モノノ怪でエロパロ 2札目

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1名無しさん@ピンキー
皆々様の妄想と情欲、お聞かせ願いたく候。
怪〜ayakashi〜、モノノ怪 のエロパロスレでおじゃる。
基本sage進行、ねこねこいいこの精神でマターリと。
次スレは>>970か、480〜490KBほどで随時対応。
口上を述べたのち、スレタイ・テンプレ・愛を揃えて解き、放つ!

投下時はカップリングを併記、エログロ、陵辱、SM等は注意書きを。
女体化、擬人化については専用スレあります(後述)。投下は自己判断で。
ただし元が男性キャラクターの女体化は歓迎されにくいです。メザシの頭や
塩や灰やお札で魔除け結界張られても泣かないように。
まして男同士の組み合わせは相容れん。数字板へどうぞ。
煽り、叩き等、視野が狭くてKYなアヤカシは、海座頭でないので答えぬこと。

前スレ モノノ怪でエロパロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1188488875/

保管庫(Wiki、誰でも編集可、作品保管に協力を)
http://mononokeeroparo.matome-site.jp/

●参照

【女体化】TS系小説総合スレ【男体化】5話目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1182867370/

擬人化総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176796139/
2名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:18:46 ID:U2hNMFrC
>>1
乙…ですよ…。
3名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:26:28 ID:78E0Qja9
>>1乙ですよ。
4名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:30:12 ID:J/Bw4d5q
>>1乙だぞォ☆
5名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:41:20 ID:NqbNnbpZ
>>1乙もご存じないか
6名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:11:31 ID:17f/8Orz
>>1乙をするためには条件がある、
スレタイ・テンプレ・愛を揃えて住民に示さねば…立てられん
7名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 00:36:34 ID:uReL1aYp
YATTA!YATTA! 早速祝いだ!
>>1乙、新しいスレの門出だ。
8名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 02:46:27 ID:EqsjY0Gv
>>1乙、満ちたようでございます。
9名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 10:00:58 ID:cuOVJHLU
「みんなー。僕にも>>1乙ができたよ……」
「「「「「オメデトー!」」」」」
10名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 23:47:46 ID:cuOVJHLU
>>1乙が……近づく……。

即死回避にはレスいくつ必要なんだろう?
前スレは前スレとして、投下が欲しいなぁ。
リレーでも逆レイープでもなんでもいいから読みたい……。
11名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:09:08 ID:iRfz2Tjq
>>1乙の流れだけで吹いたww
確かに投下欲しいな〜前スレは他の女キャラの話で盛り上がっているようだし、
インスパイアされた職人さまはおらぬか!
12名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 11:03:50 ID:D4GJU1R4
前スレ満ちたようでございます。

前スレ>>854
GJな絵を頂きました!
何てトコロにスレタイが入ってるんだwww
13名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 13:09:19 ID:qVNpsMNN
前スレ ID:+QIo2lM1に告ぐ

一気に落っこちて読めない人がいたり、wiki保存しそこねたらどうする気だw
もうちっと余裕残しといていいんじゃないか
14名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 13:55:14 ID:+QIo2lM1
>>13+住人の皆様
ごめん。言われてみればそうだ。
考えが及ばなかった。申し訳ない。
15薬加陵辱風味1:2008/01/06(日) 22:05:50 ID:B7gDx/C3
あんまり薬加ばっかだといー加減偏り出るし
どうすっかなあと思ったんだが、即死防止の投下てことで
お目こぼしいただきたく候。

ちなみにレイプ臭強めで甘くないんで、苦手な人は見んといてください。






好きです、と伝えた。

坂井の屋敷の前で別れてから数年経ち、けれど、あなたを忘れたことはただの一度もなかった。
あなたが一所に留まれぬ人であることは、なんとなく理解している。
江戸に着けば、お別れなのだということも、承知している。
そして、今度別れたら、──もう二度と、会うことはないかもしれない。
だから。

抱いて、くれませんか。

薬売りの男の前に立ち、真っ直ぐにその目を見据えて、加世は胸に燻る思いの丈を告げた。
海座頭の問いに、恋はまだだと言ったが、あれは嘘だ。いや、あの時初めて自覚したのだと言っても良い。
顔が熱い。恥ずかしくて、怖くて、今すぐに目を逸らし踵を返して脱兎の如く逃げ出してしまいたい。しまいたいが、ぐ、と堪えた。
薬売りの唇が微かに、薄く開いた。静かに息を吐く気配を感じる。
嘆息。それはどんな心持ちから齎されたものなのだろう。怖い、怖い。だが、目を逸らすことが出来ない。
薬売りは、再び口を閉じた。
その口元が笑んでいるように見えるのは、すでに笑みの形に彩られている、藤色の紅のせいだろうか。
彼の心の内が計れず、揺らぎそうになる視線を懸命に正し煩悶する加世に対し、彼は、薬売りの男は、赤い隈取に飾られた目をやんわりと細めて、詠うように、言った。

「遊びで良けりゃ、抱きましょう」





太腿を抱えて下から思い切り突き上げると、薬売りの胸にもたれた加世の背が大きく仰け反った。
張りのある形の良い乳房が揺れる、その様が、小さな鏡面に映し出される。
力んだためにか、後ろ手に戒められた、褐色の両手首に空色の帯紐が食い込み、ぎちりと音を立てた。
「ふぐ……っ、……ぅぅっ!」
厚みのある唇から、くぐもった声が零れた。
赤い帯紐の結び目に邪魔されて、何事か言おうとしたのか、それともただの苦鳴だったのか、分からない。
唾液に濡れ赤味を増した唇は、その肉厚な様と相まって嬲られた女陰を思わせる。
丸い小さな鏡に映し出されたその様子を、加世の肩越しに覗き見た薬売りは、己の愚息がまた一段と張り詰めるのを自覚した。
鏡面の端に、濡れた頬が映ったのは、あえて無視した。
16薬加陵辱風味2:2008/01/06(日) 22:07:41 ID:B7gDx/C3

「あんたも、馬鹿な女だ」
抑揚のない声音で囁いて、汗に濡れた項を舐め上げる。
揺れる加世の足元には、剥ぎ取られた着物が無残に散乱している。
「遊びでもいい、なんて。俺みたいな男に、そんなことを言っちゃあ……」
こんな目に遭っても、文句は言えませんぜ。
その言葉通り。娘は、初めての男を背後から迎え、労われることもなく抱えられて、容赦なく揺さぶられた。
自身の重みでさらに最奥まで抉られ、あまりの衝撃に、もう、抵抗する気力すら残っていないようだ。
「加世さん、ほうら」
振動による刺激に、ただ口から力なく空気と音を吐き出すだけの加世に、お構いなしに薬売りが声をかける。
ちゃり、と細い鎖を揺らしながら、丸鏡の鏡面を己らに向けて下から翳す。
「見えますか。俺達が、繋がっているところ」
加世を抱える薬売りの目には、かろうじて見える、程度ではあったが。
そこには己の肉茎に深々と突き刺され、内部を余すところなく掻き回されている、加世の、未だ生娘の気配濃厚な女陰が映っていた。
子を生すことのない精をわざわざ外に放出する必要はない。繋がったまま幾度となく吐き出された白い汚濁と、それによって押し流された鮮血で、結合部はべとべとに汚れていた。

酷い男でしょう。

言葉にする代わりに、加世の耳朶に犬歯を立て、ほんの少し力を込めて噛みしめる。
加世の体が一瞬硬直し、震えた。腹の中に埋められた男根をきゅうきゅうと締め付けて、薬売りに得も言われぬ快感を齎せる。
その肉道の狭さを楽しむように、味わいつくすように、爪が柔らかな太腿に食い込むほど抱え込み、開かせて、褐色の体を上下に揺する。
揺れに合わせて己の腰をも動かした。
濡れた肉の絡まりあう淫猥な音が、ひたすら肉欲を刺激し劣情を煽る。
猿轡を咬まされた加世の口から漏れるのは、ただ苦しげな吐息、悲鳴になり損ねた声、嗚咽。そこに甘い快楽のあろうはずもなく。
だがどうであれ、己が心地好いことに変わりはない。
果てしなく、苦々しい悦楽。

忘れてしまうといい。
こんな、酷い男のことは。

体に残された傷は癒える。いずれ、跡形もなく消えるだろう。
心に残された傷は、誰か、別の優しい男に癒してもらうといい。
癒えるのに時がかかるなら、そのぶん己を恨めばいい。
恨んで憎んで、散々な目に会ったと、思い出すのも穢らわしいと、忘れてしまうといい。
そうして、

あんたは
俺の知らないところで
馬鹿みたいに笑いながら
平凡でけれど平和な日々を
つつがなく
幸せに

──生きていけばいい。




おそまつ!
17名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 22:12:07 ID:B7gDx/C3
>>15-16
あ、ちなみに前スレで話題になってた緊縛と鏡プレイを
勝手にネタにさしてもらいやした。
オッケーイエロー!(敬礼)
18名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:21:48 ID:7XLUxdjL
GJ!!内面描写がせつねえーーー
19名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 01:41:06 ID:eLGAb8oB
前スレで鏡プレイを出した者です。
ああ、こんないやらしく使われるとは…感謝感激。

最後のくだりで薬売りが嫌な人になりきれてないのがいい。
そして切ない。GJです。
20名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 02:42:44 ID:z5YLWy8i
>>16
イイヨーイイヨーGJダヨー!!!緊縛鏡レイープご馳走様でした!しかしなんて切ない薬売り
いつもそうやって誰かと想い合うことを避けて生きてきたのかと思うとホロリとくる
21名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 19:16:19 ID:FC8iUlAp
>>15
GJGJ!! やらしくて切なくてイイ!
世界に引き込まれて戻ってこれない。勝手に続きの情景が頭で再生されてるよー。
22ドS:2008/01/07(月) 21:11:53 ID:T/0/JUw9
新スレ乙!
ちょっとだけだけど投下します。
23加世×ハイパー:2008/01/07(月) 21:13:31 ID:T/0/JUw9
 帯を解き着物の合わせを開くとそのまま倒れ込み豊かな乳房を男の胸に押し付ける、柔らかな塊が平たく形を変え男の体温が移るかの様に先端が淡く尖った。
「はぁ…ぁん…」
 先端を男の胸に擦り付けると痺れるような快感に襲われ、興奮が高ぶり身体中が男の味を求めて疼きだした。
男の胸に唇を這わせるとぴくんと男の体が震えた、その反応を楽しむように先端を口に含んだ。
「ぁ…はっ…」
 切な気な、また拒絶を示すような声が漏れる。
「嫌なの?でも…だめ、やめないもん」

男の乳に吸い付いているなどなんとも奇妙な気分だ、それも己よりずっと大きく屈強な男のものをだ。

きつく吸い上げ舌で弄ぶと男の体が戦慄き喉を反らす、女の様なその反応に堪らず加世が吹き出した。
「ふふっ…可愛い」
 尚も先端を愛撫し脇腹を撫でていると加世の尻に当たるものがある、それは徐々に質量を増し加世を地から押し上げる様に立ち上がってきた。

腰をくねりそれに尻を擦り付ながら男を見下ろすと目覚めぬまま加世の動きに合わせ荒い息を吐き呻いている、そんな眠れる男に加世は僅かに苛立ちをおぼえ初めていた。
24加世×ハイパー:2008/01/07(月) 21:16:09 ID:T/0/JUw9
「もう…全部見ちゃいますよ」
 小さく男に囁くとその下履きに手をかけスルスルと紐を解く、拘束するものがなくなった事で下腹部の膨らみが増し布を押し上げた。
男の下半身を覆うだけとなった布をずり下ろすその行為に加世の胸は高鳴りほぅと熱い息を吐いた、

―私…男の人にこんな事してる…―

体の関節が固くなり指先が震える。

下履きを足の付け根まで下ろすと風変わりな黒い褌が晒された、中心が大きく盛り上がり股に引きつれている。
 褌の上からそれを掌で撫でるとじわりと布越しに熱が伝わる、
「大きい…」
 思いの外大きな男のそれに加世が息を飲んだ。

ごくりと生唾を飲み込み褌の結び目をすっと引いた、それまで恥じらいからか躊躇からかひどく緩やかだった手の動きは嘘の様に情欲に駈られ滑らかに動き回っている。

焦った様に褌を退けると加世の焦がれるものがついに露にされた。

「ぁあ…すごい」

 ビクビクと脈打つそれは男の肌と同じく色素が濃く先端から透明な液体を滲ませている、そして何より腕と見紛うほどに太く巨大なものであった。
25名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 21:51:50 ID:SqSwC9RU
規制かかってる?
26名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 23:18:43 ID:YV4q8d/3
あばばばば、これなんて焦らしプレイ?

前スレ>>854
GJGJ!! 隙間から覗き見るってのが、こんなに淫靡だとは……!!
目からウロコぽろぽろでした。
27名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 21:22:54 ID:5iE4UgbB
前スレ天秤の方へ
あなたに会いたいです。まさかこんな気持ちになるとは…
28名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 21:38:19 ID:VquwoJGF
???
29337:2008/01/08(火) 22:34:08 ID:qnjdkFzz
ずっといたけど御久。

>>27こんちはーノシ
これは『あんだけ投下しまくってたくせにぱったり姿見せなくなって、
続きどうしやがった投下しやがれこんにゃろー』という意味だと
受け取ったw

あの……エロがないんだ、けど……orz
しかもなんか、海坊主並に長くなってるんだけど……orzorz
ごめん。でもこのスレがなかったら生まれなかった話だから、
ここで完結させたいんだ。ダメな人はNG登録よろしくです。
もーちょいエロ話の投下を待つつもりだったけど、まぁいいか。
前半行きます。全9レス予定。
オ リ キ ャ ラ し か い な い 。
30名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 22:36:02 ID:wtXH5yST
気になるってばよ
31前と後の事語り〜再び化猫〜 1:2008/01/08(火) 22:42:43 ID:qnjdkFzz
〜市川節子〜

 がん、と安酒のコップが耳障りな音をたてた。シミの浮いたカウンターの向こうで、
大将がちらりと視線をあげるが、肩をすくめて仕事に戻る。もう腕が思うように動かず、
力の加減がうまくいかない。その辺にしちゃどうだ、と隣から軽く諫められるが、
今夜は酔わずにいられないだけの理由があった。悪い酒になるとわかっていても、
彼はぐらぐらする体をカウンターで支えて、もう一杯、とコップを突き出す。兄ちゃん
荒れてんなぁ、と隣の男の苦笑する気配。
 あれ、と彼は酒精に毒された頭で疑問に思う。隣は、新聞社の、同僚ではなかったろうか……。
 彼の思考を読んだように、男は、ここに座ってた兄ちゃんなら、急の仕事が入った
とかで行っちまったぞ、と言う。俺ァあっちで呑んでたんだが、気になったからあんたの
面倒引き受けたんだよ、と。
 にかりと笑う、男の顔は目の辺りに影がさしてよく見えない。ガード下の屋台は
元より暗いが、多分に酔いのせいだろう。彼は、どうも、ととりあえず頭を下げた。
見知らぬ他人に迷惑をかけることは避けたいが、すでに足取りも覚束ない自覚はある。
 で、どうした、女にフラれたか、と男が訊く。手にしたコップを赤い舌でちびりと舐める。
白い液体。濁り酒か、とぼんやり思う。
「失恋なら、とうの昔にしてるんですがね」
 あいよ、と大将に差し出された清酒を自分もちびりとやって、彼は口を開いた。酔いが
深いわりにまだ呂律は回るようだ。同僚には散々うるさがられたが、誰かに聞いてほしくて
たまらなかった。
「とっくに、フラれてんですよ……。でも、好きだった。諦められなくて」
 ひひ、と隣の男は笑う。その嬢ちゃんが、結婚でもしちまったか?
「そんならいいんですよ!」
 彼はがんとカウンターへこぶしを叩きつける。酒の面(おもて)にさざなみがたって、
すぐに消えた。
 感情も、こんなふうに収まるものなら。
 彼はぐっと奥歯を噛み締める。震える喉を振り絞るようにして、言葉を吐き出した。
「死んじまった。……自殺、したんだそうです」
 本当に、結婚の知らせであればどれほどよかっただろう。もちろん胸は痛んだろうが、
こんな知らせとは比較するべくもない。
32前と後の事語り〜再び化猫〜 2:2008/01/08(火) 22:46:01 ID:qnjdkFzz
 隣の男は一転して、そうか、と沈痛な声を出した。
「彼女が自殺なんて、僕には信じられない。陸橋から飛び降りて、その上電車にまで
轢かれるなんて……」
 さぞ、酷い死に様であったろう。生前の美しさは欠片なりと残っていたのだろうか。
通夜に出させてもらったが、棺はかたく蓋をされて対面はできなかった。それとは裏腹の
遺影の笑顔が喉を締めつけて、彼女によく似た面影の女性のすすり泣きが苦しくて、
ろくに顔をあげられなかった。
「なんで、自殺なんか……」
 喉の奥に凝った熱い塊が火を噴くようだ。彼はまたぐいと酒をあおる。……ほんの
一瞬の慰め。抜けてしまえばたちまち塊は存在感を増し、ますます喉を圧迫するようだった。
「彼女は、同期だったんです。さっきのあいつと三人、同じときに今の会社に入って」
 そうか、と隣の男は相槌を打ってくれる。
「女だてらに、て周りは言うんですよ。見目はいいのに気が強くて、変に知恵つけた
女じゃ嫁の貰い手もない、て。まぁ……確かに、従順な女性じゃ、ないですけど」
 兄ちゃんはそういうのが好みかい、と、あえて普通の女の話のように訊かれるのが
嬉しかった。酒の席、男同士のくだけた会話。いつの世も、人間の関心事など、
そう変わりはしないとばかりに。
「……僕、会津の出身なんです」
 唐突な話題の転換に、男は、ふぅん?と首を傾げた。それにしちゃお国訛りがないね、と
言われて、彼は苦笑した。
「東京には、学校のために十五のときに来ました。会津者だってわかると何かと肩身が
狭いんで、必死で直したんですよ」
 なんでかねぇ、と男は酒の合間に煮干しをつまんでいる。御一新の時代も、とうに
昔のことだのにねぇ、と言う男に、彼は我が意を得たりとばかりに頷いた。
「そうなんです。汽車が走って電話が通って、こんな時代に今更会津も長州もないもんだ。
馬鹿馬鹿しい。……そう、思いはしても」
 彼は少し笑う。
「情けないことです。いざ侮蔑と嘲笑に晒されると、これが耐えられなかった。言葉を直して、
めかしこんで、東京者みたいな顔を必死で装って、それでも生まれがバレやしないかと
びくびくしてました。実家にもろくろく帰らず、文もやらず」
 親不孝だなぁと、率直な言葉が身に染みた。深く頷く。
「まったくです。馬鹿なことをしたもんだ。……それを、気づかせてくれたのが彼女でした」
 おぉそこにつながんのか、と男は口の端からはみ出した煮干しの尾をぴこぴこと
上下させた。
33前と後の事語り〜再び化猫〜 3:2008/01/08(火) 22:49:53 ID:qnjdkFzz
「どれだけ必死で努力しようと、会津者が出世できるわけないって、いいかげんな
仕事ばかりしていた僕を、彼女は思いきり平手で打ちましてね。ならあんたの体を
寄越せって、物凄い勢いで怒るんです。私がどんだけ望んでも得られない男の体を
持ってるくせに、努力する気がないなら女になって嫁にいけ、一生自分にないもの
指折り数えて、旦那に不平不満を言っていろ、てね」
 ぶ、と男が吹き出した。そいつァまた剛毅な嬢ちゃんだ、と笑う。でしょう、と彼も
笑ってみせた。
「これで目が覚めなきゃ、それこそ男じゃないですよ。そう思って縮こまってた心を
恐る恐る伸ばしたら、これがまたびっくりするほど楽じゃあないですか。随分
ひさしぶりに深呼吸した気がしてね、つまんないことにびくびくしてたもんだと
思いました。……でも、意外とね、そのつまんないことがあっちこっちでまかり通って
しまってる。なら、せっかく新聞記者なんだ、僕がそれはつまんないことだって世間に
伝えてやろう、そんで新しい日本が本当に生まれ直すための一助になるんだなんて、
先の目当てまでできて」
 なのに、とまた言葉が詰まる。コップに触れる指へ強く力を込めたところで、
自殺じゃなかったんかもなぁ、と、男がぽつりと言った。
「―――っ!? それはどういう、」
 あ、いや、と男は彼の剣幕に驚いたように手を振る。しばらく黙って、実際のところ
兄ちゃんはどう思う、と逆に訊き返された。
「……僕は」
 ―――どうして相談してくれなかったのだ、と思った。
 がっくりと肩を落とした森谷デスクに、最近仕事に悩んでいたようだったから、と
聞かされて、無力感にうちひしがれた。好きだなんて言わなければよかった。ただの
同期であったなら、死ぬほど思いつめていたその胸中を、一言でも聞けたかも
しれないのに。
同期のよしみというものは、その程度には深かったろうに。
 ―――そんな馬鹿なと思いつつ、自分は。
 自殺だと、信じてしまって。
 彼女をちらとも知らなかった警察の言と、まがりなりにも想いを寄せていた自分の目と。
 どちらを、信じるのだ。
「……大将、お勘定を」
 あいよ、と低い声がぶっきらぼうに言う。その声がいつもと違うような気がしたが、
彼の心中はもうそれどころではなかった。まずは一刻も早く会社へ。
 まぁ待てや、と隣の男はコップを差し出す。ふらふらしてんじゃねェか、水の一杯
くらい飲め。
 ありがたく受け取って飲み干す。どこか懐かしい味がした。故郷の、水の味だ。
ぷはぁ、と息をついて、口元を拭う。
「これは、美味いや。東京は水が不味くって」
 だよなァ、と男は頷いた。大将が寄こしたお釣りを財布にしまい、彼は二人へ深々と
頭を下げる。
「ありがとうございました。僕はこれで」
 またな、と男は片手をあげる。駆け去った彼の背後で、にゃあと猫が鳴いたような
気がした。


34377:2008/01/08(火) 22:59:52 ID:N6krKbL7
携帯より。なんか投下できないぞ。なんだろ?
35名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 23:48:43 ID:5iE4UgbB
こっちも携帯からだ!待ってたぞこんちくしょー!!

なんとかこのもやもやを消化したかったんだ…

悪い意味ではない。エロがないのは個人的にはぜんぜんきにしてない!
というより、内面のとろりとしたねばっこい感覚が大人の時間を感じさせる。こんなエロパロがあってもいいんじゃないか?

って超興奮中だ
36名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 23:49:26 ID:28nl7efu
これは…愚痴るモボ島様じゃない…よね?
転生後のぎゃいかおじゃるかと…大将誰?
37名無しさん@ピンキー:2008/01/08(火) 23:57:26 ID:5iE4UgbB
息をただして…


すまん、暑くなりすぎた…
ただ叶うなら…どうか薬売りとチヨにはふれてくれまいか…
38337:2008/01/09(水) 00:20:11 ID:LE4bHVb/
今更気づいたが自分は337であって377じゃないよなorz
ぐあ恥ずかし!いつから間違ってた!?

ごめん時間切れ。書き込みましたって出るのに反映されない…。
節子編はとりあえずここまでなんで、キリはよかったけど…。
ドSさまもこれに捕まった?のか?
とりあえずID変わったら書き込めるかテスト。
39746:2008/01/09(水) 00:34:35 ID:5cah6rkq
>>36
モボ島様と聞いてすっ飛んできました。
が・・・

いったいなんのことやらと、考えること数十秒・・・ようやく気付いた・・・orz

>>38
いつも思うのだが、立て続けによくそんなに話が書けるなあと、ほんとに感心してる。
自分は一個書き上げるだけで息切れしちまうもんで・・・
40名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 04:39:56 ID:gadTCL74
>>39
モボ島様の需要が結構ある件
41名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 05:33:28 ID:tQuhRt8K
この混乱に紛れてコッソリ…
ドSさま大好物です。続き待ってました。
いつハイパーが目を覚ますのか、覚まさないのかスリルを楽しんでます。
微Mより
42337:2008/01/09(水) 18:52:05 ID:ThBSIgVh
この時間ならどうだ!?
……変なところで切れてたら、察してくださいorz
昨日投下するはずだった予定だったとこまでいきます。

モボ島さまじゃなくてゴメンw
昨日も言ったけど前半はオリキャラしかいないんだ。
強いて言うならマネキンの話。
文章表現上髪がどうとか頬がどうとか書いてるけど、
ビジュアルイメージは全部白ののっぺらぼーだw
43名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 22:09:29 ID:nalUZrI8
むり…なのか…
44前と後の事語り〜再び化猫〜 4:2008/01/09(水) 22:12:29 ID:ThBSIgVh
〜福田寿太郎〜

 部屋には、色とりどりの織物が散乱していた。
 和洋折衷の屋敷の中でも、奥向きのその部屋は和の趣きが強い。磨きこまれた
欄間や柱がずっしりと黒く光り、丸窓から覗く灯籠や紅葉が、屋内だけでは完結
しない空間の奥行きを感じさせる。障子が開け放たれ、柔らかな光が差し込む部屋は、
盛んに衣擦れの音がしていた。
 主役は年の頃十六、七の娘だ。熱心に姿見を覗き込んでは母と視線を交わしている。
肩口から裾まで花鳥風月が縫い取られた長振袖、あるいは細かく施された総絞り、
華やかな西陣の織。いかにも上流階級らしいすべらかな指が次々に鮮やかな生地を
撫で、控えめながら楽しげな笑いがさざめく。娘らの頭にあったのは、次回の園遊会に
何を着ていくか、髪をどう結うか、その席で行われる社交の段取り、そして娘の婚約者の
ことだった。
 出入りの商人は、言葉巧みに昨今の流行を語り、年頃の娘が映える品を選び
取っては娘の体に当てていく。おだてが上手いだけでは贔屓にされることはできず、
その点、彼は流行を嗅ぎ取る能力も、それを娘らの好みとすりあわせる能力も高く、
娘も母もその手腕を信頼していた。ああでもないこうでもないと、女特有の迷いを
繰り返しながら、品が選ばれていく。
「じゃあ、これにしようかしら」
「少し、地味じゃあない?」
「あら、あなたも来年には嫁ぐのですもの、慎ましやかな柄も着こなせるように
ならなくてはね」
 毎度ありがとうございます、と商人が頭を下げたときだった。切羽詰った声をあげて、
日頃沈着な家令が部屋に飛び込んでくる。奥様、と悲鳴のような呼びかけに、
女たちも商人も、訝しげな顔をした。
「なんです、騒々しい」
「電報が、旦那様が―――!」
 彼女らの日常は、そこで終わりを告げた。


 じゃっ、と手荒い音を立てて、娘は重いカアテンを閉める。きつく合わせ目を閉じて、
何度も隙間がないことを確認した。ここは二階、窓の外には広く敷地が続いており、
誰が覗くこともできないと頭では理解していても、そうせずにはいられなかった。
ここ数日いやというほど味わった、無遠慮に浴びせかけられる白い光、硝子を割って
飛び込んでくる石の数々が、彼女の神経に濃厚な影を落としている。
45前と後の事語り〜再び化猫〜 5:2008/01/09(水) 22:15:28 ID:ThBSIgVh
 すっかり薄暗くなった部屋でしばらく俯いていると、にゃあと聞こえてびくりと
肩が揺れる。すりと足元に温かなものが身を寄せて、彼女はほっと息を吐いた。
祖母の猫だ。
「……おまえ、私に付いてきたの?」
 にゃあ、と猫はさらに鳴いて、すりすりと彼女へ身を寄せる。その体を抱いて
寝台に腰を下ろすと、自分以外の体温に、張り詰めていたものが一気に緩んだ。
どうして、と嗚咽が洩れる。
 どうして、こんなことになったのか。
 父は、行儀作法には煩かったが悪い父ではなかった。それが、娘のための
躾というより、娘が嫁ぐことでよりよい人脈を築くためであったとしても、父が
探してきた婚約者は良い人であったし、不満などこれっぽっちもなかった。
福田の家柄であれば政略結婚などは当然のこと、幸福の量を決めるのは
結婚までの経緯でなく、結婚してからの過程だ。父を助け、夫を支え、子供を
育て―――そういう人生が待っているものと、疑いもしなかったのに。
 猫は膝の上でおとなしく丸くなっている。涙を拭う指先の感触で、頬がこけた、
と思った。ほんの数日で母はすっかり痩せた。自分も、あんな顔をしているの
だろうか。青白いばかりの肌、目の下には隈が浮き、髪はぱさぱさになって。
 気の毒に、と囁く声が耳の奥からよみがえる。
 ―――福田さまのお父さま、行方不明ですって。
 ―――新聞に出ていたこと、本当かしら。汚職だなんて……。
 ―――お金が絡むのはよくあることよ。それより、殺人の……。
 ―――しぃっ。ほら、福田さまがいらっしゃるわよ。
 ―――校長室に呼ばれたとか……。
 お気を落とされないでね、とそれまでの友人たちは言った。こんなもの、
何かの間違いでしょう。いずれ真実は明らかになるわと、手まで握って。
 けれど、女学校を辞めて以降、連絡はふっつりと途絶えた。屋敷には不調法な
記者たちが押しかけ、その記事に激昂した市民が怒声とともに石を投げ込む。
心労のあまり母が倒れて、彼女たちは夜陰に乗じて母の実家へ逃げ出した。
まるで夜逃げのよう、と泣く母を懸命に宥めながら、彼女も必死で涙をこらえていた。
誰に言われたわけではないが、縁談も破談だろう。こんなことになって、あの人は
どう思っただろうか。最後にお別れを言うこともできなかった。
 記者たちの、暴力的とも言える喧騒とカメラは恐怖でしかなかったが、それでも
彼女は毎日新聞を食い入るように読んだ。いつ父の無実が証明されるのか―――
父はどこへ行ったのか。だが次々に書き立てられていく記事は、彼女が望むもの
とはまるで正反対だ。
46前と後の事語り〜再び化猫〜 6:2008/01/09(水) 22:18:23 ID:ThBSIgVh
 祖父は彼女が新聞を読むのを好まない。女がいらん知恵をつけるな、と
いうのが言い分だ。それでいて、他に言う相手もいないのか、盛んに彼女へ
記事の不平を漏らしている。
 祖父によると、地下鉄を通すのは大変なことなのだそうだ。それによって
多くの市民が働き口を得、地下鉄が通ることで近辺の経済も活性化される。
また、地下トンネルを開通するための技術も開発され、科学技術の研究発展に
多大な貢献をするものらしい。我が国の将来まで見据えたその功績に比べれば、
贈収賄など些少な問題に過ぎず、むしろ便宜を図ることで企業は安心して
仕事に専念できる―――と。
 政治とはそういうもので、騒ぎ立てる民衆が愚かなのだと言われれば、
彼女は反論する根拠を知らない。それは男の仕事で、彼女が学んできた
事柄にはなかったから。
 それでも、どうしても気になることがある。
 暗闇の中、彼女は猫の体に頬を寄せる。ごろごろと喉を鳴らされたが、
寄る辺なさに目眩がしそうだ。
 ―――私は、人殺しの娘なのか。
 地下鉄に関する諸事を調べていた女性記者が、かつて変死していたのだと
記事にはあった。
 石に巻かれて投げ込まれた紙には、日本橋建設に仕事を奪われ、会社が
倒産して首を括った男の家族の恨み言が連ねられていた。
 使用人たちが陰で噂する、父が乱暴した女性とはどんな人だったのだろう。
 そして、彼らの、父に対する恨みや怒りは、父の失踪により矛先を失い、
いまや彼女へと向けられて―――いる。
 名前も顔も知らぬ大勢の人間に、殺したいほど憎まれているという事実。
 死にたいと、毎日のようにうわ言で繰り返す母。
 暗い、暗い。深すぎる闇に、立つことさえおぼつかない。
 幾重にも厚く外界を遮断した部屋で、彼女はどうすることもできずに泣く。
膝の猫が、ぱたりと長い尾を振った。


47前と後の事語り〜再び化猫〜 7:2008/01/09(水) 22:21:51 ID:ThBSIgVh
〜森谷清〜

 母は毎日泣き暮らしている。
 彼はようやく切った電話に受話器を戻して、うんざりと息を吐いた。頭の中が、
耳から入った悪意に侵食されて、毒々しい色のもやがかかっているようだ。
 ―――まったく、とんだ恥さらしだよ。
 ―――世間様に顔向けができやしない。
 ―――毎日毎日、本当に肩身が狭くて。
 元から強い人ではなかったが、自分が今どれだけ不幸か、父がどれだけ酷い
裏切りを働いたか、連日のように繰言を聞かされるという立場に、いいかげん
辟易する。
 成人し、父と酒を酌み交わすようになってから、父は外で酔うと必ず「女は視野が
狭い、空気が読めない」と繰り返した。思わず頷いてしまったのは、母がそうである
からだ。
 悪人なのではない。母は良くも悪くも普通の女だ。たぶん父のことも、彼を含めた
兄弟たちのことも、母なりに愛している。だが、母が一番愛しているのは、
『良妻賢母と誉めそやされる自分自身』なのだということも、この年になれば
いい加減わかっていた。
 育ててもらった恩義は感じるものの、尊敬はできない。
 そんな母と、父がどうして結婚したのかも、理解不能だ。
 彼はまだ独身なので、夫婦のことはわからない。だが仕事をする男として、給料を
持ち帰るときこそねぎらわれはするものの、常に出世や給料で他所の家庭と比べられ、
夜討ち朝駆けの仕事に食事の準備が大変だと不満をこぼされ(しかも母自身は、
不規則な生活を送る父の体のことを心配しているのだと信じている)、疲れて帰って
きたところに、懸命に尽くしているのに誰も褒めてくれないと愚痴をこぼされる―――
そんな父を、正直なところ哀れに思う。
 そりゃあ、仕事にかこつけて家に帰らなくなっても仕方がない、と思うのだ。しかし、
あまりにも長く家を空けると、今度は浮気を疑われ、けたたましい声で詰め寄られる
ことになる。
 結婚は人生の墓場だと言う。冗談ではなく、父にとって家庭は墓標……でなければ
牢獄に等しかったのではなかろうか。少なくとも自分にとってはそうだ。女というものは
不機嫌なとき、何が気に障るかわからない。というより、何にでも怒りの種を見出す。
毎日毎日、母の機嫌を窺っては薄氷を踏む思いだった。学校を出て就職して、
一人暮らしを始めたときには、心から快哉を叫んだものだ。
48前と後の事語り〜再び化猫〜 8:2008/01/09(水) 22:24:27 ID:ThBSIgVh
 だから、父が失踪したと聞いたとき、真っ先に思ったのは駆け落ちだった。
実は愛人がいて、その女性との時間が心安らげるひと時だったのだとしたら、
息子としては複雑だが、男としては、まぁいいのではないかと思ったのである。
だが、現実はどうも違うらしい。
 本当に父が福田市長の汚職に関与していたのかどうか、彼にはわからない。
報道ではほぼ黒として書き立てられているが、仮に関与していたとして、
どうして犯罪の片棒を担ぐことになったのか、動機まで掘り下げている紙は
ないようだ。むしろ組織としての腐敗を糾弾する論調が多い。
 どうしてだろう、と思う。
 子供の頃、滅多にない休みに父は彼を肩車して河原へ連れていってくれた。
父さんは市民に真実を伝える仕事をしているのだと、それが民主主義の根幹を
支えるのだと、誇らしげに語っていた声を今でも覚えている。難しいことは
わからなかったが、子供が憧れるに足る父だった。新聞記者の息子であると
いう誇りにかけて、漢字の書き取りは真剣に勉強したし、満点の答案に、
母はもちろん、父がよくやったと褒めてくれるのがとにかく嬉しかった。
 話を聞きたい。何が父をそうさせたのか。だから、どんな事件に巻き込まれた
のかわからないが、無事に帰ってきてほしい。
「電話、終わったかい?」
 下宿先の大家がひょいと顔を出したのに、彼はありがとうございましたと頭を
下げた。
「あんたも大変だねぇ、毎日毎日」
 ええまぁ、と彼は曖昧に笑う。ご迷惑をかけてすみません、ともう一度頭を下げる。
「いいよ。今お母さんも大変な時期だろう。心細いんだろうし、話くらい聞いてやんな。
一度くらい、帰ってやった方がいいんじゃないのかい?」
 大家は、いかにも気のいいおばちゃんといった風情だが、やはり同性である
故か、幾分か母に甘い。あの性格を知って同じことを言えるかどうかは謎だ。
「俺も、仕事があるんで」
「休めないのかい?」
「父があんなことになって、社長は気にしないと言ってくれましたが、やっぱり
周りの目が厳しいので。今は、俺も踏ん張り時なんです」
 ああそうだねぇと大家は頷く。頷きながら、でもやっぱり、と言い出すのが女だ。
どうしてこう何度も同じことを言わなければならないのか、理解に苦しむ。
49前と後の事語り〜再び化猫〜 9:2008/01/09(水) 22:28:21 ID:ThBSIgVh
「そうだ、ミケにエサ、もうやりましたか?」
「いいや、まだだけど」
「俺、やってもいいですか。あいつ可愛くて」
 すっかりお気に入りだねぇ、と大家は笑う。ちょっと待ってな、と言われて、
戻ったときには猫飯と皿一杯の野菜の煮物を渡された。
「多めに作ったから、食べなさい。あんたら若い男は、ほっとくとろくなモン
食べやしない」
 一人で食べるにはずいぶん多かったが、ありがとうございますと押し頂く。
「じゃ、行ってきます」
「あいよ。よろしくね」
 猫ばっかり可愛がってないで、彼女も作るんだよ、と背後から言われて、
彼はこっそり息を吐いた。
 余計な口をきかない分、今は猫の方がよほどに気が楽だった。



   つづく



投下できたぁぁぁぁぁ!
心配してくれた人たちありがとう!
結局自分のミスだった! 一行目空行で始めたら弾かれるの
知らなかった……コンナ タンジュンナ コトダッタナンテorz
死亡組のお話おしまい。次は生き残り組です。
50名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 23:08:57 ID:nalUZrI8
GJ!!おつかれ!

続き待ってますからぁ!
51名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 00:16:32 ID:YuYJhaws
GJ」。337ェオェ゙ソェュェヌェケ
?ェュェャ?ェキェ゚」。」。+」ィ0??「」?」ゥ + ???? +
52名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 00:21:28 ID:YuYJhaws
文字化けしちゃった(@@
337さんGJ!!
続きが楽しみです+(0゚・∀・) + テカテカ +
53337:2008/01/10(木) 22:17:08 ID:zk6nTSJ0
まとめサイト更新したよー。
多数決的に、女体化?ブツへのリンクは削除しますた。
前スレ809氏、イラストも収蔵させてもらいましたがよかったですか?
リンクはネタ元作品のタイトル隣にあります。
54名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 22:36:45 ID:IMHuTyI1
>>53乙ー。
俺の記憶が正しければ、「加虐愛」にドS氏によるイメージイラストがなかっただろうか。
あれも保存できれば更に嬉しいな。

女体化?のやつ、どうも「薬売りは中性」という脳内設定な感じだったな。
特殊な設定のやつは、投下する前に皆の意見を聞いた方が良いと思う。
55337:2008/01/10(木) 22:55:38 ID:zk6nTSJ0
>>54
うん、あった。だが自分が保存してないんだorz
なにせ自分がスレに出没する前のもあって……。
誰かデータ提供してくださいお願いします。
56名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 00:06:14 ID:IJ9COPzY
2スレ目15です。337氏乙!
wikiの勉強がてら自分の作文修正してみた。
改行は深く考えずに~~で<br>一個分だと思うよ。

ドS氏の画像、自分も持ってないや…。力になれずすいません。
あと、あんな短い文にレスくれた方々ありがd!
嬉しかったです。
57名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 21:45:10 ID:4d8sFeMD
道中、夕立に見舞われたる折、雨宿りの席同じくするは紫煙くゆらす隻眼銀髪の薬売り。
類は供を呼ぶとはよく言ったものだ。
「お邪魔、します」
「ああ」
「参りましたね」
「まったくだ。ろくに前も見えやしない」
「しかし、すぐにやむでしょう」
「だな…あんた、同業者か」
「貴方が、薬売り、ならばそうなります」
「いや、そっちの仕事じゃない。なんというか、人ならざるものを扱う仕事、してないか」
「…はて、なんのことやら」
「はは、言いたくないならいいけどな。あんたから"奴等"が逃げてくもんで気になっただけさ」
「…」
天秤を一つ指に載せると、チリン、と男にむけて首を傾げた。
「あなたも、少し違いますね」
「片目を奪われたときに、俺は半分奴等になっちまったのさ」
「…やはり違いますね」
「ん」
「同業者ではない、ということですよ」
「ああ、どうやらそうらしいな」
雨が上がり、左からきていた隻眼の薬売りは右に、右からきていた薬売りは左に向けて歩きだした。
彼らは知らない。
既にもう一方の薬売りが通った道では薬がうれず、二人とも飯の種に困ることになる未来を。
58名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 22:27:49 ID:L04BfdNu
うおぉ!! ギンコと薬売り、夢の共演www
59名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 23:03:40 ID:iPDA5Qz2
?? 夢の競演はいいんだが・・・
エロパロでもないし、投下前のレスもないし・・・誤爆?それとも続きあるのかな?
60名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 00:13:17 ID:MEV5vPpS
短いけど、前スレ>>818続き



 薬売りらの舌が手が、加世の肌を丹念になぶっていく。柔らかく吸いつくかと思えば弾力をもって指から逃げる感触に、どれだけ触れても飽きる気がしなかった。まして時折甘い声をあげられ首を左右に振って耐えられては、腰が疼いて仕方ない。
 薬売りたちは揃って心の中で刻を数える。先ほど加世に飲ませた薬が効いてくるまで、あとどれくらいかかるだろう。狂わせてみたい、求めさせてみたい。ぽってりとしたこの愛しい口唇が、一言欲しいと漏らしたら、一体どんな心地がするだろう。
 終わった後、怒られますかねぇ……と、どれかがちらりと思う。それは共有意識の内を伝播して、ちらちらと薬売りたちの目の中に後ろめたさがよぎった。

 本当は、この辺りでやめておいた方がいいのだと……、誰に言われるまでもなく、わかっている。

 末っ子と揶揄混じりに呼んでいても、あれだとて自分には違いない。もっと打算的な部分でも、この行為に加世が負の印象を抱いては、長期的に見て不利になるばかりだと―――承知しては、いるのだが。
 自制が、きかない。
 いや、引きとめようとする声を振り切って、確信的に踏み外そうとしている。
 加世が応えてくれた、今も応えてくれる、その喜び。何度でも確かめたくてしかたない。
 浮かれ騒ぐ心は、一方で憂さ晴らしの酒に似た不安定さを内包している。人は変わるもの、そして儚いもの。想いの成就は同時に喪失の恐怖を薬売りに与える。

 明日だの未来だの、そんな不確定なものより今が欲しい。

 業が深い、と薬売りらは自嘲する。それでも今は、何も考えずに加世を味わいたかった。
 今だけは、せめて。

 薬売りらの真ん中で、加世の体が震える。潤んだ瞳、濡れた睫毛がうっすらと開いた。
「……く、薬売りさん」
「はい」
「なんです?」
「あ……な、なんか、あたし……ヘン」
 切れ切れに訴えられる言葉に、沸き立つ心と、申し訳なく思う感情とを同時に押し殺し、薬売りたちはしゃあしゃあと口を開く。
「変?」
「別に、どこも変ではありませんよ?」
「綺麗ですよ」
「可愛いですよ」
「そ、そうじゃ、なくってぇ……」
 もじもじと擦りあわされ始めた膝に、薬売りたちが密かにほくそえんだ。



精神的に『がっつかせて』みたー。
新スレでも職人さんたちの素敵な連携プレイが見られることを祈って、
ヘイ、パス!
61名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 00:43:38 ID:CehCK+WL
改めて読み返すと、結構いろんなエロパターン網羅してるんだな。
あと足りないのは触手くらい?
薬売りズなら触手くらい出せそうな気もするがw 妥当なとこだとモノノ怪に
ヤられちゃう感じだろうか。
そういえば旧化猫じゃハイパーの模様が空中に飛び出してた…使える?w

ドS氏の、加世の玩具にされてるハイパーは、模様ない状態かぁ。
62名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 01:02:50 ID:miMMRVkZ
>>61
寝てるんだから目玉模様閉じてたりして。
目覚めると共にバチバチバチーって見開くとか。

二人同時にびっくりするぞ?
63名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 03:10:52 ID:q2685DQP
そこでタコを使うんだ
64名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 06:41:15 ID:EKMgeVCG
>>60
精神的がっつきうわあああああ!!
青春スーツ着用したな、薬売り。すばらしい。

>>63
イッた瞬間に墨を吹かれて茫然自失の加世と笑ってよいものかどうか悩む薬売り
65名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 08:41:10 ID:4uWp6GLF
展開迷ってたら先越されたw
GJな>>60続き




その間も刻一刻と、加世の様子は目に見えて変化していく。
「あ……、ああぁ……っ」
耳朶に吐息がかかれば声を上げて仰け反り、爪の先で胸の丸みをなぞられれば全身をびくびくと震わせる。
薬売り達の柔く緩やかな愛撫に対し、明らかに、過剰な反応を返すようになってきた。
太めの眉を切なそうに寄せて、乱れ始めた吐息を何とか整えようと浅い呼吸を繰り返す。
「だ、だめぇ……あたし、やっぱり、ヘン……っ!」
ゆるゆると首を振りながら懸命に、内側から沸いて溢れ出ようとする何かをどうにか抑え込もうと、自身の腕で己が身を抱きしめ、赤子のように丸くなろうとする。
それをやんわりと両側の二人が押し留め、手の甲、指先へと口付けを落としながら宥めすかした。
加世の身の内で熱く悩ましく暴れるものが何であるのか、一服盛った当人達からすれば分かりきったものではあるが。
「変……とは?」
「どういう、ことです」
「加世さん」
空惚けて問いかける薬売り達に、加世は頬を紅色に染めたまま、心細げな、縋るような涙目を向けた。
平素のきゃいきゃいとした、陽の気の塊のような加世の溌剌さは薬売りの好むところであるが、そんな娘が垣間見せるしおらしさ、弱さは、滅多にお目見え出来ぬものであるからこそ、男の心をざわざわと煽り昂ぶらせる。
ましてやそれが、自分(達)だけが見ることの出来る、自分(達)だけに向けられた媚態であるなら尚更。
「加世さん」
「加世さん……」
これ以上ないほど優しく甘く囁きかける薬売り達に、信頼かはたまた観念からか、加世は自らの吐息で湿った唇をわななかせながら、「からだがあついの……」と消え入りそうな声で白状した。
「あ、あつくて……苦し……っ、やぁん、なん、でぇ……!」
「落ち着いて」
「大丈夫、ですから」
「落ち着いて」
「そう、落ち着いて」
口々に宥められつつも、加世は男達の前で無意識に腰をくねらせ、閉じた膝をいっそうもどかしげに擦り合わせる。
汗に濡れた褐色の肌が益々熱を持ち、まるで色を混ぜ込んだように全身が赤味を増す。
温かそうで、実に美味そうな色、だ。
加世を見る薬売り達の目の色も変わっていく。いや、澄ました面を被り続けていることが既に、ままならなくなってきただけだ。
66名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 08:49:33 ID:4uWp6GLF
続き



「加世さん」

一人のひと声が、合図となった。

「私、達に。……どうして欲しい、ですか?」
一人が、指先で膝頭から太腿にかけてをつぅとなぞった。
「ひぁっ!」
力んでいた膝が緩んだところへすかさず、一人が体を割り込ませる。
加世の脚の間を陣取った一人がとんと軽く肩を押せば、その体は簡単に傾げ、待ち構えていた一人が抱きとめた。
胸の膨らみの下から脇腹を通って腰、さらにその下へ、脚の付け根の線に沿って中心に向かうように、指を這わせる。
加世の腰がびくりと跳ねたが、その指は肝心なところへは触れず、引きかえしてしまう。
「やぁ……っ!」
泣きそうな声が加世の口から飛び出す。その声音に落胆が混じっているのは、決して気のせいではない。
その後も焦らすように、白い手がかわるがわる、軽く触れては離れてゆく。
「加世さん」
「教えて、ください」
「私に」
「私達に」
「して欲しい、こと」
柔らかな快楽も、熱を持て余した体で受け続ければ、それはもはや拷問に等しい。
加世の理性の箍は、そろそろ限界に達しようとしていた。
「お、おねが、い……」
切羽詰った、嗚咽を堪えるように途切れがちの、けれども甘い声。
「もっと、触って、ください……っ!」
その言葉を聞いた途端、脚の間にいた一人が加世の腰を抱え込み、下腹を押し付けてきた。
熱く硬く存在を主張する男そのものが、ぐっしょりと濡れそぼった娘の花弁に張り付き、肉の芽を擦り上げた。



がっつきながらも涼しい顔して痩せ我慢w
お返し焦らしプレイの後まだ突っ込んでねぇー
こんなところでヘイ、パース!
67名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 10:33:29 ID:qBBHLst7
>>65-66
朝っぱらからなんというGJ!
やっべ萌えが止まらない。これから仕事なのにwww
68727:2008/01/13(日) 13:34:57 ID:YzAewvHY
業務連絡。
2スレ目、ここまでのリレーをまとめのほうに収蔵済です。
展開迷ってたらずんどこ話が先行っててアレヨアレヨという感じだw

しかし「がっつく」、職人さん達のツボに入っちゃったんだろうか。
69名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 19:06:11 ID:eYQAQHBJ
727氏乙! ありがd。

>>65-66
GJGJ!!
職人様方、できればでいいんですがパイズリとかも見たいでs
70ドS:2008/01/13(日) 20:22:38 ID:5jG7DJZm
727氏乙です。
俺のイラストはまたupできるんだがここにupすればいいの?
71337:2008/01/13(日) 20:42:45 ID:qBBHLst7
>ドS氏
ああ、ご本人降臨よかったー!
ここでもいいし、直にWikiにうpでもだいじょーぶです。
Wikiの場合は、編集ページに画像うpフォームがあります。
ここにうpなら、掲載方法をお選びください。

1.本文とは別ページにまとめうp
2.本文とは別ページに1枚ずつうp
3.本文の最後にまとめうp
4.本文の該当箇所に適宜挿入うp

Wikiへの画像うpのやりかた、まだ自分でもよくわかってないんですがw
1枚ならわかるんだけど……。
72名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 04:26:17 ID:0pkaT1vQ
>>69
シックスナイン乙w

パイズリは無論だが尻ズリも変態プレイ臭くて良いとは思わんか
いやイキナリ後ろ突っ込むのも可哀想だからさ
まずはそれで慣らすとかさ
73名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 05:15:09 ID:XejC8MpX
もしかして薬売りsはこういう会話を脳内で交わしあってんのかw
74名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 08:05:55 ID:JZV1wgYy
天秤ズだった住人たちが、いつの間にか薬売りズに…www
75名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 10:21:47 ID:lTIU77N3
モノノ怪を退治できる住人が集まるスレはここですか?w
76名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 18:01:37 ID:xV/NC4wr
むしろこの変態的執着と欲望はモノノ怪の域w
この因果と縁に感謝いたしたく候w
77名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 19:53:26 ID:JZV1wgYy
某所のSSじゃないが、薬売りの中にもやっぱり男としての
モノノ怪はいるんだなあ
78337:2008/01/15(火) 00:19:09 ID:PI9DF8wV
エロエロな流れをぶたぎって、天秤の人参上ー。
生き残り組前半投下。たぶん全7レス。
79前と後の事語り〜再び化猫〜 10:2008/01/15(火) 00:21:22 ID:PI9DF8wV
〜木下文平〜

 貧相なちゃぶ台の上に、寄木細工のオルゴオルが乗っていた。
 木下はひとつ溜息をつくと、ねじ回しを手にオルゴオルの蓋を開ける。覚悟は
していたものの、中でぐるりと輪になっている猫たちが一斉に木下を見上げるのに、
思わず肩が強ばる。真鍮製だろうか。鈍い金色に光りながら、すました顔で座って
いるもの、腹をみせて転がっているもの、丸くなって寝ているもの、前肢を伸ばして
うんと伸びをしているもの。親指ほどの大きさだが、毛の一本一本まで彫り込まれた、
なかなか精緻な出来の猫たちだった。裸電球が放つ橙色の光を、目の位置に
嵌め込まれた硝子玉がきらりと反射して、木下は思わず視線を逸らす。
 そのまま視界に映る自分の部屋は、狭いが片づいてはいる。珍しいのね、と昼間
笑われたことを思い出した。身辺整理をしているなどと言えるわけもなく、曖昧に
笑ってごまかしたが、不審に思われていたようだ。田舎から母が上京してきたことに
でもすればよかったか。
 木下は意を決して目の前の猫と向き合うと、息を詰めるようにしてネジを探り外して
いく。こまごました部品を手順ごとに番号を振った空き箱へと分類し、雑紙に軽く
図面を引いた。猫の乗った細工部分が外れると、大急ぎで布を被せる。トパァズ色の
視線が遮られて、大きく息をついた。
 幼い頃から機械の類が好きだった。歯車やネジといった鉄屑を集めては、うっとりと
眺めたり、拙い手つきで組み立てようとしたものだ。長じるにつれ、整備そのものより、
大型機械を自分の手で動かす華やかさに憧れて電車の運転士になったが、玩具の
修理くらいならわけもない。それを知っている女が、動かなくなってしまったオルゴオルを
直せないかと、昼間持ち込んできたのだった。
 大叔母にもらったのだと言っていた。音楽にあわせて、猫たちがくるくると回転する
細工らしい。見た目からしてかなり高価なものだろう、西洋文明の洒落た気配がする
それは、うらぶれた男一人暮らしの部屋からいかにも浮いていた。
 そんなことないわよ、と女は楽しげに笑って、木下の制服にブラシをかけていた。
これだって十分にハイカラじゃない?という言に、それは仕事着だからと苦笑した覚えが
ある。身分違いというほどに差があるわけでもないが、良いところのお嬢さんと言って
いい程度に実家が裕福な女には、いまいちピンとこなかったようだが。
 オルゴオルの箱をひっくり返し、今度は裏からネジを外していく。箱の中に手を
突っ込んで支えると、内蓋の赤いビロオドが、つやつやと手先に触れた。
 出世したかった、と思う。今更言っても詮無いことだとわかっていても、繰り返すことを
やめられない。出世して、彼女に釣り合う男になって、堂々と先方の両親に挨拶に
行きたかった。しかし、それはもう叶わない。
80前と後の事語り〜再び化猫〜 11:2008/01/15(火) 00:23:23 ID:PI9DF8wV
 一昨日木下の元へやってきた門脇は、そんなに重い判決にはならないだろう、
情状酌量もつくはずだと言っていた。だが、それでももう運転士を続けることは
無理だ。職場はたちまちに居心地の悪い空気へと変わった。暗黙のうちにかかる
圧力に、自然と背中が曲がり、うなだれて過ごす。左遷か、辞職か、解雇か。
地下鉄開通だけを見れば世は華々しい変化を続けているが、その背後には不況が
暗い影を落としている。仮に会社を辞めたとして、すでにそこそこ年齢のいって
しまった木下に、再就職先があるだろうか。
 こんな状態で、結婚など望めるはずもない。
 ―――していなくてよかった、と言うべきだろうか……。
 一人身ならまだなんとかなる。なんとかならずとも、野垂れ死ぬのは木下だけだ。
女や、もしかしていたかもしれない子供と、心中するようなことにはならない。
 懸案事はそれだけではなかった。
 今も時々背後から、底光りする猫の瞳が見つめている気がする。もし、もう一度
でも木下が何かを間違えたなら、即座に飛びかかろうと喉奥で低くうなり、爪を研ぎ、
牙を剥き出している。人の道理を解さぬ狂った畜生は、怒りのままに木下の周りをも
殺し尽くすかもしれない。
 あの鋭い爪に、愛しい者を引き裂かれるくらいなら。
 怯え惑いながら生きていくのは、木下ひとりでいい。
 入り組んだ作りからようやく内蓋を取り外すと、組み合った歯車が見えた。かりかりと
ぜんまいを巻いて動きを観察する。ひとつひとつはなんということもない金属片だと
いうのに、その切り欠きが噛み合い連動して大きな動きとなっていく様は、毎度のこと
ながら感心する。近代の象徴、無駄を削ぎ落とした美しさ。
 どうして人はこのように在れないのだろう。純粋に目的にのみ邁進していればいいのに、
見栄だの恨みだのと鬱陶しく、挙句に他人を巻き込んで人生をめちゃくちゃにする。
 木下の視線が止まる。美しい回転運動が一点で止まっていた。これのせいか、と
その周囲を見ると、バネがひとつ外れている。何かの衝撃で引っかかっていた部分が
落ちたのだろう。ピンセットでつまんで戻し、再度ぜんまいを巻いてみると、突起に
弾かれた金属がぽろぽろと音を立てた。
 直った、と木下は笑う。よかったな、と箱の外側を撫でた。音を奏でるためにある物が、
歌えないのでは辛かろう。これからは存分に、彼女とその家族へその澄んだ音色を
聞かせてやればいい。
 再度内蓋を戻し、順にネジを締めていく。布の下から取り出した猫も、もうさほどに
恐ろしくはなかった。取り付けると、なるほど金属の輪がゆっくりと回転して、その上の
猫たちも回る。硝子玉の目にあたる光の角度が変わって、きらきらと光るのが綺麗だった。
 木下は箱の中に封をした手紙を忍ばせると、そっとオルゴオルの蓋を閉じた。


81前と後の事語り〜再び化猫〜 12:2008/01/15(火) 00:24:58 ID:PI9DF8wV
「おい、新入り。客だぞ」
「客?」
 木下は機械油にまみれた顔をあげる。洒落た制服はあちこちに染みのできた
作業着に変わったが、なんとか職は失わずに済んだ。スパナを置いて新しい
上司を見上げると、頑固親父は倉庫の入り口のほうへ顎をしゃくる。かつかつと
高く靴音を響かせ、こんな場所には不似合いのスカート姿で現れたのは、
木下が先日手紙で別れを告げたはずの女だった。
「ど、どうしたんですか!?」
 目が腫れぼったいのはよほどに泣いたのか。何があったのかと、思わず
駆け寄ると、ばっちーん! という音とともに目の前に星が散った。
「ど、どうしたはこっちのセリフよ! な、何よこれぇっ!?」
 ぐしゃぐしゃに握りつぶされた手紙は、木下が書いたものだ。
 この女にだけは、どうあっても誠実でいたかった。
 悲恋に酔った気分もあったかもしれない。先日の事件のことを、化猫の件も
隠さず赤裸々に綴った。信じてもらえなくても仕方がないが、伝えておきたかった。
 いい加減なことを書いてと怒っているのだろうか。別れることには変わらない
だろうに、わざわざ職場まで押しかけて殴るほどに怒らせるとは思わなかった。
とりあえず激昂しすぎてまた泣き出した女を宥めようと、木下は慌てて口を開く。
「いや、これはあなたをからかおうとした訳ではなくて、本当のことで……」
「事故起こしたのは知ってるわよ! 市長汚職に関わりがあるんでしょ!?
新聞、国民日日も毎朝も東京も、売店に並んでるだけ全種類買ったんだから!」
「はぁ……」
 そうですか。
 迫力に押されて思わず口ごもると、ぎっ、と真っ赤に充血した目に睨まれる。
「だからってどうして別れなきゃいけないの!? し、しかもこんな、一方的に、
手紙だけで! あっ、あたしは別に、出世しそうだったから文平さんを好きに
なったわけじゃないわよ!!」
 しゃくりあげながら詰られて、木下はひたすらにおろおろする。そもそも木下は
女性に人気のある性質ではない。女の扱いには慣れていないのだ。こんなとき
一体どうしたらいいのか、皆目見当もつかない。
 わかってたけど、と女は泣きながら続ける。
「そういう、肝の小さいところが好きなんだけど! でもこれってあんまりよ!」
82前と後の事語り〜再び化猫〜 13:2008/01/15(火) 00:26:43 ID:PI9DF8wV
「……はい?」
 何が好きですと?
「いちいち世間体を気にして、なにかとおどおどびくびくして、なのに一生懸命虚勢
張って、人に裏切られるのが怖いもんだから、絶対言うこときく機械が好きな、
そんな文平さんが好きなのよ!」
 どう聞いても貶しているようにしか聞こえない言葉を吐ききって、女は少し
落ち着いたのか、ごしごしと目元を擦る。いつになく子供っぽい仕草に、木下の
鼓動が跳ねた。
「……だ、だって。電車の、運転手さんて、乗っているお客様、すべての命を
預かっているんでしょ。それで、時間も預かって。もし遅れたら、人生を変えるような
受験とか、会議とか、商談とか、もっと言うと親の死に目に間に合わなかったりする
かもしれないお仕事でしょ。小心なくらいでちょうどいいけど、竦んでしまっても
いけなくて、秒針とにらめっこしながらいっぱい心配して心配して、それでもぎりぎりで
踏み止まって、逃げずに勤めた文平さんは、立派だと思ってたの」
 脳天を、思いきり殴られたような心地がした。
 ―――そんな。
 そんな上等な男じゃない、と反駁しかける。
 口を開いて、でも、何も言えぬまま閉じて。
 自分は何もわかってなかったのだと、今更悟った。心のどこかで、今も己は
被害者だと思っていた。巻き込まれただけ。不運だったと。
 違う、のだ。違った。自らが犯した過ちが、この期に及んで身に染みて、鳥肌が立つ。
 彼女は、木下の運転する電車に安心しきって乗っただろう。なんの心配もせず、
定刻に目的地へ着くことを疑いもせず、木下にすべてを委ねて。
 その、全幅の信頼を。
 自分は、完全に裏切っていた―――のだ。
 運転士として新人の頃、うるさいほど言われた訓辞があった。命を預かるということ。
木下にとってこの女が大事であるように、電車に乗った一人一人に大事な人間が
いるという事実。否、本当はずっと言われてきた。慣れに任せて聞き逃してきた、
幾多の声の、その重み。
 取り返しがつかない―――。
 じわりとせりあがった塊に喉を塞がれて、鼻が詰まって、声にできない。がばりと
頭を下げ、すまない、と心の中で何度となく繰り返す。
 彼女はそんな木下の頬に手を添えるとぐいと頭を起こさせた。
83前と後の事語り〜再び化猫〜 14:2008/01/15(火) 00:28:43 ID:PI9DF8wV
「そんな文平さんを誇りに思ってた。けど、文平さんは機械じゃないのよ、
わかってる? ひとつ疵がついたからってハイおしまいってんじゃないでしょう?
あたしだって機械じゃないんだから、たとえそれが文平さんの好みじゃなくっても、
そう簡単にこんな酷い言い様受け入れたりしないんだから。ご遺族に頭下げる
ならあたしも下げる。世間の人が罵るなら一緒に罵られてあげる。……だから、
この先の道がどんなに辛くたって、お願いだからあたしのために頑張って」
 次第にまた涙声になる言葉を、信じられない気持ちで聞く。白い柔らかな手が
頬から下りて、木下の機械油で黒く汚れた手を握った。濡れた目が木下を
見つめて、それがあまりにも綺麗だった。
「―――生きて戻ってきてくれて、ありがとう」
 思わず強く握り返した手は、しばらくして「あー、」と空咳をした整備長と、
微笑ましげな同僚たちの視線に二人が我にかえるまで、つながれたままとなる。



〜山口ハル〜

 三角巾をかぶり、たすきをかけ、前掛けもつけて、ハルは掃除の支度を
万端整える。がさがさと古新聞を床に広げ、納戸を開けた。斜めに差し込んだ
日差しに、ちらちらと埃が舞い光る。
 納戸の中には、様々にガラクタが詰め込まれている。日頃さして多くを
買い求めているつもりはないのに、ただ暮らしているだけでずんずん物が
増えていくのは何故だろう。
 ハルは大小の箱をひっぱりだしては中身を検分する。季節の贈答品、古着の
端切れ、女ふたりで食べきれぬまま古くなった缶詰、昔いっときだけ嗜んだ
刺繍の糸束、
 夫の遺した昆虫標本―――。
 こんなところにあったのか、とハルは標本箱を取りあげる。放っておかれた割に
さほど傷んではいないようで、埃に汚れた硝子窓を拭うと、つやつやと輝く甲虫
やら翅の薄い蜻蛉やらが姿を表した。
 真面目で物静かで、時に気が弱いふうだった夫が、唯一夢中になるのが虫だった。
旅行に出かけるときは必ず虫取り網とカゴ持参で、向けられる奇異の目に、
なんとも言えぬ気分を味わったものである。正直ハル自身は脚の多いものが
得意な性質ではなかったので、家の中に持ち込まれた虫カゴの中身に悲鳴を
あげたこともあった。服も靴も泥だらけにするわ、一旦標本作りに集中し始めると
生返事しかしないわ、そんなとき迂闊に部屋を掃除すると怒るわで、長きにわたり
夫婦喧嘩の種だった。いつまでも夫が虫などに夢中なのは子がないからだと、
姑に責められ泣いたこともある。
84前と後の事語り〜再び化猫〜 15:2008/01/15(火) 00:31:14 ID:PI9DF8wV
 ……懐かしい。
 几帳面にひとつひとつ記されたラベルを指でなぞる。久しぶりに見る、夫の字だった。
 さらに奥を探ると、夫が愛用していた図鑑やらルーペやらの一式も出てきた。
丹念に埃を払い、黴びていないかひっくり返して確認する。あまり湿気のこもる
場所でなくてよかった。でなければ今頃、虫を苗床にキノコが生えていたことだろう。
 はらはらと、図鑑をめくってみる。白黒のペン画に夫が自分で彩色したもので、
昔はよく見せられた。やがてハルのひきつった顔に気づいたか、夫は無理に見せる
ことはなくなったが、はて、それは結婚してからどれだけ過ぎていただろう。ハルとしては
せいぜい蝶の頁くらいしか受けつけなかった。
 今見ても、やはり夫が心底慈しみ褒め称えたように美しいものだとは到底思えなかったが、
あちらこちらに書き込まれた夫の文字は、溢れるほどの情熱を伝えてくる。この関心の
何分の一かでもハルに向けてくれればよかったのだが、と苦笑して、折り癖のある頁に
出た。しおりのように、一葉の写真が挟まれている。
 こんなところに、とハルは眉を寄せた。滅多に撮るものでもないのに、きちんと
保存しなくては、傷んでしまうではないか。
 取り上げて、ハルはぎくりと体を強ばらせる。猫を抱いた若い女の姿に、先日の
出来事が一瞬まざまざと甦った。
 小さく悲鳴をあげて図鑑に叩きつけるように裏返す。大きく肩を上下させて深呼吸を
繰り返すと、恐る恐る、まためくってみた。
 なんのことはない、それはハルと夫の若い頃の写真だった。ハルはまだ二十か
そこらだろう。慣れないカメラに照れをにじませながら、幸せそうに笑っている。
 旅先―――だったはずだ。
 懐こい猫を可愛がっていたら、カメラを下げた男が、一枚撮らせてくれと言ったのだ。
 虫ではなく鳥が好きだということだったが、好事家同士、夫と妙に話が合っていた。
旅行後この写真が送られてきて、しばらくは季節の挨拶もしていたように思ったが……。
 何故こんなところにこの写真が、とハルは再度図鑑に目をやる。
 深い、瑠璃色の翅を広げる蝶の頁。
 こればかりは、初めて見たときからハルも綺麗だと思った。確か南方の島々に
生息するものだったはずだ。本物はもっとずっと美しい色で、それこそ宝石を砕いて
惜しみなく降り注いだようなのだと、熱く語った口調を思い出す。まだ付き合い始めの
頃、だったような……。
 傍らに添えられた、青インクの走り書きに目を落とす。
『ハルさんが好きになってくれた。嬉しい。』
 がっ、と頬に血がのぼった。あわあわと周囲を見回し、再度読み直す。当たり前だが
文面は一文字も変わらなかい。思わず図鑑を閉じてしまう。
「……あなた」
 まったく、何を書き残しているのだ。写真と、ハルが好きになった虫と、走り書きと。
こんな、図鑑の中なんかに、心の内を揃えて閉まっておくなんて。
「―――ハルさん、ハルさん。いないのかい」
 ふと耳に届いた姑の声に、はいと慌てて返事をする。出ていこうとしたが、足の
踏み場がない。急いで道筋を作るが、姑が顔を出す方が早かった。
85前と後の事語り〜再び化猫〜 16:2008/01/15(火) 00:32:44 ID:PI9DF8wV
「一体何をやって―――おや」
「すみません、お義母さん。少し、納戸の整理をと思って」
 どんな小言が来るかと身構える。呼んだらすぐに来てくれなくては困る、年寄りの
方を歩かせるなんてと愚痴られるか、あるいは散らかし過ぎだと嫌みを言われるか……。
 しかし、姑が口にしたのはそのどちらでもなかった。
「忙しいとこ邪魔したね」
 拍子抜けするほどあっさりと、姑はハルに背を向ける。障子戸を閉めかけた、
細い手がふと止まった。
「……ハルさん、あんた、あの男とは別れたのかい」
 背を向けられたままの不意打ちに、ハルは中途半端に腰をあげたまま静止した。
肩越しに振り向いた姑が、なんて顔をしてるんだい、と荒く鼻息を吐く。
「あの子が死んで五年だ。出て行くってんならあたしも止めやしないよ、せいせい
するさ。だけどあんた、男を見る目がないよ。ろくな噂がないじゃあないか。どうせ
再婚するなら、あの子以上の男を見つけといで」
 ふん、と顔を戻し、去ろうとする姑に、ハルはへなへなと腰を下ろす。
 ―――知って、いたのか。
 知っていて、黙って見守っていたのか。
「お義母さん」
「なんだい」
 ぶっきらぼうな声音に、謝罪など受け入れられないだろうな、と思う。迷いながら
言葉を探して、結局無言で頭を下げた。
 姑もまた何も言わずに息を吐き、体の向きを戻すと、はいよと手拭を出す。
きょとんと見あげると、ハルに無理やり押しつけるようにして、今度こそ去っていった。
 ゆらゆらと視界が歪む。
 その段になってようやく、ハルは自分が泣いていたのだと知った。
 古い写真の中で、猫はただ満足そうに目を細めている。



   つづく
86337:2008/01/15(火) 00:34:54 ID:PI9DF8wV
次回に正男と門脇がきて、ゲスト終了。
その次にチヨと薬売りの話が来て、全編終了(`・ω・´)
長くてごめん、もーちょい付き合ってね。
87名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 01:25:57 ID:R/tH64Cb
みじゅえの生まれ変わり?がイイ女だぁぁぁ!
そして337氏の手にかかるとハルが可愛く思えて困るw
88名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 07:03:08 ID:hL+QK/Np
元の話のイメージはそのままに話膨らませられるのがすごいなー!
標本のくだりにホロリ…
89名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 10:50:32 ID:f+Onb4L5
お義母さんにぐっときた…!!
90337:2008/01/16(水) 20:53:57 ID:KaKpRRn6
さと話書いた影響か、自分の中でハルさんは可愛いキャラらしいんだw
我がことながらよくわからない。

投下いきます。ゲスト話完結5レス+α2レス?
+αについてはもっかい下で書きます。
91前と後の事語り〜再び化猫〜 17:2008/01/16(水) 20:56:11 ID:KaKpRRn6
〜小林正男〜

 今月分だよ、と渡された封筒を、正男は深くお辞儀しながら両手で受け取った。
給料日の午後は、半日だけ休みがもらえる。月に一度自宅に帰る日、正男以外の
住み込みの少年たちも荷物を抱えて並んでおり、狭い店の中に浮かれた空気が
漂っていた。
 牛乳瓶がずらりと詰まった重量のケースを軽々持ち上げてみせる店長は、
今日も立派な力こぶを披露しながら、どんと少年らの前にハネ物の牛乳を詰めた
箱を置く。運送中に蓋が外れたり、瓶にヒビが入ったりしたが、飲む分には
問題ないものだ。一人三本、土産に持ち帰ることを許されていた。基本的に毎日
牛乳を配達させるような客は金持ちだ。その瓶が自分の物として手の中にあると、
その白さは仕事中見る以上に輝いて見える。
 声変わりも済まない少年たちは甲高くさざめきながら、もう少し年長の少年たちは
やや寡黙に格好をつけて、次々に自転車へまたがって町の方へ消えていく。
見送る正男の背に、店長が、野太い声をかけた。
「どうしたぃ正男。帰らねぇのか。言っとくが遅刻したら晩飯は抜きだぞ」
 はい、と正男は頷く。育ち盛りの少年たちの食欲の前に、用意された食事が残る
ことなどありえない。食事時はいつも戦争で、時間に間に合わない方が悪いのだ。
 正男の視線を辿った店長が、ああ、と頷いた。
「今日はあの姉ちゃんらが来る日か。言伝なら預かってやるぞ」
「いえ。今日は自宅に帰るって、こないだ言っておいたので」
 霧ヶ原陸橋の上では、供えられた花々が鮮やかだった。なんだろうと足を止めた
通行人が、花に埋もれるようにして重なった新聞に事情を悟ったように頷いて、
手を合わせるのが見えた。
「なら、とっとと行ってこい。日が暮れちまうぞ」
 はい、と正男は頷いて、吹っ切るように自転車へ駆け寄る。ぐいとペダルを
踏み込み体に加速がかかったとき、色気づいたかな、とおかみさんへ笑う店長の
声が、微かに背中に届いた。
 ―――そんなんじゃない。
 チヨは綺麗だと思う。優しいし、いい匂いもするし、その割に気さくで、話しやすい。
あの事件の渦中でも、正男のことを結構気にかけてくれた。小学校を卒業した
年齢の男が泣くなんて、今思い返せばちょっと恥ずかしいが、チヨは軽蔑したり
しなかった。子供扱いされてはいるが。
 前回会ったときは、背ぇ伸びたねぇー!と驚いたようにイガグリ頭へ手を
乗せられた。男の子は伸び始めると早いから、きっとすぐに追い抜かれるわよ、と
ハルが笑っていたことを思い出す。
92前と後の事語り〜再び化猫〜 18:2008/01/16(水) 20:58:44 ID:KaKpRRn6
 ―――子供、なんだなぁ……。
 ぐいぐいとペダルを踏み込み、風を切る。途中までは毎朝通う配達経路だが、
途中で角をひとつ曲がった。
 自分で金を稼いではいる。鞄に大切にしまいこまれた給料袋は、弟らの大事な
学費になるはずだ。持ち帰る牛乳も、競いあって飲むだろう。初めて給料の袋を
母に渡したときの誇らしい気持ちと、押し頂くようにして受け取った母の、
お疲れ様です、というそれまで聞いたことのなかった声の響きは、たぶん今日も
変わらずもたらされる。
 だが、やはり正男はまだ子供で、見えるところ、見えないところでたくさん大人が
助けてくれているのだ。
 あの事件の関係で、正男は一度警察に呼ばれた。そうして帰ってきた正男を、
少年らはまるで英雄のようにもてはやしたが、別にたいしたことがあったわけでは
ない。警察の事情聴取というのは同じことを何度も何度も繰り返し聞かれるので
うんざりしたが、門脇の口添えもあってか、若い刑事にお菓子やら丼飯やらを
やたらに勧められた方が、よほど記憶に残っている。たいしたことが話せるわけ
でもない正男に、しっかり食って大きくなれ、と、笑って背を叩いてくれた。
 保護者として店長もついてきて、仕事に穴を開けることに恐縮する正男に、
むっつりして腕を組みながら、気にするなと言ってくれた。正男は親御さんからの
大事な預かりものだと、店にいる間は俺が父親なのだから下げる頭は下げにゃ
なるまいと言ってくれた店長の背中はいつも以上に大きく、正男は己が急に
小さくなったような心地がしたものだ。
 同様に大きかった背中が、記憶の中に、もうひとつある。
 店長と違って、さして逞しさはない。おかしいほど派手な着物、女結びの帯と、
一つ目の模様。
 あの事件で、正男は随分汚いものを見た。
 大人だからといって立派とは限らない。そんなことはとうに知っている。正男の
父は借金を残して女と逃げた。正男が子供らしくあれたのは、母と兄姉たちが
懸命に働いてくれているからだ。
 ずるいことも、卑怯なことも、臆病で小心なことも、面倒で手を抜くことも、
人にはある。
 それを少年らしい潔癖さで拒絶するには、でろりと濁って自分の顔に嵌まって
いた目の記憶があまりにも鮮烈で、正男には無理だ。
 同類だ。自分も。誰もかれも。
 それでも、不思議とひねた気持ちにはならなかった。人間なんてみんな汚いと
言うのは簡単だが、見えなくなっていた目が見えるようになる寸前、瞼の裏に
弾けた金の光と色とりどりの花が、とてもとても綺麗だったのを覚えている。
人の醜さを見据えながら断罪もせず、ただなすべきことを淡々となして、
あまつさえ美しい光に変えて消えた背中。
93前と後の事語り〜再び化猫〜 19:2008/01/16(水) 21:01:28 ID:KaKpRRn6
 もう少し、話をしてみたかったな、と思う。
 あの人は、人間を好きだろうか。こんな人もいるんだよと、店長や正男の
家族を紹介したら、どんな顔をするのか見てみたい気もする。
 あれこれと考えながら坂を下る。ブレーキを少し緩めると、面白いほど
スピードが出た。めまぐるしく流れていく視界の端を、ふと見覚えのある
派手な着物がかする。
 慌ててブレーキをかけた。甲高く金属の軋む音。かなりの距離を行き過ぎて、
なんとか振り向いたが、確かに見たと思った鮮やかな色はどこにもない。
 ちりん、と微かに鈴の音がする。きょろきょろと辺りを見回すと、狭い路地
から白猫が一匹、実に鷹揚な足取りで姿を現した。ちりん、と首輪の鈴が鳴る。
 ……なぁんだ。
 正男はちょっと肩を落とすと、のろのろと自転車を前方に向ける。とん、と
地面を蹴った。
 帰ろう。彼を待つ、家族の元へ。



〜門脇栄〜

 ぷふー、と吐き出した安煙草の煙が苦かった。どっかりとベンチに腰を
下ろしたまま、門脇は空を見上げる。
「あー……晴れてんなぁ……」
 無意味に呟いて、しばし流れる雲を見るともなしに眺めた。と、その背後
から影が差す。
「あれ、門さんこんなとこでどしたンすかぁ?」
 聞き覚えのある声に、門脇はひらひらと片手をあげた。
「休憩だよ、きゅーけいっ」
「はーん? じゃァオレ隣お邪魔していッスかね?」
「勝手にしろ。俺のベンチじゃねんだから」
 相っ変わらず気の抜けた野郎だ、とぼやくと、男はへらへらと笑いながら
門脇の隣に座った。その横顔はまだ若い。どうにも背広が似合わない男で、
仕事に就いて数年経つというのに、いまだに背広に『着られている』ような
印象を受ける。門脇と違い、詐欺や横領といった知能犯を扱う部署に所属する
せいか、粗暴さもない。どこかの学者だと言っても通用するような容貌で、
門脇に倣ってか、うぅーん、と伸びつつ空を見あげる。
「あぁ……いーい天気ッスねぇ……。昼寝してェー」
「寝るなよ。起こしちゃやらんからな」
「はいはい」
「はいは一回ッ!」
「はっ、門脇警部補殿!」
 冗談のつもりだろうが、敬礼がいまいち様になっていないのがなんとも
泣けてくる。
94前と後の事語り〜再び化猫〜 20:2008/01/16(水) 21:05:00 ID:KaKpRRn6
「……ところで門さん、こなた旅館、ウラ取れました。いや、例の証拠は出て
こなかったンすけど、知り合いが忘れ物したってンで、それらしき封筒を取りに
来た人物がいたってェ証言が。写真を見せたところ、どうやら森谷で間違いねッス」
「……そうか」
 門脇は煙草を咥える。ふー、と長く煙を吐いた。
「なンで、森谷の自宅とブンヤの方へも家宅捜索入る方向で進んでます。
ブンヤの記者でやたら協力的なのが一人いるンで、案外早く決着つくかも
しれません」
「協力者?」
「えぇ、まァ。市川節子の恋人だか、なんだったかの男らしいッスよ。あれから
ずっと、ちまちま調べてたみたいで。……あー、そうそう、なんかコイツが
面白いこと言うンすよ。調べ始めたきっかけは、猫のお告げだったとかなんとか」
 男の言葉に、門脇は盛大にムセた。ウケを取れたと思ったらしい男が、
あはは、と屈託なく笑う。
「ね、ね、おっかしーでしょ? 酔っ払ってたけど、後から思い返すと、どう
考えても耳と二股の尻尾が生えてたなんて言うンすよ。あんだけ泥酔してた
のに、水の一杯でしゃっきりするなんておかしいと思うべきだった……、
なんて大真面目に言うモンすから、最初は信用していいのかどうか
悩んじまいましたよォ。や、調べ物は確かにきっちりしてたンすけど」
「そ……そうか……」
 門脇は新しい煙草に火をつける。大きく煙を吸い込んで、なんとか気を
落ち着かせようとした。
「……奴さん、どこでその猫又やらに会ったって?」
「えぇっと……あ、ほら、門さんの知り合いの坊がいる牛乳屋があるじゃ
ないッスか。あすこの前を行った先の、駅のガード下ッスよ。飲み屋の
屋台が並んでるトコ」
 あそこのご内儀は猫好きで、たまにハネ物で身内でも飲めないような
牛乳を猫に振る舞ってやったりする、と、門脇は正男に関わったせいで
無駄に増えた周辺情報をとっさに思い浮かべる。
 店の周りに居つかれると商売に支障をきたすから、残飯を漁りに猫らが
集まる、ガード下まで出張するのだ。
 ……いや、いやいや。
 まさか。そうともまさか。あんな前時代的で迷信じみた出来事、一生に
一度経験すれば十分だ。
 我ながらひきつった笑みを浮かべつつ、門脇はこの話題はもうやめだ、と
首を振った。
95前と後の事語り〜再び化猫〜 21:2008/01/16(水) 21:07:05 ID:KaKpRRn6
「……まぁ、何がきっかけでも、調べ物がしっかりしてりゃあいいじゃねぇか」
「そッスよねー。オレらも助かるし、お猫様と男の執念様さまッス」
「ふん。どーせ俺ァ大雑把だよ」
「あっ!? いや門さんをどうこう言いたいわけじゃ!」
 あたふたと手を振る男に、門脇は短く笑った。
「いんだよ。今回ばかりは、ちっと真面目に反省してる。……なァ、おまえ
なんで刑事になった?」
 唐突な問いかけに、へ?と訊き返して、男は腕を組む。
「なんで……なんでですかねェ。……うーん、なれちまったから、かなァ。
オレ、ガッコの成績は良かったですし、公務員だから、食いっぱぐれることもねェし」
「……期待を見事に外した回答、ありがとよ」
 投げやりに言うと、男は決まり悪げに頭をかいた。
「お題目は大事ッスけど、それで腹が膨れるじゃなし。警察だって組織ッスから、
あっちの思惑こっちの思惑あって、それに税金で食ってる以上、自分の興味で
勝手に迷宮事件追求するわけにもいかないじゃないッスか。やっぱ、それなりに
成果っつーモン挙げないと。遊びや趣味でやってンじゃないンすから」
 門脇はしばらく黙り込み、じろりと男を睨んだ。
「……俺を慰めようってんなら、百年早ぇぞ」
「や、そんなつもりじゃあ。あ、門さん見てくださいよあれ、猫が服着てら」
 話題を変えようとしたのか男が指差したのを、わざとらしいと指摘する余裕も
なく、門脇はぎくりと振り返る。体がとっさに半分逃げた。
 人間のことなど知ったことではないとばかりに、赤い服を着た茶色の縞猫が、
悠々と道を横切っていく。
「うわー。車に撥ねられンなよー。……あれ、門さん猫苦手ッスか」
「うるせぇ!」
 猫は渡りきった先でちらりと門脇らを振り返り、くあぁと大きな欠伸をした。
そのままのんびりと毛繕いを始める。
 ……ああもう、わかってるよ。
 門脇は心中でひとりごちた。
 伊達にお上の遣いを二十年以上もやってきたわけじゃねぇんだ。
 わざわざ監視なんてご大層な真似されんでも、人の世のことは人で片を
つけてやる。
 だから、頼むからお前らは関わってくれるな。
「さて、と……。門さん、そろそろ戻りましょーか」
「ちっ、しゃーねぇな。お勤め、お勤め、と」
 煙草の火を揉み消し、踵を返した一瞬、にゃあお、と揃って鳴く猫の大群が、
見えたような気がした。



  おわり
96337:2008/01/16(水) 21:11:10 ID:KaKpRRn6
これにてゲスト話終了です。

……で。当初鵺に入れるつもりで、いまいちだったから化猫に入れようと
回したエピソード、結局化猫より鵺のゲスト2本目の冒頭に入れた方が
収まりよさそうな感じでorz

投下するんで、すみませんが脳内で挿入してくださいorz
97更に後(のち)の事語り〜鵺〜 1(追記):2008/01/16(水) 21:13:50 ID:KaKpRRn6
 薬売りさん、と呼ぶと、なんですか、といつもどおり穏やかな声が返ってきた。
 白く濁った視界に、ぼんやりと影が差す。加世が見当だけで手を伸べると、
案の定届かなくてふらふらと指が宙を掴んだ。それでも不安はない。一拍
待てば、変わらず力強くて温かい手が迎えてくれる。皺だらけの、思うように
動かなくなった手が、白い手に柔らかく包まれる様が、目に浮かぶようだった。
 見えないけど、と加世は微かに苦笑する。
 ここまで年齢を重ねてしまえば、もはや年を取ることに抵抗はない。ただ、
白そこひで薬売りの顔が、姿が見られなくなってしまったことだけが、どうにも
難儀だった。
 平気な声、出してるけど。
 無理、してないだろうか。元気だろうか。
 わずかな表情の変化が、姿勢の傾きが、どれほどこの人の心の内を伝えて
いたことだろう。
 たくさん、幸せにしてもらった。その人に、最後に大きな哀しみを背負わせる
ことが、唯一の心残りだ。
「あたしが、死んだら」
 加世さん、と薬売りが咎めるような声を出す。それにゆっくりと首を振った。
「お願い。聞いて」
 悲しませる。わかっている。けれど、伝えておかなくては。
「お墓に、木を、植えてほしいの」
 き、と薬売りが呟く。その響きに、ああやっぱり落ち込んでる、と思った。
取り繕ってもふとした折に、沈痛な気配がぽろぽろとこぼれる。憔悴している姿を
思うと、自分が歯がゆい。
「木、なら……少しは、長いこと、薬売りさんと同じ時間を過ごせるかなぁって」
 なかなか言うことを聞かない手になんとか力を込める。どうか、伝わって。
 たとえ体を失くしても、見てるから。傍にいるから。
 あなたは、ひとりじゃないから。
 口には出せない。出してはあんまり薬売りに対して酷(むご)い。どうしたって
妻を失くさざるを得ない夫に、なんと言えばいいのか。何ができるのか。考えて
考えて、これくらいしか思いつかなかった。
「実が、なるのが、いいなぁ……。食べられるやつ。それで、できれば花もきれいで、
それから、薬の材料にもなるようなの」
98更に後(のち)の事語り〜鵺〜 2(追記):2008/01/16(水) 21:18:34 ID:KaKpRRn6
 欲張りですね、と薬売りがちょっと笑った。そうよ、知ってるでしょと返す。
 しばらく考えている気配がして、桃はどうです、と薬売りが言った。
 なるほど、邪気を祓うという桃の木はなかなかいいかもしれない……が。
「んん〜。できればもうちょっと、手間がかからないのが、いいな」
 旅から旅のあなたが、放っておいてもすくすく枝を広げて、花で、葉で、実で
迎えてくれるような木が、いい。
「……あ、あれはどう? ざくろ」
 柘榴ですか、と薬売りが少し首を傾げる気配。仏様が、人肉の代わりに
鬼子母神に与え、彼女を仏道の守護者たらしめた実。
 その身を捧げて悲しい魂を救い続ける薬売りに、少し、似ている。
 濃い緑の葉も、鮮やかな朱色の花も、いい。
「薬に、なる?」
 虫下しになりますね、と薬売りが言った。加世はほっと息を吐く。
「じゃあ、決まり、ね……」
 わかりました、と約束してくれる薬売りの声に、ありがとう、と呟く。すぅっと、
意識が遠くなった。



 ありがとう。
 大好きよ。

 この体も家も朽ちてなくなって、あなたがわたしを忘れるほど時が過ぎて。
 やがて、すべてが過ぎ去る後も。

 あなただけを、想っている。



そいで投下済みの同タイトル話の頭に続く、とゆーことでorz
チヨ話も大方書き終わったぜヽ(*´∀`)ノ
99名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 00:30:30 ID:no7KMY8m
最後切ねぇー… 。゚(゚´Д`゚)゚。

毎回毎回良い話をありがとう
ますますモノノ怪のキャラ達のことが好きになったよ
100名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 02:49:10 ID:q0Nli9AL
わあーん。・゚・(ノД`)・゚・。
目から鼻から怒涛の如く汁が溢れる〜
加世ちゃんの想いが暖かくて切ないよ…
いつか二人が何のしがらみもなく、穏やかに過ごせる時がくればいいなぁ
いや、この切なさもモノノ怪の醍醐味だけどさ!

…ちょっとティッシュなくなったから、取ってくる(性的な意味でなく)
101727:2008/01/17(木) 21:45:43 ID:FjLlD3x9
いつものことながら337氏の構成力は素晴らしい…!GJです。

ところで337氏作品、まとめにはまだ上がってないんだけど
そろそろ収蔵に入っちゃって良いのかな。
337氏さえよければ手持ちから時間見つけ次第順次上げていきますが。
どうしましょうかね?>337氏
102337:2008/01/18(金) 22:35:40 ID:1BT2qhxZ
へい参上!

>>727
ありがd。事語りも完結することだし、プレーンテキスト持ってるんで、
Wiki 研究がてら自分でガンガッテみる。
次回投下することがあったら、折り返し改行入れるのやめよかな……。

投下いきます! エロないどころかカップリングかどうかも怪しいorz
ぷ、プラトニックでストイックなエロスを感じてくだしあ。
冒頭2レスくらい、ホラー・流血表現が強いです。
全9レス+謝辞1レス予定。
103後(のち)の事語り〜再び化猫〜 1:2008/01/18(金) 22:38:52 ID:1BT2qhxZ
 ぐちゃっ、とも、ごきゅっ、ともつかぬ、ひどく嫌な感じの、湿った音がした。
 長いような短いような浮遊感の後、固い地面へ背中から叩きつけられた。
激しい衝撃に肺の空気が丸ごと抜ける。同時に脳天までを激痛が貫いた。
ちかちかと目の前に光が飛んで、視界が暗転したあと真っ赤に染まる。
ごぽり、と口から飛び出したのは血だ。鮮烈な動脈血。その色に、さっきの
音は人体が壊れる音だと知る。
 痛い。痛い。
 叶うなら転げ回って絶叫したい。この痛みを僅かでも紛らわすためなら
何でもする。なのに、投げ出された指先一本、ぴくりとも動かせない。
「あ……」
 濁った声が、喉からこぼれる。ひゅうひゅうと肺が鳴った。自分のものでは
ない声に、チヨはようやくこれがいつもの夢だと悟る。
 だからといって痛みの軽減はない。体の自由もきかないまま、無機質に
固い鉄と石の地面に縫いとめられている。どろりと生温かいものが
流れ出していく感覚、ばらまかれた原稿用紙が微かな風にそよぐ。残酷な
までに晴れ渡った平穏な朝空、爽やかに鳴き交わす小鳥達の声。その一隅で
繰り広げられる痛みと恐怖に、気づく者は誰一人いない。
 ―――やめて……。
 何度繰り返しても、この夢がチヨの願うようになったことはなく、どれほど
念じても目は覚めない。先の展開がわかっているだけに、全身が震えて
かちかちと歯が鳴った。
 ―――お願い、許して。
 逃げられない。ならばせめて目を閉じたい。怖いものが来る。あと、もう
幾らもない。
 見たくない、見たくない。これ以上はイヤ。お願い助けて。
 誰か。
 必死に祈るが今夜もそれは叶わない。自分のものでない目がゆっくりと
瞬いて、視界に変わった服を来た猫が映る。
 やめて―――やめて。お願いだから……!
 どうしようもない恐怖にチヨの心が縮みあがる。あれが来る、来てしまう。
無慈悲な鉄の塊、冷たい金属の車輪、絶対的な重量がぐちゃぐちゃに肉を
轢き潰す。あの、一瞬の―――!
 臨界点を超えた涙が溢れた。線路が、大地が小刻みに振動して、あれの
接近を否応なく知らしめる。なのに動けない、逃げられない。
104後(のち)の事語り〜再び化猫〜 2:2008/01/18(金) 22:40:37 ID:1BT2qhxZ
「許サ……ナイ……」
 掠れてぼろぼろになった声が耳に届く。チヨは心の内でひたすらに
ごめんなさいと繰り返した。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
だが戻ってくるのは怨嗟の言葉だ。

 許さない。

 限界まで見開かれた目が走りくる電車を映し、運転席で船を漕ぐ男を映す。
体に伝わる揺れがどんどん大きくなって、少しでも自分を守ろうと、気持ちだけは
必死で手足を丸めようとする。
 お願い―――お願い気づいて!
 助けて、誰か!
 死にたくない! 死にたくないいい―――っ!!


「いやあああああああああっ!!」


 絶叫して飛び起きると、そこは見慣れた自分の部屋だった。がんがんと頭が鳴る。
四畳半の安普請、夜中の悲鳴に抗議するように、どんと隣から壁を殴られる。
乱暴な音に、チヨの肩がまたびくりと跳ねた。ぼろぼろと涙がこぼれる。何かに
とり憑かれたように、震えていうことをきかない手を、必死で目の前にかざした。
 腕―――ある。
 手のひらをゆっくりと開閉して、布団をめくる。
 脚も、ある。
 恐る恐る、胴体に触れてみる。乾いた寝巻きの手触り、赤錆臭い気配はなく、
どこにも怪我はない。
 チヨは震える指で己の肩をかき抱く。全身にねっとりした嫌な汗をかいていて、
寒くて寒くて仕方なかった。
 ……怖かった。
 みぞおちの辺りが凍えている。安堵と恐怖と痛ましさ、そして後ろめたさが
ぐちゃぐちゃになって、嗚咽が洩れる。声を殺しながら泣きじゃくった。
「……ごめん、なさい……」
 あんな、酷い死に様を。
 節子さんは、したのだ―――。
105後(のち)の事語り〜再び化猫〜 3:2008/01/18(金) 22:42:57 ID:1BT2qhxZ
 チヨも一度死んだ。少なくとも死んだと思った。唇が腫れ上がって痛くて
痒くて、化猫の爪にずたずたにされて。
 けれど、その後取り込まれた化猫の―――節子の目を通して見た光景は、
あまりに酷い。
 節子にだって、問題がないではなかったろう。見下されていたことを知って、
むかっぱらが立たなかったわけではない。なるほど新聞記者になるくらいだから、
学校の成績はよかったのだろう。勉強が得意ではなかったチヨからすると、
たぶん想像できないくらい。でも入社してからの仕事はお茶汲みや掃除や、
せいぜいが男性記者の走り書きの清書が中心で、あれならチヨにもできそうだ。
 だからと言って、人があんな風に死んでいい理由になんかならない。同期の
男たちが、ただ男だからといって次々仕事を任されていく悔しさ、置き去りになる
焦り、気負いが空回っては冷笑されて、それでも必死に歯を食いしばって。
ようやく掴んだと思った光明は手酷い裏切りに終わり、その上、あんな死に方。
 チヨの目にまた涙が盛り上がる。幻とはいえ経験した節子の人生。そりゃあ
恨みも憎みもするだろう。人には心があるのだから、当然のことだ。
 ごめんなさい、と繰り返す。節子は、猫は、成仏したろうか。命が許されたのは
何故だろう。ハルや正夫とも話をしたが、夜毎夢に見るのはチヨだけのようだ。
それともこれが罰なのだろうか。
 節子は、チヨを生かしたのを、後悔、しているのか……。
 目の前が暗くなる。己が情けなくて仕方なかった。唐突に絶たれた節子の人生、
比べて自分は生きている。その事実に後ろめたさを感じるのは、渇望と言えるほど
強い、節子の意志を知ったからだ。
 女優になりたいと口では言いながら、漫然と外から与えられる機会を待っていた。
いつか誰かが、埋もれている自分を見つけて褒め称え、磨きあげてくれる。本気で
信じているのかと言われたら自分でも笑うだろうが、心の奥底は確かにそんな
物語を期待していた。
 浅ましい。人の死を利用してまで名を売ろうとし、故人を貶めたにも関わらず
何の成果もなかった。自分の存在は見出される原石などではなく、路傍の石に
過ぎないと、目の前に突きつけられた気がする。
 こんなチヨが生き残るより、節子が助かればどれほど世のためになっただろう。
功名心に走るきらいはあったものの、節子は市民に真実を伝える仕事をしていた。
 対する自分はどうだ。ろくに学もなく、男どもに媚を売り、いやらしい手に体を
触らせて食べている、空っぽの女。
 それ、なのに。
 毎夜死にたくないと思う。それはもう強烈に、焼けつくような生命の叫びだ。
節子の無事を願うより、自分が死ぬかもしれないことが、怖くて怖くて祈るのだ。
 生きているからといって、何ができるわけでもないのに。
 それでも死にたくないのだと思い知り、されどどうしたらいいのかわからずに
立ち竦む。
106後(のち)の事語り〜再び化猫〜 4:2008/01/18(金) 22:44:24 ID:1BT2qhxZ
 その命を寄こせと言われたら、自分は節子になんて言おう。
 苦しい、悲しい。自分の手の中には何もない。
 ごめんなさい、ごめんなさい。
 自分が死ねばよかった。でも死にたくない。
 何かしなければ。でも自分に何ができる。
 怖い。何も見えない。動けない。闇の中でひとりぽっち、迷子になっている。
「ごめんなさい……」
 切れ切れに繰り返しながらひたすら泣いていると、ちりん、と微かな音がした。
 顔をあげる。子供のようにこぶしで涙を拭って辺りを見回すが、そもそも
部屋の中から聞こえた気がしない。もっと、遠かったような。
 珍しくもない鈴の音。どこかの部屋で、飾りでも落ちたのかもしれない。
 そう、思いながら、耳は静寂を探る。電車の中でぺこりと挨拶してくれた、
あの不思議な天秤と、それから。
 ―――薬売り、さん。
 気がついたときにはもういなかった。モノノ怪を斬って、そのまま消えてしまった。
 あれだけみっともない姿を晒した後で、どんな顔をして会ったらいいやら
わからないが、お礼を言いたい。
 ―――そうだ。
 伝えたいことがある。化猫に取り込まれた、チヨだから言えること。
 そこまで思って、あは、と自嘲の笑みが洩れた。
「こんな女じゃ、嫌われたよね……」

 ―――ちりん。

 今度ははっきりと聞こえた。ばっ、と顔をあげると、さっき隣から殴られた
壁がない。
「……へ?」
 いや、壁に映し出されているのか。この世のものとも思えぬ虹色が渦巻く
光景、縁にぐるりと札が貼られて世界を切り取り、中央に独特の人影が
切り絵のように浮かんでいる。その足元で、これまた影だけの天秤が、
ちりちりと鳴っていた。
「く……薬売りさん?」
 影はこくりと頷く。動きからするとこちらに背を向けているようだ。どこか
不機嫌な声が、勘弁してくださいよ、と言った。
「ご婦人の寝室に出張する仕事はしてないんですがね」
 溜息ひとつ。
「あなたがあんまり泣くから、天秤がうるさくて仕方がない」
107後(のち)の事語り〜再び化猫〜 5:2008/01/18(金) 22:46:29 ID:1BT2qhxZ
「あ……ご、ごめんなさい?」
 なんで謝ってるんだろう、と思いつつ、チヨは慌てて手櫛を通すと軽く
髪を編んだ。こちらを見てはいないようだが、あんな整った容姿の人に、
寝起きの姿は見せたくない。
 ああどうしよう、きっと目が腫れてる。
 不自然にならない程度に精一杯身なりを整えようとするチヨの一方で、
薬売りは、ああとかいやとか何やら口ごもっていた。また溜息ひとつ。
「……責めたかったわけじゃないんですよ。申し訳ない」
 呼び出せないなら諦めればいいのに、とぶつぶつ呟いて、聞き咎めた
らしい天秤に攻撃されている。影絵遊びのように映し出されるその様子は、
何か、地下鉄で会ったときと雰囲気が違うようだ。なんとなく親しみやすくて、
チヨは少し笑った。それに安堵したのか、薬売りの声も和らぐ。
「これ以上は、近づきませんから」
 まるで淑女にするように言われて、チヨは目を丸くする。照れくさくて、
ばたばたと手を振った。
「や、あはは、そんな気にしないでいいですよぉ。ほら、あたしなんてカフェで
働いてるくらいだし……」
 言う途中でまた涙がぽろりと落ちた。あれ、あれれ、と言いながらも止まらず、
泣き笑いになる。
 ……誰かに、優しくしてもらったの。
 すごく、久しぶりの気がする。
 薬売りの足元で、ぴょんぴょんと天秤が跳ねる。くるりと回って、こちらを
窺うように左右に揺れる。チヨを心配して、なんとか励まそうとしてくれている
のだと、何故かすんなりわかった。それがまた傷だらけの心に沁みる。
「あ、あの、薬売りさん」
 震える声を、なんとか言葉にする。とにかく、言っておかねば。
「あの、助けてくれて、ありがとうございました」
 深く頭を下げると、薬売りはしばらく押し黙った。
 ……なにか、機嫌を損ねたろうか。
 まだ帰らないでほしい、と思う。今はひとりになりたくない。けれど、どう
引き止めていいかわからない。
 黒一色の影でしかない姿に、近づいていいのかすら。
108後(のち)の事語り〜再び化猫〜 6:2008/01/18(金) 22:48:31 ID:1BT2qhxZ
「……その礼は、筋違いってもんでしょう」
 溜息のように、薬売りが口を開く。
「私は、化猫を斬るためにチヨさんを利用しただけ。チヨさんが助かったのは
結果論に過ぎない。強いて礼を述べるなら、化猫に言うべきじゃ、ないですかね」
 モノノ怪に礼ってのもおかしな話ですがね、と笑うのに、チヨは首を振る。
「あたし、あたしはいいんです。あたし、すっごいバカだったから。ほら、バカは
死ななきゃ治らないって言うでしょ? だからたぶん、ちょうどよかったんです」
 そうじゃなくて、と続けようとして、薬売りが額を押さえたらしいことに気づく。
脱力したようにその場へずるずると座り込むに至って、チヨは思わず駆け寄った。
「く、薬売りさん!? どうしたの、大丈夫ですか!?」
 こんなにはっきり見えているのに、指先に触れるのはぼろぼろの土壁の
手触りだ。それでも、薬売りの背に手を添えずにはいられなかった。
「どっか痛い? あっ、そうだあのとき頭怪我したでしょ!? 傷口開いた!?
どうしよう、手当てしなきゃ……」
「いや、違いますから。大丈夫」
「でも」
 大丈夫、ともう一度繰り返して、薬売りは天へ向けて大きく息を吐いたようだった。
「……先に、続きを聞いてしまいましょう。チヨさんでなければ、私は誰を助けたと?」
 様子が気になりはしたものの、チヨは大きく息を吸う。こんな機会、きっと
二度とない。一音一音を大切に、きっぱりと舌に乗せた。
「市川、節子さんです」
 反応はない。無言のままの薬売りに、チヨは懸命に言葉を続ける。
「あたし、いっぺん死んでから、節子さんの中にいたんです。だからわかる。
節子さん、薬売りさんにとても感謝してました。猫たちだってそうです。本当です!」
 こうして伝えることができてよかった、とチヨは先程までと違った意味で瞳を
潤ませた。何か大きな荷物をひとつ、やっと肩から下ろせた気がした。
「すっごく怖かったし、嫌な気分にもなったし痛かったけど、ううん、今でも夢に
見て怖くてしかたないけど、でも、こうしてあなたに言えることが、すごく、嬉しい」
 ありがとう、ございました。
 深く、頭を下げる。伝わってほしい、わかってほしい。あなたは確かに悲しい
魂を鎮め救ったのだと。
 あなたに感謝する人がいるのだと。
 ―――そう、か。
 チヨは泣きながら悟る。
 ずっとずっと、あの夢を見続けた理由。
 己が愚かさの戒めだけじゃない。この言葉を伝えるために、きっと猫が見せて
くれたのだ。随分高い代償だけれど、それくらいしないと、バカな自分には
わからなかったから。
109後(のち)の事語り〜再び化猫〜 7:2008/01/18(金) 22:50:33 ID:1BT2qhxZ
 ちりん、と鈴の音に目をやると、天秤がひらひらと飛んでいた。影、ではない。
蝶のような可愛い姿で、チヨの元へ飛んできて、鈴と持ち替えたらしい
ボンボンでチヨの涙を拭ってくれる。
「あ……ありが、と……」
 天秤はぴょんぴょんと跳ねて回る。すごく、可愛かった。
「あの時も、挨拶、してくれたよね……?」
 大きく頷くように、天秤が傾く。チヨは少し笑った。
「不思議。どうしてあたしによくしてくれるの?」
 天秤が左右に振れる。もどかしげにその場で軽く跳ねて、薬売りの方を見る。
つられてチヨもそちらへ目をやった。視線に気づいたか、薬売りが影のまま
ちらりと振り返った。
「……そう、ですね……。たとえて言うなら、そいつらは、チヨさんのご先祖に
恩がある、ようなもので……」
「ご先祖?」
「たとえ、ですけどね……」
「律儀なんだぁ」
 チヨは指先でちょいちょいとその小さな頭を撫でた。小動物のように擦り
寄ってくるのが嬉しくて、あちこちをくすぐってみる。
「でも、あたしはその人じゃないよ? 恩返ししたいって思わせるなんて、
きっといい人だったんだろうけど……あたしには、そんな価値も資格も
ないもん。そんなふうに思われても、困る」
 ぴしーん、と天秤が固まる。ややあって、ぱったりとその場に倒れた。
チヨは慌ててその背をつつく。
「え? あれ? 天秤さん? く、薬売りさん、天秤さんが!」
 来い、と低く薬売りが呼ぶ。伸べられた人差し指に、天秤がよろよろと
飛んでいって、辿りつく前にべしゃりと落ちた。ふらふらしながら起き上がり、
ようやく壁の向こうへ吸い込まれていく。
「……もしかしてあたし、言っちゃいけないこと言った……?」
 いや、と薬売りが呟く。
「チヨさん本人から言ってもらって、こいつらも納得したでしょう。落ち込む
のは、勝手に期待したこっちが悪い。いい薬です」
「そ、そう……?」
 もっと優しい言葉をかけてあげればよかった。せっかく慰めてくれたのに。
 人違い、だけど。
 その事実がずきりと胸に響く。やっぱりチヨ自身のみでは、人に優しく
されたりしないのか、と。
110後(のち)の事語り〜再び化猫〜 8:2008/01/18(金) 22:52:23 ID:1BT2qhxZ
 優しくされなくて当然の人間なのに、そう思ってしまう自分が、嫌だ。
「……チヨさん」
「はい」
「普通の……人でした、よ」
「え?」
「その、天秤が恩を受けた人は。菩薩でもなんでもない、泣きも笑いもする
普通の人でした。人と自分を比べてひねたり妬んだり、逆に優越感に
浸ったり、ね。でも、周りのものを心底愛して、幸福にもしてくれた」
 す、と壁の中から手が伸びてくる。黒一色から生まれる、色の塗られた
長い爪と、白い手と、鮮やかな袖と。後ろ手のまま人差し指と中指で、
小さな包みを挟んで寄こす。
「お守りです。もう怖い夢を見ないように」
 細かく折られた、紙―――の、ようだ。
「……お札?」
 ぽろりとこぼれた言葉に、薬売りが微かに笑った。
「そうですよ。幻に囚われてはいけない。チヨさんの真は、何も変わらない」
「真……」
 そんなものあるのかな、とこぼしたチヨに、薬売りは首をかしげる。
「真のない人間に、俺は会ったことがない。それがどんなに自分勝手で、
傲慢なものでも、ね」
「でも、そんなのただの嫌な人、じゃあない?」
「それを嫌だと思うなら、自分のなりたいようになればいい。良くも悪くも
人は変わる。せっかく、命があるんでしょう」
 うん、と頷いてみる。かさりとチヨの手の中に落ちたお守りは、なんだか
とても温かい気がした。
「それじゃ」
 薬売りが一歩離れる、その背に慌てて呼びかける。
「ま―――また会える?」
 縁があれば、と薬売りは言った。虹色の景色が急速に薄れる。完全に
消える寸前、覆っていた幕が落ちるように、一瞬だけ薬売りに色がつき、
姿があらわになった。風変わりな紅をさした唇が、チヨに向かって微かに
動く。


 ―――ありがとう。


111後(のち)の事語り〜再び化猫〜 9:2008/01/18(金) 22:53:28 ID:1BT2qhxZ
 チヨは、くずおれるようにその場へ座り込んだ。
 何の変哲もなくなった部屋に、また暗闇が戻ってきたかと思ったら、ほのかに
明るい。
 窓の方を見ると、すでに夜が明けかかっていた。
 ぺらぺらの安いカーテンをめくると、起き出す前の町の姿がある。
 朝だ。
 ちりちりと道を走っていく自転車は、牛乳配達の少年ら。その姿に、正男や
ハルを思い出す。あんな事件がきっかけで知り合って、でも友人と呼んで
差し支えない人たち。その人たちが今、どこかにいてくれる空の下だ。深い青が
徐々に薄れ、茜の色が広がっていく。これまでとは違った意味で、どっと涙が
溢れた。
 なんだ、と泣きながらチヨは笑った。
 心配してくれる人、いるじゃない。
 こんな自分でも。
 正男も、ハルも、チヨに笑いかけてくれた。いなくなったら悲しんでくれるだろう。
それだけでも十分だ。ちっぽけで浅ましい自分でも、きっと人を愛せもする。
 夢でなかった証拠に、浅黒い手の中にはお守りがあって、チヨはぎゅっとそれを
胸に抱きこんだ。
 ありがとう、と呟く。
 大丈夫だ。自分は歩ける。生きていける。
 その事実が嬉しい。今までチヨを生かしてきたものすべてに対する感謝が
こみあげて、朝焼けの美しさが胸に迫った。
 ありがとう。

 また、いつか会えますように。



   おわり
112337:2008/01/18(金) 22:59:48 ID:1BT2qhxZ
謝辞

素晴らしい作品を生み出して見せてくれた、原作スタッフの皆様に感謝します。
二次創作の形をとっていますが、これが自分の、あの映像作品に対する感想文です。

本作を生み出すきっかけをくださった、ドS氏と、前スレで1作目後続きキボンして
くださった方に感謝します。
あなた方がいてくれなかったら、本作は生まれませんでした。

投下の度にレスくださった皆様、もはやエロパロじゃねーよな内容を受け入れ、
あるいはスルー検定で見てみぬフリをしてくださった住人の皆様、読んでくださった
すべての人に感謝します。
御陰様で最後まで書ききることが出来ました。

これにて事語り完結です。ありがとうございました。


……またなんかエロ書けたら投下にくるんで、今後ともよろしくー。
113727:2008/01/18(金) 23:00:02 ID:5HSJqSMs
リアルタイムで投下に遭遇!今日は運がいいぜ!

いやー、いいなあ、いいなああ!
ひたすらGJの嵐です。こんな素晴らしい作品読めて本当に幸せ。
337氏投下お疲れ様です。まとめサイトの件も了解なのですよー。
114名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 23:27:43 ID:ZRzEH8OF
お疲れ様でした!

去年の暮れにモノノに出会い、もっと観たいと餓えきっているとき
あなたの作品を見つけました。
二次創作ではあるけれど、神懸かり的なクオリティに興奮しきり…。
まさかエロパロ板で泣くとは…。
ご自身のサイトにくるまってもほぼ毎日見に行ってしまう…もうファンですわ。

新作あらゆる意味で楽しみにしてます!


GJ!
115名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 23:47:39 ID:IXcnyJ3b
337氏
胸の熱くなる作品をありがとうございます。
原作の空気を壊さず、物語を掘り下げ、広げ
深みを持たせた作品を読ませていただけて感謝です。
ますますモノノ怪が好きになりました。

あ、自分は前スレ809なのですがWiki収録お手数をかけしました。
親指のつき方を右と左まちがえちゃって恥ずかしくて出て来れなかったんだw
描き直さないから手だけ脳内で左右反転してやってください。
116名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:11:01 ID:k/GDWpi6
337氏
お疲れ様でした!!!
まさか天秤×加世からこんなに壮大な物語が生まれるとは
あのときは思ってもみなかったwww

素晴らしい作品を有難うです。GJ!!
117名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 01:53:14 ID:mkl9f8s4
337氏
乙です!あ〜感無量ていうか胸いっぱいになりました
丁寧な作品を読ませて下すって、ありがdでした
次回作やエロもwktkしながら待ってますよー!
118名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 08:18:31 ID:B86gtS79
337氏
お疲れ様でした!
全部まとめて一冊の本にしてもいいんじゃないかと思うくらいの完成度でした。
これから書かれるであろう337氏完全オリジナルストーリーも期待しております。
119名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 23:56:15 ID:FOqD0Co0
ちょっくらK極の本を読んでいたら、飛縁魔という女の妖怪?が出てきた。

>顔かたちうつくしけれども いとおそろしきものにて
>夜な夜な出て男の精血を吸い ついにはとり殺すとなん

だそーだ。日本版サキュバスってところ?
頭の中でうっかり幻ちゃんが襲われてげっそりしてしまった。
ごめん幻ちゃん。
120名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 07:38:59 ID:rWtHoSt3
>>119
飛縁魔(ひのえんま)=丙午(ひのえうま)=丙午生まれの女性は
男を取り殺す、という俗説から生まれた妖怪ですな。

そういう妖怪といえば、モノノ怪のOPにはカマイタチが
くるくる回ってるけど、出てはこなかったね。
もし続編が有るとすればどんなモノノ怪が出るかな。
121名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 00:16:10 ID:dIEQ5+Lh
緑魔子
122名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 00:21:50 ID:M7eigjmh
百々目鬼とかでないかな。
123名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 08:15:51 ID:Tfm7t0xr
モノノ怪と言えば歌川国芳つながりで、がしゃどくろとかいいな
124名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 18:55:06 ID:T6YkRzuU
カマイタチか……。
少しずつ服を切り裂いていって、見えそで見えないチラリズム。
うっかり勢い余った空刃に、白い肌に走る赤い傷。
ぷくりと血の玉が盛りあがって、つぅとひとすじ流れて落ちる。
それを舌で舐め取って、凄絶な感じのエロスでひとつ。
125ドS:2008/01/22(火) 22:48:40 ID:jxu77nbc
じゃあ俺は雪女で氷柱ファックを提案。
少しだけ投下。
126加世×ハイパー:2008/01/22(火) 23:03:33 ID:jxu77nbc
「んくっ…ちゅ…んっ」

気が付くと加世は口内いっぱいに男の巨大なそれを頬張りしゃぶりついていた。
その大きさ故大部分は加世の口に収まらず柔らかな手によってゆるゆるとしごかれる、流れ落ちた唾液を塗り付け滑らす事で辺りに水音が響き二人をより淫靡なる深みへと導いた。

「はぁ…はぁ…、また大きくなりましたよ…」

 張り詰めた亀頭を左右にそっと割り開くと透明な液体がとろとろと溢れた、加世の奉仕に過敏なまで反応を示すそれを誘われるように舐めとりながら自身の下腹部に手を伸ばした。

「あ…」

 そこは思った以上に濡れそぼり熱く火照っていた、

こぽり

指先が触れ液体を留めていた力が破られ指を腿を伝い流れた。

「はぁ…あん…、ここ熱いの…薬売りさん…」

 加世は一層息を荒げて男に股がったままくるりと向きを変え男の顔の方に尻を向けた、

「は…ぁん、薬売りさん…見える?よく見ててね…」

男の顔に向けた尻を高く掲げその濡れ光る秘裂を見せつける様に割り開いた。
127加世×ハイパー:2008/01/22(火) 23:19:20 ID:jxu77nbc
秘裂の中心を浅く掻き回し疼く淫核を擦る、形の良い尻が宙をさ迷い赤く充血した緋肉がひくひくと蠢き加世の指を貪った。

「んうぅ…ふぁ…」

 口での奉仕も勢いを増しジュブジュブと音を立てて頭を上下させている、

「はぁ…うっ…」

 眉を寄せて荒い息を吐く男の胸に加世の秘裂から溢れた蜜がぽたりと滴った。
「っ…薬売りさん…」

 向き直った加世は男の下腹部に腰をかがめしとどに濡れた秘裂を硬く起立した男のものにあてがった、双方の熱が触れ合うと留められていた液体がくちゅりと音を立て混じりあい一筋の滝の様に男の腹に落ちていった。

「う…ん、入らないよぅ…」
 加世は挿入を試みるが不安定な姿勢のためか男のものが大きすぎるためか、ぬるぬると滑り難儀していた。
男の腹に片手を付き腰を動かすとぬるりと滑った先端が淫核に触れ、もどかしい快感だけが断続的に与えられた。

「あっ…ん、…ひぁっ!」

くねらせていた腰が突然左右から強い力で掴まれた、肉に爪が食い込むほどにがっちりと掴まれ突然の事に加世は驚き悲鳴をあげた。
下ばかり見ていた視線を上向けると半裸の男がこちらを見ていた、漆黒に浮かんだ赤い瞳が鋭く加世を咎める様な眼差しを向けている。
128ドS:2008/01/22(火) 23:25:35 ID:jxu77nbc
次くらいで終わると思う。
337氏乙でした、337氏の薬売りは良い意味で人間臭くてGJでした。
129名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 23:59:04 ID:T6YkRzuU
起きたーーーーー!!!
加世エロいよ加世!(*´Д`)ハァハァ
130名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 00:20:25 ID:JtqJXc/Q
睡魔も夢魔も吹っ飛ぶ覚醒エロスGJ!!
目玉ギンギンにして待ってる!
131名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 02:22:21 ID:jz5WDC32
fuoooooエロース!!GJ!!!
お仕置きの予感にwktkしてます
132名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 03:19:57 ID:YegvgZT7
GJ!寸止めですかー流石ドS氏w
エロ加代もいい!すごくいい!続きwktk
133ドS:2008/01/24(木) 23:53:55 ID:NWuvqOd+
忘れ物、横にして見てくれ。
全体 ttp://imepita.jp/20080124/848770
加世up ttp://imepita.jp/20080124/846790
ハイパーup ttp://imepita.jp/20080124/822870
134名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 00:12:54 ID:uhjpOl2Q
>>133
ドS様のイラスト北ーーーーー!
絵柄が可愛くてたまらんですGJ!
135名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 01:22:21 ID:qrvSr5Oq
み、見れなかった…_| ̄|○
136名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 02:04:00 ID:CyI739+C
ドS氏GJ!
ハイパーのナニの大きさにグッときたwww
…加代ガンガレw
137名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 08:24:36 ID:GP/O/lk5
ドS氏の加世のイラストのかわいさは反則
138名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 21:08:44 ID:dOg3awSD
次回作の時代を考えるなら幕末とかおもしろそう
新撰組小田島様とか
139名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 22:42:26 ID:rPL11C4T
そういえば、舞台が日本だから日本の妖怪になるのか、
日本人の情念でモノノ怪化するから日本の妖怪になるのか、
その辺わかんないよね。
なんだっけ、座礁した外国船とかなかったっけ?
その乗組員とかの情念がモノノ怪化したら、和風になるのか
洋風になるのか。
140名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 23:00:55 ID:RnJA23jK
>>139
洋モノノ怪・彷徨える阿蘭陀人とかでしょうか?
141名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 08:00:33 ID:J6pvY0st
でも座敷童子みたいに見た目外人のキャラもいるから、
キャラのビジュアル的に新鮮味は無いだろうなー>洋モノノ怪
雰囲気はいい感じになるかも。
142名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 19:37:09 ID:jIdGyuW7
ドラキュラ・ヴァンパイアとかも有り?<洋モノノ怪
143名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 22:08:57 ID:NonwzuD4
>>142
和装D?
144名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 22:57:20 ID:Pknmptx+
コミックス発売記念で、前スレの最初の方に出てた、
坂井の女たちの玩具にされる薬売りってのを書いてみたくなりますた。
……前フリが長くて、まだちょっとエロくないんだけど、
長くなったのでとりあえず前半部分を投下します。
よろしくお願いします。
145傀儡回し 1:2008/01/28(月) 22:58:37 ID:Pknmptx+
 昼ひなかの暑さも大分和らいで、どこか硬質なヒグラシの鳴き声が響き始めていた。
 大きく家紋を染め抜いた門幕脇で、迎えの提灯番を務める小者は、門前で足を止めた人影に、おぉい、と声をかける。
「薬売りィ」
 派手な身なりの男だった。
 かたかたと、その背に負った箱が音を立てているような気がしたが、横顔にきかん気の強そうな気配を感じとって、まずはお節介を焼いてみる。
「今日は姫様の婿取りだァ。薬は、売れねぇぜー」
 ふいと、獣のように首から上が動いて、薬売りの目が小者をとらえる。ぎくりと小者は身を竦めた。なんの疚しいところもないが、不思議と見られた者を不安にさせる目だ。
 かつりと高下駄が鳴って、薬売りは歩み寄ってきた。青い紅をひいた唇が、わずかに開く。
「何を―――」
 ひょいと上半身を倒し、薬売りは小者の顔を覗き込む。
「―――そんなに、恐れて―――いる」
 一声で、看破された。
 小者はぽりぽりと頭を掻いて周囲を見回すと、ぐっと声を低めた。
「坂井の家ァ、男に祟る」
 塩野の若も気の毒になァ、と呟いた。借金のカタに化物屋敷へ取られてよゥ。
「……化物屋敷」
「そうとも」
 小者はひっそりと頷いた。
「ここの主人は女共なのよ。街で何ィ聞いたか知らんが帰んなされ。あんたみたいに若くて綺麗な男じゃあ、最後の一滴まで精ィ搾り取られンぞ」
「坂井の女衆は、年を取らぬ、と―――」
「ああ、本当だァ。奥方様ァ―――実際はこン人が御当主みたいなもンだが―――今日婿取りなさる姫様の母君だってェのに、二人並んだところはよく似た姉妹よ。あの二人が親子とは、とても、とても」
 ほぉう、と薬売りの男は笑う。
「そいつぁ……興味深い……です、ねぇ……」
 くるりときびすを返した薬売りに、小者は慌てて声をあげる。
「嘘でも冗談でもねぇぞ! 命あっての物種だァ。帰れ、帰れ」
「ご忠告、いたみいりますが……ね」
 俺は、斬りに来たんで―――と薬売りの声が風に流れた。
「モノノ怪を、ね……」


 傀儡回し〜序の幕〜


146名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 22:59:44 ID:rRlvkQya
>144
щ(゚д゚щ)カモーン!!!!
私もコミックスの通販注文したよ!まだ届かないよ!てか…初版売り切れの噂が…
147傀儡回し 2:2008/01/28(月) 23:00:08 ID:Pknmptx+
「ちょっと加世! いつまで油しまってれば気が済むんだい!」
「はぁーいー。すぐやりまぁーす」
「ったく」
 べーっだ、と女の後姿に舌を出していた娘が、勝手口に姿を見せた薬売りに、あらやだ、と振り向く。
「お届けもの? 何かあったっけ」
 さて、と薬売りは娘の顔をさりげなく観察する。
 坂井の女は、男を取り殺す―――と。
 街で聞いた噂はそれだけだ。小者の言葉を信用するなら、それはどうやら本当らしい。
 問題は、どこまでが『坂井の女』に入るのか―――か。
 薬売りが身分をあかすと、娘は、ああダメダメ、と薬売りを追い出しにかかった。
「今日はそんなヒマないのー」
「……ご婚礼があるから」
「そうそう」
 娘は喋りたくて仕方ない、というふうに、目を輝かせた。
「真央様が塩野様からお婿を迎えられるの」
「婿、ですか」
「そーよぉ。坂井のお家は女系なのね。男の子が育たないんですって。真央様の他にもご兄弟はいらしたんだけど、真央様しかご成人なさらなかった、て」
 それは俺には好都合、と薬売りは上がりかまちに腰を下ろす。
「ええ?」
「花嫁さんに、ぴったりの薬……」
 こしょこしょこしょ、と耳打ちすると、娘は顔を赤くして身をよじらせた。
「やっだぁ、もぉ〜! でも見せてー!」
「はい、はい」


「お母様」
 色内掛けに角隠しをつけた真央が、同様に美しく着飾った水江の前に手をついた。
「塩野の方は……まだ」
「そう慌てるものではありませんよ」
 水江はおっとりと笑う。
「小田島が御先導をつとめに行っているのですから。直に参られましょう」
 かつん、と伊顕が首を動かして頷いた。勝山と笹岡が同調する。
「お世継ぎご誕生が、楽しみな」
「勝山殿、それはいかにも気が早うございましょう」
 かつり、かつり。
 旅芸人らが前庭でちんしゃんと奏でる楽の音が、ヒグラシの声に混じって流れていた。

148傀儡回し 3:2008/01/28(月) 23:01:33 ID:Pknmptx+
「すっごぉ〜い、たくさんあるぅ〜! うん、真央様が買ってくださるかも!」
「塩野の若様というのは、どんなお方で?」
「えー? あたしたちみたいな下働きはよく知らないんだけどぉ……」
 ふっくりした唇に人差し指を押しあて、娘は悪戯っぽく笑う。
「真央様がお見初めになったんだから、きっと目元の涼しい伊達男よ。あちらのお家の借金を肩代わりしてまでお迎えになるんだもの」
「……今の、御当主は」
「伊顕様? うん、伊顕様は御隠居様のお血筋よ。本当は、伊国様がご長男だったんだけどぉ……お酒に溺れて、ずぅーっと人事不省の有様なの。伊顕様も、お体が弱くていらっしゃるしぃー。奥様の水江様がいらっしゃらなかったら、坂井の存続も危なかった、て」
 ほぉう、と薬売りは相槌をうつ。
「奥方様は、随分やり手のようだ」
「そーよぉ。いつまでもお美しくて、かぁっこいいんだから!」
 憧れの眼差しで、娘は我がことのように胸をそらした。そこへ、加世!と甲高い声が割り込む。
「あんたは―――なにこんなところで油売ってんだい!」
「鼠捕りの薬を」
 薬売りはその場に手をつき深く頭を下げる。
「お勧めしていた、ところで」
「結構よ! 加世、あんたは水でも汲んでおいで! 瓶がすっかり空になってるじゃないか!」
「はぁ〜いぃ〜」
 不満げに頬を膨らませた加世が、しかし薬売りが下げている頭の上でちらりとさとと視線を交わす。
「お騒がせして申し訳ない」
 薬売りはゆっくりと頭を上げた。
「すぐ……出て、いきますん、で」
 かつん、とどこかで、硬質の音がした。



 ―――男。
 ―――男だ。
 ―――許さぬ。
 ―――許さぬ。

 許サ、ナイ。



149傀儡回し 4:2008/01/28(月) 23:02:34 ID:Pknmptx+
 そんなにすごいのかい、と頬を染めるさとが、薬売りに盃を差し出す。
「……いえ。まだ、仕事が……」
「そう言わずに。祝い酒なんですよ。真央様の幸せを祈って、空けとくれ」
 では、と礼儀に従って薬売りは口をつける。空けるを待たず、くらりとその上体が泳いだ。



 色濃く塗り重なった女の怨み、骨の髄まで思い知れ。



「塩野の若よりイイんじゃないかい?」
「でっしょぉ〜?」
「調子に乗るんじゃないよ、まったくあんたときたら」
「あ、真央様」
「水江様も。まぁ、こんなところへお運びいただいて」
「……あの部屋へ運んでしまって。小田島が戻らぬうちに」
「ええ、ええ」
「お気に召しましたぁ?」
「そう、ね。塩野はどうしましょう、お母様」
「とりあえず木偶にでもお相手させておけばいいんじゃないかい」
「まぁ、酷いお母様」
 ほほほ、と女達の笑い声が台所に満ちる。



 ゆっくりと薬売りが目を開けると、がんがんと頭が痛んだ。
 不覚、とこっそり心中で落ち込む。
 薬売りが薬で意識を奪われたなどと、まったく不覚以外の何物でもない。
 手慣れたやり方ではあった。水でなく酒で飲ませるのは匂いと味を誤魔化すためがひとつ、薬の効きを高めるためがひとつ。
 ―――外道だ。
 こんなに強い効き目のものを、酒精で飲ませるなどと、うっかりすれば死にかねない。
 むしろ、死んでも構わぬ―――と。冷ややかな悪意が、ある。
150傀儡回し 5:2008/01/28(月) 23:03:29 ID:Pknmptx+
「あ、起きたぁ?」
 あっけらかんとした娘の声、目線だけを動かして、薬売りはぎょっと体を引きかけ、自分が縛られていることに気がついた。
「お水あげるから、暴れないで、ね?」
 南方の出身か、大地の色をした肌に襦袢をひっかけただけの姿で、泣きぼくろの印象的な娘は細い首をかしげた。
「……俺は、なんか縛られるようなことを、しましたか、ね……」
 非難を乗せてかすれた声を出すと、娘はぺろりと舌を出す。
「ううん? でもね、薬売りさん格好いいんだもの。食べちゃおうと思って」
 悪気のまったくない、無邪気な声。その背後で、思い思いに薬箱を漁っていたらしい女たちが、ほほほ、と笑った。
「なぁに、これ」
「こんなものまで」
「まぁ、可愛い」
 そんな女たちを、極彩色の壁絵が囲んでいる。六角形の変わった造り、柱は天井へのぼるにつれて竜頭の細工となっている。部屋の中央に同じく六角の台が据えられ、縁から溢れるように布団が敷き詰められ、薬売りはそこに転がされていたのだった。
 天井にある―――あれは。
 落ち格子……だろう、か。
 解毒のためにも水は必要だ。おとなしく水を求めると、娘は小さな手でいそいそと水差しの吸い口を薬売りの口元にあてた。唇を動かしかけ、ふと気づく。
「……これには、変な薬は入ってませんか」
「どうかしら。お薬売ってる人なんだから、わかるんじゃない?」
 口にした言葉が意地悪く響いたのに気づいたらしい。娘は太めの眉を八の字に下げると、あたし下っ端だから、これ以外のお水はあげられないの、と申し訳なさそうに肩を竦めた。
 仕方ない、と薬売りは腹を括る。慎重に一口含んで、舌の上で転がした。
 どうやら、清水だ。
 水差し一杯分の水を空け、薬売りは軽く頭を振る。笑いさざめく女たちへ目をやった。
「これは一体どういう仕儀か、お聞かせ願えませんかね」
 おや、と水江が顔をあげる。
「ご不満かえ?」
 真央が白い小首を傾げた。
「『坂井』へ来たからには、承知の上、だろうに」
 さとがくすくすと笑った。
「男の面子にでも、障ったのでございましょう」
151傀儡回し 6:2008/01/28(月) 23:05:30 ID:Pknmptx+
「つまらぬこと」
「ほんに」
「あまり、興醒めさせないでほしいもの」
「でなくては、ねぇ?」
 かつん、と音がして、天井からばたばたと羽織袴を纏ったモノが降ってくる。
 床へと落ちる寸前に、引かれるようにがくんと空中に留まった。
 薬売りは目をすがめる。
 ―――かつん、と。
 硬い音を立てるのは白い骨。
 されこうべがかくかくと、見えない糸に従って踊った。
「―――この」
「ように」
「なる」
 笑み含みの宣言に、薬売りは荒らされた荷物に退魔の剣を探す。
 モノノ怪の―――形。
「―――傀儡回し」


 カチン!



  つづく



女性陣のビジュアルは、みんな若い頃のものでお願いします。
152名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 23:26:34 ID:W/L+IQss
>>144
まだ前半だと言うのに坂井の女衆が
じわじわ黒くwww
gjです!後半を楽しみにしております!
153名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 03:07:08 ID:hMpXTIAw
>144
すげ、退魔ものの雰囲気残しつつ逆転パラレルか!
エロも話のオチもwktkして待ってる
154名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 16:15:17 ID:5z7jyfHn
女性陣のビジュアルがみんな若い頃、という一文を読んで
真央が高校生、加世が中学生くらいなのを想像してしまった…
155名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 18:42:36 ID:QSFgeGhf
>>154
最早脳内でそれにしか見えない!

幼女は!幼女はおらぬかぁー!www
156名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 21:38:19 ID:gbbH4Fhw
落ち着いて!
あなたの嗜好がバレちゃうから落ち着いてー!
157名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 08:09:34 ID:ZNl2rKUN
薬売り×幼女加世を想像したじゃないか・・・
158名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 10:56:10 ID:fk9hAraY
>>157
奉公前の元気で可愛い加世ちゃんに振り回されて
困ってる薬売りのほのぼのですか?

ちょっといいかもw
159名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 15:49:37 ID:+DujBijB

なごむなぁ〜(*´Д`*)
160337:2008/01/30(水) 23:11:17 ID:LN86I6Na
バーカ、な自分に今更気づいてもいいですか。

……orz

まず、前回名前欄入れ忘れました。傀儡回しは自分です。これはまぁ許容範囲……か?
次。>>146で文章抜けました。没の方を投下してどうする自分。

× 色内掛けに角隠しをつけた真央が〜
○ 色内掛けに角隠し、懐に厄除けの花人形を忍ばせた真央が〜

ごめん、ほんとごめん。
続きはもうちょっとかかりそう、です。
161名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 00:11:35 ID:3NJGdnaq
>>160
名乗らなくても薄々わかってたんだぜ?
つかわざと名乗ってないのかと深読みまでしちゃったんだぜ?
ドンマイ、続き待ってる。


幼女ネタにふと思いついた。
古い話で恐縮だが、モノノ怪たまごっちがあったら是非やりたい。
育て方次第で、薬売りになったり加世になったり、小田島様になったり
坂井のジジイになったりすんの。
162名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 01:56:46 ID:DTHPArp9
ジジイになった瞬間
「滅!!」とかって叩きつけそうな予感がする
163337:2008/01/31(木) 19:13:45 ID:/Rhywcci
ジジイになっちゃったら、そんな育て方をした自らの不明を恥じて
切腹するw

続き投下いきます。文量読み間違いましたorz 前半どころじゃない。
三の幕で大詰めになるといいんだけど……。

エロ部分がなんかカオス。なんだろう、精神的SM?
何故か加世が犠牲者になって、百合陵辱めいたふいんき(ryです。
薬売りは緊縛?、目隠し猿轡状態で待機中。
ほんのり薬加風味のような気もしますが甘さはない。
164傀儡回し 7:2008/01/31(木) 19:15:29 ID:/Rhywcci
 一瞬の攻防―――だった。
 縄を解いた薬売りが加世の額に札を叩きつける。
「ぎゃあああああああああっ!」
 喉を絞りあげるような絶叫、札の表面が渦巻いて赤く目玉模様が浮かび、さらに赤く染まって爛れ落ちる。ぷっつりと糸が切れたように、娘の体が倒れた。
 鏡に映したように坂井の女と薬売りが片手を振り切り、片や大量の札を、片やうねり絡まる黒い糸を、一斉に放つ。
 糸―――否、髪だ。
 どっと湧きだしたそれは、薬売りの元へ飛びかけていた退魔の剣を呑み込み絡めとり、札を遮ってきりきりと鳴いた。
 拮抗、する。
 のしかかる怨念の重み、かつかつと騒ぎ立てる男共の成れの果て、ぢぢ……と髪が焦げ、不快な臭いが鼻をつく。
 うねうねと攻めかかる黒髪を片手をかざして支え、さらに踏みだそうというところで薬売りはつんのめる。足元を見やると、加世だった体が知らぬ娘の顔をして、長く伸びた赤い爪で薬売りを捉えていた。
虚ろな眼窩がぽっかり開いて、赤い唇ががらがらに荒れた声を吐く。

 許サ、ナイ。

 珠生様、と誰かが呼んだ。どん、と激しい衝撃と共に二人が黒髪に呑まれる。
「やれ、活きのよいこと」
 紅白に編まれた綱を女の白い手がぐいと引いて、がらがらと格子が落ちた。


 傀儡回し〜二の幕〜


 次に目を覚ましたときには、罪人のように頭上に両手を掲げ、肘より先をがっちりと格子に固定された状態で座っていた。
 どれほどの時間気を失っていたのか、指先から血の気がひいて感覚がない。無理に動かそうとするとちりちりと痺れが走る。
 縄―――では、ない。
 薬売りは顔をしかめる。
 女の髪で縛られているというのは、なんとも言えず気色が悪い。単なる材質として見ても、丈夫過ぎてタチが悪い。
 ごそごそと楽な姿勢を探して身じろぐと、ごめんなさい、と細い声がした。
「薬売りさん、大丈夫?」
165傀儡回し 8:2008/01/31(木) 19:16:48 ID:/Rhywcci
「……ああ。いたんですかい」
 こちらは単に後ろ手で格子に括りつけられているらしい加世が、薬売りの言葉にぷぅと膨れた。
「いましたぁー。……って薬売りさんこっち見ちゃダメーーーーーっ!!」
「え」
 反射でそちらに目をやって、意味に気づいて目を逸らす。窓もないのに何故この部屋はこうも明るいのか。きっと何か細工がしてあるのだろうが、迷惑な話である。
 ……もとい。ちょっとだけ役得かもしれない。
「……憑物は、落ちたようで」
「おっ……おかげさまで」
 なんとか肌蹴た襦袢で前を隠そうとしているのか、悪戦苦闘している気配がする。ぎちぎちと縄が鳴って、柔肌に傷でもつかぬかと他人事ながら心配になった。
「見やしませんから、安心してくださいよ」
「だっ、だってぇ……。あああ、あたしってば今まで……今まで……あああああ」
 なんてことしてたんだろ、もうお嫁にいけない、穴があったら入りたいぃ〜、と泣きそうな声に、ああ、普通の娘だったのだな、と薬売りは安堵した。
「あんたのせいじゃない。すべてはモノノ怪の仕業だ。悪い夢でも見たと思って、忘れてしまえばいい。……まぁ、生きてここから出られればの話、だが」
「……薬売りさん」
 慰めるつもりで言うと、途端に娘の声が低くなった。
「助けてもらった人にこんなこと言いたかないけどっ。その、モノノ怪?の気持ちもわかりますっ。男ってほんっと最低ッ! この無神経! 恥知らず!」
「は」
 なんで俺罵られてんの?
「だからこっち見ちゃダメぇーーーーーっ!!」
「はい。すみません」
 疑問にうっかり視線を動かしかけて、真っ赤な顔と、八の字に歪んだ眉と、今にも泣きそうに潤んだ目を見てしまう。心のどこかにさざ波が立った。
 ああいや。ほだされている場合ではない。
「俺は……モノノ怪を斬りに……来たんですが、ね」
 視線だけで退魔の剣を探すが、どこへ隠されたのやら見当たらない。荒れ放題に荒らされた薬箱を思って、溜息が洩れた。
166傀儡回し 9:2008/01/31(木) 19:18:43 ID:/Rhywcci
「しかし、退魔の剣を抜くには、モノノ怪の形と真と理が必要……なんです、よ」
 だから。
「お話を聞かせちゃもらえませんか……ね」
「真……と、理?」
 慣れた反応に、薬売りはいつもどおり口を開く。
「真とは事の有様。理とは心の有様。何かがあり、何者かが、何故にか、怒り、怨んでいる。……それは何故か」
「……何故、か?」
「あんたはモノノ怪の気持ちがわかると言った。それはどういう意味だ」
 知らず厳しい口調になった薬売りに、加世は口ごもる。
「意味……って言われても。そう感じる、としか……」
「感じる?」
「だって男って偉そうにする割に役に立たないし。いやらしい手でベタベタ触ってきて、嫌がるとケチだの出し惜しみだの文句つけて、そんなこと気にするな、いちいち騒ぎ立てるななんて、
あんたは気にしなくてもあたしは気にするってぇーの! そのくせ貞操を守らない女なんてクズだとか言うでしょ。どっちがクズよ。気持ち悪い、大っ嫌い!」
 怒涛の勢いで飛び出した悪口に、薬売りは目を丸くする。
 年若い娘特有の潔癖さ―――だろうか。
「だから、懲らしめてやりましょ、て水江様と真央様が。女とおんなじ目に遭わないとわからないなら、わからせてやろうって。さとさんと三人でしてらしたのに、仲間に入れてもらったの。見た目がいいのは攫って閉じ込めて、そうじゃないのは力仕事でもさせといて。
表向き男が必要な部分には、操り人形を置いとけばいいし、その方が世の中よっぽどよくなりそう―――って、そういうこと、なんだけど」
 加世は自信なさげに声を低めた。
「うん……さっきまでは、そう、信じてたけど……。今考えると、これってヘン……だよね……」
 薬売りはほぅと息を吐く。
「……珠生ってのぁ……誰、ですかね」
「たまき? うーん……知らない……と、思うんだけど……」
「―――男共に嬲り殺された、可哀相な娘の名前でございます」
 ねぇ、さとや、と両脇にさとと水江を従え、赤い回廊から姿を見せた真央が、膳を捧げたさとに向かって笑う。さとだけでなく、水江もまた、気まずげに視線を逸らした。
「先代当主の伊行という男は、畜生にも劣る酷い男で」
 おっとりと、真央は水江によく似た顔で笑う。
「民が坂井に逆らえぬのをよいことに、見目よい娘を攫っては、この部屋で嬲っておったのです。息子の伊国もね。伊顕は手を出しませなんだが、それは気が弱ぉうてのこと。知りながら止めぬのでは、同じ穴の狢でございましょう」
「……よく、ご存知で」
 水江の娘というからには、それは真央の生まれる前ではないのか。
 問うた薬売りに、真央はさとに手を振って、格子の隙間から膳を差し入れさせた。
「可愛がっていただいたのです」
 真央は愛しむように胸元に触れた。
「私など、珠生様から見れば憎んでも憎みきれない者でしたでしょうに。おまえに罪はないと、たいそう優しくしていただきました」
「仇を―――討つ、と?」
 亡き人の代わりに、世の男共へ復讐を。
 それが、理―――か。
167傀儡回し 10:2008/01/31(木) 19:21:15 ID:/Rhywcci
 眼差しを厳しくした薬売りに、真央は笑う。
「さぁ? 私は女でございますから。物の道理などわかりませぬ。怨むというならこのさとも」
 白い手が、さとの背に触れた。
「珠生様の前は、さとでした。そして―――」
 俯いた母を、真央は振り返る。
「―――世間体から監禁こそされませなんだが、嫁という立場は弱いもの。あとはもう言わずとも……おわかりでしょう? そうして真央が生まれましたが、はてさて誰が父やら」
 くつくつと、真央は赤い唇で笑う。
「誰にせよ、坂井の血には変わりございませんねぇ。穢らわしいこと」
 不義の―――そう、ただ祖父と母の間の子というのではなく、これ以上ないほど道を外れた挙句の子であると―――その、己への疎ましさ。
 それが、真か。
 ひどい、と加世が呟く。その顔には女たちへの同情がありありと表れていた。
「―――加世」
 優しげに真央は呼ぶ。
「縄を解いてあげようねぇ。心配したのよ、そこの男に怪しげな術をかけられて。今はもう、大丈夫?」
「……あの、あたし」
「皆まで言わなくてもいいわ。怖かったでしょう。許してね」
 加世の瞳が揺れる。はらりと解けた縄、痺れたのか小さな両手をこすりあわせて、薬売りと女達を交互に見やる。
「お食べ。それと、これも。私はあの男共ほど非道じゃないわ。食べさせておやり」
「あの……でも」
 加世は俯く。
「これって……本当に、意味があるん、でしょうか……」
「―――加世!」
 ぴしりと飛んださとの声を、真央が押しとどめる。
「どういう、意味?」
「あっ、あのぉ……えっと、あの男達が、酷い、嫌な奴なのは本当です。真央様も水江様も、さとさんも、お気の毒だと思います。あの、でも、あたし……、あたしは、薬売りさんは悪い人じゃないと……思って。
そりゃ、あの、ちょっと考えなしなところはあるかもしれないけど、慰めてくれたし……。か、考えてみたら、あたしは、水江様や真央様みたいに、お家を取り仕切るなんてことできないし、誰かのお嫁さんになるんだって悪くないと思うし……。
女でも、そんな風に色々なんだから、男だからって皆がみんな、あいつらみたいな下種なんじゃ……ないかも、て」
 つっかえつっかえ訴える加世に、真央は、そう、と優しく微笑んだ。加世がほっとしたように息を吐く。
「真央様―――」
「あなたも所詮、踏みにじられた経験がないから―――わからないのね」
 笑顔のまま告げられた言葉に、一瞬加世が戸惑う。その前で、どぅっ、と殺気が膨れあがった。薬売りは声を張りあげる。
168337:2008/01/31(木) 19:21:43 ID:/Rhywcci
ごめんちょっと一旦中断。
169名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 19:40:19 ID:Bx6S1mba
生殺しやっちゅうねんwww
170337:2008/01/31(木) 20:03:38 ID:/Rhywcci
>>169
ごめんw

すんませんでした、再開します。
171傀儡回し 11:2008/01/31(木) 20:05:26 ID:/Rhywcci
「―――形と! 真と! 理によって!」
 懐から、鈴の音を立てて退魔の剣が飛び出す。
 女達が驚いたように目をみはった。どこから、と悲鳴のように叫ぶ。
「剣を―――解き放つ!」

 どん、と髪がくねって、加世の悲鳴があがる。
 ぽたぽたと、傷つけられた頬から血が溢れた。
 ―――薬売りの血だ。
 剣が、抜けない。

「何故……っ!?」
 狂ったような哄笑があがった。
「何が足りない!」
 知りたいか、と真央が笑う。
 さとが笑う。
 水江が笑う。
「ならばその身をもって知るがいい!」


  *


 ちりちりと、手足と首に巻きついた髪が肌に食い込んで痛い。
 髪の手入れをするときに、うっかり指に刺さることは稀にあるが、今加世の四肢を捕らえているそれは根本的に性質が違うようだ。一束にも満たぬほんの数本、それが意思を持つようにきりきりと絞まって、肌を切り裂く寸前でとどまっている。
 加世に許された装束は、その恐ろしい髪だけだ。あとは身を隠す術ひとつなく、くすくすと女達の嘲弄に晒されて立っている。格子の中は、意外と広かったのだなと思った。薬売りと、加世と、三人の女達で一杯だが、入れないことはない。
 若いねぇ、と水江の手が加世の肌を撫でる。その手のあまりの冷たさに、加世はふるりと身を震わせた。
「いい手触りだこと。張りがあって。……なめしたら楽器に使えそうねぇ」
 ぎくりと顔がこわばる。真央が笑った。
「お母様、加世が怯えているじゃあありませんか」
 するすると白い腕が背後から絡みついて、すくうように加世の胸を揉みあげる。
「っあ、」
 背に触れる上等の絹の感触、真央は角隠しこそないものの花嫁衣裳のままだ。衣服を着ている者の前で裸にされることが、こんなに心もとなく、いたたまれないものだとは知らなかった。
172傀儡回し 12:2008/01/31(木) 20:09:03 ID:/Rhywcci
「加世は……どこが好かったんだったかしら……ねぇ?」
 泣きそうな気持ちで首を振る。言わないで。薬売りに聞かれる。聞かれてしまう。
 ねっとりといやらしい手つきで、水江が加世の尻から太腿を撫でまわす。その背後に薬売りがいる。
 無残な姿だった。
 加世は、髪の拘束こそあれ、どこに縛りつけられているわけでもない。逆らえばその髪が絞まって落ちると脅されてはいるものの、四肢は自由に動かせる。
 だが、薬売りは両腕だけでなく、視界を奪うように顔の半ばまでをこの恐ろしい髪に覆われて、格子に縫いこめられている。無理に薬を飲ませたあとは猿轡も噛まされて、表情はほとんど窺えない。
鮮やかな着物は乱暴に肌蹴られ、方々から伸びた黒髪がざんばらに乱れて、うち棄てられた文楽のようだ。加世から見ると羨ましいほど白い肌は、抵抗の痕として幾筋も髪の刃に痛めつけられ、
あちこちに血が滲んでいた。その胸が上下しているのでなかったら、死んでいるのかと思うところだ。
 あちらから見えないだろうことは加世を安堵させたが、意識のあるなしがわからないことが怖い。いやたぶんあるのだろう。薬売りを庇った加世を、その当人の前で辱めることが、女達が加世に科した罰なのだ。
 おまえを庇ったのはこの程度の女なのだと―――そして、この程度の女におまえは庇われたのだと、薬売り自身をも貶める。
「恥ずかしがることは、ないじゃあないの。今までもたくさん、してきたでしょう……?」
 声音ばかりは優しい真央に、加世は唇を噛んで、耐え切れずに薬売りから目を逸らした。真央の舌が首筋を這い、水江の唇が腹部を這う。顔だけでなく背格好もよく似ている。
四本の手が休まず動いて、加世の体が次第に熱を帯びた。きゅ、と胸の先端をつままれる。
「や、あ……っ」
「ふふ。加世はいやらしいねぇ」
「可愛いこと」
 快楽を知っている体は容易に煽られる。まして女達はその性別故に、加世の弱いところを的確に責めたてた。じんわりと秘所が濡れていくのを感じて、目の前が暗くなる。
 ―――怖い。
 どうなるのだろう。何をさせられるのだろう。そして薬売りはどう思うだろう。
 モノノ怪に憑かれていた―――と薬売りは言ったが、自分が何をしたのか、どう思っていたのか、記憶は明確に残っている。どうしておかしいと思わなかったのか。本意でなかったというのは言い訳にしかならない気がする。
モノノ怪に呼応して同調する部分が、確かに自分の中にあったのだ。ましてや今、諾々と女達に従うのは命惜しさの自分の意思で、恥ずかしくて情けなくて涙がこぼれる。
 死ぬのは怖い。
 でも、まがりなりにも慰めてくれて、言葉を交わした薬売りに、軽蔑されるのも嫌だ。
「兄さん、期待しておいでねぇ」
「聞こえるかしら。可愛い声でしょう」
「加世ったら恥ずかしがって。耳まで赤いよ」
「でもいつもより好いみたい。こういうのが好きだったのね」
「やっ……言わな、で……っ」
 必死で真央の腕に縋りつくと、きりりと喉元が絞まった。加世はぎくりと体を強張らせる。真央はふんわりと優しく笑った。
「なぁに?」
「いっ……いえ……」
 静かな恫喝に、もう何も言えない。ああ、と納得したように真央が頷いた。
「お口が寂しい? 気づかなくてごめんなさいね」
173傀儡回し 13:2008/01/31(木) 20:12:05 ID:/Rhywcci
 え、と呟いた瞬間、ぐいと頭をねじられて、唇があわさった。
「ん……っ!?」
 思えば口を吸われたことはなかった。混乱するうちに真央の舌が加世の口内を蹂躙していく。
「んっ、ふぅ……っ!」
 水江が一旦手を離し、無理な体勢だった加世を真央に向き合わせる。姿勢は楽になったが、おかげでますます深く貪られた。逃げても逃げても舌を絡められ、そのうち片手が胸に下りて双方から快楽を送られる。
そうして、水江の腕が背後から加世の太腿に絡みつき、指が秘所を撫であげる。
 声にならない悲鳴があがった。


  つづく


さとさん空気w これから活躍……してくれるといいなぁ。
こんなカオスなのにエロ度が足りないのは何故だろうorz
中断すみませんでした。
174名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 23:11:22 ID:hOTGcO74
>>168-169-170の流れ吹いたwww

それにしても苦戦する薬売りGJ!!!
続きが楽しみ過ぎる!
175727:2008/02/01(金) 01:32:05 ID:DXQ6vD1D
>>337
新作投下乙なのです。こうきましたか!
原作アニメが(怪は別として)あまりにも無敵なので、
苦戦する薬売り、いい感じです。

で、エロなしで申し訳ないんだけど
少し前に薬売りとちび加世でほのぼの?という話に
何か色々解き放たれたので久々に投下。
全5レス。
176まどろみのあと 1/5:2008/02/01(金) 01:32:33 ID:DXQ6vD1D
「あらやだ、届け物?――何かあったっけ」
 朗らかな声に妙な既視感をおぼえて視線をおよがせると、見るからにはつらつと元気のよさそうな地黒の若い娘

が薬売りを見ていた。奉公人か、下働きか、立場のほどはよくわからない。くりくりとよく動く大きな瞳、左目の

下にぽつりと一つ、どこか絶妙な按配で色気を添えている黒子、婀娜っぽさと愛嬌が同居するふっくりとした唇。
「――いえいえ、」
 決して少なくはない衝撃を完全に飲み込んで、薬売りは声をあげる。
「私は、薬売り」 
 そしてまったくおなじ言の葉を吐き出す。
 娘はすっかり自分のことなど忘れているだろう。そのように暗示をかけた。
 すべて忘れてしまうようによく言い含め、暗示をかけ、目が覚めたときには夢でも見ていたのだと思うようなと

ころへ運んで、誰かが見つけてくれるまで離れた場所で見守った。意図していたとおりに、通りがかったどこかの

お侍に無事保護され、おさない童女は家路についたのだ。
 たしか、そう、名前は……。

 ――かよ。 



 子供は幼いうち、七をかぞえる歳までは神の眷属だと言う。
 それは半分正しくて半分偽りだ。たしかに大人には見えないものをながめたり、知ることのできない気配をあざ

やかに読むことができるのは事実だが、それはあやかしや物の怪に狙われる遠因ともなる。あまり直接の害を加え

ることが多くないあやかしは別とするとして、ヒトの因果と縁がその存在をゆがめた物の怪ともなれば、たいがい

は自らの姿を見られることをひどく嫌うからだ。
177まどろみのあと 2/5:2008/02/01(金) 01:33:48 ID:DXQ6vD1D
 そして、そういった邪魔なものはやはり排除する方向に動くのが定石というもの。
 そういう意味では神の眷属というのもあまりありがたくはないものだな、と薬売りはぼんやり考える。
 ふりかかる災難を避けるすべがあるならまだしも、眷属だからとて神が無条件の保護を与えるわけでもないのだから。
 それにこうして、――
「……あなたは、だあれ?」
 自分は物の怪を斬るためにやってきたはずなのに、なぜだかついでに迷子を保護する羽目にもなったりする。
 形と真と理をそろえるのにしくじったせいでひどく脇腹を打ちつけてしまい、着物の上から軽く触れただけでも思わず体をかたくしてしまうほどの痛みが走る。呼吸をするだけでもしくしくと痛むので、もしかしたらあばらの一本か二本でもいかれてしまったのかもしれない。
 あとで膏薬を貼らなければと忌々しい気分で考えていたら、どうやら物の怪が連れ込んだらしき地黒の童女が、岩室のなかから薬売りを小首をかしげて見つめていた。
 ……物の怪をその身に飼っていたのは、幼い子供をなくした女だった。
 その心痛は推して知るべしだが一度物の怪と化してしまえば斬って開放するしか、してやれることはない。
「おばさんの、おともだち?」
「……」
 童女には、何か暗示をかけられたり記憶をゆがめられているような気配はない。
 むしろその周辺にはかいがいしい細かな世話の痕跡があり、あの物の怪と化したあわれな女は、最後の一線だけは譲り渡すことなく護りきったのだろうと理解する。母親であるならば、子供にだけは手をかけないものだと決まっている。
 くりくりとした大きな瞳、健康的に日焼けした肌、ぷっくりとした唇。
 きれいなつやを乗せた黒髪をまっすぐにおろし、顎の線できれいに切りそろえている。歳のころは五つかそのくらいだろうか。まだ物の怪やあやかしをその目にとらえることのできる年齢であろうことは、すぐにわかる。
「……いえいえ、」
 不思議そうに見上げている童女の前へ片膝をつき、目線の高さを低くする。
178まどろみのあと 3/5:2008/02/01(金) 01:34:43 ID:DXQ6vD1D
「私は薬売り」
「おばさん、どこいっちゃったの?」
「大事な御用を思い出して、ずいぶん遠くへ出かけたようですよ。約束の薬をもってきたのですが、一足おそかったようだ」
 すらすらと今見てきたような嘘が口をつく。
「おばさん、かよを、おいていったの?」
 大きな目にみるみる涙が溜まりはじめる。
 そうではない、と言おうとして童女の言葉に驚愕した。……どうやら、本当に、あの女は細やかな愛情をこの童女に注いでいたらしい。
 物の怪にかどわかされた子供など薬売りはそれこそ文字通り数え切れないほど見てきたが、そもそも口をきけない状態にされているか狂っているか、骨か躯になっていたことがほとんどで、こんなにまともな状態の子供など見たためしがない。
「――かよ、と。言うのだね」
 つややかな髪を、血の汚れがついていない左手のほうで撫でてやる。
 薬売りの言に童女はこくりと首肯し、しゅんとした顔をする。
「くすりうりのおにいちゃん、おばさん、いつかえってくるの?」
「しばらく戻りませんよ。おかよちゃんも、もう家へ帰らなければ」
 たんねんに髪をなでてやりながら、静かに告げる。
 ……おそらく怖い思いはしなかったのだろう。記憶をゆがめられたり、物の怪に都合のよいように心をいじられている子供はこんな目はしない。ならば、不思議な夢を見ていたと錯覚させるほうが得策だ。
 恐ろしい経験はなかったとはいえ、あの女の外見はどうみてもまともなヒトのものではなかった。覚えていれば、いずれ自分が出会ったものはヒトならざるものだと気付くだろう。適度な畏怖は人を用心深くさせ益になることのほうが多いが、いきすぎた恐怖はかえって毒になる。
179まどろみのあと 4/5:2008/02/01(金) 01:35:26 ID:DXQ6vD1D
「おうち?」
「……ええ、そうですよ」
「かよの、おうち……」
 言われて初めて気付いたように、かよと名乗った童女は軽く目を瞠る。
「――おうち、かえりたい」
「ええ、そうでしょうとも。おかよちゃんが見えないから、きっと皆心配している」
 言葉の端々にほんの少しづつ暗示を篭めてゆく。
 ここは自分のいるべき場所ではない。帰るべき家があり、そこでは懐かしい人が待っている。
 そう、そこは両親がおり、戻らなければならない――自分の家、だ。
「すぐに出ましょう。大丈夫、すぐそこです」
「ん……」
「ほんのちょっとだけ、歩いた先……」
 穏やかな優しげな声で囁き、暗示の網を強くしてゆく。
 童女の瞼がゆるゆると半分ほど降りて、うつらうつらと小さな頭が揺れてくる。
「……ああ、いけませんね。眠くなってきましたか」
 座っていた岩の上からずるりと滑り落ちかけたところを抱きとめ、痛めたほうの脇腹に触らないようにして抱きかかえる。うとうとと夢うつつの顔をしている童女が、近いところから薬売りを見上げてきた。
「かよの、おうち……」
「すぐ近くまで連れて行ってあげますよ。少し、お眠りなさい」
 ――目覚めた時にはもう、夢は晴れている。
「良い夢を――」
 貝殻のような小さな耳元で囁き、ゆっくりと瞼の上を指でなでる。その動きに従って童女の瞼は静かに下りてゆき、ほどなくして寝息をたてはじめた。
 くたりと力を失った体は軽く、抱いて歩くにも大きな不都合はない。
180まどろみのあと 5/5:2008/02/01(金) 01:36:10 ID:DXQ6vD1D
 起こさないようにして慎重に抱きかかえなおし、薬売りは肩ごしに童女がいた岩室をふりかえる。
 大きな岩盤を三角にたてかけた部分がまるで屋根のようで、その上に小さな花が咲いていた。

 くうくうとあどけない顔で眠る童女を、街道わきに置かれた地蔵のそばへ降ろす。
 雨ざらしではなく小さな小屋が付属しており、新鮮な花や供物が置かれているところを見るとこまめに世話がなされているとわかった。それはそのまま、あまり長い時間を待たずにここへ人が来るはずだという意味でもある。
 取り立てて美しくも醜いわけでもない童女だが、日焼けしたすこやかな様子や目元に彩をそえる黒子、色々と特徴がある。近隣の村や町で暮らしていたのであれば、まともな大人に保護されれば必ず家へ帰されるだろう。
 童女の様子がよく見える、しかし街道からは見咎められる心配のない深い藪の中に身をひそめ、薬売りは誰かが通りがかるのを待つ。
 一刻過ぎ、二刻が過ぎ、そして三刻目のなかばにさしかかったところで、父親らしき堂々とした風体の男に手を引かれた少年が地蔵を指さして驚いたような声をあげた。
 しばらくそのまま藪の陰から様子をうかがっていたが、どうやら信のおけそうな侍だ。
「……そう、すべては夢の中の出来事」
 何もかも忘れておしまいなさい。
 不思議なおばさんのことも、岩室を訪ねてきた薬売りのことも。
 道に迷って、泣きつかれて、お地蔵さんのそばで眠ってしまっていたと……そう思い込めばいい。


 (終)
181名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 01:38:24 ID:DXQ6vD1D
……orz
ごめん1/5が改行変なことに。
読みにくくて申し訳ない。
182名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 02:47:28 ID:wHWIV/v0
>>176
ありがとうGJ!幼女加世と薬売り可愛かったよ!
183名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:14:49 ID:RCYE30eW
薬売りとチビ加世ちゃん話、癒されたぁ…(´∀`)
ちょっとしたレスのやりとりから、ここまで書けるって
やっぱりここの職人さんは凄いわ〜GJでした!また読みたいです!
184名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:35:43 ID:5vb+LubV
ちび加世ちゃんGJです。かわいいかわいいかわいい!
情景が目に浮かぶようです。
何でみんなこんなに描写がうまいんだろう。
185337:2008/02/05(火) 22:35:19 ID:A46yNLqH
投下いきます。長いけど無理やり一気にラストまで。
陵辱・無理じい臭強いです。でもエロ行為としては中途半端。
186傀儡回し 14:2008/02/05(火) 22:37:43 ID:A46yNLqH
 くちゅくちゅと、上からも下からも水音がする。真央は唇を離し、加世のぽってりした唇に人差し指から薬指までを突き入れて盛んに蠢かせた。口の端から唾液が糸をひいてこぼれ、胸元へ垂れて、てらてらと光る。
一方で脚の間では、水江の左手が蜜壺を探り、右手の指で肉芽を転がして、加世の体を思うままに跳ねさせた。とろみのある愛液が水江の指に、黒々とした陰毛に絡んで、こぽりと泡を立てては太腿を流れていく。
 がくがくと膝が揺れる。だが二人はへたりこむのを許してくれない。くずおれそうになる度に、水江が女とも思えぬ力で引きずり起こし、真央が立っておいでなさいと笑うと手首の髪が締まる。
必死で体勢を立て直すと、いいこね、ご褒美をあげようね―――となおさら深く蹂躙される。
「いやらしいねぇ」
「いやらしいわねぇ」
 くすくすと、嘲笑混じりの声音にまで嬲られて、加世は必死に身をよじっては少しでも快楽から逃れようとする。頬に幾筋もの涙が伝って、当分乾きそうもない。
歪み揺れる不安定な視界の端を、ちらちらと薬売りの鮮やかな着物がかすれば、そちらも気にせずにはいられない。それをわかっているように、女達はいっそう高い声をあげさせる。
「やぁっ……あ、はぁん、も、ゆ、ゆるし……あああっ」
 聞かないで。お願い。
 もはや喉から飛び出すのが、泣き声なのか悲鳴なのか、哀願なのか嬌声なのかもわからない。ただ、この責め苦から解放されたかった。
 ―――と。
 黙々と一人、火鉢を調えていたさとが楽しげに声をあげる。
「水江様、真央様。よいようでございます」
「そう。ご苦労様」
 真央はにこりと笑うと、加世の両頬を手のひらで包むようにして目線を合わせた。
「……助けてほしい?」
 恥も外聞もない。こくこくとせわしなく頷くと、真央が形のよい眉を悲しげにひそめた。
「泣きすぎて目が真っ赤ね、可愛いうさぎさん」
 そのままいたわるように加世のほつれた結い髪を撫でつける。
「可哀相に。……でもね、加世」
 するりと水江の腕が離れた。かくりと加世の膝が折れて、真央の指に力がこもる。頭蓋を締めつけられ、首がのけぞって痛みに呻く。端から見れば、夜叉が今しも娘を喰らうかのようだろう。
「みんな、そうだったの。助けてほしくて、何もないところへ何度手を伸ばしたかわからない。泣いて祈っても狂ったように願っても、奇跡なんて起きなかった。
なのにあなただけ許されちゃあ……不公平、でしょ?」
 ぱっと真央が手を離して、加世の体がどさりと床に落ちる。
「布団があるだけよいこと」
「ほんに。男共の気の利かぬことといったら」
「ねぇまったく。ただでさえ痛い体がなおのこと痛くって」
 女達がさざめく中で、横あいから、さとが持ち手へ厳重に布を巻いた、細長いものを差し出す。
 ―――火箸。
 真っ赤に焼けた。
 鉄の。
 ひっ、と加世の喉の奥が鳴る。真央が、よく焼けてるわとさとをねぎらって受け取った。空いた片手が上がって、薬売りを指差す。
「ずいぶんお待たせしてしまって、申し訳なかったこと。加世、殿方のお客様に、おもてなしをしてさしあげて」
「心を込めて、ねぇ?」
「おまえは淫乱だから、さぞやお喜びくださるだろうよ」
187傀儡回し 15:2008/02/05(火) 22:39:27 ID:A46yNLqH
 ―――逆らえない。
 目の前が暗くなる気がした。嗚咽の中から切れ切れに、ごめんなさい、と呟く。火箸に追い立てられるように、薬売りの前に膝をついた。
「……ごめんなさい……」
 繰り返しても、薬売りからの反応はない。否、身動きひとつままならないのだろう。無抵抗の体を自分が今から踏みにじるかと思うと、おためごかしに思えても、謝らずにはいられなかった。
 加世、と女の声で咎められて、慌てて手を伸ばす。そこはもう硬く立ち上がっていて、女達がこうもしつこく加世を嬲ったのは、薬が効くのを待っていたのかと、いまさらに腑に落ちた。
 悪意が―――深い。底が知れない。
 どうしてそこまで、と思うのは、女達の言うとおり自分が乱暴されたことがないからか。こんな風に、延々と心を折るような真似を続けられて、誰に助けを求めることもできなくて、ずっとずっとひとりで。
恨んで憎んで、でも表に出せずに心の中に溜め続けると、人は誰しもこうなるのだろうか。
 ―――なんて、暗い。
 ごめんなさい、と震える声でもう一度呟いて、女達の望むように、薬売りのそこに顔を寄せる。せめて苦痛を与えぬよう、柔らかく触れて口に含んだ。
 熱い。
 先端に舌を這わせ、手でしごくと、とくとくと鼓動を感じる。
 恐々と上目遣いに様子を覗うと、声を堪えているのか、きりきりと猿轡が噛み締められていた。忙しくなる呼吸と脈動、薬箱の中のあれこれの、効能を説明したのはこの人自身だ。
まさかこんなことになるなんて、坂井の台所に顔を出した時は思いもよらなかっただろうに。
 どうするのが一番いいのか、迷いながらゆるゆると顔と手を動かしていると、手を抜くなと叱責が飛ぶ。
「ほら、兄さんが物足らなさそうだよ」
「いやねぇ、いまさら取り繕ったところで、おまえの淫蕩ぶりはこちらの方もわかっておいでだろうに」
「まぁ……下働きがいたらぬのは、主人の責でもあるかしら。さと、手伝ってあげて」
 命を受けたさとの粘つく舌が、薬売りの耳朶をねぶる。絡みつくように、指が胸元から脇を辿っていき―――じゅ、と嫌な音がして薬売りの体が跳ねた。
「―――ッ!」
 さすがに堪えきれなかったか、猿轡でくぐもった叫びがあがる。ぎっ、と一瞬格子が鳴った。一度火鉢に戻されて真っ赤な色を取り戻した火箸が、白い肌に押しあてられている。
肉の焼ける嫌な臭いが立ちのぼり、衝撃で髪が食い込んだ肌から、じわじわと血が流れる。
「さっ、さとさんやめてください! ちゃんと言うこと聞いてるじゃないですかぁっ」
「お黙り! あんたも食らいたいの!?」
 まなじりを吊り上げて、さとにその凶器を向けられると体がすくむ。もう、次の言葉を口にできない。
「―――加世」
 水江が優しい声で呼んで、びくりと顔をあげた。
「どうすればいいか―――おわかりだねぇ?」
 加世は睫毛を震わせて瞑目する。
「……はい」


 傀儡回し〜大詰め〜


188傀儡回し 16:2008/02/05(火) 22:40:47 ID:A46yNLqH
 じゅぷじゅぷと、忙しなく水音を響かせながら、加世の頭が上下する。時折しゃくりあげ、むせて咳込むと薬売りに傷が増えるので、その顔から徐々に表情が消えていった。
懸命に心を殺して薬売りを高め、女達の言葉のまま雌猫のように体を擦りつける。
 誰の意向か、視界を覆っていた部分の髪が外される。頬のあちこちに細かい傷を作りながら、女達を睨む薬売りに加世が首を振った。だめ、と唇だけで訴える。
「そんな、顔、しないで……あ、あの」
 ががっ、と爆発するように加世が耳まで赤くなる。それでも、細い、震える声が懸命に紡がれた。
「や、やらしい、あたしを……見て、ください。お願い」
 弾けるような甲高い笑いがあがる。腹を抱えて、浮かんだ涙を指で拭いながら、健気だこと、と水江が言った。
「ずいぶんな入れ込みようだねぇ」
「確かに色男だけど」
「馬鹿だねおまえ、多少見てくれがよくても男は男だよ。この浅ましい目つきがわからないのかい?」
「ねぇ? 加世を見たら抑えがきかないから、私達を睨んで誤魔化そうとしたんだろうに」
「下郎が」
「畜生道のケダモノだって、これよりかはまともでしょうよ」
「おまえたちなど、使えたところでせいぜい種付けの道具さ、何を思い上がっているのやら」
 加世が頭を振る。潤んだ目で、媚びるように女主人達を見あげた。
「でも、あの……もう、我慢できません。欲しい……」
 どっと笑いがわいた。
「仕様のない子。まだわからないのね」
 真央が笑う。さと、と声をかけ、加世を手招いた。
「……真央様」
「いいからいらっしゃい。いいものを見せてあげるから」
 薬売りを気にしながら、重い体を引きずるように加世が真央の側によると、ばさりとさとの着物が落ちた。え、と目を丸くする加世の前で、なだらかな線を描く脚が薬売りにまたがる。
「はは、兄さん怖い顔だねぇ。……でも、欲しいンだろう? ほら」
 腰を落としたさとに、薬売りが呻く。さとの白い体が上下に揺れる度に、ぎちりと拘束が鳴った。目隠しがなくなって多少余裕のできた頭部が、ぐ、と反らされて白い喉を晒す。ね?と真央がしゃがみこんで加世を覗き込んだ。
「誰でもいいのよ? 情なんて、かけてあげるだけ無駄なの」
「可哀相に、ねぇ。男に夢を見るのはもうおやめ」
「可愛い加世。わかったらこちらへおいで。一回の間違いは許してあげる。もう十分に罰も受けたものね?」
 口ごもっていると、ああ、とさとの嬌声があがった。すごい、とうっとりした口調が言う。
 さっきまで、加世の手と口の中で脈動していたそれが、今はさとの中にあるのか。
 思わず視線がそちらへ流れると、もう逸らせない。食い入るように加世が見つめる先で、気づいたらしい薬売りがさっと顔を背けた。
 ふつりと、何かの糸が切れる。
 おいで、と差し出される手を、加世はふらふらと握った。


   *

189傀儡回し 17:2008/02/05(火) 22:42:45 ID:A46yNLqH
 濡れた手拭いの感触に目を開けると、体中が痛んだ。薬売りは思わず顔をしかめ、かたく目をつぶって痛みの波をやり過ごす。
「……気づいた」
 囁くような声にそろそろと目線を動かすと、泣き腫らした目をして、それでも娘が気遣わしげに薬売りを覗き込んでいた。
 ……気まずい。
 思わず視線が泳ぐ。情の深いタチなのだろう、薬売りへ心をかけた振る舞いはモノノ怪の気に食わなかったようだ。おかげで最後まで行き着くのは免れたものの、まったく平静でいるにはいささか肌が近くなりすぎた。
 後ろめたさもある。
 暗闇の中、薬売りに触れる舌先が震えて、娘は嗚咽をこらえていた。ひっくひっくとしゃくりあげる声、扱く手が頻繁に離れたのは涙を拭うためだったろう。哀れだと、思った。
 慰めてやりたいと、同情は熱に炙られて嗜虐心へと倒錯した。平たく言うと興奮した。この口が、と知らず見つめている自分に気づいて、心中で舌打ちする。あんな状況下で哀れな娘に欲情するとは、確かに鬼畜の所業だ。
薬のせいというのは容易いが、責任と共に心も投げ捨てるような真似は、性に合わずに困惑する。
「あの……売り物を荒らして申し訳ないんだけど、傷薬はどれ?」
 問われて、改めて娘へと視線をやる。いまさらだが縛られていないことに驚いた。襤褸布のような姿で、相変わらず格子の中とはいえ、一応布団に転がっているらしい。その横に、薬箱がでんと控えている。
「……誰が……これ、持ってきたんですか」
 掠れた声を出すと、娘が小首を傾げる。
「あたし。いけなかった?」
「いえ。重かった……でしょう」
「大丈夫。それより、薬はどれ?」
「ああ……はい」
 起き上がろうとして、思いきり失敗する。全身に走った痛みに、再度その場へ突っ伏した。
「まだ起きちゃダメ!」
 そのようで、と切れ切れに呟く。無理な姿勢を長時間強いられて、その上あんな真似までさせられては筋が強張るのは当然だった。最中に足が攣らなかったのは僥倖というものだろう。挙句、あの凶悪な髪のおかげであちらこちらがぼろぼろだ。
 特に腕が酷いな、と全身の感覚を探る。ぎちぎちに縛られていたおかげで、かえって骨まで達することはなかったようだが。やれやれと思って、ふと気づいた。
「……あんた、腕は」
「腕?」
「足と……首も」
「……ああ、あの髪? うん、取ってもらったから大丈夫。もう二度と逆らいませんって誓ったの」
 ぎょっと目を見開くと、娘は困ったように太めの眉を八の字にした。
「今度は、操られてなんか、ないから。あたしの意思」
 絶句してその顔を見つめる。娘は情けない顔のまま、ぽつんと訊いた。
「……軽蔑、する?」
「……できる立場にないのは、わかってますよ……。ああ、薬は、黒い、蛤の貝殻に塗り込めたのが」
「これ? ……足りないと、思うんだけど」
「俺じゃありませんよ。あんたに」
 大きく息を吐いて、痛みをこらえゆっくりと起き上がる。
「無理しちゃダメだってば!」
「大丈夫です。慣れてるんで」
「痛みに慣れるなんてこと、あるわけないでしょ!」
 唐突に、娘が叫んだ。泣きそうな響きを叩きつけられて、薬売りは目をみはる。
190傀儡回し 18:2008/02/05(火) 22:44:29 ID:A46yNLqH
「覚悟してても痛いものは痛いし、辛いものは辛いじゃない! だっ、だからみんなあんなふうになっちゃって! 酷い人に酷い目に遭わされて、それでどうして幸せになれないの!? どうして」
 どうしてずっと辛いままなの、と娘は泣く。こんなの酷い、絶対間違ってる、と。
 ―――それでも、娘は薬売りを一言も詰らない。
 気がついて二度驚いた。助けてくれと、なんとかしてくれと縋られないのは―――加世の中で、己が頼るに足りない者だからだ。
 ……無理もない。
 そこまで娘を追い詰める、一因となってしまった自らの不甲斐なさに目眩がした。
「モノノ怪の形を成すのは、人の因果と縁」
 薬売りは顔をしかめながら、ばさりと半襦袢を羽織る。腰紐に、指から流れた血が染みた。
「この地、この縁に縛られて、人の世に在るモノノ怪は、斬らねばならぬ」
 加世さん、と初めて名前を口にした。
「人形に―――心当たりは、ありませんかね」
「にんぎょう?」
「花嫁の」
「え―――厄除けの?」
「それは、何ですか」
 加世は戸惑ったようだったが、ふと我に返ると慌てたように薬売りの着替えに手を貸す。
「婚家に輿入れするまで、道中の花嫁御寮は人じゃあないの。生家を出るときに半分死ぬから……ほら、花嫁さんって白装束でしょう? だけど、それだと悪いものに憑かれやすいんですって。
人より半分彼岸に近いから。だから、身代わりの人形を懐に入れておくの。婚家の迎え火で焼いて、道中の魔を落とすんだけど―――それが、どうかした?」
 ちりん、と鈴を鳴らして、薬売りは退魔の剣を構えた。
 どろりと部屋に黒い渦が巻く。薬売りの手から離れた札が、加世を守るように結界を作る。
「ひとつ、モノノ怪の形は傀儡回し―――」
 がらがらと、誰が触れるでもなく格子があがった。耳を覆いたくなるような女の嘲笑が、幾重にも響く。
「ふたつ、坂井の女衆は年を取らぬ―――ならば」
 水江が、さとが、ゆらりと凝って姿を見せる。一旦宙に散った札が、八方からそれを取り囲み、ひゅんと鋭く空を切って迫る。
「それは人ではない。モノノ怪でもない」
 かつん、と乾いた音がする。

「―――人形だ」

 ぎゃああああああっ、と空間をつんざくような悲鳴があがった。札に赤く紋様が浮かぶと同時にがらがらと四肢が崩れ、糸に吊られてぷらぷらと揺れる。かくんと、絡操の口が開いた。
「ええええええっ!?」
「さらに!」
 薬売りが札を構える。
「人を操る術を持ちながら、わざわざ女達を人形とした―――それは何故だ」
191傀儡回し 19:2008/02/05(火) 22:45:55 ID:A46yNLqH
 あはははは、と狂ったように哄笑する影が。
 花嫁の―――姿を。
 とる。

 許サナイ。

「人形の姿かたちは、元来作り手の思うまま―――」
 りん、と鈴の音が鳴る。
「人から作り変えられたはずの水江と、おまえが似た姿をもつのなら」
 札が鮮やかに乱舞する。白から赤へ。そして金へ。
「水江をおまえに似せたということ―――すなわちおまえは」



 真央ではない。



 どぉうっ、と闇が蠢く。
 降り積もった悲しみが、色濃く塗られた怨嗟の景色が、一枚一枚と剥がされ解きほぐされて、輪郭を徐々に浮かび上がらせる。

 ―――降りしきる牡丹雪。
 ―――連れ去られる花嫁。
 ―――剥ぎ取られる衣装。
 ―――懐から落ちる花人形……。

 主人の厄を引き受けるのがお役目なのに、と真央は―――否、真央と名乗っていた女が泣く。
 その姿は、身代わりというだけあって主人の珠生を映しているのか。それは薬売りにもわからない。だがきっと、薬売りの足を掴み許さないと囁いた、あの女が本当の真央なのだろうと―――思う。
 焼かれず在り続けた人形は、その役割のままこの地に凝った悲哀を、憎悪を吸って、ついにはモノノ怪と化した。
 厄は―――祓わねば、祟るのだ。

 許さない、と響くのは女達の声なき声。その毒が花人形を侵し、女は胸をかきむしるように身悶える。涙を持たぬ身でむせび泣く。ざんばらに乱れた髪が蠢いて、周囲の何もかもを薙ぎ払おうとする。
192傀儡回し 20:2008/02/05(火) 22:47:14 ID:A46yNLqH
 助けて。
 苦しい。
 誰か―――お願い。
 役立たずの、私の代わりに。
 あの人を―――みんなを。

 助けて。

「囚われるな―――」
 花は束の間に枯れるもの。
「清め、祓おう」
 昔日の悲しみを。
「形と、真と、理によって―――剣を、解き放つ!」


   *


 ぺたん、と加世は天井を見上げて座り込んだ。
 きらきらと、色とりどりの紙吹雪が降ってくる。
「……あたし……」
 呆然としたまま周囲を見回し、やがてすっとんきょうな声をあげる。
「今まで何にご奉公してたのーーーーっ!?」
「モノノ怪と、人形……です、ね」
「ウソぉーーーーーっ!!」
 頭を抱えて突っ伏した加世の隣に、薬売りは屈み込む。
「従うべきモノノ怪はいなくなりましたが―――あんたの意思は、どうなります」
「え……」
 加世はしばらく考え込む。
「……う、うん……実家に、帰ろうかな……」
「そうですか、よかった」
 ぽかんと、加世は薬売りを見上げた。安堵したような声音、これはもしかして。
「……助けて、くれたの?」
「珍しいですよ」
 モノノ怪に追い込まれて、俺に助けを求めてこない人は……と、薬売りは苦笑する。
「あんな姿見られちゃあ、頼りようがないかもしれませんが、ね」
 ぱーっと加世の頬が染まって、あわあわと視線が泳ぐ。そしてはっと気づいたように薬売りの腕を掴んだ。
「きっ、傷は!? 傷はーーーーーっ!?」
「だから、大丈夫だと言ったでしょう」
 くるくると変わる加世の表情に、薬売りは喉の奥で笑う。
「夢……みたいなもの、です」
 人の生活にお戻りなさい、と囁いて、薬売りは坂井の屋敷を後にした。



 その後、塩野の屋敷で婚姻など知らぬと言われ、首をひねりひねり帰ってきた小田島が、空っぽになった坂井家にぽつんと残った加世を見つけて目を白黒させることになる。

 また、これきりと思っていた娘に数年後海の上で再会してしまい、薬売りは自らの失態を思い出してものすごく気まずい思いをするのだが、それもまた、別の話。



 おわり
193337:2008/02/05(火) 22:53:45 ID:A46yNLqH
花人形を厄除けに云々は一部創作なので、あまり本気にとらないでくだしあ。
男性向けエロのつもりで愛のないセクースに挑戦したけど、
エロスキルが上がるまで、もうやらないよヽ(`Д´)ノウワァァァン

化猫は神作品なのだと、再認識しますた。
194名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:32:01 ID:2Owgltnc
乙ー!
面白かったですGJ!
モノノ怪がエロ作品だったらこんな感じなのかもと思ったよ
お疲れ様でした!
195名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 13:15:20 ID:hVRpYqXu
>>193
乙!!!

ただエロいだけじゃなく、しっかりモノノ怪の物語になっててかなり楽しめた。

ありがとう!!!!
196名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 18:31:37 ID:NEWRFVy4
二次創作とは思えないよ、GJ!クォリティ高いなあ!
食い入るように読みふけってしまった。
197名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 01:04:14 ID:XYXHAZmJ
tp://mixds.hp.infoseek.co.jp/index.htm
ここで検索。どっかで読んだ作品ばっか
198名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 05:06:15 ID:x1tmhcYl
199名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 05:09:28 ID:WstcDcbN
??
おまい二次は初めてか?
200ドS:2008/02/08(金) 23:45:54 ID:HbSDU+WY
空気を読まずに完結編投下。全裸で。
201加世×ハイパー:2008/02/08(金) 23:47:22 ID:HbSDU+WY
男は加世を見つめたまま細腰を掴んだ手に力を込める、

「あ!待っ…ひっ!あああぁぁ!!」

 そして制止を構わず力任せに加世を貫いた。

「あぐっ…!!あ…は…っ」

 腰を掴まれた加世は逃げることはかなわず胎内に捩じ込まれたものの熱と圧倒的な質量に目を見開き背筋をしならせた、

「………」

 一方男はぼんやりと黙ったまま苦しそうに呻く加世を眺めていたかと思うと、結合部に視線を落とし小さく腰を揺すった。

「あ…ひぐ!んあぁぁ!!」

 胎内をえぐられゴリゴリと不快な音を感じ加世は矯声ではない悲痛な声をあげた、すっかり男を受け入れた秘裂は目一杯押し開かれ硬く反り返ったものによって下腹部が不自然に膨れている。

男は腹筋だけですっと起き上がり鼻先が付きそうなほど間近に加世の顔を見つめた、ぱらりと肩から落ちた銀糸の髪が加世の胸にすだれがかった。

「あふ…、薬売りさ…うっ…ん!」

 ごめんなさい、許して、と続けようとした厚い唇に紫の紅をさした唇が食らいついた、ぬるりと大きな舌が加世の口内に侵入し唾液を絡めとり両唇にきゅうと吸い付く。
202加世×ハイパー:2008/02/08(金) 23:50:33 ID:HbSDU+WY
「ん…ふっ…、ぅん…」

 次第に加世の体の緊張が溶け、男の首に腕を回し深く唇を繋げた。

男は加世の体を抱き腕に力を込めるとぐっと腰を突き出した、

「ぅああ!っむ…!んん――っ!!」

声をあげ空気を求めて口を離そうとした加世の後頭部を押さえ付けなおもその艶やかな唇に食らいついた。
男が腰を動かすたび巨大なそれが加世の最奥に突き込まれ、腹の奥深くにチリチリと焼け付くような快感を与えた。

「んっ!…ふぅ…、うぐ…」
加世の矯声、吐息、または悲鳴、その唇から出でるもの全てを飲み込もうとするかのように、男は加世の口内をまさぐり攻め立てる。
男の背に回した加世の手がかりりと筋肉質な背中を引っ掻き赤い痕を幾筋か刻んだ。

加世を膝に抱えていた男はそれだけでは足らなくなったのか、加世を地面に倒すと両足首を掴み上げより一層早く激しく叩き込んだ。
「ひいっ…ぃ!あぐっ!んあぁあ―!!」

やっと唇を解放された加世は荒く呼吸を繰り返し男の首にしがみついている、揺さぶられる度に弾む乳が男の胸に擦れつんと上向いた。

男は息一つ乱さず加世を攻め立てる、激しい律動により飛び散った加世の蜜が男の下腹部から加世自身の尻まで濡らしていた。
203加世×ハイパー:2008/02/08(金) 23:55:50 ID:HbSDU+WY
「くっ…ひぃ!だめ…もう!だめなのぉ!あぁああ――!!」

 異形ともとれる巨大なものに臓器を押し上げられる不快感と、体丸ごと突き上げられるようなかつてない快感が合わさり高みへと登り詰めた。

「はっ…!ひぃ…、あぅ…ぅ…!」

 加世の全身が跳ね上がりびくびくと痙攣し膨れた下腹部が不規則に波打つ、きょろりと上向いた大きな瞳から溢れた涙が睫毛に溜まり一呼吸後に乱れた日本髪に落ちた。


乱れた着物を重ねた上に力をなくした加世を寝かせ男はその姿にしばし見いっていた、

「…か……ょ…」

―りん―

男の背後に鈴の音が鳴った。

金の化粧をした男がゆっくり振り向くと紅い化粧をした男がいた。

涼やかな視線が二つ重なる。

先に目を反らしたのは金色の男だった、金色の男は糸が切れた人形の様に崩れ落ちその背中からぴょんと一機の天秤が飛び出した。

―りん、りん―

天秤は忙しなく鈴を鳴らしている。


「…お前か」


終わり
204名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 23:57:26 ID:GI78G4J0
ちょwwまさかのオチwwww
205ドS:2008/02/09(土) 00:00:10 ID:HbSDU+WY
以上です、お粗末でした。
上の検索サイトのレスってどういう意味なんだ?エラーで見れなかった。
206名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 00:11:51 ID:wyRHFgK5
ドS様!!真に御美事に御座いまする!!!!!!!!
あれだけヤっといて呼び捨てとはwwwwwwwwwwwwww

しばしの間虫歯の痛みすら忘れてしまい申した。
207名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 02:08:18 ID:slv+deKh
ドSさまGJです!お疲れ様です!
凄いなウエンツのブツは…描写に血とコカーンがたぎりました。
オチにはビックリしましたー薬売り、勘忍してやって欲しいw
208名無しさん@ピンキー:2008/02/09(土) 04:45:13 ID:Z0676EXB
エロさを堪能したあとものっそ吹いたwww
さー、お仕置きの時間だよーwww
209ドS:2008/02/10(日) 23:03:38 ID:MhaMYGLD
加虐愛みたいな鬼畜凌辱系をまた書きたくなったんだが、俺の妄想が枯れかけている。

どなたか画期的でエロいプレイをご存知でしたらお聞かせ願いたく候。
210名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 23:50:36 ID:UgHVtspI
加世×ハイパーかと思ったら、まさかの天秤×加世w
211名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:16:22 ID:MiAV6qLi
>>ドS氏

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 触手!触手!
 ⊂彡

兄のことを思いながらタコ的な海神に蹂躙されるお庸、
徐々に正気を失ってついには海神に取り込まれる……。

兵衛×加世なら……入れたまま乗馬なんてのもイイ。ガツガツしそうw
それか、街道脇の繁みの中で木に縛りつけて、こっちは暗いけど向こうが
明るいんで通る人がよく見える、声を出して街道の人が見上げでもしたら
確実に見られる……あ、いっそ結構な細木か竹で、体揺らしたら繁みか
枝ごと揺れてバレる、必死で快楽を我慢する加世……なんてのも。

「ほら、今通った男……風もないのに、という顔をしていたぞ」
「んむっ……んんっ、……んぅ……っ!」

……鬼畜は難しいですorz
ところで、加世×ハイパー後、お仕置きの時間はこないのでしょうかwktk。
212名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:22:53 ID:nIxR9yQ7
>>210
ドS氏、あんまり鬼畜っぽくはないですがこんなのはどうでしょう
つ四十八手制覇プレイ
つあの時代のお道具(張り型など)プレイ

>>211
すごく…クトゥルフです
213名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:24:59 ID:nIxR9yQ7
すいません安価ミスってましたorz
×>>210 ○>>209

ドS氏、>>210氏、申し訳ない
214名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:23:07 ID:2rU1YeBb
>>212
>四十八手
すでにそのうちの5〜6つ位は既出ってるかと。残り43手でもおkってことで
一晩に48手は男も女もきつかろうし・・・ってかマジ死ぬぞ。
7〜10日間耐久ってのはどうだ?

例えば、兵衛×加世で
兼貞を折ったことで兵衛に呪い発動!それを解くには7日間の禊が必要であり、その方法とは!

・・・・・・スマンかったorz 書いてて自分馬鹿かと・・・

>>211
お仕置きは是非、薬売り×天秤でヨロ
215ドS:2008/02/11(月) 23:57:28 ID:3AbpXmDW
この流れに色々とみなぎってきた。

遅くなりましたがイメージイラストをup、自分で収蔵しようとしたが分からんかったです…無知でごめん。

佐々木×加世
ttp://imepita.jp/20080211/454550

佐々木×加世up
ttp://imepita.jp/20080211/456310

薬売り×加世-目隠し
ttp://imepita.jp/20080211/448690

薬売り×加世-目隠しup
ttp://imepita.jp/20080211/451710

薬売り×加世-拘束&目隠し
ttp://imepita.jp/20080211/446530

加虐愛-異物&穴ル
ttp://imepita.jp/20080211/051070

加虐愛-異物&穴ルup
ttp://imepita.jp/20080211/046540

加虐愛-異物&刀緊縛
ttp://imepita.jp/20080211/057460

加虐愛-異物&刀緊縛up
ttp://imepita.jp/20080211/056200
216名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:56:54 ID:aerxUA/F
ドS氏 thx!
このスレに遅く来たから見れなくて残念だったんだ
拝見できて嬉しいです。
てか、お名前に似合わず(失礼)なんという可愛い絵柄。
萌えました!
217337:2008/02/12(火) 13:20:41 ID:icVJSMqU
>ドS氏
乙です! とりあえずローカルへ保存保存。
これって全部右回り90度回転するのが本来の向きでいいですか?
218名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 13:36:31 ID:fXvmLiGi
あー、えと、まんま保存するのが筋だろうとは思うけど、だいじょぶ?
一時的な閲覧と違ってずっと残ることになるんだろ・・・
局部とか修正いれなくて平気かなあ・・・ギリおk?
住人の皆々様とご意見と、ドS氏へも確認いたしたく。

219名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:34:16 ID:Y/nACGyr
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
220ドS:2008/02/12(火) 22:54:43 ID:sqGg9WHc
>>337
はい、90度回転です。お手数かけます。

修正はしないとやばい?線をひくなりしてupし直した方がいいでしょうか。
221218:2008/02/13(水) 00:03:13 ID:FQesHYJ4
>>220
小心者ですいません。
同じ描写でも文章よりビジュアルの方が制限される度合いが大きいと思うんだ。
wiki借りてるの337氏(だったよね?)だから、万が一それで迷惑掛けることになったら
申し訳ないし・・・
wikiのフロントページに18禁の表示があるから大丈夫なのか、それでも駄目なのか
この辺の線引きは微妙なトコだと思うんで、住人の皆さんの意見を聞いてからの
判断待ちにしたいと思うんだけど。
自分は、局部の挿入描写のあるイラストは、お蝶イラストみたく文字入れてみるのはどうかなっと思う。
消しちゃったら、載せる意味ないしねw
222名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:51:13 ID:eAsC7A1j
できればそのまま載せて貰いたい。
何故だか何時も上のリンクからは一枚も見れないんだ…
規約とかで制限されるなら仕方ないけど。
223337:2008/02/13(水) 18:58:55 ID:tnW5pOGr
とりあえず利用規約に関しては、ごく一般的な記述があるだけなんだ。
えーと、禁止行為として、

>倫理的に問題がある低俗、有害、下品な行為、他人に嫌悪感を与える内容の情報を開示する行為。
>ポルノ、売春、風俗営業、これらに関連する内容の情報を開示する行為。

あと、まぁ、公序良俗に反する行為もダメ、とはある。
白黒はっきりさせるのに手っ取り早いのは運営側に直接問い合わせることだけど、
藪をつつく可能性もあり?w
一応メール問い合わせの準備もしておきます。

ついでに、もしやるんだったら局部ごまかし案も置いていくんだぜ。

つ 天秤で隠す。
つ ウェンツ時のお花模様で隠す。
つ お札で隠ry
つ 退魔でry
つ ぬこry
224218:2008/02/14(木) 02:12:03 ID:ba+9vUjG
>>223
337氏、利用規約についてレスdです。
てか、いまのとこ意見(希望?)レスは>>222氏だけか。引き続きご意見ヨロ。
225名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 22:04:50 ID:x0pU/RzP
意見募集してるようなので一票をば
自衛として秘部・結合部には、あるか無きかの横棒線が1本欲しい。
337氏の案なら、お花がドS氏の絵柄にあってるなぁ
226337:2008/02/18(月) 00:02:24 ID:bymMhifZ
とりあえず別アド使って問い合わせ中。
中の人がよほど時間が有り余ってるのでも限り、同一人物だとはバレない
はずなんで、そこんとこはご安心をw
回答がきたらまたお知らせします。
一番の問題は結局規約に引っかかるか否かだろうし。
内容丸ごと引っかかってたら笑えるがw

とりあえず、回答が来るまでこの問題は一旦横に置いといて、
また雑談とか投下とかが見たいです先生。
そんな感じでいいでしょうか。>>218
227名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 00:20:31 ID:gMaJA9R3
そういやリレーも一ヶ月以上開いてるのか
えらい所でおあずけ食ってんなwww
228218:2008/02/18(月) 00:42:49 ID:d/Wcr40H
>>226
お手数かけさせてしまって、申し訳ない337氏。
にしても、相談するだけなのに書き込みもビビるってなんだよwww
>>225氏 レスdです。

や、いらん結界札貼ったようで・・・こうなるとは思ってなかった。
問い合わせの回答待ちってことで、この件一旦横に置くことにしますよ
229ドS:2008/02/18(月) 23:15:04 ID:n1eiMg2a
337氏
何から何までdです。

では、前に話が出たお仕置き編ができたので投下。
230ドS:2008/02/18(月) 23:19:21 ID:n1eiMg2a
―りん! りん!―

玉虫色の空間に鈴の音が木霊している。

「まったく…お前は…」

出所はあの不届きな一機の天秤、自分を掴み上げる薬売りの手から逃れようと激しく暴れている。

「主の女に手を出すとは…許せないです…よ」

薬売りは天秤の頭部をもう片手の指で弾き、何とも地味に痛め付けている。

―りん! がちゃがちゃ!―
天秤はいやいやとするように身を捩る、部品が軋み金属音が鳴り響いた。

「反省…していない。おまえ…ぐっ!!」

突然背後から何者かに羽交い締められた、思わず手の力を緩めてしまう。

―りん!―

薬売りの手から軽やかに飛び上がった天秤は地面に降りくるりと廻ってみせた。
「ぐぐっ…、何者…」

強い力で首を固められた薬売りが何とか後方を振り向くと金色の化粧をした自分がいた、

「……?!」

あり得ない事態に驚愕し薬売りは言葉を失い目を見開いた。

「……」

金の男は薬売りを一瞥するとにやりと牙を見せた。

―がちゃがちゃ!―

金の男の背後から重なりあった金属音が鳴りおびたたしい数の天秤が現れた、

―りん!―

整然と並んだ天秤達が一斉に薬売りに傾く。

首を固められ意識が飛ぶ寸前に薬売りは絶叫した。

「お…ぉ…お前らぁぁぁ―――!!!!」


おわり
231名無しさん@ピンキー:2008/02/18(月) 23:30:59 ID:FnkqYqb4
てんびんAは なかまを よんだ!
てんびんDが あらわれた!
てんびんEが あらわれた!
てんびんFが(ry

てんびんズは ハイパーを きどうさせた!!


と、青背景に白文字で見事に浮かんだ。
お腹苦しいwww
232名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 00:02:54 ID:6mQZLjT4
下克上!w

ちょ、薬売りとハイパー別人設定で、加世の取り合い三角関係とか読みたくなった。
薬売りvsハイパー 勝つのはどっちだ!?w
233名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 07:58:48 ID:LFSuCVIi
テクニックでいったら薬売りだが
持久力とモノの良さでいくとハイパーが勝ちそうだ

でも一番可愛がられるのは天秤ズ

それを羨ましげ・恨めしげにみる主人ら…
234名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 19:28:30 ID:sHpJui2n
>>231
こっちはあんたのおかげで
総てんびんズが合体した
てんびんキングを想像してしまったじゃないかwww

…どんだけでかいんだろな…
235名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 20:30:57 ID:g+IkwvyH
>>234

(前略)
てんびんSが あらわれた!
てんびんTが あらわれ(ry

(↓出番待ちの面々)
てんびん???「隊ちょー! 大変です! 識別文字が足りません!」
てんびん???「何ィ!? じゃあ小文字を使え! 小文字を!」
てんびん???「らじゃー!」

(中略)

てんびんuが あらわれた!
てんびんvが あらわれ(ry

てんびん???「やっぱり足りません!」
てんびん???「くっ……全26文字しかない南蛮文字はこれだから……!」
てんびん???「キリルは!? ロシアもあるだろう!」
てんびん???「なるほど! 割振り準備開始します!(かたかたかた)―――ああッ!」

(レッドランプ点灯、警告音)うぃーおぉん うぃーおぉん うぃーおぉん!

てんびん???「どうした!?」
てんびん???「ダメです! スー○ーファ○コンのスペックオーバーしました!」
てんびん???「しまったーーーーーっ!!」
てんびん???「ちなみに名前に使えるのは全角6文字までです! 濁点含む!」
てんびん???「ならばすでに登録済みの文字を使うんだ!」
てんびん???「はっ!」

てんびんうが あらわれた!
てんびんえが あらわれた!
てんびんおが あらわれた!

てんびん???「なんかイマイチ締まりません!」
てんびん???「仕方あるまい! 背に腹は変えられん!」
てんびん???「このままいくと、『てんびんょ』とか『てんびん!』とかがあらわれるのか?」
てんびん???「そういうことに……なりますか……」
てんびん???「真の敵は……味方の内にこそあったということか……。くそっ!」
てんびん???「いや、数からすればもう十分だろう! 突撃を開始する! 総員合体準備!」
てんびんズ「「「「「らじゃー!!」」」」」


てんびんズは がったいして てんびんキング(ちいさめ)に なった!


……と、いうわけで、せいぜいモスラくらいじゃないかなと思ってみる。
236337:2008/02/19(火) 20:42:30 ID:g+IkwvyH
……つい面白くて、ここに来た目的を忘れて窓閉じるところでした。
うっかりうっかり。

問い合わせ回答きました。
まず問い合わせの内容だけど、>>223で書いた規約を引用し、

> 【成人向け小説サイト、および2ちゃんねるのPINK系板のまとめサイト】
> は、この規約に抵触するでしょうか?
> 内容は、成人向け小説中心、イラストも少々。写真や実写動画の掲載は
> ありません。また、サイト内で出会い系等の交流も一切ありません。
> イラストについては、局部の露出の可否(モザイクや修正が必要かどうか)も
> お教えください。

と、こんな具合。これに対する返答が、

> 局部のイラストは掲載なさらないでください。
> 他の文章等は児童ポルノなどの法に触れるコンテンツでなければ
> 掲載可能です。

でした。
なので、まとめサイトの存続は可。
ドS氏には、お手数だけどもイラスト軽く修正かけてください。>>222氏ゴメン。

と、こんな感じ。いかがでしょう。
237222:2008/02/19(火) 21:44:23 ID:Qgl7ooqm
>ドS氏
天秤ズかっけええええ!!!
はぐれメタル天秤と薬売りの一騎打ちとかねwww

>337氏
問い合わせ乙です。
おk把握した。
全く見れない事を思えば十分です。
修正部分はハイパーだと花に一票かな。
ハイパーの局部を滅!
238218:2008/02/19(火) 23:17:47 ID:QGA40Xv4
>>236
337氏、問い合わせ乙です。とりあえず>>215の9枚の内3枚は修正で他はおkでいい訳か。





>児童ポルノ
・・・・・・文章でも引っかかるのか・・・そうか・・・orz
別に書き始めてもないし・・・ダメージないからいいけど・・・
239名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 08:15:30 ID:Fm03rSUU
>>237
滅っちゃらめぇぇぇぇぇ!www

……字面が『減っちゃry』と似てる、とふと。
240名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 17:07:49 ID:Fm03rSUU
御久な>>66続き。



「ふぁ、ああーーーーーーっ!」
 がくんと加世は首をのけぞらせる。まぶたの裏がまっしろになって、ちかちかと何かが明滅した。薬売りが切羽詰まったような吐息を洩らして、ぐいと加世の両膝を寄せる。そのまま前へと押しやって、
細い体をふたつに折り畳むように膝頭で乳房を押しつぶさせた。膝を抱えるに似た姿勢に加世が疑問を覚えるより先に、左右から手が伸びて膝裏を押さえる。そうして、薬売りが腰を動かし始めた。
「あっ、ゃっ、ああんっ」
 薬売りのそれが加世の割れ目をこすり、むっちりした太腿の狭間を出入りする。十分に立ち上がって充血した肉芽をこすられ、脚から伝わる振動が胸の膨らみとその先端を揺する。
遅く早く繰り返される律動は祭の手拍子足拍子にも似て、普段は奥深くしまわれた原初の衝動を呼び起こす。
 汗が。
 浮いて、流れて、狂う。
「ゃ、ああっ! くすりうりさん! くすりうりさぁんっ!」
 これなら痛くないでしょう、と薬売りのどれかが言うが、答える余裕が加世にはない。身の内に宿ってちりちりと加世を苦しめた熾火が、炎になろうとしている。怖いのに、焼き尽くされたくて、
けれどまだ風が足りないのか薪が足りないのか、ちろりちろりと思わせぶりに火の舌先が覗くばかり、一向に燃えあがってくれない。
 ぱくり、と。
 脚を押さえている薬売りたちが加世の爪先を食んだ。
 加世を後ろから抱きとめている薬売りが、褐色の首筋に浮いた汗を舐め、甘噛みする。
「ひゃ、ん、んんっ、んんぅーーーーっ!」
 きつく目を閉じ、眉を寄せ、自らの裡にある種火を興そうと意識が潜る。
 息もできない。
「……加世、さん」
「加世さん」
「足りない、ですか」
「もっと?」
 問いかけられる言葉の端々に、意地悪な笑みが隠れていると思うのは被害妄想だろうか。ぎりぎりまで呼吸を我慢して、尻尾の先が見えた、と思った瞬間大きく揺さぶられる。
「―――はっ、ひゃあぁんっ! あ、やっ! いじわるぅっ!」
 うっかり詰めていた息を吐き出してしまい、求めていたものがまた霧散する。思わず不満に尖った唇を吸われ、ぽろりとこぼれた涙を舌で拭われ。
 ああ、と薬売りが深く息を吐いて、何か熱いものがお腹にぶちまけられる。はっ、はっ、と短い呼吸を整えながら、体液でぐちゃぐちゃにぬめったものが脚の間から引き抜かれた。
折りたたんだ脚を戻されると、白濁を加世に塗りこむように下腹部と太腿を一斉に撫でられる。
「やっ、あぁぁんっ!」
 気持ちいい。気持ちいいけれど、物足りない。
 体が勝手にくねる。火照るあまりに汗が浮き、その水分が邪魔をするのだろうか。行き場を見失った熱が加世の中で暴れて苦しい。
「では次」
241名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 17:13:45 ID:Fm03rSUU
続き



 ひょい、と一人が加世の体にまたがった。下半身が見えなくなったけれど、幾つもの手がせわしなく這い回っているのはわかる。
 見えないからこそ余計に、感覚を拾おうと知覚は鋭敏になる。
「いや、あ、あぁんっ、あ、あああ!」
 衝動に任せて無茶苦茶に脚を蹴り上げたいのだが、足首をがっちり固定されてこれもままならない。わずかに許された自由の範囲で、加世の全身がびくびくと跳ね回る。
「くすり、うり、さぁんっ! や、くるし、」
「もう少し、辛抱、してください」
 囁いて、ぴんと張りつめ震える胸のふくらみを、両側から手のひらで包まれる。ゆっくりと大きく円を描くように揉まれて、ん、と加世が反応すると、間にいきり立ったものを挟まれた。
「え」
「こういう方法も……あるんです、よ」
「いい……です、ね。実に、やわらかい……」
 陶然とした声。
 先走りの汁でぬるついたものが、ふやふやと頼りない感触を楽しむように加世の間を行き来する。自然すぎる動きでふくらみを寄せる手が入れ替わって、一心に腰を振りたてる者と先端を吸いたて愛撫する者とに占拠される。
「んぁっ、は、あぁっ、あぁぁんっ」
「加世さん」
「加世、さん」
 首をのけぞらせ、左右に振り、なんとか熱を逃がそうと―――あるいは炎にしてしまおうと一人悪戦苦闘する加世が、ぎゅっと強く握り締めていた手を、左右で二人がぽんぽんと叩いた。
「え、な、なに、あ、あぅっ、はぁんっ!」
「ちょっと……手、開いて、くれませんか、ね」
「しんどい、かもしれませんが」
「お願いします、よ」
 短い爪が手のひらに食い込んでいたこぶしを、やんわりと薬売りが広げていく。加世がなんとか力を抜くと、何かが、滑り込んできた。
「軽く握って……そう、上手、ですよ」
「あんまり、力入れすぎないで、ください、ね」
 上から手を添えるように握らされて―――それは。
 考えるまでも、なく。
 恐る恐る向けた視線の先に、加世は一瞬絶句した。
「ちょ、えええええっ!?」
「すみません、ね。我慢、できなくなっちまいまして」
 申し訳なさそうに眉を寄せて、誰かが額に口づけを落とす。
「加世さん」
「加世さん」
 熱い吐息は、もはやどの薬売りのものなのか―――あるいは、加世のものなのかもわからず混じりあった。
「あんたが―――欲しい」



要望なるだけ取り入れてみた……です。スマン尻ズリにはならなかったorz いささかやり過ぎた……?
誰か尻拭いお願いします、そろそろ終結へ向かうかヘイパース!
242名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 21:46:03 ID:o7axB8DF
みwwなwwぎwwってwwwきたwwww

GJGJGJ!!
続きまってました!
243名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 23:50:12 ID:kwxWF6cc
一発書き薬×加
作家さん降臨待ちの間のお目汚しに…と思ったら続ききちゃった!?
244名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 23:53:14 ID:kwxWF6cc
肌襦袢から除く褐色の肌が目に愛しい…
薬売りは目を細めて先ほどまで狂うように愛しんだ体をめでる。

普段きゃいきゃいとさわぐ年の割りに幼さの抜けない
天真爛漫を絵に描いたような娘が床で広げる痴態には、男の理性を吹き飛ばす艶がある。

薬売りさん…もっと…

請われるうちは請われるままに…

もう…ぁ、だめぇ…

壊れるならば、壊れるほどに…

情欲の限りを尽くし、妄想の隅々まで体現しようと娘の体をむさぼった。
あまりに高ぶった自身に、今は気を失ったように眠る娘の愛おしいこと…

「…ん…むぅ」

娘は寝返りをうって薬売りに寄り添う。
猫のように身を丸め、幼子のように必死と襟元をつかむ。
寝返りを打った頬に敷布の後がついているのに苦笑する。

おやおや、娘さんがこれじゃああんまり色気がありやせんぜ…

心のうちで思うのとは反対に保護欲を掻き立てられて抱きしめる。

245名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 23:53:58 ID:kwxWF6cc
お前もいつかは誰かを愛することがあるのかねえ…


言ったのは父だったか…名前ももう思い出すことができない。
ただ本能のようにアヤカシを斬る。

父が自分に課した使命。
守り抜けと…生きる意味だと…

お前を作った理由だと…

人外の自分に、何を愛しんで何を守れというのか…
ちりあくたのように、どこからか現れてどこからか消える生がほしっかた。
一瞬一瞬を、ただ生きたかった。
…人のように。




「…ふぁあう!」


びくっと薬売りが目を見開く。相変わらず娘はむにゃむにゃと夢の中だ…


「…っふ」

まったくどうしてあなどれない…
思考の深みに落ち込む自分を拾い上げるのはいつもこの娘だ…






「…あなたにはかないませんねぇ…加世さん」





終わり
246名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 23:56:27 ID:kwxWF6cc
改行しすぎた!
ほんっと初めてなんで許して下さい。

さらに
父は有名なあの清明さんってかってに…ぐわぁぁすいません。
半年ロムします。
247名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 01:06:48 ID:z3dvImhP
>>240-241
おっきした。なんというエロス。GJ!

>>243-246
二 度 と 来 る な 。
248名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 23:55:48 ID:lvCJWzdX
そこまで言わんでもw
249名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 02:45:39 ID:HoxNB4Kt
>>243
今後の成長に期待。
また来てくれ
250名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 10:59:37 ID:4MXTp8CV
モノノ怪の小説はここにしろ個人サイトにしろレベル高いから
みんな目が肥えてるよな

>>243
とりあえず本当に半年ロムって、その間に修行すれば
251名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 00:13:05 ID:qixuukdy
イラストの修正問題にあれこれ思いを馳せていたはずが、いつの間にか
ハイパーのモノにあのくるくる模様はあるのか真剣に悩んでいたヴァカは
自分だけでいい。

でももしかしたら仲間がいるかもとちょっとだけ期待してみる。
252名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 17:10:18 ID:yvlRDPxs
…あったら面白いとは思うけど、でもあんまりカッコよくは無いよねwww
253名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 20:03:09 ID:ZyZwbLY3
体の隅々まで加世ちゃんに模様をなぞってもらうといい、と思ったw
254名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 21:45:23 ID:6fVJhh9R
ハイパーうらやましすぐる…!<加世にナデナデ
天秤ズがヤキモチやきそうだw
255名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 22:22:51 ID:sppLRNgF
あの模様センサーらしいからなぁ。それとも目玉っぽい部分だけがそうなんだろうか。
感覚器なら、ものすごい苦痛かものすごい気持ちいいかどっちかだろうけど、
エロパロ的に性感帯だったら大変だなと思ってみる。全身w
256ドS:2008/02/25(月) 22:55:06 ID:Ki5fAviW
修正してみました、花とお札と金魚で誤魔化せたかな。

兵衛×加世
ttp://imepita.jp/20080225/808820

薬売り×加世-目隠し
ttp://imepita.jp/20080225/810450

薬売り×加世-目隠し&拘束
ttp://imepita.jp/20080225/811840

加虐愛-異物&緊縛
ttp://imepita.jp/20080225/815760

加虐愛-異物&穴る
ttp://imepita.jp/20080225/817470

加世×ハイパー
ttp://imepita.jp/20080225/819260

加世×ハイパー-加世up
ttp://imepita.jp/20080225/821090
257名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 23:58:02 ID:RSK03A8a
ドS様のイラストが何故か
画像が一部見れないようです
258名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 16:06:28 ID:8nYWm3c2
>256
ちょwww
逆にいかがわしくなってる気がするんですがw
GJ!!

>257
256の画像なら全部見れたよ。
そういう意味じゃなかったらごめん。
259名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 18:04:20 ID:MZ2GTKDw
確かにw隠すほうがエロイとはけしからん、もっとやれ!

>>257
自分は携帯から見たよ。
パソコンからは見れなかった(´・ω・`)
260337:2008/02/26(火) 18:56:59 ID:LIjkiTUZ
>ドS氏
乙です! 保存しますた(`・ω・´)ゞ
見られなかった住人さん待っててくだされ。この後収蔵する。

>>258
日本には、見えぬもの、統制されたもの、抑圧されたものをエロスと感じる文化があってだなw
ああ、日本に生まれてよかった。本当によかった。
261名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 20:02:00 ID:CWbfSFH3
女とヤってお金が貰える♪
まさに男の夢の仕事!
出張ホストっておいしくない?
ttp://godblessall.net/2ch/01_info.html
262名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 00:09:03 ID:pNBtVWAb
薬売りの出張ホストネタなら構わんので
ボトルキープしてやらんでもない

263名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 00:50:06 ID:Y/1aHs1m
薬売りは、どっちかってーと複数ねぐらを確保しているgdgdなヒモだと思う。
のはぬこっぽいからだろうか……。
264名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 20:54:07 ID:sA31Nz7v
お蝶さんの所へは頼まれてもいないのに出張するホスト敦盛
265名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 22:19:36 ID:QNNhGi1n
お蝶さんがドアを開けたら「お蝶さん!俺と夫婦になろう!」と違った意味合いで営業妨害な敦盛。苦情殺到ww
266名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 01:53:25 ID:91g3Cq43
指名No.1をめぐる薬売りと敦盛の熾烈な戦いが見たいwww
267名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 02:36:02 ID:VZszZfyM
自分はチヨたんに「女優になりたいのぉ〜」とねだられたい
あとムチプリふとももサワサワしたい
268337:2008/03/07(金) 21:02:36 ID:YysvDUCP
とりあえず保守っとく。投下の間が空きすぎてうずうずするんだぜ?
これってなんて中毒。2,3日の間に投下できるようにガンガル(`・ω・´)
269名無しさん@ピンキー:2008/03/07(金) 21:13:29 ID:ZspbTHlt
のっぺら夫婦が大好きだ
270名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 20:03:57 ID:pY7BVRvb
わー337さんだ!
三点倒立しながら楽しみに待ってます!
271337:2008/03/10(月) 18:50:37 ID:wgxdoTlH
投下いきまーす。
薬加、今回投下分はエロなし御免。全6レス予定。
272サノメ 1:2008/03/10(月) 18:52:38 ID:wgxdoTlH
「あちゃあ……留守かぁ……」
 いいかげん馴染みもできた長屋の一室に加世が顔を出すと、まだ明るいというのに戸が立てられていた。水瓶も空で、すっかり乾いている。鍵などかかっていないから部屋には上がれるが、さてどうしたものか、と加世はがらんとした部屋を見回す。
 貧乏長屋はろくすっぽ調度がないものと決まっているが、この部屋の主はその身と背負った薬箱のみで各地を旅する人物だから、なおのこと何もない。とりあえず、加世はごとごとと雨戸を開けて部屋に風を通す。
 意外なことに、江戸に着いてからも加世と薬売りとの縁は切れなかった。どういう風の吹き回しか、薬売りがしばらく江戸に落ち着くことを決めたからである。
 二日三日程度の遠出はしているようだが、基本的にはなんの変哲もない某(なにがし)長屋の一角を住まいとし、近場の行商に出ている。たまにはいいでしょう、というのが本人の弁で、見知らぬ土地に思いがけず顔見知りがいることになったのが、加世にとっては嬉しい。
 とはいえ。
 薬売りが言うように、単なる気まぐれで―――と信じるには、かの人物は裏がありすぎた。
 なんでだろう、と加世は思う。坂井の騒動のとき、多少は言葉も交わし、それなりの親しさもあったと思う小田島と加世の元に、薬売りは一晩だって寄らなかった。
あるいは面倒ごとに巻き込まれるのを嫌ったのかもしれないが、食事くらいは共にしてもよかったのではないかと、後になって思った。なんといっても、薬売りは二人の命の恩人なのだ。たとえ本人がたまたまのことだと言い張ったとしても、恩人は恩人である。
 あれほどすっぱりと去ってみせたからには、薬売りの常はそちらなのだろう。それを曲げて江戸に留まる理由を、加世はこれまであれこれと考えてきた。本人に訊くという選択肢は最初からない。どうせ素直に言うわけがないのだ。
 真っ先に疑ったのは例によってモノノ怪絡みで、だがそれにしてはいつまで経っても噂が聞こえてこず、薬売りも相変わらず江戸にいる。
 ようようそれらしい理由を思いついた頃には、加世は首尾よく青物屋の奥向きに奉公先を見つけていた。

 ―――アヤカシの海を抜けてきたことで、薬売りの体に相当の負担がかかったのではないか。

 モノノ怪を『斬る』のがどれほどの労苦なのか、加世にはわからない。ただ、人の姿のままで為せないことが、楽なものだとも思えなかった。それを、薬売りは船上で立て続けにこなしてきたのである。休養が必要になっても不思議はない。
 それとなく観察してみたが、はたして弱っているのかどうか、加世にはわからなかった。まして、本人が何を言うはずもない。
 一人で生きている人なのだと、なんとなくわかる。他人に何かを期待することがないから、口に出す言葉はおのずと限られる。
 ならば、こちらはこちらで勝手にやろう、と加世は決めた。
273サノメ 2:2008/03/10(月) 18:53:49 ID:wgxdoTlH
 わずかに自由になる時間を見繕っては、薬売りのところへ顔を出す。江戸のご飯は塩みが強くて、不味いというのではないが故郷の味が恋しくなる、たまには口にあうものを食べたい、と我がままをこねて料理を作る。
無論、体を損ねているかもしれない薬売りに滋養のあるものを食べさせようというのが実のところだ。加世の勘違いならそれはそれでいいし、美味しいものを食べるのだからどう転んでも損はない。
嫌がられたらやめようと思っていたが、加世なりの恩返しを、今のところ薬売りは何を言うこともなく受けている。
 ―――受けていた、と言うべきか。
 加世は掃除用具を手にすると、布で口元を覆ってぱたぱたとはたきをかけ始める。人がいなくても、いや、いないからこそか、埃は積もるものだ。
「いつ帰ってくるか、わかんないし……。作り置きして傷んでもやだしなぁ」
 もごもごと布の下で呟いて、箒で板間を掃きだしていると、近所のおかみさんが表を通りがかって顔をほころばせた。
「おやお加世ちゃん。お疲れさんだねェ」
「こんにちはぁ〜」
 手を止めて布をずりおろし、ぺこりと頭を下げる。おかみさんはちょっと首を傾げた。
「薬売りさんなら留守だよゥ? 昨日の昼前にお出かけだったけどねぇ」
「ん〜、行き違っちゃったかぁ……」
 参ったな、と思案する加世に、おかみさんはにやりと笑う。きょろきょろと辺りを見回して土間をやってくると、ひそと低めた声で囁いた。
「あんた、わざわざ通ってきて空振りするくらいなら、さっさと薬売りさんと夫婦(めおと)になっちゃあどうだい?」
「め―――っ!?」
 ひっくり返った声に喉が引きつり、思いきりむせる。おやおや、とおかみさんは加世の背を撫でてくれた。
 が。
 この誤解はキツい。何が何でも正しておかねば、なにかとてもすごくマズい気がする。
「めっ、めめめ夫婦なんて! あたしと薬売りさんはそういうんじゃないんで! ほんとに!」
 加世が必死で言うと、おかみさんは目を丸くした。
「あれ。脈なしかい」
「脈も何も! 薬売りさんはあたしの恩人で! これは単なるご恩返しですから!」
「……そうなのかい?」
「そうなんです!」
 勢い込んで念を押す。おかみさんは何か不満そうだったが、加世は無理やりに話題を変えた。
「あっ、あの! じゃあ薬売りさんに言付けお願いしていいですか? あたし、大旦那さまの里帰りのお供をすることになったんで、しばらく来られませんって」
 ああ、とおかみさんは得心がいった風だった。
「サノ祭のつきそいかい」
「え、知ってるんですか?」
「ああ、友達の妹が、昔見越屋さんのお世話になっていたから。なるほどねぇ、まだ日も浅いのに見込まれたもんだ。おめでとさん、うまくいくといいねぇ」
274サノメ 3:2008/03/10(月) 18:55:16 ID:wgxdoTlH
 加世は笑う。見越屋とは加世が今住み込みで奉公にあがっている青物屋だ。前の主人は、そも豪農の三男坊だったが、農家の暮らしが肌に合わず、江戸に出てきたのだと聞いた。
といって実家と険悪だったというのでもなく、つながりを利用して安くでよい品を仕入れ、小売りから一代で大店を起こした傑物だそうだ。
 加世も、仕事の折に触れ少しだけ話をしたことがある。想像していたのとはいささか違い、腰が低く人あたりの柔らかい、温和な好々爺だった。
今は息子に店を譲って隠居の身だが、数年に一度の故郷の祭には必ず出ていく。代々行なってきた豊作祈願で、一族が宗家に集まる大がかりなものらしい。
 その随従に選ばれるのはどうやら大変な名誉らしい、と加世は肌で感じている。よほどに大事な祭なのだろう。
「わかった。薬売りさんが帰ったらよぅく言っておくよゥ」
 お願いします、と加世は頭を下げ、しっかりおやりよ、とおかみさんに肩を叩かれた。ひととおりの掃除をして、帰路につく。次に来るのは半月先か、ひと月になるか。その間に、薬売りは長屋を引き払うかもしれない。
 いつまで経っても物が増えないのは、あそこが仮の住まいだからだ。それくらいは言われずともわかっている。
 挨拶くらいはして、旅立ちを見送りたかったが、それも無理か。
 もう一生会わないかもしれないな、となんとなく思った。


   *


 ご隠居の体にあわせて、三日の旅程はのんびりしている。
 一行に若い娘は加世だけだった。どころか、女は他に久と呼ばれる古参の女中一人きりで、短い旅ながら男衆は加世に親切だ。
 あと半月もすれば田植えが始まる。木々が青々と枝を伸ばし、風が心地よい道行だった。
「加世は天女の話を知っているかね」
 駕籠の隣をてくてくと歩きながら、ご隠居の話し相手を務めるのも加世の仕事だ。老人の話は長い上に繰り返しが多く、説教じみてかなわないことが多いが、さすがに元・希代の商人は各地の変わった話を数多く知っていた。
その話ぶりに、加世はちらりと船で一緒になった口数の多い修験者を思う。
「天女ですか? あの、羽衣を着て降りてくるっていう」
 そうそう、と老爺は目を細める。
「宮野木には、昔、天女さまがいらしたそうな。サノメさまといわっしゃる。サノメさまは村の若者と恋に落ち、子をなした。それがうちのご先祖様じゃと、幼い頃によう聞かされた」
「えぇ!? すっごいじゃないですかぁ〜」
 目を丸くする加世に、なんの、とご隠居は笑う。
「本当か嘘かわからんよ。とはいえ、天女さまが降りたと言われる宮池は、どんな日照りの年でも枯れたことがない。おかげで米も野菜もよう取れる。今の見越屋があるのもサノメさまのご威光よな」
275サノメ 4:2008/03/10(月) 18:56:14 ID:wgxdoTlH
 ああそれで、と加世は納得する。
 見越屋の守り神は、大黒様でなく弁天様なのだ。水と富を司る女神は、そのサノメさまだったのだろう。
「サノ祭は、サノメさまをお祀りするのでな。ちょうど加世が来てくれて助かった」
「……へ?」
 唐突に飛び出た自分の名前に、加世はきょとんとご隠居を見返す。
「あたしが、なにか……?」
「なに、難しいことはない。村に入る前に祭衣装に着替えて、サノメさまとして歓待を受けてくれればそれでよい」
「―――ちょ、え、えええええっ!?」
 仰天して問いただすと、天からの来訪者であったサノメにちなんで、祭のサノメ役を務める娘は村外から招く慣例であり、見越屋ができてからは隠居が(当時は主人だったが)奉公人の中から選んで連れて行っているのだそうである。
「そっ、そんな大事なお役目だなんて、あたし聞いてませんよぉー!」
「いやいや、そう構えんでもええ。大層なしきたりがあるでもなし、お久が側女としてつくで、言うとおりにしとってくれれば」
 うう、と加世は唸る。
「……なんで、そんな大切なお役目を、新参者のあたしに……?」
「なに、さすが以前お武家様に仕えていたというだけあって、加世は行儀がしっかりしておる。サノメのお役は難しくはないが、あまり野卑な者には任せられん」
「ふ、普通にしてるだけですけど……」
「親御の躾がよかったのかの」
 正面から褒められると、それ以上を言い立てにくい。
 その晩寄った宿はすでに村の事情をよく知っているようで、加世は温泉に入れられると温かな布団に寝かせられた。翌日は村入りだ。
 ……男衆が親切だったのは、自分がサノメだから、だったのか……。
 ことんと宵闇に意識が落ちる。
 寸前、りん、と遠くで鈴の音がしたような気がした。


   *


 かたん、と隣の戸が開いた音に、女は顔をあげる。ひょいと戸口から頭を出すと、大きな薬箱が部屋に引っ込むところだった。
「薬売りさん、お帰りかい?」
 手を拭き拭き覗き込むと、間口に座り込んだ薬売りがゆったりと頭を下げる。
「……どうも」
「留守の間に、お加世ちゃんが来たよゥ」
 言うと、彼は視線をあげた。
「加世さんが?」
276サノメ 5:2008/03/10(月) 18:57:27 ID:wgxdoTlH
 これのどこが脈なしなのかねぇ、と女は内心首を傾げたが、言付けられたとおり、しばらく来られない旨を伝える。
「サノ祭にサノメとして行ったんだ、おめでたいことだよゥ」
「祭……ですか?」
「そう。宮野木の大事なお祭だそうだよ」
 薬売りは眉を寄せる。
「村の祭に、部外者が?」
「ああ、あすこは天女の村だから」
「マレビト……ですか」
「まれびと?」
 いえこちらの話で、と薬売りは手を振る。
「それは、田開きの祭で?」
「この時期だから、そうなのかね。まァ、うまくいけば玉の輿だよ。宮野木は江戸からそう遠くもないし、見越屋のご宗家は立派なおうちだしね。アタシの友達の妹も、サノメになってあちらに嫁いだんだよ。
ご隠居さんに見込まれたんだ、イイ相手が見つかるといいね」
「……つまり、」
 心なし低くなった声で、薬売りが言う。
「祭は建前で、実質見合い、ということですか」
 はて、と女は首を傾げた。
「よそのお祭だから、アタシもそう詳しくはないけれど。普通、祭の夜ってのは若衆が娘衆にちょっかいかけるものじゃないかい? ほら、歌垣とかしてさ。さすがに江戸じゃあそうそう見なくなったけど」
「……加世さんは、それを承知で?」
 さてね、と女は腕を組み、ちらりと薬売りの顔を見やると、多少意地の悪い笑みを浮かべた。
「ずいぶん気にするね、薬売りさん?」
「ありゃあ、妹、みたいなもんなんで」
 妹ね、と女は笑う。
「まったく似た者同士だねェ」
「なんです」
「いやね、お加世ちゃんにサ。わざわざ通ってきて空振りするくらいなら、さっさと夫婦になっちゃあどうだい、て言ったのサ。おっと、怖い顔しないでおくれよ。
これっくらいになると、人間余計なお世話を焼きたくなるものでねェ。でも、薬売りさんは恩人で、これは単なる恩返しだって、すごい勢いで言われちまったよ。だからまァ……そうだね、安心おし?」
「……それで余所に出掛けられちゃあ、安心も何もないんですがね……」
 憮然として言う薬売りに、女は笑う。
「まぁまぁ、妹ならなおさら祝っておやりよ。お加世ちゃんからじかに聞いたわけじゃないけど、でも普通はそんな事情、聞いてから行くもんだろうし。わかってたんだと思うよゥ? 友達のときもそうさね、……あれ?」
277サノメ 6:2008/03/10(月) 18:59:13 ID:wgxdoTlH
 首をひねった女に、薬売りは目線だけでどうしたと問うた。
「そういやあのときは……どうだったっけね。記憶に……ああ、そうだ。せっかくの嫁入りなのに、披露目も祝いもしなくてね。ずいぶん急な話で、準備が間に合わなかったって、友達がこぼしてたよ。
そうそう、めったにない晴れの日だってのに、なんにもなくてがっかりしてねェ。でも、お加世ちゃんは、戻ってくるような口ぶりだったし……?」
 あれ、あれ、と首を傾げた女の前で、薬売りは高下駄を元のように履くと立ち上がる。
「……すみませんが、またしばらく留守にしますんで」
 よろしく、と言ったときにはもう歩き出している。
 鮮やかな着物がせかせかと角を曲がっていくのを、女は目を丸くして見送って、あれあれ、と含み笑いを洩らした。
 さて、一体どうなって帰ってくるのやら。


   *


 山あいから見下ろす村は美しかった。
 なんの変哲もない村である。一段低い平地に茅葺屋根が身を寄せ合うようにして集まり、峻厳と迫る山肌をどうにか押しとどめて畑と田んぼが段々に拓かれている。
遠くに望む尾根にはまだ雪が残っているが、村の中にはすでに若い青葉が広がって、天に向かってつんと尖った影を見せる檜(ひのき)の深緑とともに、春のまだら模様を作っていた。
 珍しくもない貧しい村、に見える。
 見越屋の隠居、八太郎左は、じっと眼下の村を睨む。
 村のことは嫌いではない―――嫌いではなかった、と言うべきか。余所者の八太郎左を、実の子と隔てなく育ててくれたのはこの村だ。だがそうして一人前に育つ間、時にどうにも息苦しくなって、叫び出したくなることがあった。
村を出たのは八太郎左にとって必然で、しかし、完全に縁を切ることも考えられなかった。
 嫌いなのではない、と今でも思う。ただ、何の変哲もないように思っていた村が、八太郎左には恐ろしい。食うにはかつかつ、天の気の具合が悪ければたちまちに飢えかねないような村―――そのはずが。
 どうして、こんなに豊かなのだろう。余所者は八太郎左だけではない。近隣の村では、育てられない子が生まれると、この村まで来て捨ててゆく。村では天女の伝説が生きているから、サノメさまからの下賜されものだと、捨て子を大事に育てた。
畢竟、村ではずんずん人が増える。増えた人が懸命に田を広げ畑を広げ、育ててもらったご恩返しによく働くから、村はますます豊かになる。
 しかし、どうして皆が皆『食える』のか―――不作の年であっても、せいぜいが村の口ととんとんの出来となるのか、八太郎左にはどうしてもわからなかった。
 否、なんとなくはわかっている。サノ祭、サノメさま。それは神事であり禁忌でもある。
 ―――わかっているのだ。
 恐ろしいものから目を背けるために、村を出たのだということは。


  つづく
278名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 22:47:36 ID:qwq5nYtp
>337氏 新作乙です!
押しかけ女房になりきれない加世かわゆす
サノ祭はリンカーンイベントなのかな?と当たらない予想をしながら
何がどうして村を豊かにしているのかがとっても気になります。
後編wktk!!
薬売り超がんがれ
279名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 01:59:05 ID:L0kqQKM4
337氏相変わらずの美文、乙です!
生活感が溢れててイイな〜
押しかけ女房ってイイw
ちょっと、ちょっと!ちょっと!!な加世ちゃんが気になりすぎてハゲそうだけど…
負けるな薬売り!(アッチも)頑張れ薬売り!てことで続きwktk
280名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 11:23:14 ID:FdzPeviz
サノメって預言者ヨハネの首を所望したとかいう魔性の女!?とgkbrして
調べたら、それはサ“ロ”メだったウッカリウッカリ。
仮想とはいえ江戸だろがと数分前の自分に言いたい。
281名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 20:04:01 ID:J5SmiTbk
>>280
薬売りの首を手に恍惚の表情を浮かべる襦袢姿の加世さんを妄想してしまった
ss続きマッテル
282809:2008/03/15(土) 00:27:11 ID:unTo9IcO
>281氏
こんな感じですか?わかりませ…
http://up.mugitya.com/img/Lv.1_up53416.jpg.html(生首・流血注意)

337氏続き楽しみです!
283282:2008/03/15(土) 00:28:15 ID:unTo9IcO
Pass忘れてました。目欄です(´Д`)
284名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 09:30:03 ID:SSaX/IVw
>>282
SUGEEEEEEE!!
自分281氏じゃないけど809氏GJGJ!
……で、できれば加世の頬染めて、あと首刎ねられたあとだから
薬売りは蓬髪の方が……とゴネてみる。

王は坂井のジジイで、妃は……みじゅえよりさとかな?
285281:2008/03/15(土) 10:09:18 ID:6iZjtaGS
天女の村…「田開き」の祭りという言葉に淫靡な匂いを感じつつ…wktk
>>282
なんと迅速な仕事!残酷だが美しい
286337:2008/03/17(月) 23:06:35 ID:s09pmAMZ
>>280
>>278の書き込みに、何故ここでア○リカ大統領がと真剣に悩んでしまった
自分もサロメの話題に混ぜてください。…………orz

でもモノノ怪deサロメ、イイ!
あれ一枚ずつ服脱ぎながら踊るんじゃなかったっけ。
まずは帯を解いて放り投げ、次に……ってこれじゃストリッパーか。


気ぃ抜くとやたらめったら長くなっちまいそうで手綱締め締め。
今回もエロ突入ならず。最後には必ずエロ入るのでもうちょい待ってくださいすみません。
全4レス分、投下いきます。
287サノメ 7:2008/03/17(月) 23:08:53 ID:s09pmAMZ
 ……なんか、とんでもないとこに来ちゃったかもしれない。
 と、加世は背すじをつたう汗を感じていた。
 祭の規模は、思っていたよりずっと大きかった。考えてみれば見越屋ほどの大店の、主要な仕入先なのだ。村といっても、五軒や十軒で済むわけがなかった。
更に、八太郎左のように今は村を出た親類姻戚までが、山を越えてやって来ている。土地が広いから江戸の祭のようにごみごみとしては見えないが、子供も含めて二百からいるのではなかろうか。
 それだけの視線に晒されて、加世は緊張でがちがちである。側女(そばめ)の久には、案山子がたくさん立っているとでも思えばよいと言われたが。
 ―――ムチャ言わないでよぉぉ〜っ!
 そりゃあ確かに野卑な者には任せられないだろう。とはいえ、事情もよく知らぬ赤の他人にあっさり任せていいものだとも、全然思えない。
 一段高くしつらえられた舞台から見下ろせば、そこは既に水を引かれた田が広がっている。しゃんしゃんと神楽鈴が鳴り、鉦が鳴り、笛が鳴き、小鼓が鳴る。
喉自慢の村人がはりのある声で音頭をとると、白い褌ひとつになった若衆らが踊るようにしながら、田んぼの泥土をすくっては畔(あぜ)にぶちまけた。
 結構な重労働に見えるが、村人たちはどっと笑っては若衆らに「しっかりしろ」だの「腰いれろ」だのと冷やかしの声を投げる。やがては「ぬらせ」の「来いさ」の揃って呼びかけ、「おいさ」「行くさ」と勇ましく若衆が応える。
「…………うわぁ…………」
 これまでとは違った意味で、加世は顔を赤くして目線を泳がせた。
 ……これ、見立てだったらどうしよう。
 いやいやいやまさか。そんなまさか。
 胸中で激しく動揺していると、横手から声がかかった。
「お食べになりませんか」
 目線を移すと、そこには鬼の面。わかっていても、心臓がばくばくする。いまだに慣れない光景だ。加世は慌てて箸を取り、目の前に並んだご馳走に向き直る。
「いえ! いただきます!」
 きなこのぼたもちを小皿にとって、こっそりと伏せ目で周囲を窺う。
 村の女達は、みんな鬼の面をつけている。赤いの青いの白いのと、人数が人数だけに壮観だ。村に入る前の祭行列で、最初にお久さんの面姿を見たときにはぎょっとしたものである。
 神事の間、村に女はサノメのみ、という意味なのだそうだ。着物も木綿や麻の生成りものばかり、加世の着せられた五色の絹織物とはずいぶん様子が違う。
 そういえば弁天様は嫉妬深いんだったか、と加世の笑いはひきつりっぱなしである。
 下にも置かぬとはこのことで、宿からここまで、加世はずっと輿に揺られてきた。ご隠居の姿を探せばしっかり歩いていて、なんとも肩身の狭い思いを味わったものである。
払われている敬意は加世ではなくサノメに向いているのだとわかっていても、並いる目上の人々に頭を下げられると尻のすわりが悪くてむずむずする。
 豊かな村なのだとは思う。件の宮池の淵を通って村入りしたが、一旦山を登るその道は、普段利用しているものではなく、祭道と呼ばれる特別のものだそうだ。人の通わぬ道は、こまめに手入れをしないと緑に埋もれてしまう。
祭道を保つのは宗家の大事なお役目だそうで、生活に直結しない作業に人手をさくだけの余裕があるのだ。そうして、祭の前になると、村人総出で枝を払い、土をならして、神下りの道を整えるらしい。
288サノメ 8:2008/03/17(月) 23:10:19 ID:s09pmAMZ
 その払った枝で、サノメを饗するための煮炊きをすべて行うというのだから徹底している。なんという木なのか、燻ぶって煙があがったとしても、焦げ臭いばかりでなく少し甘めの、いい香りがした。
「お久さん」
「はい?」
「これ……何してるんですか?」
 もこもことぼたもちを咀嚼して目の前の光景を問うと、鬼面の女は大きく頷いた。
「タノカミさまをお慰めしてるんですよ」
 またよくわかんない単語がー! と、加世は頭を抱えたくなるのをこらえる。
「タノカミ?って? サノメとは違うんですか?」
「サノメさまは祭行列と一緒に山から下りてこられますが、そのときヤマガミさまもいらっしゃいます。ヤマガミさまは、そのまま田んぼにお降りになって、タノカミさまになられるんですよ」
 久の説明に、ぽん、と加世は両手を打った。
「……ああ! 田んぼの神さまかぁ!」
 郷里と発音が違うのでわからなかった。
「そうです。お早く田んぼに慣れていただけるよう、土を撒いてお迎えします」
「へぇぇ〜」
 所変われば……って本当だなぁと、加世は感心する。
「じゃあ、サノメさまは何の神様なんですか?」
 はて、と久は首を傾げる。
「やはり田んぼをお守りくださる方ですが……。強いて言うなら、タノカミさまがお体で、サノメさまが魂、でしょうか。
祭のあと、サノメさまは早苗にお宿りになって、田植えをして始めて、体と心が合わさり、田んぼの守りが完全になる……と思います」
「んじゃ、あたしは山から早苗までの、サノメさまの乗り物みたいなものなんですね」
「そういうことになりますか」
 なぁんだ、と加世は肩の力を抜き、自分の想像したものに赤面した。
 やだもう、はしたない。
 転げまわりたいのを誤魔化すように、朴の葉に並べられた、見慣れぬ食材を示す。
「これは?」
「牡丹です」
「ぼたん?」
「シシ肉です。お口に合いますかどうか」
 赤味噌に漬けた肉を、朴葉で包んで焼いたのだろう、焦げた味噌が香ばしく、とろりと甘い脂が舌の上で溶けた。思わず満面の笑みになってしまう。
「おいっしー!」
「お好きなだけどうぞ。白酒はいかがでございますか」
「いただきます! ……って、そういえばこれだけのお祭なのに、屋台は出ないんですか?」
 きょろきょろと見回すと、久は侍女役の鬼に白酒を言いつけてから笑う。
「今はまだ神事でございますから。神事が終わって後、屋台も見世物小屋も立ちますよ」
289サノメ 9:2008/03/17(月) 23:12:54 ID:s09pmAMZ
 へぇ、と加世は顔を輝かせる。
「いつ終わるんですか?」
「さぁ、それは……サノメさま次第でございますから」
「え、あたし?」
「はい」
 祭囃子は最高潮に達していた。


  *


 ―――さて、次は何の話をするか。……あ? ああ、そういえば喉が渇いた気もするな。貴様もたまには気が利くものだ。おお、では水にちなんで、次はけっして涸れぬ泉の話でもするか。
 ん? いやいや違う、水神の加護なぞと、めでたい話ではないのだ。無論龍でもない。―――女よ。……ふふ。そぉ〜かそぉか聞きたいか。よし、では話してやろう。
 おほん。
 昔、ある東(あづま)の国の話だ。土地はそう豊かではなかったが、その地を長くまとめてきた代官は上を敬し下に厚く、広く慕われた立派な男であったそうな。
 しかし、この世に生きる以上、なんぴとも悩みから逃れることはできん。代官には二人の息子がいたが、この二人のために代官は日々頭を痛めておった。
かたや兄、父譲りの穏やかで賢い人となりだったが、生まれつき体が弱く、一年の大半を臥せって過ごしておった。かたや弟、頑健で力自慢の若者だったが、その腕を乱暴狼藉にしか使わぬ粗野な男であった。
 さてこの二人、どちらが代官の跡目にふさわしいか。
 ……んん、実に難題よな。
 だが、この代官は百姓との和を重んじたようだ。そも自身も百姓で、纏め役を務めるうちにお上から代官を拝命した……ということらしい。よって代官は、乱暴者の弟より、兄に跡目を継がせたく思っていた。
 ところが、だ。
 この兄は出来の悪い弟を愛していた。頑として妻を娶ろうとはせなんだ。……あるいは、体のことを引け目に思っていたのかもしれん。その地の風習でな、嫁をとらねば一人前とは認められず、家を継ぐことはできん。
一方で日々好き勝手に暴れまわる弟は、方々で若い娘たちにちょっかいをかける。その娘たちのいずれかが、いつ何時弟の妻の座を占めるかわからず、そうなってはむしろ弟に家督を譲るのが自然な流れということにもなりかねんのだ。
 代官はほとほと困り果てた。そしてついに、埒があかぬと、押し問答に見切りをつけて兄に条件を出した。これがなんと、もしも天女を見つけてきたならば、その女を妻に迎え、家を継ぐようにというものでな。
いやまったく破天荒な条件よ。これは無理だろうと踏んだ兄は、条件を承諾した。代官は早速村々へ使いを出し、天女を見かけた者は子細を話し、連れてくるよう触れを出したのだ。
 しかし、しかし。意外なことに、しばらくして代官の屋敷を訪れた女があった。たいそう美しく、気品ある佇まいの女で、なるほどこれは天女に違いないと代官は兄に引きあわせた。すると二人はたちまちのうちに恋に落ち、めでたく祝言を挙げることと相なった。
 これで終わればめでたしめでたし。ところが、そう上手くいかないのが世の無常。ここに兄の祝言を面白く思わない者があった。……そう、弟だ。弟は義姉となるはずの天女をどこからか垣間見、己のものとしたいと企んだ。
そしてついに婚礼の夜、天女を盗み出してしまったのだ。やれこれで肩の荷が下りると喜んでいた代官は、思わぬことに心底怒り、二人を追放すると触れを出した。
 戻るに戻れなくなった天女は、残してきた兄の身を案じ、昼となく夜となくさめざめと泣いた。その涙が流れ流れて、溜まりに溜まって泉となった。
 ―――今もまだ、天女は泉の底で泣き続けている。その哀しみが尽きるまで、泉はけっして涸れぬのだと言う。満々と湛えられた青い水は、愛しい男と引き裂かれた、天女の嘆きなのだ。


   *


290サノメ 10:2008/03/17(月) 23:17:29 ID:s09pmAMZ
 弥太は唇を尖らせて、ぽんと足元の石を蹴り飛ばした。見上げた先、オタモリの家があるはずの方向は、夜だというのに空裾がほのかに明るい。きっと今も明々と篝火が焚かれて、昼間のように明るいのだろう。
 ……つまらない。
 いつまで神事が続くのか、と弥太はふてくされる。子供らにとっては、それなりに賑やかであってもろくに駆け回れず遊べもしない神事より、屋台や見世物が並ぶ後祭こそが祭だ。
一日くらいなら神事があってもいいけれど、もう三日目が終わろうとしている。
 それに、と弥太は力なく納屋の戸に手をかけて、ごろりと筵に横になった。もう、十日も鈴姉に会っていない。オタモリ―――宗家には祭の間限られたものしか入れないから、
サノメとなってしまった鈴姉に弥太が会うことはできないのだ。
 お名指しされて、宗家へと迎え入れられる日、鈴姉はずいぶん久しぶりに弥太の頭を撫でた。一人で大丈夫かと聞かれて、もう子供じゃないやと胸を張った。
しっかりねと、何度も何度も振り返りながらオタモリへの道を登っていった姿が最後。
 鈴姉も弥太も貰われ子だ。何かと忙しい養父母に代わり、弥太の子守をしてくれたのが鈴姉だった。この村へは三つか四つの頃、実の母に手を引かれて来たはずだが、弥太はもう覚えていない。
いや、うっすらと記憶にあるような気もするが、思い返そうとするとその顔は鈴姉のものにすりかわってしまう。弥太にとってはむしろ十ほど違う鈴姉が、母だった。
 その鈴姉がサノメに選ばれたのが子供心にも誇らしく、初めての祭に胸躍らせ、どれだけ綺麗な天女かと、晴れ舞台を楽しみにしていたのに。
 いや、期待通り昔語りの天女に扮した鈴姉は、見たこともないほど綺麗だった。綺麗だったけれど。
 ―――寂しいんじゃないやい。
 弥太はぐいと目元を拭う。泣いてなんかない。もう八つにもなる男が、姉を恋しがって泣くなんて、そんな格好の悪い。
 寂しいのじゃない。ただ、鈴姉が心配なのだ。昨日も今日も、見かけた鈴姉は熱でもあるようにぼぉっとして、弥太に気づきもしなかった。最初の日は、陰でこっそり手を振ってくれたのに。
 早く神事が終わればいい。そうしたら、戻ってきた鈴姉と手をつないで、一緒に屋台を見て回ろう。水飴を舐めて、講談を聞いて。
 そして夜は、また夜語りを聞きながら眠るのだ。
 早く、早く。
 この退屈な神事が終わりますように。


  つづく


と、いうわけでモブ村人はカカシなイメージ。
ついでに、八太郎左は、鵺の半井はん(鼻キツツキの人)をもーちょい年取らせてしおしおにした感じ?です。
291名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 23:32:36 ID:4Hc7Lae+
続きが気になる〜職人の降臨を心よりお待ちしております。
292名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 01:40:16 ID:4xueoThH
ほんと加世の身が心配なような、楽しみなような…(ry
続きが禿しく気になります!

あとサロメな病んだ感じのクスカヨも読んでみたいです>>職人様
293337:2008/03/24(月) 23:14:38 ID:mjeo+yVb
トロくてすんまそん(´・ω・`)
地道におつきあいくださると幸い。杉の時期が終われば……たぶん……。

サロメ、そういえば昔「実はヨハネもサロメを好きなんだけど、立場や宗教、
身分なんかの都合でサロメを巻き込んじゃいけないとつっぱねたのに、
それを若いサロメはわかんなくって〜」とゆー悲恋モノに置き換えようと
してみたことがある。病んだエロスハァハァ。

投下いきます。また4レス分。お預け続行御免。
294サノメ11:2008/03/24(月) 23:16:58 ID:mjeo+yVb
 ―――りん、と。
 遠くに、鈴の音が聞こえた。
 神楽鈴の、文字通り鈴なりの音とは違い、空気に染み入るように単独で響き、尾を引いて消える。
 不思議と、心にひっかかった。
「まだ、どこかでお囃子してるんですか?」
 寝支度を済ませた加世が訊くと、正座した鬼はいいえと首を振る。加世はさりげなく面から視線を外した。
 日が暮れた後、ほの暗い部屋で見る真っ赤な鬼の面は、正直けっこう怖い。
「楽を、ご所望でしょうか?」
「あっ、いえそうじゃなくて! さっき鈴の音がした気がしたので……気のせいかな?」
「誰ぞお道具の片づけでもしているのかもしれません」
「あ、そうかぁ〜」
 あはは、と軽く笑うが、沈黙が気まずい。寝るときもつきそいっぱなしなんだろうか、と加世はちらちら鬼の面を盗み見る。
「……他に御用はございませんか?」
「ないです!」
「かしこまりました。では、そのように」
 何が?と思いはするが、鬼は深々と一礼すると視線を上げぬまま下がっていった。加世は大きく息をつくと、ばふりと布団に倒れ込む。
「つっかれたぁ〜!」
 たいしたことはしていない。座ってにこにこしながら、ご馳走を飲み食いして、珍しいあれこれを見ていただけだ。それだけだが。
「なぁんにもっ! 説明してくんないんだもんなぁ……」
 ぶつぶつ言って、布団の上を転がる。先の見通しがまったくつかないというのは、なかなかに疲れる。サノメの一挙一動には村人の目が集まっているから緊張するし、慣れてきたら慣れてきたで欠伸もできないしで、朝から晩までまったく気が抜けなかった。
 いつまで続くのか、との加世の問いに、鬼はサノメが示すのだと言った。祭が終わる徴(しるし)があるのだと。そんなもの聞いていない、と加世は言ったが、その時になればわかりますと、側女はとりつくしまもない。
 見越屋で働いているときもそう近しく言葉を交わしたことはないが、それでももう少し違う人柄ではなかったか。言葉遣いや、何より顔が見えないこととあいまって、まるで別の人を相手にしているように感じる。
 加世はむくれながら部屋の蝋燭を眺める。ちろちろゆらゆら、炎がせわしなく揺れて、物の影が盛んに伸び縮みする。
「あたし単なる奉公人なのにぃ……」
 巫女の真似事などさせられても、正直困る。
 とはいえ、奉公人の分際で、タダで祭見物をさせてもらっている……どころかこの高待遇、文句を言うだけ罰があたるというもので、慣れない仕事だと割りきるしかない。こんなことなら、炊事洗濯でもしているほうがよっぽど楽だが、仕事なのだから仕方がない。
295サノメ12:2008/03/24(月) 23:18:16 ID:mjeo+yVb
 加世は深く溜息をついて、蝋燭を消そうと起き上がる。
 ここも、立派な部屋だ。宗家の離れだと言うが、築山や竹林の配された庭を細い道が何度も折れ曲がり、方向感覚のわからなくなったころ忽然と小さな建物が現れて、びっくりした。道が道だから母屋からはずいぶん離れているようだが、実際の距離はさほどでもないのだと言う。
朱塗りの柱に緑の窓、白い壁とくればお社にしか見えないが鳥居はない。青々とした畳は替えたばかりのようで、い草のいい匂いがした。どこかで香も焚かれているようだ。
 そこに、加世ひとりきり。
 なんとなく、ぞくりとする。
 無意識に両手で体を抱いて、そんな自分に気づくと気持ちを紛らわすように、へへ、と小さく笑った。
 だいじょうぶ、だいじょうぶ。
 怖いことなんか何もない。
 隙間風などなさそうな立派な造りでありながら蝋燭の炎が盛んに踊るのは、障子戸が薄く開いているからだ。これだけは、朝までけして閉めてはならないと言われた。表玄関に面した戸と、そのちょうど背後にあたる戸。
まっすぐな線上は外につながっているのかと思うとなんとなく落ち着かなくて、布団は隅に寄せた。
 ふっ、と息を吹きかけて踊る炎を消す。白く煙がなびいて、ひどく甘い匂いがした。蜜蝋、なのだろうか。
「ぜいたくぅ〜」
 ぽつり、呟いて布団に戻ろうとし、振り向いた加世の足がぎょっと止まる。
 障子戸に、平伏する人影が映っていた。
 りん、と鈴の音がする。
「―――サノメさまに申し上げます」
 静かな声は若い女のもので、加世はばくばくする心臓をなだめながら、はい、となんとか口にした。
 ―――おおおおどかさないでよぉぉ〜!
 ちょっと涙目になってしまった。
「御池にて御徴(みしるし)を拾いましてございます。ご確認いただけますでしょうか」
 まだ寝られないのか、とがっくりしながら、はいはーいと返事をすると、障子戸がすいと開いて、三方と白い手だけが差し入れられた。
 炎を見つめていた目が暗さに慣れると、加世はぽかんと口をあける。
 それ、は。
「天秤さんーーーーっ!?」
 すっとんきょうな声を上げ、あまりの大きさに慌てて口を押さえる。天秤は尖った足で立ったまま、くるくると回ると外に向かって、りん、と傾いた。
「ちょ、どどどーしてここに? え、薬売りさんが来てるの!?」
 混乱しながら近づくと、戸の隙間から女の顔が見えた。にこりと、笑う。
「お心当たりが、おありでございましょうか」
「こ、心当たり?」
「お知り合いの方の物ですか」
 加世が頷いて手を出すと、天秤がぴょいと加世の手に乗る。女は少し驚いたように目をみはった。
「此度のサノメさまは、不思議な力をお持ちでいらっしゃる」
「いえ! 天秤さんは薬売りさんので、不思議なのはその人の方ですから! あたしは、たまたま知り合っただけで」
 言いながら、加世はきゅうと胸元に天秤を抱きしめる。なんだかすごく、ほっとした。余裕ができて、まじまじと女の顔を見る。
296サノメ13:2008/03/24(月) 23:19:17 ID:mjeo+yVb
 綺麗な人だ。
 少し、真央様に似ている。
 目が合った。
 あれ、と加世は首を傾げる。
「面は? 夜はしなくていいんですか?」
「私は、村の者ではございませんので」
 言って、女は少し部屋の中を見、かすかに眉を寄せた。
「……少し、お邪魔してもようございましょうか」
「どっ、どうぞ」
 加世が体を引くと、女はついと音も立てずに部屋へと入り、そのまままっすぐ横切って、細く開いていた向かいの戸を閉める。
「あ」
 思わず呟いた加世を振り返り、女はそちらも閉めろと言う。
「え、でも……戸は開けたままにしとかなくちゃいけないって言われて」
「閉めた方がようございます」
 女はきっぱりと言った。
「そちらは北東。鬼門ですから」
 げっ、と加世は小さく洩らすと、きょろきょろと外を見てぱたりと戸を引く。暗い部屋で、女の顔がほの白く浮かぶようだった。
「明かりを……」
「いえ、どうかそのままで」
 女は手を上げて加世をおしとどめる。
 白装束だ、とふと思った。何故か今まで、気づかなかった。
 女はにこりと笑う。加世と幾らも変わらない年に見えた。気安くなって、加世も少し笑う。
「鈴、と申します。サノメさまのお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「あ、加世です。あの、天秤さんを届けてくださってありがとうございます」
「いえ。加世さんのものでほっとしました」
「や、あたしのじゃないんですけど、」
 言いかけたところでおとなしく抱かれていた天秤がもぞもぞと動き、慌てて力を緩めるとふわりと浮いて、加世の背後へ飛んでいく。先ほどまで開いていた入口の前に陣取ると、りんと両腕の鈴を垂らしてぴたりと静止した。
 それを見送って、同じ名を持つ女は感心したように頷いた。
「これは、心強い」
「……えっと……な、なんかあるんですか」
 天秤が動くということは、この世ならざるものが近いということだ。加世はやや身を縮めながら女の顔を見る。
「大丈夫です。害はありません。お気を強く持たれますよう」
 ―――ってホントになんか起こるんかい!
 とほほ、と加世はがっくり頭を垂らす。まったく、自分の人生『こういうこと』にやたら縁ありすぎじゃなかろうか。
「……先に、加世さんがお訊きになりたいだろうことにお答えしておきます」
「へ、なんですか?」
「祭の終わらせ方です」
「えっ!?」
 加世が身を乗り出すと、鈴は、落ち着いて聞いてくださいね、と念を押した上で、
「サノメには数々の特権が与えられますが、それもそのひとつです。村の女たちの中で、誰よりも早く好きな若衆を名指しすることができます」
「……はい?」
 いまいち判らずにいる加世に、鈴は言葉を探すようにする。
「えぇと……つまり、祭の夜は言い交わした男女が一緒に過ごすもの、ですから……。平たく言うと、夜伽の相手を」
297サノメ14:2008/03/24(月) 23:22:27 ID:mjeo+yVb
 ぶふぅーっ、と加世が噴き出す。
「んなっ!? よよよよ、夜伽ぃぃいっ!?」
「神事が終わるまで、村の女たちは女でなく鬼ですから。サノメさまがご指名をなさらねば、誰もそういうことはできないのです」
「そっ、そそそぉんなこと言われてもっ!」
「若衆が泥撒きをしていたでしょう。あれは、まぁ、品定めの機会のようなもので」
「困りますそんな! あたし、ただご奉公先のご主人についてきただけで!」
「そう、でしょうね……。まったく、弥太にも困ったこと」
 ふぅ、と頬に手を添え、鈴は溜息をつく。
「ともあれ、お名指しというのは、このように」
 女は、自ら運んできた三方を示した。
「御池に、その相手の物が見つかるのです。……もちろん、サノメとなる娘が、事前に好きな男から何かを借り受けて、池に投げ込むことが本来の人としてあるべき祭事なのですが」
「ちょっ、えっ、えええええーーーー!?」
「お静かに。……ここ三十年ほど、でしょうか。地縁のない、当然そういった祭の事々も知らぬ娘がサノメとなるようになりました。中には、運よく相手を見初め、そのままこちらに嫁いだ娘もいますが……稀なことです。そして、神事は三日までと決まっています。
四日目まで持ち越すと」
 鈴は一旦言葉を区切る。
「も……持ち越すと?」
「悪いことが起きる」
 一言一句をはっきりと発音して、鈴はひたと加世を見つめた。
「―――と、信じられています。以前、まだ村の中からサノメが出ていた頃、死んだ娘がおりましたので」
「な、なんで……?」
 女は黙って首を振る。
 ―――わからない、ということか。
「それ故に、三日目の夜までにお名指しがなかった場合、宗家の者が夜這いをかけ、無理に神事を終わらせます」
「えええええーーーーーっ!? そっ、それも困ります!」
「ご安心を。大概、私が逃がしておりますので」
 さらりと言われた言葉に、加世はぽかんとする。
「逃がす……って、そんなことしていいんですか?」
「よいのですよ。所詮人の祭、若い娘を泣かせる意味などないのですから」
「え……えぇ?」
 そうも簡単に言いきられると、なにやら罰当たりな気がしなくもないのだが。
「そもそも、外から連れてくる必要などないのです。何を恐れての仕儀なのやら……」
 ―――ちりん。
 女の思案を遮るように、鈴の音が響く。加世と女の視線の先で、障子戸にくるくると影が踊った。
「な―――」
「しぃ。お静かに。……害はございません」
 影―――そう、影のはず、なのに。
 深い青。水を映すような緑。どぎついツツジの色。紫、橙。
 とりどりの色が、色皿を引っくり返したように障子に映る。黒く残った四角い桟こそが純粋な影の色だろう。外の光を微かに透かして青白い障子紙。そこに―――人の、影が。
 兄さん、と。
 呼んだ。


  つづく


もーエロ書きたいよウワァァン!
298名無しさん@ピンキー:2008/03/24(月) 23:53:58 ID:4xueoThH
>>337
乙です!あ〜読んでてドキドキしたー。
カチンが今にも入りそうな空気感、たまらないですね。
そんな中、天秤さんは最高の癒しキャラw
続きが気になります。楽しみにまってます!

あと病んだエロスも是非読みたい!天真爛漫故の恐さみたいなの…どうでしょ?
299名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 12:19:44 ID:sXbymuWn
続き待ってました〜職人乙です!
いよいよ佳境でしょうか文章にも緊張感が増してきて
読んでても前の話が気になって、あっちこっち戻りつつじっくり読ませていただきました。
ちりばめられた仕掛けがどう畳まれていくのか楽しみでしょうがないです。

そして天秤さんに息抜きさせられました〜やっぱかわゆい♪
花粉症で辛い中まさにGJ!でございました。
300名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 22:38:10 ID:yy8+j54C
相変わらずの美文乙です
続きwktk
301空涙:2008/03/31(月) 23:38:21 ID:ofUUZugQ

えも言われぬ、とはこういうことだろうか、と加世は思う。どうしたって言葉にできず、
イイとかイヤとか、あとはもう単語ですらない鳴き声にしかならない。心、満ちて。こ
ぷこぷと、ぴちゃぴちゃと、赤裸々な水音になって跳ね溢れる。
「薬売り、さぁん……っ」
高く上擦る、求める声。縋るように腕が伸びて、むちゃくちゃに白い体を引き寄せる。
は、とか、ふ、とか、熱い吐息が耳朶にかかって腰がくねった。ぐちぐちと中身が擦れ、
口腔を貪りあう。境界などわからぬほど深く交わって、けれどどうしたって真実溶けあ
い一つになることはできない。……個、であるが故に。
「か、よ……」
愛しんでもらえるのは、加世が加世として生まれ、薬売りが薬売りとして在るからだ。
だとすれば、薬売りはこの哀しみすら甘美だと言うだろう。……やはり、重ならない。

よもすがら、零れ続ける涙はただ、あなたのために。



337です。連載豚切って季節ネタすみません。しかもちょとフライングですが。
……やりたかったんだ!
サノメもがんがりますノシ
302337:2008/03/31(月) 23:46:08 ID:ofUUZugQ
タイトル部分にカップリング表記忘れたorz ごめんなさい。
303名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 00:13:03 ID:hYEensY5
>>301
季節ネタ?て?
304名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 01:40:53 ID:bgY1SpOq
GJ!

サノメの続きが読みたくて
夜も眠れないぜ‥‥
305名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 12:52:00 ID:hYEensY5
ああー! やっとわかった逆くの字! 語尾が薬売り仕様w
ヌゲー!! GJ!
306名無しさん@ピンキー:2008/04/08(火) 17:47:32 ID:axw+jn9J
保守
307名無しさん@ピンキー:2008/04/12(土) 02:05:15 ID:1vZEhoQz
ちりーん
308名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 01:13:17 ID:svnzc9CK
309名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 02:16:42 ID:+70dc7f4
310名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 13:26:35 ID:thtZOnu3
311名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 13:45:25 ID:wUjTQzO+
312名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 16:07:37 ID:7ZKH3RNX
313名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 20:14:42 ID:R/dCk+NF
314名無しさん@ピンキー:2008/04/14(月) 20:15:27 ID:Q0IoPqsg
315名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 02:24:08 ID:SnaiVCG2
316名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 03:29:08 ID:IvOzzM1N
317名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 07:29:23 ID:Kacyg8K8
こむらさん
318名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 19:47:31 ID:7A8aKbsG
敦盛×薬売りは需要無いですかね?
319名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 20:51:49 ID:PCWu5uLj
>>318
前スレでは数字板でやってくれって流れだったと思うけど
今の住民のみんなはどうだろう?
自分は受けがあんあん言ってなかったら平気。(個人的な意見でゴメン)
320名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 21:05:50 ID:7A8aKbsG
そっか…。やっぱりモノノ怪を知っている人に見てもらいたいって気持ちがあるから
出来ればここで見て欲しいし…

あんあん…しまった似たような事言ってるやw
ちょい描き直してくる
女体化は駄目なんだよな?
321名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 21:12:27 ID:IvOzzM1N
そっち系の話は、話題に出ただけでも激しく嫌がられてたぞ。
確か以前、薬売り中性設定でのそんな話が有ったけど、まとめサイトからも削除された。
うpしたいなら、数字板のビデオ棚に行ってみるのはどうだ?
322名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 21:21:32 ID:7A8aKbsG
そうか…わかった自粛する。
薬売りがあまりに色気ムンムンで加世より白いから思わず小説書いたんだが…
ここはノーマル専門なのかなorz
323名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 22:54:37 ID:9S84qUR3
神職人様達はどこへ行ってしまったのか…
324名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 22:59:56 ID:IvOzzM1N
>>322
>>1読む限りではノーマル専門。でも女同士のは大丈夫ぽい。

せっかく書いたんだし、男同士のなら、数字板にもモノノ怪スレが有るから、そっちで詳しい事を聞いてみれば?
女体化するなら女体化専門スレで。
325名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 23:08:02 ID:7A8aKbsG
>>324
ありがとう。そうして見るよ。
ここの住人は穏やかで作品アップしやすい雰囲気だったからつい我が儘を言ってしまった。

ノーマルも大好きなのでサノメの続きが気になって仕方ない。
職人の作品を拝みたく候。
326名無しさん@ピンキー:2008/04/16(水) 16:31:16 ID:bcslc94H
「エロパロ」が「サロンパス」に見えた俺末期
327名無しさん@ピンキー:2008/04/16(水) 19:08:20 ID:Yx7YuZIP
>>326
ロとパしか合ってない上、字数も違ぇwww

……仲間に混ぜてもらえますか。
328名無しさん@ピンキー:2008/04/16(水) 20:13:13 ID:mwdHiPq7
サロンパスで前貼りした加世たん想像した。
ちょっとウェンツされてくる
329名無しさん@ピンキー:2008/04/16(水) 20:27:04 ID:glKj+wT4
本物のサロンパス想像してイテテテテと思っちゃったよ…orz
ちょっと滅されてくる
330ドS:2008/04/16(水) 20:50:42 ID:cRyfzYKo
保守がてら投下。まだ中途半端だけど触手×お庸。
331触手×お庸:2008/04/16(水) 20:52:36 ID:cRyfzYKo
何刻たっただろう。

舟の蓋を閉じる際渡された蝋燭ももう消えかけている、

「………」

ドロドロに溶けた蝋の上の炎が小さな息に揺らめいた。

「…兄様…」

暗闇からは舟が軋む音と波音しか返ってこない。

お庸はころりと横になり膝を丸め目を閉じた、瞼に浮かぶ兄の姿を振り払うように思考を停止させようとした。


―…巫…女……―


閉じかけた意識が波音の合間に微かに何者かの声を捕えた、

―私の…巫女…―

波間に聞こえる声は水中に木霊するように辺りに響きお庸の元に少しずつ近づいてくる。

神か怪か、人外に喰われるのは覚悟のうえの事。ただ、せめて楽に逝けることを願わずにはいられなかった。

冷たい床に丸まったお庸は小さな体を小刻みに震わせその声の主を待ち受けた、
「…兄様…っ」

白肌に浮かんだ玉の汗が一つぽたりと床に落ちた。


ひゅうと船内に潮風が吹いたかと思うと床から水が沸きだし瞬く間に足首ほどまで満たされた、蝋燭の火が消え薄暗闇だった空間は完全な闇となる。

―巫女…―

声ははっきり音としてお庸の耳に届いた、

「静まり下さい…、どうか…」

お庸の祈りに呼応し水面が波打つ。
332触手×お庸2:2008/04/16(水) 23:43:50 ID:cRyfzYKo
闇の奥がぼんやりと青く光り波紋とともに声が響いた。

―巫女…、美しいな―

光の中から影が一筋お庸のもとに伸びる、間近に迫ったそれにお庸は息を飲んだ。

それは異様に長く滑らかな人間の舌と形容するに相応しくウネウネと蠢いている、ぬるつく粘液をたっぷり纏い所々から糸を引き滴り落ちた。

「ひぃ…!」

思わず後ずさるお庸に声が近づく、

―恐れることはない―

触手は宙を泳ぐようにお庸の目前にまで迫った。

―すぐに何も分からなくなるから―

すると水中から触手の束が飛沫をあげ現れた、

「ぁっ…きゃああぁぁ!!」

その一本一本がお庸の手足に素早く絡まり瞬く間に少女は大の字に拘束された。

触手は見た目こそ生き物の舌だが存外体温が低く絡めている部分だけが水に浸っている様な心地だった、触手が肌の上で蠢くたび滑った水音が鳴り粘液が伝い落ちる。
333名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 03:57:41 ID:aBADTIAq
ドSさん、お久しぶりです!
うつろ船の中の逃げ場の無い狭さと暗闇と
白く浮かぶお庸の肢体を想像するだけでドキドキです。
続きが楽しみv
334名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 05:12:53 ID:GgvJ24jF
うおっとよだれが…
続き期待しております。
335名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 20:05:19 ID:01p1Ifi4
ドS氏キターーーーーー!
体調崩したりしてないかと、実はちょっと心配してた。お元気でよかった。

で。

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 触手!触手!
 ⊂彡

青い舌でハイパーを連想した自分自重w
336名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 23:16:36 ID:559X6uG2
>>328
サロンパス前貼りか……
あのお札なら、貞操帯代わりにするならもってこいかな?
並の人間じゃどうにもできん。
337名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 23:44:49 ID:01p1Ifi4
>>336

ぺた。

「ひゃっ!? な、何するんですか薬売りさん!?」
「いやなに。俺のいない間、加世さんがイイコで待っているように、まじないを……ね」
「イイコ……ってまたすぐそーやって子供扱いするぅー!」
「まあまあ。ちゃんとイイコにしてたら、帰ってきたときに」
「……ときに?」
「『ご褒美』、あげますから……ね?」


こんな?
338名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 11:05:01 ID:kZNVRn7+
ttp://uproda11.2ch-library.com/src/1179858.jpg

何と言う良スレ
大事な所だけではなくサロンパス張りまくる薬売り
帰って来た時に「おや、加世さん何故札が濡れ(ry」
こうですか?わかりません><

っと、こんな時間に誰か来たようだ
339名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 13:40:13 ID:9CE99G43
「札に赤い紋様が…。
モノノ怪の仕業なら、早く退治しないと、いけませんね」

そして、おもむろに自前の退魔の剣を解き放つわけですね。
わかります。
340名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 14:59:15 ID:r3cHWayY
>>338
すげええええええええ神絵師ktkr!!!!!
アングルといい尻に乗った天秤といい、萌えちまったじゃねえか……
てかサロンパス張りまくりだろwwww
しかし薬売りはよくサロンパス貼る時点で我慢出来たな

>>339
だれうま
自前の大麻の剣は「精・欲・愛」が揃うと解放(射精)出来るわけです
ね。わかります
341名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 18:53:58 ID:RoQoCHbd
エロパロ≒サロンパスがここまで膨らむとはおもわなかったw
さすが薬売りさんは愛されてるなぁ。

>>338
その天秤はいろいろなところをチクチク刺激するわけですね?
342名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 19:00:23 ID:iJqreHIU
にょ…とかも、薬売りの許可が必要になるわけですね。

「薬売りさん、お願いだからこれはずしてよぉ、ださせてよぉ〜」
「いけませんね、それを解き放つには、まだ……早い」
343名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 19:37:17 ID:zynIp/pP
おk、受信した。


 部屋の隅を掃除しようと、重たい布団を持ち上げたときだった。
「よっこらしょ……っとひゃあっ!?」
 ぶぶぶ、と体の中心に走った細かな振動に、加世は思わず布団を取り落とす。
「や…ぁ、な、なに……!?」
 慌てて体を探ると、指先に小さく、断続的な震えが触れる。手で触れる分にはたいした振動ではないが、敏感な部分に伝わる衝撃は大きい。覚えのある場所に、かぁっと頬が染まった。
「あンのド助平……っ!」
 札を貼られるのは初めてではないが、徐々に芸域が広がっているのは気のせいか。気のせいであるはずがない。まったく、一体何に神経を注いでいるのだ。こんなことに技を尽くすくらいなら、
「ん、あぁん…っ!」
 加世の心中を読みでもしたように、振動が激しくなる。かくりと膝が折れて、取り落とした布団に飛び込む姿勢になった。
「やだ、もぉ……っ! ん、あっ、」
 じんわりと熱くなってくる。体温が上昇するにはいくらなんでも早い。涙目で着物の裾をまくると、案の定札に赤い紋様が浮かんでいた。発熱、しているのだ。
 太腿に数枚、胸に一枚ずつ、苦手な脇腹と、腰のつけねから尻の丸みに沿って前までびっしりと。厚く貼り重ねられ過ぎて自分では慰められないから、加世には悶えることしかできない。きゅうと布団の端を握る。
「あつい、よぉ……っ」
 札に促されて、肌は素直に熱を帯びる。足袋の感触すらくすぐったくて、もぞもぞと足の指が動く。息があがる。
「…や、…あっ…」
 ただでさえ久しぶりの快楽で、体は貪欲に求めようとする。きつく膝を閉じ合わせると、太腿の間で振動が交わされあって、気持ちいいけれど物足りない。
「んっ、んんっ」
 無駄だとわかっていても腰がくねる。快楽を逃がそうとしているのか得ようとしているのか、もう自分でもわからない。汗が滲む。熱くて熱くて。
 ……ダメだ、欲しい。
「く、くすりうり、さぁん……っ」
 抱きしめて、口づけて、その腕に抱いて。
 今すぐ。お願い。


こうですね?
344名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 19:41:36 ID:kZNVRn7+
ここに新ジャンルが誕生したわけだが、ここの住人達に名前を選んで貰おうか

・サロンバス+天秤×加世
・サロンパス攻め
・サロンパスお漏らしプレイ

好きなのを選べ
345名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 19:46:55 ID:kZNVRn7+
>>343
新ジャンルを考えている間にこんな素敵な作品が…ありがたやありがたや
薬売りは一度枷が外れるとどんどん遠慮が無くなりそうだ
346名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 22:38:22 ID:0bXt+Kt8
退魔の剣×加世で
347名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 00:16:30 ID:WbXoZe8K
こんなに沢山の住人が隠れてたのかw
一体どこから出てきたんだwww
348名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 00:37:17 ID:Vnt+g9yo
加世以外の女性も切望。
349名無しさん@ピンキー:2008/04/19(土) 01:47:00 ID:YY/aj2pl
>>348
そういう時は自分で生みだすんだ!
ドS氏の続きもあるので楽しみにしてる
350名無しさん@ピンキー:2008/04/20(日) 21:58:19 ID:hnlwhnpF

>>338のイラスト見れなくなってる・・・
どんな絵だったんだ?誰か保存した奴いない(・ω・`)
ってかイラスト系はすぐ流れちゃうのね
351名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 02:12:48 ID:QH++dQOT
>>350
保存したけど再うpしていいのかな?
wikiの編集の仕方もわからないアホだからwikiにも上げられないし…
画像はすぐ消えるから、この板専用のアプロダがほしい所
352351:2008/04/21(月) 02:18:14 ID:QH++dQOT
書き忘れ
>>343、GJ!GJ!!
その札をどうやって貼ったかも興味ある
寝てる間に?
貼ってからどうやって用を足したんだろうか?>加世
剥がした瞬間…!!とスカトロっぽいことも考えてしまいましたww ←変態
限界が来る前に薬売りが帰ってくるといいね!
353名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 02:53:49 ID:xBqshRjn
ここにあげるて事は後々wikiに載せる事前提なんだからいいと思うけどな>351
確かにこの板専用のうpロダ欲しい……
なんか他のモノノ怪スレが伸びていると寂しく感じるな……
自分はノマ好きだから色んな職人やネタ提供して萌えさせてくれるここの住人が本当にありがたい


ところで薬売りさんの薬の中には座薬があるのだろうか?
熱を出して朦朧としている加世の為に薬を調合
       ↓
飲み薬を作ったはずがいつの間にか座薬が出来ちゃった
       ↓
薬売り「うっかり、うっかり」
       ↓
加世に座薬注入。そして自分の退魔の剣で押し込(ry
354337:2008/04/22(火) 22:34:09 ID:UrAIEFKJ
取り急ぎ、サロンパスネタだけWikiにうpしたよ。
画像見られなかった人ドゾー。

http://mononokeeroparo.matome-site.jp/

やっべ2ヶ月もほっぽってたw
355名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 23:14:51 ID:/Qrqe7c9
ありがとうござい!

そしてサロメの続きを座して待つ…
356337:2008/04/23(水) 20:49:35 ID:O9RI0pln
ごめんよ、書いてはいるんだ。最後まで書ききったらどーんと落とすから待っててくらはい。

ところで、まじめな話をまじめに書いてるとバカネタが書きたくなります。
と、いうわけで一発ギャグ。
他のどの男性キャラでもなく、どうしても薬売りにやらせたかった。
著しくイメージを損なう恐れがなきにしもあらず。ご注意。


**************


「―――あ」
「え? ……あ。あぁ〜……」
「…………」
「……や、疲れてるんですよ、しょーがないです」
「…………」
「今日はもう寝ましょ? ね?」
「…………」
「薬売りさーん?」
「…………」
「えぇっとぉ……な、何かあったかいものでも飲みます?」
「………………」
「そ、それで、あのね? ぎゅーってして寝てくれると……う、嬉しいかな、なんて」
「……………………」 がっし!
「―――ちょっ、薬売りさんソレ売り物! 売り物だから! 手ぇつけちゃダメえぇぇぇ!」


ごめん。ホントごめん。
357名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 21:38:07 ID:tuwkWgYU
イイ薬かwww
358名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 22:36:31 ID:STBGlvJ+
>>356
ちょwwww
薬売りwwwwwww

なんか可愛いなw
359名無しさん@ピンキー:2008/04/23(水) 23:04:44 ID:WY6B2v2f
そうか 元気でなかったのかwww
フォロー困るよなwwwwww
360名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 00:24:24 ID:Eo/FqAZ+
自前の退魔の剣を解き放てなかったわけですね
361名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 02:01:31 ID:eQBqjGP5
代わりにハイパーが解き放てばおk
362名無しさん@ピンキー:2008/04/24(木) 22:28:47 ID:cX/sVaB/
ハイパー解き放つための
形が元気出る薬
真が愛
理が男の意地というところか
363名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 10:17:29 ID:2dGY+8U3
おもったんだが、
お蝶とのっぺらぼうがヤったら、ハイレベルなオナニーってことになるんかな?
364名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 23:47:02 ID:SIyXul4w
>>363
…お前天才じゃね?
365名無しさん@ピンキー:2008/04/27(日) 17:29:22 ID:aJzCjx0u
>>363
ふむ、感覚がつながってたりしたら、快感2倍で乱れに乱れるお蝶が見られるわけですね
366名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 06:34:58 ID:fAXP3uXF
むしろのっぺらぼうと同化してフタナリになって、お蝶×加世が見たくなった。
367名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 23:52:47 ID:LFCvkuIF
>>366
狐面ふたなりお蝶…グリーンリバーライト声の女言葉なのか男勝りなお蝶さんなのか(笑)
狐なだけにどう化かしてくれるか楽しみ!
368名無しさん@ピンキー:2008/05/02(金) 23:34:33 ID:ga3xN7tG
普通に敦盛×お蝶を読みたい俺は異端なのか
369名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 01:09:13 ID:hR2fxmjk
敦盛の前での薬売り×お蝶が見たい自分はもっと異端だ
370名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 01:17:10 ID:SYg1Uo41
薬売り視点での敦盛×お蝶を読みたい自分は普通だな。
371名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 22:23:58 ID:v7Bkcd+h
何の会話をしてるんだw
と突っ込みたいがこのスレでは普通か

ちなみに自分は幻殃斉と志乃さんの絡みが見たい
何気によさそうだと思っ(ry)
372337:2008/05/06(火) 21:36:27 ID:5fNox0vh
>>366
こうなりました。

サノメじゃない。ごめん。
薬加前提でフタナリお蝶×加世、また百合陵辱。
いや、これ寝取られってやつになるのか?
全5レス。
373煙羅煙羅 1:2008/05/06(火) 21:39:28 ID:5fNox0vh
 もし、と呼ぶ声に、加世は洗濯の手を止めて顔を上げた。
「もし、どなたかいらっしゃいませんか」
「はぁい!」
 ぷるぷると両手を振って水滴を払い、加世は襷(たすき)姿のまま急ぎ家を回り込む。絞る段階でよかった。水仕事は周囲の音をかき消してしまう。
 旺盛に伸びた雑草が足に絡みついて些か難渋する。少し草を抜かなきゃ、と思った。諸国を巡る薬売りについて行くうち、ある程度の滞在期間があるなら宿より家を借りようと言ったのは加世の方だ。
安く済むし、薬売りのいない間を家事で紛らわすこともできる。仮初めとはいえ、『家』を好きな男のために整えるというのは、思っていたより楽しいことだった。
 そして、もうひとつ。
「こちらは、薬売りさんのお宅でしょうか?」
「はい、そうです。こんにちは」
 表で待っていたのは、儚げな風情の女だった。面長、色白、なかなか美人。江戸で親しんだ逞しいおかみさんたちと違い、一歩下がって控える空気を纏って、だがそれ故に人妻だろうという気がした。生まれが良さそうだ。
「お薬ですか? 今主人が出ておりますので、簡単な傷薬くらいしかお出しできないんですけど……」
 これが、加世のもうひとつの仕事だった。薬売りが留守にしている間、患者の家の足りなくなった薬を補充したり、症状の推移に合わせ、薬売りの書き置きに従って新しく薬を出し直したりする。
とはいえまだまだ勉強を始めたばかりで、ご新規を診立てるのは無理だ。薬売りが何気なく下している診断を後々解説してもらって、必要な知識の膨大さに目眩がした。まったく、なんやかやと尊敬できる旦那様で困る。
顔色でいち早く人の不調に気づけるのは、女ならではだと褒めてくれはするが、師匠としての薬売りは結構厳しい。
 女は、楚々とした仕草で小首を傾げた。
「すみません、薬を買いに来たんじゃないんです。私、ご主人にお世話になった者で、蝶と申します。ご挨拶をと思ったんですが……」
 ……いや。
 いやいやいや。ちょっと待って。
 その言い方はマズい。なんかお妾さんが本妻に喧嘩売りに来たみたいに聞こえるから。ねぇ? いやまさかあはは。
 どうやら口下手、と加世は多少引きつった顔で心の中の観察記録に書き留める。確かに、人妻っぽいのに雰囲気は清楚で儚げで少女っぽくて、ある種男好きのしそうな人だけど!
たぶん薬売りさんの趣味とは違うから! 違っててくださいお願い!
「え……えぇと、お世話っていうと……」
 あ、と女は自らの言葉の不穏さに気づいたようで、口元に手をあてる。加世の顔に何を見たのか、くすくすと笑った。
「違うんです。モノノ怪を……祓って、いただいて」
 女はすいと遠くを見つめる。失われた何かを惜しむような声音に、加世は思わず同じ方角へ目を向けた。加世には見えない何か。痛みと祈りの残滓が、そこにある。
374煙羅煙羅 2:2008/05/06(火) 21:40:27 ID:5fNox0vh
「……それは、失礼しました。あの、お疲れでしょ? せっかく来ていただいたわけだし、よろしかったらお茶でも飲んでいかれませんか?」
 では、と女は笑った。
「お言葉に甘えまして」

   *

 客人のもてなしには多少珍しいかもしれないが、加世は板間の縁側にお蝶を通した。崖ぎわに建つ小さな家は、坪庭の向こうに渓谷を望む。すごい眺めですね、とお蝶が驚きの表情を浮かべた。
「あちらは東なんです。日の出なんて、ついつい拝んじゃう迫力ですよ」
 お天道さまに手を合わせるということを、ここに来て知った。思い出した、と言うべきか。町中にいると、どうしても世界がヒト中心になる。
 茶と漬け物を傍らに、お蝶は訥々とのっぺらぼうのことを語った。素直に痛ましい。加世とて坂井に奉公に出る前は、お転婆で落ち着きがないと、何度父母に溜息をつかれたか知れない。
なまじお蝶が優秀で、母の言葉に応えられてしまったのも、根を深くしただろう。
 かわいそうに、と思う。
 自らを傷つけ続けたお蝶も、ありのまま愛する喜びを知らないその母も。
「とても、とても辛かったけれど、でも、あの時は斬っていただいたことにとても感謝しました。でも、まだ、自分が丸ごと自分のものだってことに、なかなか慣れないんですけれど」
 苦笑気味に言うお蝶の肩に、加世は迷った挙句軽く手を置いた。
「……そう、言ってもらえると、あたしも嬉しいです。あの人、あんまり表には出さないし何考えてるか実際よくわかんないけど、イヤなもの一杯見て、疲れない人なんていないと思うから」
 お蝶はほっと息を吐いた。
「……不思議。人の手って、こんなに安心するんですね」
「あの人も、そう言います」
「愛していらっしゃるのね」
 う、と加世は言葉に詰まる。そう真っ正面から言われると何やら面映いのだが。
「……はい」
 なんとなくごまかしてはいけない気がして、こくんと頷く。
 羨ましい、と呟きながら、お蝶は胸元に手をやった。懐から煙管を取り出す。
 男持ち、と加世は首を傾げる。加世の疑問を予想していたのか、お蝶は笑った。
「母ひとり子ひとりで育ったものですから、疑問にも思わなかったんですけど。あの人が持っていたのは、女煙管だったんです。それで、きちんとあの人に合うものをと思って、初めて人のために見立てました。
武家の子女が持つには品がないとか、そういうこと、意識から消して。ただ、似合うようにと思って」
「きっと、喜んでくれますよ」
375煙羅煙羅 3:2008/05/06(火) 21:41:58 ID:5fNox0vh
「ええ、そう思います」
 火を入れますかと訊くと、お蝶は頷く。小さな造りの唇が吸い口に触れて、すぅと煙を吸った。
「母の想いは、今でも呪いのようです。ああ思ってはいけない、こう思ってはいけないと、いつの間にか私を縛っている。意識にものぼらないんです。そうする中には嫌な気持ちもあります。
でも、それも私のものだから。まずは、感じる練習をしなくちゃと思って」
「はい」
「口に出すといいみたい」
「はい」
「……ごめんなさいね」
 唐突な謝罪に加世が顔をあげると、ふぅっと吐き出された紫煙が目の前一杯に広がって思わず咽た。
「お蝶さん……!?」
 ごめんなさいねともう一度繰り返し、でも、と女は打って変わって瞳をぎらつかせた。
「憎らしい。勝手なことばかりして、人を知らない世界へ放り出して。苦しくて堪らないわ、辛くて堪らないわ。外の世界に出たところで、なんにも良いことなんかなかった!」
 突如ぶつけられた激しい怒りに、加世はおののく。ぱたぱたと煙を払う手が、妙に重い。空気が糊になってしまったようだ。
「毎晩かかさまが夢に出るのよ、小さい私をとても怒る。怖くて怖くて、なのにあの人はもう私を助けてくれない。あんたの男が捨てさせたからよ! ねぇ酷いじゃない、そそのかすだけそそのかして、
一人で放っぽりだして! 確かに私は幸せじゃなかった、でもとりあえず生活に困ることもなかったわ。不毛だろうがなんだろうが、好きな人だっていたのよ。あそこを飛び出したら誰が保証してくれるの?
責任もないのに言うだけの人はいいわよね! その上自分ばっかり可愛い奥さんがいて、幸せで。許せない!」
 一気に叫んで、お蝶は荒くなった呼吸をしばし整える。そこに鬼の面はないのに、ふふと笑った口元がたまらなく怖い。
 お蝶さん、と呼びかけようとして加世はまた咽る。煙に灼かれた喉が痛い。ちりちりとささくれて、声が出ない。
 お蝶がもう一度煙管に口をつける。ふぅっ、とまた紫煙を吐き出した。それはやわやわと煙そのままの動きで、だが大気に溶けず、やんわりと加世にまとわりつく。どうやってもふりほどけず、
樹液に絡め取られた虫のように、じれったすぎるほど緩慢な動きしかとれない。やがて煙は自在に形を変えながらゆっくりと天井へ昇り、加世の両手を頭上で拘束した。何これ、と加世は必死に暴れるが、
するすると肌を這った煙が真綿でできた縄のようにじわじわと四肢を絞めつける。
 足元に煙管を置いて、す、とお蝶が掲げたものに、加世は喉の奥で悲鳴をあげた。
 幅広の四角い刃。台所を預かる者には珍しくもない。
 菜包丁、だ。
「だいじょぉぶ。殺さない」
 能面のような顔がにこりと笑って、ぴたぴたと加世の頬を包丁の刃で撫でる。その冷たさに―――もちろん、冷たさばかりが原因ではないが―――加世の全身が粟だった。
376煙羅煙羅 4:2008/05/06(火) 21:43:02 ID:5fNox0vh
 いや、と声にならない声が呟く。
 何するの。
「こうするの……」
 襟を掴んで浮かせると、ざすっ、と音を立てて包丁が加世の着物と帯をまとめて切り裂いた。褐色の肌が空気に晒されて、丸い胸がこぼれる。
「やっ……いやぁ!」
「駄目、動かないで。怪我、しますよ」
 ひやりと冷たい金属の刃が、まろい体の線をなぞる。へぇ、と興味深そうな目線が一緒だった。
「さぞ、愛されたんでしょうね?」
 くすくすと笑って、お蝶は包丁を手放す。とん、と音を立てて、それは床に突き立った。お蝶はもう一度煙管を手に取る。深く吸い込み、恍惚とした表情でしばらく天井を見上げた。
空いた手が着物の前身ごろにかかり、脚のつけ根だろう辺りを撫で上げる。目線のやり場に困った。
 露骨に猥褻な仕草を繰り返し、お蝶は煙管を加えたまま加世へと視線を流す。ほつれ毛と赤く色づいた唇が毒婦のようで、肺から脳を冒す煙を撒き散らす。くすくすと笑いながら、細く白い指が加世の胸元を突いた。
「たいしたことはない、と……高を括ってる」
 疑問ですらなく断言されて、加世はわずかに自由になる範囲で懸命に首を振る。
「幸せなひと。いいわね、嫌な男に乱暴にされたことなんてないでしょう」
 お蝶がゆっくりと着物のあわせを開く。そこにあるものに、加世は愕然と目を見開いた。
「なん、で……」
「あの人を」
 愛しげに、お蝶の指が煙管を撫でる。
「せめて、この体にと思って」
 煙を吸い込むたびに、それは質量を増し高くそそりたつ。お蝶の、帯から上の乱れない姿勢と、下半身の大きくからげられた裾と、細い女の体で存在を主張するモノと。
どれもこれもが、あまりにもあるべき姿からかけ離れて禍々しい。
「素敵な思いつきでしょう? あなたとあの男の仲を引き裂くのが、私とあの人だなんて」
 うっとりと言うと、お蝶の手がかろうじて加世の腰に引っかかっていた着物の残骸を取り払った。結い上げた髪がちょんと傾ぐ。
「そう、そう。怖い思いをすると濡れるのよね。私も、これのせいでずいぶん淫売と罵られたものだけれど」
 ついと秘裂をなぞられて、加世の肢体が縮こまろうとする。
「や、だぁっ……やめて、お願い……」
 掠れた声の哀願に、お蝶が嗜虐的な笑みを浮かべる。
「……あの男たちの気持ちが、少しわかるような気もする……」
 ほら、と指差した先に視線をやって、加世はひっと息を呑んだ。うそ、と唇が動くと同時に、ばんっと激しい音を立てて部屋の扉がたわむ。
377煙羅煙羅 5:2008/05/06(火) 21:45:24 ID:5fNox0vh
 何か言っている、叫んでいる。それはたぶん加世の名前で、けれどどういう力の作用か扉の音と違いここに届かない。それを喜んでいいのか悲しんでいいのかわからない。
「やっ……いやぁ! 触らないで!」
 焦燥と怒りと絶望と。呼応するように表情を等しくする二人に、お蝶はもはや言葉を発することもなく加世の体に手をかけた。ぬるり、入り口を行き来して、一息に貫く。

「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」

 涙が飛び散って、間断なく悲鳴が響く。なんの愛撫もないまま、柔らかい女の体に深い傷を残して、ぐちぐちと陽根が加世の中を行き来し、突き上げる。皮肉にもその動きに合うように、どんどんと激しく木の扉が歪んで、けれど決して境界は壊れない。
全部を見られていると思うと、加世はもう顔をあげられなかった。見ないで、という叫びと、やめてという懇願が交互に喉を引き裂く。
「やだっ、やだぁっ! いやぁぁぁっ!」
 必死で体をよじろうとする加世に、お蝶が低く笑った。それはやがて堪えきれずに高い笑いになる。
 憎い、憎い。
 早くに死んだ父が憎い。おまえのせいで家は落ちぶれた。
 母は言うまでもなく憎い。憎くて憎くてたまらない。
 夫も、婚家も、もう助けてくれないあの人も。
 モノノ怪を斬るために私を利用するだけ利用したあの男も。
 私をひとりぽっちにしたままのあらゆる人間もこの世界も。
 誰も私を愛さない。

 ―――愛されない私が一番憎い!

「やめてっ、やだ、やだぁ……っ!」
 犯して、犯して、犯しつくして、一方的に行為を終えると、ぐったりとすすり泣く加世を前にお蝶は呟く。



「ああ、すっきりしたぁ……」



   おわり


後味悪い話ですまん。お蝶さんファンの人にもごめん。
378名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 15:07:01 ID:9fExYUwO
お蝶さんも加世も薬売りも好きだとこれは辛い。
337氏…もう少し詳しい注意書きが欲しかったです…。
379名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 15:52:19 ID:MBBOSF1o
>>378
確かに>>373-377は後味悪かったが、じゃどんな前説なら良い?って話だな
「鬼畜」とか「鬱」とか書けばよかったのかな?
自分は>>372の前説で十分、後は自己責任と思ったクチだけど
あと、スレ住人の振るネタに応えてくれる職人さんに文句言いたくない

と言う訳で337氏乙
380名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 17:10:47 ID:9fExYUwO
だって337氏だからさ、今までからしても、どっかには優しい部分があるだろうと
思って読んでしまったんだ。まさかこんな一片の救いもない話だなんて…。
驚いたのは自分だけじゃないと思うし、次からちょっと注意書き足してもらえたらと思っただけなんだけど。
自分も、レスが全然ついてない時点で予想するべきだったね。今度から思い込みは捨てるよ。
ごめんなさい。
381名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 17:21:58 ID:rIEk6o4X
「百合陵辱」と書いてあるにもかかわらず「でも」「だって」と御託並べて
なんの落ち度も無い337氏を責めるってどんだけー。注意書きに目を通してるんだろうが。
その上で最後まで読んだのは380自身なのに卑怯な責任転換で職人減らすような事すんな。
勝手に読んだのはてめえだろ。

ってことで337氏乙!!キャラを崩す事無く作り出されたシチュエーションには毎回唸らせてもらってるよ!
こんな事で貴重な職人スレ投下に支障がでないか心配だ…。
382名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 17:40:42 ID:MBBOSF1o
337氏は鬼畜陵辱も書くけど、薬加は純愛エロだからなあ…分からんでもないが
職人さんの創作意欲に水を注したくないよね


これだけじゃなんなので:

「他作品のキャラが絡みます(プラス作品のヒント)」

なんてのも前説に書いた方がいいよね?
ちょっと構想中のがあるんで、皆々様のご意見、お聞かせ願いたく候
383名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 19:57:31 ID:58d/3Nmk
乙です、337氏

>>378のようなショックは受けなかったけど
壮絶な内容にお蝶さんの生涯のことをつらつらと今日一日考えてしまった
心の奥底を突くような話はやはりさすが337氏。
私も>>372の前説でいいと思う、もし加えるとするなら「鬱」かな。

>>382
モノノ怪・怪ayakashi以外の作品が絡むなら前説に書いて欲しい
作品のヒントじゃなく、作品名(伏字あり)じゃだめなの?
384名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 21:53:50 ID:9fExYUwO
貴重な職人だからって無条件にチヤホヤしろってそっちの方がどんだけー?
337氏本人は今でも神だと思ってるよ。だからこそちょっと注意書き増やしてって
言っただけだろ。作者読みさせるだけの力がある人なんだからさ。
作品そのものを変えろって言った訳でもないのに、馴れ合いスレかよ。ウザス。
きっと薬売りの顔ばかり好きな女がホイホイされてるんだな。橋本さんも罪な人だ。
385名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 22:45:13 ID:58d/3Nmk
>>384は甘えさせてもらえなくてぐずってるんだな、よしよし。
珠生さんに頭なでてもらうといいよちんこ
386名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 01:02:40 ID:SnxlRHHv
337氏乙
これぞエロパロな代物でこれはこれで良かった。
387名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 04:09:55 ID:DbCneYob
欝や凌辱・鬼畜スキーとしては待ってました!
相変わらず良い文章で乙>>337
あーだこーだ煩いガキは801板にでも逝け
388337:2008/05/08(木) 22:43:19 ID:DI76V9hu
これでどうだー!
……もちついてくださいお願い。なんか火種になって悪かった。


煙羅煙羅、続き。ハッピーエンドではないかもしれないが鬱は回避したつもり。
鬱、鬼畜スキーな方は>>377までで終わっといてくれw
明確なエロはない。登場人物はお蝶、薬加、源慧、菖源+アルファ。
全5レス。
スピード重視のため推敲甘いけど見逃してくださいw
389煙羅煙羅 6:2008/05/08(木) 22:44:43 ID:DI76V9hu
 良くも悪くも、人は状況に慣れるものだと知った。
 加世は呆と暗い天井を見上げる。煙が逃げるのを嫌ったお蝶が、雨戸を立てきってしまって空気が淀んでいる。視界が始終薄白く霞みがかって、身じろげば水中を歩くよりなお抵抗が強い。
完全に拘束されずとも、加世の生活はひどく制限された。逃げ出せない。
 男の影を、嘘よ、と笑ってお蝶がかき消したときには本気で殺意を覚えた。この煙が、加世の心を映しただけだと。だから、あなたと同じ表情(かお)をしていたでしょうと言われても、鏡もなくて自分の顔などわかるはずもない。見たくもない。
 同時に、深く安堵した。
 薬売りは、まだこれを知らない。今も元気で、どこかを旅している……と思う。
 衝撃、痛み、恐怖、嫌悪。
 あらゆる負の感情に泣けるだけ泣いた後、涙の底から浮かんできたのは、守らなくては、という思いだった。
 第一には、自分の命を。
 殺さないとお蝶は言った。言ったけれど、いつ気が変わるかわからない。菜包丁は変わらずお蝶のそばにある。煙管と同様、何か思い入れがあるようで、片時も離そうとしなかった。刃を向けられたときのことを思い出すと、膝が震える。
体が竦む。それでも、負けられない。
 こんなことになって、薬売りにどんな顔をして会えばいいのかわからないけれど。
 もしも、この上加世が殺されてしまったら、薬売りはどれほど悲しむだろう。
 大事に思われていることを知っている。あまり顔には出さないけれど、実は情が激しい人であることも。だからこそ、冷たくなった自分を前にする薬売りを想像するだけで、心が潰れそうになる。そんな思い、絶対させない。
 守らなくては、あの人を。
 愛しいものを。
 珠生の気持ちが今ならわかる。あの状況下にあって、小さく温かい命が、どれほど愛しかっただろう。
 人によっては―――そう、たとえばさとなら。
 自分より弱い存在ができて、憎しみの限りをぶつけるかもしれない。でもそれで、どれほどの気が晴れる。命ひとつを犠牲にして、ほんの一時溜飲が下がった気がしても、そんなものなんの慰めにもならない。
 子猫を愛して、救われたのは、支えてもらったのは自分の方だと、珠生なら言うだろう。彼女の真だ。その命がただ生きていてくれることに尽きせぬ感謝を捧げて、幸福と安寧を得た。
 ―――ありがとう。
 加世は瞼の裏に描いた人へ声もなく告げる。
 あなたの生き様が、あたしを導いてくれます。
 あたしの愛しい人が、あたしを支えてくれます。
 負けない、負けない。
 だから、こんな体になったあたしを、それでも、どうか。
 あの人がぎゅっと、抱きしめてくれますように。

390煙羅煙羅 7:2008/05/08(木) 22:46:21 ID:DI76V9hu
 常人にはどうしようもできない煙が、札で開け放たれた風の通り道に吹き払われる。金色の姿に変わってもいないのに聞く怒号、鈍い衝撃音とともに壁に叩きつけられる女の体、荒れ狂う背は予想していた。
煙から解放されても強ばって動かない体を叱咤し、必死でしがみつく。

 やめて、お願い。
 それ以上したら死んじゃう。


   *


 目を開けると、殴り飛ばされた頬がひりひりと痛んだ。頬だけではない、体のあちらこちらが、わずかな動きに重く鋭く痛む。
 懐かしくはないが、覚えのある痛みだ。まがりなりにも夫の立場にあった男は、時折派手に荒れると酒臭い息を吐き散らしながらお蝶に殴る蹴るの暴行を加えた。義妹がけたけたと笑いながらそれを眺め、死んじゃうわよゥ、と
形ばかりは止める言葉で、男を煽り立てたのも覚えている。
 ああ、働かなくては。誰も私を守ってくれない。
 歯を食いしばって上半身を起こそうとすると、すっかり生ぬるくなった濡れ手拭いがぼたりと落ちた。同時に、まだ起きてはいけません!と、なよなよしい男の声が慌てたように言う。
すらりと襖の閉まる音、視線をめぐらせれば声の印象そのままの、やたらに線の細い僧が水を張った盥(たらい)を置いてお蝶の枕元に座った。
 よかった、と年若い僧は女形を思わせる顔で笑い、濡れ手拭いを取り上げると盥に浸した。お蝶を再度寝かせると、絞った手拭いを頬の痛む箇所に当ててくれる。
 ―――冷たい。
 気持ちいいとは、思いたくない。
 ここは、と掠れた声が問うた。
「光明寺です。私はここの僧で、菖源と申します」
「お寺……」
「はい」
 何があったのかに考えを巡らすよりも先に、ぼろぼろと涙がこぼれた。ぎしぎしと痛む両手を持ち上げて顔を覆う。
「……どうして生きてるの……!」
 菖源は慌てた風もなく手拭いを離すと、濡れた手を乾いた布で拭った。
「死にたかったのですか」
 もちろん、そうだ。
 いや違う。
「死ななくちゃいけないの。この世がそうさせるのよ、誰もかれも、何もかもが私をいらないっていうのに、どうして生き延びたりするの! いらないなら殺してよぉぉっ」
「無用のものなど」
 菖源は静かな声を出した。
「この世にはございません」
391煙羅煙羅 8:2008/05/08(木) 22:47:23 ID:DI76V9hu
「御託並べてんじゃないわよ宗教屋!」
 べちりと濡れ手拭いが飛ぶ。菖源は顔色も変えずにそれを受けた。ずるりと滑るそれを取り上げ、また丁寧に盥に浸す。立ち上がり、廊下に顔だけ出すと、人を呼び誰それに目を覚ましたと伝えてくれと言う。お蝶のそばを離れないのは、
「監視ですか」
 唇の端を歪めると、菖源は眉を下げた。
「あの薬売り殿と奥方には、私の師が大恩を受けたのです。師が受けた恩は私の恩です。そのお二方に頼まれた以上、あなたの身はお守りせねばなりません」
 はは、とお蝶は調子の外れた笑いをあげる。
「偽善者が!」
 菖源は悲しそうな顔をしたが、何も言わない。しばらくすると襖の向こうからぎゃあぎゃあと赤子の鳴く声がした。おおよしよし、と抱いている僧があやしているが、一向に泣き止まない。
「源慧様」
 菖源が襖を開けて頭を下げる。赤子の声がいっそう大きくなった。耳障りな響きに、お蝶は思わず耳を覆う。赤子を抱く小躯の老僧が、ほとほと困り果てたような顔をした。
「やれ、元気なことだ」
「源慧様、私が」
「いや、いや。構わんよ」
 おぼつかない手つきで、源慧はお蝶に赤子を差し出した。思わぬことに、お蝶は身を硬くする。実に、うるさい。
「抱いてみなされ」
 怪我人に向かって、と睨みつけるが、老僧の大きな目は動じない。しぶしぶ半身を起こし、泣き喚き暴れる体を受け取った。
 いやいやをするように伸び縮みする小さな足は、見目に反して力強くお蝶を蹴り飛ばした。痛いが、放り出すのはためらわれた。固く握り締められた手、皺くちゃに顔をゆがめて赤子は泣き、大きく開いた口にはまだ歯がない。
小さいが重い。高い体温。
 琴、茶、花、あるいは炊事洗濯ならなんとかなるが、赤子の世話は経験がない。夫との間に子は授からなかった。源慧以上におぼつかない手つきで抱きかかえると、菖源が横から、このように、と抱き直させた。
左腕の肘内側に頭を乗せると、自然と赤子の腕が脇の下を通る。見よう見まねで赤子の体の下に回した右手で、ぽん、ぽん、と背を叩くと、次第に泣き止む。涙に濡れた真っ黒な瞳が、きょとんとお蝶を見上げた。
「おお、菖源。慣れておるな」
「仏門に入る前は、よく妹弟の面倒をみておりましたので」
 そうかそうかと源慧は満足げに頷くと、お蝶のそばに腰を下ろそうとする。膝を痛めているのか、菖源が肩を貸してゆっくりと座った。
「源慧と申す」
「……お蝶です」
「事情は、簡単に聞いておりますがの」
「罪人です。何故番所に突き出さないのですか」
「さて。それは私の判断するところではない」
392煙羅煙羅 9:2008/05/08(木) 22:48:18 ID:DI76V9hu
「犯罪を見過ごす、と」
「寺は罪人を裁くところではない。……弥陀の本願は、善悪を超えて一切衆生を救うことにある」
「そうですか」
 そっけなく言うと、お蝶は源慧から視線を外す。となると、必然的に赤子を見つめることになった。こちらを見上げる黒い目が何かを思い起こさせて、顔をしかめる。と、赤子もふにゃと顔を崩した。
また泣かれてはかなわないと、慌ててまた背を叩く。
「どこか、行く当てはおありかの」
「……特には」
「そうか。まぁ、どちらにせよその体ではしばらく養生が必要だろう。ゆっくりなされよ」
「……でも、お金が」
 ああ、と源慧は頷く。
「その子は、今朝門前に捨てられておりましての」
「そうですか」
「引き取り手は探すが、しばらく寺で面倒を見てやらねばならん。それを手伝ってもらえればよい」
 言葉は柔和だったが、それは事実上の命令のようだった。お蝶に断る術はない。
 はい、と頷くしかできなかった。


   *


 お蝶はぐったりと布団に横たわった。
 ……きつい。
 赤子がこんなにも手のかかるものだとは思わなかった。
 菖源が手伝ってくれはするが、彼も勤めがあるのでお蝶と赤子ばかりにかまっていられない。
 今も、ようやく泣き止んで寝入ったところだ。先ほどまでの荒れようが嘘のように、すぅすぅと寝息を立てて、のんきにふにゃふにゃ笑ったりする。
 ……寝ていれば、可愛いのに。
 けたたましい泣き声を聞くと、肩がはねる。あまり長いこと泣かれると苛立って仕方ない。まったく言うことを聞いてくれない赤子を怒鳴りたくなって、そんな自分はやはり人間として欠陥があるのだと思っていたら、菖源が否定した。
 赤子の泣き声は、不快に感じるようにできているのですよ、と相変わらずなよなよと笑い、お蝶よりはるかに上手に赤子をあやす。
 人間は嫌いなものの方が意識に引っかかりやすい。赤子は命のすべてを大人に預けているから、何かあったときに気づいてもらえなくては困る、不快に感じるのはあなたが人として正常な証だと言われた。
 言われて泣いた。何故か泣けて泣けて仕方なかった。
393煙羅煙羅 10:2008/05/08(木) 22:48:59 ID:DI76V9hu
 面倒はみるが乳は出ないので、菖源が一日三度、赤子を抱いて村へ降りる。それ以外で腹を空かせて泣くと、温めた山羊の乳を与えた。それでもなんとか、赤子はふくふくした頬のまま育っている。
今ではお蝶を母と認識したのか、姿が見えなくなると途端に泣く。
 ……自分は、どんな赤子だったのだろう。
 聞いたことがない、と気づいた。
 母との会話は今と将来(さき)のことばかりだった。過去の話もあるにはあったが、それはお蝶のことではなかった。梅澤の家がどれほど由緒ある名門か、まだ家が華やかだった頃の記憶、はてはかつての母がどんなに優秀な子供であったか。
 母の目に、お蝶は映っていなかった―――と思う。
 しかし、それでは赤子は育たない。誰かが手を貸してやらなくては生きていけない、頼りない命であることを、今のお蝶はもう知っている。
 誰が育ててくれたのだろう。乳母がいたのか。それとも―――母が?

 疑問を抱えながらも、赤子の泣き声に追いまくられて日々は過ぎる。赤子はちょくちょく熱を出し、その度寝ずの看病で目の下に隈ができた。
 それでも、赤子がきゃあきゃあと笑うようになるとお蝶も笑えた。抱いて歩くと、修行中の僧が声をかけてくれる。知らない人間が近づくと、赤子はぎゅうとお蝶にしがみつく。大きくなったなと頭を撫でられ、笑う姿を見ると、なんだか誇らしい気がした。
 ―――やがて。
「お蝶殿」
「源慧様」
 赤子を抱いたままお蝶は頭を下げる。膝の調子は少しずつ悪くなっているようで、最近では杖を使っていた。
 人は誰しも老いるものですからの、と言われて、ふと、母のことを思った。
 生きているのか、死んでいるのかわからない。だが、生きていれば今幾つだ。皺や白髪の増えた母の姿を、うまく思い浮かべることができない。できないけれど……。
「何か御用ですか」
 うん、と源慧は頷く。
「長いこと面倒をかけたの。その子を引き取ろうという夫婦が見つかった」
「―――え」
 きゅうと抱いた腕に力が篭る。明日には引き取りに来る、と言われて戸惑った。
 見下ろすと赤子は機嫌がいいのかきゃいきゃいと笑う。
 笑う顔がふいに歪んだ。もう知っている。赤子はお蝶の表情を映す。真似しているのだ。そこへぽろぽろと涙が落ちる。赤子もむずかり始めた。
 何故涙が出るのか―――まだ、お蝶にはわからなかった。わからない、でも。
 明日、赤子を見送った後、旅に出ようと思った。
 世話になった寺の皆に―――とりわけ菖源に頭を下げて。
 薬売りと加世へ、謝罪の旅を。
 お蝶があれをなしてから、彼らはあの家を引き払ったらしい。今はどこにいるかもわからない。会ったところで、罵倒されるのがオチだろう。
 それでも、謝らなくてはならないと―――謝りたいと、思った。
 そう告げると、源慧と菖源は笑ってくれた。
 たぶん、もう少し。あと少しで。
 何かが、わかるような気がする。
 翌日は赤子との別れを悲しむように、しとしとと細い雨が降っていた。


   おわり
394名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 05:37:29 ID:VZg2KZ8z
337氏 GJ!GJ!!
加世と薬売りのその後が気がかりだが
お蝶さんに関してはホッとした。
(加世が止めるまでお蝶さんを袋叩きにしてたんだろうか薬売りは…)
甘いかもしれないけど救いがあっていいね。
菖源がいい味出しすぎwwwwww
395名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 05:51:07 ID:T/6u8Pez
こんなときこそサロンパス前貼りで加世を守るべきだろう。
と、サロンパスネタを蒸し返してみる。
396名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 07:19:40 ID:xpdwwPCJ
>>395
いや、そのりくつはおかしい。(AA略

相手がモノノ怪だから、ノーマルのサロンパスだと、短時間しか耐えられない。
ゴールデンサロンパスは形・真・理がそろってるからこそのあの高性能だろうし、不特定の相手には使えなさそう。
397名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 13:56:46 ID:kgLD9Fdx
これでこそ337氏!GJ!おかげで気分悪かったのがよくなりました。
ちゃんとGJがつくSSになって、怪我の功名ですかね。ちゃんと昇華してくれて、
さすが他人に目くじら立てて叩くしか能のない奴らとは違う。
これからもエロパロにとどまらない良作品を書いてください。応援してます。
398名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 15:37:29 ID:VZg2KZ8z
読後感良かったのに>>397のおかげでゲンナリ。
言葉を選べないんだったら半年ROMってくれない?
1行目と4行目は同意できるけど、2・3行目がお子様すぎる。
399名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 18:16:21 ID:/A1H2LFd
ぐる、ぐる、ぐる、ぐる…、ですよ
400名無しさん@ピンキー:2008/05/10(土) 04:04:14 ID:yek0sQrg
>>397=378
お前・・・どんだけ幼稚なんだ

ちゃんとGJがつくSSになって、怪我の功名ですかね

何この超絶上から目線w基本的には職人さんは書きたいものを書き、読み手は
それが自分には合わなかったらスルーしてるんだよ。前回投下後に337氏を叩いてたのは
お前だけで、他の人はお前を嗜めていただけなのにこれか↓
他人に目くじら立てて叩くしか能のない奴らとは違う
それお前じゃねーかwwww自己紹介乙w
自分の言いたい事だけ書き込むのが感想じゃねぇ!それが解らないなら黙ってろ!!
401名無しさん@ピンキー:2008/05/10(土) 23:28:17 ID:ofo0txKH
菖源の魅力に目覚めた。
エロも好きだがプラトニックも大好物の自分、仮親の菖源とお蝶の組み合わせに禿萌えた。
おまえらそのまま夫婦になっちゃえYO! でも性愛が絡まないからいいのがジレンマ!w

天秤萌えといい、337氏は萌えの開拓者だな……。
402名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 04:38:58 ID:y++L9Boi
今まで菖源はとくに意識したことがなかったが、これはすげえっ!
職人GJです!
403名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 00:59:32 ID:tBsSqlUC
最近スレ住人がとっても早起きなのか昼夜逆転してるのか悩む。
自分の知らないどこかで秘密の早朝特別メニュー(エロ的な意味で)でも
行われているのかハァハァ。

朝エチーもまた味があるよな?
404名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 17:59:35 ID:Vz8PvsU3
退魔で疲れ切って布団に倒れ込む薬売り
翌朝やっと眼が覚めると

朝で元気な股間の剣に加世ちゃん馬乗り
405名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 22:21:27 ID:tBsSqlUC
「……加世さん?」
「あっ!? あ、あはは、……起きちゃった?」
「これは」
「――や、あの、ち、違うの! だって目が覚めたら薬売りさんが着替えもしないで
寝てるから、帯くらいほどいて布団掛けてあげようと思って、そしたら、その、朝だから」
「……だから?」
「ええとその……うっかり、うっかり。なんちゃって。えへ」
「…………」


こうですかわかりry
406名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 03:20:54 ID:De7YomZ3
>>405
永久歯が抜け落ちるほど萌えました
加世可愛いすぐるよ加世
やっぱりこのスレにはネ申がいらっさるなぁー凄いです
407404:2008/05/13(火) 09:38:07 ID:Kz5W6iKf
何というエロカワ、明るいエチーに仕上げてくれたんだ。
GJでけしからん。

罰として1日駅弁してなさい!
408名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 16:42:31 ID:MsxGGd29
>罰として1日駅弁

そんで腰をぎっくりやって、うんうん唸りながら寝てる横で、
「若くないのにムチャするから……」
「わきまえようよ、もう少しさぁ……」
「はいはーい。ツボ刺激隊せいれーつ!」
って天秤ズにひそひそされるんだな?w
409名無しさん@ピンキー:2008/05/13(火) 23:03:30 ID:TALDUtRk
今こそサロンパス(湿布的な意味で)の出番だ!www
なんだかんだ言いながらツボ押し治療してあげる天秤たんカワユス。
410名無しさん@ピンキー:2008/05/14(水) 22:48:53 ID:ql9U+jhj
薬売りさんを「若くない」っていう天秤はょぅι゙ょもしくはショタ?
薬売りさんロリコンフラグwww
411名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 22:43:20 ID:ViAKsNGF
薬売りがもし不老不死的な存在だったら、加世相手はもちろんのこと、
座敷の女将が相手だとしてもロリコンになるんじゃないだろうか。
412337:2008/05/16(金) 18:45:12 ID:4jxJR275
保管庫更新しました。
自分の含め、現時点までの全作品収蔵したはず。
抜け指摘・小ネタ収蔵依頼等あったらあちらの掲示板までよろしくお願いします。


>>395
遅レスだけど、『だから』薬売りがいないときにサロンパス貼るようになったと
考えてもイケる、と思った。この理由じゃ加世も逆らえまいw
413名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 15:27:02 ID:lKrMmOit
age
414名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 10:52:13 ID:rEKhGKh1
age
415名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 14:31:35 ID:0uxL1dNe
↑の朝エッチねたに萌えたので描いてみました。
台詞は405氏のをまんまお借りしましたm(__)m

http://up.mugitya.com/img/Lv.1_up60203.jpg_fj5vf1INJnhGrDpDOU91/Lv.1_up60203.jpg

パスは「hige」です
416名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 14:57:01 ID:rxfF7Zq+
加世×ハイパーの話も有ったし、加世がこういうキャラのイメージが付いてしまうwww
417名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 20:45:33 ID:GDH8Afwy
UMEEEEEEE! SUGEEEEEEE!!
薬売り完全に剥かれてるwww 起きろよwww
寝てる薬売りを「もぉー、しょーがないなー」って顔で見てる加世がカワユス。
418名無しさん@ピンキー:2008/05/23(金) 12:58:36 ID:y59dkTWr
>>415
今見たら見れなかった。
見たかったな。。。
419名無しさん@ピンキー:2008/05/24(土) 21:13:33 ID:RoNPgMdF
>>415
再うp!
420名無しさん@ピンキー:2008/05/24(土) 23:35:22 ID:GVpPaPO3
すみません前回うpの時にいろいろミスったりしたので
直したり加筆してきました。
暖かい米 再うpコールありがとうございますm(__)m

パスは『ketsuago』です。
421名無しさん@ピンキー:2008/05/24(土) 23:36:37 ID:GVpPaPO3
しまった!アド忘れてました〜〜〜〜〜
うっかり うっかり
http://up.mugitya.com/img/Lv.1_up60393.jpg.html
422415:2008/05/25(日) 18:17:18 ID:lEhtZaZe
↑追記 薬×加エロ ギャグ風味で薬売りがひん剥かれてます(注意)
423名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 19:03:21 ID:NVOAZsy5
何度行っても503   orz
424415:2008/05/25(日) 20:06:47 ID:lEhtZaZe
>>423 
もしかして「ketuago」で打ってませんか?「ketsuago」ですぜ。
425名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 23:05:38 ID:t1V657A1
>>415さん
再うpありがとう!
ええもん見させて頂きました。
眼福眼福〜。
426名無しさん@ピンキー:2008/05/26(月) 22:25:40 ID:ixJtrIY2
みれた。エロ萌えた。ありがとう
427名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 02:17:19 ID:hh/WPQmc
ヴィジュアルブックのネタで祭りは始まらんのかのう〜
428名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 08:33:00 ID:LIfy0gvU
ポスターブックののっぺら大人気ワロタw
祭するには女人率が低くてなぁ……。
429名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 16:49:02 ID:hh/WPQmc
本当に女人率低いですよね・・・
林田氏→鵺・半井はんらは頭蓋骨
荒川氏→怪・化猫+座敷童子
坂本氏→のっぺら
蜷川氏→紅葉で新・化猫
岡崎氏→ピアス&指輪で新・化猫
枢氏→のっぺら
田島氏→旧・化猫

ということで橋本氏が海坊主と考えて心眼で加世ちゃんが見えるよう
修行してこようかと・・・
430名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 17:48:26 ID:hh/WPQmc
蜷川氏→+座敷童子でした
ややこがおりました。
431名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 23:52:16 ID:eMDfhYDM
必死で考えたけど、せいぜい加世が「薬売りさんがいっぱい!」って喜んで、
今日はどれを枕の下に敷こうか悩んでる図くらいしか浮かばなかった。
そんで、坂本氏イラに、正座膝詰めで説教。
「女の人にこんな格好させちゃダメでしょう! かわいそうじゃないですか!」
え、俺のせいなの?と思いながら、すみません言ってしまう薬売り。
432名無しさん@ピンキー:2008/06/01(日) 01:00:34 ID:DRCfUj2x
>加世ちゃんが枕の下に敷こうか悩んでる図
( ゚∀゚)・∵. グハッ!!萌えた!

坂本氏のイラは胸元開きすぎですよね、なので
「加世さんもこれくらい開けて・・・」とかいらんことして
また説教が長くなればいいと思う○(#゚Д゚)=(  #)≡○)Д`)・∴'.
433名無しさん@ピンキー:2008/06/04(水) 00:07:04 ID:Pv8nmE9t
妖怪図鑑をめくってて思ったけど、そのものずばりでエロいのっていないもんだな。
とり憑かれると色に狂うとか、そういうの。
西洋じゃ7つの大罪に色欲がエントリーされてるのに。価値観の違いか。
434名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 15:53:02 ID:3DHukvJl
今日は雨でしかも上空に寒気があるせいか寒いな〜とか考えてたら

物の怪の気配もなしだわ雨で仕事に行くのもおっくう。
しかも加世ちゃんが近くに居て
「今日は肌寒いですね。」とか言ってるもんだから
「寒いですか?」などと言いながら布団に引きずり込む薬売り
加世ちゃんが抵抗するも
しれっと「すぐに暖かくなりますよ。」とかなんとかかんとか無理矢理してしまう。


と言う電波を受信した。

受信しただけで書けない自分が悔しい。
435名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 19:00:11 ID:yX6fu/Pv
>>434の電波を天秤ズが阻止するようです。


「雨で寒いと人恋しくなるよねー」
「寒いかどうかはともかく、そうだねー」
「人間の感覚ときたら、同じ温度でもあったかいって言ったり寒いって言ったり、
ややこしいんだよ」
「大丈夫、今日は寒いんだよ。加世ちゃんがそう言ってた」
「そっかじゃあ寒いんだ」

「大変だぁー!」

「なんだ」「どうした」
「この辺もう梅雨なんだって! これから毎日雨だよ!」
「ええっ、梅雨!?」
「そう梅雨!」
「てことは―――」


「「「「「 錆 び る !!」」」」」


「ぎゃー! オイルオイル!」
「乾いた布! 研磨剤!」
「夏に向けて最後のお手入れ!」
「素肌自慢のきらめきボディを手に入れろ!」
「加世ちゃーん! 磨いて! 拭いてー!」
「加世ちゃーん!」
436名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 19:19:36 ID:EQrrqzkR
天秤ズ…無機物なのになんという可愛らしさ…
どんなにシャラシャラ美しく鳴っていても内容がコレなんだろ。
一つや二つ持ち帰っても仕方あるまい。
437名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 20:26:18 ID:OEBfn6nn
だが薬箱はたぶん木製だ。
湿気で膨らんで、引き出しが重くなるかもしれん。
いつもどおり飛び出そうとして引き出しが開かず、
「あれ?」「あれぇ?」
ってなってたらなおよしだ(*´∀`)b
438名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 20:31:41 ID:W/3QD7qf
なんというナイスな天秤ズ
しかしどいつもこいつもご主人は無視ですかいwww
やっぱり加世ちゃんがいないと物事は上手くいかないと
これでハッキリしました。
職人GJ!
439名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 00:23:48 ID:X4fPHufq
一番好きなカップリングが天秤×加世の自分は、エロパロスレの趣旨から外れていそうだ。
440名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 21:55:57 ID:UvPeWGzk
大丈夫、自分はこのスレで天秤×加世にすっころんだから
441名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 23:07:41 ID:ocKemVzh
たまにでいいから、退魔の剣のことも思い出してあげてください。
442名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 23:26:32 ID:L9VXlq2A
サロンパス(お札)加世のことも思い出してください。
443名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 00:21:23 ID:LRGvLtFg
そういえば、加世に反抗する天秤ズ(お札、退魔)ってのは見たことない気がする。
シチュも思い浮かばないがw
ある日突然天秤にそっぽ向かれて、焦る加世とか可愛いと思うんだ。
444名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 00:57:10 ID:IDgfVPCb
愛をっくだーさーい♪
うぉうおぅ
愛をっくだーさーい♪
445名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 00:58:35 ID:IDgfVPCb
すみません誤爆しました。申し訳ないです。
446名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 00:59:43 ID:Ef+1WNTx
噴いた
447名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 13:18:02 ID:bSfadOg2
職人が降臨するまでのツナギとしてつまんでてくだせぇ

薬×加世 バック攻め そんなにエロくないよ
パスはメ欄に
http://up.mugitya.com/img/Lv.1_up62052.jpg.html

448名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 13:33:40 ID:t7ZxJlHI
>>447
ありがたくつまみますた。


薬売りの筋の浮いた手のエロさは異常。
449名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 00:49:45 ID:5uDU6OH9
>>447

 背後から薬売りが加世の腕を掴み、手綱のように引き絞った。
「やっ、何す―――ひゃあああんっ!」
 じゃじゃ馬馴らしとばかりに強く腰を叩きつけられ、ぐりと体の奥を抉られて、加世は抗いかけた口で高くいななく。柔らかな二の腕に、男の指が食い込んでいた。
 並足から駆け足へ、奔放な牝馬(ひんば)は乗り手から逃れようと盛んに首を振る。目の前に閃光が散り、快楽につぅと涙が零れるが、乗りこなそうとする男の手にも骨ばった筋が浮く。荒い呼吸と微かな呻きが矯声の合間を縫って、次第に一体となると疾走を始める。
「……いいこだ」
「あっ、ああんっ! ……あっ、ふ、はぁっ! あっ、ああっ!」
 互いが互いを導き連れて、駆け上る、歓楽の極み。加世は何度も薬売りを呼ぶとその背を弓なりに反らせた。ぐいと手綱を引いた男も、愛しい牝馬の名を呼んで果てを知る。

 共に行く、はるか世界の果てまでも。


携帯からなんで改行おかしかったらごめん。
450名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 13:51:21 ID:Aw0ELL1X
うぽ!これはいい薬×加

読んで→観て 読んで→観て 読んで→観てループ
お二方ともGJ!
エロ萌えました。
451名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 19:11:19 ID:ROaM5Elv
すみません…お邪魔します。こんな良スレがあったとは…ww
薬×加世、薬×天秤なので、鼻血いっぱいで倉庫見させていただき
ました。ご ち そ う さ ま で す G J !>>職人の皆様
452名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 21:52:25 ID:A170FoS4
>>447

おつまみ画見れないんで再うp希望します
453447:2008/06/12(木) 22:06:58 ID:Aw0ELL1X
>>452
まだ下げてないですよ〜混んでるのかな?

>>449
すごい素敵なSSをつけていただいて鼻血ブーです
すすすすげぇ このまま死んでもいいかもしれん!
454名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 03:59:40 ID:sxGa0uSG
敦盛登場前の薬売りとお蝶さんのやりとりはエロすぎる
あえて2人を描かなかったスタッフGJ
あのとき卑猥な何かが行われ、あちゅもり涙目であったと信じている
455名無しさん@ピンキー:2008/06/13(金) 11:42:27 ID:qvx3hxb8
佐々木某(夫)と敦盛と薬売りか。
本人にそのつもりはなくとも、魔性の女だなお蝶さんw
456名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 01:31:24 ID:fFZr1muK
江戸時代の布団は、シーツをつけずに直寝だったらしいことを知った。
男のも女のも、よっぽど量が多いとか多汗じゃなきゃセーフだろうが、
潮吹きはどうしてたんだろう。あ、だから服着てしてたのか?

薬売りが攻め過ぎて怒られてたらいいと、ちょっと思った。

「もぉぉっ、お布団濡れちゃったじゃないですかぁ! 薬売りさんのせいですよ! バカぁ!」
「なら……ほら、裏返せば、いいじゃあないですか」
「なに『良案! 解決!』みたいな顔してんですか!? そこで『え、ダメなの?』って
顔しない! 反省の色ナシ!? ってゆーかなんで嬉しそう!?」
「いやぁ……あんたは心底俺を理解してくれてるんだなと……。愛してますよ、奥さん」
「―――ご……っ、誤魔化そうったって、そうはいかないんだからー!」

単なるバカップルです本当に(ry
457名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 03:18:15 ID:6Qe6+xDJ
>>456

片一方の布団が汚れても、もう一方の布団で一緒に寝ればいいYO!
んで朝になったら薬売りが布団洗わされる。
ニヤニヤしながら干しとけ〜

んで、井戸端で他のおかみさんらに”あそこは昨夜も燃え放題だったな”とか
思われてればいい。
458名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 23:16:30 ID:HRC9wUvh
>>456
今週色んな事件があったが癒された・・・GJ
459名無しさん@ピンキー:2008/06/16(月) 13:15:38 ID:A0OB0v/3
>>456
バカップル上等というか是非お願いし(ry)
燃え放題ワロスw
460名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 23:33:02 ID:FvTYUdlp
>>456
バカップルな薬×加はココロのビタミンです、
読むだけで顔がテカテカになるよ+(0゚・∀・) + テカテカ +
461名無しさん@ピンキー:2008/06/20(金) 01:27:56 ID:aLVSa43b
ごく最近アヌメ見てこのスレ発見したときの俺の喜びようったらねーよ!
加世ちゃんかわいいよ加世ちゃん。ニヤニヤしながら保管庫読ませていただいた。
つうかこのスレのおかげで薬加に開眼。ありがとう職人さんたち…!GJ
462名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 01:05:56 ID:5UU1TePr
薬売り≠ハイパーで、薬売りとハイパーと加世の3P。
脈絡もストーリーもなくエロのみです。



 よく似た男二人の間に、細い娘の体が挟まれていた。黒と金の男は娘の背後から膝裏に手を入れ、むっちりとした太腿を大きく広げるように抱えあげて、向かいあう白と赤の男が不安定な上体を抱き止めている。
 大きく揺すりあげられる度、息も絶え絶えに娘は鳴き、口元からはよだれが、黒目がちな瞳からは涙が零れた。空に浮いた体は、逃れようもなく前と後ろに深く怒張を呑み込む。押し入った衝撃でこぷりと泡立った体液が、娘の尻の丸みに沿って伝うと、ぽたぽたと地に落ちた。
「やぁっ、……も、だめぇっ、死んじゃうぅ……っ」
 まだだ、と凄みのある低い声が左の耳に宣告すると、加世さん、と幾分柔らかい声が右に囁いて耳の穴を舌で犯し、ふぅと息を吹きかける。それでまた娘の腰骨は震え、きゅうと男たちを締め上げた。どっと愛液が溢れる。
 死んじゃうよぅ、と涙ながらに繰り返す娘の中で、薄膜を隔てて硬いものが擦れ合い、ぬるりと滑って、予期せぬ場所を抉る。ひゃあと娘がまた高く鳴いて、ぴんと伸びた爪先が空を蹴った。
463名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 01:09:43 ID:5UU1TePr
「やぁっ、……も、だめぇっ、死んじゃうぅ……っ」
 まだだ、と凄みのある低い声が左の耳に宣告すると、加世さん、と幾分柔らかい声が右に囁いて耳の穴を舌で犯し、ふぅと息を吹きかける。それでまた娘の腰骨は震え、きゅうと男たちを締め上げた。どっと愛液が溢れる。
 死んじゃうよぅ、と涙ながらに繰り返す娘の中で、薄膜を隔てて硬いものが擦れ合い、ぬるりと滑って、予期せぬ場所を抉る。ひゃあと娘がまた高く鳴いて、ぴんと伸びた爪先が空を蹴った。
「やだ、やだぁ……っ! 助けて、お願い、イク、死んじゃう……っ!」
 目の前の白い男に縋りつき胸のふくらみを押しつけ、反動で突き出された腰は揺るがぬ黒い男を根元までくわえてくねる。まだ余裕だなと黒い男が呟き、ほどほどにしろと白い男は苦笑する。
 ―――人は脆い。
 ―――お前のように、か。
 淡い笑みは返答としては曖昧だ。まぁいいと黒い男は最果てに向けて娘を追い詰めにかかった。
464名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 01:20:38 ID:5UU1TePr
 我らが妻は淫乱だ、と耳元で揶揄してやると、そこがまたいいんですけどねと片割れも合わせる。ついでに軽く娘の体を持ち上げて、腰の動きに合わせ落とした。囁きできつくなった内部を、男らのものが容赦なく割り広げる。
 叫んだ娘の声は、もはや言葉になっていなかった。片や腹の上で、片や腹の奥で脳髄が弾けるような快楽を味わい尽くすと、ようやく娘の肢体を下ろしてやる。
 何故抜く、といささか憮然として黒い男は娘の汗で張りついた乱れ髪を払う。非難めいた調子に、白い男は、この肌に白濁が散るところを見たかったからだと肩を竦めた。既に満足したのか、濡れ手拭いが、その欲望の痕跡を拭っていく。
 孕めばよい、と呟かれた言葉に、強欲な、と言葉ばかりは笑って目を伏せた。二対の視線の先で、娘は先程までの狂乱が嘘のように、穏やかに眠っている。



終わり。
465名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 04:05:29 ID:mrYL+Pc5
G J ! ! ! !
466名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 10:36:03 ID:5UU1TePr
コピペミスorz すみません。
467名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 13:38:56 ID:wRvV1hNj
うっひょおおエロい!いい!!
468名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 14:21:11 ID:1ovA5mI+
もえ……ました。GJGJ!!
469名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 22:43:53 ID:5UU1TePr
dクス。
立て続けですまんが、薬加でピロートーク。



 イヤだのダメだのヤメテだの、閨言を額面どおりに受け取ることなどない。だから、それは本当に何の気なしの言葉だった。
「俺は、気持ちいいんですがねぇ……」
 挿入に、やぁっ、と感極まったように上がった喘ぎへ、ふと答えてみる。すっぽりと埋まったまま額に口づけて顔を離すと、娘が目をみはっていた。
 何か虫でもいたかと背後を振り返ろうとした時、あの、とおずおず娘が口を開く。
「……き、きもちいい、の? 薬売りさんも?」
 直に問うのは憚られるのか、うろうろとさ迷う目元に赤く羞恥が浮かんでいた。荒々しく掻き抱きたくなるのを堪えて、そりゃあと笑う。
 己を収めたなめらかな腹を、そっと手のひらで撫でた。返す手の背でまた撫でる。流石に、上からではわからないが、
「……あんたの中は、気持ちいいですよ。熱くて、みっちりしてて。あんたが感じれば感じるほど……」
 俺も気持ちいいんです、と故意に低めた囁きを小さな耳に流し込むと、娘は慌てたように反対側へ顔を背けた。お決まりのようにヤダと口にして、あ、と口元を塞ぐ。迷うように睫が揺らいで、何を考えたんだかきゅっと秘所も締まる。
470名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 22:49:19 ID:5UU1TePr
「……じゃ、ないです……」
 さて鳴いてもらうかと身を起こした男に、娘は両手で顔を覆って言った。
「はい?」
「ヤじゃ、ないです」
 言葉とは裏腹に、娘はイヤイヤをするように首を振る。消え入りそうな声だったが、男の尖った耳はぎりぎり娘の心を拾った。
「薬売りさんが気持ちよくなるんなら、悦く、して。……あたしで、気持ちよくなって」
 今日はもうヤダって言わない、と何やら決意した風の娘に、動かしてもいない怒張がぐんと質量を増したのは、たぶん、仕方ないことだと思う。


終わり。
この後3Pばりに足腰立たなくなるまで責められまくればいいと思う。
471名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 22:59:05 ID:wRvV1hNj
加世かわいいよ、加世!
いかん萌え殺されそうだ・・・鼻血ティッシュが欲しくなってきた。
職人GJ!
472469:2008/06/22(日) 23:54:37 ID:5UU1TePr
>>471
ありがとう。
ところでレスする時はsageてくれまいか。
メール欄に半角英数でsageと入れればできるから。
投下直後にageられてると、なんかやらかしたかとビビるんだぜw
473名無しさん@ピンキー:2008/06/24(火) 23:42:19 ID:IyzAsxOn
>>462
超GJ!!
何というか職人ズの薬売りズといいこれといい
加世ちゃんが愛されまくってると凄く萌えてたまらないんだブラザー。
474名無しさん@ピンキー:2008/06/25(水) 06:00:33 ID:4ZXZwkYc
ヒッヒッフーヒッヒッフー
475名無しさん@ピンキー:2008/06/25(水) 06:10:07 ID:yLQ213x8
何故にラマーズ方?
476名無しさん@ピンキー:2008/06/25(水) 09:20:46 ID:tGfLdOe+
新作SSを生み出す作業中なんだよたぶん。

トキハナテー!!
477ドS:2008/06/26(木) 01:23:38 ID:Su6eAKGr
忘れられてるかもしれんが一応少しだけ投下。
478触手×お庸:2008/06/26(木) 01:26:00 ID:Su6eAKGr
巫女装束の袖口から数本の触手が入り込み温かい暗がりを奥へ奥へと侵入していく。

「ひぃ!嫌っ…うっ…!」

お庸が声をあげるのをはかったようにやや太めの触手がその小さな口に飛び込んだ。

触手はお庸の口内を動き回り粘液を撒き散らす、それは僅かに潮の香りがするほぼ無味の液体でねっとりと舌に纏わりつく不快感以上の苦しみは与えられなかった。

「ふぅ…う…ん…!」

気が付くと袖口から侵入した触手が身頃まで入り込み胸上を通り着物の会わせ目から顔をだしている、その中の一本が緋袴に伸び器用に腰紐を捕らえるとしゅるりと解いた。

「う…ぐっ…」

お庸の固く閉じた瞼から涙が一筋溢れた。

纏わる触手に力がこもり絡めた着物を一気に引き裂いた、耳障りな音とともに千切れた布切れや装飾が水面に散らばりお庸が纏うものは巫女装束の残骸と滑った生き物のみとなる。

―ほぅ、まだ幼いと思ったが十分女の体をしているな―

お庸の体はその顔立ちに等しく同じ年頃の娘に比べるとやや幼いが、胸と尻には適度に肉がのり緩やかな曲線を描いている。
479触手×お庸:2008/06/26(木) 01:29:45 ID:Su6eAKGr
手足に絡んだ触手が蔦のように伸び腿と二の腕に巻き付く、直に触れるそれは捕えた獲物を逃さんとするように肌に吸い付ききつくお庸の四肢を締め上げた。

「ふ…ぅ…っ」

―苦しいのか―

中空に漂っていた触手が束になりお庸の腰を抱き支え上げた、すっかり触手に抱きすくめられお庸は重力から解放されて薄暗闇に浮かんでいる。

肋骨の凹凸が浮かぶ皮膚をつたい両乳房をそれぞれ触手が丸く縁取る、

「う…ふぅ…」

冷たい触手が胸に触れたことでさっと肌が粟立ちその先端も反応を示した。

縁取られ存在を強調された乳房を触手が人間の指のように渦巻きを描きなぞり始めた、中心に向かいゆっくりと両乳房を弄び時折縁取る触手をすぼめて膨らみを締め上げた。

「あぅ…うぐぅ…」

触手をくわえたお庸は閉じられぬ唇から涎と粘液の混じったものをだらだらと垂れ流し、白い首を反らして弄ばれる違和感に耐えた。

渦巻きを描いていた触手の一方がふいに乳房の先端をぬるりと撫でた、

「んぅっ…!」

お庸の体が小さく跳ね腰が反り滑らかに曲線を描いた。

はかったように両の先端に触手が食らいつく。

まだ柔らかさのある先端に巻き付き乳房と同じように締め付けしごき上げた、

「んんーっ…!」

お庸は唯一自由を許された首を左右に振り未経験の感覚に打ち震える、両胸の先に火がともったようにチリチリと快感が芯を焼き冷たい触手に対しお庸の肌は熱を帯びはじめた。
480ドS:2008/06/26(木) 01:33:25 ID:Su6eAKGr
やっとここまでかorz 早く書けるようになりたい。
481名無しさん@ピンキー:2008/06/26(木) 10:34:02 ID:lvwYRR+7
触手エロいよ触手。お庸がよがり狂うところを早く見たいキヒヒ。
わっふるわっふる!
482名無しさん@ピンキー:2008/06/27(金) 12:56:46 ID:odEW/3ti
ドS氏待ってた!
このねばっこいエロさたまらん…!
483名無しさん@ピンキー:2008/06/30(月) 22:41:09 ID:bp/1vArI
えらく過疎ってるな。
プチオンリではどうだったんだろ。
484名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 18:47:29 ID:+qmZ03RQ
今みんな本の用意で忙しいんだよ。サイト巡っても潜ってる人多いし。
485名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 23:37:23 ID:FAHxIT/f
職人降臨祈願
486名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 23:55:22 ID:Yxa35xFQ
新化猫で、節子が電話で呼び出されるんじゃなくて旅館に留め置きされて、
金か節子に対する反感とかから中居もグルで睡眠薬入りの茶を出して森谷と共に離れへ。
節子が気がつくと裸で亀甲縛りされていて、目の前で原稿を燃やされ、
アニメ通り口論になったところで福田市長が華麗に登場、調教開始。
節子のカメラを使って森谷がその様子を写真に収め、弱みを握る。
哀れ節子は男たちの人形に……って電波を受信した。

節子には赤い縄が似合う。
487名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 01:46:56 ID:GY1Q1wGW
うわ、薬加サイトもかなり過疎化してるけど、ここもひどいなー
488名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 02:53:51 ID:oKA/HYlX
保守age
489名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:54:10 ID:ZY9qGt2C
保守代わりに馬鹿ネタ薬加。


「あっつぅ〜いぃ〜! 暑い暑いあついぃ〜っ!」
「……加世さん、そう連呼したところで、」
「涼しくならないのはわかってるけど、言わずにはいられのぉ〜!」
暑さにうんざりする加世に、ふむ、と薬売りは唸った。
「加世さん」
「なぁに〜?」
「昔、京へ行ったときに聞いた、多少涼しくなる方法がありますが」
がばりと加世が身を起こす。
「なになに!?」
「かの御仁は涼を求めてやっていた訳ではないので、気休め、程度かもしれませんが」
「もぉ、もったいぶらないで教えてよぅ!」
詰め寄る加世に、薬売りがふふと笑う。いつの間にか、その手に剃刀が握られていた。
「剃るんですよ……下の毛を、ね」

薬売りが塩壷に殴り倒されたのは、言うまでもない。


実尊寺流クールビズ!
490名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 13:22:09 ID:hC9XoMJd
>>489
GJGJ♪
491名無しさん@ピンキー:2008/07/18(金) 00:44:36 ID:mS9r7P6X
薬売りアホスw
492名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 04:00:05 ID:KngUdG2j
暑中お見舞い薬加エロ、投下いきます。らぶいけど薬売りが結構S。
携帯からなんで改行等ミスったらごめんなさい。
過疎ってるから大丈夫だと思うけど、変に時間があいてたら察してくださいorz
493夕立 1:2008/07/20(日) 04:02:54 ID:KngUdG2j
 驟雨、来たる。
 夏の夕には激しい雨がつきものだ。お湿りがあるとないではその後の過ごしやすさが段違いだから、降ってくれるのはありがたい。現に今、いまだ激しく屋根壁を叩く雨音を聞きながら、足元を通り過ぎていった風はひんやりとしていた。
 ……もとい。それは加世の臑(すね)が濡れているせいか。臑、だけではなくて。
 ちゅ、と音を立てて離れた唇は荒い息をこぼした。濡れてぺったりした猫っ毛は、先端からぽたぽたと雫を落としてなお加世を濡らす。薬売りは鬱陶しげにそれをかきあげて、薄目を開けたまま加世の首筋を伝う雨水を舐めあげた。
「喉が、乾きましてねぇ……」
 ならば水を飲めばいいのに、男はちまちまと加世の肌から水滴を啜る。たっぷりと水を含んだ襦袢が肌にはりついて、意外と逞しい体つきと、そこにくまなく走る赤い紋様が透けて見えていた。
 女の方もまた同じことで、色の濃い肌はたやすく透ける。雨に体温を奪われ、つんと上向く胸の先端を、薄い唇が襦袢ごと吸い立て、鋭い歯でやわやわと挟む。
「……やっ、あ……!」
494夕立 2:2008/07/20(日) 04:06:45 ID:KngUdG2j
 のけぞる首を、雨粒が滑り下りていく。それは激しい情交のときに、汗が流れる様とよく似ていた。取り違えた肌がかぁっと熱を帯びる。
「や、だめ……、部屋、濡れちゃ……」
 ずぶ濡れのまま上がれない。抵抗すると、男はくつと喉で笑う。
「だから、ここにいるんじゃあないですか」
「……まさか、このままぁ!?」
「板間を濡らしたくなけりゃあ、ね」
 女を戸板に押しつけて、土間にひたひたと水たまりを広げながら、男の手が女の襦袢の裾を割り、ぐいと片足を持ち上げた。すかさず体をねじ込んで、力の抜けていた膝が体重を支えきれぬのを見越した目がかすかに細まる。
「ひぁぁっ!?」
 熱い塊で女の体を受け止めると、きつく回った腕のせいとでも言いたげに男は首を落とし、再度女の唇を奪う。むぅ、と鳴く舌を絡めとって、下から突き上げた。風雨を遮り防ぐ戸板が、内からの圧力にきしきしと鳴る。
「んっ、んんっ、んぅぅ―――っふは、あぁんっ!」
 雨に打たれて涼むも一興なんて嘯いて、襦袢一枚で外へ出ていったときからこのつもりだったのか。耳元で低い声が笑って、ぞくりと加世の背すじをざわつかせる。
495夕立 3:2008/07/20(日) 04:17:33 ID:KngUdG2j
「……濡れる俺は、そんなによかったですかい……? ろくに触れてもいないのに、」
 ぐぅっと腰を突き込まれ、加世は高く鳴く。
「……ここの、熱いこと」
「違、うも、……あン、ひゃっ、ば……かぁ……っ!」
 揶揄を否定してみても、体はきゅうきゅうと男を締めあげる。ともすればかくりと折れそうな膝を支えるのが精一杯、酷使された内腿の筋肉が震えて、しかし苦痛は快楽が覆い尽くして感じることもできない。
終わった後痛むだろうなと思うのにやめられないとは、話に聞く麻薬のようだ。嬌声の向こうに遠雷を聞く。いつの間にか耳を聾する雨音はなりを潜めて、残るのは聞き慣れた水音、呼吸音、よがり声。
 背中が戸板にこすれて軋む。薬売りの腕は加世を支えるのに一本、脚を抱えるのに一本でもう一杯、刺激の与えられぬ胸を加世がもどかしげに薬売りにすりつける。
「ここ、が」
 襦袢の襟あわせに白い歯が立ち、男が獣のように首を振ると、ふるりと胸の丸みがこぼれた。
「お寂しい、ようで……」
「そっ、んなぁ…あっ、こと……ぁあんっ」
「ない、と? では、触れずにおきますかね……」
「やっ、もぉ、あん! いじ、いじわる!」
496夕立 4:2008/07/20(日) 04:21:26 ID:KngUdG2j
 涙目で詰ると男は楽しげに笑う。正直、何度見ても極悪人のような笑いだと思う。……実際、悪人かもしれないが。
「そう……どうして欲しいか、この、加世さんの口から、直に聞きたいですねぇ……」
 低く唆す声は艶めいて、己の魅力を十分にわかっている。その自信が癪に障るのに、折れずにはいられない。―――やっぱり、悪人だ。
 もしょもしょと呟くと、お決まりのように聞こえないとの返事、血液の集まった耳は感度を増して、ふっと浴びせられた吐息にぞくんとすると同時に突き上げられる。
「あ、あぁぁ、さ、……触っ、て……お、ねが……ぃっ」
「では、」
 男は首から加世の腕を外させると、高く上げていた脚へ導く。
「俺の腕は、二本しかないのでねぇ……。自分で、ちゃんと広げておくんですよ」
「あ、ひぁ……!」
 片腕で男に縋り、片腕で自らの脚を掲げさせられて、つるりと滑った男の手に加世が身悶える。つと口に流れ込んだ水滴は塩の味がして、もはや雨粒ではない。薬売りの舌はとっくにわかっていただろう。
 外では虫たちが鳴き始める。雨は過ぎた。なのに、ここだけ、まだ。
 濡れる、濡れる。薄い襦袢は一向に乾く気配を見せない。
497夕立 5:2008/07/20(日) 04:27:27 ID:KngUdG2j
「んぁっ、あ、あぁ、くすりうりさ、あた、あたし、も……っ」
「おや、もう降参で?」
「やん、だ、だって、も、イキた……っ!」
「……仕方、ないですね……」
 イイ声で啼いてくださいよ、と囁いて、薬売りが一瞬体を離し加世の上から下まで目線で撫でる。次の瞬間、深く穿った。
 甘い嬌声をあげて、細い体がびくびくと痙攣する。ああ、と男も吐息を漏らした。
 黒く色を変えた土間の片隅に、濁った液体が点々と散った。


「夏の楽しみが、増えましたねぇ」
 くつくつと笑う薬売りに、加世が心の中でてるてる坊主に助けを求めたとか、求めなかったとか。



 おわり



こんなツールで投下するドS氏と世の携帯職人を尊敬する。ふぃー。
まだこれからが夏本番、毎日暑いですが皆さまお体に気をつけてお過ごしください。
498名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 09:40:17 ID:8K1fY+/o
GJです♪
いいお湿りいただきました♪♪
499名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 13:36:31 ID:iYJs69wQ
うだるような夏にぴったりのいいエロですね!
濡れた襦袢のえろさは異常だ
500名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 23:24:10 ID:tddYT+dz
うひょーGJ!
良い夏エロ小説だー!
携帯からとは、とても思えないよ。
次回作もヨロ。
501名無しさん@ピンキー:2008/07/24(木) 02:26:08 ID:Lk9yJ/yQ
日本の夏!薬加の夏!
職人ってほんとすごいなあと思いますた・・・GJwwwww
502337:2008/07/29(火) 12:18:06 ID:ZERtWE3y
業務連絡です。

MyWikiの調子がここんとこ悪くて、まとめサイトが見られないことが多い様子。
ついでに荒らしと編集イタチゴッコ中。夏ですな。
落ち着くまで少々お待ちください&閲覧時はクリック前にURLチェック推奨です。

あんまり続くようだったら引っ越しますかね……。
503名無しさん@ピンキー:2008/08/02(土) 23:47:51 ID:8+Kn3RKq
ほしゅる。

ところで甲子園が始まったわけだが。加世にはチアガールが、珠生にはアナウンス嬢が似合いそうだ。
一方で男キャラ達は誰一人として高校球児が似合わない件w
504名無しさん@ピンキー:2008/08/03(日) 23:30:19 ID:tvmJmLEP
>>503

つぎゃい!
505名無しさん@ピンキー:2008/08/04(月) 00:43:18 ID:m9VNOpH2
ぎゃいはどっちかってーと監督じゃね? ベンチで貧乏ゆすりしてそう。
それなりに熱血な指導で初の甲子園出場を果たすも、対するは名門聞香高校、監督は宿敵実尊寺。
「東の田舎高校がまぐれで出てきたとて、うちの敵ではあらしまへん。おお、臭い、臭い」
球児たちの熱い闘いが今始まる!

……なんてな。
506名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 04:54:51 ID:vwN4MZBk
お蝶マネージャーは俺の嫁。
507名無しさん@ピンキー:2008/08/08(金) 02:07:41 ID:1V87rNP5
>>506
敦盛がバットを持って行ったので御注意ください。

関係ないけど、敦盛は打順の4番を薬売りにいつも持っていかれて、5番のイメージだw 小田島様は堅実な2番か3番
508名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 00:43:30 ID:19ST5zAg
>>507
敦盛が活躍するタイミングで、これみよがしに話かけたり触ったりしてわざとお蝶さんの気を逸らし、
敦盛の何かしらの活躍をお蝶さんが全て見逃すように仕向ける薬売りを想像したw
509名無しさん@ピンキー:2008/08/12(火) 13:45:45 ID:UuxC5t16
>>508
それを加世ちゃんが見てあらぬ誤解をしてしまい
般若の形相で薬売りに千本ノック(退魔の剣使用)してる姿をさらに想像した。

加世「ぬをぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!(怒」
薬「加世さん、何、怒ってるんですかね?(困惑」
退魔「解き放つ〜!!!!!!!!!!!!!!!!!ヒャッホゥ〜wwwww」


それを物陰から見守るあきこ姉さんではなく天秤's

天秤's「加世ちゃん、頑張れ〜!!!」
   「何か、退魔さん喜んでない?」 
510名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 19:34:31 ID:JRxw8p1I
>>508
やっぱり敦盛も小田島様とは違った感じで、弄られ役ですねw

>>509
ちょwww 退 魔 さ んww
薬売りは自業自得だw

後で部室で仲直りの蒸した密室で汗だくエチすれば良いよ
511名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 21:34:15 ID:PBI3/wg3
先生!菖源マネージャーと源慧校長が、部室に入ったっきり出てきません!
512名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 03:08:57 ID:55PUvEmH
age
513名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 20:12:48 ID:XQJmL6FA
>>511
加「く…薬さぁん、何か、扉の向こうから変な音がするんですけどぉ−」
薬「なぁに、こちらも派手に音を立てりゃあ気にならなく……」
加「いやそのりくつはおかしい!
 ってか、なぁにさりげに私のジャージ捲り上げてるんですかぁ−!」
薬「……おっと、そんなに…大声を上げちゃぁ、人が来ちまいます、よ」
加「うぅ−、このひきょうものぅ−!!」

……つづき だれかたのむ
514名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 22:54:25 ID:/BwdqqGa
待てw 高校野球は政治以上にクリーンさが求められるんだぞw
猥褻行為で出場停止になっちまうwww

そんな流れをぶったぎって、本日、祝・ハイパーの日!
薬売り≠ハイパーで、ハイ加世投下いきます。
今回分はエロなし、全5レス。
515神婚 1:2008/08/18(月) 22:55:43 ID:/BwdqqGa
 その姿を見た瞬間、ざわりと一斉に鳥肌が立った。
 恐怖、ではない。『彼』が姿を現した以上、モノノ怪は祓われる。狂気のない猛々しさは、哀しみから遠いものだ。たぶん、太陽を拝むに似ている。あるいは、炎に。過ぎればきっと脆弱な人の身には毒だろう。それでも目にすると安心するのだ。
 ほっとしていいはず、なのにこの胸を締めつける感情はなんだろう。全身を握り込まれたかのような、あるいは雷に打たれたかのような衝撃。食い入るように両の目がその姿を追い求めて引き剥がせない。
 息が詰まって、全身を駆け巡る―――これは、歓喜だ。
 邂逅ではない、言葉も交わさず視線すら合わない。でも、

 会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった。

 あなたに、もう一度。

   *

「―――薬売りさん!」
 すべてがひと段落した後で、きびすを返した後姿を息せき切って追いかける。坂井の頃よりどこかとっつきにくくなった男は、無言のまま長い前髪を揺らして加世を見返った。
 追いついてよかった、と胸を撫で下ろす。たとえ周囲が大海原であっても、この人がその気になったらあっさりと姿を消してしまいそうだ。浮世離れした空気を纏って、突然このそらりす丸に現れたように。目的は、果たされてしまったのだから。
 こくりと、加世は喉を鳴らす。細い細い糸を、どうやったら切らずに済むだろう。
「あの……あの。訊いてもいいですか」
「……何か」
 低く平坦な声が応えて、加世はぎゅっと胸元で手を握った。生まれて初めてといってもいいくらい心臓がばくばくしている。いや、単に心拍数の問題なら今までにもこれくらいあったはずだ。死ぬような目に遭ってきた自覚はある。
 けれど、恐怖ではなくて。
 ……ああ、これもか。
 あの人はあたしに知らない感情ばかり植えつける。
「あの、あのぅ……退魔の剣を抜いたときに出てくる、あの人は……」
 やだ、震えるな声!
「そのぉ……誰、ですか?」
 蚊の鳴くような声になって、加世はついに顔を上げていられずに俯く。恥ずかしくて顔が火を噴きそうで、きっと今自分は首まで真っ赤になっている。
 足元しか見えない視界の中で、それでも薬売りが身じろいで体ごと加世に向き合ったのはわかった。恐る恐る視線を戻すと、内面の窺えぬ顔のまま、薬売りが加世を見下ろしている。
「……俺だとは、思わないんで?」
516神婚 2:2008/08/18(月) 22:56:14 ID:/BwdqqGa
「えっ」
 加世は目を丸くする。
「薬売りさんなんですか!? 嘘ォ!?」
「さぁて……どうだか」
 そらっとぼけて視線を流され、一気に頭に血がのぼった。
「ちょっと薬売りさん! 人が真剣に訊いてるのに―――!」
「―――知って、どうする」
 怒涛の文句をたたみかけようとしたところを遮られ、ぐっと加世は言葉を呑んだ。透明な湖面のような青い目が、加世のすべてを暴くように見据えてくる。
 真と、理。
 それを見透かすための、水鏡だ。見られるだけで不安になる。居心地が悪い。
 その目が、わずかに蔑みの色を浮かべた、と思った。
「悪いことは言わん。関わるな」
 長い爪が加世の顔を辿って、近づいた端正な顔の中で鋭い牙が覗く。
「―――喰われるぞ」
 低い、恫喝。
 しかし、怯むよりも先に気に障った。加世は白い手を思いきりはたき落とす。
「あの人を鬼みたいに言わないで! そりゃ、勝手に近づいたら危ないだろうなって思うけど、悪い人じゃないのはわかってるんですからね! 脅そうったってムダなんだからぁっ!」
 薬売りははたかれた手にぽかんとし、ふるふると振って、やがて小さく笑った。
「いやぁ……。あれが人でないのは、確か、ですがね……」
 くっくっ、と喉の奥を震わせつつ、薬売りは、ああ、とわざとらしく両手を打ち合わせた。
「そういえば加世さんには……助けてもらったことが、ありましたっけ。いや、見事な塩壷の投げっぷりで」
「今はそんなこと話してるんじゃないでしょ!? 何よもぉ、バカにしてるの!?」
「いえ、いえ」
 袖の中から不意に現れた退魔の剣を、薬売りは握り込む。
「ですから、一度だけ―――助けてもいいかと、思いましてね」
 言うなり薬売りが剣を持ち替える。左手に鬼の顔の柄、右手で鞘、大振りの袖がひるがえったかと思うと、刀身が。
「えっ!?」
 加世は信じられぬ思いで自分の腹を見つめた。
 どすんと、衝撃。
 普通の、銀色に輝く剣の刃。そこに雷光が走っていることまではわからなかった。鞘の大きさに見合った長さのそれが、帯を突き破って加世の体に吸い込まれるように、否、体は異物を拒もうとした。けれど力づくで突き立てられた。
 ―――刺された。
 目の前の現象を脳が認識した瞬間、激痛とともに視界が真っ赤に染まった。
517神婚 3:2008/08/18(月) 22:57:22 ID:/BwdqqGa
 悲鳴。
「―――いってらっしゃい」
 薬売りの言葉は、加世の耳には届かなかった。

   *

 赤は巡る血潮の色で、沈みゆく日の色、闇を拓く火の色、明らかなるもの、顕わなもの。そしてあの人の目と爪に宿る色。
 加世が目を開けると、世界は完全に漂白されていた。輪郭、こそあれ、己以外の何もかもが白い。前のめりにくずおれるようにして座り込んだ体、恐る恐る覗き込むと剣は確かに加世の体に突き立っていて、
けれど先程の激痛が嘘のように何も感じられず、現実感が薄い。それでもさすがに触る勇気は持てなかった。痛くないからとりあえずいいか、と放っておくことにする。
 さらに見ると、床についた手は影を失くしていた。手だけではない。そらりす丸はおろか凪いだ海すらも均一に白いばかりで、加世のもつ肉体の形を映さない。だからこそ、か、此処に在っては己の纏う色どもが濃密さを増したようで目に沁みる。
ゆらり、視界の端を金魚のように横切った墨色を目で追い直すと、それは古の時代の文字のようだった。
 ああ、と加世は目を瞑る。
 かつて哀しい化猫の真と理を示す空間へ導かれたときに、一瞬通り過ぎた場所……だ。
「……女」
 低い声が体に響いて、慌ててもう一度瞼を開くと『彼』が立っていた。忘れていた動悸が瞬く間に戻ってくる。そういえば薬売りは『助ける』とか言っていたような。
 会わせてくれたのか。
 正直少しくらい説明してほしかったというか、なにせ死ぬかと思ったし言葉を惜しみ過ぎだと言いたい気持ちがないではないが、とりあえず感謝しますありがとう薬売りさん!
 立ち上がろうとする加世を『彼』は大きな手で押しとどめる。見上げた先の額の模様が、きょろりと動いた。
「……あれが、贄を寄越すとは珍しい」
 ニエ?と加世は首を傾げる。
「贄だとも。生娘だろう」
「そ……っ!」
 そんなこと! あるけど! あるけどさぁ!
 さらりと口にされた単語に、絶句すると同時に頬に血がのぼった。いきなりなんてことを!と加世が叫ぶ前に、『彼』は何かを思い出そうとするように口元に手を当てる。
「まだ素敵な恋もしたことがない……だったか」
「イヤーっ! なんで知ってるのやめてそれ以上言わないでぇーっ!!」
 思わず顔を覆って絶叫すると、白い空間に残響がさざなみのように伝った。床に接した足先が微かな振動を感知してくすぐったい。……って何これ。
 右手を下ろして床を撫でる。見た目から感じるほどには冷たくない。ただ、元のように木材ではありえず、畳とも違う。柔らかくはないが石のように硬質な手応えでもない。加世の知らないもの―――そも、加世の知らない世界。
518神婚 4:2008/08/18(月) 22:58:22 ID:/BwdqqGa
 床に向かって、あー、と声を出してみる。押してもびくともしないのに、声に合わせて微細な振動が生じ、手のひらに伝わる。打ち鳴らされた太鼓の薄膜のようだ。
「うわー。おもしろーい」
 感心していると、頭上から、くっ、と小さく笑う声が降ってきた。―――しまった。
「……これは、また、胆の太い」
「いっ、いやあの、普段こういうことってないからつい!」
 子供っぽいって思われたー!?
 ぶんぶんと両手を振って言い訳するがもう遅かったようで、幼子にするようにぽんと頭に手を置かれる。
「ほどほどにしておけ。影の次は、色を盗られる」
 ぎょっと手を引くと、その仕草がまたおかしかったようで異形の男が笑う。むぅっと加世は膨れた。
「もぉー! そんなに笑わなくたっていいじゃない!」
「そうか。気をつけよう」
 あっさりと男は頷き、さらりと、名はなんだ、と訊く。答えようとして、ふと気づいた。
「……あんなことまで知ってるんだったら、あたしの名前も知ってるんじゃないんですかぁ?」
 拗ねたような響きになったのは、状況からして仕方ないと思う。初めて好きになった人の前で、早速恥をかきまくるとは思わなかった。
「知ってはいる。あれが呼んでいたからな」
「ほらやっぱり!」
 案の定の返事に唇を尖らせると、男は不思議そうに首を傾げた。
「だが、お前の口から聞かねば婚姻が成立しない」
 ぶふゥーっ!!
 加世は思いきり噴いた。
「なっ、なななな」
 ―――なんですと!?
 婚姻、て結婚!? や、待ってあたしはただ、ちょっとでもお近づきになりたかっただけってゆーか、そりゃもう会えなくなるかもって思ってたからできれば次の約束とか考えてたけど! 婚姻って! 一足飛び! 一足飛びだから!!
 胸のうちでは怒涛のように繰り広げられる反駁も、口にできたのは「な」の文字だけだった。
 一旦落ち着こうと深呼吸。すーはー。
「な―――なんで、そんな、いきなり!」
「いきなり?」
「こっ、婚姻とか!」
 男は加世を見下ろす。
「人、ならざる者に捧げられた贄は、巫子(ふこ)で嫁と決まっていよう」
「そうなのーーーーーっ!?」
519神婚 5:2008/08/18(月) 22:59:14 ID:/BwdqqGa
 頭を抱えると、ちょうど壁に触れていたらしい文字が振動を受けてふるふると細かく波打った。この世ならざる光景を見ながら、そんな大事なこと説明皆無ってどうなのよ!と、ここにはいない薬売りを恨めしく思っていると、すいと視線が外れ、男が離れた。
「……偶然、迷い込んだだけならば、見逃してやる。色を失くし記憶を盗られる前に、去ね」
 迷い込んだことにしてやる、と、それは『彼』なりの優しさだろう。けれど、離れた手が寂しくてすぅすぅする気持ちには、ちっとも優しくない。
「どちらか……しか、ないんですか?」
「当然だ」
 独特の色合いの瞳が、加世を厳然と見下ろした。
「此処は人の世ではない。我らには我らの従う法がある。なればこそ、あれも毎度苦労しているのだと、お前は知っているはずだが」
「……はい」
 突き放すような言葉に、加世の胸は痛む。形、真、理が揃わないばっかりに、坂井の屋敷では人が死に、薬売りも怪我を負っていた。
 そういう、ことなのだろう。
 人の世で水が低きに流れるを押しとどめること叶わぬように、人の意思が届かぬ、世界の定めた法則だ。
 しかし、と加世は思う。
 なんて難儀な初恋だ。きっと一目惚れだったのに自分で気づかず、自覚したと思ったらいきなり刺され、人外の世に来たかと思えば、恋を味わう前に嫁げときた。
 ……嫁ぐ、と胸のうちで繰り返す。とくんと鼓動が跳ねた。
 嫁に行け、とは、坂井から実家に戻ったときにイヤになるほど言われた言葉だ。見合いという名の下に遠目から覗いて、結婚が決まってしまうことも珍しくはない。人には添うてみよだと諭されても聞けず、駄々をこね続けてきた。
 ……過ごした時間は、そういった見合いとほとんど変わらない。男はそれでも加世のことを、薬売りが知る程度には知っているようだが、加世は遠目に二度見たきりだ。言葉を交わしたのは今日が初めて。
 でも、知っている。負の感情に呑まれてしまった魂に、真っ向から向き合い救済をもたらす存在であること。珠生の味わった苦難を目の当たりにして、ぼとぼとと大粒の涙を零す化猫の心情を思い、せめてもその苦痛が終わったとき、『彼』は文字通り神様に見えた。
 感動と、感謝と、尊敬と。苦しいほどの憧れ。
 ―――ならば、いいではないか。
 このまま別れたら一生後悔する。きっと引きずり続けて、それこそ結婚なんかできないだろう。特別と言って手を貸してくれた薬売りだって、加世がすごすごと引き返してきたらなんて思うか。
 絆は、夫婦となってから築いても遅くない。築きたい、と思える相手だから。
 加世は座を正して両手をついた。
「……好きです」
 男の目が加世を見下ろす。
「ふ、ふつつかものですが、どうぞ、末永くよろしくお願いいたします」


つづく
520名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 23:07:51 ID:I66ECuUZ
続きが楽しみだ〜!!!!!!!!!!!!!!
521名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 04:21:17 ID:8EIVGBhG
ひょえ〜!!!?逆プロポーズですか加世ちゃん!!www
今までにない新しいハイパー×加世にwktkを隠しきれないです。
続き待ってます、三点倒立で。
522名無しさん@ピンキー:2008/08/25(月) 18:53:57 ID:7OxpAnaH
サノメの続きはどうなったのかなあ……。
523名無しさん@ピンキー:2008/09/02(火) 02:13:05 ID:D3ZS+cls
ほしゅあげ
524名無しさん@ピンキー:2008/09/03(水) 03:45:56 ID:fUS1zHrL
続きまだー?
525sage:2008/09/04(木) 00:48:12 ID:PMcCvSyD
まぁ、そう急くな
飴ちゃんやるから つ>〇<
526名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 00:48:50 ID:PMcCvSyD
間違えたorz
527名無しさん@ピンキー:2008/09/04(木) 12:20:20 ID:5Y3e7TCE
>>526
気にするな(T_T)\(-_-)ヨシヨシ
528名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 16:49:10 ID:uKPICGo6
保守がてらこんなのしてみた。

取扱説明書 メーカー
ttp://u.p0k.net/torisetsu/

薬売りさんの取扱説明書

薬売りさんをご使用する際には以下のことに気を付けて下さい。
・女性を近づけてはいけません。
・煙が出ている、異臭がするなどの異常状態のまま使用しないで下さい。
・長い間お手入れを怠りますと、通風孔の毛が伸び、見た目を損なうことがあります。

薬売りさんが故障かな?と思われる場合は以下のことを試してみて下さい。
・まれに、一本背負いで直ることがあります。

それでも薬売りさんが正常に動作しない場合は。
・背中に記載の製造番号をお控えの上、当社までご連絡下さい。


ハイパーさんの取扱説明書

ハイパーさんをご使用する際には以下のことに気を付けて下さい。
・ごくまれに、電波の影響を受け誤動作することがありますが、仕様です。
・模倣品にご注意下さい。
・オリジナルはこちらではありません。
・煙が出ている、異臭がするなどの異常状態のまま使用しないで下さい。

また、ハイパーさんを以下の場所でご使用にならないよう気を付けて下さい。
・結婚式
・宇宙
・無人島

ハイパーさんが故障かな?と思われる場合は以下のことを試してみて下さい。
・ハンマーで、側頭部を優しく撫でましょう。

それでもハイパーさんが正常に動作しない場合は。
・クマのぬいぐるみと交換を致しますので、当社までご連絡下さい。


薬売りさんには(加世ちゃん以外の)女を近づけちゃダメなんだ!
ハイパーさんを交換された後、解き放ったらクマー!!!!!!!!!!!!!!
529528:2008/09/05(金) 16:54:54 ID:uKPICGo6
続いて

退魔の剣さんの取扱説明書

退魔の剣さんをご使用する際には以下のことに気を付けて下さい。
・女性を近づけてはいけません。
・ごくまれに、電波の影響を受け誤動作することがありますが、仕様です。
・煙が出ている、異臭がするなどの異常状態のまま使用しないで下さい。

また、退魔の剣さんを以下の場所でご使用にならないよう気を付けて下さい。
・無人島
・きれいなところ
・なにかの上
・墓地

退魔の剣さんが故障かな?と思われる場合は以下のことを試してみて下さい。
・ネコを与えてみて下さい。

それでも退魔の剣さんが正常に動作しない場合は。
・電池が入っていない可能性が高いです。



天秤さんの取扱説明書

天秤さんをご使用する際には以下のことに気を付けて下さい。
・男性を近づけてはいけません。
・シンナーなどの有機溶剤は動作がおかしくなる原因になりますので、使用しないで下さい。
・雑巾でこすったりしますと変質する原因になりますので、ご注意下さい。
・風呂場では使用しないで下さい。

また、天秤さんを以下の場所でご使用にならないよう気を付けて下さい。
・葬儀場
・乗り物の中

天秤さんが故障かな?と思われる場合は以下のことを試してみて下さい。
・アルコール分を含んだ雑巾で、全体的に優しく拭いて下さい。

それでも天秤さんが正常に動作しない場合は。
・どうすることもできません。



530528:2008/09/05(金) 16:57:15 ID:uKPICGo6
上記の取説からエロパロに持って行こうとしてみたけど
オイラのおつむじゃギャグ路線に行ってしまうorz
531名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 21:39:43 ID:QF3rOHEH
> 退魔の剣さんを以下の場所でご使用にならないよう〜
> ・なにかの上

机の上で構えるのアウト!?

> 天秤さんを以下の場所でご使用にならないよう
> ・乗り物の中

海坊主と鉄猫アウト!!

しかし>>528、これでどうエロパロにwww
532名無しさん@ピンキー:2008/09/05(金) 22:48:02 ID:9ueEgPz8
ギャグでも良いから物凄く読んでみたい!
533蛸(+薬売り)×加世※鬼畜注意:2008/09/08(月) 16:03:51 ID:QT0Dhv77
神職人が降臨するまでの場繋ぎにヤンデレと鬼畜の違いが判らない俺が言葉責めをコンセプトに携帯から投下しますよ。

初心者故、展開が唐突過ぎるのと不自然な所は見逃してくれ。







何時ここに来たのか、何故、こんな事になったのか加世はとんと思い出せなかった。

浅黒い肌を這い回る、ぬめぬめしたモノ。

ずるりと擦り付けられる度、ぞろりと孔を撫でられる度、加世は泣き叫ぶ。

どれ程の時が経っただろう。

加世がもう声も上げられなくなった頃、もう消えかけている思考の端に『彼』の姿を思い描いた頃、それは起こった。

「こいつは、酷い」

低く、良く通る声。

「こりゃあ…大蛸」

カチン

場を切り替えるような、澄んだ音が辺りに響く。

加世はその最も求めていた声に、残った力を振り絞り顔を上げる。

「くす、り、うり、さん?」

少し霞んだ視界に極彩色の男の姿を認める。

男は小高い所に座してこちらを見下ろしている。

「たす、け、て」

弱々しく手を伸ばす。男の口許が、紅の形に歪む。

「駄目、です」

「え…」

何故。

「モノノ怪を」

モノノ怪を斬るのがあなたの
534蛸(+薬売り)×加世 続き:2008/09/08(月) 16:09:19 ID:QT0Dhv77
「うぐ…ううっ」

「人の縁と因果が巡ってモノノ怪を成す」

加世さん。

「そいつァ、あんたのやや子も同然だ」

『やや子』の一言に加世はびくりと震える。

海座頭の一件を思い出したのだろうか。加世の動揺に気付いているだろうに、薬売りは更に加世を追立てる言葉を吐く。

「そいつがあんたの元に現れたということはそれはあんたに因果のあるもの」

真と理はあんたの中にある。

「あんたの胎の中の欲に、あやかしが宿ったんだ」

いつの間にか加世の前に現れた薬売りは加世の涎の垂れるぽってりとした唇を撫でる。

「あ…」

ねえ、加世さん。

理を解く手掛かりをやろうか。

ゆるゆると加世の唇を撫で薬売りは言う。

「このように」

口の中に指を突っ込んでねっとりと掻き混ぜる。

「ふ…ぐ…ちゅ…」

俺に犯して欲しかったんでしょう。

あんたの俺を見る目はいつも物欲しそうで。

「ち、違…」


「ほぉう、違う。違うってんならこいつは相当の好き者だ」

535蛸(+薬売り)×加世:2008/09/08(月) 16:15:44 ID:QT0Dhv77
悦がらせてくれるのなら誰でもいいんですか。

「違…」

薬売りの蔑みの言葉を、加世は必死に否定する。

しかし現状は大蛸の足が太腿の間を擦る度蜜を垂らして、これじゃあ薬売りの言う通りの女であるようなもの。

撤回、するには。

「あたし…」

あたしは…

「薬売りさんに…」

抱いて欲しかった。

『理』を消え入りそうな声で口にした。

カチン、と場違いに澄んだ音が響く。

それじゃあ次は真だ。

薬売りは低く囁く。

「言え」

モノノ怪の、お前の真を。

「ああう…っ」

前を後ろを、激しく突き上げられる。

吸盤が敏感な箇所を強く吸い上げた。

言いたくない。

言ったらきっと戻ってこれない。

嗚呼、でも、もう。

胎の中を這いずり回るモノに耐えきれず、遂に加世は口を割った。

「あたしが…淫乱だからっ!あたしが淫乱だからですぅっ!」

カチン

その言葉に反応したかのように大蛸の足の動きが一層激しくなった。

「ひぃああぁあっ!」

536名無しさん@ピンキー:2008/09/08(月) 16:20:09 ID:QT0Dhv77
目の前でこれ以上は無理な程脚を広げられ、子を成す孔も排泄する孔も犯されている娘の姿を見ても薬売りは全く表情を変えない。

真も理も明したと言うのに何も行動を起こさない男に、加世は靄掛かった頭で必死に助けを乞う。

「くすりうりさぁんっ!あぁっ…た、たすけてぇっ!」

必死に頼み込んでも薬売りはいっこうに動かない。

やがてたっぷり時間をかけて出た答えは死罪を告げられるに等しい一言。

「嫌、です」

加世の思考は停止する。

「モノノ怪は斬らねばならん。だからいずれは斬ってやる」

それまであんたの正気が持つかは知らないが。

「な…」

どうしてそんな事を言うの?

加世の目に浮かんだ疑問に、男は薄らと微笑む。

「加世さん、俺はあんたが大好きだ」

加世の痴態をうっとりと眺めながら薬売りは言う。

「弱くて、脆くて、欲望に素直で、本当にあんたは人間らしくて」

犬歯を覗かせて薬売りは笑った。

「本当に」

大 好 き だ

「あ…う…」

胎の中のものが最奥を叩いてこじあけようとしている。

感覚に、加世はもう何度になるか分からない絶頂が近いことを悟る。

絶叫と哄笑が、辺りにこだました。



おしまい


この後ウエンツな展開も考えたけど疲れたから放置プレイ。
537蛸(+薬売り)×加世:2008/09/08(月) 16:30:08 ID:QT0Dhv77
…ごめん、最初と二番目の繋ぎの一文入れ忘れた。


つ モノノ怪を斬るのがあなたの役目でしょうに。

加世は抗議の声をあげようとするが、ぬめるモノが口に突込まれ、叶わなかった。


と入れる筈だったんだ…。

sage忘れてるし、ちょっとウエンツされてくる。
538名無しさん@ピンキー:2008/09/08(月) 21:27:25 ID:/Fk7Qhiy
ウヒョーーー!えろす!えろーーーーーす!!
539名無しさん@ピンキー:2008/09/11(木) 01:06:31 ID:HVwyX5iT
加世のぽってり唇と薬売りの白い指先をセットにされた日にゃオイラ・・・
ハフーンGJwwwww(*´Д`)b
540名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 03:30:18 ID:idwCdfKa
過疎だなぁ……。もう住人はいないのか。
541名無しさん@ピンキー:2008/09/15(月) 09:00:58 ID:P+SvahsX
実はこっそり隠れてたりする
542名無しさん@ピンキー:2008/09/16(火) 02:24:12 ID:69LHiMVJ
同じく隠れている。
543名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 00:43:52 ID:uR3lu8M/
いるよノシ
544名無しさん@ピンキー:2008/09/17(水) 03:07:41 ID:1Wiw/p/X
神婚の続きを密かに待ってる
545名無しさん@ピンキー:2008/09/19(金) 00:59:08 ID:Y0mNnb/v
いるよ。ときどき覗いてるよ|д゚)ノ
546神婚 6:2008/09/21(日) 00:06:49 ID:iSsOl9AL
ここにもいる。

>>544
ありがとん。

間が空いて申し訳ない、投下いきます。まだ完結しない。
金加世続き、人外属性強め(触手プレイっぽい)。
NGワードは神婚で。
547名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 00:08:12 ID:8mY1o925
ごめん名前間違えた…orz

↓から本編投下
548神婚 6:2008/09/21(日) 00:10:46 ID:8mY1o925
男の全身を彩る『目』が一斉に蠢くと、全部がきろりと加世の方を向いた。人よりはるかに多い視線に晒されて、頬が火照るのをじっと耐える。
 ……試されている。
 価値を、真実を、覚悟の程をはかられている。
 きゅっと唇を噛んで、加世は真っ直ぐにひとつひとつの目を見返した。ここは、退けない。
「……いいだろう」
 ふと、男が笑ったような気がした。押し寄せる圧力が緩んでほっとする。男が加世の目線にかがんで、端然と相対する。そうやって正座すると、どことなく薬売りと似ている、と思った。
「懐のさかずきを出せ」
「へ?」
 そんなものを入れた記憶はないのだが、探ると本当に入っていた。つややかな朱塗りのさかずき。なんでこんなものが、と思いながら取り出すと、落とすなよと釘をさされる。
「それはお前の心の臓だ」
「きゃーーーっ!?」
 つるっと手が滑りかけて、慌てて持ち直す。
「あ、あぶっあぶなぁーーーーっ」
 震える指先でなんとか持ち直すと、男は加世の前に手を出した。寄越せ、ということだ。加世は両手で奉げるようにしながらその手を見る。
 ……おおきい。
 指が長いから騙されるが、節の立った手は意外にごつごつしている。赤く長い爪、形と真と理によって猛り吼える退魔の剣を、握り統御する男の手が、加世のさかずきに―――触れた。
 ぞくり、と背筋に何かが走った。嫌な感じではないが、腰骨の辺りが痺れて力が抜ける。正座していたからいいようなものの、そうでなかったら膝から崩れ落ちていたかもしれない。
 さかずきを手にした男は微かに笑った、ようだった。
「ぬくい、な」
「えっ、えっ!?」
 自分の手にあるときは、特に温度など感じなかったのだが。勝手に全身が熱くなる。捕縛でもされたように、男の手元から目が離せない。自分の心臓だというそれが、男の大きな手に包まれ悦びにうち震えているように見えた。
 自分、も。
 ああなっているのか。
 褐色の指にさかずきがゆっくりとなぞられてぞくぞくする。胸の奥と腹の底が熱い。とろんと眼差しが潤むのがわかった。陶然とした目の先で、赤いさかずきの底からゆらゆらと金の液体が湧く。湧いて、満たして、惜しげもなく溢れ、男の手指を濡らしてぽとぽとと零れていく。
「……綺麗……」
 金と朱の色、大地の引く力で地肌に描かれる曲線に恣意はない。うっとりと呟く加世に、そうだな、と男も頷く。そして片手を加世へ伸ばした。
549神婚 7:2008/09/21(日) 00:16:04 ID:8mY1o925
動くな」
「……はい」
 言いながら彼は加世に刺さりっぱなしだった退魔の剣に触れる。不安はなかった。どこか夢見心地のまま、加世は素直に返事をして、男の挙動を陶酔の色で見守る。
 動くなよともう一度念をおして、男は鬼の柄を握るとずずっと加世の中から引き抜いていった。かすかにくすぐったいような感触、やはり痛みはなかった。体内から現れた刃がぬれぬれと赤いのがいっそ不思議なほどだ。
ぴたん、と一滴血が飛沫いて、すぅっと色を失くし周囲に溶けていく。
 抜ききった刃の先を、彼は加世のさかずきへ傾けた。
つぅと加世の血が集まって滴になり、とろりと酒杯に落ちていく。
金の液体と混ざって螺旋を描いた。そのまま口元に運ぶと、青い紅を引いた唇が加世の心臓に触れて、こくりと、一口。二口、三口。
 喉仏が、動く。
 男は加世の手を取り、そこへさかずきを戻した。
「飲み干せ」
「……はい」
 男に倣って三口目でくっと空けると、さかずきごと溶けて流れ込んでくる。口に含んだ液体は甘く、かすかに舌先に苦みが残った。
喉を滑り落ちると度の強い酒のようにカッと灼かれる。胃に、落ちていくのがわかって、途端爆発しそうな鼓動を知覚した。
同時に酩酊感が沸き上がって頭がくらりとする。
かつてない幸福感に意識がふわふわした。何も考えられないまま、重なる唇を受け入れる。
「……なんて……お呼びすれば、いいですか」
「好きに呼べ」
「そんな、難しいです」
 男の指先がゆっくりと加世のうなじをくだる。さわさわと後れ毛が揺れて、加世はいっそう深く男の舌を受け入れた。
男の手は肩口を通って帯揚げを解き帯を緩める。加世の胴を締め律していた束縛が消え、代わりに胸がきゅぅっと縮み上がった。
襟をくつろげた男が胸元に口づけて、思わず、や、と声がこぼれた。
「あ、ああああのっ」
 男は黙って顔を上げた。話を聞いてくれるのかと思いきや、尖った黒い歯が加世の下唇を食む。
「ふぁ、ひょ、ひゃの!」
 メゲずに訴えようとするとうるさいとばかりに口を塞がれた。
「んっ――――!」
 加世の口の中を乱暴に蹂躙しながら、男の手が黒髪の間を探って簪を抜き、櫛を抜き、笄を抜く。ぷつりと結い紐の切れる気配がして、ざぁっと髪が流れ落ちた。男が指をくぐらせ、微かに目を細める。
「―――っくは、」
「……美しい」
 口づけの間、息継ぎが許されなかった加世は涙目で酸素を求めるが、ほとんど触れたままの唇の上で男は淡々と呟いた。苦しさばかりでなく、加世は真っ赤になる。
「……あっ、あなたに言われても―――っ」
550神婚 8:2008/09/21(日) 00:17:26 ID:8mY1o925
「何故だ」
 男は愛しむように髪を梳く。加世はもごもごと、だって、と呟いた。
「その、あなたの髪の方が、ずっときれい、だし……」
「女の髪と、一緒にされてもな」
「え、あ、ごめんなさい……?」
 眉がないせいか、目の色か不思議な紋様のせいか、男の表情は読みにくい。それでも何か複雑そうな気配で、加世は伸ばしかけていた手を引っ込めた。きらきらしてさらさら流れていて、前から撫でてみたかったのだが。
 男は鬱陶しげに髪をかきあげて、女の髪は特別だ、と言う。
「大事にしろ。お前を守るものだ」
「……はい」
 慈しみを込めて指で梳かれると、祝福を受けているようでくすぐったい。
 やがて男の手がゆっくりと加世の肩を押して、脱いだ着物を褥に横たわらせた。厚いてのひらが鎖骨の下から胸の膨らみまでを撫でる。男が再度訊いた。
「……名は」
「加世、です……」
「かよ」
 その声で呼ばれた瞬間、どうしようもないものが込み上げて、加世は両手で顔を覆う。恥ずかしい、嬉しい、くすぐったい。本当に、顔が火を吹いてしまいそうだ。そんな加世に顔を寄せると、耳元で男は低く囁いた。
「――――」
 え、と加世は目をみはる。
「預けよう、吾が妻」
「……はい……」
 不思議な、けれどこの国に生まれた自分の血肉は既に知っていたような響き。懐かしく、慕わしく。幼い頃の遠い思い出のように、胸を締めつけられた。慕情が募って涙になる。
 さかずきを交わし、名を交わし。夫婦と、なったのだ。
「……みことさま」
「他人行儀だな」
 試しに一部を呼んでみると夫は零して、だが言葉の割に笑みを含んでいる。また唇が重なった。今度はあまり深くならず、加世の上を順に滑っていく。ちらり見えた舌は青い。けれど、優しくて熱い。同様に優しく熱い手に、もっと触って欲しくて皮膚がちりちりする。
さっき飲んだ金の色が、元の主の中へ戻りたがってでもいるのだろうか。あんなふうに、螺旋を描いて混ざってしまいたい。
 思い描いた色に、味と熱の記憶もよみがえってこくりと喉が鳴った。夫の体を走る金の模様に目が吸いつく。舐めれば先と同じ味がするだろうか。ほとんど無意識のうちに両手が男の手をとって、顔が近づいていく。伏せた目が金の色から離れない、離せない。
舌が伸びて、ぺろと舐めた。ふと見上げた男は、驚いたように目をみはっている。
「―――あっ、や、やだあたし、はしたない……!」
 なんてことを、と我にかえるがもう遅い。
551神婚 9:2008/09/21(日) 00:18:41 ID:8mY1o925
「気に入ったか?」
 夫は面白そうに言って加世の唇に長い爪をあてる。小さな音と共に帯電したように空気が震えて、甲の模様が一気に樹形図を伸ばした。枝は複雑に分岐して一部では統合し、何もない空中をものともせず走ると加世の口へ飛び込む。
「むっ!?……ん、ふぁ」
 不思議な感触が口内を蠢き、一杯に頬張らされる。厚さがあるとも思えないのに、模様はどの角度から見ても常に正面から相対しているように思えた。それでいて口や舌の粘膜が感じるそれは自在に動く指に似ている。
加世の舌をなぞり、上顎をくすぐり、頬をこすりながら出し入れをされる。
「んっ、んんっ」
 かきだされた唾液が唇の端から零れる。それを、もう片方の手で背中ごと寄せられて舐めとられた。恥ずかしいのに、目が合うと下腹部がじんと疼いた。視線を介して体内に何かを射込まれたように。支配、される。
 背中から腰に下りた手が、しばらく腿を撫でると内側に回る。触れられてびくりと体が震えた。上がった声は頬張ったものに阻まれてくぐもった響きになる。長い爪を巧妙に避けて、指の腹がとろりとしたものを掬った。ゆっくりと秘裂を上下になぞられる。
「んっ、んむっ、んんんーっ!」
 ぞくぞくして、勝手に体が震えた。一緒に震える乳房を、青い舌が舐め上げる。乳首を含まれると、頭がまっしろになった。
「んんんんーーーーーっ!!」
 びくん、と痙攣する。目尻から涙がこぼれて、こめかみへ流れる。いつの間にか汗ばんだ肌が燃えそうに熱い。
 加世の唾液でぐしょぐしょになった金の枝がしゅるしゅると縮んで、男の甲に収まる。そこをぺろりと夫が舐めるのがたまらなく淫靡に映った。秘裂の奥が疼いてひくついて、もうなぞられるだけでは足りない。
「……随分、物欲しそうな目だ」
「あ―――あなただって……!」
 かぁっと羞恥に灼かれて口走ると、夫が目を細めた。情欲に濡れた瞳が細まると、なんだか意地の悪そうな顔になる。そうだな、と呟いた口元から、牙のように尖った歯が覗いた。
「もう少し、馴らした方がよかろうが……」
 わずかに怯んだ加世に気づいているのかいないのか、男のがっちりした肢体が加世に覆いかぶさる。先端がぬるりと入り口にあたった。
「ぁ、ちょ、ちょっと待―――」
「力を抜け」
「あっ、いっ、ああああああああっ!」
 暴れようとする脚は押さえ込まれてびくともしない。ひけた腰はあっさり追いつかれた。快楽でなく、痛みに背が反り返る。目の前に閃光が散った。

552神婚 10:2008/09/21(日) 00:19:33 ID:8mY1o925
「やっ、いた、痛いぃっ!」
「……まだ、先だけだが」
「えええええっ!? ムリっ! ムリですぅ!」
 甘やかなものが吹っ飛んで、涙目で訴えると男はわずかに顔をしかめた。きろきろと金の『目』も動く。しばらく考えるように目を伏せ、腰をひくと加世を助け起こす。
「ならば、仕方ないな」
「え」
 ムリと言ったのは自分だが、そうもあっさり退かれると寂しい。煽るだけ煽られた熱の行き場もない。我侭な本音に瞳が揺れて、加世が縋るように夫を見上げると、そんな目で見るな、と男は苦笑する。
「まだ忍耐を求めるとは、困った女だ」
「え、あの」
「加世」
 不意打ちで低く呼ばれると、忘れていた疼きが戻ってくる。両腕に腰を支えられて、胡坐をかいた夫の上へまたがるように座らされた。すっぽりと抱え込まれて、頭から背を撫でられる。
「捨てはしない。安心しろ」
「……はい」
 迷子か捨て子ほど、心もとなげな様相だったのだろうか。ことんと頭をもたせかけると、男も軽く汗ばんでいるようだった。なんとなく、嬉しい。
「今更、やめてはやれんが」
 続いた言葉に、加世は小さく頷く。ぎゅっと大きな体に抱きついた。
 痛かった、けれど。
 少し優しくされるだけで、同じ場所がまた熱を求めて蠢く。はしたなく蜜を垂らして、疼いている。一旦離れたときに感じた喪失感は、今自分が欲しがっているのだと実感するに十分で、もう離されたくない。こうして肌を合わせていたい。
「大丈夫……です」
「そうか」
 子供に高い高いをするときのように、男の手が加世の脇の下へ入って体を支えた。加世が目をぱちくりさせると、男が言う。
「お前から来い」


 つづく
553名無しさん@ピンキー:2008/09/21(日) 07:09:41 ID:V046ymHp
GJ 続きが読めて嬉しいっす
554名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 00:48:54 ID:8THtiEx7
突っ込んでないのに妙にエロい!
だがハイパーに同情を禁じえない!
わっふるわっふる!
555名無しさん@ピンキー:2008/09/23(火) 15:22:18 ID:wav5pUWJ
密かに待っててよかった!
ハイパー惚れるし・・
終わりまで楽しみに待ってます
556名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 19:54:56 ID:/inVXPWf
加世が小便組になるとかふと思い浮かんだんだけど、そういうスレじゃないよね
557名無しさん@ピンキー:2008/09/24(水) 22:54:23 ID:4983BK2D
小便組とはなんぞ?とぐぐってきた。
これはこれで面白い題材じゃないか?
加世の元はギャルだそうだし、援交で金だけむしりとってヤらせないパターンと思えば
あまり違和感ないな。
チヨ寄りになるかもしれんが。
冒頭に注意書きすれば大丈夫じゃないかな。
558名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 01:27:49 ID:rAv5m+x1
自分もぐぐってきたw
いいんじゃないかな、面白そう。
ただ注意書きが欲しいかもしれない。
SMプレイぽくなったりするんだったら。
559名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 01:29:05 ID:rAv5m+x1
って>1に書いてあった。ごめん
>注意書き
560名無しさん@ピンキー:2008/09/25(木) 01:33:33 ID:DglXSYrW
SMっぽくなきゃ注意書きもいいんじゃない?
561名無しさん@ピンキー:2008/09/26(金) 01:17:09 ID:eSjvG531
寝小便をして別れさせようとしたが、付き合った男が本気で愛してくれてて、逆に病気かと思われて余計に関係が深く…とか
562名無しさん@ピンキー:2008/09/29(月) 23:56:05 ID:raKEy+Wz
保守。

化猫荘の大家一家、サラリーマン風のがきっとパパンで他のが息子だよな。
するってーとサザエ風小田島様はやっぱり女性なんだよな。
つまり、昼下がりの化猫荘で、〜禁断の人妻逢瀬〜みたいなエロパロも、


……すまん想像力の限界だ。
563名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 14:15:02 ID:8R0ZEsKd
他の一人はお下げで幼稚園の女の子に見えるんだけど…
あの顔で将来嫁の貰い手が心配だと思ったんだけど
小田島おばさんが結婚できてるんだから大丈夫かwww
564名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 23:31:04 ID:da14cp9r
アパートが女性専用の寮とかだったら
薬売りの夜這いネタとか出来るかもしれんが、薬売りも
店子だもんな。
565名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 19:07:20 ID:5qan7aiN
神が降臨するまでの保守として、全然エロじゃないネタを置いておくよ。
ヒマつぶしくらいになるといいけど。

● 空き部屋に入居希望の場合、大家までご連絡を ●

101号 小田島一家(生活全般、メインの部屋。夫婦が主に利用)
102号 小田島一家(兄と妹が主に利用。妹は幼稚園なので両親の部屋にいることが多い。)
103号 志乃&ややこ(逞しきシングルマザー。お料理上手。大家さんと仲が良い。)
104号 柳幻殃斉(自称・祈祷師、霊能力者。何かにつけて口ばかりでアテにならない。)
105号 《空き部屋》 ←店子募集中
106号 加世(勉強とバイトに忙しい女子大生。いつもお腹を空かせている。)
107号 源彗&お庸(仲良し美形兄妹。いささか仲が良すぎる。)

201号 久代(悠々自適の老女。アパート住まいだが金は持っている模様。薬売りの顧客。)
202号 敦盛&お蝶(おしどり夫婦…と思いきや、カカア天下。夫は大道芸人。)
203号 大澤&半井(東大寺カルテットのメンバー。売れないコント芸人。)
204号 室町&実尊寺(東大寺カルテットのメンバー。売れないコント芸人。)
205号 珠生(&化猫)(実は新聞社に勤めるバリバリキャリアウーマン。よく捨て猫を拾う。)
206号 薬売り(名前が薬売りなのに、何のバイトをしているか不明。謎の店子。)
207号 《空き部屋》 ←店子募集中(ただしこの部屋は人が入ってもすぐに出ていってしまう。)

●最寄駅 東武鉄道東上線 某駅(駅から歩いて10分)
●家 賃 四万五千円 共益費二千円 (礼金・敷金なし)
●建物構造 木造2K 西向き
●主要な設備 バストイレ別、ガスキッチン


ところで『刀を持った不審者』とはワカメのことだろうか?
それとも退魔の剣を持って立ってる薬売りのことだろうか?
場合によっては105号に佐々木さんが引っ越してきそうだ
566名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 21:09:03 ID:coOvDRXt
14世帯のアパートって結構でかめだな。
小田島様一家、そこそこの資産家か。
567名無しさん@ピンキー:2008/10/06(月) 23:03:35 ID:vXsdMBnH
>>565
>『刀を持った不審者』
ハイパーの事かと思ったのだが。
568名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 00:28:17 ID:ov8HJ9a/
>>567
公式では薬売りとハイパーは同一人物でしょ?
だったら不審者はやっぱり薬売りのことか。
刀もって各家庭に「真と理」とかやかましく聞きにいくという。
569名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 00:34:28 ID:d78ZAhrp
>>568はいったい何の公式を見たのだろうか。
570名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 01:16:59 ID:ov8HJ9a/
>>569
イベントでの監督の発言
571名無しさん@ピンキー:2008/10/07(火) 01:20:05 ID:ov8HJ9a/
>>569
ごめんね、途中で送信しちゃった。
イベントでの監督の発言「ハイパーは薬売りのセカンドパーツ」と、
設定資料のハイパーの説明「封印が解いた薬売りの姿」を見て。
572名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 00:34:31 ID:RF2UyCEf
以前、考察スレの方で色々考察されてたぞ。
現状のソースだけでは結局FAは出てない。
て訳で、色んなパターンで妄想すれば何度も美味しい。


ところで、不審者どころか「変質者」ハイパーとか、恐ろしい物を妄想してしまった・・・・・
「変質者」ワカメなら似合ってるけど。
573名無しさん@ピンキー:2008/10/08(水) 01:01:12 ID:C9wQWDB9
>>571
正しくは「封印が解けた薬売りの姿」じゃなかったか?

設定資料でもガンガンのアオリ文でもハイパーに対する名称は
「薬売り」であって、「(薬売りとは別の)謎の男」とは
書かれてないから、やっぱりFAが出てないとしてもハイパーと
薬売りは公式で同一人物なんだろうなー

が、同人やここでは色んなパターンで楽しんだ方がいいに決まってる。
「変質者ハイパー」っていうとものすごい変質者みたいだwww
574名無しさん@ピンキー:2008/10/10(金) 03:10:50 ID:PboU072s
セカンドパーツでも別意識とかあるかも知れんしな
575名無しさん@ピンキー:2008/10/11(土) 22:14:36 ID:88AX6BHU
公式では明記してないから推測の域を出ませんよ。
てか、考察スレで話した方がいいと思うが。

職人さん不足で過疎りかけてるな。
モノノ怪は(若い)女性キャラが少ないせいもあるのか?
576名無しさん@ピンキー:2008/10/13(月) 22:54:31 ID:hSDh2mZP
>>552の続き

金加世、まだ未完、NGワード神婚、全3レス。
本番入ります。
577神婚 11:2008/10/13(月) 22:55:50 ID:hSDh2mZP
「そ……っ」
 加世は絶句する。不安定な姿勢を支えるため夫の肩に添えた手に、逆らうように力がこもった。
「で、できません……!」
「駄目だ。来い」
 低い声で優しく、だが有無を言わせず命令されると、腰から砕けそうになる。
「でもぉ……っ」
 泣きそうになって赤い目を見つめると、軽く唇を啄ばまれた。
「……お前が痛いと言うのを聞いてから動きを止めるより、お前が自分で止まる方が早い。調整もきいてお前の負担が少なかろう。来い」
 加世はおずおずと自分の体の下へ視線をやる。見慣れなくて違和感を拭えない形のものが、加世へ向かってそそり立っていた。
 ―――うわぁ、うわぁ、うわぁ!
 ばっ、と目を戻すと、加世の様子に気づいた男が腰を加世の太腿に押しつけてくる。
「んぁ……っ!?」
 熱い。
「……わかるか?」
 触れた箇所からぴくぴくと細かい震えが伝わってくる。ぬるりと滑るのは、加世の蜜ばかりではない……かも、しれない。熱っぽい吐息が、耳元に吹き込まれる。
「……もう一度は、言ってやらん。お前が泣こうが喚こうが、勝手に動くぞ。―――迷うな、来い」
 ぎゅっと目を瞑って、加世は太腿の感覚を頼りにゆるゆると腰を下ろしていく。熱い塊に太腿の内側を撫でられて、ぞくぞくと背すじが震えた。
「……いいこだ」
「…っやぁ、もぉ……っ」
 半泣きで男の頭に縋りつくと、がっしりと片腕で抱え込まれた。もう片手で角度を調整したようで、ぬるりと再び入り口にあたる。先ほどの痛みを体が思い出して、勝手に息が詰まった。
「呼吸を止めるな。ゆっくりでいい、吐け」
「は……い……」
 恐る恐る体を沈めていくと、痛いが耐えられないほどではなかった。一旦止まって大きく息を吐き出す。集中のあまり全身に浮かんだ汗が、つぅと流れた。
「は、離さないで、ください……ね」
「ああ」
 綱渡りをするような加世の体を片腕で支えたまま、空いた男の片手が加世の丸みに沿って流れ、尻肉を掴む。むにむにと指を波のように順に動かして、柔らかいな、と呟いた。
578神婚 12:2008/10/13(月) 22:56:37 ID:hSDh2mZP
「こんなふにゃふにゃした体で、よくぞ立って歩けるものだ」
「立って歩けなかったら、困るじゃないですかぁ……っ」
「それはわかるが」
 手はさらに滑って、加世の二の腕をぷにぷにと弄んだ。
「……この腕で、よくあの壷が持ち上がったな」
「〜〜〜〜〜っ。もぉぉっ、そんな古い話! だっ、大体あれは! 大部屋、ぐるーって塩の線で囲ったんですよ!? 中身、半分くらいしか残ってなかった……はず、うん、たぶん……」
「実に勇ましかった」
 くく、と笑われて加世は真っ赤になる。自然、恨めしげな顔になるのを、男が宥めにかかった。
「そう怖い顔をするな。褒めている」
「あんまり、そう思えないんですけどぉーっ」
「夫の言葉が信じられないか?」
 むぅっと加世は唇を尖らせる。
「……それを言っちゃ、卑怯ですぅ……っ」
「許せ。元々お前を偲ぶよすがが少ない。……これから、増やすにしてもな」
 腕から背に回った指先が、つつ、と背骨に沿って撫で下ろした。
「ひぁんっ」
 ひく、と繋がりかけた箇所が蠢く。思い出したように加世の体から力が抜けて、また少し沈み込んだ。
「辛いか?」
「……だいじょうぶ、です……」
 ゆっくり、ゆっくり。
 促されて息を吐いて、励ますように、いたわるように頭と髪を撫でられて、また幾つかとりとめもない言葉を交わして、時々は愛撫も受ける。
 唐突に、気づいた。
 愛されてる。
 異形の目は、加世の様子をじっと凝視(みつ)めている。加世の体の状態に添うようにして、加世が男と同じ場所に辿りつくのを待ってくれている。
 じんわりと胸に喜びが広がった。大事にされるのって嬉しいんだ、と思う。
 当たり前のことだけれど、心の底から実感できるなんて、人生に何度あるだろう。
 喜びは熱になって全身へ沁みる。熱は加世の体を溶かして男とひとつになるのを助けた。涙が滲む。……入った。
579神婚 13:2008/10/13(月) 22:58:00 ID:hSDh2mZP
「どうした。痛むか?」
 語調は変わらぬのに、きろきろと金の『目』が泳ぎ回っているのが可笑しい。泣きながら笑って、首を振って、嬉しいんです、と尖った耳元に口を寄せた。
「すっごく、幸せで。嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。そしたら涙が、勝手に」
 ぴこぴことくすぐったそうに長い耳が揺れる。可愛い、とその動きに釘付けになったとき、首すじを舌が這って軽く歯が立った。
「ぁんぅ……」
「お前は、甘い味がする」
「甘い、の……好き?」
「嫌いではないな。……お前は」
「ふふ、大好き」
「だろうな。女子供は甘いものが好きだ。……だから甘くなるのか?」
 首をひねる男は、真剣なのかそうでないのかわかりづらい。ひとしきり忍びやかに笑って、加世はふと気づいて困った。
「えっと……。これ、から……どう、すれば」
「動けるか?」
「はい……」
 助けられて体を浮かせる。もう一度ゆっくり沈めると、さっきよりは楽に入った。ずくずくと下腹部が痛むが、痛みというより違和感に近い。男を受け入れて平気な自分の体が、なんとなく誇らしい。
 どちらからともなく視線が絡んで、口づけを交わす。深く侵入する舌、ぴちゃぴちゃと音を立てて舌が擦れあい、上顎のざらりとした部分を先端で撫でられる。ぷっくりした下唇を甘噛みされると、勝手に体がくねった。
中が擦れて、痛みがないわけではないのに、何故だか止まらない。やわやわと胸を揉まれる。くちゅと離れた唇の隙間から、黒く尖った歯が見えてぞくぞくと芯が震える。
 もっと欲しい。
 ねだるように白銀の髪をかきわけ頭を引き寄せると、男は応えて再度深い口づけをくれた。


   つづく


予想外にラブくなったw
580名無しさん@ピンキー:2008/10/16(木) 00:01:36 ID:EK8d9Klo
わわわわっふるぅう!
ラブラブで甘くて・・・
次の投下をお待ち申してます
581名無しさん@ピンキー:2008/10/16(木) 18:01:59 ID:mFIhpQQU
うほっww毎度GJです!
金加世バランス良いな
582名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 01:01:18 ID:+uX0SUPz
保守。規制激しいな。
583名無しさん@ピンキー:2008/10/27(月) 06:42:49 ID:f1S+B19x
ほす。
薬売りはたまに薬箱の中身を虫干ししようとして、
途中でイヤんなってふて寝してるとよいw
584名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 16:42:33 ID:xTGDCoYX
>>579続き

金加世、完結、NGワード神婚、全3レス、ギャグおまけあり。
おまけがやりたくてこのタイトルにした、反省はしない。
どうぞ。
585神婚 14:2008/10/29(水) 16:43:18 ID:xTGDCoYX
 たどたどしく、けれど本能に従って加世の腰がゆらめいて、繋がった箇所がくちゅくちゅと音をたてる。眉が寄るのは苦痛からばかりではなくて、火照った頬をなぞられると甘く声が零れた。
「あ……んっ」
 胸の先端を長い爪で軽くひっかかれて、背が反った。次第に摩擦は少なくなって、滑らかに男のものが加世の中を出入りする。ふ、と男が息をついて、様子に加世が顔を覗き込むより先に、衝撃が走った。
「―――あっ!?」
 突き上げられた、とわかったのは、今まで届いていなかった場所に男が達したからだ。思わずひけた腰を、男の手が掴んで引き戻す。
「……まだ、辛いか」
 尋ねる男の吐息が熱かった。低く掠れた声に、蕩けることを覚え始めた奥が、さらに蜜を吐き出すのがわかる。加世は勢いよく首を振った。たとえ本当に辛くっても、好きな男にされて嫌な女がいるわけない。
「へいき……です、から……」
 して、と願う。
 愛して。もっと。
 男に欲しがられている、それを与えることができる、という幸福に目眩がする。
 それに、加世の足りない部分をいっぱいに埋めてくれる男が、自在に動くとどうなるのか、興味もあった。
「あの、ね。あなたも、気持ちよく、なって……?」
 気持ちの丈を込めて髪を梳き、額の『目』に口づける。異形の赤い目が細まって、ああ、と加世の願いを聞き届ける応えがあった。
「―――っ、は、ああ……っ!」
 がくんと首がのけぞる。宙に踊った手をはっしと掴まれて、代わりに加世そのものが男の膝の上で踊らされる。
「あっ、あっ、あっ、」
 貫かれて、こじ開けられて、鮮血が流れる。こりこりと内壁を擦られると、火がつくようで汗が噴き出す。
 熱い。
 そうだ、優しいだけのわけがない。激しさを秘めた姿に、心を灼き切られて加世はここへ来たのだから。
 今度は体を灼かれる。灼き尽くされる。きっと灰の一片も残らずに、あの美しい火花にされる。現にほら、瞼の裏がちかちかする。
 本望だ。
 腰から頭のてっぺんへ雷(いかづち)が走る。両脚が跳ね上がって、かはっと衝撃に咳込んだ。身の程知らずに太陽を慕った娘。奇跡の降臨は身を滅ぼす。わかっていても、求めずにはいられなかった。
「やっ、ああっ、あああああっ!」
 叫び声に、辺りを漂っていた墨文字が一斉に震えた。宙を伝播する、声の軌跡が見える。伝わる、波紋。真っ白い空に虹色の輝点が浮かぶ。
 自分の体が炎と化すのを、一瞬確かに見たと思った。
586神婚 15:2008/10/29(水) 16:44:04 ID:xTGDCoYX
   *


 ぱちりと開けた目に、そらりす丸の派手な装飾が映る。うるさいほどに鮮やかな、現世。
 綺麗だ、と思った。
 お日様があるから、世界は色を備えて美しい。
「―――お疲れ様で」
 つやのある声にねぎらわれて、起き上がろうとすると全身が痛んだ。
「いっ……たぁ〜〜〜〜!」
「まだ寝ておいでなさい。水はいりますか」
「いりますぅ……」
 弱々しく答えて、視線だけを動かした先、薬売りの帯に退魔の剣が挟まっている。ちりん、と金色の鈴が鳴った。
「あたし……どうしたの?」
「一旦戻されたんですよ。人がずっとあそこにいるわけにゃ、いかないんでね」
「じゃ、夢じゃないのね?」
「せっかくの嫁の貰い手ですからねぇ。夢にしない方が、いいんじゃないですか」
「もぉぉっ! またその話ーーー!?」
 ぷーっと膨れると、おやおやと薬売りは笑う。
「初夜を終えた花嫁さんの割に……変わりませんねぇ」
「ぎゃー! 薬売りさんの助平! 変態! 親父!!」
 親父、の罵倒に、何故かぴくりと薬売りのこめかみがひきつった。
「……では、あれからの伝言はいらないということで」
「きゃあーーー! ウソウソ! ごめんなさい薬売りさん! 男前! 素敵! 日本一!」
 調子のいいことで、とボヤきながら、薬売りは加世の背を支えて助け起こしてくれる。口元に水を湛えた碗があてがわれた。
「朝日子でいいか、とのことですよ」
 こくりと飲んだ清水が甘い。十分に喉と唇を湿らせて、加世は首を傾げる。
「あさひこ?って?」
「加世さんの渾名でしょう。あちらへ行っても、名を取られぬように」
「もいっこ名前つけるの?」
「そうです。吾が妻……『あづま』で、日の眷属だから、朝日でよかろうと。子は猫の『こ』ですね。『ひこ』では彦に通じますから、単純に朝日でいいんじゃないかと俺は思うんですけどねぇ」
 ぶつぶつ言う薬売りの言葉が素通りする。眷属、と繰り返して胸が熱くなった。
 太陽に焦がれた人の娘が、その炎に灼かれて、それきりではなくて。
 嫁いだ。迎え入れられた。
 本当に……あの人の妻になった。
587神婚 15:2008/10/29(水) 16:45:45 ID:xTGDCoYX
「……加世さん?」
「ううん、あの、えと……嬉しいです、って、薬売りさんに言えばいいの?」
「朝日子? 朝日?」
「朝日子」
「……そうですよね、好いた男にもらった名前に、ケチをつけた俺が馬鹿でした。はいはい、じゃァあんたは朝日子で。妙な感じですが今日から家族です。どうもよろしく」
「えっ、薬売りさんが息子!?」
「誰が息子ですか!?」
 薬売りを通してこの光景を見ていた男が、笑いながら妻をからかうのは次の晩のこと。



 昔々、娘は神様に嫁入りし、自分も太陽になりました。



 めでたし、めでたし。




 おまけ。


『神婚さん、いらっしゃ〜い!』
「うわぁ、なんですかこれ! 箱に人が入ってる! 喋ってる!」
「てれびだ」
「てれび? よくわかんないけどすごーい!」
「出るか? 『いえす/のぉ枕』がもらえるぞ」
「枕?」
「つまりだな、ごにょごにょごにょ……」
「きゃーっ、もぉ、やだあなたったらーーーー!」


 おしまい。



ぽつぽつ投下におつきあいいただき、ありがとうございました。
588名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 21:49:34 ID:+MeeWdKq
                ∩
                ( ⌒)      ∩_ _グッジョブ !!
               /,. ノ      i .,,E)
              ./ /"      / /"
   _n グッジョブ!!  ./ /_、_    / ノ'
  ( l    _、 _   / / ,_ノ` )/ /_、 _    グッジョブ!!
   \ \ ( <_,` )(      /( ,_ノ` )      n
     ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ     |  ̄     \    ( E)
       /    /   \   ヽフ    / ヽ ヽ_//
589名無しさん@ピンキー:2008/10/31(金) 02:04:28 ID:IrvWDZZL
GJ 良いハロウィンになったねぇ
590名無しさん@ピンキー:2008/11/04(火) 00:38:28 ID:pa228fNg
ほしゅあげ
591名無しさん@ピンキー:2008/11/04(火) 01:15:03 ID:PK4sWFQO
うぉぅ続きがきてる
幸せな感じに完結してよかった!楽しませてもらいました
ありがとう
592名無しさん@ピンキー:2008/11/06(木) 06:21:12 ID:KH33t/Uw
オチに癒されたwwwww職人GJww
593名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 07:52:21 ID:VXUJXVaw
トレカ発売記念。
コンプしたけど、残念ながらエロパロるのはちと厳しい。
594名無しさん@ピンキー:2008/11/09(日) 08:27:10 ID:wPWbGglL
トレカ発売で一部のスレのみ沸いてるww
595秋宵華蝶:2008/11/12(水) 23:05:31 ID:ksPGOik7
薬×花魁です

エロくはないと(ry
もしかしたら…薬売りイメージに支障をきたすかもしれません。
すいません。イメージ崩れが怖い人はスルーでお願いします

「まぁ読んでやんよ」という方どうぞ↓
596秋宵華蝶 一:2008/11/12(水) 23:06:15 ID:ksPGOik7
「―――いらっしゃい」
女が戸を引くとからりと鈴がなった。古びた大きめの鈴の音は錆びついて侘しい。
「おや、これはこれは…。花紫様ではございませんか」
「…今晩いい?」
「…勿論で、ございますよ」
薄暗い中、蝋の火が妖しく揺れる。
細やかな彫刻が施された紅の文机の向こうにぼんやりと浮かび上がるその者は
煙管を口から離し煙を一息吐くと、答えてにこりと妖しく笑む。
浴衣を緩く着流し、灰色に波打つ長い髪は昼間と違い下ろしている。
その髪のすき間からは緋の隈取りに彩られた紺碧の瞳が微かに見える。
肘掛けに腕をかけ体をやや斜めに座すその姿は妖艶で、声を聞かなければ女と見紛うほど。
否、女にもこれ程の妖艶さは出せまい。
「先にお邪魔してるよ」
客の花紫と呼ばれた女はいつもの部屋に向かおうと体を左に向け部屋の方へ歩み始めるが、
すかさず男が止める。
「あぁ、御待ち下さいまし。」
「?」
「…前払い。」
しれっと男は手の平を上に向け軽く差し出す。
「…しっかりしているねぇ」
花紫は軽く息をつくと袖に手を入れ金を取り出し大雑把に男に手渡す。
「お陰様で。こちらも商売ですから」
男は金をしまいゆるりと立ち上がるとそのまま入口の戸を少し開き外に掛けている札をひっくり返す。
『満場御免』
「…いつも思うが、部屋も身も1つなのに『満場』とはねぇ」
皮肉を含め寒椿は言う。
「満場には違い御座いませんからね」
言いながら男は戸に鍵をかけると角に置いてある蝋を台座ごと持ち上げ部屋の方へ歩き出す。
「では、こちらへ」
597秋宵華蝶 二:2008/11/12(水) 23:09:07 ID:ksPGOik7
着いたその部屋は壁や襖に色とりどりの絵が描かれており、椿や象等が蝋燭の火に妖しく浮かび上がる。
十畳程の部屋の真ん中には大きめの派手に彩られた布団が一組。何が目的の部屋かは一目瞭然だ。
「それでは今晩御相手させて頂きます。太夫の花紫様には畏れ多くも」
男は三つ指を立て深々とかしづく。
「型通りの挨拶はいいよ。あんたもうち来てあたしを指名でもしてくれればいいのに。
いくら江戸一の太夫だからと言ってもあんたに払うよりは金も取らないんだからさ」
「そのうち…」
笑んで男は言う。
「いつもそのうちって言いながら一度も来た試しがない」
花紫はため息をもらす。
「私もある意味同業者ですからね…夜も忙しいのですよ。
其れより夜が明けてしまいますよ。…いらっしゃい」
598秋宵華蝶 三:2008/11/12(水) 23:10:59 ID:ksPGOik7
女を引き寄せると、男はゆっくりと着物を脱がせていく。
あんな長い爪でよくまぁ器用なものだと花紫は感心する。 男の動きは爪の先まで優美そのもの。
最後の着物一枚になると布団へ静かに寝かせる。
花紫は今更のように体が火照るのを感じた。
この男だけなのだ。自分がここまで羞恥を感じるのは。
客の男どもは乱暴で、興奮を隠そうと努めながらも隠せていない。
かく言う己も適当にあしらうだけだ。客を大事に等思っていない。
浴衣をゆるりと着流したままの男は仰向けの花紫を上半身だけ腕で跨いだ。
跨いだ左手で自分の上半身を支え花紫を覗き込むように穏やかに見つめると
右手で頬をなで優しく接吻する。長い髪が柳のように下がる。
これだけの事で太夫ともあろう花紫が身悶えを感じる。
この男に抱かれる時だけは身も心も大人しくなってしまうのだ。
売られる前の少女の頃に戻ったみたいに。
たった一人にでいい、愛されたいのだ。慈しみを受けたいのだ。
体は他人の欲に踏みにじられても心は決して侵されまいと、頑なに耐え、芸を磨いてきた。
結果今の地位を得た。ある程度は客も選べるようになったが、それでもやはり虚しく侘しい。
この男はどこまでも優しい。がっつくということが無いのだ。ただ時折何か危うい目付きをするのだが
599秋宵華蝶 四:2008/11/12(水) 23:12:18 ID:ksPGOik7
「…大人しくなりましたね。流石太夫ともあろうお方。お綺麗で御座いますよ」
「…み、みえすいたお世辞はいらない。アンタに言われたって嬉しくないんだから」
「おや、それは失礼致しました。…頬が赤く染まる所も可愛らしくいらっしゃる」
「うるさい!」
こういう時花紫はいつも気持ちと裏腹な事を言ってしまう。
素直になれない自分が嫌だと思うがそれ以上に気持ちを完全に読まれている事が腹立たしかった。
「それではお互い黙りましょう…?」
言って男は再び接吻し花紫の口は封じられてしまった。なだらかに舌を使う。
花紫は鼓動が一層激しくなるのを押さえるのに必死だったが
着物をゆっくり捲られるときに思わず呼吸が一瞬止まった。
瞬間男の目が微かに意地悪そうに細まったがそれ以外は何も変わらなく花紫はされるがままだった。

・・・
600秋宵華蝶 五:2008/11/12(水) 23:24:18 ID:ksPGOik7
・・・

「男で身売りなんて商売してんのアンタぐらいじゃないの」
あれから二刻程たったか。ようやく落ち着いて来た花紫は横に侍る男に向かって言った。
「さぁて…どうだか…」
「立ち入った事聞くようだけど…嫌なら答えなくていいんだけどさ、
何でこんな商売してんの?本業薬屋なんだろ。売れないの?」
「薬は売れますよ。…本もね。皆さんお好きなんですねぇ。」
くつくつと男は笑った。
「じゃあなんで…?その、…普通に嫁貰って本業だけやってればいいのに。
…話によるとアンタ、身売り男女関係なく、なんだろ?」
やや思いきったように花紫は言った。
「私はまだ嫁を貰おうとは思ってませんからねぇ。それに身売りって感覚は御座いませんよ。
確かにおっしゃるように男性の御相手する場合も御座いますがね」
男の目が妖しく光った。
「私は人をある程度選びますから、嫌なら払えない程の高い金要求したりしてお引き取り願いますし。
単なる道楽の一端ですよ…」
ほんとにそうだろうか、と花紫は何となく思った。確かに嫌々やっているようには見えないが、
…もしかしたら、この男にはさして取るに足らぬ事なのかもしれない。楽しくも無いが嫌がるほどでもない。
ただの仕事の一貫。かくいう自分もそんな所だから。最初は嫌で嫌で仕方なかったが今はある程度割りきれている。
これが悟りというものだろうか。
601秋宵華蝶 六:2008/11/12(水) 23:25:15 ID:ksPGOik7
花紫はこの男が薬の商いとこの仕事のみをしていると思っていた。
よもや人間以外が相手の奇っ怪な「別の仕事」をしているとはつゆしらず。
「変わった人だね…」
「そう、ですか?」
男は再びくつくつと静かに笑った。花紫はまじまじと男の顔を見つめる。うねる髪が邪魔をしてよく見えないが、
緋色と濃い睫毛に彩られた切れ長の目に、これまた緋をのせた筋が通った鼻。口元は上唇のみ蒼く隈取りを施されている。
たまに金に輝いて見える、うねる髪は南蛮から来たという一枚の絵を飾る額縁のよう。
この男の色香は化粧のせいだけではあるまい。花紫は軽く溜め息をつく。
「…アンタを見てると女の自信を無くすよ」
「…そうおっしゃられては私が男の自信を無くします」
「…そういう意味じゃない」
こちらの言いたい事を分かった上でのこの物言い。しれっと眉をひそめて困ったような口振り。
どこまで役者なんだか、と軽く花紫は舌を打つ。
602秋宵華蝶 七:2008/11/12(水) 23:34:37 ID:ksPGOik7
鳥の囀ずりが聴こえてきた。室内は窓も無いので暗さは変わらないが恐らくもう夜明けも近いのであろう。
「―――そろそろおいとまするよ」
「…では着付けして差し上げましょう。お立ち下さいまし」
だるそうに花紫は立ち上がる。男は手馴れたもので、脱がせた時同様、迷い無く着付けしてゆく。
ものの数分で来た時の姿に戻った。
「相変わらず手馴れたものよ。早いねぇ」
「…恐悦至極」
「…また来るから。一月後にでも」
どこからかカタカタと金属音がしたように花紫には聞こえた。
「…お待ち申し上げておりますよ」
笑んで男は言う。

からり、と鈴が鳴った。寒椿が戸を開け帰って行ったのだ。
「やはり…取り付かれている」
一人ごちたのは男だ。手元には赤い短刀がある。鞘の部分には赤い鬼のような、夜叉のような首が彫り上げられている。
「あの女…以前より伸びている。…首が。…一月後にはカタが着きましょう」
男の言葉に反応するように、刀の首がカタカタと鳴った。


一応、おしまい。




「読んだけど、つまんないじゃんよ!」という方ホントごめんなさい。
でも読んでくれてありがとう
続きもぼんやり考えたけど、こんな終わり方で。
もしかしたら薬売りが見せた幻想かもね…と書いてて思ったけど、わかりません。
形と真と理受け取って頂きたく候。
603名無しさん@ピンキー:2008/11/13(木) 20:18:52 ID:Gk9mWnxr
GJ。よかったよ
モノノ怪女郎屋でやったらきれーそーとかおもった
604名無しさん@ピンキー:2008/11/13(木) 20:33:49 ID:gxUUBMZj
退魔ものktkr!
CPものもいいけど、こんな風に目的のため淡々と不特定を相手する薬売りも
それっぽくてイイね。
できれば3カチンまで希望。
605名無しさん@ピンキー:2008/11/14(金) 02:01:55 ID:O3sSIhC7
きぼー
606名無しさん@ピンキー:2008/11/15(土) 02:27:29 ID:QQa/iS17
忘れてる方もいらっしゃるかと思いますがドSです、触手×お庸がどうにも煮詰まってしまいまして一旦他のを書きに来ました。
前に出た高校野球の話から生まれた薬売り(高校球児)×加世(チアリーダー)です、本番なしですが暇潰しにでもどうぞ。
607薬売り×加世:2008/11/15(土) 02:30:26 ID:QQa/iS17
晩夏の夕刻、薬売りは練習を終え重い体を引き摺り野球部部室に向かっていた。
誰もいないグラウンドに長い影が伸び未だ厳しい日射しが容赦なく彼の肌を刺す。

「んっ…、痛っ…」

ふと聞こえた声に足を止めると水飲み場に少女がいた。

チアのユニフォームに身を包んだ少女はシューズとソックスを脱いでおり蛇口からの流水に方足首を浸している、

「加世さん」

薬売りは声をかけた。

少女が振り向き束ねた髪が狐の尻尾の様にふわりと弾んだ。

「あぁ、薬売り君。お疲れ様」

「足、どうかしたんですか?」

薬売りが問うと加世は少し困った顔をしてはにかんだ、

「チアの練習で捻っちゃって…腫れてたから冷やしてたの」

痛めた足を擦り溜め息をつく。

「それは可哀想に、捻挫ならよく効く薬があるから私が診ますよ」

薬売りは加世に背を向け地面にしゃがみこんだ。

「はい…どうぞ」

「へ?…あっ、それは…」

おぶされと促す薬売りに加世は勢いよく首を振った。
「わ、私って結構筋肉質で重いから!薬売り君は細いから折れちゃうよ!」

「折れやしません…よ」

思春期の少女は頬を染め辺りをキョロキョロ伺うと、遠慮がちに少年の背に身を預けた。
608薬売り×加世2:2008/11/15(土) 02:32:57 ID:QQa/iS17
「よっ…と」

薬売りはすっと立ち上がり背中の加世に負担がかからぬよう深く背負い直す。

「やっぱり折れそう…」

加世が恥ずかしそうに呟いた、薬売りはふっと微笑んで歩き出す。

「これくらいで折れませんよ…、それより…柔らかくていい気持ちだ」

薄いユニフォームごしに柔らかな乳房が薬売りの背中に当たり本来の形を変えている、それが歩を進めるたびに揺らされ二人の体の間で窮屈そうに弾むのだ。

「んー…大きな玉蒟蒻を二つ背負っているような…、おっと」

「もう!変な例えしないで!」

耳まで真っ赤にした加世がこつんと薬売りの頭を拳で叩いた。



「じゃあそこに掛けてください」

促され加世はベンチに腰掛けた。

体育倉庫に連れてこられるとは思わなかった加世は終始そわそわとしている、その部屋はやや埃っぽく汗と土の匂いが染み付いていた。

暫し無言の時間があった後、ロッカーを探っている薬売りに加世が声をかけた。

「あの…薬売り君て野球部なのに何で髪長いの?」

「まぁ…そういう仕様ですよ」

「何で野球部なのにお肌真っ白けなの?」

「仕様…です…よ」

「へぇ、仕様かー」

無難な会話を二三交わすと薬売りは薬箱を抱えて戻って来た。

「かさばるからここに隠してるんですよ」

引き出しから優美な入れ物に入った軟膏を取り出し加世の脚を持ち上げる、粘った液体を指先ですくい熱を持った足首にそっと塗りつけた。

「ひゃ!冷たっ」

「…動いては駄目です…よ」
軟膏を塗り終えるとガーゼを貼り、包帯を手際よく巻き蝶結びを飾った。

「はい…これで大丈夫。念のため病院で診てもらって下さい」

「ありがとう、痛みも引いたみたい」
609薬売り×加世ラスト:2008/11/15(土) 02:35:10 ID:QQa/iS17
だが、薬売りは未だ床に座り込み加世の脚を持ったままでいる。

「…薬売り君…?」

すっと包帯を巻いた足首からふくらはぎを一撫でし薬売りは呟いた。

「綺麗な脚…ですね」

そして目線を落としたままゆっくりと足の甲に口付けた。

「あっ…!やだっ!離して!」

加世は驚いて脚を引こうとしたがその脚は薬売りに掴まれ彼の手の中に止められた、唇の温度が伝わり熱い息が皮膚を掠める。

眼球だけ動かし加世を一瞥し薬売りは薄く笑った、足の甲に押し付けた唇を滑らせ膝まで登るとぺろりと柔らかい皮膚を一舐めした。

「んひゃぁ!」

こそばゆさに身をよじりベンチからずり落ちそうになる加世、またも薬売りに軽々受け止められ元に戻される。

「まぁ…まぁ…、いいじゃありませんか…。おや、ここも擦りむいてますよ」

足首を支えていた手を膝裏に移動し脚を開かせ、プリーツスカートに隠された内腿に唇を這わせる。

「あ…」

「ほら…ここですよ…、疼きませんか?」

くしゃくしゃになったスカートの向こうの薬売りに見据えられ加世はもう抗うことはなかった。

―ぺちゃ―

小さな水音が静かな部屋に鳴り、

「こ、こらぁ――!!!何をしとるか――!!!」

怒号でかき消された。

いつの間にか入り口にジャージを着た厳つい男がわなわな震えて立っていた。

「…ちっ…」

「あ…小田島先生…」


終わり
610名無しさん@ピンキー:2008/11/15(土) 02:38:23 ID:QQa/iS17
全部書いてからなんですが舞台は現代の学校です。以上お粗末でした。
611名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 15:41:43 ID:dAnA4JFY
どS氏だあ!!
寸止めww
薬売り残念ww
612秋宵華蝶:2008/11/16(日) 21:50:15 ID:R0jsEOfr
>>603 >>604 >>605

ありがとう!
3カチンまで希望してくれてありがたいです。
という事で完結させました
結構長くなってしまった…。
内容重視のためもあり、エロは相変わらず弱いです…ギリギリです…
ドS氏に恐縮しつつ、
ひとまず「秋宵華蝶 第二夜」投下します
613秋宵華蝶 第二夜 一:2008/11/16(日) 21:53:00 ID:R0jsEOfr
―――からりからから。
「…約束通り」
「下弦の月に」
「今宵も一月前と同様、善い月でございますね。しかし地上の月に比べれば天の月もかくや」
江戸吉原は玉屋の太夫、花紫がこの男を以前訪ねたのは丁度一月前の下弦の月の宵の事。
「相変わらす口が減らないね。…いい?」
いつも通り煙管片手に艶やかな着流しで座す男に問う。男は煙を一つ吐くと、こくんと童のように頷いた。
「勿論。……お待ち申し上げておりましたよ。首を長くして、ね」
いつもの男の笑みに、なぜか花紫はいつもと違った僅かな暗雲のようなものを感じた。
ぞくり、と背筋を走るものがある。
「…どうなさりました?」
「…いや。今宵は冷えるな…」
「もうすっかり秋も深まって御座いますから。お風邪を召されぬよう」
例によって花紫は金を男に手渡した。
男は確かに、と金をしまうとこちらも例によって戸の札を返し鍵をかける。
「では、参りましょうかね」

そこはいつもと同じ部屋――――

のはずだった。
否、確かに同じ部屋なのだが―――。
「………御札?」
怪訝そうに花紫は壁一面に貼られてある白い紙を見つめた。
「…単なるマジナイですよ。ほら、巷で何とか言うモノノケが出るとか出ないとか。…御守り程度に、ね」
「…にしても、気味悪いね。何もこんなに張らなくても…これで客が寄り付くのかい?」
花紫は眉をひそめて男の顔を見る。
「…今日誂えたばかりですから。花紫様がお客様第一号で御座いますよ」
笑んで男は言う。花紫には男が本気なのか冗談なのか判りかねた。
「…でもこれじゃあ…あまりにも気味が悪い…」
花紫は顔をしかめ呟いて自分を抱き込むように両手を交差し肩を抱く。
絢爛豪華な内装は手のひら程の白い紙に覆われ、
その上には蝋燭の火に浮かび上がった自分たちの影が踊る。
花紫でなくとも気味が悪いであろう。
男は立ち尽くす花紫を片手でふわりと抱き込み、耳元で低く囁いた。
「今日ばかりは我慢なさって下さいまし。なに、いざとなれば札の事すら忘れさせて差し上げますから」
「……うん」
甘い言葉もこの時の花紫の不安を完全にかき消す事は出来なかった。花紫はただ黙って男の胸に顔を埋めた。
それはただ、札から目を背けんがためであった。
614秋宵華蝶 第二夜 二:2008/11/16(日) 21:55:32 ID:R0jsEOfr

「では太夫様。畏れながら今宵、お相手させて頂きます」
「…うん」
男は未だ不安げに立ち尽くす花紫を不意に抱き締めた。思わぬ事に花紫ははっと息をのむ。
先程と違い、今までに無い位の強い力だった。そのまま男は呟く。
「…目が覚めましたか。どうか私を見て下さいな」
「…うん…」
花紫は急に顔が火照るのを感じた。男の力が緩んだ。帯に手を掛ける。
するり、とゆっくり、しかし手際良く着物を脱がせていく。
着物一枚の花紫を床へいざなうと、男は再び抱き締める。
「寒くは御座いませんか。お風邪を召されては大変ですから」
「…大丈夫。どちらかというと…今はちょっと熱い」
「…よろしいことで」
笑みを含んだ低い口調に花紫はくらりとする。

テンプテーション。

誘惑というものがもし呪術だとしたら、きっとこんなものなのかもしれない…
思考力を奪うというか、頭の中が痺れる感じ…。花紫はぼんやりと思う。
男は穏やかに花紫を見つめるとツと顔をひとなでする。
「…なんか今日いつもとちょっと違わない?」
「…どうして?」
「なんていうか…あんた、前まではあまり抱き締めたりしなかったのに」
「花紫様をこちら側へ戻すためですよ」
「…こちら?」
「札に嫉妬したので御座いますよ。あまりにも札に注意がいきすぎるから」
くつくつと男は笑う。この男はどこからどこまで本気なのであろう、と花紫は虚ろに思う。
「私は常に本気で、御座いますよ」
花紫の心を読んだように男は言った。
「…そう…」
「何もかも忘れさせて差し上げましょう。…お喋りはそろそろお仕舞い」
615秋宵華蝶 第二夜 三:2008/11/16(日) 21:59:45 ID:R0jsEOfr

男は浴衣のまま女を封じるかのように四肢を女の左右に配し真上から見下ろす。
緋に隈どられた涼しげな目元に蒼い隈どりを配した上唇。
なんとなくいつも笑っているように見えるのは隈取りのせいだろうか。
花紫は心の臓が高鳴るのを悟られまいとする。
男はゆっくり顔を下ろしそっと口付ける。男のしだれかかる長い髪によって外界は完全に遮断された。
花紫にはもう男しか見えなかった。

柔らかい触りから、玩ぶように舌が絡む。不意に花紫に鈍い痛みが走った。犬歯で唇を甘噛みされたのだ。
咄嗟の事で両腕が動いたが、瞬間片方づつ手のひらを指を絡ませるように握り込められ
顔の左右に押し付けられた。花紫が目を見開くと男はツと目を開け笑むように細め再び閉じた。
男の指がいやらしく、勿体つけて絡む。
これで花紫は完全に動きを封じられたようなものだ。この男には今まで感じたことの無い束縛感。
しかしその束縛が花紫にはなぜか心地よかった。
―――女は目を閉じた。
616秋宵華蝶 第二夜 四:2008/11/16(日) 22:06:44 ID:R0jsEOfr



辺りはしんとしている。
男は眠る女をスと見つめる。
己は床の傍らに座し、行灯に手を伸ばすと、油皿を枕元に置く。
黙って男は女を見つめる。

いかほど経っただろうか。
ちりん、と鈴の音がなった。布団を挟んで女の体の上に配置した天秤が傾く。
壁の札が紋様を描き一気に赤く染まった。直後女の首がわなわなと動き出した。
「…来たか」
女の首は身じろぎするように震えが激しくなり、徐々に伸びる。
まるで震えの反動を利用して首事態が伸びんと欲するよう。
「…油が欲しいか」
男は首に向かって言った。元の位置から三寸ほど伸びたところで首は震え続ける。
「…結界を貼ってある。あがいても好きには動けまいよ」
「…おのれ…」
この世のモノとは思えぬ声で呻き、女の首がぐりん、と男の方を向いた。
蝋燭の僅かな光の中に浮かび上がったその顔は夜叉のようでありもはや花紫の面影も無い。
首は目を見開いて男を睨み付けた。
「その人を解放しろ。…ろくろ首…いや、寒椿。貴女でしょ。……姿を表せ」
カチン、と短刀の首の歯音が響いた。
黒い影がむくりと花紫から起き上がる。
男は影を見据えた。
617秋宵華蝶 第二夜:2008/11/16(日) 22:08:45 ID:R0jsEOfr
読んで頂いた方、ありがとうございました。

続きはまた後日書き込みます
楽しんでいただければよいのですが…
618名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 23:02:38 ID:MMib6QUy
ドS氏の書く文章は、相変わらずエロくてGJ!
「仕様ですよ」の問答が、赤頭巾とオオカミの会話に見えたwww

「どうしてそんなに大きい耳をしているの?」
「あんたの悦い声が、よぉく聞こえるように、ですよ……」

こんな感じにw

>>612
完結させたってことはもう手元では完成済み?wktk
619名無しさん@ピンキー:2008/11/16(日) 23:20:08 ID:R0jsEOfr
>>618

い、一応、完成済み…(-ω-;)
620名無しさん@ピンキー:2008/11/17(月) 00:28:38 ID:/OTR6SPR
>>612
やばいハマってきたww
首長くして待ってるわ
621秋宵華蝶:2008/11/19(水) 18:52:06 ID:6038hnDF
>>620
ウエンツされちまいますぜwww

待ってくれた方ありがとう
ちょっと長いですが、「秋宵華蝶 満願成就の最終夜」
一気に投下します。怒涛の(とか自分で逝ってみる)最終回です
…誰にも突っ込まれないうちに自分が突っ込みを入れてやる…

薬売り…お  ま  え

いろんな意味でね。つか自分にも突っ込みどころ満載。
ではどうぞ↓
622秋宵華蝶 満願成就の最終夜 一:2008/11/19(水) 18:54:00 ID:6038hnDF

「ねぇ…あんた一人身なんだろ?」
「…だったら?」
「アタシをもらってくれないかい?」
「申し訳ないのですが…当分は一人身でいるつもりなのでね」
女は笑った。
女の名は寒椿という。寒椿は格子であった。太夫に次ぐ身分の花魁である。
ある時寒椿のいる店で化物騒動が起こった。
その時、たまたま薬の商いで居合わせたのが、この男だったのだ。
化物に襲われそうになった寒椿は万が一の所でこの男に助けられた。
寒椿は店では相応の地位もあったので化物に関して男に数々の情報を提供し、協力する事が出来た。
男に接する内、寒椿は次第に心惹かれていった…。


「…貴女…ご自分が亡くなってからいかほど年月が経ったと思っているんです?」
男は影に向かって声をかける。影は黙って立ち尽くす。
「…アヤカシとなった貴女は今やただの化物でしかない。よって斬らねばならぬ。
…貴女の為にも…この娘の為にもね。ろくろ首は夜眠りについてから油を舐めようと首を伸ばす…
眠ってからじゃないと姿を表さないとは、まことに厄介なモノノケになってくれたもんですね…」
「…どうして…アタシだと…」
影は呻いた。
「この娘、貴女にちと似たところがございましたからね。それに…たまに貴女の顔が出てましたよ」
男は影を見つめる。影は狼狽するかのように揺らめいた。
「貴女の想いが花紫の想いと同調し、人を欲し想う心が首を伸ばしろくろ首となった。それが…真」
カチン、と渇いた音が響く。
「…人を欲してはいけないのか。お前を欲してはいけないのか。…二度も死ぬのは嫌じゃ。
お前を忘れられなかった私は一人入水した。六つで売られた頃から生きるため、
家の借金を返すため芸を磨き客におもねり、格子にまでなったが結局欲しいモノは手に入らなかった…
好きな男には振り向いてもらえず、好きでもない男の相手をしなければならぬ毎日。
…世は不条理じゃ。こんなにも侘しく、虚しい。
生き延びんがため、生きてきたがお前にでおうて望み叶わぬまま生きるのがこんなにも辛いことを知った。
あたしをこんな形にしたのはお前なのだよ?そのお前があたしを斬ると言う。お前は人を想うた事があるか?」
男は黙って影を見つめる。
影は間をおいてぽつりと呟いたが男に聞こえたかどうかは定かではない。
「…否、あたしが怨んだのはお前等ではない…」
623秋宵華蝶 満願成就の最終夜 二:2008/11/19(水) 18:55:37 ID:6038hnDF

影は発狂するように大きくうねる。
「…嫌じゃ、嫌じゃ…もう、一人は嫌じゃ!もう嫌じゃ…」
「…それが…理」
カチン、と短刀の首がなった。
「形と…真と…理によって剣を…」
「お前を道連れるのが叶わぬなら、この娘を貰うてゆく!」
「…解き放つ…」
影は一瞬広がり大きく蠢き、娘の中へ戻ろうとした。
「その娘の体は天秤が守っている…もう戻れまい。大人しく斬られよ」
夜叉の頭を持つ剣を手にする男は金の衣に金の紋様を褐色の体に纏っている。紅い帯が鮮やかに宙を舞う。
そこには先ほどまでの白い肌の細く女のような男は居なかった。
「憎し憎し…」
影は花紫に入れぬとみるやいなや男に襲いかかった。迫り来る影は二本の赤黒い細い影をたなびかせていた。
後方にたなびくそれは、さながら涙のよう。
「あなうらめしや!!」
男は剣を振るう。呪詛のような刃は美しいほどの光と彩色を放つ。男の長い銀髪がなびいた。
「静まれ…転生の地で安寧に生きよ」

「滅!!」
男は一心に剣を降り下ろした。
閃光が、走った。



辺りは静まりかえっている。
男は一人床の傍らに座し佇んでいる。床では花紫が安良かに寝入っていた。
男は女の頬をさらりと撫でて一人ごちた。
「……人を想うた事があるか……世は不条理……」
624秋宵華蝶 満願成就の最終夜 三:2008/11/19(水) 18:57:26 ID:6038hnDF

花紫は目を覚ました。傍らには男が寝入っているようだ。花紫は男の腕の中にいた。ぼんやりと辺りを見回す。
どこからか光が漏れているようで、光の筋が数本、室内に走っている。
「……朝…?」
花紫は呟いて、はっと慌てた。
「…ん…」
男も目を覚ましたようだ。
「…おはようございます」
花紫を抱いたままの姿勢で眠たそうににこりと笑んで挨拶する。
「…う、うん…あたし…もしかして寝ちゃったの…?」
花紫は青ざめて恐る恐る男に問うた。
「そうですが…何か問題でも?」
「い、いや問題っていうか…あ、あたし自分ではわからないんだけど、
寝相悪いみたいだから一人の時しか眠らないって決めてたんだよね。それで昔客一人逃しちゃって…」
ひきつった笑いを浮かべ花紫はおろおろと話す。声のトーンもどこかおかしい。男は、ははぁと心の内で呟く。
「安良かに寝入られて御座いましたよ。この通り、大人しく私の腕の中に収まって……」
蠱惑的に男は笑んで言う。花紫は一気に赤面した。
「それより…よく眠れましたか」
男は穏やかに問うた。
「う、うん、それはなんか久しぶりにぐっすり眠った感じ…肩こりっていうか、
いつもの起きた時に感じる首の痛みも酷くないし」
「肩こりですか…?」
「いつもは起きた時に酷くてね…そうだ、なんかいい薬ない?」
男は少し考えると一人で妖しく笑んで答えた。
「…それではしっかり効く善いものが御座います。お出しして差し上げましょう。
……あぁそういえば昔、ろくろ首の女を治したとかどうとか言う、逸話も残っている妙薬でしてね…」
「ほ、本当!?」
女の顔が心なしか輝いたように見えた。
「逸話ですけどね。…でもまぁ火の無いところに煙は起たぬと申しますから…。一粒で効果覿面、ですよ」
「じゃあそれ貰っていくよ」
花紫は嬉々として笑顔で答えた。
625秋宵華蝶 満願成就の最終夜 四:2008/11/19(水) 18:58:30 ID:6038hnDF
「…そう言えば…御札は?」
安堵して辺りを見回した花紫は怪訝そうに呟いた。
昨夜貼ってあったはずの御札が一枚残らず消えていたのだ。
「…あれは昨夜の内に処理しましたよ。客が怖がるんじゃあ元もこもない…」
「全く、顔はいいのに趣味悪いんだからね…」
「私の所に通う貴女も十分悪趣味で御座いますよ…」
「それは…」
赤面して花紫は顔を背ける。
「お仕事の方はどうです?」
不意に男が話題を変えた。花紫は眉を潜めて答えた。
「どうって…別に。もう慣れたし」
「私はね…この仕事畳もうと思っているんですよ」
「えっ…?」
花紫の顔色が変わった。
「元々、目的も無くふらりと始めたもの。そろそろ別の地へ行こうかと」
「そんな…じゃあ…」
花紫の目からは自然に涙が溢れた。この男の存在が花紫にとって生きる糧となっていた。
今までの逢瀬はたった数回だったが、花紫にとってこの男は生きる意味そのものとなっていたのだ。
男は黙って女を見つめた。
「…あんたがいたから…私は生きてこれたのに…」
「…違います。私なんかよりもっと近くにいて貴女を大事に思っている人がいるはずだ」



花紫の脳裏にちらりとある男の顔が浮かんだ。

626秋宵華蝶 満願成就の最終夜 五:2008/11/19(水) 18:59:43 ID:6038hnDF

その男は花紫の側にいて雑用をこなしていた。
分をわきまえ、従順で優しい目をした男だった。
落ち込んだ時はいつも決して近寄らず、側に侍りただ言葉で励ましてくれた。
「ち、違う…」
「やはり思い当たる節がおありですね…
私なんかよりその男の方が余程貴女を幸せにすることができるはずです」
花紫は寝返りをうち男に背を向けると黙って聞いていた。
「花魁の定年は確か二十八あたりでしたね…貴女にはまだ先だ。
しかし…そろそろ自分を一番に思われても良いのではないですか。
…そうそう、今まで頂いたお金はそっくりそのままお返ししますよ。
貴女がこれからどうするのか、それは問いませんがこれだけあれば暫くは何もせずとも楽に生きていけましょう」
花紫は顔を伏せ、暫く言葉も出てこないがやっとの体で口を開く。声が震える。
「…わかった…あんたの事は諦める…だからもう少しだけ…ここに…居させて…」
「…良い子だ」
男は腕を伸ばし花紫をこちらへ向かせると優しく強く抱き締めた。
女は男の胸に顔をうづめ泣いた。男の髪が柔らかく絡む。嗚咽が込み上げてきた。




「……柄に無い……」
女が去った後の戸を虚ろに見遣り、男は自嘲めいた口調でぽつりと言った。
男はふらりと、よろける様に立ち上がった。着崩した浴衣の裾と長い波打つ髪が弱々しく揺れる。
床に置かれていた緋色の短刀が物言いたげにカタカタと音をたてた。

昔からろくろ首は美しい遊女の姿で描かれる事が多い。
「悲しき…モノノケ」
自ら刃に飛び込むほどに。
627秋宵華蝶 満願成就の最終夜 六:2008/11/19(水) 19:00:41 ID:6038hnDF


「ここ辞めようと思うんだ」
目の前の太夫の言葉に男は目を見開いた。
「辞めて…どうするおつもりで…?」
「どうしようかね…寺にでも入ろうと思うよ。心穏やかに暮らせるかな」
「…本気ですか」
男は動揺を隠せないようだった。物静かなこの男には珍しい、と花紫は思う。
「うん」
穏やかに太夫は頷いた。
「では…」
男はやや言葉につまり、後に思いきったように口を開いた。
「で、では私の元へ来ては頂けませんか?無礼は承知の上で御座います。
私は貴女の側に侍るだけで幸せで御座いました。貴方をお守りするためならなんだって致します。
…勿論、お断り頂いて結構ですが…」
暫しの沈黙があった。男は俯きつつ、その沈黙に耐えた。
「…本当に?」
キ、と男は顔を上げた。
「冗談でこんなことが申せましょうか。ずっとお慕い申し上げておりました。
高嶺の花と、自分に言い聞かせてきた私は今、一世一代の覚悟を決めた所で御座います」
花紫は呆然と男を見つめ、目に涙を浮かべた。
「こんな近くに…いたのに…」
花紫は弱弱しく呟いた。
「…ありがとう…佐吉。あの人が言ったこと…本当だったんだ…」
「…?あの人とは…?」
「西のあの小さな山の上に変わり者が住んでいてね。その人が教えてくれたんだ」
花紫は外を指さし説明したが、佐吉は怪訝な顔をする。
「…失礼ですが…あの山の上には今は落ちぶれた古寺しかないはずですよ。人が住んでるわけは…」
「それは古い話だろ。今はもっとちゃんとしたものが建ってるよ」
「…おかしいですね…」
佐吉は未だ納得の行かない様子で首を傾げる。
「じゃあ案内するよ。あの人まだいるか分からないけど…。
もしいたらあんた紹介して、薬のこととか…お礼もいいたいし」
花紫は楽しげに笑んだ。
628秋宵華蝶 満願成就の最終夜 了:2008/11/19(水) 19:04:31 ID:6038hnDF
下弦の月の晩をぼんやり思い出しながら花紫は佐吉を案内した。夜以外でこの道を通った事は無かった。
「こんなとこを夜な夜な共の者もお付けにならずお一人で行かれるとは無用心すぎます」
佐吉は眉を顰め地味に抗議したが、まさか夜這いに行くためだからとは花紫でも言えず、黙って聞き流した。
長い石段を登り、たどり着いたその先には、建物が見えた。
「…やはり…」
佐吉は頷いた。花紫は呆然と立ち尽くす。まさしく古寺だ。今にも崩れそうな体である。
近づいてみたがあの男がいた建物には到底見えなかった。
一陣の風が吹いた。

からりからから。

聞き覚えのある錆び付いた音にはっとして花紫は辺りを見回す。
寺の賽銭箱の真上に吊るされた鈴に目が止まった。
古びた鈴の音は、まさしくあの男に迎えられる時に何度も聞いた音だった……



後日、江戸の町は一つの話題で持ちきりとなった。
「あの、花紫太夫が消えたらしい」
「消えたって…どういうことだね?」
貰い手が決まったのか、それともただ一人姿を晦ましたのか。もしくは病にでもなって…。
様々な憶測が飛び交う中ただ確かなのは、玉屋を訪れてももうそこには花紫は居ないという事だ。
真相は江戸の小市民には分かりえなかった。
真相が分からぬ人々は、ただただ「消えた」とばかり噂した。
天保十年。玉屋の花紫太夫をもって、太夫という地位も江戸吉原から完全に消えた。
後の世に、花紫は江戸吉原最後の太夫として未来永劫語り継がれることとなる。





629秋宵華蝶 満願成就の最終夜:2008/11/19(水) 19:13:06 ID:6038hnDF
終わりました!
読んでくれた人ありがとう。
パロってみて、モノノ怪の脚本家さん達凄いなって事を改めて感じました

「秋宵華蝶」の段階ではまさか主人公が花紫になるとは思ってなかっ(ry
三かちん希望してくれた人、ホントありがと!

そしてエロ無しと言いそびれた…ウエンツされて来ます
630名無しさん@ピンキー:2008/11/19(水) 22:03:52 ID:O3dX/KL9
GJ!めっちゃ気持ちよく読めたぁ
631名無しさん@ピンキー:2008/11/20(木) 20:37:05 ID:Mr7jr5FZ
>>629
エンディングにナツノハナが聞こえたやうな
632名無しさん@ピンキー:2008/11/20(木) 21:03:09 ID:a8R8O1gp
合いそうだね
633名無しさん@ピンキー:2008/11/27(木) 23:42:03 ID:04Mkq2Ww
保守!
634名無しさん@ピンキー:2008/11/30(日) 17:44:16 ID:Y5ukJDjn
最近知ったけど花紫って実在の人だったんだね
635名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 00:26:44 ID:ZYfTGbrx
え、そうなん?
詳細うpよろしく

636名無しさん@ピンキー:2008/12/01(月) 00:48:57 ID:OVa3B1nq
ttp://www.himejifan.com/manabu/monogatari/2takao.html 
一番下の『吉原の太夫とは』のところ

ttp://www.seibidou.com/cgi-bin/herodb/souko/bin/bin080209140754009.jpg
歌麿の「玉屋内花紫」
637名無しさん@ピンキー:2008/12/02(火) 01:59:06 ID:42vT5F/H
>>636
玉屋かぁ。画像まで上げていただいてありがとうございますっ!
638名無しさん@ピンキー:2008/12/07(日) 09:42:29 ID:GDo2IjbY
保守
639名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:24:45 ID:bO1mKlyn
保守るとき保守れば保守る!
640名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 21:05:55 ID:sRTfq7Jt
万人の万人による万人のための保守
641薬加で薬受け風味:2008/12/16(火) 00:01:09 ID:GDUh34YQ
今のところ加→薬で、前半薬受け気味。
途中ですが、投下してみます。

642薬加で薬受け風味1:2008/12/16(火) 00:03:02 ID:FZuBnRIz
男が長屋の戸を引く。
いつもならすぐに、おかえりなさい!と満面の笑みで迎えてくれるはずの娘の姿が、ない。
おかしい。こんな時分に家にいないなんてことは、今まで一度もなかった。
おそらく夕食になるはずだったはずの食材達は、桶に浸かるか、まな板の上に転がるか、
はたまた鍋の中。なんとも中途半端な有様。
留守中に何かあったのか・・・。不安がよぎったその時、がらっと背後で鳴る引き戸の音。
すぐさま振り返ると、今まさに姿を探し求めていたその娘が引き戸にもたれかかる様に
そこに立っていた。
「加世さん・・・?」
怪訝な顔でその娘の名を呼ぶ・・・が、反応がない。様子がおかしい。
顔はうつむき加減でよく見えないが、まとっている空気が、明らかにいつもと違う。
あの溌剌とした雰囲気が微塵も感じられない。何事かと側に駆け寄り、重心を自分に移すようにして
引き戸にもたれかかっていた肩を抱き寄せた。
「・・・んー?」
とようやく娘の声がしたかと思うと同時に、男は眉根を寄せた。
こいつぁ・・・・・。なんだって、こんな・・・。とため息をつく。
立ち込めた匂は、いつもの娘の柔らかく甘い香とはほど遠く、鼻の奥まで刺激する。
「どこに・・・行ってたんです?」と、不機嫌な色を帯びた声色で問うと、ようやく娘は顔を上げた。

643薬加で薬受け風味2:2008/12/16(火) 00:06:24 ID:GDUh34YQ

「・・・あーくすいういさんじゃないれすかー。おかえいなさーいv」
へらっと締まりのない顔で、答えになってない応えをする娘。
頬はまるで情事の後のように薄紅に染まり、唇は熱を持ったように紅く、いっそう厚みを増して見え艶やかである。
半落としの瞼の向こうには、潤んだ漆黒の瞳。・・・・あぁ。と、男は先ほどより深いため息をつく。
脊髄の芯がにわかに疼く。
その全てを貪りたい衝動を抑えながら改めてもう一度、語気を強めて問う。
「ど・こ・で。飲んでたんですか?」
これだけは確かめておかなくてはなるまい。
このあたりは長屋が並ぶばかりで、飲み屋は一軒だってない。見れば、足もともおぼつかないあり様。
一体どこで飲んでいたのか・・・いや、正確には「誰と」飲んでいたのか。
それだけは聞き出さなくては、この先の娘への対応も変わってくるというもの。
それがもし、男であろうものなら・・・と勘ぐる男をよそに、娘は気持ち良さそうに瞳を閉じてしまった。
「ちょっと・・・!加世さん?!」質問に答えて下さいと男が肩を揺さぶると、
娘の首ががくっと振れて、仕方なくといった風に散漫に、とろんとした瞳を開く。
その焦点の合っていない瞳が、達した後の様に似ていた。
男は心の臓ではないところで拍動を感じ始める。
「今まで、誰といたんです?」
焦れた響きを帯びる問掛けに、ようやく娘が答える。
「・・・さえさん。おむかいの・・・」
あと・・・ご近所のみんなもー。にこにこと答える娘に、さらに問いかける。
「みんな、とは。」
「みんなはみんなですよぉー・・・。」
結さんとかー。お静さんとかー。それとー・・・と、たらたらとした応えに痺れをきらし、男が核心を問う。
「そこに、男衆はいなかったんですかい?」
「いませんよぉー?・・・・・だってねぇ」
と娘は上目づかいで男を見つめると言った。
・・・おんな同士の話をしたくて、集まったんですもん。
644薬加で薬受け風味3:2008/12/16(火) 00:11:11 ID:FZuBnRIz

そういう事か、と男は納得した。
そういえば今朝、近所の女衆が加世を訪ねてきているのを出掛けに見た。
あの時、今夜の女だけの飲み会の誘いを受けていたのだろう。
ひとまずは、安心した。男の劣情を煽って止まないこの娘の色は、他の輩には見られずに済んだようだ。
そう思うと、また腰が疼きだした。
そういえば、己が酔ってこの娘を貪ったことはあっても、その逆はなかったな。
などと考えていると、娘と視線が交錯した。

「ねぇ?・・・くすりうりさん。」
・・・あたしに、させて欲しいことが・・・あるの。と上目使いで言ったと同時に、娘が思いもよらぬ行動に出た。
その行為に、男は思わずうっと声を漏らす。
娘の掌が己を撫で上げたのだ。
ただでさえ、酔った娘の艶に疼いていた根が、にわかに立ち上がる。
その娘の手を思わず両手で掴むが、娘はもう片方の手でさらに擦り上げる。

「加世さん・・ッ」

声が上ずる。男は混乱した。
普段では考えられない行動。娘の掌から与えられる初めての快感に、思考が止まる。
娘は距離を縮めると、男の耳元で囁く。

「ね、お願いだから・・・。」
早く脱いで?と、可愛らしくおねだりをした。
645薬加で薬受け風味4:2008/12/16(火) 00:19:46 ID:FZuBnRIz

衣擦れの音が、明るい部屋に響く。

普段の二人の閨事は、文字通り閨(やみ)の中で為す。
それは男が初めて娘を抱いた夜からの決まり事のようでもあった。
娘は、男からの淫薬の強要を甘んじ受けることはあっても、闇だけは守り通してきた。
男は夜目の利くほうではあるが、闇にもどかしさを感じるのが常であった。
身体を重ねるようになってから、日が浅いわけではないが、一向に慣れず、恥じらう娘を愛しく思う。
一方で、己の一物を咥えこむ華を、律動に合わせ揺れる柔らかな実を、
乱れながら啼き、快楽に溺れる表情を、余すとこなく存分に眺めたいという劣情が男の中でくすぶっていた。

すでに襦袢姿の二人は脱ぎ捨てた着物の上で、膝立ちのまま互いの腰紐に手を掛けていた。
娘が男の衣を脱がせたことは、今まで一度もない。
それが今夜は、脱いでとせがむばかりでなく、自ら男の腰紐に手を掛けている。しかも明かりの下で。
男は、めったにないその状況を、楽しむことに決めた。
娘の腰紐を解き終えると、襦袢の前が肌蹴たが、あえてそれを肩から落としはしなかった。
そのまま腕を下ろし、娘の好きにさせてやる。

「いったい何を、してくれるんです・・・?」と言う男の口が厭らしく嗤う。
近所の年増な女衆に吹き込まれたことでも試してみたいのだろう、ということは大体予想がついた。
娘は男の下穿を下ろすと、下帯に手をかけながら言った。

「・・・さっきね、教えてもらったの。」
ぺたんと座り込むと、娘の目の前にはちょうど、下帯の下で既に十分に立ち上がっている男がある。
ゆっくりとそれを解いていく。
現れた男は、下帯から解放された反動で娘の目の前で軽く振れ、その先が娘の鼻をかすめた。
そのわずかな刺激にも男の腰がびくッと震えた。
思わず吐息が漏れそうになるのを堪える代わりに、眉根が寄る。

己自身の目の前に、紅く艶やかなふっくらした唇がある。
娘の大きく潤んだ瞳に見つめられている。
そしてそのさらに奥には、深く谷を作る乳房。
その光景に煽られ、拍動しながらさらに大きさを増す自身。
早くッ・・・その唇で、舌で、胸で、包みこんでくれ・・・!
646薬加で薬受け風味5:2008/12/16(火) 00:26:44 ID:FZuBnRIz
娘は初めて光の下で見る男に意識半分で感心していた。
きれいな肌色・・・あたしの肌と薬売りさんの肌とちょうど中間くらいかしら。
と魅入りながら、ふふっと笑った。その吐息がまた男の先端を刺激する。
「加世・・・さんッ!」
もう限界とばかりに、男は両手で娘の頭を押さえ腰を突き出してきた。

「やッ・・・、も〜ぅ!動いちゃだめですぅ〜」
娘は顔を反らし、男の先は娘の柔らかい頬に擦りつけられている。
はぁ・・・っ!と男が吐息を漏らした。
頬に触れただけでこの快感。それがその唇なら・・・ッ!と男の限界がすぐそこまで迫ってきていた。
娘は男からの頭の拘束を解くと、上目づかいで言った。

「お願いだから・・・じっとしてて?」
ね?と首を傾けながら言う娘の笑顔が憎らしい。
「では・・・早くッ・・・!」
と今まで聞いたこともない切ない声を上げる男とは対照的に、娘は余裕の表情で答えた。

わかってますから・・・。」

そう言うと、娘の両手が男の大腿に触れた。
647薬加で薬受け風味:2008/12/16(火) 00:30:39 ID:FZuBnRIz

王道スロー展開ですいません。

後半はまた後日。
648名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 21:11:55 ID:RIbDdPMS
乙でーす
649名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 23:31:46 ID:zCJsSa+j
そろそろ和姦秋田。前スレみたいなハードなやつキボン。
650名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:23:00 ID:yDcNyBJH
性交以外はどうだろう
自慰とかSMとかおしっこ我慢とか
651名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 00:42:09 ID:/cXTrYM/
で、>>646の続きは来ないんだろうか。
投げ出すのは感心しないな。
652名無しさん@ピンキー:2008/12/26(金) 00:58:58 ID:zrCJYUpM
投げ出しっつか
秋田って言われたから需要無いと思って自重したのかと思ってた
自重する必要は勿論ないけどね
まだ書き上げてないだけかもしんないが
653名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 03:46:26 ID:NfMpCAaH
小田島キボン
654名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 13:46:54 ID:0ef3QA5b
自重なんかいらねえ!
来いっ
655名無しさん@ピンキー:2008/12/30(火) 21:05:11 ID:oxA1kuYT
まとめると小田島で自重せずハードな自慰?
ハードル高えなおいw
656名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 03:12:13 ID:XwR3VPpj
まとめんなw
圧縮落ち免れてヨカタ。よいお年を!
657名無しさん@ピンキー:2008/12/31(水) 04:14:55 ID:cbWq3tDo
小田島で自重せずハードな自慰で姫初め?
濃度も高いなw

>>646戻って来いっ
そして、よいエロパロを!
658真央×小田島1:2009/01/01(木) 03:47:04 ID:90YqCVdw
>>653-657の流れで即席書いた
小田島で自重せずハードな自慰をする真央様



長い黒髪を振り乱し、上下に揺れる白い体を、小田島は陶然と見上げていた。
ほっそりとした肢体には些か不釣り合いとも思える、豊かな乳房が弾力をもってはずむ様は煽情的で、目を逸らすことが出来ない。
堅物だの愚直だの言われても、己も所詮はただの男なのだな、と小田島はしみじみ自嘲した。
あ、あ、あ、と揺れに合わせて赤い唇からは細い嬌声がこぼれ、同時にじゅぶじゅぶと濡れた肉が絡み合う、粘ついた水音が股間の辺りから響いた。
硬く膨れた陰茎をぐにぐにと締め付け、扱き続ける肉筒は熱く、それでいて柔らかく、まさに甘美だったが、あと一歩のところでどうしても物足りなさが残る。
それがなんとも言えずもどかしかった。
肉壁からとろとろと滲みだす温かな蜜が陰茎を伝って袋まで濡らす、てろりとした感触にまた焦燥感が募った。
「く……、真央、様……っ!」
「あン! あ、あぁ、小田島、また硬くなった……あぁ、ふふ……」
切羽詰まった男の呟きに、跨る女はうっとりと目を細めて我が身を抱きしめた。

小田島が坂井家の一の姫である真央と肉の関係を持ってから、早二年が経とうとしていた。
とはいえ、仕える家の姫君と人知れず恋仲になった、という甘やかな話ではない。
この性交は、主の妻女である水江から言い渡された、れっきとした「お役目」だった。
曰く、いずれは名のある家の男の元に嫁ぐことが定められている真央への、『教育』とのことだった。
それなりに若く、加えて忠義に篤く、しかし美形ではない小田島は、水江の言葉を借りるなら『教育に最適の人材』だったらしい。
──どんな教育だって言うんだ、おい。
白羽の矢が立った時、殊勝な顔の裏で小田島は、心底呆れたものだった。

そしてこの二年で、真央はすっかり男の味を覚えたようだった。
母親の言いつけに逆らう考えはなく、しかし嫌悪と戸惑いが見え隠れする表情で、恐る恐る小田島に触れていた真央はもういない。
659真央×小田島2:2009/01/01(木) 03:51:13 ID:90YqCVdw
「はあっ、あっ、んん、んくぅ……んっ!」
恍惚に歪んだ汗まみれの赤い顔は淫乱そのもので、昼間の取り澄ました顔を持つ女とはまるで別人だ。
再び小田島の腹の上に手を付き、踊るように腰を振る。一層水気を増した淫猥な音がぐちゃぐちゃと結合部から響いた。
真央の動きは自分の快楽を追うためだけの動きだった。男には正直たまったものではない。
もはや小田島を男ではなく、ただの張り形、自慰の道具と見なしているのかもしれない。
あくまで『教育』である以上、小田島から真央へ触れることは必要とされた場合のみ、それ以外は一切禁じられている。
今は頭上で括られた両手を情けなく思いながら、「なんて拷問だ」と小田島は心中こっそりと毒づいた。

濡れそぼった互いの恥毛を擦り合せるようにして身をかがめると、白魚の指で男の乳首を捏ね回しながら、真央は蠱惑的な微笑みを小田島に向けた。
「素敵よ、小田島……」
うふふ、と熱く湿った吐息を吹きかけて、ちろちろと小田島の口腔へ舌を這わす。
男としての矜持を自ら踏みつけ、小田島は舌を出して真央と唾液を交換した。
「でも……まだ、駄目よ」
甘く囁いて、真央は指先を繋がった場所へと延ばした。
肉芽を軽く弄んでから、つうっと慈しむように己の秘処を貫く肉棒の根元をなぞる。
今にもはちきれそうな赤黒い陰茎に、さらに目の覚めるような赤色の組紐が結ばれていた。
「もっと感じさせて」

──いつか血が出るんじゃなかろうか。
快楽と苦痛の狭間で、小田島は力なく思った。



おっしまい!
あけおめことよろー

小田Gゴメソ(´・ω・`)
660名無しさん@ピンキー:2009/01/01(木) 20:31:04 ID:9ISme3Fs
非道すぎるあんまりだもっとやれ!
新年早々美味しいエロをありがとうGJ!!
661名無しさん@ピンキー:2009/01/03(土) 22:43:49 ID:K+PgiG8X
GJGJ!
この真央が塩野に嫁いでたら悲惨だったろうな、いろんな意味でw
若い男をくわえ込むか、いっそ小田島様が嫁入り道具のひとつwなんてなw
662名無しさん@ピンキー::2009/01/05(月) 01:19:28 ID:GIjr277o
薬売りズ×加世の続きを待ってろくろ首になっちまいそうです、ぜ・・・

自分に文才があったら・・・っ!
663名無しさん@ピンキー:2009/01/08(木) 23:06:13 ID:7YhMKxL0
ろくろくび定着ww
664名無しさん@ピンキー:2009/01/13(火) 09:04:13 ID:QvgMnDnl
ろくろくび絡まるww
665名無しさん@ピンキー:2009/01/15(木) 22:32:53 ID:DAEBPt8M
>>664
いっぱいいすぎて??
666名無しさん@ピンキー:2009/01/17(土) 22:51:41 ID:ScymNngs
666(゜∀゜)
667名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 22:51:02 ID:YyY0M43y
保守!
668名無しさん@ピンキー:2009/01/24(土) 23:33:55 ID:L6ra91ss
野手
669名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 01:23:25 ID:rVCQ9Mvr
野生の薬売りがとびだしてきた!
670名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 04:53:38 ID:gIJDrOQV
野生の薬売りは牙をむき出してうなっている!

手なづけますか?
 
 はい いいえ
671名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 18:41:18 ID:xxCWZ3Ps
>はい
→…誘って、るんですかい?
それは、また…
貴女も「好き」なお方だ…
では、遠慮なく…アーッ→お持ち帰り

>いいえ
→ほう…興味がない、とでも?
…多少嫌がられた方が、俺もそそるってもんですけどねぇ…(ギラリ)
と、いうことで…アーッ→お持ち帰り

野生の薬売りの巣に持ち帰られてしまった!
この場を切り抜けるためにどのアイテムを使う?

・塩
・春画
・眠り薬
・己自信
672名無しさん@ピンキー:2009/01/31(土) 20:17:34 ID:nVGcGUTB
あ ら て の 乙 女 ゲ ー ムwww

じゃあ眠り薬で!!
673名無しさん@ピンキー:2009/02/01(日) 11:02:33 ID:HbWpOxjn
薬売りには 効果が ないみたいだ…

「大体、薬に頼って眠ろうっていう、その根性が気に食わない。
なに、そんなものなくとも、ぐっすり眠れるようにして差し上げますよ……」

GAME OVER



アーッがアッーに見えてまさかのryかと勘違いしたのは自分だけでいい。
674名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 02:48:38 ID:44Opxxai
薬売りには薬は効かないのかw

…春画でお願いします
675名無しさん@ピンキー:2009/02/02(月) 20:11:49 ID:wtROS7JN
薬売りには 効果が ないみたいだ

「ほぉ・・・俺がこの程度のモノに動じるとでも?
もっとすごいヤツを、教えて差し上げますよ・・・」


これもGAME OVERw
676名無しさん@ピンキー:2009/02/03(火) 15:59:30 ID:/sDhWDfZ
あ、今更ながら誤字発見w

>>671
の選択肢「己自信」→「己自身」すいませぬ
677名無しさん@ピンキー:2009/02/06(金) 22:09:19 ID:CkRl+5/k
薬売りが持ってるものは効かないのかな

では塩でw
678名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 08:48:23 ID:8olYZhnH
薬売りの 目の色が 変わった!

「明石の天然塩……。サバにしますか? アジにしますか? それとも鮎か岩魚?」

薬売りの 興味は 魚に移った!

どうしますか?

→魚で釣る
→良い塩は豆腐だろjk
→酒だ酒だ! 酒を持ってこい!
679名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 22:43:53 ID:clloTuMr
>>678
そう来たかwww
酔わせてみたいな…ゴクリ…
→酒
680名無しさん@ピンキー:2009/02/10(火) 22:34:10 ID:+797dTZK
この流れマジおもろい。gjだ673
681名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 21:43:01 ID:s+0YSVtf
がちゃーん!!

とっくり が 割れた!

「モノノ怪は……わたし……?」

野生の お蝶さんが 現れた!!

「YATTA! YATTA!」

ついでに 敦盛が 乱入してきた!!

→たたかう
→ようすをみる
→みんなで酒盛り!


……保守代わりのつもりだが、いつまで続くんだこれw
職人さん来ないかなー
682名無しさん@ピンキー:2009/02/13(金) 23:47:20 ID:i6ASbxwk
>野生の お蝶さん

想像できないwww
683名無しさん@ピンキー:2009/02/14(土) 01:40:03 ID:dUeRVhT/
これはこれで楽しいからいいんじゃね?


→たたかう で!!

カオスな乱闘決定w
684名無しさん@ピンキー:2009/02/16(月) 22:19:29 ID:iJ5eRL04
スレ、agesるっ!!
685名無しさん@ピンキー:2009/02/18(水) 12:05:04 ID:MhpPS0wH
>681
じゃああたしはみんなで酒盛る!
686名無しさん@ピンキー:2009/02/22(日) 22:15:58 ID:I3qBJjpE
>>683,685

(プレイヤー)の 塩投げ!

明石の 天然高級塩が お蝶さんめがけて 飛んでいく!

敦盛の かばう!

敦盛は お蝶さんを かばった!

「あなた……!」
「SHOPPEEE! SHOPPEEE!」

薬売りは 猪口を片手に 七輪で 魚を 焼いている!

「この塩の、甘みがわからぬ、とは……。実に哀れな、モノノ怪だ」



・・・ごめん。反省はしている。
687683:2009/02/22(日) 23:53:43 ID:SHjuwVi6
盛大に笑った!!
敦盛「SHOPPEEE!」てw
688名無しさん@ピンキー:2009/02/23(月) 02:39:49 ID:WpntaTUM
>>683
→たたかう
薬売り「そんなことよりも、魚・・・」
敦盛「ただの人に負けるような身ではない」

敦盛の煙管から煙を吹きかけられ、のっぺらになった!動けない!
それに気付いた薬売りが、怪しい笑顔と筆を携えつつ、近づいてきた・・・
GAME OVER


>>685
→みんなで酒盛り!
しばらくすると敦盛とお蝶さんが交尾し始めた。卑猥な単語が飛び交う気まずい空気、
ふと気付けば、杯を持ったままの薬売りの視線が、痛いほどこちらに向いている。

やばい!最初は逃げようとしていたのに、何で酒盛りなんかしてるんだ!?

そして>>671の選択肢へ戻る・・・保守
689名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 20:39:25 ID:4R9Sh6BJ
ああああ戻ってもたぁぁぁっ
ってかSHOPPEEEEEEに吹いたwww
690名無しさん@ピンキー:2009/02/24(火) 22:32:00 ID:r9JSDObX
無限ループかw
691名無しさん@ピンキー:2009/02/25(水) 13:31:08 ID:tHbFxcts
>>678
→良い塩は豆腐だろjk を選んでみる。
692名無しさん@ピンキー:2009/02/28(土) 21:28:30 ID:WS2QeCS7
保守、満ちましてございます
693名無しさん@ピンキー:2009/03/05(木) 20:56:55 ID:uVYYGpMF
「満ちたようでございます」だ
694名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 23:31:50 ID:Dx2szkID
くちゅり…

女より白くきめの細かい肌から玉になった汗がするりと音もなく滑り落ちる。間隔の短い息遣いが男の高ぶりを感じさせるようで、女はぞくりと身震いする。
自身の中心に、深く入り込んで熱を放つ男を無意識で絞りあげる淫欲。もっとほしいとひくつきながらさらに奥へと男を誘っていく…
『加…世さんっ…』

あぁこの声が好き…

たまりきらず、体内に勢いよく流れだす男の欲望に、体内まで舐められているよう。
そのみだらで不確かな感触に意識が白くなってゆく…
695名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 23:42:30 ID:Dx2szkID
事がすむと、男はいつも優しく女をいたわった…
体のどこにも無理がかからぬよう、そっと抱きしめ髪をすき、背を撫でて

『…大丈夫…ですか?』

と、聞いてくる…。
ことに最近は念入りに。無理もない…女は老いる。
大丈夫…と、答える代わりにふわりと笑顔。そしてゆっくり目を瞑る。
いつものように…大丈夫を伝える。


男は女が若い時ほどではないが、変わらず求めてくる…。
『加世さんがどんなに老いようと、私の気持ちはかわりません』
歌舞伎役者顔負けの色男なのに、自分の言ったことを表す方法がこれなんだから、ほんとに不器用。
女はクスリとひとり満足した。
696名無しさん@ピンキー:2009/03/09(月) 23:58:45 ID:Dx2szkID
男が静かに眠りに落ちた頃、女はそっと目を開けた。
起こさないようにそっと男の顔をのぞき見る。この動作もいつからかとてもしんどくなった…今日はことにつらい気がした。

整った顔立ち、薄い唇に紅のくまどり、もうみ慣れはしたものの、やはり惚れ惚れしてしまう。

あぁ…大変いそがなくっちゃ…

不意にそう思って言葉を紡ごうとしたが、どういうわけか声にならない。

どうしよう、困ったな…、…そうだ!

動かない体になんとか力を込めて自分の額を男にすりつける。
…どうか伝わって。

薬売りさん、私が死んだら、お墓を作って…

あのね、私を埋めたらその上に石をおいてね。
大きくなくてもいいの。きれいじゃなくてもいいの。
その辺にあるようなのがいいの。

少し寂しいかもしれないけど、お花とお線香でも備えたら、それらしくみえるでしょ?


それに…あなたが私を忘れるくらいに時間がたてば、きっと苔がむして、それこそ大地にかえって、ありふれた景色の一つになるでしょう?

…あなたが悲しい事を思い出さなくてすむでしょう?
697名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 00:05:14 ID:Dx2szkID


伝わってね。大好きよ。



朝、男が目を覚ます。
くるべき日が来たのかと、男は静かに…悟った。



以上、激しく後悔。ほんとにすいません。ただ最近の過疎化がどうしても…
しかし、自分は職人にはなれないんだと悟りました。
698名無しさん@ピンキー:2009/03/10(火) 22:34:31 ID:BEA91FNI
職人お帰り!

いや、十分堪能した・・・っ
最近お笑い傾向だったから、切ない話に余計じーんとしたよ
この勢いで他の職人も返ってきてくれると嬉しいなぁ
699名無しさん@ピンキー:2009/03/13(金) 01:19:09 ID:qKzpaK8T
GJ!
700名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 01:03:37 ID:fVplrWyQ
保守じゃ
701名無しさん@ピンキー:2009/03/18(水) 20:57:15 ID:5P8HHqoq
sageてどうする
702名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 14:14:13 ID:GKct9DJk
保守
703名無しさん@ピンキー:2009/03/25(水) 22:23:50 ID:66iMVCzM
監禁陵辱墜ちる系で、市川節子が福田市長に犯される話が読みたい。
愛用のカメラで恥ずかしい写真とられて、カストリ誌に顔出しで載せられたりすればいい。
プライド高いからうってつけだと思うんだが、探してもないんだよなー。
704名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 04:41:11 ID:Bz84Mx1d
圧縮が近そうなので、保守
705名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 12:30:38 ID:thzaTJK4
>>704
なれば上げい
706名無しさん@ピンキー:2009/04/03(金) 14:12:38 ID:uyLMxl76
あげ
707名無しさん@ピンキー:2009/04/13(月) 04:32:51 ID:wK1ln9c/
保守あげ

チヨが、客にキネマに出してあげるって言われてのこのこついてったら
変態爺含む複数の男に入れ替わり立ち替わり犯される、てのが読みたい。
キネマ時代にポルノはあったんだろうか。どんな娯楽もまずエロありきだと
思うが、無声じゃ厳しいか。
708名無しさん@ピンキー:2009/04/15(水) 23:16:38 ID:JxuIJ3nk
そのむかしブルーフィルムというのがあってだな・・・
709名無しさん@ピンキー:2009/04/17(金) 23:51:47 ID:P/mWOlRk
kwsk
710名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 22:54:25 ID:PABi+qr1
そのまんま、無声映画時代のポルノのことだよー
チヨ倫姦見たいねw
711名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 12:11:15 ID:s+bwdY6U
ほしゅ
712名無しさん@ピンキー:2009/04/26(日) 22:25:58 ID:31uSgeYz
美形アイドル チアリーダーが脱ぐいでいる動画。画像が
無料で見れました。
http://www.freepe.com/i.cgi?zxc9
713名無しさん@ピンキー:2009/04/30(木) 13:27:04 ID:DP2Zs0mo
ウィルスにマジレスもなんだが、チアリーダーは薬売りやハイパーと同じく絶対領域がいいんじゃまいかほしゅ
714名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 02:05:51 ID:cUfT1/lb
すっかり過疎ってるな・・・
第三期でも映画化でも何かやってくれマジ
715名無しさん@ピンキー:2009/05/03(日) 07:47:22 ID:Em4AO0pD
過疎ってるっていうより
職人さん達が忙しいだけなんじゃないか?
・・・と思いたい

日産サイトに裏できた
だがしかし
パス請求できない俺チキン。
716名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 12:50:05 ID:6JG8d+Zm
江戸の春画にはジジババが題材のもあるそうだ
守備範囲広すぎるだろ日本人

というわけで、坂井の爺×万屋女将とか・・・いややっぱいらねw
717名無しさん@ピンキー:2009/05/09(土) 23:14:27 ID:y/b6X0ig
海坊主でいくさ船なり海座頭なり呼んじゃった犯人は、他でもないげんすい和尚様。
じゃあお庸さんはどうなったかというともう魂になって兄様が自分を許すのを待っていただけだったのよね。
黙って死んじゃったのは可哀そすぎるなあ。てなわけで稚拙ながら一本。


『お庸の行方』

五十年前の総称の粋を集め、絢爛豪華をきわめて作られた“うつろ船”。
蟻一匹はいる隙間もなく閉じられたその箱の中に、その少女はいた…。

熱き恋心をたずさえ、堪え忍ぶ生に見切りを付け、進んで旬の身体を闇の中に投じた少女。
その名はお庸。

静かに般若心経を唱え続ける彼女を見そめた者がいた。

うつろ船は深海の潮の流れに乗せられ、南の海に引き寄せられていた。

深海の水圧で気を失っていたお庸が目を覚ました。
もううつろ船は揺れていなかった。もう二度と感じることのない陸地の感触をその身体は感じた。

いきなり船の中に大音響が響く。何かを打ち付ける音、擦る音、木が擦り剥けるザリザリという音がした後蓋は開いた。

お庸の眼前には待ちに待った極楽浄土が広がった。
718あかしそ:2009/05/09(土) 23:31:41 ID:y/b6X0ig
「恐れなくても良い。恐れることはない。出てきなさい。経を唱えていた者よ」

丸く開いた船の出口から、若い男の声がした。

二度と見ることはないと覚悟していた陽光が目に痛い。
ふらつく足取りをものともせず、船を出るなりお庸は仏の前にひれ伏した。
「我の名は仏ではない。ここは人の世とも極楽浄土とも違う我の城。その犠牲の訳、お教え願いたい」
「…あなた様は?ここはなんという国ですか?」
「我が名はニライカナイ。竜宮の国の皇太子」
衰弱激しく、お庸はそのまま気を失った。
719あかしそ:2009/05/10(日) 00:09:28 ID:E/NI3oYH
カナイはお庸を片時も側から離さなかった。
お庸に生きる意志は無かった。薬、酒、食べ物も拒否した。

ここの物を食べれば、肉体もそのままで竜宮で生き続けられる。
しかし食べなければ、肉体は生き続けられない。
その魂は極楽か地獄の使者が迎えに来る。竜王にはその判断をする権限があった。

夢うつつのお庸の耳に、傍らで話すカナイの声が聞こえてきた。
「父上、我に皇太子の任を辞する許しを下さい。お庸に心乱れるのが止められません」
「龍神のそなたが心乱れることで、海は実際に大荒れ、船と共に沈んだ魂が増えておる」
「その者達の魂だけでなく、帰りを待っていた家族の嘆き、糧を失い後を追った魂の嘆きも聞こえます」
「任を辞してどうする」
「お庸の魂と共にどこまでも海をさまよいます」
「執着が…しかも実の兄と通じ合う願いをまだなだめておらぬ執着があまりに強すぎて
本来なら行ける極楽浄土にも迷うて行けなくなっておる。そこをカナイがここへ引き寄せてしまった。
執着を断ち切るようなだめ切れなかったのは悔しかろうが、成仏できないのもこの娘の選んだ道
ここの物を食べていないのも幸い、そなたは心を括って、後を観音菩薩にゆだねてはくれまいか」
「…父上、今しばらくの時間をたまわりたく…」
竜王は立ち去っていった。

替わってカナイの侍従が、カナイに湯に入るよう勧めた。カナイは返事だけをし、動かなかった。
お庸はまた長い眠りに着いた。

目が覚めたお庸は、カナイに初めて自分から願いを口にした。
「体を清めたくおもいます。湯に連れて行っていただけませんか」
720あかしそ:2009/05/10(日) 00:35:18 ID:E/NI3oYH
どこまでもどこまでも天井が高い洞窟の中には
海底火山の熱を引いてきた温泉がこんこんと湧いていた。

カナイはお庸の細くなった体から黙って着物を落とし、抱きかかえて湯に入っていった。
湯の中でカナイは正体を露わにした。
緑の鱗をらんらんと光らせた竜の姿になった。
「そのまま…そのまま私を食べてくださいませ…。私の身でお心が静まるならもう海に捧げた身、惜しくはございません」
「みなまで言うな!」
カナイの唇がお庸の唇を塞ぎ、白い肌には緑の尾が巻き付いた。
我に返ったカナイは青年の姿に戻り、唇を重ねたまま手頃な岩にお庸を押しつけた。
カナイはお庸が拒まないことに初めて気が付いた。

そのころ人の世の海は、人々の願い通り、穏やかになった。
721あかしそ:2009/05/10(日) 01:03:44 ID:E/NI3oYH
お庸の身体をカナイの唇が這っていた。
首、乳首、太股、要所、要所でたまらず声を出した。
「どうぞお好きなだけ…お好きな…あ…ああっ……どうぞ…お望みのままに…」
「その願い、永久に叶えようぞ…」
「うっん…んん…ああ………カナイさま!」
カナイの頭はすでに湯中に沈んでいた。
その唇は手指と共に少女が抗えない場所を這い、吸って、揉んで、掻き回していた。
「時は止めた」
「……ぁぁ、カナイ……さ…ま!」
「その煩悩、尽き果てるまで」
「は……あぁぁ…カナイ、さまが、あつい…です…」
「幾度でも幾度でも」
「…おかしく…なり…そうです…んん!」
「果てるが良い!」
「!!!」

唇と手指の後は、カナイの半身が少女の処女を優しく押し開けた。
そして再び唇と手指、次は半身との交わりが繰り返された。
お庸の身体は閉じる暇がなかった。

時を止めたまま、二人は幾晩分、幾日分交わり合っていたか…。

お庸の心から煩悩という名の濁りが、消え去っていた。
カナイはお庸の胸に抱かれ、安らかにつかの間の眠りに入っていた。
お庸は忘れていた経をそっと呟いた。
(観音菩薩さま、観音菩薩さま、私の心から煩悩の炎が消え去りました)
722あかしそ:2009/05/10(日) 01:27:48 ID:E/NI3oYH
カナイが目覚めると、カナイは岩場に横たわっていた。
「お庸!」
「カナイさま」
お庸は美しい着物をまとい、黄金色に輝いていた。
「お庸、まさか…」
お庸の斜め後ろに、見覚えのある人が立っていた。
「なむ観音菩薩さま!」
「カナイ、お庸の心をなだめてくれたこと、礼を言いますよ。お庸には心の準備ができました。ここでお別れです」
ひれ伏していたカナイは顔を上げた。
「お庸、ここに残ると言ってはくれまいか!后となってはくれまいか!」
「カナイさま…」
お庸は言った。
「私の心を満たし、なぐさめて下さりなんとお礼を申して良いか分かりません。
しかしこの身は人の世の癒しに捧げた身、やはり極楽浄土に入り、そこから兄様の行く末を見守るのが
私にふさわしい死後の処し方なのでございます。お許し下さいませ」

「カナイよ。今後お庸の幸せを願い、定めをまっとうするなら、
この南の海の生き物はいつまでも繁盛し、名誉を受け、人々にも神々にも称えられる海となるであろう
このことにくじけず、お庸を心穏やかに見送るがよい」
観音菩薩の言葉に、カナイの心はやむなく揺れたが、じき治まった。
お庸は観音菩薩に連れられて、光を放ちながら天へ向かっていった。

その後、兄様ことげんすい和尚の執心が例の海域に悪霊を住み着かせることとあいなるが
その喧噪をさておいても南の海はいつまでも穏やかで豊かになったと言うことである。
ちなみにカナイは今も独り身であるそうな。

おしまい!
723名無しさん@ピンキー:2009/05/10(日) 12:13:01 ID:F7ODzY9h
うわぁGJ!
大人の御伽噺って感じだ!
兄さまのことが解決した今、たまには竜宮に来てカナイとお茶でもしてほしいぜ
724名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 23:25:22 ID:hiO5DqCe
GJ!!!

ちゃんとストーリーのあるエロだな
職人カムバ―――ック!!!
725名無しさん@ピンキー:2009/05/19(火) 15:06:08 ID:utTL5pvk
ふおおおお、おもろかったGJ
726名無しさん@ピンキー:2009/05/21(木) 08:13:46 ID:rvhX1m6v
>>722
GJ!!!!
727あかしそ:2009/05/23(土) 09:52:30 ID:X6OFKGl1
あざーっす♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
728名無しさん@ピンキー:2009/05/31(日) 18:07:10 ID:VNaNfFwC
楽しそうですね
729名無しさん@ピンキー:2009/06/02(火) 06:40:23 ID:PPeQN70R
オンリー盛況だったな
薬加スペースのほとんどが18禁でワロタw
730名無しさん@ピンキー:2009/06/12(金) 12:35:51 ID:3HcYABU/
オンリー行けなかった自分に誰かkwsk
レポ探してもあんまりわからん
結構サイト持ちじゃない人が本出してた?
通販はないのか・・・ここもめっきりで飢えがきつい
731名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 10:30:58 ID:pzaS1RBK
オンリーってなに?同人コミックセールのこと?
田舎で、モノノ怪同人の世界は知らないんだわ。興味あるけど。
732名無しさん@ピンキー:2009/06/13(土) 14:01:37 ID:XMaBtAj1
ほとんどがサイト持ちだった
733天秤ズによる人体の考察:2009/06/17(水) 00:03:19 ID:ee6HE0xS
流れぶったぎって保守がてら。


「天秤ズのぉ〜!身体☆測定〜!」
「いえ―!」
「っても僕らみんな同じだし」
「メイドインジャパンだからね!こだわりの職人魂だよね!」
「それを逆手にとられて、コミックじゃ見るからにコp―――」
「言うな!それ以上言うな!デジタル処理はアニメ時点から重要な役割を果たしてるんだぞ!」
「まぁまぁ。代表して誰かを測ろうよ」
「はい!はいはい!今日ちょっと背ぇ高い自信があります!」
「よし、巻き尺を持て!」
「はっ!……丈は5.32寸であります!」
「おお、伸びてる」
「確かに伸びてる!」
「前回の測定冬だったもんね」
「夏が近いんだねぇ」
「加えて、今日、日なたで数刻待機させられたのであります!」
「乙」「乙」「乙」
「今の時代はいいけど、真夏の車内に「うっかり、うっかり」で放置されたらぐんにゃりしちゃいそうだよね」
「いや、それより「熱ちっ!」ってなって放り投げられる方が先だと思う」
「僕らはいいよ、問題は退魔さんだ」
「ご主人様が退魔さんをダッシュボードに放置したら、とりあえず鈴鳴らして注意しなくちゃね」
「ね」「ね」「ね」
「ところで、人間も熱膨張するの?」
「えー、しないんじゃね?だって恒温動物でしょ?」
「でも加世ちゃんとか、夏になるとお腹気にしてるよ」
「秋にも気にするよ。「ご飯が美味しいからって食べ過ぎたぁ〜!」って嘆いてるの、僕知ってる」
「それ言ったら冬だって、お餅のせいで膨張するんだよ」
「お餅、焼くと膨らむもんね」
「あれ面白いよね!」
「まだ根拠はあるんだ。ほらよく加世ちゃんがご主人様に言ってる」
「ああ、「熱い、おっきい」てアレ?」
「そうそれ。だからきっと、ヒトも熱膨張するんだよ」
「ふぅん。じゃあご主人様も夏に背ぇ測ればいいんじゃね?」
「……ちっちゃいの、実は気にしてるよね」
「してる。絶対してる」
「よし、じゃあご主人様に教えてこよう!」
「僕らってなんて主人思い!」
「きっとご主人様喜ぶよ!」

「えい、えい、おー!」

ちりん
734名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 00:24:52 ID:3RIQeSoC
なんという傑作wwwww
735名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 01:27:24 ID:SnepdRqX
わらったwwww
最高w
736名無しさん@ピンキー:2009/06/19(金) 13:17:36 ID:4HgSkspv
そこに繋がったかwww
737名無しさん@ピンキー:2009/06/24(水) 18:56:47 ID:sybKeKCJ
そんなに背低かったっけ?
738名無しさん@ピンキー:2009/07/02(木) 22:13:45 ID:hzTR7wnt
さぁ、シークレット高下駄の開発に戻るんだ

あの下駄で天気占ったら曇りか雨ばっかだろうな。
退魔の剣の毛は湿度でぼわってなるんだろうか。
なびいてるとことか見るとキューティクルばっちりっぽいけど、
「天気予報もできないたぁ、松ぼっくりにも劣る……。
エラーで無駄に光るくらいなら、天気によって色変えるぐらいの芸当、
してみせたっていいんですよ」
と髪がまとまらなくて機嫌悪い薬売りに八つ当たられる保守
739名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 13:02:36 ID:XRHOxJ40
「高下駄」と銘打ってる時点ですでにシークレットではないと思うんだ
湿気で髪がぼわっとなってる薬売は椿油でお手入れししようwww
740名無しさん@ピンキー:2009/07/05(日) 19:45:32 ID:QuJWlWVX
では、ハイパー用のシークレット足袋の開発でも、いたしましょうか
741名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 07:15:55 ID:g4ZMIPa0
お願いします。
742名無しさん@ピンキー:2009/07/06(月) 11:43:27 ID:fLZGnpqx
たwのwむwなwww
743名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 13:10:23 ID:CoLmsEVk
こわくてろまんちっくなの一本ほしーなー
744名無しさん@ピンキー:2009/07/12(日) 01:02:45 ID:q2gpZDjb
俺もー
745回向  初七日 1:2009/07/12(日) 23:39:51 ID:W1EY8zaa
怖いかどうかはともかく、こんなかー?

小田島×真央、エロなし。続きもの。





 ―――だじま


 惨劇の夜から七日が過ぎた。
 事後処理に忙殺された小田島の眠りは深い。布団に倒れ込み枕に頭を乗せ、ぱちりと瞬いたと思うと既に辺りが明るくなっているのである。
賑やかな鳥の声に呆然とし、だがそうそう呆けてもいられずに無理やり体を動かした。動けば日々は流れていく。
 そうして、七日。
 狐につままれたような感覚は、あの夜と地続きだ。確かに一晩を過ごしたはずが、門の外はまだ婚礼の日の夕刻であった。時の感覚が曖昧で、
いまだ夢の中にいるような気がする。
 ……どこかでまだ、夢なのではないかと思っている。目が覚めればこれまでのこと、全部なかったことになるのではないかと。
あれほどのことがありながら、変わらず朝日が昇り、動けば腹が減り、世がそのまま続いていることが、己の中で噛みあわないでいる。
 この世の終わりの一つや二つ、来たとておかしくないはずなのに。
 ううんとうなされて寄った眉。
 そして唐突にぽかりと意識が浮いた。開けた目に夜の闇がしっとりと黒い。くんと動いた鼻は深夜の匂いを嗅いだ。何故こんな時間に目が覚めた、
疑問は枕辺に座した影と目があって解ける。白い白い、亡くなる直前の白無垢を映したような、だが各段に薄い白帷子(かたびら)。
 小田島、と影は笑った。無骨な男は急ぎ飛び起き、布団から降りてかしこまる。
 深く頭を下げた先、今更に痛ましさが胸をついた。なるほど、彼女が血を連ねた者は非道であった。重い罪には一族連座で刑が下ることもある。
さりとて、なんの罪科もない者が、若い身空で命を断たれれば痛ましい。いや、この際老若男女は関係ない。いかなる者であれ、あのような死は無惨であろう。
変わり果てた骸にとりすがる、幼な子と妻の泣き声が耳に残る。祝いに華を添えるべく呼ばれた者たちは、もう舞うことも楽を奏でることもない。
一家の柱を失って、彼らの明日は厳しいものになるだろう。……それがわかっていたとて、小田島に出来ることは何もない。
『小田島』
「はっ」
『顔をおあげ』
 柔らかな声が言った。不思議なほど、生前よりよほど穏やかに響く。顔をあげた小田島の前で、真央は口元にほっそりと苦労知らずの手を添えて笑った。
『お前は本当に正直ね。思っていることがなんでも顔に出る。わたくしが悲愴でないことが、そんなに意外?』
「とんでもございません。……ただ」
 小田島の眉が下がる。丸っこいどんぐり眼が、欠け始めた月のように縁をへこめた。
「そのように幸せそうなお顔を……生きておいでの間に拝見することができなんだことを、悔やんでおります」
『それは無理よ』
746回向  初七日 2:2009/07/12(日) 23:41:55 ID:W1EY8zaa
 真央はあっさりと小田島の言を否定した。
『死んでこそ浮かぶ瀬もあれ、ということね。わたくし、坂井がこんなにもわたくしにとって重荷だったなんて、なくなって初めてわかったわ』
 彼女はしみじみと頬に手を当てた。
『本当に、知らなかった。息をする必要がなくなった今になって、呼吸が楽だと感じるの。可笑しいこと』
「……左様でございますか」
『ええ。どこにでも行けるし、なんでもできると思うわ。……それとも、坂井はなんの関わりもないことで、わたくしの体がなくなったからなのかしら……。
小田島、お前、わかる? ……ああ、そう困った顔をしないで。わからなくても仕方ないわ。お前はまだ生きているのですものね。……お前の体は、まだ重い』
 それが生きているということね、と影は長い睫を伏せた。
 ぼんやりと淡く輪郭を光らせながら、それでも影は闇と訣別してはいない。揺らいで溶ける。溶けては滲むようにまたぼんやりと光った。根の国の光、黄泉の色。
 死者は、だが、不吉な匂いはしなかった。
 ただ、切ない。
 これほど近くにありながら、深く断絶されて二度と戻ることがない。
『母上様も、父上様も、叔父上様も、今頃はおわかりだわ。……さぞ、ご自分が重かったでしょう。みな、知らず疲れきっていたのね』
「……恨んでは、おられないのですか」
 影はわずかに首を傾げた。
『ないわ、と言ったらお前は安心するのでしょうけど……正直なところ、わからないの。ねぇ小田島、わたくしは不幸だと思う?』
 小田島は言葉に詰まる。畳の目を見据え、じっと考える風情の男に、影は黒々とした目を向けた。
『言い方を変えます。お前の目に、わたくしは不幸に映る?』
「……今、こうして、お会いするまでは」
 男は畳に視線を落としたまま言う。
「おいたわしいと、思うておりました。ですが」
 影は黙したまま小田島の言葉を待つ。
「……ですが。恐れながら、私は死後の世界を存じ上げませぬ。……知らぬことだと、今、知り申した。であれば、手前勝手に哀れむことなどできますまい。
真央様がお笑いになれるのであれば、よかったと申し上げるのみ」
 真央は満足げに笑って粗末な白い裾を払う。つと踏み出した姿に、足があるのだな、と小田島はぼんやり思った。かろん、とどこかで下駄の音がする。
『また七日後に参ります。……いいわね? わたくしと会ってくれるわね、小田島?』
「……はっ」
 深々と下げた頭を戻した先に、もう真央はいなかった。


 二七日へつづく
747名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 02:28:37 ID:7Lhi64Es
>>745
GJ!面白いです!
真央がやすらかそうで嬉しい
748名無しさん@ピンキー:2009/07/13(月) 07:06:26 ID:G4nzX9qs
>>745
こうゆうのもいいなぁ
749名無しさん@ピンキー:2009/07/21(火) 13:25:53 ID:Vo6SngIj
27日って7月27日ですか?まだしばらくあるなぁ
PC前で正座して待ってます。
750名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 19:21:24 ID:JJ/IqqNk
>749
ひとなのか、ふたなのか、みなのか、よなのか、次回のうp、いつなのか

なんちてw
二七=は死後14日後
751名無しさん@ピンキー:2009/07/22(水) 19:26:54 ID:JJ/IqqNk
あ、すまそ。
ひとなのか じゃなくて しょなのか だったー。
752回向 二七日 1:2009/07/27(月) 00:52:13 ID:HrCmMe6w
相変わらずエロがない。



『塩野様のお顔を、見て参りました』
 七日の後、夜更けに再度現れた影は、変わらず穏やかな調子でひそりとそう言った。今宵は寝支度をすることなく、羽織袴で死者の訪いを出迎えた小田島は、左様でございますか、と相槌をうつ。
『嫁ぐと決まってすぐの頃、周りに尋ねたことがあったのよ。塩野とはどんな者かしら、と』
 名字帯刀を許されてはいるが、正確には塩野の出自は武家ではない。豪商だ。さらにその前身は一介の馬喰だった。坂井を憚って屋敷の造りこそ格式に劣るものの、馬を育て養う敷地ははるかに広い。
金銀を収めた蔵が片手の指もあることで、富貴になることをこの辺りでは『五つ蔵を建てる』と言った。
『誰もが言ったわ。ご立派な方です、と。……坂井の者は、また別だけれど』
 言って真央はくすりと笑った。
『知っている? さとなんて、おいたわしいって言ったのよ。わたくしを哀れんだの。もちろん面と向かってではなかったけれど。勝山に慰められていたわ。
……その顔は、立ち聞きなんてはしたないと言いたいのかしら、小田島?』
「……いえ、いや……無論、褒められたことではございませんが。さと殿と勝山様も迂闊であったかと」
『そうね。でも誰もがわかっていたでしょう。この縁組みはわたくしの身売り』
「真央様」
『無礼よ、小田島。お前に咎められるいわれはないわ。だって』
 すぅ、と上がった睫の下から、黒々と底の見えぬ眼が覗いた。生者であれば自然と宿る輝きはなく、かろうじて眼窩(あな)ではないそこはただ黒い。
今にも何か正体の知れぬものが浮き上がってきそうな、夜の沼の深みに似ていた。
『お前も、そう思っていたでしょう? 否定は許しません。お前はとかく杓子定規だけども、愚者ではないのだから』
 小田島は渋面をつくる。褒められているのか貶されているのか、なんとも判断に困った。
「……塩野様は、財に驕らず、貧しい者たちへの施しも厚い人徳者とお伺い致しました故、真央様が嫁がれても、おさおさ疎かにはなさるまいと……」
 苦し紛れの小田島の言に、真央はおっとりと笑う。
『お利口な答ですこと。……でも、そうね。よく道を知る方のようでした。わたくしの死を悼んでくださっていたわ。……昔は、叔父上様のお友達だったのですって』
 小田島は身じろいだ。
「……友、でございますか」
753回向 二七日 2:2009/07/27(月) 00:54:29 ID:HrCmMe6w
『同じ先生に教わった仲だそうよ』
「ご学友」
『ええ』
「……そのようなこと、伊國様は一言も」
『そうね』
 真央はぬばたまの眼をゆっくりと瞬かせた。
『叔父上様は、昔、神童とも呼ばれたのですって。坂井の……いえ、お祖父様の無体な仕打ちを憂い、領民らを思う、誰からも行く末を期待された若様だったと』
「…………。さ、左様で」
『困った顔ね、小田島?』
 真央は無骨で馬鹿正直な男をからかうように笑う。
『とても信じられないでしょう? わたくし、お祖父様の昔の所業を聞いて、てっきり、叔父上様はお祖父様の悪い血を継いだとばかり思いました』
「ま、真央様」
 あんまりあけすけな真央の評に、小田島は汗を浮かべて遮ったが、死者はどこ吹く風と受け流し、夜の静けさへ告げる。
『叔父上様は、賢すぎた。……あるいは、お祖父様を欺くほどには賢くなかった、とも言えるのかしら。青さに任せて真っ向から糾弾して、廃嫡の憂き目にあった』
 ふ、と真央は黙る。しばらく考える風情で目を伏せ、ぽつりと言った。
『……もしも、叔父上様が家督を継いでいたら。化猫は、出なかったかしら……?』
 それでは真央が生まれまい、と小田島は言いかけて、ぐっと歯を食いしばった。
 生まれない方がよかったと言うのであれば、それはあまりに悲しい。
「化猫は……薬売りの男が、斬り申した」
『知っています』
「胡散臭い男でしたが、信頼に足る者でした。その男が、斬ったのです。過去を変えることが叶うならば、男も血を流してまでむざむざ哀れなモノを斬りますまい。
……このような言い方は卑怯かもしれませぬが、起こったことは、最早致し方ないこと、なのかと」
 真央は瞬く。微かに首を傾げて、それはわたくしを慰めているの、と問うた。
「せ、僭越ではございますがっ」
『よい。……お前は、優しいわね』
 また来ます、と影は立ち上がる。小田島はひれ伏して真央を見送った。開かなかった障子戸の向こうで、ぽぅと燈篭が灯るのがわかった。


  三七日へ続く


待ってくれてありがとう
754名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 05:41:26 ID:nzoeRUeS
>>752
待ってました
続き楽しみぃ
あと叔父は正しくは伯父になると思うよ
755名無しさん@ピンキー:2009/07/27(月) 19:22:33 ID:Gdjvn43M
待ってました!
淡々とした語り口調がいいなあ
756名無しさん@ピンキー:2009/07/31(金) 16:03:06 ID:QLyRdBS5
待ってました
深々と染み入るような真央の語りくちや
朴訥な小田島が良いなぁ
続きも待ってます。
757名無しさん@ピンキー:2009/08/08(土) 15:22:23 ID:ateaoHLR
今日はハイパーの日アゲ
758名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 16:36:37 ID:VXycnVAt
8/18こそがハイパーの日。
759名無しさん@ピンキー:2009/08/27(木) 23:55:42 ID:axcuMsWh
これは、保守だ・・・カチン
760名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 09:52:02 ID:zg9Pu6o4
過疎ってるなー
職人降臨しないかなー
761名無しさん@ピンキー:2009/08/29(土) 13:20:14 ID:IVYlDWJd
規制を滅りたい
頼む!なんとかしてくれー!
762名無しさん@ピンキー:2009/08/30(日) 19:55:29 ID:ka/NYVcb
規制、アレって本当に困るよな
投稿しようかと思うと突然くらって慌てる羽目になる。
763名無しさん@ピンキー:2009/08/31(月) 15:15:51 ID:foqGDr0h
頑張って!
764名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 01:59:19 ID:Lj1g+A7W
職人さまの、頼みとあっちゃあ・・・仕方あるまいッ!
765名無しさん@ピンキー:2009/09/01(火) 13:27:44 ID:b6b6f3RP
きゃーすてきー
766名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 03:08:11 ID:iKNz0xTv
惚れる
767名無しさん@ピンキー:2009/09/06(日) 11:31:02 ID:fUxsohJ+
かっこいいっ
768名無しさん@ピンキー:2009/09/10(木) 19:31:32 ID:LlD64hzo
解き、放つ!
769名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 00:50:42 ID:BOklqC9N
過疎ってると自分の駄文を晒してみたい衝動が押し寄せるけど

やっぱ無理!てなる。
職人様かむおーんっ
770名無しさん@ピンキー:2009/09/12(土) 22:21:57 ID:RyyGHIki
晒してみて!
771名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 22:30:05 ID:PuXab4m0
読みたい、読みたい!
772名無しさん@ピンキー:2009/09/13(日) 23:22:39 ID:PJtXzB2e
晒して!ぜひ!
773名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 01:12:00 ID:3o6lV7pr
じゃあちょっとした保守代わりに駄文を晒してみます。
初書き、初投なもんで至らない点多々よろ
エロまでが長い。飽きたらウェンツしてくれ頼む!

*秋桜〜一輪目〜*

 ぼぅっと朱に色づき始めた夕日に染められた景色の中を、高下駄がカラン、コロン、と拍子を刻むように音を鳴らして進んでいく。
きゃっきゃとはしゃぐ童達の声が後ろから近付いて来て、己の周りをおどける様にくるくると廻ってまた走り去って行った。
ふっと小さく笑いを洩らすと、風に乗ってどこからか、早くも夕餉の匂いがしてきた。
これは少々急がねばと足を速める。

 己の住まいは人里にこそあれど、集落からは少しばかり離れている。
元来、己には『帰る場所』などは必要なかったし、他者との関わりなどというのも、薬を商い、モノノ怪を斬る為以外には必要なかった。
いや、『必要なかった』というよりも『避けていた』というのが正しいだろうか。

 今まで幾多のモノノ怪を斬り、数多の人間を見てきた。
モノノ怪の形は同じものだとて、それを生み出す人間が変わればその真と理も異なる。
モノノ怪は人を祟る。人はモノノ怪を生み、モノノ怪を恐れ、モノノ怪の為に泣く。
幾月幾年、考えてみても、未だに人というものの底は知れぬ。
触らぬ’’神’’に祟りなし、というのも言い得て妙かもしれないが、真も理も、時に形さえ不確かな、人。
言い様、考え様によっては人間の方がモノノ怪よりも恐ろしい。分らぬものに進んで関わりたいとも思えぬ。

「しかし…今の己の有り様ときたら、、、」
そんなことを思っているうちに足取りが滞ってきたのに気付いて再び足を速める。
もう殆ど人家のない道を、下駄の音とこおろぎやら鈴虫やらの鳴き虫の声、脇を流れる小川のせせらぎだけが静かに響いていた。
そのなんとも言えない感覚を楽しんでいたが、急に生暖かい風が吹いてきた。空を見上げれば、朱い雲が流され、鉛色の雲に変わっていき、西の空に光の線が走ったのが見えた。
「しまった」思ったと同時にぽつぽつと水滴が落ちてきて、瞬く間に水瓶を引っ繰り返したような雨が激しく降り注いだ。

 これはまずいと薬箱を担ぎ直して既に大きな水溜りのできた、ぬかるんだ道を着物に泥が跳ねるのも構わずに走った。
いつもなら慌てずこんな何もない道でも、木下でも空き家でも見つけて一時の宿りとするところだが、今はそのような余裕はない。
ただ早く、早く、己の帰る場所へ、己を待つ者の処へ。


*とりあえず続く*
774名無しさん@ピンキー:2009/09/14(月) 01:40:29 ID:HzbsyuEi
あ、カップリングは王道で薬×加です。

全く何番煎じだw
775*秋桜〜二輪目〜*:2009/09/14(月) 22:36:17 ID:3o6lV7pr
「あー、降ってきちゃったぁー」
加代は急いで外に干しておいた洗濯物を慌ただしく取り込む。
さほど多くもない洗濯物も娘の細腕では抱えるのがやっとで、地面に落とさないように濡れないようにと気を遣いながらようやく家に運び入れた。
足を軒下に投げ出したまま、ごろんと洗濯物の山の脇に仰向けになり、
「うぅ、今日は過ごしやすくて気持ち良いからって昼寝なんかするんじゃなかったなぁ」と大きな溜息をつく。

しかし、幸い洗濯物もそんなに濡れずに済んだし、日の高いうちに干していた布団は既に取り込んでおいた。
それに(少し離れた)お隣より、女一人でいることの多くあることから大変だろうとの好意で、瑞々しい野菜も頂戴した。
それだけで加代の憂鬱な気分は吹き飛び、今晩のおかずはどうしようなどと考えるだけで嬉しくなった。
『…薬売りさん』そのまま闇で一層高く見える天井を見つめて呟く。
「今、どこで何してるのかな」、「無事に元気でやっているのだろうか」、「次は、いつ帰ってくる?」。
なんの便りもなく、ただ愛しいあの人の旅の無事を祈り、帰りを待つ日々は、時々どうしようもなく不安で寂しくて、無性に悲しくなる。
はぁ、とまた溜息が洩れる。
この天気のせいか、スッパリと切り替えの早い加代の心も曇りやすくなってしまう。

その時、ピシャッと空が光った。
「きゃっ」間髪入れず空気をつんざく轟音が鳴り響く。
「やだ、もぉー」
次の瞬間はっと我に返って「いっけない、夕餉の支度しなきゃ」
加代は雨戸を閉め、台所へ走って行った。
776*秋桜〜三輪目〜*:2009/09/14(月) 22:42:52 ID:3o6lV7pr
ガラリっと玄関の戸の開けられる音がした。

「むん?」とふつふつと煮え立つ鍋の脇で小皿に口を付けていた加代は、戸外の雷雨と夕餉支度に多少賑やかな台所で、確かにその音を聞き取った。
こんな天気の中、それもこんな時分に誰だろう、と些か面倒臭そうに口を尖らせて、袖を上げていたたすきをしゅるりと解く。
「はぁーい、何方ですかぁー……あーーーっ」と小走りで玄関へ向かい、その来客の姿を認めて思わず声を張り上げた。

「薬売りさんじゃないですかぁーっ」
そこには、頭から足の先までずぶ濡れになったこの家の主が立っていた。
男の長く柔らかい前髪は一層顔に纏わりかかり、顎の線や着物の裾からはぱたぱたと滴が落ちて地面に水鏡を作っていた。
鮮やかな着物や下穿きの所々にも点々と泥が跳ね、この激しい雨の中を傘もささずに走り抜けてきたのだろうということが見て取れる。
叫んでから気を持ち直して一息ついたものの、思わず声が引っ込んでしまう。
待ち侘びていた男のあまりにも突然の帰宅と、雨に降られるなどという普段この男からは想像し難い様に、加代は驚きと嬉しさ、可笑しさ、安堵で自分がどんな表情をしているのか分らなくなってしまった。

「と、とりあえずっ」加代は仕切り直すように語勢を強くした。
「早く上がって着替えてください!そのままだと風邪引いちゃいますからっ」男に駆け寄り、手を引いて段に座らせる。
「あーもうこんなに冷えて…、すぐに湯と夕餉の支度しますねっ」
懐から白い手拭いを出して男に差し出し、まるでやんちゃして帰って来た子供に話すように言う。

すると「これを」と、どこから出したのか笹葉にくるまれた包みを手渡された。
「なんですか?」とほんのり生臭い匂いのする包みを開いていく。
「あ」
「鯖、ですよ」
包みの中には丸々と太って、如何にも活きの良さそうな青光りした秋鯖が数匹入っていた。
「どうしたんですかーこれっ」滅多にお目にかかれない珍しい食材を前に、加代は目を輝かせた。
「いつだったか、漁村に寄った時ですかね、そこで商売した時に、客になった漁師から薬代の代わりにと渡されたんですよ」
「銭でないなら薬を返してもらおうかとも思ったんですが、こういった旬物は最近じゃあ滅多に手に入らない。しかも生臭物はこの辺りなら尚の事、たまには加代さんに土産の一つでもと思いましてね」
男は濡れた腕や手を手拭いで拭きながら淡々と話す。

思わぬ贈り物に、加代はきゃあきゃあとはしゃいだ。
「じゃあ、これから早速料理しますねっ、これくらいあれば焼き物にも煮物にも出来るし、それから…」問いかけが楽しさからか独り言に変わっていく。
「よしっ、じゃあせっかく活きも良い事だし、今晩は塩焼きにしますっ」
すぐに用意しますから待っててくださいね、と奥へ戻ろうと踵を返す。

「加代さん」顔を拭いながら男は目だけをちらりと動かす。
「はい?」ふにゃりとした顔で加代が振り返る。
「あんたの嬉しそうな顔が見れて、私も土産を持って来た甲斐があったってもんですが、
久方振りに家に戻った主人に労いの一言もないんで?」

「あ…」加代の顔がぼわっと赤くなった。
お土産ではしゃぎすぎるなんて…あたし、まるで子供じゃない。
「おっお帰り、なさい。薬売り、さん…」
申し訳なさと恥ずかしさで上手く言葉が出てこない。

その様子を背後から感じて取れたのか男はゆっくりと振り返ってそっと微笑み掛ける。
「はい、ただいま、帰りましたよ」

*続く*
777名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 19:28:16 ID:B/spZyd/
加世さんかわゆす
続き楽しみです
778名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 20:03:15 ID:d2bggrrB
いつだったか手に入れた活きのいい鯖www
生ダコよろしく、その鯖もピチピチ跳ねてるんですね?

続き楽しみです
779名無しさん@ピンキー:2009/09/15(火) 23:26:58 ID:B0JV3tmA
わっふる!わっふる!
780*秋桜〜四輪目〜*:2009/09/16(水) 01:10:36 ID:fh5I5hB/
加世さんの名前を間違えるたぁ、なんたる失態
ちょっと滅されてくる。まったりのらくら投下御免。続き↓


膳の上に温かな料理が並んだ。
炊き立ての飯に汁物、冬瓜の葛かき、糠漬、そして鯖の塩焼き。
薬売りと加世は囲炉裏を挟んで向かいに座り、談笑する。

「もう少し早くに帰って来てくれたら、御馳走たくさん作ったのに」と加世は申し訳なさそうに言う。
「これで十分ですよ、どんな良い宿の膳もやはり加世さんの拵えたものにゃぁ敵わない」男はやや下、囲炉裏の火に視線を置いて静かに笑う。
「またそんなおべっか言ってー」加世は含みがあることも分かっていながらも照れてしまう。

「それにしてもこの鯖っ、美味しいー。お代わりしちゃおうっかなぁ」
「秋鯖は嫁に食わすな、なんてよく聞きますがね」
人の鼻につくのを知っていながら敢えて神経に触る事を言って愉しむのがこの男の意地の悪いところだ。
もうっ、と男を睨んでぷくっと膨れ、右拳を上げる。
「おっと」おどけながら男は身構える。

「そう言えば…この鯖ってどうやって持って帰ってきたんですか?ここから海までって言っても結構ありますよねぇ」加世が思いついた様に訊き、首を傾げた。
「ああ」箸を置きながら薬売りが静かに答える。
「薬箱ですよ。どうしたものか奥に仕舞うほど日持ちがいいもんで」さも当然の様に言う。
そう簡単に手をポンと叩いて納得など出来ることではないが、この男と一緒にいればそれが不思議と納得できてしまうのが恐ろしい。
そういえば、前に薬箱から蛸が出てきたこともあったっけ…。
「あはは、ほんと、不思議ですよねぇ」
「そうですかね」

こんなやり取りをしていたが、ふと加世がくんっと何かを嗅ぎつけた。
「なんだか…いい匂いしません?花みたいな、でも甘い良い香り」加世は鼻で香りの正体を探っている。その様子を見て、薬売りはまたも淡々と答える。
「ちょいと薬をね…調合してたんですよ、今回は結構売れたおかげで残りが少なくなっちまって」
湯に入り、夕餉の支度が出来る間のほんの一時に薬など作っていたのかと流石に感心した。が、その半面働き者というか仕事馬鹿というか、少し呆れながら言う。
「お仕事も大事ですけど、でもこんな時くらいゆっくり休んでてください?大体、薬売りさんはもっと自分の体をっ…」
「はい、はい」皆まで言うなと気遣いを遮られた。

少し不満だったが、これもいつものこと、それにこの甘い香りですぐに気分が不思議と和らいだ。
「でも、本当に良い香り…何の薬なんですか?」
「色々です。最近の客は苦いのは嫌だ臭いのは嫌だと注文が多い…。まぁ、作ってみたもののまだ効くかどうかは分かりませんがね」
「ふーん」加世は相変わらず香りを楽しみながら話を聞いていた。

そうこうしているうちに食事は済み、加世は後片付けに取りかかる。
「私、片づけてから休ませてもらいますから、薬売りさんは今日はもう早く休んでください」洗い桶の中で食器を洗いながら加世は言う。
「はい、はい」後ろから男のいつもの口調で返事がした。
「時に、加世さん」
「なんですかー?」後ろを振り向かずに応答する。

「今宵は冷える…。私が先に頂いちまいましたが、加世さんもゆっくりと湯にでも浸かって、早めに休んだ方がいい」
珍しく毒気のない温かい労いの言葉。
加代はそのまま、自分の心を悟られぬように微笑む。
「はぁーい、これが終わったらすぐにでもー」と顔と心とは裏腹に悪態をつく様に応えた。

薬売りは「ではお先に」と静かに立ち上がって寝所へ向かう。
そしてこの男も、また自分の心を悟られぬように小さく微笑んでいた。


*続く*
781*秋桜〜五輪目〜*:2009/09/17(木) 18:29:09 ID:jRI+BBIA
雨は勢いを弱めても相変わらず降り続いていた。
「ふぅー」加世は一日働き通しで少しくずれた帯を解いていく。
一日の締めくくりは、やはり風呂に限る。
胴を締めていた帯を外せば不思議と体が軽くなるのも楽しみの一つだ。
また、食事の時に漂っていたあの香りが微かに家の中に充満しているようで、
「家の中でこんな香りがしてたら毎日楽しくなるのにね」と独り呟いた。
最後の一枚を脱ぎ捨て、手拭いを携えると、カラリと風呂場の戸を開けた。

「っっっ!?」
「あぁ、またお先に頂いてますよ」
ピシャンっと戸を閉め直し、その場に座り込むと、加世は真っ赤になって中の男に言う。
「どどど、どうして薬売りさんが入ってるんですかぁ!!」
風呂場で反響した声が返ってくる。
「どうしたもなにも、今宵は存外に冷えて仕方がない」
「すっかり湯冷めしてしまったもんで、ついでに加世さんの背中でも流して…」
「余計なお世話です!!」
フーフーと肩を上下して呼吸をしながら加世が怒鳴る。

想定外に怒りを露にした娘に、少々気遣かわし気に、なだめる様な声で男が言葉をかける。
「でも加世さん、そんなところでそんな格好してると、それこそ体に毒ですぜ」
加世はただ黙っている。確かに寒い。
それにこんな床の上で、一糸纏わぬ姿で座り込んでいるのが恥ずかしくて仕様がない。
そして冷えた頭で、さっき咄嗟に勢いで言ってしまった言葉を思い返して、罪悪感と意地とがぶつかって中々動けなかった。

気まずい空間を、しばしの間沈黙と雨音が支配する。
「ふぅ」と一息入れ、男が折れたように言った。
「あんたに風邪を引いてもらっちゃあ困る。機嫌を直して、入って来ちゃくれませんかね?なあに、なにも取って食いやしませんよ」
柔らかな口調で手を差しのべられた気がした。
「…ほんと、ですよ?じゃあ、あっち…向いててくださいね」拗ねた様に娘が応える。
782*秋桜〜続・五輪目〜*:2009/09/17(木) 18:36:00 ID:jRI+BBIA
「もう、平気ですよ」薬売りは準備万端の旨を引き戸越しの加世に伝えた。
カラカラと先程よりもゆっくりと戸が開けられる。
ぴたぴたと水っぽい足音が静かに近付き、湯面が揺れた。
決して広いとは言えぬ湯船の中で、加世と薬売りの背が微かに触れ合う。

「やっと、入って来てくれましたね」
「だって、あのままだと本当に風邪引いちゃうし…それに薬売りさんが…」
加世はまだ少し不機嫌な様子でごにょごにょと小さくぼやいている。
「良い湯、でしょう?」加世の言い分を丸め込んで言葉を被せる。
「…うん、とっても気持ち良い」加世が少し間を置いて口を開いた。
「それに、この湯の色と香りって…」乳白色の湯を手ですくうと、気に入りの香りを吸い込んだ。

「薬湯、ですよ。こんな季節がらですからね」湯に手拭いを浮かべ、風船を作って手遊びしながら薬売りが言う。
「薬湯…、でもこれ何湯なんですか?たくさん香りが混じってて、こんなの初めて…」
「菖蒲に生姜、蜂蜜、柑橘の皮、汁、桃の葉…他にも少々」
「すごいっどれも高価なものばっかり!良いんですか?そんなの使っちゃって」ブッと噴き出して加世はいたたまれずに少し後ろに退いた。

「まったく、良い年頃の娘さんが…」はしたない、と薬売りが少々呆れて呟く。
「それに言ったでしょう。あんたに風邪をひかれちゃ、困る。それにこれを売り物にする気も毛頭…ない」
いつも肝心な所で天邪鬼なこの男に、こんなにも素直に優しくされて心臓が暴れる。

今日は何処かおかしい。
土産を持って帰って来たり、自分だけのためにこんな薬湯まで用意してもらえるなんて、何か含みがあるに決まっている。
そんな考えが引っ切り無しに浮かんでくるが、惚れた弱みかこの湯に中てられたか。
強気な眉に反して目がとろんと緩む。

『加世さん…』湯面が揺れ、名を呼ばれた。
ゆっくりと身体を回し、男に向ける。
いつの間にか向い合せになっていた。
「湯加減は、どうですかい?」目を細め、男は娘に訊ねる。
男の顔をまともに見れないまま、娘は俯いて問いに答えた。
「ぽかぽかして、あったかくて…とっても良い気持ち良い、です」

―それは重畳…言ったと同時に白く長い指が湯から伸びて来て、娘の顎をついと持ち上げる。
紅い化粧に縁取られた碧眼が目に飛び込む。
加世は動けない、目も反らせない。
この眼に、涼しい色をしている癖に、奥の奥では獣の目をした、妖艶なこの眼に見つめられて動ける筈などない。
「あ…」
「少し、温くなってきちまいましたね…。もっと熱く、体の冷えぬように」
ぐいっと腰が引き寄せられて唇と唇が合わさった。

*続く*
783名無しさん@ピンキー:2009/09/20(日) 19:12:56 ID:O4IBkzNz
薬売りが平然とエロいw

サバの入ってた薬箱は生臭くならなかったのかw
加世が年取るの気にし始めたら「ではどうぞ」って薬箱に大事にしまいこんだりしてなwww
784名無しさん@ピンキー:2009/09/23(水) 17:18:15 ID:QqcL1gFT
続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チン チン
785*秋桜〜六輪目〜*:2009/09/23(水) 22:32:18 ID:febpkNk8
修正やらしてたら遅れました。申し訳ありません。
相変わらずのスロー展開ですが、もう少しお付き合いください。

―ちゅ…ちゅぷっじゅるっじゅ…
白と藤色の間から伸びた赤く熱い舌が熟れた肉厚の桃を思わせる唇にかぶり付き、些か乱暴に舐る。
浅く、徐々に深く唇をなぞり、口内を掻き回し、舌と唾液とを絡めとっていく。
厚みのある唇から唾液が零れ、口付けの際も時折ぬるりと滑るので、逃がすまいと甘噛みする。

「ふっ…、ぅん」
娘の吐息と喘ぎが混じった艶のある声が反響し、駆け上がる男の情欲を煽った。
薬売りは唇を一層深く食い込ませ、加世を一気に白湯の中に押し倒す。
ザブンと大きく波が立ち、白い湯面には長い銀髪と、すっかり解けた黒髪が絡み合うようにうねった。
加世は突然の事に目を開き、反射的に胸元に挟まれていた腕に力を込め、身体を離して退き下がろうとする。
だが男の手はがっちりと娘の後頭部を抑えつけ、腰は更に引き寄せられて体はおろか唇さえ離せない。
そんな娘の気色を悟っても尚、男は口付けを止めない。
それどころか湯が入らないよう、器用に舌を差出し、引っ込めては絡めてくる。
湯の中で絡められる舌は、先程とはうって変わってひんやりとした。

温かい、冷たい…。感覚が鈍くなってくる。
頭が……重い…。何も、考えられない…。
加世の思考はぼやけていき、込められていた力がすぅっと抜けていく。
男も娘から抵抗の念が消えたのを感じ取ると、ゆっくりと腕の力を緩めた。
一瞬、男の唇が離れる。
『―っん』離れたかと思うとまたすぐに吸いつき、温かく甘い液体を口移された。
同時に拘束が解かれる。
786*秋桜〜続・六輪目〜*:2009/09/23(水) 22:38:12 ID:febpkNk8
『ぷはぁっ』ようやく解放されて、加世は湯面から勢いよく顔を出す。
一呼吸遅れて男もゆっくりと上体を起こした。
「…嘘吐き」加世が上気した顔で呼吸を整えながら静かに薬売りを睨む。
「嘘では、ありませんよ…。取って食いは、しなかったでしょう?」雫を落としながら、男は悪びれた様子も無く、くつくつと笑う。
既に十分食われた気がするが…。食わされたと言えば…。

「あれ、最後の…この湯ですよね。甘い…っ」言いかけて加世は異変に気付く。
喉の奥から腹部にかけて、液体の通った道筋が熱い。脈が、呼吸が速くなってくる。
「はっ…なん、こ、れ…薬売り…さん?」戸惑いを隠せず、先刻よりも一層潤んだ目で加世が男を見上げる。
濡れて張り付いた美しい銀髪の奥の眼が妖しく、真っ直ぐに狙いを定めたのが分かった。
「おや、忘れちまいましたか?『もっと熱く』、湯が温くなったなら温めれば良いだけの事」
それだけ言うと、薬売りは加世の黒く艶やかな濡れ髪の間を縫って頬に指を這わせた。

「まだ、冷えて、いますね」
すすす、と指が髪と頬を伝って右耳の付け根を指で挟み、耳朶とその奥の小さな入口を親指の腹で擦る。
湯の中からもう一方の手が伸びて乱れた黒髪をサラサラと梳かしながら首から肩、背中、腰へと移動していく。
「ちょ、温める…って、薬売りさ…ひゃんっ」
そのまま左の耳朶を犬歯で軽く噛まれ、舌がぺろりと縁や入口を這った。
ぞくりと加世は背筋をピンと張り、肩を竦める。
耳元で男の吐息が、舌と唾液の感触が、それだけで体の奥がきゅんと火照った。

腰に添えられた手が脇腹と下腹部の上をすり抜けてゆっくりと胸の膨らみを下から揉み上げる。
「んっ」ぴくりと加世の体が反応した。
口付けは耳からするすると首筋へと落され、強く吸われた。
湯に中てられてほんのり赤く染まった褐色の肌に一層濃厚な紅い花がぽつぽつと咲いていく。
白湯から褐色の肌が浮かび、そこに己が散らした紅が散るのを見るのは何とも愉しく、征服欲を高める。が、まだ何かあと今一歩の処で傍観的だった。

「ふむ…己もこの湯の気に中てられ始めたとは言え、少々、らしく無かったか…」
ちらと見ると、加世は眼を伏せて左下に俯き、唇から声が出そうになるのを必死に堪えているようだった。
薬売りは静かに息を呑み込んでその姿に見惚れる。
伏せられ、濡れた黒い睫毛が一層長く艶やかに光り、先には雫が溜まっている。
膨らみつつある快楽への昂りが娘の体を容赦なく染め上げても尚、唇を噛み、気丈に己を貫こうとする。
『―嗚呼、やはりこの娘は…』薬売りが愛おしげに笑う。
そして同時に衝動が沸騰した。
787*秋桜〜七輪目〜*:2009/09/23(水) 22:54:58 ID:febpkNk8
『欲しい。足りない、この娘の総てが欲しい。狂う様を、見たい』
内なる獣を加世に気取られぬように、静かに顔を湯に沈めた。
そして衝動を一気に叩きつけるように加世の膨らみの先端に吸いついた。

「んっっ、やっ」
今迄よりも大きく加世の身体がビクンと跳ね、薬売りの顔に手を掛けて引き剝そうと力を込める。
『させぬ』と更に強く吸い、ねっとりと舌で転がす。
予め胸をゆっくりと揉み上げていた手も先端へ移動し、長く整えられた爪の先で挟んで、摘まみ、擦り、軽く引っ掻き、といった甘い刺激を与えている。
押し寄せる快楽の波に力が入らず、薬売りの顔に掛けられた小さな手は震えながら添えられている風になった。

口内で愛撫される小さな実は徐々に硬く膨らみを増し、その様に男は静かに歓喜して耳朶と同じように軽く犬歯を突き立てる。
「あっ、あぁ」
加世はもう堪らず、声を洩らさずにはいられなくなっていた。
薬売りは水面下で確かに伝わる娘の体温と高速の鼓動、降り注ぐ嬌声に心を躍らせる。
そして白湯に揺らめく茂みを抜けた奥に狙いを定め、湯とは異なる蜜で濡れた割れ目を陰核へと擦り上げた。

「ああぁっ」
加世の身体が強張り、男の頭をきつく抱き締めて仰け反った。
見開かれた目からも湯水とは異なる雫が一筋、二筋流れ、加世は吊糸の切れた人形の様に湯の中へ頽れる。
その身体を薬売りが抱き抱えると、加世の虚ろになった視線と己の視線とを絡ませながら再度軽く口付けた。


*続く*
788名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 08:32:26 ID:+zIMBIH3
入浴プレイと見せかけて、まさかの薬プレイとは。
こいつぁ・・・なかなか手強いw

焦らしプレイも嫌いじゃないが・・・
最近、夜はめっきり寒くてな、裸で正座もツライ季節なんだぜage!
789名無しさん@ピンキー:2009/09/26(土) 16:21:36 ID:vm3j73XB
>778
つ 足袋

共に寒さを耐え忍ぼう。
790名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 10:47:26 ID:afDwx2vi
>788
つ 褌

とりあえずソコは隠せ、な?
791名無しさん@ピンキー:2009/09/27(日) 21:29:53 ID:YDr39Eyr
B地区も隠しなさい

つサロンパス
792名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 18:47:01 ID:rlN/KPcy
ついでに目隠しなど

つ 紫頭巾
793名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 19:57:23 ID:m77IB+TH
じゃあコレも要るよな

つ鞭
794名無しさん@ピンキー:2009/09/28(月) 21:31:49 ID:rlN/KPcy
それならコレも是非

つ 高下駄
795名無しさん@ピンキー:2009/10/02(金) 00:09:57 ID:0NAnym/5
いつのまにか788を弄るスレになっている件w
道具もそろったところで、話をもどそうか

続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チン チン
796*秋桜〜続・七輪目〜*:2009/10/02(金) 00:34:08 ID:AfV131p1
>>788-794
僭越ながら盛大に吹かせていただきました。
相も変わらず焦らして参りますが…
>>788さんの最終形態が気になって仕方がありませんです。はい。

おっとうっかりうっかり
↓続きです
797*秋桜〜続・七輪目〜*:2009/10/02(金) 00:38:07 ID:AfV131p1
ぼやけた焦点が徐々に合っていき、加世は己を抱えて気遣わし気に顔を覗き込む男の顔を認めた。
「は…くす…さ…?」軽く絶頂を迎えた反動で朦朧としたまま加世が口を開く。
男は安堵の表情を見せたが、すぐに顔を反らし、加世の目を見ようとはしない。
そして眉間に少し皺を寄せ、伏し目がちに一言だけ「申し訳ありません」と言った。

男の口から出た突然の言葉に、加世は益々勢いを増す火照りと上がる呼吸を抑えて微笑む。
「どう、して…?薬売りさんが…謝る、こと…」
―ない、と言いかけて言葉を遮られる。
「私は、いつも加世さんに何もしてやれない。あんたの笑う顔を見たくても、結局はあんたを泣かせてばかりだ」
己で己を御しきれぬのに苛立つ。
この娘は、加世は己には勿体無い程に尽くしてくれている。

『明日在り続けるとも分からぬ生命を、那由多の先までも待つ事になる』
己が眼前、見据えても尚、見えぬ物を延々追い続けて行くという事が、どれ程冷たく空しい物であるのか。
花は咲いてこそ…花。この花が旭日の下ならば大輪の花を咲かすであろうと分かっているから、寒月の下に身を置いて咲かぬ花などになって欲しくは無かった。
だが何度諭しても、加世はいつ消え失せるとも分らぬ己と共に生きる事を選んだ。
然し、ならばせめて、日の下で無くとも月下に咲かせよう。
日光より脆弱な、「光」とまで呼べる物では無いかもしれぬ。しかしそれが、己がこの娘になせる唯一の理。

『だが、この様は何だ』
自嘲じみた言葉で自ら思惑を遮った。
時々、考を巡らせてはあと一歩の所でいつも我に返る。
己は、見たく無かっただけなのだ。
己は、己が考えている程より無力で、脆いという事を。
与えているのは、与えられているのは、いつも…。
「薬売りさん…」
己を呼ぶ声に、はっと反射的にその出所を見遣る。
「私、大丈夫ですから、だから…そんな顔、しないで下さい」
己から滴っていた雫で濡れた娘が、潤んだ目で努めて明るく微笑みながら己を見上げている。
「加世さん、私は…」言いかけた唇にそっと指を添えられ、加世はただ静かに首を横に振る。そして口を開いた。

「なんで…今日あんなに濡れて帰って来たんです?傘、持ってましたよね?」
突拍子もない問いに、男は柄にも無く鳩が豆鉄砲を食った様になる。しかしすぐにいつもの様に静かに答えた。
「傘など、悠長に広げている間も惜しかった。ただ早く、加世さんの顔が、見たかったんですよ…土産も無駄にしたくは、無かったですしね」
薬売り自身、薬湯に中てられたのか、普段よりも率直に己の心中を明かす。
嬉しくなって、加世は目を細めてふふっと笑った。

「それに…」男は言葉を続ける。
「私が加世さんに出来ることなど、其の程度の事ですから」いつもとは異なる部類ではあるが、やはり肝心な所で鼻につく事を言うこの男。
パチっと軽く頬を叩かれてそのまま優しく添えられる。
「薬売りさん…ばかです。私が、お土産であんなに喜んでたって思ってるんですか?確かに、すごく嬉しかったけど、でも…」加世が静かに言葉に力を込める。
「私は…私にとって、薬売りさんが無事に帰って来てくれた事が一番のお土産なんですよ…。今此処に居てくれて、傍に居てくれて…ありがとう、ございます」
どくっと大きく男の心臓が跳ねた。
798*秋桜〜続・七輪目〜*:2009/10/02(金) 01:04:11 ID:AfV131p1
頬に添えられた小さな手が白い輪郭をなぞって確かめるように行き来する。
そして自然と、互いの身体を密着させていった。
加世は薬売りの見掛けよりも些か広い背に精一杯腕を回し、薬売りも幼子を守り抱く様に、加世の頭と背に手を回す。

「薬売り、さん…」娘の熱い吐息が耳に掛かる。
娘の豊かな胸の膨らみが白い胸板に押し潰され、呼吸の度に形と感触を変えては擦れた。
「私が、こんなこと言うの…恥ずかしい、けど…私…」堰が切れた様に加世の呼吸が上がる。
ぎゅっと白い背に圧力が掛かり、耳に唇が触れて一瞬ぴくりと動く。

「今、薬売りさんが……」
男は湧き上がる衝動を抑え込んでその言葉を今か今かと待つ。そして、暫しの沈黙の後にそのか細い声を聞き取った。

「すごく…欲しい、です」
血液が、全身がぞわりと波立つ。
その波が自らの息をも飲み込んで、深部で己自身を絡め取っていた鎖縄を、音も無く千切った。
熱を帯びた男の吐息がゆっくりと吐き出され、普段変わり無い、心地良くも危うい低声が加世の耳元に降り掛かる。
「……知りません、ぜ」

ぎくりと加世は火照る体に不釣り合いな悪寒を感じた。
『あ…私、まずい事言っちゃった、かも…』慌てて加世は取り繕う。
「あ、あのっ、いっ今のは弾みで言っちゃったって言うかっ…そのっ…っふむん」
言ってる傍から言わせぬと言わんばかりに口に人差し指を突っ込まれた。

『また、甘…』心地よい味に本能的に唾液がじわりと滲み出で、舌が僅かに動いてしまう。男はそれを逃さない。
「おや…随分と、この味がお気に召したようで。しかし、私の指までそんなに舐められては……どれ…」
色情に濡れた言葉が紡がれ、加世の羞恥を含んだ心持は奥へ隅へと追い立てられて行く。
「ん…くっ」息が苦しい。指を突っ込まれているからというだけでは無い。
ぬるりと口内を動き回る指から甘味と香りが鼻腔へ抜けて、頭へ甘美な刺激がじりじりと昇る。
「では私も、味見と…参りましょうかね」
そう言うと、紅く痕が残る首筋を顎の下から鎖骨へ、猫が仔を舐める様にねっとりと舐られた。


*続く*

799788:2009/10/02(金) 19:26:27 ID:0NAnym/5
待ってました抱擁力のある加世がたまらん
次も正座して待ってるからぁ///!

だれかまともな防寒具をくれないか?w
800名無しさん@ピンキー:2009/10/03(土) 00:39:46 ID:5bv3pujR
よかったらどうぞ

つ 大胸筋矯正サポーター
801名無しさん@ピンキー:2009/10/04(日) 23:02:27 ID:hr3VgI2e
これも使って

つ5本指ソックス
802名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 03:18:22 ID:ny6qI/5W
寒さを防ぐなら毛がついたやつがいいかね

つ猫耳
803名無しさん@ピンキー:2009/10/05(月) 04:23:00 ID:oRlsPaVs
風邪をひいたら大変ですから

つサージカルマスク
804名無しさん@ピンキー:2009/10/06(火) 23:24:29 ID:Lztg29//
まだ寒そうだな…特に首の辺りが

つ ネギ
805名無しさん@ピンキー:2009/10/07(水) 18:35:03 ID:WHg1LXIx
寒い時期は革が良いよね。

つ 野球グローブ
806名無しさん@ピンキー:2009/10/08(木) 00:54:20 ID:eTN3hIDJ
こいつの防寒能力なめんな

つ 黒タイツ


はいドーン
807*秋桜〜八輪目〜*:2009/10/10(土) 02:18:09 ID:ohUFAni9
敏感になった、湿った肌の上を舌が這う。
男の舌の動きに合わせて喉元をつうっと指が下った。
首に触れられる事は、本能的に畏怖の念を抱かせる。
びくりと加世は肩が竦み、声を上げそうになるが、指を入れられている為に声を出せない。
堪らず声の代わりに薬売りの指を強く吸う。

「おっと…噛み付かないで、下さいよ?」薬売りがからかう様に言って濡れた指を抜き取った。
そしておもむろに加世の手を湯の中から掬い上げる。
薬売りはその手を見つめて目だけで笑うと、その指先に集まった玉の滴を加世の指ごと口に含んだ。
「あ、あの…薬売りさ…」加世は言い掛けるが、抵抗する事は無かった。
白露を、それが染み込んだ指を、丹念に舐め、軽く噛み、吸う。
指先の感覚も研ぎ澄まされているせいか、快感とは異なるものの何処かくすぐったい様な感覚で、身をよじりたくなる。
薬売りは時折、ぴちゃりちゅぷりと故意に音を立ててはどぎまぎする加世の様子を楽しむかの如く目を細める。
そして指を一層強く吸うと「大層、甘い…ですね」と、意地悪そうに含み笑いを浮かべた。
それに加世が羞恥で耳まで染めているのを認めると、満足したのか指先に軽く口付ける。
そのまま目を伏せて、静かに唇が動いた。

「加世さん…加世さんの理、もう一度、お聞かせ願いたく…」
伏せた暗闇に、ぴくりと手の中の指が跳ねた。
今この手の先で、加世は目を見開いてひどく赤面しているのだろう。
この娘に、それを再び口にさせる事は酷かもしれぬ。
この娘の、己への情を疑う訳も無い。
ただもう一度で良い、確かな証が、許しが欲しかった。

『臆病者め』と何者かが吐き捨てる。
『だが、これで良いのかもしれぬ』とまた何者かが言う。
否、これで良いのだ。この娘に臆病者だと気付かされ、また臆病を恥じる必要も無い事をも教えられた。
当人は、恐らく気付いてもいないのだろうが…。
その娘に、これ以上臆病を晒す事を臆して何になる。
薬売り自身、己の鼓動が一刻み毎に深く、ゆっくりと脈打ちながらも、奥底で何かが蝋燭のように揺らめいているのが分かった。
『懼れて、いる…?』これは、本当に随分と気が小さくなったものだと咲った。

その時、小さな温もりを包んでいた手を、新たな温もりが包み、絡ませた。
眼を開けると、加世はその手を見つめて穏やかな微笑みを浮かべている。
そしてそっと視線を上げて、強くも、潤んだ柔らかな眼差しで薬売りを見据えて言った。
「私、薬売りさんを…もっと、感じたいです」
加世の面持ちに、言葉に、それまでにあった恥じらいは無かった。

否、恐らくは”あった”のかもしれぬ。
殊に、この様な事には人一倍過敏な娘だ。
だがそれさえも凌駕したのだろう。
それは自身の理を伝えんとする意志の強さか、または情の深さの表れか…。
薬売りが応える様に微笑んで手を引く。
808*秋桜〜続・八輪目〜*:2009/10/10(土) 02:22:09 ID:ohUFAni9
「では…来て下さい」自らの両の肩に加世の手を置かせた。
すると、「あの…」と加世が言い難そうに口を開く。
「ああ、これでは見当も付きません、ね」
ふっと笑いを洩らして、加世の手を取り、「ではこれで、どうですか?」湯の中で熱く反り上がった物に這わせた。
それに触れた一瞬、躊躇った様に委縮した加世の指がするすると形をなぞる。

薬売りの身体がぴくりと動いた。
徐々に確かめるかの如く、根元から頂へ、指の動きに合わせる様に加世の上体が白湯に沈み込んで行く。
そして肉幹の先端が充分過ぎる程に濡れそぼった割れ目に分け入った。
一瞬、加世は動きを止めたが、息を軽く吸い込むと目をきゅっと瞑って身体を一思いに降ろした。
蜜と湯で満たされた女陰は、普段のそれよりも容易く男を受け入れ、尚且つ激しい刺激を与える。

「あっあああっ」
加世の叫びにも似た嬌声が浴室にこだまする。
加世は薬売りの肩にぐっと力を掛ける。
普段なら動いて互いを求める所だが、この湯のお陰で挿入しただけでもこれなのだ。動ける筈は無かった。
すると、薬売りの腕が加世の腰を抱える様に支え、ふわりと持ち上げられた。
そしてそのまま体を落とされ、下から突き上げられる。
「あっやああ」
突き上げられる度に水が流れ込み、肉幹と共に膣内を掻き回す。
水圧が奥を一層強く刺激して押し上げ、慣れない快楽に身をよじる。

「あっ…はっ、んんふっ」
突然、唇を奪われて塞がれ、加世の潤んだ目から涙が零れた。
じゃぶじゃぶと湯が跳ねる音、じゅっちゅっと唇から洩れる淫らな音、性質の異なった水音が鳴り響く。
口付けを止めて薬売りは加世の頬を伝った線の跡をぺろりと舐め取る。
そして、空気を貪る様に天を仰いだ加世の胸元に顔を潜り込ませると、ぴんと立ちあがった粒を口に含んだ。
「んっぁあ」加世はぶるぶると震えて薬売りの首に手を回してしがみ付く。

「くす…り売りさんっ薬売りさぁんっ」加世はしがみ付いたまま、男を呼ぶ。
熟れた果実の様に柔らかく、ぬるりと滑るかと思えば締め付けられる。
気を緩めれば直ぐに達してしまいそうになる。
薬売りは答える代りに、揺れる豊かな乳房に強く吸い付き、一つ痣を付けて加世を抱きしめる。
「加世…さん」
薬売りの速くなった、熱気を帯びた吐息が加世の掛かる。
「薬売りさ…私っ、も…だめぇぇ」
薬売りも辛そうな面持ちだが、もっと、更に早く、強く、突き上げて腰を中の膨らみに擦りつけた。
それに呼応するかの様に、加世もまた、男を強くきつく締め付けて来る。

快楽による意識の浸食は瞬く間だった。
「あっあぁあああああああ」
「くっ…」
身体を、意識ごと搾り取られるような感覚と共に、意識を、身体の奥を、突き抜けるような快感と共に。
とろりとした熱い精が放たれ、娘の内に流れ込む。
加世は薬売りの頭を抱え込んだまま仰け反ると、くたりと薬売りにもたれ掛かる。
薬売りはもたれ掛かる娘の身体を静かに支えると、愛おしげに頭を撫で、目を伏せた。
809*秋桜〜九輪目〜*:2009/10/10(土) 02:27:17 ID:ohUFAni9
ちゃぷんと水が跳ねる。
浴槽の縁に肘を置き、そこに頬を乗せて不満気にしているふくれっ面の娘。
「そろそろ、機嫌を直してくれませんかね」
その後ろでは男が悪びれた様子も無く、文字通り平謝りで娘のご機嫌取りをしている。

「その台詞、さっきも聞きました。薬売りさん本当に悪いと思って無いですよね?」
娘が振り返って、責める様に男を見遣る。
「しかし加世さん、先程は<謝る事は無い>と言ってたじゃあないですか」
「それとこれとは別ですっ。全くもう…誰のせいでお風呂沸かし直したと思ってるんですかぁ」
加世の半ば呆れた叱咤にも、薬売りは眉一つ動かさない。
「まあ、まあ、今度は本当に良い湯でしょう?」それどころか口も減らない。

「それは、そうですけど…。ってそうじゃなくて、というか、なんで媚薬なんか入れたんですか!」
ふにゃりとしたりふくれてみたり、加世はまるで気が休まる所が無い。
「いやぁ、派手に雨に降られたものですから、薬が湿気て売り物にならなくなってしまったもので。加世さんが鯖で喜んでるのを見て、少々私も、御相伴に与れない物か…とね。」
薬売りは加世の百面相を楽しんでいるかの如く更に悪びれず言う。

「薬売りさんの馬鹿!助平!もう知りませんから!」
加世は真っ赤になって湯を男にばしゃりと掛け、再びそっぽを向く。
「やれやれ…」とびっしょりと濡れた男が張り付く前髪を手で除けながら呟く。

「今度は、いつ帰って来るかちゃんと教えて下さいね。御馳走、いっぱい作って待ってますから」
加世が背中を向けたまま言った。
薬売りは驚いて一瞬大きく目を開くが、直ぐに穏やかに目を伏せて微笑む。
「そう、ですね」
「それと…良かったら、また薬湯、作って下さい。媚薬入りのはもう懲り懲りですけど、あの香りは好きだから」
「はい、はい」
思わぬ要望に嬉しく思ったが、それを悟られぬ様にいつもの様に返事を返す。

「今回は、いつもより長く、家で休んでいってくれますよね」
「そうですね」
加世がくるりと振り向いて笑う。
「だったら、今度は私、ゆっくり背中でも流しますから」
薬売りは笑う様に目を細めると、静かに天井を見上げた。

加世はこんな日々が続いて行く事を祈る。
毎日続かなくても良い。少しずつ、太く短く。
―貴方が今、ここにいる喜びを…紡いで、長く永く、もっと、もっと。
雨音はいつの間にか消え、辺りには虫の声と、秋の桜が静かに風にさやいでいた。


*終わり*
810名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 02:39:44 ID:ohUFAni9
皆様のお陰でなんとか終わることが出来ました。
ここまでお付き合いして下さって本当にありがとうございます。

職人さんすげぇ。
やっぱり自分に書き手は難しかったみたいです。
申し訳ついでに蛇足補足をついでにちょいと…すいません

秋桜はコスモスの和名だそうです。
花言葉は「乙女の真心」「愛情」「優美」。
こんな加世さん主体の話が出来たらいいなぁ
と思ってたらただの駄目夫と実はしっかり者妻の夫婦漫才と化してました。
過去作品巡礼して来ます。

>>799-806
GJ…ですよ…
絵に描いてほしいくらいw
811名無しさん@ピンキー:2009/10/10(土) 08:36:11 ID:CztE4FvN
職人GJ!
加世ちゃんかわゆくて
薬売りがエロい
エロかわいい作品でござった。

また新作できたら投下してくだされ。
812788:2009/10/10(土) 19:55:35 ID:29NB1pSl
GJ!
こういう夫婦モノのもいいな。
ヘタレてるくせにしっかりエロいことかます薬売りもいいが。
精神的には薬売りより大人な加世に 萌 え るw
新作も出来れば・・・期待してます!

防寒具ありがたく使わせていただきましたありがd!
重ね着には迷ったけど
>褌>5本指ソックス>足袋>黒タイツ>高下駄、この順に着用したよ。
股がモゴモゴするんだけど(性的な意味でなく)
813名無しさん@ピンキー:2009/10/14(水) 03:44:56 ID:mhmy04mE
遅ればせながら乙乙GJ!
久しぶりに投下を待つ楽しみが日々に加わったよ
しれっと風呂先回りしてる薬売りが大変良かったw
814名無しさん@ピンキー:2009/10/25(日) 02:19:06 ID:qsa02G3C
ほりごたつ
815名無しさん@ピンキー:2009/10/26(月) 23:36:08 ID:a2CAGxlE
>814
どうした寒いのか?
一緒に過去ログでも読んであったまろうか。
816名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 00:55:17 ID:itL+hfjD
保守

もう11月だね
冷えてきたし、冬になるとayakashi〜化猫が観たくなってくるよ
817名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 00:59:26 ID:itL+hfjD
sageてしもうた

一気に寒くなってしまったorz
818名無しさん@ピンキー:2009/11/02(月) 03:23:40 ID:F6zL2TCq
化物語のあのキャラを薬売りにしたい
声同じだし
役回りも同じだし
819名無しさん@ピンキー:2009/11/10(火) 14:09:38 ID:9GSoTEW2
猫と一緒にこたつで丸くなる薬売り
犬と一緒に雪の庭ではしゃぐ加世
一人寂しく仕事で立ち見番の小田島様

どうしても小田島様にはサラリーマンの哀愁が似合うと思ってしまうw
820名無しさん@ピンキー:2009/11/13(金) 19:52:16 ID:P8Puu2ov
>立ち見番
それじゃサラリーマンじゃなくて
警備員のおじちゃんじゃないか?w
821名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 09:26:32 ID:0aHU2awK
>立ち見番の小田島さま
顔と腕だけまっくろ日焼けになってるんですねw
822名無しさん@ピンキー:2009/11/19(木) 02:27:47 ID:UnrWUZiT
> 日焼け
だが顎は青い。これは譲れん。
823名無しさん@ピンキー:2009/11/20(金) 10:22:01 ID:SJ6o+ls/
>顎は青い
吹いたm9。゚(゚^Д^゚)゚。プギャーハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
824名無しさん@ピンキー:2009/12/01(火) 00:36:39 ID:PuF9IeaL
あえて空気読まずにリレーの続き。



つい先程まで生娘だった体に、三方から容赦なく精が注がれた。濁った体液でまだらに染められた肢体に、薬売りたちは満足するどころか更に昂ぶってしまう。胸や背中をくまなく埋める赤い目玉模様が燃えるほど熱い。
交合と言うより手篭めの様相を呈してきた行為に、しかし肝心の娘は抗議するどころでなく、身を冒し心まで侵されそうな悩ましい苦痛に悶え泣く。助けて、と切れ切れに訴える口を、耐え切れぬとばかり薬売りの一人が奪った。
「んんーっ!」
下半身で別の薬売りの手がつるりと尻の割れ目に手を這わせ、すぼまった穴の周りをくにくに押すと、拒絶の言葉も許されず、加世は大きな目をさらに見開く。暴れようとする膝の丸みは左右それぞれの薬売りに太腿ごと抱え込まれ、甘噛みに牙を立てられた。
若い裸体に精液を飛び散らせ、大きく広げられた脚は男に絡めとられ、薬に体内を犯されて、加世は再び秘所を薬売りらの目に晒す。
―――実に、物欲しそうな……。
よだれを垂らしてひくつくのは、加世のソコか薬売りらの欲望か。
ぬるりと愛液を尻穴の周囲に塗り込んで、薬売りの指はいよいよ加世の花弁に戻る。ふにふに弄ると加世の入り口が更にひくついて、押さえつけられているのに腰が揺れた。
つぷり、と薬売りの指が沈むのと、上の薬売りが加世の口を解放するのとは同時だった。
「ああぁーーーーーっ!!」
甲高い悲鳴が迸り、加世の背が弓なりに反って跳ねた。薬売りの指はきつく締めつけられ、絡みつかれて、熱く激しくしゃぶられる。肉の蠕動をしばらく味わい、薬売りはおもむろにその指を引き抜いた。
「あっ…いやぁ……っ!」
加世が鳴く。
責め苦の中で正体も知らぬまま求めていたものへ、身も世もなく飛びついた。
「いやっ、お願い! 入れてぇ……っ!」
「痛くは、ないですか」
気遣うフリで焦らし苛める声へ、気づく余裕も最早ない。



とここまで。
825名無しさん@ピンキー:2009/12/06(日) 22:02:41 ID:jN6CTKUP
続きマダー?
826名無しさん@ピンキー:2009/12/07(月) 06:50:42 ID:CGtPYA0j
>825 同意

すごく…滾ります!
827名無しさん@ピンキー:2009/12/08(火) 07:12:23 ID:4VzeJplw
リレーキタ - .∵・(゚∀゚)・∵. - ッ!!

あきらめかけてたから嬉しい!
828名無しさん@ピンキー:2009/12/11(金) 23:06:47 ID:aowopJJu
「痛く、ないっ、からぁ……っ」
身を炙る苦痛にか、大きな目玉からこめかみへ、つるりと涙が零れていった。
ふっくらした唇に「おねがい」されて、薬売りらは競い合うように甘い吐息を貪る。次から次へ、息つく間もなく舌を差し入れ翻弄しながら、一人がおもむろに身を寄せると、指よりはるかに大きな熱量をゆるゆると加世の中へ沈めた。
「んむぅぅぅーーっ!」
暴れようとする体を押さえつけ、薬売りらは情欲に濡れた目で女の体を視姦する。了承もなく身の奥へ押し入った雄の欲望が、あぁ、と切実な吐息に変わった。火照った指先が気遣わしげに加世の頬から顎、首すじを撫でる。
「……痛い……です、か?」
訊ねはしても、別の自分が口内を犯し、味わうのを止めはしない。必死に何かを訴えようとする視線を気づかぬふりで、薬売りは腰を引くと猛る凶器を再び深みへと沈める。
「んんっ、むぅーっ!」
男とは違う造りをした体は、本能に従って熱塊をくわえこみ、きつく締めあげてなお奥へと導くように蠢く。脊髄を駆け上がって脳を掻き乱すかのような快楽に、自然、薬売りの抽挿は早くなっていった。
くぐもっても途絶えることなく耳に届く声は、快楽の喘ぎだろうか、それとも無体への悲鳴だろうか。
繋がった意識の底は愛しい唇を解放させずに聞きたくないものを封じ込める。今更止まれない。心を求めていたはずが、背徳感がかえって興奮を煽る。
「―――っ、は、」
「んんーーーーっ!!」
どぷっ、と熱い精を吐き出して、ほのかに赤く染まった耳と目元を震わせ、薬売りが果てる。
別の一人がこくりと喉を鳴らして生唾を飲み込み、イった薬売りを押しのけるようにしてぐったりと脱力した加世の体に覆い被さった。
紅色を呈した秘裂から、とろりと白いものが溢れて糸を引いている。
「加世……っ」
柔和の名残も留めず荒々しくその名を呼んで、二人目が細い娘の体へ性器を突き入れた。



輪姦ムズい。
829名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 18:09:17 ID:onjSnGeJ
GJ!
ぐっじょぉぉぉぉぉぉぶ!
続きを裸正座で待ってます!!
830名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 19:08:52 ID:ZxJKKuDS
おぉっ!久しぶりに覗いたら大変な事に! GJ!

輪姦ネタとして 腋窩性交 という技を最近知った
気が向いたら使って頂けませんか職人様w
加世の二の腕は乳並みにイイ感じだと思うんだがww
831名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 00:53:01 ID:5uDU6OH9
>>830


二人の薬売りが結合した加世の体を左右から引きずり起こし、挿入した薬売りが上の口も奪った。深く、いつ終わるとも知れず何度も角度を変えながら、下からも突き上げて加世を揺さぶる。
ぐちゅぐちゅと、精液と愛液が加世のナカで混ぜ合わされ、押し入った肉棒に掻き出されてはとろりと溢れる。
そんな中、薬売りらは加世が抱きつくことを許さなかった。
放り捨ててあった自らの赤い帯締めを手にすると、突き上げられて大きく揺れる胸の膨らみの下を通し、二の腕ごと縛り上げる。今度は胸の上を通して、もう一本。
「んんーーーっ!?」
逃げようとする両手を捕まえて後ろ手に縛ると、前の二本へ器用に端を通し、結び目を作る。
「……ほぉ」
「こいつぁイイ」
「思った以上に、似合います……ね」
熱を帯びてしっとりと汗ばんだ色の濃い肌、あちらこちらに男が吐き出した欲望の痕、そこへ紅の紐を掛けられた体は、本人の意思はどうあれ淫靡以外の何ものでもなかった。
雄の目で舐め回して、頬を伝う涙を啜り、耳をかじる。
「綺麗ですよ、加世さん」
「まったく」
「……実に、いやらしくって、ねぇ……」
「最高……です、よ」
「んっ……んんぅ……っ、」
首すら振れずにいる娘の背後から、ぴったりと体に寄せられた腕との間、脇の部分に、立った姿勢で薬売りらは左右に分かれると肉棒をねじ込む。
豊かな胸に負けず劣らず柔らかな女の肉に包まれて、低く呻いた。肩を押さえ込み、最初から激しく腰をぶつける。先走りの汁ですぐにそこはぬるついて、娘の体がびくんと揺れた。
「加世さん」
「加世さん」
両足は別の二人が抱えて、ちゃぷちゃぷと小さな足の指を舐め回す。
幾筋も涙を零している娘の黒々とした両目は、焦点を失い始めていた。
唾液の糸を引いて解放された唇は、甘く高くよがる。加世の下の薬売りが寝転がると、別の薬売りがすかさず赤い紐で強調された膨らみを弄った。
白濁液をつんと尖った乳首に塗り込み指で震わせると、首と背中を弓なりに反らせて加世が啼いた。



読み方すらわからなかったんだぜw

これで何人?
素股、パイズリ、手で二人、普通に一人、今してるのが三人で計八人か。
……まだ順番待ちいるっぽいなw
832名無しさん@ピンキー
>腋窩性交
昔、サド公爵(だったっけ?)の本で読んだ、
腋毛のじょりじょりがいいんだってさ。

加世たんの乱れっぷりがたまらん (;゚∀゚)=3ハァハァ
縛りって浪漫だよな、お乳に食い込んでる紐になりたいぜ。