1 :
名無しさん@ピンキー:
前スレがなくなっていたので立てました
乙!
新スレ建て任せてしまい申し訳なく思うよ
携帯厨の痛いとこだな
しかしこれでまた彩のバトルが読めるようになるのはめでたい!めでたい!
スレ立て乙です。前スレの小ネタ続き投下します。
小ネタその4(ラスト)
「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」烈帛の気合いと共に彩は大きく踏み込み、ちよりの腹部にボディブローを叩き込む。
「ぐぅぅっ!?」
先程から延々と耐えていた便意が公衆の面前での脱糞という形で消えた彩にとって最早怖いものは何も無かった。羞恥は臨界点を突破し、今まで抑えていたもの全てが振り切られた今、怒りにも似た感情だけが彩の身体を突き動かす。
彩の放った拳頭がちよりの腹へ深々とえぐり込み、
便意を必死に我慢していたちよりはくぐもったうめき声を発しながら悶え苦しむ。
(くっ!この人、私を巻き添えにしようとして…………!?)
彩の意図を察したちよりは必死に漏らさんと肛門の活約筋に力を入れて締めるが、その間にも彩の腹責めは絶えず行われてる。
自ら産み落とした茶色と黄土色が混じりあった糞塊の小山を足でグチャグチャに崩す事も構わず、目に涙を浮かべたまま彩は形の良い眉と目尻を吊り上げた凄まじい形相でちよりの腹に容赦無いパンチを打ち込んでいく。
「うぅ………うぐっ」
活約筋の崩壊が訪れようとしていた刹那、ちよりは腹責めに集中してガードが下がっている彩の顎に無我夢中で膝を打ち込んだ。
「っあぅ!!」
ゴツッという鈍い音がした後、膝蹴りによって彩の小柄な身体はのけぞり、ふらふらと大きくよろめく。
「やぁっ!!」
間髪入れずに棒立ちになった彩の身体に条件反射とも言うべき反応の速さで先程のお返しと言わんばかりに彩の腹部へ前蹴りを突き刺す。
「うぇぶっ………」
腹部に強烈な一撃が決まり、彩は膝を付いてから四つん這いにキャンパスへ倒れ込んだ。
「あ、あ………」
口を大きく開き、涎を垂らしながら小さなうめき声を漏らして全身を小刻みに震えさせると彩の身体はとうとうキャンパスに沈んだ。
「ワーーーン、ツーーーー、スリーーーーー………」彩がダウンしたと同時にレフェリーを務める部員の女生徒は腐臭にも似た排便の臭気に顔をしかめながらもカウントを唱える。
「ハァ……ハァ………うぅっ………」
格闘に向いているとは言えない枝のような細い手足をガクガクと震わせ、黒目がちな大きい瞳から溢れて頬を伝う涙も、桜色の唇から垂れる唾液も拭うおうとせず懸命に立ち上がろうとする。
「うぅっ………う、あぁ」
力ない悲鳴を僅かに紡いだ後、彩はびたんっと音がする程うつ伏せに無様に倒れ込んだ。
「K.O!!勝者、天草ちより!!」
レフェリーが双手を掲げて交差するように大きく振り、彩の戦意喪失、そして勝者の名を高々と叫んだ。
その瞬間、女生徒達の一際大きな歓声が響き渡り、観衆達は狂喜乱舞といった有り様でちよりの勝利に歓喜した。
「彩ちゃん、彩ちゃん!大丈夫ですか!?」
ジャージ姿の友美は勝負が決まると同時に慌ててリングの中へと入り、彩を抱き起こして揺さぶる。
「うっ………うん」
意識がはっきりしていないのか、彩は返事はするものの半ば気絶した状態だった。
(ハァ……ハァ……くぅ、間一髪でしたね………うぅぐ!!)
二、三回大きく肩で息をした後、ちよりは勝利の余韻も味わう事なく慌てて緩みかけた菊座を締め直し、四方のリングに一礼をしてからグローブを外してリングロープをくぐり抜けた。
「あ、ちより会長。どこに行くんですか?」
ちよりのセコンドに付いていた女子部員がやや不思議そうな顔で声を掛けるが、ちよりはそれを聞いてはいない。いや、正確には聞こえているのだが、今のちよりには応える余裕もなく、やや小走りで第二体育館の扉を開けて渡り廊下へ移動していった。
※
「は、早く!?早くしないと……………」
渡り廊下を通って第一体育館に辿り着いたちよりは慌ててトイレに駆け込み、
一番手前にある和式の便器がある扉を開けようとした。
グルッ!ギュルルルルルルルルッ!!
「あぐぅぅ!!も、もう間に合わない…………」
最早一刻を争う状態のちよりはたまたま手洗い用の水道の所に置いてあったプラシチック製の青いバケツを掴むと穿いていたスパッツと尿を含んで黄色く変色した下着を下ろし、丸みを帯びて白くふっくらとした尻をバケツに下ろす。
ボビュッ!!ブリュリュッ!!ビチビチビチビチッ!!!ブビュルルルルルルルッ!!!ブシューーーーーーーーーーッ!!!!!
ビブュルッ!!
腰を下ろした瞬間、凄まじい破裂音と同時にちよりの尻穴からおびただしい量の下痢便が噴出し、バケツの中は軟便であっという間に満杯になる。
「くぅぅぅぅぅぅぅっ!!…………ん、んぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーっ!!!」
ビシュルッ!!ブビッ!!ブリュッ!!
ちよりが顔を真っ赤にしながらいきむと今度は20cmもある野太い糞塊が大口を開けた肛門からヌルリと押し出され、泥状の濁った汚物の水溜まりの中へと大便が飛沫と派手な音を立てて落ちる。
その落ちた糞塊により、元々下痢便によって溢れ掛けていたバケツの中身はとうとう溢れ出してタイル張りの床に茶色く濁った汚水が溢れ返った。
それによりバケツの口に密着させていたちよりの白い尻は汚物で見事に茶色く汚れ、見るも無惨な状態になり果てていた。
ボブッ!ブブッ!!ブゥ〜〜〜…………
このまま延々と続くのではないかと思われる脱糞は
その糞塊が産み落とされ、最後にトイレ全体に放屁の音を響き渡らせるて終焉を迎えた。
「うっ…………うぐっ…………」
長く感じた排泄の刻を終え、水を打ったように静まり返ったトイレの中でちよりは優しい印象を与える垂れ気味の目元を潤ませて小さくすすり泣いていた。
測らずともバケツの中に汚物を撒き散らしてしまった自分に対する情けなさと人前で大便を漏らさずに済んだ事への安心感といった感情全てがごちゃごちゃに混ざって思わず泣き出してしまったのだ。
例えムエタイの頂点を極めたちよりとてまだ十代の少女、こんな事になってしまえば泣きたくなるのは無理もない。
十分後、気持ちの落ち着いたちよりはバケツの中に並々と入った便塊を洋式の便器に流してから静かにトイレを後にした。
その後、意識の回復した彩はキャンパスに漏らした便塊を自分で掃除した後、
教員と生徒会宛てに今後は真面目に学校生活を送る事を誓ったという。
―――了
投下終了。次回から本編の新作始めます。そして今日で今年最後の投下になります。それではよいお年を
これは突き抜けている!wwww
7 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 23:28:13 ID:5xa6j4iS
保守
8 :
放蕩:2008/01/04(金) 23:30:04 ID:WXslHe2M
美咲の声を初めて聞いたのは、彼女が発する悲鳴からだった。
今にも噛み付いてきそうだったあの表情が、今は苦痛に歪んでいる。
天井からの照明に明るく照らされた闘技場の周囲は、
スーツ姿の男達と、連れ添いの女達で埋め尽くされている。
初めて足を踏み入れた時、金持ちってのはこんなにも暇を持て余しているのかと思った。
観戦者の野次は煩かったが、美咲の苦悶の声は俺の耳に届いてくる。
どこかにマイクでも設置されているのだろう。
悲鳴はおろか、彼女らの身体がぶつかり合う音から、
腰から漏れる卑猥な水音さえもが、はっきりと聞こえた。
闘技場の真中に転がされた美咲のホットパンツを、対戦相手の女が踏みにじっている。
相手の足に力がこめられる度、彼女のホットパンツの中心が徐々に盛り上がっていくのが判り、
俺の目は思わずくぎ付けになる。
それはまるで、彼女の股間で男根が鎌首をもたげ始めたかのようだ。
いつもはきつく結ばれていた、美咲の瑞々しい唇が開かれて、悲鳴が漏れる。
思っていたよりもずっと可愛らしい声だった。
美咲は悲鳴をあげながらも、両手を下半身に伸ばしていた。
ホットパンツを内側から突き上げる男根を押さえて、「ひぃっ、ひぃっ」と喘ぎながら、
振動するそれを体内深く押し戻す。
彼女を踏みつける女が、その足に更に力を込めたが、
美咲は悲鳴をあげながらも必死に太股の間を抑え続けた。
やがて女の方が根負けした。
舌打ちを一つして、美咲の身体に膝から体当たりする。
ニードロップってやつか?
膝は美咲のホットパンツとビキニブラの丁度中間にずっぽりと埋まった。
多分胃の辺りだろう。その証拠に美咲の両頬が微かに膨らんだ。
再びきつく結ばれた唇の隙間から漏れた液体が、水鉄砲のように飛ぶ。
さっき無理やり飲まされていた水が逆流してきたに違いない。
女が自分の上から離れると、美咲はたまりかねたように辺りを転げ回った。
「うっげえええええ」
俺の物になった筈なのに、ロクに声さえ聞いた事のない相手。
その彼女が上げる無様な声。
びちゃびちゃと音を立てて垂れ流す胃液。
胃と股間を抑えてのたうちまわる醜いその姿に、
何故だか俺は酷く興奮していた。
9 :
放蕩:2008/01/04(金) 23:30:34 ID:WXslHe2M
女ばかりが立て続けに3人。男児に恵まれない事を親父はいつも嘆いていたそうだ。
それなりの商才はあったらしいが、昭和育ちというか、昔気質な所も多かった。
バブルの時期に一山当てて、その後もそれなりに。強引な事もやって一代で財を築いた。
一番上の姉が産まれて10年。
親父の呼称も社長から会長に変わった頃、ようやく待望の男児が産まれた。
親父の喜び方は尋常ではなく、その後の落胆は更に常軌を逸していた。
医者は、生きて10歳までだと言ったそうだ。
後継者を欲していた親父の希望に、俺は生まれながらにして背いたわけだ。
お袋は悲しみ、親父は怒りの余り生まれたての俺を殺そうとした事もあったらしい。
今もその産婦人科に勤めている、よく太った看護士が話していた。
いかにも人の良さそうな風体でいながら、余計な話ばかり聞かせてくれる。
小学校に入る頃には、なんとなく気付いていた。
お袋の異常な過保護ぶり。親父の俺に対するよそよそしさ。自分の余命。
お袋は、俺が10年目の誕生日を迎える前に逝った。
ついに俺以外の男児に恵まれなかった親父は、3人の姉達の育成に力を注ぐようになった。
10を過ぎて、医者の俺に対する言葉が20歳を越えられるかどうかに変わった。
お袋の愛情の賜物だとか適当に理屈をこねる姿が滑稽だった。
そしてその20を過ぎて今尚しぶとく生きている俺を見たら、あの世の親父はなんと思うだろう。
10年経つごとに言うことを変える医者を殺しに来るだろうか。
姉達ではなく俺を後継者にすべきだったと思い直すだろうか。
親父が逝った時、姉達には会社のポストと遺産を、俺には何故か屋敷と姉達以上の遺産を残した。
誰もお前の面倒は見ない。その代わりにこの金をくれてやる。
俺にはそう受け取れた。
豪遊もしてみた。しかしどれだけ散財しようが、俺の短い人生で使いきれる額ではない。
投資の話も腐る程持ちかけられた。
だが、先のない人生でこれ以上金を増やした所で馬鹿馬鹿しい。
車も買った。医者も買った。女も買った。どれも壊しては捨てた。
俺のような腐った人間が発する匂いがあるのなら、その匂いを嗅ぎ付ける種類の人間もいる。
その日、俺はその事を知った。
男が、俺の元を訪れてきた。
「人間を買ってみませんか?」
男は言った。詐欺や宗教の勧誘も数多く相手にしてきたが、こいつとの会話が一番奇天烈だった。
「具体的に言えば女を買いませんか? という事です。
ご趣味が違えば男も揃えられますが」
「女の斡旋なら間に合ってるよ」
「性的な意味合いだけではありません。
失礼ですが貴方は、刺激に飢えていらっしゃいませんか?
面白い賭け事があるのですよ。参加資格は人間の所有です」
「どこの国の話だよ」
「この国での話ですよ。例えるなら、時代劇のように娘を1人買って頂く。
互いに娘を持った人たちが集い、あるいは金を賭け、あるいは見せ合う場があるのです」
この国でそんな奴隷商売みたいな事が?
疑う視線に相手は慣れているらしかった。
脇に抱えていた山高帽を被り、平然と俺に誘いをかける。
「まずは一度、ご覧になっては如何ですか?」
この国の人間で山高帽が似合う奴もいるんだなと、変な所に感心した。
いや、言葉が上手いだけで、この国の生まれではないかもしれないが。
結局俺は、好奇心に負けた。
10 :
放蕩:2008/01/04(金) 23:31:18 ID:WXslHe2M
「残念ながら、形勢不利のご様子ですね」
背後で男の声がした。山高帽をかぶった男だと声で判ったが、俺は答えなかった。
男のいう所の特別席、俺1人貸切りの部屋から、闘技場を食い入るように見つめる。
美咲を襲っていた女が、別の獲物に向かうのを目で追った。
今度は美咲より年下とおぼしき少女を狙うつもりらしい。
背も胸も無く、制服姿の少女は、少し離れた場所でのびている。
「せめてシャンパンや女はサービスさせて頂きますよ。必要な物はございませんか?」
続く声も無視して、少女の行く末を見守る。
女は少女のスカートの中に手を伸ばし、下着を剥ぎ取ろうとしているらしい。
少女が抵抗すると、女は制服越しに小さな胸を鷲づかみにした。
「ひぎぃぃぃ!」
少女の絶叫が貸切部屋にも響き渡る。
どうやら胸の先端をひねり潰されているようだ。
制服の下にブラジャーはつけていなかったのだろう。
女の手が離れると、少女は胸を隠すように両腕でそれを抱えた。
その隙に女が少女の足を抑えて、ショーツを脱がす。
ピンク色の愛らしいそれを投げ捨てると、
今度はサッカーのフリーキックでもするように少女の身体を蹴り飛ばす。
少女の身体が一瞬浮き上がった。
「げぼぉっ・・・」
花も恥らうなんて枕詞が似合う女は、もうこの世にはいないと思ってはいるが、
それでもこの少女に対する俺のイメージを表すなら、可憐かつ儚げだ。
その彼女の口から漏れるのは、おおよそ似つかわしくない嗚咽。
自分の鳩尾につま先をめり込ませた女の足に向かって、盛大に嘔吐し始めた。
「そんな所でこっそり吐いてないで、皆さんにちゃんとお見せしなさい」
女が観客にアピールする。
そして、ゲロを吐く少女を背後から抱き起した。
制服とスカートの間でちらちらと覗く臍。
その少し上辺りで、少女を抱える両手を握り合わせる。
飲みすぎた奴を相手に、トイレで俺もやった事がある。
女は両手で、少女の胃を強く圧迫した。
「ぶげええええええええ!!」
少女は、その小さな口が胃液を噴き出す様を、たっぷりと観客に晒した。
少女も美咲と同様に、吐きやすいよう、あらかじめ水をたっぷりと飲まされているのだろう。
制服が黄色く汚れていく姿に、観戦者達が興奮の声をあげる。
下卑た趣味だ。
しかし、自分の下半身が反応するのは俺自身も止められない。
視線は汚されていく少女の姿から動かす事が出来ない。
11 :
放蕩:2008/01/04(金) 23:31:49 ID:WXslHe2M
「お邪魔だったようですね。引き続きお楽しみ下さい」
山高帽の男の足音が遠ざかっていく。
闘技場では、胃液を出し終わった少女に対して、女が責め方を変えていた。
スカートをまくしあげられて、埋め込まれたバイブレーターが半分だけ顔を覗かせている。
「なぁ・・・。どうして俺をここに誘ったんだ?」
目を動かすことなく、俺は声を出してみた。
山高帽からの返事は、少し遅れてやってきた。
「貴方のお父上には、大変お世話になったものですから」
あの堅物の親父がここに?
視線の先では、完全にグロッキーな少女の下腹を、女が踏み潰していた。
「ぐべぇっ」と潰れたカエルのような悲鳴が聞こえる。
「お客様としてではなく、出資者としてですがね。
勿論、目的は伏せたままですが。莫大な額の出資をして頂いたのです」
山高帽の声とともに、少女の股間が震え、押し出されたバイブレーターが床に落ちる様子が目に映る。
女が少女を踏みつけたままで、誇らしげに腕をあげていた。
厳格であろうとし、抱え込んだ金に見合うだけの品格と家柄を築こうとやっきになっていた親父。
その親父が、騙されてこんな所に相当額の金を流し込んでいたとは。
その収益の一部は、今も姉達の元に集まっているのだろう。
親父も姉達も、現実を知ったらどんなに怒り狂うか。
しかも末弟の俺が、今そこで金を落としているのだ。
『バイブが落ちましたので、芽衣は失格です。残った美咲と希の勝負となります。オッズは・・・』
アナウンスががなり立てる音量も、耳を通り越していく。
ガラスの反射で、自分の顔に笑みが浮かんでいるのを知った。
湧き上がってくるドス黒い感覚が、楽しくて仕方ない。
「気が変わった。女と煙草を用意してくれないか」
笑いながら、俺は山高帽に語りかけた。
「どういったお相手がよろしいでしょう。
大人しく隣に座らせますか? この場で発散なさいますか?」
「煩くない奴がいい。黙ってずっとしゃぶってるようなのはいるか」
「ご用意致します。煙草の銘柄にご指定は? 葉巻もありますが」
「マルボロでいい」
↑こういうのは需要ある?
需要アリアリですな
退廃的な雰囲気がGOOD
ずっと第三者視点で進むのも面白い
それにしても文章がうまいな
GJ!
引き込まれて読み入ってしまいました。
これからの展開に期待大です。
15 :
放蕩1/9:2008/01/05(土) 18:01:28 ID:g/rFFZ6a
山高帽と移動する時、俺はいつも嫌味なベンツに乗せられる。
窓にスモークの張られた後部座席に押し込めれば、何処へ向かうのかも判らないのが理由だろうが。
最初にそこに連れて行かれた時、山高帽は俺の前に女を並べた。
10代から30代まで年齢もまちまちで、服装もチャイナから制服、ランジェリーから水着まで。
まずは好きな女を1人選べと言われた。
俺が目に止めたのは、制服姿の女だ。高校生位だろう。
「制服がお好みでしたら、同じ年齢で他にもう少し場慣れしたのがおります。
その娘は賭場にも1度出たきりですから、正味なところ、最初に買うにはお奨めしません」
美咲という名は後で教えられたが、俺が選んだその娘の制服には見覚えがあった。
お嬢様連中が多いらしいと、高校時代に有名だった。
それがどういった経緯であんな所に並ばされていたのかは、今も知らない。
「最初は、ある程度他のお客様の所にいた人間を買うのが楽ですよ」
持ち主が飽きた娘は、半額で店に売られ、また新しい相手を買うシステムだそうだ。
隣で山高帽が説明している間も、彼女はずっと俺を睨み付けていた。
気位の高さはまだ失っていないらしい。
相手を突き刺すようなその視線が気に入って、俺は結局彼女に決めた。
「お好みでしたら止めませんがね。慣らすには時間がかかりますよ?
まぁ、その年にしては立派な胸を持っているのが救いですか」
最後まで文句を垂れる山高帽を笑い飛ばして、俺は彼女を買って帰った。
屋敷の一室を貸し与えると、彼女はベットの上で座ったまま動かなかった。
相変わらず突き刺すような視線で俺を睨み続けている。
「賭けに使う以外でお前をどうこうする気はねぇよ。
逃げ出しさえしなけりゃ、好きにやってていい」
もともと俺の身体には、どうこう出来る体力も精力もない。
その日は動きすぎたのだろう。
初日以来、美咲の顔を見る事もなく、3日程寝込んだ。
10代の頃は毎朝目が覚めて、生きている事を神に感謝した。
20を越えてからは、まだ俺を連れていってくれない死神を呪いたくなる。
ようやく立ち上がれるようになった後、一度だけ美咲とすれ違った。
風呂上りだったらしい。バスローブに身を包んで、乱れた髪を整えながら歩いていた。
客室にもシャワールームはあるが、浴場を使ったのだろう。
俺に気付くと、ローブの前面をきつく抑えた。
厚いバスローブ越しでも胸の形がわかる。
成る程、確かに年の割に大したサイズだ。
今にも噛み付いて来そうな顔をする娘の横を、俺は鼻を鳴らして通り過ぎた。
彼女とはそれきり、賭博の日まで顔を合わせていない。
16 :
放蕩2/9:2008/01/05(土) 18:01:54 ID:g/rFFZ6a
芽衣を踏みつけたまま、希は観客に向けて勝利のアピールを繰り返している。
スタイルの良さを見せつける女王様ルックにブーツといい、相当このイベントに向いている。
芽衣は希の足の下で、泣きながら今もげぇげぇやっている。
美咲はというと、何時の間にか希の後ろに立っていた。
こいつだってあれだけゲェゲェ吐かされていたのに、瞳はまだ鋭い。
希が振り返ったと同時に、その頬をグーで殴りつける。
結構いいパンチだ。
張り倒されて尻餅をつく希に向かい、すかさず蹴りを飛ばす。
スニーカーのつま先が、レザー製のショートパンツの股間にめり込んだ。
希の秘唇にも、もちろんバイブレーターが埋め込まれている筈だ。
それが思い切り奥まで捻じ込まれたらしい。
お嬢様かと思っていたが、案外えげつない攻撃をする。
蹴った美咲自身も、バイブレーターが動いたのだろう。
少し内股になっていた。
「ひゃひぃぃぃ! お、奥に・・・奥にぃ! 抜いてぇ!」
希が叫ぶ。レザーパンツの隙間から液体が漏れ出していた。
失禁したのか、尻の穴から浣腸液が漏れているのかは、ここからでは判らない。
美咲は肩で息をしながらも、泣き叫ぶ希を冷徹に見下ろしていた。
レザーパンツに手をかけて、それをひきずり下ろそうとする。
希が手を伸ばして必死にそれを防ぐ。
しばらく力比べが続いたが、美咲が先に諦めた。
立ち上がって、腹立ち紛れか希の腹を踵で思い切り踏みつける。
希も、他の二人と同じく飲まされた水を吹き上げてのたうった。
さっきとまったく逆の立場だ。
しかし、見下ろす美咲の顔が心なしか青ざめている。
普段より心持ち突き出た下腹に手を当てた。
腸が暴れ出したらしい。
美咲は明らかにとまどっていた。
出てくるのは流し込まれた液体だけだろうが、
それでも大衆の面前では耐えられないのだろう。
「力比べしたからねぇ。苦しいなら私が出してあげるよ」
美咲がハッと顔をあげた所へ、希のミドルキックが飛んできた。
よろめいて後退し、壁に背をぶつけた。
盛り上がったホットパンツに慌てて手を伸ばす。
「ひぅぅ・・」
小さな喘ぎ声をあげて、体外へ流出しようとするバイブと液体を指で押し止める。
細く白い指を、自分の股間と尻の合間に食い込ませる美咲の姿に、
俺の黒い欲望が渦を巻く。
17 :
放蕩3/9:2008/01/05(土) 18:02:29 ID:g/rFFZ6a
賭博が行われるのは月に一度。山高帽が迎えに来る。
美咲はその日も制服姿だった。
適当に服を買うか、姉達の物を使わせようとしたが、従わなかったようだ。
会場に着くと、美咲は控え室に、俺は特別室とやらに通された。
室内から円形のスペース−闘技場と呼んでいるそうだ−と、
それを取り巻く観客席が見える。
観客席には既に何人ものスーツが、女連れで座っていた。
あのスペースで女同士を争わせて、その勝敗に賭けるらしい。
女は常時バイブを装着して、それを抜き取られた方が負け。
とんでもねぇルールだな。
「あの制服のまま戦わせるのでよろしいですか?」
説明の終わった山高帽が尋ねる。
美咲はあの服しか着ない。あれが破れたりしたら困るだろう。
「適当にあいつの好きなの選ばせてくれ」
「準備しましょう。時に、スカトロはお好きですか?」
相変わらず平静な顔でとんでもない事言うなこいつ。
「興味ない」
「では腸内洗浄させておきましょう」
「そんな事までさせるのか?」
「水気が多い方が、喜ぶお客様が多いものですから。
試合前には水を飲ませたり浣腸液を流し込んだり、当方も色々と工夫しています」
世も末だ。
「貴方がお持ちの娘はまだ経験が浅いですから、
オッズ調整のために二人一組で一人の相手と戦わせます。
どちらか一方でも勝てば配当金が入りますが、
上乗せは、まぁしない方がよろしいでしょう」
更に、負けた娘は相手オーナーがその場で犯しても構わないそうだ。
示談金で回避も出来るシステムにしているが、前例は皆無に等しいらしい。
あの凍りついた顔を思い浮かべて、俺は一つ尋ねた。
「美咲はそのルール、知ってるのか?」
「勿論。彼女は前回敗北して公開レイプされましたから。
前のオーナーがその場で売り払った後、貴方の目に止まったわけです」
18 :
放蕩4/9:2008/01/05(土) 18:03:06 ID:g/rFFZ6a
「んっ」と、足の間で声があがった。
俺は、呼び寄せた女の頭を固定し、そのまま黙って続けるよう促す。
「ただじゃ負かさないよお前!」
スピーカーから闘技場の声が届く。
希が怒りも露に美咲の腰を抱え上げた。
結構パワーがあるらしい。
股間を抑えままの美咲の腰を、自分の膝に突き落とす。
美咲の腰と太股から浣腸液がしぶきを上げるのがわかった。
「はぐうっ!」
希の太股に乗せられた体勢で、美咲の目が大きく開かれる。
唇がパクパクと開閉を繰り返していた。
子宮まで捻じ込まれたのではないかというバイブの刺激と、
菊口から吹き出る液体の感触、それに伴う激しい恥辱。
それらを同時に味わって、美咲の脳がパニックを起しているのだろう。
彼女の唇から唾液が流れ落ちるのをゆっくりと眺める希。
彼女はもう一度、それが見たくなったらしい。
獲物の腰を抱えて、またも膝に落とした。
「はぐうぅっ!!」
再び飛び散る何種類かの液体。
ひぃっという喘ぎ声を十数回連続させられた後、美咲の身体は希に抱きかかえられた。
次はどんな責めに晒されるのか。
もう一人の俺が期待に蠢く。
希は、美咲のホットパンツを引き摺り下ろす。
淡い茂みを剥き出しにされた美咲は、慌ててそれを両手で覆い隠す。
希は構わず彼女の身体を、振り子のように揺らし始めた。
何度か左右に振って、振り子の幅が最も大きくなった所で、自分の肩へ仰向けに抱え上げる。
タワーブリッジ?
或いはアルゼンチンバックブリーカというのだろうか。
どうやら希はプロレス技がお好みらしい。
完全に立ち上がる事は出来ずに、半ばおんぶしているような格好だが、
それでもやはり大したパワーだ。
美咲は顎と太股を掴まれて、背骨を徐々に反らせていく。
ビキニブラに包まれた大ぶりの乳房が、プルプルと震えた。
強制的に開かれた秘唇から、振動する男根がゆっくりと押し出されていく。
ミシミシと背骨が軋む音が聞こえてきそうだ。
「ぐえぇっ・・・うぶぅ・・・」
意味を成さない低いうめきが繰り返される。
きつく結ばれてばかりいた美咲の口が、
今はだらしなく開いて、こぼれる唾液は泡となっていた。
19 :
放蕩5/9:2008/01/05(土) 18:03:34 ID:g/rFFZ6a
もはや美咲の敗北は間違いなさそうだ。
賭け金をフイにされるが、俺の分身は女の口の中で嬉しそうに震えている。
「これがトドメだなんて思わないでね。
お前はただじゃ負かさないよ」
希の呟きが聞こえた。
美咲の太股を掴む指が、その付け根に向けられる。
目をこらすと、バイブを吐き出す美咲の唇、
そのすぐ上を、希の指が器用に割り開いていくのが判った。
恐らくつい先日までのお嬢様高校生にとって、性経験はここへ来てからだろう。
しかし試合前から膣内を刺激され続けていたのだ。
割り開かれて芽を出す突起は、さぞ充血して膨らんでいるに違いない。
その初々しく敏感な性器を、希の長い指が3回程ノックした。
「ぐびぃぃぃ!!」
それだけで、苦痛のうめきと恐怖の悲鳴が、美咲の口から一緒くたに吐き出される。
希はノックした指で、剥き出しのクリトリスを左右に擦り始めた。
まだバイブの残る体内からの刺激に、外部からの強烈な刺激がシンクロする。
「ふぁ・・。だ、だめっ! イヤ! イヤ、ひぐぅ!! ひぐぅぅぅぅ!」
美咲の腕が必死に伸ばされるが、背中をへし折られて届かない。
淫靡な粘着音が次第に強く響き渡る。
仰け反った頭を左右に振り乱して、美咲は静止の悲鳴をあげた。
涙が左右に飛び散る。
或いは強すぎる刺激に耐えているのかもしれない。
ぷしゅっと音を立てて、バイブレーターが水分と共に床に落ちた。
咥える物のなくなった美咲の秘所が、ヒクヒクと蠢く姿を観衆に晒す。
勝負は決した。
しかし希はそのまま美咲の背骨を軋ませてつつ、
快感を得るためだけにある部位をこねくり回す。
バイブが落ちた時と同様の音を立てて、
お嬢様の股間が漏らす汁が、女王の指を濡らした。
「ヤァッ、イヤァ。もう・・・ひっ・・もうヤメ・・ひうううん!
見るな、見るなァーーー!!」
負けて尚晒される自分の姿に美咲は絶望しているのだろうか。
冷徹な表情と突き刺すような視線の、制服を着た女はなりを潜め、
今そこにいるのは、淫靡な責めによがり泣く半裸の女。
残された唯一の着衣をボリュームのある胸が揺らし、ガクガクと震える腰は潮を吹き始める。
「皆さぁん。ご覧下さい。美咲嬢の潮吹きでぇす!」
希が大声を張り上げて、美咲の腰を周囲の観客に見せて回る。
その言動に興奮したのか、或いは希が特別な刺激を与えたのか。
身も世も無い声をあげて、美咲の腰は一際盛大に潮を吹き上げた。
刺激され、ヒクつく股間がついに痙攣し、あえなく絶頂に導かれる。
氷の仮面を被っていた筈の少女が、たかが指一本のクリトリス責めに屈し、
こうも簡単にイカされてしまうとは。
愛液と小水の入り混じった液体は、観客席近くまで飛ばされた。
「ふあああああああああああああ!」
歓声を上げる観客を前に、美咲の絶叫は長く響いた。
20 :
放蕩6/9:2008/01/05(土) 18:04:14 ID:g/rFFZ6a
その声が途切れる前に、「うぶっ」っと声を漏らして足元の女が顔を離した。
抑えた口元から白い粘液が零れ落ちている。
「申し訳・・・うっ・・ございません」
「気にすんな。こんなに出したのは俺も初めてだ」
すがるような視線を手で追い払うと、俺は意識を美咲に戻した。
希に投げ捨てられた少女は、腰を突き上げた格好でうつ伏せに倒れている。
押し殺した嗚咽が聞こえて来た。
余韻に未だ腰が震えている。
しばらく立つ事もままならないだろう。
向きが違うので、蠢いているであろう秘唇は残念ながら覗く事が出来ない。
部屋から出ようか。
考えているとノックの音がした。
山高帽の声が聞こえる。
「入ってもよろしいですか?」
「いや、俺が出る。下に行こう」
俺は身なりを整えてから、部屋を出た。
観客席では配当の還元が始まろうとしていた。
闘技場では希が、そのオーナーと思しきスーツの横で手を振っている。
芽衣は胃液に汚れた服をきつく握り締めていた。
傍目にも判る程小刻みに身体を震わせながら、ちらちらと観客席に視線を送っている。
視線の先では、長髪で細身の青年が静かに座っていた。
こっちは芽衣のオーナーか。
芽衣の、オーナーを見る瞳は、恐怖で今にも泣き出しそうだった。
美咲に目をむけると、彼女は突き出していた腰を降ろして、
誰の目にも触れないよう、両手で大事な部分を隠している。
涙に濡れていても、その瞳は俺を睨みつけていた。
『これより配当金をお配り致します。勝利者希のオーナー様にはお楽しみタイムです』
馬鹿馬鹿しい内容のアナウンスが平静な声で響く。
美咲の瞳の奥で、何かが揺れた。
芽衣は滑稽な程ビクっと震えた。
希と、よく肥えたそのオーナーが、芽衣の制服に手をかける。
拒絶する少女を二人掛かりで裸に剥くと、オーナーは即座に腰をぶつけ始めた。
いきなり挿入しているらしい。
芽衣の絶叫が響く。
小さな少女が観客の前で陵辱されている。
その間も、美咲は噛み付いてきそうな表情で俺を見つめている。
俺も美咲に視線を向けたままだった。
希のオーナーが声を上げると、しばらくして芽衣の叫びが嗚咽に変わった。
射精まで終えたらしい。
「おい。俺の女は二人相手に勝ったんだ。二人とも犯っちまって構わないんだよな?」
典型的なダミ声が俺と美咲に近づいてくる。
21 :
放蕩7/9:2008/01/05(土) 18:04:47 ID:g/rFFZ6a
豚のように肥えた男の手が、美咲の肩を掴んだ。
その時俺は、俺を睨む瞳の奥で揺れるものの正体が判った。
恐怖だ。
「はい。示談金が払われない限りは、お好きにして頂けるルールです」
俺の隣で山高帽が答える。
豚は嬉しそうに鼻を鳴らすと、美咲のビキニを剥ぎ取りにかかった。
白くて柔らかそうな果実が揺れても、美咲は声ひとつあげない。
全体のボリュームに比べると小さく思える乳首に豚がしゃぶりついた。
恐怖が身体の芯から侵食を開始しているのだろうが、美咲は動じない。
ダメだ。これでは俺の身体は反応しない。
「示談金を払うからその口をどけてくれないか」
同じ事を2回言った後、ようやく豚が、マヌケた顔をこちらに向けた。
2回も聞いてまだ言葉の意味が理解出来ていないらしい。
美咲の方がとまどっていた。
「オイオイ、馬鹿な事言うなよ兄ちゃん。そんなに時間もねぇんだ。
そろそろ本番やらせてくれよ」
「幾らだ。幾ら払えば引き下がってくれる?」
「どうせお前にゃ払えねぇよ。恥かく前に黙りな」
「幾らだ」
豚が明らかに苛立っていた。俺も苛立っている。
「1億!! どうだ、1億払ったらやめてやるよ小僧」
「払おう」
喚く豚に即答した。
ジャケットから小切手を取り出し、山高帽にボールペンを要求したが、
その手がやんわりと押し戻される。
「申し訳ございませんが、示談金は購入金額の半額までと明記してございます。
お二人ともその金額でご納得下さい。
大した娘でもございませんので、遥かに小さい金額ですが」
山高帽が説明すると、豚はつまらなそうに美咲を突き飛ばし、希を連れて闘技場から去った。
俺もここを去る事を山高帽に告げる。そろそろ体力が限界に近い。
22 :
放蕩8/9:2008/01/05(土) 18:05:31 ID:g/rFFZ6a
帰りの車中で、美咲は唇をきつく噛んで、涙を零していた。
「貴様なんかに、助けられたくなかった」
何度もそう繰り返している。
うとうとしながらずっと聞き流していたが、何の気まぐれか、俺は一度だけ口を開いた。
「悪かったな」
言い終わらないうちに、俺は座席に押し倒された。
制服姿の女子高生に、簡単に馬乗りされてしまう程の筋力しか持ち合わせていない。
「お前なんて殺してやる!!」
美咲の両腕が俺の首を握りつぶそうとした。
同席していた山高帽が慌てて間に入り込む。
「いいさ、殺せよ。どうせ明日目が覚めるかも判らない命だ。
今ここで終わらせてくれ」
「自殺志願も結構ですが、車を降りてからお願い致します」
山高帽の心配はもっともだが、俺は本気で美咲に任せるつもりだ。
どうせまたしばらく、ベッドで覚醒と睡眠の繰り返しだけの生活になる。
目覚める度に味わう絶望から解き放って貰えるなら、それもいい。
しかし、期待した程の力は首にかかってはこなかった。
「貴様なんか・・・」
そう呟く眼前の女に、軽く失望した。
「本当はあの豚野郎に犯して欲しかったのか?」
「なっ!?」
顔を赤くして怒り始める制服女。
俺に馬乗りになったままのスカートに手を突き入れる。
「相手の指たった1本でよがり狂ってたもんな。
クリを擦られるのがそんなに好きか?
何分耐えれた。5分か? 3分か?」
俺は手の平に美咲の秘部を乗せて、割れ目を擦ってやった。
怒りの視線が動揺に変わる。
「擦ってやるからここでまた潮を吹くか?
それとも今度は奥に捻じ込まれたいのか」
下着越しに指の先だけ突きこんでやると、
美咲は悲鳴をあげて俺を突き飛ばした。
そして座席の隅に顔をうずめ、すすり泣き始めたが、
やがて大声を上げて泣きじゃくった。
23 :
放蕩9/9:2008/01/05(土) 18:09:22 ID:g/rFFZ6a
「貴方は、調教の才能をお持ちかもしれませんよ」
山高帽が自分の席に戻って笑みを浮かべる。
俺は鼻を鳴らして身を起した。
平然としているつもりだが、スラックスの内側にいる俺はずっと前から反応している。
「この娘もじき、喜んで貴方の前で自慰に耽る日が来そうですね。
そうなったら売価よりも高値で買い取っても結構ですよ」
堕ちた女に興味はない。
心の中で答えた。
既に口を開くのも億劫になっていた。
「初参加は残念な結果でしたが、次回も是非ご参加下さい。
気に入っては頂けたと思いますから」
車から俺と美咲が降りると、男は山高帽を外してそう言った。
「ああ、また迎えに来てくれ」
頷いて山高帽を被りなおす男には、知る由もないだろう。
俺は、親父が憎む下卑た世界で親父の金を削ってやりいだけなのだ。
その名声を地に貶めてやりたかった。
ちっぽけな復讐心が少しでも満たされるなら、俺の腐った金など幾らだって落としてやる。
その為に山高帽を利用するつもりだ。
しかし、ふと思う。
山高帽はそんな事等とうに知っているのかもしれない。
知っていたからこそ、俺に声をかけてきたのではないだろうか。
離れていくベンツを見ながら、そんな考えがよぎった。
世界がぼやけていく。
願わくば、次にまたこの世界を目にしなくて済むように。
祈りながら俺の意識は暗闇へと落ちた。
>>13 >>14 解答に感謝
ダークな雰囲気に痺れます
GJ!
本編投下します。
※投下する前に注意、及び変更点
・本編をストーリー物として整理する為に前スレで投下した刹編を加筆修正して本編にハメ込みました。
・以前タイトルを『HORNET』と書いていましたが『彩Aya』に変更、そして統一します。
彩 Aya 第一部 1
人や獣、万物すべてにいつかは訪れる終着点がある。それが『死』というもの。
だが、それは必ずしも生き物だけに存在するものではない。ここはまさにそれを
体現していた。
バブル経済崩壊と同時に倒産し、十数年間取り壊されることもなくただ廃墟とし
て残された工場は暗闇にその姿を潜めながらも通り行くもの全てを威圧するかの
如く静かに、それでいて悠然とした佇まいを見せている。
そんな廃墟と化した工場におよそこの場所では不釣合いといえる風体の人物が歩
いていた。
ヒールが二〇cmもあるキャメルカラーのブーツで乾いたアスファルトを鳴らし
ながら歩を進めているのは一八〇cmの長身で痩せ細った白い外套姿の女。
開襟にして胸元まで開けたグレーのドレスシャツに膝下まである白いトレンチコ
ートを羽織り、太ももまで露出させた黒いタイトミニのスカートを穿いている。
一見すればモデルのような体系と小綺麗な身なりをした女の顔は目元を覆う前髪
と深夜の暗闇も相まってはっきりと見ることはできないが、ナイフで切り込みを
入れたかのように鋭い目と病人と見紛うほどに蒼白い肌、それに相対するかのよ
うに赤い唇。顔つきはやや面長ではあるが頬から顎にかけてシャープな線を描い
ている。いささか愛嬌に欠ける容貌だが、十二分に端正な顔立ちをした女だった
。
加えて控えめに施された化粧により、その麗人ともいうべき顔に艶やかさを出し
ている。
だが、その女自身が全身に纏っている雰囲気は艶やかな美貌とは違って凍てつく
氷のように冷たく、闇夜のように陰鬱とした不気味でおぞましいものだった。
フォークリフトや外注先のトラック、そして社員の車が通るために舗装された道
路をウエーブしたワインレッドの髪をなびかせて歩いていたがそこでふと、
女は
立ち止まる。
「…………」
おもむろにコートの懐からセブンスターのメントールの箱を取り出し、箱の中か
ら一本出すとそれを形の良い赤い唇に咥えてからデュポンのガスライターで先端
に火種を植え付ける。
「……いつまで」
灯った火を消す為にガスライターの蓋を閉じるとキンッという小気味良い金属音
が鳴り響き、その次に女は初めて口を開く。
「いつまで私に付きまとう?いい加減目障りだ」
煙草特有の紫煙が漆黒の空へと舞い上がる中、女はその煙を天を仰いで見つめな
がら苛立ちの感情を含んだ低い声で言葉を紡ぎ続ける。
今、どれだけ辺りを見回してもその廃工場には女以外の姿は見当たらない。
「その程度で気配を消したつもりか……私も舐められたものだな」
憤りと共に肺に溜め込んだ煙を吐き出してから女は前髪越しに覗く切れ長の目を
更に細めてゆっくりとした動作で振り返る。
視線の先には辺り一面黒で塗り潰された闇が広がるだけだが、やがて革靴が鳴ら
す足音と共に一人の人間の姿を浮き出した。
「さすがは神薙一族当主、神薙刹(かみなせつ)と言った所か………」
暗闇から浮き出た輪郭の正体は黒の上下スーツに身を包んだ女の姿だった。
肩まで届く黒髪は束ねてはおらず、顔立ちからして東洋人と想定出来るが低い鼻
に吊り上がった目、厚ぼったい唇とお世辞にも決して美人とは言えない。身長は
コートを着た女よりやや小柄だが女にしては上背がある。
「私に何の用だ?」
露骨なまでに不機嫌な態度を表しながら刹と呼ばれた女は吐き捨てるように言い
放ってスーツ姿の女を三白眼で睨み付ける。
「わが主の命令だ。貴様の力、試させてもらう」
スーツ姿の女はスッと右足を半歩引いて身構え、拳を心持ち軽く握る。
「力…だと?馬鹿も休み休み言え。私は下らない事に付き合う気は毛頭無い」
刹は再び煙草を咥えてスーツ姿の女とは対象的に構えようともせず、コートのポ
ケットに両手を突っ込んだまま踵を返して再び歩き出していた。
「………行くぞ」
女は刹の態度にも顔色一つ変えようとせず、アスファルトを蹴って接近すると背
を向けた刹の後頭部に握った拳を伸ばしてストレートパンチを打ち込んだ。
「…………フン」
女の放った拳は速く、プロボクサーにも匹敵する程の鋭いパンチだった。だが、
刹が女の動作を嘲笑うように鼻を鳴らした瞬間、後頭部を確実に捉えると確信し
ていたその拳は暗闇の空間を虚しくを突くだけに終わった。
「…………あんまり頭に乗るなよ下朗」
「――――――ッ!!」
自分の背後から獣が唸り声を上げるような声が聞こえて振り返るとそこには先程
まで自分の目の前にいた筈の刹が煙草を口の端に咥えて両腕をだらんと下げたま
ま前傾姿勢になっていた。「何処の誰かは知らないが………今の私は機嫌が悪い
。命を失くしても責任を取るつもりは無いから覚悟しておけ」
ぺッと煙草を地面に吐き捨てて血のように赤いルージュを引いた口から剣呑な言
葉が呟かれた刹那、女は本能的危機を察して後ろに下がるが時すでに遅し、刹の
掌が視界に入った時には女の顔はその掌にしっかりと掴まれていた。
相手の想定外の行動に一瞬呆気に取られた女は反応に遅れ、そのまま刹に囚われ
た憐れな獲物となってしまった。
「……ぐっ!?」
咄嗟に自分の頭を鷲掴みにしている掌を振り払おうと試みるものの細く、たおや
かな指はその見た目に反して尋常でない力が込められ、女の柔肉にギリギリと食
い込んでいく。
「うっ……うぅ!?」
まるで万力にでも締め上げられているかのように顔は微動だにせず、女は唯一動
かせる四肢をひたすらに暴れさせてもがく事しか出来なくなっていた。
「クククク……人が死を前にして足掻く姿はいつ見ても無様だな」
喉の奥から絞り出したような低い声で陰気に笑いながら刹はスーツ姿の女を冷徹
な眼差しで見下している。聳やかす肩にコートを纏ったこの化生は捕獲した獲物
をどう屠ろうかと思案を巡らせているのだ。
コールタールを含んでいるのかと錯覚してしまうほどによどみきっていた瞳は猛
禽類のようにぎらつき、屍のように蒼白い肌は心なしか血色が良くなっている。
そして先刻まで不機嫌かつ冷淡な態度に塗り固められていた表情には地獄の鬼女
よろしく薄気味悪い微笑を浮かべていた。
紅を塗った唇は三日月に裂け、その隙間から覗く鋭い犬歯は栗色髪の陽気な少女
を連想させるが、彼女のそれは愛嬌の一つにすら見えず、まるで野獣の牙そのも
のに思えてくる。
「さぁ、イエス様に祈祷は捧げたか?最も……無神論者の私が連れて行くところ
は天国でも地獄でもないがな」
唇の両端を吊り上げて笑いながら放った言葉はそこで途切れ、次の瞬間には闇に
浮かぶ二つの輪郭は元の位置から消えていた。否、動いていたと言うのが正確な
表現なのだが、その速度は肉眼で捉えるのも不可能な程に速いのだ。例えるなら
それは稲妻、そして光のような速さである。
「きぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
狂気を孕んだ凄まじい絶叫が女の鼓膜を簡単に突き破り、そして放棄されて転が
っていたドラム管やコンテナを振動させる。
鼓膜を破られた女はその痛みに両耳を抑え、声を上げて叫びたい衝動に駆られる
が目の前にいる赤毛の死神が自分に死を与えるであろうと考えると身体の底から
沸き起こる恐怖によって声を出すことさえ出来ない。丹頂鶴の翼のように白コー
トの裾が翻り、大地を蹴るに向いているとはいえないハイヒールタイプのブーツ
で器用に暗闇を疾走する刹は後ろに存在する廃工場の外壁にあらん限りの力で叩
き付ける。
その動作に技巧などといった言葉は一切存在せず、力任せ、暴力といった単語が
ひどく似つかわしい。
後頭部は苔や黴が張り付いて薄汚れた外壁と刹の掌とにサンドイッチされ、頭部
から噴出した血糊と脳漿がコンクリート製の壁にへばり付いて醜悪なウォールペ
イントを施していた。
「がっ……あっ!?」
恐らく生涯で一度も経験したことが無い衝撃に次いでグチャッというトマトが潰
れたような音が鼓膜が破れた耳から微かに聞こえてきた女は首筋から背中に掛け
て流れる生暖かい血の感触と痛みすら超えた致命的な外傷に意識が朦朧としてお
り、女の目は虚ろになって遠くを見つめている。
「折角だ。動く標的の撃ち方……教えてやろう」
それまで頭を掴んでいた手の力を緩めて女の顔を開放し、五指を投げ出したまま
の左手をスーツの襟元に滑らせてからそれを無造作に掴み上げると右腕を振り上
げ、細やかに手入れされた長い爪で女の顔を掻き毟った。
「ぎゃあっ!!」
本人の趣味なのかネーブルカラーのマニキュアの上にネイルアートで彼岸花の模
様をあしらった爪は鷹爪と呼ぶに相応しく、研がれた刃物のように切れ味は鋭い
。刹は自らの身体で生み出した凶器で容赦なく女の顔の皮膚、そして肉をがりが
りと切り裂き、頬や鼻と言った部位に惨たらしい裂傷を刻んでいく。
「貴様も所詮は人の器を越えられない人間か…………つまらん」
それまで張り付かせていた笑みは消え、刹の容貌は再び不機嫌な形相に戻ってい
た。ブツブツと言葉を小さく呟きながら刹は長い爪で女の顔に斬撃を何度も何度
も見舞い、ついに顔は原型すら留めない状態にまで成果てていた。
高価そうなコートや肌に返り血を浴びることも構わず、ひとりきし血まみれで動
かなくなってしまった女を痛ぶった刹は爪と指の肉に挟まった皮膚や血で真っ赤
に染まった肉片を一瞥し、今度は女の両肩に手を置いてから耳まで裂けんばかり
に大口を開けて牙のように尖った犬歯を女の首筋、そしてそこに位置する頚動脈
へと吸血鬼が生き血を啜るかのごとく噛み付いた。
頚動脈は脳に血液を送る為の重要な機関である。
柔道や総合格闘技、柔術の試合で見られる技、チョークスリーパーや三角締めは
腕や足などでここを締め上げることによって
相手の脳に血液を行き届かなくさせて失神、俗に言う『落とす』事が出来るのだ
。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」
断末魔、正にその言葉が当てはまる雄叫びを上げて女は眦を見開いた。
犬歯は皮膚をいとも簡単に貫き、ギチギチと首筋を抉っていく。痛覚が身体全体
を支配し、もはや女は虫の息だった。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ………ぐぅあっ!!」
獅子のうめきにも似た声を発しながら刹はクルミでも噛み砕くかのように歯に力
を込め、首の骨にまで達している歯で延髄を砕いた後、生肉を噛み千切った。
ブチブチという皮と肉が身体から離れる音がすると同時に女の総身は雷に打たれ
たかのように数秒に渡って痙攣し、やがて絶命のときを迎えた。
先刻から見せている刹の闘い方は人間が行うものとは常軌を逸脱していた。爪で
皮膚や肉を切り裂き、歯で肉と血管、髄までも千切って噛み砕く。
それは武術、格闘技といった人間が長い歴史を掛けて築き上げてきたものではな
く、獣が生存の為に他の種族を喰らい、貪り尽くす事だけに徹した闘争本能剥き
出しの闘い方だった。
「………フンッ、人という狭い檻に閉じこまった奴に私を倒せる訳が無い………
地獄で自分の弱さを嘆いていろ」
首筋と頸動脈を噛み切った際に千切れた肉片を口腔で吟味しながら地面に倒れこ
んだ女の亡骸に侮蔑の視線を向けて鼻を鳴らした。生前の面影すら残さないまで
顔を切り刻んだ事によって飛散した血はトレンチコートの襟元や白貌という言葉
が相応しい顔面に付着し、生々しい血痕が残っている。そして掌やコートの袖口
、中指に嵌めたカルティエのシルバーリングまでも赤黒い鮮血でべったりと汚れ
ているが、本人はそれを拭うのも面倒だと言わんばかりに五指を力なく広げ、腕
を下げたままにしている。今しがた人を殺めたというのに刹は罪悪感など微塵も
感じてはおらず、むしろ
“邪魔な虫を殺した”程度にしか思っていない。
ワインレッドに染めた豊かな巻き髪が突発的に吹いたそよ風で揺れ、暗い闇に埋
もれた顔には歩いていた時と同じ不機嫌な表情を張り付かせていた。
「さて………と、腹も減っている事だ。食事にするか」
細かく噛みこんだ肉片を喉に通してから刹は再び唇の端を吊り上げて笑うとゆっ
くりと骸に手を伸ばし、死体の右腕をまるで木に生った果実をもぎるかのように
容易く引き千切った。
肩口の皮膚と肉が裂けてブチブチという音が廃工場に響き渡り、最後にゴキッと
いう音が聞こえると腕はスーツの生地ごと亡骸から引き離され、腕は刹によって
握りしめられていた。
「まぁコイツの身体ひとつでも腹の足しにはなるだろう」
物騒な言葉を吐いてから刹はスーツに包まれていた腕の部分に纏わりついていた
衣類の生地をむしり取ってから大きく口を開け、そのまま千切った腕にかぶりつ
いた。
生肉、そして骨ごとその鋭利な犬歯でバリバリと噛み砕きながら刹は噛み切った
二の腕の一部分を口の中でグチャグチャと咀嚼している。
本人にとってそれは先程の言葉の通り“食事”なのだろうが、その光景は余りに
も残忍なものだった。
次に刹は前腕部分に噛み付くと再び骨ごと噛み千切り、再び咀嚼し始めた。今度
はグチャグチャという音だけではなく、ゴリッ、ゴリッと骨を歯で噛み砕く生々
しい音まで聞こえてくる。
やがて腕一本を胃袋の中に納めると今度は死体をブーツの爪先で仰向けに転がし
て屍の上に馬乗りの体勢となり、スーツを爪で荒々しくぞんざいに切り裂いてか
ら露出した腹部の皮膚をまるでバナナの皮でも剥くかのように引き剥がし、変わ
ったネイルアートを施した爪で胸から臍に掛けて“メス”を入れ、縦一閃に切り
裂く。その切れ目に十本の指を背中合わせに強引に突っ込むと無理矢理傷口を押
し広げた。すると大腸、小腸、心臓、胃、肺、すい臓といった内蔵と肋骨が姿を
現した。中枢神経はまだ生きているのか、臓器はまだピクピクと僅かにうごめい
ている。まるで自分達が生きている事を刹に主張するかのように。
だが、獲物を喰らう事を考えている目の前の女にとってそんな主張など知った事
ではない。
刹はガマ口のように広がった傷口へ頭から突っ込むような体勢になってまだ鼓動
を続けている死体の内臓を食い荒し始めたのだ。
それは最早人間の行動ではない。今の刹は血肉に飢えた野獣、或いは仏教の中で
存在する餓鬼そのものだった。自らの手で屍に変えた女に慈悲の気持ちすら表し
ていないこの赤毛の女にとって己以外の生物は全て餌としか見なしておらず、目
の前の死体も単なる補食の対象でしかない。
大腸に牙を突き立ててそれを引きずり出し、血に濡れたソーセージを噛みしめて
いく。心臓は掌で掴み取り、これも中から引きずり出して天に掲げると豆腐のよ
うに柔らかい臓物に力を込めて握り潰し、ポタポタと滴り落ちる血を喉を鳴らし
て飲み下していく。
そして己の手中で紙クズのように丸められた心臓をも口の中へ放り込み、貪り始
めた。
肋骨は両手で掴み、途中でへし折るとスナック菓子のようにサクサクと噛み砕き
、破片……否、粉になるまでよく噛み込んでから喉に通し、血で流し込む。
情け容赦ない蹂躙により、死体から滲み出た血糊で刹と死体との周りは真っ赤な
血の池と化していた。いつの間にか死体の中に収まっていたはずの臓物は綺麗に
失くなっており、下半身すらも喰らい尽されて残すは上半身のみとなっていた。
血の色をした髪は更に紅く染まり、小綺麗な服も血だるまになって無惨なものに
変わり果てていた。
それでも尚続く彼女の“食事”は不快で耳障りな音を闇夜に響かせていた。
おぞましい地獄絵図とも言える人喰いの晩餐は、未だ終わることを知らない。
※
「ただいまー」
玄関のドアを開けて自宅に入った彩は薄暗い玄関の電気を付けて靴を確認する。
置いてあるのは彩がいつも愛用しているスニーカー一足のみがキチンと揃えられ
ているだけで他の靴は一切見当たらなかった。恐らくあの几帳面な父親の事、脱
いだままにしていたスニーカーを『やれやれ………』と呆れながらもちゃんと揃
えてくれたのだろう。
そしていつもの革靴が見付からない事から考えて父はまだ仕事から帰ってきてい
ない。彩の父親は中小企業ではあるが食品会社の社長という立場の為、仕事が遅
くなる事は珍しい事ではない。ちより程では無いにしろ、彩も一応の所社長令嬢
なのだ。幼い頃は仕事の多忙さが原因で運動会や学芸会といった学校行事に父が
来れる事はなく、幼少期の彩はその度にふてくされていた。だが、この歳になっ
てまでそんな風にいじける事など到底出来るものではない。まだ十分子供っぽい
所のある彩も父が自分の為に頑張って働いている事も理解しているつもりだ。寂
しくないと言えば全く嘘になるが、仕事以外に生き甲斐を見付けられない不器用
な父を咎める事などしようとは思わないし、家庭を省ない所はあるものの基本的
に根が優しい父は何気なく振る舞っているように見えるがちゃんと彩を気遣って
くれている。その事も勿論彩は知っているが、さすがにそれを口や態度に出すの
は気恥ずかしい。それなので彩は父に対して“愛しい愛しい娘の為に頑張るのは
いいけど〜無理し過ぎて過労死しちゃ
ダメだよ”といつもの人懐っこい笑顔を向けて冗談を言うのが日課になっていた
。そんなバレバレな照れ隠しを使う父と似た自分の不器用さに思わず苦笑しなが
ら絆創膏を貼った頬を人指し指で掻き、彩は二階にある自室へと続く階段を登っ
ていく。
その間彩は自分が退学になった事を父親に何て切り出せばいいかをしばらく考え
ていた。
※
二階の手前側の木で作られたドアを開けるとまず目に写るのが畳八畳分のフロー
リングの床と西側に設置されているベッド。
窓の直ぐ下に位置する所に学習机がある。
ベッドと反対の所にはマンガや格闘技の教本、専門誌がギッシリ詰め込まれた本
棚と桐で作られた頑丈そうな箪笥があった。本棚の下には三〇キロのダンベルが
二つ並んでいる。よく部屋を散らかす性分の為、その度に父親に片付けろと口煩
く言われる。
彩は部屋に入るなり直ぐ様着ていた学園の制服を脱いでライムグリーンのショー
ツ一枚という姿になった。ブラをしていないのは本人曰く、“する必要が無いく
らい胸がぺったんこだから”だという。その本人の言葉通り彩の胸はなだらかな
曲線を描いて申し訳程度にしか膨らんでおらず、その二つの小さな膨らみの上に
小粒の苺のような乳首があるだけ。なるほど確かにこれならブラを付ける必要は
ない。かといって彩は別段貧乳である事をコンプレックスにしてはいない。寧ろ
身長が中々伸びない事の方が彩にとってコンプレックスだった。一四五センチと
いう小学生中学生位の身長しかない自分の身長では闘い方にも制約が出来てしま
う。
それ故に彩はストリートファイトで“どうすれば自分より体格の勝る人間を倒せ
るか?”というのを常に考えて闘いの中で試行錯誤してきた。その努力と生まれ
持った柔軟な思考が実を結び、彩は冷静に相手の動きを見てその相手に合わせて
闘い方を変えていくという戦法を編み出したのだ。
そこまで辿り着くのに気の遠くなるような努力もしたし、様々な馬鹿な事もやっ
た。とはいえ、そこに辿り着いたからといってそこは彩の目指すゴールではない
。自分は闘う者としてまだまだ未熟なのだ。事実彩は闘いになればつい感情的に
なってしまうという欠点もある。もう少し自分の感情をコントロールする事も大
切だと彩は考えていた。
ベッドの上に脱ぎ捨てていた赤茶色のブレザーとリボンタイ、そしてグレーのプ
リーツスカートをハンガーに掛けると直ぐ様箪笥から黄色い無地のTシャツとデ
ニムスカートを引っ張り出してそれに着替え、仰向けの体勢でベットに寝転んだ
。
「…………フゥ」
左右ともお下げに結んでいたゴムを解いて髪を下ろし、天井を仰ぎながらぼんや
りと今日学園で聞いた理事長の話を思い出していた。絵里が何故学園にいられな
くなったのかという話を理事長から聞かされた彩は母の意外な過去を触れ、表情
にこそ出してはいなかったが内心は驚きの連続であった。
――昭和五十四年、三笠ノ宮学園現理事長、勅使河原(てしがわら)ナツ子が現役
の国語教師として三笠ノ宮学園に赴任していた時、ナツ子は絵里のクラスの担任
だった。
戦前の教育をしっかりと叩き込まれていたナツ子の授業は厳しいものと評判だっ
たが、授業自体は分かり易く解説し、生徒達が完璧に分かるまで何度も教えると
いう熱血教師ぶりが学園でも人気があったという。
六月初旬のある日、いつものようにナツ子が授業をしていると黒服に身を包んだ
十人ほどの男達が絵里の教室になだれ込み、『美島絵里を出せ!!』と叫んでい
たという。
他の生徒達は“また美島さんが問題を起こしたの……?”と半ば呆れ気味に絵里
の顔を一斉に視線を向けたが絵里自身“誰この人達?”といった表情で首を傾げ
、訝んでいた。
ナツ子は土足で押し入ってきた男達に対して即刻出ていくよう注意を促したが男
達はそれで立ち退こうとはせず、あろう事かナツ子の顔を殴り飛ばしたのだ。そ
の瞬間に絵里は頭に血が上ったのか、いつも豪快な笑い声を上げて屈託なく笑う
絵里からは想像も付かない程恐ろしい形相で男達のうち一人に飛び掛り、顎と金
的を一挙動で蹴り上げてそこから教室中は悲鳴と怒号とが飛び交う一対十の乱闘
騒ぎになったという。騒ぎは二時間にも及ぶ大規模なものとなったが、絵里に手
酷く痛め付けられた男達はやむなく撤退して騒ぎは沈静化した。幸い、生徒達に
怪我人はいなかったが当時の理事長、校長、そして教員達はこの騒ぎが原因で警
察沙汰になり、学園の評判が落ちる事を恐れ、こぞって絵里一人に罪を被せて退
学させようと企てたのだ。そんな中一人だけ反対するものがいた。絵里の担任で
あり男達に殴られた勅使河原ナツ子である。“大人達が責任逃れして生徒に泥を
被せるとは何事か!”と教員達を怒鳴ったが、例えナツ子が経歴二十年のベテラ
ン教師とはいえ権力に勝てる訳もなく
、結果絵里は退学に追い込まれてしまった。
その後ナツ子は絵里をかばってやれかった事に対して深く絵里に詫びたが、学園
を去る時絵里は“先生一人だけがアタシを守ろうとしてくれたじゃん。アタシは
それだけで十分嬉しいよ”といつもの瓢々とした笑顔を見せてくれたという。そ
の後、ナツ子は絵里を心配して家を訪ねようと考えていたが、多忙さにかまけて
中々時間が取れず、とうとう最後まで絵里と顔を合わせる事なく昭和五十六年の
春、教職員の異動で三笠ノ宮学園、そして明野宮市を離れる事になってしまった
。それから二十余年の月日が流れ、ナツ子は理事長としてこの学園に戻り、そし
て絵里の娘、彩に出会った。
『私は………この事に因果のようなものを感じています。まさか十数年の刻を経
て絵里さんのご息女に出会うとは思いもしませんでした………』
『私もお母さんと理事長が知り合いだったなんて全然知りませんでした。それに
そんな過去があった事も』ソファーに座り込んでいた彩は懐かしむように何処か
遠くを見つめて過去の思い出を振り返って話続ける媼を見つめながら一語一句聞
き漏らさないように話を聞いていた。
絵里は彩が幼い時から自分の武勇伝を話す事はあれどそういった過去の話はして
くれなかったので理事長の話にはある種の新鮮さを感じていた。
『えぇ、悔やむなら………あの時絵里さんを守ってあげられなかった事が本当に
口惜しいです』
『お母さんの事ですから………きっとそんな風に理事長がお考えになるのは本望
ではないのではないと思います』
再び表情に暗い陰を落とす理事長に対し、彩は努めて明るく振る舞った。
『そうですね。絵里さんも貴方に似て心根の優しい方でしたから』
『ぼ、ボクは!?……いいえ、私は優しくなんかはありません。今回もついカッ
となって問題を起こしてしまいましたし』
『それでも、天草さんや五條さん、そして桐生さんを守った貴方は十分に優しい
心を持った人だと私は思っています』
『は、はぁ………』
改めて言われると勢いで土下座をした自分の姿を思い出して急に恥ずかしくなっ
てしまい、彩は身を縮こめた。
『絵里さんは元気にしていますか?』
『…………………』
理事長が何気なくそう聞いた瞬間、彩は口をつぐんで下を向いてしまった。
『美島さん?』
『それが………私が中学の時に家を出ていって以来、一年間音信不通なんです』
『えっ!?それは本当ですか!?』
『はい。よく分からない事を言いながら家を出ていったきりで……お母さんの事
ですから心配は無いとは思うんですが………』
『そうだったんですか……………』
――――――――――――――――――――――
投下終了。今日はここまでです。
ゴメン一つだけ言わせてくれ
理事長、彩がちより達を守ったとか言ってるけどどの口で言ってるんだよ
試合で済むところを彩大暴れでちより会長モロとばっちりじゃん
他の全ては見逃せてもこの一点だけは譲れない。
理解ある理事長みたいなので無理のある良い話を仕立てて彩を正当化するのだけは止めて欲しかった
ゴメン空気読まずに無粋な書き込み本当にゴメン。
ただ好きな作品だけにキャラへの愛情に溺れた話にはして欲しくなかったんだ。
これからも続きを楽しみにしてるから頑張ってくれ!
いえ、寧ろダメな所を指摘して下さるのは嬉しいです。そうですね………では時間軸を柚華戦の後まで戻して(今までのちより戦を無しにして)彩を普通の女子高生として書き直します。
―――あらすじ
主人公、美島彩はごく普通の高校一年生。だが夜になれば明野宮市で繰り広げられる闘い、ストリートファイトに身を投じる闘士となる。様々な闘士と出会い、激闘を通じて彩は成長し、自分に闘いを教えてくれた師匠であり目標である母、美島絵里の背中を追って行く。
――――――――――――書き直しverとしてはこんな感じのストーリーでやっていきます。
いやいやいやいやいやいやいやいや!!
別に話をやり直せとか傲慢な積もりじゃないから!
ただ思った事垂れ流しただけだから!
他の人は丸ごと好きだと思ってるかもしれないし、
やり直したらちより会長もなかった事になるじゃんwwww
批判は批判で何をしても出てくるよ。それを自分なりに受けるだけで良いよ。
でも流されちゃ駄目だよ。自分なりに良いと思って書いたんだろ?
それは分かるし、話は好きだし応援してる。
ただ彩に対して甘過ぎる世界観かなと思っただけでそれは好き嫌いとは全く別なんだよ。
伝わってるかな…。
ゴメンな。ここまで生真面目な人とは思わなかった…orz
ごちゃごちゃ色々すまんかった。
大丈夫です。伝わりました。
ただ、書き直すと言った理由はちより戦の時にロクに準備もしないで無理に書いていた為、途中からキャラが思い通りに動いてくれず話がおかしな方へ傾いてしまったからです。
書き手の我儘になってしまいますが、ストーリー物として書くために一から構成を練り直して書こうと思いました。
……ちより戦好きで読んで下さった方には申し訳無いですが自分で読み返してみてハッキリ言ってちより戦の彩、黒歴史として封印したいですorz
プロローグ
明野宮市の市街地から十キロ程離れた場所にある空き地には、眠りに付きつつある街の静寂を打ち破るかの如く様々な声が木霊していた。
歓声と野次、賞讚と罵倒。暗闇を街灯だけが僅かに光を照らすそこはまるで何かを囲うかのように人だかりが出来き、皆喉を潰さんばかりの勢いで声を出し続けている。
それは端から見ればただ乱痴気騒ぎを起こしているだけにしか見えなくもない。彼等の耳をつんざくような絶叫と怒号は全て中心で対峙している二人の少女に向けられているものだった。「ふっ!!であぁっ!!」
片方の少女は日付がとうに変わったこんな時間にも関わらず、紺色のブレザーにプリーツスカートという制服に身を包んでいるが、
スカートは太股が露出するまで改造している。
髪はヘアカラーで染めたのか人工的な明るい茶髪に顔には必要以上に塗り込んだファンデーション、
瞼はスカイブルーのアイラインで小さく縁取り、唇に薄いピンクのリップグロスを引いていた。
典型的な『今時の女子高生』といった風体であるその少女は今、目の前の相手に向かって懸命に、そしてがむしゃらに拳を振るっている。
「おっ………と。ホラホラどうしたの?さっきから全然ボクに当ってないよ」
制服姿の少女の拳を避けているもう一人の少女、
美島彩は余裕を表した笑みを浮かべながら少女を挑発し、まるでダンスでも踊っているかのように軽やかなフットワークを駆使して迫り来る拳を危なげもなく回避していた。
黒目がちでパッチリとした大きい目に小さい口から覗く長い八重歯、低くて可愛らしい鼻には絆創膏を貼っている。
年の頃は15〜16程のまだあどけない顔立ちだった。
黄色い無地のTシャツの上に女王蜂の刺繍が施された金色と黒のスカジャンを無造作に羽織り、
色落ちしたデニムスカートを穿いている。頭には黒いメッシュ生地で『ONSIDE』とロゴが描かれたアポロキャップを被り、手には黒い革手袋を嵌めていた。
離れて見ていれば少年と見間違えるような格好だが、健康美を余す所なく発揮しているアクティブな彩にはその格好が良く似合っている。
「くぅっ………!?」
自分の攻撃を悉く避けられていた少女は忌々しげに歯を軋らせながら再び腕を肩の後ろにまで振り上げ、大振りのフックを彩の顔目掛けて放った。
「――ッ!せぇぇいっ!!」それまで緩やかな笑顔を浮かべていた顔を途端に引き締め、真剣な表情になった彩はスッと一歩踏み込み、少女のフックをパーリングで弾くと腰を素早く回転させて小さなモーションからカウンター狙いの縦拳、
ワンインチパンチを少女の顔面に打ち込む。相手の攻撃を捌きつつ攻める動作を一挙動で行う動作を流れるように行うその様は、
闘う事を生業としている格闘家に一切の引けを取らない。
「がふっ!!」
拳頭や指の肉、手の甲を相手の歯で切らないようにする為に革手袋を嵌めた拳が顔面を正確に捉え、少女の身体はその衝撃に逆らう事なくフラフラとよろめいた。
「実戦での闘い方、ひとつだけ教えてあげるよ。拳は握りが甘いと殴った方が怪我しちゃうからどうせなら掌底使った方がいいよ」
言い終えてから彩は握っていた拳を開いて掌に変え、再び間合いを詰めると今度は少女の下顎を掌底でかち上げる。
「ガホッ!!」
本人の意思とは無関係に顔が上を向いて大きくのけぞり、舗装すらされていない荒れた地面に砂煙を撒き上げながら少女の身体は仰向けに引っくり返った。
「痛ぅっ………ハッ!!」
背中から倒れた少女は顔を苦痛に歪めて顎を手で抑えながら上半身を起こすと自分の目の前に差し迫った何かに思わず息を飲む。
空手でいう所の下段突きのような体勢になって彩は革手袋を嵌めた拳を少女の鼻先に付くか付かないかの距離で止め、そのまま静止させていた。
「どうするの?まだ続ける?それともギブアップ?」その拳を突き出している本人は再び小学生と見間違える位の童顔に悪戯っぽい笑みを見せながら少女に判断を委ねた。
「………ギブアップ。チッ、援交より良い小遣い稼ぎ出来るって聞いたからわざわざ来たのに………とんだ骨折り損だよ。まさかこんなチビが無敗のストリートファイターなんてな……アタシもまだまだ世間の勉強が足りねぇ」
大袈裟なまでに肩をすくめてフゥッとため息を付き、少女は彩を見上げて苦笑しながら降伏を宣言した。
ギブアップの言葉を少女から聞いた彩は拳を顔面の前からゆっくりと引き、
少女の手を掴んで引き起こす。
先程倒れ込んだせいか制服は背中から尻に掛けて砂が付着して汚れていたが、彩は少女の背中を掌で軽く叩き、砂を払い落としてやる。
「ウィナー、彩!!」
二人の立ち合い人として闘いを見届けていた男が勝者の名を叫んだ瞬間、歓声は一際大きくなって空き地に響き渡る。
「よっしゃあっ!!また彩の勝ちだーーーー!!」
「へへへ、やっぱり本命に賭けた甲斐があったぜ。サンキューーーー!!また稼がせてもらったよ彩ーーーーーーー!!」
「おいおい、何だありゃ?折角チャンスだったんだから顔面に一発入れてやりゃあいいじゃねぇか。甘っちょろいったらありゃしねぇ」
「いいじゃんかよ、彩のお陰でまた儲けられたんだから。それともお前が彩と闘ってみるか?多分秒殺だと思うけどな」
「また彩の勝ちぃ?これで二十人抜きじゃない。アーヤーーーー!!たまには派手に負ける所見せなさいよーーーー!!アンタばっかり勝ってたらつまんないわよーーーーーー!!!」
ギャラリー達は思い思いに叫びながら彩に声を向けた。
ストリートファイト………大衆の娯楽、或いは賭博の対象として毎週末の深夜に明野宮市の街頭や公園、空き地等の公共の場所で開催されている。
ルールは簡単、一対一、もしくは複数対複数で行われて相手を倒す事が目的。
そのストリートファイトで無敗を誇るこの少女こそが美島彩である。
「O.K!!……なーんてねっ」
被っていた黒いアポロキャップを取って真上に投げ飛ばし、彩は勝利の喜びを体全体で表現するかのように笑った。天真欄漫………そう言った言葉はまるでこの少女の為に存在しているのではないかと錯覚してしまう位愛らしく、それでいて純真さに満ちた笑みだった。
――――――――――――投下終了。世界観はある程度残していますが設定や彩のキャラを大幅に改訂しました。
よーしパパ期待しちゃうぞ!
第一章『昼間はチビッ娘女子高生、夜は無敗のストリートファイター!』
サテン生地のカーテン越しに射す柔らかい陽射しと外から聞こえる雀達のさえずり、そして携帯電話のスピーカーから鳴り響くJ−POPのメロディはベッドの中で芋虫のように縮こまっている彩を起こすのに十分な効果を発揮していた。
布団に潜り込み、規則正しい寝息を立てながら堕眠を貪っていた彩はモゾモゾと小さな身体を布団の中で動かす。
「う、うぅ〜ん………」
頭ごと被っていた布団の中から華奢な細い手だけを這い出してその手を頼りに携帯電話を探し出す。
「………あ、あった」
コツッと指先に当たった固い感触が目的のものだという事を確信した彩は携帯を無造作に掴んでフリップを開け、クリアキーを押す。
するとアラームとして設定していたJ−POPのメロディ音が鳴り止んだ。
「ふぁ……あぁ〜ぁ……うにゅる」
布団を身体から剥がして上半身だけを起こし、掌を口に当てて大きく欠伸をしながらもう片方の腕をぐっと天井へ向けて軽くひと伸びする。
時刻は午前五:〇〇。
彩がいつも起きる時間帯である。同年代の少女と比べれば早起きの部類に入るが彩にとってこの時間は早起きでも何でもなく、当たり前の事に過ぎない。
というのも、今彩は父親と二人暮らしで掃除、洗濯、料理といった家事全般は主に彩が担当しているからである。
朝は朝食の支度から会社に行く父親の為に弁当作り、昼間は学校に行って帰ってきたら夕飯の支度に洗濯と大忙し。なのでこの時間には起床しておかないと間に合わないのだ。
起きたとはいえまだ眠気が残るのか普段はパッチリと開いている目もややトロンとして瞼が下がっている。
青い上下のパジャマを着て間の抜けたような愛らしい欠伸をしている様はまるで人形技師が丹精を込めて
造形したビスクドールが
自らの意思を持って動き出したのではないかと錯覚してしまう。
身体を小刻みに震わせながら伸びを終えると口を半開きにしたまま寝惚け眼を
ゴシゴシと擦って呆けていた。
「う〜ん…………うん、よしっ、今日も頑張るぞ」
やがて脳にゆっくりと血液が巡って意識が覚醒し始めた後、丸っこくて柔らかいほっぺたを指で摘んでムニッ、ムニッと引っ張ってから完全な目覚めを確認した彩は温もりが残るベッドから身を離して起き上がる。
そして寝間着としていたパジャマの前ボタンを上から下へと外し、上衣を脱ぎ始めた。
上衣を脱いで上半身裸なると姿を表したのはブラではなく、ピンク色の突起しかない平坦な胸だった。
膨らみかけという言葉すらお世辞になってしまうその胸は紛う事なき貧乳である。というかぶっちゃっけ無い乳である。
擁護しようがねぇ位にペッタンコである。これならブラをしていないのも納得出来る。
腰もくびれという物が全く無い寸胴で、その筋の者達が狂喜乱舞しそうな程完璧な“ロリ体型”だった。
次いでパジャマのズボンを下ろすと今度はクマの絵柄がプリントされたパンツが姿を見せた。小学校の低学年生が穿きそうなパンツを何の恥ずかしげもなく穿いたその姿は間違いなくストライクゾーン低めの野郎共には垂涎の的だろう。
加えて二次成長経験していないんじゃねぇかと疑いたくなる位の童顔と子供っぽい言動のせいか彩はよく小学生、中学生と間違われる事が多い。
夜遅くに市街地などうろついていると警官に補導される事も屡々ある。
年頃の少女ともなればこういう体型には少なからずコンプレックスを感じるはずだが、そんな事など気にも留めない彩はハンガーに
掛かっているセーラー服を手に取って着替え、机に置いておいた二つのゴムを手に取って背中にまで届く後ろの髪を左右に束ね結ぶ。
こうしていつものお下げ頭が完成した。
「さて………と」
身支度を終えると木製のドアに向かって歩き、ドアを開けて部屋を出ると一階へ続く階段を下りていった。
※
洗面所で顔を洗い、歯磨きを済ませてから台所に来た彩は直ぐ様制服の上に猫のアップリケが付いた手作りの黄色いエプロンを纏い、まな板の上に置いた大根を包丁で切り始めた。
さすがに慣れているのか、トントントンッと板を包丁で叩く小気味良い音を立てながら綺麗に大根を切っていく。
「ふぁ〜………おはよう彩」朝食の準備をしているとそこへ彩の父親、美島祐司(みしま ゆうじ)が紺色の上下スウェットという格好のまま朝食を作っている彩の前に姿を現した。
寝癖も直していないボサボサ頭で祐司は頭を掻きながら大きく欠伸をして愛娘に朝の挨拶をする。
「あ、お父さんおはよー」
それまで包丁と千切りに切っている大根に目を向けていた彩は起きてきた父親の方を向いて挨拶を返した。
「うぅ………頭痛い」
祐司は食卓の椅子に腰掛けるとテーブルに置いてあった煙草の箱から一本出して火を付けつつ頭を抑えた。「昨日は飲んで来たの?」
テキパキと朝食の準備をしながら頭痛に悩まされている父親に何気ない相槌を打つ。
「あぁ、部長の付き合いでちょっとな…………」
「お酒弱いんだからあんまり無理しちゃダメだよ」
彩は再び振り向くと未だグロッキー状態の祐司に向かって口から覗く長い犬歯を出しながら屈託なく微笑んだ。
「お前がそういう風に言ってくれる良い子に育ってくれて父さん嬉しいよ。
絵里なんか二日酔いの時は“祐司!鍛え方が足りないぞーーー!!”って言いながら頭掴んでぐわんぐわん揺らすからな」
「アハハ、お母さんらしいね」
二日酔いで苦しんでいる父の頭を豪快に笑いながらハイテンションなノリで思いっきり振り回す母を想像して彩は思わず笑ってしまう。
「ま、今は家にいないからそういう被害に合わなくて済むんだがな。ハァ……全く、夫と娘ほっぽり出して何やってるんだか」
テーブルの中央に置いてあった灰皿に煙草を叩いて灰を落とすと祐司は溜め息を付いた。
「お母さんの事だから連絡が無いのは元気にやってる証拠だよ。それにお母さんの放浪癖はいつもの事だしね」
「そうだな………ま、その内またひょっこり帰って来るだろ」
夫としてそれなりに妻の身を案じているのか、
祐司はどこか遠くを見つめたような目で頬杖を付いていた。
「お父さん。お母さんの事心配なのは分かるけど、あんまり心配し過ぎて会社遅れちゃったら元も子も無いよ」
そう言いながら彩は湯気を立ち登らせている鍋の両端の取手を掴んでコンロの上からテーブルの上にある鍋敷きの上へとゆっくり置いた。
「そうだな。可愛い娘の為に今日も頑張って働かなくちゃな」
祐司は彩に穏やかな笑みを見せながら煙草の火を揉み消し、灰皿を片付ける。
「うん。だから早く御飯食べよ」
相変わらずニコニコ笑う彩は食器棚から出してきたお椀に鍋の味噌汁をおたまで掬ってお椀の中に入れた。
※
「はい、お父さん」
炊飯ジャーの中から炊き立ての御飯を茶碗によそってそれを祐司に渡す。
「ありがとう」
御飯を盛られた茶碗を受け取った祐司は早速箸を使ってキラキラと光る炊き立ての白米を口に運んだ。
食卓の上に並んでいるのは焼き鮭と大根の味噌汁。昨夜の夕飯の残りである肉じゃがとキュウリと蕪の浅漬け、簡素ではあるが朝食には充分なボリュームだった。
どちらかといえばパンの方が好きな彩だが、家の食事は和食が好きな祐司の好みに合わせて作っている。
「味噌汁どうかな?しょっぱくない?」
御飯を盛った茶碗を置いて祐司は味噌汁の入ったお椀を持ち、ゆっくりと傾けながら味噌汁をすすった。
「うん。美味いよ。味も丁度良いし大丈夫だ」
「そっか。良かった」
返答が来るまでは少し不安げだった表情も安心したものになって彩は自分の分の食事に箸を付け始めた。
「あぁそうだ彩」
「ん?なぁに?」
ふと、思い出したように祐司が言うと彩は花柄の付いた小さい茶碗を持って箸をくわえたまま可愛らしく小首を傾げる。
「今日は残業で遅くなりそうだから夕飯は………」
「うん、分かった。じゃあ御飯テーブルに用意して蚊帳掛けておくね」
「あぁ、そうしてくれると助かるよ。彩も夜更かししてないでちゃんと寝るんだぞ」
「はーい」
そんな何気なくも他愛ない親子の会話に花を咲かせつつ二人は箸を動かして食事を進めていった。
※
「ふぅ……ごちそうさま」
食事を一通り終えて祐司は「ウッ」とおくびが出そうになるのを堪えてそっと腹を撫でた。
娘の前でそんな事すれば間違いなく白い目で見られて咎められるからである。
「お粗末様。あ、お父さんもうそろそろ準備しないと電車間に合わなくなっちゃうよ」
空になった食器や皿を片付けながら彩は時計を見ながら父親に支度をするよう促した。壁に掛けてある時計の針は七:〇〇を差している。駅は彩の家から歩いて十五分の所にあり、祐司が勤務している会社へ行く電車は七:四〇分に来る。
これに乗り遅れると次の電車が来るまで三〇分は掛ってしまう。そうなると八:〇〇までに出勤しなければならない祐司は遅刻確定である。
「あぁ、直ぐに支度するよ」ガタッと音を立てて祐司は椅子から立ち上がり、身支度をする為に自室へと戻っていった。
「お弁当、準備終わる頃には出来るから」
彩は食器を全部流しに置くと食器棚から祐司がいつも使うプラスチック製の弁当箱を取り出してそこに御飯と電子レンジで暖めた冷凍食品、そして弁当用に焼いておいた鮭の切身を四分の一程に切り、菜箸を使って弁当箱へ詰めていく。
全てのおかずを詰め終えてから蓋を閉め、それをベージュの弁当包みで包んでからギュッと固く結んだ。
「よし、これでOK」
彩が一通り作業を終えた頃にグレーのスーツに着替えて髪を整えた祐司が再び台所に姿を現した。先程の寝起き姿とは一変して、スーツを見事に着こなした姿で背筋を伸ばしている祐司はいかにも仕事を完璧にこなすサラリーマンという印象を与える。
だが二日酔いの頭痛がまだ残るのか、掌で少しトントンッと頭を叩いていた。
「はい、アナタ。お弁当だよ」
まるで新婚の嫁のように言いながら冗談めかして笑う彩は両手に持った弁当をそっと祐司に手渡す。
「アナタはやめろアナタは」間髪入れず娘に突っ込む祐司は鞄の中に彩から受け取った弁当箱を入れて玄関へと歩いていった。
「じゃあ彩、行ってくるよ」革靴を履いた祐司は彩に振り向きながら玄関のドアを開けた。
「うん。いってらっしゃーい……あ、そうだ。お父さん」
「何だ?」
祐司が振り向くと、そこには先程まで笑顔だった彩が急にうつ向いてモジモジし始め、頬を赤らめて軽く目を閉じ、爪先立ちで背伸びをした。
「行ってきますのチュー………んーっ」
ペシッ!
「はぅっ!」
いきなり顔を近付けてきた彩に対して祐司は軽く額を掌で引っ叩く。余りの突然の衝撃に彩は両手で額を抑えた。
「父親をからかうな」
「うぅ………お父さんノリ悪い。折角新婚さん気分味合わせてあげようと頑張ったのに」
そう言って彩は頬を膨らませ、ジト目で祐司を恨めしげに睨む。
「ハァ……お前そういう所は絵里に似てきたな」
最近顔も妻に似てきた娘を見つめて呆れたようにタメ息を付きながら祐司は気を取り直して家を出た。
「行ってらっしゃーい」
家を出た祐司を元気良く手を振って見送った後、彩は自分も学校へ行く時間が迫ってきたため階段を駆け上がって自室へと戻った。
ドアを開けて床の上に置いてあったスクールバッグを手に取り、ストラップの部分を肩に引っ掛ける。
体操着やら教科書を昨日の内に詰め込んでしっかりと確認した為、恐らく忘れ物の類は無い。
学校へ行く準備を終えた彩は部屋を出る前、格闘技の専門書や参考書、マンガといった本ギッシリと詰まった本棚の上に置かれた写真立ての前に歩み寄った。
写真立ての中には美島家の前で若き頃の祐司と幼い時の彩、そして母である絵里が家族三人で一緒に笑って写っている写真が入っていた。
彩が五歳の時、写真好きな祐司の旧友が遊びに来てくれた時に撮ってくれた写真であり彩にとってこの世で一番大切なものだ。
出掛ける時この写真、正確には写真に写る母に向かって行ってきますというのが彩の習慣になっていた。
この頃から彩はずっと絵里に闘いの手ほどきを受けてきた。
五歳の誕生日の時、初めて絵里に連れられて来たストリートファイトで絵里は闘い、自分よりも体格の大きい相手を華麗にKOさせた絵里を見た彩にとってそれは衝撃的な光景だった。
普段は瓢々としていて祐司をからかってばかりの母が突然闘い始めたのだから。
だがそれ以来、彩は絵里に憧れを抱くようになった。思えばその日から自分の運命は決まっていたのかもしれない。“お母さんのように強くなりたい!”
“お母さんのようにかっこよくなりたい!”
子供心にそう思った彩は
一にも二にもなく闘う術を学ぶ為に絵里に闘い方を教えてと頼んだ。
そんな娘に対して絵里は笑いながら“お母さんみたいになりたいのか?ようしお母さんに任せなさい!絶対にお前を強くしてやるから!!”と笑いながら彩の
頭をクシャクシャと撫でた。
強くなる為の練習は決して楽しいものではなかった。ハッキリ言って辛いものだったが、厳しくも優しい絵里がいつも自分の側にいてくれたおかげで彩は毎日休む事なく練習を続けていった。
あれから十年………彩はこの明野宮市で無敗のストリートファイターとして君臨した。
今の自分を見たら母は何と言うだろうか?
“よくやったぞ彩!”
“まだまだ、そんなんじゃアタシを越せないよ!もっと修行しな!!”
そんな風に言ってくれるだろうか?
答えは分からない。
その答えを聞ける本人は彩が中学二年の時、家を出ていって以来帰って来ていないのだから。
祐司の前では放浪癖はいつもの事と気丈に振る舞ったが、やはりいないと寂しいものもある。
ふと、目頭が熱くなるのを感じたが彩はそれをセーラー服の裾で拭った。
“今は泣いちゃいけない。お母さんに笑われちゃう!!”
そう思ったピシャッと両手で頬を叩き、写真に向かって微笑んだ。
「じゃあお母さん、ボク行って来るね」
幼き日の自分と並んで両手にVサインを作っている写真の母に向かって彩は行ってきますと告げてスクールバッグを肩に掛け直し、
小走りで部屋を出て一階に降り、玄関のドアを開けて家を出てからしっかりと玄関の鍵を閉めて戸締まりを確認すると学校へ向かった。
投下終了します。
48 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 02:53:58 ID:F0d7PXCf
保守
>>47 これはまた設定をガラリと変えて一気に吐き出してきましたな!
ちょっと駆け足過ぎる説明の気もしないではないですが、心機一転のリスタート次回投下待ってるぜ
チンケな男だなー、彩の作者は。
書けないならわざわざ割り込まなきゃいいのに・・・・
どこに割り込んだん?
>>46の続き投下します。
※
彩の住む街、明野宮市は
県の中部に位置する中核市で、一九五〇年代に開発された内陸型工業団地の急速な発展によって関東圏内唯一のメトロポリスとして指定されている工業都市でもある。
また、元々が城下町だった事もあるせいか市全体がまるで迷路のように入り組んだ造りになっている。
市の中央にある駅を基準にして西側方面が高層ビルの立ち並ぶ市街地、東側が巨大な工業団地と閑静な住宅街となっている。
彩の自宅、そして彩が今年の四月から通い始めた明野宮城東高校もこの住宅街の中にある。
自宅から学校までの距離は約三キロ位で、基本的に身体を動かす事が好きな彩は自転車やバス等は使わずに毎日歩いて通学している。
「んっ、ん〜………今日もいい天気〜」
まだ人通りの少ない通学路を歩きながら彩は両腕を高々と挙げてぐっと伸びをした。煌めく陽光が全身に降り注ぎ、春の暖かいそよ風が頬を優しく撫でる。
伸びをしたせいでセーラー服の裾からヘソが顔を覗かせるが、ボーイッシュな彩らしくその辺は全く気にしてはいない。
一応本人にも女としての自覚はあるつもりなのだが、出る所が全く出ていない幼児体型と幼さを残した言動もあいまって同級生達からはよく『子供っぽい』と茶化されている。
その度に彩は頬を膨らませて『む〜……ボク子供じゃないもん!』と抗議するのだが、いかんせん怒った顔に迫力が全く無く、寧ろ可愛らしさが引き立ってしまう。
とはいえ彩自身も底抜けに明るく人懐っこい性格なので女子だけでなく、男子の友達も多い。その為か彩はクラスではマスコット的存在となっている。
「アーヤーーー!!」
「ん?」
ふと、背後から軽快な足音を鳴らして駆けて来る女生徒の姿があった。
一部の友人達の間で愛称となっている呼び名で声を掛けられた彩は後ろを振り返る。
「あ、タマちゃん!おっはよー!!」
声の主を見た瞬間に彩は弾けるような笑みを女生徒に向けて挨拶した。
「おはようアーヤ」
彩の所まで走ってきた女生徒は前髪の乱れを手で直しながら彩と同じように破顔して挨拶を返す。
彩にタマちゃんと呼ばれたこの女生徒は三木原珠音(みきはら たまね)。
彩のクラスメイトであり、入学式の時に席が隣同士だった事もあって仲良くなった生徒だ。
性格も彩とよく似て明るく活発な為、二人は初めて話してから十分もしない内にすぐ打ち解けた。
身長は彩より若干高い一五六センチ位で緑色のショートカットの髪が特徴的な少女だ。身体の方は彩とは違い、年相応にしっかりと発育している。
「また傷増えたね。相変わらずストリートファイト?」
珠音は制服のプリーツスカートから覗く彩の太股に付いた青痣や膝小僧に貼られた絆創膏を見てよくやるなぁといった表情を浮かべる。
彼女は彩がストリートファイターである事を知っている数少ない友人である。
「うん、そだよ。タマちゃんもやってみる?殴られるのは痛いけどやってみると凄く楽しいよ」
「あたしはパス。流石に身体に痣とか作るのは勘弁だしね」
「そっかぁ……ちょっと残念」
「ハァ………それにしてもこんな子供っぽい娘が明野宮で向かう所敵無しのストリートファイターなんて誰も思わないわよねぇ」
「ん?何か言ったタマちゃん」
「何でも無いよ。さ、早く学校行こ!」
「ほぇ?」
自分の台詞を誤魔化すように珠音はワザとらしく声を張り上げてから走り出す。
自分を追い越して学校へと向かって疾走する珠音に対し、彩はその場で立ち止まったまま頭に複数のクエスチョンマークを浮かべてキョトンとしていた。
「アーヤ!!早く早くー!!」
三〇メートル先まで行った珠音はそこで振り返って大仰に手を振り、呆と立ちすくしている彩を急かす。
「う〜ん………ま、いっか。よーし!タマちゃん、直ぐ追い付くからねー!!」珠音の言葉がよく聞き取れなかった彩は殻を剥いた
茹で卵のようにツルツルとした眉間に皺を寄せて一体何を言ってたのかをしばらく考えていたが、
直ぐにそれを放棄していつもの元気溢れる笑顔になると肩に掛けたスクールバッグを掛け直して珠音に追い付くべく走り出す。
いつもと変わらないやり取りで颯爽と通学路を駆ける二人の姿はまるで風景画の一枚絵に描写されたような鮮やかな光景だった。
※
明野宮城東高校は公立の学校の為か、私立に比べれば余り綺麗な学校とは言えないが、それでも生徒数は八〇〇人を超える男女共学の学校である。
グラウンドのあちこちに咲き誇る桜は微風が吹くと共に花びらを飛ばし、巨木から散開した花びらは空を緩やかに泳いでいる。
スクールバッグ片手に校門へと入っていった彩と珠音は同級生達に挨拶を交しながら自分達のクラス、一年A組の教室へと入った。
「美島、三木原、おはよ」
「おはよー」
「おっはよ〜!」
詰襟を着たクラスの男子数名が教室に入ってきた挨拶をすると珠音に続き、彩が挨拶を返す。
「彩ちゃん、珠音ちゃん。おはようございます」
二人が自分の席の椅子を引いて席に着くと一人のお団子頭の女生徒が彩達の所までやって来てにこやかに微笑みながら挨拶をしてきた。
だがこの女生徒は他の生徒のように声を掛けるだけの挨拶ではなく、彩と珠音に対して深々と一礼しながら挨拶をしたのだ。
「ユメちゃん、おっはよ〜!」
「由芽、あたし達にわざわざ頭下げながら挨拶しなくていいっていつも言ってるでしょ」
二人にお辞儀をしながら挨拶をしたこのお団子頭の少女は一之瀬 由芽(いちのせ ゆめ)
活発な二人とは対称的に控え目かつ礼儀正しい性格ではあるが彩、珠音とは相性が良く、学校ではいつも三人で固まって話している事が多い多い。
彼女もまた、彩がストリートファイターである事を知っている友人だ。
「あ、申し訳ありません。中々癖が抜けなくてつい………」
お団子頭の少女、由芽は珠音の言葉を聞くと眉をハの字にして言葉通り申し訳無さそうに謝罪した。
由芽の家庭は典型的な中流家庭だが、両親の厳しい躾を受けて育った為、常に礼儀を欠いてはいけないという両親の教えを忠実に守っている。
そのせいか彼女はクラスの誰に対しても礼儀正しく接しているのだ。
「タマちゃん、そんな風に言っちゃダメだよ。きちんとした態度で挨拶出来るのがユメちゃんのいい所なんだから」
落ち込む由芽を見て彩は珠音をたしなめながら由芽に助け船を出してやる。
「別に責めてないわよ、ただ………あたしたち友達なんだからそこまで大仰に挨拶されるとこっちまで気遣っちゃうからそういうのは辞めて欲しいって思っただけよ」
「…………はい」
「………ま、これからちょっとずつでいいからその辺は直した方がいいわよ由芽、礼儀正しいのはいいけど、クラスメイトとかにずーっとそれで接してると逆に印象悪くなっちゃうから」
「あ…………はい。頑張ってみます!ご指摘ありがとうございました!!」
珠音の言葉を聞き、由芽ははにかみながら笑うと再び身体を九十度に折ってお辞儀をする。
「だからそれを直せってーの!!」
礼をしている由芽の後頭部に珠音は席に座ったままビシッと打ち下ろし式のチョップを入れた。
「あぅっ!!」
後頭部を手刀で叩かれた由芽は両手で頭を抑えながら情けない声を上げながら涙ぐむ。
「うぅ〜……珠音ちゃん、痛いです〜」
「大丈夫?ユメちゃん」
最早泣く一歩手前まで来ている由芽の顔を彩は席から立ち上がって覗き込む。
「あぅぅ……頭がガンガンいってます」
「アハハ〜、いい角度で入ったからね。ハイ、痛いの痛いの飛んでけ〜」
そんな由芽に彩は相変わらず長い八重歯を覗かせながら笑うと由芽の後頭部を二、三回優しくさすり、そのさすってあげた手を珠音の額に向けた。
「あたしに飛ばすな!!」
他の生徒達と同じように三人が騒いでいると始業開始の無機質なチャイムが教室内に鳴り響く。それと同時に教室にいた生徒は自分の席に戻り始めた。
「おーし、ホームルーム始めるぞー。席着けー」
チャイムが鳴ってから数分後、担任の教師が出席簿片手に教室へと入ってきた。顎髭を蓄えた三〇代半ば位の男の教師で、お世辞にもあまりやる気は感じられない。
(う〜ん、この前のファイトマネー結構貰えたからそろそろお父さんに新しいネクタイ買ってあげよっかな〜)
各々の生徒が席に座り、
顎髭の担任がダラダラと生徒の出席を確認している中、彩は前回のストリートファイトで得た賞金を使って祐司へ何をプレゼントするかを考えながら胸を踊らせていた。
――――――――――――今日はここまでです。
>>55 お疲れ様です。
これからが楽しみです。
今回はのほほんとしてよかったです。しかし、嵐の前の静けさって感じを受けますね。
なんとなくですが、この彩は腰痛持ちっぽいな。
サーバー移転して見逃してたよ
なんというアットホームwww
>>56 >なんとなくですが、この彩は腰痛持ちっぽいな。
(・ω・)?
>>55の続き投下します。
※
四時間目の世界史の授業。教壇に立って教科書を片手に黒板へ文字を書いていく教師に倣い生徒達も黒板の文字や年号を写していた。
彩達のクラス、1―Aの教室にはチョークで黒板を掻き鳴らす音と生徒達が黒板に書かれた文字をノートに写していく音しか聞こえておらず、雑談をしている者は極僅かしかいない。
その中で彩もまた、机の上に教科書とノートを広げて黒板に書かれていく文字を目で追い掛けながら懸命に写していた。
「ねぇねぇアーヤ」
「んに?」
前の席にいる珠音がノートと黒板を交互に見ながら文字を写していく彩の方を振り返って話し掛ける。
1年A組の席順は五十音順である為、名字が三木原である珠音が彩の前の席になっているのだ。
「どうしたのタマちゃん?」 それまで熱心に動かしていたシャーペンを一旦止め、彩は珠音の顔を見る。
「あんた今週もストリートファイト出るの?」
「うん、出る予定だよ」
「ふーん……そっか」
彩が今週の日曜日に開催されるストリートファイトをやると聞いた途端、珠音は何かを企んでいるような含み笑いを見せる。
「それがどうしたの?」
「ちょっとね……この前バイト代全部使っちゃって今月ピンチだからさ、ストリートファイトでアーヤに賭けてお小遣い稼ごうと思ってんのよ」
つまるところ珠音は今回のストリートファイトでトトカルチョを行い、自分の小遣いを得ようと企てているのだ。
ストリートファイトというのは名前こそ響きは良いかもしれないが、平たく言ってしまえば草格闘大会の域を出ない路上喧嘩の意味を差している。
ごく稀に本物の格闘家がストリートファイトに出る事はあれど、基本的には格闘技すらまともにやった事の無い素人同然の荒くれ者達がこぞってやるような殴り合いに過ぎないのだ。
その為かスポーツのようにただ観戦するものはごく一部の愛好家だけで他の者達は日頃の鬱憤を晴らす為の娯楽、あるいは賭博としか見ていない。
どちらのファイターが勝つかというのを観るよりはどちらのファイターに賭ければ儲かるかというのを楽しみにしている者が大多数である。
その中で彩は競争馬でいう所のいわゆる『本命』として見なされている。
事実彩は十二歳の時ストリートファイトという舞台にデビューしてから三年間一度も敗北というものを経験した事が無いのだ。
日頃体力を持て余した粗野粗暴な者達が集まるストリートファイトで彗星の如く現れた美島彩の存在は余りにも異質ではあったが、腕力が自慢の男達ですら彩には一目置いていた。
殴り合いなど絶対に出来ないような愛くるしい容姿とは裏腹に、闘いになれば疾風のような素早い動きと羽根のような軽やかな動きで相手を翻弄し、僅かな
手数足数で自分より遥かに体格の勝る男を一気に打ち倒してしまうのだ。
それ故にストリートファイトの愛好家達は彩の事を
『ストリートファイトという荒野の舞台に舞い降りた天使(アイドル)』と呼んでいる。
そしてそういった愛好家達が趣味で作ったホームページやブログには、彩が闘っている時の画像が幾つも貼られており、本人の知らない所で熱狂的なファンを作り出している。
「……タマちゃん、ストリートファイトで未成年がお金賭けるのは禁止だよ」
口を尖らせて彩は珠音をたしなめる。
「いいじゃない別に。固い事は言いっこ無しよ」
「固い事とかじゃなくてダメなものはダメだよ」
む〜っと唸りながら彩はジト目で珠音に抗議の視線を向けた。
「ハァ………分かったわよ。仕方無いから今月は財布の紐締めて我慢するわ」
考案していた計画をなし崩しにされた珠音はしょんぼりと肩を落としながら身体を戻し、前を向き直ってノートに文字を書き写す作業に戻った。
※
午前中の授業を終える無機質なチャイムが鳴り響き、昼休みになると生徒達は束の間の休息を味わいながら昼食を取っていた。
教室で友人と机をくっつけながら弁当を広げる者、学食を利用する為に食堂へと向かう者など皆思い思いの時間を過ごしている。
「あーんっ……んむ……んむ」
そして彩、珠音、由芽は昼休みになると同時に屋上へと上がって備え付けのベンチに三人仲良く並んで座り、そこで昼食を取っていた。珠音が右端、由芽が左端に座って真ん中に彩が座っているという形である。
珠音と由芽は持参してきた弁当なのに対し、彩だけは購買で買ってきたカツサンドを幸せに満ちた笑顔を浮かべながら頬張っていた。
「しっかしよくまぁ美味しそうに食べるわねぇ……たかが購買のパンなのに」
「フフフ……彩ちゃん本当に幸せそうで見てるこちらも和んでしまいます」
珠音、由芽の二人は弁当を箸でつつきながら思い思いの言葉を口にしていた。
カツサンドは彩の好きな食べ物の一つであり、昼休みになるといつも購買でカツサンドを二〜三個取って来ては先程と同じような笑顔で頬張っている。
「うぅ〜ん、美味しいよ〜」 元々が小学生と間違えられる程童顔な彩だが、こういった表情を浮かべると更に幼く見えてしまう。
口の中でカツサンドをモグモグと噛みながらオレンジジュースのブリックパックにストローを刺して一口飲んだ。
「あ、彩ちゃん。お口にマヨネーズ付いてますよ」
ジュースを飲み終えてから再びカツサンドに夢中になっている彩の口の端に付いたマヨネーズを由芽はポケットから取り出したハンカチで優しく拭いてあげる。
「んっ………エヘヘ、ありがとう。ユメちゃん」
「いえ、どういたしまして」「いつも思うけど……ホントーに子供みたいね。これじゃあ小学生に紛れて遊んでても違和感無いんじゃないアーヤ」
「むっ!タマちゃんそれどういう事!?」
珠音がポツリと漏らした言葉に彩は頬を膨らませて珠音を睨み付ける。
「そのまんまの意味よ」
「む〜〜〜〜〜〜!!ボク子供じゃないもん子供じゃないもん!!!」
ベンチに座ったまま両手をブンブンと振って彩は珠音に猛抗議していた。
猛抗議と言えばそれなりの形にはなるが、実際には単に駄々っ子のように暴れているだけである。
「ちょっ………カツサンド持ったままジタバタするんじゃないわよ!!パンくず飛ぶでしょうが!!!」
珠音は暴れる彩の頭をガッチリと手で抑えて拘束し、必死に彩を制していた。
「うにゃーーーー!!」
「っ!!このぉ…………」
「あ、あぅ……珠音ちゃん、彩ちゃん喧嘩はダメですぅ!!」
暴れる彩とそれを抑えている珠音、そして仲裁しようにも出来ないままオロオロしている由芽。
この凄まじく低次元な闘いと無意味な仲裁は三人仲良くパンクズまみれになりながら昼休み終了を伝えるチャイムが鳴るまで続いていた。
今日はここまでです。
煮込んでくるね〜
そろそろバトル分の補給を受けたいところだが…
その辺どんな腹積もりなんかな?
前スレの地下女スキーさんやっぱりもう帰ってきてくれないのかな………?
いやいや、毎日チェキしてるんだな、コレがw
ただ、4月までは色々と忙しいっぽくて動けません(汗)
彩って前戯のお話ですか?
挿入して3分ってパターンだなこりゃ。
>>64 そういえば地下女スキーさん。各キャラの名字の元ネタってもしかして餓狼伝ですか?
松尾とか姫川とか
>>66 いえいえ、餓狼は嫌いじゃないけど、女キャラの名前にしたりはしませんね。
元ネタのキャラを思い出して萎える(笑)
松尾はすごい適当につけた気がする。由来や元ネタは特にないですね。
姫川は……………檜山姫ゲフゲフン!
>>60の続き投下します。
>>62今回バトルシーンがありますのでご安心下さい
※
「よーし、今日のHRはここまでだ。じゃ、気を付けて帰れよー」
全ての授業科目が終了し、無精髭を生やした担任が相変わらず覇気の無い態度でHRを締めくくると生徒達は一斉に帰り支度を始めた。
それまで静かだった教室が生徒達が雑談を交す声や椅子を引きずる音によって騒がしくなる。
「じゃあね、アーヤ」
「それでは彩ちゃん、お先に失礼します」
彩より先に帰り支度を終えた珠音と由芽は一足先に教室を後にした。
珠音はこの後バイト、由芽は塾に行かなければならない為、彩よりも帰宅は早い。
「うん。バイバーイ」
机の中から教科書を取り出してスクールバッグに詰め込んでいた彩は二人に向かって別れの挨拶を告げる。
「さーてボクも早く帰ろう」 全ての荷物を詰め終えた彩はスクールバッグのファスナーをしっかりと締めてからストラップ部分を肩に掛けて他の生徒達同様に教室を出ていく。
「あ、そういえば今日スーパーのタイムサービスでお肉と卵三割引きだったんだっけ。帰りに買って行かなくっちゃ」
およそ十五歳とは思えないほど所帯じみた台詞を呟きながら彩は昇降口に向かって歩いていった。
※
「ふーっ、買えた買えた。。これでお父さんにスタミナ付けて頑張って貰わないと」
日もすっかり傾いて空が茜色に染まった頃、開いたスーパーの自動ドアから出てきた彩は豚肉と十二個入りの卵パック二つが入ったビニール袋を片手にぶら下げて上機嫌に笑っていた。 どうやら目的のものは手に入ったらしい。
「今日は豚カツ、豚カツ〜豚カツ食べて頑張るぞ〜」 意味不明な歌を口ずさみながら彩は自宅がある住宅街ヘと向かってスキップで跳ねていった。兎のようにピョンピョンと跳ねると二つに結んだ栗色のお下げが上下に揺れ動く。
「…………おい、そこのチビ」
ふと、帰り道の途中にある空き地に差し掛かった所で一人の少女が彩に声を掛けてきた。
「ふぇ?」
彩が声を掛けられた方を向くとそこには茶色いブレザータイプの制服に身を包んだ少女が樫の木で作られた漆塗りの木刀を片手に持って佇んでいた。ブレザーとワイシャツの袖は七分にまで捲り、首に付けたリボンタイは結ばずにそのまま襟元に引っ掛けている。
木刀を持っているだけでも違和感があるのに、制服をラフに着崩している為、普通の女子高生と呼ぶには余りにも抵抗がある出で立ちである。
「えーっと………ボクの事?」
少女の方を振り向いて頭に『?』マークを浮かべながら彩は顎に人差し指を当てて小首を傾げる。
「そうだよ。アンタ城東高の美島彩だろ?」
「うん、そうだけど……」
「やっぱりな……噂には聞いてるよ。無敗のストリートファイター、美島彩さん」
少女は唇を吊り上げながら皮肉めいた笑いを見せて木刀で肩をトントンっと叩いている。
「いやぁ……それは周りの人達がそう言ってくれてるだけであってボクはまだまだ未熟だよ」
恥ずかしそうに頬を赤らめながら彩は後頭部をポリポリと掻いた。
「へぇ、ストリートファイターにしちゃ意外と謙虚なんだねぇ………」
「そうかな?ボクは思った事しか言わないよ」
「そうだよ。その謙虚さ………」
そこで言葉を区切り、少女は左足を一歩前に踏み出した。
「少しはあやかりたいもんだねぇ!!!」
そう叫ぶと同時に少女は木刀を真上から振るった。 狙いは彩の頭頂。
「うわっと!?」
本能的な勘で彩は瞬時にサイドステップを使い、上段に振りかかってきた木刀を避わすと直ぐ様後方へ飛び、少女から身を離した。
「い、いきなり何するの!!」
余りにも唐突な奇襲に流石の彩も眉を吊り上げて少女を怒鳴る。
「別に。ただアンタをぶっ倒してアタシの名を上げるだけさ。このアタシ、明野宮城北高校一年、高良紗和のな!!」
「こーら……さわー?女の子なのに変わった名前だね」
「アタシはタイマンじゃ二百戦連勝の実力を持っている。そしてアンタを倒してこの明野宮市にその名を轟かせてやるのさ!!」
高良紗和と名乗る少女はひとりきし喋った後、手入れすらされていない草むらの空き地を駆けながら再び彩との間合いを詰めていく。
「オラオラオラオラァッ!!!」
猪突猛進。その言葉がぴったり当てはまるように高良沢は彩に向かって休む事なく木刀を振るっていく。
先程見せた上段への振り下ろしから袈裟斬り、手首を返しての胴打ちから小手打ち。周囲の大気を切り裂きながら高良は怒涛の連続斬りを見せていった。
その型は剣道や剣術というには余りにも滅茶苦茶な木刀の振るい方で、恐らく完全に我流なのだろう。
木刀の軌道はお世辞にも綺麗とは言えない。
だが、正統な型など関係無く、称讚に値する程のパワーが高良にあるのもまた事実。
「………くぅっ!!」
彩は相手の予想外のパワーと攻めに若干焦りを感じてはいたが、流石彩も百戦練磨のファイターである。 高良が振り回す木刀を巧みなフットワークを使い、全ての攻撃を紙一重の所で見切っていた。
「――――ッ!!」
彩は持っていたスクールバッグとスーパーの袋を空き地の隅に投げ捨てて砂煙を巻き上げながら摺り足をを使い、高良から距離を取った。
その摺り足はまるで氷上を滑っているかのように滑らかである。
(相手が武器を持っている限り迂濶には近付けないから………よしっ!!)
相手の体格、スピード、パワー、手にしている獲物を見てから瞬時に頭の中で高良との闘いをシュミレーションしていく。
そして息を整えてから彩は左足を前に出して半身に構えると軽く拳を握り締め、前に出した左足の爪先で二、三回地面を小突いてリズムを取る。
「おいおい、逃げの一手かい美島彩!!」
高良もまた、砂塵を舞い上げながら地面を蹴り、再度間合いを詰めて木刀を高々と上げて振り下ろす。
木刀の切っ先の目標は彩の鎖骨に狙いを定めていた。「――ッ!てやぁぁぁっ!!」
それまで攻めに回っていなかった彩が烈帛の気合いと共にその細い脚を稲妻の如き速さで摺り上げる。
「――――なっ!?」
大気を切り裂きながら鞭のように襲い掛ってくるハイキックは木刀を握っていた高良の手の甲を鮮やかに直撃する。
「うぐっ!?」
背足、つまりは足の甲での蹴りを受けた高良は形容し難い痺れを手の甲に受けて思わず握っていた木刀を手から離してしまった。
「せぇいっ!!」
相手の手から滑り落ちた木刀を目で確認しながら彩は蹴り足を素早く引き戻してもう一度ステップし、右膝が胸に付く位まで上げて『タメ』を作り、そのまま一直線の軌道でサイドキックを高良の腹部に放つ。
このサイドキックは彩が最も得意とする蹴りの一つであり、ストリートファイトにおいても掌底と同じ位使い勝手が良いため、彩は重宝している。
「うぶっ!!」
腹へと見事に突き刺さった蹴りに高良は顔をしかめてたまらず片膝を付く。
「もう一回行くよ!!」
蹴り足を引き戻してから彩はもう一度右足を抱えるように上げて『タメ』を作り、その『タメ』を一気に解き放ってサイドキックを繰り出した。そしてその蹴りは片膝を付いている高良の顔面へと向かって真っ直ぐに伸びていく。
「がふぅっ!!」
コンバースのスニーカーの靴底が高良の顔面を正確に捉え、高良は鼻血を吹き出しながらスローモーションで仰向けにひっくり返った。
「もぅ………いきなり木刀なんか振り回したりしたら危ないじゃんか!」
一息付くと両手に腰を当てて彩は頬を膨らませて大の字に倒れている高良をたしなめる。
「ぐっ……ぐぅぅ、この」
ゆっくりと上半身を起こして高良は落ちていた木刀を握り直して立ち上がる。
「い、今までのは前座だ!!こっからは本気で行くぜ!!」
「本気なのはいいんだけど………とりあえず鼻血拭いた方がいいよ」
鼻から真っ直ぐに垂れる鼻血をまだ痺れの残る手の甲で拭いながら高良は木刀の切っ先を彩へ向けて再び駆け出した。
今度はモーションの大きい“斬り”は多用せず、“突き”で攻めていく。
「ホラホラホラホラホラッ!!!」
五月蠅い程の叫び声を夕暮れの空き地に轟かせながら高良は彩の喉元、胸、肩、肋骨といった部位に五月雨のような突きを連続して放っていく。
「フッ!」
木刀のスピードに目が慣れてきた彩はその突きの連撃に対して先程のようにフットワークを使うのではなく、中国拳法でいう所の三才歩という体捌きを使って木刀の突き全てを軽やかに、そして柔迅に避わしていく。
その避わしていく彩の姿はさながら舞いのようである。
「いつまでもそうやって………避けれると思うなぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
高良がそう叫んだ刹那、木刀が突如としてその軌道を変えた。
(――――えっ!?)
『突き』の軌道から『斬り』に変わり、横薙ぎに振られた木刀が水色のプリーツスカートから覗く彩の大腿に直撃した。
ガッという乾いた音が空き地に響き渡る。
「うぐっ!!」
プロのキックボクサーや空手家のローキックを受けた時と同じように脚に高圧の電流を流されたような感覚が彩を襲う。
「そらよっ!!」
暇すら与えないと言わんばかりに続け様高良の振るう木刀は真上から襲い掛り、彩の華奢な肩を叩く。
「あぐぅっ!?」
樫の木で作られた木刀は固く、本気で打たれれば骨折は免れない。
だが、彩は肩に直撃する寸前でバックステップを使って僅かに木刀が当たるポイントをずらし、幸いにも骨折は免れた。
「っ、うぅ………」
だが、ダメージは隠しきれないのか彩は顔をしかめながら肩を抑えている。
「へへへ、形勢逆転だな。さて、これで大人しく寝てな!!!」
そう言って高良は再び突きの構えを取り、彩に向かって真っ直ぐに走る。
「じゃあボクも……本気で行くよ」
僅かに声をトーンを落として静かに呟いてから彩は目を閉じ、すぅっと大きく深呼吸してから目をカッと開く。
「氣術発動、妖波(ようは)!!」
彩がそう叫ぶと同時に空き地周辺の空気が変わった。
夕暮れ時とはいえ、それまで暖かかった空気は一変し、まるで灼熱の溶鉱炉のように暑くなっていく。
「な、何だ!?」
周りの空気が変わった事を肌で感じ取った高良は頬に汗を伝わせながら辺りを確認するが、周りの空気が熱風を帯びて暑くなった以外何ら異変は見られない。
だが、自分と対峙している栗色髪の少女、美島彩の姿を見て思わず息を呑んだ。
視線の先にいる彩は身体の周りに輝かしい光が纏い、両拳を握り締めた態で神々しく佇んでいる。
「な、何だ?一体何が始まるんだよ!?」
慌てふためく高良を尻目に彩は再び半身に構え、握り締めていた右手をゆっくりと振り上げる。
「熱き覚醒の荒波、ラウズウェイブ!!!!」
瞬時に片膝を折ってしゃがむような体勢になって身を低くすると身体同様に神々しく輝く拳で地面を殴り付けた。
すると殴り付けた場所から黄金色の凄まじい衝撃波が発生し、まるで津波のようになって高良に向かって一直線に走っていく。
「なっ!?なにぃぃぃぃぃっ!!そんなん有りかよーーーーーーーーー!!!!」
とっさに避けようとするものの衝撃波の勢いは亜光速とも呼ぶべき速さで高良に差し迫っていた。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彩の放った衝撃波をまともに受けた高良は轟々たる爆発音と共に絶叫を夕暮れの空き地に響かせながら元の場所から二〇メートル先まで吹き飛ばされ、コンクリート塀に叩き付けられた。
その衝撃で一○メートルの高さもあるコンクリート塀の一部は凄まじい音を立てて崩壊し、高良は瓦礫の中へと沈んでいった。
「ア、アタシは………二百戦で、連勝の………タイマンなんだよぉ………」
天に向かって震える手を伸ばしながら高良は呟くが、やがて力なく失神した。
「ハァ………ハァ……やったぁ!ボクの勝ち!!」
肉体と同時に精神力をも擦り減らす『氣術』を使った反動からか、彩は肩で息をしながらも高々と右手を上げて勝利のポーズを決めた。
風でプリーツスカートが捲れてクマがプリントされた下着がチラチラと見えてしまっているがその辺は気にしていない。
「あれ?そういえばボク何か忘れてるような…………」
ふと、彩は何かを思い出したように首をゆっくりと右に向けて空き地の隅を見るとそこにはスクールバッグと肉と卵のパックが入ったスーパーの袋が投げ捨てられていた。
先程彩が高良との闘いの最中に放り投げた衝撃で卵の殼がグチャグチャに割れて卵黄やら殻が飛び散って悲惨な状態になっている。
「……あっ」
彩Aya第一章 おしまい
第一章は以上です。次第二章に入ります。
>>67 地下女スキーさんお久し振りです。
前スレからずっと続きが気になってたので楽しみにしています。お忙しいでしょうがご無理の無いように頑張って下さい。個人的には松尾由実VS明石聡美のリターンマッチを楽しみにしてます。
>>68-
>>71 ※タイトル欄訂正
×彩
○彩 Aya
彩が格ゲーキャラの技使いに!
まさに超展開ww!
前バージョンとはガラリと変えてきて色んな意味で楽しみになってきた
投下乙!
>>72 どうもお久しぶりです。ご丁寧にどうもですm(__)m
聡美対由実はトーナメントの一つのヤマにしたいところですが、どうなることやら…
なんかVGっぽくなってきたね
そういえばVGの主人公もボクっ娘で気功使いだったな
武内優香はじまったな
彩がアンミラの制服を着て闘うと申したか
気とかの超能力バトルになると大味になるんだよな
ちょっと残念な展開だわ
女の子同士のバトルってやっぱりマニアックな部類に入るんだろうか?
海外では普通
屋外でも普通に女同士が掴み合ったりしてるし
それをはしたないとかみっともないとか排除する日本だと、陰湿な嫌がらせ合戦等に
終始するのでマニアックというか奇異に見られるだけ。
>>82dクス
確かにキャットファイトのビデオとかは日本より海外の方が多いな。
彩はキャットファイトっていうかリリカルなのはみたいな燃えバトルって感じがする………
なのはとアリサのキャットファイトを燃えバトルと申したか!
なのはもバトルって結局一期しか無かったよなあ
二期のフェイトとシグナムは子供と大人にしか見えないしヴィータとなのはの
戦いはしょっちゅう邪魔が入ったし三期はもうキャラ出し過ぎて何がなんだがry
>>80 外山町の貴公子みたいな気の使い手なら可。
>なのはとアリサのキャットファイトを燃えバトルと申したか!
なのはとフェイトのバトルとかじゃなくて敢えてそっちかよwww
まぁ三期は………確かに人数的に容量オーバーだな。
ラウズウェイブの元ネタってテリーのパワーウェイブ?
>>86 おおっ!いかにもボクっ娘って感じが出てる!
多才ってのはいいね
格闘は格好良いが、個人的には気とかの飛び道具は無しにして欲しかった
説得力の無い一発逆転になるんだよな、気とかの能力バトルって。
密着状態からの発勁系(修羅の門の虎砲とかチンミの浸透勁とか)なら
戦術や話の幅が広がって深みも増すので、そっちの方が良かったな
第二章投下します。今回はまとめての投下になりますのでかなり長くなります。
第二章『柔道少女、参上ッス!』
「フンフフン、フンフン〜」 昼下がりの穏やかな日曜日、彩は黄色い無地の半袖Tシャツに太股が露出したデニムのミニスカートというラフな格好で二つに結んだお下げ髪を揺らしながら鼻唄混じりにリビングで掃除機をかけていた。
美島家のリビング自体はそれほど広くは無いが、それでもフローリングのモップ掛けに始まりテーブルやソファーといった家具の掃除、窓の水拭き等といった事を全て行えばそれなりに時間は消費する。
掃除機の吸引音と上機嫌な鼻唄をリビングに響かせながら彩は慣れた手付きで掃除機を動かしていった。「よし、掃除終わりっと!」 カーペットに付着したホコリやゴミをほぼ全て掃除機で吸い取った彩はスイッチをOFFに切り換え、
コードをプラグから引き抜いて本体の中に巻き戻すと掃除機をリビングに直結している和室の押し入れの中に収納した。
「えーっと……洗濯OK、掃除、窓拭きOK、炊飯機のタイマーセットOK。今日も完璧ぃ!!」
押し入れの襖を閉めてから再びリビングに戻ると両手をグーにしてバンザイしながら飛び上がった。
どうやら家事は一通り終わったらしい。
「………あ、もうこんな時間だ!!そろそろ行かないと」
ふと、テレビの上に置いてあるデジタル時計を目にした彩はパタパタと足音を立てながら二階の自室へと戻る為にリビングを後にした。時刻は午後二:〇〇を回っている。
飛び跳ねるように木造の階段を駆け上がって部屋に入った彩はハンガーに掛けてある愛用のスカジャンに袖を通し、学習机の上に
置いてある指貫タイプの革手袋を嵌めてから頭に黒いアポロキャップをしっかりと被った。
「よーし、準備完了!今日も特訓頑張るぞーー!!」 黒い革手袋を嵌めた手を握ってしっかりと拳を作り、グローブが手にフィットする感触を確かめてから
彩はいつもと同じように本棚の上にある写真に歩み寄る。
「じゃあお母さん、行ってくるね」
写真の中でVサインをして笑う母、絵里に向かって彩は弾けるような笑顔を向けると部屋を出て再び一階へ降りていった。
※
「ん?彩、出掛けるのか?」 玄関に座ってスニーカーの靴紐を結んでいた彩に丁度書斎から出てきた祐司が声を掛ける。今日は日曜日の為、祐司も仕事は休みである。
「うん、ちょっと倭鏡院神社まで走って来るね」
靴紐を固く結んでスニーカーを履き終えた彩は立ち上がって祐司の方を向いた。
「そうか。車に気を付けろよ………あ、そうだ」
「んにゃ?」
「神社で観月に会ったら俺がよろしく言ってたと伝えておいてくれ。最近忙がしくて顔を出せないからな」
「うん、分かった。伝えておくね」
「あぁ。それと………」
「なぁに?」
「夕飯までには帰ってきてくれ。流石に飯抜きは辛い」
「アハハ〜大丈夫だよ。お父さんを餓死させる訳には行かないもん」
底抜けに明るい笑い声を発しながら彩は祐司の顔を見上げる。
「いや、餓死は大袈裟だろ………」
「え〜だってお父さんボクが御飯作らないと絶対自分で料理とかしないじゃん」
「ま、まぁ…それは、その…………」
彩の言葉通り、祐司は自分から料理等といった家事を自分からやる事は無い。
美島家の家事全般は絵里が家を出ていった日を境に彩が全てこなしている。
まだまだ遊びたい盛りの娘に家事を押し付けているようで祐司はバツが悪そうに頬を指で掻いた。
「………じゃあお父さん」
「何だ?」
突然彩は拳を口元に当て、白桃色の顔をほんのりと桜色に染めてうつ向いた。心なしか瞳が濡れ、吐息もほんの少しだけ荒い。
「もしお腹すいて我慢出来なかったら………ボクの事食べていいからね」
一瞬、祐司の中で時が止まった。
「……………彩」
「なぁに?」
しばらく固まっていた祐司が恐る恐る娘の名前を口にする。
「その言葉………誰に教えられた?」
「お母さん」
「絵里〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
突然妻の名を叫びながら激しい頭痛を覚えた祐司はこめかみを抑えてその場にしゃがみ込んでしまった。「お母さんが言うには、ボクがこういうポーズでこういう風に言えばお父さんはケダモノになっちゃうん
だって………でもお父さんがボクの事食べるってどういう事なんだろ?ねぇねぇお父さん、どういう意味なの?」
母に吹き込まれた台詞の意味を理解できていないのか彩は小首を傾げながら汚れ一つ無い無垢な瞳を祐司に向けて意味を問う。
「彩………お父さんと一つだけ約束して欲しいんだ。いいか?」
顔を引き攣らせながらヨロヨロと立ち上がった祐司は彩の華奢な肩にそっと両手を置いた。
「うん、いいよ〜」
「お母さんに教えられた言葉は今後一切使うな」
「ふぇ?何で?」
「何でも」
「う、うん……分かった」
いつも温厚な笑みを絶やさない祐司からは想像も付かないような迫力に満ちた形相にたじろきながら彩はゆっくりと頷く。
「絶対だぞ。いいな?お父さんとの約束だ」
肩に置いていた手に力を込め、祐司は彩に顔を思い切り近付けて念を押す。
「お、お父さんどうしたの?顔が怖いよ?」
父の豹変振りに怯えながら彩は思わず一歩下がった。身体が獅子を前にした小動物のように小刻みに震えている。
「絵里の奴………彩がそういう知識に疎いからって変な事吹き込みやがって」
ギリギリと彩の肩を握り絞めながら祐司は呪祖のようにブツブツと呟く。
「お、お父さん!?痛い、痛いよぉ!!」
父の迫力と指が食い込いんでいく肩の痛みに泣きそうになりながら彩は悲痛な叫び声を上げる。
「……あ!!す、スマン彩。つい」
彩の悲鳴に慌てて祐司は両手を放した。
「じ、じゃあボク行ってくるね!!」
完全に怯えきってしまった彩は逃げるように回れ右をすると玄関のドアを開けて外に出る。
「あ、あぁ。気を付けて行けよ」
脱兎の如く外へと飛び出した娘に向かって祐司は手を軽く振って見送った。
「ふぅ……ビックリしたぁ」
玄関ドアを開けて外に出た彩は眉をハの字にして胸を撫で下ろした。原因は他でも無い先程の祐司の迫力にある。
「………うん。でも気を取り直して頑張ろう!」
顔を引き締めてぐっと可愛らしくガッツポーズを取ると彩はアスファルトの道路脇で膝を深く曲げてしゃがみ、その場で屈伸運動を始めた。どうやら準備体操を行っているらしい。
「んっ……しょ、んっ……しょ……いっち、に、さん、し………」
太股と膝の関節からふくらはぎまでしっかり伸ばし、関節をほぐしていく。
次に爪先をアスファルトに当てて左右の足首を回し、それと同時に首もゆっくりと回した。
「よし、レッツゴー!!」
露出している太股をピシャッと掌で叩き、彩はゆっくりと閑静な住宅街を駆け出した。
リズミカルに脚と腕を動かしながら軽快な足音を立ててアスファルトの上を走って行く。
目的地までの距離は丁度十五キロ。決して短いとは言えない距離である。
だが、彩にとっては小学生の頃から走ってきた道のりの為、何ら苦とは思わない。
アスファルトをしっかりと踏みしめ、彩は幼い頃から見慣れた景色を見つめながら徐々にペースを上げて本格的なランニングを開始した。
※
彩の家から十五キロ離れた山林の中にある倭京院神社は九〇〇年前から続く古い神社で、元来はこの明野宮で百鬼夜行と共に暴れて猛威を振るっていた
邪神、薊(アザミ)を神の力を持った一族と倭境院の神女が倒し、そしてその御魂を封印する為に造られた神社であると言われている。 五十段もある長い石段を駆け上がって見える神社の境内では一人の巫女が竹箒で落ちた緑葉や針葉を掃き集めていた。
「観月さーん、こんにちは!!」
石段を登って境内に辿り着いた彩は手を大きく振りながら巫女に駆け寄った。 ここまでランニングで来た彩は息を弾ませながら頬に一筋の雫を滴らせてニッコリと笑う。
「……あら?彩さん。こんにちは」
観月と呼ばれた巫女は箒の動きを止め、頬に手を当てて優しく微笑みながら彩の方を振り返る。
―――倭京院 観月(わきょういん みづき)。
この倭京院神社に一人で住んでいる神女で、絵里や彩とは深い親睦がある。
腰元まで伸びた艶やかな黒髪を後ろに流して檀紙で束ね、染み一つ無い純白の小袖を着て緋袴を穿いているせいか、俗世の汚れを知らない清楚さと神々しさが観月の身体から現れていた。
また、雰囲気もどことなく落ち着き払ってゆったりとしており、見る者の心を和ませるように思えてくる。
「今日も特訓ですか?」
「はい!また裏山の特訓場使わせて貰います!!」
「えぇ、どうぞご自由に。くれぐれもヤマカカシ等には気を付けて下さい」
「はーい!」
彩は早速観月の脇をすり抜けて本殿の後ろへ回り、そこに裏山へと続く石段を駆け上がっていった。
裏山の山道をしばらく行った先には一軒の小さなプレハブ小屋があり、その隣には大人五人掛りが手を一杯に広げてやっと一周する程の太い大樹がそびえていた。
大樹の一ヶ所。人間の身体で言えば胴体から太股に位置する場所には何重にもロープが巻かれていた。
恐らくこの大樹は打ち込みの為に使われているのだろう。
巻かれたロープはボロボロになって擦り切れていた。
所々には拳頭の形にへこんだ跡もある。
この小屋は元々登山者の休憩小屋として建てられたのだが、全く使われていない為絵里が勝手に改築して自分の修行を行う為の鍛練所にしてしまったのだ。
その件で昔観月は絵里をたしなめたのだが、絵里は反省する所か『別にいいじゃん。どうせ使われてないんだから有効活用、有効活用』と言って観月の小言を一蹴したという。
それ以来何を言っても無駄だと悟った観月は絵里の行動を黙認している。
「今日もよろしくね」
幾つも齢を重ねた大樹の木肌を革手袋を嵌めた掌でそっと撫でた後、彩はすぅっと大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
そして僅かに距離を取って左足を一歩前に出し、半身になってから両拳を握り締めて構えた。
この時、右の拳は顎の下、左の拳は顎から二〇センチ前に出す。
脇を締め、顎をスッと引いて両膝と腰は軽く曲げておく。
決して力まず、肩の力は抜いて完全にリラックスした状態で彩は大樹と向かい合った。
「――――ッ!!やぁぁぁぁっ!!!!」
甲高い気合いの声を吐くと同時に瞬時に腰を切り、ロープが巻かれた箇所を右の拳頭で突いた。
ドンッ、と重く鈍い音が山に木霊する。
大樹の幹が突きの衝撃で揺れ、梢と緑葉がガサガサと音を立ててそよいだ。
「………よし!!てぇぇぇぇぇいっ!!!」
しっかりとした手応えを感じ、続け様左右の拳で大樹を突く。
殴られる度に大樹は僅かではあるが衝撃に従って前後に揺れ動いた。
「フッ!てやぁぁぁっ!!」 一息の間も置かずにストレートからフック、ボディアッパー等あらゆる拳撃を全力で打ち込んでいく。
大樹が堅いせいか拳頭と腕に痺れるような痛みが走るが、それも構わずに彩は打ち込みを繰り返して行く。
「はぁぁぁぁっ…………やぁぁっ!!!」
身体が暖まってきた彩は左右の拳による突きを五十本こなした後、右足を大きく跳ね上げて大樹にミドルキックを叩き込んだ。
足の甲の部分がしっかりとロープを巻いた箇所にぶつかり、その振動は大樹の太い幹にしっかりと伝わって大樹は突風にあおられているかのように大きく揺れ動く。
「ハァッ!!」
今度は左のローキックから身体を半回転させて後ろを向き、直線の軌道から蹴るバックキック、蹴りからフォロースルーを終えて体勢を立て直すと同時に軽快なフットワークで大きく距離を取ってから飛び込むようにステップインしてサイドキックを放つ。
静かな裏山に絹を裂くような気合いの声と堅いもの同士がぶつかり合うような衝撃音はこの後、一時間近くも休みなく山全体に響き渡っていた。
※
「…………ふぅ〜」
突き、蹴りの打ち込みを一通り終えた彩は大樹に背中を預け、木の木陰になっている所で小休憩を取っていた。
身体が暖まり、暑くなったのか被っていたアポロキャップを取ってパタパタと赤らんだ顔を扇ぎながら額の汗を手の甲で拭う。
そして乱れた呼吸を整えるのと同時にクールダウンして心を鎮めていった。
精神を集中し、神経を研ぎ澄ますと風に揺られてざわめく木の葉の音や小鳥達のさえずり、山に生息する小動物達の鳴き声まで耳に心地良く聞こえる。
「…………」
ふと、彩は振り返って顎を反らし、どこか懐かしむような目で大樹を見上げていた。思い起こされるのは幼き日の母との訓練の日々。
あの頃はただ母のようになりたくていつも必死だった。そしてその想いは今も変わっていない。
目を閉じ、彩は静かに追憶の日々を思い出していた。
――――十年前、まだ五歳だった彩はいつものようにこの裏山で母、絵里から喧嘩殺法を教えられていた。 それは絵里が強制した訳では無い。
彩が自分から闘う術を教えて欲しいと申し出たのだ。
『……………』
黒いTシャツの上に真っ赤なライダースジャケットを着て一九六〇年代モデルのビンテージジーンズを穿いた絵里が大樹の下で足を肩幅に開き、両腕を力なく下げて眼は真っ直ぐ前を見据えていた。
身長は一七〇センチを越える長身痩躯の姿で、その服の上からでもしっかりと分かる位にグラマラスな体型をしている。
『………よし』
一言、静かに呟くと絵里は半身に構え、両拳を軽く握り締める。
『――――フッ!!せぇいっ!!』
そして烈帛の気合いと共に大きく一歩踏み込んで素早く腰を切り、右ストレートを放った。
肩まで切り揃えられた栗色髪がふわっと揺れ、服の上からでもしっかりと解るくらい抜群なプロポーションを持つ身体は鮮やかな突きを決めている。
だが、その綺麗な体型と容貌とは裏腹に凄まじい破壊力を秘めた腕は風を唸らせながら大気の壁を突き破っていた。
絵里の格闘スタイルは我流の喧嘩殺法を自称してはいるが、その動きは恐ろしい位に合理的で尚且つ洗練されており、格闘技に一切の引けを取らない。
『……さ、やってみな。彩』
『うん!』
隣で絵里の動作を食い入るようにじっと見ていた彩はその場で母の動きを真似て半身に構える。
『えぇいっ!!』
そして可愛らしい気合いの声と共に突きを放つ。だが、その突きは絵里のように真っ直ぐ放たれた訳では無く、拳は斜め上の方に行ってしまった。
『アハハハハ!!そうじゃないよ彩。いい?まず半身に構えて………』
大口を開けて笑いながら絵里は彩に歩み寄り、枝のように細い彩の両腕を優しく掴むと位置をしっかりと正してあげる。
『顎をしっかり引いて、脇を締めて……そうそう。
よし、相手のみぞおちをよぉく狙って………脇を開けちゃダメだよ。そのまま真っ直ぐに突く!』
『えぇいっ!!』
弱々しい突きではあるが、先程よりはフォームも綺麗で突きも真っ直ぐになっている。
『そう!いいよ彩。やれば出来んじゃん』
娘と良く似た長い八重歯を口元から覗かせながら絵里は彩の頭をクシャクシャと撫でた。
「お母さん………ボク、強くなってるかな?」
閉じていた瞼をゆっくりと開き、追想の世界から現実に意識を戻した彩は栗色の前髪で隠れた額を大樹の木肌に押し当て、そっと囁く。
返答が無い事は分かっている。だが、それでも彩は母に聞きたかった。
自分の力量を。自分が今まで研鑽して培ってきた技の強さを。
そして……いつの日か自分と拳を交えて欲しいと願っていた。闘って母の強さを、そして自分がどれ程強くなっているかを自分自身の拳で確かめたかった。
「……………彩さん?」
「うわぁっ!!」
突然背後から名前を呼ばれて素っ頓狂な声を上げた彩は慌てて後ろを振り返る。
「み、観月さん!?」
そこには巫女装束を身に纏った観月が相変わらず頬に手を当てて彩の真後ろに立っていた。
「申し訳ありません。驚かせてしまいましたか?」
観月はやや申し訳なさそうな顔をして頭を垂れる。「い、いえ!その………全然大丈夫です!!そ、それよりどうしたんですか?観月さん」
観月が彩のトレーニングを見に来る事は別段珍しい事では無いが、今日は物思いに耽っていた時に来られたので完全に不意を付かれた彩は顔を赤らめて焦っている。
「お茶が入りましたので一息入れませんか?今日は桜餅も出来ていますので」
「え?本当ですか!?」
「はい。少々作り過ぎてしまったのでよろしければ沢山食べて下さい」
「はい、ありがとうございます!!」
観月の言葉を聞くや否や彩は弾けるような笑みを浮かべて観月と共に山を下りていった。
※
「いっただきまーす……あむっ………むっ」
本殿の縁側に座り込んだ彩は小皿に乗せられた桜餅を一つ掴むと巻いてあった桜の葉を剥がして桜餅を一口頬張る。
見た所市販している物の類ではなく、どうやら観月の手製らしい。
「お味の方はどうですか?」 縁側に正座して手に持っていた急須を傾け、二つの湯呑み茶碗にゆっくりと緑茶を注ぎながら観月が聞く。
「すっごく美味しいです!」 餅を喉に通してから彩は幸せに満ちた顔で観月に答えた。
「それは良かったです。こうやって自分が作った物を出せるのは彩さん位しかいませんからね」
湯呑み茶碗に注いだ緑茶を手に持ち、観月は彩にそっと差し出す。
「………フフフ」
途端に観月は白い上衣の袖で口元を隠しながら微笑した。
普通の女であれば何かを企てているような笑みになるのだが、観月がやると全くと言っていい程嫌味にならない。
「ほぇ?どうしたんですか?」
「いえ、失礼しました。彩さんを見ていると昔の絵里さんを思い出してつい懐かしくなってしまいました………あの頃の絵里さんは
とにかく強くなりたいって言って必死に裏山で訓練したり奉仕作業中の私を強引に引っ張り出して手合わせを申し込んできましたから」
「へぇ………お母さんにもそんな時があったんですか」
「えぇ、それで絵里さんには随分振り回されましたから。今でこそ笑い話として語れますが昔はよく絵里さんとそれで衝突したものです」
そういって観月は過去の日々を振り返っていた。
「私も歳を取りましたね………こうやって絵里さんのご息女に昔話を語るんですから」
「うーん……でも観月さん全然歳を取ってるように見えないですよ」
彩の言葉通り、観月はとても三十を越えた女には見えなかった。外見的に見れば十代後半と偽っても通用しそうな容貌である。
彩は幼い時からずっと観月を見てきたが、観月はその時から全くと言っていい程老けていないのだ。
「外見はそう見えるかもしれません。ですが身体の方は正直でして若い時のように無茶は出来なくなっていますよ」
再び袖で口元を隠しながら観月は微笑んだ。
「そうなんですか……あ、そうだ観月さん」
桜餅を噛み締めながら彩は何かを思い出したように口を開いた。
「はい、何でしょうか?」
「今日も組手お願い出来ますか?」
「えぇ、私で良ければお相手します」
「やったぁ!!じゃ、早速お願いします!!」
食べ掛けていた桜餅を一気に口の中に入れて緑茶を喉に流し込むと彩は立ち上がって境内の中央へと掛けていった。
観月もまた、草履を履いて彩に続くようにして境内の中央へと歩いていく。
「よろしくお願いします!!」
観月と対峙した彩は帽子を被り直して上半身を九十度まで折り、深々と一礼する。
「はい、お手柔らかにお願いします」
元気に満ちた彩の礼に対して観月は相変わらずの慈愛に満ちた笑みを浮かべながら静かに礼をした。
「……………」
「……………」
互いに礼の動作を終えると先程までの和やかな雰囲気とは一変して二人とも表情を引き締める。
それまで縁側に座り込み、茶を呑みながら談笑を交わしていたとは思えない程二人の間には緊迫した空気が漂っていた。
とはいえ別段二人にとってこれは珍しい事ではない。彩はトレーニングの後、観月の手が空いていればいつも手合わせの相手を頼んでいる。
幼い時は専ら絵里と観月の組手を見てきたが、今では自分が観月と手合わせを願い出ているのだ。
彩はスッと半身になって軽く握った両拳でガードを固め、構えを取る。
対する観月は左足を半歩前に出したいわゆる自然体に構えて左右の手を手刀にし、胸の前に出していた。―――倭京院流古武術。
これが観月の格闘スタイルである。
元来は倭京院の神女が薊を倒し、封じる為に生み出した武術としてこの倭京院神社に古くから伝えられてきたものであり、本来で
あれば弓を用いて闘う武術なのだが、薊を封印してからは武器を用いる事も無くなり、時代の流れと共に
倭京院流古武術は様式化されて現在では神楽舞いの時に用いられる舞踊となっている。
だがそれでも倭京院の神女は代々より実戦性に富んだ技を受け継いできた。
観月もその技を継承した一人であり、彩同様に『氣術』を使う事も出来る。
倭京院流古武術では投・極・打の攻撃方法が存在する総合武術であり、当て身の際には拳を用いる事は無く、主には手刀、掌打を使う。
また、空手やテコンドーで見られるような派手な回し蹴りや顔面に放つような高い蹴りを用いる事も無い。
蹴りを使うとすれば精々下段、中段への前蹴り、足払い、足刀蹴り位である。
理由として、巫女が穿く緋袴というのは裾が長い為、蹴りを放つには適してはおらず、そして主な履き物が草履である為、爪先を用いる蹴りは怪我をしやすいのである。
また、その格好では蹴りを放つには脚に充分な力が伝わらないため倭京院流には回し蹴りの類は存在しないのだ。
「…………」
膝でリズムを取りながら彩はジリジリと前に進みながら観月との間合いを計る。スニーカーの靴底と石畳が擦れる音が二人の耳に響いた。
「…………」
観月は彩の動きに合わせて彩の間合いを外している。微動であるが、彩が前進するのに対して後方、或いは斜め後ろへと下がっている。
白昼の境内で静かに構える巫女とアップテンポのリズムに合わせて小刻みに身体を動かせている少女。
端から見れば余りにも奇妙な光景ではあるが、恐らく今二人の間には誰も割って入る事は出来ない。
それ程二人の間には張り詰めた空気が流れているのだ。
「――――ッ!!やぁぁぁっ!!」
ほんの一呼吸の間。残像を残しながら石畳を蹴って彩は駆け出し、観月に接近した。
二人の距離が五センチにまで縮まってから彩は観月の顔面に狙いを定めて縦拳を放つ。
プロボクサーをも凌ぐ程に素早く、尚且つ刃のように鋭いジャブである。
「―――ッ!!」
観月はその拳を目でしっかり捉えながら首を僅かに傾けてジャブを避けた。
俊敏という言葉すら凌駕する彩のスピードも充分賞讚に値するが、それを目で捉えて紙一重で避けた観月の動体視力も賛辞を述べるには充分過ぎるものだった。
「せぇいっ!!」
ジャブを放った左腕を引き戻してから今度は右腕でフックを打つ。だが、素人がやるような大振りなフックではなく腰の回転を活かして腕をコンパクトに振るショートフックである。
「フッ!!」
およそ格闘、武術とは無縁としか見えないたおやかな手で観月は彩の鉤状に曲げた肘の内側に手刀を打ち込む。
ここには神経が集中している為、叩かれると痺れるような痛みが走る。
「っぁう!!」
鋭い痛みに襲われた彩は僅かに顔をしかめる。そして次の瞬間には観月の逆の手が自分の胸目掛けて真っ直ぐに伸びていた。
「あぐっ!!……ゲホッ、ゲホッ」
ドンッ、という衝撃音。観月が彩の胸に右掌打の一撃を放っていたのだ。
上衣の袖口から覗くその細腕からは想像も出来ないような重い掌打を胸に受けた衝撃で彩の肺から酸素が絞り出された為、大きく咳き込む。
胸を手で抑えながら追撃を受けない為の処置として一旦彩はバックステップで後退するが、観月が彩を追い掛けるように身を低くして前進してきた。
地を駆けるに向いているとはいえない草履を穿いていながらもまるで氷上を滑っているかのように滑らかな足捌きである。
「ギアブレードッ!!」
眼前に差し迫ってきた観月に対して彩は後方宙返りの容量で身体を回転させて弧を描きながら観月の顎を蹴りあげる。
彩の身体がその技名の通り、歯車のように回転した。
「うぐっ!?」
彩の爪先が観月の顎を捉え、緋袴を穿いた巫女は大きくのけぞりながら後ずさる。
「てやぁぁぁっ!!」
後方宙返りを終えて地に着地すると彩は即座に体勢を立て直し、飛び跳ねるようにステップインしてからサイドキックを放った。
「――――ッ!」
矢のように一直線に襲い掛ってきたサイドキックを観月は彩の足首辺りを掌で打ち、彩の蹴りを捌く。
観月の鳩尾に刺さると思われていた脚は大きく右に逸れて彩は身体のバランスを崩した。
「――――やぁぁっ!!」
だが、彩はその捌きを予測していたかのように右に振られた脚の勢いを殺さず、寧ろその勢いを利用して身体をコマのように回転
させてから軸足となっている左足のバネを活かして
跳躍し、観月の側頭部へと飛び後ろ回し蹴りを放つ。 スカジャンの背中にあしらわれた女王蜂も彩の動きに合わせるかのように空を舞っていた。
「隙が大きすぎますよ!!」 そう叫びながら観月は襲い掛って来た後ろ回し蹴りを細腕に力を込めてガードし、彩の左足が着地したのを見計らってしゃがみ、
足払いで彩の足を薙ぎ払う。
「うわっ!!」
片足で着地した為、身体のバランスが不安定だった所に足払いを受けた彩は身体の支えを失い、見事にひっくり返って転倒した。
「痛ったぁ〜……」
苦悶の表情を浮かべながらも彩は寝そべった状態からヘッドスプリングで飛び跳ねて起き上がる。
「………どうしました?もう終わりですか?」
先程までの柔らかな物腰とは全く逆の冷たい声と相手を突き刺すような視線。 まるで倭京院観月という女性の中から別の人格が生み出されて姿を表したようであった。
「まだまだぁ!!」
こちらもまた、普段の子供っぽい彩からは想像も出来ないような力強く、凛とした声を張り上げる。
目に掛る淡い茶髪の前髪を指で払い、アポロキャップを目深に被って再び半身に構え直した。
「はぁぁぁぁっ!!」
境内に彩の気合いの声が響くと同時に再度彩は間合いを詰めて観月の腹部にボディーブローを打ち込んだ。位置的に言えば丁度胃袋の辺りである。
「ぐっ…………!?」
小さな金槌で打たれたような衝撃を臓府に受けた観月は綺麗な眉間に皺を寄せてうめく。
「せぇいっ!!」
観月の動きが止まった事を見逃さなかった彩は続け様に観月の顔面にストレートを打ち込もうと握った拳を真っ直ぐに突く。
「……………」
だが観月はその眼前に来たストレートに対し、静かに左の掌をかざして受け止め、そのまま右の掌で彩の手首を掴むと瞬時に逆方向に捻った。
「うわっ………!?」
慌てて彩は腕を引いて脱出しようと試みるが時既に遅し。
瞬時に腕関節を極められて彩の腕は観月の手によって見事に逆手に捻られていた。
「イタタタタッ!!」
余りの激痛に彩は悲鳴を挙げて二つに結んだお下げを振り乱しながら身悶える。
激痛に苛まれる彩を尻目に観月は腕をしっかりと極めたまま再び彩の足を払おうとして静かに足を動かした。
「もう……痛いってば!!」 片目を瞑って痛みを訴えながら彩は脚を僅かに上げて『タメ』を作り、一気に解き放つと無造作に観月の脛を踵で蹴り飛ばす。
「うぐっ………!?」
裾の長い袴を穿いている為脛の位置はしっかりと分からないが、それでも蹴った角度が良かったのか彩の踵は観月の脛をしっかりと蹴っており、急所を蹴られた観月はその痛みで掴んでいた彩の腕を放してしまった。
関節技から何とか逃れた彩は再び後方に跳んで観月との距離を取る。
そしてゆっくりと深呼吸して精神を集中してから彩は対峙している観月を静かに見据えた。
「氣術発動、妖波!!」
そう叫ぶと彩の身体が光に包まれ、周囲の空気が熱を帯びて温度が急速に上昇して行く。
「行くよ、観月さん!!ラウズウェイブ!!!」
片膝を付いてしゃがみ、石畳の上に氣を纏った拳を叩き付けるとそこから黄金色の氣の荒波が生じ、石畳の上を一直線に走っていく。
「―――ッ!!!」
光の速さで差し迫ってきた衝撃波を観月はとっさの判断で横に飛び、ラウズウェイブを間一髪の所で避けた。
観月という目標を失ったラウズウェイブはそのまま真っ直ぐ走っていき、境内にある狛犬に凄まじい破壊音を立てて衝突し、消滅する。
「外した!?」
ラウズウェイブを放った状態から硬直していた彩は慌てて体勢を立て直すが、観月は既に自分の目の前にまで来ていた。
「くぅ………!?」
焦りが生じた彩は再び観月の顔目掛けて右のストレートを放つ。
「はっ!!」
観月はそのストレートに対して双手を交差させて山形――――つまり上段に受けてそのまま受け止めた右腕を右手で肘、左手で手首を捉えつつ一歩後ろに右足を引き、彩の体勢を前方に崩した。
「うわわっ!!」
体勢を崩されて前のめりになった彩は起き直ろうとするが、観月はその力を利用して両手を振り被りつつ彩の右脇を内から外へとくぐり抜けて転身すると彩の肘関節が先程と同じように逆に捻られて関節が極まる。
そして観月はそのままの状態から急激に身を沈め、左膝を付いて彩を投げ放った。
「うわぁっ!?」
鮮やかに弧を描き、凄まじい勢いで彩の小柄な身体は数秒間空中に放り出された後、ドサッという音を立てて背中から地面に落ちていった。
倭京院流、技の一。『雷公(いかずち)』。
古流柔術でも見られる極めから相手を投げ飛ばす最もポピュラーな技であり、倭京院流では初歩的な技の一つである。
「う……うぅ」
何とか起き上がろうとするが、先程の足払いで転倒した時とは違って凄まじい衝撃を受けた為、身体が言う事を聞かず動いてはくれない。
「う、うぅ〜ん………」
何とか起き上がろうと四肢に力を入れる彩だが、そこでふと喉元に『何か』を押し当てられている事に気付いた。
双牟を開けて見てみるとそこには自分の近くまで接近してきた観月が喉元にほっそりとして長い指先を押し付けており、彩が起き上がろうするのを貫手で抑えているのだ。
つまりはいつでもトドメを刺せるという状態である。
「え、えっと……その………参りました」
将棋で言えば自分は詰み、チェスで言えば自分はチェックメイトの状態であると悟った彩はその可愛いらしい唇から降参の意を示す言葉を漏らした。
彩から参ったの言葉を聞いた観月はゆっくりとした動作で貫手を彩の喉元から離し、残心すると両足を揃えて両手を臍の下辺りに重ねると静かに会釈した。
「うぅ……やっぱり強いなぁ観月さんは」
後頭部をさすりながら彩は歩み寄ってきた観月の手を借りて起き上がる。
これで彩は観月との闘いのみ連敗記録を更新し続ける事になってしまった。
彩が観月との手合わせの時はまだ一回も勝った事が無い。
「いえ、私もまだまだ未熟です。それよりも申し訳ありません、年甲斐もなくムキになってしまって……」 彩を助け起こしながら観月は筆で掃いたような形の良い眉をハの字にして謝罪した。
「大丈夫ですよ。ボクこれ位なら平気ですから!………アイタタタタ」
謝る観月に対して心配を掛けないようにぐっと力ごぶを作る真似事をしてみるが、すぐに腰を抑えて痛がった。どうやら投げられた際に腰を強打したらしい。
「今日の組手はここまでにしましょう。ありがとうございました」
彩が立ち上がってから観月は再び丁寧に一礼し、組手前と同じように目を細めて穏やかな笑みを彩に向ける。
「はい、ありがとうございました!」
彩もまた、掌に付いた砂を払い落としてから観月に倣い礼をした。
※
「観月さん………」
「はい?」
組手を終えた二人はゆっくりと息を整えてから境内の中央で向かい合っていた。既に空は夕日で赤く染まり、宵闇が迫って来ている。
「ボク……強くなってますか?」
やや間を置いて彩は口を開いた。本来であれば一番母に聞きたかった疑問を彩は観月にぶつけてみる。いつも笑みを絶やさない彩とは違う、真剣な顔付きであった。
「えぇ。まだ荒削りな所はありますが、日に日に強さを増しているのは分かります」
「じ、じゃあボク、お母さんに近付けていますか!?」
「…………」
そこで観月は彩から視線を外し、遠くを見るような目で首を斜め上に動かして夕暮れの空を見つめた。
暁の空にはカラスが飛び交っている。
「………絵里さんは、紛れも無く天才です。私ですら妬みの感情を持つに」
「…………」
「そしてあの人は……彩さんと同じ年の頃には幾太もの死線をくぐり抜けて強さを積み上げてきましたから……絵里さんの闘いを間近で見てきた私には正直、
彩さんはまだ絵里さんの境地にまで辿り着いているとは言えません」
「そう………ですか」
観月であればこそ、優しい物言いではあるがそれは自分がまだ母に近付けてすらいないという事実。
彩は肩を落としながら突き付けられた現実に落胆した。
「ですが、今までのように鍛練を欠かさずにいればきっと絵里さんの所に辿り着けると私は信じています」
「本当ですか!?」
「はい。私は陰ながら応援していますので頑張って下さい」
「はいっ!!」
清らかな笑みと激励の言葉に彩は元気を取り戻し、笑顔になった。
「ですが………」
「ふぇ?」
「出来ればその………境内で氣術を使うのは遠慮して頂きたいんですが………」 そう言って観月はチラッと後ろを振り返る。
視線の先にはラウズウェイブの直撃を受けた狛犬が原型を留めないまでに粉々になり、石の瓦礫と化していた。
「………あぁっーーー!?ご、ごめんなさいっ!!!!」
変わり果てた狛犬の姿を見るや否や彩は奇妙な声を上げ、太股に帽子のツバが付くのではないかと思われる位頭を下げて陳謝した。「いえ、これから気を付けて頂ければ良いんです。それに昔の損害に比べればまだ良い方です」
物凄い勢いで頭を下げる彩に対して観月は笑顔を取り繕う。
「え?もっと酷い被害にあった事あるんですか?」
「えぇ……まぁ」
どこか歯切れの悪い言葉を呟きながら観月は相変わらず頬に手を当てて静かに呟いた。
「昔……絵里さんのラウズウェイブで本殿が半壊した事ありましたから……それに比べれば」
「……………」
「その後、私は当時宮司を務めていた父に八時間たっぷりと絞られました」
「……………」
「あの時は………本当に絵里さんとの友情が崩れそうになって危なかったです」
「あ、あぅ………お母さんが御迷惑お掛けして本当にごめんなさい」
今度は自分の過ちではなく、母がやった所業に対して彩は再び観月に謝罪した。心なしか少し泣きそうになっている。
「そ、その件は彩さんに非はありませんのでどうか気にしないで下さい!」
目の前で必死に謝る彩を見て流石に不憫に思った観月は慌ててフォローを入れた。
「そ、それより彩さん。そろそろお帰りになった方がいいのでは?もう夕食時ですし…………」
気まずい雰囲気の中、観月は懐にしまっていた懐中時計を見て話題を振る。
「あぁっ!そろそろ家に帰って御飯作らないとお父さんが餓死しちゃう!!」
クルッと回れ右をし、パタパタと軽快な音を立てながら石段の前まで走っていき、そこで彩は思い出したように観月の方を振り返った。
「観月さーん!今日はありがとうございましたーー!!」
「はい、またいつでもいらして下さい」
大きく手を振りながら溢れんばかり元気を発揮している彩に観月は小さく手を振って見送る。
別れの挨拶を終えた彩はトレーニングや組手の疲れすら微塵も見せずに石段を下っていった。
「…………痛ぅっ!!まさか彩さんの氣術があそこまで増幅しているなんて……」
彩が帰った後、夕暮れ時の境内で一人になった観月は額に脂汗を滲ませながら右腕を抑えて顔を苦痛に歪めていた。
よく見ると観月の右腕は指先から肘まで火傷を負ったように赤く腫れ上がっている。
先程の組手の時、ラウズウェイブを完全に避けたと思っていた観月はその実、避けているようで手の甲に直撃を受けていたのだ。
「絵里さん……貴女が思った通り、やはり彩さんも徐々に覚醒し始めているようです……一族の力に」
かつて親友の契りを交した女性の名を呟きながら観月は茜色の空を仰ぐ。
「やはり彩さんも………絵里さん同様に一族の宿命からは逃れられないようですね」
痛みが走る手で袴を握り締めながら観月は顔を伏せてそう呟く。
「とりあえずは……この件はまだ彩さんには伝えないでおいた方が良いでしょう………それより」
痛みの残る右の手の甲を抑えながらフゥッと一つ溜め息を付き、観月は彩の手によって破壊され、粉々になった狛犬の残骸を見つめる。
「お片付け……しませんとね」
本殿から少し離れた所にある物置に歩いていった観月は一輪車を持ち出し、その一輪車に石ころと化した狛犬を片付け始めた。
【続く】
今日はここまで。
………いい加減携帯で書くのに限界感じてきた。
ちょwwwwwwwwww彩のお母さんwwwwwwwwwww
なに教えてんだよwwwww
過去ログ見てみたんだけど皆キャットファイトよりも本格格闘小説書いてる人多いね。どうやったらこういう風に格闘描写書けるようになるんだろう?
>>88>>89 ○○とかはやめて欲しいとか○○の方が良かったとかどんだけ作者に要望押し付けてんだよ。ウゼェ
嫌ならスルーすりゃいい話だろ。
>>102 餓狼伝とかに影響受けてるから書けるんじゃね?
知らんけど
>>35の上から目線も充分むかつく。
文章力とか指摘するならまだしも内容にケチ付けんならテメェが書けよ。偉そうに批判すんならお前はちゃんとしたSS書けんだよな?
まぁ一番むかつくのは
>>35のレスをスルーもせずにいちいち真に受けて書き直すとかほざいてる作者だな。亜佐倉死ね。氏ねじゃなくて死ね。
自分の書いたもん無かった事にするとか黒歴史とか平然と言える奴が神経が分からねぇ
お前、時間軸が二ヵ月半ズレてるよ
てか
>>104の物凄い上から目線に端から聞く俺こそ涙目www
どしたん?この子…
えー………その件に関して言い訳はしません
途中で放り投げてしまって申し訳無いです
ただ今回は前作のように行き当たりばったりではなく、今回は一つ一つ段階を踏んでやっていますので前作のようにただ突っ走らせる訳ではなく、じっくりと自分の中で彩を育てていきたいと思っています
それと氣の飛び道具に関しては賛否あると思いますが物語に一番関わってくるのがこの『氣術』なのでどうか長い目で見てやって下さい
つまらないと言われないような作品に仕上げるよう努力します
頑張れよー
もうちょっと流行ってほしい期待保守
過去スレ見てて特に読み手の感想も無いのに投下を続けていくここの職人は本当に偉大だと思った
保守しないと落ちそう……………
1スレ目が読めないんだけど保管庫ってありますか?
困ったとき、オレならググってみる
>>113 ぐぐったら読めた
だが453レスめまでしか読めない
保管庫あるの?
116 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 20:54:26 ID:tmp61Uo6
地下女スキーはどこいったんだ?
初期の柔道部の話からずっと好きなんだが
あ、
>>116 サーセン…再開はもうちょっと待ってください(汗)
気迫の込もった声と青畳に身体を打ち付ける音が断絶する事なく室内に響き渡っていた。
日も沈み掛け、外の風は冷気を孕んで辺りの大気を冷ややかなものにしているのにそこだけはまるで蒸し風呂のように熱気が立ち込め、室内の空気を焼き尽している。
明野宮城東高校の一角にある小さな武道場。そこは体育の授業等で使用するアリーナタイプの体育館とは違って天井が低く、壁はニスを塗った檜の板が貼られていて床には三十畳程の青畳が敷き詰められた簡素な構造の建物である。
その青畳の上では女子柔道部の少女達が学年や体重差に関係なく対峙し、互いに袖や襟を掴んで組打の稽古を行っていた。
刺子織りの白い柔道着に身を包み、帯をしっかりと絞めた少女達は頬や額に流れ落ちる汗も構う事なく、しゃにむにと言った様子で練習に励んでいる。
女子柔道部は来週に控えた試合の最終調整の為、休日を返上して部活に来ているのだ。
明野宮城東高校の女子柔道部は市内でも万年弱小と言われており、団体戦や個人戦の大会でもおよそ成績は芳しくない。
だが、それでも少女達はせっかくの休みを返上されて部活にスケジュールを埋められた事に対して文句一つも言わずにただひたすら部活動に打ち込んでいた。部員達の気合いは時間が経つ毎に連鎖反応を引き起こして彼女達を指導している顧問の声にも自然と熱が入る。
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その中でも一際気合いの入った少女、宮城真緒(みやぎ まお)は対峙していた部員の少女を豪快な払い腰で投げ飛ばした。
「うわっ!!」
右手で左袖を掴まれ、左手で背中を掴まれた部員の少女は上半身を右に引き寄せられてから右の内股を脚で払われて一気に投げ飛ばされる。
腰を大きく突き上げる様がまるで海老が跳ねているかのように見える事から海老跳ねという異名を持つこの技であるが、真緒の払い腰はその異名の通りにダイナミックで一切の躊躇が無い見事なものだった。
「次、お願いします!!」
先程の気合いに劣らない程良く通る声を響かせ、あどけない容貌に不釣り合いな凛々しい眉を逆立てた真緒は柔道着の襟を整え、帯を絞め直してから両手を高々と挙げて自然体に構える。
真緒に投げ飛ばされた少女が起き上がると同時にそそくさと壁際に移動して次の乱取りの邪魔にならないよう安座に座り込むと、次の乱取りの相手として控えていた部員の少女がゆっくりと真緒の前まで歩を進めた。
「おっ……お願いします!!」
真緒の凄まじい気迫に気押されてやや及び腰になりながらも部員の少女は真緒と同じように自然体に構えると真緒の袖と襟を掴み、組み合いを始める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
真緒もまた、少女の袖と襟を掴むと同時に今度は部員の体勢を崩すと同時な自らの身体を転身させて少女を背負い込んでから投げ飛ばした。
お手本の背負い投げと比べても何ら遜色が無いほどに真緒の背負い投げは基本に忠実で、他の部員達の注目を集めるには十分過ぎるものだった。
「うぅっ!?」
投げ飛ばされた少女はとっさに受け身を取って青畳に身体の全てを委ねるが、真緒は倒れ込んだ少女を見るや否や直ぐ様自分も同じように倒れ込み、少女の左腕を両手で掴んで腕ひしぎ十字固めの体勢に入った。
投げから極めに入る一連の動作は驚く程に速く、一切無駄な動きが無い。
「う、うぐぐぐぐぐ………」 肘関節を伸ばされ、真緒によって完璧に身体を制された少女は自由の利く右手で青畳を叩いた。
「それまで!!宮城、ストップ!!」
部員達の乱取り稽古を静観していた顧問が終局を告げると真緒は掴んでいた左腕を放して立ち上がる。
「ありがとうございました!!」
ふぅっと一つ息を吐き、呼吸と上衣の乱れを整えてから相変わらず気合いの入った声を発して深々と頭を下げた。
それに対し、先程腕ひしぎを極められていた少女は肘関節を抑えながら顔を苦痛に歪めている。
「うぅ………宮城さん。お願いだから少しは手加減してよ……私まだ入部して一ヶ月経ってないんだから」
「あ、あぁ……ごめんなさいッス!!自分つい熱くなっちゃって………本当に申し訳無いッス!!」
先程までの凛とした顔付きが嘘のように真緒は眉をハの字にして情けない声を漏らすと心底申し訳無さそうな態度で部員の少女に何度も頭を下げた。
墨染の反物のように黒一色の髪を肩まで切り揃えて右側の上部だけを玉のアクセサリーが付いたゴムで結んだ髪の束が頭を下げる度に揺れ動く。
柔道着は他の部員達と同じ柔道部から支給されたものだが、腰に巻いている黒帯の端には「講道館 宮城真緒 四段」という文字が金色の刺繍で刻まれていた。
この少女が実力者である事を示す紛れもない証となるには十分な代物となっている。
真緒は今年四月に明野宮城東高校に入学し、一にも二にもなく柔道部に入部した少女である。
幼い時からずっと柔道をやっており、彼女にとって柔道は人生の三分の一を占める程大切なものだった。 身長は小柄な部類に入るものの、厚手の柔道着の上からでも分かる位に胸は小玉スイカ程の大きさにまで発育している。
「でも宮城さんやっぱり強いね。小さい時からずっと柔道やってきただけの事はあるよ」
腕の痛みが取れた少女は真緒の黒帯を見つめてそう呟く。
「そんな事無いッス。自分はまだまだ未熟ッスから」 屈託の無い笑みを見せながら額の汗を柔道着の袖で拭う真緒は少女の呟きに対して謙遜した態度を見せるその様は全くといって良い程嫌味にならない。
「よし、今日の練習はこれまで!!」
顧問を務める女教師がそう告げると真緒を含む部員達が一斉に組打を辞めて礼をする。
「皆、今日はお疲れ様。いよいよ来週には試合だけど各自体調を崩さないようしっかり健康管理するんだよ!」
「はいっ!!」
乱取りを終えた部員達が横一列に一定の感覚を開けて正座し、自分達の前で同じように正座している顧問の声に応えた。
「特に宮城、あんたはね」
「へ?自分ッスか?」
いきなり名指しで呼ばれた真緒はきょとんとした顔で顧問を見つめる。
「また鉄下駄穿いて市街地走り回るような事するんじゃないよ」
「えぇーーーーっ!!先生アレ見てたんスか!?」
「あんな人通りの多い所で柔道着着て鉄下駄穿いてる馬鹿見りゃ誰だって気付くわよ」
「あ、あぅぅ………秘密特訓のつもりがバレバレだったッス」
正座したままがっくりと頭を垂れてうなだれた真緒を見て部員達の笑い声が沸き上がる。
「練習熱心なのは認めるけどオーバーワークは禁物だからね。はい!じゃあ今日は解散!!」
「ありがとうございました!!」
全ての練習が終わり、解放された少女達は武道場の掃除をしてから武道場に隣接された更衣室へと入っていった。
※
「ねぇ帰りどこ寄ってく?」「21(トゥエンティーワン)のアイスクリーム食べに行こうよ!」
「えぇーでもあそこアイスのボリューム多いよ」
「大丈夫!食べれなくなったら私食べてあげるから」
「何言ってんのよ、そんなガツガツ食べたらアンタ軽量級ギリギリなのにオーバーしちゃうわよ」
「大丈夫よ、私太らない体質から」
「もう、調子良いんだから」 ロッカールームが立ち並ぶ更衣室の中で少女達は着ていた柔道着を脱ぎながら談笑を交していた。
彼女達もまだまだ遊びたい盛りの為、専らの話題は帰りにどこへ遊びに行くかというのが大半を占めている。
「それじゃあ皆さん、お疲れ様でしたッス!!」
その中で真緒は一人、着替えもしないで柔道着のままスポーツバッグを小脇に抱えて着替え途中の少女達に頭を下げて更衣室を飛び出していった。
「ねぇ………宮城さん着替えてなかったよね?」
「また一人で特訓するんじゃないの?」
「え!?でもさっき先生に練習し過ぎるなって怒られたばっかじゃ……」
「仕方無いでしょう。だって宮城さん熱血柔道バカだもん。常に柔道やってないと落ち着かないって感じだし」
「でも………大丈夫かな?オーバーワークで怪我しなきゃいいけど」
「その事本人に聞いたら『自分は身体が頑丈なだけが取り柄だから大丈夫ッス!』って答えてたよ」
「そ、そうなんだ………でも宮城さん凄く強いから今度の大会優勝しちゃうかもね」
「アレでもうちょっと他の事に目向けてくれれば付き合いやすくなるんだけどねぇ………ま、あの熱血柔道バカには無理だろうけど」
「その言い方酷くない?」
「いいの、いいの。一応誉めてるんだから」
「誉め言葉に聞こえないよ、それ」
口々に真緒の事を話題にしながら少女達は学校指定のジャージに着替えてスポーツバッグのストラップを肩に掛けると更衣室を出て武道場を後にした。
※
日もすっかり沈み、辺りが薄暗く街灯がアスファルトを照らしていた。
「先生には駄目って言われたけど…………」
校門の前に柔道着姿で立ち尽くしていた真緒は抱えていたスポーツバッグのファスナーを開けてゴソゴソと漁ってあるものを取り出す。
「やっぱりヘトヘトになるまで動かないと気が済まないッス!」
右手に持ったあるものを舗装されたアスファルトに落とすとゴンッという鈍く、重い音が響く。
そしてその場で穿いていた学校指定のグランドシューズを脱いで裸足になった後、グランドシューズをスポーツバッグの中に押し込む。
アスファルトに落としたそれは一見すると只の下駄のように見えるが、街灯に照らされて鈍い光沢を誇っており、材質は明らかに木材では無いことを物語っている。
あるものの正体、それは真緒が中学生の時からずっと愛用していた鉄下駄だった。
「それに特訓でヘトヘトになればお母さんの作ってくれる今日のご飯も美味しく食べられて夜もぐっすり眠れるはずッス!」
聞くものが一斉に首を傾げたくなるような自論を展開させながら真緒は足の指に鼻緒を通して鉄下駄を履く。
「よーし!目指すは十キロ!そしてその後は腕立て伏せ一〇〇回に指立て伏せ
五〇回!その後に砂袋抱えてのスクワット三〇〇回!!宮城真緒、武道家を志すものとして自分に妥協はしないッス!!」
握った拳を天に突き上げてポーズを決めてから真緒は早速駆け出していった。鉄下駄を履いたせいで真緒が走る度に鉄の下駄底がアスファルトを叩くせいか、凄まじい轟音が辺りに響き渡る。
「一、二、三、四、五、六、七、八!!!」
鉄下駄の轟音に劣らない程の掛け声を繰り返しながら真緒は夜の明野宮市を走っていった。
今日はここまで。
すいません最近スランプになっちまいましたorz
>>123 自分の好きな漫画やラノベ、ゲーム、アニメなんかをたっぷり摂取すれば自然とテンションは高くなるよ
ここに作品投下するのは義務でも仕事でもないんだからゆっくりやれば良いよ
保守
126 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 16:01:26 ID:6hXZ4Zsf
始めまして、自分もこういうジャンルが好きなので、書かせてもらいます。
ギュッ、手にはめたオープンフィンガーグローブの様子を確かめる。うん、まあこれなら何とかなりそうだ。
「ヘイ、サユリ、ジュンビOK?」サユリ、これ私のリングネーム、でっ、話し掛けてきたのがマイケル古河さん
英語の話せない私のための通訳。
あっ私本名、橘祥子って言うんだけど、仕事で格闘家をやってんの、っていっても、
K-1とかそう言うのじゃなくてまあいわゆるキャットファイト?ってやつ何だけど。
私高1まで空手やってて、知り合いにバイトとして紹介されて始めたのがキッカケ・・・・。
う、いやなこと思い出しちゃった。まあ、よくある話でしょ?で、そこで色々な試合をしてたら、
アメリカの・・・なんかTV局のえらい人が私のこと気にいちゃって、「今度こちらで試合をしてみないか?」
ってことになって、気が付いたらここにいたって分け。あ、もちろん旅費は向こう持ちだから安心して。
でもさあ、試合場所ってラスベガスなんだよ、びっくり。
しかも何か以下にも金持ちですって感じのお客さんばっかり、しかも女の人とかいるし。
きっと普段悪いこととかやったり、ワイン飲みながら膝の上とかに猫とか乗っけてるんだよ、いいな〜。
「ヘイ、サユリ、今日のあいて、アマレスチャンプよ」うそ、「しかも英国のお嬢様ね」・・・・あっ、
もしかして前に新聞に出てた、すごい強いアマレスの金メダリストの?「そね」そうネジャナイよ、そねじゃ。
美人で家柄もよく、しかも強いって・・・そんな子が何でこんな事してるんだろ?
「きっと、ナナフシギネ」・・・意味わかんないし。「それより試合始まるよ」
あ、いけない、私は古賀さんに言われ慌ててアリーナへと足を運んだ。
私が向かったのはローマのこう、円形格闘技場って言うのかな、そんな感じの場所だった
大きさはあんまり広くなく、普通のプロレスとかのリングよりも若干狭い感じだった。私はそこの入場ゲートの所で、
出番が来るのを待ってる。「ヘイ、サユリ、きんちょうしてナイカイ?」そう言うと、なんと突然古賀さんは私の胸を鷲掴みにして来た!
な、何してるんだ、おっさん!!あ、そう、そう、私の今の格好、丈が少し短い赤のチューブトップに、スッパツ、
何か少し動くと色々見えそう、そんなリングコスチューム。って、説明してる間も、おっさんの手は揉みっ放し、
止めっていてるでしょ!「サユリ、イツモドウリイクね」こんなシチュエーションでイクとか言うな、イカねえよ!
まあ、いつも道理の試合で良いんならわけないけど・・・とりあえずおっさんに一発エルボーを叩き込んだ頃、リングからコールが聞こえた。
半分ぐらい何言ってるのか解らないけど、大きく名前をコールされ私は片手を上げながら入場した。
どうやら日本人は珍しいみたい、歓声が上がる。そして私がリングというか、アリーナの真中で声援にこたえてると、
相手の娘のコールが始まった。やっぱり半分以上わかんない・・・。でも最後の「・・・ヘレナ・アンダーソン!!」は、私でもわかった。
そして激しい歓声が私のときよりも巻き起こる。出てきた子はやっぱり・・・綺麗・・・。すらりとした手足、綺麗な金髪、ブルーの瞳。
そんな彼女は水色のビキニを身に付けてる。これがまた肌の色とかとよく合う、ってかちょっとむかつく。
何だこの「僕の考えたパーフェクト超人」
キンニク星に帰れ。
そんなこと考えてると、じっと私のことを睨みつけて来てることに気が付く。
くそ、美人だからって舐めんな!この金髪め!!
私も負けずに睨み返してると、向こうはぷいっと目をそらした。
ふふん、勝ったな。
「でも胸の大きさは互角だよ・・・・」うわ、おっさん!?びっくりした。
いいえ、断然形では勝ってます〜。「でもやわらかさでは向こうのが上かもね」
うっ、まあ確かに私のほうがツンっと張ってて、形はいいけど、見た感じあのこの方が、柔かそう。
って何言わすんだこのおっさん。
ヘレナは最初に私にがん付けしたあとは、向こうを向いたまま一人でストレッチとかしてる。
そういえば私より年下みたいだけど幾つなんだろう。
そんなことを考えてると。セコンドが下げられる。
いよいよ試合が始まった。
私は少し緊張しながら身構えた。
空手対アマレス、って言うと聞こえは良いかもしれないけど、実際はそんな物ではない。
先ほどと同じようにヘレナが私のことを睨み付けてる。・・・私なんかしたか?この子に?
戦う前からこんなにうらまれる筋合いはないんだけど、まあいいや。
「ねえ、って、言葉通じないだろうけど、楽しく試合しようよ」私は片手を差し出す。
とっ、その瞬間だった。
急に私の視界がぐるりと回り。
天地が逆転した。
始めは何が起こったのか解らなかった。
後から考えるとよく受身が取れたもんだ。
ヘレナがすごい速さで私にタックルを決めたのだ。
やばい、来る!転ばされたあと私はとっさに次に来るであろう攻撃に対し身構えた。
だが、攻撃はこなかった、なぜかヘレナはただ私を転ばしただけで私から離れてしまった。
・・・なんで?・・・そうか!私をいつでも倒せるって言うアピールなんだ。
馬鹿にして、確かにアマレスだとあんたの方が凄いけど、でもあいにくとこれはスポーツなんかじゃない、
ましてTVなんかの格闘技とも違う、そのことを思い知らせてやる!!この金髪め!
私の心に火が灯ったのが解ったのか、ヘレナはファイティングポーズをとる、
事前に対戦相手の情報を知らせておく為か、打撃に備えたアマレスとは違う構えだ。
でも、生憎様。
私は打撃を警戒する彼女に対して掟破りの逆アマレスタックルを決めた。
「クッ」彼女の口から悔しそうな声が聞こえた。
とはいえもちろん彼女のような綺麗なものではない。
しかも倒れないように、くるりと体を返し、背中を丸め首をしっかりガードし、後ろからの攻撃に備えた、
ガードの構えを取られる。
確かに総合格闘技や、アマレスじゃあ、100点だろう。でも残念ながらここはそう言う場所じゃない。
チュプリ。
「WHAT!!?」私はヘレナの股間に指を滑り込ませ、がら空きのボトムを攻め立てる。
「NO,NOOO!!」ヘレナが叫び声をあげた。でも私はきにせずに水色のビキニの上から、ガードの薄い
下半身を攻め立てた。「・・・・!!!」ヘレナは必死で何かを抗議している。たぶん「卑怯よ!!」
とか何とか言ってるのかもしれない、でも反則なられフリーがとめに来るはず、誰もとめにこないし、
観客は大喜びしている、私はかまわず続けることにした。「AAAA!!NO・・・NONO」
ヘレナはその間苦しそうに首を振り、私の攻撃に耐えつづけてる。
そうだ、せっかくだから確かめてみよう。
モミモミ。
「AAAA!!・・・・・」私が胸を揉むとヘレナは大きく体を仰け反らせる。
・・・・ううん、同じくらいかな・・・・・。
胸を揉みながら、自分のと比較してみる、多分柔かさではほぼ互角だ。
ただしどうやら感度では、相手のほうが数倍上、呆れるぐらい感じてる。
ほらほら・・・乳首をこりこりさせると、先ほどよりも凄い悲鳴がヘレナの口から上がる。
もう顔なんて涙と涎でグチャグチャ、せっかくの美人が台無しだ。
「AAA・・・・UUUUUU・・・・」ヘレナは何とか私の指技から逃れようと、体を起こし四つん這いになる、
でもそんなことしても無駄だ、私が後ろから抱え込むようにして、お尻と胸を攻め立てると、
あっさりと、体は崩れて、お尻を突き出した体勢で倒れこんだ。
ファイト、アマレスチャンプ!私はさっきまでのお返しで意地悪く声をかける。
「UUU・・・・UUU]だがそんな掛け声も耳に届かないかのようにうめき声を上げつづける。
・・・・・そうやって、あくまでも無視し続けるなら。
こうだ!!
「AAAAAAA!!!!!!!」私はずぶりと直接彼女の中へと指を差し込んだ。
「OAAA!!!AAA!!!!」ヘレナの悲鳴がリングに響き渡る。
今気づいたけどヘレナの悲鳴結構かわいい。
苛めガイがある。
ほれホレここか?ココがええノンか?
今時ではけして誰も口にしないであろう台詞を口にしながら、私はヘレナのアソコヲガンガン攻め立てる。
もう、彼女は太ももまで、べショべショになっている。
やばい、すっごく楽しい。
と、まさにそのときだった。
「・・・うう、も、もうやめて・・・・」!?、?あれ?君、日本語はなせるの?
「・・・・あうう、おねがいです・・・もう、もうやめて」・・・・何だ日本語話せたんだ。
・・・・でもだめ!!
グリグリグリ!!!
「ああああ!!や、やめて、やめてください!!!」オリンピック金メダリストの天才少女が、
あそこに指を突っ込まれているところをみんなに見られている。
これは彼女にとっては・・・いや、別に普通の子でも、耐えられないことだろう。
だがしかし!!!
挌闘家ならリングの上では相手が親であっても手を抜くな!!!byアントニオ猪木
私は心を鬼にしてこの娘を攻め立てる。
・・・・・・・・猪木じゃなかったかも。
・・・・・・・・まあいいや。
チュポン。
心は鬼でも私だって、年頃の女の子、痛いぐらい気持ちはわかる。
私はヘレナのあすこから、指を引き抜いた。
「ああううう・・・・」がくりとヘレナはその場にくずれ落ちる。
「大変!!ドクターを呼んで!!!」私が叫ぶと、すぐに係の医者がやってくる。
そして、色々と調べ上げている。
もちろんあすこを。
「あああ、いや、いや」ヘレナは顔を手で隠しながら泣き叫ぶ。
私はそんな様子を心配そうに眺めていたがやがて・・・。
「検査の結果ヘレナ・アンダーソン選手、性器の具合良好、乳首の隆起も十分、
よって試合続行可能と判断します!!」
よし!私は小さくガッツポーズをとった。
ヘレナはもうフラフラの状態で私のほうに歩み寄る。
全裸で。
太もものあたりはぬらぬらしてるし、乳首もファイティングポーズ取りっぱなし。
目もなんかぼんやりしてる。
・・・・・なんかここまで来ると可哀想かな。
そう思った私は
チューブ・トップスを脱ぎ捨てると、観客席に放り込んだ。
観客はもちろん喜んでくれてる。
そしてボトムも脱ぐと同じように放り込んだ。
そんな私を見てヘレナは唖然としている。
「これで条件は同じよ、ヘレナ」私はびしりと指を突きつける。
そんな私の言葉に意味がわからないといったような顔をするヘレナ。
・・・・なんて察しの悪い・・・・。めんどくさいのでさっきと同じようにタックルをすると、
ヘレナは今度はあっけなく転がった。
「あ、あううう」またかわいい悲鳴・・・・。
私は体の向きを変えると仰向けに転がるヘレナの顔のところに自分のアソコを持っていった。
いわゆる体固めだ。
まあ、その方面では69とも言うがね。
そんな感じの体勢に持ってくと、察しの悪い彼女もようやく気がついたようだ。
私のあすこに指を入れると舌を使い一生懸命攻め立ててくる。
うっ、まずい!意外とこいつ上手い。
私は体の中から巻き起こる快感に耐えながら攻撃を加えることにした。
チュプ
「ああん!」
私が指を入れると、あっけなく彼女は崩れる。
ちょっと!!もっとがんばりなさいよ!!・・・・いや、今がチャンス。
クチュクチュ
「はああ、ら、らめ、あたまおかしくなりまひゅ・・・・」
足の間からかわいい悲鳴が上がる。
・・・・・もう!!せっかくチャンスを上げてるのに!!!
いや、あれよ?相手の力をすべて受けきって勝つ!!ってこと。
仕方ないな・・・・・・えい!!
むぎゅっ、私は自分のあすこをヘレナの顔にさらに押し付ける。
「うんぬうんんん・・・・」苦しそうなヘレナの息が私のあすこにかかる。
うう、やっぱすごい・・・・・。思わず私は快感のために、大きく体を仰け反らせた。
でも私だってココで負けるわけにはいかない。
ヘレナの足を大きく広げると指と舌を使い満遍なく、陰核と内部を責める。
・・・・今気づいた、ヘレナって結構毛が薄くて柔かい。
あとやっぱりパツキン。
でも今は戦いの真っ最中、そんな細かいことにかまってられない。
さっきまでジタバタ動かしてた足も諦めたのか動きが鈍くなる。
ソロソロ、フィニッシュさせちゃうかな〜。
「橘流必殺奥義!!参天攻め!!!」
私は大きな声で叫ぶと、ヘレナのあすこと、ぷっくりしたお豆、そして、後ろの穴を、
容赦なく攻め立てた。
「ひゃああああ!!!ら、らめ、らめです!!!あうううう!!!」
私は声がよく聞こえるように少し腰を浮かす。案の定、
かわいい声がアリーナに響き渡った。
「はああ!!らめ、ああううう!!」
ホレホレどうだ!!どうだ!!私はさらにバイブレーションを高める。
「あああ、ら、らめ、らめ!!!!!!あああううううう!!!!」
ジョバー!!!
うわ!
思わず私が吃驚するくらい汁気たっぷりに、彼女の下の口は、敗北を宣言した。
カンカンカン!!
激しくゴングが打ち鳴らされ、会場からは勝った私へ惜しみない拍手が巻き起こる。
ありがとうございます!!
私は笑顔で手を振ると、会場からさらに拍手が巻き起こった。
以上が私のラスベガスでの初試合、で、この後私のライバルの晶とか、チャンプトの試合の話とかあるんだけど、
ん?あれ?どうしたのへレナ?・・あっ、あの試合の後この娘、すっかり私のパートナーになったの。
・・・で?・・・え・・・ああ・・・ごめん!急用ができたからまた今度ね!
・・・・・もおう、ヘレナ思い出したら、したくなったって・・・まあいいわ、たっぷり可愛がって上げる。
終わり
以上です。下手なものですいません。
どうでしたでしょうか?
おんなのこどうしのHな戦いを書かせてもらいましたが、こう言うのより、
「女の娘どうしのガチバトルそしてSEX」とかの方が良いのでしょうか?
感想、駄目だし、お願いします。
ではまた〜。
>>131 いや良かった
GJ!だ
金髪の若きアスリートが衆人環視の中で恥辱に泣かされるの最高だ
まあ確かにもっとガチな壮絶なバトル分は欲しかったかも…
あと…投下する時は書きながらじゃなくて、まとめて一気に連続投下し切らないとコメントし辛いよ
後は問題なし!次を楽しみにさせて貰いまーす
>>131 GJ!
まさかこのスレでみさくら語見れると思わなかったww
>>6hXZ4ZsfさんGJです。明るくギャグ調な文章が読みやすく、エロバトルが新鮮だったので凄く面白かったですー
135 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 07:47:13 ID:cMwwxYYG
皆様感想ありがとうございました。
132様>ごめんなさい!!「まとめて一気に連続投下」ってやり方がわからないんですよ・・・・・。
2ちゃんねる初心者ですいません・・・・・。
だから判るまでは書き込んでから送信って言う形になちゃうと思います。
それでも良ければお付き合いのほど、宜しくお願いします。
133様>「みさくら語」これ知らなくて調べてみました。・・・・なるほど、
どっかで目にした言葉をそのまま使ってみたんですけど、そういう言語だったんですね〜。
感想アリガトデス。
亜佐倉さん>感想アリガトデス。これからもがんばりますので、亜佐倉さんもがんばってください。
で、感想の御礼ではないですが、また少し書かせてもらいます。
少しグロイかも?
136 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 08:16:26 ID:cMwwxYYG
くちゅ、くちゅ・・・・・・・。
深闇があたりを包み込み、ムシ達の唄がわずかに聞こえる。
板張りの床の上、少女二人が互いの体を求め合っていた。
姉が、妹を。
妹が、姉を。
求め合っていた。
「・・・・はぁ、んん、お、お姉さま・・・・。」妹が、姉の体を味わいながら、
姉に声をかけた。
「う、んん、ああ、ん」くぐもった姉の声がそれに答える、
妹の体中を指でかわいがりながら。
「ううう、あああん」猫のように身を震わせながら、全身でたっぷりと快楽を受けとめる。
それでも必死に大好きな姉上を味わいつくそうと、全身と、一番愛おしい場所に舌を這わせる。
「ああああ・・・・・・」その度に姉もまた全身を振るわせる。
だが、かわいい妹をかわいがるその動きは止まる事なく、全身と、一番可愛い場所に、
指を這わし続ける。
「ああああ、お姉さま、もう、もう、堪え切れません!!!!」
「あ、うううう!!!私も、私も、もう無理!!!!」
先に妹が声を掛け、昇り詰めたのは同じであった。
再び静寂と、ムシの唄と、そして姉妹の微かな息が、部屋に満ちる。
「・・・・・・・すき、おねえさま・・・・・。」
「・・・・・・・すきよ、わたしも・・・・・。」
妹が姉に抱きつき、姉が妹の長い黒髪をなでる。
白い肌と白い肌、美しき黒髪と美しき黒髪ソレハ、月明かりの光の中、混ざり合う。
幾らの時が過ぎたころか。
「・・・・・・・そろそろ・・・・・はじめる?」姉が問かけ。
「・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・」妹が応じた。
二人は対峙していた。ムシの唄はやんでいた。二人の殺気を感じ取り。
二人はすでに装束を身にまとっている。それは暗闇の中、白く、白く照らされていた。
二人とも構えもとらず、身じろぎもしない。ただただ見詰め合っていた。
それこそが、これから起こるであろう出来事が何であるか雄弁に語っている。
殺し合いであった。
先に動いたのは姉であった。剣豪が名刀を振るうがごとき、手刀が妹に襲い掛かる。
ヒュン!!一気に間合いをつめると、躊躇うことなく、妹に切りかかる。
喉元から赤い血潮が走り血の海に沈んだ。
ことであろう。
並みの武術家ならば。
だが、姉の必殺の一撃は空を切った。
それを見逃さず、妹は素早く手刀を掴むとそのまま地面へと叩き付ける。
姉の体は一回転し、頭の上の地面へと、真っ逆さまに昇っていった。
グシャリと鈍い音がし、頭蓋骨が砕ける音が聞こえる。
筈であろう。
並みの武術家ならば。
だが、違った。
しかし、無事ではなかった、右肩の骨は確実に砕けていた。
先ほどまで、妹を愛していた右腕は使えなくなり。
先ほどまで自分を愛していた右腕は使えなくした。
シュゥ!!!自らの腕を掴み続けている妹の手に反対側の手で切りかかる。
シュパ!!!切り裂いたのは、わずかに胴着の袖であった。
妹は姉の攻撃の届かない場所まで離れる。
姉は警戒しながらユックリと立ちあがる。
ここまで、二人とも一言も発しない。骨が砕けたそのときですら。
激痛が全身を走る。本来ならば悲鳴の一つを上げてもオカシクナイ。
いや、痛みから気絶するのが普通であろう、だが、そうはならない、
普通などではないのだから。
ここにきて初めて姉のほうが構えを取る、
腰を落とすと左腕を右側の腰の所へと持ってくる。そして、妹に対し半身になる。
空気が揺らぐかのような錯覚の後、先ほどよりも早い速度で姉は一気に間合いをつめ
妹へと切りかかった。
居合いのそれであった。
だが、またしても、姉の必殺の一撃は、妹に致命傷を与えることなく、
わずかに胴着の胸元を切り裂いたに過ぎなかった。
再び同じ姿勢をとると、二度、三度、妹を絶命させるまで手刀を振るう。
三度目はなかった。
妹は姉の刀を掴むと先ほどと同じように躊躇うことなく姉を叩きつける。
これで姉は日本の名刀を失った。
先ほどの居合いも使えない。
だが、それなのに、折れた刀を鞘に納めるかのごとき。
また、居合い切りの体制をとる。
初めて妹の顔に同様が走るが、それは一瞬で消る。
ヒュン!!!!!
今までよりも早い踏み込みで妹との間合いをつめる。
ーくる!!−
妹がそう判断するより早くそれは来た。
下から。
姉の膝が。
グシャリ。
避け切れずそれは狙いたがわず妹の顎を砕く。
フラフラと左右に体を揺らす妹の側頭部に足刀が飛ぶ。
ガクリと糸の切れた人型のようにその場に崩れ落ちる。
姉は妹のそばに近寄る。微かに指を震わせながら何かを伝えようとしている。
妹のそばに。
先ほどまで自分を味わいつくしていたあの舌は、顎の骨とともに砕け、使うことはできない。
先ほどまで大好きだったおねえちゃんを味わいつくした舌は今はもう使えない。
だから彼女は震える指で姉に伝えた。
「私が未熟だったばっかりに、痛い思いをさせてごめんね」と・・・・・・。
妹は前よりいっていた。
「投げ技や間接は極めれば、相手を苦しめることなく勝敗を決する事が出来る」と・・。
姉は冷たくなってゆく妹の、哀れなぐらい痛々しい、その身を見て、
そのことを、痛烈に感じた。
月夜に照らされた妹は白く白く美しい。
いつの間にかムシのなきごえが聞こえてくる。
そして、姉もまた
泣いた。
終わり
う〜ん、やっぱり相変わらずの下手な文章でごめんなさい。
まじめなのってむずかしいです。
まあ、ギャグのもうまくはないですけど。
もっと精進していきます。
ではまた〜。
お姉チャンバラ思い出した
相方の乳しか覚えてないがラストバトルがこんな感じだったqqq
GJ。
GJ!
シリアスな展開も独特な雰囲気が出ていて楽しかったよ
彩「次回 魔法少女リリカルなのは 『それは不思議な出来事なの?』リリカルマジカル頑張ります!!………って台本間違えたーーーーーーーーーっ!!!!」
続き書けなくてむしゃくしゃしてやった。反省は………しとります。
後、なのはは無印の1話〜3話しか見た事無いからこの程度の知識しかありません。お許しあれ。
>>135 GJです。殺伐としたバトル好きなので読んでて楽しかったですよ。
狂った姉妹もGOOD
なんか鉄拳の姉妹を思い出したよ
愛憎絡み合う肉親同士の壮絶バトルってのは有りそうで無かったんで良かった
即席にしては力作だったよ!GJ!
わーい皆さん感想ありがとうございます。
140さん>あのゲーム僕も持ってますけどそこまでいけませぬ・・・「くやしいです!!」
そしてあのシリーズの名作はラブアッパー
それにしても速い感想ありがとうございます
141さん>ありがとうございます、光栄です。次もがんばります。
亜佐倉さん>こういう話は実は苦手なんですけど楽しんでいただけたのでよかったです。
後、思いっきり路線変更かと思いました。
143さん>鉄拳かあ〜、そういえば鉄拳スレでもかかせてもらってるんですので、
よければ読んでみてクダサイナ。
リリとか飛鳥っていじりがいがありますよねってか、パンツとかブルマとか。
お礼ついでにまた少し・・・・・・。
ひさしぶり〜、げんきだった?えっ?昨日あった?そうだっけ?なんか一月ぐらい会ってない気がしてさ。
私?うん元気元気!!ってか前に話したデビュー戦、あれから無敗なんだよ。
へっへへーすごいでしょ、あ、これシングルの話ね、タッグだと何回か負けてるから。
え?ヘレナ?うん、元気だよ、今日もたしかこの後試合が組まれてるはずだよ、いっしょに見に行く?
OKじゃ、見に行こうか!!早くしないとあのコ秒殺しちゃうから。
ここ、ここからがよく見れる上に・・・ただでみれるんだぜ、へへ、ええと
ヘレナの試合はああやってるやってる、てかヤラレテル、ウンやられ捲り、すごいよ、先生。
えっ、見えない?じゃあ解説したゲル。最初はどうだったか判んないけど、また例によって未着していった後、
胸とか触られてひるんだ好きに、揉まれまくりって、展開だと思う。ほらほらすごいよ、ヘレナよだれとかたらしちゃって
ロープに手を伸ばしてる。あっ、キャメルクラッチ、知ってるキャメルクラッチ?
こう、うつ伏せの相手グイーって無理やり反らさせる技、でねやりすぎるとラーメンみたくなるんだって。
やばくねラーメン。古賀さんが言ってた。あっ牛丼だったかも?まあ良いや、
私のヘレナがラーメンになったらまずくない?いや、味じゃなくてさ。そうじゃなくて。
とか言ってる間に其のままゴロンと仰向け状態にされて背中に足を押し当ててられ、首をロックされる。
ボー・アンド・ローって関節技がきまちゃッた。すごいね、いや、ヘレナのへたれっぷりじゃないよ?
あいてがすごいな〜って、だってあのコ義務じゃない下手すると、そんな子がさあ
私のへレナを玩具に、じゃ無くて、ええと、オリンピックチャンピオンを手玉に取ってるんだもん。
もうギブアップかな?ねえ?ええ〜うるさいって何で〜。あ、ほらほら、タップした。
あれ?レフリーとめんよ?何で?・・・・うわぁ!えげつない、ギブッて言わないように口押さえてる。
そうかそんな手が・・・あ、ワタシモ、ヤラレナイヨウ、キヲツケヨウ。
あ、ねね、失神するよヘレナ、あの子ね、失神する前に左胸がピコってなるの。
いいぞーそのまま落とせー!!・・・あ、ガンバレ、ヘレナー。
ほら、ほら、ほら!!ねえ、墜ちたでしょ?ホンとあの子へたれだよね〜。
あ、ヤダ、股間のとこ・・・・お漏らししちゃったみたい・・・・。
でも今日は相手が今日入った新人で、なおかつ、義務のコだけど、秒殺は免れたね。
_?ああ、いつもあのコあっというまにKOされちゃうから、秒殺女王って呼ばれてるの。
今日もたーップリ、この試合のことでいじめてアーげよっと。
あれ?帰るの?これから敗者罰ゲームで、いろいろ面白いことがあるのに。
うんじゃあね、おつかれ〜。
これはウザい
最初のはいいと思ったがこれはマジでウザイ
読みづらい上にキモくてもうめるぽ
ガッ
内容は良いんだが、如何せん文章の稚拙さが痛い
わざとそういう感じに見せたいのかも知れないけど、それにしても酷い
その辺の覚醒を期待
内容だけならGJレベルなだけに、もったいない
いやいや!これウザ可愛いを絶妙に再現できてね?
単調なありがち格闘物を書く駆け出しかと思ったらこれ結構な文才じゃないか?
申し訳ありません。145を書いたものです。
適当に書いたので不愉快な思いをされた方、本当にスイマセンデシタ。
下手なりに頑張ってゆきますので、
長い目で見守ってて下さいお願いします。
ご指摘有難う御座いました。
このレスからHNを亜佐倉改めミヤビに変更致します。改めまして
>>122の続き投下します。
※
「いっただきまーす!」
「いただきます」
夕食時、台所に隣接している食卓の席に座っていた彩と祐司は互いに両手を合わせていた。
ダイニングテーブルに並んでいるのは皿に盛り付けられたオムライスとマカロニサラダ、そしてコーンスープといった家庭的な洋食料理の品々。
マカロニサラダ以外の二品は出来たてでまだ温かい為、天井に向けて湯気を立ち上らせていた。
「今日は珍しく洋食なんだな」
半熟でトロッとした卵をスプーンでつつきながら祐司はケチャップを掛けたオムライスを口に運ぶ。
「うん。たまには洋食に挑戦してみようかなーって思って作ってみたんだよ。この前テレビでフワフワオムライスの作り方やってたから」
嬉々とした表情で喋りながら彩もマカロニサラダをスプーンで掬ってから口に運んでいった。
「そうか………ところで彩」「んにゃ?」
「観月……元気にしてたか?」
「うん。いつも通り元気だったよ。手作りの桜餅も食べさせてもらってね、凄く美味しかった」
「そうか……迷惑掛けたりしなかったか?」
「うぐっ………!?え、えーとね………」
祐司の言葉を聞いた途端、彩はスプーンをくわえたまま縮こまってバツが悪そうに左右の人差し指を胸の前でツンツンと合わせている。
「………どうした?」
「えぅ………あ、あのね……観月さんと手合わせした時にね…………ラウズウェイブで……その………神社の狛犬………壊しちゃった………」
「……………は?」
彩の口から紡がれた言葉を聞いた祐司は一瞬唖然として口をぽっかりと開けた。
開いた口が塞がらない、というのは正にこういった表情を示すのであろう。
「あ、あぅぅ………で、でもワザとじゃないんだよ!観月さんがすっごく強かったからラウズウェイブ
使ってね……それを観月さんが避けて………そしたら狛犬に当たっちゃって…
………それでガラガラーって崩れちゃって……その………で、でもでも!観月さんは今度から気を付けてくれればいいって言ってくれたし……………うにゅう」
早口でまくしたてながら必死に自分を弁明する彩だが、喋れば喋る程声は弱々しいものとなり、最終的に言葉は鼻声になっていた。
心なしかぱっちりと開いた大きめの瞳は潤んでいて、目尻から雫が溢れ落ちそうになっている。
「…………ふふっ」
そんな今にも泣き出しそうな彩の姿を見た祐司は思わず苦笑を漏らした。
「やれやれ、まさかお前がここまで絵里に似るとは思わなかったよ」
「ふぇ?」
目尻に涙を浮かばせていた彩は祐司の言葉を耳にして小首を傾げる。
「絵里も昔、倭京院神社で散々物壊してな…………よく観月に怒られてたよ。その後俺が観月をなだめるのには苦労したなぁ」
頭の片隅に置いていた過ぎ去りし日々を記憶から呼び戻した祐司はマカロニサラダを口に運びつつ彩に過去の事を語り始めた。
過去の話――といっても別段それは重々しいものではなく、単に父が娘に対して自分の昔話を夕食ついでに話しているだけに過ぎない。
「観月さん……昔そんなによく怒ってたの?」
「あぁ、今の観月からは想像も付かない程凄い顔でいつも絵里の事怒鳴ってたよ。『あなたはこの神社を何だと思ってるんですかーーーっ!!!』って言ってな。凄い怖かったよ」
若かりし頃の観月の口調を真似ながら祐司は笑ったままおどけたようにしてみせる。
「あ、そういえば観月さんにも聞いたよ。昔お母さんがラウズウェイブで神社の本殿壊しちゃったって」
「あの時か…………あの時は観月もこれ以上無い位に怒ってたからなぁ………
俺もとばっちりを受けて引っぱたかれたもんだ……けど、それで落ち込んだ俺を真姫が励ましてくれてな………………」
そこで祐司は突然言葉を区切り、先程までの穏やかな表情に暗い陰を落とした。
「…………お父さん?」
今まで自分には滅多に見せた事の無い父親の表情を見て彩は訝しみながら再び首を傾げる。
「あ………あぁ!いや、何でも無い。さ、早く冷めない内に食べるぞ!」
「………?」
身を乗り出して自分の顔を覗き込んできた彩を見て我に返った祐司はわざとらしく声を張り上げてオムライスを掻き込み始めた。
そんな祐司を見て何か引っ掛かるのか、彩は未だに小首を傾げたままだったが、やがてそんな疑問よりも食欲の方が勝り、祐司に
倣って夕食に手を付ける事を再開し、その後二人はお互い喋る事もなく黙々と食べ続けていった。
夕食を済ませて食器を洗い終えた彩は直ぐに自室へと戻り、トレーニングを開始していた。
まず、開脚ストレッチなどの柔軟体操を三十分以上も掛けてしっかりと行い、
靭帯や筋肉をよくほぐしてからスクワットと腹筋、背筋を50回ずつ3セットでこなしていく。
「ん………しょ、うん………しょっ………191……192………193…………」
そして今、彩は最後の締めとして腕立て伏せをやっている最中である。
緑色のカーペットを敷いたフローリングの床に両手両足を付き、額に大粒の汗を浮かばせながらひたすら腕立て伏せの回数を口で数えていった。
こういった器具を一切使わないで行う筋力トレーニングも、昼間のランニングや大樹への打ち込み同様に小学生の頃から一日も
欠かした事の無い日課となっており、彩にとってこういたトレーニングをやるという事はいわば歯磨きや
食事と同じ位日常生活において当たり前なものとなっているのだ。
「196………197………198………199…………ハァ………ハァ………にぃ………ひゃぁ…………くぅっ!!…………はぁぁぁぁ………はぁぁ……………終わったぁ〜」
ノルマを無事達成した彩はそのままうつ伏せになって床に倒れ込む。
頬から伝ってきた汗が下顎にまで来てカーペットに滴り落ち、着ていたTシャツが汗を吸って地肌にべったりと張り付いているのにやや不快感を覚えるが、
張り付いた生地を手で剥がすより先に、乱れた呼吸を整えようと懸命に酸素を補給していた。
「はぁ……………はぁ…………ふぅ…………あ、もうストリートファイト始まっちゃってる!急がなきゃ!!」
傍らに置いてあった携帯電話のフリップを開け、
ディスプレイに表示されている時計を確認した彩はおっとり刀でスカジャンに袖を通し、アポロキャップを被ってから指貫タイプの
革手袋を両手にしっかりと嵌め直す。
「よし、準備完了!!」
先程まで息を切らせていたのが嘘のように覇気のある声を発しながら右手を握り締め、革手袋の感触を確かめた彩は部屋を出て階段を降りていった。
一階に降りるとリビングでは、ソファーに座っていた祐司がコップに注がれた水割りの焼酎をチビチビと飲みながら肴のカワハギをつまんでテレビを見ている。
どうやら晩酌をしている最中のようだ。
「お父さん、ボクちょっと出掛けてくるね」
「ん………?」
アルコールを摂取したせいで赤らんでいる顔を彩の方に向けながら祐司は焼酎の入ったグラスをテーブルの上に置いた。
水割りの焼酎と共に入っていたロックアイスがぶつかり、硝子製のグラスを静かに弾き鳴らす。
「またストリートファイトに行くのか?」
「うん!もっともっと闘わないと、お母さんみたいに強くなれないもん!」
「そうか………怪我だけはするなよ」
「うん!……あ、お父さんも、お酒強くないんだから飲み過ぎちゃダメだよ。それじゃ、行ってくるねーー!!」
祐司に向けて牙のように尖った犬歯を見せながら笑う彩はそのまま踵を返して玄関へと小走りに駆けていった。
しばらくして、玄関扉の開く音が聞こえて彩が家を出ていくと美島家には祐司がただ一人残される形となる。
「ふぅ………やっぱり血は争えないって事か」
そう呟いた祐司はポロシャツの胸ポケットからマイルドセブンの箱を取り出し、箱から一本出すと口にくわえて100円ライターで先端に火を付けた。
ニコチンとタールを含んだ主流煙をゆっくりと肺に吸い込んだ後、ソファーの背もたれに自分の背中を預ける。
「絵里、彩は逞しく育ってるよ。色々お前の悪い面も学んじゃったりしてるけどな」
吸い込んだ煙草の煙を一気に吐き出し、先端から立ち上ってゆらめく紫煙を見つめながら祐司は天井を仰いだ。
「すぅぅぅぅ…………はぁぁぁぁぁぁ……………」
玄関のドアを閉めて外に出た彩は目を閉じてから静かに深呼吸を始めた。
五月の初旬とはいえまだ夜風は冷たく、スカジャンの繊維の隙間をくぐり抜けて入り込んでくる大気はトレーニングのせいで汗ばんだ彩の身体を急速に冷やしていく。
だが、今の彩はその程度の夜風で肌寒さを感じない程に気持ちを高ぶらせていた。
鼻孔から吸い込んだ空気を肺に送り、ゆっくりと口から吐き出してから閉じていた目を開ける。
「………よし、行こう!」
両頬を掌で叩いて自らに喝を入れた彩は街灯だけが光を照らす路面を蹴って一気に走り出した。
目的地となるストリートファイトの会場へと向かう為に。
市街地のほぼ中心に位置する明野宮駅西口。その駅前に設けられたロータリーには、異様な光景が広がっていた。
いかにも武闘派といった感じの筋骨隆々とした男達や会社を終えて家路に着く途中だったスーツ姿のサラリーマン達などが群れを為すようにロータリー地帯に集い、まるで円陣を組むようにして一ヶ所を囲っている。
「フッ!やぁぁっ!!」
「うぐっ………くぅっ!!」 その群衆の中心にいるのは、二人の少女だった。
片方の少女は名門のお嬢様学校として名高い私立繚乱女学院……通称乱女の制服に身を包んだポニーテールの少女で、もう片方の少女はファミレスチェーン店、びっくりモンキーの制服を着た目元に泣きボクロのある少女だった。
「よーし、もっと攻めろ可莉奈ーーー!!!」
「負けるなよ聡美ーーーー!!!」
ギャラリー達の声援が一層大きくなる中、ポニーテールの少女はしきりにパンチやキックで攻めていき、泣きボクロの少女を追い詰めていった。
対する泣きボクロの少女は自らが防御に徹している事を歯痒く思いがらも、空手の中段受けや双手受けを駆使してポニーテールの少女の攻撃を防いでいる。
「行け、ケロぴょん!ケロケロメガヒート!!」
通常の打撃では相手に大きなダメージを与える事は出来ないと悟ったポニーテールの少女はバックステップで後方に大きく跳び、足元にいるペットの蛙に指示を出す。
するとその蛙は突然炎を纏い、泣きボクロの少女に向かって凄まじいスピードで突進していった。
「きゃあぁぁっ!!」
炎を纏った蛙の突進を受けた泣きボクロの少女の身体は火に包まれ、その熱さに思わず悲鳴を上げる。
燃え盛る炎のせいで制服の一部やパレオのように巻いていたスカートが燃えてしまい、彼女の白い肩や胸の上部、大腿が露わになってしまった。
「よし、これなら行ける!ボク達なら絶対勝てるよケロぴょん!!」
自分が優位に立った事を確信したポニーテールの少女は戻ってきた蛙に向かって歓喜の声を上げた。
彼女の言葉が理解出来るのかどうかは定かでは無いが、蛙は少女の言葉に応えるようにその場で高々と跳ねた。
「う、うぅ………」
アスファルトに倒れ込んだ泣きボクロの少女は所々に火傷を負いながらもヨロヨロと立ち上がる。
予想以上にダメージが深いのか、周囲にもはっきりと分かる位に肩で大きく息をしていた。
「甘く見ないでよね……アタシの拳は炎の拳。迂濶に触ると火傷するわよ!」
芯の強さを現した目をポニーテールの少女に向けた後、少女は半身に構え直す。
「はぁぁぁぁ…………」
両目を閉じて精神を集中させ、呼吸を整えると彼女の両手に怒気を孕んだ紅蓮の炎が宿り始めた。
そして彼女はポニーテールの少女との間合いを一気に詰めていく。
「火焔斬!!」
泣きボクロの少女は接近するや否や路面を蹴って跳躍し、弧を描くように炎を宿した両手を大きく振り回した。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
彼女の技をまともに喰らってしまったポニーテールの少女は先程泣きボクロの少女と同じように暁の炎に包まれ、数秒間の間空中に投げ出された後、アスファルトに背中から落ちていく。
「うぅっ……………」
何とか力を振り絞って上半身を起こそうとするものの、ポニーテールの少女に最早余力は残されておらず、そのまま糸の切れたマリオネットのように倒れたまま動かなくなってしまった。
「ウィナー、聡美!!」
それまで二人の勝負を傍観していた立ち合い人は泣きボクロの少女に歩み寄り、彼女の片腕を挙げてから勝者の名を声高に叫んだ。「やったよ大介ーーー!!お姉ちゃん勝ったよーーーー!!」
泣きボクロの少女は両目に涙を浮かべて満面の笑みで大きくガッツポーズを取った。制服は焼け焦げ、手足には打撃を喰らったせいで青痣が出来てはいるが、少女はそれよりもたった一人の血を分けた弟に自分の勝利を報告出来た事が嬉しいようだった。
【続く】
Youも文章力云々以前に設定が明後日の方まで飛んでいっちゃったから僕は付いていけないYo!
一度飛んじゃったら、元の位置に戻る事出来ないからねー大変だよね、ホント
戻るボタンが付いてるブラウザとは違うからな
完全にV.G.方面に行ってしまわれてorz
とってつけたような能力バトルモノって、イヤボーン・・・理不尽&都合のいい逆転があるから、どうものめり込めない
インフレを戻すには、なつきクライシスみたいに人外の化け物にボッコボコにされてトラウマ植えつけられて、
一からやり直すのもアリだぜい
163 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/03(火) 22:02:50 ID:YY+IKiky
ミヤビさんありがとうです。
とりあえず、またひとつ書いてみます。
「師範代! 早く来てください! 」門下生の泣きそうな声を聞き、その少女。
北村岬 は携帯の電源を切ると急いで道場へと戻る。
「お帰りなさい、先生」道場へ戻った岬が見たものは、床に倒れた自分の門下生たちだった。
そして一人立ち尽くす少女がいた。長い髪を後ろで束ね、短パンにTシャツというラフな格好。
少女の名前はーー「始めまして私、武藤直美 っていいます」ーーと言った。
「……道場……破り?」岬は普段と変わらぬ感情の感じられぬ声で問いかける。
「大・正・解! 」直美はクスクスと楽しそうに笑う。「アナタ、最強の挌闘家なんでしょ? 」
なおも楽しげに笑いながら岬へと近づく。「けちけちしないで、私と戦ってよ」
そんな直美をじっと見つめていた岬は静かに首を振る。
「あれ? 逃げんの? 」その問いに対してもまた首を振る。
「……ちがう 」「?? 」 「……最強じゃなくて……無敗なだけ」
「なにそれ? 自慢? 」わけがわからないと言ったように直美は両手を広げる。
「……私……勝てない相手と……闘わない……」そう言うとくるりと直美に背を向ける。
「は、なんだーーー」直美が言いかけたまさにそのとき、
「……着替えてくる……まってて」そう言うと岬は道場の奥へと引っ込んだ。
「言ってくれるじゃないの!! 」怒りをこめて直美は岬の消えたほうをにらみつけた。
「……お待たせ」 奥から出てきた岬は上下白のタンクトップとスパッツを着込み、
手にはオープン・フィンガー・グローブをはめている。リングシューズの色まで白である。
「ふ〜ん、てっきり古臭い胴衣でも着てくるんだと思った」 拍子抜けしたように様に直美がつぶやく。
「……汚れると……困るから」 ポソリと呟いた一言に対し遂に直美はぶち切れた。
「そうかよ! じゃあそのコスをてめえの血でぐちゃぐちゃに染めてやんよ!! 」
そう言うとイキナリ岬の顔めがけて殴りかかる。バチン!! すさまじい音が場内に響く、岬はとっさに直美の一撃をガードするも
両手にはびりびりとした衝撃が残る。「オラオラ!! どうした、あたしには勝てるんじゃねえのかよ!! 」
すさまじい速さのラッシュが続く、道場生の中にも、最初の数発はガードできた者はいたが、
このラッシュを受けきれずにみな、倒されている。
直美より、岬のほうがはるかに身長は低い、ハンマーを振りを下ろす様な重い一撃が小柄な体に降り注ぐ。
「おらおら!! どうした!! ちょっとは反撃してみなよ!! 」
「……わかった」 ドス! 直美の腹に突然重い痛みが走る、それが岬の拳だという事に一瞬直美は気づかなかった。
「あ…? あがぁ…」 「……反撃」 スッと拳を引くのと、前のめりに直美が崩れていくのとは同時だった。
「ぐっ……調子乗ってんなよ!! 」 直美が立ち上がると スパン!! 岬は完全に立ち上がるのを待って、
直美の即頭部に蹴りが飛び、「ひっぃ」 情けない声を上げ、直美はとっさにガードする。
「……まだ、やる? 」 無表情のままじっと直美の目を見つめ、岬は静かに問いかけた。
「ううう、わかった、私の負け……」 直美は両手を上げる。「……そう」 岬が呟いた瞬間だった。
「なんてな!! 」 直美は油断した岬に掴み掛かる、が、それは岬の予想の範囲だった。
「……そう」 すっと体を捻りその手を交わす、だがここで、岬の予想外の出来事が起こった。
「あめぇよ!! 」 ガシッ、直美は岬のチューブトップをつかむとそのまま引きずり倒す。
予想外の行動の為に、力で劣る岬は完全にねじ伏せられてしまった。
岬を上半身裸にし馬乗りの体勢にと移行する直美。その顔は勝利への確信に満ちていた。
「どうだ、これで形勢逆転だ! 」 「…………」 胸を隠そうともせずに、岬はじっと直美をにらみつける。
「まるで、レイプするみたいだ」 下品な言葉を口にすると、先ほどと同じように、直美はラッシュを浴びせかける。
先ほどと同じようにガードを固めているが、今度は背中に床がある状態ではダメージが完全には逃げずに、徐々に岬は追い込まれてゆく。
「……あうぅ……」 思わず岬の口から悲鳴が漏れる。「へぇ〜、いい声で鳴くじゃん」 嬉しそうに力任せにパンチを叩き込む直美。
「……い、たい」 その声は直美に優越感を持たすのに十分であった。
「ほらほら、もっと鳴けよ!! 」
岬のガードがだんだんと下がってゆき、僅かずつではあるが、隙間が開いてきた。
「ほら、ほら、ほら!! 」 何かに取り付かれたようにひたすら拳を振り続ける直美。
「どうしたの、さっきまではあんなに上から目線だったのに」 そう言いながら拳を振り上げた瞬間。
「……ポジショニングが……悪い」 ポソリ、先ほどまでと同じく岬が口を開いた。
「えっ!? 」 そういった瞬間、するリ。
直美の首に何かが巻きついてきた。
それが岬の足であることに気づいたのは、殴りつけていた手を、岬に握られてからだった。
「……これが、三角締め」 グイグイと岬の足が直美の頚動脈を締め上げて行く。
「くっ、なめんな!! 」 よろよろと立ち上がると、そのまま岬を持ち上げ背中から床に叩き落す。
バシン!! 「……うっ」 微かな悲鳴が上がるが、岬はしっかりと足をフックしたままなおも締め上げる。
2回、3回と直美は岬を持ち上げ床にたたきつけていたが遂に体勢が崩れ、がっちりと、岬の三角が完全に決まる。
柔らかな太ももは、しっかりと直美の体に密着し、抜け出すことは不可能であった。
「……降参? 」 「はっ……、おッパイ丸出しで……威張ってんじゃねえよ… 」
荒い息を吐きながら、直美が悪態をつく。だが、彼女にもう抵抗する力は残ってなかった。
(や、ッべ、こいつ、マジで強いわ)
そして、自分と相手との力量の差を痛感しながら、ゆっくりと直美は眠りに落ちていく。
「……おはよう」 「わわ!! 」 目を覚ました直美は突然の岬のアップに驚き、
あわてて飛び起きた。
「……むぅ……ヒドイ」 少しすねたような声でじっと直美を見る岬。
「な、ん?私、あんたに負けて……」 「うん……だらしなく…伸びてた」
そう言う岬を見て、直美は疑問を口にする。
「ねぇあんた」 「…なに? 」 「何でまだ裸なの? 」
岬はそう言われて自分に視線を置き、また直美を見る。
「なんか……へん?」 「変だろ!!」 即座に直美が突っ込むと、岬は首をかしげる。
「だって……、着てたら汚れるよ?」 「!?」 意味がわからず首をかしげると、岬はスッと
直美との間合いをつめた。 そして、「!!?」 そっと直美の唇に、自分の唇を重ねた。
岬の舌が口に入る瞬間、あわてて直美は岬を突き飛ばす。
「な、なにすんの!? 」 「………お仕置き」 じっと、岬は直美を見つめ、今度はスッと、直美を、押し倒す。
「あっ」 「……うちに来た娘、……みんなにしてるよ? 」 「え!?」
「道場…破りにきた子……全員 」 「ちょ、わたしはー」 そう言い掛けた口に先ほどと同じように唇が触れる。
「んんん………」 クチュクチュ。 格闘技で攻められた後に、今度は口の中を徹底的に責められる。
(やば、すっげえ、きもちいい) 直美の頭の中はどろどろとトロけてゆきボーっとなる。
ペチペチ、岬にほほをたたかれて、直美は目を覚ます。「……感じすぎ……」 少々あきれたような顔で岬が言う。
「う、うるさいな、あんたが旨過ぎるんだよ!! 」 言ってからはっとなる直美。耳まで真っ赤になりそっぽを向く。
「アナタも、脱いで……」 そんな直美に畳み掛けるように、岬が直美につめよる。
「う、わ、わかったわよ、脱げばいいんでしょ!! 」 まったくとんでもないところに道場破りに来たもんだ。
心の中で舌打ちしながら直美はTシャツを脱いだ。
色気のないスポーツブラが返って色気をかましだす。
「……それも」 「はいはい」 スポーツブラをはずすとやけくそ気味に放り投げる。
「……じゃあ、アナタは……、私の胸を触って」 そう言うと岬は整った形の豊かな直美の胸に手をやる。
「えっ!? うう」 直美も岬の胸に手を伸ばす。
「ねえ、あんたの胸触るとこないんだけど! 」 岬の小ぶりで形のいい胸に手を伸ばし直美は悪態をつく。
「むか……」 コリ 「あぅ!!」 その言葉を聴き、岬は直美のピンク色の先端を強く捻る。
「遺伝……」 「そ、そうよね、あんたのせいじゃないわよ!!」 ジーッと直美をにらんでた岬は、
それを聞くとコクリとうなずく。 「わかれば……よろしい」 二人はその後しばらくお互いの胸や体を愛し合った後、
「………じゃあ、今度は……ここ」 岬は直美の短パンに、手をかけた。
会話が連続してるから読みづらい、つーかどっちのか分からない感じになっトル
167の続きです。
「へ? いや、それは」 「……はやく……脱いで」じっと直美の顔を見つめる岬。
「わかったわよ!! はい!!」短パンと下着を一緒に脱ぎ捨て下半身裸にある直美。
チュプ。 そこに無造作に指を、押し入れるとゆっくりと肉壁をこすり始める。
「ちょ、そんないきなり……ああぁ」 クチュクチュ 「もう……こんなに濡れてる…」
「直美……もっと……力を抜いて…」 そうは言われても何しろ始めての事である、太ももに余計な力が入り、
岬の手の動きを阻害してしまう。 「……痛い……の?」 「ち、違う、その逆」
拳をキツク握り、体を震わせる。 「足の間から頭の先まで電気みたいなのが何度も、往復してる」
「♪」 少しうれしそうな顔をすると、岬はそのままゆっくりとストロークを繰り返す。
「ああ、いい!! すごい!! すごい!!」 そのスピードは徐々に速くなりまるで直美の肉壁をけずり取り、
愛液すべてを掻きださんばかりの勢いである。
「あああ!! ああ!! 逝く!! イクイク!!」腰を激しくガクガクと震わし、卑猥な言葉を吐きながら、
直美は岬に対して二度目の敗北を喫した。
「……どうだった? 」 軽い失神から覚め、服を着替える直美に岬は声をかけた。
「う、お、覚えてろ、今度は、あたしが主導権を握ってやるからな! 」
言ってからまた失言に気がつき赤くなる直美。
「ち、ちげえよ!! 今度はぼこぼこにしてやるからな!! 」
着替えが終わり、ビシリと指を突きつける直美。
「うん…………、まってる」 岬は相変わらず何を考えてるのかわからない顔でうなずいた。
「今度来るときまでにはもちっと揉み応えのある胸になっとけよ」
白い歯を見せ意地悪く笑う直美に対して、岬は口をへの字に曲げて恨めしそうにじっとにらむ。
そんな岬に背を向けると軽く手を振り、直美は道場を後にした。
終わりです。
昔に書いたものの書き直しなんですけど、うーんまだまだ勉強不足ですね。
次回もがんばります。
>>168も言っているけど、次回作は是非改行を入れてくれ。
読みづらくて流し読みしか出来なかったが、
中身はかなりツボな気がしたんだ。
非常に読みたい。
全ての「」の前後に必ず入れるだけでも全然違うと思う。
上から目線で物凄い申し訳ないのを判った上で、断固改行を要求するw
始めまして。
以前から興味のあるスレだったので、自分でも書いてみました。
職人の方々のような心躍る話にしたいものです。
盛り上がってくるとすぐ一歩臭くなr
1.
悠里は控え室の中、一糸纏わぬ姿でいた。
ストレッチをするには裸が良かった。
血色のいい桃色の肌、一見華奢に見えるが曲線で象られた身体。
「ふっ…」
小さく息を吐くと、悠里は開脚したまま腰を落とす。
長い両脚は抵抗なく真一文字に伸びきる。
合間にひとつの音すら立たない。驚くほどしなやかな筋肉。
幼少時から鍛え、股割りに慣れなければ出来ない動きを顔色ひとつ変えずにこなす。
「はっ!」
気合一閃、青波は伸び上がるように脚を揃えて立つと、体勢を整える事もなくバク宙に繋ぐ。1度、2度、3度身体を円転させ、片手首を支えに静止する。
影から見守る男は唾を呑んだ。
その柔らかそうな女体の美しさと力強さに。
一連の躍動を流れるようにこなす技量の高さに。
音を立てず、間を読ませず、それはまるで歴史に伝え聞く『くの一』のようだ。
「…どうしたの?用があるなら入っていいわよ」
急に声を掛けられ、男は狼狽した。
いつの間にか悠里が眼前に迫っていたのだ。ぷるんとした乳房の間を汗が伝い落ちる。
女らしい甘酸っぱい香り。
悠里は裸を晒すことを恐れない。
恥を知らないからではなく、己の肉体に対する絶対的な自信の顕れだった。
事実、彼女はモデル顔負けのスタイルを誇る。
「しっ、失礼しました!…その、そろそろ準備を始めて頂きたいのですが…」
「…そう、分かったわ。少し待ってて」
悠里は隠すこともなく堂々と身支度を始める。
紐を口に咥えて手を後頭に回し、胸を揺らしながら髪を結っていく。
その腕は世間知らずの令嬢と変わらぬほどに細い。
男はただ見入った。
自分など触れる事も叶わない、圧倒的な実力を有する彼女に。
「今日の相手…茜はね」
悠里は髪を結いながら言う。
そうして言葉をかけられる事さえ、男には最上の光栄だ。
一流のアスリートでも彼女と会話する機会などそうありはしない。
「高校の後輩だったの。負けず嫌いで、大会の度にボロボロの顔で泣いてたっけ。
それがとうとう、私に挑めるランクに来たのよ」
悠里が髪を結い終わる。黒髪は獣の尾のように揺れた。
彼女は裸体のまま、部屋の隅、下にビニールの敷かれたサンドバックへ向かい合う。
「正直、困ってるの。彼女は私に本気を出して欲しいはず」
タンタン。サンドバックを叩く。手打ちながらそれは小さく揺れ始めた。
「…でも私の本気は、簡単に人を殺せてしまう。」
ドッ、ドッ。腰を入れて打つと、サンドバックは振り子のように大きく揺らぎだす。
悠里はそれを冷ややかに見つめた。
揺れ、戻り、揺れ、戻り。
サンドバックが丁度自分の腰を掠めた時、彼女はきゅっと靴を鳴らす。
ド ン
「う、うわあっ!!」
男は思わず叫んでいた。追突事故を思わせる重い音が鼓膜を突き抜けたのだ。
ざあああ…っと何かの流れる音がする。
おそるおそる顔を上げ、男は目を疑った。
蹴られた方と逆側が破れたサンドバック、黄色い粉塵、流れ落ちる砂。
あの硬く重いサンドバックを蹴破ったのだ。
人間相手ならば臓器が破れているだろう。
悪魔の与えた天賦の才。
「まさか……ね。」
悠里は、床に広がる砂を静かに見つめて呟いた。
2.
「お願いします…押忍っ!」
胴着に身を包んだ茜は、眼前の娘へ向けて叫んだ。
まだまだ甲高くあどけなさの残る喝。しかしその実力は確かだ。
神崎茜、20歳。
中学時代より空手に打ち込み、数知れぬ挫折を経て類稀な精神力と耐久性を身につける。
空手を長く続ける彼女が尊敬する人物は多い。父親、師範、試合相手…。
しかし、彼女が「憧れる」のは1人だけ。
(先輩……)
茜は瞳を開いて悠里を見つめる。
横髪を頬に遊ばせ、結った後ろ髪を揺らし、若き王者は泰然と立つ。
166cm、42kgのモデル体型。
豊かな胸に押し上げられた薄手のブラウス、黒い羽のように肩にはためくニットボレロ、
脚のラインを殊更に強調する膝下までのスパッツ。
黒を基調に整えられたその姿は、彼女の見事なスタイルと相まって
浮世離れした妖艶さを醸し出している。
彼女が立つリングは、まるでファッションショーの舞台のように思えてくる。
選手としても、女としても、あまりに高い次元で完成した遠い存在。
しかし…彼女が腰に巻いているのは、“茶帯“だった。
長らく使い込んですっかり黒ずんだ茶帯。茜はそれを知っていた。
(あれ……私が先輩に渡した…!?)
卒業式の日、追いすがって泣く茜と交わされた茶と黒の帯。
高校で空手を始め、天賦の才でたちまち全国を制した悠里との細い絆。
総合格闘技界の王者となった今も、まだ付けてくれていたのか。
茜の視界が滲む。
「ほら、試合前に泣く選手がどこにいるの?」
悠里が茜の頬を撫でて笑う。
到底勝てるとは思えない。けれども――全力で。
「全力でお願いします、悠里先輩っっ!!」
茜は腰の黒帯を引き絞り、高らかに怒号を飛ばした。
悠里は淋しそうに頷き、赤コーナーによりかかり、
表情を消す。
(脚だ、脚を受けちゃいけない!)
少女は自分に言い聞かせ、常に距離を保って悠里と対していた。
悠里と対峙した選手すべてが、まずローキックで倒されている。
あるいはそれが決定打となっていることも少なくない。
半身に構えてジャブのような左を刺してくる悠里。
それを手刀で捌きながら、茜は彼女の腰に目を凝らす。
防御一辺倒ではあるが、まだ決定打は貰っていない。
「やるじゃない」
悠里が半歩下がりながら賞賛する。息すら上がっていない。
「はっ、ハァっ…」
神経を削る作業で、茜は肩で息をしているのに。
『さぁ茜選手、攻撃のチャンスがありません!このままチャンピオンのペースか!?』
実況がそう叫んだ、開始1分42秒。
悠里は半身の姿勢から、脚を左右に揃え直した。
ローだ! ――茜の総身にアラームが鳴る。
悠里が内股に膝を下げるのに合わせ、大きく後退した。
しかし次の瞬間、少女は目を剥く。
バックステップをしたにも関わらず、悠里が目前に迫っていたからだ。
「ありえ…ない……」
直前まで悠里の左足は大きく曲がっていた。
後ろ回りに力を込めた、右を蹴りだすための軸になっていた。
それなのに、彼女は右で踏み込んできたのだ。
(重心が読めない…!?)
ばちんっ!!いい音がする。
ほぼ反射で防いだ顔への一撃は、踏み込みの力を利用した精確な正拳。
防いでもその拳圧で身が竦む。
開始1分51秒。
茜は反撃のために右足を踏み込もうとした、しかし、脚にはすでに力が入らなかった。
視界にまだ蹴っていないはずの右足が投げ出される。
見ると、悠里の左足が消えている。ローを放ったらしい。
脚払いに思えるほどの痛烈なローキックで、茜の身体は宙に浮いた。
視界が横に倒れ、リングの白い床が視界に広がり、頬と肩ががつんとぶつかる。
痛い。
しかし、一番深刻なはずの右足に痛みが無い。痺れている。
ごめんね。遠くで悠里の呟きが聞こえる。
そして右足が、疼いた。
3.
「いっ、…ぎゃああああああああぁあああア!!!!!」
会場に甲高い悲鳴が響き渡る。
茜は倒れたまま、右足を抱えてのたうち回った。
熱い、熱い!胴着が燃えるように熱く皮膚に食い込む。
折れたか、いやかろうじて折れてはいない。
しかし…茜は今改めて、頭上に立つ娘の二つ名を思い起こしていた。
―――『カーペントレス(木こり娘)』―――
細くしなやかな彼女の脚は、野球用の圧縮バットを叩き折り、
細い木ならばなぎ倒し、そして人間の脚ごとき骨ごとへし折る。
一撃必倒、まさしくそれだ。
「うぐあ、あああ…おおぁ…っ!!」
茜の脳裏に、脛へ戦斧を叩き込まれるイメージが浮かぶ。
なるほど――木こり娘だ。
『挑戦者、ダメージが大きすぎるか?倒れたまま立ち上がりません!
カウントはなし、彼女が失神するか負けを認めるまで、苦しみは続きます!!』
実況の声がわんわんと頭に響く。喚声がドームの中を揺らしている。
若い少女が殴りあい、落としあうのを嬉々として見守る狂乱。
悠里はロープへ背を預け、じっと自分を見下ろしていた。
(勝てない。敵いっこないや…)
茜は思う。はめたかせる黒いボレロが、まるで漆黒の翼に見えた。
人間が勝てる相手に思えない。
あれと対峙したこと、倒されたことが誇らしくなるほどに、強い。
ごめんなさい。彼女はそう言っていた。どこか寂しげに。
(同情してるんですか…?私が弱いから、力がない、から…)
悠里の腰に細い紐が揺れていた。茶色い帯。
――あなたは強くなるわ。またリングで会いましょうか。
あの日、最後の言葉と共に交わした、茶帯。
「おおっと!!これは挑戦者、ふらつきながらも立ち上がりましたっ!」
瘧にかかったように震える脚を叱咤し、茜はロープに縋って立ち上がる。
悠里が少し目を開いた。
立ち上がるが、重心を安定させるのに苦心する。よろけ、よろける。
完全に右足が死んだらしい。
「はっ…はぁ…っ…はーっ…」
茜は持久走を終えたように肩で息をしていた。
ロー一発で体力の殆どをもっていかれたらしい。
ぎしっ。リングが軋み、悠里がしゃんと背を伸ばして中央に歩み出る。
歩く様は絵になった。本当に、格闘家とは思えない美しさ。
「強くなったわね、茜」
悠里はグローブを握りしめ、型を作って言った。
茜はそれがとても嬉しかった。
彼女が構えて、自分を褒めてくれる。その為にここまで来たのだ。
「…せぇあああ!!」
茜はロープのしなりを利用して悠里に迫った。
左足で踏み込み、体重を乗せて右の拳をひねり出す。
悠里は頬を掠めさせてそれをかわし、返礼に茜の顔へ掌底を叩き込む。
「ぶふっ」
茜の頬に赤い筋が散った。掌が抜けるとリングに紅い華が咲く。
『華が潰されたー!可憐な少女の顔面が、真っ赤な血に彩られています!』
会場のボルテージが一気に上がった。
頭がくらくらするのが喚声で余計にひどくなる。
「ふっ!」
間髪入れず、悠里のフックが棒立ちの茜の腹を抉る。
「ぐぅ…お…!!」
茜の細い身体がくの字に曲がる。
肋骨が開くような痛み、胸のしくしくする感覚。吐くな、吐くな。
「はーっ、はーーっ」
茜は大きく口を開けたまま前屈みで固まった。
必死に様々な苦しみに耐え、闇雲に拳を出し、またカウンターを取られる。
『とうとう茜選手が失禁です!いまどれほどの痛み、どれほどの恐怖が彼女を襲っていることでしょうか…』
茜は内股のまま、マットに染みを作っていた。
しかしそれでも茜は感謝していた。悠里は手加減をしていない。
自分が立っている限り、容赦なく打ち据えてくれる。
頭を殴られる。腹を打たれる。体中が傷口になったようにひどく痛む。
身体の芯が凍ったように寒くなる。危機感というものだろうか。
パワーが、スピードが、テクニックが及ばない。
マットに点々と血を流しながら、亀裂のような視界で茜は拳を振るう。
すでに空手の型を為していない、まるでボクシングのストレート。
3年間、寝る間も惜しんでの鍛錬で実力をつけた。
総合でのキャリアも積み、日本女子屈指の実力者と謳われた。
その自分が、悠里にはまるで手も足もでない。
回し蹴りのようにローを繰り出す。パンと音がする。膝で受けられた。
ローを返される、ぐしゃっと脚の筋を壊される。
ほとんどノーモーションなのに重く残る一撃。
斧は軽く打ち下ろすだけで、簡単に人の腱を破壊していくのだ。
なんと理不尽なのだろう。しかし、それが格闘だ。
視界が低くなる…もう悠里の光を孕んだ冷静な目が見えない。
揺れる胸が、細く括れた腰が鼻先に映る。
鉄の味のする口を開き、叫びながらそこに一撃を浴びせた。
届かない。悠里はバックステップで軽々と射程から消える。
見てから反応できるのか、動きが全て読めているのか、あるいは攻撃のための助走か。
何もかもがわからない。分かる事は唯一つ、自分では絶対に勝てないことだけ。
顔にワンツーが叩き込まれる。脳を揺らすことを目的とした、的確な揺さぶり。
脳の中がすかすかになる、首が痛い。どこを殴られても涎が止まらない。
それでも打ち返す。何発かはさすがに当たっている。ただ、効かないだけだ。
血のたまった鼻の奥に、それでもかすかに匂いがする。
花のように柔らかくいい匂い。悠里のシャンプーの匂いだ。
彼女が風呂が好きで、運動の前後にはいつもその匂いをさせていた。
自分が立つ理由はたったひとつ、美しい彼女と一分でも長く戦いたいから。
しかし…もう限界だった。次に倒された時が意識の最後だ。
茜は無理矢理に目を開き、真っ赤な視界の中、女帝の姿を目に映す。
カーペントレス。未だ負けを知らない常勝王者。
自分は、少しでも彼女の関心を引けただろうか――?
「終わりっッ!!!」
悠里のよく通る声が叫んだ。
“必殺”のローキックが放たれる。
どう重心をかけ、いつ脚が消えたのか、結局わからない。
人智を超えたバランス感覚。黒人並みの身体のしなやかさ。見る者を狂わせる美貌。
現代のくの一のような彼女なら、きっと負けることはないだろう。
茜は腹を貫く痛みに呑まれながら笑う。
華奢な身体は宙を舞い、地に伏して、解けた黒帯がそれを追った。
「ふーっ、ふー…っ……」
脚を振り切った姿勢のまま、悠里は小さな挑戦者を静かに見つめていた。
「ふぇん…ふぁ…い…」
茜が虚ろな目で呟く。
「喋らないで。すぐに担架が来るから」
悠里が彼女を抱え起こしながら囁いた。
「わたひ…ごめんなさい。あいへに、はら…ぁくて…」
「何言ってるの。ほら」
悠里は茜にそっと片方の頬を見せた。そこには糸ほどの、しかし確かな切り傷。
「自分の血を見たのなんて久しぶりよ。よく頑張ったね」
悠里の母親のような笑顔に、茜は目を潤ませかけ、すぐに閉じる。
「…ろ、同情はいいんれす。負けは負け、惨めならけれすよ」
閉じかけず涙を溢す彼女を、悠里は優しく抱きとめた。
やがて、がくっと意識をなくした茜を見つめ、彼女は呟く。
「……強いわね、強くなった。でも…」
ぎゅううっと拳を握り締め、それを押さえて首を振る。
何かを抑えるかのように…。
4.
「ハハ、あの王者、まるでイき損ねた雌豚みたいな顔だねぇ!」
観客席の最後列、ビールを喰らいながら巻き毛のブロンド女が言った。
筋トレに情熱の全てを注いだような二の腕ながら、全体的にスタイルがよく見えるのは、
彼女が恰幅の良いアメリカ女性だからだろうか。
「ねぇママ、あの女強いの?」
彼女の隣に座る、10歳ほどの愛らしい少女が尋ねた。
「んー…まぁ強いんじゃあないの?今のところはね」
「今のところ…?」
巻き毛の女性・ヴェラはビールの最後の一滴を啜りあげる。
「キャシー、あの挑戦者のコ…あのやり方は間違ってないんだよ。
闇雲に手を出して、腕力に任せて振り回す…ただパワーが足りないだけ」
ヴェラはビール缶を宙に放り投げた。それをキャッチし、力を込める。
何とも不快な音とともに、スチール缶が僅かずつひしゃげていく。
けきっという音で手の平サイズに縮まったそれを、ヴェラは娘に手渡した。
キャシーはそのビール缶を不思議そうに見つめ、落として踏みつけた。
その一発で缶は完全に金くずと化す。
「男が女を殴っちゃ大問題だ。女をいたぶれるのは女。
そして日本の女王者を倒せるのは戦勝国ステイツの女さ。
なぁキャシー、見たいだろう?あの王者ののたうち回る様をさ」
「ママ、出来るの?あの人美人さんだから、すっごく楽しそう〜!」
ヴェラは豪快に笑った。周囲の人間が恐ろしそうに振り返る。
「あーあ出来るさ。ただアタシはテクニシャンじゃない。
そこでだキャシー、あんたも手伝っとくれ。奴の気をひく、薬を打つ、何でもいい。
そうすりゃ、本場のへヴィ・ボクシングであいつを泣き喚かせてやるからさぁ」
ヴェラとキャシー、ブロンドの親子は面白そうにリングを見下ろす。
その視線の先では、誰もいなくなったリングで1人、拳を見つめて佇む悠里がいた。
>>172 GJ!
面白い。うん。燃えますね!
また、読みたいです!続き待っています!
ただ、やっぱアメリカなんだ……。
ローキックで堤防に木の杭を打ち込むんですね
わかります
このスレは時々エロとか抜きでもマジで燃える作品が投下されるから目が離せねえ
GJ!
しなやかな雰囲気の雌猫達の骨太なバトル描写
面白かった!
GJ
ブロンド親子がどんな卑怯な手で来るのか楽しみだ
GJ!
↑間違えました………orz
……突然で申し訳無いのですが、僕このスレから撤退します。散々大口叩いておいて住人の方の期待に応えられなかった自分が悔しいので。
サイトの日記にも書いたのですが彩 Ayaの続きはバトルシーンを修正して自サイトでやっていきます。
今まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。
>>172さん
GJ!
凄い心踊りました。これからも続きを楽しみにしております。
勝手に裏切った気になられても困るんだが…
まあ最近の展開は正直迷走している感はあったけど、それでも楽しみにしてたんだよね
スレにあるマイナス批評を見て必要とされていないと感じたのかもしれないけど、
そういう人らの意見の声は大きく、別に文句のない人はだんまりを決め込んでいる
そういう意味では俺らは冷たかった。それは謝る。
まあ自サイトに行けば続きを読めれるみたいだし、ここに来るのもサイトに行くのも変わんないか
残念だがお疲れ様!これからも応援してるぜ!
便乗。俺もあやややや大好きだ。
このスレはミヤビさんっつーか亜佐倉さんが頑張ってくれたから3まで来れたんじゃないかと個人的には思ってる。
だから文句言うなとかそういうのじゃないけど、俺個人はずっと亜佐倉さんの作品を見ていたい。
サイトだけで続けるのも構わないんだけど、俺はこのスレで皆と見たいなと思ってる。
確かに迷走してるけど、すげー楽しみだったんだ。。。。
191 :
172:2008/06/08(日) 05:23:30 ID:AlnBXa/K
私も大ファンなんですよ。…というのは置いておいて
感想非常に有難うございます。
ジ・エッジ2話、前編を投下します。
1.
悠里の朝食は重い。
ホタテや海老・イカのエキスをベースに香草で風味付けしたスープに始まり、
ささみと小松菜の蒸し煮、玄米とニンニク・牛スジのオリーブオイル炒飯、
出汁巻、小魚のほぐし身、ババロアとレモンのシャーベット…
レストランのフルコースのような品目が並ぶ。
中には日本で見かけない不思議な具材も多い。いくらの金がかかっているのだろうか。
闘技場の覇者として相当な稼ぎがある彼女だが、それが全て食費に消えるとの
揶揄がなされるほどだ。
悠里は前日に仕込みをし、朝も早くから鼻歌混じりに鍋やフライパンを繰る。
そして何時間もかけて作った挙句に、また何時間もかけてゆっくりと食するのである。
彼女の夢は些細だが多い。
その一つが、『誰かと朝食を取りながら語らいの時を持つこと』だ。
何人かに誘いを持ちかけたが、誰もが起きぬけのフルコースに食欲を萎えさせる。
ゆえに悠里の朝は静かだった。
高層ビルの高みから都心を見下ろし、テーブルの食事をつまみながら朝刊に目を通す。
彼女はスープを啜って頬を緩めた。
幸せそうに咀嚼しながら次々と味わい尽くしてゆく。
その見事な食べっぷりが強靭な肉体を形作るのだろう。
「はっ、はっ、はっ、はっ…」
悠里はスウェットとホットパンツという軽装で60qのランニングをこなしていた。
リズミカルな呼吸で軽快に脚を運ぶ。
自転車で漕ぐ程度の速さは出ており、さしもの彼女も鼻頭に汗を伝わせる。
道行く者の多くが振り返っていた。
娘の顔は油断なく研ぎ澄まされて凛々しく、結われて後ろにたなびく黒髪は
艶めいた獣の尾のよう。
そして何より、モデル顔負けのスタイルと程よく肉ののった美しい筋肉が、
日々を安穏と過ごす人間とは次元の違う存在だと知らしめる。
その洗練された美貌と磨きぬかれた体躯に、老若男女が鮮烈な衝撃を受けた。
「ふっ、ふっ、はぁー、はっ…」
新緑の中を駆けながら、彼女は爽やかな酸素を胸に蓄える。
最近は悩む事が多い。
自分が打ち負かした相手、負傷させた相手、そして彼らを大切に思う人間の事。
闘士として、覇者として、彼女は常にそれらと向き合わなくてはならなかった。
彼女は怖かった。
猛者が、ではない。復讐が、でもない。
怖いのは、血塗れの後輩を冷酷に見下ろしている自分。
骨をも砕く必殺の蹴りを放ち、自身に返ってくる脛の痛みに恍惚とする自分。
『力もないくせに暴力に頼る方が悪い』
『面倒なら圧倒的な実力差で解らせれば良い』
勝利を重ねるたび、いつしかそうした考えを意識の底に抱く自分がいた。
そしてそれを頑として否定し、戦いを楽しむ自分も。
強者には2通りある。
強さを増すたび、相手を認め、自分を認め、得を高めるもの。
強さを増すたび、世を儚み、自分を誇り、才覚を研ぎ澄ますもの。
前者は試合における英雄で、後者は戦場における英雄だ。
果たして…。
「はーっ…、……はーっ……」
悠里は大樹の木陰で脚を止め、パンツのポケットから茶帯を取り出した。
『先輩…私、強くなります。先輩と戦えるぐらい…倒せるぐらい!!』
ショートカットの少女の言葉が甦る。強くなる。
――今は自分を磨く事だ。そうしなければ、“私”はわからない。
悠里は再び走り始めた。照りつける日差しに細い背を焼かれながら。
2.
野外トレーニングに明け暮れるうち、辺りはすっかり暗くなってしまった。
悠里は仕上げのランニングで自宅近くまで戻ってきていた。
全身に水を浴びたような汗をかいている。
激しい運動で興奮しているのか、しこり立った乳首がウェアを押し上げる。
その状態になって初めて、彼女は精一杯動いたと実感できるのだ。
(いい汗掻いたわ。さすがにもうクタクタ…)
悠里は首にかけたタオルで汗を拭く。
この後はゆっくりと風呂に漬かって至福の時を味わおう。
彼女がそう思った時だった。
「チャンピオン・ユーリ…だよねぇ」
人気のない公道に巻き毛ブロンドヘアの女性が立ち塞がる。
大きい。身の丈は180程度、腕は非常によく鍛え上げられて筋が浮き、
それなのに全体としてはかなり引き締まって見える。
アメリカンモデル、その中でも格別に迫力のあるグラマラスさだ。
「 ! ヴェラ・ウェーステラン…?」
悠里は女性の顔を見て驚愕する。
ヴェラ。数年前まで女子ボクシングの無敗の世界ランカーだったが、
度重なる問題行動でタイトル戦を前に姿を消したアメリカン・ヒール。
殊更、アジア勢には不遜な態度を取る女性だった。
「貴方がなぜ日本に…?」
悠里は腕を組みながら問うた。すでに心の準備は整えている。
理由は知らないが、ヴェラの雰囲気は獰猛さを孕んでいた。
「なに、ちょっと潰しておきたい奴が日本にいてね。
この国は格闘技に裏の金を弾むから、掘り出し物がよく隠れてんのさ。
でもどうしてか、今の王者はアンタみたいな小娘だって言うじゃないか。
だから一つ、手合わせ願おうってわけだ」
ヴェラは脇の運動公園を示して顎をしゃくった。
悠里は訝しみ、しかし素直にそれに従う。
その運動公園は夜が更けるとレディースの溜まり場となることで有名だった。
「ねぇ、あいつマジで来たよ!」
「けっ、面白ぇ!」
悠里が歩を進めると、公園の回りに硝煙を炊いた物騒な姿が映り始める。
(…まずいわね)
悠里は心中で毒づいた。
ここは悠里のロードワークコース付近であり、彼女は以前レディースの集団に襲われた事があった。
当然その程度は軽くあしらい、以後は遠巻きに見られるだけで実害はない。
しかし恨みは持たれているに違いなかった。
「ん、どうかしたのかいユーリ?」
ヴェラが悠里の顔を伺い見る。動揺ぶりを確認しているらしい。
(そういえば現役時も、いちいち対戦相手を的確に煽るタイプだったわ)
的を悠里1人に絞るなら、それなりの著名人である為に家を割るのは容易い。
さらにはその近所に諍いの種があるのも戦いを生業とする以上当然だ。
ヴェラがいつの間にか試合用の10オンスグローブを嵌めている。
仮にも相手は無敗の元ボクシングへヴィ級世界ランカー、
そして周りには自分に恨みを持つ娘たち。
無傷で勝てばレディース達もさばけるだろう。しかしそれは難しい。
負けた時は勿論、満身創痍でも袋叩きはまず避けられまい。
しかし悠里は王者だ。逃げるという選択肢はない。
「いいわ…」
悠里は脚を開いて泰然と立った。
正面のヴェラは不思議な感覚に捕われる。
身長170弱。自分より2周りは小さい悠里が、気迫で同等以上の大きさに思えるのだ。
「 御手並み拝見といきましょうか。 」
悠里の後ろ髪が尾のように揺れる。不動の野生が瞳に宿る。
「けっ…!これだからジャップは生意気だってんだ!!」
ヴェラは大きく踏み込み、悠里に向かって走りだす。
喚声が公園を揺らした。
3.
ヴェラの踏み込みは流石のものだった。
かなりあった悠里との距離が一瞬で潰され、鋭い左が飛んでくる。
悠里はそれをパーリングで捌くが、あまりの重さにコンマ単位で反応が鈍る。
「WOW!」
咆哮一閃、距離を測る左は引かれ、代わりに右が唸りを上げる。
速い。悠里は思った。ハンドスピードではなく、圧迫感がこちらの時間を遅める。
捌けない、いなせない。ヘッドスリップで空を切らせる。
「っ!!」
完全にかわしたのにうなじが寒くなった。側頭がちりつき、三半規管に風が吹き付ける。
まるでマグナムのような右ストレート。
(驚いた…これが本職、段違いね)
感嘆の意を示しながら、悠里も小手を晒す。
すぐ傍に迫ったヴェラの脇に肘を当てる。至近距離なので威力はないが、ヴェラの身が少し仰け反る。ミドルレンジの空間が空く。
そして、悠里の軸足が後ろ回りに力を込めた。
「せいっ!」
ヴェラが気付いた時には、すでに悠里の右足は弓のようにしなっていた。
(さすがに…これはやべぇ!)
ヴェラの脳裏に先日見た試合が浮かぶ。一人の少女がローの一発で宙を舞った。
衝撃的な光景だった。大口を叩きはすれ、その危険性は認めざるをえまい。
だが、もう避けられない。後ろに飛んでももはや逃げ切れない。ならば。
「なめんな!!」
ヴェラは咄嗟にグローブで悠里を突き飛ばす。かろうじて距離が開く。
――ヴォン!!
大リーガーがバットを大振りしたとき、そんな音がしたかもしれない。
だがそれは目の前で空振りされたローキックだ。
ヴェラはふと痛みを感じて膝を見た。悠里の靴先が掠り、真っ白な線を残している。
細く血が滲み出した。
「けっ…カーペントレス。リアルに斧ってわけ?とんでもないね」
ヴェラが忌々しげに顔をしかめながら言う。
「貴方こそ。くれぐれも顔には当てないで頂戴ね」
悠里も体勢を立て直しながら返す。
レディース達は息を呑んでいた。なんという2人だ、と。
しかしまだ圧倒されているわけではない。
事実、悠里の後方では不穏な動きを見せる者たちがいた。
「WOw,wOa! ! Don’t fuck with me!!!」
ヴェラはワンツーの度に口汚く叫びながらラッシュを加える。
見苦しいがそれは効果的で、威力・スピードともに脅威だった。
しかし悠里はそれをダッキングとスウェーバックでかわし続ける。
「はあっ!!」
身をかわした動きを利用し、裏拳を叩き込む。
それはヴェラのブロンドに潜って首を打った。
「ぐ、この……!!」
ヴェラは手を出しながらも舌を巻く想いだった。
こちらの攻撃をすべて紙一重でかわしながらちくちくと刺してくる。
かわしながらなので威力は低いが、顎など打たれては厄介だ。
なんと冷静で卓越した戦闘勘だろう。
この王者をスタンドで打ち崩すのは難しいかもしれない…。
ヴェラがそう思い始めた時。
「きゃあっ!」
突然悠里が叫び、大きくバランスを崩した。
見ると、彼女に足元には大量の空き缶やビー玉が転がっていた。
おまけに油のような物まで撒き散らされている。
そんな足場ではフットワークなど使えるはずもない。
「O.K.!!」
ヴェラはここぞとばかりに勇んで右を放つ。
「ま、まって…」
足元をふらつかせながら悠里が慌てている。
力みすぎて脇がしまらなかったが、その一撃はついに悠里の鎖骨に直撃した。
「あああっ!!」
悠里が肩を押さえて倒れこんだまさにその時、それを待っていたように、
何かが草むらから彼女の頭に飛び掛る。
それはヴェラと同じくブロンドの髪をもつ少女だった。
彼女は倒れた悠里の頭に飛びつくと、恐ろしく慣れた手並みで首に脚を巻きつける。
「な、何!?」
倒されたショックと肩口のひどい痛みに動転した悠里は、愚かにも
そのまま立ち上がろうとしてしまう。
巻きついた少女の脚が、彼女自身の体重でぎっちりと悠里の頚動脈を締め上げる。
「かっ……あ゛…!!」
悠里は目を剥いた。頚動脈を完全に締められればどんな人間でも数分ともたない。
咄嗟に手を差し入れて完全なロックは避けたが、この少女、相当腕っ節が強い。
恐らくは母譲りか。第一脚を使って体中で締めているのだ、そう容易く剥がせない。
そして、敵は少女だけではない。
「キャシー、ナイスだ!そのまま離すなよ!!」
ブロンドの女が最高のステップを踏む。棒立ちで手を上げたままもがく悠里へ一直線に。
腋を締める。膝を曲げる。脚を踏みしめる。拳を固める。
「や…」
悠里が声を出すが、止まる筈はない。
丸太のような豪腕が悠里の腹を捕らえる。文句の付けようもないパーフェクトなストレート。一縷の衝撃も逃さずに細い腰の奥底へと叩き込まれる。
レディース達は目を疑った。
「ぐうおおおおおお…えごおぉおおお゛おふ…っ!!」
強く美しい悠里が口から大量の唾液と人間とは思えない悲鳴を吐きこぼし、
膝をついて力なく崩れ落ちる。
絶対王者の名を欲しいままにし、まともに被弾する事さえ滅多にないあの悠里が。
「うあああ……っくはっう……!!」
片手で腹を押さえて地面を凝視する悠里。その額にはひどい汗が流れていた。
本気でダメージを抱えているのだ。
「ほーらお姉さん。キャシーとも遊んでよ」
腹部への豪打に悶絶する悠里を愉快そうに眺め、ブロンドの少女が自らの脚を引きつける。
頚動脈への締め付けがいよいよ深刻なものとなる。
「け…へぇ…」
息苦しさのあまり伸び上がるように膝立ちになった悠里の腹部に、再びへヴィボクサーが溜めに溜めた一撃を叩き込む。
悠里の膝がびくんっと震え、夜の公園を痛々しい悲鳴が震わせた。
えげつないやり方で来たなぁ……金髪親子。だけどGJ!
感想どうも有難うございます。
The Edge 2話、後編を投下します。
1.
「ハァッ、ハァッ……。チッ、化け物かい…」
ヴェラ・ウェーステランは拳を打ち戻しながら息を切らせていた。
眼前には常勝の女帝が幼子に首を極められながら膝をついている。
腹部に数え切れぬほど叩き込まれた超重量の拳。
女帝の唇からは黄色い吐寫物が糸を引き、足元に広がっていた。
しかし、彼女――悠里の瞳は真っ直ぐにヴェラを捉える。
許しを請う目ではない。怒りに燃える目でもない。
ただ相手の一挙手一投足を伺う、湖畔のように静かな眼。
(こんな細っこい身体で、なんてタフさだ)
ヴェラはその視線を受けて睨み返すことに疲れ始めていた。
「これで…眠っちまいな!!」
何度似たようなKO宣言をしただろうか。
ヴェラは脚を滑らせるように踏み込み、アッパー気味に膝立ちの悠里の腹を穿つ。
「っくぉおおお゛!………かふっ……!!」
悠里の喰いしばった歯が開き、身体がくの時に折れ曲がる。
ホットパンツの隙間から太腿に透明なせせらぎが伝っていく。
「リーダー、あいつ小便漏らしちまってますよ!」
「くおお、だって。あいつも人間なのねぇ」
レディースの取り巻き達が罵りの声を上げた。
悠里にもそれは当然届いている筈だが、彼女はヴェラから視線を外さない。
「そりゃあ、あれだけお腹を打たれりゃ…ね。」
レディースの頭・早紀は悠里を見つめ、どこか物憂げに呟いた。
悠里の首を締めるキャサリン・ウェーステランは、疲れていた。
悠里はキャシーの脚を外そうと腕でガードする。キャシーは締める。
小さな身体で本職の格闘家とそんな力比べを続けているのだ。
彼女の母も疲労を隠せず、一方的な展開にも関わらず攻撃の手を止めている。
『いいかいキャシー、まずアタシがパンチで奴を倒す。
そうしたらあんたは飛びついて奴の首を絞めるんだ。
頚動脈を絞められながらパンチを浴びる、これで参らない奴はいないさ』
昨夜、ヴェラは酒をくらいながらそう言った。
キャシーは笑ってうんと答えた。そうすれば、母も笑ってくれる。
少女はいつも母に合わせてきた。
女手一つで自分を育ててくれた最愛の母を喜ばせる為に。
しかし返されるのは少女の好きな笑いではない、卑屈な嘲笑。
『ねぇママ。』
キャシーは酔って自分に頬擦りするヴェラに言う。
『あたしがいなくても、ママはあの人をたおせる?』
ヴェラはとろんとした眼でキャシーを見つめて返す。
『前に言ったろう、アタシはテクニシャンじゃないってさ。
殴ることだけに専念させておくれよ、キャシー…』
2.
決断しなければならない。悠里の本能がそう叫んでいた。
身体をいじめ抜くトレーニングで疲れ果て、長時間にわたって頚動脈を圧迫され、
へヴィ級のストレートを腹部に貰い続けたのだ。
頭の中はもう霞がかかったように真っ白になっていた。
痛み、熱さ、それすらも感じ取れないほどの浮揚感に包まれている。
意識が持つのもあと僅かだろう。
キャシーを振り落とすのは容易い。
拳をふるうヴェラに対し、ほんの半回転して背を向ければ良いのだ。
そうすればヴェラの豪腕は首にしがみつくキャシーに直撃し、年端も行かぬ彼女は
たちまちに意識を途切れさせるだろう。
あるいは後ろの彼女に肘打ちを喰らわせてもいい。背負って投げる事も可能だ。
だが悠里にはそれが出来ないでいた。
敵の子供とはいえ、幼い子供に危害は加えられない。
ゆえに彼女はキャシーを半ば庇う形で、あえて正面からヴェラと対峙する。
甘すぎると自分でも思った。しかし、冷酷に子供を切り捨てるよりましだ。
とはいえ意識が断たれるのももう時間の問題。
ならば、キャシーに構っている暇はない。締め落とされても仕方ない。
それまでにヴェラ1人さえ倒せたなら。
悠里は首を絞めるキャシーの脚から手を離した。
キャシーは動揺する。
倒れてはいないから落ちたわけではない。観念したか。罠かもしれない。
締めていいものかと緩めに締め付けを続ける。
だが、ヴェラは降参だと読んだらしい。構えを下げて息をつく。
早計だ、
キャシーが思った直後、彼女の身体は悠里の背で風を感じていた。
悠里が攻勢に転じた瞬間だった。
悠里の髪は結いがほどけ、汗に濡れて絶妙なさわり心地だった。
彼女の汗はさらさらしている。うなじから女性特有の甘酸っぱい匂いがする。
その主は瞬く間にヴェラの脚を払っていた。
ほとんど座っているに近い超低空からの脚払い。
強烈なローキックではないが、それだけに速さも桁違いだ。
寸前まで反撃など予想だにしていなかったヴェラは、きょとんとした表情で脚を開く。
脚払いの回転をそのままに、開いたヴェラの股下に滑り込んだ悠里は、
起き上がっていく身体にあわせてアッパーを放った。
「がふっ!!」
全く反応できぬまま、ヴェラの顎がかち上げられる。
悠里の身体は仁王立ちのヴェラの下から回転したまま抜けて背後をとった。
暗がりから抜け、夜の公園の灯がメリーゴーラウンドのように視界を巡る。
僅か1、2秒の出来事。
何というスピード、何という映画じみた身のこなしだろう。
悠里の背という特等席で、キャシーは生涯初めて味わう躍動感に呑まれていた。
どれだけの鍛錬を積み、どれだけの場数をこなせばこの身のこなしが出来るのか。
流れる力を無駄にせず、悠里はそれまでの動きすべてを遠心力に変えて、
立ち尽くすヴェラの背に蹴りを放つ。
鍛え上げられた身体から繰り出される必殺の蹴り。
「ぐああああっっ!!!」
この世で最も大きく逞しかった母が、まるで軽石のように跳ね飛ばされる。
当然だ。
たった一蹴りに込められた、悠里の才能と汗と情熱と気迫。
それらは今のヴェラが受け止めるには、あまりに、あまりに重すぎた。
3.
背後からの一撃にヴェラが墳怒の表情で振り返る。
しかしその顔は悠里の方を向き、固まった。悠里も違和感を覚える。
「キャ…シー…?」
今の今まで悠里の首を締めていた少女が身体を離し、悠里の傍に立っていたのだ。
「何だい、アタシが不利になったとでも思ったのかい、馬鹿だね……」
言いかけ、再びヴェラは目を疑う。
娘のサファイアのような瞳から涙が零れていたからだ。
「…ママ…」
キャシーは悠里の傍に立ち、怯えるように口を開いた。
「ママは、すっごく強いよね?この人よりも強いよね……?
ママは世界一強いんだって…思ってた。でも、もうわかんない。わかんないよぉ!!」
娘が泣いている。自分に疑問を投げかけて。
ヴェラは手をぶらりと下げて放心した。
「けほっ。サシでやれってさ。どうする?」
咳き込みながら悠里が言う。
ヴェラはグローブを強く握りしめた。殴り合いで勝てないことは既に分かっている。
今さら娘に良い所は…。
ヴェラがそう気落ちした時、悠里は意外な提案を発した。
「別に、ボクシングじゃなくても構わないのよ?」
ヴェラはその言葉に顔を上げる。
悠里は変わらず、静かにヴェラを見つめていた。まるで心を透かすかのように。
「バ、馬鹿だね。ボクサーがボクシングをせずに、何するってんだい」
ヴェラが言うと、悠里は脇を締めないラフなスタイルで拳を構えた。
「決まってんでしょ。喧嘩よ、ケンカ」
しゅっ、しゅっと空中に勢いだけのコンボを決めていく。まるで子供の遊戯。
しかし、ヴェラははっと目を見開いた。
その昔、カンザスのストリートで殴り合いに明け暮れた少女時代を思い出す。
戦う事が何より好きだった。
だから殴り合いで富が得られるボクシングを選んだ。
しかし喧嘩とボクシングは違う。ルールに大人社会の仕組み。不自由が多すぎる。
だから無敗のままタイトルを取らずに抜けた。
いや、「逃げた」のだ。
ただの喧嘩好きが生き残れるかどうかの壁、それがタイトルマッチなのだから。
王者に勝ちたい。一番になりたい。
酒に浸りながら、「無敗」の敗北者はそればかりを悔やんでいた。
最初に悠里と対峙した時、なぜ彼女が自分よりも大きく見えたのかが分かった。
「王者がここにいるのよ、ヴェラ!母親なら、娘に意地を見せなさいよ!!」
悠里が自分の胸を叩いて一喝する。
ヴェラは俯いた。そしてグローブの紐を噛み、自ら解き始める。
ボクサーの象徴というべきそれを投げ捨てて呟く。
「……ユーリ、頼みがある」
彼女の頬に涙が光った。
「アタシの脚を蹴っとくれ。両脚を、全力でだ」
母の言葉に、キャシーが泣きそうな目になった。しかし止めない。
それは母の禊なのだ。
悠里は頷き、ヴェラに近づく。
ヴェラがぐっと脚に力を込めたのを確認し、烈迫の掛け声と共に脚を振るった。
ヴェラの引き締まった太腿が震え、腰が大きく揺らぐ。
「がああ…あうう、おおおおっ……!!!」
掌を握りしめて歯を喰いしばり、斧を叩き込まれるような衝撃に耐える。
しきりに震える右足に続き、左足にもローが打ち込まれる。
二度目は耐え切れず、ヴェラは豊かに育った身を地面に屈した。
「…はぁ、はぁ…なんだい、これで全力、かい。骨も折れやしない」
ヴェラはうずくまったまま言い、笑った。
「お生憎様。貴方のボディが利きすぎて、足に来てるのよ」
悠里も笑みを返す。
「けっ、チャンピオンが弱音吐きやがって」
「この、子供に頼ってた大女が生意気言うんじゃねーわよ!」
ヴェラの煽りに悠里は舌を出して返す。
悠里の瞳はようやく、闘志をもってヴェラを映し始めていた。
ヴェラはそれを誇らしく思った。
それはこの美しい女帝に、戦う相手として認められた証だ。
長かった。
キャシーはぞわぞわする武者震いに肩を抱き、対峙する2人の女性を目に焼き付ける。
自分にとってこの世で最も強い2人。その本当の戦いが、始まるのだ。
4..
「胸をお借りするよ、チャンピオン!」
ヴェラはガードを下げ、前傾に構えた。そのままタックルに移行する。
(速いわ、良い動きじゃない)
悠里はそのタックルを切るべく軽めに身構える。
しかし悠里の手がヴェラの背に触れた瞬間、そのまま手前に来るはずの突進力は
急速に向きを変える。
ヴェラは一瞬の隙をついて悠里の背後を取り、彼女の腰を腕ごとがしりとクラッチした。
「し、しまっ…!」
悠里はもがくが、パワーでは敵わない。
「うおおおお!!」
ヴェラは叫びと共に、悠里を抱いたまま勢いよく反り投げる。
達磨式ジャーマン・スープレックスだ。
腕を取られては防ぎようもなく、悠里の頭は公園の地面に力の限り叩き付けられる。
脊髄がすっぽりと抜けるような痺れと共に、身体中がびくんっと仰け反る。
「あ…あう、あ……」
ほぼ一回転し、悠里の身体は背中から着地した。
その着地点に向け、ヴェラの渾身の右が打ち下ろされる。
「きゃあっ!!」
悠里は思わず叫んで横に転がった。頭のあった位置で砂飛沫が舞う。
立ち上がるものの、脳へのダメージでまともに水平線が捉えられない。
視界が何重にもぶれてしまっているし、脚もまっすぐ立たない。
「どうした、棒立ちだよユーリ!!」
ヴェラが再び自分にタックルを浴びせてくる。
今度はまともに正面からぶちかまされ、堪える事もできない。
「あうっ!」
悠里の身体は背後の大樹に叩き付けられる。
間髪いれず、ヴェラは悠里の右頬に痛烈なフックを叩き込んだ。
「がっ!あはあっ!!!」
悠里の首が左右に跳ねる。ヴェラと樹に挟まれて逃げ場のない中でのラッシュ。
ぐしゃ、ぐしゃあっと顔が潰されていく、久々の感覚だ。
ヴェラの攻撃は見違えるほど鮮烈に変わっていた。
型どおりの単純に重いフックやジャブではなく、踊り狂う牛のような猛撃。
(…だ、ダメ、気持ちよく…なっ……て……)
ハードワーク、数え切れない腹撃ち、窒息、力比べ。
酸欠と限界を超えた極度の疲労が、ついに痛覚を痺れさせる。
陰核が屹立し、秘裂の奥が潤うのが感じられる。
とろとろと頭を巡る快感。睡魔にきわめて近い悦楽。
「くっ…ま、まだ、よ!」
焦点の合わなくなっていた瞳を開き、悠里は目を覚ました。
殴られたまま、樹に背を預けてしならせ、溜めての前蹴りを繰り出す。
「ぉぐぅえっ!!」
鳩尾に不意の一撃を喰らったヴェラは、目を白黒させて後ろ向けに倒れこんだ。
悠里はそれを追いかけ、今度は逆に蹴りの洗礼を浴びせる。
地面に丸まったヴェラへサッカーボールキックを叩き込む。
「くっ、ううっ!!」
脚や背を間断なく蹴られ、ヴェラは為す術もなくさらに頭を抱えて小さく丸まる。
キャシーがおろおろとそれを見守る。
悠里はその一方的な展開に不自然さを感じた。あまりにも大人しい。
そして悪い予感は的中する。
「…貰った!」
丸まっていたヴェラが、突如バネのように跳ねてアッパーを放ったのである。
その一撃は今まさに蹴りを放とうとする悠里の顎を打ち抜いた。
「いぎ…!」
噛み殺された悲鳴を上げながら、悠里は再び仰向けに倒れこむ。
しかし打ちは浅い。意識ははっきりしていた。
悠里は追撃で踏みつけるヴェラの脚を抱え込んだ。そのまま足首を極めにかかる。
「い!い…っつう!」
ヴェラは足首を不自然に曲げられて呻き、近くにあった木の枝を掴んだ。
その枝と片脚を支えにし、右足に絡んだ悠里ごと強引に蹴り上げた。
なんという剛力だろう。
「う、うそでしょ………!?」
まさかその状態から投げられるとは思いもせず、悠里は樹の幹に叩き付けられる。
彼女はぐったりと手足から力を抜いた。
後頭部を打った為に脳震盪を起こしたらしい。
「これで終わりだよ!!」
ヴェラは身体の回転を利用し、止めにストレートを悠里の顔に叩き込んだ。
ぐちっと明らかな音がし、悠里の顔面が紅く染まる。
会心の手ごたえ。
ヴェラは腕を伸ばしたまま、ぞくぞくする感覚が背を這い登るのを感じていた。
自分は勝ったのだ。
この強く美しい王者に。
腕を引くと、悠里の身体が崩れていく。
豊かな胸、細い腰、ハーフパンツから覗く長身を際立たせる長い脚。
「あ、あああ!!」
ヴェラは軽い絶頂感に襲われ、悠里の白い肌を見ながら息を詰まらせた。
しかし、直後。
その視界は乳白色の白から蛍光灯の無機質な白に変わる。
背中と首と頭、順に遠くで痛みを感じ、視界に樹の幹が映りこむ。
悠里がいた。
樹の幹を足場に、高々と脚を掲げて自分の顎を跳ね上げる王者が。
――やれやれ、余計な事しちまったかね
ヴェラは遠のく意識の中で笑った。
脳震盪を起こしていたものを、わざわざ自分の拳で目覚めさせてしまった。
―――完敗だ。バッサリ、切り落とされちまったよ…。
5.
「はぁ…はぁ…」
樹の幹にもたれ掛かり、悠里は大きく息を吐いた。
ヴェラが動かないのを確認し、腹部を抱えながら千鳥足で公園を歩く。
「「…あ……!」」
声を上げたのは同時だった。
悠里ともう1人、戦いを間近で見物していたレディースの頭、早紀だ。
金のメッシュを入れたセミロングのダークブラウン、いかにも今風の髪をしている。
彼女は一瞬戸惑いの表情をし、次に警戒するように悠里を見据えた。
悠里は疲労の色を顔中に浮かべている。
しかし早紀に向け、満身創痍ながら拳を突き出してみせた。王者の誇りか。
「いいわ…。…かかって…きなさい……」
早紀はそれに何かを言おうとしたが、それよりもレディース達の騒ぐ方が速かった。
「な、何よ!さ、早紀さん、やっちゃって下さいよ!!」
「そ、そうよ!死に体で何気取っちゃってるわけぇ!?」
遠巻きに煩く囀る。
「さぁ。どう…したの…?」
悠里も拳をこちらに向けて煽る。
早紀は、その脚を震えさせている悠里が、ふらつく彼女が、恐ろしくて堪らなかった。
恐怖とは違うかもしれない。
感動、嫌悪、何か強い感情に共通する律動が、早紀の心を狂おしいほどに揺らす。
悠里が敵と見なしている、怖い、自分は頭だ、示しをつけなければ、可哀想。
良いのか悪いのかではない、するのだ、しなければならない。
雑多な考えが一瞬のうちに頭を埋め尽くす。
「…う、うわあああああ!!!!!!」
早紀は叫びながら悠里へと突っかかっていく。
ベタ足のステップ、大振りの拳。目の前に悠里の顔が迫る。
166cm、女性にしてはかなりの長身。大きい。
やられる前に、やるんだ!!先の戦いで悠里の強さが伝わってきた。
自分など彼女のほんの一蹴りで致命傷を負ってしまう。
「わああああ!!」
彼女はパニック状態で悠里へ拳を振り上げる。
しかし次の瞬間、彼女はそれを悔いた。
至近で見る悠里の瞳にはすでに光がない。立ったまま失神している。
それを知っても身体の勢いは止まらず、早紀の拳は悠里の顔面へとめり込んだ。
ぁ…。
小さな悲鳴が聞こえた気がした。
悠里の眼球が上を向き、膝をつき、力なく前のめりに倒れこむのが見える。
地面に広がる黒髪、動く事のない指、赤く腫れた脚。
仰向けると、悠里は眠るような顔で気を失っていた。身体がひどく熱い。
「す、すげぇ、一発だ!!」
「さすがリーダー!あの王者を倒しちゃっ…」
周囲で喚声が沸き起こりかけ、しかし早紀の呟きで静まる。
「……どこが……?」
早紀は悠里の身体を抱いて呟いた。
「どこが、凄いのよ。こんな…こんな惨めな勝ちが!!!」
腕に抱いた身体は女らしく華奢に見える。
しかしそこに塗り込められた努力や情熱は、自分が語る事さえ憚られるほどに尊い。
ましてや、倒す事など。
早紀は涙した。自分の非力さに、卑怯さに、愚かさに。
6.
ヴェラはホテルのベッドで目を覚ました。
懇意になったレディースの誰かが運んでくれたのだろうか。
ぼやける視界に、娘のキャシーが映る。
彼女は1人で何か戦う真似をしていた。脚を振り上げ、横に薙ぎ。
「…キックかい、キャシー」
ヴェラは娘に呼びかけた。キャシーがびくっとする。
「あ、ママ!ううん、これ、ママのボクシング!!
でもね、キャシーのはちょっと違うの。
ぜったい負けないように、お姉さんの蹴りも使うの。
ママのパンチと、あの蹴り!すごいでしょ?」
キャシーはパンチとキックを交互に繰り出しながらまくし立てる。
ヴェラはそれをじっと見つめていたが、やがて笑い出した。
品のない嘲笑ではなく、心から本当に楽しそうに。
「キャシーは凄いねぇ。でもそれは、“ボクシング”じゃないよ」
キャシーは首をかしげた。
「ボクシングじゃ…ないの?」
ヴェラは彼女の髪を撫でてやる。
「ああ。それは、キックボクシング…。『日本』の武術さ」
「…キック…ボクシング…。」
キャシーは自身の編み出した物の名前を繰り返す。
ヴェラは微笑を浮かべた。
――ユーリ… この子はきっと、アタシよりずっと強くなる。
この子が大きくなった時、また、戦ってやってくれるかい…?
あれ? 無茶苦茶GJじゃね?
悠里のヒロピン展開かと思いきや、ちょっと良い話を絡めた闘う良い女を描いてくるとは
通りすがりにGJ!
良いもん見たわ
1.
深緑の公園に朝日が差す。
悠里は金色に染まる木々の一つに背を預けて眠っていた。
その傍らに早紀が座している。レディースの頭らしからぬ正座で。
眠る悠里はただ優雅で、とても格闘家には思えない。
しかしヴェラとの死闘を見た今ならわかる。
その身体は並ならぬ鍛錬で培われた女体の傑作だ。
いわば数億もする名匠の壷に等しい。
美術館に飾られ、一般人は触れることさえ許されない至宝。
早紀は傾いていたそれを止めの一押しで壊したのだ。
罪悪感と、訪れる返礼への恐怖。それが他のメンバーのように逃げる事さえ許さない。
「ん…」
陽に顔を照らされ、悠里が目を覚ました。
記憶を辿るようにゆっくりと視界を巡らせる。
そして正座した早紀を見つけ、意外そうな表情になった。
「すいませんっした!!」
早紀は地に頭をつけて謝罪する。悠里と対峙した時同様に怯えて。
「地面に細工して転ばせたのも、最後に殴ったのもあたしなんだ。
あたしなんかが、無敗の王者だったあんたのプライドを…!」
消え入るような声。それを聞き、女帝はふっと破顔する。
「気にしなくていいわ。…私を倒したのは、貴方が今年に入って9人目。
トータルでは何百人目かわからないぐらいよ?」
「え…?」
早紀はその言葉の理解に苦しんだ。
悠里は武に携わる女性ならば知らぬ者のない『絶対王者』だ。
現役高校生として15でデビューして以来6年、試合では一度の黒星もない。
邦人に限らず欧米諸国の強豪にも引けをとらない大和撫子の星。
それが数百人に倒されているというのか。
「そ、そんな!あんたが負けたなんて話、聞いた事が……」
言いかけ、早紀ははっとする。
今まで何百人が早紀のように慌てたことだろう。
何らかの事情で満身創痍の悠里と戦い、意図せずに勝つ。
他言するはずがない。もし全容が知れれば、栄誉どころか大恥だ。
「私は試合がない日は大抵、倒れるまでトレーニングを続けるの。
戦いは勝つより負けた時の方がずっと得られるものが多いからね。
さすがに公式で負けるわけにはいかないから、野外戦で限界を試すのよ。
へヴィボクサーにレディース…。危険だけど、チャンスでもあったわ。
貴方達の相手が出来なかったのは、ちょっと情けないかな」
悠里は肩をすくめて言う。
全てはトレーニングだったのだ。
ヴェラとの決着後に自分を煽ったのは、意地でも何でもない。
思えばヴェラとの勝負を決したのは、顎へのただ一発の蹴りだった。
悠里はいつでもそれを放つことが出来たはずだ。
彼女はあえて窮地に陥るまで、じっと耐えていたのである。
ヴェラの奮戦で脳震盪を起こしたのが最大の誤算だったのだろう。
「目が覚めるまで見守ってくれて、ありがとうね」
眩い朝日の中、悠里は早紀に向けて微笑みかけた。
その笑顔はあまりに気高い。
偶然にも彼女を倒したという縁を噛みしめ、早紀は誓った。
喧嘩で多少は覚えのある腕を本気で磨こう。僅かでもこの人に近づこう、と。
※
悠里はようやく帰路につく。通勤ラッシュで賑わう駅前通りへ。
その足は立ち並ぶ建物でも一際の威容を放つ高層ビルで止まった。
『奈波フロンティアビル』
朝焼けを映す青ガラスにその文字が見える。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
数人の受付嬢が一斉に起立し頭を下げた。悠里は軽く頷いて階段を上る。
15階。人込みが塵に見える高さになると、大きな扉に突き当たる。
『目を近づけて静止して下さい』
網膜照合が行われ、続いて指紋照合。
最後にIDカードを通し、ようやくセキュリティーランプが青に変わって扉が開く。
中は屋敷のように広かった。
紅い絨毯。中央に置かれたグランドピアノ。
壁際の棚には空手、カポエイラ、ムエタイ…様々な格闘技のトロフィーコレクション、
別の棚には数え切れぬほどの本がびっしりと並んでいる。
悠里はその部屋を抜け、温泉のような浴室へと歩を進めた。
シャワーを浴びながら、悠里は鏡に映る裸体を眺める。
張りのある肌に弾かれて水が伝い落ちてゆく。
零れるようながら垂れてはいない乳房、大きく括れた腰、安産を示すお尻。
だらりと下げた腕をつまむ。
つきたての餅のように、いっさい硬さを感じない絶妙の触り心地。
黒人以上の弾性を誇る身体は、生半可な打撃など楽々と吸収してしまう。
しかし彼女の腹部や手足にはうっすらと赤みがさしていた。
(ジャブ52発、ロー49発、ストレート13発、アッパー7発、ボディ51発、
弱チョーク32分、スープレックス1回、後頭部強打3回で失神…か。
まだまだ打たれ弱いわね)
悠里は意識を失うまでに受けたすべての攻撃を思い起こした。
ヴェラとの戦いだけではない。
60q離れた他県までランニングで向かい、道場で若手衆に稽古をつけた。
18人との総当たり。勉強させる意味もあり、耐久力の限界を知る意味もあり、
一人一人にたっぷりと隙を見せて打たせてやった。
技術は拙いが、力だけは有り余っている連中である。
(その上にあのへヴィ級の連打。さすがに身体が軋んだわ)
悠里は口元を歪めた。
彼女が身を削るような特訓をするのは、単に強さを得る為だけではない。
私生活での彼女は温厚なマゾヒストなのだ。
あらゆる相手に敬愛の念を持ち、ひたむきで、時に甘えさえする女性。
しかしそれももう終わる。
一眠りして夜がくれば、悠里は『カーペントレス(木こり娘)』となる。
冷徹な常勝のサディストに。
2.
「おい見ろ、悠里だ!」
「すげぇ…いつもながらなんて身体してんだよ」
「脚長すぎでしょ、あれ…」
「お、俺、悠里にサイン貰った事あるんだぜ!」
「バッカ、あの人は誰にでもくれんだよ」
「あーいい匂いだなぁ…。なんか勃ってきちまった」
客の興味を一身に浴びながら、悠里は花道を進む。
顔へ、胸へ、脚へ、羨望と色欲にまみれた視線が絡みつく。
今日はメタリックなラウンドガールのような格好だ。
スポーツブラをつけた最高の形の胸が一足ごとに弾む。
ただでさえ短いスカートが長い脚のおかげでマイクロミニに映る。
なるほど目を引かぬわけがない。
背をしゃんと伸ばし、獅子の尾のような後ろ髪を揺らして王者は歩む。
堂々たる覇気が170近い長身をさらに上増しして見せる。
その艶やかな風格はまさしく女帝と呼ぶにふさわしい。
そして青コーナーには挑戦者が待ち構える。
「青葉ちゃん、勝てー!」
「勢いなら青葉ちゃんの方が上よ、いけるいける!!」
観客席から女子高生たちの黄色い声援が上がっている。
青葉という少女はカチューシャをした髪を小耳にかき上げ、
品定めするように悠里を見ていた。
一見するとテニスかバレエでもしていそうな可憐な少女。
しかし彼女は柔道家である。そのギャップと、負け無しの強さ、
そして女子高生というブランドで今人気が鰻上りだ。
青葉は女子高生のステータスといえる制服姿だった。
ブレザーにブラウス、棒タイ、腿まで折り込んだスカート。
ありがちな制服姿だが、彼女が着ると非常にスタイリッシュに映る。
猫のような吊り目からおおよその性格が窺えた。
――強くて、綺麗で。きっと学校中のアイドルね。
悠里は彼女を見つめながら思う。心中で笑いを堪えながら。
「どうしたんだい?人の顔ジロジロみちゃってさ」
青葉は悠里に対し、自意識過剰気味に言い放った。
絶対の自信を持つゆえの過敏さ。見られて当然、賞賛されて当然。
そう考える不遜な人物を悠里は知っていた。
――高校の頃の誰かさんにそっくり。
悠里の腹の底から黒い嘲笑が湧き起こる。
茜のように実直な人間ならば、褒めながら真摯に戦ってもやれる。
しかしこの憎たらしい青葉には微塵もそうした気分になれない。
たまらなかった。
自信に溢れ、多くの信者を携え、地球は自分を中心に回ると考える娘。
それを実力で叩き伏せると、どんな気持ちになるのだろう。
その時周りの親衛隊は、どのような表情を浮かべるのだろう。
悠里はサディスティックな妄想に打ち震えた。
コールが終わり、両者はリング中央に揃い立つ。
「キミ、ここのカリスマなんだって?凄いね。
でも今日ばっかりは大恥掻くことになるよ。
リングのいろんな場所にマイクを置いてあげたからさ、
関節でも極められながらいい声で泣き叫んでよ」
青葉は悠里を見上げ、嘗め上げるように囁いた。
「くっ、ふふっ!」
悠里はそのひと言でついに笑い声を上げてしまう。
遠くで上がる黄色い声援がおかしくてしょうがない。
青葉は気分を害されたのか、怒りに燃えた瞳で悠里を見つめる。
「すぐに熱くなるのね。燃えすぎる蝋燭は短命よ」
悠里は青葉に諭すふりをして言う。
青葉はその言葉でさらに激昂し、奥歯をぎりりと噛みしめた。
悠里はそれを面白そうに眺める。
しかし悠里はまだ知らない。
自分を小粒にしたようなその少女が、どんな皮を被っているのか。
3.
「ほら、どうしたの?早く投げないと駄目でしょ」
悠里に耳元で囁かれ、青葉は眉を吊り上げた。
「うりゃあああぁっ!!」
気合と共に悠里の腕を掴み直し、背負い投げを試みる。
しかし悠里がびくともしない。まるで大木を背負っているようだ。
「脚の力が足りないのかしら。柔道は腕相撲じゃないのよ?」
悠里は囁いて青葉の怒りに油を注ぎつつ、彼女の左脚を自分の脚で押し込んでいく。
徐々に前向きにフォームが崩れ、青葉が後ろ向けに堪えようとした。
そこを悠里が引き落とす。
青葉の身体は自重と悠里の力で、背中から痛烈にマットへと叩き付けられる。
バアアン!!
小気味良い音が会場に響く。
「っくは…あぁが……!!」
肺の空気を押し出され、青葉はうめきながら床を転がった。
彼女が随所に仕掛けさせたというマイクがその始終を拾う。
「あ、青葉ちゃん…。」
最初は何かと騒いでいた青葉の応援団たちも、次第に声を細め始めた。
先ほどから全ての投げが潰されているのだ。
投げ合いで柔道家の青葉より、悠里に分があるのは明らかだった。
「…ふふ、あっはっは!!どうしたの、まるでダメじゃない!
柔道家が投げを潰されて、一体どうやって私に勝つの?
寝技?それとも打ち合いでもする?」
悠里はマイクを使い、会場中に響けと言わんばかりに煽る。
『おおっと、これはチャンピオン、痛烈な皮肉だぁ!
男の嫉妬は見苦しい、しかし女性の罵りは美しい!!
お嬢系柔道家、青葉選手はもはや打つ手なしか!?』
実況も便乗して青葉を罵る。
青葉は起き上がったものの、じっと項垂れていた。
「あ、青葉…ちゃん……。」
「っくそ、あの女!馬鹿にすんのもいい加減にしなよ!!」
応援団からは様々な色の声が飛び交う。悠里はそれを無表情に見下ろした。
普段ならば胸が痛むことだろう。
しかし試合の異常な熱気の中、無限の瞳に晒される今は違う。
戦いにおけるショーマンシップとはエゴを見せることだ。
「さぁ、どうしたの?」
悠里は立ち尽くす青葉に近づきながら声をかける。
心が折れたのだろう、一芸に秀でた者にはありがちだ。
悠里がそう思って彼女の肩を叩きかけたとき、その肘に鋭い痛みが走った。
悠里は肘を抱えてたたらを踏む。
「キミが言ってくれたじゃんか、“打ち合おう”って!
ほらほら、どうしたんだい!?打ってきなよ!!」
青葉は眉を吊り上げながら、憤怒の形相で煽りを返した。
ジャブのように悠里の腕を叩く。
「…っく!あう!」
悠里は距離を取った。舌を巻く思いだった。
打たれた肘がひどく痺れている。パンチが馬鹿に重い。
すぐに燃え盛る蝋燭の炎、それは時として山火事にもなりえるのだ。
柔道家の打撃は予想より遥かに重い。
握力やリストの力・背筋力が極めて強いからだ。
しかし青葉の打撃は、それに照らし合わせても異様に重い。
「ほら、ほらぁ!キミ柔道家に打ち負けちゃうよ!?」
青葉はコンビネーションで裸拳を叩き込む。しかし、顔や腹を狙ってではない。
――こ、この子、腕を壊しに来てる…!!
悠里は腕を打たれながら辟易していた。
悠里が繰り出す打撃に合わせ、右手の肘と手首のみを集中的に叩いてくるのだ。
かといって手を出さずにいると顔や腹に容赦なく叩き込まれる。
「うりゃあっ!!」
「くぅうっ!」
今一度肘を打たれ、悠里はあまりの痛みに腕を押さえて後退した。
見ると、右手首と肘の辺りが青痣になっている。
いくらしなやかな筋肉を持つ悠里でも、そこは普通の人間と変わらない。
「んん、なぁに今の声?皆聞いた?痛いよぅーって感じだねぇ!!」
青葉はカチューシャを光らせて細い腕を誇らしげに振り回した。
客席の一部から笑いが起こる。悠里は歯を噛みしめた。
「柔道家、柔道家って騒いでるから、ころっと騙されたわ…。
貴方投げの練習より、腕を打つ特訓ばかりしてきたんでしょう」
悠里の言葉に、青葉は満面の笑みを浮かべる。
「さぁ?別に努力なんかしなくても、キミ隙だらけじゃない」
さらに応援団が騒ぎ立てる。
練習をしていないはずがない。悠里は思った。
これほど的確に腕を破壊してくるストライカーとは想定外だ。
そしてこの後、彼女は更なる苦戦を強いられる事となる。
『これは驚きました、王者が腕を押さえて苦しげな表情!
挑戦者の柔道家という肩書きに翻弄されたのか?』
実況が応援団と共に騒ぎ立てる。しかし事実だ。
悠里は青葉の打撃力に目を見張る思いだった。
しかし憤怒の形相で殴りかかってくる様を見て少し納得する。
単に力が強いだけではなく、怒りで力のリミッターを外しているのだ。
プライドが高いゆえの憤怒。それがこの爆発力だ。
「…っ気に、喰わないわねぇ……」
なおも殴りかかろうとする青葉の裸拳をバックステップでかわし、
悠里もまた怒りを滾らせる。
「これで、スパッと終わらせてあげるわ!!」
脚でマットを静かに踏みしめ、木こり娘は狙いを定めた。
左を打って空いた脇腹にミドルキックを叩き込む。
最悪アバラが何本か逝くかもしれないが、容赦はしない。
「せゃああああああ!!」
パンッ!!といい音がした。
「ぐ、うう…!!」
低いうめきも聞こえる。しかし次の瞬間、悠里はがくっと腰をよろけさせた。
青葉が悠里の蹴りに耐え、その脚を脇に挟んだのだ。
「た…耐えた!?無茶な…!!」
悠里は今日何度目かの驚愕に目を剥く。
「がはっ…!うう、ああおお…っぁはっ…」
青葉は衝撃に涎を垂らして苦しんでいた。しかし、脚は離さない。
悠里の蹴りは重い斧を振り下ろしているようなものだ。
並みの神経ならば受け止めようなどと思わない。
「取った…、貰ったあぁ!!」
青葉はタックルの要領で悠里を押し倒す。
悠里は片脚でもバランスを取っていたが、さすがに柔道家の押さえ込みには抗いきれない。
脚を高く上げたままマットに倒れこむ。
『こ…これは、王者の蹴りを受け止めてのテイクダウンだ!
素晴らしい根性。恐らくアバラには深刻なダメージが残るでしょう。
しかし!柔道家がマウントを取った、これは大いなリターンです!!』
実況の叫びが悠里の危機を会場全てに知らしめた。
悠里は片脚を取られたままもがく。
「っふふ、脇がお留守だよ!」
青葉は悠里の上にのって押さえつけたまま、身体を少しずつ左にずらし始めた。
――腕を取るつもりだ!
そう悟った悠里は両腕を組み合わせて守りに入る。
「さすが、いい勘してる!でも無理だよ…その腕じゃあさ!」
青葉はさっと悠里の左に回りこむと、その左腕を取りにいく。
悠里はそれを防ごうとし、ふと右腕に電流のような痛みを感じた。
先ほど青葉に集中的に叩かれた右腕だ。
うっ血して痺れた右腕には思うように防御ができず、あっさりと左腕を青葉に取られてしまう。
腕を伸ばして脚に挟まれ、捻りながら極められる。
腕が可動方向と逆に反り返り、首と肩を固定されたまま完全に伸びきる。
「い、いっつ…!!」
悠里は鋭い傷みに目を細めた。
「さぁ、タップしなよ。言っとくけど、わたし本気で折る子だよ」
青葉が脚を悠里の左腕に絡ませて言う。
むちむちした太腿の感触。しかし極めは硬く、もう抜け出せない。
悠里は歯を喰いしばって肩を蠢かす。
「無駄なんだってば。キミ馬鹿なの?」
青葉がおちょくるように言いながらさらに背を反り返らせる。
悠里の肘からバキバキと音が響いた。
「――――っっ!!」
悠里は悲鳴を上げず、長い脚をばたつかせて苦しみを表す。
ミニスカートから白いショーツが覗き、内腿に筋が浮く。
女帝のあられもない姿と先ほどの不吉な音に、会場がざわつき始める。
「ほらぁ、断裂しちゃった。これって叫べもしないくらい痛いんでしょ?
降参しなよ。今の音聞いたら、誰も責めやしないわ。負け犬、なんてね!
ふふ、あっはははははは!!!!」
青葉の高笑いがマイクで会場中を震わせる。
それに煽られるように青葉を指示する叫びが大きさを増していく。
10分以上が経っただろうか。
悠里は背を仰け反らせながら延々と続く痛みに耐えていた。
額には脂汗が流れている。
「はぁ、はぁっ…!お、折るなら早くしたらどうなの?
貴方程度の相手、足だけで丁度いいハンデよ!」
王者はなおも気丈にそう告げる。青葉の応援席からさえ感嘆の声が上がった。
しかし当の青葉は、それを称えはしなかった。
「ああそう。じゃあ、ね」
びきっ!!
硬い音は一瞬だけ。それは傍目には何でも無いことに思えた。
しかし、青葉が悠里の腕を解放した時、彼女の左肘はもはや肘ではなかった。
『お、折られたーー!!王者の左腕が、ああ、あれは…。悲惨です、悲惨です!!
私はどちらの味方もいたしません。しかし…今の王者には、かける言葉も
ありません…!!』
悠里はうっ血した右腕を天へかざしながら、仰向けで大きく口を開けていた。
何かを絶叫するようなまま、何の声も発さず。
その悠里の顔に被さるように、青葉の笑みが覗き込む。
「あーあ。意地張るから、腕がどっちも使えなくなっちゃたね。
痛いかな。やりすぎたかな。じゃあ、ちょっと気持ちよくさせてあげる」
青葉は腕の使えない悠里を抱えるように持つと、自らの膝へ乗せた。
そして悠里の両のすねを自分の両脚に挟む。
「…な…なにを、す…るの…!?」
声を枯らした悠里が慌てる間に、彼女の身体は青葉の膝の上で自由を失った。
正座するように脚を挟まれ、両腕は力なく垂れ下がる。
その状態の悠里の嘗めるように見たあと、青葉は急に手を悠里のパンツへと潜らせた。
ショーツをずり下げ、薄い茂みに覆われた割れ目へと指を潜らせる。
「なっ…!や、やめなさいよ!!」
悠里は声を上げた。
会場のあちこちで唾を呑む音が聞こえる。
「あははは、やめさせたいんだったら、自力でなんとかしたらどうだい?」
青葉が会場へ向けて言う。
それは暗に悠里を征服した事を誇示するものだった。
会場のボルテージが極限に近くなる。
「くっ…!」
悠里は脚を動かすが、青葉にしっかり挟まれたまま正座している状況では
まともに力も込められない。
悠里は奥歯を噛みしめた。己のサディストとしての矜持が穢されてゆく。
青葉はそんな悠里の首筋に舌を這わす。悠里の身体がびくんと仰け反った。
「お、敏感だね。やっぱりキミ、今まで会った女の中でも最高の身体だよ。
この感度じゃ、ファンの前でかなりの醜態を晒してくれるね」
青葉は手を悠里の身体に這わし、その胸や秘所をまさぐっていく。
「ふふ、もう乳首もクリもビンビン。戦いの最中に興奮してるんだ?
でもまだだよ、もっととろとろにしてやるんだから。
寝技で鍛えたレズビアンのテク、嫌ってほど味あわせてあげる」
青葉の言葉をマイクが妖艶に拾っていく。
「や、やめなさい、この、ただじゃおかないわ……あっっ!!」
凍りつくような悠里の剣幕も、青葉が秘所をまさぐると途端に勢いを失う。
「怒るより、どんどん中に入ってく指の方を注意したらどうだい?
キミなんかすごく血行が良さそうだから狂っちゃうかもね。
ほら、とろとろ、とろとろ…気持ちいい波がくるよ」
青葉は淫靡な言葉をささやきながら悠里を抱きしめた。
「…悔しい?わたしはね、キミみたいな美人の自信家が一番むかつくの。
大勢のファンの前で、泣きながら狂っちゃいなよ!!」
カチューシャをした制服姿の女子高生。ラウンドガール姿の麗しい女王。
女2人の噎せ返るような汗と熱気の中、そう囁く声が聞こえる。
そこでやっと悠里は、敵もまた自分と同じタイプの人間だったのだと気がついた。
タイプの違うお嬢同士のバトルで、しかもエロ展開…っ
つ、続きが今から待ち遠しい!GJ!
GJすぐる!!!
格下相手にいいようにされてさらに辱められるなんてたまらん!
ええい、続きはまだか!
つ、続きを…っ!
早く続きをぉ!!!
(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
格下とナめていた相手に肉体的にも性的にも辱められた女王とかドツボだわ・・・
ただこれだけで終わりそうもないので逆襲が始まってからの凄惨な展開を想像するともうwktk
まぁこのままぐっちょぐっちょに堕とされても私は一向に構いませんがね!
なんだこの展開、GJ
エロは無いのかぁ俺の好みとは違うなと思ってたらドストライクですよ
素晴らしいです!! 早く続きが見たい。
久々に来てみたら凄い職人さんが来てた。GJ!
皆えっちです><
1.
膝まづいて見上げるリングは広かった。
白いライトが自分たちを淡々と照らしている。そのライトは暖かいが、開いた脚の間では
濡れたショーツがひんやり冷たい。
ちゅくちゅちゅくちゅくち … ちゅくちゅっちゅっくちゅ …
粘質な水音が絶え間なく聞こえる。音と同じリズムで股座にむず痒さが蠢く。
肉のあわいに沈みこんだ指は、まずゆっくりと周りの襞を撫で回し蕩かす予告をした。
そして興奮で膨らんだGスポットを的確に捉える。女の生理反応で腰が浮く。
そこをぐりぐりと可愛がられ続けると、やがて女の奥底からは愛液があふれ出る。
意思などとはかけ離れた肉体の唾液だ。
指はその蜜をたっぷりと掬って割れ目から抜けると、傍に息づく小さな肉芽を覆った。
そしてフードから半ば顔を出した陰核がじかに扱き立てられる。
陰核はむき出しの神経に等しいのだから、いくら悠里でもたまったものではない。
『うう!』
悠里は陰核を扱かれ、腰を引きながらうめいてしまう。
呻きはマイクで会場中に反響し、大きなざわめきを起こす。
女帝は頬を赤らめて俯いた。
「ふふ。そんなに可愛い声上げるんだ、無敗の王者さん」
背後の娘が嘲るように囁いてさらに陰核をこねまわす。
無数の瞳に見られているのだ。そう意識しても身体が思い通りにならない。
最初はひりつくだけだった陰核のこねも、愛液が馴染みだしてからは腰が引けるほどの
言い表しようも無い快感にすりかわってしまっていた。
この快感は危険すぎる。後頭部を打ち付けたときよりも鮮明に脳が警鐘を鳴らす。
尿意の臨界点に似た、すべてを投げ出したい理不尽なむず痒さ。
「ああ、ああ!」
腰を跳ねさせ、そう叫ぶのを止められる人間が果たしているのか?
観客はできるか?後ろの蹂躙者は果たして耐えられるのか?
悠里はロープを睨みながら声もなく吼えた。
自分が声を上げるたび、あちこちでくすくす笑いが沸き起こる現状に。
悠里は膝立ちのまま、背後から青葉に「絡みつかれて」いた。
身につけていたメタリックなコスチュームは“邪魔”だと青葉の剛力で引き裂かれ、
床へ無残にうち捨てられている。
青葉の細腕は悠里を巻くように抱き、豊かな乳房とショーツをまさぐった。
ショーツに潜った指はとみに激しく動き、会場に響くぐちゅぐちゅという音が悠里の中の様子を生々しく物語っている。
「すげぇ音…。悠里もやっぱ女なんだな…」
「あ、アングルだろ。悠里があんなので感じるわけねぇよ!」
「でもどう見たって感じてるじゃない…。気持ち良さそうに腰うねってるしさ」
「あれが濡れるってことよ。射精すだけの男にはわかんないでしょうね」
音を巡って会場では様々な声が漏れた。それらがリング上でも妙にはっきりと聴こえてしまう。
「ふふ、キミが感じてるかどうかで口論しちゃってるお連れさんがいるねぇ。
素直に教えたげたらどうだい?もう腰が抜けるくらい蕩けてます、ってさ」
青葉は陰湿な笑みを浮かべて悠里に囁きかけた。
「はっ…ま、まさか…はぁ…そんなこと………ないわ……はっ、はっ…くっ…!」
悠里は涙を浮かべて青葉を睨む。しかしその身は指を蠢かされるたびに悶えた。
意地を張っているのは子供にも明らかだろう。
「ふぅん、感じてないって言い張るんだ」
青葉は目を細め、悠里を乗せた膝を少しずつ開き始めた。
間に挟まった悠里の脚も無理矢理に開かされていく。
「やめ…っ!」
悠里の小さな非難を聞く者などいない。
「それじゃみんな、悠里さんのあそこを見せて貰おっか。綺麗なままだといいねぇ」
青葉は言いながら悠里のショーツに手をかけた。
艶やかな悠里のイメージにマッチした、シルクの白い紐パンツ。その横紐に指をかけてするりとほどく。
「あ、いや!」
悠里が制止する間もなく、紐が解けたショーツは青葉の指に絡んで取り去られる。
「皆見えるぅ?この真っ白な紐パンツ。よっっぽど自信がある女じゃないと穿けないわ。
ふふ、本当に女王さま気取りなんだね、キミって」
青葉は紐パンツを指先で回しながら嘲った。
悠里が燃えるような瞳で睨みつけるのを見て、さも可笑しそうに笑いながら腕を振る。
「あっ」
悠里は目を疑った。
あろうことか、少女は長時間の嬲りでたっぷりと愛液を吸ったそれを、男の群がる観客席へと放ったのである。
「お、おおおおおおお!!!!」
雷轟のようなどよめきが起こった。我こそはと男たちが群がり、手にした者を次々となぎ倒しての醜い奪い合いが始まる。
悠里は絶句した。
運良く手にした男がショーツを鼻に押し当て、鼻腔を膨らませたのだ。
「う、うあぁ、すげええ……!!」
男は目を見開いて興奮しきり、ズボンを擦りはじめる。
控え室で少年のように目を光らせてサインをねだってきた男だ。
自分の存在を神格化する男に、悠里は「仕様のないこと」と喜悦に浸った。
その男がすっかり自分を俗物として見ている。
悠里の分泌した愛液を啜り、所詮は抱き甲斐のあるだけの女だと卑しく笑う。
「う、ぐぐ…!!」
悠里は顔を真っ赤にして唇を噛んだ。
「ぁっはっはっはっは!!男ってほんと信じられない、あんなモノを!
そんなのが欲しいなら、ここにもっと濃いのがたくさんあるわ!!」
青葉は悠里の秘裂に指を沈める。くちゅりと音がする。
悠里のラヴィアは男を知らないか、あっても経験の乏しそうな鮮やかな桃色だ。
青葉はしばしそこを嬲り、指を抜いて頭上へ掲げる。
水飴のような愛液が糸を引いた。
モニターにもそのいやらしさが大々的に映され、観衆は固唾を呑む。
さらに青葉は、その腕を外へと差し伸べて1人の男に晒した。
「ほら、お嘗め。」
男は最初こそ面食らった顔をしたものの、青葉の白く美しい指、細い腕、猫の目、
天を仰ぐ悠里の顔、その零れんばかりに張った胸、折れそうに細い腰を順に眺め、
おそるおそる少女の蜜の垂れる指をしゃぶる。
「ふふふ、あははははは!!!ねぇ美味しい、美味しいの?
愛液なんて生臭くてしょっぱくて、わたしはとても口に含む気がしないや!
でも、ねぇ?キミのならさらさらして美味しいの?」
青葉は男の口から指を引き抜き、液で光る手を悠里の顔に塗りつけた。
「く…う……!!」
濃厚な臭気。化粧をせずとも美しい顔が歪み、屈辱に燃える。
直後、青葉は手をのけた。僅差で悠里の歯ががちんと噛みあわされる。
「やだ、噛まないでよ。もうそれしか抵抗できないからってさ。
ねー皆、みっともないよねぇ。常勝の王者さまが小娘の指を噛まれるのよ?」
嘲り笑う青葉の傍で、顔を濡れ光らせた悠里は悔しげに歯を鳴らす。
試合前まで2つに分かれていた声援は、今や完全に統合されつつあった。
王者を腕に抱えて翻弄する少女、顔に愛液を塗りつけられて屈する王者。
明暗は露骨に分かたれていたからだ。
悠里の美しさにそそられていた者、強さに魅せられていた者、
それらが今や下を向いて黙り込んでいる。
逆に女子高生を始めとする青葉のファンは沸き立っていた。
「すげえや青葉、やっぱオマエ最高だよ!」
「そろそろイカせてあげなさいな、それから裸締めで失禁KOよ!!」
青葉は圧倒的な声援を受け、誇らしげな笑みを浮かべた。
「ふふ、口先では生意気言ってたけど、身体はこんなに正直じゃない。
ぐちょぐちょの襞が指に痛いくらい吸い付いてきてるよ。
わたしの指をおちんちんとでも思ってるの?飢えてるんだね、キミ」
青葉は3本指で悠里の中をくじりながら、指の間に陰核を挟んでゆるゆると扱いた。
悠里は泣くような嬌声をあげる。
豊かな胸は青葉の手の中で形を変え、蕾を硬くしこり立たせている。
指で淡みをひらくと、とろぉっと濃い蜜が洞穴の奥から流れ出てくる。
悠里が性的に極まっているのは弁明のしようもない。
カメラはその様子を克明に写した後、次に悠里の表情を捉える。
眉をハの字に折り、目尻から涙を溢し、鼻先に愛液を光らせ、濡れた唇は半開きで、
視線は横を向いたまま凍りついたように動かない。
まるで強姦された無力な少女のように。
青葉は悠里の腕をとって掲げ、その腋の下に舌を這わせた。
客席の一部で失意に満ちた嘆きが起こる。
腋を舐める、それは行為だけなら愛撫の一環でしかないだろう。
しかし王者が腋という弱点を晒し、挑戦者がそこを嘗めとる。
それは悠里に憧れる者にとって、あまりに絶望的な光景だったのだ。
しかし、悠里がどうにもできない事もみなが理解していた。
右腕は手首と肘が真紫になって到底使えるものではないし、左腕は本来肘のあるべき
部分が外れて筋のように細まっている。
長い脚は執拗な苛みと正座したまま踏みつけられる事での震えが来ている。
悠里は四肢が利かぬまま嬲り者にされ、好奇の視線の中でただ喘ぐしかない。
「はしたない…私なら自殺モノね」
「本当。素直に参ったって言えばいいのに…プライドが高いのか無いのか…ねぇ」
「おい、誰かもう止めてやれよ。泣いてんじゃねぇか…」
もはや会場を覆っているのは同情だった。悠里はそれをひしひしと感じた。
「あーあ、何だかわたしが悪役みたい。弱いキミが悪いのに、ねぇ?」
青葉はわざとらしく言う。
悠里は滝のような汗をかき、ひどく息を乱していた。
ただの一度もイかせて貰えず、腰の抜けるような高原状態を保ったままでの
「焦らし」を受けているのだ。
性感の淵で進む事も戻る事も許されず悶え苦しむ。
死の覚悟をした捕虜でさえ女性器を弄り回されるその拷問には耐え切れず、
最後には必ず秘密を吐露したとも伝えられる。
悠里を抱きながら、青葉は己が女である事に感謝していた。
餅のように柔らかく絹よりも滑らかな珠の肌。
発情に伴って立ち昇る、ほのかに甘く爽やかな上質の汗の香り。
挟んだ脚から伝わるバネのようにしなやかな筋肉。
くわえた指を強く柔らかく咀嚼する極上の膣。
もしも青葉が男なら、間違いなく理性をかなぐり捨てて抱くだろう。
男とはそういう生き物。そして悠里はそうさせるだけの上玉だ。
その悠里を篭絡させる、その為に青葉は半年以上も休まず特訓を続けてきた。
決着の時は近い。少女は悲願の成就に胸を高打たせる。
「さぁ、もうイかせてあげる。皆に見られながら、はしたなく悶えなよ!!」
青葉は腰を浮かせ、悠里の股を限界まで開いて痴態を見せ付けた。
「い…いや…!」
悠里が首を振って抵抗する。青葉は彼女の赤く充血した秘唇を擦りあげた。
ラヴィアと陰核を同時に扱きたてられ、悠里は悲鳴をあげる。
無数の目が見ていた。絶対王者としての尊敬に満ちた目ではなく、蔑み哀れむ視線で。
マウントで一方的に叩き伏される、血塗れで逃げ惑う。
世界の強豪とやりあう中、時にはそんな場面もあった。その時でも誰かが彼女を支援した。
しかし今、彼女の勝ちを信じる者はいない。
『青葉!青葉!!青葉!!!青葉!!!!』
会場中が青葉を支援するコールで満たされている。
裸を見られたぐらいではうろたえない。しかし辱められるのは全く別だ。
後ろから抱かれ、陰部から蜜を垂らし、それを何百というファンが見ている。
屹立した乳首を、赤らんだクリトリスを……。
「う、ううっっ!!」
常勝の女帝は天を仰いだ。直後、彼女の秘部からは夥しい飛沫が噴き上がる。
「あははは!!人に見られて潮吹き?信じられない!!!」
青葉は高らかに嘲笑した。
人々はあるいは拍手し、あるいは項垂れて顔を覆う。
『ついに、ついに悠里が潮噴きだー!無敗の王者が挑戦者の手で陥落ーー!!』
実況が叫び、審判がまさにゴングを鳴らさんとしたとき、それは起こった。
「んぐ、ふっ…。 お、お、んうぅおおげぇええぇええっ!!!」
蛙の潰れたような悲鳴とともに、リングに白い嘔吐物がぶちまけられる。
吐いたのは青葉だ。
2.
『は、吐いたー!!青葉選手が突然の嘔吐!過度の興奮…いや、ダメージか?
王者に潮吹きという屈辱を与えた直後、自らも公然嘔吐という世紀の失態っ!!』
実況の叫びが酸味を帯びた匂いにかき消されてゆく。
青葉は勝ちを確信していた。悠里は観客の見守るなか惨めにも潮を噴いたのだ。
自分に照らし合わせて考える。それは絶対的な敗北。
それ以上衆目に晒されることは矜持が許さない。思考力さえなくす。
悠里も間違いなくその類だろう。
とうとうこの王者に勝ったのだ。完全なる勝利だ…。
青葉が全てから解放されて力を抜いたその瞬間、脇腹へ肘が叩き込まれた。
悠里の蹴りを受けた左脇腹だ。テイクダウンの代償でアバラが数本いかれている。
そこへの肘打ち――いや、正確には上腕打ちか。
脇腹へ叩き込まれた悠里の左肘は、完全に脱臼して紐状になっているのだから。
胃袋が膨れ上がって中身が逆流する。臭気が鼻を侵す。
「んごぉ、ぐはぁあああ…!!」
青葉は腹を抱えながら涙した。沸いていた客席が水を打ったように静まり返る。
うずくまる青葉の前に影が落ちた。
青葉ははっとして上を見上げ、そして身を凍らせる。
「……よくも……。よくもよくも、よくも………ッ!!!!!」
青筋を浮かせ、歯を喰いしばり、尾のような後ろ髪を揺らす逆光の影。
獅子か、虎か、豹か。その獰猛な生物は、明らかに青葉に“殺意”を抱いていた。
その脚から神速の蹴りが放たれる。
「きゃあっ!」
青葉は顔を腕で庇った。肩がごりっと唸り、華奢な身体は容易く吹き飛ぶ。
転がって逃げても悠里は一呼吸で目前に迫った。青葉は咄嗟に身体を丸める。
2発の蹴りがほぼ同時と思えるほど連続で叩き込まれた。
「あぐうっ」
まず腕には足の甲での蹴りつけ。
皮膚表面で一瞬タメながら抉りこむように蹴る、標準的なローキック。
腕に高圧の電流を浴びたような痺れが走る。
続いて脚への本気の蹴り。
悠里はバネを活かして目で追うのがやっとの速さで旋回し、足刀で青葉の膝を薙ぐ。
慣れない人間は彼女が棒立ちのままローを放ったと思うだろう。
その衝撃こそ、悠里が『カーペントレス(木こり娘)』と呼ばれる所以だ。
「くぁああああ!!!」
膝がバキバキと音を立て、青葉はマットの上で円転する。
「さぁどうしたのおまえ、反撃なさいよ」
床を這う青葉に、悠里が声を投げかけた。
客席が凍り付いている。実況さえもがマイクを握って静止している。
友人を振り返ると狂喜していた彼女らまで不安げな表情だ。
先ほどまで、あんなに青葉圧勝のムードだったというのに。
その状況まで必死で持ち込んだのに。
「たった数発の、蹴りで…?…キミが王者だから?…頂点だから?」
青葉は血の滲むような特訓と、体型を維持したままの肉体改造を思い出す。
蹴られた腕が、膝が痛い。 すべては――悠里のせいで。
「……ふざけんじゃあないよおっっ!!!」
青葉は跳ねるように起き上がった。脚を踏みしめて眼前の悠里の頬に拳を叩き込む。
悠里は不意をつかれた上に手が使えない、当然ガードも出来ない。
会心の手ごたえ。
「ぶあっ!!」
悠里が大きくよろめいた。よろめきながら殺気に満ちた目で睨んでくる。
青葉も歯を剥き出しにして睨み返す。
「「…殺してやる!!」」
リング中央、2匹の女帝が頭をかち合わせた。
3.
『こ、これは壮絶などつき合いだー!!共に品格と人望のある令嬢同士、
それがリングの中、アウストラロピテクスよりも野蛮な殴り合い!!
誰か止めろ、血が流れるぞ!!だが私にはできない、敵わない!!!』
実況がリングに叫びを投げる。
「青葉!青葉!!青葉!!青葉!!!」
「ユーリ!ユーリ!!ユーリ!!!ユーリ!!!!」
喚声は再び拮抗し、応援合戦が会場を奮わせる。
「うりゃああああっ!!」
弧を描く青葉のパンチが悠里の鼻先へめり込んだ。
「ぐうっ!!」
悠里がよろめく隙に手首を固め、背を反らせてさらに連打を繰り出す。
「うっ!ぐっ!がっ、あっ!ぐ、あっ、がは!!!」
悠里の顔が左右に弾けとび、リングに血の雨を降らせる。
だが彼女が打たれながら脚を引いた直後、今度は青葉が悲鳴をあげた。
「があああ…ぐうえええ……っふ!!」
腹部を抱えながらよろよろと後退する。
手数ならばパンチの青葉、威力ならばキックの悠里に軍配が上がる。
悠里は所々が赤くなった裸体を衆目に晒していた。
青葉もブレザーを脱ぎ、ブラウスを第三ボタンまで噛み千切られたボロだ。
まるで浮浪少女の装い。しかし彼女らはなお高貴だった。
気の強い凛とした目を光らせ、黒髪を吹きすさぶ戦風に舞わせて。
「わたしにだって、意地があるんだ!キミよりずっと誇り高い意地が!!」
青葉が悠里の懐へ潜り込み、素早く腕を取った。それだけで悠里は泣きそうな顔になる。
そして青葉は悠里の脚を刈り、豪快に背負い投げた。
手を使えない悠里にそれをかわす術はない。
「きゃ…!!」
悠里は背中からマットに叩きつけられ、切羽詰まった悲鳴をあげた。
今日の彼女は頭を打つと特に酷くよろけるようである。
足元もおぼつかずに立ち上がる悠里に、青葉は渾身の右を叩き込む。
頬に、腹、また腹。濁った悠里のうめき声がその威力を物語る。
しかし、悠里も伊達に王者を名乗るわけではない。
青葉との距離に合わせ、前蹴り、横蹴り、踵落とし、様々に蹴りを使い分ける。
単に脚がしなやかなだけではできない芸当だ。
蹴りを繰り出す腰の粘り、腕の振りを必要としない絶妙なバランス感覚。
脚のみでの戦いなど、それらを高い次元で鍛えていないと為しえない。
「どうしたんだい、ひどい顔だねチャンピオン!」
悠里の顔は殴られ続けて腫れあがっていた。
左目が塞がり、鼻からは夥しい血を流し、唇も数箇所切れている。
完全なノーガードの為、へヴィボクサーの連打を喰らった時よりも酷い。
「おまえこそ、さっさと病院に行ったらどうなの?」
酷さでは青葉の脚とて同様だ。
太腿も膝も脛も、至る所が真紅の大蛇に巻きつかれたよう。
彼女は常に臀部がマットに吸い寄せられるような感覚の中にいた。
尻餅がつけたらどんなに楽だろう。しかしそれをしては、もう悠里には勝てない。
2人は憤怒の形相で掴みかかってゆく。
鈍い打撃音が延々と響き合い、リングに血と汗で地図が描かれる。
互いの勢力圏を示しあう執念の地図が。
もはや両者に罵詈雑言が交わされる事はなくなっていた。
相手ももう限界だ。共にそう信じ、燃え盛る瞳で威嚇しあう。
猫かトラかライオンか豹か。いずれにせよ2人は孤高の捕食者だ。
そして王者は2人いらない。
「把ぁぁ……!!」
悠里は弓を引くように右足を下げて半身に構えた。
「来るのかい、ならこっちもマジで殴らせて貰うからね!!」
青葉は腰をためて剛力の全てを拳に集中させる。
決着だ。会場が息を呑んだ。
2人が弾けるように踏み出したのは同時だった。
悠里がマットを踏みしめ、静かながら恐ろしい速度での飛び膝を放つ。
青葉は細い身体全てを捻りながら豪腕を悠里の顔に振り上げる。
2匹の捕食者はか細い腕と伸びやかな足をお互いに突きたてていた。
拳は女帝の顎を高らかに跳ね上げ、膝は少女のブラウスに皺を刻む。
2人は同時に崩れ落ちた。
青葉はへたり込み、悠里は尻餅をつき。
全く異例な事ながら審判がリング内へ駆け上る。
彼女はまず悠里の顔を覗いた。
目を見開き、瞳孔をぐらぐらと彷徨わせてはいるがやがて収まる。
次に審判は屈み込んで項垂れた青葉の顔を見上げる。
…彼女は白目を向いていた。口から溢れるほど唾液を零し、ぴくりとも動かない。
「水月を本気で蹴ったからね、しばらく飛んでるわ」
戸惑う審判に、肩で息をしながら悠里が言う。
審判はおたおたと立ち上がると、両の手を掲げて交差した。
『試合終了ーー!!やはり王者は変わらない、神の斧が挑戦者を粉砕!!
しかし挑戦者の青葉選手、お嬢系柔道家などとはとんだ失言!
誇り高きキャットストライカー、王者に苦汁を舐めさせる堂々の奮戦でありました!』
実況が割れんばかりに叫びを上げる。会場中から万来の拍手が巻き起こる。
しかし…。
4.
……しかし。宴はまだ終わらない。ここは女の闘技場だ。
男の友情よりも女の陰湿さが全てを支配する穴倉。綺麗に終わるとは限らない。
キャットファイトには興行上、娯楽の要素が欠かせない。
客の多くは単に試合の勝敗だけでなく、勝者による敗者への報復を期待してもいる。
「チャンピオン、あの。ご希望通りお持ちしました…」
審判の娘が悠里におどおどとバスケットを渡す。
悠里は横髪を払いながらその中身を取り出してゆく。
ローション瓶に、細く長いペニスバンド、アナルビーズ…。
「や、やめてー!!青葉ちゃん頑張ったじゃない!!許してあげてー!!」
どこかで赦しを求める声がする。
失神したまま審判に四つん這いにされ、後ろ手に縛られるカチューシャ娘。
そこにゆったりと悠里が覆い被さった。
「あ!うあ!うあ、…っあ!!」
青葉はカチューシャを揺らして泣いていた。さらさらした髪がマットをくすぐる。
「はは、驚いたわ。あれだけ大口叩いておいて、おまえ処女だったのね」
悠里はうっ血した腕で青葉の腰を抱き、深々と貫いていた。
腕の痛みより蹂躙する悦びのほうが勝るらしい。
ペニスバンドが容赦なく青葉の初物の花弁を割りひらく。
白濁したローションを僅かな破瓜の血がピンクに染めた。
ずごっ、ずごっ、ずごっ、ずごっ……。
悠里は残酷なほど大きな抽迭で青葉を犯していた。
一片の憐れみすら映さないその顔は清清しくさえあった。
「くっ、憶えて、なよ…!もう、キミだけは絶対にゆるさない…。
必ず、必ず復讐してやる!!!」
青葉は後ろから貫かれ、泣きながら喚いていた。
その様が余計に観客の嗜虐心をそそる事にも気付かず。
「いいわ、いつでもかかって来なさい。傷つけられる痛みを知って、
これでおまえのサディズムも一皮剥けるでしょうからね」
悠里は言いながら縛られた青葉の腕を掴み、引きずってロープの外へ出した。
リング外に青葉の首が飛び出る形となる。
「さあ皆、お楽しみの時間よ。青葉ちゃんのこれからの為に、
たっぷり可愛がっておあげなさい!」
女帝の一声で、リングに男たちが殺到する。青葉は目を見張った。
「ん、んうぅー!!」
むさ苦しい中年男性に、青葉の艶々とした唇が奪われる。
女子高生たちから悲鳴があがった。
敗者の少女は唇を舐められ、舌を絡ませられながら噛む事はできない。
リング上で選手と戦うのとは違い、観客に怪我をさせれば立派な傷害罪だ。
「おい、次は俺だ!」
中年に代わり別の男が青葉の口を貪り始める。
「むううー!うー、うぉほえてははい…むうっ!!」
お嬢と呼ばれ、学年中から羨望の眼差しを受けていた無敗の柔道家。
彼女は今ずんずんと悠里に突かれ、見知らぬ男に唇を貪られて身悶えていた。
「わかった?これが此処で女に負けるってコトよ」
悠里はくすくすと笑いながら、青葉の小さな尻穴を指で開いてアナルビーズを宛がった。
リングでの悠里は完全なサディストである。
受けた辱めや痛みを残らず相手に返す常勝の捕食者。
温厚なマゾヒストとしての彼女に惚れる者には想像もつかないだろう。
彼女自身、リング上での己のサディズムに恐怖するほどだ。
だが彼女は、その二つの人格を共存させることでようやく自我を保てていた。
力には行使したいという魅力が付き纏う。
容易く人を壊せるほどの力、それを生まれながらにして持ちえたならば尚更だ。
普段は温厚なマゾヒスト、リングでは常勝のサディスト。
けしてその均衡を崩してはならない。
リングで負ける事があったり、私生活で殺意を抱いたり。
それらちょっとしたことで自我が狂いかねないと悠里は悟っていた。
その時自分はきっと、見境なく人を傷つけるようになる。
そうなった時に一体何者が自分を止めてくれるのか。
自らの身体の下で喘ぐ青葉を見つめ、バスケットに残された茶帯を眺め、
悠里はくつくつと笑った。どこかひどく寂しげに。
マゾとサドの女王…
今一番負ける姿が見たいヒロインが今ここに誕生した!
悠理、潮吹きまでしといて勝ちに持ち込めるとはこれからのバトルも激しい物になりそう!
作者さん凄い力作GJ!
凄まじい迫力、感動しました。
これは凄すぎる
エロをまじえつつも高次元のバトル描写
神じゃ、神がきたぞ
なにこのクオリティ……
しかし悠里はもう薬でも盛らないと試合では倒せそうにないな
ヤヴェェエよ、超GJだろ
誰か早く海外の女帝にオファーするんだ!!!
早く!!!!!
主人公が出てる大会ってどこレベなの?
街とか市レベ?
それとも全国レベル?
海外オファは早い気がする。
漏れとしては県レベぐらいで、これから
全国のツンツン同士の美人対決がいいなぁ。
作者GJ!
悠里強過ぎるな
ヴェラに無敗の元ボクシングへヴィ級世界ランカーっつー設定がある以上普通に世界レベルかと
更新まだかよー
更新なんてせかすもんじゃないだろ。
神のペースで都合いいときにでいいじゃん。
元々数ヶ月に一度投下ってのが普通のスレだしね
そういや、このスレって保管庫的なのないの?
無いと思う
更新は基本的に不定期です。
ですが出来るだけ皆さんの声援に恥じない作品にしたいと思います。
ちなみに主人公・悠里は一応日本チャンピオンレベルのつもりです。
格闘少女のカリスマですが、女闘自体がマイナーなので世間一般での知名度はそう高くない、という感じ。
詳しくは次回に説明を入れる予定です。
以下、4話です。
1.
その部屋は中華風の趣きを湛えていた。
壁には優美な柳模様が描かれ、障子の枠は広がる木の枝を模し、
壷や屏風には鮮やかな彩色で龍や華が描かれている。
そして木の床はそれら全てが映りこむほどに磨き抜かれていた。
その床に1人の女性が座している。
名は香蘭(シャンラン)。
実年齢はゆうに30を越えるが、外観は17,8にしか見えない。
ぱっちりとした瞳、左右に垂らした三つ編み、つやつやの肌。
その若々しさは中国が誇る薬事・美容の結晶であった。
しかしそれでも、たとえ香蘭があと10若かったとしても、
眼前に横たわる女性にはやや見劣りする。
香蘭は女性――悠里の裸体にほぅと溜め息をついた。
香蘭だけではない、彼女に鍼灸を習う娘たちも何十人と見入っていた。
鍼灸の大家である香蘭が自ら鍼(はり)を取る事はそうあることではないし、
鍼を受ける悠里も女性として最高レベルに研ぎ澄まされた肉体の持ち主だ。
その2人の施術はもはや芸術だった。
湯上りの悠里の体はほのかに上気している。
山羊のミルクを岩清水で溶き、桜の花を閉じ込めたような肌。
手で覆うと吸いつくように瑞々しい。
香蘭はその悠里の左腕をとって擦る。
人間の皮膚にある「疾患による微細な陥没」、いわゆるツボを探るためだ。
香蘭は悠里のツボを探り当てると金色の鍼を手に取った。
金を含む鍼は柔軟性に富み、刺入時の刺痛が少ない。
香蘭はその先を悠里の肘裏に宛がう。
針先はきめ細かい肌を沈み込ませ、ある一瞬、薄皮を弾けさせて侵入する。
さくっ。
鍼が刺された瞬間、悠里は身を震わせた。
挿し込まれたのはわずか2.3o。しかし体の奥まで痺れが走る。
悠里はつらそうに声を漏らした。左肘は以前青葉に断裂させられた箇所だ。
「リハビリ込みの全治二ヶ月か。ひどい怪我だったな」
「…ええ、ここしばらく左手を使った特訓ができなかったわ。
ずいぶん筋肉が痩せてるでしょうね」
悠里は目を瞑ったまま息を弾ませた。
もとより悠里の身体は並外れて強靭であるし、彼女自身も食事などに気を遣う。
血肉に関してなら一流アスリート並みの回復力だろう。
しかし腱や関節は一般人とそう大差があるわけではない。
というより、あれほど凄絶に砕かれても回復できる事自体が特筆に価する。
「何、貴様ほど鍛え慣れた身体なら戻るのに時間はかからん。
もっとも、無茶な鍛錬で肥大した低質な筋肉を付けるのは論外だがな」
香蘭はそう言い捨てて刺入を再開する。
香蘭の鍼は肩を回り、横腹に差しかかった。
肉も薄く敏感な場所だ。鍼が送り込まれる毎に悠里がくすぐったそうに悶える。
彼女は体中にどっと汗をかいていた。
それは香蘭の鍼の効果と、悠里の感度の良さを端的に物語る。
しかしそれだけではない。
桜色の肌に鍼を打ちながら、香蘭はふいに目つきを鋭くした。
「悠里…随分と感じ入っているようだが、私は貴様に負けた日を忘れた訳ではない。
いつ禁針穴(急所)に鍼を打たんとも限らんぞ?」
肋骨の骨端に深く鍼を打ち込んで香蘭は凄む。周囲の中国娘たちが騒然となった。
針は一瞬で人命を奪う。急所を刺されれば如何に悠里とて即死は免れない。
そして香蘭は本来、針を使った暗殺術が専門だ。
幼い少女の頃から要人暗殺を眉一つ動かさずにこなしてきた。
日本に来た理由も暗殺の依頼があったためだ。
彼女は数え切れぬ命を奪った。4年前、17歳の少女に路地裏で敗北を喫するまで。
しかし当の悠里は香蘭の殺気を涼しげに受け流す。
「ふふ、怖いなぁ。これじゃあ抵抗もできない」
下腹に打ち込まれる針に腰を仰け反らせて笑う。
言葉とは裏腹に、悦楽を感じこそすれ恐怖など微塵も覚えてはいない。
「…やれやれ、貴様には敵わんな」
香蘭は射抜くような視線を和らげる。
そこには悠里への強い親愛の念が残っていた。
鍼治療で最も大切なこと、それは施術者と患者との信頼関係だ。
普段の悠里はまず本気で怒る事がない。
例え本気の殺意を向けられても飄々としている。
卑怯な手段で首を絞められ、腹部に豪打を浴びて嘔吐の憂き目にあっても、
焦りはすれど怒りはしない。
母性に溢れた優しい娘だ。対峙した時、香蘭は感じた。
そして同時に恐ろしくなった。
温厚な人物ほど内に抱える獣はおぞましい。闇に生きる香蘭はそれを知っていた。
悠里自身もそれに気付いている。だから格闘に身を置くのだ。
出来すぎた人格、それに相反する破壊衝動と周りの全てが矮小に思える力。
その捌け口が常勝のサディスト『カーペントレス』だ。
そこで征服欲を満たす限りは、彼女は彼女でいられる。
しかし王者であり続けることは難しい。
挑戦者の間は勢いに乗って攻め上がるだけでいい。
しかし王者は常にそれを真正面から迎え撃たなくてはならない。
いつでもベストなコンディションとは限らないだろう。
女なら生理もあるし、名が広まると私生活で襲われる事もある。
ゆえに時には青葉のような格下にすら不覚を取る。
それでも勝っているうちはいい。
だがもし悠里がリングで自信を失えば、勝ちえない化け物に叩きのめされれば、
「温厚な彼女」の方へ歪んだ思想が逆流する。
多くの者に尊敬され、愛される彼女はどこにもいなくなってしまうだろう。
「悠里…。」
香蘭が呼びかけた。悠里は濡れた瞳でまどろんでいる。
「ん、どうした、蕩けたような顔をして。私の鍼で感じたのか?」
悠里が桜のような唇を開いた。
「ええ、何だか火照っちゃって。相変わらず、貴方の鍼は凄いわね」
彼女は笑いながら胸を隠す。
普段裸体を見せることに躊躇しない娘だが、さすがに官能の色を示すと別らしい。
香蘭はそれに意地悪そうな笑みを浮かべた。
「嬉しい事を言う。ならすっきりと逝かせてやろう。……おい」
香蘭が手を上げると、周囲で見ていた中国娘が駆け寄った。
そして悠里の脚を絡みつくようにして持ち上げる。
「きゃ、きゃあ!」
悠里は倒立する格好で脚を開かされる。
「…うわぁ、きれいなピンク……」
中国娘達は脚を抱えながら悠里の秘部に見入っていた。
恥じらいの場所がかすかに艶を帯びている。まるで桜色の唇。
香蘭の鍼が刺さるたび、そこは喘ぐように開閉した。
「見事な女陰だろう。生娘でもこうも鮮やかなものは滅多に見られんな」
香蘭は秘裂を覗きながら娘達に語りかける。
鍼が刺されるたび、桜貝のようなそこは潤みを増していく。
くんと屹立した陰核が、悠里の感覚が研ぎ澄まされている何よりの証拠だった。
そして金の鍼は彼女の門渡りを捉える。
「さて、悦びの時間だ。」
香蘭が笑みを浮かべながら呟いた。
蟻の門渡り。女性器と肛門の間にある、性感神経の束。
そこへやや深く鍼が沈み込む。
「んーーーっっ!」
初心な中国娘達は、なぜ悠里の悲鳴がそれほど悲痛なのか分からなかった。
しかし次の瞬間、悠里の花びらがとろっと蜜を吐いたことで全てを知る。
長い脚が娘達に抱かれながら宙を蹴った。
「ふん、敏感なことだ。そら、まだだ。女はまだ極まるぞ」
香蘭はいよいよ楽しげに笑い、硬くしこった陰核を摘みながら門渡りを丹念に貫く。
…さく…さく……さくっ…
「だ、だめ、それ、それダメえっ!!いやあ、あ熱いっ!熱いいいっっ!!」
悠里は泣くのか笑うのか分からない声を上げて腰をくゆらせる。
秘裂からは一筋また一筋と蜜が溢れ、すべらかな下腹へ伝い落ちていった。
2.
「はぁ…まだじんじん疼くわ。全く、やり過ぎよ」
薄絹のようなシースルージャケットを纏いながら、悠里は頬を赤らめて言った。
「はは、赦せ。貴様ほど感度がいいと、つい嬉しくなるのが鍼師という人種だ」
香蘭は少女のように屈託のない笑みで返す。
服をルーズに着こなしながら、悠里も笑みを浮かべた。
「ま、いいわ。身体が随分軽くなったもの。頭も冴えたし、血もよく巡ってる」
悠里は目を閉じて自らの身体に手を触れていく。
その彼女をじっと眺め、香蘭は急に豪奢な上衣を脱ぎ捨てた。
「…悠里、仕上げにひとつ手合わせしてみんか?…この私と」
目の淵も鮮やかな香蘭の釣り目は、先ほどまでの嬉々とした物ではなく、闘士ならではの炎を滾らせている。
その煽りを受けて悠里も目の色を変えた。
「あら、いいわね。私も久々にやり合いたいなって、さっきから思ってたのよ」
くすくすと笑いながら静かに構える。香蘭も同じく構えを取る。
周囲の中国娘達は息を呑んだ。
2人が構えた、ただそれだけで室温が2度は下がった気がする。
香蘭は屈伸を途中で止めた格好で腰を落としていた。脚のバネが活かされる構えだ。
チャイナドレスのスリットから覗く生脚が何ともいえず艶めかしい。
左手の甲を相手に向け、右手は今にも振り下ろさんばかりに頭上に引き絞られている。
頭には2つのお下げが揺れ、その構えは大口を開けた龍が髭をなびかせるが如くだ。
対する悠里は空手の基本型である猫足立ち。
左半身に浅く構え、左脚はすぐにでも蹴り出せるよう僅かに浮いている。
ただ、本来守りに使うべき両手は妙だった。
左右どちらもが捌くための形を取らず、異常なほど引き付けられている。
まるで守りを捨て、打撃を叩き出す事のみを目的とするように。
悠里は守りの構えを取らない。
それどころか初めから構えること自体が珍しい。
泰然と立ち、掌を握ったり開いたりして出方を伺っている事が殆どである。
通常、格闘家を相手に『守り』をしないのは相手を侮るに等しい。
しかし悠里にあって攻撃特化は傲慢ですらなく、それは必倒の宣言であった。
虎は牙さえあれば人を屠るのに足るのだから。
「これ、貴方に教わったのよね」
悠里は一歩踏み込んだ。音のしない、移動後の重心さえ読ませないステップ。
「震脚か。確かに理屈を教えはしたが、もう“踏み込み”から“踏みしめ”にまで
昇華させたのか。末恐ろしい才覚だな」
香蘭は悠里のセンスに目を見張る思いだった。
会得に10年はかかる技法が、たかが数年で実践レベルにまでなっているのだ。
悠里はその震脚で一気に香蘭との距離を詰める。
単に速いだけでなく、巧みな体重移動でタイミングをずらしての接近。
だが香蘭はその身体の動き全てを見切っていた。
「甘い!」
大気を押しつぶすような掌底が悠里の鼻先に迫る。
悠里はそれを右手で流し、その勢いのまま身体を回転させ回し蹴りを放った。
「ちぃ…っ」
右手を流された香蘭の右半身は完全な無防備だ。
薄いチャイナドレスのみに覆われた細い腰があるだけ。
しかしその腰に悠里の踵が沈む寸前、そこに何かが割って入る。
香蘭の振り上げた右膝だ。膝は悠里の蹴りを受け止め、弾き返す。
「いつ…!」
回し蹴りを途中で止められ、悠里の背中が晒される。
「よくぞ背を見せたな!」
香蘭はその背に痛烈なショルダータックルを浴びせた。
そのまま悠里を倒せば背面騎乗のマウントポジションが取れる。
「くっ」
しかして悠里は傾いた。だがやけに呆気なさ過ぎる。
香蘭は倒れながら、軸足としていた左足に悠里の両足が絡みついている事に気がついた。悠里の両脚はとんでもない力で香蘭の軸足を捻る。
当然、香蘭の体自体も大きく回転する。
2人して横ざまに倒れこんだ。しかし、先に起き上がるのは体勢を制した悠里だ。
身体を跳ね起こすついでに、真後ろの香蘭を荒馬の如く蹴りつける。
「ぐ…!」
かろうじて手でガードした香蘭だが、横臥したままでは力を後方に逃がせない。
そのまま腕ごと鳩尾に叩き込まれる形となった。
気道がひしゃげ、香蘭は海老のように身体を丸め込む。
そこに悠里が向き直った。
「はぁっ!!」
丸まった香蘭の顔めがけて容赦ないサッカーボールキックを見舞う。
しかし香蘭もただ無闇に丸まったわけではない。
逆上がりの要領で倒れたまま身体を回転させ、キックから紙一重顔を逃がす。
同時に顔の位置にきた香蘭の足は、悠里にとって踵側からの見事な足払いとなる。
「あッ!?」
さすがの悠里も後ろからの足払いは想定していなかったらしい。
手をばたつかせて盛大に尻餅をついてしまう。
悠里は尻餅をつき、香蘭はその足に自らの脚を絡ませたまま半身を起こす。
そして2人の手が唸りを上げたのはほぼ同時だった。
共に半身を起こした状態のために粘りのある打撃ではない。
しかし、単純な腕力でも一撃で大の男に泣きを入れさせるレベルである。
悠里の右の正拳は香蘭の右の手刀で流れて木の床を僅かにへこませた。
それとほぼ同時、お互い右手に隠すように放った掌底が相打ち、ぱんッと乾いた音を立てる。どちらかが反応し損ねれば肋骨が軋んでいたに違いない。それほどの音。
「互いに考える事は同じか。笑えるな」
「そうね、面白いわ」
2人は息のかかるほどの距離で視線を交わす。共に頬を紅潮させて。
見ようによっては麗しい美女二人の接吻にも映る情景。
しかし握り合わされた左手はぶるぶると震え、骨まで砕かんばかりだ。
二人の痩身からは想像もつかない膨大な圧力がそこに閉じ込められている。
腕力はほぼ同格、ならば決め手になるのは体制だ。
上側に陣取る悠里が体重をかけ、せめぎ合う左手ごと押し潰していく。
「ふふ、どうしたのシャンラン?この程度かしら?」
「…図に乗るな、小娘が。」
香蘭の姿勢さえ崩せば、悠里は締め落とすもパウンドで殴るも自由だ。
傍目には悠里が圧倒的優勢に思えた。
しかし肘がついに床に叩きつけられた時、香蘭は右手を振り上げた。
下から振り上げたにしては余りに迫力のある音が風を切る。
香蘭は左肘を押し込められていた。突きを繰り出す際の引き手のように。
香蘭はその状態を逆に利用したのだ。
香蘭を崩す事に執心していた悠里は反応が間に合わず、見事に顎を打ちぬかれてしまう。
「ぎゃうッ!!」
悠里の目が見開かれ、顔が高々と跳ね上がる。普通なら即失神だろう。
しかし悠里は打たれ強い。何しろ殴られ屋のような修行をしてきた女帝である。
一度や二度顎をかち上げられて気を失うタマではない。
悠里はたっぷりと背をそらすと、しなやかな身体のバネを一杯に使って細腕を叩き下ろす。
「んぐうっ!!!」
今度は香蘭が切れ長の瞳を見開く番だった。
細腕に到底似つかわしくない、鉄筋を振り下ろされたような痛みが腹部を襲う。
下に組み敷かれている状態はやはり危険には違いない。上からの衝撃を逃がせないからだ。
「はっ、はぁっ…」
「ふー、ふぅーっ…」
息を弾ませ、二人は再び至近距離で睨みあう。互い脚を締め上げながら。
絡んだ足を解くことは双方ともに阻止すべきことである。
悠里はマウントに近い状態で上にいる恩恵に与れる。
体力の消耗差もあり、攻撃の当たりやすさもあって出来れば逃したくない。
下の香蘭は一見不利だが、スタンドで殴りあうほどではない。
悠里のパンチの回転とコンビネーション、そして神速必倒の蹴りはまさしく神業だ。
悠里を相手に正面きっての殴り合いはリスクが高すぎる。
ならばこの至近距離、寸勁や掌打でやりあうのが得策である。
お互いの思惑を感じ取り、2人の美女は股を擦りつけるようにして脚を締める。
香蘭はチャイナドレスから覗く生足、悠里は薄手のスパッツだ。
押し付けると互いの感触がはっきりと伝わる。
むちりと程よく肉の乗った太腿は柔らかく、暖かい。
戦いでしとどに汗をかいた滑りはまるで女を濡らしているかのようだった。
事実、2人はとても昂ぶりやすい。
身体を極限まで絞り、鍛え、張り詰めさせるゆえに感覚が鋭敏なのだ。
一流のビルダーが空気に触れるだけで乳首を屹立させる事と似る。
しかしそれ以上に、男の肌は身を守る鎧だが、女の肌は赤子と触れ合うための性感帯だ。
磨き抜かれた女体は、人智を超えためくるめく官能に晒される事になる。
「んん……!」
「くう……!」
どちらともなく、甘い声を上げていた。
互いに脚を外させるまいともつれ合うそれは、薄い布越しでの貝合わせに等しい。
濡れた太腿が擦れあい、屹立した陰核が柔肉に潰されあう。感じない筈がない。
香蘭は悠里の、湖の底のように静かで、子供のように光を孕む瞳を睨んだ。
大人びていながらどこか愛らしい瞳。こちらを睨みながらもぞくぞくさせる瞳を。
「……まるで女豹だな。男でも女でも関係なくそそらせる…。」
悠里の瞳孔に映る香蘭は、ふっと顔を和らげた。
「やめだ。格闘ごっこは此処で切り上げるぞ」
香蘭の言葉に、悠里はやや意外そうに目を開いた。
「あら、もうやめなの?まだ拳法らしい拳法も味わってないのに」
どこか残念そうな悠里の胸を、香蘭の手が包む。
「ひぁ!」
手はそっと包み込んだだけのようで、しかし悠里は背筋を震わせた。
「拳法の代わりに、じっくりと憶え込ませてやる。私の房中術をな」
香蘭は悠里の豊かな胸に指を這わせ、乳腺を扱いた。
ふぁ、という気の抜けたような声で崩れ落ちる彼女の唇を、香蘭の唇が受け止める。
桜色の唇がもごもごと動き、中身を啜りながら舌を絡めあう。
「ん…んむ、む…うう、ン……。」
悠里の見開いた目はやがて眠そうに蕩けてゆく。
ずず、じゅるっ。くちゅ、くちゅ。
桜色の頬がへこみ、喉へ透明な雫を垂らしながら淡い唇は貪りあう。
胸をまさぐられる。尻を覆うようにスパッツへ手を潜り込まされる。
シースルーのジャケットに風を孕ませ、びくんびくんと腰を跳ね上げ悶える悠里は、
或いは蜘蛛に捕らえられた蝶のようであり、
或いは快楽の沼に沈み行く妖精のようでもあった。
いずれにせよそれはあまりに淫靡であり、見守る中華娘たちはいつしか誰からともなく貪り合い、同性を求めはじめる。
今や部屋は悩ましい喘ぎ声で満たされ、暖かいおんなの匂いが充満し、
磨き抜かれた木の床は止め処もなく滴る女蜜ばかりを映していた。
そこにはもはや、蕩けた雌が絡み合うばかりであった。
えっろーーーーーい!!!!!
GJ!(*´д`*)
試合の悠里は負けない!
負けるときは惨敗する時だけだ!!!
これは間違いなく萌える
相変わらずエロ格闘GJ!
鍼灸知識が本物っぽいw
悠里を恥ずかしいピンチに追い込んでみたいが
生半可なことじゃ恥ずかしがってくれそうにないな
浣腸ですよ
しかし奴は浣腸しても耐え抜いて勝ってしまう気がする
試合後にビデオで自分の苦しむ様子を観て
「あそこで漏らしていたらどうなっていたのかしら……」
とか言いながら至福の自慰に耽るようなイメージだw
(屮゚Д゚)屮浣腸オーダーハイリマシター
1.
「おい、見ろよあれ。すげぇ可愛い子」
「うぉマジだ。うわー、付き合ってみてぇ」
「お前、さすがにあの歳は犯罪だろ。でも何かエロいな…」
繁華街の一角で囁きが漏れた。その視線の先には1人の少女がいる。
歳は13、4だろう。人形のように愛くるしく、垂れ目が印象的な少女だ。
背丈は150cm程しかなく、顎には大人特有の尖りがない。
さらには後ろ髪をリボンで結んでいるため、いっそう稚なさに拍車がかかる。
白い肌とは対照的に、少女の服飾は黒で統一されていた。
ブラウスも、ミニスカートも、リボンも、ハイソックスも。
それは少女の気品も相まってシックであると同時に、少女の内向性を映してもいた。
人形か、はたまた稚ない姫君か。
少女の名は高峰莉緒。『お嬢系柔道家』高峰青葉の実妹だ。
莉緒は肩から膨らんだ旅行鞄を提げていた。
相当に重量がありそうなそれを、少女は顔色ひとつ変えず揺らして歩く。
今日は中学校の遠足帰りだ。
遠足とはいえお嬢様学校、当たり前のように日本を横断するレベルだが。
そして莉緒の足は老舗の旅館を思わせる屋敷で止まった。
門を開くと一面に広がる枯山水。その中央の石畳を和服の女性が掃いている。
少女と和服女性は互いに慎ましく礼を交わした。
莉緒が屋敷へ上がり自室へ向かおうとした所、ふとすすり泣くような声が聞こえる事に気がついた。出所は青葉の部屋だ。
「お姉ちゃん?どうかしたの…?」
襖を叩いてみても返事がない。莉緒は薄く襖を開く。
そこには明かりもつけず、部屋の隅で塞ぎこむ姉がいた。
「お姉ちゃん!?」
莉緒が駆け寄ると、青葉はようやく気がついたかのように顔を上げる。
莉緒はその幽鬼のような顔に面食らった。
「ああ、莉緒じゃない…。旅行は楽しかった?」
いつもの倣岸不遜な姉とは似ても似つかない。
部屋を見回すとさらに異常だった。
柔道のトロフィーが壊され、青葉の載った雑誌や試合のビデオが散乱している。
まるで今までの全てを否定するかのような惨状。
「わたしも、莉緒みたいに淑やかだったら良かった」
青葉が呟いた。
「あんた、格闘技やろって誘ったら『相手も痛いから嫌』って言ったよね。
誰かと喧嘩になった時だって絶対に手を上げなかったし。
わたしはそれをバカにして、結果がこの有り様」
青葉は手にした写真を莉緒に差し出した。
ネット上のある1ページをプリントアウトしたものらしい。
莉緒は目を疑う。
そこには薄汚い男に口を貪られ、涙を流す青葉が写っていたからだ。
「自分でも、出来過ぎだってぐらい会心の試合運びだったんだよ。
両腕を使えなくして、脚だってもうガクガクだったはずなんだ。
でも、それでも倒せなかった。っふふ。所詮はさ、格が違うんだよ」
青葉は自虐的な笑みを浮かべて言った。
「ち…違う、お姉ちゃんは強いよ!」
「ありがとう莉緒。でも、もう良い…もう1人にさせてぇ!!!」
莉緒の叫びにも、青葉の炎は戻らなかった。
莉緒はよろよろと後ずさる。
信じられなかった。小さい頃から強さの象徴だった姉。
自分が虐められている時、困っている時は必ず助けてくれた。
美人で、強くて、誇り高くて。
学校中で噂される青葉は、莉緒の誇りであり将来の理想でもあった。
それが牙を折られた犬のように弱っている。己の全てを恥じて泣いている。
「お姉、ちゃん……」
莉緒は自室に貼られた凛々しい姉の写真を見て呟く。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんお姉ちゃん…」
アルバムに、卒業写真に、どこを見ても姉は美しく猛々しく写っている。
しかしそれは昔の姉だ。本物ではない。
「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんおねえちゃんっっ!!」
いつしか莉緒は最愛の姉を求めて部屋中の机や箪笥を引き倒していた。
目から涙を溢れさせながら。
誰が青葉を犯したのだ。誰が自分の理想を穢したのだ。
そして最後に莉緒の目は、床に落ちた一枚のチケットを捉える。
――わたしがチャンピオンになる日なんだから、絶対見に来なよ!
青葉がそう言って置いていったものの、旅行と重なって泣く泣く諦めた試合だ。
『お嬢系柔道家 青葉 vs. 木こり娘(カーペントレス)悠里』
2日前の日付でそう記されている。
「………ふぅん……。悠里、って言うんだ……」
莉緒は静かに呟いた。
2.
レディースの早紀にはファミレスという場所がよく合った。
しかしその対面に座る女性には違和感がある。
淑女という言葉の似合う、日に焼けた肌がエキゾチックな魅力を醸しだす女性。
彼女はリス族のアルマと名乗った。
「では、悠里さんの出自をご存知の方は居られませんの?」
流暢な日本語だが、アルマの話し方はやや時代めいている。
「ああ。姐さん、高校に入ってからの武勇伝には事欠かないんだが、
それ以前は小中でクラスメイトだったってレベルの情報さえない。
多分、海外にいたんじゃないか?外資系のビルに住んでるしな」
早紀は煙草を咥えながら説明した。悠里を姐さんと呼ぶのは彼女なりの敬意だ。
「そうですか…。ところで良ければ火、お貸ししましょうか?」
アルマはその話に頷き、ふとライターを取り出していう。
煙草を咥えるだけの早紀に配慮したらしい。
「いや、べつに吸おうって訳じゃねえんだ。体鍛え直してて禁煙中だし。
ただ、咥えてないと落ち着かなくてさ」
早紀は頭を振って言った。確かに彼女の身体は数ヶ月前よりも締まっている。
「なるほど。身体を鍛える…素晴らしい事ですわね」
アルマはぽつりと呟いた。
その何気ないひと言に、早紀の背筋はそそけ立つ。
リス族特有の訥々(とつとつ)とした喋りがいやに恐ろしい。
正直なところ、早紀はアルマに恐怖を覚えていた。
一見淑やかそうだが、タイ人系の何とも恵まれた身体をしており、
瞳には隠しえない獰猛さを漂わせている。
まるでジャングルの黒豹だ。
テーブルを挟んでいても、いつ襲われるかと本能が警戒してしまう。
「ところで、一ついいかな」
早紀は渾身の勇気を振り絞って問うた。
「あんた、何で姐さんの事を知りたがる?ただのファンには見えないが。
……まさか、あの人とやる気かい?」
早紀の疑惑を真正面から受け、アルマは艶やかに笑う。
「出来れば。どうすれば闘う権利が得られるか、ご存知かしら」
さらりと言い放った。
対峙する事自体が無謀ともされる絶対王者をものともしていない。
それが過信ではないことは、彼女の総身に纏う雰囲気が示している。
殺人術・ムエタイを編み出した戦闘民族の気が。
その気に当てられ、早紀は質問に答えざるを得なかった。
「…必要なのは、シンプルに女ファイターとしての人気や風評だ。
女闘は娯楽の意味合いが大きいから、客が望まないと始まらない。
ネット上のアンケートで一番客が推したカードが実現されるんだ。
もっとも、実力に開きがあるとダメだけどな。
姐さんと戦うなら、空手・柔道覇者ぐらいの肩書きは必要だよ」
早紀は、自分が饒舌すぎる事に気付いていた。
悠里と対峙した時、彼女は卒倒しかねないほどの恐怖に襲われた。
しかし今、このタイ人女性を前にした恐怖はそれをすら上回る。
「へぇ…気の長い話ですわね。目立ちたくはないんですけれど」
アルマは蛇のような目で早紀を見つめていた。
それだけではないだろう?と暗に囁くような目。
早紀はしばし黙り、しかしついには致命的となる事実を吐露してしまう。
「…も、もう一つ、方法はある」
アルマが興味深そうに目をぎらつかせた。
「王者が……悠里姐さんが、自ら対戦相手を指名した場合だ。
その場合、相手がファイターなら無条件に対戦が組まれるらしい」
早紀の手に持ったグラスが細かく震えた。
これでは、アルマに悠里を煽れと言っているようなものではないか。
そして、アルマは淑やかに笑い始めた。
舞台上の悠里がするように、くつくつと、楽しげに。
アルマが金を置いて店を出た後も、早紀は凍ったように固まっていた。
今さらになって首筋からぬるい汗が噴出している。
また1人誰かが扉を開け、外気が汗をさらに不気味に温める。
――ちょうどいいですわね。
アルマの最後に残した囁きが耳から離れない。
手の中で、澄んだ氷が音を立てて溶けた。
3.
半年ぶりに見た茜は、すっかり女らしくなっていた。
短髪なのは変わらないが、全体にモデルのように垢抜けている。
艶やかな黒髪は柔らかく風に揺れている。
ややハーフじみた悠里に対して、いかにも日本人らしい愛嬌だ。
「うわぁ、可愛いい……!」
悠里は思わず茜の髪を撫でてしまっていた。
「や、やめて下さいよぉ!恥ずかしい!」
茜はいやいやと首を振る。拒否というより、子犬が首を振るに等しい。
「……は、半年前先輩に負けて、ちょっと吹っ切れたんです。
空手空手ってやって来たけど、たまには女らしくしようかなって」
茜は髪を直すフリをして顔を隠しながら言った。
なるほどその表情はいかにも乙女だ。悠里はその照れ顔を覗いてからかう。
屋外喫茶店での微笑ましい一時。
すらりとしてはいるがどちらも一流のファイターだ。
姉妹のようにじゃれあう姿からは、とてもそうは見えないだろうが。
蝉が鳴いている。
「んく、んくっ……」
悠里は先ほどからしきりに注文した瓶の水を飲んでいた。
ただの水ではなく“水素水”だ。
パンチドランカー症状の元になる活性酸素を消滅させるともいう。
医学的には否定される事の多い説だが、悠里は気にしない。
彼女は自らの体感を最優先するからだ。
水素水を飲んで頭痛や眩暈が軽減するなら飲む。
世間で良いと騒がれても気に入らなければ摂取しない。
そうしたエゴはさすが一流のファイターらしい、と茜は思う。
瓶に口をつける悠里を、茜はじっと見つめていた。
水を飲む、それだけで何と官能的なのだろう。
桜色の唇が筒を柔らかく包み、透明な液を口に含んでは喉へと迎え入れる。
白い喉元が液を嚥下する瞬間、重たるい音が響き…。
その時、悠里の目がちらりと茜を捉えた。
「ふふ。どうしたの?」
瓶から口を離した悠里は、幼子を見る母のような笑みを浮かべた。
茜は胸がざわついた。
ただでさえ日本人離れした美貌であるうえ、表情が活きすぎている。
その笑顔を向けられる人間が、果たして何人いるだろう。
このすぐ傍で、白い服に包まれた体に触れる事を赦される人間が。
「せんぱい…!」
茜は自分でも気づかぬうちに、悠里の豊かな胸へと飛び込んでいた。
どこまでも沈み込むような暖かい柔肉。春に咲く花のような匂い。
「あらあら、甘えんぼな空手家ね」
悠里の手が優しく背を撫でてくれる。
茜に尻尾があれば、忙しなく振っているに違いない。
茜にはそれほど悠里が大きな存在だった。
美人で、強くて、誇り高くて。
己の人生の全てをかけて追いつき、横を歩きたい大きな背中だ。
「「あむ…」」
いつしか2人は唇を重ねていた。
右手をぎゅぎゅっと握り合い、左手をお互いの秘部に導いて。
「わぁ、先輩もう濡れちゃってる」
茜が悠里の中をひらいて囁いた。悠里はやや恥ずかしげに息を潜める。
他の相手ならば笑顔で踵落としでも喰らわせているかも知れないが、
相手が茜なだけあってされるがままのようだ。
可愛い。茜は思いながら、さらに奥へと指を送り込む。
「は、あ…っ!」
悠里は溜め息とともに天を仰いだ。小さく達したらしい。
青葉にくじられた時とは明らかに異質な反応。
それは最愛の相手に、心も体も預けている証拠だった。
「先輩、もっと鳴いて?」
茜は3本指を潤みに鎮めながら、小指で慎ましく閉じた後孔を弄くる。
「いやあん、そんなところ…っ!!」
悠里はさわさわと髪を揺らした。
屋外で木陰に潜んでの絡み合い。異常な興奮が脊髄を焼く。
ぎしっぎしっ。椅子の鳴る音が耳に残った。
蝉がけたたましく鳴いている。あれもまた女を求める求愛の声だ。
茜は細く長い指で悠里の襞を撫でまわし、彼女の蜜を溢れさせ、
また自身も胸をしゃぶられながら歓喜する。
椅子の端から透明な雫がしたたる頃、2つの肢体もまた汗みずくで脱力した。
茜は悠里に寄りかかり息を整えていた。涼風が火照った肌に心地良い。
その風が少し強まった時、悠里が耳元で何かを呟いた。
「気を付けなさい」
そう聴こえた直後、周囲が一瞬で騒がしくなる。
跳ね起きると辺りをレディースの集団に囲まれていた。
ヘルメットにライダースーツ、バット、チェーン。様々に武装している。
早紀が率いていたメンバーの一部だ。恐らくは別派閥だろう。
「姉さん、お愉しみは済んだかい?じゃあケジメつけようか」
1人がにじり寄って宣告する。
悠里はそれを面白そうに眺め、髪を靡かせて立ち上がろうとし――
茜に制される。
「先輩。私に、任せてください」
茜はグローブを嵌め、鉢巻を締めて悠里の前に立ち塞がった。
小さな背中だが、中々にいい背筋のつき方をしている。
「はぁ?何だクソガk――」
レディースが言い終わる前に、茜はそのフルフェイスの顎を打ち抜いていた。
硬いメットを被った事が災いし、相手は顎を強打して悶絶する。
「こ、この野郎!!」
その一撃で、集団の関心は華奢な茜へと集中した。
茜はパラソルの刺されたテーブルを軽快に飛び越えながら誘導する。
左から来たストレートを身体を捻っていなし、その力を脚に流して反対の少女の足を刈り、背後の敵を背負い投げつつ鎖をかわし。
時代劇の殺陣の如く、茜は同時に7人を手玉に取っていた。
茜が演舞のように身を翻す中、レディースの武器は無駄に器物を損壊し、同志を討つ。
始めは喧嘩かと遠巻きに見ていた客たちも、今やその立ち回りに熱狂していた。
「おいおい、またかよ。全く勘弁してほしいぜ」
騒ぎを聞きつけ、喫茶店の奥から大柄な黒人が顔を覗かせた。
とはいえ焦るふうではない。むしろ戦いで覗く少女の艶肢を好色そうに眺めている。
「ごめんなさいグレッグ。後で色つけて補償させて貰うわ」
悠里はテーブルで脚を組みながら彼を仰いだ。
グレッグはその横に腰掛け、缶ビールを開けながらくつろぎ始めた。
どのみち暴れているうちは新規の客がこないと踏んでのことだ。
格闘女王と懇意になれば、このぐらい通り雨ほどにも気にならないらしい。
「しかし、なかなかどうしてやるじゃねぇか。あの娘っ子」
グレッグはビールを喰らいながら言った。
その視線の先で茜は回し蹴りを放ち、3人の顔を払っていた。
相手が武器をちらつかせても微塵の動揺も見られない。
「でしょう?負ければ負けるほど、格段に強くなるのよ。
今やったら、きっとかすり傷じゃ済まないわね」
悠里は目を細めて茜を見守る。
確かな茜の成長に胸を高打たせて。
その時間はずっと続いているべきだった。
しかし、因縁の刃は静かに研ぎ澄まされてゆく。
優しげな笑みを浮かべる悠里が悠里なら、四角い檻で冷笑する彼女もまた彼女。
その二つが『存在しない事はありえない』。ゆえにそれは宿怨だった。
陽射しがきつかった。まるで今日という日をセピア色の地面に焼きつけるかのように。
悠里がどれほど今を恋しがろうとも、刻は足音を立てて近づく。
「はぁ、はぁ。此処にいたのか!姐さん、大変なんだ!!」
慌しく喫茶店に駆け込んだのは金メッシュを入れた少女だった。
頭の登場でレディース達が一斉に動きを止める。
茜が振り返り、そして悠里も首を傾げた。
遠くでまた一匹の蝉が鳴くのをやめた。
うおー!物語に広がりがー!ぐぐぐGJ!
読ませる力が凄いし表現が巧みすぎる
エロも絡んで最高
GJです
300 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 20:26:09 ID:yTIoDXMx
300
1.
「ヴェ、ラ…?」
悠里は病室に立ち尽くしていた。
その視線の先には、体中に包帯を巻きつけたヴェラが横たわっている。
頭、腕、胴、足。体中を徹底的に破壊されて。
「すまねぇ、姐さん…」
早紀が呟いた。
「あたしが駆けつけた時にゃ、タイ女が1人立ち尽くしてるだけで。
そいつ、ファミレスで姐さんの事を聞いてきやがったんだ。
ただ事じゃないって後から探してみたら、もう全部終わってて…」
早紀はヴェラを見つめ申し訳なさそうに項垂れる。
すると、そのヴェラの唇がわずかに動いた。
「ちびは…キャシーはどこだい?何も見えないよ…キャシー…!」
死人のような土気色の顔で我が子を捜し求めている。
その手のひらは部屋の奥の小さな寝台に向かっていた。
看護婦の頷きでそこへ歩み寄り、悠里は息を呑む。
「ひ…ひどい…!」
茜が顔を覆った。
その幼い体には無数の掻き傷が残されていた。
白人少女の美しい肌を否定するかのごとく、徹底的に。
若い局所にも治療の跡があった。
「もう…やめて…。たす、けて、ママ……おねぇ…さん……」
キャシーは眉を顰めてうなされている。
「…こんな小さな子に、乱暴するなんて」
茜が怒りに拳を握ったとき、ふと隣の早紀が凍りついている事に気がついた。
その視線を辿り、茜ははっとする。
キャシーの腹部に存在する無数の切り傷の中に、短い英文があるのだ。
そこには、くっきりと刻まれていた。
『for Yuri…“the Carpentress”』
白い腹部に浮かぶ紅い宣告。
それを眺める悠里の表情を、茜は見たことがなかった。
「せ、先輩…?」
やっとの思いでそう口にすると、悠里がゆっくりと目を向ける。
瞳孔の狭まった獣のような眼。
これほど怒りに満ちた悠里を、茜は見たことがなかった。
「アルマ…その女は、そう名乗ったのね」
悠里は冷たい声で早紀に問いかけた。早紀は慌てて頷く。
パキ、パキン。
病室に響いた奇妙な音は、悠里が曲げ伸ばす指のものだった。
「すこし、仕置きが必要ね」
茜は言葉を失う。
その外面は美しい黒髪をした、自分の憧れる悠里だ。
しかし薄皮一枚隔てた中身は自分の知らない存在だった。
くるりと踵を返す悠里は、そのまま部屋を出ようとする。
「先輩っ!」
茜は無意識にその手を掴んでいた。悠里が振り返る。
重い沈黙が間に流れる。
「……ヴェラ達を、頼むわ」
ひと言が呟かれた後、手は静かに振り解かれた。
2.
リングの上では、悠里の心臓はいつも張り裂けそうに高鳴っていた。
しかしアリーナに入場する前からそうであるのは初めてだ。
タン、タンッ。
悠里は控え室で跳ねながら時を待っていた。
身体がいつになく軽い。血管の一本一本が躍動するのが解る。
昂ぶっていた。
『赤コーナーより、チャンピオン・悠里の登場です!』
アナウンスと共に、会場にどよめきが走った。
悠里が風のように花道を駆け抜け、瞬く間に宙を舞い、片手をリングポストに乗せて軽やかにリングへ降り立つ。
普段優雅な入場をする悠里とはかけ離れた、野性味溢れるパフォーマンスだ。
彼女はソンブレロを被り、首には赤いスカーフ、ウェスタンレザーのベストにミニスカートを着込んでいる。
「カウガールかよ!うっひょー、たまんねぇー!!」
「だな、あの胸と尻でカウガールは反則だぜ!」
「それより今日の悠里、なんか変じゃねぇか?」
「ああ、いつも憎らしいほどクールなのにな。相手はどんな奴だ?」
「見たことない奴だな、でも悠里たっての指名らしいぞ」
「結構いい身体だな、素人じゃなさそうだぜ
観客の喚声を他所に、悠里は青コーナーを睨みつけた。
「アメリカンなカウ・ガール…。何やら意味深な格好ですわね」
アルマは青コーナーに寄りかかって笑う。
彼女は胸と腰周辺にぞんざいに布を巻いたような民族衣装だ。
露出度の高い格好は、彼女の女らしく引き締まった腹部を隠さない。
それだけで並の日本人とは格の違う強さが伺えた。
悠里はソンブレロをリングポストに預けてリング中央に歩み出る。
「何故、ヴェラとキャシーを襲ったの?」
悠里は問いを投げた。
アルマも進み出る。175はある長身、悠里でさえ見上げなければならない。
「あら、私から襲ったわけではありませんわ。元々あの方は、私と戦う為に
日本にいらしたんですもの」
アルマは肩に通した紐状の飾りを撫でながら答える。
悠里と初めて対峙した時、確かにヴェラは来日の理由として『倒したい奴がいる』事を挙げていた。それは得心の行く戦いだ。しかし。
「…でも、キャシーは?…あの子は関係ないでしょう」
悠里は静かにアルマを睨み上げる。
異様な光景だった、試合前に女王が激昂するなど、今まで一度たりともなかった事だ。
会場は僅かに騒然とする。
アルマはそれを面白そうに眺め、ふいに訥々と語り始めた。
「ねぇ王者さん、全ての質問はどうぞ勝ってからなさって下さいまし。
周りを御覧なさいな、すっかり興醒めしておられますわ」
悠里はなおも対決について問い質そうとしたが、その言葉でふと我に返る。
「なんだよ、痴話喧嘩見に来たわけじゃねえぞ!」
客席からはそうした不満も出てきていた。
「あらあら、怒り心頭ですわね」
アルマは優雅に笑った。普段は悠里がするような所作だ。
すっかりお株を奪われた形の悠里は、渦巻く怒りを拳に固める。
しかしアルマは、その拳を振り上げる事を赦さなかった。
アルマはリングアナウンサーからマイクを取り上げる。
「皆様、ただ今は御見苦しいところをお見せし、大変失礼致しました。
つきましては対戦の前に一時間を頂戴致し、償いをさせて頂きとうございます」
アルマは特有の暗く重い喋りで語る。
派手さはないが、偽りも無さそうな響きだ。
悠里も観客も『償い』の意味がわからず、呆気に取られる。
そして次にアルマが発した内容は異常だった。
「ええ、女の償いで御座います。今から一時間、私とこの悠里さん、どちらかお好きな方を存分にお愛し下さいませ。正常位で口づけをしながら愛されるも結構、後ろから獣のように犯されるのも自由で御座います」
アルマは悠里の肩を抱きながら観客にアピールする。
悠里は容易に肩を取られた事にも驚愕したが、何より勝手なルールに苛立ちを隠せない。
「な、何言ってるの!そんな馬鹿な事、できる訳が……!」
言いかける悠里の声は、客席から起こった爆発のような喚声に掻き消される。
辺りを見回すとリングの外は総立ちとなっていた。
「マ、マジか!?好きにしていいって、あの悠里が言ってんのかよ!?」
「ああ、良くわからねぇがそうらしいぜ!くぁー、夢みてぇだ!!」
「お、俺、4年前からずぅっと悠里にしゃぶって貰いたかったんだよ!!」
「おい、押すな!押すなって!!」
客席はもはや阿鼻叫喚の大騒ぎだ。今さら悠里が何かを言って収まる気配ではない。
「あら、紳士の方々が大層な騒ぎようですわ。ほんのジョークでしたのに」
アルマがくつくつと笑う。
「な、何て事を…!!」
悠里は怒りに満ちた目でアルマを睨み据えた。しかしアルマが目を見開くと動きを止める。
そこには完全な獣の眼があった。試合前に廊下の鏡で見る、最もおぞましい悠里の目が。
「ねぇ、偉大な格闘大国の王者さん?」
アルマは光をという訳じゃありませんもの。
私だって一時間、逃げも隠れもせずに紳士淑女の慰み者になりますわ」
アルマの瞳に語り掛けられ、悠里感じない無機質な瞳で悠里を覗き込む。
「お客様の満足いくよう身を削るのが、プロのファイターというものですわ。
何も王者さんだけに犯されろは納得してしまう。
確かに、青葉に嬲られた時とは違う。恥ずかしさも苦痛もフェアだ。
しかし解せぬ事がある。
「…どうして、わざわざこんな事を?ひょっとして色情婦なの、おまえ?」
悠里はアルマを熱く睨み据える。アルマは鼻で笑った。
「あら、わかりませんの?これも勝負ですわ。SEXはマラソンに匹敵する運動量
と申しますもの、一時間犯され通した後、改めて死合いのゴングですわ。
生半可な鍛え方では立つ事さえままならない、もしかして貴方もそうですの?」
お返しとばかりにマイクで言い放つ。悠里は眉を顰めた。
舌戦にさらに場がヒートしてゆく。
アリーナの熱気はもはや猛暑に匹敵した。頭の割れそうな叫びが響いていた。
「いいわ。色魔の戯れに付き合ってあげる」
悠里はリングに泰然と立って言い放った。
するとアルマが懐から嬉しそうに瓶を取り出す。
ぱんっと素早く悠里の足を払うと、大きく開いた股座へ指を近づける。
指には薄紫に光るゼラチン状の軟膏。
「な、何を!」
悠里はその怪しげな薬を警戒し、アルマの手首を押さえる。
「あら、怯えないで下さいまし。避妊薬代わりの殺精効果のある麻薬ですわ。
これを塗りこめればほどよく潤って、挿入の痛みは感じなくなりますわ。
阿片とは違って中毒性も薄いんですの。もっとも、その分効きますけれど」
アルマは小馬鹿にしたような表情で、その指をまず自らの女に塗りこんだ。
使う勇気もないのか。そういった表情で。
「…くっ、塗りなさいよ」
悠里は悔しげに唇を噛む。アルマは指にたっぷりと薬をつけ、悠里の顔を覗きこみながらショーツを除け割れ目に指を沈み込ませる。直後、悠里が眉をしかめた。
「ふふ、どうかなさいまして?」
アルマはさらに奥深くまで指を送り込んで薬を肉襞に塗りこめる。
「く、う…っ」
悠里は尿道の裏が炙られるような熱さを感じた。
薬が何度もかけて塗りこめられ、いよいよ警備員に制されていた観客たちがリングににじり寄ってくる。その段になって、悠里は状況が少しもフェアではない事に気がついた。
まず薬による発汗がアルマと全く違う。恐らくアルマは「慣れて」いるのだろう。
そしてもう一つ、2人で犯されるならば数は2分される、と考えた。
しかし今、リングに上がった男達は一目散に悠里に向かっている。
『犯したい』そう考える度合いがまるで違うのだ。
これは人望の差、人気の差を巧妙についた罠だ。
しかし悠里がそれに気付いたとき、すでに彼女は複数の男に押さえつけられ、鼻先に異臭を放つ逸物を突きつけられていた。
悠里の筋力ならば、並みの男が数人で押さえつけたとて跳ね除けるのは容易だ。
しかし相手が観客で自分が選手である今は、下手に抵抗するわけにもいかない。
哀れなカウガールは地に這ったまま為す術もなかった。
無骨な指がミニスカートを捲り上げ、ショーツをずらして中に沈みこむ。
同時に鼻を摘まれ、空気を求めた口に臭気の塊が抉りこまれる。
「お゛ぇっ!」
悠里は思わずえづいてしまう。
「へへ、デカイってのはいいよなぁ。あの女帝がちぃと苦しそうだぜ」
どこかで下卑た言葉が囁かれ、悠里が睨む前に剛直は口の中でスライドを始めた。
喉奥の粘膜に硬いものが擦れ、悠里は目を見開く。
せせらぎのように煌く黒髪が捉えられ、整った顔立ちがへこんだまま前後する。
凛と響く悠里の声が、蛙のように濁りはじめた。
なという罠!
この発想はなかったwww
萌える、敏感体質の上に媚薬の様なモノを塗られ、犯されまくってイカされまくった女帝!
どんな勝負になるのか楽しみで仕方ない!!!
というか、勝負になるのか、そこが一番の楽しみかもしれない…
ホントにそんなグチョグチョの展開になってくれるのかは疑問だが、敗北させずに悠里にフェラさせる話の流れは上手いと思った
こりゃあ凄いわ。次へとどんどん期待が膨らむ
GJ!
>>286頭の発言が気になるんだよな
スカが問題なんじゃなくて、普通に浣腸なのか…精液or温泉浣腸なのか
そこが問題だ。
wktkしながら待つ。半裸で
――私は、野原奈津美。バリバリのギャル。
今日も、パッチリ上目遣いでクラスの男をメロメロにするの。
ちょっと可愛いコぶれば、男なんて一発でオチるんだから…。恋愛って、ゲームみたい。
私みたいなスゴ腕ゲーマーは、あっという間に勝っちゃうの。
そんなイタい思考を持つ彼女、奈津美は、公立校白羽学園2−Bにてお姫様のような存在であった。
見た目は、背が短く、小柄のロリッ娘。貧乳。かわいらしい見た目だ。目がパチクリしているのは化粧の
たまものだが。
大変な男好きであり、男の前では明らかに態度が変わる。そんな女だ。
しかし、気に入らない女は、テッテー的にツブす。それが彼女のモットー。
彼女の標的になるのは、主に地味系のおとなしめな女子。
現在の獲物は、同じ2−Bの湖水綾。彼女は綺麗な顔立ちをしている、無口系の女子だ。
彼女は気が弱く、人見知りが激しいのでたいてい一人で過ごしているが、男子からは隠れた
人気がある。それが彼女には気に食わないのだ。今日も奈津美は、とりまきの恭子とリカを
つれて、彼女を人気の無い倉庫に追いやっていた。
「ったくさァ、陰キャラのくせに調子のってんじゃないよォ?湖水ィ〜」
男子に向ける甘〜い光線とはかけ離れた忌々しい瞳で、綾をにらみつける奈津美。
「……。」
何もいえない綾は、ただジッと下を向いているしかない。
「え!?何とかいったらどうなのォ!?あんたってほんと無口…クールビューティーのつもりィ〜!?」
「ホラ…口開けろよ♪」
リカが、綾のあごをぐいっと上に向け、口を大きく開けさせた。
「きゃっはははは!!ブサイクゥ〜〜!!」
醜い笑い顔で三人の女は高々と笑った。
「そんなにオクチ開けて…何か食べたいんでしょぉ?アタシの特性料理、食べさせてあげる」
恭子は、あらかじめ用意しておいた濡れ雑巾を綾の口に押し込んだ。
「………」
綾の目には、涙が溜まっている。
綾は、奈津美たちの手によって、今まで散々ひどい目に遭ってきた。
クラスの男子が綾は綺麗だと話しているのを聞きつけ、嫉妬した奈津美がクラスの男子に
綾はヤリマンだという噂を流した。これが、始まりだった。
おとなしい綾も、そんな噂を流されて黙っている訳にはいかない。だから、奈津美に言った。
「どうして、あんな噂を流すんですか?野原さん…私、貴方に何かしたのかな…」
「はーぁ?何でアタシがあんたの噂流すんだよ」
敵対心丸出しの奈津美は、大きな声で怒鳴った。綾はおもわずビクッと震え上がる。
「でも私知ってるんですっ…だって、調べたんだもの」
「調べたぁ?あんたそんな陰湿なことしてるわけぇー?きっしょい女!そんな性格だから
噂がたつのよ。当然でしょー?こ・す・い・サン!」
「だ、だってあなたが噂を流したんでしょ…?」
「あーあーあー!うっぜーんだよしつこい女だなァお前ぇ!!」
「しつこいって…そんな、あたしはただ」
そのとき、リカと恭子がやってきた。
「どぉしたの?奈津美」
「こいつがしつこいんだよ、湖水綾!」
「あー、コイツ?うっざいよねぇ。クールにすかしちゃっていい気のなっちゃってさ」
「……」
目の前でどんどんと自分を罵倒していく女三人に、綾はポカンと黙るしかなかった。
「アタシさぁ…コイツの姉のこと、知ってるんだよねぇ…。」
恭子が、楽しくて仕方が無いという口調で口を開いた。
「ソープで働いてるみたいだよぉ〜♪とんでもない姉だよねー」
「うっそーまじぃ!?」
「!!!」
綾は、ただ絶句するしかなかった。
どうして、この人が私の姉のことを…。
「傑作ゥ!こうなりゃ、妹がソープ嬢になる日も近いのかもねぇ♪クラスの人たち
にいったら、どんなことになるかなぁー?あっははは」
綾の顔は青ざめた。
綾は、姉の美羽と二人暮らしをしている。母と父は、綾が中学生のとき、事故でなくなった。
頼れる親戚もいない二人は、とっても貧乏な暮らしを送っていた。
姉は、そんな生活を支えるため、ソープで働いている。
綾はそれを知ったとき、ただ泣いた。自分も高校をやめて働く、だからその仕事はやめてくれと頼んだ。
だが姉は、綾を抱きしめ、こう言った。
「私は中卒で、つく仕事なんて無い。だけど綾には、そんな人間にはなって欲しくないの。
綾が立派な大人になるまで、私、しっかり綾と支えあっていこうと思うの。
だから…せめて、高校は卒業して。私、応援してるから。」
綾は姉が大好きだった。姉を傷つけるようなことだけは、絶対に許したくない。
大好きな姉さんを笑いものにされるなんて…。
「お願い!誰にも言わないで…お願いだからぁ!」
綾は涙ながらに訴えた。女三人は、最初ははぁー?とか言うに決まってんじゃん、とか
言っていたが、そのあとおもしろいことを思いついた顔で言った。
「わかったわ。その代わり、今日からあんたはあたしたちの奴隷…♪」
そして現在に至るのである。彼女達の綾に対してのいじめはものすごく、周りの女子は見てみぬ
ふりをしていた。リカ、恭子、奈津美は男に媚まくるタイプなので、当然男の前ではいじめはしない。
あくまで、さりげなく噂を流すだけである。だから男子でこのことに気づいているものはいなかった。
「汚い女ね、雑巾が大好きなんてさ♪アタシ達、明日もあんたに雑巾あげるわ。感謝しなさいね、湖水綾!」
バシッ!奈津美は綾の頬を思いっきりひっぱたいた。
「うぅっ…」
思わずよろめく綾。
「フフン♪」
捨て台詞のようにそうつぶやくと、奈津美は去っていった。それを追いかける二人。
しばらく呆然とその場に座っていた綾だったが、やがてフラフラと立ち上がり、家路についた。
家には、姉が作った料理がおいてあった。
それとともに、
「綾へ。今日も勉強がんばってる?美羽ちゃん応援しちゃうぞー☆なんちゃって。
美羽」
という置手紙があり、綾羽フッと笑顔になった。
料理をレンジへセットし、もう一回手紙を読み返すと、こんな追記があった。
「P.S 最近悩んでるんじゃない?乙女は悩みがちだから無理も無いね。いつでも相談してね?」
「……」
綾は、悲しげな表情になった。
平気な振りを装っていたけど、知らないうちに姉さんを心配させてしまっていた。
―これでは、だめだ。
綾はがんばる決意をし、手紙を大切に畳んだ。
次の日。
綾は登校しつつ、今朝の姉の様子を気にかけていた。
なんだか、悲しそうな顔をしていた…。
下駄箱に、紙切れが入れてあった。
「今日の放課後屋上に来い」
ギャル文字で書かれた字が躍るその紙は、汚らしくぐしゃぐしゃになっていた。
「……」
綾はため息をひとつつくと、トボトボと教室へ向かった。
(放課後が来ないで。神様…。)
そう祈っても、時間の流れは変わらない。綾は絶望した顔で屋上へ向かう。
フェンスを越えると、そこには見慣れた三人の女に…二人の男が立っていた。
それは、奈津美にお熱をあげている二人だ。すでにメロメロになっているので、
いじめるところを見せても平気だと奈津美は思ったのかもしれない。
(でもなんで男子が…。)
イヤな予感を感じつつ、強張るからだを引きずるように綾は五人へと近づいていった。
<続く>
>公立校白羽学園2−B
小学二年生同士の壮絶なキャットファイトに期待してるニダ
もしも高校とか中学とか言ったら絶対許さんニダ
絶対ニダ
たぶん高校生だろうね
綾が姉ちゃんの仇!と奈津美を禊ぐ展開を激しくwktkして待つ
>>311 浣腸あるなら普通の方が良くね?
まぁ作者さん次第ですな
新作もGJ
>>317 展開を考えて、温泉浣腸であっても俺は一向に構わんっ!
実はアルマもされてて耐久バトルだったら最高だ
どちらが勝っても面白そう
莉緒がなにか仕掛けてきそうな気もするし
とにかく続きがたのしみだ
>>314 イジメリンチかそれとも逆襲の壮絶バトルに発展か…楽しみだぜ
GJ!
ジエッジの作者ですが、諸事情でしばらく続きが書けそうにありません。
ひょっとしたら来月頭まで掛かるかもしれませんが、どうかご勘弁を…。
乙
さりげなくフェードアウトだけは勘弁
SS書いてる場合じゃなくなったのかw
単に忙しいならいいが入院とかだとおじさん心配だぞ。
また落ち着いたら帰ってきてくれ、待ってるぜ
下手な文章だけど、読んでくれてありがとうございます。
綾達は高校生です。
では
>>314の続きを
「ほら、早く来いよ♪」
リカが意地悪な笑みで綾を手招きした。
恭子、男子二人も同様だ。奈津美は、珍しいことに大人しく男二人の背後でこっそり笑っていた。
やはり、男子の前ではどこまでもしおらしくいたいらしい。
綾は、恐る恐るリカたちに近づく。―すると突然、リカが綾を思い切り突き飛ばした。
「きゃっ…!」
地面に倒れる綾。
「キャッ☆だって! きんも〜い!」
恭子が綾のわきばらを蹴りつける。
「い…痛い…っ」
「恭子、本題に入ろうよ。」
奈津美がいつもよりずいぶんオクターブの高い声で言った。
「あぁ、そうね。じゃ、森君、田中君、お願いね☆」
「おう」
男子二人が横たわる綾に近寄り、無理やり起こした。
そのまま顔をぐいっと綾に近づけ、
「昨日さぁ、兄貴がお前の姉ちゃんが通うソープに行ってきたんだ。
指名してヤったらしいけど、すっげぇガバガバマ○コだったらしーぜ?
お前がヤりすぎだからお前の妹もヤリマンになったんだって言ったら、突然
キレだして睨み付けてきたんだってさ!」
「――!」
「ほんっと、バカな女だよなぁ!俺の兄ちゃんに勝てるわけねーのに。
ハラ殴ったら一発だったらしいけどな!もしかしたら子宮壊れたんじゃね?
汚いヤリマン女にはお似合いの報いだよな!ハハハッ!」
「……!!!!」
綾の頭が真っ白になる。
今朝、姉が苦しそうにお腹を抑えていた。
心配してたずねたら、かき氷を食べ過ぎて胃腸風邪になちゃったと笑っていた――。
そして、いつもとは明らかに違う悲しそうな表情をしていた…。
「だからさぁ、俺らがお前の体の汚さも確かめてやるよ!」
そういうと、突然田中が綾の服のボタンをブチッと外した。
「きゃあぁ!」
「いいから早く脱げって!!」
綾のブラウスが脱がされ、ブラのホックが外される。
「いやっ!絶対嫌…はなして!はなしてぇ!」
「うるさい女だな!暴れるんじゃねぇ!」
森が綾を押さえつけ、田中が綾の露になった胸をまさぐり始めた。
「へっ…こんなとこばっか立派に育ちやがって…!」
「い…嫌…ぁ…っん」
綾は大粒の涙を流した。―なんで私と姉さんばかり、こんな目に遭わなければいけないの…?
神様がいるんだったら、絶対に恨んでやる…。
ふと顔をあげると、見下すように笑っている三人が目に映る。
その瞬間、綾の中の何かが切れた。
<続く>
こ、これは燃える…!
ただ男は要るのかな?女が姉ちゃんを嬲るってので良かったんじゃ?
この展開だと女が男を倒すってなりそう。
まぁまだ解らないので、続きに超期待する。しかしおもしれー
奈津実達が男に犯せって頼んだのでは?
続きが気になる!
いいねいいね!
ここでバカ女達を冷酷なまでにボコってスカッとさせて欲しいね
次にまた期待だね
いやいや、ここはただ冷酷にボコるよりも立場逆転までは持っていかないと
>>324の続きです。↓
「へへ…」
興奮した田中が、おもむろにズボンを脱いだ。
そそり立った肉棒が露になる。
「おら、舐めろよ。メスブタ!」
田中はそれを、綾の柔らかな乳房に押し付けた。
「――」
ゆっくりと顔を上げた綾は、思い切り田中を睨み付けた。
その眼光は鋭く、とても綾が発するものとは思えない。
「!?」
田中は、思わず――というより、無意識の内に『恐怖』を感じたのだろう、
目が合うなり反射的に後ずさりしていた。
次の瞬間。
「うぎゃああああああっ!!」
綾の足が、田中のものを力いっぱい蹴りつけていた。
見事命中したキック。田中はかなりのダメージを負った。
「ぐ…ガ…ッ」
あまりの激痛に倒れこむ田中。
「な…なんだよ コイツ…」
森があっけにとられ、綾を抑えていた手を離した。
そのスキを巧みについた綾は、すばやく振り返り、森の肩をガッシリと掴んだ。
プルン…目の前で綾の胸が揺れ、森の視線は一気にそちらへと集中。
そんなことには構いもせず、綾は勢いよく森を突き飛ばした。
ガンッ!鈍い音が屋上に鳴り響く。
森は後頭部からコンクリートに直撃したのだ。
「がはぁ…っ」
口から泡を吹き、森は気を失った。
「んのアマああああ!!」
露になったままのコカンを抑えつつ、田中が綾に向かって突進してきた。
綾は一瞬でしゃがみ込み、田中のパンチを避けると、相当なダメージを負っているであろう
田中のモノに、とどめとばかりに重いローキックを放った。
「ぎぃえ――――!!」
田中は、人生で味わったことの無い痛みに打ち震え、のた打ち回った後、倒れた。
ピクピクと痙攣している。こちらも気絶したようだ。
「何がメスブタよ…汚いものを押し付けないで。気持ち悪い」
綾はブラを身に着けながら、冷たく言い放った。
一部始終を見ていた三人の女は、綾のあまりの豹変ぶりに、ビックリどころの騒ぎ
ではなかった。
横たわっている男二人と綾とを交互に見つめ、ひたすら唖然としていた。
綾は、二人の男子を、まるで氷のように冷たい瞳で見下ろしていた。
その表情は、さっきまで泣き顔だった綾とは全くと言っていいほど別物だった。
感情の無い機械のような、完全な無表情。
自分を犯そうとしていた者を見つめる彼女の冷たい表情は、怖いほど美しかった。
綾は、ゆっくりと三人のほうへ顔を向けた。
氷の視線で見つめられた彼女達は、思わずビクッと体を震わせ、表情を強張らせた。
「…彼氏、倒されちゃったのよ。かかって来ないの?」
綾が言葉を放つ。
三人は、まるで石化の魔法をかけられたかのように固まっている。
――彼女達の顔を流れる冷や汗を除けば。
しばらく沈黙していた綾は、やがて、
「…なぁんだ。あんなに偉そうにしてたのに、ただの雑魚だったんだ…」
ポツリとそう呟いた。
そして、フッと鼻先で笑った。
「とんだ拍子抜け。バカみたい。」
今まで散々見下してきた女にここまで言われ、さすがに頭に血が上ったのだろう。
リカと恭子が綾に襲い掛かってきた。
「まぐれで勝ったからって、調子に乗るんじゃねえよおおお!!」
「湖水の分際で私たちに勝てるとでも思っちゃってるわけええ!?」
二人同時にパンチを繰り出してくる。
<続く>
よっしゃぁっ!反撃開始じゃあ!GJ!
まあ一人くらいなら気づいたら綾が後ろに立ってておもむろに首に手を回したかと思うとこきゃって捻って白目剥かすくらいはして良いと思う
>>330続き
(なんだろ、この感じ…胸の底から、何かがみなぎってくるような…)
極度の怒りによって身体能力の才能を覚醒させた綾は、もはや最強の少女となっていた。
「オラアッ!!」
(遅すぎ…。)
当然、そんな綾にこの女達がかなうはずはない。
簡単に二人のパンチを見切った綾は、軽やかにそれをかわした。
ますます腹を立てた二人。間髪を入れず、リカが凄い形相で蹴りを放ってくる。
綾はまたフワリとかわすと、振り下ろされたリカの足を手で掴んだ。
「離せッ!!気安く触るんじゃねェ!!」
「ええ、離してあげる。」
綾はそう言うと、リカのわき腹に強烈なエルボーを見舞った。
「うげぇっ!」
リカが吹っ飛ばされる。まさにバカ力である。
「このぉ!図に乗ってんじゃねぇ!!」
恭子が背後からの頭突きを試みる。しかし…
「くらえやああああ」
「遅すぎるのよ…!」
綾は信じられないことに、上空へジャンプし、迫り来る恭子の後頭部に足を乗せ、
グンッと跳躍した。
「ギャッ!」
頭の重みに耐えられず、恭子は体を前に大きく曲げる。
「すぐにそうやって目をそらす…甘いわ!」
恭子に向かって落下した綾は、
「はっ!」
なんと上空で体ごと回転。回し蹴りが恭子の背中にクリーンヒットした。
「ウギャァ!痛いぃッ!」
恭子は背中を押さえて転がりまわった。
綾は横たわる二人の女を見下ろした。
「何?もう終わり?」
リカと恭子は、自分達の能力は綾のそれを大幅に下回っていることを自覚した。
二人の表情には、明らかな恐怖の色が現れている。
綾はその表情を見て、今まで味わったことの無い感情を味わっていた。
(なんでだろう、体が熱い…気持ちいい…!)
自分を散々いじめていた女達が、今はその力にあっけなく屈し、恐怖している。
その事実が、綾の中に眠る優越感という感情を激しく奮い起こさせた。
それと同時に、今まで一切明るみに出なかった、綾の中の特殊な性癖も表に表れた。
そう、綾は実は、サドだったのだ。
(私…自分がこんなことに興奮するなんて知らなかった…なんてゾクゾクするの…)
こうなった綾を、もう誰にも止めることはできない。
「ほらほら、どうしたの!?さっきまでの威勢は?ねぇ。」
綾はリカと恭子の前髪を掴み、上に持ち上げた。
「痛い…!」
「くすっ、リカさんの口からそんな苦しい声が出るなんて私知らなかったなぁ。
ねえねえ、どうしたの?いつもみたいな台詞、言ってよ。」
二人は震えながら、ただ黙っている。
「言いなさいって言ってるでしょぉ!?ほら、ほらっ!」
バシンッ!綾の平手打ちが二人の顔に当たる。
「ヒィッ!」
「早く言わないと自慢の顔、腫れ上がっちゃうよ?まあ、あなた達が思ってるほど可愛い
顔じゃないけどね…あははっ!」
バシィンッ!綾は更に強く頬を引っ叩いた。
「うぇっ…やや、やめて…お願いよ…ヒック…」
「ぷっ!やだぁ!泣いてるの?2−Bの女王とか呼ばれてるあなたが…?
きゃはははっ!大爆笑だね!泣き顔も醜〜い!」
バシィィンッ!平手打ちをやめようとしない綾。
「い、言うから…お願い…」
リカと恭子の顔は既に膨れ上がっている。
「あら、いい子じゃない。早く言ってよ、ホラホラ」
「ちょ、調子乗ってんじゃねぇ…」
「ぶぶぶ、ぶっ殺す…ぞ」
「あっははは!そうよ、よく言えたわね!」
綾はそう言うと、立ち上がり、二人の腹を力強く蹴りつけた。
「ギャアアッッ!」
「うぐええっ!」
二人は悲鳴をあげる。
「姉さんと同じ目にあってる気分はどう?さぞかし苦しいことでしょうね!
もっともっと、痛めつけてあげるから…どう?うれしいでしょ?きゃはははっ!!」
<続く>
キターーーー!GJGJGJぉぉぉぉぉ!!
ナイス!!
鬼畜な綾さん素敵
てかすげぇキャラ変わってるwwww
どんだけスーパーサイヤ人になってんだwwwwww
いいぞ!もっとやれお姉ちゃんの分まで!
何故かこのスレって、新しい書き手が現れるとそれまでの書き手が消えるよな。
そういうジンクスでもあるんだろうか
しかし登場人物は「あや」
339 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 20:22:30 ID:rixsZH4d
過疎スレってことだろ
結構名門スレだと思うんだが
名門スレってなによ
1スレ目が立ってから長い事存続してるスレのことじゃないか? 知らんけど
ザ・エッヂの人復帰が待ち遠しいな
343 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/20(日) 20:43:09 ID:suv7Hv7+
>>342 ザ・エッヂ → ×
ジ・エッヂ → 〇
エッジ じゃねえの?
その方がエッチだと思って
ち、地下女スキーさんの新作が読みたいです…です…
都内某所にある非合法格闘場、そこで今夜も女ファイター同士の死闘が繰り広げられていた。
関東地方では三日前に梅雨明け宣言が出されていた。だが場内は観客の熱気が篭っており、やたらと蒸し暑い。
よって客も女闘士もその肌に大量の汗を浮かべるはめとなった……。
「美鈴!そんなDランクファイターに負けるんじゃねえぞ!!」
「こっちゃあテメエに今月の給料賭けてんだ!負けたら「処分場」送りにしてもらうぜ!里佳子ぉ!!」
「殺せ!!そんな牝豚、さっさと殺しちまえよっ!」
「おらぁっ!!殴れ殴れ!!もっと気合入れて殴り合わんかいッ!!かーぁ…ぺぇッ!!闘犬女どもがッ!!」
試合場には、地下独特の口汚い声援−いや、罵倒と言うべきか−で満ちている。
その非情な声に背中を押されるように、二人の女は金網リングの中で戦っていた。
女達が、こんな危険で非合法な場所で戦う理由は人それぞれである。
Cランカーで女子大生の矢島美鈴は、元々格闘技が好きで、プロ格闘家を目指しているような少女であった。
地下ファイトに足を踏み入れたのは純粋な好奇心とスリル、そして高額のファイトマネーである。
女子では中々やる機会のないガチファイトが思う存分できて、しかもそれなりの金が手に入るのだ。
学費を稼いで両親の負担を減らしてあげたいという親孝行の思いもあった。
対するDランカー、高田里佳子はと言うと、死んだ夫の借金であった。
27歳の彼女は、3年前に、6つ年上のベンチャー社長の夫と結婚したが、幸せな結婚生活はそれからわずか半年後に、夫の借金苦による自殺という形で幕を下した。
彼女は夫から遺産を継ぐことになった。借金一億という負の遺産を…。
借金取りは、最初里佳子をソープに沈めようとしていたのだが、ふとその経歴を見て、計画を変えた。
学生時代、女子空手競技インカレベスト4…
「奥さん、アンタもソープランドなんて嫌だろう?」
「このアングラファイトなら、上手くすりゃ、2年で借金完済できるかも知れんぜ?」
借金取りの言葉に、里佳子がどちらの道を選んだか、想像に難くない。
それが彼女らを、危険なファイトに駆り立てる理由であった…。
「くッ!無理せずさっさとくたばりなって、オバさん!」
濃紺と白の、ツートンカラーの競泳水着を汗みどろに濡らした美鈴が、里佳子に圧し掛かってパンチを繰り出している。
パンチを繰り出す度に、短めに切り揃えた赤色がかった髪が揺れる。
里佳子はいわゆるガードポジションになって防いでいたが、美鈴は容赦のないパウンドで里佳子の顔面を殴る。
「あがッ!ぐぉッ!!んうぅ……くはッ!」
同じく汗みどろの里佳子、パンチが繰り出される度に汗がぶわっと飛び散り、うなじ辺りで束ねた髪が揺れた。
里佳子の汗は、美鈴と違い水着に吸収されることなく、その白い肌を覆って、テラテラと艶かしく輝いていた。
そうなのだ、この闘技場ではDランカー以下は、トップレスで戦わねばならないというルールがあるのだ。
Cランクから陥落してから、この女として恥ずべき姿で3戦の試合をこなしていた。
このトップレスという姿、乳房を客席に曝け出して戦うということにようやく慣れてはきていたが、それでも気分の良いものでもない。
今日勝てば、美鈴と入れ違いでCランクに上がれる。そう思えば里佳子の戦意も上がろうというものだった。美鈴のパウンドを必死でガードしつつ、反撃の機会をうかがう。
「い、何時までもトップレスは嫌ッ…今日こそはぁ…」
「はぁ?アンタみたいな年増はトップレスくらいやらないと、男性諸君の目を楽しませることなんてできないでしょ!?ずっとオッパイ丸出しで戦ってなっ!」
幼い頃から格闘技をやってきた美鈴は流石に気が強い。ややツリ目がかった瞳やきっと一文字に結ばれた唇がそれを物語っているようだった。
対照的に里佳子は、全体的におっとりしたような印象を受ける顔である。
そんな二人が、地下の金網リングの中で死合を繰り広げている。
美鈴が、劣勢の里佳子を罵りながら攻撃を続けていた…。
はい、どうもこんばんわ。普段から覗いている地下女子格闘技スキー(正式名称)です。
>>346に呼ばれたような気がしたので、生存報告しに来ようと思ったのですが…。
ついでなので御土産に40分で作ったSS持ってちょっと帰ってきてみましたよ〜
まあ、色々とあったりなかったりで…半分蒸発、幽霊部員状態でありやすが…私のことはどうぞお構いなく
>>347は文字通り、「戦時急造」なので40分(若干の誇張アリ)で作りました。
適当に造ったので、設定とかおかしかったり、ヘンな表現とかあったりするかもですが、キニシナイキニシナイ…。
あと、どっちが美鈴と里佳子、勝つか例によってアンケートで決めたいかな〜、と思ってますので
適当に投票なんかしちゃったりして下さい。それによってこのスレが活気付けばなにより…。
投票の締め切りは…まあ、適当に48時間後くらい?まあ適当に延長したりするかもですが…
>>348 先生、前のを投げっぱなしのまま素敵な新連載だなんて…ビクビクッ
矢島美鈴の大逆転惨敗で
俺も処分場送りになったみりんさんを見てみたいな
>>349 それは違うナリよ。
裏学園祭は、今はストップしてるけど、何とか続けますぜ。
そしてこれは適当に作った「戦時急造SS」だから、新連載じゃなくって、次で終わりw
まあ、設定を継続して使って、裏祭完了後にでも、何かするかも知れないけど
>>350 処分場=処刑場
負けがこんで役に立たないと判断された女ファイター(E、Fクラス)を肉体改造したり、コロコロしたりするところ
よっぽどのことをしない限り、Cランクのみりんさんがいきなり落されることはない。
あの野次はハッタリみたいなもん
呼べばツーカーで帰ってくる、そんな我らの地下女スキー
おっとり若妻好きなんで、ぜひクソ生意気なみりんをヴォッコヴォッコにしてほしい。
好きなペースで好きな作品を書いてくださいませ。
末永くこのスレに繁栄あらんことを…
>>351 なんか美鈴がみりんさんで通ってるwwww
「私はねぇ、子供の頃からプロの格闘家になりたくて、柔道とか日拳とか、色んな修行をやってきたの!アンタみたいなオバさんに負けるつもりはないわ!」
美鈴が吼えるように言いながらパウンドを放つ。対する里佳子は、普通にしていても泣いているような顔を更に歪めて、美鈴の口撃にも無言だった。
「はンッ!!ねぇ、オバさん…泣いてないで何とか言ったらぁ!?」
一発、大きくフックのようにパンチを放って…そしてガードされた状態から脚を取りに行く。
「やぁああぁッ!?」
元々、空手出身で打撃メインの里佳子は、総合ベースの美鈴に関節の取り合いで分が悪かった。
美鈴がアキレス腱を脇に抱え込めば、恐怖の悲鳴が、激痛のそれに変わる。
「ぃっぎゃああああぁっ!?!いっ゛!?イダぁいッ!?!…ンぎぃいいいい〜ッッッ!!!」
「このっ!!さっきまで私の脚を散々蹴りまくったお返しだ!」
競泳水着から延びる美鈴の太ももは、痛々しい無数のミミズ腫れの痕があった。
そう、この試合の序盤で里佳子のローキックに苦しめられた痕である。
美鈴のアキレス固めは、まったくの遊びも余裕もない。プロレスの試合などで見られる『痛めつける技』と言うより『壊す技』であった。
そしてその容赦ない技に、里佳子のアキレス腱は、極めが入って僅か数秒で、負荷に耐え切れなくなってしまった…。
ぶッ…ブチブチィッ!!
里佳子は自身の体内で、組織が断裂する音を直に聞いた。
美鈴はアキレスを圧迫した前腕に、その感触を感じた。
「ひっぎゃあああああああぁっっ!!?!あっぐぐぐぐうううううぅっっ!!!ぃがぁああああああぁぁっ!!」
脹脛を焼かれるにも似た激痛に、そのおっとりした顔からは想像もつかぬような凄惨な悲鳴が漏れる。口の端から涎を垂らしながら、マットをのた打ち回っている里佳子。
その彼女の背中に、容赦なくカカトを落して追撃していく美鈴。
「ぎゃほッ!?ごふぅぇっ!?!」
「あははッ!!私に散々キックくれた罰よ!イイ気味だわ!」
そして、勝ち誇った美鈴の容赦ない追い撃ちは、逃げようとした里佳子の膝にブチ込まれる。
グギグギグギイィッ!!
金網リングはおろか、喧騒に包まれている客席にすら聞こえるくらいの大きな破壊音。
膝を砕かれた女闘士は、そこを抱きかかえて肺から空気の塊を悲痛な悲鳴に変換しつつ吐き出す。
「ぎゃあああああああぁッ?!?!?!うッ゛、うォ゛おおおおおおおおぉ゛〜ッ゛ッ゛!!!」
アキレスを切断され、反対の膝は蹴り砕かれた女空手家。脚を、しかも両方とも破壊されれば、反撃も不可能だろう。
勝利を確信した美鈴は、右腕を高く掲げて客席にフィニッシュをアピールし、マットをのたうっている里佳子の身体を爪先で仰向けにした。
その行為に、会場のボルテージは嫌がおうにも上がり、客席の喧騒は一層大きくなる。
「キタキタキタキタアッ!!良い悲鳴だぜ!イイ女のこんな凄え悲鳴が聞けるのが、地下ファイトの醍醐味ってヤツだぜ!!」
「おおお〜ッ!?!凄え!美鈴はやっぱ凄いぜ!!両脚とも壊しやがった!」
「凄いな!美鈴…ついでにあの未亡人闘士の両腕もヘシ折って、ダルマにしちまえばいいのにな」
「だがそろそろトドメ刺すつもりだぜ?一体どんな風にあの若後家さんを料理してくれんのかな?」
「美鈴!!いいぞいいぞ!!サイコー!!殺しちまえよ!!その若後家さんをキュっとシメちまってくれ!!」
「ふふふ、オバさん。最後は私の得意技でシメ落としてあげるわよ」
里佳子の身体に跨り、脇に彼女の頭を抱え込んでフロントチョークを極めようとする。
「私の得意技なの。これで10人はシメ落としたのよ…ほとんどの連中は、身体中の孔を緩ませて、みっともなく色んなモノをヒリ出しながら負け犬に堕ちてったわ」
「あッ……うぁあッ……い、いやッ…」
「ふふふ、オバさんも、そうなりなよ?アングラファイトの敗者の末路がどういうものか、お客さんに見せつけながら、惨めに漏らして負け…んがッ!?」
勝ち誇った美鈴の言葉が突然遮られた。血を流す鼻を押さえ、身体を仰け反らせる美鈴。
「や、やったなッ!?この年増っ!」
肘撃ちで鼻を砕かれ、怒りと痛みで悪鬼のような形相で里佳子を睨んだ美鈴の目に、更なる追撃の肘が写る。
「うっ……ぎゃがあぁっ!?」
首を振ってかわそうとして、髪を掴まれた。回避することができず、肘の尖った部分が左目にめり込む。
里佳子は、美鈴にマウントポジションを取られた体勢のまま、髪を掴み肘を顔面に入れていた…それも何度も何度も
「せいッ!…はあッ!!悪いけど、シメ落とされるつもり、ないわよッ……たぁッ!」
「ぎゃッ!?うぐごッ!!…んげっ!!」
「シメ落しなんて、狙ったのが…間違いだったのよ…はッ!」
「ぐげぇっ!!あがあっ!!」
「私の足を殺したあとは、距離を取って蹴っていれば良かったのに…派手に締め落そうなんて欲出すから…せいやッ!!」
「ぎゃひぇンッ!!!」
肘を振るって美鈴の顔面を殴れば、圧迫のない乳房がぶるんぶるんと揺れる。
場内は予想外の大逆転の展開に、これまでにない盛り上がり方で。
「っしゃあああっ!!いけいけぇ!人妻ぁ!!殴り殺せ!!クソ生意気なその牝犬を屠殺しろよっ!!」
「美鈴ぅ!!何やってンだよっ!?!さっさと抜け出すなり、反撃するなりしろやー!」
「リカぁっ!!ブチ殺せ!!お前がソイツをブチ殺せば、俺は車のローンが返せるッ!!」
「おおっ!?里佳子のおっぱい、ぶるぶるエロく揺れてやがるぜ!!もっとサービスしろ!!美鈴ぅ!お前負けたらトップレスなんだろ!?頑張らねえかよッ!!」
「ごらごらああっ!!人妻をクソ塗れにして負け犬に落すンじゃねーのかぁ?!宣言した以上はしっかりしろぉ!!」
凄まじい地下観客の悪意に満ちた罵声。それに包まれた二人の女闘士の死闘は、決着を迎えた…。
「・・・・・・・・・・」
里佳子の肘撃連打により顔面を破壊された美鈴が、金網リングの中無残に生ゴミのように転がっていた。
へし折れた鼻は横を向き、無残に白目を剥き、舌を垂らした美鈴の顔の周りには、白い塊が散らばっていた……彼女の前歯であった。
競泳水着のクロッチ部分は、持ち主が漏らした小便を吸い込み、濃い色に変色している。
完全に脱力したことを証明するかのように、手足をだらしなく大の字に広げた無防備な姿勢でのダウン姿を晒していた。
その横では、脚を砕かれた勝者が勝ち名乗りを受けていた。
彼女はこれで多額のファイトマネーを受け取り、借金の一部を返済できる。そして次回からはCランクファイターとして、胸を晒さずに試合に望めるのだ。
だが、それと入れ替わりに、この試合の敗者、美鈴はDランクに落ち、乳房を晒しつつ試合する屈辱を受けねばならない。
そしてそれとは別に、地下試合では敗北した闘士にはペナルティが下される。
無残な失神姿を晒す美鈴の競泳水着を、二人の係員が脱がせていく。失禁で濡れたそれを客席に放り投げると、男達はそれぞれ左右から敗者を抱え上げ、手首を縄で縛ると天井から吊るしてしまう。
……彼女に下される敗北の罰とは『彼女に賭けた客から人間サンドバックにされる』という過酷なものだった。さっそく、大枚すった男達がリングへと上がってくる。
それと入れ替わるようにリング外に運び出された里佳子。担架に乗せられ花道を引き上げていく彼女の背中から、悲痛な敗者の叫びがあがった。
まあ、割と適当です。
たまには凄惨なのもいいかな〜、と美鈴を半殺しにしちゃおうかな♪ なんて思っちまいましたが、1/4殺しくらいで収めてやりましたよ。
また感想などくれたら嬉しいです。
次はですね…サンボ娘対合気姫に着手を、ですね…(汗)
容赦ない攻撃で身も心もボコボコ・・・
最高!GJ!素晴らしい!!
流石は地下女スキーさんや! ボッコボコ最高や! 続きなんて最初から…いや、必要だね。 間違いない。
相変わらず流石としか言いようがおまへん
俺も人間サンドバックに参加してなまごみりんの恥骨をバキバキにしたいッ!!
人妻麗しいよ人妻。
サンボ娘対愛器姫もめっちゃ期待しとります!
地下女スキーさんやはり良いね
俺は最初の柔道の話好きだったな
全裸筋トレとか、やはり敗者には屈辱の罰が良い
>>356 >>358 ありがとうです。ボッコボコ娘が大好きな鬼畜者ですからw
>>359 なまごみりん、とはステキネーミングw
恥骨バッキバキとかステキすぎw
>>360 初期からのごひいきありがとうございます。
聡美対由実の決着、何とか今世紀中にはつけますので…(汗)
馴れ合わなくていいからさっさと書けよ
>>362 友達いなくて、本当はかまってほしいんだろ
>>361 ディ・モールト!素晴らしい!
ブラボー、おお…ブラボー
このスレはもはや馴れ合うのがデフォだからな。気に入らなければコテでスルーだ。
夏厨ってこんなところまで沸くんだね
18歳以下は立入禁止だかんね
あれ? そろそろエッヂの人帰ってくる時期じゃね?
誰?
でもさ、文才あるとなしの差は、持続力の差かもしれないね。
気分がのったときとか、得意なシチュとまでは書けるのは普通かな。
ここの作者たちはコンスタントに最後まで書いた人いないし。
ある程度書いて消えて、また違う作品でカムバック。
しょーがないか。
なんだこの見当違いの叩きは?
荒らしか?
面白いのが読めるなら連載だろうと新作読みきりだろうと構わない俺参上
まあストーリー物ならその結末がどこに向かうのかは若干気になるけど。
それよりあれだ、どうせなら見たいシチュでも書いて作者さん方の妄想を喚起しようじゃないあか。
俺はこの水着のナイスバディ美女たちが海辺で些細なことで喧嘩を始めて、砂まみれになりながらつかみ合いしたり、髪の毛掴んで海の中で窒息させたりなんてのを見たい
>>371 昔の海外青春ドラマであるみたいなワンシーンだなw
ベイウォッチにそんなシーンあるぞqqq
374 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 20:41:13 ID:KEAkdihr
小説の続編、期待してます!
希望としては打撃系の対戦とか。ボクシングが好きなんで。(^^;)
>>374 結局さ、作者たちは、凡才が頑張りすぎ飛ばしすぎなんだよな。
で、力尽きてフェードアウト。
彩とか日常の色付けすぎでにっちもさっちもでもう見てらんないw
凡才は気取らなくていいんだよ。
文豪が書いたよな完結しない凄い作品<現国5の奴の完結する作品
だよね。
随分と偉そうですね
凡才凡才と見下し発言をするって事は、地下女さんやエッジの人より遥かに上の実力を持つんでしょうね
楽しみです
投下がない限り保守すらない、たまの書き込みは逃げただとか凡才だとか職人を侮辱する叩き。
こんなところに投下があるはずもないだろ
そんな事はどうでも良いが、エッジの人はまだかっ!?
>>379 漏れは逆に、職人は反発して奮発してくれると思ってるんだけど。
こんな低俗な叩きに気を悪くしたり凹まされてるようじゃ、
ホントに凡才以下だよ。
まぁ、この叩きに便乗すれば、アイディア不足で続かなくなった
自らの不甲斐なさを隠して消える理由付けにはなるわな。
つうか普通に忙しいから書けない、とは考えないのか?
社会人にはお前らみたいに自由な夏休みがある訳じゃないんだぞ
はぁ…
オマイラの醜い言い争いを可愛い女の子同士の罵り合いに返還でもしないとやってランナウェイ
し! _ -── ‐- 、 , -─-、 -‐─_ノ
女 喧 // ̄> ´  ̄  ̄ `ヽ Y , ´ ) 喧 え
同 嘩 L_ / / ヽ 嘩 |
士 が / ' ' i !? マ
ま 許 / / く ジ
で さ l ,ィ/! / /l/!,l /厶,
だ れ i ,.lrH‐|'| /‐!-Lハ_ l /-!'|/l /`'メ、_iヽ
よ る l | |_|_|_|/| / /__!__ |/!トi i/-- 、 レ!/ / ,-- レ、⌒Y⌒ヽ
ね の _ゝ|/'/⌒ヽ ヽト、|/ '/ ̄`ヾ 、ヽト、N'/⌒ヾ ,イ ̄`ヾ,ノ!
l は 「 l ′ 「1 /てヽ′| | | 「L! ' i'ひ} リ
ヽ | ヽ__U, 、ヽ シノ ノ! ! |ヽ_、ソ, ヾシ _ノ _ノ
-┐ ,√ !  ̄ リ l !  ̄  ̄ 7/
レ'⌒ヽ/ ! | 〈 _人__人ノ_ i く //!
人_,、ノL_,iノ! /! ヽ r─‐- 、 「 L_ヽ r─‐- 、 u ノ/
/ / lト、 \ ヽ, -‐┤ ノ キ 了\ ヽ, -‐┤ //
ラ { / ヽ,ト、ヽ/!`hノ ) モ |/! 「ヽ, `ー /) _ ‐'
ウ ン ヽ/ r-、‐' // / |-‐ く | > / / `'//-‐、 /
ェ ナ > /\\// / /ヽ_ ! イ ( / / // / `ァ-‐ '
イ / /! ヽ レ'/ ノ > ' ∠ -‐  ̄ノヽ /
{ i l ! / フ / -‐ / ̄/〉 〈 \ /!
ランナウェイに素で噴いたわwww
>>382 にしても一言レスぐらいどうよ?
別に職人さんに義務なんてないが、
まだ書けませんぐらいのレスならいいだろ?
まあなんにせよそんなウザいことばっか言われていい気はしないわな
頼むから男同士の壮絶なバトルだけは勘弁してくれ
ああ言えばこう言うっつー流れは終わり。終了。
ドミネートスレでは一年に何回の投下なんだし、それに比べれば恵まれてるさ。
例え投下が無くても皆で妄想垂れ流してマタ―リしようぞ。
そうしているうちにまた投下もあるさ。急いてはいけない。
逃げたとか所詮凡才とか職人を追いつめる場所ではいけない。
その方が建設的だな
誰か妄想垂れ流してくれよ
見たいシチュでも書いていきますか?
昔の某バラエティにジャイアント将棋ってのがあったんだが。
それをパクってみたら、それはそれで悪くないネタになる気がしたんだがどうか?
色んな競技の格闘美女美少女が将棋の各駒に振り分けられ、駒同士が接触したら抽選で決められたルールで勝負っていう。
普通の将棋と違って、その勝負に勝った方の駒が盤上に残る。
王将は棋士自身が担当。 (棋士の格闘能力に関しては未設定だけどw)
何か必死になる理由付けさえ成立させられれば全戦壮絶な試合が期待できると思うのだが。
>>392 15年くらい前、と○ねるず、でやってたような気がするね、その企画。
やはり『必死になる理由』は、エロいペナルティとかかねー?
選手達は都内某所の地下闘技場に集められ
最終的に駒として盤上に残れば地上に開放って事で
もちろん試合に負けたらHな罰ゲームが待っていると
歩兵ははじめは雑魚だがガンガン成長する大器
香車は猛進してぶん殴るしか知らないアホの子
桂馬娘は須藤元気みたいなトリッキータイプ
金銀は双子で常に女王の傍に待機している
角は遠距離攻撃に長ける
竜王は全格闘技を修めた化け物
こうですかわかりません
>>395 そして玉は玉座に正座して座って、状況をまったく把握できずに
「ん?ん?」って笑顔で左右をキョロキョロ見回す役立たずな女の子なんだろ
王は王理恵
ちょっと書いてみます。
「おお! クミ選手の三連続キックが宙を切る、我々はまた信じられない光景を目にしています!!」
実況が大声で叫ぶ、
観客達も目の前の光景が信じられず驚きの声が上がった。
観客達が驚いたのも無理からぬ話であった、
リングの上で二人の少女が闘っているが、
キックボクシング女子王者の蹴りがかすりもしないのである。
もう一人の少女は格闘経験がないというのに。。
(なんで!? なんで私の攻撃が当たらないの……)
クミは焦りを隠せずにはいられない。
目の前の金髪の少女は自分の攻撃をかわし続けていく。
まるで、次に来る物がすべてわかっているかのように……。
(本当にこの娘、格闘経験がないの?)
ドン。
(あ!? シマッタ!)
クミは気がつくとロープ際にまで追い詰められていた。
リトアニアに一人の天才がいた。
人は彼をこう呼んだ。
『ザ・チェス』と、
彼は日本におとづれたおり、
よく似たゲームの存在を知りそこでこのゲームに魅せられた。
そして、そこで一人の女性と知り合いその娘と結ばれる。
その娘は、天才女流棋士と呼ばれた女性であった。
二人の間に生まれた少女はアリサと名付けられる。
アリサは生まれつきある一つの能力に優れていた。
『先読みの能力』である。
「う、うわあああ!!!」
ロープ際に追い詰められたクミはアリサに殴りかかる。
「……予想……どおり」
ヒュン
ドス
女子キックボクシング・チャンピオンのパンチを身を低くしてかわすと、
そのまま彼女の顎にカウンターを当てる。
パンチの勢いそのままにゆっくりと前に倒れこむクミ。
レフェリーが両手を振り勝負がついたことを皆に知らせる。
その瞬間、観客席から大きな拍手と歓声が沸き起こった。
「こ、これは予想外の展開! 何とアリサ選手、キックボクシング王者
近藤クミ選手を倒しました!!」
実況の叫びが響く。
「これにより、西村オーナーは香車と桂馬に続き、銀も失いました、
これは少しつらい状況です!!」
そんな実況を背にアリサはリングを降り、元々自分の立っていた場所へと戻る。
8×8の人間将棋盤へと。
こんな感じでしょうか?
うまうま
ぜひ詰みまで、って無理か?
でも9×9だよ。
新ジャンル:詰ンデレ
龍馬「別に王手を躊躇ったわけじゃないわ、すぐに終局になるのがつまらないだけよ」
タマ「うん、でもありがとう…りゅうまちゃん」
龍馬「///…も、もう少しだけココにいてあげるわ。裏切りじゃあないんだからね!」
1.
男は息を呑んだ。
悠里を抱いていた男達が、一人また一人と精も根も尽き果て腰を抜かしていく。残る男は彼だけだ。
多くが精気滾る若い男だった。その彼らがたった一度、悠里に精を注いだだけで全てを吸い尽くされたように脱力していくのである。
男はその情景に異質さと、そして多大な期待をもってリングに上がる。
女王はリングポストに寄りかかっていた。
カウガールを意識したコスチュームは汗にまみれ、シャツが素肌を透けて見せる。
剥き出しになった下半身にはブーツだけが白い肌を引き立てる。
ふっくらとした尻肉、肉感的なカーブを描く健康的な脚、蜜を零しひくつく桜色の秘裂。
もう何年も前から、その身体は多くの人間を欲情させてきた。
男はそそり立った逸物を女王の急所に宛がう。脚長の悠里に対してやや背伸び気味で挿入すると、すでに潤みきっていた柔肉は簡単に怒張を呑み込んでゆく。
「ぁ――…っ」
「う、う…あ……っ!?」
蕩けきった膣に硬さが沈みこみ、悠里は細い息をつく。そして男もまた声を上げた。
一突きで目の醒めるような性交が予感されたのだ。
悠里の内側は熱く脈打っていた。鍛え上げられた腰による締め付けは鈍い痛みを覚えるほどだ。
呼気に合わせて拡がった襞でさえ絶妙に肉茎をくすぐる。
喰い締めて、緩めて、その襞の蠢きだけで暴発しかねない、経験のない熱さと締めだった。
当然、狭くて感じるのは男だけではない。
締め付けに抗って怒張を叩き込むと、悠里も鼻を鳴らして乳房を弾ませる。
男は熱いとろみを穿ちながら悠里の下腹に手を回した。
皮膚は絹のようにすべらかで、しかも並みの女性の触感とはまるで違う。吸い付くような薄い脂肪と張りのある筋肉にはっきりと分かれている。
太腿に手を伸ばせば、そこも野生動物を思わせる弾力を内包していた。細い脚ながら凶器と恐れられる蹴りが繰り出されるわけだ。感度も良いらしく、腿を撫で回すとぞくんと震えが走った。
どこを触っても未知の驚きがある。年中抱いても飽きの来ない身体だ。
男は悠里の締まった腰を抱え、背後から獣のように犯し続けた。
うなじからはすっきりとした類の汗とシャンプーの香りがするし、具合はまさしく極上だ。
しかし犯していて感じるのはそれ以上のものだった。
悠里の、身体中から漲る闘気。それが肌をちりつかせる。
野生のライオンに馬乗りになるに等しかった。強靭な獅子を征し、服従の鳴きを入れさせる。
リングで悠里を犯し声を上げさせるのは、それと同じ事だった。
肉体的・精神的共に満たし尽くされ、男の逸物は潤みの中でまた一回り太さを増した。
悠里はコーナーポストに寄りかかりながら荒い息を吐く。
普段なら何人の相手だろうが息一つ乱さず、ともすれば汗さえかかずに終わらせられる。
しかしアルマに塗り込められた麻薬は彼女の身体を初々しく変えていた。
何度突かれても痛みにも似た痺れが腰を巡り、すぐに快感になって脊髄を流れる。
豊かな胸、安産を約束する腰つき。最高の鮮度をもちながらも女として熟しつつある身体は、それらを水分を摂るかのごとく吸収した。
「んうぅぅ――! んく……っ」
唇を噛み締めて悠里は耐えた。麻薬で昂ぶらされた身体を男達に休み無く抱かれ、それを衆人に晒さなければならない。脚を大きく開いたまま男の剛直を迎え入れ、その快感を逃がすすべもない。
鍛錬で感覚を薄紙のように研ぎ澄ませた悠里にとって、その責めはあまりにも甘かった。
身体に宿った種火が、一突きごとに煽られて燃え上がる。仙骨の奥を切なく焦がす。
「ああ、――ッあ!」
男に深く貫かれ、悠里は思わず声を上げた。男は限界が近いのかスパートをかけてきている。
悠里は内腿に蜜を垂らしながら唇を噛んだ。
腰を上げれば、大抵の男より脚が長いので相手はやりづらく勢いを殺げる。
だが快感が増してくるとつい腰が下がり、相手はここぞとばかりに絡みついて深く貫くのだ。
「あっ、―ふ、ンぐッ…!!」
運動量か、麻薬での疲弊か、悠里は自らの身体が異常な状態にある事を知っていた。
1000回のスクワットにも動じない膝が、腰を打ちつけられるうちに笑っていた。
それに追い討ちをかけるように、男が最後の射精準備に入る。乱暴な抜き差し。完全に精を放つ為だけの動き。パンパンと腰が打ち付けられ、秘裂から濡れた音が漏れ、腰が痺れに包まれる。
「おおっ!!」
男が射精と共に膣奥に亀頭をすりつける。その動きがたまらなかった。
この男も大量に精を放つ。子宮口の辺りで亀頭を潰し、どくどくと無遠慮に流し込んでくる。
よほど自分の中が良かったのか、溜めた分を全て吐き出していく。今までの男もそうだった。
(……ふぁ、ぁ……!)
疲れから解放された高揚感と相まり、受精が心地良くさえある。妊娠というものが人体の自然だからだろうか。
これでやっと終わる…。そう思った悠里は、しかし、視界に映る人影に戦慄を覚えた。
そこにはペニスバンドやディルドーなど道具を携えた女たちが並んでいたからだ。
「あはは、女王様って案外エロいね。おまんこが愛液でぐちゃぐちゃじゃん」
「そりゃ、いっつも裸同然のコスで人の男誘惑してるぐらいだもんね」
「乳首もビンビンに立たせちゃって。レイプで感じたの?こういう女がいるから勘違いされるのよ」
悠里は彼女らに威嚇の目を向けた。しかし誰も怯まない。修羅場での度胸は女の方が上らしい。
これからは性欲に限界のない女の時間だ。
青葉の笑みが甦る。
女による女への責めのいやらしさ・執拗さというものを、悠里はよく知っていた。
悠里の汗みずくの身体はリング中央に戻され、女たちの細腕が自由を奪った。
「この世で一番怖いのは生きた人間、一番恐ろしいのはメスの憎悪ですわね」
アルマは男に跨って呟いた。軽く汗をかきながらも表情は精気を吸ったように溌剌としている。
黒豹を思わせる身体で男を「犯し」ながら、その視線は悠里に向いていた。
悠里もまた一人の女性に跨っている。しかしそれはアルマとは意味が違っていた。
下になった女は並みの大きさではないディルドーを腰に装着し、それで悠里を突き上げていた。
女であるゆえに感じ方を心得た突き込み。前後にくゆらし、腰をすりつけながらねじりこむ。
その効果は確からしく、悠里はうめきながら腰を揺らした。
しかし逃げる事はできない。彼女の両腕は万歳をするように抱え上げ、掴まれていた。
晒された豊かな乳房は常に揉みしだかれ、性器と変わらぬほど敏感になった乳首も転がされる。
膝立ちのまま身体中を愛撫され、悠里は為すがままになるしかない。
鍛えに鍛え上げた強靭な身体がまるで空しい。
おまけに先ほどからは、ヤンキー風の少女によって後孔の蕾まで弄くられていた。
「やあっぱりココが弱点だ。ケツ穴ほじられてスゲ―嬉しそう。ただピンクで皺も綺麗だけど、この柔らかさは初めてじゃあないね」
「マジ?あの高嶺の花がアナル貫通済みかよ」
「わー、格闘女王がお尻ぐりぐりされてイヤがってるぅ〜!すっごーい」
「あの色黒女のクスリ塗ったからかな、ブジュブジュいってるね〜、こりゃされる方はたまんないわ」
罵りを受けながら、しなやかな指で排泄の穴を犯される。プライドが汚され、若き女帝は憤怒に狂う。
それでも尻穴をひらかれる汚辱感はどうしようもなかった。
「うーっ、ウ!――ぃぎひー…っ!」
ぐぽっと空気と共に指が抜かれ、再びぬるい粘液と共に抉られる。指はためらいなく悠里の腸の奥深くまで滑り込み、便の通り道を刺激していく。
女のアヌスには前立腺がない。けれども、それと近しい感覚は呼び起こせる。
子宮の裏をこりこりと嬲り続ける彼女らは、確実にそれを知っていた。
“うんちひり出しただけで感じるくらい、徹底的にシてあげる”
そう耳元で囁いていたのは真実だった。
うひひ、見て見て。すっごい顔… ――囁きが、また聞こえる。
「うア゛あッ!」
耐え切れない感覚についに声を漏らし、悠里は前方に腰を逃がす。しかし今度はディルドーが子作りの壷に深々と沈み込む。たちまち直接的な絶頂感が通り抜ける。
どうもがいても逃れられない。
女の部分からは蜜を垂れ流させられ、肛門には下痢便が迸る直前の疼きが染みている。
すでに自分のアヌスは排泄器ではなく、快楽を求める性器に成り下がっている証拠だ。
おしりが、あそこが、胸が、おしりが…。無数の指と器具に苛まれ、身体中を快楽の大波が襲う。
母乳が出そうなほど乳首を摘まれ、無数の視線に脳が焼かれ…
悠里の意識はホワイトアウトした。
2.
リングの上には2人の少女。年は10にも満たないだろう。
一人は天使のような愛らしさをもつ白人少女。輝くような金髪と白い洋服、白い肌。
彼女は笑いながら対戦相手を小さな足で踏みつけていた。しかし遊びのレベルでではない。
相手から外れマットを踏み抜くとダゴンダゴンと轟音がなる。
それを受けているのはアジア系の少女だった。黒髪を後ろで結い、糸のように垂らしてマットの上、丸くなっている。胸もお尻もまだまだ幼い。
しかしその年端も行かぬ彼女は、白人少女から容赦のない責めを受けていた。
踏みつけが顔に当たればぶふっと噴き出し、手足に当たれば抱えてのた打ち回る。
しかし今日に限った事ではない。昨日も、その前もだ。
リングを囲むのは人数こそ少ないが、プロレスラーやスタントマンが多い。目上からのシゴキで受けるストレスを、小さな女の子が嬲られるのを見て晴らそうというのだろう。
べつに黒髪の少女は無抵抗を義務付けられているわけではない。
しかし彼女は格闘技の素人で、対する白人少女は母親から軍隊格闘の英才教育を受けている。
棒やナックルを手にしたとて勝負になるわけがなかった。
ぐしゃ、ぐしゃっ。
白人少女のワンツーで黒髪少女の鼻が潰された所でゴングが鳴った。
白人少女は涼しい顔でコーナーに帰る。アジア少女はリング中央で痛切な悲鳴を上げる。
ど う し て …?
ど う し て こ ん な 目 に … ! ?
涙に滲む視界の中、黒髪の少女は手をみる。真っ赤に染まった手。
一人のコーナーは恐ろしいまでに広く、寂しかった。インターバルが怖かった。
白人少女はトレーナーや取り巻きに取り囲まれ、水やら何やらの世話をされている。
でも自分には誰もいない。所詮は頑丈さだけを買われた練習台だ。
ニホンで産まれたという事以外、少女は親の顔も知らない。
気付いた時には兵士の慰み者だった。器量は良かったが処女指定がなかったので、
肛門も、女性器も、口も、全てを毎晩使われた。
その生活に比べれば、殴られて全てが保障される今はラクだった。
その生活が続く限り。
しかしある時、白人少女はにこやかに言った。
「ねぇ聞いた?もう皆、おまえに飽きたんだって。今日また負けたら用済みよ?」
黒髪の少女が見回すと、確かに空気が違っている。
リングの外に張られた金網、響くブーイング、そしてオトナたちの冷たい表情。
幼い少女は、時が来たのを知った。
『ダイジョーブ、始めからの契約は今日も同じよ。おまえが私を倒せたら、
私の全部はおまえの物なんだから。地位も、練習器具も、ユーリの名前も。
何もないおまえになんだって入ってくるのよ?』
白人の少女はタンタンとステップを刻みながら笑った。
笑えるのは、そのような可能性が1%もないことを知っているからだ。
可能性が1%あるなら、100回闘えば一回は勝てるのだから。
『そうそう、それと。…今日は、私もおまえを殺していいって言われてるの』
白人少女はそう言ってグローブを嵌めた。拳の部分に鉄が見える。
はっとして黒髪少女がその顔を見ると、青い瞳は静かに据わっていた。
子供特有の残酷さで、虫の羽をちぎるように人を殺す目だった。
黒髪少女は、自分が数人目の実験台であることを思い出していた。
幼い少女は、時が来たのを悟った。
優しいだけでは全てを失う事がある。力があれば全てが手に入る時がある。
名もない少女は、初めて手のひらに力を込めた。
3.
悠里は目を覚ました。どのくらいの時間意識が飛んでいたのだろう。
衣類はもう何も纏っておらず、2穴が熱い。
「あら、お目覚めですわね。あと少しで不戦勝でしたのに。」
リングの中央ではアルマが見下ろしており、傍では審判が悠里を覗き込んでいる。
「…何をいうかと思えば…。闘わずに終わり、なんて…笑わせるわ」
悠里は震える脚を叱咤して立ち上がった。
ひとつ深呼吸をする。それで身体の調子がわかる。
ダメージは想定より大きい。麻薬の作用だろうか、全身にかいた汗が冷えて感じられるほどに火照っていた。立つのがやっとの高熱に浮かされているようだ。
しかし、悠里にも意地がある。
ロープを支えに立ち上がり、アルマに対して構えを取る。
ムエタイを意識した急所を護る構えだ。
ガードを考えて構えることは珍しい悠里だが、護りを疎かにして捌ける状態にはない。
しかし対するアルマは構えず、輪のついた細い紐を取り出した。
「タイ人の格闘だからムエタイ、と考えられては困りますわ。私の闘法はミール。ご存知かしら」
悠里はやや考える素振りを見せ、頷いた。
ミール。日本では『クシュティ』の名で伝えられた格闘技だ。
腰に紐をつけて闘う、オイルを塗って滑りやすくする、などといった独特のルールも存在する。
「お互いの腰に紐をつけて、逃げ場のないままでのド突き合い。まぁ、プロレスですわね」
プロレス。その言葉に場が騒然となる。
「ね、どうかしら。受けてくださらない?」
アルマはその騒ぎに乗じてさらに踏み込んでくる。悠里の目つきが険しくなる。
終始アルマのペースに乗せられてしまっているのが気に食わないのだ。
しかし、今度こそ条件はフェアだと思えた。特別に断る理由もない。
「…勝手にしなさい。ただし、逃げ場がなくて後でキャンセルは聞かないわよ」
悠里は苛立ちを露わにして応じた。しかしアルマはくすくすと笑うばかりだ。
「ありがとうございます。じゃあ、結びますわね」
アルマが取り出したごく細い糸。腰につけるには余りにも心もとない。
しかしアルマが悠里にそれを巻く時、本当の狙いが明らかとなった。
悠里は目を疑った。
「ふふ、せっかく女なんですもの。丁度いい引っ掛かりでしょう?」
凧糸のような物で結ばれたのは女の急所。すなわち、両者の乳首と陰核だった。
さきほどの性的興奮はこのための前準備だったのだ。
尖った乳首はじかに糸で結び、デリケートな陰核は小さな輪に通して糸へ繋ぐ。
敏感な三ヶ所がぎちぎちと搾り出される。
観客の盛り上がりに反し、悠里は歯を鳴らした。
「どこまで………どこまで!」
しかし言い終わらないうち、アルマの振りかぶった腕が悠里を襲う。
悠里は咄嗟に胸をかばった。
プロレスでいう逆水平チョップだ。打撃よりダメージは軽い。
しかし…本当の恐ろしさは表面上のダメージではない。
悠里がそれに気付いたのは、チョップの圧力で身体が後方に流されてからだった。
「しまっ…!」
考えるより早く、胸の尖りと陰核に鋭い痛みが走る。
アルマも小さく顔をしかめてはいるが、明らかに体制を崩した悠里の方がきつい。
「あッ!あ、いぃいーーっ!!」
背と腰を同時に跳ね上がらせ、悠里は思わずアルマの身体を掴んで堪える。
「…痛かったの?でも格闘家が泣かないで下さいまし」
アルマの言葉で、悠里は自分が涙を零していることに気付いた。
恐ろしく厄介な戦いに挑まされていることを、悠里はようやくにして悟った。
ダメージを受け流すという基本の動きが、局所を痛烈に苛む状況。
やや膨らんだ程度のアルマに比べ、しこりたちすでに痛いほどの悠里の秘部。
しとどな汗と愛液で極度に滑りやすくなったマット。
その全ての要素が、悠里に涙を流させようとしていた。
「私が日本に来たのは、プロレスに興味があったからですの。強靭な肉体と多彩にして豪快な技。
タイ人の本領をどうぞご堪能あそばせ」
アルマガ細い身体でポージングを取る。
日本人とは比にもならない、驚くほどしなやかな筋肉が深く浮き出た。
起きててよかった…
って、余計寝られなくなりましたGJ!
待ってました!
重厚な格闘部分の描写とかなんか凄い
よくこんなん知ってるな…
GJ!
うわあああああああああああああああああああああああ
きてたああああああああああああああああああああああ
GJだ!
この展開も、ここからの期待値も…間違いなくGJだっ!
文才あるとなしの差は、持続力の差かもしれないね。
気分がのったときとか、得意なシチュとまでは書けるのは普通かな。
ここの作者たちはコンスタントに最後まで書いた人いないし。
ある程度書いて消えて、また違う作品でカムバック。
しょーがないか。
↑
なんでここでコピペ?
無駄に絡んで職人のやる気を減退させるボディーブローみたいなもんだろ
狡猾なヤツだぜ。荒らしってヤツぁよぉ
性質的にいうとグレート・カブキや武藤の毒霧だと思うw
おれはただの荒らしやガキとは違うと思うな。
>>415のコピペの通りにはならないでくれ、という
職人さんへの期待だと思うな。
いや、仮に荒しじゃなくても、その意見通りなら馬鹿がやる事じゃないか?
放棄は論外にしたって、書き手にも生活ってモンがあるんだから
放棄は論外なのか
しかし高速道路の工場とおんなじで、宣言がない以上は復活の可能性があるとされて放棄ではないよな
職人さんも大変だよな。
一週間あけたら、放置とか言われちゃうんだから。
でも、
エッヂの人も、8月に入ったら書けますとか言ってたのに、
月末に滑り込みセーフ状態。
どっちもどっちかな。
まぁ、色々あるだろうから仕方ないっちゃ仕方ないよ
エッヂの人の場合は8月頭って宣言してたから、伸びるなら伸びるって言って欲しかったなってのはあるけど
で、「8月末になりそうです」と報告があると
イチイチ報告イラネ
そんな事言ってるひ暇があったらサッサと書け
と言われるんですね。判ります。
冗談はさておき
>>411 おかえりなさい。
この後の展開をwktkして待ってます。
用事が8月までかかるからしばらく待っててねと言ったのを8月投下と勘違いされ、
挙句に逃亡だの何だのと騒ぎ立てる荒らしとどっちもどっちとまさかの疫病神扱い
すげーこのスレすげー
俺ならもう絶対書かないわ
勘違いしてるのはお前だ。
何週間も空けて予告さえ破り、あまつさえ一言の謝罪もしない奴にこのスレで書く資格はない。
誠意を込めて謝罪した上で住人全員の許可を取れ。仮にも社会人ならこの理屈は理解できるな?
おいおい…勝手にSS書きを義務化するなよwww
謝罪とか資格とか腹イテェwwww
予告も自由なら、それを守るも自由。また予告を信じるも自由。
ここは何の義務もない個人の趣向を自由に晒す場だよ?それこそ仕事じゃないだぜ?
まあ勝手に声高に叫ぶのも自由なんだがなw
作者さんには的外れな声は気にしない意志の強さを試される流れだな。
本当に気の毒だわ。
なにこの片腹痛い流れ
俺は職人という神の降臨を黙って待つだけだ
そして降臨された際には礼を言う
気に入らなかったらスルー
それがネットマナー(笑)
>>426みたいな正義感ぶった自治厨がわいてるな。
自分ならこんなスレには書かないとか言っちゃって、
自分で職人さんの逃げ道広げてるのが解ってないらしい。
そう、上述のコピペのような叩きは荒らしじゃない。
書き始めたからには放棄しないでほしい、というエールなんだよw
本当に書いてほしいなら逃げ道とか言う言い方は控えたら?
放棄とか逃げ道とか、何か家に押しかけて包囲する借金取りみたいだぞ。
SSってそこまでして書き続けなきゃいけないものなのか?
369=375=381=419=423=427=430 というところだろうか、乙
でも早く宿題やれよ?
あと1日しかないぞ?
プロファイリング厨の定番の自治レス、乙
おいおい…
オマイらの姿をマイクロビキニをつけた小学生娘にして
罵り合いながらのオイルバトルロイヤルしてるのに変換するのも限界があるんだぜ?
よし、じゃあ女闘将棋の続きでもするか
437 :
432:2008/09/01(月) 08:30:20 ID:d+2q9NSa
383=434 妄想癖ロリコンというところだろうか、乙
男闘美で無駄に流してんじゃねえよ
週末人、エッヂの人にも華麗に流してスルーされてんだからよ
職人さんも大変だけど率直な感想。
職人さんも始めは、趣味みたいな軽い気持ちで投下するんだ
と思う。でも、住民の期待レスとか延滞罵倒レスとかある
うちに、作品がどんどん内容的にも時間的にも、重荷になって
いくんだろうね。軽い気持ちで書き始めるのもいいけど、重荷
を背負えないほど期待に応えようとしないで、最後まで軽い
気持ちでいいんだよね。凡人が背伸びしなくていいんだから。
良いこと言ってるのに、凡人の一言は余計だったなw
こんな文法の問題を見かけた。
( )にどんな表現を入れたらいいでしょうか
もうすぐ休みだけれど、試験が近いので、旅行( )ではない。
1.ところ
2.どころ
3.ばかり
4.ばかりか
ところで、
>>439 の文章を見てくれ。
軽い気持ちで書き始めるのもいいけど
(中略)
最後まで軽い気持ちでいいんだよね。
コイツをどう思う?
職人、叩き、叩き叩き、ここまで同レベルのスレも珍しいなw
で、そろそろ「オマイラを女に転換妄想ハァハァ」野郎の登場ですかそうですか
いや、俺はお前らをパンツ一丁のガチムチ野郎だと知ってるぞ
エッジの人も今頃乳首いじりながら「どうゆうことなの・・」とか言ってる
投稿してるだけなのに、何でこんなに落ちちゃったんだ?エッヂの人w
これじゃ負け逃げじゃんかw
これはそろそろ本気で見限られるかもわからんね
スレを見限るんなら、似た別のスレで投下すればいいんじゃない?
そもそも荒れた砂漠のようなこのスレに投下した時点で、
見限るなんて行為はしないはず。
つか、実力で砂漠をオアシスwにしようとしてたんだろう。
よって、投下がない=書けなかった、ということ。
見限るなんて格好いいもんじゃないな。
何の努力もしてないようなヤツが勝手に砂漠とかよく言うわ
保守
>つか、実力で砂漠をオアシスwにしようとしてたんだろう。
よって、投下がない=書けなかった、ということ。
何の根拠もない妄想を前提によってとか言っちゃうコイツ怖っ
リアルではストーカーでもしてんじゃね
お前さんたち、そろそろ荒らしはスルーの方向にシフトチェンジしようぜ
453 :
432:2008/09/06(土) 08:15:27 ID:AiX4f+k4
442=451 というところだろうか、乙
>>452 スルーなんてできるわけないじゃん
類友、同類なんだから
エッヂの人を見ろよ
相手にせず、上から目線で無言で書き溜めてるよ
久々に伸びてたから期待したのにクソみたいな流れで泣いた
週末だけど、エッヂ来るかなぁ?
来ないだろうなーw
432は俺だ。何騙ってんだよww
だれでもいいよ432なんてw
エッジの人、煙に巻いてどっか行っちゃったね。
行っちゃったふりかw
たぶんcheckはしてるんだろうw
そらまあ、義務でもなく自分の趣味で投下したら、ここをもっとこうすりゃいいとか
ならまだしも、凡人が背伸びだの遅れたから謝罪しろだの許可を取れだの、
なんで気違いに粘着されながら投下せにゃならんのよ
俺なら金輪際投下せんがなqqq
↑
もう待ってる奴とかいないし消えていいよ
最後の投下
>>404の当時でも相当な言われようだったのに、なぜか投下している。
あの時は何だったんだろう?あの時と今との違いって何?
>>404当時みたく、関係ないふりして投下すればいいのに・・・
書くペースは人それぞれだろうに、逃げたとか言う人って何なの? あ、馬鹿か。
俺は待ってるんでエッヂの人頑張ってくれー
特定の書き手に粘着しているところからいって、
人気に嫉妬した書き手あたりだろ。
基本はスルーでいいだろうけど、まだ暫く一人で書き込み続けるだろうし、
せっかくだから皆でからかって遊ぶか、もしくは避難所でも作るかい?
エッヂの人も大荒れだった前回の投下時に詰ンデレとかネタかますタマだから、多分全く堪えてないと思うぞ
書けない理由は夏バテか逆に夏を満喫してるか…ってとこじゃないか?
おまいらも今の時期SS書こうとおもわんだろ
>>464 概ね同意だが、最近結構涼しいと思うぞw
背伸びなくして成長のカタルシスはありえねェ
グッドカオス
エッヂは最後まで走破するつもりです
できるだけ早く書くようにして、たまには近況報告もしますね
1.
アルマは人を殴る事が大好きだ。
格闘能力に優れるタイ人の、その中でも恵まれたリス族の、更に変異種の肉体。
殴られた相手は絶対にタダでは済まなかった。
ボクサーでも、ムエタイに勤しむ屈強な男でも。
殴って打ち倒すのが好きだ。それで客を沸かせるのが大好きだ。
愉しむ・愉しませるためなら何だってやる。
対戦相手と因縁をこしらえておくのもいい。ウォーミングアップに乱交するのもいい。
紐と紐で女の部分を結びつけ、どちらかが朽ち果てるまで殴りあうのもいい。
相手が気高いファイターであれば、鍛えに鍛えられた美しい身体の持ち主であれば、
勝利の瞬間は至福となった。悠里などその最たる物だ。
零れそうな乳房はつんと上を向き、それを押し上げる胸筋は程よい肉付きで腰へ流れる。
腰は抱えれば折れそうに細いが、背と太腿は肉感的に発達し、立ち姿はまるでしならせた弓だ。
生まれつきの骨格と限界までの鍛錬が育んだ、普通では維持しえないスタイル。
彼女がカウガール姿で現れた時から、アルマは胸が高打って仕方がなかった。
桜色の裸体が眼前に晒される今、もはや柔肉を叩き潰したい衝動を抑えきれないほどである。
悠里は高めに構え、アルマを窺いながら息を整えていた。
顔は熱に浮かされたように赤らみ、額には汗が噴出している。消耗は相当なものらしい。
――ふふ、こっちが見えてるのかしら?気をつけないと、痛いわよ…。
アルマは僅かに肘を下げた。素人目にはガードを固めたように映るだろう。
しかしそこに隠された意思を読み、悠里は前傾に身構えた。
狙いはボディだ。腸が詰まっているのが信じがたいほど細い腰、打ってダメージが入らない筈がない。
「シッ!」
アルマはヌンチャクを振るがごとく肘先を放った。
皮膚が空気に擦れてチリリとする速さ。それを悠里は避けない。
「んむぐっ…!!」
クリーンヒットは悠里の漏らした声で確認できた。
素人ならすぐさま悶絶する一撃をモロに喰らい、さしもの悠里も眉根を寄せる。
おおおっと客席から声が上がった。
当然だ。悠里にボディーブローを叩き込み、苦悶の声を漏らさせる。
悠里と肌を合わせた彼らには、それがどれほど困難な事かが分かっていた。
しかし、驚愕の表情を見せたのは悠里だけではない。
腹部へのインパクトの瞬間、アルマの手首に返った鈍い痛み。
堅い、とアルマは感じた。しかし岩のような堅さとは違う。
柔らかい樹皮が幾層にも重なって樹の幹となるように、悠里の下腹は生半可な力では貫けない弾力を内包していた。
――なるほど、避けようともしない訳ですわね。
なんと倒し甲斐のある相手か。アルマは手首を振って優雅に笑った。
ふうっと息を吐き、悠里は背を伸ばす。尾のような後ろ髪が揺れる。
会場が再び緊張に包まれる。今度は女王の攻撃だと。
だが、アルマは妙に落ち着いていた。余裕をもって悠里の様子を窺っている。
悠里はそれに不可解そうな顔を向け、すぐに表情を消した。
攻撃に意識を集中させたのだ。
風切り音のしそうな悠里の左フックは、鋭くアルマの顎に吸い込まれる。そして綺麗に打ち抜く…
はずだった。
「んんくっ!!」
だがしかし、声を上げたのは悠里の方だ。
観客は目を疑った。
今まさに振り抜けようとしていた悠里の上体が元に戻り、拳の勢いも殺されている。
まるで時間が戻ったよう。一つ違うのは、アルマが右の乳頭を繋いだ糸を引いている事だ。
悠里の悲鳴もそれが原因だろう。
人は打撃を放つ際、身体の回転を利用する。左を打つなら右向きに、右を打つなら左向きに。
アルマは一瞬でその捻りを見てとり、それと逆方向に糸を引く事で攻撃を殺したのだ。
「ふふ、御免なさい。でも殴られるのは大ッキライですの」
「……殴られるのが嫌だなんて、とんだプロレスラーね」
余裕の表情のアルマに、悠里は苛立ちを隠せない。
ミールという変則的な闘法に関しては、アルマに一日の長があるようだった。
悠里はアルマを睨みながら、片目を閉じて滲んだ涙を殺す。
視界の端に映る右乳首は赤く充血し、糸が深く食い込んでいる。
まさに顎を打ち抜こうとした瞬間に痛みが走った。
意識しない痛み。針が刺さった程度のものだが、身を竦ませるには十分だ。
まさか糸一本で身体を制御されるとは。悠里はこの闘法の恐ろしさを理解した。
組み合うに近いこの距離で、身体のバランスは最も重要なファクターなのだ。
厄介ね。
そう考えた直後、悠里は鳩尾に何かが突き刺さるのを感じた。
ズグッ!
(し、しまっ…た……!)
肺から空気が抜ける苦しさに頭が白んだ後、それが膝蹴りだと理解する。
タイ人の石のように硬い膝を鳩尾に叩き込まれたのだ。
「げぇえぼっっ!」
無様な声を上げながら、悠里は思わずアルマの肩に倒れ掛かる。
喰らったのは考え事をしていたからではない。ほぼ密着した近距離で、視界より下からの攻撃を知る事は極めて難しいのだ。
「あら、どうなさったの?しゃんとなさいな」
悠里が寄りかかった肩は一瞬下がり、次いで火の様に勝ち上げられた。
がちんっと悠里の歯が鳴る。
「は、あぐ!」
肩という力強い部位で、それもゼロ距離で脳を揺らされる。
脳へのダメージは深刻だ。
頭の中が何重にもズレているのがわかり、下顎にむず痒さが沸き起こる。嘔吐の前兆だ。
(こ、これぇ…や…やばい…かな……)
悠里は千鳥足で後ろへよろけ、胸の糸に引かれて止まった。
身体は止まっても脳は揺れ続け、周囲の景色が回転しはじめる。
その回転の中心では、アルマがこれ見よがしに腕を引き絞っていた。
オオオオオォ!!!!
歓声がアリーナを揺らがせる。アルマの血脈もその熱気で滾る。
女王が頭をぐらつかせながら後退する様はそれだけのものだった。
――いける、ここで畳み込める!!
アルマはマットを踏みしめ、前方へ力を放り出した。
まるで技ともいえない粗雑な一撃。ただ加減をしないゆえに、込められた力は計り知れない。
その一撃は悠里のうなじを掠め、艶めく黒髪を巻き込みながら宙を貫いた。
「惜しいぞー!」
「おいおい、アレ当たったら悠里でもブッ倒れるんじゃねえのか!?」
「いいぞいいぞー、久しぶりに王者に鼻血噴かせてやれ!」
客の声も高まる。果たしてどこまで本気なのか、とアルマは疑いながらも、彼女自身言葉にならない確信に満ちていた。
次か、その次か、またその次か。遠からず決定的な一打が入る、と。
「りゃあッ!!」
ハンマーナックル。気のせいではなく空気を駆る音を立て、悠里の脇腹を拳が襲う。
しかし、それは悠里のアバラを砕く事はなかった。
ち、と舌打ちし、アルマはさらに畳み掛ける。見た目にも派手なラッシュに場が大いに沸く。
だが、その歓声は次第に戸惑いの色を浮かべ始めた。余りにも、余りにも当たらない。
アルマは豪快に腕を振るう。足を使う戦いならばともかく、至近距離で届かないはずがない。
しかしそれは悠里を追い詰めず、アルマの息を荒げるだけだった。
そしてアルマの拳が、止まる。
「………っ!」
アルマは絶句した。その眼前には顔を深く腕で庇い、なおも視点の定まらない悠里がいる。
連打に要した時間はせいぜい一分強。顎を肩で打ちぬかれたダメージが抜けるはずがない。
しかし、アルマの攻撃はすべて「捌かれた」。
悠里は意識してそうしたわけではないだろう。判断はおろか、攻撃を分析する余裕さえ彼女にはないはずだ。ならば、それは防御でさえない。
本能のみでアルマのラッシュをすべて斬って落としたのだ。
アルマがしばし自失したのは仕方のないことだろう。しかしそれでも、彼女は手を出すべきだった。
時間を与えれば悠里のショックは抜ける。しっかりと足を踏みしめ、マットに腰を据える。
「ぐ…!」
アルマは寒気を覚えた。マットにつく足の裏が汗に濡れる。脚が、脚が来る。――防げ。
「せぇいッッ!」
胸がすくような一喝とともに、悠里の脚が振り上げられる。斧に例えられる必倒の一閃。
結ばれたリングが秘唇をくすぐるだろうが、その程度でブレる足腰ではない。
アルマはもはや外面を気にする余裕などなかった。常に一定の気品を保ってきた顔を歪め、
悠里の脚の付け根を蹴り上げる。
タシン!!
張りつめた音で、アルマの腿に悠里の足の甲が吸い付いた。
アルマが目を瞑る。その黒豹のような身体がガクガクと痙攣する。
だが直後、アルマはかすかに笑った。確かに強力な一撃だが、損傷はない。
とっさに悠里の足を蹴って威力を殺ぐ事ができたからだ。
この距離だからこそ出来た芸当だ。だがこの距離でいる限り、
もう脚は怖くありませんわ。
アルマはそう囁くつもりでいた。だが、それは叶わない。
顎がぴっちりと閉じている。なぜか、天井のライトを見上げている。
後頭に汗が伝い落ちるのが感じられ、やっと自分の状況が理解できた。
アッパーだ。顎をかち上げられた。
何とか必殺の足を凌いだのに、乗り切ったのに…
いや、だからこその囮だ。脚に注意を引き付け、アッパーで仕留める。
確実な脅威をひとつ持っていればこそのコンビネーション。
そしてこのアッパーの威力もまた十二分に脅威に値する。
動けない。仰け反ったまま、魚のように口を開閉する状態から抜け出せない。
「ねぇ、いい事教えてあげる。私のリングでのルールはね……三倍返し、よ!!」
両肩に手が置かれた。身体が前方に引きつけられる。前身への脅威。
膝だ、この距離でこの状態、そして局所的な堅い痛み。
ドン!!
「ごぉお、おぉオお……!!」
口からは一瞬に唾液と涙が溢れ、悠里の肩が近づいてくる。
涼やかないい香り、魅惑的な鎖骨。
極楽のようなそこに身を預けた瞬間、全てが終わる。
2.
アルマの黒髪が悠里の髪と絡み合う。
アルマは悠里に寄りかかったまま動きを止めた。
会場には、一斉に息が漏れた。
溜息か、緊張の糸が解けたのか。ともかくも勝負は決した。
後は悠里がアルマへ駄目押しのラッシュを浴びせて終わりだ。
皆がそう思った。荷物を纏める者もいた。
しかし、やがて会場には怪訝な顔が広がってゆく。
「…おい、なんで悠里、動かねぇんだ……?」
「アルマって女もだ。死んだみてぇに止まってやがる」
「気絶…してんのか?」
2人は膠着状態にあった。組み合ってから既に5分が経過している。
その間、まったく動きを見せない。
一体どうしたのかといぶかしむ中、一人が頓狂な声を上げた。
「お、おい見ろ、悠里の肩!血だ!」
その声に、会場の視線が悠里の肩に集まる。確かに悠里の肩から背中にかけ、一筋の血が流れている。
それはバッティングの血ではない。
「う、ぐうっ…!!」
悠里は小さくうめいた。その顔は苦悶に彩られている。そしてその華奢な首元には、アルマが必死の形相で歯を立てている。
噛みつきだ。アルマは悠里に倒れ込む瞬間、彼女の首元に齧り付いたのだ。
まず殆どの格闘大会で禁止される噛みつきだが、女闘においてはその限りではない。
そもそも女の戦うキャットファイトは、噛み付き・引っかき・髪の毛の引っ張り合いが原初だから、
というのがその理由である。
アルマの執念の牙は時を追うごとに深く食い込み、とうとう背中にまで血が滴りはじめていた。
「あ、ぐ、うん……うぐ、…ッぐ!!」
悠里は脂汗を流しながら噛みつきに耐えている。噛まれている側の彼女は、殴るか蹴るか、ショックを与えてアルマを怯ませるという戦法が取れない。痛みを感じれば、アルマはそれを利用してさらに深く噛み締めるだろう。そうなれば傷は致命的に深くなる。
アルマとて、苦渋の選択で噛み付きはしたものの他の行動は取れない。人間の顎の力では、噛むことに全てを集中させなければ肉に食い込むことは難しいからだ。
ゆえに2人は膠着していた。
だがそれは表面での話だ。水面下では、2人の関係には静かな変化が訪れていた。
劣勢なのはアルマだ。
アルマの踏みしめる脚を、後ろから払う格好で悠里の脚が挟んでいる。
足を払われ後ろに倒されるのを、アルマは必死に踏みとどまっているのだ。
だが、彼女は疲弊していた。噛むことにひどく力を消耗しつつ、悠里と脚で力比べをしているのだ。
押し切られるのが時間の問題だということは、他ならぬアルマが一番良く理解していた。
そして、均衡が崩れる。
ぐるんっとアルマの身体が回転し、頭からマットに打ち付けられた。
後頭部への衝撃に、アルマの歯は血の華を伴って悠里の肩から抜き去られる。
膠着状態からのそれは遠目の観客にどう見えたろうか。場は一気に騒然となった。
「うお、何だ!?いきなりどうしたんだ!?」
「投げだろ、悠里が馬鹿力でブン投げたんだよ!」
「いや、合気だ。悠里ならそれぐらい使える」
「うわぁ、後頭部モロかよ…容赦ねぇ」
口々に意見を述べ合う観衆の声を浴びながら、悠里とアルマは重なるように突っ伏していた。
10分にも渡る根競べで両者共に消耗しきっている。
汗ばんだ珠の肌を合わせ、熱い息を口づけのように掛け合いながら僅かな休息を取る。
そして先に回復したのは悠里だ。
「もうヘトヘトでしょ、悪戯娘はママのおっぱいでお休みなさいな!」
たちまち下になったアルマの首と頭を固定する。ギロチンチョークだが、それだけではない。
水風船のような豊かなバストを相手の鼻に押し付けている。
頚動脈を締めながら、さらに呼吸も遮る技だ。
アルマの喉からけこっと音が鳴り、日に焼けた美貌が徐々に苦悶の表情に変わる。
だが完全に極まってはいない。アルマは片手でかろうじて隙間を作っていた。
ギギギギ、と音でもしそうな競り合いが続く。悠里の乳房から漂う香りで鼻腔を埋めつくされ、
アルマはその懐かしいとも香ばしいともつかない匂いに頭を蕩けさせた。
呼吸は苦しくなっている。圧し掛かる悠里の身体は余りに力強く、跳ね除ける事は不可能だ。
アルマは唯一動く右腕でマットを叩いた。
だが、それはタップではない。彼女の目は、リングに散らばる様々な物を捉えていた。
乱交で使われたローションの瓶、張型、そして……
悠里はあらん限りの力で王手をかけていた。この裸締めが極まれば勝負ありだ。
今は完全に極まってはいないが、体勢から言って優位は揺るがない。
先ほど押し倒す事が出来たように、今度も時間の問題だ、と考えていた。
事実、それは間違いではない。アルマさえ何も行動を起こさなければ。
「お、おい、アルマが持ってるアレって…!」
「ヒョオ、誰だよあんなん置いてった奴は」
「でもこれ、面白くなるぞ…!おい誰か、ムービー用意しとけ!」
観客の声を耳にし、そこでようやく悠里は顔をあげた。
這い蹲るようにして技の極めを急くあまり、周囲への警戒が甘くなっていた。
アルマは真っ赤な顔で今にも気絶しつつある。
その左手は、震えながらかろうじてチョークを抑えている。
そして右手は…身体を回り込み、悠里の後ろに回っている。そう、認識した直後。
「ひ!」
悠里は思わず小さく叫んでいた。今までに経験のないおぞましさのせいだ。
それは肛門の中に起こっていた。何かのチューブが入り込み、ひどく冷たい液を流し込んでいる。
本来は出す事しか知らない排泄の穴に。
「な、な、に…?」
背筋が寒くなり、悠里は腰が浮くのを止められなかった。同時に締めが緩まってしまう。
ゲホゲホと咳き込んだ後、アルマは凄絶な笑みを浮かべた。
「…っふん、浣腸は初めてかしら?ならもう何分ももたないでしょうね。でも頑張りなさい、
私に勝っても排泄欲に勝てなきゃ、公衆の面前で死ぬほどの恥をかくことになりますわよ」
浣腸。その言葉に、悠里は目を見開いた。
言葉もなく腰を落とし、一刻も早くアルマを締め落としにかかる。
しかし、3秒後。
グルルル……
腹部に生じた差し込むような痛みと肛門の蠢きに、悠里は身を竦ませた。
悠里が思わず腰を上げたのを見て、アルマが素早く腰をマットに打ち付けた。
アルマが腰を引くと陰核を結んだ糸が引き絞られる。
「んんっ!」
包皮をリングにずるりと剥かれ、悠里はほんの一瞬、だが確実に腰を抜かした。
「ふふ、私もだから解りますわ。興奮して興奮して、もうクリちゃんはビンビンですわよね?
何度もリングで包皮を剥かれて、戻って、剥かれて…なんて、たまりませんわ。
ねぇ、2人で殴りあいながらズルズル逝きまくりましょ?ウブで可憐な女王様。」
アルマの言葉と共に、右手が壮烈に悠里の腹へと叩き込まれた。
軽く達しかけていた悠里は身体をくの字に折って声もなく叫ぶ。
そのほっそりした腹部では濁った音が間断なく渦巻き、尻の褐色の蕾はひくひくと息づきはじめていた。
キター!エッヂの人キター!
しかもこの荒れたスレを気にしてねぇwwww凄いwww
やっぱ2ちゃんでSS晒すような人はこれくらい図太くなきゃな
本編ではようやく悠理も反撃開始といったところで、アルマとの駆け引きとか
いかにもな格闘描写に腹責めとかとでチンコ勃った
作者さん乙です。GJ!
この展開
このスレの流れ完全スルー
間違いなくGJだ!
GJ!!!!!
ちょっとづつではあるがアルマの余裕が剥がれてきたな
悠理は化け物だから根比べや打ち合いになったらその恐ろしさを十二分に発揮するだろうな
悠里は倒れたアルマに覆い被さりながら、肩で息をしていた。その姿は騎乗位を思わせる。
体力の消耗は思った以上に大きい。大人数相手に犯され、2ラウンド程度激しく動き回り、
そして今、浣腸という未知のおぞましさが腸をじわじわと蝕んでいる。
全てはアルマの思惑のままに。
その状況で激昂しないほど、リングでの悠里は大人しくなどない。
「はっ!」
悠里はマウントで上になった体勢から拳を叩き下ろす。申し分ない速度と威力だ。
だが精緻さに欠けたその一撃は、アルマが必死に首を振ることで避けられた。
ゴン! マットが弾んで鈍い音が響き渡り、悠里は唇を噛み締めた。
力みすぎた一撃は彼女の腕に跳ね返り、脊髄を痺れさせる。
「焦っておいでですわね」
アルマはそんな悠里を嘲笑うと、一気に身を起こしに掛かった。
「く!」
悠里がマウントからの脱出はさせまいと踏みとどまる。アルマは半身を起こした状態でせき止められたが、眼の前には阻止しようとして無防備になった悠里の裸体だ。
アルマは一も二もなくタックルを叩き込む。
体格ではアルマの方に優位がある。身体を浮かせていた悠里には耐えられる筈もない。
悠里はマットに頭を叩きつけられ、気付くとマウントが入れ替わっている。
悠里が下になり、それを追うようにしてアルマが悠里の“下腹”へ飛び降りる。
「あぐはあ…ぁ……!」
悠里は目を見開いた。渋る腹に圧し掛かる自分にも勝る質量。脚がびくんっと跳ねる。
『おっとこれはツラい!浣腸を施した細い腹へのダイビングプレスだ!』
実況がそれを囃す。
そしてアルマは屈伸の要領で追い討ちをかけようとしていた。
勢い良くアルマの腰が持ち上がると、陰核を糸で結ばれた悠里の身体も持ち上がる。
糸に引かれたリングが敏感な若芽を絞り上げる。
自重をクリトリスひとつで支えるという、初めての経験。
蕩けきった蜜壷を後背位で愛されながら、何十という男の指でこりこりと扱かれ続け、
嘗め回すような視線が裸体を辿るのを感じながらリングでの死闘を演じ。
アルマも言葉通り、悠里のクリトリスは桜色に艶めいていた。
それなりの技術のあるものにちろちろと舌を這わされれば、恐らく5往復を待たずに達する事ができるだろう。それほどの寸止め状態にあった。
アルマが腰を浮かせた一瞬の痺れは、痛烈な痛みを伴いながらもその一舐めに値する。
「あぁ……」
脳裏に揺らめく光に悠里が恍惚とした直後、悪夢が襲いかかった。
腰を浮かせていたアルマが、悠里の下腹に再び尻餅をついたのだ。
「ぐふ!!」
悠里は目を見開いた。再び下腹を混ぜ返す苦痛。脚が震えるほどの排泄感。
腹部を押さえて苦しむ悠里に、アルマはさらに同じ行為を繰り返す。
腰を浮かせてクリトリスを扱いてやり、直後に荒れ狂う腹に体重を叩き込む。
「ぐ、あぐ、げほ、かはぁっ!!」
悦楽と苦痛に揺らぐ悠里は反撃もできぬまま、長い脚をばたつかせて苦しみを露わにする。
五度目、アルマが後ろ手に悠里の脚を掴んで飛び降りたとき、小さな破裂音が悠里の脚の間から漏れた。悠里は額にひどく汗を掻き、しまったという表情をしていた。
「あらぁ、とうとうお粗相かしら?」
アルマは悠里の脚の間を覗いて囁いた。そこには僅かに液だまりができている。
『おっと、何故止まっている?今の痛烈な腹責めで、とうとう悠里の我慢の糸が解れたか!?』
実況の叫びに場が沸く。それに気をよくして悠里に向き直ったアルマは、突然身体が浮き上がるのを感じた。悠里が片足だけで自分を持ち上げているのだ。
「いい加減に……」
確かに悠里の我慢は限界だった。肛門は空気を吸引するようにヒクついている。だがそれを我慢する力が、そのまま下半身の馬力に繫がるのは好都合だった。
アルマを浮かせた左足を素早くマットに戻し、それを軸足に右足を振り上げる。
「しなさいよッ!!」
斧を振り上げるのに等しい状況がそこには起きた。
「きゃああああああ!!!!」
アルマは急所への蹴り上げで股下を押さえながら飛び上がる。
悠里もその股下を押さえた手を掴み、腹筋とアルマの力を利用して立ち上がった。
一瞬にしてそれまでの劣勢を跳ね除けて、グラウンドがスタンドに切り替わる。
『カーペントレス』悠里の世界に。
今度はアルマが青ざめる番だった。スタンディングは避けなければ、しかし脚が動かない。
悠里は深く腰を落とし、突き上げるようにアルマに迫る。
パンッ。
音は一回だったが、アルマの顔は左と奥に二回弾け飛んだ。
――は、速い……反応が、まるで……
その一瞬で、アルマの頭は白んだ。踏みとどまろうとした瞬間にガクッと腰が落ちる。その瞬間。
「ダウン!!」
突如リングの外で声がした。場の視線がそちらに集まる。
それは人形のように愛くるしい少女だった。白い肌に対して、服飾は黒で統一されている。
背丈は150cm程しかなく、大人特有の尖りがない顎が幼い印象を与えた。
彼女を目にした者は一様に目を疑う。
少女は、片手にマイクを、そしてもう片手に一リットルは入る巨大な浣腸器を手にしていた。
可憐な少女には似つかわしくないおぞましい道具。そのあまりのギャップに。
気付いているものは少ないだろうが、水を満たしたそのサイズの浣腸器はとてつもなく重い。
それを片手でぶら下げる少女の力は軽視できない。
ただ悠里がその少女を注視するのは、それとは別の意味があるようだったが。
「今の、ダウンですよね。せっかくだから、今からダウンするたびにコレでお仕置きしませんか?
何だか長引いちゃってて、わたし疲れちゃいました」
少女は桜の花のような唇を開き、さらにとんでもない提案をする。
『こ、これは意外なトラブルメーカーだ!可憐な少女が、おぞましい提案を投げかけています!
この荒唐無稽な提案に、どう対処するべきか!!』
実況さえ可憐と形容してしまうほど、その黒装束の少女の容姿はずば抜けていた。
場は一瞬静まり、やがて賛同の声が漏れ始める。
「そうだな、あのアルマって奴にはまだ何のハンデも無いもんな。
弱いんならともかく、悠里と互角に闘えてそれはずるいぜ!」
「おう、たっぷり注ぎ込んでやんなよ嬢ちゃん!別嬪2人ともカエル腹にしてやれ!ボテ腹カエルファイトだ!!」
満場一致。そう思える熱狂振りに、ようやく意識をはっきりさせたアルマは再び青ざめるのだった。
「う、ウソ…ですわよね?」
特に彼女がたじろいだのは、悠里と互角に戦えるという部分だ。
互角に映ったなら余りにも上等だ。策謀なしのガチンコなら、勝負にさえなっていないことはアルマ自身が一番良く理解していた。
「へーぇ良かったわね、これでおまえも私と対等よ。甘んじて受けなさい」
悠里がアルマの肩を掴む。彼女とて先に浣腸を施された不利があるはずだが、そうは見えない。
「ぐっ……言われなくても、理解していますわ。ここで受けないのは、流石にみっともないですもの」
アルマは膝まづいてリングサイドに臀部を晒す。
少女日に焼けたエキゾチックな尻を割り、は軽々と浣腸器を抱えて直した。
アナルバイブほどもある嘴管がアルマの菊門を捲くり込む。
「ぐ…ううううぅ!!」
アルマがきつく目を閉じた。一リットルの浣腸などさすがの彼女も経験がない。
半分も注がれないうちから膝が笑い、ほっそりとしていた腰が歪に膨らみはじめる。
彼女は下を向きながら、ギリギリと歯を鳴らしていた。
悔しさからではない。彼女は背中に凍りつきそうな恐怖を感じていた。
自分自身もハンデを負ってしまう事。それはつまり、悠里と同じ条件になったという事だ。
あの化け物と正面から、何もなしで闘えと言われているに等しいのだ。
ほんのさっきまでなら、自分にも勝機が信じられたというのに。
何と言う事をしてくれたのか……。
アルマが少女を睨みつけようとした瞬間、少女が囁いた。
「頑張って悠里さんを連れてきて下さいね。わたし解ってますよ、あなたはまだ、全力を出してない。
怯えるほどでもないんですよ。あなたが悠里さんが怖いように、悠里さんだってあなたの打撃を警戒せざるを得ないはず。あのひとを早くダウンさせて。本気で、お願いしますね」
少女は浣腸器を抜き差ってゴムの栓を嵌めこみ、微笑んだ。
アルマは耳を疑った。そして次に、少しだけ気が楽になった。
悠里を乗せていたつもりが、相手に呑まれていたのは始めから自分だったのだ。
無理に強打を狙う必要はない。恐れる必要は無い。
自分の身体はタイの山奥で、断崖を登って作ったものだ。
ロッククライマーの筋肉は、それそのものが強いわけではない。
しかし落ちれば死ぬ、という状況下で培った根性は何物にも劣らない。
臆すれば全てが無くなる、という状況下でなら。
悪霊が、余計な事を吹き込んだみたいね。
悠里は黒装束の少女を見下ろしながら、厳しい表情を崩さなかった。
何を囁いたのか、アルマにはじめから漂っていた白粉のような薄い虚勢が剥がれ落ちた。
そして代わりに、自分に似た獰猛さが覗き始めている。
それは今の悠里にとって脅威になりえるものだった。
しかし、それ以上に悠里は微笑んでアルマを送り出す少女を睨み据えた。
色白な肌・優しげな垂れ目が柔和な印象を与えるが、悠里にはひどく苛立たしかった。
それと良く似た少女を知っている。
すべては記憶に宿る彼女から始まった。
悠里が初めて痛みを知らしめられた相手。初めて拳を振り上げた相手。
そして幼い悠里が、生まれて初めて殺めた相手。
おおぅっ!早々と投下GJ!
しかしやはりアルマでもガチでは悠理に負けちゃうのか…
しかも勝負にならないとかww
悠理テラ化け物www
しかも野試合ではそんな悠理も結構負けてるとかってどんだけ化け物がいるんだよww
1.
足裏に感じるマットが質量を増す。
一リットルもの浣腸を受けたアルマ、微量ながらすでに数分を耐える悠里。
体の内側から腸をかき回される苦痛は、2人を攻撃に向かわせた。
「はあっ!」
先に仕掛けたのは悠里だ。
腕の振りと共に、葡萄の粒のような乳房が揺れる。
「くっ!」
鼻先を狙う悠里の腕をいなし、その腰の捻りを反転させて左を突き出す。
悠里はその左をしっかりと目で捉えていた。
ヘッドスリップでかわし、攻撃に転じようとしたその瞬間、側頭部に痛みが走る。
「つ!」
悠里は振り上げようとした拳を宙に投げてよろめいた。
肘だ。アルマは悠里のヘッドスリップを読み、肘を掠らせたのだ。
左のこめかみがさくりと切れた。
「ちっ…」
悠里は眦を流れる熱さに流血を悟る。だがアルマに容赦はなかった。
黒豹のような身体が仰け反り、布を巻いた拳が迫る。
狙いは切れたこめかみだ。悠里は目を細めた。
ヘッドスリップ?―今、それで肘を喰らったばかりだ。
スウェイバック?―糸で乳首を繋がれた中、それも不可能。
コンパクトな打撃で弾くだけの隙も無い。
悠里は頭を庇って衝撃に備えた。打撃を甘受する、それしかなかった。
「はあああああッッ!!!」
鼓膜が震えるほどの怒声。裂帛の気合で打ち出された拳が王者を襲う。
「あああっ!」
悠里は叫んだ。
悠里の気丈さを知る観客は訝しみ、一瞬の後に息を呑む。
悠里の右目周辺が真っ赤に染まっていた。
アルマの一撃はガードを潰し、切り傷を拡げて血を溢れさせたのだ。
「おおっと、ま、まさかの大出血!チャンピオンの右目が塞がったか!?」
実況の声に、悠里は我を取り戻す。
足元の赤い滴りが流血と気付くのには時間が要った。
「こ…この…おぉ!!」
悠里は激昂して蹴りを放つ。
アルマの小さな悲鳴。だがその直後、悠里に風切り音が迫った。
「ぐえ…っ!!」
まず無意識に声が漏れ、続いて腸がねじれるように痛む。
腹部へのボディブロー。浣腸を施された腹への一撃はとてつもなく効いた。
菊門を必死に締めているのに暖かい雫が膝裏を伝う、
「うぐ、ぐ」
悠里は前屈みで腹部を押さえて固まった。
腸がマグマのように煮え滾っているのがわかる。
イチジク浣腸を施されて何分がたっただろう。ボディならば十発でも二十発でも耐えられる。
だが内側から炙られるその感覚は、経験のないものだった。
脂汗が顎を伝う。決壊は時間の問題だ。
アルマはそんな悠里の髪をひっ掴む。
「さぁ、何回耐えられるかしら」
アルマは訥々とした口調で呟き、おもむろにアッパーを放つ。
排泄欲と戦う悠里にそれを捌く余裕はない。
「……っっ!!」
悲鳴はなかった。上げたのかもしれないが、顎が閉じていて発せられなかった。
だがダメージは素人にでも見て取れる。
締まった太腿が痙攣していた。長身を誇るアルマに顎をかち上げられ、無防備に伸び上がりながら。
アルマの拳が引かれると、解放されたように悠里の身体が地に下りる。
しかしそれをアルマが再びアッパーでかち上げる。
髪を掴まれていては逃げ場がない。排泄を堪えていては防ぎようがない。
悠里は固く目を瞑って衝撃に耐えた。
「あぐっ…!!」
足がぐらつく。いかに上質な筋肉を持つ悠里といえど、頭を揺らされれば当然だ。
2連続のアッパーに場が沸く。
しかしアルマの猛攻は2発などでは止まらなかった。
「落ちろぉッッ!!!!」
場内に唸るような叫びが響く。アルマの発したものだ。
優雅な物言いをしていた先ほどまでの彼女とは明らかに違う。
硬い拳を、鍛え込まれた腕力を、外観を捨て呼吸さえ忘れて打ち込む。王者の顎という一点に。
「っがは!!」
悠里は棒立ちのままそれを受け止め、細い身体を痙攣させてもがく。
3度目のアッパーで悠里の身体が揺れる。
スリムだとはいえヒト一人の体重をものともしないそのアッパーが、生半可な威力のわけがない。
4発、5発。鋭い引き手でアッパーを放ち、腕が疲れれば腹部への膝蹴りを織り交ぜる。
「はぁー、はぁーー…っ!!」
息を荒げながら放った7発目のアッパーで、とうとう悠里に変化が起きた。
上部座席で観戦していた者には全てが見て取れただろう。
「こぷっ…」
アッパーが顎にめり込んだ瞬間、悠里の瞳孔が開き、口から黄色い物が吐き出された。
悠里が頭を下げると、続けてさらなる吐瀉物が足元に滴り落ちる。
「う、うごえええ…っ!!!」
それを見た女たちが囃したてようとし、息を呑んだ。
今まさに嘔吐を終えて喘ぐ悠里に、なおもアルマがアッパーを打ち込んだからだ。
明らかに危険すぎる一発。
悠里の首がびくんと痙攣する。顎はアルマの拳先から外れ、手首を滑り、崩れ落ちる。
しかしその膝が地に着かない。アルマと糸で繋がれた蕾が、身体を中空に吊り下げたからだ。
悠里は悲痛な叫びをあげ、意識を取り戻した。
目覚めた悠里が耳にしたのは、割れんばかりの歓声。
見上げれば、アルマが高々と腕を振り上げてガッツポーズを取っている。
悠里を燃えるような瞳で見下ろしながら。
悠里は黒装束の少女から罰を受けていた。
ダウンすれば一リットルの浣腸を施される。悠里もアルマもだ。
アルマは腹に溜まった水を常に感じていた。腰を粘らせるたびに尻穴のプラグが擦れた。
だがそれはマイナスになるばかりではない。ここからは一分一秒と限界が近づく。
常に速攻を仕掛け、常に全力を尽くさなければならない。そうなれば根比べだ。
アルマは自分の手を見つめた。
割れては生え直し、幾層にも重なった爪。手の甲ほどに厚みを増した指先。
険しい山肌を素手でクライミングして鍛え上げた腕だ。
人を殴るための練習を重ねた腕より一撃の威力には劣る。だがこの腕の真価は持久力にある。
気を失うまでアッパーをかまし、血を吐くまで連打を打ち込んでやる。
無敗の女王を真っ向から跪かせてやる。
悠里へのペナルティが終わり、2人はリングの上で再び対峙する。
モデル顔負けのスタイルだが、両者の腹部は張っていた。
妊婦を思わせる裸体は妖艶でさえある。
聖母の体型と美しさを兼ねる二人。
それが牙を剥いたのは同時だった。リング上、2人の顔が大きく弾ける。
覚悟を決めておいて良かった。アルマは心からそう思った。
額に垂れる髪の下、悠里が湛えた自分と同じ笑みを見て。
2.
打てば打ち返し、リング上では休みない連打が交わされていた。
リーチに勝るアルマの拳が悠里の顔に叩き込まれ、次の瞬間には潜り込んだ悠里のフックがアルマの腰に叩き込まれる。
共に息を切らしながら、それでも機敏な動きで攻撃を通してゆく。
その光景をリングサイドで見つめる少年がいた。彼はじっと悠里を見上げている。
心が躍った。
腹筋、側筋には筋が見え、締まった体ゆえに胸や臀部の膨らみが引き立つ。
クラスの少女とはまるで違う、筋肉質の美しい肉体。
悠里は、少年にとっての「初めての女性」だった。
小さな男根には今も彼女の感触が残っている。襞の折り重なった熱くうねる胎内が。
彼女は上質な身体で、奥の奥まで柔らかく、そしていい匂いがした。
その女性が裸で戦っている。
彼女が腰を溜めてパンチを打つたび、豊かな胸が揺れる。
パンチを受けた相手が放った蹴りが、女性の内腿を滑りあがって股座を蹴り上げる。
ほんの僅かに、何かの液が脚の間から漏れる。その女性は苦しげに叫んで身を屈めた。
睾丸を蹴られるようなものなのだろうか?
がんばれ。少年は心の中で呟いた。大人の多くは悠里がやられた時ばかり沸く。
悠里は勝ちすぎてつまらない。そういう声が聞こえた。
彼らにとってはこの闘いも、誰が悠里を倒すかという掛けの一つに過ぎない。
あんなに強くて、かっこいいのに。少年には大人の賭け事が理解できなかった。
彼の曇りない目には、悠里がひどく孤独に映った。
王者として追い詰められ、勝っても得る栄誉などなく、ただがむしゃらに戦い続ける。
まるで自分を殺す場所を探すように。
リングの上に荒い息が重なり合う。時間にして10分強、その中で何十もの拳を交わした2人は、互いの肩に額を乗せて呼吸を整えていた。
あれから双方とも2度のダウンを喫している。当然2リットルの浣腸が加えられ、計3リットル。
両者の腹はまさしくカエルのように膨らみきっていた。糸で結ばれていなければ立っていることすら困難だろう。
だが、2人の苦悶の原因ははちきれそうな腹だけではない。拳さえ砕こうという殴り合いの末、両者の顔は腫れあがっていた。気品ある顔立ちはバッティングとカットで鮮血に塗れている。
さらには糸で結われた局所も無残に成り果てていた。始めは桜色だったそこは完全な朱色に変わり、糸の周囲に血を噴き出させる。もはや何ら痛みを感じない事がかえって危険だった。
そして口からも息をする度に血が滴るのだが、それは口の中を切ったから、だけではない。
「たまんないわね、このツラさ…」
悠里が薄目を開けて囁く。その腹部からおぞましいほどの唸りが起き、悠里は唇を噛み締める。
「ええ、また限界かしら、ね」
アルマは堪えながら白目を剥きかけ、やはり唇を噛んで意識を留める。
2人の口から血が滴る一番の理由は、そうして唇を噛むからだ。
すでに何十回と限界を迎えている肛門と、避けずの打ち合いで飛びかける意識を繋ぐために。
すでに根性などという次元ではない。観客も、実況さえも語る言葉をなくしていた。
2人は瘧にかかったように震える脚を叱咤し、同様に震える腕で相手を引き離す。
体力はほぼ尽きた。動けるのはこれが最後だろう。
「くおおおおおおおお!!!」
アルマは引き絞った腕を振り上げ、悠里の顔を打ち上げた。
水脹れの腹を打てば命さえも奪えるかもしれない。だが限りない打ち合いで拳を握る事さえ困難な今、サンドバック状のそこを打ち抜ける筈もなかった。ゆえに顔へ叩き込む。
「ぶはぁっ!!」
悠里は溜めていた息を吐き出した。衝撃が脳を刺し貫く。内臓が軋み、呼吸さえ苦しい。
それでも悠里は怯まない。むしろ、その顔は笑みを浮かべていた。
はぁーー… はぁーーー…。
口の端から息を漏らしながら悠里は脚を踏みしめる。トン、とアルマの胸に左手が添えられた。
観客が騒然となる。アルマも目を見開く。
3リットルもの浣腸を施され、限界を超す我慢を重ねた末の行動とは思えない。
何が彼女をここまでさせるのか。
アルマは引き絞られた悠里の腿を見て思う。最後の最後に悠里が選んだ攻撃は、
「うりゃああああああ!!!!!」
頭部へのハイキック。
剥き出しの恥部の全てを隠さず見せる執念の一蹴り。
受けた恥辱の全てを、自ら恥を晒す事によって払拭するような一閃。
それはガードしたアルマの両手を弾き、彼女の身体そのものを跳ね飛ばした。
水で膨れ上がったアルマの身体がリングを舞う。2人を結んでいた糸が役目を終えたようにひとつ、またひとつと外れていく。
――ねぇ、いい事教えてあげる。私のリングでのルールはね……三倍返し、よ
悠里の言葉が、ふと倒れゆくアルマの脳裏に浮かんだ。
恥辱をあえて受けきり、相手に返し、さらには自ら恥を晒した上での勝利。
なるほど、これなら何者も文句など言えまい。
別格、というわけですわね。
マットに沈みながらアルマは笑った。どんな勝利を遂げた時より、その顔は穏やかだった。
3.
「まだ痛んでる…。あんなの、もう二度とごめんだわ」
控え室のベンチに腰掛け、悠里は腹を抱えた。
4リットルの排泄を思い出すと顔から湯気がでそうなほどだ。
今日は散々だ。それでも、何故だろう。気分は変にすっきりしていた。
いや、散々だったからこそだろうか。
拳は殴りすぎて砕け、顔は包帯だらけで、立てないほどに腹痛がひどい。
鏡に映った顔は死人のようだ。
「ざまぁないわね、ユーリ。あのまま弾け飛んじゃえばよかったのに…」
悠里はぽつりと呟いた。
「も、もうご勘弁くださいませ!!これ以上は、わ、私、……んあああッッ…!!!」
アリーナの片隅では地獄が繰り広げられていた。
アルマが前後から逞しい男に押さえ込まれ、前後の穴を「使われて」いる。
周囲にはバケツと浣腸器が散乱していた。
「へへ、ケツの締めが最高だぜ姉ちゃん。格闘やめてSM嬢にでもならねぇかい」
男は赤黒い逸物でアルマの菊門を割り開いていた。限界以上に排泄を耐えていたアルマは切ない痛みに泣き叫ぶが、誰一人として聞こうとはしない。
哀れな敗者は壊れたように震える脚を掴まれ、穴という穴を使われてエキゾチックな身体を悶えさせるだけだ。
それを面白そうに見守る群衆の中、一人だけ離れてメモ帳を眺める少女がいた。
アルマ達に大量浣腸を課した張本人である黒装束の少女だ。
「お、お嬢ちゃんは、あんなのに興味ないのかい?」
一人の好色そうな男が彼女に声を掛けた。
少女はふっと男に目を向ける。人形のように綺麗な顔が男を釘付けにした。
「…興味?いえ、ありますよ」
少女はパタンとメモ帳を閉じて答えた。
「体格から考えて、お腹がはちきれる寸前でした。その極限下、お互い死に物狂いで殴り合ってくれて」
少女はくすくすとおかしそうに笑ったあと、ぽつりと続ける。
お陰で、あの人の限界が見えたかな。
おお、7章完結着てた!
相変わらずGJな出来栄え、感服したでござる。
最後の一文に途轍もない期待感を抱きつつGJ!
エッジの人GJ!
しかしエロ漫画とかなら浣腸食らった女とかちょい触っただけで漏らしたりするのに
打撃を受けてさえ耐え続けるとかモンスターみたいな二人だなw
そしてただでさえ余裕に満ち溢れる黒衣の少女がその上で悠理の研究を重ねていて、
着々と悠理敗北へのカウントダウンが始まっているっぽいのが期待させる
やっぱこういう負けそうで負けない女がズタズタにされるシチュが読めるというのがエロパロのカタルシスだよな
本ルートでは勝ち続けるという悠理ならば、アナザールートとかではボロボロに完璧に敗北して
観客の男達の奴隷になって許しを乞うような悠理も見てみたいな
エッジがつまらん話ばっか投下するせいでスレが全体的に白けてるな
↑
つまらないっていうか、なぜかしらけムードは漂ってるな。
でもエッヂ本人もそれは気付いてるっぽくて、
悔しくて連投ってとこかな。
相当な負けず嫌いと見たw
でもつまらなくはないよ。
っつか続きは読みたい。
今のエッジになら私だって勝てる!!
>>499 余裕ッチ
ここから主人公を殺さないよう気をつけないと
1.
「必ずだ、プロのカメラはきっとキミの本質を引き出す。女優がなぜ美しいかわかるか?…」
しつこく勧誘する男に、悠里はやれやれと目を閉じた。
「な、気になるだろ?誰だってそうなんだ」
反応あり。興に乗った男は興奮してまくしたてた直後、目を瞬かせる。
「一度肌で感じてみれば……って、え?……」
ほんの一瞬前まで眼の前にいた女性がいない。
振り向くと、彼女はいつのまにか彼の背後にいた。手の届かない遠い雑踏に紛れて。
(なんでわざわざ、こんな姿に声をかけるのかしらね〜…)
清涼飲料の缶を手に悠里は溜息をつく。
清楚、クール、知性的。形容の仕方は人それぞれだが、黙っていれば悠里は悪いようには見られない。賑わいのある街を歩けばすぐに先程のようなモデルの勧誘を受けた。
そのため買い食いなどイメージを崩すような行動をしばしば取っているのだが、学生時代から高嶺の華であった彼女には、それがかえって親しみやすいスキになっている節もある。
「ふぅ」
飲料の最後の一滴を啜り終えた後、悠里はその缶をおもむろに握り潰した。アルミ缶はパギギと騒々しい音を立てて拳に収まる。
次にそれは宙に放られた。高く投げ上げられた缶は放物線を描いて落下し、猫のような瞳で追いかけていた悠里の一蹴に捉えられる。缶はまっすぐに飛び、傍らにあった缶入れの入口に当たり、そこに刺さっていた別の缶を押し込んで中に消えた。
「うお、すっーげぇ!」
たむろしていた少年達が目を見開く。悠里は少し機嫌よさそうに唇を尖らせた。
(そうそ、どうせ目立つならこんな風じゃなきゃ)
沸き立つ少年達にひらひらと手を振り、悠里はふと傍らの建物を見上げた。そこはゲームセンターらしい。入るのは随分と久しぶりだ。
店内に響く騒がしいハードロックには耳もくれず、各々が何がしかに没頭している。例えばアーケードの格闘ゲーム。
『自分で闘った方が強いのに』
悠里はそんな事を思い、ひょっとしたら洒落になっていないかなと思い直す。
モデル体型の悠里が強いなど、或いはまともに喧嘩ができるなど、誰が思うだろう。
そんな事を考えながら歩いていると、一箇所に異様な人だかりが出来ているのが見えた。
「ほらほらどーした、 ガンバれよー!」
そんな声が聞こえた。喧嘩かと思って覗き込んだ悠里の目に映ったのは、一台の堂々たるキッキングマシンだ。
そこには日に焼けた体育会系の男達が、走って助走をつけたりジャンプして蹴りつけたり、何とかして高得点を出そうと奮闘している姿があった。
346kg、332kg。ハイスコアの616kgには遠く及ばず、とうとう彼らはマシンを離れた。
「お疲れー!」「なかなかいい線いってたぜ!」
山のような野次馬が彼らの健闘を称える。
「さぁ、次は誰だ?誰がやる!?」
その中の一人が音頭を取り、次の挑戦者を募る。だが応える者がいない。当然だ、これだけの数に見られるというプレッシャーは相当なものである。
その中でなお名乗りをあげるとしたら、それはそう、根っからの格闘馬鹿に他ならない。
「おお、まさか姉ちゃんやる気かい!?」
「おいおい、怪我すんなよ!!」
野次馬が煩いほどに沸く。悠里は目を閉じ、そのプレッシャーを存分に愉しんでいた。
悠里に限らず、美女は視線に敏感なものだ。
デニムパンツの裾をなおす仕草、揺れる胸、その時に覗く引き締まった腿。
その全てにいやらしい視線が纏わりついてくるのがわかる。
「よし!」
パンと可愛らしく手の平を打つと、男は鼻の下を伸ばし、女は眉を顰める。
どちらの表情も楽しくて仕方ない。どうせすぐに消えるのだから。
(そういえば初めてね。キッキングマシン)
悠里は構えながら思う。遊具ならば実戦とは勝手が違うかもしれない。
だが人の脚を折る感覚でやればヤワな記録にはなるまい。
はじめ華奢な体つきをからかっていた野次馬達は、悠里のモーションを追って口を噤む。
上体は前方に倒しこみ、蹴り足は中段から入り下段へと鋭く落下し、膝から先が視認できぬほど加速度を増してゆく。細身ながら全体の安定感は岩のごとくだ。
誰ともなく、息を呑んだ。空気は瞬きすらさせなかった。
そして、瞬間。
悠里の軸足が内に捻られ、蹴り足の膝が伸びきった瞬間。
ゲームに興じていた若者達は、一様に同じ方を振り仰いだ。
2.
『怖いものが、いる。』
それが試合のキャッチコピーだった。
「本当、評判通りですね。あれは、かなり……」
茜がリングを見て口を開いた。空手家である彼女から見ても、その選手は良い筋肉をしていた。
赤髪に大きな掌、ゴツゴツした腹筋、パンと張った足。迫力は十分すぎる。
小麦色の肌にはビキニ状のコスチュームがよく映えた。
「そりゃ、そうさ。ヤバイなんてもんじゃねぇよ」
金メッシュの少女、早紀は神妙な面持ちで答える。その額には汗が流れていた。
その選手・アキナを早紀は知っている。一度拳を交わせば必ず相手は血みどろになる。そんな曰くがあった闘姫だ。もとはどこか遠くの地域で隊を率いていたが、何度も警察の世話になり、やがて流れ流れてレスラーになったと聞いてはいた。
「でも、なんであたしに…?」
早紀はチケットを取り出して眉を顰める。それは茜も同様だった。
彼女ら2人に脈絡もなく送られてきたチケット。その舞台は悠里の立つアリーナとは違う、収容人数600人ほどの会館だった。どうやら女子プロレスのリングらしい。
なぜそんなものが2人に送られてきたのか。なぜその2人になのか。それはわからない。
そして不可解なことはもう一つ。
闘姫とも言われるアキナに対し、相手の少女が儚すぎることだ。
「高峰莉緒 14歳。レスリングを始めて半年、それ以前の格闘技・部活暦なし。…ナメてるね」
早紀は呆れ半分にパンフレットを投げ捨てる。茜も同意見だった。
確かに莉緒の見目は著しく良い。150ほどしかない身長、人形のように白い肌、優しげな垂れ目、後ろ髪に結んだリボン。そのコケティッシュな魅力は嫌う男の方が少なかろう。
だが格闘家としては非だ。
スクール水着をやや飾りつけたような黒コスチュームの下は、丸みを感じさせる幼児体型。
眼前の鍛え上げられたアキナとの差はどうだ。
早紀も茜も、この出来レースのような試合をまともに見る気がせずに開戦を待った。
そしてゴングが鳴り響く。
「な、なんだアイツ…!!」
開戦直後、早紀が舌打ちした。
黒服少女・莉緒は、ゴングが鳴ったのにも関わらず、ぼうっと「髪をいじって」いた。
黒髪をさらさらと指に遊ばせている。
男はその優雅さに見惚れるかもしれない。だが対戦者のアキナは激昂する。
「へーぇ、そんなに枝毛が気になるのかい。なら根こそぎ全部抜いてやろうか!!!」
アキナはおもむろに莉緒の髪を掴んで引きずり倒した。莉緒は小さな悲鳴を上げる。
だがアキナに容赦はない。ジャイアントスイングの要領で小さな莉緒の身体を振り回し――
リングポストへと痛烈に叩きつける。
莉緒は頭を抱えたままコーナーポストに丸くなった。そこへアキナの影が落ちる。
踏みつけた。上からブーツで、ゴツゴツと。莉緒の足が上下に揺れる。
「うっへぇ、止めないのかねー」
早紀は面白そうに言った。ざまあみろという表情がありありと出ている。
茜は周囲を見回すと、早紀とは逆にアキナへのブーイングが起きている。
それを見て茜もやはり憮然とした表情になった。可愛ければ正義かと。
リングではカエルのように大の字になった莉緒を、アキナが逆さに抱え上げていた。
体格差で一見抱っこのように見える。だが無論、そのような生易しいものではない。
アキナは莉緒を抱えたままポストを上り、莉緒の股を開かせて四方にアピールする。
ここでようやく歓声が沸いた。
何しろ少女の綺麗な肌である。未熟な脚の形も相まって嗜虐性は相当だ。
アキナは幼い少女のV字をたっぷりと見せ付けた後、ポストから飛ぶ。
ごぐんっ
鈍い音がした。茜も早紀も一瞬目を逸らすほどの。
避けられるはずがなかったのだ。マットの上では無残にも、細長い少女の脚がびくん、びくんと痙攣していた。アキナはそれを片手で押さえつけ、片手で勝ち名乗りを上げる。
大歓声。
ワン!トゥー!2カウントで少女の足が急送に回転しフォールを免れる。
莉緒は這ったまま片手で頭を押さえ、片手を地について息を整えていた。
「…一方的、ですね…。流石にちょっと……」
茜が胸を押さえながら呟く。早紀がそれにはっと嘲りの笑みを寄越した。
だが確かに一方的だった。その時までは。
アキナが莉緒の小さな身体を無理矢理立ち上がらせ、ロープへと放る。
弾かれて返ってきたところを飛び蹴りで迎え撃つ……筈だったのだろう。
誰もがその一撃を予想した。
異変に気付いたのはたった一人。対角に迫る莉緒の微笑を目にした、アキナだけだった。
アキナの飛び蹴りは外れた。いや、少女の体がずれたために外された。
代わりに有効打となったのは少女のラリアット。細くたゆんだ腕での一撃。
それで、アキナは90度円転した。
「な…っ」
直前まで嘲笑っていた早紀が表情を凍らせる。
アキナは背中からマットに打ち付けられ、首を押さえて咳き込んだ。
会場が静まり返る。その中、少女がアキナの両足を掴んだ。そのまま自分より2周り以上も大きい身体を、マットの上で引きずる。
それがどんなに残酷か、観客が知ったのはアキナの叫びでだった。
「あ、ああああ熱いいいいいいいいいいいーーーーーーーーーーッッ!!!!!!」
絶叫、あるいは断末魔。そのような声がアキナの喉から絞りだされた。
早紀はそれを聞いてただ疑問を感じたが、格闘家でもある茜は思わず目を覆う。
マットはその特性上、極めて滑りにくくなっている。つまりは摩擦係数が非常に高い。
そこを背中剥き出しの格好で引き摺られれば、大火傷を負う可能性さえある。
アキナの叫びは至極当然のものだった。
それほどの残虐行為を、人形のように愛らしい少女がやってのける。
そして何より恐ろしいのは、その絶叫をきいてなお、間違いなくその被害を知っているだろうに、
莉緒が先ほどからにこにこ笑うのを止めない事だった。
少女はアキナの脚を脇に抱えたまま、片足を上げて下履きを脱ぎ、つま先で器用に靴下を脱いだ。
そして表れた真っ白な足をアキナの股にあてがう。
く、と小さな声が闘姫から漏れる。
「ああすごい。脛は堅くて逞しいのに、ココはあったかくて柔らかいのね。」
少女はほうとした表情で告げる。そしてしばらく足を蠢かせた後、本格的に振動させ始める。
電気アンマだ。
会場はこれ以上ないほどにどよめき立ちはじめた。
「おおお、おおおお!おおお、くあああああああおおおおお!!!!!」
「ああん、もう!うごかないでよぉ」
背中の痛みか、アンマの快楽か、少女に良い様にされる屈辱か、闘姫は頭を振って泣き叫ぶ。
莉緒はその抵抗を抱えた脚で封じながら、内腿に筋を浮かせてのアンマで責め立てる。
気持ち良いのかアキナの腰は何時しかひくんひくんと浮き沈みを始めていた。
「ああ気持ちいい気持ちいい、気持ちいい気持ちいいよ」
莉緒は足裏の感触に恍惚とした表情を浮かべ、その表情のまま前屈みになった。
桃を割ったような薄唇から唾液が零れ落ちる。それは開きっぱなしになったアキナの喉奥へと染みた。
アキナの目がはっと開く。幼い陵辱者の唾液を飲まされた、その屈辱が闘姫の心を炊きつける。
「くぉおんのやらあああああああ!!!!!」
すぐ傍に近づいていた莉緒の顔、そこに渾身の一撃が見舞われる。さらに右、左、右右左右左。
嵐のような殴りつけで少女の顔が左右に跳ねる。しかし、アキナの連打は止まった。
「すごぉい……」
アキナの瞳の炎は莉緒を見て凍りついた。
莉緒の表情は、その時もはや満面の笑みに達していたからだ。
「おねぇさん強ーいねぇ。わたし、大好きよ。大好き。強い人が大好き、貴方もだぁい好き。」
アキナが目を見開く。
「あ……ああ、う………!!!」
莉緒は再びアンマを始めた。ゆるゆるとアキナの恥部を揉み潰してゆく。
やがてその部分から黄色い液が漏れ始めた。それは闘姫の涙だった。
莉緒は何か言いながらアキナを解放し、ひっくり返す。
そして海老反りになったアキナの上に乗ると、アキナの顎の下で手を組んで持ち上げた。
地に這った相手におんぶを強要するようなキャメルクラッチ。
火傷を負った背に、その背骨極めはどんな心地だろう。
「助けて、助けて、たすけて、だれかたすけてえええええええーーーーーーーー!!!!!」
アキナは、恐れ知らずの伝説のレディースは、後ろに極められた腕で必死にタップか、あるいはロープを求めながら、哀れに助けを求め子供のように泣きじゃくるだけだった。
その上に乗る少女はあどけない笑みで拷問のようにアキナの背を揺らし始める。
彼女は虚空を見つめながら、微笑みながらずっと何かを呟いていた。
茜にも早紀にもそれは聴こえなかったが、絶叫にも似た騒がしさの中で波紋のように伝わってくる。
少女はずっとこう繰り返しているそうだ。
つぎは あなたよ 。
※
NEW RECORD!!
その文字が光り輝く前で、悠里は髪をかきあげる。その周りを賞賛と羨望の眼差しが囲っていた。
彼女こそは孤高のマゾヒストにして至高のサディスト。
木こり娘と誰が呼んだろう。
そのしなやかな足技は、まさしく神技と言われていた。
>>508 GJ。ストーリーの進め方が上手いな。
ロリッ子見てたら桃魂ユーマを思い出したw
>>508 GJ!いやはや最近投下が早いね
しかしアルマも結構えげつない闘いをするキャラだったけど莉緒もまたえげつない闘いをする娘だなぁ
しかもロリっ娘
早くも悠理との対峙にwktkです
エッジの人乙〜
久々に来てみたら大量更新されていて驚いた
アルマ戦は期待通りの激しさで満足だったけど噴出シーンが省略されたのが惜しいな
悠里は結局人目に付かないところまで耐え切ったのだろうか
個室で一人のた打ち回る悠里が見たかったぜ
ロリはいい非道キャラだけど戦力的に太刀打ちできるのか心配だな
なんか妙なパワーと打たれ強さを見るに無痛症的な設定もってそう
いいじゃなイカ。作品について議論があるのは盛り上がる兆候でゲソ
まあ狭量ではあったなスマン
よく読みゃあバレバレだしなw
>>512の予想ネタバレでエッヂ涙目w
で、ここらで長期休載ですよ、彼の性格からしてw
展開を読まれたならともかく、随所で匂わせてた敵の特性ぐらいじゃ涙目にはならないと思うよ
桃魂ユーマって、180センチゴスロリが心の中じゃキャッこいつう☆レベルなのに、
実際にはおんどれアぶっ殺すとか言って暴れてて知らぬ間に校内を占めてく漫画だっけかw
>>518 まさしくそんな漫画w
拾った画像に惹かれて買ってみたら中身とんでもなかった。
電気アンマいいよね
1.
並木道を歩けば、やがて大噴水が目印の公園に辿りつく。
周りを自然と繁華街に包まれたそこは市内屈指のデートスポットであり、平日の昼間であってもテーマパーク並みの賑わいを見せていた。
そこへ一人の女性が現れる。何人かの男がちらりと視線を投げ、そのまま固着させる。
さらさらの黒髪、すらりとした長身。
近づきがたいほど涼やかな美貌とは別に、覇気が明らかに常人とは違った。
カーディガンにチェックのスカート、黒タイツにブーツ。
冷え込んできたためスレンダーな身体は秋を纏っている。
視線を浴びる中、彼女はふいに足をとめた。
「さすがにもう偶然じゃないわよね。…何の用なの、おちびちゃん?」
振り返る先には幼い少女。彼女は全身を喪服のような黒で統一していた。
あどけない顔立ち、優しそうな垂れ目が愛らしい。これほどリボンの似合う娘もいないだろう。
だが悠里はその少女、莉緒に警戒心を抱いていた。
アルマとの戦いのさなかに現れ、周囲を煽って浣腸の責め苦を課した悪魔。
控えめな見た目とは裏腹に人を沸かせることを知っている。
つけられていると気付いたのは随分前だった。幾度も角を曲がり脇道に逸れ、尾行を確信した上で公園におびき寄せた。
万一戦いになった場合、路上より開けた場所の方がやりやすいからだ。
「ん、バレちった」
少女は頬を掻きながら歩み寄る。
悠里は見た目には直立のまま、前向きに重心をかけた。
悠里のそれは前傾の構えに等しい。蹴りも突きも放つのに一秒を必要としない。
当然、前向きにプレッシャーが飛ぶ。どれほど格闘に疎い者でも感じぬ筈がないほどの。
しかし莉緒はまるで何事もないかのように距離を詰める。
「会いたかったよ、悠里おねえちゃん」
莉緒は甘えたような声で悠里の眼前に迫り、悠里を見上げた。
悠里は見下ろしたまま動かない。
本来であれば即座に先制のジャブを打って然るべき、危険な局面だった。
しかしリング外での悠里はベビーフェイスだ。
現時点で何ら攻撃をしていない小さな少女に、自分から攻撃を加える。
そんな事は彼女の正義感が許さなかった。
たとえ、これから攻撃を受けるだろうとわかっていても。それが悠里という人間だ。
かくして少女は抱きついた。
辺りに微笑ましい笑みが漏れる。それは甘え盛りの妹が姉にすり寄ったように見えたから。
だが良く見れば、悠里の腰に回された莉緒の手首が組み合わされ、悠里がわずかに顔を顰めたのがわかったろう。
ベアバック。それはそう呼ばれる技だった。
(…!痛…い……!!この子、素人じゃない…!)
悠里は涼しげな顔を保ちながら、呼吸が苦しくなっていくのを感じていた。
少女の力が凄まじく強いことも勿論ある。
だが脚の長い悠里のちょうど腰辺りに莉緒の肩が来る、という事実が大きい。
少女は踏ん張りで生じた剛力を一切無駄にせず、全てを鯖折りに注ぎ込めるのだ。
受ける悠里にとってはたまったものではない。
少女の腕に圧迫されて腰が悲鳴を上げ、柔らかい身体に押し付けられた腹部がひしゃげる。
それでも悠里はなお攻撃をしない。いや、できなかった。
「まぁ、甘えんぼ。可愛い盛りね」
「よっぽどお姉ちゃんが好きなんだろうな。かっわいいー」
周囲の声が聞こえる。
悠里は確実にダメージを受けている。だが傍から見れば、それは甘えられているだけだ。
ならば、状況は先と同じ。自分から殴りつけるような真似ができるはずもない。
かといって優しく振りほどけるような力ではなかった。
莉緒はその全てを見透かすように微笑む。
しばらくして、莉緒の手がふいに力を緩めた。悠里は大きく息を求める。
そして急いで振りほどこうとした瞬間、再び莉緒は強く腰を締め上げた。
「んぎっ!!」
たまらず悠里がうめく。周囲からやや不信な目が寄せられた。
(じょ、冗談じゃないわ……!このままじゃ腰が折れるか、締め落とされるか…!!)
悠里はあまりの息苦しさに目を細める。涼しい顔を保っているのも限界だ。
だが攻撃は矜持が許さない。
抱きしめ返すようにベアバッグを返すことも考えたが、悠里からすると少女の腰は遥か下。
とても勝負になるとは思えなかった。
「ふふ、顔真っ赤になっちゃってタコみたい。でもそんな顔も可愛いよ」
莉緒は上目遣いで悠里を見上げ、カーディガンに顔をうずめる。
「ぱふぱふ〜」
胸を頬で押しつぶしながら上機嫌だ。さらにカーディガン越しに胸の突起を探し出し、唇で甘噛みしはじめる。悠里が一瞬反応を示した。
「ノーブラだぁ。動くと擦れて痛いモンね」
莉緒が嬉しそうに囁いた。
しかしそんなことをしながらも締めの力は微塵も緩めない。
一方の悠里は汗を流していた。
腰にナイフを刺されたような痛みが生じている。息も相当苦しい。
あと何分も続くようなら形振り構わず叩き潰すしかない。さもなくば立てない身体になる。
それを見透かしたように、莉緒が再び力を緩めた。
悠里が息を吐き、そして愕然とする。
膝が笑っていた。立っていることもままならず、少女にもたれ掛かってしまう。
「あは。おねえちゃんの方から甘えてくれるなんて嬉しいな」
悠里は莉緒の嘲りに目を剥き、3度目のベアバッグにその目を固く閉じる。
(だめ、もう限界っ!!腰を折られちゃ風体も何もないわ!)
悠里がまさに莉緒の首を掴もうとした瞬間。
悠里を締め上げる力が変わった。内側に引き付ける力が、持ち上げる力に。
少女の行動を悟り、悠里は急いで手を引っ込める。
「さぁ、広場の真ん中でイカみたいに踊って」
少女は一瞬で悠里を地から引っこ抜いた。体格差を物ともしない様は圧巻だ。
観衆が驚きの声を上げる。
「くっ!!」
悠里は焦りを隠せなかった。持ち上げられることには慣れていない。
生来の腰の強さでどんな投げでも持ち堪えてきた。
だが強烈なベアバッグで腰を抜かされては堪えきれない。
視界いっぱいに草の生えた地面が迫る。悠里は咄嗟に手を差し出した。
勢い良く反り返った莉緒に重なるように、悠里の身体が地面に振り下ろされる。
悠里は済んでのところで腕をクッションにして跳ね、前転して膝をついた。
ブリッジしたまま莉緒が口笛を吹く。
「…い…っ!」
膝をついた直後、悠里は肩を押さえる。無理な受身で痛めたらしい。
そんな隙を莉緒が見逃す筈はなかった。
跳ねるように飛び起きると噴水に駆け上り、飛び、膝を引き付け、
「いくよ!!」
立ち上がりかけた悠里に飛び降りざまの強烈なドロップキックを見舞う。
「ぐ、あああっ!!」
上空からの奇襲に、悠里は顔を庇うしかなかった。小柄な体型からは想像もできない衝撃。
痛んだ手でダメージを殺しきれるはずもなく、華奢な身体は吹き飛んで植え込みに突き刺さる。
「え、何々?姉妹喧嘩!?」
「わ、わっかんねぇ…!けどあの落とし方はプロレスごっこってレベルじゃねぇぞ!」
周囲は騒然とし始めた。この段になってようやく気がついたらしい。
莉緒はドロップキックの反動で尻餅をついたらしく、立ち上がって尻をはたいている。
「……やってくれるわ」
悠里が植え込みから立ち上がり、袖を払いながら呟いた。
「もう、遠慮しないから」
ポケットから指貫のグローブを取り出して嵌め、腰には茶帯を固く締める。
臨戦態勢だ。
観客がそう悟った瞬間、悠里の身体は消えていた。
地を滑るように数歩で莉緒との距離を潰す。その迅さはそのまま脚を繰り出す勢いへ。
ボッ!!!
爆ぜる音が空を斬り、にやけた莉緒の髪を花のように散らばらせる。
「うお、はええぇ!!何だあれ!?」
「蹴り?い、いや女があんな音させるわけねぇよな…」
「…つうか、今植え込みに居たんじゃないのかよ…?」
完全に理解の範疇を超えた観衆が惑う。
その中心で2人だけ次元の違う娘は、今ようやく対峙の時を迎えていた。
2.
約2m、踏み込めばすぐの距離に2人の女が対峙する。
「ふふっ」
小さな笑いで突っ込むのは少女だ。おっとりした様子から想像されるより遥かに俊敏に踏み込んだ。
その勢いのまま悠里の胸元へアッパーを叩き込む。
しかしその初撃は見事に潰された。凄まじい腰の捻りを加えた悠里の打ち下ろしによって。
ベアバッグでは少女の小ささが幸いしたが、今度はそれが仇となったのだ。
正面から顔を打ち抜かれ、小さな体が地面に伏す。
いい手ごたえに悠里の目が綻んだ。
右の打ち下ろしをカウンターで喰らえば、しばらくは痛みで地面に横たわるはずだ。そこを蹴りつける。
そう考えて素早くバックステップを刻む。しかし、その足がもつれた。
見るとブーツの足首を手が掴んでいる、莉緒の小さな手が。
彼女は地面に転がりながら、冷静に悠里を見上げていた。
そこにダメージらしいダメージは見えない。
「く…!」
悠里は手を振り解こうとしたが、足首に食込もうかという掴みは外れない。
そのまま引き倒そうと言わんばかりだ。もし掴まれていない方の足で蹴りつけようと振りかぶれば、その瞬間に軸足を引かれて転倒を余儀なくされる。
ならば、と悠里は膝の力を抜き、へたり込むように少女に覆い被さった。
軽いとはいえ、明らかに少女より重い体重を乗せた膝が少女の肩を打ち抜く。
「うぎあ!」
さすがに莉緒は悲鳴を上げた。悠里はその声にほっとする。
これでマウントポジション。体重をかけて相手の動きを制しさえすれば、打撃では有利だ。
「おいおい、ちっこい方組み敷かれちまったぞ」
「あの体格差じゃひっくり返せねぇよ。決まったな」
素人目にさえその優劣は明らかだった。
だが、下になった莉緒に焦りの表情はない。どこか期待さえ含ませたような瞳をしている。
下から腕を取られる?攻撃に専念して無防備になった顎を打ち抜かれる?
そうした可能性を考えつつ、それでもなお悠里は莉緒に強烈な下段突きを打ち込んだ。
そこに腕を取る隙も、カウンターを合わせる暇もありはしない。
少女の上体が土の上でバウンドする。
一打では止めない。顔に胸に腹に、隙を見つけては拳が打ち込まれていく。
「あうっ!ぎゃん!」
可憐な少女が馬乗りに跨られ、一方的に叩きのめされて叫ぶ。それは強姦を想起させた。
状況は一方的だ。
上になった娘の打撃は打ちも引き戻しも素早く、防ぐことや掴む事が叶わない。
そもそも莉緒が何かしようとしたその前兆を叩いて止めるものだから、少女には為すすべもない。
そんな状況下ながら、不思議と観衆の中に止めようとする者は現れなかった。
モデル並みの身体をもつ美しい娘と、人形のように愛らしい少女。
どちらも日常生活で滅多に見かけないほどの容姿だ。その2人が痛めつけあっていても何処か現実味がなかった。闘争と感じるには幻想的すぎた。
殴り始めて10分ほどが経過しただろうか。
莉緒は唇が切れ、鼻から血を流し、頬を真っ赤にしていた。普通であればとうに失神している。
確かに少女はぐったりとしていた。
しかし少しも意識が飛んではいない。瞳は変わらず、期待を込めて悠里を見つめる。
「はぁっ…っ!は、はぁ、はぁ…っ!!」
息を切らせているのはむしろ悠里だ。
殴っても殴っても一瞬痛がりはするが、すぐに仄かな笑みを浮かべて見つめてくる。
その異様さが打ちっぱなしの疲労をどれだけ増幅させることだろう。
「必死に戦ってうおねえひゃんって、かっこいいんらね」
鼻を潰されてなお、陶酔したように顔を覗き込みながら囁いてくる。
戸惑うなというのが無理な話だった。
普通の人間にとっても妙だ。しかし闘争に身をおく悠里には尚更だった。
人を殴ればダメージがある。それが格闘の大前提だ。殴られて頬を赤らめるなどありえない。
「マゾヒスト」という特殊な人種を除けば。
悠里の額からは汗が滴り、同じく汗まみれの莉緒の顔に伝い落ちていた。
必死に拳を振り下ろす側か、されて悶えている側か。
むうっとする汗の匂いが2人の間に漂い、鼻腔の奥を暖める。
「もう終わり?」
莉緒はにこやかに問いかける。悠里はそれを睨みつけた。だが拳が動かない。
心労もある。打ち続けによる腕の疲労もある。しかし何より拳自体のダメージが大きい。
バンテージも巻かず薄いグローブで殴り続けた。横たわった少女の身は脂肪が少なく、骨を直接叩くようなものだった。固い物がぶつかり合う。莉緒は身体に赤い斑点を作っているが、当然悠里の拳も悲鳴を上げる。
※
『もう終わりなの?』
脳裏に白い少女の言葉が甦った。少女はユーリ、裏格闘界のサラブレッドだ。
檻のようなリングの中、心優しい少女が生まれて初めて放った打撃を何十と喰らい、ユーリはにこやかに笑っていた。
「あ゛…っ!!」
割れた拳から血が流れ、黒髪の少女は怯える。だがそれ以上に相手の笑みが怖かった。
『もう、終わりなのね?』
白い少女が一歩を踏み出す。その足が伸びきれば、また腹部がただれたように痛むのだ。
黒髪の少女は逃げた。必死に助けを請いながらリングの金網に取り付く。
その瞬間、少女の身体は跳ねとんだ。
『脳味噌まで低級なのね。金網には高圧電流が流れてるって、最初に言ったでしょ』
魚のように痙攣する黒髪少女を、ユーリが抱えて投げ飛ばす。青い電流の走る金網へ。
また弾け飛ぼうとする彼女を、ユーリがゴムブーツで押さえつけた。
割れんばかりの絶叫が響き渡る。
黒髪少女は金網に押し付けられたまま踊るように全身を跳ねさせ、叫び、やがて失禁した。
周囲で起こるのは“笑い”だった。
『死んじゃえ、死んじゃえ』
悪意の言葉が、経のように繰り返されながら小さくなっていく。
※
悠里は歯を食いしばった。拳の痛みを無視し、更に右を叩きつける。
だがその一撃は先程より明らかに鈍い。悠里の恐れていた通り、拳先が届く前に莉緒に絡め取られてしまう。悠里の表情が強張った。
「綺麗な顔は堪能したから、次は苦しそうな顔を見せてね」
莉緒は左手で悠里の手首を掴み、上体を起こしながら裏に右手を通した。
そして腕を締めながら上体を横にずらし、腕を背中側に捻り上げる。
チキンウィングアームロックだ。
「がああっ!!」
悠里はたちまち顔を歪ませた。本当に力が半端ではない。
逃げるように身体を仰け反らせたことで莉緒の脚が自由になり、胴に絡まされてさらに極めが強固になる。
異常な打たれ強さ、巧みな締め技。悠里は相手が天性のレスラーだと確信した。
「苦しそう。もっと見たいな」
ぎりぎりと腕を捻り上げながら、莉緒は悠里の耳を舐めた。悠里が悲鳴を上げる。
いつしかポジションは逆転し、地に這い蹲った悠里の右腕を少女が抱きしめる格好になっていた。
「すげぇ!あのチビ脱出しやがった!!」
「あのモデル女、えげつなく極められたまま首筋舐められてるわ。ざまぁないわねぇ」
野次が率直に状況の変化を謳う。
「ギブ?ギブ?」
莉緒が尋ねるが、悠里は首を振った。直後、極めの角度が深まる。
「あああああっ!!!」
悠里は天を仰ぎながら叫んだ。叫ばずにはおれなかった。肘が砕けて横方向にずれ、肩が引っこ抜かれるようだ。
莉緒はなおもマイペースに悠里を舐めしゃぶってゆく。
「あは、あの時噛まれた傷、まだ治ってないんだ」
アルマ戦での噛み傷がかさぶたとなった場所を舐め、顎で服をずらしながら鎖骨に舌を這わせる。
悠里は凄まじく顔を歪ませながら、時にぴくんと反応を示す。
外野から荒い息が聞こえはじめた。
「関節技って気持ち良いよね。相手に支配されてるっぽくて、痛くてたまんなくて、恥ずかしいの。
ねぇおねえさん、真っ赤な顔しちゃってイイんでしょ?」
「……っく、あ、生憎、ね。筋書きのあるプロレスと違って、こちとら実戦なのよ!」
悠里は涙を堪えながら叫んだ。普段の彼女らしからぬ暴言だった。
それほどアームロックには余裕がなく、屈辱的で、切ない。
別に怒っているわけではないが、今は何かを叫んで気を発散させるしかなかった。
「ふふ、強気ね。でもそういう人大好き。だからもう許したげる」
そう言うと、莉緒はあっさりと極めを外した。悠里の身体が力なく崩れ落ちる。
「はぁ、はぁー……」
悠里は肩で息をしていた。敵を前にして立ち上がる力もない。
「…やっぱり…:
その悠里を見て、莉緒は呟いた。
「おねえさん、生粋のストライカーなんだ。打撃には滅法強いけど、寝技にはほとんど素人。
外すのも苦手で、極められた時のストレスも異常に大きい。
どんなに練習しても寝技の合わない人がいるって、お姉ちゃんが言ってたっけ」
ようやく立ち上がった悠里に、莉緒が不穏な笑みを見せた。
「嬲って嬲って引きずり出してあげる。…カーペントレス………!!」
>>529 GJ!関節責めのギチギチとした感じがたまらんぜ
うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
GJ!
弱点晒されまくりな上に、悠里の攻撃に耐えられるサブミッションハードマゾが相手とわ!
野外戦って事は…もしや!?(*´д`*)
これだけ体格差があってもマゾの人には打撃が効かないものなのか
なんかアゴでも打ち抜けば簡単に昏倒させられそうな気がするんだが
莉緒には浣腸の時のような奥の手があるのかな
急所攻撃がルール違反にならないっていうのは非常にエグい
指で肛門狙えば内臓直接攻撃も可能ってことになる
打撃キャラばかりで気がつかなかったが女闘自体組技系に有利なルールなんだな
今日の没ネタ
・試合前後にドーピング検査として公開放尿
・過去の猛者を憑依させて戦うイタコ娘
今更ですが、いつも感想有難うございます
1.
公園には山のような人だかりが出来ていた。
「どうしたんですか、この騒ぎ?」
通りかかった男が問う。
「何か、ちっこい女の子と綺麗な女が殴り合ってるらしいっす、ガチで!」
傍にいた少年が振り返って答えた。
普段から人の多い場所であるし、いかつい男の喧嘩などは日常茶飯事だ。
しかしそれに比してもその日の盛り上がりは異常といえた。
男は人ごみを掻き分けて覗き込む。
そこだけスペースの空いた噴水前では、確かに2人の娘が組み合っていた。
どちらも道ですれ違えば仰ぎ見るほどの瑞々しさだ。
長身の女が攻撃のために息を吸いこんだ。
黒タイツに包まれた脚が引き付けられ、チェックのスカートが翻る。
むちっと膨らんだ腿に男が見惚れた瞬間、その脚先は凶器に変わった。
大気を裂いて鋭く斬り込む戦斧に。
それを受けるのは華奢な少女だ。彼女は壮烈な蹴りを避けようとしない。
蹴りは左腕にめり込んだ。胴がくの字に折れて吹き飛ぶ。
少女は地面を転がり、一瞬ののち跳ねるように立ち上がった。
「あっはははは!!すごい、凄い!!…ねぇ見て、腕がこんなになっちゃった」
少女は蹴られた腕を突き出した。
黒い長袖に隠され外傷はわからない。しかし腕はひどく痙攣していた。
差し出されたまま小刻みに跳ね上がっている。
「熱いの、胸にまで痺れがきて…ドキドキして止まらないの」
左胸を押さえながら少女は笑う。幼い顔に似合わない恍惚とした表情で。
対する娘は尚も容赦せず構えを取った。
「……な、何…なんだ?……これ………?」
男はやっとの思いで呟いた。
今まで見たどんな男より熾烈な蹴りを放つ娘。
それをまともに被弾しながら、壊れゆく身体を楽しむ少女。
イカれた喧嘩は何度も見た。クスリを打ちながらナイフで刻みあう現場もあった。
しかし、眼前の情景はその記憶をも上書きする。
息を吸って、踏ん張って、股関節を締めて、脚を叩きつけて、肩で受けて、転がる。
彼女らの動作を支える全てが理解を超えていた。
異性であるとか、芸術的価値を覚えるほどの肢体だとか、そんな事ではない。
或いは気の遠くなるような鍛錬の結実が、或いはタガの外れた精神が、
彼の現実と乖離しすぎていた。
莉緒の顔に容赦ない正拳突きが叩き込まれる。
少女が吹き飛んだ。
絶対的なリーチ差があるのだから当然だが、莉緒は打たれる一方だ。
ダメージの程はわからない。だがこのままでは勝ち目はないだろう。
男がそう考えた瞬間、少女は悠里に背を向けて走り出した。
「おい逃げんのか!」
野次が飛ぶ中、少女は走る。一番近くに居た、男に向かって。
「え…?」
男の視界で少女が屈みこむ。消えたと思った瞬間、彼は後ろに気配を感じた。
振り向くのとどっちが早かったろう。
彼の身体は、強烈なキックで前方に投げ出されていた。
悲鳴も上げられない。一瞬の後、少女が後ろに回りこんで蹴ったのだと理解する。
何故か?とは考えるまでもない。
息のかかるほどの至近で目を見開いている、少女の対戦相手。
男はそこにぶつける飛び道具として利用されたのだ。
「ぐっ!!」
ぶつかる、と覚悟した次の瞬間、男は柔らかく抱きとめられていた。
コンマ数秒の反応で悠里が顎を引き、豊かな胸に男を包み込んだのだ。
安堵の息が漏れる。安らぐ香りがし、暖かな感触に心が和む。
「あ…ありがとう……」
感謝の意を述べようと、至福の中で顔を上げたとき、男の顔に赤い何かが降り注いだ。
整った娘の顔に拳がめり込み、赤いものはその隙間から噴き出している。
ぬるく生臭い、それは人の血だった。
2.
鼻から盛大に血を噴きこぼし、悠里は一歩、二歩後退した。
息苦しいほど熱い血が溢れる。血は鼻を押さえる手のひらをあっという間に染め上げ、手首を流れて地面へと間断なく滴り落ちていく。
ふいに涙が溢れ、身体は余りの痛さに立ったまま硬直した。
「あぁ、ぁはっく、が…あぁっく、うっく、ああ、あぐぶ……!」
声にもならない声。意思とは無関係にしゃくりあげてしまっているらしい。
こんな重い一打は受けたことがない。ましてやそれを、自分の肩までしかない少女が放つなどとは信じられない。だがそれは事実だ。
悠里はふらつく足で、よろめきながら莉緒と距離を取る。滴る血が2人の間に赤い蛇を描いた。
無様に逃げ惑うのは、必死に回復を図り、それ以上にまず倒れないための苦肉の策だ。
それを嘲笑うように、莉緒はゆっくりと悠里の前を遮る。
「いったぁい。殴って指がおかしくなっちゃった」
少女は微笑みながら拳を見せた。その人差し指が不自然に陥没している。
それは莉緒の馬鹿力をよく表していた。しかもそのダメージをすら、莉緒はさして気にしていない。
悠里の顔が引き攣った。
人の顔面を殴る。普通の人間はこれを躊躇する。だが戦い続けて顔面を殴ることに免疫が出来ても、素手のまま全力で殴る事はできない。無意識下のレベルで制御してしまうからだ。
人の頭蓋骨は重く硬い。体中のどんな骨よりも。そこに全力を叩き込めば、拳などあっけなく崩壊する。たとえ殴った経験がなくとも、人間の脳はその結末を予測し制しようとする。
だがごく一部にだけ、そうしたリミッターが外れた者がいる。
「自分の受ける痛み」より、それを対価に生まれる「相手の痛み」を求める人種が。
悠里はそれをよく知っている。
リングでの彼女が、まさしくそうなのだから。
相手の事が分かると、悠里の足は再び止まった。建設的な考えで行っていた逃避が出来なくなった。
莉緒はその悠里にゆっくりと近づく。
悠里は逃げられない。蛇に睨まれた蛙のように。
傍から見れば小さな少女に臆する様は妙かもしれない。
だが、殴られた悠里に相手の体型は関係なかった。
一撃で鼻を破壊されたこと。14歳の一切セーブをしない力は、人一人を破壊しうること。
ただその事実しかない。冷静に判断などできない。
恐怖に呑まれると人はシンプルになる。
嗅覚が絶たれたと同時に、悠里の世界は一つずつ閉ざされていった。
秋風は内からの寒気に変わり、濡れた視界は少女の笑みだけを映し、味覚は血に染まった。
はぁーー… はっ は ぁ… はぁ …
暗い世界に自分の息遣いだけが聞こえる。濁った視界で少女が腕を伸ばす。
勝手に背筋が丸まり、腕がガードをする。
今度は、少女の腕は優しく触れただけだった。からかうような笑いが聞こえる。
そして訪れる静寂。
音もなく、声もなく、気配もなく。何もないのに、どす黒い恐怖だけが波を打つ。
不安で心臓が萎みきってしまいそうだ。一時間もすればきっと気が触れる。
「おねえちゃん怖いの?そんな立派な身体してるのに」
莉緒が嘲り、動く。先ほどと同じ動き。
しかし今度は殴られた。顎下からガードをすり抜けるように鼻を勝ち上げられ、また血の飛沫が上がる。
悠里は鼻を押さえたままたたらを踏んだ。
「じゃあ、もういいや。死んでよ」
3.
「おおっ!!!」
歓声が上がった。
莉緒が飛び上がり、鼻を押さえる悠里の首に組み付いたからだ。そのまま首締めに移行する。
「がぁっ!」
背後からきつく首を締め上げられ、悠里の身体が下がっていく。
莉緒は後ろから締めたまま、その落ちかけた膝を後ろから蹴りつけた。
がくんっと悠里の腰が落ち、足は莉緒の足に踏み潰される。
「おねえさん、最後に聞くよ」
痛みにうめく悠里に、莉緒が問う。
「ギブ、アップ?」
悠里は膝立ちのまま首を絞められ、鼻血を垂らして苦悶していた。
その憐れさは陵辱を受けた生娘のようだ。
(く、首…が…!!ほ、ほんとに…締まってる、殺す気なの…!)
いくら悠里がマゾヒストとはいえ、許容できる痛みには限度がある。
特にその痛みの裏に、明確な殺意があれば。
(死にたくない!!)
いくら野外戦とはいえ、このギャラリーの中での決断には勇気がいった。
しかし悠里はそれを決めた。
「…き、きぃふ……あっ…ふ……れす……!」
首を絞められながら声を絞り出す。目尻から涙を流して。
決着だ。
誰もがそう思ったとき、悠里がうめきを上げた。
うめきを上げたということは首締めが緩まったということだ。しかし、それは開放ではなかった。
「あは、ごめぇん。鼻血で何いってんのかわかんないや〜」
莉緒は悠里の脚を踏みつけ、首を絞めたままその頭を引き付けた。
前にアキナを破ったキャメルクラッチに似ているが、膝が背を圧迫する為、えげつなさはその非ではない。
カベルナリア(弓なり)。
脚を踏みつけて封じ、垂直に立てた膝でブリッジを極めさせ首を絞める。
極限の背骨折りにスリーパーを絡めた殺し技だ。
その圧倒的な迫力に地鳴りのようなどよめきが起きる。
だがその騒ぎに負けないほど、悠里の叫びも凄まじかった。
「うおおおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!」
その優美な容姿からは想像も出来ないような低いうめきが辺りを震わせる。
それほどこのカベルナリアは強力なのだ。
脚を押さえられては弓なりから脱出する術がない。いくら身体が柔らかいといっても、足先が見えるほど反らされては脊椎が悲鳴を上げる。おまけに首まで絞められる。
「ああ、おねーさんに包まれてるのがわかるよ。ふふっ、腰がびくびくして可愛い」
莉緒は悠里の下で囁く。
この技はかけられる方は地獄だが、かける方は膝を立てて腕を引き付けるだけ、途中からは寝ているだけでいい。さらには体格差もさほど影響しない。
時が経てば経つほど一方的になる。そしてまともには脱出しえない。
「くぅあああああっっ!!」
しばらくして、悠里がまた声を上げる。みれば、背骨の極めがさらに深まっていた。
悠里の柔軟さが災いし、相当えげつない角度に極まっている。
観衆、特に男の目はその悠里の下半身に集中していた。
弓なりになったことでスカートがめくり上がり、黒タイツも腰の部分からずり下がって僅かに下着が覗いてしまっている。引き締まった美脚から覗く恥じらいに視線が集まるのは当然だった。
「ほらぁ、皆見てるよぉ。おねーさんの股のトコ」
莉緒が囃しながら膝を上下させると。悠里の腰も卑猥に蠢く。
周囲にため息が漏れた。
悠里はその屈辱に顔を歪ませながら、苦しみに必死に抗うしかない。
鼻が詰まり、喉も圧迫されている。
息苦しさが水のように肺に溜まっていき、胸が痙攣する。
その苦しさが頭の芯まで痺れさせ、意識を薄めてゆく。視界はよく真っ暗になる。
時折上体がびくっと跳ね上がり手足が痙攣する。
悠里は自分が死にゆくのを眺めていた。
唯一感じるのは、背筋に走る凄まじい電流。
『死んじゃえ、死んじゃえ』
白い少女に、放電されたリングへ押し付けられた時と同じだ。
電流を浴びて身体が跳ねる。それが死ぬまで続く。
しにたく … ない …
身体の奥が呟いている。思い出が走馬灯のように頭を巡ってゆく。
したいことがまだいくつもあった。
自分が作った朝食を何人かで囲んだり、花を育ててみたり、小さな犬を飼ったり。
いつかは恋だってしてみたい。
自分でも笑ってしまうほど女めいた願望ばかりだ。
暗かった視界が一瞬で真っ白になる。
その中に映るのは、凄絶な悪魔の笑顔と、自分の脚。多くの敵を屠ってきた無敵の脚。
自分ひとり守れない無力な脚。
腰に巻いていた茶帯が緩んでいく。
背骨折りが完成に向かうにつれて戒めは解け、見開いた目が穏やかになった瞬間、
ばさりと地に落ちる。
それを目にした瞬間、悠里の中の何かが切れた。
4.
悠里がぐったりとした瞬間、莉緒が首の締めを離した。反りきった悠里の上体が戻る。
それを見て観衆は大きく息を吐く。
悠里のギブアップでも終わらなかったこの野外戦も、締め落としでようやく終了だと。
記念に写真を撮るものまでいる。
だが、当の莉緒は不思議そうに手を見つめるだけだった。
――なんで、離したんだろ?
彼女は悠里が失神しても首締めを続ける気でいた。
普通の人間なら失神して終わりだろう、だが悠里ならわからない。おそらくはまだ限界は先にある。
ゆえにきっちり止めを刺そうとしていた。
だが、何故かその手が緩まった。すっぽ抜けたのではない。疲れたわけでもない。
あははっ
小さな笑いが聞こえた気がして、莉緒は膝の上を見上げ、息を呑んだ。
失神しているはずの悠里が身を起こしている。
こちらを見下ろす瞳は、何かが違っていた。リングの上での野性味溢れる瞳ではない。
莉緒はぞくぞくっと身を震わせる。
彼女は、なぜ自分が首締めを離したのかを理解した。
偶然などではない。そこに現れた見たこともない女王に、本能が畏怖したのだ。
おおっ!投下GJ!
まさかギブアップしちゃうとは悠理追い詰められてるなぁ
莉緒のえげつなさは殆ど負けフラグレベルですなw
そして過去のトラウマ(?)抵触により表出した悠理の新たな攻撃モード
順当にいけば莉緒がボロ負けしちゃうとこだけど、自分としては
アルマ戦から引っ張ってきた因縁のカードだけにまだまだ
悠理を理攻めで苦しめて欲しいな
やっぱこういうSS見てると悠理みたいな強い女の惨めな敗北やら陵辱を読みたくなるよな
バトルの観客とかも多分おんなじ気持ちで野次を飛ばしているに違いないw
なんかもう飽きて来た
別の新人来ないかなー
まぁそう言うなよ。
エッヂの人も休みの土曜1日潰して書いて、
投下してくれてるっぽいからさ。
おれは最後まで見たい派。
エッジの人乙ですー
前哨戦かと思いきやこのまま決着しそうな流れだな
それはそうとコレ↓
・試合前後にドーピング検査として公開放尿
はもっと初期にやっておいて欲しかった
浣腸デスマッチの後となってはややパンチが足りない気がする
お気に入りに追加しますた
俺もなんか展開がワンパターンで萎えて来た
最後はゆうりとか言う糞ビッチ死ぬENDにしてくれ
絶対最強なんてこの世に存在しないんだよ
シュルトみたいでいらいらする
確かにあのまま締め落とされて失禁の方が萌えたかな。
エッヂは、スレよりも自分の作品を取っちゃったみたいだね。
はい職人は書き手の奴隷宣言出ましたー!
ただの感想だよ。
そんな意味込めてないから。
>>554 一行目で止めときゃそうとれるかもしれんけど…
だったら2行目いらなくないか?
なんていうか、書き手が嫌がりそうなことでも平気で言うやつが多すぎる気がするぞ
>>551に関しては、だったら自分で書いて自己満足してろとしか言いようがないし
彩の作者を潰したことでいい気になってるんだろう
もうこの手のは放置しておけ
まぁ本当にThe Edgeを楽しんで読んでる人の為にもこういうのはガン無視で行こうぜ
後、まだ完全には潰れてねぇよwwwww
ってかそろそろ次スレ?
あ、本当だ
なんだかんだ言いながら結構健全な感じにスレ容量使い切ったもんだよなw
ギブアップする所は、もうちっと恐怖に塗りつぶされて、心が完全に折れる描写が欲しかったな
あと・・・失禁ないのが納得いかんw
潜在能力覚醒で逆転展開なら尚更惨めな完敗描写が欲しかったっす
まぁ昨夜だけで10回ほど抜けたので満足だけど
おいおい、完全には覚醒出来ずに負ける可能性だってあるんだぜ?
マダ何かある…俺はそう信じてる
>>548(彩作者)は潰されて引っ込んだことになってるらしいw
でもあれ自滅じゃなかったっけ?w
でもウンコ我慢ファイトはよかったよ
あれはいまだに使ってる
まぁ確かにそろそろ自重はして欲しいな作者には
新人が入りづらいのかも知れんし
新人が入りづらいと言っても、投下する人はするよ
しないって事はする人がいないって事だから、俺はエッヂの人には頑張って欲しい
何が自重しろだ。
エッジが書かなくなった後で新人とやらが来る保証でもあるのか?
あったとしてもちょっと実力のある書き手がいるから書かない、なんて奴がろくなもんであるはずがない。
色々荒れてるようだけど、とりあえず新スレ立ててみる
>>563 その「確かに」がどこに引っかかってるのか全く理解できないw
新人が入りづらいとか言って、いもしない新人の気持ちを代弁するような形で荒らし意見するなよ
唯一の職人に投下自重させてどうする気なの?オマイが新作投下してくれるの?
そろそろ埋めに入ろうか。
皆はSSで格闘とエロ、どんくらいの比率が好み?
俺は6:4ぐらい。
比率で表現するのはなにげに難しい
個人的には直接的なセックス表現は無いほうがいいな
戦闘シーンの中に垣間見える羞恥とか無様さが抜ける
この場合の「エロ」が何を指しているかにもよるんだが、一般的な性的描写のことだとすれば
8:2くらい
ただしこの8の中には、リョナ分が2〜3程度含まれる
格闘シーンそのものより、苦しんで悶えてるところとか、
生意気だったり凛々しかった娘が無様な姿を晒すギャップとかを求めている俺って
ここではマイノリティ?
上記を戦闘、エロをエッチな技とか責めと考えて
7:3から8:2くらいがツボです。
このスレでエロは苦しんだり悶えたりする際の技みたいな認識なんで、どのくらいと言うのは難しいわけだがw
>生意気だったり凛々しかった娘が無様な姿を晒すギャップとか
それは大いにあるなぁ、自分の場合
8:2〜7:3だと思うけど、表現の卑猥さ次第では随分と比率が変わる可能性あるね
えらくスレが進んでるから新人でも着たかと思ってみれば・・・
とりあえずこのスレなら9:1位でおkだわ、エロは他のとこで補充できるし
さて、問題は地下女さんだ。結局このスレでは復活とならなかったが、
次スレではトーナメントの続き期待していいんだろうか?
っていうか期待するぞ?w
そっと消えようとしてたのに、わざわざ名前出されて地下女涙目w
それか、投下きっかけ作りに本人かwww
お前はいったい何を言ってるんだ?
とっとと埋めようぜ
やめようよ、能力以上を要求しても、苦しませるだけだ
地下女 ◆Yn5OCYuqwA :2008/02/16(土) 22:59:53 ID:s9vvlsY8
いやいや、毎日チェキしてるんだな、コレがw
ただ、4月までは色々と忙しいっぽくて動けません(汗)
だそうですww
いや、地下女の続きなんて読みたくねえし
厨二臭い文で自信満々になってるわりに、毎回同じ展開しか書けないどこぞの知障よりはマシ。
それ、まさかエッヂのことじゃないよね?
エッヂは頑張ってる方じゃない?
口だけ地下女なんかよりよっぽどだよ
地下女と比べてどうかは知らんが、毎回きっちりと話を作って、浣腸なんかのリクにも答えて、
悪口を言われても絶対に返さない辺りで、住人を楽しませようとしてるのは伝わってくる
だな
趣味で書いてるものを読ませてもらってるだけなのに、続きが来ないだけであたかも自分の権利が侵害されたかのように反発する奴って何なの?
突き放すことで発破かけてるつもりだとしても頭悪すぎる。
そういう態度は地下女さん以外にも悪影響を与えて、スレを荒廃させる原因になるぞ。
何も生産していない人間の悪態が原因で過疎が進むってアホらしすぎる。
そんなに今の状態に不満があるなら自分で何か書いてみ?
人を攻撃するときに発揮されるその文才とやらを使ってさ。
難癖つけてお前みたいに頭に血を上らせる奴が出てくるのを待ってるんだよ
いいから放置しろ
荒らしに食いつくのが一番スレ荒廃の原因なんだよね
荒らしに突っかかるヤツも荒らしって格言もあるしね
>>588もエッヂの人級のスルー力を身につければいいと思うんだ
そろそろ埋まるかな?
次スレの発展期待
埋まった?