととか、やりたいこととか、私はこなたのことをこんなに気にしてるのに、こなたは
何一つ考えようとしてなくて。それがなんだか悔しくて哀しくて。
 だから、勉強を見てあげたりしなければ、こなたも自分でやろうとするかもしれないと。
勉強で忙しいから会えないと云えば、こなたも自分もやらないといけないと思ってくれる
かもしれないと。
 それが、そんなにこなたのことを傷つけるなんて思っていなかったと、改めて考えると
自分が非道いことをしていると気づいて青ざめたと、そう云った。

 ――涙を流しながら。

 その涙は嘘じゃない。本心を隠して心にもないことを云う私が哀しくて、自己憐憫で流した
涙だった。
 けれどこの涙はきっとこの嘘を補強してくれることだろう。

 ――私は、上手に嘘を吐こう。
 この感情が人を傷つけてしまうのなら。
 この棘が誰かの心に刺さってしまうのなら。
 私はそれを鎧ってしまおう。決して表に出ないように、鋼鉄の鎧で覆い隠そう。
 たとえその内側で、棘が私の身体に刺さったとしても。
 大丈夫、自分が傷つくだけなら、私はこれからも生きていける。
 きっとそれが普通になる。痛みを抱えて生きるのが普通になる。
 人間は意外と強いから。
 いつかそれにも慣れるから。

503夏/窓枠の花(第五話)8/9:2008/01/20(日) 13:32:40 ID:J0w/vHPE
 ――だから私は上手に嘘を吐こう。
 避けることはもうしない。
 逃げることももうしない。
 伝えることも、決してしない。

 そんな感情などないかのように。
 まるで普通の異性愛者のように。
 私は完璧な演技をしよう。
 そうしてこの人生を楽しもう。
 せめてこの劇場に幕が降りるまで。

「かがみ……ごめんね。わたしの方こそ、本当、怠けてばっかで。やらないといけない
こと先送りしてばっかで……。かがみはそんなにわたしのこと考えてくれてるのに……」

 そう云って涙ぐむこなたの額に私の額をこつんとくっつけた。

「私たち……たまにこんな風にすれ違うかもしれないけど、それでも私、ずっとこなたと
友達でいられたらいいなって、思ってる」
「……うん、かがみ。わたしもだよ。わたしたち、ずっとずっと、友達だからね!」
 顔を真っ赤に染めながら嬉しそうに笑うこなたが本当に可愛くて。
 頬を伝う涙の軌跡が驚くほど綺麗で。
 私は心で血を流す。

 大丈夫。きっと大丈夫。 
 ほら、私はこんなに上手に心を殺せてる。

   ※   ※   ※

 ひび割れて壊れてしまいそうな身体を引きずって、家にたどり着いた。
 このままベッドに倒れ込んでしまいたいけれど、まだやらないといけないことがある。

「……仲直り、してきたよ」
 そう云うと、つかさは哀しそうにうつむいた。
「……そっか……仲直り……。それがお姉ちゃんが決めたことなんだね」
「うん」
「わたし……わたしに、なにかできることないの!? わたし、馬鹿だから、どうしたら
お姉ちゃんのためになるのか、こなちゃんのためになるのかわかんないけど! でも、なん
でもするから!」 
 はじかれたように顔を上げて、つかさは叫んだ。
 私はしばらくその桔梗色の瞳を見ながら考えたけれど、何も思いつかなくて首を振った。
「つかさ……あんたは、あんたはそこでずっと笑ってて欲しい。……あんたが幸せそうに
笑っていれば、私はきっと耐えられるから」
 そう云った私に、つかさは微笑みを浮かべてくれたけれど。
 涙が零れてしまえば、それはもう笑顔とは云えなかった。


504夏/窓枠の花(第五話)9/9:2008/01/20(日) 13:33:16 ID:J0w/vHPE
 もう眠りたい。
 力なくベッドに倒れ込めば、窓から吹きこんでくる風が、垂れ下がった私の髪を揺らす。

 八月の風は、熱気を孕んで。
 
 髪と同じように、窓枠の花も揺れていた。

 それは想い人からもらった大切な花。
 少し桜色がかったマーガレット。

 花言葉は『真実の友情』。
 それと『恋占い』。

 そしてもう一つ。あの後みゆきに教えてもらった花言葉が、もう一つある。

『秘められた愛情』。

 それを思い出して、私は乾ききった薄い笑みを浮かべる。
 肌寒い荒野にたった一人佇んでいるような感覚。
 八月の風も、そんな私を暖めるには足りなくて。

 閉じ行く瞳の先、細くなった視界の中で。

 花びらがひとひら、風に吹かれて舞い落ちた。


(了)


 4 s e a s o n s
【秋 / 静 か の 海】へ続く
50516-187 ◆Del8eQRZLk :2008/01/20(日) 13:34:10 ID:J0w/vHPE
以上です。ありがとうございました。
1レス目のレス番間違えました、ごめんなさい。

やっと夏が終わりました。な、長かった……。

ところで、“半身”の話は春の二話、
“一人暮らし”の話は夏の二話に張っておいた伏線を
それぞれ引っ張り上げてきたのですけれど、
こういうのって、途切れ途切れで間を空けてポストしていると
あんまり意味がない気がしてきました。うーむ……。

ちなみに、終わりに向けての伏線も前回あたりからぼちぼち
ばらまいています(そこまで書けるのかどうか不明ですけど)。

マリみてに続いて、今度はリリカルなのはにも嵌ってしまったので、
秋はしばらく遅れると思います。
なのフェイいいよなのフェイ(百合ならなんでもいいらしい)。

それではみなさまごきげんようなの。
506名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 13:50:17 ID:tdCdcBGG
>>505
かがみの心情がびしびし伝わってきました
あれ、なんか視界がぼやけて……
とにかくGJっです
秋を楽しみに、また〜り待ってます
507名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 14:29:15 ID:X+Qn6sRI
>>505
GJ!
描写がとても上手くて引き込まれてしまいました
続編心から期待して待ってます
508名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 16:09:51 ID:8FyO7VzV
>>505
これはGJ。
切ないですな……

前半読んでて、かがつかだと思ったのは
俺だけじゃないはず。
509名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 17:38:47 ID:SThwHGKI
>>505
秘めるべきでない愛情を秘めちゃうことを選んだかがみが、もう切なく切なくって。


続きをお待ち申し上げます。切なくて死にそうなので。
510名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 17:51:59 ID:io8PW/ep
>>505
超GJ
毎回多方面の問題をちゃんと書いていてすごいなぁ
一つの側面だけじゃないんだよね。
続き待ってるからなのはもそこそこにまた戻ってきてくれーw
511名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 19:03:09 ID:RrIcf89V
>>505
待ってました!
超GJ!!相変わらず描写上手いなあ…
続きも全裸で待ってます!
512名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 20:25:16 ID:fkCubM/Q
>>505
かがみぃぃぃぃぃ!(号泣)
ラストには幸せが待っているといいなぁ……

空いてるようなので、一話行かせてもらってよかですか?
513名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 20:28:00 ID:N3ta4CCt
>>505
GJ
続きの秋編待ってます
つか、なのはにも嵌ったのかよ ! w
514名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 20:29:01 ID:KHX5L+EE
>>512
いいけど、容量確認OK?
515妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/01/20(日) 20:34:31 ID:fkCubM/Q
今回は直接掲載ではないので、容量は大丈夫っす。
では、行かせてもらいやす。

・オリキャラ?(こなつー他)注意、非エロ、CPなし、若干マニアック描写あり。
・『こな☆フェチ』、ならびに『てけてけかなたさん』の設定を一部お借りしています。
・容量は約900行、37KBになります。
なお、本文の後にスクリプトがついていますが、無料サイトが勝手につけてくる広告タグですのでご了承ください。
(問題はありませんし、そもそもtxtですので動作しませんw)

お楽しみいただければ幸いです。


本編:
つ【ttp://hammer.prohosting.com/~gaketsu/Temp/SF2.txt
挿絵(やや閲覧注意):
つ【ttp://hammer.prohosting.com/~gaketsu/Temp/pinch.jpg
516妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/01/20(日) 20:35:33 ID:fkCubM/Q
---------------------------------------
(あとがき)
ここにあとがきを書いてしまうのもなんですが……

というわけで、作者的には、こなつーは『もう一人のこなた』そのものです。
とはいえ、これはオリキャラなのか、キャラ改変なのか……いまだに答えは出ていません。
(個人的には『キャラ改変』のつもりですが、人によってはオリキャラに見えるかも)
ありがとじゅしたー。
517名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 20:50:47 ID:hc3HT8TT
画像・・・一度目保存せずにブラウザ閉じたら、次回以降、
なんかサインアップと出るんだが・・・保存したいんだけどどうしたらorz
up場はよくよくえらばないといけないという好例がでたorz
妄想屋様、なんとかしていただけないでしょうか・・・orz

それはそうとして・・・まだ読み途中だった・・・・これはGJの予感。
518名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 20:56:40 ID:Ker0Bka3
>515
挿絵のエロさにKOされました。本編はゆっくり読みたいと思います。
投下は次スレが立ってからの方がよさそうですね〜
519妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/01/20(日) 20:56:43 ID:fkCubM/Q
あれ、すいませんorz
ファイル置き場に使ってる、個人の無料サイトだったんですが……

ではいつものところに(やっぱり閲覧注意)
つ【ttp://freedeai.com/up/src/up6155.jpg
520妄想屋(仮名) ◆JUqojnT5.c :2008/01/20(日) 21:01:03 ID:fkCubM/Q
むう、本編もサインアップ出るなぁ……ここ(prohosting)はそうそう使えないかorz

あわてて、本編をこちらにもうpしました。長持ちはしないかも。
つ【ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1200830349.txt

あと、ここもドメインによっては蹴られるという情報が……(だから使いたくなかった)
どこかいいトコ教えてください。orz

何度もすいません。でわ名無しに戻ります。
521名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 21:10:05 ID:RYtPNXi2
あれだったらちっこい専用うpろだでも作りましょうか?
522名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 21:14:56 ID:hc3HT8TT
只今読了!こいつはすばらしい!
こな☆フェチの新しい道筋現る!
こなつーの性格設定もできてきてるし、新キャラ(あえて言わない、本編嫁)も
新たなファミリーとして君臨する予感。
今回はどうなったかはこれまた言わない本編嫁だが、
引き込まれて読ませていただいた、GJ!
523名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 21:37:16 ID:+TE0f8k7
作品投下したいので、ちょっと早いですけど新スレ立てます。
524名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 21:58:11 ID:bci5zok/
新スレができたようです。

らき☆すたの女の子でエロパロ34
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1200832768/
525書く人:2008/01/20(日) 22:01:20 ID:+TE0f8k7
立ててきました&投下しました
では接続できなかった間に投下された作品を読んできます。
526名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 22:14:26 ID:5rYDPEYI
>>525
乙です

そんじゃ早速埋めネタを
ちと長いですが

―――――――――――

 私、柊つかさが、その青い髪をした女の子に出会ったのは、全くの偶然だった。

 二年前の春。
 高校一年生になったばかりのある日。
 どうをどう間違ったのか、学校から家に帰る途中だったはずの私は、
 なぜだか秋葉原という街のど真ん中にいた。
 たぶん、乗るべき電車と降りるべき駅を間違えちゃったんだと思う。
 その上でお姉ちゃんともはぐれてしまって、私はほとんどパニック状態だった。
 かがみお姉ちゃん。
 双子で、なのに私なんかとは全然違ってすっごく頼りになる、一番近くて一番大好きな、
 一番大切な、ひと。
 あの人がいないと私はダメだ。何もできない。
 だから――今にして思えば、そのまま駅に留まっていればよかったのだけど、
 私はお姉ちゃんを探しに街中に飛び出してしまった。
 そして、迷った。
 最悪だった。

 文字通り、右も左も分からない。
 ううん、もちろんどっちが右で左かは分かるけど。右に何があって左がどこに通じてるのか、
 それがまったく分からない。
 家に連絡しようにも、携帯電話はまだ持っていなかったし、公衆電話も見当たらない。
 とりあえず、狭い路地裏っぽいところには近寄らないようにする。あと車に気をつける。
 できることと言えば、それぐらい。
 本当に何もできない。
 おまけに何か、ヘンな視線をずっと感じる。周り中からずっと見られている気がする。
 通行人の大半を占める、なんだかどれも同じような印象を受ける青年から中年ぐらいの
 男の人たちが、私のことを遠巻きに眺めたり、追い抜きざまに振り返って見たりしてくる。
 中にはカメラを持って積極的に近寄ってくる人までいる。
 そのたびに走って逃げたりしていたから、まだ危害を加えられたりはしていないけど、
 もうヘトヘト。道も余計に分からなくなるし。
 なんでなんだろう。制服姿の女子中学――ああ違う。もう高校生なんだった――が
 珍しいのかな。
 実際、辺りを見回してみても、そういう人たちは見当たらない。そもそも女性が少ない。
 でもいるはずなんだ、もう一人。
 私と同年代で、おんなじ格好をした、私のお姉ちゃんが。この街に。
 いっそ大声で「お姉ちゃ〜ん」と叫びたくなったけど、それも怖くてできなかった。
 まさに八方ふさがり。
 私は恐怖と無力感にうちひしがれていた。
 うう、その程度の漢字すら分からないよ。
 でも――ちょうどそんなときだった。
 その子を見つけたのは。
5272/4:2008/01/20(日) 22:15:51 ID:5rYDPEYI
「……小学生?」
 最初は見間違いかと思った。
 でも、そうとしか見えなかった。
 私よりもどう見ても小さく、私よりも明らかに場違いな、青い髪をしたその少女は、
 確かに存在していた。
 なんであんな子が、こんな場所に……
 それに、なんとなく見覚えもあるような……
 しかし疑問に思っている暇はなかった。その子は周りのおかしな街並みにも、
 私のこともまるで気に掛けることなく、さっさと角を曲がって姿を消してしまったのだ。
「――ま、待って!」
 慌てて追いかける。
 道は通行人でいっぱいだったけど、私がよっぽど必死な顔をしていたのか、
 みんな驚いたように道を譲ってくれたので走るのにそれほど苦労はしなかった。
 すぐに同じ角を曲がり、再び女の子を視界に捉える。
 だけどまたしても、その子はどこかのお店に入って見えなくなってしまう。
 さらに走った。
 そして立ち止まる。
「ここ……だよね?」
 『GAMERS』と、角ばった書体が踊る黄色い看板。
 あの子はこのお店に入っていった……と思う。たぶん。きっと。おそらく。
 開放された入り口から中を窺い見てみる。女の子の姿は見えない。
 何のお店だろう。
 おもちゃやさん? もしくは、それ風の、文房具屋さん。
 あえて言えば、そんな感じだった。名前からしてゲームショップかとも思ったけど、よくわからない。
 なんにしてもいつまでも店先に立ち尽くしているわけにもいかないと、私は中へと足を踏み入れた。
 早くあの子を見つけないと。

 でも……どうして?
 あの女の子を見つけて、私はどうするつもりなのだろう。どうして追いかけたりしたのだろう。
 迷子だったらいけないから、保護する?
 自分が迷子なのに?
 そもそもあの子の表情や足取りには、遠目に見ただけだけど迷いはなかったように思う。
 まっすぐこのお店を目指しているように見えた。誰かに助けを求めてなどいなかった。
 だったら、どうして?
 ……たぶん、逆だ。
 助けを求めていたのは、私。
 右も左も分からない。お姉ちゃんもそばにいない。だからといって、周りの人たちはなんだか怖い。
 だから、自分よりも弱そうなあの子に、私は安心した。
 自分よりも小さい子になら近づいても危険はないと、そう判断したのだ。
 最低だ。
 情けない。
 だけど、最低で情けないけど、それが事実。
 今の私には、主に心情的な意味で、あの子以外にすがれるものがない。
 見た通りこのあたりに慣れているのなら、素直に事情を話して道を訊こう。
 そうじゃなくて、近くに家族がいて安心していたのなら、その家族の人に訊こう。
 そして、仮に、もし迷子だったとしたら、あの子も同じように私になら安心できると思うから、
 二人で協力してこの街を脱出しよう。
 自分には何もできないから。何も分からないから。
 だからせめて、その弱さを武器にしよう。
5283/4:2008/01/20(日) 22:17:16 ID:5rYDPEYI
 中に入ると……ますます何のお店だか分からなかった。
 店頭には、コンビニなんかでよく見かける人形つきのお菓子の箱みたいなのとか、
 キットカットの小袋を大きくして薄くしたようなものとか、そういった正体不明の商品が
 所狭しと並んでいて、合間に手書きのポップとかが刺してある。
 どれにもマンガみたいな絵が描いてあるけど、中身はサッパリ分からない。
 少し奥には、ロボット? とか、女の子の人形が飾られたショーケースがあったり、
 これまたマンガ絵の描かれたCDやDVDらしきものが並べられてたり。
 中には普通に歌手らしき女の人の写真がジャケットになったいるものもあるけど、
 どれも聞いた名前ことのないばかりだった。
 本当に、何のお店なのだろう。なんとなく、何かの「専門」的な雰囲気は分かるけど……
 って、そんな場合じゃなかった。
 あの子を探さないと。

 辺りを見回す。
 あの特徴的な青い髪は見当たらない。
 このお店、それほど広くはないみたいだけど、棚が高いから見通しが悪い。。
 人が多いから移動するだけでも大変だし。
 あと、ここでもヘンな視線を感じるし。むしろ外にいたときより強くなってるかも。
 そうして奥の方、見た感じ本屋さんっぽいところまで来たところで、
 私はとんでもないものを見つけてしまった。
 エレベーターだ。
「そ、そんなぁ……」
 フロアは一つじゃなかった。つまり、実は今見えてるのより何倍も広いってことになる。
 また、階層があるってことは行き違いになる可能性も高いってことだ。
 どうしよう。
 入り口で待ってようかな。
 それなら入れ違いにはならないだろうけど……ヘンな人に声をかけられても困る。
 それに、もう簡単な買い物を済ませられる程度の時間は経っているから手遅れかも知れない。
 てゆーか、すでに入り口がどっちかも分からなくなってるかも。
「どうしよう……」
 途方に暮れる。
 立ち尽くし、情けない声をこぼす。そこに、

「――あの、どうしました?」

 背後からそんな声がかけられた。
「えっ?」
 驚いて振り返ると、そこにいたのは――またしてもどこか見覚えのある女性。
 OLさんかな? エプロンとかはつけてないからここの店員さんではないと思う。
 ピンク色の長い髪をして、メガネをメガネをかけていて、そのためか柔らかい雰囲気で、
 とりあえず少し安心する。
「あ、ええと、あの……」
「はい」
 それでも慌ててしまう私に、そのお姉さんは安心させようとしてか、優しく微笑んでうなずいた。
 それを見て、私はようやく落ち着く。
5294/4 「青とピンクと黄色いリボン」 by23-49:2008/01/20(日) 22:20:14 ID:5rYDPEYI
「――ごめんなさい。あの、人を探してるんです」
「人、ですか?」
「はい」
 うなずいて、手で胸の高さを示す。
「背はこれぐらいで、たぶん小学校ぐらいの、青い髪の女の子です」
 するとお姉さんは、少し驚いたような顔になった。
「え? それって――」
 そして何かを言いかけたところに、今度は横合いから、

「いた! お姉ちゃん!」

 幼い感じの声。
「え?」
「あら」
 私とお姉さんが同時に振り向く。
 するとそこにいたのは、はたして――あの青い髪の女の子だった。
「もう、何やってんのお姉ちゃん」
「ごめんねひかげちゃん、でももうちょっと待ってね?」
 どうやら、このピンクの髪のお姉さんと姉妹らしい。
 言われてみれば――顔立ちとかは少し違う印象だけど、それでも、どこか似ている。
 お姉さんに見覚えがある気がしたのはそのせいか。
「なに? もうお仕事終わったんでしょ?」
「ええ。でもこのお客さんがね?」
 言いながら、お姉さんが手で私を示す。
 すると女の子が睨んできた。
 少し怯みながらも、その吊り目を見て理解する。
 かがみお姉ちゃんに、どことなく似ているんだ。
「ひかげちゃんを探してたんですって」
「私を? なんで」
「えっ? あ、え、えっと、それは、その――」

 そうして。
 事情を話すと、まずひかげちゃんと言うらしいその子に「私は迷子なんかじゃない」と怒られた。
 お姉さん――ひなたさんと言うらしい――がここの店員さんで、その終業時間に合わせて
 迎えに来たらしい。
 素直に謝ると、今度は呆れられた。
 そして二人に案内されて無事に駅まで戻って、お姉ちゃんとも再会することができた。
 当然、思いっきり怒られた。





 ちなみに。
 このしばらく後に私がまたこの街を訪れて、外国人の男の人に道を尋ねられて、
 それをきっかけに今では親友になっている泉こなたちゃんに出会うんだけど、
 それはまた、別のお話。


―――――――――――


以上
ミスリードを狙ってみました
530名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 22:26:27 ID:NptzpWrZ
埋めネタグッジョ!
まんまとはまっちまったぜ!
531名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 22:38:07 ID:RYtPNXi2
埋めネタGJです。
思わずあの姉妹の名が出てきて「へっ?!」と言ってしまったw


専用うpろだ作りました。
ttp://www.sonokawa28.net/lsssuploader/upload.html
アップロードにはURL中にあるこの板の"名前"を入力してください。
532名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 22:42:40 ID:hc3HT8TT
んなっ!?Σ(=ω=.)
私もだまされたーよ!
久しぶりに格闘で出番か!と思って構えてたのに・・・。
533名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 22:42:49 ID:RYtPNXi2
>>531に一つ訂正。

アップロードにはURL中にあるこの板の"名前"を入力してください。
 ↓
アップロードにはこのスレを開いているブラウザのURL中にある
"板の名前"をPostkeyに入力してください。
534名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 23:30:01 ID:fkCubM/Q
>>529
ちょ、やられたw
そういえば、ひかげは髪青いし、ひなたさんはピンクの髪で眼鏡だもんなぁ。


>>531
おお、ぐっじょです。
早速ですが、『えす☆えふ2』を一式うpしときました。

……「*10File」ってことは、一度に10ファイルまでまとめてうpできたのかな?
535名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 00:05:18 ID:IzDDN7Ol
このスレの埋めにいま作ってるやつのプロローグでも投下しちゃおうかな…
536名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 00:14:35 ID:Zw0KtY2I
>>505
ううむ・・・切ない・・・
こんなにも強い気持ちを抑え込むのも大変だし、絶対辛いことだと思う
自分に嘘をつき続けることもそうだし・・・。
秋、楽しみにしてます。

>>520
みゆきさんは自分のレプリカまで作ったんか・・・
そして5M圏内に入ると鼻血発症、と。
今回でまた一人増えたことでこの先が楽しみすぎるw
537名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 00:50:43 ID:fb+uV/Ep
>>534
うpろだに表示されてる*10(今見たら*20になってましたが)は、ろだの最大ファイル保持数ですよ
たとえば、ファイル数が20ある状態で新たに何かアップロードすると、古いものから順に流れてしまいます
538名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 01:05:51 ID:BOn8mKOP
>>520
面白かったです!
笑えて、ちょっぴり感動できて、心温まって、
いやー、えす☆えふってほんっとーにいい話ですね。
539名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 01:35:51 ID:7rDE3uDP
姉妹スレ
らき☆すたの女の子がエロパロ
…何となく百合度が上がりそうな気がしませんか
540名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 06:36:36 ID:GqKREwHA
>>529
なぜだろう、ピンクの髪のほうがひなたなのは結構すんなりわかったのに、
青い髪の少女がひかげだ、という発想は最後までなかったw
541名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 11:02:17 ID:ICfdw4u1
あげ
542名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 16:14:01 ID:CHOHgFzf
埋め
543名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 16:31:25 ID:GlcJ/3It
あいかわらず不憫なこなつー……
544名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 18:10:38 ID:sbhe5ejS
>>543
そういえば確かに。

1作目:ひとりえっちして壊れかける

2作目:ヤンデレみつきさんに壊されかける

でもアレだ、壊れたり直ったりするのもロボっ子の重要な萌えポインツであってだね?
……おや、兎のぬいぐるみなんぞ持ってどうしましたか、こなつーさn


「れでぃーす・あーんど・じぇんとるまーん! これが最後のカーテンコールぅ!!」(怒


ウボァー


(返事がない。ただの埋め&GJのようだ)
545埋めネタ:2008/01/21(月) 18:24:39 ID:ssbCRawL
「じゃあ私が先攻ね、ドロー!」
 こなたがデッキの上から一枚をとり、5枚ある彼女の手札に加える。
 そして不敵に笑うと、場に一枚カードを出す。
「魔獣クロベロス(攻 1700/守 1800)を攻撃表示で召喚!」
『やったるでー!』
 こなたの前に羽根の生えた小さい狼のような世界史教師のようなモンスターが現れる。
「さらに場に二枚のカードを伏せ、ターンエンド!」
「あら、いいの? そんな弱いモンスターで……私のターン、ドロー!」
 こなたの相手……かがみもデッキからカードを引く。
「行くわよ、機械獣こなつー(攻 2000/守 1200)召喚!」
『AIチェックサム:正常。動力炉、駆動系、循環系……』
「くっ……☆4つなのにその攻撃力、侮れないね」
「ふふっ……私のこなたデッキは最強よ! 魔獣クロベロスに攻撃!」
 かがみの前に現れた少女の胸のパッチが開き、こなたのモンスターに照準をあわせる
「でもまだまだ、甘いよかがみん」
「!」
 少女の放ったX○スターがこなたのモンスターを吹き飛ばす!
 だがその刹那、それが霧と消える。
「罠カード発動……『妄想マシーン』、このカードの効果によりこのターンの攻撃は全て妄想!」
「くっ……迂闊だったわ、場に一枚カードを伏せてターンエンドよ」
「くっくっく、もう少し考えるべきだったね。私のターン、ドロー!」
 デッキからさらにカードを引き、こなたの顔がにやける。
「よぅっしキタキタキター! クロベロスを生贄にささげ、聖人みゆきさん(攻 2400/守 3000)召喚!」
「うっ、☆6つの上位モンスター!?」
『よろしくお願いします、どうぞお手柔らかに』
「さらに永続魔法カード『死のこな☆フェチウィルス』発動! 場に『こなた』と名のつくモンスターが居る場合発動し、全てのモンスターに感染し攻撃力を600アップ!」
「な、こ、攻撃力3000!?」
「しかもこの効果は『こなた』と名のつくモンスターには感染しない、いっけぇアルティメット・ノーズブラッド・バースト! 粉砕★玉砕☆大喝采!!!!」
『ああいけませんよ泉さんそんな胸部なんて開いたらだばだばだばだばだ』
『ちょwww 私こなた姉さんじゃなくてこなつ』
 ヒュンと鼻から神速で飛び出した鼻血が辺りを一瞬で血に染める。
 そのまま見事爆裂四散した。
「ふふふ、こなたデッキにはこのカードは大敵だね」
「……ふふっ、罠にかかったわね。そのカードが出るのは予測済みよ」
「なっ!?」
「こなつーは効果モンスター……戦闘で破壊され、墓地に行ったときあるキャラをデッキから特殊召喚出来る!!」
「ま、まさか……!」
「出てきなさい、機械獣みつきっ(攻 2000/守 1900)!!!」
『私はみつき……高良みゆきの、レプリカ・アンドロイド』
 こなたの場にいる女性と同じ……いや、わずかに違う女性がかがみの場に現れる。
「みつきはこなつーが墓地に行って召喚された場合、攻撃力が400アップするのよ!」
「い、いくらアップしても2400じゃ……ああっ!!!」
 そこでこなたはようやく気がついた。
 彼女自身が今発動したカードのことを。
546埋めネタ:2008/01/21(月) 18:27:00 ID:ssbCRawL
「そう、みつきにも感染するわ……こな☆フェチが!!!」
「くぅっ……やるねかがみ、ターンエンドだよ。でもこのままじゃお互い攻撃力は3000、こう着状態だね」
「ふふ、どうかしら……私のターン、ドロー」
 デッキから一枚とり手札に入れ、かがみは少し悩む。
(ふふ、とか言って見たけどやばいわね……攻撃力上げるのも下げるのもなし、一応『これ』あるけど……相変わらず使えないか)
「一枚守備表示にして……ターンエンドよ」
「よっし、私だね。ドロー……ふふ、かがみ。案外すぐに終わりそうだよ」
「!?」
「行くよっ、薄幸少女ゆーちゃん(攻 1000/守 1000)を攻撃表示で召喚!」
『あ、えと。が、頑張ります』
「な、何よ……そんな1000ぐらいの攻撃力で」
 そこでかがみは眉をしかめる。
 1000? いや、違う。
「こな☆フェチが感染してゆーちゃんの攻撃力は1600……そしてリバースカードオープン、魔法カード『ヤンデレ』発動!」
『お姉ちゃんは私のモノ……オネエチャンは、ワタシの、モノ』
 こな☆フェチの赤いオーラがみるみるうちに黒く変色していく。
「守備力1000以下のモンスターにのみ装備可能……その攻撃力を2倍にする!!」
「こ、攻撃力3200!?」
「黒ゆーちゃん必殺☆コト○ハクラッシュ!」
 Nice Boat
「わ、私のみつきが……」
「ふひひっ、ホワイホワイ……そっちの裏守備も壊させてもらうよ! アルティメットノ(略」
『ゾワンギゾワンゴデス!』
「ふふ、これでかがみの場にモンスターは0だよ」
「ま、まだよ……リバース効果発動、変態外人パトリシア(攻 1000/守 1000)は一度だけ墓地から牛肉100%になって復活出来るわ!」
「それでも攻撃力は半減……たった攻撃力500のハンバーグの材料じゃ、何も出来ないよね。ターンエンドだよ」
 かがみの場には攻撃力500
 対してこなたの場には攻撃力3000と3200という強力モンスター
「かがみの残りライフは3800、次で終わりかな? サレンダー(降参)すれば?」
「だ、誰がするもんですか……ドローっ!」
 勢いよくカードを引くかがみ。
 だがすぐに表情が歪む。
 格闘家みなみ(攻 2500/守 2000)☆5
 特殊効果もないただのカードでは、生贄召喚にしたところで瞬殺される。
 だが、手札には逆転のカードなどあるわけない。
 いやあるにはあるのだが、それは……
547埋めネタ:2008/01/21(月) 18:27:59 ID:ssbCRawL
「あはは、はやくカード裏守備にでもして終わりなよ。たった一体のモンスターと一枚の伏せカードじゃ、どうにもならないよ」
「……!」
 その時かがみは思い出した。
 一番最初に伏せたカード……ここまでの流れで、すっかり忘れていたカードを!
「……そうね、終わりにしましょ」
「わっ、サレンダー?」
「いいえ……このターンで、終わりよ! 伏せカードオープン!」
「!!」
 その瞬間、こなたの表情が歪む。
 確かに一体しか、モンスター(ハンバーグ)しか居なかったはずの場にモンスターの影。
 いや……本当に影だけ、二体も!
「魔法カード『背景コンビ』……場にみさお(攻 0/守 0)あやの(攻 0/守 0)を特殊召喚するわ!」
『あやのぅ……私らすっかり忘れられてたゼ?』
『あらあら』
「そ、そんな攻撃力の低いモンスターが三体来たからって……あああっ!!!」
 こなたは愕然とする。
 三体。
 その単語が何を意味するのか。
「こなた」
 かがみが、笑う。
 そしてゆっくりと、カードを天に掲げた。

「あんたに『神』を……見せてあげる」

(続かない)

もちろん あの神様が出てくるわけです
ルール? 知らね!
あと勝手に設定借りて ごめんなさい!!


『あ、あの、争い事は良くないんじゃないかと……』
「空気読め!!!」
54843Hev0JB:2008/01/21(月) 19:59:57 ID:xpzhOxv8
>>547
喜びのGJストリーム!
遊戯王ならぬこなた王ですか。
続きをお願いしたいッ!
ミスターKY
549名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 20:19:14 ID:8YJd3sKF
>>547
黒炎弾吐きましたwwGJ!もっとやれ!
550久留里:2008/01/21(月) 23:28:58 ID:zTHHv9Gu
>>529
梅ネタGJ!!

ひかげが大好きな漏れはすぐに分かったぜ(危ない発言)
因みにオリキャラのあゆみは(ry
551名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 23:40:37 ID:CHOHgFzf
>>547
盛大に吹いたwww
ぜひ続きを
552名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 01:14:14 ID:p8PXJyUd
>>547
あと2KBある!
続きを!!
553名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 04:23:15 ID:kW0cmudO
>>547ここで切るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
 
色的にかなたさんはオベリスク。そんなわけで
【巨神兵かなた】攻、6000/守、5000
特殊効果、このカードはフィールド上にこなたがいる限り(プレイヤーの場合も含む)攻撃力、守備力は∞となる。また、こな☆フェチウイルスの効果により不死と化す。
 
またプレイヤーがこなたの場合は、主に性的行為が原因でLPが一ターンにつき1000失われる。

こな☆フェチ感染かなたさん・・・考えるだけで恐ろしい・・・
554名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 08:55:04 ID:CZ7WkN/U
らき☆すたの女の子でエロパロ34
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1200832768/
555名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 09:31:49 ID:ucknDfzf
ひよりんは俺の嫁
556名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 10:06:06 ID:ucknDfzf
パティも俺の嫁
557名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 10:11:48 ID:3t3oa1TY
>>555は俺の義弟だったのか…
558名無しさん@ピンキー
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