【涼宮ハルヒ】谷川流 the 56章【学校を出よう!】
>>841 数行読んで原作の転載かと思ったのに、改めて見ると改変済みwwwwwww
まあでも、これで勃起したとかは過剰に持ち上げすぎてて萎えるわな
>>841を元にちょっと加工してみたw
体育館倉庫に隠れたキョンとハルヒ・・・・
おもむろにハルヒに語りかけてみる
「なあ、ポニーテールにしてみないか?」
ハルヒはキョトンと俺を見つめ、
「なんで? あんた、ポニテ好きなの?」
ああ、大好きだ。俺の趣味さw。
ふん、と鼻を鳴らしつつハルヒは満更でもなさそうに、
「簡単そうに見えるかもしれないけど、ちゃんとするの、結構面倒なのよ」
頬を何故か赤く染めつつ言いながらも、ハルヒは地に落ちた黒ジャケットのポケットから髪留め
ゴムを取り出して、長い黒髪を器用に後頭部でまとめあげた。
「まあね、このほうが運動部らしいかもね。……そんなわけだから、ちょっといいかもって、思ったの。
まぁ、色々と手伝ってもらったし、いいかもって。大好きって言うし。だからその・・・・、お願い、とにかく、その・・・」
ハルヒは光陽園学院制服を、するすると脱ぎ始めスカートを足もとにストンと落とした。華奢な足と、白いレースの下着が覗く。
ハルヒの潤んだ瞳に見つめられながらそして本気度百パーの声が、のどから躍り出る。
「……優しくして」
ばっちりだ。俺の目には魅力度三十六パーセント増になったように見えるぜ。
>>846 wをSSとかで使わないほうがいい
バカっぽい作品に見える
所詮SSだから、な。あんまり身構えなくてもいいよ。
でもwは無い方が良い
wは好みによるだろうが、とりあえず三点リーダの使い方は統一したほうがいい。
「……優しくして」みたく二つ続けるのが慣行。
まあ出版の都合で、別に由緒正しき文法ってわけじゃないから気にすんな。
ただ、ほぼそれ遵守なラノベに慣れた層にとり、逆らうのは目障りなので、
右に倣うべし。同様にダッシュを使うときは四つで一組が無難だそうだよ。
あれはやりすぎだw
個人的にはGJだが
魔改造……こんな感じか?
「なあ、茶巾縛りにしてみないか?」
ハルヒはキョトンと俺を見つめ、
「なんで? あんた、茶巾好きなの?」
ああ、大好きだ。俺の趣味さ。
ふん、と鼻を鳴らしつつハルヒは満更でもなさそうに、
「簡単そうに見えるかもしれないけど、ちゃんとするの、結構面倒なのよ」
言いながらも、ハルヒは地に落ちた黒ジャケットのポケットから髪留めゴムを取り出して、長い黒スカートの裾を器用に頭上でまとめあげた。
「まあね、このほうが運動部らしいかもね。……そんなわけだから、いいかもって、思ったの。まぁ、七夕のとき手伝ってもらったし、いいかもって。好きって言うし。だからその、お願い、とにかく、その」
ハルヒは下半身丸出しの火星人シルエットで少し恥らうと
「……優しくして」
ばっちりだ。俺の目には魅力度三十六パーセント増になったように見えるぜ。
>>820 >馬鹿はお前だ
>ガチだとか吐き捨てながら「だろう」ってなんだよ
>ゆとり爆発しすぎだ
ここまで見事に墓穴を掘るヤツ初めて見たw
にもかかわらず、臆面もなく「ゆとり」てw
クソワロタwww
一日以上前のレスになにをそんなにはしゃいでいるんだね君は
余程むかついたのだろうな、ゆとりと煽られたことが
そういやここの56章ってエロパロではかなり上位に来ると思うのだが。
やたらの血の気の多い奴がいるのは確かだな。
もっと楽しくやればいいのに、と思うが。
ほっときゃどんどん抜かれてくだろ
新作出ねえんだもん
特に憂うことは無いが。
スレを伸ばすのを目的としてるわけでもなし
面白い作品さえあればおk
火星人刑事だろ
ふいんき
谷口×ハルヒネタを書いてます。
期待しないでください。
分かった。期待しないで待ちもしないよ。
>869
どうもです
ブログでやってろ
残り30kbちょっとか。埋めネタぐらいしか投下できないな。
873 :
埋めネタ1:2008/01/28(月) 00:21:45 ID:6EHYZ/0m
ある日、同じクラスの親友にこんな話を振られた。
時間が戻せたらいいな――と。
なぜそんな話をと聞いてみたところ、
「こないだロト6を家族で買ったんだが、惜しいところで外れてしまってな。しかも、このハズレ方というのが嫌味でよ、
当選の番号が、1/15/23/28/36/41だったんだが、俺が買ったやつに2/16/24/29/37/42ってのが
あったんだ。全くついてねえな。時間を戻せたら、全部一つずらせと言ってやりたい気分だ」
「それは嫌味でも何でもない、ただの現実じゃないのかい? 当たらないというのが宝くじというものだろう」
「……そんな身も蓋もない返し方をされても困るんだが」
ジト目で返してくる彼に、あたしはくくっといつもの苦笑を投げて、
「それは失礼。でも、やはり僕としては時間を戻すという考えには至らないな。せいぜいもう一回挑戦してみようとか、
出現数字の傾向でも調査してみるかなぐらいで終わると思うよ」
「前向きでいいよな、佐々木は」
そう彼はいつもの嘆息を吐く。
普通の発想ね。とても平凡で庶民的な発想。じっと彼――キョンを見て、そんなことを考えてしまう。
普段ならここで終わり。たわいもない会話で終了。だけど……どういうわけだか、
キョンに対してだけはつい深く突っ込みたくなる。なぜだろう? 理由はやっぱりあれなんだろうけど。
あたしはすっとキョンの机の上に身を乗り出すと、
「でもキョン。キミは時間を超えて過去に行き、未来を変えるという行為をしてみたいと思うのかい?」
「しょっちゅうあるね。あの日の大失敗とか、恥ずかしい自分の行動を過去に戻って制止してやりたいとか、
やりたいことを上げればキリがない」
「へえ、キミの失敗談とやらは非常に興味があるんだが。教えてくれないかい?」
「冗談じゃねえよ。過去に戻って抹殺したいぐらいなのに、どうして他人に語らなきゃならんのだ」
と、ここでキョンはあたしに少し顔を近づけると、
「さっきから聞いていると、まるで佐々木はそんなことをしたくないと聞こえるんだが。
それはあれか、消してしまいたい過去なんて全くないっていう完璧人生なのか?」
「まさか。僕にだって恥ずかしい体験や思い出したくもない失敗なんて腐るほどにある。ただ、わざわざ過去に戻って
それを修正したいとまでは思わないって事だよ。そんな夢物語が現実になるとも思わないしね」
「手段がないっていう理由ならわかるが、あってもやりたくないって言うのか?」
「そうだよ。全く思わない」
意外そうな顔を見せるキョン。こうなるともういつもの展開で、あたしのペースだ。
「キョン、キミは過去を変えるなんて言うことを平然に言っているかも知れないが、
それに伴って発生する被害を考えたことあるかい? さっきキミが言ったとおり、宝くじの抽選番号を変えてしまえば、
本来当選するはずだった人の金額が減ってしまうんだ」
「……別にちょっと減ったぐらいで影響が出るとは思わないが」
「仮にその人が当選金で借金を返済するはずだったら? 最悪、キミが割り込んだせいで半額になってしまうわけだが、
それで返済できなくなるかも知れない」
「まあ……そうかもな。だが、それも事前に調べておけばいいだけじゃないか? 影響範囲もきっちり調べておいて
全く他人に悪影響が出ないということが分かればいいだろ」
「それでも僕は遠慮したいね」
あたしのつれない反応に、彼は首をかしげる。
「もう少し切り込んでみようか。例えば、僕が30分前に戻ってキミを階段から突き落とした場合、
今僕が話しているキョンはどうなると思う?」
「消えるんじゃないか? いや――パラレルワールドとかいって、それはそれ、これはこれになるのかもしれないな」
「過去から現在へは連続している。キミが五体満足でいる過去がなくなったって言うのに、今全く無傷のキミが
ここに存在し続けるって言うのは少々矛盾するんじゃないかな?」
「まあ……確かに。ならやっぱり消えちまうんだろうか」
「正直、平行世界とかはよく分からないからパスしておくよ。だから、僕も過去を変えた時点で今ここの僕たちは
ばっさり切り捨てられると思っている」
「だが、佐々木の行動しだいなんじゃないか? 俺を階段から突き落とせば、確かに今こうしてのほほんと机に座っている俺は
消えてなくなるかも知れないが、背後から後頭部を突っつくぐらいなら何も変わらずに、俺はこうして佐々木としゃべっていると
思うぞ」
874 :
埋めネタ1:2008/01/28(月) 00:22:25 ID:6EHYZ/0m
「そうだね。その場合、99.99%同じ記憶と人格を保持したキミが僕の前にいるだろう。だけどそれは全くの別人でもある」
「…………?」
彼は理解できないというように眉をひそめた。構わずあたしは続ける。
「過去を変えた時点で、どんな同じパターンを歩んでも切り捨てられた未来と、そこから生まれた未来は別のものさ」
「んなバカな。だってほとんど同じ記憶と人格を保持しているんだろ?」
「そうだよ。ほぼでも、全く同じでも別人だ。そうだね。例えば、キョンのクローン人間を今すぐここに作り出せたとしよう。
その場合、キミと全く同じ記憶と人格を持っている人間が二人いることになる。想像できるかい?」
「……ああ」
「で、そのうち一人を消してみよう。さて、消された方の意識はもう一人の方に引き継がれると思う?」
「いいや……多分きえちまった方はそこで終わり……だな」
ここでキョンはようやくあたしの言っていることに意味に気がついたらしい。なるほどという表情を浮かべている。
「同じように、例え全く同じ現象の連続が続いても、切り捨てられた未来はそこまでだよ。
新しく生まれた方には同一人物に見えるけど、やっぱり別人というそっくりさんがいるだけ」
あたしはすっと窓の方に視線を向ける。数十億という人間が住む世界がそこから延々と続いている。
「僕はそんなことはしたくない。それではまるで大量虐殺じゃないか。過去を変えた僕はいいかもしれないが、
その結果で切り捨てられた人たちが数え切れないほどできてしまう。そんなことをしてまでしたいとは思わないね」
「虐殺って言うことはないんじゃないか? 別に銃や刃物で殺す訳じゃないんだから」
彼の発言にあたしはやれやれと首を振ると、
「キミはどうやら外傷があってこその死だと思っていないかい? 僕はそれは違うと思うよ。
死って言うものがなんなのか。個人的意見だけど、それは認知している生命が停止し、その人から発信される情報が停止され、
なおかつそれを受診した記憶が交信されない状態じゃないかと思っている」
「訳が分からん」
「つまり、その人は口を発しない、身動きしないという認識が死につながるんじゃないかってことさ。
それは外傷に起因する必要はない。それこそ、全くの行方不明――これはまだ生きているんじゃないかっていう希望を抱かせるけど
――でも言い訳だし、さっき言った過去の改変による未来の切り捨てでも同じ事だよ。本来あるはずだった時間の流れを切り捨てて
そこにいた人たちを消し去ってしまうんだから。れっきとした殺人行為だね」
キョンは首をかしげて理解に努めているが、あたしは構わずに続ける。このたたみかけの時の彼の反応が最高なんだ。
このかわいげのある態度を見たいがために、ついどうでもいい話を続けてしまう。
「ついでに言えば、誰も知らない形で未来を切り捨ててしまった場合は、死とは言えないと思う。
だって誰もそれを知っている人がいないんだから。だけど、この場合、過去を変えてしまった人は知っているんじゃないかな?
おっと、ここで過去を変えてしまった人も、切り捨てられた未来から来たんだから消えるんだろ?というツッコミはストップだ。
その話まで始めると昼休みが終わってしまうからね。で、僕が過去を変えたなら、切り捨てられた未来の人々を認識できてしまう。
それは僕が原因による殺人だよ。全く冗談じゃないね。数十億の人々の死を抱えてまでそんなことをやりたいなんて
ごめんこうむるよ。ましてや、それがお金が欲しいなんていう低俗な理由なら論外だ」
ここで午後の授業の開始のチャイムが鳴り響く。残念。もうちょっと目を回しているキョンを見ていたかったんだけどな。
あたしは椅子から立ち上がると、
「キョン、キミが漫画や映画の影響を受けるのは一向に構わないけど、たまにはそこから発展して考えてみるのも
おもしろいんじゃないかな?」
「……全くお前にはかなわねえよ」
そう言ってキョンはごそごそと午後の授業を始める。
あたしは自分の席に戻ってからも、彼の姿を見続けていた。
――明日はどんな話でキョンの目を回してやろうかって考えながらね。
875 :
埋めネタ2:2008/01/28(月) 00:24:30 ID:6EHYZ/0m
シチュエーション:不良3人(一人がバットで武装)に捕らわれた喜緑さんを助ける生徒会長
876 :
埋めネタ2:2008/01/28(月) 00:25:15 ID:6EHYZ/0m
その1 実力行使で三人を追い払う生徒会長
「あ、何だてめえは? うぜえからとっとと消えな」
汚らしい部屋の中に、罵声が飛ぶ。
どうやら獲物を食すタイミングで邪魔が入ったことを憤っているようだ。
俺はキザっぽくゲスな三人をにらみつけ、
「そうはいかん。このような状況を放っておけるような矮小な人間であるつもりはないのでね」
「へー、かっこいいじゃん。三人相手にやろうってのかよ?」
彼女に馬乗りになっていた男が嫌らしい笑みを浮かべると、近くに無造作におかれていたバットを取った。
他の二人もメンチを切りながら、俺の方に寄ってくる。
俺は無造作に眼鏡を外し、ポケットにしまうと、
「……いいだろう。三人まとめて相手してやる、来たまえ」
俺はゆっくりと部屋の壁に背を向けるように立った。そこにバットを構えた男一人、後続にすでの二人がじりじりと迫ってくる。
背中に遮蔽物がある場合、一度におそってこれるのはせいぜい二人が限界だ。
人間の心理にはパーソナルスペースというものがある。複数で殴りかかってくるにしても、それぞれある程度の距離を
持とうとするからだ。もっともこれでは退路もなくなってしまうが、もとより引くつもりなど毛頭ない。
――しかし、連中はもっと愚かな選択をした。一番最初に殴りかかってきたのはバットを持った男だったからだ。
「くたばれっ!」
狂気に染まったツラでそいつはバットを振り下ろしてきた。だが、俺は焦ることなく紙一重でそれを交わす。
よけられたことに逆上したそいつは、オーバーなスイングでバットを振り回してきた。
これでは他の二人は巻き込まれることを恐れて手出しできない。こいつは最初から人数の差という有利な条件を放棄したのだ。
めちゃくちゃに振り回すバットはことごとく空を切り、そのたびに部屋の中の花瓶・本棚・椅子・机にぶつかる。
一向に俺をホームランできないバット男はますます逆上した。こいつはだだをこねる子供が、物を破壊するときの動作と
全く変わらない。物を壊すとき、物が逃げることはない。だが、万一その物が逃げてしまい一向に破壊できないとわかったら、
バットをふるう人間はどういう気分なるだろうか。当然、破壊行為が成就できずストレスを解消できないんだから
ますます逆上する。
言葉にもならない奇声を上げ、バット男はそれを振り回していたが、やがて息が上がり始める。
おいおい、この程度の素振りで根を上げるとは鍛錬が足りないんじゃないか?
頃合いだな。そう判断した俺はバット男が大根切りのようにそれを大きく振り上げたタイミングで動く。
そいつの荒い鼻息が浴びるほどに接近し、軽くミゾの部分に拳を当てた。
何をされたのかわからない男はバットを振り上げたまま、一時停止してしまう。
さて、こいつは次にどう動く? このまま俺の方に身体を動かせば遠慮なく拳をこいつの腹にねじ込ませてもらおう。
向かってくる物に対して、俺の拳の加速が加わればただではすまないぞ。
しかし、バット男は意外なことにぱっと身を後退させた。得体の知れない何かを感じ取ったのだろうか。
技量はさておき野生の感は備わっているようだ。しかし、俺の仕掛けた罠は後退しても同じことだ。
即座に俺もバット男が後退した方に身を進め、そいつの腹に拳をねじ込んだ。当然、こいつの引いている方へ力を加えるため、
向かってきたときに比べて威力は格段に落ちるが、目的はそこにはない。
「うおわっ!?」
バット男は情けない悲鳴とともに床に仰向けに倒れ込んだ。自ら行った後退動作に、想定外の俺の力が加えられたため、
足をもつれさせてしまったのだ。
877 :
埋めネタ2:2008/01/28(月) 00:25:37 ID:6EHYZ/0m
俺は即座に倒れたバット男の胸板を思いっきり踏みつけた。そいつは発狂したような悲鳴を上げて、口からつばを飛ばす。
これで一人片づいた。
すっと振り返ると、他の二人が唖然と俺を見つめている。バット男だけでケリがつくものだと思っていたのだろうか。
やがて、ようやく状況を飲み込んだ一人が俺に殴りかかってきた。なっちゃいない。まだ二対一だというのに、
一人ずつ飛びかかってくると無能にもほどがある。
繰り出される拳。俺はそれをかわして、そいつの腕を握った。
最初はこのまま腕を引っ張り転ばしてやろうかと思ったが、すぐ近くに部屋の壁があることに気がつき、
そいつの拳をそちらへと強制的に誘導してやった。メキャという鈍い音とともに、拳が壁に激突する。
すぐにそいつも悲鳴を上げて床を転がり回り始めた。今の衝撃程度で拳がつぶれるとは脆すぎないか?
さて、これで二人片づいた。さて最後の一人は……と見たが、とっとと悲鳴を上げて部屋から逃げ出す姿が。
情けない上に、仲間を置き去りかよ。
俺は床に倒れたまま、ずっと動かなかった彼女の元に駆け寄る。見たところ乱暴はまだされていなかったらしい。
きれいな姿のままを確認し、ほっと胸をなで下ろす。
「さすが会長ですね。この程度ならば一ひねりといったところですか」
「……こういったことは避けたかったんだがね。また古泉の奴に変な借りを作ってしまったからな」
そんな言葉を交わしながら、彼女の身体を支えて起きあがらせる。彼女は服に付いたほこりを払いながら、
「安心してください。情報操作は得意ですから。わたしは会長の書記ですよ?」
そうにこやかな笑みを浮かべた。
878 :
埋めネタ2:2008/01/28(月) 00:26:11 ID:6EHYZ/0m
その2 迫力で三人を追い払う生徒会長
「あ、何だてめえは? うぜえからとっとと消えな」
汚らしい部屋の中に、罵声が飛ぶ。
どうやら獲物を食すタイミングで邪魔が入ったことを憤っているようだ。
……だが、欲望に染まった貴様らの怒りなど、今俺の脳内に悪性ウィルスのように蔓延している感情に比べれば、
クソの価値もない。
「彼女を離してもらおうか……」
俺はつかつかと三人の元に近づく。だが、そのうちの一人が汚らしい笑みを浮かべながらバットを握ると、
そのまま俺の横腹を殴りつけた。
全身の神経に激痛の信号が行き渡り、胃は震えのあまり胃酸をのどに向け逆流させ、手足はそのシグナルを拒絶するために
感覚機能を遮断させた。
しかし、俺は膝をつくどころか殴られた場所を手で覆う気にもならない。逆にその痛みが俺の怒りをより純粋で
鋭利なものへと変化させてくれる。
そして、言う。
「彼女を離せ……」
俺が先ほどと同様の言葉を口にしたとたん、バット男は俺の脳天にバットを振り下ろした。
――一瞬、世界が暗転した。次に視界に閃光が走る。
「カッコつけてんじゃねえよ」
バットを振り下ろした男は下劣な笑い声を上げた。背後の二人もニヤニヤといやらしい視線を向けた。
俺は自分の視線が床に落ちていることに気がつく。そのとたん、自分に対しても苛烈な怒りがわき起こり、
その激情が身体をやるべきことへと動かす。
「――うおっ!?」
バット男の情けない悲鳴。俺の手がするりと伸び、そいつの顔をつかんだからだ。
急におびえた顔に変わったそいつは、反射的に俺の腹に膝を入れた。だが、さっきの頭への一撃で
神経回路のどっかがぶっ壊れたらしい。痛みどころか、身体のどこもそれに反応しない。
俺はバット男の額に、自分のそれを触れさせ、
「もう一度言う。彼女を今すぐ離せ……!」
そいつはヒッと短い悲鳴を上げた。ゆっくりとそいつの額から頬を伝って血が流れていく。
どうやらいつの間にか俺の頭から激しい出血が起こり、くっつけている額を伝わっていっているようだ。
隣にいた男が、引きつった顔で何かを言ってきた。そいつの滑舌が悪ったのか、聴覚のどこかも狂っているのか、
内容は聞き取れなかったが、返す言葉は一つだけしかない。
「だまれっ!」
俺の怒鳴り声に、そいつは顔面蒼白となりそれ以上何も言わない。もう一人もおびえた表情でただ震えるだけ。
またバット男に俺は視線を戻し言う。
「彼女を離せ……!」
そいつはもう涙をぼろぼろと流し、ただ俺の言葉にうなずくことしかできなくなっていた。
やがて俺の手を振り払い部屋から他の二人と一緒に逃げ出していく。
「…………」
ぼたぼたと顔から血が流れ、床に血痕を広げていく。さすがに――限界――が近いな――
ふと、目の前にハンカチが差し出された。とらわれていた彼女が立ち上がり、こちらにそれを差し出している。
「無茶をしますね。あなたなら、あの程度の者など簡単に蹴散らせたのではありませんか?」
「生徒会長という立場もあるんでね……。古泉の奴に変な借りは作りたくない」
そう遠慮なくハンカチを受け取ると、傷口を押さえる。
と、ここで彼女が俺の肩を取り、
「帰りましょうか」
そう言って俺とともに歩き出した。
助けに来た俺が助けた彼女に担がれるなんてなさけないよな、全く……
分裂のあたし=佐々木だったか
僕口調は演技らしいから
880 :
埋めネタ2:2008/01/28(月) 00:26:55 ID:6EHYZ/0m
その3 知略で拳を使わずに三人を追い払う生徒会長
「あ、何だてめえは? うぜえからとっとと消えな」
汚らしい部屋の中に、罵声が飛ぶ。
どうやら獲物を食すタイミングで邪魔が入ったことを憤っているようだ。
俺はキザっぽくゲスな三人をにらみつけ、
「そうはいかん。このような状況を放っておけるような矮小な人間であるつもりはないのでね」
「へー、かっこいいじゃん。三人相手にやろうってのかよ?」
彼女に馬乗りになっていた男が嫌らしい笑みを浮かべると、近くに無造作におかれていたバットを取った。
他の二人もメンチを切りながら、俺の方に寄ってくる。
汚らしい連中だ。こいつらがはき出す二酸化炭素にふれるだけで、身体のどこかが異常動作を起こしそうだぜ。
「あ? どうなんだよ。びびっちまったか?」
バットを背中に担いだ男が挑発的に言う。だが、そんなものには反応せず眼鏡をゆっくりと外し、
ポケットにしまった。ちなみに内心では暴発寸前なのは秘密だ。
「確かに君たちの言うとおり、三人を倒すのは私がどれだけ武術に優れていても不可能だろう。
しかし、一人ぐらいは道連れにできる自信はあるがね」
「早々にギブアップ宣言かよ。口ほどにもねぇ」
三人がけたけたと下品な笑い声を上げる。愚かな連中だな。はっきりと言ってやらないとわからないらしい。
俺はわざとらしく口元に笑みを作ると、
「もう一度言うぞ。お前らの三人を倒すことはできない。だが、そのうち一人はきっちりと仕留める。
これについては約束しておこう。もっともその一人が君たち三人の誰になるかはわからないがね」
ここまで言って、ようやく馬鹿三人組はその意味に気がついたらしい。すぐに笑顔が引きつった顔に変化して、
各々を見合う。
こういった所詮身勝手で希薄な関係の集団の場合、一番かわいいのは我が身だ。
今、三人掛かりで俺と戦えば勝つことはできるだろう。しかし、やられる一人は自分かもしれない。
その恐怖に打ち勝ってまで戦えるか? どうみても、仲間の結束ために……とかいう連中でないことは一目瞭然だな。
「どうした? お前たちの方が圧倒的有利であることには変わりはないんだぞ? 早くかかってきたまえ。
俺は遠慮なく一人をなぶり殺しにさせてもらうがね。そうだな……目をつぶすか。安心しろ。死にはしない。
ただ、今後の一生を闇の中を生きていくことになるだけだ」
できるだけ押し殺した声で、ゆっくりとゲスどもに語りかける。
「くっ……」
バットを持った男は、おいそれと引けるかというように口元をゆがめ、バットを構えた。
そして、俺の方に一歩近づく――
その時だった。背後にいた一人の男が突然その場から離れ、
「つ、つきあってられねえぜ。俺は抜けさせてもらうぞ。後は好きにしてろよ!」
月並みの捨て台詞を吐いて、部屋から逃げ出していった。バット男の背後のもう一人もそれに続いて、
小さな悲鳴を上げて逃げ出す。
「おい待て! 逃げる気かよ!?」
バットを持った男が悲鳴のような声を上げて呼び止めるが、二人は戻ってくる気配はない。
俺はそれを確認すると、バット男の前に一歩踏みだし、
「これで一対一になったな。だが、お前はまだ武器を持っている。有利なのは変わっていないぞ。
どうした、早くかかってこい」
ううっとバット男は呻く。しばらく恐怖と悔しさから出る歯ぎしりを続けていたが、やがて、
「くそっ、覚えてやがれ!」
と、これまた月並みな捨て台詞を吐いて部屋から逃げ出していった。全くどうしてああいう連中の言動は似るのか。
心理学的に調査を行ってみれば興味深い結果が出そうだな。
部屋の中には、俺と彼女だけになった。
おそわれていた彼女は特に何の感情の変化もなく、ゆっくりと起きあがると、いつもの柔らかい笑みを俺に向け、
「ああいう連中を追い払うために拳は必要ない、ということですね」
「殴るだけが戦いではない。それに生徒会長という立場もあるのでね。こういった方法が一番望ましいのだよ」
そう言って、俺は眼鏡をかけ直すと、彼女に微笑んだ。
881 :
埋めネタ3:2008/01/28(月) 00:27:45 ID:6EHYZ/0m
それは満月の夜の出来事だ。
その日の夕刻、俺は書記である喜緑くんの姿がないことに嫌な感じを憶えていたが、
帰り際に下駄箱に入れられた殴り書きの脅迫文を読んで、その予感が的中してしまった。
「お前の書記は預かった。○○川××橋の河原まで来い。警察には連絡するな」
実は数日前に校内を荒らしている不良グループをいろいろな手を使って
退学に追い込んだという経緯がある。通常なら更生させるという手段が真っ当かも知れないが、
奴らはもはやそれを望めず、生徒への害を振りまくしかないと判断した。
ま、お飾りの生徒会長な俺でも、さすがに奴らの行動には目に余ったからな。
個人的にも目障りだったから追放してやったというわけだ。
しかし、その脅迫文のサインを見るとどうやらその不良グループのリーダが喜緑くんを誘拐――拉致したようだな。
この定番で稚拙な脅迫文の書き方からして、後先を考えない行動をする知的レベルの低い存在であることは疑いようがないが。
さて。
「行くか」
俺はその脅迫文を破り捨てると、指定の場所へと向かった……
「へえ、逃げずに来るとは泣かせるじゃねえか」
雲一つないきれいな満月の夜空にふさわしくない下劣な笑い声。指定された場所に来てみれば、
十数人の武装――とはいってもバットや鉄パイプ程度だが――したいかにもな連中が待ち受けていた。
その中心では跪かされた喜緑くんの姿もある。彼女の力を考えればなぜこんな囚われの身になっているのか
正直理解しかねるのが本音だが……
それについては、俺を呼び出したリーダ格の男が勝手にしゃべってくれた。
「この女も健気でいいねぇ。適当にお前の学校の生徒を拉致ってヤルっていったら、自ら進んで俺たちについてきたよ。
自己犠牲心って奴かぁ? ならこっちも遠慮なくってわけだ」
正直、この野郎と同じ空気を吸っていることすら嫌悪感を憶えるぜ。
そいつは未成年であることも全く気にせず、近くに置いてあったビールを瓶ごとラッパ飲みしている。
軽く酔っぱらっているのだろう。少し顔も紅潮してテンションも無駄に上がっているようだ。
これ以上、このバカに付き合う義理もないか。
「随分と虚勢を張っているようだが、ようは実力では俺に対抗できないから、人質を取ったと言うわけだな?
あまつさえ、それでも一人ではダメだと思って仲間まで集める用心ぶり。慎重と言えば君の神経を逆なですることはないだろうが、
逢えて言わせてもらおう。それはただの臆病だ、とな」
「なんだと……!」
俺の挑発にあっさりと激高したそいつは、持っていたビール瓶をたたき割り、その割れてとがった刃先を喜緑くんの顔に近づける。
ちっ、彼女なら顔を傷つけられたとしてもあっさりと修復できるだけの力はあるだろうが、
はっきり言おう。彼女の顔が一瞬でも傷つけられている瞬間など見たくはない。
だが、この人数差――さて、どうしたものか。
「へへっ、この女が無事でいて欲しければ、動くんじゃねえぞ。おら、やっちまいな」
リーダ格の男の一声で周りにいた仲間どもが一斉に俺に襲いかかった……
「ぐうっ!」
俺は圧倒的な人数差と人質という不利な条件で全く反撃もできず、ひたすら嬲られ続け、
最後は二人がかりで地面に押しつけられた。屈辱的な仕打ちだが、彼女が傷つくことを考えれば、痛みも柔らぐってもんだ。
「ざまあねえなぁ。偉そうな口をきいておきながらよぉ、その程度かよ」
圧倒的有利な奴が吐く定番台詞だな、全く。こういう事のは伝統的に誰か伝えてでもしているのか?
しかし、俺の意志が全く挫かれていないことに気がつくと、またカルシウム不足にもほどがあると言いたい怒りを浮かべ、
「何だよ、その目は。まだやれるって言いたげだな。なら、今度はこの女をいたぶってやろうかぁ?
ほれ、満月にふさわしい月見酒だ。テメエの女が杯代わりにな」
882 :
埋めネタ3:2008/01/28(月) 00:28:12 ID:6EHYZ/0m
また下劣な笑みを浮かべ、新しいビール瓶を持ち出すと、ふたを開け喜緑くんの頭上からそれを注ぎ始める。
「貴様……!」
思わず自重し続けた俺の怒りが口から飛び出してしまった。ちっ、何とか今まで堪えてきたってのに。
俺の反応がさぞかし満足だったのか、ますます調子に乗り始め、
「どうやら、テメエが傷つくよりこの女を痛めつけた方が効果があるようだなぁ。
だったら、今からお前の目の前で俺たちオールスターによる球技大会をみせてやるよ。もちろん種目競技は玉転がしだ」
ポロリもアルよ!と取り巻きから下らなすぎる捕捉が入る。
ちっ、それだけは何としてでも避けたいが、どうすることもできない状況だ。あとは喜緑くんが自力で何とかするのを待つしかないが、
なぜここまでされてもまだ跪かされたまま身動き一つしない。何を考えている?
取り巻きの男たちは、もはやケダモノ精神丸出しで彼女への包囲網を狭めていった。
気の早いことにすでにズボンに手をかけているものまでいる。
――だが、リーダ格が何気なく放った次の一言で全てが変わった。
「にしてもこいつの髪の毛おもしれえな。ビールをかけるとふやけてアレみたくなる。おっと、これが本当のわかめ酒――うぎゃあ!」
突如としてリーダ格の男が絶叫した。見れば、喜緑くんの手がそいつの手首をつかんでいる。
それも、まるで握りつぶされるソーセージのようになっていた。あれは痛いどころの話ではない。
中の骨も完全に粉砕されているんじゃないだろうか。
「最重要警戒禁止ワードを確認……インターフェース上の感情制御回路にエラーによる暴走を確認も、これを許容……」
ゆらり、と喜緑くんは立ち上がった。リーダ格の手首はまだ握ったままだ。そいつは絶叫するだけで精一杯で
彼女に対して抵抗すらしていない。
彼女の顔はややうつむき加減のため、その視線まで見ることができなかった。
しかし、俺には別のモノがはっきりと見える。恐らく周りの連中にも見えているだろう、彼女を覆う『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……』という見えない擬音が。
唐突に、クギャと悲鳴なのか人体の軋むものなのか判別不能な音が俺の両耳を貫く。同時に、俺を押さえつけていた二人の男が
数十メートル先まですっ飛ばされ、最後には川の中心部分に着水した。どこか身体の一部でも機能不全に陥ったのか、
まともに泳ぐこともできずばしゃばしゃと下流の方へ流されていく。
俺はようやく自由の身となったものの、身体の隅々に激しいダメージを受けていたため、立ち上がるだけで困難だった。
しかし、不良どもの注目はすでに喜緑くんになっているらしく、俺には目もくれず一斉に彼女の眼前に集結している。
ここに来て、彼女はようやくリーダ格の男の手を離した。代わりにその空いた手でまるで顔の仮面をはぐような動作を見せる。
ただ、ちょうど彼女は俺から背を向けているためその様子を見ることはできないが。
「ふざけやがって! 今すぐぶっ殺して――」
リーダ格の男が涙目で喜緑くんを怒鳴りながら、その彼女を睨みつけ――
それから数十秒間、周りの取り巻きを含めた絶叫のオーケストラが開始された。みな彼女の顔を見たとたんに、つばを飛ばし、
泡を吹き、ある者はまるで絞首でもされているかのように舌を大きく吐きだして呻いている……
耳をつんざく地獄の発狂が終わったとき、俺と喜緑くん以外は全員白目をむいて気を失っていた。
まあ、ピクピク反応しているところを見ると死んではいないだろうが、心に重大な傷を負ったのは間違いなさそうだな。
ふと、すっと彼女は俺の元に立ち手をさしのべてきた。その顔はいつものようににこやかで穏やかなものだ。
だが、俺はその手は受け取らず、自力で立ち上がる。酷い奴なんて言うなよ。彼女を助けに来ておきながら何もできなかったんだから、
その程度のプライドぐらいにはすがらせてくれ。
俺は自分の服に付いた土を払いながら、
「怪我はないか?」
「そうですね。自宅に戻った後にお洗濯をする必要の手間が一つ増えたぐらいです」
そう彼女はいつもの笑顔のまま、ビールまみれになったセーラ服に触れる。
俺はぼりぼりと後頭部をかきながら、
「今回の件については謝罪しておこう。こいつらがここまで性根が腐っているとは判断できなかったのはわたしの失策だった。
結果として喜緑くんを巻き込んですまなかったと思っている」
「構いません。これも生徒会の役目。会長のお役に立てるなら、光栄です」
月明かりに照らされた彼女の笑みは、どこまでも柔らかく見えた……
俺と彼女のそんな満月の夜の出来事だった。
〜おわり〜
これ全部見たことある
884 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 00:52:26 ID:GrLUU3iL
埋めてる割には新スレが立ってないんだが…
本人なら構わないけど、どうなんだろう?
スレ建てて来る。ちょっと待っててくれ。
甜菜厨死ね。氏ねじゃなくて死ね。
神聖なるエロパロの貴重な埋めレスを消費してんじゃあねぇよ。
エロパロの埋めはなぁ、朝比奈さんの毒舌や砂金の一粒のような埋めネタが許される一瞬なんだよ。
鯛焼きの尻尾まであんこが詰まってんだよ。
>>859 ちょっとスレ一覧見てきた。
今57章建ったのでここが板トップ。
続いて東方スレの56章。今、勢いは東方の方があるからすぐに抜かれるな。
まあ一時期のブームが落ち着いたとはいえ、それでも板内では充分このスレは勢いあるよな。
892 :
梅ネタ:福笑い:2008/01/28(月) 05:11:42 ID:GrLUU3iL
小ネタを一つ。
我らがSOS団は、今回の年末年始も合宿と称して鶴屋さんの別荘にお邪魔した。
今日は天気が良かったので暗くなるまでスキーをした。
別荘に戻り広々とした風呂で疲れをいくらか取り、晩餐としか言えない夕食に舌鼓を打ち、
今は客間で福笑いをしているところだ。残すは俺とハルヒの二人。トリは俺だった。
昼間の疲れと夕食の満腹感で俺は眠くなっていた。
判断力が鈍っているのでいるので、適当にやればそこそこ笑える物が出来るだろう。
適度にオチをつけて、その後は部屋に戻ってバタンキュー。
俺はそんなプランを考えていたのだが、何を思ったのかハルヒが
「じゃーあたしはキョンのをやるわ」
と言い出した。
ハルヒが出鱈目に作った福笑いを「キョン、そっくりじゃない」なんて言いながらゲラゲラ笑う姿が目に浮かぶようだ。
まあそっちがその気なら、俺だってケッサクなハルヒ画を作ってやるよ。
覚悟しとけよハルヒ。
どれどれお手並み拝見と行こうじゃないかと座り直した俺に、ハルヒは
「キョン、あんたは見ちゃ駄目。あっち向いてなさい」
と言いつけた。
まあその方が面白いかもしれないな。俺は大人しく窓の外でも眺めることにした。
程なくしてハルヒが「出来た!」と声を上げたので、俺は、さてさてどんなアホキョンが出来たのかね、などと思いつつ振り返った。
そして硬直。
古泉と朝比奈さんがそれぞれ「これはこれは、瓜二つですね。流石は涼宮さんです」「ふぇ〜、キョンくんとそっくりですぅ〜」と言い、
長門までか感心したように「……似ている」と呟いた。
俺もそっくりだと思う。
ハルヒの作った福笑いは、眉毛、目、鼻、口が違和感のない範囲でバランスよく置かれているなんてものではなく、
構成する部品が、それぞれ実際の俺の各パーツと同じ位置関係に置かれていた。
まったく、しょうもないところで妙に勘の働く奴だ。
しかし古泉が
「いえいえ、こらは普段涼宮さんがあなたのことをよく見ているということですよ」
などと言い出し、ハルヒは慌てて
「ちょ、ちょっと古泉君。そんなわけないでしょ! 偶然よ偶然!」
と否定した。
まあ、俺もそうだと思うよ。ハルヒは一番が好きだからな。きっと、他の団員より上手にやりたかったとかそんなんだろ。
……古泉、そのニヤケ面は止めろよ。「そういうことにしておきましょう」じゃねーよ。
「さーキョン。最後はあんたの番よ!」
ああ、俺の番か。まあ適当にやってやるさ。
「それとキョン!」
ん? どうした?
「もしあんたが下手なの作ったら罰ゲームだからね!」
何故俺だけ罰ゲームなんだ?
「そうねぇ……」
俺の話も聞けよ。
「もしあんたが変なの作ったら、スキー場を転げ落ちてもらうから。漫画みたいに体に雪をくっつけて大玉になって、
木にぶつかって雪を頭からドサ。あたし一回見てみたかったのよね」
おいおい。そんな子供みたいな事思いつくなよハルヒ。それに、なんだその天真爛漫なニマニマ顔は。嬉しそうにしやがって。
……どうやらハルヒは本気のようだ。やれやれ。気合を入れてやるしかないみたいだな。
俺は目隠しをされる。
ハルヒの福笑いは、確か笑った顔だったはずだ。
俺はハルヒの笑顔を真剣に思い出す。
100ワットのスマイル。
その眉毛の傾き。窓の外に広がる、冬の夜空のような爛々と輝く瞳。形の良い鼻。大きく開いた嬉しそうな口――。
今はもう、ハルヒの笑顔はそれほど珍しいものではない。だから簡単に思い出せる。
入学当初からは想像もつかないほど、あいつはよく笑うようになった。
――よし!
俺はハルヒの楽しそうな顔を脳裏に仔細に思い描き、福笑いの作成に取り掛かった。