スクールデイズの分岐ルートを考えるスレ part2

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437心の彼氏(後編)
「(あっ来たみたい。)」
「(彼がそうかい?)」
「(彼じゃなくてあいつでいいよ。)」
「(そんな言い方しなくても・・)」
「(しっ来るよ。)」
そう言っている間に男が二人に近づいてきた。
男は二人の目の前に立ち、誠を値踏みするように見ている。
その男の容姿は普通で服のセンスも普通。
敢えて特徴を挙げると眼鏡をかけていて少し神経質そうな感じだった。
「(心さん、その人が彼氏ですか?)」
「(そうだよ、だからあんたはお呼びじゃないの!)」
「(嘘ですね、その人はあなたの彼氏じゃありません。)」
「(なんであんたにそんな事がわかるのよ!)」
「(心ちゃん、そんなにケンカ腰にならなくても。)」
「(その人はあなたのお姉さんの夫の誠さんでしょう?)」
これには誠も心も凍りついた様子だ。

「(そんな芝居で僕を驚かせようなんて心さんは楽しい人だなあ。)」
「(あんたね、自分が嫌がられてるって自覚は無いの!?)」
「(別に最初から好きになってもらおうなんて思ってません。)」
「(最後まで好きになることは無いわ!)」
「(何故です?僕はあなたの全てを調べ上げてそれに対応していく自信があります。)」
「(一体何を言って・・)」
「(現に今の僕はあなたの住所や家族構成だけでなく
  大学への通学経路や時間帯まで把握しています。
  それに毎日あなたの近くであなたの事をずっと見ていますし。
  あくまでこれはほんの一例ですけど。)」
「(あんたそれストーカーって言うのよ!)」
「(さあデートしましょう、楽しい一日をお約束しますよ。)」
男は心の話を全く無視して心の手を掴んで無理矢理引き寄せようとしていた。
誠も間に入ってやめさせようとしているけれど埒が明きそうに無い。
「行きましょう、こうなったら全員で抑えるしかありません。」
「そうですね。あれ?いたるちゃん?」
言葉が周りを見回したけれどいたるがいない。
ふと視線を外に向けると猛然と走って騒ぎの場に向かういたるがいた。
そしてその勢いのまま男の顔面に飛び蹴りを食らわせて吹っ飛ばしてしまった。
それを見ていた言葉も卯月も唖然となったのは言うまでも無い。
438心の彼氏(後編):2008/02/03(日) 00:09:49 ID:9miA2wGH
再び待ち合わせ場所。

「あんたねえ!!」
いたるは全身に怒りのオーラを纏って蹴り倒した男を見下ろしていた。
男は地面に落ちた眼鏡をかけなおしていたるを見上げた。
「これはいたるさんじゃないですか。」
「あんた私に付き纏った後は心お姉ちゃん!?ふざけるんじゃないわよ!!」
「え?いたるちゃんがバイト先でストーカーに遭った相手ってこいつだったの?」
「そうだよ、心お姉ちゃん。」
「ストーカーだなんて人聞きが悪いなあ。」
「うるさい!!」
「でも僕が心さんを好きになる気持ちは誰にも止められませんよ。」
「それは意地でも止めてもらうわ。
 私があんたを好きになることは永久に無いから。」
「僕のどこが気に入らないんです?」
「一言で言うと全て。」
「手厳しいですね。」
439心の彼氏(後編):2008/02/03(日) 00:10:31 ID:9miA2wGH
「そもそもあんたが男である限り絶対に無理よ。」
そう言って心はいたるを優しく抱きしめた。
「そういう事だよ。ね、心お姉ちゃん、いえ心お姉さま。」
心もいたるも足まで絡めあって恍惚とした表情でお互いを見つめ合っている。
「いたるちゃん最近また成長してきてるわね、
 なんだか抱き心地が良くなってきたよ。」
心はそう言ってツツーッといたるの背中に指を這わせた。
「あん、くすぐったいですぅお姉さまぁ。
 もぅそんな事は夕べしっかり確かめてたじゃないですかぁ。」
心といたるの周りだけ完全に雰囲気が変わってしまっていた。
そこには誰も割って入れない二人だけの世界が構築されていた。
「た・確かに僕が調べた限り二人とも彼氏はいなかった。
 それにこの二人はよく一緒に行動してるし泊まってる。
 まさかその理由がこの二人が恋人同士だったからだなんて・・・
 でもこんな事って・・・こんな事って・・うわああああああ。」
男は背を向けて駆け出してその場から逃げ出してしまった。
440心の彼氏(後編):2008/02/03(日) 00:11:26 ID:9miA2wGH
「あ・あなた達まさか・・・」
あまりの光景に駆けつけた言葉も呆然としていた。
「二人とももういいわよ。」
卯月がそう言うと二人はパッと離れてしてやったりという表情になった。
「作戦成功だね、卯月ちゃん。」
「うん、うまくいった。」
「これで心お姉ちゃんだけでなくて私も付き纏われる心配が消えたもんね。」
「すごいなあ卯月ちゃんは。
 俺と心ちゃんの偽カップルだけじゃなくてこういう奥の手を用意してたんだね。」
「話を聞くと実にしつこそうな相手だったので。
 それにしてもいたるちゃんに付き纏ってた相手と同じだとは思いませんでした。」
「私も驚いたよ、あいつがまさか心お姉ちゃんまで標的にしてたなんて。」
「それにしてもびっくりです。
 心もいたるちゃんも最初から言ってくれればいいのに。」
「お姉ちゃんは病み上がりだったから心配かけたくなかったんだよ。」
「うん、お姉さんにはお部屋でちゃんと休んでて欲しかったからね。」
「それにしてもいたるも心ちゃんも演技上手かったなあ。」
「私と心お姉ちゃんの仲だったらこんなの簡単だよ。」
「そうだね、付き合い長いし。」
「じゃあみんなでお茶してから帰るか。」
「心ちゃん、また襟歪んでるよ。」
卯月が心の襟に手をやってしっかりとマイクを回収していた。
「卯月ちゃん、今度何かお礼をさせてください。
 妹達がお世話になったんですから。」
「いえ、そんな。」
441心の彼氏(後編):2008/02/03(日) 00:12:20 ID:9miA2wGH
帰り道で。

喫茶店でみんなで一休みした後、いたると心と卯月の3人は
そのまま遊んで帰るとの事なので誠と言葉だけで帰途についていた。
「それにしても言葉、出歩いて大丈夫なのか?」
「少し疲れました、だからこうして誠君に支えてもらいますね。」
言葉は誠に腕を絡めて少しはにかんだ様子で誠を見上げていた。
「ああそうだな、そうしてくれ。」
二人はマンションまでそのままのんびりと帰った。
『久々に二人だけで過ごす週末の夜も悪くないな。
 今日の晩飯は言葉の好きな物でも作ってやるかな。』

End