Hの時だけデレデレになる女の子2

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710名無しさん@ピンキー:2010/08/07(土) 05:20:19 ID:HAE19yp2
ANDERE
711名無しさん@ピンキー:2010/08/13(金) 05:23:56 ID:/cluUGYW
ロリ系デレで誰か
712名無しさん@ピンキー:2010/08/16(月) 02:46:10 ID:rAdFpjfx
>>711君が
713名無しさん@ピンキー:2010/08/22(日) 08:50:51 ID:g/095LqJ
とりま上げておこう
714名無しさん@ピンキー:2010/08/25(水) 01:35:51 ID:JxcaGoE+
投下があっても感想もなく保守や空上げばかりのスレに職人が来ると思うか?
715名無しさん@ピンキー:2010/09/05(日) 09:34:29 ID:tF7iIUAO
保守
716名無しさん@ピンキー:2010/09/17(金) 00:01:14 ID:jy5IpYpu
保守
717名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 20:18:16 ID:kalrFdh4
kusosure
718名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 08:42:22 ID:p3dLkfvX
投下する甲斐もないスレだよね、ここ。
719名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 17:30:39 ID:lYNjXcvW
この程度で何を…
720名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 21:58:49 ID:1JOrFHzG
ほしゅ
721名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 22:59:37 ID:Z7quRkg9
容量やばいけどもう次スレはいらないな
722名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 23:11:06 ID:3D/K2avK
age
723名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 20:19:24 ID:1gvo/Qcg
保守
724名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 18:22:01 ID:26wHjZo1
保守
725名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 03:07:59 ID:sxQ7KSuR
阿呆ちゃいまんねんパーでんねん
726名無しさん@ピンキー:2010/11/13(土) 04:35:39 ID:hwBBOnxY
ビッチな娘が一途になったら第3章
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1260763640/
作品の系統が似ているし次スレからココ↑と統合したら良い・・・
727名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 08:02:10 ID:dsJK1nq1
>>726
ここはどっちかと言うとふだん真面目でエッチの時だけビッチになるような話なんだけど。
728名無しさん@ピンキー:2010/11/14(日) 12:32:19 ID:HSkI5ZpI
普段だれとでもセックス中出しするビッチに興味は無い
自分だけに本性をだしてH迫ってくる真面目ちゃんに興奮するのだ
729名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 01:53:55 ID:Wm7foSZ8
だが・・次のスレ立ても職人が居無いし、保管庫の作品を埋もれさせるのは惜しいし
何とかならんものか・・・・・
730名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 02:47:14 ID:YIxUeksV
ホンジョロイドからそろそろ2年か
731名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 14:24:49 ID:bRJoqjQ6
難しいよねイメージが
設定だけでも書き殴ってみるとか
732名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 20:48:56 ID:lm1KUa14
>>730
俺は未だに待ってるぜ…
733名無しさん@ピンキー:2010/11/17(水) 20:52:49 ID:h79aiiAe
>>俺もだ
734名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 04:47:53 ID:8ElqdqKX
あきらめろ
735名無しさん@ピンキー:2010/11/18(木) 21:21:04 ID:jzxOVmcT
ホンジョロイド最高や!
嫁にしたい
736名無しさん@ピンキー:2010/11/19(金) 00:07:56 ID:CiphJdw2
ホンジョロイドを待ち続けて早・・・何年だ?
737名無しさん@ピンキー:2010/11/21(日) 02:28:30 ID:CGPqxHCV
大体職人を誘致したいのなら改革が必要だな・・・
例えばホンジョロイドが住民の理想なら
堅物学級委員がとか
氷の女がとかある程度書き手に
こちらのニーズをスレタイで提示しないと
規制だらけでどこのスレも過疎化が進む中
復旧は難しいだろう
折角保管庫まで作ったんだから
このスレが終わるまで今後の方針を決めておいた方が良い
738名無しさん@ピンキー:2010/11/27(土) 23:01:44 ID:+7bHks/j
ニーズねぇ…
>>186みたいなおにゃのこキボン
あと>>481みたいな快活な女の子のやつがもっと欲しい!
739名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 06:52:29 ID:MDd8nkkM
このスレが過疎ってるのは住人のせいだろ、前スレは結構賑わってたし
投下はちょっと微妙だと完全無視してアドバイスすらなし、かといって雑談もろくにせずただ保守のみ
>>714>>718で指摘されても一切リアクションなし、とっくに投下やめた職人マンセー
こんなことじゃ復活はありえない。住人が意識改革しなきゃならんよ
740名無しさん@ピンキー:2010/12/03(金) 12:13:35 ID:glToX9dl
「Hの時だけ」って、結構難しいんだと思う。

とにかくH大好きって感じにすると、「デレデレ」からは微妙にズレてしまうし。
741名無しさん@ピンキー:2010/12/04(土) 17:48:28 ID:8DtAnYoB
まずデレデレでないのをどうやってHに持ち込むかがすでに難しいんだが
742名無しさん@ピンキー:2010/12/05(日) 11:15:34 ID:zK04Zco7
>>741
そこはフィクションなんだし、イキオイでいいんじゃないか?w

強気で隙のない女を何かの拍子にうっかり押し倒してしまい、
とんでもないことをしてしまったと、反省&後悔(or恐怖)して土下座、
しかしすでに向こうはデレデレ、とか。
743名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 14:29:59 ID:cfAZs1ts
先ずはスレタイの解釈から…Hの時だけって事は普段は普通orツン、冷たいと言う事に成るな‥
ここは色々なキャラが考えられるが
エッチ有り気のスレタイだけにギャップ萌えを目指すならHとかけ離れたキャラの方が効果的だろう…
後はH時は当然よがりマクるが普段は
それを感じさせない…創作に関してはギャップがキーワドだな
後ss職人はエロだけって嫌がる人も多いらしいし(エロパロ板だろう?そこは職人が居無いと成り立たないし)
次スレを立てるとしたら
○○の時とかあの時とかスレタイをぼかしてより多くの職人が投下し易い様にする方がいいだろう
それから住民は過疎らさないで普段は自分達でプロットを出した方が新規の投下を誘致し易い筈だ
最後にホンジョロイドに関しては余り拘らない方が良い…
諦めろって言ってる訳じゃ無いぞ!
そればかりだと新規の投下が来づらくなるとゆうことだ
744名無しさん@ピンキー:2010/12/08(水) 17:33:08 ID:lupUuko1
>>743
整理と提案ありがとう。
「○○の時だけデレデレになる女の子」「あの時だけデレデレになる女の子」
っていうのも、いいかも。

あと、投下に対する感想はもちろん(GJだけでも)重要だが
SS以外の雑談とかでもスレを盛り上げるのに役立つし、
プロットとか、プロットに至らない小さなアイデアでも、
それを見て、インスパイアされて書く職人さんもいるので、
とにかく住人が保守以外の書き込みしていることが重要だよな。
745名無しさん@ピンキー:2010/12/17(金) 03:22:51 ID:lHOLWs50
某スレみたいに嵐に
襲われて息も絶え絶えに成るのが良いのか・・・
このスレみたいに保守過疎スレに成るのが良いのか・・・
まあ、最近規制のせいも有るが板全体の読み手のレベルが下がって
自サイトや専門の管理サイトに投下している職人が多いのも事実。
746名無しさん@ピンキー:2011/01/05(水) 03:59:04 ID:ZdIyerl7
あけましておめでとうございます。

今後の参考に他スレとの類似性を検証してみた。

強気な女がしおらしく成る。
*ツンデレもこのカテゴリーになるかな
普段は悪態をついたりヒーロー(男主人公)をバカにしたり、しかしそれは愛情の裏返しだった。

大人しい女の子が
*ヤンキャラや無口やサナトリウムキャラもこのカテゴリーか…奥手な女の子が爆発したときの壮絶さは圧巻だった。

クールorクーデレ
*ホンジョロイドはこのカテゴリーだろう。有名キャラだと綾波レイか…

近親相姦系
*幼馴染みも入るかな?キモ〇〇では無く当然義理のみたいな感じになると想う。フとした瞬間今まで家族と思っていたヒーロー(男主人公)に男を感じて…

ロリ系
*魔女っ子とかファンタジー系のキャラも入るかな‥大好きなヒーロー(男主人公)と遊んでいて…幼い身体に未知なる感覚が…

逆レイプ
*スレタイ的には有りだと思う。勿論淫乱女に搾り取られる話しでは無くて上記のキャラが性衝動を押さえられなく成って!みたいな。

基本的にエロシチュにこだわるのでは無く。王道パターン→性に無関心だった。→ヒーロー(男主人公)と恋に落ちる。→Hデレするで良いのではないか?
魅せるのは、え!?こんなヒロインが…
みたいな部分を強調した方が話が創りやすいと思う。
747名無しさん@ピンキー:2011/01/05(水) 12:53:05 ID:HMIfeiQ0
ことしもよろしく〜。
検証、乙です。

落差が重要ってことだよねw
(エロシーン以外の)ヒロインをどう書くかにかかってる、って感じかな。
748282:2011/01/12(水) 21:46:46 ID:oaQddDSN
 その日は土曜で、授業は昼までだった。
 ホームルームが終わり、帰り支度を始めた時のこと──。
 ざわついていた教室が、突然静かになった。
 異様な雰囲気に顔を上げると、開いた教室の扉から本条美沙希(ほんじょうみさき)が覗き込んでいる。
 ウチのガッコの生徒会長だから知らない者などいない。
 ただ、その独善的かつ独断的な言動もそれなりに知れ渡っているため、慕われているとは言い難い。
 そんな女がわざわざ別のクラスにやってきて、殲滅すべき目標をサーチするような鋭い目であたりを見回しているんだから、放課後の教室が静まり返るのも無理はなかった。
 俺の席は前から4つ目、窓側から2列目だ。
 すぐに目が合った。
 ──やう゛ぇ。
 何がヤバいのかはよくわからないが、とにかくマズい。
 そして、悪い予感ってヤツは大抵当たる。
 彼女はクラスメイトたちを押しのけ、すぐに俺の席までやってきて言った。
「つきあってくれ」
「へ?」
 慌ててあたりを見回す。
 さすが生徒会長だけあって、……かどうかは知らないが、本条の声は張りがあって、大声でなくてもよく通る。
 気がつくと、教室は分厚い氷の張った真冬の湖のように静まり返っていた。
 遠くでちらちらとこちらを見ている女子の一群がいる。
 あからさまに、好奇の視線だ。
 だが、当の本条はそのことに全く気づいていない。真っすぐ俺の顔を見つめてくる。
 セラミックみたいに滑らかな顔や大きくて澄んだ目は、確かに綺麗だ。
 だが、何の表情も浮かんでいない。はっきりいって何を考えているのかわからない。
 俺にわかっているのはただ、こいつに常識は通用しないということだけだった。


ホンジョロイド [season2]
「ホンジョロイドは電気ブラシの夢を見るか?」
749282:2011/01/12(水) 21:47:37 ID:oaQddDSN
 正直なところ、俺=結城大地(ゆうきだいち)は、この女=本条美沙希とつきあっている。
 ──いや、つきあっているなんて言ったら、コイツは間違いなく否定する。
 本人に言わせると恋とか愛とかつきあうとかいうのがどうにも苦手らしい。
 これは想像だが、自分が男女交際をしていると認めるのが嫌なだけなんじゃないかという気もする。
 ただ、そんなわけで、事実としては完全につきあってる筈なんだが、二人の間ではそうじゃないことになっている。
 ま、俺の方も相手の意思を尊重して、話を合わせている。それが無難な選択と言うものだし、そうしといた方が便利なこともあるし。
 何より本条相手に反論しても、話が明後日の方に飛んでいき、そのまま行方不明になるのがオチだったり。
 ――それが、突然の「つきあってくれ」だぁ?
 そんなこと言われても、何を今さらな話だったりするわけだが、……何でまた、他の生徒が大勢いるところで、ここまでおおっぴらに言わなきゃなんないんだ?
 もしかして、ようやく自分の気持ちに正直になり、本気でつきあう気になった、とか?
 いや、さすがにそれはない。……と思うが、断言はできない。
 成績優秀・品行方正で教師の信頼も厚く、さらに生徒会長の役も積極的に果たし、おまけにとびきりの美少女。──それが本条美沙希だ。
 もちろんそれだけなら典型的な生徒会長キャラってことで、もう少し人気があってもいい筈だが、そうは問屋が卸さない。
 対等または目下の者には基本的に命令口調でつっけんどん。人使いは超荒いし、常に自分が正しいと思っているような強引・マイ・ウエイ。クールといえば聞こえはいいが、実際のところはただの無表情──。
 他人の気持ちや事情には一切おかまいなしに、生徒会の仕事をバリバリこなす様子は、さしづめ感情のないマシンのよう。
 ある時、俺の悪友が言った。──あの整った顔の皮膚一枚下には、超高性能の電子部品(デバイス)がぎっしり詰まっているんじゃないか、と。
 つまるところ、人間そっくりのロボットそっくり。ってわけで、ついたあだ名がホンジョロイド。
 ──まあこれは、俺と俺の友人がこっそりそう呼んでいるだけなんだが。
 とにかく、彼女の演算システムは人知を超えた結論を導きだし、しかも当人はそれが妥当だと信じて疑わない。
 おかげでこっちは七転八倒、今日もまた振り回されるハメになる……。
750282:2011/01/12(水) 21:48:34 ID:oaQddDSN
 相変わらず何の感情も感じられない低い声で、彼女が言った。
「今日これから予定あるのか?」
「え?」
「ちょっと、つきあって欲しいって言ってるんだけど」
「……あ、そっか」
 ──それね。その『つきあう』ね。
 どうやら俺は、動揺しているらしい。いきなり身体の両脇に、つーっと汗が流れ落ちるのがわかった。
 教室の隅では、普段俺とはほとんど話さない女子の一群が、こちらを見ながらヒソヒソ話を続けている。
 できることなら、『知っての通り、俺は生徒会の会計なんですぅ。生徒会長がやってきてつきあえとかいうのも、きっと仕事に決まってますぅ』と、力いっぱい説明したいところだ。……もちろんそれはそれで余りに不自然なわけだが。
 別に二人の関係を隠したいってわけじゃない。数人だが、俺たちがつきあってることを知ってるヤツもいる。
 ただ、コイツがわざわざ俺の教室までやってくるなんて想定外で、……それだけでなんか激しく疲れていた。
「何ぼっとしてるんだ? どうせヒマなんだろう?」
 多分、彼女のバイオ・コンピューターは、断わられないという答を算出済みなんだろう。
 非常にシャクだが、確かに俺は頼まれると断れない性格だ。
 それにこのところ、生徒会の仕事で一緒にはいても、マラソン大会やら入学試験の準備の手伝いやら何やらで、二人きりの時間なんてなかった。
 今日はようやく、久しぶりに何の予定もない土曜日で、元々こっちから誘おうと思っていたところだ。
「あ、ああ、いいよ……大丈夫だ」
 だがやはり、またいつものように振り回されている気がする。
 そう思いながら、のろのろと立ち上る。
 記憶に間違いがなければ、確かコイツは俺のドレイだった筈なんだが……。
751282:2011/01/12(水) 21:49:13 ID:oaQddDSN
 出口に向かって廊下を歩く。
 ホンジョロイドは学生鞄とは別に、肩から大きな布袋を下げていた。
 それなりに重量があるらしく、歩くバランスが微妙に変だ。
 ひと足ごとに、上半身が左右に振れる。
「重そうだな。……持とうか?」
「そうか、すまない。助かる」
 渡された袋の中身は、ノートPCだった。
 確かにそれはそうなんだが、……何だこれ?
 よくあるA4ノートタイプよりかなりデカい。このサイズだと多分17インチ、かなりビッグな部類だろう。
 そのガタイのデカさに違わず、重さも相当なものだ。
 いや、確かに最近はデカめのノートPCも増えている気がするが、新製品というわけではない。袋の口からちらっと覗き込んだだけだが、どう見てもかなり古そうだ。
 本条の話によると、親戚のおじさんから貰ったお下がりらしい。
 最先端のバイオ・メカニクスの結晶のような超高性能美少女ロボには、似合わないというか時代考証が間違っているというか、──とにかくチグハグな印象だった。
「ってか、何でこんなの持ってきてんの?」
「……実はこのコの調子が悪い」
 ツッコミどころ満載なわけだが、気にしない気にしない。下手にツッコむと、余計に話がややこしくなるだけだし。
「どこがどう悪いんだ?」
 さして機械に強いわけでもないんだが、話の流れでそう尋ねた。
 だが、彼女の答を耳にした途端、俺は激しく後悔した。
「どうやらメタボリックシンドロームらしい」
「は、はあ?」
 ……結局ややこしい話になっていた。
 校舎を出て校門を抜け、商店街を歩きながら何度か質問を繰り返し、ようやく概要がつかめたのは、もう間も無く駅に着く頃だった。
 どうやら起動やアプリの起ち上げに時間がかかるようになり、動作もかなり緩慢だということらしい。
 それが何でメタボリック症候群や、寂しいとウサギは死んでしまうというのは本当か、なんて話になるんだ????
 ぐったり疲れ果てた俺を尻目に、彼女はさらっと言い放つ。
「同じクラスのコに聞いたら、大事なファイルは別に移して、いらないものを消したりするといいらしい」
「……ああ、そうだな。ま、原因がメモリ不足なら増設した方がいいだろうし、最悪OSを再インストールすることになるかもしれないけどな」
「そう、なのか……? 外付けなんとかを買おうと思ったんだが、それじゃ駄目なのか?」
「いや、多分、それで大丈夫な筈だ」
「そうか。ギガバイトがどうしたとか、野菜みたいなのがどうしたとか言われたんだけど、実はよくわかっていない。……どうも機械は苦手だ」
 ええええ? 機械が苦手?
 ――いつも普通にパソコン使ってただろ?
 っていうか、ロボのくせに機械が苦手って、……いいのかそれで?
 それに、これから行くのは八百屋じゃねーぞ?
752282:2011/01/12(水) 21:49:52 ID:oaQddDSN
 駅前のファーストフードで食事を済ませ、その後、電車で15分ほどの町にある大手量販店に外付HDを買いに行くことにした。
 電車の中で並んで座り、バックアップや外部記憶メディアについて話した。……わかってもらえたかどうかは全く自信がない。
 ホンジョロイドは普段、サクサクとPCを使っている。少なくともそう見える。
 だが、どうやら機械の動作や構造にはまったく関心がないらしい。
 話の途中で、さっき本条が言った『野菜みたいなの』というのが実はNASのことだったとわかったが、そこ説明し出すと気が遠くなりそうなのでヤメにした。
 結局のところ、俺の話は彼女がさえぎる形で終わりになった。
「全部キミに任せる。普通に動くようにしてくれればそれでいいから」
 いつの間にか、作業も俺がするという話になっている。
 ──ま、それはかまわないけどさ。
 会話が途切れた。
 電車に揺られながら、静かな時間が流れる。
 ぼそっと彼女がつぶやいた。
「何か話せ」
「何か、っていわれてもなあ……」
「黙ってると気詰まりだ。こうして二人でいると、まるでデートみたいだし」
「ふふ、そうか」
「嬉しそうな顔をするな。私は全然嬉しくない」
「だけど、お前がつきあえって言ったんだぞ?」
「それはそうだけど、別にデートではない、ただの買い物だ」
 本条は相変わらず頑なに恋人になることを拒否している。
 普段のホンジョロイドは以前と変わらぬ硬質なマシンだ。
「っていうか、教室にいきなり入ってきて『つきあえ』だなんて、さすがに驚いたけどな。まあ、俺は恋人同士ってことでも全然いいし、クラスの連中にバレたって構わないっちゃあ構わないんだけどさ」
「だから、そういう意味じゃない。ただ買い物につきあって欲しかっただけだ」
「だったらメールくれればよかったのに」
「何言ってる……。休み時間の使用は暗黙の了解になっているとは言え、携帯の使用は校則違反だぞ」
「まさかお前、携帯持ってきてないのか?」
「持ってはいる。だが、飽くまで緊急用だ。余程のことがない限り、校内では使わない。たとえ悪法であっても、法は法だ。それが問題だというなら規則を変えるのが筋だ」
 もちろん俺に、何か意見があるわけじゃなかった。あったとしても、コイツと議論する気はない。
 だが、彼女は一人で話を続ける。
 いつの間にか『民主主義とは何か』にまで発展した熱弁を、なんとか片手を上げて制した。
「っていうか、俺たちがつきあってるの、間違いなくバレたと思うぞ?」
「まさか。……というより、その『つきあってる』っていうのはやめろ。あの程度で回りが勘違いするとも思えないけど、もしそうなら後でちゃんと訂正しておくよーに」
「どう訂正するんだよ? 『本条は俺の恋人とかそういうんじゃない。実はドレイなんだ』とか言えばいいのか?」
 にやっと笑って、俺はそう言ってやった。
 だが彼女は、顔色ひとつ変えない。
「そんな非常識なこと、キミが言う筈ない」
「言ったらどうする?」
「殺す」
「そうか。俺はまだ死にたくないな。困ったな……」
 俺はふざけてそう返したのだが、こちらの顔を覗き込むホンジョロイドの目はぜんぜん笑っていない。
「私もキミには長生きして欲しい。だから余計なこと口走ったりしないように」
 俺の目を見つめそう告げる彼女の顔は、やはりいつもの無表情だった。
753282:2011/01/12(水) 21:50:53 ID:oaQddDSN
 予算にあわせて500GBのポータブルの外付けを買った。
 彼女の大きな布袋にはまだ余裕があり、買った外付HDも箱ごとその中に詰め込んだ。
 かさばるが、どちらにしたって運ぶのは俺だ。
 できるだけさりげなくきいた。
「どうする? ウチ来るか?」
「ああ、キミさえよければ。……修理の道具とかも揃っているだろうし」
 何も気にしていないように本条はそう言った。
 パソコンの修理に、何か工具が必要だと思っているみたいだった。最悪、必要になるケースもあるかもしれないが、ノーパソを開いてハード的な問題を解決するスキルは俺にはない。……とはいえ、今はそんなことどうでもいい。
 内心の期待と興奮を押し殺し、俺は黙々と荷物を運ぶ。
 って、まがりなりにも俺がご主人様で、本条の方がドレイなのだが、それはまあ目を瞑ってやる。
 ホンジョロイドは作業用のロボではないし。
 ──って、そもそもそういう話でもないわけだが。
 ここ最近、エッチしていない。……って、そうそう、そういう話だ。
 行事やら試験やら生徒会の仕事やらでなんだかんだで忙しかったし、とにかくそういう雰囲気になる時間がなかった。
 何度か生徒会室で二人きりになることはあったんだが、俺がテを出そうとする度に、上手くかわされたり、無理やり押しのけられたりしている。
 正直、かなり悶々としていたところだ。っていうか、間違いなく俺は、欲求不満だ。
 そんなところへ昨夜、長電話を終えた母親が言ってきた。
『今の電話、学生時代の友だちからなんだけど、温泉行かないかって。無料宿泊券が余っているんだって。……でも、いくらなんでもいきなり明日だしねえ。困っちゃうわよねえ』
 そう言えば、父親も来週半ばまで出張中で今はいない。
 そのことに思い至った瞬間、すぐさま俺は『親思いの息子』に変身した。
『オヤジもいないんだし、たまにはゆっくりしてくるのもいいんじゃね? 滅多にないことだしさ。俺は別に一人でも全然平気だし』
 俺がそう答えた途端、それまであまり乗り気じゃないようなことを言っていた母は、いそいそと参加を伝える電話をかけていた。
 午後には友人と駅で待ち合わせと言っていたから、今頃は列車に揺られている筈だ。
 ──というわけで、実は最初から誰もいない家に本条を誘う気マンマンだったのだ。
 それが向こうから飛び込んできた。
 しかも、彼女が『そのつもりだ』と答えたってことは、つまり『そのつもり』だということだろう。
 ──とはいえ、やはりきちんと伝えておかないとな。
 俺はできるだけさりげなく本条に告げた。
「母は温泉に行ってていない。……あと、父親も出張中」
「そうか。……でも、あんまり遅くならないうちに帰るよ」
 やはり何でもないことのように、彼女はそう答えた。
754282:2011/01/12(水) 21:51:45 ID:oaQddDSN
 家に着き、本条のコートをハンガーにかけて、俺の上着と並べて吊るした。
 コーヒーを淹れて部屋に戻ってくると、彼女は何もせずにちょこんとベッドに腰を下ろして待っていた。
 ──可愛いじゃん。
 行け! そのまま押し倒せ!
 脳内でそのような命令が下った気がしたが、俺は無難を愛する男だ。ガッツキすぎなのはみっともないと思い直し、椅子に座った。
 時間はまだたっぷりある。
 コーヒーを一口飲んで、まずはノーパソのメンテを済ますことにした。
 ほとんど無意味な常駐アプリがあったので、それを外す。さらにフリーソフトを使って、間違いなく使ってないと思われるアプリを削除すると、それだけで動作が改善した。
 俺のパソコンでググったところ、7年前の機種であることが判明した。ただメモリはめいっぱい積んであったし、どうやらHDDも換装しているらしい。何よりハードの故障では無さそうで、一安心だった。
 ただ、買ってきた外付HDを繋いでパーティションを切り、ファイルを移動する段になって、急に作業効率が落ちた。
 そもそも、他人のパソコンというだけで随分と勝手が違う。何が入っているか、どういう風にファイルを整理しているかも、人それぞれだ。
 しかもこれはホンジョロイドのPCだ。
 あるべき筈の場所にあるべきものがなかったり、同じ書類がいくつも別のフォルダに保管されていたり、意味が不明だ。
 どこに何があるのか尋ねても、当人もよくわかっていない。
 本当なら丸ごとバックアップとってOSを再インストールすべきなのかもしれない。だが、前と同じように使えるようにすることまで考えると、俺のスキルではいくら時間があっても足らなくなりそうだった。
 しばらく悩みながらいじっているうちに、非圧縮フォーマットのまま入れてある音楽のデータがかなりの量を占めていることがわかった。それを外付に移動させただけで、内蔵HDの使用量が3分の1以下になり、動作も見違えるほど軽くなる。
 彼女を椅子に座らせ、今後その類いのファイルは外付に溜め込むよう手順を教え、ついでにバックアップソフトの使い方も説明した。
 さすがに高性能美少女ロボだけあって飲み込みは速い。
 動作が快適になったのが嬉しいらしく、ふんふん鼻歌を歌いながら操作を試す様子は、機械が苦手には到底見えない。
 ──って、ホンジョロイドが鼻歌????
 それくらい上機嫌ってことか、リラックスしているのか、……とにかく俺にとって悪いことじゃない筈だ。
 正直いって俺は待つのに飽きていたし、これ以上我慢するつもりもなかった。
 そろそろエローなモードを発動させる頃合いだった。
755282:2011/01/12(水) 21:52:26 ID:oaQddDSN
 背中から抱きしめようと立ち上がりかけたその時、くるっと椅子を回して彼女がこちらを向いた。
「快適だ。キミはパソコンの達人だな」
「……別に達人ではないけど、そ、そうか、よかった」
 幸い、ぎりぎりのところで、まだ何の行動も起こしていない。
 ──いや、そうじゃなくて、こっちはご主人様でこいつはドレイなんだぞ? 本当ならいつだって好きな時に抱いていい筈なんだが。
 俺の葛藤と困惑をよそに、ホンジョロイドは何の感情も浮かべずに言った。
「何かお礼をしないとな」
「何?」
「パソコンを動くようにしてくれたお礼。買い物にも付き合わせたし……」
 正直今の俺の頭の中は、エロいことでいっぱいなんだが。
 目の前にいる本条の制服の胸の膨らみや、椅子に腰掛けたスカートの裾から顔を出した膝や、揃えられた足が時折僅かに開いてできる影の領域とか、白く滑らかな首筋とか、その無防備な仕草とか、……お礼ならぜひその身体で!
 しかし、残念ながら俺は、無難を愛する男だ。
 己の淫らな欲望をストレートに相手に伝えるのは、さすがに時と場合を選ぶ。──たとえそれが自分のドレイ相手であったとしても。
「気にするな。大したことじゃない」
 そう答えた俺の声は、妙にかすれていた。
 慌てて冷めたコーヒーを飲む。
 ホンジョロイドは無表情なまま、じっとこっちを見ていた。
 だがすぐに、「そうか」と答えて後ろを向くと、再びパソコンの操作に戻る。
 背中を向けたまま静かに彼女が言った。
「そう言えば、キミは今でも私のことを本条と名字で呼ぶけど、それはそれでいいのか?」
「どういうことだ? お前だって俺のこと、結城って呼んでるじゃないか」
「ご主人様とでも呼んだ方がいいか?」
 俺は一瞬、口に含んだコーヒーを吹き出しそうになった。多分同時に鼻の下も伸びていたに違いない。
 だが、実際に本条が俺をそう呼ぶところを想像して、すぐに気持ちが萎えた。
[想像1]『ご主人様、さっさと仕事を片づけろ』
[想像2]『私は忙しい、ご主人様ひとりで何とかするよーに』
[想像3]『これは決定だ。ご主人様の意見など聞いてない』
 ──こ、こんなご主人様は嫌だ。
「い、いや、今のままでいい……」
「そうか、よかった。もしそんなことを望まれていたらどうしようかと、少し心配してたところだ。……ただ、ドレイを苗字で呼ぶのは、やっぱりちょっとおかしい気がする」
 それを言ったら、高校生の分際でご主人様だったりドレイだったりする事自体、完全にイカレてる。……成人してればいいのかという話はともかく。
 それに、俺たちが本当にご主人様とドレイなのかと言えば、かなり相当微妙に違う気がするし、……っていうか、この会話自体、何もかもが果てしなくイカれてる。
 とはいえ、ホンジョロイドに常識は通用しない。そしてその非常識ぶりを、俺は実のところかなり気に入っていた。
756282:2011/01/12(水) 21:53:02 ID:oaQddDSN
「……ドレイをどう呼ぶのが正しいのか、俺にはわからんが」
「私だってわからないけど。ただ、今イチ私にはドレイとしての自覚がないみたいだ。普段はすっかり忘れてるし。それってもしかすると、名字で呼ばれてることにも原因があるんじゃないかと思って」
 ど、どうしたんだ、ホンジョロイド……。
 さすが高性能キテレツロボットだけあって、その着眼点は無駄に鋭い。しかも間違った方向に。
 ──いや、この間違いは問題ない、っていうかもっとやれ!
 本当はドレイの自覚とか言うこと自体どうかしているが、そんなことはどうでもいい。実にこれは、追究するに値する問題じゃないか。
「そう言われてみれば確かに大問題だ。俺も時々、お前がドレイであることを忘れてるしな」
「まあ、元々普通に友だちだったんだから当然といえば当然か。その上キミが平凡な呼び方で接してくるんだから、ドレイとしての自覚がなくてもアタリマエ、……私のせいではないな、うん」
「お前は愛だの恋だのが嫌いだから、平凡な呼び方の方がいいんだとばかり思ってた」
「私は平凡な、どこにでもいるごくごく普通のニンゲンだからね。ただ、その、なんだ……、キミが時々私のことを『お前』と呼ぶのは、ちょっとそれっぽい、かも」
「そうか?」
「……うん。まあ、少しだけ」
「じゃあ、もっとそれらしい呼び方すれば、お前はドレイの自覚を持つのか? 
だったら……、えっと、何だろ? ――『このメスブタが』とか?」
 冗談めかしてそう言った。
 本条はどこか嬉しそうに身体を弾ませ、高い声で反応する。
「あ、それ、聞いたことある。……だけど、却下。確かに私はメスだけど、ブタじゃないし。
 知ってるか? ブタって凄く可愛い動物なんだぞ? それを人は計画的に繁殖させ殺して肉を食べる。大量殺戮しておいて、しかも蔑みの言葉に使うとは、あのコたちに対して失礼だ。
 百歩譲って食べるのは仕方ないとしても、その食べる相手を馬鹿にするなんて、食べ物を粗末に扱っているようなもんだ。
 このメスサンマが、とか、メス納豆が、なんて絶対に言わないだろう?」
 頭が痛くなるような論理展開だが、ホンジョロイドにおいてはこれこそが平常運転だ。
 ──っていうか、一体何の話をしてるんだ?
「いや、まあ、えっと、その、何だ……。本条がエコに関心あるのは知ってたけどさ。まさかお前、肉は食わないとか? もしかして、ベジタリアンだったりするのか?」
「豚以外は食べるよ? 魚も好きでよく食べる、全然可愛くないし。
 仔牛は可愛いからあまり食べないようにしているけど、でかい牛や鶏は大して可愛くない上に妙に美味しいしね。
 ――だけど、ブタは本当に可愛いぞ?
 私のことをブタと呼んでも、それは可愛いといってるようなもんだ。罵倒にならない上に、全然的確じゃない。
 ちなみに、ブタって本当は凄く清潔好きな動物なの知ってるか? あと、中国のメイシャントンっていう種類のブタは西遊記の猪八戒のモデルとも言われててるんだが……」
「わ、わかった、もういい、ブタが可愛いのはよくわかった」
 豚の魅力についての力説を遮られ、ホンジョロイドは僅かに憮然とした表情になったが、そのまま黙り込み小さく溜め息をつく。
 それからコーヒーをずずずっと啜り、ちらちらとこっちを見てくる。
「あの……」
「そういえば……」
 ほぼ同時に、彼女は立ち上って何か言いかけ、俺の方はコーヒーカップを回収しようと手を伸ばしていた。
 その後、先に口を開いたのは本条の方だ。
「何だ?」
「いや、コーヒーのお替わり淹れてこようと思って。もう無いだろ?」
「そうか、……でも」
「作業も終わったし、一息入れよう?」
「……ああ、うん、わかった」
 小さく頷いて、彼女はまた椅子に座り直す。
 俺は一階に降りて新しいコーヒーを淹れ、部屋に戻った。
 その間に、彼女はパソコンと外付HDを袋の中にしまっていた。
「ほれ、コーヒー。砂糖なし、ミルク多め」
「ありがと」
 彼女は両手でマグカップを受け取り、そっと口をつける。
 ずずっと音をたてて少し飲むと、静かに言った。
「いや、ホントにパソコン助かった。コーヒーも美味しかったし。……とはいえ今日はこき使いすぎたみたいだな。これ飲み終わったら帰るから」
 え?
 帰る??
 えええええーーーーっ!
 どうして? 何故だ? 何故なんだ?
 いくら何でも、そりゃないだろ。
『そのつもり』じゃなかったのかよ!?
757282:2011/01/12(水) 21:53:36 ID:oaQddDSN
 穏やかな午後の陽射しが、無表情な彼女の美貌を照らしていた。
 時計の針は3時を回ったところだ。
 久しぶりの二人きりでデートっぽく買い物して、彼女も何だか妙に機嫌がよくて、……何も問題ない筈だった。
 いや、俺だってそりゃエロい期待は常にありつつも、チンプンカンプンな会話だって楽しくなかったわけじゃない。
 逆に楽しかったからこそ、突然の帰宅宣言に不意を突かれた。
 元々、コイツの考えることはわからない。だが、少なくとも俺の部屋までついて来て、ついさっきまで楽しく会話してて、なのにそのまま帰るって……?
 ――意味不明。
 その後、突然沈黙が増えた事だけは確かだ。
 気がつくと、ホンジョロイドはコーヒーを飲み終わっていた。
 彼女は小さく「ごちそうさま」と言って立ち上がり、上着を身につけコートを羽織った。
 学生鞄を手に取り、重い布袋を肩から下げる。
 俺は無言で、その布袋を彼女の肩から外そうと手を伸ばす。
「送ってくれなくても大丈夫。さすがに道も覚えたし、ちゃんと一人で帰れる」
「荷物かさばるし、重いだろ」
 そう答える俺の声は、自分でも不機嫌そうに聞こえた。
 どうやら俺は、本気でがっかりしていたし、怒ってもいるみたいだった。
「……じゃあ、途中まで頼む」
 そういって彼女は布袋を俺に手渡す。
 すぐに後ろを向き、部屋のドアを開けて、出て行こうとする。
 何か考えがあったわけじゃない。
 そうしようと思ってしたわけではなかった。
 とっさに俺は荷物を床に置き、彼女の肩を掴んでいた。
 まるでダンスみたいに、本条の身体がくるっと半回転した。
 次の瞬間、俺の腕が、その細くて柔らかな身体を抱きしめていた。
 何の感情も感じられない声で、ホンジョロイドがつぶやく。
「……どうした?」
 何と答えたらいいのかわからない。
 俺はただ黙って、彼女を抱く腕に力を入れた。
 くっと、小さく彼女の喉が鳴る。
 彼女の頬が、俺の顎に重なった。
 顔を動かし、耳元に唇を寄せて言った。
「もう少し、いたっていいだろ」
「……腕を離せ」
「いや、離さない」
 びくっと小さく彼女の肩が震えた。
 それから抑揚のない声で、小さく言った。
「何故だ? 何故こんなことをする……」
「ん?」
「……キミは一体、何を考えてるんだ?」
 間違っても、今この場で、コイツにそんなこと言われるとは思わなかった。
 何考えてるかわからないのは、100%お前の方だーっ!
758282:2011/01/12(水) 21:54:47 ID:oaQddDSN
 ──今、何を考えてるかって?
 自慢じゃないけど、俺はかなり相当エロいことが好きだ。今だって、頭の中はエロい期待ではちきれそうだ。
 だけど同時に、これまた自慢じゃないが無難を愛するごくごく普通の男だったりする。……いや、普通ってところにあまり自信はないが。
 とにかく、エロい雰囲気になってない本条に対して、露骨な言葉を使うのはちょっとマズい気がした。
 俺はもう一度、自分が何を考えているのかじっくり考えてから答えた。
「お前とエッチなことしたいと考えてる」
「えっ?」
 えええええーっ? っつか、『えっ?』じゃないっつーの!
 今本条は『えっ』て言ったけど、それって驚きの『えっ』だよな? だけど、俺が考えてたことって……、
「そんなに驚くようなことか?」
「……変な嘘つかなくていい」
「嘘じゃないって。……急に帰るなんて言いだして、そっちの方がよっぽど意味不明だ」
「パソコンの作業も終わったし、後は帰るしかないだろう……」
「お前の方こそ何考えてるんだよ。ちょっと前まで楽しく過ごしてたのに」
「そうか、よかったじゃないか。ホントにキミは、パソコンと相性がいいんだな」
「はあ? ……ちげーよ。それって、お前が俺に頼んだことだろ?」
「それはそうだけど……。もちろん直してくれて感謝してる。でも、これ以上、無理して私の相手をしなくてもいいから」
「エッチなことしたいって言ってんだろ。お前の方こそ何考えてんだよ」
「それって多分、女性を傷つけないための嘘ってヤツだろう。でも、したくもないのにされるのは、こっちだって迷惑なだけだ」
「お前さあ、……何で、俺がしたくないなんて決めつけてんだよ?」
「キミは大抵の場合、二人きりになるとすぐにちょっかい出してくる。でも、今日はそうじゃない。そういう気分じゃないからに決まっている」
「それをいつも撥ね付けるのはお前だろ。先週だって、ブチ切れられたぞ?」
 そうだった。
 確かに先週、生徒会室で本条にちょっかい出して、凄い勢いで突き飛ばされたんだった。
「当たり前だ。突然あんなことされたら、誰だって驚く」
「……服の上からちょっと胸触っただけだろ?」
 言ってから、俺は自分の発言を猛烈に後悔した。ほとんど開き直った痴漢の言い訳みたいじゃないか。っていうか、いかにもセクハラ男が言いそうなセリフだ。
「昼休みだったんだぞ。鍵もかけてなかったし、そもそも鍵かけるのも不自然だし、いつ誰が入ってきても不思議じゃない状況で、あんなことするのが悪い」
「だからそれは、……すまなかった」
「誰か来たら、私だけじゃなくキミだって困った筈だ」
「……でも、突き飛ばさなくたっていいだろ?」
「ああでもしなけりゃ、キミは私をおかしくする気だった」
「そこまでするわけないだろ?」
「いや、しそうだった。……本気で慌てたんだからな。まさかこんな時に、って思った」
「それなら、口でやめろって言えばそれで済む」
「口で言っても、キミはやめない」
「うーん、そうか? やめたと思うぞ。……ああ、でも、もし本条が『あんっ』とか声出したら、もう少しいろんなことしてたかも」
「私は『あんっ』なんて言わない。けど、だったらやっぱり、他に方法がなかったってことだ。……あの日のことを気にしてキミが私を遠ざけているのだとしたら、仕方ない」
「……遠ざけてる?」
「お礼をしたいといっても断るし、ドレイの話をしても話を逸らすし、いつまでたっても何もしてこないし、……キミに避けられていることくらい私にだってわかる」
 話を逸らしたのは本条の方だ、と思ったが、指摘するのはやめにした。
 それより、その可愛らしい耳にキスする方が何倍も素敵なことに思われたからだ。
 チュっと音をたてて、唇で吸った。
 ひく、っと、小さく彼女の身体が揺れた。
 本条の耳は、熱を持って赤くなっていた。
 そして突然、このズレまくりで意味不明の会話が、実はそれほど悪い展開ではないように思えた。
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 片手を彼女の腰にまわし、反対の手は彼女の頭を後ろから包み込むようにした。
 耳たぶから頬にかけて、唇を滑らせた。
 やがて、彼女の薄い唇の端に届いた。
 その場所をついばむように数回音を立てて吸った。
 顔を離すと、本条はむずがるような声で言った。
「ほ、ホントはしたくないくせに、無理するな」
「……ずっとしたかった」
「嘘だ。だったら何で、今まで何もしなかった?」
「そうか、……ごめん」
 どうやら俺たちは二人とも、相手の出方をうかがっていたようだった。
 ぼそっと、ぎりぎり聞き取れるくらいの小さな声で、本条がつぶやく。
「……私に興味なくなったんだろう?」
「まさか、そんなことあるわけないだろ。興味のない相手の買い物につきあったり、パソコンのメンテ手伝ったりしないよ」
「どうかな。キミは元々親切だし。それに男というヤツは、一人の女にはすぐに飽きるらしい。私が異性として興味を持たれ続けるのはかなり難しそうだ」
 そう答える本条は、どこかふてくされた表情だ。
 僅かに身体を反らして、彼女の顔を覗き込む。
 瞬きを繰り返す目が、すっと逸らされた。
 もう一度、キスをした。
 今度はすぐには離さない。
 何度か唇をなぞった舌を、ゆっくりと差し入れる。
 最初は無反応だった本条の身体が、突然びくっと震えた。
 その途端、彼女が舌を合わせてきた。
 くふっと、鼻から息が漏れる。
 ほのかに、甘い体臭が漂う。
 長い間、舌を絡め、互いに吸いあった。
 唇を離した時には、彼女の息は荒く変わり、顔はますます赤味を帯びていた。
 そして突然、本条の身体が俺の腕をすり抜け、崩れ落ちるようにベッドに腰を下ろしていた。
 すぐに逃げるようにベッドに上がり、そのままぺたんと座り込む。彼女は微かに困ったような表情を浮かべ、こちらを見上げた。
 何度も瞬きを繰り返す目が、しっとりと濡れている。
 それからこちらに背中を向け、ゆっくりとコートを脱ぎだした。
 俺はそんな本条の後ろ姿をしばらくぼうっと見ていたが、彼女がコートを脱ぎ終わるのと同時に立ち上がり、ハンガーを手にして戻った。
「ほれ、コート」
「あ、ああ、ありがと」
 背中を向けたまま、本条がコートを手渡す。
 俺はそれをハンガーに通し、部屋の入口にあるフックにかけ、エアコンの温度を上げる。
 ベッドの上の本条はすでに制服の上着とセーターを脱いでいて、丁寧にたたんで椅子の上に載せている。
 ブラウスの下から、白く丸い肩が現れた。
 思わず抱きしめて唇を押し付けたい欲求に駆られたが、それより自分も服を脱ぐのが先だ。
 パンツ一枚残して裸になり、先に潜り込んだ本条を追って、ベッドに入る。
 布団の中には、ホンジョロイドの甘い匂いが広がり、俺を誘っていた。
 男を、……いや、俺を夢中にさせる匂いだ。
 横から抱きつき、彼女の顔を覗き込むと、むずがるように本条は顔を背ける。
「……久しぶりだな」
「こんな時に、普通の会話なんて、……しなくていい」
 本条は真剣な表情でそう答える。
 だが、じっとこちらを見つめるその目は、どこか照れた笑みを隠しているようにも見えた。
「悪かった。久しぶりのせいか、俺の方もうまく言いだせなくて、タイミングも合わなくて、ドギマギしてた。お前に帰るって言われた時はマジでガックリきた」
「……だったら、さっさと好きにすればよかったのに」
「そうかもしれない。だけど、俺は別に、本条を無理やり好き勝手したいわけじゃないから」
「そんなこと私に言われても困る……」
「それに、お前だって好きなようにすればよかっただろ?」
「そんなの、どうすればいいかわからない」
「お前に抱きつかれたら、俺いつだってすぐにその気になるって。わかってるだろ?」
「……そんなこと、できるわけない」
 そう言って彼女はぷいっと顔を逸らす。
 耳たぶが前よりも赤くなっている。
 どうやらホンジョロイドは、すでに変形が終わっているらしい。
 ──Mモード発動! チェンジ、ミサロイド!
 俺は心の中で、そう叫んでいた。