らき☆すたの女の子でエロパロ32

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「今日、こなちゃんから・・・」

永い区切りの後に発せられる言葉は既に知っているが
それでも聴覚を研ぎ澄まして、つかさの一言を聞き漏らすまいとしている私は
何を考えていたのか自分でも分らなかった。

「・・・別れようって言われた」

再び耳にする事となったつかさの言葉は
まるで麻薬のように私の肢体に溶け込み、理性を蝕み続けていく。

これ以上、つかさと話をするのは危険すぎる!

残りわずかな理性が懸命に警告音を鳴らし続けていたが
垂れ目な瞳から零れ落ちた涙の跡が、痛々しく残っているつかさを目前にすると
私の足や腕や口までもが機能しなかった。

「私・・・こなちゃんに嫌われるような事、しちゃったのかな?」
「・・・そんな事無いわよ」

それでも、絞り出すような声でつかさに語り返したけれど
こんな言葉は戯言にしかならず、言えば言うほど私の胸を圧迫してくる。

「つかさはこなたの事が好きなんでしょ? だったら、そんな風に考えちゃ駄目よ」

言葉を繋ぐ度に、苦しくて噎せ返るような想いが私を押し潰してくるのに
歯止めの利かない口は、本来の目的を忘れて彷徨う様に動き続ける。

止まってよ、私の口。
もう苦しい想いはしたく無いのに。
どんなにこなたを想い続けても決して実らない想いなんか、さっさと捨てたい。
でも、この想いは私を優しい気持にさせてくれる大切な宝物。
だから捨てる事が出来なかった。
「ねえ、つかさ・・・こなたと縁りを戻したくないの?」
「・・・ウン、戻したい」

そうよね。
つかさはこなたの事を愛している。
こんなに泣きじゃくる位、とても愛している。
そして・・・私も愛している。
ずっと、ずっと愛してきたし、これからも愛し続ける。
それなのに実らなかった想いは哀れ過ぎて、
行き先の無い気持ちは何所まで彷徨い続けるの?

もう、辿り着きたい・・・こなたのところへ

思考にならない考えが、脳内のシナプスを活性化し
電気信号と化した情報が、体内の神経を介して全身に行きわたった。
それはまるで雷に打たれたような電流が全身を駆け巡り
もはやコントロールが利かなくなった私は、つかさの部屋を飛び出し
玄関に停めてある自転車に跨るとペダルに全体重を掛けた。

「お、お姉ちゃん。待って。何処に行くの?」

私を呼止るつかさの声が聞こえている今なら、まだ引き返せたかもしれない。
だけど私は、戻るべき現実を放棄して向かいたい理想へと進み続けた。

「ごめんね、つかさ・・・酷いお姉ちゃんで」

何度も呟き続けた妹の名前が、本人に届く事は無いのに
それでも謝り続けたのは唯の自己満足かもしれない。


衣服が肌に張り付く位の汗が噴きだし始めた頃
私は半年ぶりとなる泉家の玄関先でチャイムを鳴らしていたが
インターホンから返答が全く無い。
だけど、鍵が掛かっていない玄関の戸を開けた時に感じた温もりから
こなたは居る、と確信した私は何度も呼び掛けた。

「こなたー、居るんでしょ? 入るわよ」
返事の無い玄関に足を踏み入れ、物音の無い廊下を歩み続けると見えてくるこなたの部屋。
その扉を開けると青髪の少女が椅子に座ってキーボードを弄っていた。

「休日の昼間からパソコン? 少しは外に出たら?」
取り付くつもりでは無かったが、自然と発せられた第一声は他愛もない世間話で
そんな私に返事をしてくれないこなたに、一歩ずつ近づきながら部屋を見渡してみると
やたらファンシーな小物が増えているのに気付いた。

そっか・・・つかさがプレゼントしたのね。

その小物を見るたびに、つかさの泣き顔が脳裏に浮かびあがり
失っていた理性が急速に私を支配し始めた。
そして、こなたの背後で立ち止まった私が語りかけた言葉は
己の理想とは遠く掛け離れていた。

「つかさ・・・泣いてたわよ」
「・・・」
「どうして別れるなんて言い出したの?」
「・・・」
頭で考えて選んだセリフは空虚すぎて、こなたへ届かないかもしれないけれど
私は話を止める訳にはいかなかった。

「こなたは・・・つかさの事が好きなんでしょ?」
「・・・」
「好きなら・・・縁りを戻してよ」

此処で“ウン”と言って欲しい。
決して首を横に振らないで・・・お願いだから。

そんな私の本心では無い期待を裏切って
こなたは首を横に振りながら、揺らぎ無い決心だけを伝えてきた。

「私は、つかさと縁りを戻す事は出来ないよ」
こなたの声が私の鼓膜を振動した次の瞬間、
さっきまで見えていたファンシーな小物が一瞬で視界から消え去り
今は後ろ姿の少女しか映っていなかった。
そして、その少女を見る度に何度も捨て去ろうとして
何度も大事に抱え込んだこなたへの想いが、私の内側から溢れ返り
私を簡単に壊してしまった。

「別れるなんて言わないでよ」
「・・・かがみ?」

声のトーンが変わった私を不思議に思ったのか
振り返る事の無かったこなたが、椅子を半回転させて
その半目な瞳には動揺が見え隠れし、目尻は若干赤くなっており
何より私だけを見てくれている“こなた”という存在が愛おしかった。

もう、良いよね
我慢したよね・・・わたし
だから・・・言っちゃうね

「別れられたら・・・今まで我慢してきた私は何だったの!」
「かがみ、どうしたのさ」
「どうもして無いわよ! 私は・・・こなたの事が好きなの!」

こなたの色と、つかさの色が入り混じったこの部屋で
私という異色が入り込んでしまった。
それはタブーだったのか、私には理解する術は無いけれど
明確に誇示していた事実は、こなたの驚いた表情の中に見える拒絶の反応だった。

「・・・ごめん。かがみ」
「そっか」

元々は諦めていた恋に、淡い期待を込めただけの衝動だった筈。
それなのに、私の瞳から溢れてくる滴は一体何を意味しているのだろうか。

こなたに振られたから?
つかさを裏切ったから?
私が愚か過ぎたから?
考えれば考える程、静かに流れ落ちる涙の量は増えていくばかりで、
輪郭すら分からないこなたの姿は、過ぎ去った理想の残骸だった。

「泣くつもりは無かったのに・・・ごめんね、こなた。嫌な姿を見せちゃって」
私の勝手な独り言に“ブンブン”と擬音が聞こえてきそうな勢いで
首を左右に振るこなたの心遣いが、私の弱い部分を締め付けてくる。

「謝らないでよ、かがみ・・・つかさを傷つけて、かがみを傷つけて・・・悪いのは私なんだから」

それでも、こなたは傷つけた相手以上に傷ついている。
不器用で鈍感で愛くるしくて、素直になれないところが私と似ているのに
いつも私ばかり茶化してくる。
そんなこなたに私は惹かれて、理想と現実の区別がつかなく無くなった。
だから知りたい。
こんなにも私を狂わせたこなたが、つかさと別れるなんて言い出した理由を。

「ねえ、こなた・・・どうしてつかさと別れたの? まさか、つかさの事が嫌いになったとか」
「私ね・・・つかさの事は今でも好きだよ」
「え?」
「好きで好きで、堪らなく好きで・・・だから別れようと思ったんだ」

こなたは雲を掴むような事を言っていて、私が理解できる次元を遙かに超えていた。
それでも、涙を拭った私の瞳に映ったこなたの顔は
悲しみでも無ければ満ち足りた笑顔でも無く、無表情とは違った面持ちをしていて、
始めて見る表情なのに、ずっと前から見ていた既視感を覚えた。
「つかさと別れる事が出来たから・・・これで、全てを終わらせられる」
「こなた?」
「私ね・・・余命、半年って宣告されたんだ」


物語には必ず始まりがあり、そして終りが訪れる。
その間に幾つもの喜怒哀楽を繰り返して、時には急ぎながら時には緩やかに
終着点を迎える事となる。

そんな事は分かっていた。
分かっていたのに、目の前のこなたの言葉を
一生懸命排除しようとしている自分は、何一つ理解しようとしなかった。


春には満開だった桜達も、今は深い緑の帽子を被っていて
その大群に囲まれるように、1本の樹だけが痛々しい焦げ茶色をしていたのを
私は決して忘れない。

45822-468:2008/01/14(月) 10:09:28 ID:S2f1do2g
読んで頂き有難うございます。
第3章という事で、かがみ達は3年生になっておりますが
その辺りを全く触れる事が出来ませんでした。
そして章を重ねる毎に、話が飛躍しているような気が・・・

あと、どなたか存じませんがwikiでコメント頂き有難うございます。
御期待に添えた作品になっていれば良いのですが

459名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 12:15:28 ID:+nJ2IaGI
>>445
ttp://www.geocities.jp/je104049/hiyo.PNG
ゴッドひよりん描いてみました
ひよりん可愛いよひよりん
460みゆつか愛してる:2008/01/14(月) 12:20:25 ID:xG0BJsdH
>>445
GJGJGJです!
壊れみゆきさんたまりませんw
やはりお風呂ものはいいですね、次はどんなお風呂ものを(ry

>>458
病気告白キタ――(゜∀゜)――!!!!
切ないですね〜続きが気になって仕方ありません!激しくGJです!

>>407
すみません、これは「陰核」の間違いでしたw
壮絶な間違いだったので保管庫では改稿させていただきました。
461ぶーわ:2008/01/14(月) 12:20:47 ID:+nJ2IaGI
下げ忘れて名前も入れ忘れるとは何たる失態
最近ドヂが 多いです
462名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 12:53:25 ID:20HBRPZO
>>458
えええええ、切なさに切なさが重なる、なんという展開。
結末を勝手に予測して、早くも涙目です。GJ!

>>459
自分の作品の絵を描いていただけるのは初めてなので、とても感激いたしました。
ここに今一度、感謝の意を表したいと思います!
46323-49:2008/01/14(月) 13:31:24 ID:iSlwwdzn
どうも、23-49です
前作「ハニマスタード・ラプソティー」の続き、上がりました
他にどなたもおられないようでしたら五分後ぐらいから投下させてください

・こなた&みさお
・こなた視点
・エロ無し
・5レス使用
・黒キャラ注意


万一途中で投下できなくなった場合は wiki に直接上げ、避難所に報告します
PC以外の端末を持っていないのでこちらへのアナウンスはできません
不自然な間が空いた場合は wiki か避難所を参照してください
464栗色攻略戦 前編 1/5:2008/01/14(月) 13:36:49 ID:iSlwwdzn
  
 簡単だった。
 そう。考えてみれば――否。本来なら考えるまでもないほどに、実に簡単なことだった。
 かがみを挟んで私の対称位置にいる人物。
 かつ、峰岸さんが味方をする相手。
 そんなの、一人しかいないじゃないか。
 そんなことにも気付けないなんて、どうやら私は相当に面食らってしまっていたらしい。

 でも、分かったよ。
 構図は見えた。陣営も把握した。
 丸二日かけて情報を収集し、作戦も立てた。切り札も用意した。あとは幕を上げるだけ。
 それじゃあ行こうか。
 第二ラウンド、だよ。


  −−−−−−−−−−−
        栗色攻略戦
  −−−−−−−−−−−


 私立だからか、この陵桜学園には毎週じゃないけど土曜日にも授業がある。
 ふだんは面倒くさいだけのそのことが、今日だけはありがたい。 
 あの学食遭遇戦から四十八時間が経過したこの放課後。私、泉こなたは学校の図書室を訪れていた。
 ある人物と待ち合わせをするために。
「――お、きたきた。おーい、こっちこっち」
 程なくやってきた待ち人に、手を挙げて笑顔で呼びかける。
「……」
 さすがに場所を考慮してか、相手は仕草だけで返答し、そのまま歩み寄ってくる。
 そして手に持っていた四つ折りのルーズリーフを、私が着いている大机の上に広げて置いた。

“放課後、図書室まで来て。できれば一人で”

 自分の筆跡によるその短い文章に私は一旦目を落とし、そしてまた相手の顔を見上げる。
 不可解八割、不機嫌二割ってところかな。
「なんだよちびっ子。わざわざこんなモン使って呼び出して」
 その人、日下部みさおは表情どおりの声で言った。
「あ、うん。ゴメンね」
 なるべく申し訳なさそうな顔を作って謝る。
 それは紛れもなく私が彼女の靴箱に仕込んだものだ。三時間目の休み時間を利用した。
「ちょっと、かがみには知られたくなくてさ。メアド知らないし。――えっと、何か予定あった?」
「ぃや、別にねーけど。てかなんなんだよ」
 言いながら、みさきちは私の向かいに腰掛ける。ちょっと警戒入ってるね。愛想良くしすぎたかな?
 ならばさっさと本題に入るとするか。
「聞いたよ。最近がんばってるんだって? 勉強」
「ん? あー。まーな」
 ふむ、意外と反応が薄いね。誰に、とも訊かないし。
 ま、想定の範囲内だけど。
「どんなふうにやってるの?」
「……なんでそんなコト訊くんだよ」
 おっと、ここで硬化しますか。
 だったら少しほぐしてあげちゃおう。
465栗色攻略戦 前編 2/5:2008/01/14(月) 13:38:16 ID:iSlwwdzn
「だって、みさきちって私とレベル同じぐらいだったじゃん? だから真似できるかなーと思って。
かがみやみゆきさんの流儀じゃハードル高すぎるんだよね」
「……ふぅん」
 ちょっと意外そうな顔をしたあと、何気ない感じでみさきちは相槌を打つ。
 でも微妙に喜んでるよね。わかりやすくて助かるよ。
「なんてゆーかさ、やっぱ受験生なわけだしね私も。いつまでもなまけてるわけにもいかないし、
何よりさ、いつまでもかがみに頼りっぱなしじゃ迷惑だと思うんだよね」
 続く私の言葉――特に最後の部分に反応し、眉がピクリと動いた。
 そしてまた「ふぅん」とつぶやくと、
「……しゃーねーな。わかったよ。教えてやろうじゃないの」
 偉そうにそう言った。
 ちょっと赤くなってる。かわいいもんだねぇ。

「――つっても別に特別なコトはしてねーよ。基礎をみっちりやってるだけ。とりあえず最初は
一年の復習から始めた」
「ほうほう」
「ここに受かったってことはさー、ここの授業についていけるって判断されたってことじゃん?
そう思って真剣にやってみると、意外にイケるんだゼ、コレが」
「おおー」
「あとはまー、繰り返しだな。解らなくなったら解るところまで戻ってやりなおす。
あ、でも歴史なんかは逆だぜ。まず大雑把に憶えて、そっからだんだん細かくしてくんだ」
「なるほどなるほど」

 得意げに語るみさきちに、できるだけ感情を込めて相槌を返す。
 その作業は思ったより簡単だった。てか意外と、本当に参考になるかも。
 明らかに誰かさんの受け売りな部分もあるけど、あえてツッコミは入れないでおく。
 まだ機嫌を損ねられちゃ困るからね。
「ま、そんなトコかな。なんか質問ある?」
「うーん……今はちょっとないかなー。またあとで思いついたら訊いてもいい?」
「おっけーおっけー、おねーさんに任せなさい」
 えっへん、と胸を張るみさきち。
 どうやらポーズじゃなく、素で得意になってるね。……頃合い、かな?
「でもさー」
「ん?」
 私の自然なつぶやきに、みさきちは笑顔で首をかしげる。
 その笑顔に向け、隠し味程度に尊敬の念を匂わせて、そっと本命の問いを差し出した。
「なんで急にがんばろーと思ったの?」
 答えは、実はだいたい知ってる。
 おおよその見当はついてたし、ゆーちゃんにも確認を取ったから間違いない。
「んん? ……へへん、知りたいか」
 みさきちの笑顔が、勝ち誇ったようなものへとシフトする。
 シミュレーションBか。
 よりにもよって、一番やりやすいパターンとはね。
「う、うん」
 勝利への確信を押し殺し、わずかに戸惑いの色を見せると、みさきちは得意げにうなずいた。
「そーかそーか。ならば教えてしんぜよぅ」
 その姿からは、もはや疑いも警戒も完全に消えている。
 ここまで来ればこちらから口を挟む必要はもうないだろう。
 新世界の神にでもなった気分だよ。
 まさに計画通り。笑いをこらえるのがこんなに大変だったとは、ってね。
466栗色攻略戦 前編 3/5:2008/01/14(月) 13:39:19 ID:iSlwwdzn
 そうしてみさきちが語った内容は、だけど少し意外なものだった。
 かがみにもっと構ってもらうために勉強をがんばる――そこまでは予想通りだったけど、
 まさか夏休みの宿題を自力でできるかどうかなんて賭けまでしたとはね。
 道理で自信満々なわけだよ。
 口ぶりからして賭けそのものには負けたみたいだけど、かがみの心を動かすのには成功した、と。
 試合に負けて勝負に勝った、ってことになるのかな。
 ともあれ、これで欠けていた最後のピースも埋まったし、全ての準備は整った。
 覚悟はいいか、泉こなた?

「どーするー? ちびっ子。おまえも中間あたりでがんばってみっか?」
 余裕たっぷりに笑うみさきち。
 声大きいよ。図書室だよここ。
 ま、いーけどね。もう用は済んだし、そろそろご退場願うとしますか。あともつかえてるし。
「いやぁ、二番煎じはどーかな。そもそも私には無理だよ」
 無理だし、無意味だ。
「へっへん。ま、やるだけやってみろよ。勉強できて損ってことはないぜ?」
「あはは、そーだね。がんばってみようかな。ありがとね、みさきち」
「おう。どーってことないって」
「いやホント。付き合ってくれてありがと。参考になったよ。こんど何かおごらせてよ」
「そか? じゃあ……」
 遠慮のない調子でつぶやきながら、みさきちは視線を宙に飛ばし、そしてニヤリと笑った。
「確かバイトしてるんだよな? コスプレキッサ、だっけ。そこでなんか食わせてくれよ」
 そ、そう来ますか。
 誘導無しだとナニ言い出すかわかったモンじゃないね。別にいーけど。
「おっけ。とっときのオススメ出すよ。いつがいいかな、っと……」
 言いつつ、スカートのポケットから携帯電話を取り出す。
 ふふふ、激辛パフェなんかどうだろうね。

 ――あ。

 かがみから着信入ってるよ……
 何も言わずに連続ですっぽかしちゃったからかな。まったく寂しがり屋さんなんだから。
 でも今はこっち優先。
 ゴメンねと心の中で謝りながら、何気ないふうを装ってスケジュールを呼び出す。
「えーっとね、来週は火曜と金曜、あと次の日曜にシフト入ってるから――」
 いつにする、と言いかけたところに、
「あっ、そーだ! それより!」
 大声が被せられた。
 さすがに慌てる。
「ちょっ、みさきち声大きいっ。ここ図書室っ」
「うおっ。ご、ゴメンゴメン」
 奥の方のちょっとした隠しスペースだから周りに人はいないけど、それにしたって限度があるよ。
「もぉ……で、なに?」
「あ、うん。岩崎のこと」
「え――」
 思いがけない名前に、心臓がドクンと跳ねた。
 思いがけないってゆーか、最初からずっと頭にあったけど、相手から出されるのは想定外だ。
 なんで? まさか、知ってる?
「い、岩崎って、岩崎みなみちゃん……?」
「そっ。その岩崎。おまえって、あいつとワリと仲いいよな?」
「……まぁ、ね。ゆーちゃんの友だち、だし」
467栗色攻略戦 前編 4/5:2008/01/14(月) 13:40:22 ID:iSlwwdzn
「だよなっ? だったらさー、おまえからも陸上部入るように頼んでみてくんないかなー。
なんかいっくら口説いてもぜんぜんでさ。あんだけの逸材がもったいないって」
「……」
 え?
「……はい?」
「だから、勧誘。あいつめっちゃ足速いんだぜ? 知らねーの?」
「う、ううん。知ってる」
 私と同じぐらいだとは聞いたよ、ゆーちゃんから。
 けど……なんだ。そんなことか。ビックリした。計画が全部パーになるかと思った。
 でも考えてみればゆーちゃんにもひよりんにも口止めしたんだし、そんなわけはないよね。
「……別にいいけど、なんで私?」
「だからぁ、仲いーんだろ?」
 いやまーそーだけど。みさきちよりは付き合い長いけど。
 でも難しいと思うなあ。それって言い換えれば、放課後はゆーちゃんを放置しろってことじゃん。
 そんなの、たとえゆーちゃん本人から頼まれたってOKするとは思えないよ。私なんかじゃなおさらさ。
「まあ、言うだけ言ってみるけど……保障はできないよ?」
「よしっ! じゃー契約成立な!」
 ずいっ、と手を差し出してくるみさきち。
 仕方なく握り返す。
「だから、声大きいって」
 ま、いっか。


「そんじゃ私、少し調べ物してくから」
「おうっ。じゃまたな、ちびっ子」
 そして来たときとは対照的な騒々しさでみさきちは去っていった。
 それを見届けると、私は、
「さて、と」
 つぶやいて。
 顔の向きはそのままに。

「――峰岸さん」

 呼びかけた。
 二秒、
 三秒。
 反応はない。
 目を閉じる。
「…………」
 十秒数えて、開ける。
 すると音もなく。
 気配もないままに。

「こんにちわ、泉ちゃん」

 その人、峰岸あやのさんは私の真正面に佇んでいた。
 ……演出を心得てるねえ。


     ☆
468栗色攻略戦 前編 5/5:2008/01/14(月) 13:41:24 ID:iSlwwdzn
「うん、こんにちわ」
 まずは笑顔でお出迎え。
 峰岸さんも笑ってる。けど、
「どうして、いるって分かったの?」
 うわ、ホントに不思議そうな声。ぜんぜん裏が見えない。みさきちがアレだった分、なおさらか。
 でもそんなの関係ねぇ。ここまで来たらやるしかないさ。
 とりあえずこちらも笑顔は崩さずに。
「ううん、分かんなかった。でも来るって信じてたよ。――どう? 隠れやすかったでしょ、ここ」
 両手を軽く広げて周囲を示す。
 奥まった隠れスペース。
 逆に言えば、内側からも周りが見えにくいってこと。
 私からもみさきちからも死角になる場所は、ちょっと調べただけでも四ヶ所はあった。
「うん。……そっか、まんまと釣られちゃった、ってわけだ?」
 さりげない動きで辺りを見回しながら、峰岸さんは悪戯っぽくつぶやく。
 同時にこぼれた髪を耳にかけなおす仕草は逆に大人っぽくて、そのギャップがすごい威力だ。
 コレがふだん目立たないんだからなあ。
 どんだけ自己制御が上手いんだか。
「でも、それと私が来ることとは、関係ないんじゃない?」
「そうだね。でも、みさきちに用がない日は一緒に帰ってるんだよね? だったら峰岸さんも手紙を
見る可能性は、高いでしょ。で、見さえすればもう、来るでしょ」
「そう?」
「そう」
「『一人で』って書いてあったじゃない。それを無視すると思ったの?」
 ひどいな、と峰岸さんは微笑む。
 またホントに悲しそうだし……
「いやいや、実際来といてソレはないでしょ。ってゆーか、そうじゃなくてね」
 ぴ、と人差し指を一本立てる。
「だって“ヒロイン”同士の直接対決だよ? それを知ってて見逃す“読者”がいるかな?」
「そっか……」
 峰岸さんのまぶたが、かすかに開いた。
 色素の薄い瞳が垣間見える。

「……それで、どうするの?」

「……っ!」
 うわぁ。
 なにコレ? 声色とか使ってないよね? なんか雰囲気が一変したんですけど。
 たまらず顔を伏せてしまった。
 目を開けただけで、なんでこんなに……東の龍王かこの人。
「……場所、変えよっか」
 ごまかすように、そのまま立ち上がる。
 けど、もともとそのつもりではあったし。好都合だと考えよう。
「あら、調べ物するんじゃなかった?」
 さっきの凄味を収納し、またしても本当に不思議そうに峰岸さんが訊いてくる。
 普通に考えたらイヤミなんだろうけど、まるでそうは聞こえない。恐るべきは、その柔らかさか。
「もちろん、調べるよ?」
「私を?」
「そゆこと」
 そして頭の回転も速い。いやホント、これは思った以上に強敵だ。
 よくこんな人とノンキにマンガ談義なんてできたな、二日前の私。
 でも、なんなんだろうねこの感じ。
 ゾクゾクする。




46923-49:2008/01/14(月) 13:42:44 ID:iSlwwdzn
以上です
ありがとうございました

といわけで、前哨戦でした
次回、こなたVSあやの(VSて)、本戦に入ります
470名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 13:46:57 ID:+nJ2IaGI
>>469
リアルタイムGJ! 続き待ってました!
あやの怖いよあやの
こっちまでなんかゾクゾクしてきました
471名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 13:53:12 ID:M+8lnX00
>>458
まさか病気とはね…。それが理由か。
もう一緒にはいられないから、このままだと今以上につかさを傷つけるから、
だから別れた、てとこかな。うー、切ないなぁ…

>>469
峰岸怖いって。
さぁ、どう勝負?をしていくか楽しみですぜ
472名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 14:56:24 ID:20HBRPZO
>>469
背景コンビをここまでイキイキと動かせるあなたには毎度脱帽です。
今後も楽しみにしています、GJ!
473ぶーわ:2008/01/14(月) 14:58:38 ID:+nJ2IaGI
ども、ゴッドかなたさん描いてもらって狂喜乱ぶーわです
『彼女は遷移状態で恋をする』の続き投下させてもらいますね
本家おす☆かが復活で、こっちが立つ瀬ないです! でも嬉しい!
・TS注意(かがみつかさみゆき男性化)
・かがみ編5レス こなた編5レス 計10レス拝借しますね
474彼女は遷移状態で恋をする(7)-かがみside-(1/5):2008/01/14(月) 15:01:07 ID:+nJ2IaGI
「あ、そろそろ始まりますよ」
 みゆきの言葉に、全員が空を仰ぐ。
 そして破裂音や空を上る音をBGMに、空に花が咲く。
 そういやこれを見に来たんだっけな、とそこでようやく思い出した。
 両手の感覚ですっかり忘れてたというのが本音かな。
 しかし……本当に何なんだこの状況は。
 どうして右側に峰岸が居て、左側に日下部が居るんだ?
 いや、居るのはいいよ居るのは。
 誰が何処にいようが俺の知ったこっちゃないさ。
 でも何で……手なんか繋いでるんだろ。
 やばいな、峰岸ファンに見つかったら殺されるぞ
 ってか日下部強く握りすぎだろ。
 そろそろ千切れそうで痛いんだが……まぁ悪い気はしないな。
 そうやって、俺は浮かれていた。
 だから……偶然だった。
 空に広がるのは、満開の花火。
 耳を連続で劈いていく破裂音に軽く眩暈を覚えながら、偶然俺の視界は『それ』をとらえた。
 両手にあるクラスメイトの温もり……それが少し気恥ずかしかったのかもしれない。
 そいつらの顔も見れなかった所為で、俺の視線は『彼女』に向けられた。
 ……最初言っておく、あくまで『偶然』だからな。
 その、後の事も。
「こなた?」
 俺の眼に、今呼んだ名の『彼女』が映った。
 他の奴らは全員、空の花火に目を奪われている。
 なのにそいつは……違った。
「あ……」
 俺の声に気がつき、こなたと視線があった。
 だけどすぐに、俺から顔を背ける。
 一瞬、何が何だか分からなかった。
 何て言うのかな、花火が俺の頭の中で爆発した気分。
 耳に反響する炸裂音が、妙に邪魔だった。
 ……。
 眼があったのは、一瞬だった。
 顔をあわせたのも、一瞬。
 なにせすぐに顔を背けられたから。
 だけど見た。あれは……泣いてた? いや、そう見えただけ?
 でも確かに花火に反射して、こなたの顔に何かが光ったのを俺は見た。
 ……気がする。
「どうかした? 柊君」
 峰岸が俺の視線に気がつき、空から視線を俺に移す。
 手を繋いでた所為もあってか、思いのほか顔が近かった。
「やっ、いや……」
 その峰岸ドアップに動揺して、俺も慌てて視線を空に戻す。
 だけど、空に映る満開の花火も何処か眼に入ってこない。
475彼女は遷移状態で恋をする(7)-かがみside-(2/5):2008/01/14(月) 15:02:37 ID:+nJ2IaGI
 入ってくるのは……さっきのこなたの顔。
 やっぱり泣いてた、のか?
 何で? 理由は? そうだ、泣く理由がないだろ。
 あいつが泣くのなんて滅多にないし。
 そうそう、ないないありえな……ん?
 なんだろう、今頭の中で盾と矛がすんごい勢いでぶつかり合った気分。
 その衝撃の余韻が俺の脳に届いて、痺れるような快楽が脳みそをゆっくり抉っていく。
 ……。
 ああ……そう、だ。
 あったじゃないか……それもつい最近。
 今頃になってようやく思い出した。
 俺……泣かせたんだっけ。
 よく分かんないまま怒って、酷いこと言ってそれで……。
 て、ちょっと待て。
 ……なんてこった、俺まだ謝ってすらないじゃないか!
 何を呑気に、浮かれてるんだ?
 そんな事してる場合じゃないだろ?
 一番最初に言うべきだっただろ?
 ……ごめん、って。
「悪いっ、峰岸。日下部」
「へっ?」
「ふぇっ?」
 二人と繋がっていたそれぞれの手を離す。
 空の花火に気をとられていたから、二人とも眼を丸くする。
 だけどそれも気にせずに俺は、二人から離れる。
 そのまま日下部の目の前を通り抜けそして……。
「こなたっ」
「!」
 そのまま、こなたの手を……掴んだ。
 馬鹿をやってる自覚はあった。
 何を皆の前でやってるんだと心も自制の声を叫ぶ。
 でも体が勝手に動いたんだ……仕方ないだろ。
「来いっ!」
「ふぇ……えっ?」
 そのままこなたの手を引く。
 もちろん俺のそんな行動に、他は呆気にとられるだけだ。
 ……約一名を除いてはな。
 振り向かなかったけど、憎たらしい笑顔は見えてるぞ……ったくお前はそういうやつだよ。
「悪いが後を頼む……みゆき」
「はい、任されました」
 最初に言っただろ?
 そういうもんなんだよ……親友ってのはさ。




 遠くで、花火の音がする。
 少し離れただけで祭りの喧騒も今は遠い
476彼女は遷移状態で恋をする(7)-かがみside-(3/5):2008/01/14(月) 15:04:30 ID:+nJ2IaGI
 たまに空に開く花火と、公園の安っぽい電灯が俺達を照らしていた。
「か、かがみ……っ」
 こなたの声に俺も脚を止める。
 何処まで行こうなんて考えてもなかった。
 ただ少し、二人になりたかった。
 それにその何ていうか……ああ、そうだよ、恥ずかしかったんだよ悪いか!?
「どうかしたの?」
 ああ、そりゃそんな質問するよな。
 突然手を掴んで、連れ去ったりなんかしたらそりゃ尋ねるさ。
 悪いがちょっと待ってくれ……今少し、頭を整理してるところだ。
 勢いって怖いよな、普通するか? こんなこと。
 ええい、何でまだ手繋いだままなんだ。
 いやまぁそりゃ……柔らかい、けど。
 うああ余計な事考えてる場合じゃないだろ!
「えと……ごめん」
「……っ」
 熱暴走する頭で、言葉を搾り出す。
 その言葉の意味がこなたにも伝わったのか、繋いでいた手が少し強く握られた。
「まだ、ちゃんと……謝ってなかっただろ?」
 ……全部俺の所為だ。
 俺が浮かれて、忘れてた所為。
 本当は一番最初に、言うべきだったんだ。
 顔を遭わせた、一番最初に。
 なのに、他の事考えてて……こなたの事、全然考えていなかった。
「酷いこと言って悪かった、本当にごめん」
 下げれるだけ頭を下げる。
 それだけの事を俺はやったと思ってる。
 だから、すぐに返事があったのは少し意外だった。
「いいよ」
 声に顔を上げる。
 こなたの顔が目の前にあった。
 花火をバックライトに受けたその笑顔が、栄えた。
 その時、何故だろうな。
 俺の胸の奥で……不思議な音が聞こえた気がした。
 心臓を太鼓に見立てた、祭囃子が。
「かがみが本気であんな事言うわけないって知ってるもん。だから、気にしてないよ」
 こなたの笑顔が網膜に焼きつく。
 ……ん?
 な、なんだ?
 なんでだ?
 手が痺れてきた……こなたと、繋いでるほうの手が。
 胸の奥の音色が騒がしく耳に響く。
 いやいやいや、何を意識してるんだ? 俺は。
 手ぐらい繋いだって普通だろ?
 日下部や峰岸とも繋いでたじゃないか、なぁ?
 だ、だから別に気にすることなんて……。
「あ、そ、そっか」
 なかったのに。
 何故か、その手を離してしまった。
 へ、変だぞ俺。
 暗い所為で見えてはないと思うが多分……今、顔がやばい。
477彼女は遷移状態で恋をする(7)-かがみside-(4/5):2008/01/14(月) 15:06:49 ID:+nJ2IaGI
 トマトのほうがまだ何ぼかマシな状態だ。
「あ、ほら。ここからも花火見えるよっ」
 花火の音が聞こえ、こなたが空を仰ぐ。
 公園の木々の間から漏れた花火の光が、もう一度こなたの顔を淡く照らす。
 ……。
 その、笑顔に安心したからかもしれない。
 俺はこなたに聞いてしまった。
 思わず。
 何故か。
 うっかり。
 ……どうしても。
「なぁ、こなた」
「うん?」
 こなたの眼が俺を見る。
 ど、どうしたんだ? 俺は。
 動悸がさっきから、おかしい。
 こんなの、まるで……。
「なんでさっき……泣いてたんだ?」
「えっ……」
 それを直接、見たわけじゃない。
 一瞬だった。
 ほんの一瞬。
 花火の光の反射で僅かに光った、微かな光源。
 でも……確かにあれは、涙。
 今は何故かそれが、確信だ。
「あははっ、何言ってんの? かがみ」
 こなたが俺から、白々しく視線を外す。
 それにまたカッときて。
 頭に血が上って。
 ……俺ってやつは、どうしてこうなんだろうな。
 そのまま俺は、やってしまったわけだ。
 また、な。
「……こっち、見ろよ」
 こなたの頬を俺の手が掴む。
 そして無理矢理、視線を合わせる。
 手が、痺れる理由が分からない。
 動悸が早くなる理由だって分からない。
 でも……触れた頬は、柔らかかった。
「なんで……泣いてたんだ?」
 もう一度、聞く。
 近かったこなたとの距離が、さらに縮まる。
 吐息が俺の鼻をくすぐり、妙にそこだけむず痒く感じる。
「泣いてなんか……ない、よ」
 こなたの震える声が、小さく聞こえる。
 その度に心臓が、張り裂けそうなくらいに暴れる。
「泣くはずないよ。泣くわけ……ない」
 それは俺に言っているようで、不思議な違和感。
 まるでこなたが自分自身に言っているような、そんな感覚。
 そのまま、俺の指に……『また』冷たいものが触れた。
 ……。
 そこまで来て俺はようやく、思い出す。
 この状況が、何を意味するのか。
478彼女は遷移状態で恋をする(7)-かがみside-(5/5):2008/01/14(月) 15:10:04 ID:+nJ2IaGI
 これはまるで……あの日と一緒じゃないか。
「こっ、こなた?」
 驚きに手を離し、近かった彼女の顔を遠ざける。
 指に触れた涙が心臓を跳ねさせる。
 泣いてる……こなたが、また。
 また俺は、泣かせたのか?
 またこなたを……。
「ち、違うからっ」
 その心の声に答えるように、こなたが慌てて涙を拭く。
 だけど、それは止まらない。
 目の前でただ零れる涙を見て……俺は立ち尽くすしかできない。
 俺には何も……出来ない、のか?
「違う、違うから、見ないでっ……お願い」
 その言葉が。
 その涙が。
 その……全部が。
 俺の中の何かを……壊した気がした。
「っ!」
 こなたの驚きや嗚咽の混じった声が、耳に届いた。
 まるでゼンマイ仕掛けの日本人形。
 俺の中の壊れた歯車が、俺の体を勝手に動かす。
 気がついた時には、俺の手は――ああくそっ、何をしてるんだ俺は。
 後になって考えれば、自分がおかしかった事に気がつく。
 それでも後の祭りでしかない。
 泣き喚くこなたの手を掴んで俺は――うああ頼むからやめてくれ、頭がどうかなりそうだ。
 なんでだ? 何でこうなった?
 理由なんか分からない。
 でも確かに『居る』。
 ここに、彼女が。
 俺の両腕の中に……こなたが。
「これなら、見えないだろ」
 自分で口走った言葉の意味も、よく分からない。
 いや、意味は分かっても無茶苦茶だ。支離滅裂すぎる。
 両腕が、こなたを支える。
 その中に、彼女の全てがある。
 腕に寄りかかった重さが、彼女の全て。
 俺の腕の中で泣く、彼女の全て。
 嗚咽と慟哭が俺の体の中を通り過ぎていき、両手に力をこめる。
 もう、花火の音は聞こえなかった。
 静寂が支配する中で。
 安っぽい舞台照明の下で。
 俺とこなたは……二つの影を、一つにしていた。

 もう一度言っておく。
 これは……偶然だ。
 色んな偶然が、重なった結果。
 それぐらいしか、今の俺には説明できない。
 この行動の意味も。
 この、動悸の意味も。

(続)
479彼女は遷移状態で恋をする(7)-こなたside-(1/5):2008/01/14(月) 15:12:02 ID:+nJ2IaGI
「来いっ!」
 手がまるで、火傷するくらいに熱かった。
 強く握られたその手が痺れて、脳まで麻痺していく感覚。
 私の手は今……かがみに握られていた。
 突然だった。
 かがみの声に振り向いて、眼を合わせた。
 だけど溢れた涙を見られたくなくて……顔を背けた。
 そしたらあとはもう、この状態。
 ただ彼に引っ張られてそのまま、人ごみを掻き分けていく。
 それが突然すぎて。
 その理由が分からなくて。
 繋いだ手が恥ずかしすぎて……。
 私はそのまま何も言えずに、彼にされるがままについて行く。
 顔が燃えそうな位に熱い。
 心臓の鼓動がピッツィカートみたいに暴れる。
 ……ああ、私はまたみっともなく何かを期待してる。
 期待なんて、したら駄目だって分かってるのに。
 ほら、心を落ち着けよう。
 こんな繋いだ手なんて、意味ない。
 振り払えばいい。
 振り払って言えばいい、どうしたの? って。
 そうするだけで……いいのに。
「かがみ、どうかしたの?」
 震えて上擦った声が出た。
 ……手を、繋いだままで。
 そんな自分の女々しさが、嫌だった。
 私の声に反応して、かがみが足を止める。
 誰もが空の花火を見に河川敷に集まって、こんな小さな公園には誰も居ない。
 私と……かがみ以外。
 繋いだ手が痺れて、それが脳に伝わっていく。
 どうして手、繋いでるんだろう。
 他人から、どう見えてるんだろう。
 そんな事ばかり考える自分が、惨めだった。
 だって、無駄なんだ。
 その全部を考えること自体……。
「ごめん」
「……っ」
 かがみの声が、届く。
 声で、耳に。
 振動で、手に。
 それが私の動悸と混じって、不協和音。
 そこからかがみの言葉だけを必死に探す。
 ……謝られた。
 それだけを理解した後に、一瞬呆気に取られた。
 でもすぐに分かった、その謝罪の理由が。
「まだちゃんと、謝ってなかっただろ? 酷い事言って悪かった……本当にごめん」
 そのまま私の前で頭を下げる。
 それは少し不思議な光景。
480彼女は遷移状態で恋をする(7)-こなたside-(2/5):2008/01/14(月) 15:13:33 ID:+nJ2IaGI
 いや、私が見慣れないだけなのかもしれない。
 でもその姿が何処か、滑稽で……可笑しかった。
 もしかして、皆の前で謝るのが恥ずかしかったのかなって。
 それでも……私のために、謝ってくれたんだなって。
 ……かがみらしいな、って。
「いいよ」
 だから、笑ってしまった。
 私の声に反応して、かがみが顔を上げる。
 声に出なくて良かった。
 顔だけだったら暗くて……見えないもんね。
「かがみが本気であんな事言うわけないって知ってるもん。だから気にしてないよ」
「……そっか」
 安心したのか、かがみの手が離れる。
 ……。
 そ、そうだよね。
 私を連れ出すだけだったんだから、もう繋いでる必要なんてないよね。
 うう、だからそういう所が女々しいんだって。
 か、考えちゃ駄目だって。
 考えたらまた顔真っ赤になっちゃうもん。
 うああ、意識しちゃったらもう!
 わ、話題を逸らさなきゃ。
 話題話題……ああそうだ、何しにここに来たのか忘れてたっ。
「あ……こ、ここからもっ花火見える、ねっ」
 わざと話題を花火にふり、注意を空に向ける。
 空と言っても、木々の間から微かに見えるくらい。
 上手く笑えて言えたと思うけど、今はそれより顔の熱を何とか……。
「なぁ、こなた」
 って向いてないし!
 こ、こっち見てる。
 返事……えと、返事。
「う、うん?」
 上擦って変な声が出た。
 ど、どうしたんだろかがみ。
 じっと、私を見てる。
 その視線に貫かれて……鼓動が暴れる。
 かがみが……見てる。
 私だけを。
 ……私だけ、を?
 それに気がつき、不意に情景が頭に叩きつけられる。
 それはほんの数分前の、惨めな情景。
 そうだ、ついさっき。
 皆が空に目を奪われる中で、見ていた。
 かがみが……『私だけ』を。
「なんでさっき、泣いてたんだ?」
「えっ……」
 心臓が、跳ねた。
 まるで私の心の中まで、彼の目で貫かれている気分だった。
「あ、あははっ。何言ってんの? かがみ」
 視線を逸らし、頭に浮かんだ言葉を適当に並べる。
 ううん、そんなはずない。
481彼女は遷移状態で恋をする(7)-こなたside-(3/5):2008/01/14(月) 15:14:39 ID:+nJ2IaGI
 だってすぐに拭いた。
 顔だって、すぐ背けた。
 あんなに暗かった。
 だからこっちを向いてただけじゃ、見えるわけない。
 見えてたはず……。
「っ!」
 ……その時、だ。
 私の頬に、何かが触れた。
 その何かが私の顔を、かがみに向けさせる。
 視線が交わった。
 鼓動が、速くなった。
「……こっち、見ろよ」
 それは、かがみの手。
 それが私の顔を固定する。
 『あの時』と……まったく同じ状態。
 その光景が、また私の頭の中に無理矢理叩きつけられる。
「なんで、泣いてたんだ?」
 声が耳から入って脳を、劈く。
 それに、答えられるはずもない。
 だって何て言えばいいの?
 悔しかった?
 嫉妬した?
 惨めだった?
 苦しかった?
「泣いてなんか、ないよ」
 そうだ、そんなはずない。
 だって分かってるから。
 意味なんか、ないって。
 そんな感情……持つだけ無駄なんだって。
「泣くはず、ないよ」
 自分で復唱する。
 そうやって、自分に言い聞かせる。
 その言葉を体に染み込ませて、紛らわせる。
「泣くわけ……ない」
 そうだよ、泣くわけない。
 分かってるんだもん。
 ねぇ、そうだよね?
 それでいい。
 それで、いい。
 それで……いい!
 そうなのに……それでいいはず、なのに。
 ねぇ、なんで?
 なんで、私は……泣いてるんだろ。
 泣くわけないのに、ね。
「こ、こなたっ?」
 かがみが慌ててその手を外す。
 駄目だ。
 泣くな。
 泣いたら絶対、困らせる。
 だってかがみは何もしてないよ?
482彼女は遷移状態で恋をする(7)-こなたside-(4/5):2008/01/14(月) 15:16:14 ID:+nJ2IaGI
 そう、何も……。
 私には何もして……くれない。
「違う……から」
 涙は、止まらない。止まってくれない。
 早く、止めなきゃ……ほら、かがみが困ってるよ?
 ねぇ止まってよ、お願いだから。
 止まれ、止まれっ、止まれぇっ!
「違う、違うから」
 そうだ、違う。
 かがみの所為なんかじゃない。
 私が勝手に泣いてるだけだから。
 違うからっ。私の所為だから。
 だから……。
「見ないで……お願いっ」
 見られたくなかった。
 だってこの涙はきっと、嫉妬の涙。
 そんな女々しくて醜くて……みっともない涙。
 そんなもの、かがみに見られたくない。
 じゃあ、前みたいに逃げればいい。
 そうすればきっと、かがみには見られない。
 ……でも、それが出来ない。
 かがみの傍に……居たい。
 でも……でもっ!
 そんな、矛盾した感情が私の中で暴れる。
 それが惨めで、嫌で……涙になってまた溢れる。
 その時だった。
 涙を必死で拭う私の手が、止まった。
 私が止めたんじゃない……誰かが、止めた。
 誰かの手、が。
 誰の手だろう――二人しかいないのに
 どうして、止めるんだろう――かがみしかいないのに
 どうして、かがみなんだろう――かがみしかいないから?
 どうして……好き、なんだろう――ううん、かがみ……だから
「これなら、見えないだろ」
 声が、私を弛緩させていく。
 暖かい何かが私を包む。
 何時の間にか私は、包まれていた。
 かがみの、全てに……彼の暖かさに。
 それが嬉しかったのかすら、分からない。
 溜まっていた何かを吐き出す様に。
 私はただ、泣いた。
 かがみの腕の中で……ずっと。




「もう、平気か?」
「……うん」
 どれくらいだったんだろう。
483彼女は遷移状態で恋をする(7)-こなたside-(5/5):2008/01/14(月) 15:18:11 ID:+nJ2IaGI
 空の花火はもう、咲き乱れることもなかった。
 祭りの喧騒も次第に小さくなり、私はかがみの腕から離れる。
 ここだって、誰かが通らないわけじゃない。
 それにいつまでもかがみに抱かれてるのは……ちょっと、我慢が出来なかった。
 今だって心臓が右に左に反復横とびしてる気分。
 顔なんか、今なら卵も焼けそうなくらい。
 でも……涙は落ち着いた。
 心も、その中の……馬鹿げた感情も。
「ごめんね」
「……あ、謝るようなことじゃないだろ」
 かがみが、言葉を濁らせる。
 もしかして……かがみも照れてるのかな。
 そうだといいな、って思うのは……悪いことじゃないよね。
 ……。
 顔がまた、熱を持った。
 体を包んでくれた彼の手の暖かさが、まだ残ってる気がする。
 あ、あははっ。
 馬鹿だな、私。
 きっと、ご褒美なんだ。
 諦めようって決めた事への、神様からのご褒美。
 そうだったら……辛い、ご褒美だよね。
 だって……ああ駄目だな、考えるからいけない。
 そうだよ、そうやって考えることすら……無駄なんだから。
「……行こっか、皆待たせちゃってるね」
 かがみに背を向ける。
 ありがとうは、心の中で言うね。
 声に出したらきっとまた、考えちゃうから。
 それで、全部にしよう。
 これで全部。
 私の、馬鹿げた感情の……私とかがみの、全部。
「こなた」
「?」
 かがみの声に、振り向く。
「どうかした? かがみ」
 その時の私の顔は、どんなだったんだろう。
 笑ってた? 泣いてた?
 ……そんなの、後になっても思い出せない。
 でもかがみのその声だけは。
 その言葉だけは……一言一句、忘れられない。

「浴衣、似合ってるな」

(続)
484ぶーわ:2008/01/14(月) 15:19:31 ID:+nJ2IaGI
続きます。
ようやく鬼鈍かがみんもほんのり男を見せてくれたところで次回、折角上がった株が……?
何か人袖の番外編、意外とすんなりおっけーだったみたいで嬉しいです
「今さらだろ」とかって一蹴されるかと思ってました。
ネットが今出来ない状態なんで出来るときに投下させてもらいます

あと7-896氏にゴッドかなたさん描いてもらったんでお返しにこな☆フェチみゆきさん描いてみました
ttp://www.geocities.jp/je104049/miyu2.PNG(流血注意)
ttp://www.geocities.jp/je104049/miyu1.PNG(真面目版人袖ラストイメージ)

って容量見てなかったすんまそん、次スレも神作品が投下されますように
485名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 15:21:44 ID:ogle0LEV
きた―!!o(゚∇゚*o)(o*゚∇゚)o〜♪

甘い。とても甘い!続きが気になって仕方ありません。
GJ!!
486名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 15:40:35 ID:M+8lnX00
>>484
続ききたああああああああ!!!!!!
読んでる最中ずっとこのニブチンが!!とか思ってたけど
最後の最後でよく言ったかがみ!!ついに男見せてくれた!!
そして乙女全開のこなたがヤバイほどカワイイ・・・
次も超期待してまっさ!!GJ!!
487名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 15:56:37 ID:NbYR2PEA
やっほいktkr
やっとかがみのすべきことが書かれた気がします。
しかしよくこなたの心理をかけるぁ、と感心してしまいました。
うん、うまい…GJっした☆
488久留里:2008/01/14(月) 16:07:47 ID:C8FHcvuJ
投下の勢いが速過ぎてGJする余裕すら与えられぬとは……。

>>445,458,469
皆さんGJなのです。

それと…、

>>448
あゆみ「私よりもあんな変な奴の方が良いってワケ?」
マルコ「うるせぇ!! ケツの青いガキがギャーギャー騒ぐんじゃねぇ!!」
作 者「いい加減にしないと出番減らすぞ」
あ・マ「「その前にさっさと続き書け!!」」

今夜登場するので、この子を生暖かく応援してやって下さい。
489久留里:2008/01/14(月) 16:10:08 ID:C8FHcvuJ
ついでなんでスレ立ててきます。
490名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 16:13:05 ID:Ui84//PZ
あ、結局テンプレはどうなりました?
(みゆきさんの一言メモについて)
491久留里:2008/01/14(月) 16:13:31 ID:C8FHcvuJ
立てて来ました。

らき☆すたの女の子でエロパロ33
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1200294732/
492久留里:2008/01/14(月) 16:14:33 ID:C8FHcvuJ
>>490
32のやつをそのまま使ってしまいました……。
493名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:00:44 ID:lT2TF3iU
乙です
とうとうdatナンバーも1200000000超えましたか
ここは長寿ですねぇ……
494名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:03:37 ID:yrHqCJFE
新スレが立った(久留里さん乙です)今なら言える。

>>488
>この子を生暖かく応援……
ということはあゆみちゃんもまたゴッドの一柱であり、バカマルコが時の流れを司るようにツンとデレを司ったりしますか。


待てあゆみちゃん、その桜島大根はどこから取り出したにぎゃぁぁぁぁぁ!?
495名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:32:52 ID:e12hvSy0
>>487
逆に考えるんだ
ぶーわ氏は女のkちょぶわさんらめぇぇぇ
496名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 17:41:22 ID:6PFtD7m5
>492
乙です。
今スレは速かったですね。
レス番も500に達していない(SS含有率が高い)ですし。

>429
GJ!
みなみちゃんが、凄く可愛らしかったです。
胸の悩みは切実なんだけど、肝心なところで、
「吸収」を断念してしまうあたりの記述が、みなみちゃんの性格が
巧みに表現されているな、と思いました。
497名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 18:59:37 ID:lT2TF3iU
埋めコネタ

「なあ柊、今日は何の日だったか覚えてるか?」
『あんたじゃあるまいし、さすがにそのくらいは知ってるわよ。成人の日でしょう』
「はい正解。ぱちぱちぱち〜。今日はその、全国いたるところではめを外して呑めや歌えやのドンチャン騒ぎの日です」
『……もうちょっとましな言い方できないのか』
「じゃあ、ニュースでは飲酒や暴力沙汰ばっかり取り上げて、まったくいい印象のない日とか」
『あのなー』
「沖縄とかも、成人式の様子さえ報道されなければ、観光地として良い印象だけをあたえられたのにな」
『日下部は成人式に恨みでもあるのか?』
「別にそういうわけじゃないけど、ただ、テレビを見ててもそんなニュースばっかりでつまんないなーって」
『それでこうやって私に電話してきたと』
「そういうこと」
『ホントに自堕落ね……。それでも受験生?』
「そうですよー。私はしがない受験生。そして柊も同じく受験生」
『あんたと一緒にするな。……たく、私は困るわよ。あんたに『柊先輩』なんて呼ばれるのは』
「ハハハ、いくらなんでもそりゃないな。目指してる大学も違うし。でも、そんなことにならないように私も頑張ろっかな」
『なんなら今から勉強会でも開いてみる?』
「いや、今日は勘弁」
『どうしてよ。あんたのためを思ってやろうかって言ってるのに』
「外に出たら飲酒運転の車に轢かれた〜なんてことがあるかもしれない」
『ねえよ』
498名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 19:25:36 ID:CLnET/Yn
>>484
ほわぁぁぁああああGJ !
甘いし熱いし燃えるし萌えるし最高でしたw
次回また、かがみはヘタレに戻るんですか? w
499名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 20:57:05 ID:NbYR2PEA
↑に便乗埋め小ネタ

「成人式といえば?」
「振り袖きてどんちゃん騒ぎするお祭りだよね♪いいなぁ、あきらもはやくどんちゃん騒ぎやりたいなぁ♪」
「あの、あきら様?なんども説明しましたけど、成人式はどんちゃん騒ぎするものじゃありませんよ?」
「どんちゃん騒ぎして、白石に全部払わせて」
「ちょ、え?」
「あとは海外でハネムーン♪」
「……あきら様?」
「なぁに?」
「どっからハネムーンなんて文字が?」
「え?」

「べ、別にあんたなんかとハネムーン行きたいわけじゃないわよ!誰が!誰があんたなんかと!」
「ししし知ってますよ!あ、あきら様にはきっと白馬の王子さまがっ」
「あのさー」
「「日下部は黙れ」」
「みゅー…」
500名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 21:14:48 ID:NGNa4Gzk
「成人の日って、なんなんだろうね?」
「いきなりだなおい。なにか、またスイッチでも入ったか?」
「かがみ、そのスイッチ入ったって止めてくんないかな」
「いや、こなたがそういうこと言い出すときは、なにかしら危ない発言が多い気がするし」
「そんなことないでしょ。極当たり前に、人としてだね〜」
「どうせ、成人の日に逮捕される新成人は、とか言いたいんだろ」
「いや、そうなんだけどね。私はもうエロゲを堂々とできるわけだよ」
「それがどうした」
「いや、それって大人として認められてることじゃないのかな?」
「それは…」
「日本ってそういうところが曖昧だよね。一部では十八歳、他では二十歳とかさ」
「じゃあ、あんたの思う大人ってどんななんだ?」
「ん〜、エロゲなんかを架空の世界と思えることかな」
「どんな判断基準だよっ」
「じゃあ、自分を大事にしながら、人を大事にできること」
「あっ、あんたにしてはまともなこと言うじゃない」
「そりゃね、私は私だけど、かがみはかがみだし。好きな人は大事にしたいよ」
「――さてと、受験に向けて頑張らないとね…///」
501名無しさん@ピンキー
「しかし受験かあ・・・つかさはやっぱり料理関係、もしくは栄養関係かな」
「あの子の場合、そういったことよりも、睡眠の癖のほうが心配だわね・・・」
「あー・・・料理系の朝は早いからね・・・得意なお菓子関係は特に・・・」
「かがみはやっぱり、法学関係だよね、進路」
「もちろん、法曹界は異様に狭い門だから、今のうちから
 知識は貯めるだけ貯めておかないと」
「狭い門といえば、医学界を目指すみゆきさんもか」
「まーみゆきの場合、あの蓄積っぷりだけで十分受かりそうな気もするわね」
「ある作品で言ってたけど、東大の理Vって
 蓄積してきた知識じゃない種類の知性も求められるんだって?」
「そういう話みたいだわね」
「ほーそーかそーか、じゃあ私のように生まれ持った知性で
 合格することも可能なわけだ」
「やぶからぼうになにを突然・・・アンタが知性?いよいよ寝言極まったか?」
「こう見えても私学校勉強以外における知性には、自信があるのですよ。
 そして一夜漬けで高校テストの高得点いける、ホンバンに強いタイプだし」
「おーい・・・あんたもドラ○ン桜から影響うけた口かー?
 大体一夜漬けで攻略できるような場所が、日本一いや世界一狭い門と
 認識されるとおもってんのか?
 そもそも根本的な問題として、あんた医者やりたいんかい」
「んー、ほらあれよ、法外な医療費を取ってあちこち旅をする、
 無許可だけど凄腕の医者って燃えない?」
「・・・影響受けたのそっちかよ・・・あーもう・・・」

「でも・・・泉さんならひょっとして出来るかもしれませんね」
「み・・・みゆきまでなにを!?」
「泉さんから見え隠れする、あふれ出る知性、爆発する知性をもってすれば
 あの医学会の不沈空母も突き壊すことが可能かもしれませんだばだば
 そして私と共に、先進医学をリードするのですだばだば」
「・・・いや・・・その・・・言ってみただけだから・・・じゃね(脱兎)」
「あっ!お待ちになってください、私の生涯のパートナー!」
「こら待て!こなたは私の法律事務所の助手になるんだから!」
「させないよ、こなちゃんは私のスイーツショップのアシスタントになるんだよ!」

「こちらコナーク、私の将来が決まった。特殊部隊隊員、そして傭兵・・・」