1 :
名無しさん@ピンキー:
乙です
いつの間にか480KB超えてましたね
あとテンプレ変えました?
>>1乙です!
久しぶりにこっち用の書こうかなあ…
>>3 申し訳ない、独断でPS2版について加筆しました。
発売日も近まってきたし、と思ってつい。失礼しました。
>>1 乙です。
最近『乙』がガラガラヘビに見えて仕方ありません。
1乙です! 始まるざますよ
>>1乙。このスレッドの流れは速すぎる。まったくけしからん。素晴らしい。
ところでみんなに質問なんだけれど、「白石の現住所」と「らっきーちゃんねるが収録されてるスタジオ」についての情報ってなんか出てるかな?
作品世界内の設定か、そうでなければリアルの情報で。白石&あきらものを書こうと思っているんだけど、そのへんが知りたい。
そりゃ1乙ってことかい?
ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ババーーーーーーーーーーーーーーーン
>>1乙です
「エロパロ」と検索してみて理解しましたが、
相対的に比べてこのスレって結構伸びてるんすねw
「ここが新スレザマスよ」
「埋めてくれた方々、お疲れさまでした」
「やっと新しいスレね」
「みんな、またよろしくね」
「スレたててくれた人もありがとうございます!」
「…まだまだ勢いは衰えない…」
「もっとたくさんSSを…」
「…中々いい流れデスネ。このままを維持デス」
>>1 乙です。保管庫の人もあわせておつです。
自分のが載ってるをみると、なんか恥ずかしいね。
スレが滞りなく進行しますように。
みさおには 「あ、海にミートボール落っこちた!」
みさお「そんなんで飛び込むわけねーだろ!
3秒ルール激しく逸脱してるってのに!」
「右足が沈む前に左足だせば、海の上走れるんだってヴァ!」
「あー、みさきちは絶対やってると思ったよ! 期待通りGJ!」
「正直日下部は今でも本気でできると思ってそうだけどな…」
このスレはゴッドかなたさんが見守ってます
みさおには 「あ〜ツインテールとアホ毛、水面上でもいちゃついてやがる・・・」
あやのには 「日下部のやつ、『あやのと兄貴が』とかいいながら
水面上のやつらに写真ばら撒いてるぞ」
そうじろうには 「大変です、担当さんが物凄い形相で追いかけてきます!」
いや、四の五のいわずにかなた様が視覚化したら一発だろうwww
「アンセルムスが呈した本体論的証明によりますと、
『存在する』という事態を、「属性」として捉えたとしますと、
『存在するという属性を、最大に備える存在者が存在する。
何故なら、存在するという属性は、他の存在者もすべて備えているが、そのような属性を「最大に持つ者」は、まさに、自明的に存在するからである』
このような「最大の存在属性を持つ者」こそは、神である。それ故に、神は存在する。というわけです」
「へぇー、じゃあ神様って居るんだ」
「ちなみに私はどちらもいけます、親でも子でも」
「? 何の話?」
逃ーげーてー(天の声
前スレ最後のレスの元ネタってなんだっけ?
>>27 有名なアメリカンジョークの一つ。
前スレのやつはなるべく元ネタから変えないように作った。
ある船に火災が発生した。船長は、乗客をスムーズに海へ飛び込ませるために、こう言った。
イギリス人には 「紳士はこういうときに飛び込むものです」
ドイツ人には 「規則では海に飛び込むことになっています」
イタリア人には 「さっき美女が飛び込みました」
などなど。
>>28でアメリカンといったものの
こういうのは『民族性ジョーク』って呼ぶべきかも。
ななこには 「海に飛び込めば出番がありますよ」
30 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 00:57:14 ID:JV7jIdgo
ゆいには「きよたかさんが先に行きましたよ」かな。
個人情報漏洩ってレベルじゃ(ry
下げ忘れ申し訳ないorz
某フェチ病的な感じなら
「こなたが海で泳いでる」
っていえば全員飛び込むと思う。
そしてその場合
こなたには 「みんな船にいるよー」といえば飛び込むんだろうなあ
そして流れ着いた無人島でみんなと鉢合わせアッー!!
OK、カガ者フラグゲット
〈((リノ∧
(´<_` ∬ 流石よねコナ者
( ∬ ⌒∬ つか私かよ
〃'´⌒` ヽ / | |
〈i i ((リノ ))./ ̄ ̄ ̄ ̄/ |
人!リ =ω=. / =ω=. /.| .|____
.  ̄ ̄ ̄\つ\/____/ (u ⊃
黒井先生には
「僕の胸に飛び込んでおいで」
どうでも良いことだが、前スレ
>>528のみゆきさん…
トイトイ、純チャンはナイナイw
>>34 「陸に上がれたのはいいけど、…ここには食糧になりそうなものはおろか、飲めそうな水も
ほとんどない…」
「それって、どんだけ〜」
「私たち、生きて還れるのかしら……」
「みんな、弱気になっちゃだめよ!」
「そうです!私たちには、まだ大きな希望があるじゃないですか!」
かがみとみゆき、こなたの方を見る。
少し遅れて残りのみんなも、こなたの方を見る。
「ふぇ?みんな?……えっと、どういう意味……?」
「なるほど、これなら確かに、みんな生き延びれそうッスね」
「Nice lifelineデスネ!」
「お姉ちゃん、助けがくるまで、みんなのためにがんばってね」
「よし、みんな!がんばって生きて還ろうぜ!」
「あの、みなさん……?ちょ、みゆきさん鼻血出てるって。……これは、一体アッー!!」
こことVIPのまとめWikiのSS全部読みつくしてしまった…
もっとSS読みたいからSS置いてる個人サイト探そうと思うんだけどなんかいい検索ワードないかな
>>39 あれだけあったのを全部読んだのか……すごいな
VIPとかエロパロ板の関連スレのを全部集めたら、もはやちょっとした文学全集並の量だぞw
そろそろ本にしてもいい気がする
42 :
18-490:2007/11/16(金) 13:06:07 ID:7mvI4GkS
遅ればせながら、スレ立て乙です。
さて、こな×かがを愛してやまないオレですが、今回かが×こなを書いてみました。
タイトル『黄昏の君』
かが×こな
非エロ
5スレほどお借りします。
43 :
黄昏の君:2007/11/16(金) 13:08:12 ID:7mvI4GkS
「ふぅ〜」
解いていた数学の問題集にシャーペンを転がし、グーと背伸びをする。
量も多いわけではなく、しかも自分の得意分野の数学の宿題なのに思ったように以上にペンが進まない。
「はぁ…」
深い溜め息をつきながら、ノートに書かれた数字の羅列を見る。
原因は分かっている。
気分転換を兼ねての宿題だったが…気分転換どころかますます深みにはまっている気がした。
ちょっと休憩をはさむか、と読みかけのラノベに手を伸ばすと、狙いすましたようにベッドの上にある携帯がなった。
『ひ〜だまりですぅ〜♪』
って、アイツまた勝手に人の携帯の設定変えやがったな。
見覚えのない某アニソンの着信音を鳴らしている携帯を手にとり画面も見ずに通話ボタンを押す。
どうせこの時間にかけてくる人物は一人しかいない。
「…アニヲタめ」
「ふぉ、第一声がソレですかっ?!」
思った通り、泉こなたの声が受話器ごしから聞こえてきた。
「なんなのよ、この着信音は…」
「なんのことかな〜♪」
「こんな事すんのはアンタぐらいしかいないでしょ」
油断も隙もないんだから…と溜め息を交じえながら愚痴をこぼす。
「いやいや、かがみん。アニソンは、もはや神曲と言っても過言ではないのだよ。」
「いや、過言すぎだろ…」
「うぅ、かがみが冷たい」
うぐぅ〜、と漫画みたいな泣き声を出すこなた。
って、これもなんかのネタなのか?
「あ、そーいえば…あの答え出た?」
テスト後にあの問題の答えって『p-ヒドロキシアゾベンゼン』だよね、的なノリで聞かれた言葉。
いや、なんとなく思いついた言葉がp-ヒドロキシアゾベンゼンだったんだけどね。
ともかく、深い意味も思想もなさそうな普段のゆる〜い口調で発せられた言葉を私が理解するのに数秒の時間がかかった。
「……あの答え、って」
もう私の中では何のことか分かってはいたが、念の為に聞いてみる。
「…ア、アレはアレだよ」
普段私を弄るような声色とは違う、少し慌てたような口調でこなたが答える。
「アレ…?」
「えっと、一昨日の…放課後の…」
一昨日の放課後、厳密に言えば下校中だけど、つかさとみゆきが珍しくて買い物に行くらしく、私とこなたの二人きりで帰路についていたことを思い出す。
いつも通りの帰り道、いつも通りのたわいもない会話の中、いつも通りではない出来事が起こったのだ。
44 :
黄昏の君:2007/11/16(金) 13:09:04 ID:7mvI4GkS
『私ね、かがみのこと…好きかも』
ステーキの焼き加減について話していた途中、こなたから呟かれた言葉。
いや、私的にミディアムが一番美味しい食べ方…って、え?
私の少し後ろで停止しているこなたを振り返ると、こなたのいる方が西なのか、後ろの夕日が眩しくて目を細めてしまう。
その狭まった視界に捕らえたのは夕日のせいなのか仄かに染まるこなたの頬。
髪の毛で表情までは見えないけど、いつもの猫口ではなくキュッと結ばれた口元がやけにはっきりと見えた。
からかわれているのだろうか、それにしてはやけに緊迫した空気だけど…
「…っ」
状況を把握しようと、こなたに声をかけようとするが、口の中が乾燥していて上手く声がでない。
「こ、なた…?」
ようやく出た親友の名前を呼ぶとピクっとこなたの肩が揺れる。
その微動な行動を見て、何故か分からないけど、さっきの言葉はいつもの私へのからかいではない、と思った。
ようやく夕日に慣れてきた目を少しずつ開けてみる。
こなたの真後ろにあった夕日はもうこなたの肩まで位置を下げていて、やっぱりこの時期になると日は短くなるのね、なんて冷静に考えている自分に少し驚いた。
ぐっと覚悟を決めたように顔を上げたこなたが少し潤んだような瞳で私を見つめる。
その瞳が私に何か訴えるような、でも少し困ったように見えて、視線を外すことが出来ない。
「困ったような顔、してるね…」
ふっ、と何かを諦めたような悲しい笑顔をしてこなたが呟いた。
私は今どんな顔をしているのだろう、こなたが言うように困った顔をしているのだろうか。
全神経が麻痺して唾を飲み込もうとしても、上手く喉を動かせない。
そんな中、視覚と聴覚だけが研ぎ澄まされていて、目はこなたの顔を、耳はこなたの声だけを受け入れていた。
45 :
黄昏の君:2007/11/16(金) 13:10:39 ID:7mvI4GkS
待て、待て。
少し考えたい。さっきこなたは何て言った?
『かがみのこと…好きかも』
告白の際に『好きかも』なんて曖昧3cmな表現を使うのはこなたらしいなぁ。
…いや、だからそうじゃなくて。
こなたが私を好き?
そりゃあ、私だってこなたが好きだ。入学時、ただの妹の友達という位置だったこなたがいつの間にか高校生活で欠かすことのできない親友になっているくらいだもの。
でもきっとこなたの言う好きは私と同じ、友情的好意ではないのだろう。
わざわざ、友情的好意を告げるために、二人きりの、しかも夕日までセットでついた絶好調の告白シチュで言うはずがない。
というか、泉こなたという人間の性格ではない。
私をからかうだけのものならば、いつものように細い線みたいな目でニヤニヤ笑いながらもっとクサイ演技をするであろう。
と、いうことは…
やっぱりこれは恋愛的告白なわけで…。
カッーと今まで平熱を保っていた体がメーターの如く熱を帯始めた。
普通は『好きかも』という告白の時点でこうなるべきだと思うけれど、なにゆえ、告白というシチュに一度も会ったことのない私にはコレを告白と認識するまでの時間がかかってしまったのだ。
今まで、冷静だった脳が急にグワングワンと揺れている感じがする。
こなたが私を好き?!
しかも恋愛感情で?!
いつ?!
どこで?!
どのように?!
5W1H的な疑問が頭の中で飛び交っている。
「かがみ」
少し間延びした、でも普段とは何か違う声で私の名前を呼ぶ。
そんなに距離があるわけではない私とこなたとの距離を一歩一歩踏み締めるように歩くこなた。
「かがみ?」
脳内はパニックのまま、こなたの顔を眺めるしか出来ない私に、少し首を傾けてこなたがまた私の名前を呼ぶ。
「な、なによ…」
この状況で『なによ』はないだろうけど、何か言わないとこの空気に耐える術はなかった。
「かがみは私が嫌い?」
「そんなわけっ…」
ない、という言葉が小さくなったのは、こなたが発するだろう次の言葉を予測してしまったからだ。
「じゃあ……好き?」
普段からフラグがどうとかギャルゲがどうとか言ってるけど、アンタもデフォな言い回しじゃない。
いつも通りつっこみを入れることも出来たのにそう出来なかったのは、こなたの瞳があまりにも真剣だったから。
夕日のオレンジがこなたのエメラルドグリーンと交ざりあって憂いを帯びた、綺麗な色で私を見つめる。
46 :
黄昏の君:2007/11/16(金) 13:12:10 ID:7mvI4GkS
さっきも言ったけど、私はこなたが好きだ。
だけど残念ながら恋愛感情の好きではない。
ん?残念?なんで?
チラっとこなたの後ろを見ると、もうすぐ沈むであろう夕日が見えた。
その夕日が何故だか私の答えを急かしているようで、思わず視線をこなたの足元へと移す。
こなたから伸びた影が私を浸食するかのように静かに長さを増していく。
頭がぐちゃぐちゃで何も考えてられない、いや、周囲の状況を理解しているんだから冷静なのか。
とっくに超えてる頭の容量処理を諦め、完全に落ちる夕日より先に発した言葉。
「少し考えさせて」
あれから土日を挟んで2日。
ゲームや漫画の発売日でさえ待ちきれないこなたが私に答えを求めるのには十分の時間がたっていた。
しかし、それは泉こなたの場合であって、私にしては短すぎる時間である。
告白を受けた後、お互い終始無言のまま帰宅していた時から今の今まで、ずっと考えていた答え。
しかし、一向に答えは見えず、気晴しで机にも向かったけど案の定、ペンが進むはずがない。
大体、何故こなたは私に告白したのだろう。
今まで友達だと思っていたこなたからの告白。
告白をしたってことは、今までの友達関係に変化をもたらしたかった…ってことよね。
友達関係に変化、つまり…こ、恋人関係になりたいのよね、こなたは。
「か、かがみ?」
無言になった私を不安に思ったのか、こなたが私を呼んだ。
「こなたは……私と、その、恋人に…なりたいの?」
告白してきた相手に我ながらバカな質問だと思うけど、問い掛ける。
「えっ?う、うん!!」
相当びっくりしたのか、間髪を入れず返された肯定の言葉。
恋人…つまり、こなたと、その…キ、キ、キスとか…するのよね。
この前つかさと見たドラマのキスシーンを思い返してみる。
潤んだ瞳で私を見つめるこなたの肩に手を置いて、キスする自分。
え、なんで私からキスしてんの?!
ってか、なんて妄想してんのよ!!!
自分自身にツッコミを入れていると、
「私ね…」
とこなたが言葉を紡ぎ出した。
「ずっとかがみが好きだったんだよ」
「え?」
「あれ、やっぱり気付いてなかったんだ」
気付くもなにも、ずっと私を好きだった?一体いつから…?
「好きだな、って気付いたのは2年のクラス変えの時かな」
「…クラス変え?」
「うん、結構ショックだったんだよ。」
あんなに黒井先生にレアアイテムあげたのに、と呟く。
47 :
黄昏の君:2007/11/16(金) 13:13:01 ID:7mvI4GkS
いや、ていうか黒井先生だけに賄賂あげても意味ないだろ。
「かがみと一緒にいたいのに…って思ってたら、いつの間にか好きになってたわけだよ」
アハハ〜と照れ隠しをするこなたの声がする受話器が何故か恋しくてギュウと強く握り締める。
「だから、かがみの恋人になりたい、っていうか…もっと、かがみの近くにいたくて…さ」
え、な、何これ…。
半端なく嬉しい、てか顔がニヤける。
それと同時にドクンドクンと、全身に心臓が転移したんじゃないかと思うくらい鼓動がうるさい。
この心臓の速さの理由が分からない。いや、もう十分に分かってはいる。
ただ気持ちの整理がつかないのだ。
告白される前から泉こなたという人間は私にとって特別だった。
本気でなんでも言い合えたし、ボケとツッコミの相性はバッチリだった。
私の弱いところも、意地っぱりなところもきちんと分かってくれている。
―じゃあ、私は?
私はこなたの何を知っているのだろう。
アニヲタで、エロゲとかも平気でやる変な奴だけど…
たまに見せる笑顔とか、きちんと場の空気を読む性格とか、よく分からない猫口の構造とか、開いてるんだか閉じてるんだか分からない細い目とか、それから…。
と、私の知っているこなたの特徴をあげていく。
あぁ、そうか、きっと私はこなたが好きなのだ。
そりゃ、恋愛感情よりかは友情感情の方が多いけど…
小さいあの体を丸めて受話器を握っているだろうこなたを、今すぐ抱き締めたいと思ったのも事実だ。
ホント、毒されてるわね…私。
でも決して嫌な感情ではない。むしろ…
「こなた」
考えるより先にこなたの名前を呼んだ。
「あの答えだけど――」
数秒後、こなたが発するリアクションを予想しながら、充電器を携帯へと繋いだ。
48 :
18-490:2007/11/16(金) 13:15:59 ID:7mvI4GkS
なんか全然かが×こなになってない気が…orz
とりあえず続きます。
読んで下さった皆さん、ありがとうございます!!!
スレ汚し失礼しました。
>>48 リアルタイムGJっス
でも、あなたが思っている通り、かがこなではないと思う
どちらかというとこなかが寄りかと
>>40 SS読むの大好きだからなー
カプも基本的に雑食だからどれでも楽しんで読めるし
さすがに大学生活板の虐待系は鬱になったが…w
>>48 リアルタイムGJ!
シンプルだけどとてもいいSSでした
確かにどっちかというとこなかがだねー
>>48 あああああああああ!!!こなたかわえええw
すごく良かった!
すごく…良かった…から…
続き書いてくれorzあれで終わりじゃ生殺し状態っす。
>>39 フツーに"らき☆すた SS"でぐぐってもほとんど出てこないね・・・・
あってもVIPかエロパロのまとめか、投下してる書き手さんの個人サイトかで
個人のトコにはほとんどない。サーパラとかても10件ぐらいしかないから、
実は個人サイトのほうではほとんど流行ってないんじゃないかな。
とゆーかSSスレでの量のほうが異常なのかもしれないw
>>48 乙です。すっきりした感じでなかなか。
やはりこなかがかと。ひっぱってる感じがするし。
アニキャラ個別のこなかがスレに
SS保管庫あるよ
>>53 そこの初代住人だった俺は既に読み尽くしてしまった…w
>>52 直接SSを探そうと「こなちゃん」とかで検索したりもしてるんだけどなかなかHITしないんだよね
SSスレが賑わってる分、個人サイトではあまり流行ってないのかな
というかSSまとめWiki多いよなw
いまんとこエロパロ、VIP、大学生活、アニキャラ個別のカプスレで発見したよ
>>53 情報サンクス。でもそこも読みつくしたんだよなー
余談だがアニキャラ個別板のつかこなスレにも保管庫があったりする。
スレほとんど伸びてないけどね…
>>48 素直にこなたが可愛いッス…
自分も続き見てみたいです、だだ甘な展開でw
GJ!
59 :
2-390:2007/11/16(金) 19:04:32 ID:z/0ZpI2W
『残し物-4』を投下します。
こっちは甘くないんだ、済まない(´・ω・`)
・こなた&かがみ
・社会人かがみ視点
・鬱展開の予定
・二人は高校時代に知り合う事が出来なかった。それから数年後
がっかりイリュージョンです。スルー推奨。
60 :
残し物-4:2007/11/16(金) 19:06:11 ID:z/0ZpI2W
私はベッドに腰を掛け、膝に乗せたノートパソコンのキーを叩いている。
急ぎの仕事をやり残したまま休日を迎えてしまったため、こうして自宅に持ち帰ってこなしている最中だ。
断っておくが、決して仕事場での私の手際が悪かったわけではなく
ただこの一週間、残業という残業を尽く避けてきたが故の報いだった。
隣では、私が残業を避ける事となった唯一の原因が寄り添うようにして存在し
パソコンの画面をいかにも興味ありげに覗き込んでいる。
パソコンを初めて見る、という訳では勿論なかったのだが
最新の物はやはり珍しいらしく、一時間も前から私の側を離れない。
時たまに青い髪が揺れたり、肩が触れたりする度に
私の心持ちは何処かこそばゆくなり、タイプする指が調子を上げた。
こうして彼女自ら私の傍らに身を置いてくれる、その目的がノートパソコンである事が幾分悔しくもあるのだけれど。
半ば邪見にされていた当初と比べると、だいぶ私になついてくれたようでやはり嬉しい。
そんなつもりは更々無さげに振る舞う彼女だが、日々確実に距離は縮まっていると私は思う。
何度目かに私達の腕が擦れあった時、私はふと思い出した事があり、隣の少女に目を向けた。
詳しくはそれの着ている洋服で、見た目は彼女のリュックサック同様のボロではないものの若干の色褪せを見せている。
他に所持していた何着かも、確か似たような状態であったと思う。
知らずに、私はぱたりと指の動きを止めていた。
「……?」
彼女が私を見上げた事でそれに気付いたのだけれど、この際だから今日はパソコンを畳んでしまおうと思う。
何やら楽しみな用事を思い付いてしまったようだから。
「…こなた、服見に行こっか。」
来週こそ、残業は避けられなくなりそうだ
61 :
残し物-4:2007/11/16(金) 19:07:20 ID:z/0ZpI2W
─────
「ホラ、コレなんて似合うんじゃない?」
「こっちはどう? アンタ、ラフな感じの好きでしょ」
「うわ、すごいミニ…。これはちょっと露出が多すぎね。」
「…………。」
少し遠出をして百貨店に足を運んだ私達。
さっそく洋服売り場に来てみると、当然だが多種多様な品々が陳列されているわけで。
取り敢えず目につく服を片っ端から手に取ってみるのだけど、どうにも私には決められない。
肝心のこなたは呆然としていて、買い物はまるで捗りを見せていなかった。
「ちょっとこなた、アンタも選ぶの手伝いなさいよ」
「い、いや…ね、選ぶ以前の問題が…。」
やっと口を開いたかと思うと、ちょいちょいと頭上を指差すこなた。
その先には『子供服』と書かれた吊し看板があるだけだ。
バカね、心配しなくてもそれは落ちて来ないわよ。
「や、何で子供服売り場に来てんのって事なんだけど…」
「アンタが子供だからじゃない」
セール品の下着を投げつけてくる。
こらこら、そんな物で遊ぶんじゃありません。
結局、一般のコーナーで店員に見繕ってもらった物を二三購入し、その百貨店を後にした。
取り立てて帰りを急ぐ用事も無いので、その後は駅周辺の店を見てまわる事となった。
正直な所、買い物を口実にこうしてブラつきたかっただけかも知れない。
すぐ隣を歩く少女を覗き見て、今更にそう思った。
商品を飾るウインドウは歩道に並ぶ店ごとに存在し
それをいちいち覗いてみるこなたは、私の視線に気付く暇もない。
家出者がこういった公の場を歩くなど、今までそんな気分にもならなかったのだろう。
まるで上京者が初めて都会を歩くような、そんな初々しさを振り撒いていた。
「欲しい物があったら言いなさいよ」
気前よくそう言ってはみても、いざそうなるとこなたはウインドウから目を背ける。
買うとなると気を使ってしまうのか、先程からあからさまに気に掛けていたディープなおもちゃ屋にもそっぽを向いている。
その子供染みた遠慮の仕方が、ぷいと余所を向いたこなたの表情がやけに可愛くて。
私はこいつに、余計何かを買い与えてやりたくなるのだった。
62 :
残し物-4:2007/11/16(金) 19:07:59 ID:z/0ZpI2W
そんなこなたが、ふと足を止めた。
すぐに気付いた私が振り向くと、彼女は1つのグッズ店に足を止められていた。
金縛りにあったように見つめる、その先にはガラスを隔てて小さなストラップが飾られていた。
私はニヤリとせずには居られない。
「…それ、欲しいんだ?」
「ふわぁ!」
背後にまわり、そっと耳元で囁いてやると、まるで期待した通りに驚いてくれた。
慌てて否定するように首を振るのだけど、あれだけ凝視しておいて往生際が悪い。
「買ってきてあげるから、ちょっと待ってなさいよ」
「え…ちょっ…!」
私は躊躇いもせず、いかにもアレな品揃えの店に足を踏み入れた。
─────
「はいっ、買って来たわよ。」
彼女が見つめていたストラップには、饅頭のような猫が備え付いていた。
白い楕円に耳と尾が生え、可愛らしい猫の顔のイラストがプリントされている。
たった数百円のそれをプレゼントと言うには烏滸がましい気もするが、こなたが喜んでくれるならそれでいい。
そもそもプレゼントはそういう物だと、私は包みを手渡した。
「……………。」
受け取ったこなたは、やはり大喜びなんて大それた反応は示さなかったが
変わりに、それを見つめて何故か黙り込んでしまった。
小さな紙袋をしっかりと両手に、俯く姿が何処か儚げだ。
…おかしい、もしや買う物を間違えただろうか。
私は少し屈んで、恐る恐る様子を伺ってみた。
「……こなた?」
今思えば、彼女のだんまりはそんな容易い理由ではなかった。
「……えと、ありがとっ」
ただ、その時の私は知らなくて
不意に顔を上げてみせた彼女の仄かな笑みが、どうして哀しく映るのかが解らなかった。
63 :
2-390:2007/11/16(金) 19:10:40 ID:z/0ZpI2W
つづく
次回はコンビニ店員に続く4人目登場
64 :
20-612:2007/11/16(金) 19:27:38 ID:KzfLfecI
新スレになって間もないのにこんなにも神作品が。
>>48、
>>63 カラーの違う話しながらグイグイと作中へと引き込まれた。
GJ
ところで、もう少し立ってからSS投下したいのですけど、よろしいですか?
>>64
ドゾー
67 :
20-612:2007/11/16(金) 20:54:45 ID:KzfLfecI
2-390さんの投下よりあまり時間がたってませんけど、この後の予定があるので申し訳ないですが投下いたします。
>>65 では、お言葉に甘えまして。
・かがみ&みゆき&こなた&その他
・エロ無し
・7レス
です。
卒業旅行から帰る途中の東京駅、東京在住のみゆきとはここで別れることに。
これでしばらくは会えなくなると、みんな涙ぐんでいる。
「二度と会えないってわけじゃないんだし、涙は禁物よ」
そう言った私自身、目がうるんでいた。
即座にこなたからツッコミが。
「強がっているのに涙目なかがみんも可愛いよ」
「あんただって」
思わず笑みがこぼれる。
そして、意を決したようにみんなで言った。
「じゃあ、またねっ!」
この日以来みんながそろうことはなく、そのことを思うたびに深くため息をつく。
私は今、弁護士になるために東京の大学に通っている。
司法試験は難関ではあるけれど勉強漬けでは意味がないと考え、サークルにも入ったおかげで友人と呼べる人間も何人かできた。
軟派サークルと化したところを避けたり通学時間の制約などを考慮しているうちに、アニ研に入ったのは我ながら苦笑ものではあったけど。
とはいえ、同じサークルの男達からはそれなりに粉をかけられていて、私はそれをかわしながらも楽しく過ごしていた。
− 柊はツンばかりでデレがないんだよなあ −
今ではこんな、どこかで聞いたような意見までちょうだいするほど、なじんでたりする。
もちろん私だって負けてない。
「あんたたちの魅力が足りないからでしょ。くやしかったら、わたしがデレる様な男になって見なさいよ」
なあんて、笑いながら返してるけどね。
大学二年の春を迎えてサークルに後輩が入ってきてから、あの日のことをちょくちょく思い返している。
そしてそのたびに思い出すのは、あいつのいる風景。
それほどあいつと過ごした高校時代は濃密だった。
きょうもまた帰りの列車の中で、楽しかったあの日のことを思い出していた。
列車が下宿先の最寄り駅に着き、ため息ひとつついて改札を通り抜ける。
駅を出たあと、まだ寒さの残る夕暮れの町を私は歩く。
「ただいま帰りましたあ」
「お帰りなさい、かがみちゃん」
一度リビングに向けて挨拶をしたあとで部屋にカバンを置き、改めてリビングに。
すると、のんびりとテレビを見ていたゆかりさんが、にこやかな顔で話しかけてきた。
「みゆきから電話があって、きょうは少し遅くなるんですって」
「あっ、じゃあ出前取りましょうか?」
そう尋ねると、すでにお寿司を頼んだとのこと。
私のために電子ロックを解除してから、最初のあいさつをするまでの間だとか。
それを聞いたとき「早っ!」と思わず突っ込みそうになる。
もちろんそんなことはしなかったけどね。
同級生ならともかく、お世話になっている人に突っ込みを入れるわけにはいかないもの。
お気づきのとおり、東京に出てきた私はみゆきの家に世話になっている。
ひとり暮らしをしたいと何度も何度も言ったのだけれど、両親やみんなの強い勧めで下宿させてもらうことに。
ゆかりさんに「遠慮しなくてもいいのよ。みゆきの友だちなんですし」とまで言われ、断りようがなかったのよね。
とはいうものの、とどめはあいつの一言だった。
− みゆきさんとこに世話になりなよ、その方が私も遊びに行きやすいしね −
おかげでみゆきとは、ほぼ毎日顔を合わせている。つかさとはメールがメインだけど、実家に戻った時に顔をあわせることもある。
みゆきがいないときでも、ゆかりさんがいるので寂しい思いをすることがなかったのには感謝している。
まあ、みゆきから聞いたとおりの人だったんで、、特にかまえる必要もなかったのもよかったみたいだし。
だから、ゆかりさんの言葉に軽く苦笑した後、私は言った。
「でしたらお茶、入れてきますね」
キッチンでお茶を入れた湯飲みを、トレイに乗せリビングに。
テーブルに置いた茶たくの上に湯飲みを置き、ゆかりさんに勧めたあと私も一口。
うん、うまく入れることができた。
料理は苦手だけれど、お茶の入れ方だけは自身がある。
祭礼のとき、人手が足りなくて私もお茶当番になることがあるから、小さいときから練習させられたんだよね。
おしゃべりをしながらお茶を飲んでいるうちに、寂しそうだったゆかりさんの顔に笑顔が戻る。
聞くと、みゆきだけではなくおじさんも遅くなるとのこと。
みなみちゃん家のおばさんも出かけられているということで、きょうはずっとひとりきりだったらしい。
やがて他愛もない話をお茶請けにしているところに、出前が届く。
ちょっと贅沢をした、とゆかりさんがおっしゃっていたとおり、届いたのは上寿司。
たまの贅沢ということで、遠慮なくいただくことにする。
そこから改めておしゃべりに花が咲く、おいしいお寿司を食べながら。
なんということのない話ばかりではあるけれど、おしゃべりをしていること自体が楽しい。
心の疲れが一気に取れていくような気がする。
大学に入って2年目の春、ここ最近、疲れがあんまり取れてくれない。
どうしようかと悩んでいるところだったのよね。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさま。たまにはこういうのもいいわね。ふだんはお客様用にしかとらないから」
楽しかったおしゃべりを終え、キッチンで器と急須、湯飲みを洗う。
洗い終わった順に乾いた布巾で水分をできるだけふき取る。
最後にシンク周りに飛んだ水分も全部ふき取ると、後始末が終わる。
器とキッチンがピカピカになったのを見ると気持ちがいい。
次は私の番。
ゆかりさんに軽くあいさつをしてから、バスルームでシャワーを浴びる。
浴槽にもつかりたかったけれど、時間がなかったのと居眠り防止のためにあきらめた。
部屋にもどってパジャマに着がえて勉強開始。
シャーペンが紙にこすれる音と、紙をめくる音が部屋に響き出す。
みゆきの家で毎日を過ごしながら改めて思う、やはり自分にはひとり暮らしは向かないのかな、と。
誰もいないところに帰ってきたとき、心にポッカリと穴があいたような気持ちになったこともある。
あいつの言う「かがみは寂しがりのウサちゃん」というのもあながち間違いじゃないんだよね。
一方で将来を考えた時、私を捕らえる思いがある。
司法修習生になったら、どこかの地方で8ヶ月の実習生活。
寮に入れるかどうかは別にして、確実に生活拠点を移す必要があるだろう。
おそらく誰も知りあいのいない場所でのひとり暮らしが待っているはず。
でも、その日が来たら、私はどうなるんだろうか。
高校生の頃の私なら「大丈夫!」と言っただろうけど、今となっては自信がない。
少し……どころではなく、とても不安になる。
そんな時、できることならあいつにそばにいて欲しい、そんな思いが時たま浮かぶことがある。
泣いたり、笑ったり、ケンカしたり、賑やかな、安心できる日々。
そんな毎日を、あいつと共に過ごしたい。
だけどあいつは私のことをどう思っているのだろう、そう思ってすぐに自分のその思いを押し込める。
こんな思いを抱くことになったのには理由がある。
みゆきやゆかりさん、みなみちゃんやつかさと楽しい日々を過ごしてはいる。
だけど肝心かなめのあいつとは、メールと電話だけでほとんど会うことができない状態、それが一番の原因。
そう、あいつ。
泉こなたとは。
まあ、私の方にも少なからず原因はあるのだけど、こなたのバイトとの兼ね合いでなかなかタイミングが合わないってのが大きい。
卒業したとたん、一気にスケジュールが埋まって休みが取りにくくなったらしい。
みなみちゃんを通じてパトリシアさんに聞いてもらったら、バイトの責任者になっていろいろと仕事が増えたとのこと。
他にもイベントの企画を立てたり、新しいメニューを考案したりと、大忙しらしい。
しかも近々副店長になるとのこと、どんどん忙しくなるんだろうな。
そんなことを考えていると、何日か前の電話でこなたがぼやいていたことを思い出す。
− かがみのとこに行きたいのに、こんなの予想外だよ −
電話越しに聞こえてくるこなたの声に、その愛らしい泣き顔が目に浮かぶ。
目の前にいたら頭をなでてあげられたのに。
そんな思いが浮かんでくる。
でも実際は、笑いながら答えるのが精一杯だった。
「それだけ期待かけられてるってことでしょ。
いつまでもできる仕事でもないんだし、必要とされてるなら頑張りなよ」
不満気にこなたは電話を切ったけど、会いたくてたまらないのは私も一緒。
がまんできなくなる前に切りたかったのが本当のところだった。
私も同じ気持ちだと言えれば、どれだけ楽だろう。
そして、その時の寂しい気持ちを今にいたるまで引きずっている、というわけ。
「こなた、会いたいよ」
ため息をついてから一言つぶやいて、勉強中の机に突っ伏す。
こなたの電話越しにしか聞けなくなった声と、写真でしか見られなくなった顔を思い出す。
気づくと、目頭が熱くなって涙がにじみ出てる。
こなたとの電話のあと何日かは、いつもこんな感じ。
幼稚園から中学までの同級生で、会えなくなった人は多い。
けど、ここまで会えないことのダメージが大きな相手というのはこなただけ。
いや、別におかしな趣味があるわけではない。
少なくとも私とこなたが『そういうこと』をするイメージは、ほとんど浮かんだことはない。
せいぜい、田村さんの同人誌内容にからめて、こなたがからかってきた時くらいかな。
どちらかというと、少し前に近所の幼稚園の子に人気のあった魔法少女アニメの『大親友』という言葉が似合う相手、それがこなたなんだろう。
落ちこんでしまった気持ちを押さえこんで勉強を再開したけど、なかなか勉強がはかどらない。
結局、ため息をついて机の上をかたずけ、早めに寝ることにした。
なかなか進まない手に気が重くなりながら、ベッドにもぐりこむ。
だけど、いざベッドに入ると目がさえて寝付けないことを実感する。
「私、どうなっちゃったんだろう。こんなにこなたのことが気になるなんて」
『まるで恋愛小説の一場面みたいだな』と思いつつ、『おいおい、相手は女だぞ、しかもロクに色気のない』と思い直す。
無理矢理にでも寝てしまおうと目を閉じて、何も考えないようにする。
でも結局たいして眠れなかった。
見た夢も、ロクなもんじゃなかったし。
翌朝、目は覚めたけど身体が少し重い。
ここのところ夜更かししすぎたかなあと思いつつ、着替えて部屋を出る。
だけど、階段を下りようとしたとき、それは起こった。
「あっ……!」
上の段に残っているべきかかとが、ふいに滑ってしまったのだ。
ダダダダダンッ!
大きな音と共に、1階まで一気に滑り落ちてしまう。
ゴチンと頭も打って、目から火が出ると言う体験を久々にしてしまった。
頭もそうだけど、背中とお尻がやたらと痛い。
「どうかなさい……かがみさんっ!」
音を聞きつけて、リビングから出てきたみゆきが叫ぶ。
みゆきの言葉を聞いたゆかりさんとおじさんまで出てきて、真っ青な顔で私を見つめてる。
そりゃそうか、階段から落っこった人間が頭をおさえてるんだから。
その一方でスカートじゃなくジーンズにしといてよかったと思ってる、のんきな自分がいる。
スカートだったら丸見えのポーズで倒れているわけだし、それくらい、いいわよね?
のんきに構えている私をさておいて、おじさんは玄関先の固定電話へと走った。
私に、そのままじっとして動かないようにって言いつけてね。
話し声からすると、どうやらかかりつけのお医者さんに電話しているようだ。
医師が来るまでの間、みゆきにいろいろ聞かれる。
どこか痛いところはないか、気分はどうか、昨夜はよく眠れたのか、とかね。
一方でおじさんが実家に電話していることに気づいて慌てる。
止めようとはしたけれど、ことがことだけに言わないわけにはいかないと言われ、止められなかった。
そうこうしているうちに、遠くから救急車のサイレンが。
いくらなんでも大げさじゃないかと思っているうちに、病院までまっしぐら。
慌しくて、何も言えなかった。
CTスキャンやMRI検査までしてもらった結果、脳には異常が見つからなかった。
ほっとする反面、みんなに心配かけちゃったなあと反省。
とりあえず様子を見るということで、帰って休むように言われる。
なにかあったら連絡してほしいと言う条件つきでね。
ロビーに行くと、お父さんたちが青い顔で立っていた。
いっしょにつかさも立ってたんだけど、わたしの顔を見たとたんベンチに座りこんだ。
たぶん、安心したんで力が抜けたんでしょうね。
よく見ると、みんなの目の周りに大なり小なり涙のあとがある。
「ごめん、心配かけちゃって」
家族なんだから心配するのは当たり前というお父さんの脇で、大丈夫なのかと聞いてくるお母さん。
念のためきょうは部屋で休むけど、頭の方は大したけがじゃないと言うと、ホッとした様子。
つかさなんか「お姉ちゃん、なんともなくてよかったよお」なんて涙声よ。
だから近寄って強く抱きしめて、言ってあげた。
「つかさ、大丈夫よ。心配かけてごめんね」
なぐさめるのが逆じゃないかと、みんながクスクス笑う。
つかさの顔が真っ赤に染まったのを見て、素直で可愛いなと思う。
こういうときに素直になれないから、こなたに「ツンデレ」だなんていわれるんでしょうね……って、なんでこんな時にこなたのこと考えてるんだろ。
ようやくみんなの気持ちが落ち着いたところで、みゆきの家にタクシーで戻ることに。
何かあったら連絡がほしいとだけ言い残して、お父さんたちは実家に。
みゆきの家に着くとすぐ、ゆっくり休むように言われて2階の自分の部屋に戻る。
ちゃんと休んでくださいねと念押しされたので、仕方なしにパジャマに着替えてベッドに入った。
「何でこんなことになっちゃったんだろ」
検査結果を見たお医者さんから、少し疲れがたまっているようだと言われたことを思い出す。
言われてみればたしかに、ここ何ヶ月か眠りが浅かった気が。
こなたのことが気になりだしたあたりから、そんな感じだったなあと思い返す。
苦笑してからため息をつき、赤くなった顔を見られないように頭まで布団をかぶる。
部屋には1人きりなんだけどね。
冗談めかしてはみたけど、どうにも気持ちが落ち着かない。
モヤモヤした気持ちを抱えながら目を閉じる。
どうやらなんとか眠りにつくことができたようで、目が覚めたときにはとっぷりと日が暮れていた。
「かがみさん、食事の支度ができましたけれど下に来られますか?」
ドア越しにみゆきが声をかけてきた。
すぐに降りていくと声をかけ、手早く着がえる。
「おじさん、おばさん、みゆき、心配かけてごめんなさい」
気にしないでいいとは言われていたが、どうしても一言謝らなくては私の気がすまなかった。
自分のドジが原因で心配をかけてしまったわけだしね。
『気にしなくていい』と改めて言ってはくれたけれど、甘え過ぎないようにしよう。
夕食は最近では珍しくなったみゆきの手作り。
医者から言われたことを考えてくれたのか、消化のよさそうなものばかりだった。
ありがたくいただくと、みゆきにすぐに部屋に戻るように言われる。
「病気ではありませんけれど、本調子ではありませんしね。
油断してホントに病気になってしまってもいけませんから」
背中を押すようにしてリビングから出される。
誰も入っていないことを確かめた上でお湯をもらうことを話し、いったん部屋に。
タオルと着替えを持って、改めてシャワールームにむかう。
衣類を脱いで中へと入る。
だけど今日はお湯に入ることはしない、シャワーもなし。
異常なしとはいえ頭を打ったあとということで、医者はもちろんのこと、みゆきたちに止められていたから。
手で温度を確かめながら、洗面器にお湯を。
手にまとわりつく、ぬるめのお湯が心地よい。
お湯がたまっていく様子を見つめながら、ため息をひとつ。
後悔の念がどうしても消えてくれない。
かといって、何をしたらいいのかもわからない。
気づくと、洗面器からあふれ出たお湯が足元を濡らしていた。
あわててお湯を止める。
と同時に、自分のほほを涙が濡らしていることにも気づく。
なんなんだろうと思いつつ、手のひらで救ったお湯で顔をばしゃばしゃと洗う。
それからお湯を蓄えた洗面器にタオルを入れ、絞ったあとで体全体をくまなく拭いた。
最後に、ゆすいで絞ったタオルで何度もからだを拭いて、余分な水分を取る。
肌着を新しいものにし、その他の衣類を身につけ、部屋に戻ってベッドに。
とはいえ、きょうはだいぶ寝たのですぐには寝付けそうもなかった。
とりあえず、ラノベでも読んで時間つぶしでもしようと本棚から取り出す。
ベッドにもぐりこみ腕と肩から上だけが出た状態で読みはじめたけど、数ページもいかないうちに軽いノックの音が聞こえた。
誰だろうと思っていると、外からみゆきの声が。
「かがみさん、よろしいですか?」
断る理由もないので招き入れると、本を脇に置くのと同時に近いタイミングで、みゆきが部屋に入ってくる。
なぜだろう、いつになく真剣な目をしている。
どうしたのかと聞こうとしたとき、みゆきが口を開いた。
「いつからです?」
「え?」
「いつから泉さんとお会いになってないんですか?」
「ええと、去年の卒業旅行、以来かなあ」
思わず目をそらし、みゆきの質問に答える。
そう、本当はこなたと会えないでいるのではなく、私が会いに行っていないのだ。
むしろ避けていると言っていい。
会うチャンスなら今まで何回もあったにもかかわらず、私はその日にわざと予定を入れていた。
顔を見るだけならバイト先を訪ねればいいのに、私はそれすらしなかった。
なので時折こなたのかけてくる電話、それだけが接点になっていた。
こちらからはめったにかけないという一方通行な関係、それが今の私たちの関係だ。
「どうしてです?」
みゆきの強いまなざしに何も言えなかった。
実際、なんて答えたらいいのか私自身にもわからないのだ、私がこなたを避ける理由を。
ただなんとなく会い辛い、それだけなのだから。
答えが欲しいけど見つからない、そんな不安定な気持ちの中で時間だけが静かに流れていく。
「……わからない」
結局、長い沈黙のあとでこう答えるのが精一杯だった。
ウソをついているつもりはないが、どこか違う。
そんな思いを見透かされたのか、ふいにみゆきが話題を変えた。
「そうですか。ところでかがみさん。
今夜のメニュー、どなたが考えたかご存知ですか?」
「え? みゆきが考えてくれたんでしょ?」
「違いますよ」
みゆきは首を振って一枚の紙を見せてくれた。
発信元記録がついてるってことは、これはFAX?
よくよく見ると発信元はコンビニ、そこに書かれているクセの強い字は……こなたのものだった。
「泉さんに連絡しましたら、それを送ってくださいました。
かがみさんに気を遣わせるのが悪いから、病院には来られないっておっしゃった後にです」
− みゆきさんTELありがと。 たいしたことないってことだけど、今夜はかがみにコレ食べさせてあげて。 −
一番上に書かれたその文章のあとには、こと細かに書かれた料理のレシピがあった。
図解入りで書かれたそのレシピはわかりやすく、みゆきやつかさはもちろんのこと、私にでも作れそうなほどであった。
「こなたが……」
みゆきが強くうなずく。
こなたには、私が検査を受けている間に連絡を入れたらしい。
その時はかなりうろたえたみたい。
でも心配はなさそうだと聞いて、みゆきにこのレシピを送ってくれたとのこと。
「泉さんも薄々気づいてらっしゃらるようですよ。
かがみさんが泉さんを避けているってこと」
息をのみ、それ以上何も言えなくなった私を置いてきぼりにして、みゆきは部屋を出ていった。
あとに残された私の中にうずまく何かを思いおこさせたまま。
75 :
20-612:2007/11/16(金) 21:04:54 ID:KzfLfecI
以上です。
長々と書いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
エロパロ板なのにエロいのが全然書けないよ……orz
続きwktk
ええい、今日は心臓に悪いところで終わる作品が多いわい!
とにかくGJ!
こ、これがこなかが祭りか。
甘酸っぱかったり切なかったりもどかしかったり、お三方ともGJ!
GJ!
アニキャラのこなかがスレといい、
ここ最近はSS確変フィーバーだな
GJの一言につきます!早くも続きが気になってしかたありませんwwww
81 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 23:24:25 ID:BtcRhTd0
よし!俺もこなかか詰めるか!
>>81 リカルド・イゼクソン・ドス・サントス・レイチ「困ります、僕には婚約者がいます」
こなた「てれるなてれるなフフフフフ」
かがみ「そろそろ突っ込む気もうせてきたんだが・・・('A`)」
ていうか、俺もドジだ
資料拾ったの古いorz
リカルド・イゼクソン・ドス・サントス・レイチ「もう私は結婚していますwwww」
どうも、前スレでみさ×兄ネタを書いた者です。
仕事の合間に思いついたSSを投下させていただきます。
・みさお×あやの×みさお兄 3人の視点で書いています。
・非エロ。誕生日ネタ
・オリジナル設定あり。受け付けない人はスルーを。
・みさお兄の設定が無いので、私自身をモチーフにしています
(技術屋・24歳)
・8レスお借りします。
・アクセス規制で投下に時間が掛かります。
列車が到着する。扉が開き、十数人の乗客がいっせいに降りる。
昨年設置されたばかりの自動改札機は、たった2台で乗客の切符の回収とICカードの処理作業に追われている。
当然のことながら、改札口付近は大渋滞。
『またねー』『うん、バイバイ』
『今日は一杯やりますかぁ』
『それじゃ、また明日』
『お疲れ〜、あとで電話するわ』
がらんとした駅前広場は少しだけ賑やかになる。
お勤め帰りのサラリーマン、部活で遅くなった高校生、買い物帰りの主婦……。
しばらくすると、再び静寂が駅を支配する。
「………まだかな」
そんな地元の小さな駅で、私は人を待っていた。
午後7時。約束はとうに過ぎた。『彼』はまだ来ない。
改札口は1箇所しか無いので、ここで待っていれば確実に彼に会えるはず。
しかし、まだ、来ない。
遅れる事は分かっていた。約束の時間の30分前、彼から「少し遅れます」というメールが届いていた。
彼は今日も仕事で忙しいのだろう。
仕事でトラブルでもあったのかしら?
電話が繋がらないので、おそらく『彼』はまだ会社に居るに違いない。
次の電車は19時27分。
昨日までとは打って変わって冷蔵庫のような寒さの中、私はただただ待ち続ける。
今日の夜は特に冷える。立っているのは正直しんどい。
でも、私たちは約束した。ここで会う、と。
だから、私は待つ。彼が来るまで。
11月16日。木枯らしの吹く中、私は彼の到着を待つ。ただ、ひたすらに。
午後7時。仕事はまだ終わらない。
今日は人と会う約束をしている。おれの大切なあの人に。
それなのに、天はどうもおれに深夜残業をさせたいようだ。
「日下部さん、どう?」
「こりゃ重傷だ。まさか回路が完全にイカれてるわ」
「まさかこんな時にトラブル起こすとは……。とんだ誕生日プレゼントだね」
「ああ………最高のプレゼントだな…………おれ、帰っていいかな…」
今日だけは今すぐ帰りたい。
「そうすると、月曜日の実験には間に合わなくなるよな」
「……そうなんだよなぁ。」
おれは同僚と共に、いきなり故障した実験装置の原因を調べていた。
いきなりトラブルを起こした装置は、吹っ飛んだバルブだけ交換すれば何とかなるかと思っていた。
しかし、バルブが吹っ飛んだせいで、破片が装置の心臓部にまで吹っ飛び、あらゆるモノを部品交換送りにしてくれた。
中でもおれが設計した制御機は中の回路が損傷しており、事態は深刻となった。
今日は定時で帰るつもりだった。
17時30分までに自分の抱えている仕事を全て終わらせ、
5分後のチャイムと同時におれは退社するつもりだった。
17時34分。
「よし、あと1分だ」と思ったところで同僚から嫌〜な連絡が入ったのだ。
暖房の効かない現場で過ごす11月16日。
おれにとって目出度いこの日は、思わぬ所からのプレゼントを強制的に受け取るハメになった。
『もしもし?』
「もしもし?あやの?」
『うん、そうよ』
「ん〜どした?元気ねぇな?」
『うん………何でもないよ』
「そ、それならいーんだけど。あのさ、兄貴とはもう会った?」
『それが……』
あのアホ兄貴、帰りにエロ本でも立ち読みしてやがるな。
『それは流石にないと思うけど…』
「冗談、冗談、マイケルジョーダン」
『もうっ、みさちゃんってば!』
「はっははー。少しは元気出たか?
なんだったら一緒についていてやろうか?」
『うん……ありがと。でも、大丈夫』
「そ…そっか。大丈夫か。寒ぃから風邪引くなよ?」
『うん。有り難う』
「兄貴のせいであやのが風邪引いたら、こっちまで心配になるんだぜ。にはは」
『ふふふ、みさちゃんらしいわね。明日の方はどうなの?』
「ん〜?準備万端だぜ。兄貴、喜ぶかな?」
『絶対喜ぶよ。可愛い妹さんからプレゼント貰えるんだから』
「か…可愛いって////て、照れるな…。と、とにかく寒ぃから気を付けろよ、じゃあな」
『うん、じゃあね、また明日』
「ばいにー」
はっくしゅんっ!!あー寒ぃ〜。私は家(団地)の前で兄貴の帰りを待っていた。
時計は……20時40分。うぉっ、こんなところで2時間も待ってたんだ、私。
それにしても兄貴は帰ってくる気配がない。とっくに兄貴があやのと一緒に姿を見せてもおかしくない時間だ。
あー、またあやのに迷惑かけやがって。
ちっと様子見に行ってみっか。兄貴、自転車借りるぞー。
11月16日。木枯らし舞う鉛色の夜空の下、私は兄貴から拝借したスポーツバイクで駅へと向かった。
北埼玉の夜は特に冷える。
20時50分発の上り列車が走り去っていく。次は21時20分。30分待ちだ。
寒さで体はすっかり冷えてしまい、手は氷のように冷たくなっている。
携帯電話を取り出す。着信は……無い。
そろそろ帰らないと、父親に怒られる。
アルバイトでもしていない限り、流石に高校生がうろうろしていい時間ではない。
「姉ちゃん、こないなとこで何してん。風邪引いてまうで」
「わ、私は大丈夫です。有り難う御座います」
駅の前でずっと立っていたのを心配していたのか、改札口の駅員さんが私に声を掛けてくれた。
「人、待ってん?」
「…はい」
「寒いやろ、ほな、これ飲んで温み」
「あ、有り難う御座います」
「ほな、おっちゃんそろそろ帰るさかい。変な人多いから気ぃ付けや」
「は、はい」
この駅は、夜になると無人駅となる。田舎の駅なので仕方がないが、何だか心細い。
この駅を出る路線バスも、
みさちゃんの住んでる団地行きを数本残すだけとなった。
田舎の夜は、寂しい。
手には駅員さんから貰った缶コーヒー。
相当手が冷えていたのだろう。ハンカチでくるんでも熱い。
21時20分発が去る。
もう、帰ろうかな。明日、みさちゃん家で会えるし。
──あら?誰かしら?
「はぁ、やっと終わった。後は月曜にやるとしよう」
「これで、何とか実験には間に合いそうだな。宿題出来ちまったけど」
「おれはもう帰るよ。人待たせてるから」
「お、彼女ですか〜?今日、日下部さんの誕生日だもんな。勢いで襲っちゃったりして」
「アホ、せんわ。美水、先帰るぞ。お先〜」
「お疲れさん〜」
取り敢えず、最低限の処置を済ませ、何とか月曜日の実験には間に合うようにしておいた。
例の回路はもっぺん設計し直さないとダメだな。あーあ。
さて、おれは大急ぎで帰らなければならない。
そう、待っている人がいる、いつもの駅で。
あやのの事だ。多分ずっとその場を動かずに待っているハズだ。
この時間になると、いつも乗っている列車の本数がガクンと減る。
時間は…21時30分。次の列車は21時40分。間に合うかな。いや、間に合わせねば。
「お疲れ様ですっ!!」
おれは作業着の上に上着を羽織ったまま、会社を飛び出し、駅へと向かった。
あやの、待ってろよ。今、そっちに向かうからな。
この時、相当焦っていたのですっかり忘れてしまっていたが、
あやのにメールを入れておけば良かったと思った。おれ、空気読め。
21時50分
ふう、何とか駅に着いた。
何でパンクなんかするんだ、この自転車は。
兄貴から拝借したカーボンフレームのロードバイクは、
あろうことか走り出して数百メートルで先のとがった石を乗り上げ、あっけなくパンクしてしまった。
お陰様で私は駅までの数kmを押していくハメになった。
畜生、寒い。
陸上では真冬の大会でハーフトップのユニフォームを着ていたりはするが、
夏生まれの私にとってこの寒さは地獄に等しい。特にあのユニフォームは地獄に等しい。
まぁ、私のことはいい。
あやのはアホ兄貴のせいでもっと寒い思いをしているに違いない。
きっとえらく心配しているだろう。妹の私だって心配だ。
お、あやのいたいた。うわっ…あの格好じゃ寒そうだな。
まさかこんな時間まで突っ立ってるとは思わなかっただろうしな。
「よう、あやの」
「み、みさちゃん…!!ど、どうしたの?」
何でそんなに驚くんだよ。私の顔に何か付いてるか?
「ち…ちょっと気になってさ。こんな寒ぃ中あやのを立たせたままにするとは、酷い兄貴だぜ。
悪ぃな、あやの」
本当だ。全く。
「み、みさちゃんが謝らなくても…。それに私は全然怒ってないし。
………で、でも、心配だな…。何処かで倒れてないかしら」
「心配すんなって。ああ見えても兄貴はちょっとやそっとじゃ倒れたりしねーよ。喧嘩も私で鍛えているし」
「うん、まぁ」
「うおっ、あやの、手、冷てーじゃねーか!!ほら、これ着ろよ」
さっきまで着ていた上着を、さり気なくあやの背に羽織らせる。
「有り難う。でも、みさちゃん寒くないの?」
「いいっていいって、私はこのポンコツ押して走って来たから、むしろ暑いくらいだ……へ、へっくしゅん!!」
「もう、無理しちゃって。ほら」
「いいって、あやのの方が寒そうだぞ」
薄手で胸元の開いた、デートモード全開の格好だからな。
「それなら、ほら」
「おうわっ」
あやのは私の体を引き寄せ、私の上着の半分を羽織らせる。
一人用の上着を二人で羽織っているので、見事に寸法足らずだ。
駅が無人状態だからいいけど、これ、ハタから見たらどう見えるんだろうな。
「あやのだけ辛い思いするのもアレだからな。私も待つよ」
「あ…有り難う。いつもごめんね、みさちゃん」
「なんで謝んだよ」
「だ、だって、みさちゃん、私は大切なお兄さんを…」
「それは言わねー約束だろ?それにこっちは毎日嫌でも顔合わせられるし。
そりゃ、確かに兄貴は好きだけどさ……、」
正直、あの時はキツかった。兄貴が取られるんじゃないかって思ってさ。でも、それは1年前の話だ。
「ほら、そろそろ次の列車が来るぞ」
22時13分、最終から3番目の列車が最寄り駅に到着する。
降りた客はたった1人。
某ブレーキメーカの作業着姿の疲れ果てた技術者っぽい人が、無人の改札口を通る。
間違いない。あれは兄貴だ。
この後、私は一歩離れて、2人のやりとりを、ただ見ていた。
いやー、いいもん見ちまったなぁ。
「ごめん、あやの。こんな遅くまで待たせて」
「………………」
「あや…の?」
「………………」
「ほ……本当に……ごめん……なさい。お、怒ってるよ…な。
と、当然だよな。こんなに寒いのに何時間も待たせちゃってさ」
「………………………。くすっ」
「??」
「ばぁ!!」
「ほわっ!!!!」げほっげほっ、
「ふふ、驚いた?」
「はぁ、心臓停まるかと思った」
「待たせた罰よ。はい、これ。お誕生日おめでとう!」
「え?おれに」
「ええ、開けてみて?」
「どれどれ……………おおおおおおおお!!!!!!!」
「ど……どうかな/////」
「あ、有り難う!!どれどれ、早速………おお、あったかい。本当に有り難う」
「どういたしまして。私も、ほら」
「あ……付けてくれてたんだ」
「ええ、だって、お兄さんがプレゼントしてくれたから」
「そ、そういやあれから2週間しか経ってないんだったな」
「そ、そうね。同じ11月生まれだからね」
「あの……お兄さん//////」
「ん?」
「もうちょっと顔寄せて」
「へ?………………あ。//////」
ちゅっ
甘〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!
ってこれ、誰かのネタだったな。
いやいや、いいもん見ちまったぜ。あやの、すげー。
てか、ちょっと羨ましい……くなんかないぞ、兄貴とはいつも一緒だし。
流石に兄貴と「ちゅー」はしたことねーからな。風呂ならこの前一緒に入ったけど。
てか、2人とも空気読め。ほら、あそこで誰か見てるぞ。
「あの、お二人さん、仲が宜しいのは分かったが、そろそろ行かねーか」
「あ…みさお、来てたんだ」
「みゅ〜〜〜〜あやの〜〜〜〜兄貴がいじめる〜〜〜><」
「よしよし、お兄さんは悪気があってやったんじゃないんだから」
「私は兄貴の前でも背景ですぜ…。うぅ〜〜〜〜」
「す、すまないみさお。まさか迎えに来てくれてたなんて知らなくて」
「もういいもん。明日のプレゼントは父ちゃんにあげちゃおっ…「ちょっと、みさちゃん!!」
「あ、やべ………」
「え?明日が何だって?」
「「え?いえいえ、何でもないです。はい」」
「……うーん、まぁいいか。さて、そろそろ行くか。
ところで、みさお、何でそこにおれのロードバイクがあるのかな?かな?」
「あ、えっと、それはみさちゃんが…」
「あ、兄貴とあやのの事が気になったから急いで駅に来たんだよ!
兄貴がまたアホなことやらかしたらあやのが可哀相だかんな」
「なっ、だからっておれのを乗らなくてもいいだろ!
お前、自転車持ってるだろ、おれがあげたやつ」
「いーじゃん、たまにはこっちに乗ってみたかったんだよ」
「まさかお前、またぶっ壊したとか言うんじゃないんだろうな」
「………バレた?」
「アホ!!みさお〜、許さんぞ、コラ、待て、逃げるな!!」
「へっへ〜こっこま〜でお〜いで〜♪」
「コラ〜〜〜〜〜」
「きゃははははあはは」
「もう、相変わらずね。やっぱりみさちゃんには敵わないわ。
私も負けないよ。みさちゃんよりも仲良くなってみせるんだから!!」
「待て〜〜〜〜」
「いやだ〜〜〜〜」
「待って〜〜〜〜〜」
「うげ〜!!あやのまで追ってきた〜〜〜」
*****
11月16日。おれは24回目の誕生日を迎えた。
生意気だけど可愛い妹、それにいつも優しい小さな恋人に祝福され、ちょっと恥ずかしいかも。
でも、嬉しかった。誕生日、ありがとう。
fin.//
以上です。スレ汚しすんませんでした。
そろそろ国府津に回送します。ノシ
かがみの初体験ものを書き始めてるんですが、それってここに投下しても大丈夫
ですか? めちゃめちゃ筆が遅いので、完成するのはるか先になってしまいますが…
相手役の彼氏はオリキャラです。あまりオレ設定を押し出すのも何なので、今のところ
「××くん」と表記してるんですが、何かしら名前をつけた方が良いでしょうか?
>>93 うおおおおおおおおおおおおおあまああああああああああああああああああいい!!
今からロードバイクに乗ってぶっ飛ばしに行っていいか!?
何が言いたいかってーとGJ!
>>93 それ以前にエロパロじゃ、相手がオリキャラのSS自体、どんな話だろうと歓迎されない傾向が極めて強いと思うんだが…
このスレには新参だから、ここではどうか知らないけれど。
97 :
93:2007/11/17(土) 01:21:44 ID:CvOX2ntd
>>96 あー、やっぱそうなりますかねぇ。
まずかがみで百合じゃないエロを書いてみたくなって、でも白石にかがみの
純潔をくれてやるなんざ断じて許せなかったんでw、 苦肉の策として××表記で
なるたけ主張のないキャラを用意しようと思ったんですが…、どうしようかなぁ
んー、オリキャラものだってずいぶんあったし、そういう作品は、
注意書きを書いてもらって投稿してもらってたような気がするぞ。
とりあえず作者様には、注意事項を明記していただき、
合わない方は透明あぼーん推奨と書いてもらうしかないかもね。
あ、追記
>でも白石にかがみの
>純潔をくれてやるなんざ断じて許せなかったんでw
それには四の五の言わず同意。そんなら男化したこなたに
襲わせたほうがはるかにましというものだwwww
とにかく、君とはいい酒が飲めそうだwww
oreもかがみを男とかませるのは嫌だorz
だから、…そうだなこなたを男体化させてry
こなフェチで、こなた以外を男体化すればいいじゃないか
なんというみさくらワールド
蓋はある意味オリ男よりも嫌悪の対象になる可能性があるからなあ。
>>75 つ・・・続きを・・・!
なんだろう、凄く切ないような気分だよ・・・
でも続きが気になって仕方ない!
男体化は非エロでならともかくエロでやると単体キャラ好きにはけっこう嫌われるからね。そうなるとオリ男の方がいいって人もいる。
個人的に男体化は
>>101みたいな感じでやったほうが受けがいいと思う。まあ結局注意書きしてくれればなんでもいいんだけどねw
それにしてもこなフェチで男体化はおもしろそうだw
流れを読まずにSS投下してみます。SS初めてなんで、お見苦しかったらご勘弁。
・かが→こな
・最初のほうだけちょろっと微エロ(かがみ自慰シーン)
・後半かがみが少々壊れ気味
・8レスくらい使用
では投下してみます。
「…ヒトの趣味に文句言う気はさらさらないけど…アンタも好きねえ…」
私の名前は柊かがみ。高校三年生。で、
「えぇ〜、だって面白いじゃんー!挨拶がいきなり『ただの人間には興味ありません』から始まるんだよぉ」
今私の目の前で、ニヨニヨしながら一冊のアニメ雑誌を目で追っ掛けてるコイツの名前は、泉こなた。
昼休みの教室で、私はため息をついた。
私とこなたは数年前に知り合った。この高校に入学した当初、双子の妹…つかさを介して、私たちは友人になった。つかさがこなたと同じクラスだったのが一番大きかったかな。
こなたは私が今まで知り合ったことが無いタイプだったから…正直、最初は友人になれるか心配だった。でもその心配は、まあ杞憂だったんだけど。
そんなこんなで良い友人に恵まれた私は、18歳になった今でも彼氏ナシで青春を過ごしている。別に男の子に興味が無い訳じゃあないのよ。なんていうか、こなたといると本気で楽しいから、別に良い友人がいれば彼氏なんていいやって思っちゃうのよね。
そう。まあいいや、こなただって彼氏いないし。ていうか、どこの馬の骨とも知れぬ野郎にこの可愛らしいこなたが…とか考えると、激しく憤りを覚えるわ。
…そう、仲良くなって、私は気付いてしまった。
コイツ…こなたは、ひどく可愛らしいってことに。
雑誌を見つめるこなたをちらりと見る。背は歳の割にめちゃめちゃ小さい。下手すれば小学生と同レベルだろう。
やけに細い身体。聞いたら、つい最近ようやく50キロ台になったそうだ。有りえねえ。身長が小さいから、余計細く見える。
真夏の海みたいに真っ青で、さらりと癖もなく伸びた長い髪。その上に、ぴょこんと植物の芽みたいに鎮座している一本のアホ毛。
まるでまどろんでいるみたいに半分まで目蓋が覆っている瞳。ちなみにこれはコイツのデフォで、ぱっちり開けばかなり眼が大きいことがわかる。その眼をふちどる睫毛は、付け睫毛みたいに長い。
勉強は苦手らしいが(趣味に対しては、だけど)集中力はかなりあると思うし、運動神経においては私よりも上だ。ひとりっこのせいか、他人に甘えるのがやたら上手くて。
どこかいっつも危うげで。どうしてもかまってやりたくて。
「…かがみ?どうしたのぼーっとして」
「あ…いや、別に。……こなた、そのアニメ…好き?」
「うん、だいすき!」
私の問い掛けに顔を上げて、ひまわりのような満面の笑みで、こなたは答えた。
…………可愛い。
いや、ヤバいだろう私。どう考えても、私は至ってノーマルだ。同性が好きな訳じゃない。
でも――――
「かがみ…………」
覗き込んできたその顔に。
「…隙ありっ」
「えっ、わ……っ!」
カシャッ。
素早く雑誌を取り上げて、携帯カメラのシャッターを切った。
「――っいきなりひどいよかがみんっ!!」
ぶーたれて頬を淡く染めるこなたと笑う私を、風が撫でていった。
…………
「――んじゃ、おやすみ。明日は早く起きなさいよ」
「はーい。おやすみ、おねえちゃん」
いつものようにつかさとの雑談を終え、私は自室のベッドに潜る。
ぼーっとしながら適当に携帯をいじっていると、今日撮ったこなたの写真のことを思い出した。
「確かちゃんと保存したはずよね…」
ファイルを探すと――あった。雑談を取り上げられたこなたが、うっすらと頬を染めて写っていた。驚いたせいか、めずらしく瞳はぱっちりと開いている。
私自身の考えとしては、こなたはぱっちりした眼の方が良いと思う。なんていうか、可愛さが増すから。
でもだから、ぱっちりとした眼のこなたとは三秒以上見つめ合えないのよ。「可愛い」って、言いそうになるから。
でも、写真なら――――
「…可愛い。可愛いわよ、こなた」
呟いて、画面に写るこなたの口元を舌先で拭った。自分の唾液の跡が、画面に残る。
それを見て、ハッと我に返った。
ヤバい。これじゃあ変態だわ。
でも……
「く……ふ…っ…」
パジャマの下の、とろりとぬめった熱いソコを指でなぞる。
「……こなたぁ…っ!」
光る画面に写るこなたは、私を笑ってるみたいに見えた。
………………
「で、どしたの一体」
所変わって、駅ビル一階にあるサーティワンアイスクリームの窓側の一席。
目の前の日下部が、買ったばかりのアイスを舐めながら私に尋ねた。
「いや…いやさぁ……」
「…ったくなんだよー!柊にしちゃあハッキリしないなあ!」
重くなるムードを払拭しようと明るく笑って軽口をたたく日下部。文字通りのムードメイカーであるコイツは、小煩い所が玉にキズだが良いヤツなんだよなあ。
今もこうやって、相談があると言った私を「学校じゃナンだからー」と言ってわざわざここまで引っ張ってきてくれたんだし。そんなことを考えながら手にしたストローでアイスコーヒーをくるくるとかき回す。
「ほら柊ぃ!どーしたのって!」
苦笑しつつ促す日下部の声に意識を戻した私は、なるだけことばを選んで話しをはじめた。
「…えっとさ……なんつーか…私、道を誤りそうなんだよね……」
さて、どう思われるだろう。ストローを口に含んだ。
「……万引きでもしたの?」
「ごぶッ!!!」
グラスの中でアイスコーヒーが勢い良くスパークする。…そーよね、ふつーに考えれば、そーいう風に思うわよね……。
「なんだよヒトが真剣に考えたってのに!」
むうっと眉をひそめる日下部。
「ああ、いやいや…ごめんって。そーじゃなくてさ。その……こなたのことで、ちょっと」
「こなたぁ?あのちびっこでニヨニヨの、あのちびっこか?」
ちびっこでニヨニヨって…微妙な印象だよなあ、人として…。
「ん…そのこなた」
「はあ、ちびっこと柊がねえ………あ、もしかして…」
栗色の前髪の奥で、日下部の目が細められる。
感付いたか?まあ意外に鋭いとこがあるからなコイツ…。野性の勘的に。
「ふうん……なるほどね……よっし!このみさお様が迷える柊ちゃんのために一肌脱ぎましょう!」
自信満々の笑みで胸に手を当てる日下部。
「…マジ?」
「もちのろんですよ!だあーいじょーぶ、心配すんなって!」
「……んじゃ、頼む!」
「まかしとけー!!…あ、柊」
「ん?」
「その代わりこのアイス柊のおごりね」
「……………」
…大丈夫かよ。
………………
三日後の昼休み。
「はあーいっ!れでぃーすあーんじぇんとるめーん!ちゅーもくちゅーもくっ!!」
いつも通り、私・こなた・つかさ・みゆきの4人でお弁当をつついていると、すでにお弁当を食べおわったらしい日下部(ほっぺたに米粒がついている。昔の漫画か、お前は)と、峰岸がやってきた。
「おーっす!柊ぃ、今日も妹の愛妻勉強かぁ?♪」
「愛妻ってなによ…つーか二人がこっちくるのも珍しいわね、どうしたのよ?」
日下部の目が、きらーん!と光る。
「そう!よくぞ言ってくれた!えーっと!今回は皆さんに提案があります!!ここにいるあたしたち三年はもう卒業を控えています。そんで、卒業しちゃったらもー皆さんばらばら、離れ離れな訳だ!
…だーかーら!!思いで作りのため!今度の土日に、あたしの親戚のやってるホテルでぷちお泊り会をやらないかー!ということなのです!!」
一瞬の沈黙。
の、後。
「ふおぉお!ナイスだ、GJだよみさきち!!」
「わー、それ楽しそうだね!」
「思い出作りに、最適ですね」
そんなカンジのざわめきが一瞬にして私たちのなかで生まれた。
「ふーん…日下部にんな親戚いたのね」
「私も昨日みさちゃんから聞いてね、ちょっとびっくりしちゃった」
峰岸からもらった手作りクッキーをさくさく食べながら、さっきの日下部の提案について考える。
うーん、確かに、悪くないかも。たまには、そういうのも良いわよね。
「んじゃ決定だな!ではではさっそく部屋割りの籤引きをしまっす!!」
私の前に籤の袋を持ってきた日下部に話し掛ける。
「なによ日下部、やたら準備良いじゃない」
「お、気付いたか?まあまあ、これも柊とちびっこをどーにかするための手段だからな☆さ、籤引いた引いた!」
どーにかってどうする気だよ…
ちなみに、私はもうそろそろ我慢が辛くなってきていた。こなたがそばに寄ってくるだけで、どーしてもグッときてしまう。
「ほんとにどーにかなんのかいな……」
ため息をつきながら手探りで適当に籤をつかんでひっこぬく。開いてみると、「215(二人部屋)」と赤いマジックで書いてあった。
「二人部屋ね……おーい、215って誰よー?215の籤引いたのー…」
「あ、私だ!」
私の心臓が、おっきく跳ねた。こなたが、「215(二人部屋)」と書かれた籤を持っていたからだ。
……どーいうことだ。
「あ!かがみんと同じ部屋じゃん!やったあ♪よろしくー!」
めちゃくちゃ可愛い満面の笑みを浮かべながらこなたは言った。
「…これはどーいうことなのでスカ、日下部サン…」
さっそく部屋割り表作成に取り掛かっている日下部の肩をがし!と掴む。
「へ?…なんだ、心配してんの?だあーいじょーぶだって!一晩も同じ部屋にいりゃ仲直りできるよ!」
片方は普通の籤、そしてもう片方は215と書かれた籤だけ、というように袋を二重にしたいんちき・籤引きを俺に見せながら、日下部はさわやかに笑った。
………ん?
「…なあ日下部、お前今なんていった?」
「うん?だから、同じ部屋に一晩もいりゃ仲直りできるよって」
「…………仲直り?」
「うん。アレ?喧嘩してて困ってたんじゃないの?」
…日下部。これからお前のあだ名は「ミス・早とちり」に決定だ。…感付いてたんじゃないのかよ!!!!
「はあ………」
さて、どうしたものか。楽しそうに籤を折り畳むこなたを横目に、私はため息をついた。
……………
どうしよう。
どうしよう。
そんなカンジで、気付けばホテルの215室の前に立ち尽くしている私がいる。
「かがみんどーしたの?鍵、開かない?」
肩ごしにひょっこり顔をのぞかせるこなたが不思議そうに私を見つめる。
「あ、や…だいじょぶ」
その視線にやっぱりドキリとしながら急いで鍵穴にキーを差し込んだ。
「おお……」
「うわー!」
二人部屋だからあまり広くはないが、明るい天井に白い壁。控えめだけど、センスのあるインテリアに程よい空間、ふかふかのベッド。できれば一生、ここで暮らしたいと思わせる…そんな部屋だった。
「すっごいねぇ……」
「い、良いのかしら、私達ココに泊まって…しかも格安で……」
そう、日下部のコネということとシーズンオフだということが重なって、私たち一行は普通料金よりもかなり安い金額でこのホテルに泊まることができたのだった。
「これは…色んな意味で、日下部に感謝ね…」
「色んな意味で?」
「…や!!ほ…ほら、思い出をありがとう!みたいな!とか!!!」
無茶苦茶だな、我ながら。
そーだねえ、と言いながらこなたはベッドに飛び乗って遊びはじめた。そんなこなたとは反対に、私は沈んでいる。
…こなたと一晩、ひとつの部屋でふたりっきり。
こなたの寝顔。
ベッドとこなた。
「……頑張れ、私の理性」
「え?」
「なんでもない」
はあ……。花畑で遊ぶ赤ずきんを見ていたオオカミも、同じ気持ちだったのだろうか。あーちくしょー…
「ねえねえかがみん」
「なによ赤ずきん―――って!!!!」
ベッドに仰向けに転がるこなた。その両手はのびをするように頭上に掲げていて、細い体のラインが良くわかる。
半分閉じられた目蓋の奥の、長い睫毛に縁取られた、無邪気な眼が私を見つめていて。そして、着ている黒いTシャツがめくれてまったく余計な肉の無い腹があらわになっていた。
『かがみん、きて…(副音声)』
「っふおぉぉ!!!!」
「ふおぉ!!?かがみんっ!?かがみん大丈夫!!?」
「いや、副音声が…!!」
「副音声!!?かがみんほんとに大丈夫!!!?」
だ…駄目かもしれない…。
「あー…で、何よこなた」
「あ、ああえっと…んとね、おふろ。私、先に入っても良ーい?」
風呂。
おフロ。
「……………ッ!!!」
思わぬ伏兵だった。
ちなみに、また声をあげるとこなたに不審がられるから我慢した。
「い、良いわよ。入るが良いわ」
「わーいっ!かがみんさんきゅ!かがみん大好き!」
鼻歌を歌いながら、お風呂セット(バスタオル+フェイスタオル+ボディスポンジ+シャンプー+リンス+ボディソープ+あひる…………あひる?)を抱えてぱたぱたとバスルームへとこなたは走っていった。
「はあ……」
何やってんだろ、私。
想いを諦めもせずに、かといって抑えもせずに。
あーあ……
ふと、こなたの顔がよみがえる。
笑ってる顔。
恥ずかしがってる顔。
困ってる顔。
私は、どうしたいんだろうか。私は、何をしたいんだろうか。
『かがみん』
欲しくない、と言えば嘘になる。
『かがみん』
でも。そんなんは正気の沙汰じゃない。私はこなたを傷つける気か?
『かがみん』
それだけは――絶対、したくない。
『かがみん』
けれど……もう…
「かがみんってば!!聞こえてんの!?」
「おおぅ!?」
…バスルームから、本声が聞こえた。副音声じゃ無かったらしい。
「悪い悪い…どした?」
「もうっ!悪いけど、そこに落ちてるパーカー持ってきてくんない」
「あ、コレね…待って、今行く」
そばに落ちていたこなたの白いパーカーを持ってバスルームへ歩きだす。
こなたの、良い匂いがする。香水もつかってないのに良い匂いってのは反則だろう…そしてその匂いを嗅ぎとる私もどうなんだ…
「はい…、―――っ!!!」
開いたバスルームのドアの向こうには、裸のこなたがいた。いやそうなんだけど!服着てフロ入る奴のほうがおかしいんだけど!てかそんな奴いないんだけど!
「……ドウゾ」
そんなことを考えながらパーカーを手渡す。
「かがみん、ありがと♪」
…その笑顔を見た瞬間、私の口は勝手に動いてしまったんだ。
「……ねえこなた、いっしょにお風呂入っていい?」
さて、私はどうなるのかしらね……。
以上で完結です。まず訂正を…8/3の後半、「雑談を取り上げられ」→「雑誌を取り上げられ」ですスミマセンorz
予想レス数以上になってしまって申し訳ありません。また、携帯からの投下ですので見づらかったらごめんなさい…
>>116 GJですよ。
がんばれかがみ(の理性)!!w
ところで、こなたの身長で50kgは重いと思います。
40行くか行かないかくらいじゃないですか?
>>101 >>105 それは書けということですか?
書けるかなぁ……難しそうです。
>>116 ぐじょーぶ!
>「あ…いや、別に。……こなた、そのアニメ…好き?」
>「うん、だいすき!」
ここの大好きがあえて?平仮名なところでこなたの純粋さを感じた…いかん、可愛い。
続き希望したいなぁw かがみの理性が間違いなくもたないだろうけど。
これ読んでもう少し体重つけないとまずいと思った。そんな俺はガチで50kg未満
>>116 初でここまできゅんきゅんさせるとは、貴公只者ではないな。
プチ壊れ可愛いかがみにぐっじょぶ!
121 :
23-251:2007/11/17(土) 10:48:47 ID:KmX4XHuf
これから投下しますです。
・こなかが入れ替わり
・続き物
目が覚めたら、私はこなたの姿になっていた。
昨夜は自宅のベッドで寝ていたはずなのに、何故か、椅子に座った状態で
目が覚めた。身体を起こして、周りを見渡すといきなり、
こなたの部屋が瞳に映る。
私は混乱しながら、何度も首をめぐらせた。そして、机に置かれた鏡に
写った姿を見た時、私は仰天した。
「嘘…… 冗談やめてよ」
真っ青になりながら、机に置かれた鏡を何度も見直す。けれども、小柄な体、
自然に任せたままの流れるような長い髪、そして、狐みたいな悪戯そうな顔。
何度、鏡を見直しても泉こなたそのものだった。
「じゃあ。私の身体は…… まさかこなたが」
その時、少し離れた場所から、声が聞こえていた。
「こなたお姉ちゃん。電話だよ」
確かこなたの従姉妹であるゆたかちゃんだ。こなたの2学年下で、
純粋で素直そうな子。
「今、行くから」
部屋を飛び出して電話機まで駆け寄ると、受話機を大事そうに抱えながら、
小柄な少女が微笑んでいる。
「柊先輩からだよ。お姉ちゃん」
「『どちら』かな? 」
既に予想はついていたが、敢えて尋ねてみる。
「あっ、ごめんなさい。かがみ先輩の方」
(こなただ! )
焦る気持ちを懸命に抑えながら、受話器を耳に当てた。
「もしもし」
「かがみんや。おはよう」
声色はかがみ自身のもので、口調はこなたのもの。
「こなっ…… 」
こなたの名前を言おうとして、ゆたかちゃんがすぐ近くにいることに
気がついた。慌てて受話器を手でふさぎながら、彼女に声をかける。
「ありがとう。ゆたかちゃん。いやっ、ゆーちゃん」
はにかむ様な微笑を見せて頷いて、ゆたかちゃんは傍を離れていったが、
完全に姿が消えるまでは、私は何も言わなかった。
「どったの? かがみ」
「あんた『こなた』だよね」
「その通りだよ」
この上もない異常事態だというのに、もう一方の当事者は、妙に
落ち着いている。
「あんたねえ。ちょっとは驚かないの? 」
「入れ替わったものはしょうがないじゃん」
「どうすんのよ」
「私に言われてもね」
確かに、自分が思いつかないことを、こなたに要求しても仕方がない。
私は冷静さを取り戻し、こなた側の状況を尋ねることにした。
「こなたも、朝ベッドで起きたら、私の姿に変わっていたの? 」
「うーん。正確にはちょっと違うかな」
「どういうこと? 」
「昨日、黒井先生達とネトゲしてたら、寝落ちしちゃってね」
「相変わらず最低だな」
「寝落ちを最低って断言できるって、だいぶこちら側に来たね。かがみん」
「そ、そんなことより先を話しなさいよっ」
焦った口調になって続きを促す。
「目が覚めたら、かがみの部屋のベッドだったね。そんでもって
鏡を見ると、身体もかがみになっていたから、あー入れ替わったんだなと
分かったけど」
淡々とした口調で話されると、無性にいらいらしてしまうのはどうしてだろう?
「こなたは、これが『とんでもないこと』だとは思わないの? 」
「入れ替わりネタって、ギャルゲとかでもたまにあるじゃん」
「女子高生がギャルゲ言うな」
「どんな状況でも、律儀に突っ込みを忘れないかがみ萌え」
「馬鹿! 」
駄目だ…… 全く危機感が無い。むしろハプニングを楽しんでいる様に
しか思えない。
大きくため息をついたが、ふいに疑問がわき上がり、そのまま口に
出していた。
「それにしても変よ」
「どったの? 」
「だって、普通入れ替わりって、二人が同じ場所にいるときに発生するはずよ」
私はライトノベルをよく読むが、人格が入れ替わるというストーリーも
皆無ではない。
「どうゆうこと? 」
「例えば、二人揃って階段から落ちたとかいう、アクシデントの拍子に人格が
入れ替わったのならわかるけど、今回は、二人とも全然違う場所でしょ」
「まあ、そだね」
「それがおかしいのよ」
「そうかなあ」
首をかしげていそうなこなたに構わず、矢継ぎ早に言葉を続ける。
「こなた。ネットゲームで寝落ちしたのって何時頃? 」
「うーん。確か、4時は回っていたと思うけどね」
「最低ラインが4時か。目が覚めたのは? 」
「だいたい8時かな」
私が目覚める10分ほど前だ。
「そうするとこの4時間の間に、人格を入れ替える『何か』が起きたのね」
「かがみん? 」
「だって、私、昨日から今日にかけては特に何もしなかった。あんたは
何か心あたりある? 」
「いつもと変わらないよ」
「だったら、第三者がやった可能性があると思うの」
「考えすぎじゃないかなあ? むしろ夢オチの気がするよ」
こなたが大きなあくびをしている姿が、電話越しにもありありと分かったので、
私はきつい口調で言った。
「ほっぺたつねってみなさいよ」
「痛い」
「だから、夢なんかじゃないわ」
「そういうこと…… みたいだね」
不詳、不詳ながら、こなたは納得したようだ。
入れ替わりが現実ならば、どうやって対応するかに、思考を切り替えなくては
いけない。
この辺りが、こなたから夢がないとか現実的と言われる理由かもしれない。
「とにかくこなた。今日あんたの家、ああっ、言いにくい!『泉家』に
来てくれない? つかさも誘ってね。」
「つかさも? 」
「あの子、おっとりしているけど、双子だから流石に気づくはずよ。
きちんと状況を説明しないといけない。それにつかさには、『柊家』つまり
私の家族との会話について、サポートしてもらう必要があるわ。
でないと、私が記憶喪失娘になっちゃうから」
「流石に頭の回転が速いね。でも、かがみの家だと駄目なの?」
「うちは家族が多いから、秘密めいた話には向かないでしょ。それに泉家の
情報についても教えて欲しいから」
暫く無言が続いた後、電話口からのんびりした声が聞こえてきた。
「わかった。10時に行く」
「遅れないでよ」
「イエス・サージェント」
受話器を置くと、どっと疲れが出てくる。
私は両肩を落としながら、今日何度目か分からないため息をついた。
127 :
23-251:2007/11/17(土) 11:04:12 ID:KmX4XHuf
ある意味、定番ともいえる、入れ替わりものです。
今回は導入部のみになりましたが、のんびりと続く予定です。
ではでは。
GJ、文章も巧くて、凄く面白くなりそうな予感。
もしかして西澤保彦ばりのミステリ的展開に
なったりするのかな?
なんにせよ期待して続きを待ってます。
前スレの『37th lucky! 6話』がまとめサイトにないのは何故?
>>116 GJですよ
次回作にも期待です
ただかがみの一人称が俺になってるところがあったのが気になりました。
あと身長142cmで50kgはかなり重いと思う、と成人してるのに40kg台の俺が言ってみます
>>116 赤ずきん吹いたwwめちゃめちゃ笑えたから続き楽しみ。
>>127 入れ替わりキター!俺の場合、どうやってもそこからエロしか派生できないから重傷orz
なんで最近のSSは優秀作が多いのに続きばっかなんだっっ!!
禿同
続き!続き!最終回!最終回!
134 :
23-49:2007/11/17(土) 16:46:23 ID:Kkux91VV
どうも、23-49です
前スレで予告した、ゆたみさの続きが完成したので投下させてください
・ゆたか&みさお
・ゆたか視点
・エロ無し
・6レス使用
セミの声が遠い。
セミの声だけじゃなく、他の全ての音が波の引くように遠ざかっていく。
――いや。
音が私から、じゃなくて、私の意識だけが音から、色から、世界から、遠く引き離されていく。
それは馴染みの感覚。
立ちくらみを起こしたのだと、妙に冷静に判断できたのは、やはり慣れのせいだろうか。
親友の岩崎みなみちゃんの家で行われる勉強会に向かう途中、休憩に使ったバス停のベンチで
こなたお姉ちゃんの友だちである日下部先輩と出会って。
少しお話をして、お互いに自己紹介を終えたあと、ふと時計を見ると思ったより時間が過ぎていて。
そこで慌てて立ち上がったのがまずかった。
そのままお辞儀をしたのも失敗だった。
「あの、ごめんなさい。私もう行か、な……きゃ――」
しまった、と思ったときにはもう膝に力が入らなくなっていた。
視界がぐるりと廻って――
――気がつくと、何かあたたかいものに身体を支えられていた。
「っとー、あっぶねぇ」
すぐ近くから先輩の声がする。
近くと言うか、ほとんど耳元。
音が戻ってきたんだ。
そして他の感覚も。
声が聞こえたのと反対側の、耳からほっぺにかけて、しっとりと柔らかい何かに包まれている。
これは、先輩の……胸?
「ぅあっ! あのっ! ご、ごめんなさっ!」
「う、わっ、と! ちょっ、暴れんなって」
またも慌てて離れようとしたけど、思った以上に肩をしっかりと捕まえられていて、
逆にさらに強く抱きしめられてしまった。
もうほとんど顔全体が胸に押し付けられてる状態だ。
なんて言うか、困る。
女同士なのに、なんでだかすっごく困る。恥ずかしい。
「あ、あのっ、わ、わたっ、私っ、そのっ!」
「い、いいから、落ち着けって。ほら、ちょっと座れ。な?」
混乱していると、言葉とともに身体を軽く持ち上げられて、押されて、引っ張られて、
何がなんだかわからないままに、気がつけばふよふよと柔らかかった感触が消えていて、
代わりにおしりに平らな感触があった。
ベンチに座りなおさせられたんだと、ぼんやりと理解する。
「んっ」
「おう、ちょっとガマンな」
唐突に額と首筋に手を当てられて、声がこぼれた。
ふむふむとうなずくような気配……熱とか診てくれているのかな。
保健の天原先生やみなみちゃんとは違う、乱暴――というのとも違う、力強くて堂々とした触り方だ。
すごく慣れている感じがして、なんだか本当のお医者さんみたい。
「んー……だいじょぶっぽいかな」
「あ、ありがとうございます……」
「うん。いや、いいけど。てかどーしたんだよ。バスまだ来てないぜ?」
先輩が道の右側――バスの来る方を見ながら言う。
あ、そうだ。ここバス停だったんだ。
「い、いえ、あのっ。私、バスは、別に、待ってなくてっ。みなみちゃんの家はあっちだからっ。
休憩をちょっと、そのっ」
「は? え、なに? ――いや、まぁいいや。いーよ。まずは落ち着け。ほら深呼吸」
「あ――う」
そ、そうだよね。落ち着かなきゃ。
吸って。
吐いて。
すぅ、はぁ。すぅ、はー。すー、はー…………すぅ……ふぅ。
落ち着いた、かな?
「だいじょぶか? ほら、これ。飲め。おまえのだけど」
「あ……はい。ありがとうございます」
差し出された水筒のキャップを受け取り、中身をゆっくりと飲み干す。
よく冷えたスポーツドリンクが身体の熱を徐々に下げていってくれるのを感じる。
……落ち着いた。
うん、落ち着いた。
落ち着いて……冷静になって一連の流れを思い返してみると、恥ずかしさが一気にこみ上げてきた。
またパニックに落ちそうになるのを、しかし両目をぎゅっと閉じてなんとかこらえる。
うん。だめ。
会ったばかりの人に、これ以上迷惑かけちゃ、だめ。
ちらり、と帽子の陰に隠れるようにしてうかがうと、思ったとおり。
先輩は困ったような、呆れたような顔で私を見下ろしていた。
反射的に俯いてしまう。
「あの、ごめんなさい――申しわけありませんでした……」
「や、いーっていーって。てぇか、なに? バスには乗らないん?」
当然の疑問が投げかけられる。
先輩の声は笑っていたけど、私は酷く悪いことをして怒られているような気になって、
びくりと肩をすくませた。
怖くて顔が上げられない。
「はい……あの、私、身体があんまり丈夫じゃなくて……
今日みたいに暑いと、その……さっきみたいに倒れちゃうことがあって……
だから、そうなる前に休憩してたんです……」
恥ずかしい。
さっき先輩に抱きかかえられていたときとは全然違う、胸が苦しくなる恥ずかしさだ。
どうして私はこうなんだろう。
泣きそうだ。
消えちゃいたい。
「そっか、エライな」
「――え?」
まったく予想もしなかった言葉が聞こえて、思わず顔を上げる。
先輩は笑っていた。
にこにこと、嬉しそうに。
なんで……?
「ん? 休憩ってのは大事だぜ?
自分の限界を見極めて、それが来る前にちゃんと身体を休める。スポーツの基本だよ。
こんなのもちゃんと持ち歩いてんだから、すげーよな」
言って、先輩は手に持ったままだった私の水筒を軽く揺らして、優しく手渡してくれた。
ちゃぷん、と小気味良い音が耳を打つ。
これは、こなたお姉ちゃんが持たしてくれただけで……
「部活の後輩にもたまに無茶やるのがいてさー。
……なんつってー、あたしも昔はよくやっちゃってたんだけどな、へへっ。
あ、陸上部なんだー、あたし。もうすぐ引退だけど。
こう見えても――じゃなくて、見てわかるかもしんないけど、速いんだぜー?」
楽しそうに、本当に楽しそうに語る先輩を、私は茫然と見上げていた。
なんだろう、この感覚。
嬉しいのとも違う。悲しいのとも違う。
そんなんじゃなくて、もっとずっとフラットな――ただただ不思議な感覚。
不思議な、人だ。
「んで、だったらどこ行くんだ?」
「――あ、はい……この先に住んでる、友だちの家に……」
相変わらずの笑顔で尋ねてくる先輩に、まだなんとなくぼんやりとしたまま私は答えた。
「ふーん。勉強会?」
「はい…………え? なんでわかったんですか?」
家に行くとしか言ってないのに。
ひょっとして先輩もそうなのかな? でも手ぶらだし……
思っていると、先輩はどこかバツの悪そうな顔になって、言った。
「あ〜〜、それがさ。さっき水筒取ったとき――あ、ソレもゴメンな?
そんときにカバンの中が見えちまって、さ……わりぃ。ゴメン」
なるほど。言われてみれば簡単な……って、
「そ、そんなっ、謝らないでください! 怒ってませんから。逆に感謝してるぐらいで。
ですから、その、本当にありがとうございました」
言いつつ再度、深々と頭を下げる。また気分が悪くならないように、今度はゆっくりと。
そして顔を上げると、先輩は、「ぽかん」、と、目と口を丸くしていた。
けどそれもまた目が合ったとたんに、しゅるしゅると、しぼむように弱々しい顔になっていく。
なんだか一回りぐらい小さくなってしまったみたい。
確かに、人の持ち物を無断で触るのは良くないことだ。
でもこの場合は別だろう。
緊急事態……なんて、大げさなものじゃないけど、似たような状況だったし。
何より私のためにやってくれたんだから、感謝こそすれ、不満に思うなんて筋違いもいいところだ。
「えと、そうなの……?」
「はい」
「怒ってない?」
「はい。ぜんぜんです」
安心させようと――なんだか偉そうだけど――笑顔を作る。
すると先輩もおずおずと笑い返してくれた。
「なら、いいんだけどさ……」
よかった、上手く笑えたみたいだ。
それにしてもこの人、表情がころころ変わって、なんだかちょっと……ううん、すごく……
――って、いけないいけない。また失礼なこと考えちゃった。
先輩に向かって、かわいいかも、だなんて。
まったく、さっきまでの罪悪感はどこに行っちゃったんだろう。
……考えるまでもないか。
この人が、日下部先輩が追っぱらってくれたんだ。
すごいなあ。
こなたお姉ちゃんの周りは、本当にすごい人ばっかりなんだ。
そんなことを考えていると、先輩はまた表情を変えていて、少し考え込むような素振りを見せていた。
そうして一拍置いて、再び私に向きなおる。
「で、勉強会だっけ。友だちの家で」
「あ、はい」
「それってこっから歩き?」
「はい、そうです」
「……ふぅむ」
あ。
なんとなく、わかってしまった。先輩が何を言おうとしているのかが。
日下部先輩は考えていることがわりと顔に出やすいタイプみたいだけど、
それは今はたぶん関係ない。
ただ単に、私がそういうことを言われ慣れているというだけだから。
「一人で大丈夫か? なんなら送ってくけど」
やっぱり。
慣れているはずなのに――いや、慣れているからこそ、か。
軽い失望めいた自嘲の気持ちが浮かんでくるのを止められない。
こんな子どもみたいな見た目だし、たった今みっともないところを見せちゃったばかりだし。
無理もないよね。
でもお断りしなきゃ。
これ以上迷惑はかけられないよ。
「いえ、大丈夫です。ここからならもう歩いて三十分もかかりませんから」
よし、思ったより明るい声で言えた。
これなら不安にさせてしまわないですむだろう。
先輩は見るからに残念そうな顔で、肩を落とし、「え〜……」と不満げな声をもらしていた。
「……」
――え、なんで?
なんでそんな、おやつをもらえなかった子犬みたいな――って、だから!
何を考えてるの私は!
うう、なんだか変だよ。さっきから失礼なことばっかり考えちゃう。
私って自分で思っているよりもイヤな子だったのかなあ……
「なんでさ〜? 送らせてくれよぉ〜。邪魔とかしないからさぁ〜」
「えっ? いえ、でも、そこまでしていただかなくても、大丈夫ですから。本当に」
妙に熱心に言ってくる先輩に、胸の前で両手を振って返す。
あ、あれ?
「む〜〜」
「だって、その、先輩にも用事があるでしょうし……どこか行くとか……
あ、それに受験生ですし、やっぱりお忙しいんじゃ……」
「ゔ……い、ぃや、いやいや。いーのいーの。そんなの気にしないでいーんだってば、な?
てぇか三十分だけだろ? ちょっとじゃん。おねがいっ!」
言いつつ、先輩は両の手のひらを顔の前で打ち合わせる。とうとう拝まれる形になってしまった。
なんだか立場が……どうして私の方がお願いされてるの?
「えっと……迷惑じゃ、ないんですか?」
「ぜんっぜん! てゆーか今むっちゃヒマなんだよ、正直なハナシ。
あとで映画行く予定もあるこたあるんだけど、約束の時間まで三時間もあってさー。
どーやって時間潰したらいいんだか困ってんだよ」
三時間って……
やっぱり、不思議な人。
「だから、そんなさ、むつかしく考えないでいいって。あとちょっとだけ、歩きながらおしゃべり!
そんだけのことじゃん、な!」
……そっか。
そうだよね。そういうことなら、遠慮も迷惑も何もない。
「わかりました。それじゃあ、お願いします」
「おっしゃっ、やった! じゃ、いこっぜー♪」
これまでで一番素敵な笑顔になって、私の手を掴んで元気よく歩き始める先輩を、
「きゃっ――あの、そっちじゃないですっ。こっちです」
私は慌ててひっぱり返すのだった。
心の底からこみ上げてくる笑みを、抑えることなくあふれさせながら。
−−−−−−−−−−−−−
ひまわりに誘われて
−−−−−−−−−−−−−
141 :
23-49:2007/11/17(土) 16:57:04 ID:Kkux91VV
以上です
ありがとうございました
一応続く予定です
また前回同様、みさお視点も執筆中です
完成しましたら、どうかまた立ち寄らせて下さい
それと、激しく今さらですが
まとめサイトへ掲載していただき、ありがとうございました
(……あれぇ? おっかしぃな……とっくにみなみ家に着いてるはずなのに
なんでまだバス停にいるんだろこの二人……)
GJ!
自分の身体と上手くやっていこうとしながら、
でもつい気にしちゃうゆたかの心情描写が素晴らしいね。
ってか次はみんなでおでかけする話かと思ってたんだけど、
ほんとになんでまだバス亭にいるんだw
>>141 このシリーズ好きです
みさおいいヤツだなあ・・・
GJ !
やっと今追いついた…
このスレはやっぱすごすぎるよ!!
まとめてで申しわけないけれど限りないGJ!!!!!!
>>141 GJ!
みさお好きの俺にとってたまらない作品です
みさお視点Verも楽しみにしてます!
146 :
16-187:2007/11/17(土) 20:34:09 ID:f24gbzdD
すいません、あんまりレス番開いていないところで恐縮ですけど、
SS投下したいと思います。
■みさおとあやの(カップリングではありません)
■エロなし
10レスです。
白いボールが小さくなっていく。
深く暗い青に消えていく――原色の空に飲み込まれていく。
高く打ち上げられたボールが、グラウンドを飛びだし土手を越えていくのを、
みさおはマウンドで呆然と見つめていた。
生ぬるい風が吹く。
観客席でわき上がる人の波。
――ああ、夏が終わっちゃう。
そう、思った。
――――――――――――――――――――――――
デ ー ゲ ー ム
――――――――――――――――――――――――
│ 1│ 2│ 3│ 4│ 5│ 6│ 7│計│
─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
鷹│ 0│ 0│ 0│ 0│ 0│ 0│ 0│ 0│
─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
修│ 0│ 0│ 0│ 0│ 0│ 0│1x│ 1│
みさおは泣きじゃくった。
あやのの膝の上、頭を乗せて。
暴走するエンジンのような熱の残滓を抱いて、吹き出す汗を拭おうともせずに。
あやのはただみさおの髪を撫でる。
その顔を優しく見つめながら。
ピンクのフレアスカートが汗と涙で濡れるのを構いもせずに。
傍らには空になったバスケット。
みさおは試合直前でも沢山食べるから。
あやのが腕によりをかけて作ったサンドイッチ。
ピーナッツクリーム――イチゴホイップ――ツナと卵――サラダとハムサンド。
すべてみさおのお腹の中に収まって、いまそのカロリーが膝の上で燃えている。
土手の上、グラウンドを見下ろす合歓の木陰で。
「ひぐ……あ、あいつら……ずりぃよ……け、敬遠ばっか……バット、振ることも
できねぇで……ちきしょう…ちきしょう!」
3打席連続敬遠。
それが、修篤学園のピッチャーが4番みさおに下した評価だった。
累に出たみさおの俊足を警戒して、牽制球が何度も投げられた。
彼には甲子園の常連校からもスカウトがきていると聞く。
徹底したファール攻勢。
それが、修篤学園の重量打線がピッチャーみさおに下した評価だった。
修篤学園は前回の全国中学校軟式野球大会で打点No1に輝いた学校だ。
それでもみさおが許したヒットは3本だけ。
――それと、決勝点になったホームラン。
鷹宮中学校は、関東大会の準々決勝で敗れた。
中三の、夏の出来事だった。
その戦績と奮闘は誇っていいことだとあやのは思う。
事実彼女の胸のなかでは今、親友に対する憐憫と哀切と尊敬と欣喜の念がないまぜに
なっている。
――ましてや、女の身で。
けれどそれだけはいってはいけないとあやのは知っている。
みさおは“女の子にしては”などという条件付きで褒められたくて野球をやって
いたわけでは決してない。
むしろみさおは、女の子でも男の子と並び立つことができると証明したくて、
ずっと努力してきたのだ。直接みさおからそう聞いたわけではないけれど、
あやのにとってそれは自明だった。
ずっと見てきたから判る。それこそ男も女もなかった子どものころからずっと。
いつからなんだろう? 私たちが女の子になったのは。
赤いランドセルを背負ったあの日から?
月の物が来たことに動揺して泣いたあの日から?
ドキドキしながらお母さんとでかけ、初めてブラジャーを買ったあの日から?
気がついたらあやのは女の子になっていた。
昔から可愛いものは好きだった。ピンク色のスカートを穿いておしとやかに
微笑むと、お母さんも親戚の人も可愛い可愛いと誉めてくれた。あやのはそれが
嬉しかったし、自分でももっと可愛くなりたいと思ったものだった。
壁紙をパステルカラーにした。大きな熊のぬいぐるみをねだった。テレビを
見て可愛い女の子の口調を真似た。nicolaを読んでジュニアモデルにあこがれた。
やがてわたしはお嫁さんになって、男の人を支えてあげるんだ。そうやって幸せに
生きていくんだ。
そんな未来図も違和感なく受け入れて、あやのは育っていった。
けれどみさおは違っていた。
いつまでたっても男の子と一緒に泥だらけになって遊ぶ。樹から落ちては大きな
タンコブを作って帰ってくる。カマキリを捕まえてきては、ニコニコしながら
イナゴを食べさせる。
あやのは、ずっとそんなみさおが眩しかった。
みさおだって、日々丸みを帯びていく自分の身体に気づかないはずがない。
日々がっしりと強くなっていく、周りの男の子との違いを考えないはずがない。
4年生のころ、みさおはガキ大将だった。
5年生になると、よくケンカに負けてはあやのに泣きついてきた。
6年生になったころには、男子は恥ずかしがってまともに相手しなくなっていた。
それでもみさおは諦めなかった。
大きく口を開けてお陽様みたいに笑うと、また男子の輪の中に入っていく。
あやのにとって、みさおはずっとヒーローだった。
時という敵、性別という壁に、たった一人で戦いを挑んでいく不屈のヒーロー。
そのヒーローは、けれどずたぼろになって、今あやのの膝の上で泣いている。
小さな暴風雨のようだった慟哭も、今は落ち着いてきていた。
ときおり思い出したようにうめき声をあげると、ぐしぐしと涙を拭う。
「ごめん……ごめんなあやの……もうちっと待って……」
「うん、いつまででも待ってるよ」
そういって優しく額を撫でる。
つけてきたフレグランスは、みさおの甘ったるい汗の匂いでとっくに吹き飛んで
しまった。
合歓の木陰に差し込む木漏れ陽が、二人の肌にまだら模様を描いている。
遠雷のように、川向こうで啼く蝉の声が聞こえてくる。
中三のみさおにとって、この大会は野球ができる最後の機会だった。
高校野球に参加できるのは男子のみ。規定でそう定められているから。
どれだけ速く投げられても、どれだけ遠くまで飛ばせても、女子の部員を取る
学校など存在しない。
だから。
だから、この大会がみさおの最期の戦いだった。
そして全てだったのだ。
気がつけば嗚咽も止んでいた。膝の上のみさおは、目を閉じて動かないまま、
規則正しい息づかいをしている。
あれ? 寝ちゃったのかな? そう思ってあやのが顔を覗き込んだとき、みさおは
急にぱっちりと目を開けると、勢い良く跳ね起きた。
「おぉっしゃーー! 日下部みさお復活だぜぇー!」
太陽に向かって大声で叫ぶと、くるりと振り返ってニカリと笑う。
目尻を赤くしながら、けれどひまわりみたいな笑顔で。
やっぱりみさおには笑顔がよく似合う。ましてやこんなに抜けるような青空なら
なおさらだ。
だからあやのもお返しにニッコリと微笑んで云う。
「おかえり、みさちゃん」
「お、おぉ…ごめんな、いや、ごめんじゃねぇな? うーん?」
途端にみさおは首をひねって考え込んでしまった。
あやのはそれが可笑しくて、またくすっと笑う。
みさおが自分になにを伝えたいのかは判っているし、どこで引っかかっている
のかも判る。
だからあやのは先回りして云った。
「ありがとうっていってもらえた方が、わたしは嬉しいな」
あやのがそう云うと、みさおはポンと手を打って親指を突き出した。
「おぉ、そうだそれだ! ありがとうだ! サンキューだぜあやの!」
「ううん、どういたしまして。それより……」
あやのがいいかけたとき、二人の間を突風が言葉もなく吹き抜けた。
途端に目をつぶる二人。
風は生暖かかったけれど、汗ばんだ身体にはそれでも心地よい。
熱闘に灼けたグラウンドの砂が、風に舞い上げられて届いてくる。
合歓の梢がざわざわと鳴り、綾なす木陰もゆうらりゆらりと形を変える。
見上げれば、木漏れ陽を背負って、紅い合歓花が髪飾りみたいに揺れていた。
「……んで、なんだっけ?」
風が吹き止むと、改めてみさおは訊ねる。
「ん……あのね……脚、痺れちゃって立てないの……」
恥ずかしそうに、あやのはそう答えた。
誰のせいでそうなったかをすっかり棚に上げて、みさおはあやのを散々弄んだ。
あやのも悶絶しながらも一緒になってケタケタ笑った。
ようやく痺れも消え、ふらふらした足取りで立ち上がったあやのは、目尻の涙を
拭いながらみさおに云った。
「そうそう、みさちゃんに渡すものがあるんだよ」
「おぉ? なんだなんだー?」
興味津々という態で、みさおは身体を乗り出して訊ねる。
「ふふ、みさちゃんもきっと喜ぶと思うな」
そういってハンドバッグから取り出したのは、くたびれて泥だらけになった帽子。
額の部分にはSのマークが入っていた。
「あれぇ? これって修篤の帽子だよなぁ?」
「うん、修篤のピッチャーの子が、みさちゃんに貰って欲しいって。本当は交換
したかったみたいなんだけど、みさちゃんそんな状況じゃなかったから……」
「そっかぁ……」
みさおは帽子を大事そうに手にとって、ためつすがめつ眺める。所々ほつれて
破れかけ、汗がしみこんでまだらになっていた。
「それでね、あの子から伝言。『お前のことは、もし俺が今後プロになっても絶対
忘れない。お前は最高のピッチャーだった』だって。あと、『すまない』っていってた。
ふふ、かっこいいじゃん、あの子」
「そっかぁ……へへ、そっかぁ……」
薄汚い帽子を目深に被って、みさおは呟いた。再び頬に光るものが流れ落ちる。
そんなみさおを見て安堵しながらも、あやのはどこかもどかしさを感じていた。
足りない。全然足りない。
みさおに対するご褒美として、こんなものでは全然足りていない。
毎日朝早く起き出してジョギングしていたみさお。
豆が潰れて血が出るまでバットを振っていたみさお。
レギュラーを奪われた男の子に陰口を叩かれながら、意に介さず頑張ったみさお。
そんなみさおを、どうやればもっともっと褒めてあげられるのだろう。
頑張ったとか、凄いとか、誇りに思うとか、そんな思いは口にすればすぐに空虚に
なりそうで、今更二人の間でそんな言葉に意味があるとは思えなくて。
だからあやのは提案した。
「ね、みさちゃん――」
☆ ☆ ☆
「い、いいんかなぁこれ…」
「んー? 駄目だと思うよ」
「だ、だめって、んなっ、自分から云っといてっ」
「大丈夫だよみさちゃん、バレなければいいんだよ」
「……あ、あやの?」
なめらかに均されたグラウンドに、二人の足跡がついていく。
誰もいない観客席。静謐な野球場。ただ遠くから蝉の声だけが降り注ぐ。
小脇に籠を抱え、ピクニックに向かうような軽やかな足取りで、あやのは
マウンドに向かう。
けれど籠のなかに山盛り入っているのは、サンドイッチではなく白いボール。
初めは少し不安がっていたみさおも、いまやノリノリでバッターボックスに立ち、
バットを振っている。
「さーこい、あやのぉー!」
「ふふふ、いくよー」
マウンドより大分手前にあやのは立った。
真上から照りつける灼熱の陽射しに、少しくらくらする。グラウンドがこれほど
熱くなっているとは思わなかった。
――ああ、日灼けしちゃうな。
あやのはそう思いながら、けれどニコリと笑って両手を大きく振りかぶる。
そうしてボールを投げた。ひるがえったフレアスカートが、風をはらんでばたばたと
はためく。
ボールはふわりと放物線を描いてみさおの元へと向かっていった。
ボスンッ!
バットに真芯を撃ち抜かれたボールが、軟式ならではの鈍い音を発して飛んでいく。
空を切り裂いてぐんぐん伸びていくボールは、やがてバックスクリーンの天辺に
当って落っこちた。
「わ、すごーい、いきなりホームランだ」
「へへ、あやのこそ、ここまで届くボール投げれんじゃん。ちゃんとストライク
ゾーンだぜぇ」
「うん、よく一緒にやったよね」
そういいながらボールを放る。
打ち返されたボールは外野席に飛び込む。
夜の学校。部員がみんな帰った後も、みさおは残って練習をしたものだった。
あやのはそんなみさおを放っておけなくて、よく押しかけて練習を手伝った。
今みたいにピッチャーをしたり、ボールをトスしたり、投球練習で壁に当てた
ボールを投げ返したり。
そんな思い出話をしながら、投げ続ける。
みさおは打ち返し続ける。
あの日みた夕焼け。一緒に食べたアイスの冷たさ。怪我をしたときの湿布の匂いが
我慢できなかったこと。開けられないままだったラブレター。初めて二人で電車に
乗って出かけたときのドキドキした気持ち。
投げる。打ち返す。
あやのの身体から、滝のような汗が流れ落ちていく。
びしょ濡れのブラウスが肌に張りついて気持ち悪い。
きっと透けててブラも丸見えなんだろうな。ちらとそう思ったけれど、そんなことは
なぜだかどうでもよく思えた。
打球は全てホームランだった。
一本も野球場の柵を越えていないのは、回収するときのことを考えているのかも
しれない。
気がつけば、二十個ほど用意したボールも最後の一個になっていた。
みさおに笑いかけてそれを確認すると、慈しむように大事に投げた。
打ち返されたボールは、けれどホームランにはならず、三塁線を強襲するライナーになる。
「おーっと! これは長打コースだぁーっ!」
みさおは自分でそう云うと、バットを放って駆けだした。
砂埃をなびかせながら一塁を踏み、二塁を回る。まるで小さなつむじ風のような勢いで。
「速い! 速い! 俊足の日下部選手、もう三塁を回ったー!」
息を荒げて、何かを振り払うように大声で喚きながら。
「バックホォォーム! 矢のような送球だー!」
叫ぶと、頭からホームベースに突っ込んだ。
盛大な砂煙がもくもくと上がり、みさおの姿を覆い隠す。
煙が晴れても、みさおは突っ伏して動かなかった。小さな背中が、呼吸の激しさを
物語って大きく上下するのみで。
あやのも息を整えながら、みさおを見つめていた。
掛ける言葉など見つからなかった。
掛ける必要などないと思った。
やがてみさおはバネ仕掛けのように跳ね起きると、大きく空を振り仰いだ。
そうして叫ぶ。太陽をキッと見つめて叫ぶ。
「わぁぁぁぁああああぁぁぁあぁぁぁあああーーーーー!!!!」
その声も、青く澄んだ空に消えていく。
真白く入道雲のそびえ立つ、夏の空に吸い込まれていく。
空はいつも、人の営みなどまるで忖度せずに、ただ青く青く。
二人の間で、夏が溶けていった。
――まるでそう、あの日みたいな青だ。
みさおはマウンドで空を見上げて思った。
そうだ、あの入道雲、あんな雲があの日もあったんだ。
「――さきちー」
誰かがみさおを呼ぶ声が聞こえる。へにょへにょした、なぜか耳をくすぐる声だ。
「みさきちー!」
途端に現実に引き戻されて、みさおは声のするほうに振り向いた。
青い髪をした子どもみたいな女の子が、バッターボックスでバットを構えて
立っていた。
「ふふん、どうしたのさみさきち! さてはわたしに怖じ気づいたなー!」
「……あんた、普段は野球嫌い嫌い云ってる癖に、やけにハイテンションだな」
キャッチャーマスクを被ったかがみが、あきれ顔でこなたに云う。
「なにを云うかがみん、野球が許せないのはアニメが潰れるからさ! あと、
やりたくないだけで嫌いなわけじゃないのだよ!」
「威張って云うようなことか! ってか違いがわかんねぇよ!」
そんな二人の掛け合いを聞きながら、みさおはくすっと笑う。
今日の体育は合同授業だった。それぞれ野球の練習を続けてきて、その仕上げに
クラス対抗でミニゲームをするというカリキュラムなのだ。
「おー、わりぃわりぃ。ちっとボーっとしちまったぜ。だいじょぶ、ちびっこの
番はすぐ終わってベンチに帰れるぜ」
「ぷぇ、弱い犬ほどよく吠えるって云うよね! ヘイヘイ! ピッチャーびびって――」
バシンッ!
「――る?」
その球のスピードに、みさおの投球を見たことがなかったB組の全員が凍りついた。
「ちょ、ちょっとタンマッ、みさきちタンマッ」
「あっはっは、それは認めらんねぇな!」
大口を開けて笑うと、みさおは次の投球モーションに入る。
バスンッ!「ほわぁっ!」
ビシッ!「うみゃぁっ!」
こなたが空振りした勢いのままくるくる回って、ペタンと座りこむ。なびいた髪が
遅れてふわりと降りてきて、こなたの身体を覆った。
「ニヒヒ、いくらあんたでも日下部の球はそうそう打てないだろー。あいつ、中学の
とき野球部のエースで四番で、関東大会までいったのよ」
かがみがまるで自分の手柄のように自慢する。
みさおはマウンドでニヤニヤしながら云った。
「えー? なんだっけー? 弱い犬ほどよく吠えるって云ったかー? そのセリフ、
そっくりそのまんまお返しするぜ!」
「とほほ、みさきちってただのバカキャラじゃなかったんだね…」
こなたは悄然としながら、木陰で見学中のあやのに云った。
次のバッターはつかさだった。
つかさはバッターボックスで目をつぶりながら縮こまっていて、最初からまるで
打つ気が感じられなかった。
ボールがミットに収まってから目を開けて、何もない空間をバットで振るう
ありさまだった。
「ふふ、みさちゃん凄いでしょー」
あやのは、まるで自分が褒められたように満面の笑みを浮かべて答える。
「う、うん、でもあれだ! 子どもキャラなのは変わんないよね! 経験者が体育の
野球で本気になるなんてね〜」
人差し指をピコンと立てて、照れ笑いを浮かべながらこなたは云う。
「うふふ、そうみえる? あれでみさちゃん、すっごく手抜いてるんだよ」
「え……そ、そうなの?」
「うん。ほら、みて。みさちゃん、柊ちゃんが構えたミットに正確に投げ込んでる
でしょう?」
「あ、ほんとだ……」
あやのが云うとおり、かがみのミットは最初に構えた位置から全く動くことが
なかった。かがみは、ボールが勝手に飛び込んで来たあと手を閉じるだけで、捕球が
できるのだ。
「少しでもスピード上げたらやっぱり狙いからずれるし、そうすると柊ちゃんじゃ
捕れないかもしれない。だから今のみさちゃん、捕れるボールを正確にミットに放る
ことしか考えてないのよ」
あやのはそう云いながら、どこか寂しそうに微笑んだ。
「みさちゃん、凄く大人になったよ。昔のみさちゃんだったら、ムキになって柊ちゃんに
怪我させてたかもしれない。ふふ、本当に大人に、大人の女の子になってきたんだから……」
「むう……」
こなたはそう云ってうなった。
その顔は先ほどまでのだらけた顔ではなく、心の底から悔しさが滲み出てくるような
顔だった。
「ふぇ〜…全然ダメだったよぅ…。気がついたらボールがミットに収まってるんだもん、
消える魔球とはあのことだよぅ…」
つかさが二人のところにとぼとぼとやってきて云った。
「い、いや、つかさ? そりゃ目閉じてたらみえないよ〜?」
「あ、あれぇ? わたし、目閉じちゃってた? エヘヘ…」
つかさは笑いながら頬を掻いていたが、ふと何かに気づいたようにこなたをみつめると、
不思議そうに云った。
「こなちゃんどうしたの? 怖い顔してるよー」
「ん……ちょっとね……よし!」
そう云って何か決心をしたようにうなずくと、こなたはグラウンドに向かっていった。
「あら? 泉さんどうなされましたか?」
バッターボックスできょとんとしているみゆきにひらひらと手を振ると、こなたは
かがみの前に立って云った。
「かがみ、交替」
「は、はぁ!? あんたなに云ってんの?」
かがみは鳩が豆鉄砲をくらったような顔で問い返す。
「ごめんかがみ、かがみに凄く失礼だって思うよ。……でも、かがみじゃみさきち
本気で投げられないみたいだから、わたしが替わりに捕りたいんだ」
おかしなことを云うこなたに、皮肉の一つも云ってやろうと口を開いたかがみだったが、
こなたの神妙な顔付きに思わず口を閉じて、キャッチャーマスクを脱いだ。
「って、おいおい! なに云ってんだちびっこー! おまえB組じゃん! ってあれ?
柊もなんで素直に替わってんの? いつものツンデレは? なぁ?」
マウンドから慌てて叫ぶみさおにむかって、キャッチャーマスクを被ったこなたが
云い返す。
「なんかさ! 悔しいんだよね! 手抜かれてるっつーかさ、ホントはもっと速いの
投げられるのに、本気出せないみさきちがさ! ずっと野球頑張ってきて、それで凄い球
投げられるようになったんでしょ!? その本気が見たいんだよ!」
その横でかがみは肩をすくめてみさおに云う。
「だ、そうだわよ? まぁ私もあんたの球これ以上受けずに済んで良かったわ。手、
痛いんだもん」
手を振りながらバッターボックスから遠ざかるかがみの背中に、こなたは云った。
「ごめんねかがみ、今度なんでも一個云うこと聞くから!」
「……ほう? それはいいこと聞いたわ。あんた、覚悟してなさいよね…」
「う……かがみが怖い……」
そんなやりとりを、木陰に座ったつかさとあやのが眺めていた。
初夏のまだ少し涼やかな風が二人の髪を揺らしている。
「泉ちゃん……不思議な子だね……」
あやのが呟くと、つかさはニコニコ笑いながら答える。
「でしょ? なんていうのかな。誰かが何かを我慢してるのが我慢できないんだよね、
こなちゃんは」
「まったくあいつもおせっかいったらないわね。ま、そのおかげでこの時間だけ
つかさと一緒の組になれたけど」
そういってかがみは二人の横に腰を下ろす。
みると、先ほどのボールがスローにみえるほどの剛速球を、こなたは平然と受け
止めていた。
「うわぁ、なにあれ、あんなのほんとに見えないよ……」
「すっごいわね…こなたも平気なふりしてるけど、あれ絶対手真っ赤だわ」
「ナイスピーッ! 球走ってるよ! これならイチローも扇風機だよー!」
そう云って、こなたはボールを投げ返す。
みさおはボールを受け止めながら、いまだとまどった顔を拭いきれていなかった。
「おまえ…凄いけど変なヤツだなぁ…」
「みさきちにいわれたくないって。それよりみゆきさんごめんね、おまたせ! さあ、
かっとばしてやってよ!」
「おまえはどっちの味方だ!」
みさおの突っ込みに、
「みんなの味方だ!」
と云ってこなたは胸を張っていばる。
そのときふいに漂ってきた恐ろしいプレッシャーに、こなたの背筋が凍った。
みると、傍らのみゆきがいつになく精悍な顔付きで立っている。
「そういうことでしたら……私も全力を尽くさせていただきます」
そう云ってバットを構える動作には一部の隙もなく、よるものを全て叩き切る
剣豪のような緊張感が感じられた。
こなたの目には、みゆきの髪が金色になって逆立っていくのが感じられた。
「ひえぇぇ、みゆきさんが、みゆきさんが本気に! これは、穏やかな心を持ちながら
激しいボインによって目覚めた伝説のスーパーミユキサンだー!」
「んなわけあるかーっ!」
遠くの木陰から、かがみが大声で突っ込んだ。
みさおはそんなみんなをぽかんと眺めていたが、次第に上がっていく口元を押さえ
きれず、ついには大声で笑い出した。
「あ、あっはははははははははははははっ!!! なんだおまえら! なんだおまえら!
最高だぜ!」
その笑い声も、青く澄んだ空に消えていく。
真白く入道雲のそびえ立つ、夏の空に吸い込まれていく。
「おっしゃこーい、みさきちー!」
叫ぶこなたに、
「おー!」
と答えてみさおは振りかぶる。
ちらと木陰のあやのを眺めると、心から安心した笑みで、みさおのほうをみつめていた。
――よかったね、みさちゃん。
あやのが声が、みさおの心のなかに響いてくる。
見下ろす空は今日も、人の営みなどまるで忖度せずに、ただ青く青く。
夏はまだ、始まったばかりだ。
(了)
157 :
16-187:2007/11/17(土) 20:42:04 ID:f24gbzdD
以上です。読んでくださった方、ありがとうございました。
GJ!ひまわり最高!こころがポッとあたたかくなり、ここがエロパロ板ってことを忘れそうになりました
>>157 ちょ、おま、カッコいいじゃねーか!!
いいなぁ……
>>157 じーんと来た。みさおもこなたもあやのもスーパーミユキサンも可愛いよ。GJ。
待ってみゆきさん、そんな穏やかな笑顔でバットを向けないd
ニコニコに挙げられている、
らきすたキャラによるパワプロ動画を思い出して
燃えた。萌えたじゃなく燃えた。
パワプロ買いたくなってきおったわ・・・。
>157
野球経験者の俺としては、懐かしさを感じずにはいられないんだぜ。よって、最大限のGJ!
まとめ落ちてる?
確かに見れない……まさか……
メンテみたいですね
アットウィキは明日7時までメンテナンス
>>157 こういうのだいすきだ
野球は苦手だが昔親父とキャッチボールしたことも思い出されてガチ泣きさせてもらったGJ!!
まじでこの2人の勝負みてみたくなったな。
だれかパワプロでみせてくれw
あ、追記、
>>169GJ。塗り期待&みゆきもお願い(・∀・)
休日の夜なのにまとめwikiがメンテでヘコんでたんだ
それで何気なくミ○シィにログインして、足跡の見覚えのない名前クリックしてみたんだ何気なく
そしたらここの人見つけてちょっとテンション上がった。偶然って凄いよな
まぁメッセージ送る勇気もなくて今に至るわけだが
>>157震えがまだ止まらないぜ!
回想までだったら寂しい終わり方だったけど、こなたとのやりとりで最高の極致を極めたENDだったと思う。
言いたい事はまだまだたくさんあるけど興奮で頭沸いてるから良い言葉が思い付かない。だからこの一言に集約する。
神GJ!!
>>173 やあ、俺。
マイミク申請とかしたいなあ、とか思いながら恐れ多くてそのまんま、とかあるよねー。(こなた風)
176 :
23-251:2007/11/18(日) 10:26:36 ID:ON1u3MUn
読んでいただいた方と、感想を頂いた方に感謝しつつ、
>121の続きを投下します。
・こなかが入れ替わり
・続きもの
2.
さて。これからどうしようか?
まず、朝食をとらないといけないか。何度かこなたの家に遊びに
来ているので、間取りは既に把握している。
台所には入ると、美味しそうな匂いが漂い、白い湯気が立ち昇っている。
ゆたかちゃんが「ぴったん。ぴったん。もじぴったん」と、機嫌良く
口ずさみながら、薩摩芋入りの味噌汁を煮込んでいる。
今日は彼女が食事当番のようだ。料理が苦手な自分にとって、
いきなりの試練に直面しなくてほっとする。
しかし、安心したのもつかの間のことで、間もなく部屋に
中年の男性、つまり、こなたのお父さんが入ってきた。
「おはよう。こなた、ゆーちゃん」
「おはようございます。おじさん。こなたお姉ちゃん」
「おはようござ、あっ、おはよう。お父さん。ゆたかちゃん」
冷や汗をかきながらの、朝の挨拶だ。
「どうした? こなた」
娘の顔色に、敏感な変化を感じ取ったのか、こなたのお父さんは
遠慮なく近寄り、ペンだこがついた掌を私の額にあててくる。
「ひあっ」
私は、予想外の接触行為に慌ててしまい、高い悲鳴をあげ、
数歩後ずさった。
「こなた!? 」
「な。なんでもないの。なんでも」
しまった。この親子は距離感が全然無いことを忘れてた。
それにしてもスキンシップが際どすぎるぞ。こなた父。
「こなたぁ。お父さんが嫌いになったのかい? 」
露骨に娘に避けられたことがショックで、しゅんと子犬のような表情に
うなだれてしまう姿に哀愁が漂う。
(これは…… 気まずいっ)
私は慌てて言い繕った。
「き、嫌いになったりなんか、しないんだからっ! 」
「ツンデレこなたも萌えるなあ」
言った途端に上機嫌に変わって、私の頭をなでてくる。
「ツンデレ言うなあ! 」
この父親にして、あの娘あり……
私は、がっくりとうなだれて、椅子に座った。
席にはゆたかちゃんが作ってくれたご飯と、味噌汁とベーコン付きの
玉子焼きが並んでいる。
3人での食事は、大家族での自分の家とは違ってかなり静かだ。
少し寂しさを覚えざるを得ないが、不用意に自分から話題を
振ることもできない。
少なくないジレンマを抱えながら、ほとんど無言で箸を動かしていたが、
途中でゆたかちゃんが、私の顔を見ながら尋ねてきた。
「おねえちゃん。ツンデレって何? 」
「あのねえ。ゆたかちゃん…… 」
こんな純粋そうな子が、こなたと、こなたのお父さんによって
おたくの世界に、染まっていくのは何とも痛ましいことだ。
「ゆーちゃん。良い質問だね」
「は、はい」
居住まいを正して、ゆたかちゃんは真剣に耳を傾けている。
「ツンデレっていうのはね。普段はツンツンと、そっけない態度を
とっているけれど、肝心な時にはデレデレと、好意をみせる
女の子のことだよ」
「そうなんですか」
朝から何という会話をしているんだ。この人は。
「柊かがみちゃんが、ツンデレの見本って、こなたは言うけどね」
こなたのお父さんは、穏やかに笑いながら言った。
(断じて違うっ! )
心の底から叫びたかったけど、必死でこらえる。
「確かに、そうかもしれませんね」
(こらっ、ゆたかちゃん。あんたまで納得するんじゃない! )
思ったことをそのまま出せないことが、こんなに
フラストレーションが溜まるとは……
泉家のツンデレ談義のせいで、せっかくゆたかちゃんが
作ってくれた料理の味が、途中からはほとんど分からなくなってしまった。
朝食を終えて自室にもどった私は、ベッドに倒れこんだ。
「あー 疲れた」
ぼろを出さないように精一杯頑張ったつもりだったけど、
とてもじゃないけど長時間は耐えられそうにない。
もっとも、柊家にいるこなたも、同じように戸惑っているのかも
しれないが。
私は寝転んだまま、机の上に置かれた時計を眺めると9時を
指し示していた。
こなたと、つかさが来訪する時間までは、多少時間がある。
「ちょっと暇かな」
本棚をみるとびっしり同人誌が並んでいる。商業誌と異なって
一冊あたりのページ数が少ないので、本棚を見ただけでは題名すら
読み取りにくいものも多い。
ベッドから立ち上がった私は、吸い込まれるように微かに
見覚えがある本を何気なく一冊を手にとり、絶句した。
「これは…… 」
以前、こなたにコミケに連れて行かれたときに、思わず手に
取ってしまった本だ。
いわゆるBL18禁本である。あの時は途中で慌てて本を
閉じたけれど、今は人の目もない。
結局、甘美な誘惑に抗しきれずに、ベッドに寝転びながら、
最後まで読んでしまった。
「こなた達。まだこないよね」
普通の女子高生には刺激が強すぎる内容で、私は、どうにも
たまらない気持ちになってしまっていた。
ほとんど本能の赴くままに、飾り気の無いTシャツの
下にあるブラに手を当ててみる。
「本当に、ぺったんこね」
貧乳はステータスなどと強がっていたけど、やっぱり不満なんだろうか。
と半ば同情しつつブラの上から少しなでてみる。
「私、何やってるんだろ」
自嘲するように呟いてみたけど、指の動きが止まらない。
楕円を描くように小さな胸の周囲から撫で、ブラごしに乳首を
つまみあげる。
「ひゃん」
じゅんっとした感覚が襲いかかる。家での自慰とは全く違う感触に
戸惑い、興奮する。
「こなたの身体がエッチだからいけない。こなたのせいだ」
私は、責任を全部こなたの身体に押し付けてしまうと、指先の動きを
少しづつ速めていく。
「こなたっ」
あいつの名前を口に出すと淫らな気分が出てくる。白いブラを
ホックを外してずらし、胸を露出させる。人差し指と親指でじかに
摘んだ乳首を覗き込むと、薄い桜色をしたそれは硬く大きくなっていた。
「…… んんっ」
自分の喘ぎ声が漏れる。顔は赤く火照っていると思う。
『こなた』の身体で自慰をするという倒錯的な行為に、興奮を
抑えきれない。
「これ以上は、だめっ…… 」
脳裏の隅に追いやられた理性は、盛んに警告を発するが、強い誘惑に
押し切られる形で、捲り上げたTシャツと、乳房からずれたブラを
取り払う。
未成熟で華奢な身体が露になり、かわいらしいおへそが露になった。
「ちょっと待て私…… 」
微かに残った理性が吹き飛ばされるのを感じながら、こなたの
きめ細かな素肌に、ごくりと生唾を飲み込んでしまった。
この時、私は完全にBL本の主人公ではなく、こなたの身体
そのものに欲情していた。
白い飾り気のない下着に指を当てると、微かに湿っている。
「ん…… んくぅ」
扇情的な喘ぎ声をあげて、布地ごしに刺激を加えていくと、突起が
膨らんでくることが分かる。
体の芯からわき上がる快感が、加速度的に高まっていく。
「や…… ああっ…… 」
『こなた』の身体の感度は抜群に良い。度重なる愛撫によって、
白い下着は、秘所から溢れ出した粘液によって、既にぐしょぐしょに
濡れていた。
「んあっ…… んむっ」
もう駄目だ。私は下着の中に手をもぐりこませて、膨らんだアソコの
突起を激しくかき回す。
恥毛がほとんど生えていないから、一番敏感な場所が濡れた
下着越しに、くっきりと浮かび上がってくる。
「こなたっ、こなたぁあ」
私は、無我夢中でアソコとその周りを愛撫しながら、
こなたの名前を連呼する。その度に身体が何度もびくびくと
鮮魚のように跳ねて、快楽の頂にあっという間に上り詰めてしまった。
「はあ、はあっ」
少しずつ退いていく快楽の余韻にひたりながら、私は立て続けに
荒い息をついた。
入れ替わった相手の身体で自慰をするという、この上ない
倒錯的な自慰は、羞恥心を代償としながら、かつてない興奮を
もたらしてくれた。
他人から見れば「ヘンタイ」の一言で切り捨てられそうだが、
この強烈な誘惑から抗うことなど、今後もできそうにない。
ようやく心が落ち着きを取り戻すと、約束の時間が迫っている
ことに気づいた。
私は濡れてしまった下着を脱ぐと、こなたの衣装ケースから
替わりの下着を拝借し、脱ぎ散らかした服も着て、身だしなみを
整える。
程なくチャイムが鳴り、玄関に駆け寄って扉を開くと、
妹のつかさと、『私』の姿をしたこなたが立っていた。
183 :
23-251:2007/11/18(日) 10:43:43 ID:ON1u3MUn
かがみん、ひとりえっち編とあいなりました。
自慰の描写は難しいですね。
ではまた。
P.S
>181のペース数ですが(4/6→5/6)に訂正します。
>>183 リアルタイムにて読了。ていうか日曜の朝からウェイクアップしました。
富士には月見草が良く似合い、かがみには一人えっちが良く似合う。GJ!
>>183
ツンデレこなた、、、!!
想像したら見事に鼻血が出ましたよ。ええ、リアルで。
とにかくGJ!!!
>>183 かがみ…人の体で何やってんのw
だがそれがいい。GJ!
さてさて、この後の展開にも期待しておりますぞ!
>>157 感動し過ぎて泣いた。どうしてくれるんだ!!
つまりGJ!!
>>183 このシリーズ好きやわ。
てか、かがみん、こなたの身体で何やってるのさ…。
>>187 仕事はえぇwwwGJ!
なんでこのスレの神たちはこんなに仕事が早いんだ…
悲しけりゃ思いっきり泣いたっていいよ
恥ずかしいほど悔やんでいいよ
涙が〜飽きるくらいに〜
……どなたですか? ……え? JA○RAC? ごめんなさい、使用料の徴収は(ry
16-187氏も妄想屋氏もGJっス
>>190 相変わらずGJ過ぎる!
そして仕事早ぇぇ
静かだ…。
これが嵐の前の静けさなのか…
にしても全く電波を受信しないのはクリスマスが近いからか?
充電中でございます
仕込み中でございます。
じゃあ俺が電波を受信したので、ちょっと長いけどここに。
10P位あります。
・一応主人公はこなた。
・エロありません。
・作者の実体験OTLがベースです。
・一部クロスオーバー箇所があります。
・AAの嫌いな人はすっとばしで。
<<えええええー!!!>>
<<そ、そんなー!!、う、うそでしょー!!!>>
どたどたどた。がちゃ。
ゆたか「お、お姉ちゃん!!どうしたの?」
そう君「こなた!!どうしたんだ!!」
こなた「お父さん、ゆーちゃん・・・、あたし、あたし・・・ゴメン、怪しい人がいる訳じゃないし、ちょっとショックな事があっただけだから・・・、ゴメンね、心配かけて・・」
ゆたか「そ、そうなんだ・・・でもお姉ちゃん、ちょっと泣いているよ・・・」
そう君「パソコン開いているけど・・・、何かあったのか?いじめか?そんなことする奴がいたらお父さんが即文句言ってやる!!うちの大切な娘になんということをするんだ!!」
こなた「ううん、人との事じゃないんだよ・・・だから、だから・・・もう1人にしてくれないかな・・・」
ゆたか「お姉ちゃん・・・」
そう君「こなた・・」
部屋から出る2人
ゆたか「おじさん、なんかお姉ちゃん、凄くショックを受けていたみたいだったよ・・」
そう君「あの表情は今まで私も見た事がない。本当にショックな出来事かもしれない・・
ゆーちゃん、明日こなたの動きをよく見張ってくれないか?私も付いていきたいけど出版社の打ち合わせがあってな、こなたについてあげられないんだ・・・」
ゆたか「うん、わかった。あと、ゆいお姉ちゃんにも連絡した方がいい?」
そう君「そうだな。何かあるといけない。忙しい身かも知れないけどゆいにも頼んでおいてくれ。今回は事が事だと。」
ゆたか「うん・・・・」
ゆたかは部屋に戻り、携帯を取り出して電話をかける。
ゆたか「もしもし、ゆいお姉ちゃん?ゆたかだけど、明日って・・・」
翌日
いつも通り朝食を作るこなた。今日はご飯に油揚げの味噌汁に鮭の切り身に白菜の漬け物と佃煮。
ほとんどが前の晩準備済みであとは鮭を焼いて盛りつけて味噌汁を暖めているだけだったりする。
でも目がうつろだった。しかも充血している。
ゆたか「ふぁぁー、おはようお姉ちゃん。」
こなた「ゆーちゃん・・・・おはよう・・・・」
ゆたか「お姉ちゃん・・どうしたの?なんか変だよ・・・」
こなた「ううん、なんでもないよ・・、そうそう、もうすぐごはんできるからお父さん起こしてきてくれないかな・・・今日打ち合わせだって聞いたから・・・」
ゆたか「う、うん・・・」
階段を上がりそうじろうの部屋でノックし、そうじろうを起こすゆたか。
そう君「おはようゆうちゃん。で、こなたの様子は?」
ゆたか「うん、朝ご飯はきちんと作っているけど、なんか目がうつろで・・・ お姉ちゃん、なんかいつもと違うよ・・」
そう君「昨日のあの叫び声、こなたがパソコンを開いたときからあったようだったな。なんかパソコンに関係がある・・か?」
ゆたか「わ、わたしもパソコンはあんまり知らないけど、なんか「あうとる−く えきくすぷれす」って画面を見たような気がする・・・」
そう君「あうとる−く えきくすぷれす?。こなたのPCはXP Media Centerだから、「Outlook Express」、メールのソフトだな。」
ゆたか「メールのソフト、じゃ、なんか彼氏のメールとか・・・」
そう君「なにぃ!!か、彼氏だとぉ!!人の娘を傷物にしやがって!!、どこのドイツだ、ぎたぎたにしてやる!!」
ゆたか「お、おじさん、落ち着いて!!た、たとえばの話しだから。それにお姉ちゃん、基本的に男の人と話しているところとか
私見た事ないし、休日はいつもアニメとかゲームの店とかいっているから、そういうのじゃないと思うよ・・・」
そう君「はあ、はあ、はあ、済まないなゆーちゃん。じゃあ、メールに一体何が・・・」
こなた「おとーさーん、ゆーちゃーん、ごはんできたよー、味噌汁冷めちゃうよー」
2人「「はーい」」
朝食の間は3人の間は静かだった。
流れてくるのはNHKのニュースのみ。
こなた「・・・・・」
そう君「・・・・・」(どうしたんだこなた、いつもならこういうところでつっこみを入れるのに・・)
ゆたか「・・・・」(お姉ちゃん・・・どうしちゃったんだろう・・・)
結局一言も会話はなく、こなたとゆたかは部屋に戻り制服に着替え学校に行く支度をした。
ゆたか「おじさん、いってきまーす」
そう君「おう、気をつけてな、そろそろ寒くなってくるころだし。」
こなた「お父さん・・・いってきます・・・」
そう君「こなた・・・大丈夫か?・・・なんか辛いなら今日は学校休んでも・・・」
こなた「ううん、平気。じゃあいってくるね・・・」
こうして、2人は家を出て、幸手駅に向かう。
その後姿を見続けるそうじろう。
そう君「こなた・・・どうしたっていうんだ・・・」
糖武線位勢崎線糟日部駅西口から学園の直行シャトルバスが出ているバス停。そこではいつも通り3−Bのクラスメートと若干1名違うクラスのメンバー、そして長身の下級生が待っていた。
かがみ「おーす、こなた」
つかさ「おはよう、こなちゃん」
みゆき「泉さん、おはようございます」
さん
みなみ「・・・・おはようございます」
もちろんかがみ、つかさの柊姉妹、みゆきさん、みゆきさんを慕うみなみ。この4人とこなた、ゆたかを合わせ
6人で登校するのが最近の日課だった。夏も終わり、冬も迫りつつあるこの時期、この時期だからこそこういう登校風景が貴重だったわけだが、4人とも、今日のこなたの表情が異変である事を気づかないわけがなかった。
こなた「・・・うーっす。」
ゆたか「みなみちゃん、先輩方、おはようございます。」
かがみ「ちょっとこなた?どうしたのよ?朝からそんな生返事で?また深夜アニメの見過ぎ?懲りないわよねぇ・・」
つかさ「お姉ちゃん、なんか今日のこなちゃん、ちょっと違うようだよ?なんかやつれた感じ・・」
みゆき「そうですねぇ・・、なんか泉さんの動きもちょっと芳しくない様子ですし・・・どうかなされたのですか?」
さん
みなみ「・・・ゆたか、泉先輩・・・」
ゆたか「え、えーとですね、それは・・・」
ゆたかが口に出そうとした時、ちょうどシャトルバスが到着した。
こなた「ゆーちゃん、先乗るから・・・、あとみんな、今日はちょっと1人にさせてくれないかな・・・・ゴメン・・・」
5人「・・・・・・・」
こうしてシャトルバスに乗り込む6人。6人はいつもバスの最後部が指定席なのだが(何故か誰も座ろうとしないが
それはこのかつて無い豪華メンバーをそろって見て朝の癒しとしたい3年男子群により暗黙の了解とされているとか)
今日だけはこなたは一番前の運転席直後の席に座り、後の5人が後部シートに座る異様な雰囲気を出していた。やがて学生達が乗り込み、バスはロータリーを回り発車する。
学校は尾沼公園や糟日部温泉のの近くにあるのでバスなら10分くらいで到着する距離だが、今日に限ってその10分は異様に長く感じられた5人だった。
かがみ「ねえゆーちゃん、こなたどうしちゃったのよ?なんかまるで彼氏にでも振られたような感じの落ち込みようよ?」
つかさ「えー?お姉ちゃん、こなちゃんて彼氏いたのー?」
かがみ「さー、私は少なくとも知らないわよ。でもそんな感じに見えただけ。」
みゆき「私も泉さんが男の人と一緒にいたという光景はあんまり見ていませんねぇ。最近もそうでしたし。せいぜい白石さんと
さん 文化祭の後片付けの時に話し込んでいた位しか・・・」
みなみ「・・ゆたか、何か知ってる?・・」
ゆたか「ううん、私も、よく知らないんです。ただ言えるのは、昨日夜お姉ちゃんがパソコンをいじっていたときに突然悲鳴を上げてそれからあんな感じで・・・」
かがみ「パソコン?なんかネトゲーでもやってアイテムとか取り逃がしちゃったとかじゃないの?」
ゆたか「いえ、私パソコンの画面を少しだけ見たんですけど、「あうとろっく、えくすです」というソフトを開いていて・・」
つかさ「アウトロック?エクスデス?なんかゲームのキャラっぽい名前ー。」
ゆたか「いや、ゲームじゃなくて、えーとぉー。」
みなみ「・・・ゆたか、それってメールソフト・・・」
みゆき「みなみちゃんの言う通りですね。それは「Outlook Express」、つまりWindowsの標準なメールソフトです。
さん たしか泉さんの使っているパソコンはWindowsXPでしたし。」
ゆたか「そ、そうです。その「あうとるっく えきすぷれす」を開いていて、それを見てからあんな感じ・・なんですよ。」
かがみ「メール?でもこなたって、携帯メールはよく出すけどパソコンのメールってあんまりみたことないわよね?」
つかさ「そうだよねー、いつもメールしてくるのは携帯だし。私が返事を書いている間に4通とか来ちゃうもんね。」
みゆき「そうですねぇ、私たちにもあんまりPCメールは出してきませんから・・・そこに何か衝撃的な内容が
さん あったりしている可能性は否定できません・・・。」
みなみ「・・・泉先輩、かなり落ち込んでる。なんかおかしいと思う・・・」
ゆたか「み、みなみちゃんもそう思うでしょ?だから先輩、今日のお姉ちゃんの行動に注意して欲しいんです。
おじさんからも頼まれましたし、あとゆいお姉ちゃんにも放課後に来てもらうように昨日連絡しておきましたから。」
かがみ「ん。わかったわゆたかちゃん。しっかしあのバカ、どうしたのよ一体!!人が心配しているのに!!」
つかさ「しー!!お姉ちゃん、こなちゃんに聞こえたらまずいよ!!」
かがみ「でもつかさー」
みゆき「かがみさん、今日は小早川さんの言うとおり、泉さんの動きに注意しましょう。私たちも出来るだけ
さん 普通に接するようにします。ですから、あんまり泉さんを刺激するような発言は気をつけて下さいね。」
みなみ「・・・ゆたか、私も、出来るだけ様子見に来るようにする。ゆたかは落ち着いて待っていて・・・」
ゆたか「え?みなみちゃん、それは出来ないよぉ!!私もお姉ちゃんが・・」
みなみ「いくら最近は調子がよくても、ゆたかは身体が弱い、ぶり返したらそれこそ泉先輩が余計悲しむ・・・」
ゆたか「で、でもぉ・・・」
みゆき「大丈夫ですよ。私たちは同じクラスなんですから、常に様子を見ておきますし。小早川さんは落ち着いて待っていて下さいね。」
さん
つかさ「そうだね、私たちが見ているから。心配しないで待っててよー。」
ゆたか「みゆきさん、つかささん・・・、あとかがみさんとみなみちゃん、それじゃあお姉ちゃんをよろしくお願いします・・・。」
そういうやり取りの直後にバスは学園前のバスプールに着き、6人ともバスを降りて校舎に向かった。
りーんごーんがんごーん。
ななこ「ほな、授業はここまでやな。次は第一次世界大戦後の世界の経済について説明さかい、ちゃんと予習せなあかんでー。日直ー。」
立木声「起−立。」
くじら「礼。」
立木声「着ー席」
がらがらがら。着席の声と同時に黒井先生が教室を出て行き、4時限目の授業が終わる。
生徒にとっての憩いのひととき、昼食タイムがはじまろうとしている。
いつの世も昼食タイムは喧噪に包まれる物である。
立木声「あー終わった終わった。じゃあ飯でも食いに行くか。お前今日どうする?」
杉田声「学食でうどんにするよ。最近金無くてさー。」
小野声「お前糟日部LLで使いすぎてるからだろ。じゃあ俺はAランチでも食おうかなー」
杉田声「うるせぇ!!俺はお前と違って彼女がいんだよ、やりくり大変なんだかんな!!」
立木声「あーあ、わーたわーた。そういうのろけ話は放課後じっくり聞きますから。」
小野声「じゃあ彼女以内同士仲良く美味しいものくおうぜ−。」
杉田声「あ、ちょ、ちょっとまてーお前ら−!!」
くじら「ねーねー、きょうどうするー。」
後藤声「あたしお弁当持ってきたから、外で食べましょうよー。」
西原声「あー、あたしー、パン買ってくるからさー、一寸待っててくれないかなー。」
くじら「えー?またダイエットしてるのー?どうせ元に戻るんだから無駄無駄。やめときなよ。」
後藤声「これで4回目だと思うけど・・」
西原声「う、うるさいな!今度こそは成功して、愛しのあの人好みの体型になるんだから!!」
くじら
後藤声「「はいはい」」」
生徒達の話題はどのような飯を食うか、そしてどのようなくだらない話しで休息を取るかに満ちあふれている。
そう言う喧噪の中、そことは縁のない一角が。
つかさ「あー、世界史苦手だよー。第一次世界大戦って覚える事多すぎー。」
みゆき「そうですねー、第一次世界大戦は産業革命によってもたらされた技術が高度に発展して物を生産したり
さん 絶対的な権力者が国を治める時代から民衆に政治の主権がシフトしつつある時代ですから、そこで起きる
出来事はとても広範囲になるわけですからね。もちろん日本も江戸幕府が倒れて天皇主権の国家になって近代化の波が押し寄せてくる時期で・・・」
つかさ「ゆきちゃん、もう昼だからそういう話しは、ちょっと・・・」
みゆき「あ、あら、いやですね。私ったら。つかささん、ちょっと調子に乗りすぎてしまいました。済みません。」
さん
つかさ「もー、ゆきちゃんってばー。説明し出すと周りが見えなくなっちゃうんだもん。」
みゆき「え、ええ。お恥ずかしながら・・・」
さん
つかさ「さーてと、じゃあお昼食べようよ、もうすぐお姉ちゃんも来るし、こなちゃん、今日のー!?」
みゆき「!!」
さん
かがみ「うーす。ひかるっちにつかまって遅くなっちゃったわ。もうお腹が空いて・・って、どうしたのつかさ?」
つかさ「お姉ちゃん、こ、こなちゃんが・・・」
かがみ「こなたが?あれ?こなたは?」
みゆき「授業の時は確かに前の席にいたのですが、私たちが話し込んでいる間に姿が見えないのです。」
さん
かがみ「え?えええ?」
つかさ「こなちゃん、今日お弁当持ってきていないのかな?」
みゆき「つかささん、泉さんの性格からして、そういうときは
さん
こなた『皆の衆ー、今日はあしちはお弁当がないのじゃよー。ということでちょっと買ってくるから先食べててほしいのぅ−。』
って一言断って出て行くと思います。」
かがみ「ま、言い方は相変わらずだけど、そういうところは結構律儀だからなぁ。」
つかさ「でしょう?だから、授業が終わったらすっと出て行っちゃったんじゃ・・・」
みゆき「これはあんまりよくない予感がします。」
さん
かがみ「みゆきさんの言うとおりね。ちょっと探しに行った方がいいー」
立木声「えーと、あ、あそこにいるよー。」
みなみ「・・・ありがとうございます。」
ゆたか「はあ、はあ、はあ、あ、かがみさん、つかささん、みゆきさん!!」
つかさ
かがみ「ゆたかちゃん!!」
みゆき「みなみちゃん!!どうしたのですか?」
さん
みなみ「・・・ゆたかが、「こなたお姉ちゃんが心配」だからって、授業が終わったらすぐに3年B組に向かおうって・・」
ゆたか「はあ、はあ、そ、それで、はあ、はあ、こなたお姉ちゃんは・・・」
つかさ「それがね、授業が終わったら急にいなくなっちゃったの。」
みゆき「私たちが話し込んでいる間に急にいなくなって、ちょっとこれから探しに行こうかと思っていたんですよ。」
さん
かがみ「なんだかよくない予感がするわね。少し急ぎましょう。じゃあ、私たちこれからこな」
ゆたか「私もいきます!!」
みゆき「小早川さん、ダメですよ、無理したら小早川さんまで」
さん
ゆたか「だって、だってお姉ちゃんが、お姉ちゃんが心配なんだもん!!絶対おかしいよお姉ちゃん!!」
みゆき「小早川さん・・・」
さん
みなみ「・・みゆきさん、ゆたかは私が付きそう。だから・・」
つかさ「ねー、お姉ちゃん、ゆきちゃん、ぐずぐずしているヒマはないよ、みんなで探せばきっと見つかるから
急いで探しに行こうよ!!」
かがみ「つ、つかさ・・・それもそうね。まったくあの馬鹿!!、何かあるなら私たちに話してくれても良いじゃない!!」
みゆき「かがみさん、お気持ちは分かりますが、ここは急いで・・・」
さん
みのる「WAWAWA忘れ物〜俺の忘れ物〜あの日あの時、此所二で稼いだ、貴重なバイト代〜」
つかさ「あ、セバスチャンだ。」
みのる「だ、誰がやねん!!俺は執事じゃないっていってるだろ!!って、今日もまた豪華なメンバーだなー、って、あれ、お前ら泉と一緒じゃなかったのか?」
かがみ「え?こなたと一緒って?あんたこなたを見たの?」
みのる「ああ、俺がパン買おうと思って教室を出たときに、財布忘れた事に気づいて戻ってきたんだけど、その時廊下ですれ違ったぜ。なんか浮かない顔して西側階段の方に向かっていったみたいだけど?」
かがみ「ちょ、ちょっとその話もうちょっと詳しく説明しなさいよ!!」
みのる「お、おい、柊、そんな恐い顔するなって。ど、どうしたんだよ?」
かがみ「理由は後!!とにかく今はこなたの事を聞いているの!!さあ早く!!」
みのる「わ、わかったよ。浮かない顔して通り過ぎていったんだけど、一応あいさつだけはしようと思ったら
こなた『また、まただよ・・・、もう、こんなのいやだよ・・・』とかつぶやいて、まるで絶望した表情の様に項垂れてそのままてくてく歩いていったのは見た。俺もいつもの泉の姿にしては
なんか異様だなと思ったけど、なんか声をかけるのも躊躇われるかなーって思って、それで教室に戻ってきただけだ。それ以上は俺も・・・」
かがみ「まあいいわ。で、ともかく、こなたは確かに西・側・階・段・に、向かったのね?」
なんか恐喝するかのようにみのるの襟元をつかんで揺さぶるかがみ。
みのる「WA、WA、そ、そう、間違いない、間違いないから、それはホントだって!!」
かがみ「そう、ありがとう。あ、ちょっと済まなかったわね。」
みのる「あきら様以上に勘弁して下さいよ〜」
つかさ「西側階段って、学食とは反対方向だよね。ということはこなちゃんお昼を買いに行った訳じゃなさそうだよ。」
みゆき「あと、西側階段から行ける場所といえば・・・」
さん
みなみ「・・・音楽室、倉庫、地学室と・・・」
ゆたか「あ、もしかして、屋上に行ける階段?」
つかさ
かがみ
みゆき
さん 「「「屋上?」」」
みなみ「・・・そう、屋上に行ける。この時期は寒いから出てる人はあんまりいないと思う・・・」
かがみ「決まりね。こなたは間違いなく屋上に向かったわ。」
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん屋上に何しに・・・」
みゆき「あんまり考えたくないですね。ともかく、急いで屋上に向かいましょう。」
さん
ゆたか「お、お姉ちゃん、だめだよ、変な事考えちゃダメだよ、そんなのいやだよ・・・」
みなみ「・・・ゆたか、私がおんぶしてあげる。ともかく急いで屋上へ・・・」
ゆたか「みなみちゃん、ゴメンね・・・」
こうして、3人と1人(こぶ付き)は3−Bの教室を出て西側階段から屋上に向った。それは異様な光景だったが、あまりのメンバーの必死さに圧倒され誰も話しかける事はなかったという。
3年の教室は1Fにあり、屋上は5Fに相当する部分の出入り口から出るため、3人と1名(こぶ付き)は必死の思いで4F分の階段を駆け上がった。
学園の屋上は金網が張ってあり、簡単な運動が出来るだけあって出入りは比較的自由に出来ている。
春や夏場になるとそこでお弁当を食べたりボール遊びに興じる生徒がいてそれなりににぎわっているのだが、冬場が近いこの時期、好きこのんで外でお弁当を食べる生徒はほとんどいない。
ましてや、高所の屋上は低所よりも気温が低く、さすがにお昼の時間帯とはいえ普通の制服レベルで過ごせるような場所ではない。従って、普通は誰も居ないはずである。
そして3人と1人(こぶ付き)は、屋上の入口の踊り場前にたどり着いた。
かがみ「はあ、はあ、はあ、はあ、」
つかさ「お、おねえ、お姉ちゃん、もうわたしある、歩けない・・」
みゆき「そ、そうですね、さすがに、一気に、か、階段を駆け上がる、の、は、私でも、はあ、はあ・・」
さん
みなみ「・・・・・・・」
ゆたか「みなみちゃん、ごめんね、重い上に、階段走らせちゃって・・・。ぐす。」
みなみ「・・・ゆたかじゃ、こんなには、早く、階段、あ、上がれないから・・・」
かがみ「と、ともかく、こんなところ、で、休んでいるヒマはないわ、はやく、はやく屋上に・・」
つかさ「う、うん、お姉ちゃん、ちょ、ちょっと苦しいけど・・」
みゆき「だいぶ、息もなれてきました、し、皆さん、急ぎましょう。」
さん
ゆたか「みなみちゃん、もういいよ、下ろして!!お姉ちゃんが、お姉ちゃんが!!!」
みなみ「・・・うん」
その言葉でみなみがゆたかを下ろし、5人となった彼女たちは踊り場から屋上に通じるドアにかけより、その重い金属の扉を開ける。
グイーン。
重々しくも歪んだ音と共に、突き抜ける空の青さと太陽の光が降り注ぐ。
しかし季節はもう秋も終盤。吹き抜ける風は女子の制服ではとうてい長時間耐えられるほどの温度では無くなっており、5人とも肌寒さを感じていた。
つかさ「うう〜ちょっと寒いよ〜お姉ちゃん〜」
かがみ「たしかに、つかさの言うとおりこの寒さはちょっとだけこたえるね。
みゆき「長時間の滞在は身体によくありませんね。手分けして探しましょう。」
さん
みなみ「・・・ゆたか、ここは寒い、待っていた方がいい・・・」
ゆたか「みなみちゃん、気持ちはうれしいけど、お姉ちゃんが心配だもん!!寒いからって待っていられない!!」
みなみ「・・・ゆたか」
みゆき「みなみちゃん、ゆたかちゃんの気持ちは分かってあげて下さい。それもよりも、今は早く泉さんを!!」
さん
かがみ「ざっと見たところ向こう側にはいなさそうだから、反対側を私とつかさで、みなみちゃんはゆたかちゃんと一緒に
踊り場の反対方向を、みゆきさんはここで怪しい動きが無いか見てて!!」
みゆき「かがみさん、わかりました。みなみちゃん、小早川さん、急いで踊り場の反対へ!!」
さん
みなみ「・・・・うん、ゆたか、早く」
ゆたか「お姉ちゃん、まってて!!」
狭い屋上ではあるが、こなた自身が小柄のため遠くでも見逃す可能性があると判断したかがみ。こうして3方向に分かれ、こなたの行方を捜す3人。
かがみとつかさは踊り場の真っ正面を駆け抜け、こなたの姿が隠れていないか探す。
踊り場の反対方向にはみなみとゆたかがそれぞれ回り込む。それほど面積は広くないがもちろんこなたの姿が埋もれていないかを確認する。
みゆきさんはその間に周りにおかしな気配が無いかを見渡す。踊り場の内部にも気を払う。
こうして探索を開始して5分。しかし誰もこなたの気配を探すことは出来なかった。
つかさ「色々見たけど、こなちゃんの姿はなかったよ〜」
かがみ「そうね、こっち側には金網の向こう側にも姿は見えなかったわ。ゆたかちゃん達はどう?」
ゆたか「かがみ先輩と同じです。どこにもお姉ちゃんの姿はありませんでした・・・」
みなみ「・・・小柄でもあの制服は目立つはず、でもそういう雰囲気は無かった・・・」
みゆき「そうですか・・・、こちらにも目立った動きはなかったようですし、屋上には来ていなかったと言うことでしょうか・・・」
さん
ゆたか「じゃあ次の場所に行こうよ!!こうしている間にもお姉ちゃんが・・・」
ゆたかの目は号泣寸前まで来ていた。
かがみ「ゆたかちゃん、とは言っても、あいつ、こなたが次に行きそうな場所なんて・・・」
つかさ「西側階段から行ける場所といえば後は校舎の裏手かグラウンドくらいしかないよ〜」
みなみ「・・・グラウンドや裏手に行っていたら、誰も行き先を知らないなんて事はないと思う・・・」
ゆたか「じゃあ、お姉ちゃん、お姉ちゃんはどこなのーー!!」
みゆき「ここまで来るともう・・・」
さん
と左を向くみゆきさんの視界に、ある物が映る。
みゆき「まさか!!」
さん
そう言うなり、みゆきさんは駆け上がり、踊り場の区画に据え付けられていた無骨な梯子を登り始めた。
つかさ「ゆ、ゆきちゃん!!」
かがみ「ちょ、ちょっとみゆきさん!!」
みなみ「!!、そう、そこがあった・・・!」
みなみはなにか察したのか、みゆきさんと同じように梯子を駆け上る。
ゆたか「あ、ちょっと、みなみちゃん待って!!」
かがみ「・・、そういうこと?、つかさ、追いかけるわよ!!」
つかさ「あ、お姉ちゃん、まってよ〜」
こうして、5人は踊り場の区画の上、普段は貯水タンクやら受信アンテナやらが設置してある校舎一の最高峰の区画に
上り詰めた。
そして、その右奥に、こなたが、いた。こなたは区画の脇に立って、南のグラウンド側をじっと見つめているようだ。
かがみ「どうやらビンゴだったようね。」
みゆき「はい、屋上の扉は確かに誰か開けていた形跡がありました。密かに屋上で間違いないと思っていたのですが
さん さすがにこの区画は私も盲点だったようです。」
つかさ「ゆきちゃん、すごーい。そんな事まで考えていたんだ〜」
みゆき「いや、お恥ずかしながら・・・」
さん
みなみ「・・・みゆきさん、そんな場合じゃない、早く泉先輩に・・」
ゆたか「そうだよ、お姉ちゃん雰囲気おかしいよ!!、早く近くに・・・」
そういうなり、こなたは前に踏み出した。その先はほぼ空との接点、いわば飛び降りるのには何も障害のない空への入口。
かがみ「ちょ、ちょっと!」
つかさ「こ、こなちゃんだめだよ!!」
みゆき「泉さん、ダメです!!早まっては!!」
さん
みなみは台詞も無く走り出した。
ゆたか「いやぁぁぁぁぁ、お姉ちゃんダメぇぇぇぇぇぇ!!!」
そして、こなたは・・・・
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____ ハ }
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と、思いっきり校舎の上から叫んでいた。
その瞬間、その場の雰囲気が凍り付いた。取り押さえようとしたみなみも、あまりの衝撃度にその場に立ち止まった。
その大音声を聞いた下界でも
立木声「な、なんだい間の叫びは!?」
くじら「ちょ、ちょっと、今の何よぉ?」
と突然の叫び声に混乱した。今は昼時、屋上からそのような声が聞こえて来れば無理もない話である。
こなた「あ−、すっきりした。もうア○ゾンのメール、もとい角○とリ○フは年末商戦を回避しやがって〜
せっかくの年末の優雅なゲームライフがぁぁぁ、もう。でもいいや、これで気が晴れたから教室に帰ってみんなとお昼でも〜・・、っておよ!!」
かがみ「・・・・・・・(じとー)」
つかさ「・・・・・・・(むーー)」
みゆき「にこにこにこ(ゴゴゴゴ)」
さん
みなみ「じーーーーー(氷の視線)」
ゆたか「お、お姉ちゃん、昨日からのそのおかしな態度って、そ、それだけだったんだ、そ、それなのに・・・」
こなた「あ、ああ皆の衆〜これはこれはお揃いで〜、ははは、いやー、桜○祭もADも延期になっちゃったしさー、せっかく初回特典付きで予約したのにねー。」
ゆたか「
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杉田声「こ、今度はなんなんだ?」
小野声「だ、誰か屋上にいるようだよ?女子か?」
西原声「ねえ、なんか今日テレビの企画あったっけ?」
後藤声「しらない〜そんなのあったかなー」
こうして、こなたは屋上から教室に戻る間に5人にそれぞれお小言で結構絞られ、こなたは終始借りてきた猫のようにおとなしくなった。むりもない。
そして3−Bの教室。
こなた「いやいや皆の衆、心配かけて申し訳ない。ゆーちゃんもまさかそこまで心配してくれていたなんてあたしゃちっとも気が付かなかったよー。」
ゆたか「もう、お姉ちゃん!!、普通あんな表情で屋上にいたらよくない想像するもん!!全く、心配した私の身にもなってよ!!」
かがみ「ゆたかちゃんの意見に同感だわ。アンタ、たかだか萌えゲームのソフトが延期したくらいで、そんなに落ち込むこと無いでしょ!!あげくの果てに誤解される行動するなんて最低よ。」
つかさ「こなちゃん、ちょっと今回は酷すぎるよー。みんな本気で心配したんだからねー。」
みゆき「泉さん、楽しみにしていたソフトが延期してショックなのは分かりますが、今回は小早川さんが一番心配していたのですよ。
さん その点を反省して下さいね。」
みなみ「・・・次、ゆたかを悲しませたら、ゆたかの親類で先輩でも許さない・・・」
こなた「わかった、わーかりました。反省します。今回限りでこういう事はしません!!。どうかお許しを!!」
かがみ「ったく、もうこれに懲りて二度とこういう事はするんじゃないわよ!!。」
こなた「ひえー、かがみさまがお怒りじゃー」
かがみ「あんた、ちっとも反省してないようね。」
こなた「そ、そんなことは無いですよかがみ様。もうあたしはこの通り心を入れ替えましたから。どうかお許しを。」
かがみ「まったく・・」
つかさ「こなちゃん、あたしそういうのって感覚分からないけど、つらかったらちゃんと話してくれれば聞いてあげるよ〜。だからね、こういうことはもうしないでね。」
つかさ「つかさ・・・、ごめん。わかった。」
みゆき「かがみさんもつかささんも、もうこれくらいにしてそろそろお昼を食べませんか?。あと20分しか無いですけど。」
さん
かがみ「え?あと20分?もう、こなた、どうしてくれるのよ!!なんか早食い選手権のように食べないといけないじゃない!!」
つかさ「と、とりあえずもう食べようよ。時間もったいないし・・・」
みゆき「そういえば、みなみちゃんと小早川さんはどうするのですか?今から教室に帰っても・・」
さん
みなみ「・・一応、お弁当はこっちに持ってきた。ゆたかの分もある・・・」
つかさ「わー、みなみちゃんもすごーい。」
みなみ「・・・べ、別に・・・・」
ゆたか「みなみちゃん、何から何までありがとう・・・」
かがみ「あーあ、誰かさんのせいで可愛い1年生までこの有様だなんて、だれかさんは罪作りねー」
こなた「ううう、ゆーちゃん、ご、ごめんよー。」
ゆたか「もう、お姉ちゃんはいつもの感じでいてくれないよいやだよ。だから困ったら私に何か話してね。話を聞いてあげることくらいしか出来ないけど・・・」
こなた「あー、ゆーちゃんって可愛いなー」
がし。こなたがゆたかを頭から抱きしめる。
ゆたか「ちょ、ちょっと、お、お姉ちゃん、はずか・・しいよ・・・」
こなた「心配かけたダメ姉でごめんよー。あたしゃ可愛い従妹をもって幸せだよー。」
つかさ「あー、いいなー。こなちゃんお姉ちゃんって感じで。ねーねーお姉ちゃん、こんど私にもー。」
かがみ「つかさ、あんたいい歳して甘えん坊ってことはないでしょ?」
つかさ「ふぇ・・・お、お姉ちゃん酷い・・・・・」
かがみ「わ、わーたわよ!!、今度やってあげるから!!そこ、がっかりした表情しない!!」
つかさ「え?ホント?わーい、お姉ちゃん大好きー。」
かがみ「べ、別にたいしたことないんだから。それにつかさがして欲しいからやってあげるだけなんだからね!」
みゆき「あらあら、いいですね、姉妹そろっている家はこういう雰囲気が出来て。」
さん
みなみ「・・・み、み、みゆ、みゆき、みゆきさん・・・」
みゆき「あら?みなみちゃん、どうかしたのですか?」
みなみ「・・・やっぱり、何でもない・・・(私も、みゆきさんにして欲しい・・・。がっかり)」
みのる「おっと、泉もどってたのか?」
こなた「おや、これはこれはセバスチャン。今日もお嬢様をお迎えで?」
みのる「だ、誰がやねん!!もう一度言うが、俺は執事じゃないっていってるだろ!!まったく。」
こなた「いやいや〜テレビでの評判は聞いていますよー。よ、有名人!!」
みのる「う、うるせぇ!!そんなに楽な職業じゃないんだよ。いろいろあんだよ色々と。って、そうだ、泉さ、古いP○Pって持ってない?」
こなた「え?P○P?」
みのる「いや、俺「涼○ハルヒの約束」の初回限定版予約したんだよねー。でもP○Pは持ってないからさー、誰かに譲って貰おうかと
思って。泉ならきっと新型P○Pを買って旧P○Pを余らせていると思ったんだけど。安く譲ってくれよー」
こなた「し、しまったー!!!「約束」予約し忘れたー!!、ついでに新型もーーー!!」
ゆたか「お、お姉ちゃん・・・」
かがみ「ゆーちゃん、災難だわね・・・・気を落としちゃダメよ。」
つかさ「こなちゃん、やっぱり、そういうキャラなんだね。」
みゆき(12月ですけど、勉強とかは大丈夫なんでしょうか・・・)
さん
こうして、歴史は繰り返されるという。
さて、こなたの12月はどうなるのか?そしてソフトの行方は?いずれ語られる事もあるだろう。
さて、この話しと平行して、糟日部から遠く離れた関西の二四ノ宮付近。
とある高校のとある部室での風景でそれは起こった。
ハ○ヒ「ん!!」
み○る「あら〜、涼宮さん、どうなさったんですか〜」
ハ○ヒ「感じたわよ、感じたわ!!ねえ、みんなも感じたでしょ?ほら、何かの叫びって言うか、脳に直接入ってくるような感覚!!
これってテレパシーよね!!、あたしも遂に超能力が身についたんだわ!!さすがS○S団の団長ね!!」
キ○ン「おいハ○ヒ、なに昼時だからって馬鹿なこといってんだよ。俺には何も感じられなかったぜ。」
ハ○ヒ「まあ、鈍感な馬鹿キ○ンには100年経っても感じられるわけ無いわよね。そう、やっぱり私は選ばれた人間なのよ!!
みんな、今日の放課後、早速その正体を突き止めに行くわよ!!」
キ○ン「おい古○、お前からなんか行ってくれよ。今テスト期間中なのにそんなこと出来るわけねぇだろ?」
一○樹「おやおや、キョンさんらしくもありませんね、涼○さんの興味がそういう方面に向いているのを止めると、いつもの通り
また閉鎖空間ものですよ。」
キ○ン「それも頭が痛い話しなんだがな・・・おい長○、さっきのハ○ヒの言っていたことは本当なのか?」
有○希「・・・有機生命体の一時的な閉塞的感情が音声となって東の方角から送信されたことは事実。ただし別に超能力やその他の能力によって
生成されたものではない。分かりやすく言えば叫び声。」
キ○ン「そうか、って、なんで東の方からそんな叫び声が聞こえてきたんだ?」
有○希「その理由として推定される項目は3億通り。」
キ○ン「一番確率の高いのにしろ。」
有○希「単なる偶然」
キ○ン「ご大層な事言って、それが理由かよ・・・」
一○樹「まあまあ、そういう事もたまにはあるんでしょう。ともかく、涼○さんの興味が超自然的なもに向いていれば
閉鎖空間が開かれることはないわけですからね、願ったりかなったりだと思いませんか?」
キ○ン「ああ、もう、勝手にしてくれよ・・・」
ハ○ヒ「ちょっと馬鹿キ○ン!!何そこでグジグジいってんのよ!!いい、放課後すぐに部室に集合すること!!
さっきの叫びの正体を探索するんだからね!!」
み○る「あ、あの〜、わ、私今日ちょっと用事が〜」
ハ○ヒ「そんな用事後回し!!み○るちゃんも当然参加!!。今日の衣装はメイド服を用意したから、それを来て貰うわよ!!」
み○る「ふ、ふえ〜、勘弁して下さいぃ〜わ、私もうじろじろ見られるのは〜」
ハ○ヒ「だーめ!!団長命令なんだから。それに見られるって良いことでしょ?。特にこの胸が!!」
ぐにゅ。
み○る「ちょ、ちょっと、やめてくださーい!!、だめぇ、キ○ン君が見てますぅ〜」
ハ○ヒ「いいじゃない、どうせ減るもんじゃないし。って相変わらず大きいわねみ○るちゃんの胸〜」
み○る「ふ、ふぇ〜」
キ○ン(ああ、神様、俺は、どうしてこういう場に、こういう形で居なければいけないんだろうか。もうどうにでもしてくれ・・)
その時別の場所での出来事
谷○口「「WAWAWA忘れ物〜俺の忘れ物〜あの日あの時〜置き去りにした、俺だけの「弥生」〜・・・って、あああああ!!どうしてだぁぁぁ!!」
そこにはある書き置きが
「あんた 調子に 乗ってんじゃ ないわよ!!」
糸冬
かがみ「まったく、あんたったら・・・」
こなた「ご、ごめんよかがみさま〜」
かがみ「あ〜まだ反省の色がないようだから、罰ゲームといくわね」
つかさ「おねえちゃんにさんせー」
みゆき「異議はありません」
ゆたか「いくらおねえちゃんでもゆるせないんだから」
みなみ「・・・ゆたかに・・・同意・・・」
かがみ「というわけで、一日、みんなこな☆フェチ発作〜」
こなた「え・・・!?何?何!?
みんな目が何か光ってる・・・・
みゆきさん鼻血鼻血
つかさ立ったまま気絶って・・・
ゆーちゃんとみなみちゃん、何拉致ろうとしてるの?
かがみ・・・そのワキワキ手で何をしようとして・・・
わーーーみんなマジごめんよ絶対二度としないかr・・・アッー!!」
とにかく最高のGJGJGJGJを、
>>196に捧げましょう(゚∀゚)9m
>>209 台詞の前の名前はやめたほうがいいとか(これだけ台詞回しができてれば大丈夫だと思う)、
ところどころにある謎の「さん」はなんだろうとか(……って、ああ、「みゆきさん」か)、
AAに逃げちゃったのが惜しいとか(せっかくのクオリティが下がる気がする……)、
思うところはいろいろあるけど、まずは乙っした。
それにしてもこの週末は人が少ないな……大規模規制でもあったっけ?
YBB、DION、eoなど巻き添えが多いところは規制されてませんがね……
急な気温変化で風邪を引いたのかも
……あ、それは自分だけですねorz
213 :
196:2007/11/19(月) 01:17:28 ID:jk72Wm5u
>>211 言い訳がましいが一言。
台詞回し →余の部分につなげる必要があったので
(あの部分を省くと余の展開と、本編のあのモブ2人の雰囲気が伝わらない)
謎の「さん」 →軍曹にも言われただろ、「まほろ」「さん」と付けろと。それは「みゆき」「さん」にも当てはまる。
AA →こなたのAAは微妙だけど、あの文字AAは、それだけ大音声を出していたとして表現しているんだよ。
htmlだと気のせいに出来るけどさ・・・
ではまたな。
みゆきには「さん」をつけたいという気持ちはわかるけど
みゆき
さん
はないと思った
いやいや、今回はAAで表現したかったんだとおもうぞw
AAでなければいけません、今回はw
それほどの激しい魂の慟哭(リアル含めて)、という表現だったのです。
型にはまらぬ、よい表現法じゃあありませんか、
まあだからといって、今後乱立するようなことがあってはならないでしょうし、
これほどのクオリティじゃないと、初回であっても微妙に終わってたでしょうw
とにもかくにも、俺はGJを捧げるぞ。
重要なのは面白いか面白くないかだ!!! ……ん? 間違ったかな
?
少々読みにくいのは頂けなかったが、俺は面白いと思ったぜ。
お疲れさん
>今後乱立するようなことがあってはならないでしょうし
同意。今回のはOZMAの裸スーツみたいなもんだと思った。
二番煎じはゴメンですな。
>>196 乙でした。けどこなたさんや、その慟哭は一体……。
>>211 やられた…… 吸収だ……!
ゆたか&ゆいやみなみ&みゆきのように
このスレのSS作家が…… こなかがスレに吸収された……!
219 :
196:2007/11/19(月) 02:11:27 ID:jk72Wm5u
220 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 09:44:43 ID:3r+nx/87
>>209 レッツ蛇足
ななこ「よぉ泉ぃ、さっきは会心のシャウトやったなぁ」
こなた「黒井先生っ! 先生ならわかりますよね!?」
ななに「まぁゲームの発売日延びる言うんは、最近の関心せん傾向のひとつやな
ドラクエI作った頃の堀井雄二と中村光二のつめの垢煎じて飲むべきやで」
こなた「ですよねっ!? ですよねっ!?」
ななこ「まぁその気持ちはよっく理解できるんやけどな、泉ぃ……」
こなた「はっ?」
ななこ「アクアプラスやったらまだええ。けどな、ガッコん中でLeafはなぁ……」
こなた「うっ……」
ななこ「放課後、生徒指導室までこいや〜」
かがみ「こなたの下校も延期か」
こなた「どんだけぇ〜」
>>196
乙でした!読みにくいところがしばしばありましたが、
自分的には十分面白いssだったと思います!GJでした!!!
つかさの様子がおかしい。
朝、起き出してきたと思ったら、どうも足取りがふらふらしている。
それに、なんだか瞳が潤んでいる。
「お、お姉ちゃん、けほっ。洗面所、わたしも使いたいから終わったら声かけてね…けほけほっ」
どうやらカゼを引いたらしい。
「つかさ。はい、体温計」
姉の権力を利用して、強制的に計らせる。
こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
「――うわぁ。38度もあるよ……ふにゃ」
高熱があるとわかった途端、つかさは床に崩れおちた。
「ちょっ、つ、つかさ。大丈夫?」
慌てて駆け寄って、額に手をあてる――すごく熱い。
顔だって、夕焼けみたいに真っ赤だ。息も荒い。
びっくりして、思わず叫んでお母さんを呼んだ。
「仕方ないわね。つかさ、今日は学校お休みしましょう」
「…う、うん。わかった。えへへ」
お母さんに言われて、つかさは嬉しそうに表情をゆるめた。
わかる。確かに、病気で学校を休むときは、なぜが嬉しい気分になる。
でも、なんだか悔しいから、少しだけ意地悪を言わせてもらうことにする。
こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
「つかさ、なんだか嬉しそうじゃない。なになに? 学校を休めるのがそんなに楽しみなわけ?」
「そっ、そんなことないよっ」
布団から顔を半分だけ出して、つかさはおずおずとわたしの方を見る。
高熱のためか顔は赤らみ、瞳はあいかわらず潤んでいた。トレードマークのリボンは今は外している。
「あ、あのね? お姉ちゃん。帰りに、こなちゃんから宿題のプリントとか、貰っておいてくれないかなぁ?」
カゼを引いても、やっぱりつかさは真面目だ。
思わず笑みが漏れる。
でも、そんなつかさは、姉のわたしから見ても可愛いので、少しだけ意地悪したくなってしまう。
「宿題を貰っても、あんたどうせ、いつもみたいにギリギリまでやらないんでしょ?」
「そ、そんなこと、ちゃんとやるよっ……けほけほっ」
手をパタパタと振りながら否定したつかさだったが、途中で耐え切れずに咳き込んでしまった。
しまった。ちょっといじめすぎたか…。
「了解。ちゃんとプリント貰ってくるから、しっかり寝てるのよ。じゃあ、わたしは学校に行ってくるから」
「う、うん。ありがとう、お姉ちゃん」
弱っているつかさを見ていると、なんだか胸が締めつけられた。
今日はなるべく早く家に帰ってくることにしよう。
「仕方ないわね。つかさ、今日は学校お休みしましょう」
「…う、うん。わかった。えへへ」
お母さんに言われて、つかさは嬉しそうに表情をゆるめた。
わかる。確かに、病気で学校を休むときは、なぜが嬉しい気分になる。
でも、なんだか悔しいから、少しだけ意地悪を言わせてもらうことにする。
こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
「つかさ、なんだか嬉しそうじゃない。なになに? 学校を休めるのがそんなに楽しみなわけ?」
「そっ、そんなことないよっ」
布団から顔を半分だけ出して、つかさはおずおずとわたしの方を見る。
高熱のためか顔は赤らみ、瞳はあいかわらず潤んでいた。トレードマークのリボンは今は外している。
「あ、あのね? お姉ちゃん。帰りに、こなちゃんから宿題のプリントとか、貰っておいてくれないかなぁ?」
カゼを引いても、やっぱりつかさは真面目だ。
思わず笑みが漏れる。
でも、そんなつかさは、姉のわたしから見ても可愛いので、少しだけ意地悪したくなってしまう。
「宿題を貰っても、あんたどうせ、いつもみたいにギリギリまでやらないんでしょ?」
「そ、そんなこと、ちゃんとやるよっ……けほけほっ」
手をパタパタと振りながら否定したつかさだったが、途中で耐え切れずに咳き込んでしまった。
しまった。ちょっといじめすぎたか…。
「了解。ちゃんとプリント貰ってくるから、しっかり寝てるのよ。じゃあ、わたしは学校に行ってくるから」
「う、うん。ありがとう、お姉ちゃん」
弱っているつかさを見ていると、なんだか胸が締めつけられた。
今日はなるべく早く家に帰ってくることにしよう。
「ただいま。つかさ、起きてる?」
もしも寝ている最中だった場合、起こしてしまってはマズイので、あくまで小声で、わたしはそう声をかけた。
「…………」
返答は無言。どうやら眠っているらしい。
そろそろとつかさの部屋のドアを開けた。
つかさは布団にくるまり、朝と同じように顔を半分だけ出して眠っていた。
わずかに眉をたわめているように見えるのは、決して気のせいではないだろう。
あれだけの熱が出れば、苦しくないわけがない。
わたしは溜め息を吐くと、こなたに貰った宿題のプリントを、つかさの机の上に置いた。
そして、起こさないように気をつけて、部屋から出て行こうとする。
「……お姉ちゃん?」
しまった。どうやら起こしてしまったようである。
「つかさ、起きたの? 体調はどう?」
「――ん。少し頭が痛い、かな」
つかさの声は、なんとなくぼんやりとしていた。
「安静にして、早く治しなさい。こなたもみゆきも、みんな心配してたよ」
「うん。……けほっ」
ふたたび体温を計らせてみると、なんと39.6度もあった。
びっくりして、わたしはお母さんを呼びに台所へと走った。
でも、お母さんはまだパート先から帰ってきていなかった。
「ど、どうしよう」
39度というのは、病院に行かなくても大丈夫な体温なのだろうか。
考えるだけで縁起が悪いが、もしかして、死んでしまったりすることはないのだろうか。
わたしは急いで電話機の前まで走り、救急車を呼ぼうとした。
「……繋がらない」
なぜ? と考えるわたしの目の前で、電話機はツー、ツー、と無機的な音を立てていた。
壊れてしまっているのか。よりによって、こんなときに。
再び二階に上がる。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
憔悴したわたしの表情に気づいたのか、つかさが心細げにこちらを見る。
とても辛そうであり、表情は弱々しかった。
どうしよう。
つかさが死んでしまうかもしれない。
「ちょっと待ってて!」
言い置いて、わたしは洗面所へと走った。
タオルを水につけて絞る。部屋に戻ると、それをつかさの額にあてた。
「……気持ちいい。ありがとう、お姉ちゃん。……けほっ」
不安になり、思わずつかさの手を握る。
「……お姉ちゃん?」
つかさはきょとんとしたが、わたしは尚一層、力を込めてつかさの手を握った。
「つかさ。絶対に病気を治しなさいよ。そうでないと、ただじゃおかないからね」
声に力を込めて、わたしはそう言った。
力みすぎじゃないかと誰かに言われそうなほどだったが、そんなこと、今はどうでもいいのである。
「う、うん。わかった」
つかさは気圧されたようにコクコクと頷いた。
そう。それでいい。こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
結局、家の電話がダメなら携帯電話があるじゃないかということにわたしが気づいたのは、お母さんが帰ってきて、慌ててつかさを病院へ送って行ったあとだった。
医者の診断によると、つかさは重めのインフルエンザに罹っていたと言うことだ。
薬を貰い、つかさはそのあと、一週間寝込んでいた。
そして一週間経って、つかさがやっと全快した頃、今度はわたしが熱を出して倒れたのだった。
「あのー、お姉ちゃん、大丈夫?」
体温計を咥えながら寝込んでいるわたしに、つかさがおずおずと声をかけてきた。
じろっと睨むと、つかさは立ったままビクビクと怯える。
「大丈夫じゃないわよ。誰かさんに伝染されたせいで、インフルエンザに罹っちゃってるんだから……けほけほっ」
ちなみに熱は38度ある。
「その、だって、仕方ないよね? わ、わざと伝染したわけじゃないんだし…」
そう言って、つかさは胸のあたりで指をもじもじ絡み合わせつつ、上目遣いにわたしを見た。
これはたぶん、『怒らないでね?』のジェスチャーなのだろう。
まったく、姉のわたしから見ても、つかさは本当に可愛いのである。
でも、なんだか悔しいから、少しだけ意地悪を言わせて貰うことにする。
「罰として、熱が下がるまで付きっ切りで、わたしの看病をすること。わたしがアイスを食べたいと言ったら走って買ってくる。わたしが頭痛いと言ったら冷たいタオルを持ってくる。…いいわね?」
「ええっ? そ、そんなぁ、お姉ちゃん。わたしだって、休んでるあいだに溜まっちゃった宿題をやらないといけないのに」
わたしは不敵に笑ってみせる。
「そんなの簡単じゃない。ここでわたしの看病をしながら、ついでに宿題も一緒に片付ければいいのよ」
「ええーっ?」
つかさはびっくりして目を点にしていたが、わたしとしては、そのくらい当然やって貰いたい。
だって、つかさのときには、こっちだって散々に心配させられたのだ。
「これは、姉としての命令だからね。いいわね? つかさ」
「うぅ。お姉ちゃんの意地悪……」
熱で朦朧とする意識の中、わたしはにっこり微笑んだ。
こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。
END
間違えた……orz
223は無かったことにして下さい。
GJ!
カップリングなしのかがつかは、ほんわか浸れていいね。
『こんなとき、妹に拒否権は存在しないのである。』
のリフレインもばっちり決まっててかっこいいなぁ。
こんなとき、我々にGJしない権利は存在しないのである。
久しぶりにかがつかを見たような気がする
要はGJ!ということである
かがつかGJ!
ところで質問ですがチェリー視点でみなみの話のSSのタイトルと作者名教えて
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ウマー
233 :
19-256:2007/11/19(月) 17:52:36 ID:tboxDfAl
やっとこ書きあがったので投下させていただきます・・・
こなた&ななこ(&かがみ?)
非エロの、6レスくらいです、多分
あと、過度な期待はしないでください
どさり、と、敷かれた布団に倒れこむ。
長いブロンドの髪がふわりと虚空に揺らめいた。
「・・・疲れた。」
自分以外の誰もいない部屋で、ぼそりと黒井ななこは呟いた。
修学旅行もあと一日で終わり。最終日を控えた前日、夜、旅館、自室にて。
「まさか・・・こないに・・・。」
疲れるとは、思ってもみなかった。いや、そう言うと語弊が生じる。
修学旅行というイベントに先駆け、疲れるのは元より覚悟の上であった。
ただ、自らの体力がここまで落ち込んでいるとは思っていなかったのだ。
新米の頃、教え子達を追い掛け回していた自分の姿は、完全に過去の幻影となっていた。
「・・・はぁ。」
腰が痛い。その痛みに伴い自分が確実に老け込んでいることを痛感する。
「・・・風呂、入らな。」
時刻は22時30分をちょうど回ったところ。
各部屋の消灯の確認、明日の日程についての確認。
いろいろと面倒事(こういう解釈は教師として少し不味いかもしれないが)が続き、入浴もしないままこんな時間になっていた。
さすがに自分も女性の端くれであり、日中汗をかいた体を流さずに寝るのはどうにも忍びない。
むくりと起き上がる。腰から下半身にかけてびりびりと痛む。疲れがたまったのか、老けたのか。
さすがに大浴場まで歩いて行くのは面倒になり、室内に備え付けのシャワーで我慢することに決めた。
さっさと汗を流してさっさと寝よう。そう考えつつ、入浴の用意をしていた、そのとき
―――ピンポーン
部屋のチャイムが鳴った。
こんな時間に人が来るのは、予想外だった。
何かトラブルがあったのだろうか。怪訝な表情をしつつ、カチャリとドアを開けた。
・・・誰もいない、と、一瞬思った。小さすぎて。
「どもー、こんばわー・・・。」
「い、泉・・・?」
そろりとドアの陰から顔を出した人物に、完全に意表を突かれた。
「なんや、なんかあったんか?」
「い、いやー・・・そのですね・・・。」
こなたが口ごもる。
器物損壊?他校生への猥褻?窃盗?盗撮?
気分が気分なだけに、妙に嫌な想像が浮かんだ。
「その、かがみとかみんなもう寝ちゃってですねー。知ってのとおり私夜型なもんで・・・寝付けなくて、それでですねー・・・。」
「・・・まさか、遊びに来たとか言うわけやないやろな?」
「・・・アハハー。ダメ・・・ですかね?」
「お、ま、え、はぁぁぁ・・・。」
刹那、ごつんと一発裏拳を振り下ろした。疲れのせいか、いつもより音に張りがなかった。
「あでー!」
「寝れへんからって教師の部屋に遊びに来る生徒がおるかい!」
「わ、私はただ旅行を通じてのスキンシップを・・・」
「えーい、やかましわ!」
駄目だ、声を張るだけで疲れる。本気でこのまま寝てしまいたい、と思った。
「アレ?先生お風呂まだなんですか?」
スーツ姿のななこを見て、こなたが言う。
「ん、ああ・・・。色々忙しくてな・・・。もうとっととシャワー浴びて寝てまうとこやった。」
「シャワー!?大浴場は?露天風呂は行かないんですか!?」
「もうええよ・・・今日は疲れたし、腰も痛いし・・・。」
「先生、それはいけません!!」
「な、なんや、腰の痛みは死のサインなんか?」
「そっちじゃなくて!お風呂!お風呂です!」
「・・・はぁ。」
「せっかく旅行に来たんですから、きっちり満喫せねばないでしょう!
それに、現代人がストレスを溜め込む兆候にある一端に、
湯船に浸からずシャワーだけで行水を済ますということが挙げられます!
かの有名な美人指揮官も申しております!『風呂は命の洗濯よ』と!」
体を振るわせつつ長々と説明する。相変わらず変な所で饒舌になるな、と思った。
「・・・要するに、暇だから大浴場行きましょー、って言いたいんやろ?」
「・・・そうともいいます。」
「・・・はぁ。」
自分の生徒に諌められるのは、何だか少し悔しい気もしたが。
「ええよ。準備してこい。」
「え、ほんとですか!?行ってくれるんですか!?」
「何や、嫌ならええんやで。」
「いえいえ、是非ともお供させてくださいまし!」
では!と言い残しさっと自分の部屋の方向へ走り出した。
消灯時間が過ぎているのに、生徒と風呂へ行くなど、本来許されることではないが・・・たまにはのんびりしていってもいいだろう。
用意されている浴衣に手をかける。パリッとした肌触りが心地良い。
「せんせー!早くー!」
気づけばすでにこなたが部屋の前に戻ってきていた。その若さと溢れんばかりの元気さが恨めしい。
「おう、ほな、行くか。」
やっとこ気分を落ち着かせ、着込んでいるスーツをするすると脱ぎ始める。
「おお・・・」
「・・・なんや。」
「なんていうか・・・エロいですね。」
「お、女同士なんやから別にええやろ・・・。」
服を脱ぎながらこちらをまじまじと見つめてくる。柄にも無く少し気恥ずかしくなっていた。
「のおっ!」
「ど、どないしたんや。」
ななこがズボンを下ろすと同時にこなたが妙な声を上げた。
「いや〜、たまりませんなぁ〜。」
「な、何の話や。」
「やっぱり金髪美人には黒下着がよく似合いますよね〜。なんか某ツインテ鎌持ち魔法少女を彷彿させますよ。
今度一緒にコスプレでもしません?」
「お、お前は何をまた・・・それに、美人て、ウチはそないに・・・。」
「あ、私はそっちのケはないですからね、念のため。」
いつの間にかこなたは一糸纏わぬ姿となり、タオル片手に風呂の方へすたすたと歩いている。
完全に相手のペースに乗せられているのがさらに気恥ずかしい。
自分もさっさと服を脱ぎ、こなたの後を追った。
「おー、結構広いんやなー。」
「ほれほれ、さっさと入りましょうよ。」
「いや、風呂に入る前に体を流さな・・・。」
「そんな固いこと言わないで、どうせ私達しかいないんですし。ほら、ざぶーんと!」
やいなや、こなたはざぼんと風呂に入ってしまう。
続いて自分も湯船に浸かる。少し熱い。
「ふぃー。やっぱでかい風呂はええもんやなー。」
「いやーほんとに。でっかいのはひじょーにいい眺めですなー。」
「・・・さっきからお前の発言はあからさまにおっさんやぞ。」
体がじわりと解れていく感覚。切羽詰った修学旅行中に、こんなに気が休まることなどはなかった。
背中を流そうとふと立ち上がる。
「お背中流しましょうか?」
「そんなに気ぃ使わんでもええって。」
「いやいや、せっかくなのでやらせてくださいよ。」
「ん・・・ほんなら頼もうかな。」
「お任せあれ〜♪」
もこもことタオルを泡立てた後、背中をゴシゴシとこすり始めた。見かけによらず結構力の入ったストロークであった。
「きもちいーですか?」
「おう。ええ感じやで。」
「ほんとですか?」
「なんで嘘言わなあかんのや。」
「そですか・・・えへへー・・・。」
いつもの不敵な笑いではない、素直な感情が伝わってきたことに、ちょっとした違和感を覚えた。
「・・・なんかあったんか?」
「え、いや、別に何も無いんです、けど・・・。」
「なんや、言うてみい。」
「なんかその・・・お母さんみたいでですね・・・ちょっと楽しくて。」
そういえばこなたの母親は若くして他界したのだった。
身体ちっこくても、格闘技できても、料理ができても、いくらしっかりしてても。
やっぱりこなたも思春期の女の子であり、母親がいないのは寂しいものなのである。
杞憂かもしれないが、背中をこすられつつそのような気持ちが察しられた。
「す、すいません、なんか私らしくないですよね、あははー。」
「別にええやん。」
「え?」
「いっつもきばってばっかりやと疲れるで。周りには友達だっておるんやし、ウチだっておるし。
たまには空気抜いて、吐き出すもん吐き出しさへんと。それを受け取ってやるぐらい、ウチにだってできるで?」
裸の付き合いとはよく言ったものだと感じた。背中をこするこなたの動きが止まる。
「あ、えと、その・・・わ、私にフラグは立ちませんからね、ね、念のため。」
風呂のせいかそうでないのか、顔を赤くしてうろたえている姿が、何気なく新鮮であって、かわいい。思わずクスリと笑ってしまう。
「ちょっと!な、何笑ってるんですか、もう!」
「いーずみぃー。」
「へ、あ、はい?」
「腰、揉んでくれ。」
ぺたりと、浴場の床にうつ伏せに寝そべり、下半身にばさりとバスタオルをかける。
「えっ、いや、でも・・・。」
「はよせんか。教師命令やで。」
ぺたぺたとこちらに近寄り、ななこの尻の上に座り込む。そこまで重さは感じなかった。
「せんせー・・・。」
腰に手をあてたこなたが、ぼそりと呟き、
「どないした。」
「・・・。」
「なんや。」
「・・・髪、綺麗です。」
「おおきに。」
ぐっと、両手に力を込めた。
―――翌日
「ふぁ〜。つかさも寝ちゃったし、私もちょっとだけ寝ようかなー。」
横に座っているつかさは、新幹線に乗るとすぐに寝てしまった。みゆきは持参した時代劇小説を読んでいる。
「乗り物って変に眠くなるのよねー。まぁ、東京まではあと2時間はかかるんだし、寝ちゃってもいいんじゃないの?
・・・そういえば、あんた昨日結局何時に寝たのよ?」
「あー・・・1時、ちょっと前くらいかな・・・?」
「はぁ!?あんたそんな時間までどこで何してたのよ!?」
「いや、黒井先生を誘ってちょっとお風呂に行っててね。そしたらお風呂場で先生がいきなり私に揉んでくれってせがんできてさ。
教師の特権、とか言っちゃってね。そしたら先生『上手やで』とか『きもちえーよ、泉』とか、言っちゃってさー。
んで部屋に戻ったらこんどは私の体も揉んでくれて、それがまた上手で上手で、また気持ちいいんだなぁこれが〜。
体中揉まれて、『ココがええんやろ?』とか言っちゃって、まったく流石大人って感じだったねぇ〜。」
まぁそうなんですか、と、みゆきは微笑む。天然モノ同士の意思疎通が成立していた。
が、やはりもう一人には正しく伝わってはいなかった。
顔を赤くしつつ話を聞いていたと思いきや、すっくと立ち上がり歩き始めた。
「あ、あの、かがみさん、どこへ・・・?」
すでにこなたは眠りに落ちそうな状態であった。
「問い詰めてくるわ。」
誰を、とは聞けなかった。
なぜなら、歩き始めた少女の背中と眼には、
さながらみゆきが旅行前に京都のガイドブックで見た大文字焼きのような炎がメラメラと燃えていたから。
以上です。
タイトルは保管の際適当につけていただきけるとありがたいのですが、ダメですかね?
あと、ななこは俺の嫁なんやで
>>240 さすがこなたwwwwwフラグの立て方をわきまえてるなwwwww
GJ!SSは投下時のwktk感も醍醐味の一つだから謙遜する事はないぜ!
>>240 せんせーかわいいよせんせー
同年代だから気持ちが良くわかる、だんだん無茶が出来なくなって来るんだよなぁ
こなたはもちろん、ちょい役のレギュラー3人組も出番少ないのに良く性格出ててGJだったぜ
先生はかがみにはない大人の包容力(?)みたいなのがあって、
同じ保護者的立場でも先生のほうがこなたの扱いに関しては
上手いのかもしれないなと思いました。GJ!
>>240 なんてキュートな、こなななこな! この師弟は可愛すぎて死にます。俺が。
あと。
>某ツインテ鎌持ち魔法少女
真・ソニッ○フォームを着せられて恥ずかしがるななこ先生と申したか。
>>240 GJ!いつもはあんな先生だけど、決める時には決めてくれる先生はさすがだと思います!
ってか、逃げてせんせー!
>>232 それって続きなかったっけ?
みなみが自作のピアノの曲をゆたかの前に試し聞きさせるやつ
携帯だとさがすのがつらい
『彼女の寝顔』(
>>232)は19-376氏の作品
246の言ってるのは、11-618氏の『チェリー』じゃないかな?
手持ちのdatが13スレ目だけ抜けてたので、それは調べられなかったが……
wiki見る限りでは13スレ目の作品や小ネタにはないようだし
こっそり独り言
書いてる途中、ネタがいくつか被っていたことに気付いたorz
入れ替わりものを書いてみたら、既に投下されてたことに気付いた…
キャラは違うのにまた違う話と似たようなことになったのでボツに…うぅぅ
誰か分かってくれorz
249 :
23-49:2007/11/19(月) 21:05:31 ID:8tENZm42
どうもです
「朝顔と向日葵」こと、みさゆたの続編、投下させてください
例によって前回の裏側です
・みさお&ゆたか
・みさお視点
・エロ無し
・6レス使用
250 :
23-49:2007/11/19(月) 21:09:41 ID:8tENZm42
夏休みのある日。
ちょっとばかし暇を持てあまして街をぶらついていた私、日下部みさおは
たまたま通りかかったバス停のベンチに見覚えのある顔が座っているのを発見した。
小学生ぐらいに見えるその女の子が、最初は誰だかわからなかったんだけど、
少し考えて、隣のクラスのちびっ子の妹であり実は高校一年生でもあるってことを思い出して、
退屈に後押しされる形で声をかけた。
そしてお互いの名前を交換して、ついでに妹じゃなく従妹だと訂正されて、
そのあとだ。
その子、小早川ゆたかは不意に時計に目を落としたかと思うと、
弾かれたように立ち上がり、慌てた感じで勢いよく頭を下げたのだ。
「へ?」
「あの、ごめんなさい。わたしもう行かな、きゃ……」
言いながら、その小さな身体から力が抜けたように見えた。
ぐらり、と揺れて――倒れる?
「お、おいっ!?」
突然のことに一瞬反応が遅れた、と思ったときにはとっさに手が伸びていて、
寸でのところで抱きとめることに成功していた。
「っとー、あっぶねぇ……」
――って、ちっさ! ほそっ!
なんだコレ? ホントに人間か? じゃなくて高校生か?
ちっちぇーちっちぇーと思ってたちびっ子よりもさらに小さい。細い。
いやアッチを抱きかかえたことなんてないけどさ。
そーいや、いつだったか親戚の赤ちゃんをダッコさせてもらったことならあるっけ。
あんときは、腕の中にすっぽり納まる生き物の怖いぐらいの頼りなさに、軽くパニくりかけた。
その上いきなり泣き出されちまったせいで危うく落っことしそうになって、
あとでめちゃくちゃ怒られたんだよなー……
「ぅあっ! あのっ! ご、ごめんなさっ!」
うわっと!? こっちも暴れだした!
「ちょっ、暴れんなって!」
折れる折れるっ! 私じゃなくておまえの骨とかがたぶん折れる! 怖いって!
反射的に、さらに強く抱え込む。
放り出さなかっただけマシだと思いたい、けど……なんか硬直してる。
……折れた? 首、折れた?
「あ、あのっ、わ、わたっ、わたしっ、そのっ!」
おお、よかった。生きてる。
なんかロレツが回ってない気もするけど、とりあえず、今のうちだ。
「い、いいから、落ち着けって。ほら、ちょっと座れ。な?」
えっと……わきの下に手を回して、倒れないように支えながら軽く持ち上げて、
脚を引っ掛けておいてから、胸元を押す――っと、よし。なんとかベンチに置きなおせた。
ふう、意外と役に立つモンだな、体育で習った「救護者の姿勢の変え方」。
なんかかなーり我流っぽい気もするけど細かいことはどーでもいーんだ。成功したんだから。
それにしても、貧血か何かか? それか熱中症か。
前髪をかき分けて、その小さな額に手を当てる。
熱は……普通だな。高くも低くもない。んじゃ、脈は……
「んっ」
「おう、ちょっとガマンな」
手を首筋に移すと、くすぐったかったのか、鼻にかかった声が漏れた。
ちょい速め? でも不規則じゃない、か。
呼吸も正常。震えもなし。汗はかいてるけど、まあ普通。目の焦点も狂ってないし、瞳孔も開いてない。
「んー……だいじょぶっぽいかな」
軽い立ちくらみだろ。
とりあえずそう結論付けた。
この手の見立てにはわりと自信がある。部活の関係でヘバってる人間には慣れてんだよね。
「あ、ありがとうございます……」
「うん。いや、いいけど。てかどーしたんだよ。バスまだ来てないぜ?」
来てないよな?
一応、バスの来る方角を眺める。うむ、いない。
「い、いえ、あのっ。わたし、バスは、別に、待ってなくてっ。みなみちゃんの家はあっちだからっ。
休憩をちょっと、そのっ」
「は? え、なに?」
いや、何言ってんのかぜんぜんわかんねーって。なんでまた急にパニくり出すかな。
マズいことでも言ったか私?
「いや、まぁいいや。いーよ。まずは落ち着け。ほら深呼吸」
「あ――う……。すうっ、ふぅ……すぅっ――ふぅー…………」
うむ、素直だ。
そーいやさっき、声かける前に水筒で何か飲んでたな。水分も取らせとくか、一応。
うーん、と……お、あったあった。おし、まだ残ってる。
できればお茶じゃなくてポカリとかの方がいいんだけど……ってこれポカリだし。
なんだよむちゃくちゃ準備じゃんコイツ。
「だいじょぶか? ほら、これ。飲め。おまえのだけど」
「あ……はい。ありがとうございます」
フタを兼ねているコップに半分ほど注いで手渡すと、これまた素直に受け取り口をつけた。
んくんく、と、どこか一生懸命な感じに喉を鳴らす仕草が、見た目と実にマッチしてる。
空になったコップをもじもじといじくったり、
帽子の陰から恥ずかしそうにこっちをチラ見してきたり、
そんな仕草の一つ一つが小動物っぽくて、可愛らしい。
なんかもー全身全霊で「女の子!」って感じだ。いーなー。
私とは全然違うわ。
「……あの、ごめんなさい――申しわけありませんでした」
だからなのかな?
ここでいきなり謝る理由が、イマイチわかんないのは。
「や、いーっていーって。つーか、なに? バスには乗らないん?」
さておき、気になってたことを訊いてみた。
もうだいぶ落ち着いたようで、小早川は淡々とした声で答える。
「はい。あの、わたし、身体があんまり丈夫じゃなくて。
今日みたいに暑いと、その、さっきみたいに倒れちゃうことがあって。
だから、そうなる前に休憩してたんです」
へえ。
ちょっと、いやかなり感心した。
危なっかしく見えて意外としっかりしてんだな。ずっとうつむいて喋るもんだから落ち着いてんじゃなくて
落ち込んでんじゃないのかってちょっと気になったけど、別にそんなことはなかったみたいだぜ。
「そっか、エライな」
え、と顔が上がる。
なにその意外そうな顔。
「なんで……?」
「ん? 休憩ってのは大事だぜ?
自分の限界を見極めて、それが来る前にちゃんと身体を休める。スポーツの基本だよ。
こんなのもちゃんと持ち歩いてんだから、すげーよな」
持ちっぱなしだった水筒を、たぽん、と鳴らす。
おっと、返さなきゃ。
「部活の後輩にもたまに無茶やるのがいてさー。
……なんつってー、私も昔はよくやっちゃってたんだけどな、へへっ。
あ、陸上部なんだー、私。もうすぐ引退だけど。
こう見えても――じゃなくて、見てわかるかもしんないけど、速いんだぜー?」
「……」
無反応ですか。
そんなにリアクションに困ること言ってないと思うんだけどなぁ。
自分の発言を振り返ってみても、特にコレといって思い当たる部分はない。
「見ての通り」ってのぐらいか。やっぱちょっとウヌボレっぽい?
ってぇか。
どうにも会話のテンポ? 距離感? が、つかめないってゆーか。
いや別にイライラとかそーゆーのはないし、こうしてるのがイヤだって気もしないんだけど。
むしろ逆にもっと話してたい気分。
ここで別れるのはもったいない、みたいな。
……そんなに退屈してたのかな、私。
まーいーや。とりあえずいろいろ喋ってみよう。そのうち感覚もつかめるだろ。
うん、ごちゃごちゃ考えるのは性に合わないんだ。
「んで、だったらどこ行くんだ?」
「――あ、はい。この先に住んでる、友だちの家に」
「ふーん。勉強会?」
「はい。……え? なんでわかったんですか?」
あ゙。
しまったー……考えなさすぎた。
そーいやカバン勝手に開けちまったんだよな。ヤバいかな? ヤバいよな?
いや、ごまかすつもりはなかったなだぜ? 何しろ見てる前でやったわけだし。
ただ一言ことわるとか、せめて先に謝ってから言うべきだったよな。
「あ〜〜、それがさ。さっき水筒取ったとき――あ、ソレもゴメンな?
そんときにカバンの中が見えちまって、さ……わりぃ。ゴメン」
前にも一度、柊のカバンに触っちまったことがある。
あんときゃすっげえ怒られた。
借りてたノート返そうと思ったら本読んでたから自分で戻そうとしたんだよ。
そしたら物凄い勢いでひったくられて怒鳴られた。
あんときの柊、死ぬほど怖かったんだよなぁ。てか殺されるかと思った。
この中を見られるぐらいならあんたを殺して私も死ぬ、って目が言ってた。
一緒にいたあやのが間に入ってくれたからなんとか命だけは助かったんだけど、
そのあやのにも叱られた。「ダメよ、女の子のバッグに勝手に触っちゃ」って。私も女なのに……
「そ、そんなっ、謝らないでください! 怒ってませんから。逆に感謝してるぐらいで。
ですから、その、本当にありがとうございました」
へ?
小早川が頭を下げている。
あ、また貧血……ならないか。ならないな。しっかりしてるもんな。
いやいやそうじゃなくて。
「えと、そうなの……?」
「はい」
「怒ってない?」
「はい。ぜんぜんです」
「なら、いいんだけどさ……」
小早川はニコニコと笑顔を向けてくれている。
柊とは正反対の反応だ。あやのともかなり違う。
なんなんだ?
……あー、もーいーや。どーせ私にはわからないことなんだ。きっとそーだ。
いいって言ってんだから、いいってことにしよう。
またこんど機会があれば恩返しすればいい。いや、罪滅ぼし?
「で」
というわけで話を戻す。
「勉強会だっけ。友だちの家で」
「あ、はい」
「それってこっから歩き?」
「はい、そうです」
「……ふぅむ」
だったら、あんまり引き止めるわけにもいかねぇよな。さっきもう行こうとしてたぐらいだし。
でもここでサヨナラってのもなー……
まあガッコが始まったらまたいつでも話せるけど、それじゃ意味ないっつーか。
私が退屈してるってだけの身勝手かも知んないけど、だけど…………
あ、そっか。
そーだ。うん、それがいい。それならすぐに恩返しができるし。じゃなくて罪滅ぼし。できるし。
よし決定。
「一人で大丈夫か? なんなら送ってくけど」
「――いえ、大丈夫です。ここからならもう歩いて三十分もかかりませんから」
ちょ、ま。
えぇ〜〜?
笑顔で一蹴されちゃったよオイ。
しかも微妙に作り笑いっぽい気がするし。もしかして迷惑がられてる?
そうも思ってはみたものの、ヘンな勢いがついちまったみたいで止まらない。
「なんでさ〜? 送らせてくれよぉ。邪魔とかしないからさぁ」
「えっ? いえ、でも、そこまでしていただかなくても、大丈夫ですから。本当に」
胸の前でパタパタと両手を振る小早川。
それとも遠慮してんのか? 送ってやる、とか言ったのがマズかったかな。
「む〜〜」
「だって、その、先輩にも用事があるでしょうし……どこか行くとか……
あ、それに受験生ですし、やっぱりお忙しいんじゃ……」
ゔっ。
痛いところをつきやがる……しかしそんなふうに言われたら余計に引っ込みがつかない。
なんでだかわかんないけど、私はそーゆーヤツなんだ。
「……い、ぃや、いやいや。いーのいーの。そんなの気にしないでいーんだってば、な?
てぇか三十分だけだろ? ちょっとじゃん。おねがいっ!」
パンっ! と顔の前で両手を合わせて拝みこむ。
なんでそこまで……とかアタマの片隅から声が聞こえた気がするけど無視。
文句があるなら真ん中まで出てきてハッキリ言えってんだ!
「えっと……迷惑じゃ、ないんですか?」
ガードが下がった! 今だ!
「全然! てゆーか今むっちゃヒマなんだよ、正直なハナシ。
あとで映画行く予定もあるこたあるんだけど、約束の時間まで三時間もあってさー。
どーやって時間潰したらいいんだか困ってんだよ」
「……さんじかん……」
呆れられても負けないっ!
てゆーかなんか一周してちょっと楽しくなってきたし!
「だから、そんなさ、難しく考えないでいいって。あとちょっとだけ、歩きながらおしゃべり!
そんだけのことじゃん、な!」
「……」
沈黙。
セミの声だけがやかましく降ってくる。
チラ、とうかがうと、小早川は困ったような顔で私を見上げていた。
それが困ったような「笑顔」になり、さらにそこから「困ったような」が抜ける。
「……わかりました。それじゃあ、お願いします」
「おっしゃっ、やった! じゃ、いこっぜー♪」
「きゃっ」
気が変わらないうちにとその手をとって、私は張り切って歩き出す。
さあて、何を話そうか――
−−−−−−−−−−−−−
あさがおを手にとって
−−−−−−−−−−−−−
――っと? なんか引っ張り返されてる。
「あの、そっちじゃないですっ。こっちです」
……あうち。
256 :
23-49:2007/11/19(月) 21:18:27 ID:8tENZm42
以上です
ありがとうございました
一コマ目にタイトルを入れ忘れてしまいました、申し訳ありません
>>248 自分は書き始めたばかりで、今このシリーズ一本でもあるので、
完全にはわかりませんが
諦めないで頑張ってください
粗筋が同じでも書く人によって大きく違うということもありますし
「バスまだ来てないぜ?」と言ってからバスが着てないか確かめるあたり、妙にみさおっぽいな。GJ!
これはいいみさゆたwwwww
みさおの気持ちの書き方がすごく上手でした!
いわゆる完璧なGJ!です!
>>256 GJ !
なんか、みさおとはマブダチになれそうな気がするぜ・・・
>>226 GJ!! 漏れはこういうほのぼのしたのに弱いんだぜ。
>>256 GJ!! みさきちの一生懸命だけど滑りまくりな点に萌えた。
完成したので、投下させていただきます。
3レス分と短いものですが、どうぞ。
262 :
鶴:2007/11/19(月) 23:21:49 ID:D13tjNUp
11月のカレンダーにぽっかり空いた三連休、その初日の夜。
頬に涼しい秋の夜風が、カーテン越しに部屋に入り込んでくる。
机に置いたライトは明るく、お気に入りのクラシックと文庫のページをめくる音だけが部屋に
響いていて、読書の秋を演出してくれてはいたものの、みゆきの気分は晴れなかった。
「はあ……」
何度も読んだくらい面白い本ではあったのだけれど、どうしても集中できなくて、
肩を落として本棚に戻した。
なんだか味気ない気がしてCDプレーヤーの電源を切ると、部屋に静寂が落ちた。
風が冷たくなってきた。窓とカーテンを閉めて、タンスからカーディガンを取り出す。
暖かいそれを羽織っても、そのまま何かをする気も起こらず、ひんやりする机に
突っ伏して、耳と頬をぴったりとくっつけた。
「つかささん……」
ほんとうなら、この部屋にいたはずの人の名前を呼ぶ。
今日は家族が皆出払っていて、ひさしぶりに二人でゆっくり過ごせると思ったのに、
あいにくつかさが風邪をこじらせてしまったのだった。
最近は寒い日が続いていたし、悪い風邪も流行しているという。
何日も前から約束していたおでかけの計画がだめになってしまったのは残念だったけれど、
からだを壊したときはゆっくりしているのが一番だっていうのはもちろん知っているし、理解もしている。
でも、だけど……。
家を留守にもできず、今日は朝からひとり。
時計の針が動く音しか聞こえない部屋に、自分がたったひとりしかいない事実をあらためて
突きつけられた気がした。机に顔を置いたまま目線だけを動かすと、白のハンガーに
マフラーがかけてあった。もう寒い時期だからと、つかさがくれた手縫いのものだった。
次につかさとでかけるときにつけようと決めていて、まだ一度も使っていない。
暖かそうなそれに手を伸ばそうとするが、一度決めたことは守りたかったし、つけてしまったら
ますます寂しくなってしまいそうで、すぐにやめてしまった。
263 :
鶴:2007/11/19(月) 23:22:28 ID:D13tjNUp
カーディガンが暖かかいはずなのに、なんだか体で感じるより部屋の空気が冷たい。
……さびしい。
つかさの声が聞きたい。
机に置きっぱなしになっていた携帯電話を取った。
昼間、かがみから高い熱が出ていると聞いていたけれど、もしかしたらもう下がっているんじゃないか。
まだ安静にしてなきゃだめだろうけれど、少し話をするくらい、いいんじゃないか。
そうでなくても、メールくらい……。
「……だめですよね」
自分に言い聞かせるようにつぶやいて、ゆっくり携帯電話を閉じる。
まだ熱が下がっていないかもしれないし、もう寝ているかもしれない。
きっとつかさは笑顔でこたえてくれるだろうけれど、自分のせいでますます体調を悪くさせてしまったら。
そう思うと、いま自分に出来ることはなにもないのだと、みゆきは小さくため息をついた。
席を立って加湿器の電源を入れた。中の水がこぽこぽいう音が聞こえて、静かな部屋の中が少しだけ華やいだ。
倒れるようにベッドに横になり、天井の電灯を見詰める。
頭をかすめるのは、つかさの花のような笑顔。
それに、お菓子屋さん。本屋さん。花屋さん。喫茶店。公園。
今日のおでかけで、行くはずだった場所。いろいろなところを歩いてまわって、公園でお弁当をつついて、
そのあとはこの部屋でゆっくりおしゃべりをして、隣同士に布団を敷いて眠る――。
きっと楽しかったはずのそれに、思いを馳せる。同時に、こうも思う。
はやく、元気になってほしい。また、笑いかけてほしい。
明日は、お見舞いに行きましょう。
家族が帰ってきたら、すぐに。
彼女に会いたいのはもちろんだけれど、辛そうであったなら、枕元で手を握っていてあげたい。
いつだったか、彼女がそうしてくれたみたいに。あのときの彼女の手の温かさを、まだはっきりと覚えている。
左手に残った記憶は、きっとずっと色あせないまま、自分に残るのだと、みゆきはそう思った。
「あ」
264 :
鶴:2007/11/19(月) 23:23:25 ID:D13tjNUp
ふと横目で本棚を見ると、懐かしい、すすぼけた一冊の本を見つけた。
すぐさま起き上がって手に取る。きれいな折り紙の折り方……。
幼稚園生だったか、それとも小学生だったか。小さいころに、母にねだって買ってもらった本。
最初のページをめくった。こども向けらしい、薄くてひらがなばかりの本だったけれど、それは確かに、
一枚の色紙をきれいなかたちに折れるように書かれていた。
「……」
机の横の、むかしのものを入れてある、小さい棚を開ける。確かまだ、あったはず。
何段もあるそれを順繰りに開けてじっくり探すと、ようやく見つかった。
棚の一番下の段の、昔つけていた日記の下に、まだ開けていない折り紙の袋が一つだけ入っていた。
赤、オレンジ、緑、それに黒と白。とりどりの色が入れられた、なつかしい折り紙。
千羽は無理だけれど、せめてこれくらいなら。
また机に向かって、薄いセロハンの袋を開けた。最初の一枚を手に取った。
ひらがなで書かれた指南のとおりに、ゆっくり、ていねいに、折っていく。
時間をかけてできた折鶴はきれいなかたちを成していて、今まで作ったなかで一番出来がいいように思えた。
「うん」
満足げに頷いて、みゆきは次の一枚を手に取った。
明日は、これを持って行きましょう。
ここにあるだけつくって、糸でつるして。たぶん、十数枚しかないだろうけれど。
千羽には程遠い、十羽鶴なんていうものにしかならないだろうけれど。
彼女がくれた数え切れないものに比べたら、本当に小さい小さいものだと思うけれど。
それでも自然と、折る手に力がこもった。
あのひとは喜んでくれるだろうか。ほんの少しでも、元気になってくれるだろうか。
彼女が微笑んでくれることを願って、みゆきはゆっくりゆっくり、折り紙を折っていく。
閉めた窓の外で、小さくこおろぎの声が響き始めた。
夜の帳が落ちた街で、ころころという軽やかな音が、いつまでも聞こえていた。
ありがとうございました。
乙。みゆきの心がよく伝わってきたよ。
果てしないGJをあなたにおくりたいです!
みゆきさんの優しさに目が霞んできました・・(´・ω;)ホロリ
GJです!
みゆきさんの優しさに感動した!
なんというGJ。
あなたが神か。
>>256二人の性格を本当によく理解できていますな。さらにそれを並のラノベとは比較にすらならない程上手に文にできて、まとめているあなたの力に嫉妬してる。
ストーリーも俺好みで本当にいい。
今一番の期待作だからwktkして待ってるぜ。
超GJ!!
>>265まとめ方が凄いコンパクトだと思った。たった3レスでこんな密度の濃い、鬱→ほのぼのストーリーを表現できるなんてなぁ。
読んでて、安らぎという言葉は3レス目のためだけに存在してるのかと思った。短編でここまで印象に残るSSってそうはお目にかかれない。また安らがせてくれ。
超GJ!!
温かいっす…
みゆきさんの気持ちがつかさに届けばいいなあ…
また続きとか楽しみにしてるヨ。
国府津のE231-1116です。
風邪で休暇をとったので、この時間にいます。
私が風邪を引いたので、風邪ネタで以前書いていたものを投下いたします。
・原則みさ×かが
・非エロ
・10レス
・日下部家が団地住民なのは、仕様です。
「うぃ〜〜〜…………助けてくれ……」
頭がぐゎんぐゎん言う。まるでお寺の鐘の中に私が入って、
それを誰かが勢いよく突きまくるような感覚だ。
実際に視界に入るのはヒル石の天井。
団地の老朽化で出来た一本の「ひび」が、回るハズも無いのに私の目の前でくるくる回っている。
まるで風車のように。
「もう、みさちゃんったら」
「ほんと、あんな格好で走り回っていたからよ。ばか」
「うみゅ〜〜〜……ごみんなさい」
両耳からは聞き慣れた声が13倍くらい増幅されたエコーとなって私の耳に届く。
この際13倍でも3倍でも10倍でもいい。
2人の友人の話し声すらお寺の鐘のように響く。
あやのと柊は、おそらく電気オーブンのニクロム線の様に真っ赤になった私の顔を見ては呆れかえっている。
勝手知ったる他人の家。あやのは、以前兄貴の看病した時に見付けた水枕を戸棚から取り出し、
水と氷を入れて私がいつも使ってる枕と入れ替える。
「全く。ホントいっつも世話ばかり掛けて。少しは反省しなさいよ」
「ほ、ホントに昨日はごめん。げほっげほっ、」
「き、昨日の事、赦した訳じゃないんだからね。
あんたが倒れたって言うから心配して………しししししてる訳じゃないけど、
と、とにかくアンタの間抜け面を見に来ただけなんだからねっ」
柊が何を言いたいのか理解出来無いのは、私の思考回路が完全に停止しているからか?
「柊ちゃん、声が大きいわ。
みさちゃん、お家の人が帰ってくるまで私達で看病するから、安心して寝てて」
「けほっ、けほっ………すまねぇ、あやの…柊ぃ……」
二人が来るまで、家に居たのは私だけだった。
父親と兄貴は会社、母親は東武ストアのパートに出ている。
私も本来は学業に励んで(?)いるところで、つまり、普段の平日昼間は家が空っぽなのである。
小学生の時は「鍵っ子」だったので、1人で家の中に居ても平気なのだが、
いざ風邪をひくとなると、何だか心細い。
心細いあまりに、私はあやのにメールを送り、家に呼んだ。
意識がもうろうとした中で、慣れない手つきでメールを打ったもんだから、
もしかしたら暗号文状態のまま送ってしまっているのかも知れない。
滅多に風邪をひかない私が風邪をひいた理由。
そして、柊がいつもより恐ぇ理由。
それは、昨日の体育の授業にある。
私達の住む町は、それまでぽかぽかだった陽気が一転して真冬のような寒さとなり、
栃木方面から吹き付ける冷たい風で町内は冷凍庫の様な寒さとなった。
空気も乾いている。こういう時にもっとも拗らせやすいのが「風邪」だ。
たかが風邪だがされど風邪。ちゃんと治しておかないととんでもない病気に発展するってコトは
この前やってたテレビ番組で知った知識だ。
「うぅー、寒い!!何でこういう日も外で体育なのよ!!」
「こ、こういう日は体育館でやりたいわよね」
昨日の事だった。昨日は一面鉛色の曇り空で、気温は一気に低下、北国では大雪が降って交通機関が麻痺したらしい。
2時間目。私立で冷暖房完備でありながら「12月まで暖房は付けないという」アホ校長のせいで、
私ら生徒と先生は2月並みの寒さに凍えながら1時間目の授業を受けた。
この学校、冷暖房のスイッチは各教室にあるが、職員室で集中管理されているため、生徒が勝手に操作出来ないようになっている。
こういう時は理系物理の男子クラスの方が快適かもね。こっちより気温高そうだし。
そして2時間目。体育。私の一番好きな授業だ。学校は昼飯と体育の授業と部活のためにあると言っても良い。
1時間目の終わりのチャイムと共に、真っ先に更衣室へ直行する。あやのと柊も連れて。
今にも雪が降りそうな空だが、今日の女子体育は何故か外。
埼玉の北部は比較的寒く、東京や大宮よりは2〜3℃気温が低い。
昼はまだ暖かいが、朝と夜は霜が降りるほど冷え込み、この時に半袖で走り回るなど、流石の私も厳しい。
「おーっす、さっみぃーなー!!」
「み、みさちゃん………!! 寒くないの?」
「うーん、寒い。でも、運動すれば身体はあったまるんだぜ!!」ぶるぶるぶるぶる
「お前、流石にその格好は場違いだぞ」
「へ?」
「『へ?』じゃないわよ!!その格好、見てるこっちが寒いわ」
「だったら見るなよ」
「あんたが目の前に居るから、嫌でも視界に入るのよ」
しょーがねーだろ。私も好きでこんな格好をしている訳じゃない。
私は半袖の体操服にハーフパンツという、明らかに今日の様な日にそぐわない姿でグラウンドに立っている。
体操服の下は胸に当てる下着だけなので、実質1枚だけ。
せめてジャージがあれば救われたものの、うっかり忘れて今は家のハンガにぶら下がっている。
ハッキリ言おう。マジ寒い。
陸上で着ていたハーフトップのユニフォームよりかはマシだが、寒い。
乾いた北風が容赦なく私に吹き付ける。マジ寒い。
「ぶるぶるぶるぶる、寒ぃ」
「アンタさぁ、他の人から借りてくれば良かったじゃない。
陸上の友達、他のクラスにも居るでしょ?」
「あー、居るけど、何か恥ずかしくってさ」
「それなら、こなた辺りから借りれば良かったじゃない」
「チビっ子のじゃ着られる訳ねーだろ?」
「なら、みゆきの…」
「高良に借り作るのは何だか申し訳ない」
「あぁ!!いちいち五月蠅いわねっ」
何だよ〜柊ぃ〜、そうやっていちいち怒るから彼氏出来ねーんだぞ。
「喧しいわ!!もう、風邪引いたって知らないんだからねっ!!
その辺で勝手に倒れていればいいわ!!」
「とか何とか言って、私が風邪引いたら家に来るんだろ?前みたいに」
「お前、喧嘩売ってるだろ?」
「あ?売ってなんかねーよ。普段は私の事ぞんざいに扱っておいて、
『風邪引いても知らないわよ?』ってか?全くめでてーな。
あーあ、折角友達続けてやってる私の努力は一生報われねーんだろーな」
「な、何よその言い方!!
いいわ、一生言ってなさい。本当に知らないわ、ふん!!」
「まぁまぁ、柊ちゃん。みさちゃんも落ち着いて」
「おい、お前ら。そんなにグラウンド走りたいんだったらそのまま会話を続けてもいいぞ。
もう授業中は始まっている」
「「「す、すみませんっ」」」
「みゅ〜、柊に嫌われたぁ〜」
「みさちゃんが調子に乗りすぎるからよ」
「だってだってだって〜」
確かに調子に乗りすぎた。私が悪いんだから、文句は言えない。
しかし、水道水よりも冷たいあやのである。
「違うわよ。みさちゃんは厳しく言っておかないとまた調子にのるからよ。
ほら、みさちゃんの出番だよ、ほら」
「うん…行ってくる」
訂正。相変わらず怒る時は厳しいあやのである。
今日の体育ほど乗り気がしなかった事は無い。
鉛色の空の下、今日の体育の授業は地味〜なソフトボール。
小学生の頃、地元の少年野球に入っていた私は野球やソフトボールをすること自体は好きだ。
だが、今日の様な寒い日は常に体を動かしていないと流石に寒い。
それよりも、私が怒らせてしまった柊がさっきから一言も口をきいてくれなくて、
それに凹んでいるから、乗り気がしないのだ。
「あー、マジで寒い。外も寒いけど、私の心の中も寒い」
ボコボコに凹んだ金属バットを手に握り、ピッチャーをじーっと見る。
ピッチャーは柊だ。こういう時は違うチームので良かったと思う。
でも、今顔を合わせたくない奴が目の前に居る。何だか怖ぇーよ。
先生の笛の音と共に3回オモテが始まる。柊がものすっげー勢いで球を投げてくる。
怖ぇー、と頭の中で連発しながらバットを振ろうとする。しかし、直後にボスっと後で音がした。
「ストライーク!」
あれ?私がハズした?
自慢じゃないが、私は柊レベルの球ならほぼ確実に打つことが出来る。
それなのに、見事に外した。
「ストライーク!」
「ストライーク!バッターアウト!」
三振を喰らった。どうも今日は調子が出ねぇ。
柊の球は某赤い人よろしく通常の三倍…とまでは行かないが、いつもの3割り増しくらいの勢いで球を投げてきた。
私に対する怒りを球に込め、私に直接投げつけるかのように。
幸いデッドボールは避けられたが、ぶんぶん振ったバットは見事に3つの球をスルーしてしまった。
「どうした日下部?今日はヤケに調子悪いな」
クラスメイトに心配され、先生にまで心配されちまった私。
やべぇ、どうかしてるみてぇだ。
「へ、へっくしゅんっ!!!!」
マジ寒い。今日は史上最悪の体育の日だった。
その後、私は柊と一言も口をきかぬまま一日を過ごした。
残りの授業は殆ど頭に入っておらず、5時間目の世界史では黒井先生からの愛のムチを頂戴し、
6時間目の生物でひかる先生に指名地獄を喰らったのは言うまでもない。
まぁ、ぼーっとしてた私の方が悪ぃんだから、ひっぱたかれても文句は言えない。
放課後、柊はあやのにだけ「さよなら」と挨拶し、妹やチビっ子達とさっさと帰ってしまった。
私は鞄に教科書を詰め、体操服の入った巾着袋を持ってグラウンドへ向かう。
陸上部は引退したが、可愛い後輩達のために毎日部活へは行くことにしている。
空は相変わらず鉛色だが、雨の降る気配は無い。
あー、なんだか気が向かない。今日は帰ろうっかなぁ。
「みさちゃん、大丈夫?」
「うーん、今日は気が向かねぇから、陸上部行くのやめよっかなぁ」
「いや、そうじゃなくて」
「あ、柊のことか?うん、帰りに柊ん家寄って謝る」
「違うわよ。みさちゃん、何だかすごく具合悪そうなんだけど」
「な、何言ってんだよ、体は平気なんだぜっ!!ほれ……うわっ」
がたん。
椅子から落ちた。そういや5時間目から頭がフラフラすんだよな〜。
机に突っ伏していた私は、あやのに体だけは元気な事を示そうと立ち上がったのだが、
いきなり頭がふらっと来て、視界がぐるりと回った。
「今日は帰った方がいいわ。私、家まで送ってあげるから。柊ちゃんには明日謝ろう」
「うん…、そうする」
あやのが「具合が悪そう」と言うのだから、どうやら私は具合が悪いようだ。
あやのが言うことはだいたい正しいから、素直に受け止めてしまう。柊なら反発するけど。
帰りはあやのと一緒に帰った。いつものことだけど。
カラダが急にだるくなり、電車に乗っている時はあやのによりそっていたような気がする。
最寄り駅に着き、オレンジとクリーム色の路線バスに乗り、終点の団地中央で降りる。
そこはもう私の住むボロ団地の敷地内だが、私は一番南側の住棟なので、バス停から更に歩く。
と言っても2〜3分の距離だが、今日はやけに長く感ぜられる。
化学実験のおもりの様に重たい足を運びながら、なんとか5階まで上がる。
あやのは私が家に着いて玄関を開けるまで、ずっと側に付き添ってくれた。
いつも悪いな、あやの。
「私はいいわ。今日はゆっくり休んだ方がいいわ。明日、柊ちゃんに謝りましょ?」
「う、うん。ありがと」
夜、私は夕飯も食べずに布団に潜り込んだ。
スチールサッシから吹き込む隙間風が五月蠅くて、結局寝ついたのは兄貴が仕事から帰ってからのことだ。
そして、翌朝。
予定ならば今日はいつもより早く起きて家を出て、駅で柊に謝って一緒に行くつもりだった。
しかし、身体はそれを許してはくれず、40度の高熱と激しい腹痛と喉の痛みが全身を襲った。
平熱が35.2度の私にとって40度の熱は文字通りの「高熱」であり、はっきり言って地獄である。
蛇足だが、私にとっての「微熱」は36度台後半で、たいていの人の平熱に相当する。
私は母親に「何としてでも学校に行く」と言ってみたものの、結局却下され、
兄貴に運ばれて私は布団の中で大人しくすることにした。
北側の四畳半は特に寒い。
ガスストーブを付けて、私は横になる。
スチールサッシから吹き込む隙間風がびゅうびゅう五月蠅く、やっぱり寝付けない。
あやのの家からアルミサッシを持って来たいくらいだ。
そして今に至る。
やがて、母親がパートから帰ってきて、あやのと柊に「いつもごめんね」と挨拶する。
あやのは台所に残り、何やら話している。
柊は、私の部屋で、さっきからずっと側にいる。
手元には一冊の文庫本が。きっと暇潰しに読むつもりだったのだろう。
しかし、柊は本を閉じたまま、ずっと黙ってこちらを見ている。
時折、ちらりと曇りガラスの向こうの鉛色の世界を見て、はぁ、と小さなため息をつく。
昨日、調子に乗りすぎて怒らせてしまったのが、本当に申し訳ない。
「ひいら…ぎ……」
「ん、何?」
声がすっかりしゃがれている。柊は本を閉じ、こちらを見る。
「ご、ごめ…………けほっ、ご、ごめん……な……」
精一杯、気持ちを込めて、柊に謝る。でも、声がかすれて上手く喋れない。
「それはもういいわよ。私も言い過ぎたし。私の方こそごめん」
そう言われるとますます申し訳なくなっちまう。
「あの…さ……」
「ん?」
もう一度問いかける。今度は優しい笑顔で答えてくれる。
「なんで……うちに…来ることにしたの?そりゃ、呼んだのは………私だけ…ど………」
けほっ、けほっ。
「うん、正直に言うと、アンタの事が心配だった。それだけよ」
「それだけ…?」
「それだけ。」
「…………そっか…。なんか…嬉し…いな……」
「そう言われると、照れるわね。昨日、ごめんね。
昨日の帰り、アンタが本当に倒れていたらどうしようかと、心配だったわ」
相変わらずドライな口調で話す柊。でも、何だろう。この感じ。何か暖かい。
「柊ぃ」
「ん?」
「柊って…優しいんだな」
すんげー恥ずかしいけど、本当に思ったことを言ってみる。
「へっ?!ちょ、アンタ、また熱上がってるんじゃないの?
ど、どうしたのよ、と、突然………」
柊が動揺している。なんつーか、可愛い。
突然顔を真っ赤にした柊。耳まで赤い。あれ、風邪までうつしちまったかな?
「ね、熱なんか無いわよ!
た、ただ、その、あの……あ、あ、アンタに…そんなこと…言われたの………初めてだから……
だから……、ちょっと…」
「ちょっと?」
「…………は、恥ずかし……って、あー!!何でアンタに動揺してんのよ!!」
私を見るのが恥ずかしくなったのか、急に顔に手を当てて私に背を向ける。
ていうか、こっちが恥ずかしいから、台詞の後半は心の中で叫んでくれ。
なんつーか、柊がすんげー可愛く見える。
「だって…さ、柊って、いっつも……妹とか…チビっ子と、一緒のクラスに居ること多いじゃん?
中学ん時も……クラスは一緒だった…けど、二人きりで……話すことも無かったし、
修学旅行ん時も…どっか……行っちまうし………、
もう…さ………、私……柊に嫌われちったんじゃねーかって……考えるようになって…さ…
うっ……うっ……うぅ………」
あれ?何で私、泣いてんのか?泣いてんのか?
目からにじみ出てきた涙が、頬に一条の筋をつくる。
「最近…は…さ……、昼も…うっ…うっ………一緒に……食べることも…減ったし……、」
「日下部……」
涙が止まらない。柊から見れば、突然泣き出した訳わかんねー奴にしか見えていないのだろう。
多分。
こぼれた涙は敷き布団に落ち、そこだけまあるい染みをつくっている。
柊が羨ましいと思ったことは何度もある。
面倒見がいいこと、真面目でしっかりしていること、勉強も出来ること…etc.
何もかもが、羨ましかった。
私は頭悪いし、それ以前に勉強嫌いだし、
あやのや柊にすぐ甘えるし(兄貴にもだけど)、チビっ子に言われた様にお子様でアホだし、
取り柄と言えば脚が速いこと位か?
もうさ、気が付けば柊の事を考えるようになってたのかも知れない。
1年前だっけな?あやのが兄貴と付き合うようになったのは。
それから休日にあやのと会う機会は減った。いや、ウチによく遊びに来るのでむしろ増えたかな?
でも、あやのと遊ぶ機会ががくっと減った。
それでも、あのエロバカ兄貴にあやのを取られた事に対しては、それほど悔しくなかった。
それ以来、私は柊の事を考えるようになっていた。
柊自信もあの泉っていうチビっ子と一緒のことが多いけど、
かく言う私もチビっ子と最近遊ぶ様になったから、それは別にどうだっていい。
『どうだっていい』って、チビっ子には失礼だけど……。
あれ?今私は何を考えていたんだ?高熱でいつも以上に回転の鈍い頭の中は、
すでに柊のことでいっぱいだ。容量が少ないのですぐにでもパンクしそう。
「ほら、泣くなって」
ハンカチをそっと差し出す柊。布団に入ったままそれを受け取り、顔を拭ってティッシュで鼻をかむ。
「…うっ……うっ……だから…さ、」
「うん」
「柊が……来てくれた時は………すんげー…嬉しかった……うっ……
………だから……私……私………」
うわぁぁぁああああ
「よしよし、ごめんね」
恥ずかしながら、声を出して泣いてしまった。
悲しいから泣いたのではない。嬉しいから泣いたのだ。
泣いている間、柊は私の頭を撫でていた。撫で撫ではやっぱりあやのの方が上手いな。
そうか、私、今、気付いたよ。柊のこと、好きだってことをね。
「好き」と言っても「恋愛感情で」という意味ではない。しかし、「友達」として好きという意味でもない。
なんだかよくわかんねーけど、強いて言えば、「友達」にも「恋愛」にも当て嵌まらない、もっと大切な関係かな?
ずっと相手にされていないと思って、悲しかった。
真面目でしっかりしている柊が、羨ましかった。
そして、今日、本当にお見舞いに来てくれたことが、嬉しかった。
いつまでも一緒にいたい。これからも、ずっとずっと。
柊とは、もっともっと友達になりたい。いや、親友になりたい。いやいや、もっとそれ以上の関係になりたい。
なれるかな?
なれるよな。
「うっ……うっ…………柊ぃ…」
「ば…ばか………私まで泣いちゃうじゃない」
柊はもらい泣き寸前のところでこらえている。
顔がこわばっていて、相当我慢しているのが私でも分かる。
この時、私は何を考えていたのだろう。私は、ぼぅーっとする意識の中、柊にこう告白した。
「柊ぃ」
「ん?」
「すき」
「へ?」
「柊のこと、すき」
「な、何を突然……!!」
「柊は? 好き?」
「………う、うん」
「どっち?」
「好きよ」
「柊ぃ」
「ん?なぁに?」
「これからも、一緒にいていーか?」
「な、何言ってるのよ。私とアンタはいつも一緒よ。
もちろん、峰岸やこなた、つかさ達も一緒だわ。
一生友達よ。オバさんになってもね」
気付いたら私は上半身を起こし、柊にすがりつく様にまた泣いていた。
柊も我慢の限界に達して、泣き出してしまった。
お互い、抱き合うように泣いていた。
悲しいから泣いたのではない。嬉しいから泣いたのだ。
多分、柊も嬉しいから泣いていた……よな。
ほんの20〜30分の出来事だと思っていたんだけど、
実は、2時間以上も経っていた。外は真っ暗だ。しまった。
受験生なのに引き留めてしまった。私も受験生だけど。
鳴き声。襖は閉まっていたけど、きっと丸聞こえだったな。
柊はその後も、正座をしながらずっと私の側に居てくれた。
すっかり相手にして貰えなくなったのかと思い、落胆していたのだが、
それは杞憂に終わった。
襖がゆっくりと開く。
「おはよう、みさちゃん。具合はどう?」
穏やかな笑顔であやのが入ってきた。
「お粥、おばさんと作ったけど、今温めてくるわね」
「あやの…有り難う」
「ほら、日下部、顔洗いなさいよ。真っ赤よ」
「うぅ〜身体が起きられない。手伝って〜」
「自分で起きなさいよ!!もう、しょうがないわね。ほら、つかまって」
柊に手伝って貰って起きあがる。熱はだいぶ下がったようだが、
泣いていたせいで顔はくしゃくしゃだ。洗面所は水しか出ないので、風呂場で顔を洗う。
「今日は、娘のために本当に有り難う。いつも迷惑ばかりかけてごめんなさいね」
「いいえ、こちらこそ。突然お邪魔してすみません」
「日下部、また明日ね。さっさと治しなさいよ」
「うん」
では、失礼しますと言って、二人は玄関を出ようとした。
そのとき、多分無意識に私は柊を呼んだ。
「柊ぃ」
「ん?」
「また、明日な」
「うん、風邪持って来ないでね。さっさと寝なさいよ」
「うん」
二人は帰っていった。時間は9時をまわっている。本当、私のために申し訳ない。
母親が両家の親御さんに連絡を入れる。遅くまで引き留めてしまってすみません。
私からも謝りたいとこだが、もう寝なさいと言われて大人しく寝る。
翌日。風邪はすっかり治った。
回復力の早さと脚の速さは誰にも負けない。
「おーっす、柊ぃ〜」
「きゃっ、抱きつくな!!」
「風邪治ったぜ〜、それもこれもあやのと柊のお陰なんだぜ」
「す、すがりつくな////お前は猫か!!」
「柊ぃ〜柊ぃ〜」
「分かったから離れなさいよっ」
「みゅ〜〜〜〜あやのー、柊がロシアのツンデレ地帯より冷てぇよぉ〜〜」
「つ、ツンデレ言うなぁ!!」
「それを言うならツンドラでしょ?甘えたい気持ちも分かるけど、ほどほどにね。
柊ちゃん、本当は嬉しいんだから」
「うん。でもさ、さっき柊が反射的にツッコんだけど、柊って『ツンドラ』なのか?」
「ち、違うわよ。こなたがツンデレツンデレ言って、アンタがツンドラと言い間違えたから、
つ、つい、条件反射で……」
「みゅ〜〜〜〜〜〜あやの〜〜〜柊はやっぱりチビっ子の方がいいんだぁ〜〜」
「あらあら、みさちゃんも柊ちゃんも相変わらずね。
私もしばらくの間は忙しくなりそうね。ふふふ」
完
以上でございます。
有り難う御座いました。
因みにこの桂体なコテハンは、数字だけでコテハン付けてる方を真似してみたからです。
べ、別に某東海道線の新型車両とは全然関係ないんだからねっ、
ほ、本当なんだからっ。
頭がぼーっとしてきたのでもう寝ます。
>>283 GJなんだけど、こんなことしてる時間があったらゆっくり休みなさい!
日下部みたいにこじらしたら、どうするの!
 ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.. ≧ー‐: : : : : :/ : : : : : : : : : : : :>、
イ: : : : : : : : : : : : : | : : : : : : : : : : : : : : : \
. /: : : / : : : : : : : :/: │: : : : : : : : : : : : : : : : : \
/: , -/ : : : : /: : : :/ : : ,|: :|: : : : : :| : : : : ヽ : : : : : :ヽ
/: //: : :/: : :/: : : ,イ: : :/ |: :|: : : : : :| : : : : : :', : : : : |_ 」__
/: / .': : : :/ : : /.: : :/ |: : イ |: :|', : : : : | : : : : : : ',ニ/⌒ヽ.:.:>、
. // /: : : :/: : : .': \/ |: /:| ',: ',ヽ: : : :|', : : : : : : ',/ ̄.:ヽ}___.:.:.:.\
/ /: : : :/|: : : :|: : :/\.|/ | v ', \斗―: : : : : :|.:.:.:.:.:.:.\:ヽ.:.:.:.:|
|: : : /.:.|: : : :|: :f≧x、ヽ | ヽ{ /ヽ| ', : : : : : |.:.:.:.:.:.:.:.:.:| :|.:.:.:.:|
|: : ∧.:.|: : : :|: :|! {rイ心 、__ /x≦云示ア/⌒ヽ.:.:.:.:.:.:.:.| :|.:.:.:.:|
|: :/ ヽ!: : : :!:ハ Y::::j} 〃frイ:::::::::/' }.:.:.:.:.:.:.:| :|.:.:.:/
|:/ V: : :|{: :ハ ヽzソ vトーイ/ /.:.:.:.:.:.:.:.:| :|ー '
|{r=≠ニヘ : ∧/ {.:.:.:.:. 、 ヽzxV /____」 :|
} |V : : :个 、 f⌒ヽ .:.:.:.{ ′: : : :/ : : : |
{ \ー‐|: : : : : |: /「 >- 、___ノ__ ... -', {: : : :/: : : : │
| `ー|: : : : : |/ :| | | ヽ x-- 、/ } |: /:}: : : : : : |
ヽ.ヽ、 ヘ : : : :∧/| | . >ー{ ヽ/ ̄ ̄ ̄ヽ. |: : : : : :│
{ヽ.__ム: : : {-ヘ ー ' {.:.:.:.:.:.>、 { ',ヽ: : : : : |
ヽ.ー―ヘ: : :|-/ヽ 〉ーく /ヽ ヽ/⌒ | ',: : : : |
}ー―ヘ : |/ ,/ /.:.:.:.:.:| {: : :} { }ヽ.} : : : |
オ レ は 今 日 、 神 を 見 た 。
その神はツンデレやらなんやら、化け物並みの破壊力をもった萌えっ子達を
ひきつれていた、、。オレはその攻撃の嵐をかいくぐり、ぼろぼろになりながらも見事生還した。
だがしかし、それは間違いだった。最後にラスボスがいたのだ。そう、超特大デレ顔を発動させている
かがみのAAだ。こうしてオレは萌え死んだ。いわゆる>>283さん>>285さん、GJ!でした!!
>>284-286 どうも有り難う御座います。
何とか熱は下がりました。
それと、保管庫に上げて下さった方、有り難う御座います。
あまりのも駄作だったのでそのまま放置するつもりだったのですが。
最後に。
電波が次々と受信されるのはいいんだけど、中々SS化出来ないorz
仕込みが終わるまで、また名無しに戻ります。
>>288 >>1 > ☆投下した作品の保管を希望しない場合、前もってその旨を知らせること
290 :
2-390:2007/11/20(火) 22:08:39 ID:W2VG2Vs/
『残し物-妹』を投下
・つかさ→かがみ気味
・社会人かがみ視点
・こなたとかがみはつい最近お初お目にかかりますた
・今回は繋ぎなのでシナリオ進まず
オリ設定苦手な人はスルー推奨
291 :
残し物-妹:2007/11/20(火) 22:11:14 ID:W2VG2Vs/
私は今さっきまで、休日の醍醐味と称して昼風呂を満喫していた所だ。
これは朝や夜の肌寒い時間帯でなく、気温の適度な昼の間に湯を浴びる事で湯冷めの心配を解消でき
また何より、白昼堂々というのは至極気分が良い。
こなたも一緒にどうかと誘ったのだけど、奇しくも顔面に枕を投げつけられてしまった。
であるから、1人寂しく身体に湯気を纏い
タオルを頭に、風呂場から出て来たのだけれど……。
「……はぅ〜…」
「………」
部屋ではつかさとこたながご対面の様子だった。
─────
「えっと…あのね?私はお姉ちゃんに会いに来たんだけど」
「………」
「その、何処にいるのかなーって……」
「………」
端から傍観する私に気付く事なく、戸惑うつかさと無言のこなたの対話(?)は続けられる。
時たま目を >< こんな風にして参ってしまう我が妹に対し
こなたは変わらず、猫がムッとしたような口をして一言も発しない。
ましてや微動だにしない所を見ると、彼女はわざと困らせようとしているのではとさえ思えてくる。
どちらにしろ、つかさは己と相当相性の悪い人物と鉢合わせてしまったようだ。
「あ……もしかして、コレお人形なのかな。」
ポツリと呟いた。
前略、本気ですかつかささん。
そんな肉感優れた等身大の人形なんて過去幾数年見た事は無いし
何よりそんな物を所持している私はかなりアブナイ奴になりそうだ。
まったく、日本で冗談なんて流行らないわよつかさ。
なんて内心でフォローを入れてやりつつ、二人の様子を見守っていると…
「わ、すごく良く出来てるよぉ。」
こなたは頭をなでなでされていた。
おのれ、そこに直れつかさ。
私は何故か嫉妬しつつ、そろそろ声を掛けてやろうと部屋に踏み入った。
「つか──」
「こーゆーお人形って、ちゃんとついてるのかな…」
直後。こなたの投げた枕と、私の放ったタオルの鞭が
つかさの顔面を直撃していた。
292 :
残し物-妹:2007/11/20(火) 22:14:31 ID:W2VG2Vs/
─────
「えへへ、ごめんねお姉ちゃん…。」
若干の照れを見せつつ、頬を描いて苦笑うつかさ。
今は小さなテーブルを私とつかさとこなたの三人で囲み、各々の目前にはティーカップが置かれている。
「私はいいけど、こなたにもちゃんと謝りなさいよ。」
「うん。ごめんね、こなたちゃん」
この子は本当にこなたを人形だと勘違いしていたらしく
枕を投げつけられてまずびっくり。
視界に映るこなたが動いていて二度ビックリしたらしい。
肩で息を切り、若干の赤面を見せていたこなた曰く
「人間の雌は想像以上に下劣」
とのこと。
現在つかさにニコニコと詫びを入れられたこなたは、私の方を見上げて服の袖をちょいちょいと引っ張っている。
「大丈夫よ、この子は妹のつかさ。
出身は当然私と同じ埼玉だけど、こっちには調理師として出てきてるのよ」
よろしくね〜、とつかさ。
簡単な紹介を呑み込むと、こなたも軽く会釈した。
「この子は泉こなた。
えっと…上司の子供さんなんだけど、まぁ訳あって私が預かってるのよ」
こちらは取り敢えず出任せで済ませておいた。
どこの子かも知れない家出少女をかくまっているなんて事が広まれば、世間体は勿論よろしくないだろう。
身内とあれど、大事を取って話さないでおこうとは密かに決めていた事だった。
293 :
残し物-妹:2007/11/20(火) 22:16:26 ID:W2VG2Vs/
「それでつかさ、今日はどうしたのよ。」
ここでようやく訪問者の用件を尋ねるまでに至ると、該当者はカップを倒しそうな勢いで腰を起こした。
「そっ、そうだよお姉ちゃん。
こっちに越してから全然家に帰って無いって聞いたから、心配して来たんだけど…」
つかさはじっと私の顔を見た。
その血色でも伺っているのか、目は何処か探るような形をしている。
恐らくは私の、主に食生活を危惧して駆けつけてきてくれたのだろう。
いくつになっても私を気にかけてくれる妹の存在は有難いと思った。
「大丈夫だって。仕事がちょっと忙しくて帰れないだけよ」
手をひらひらとさせてたしなめるが、目前の妹は府に落ちない様子。
「でも、三食インスタントで済ませてりしてない?
お姉ちゃん料理出来ないし…」
やはり心配の種はそこか……って、一言多いわよ。
まるで出来ない訳じゃない、あまり美味しく作れないだけだ。
そしてバリエーションも極めて少ない…と、コレはやっぱり出来ないようなものか。
1人ひっそりとため息をつくも、実は今回つかさの心配する事態は既に脱していた。
「それがさ、手料理作ってくれる人見つけちゃったのよねー。」
「……!!!」
……あれ?つかさが真っ白になって硬直してしまった。
口をポカンと開けたまま、今にも何処かにヒビが入りそうだ。
「そそそ、それそれれってオト、おお男の…ひ…!」
「いや……まぁ、この子なんだけどね」
私は左側に座るこなたの頭に、軽く手をぽんぽんと乗せて示す。
この子を部屋に置いた翌日の出来事以来、朝夕と昼のお弁当まで任せてしまっている現状だ。
「……!!!!!!」
と、つかさの背景に稲妻が走った気がした。
えらい驚きようだけど、こんなちびっ子がマトモに料理作れるなんて聞いたら誰でも驚くわよね。
いや、もしや驚きの対称は子供に家事を一任している私だろうか。
294 :
残し物-妹:2007/11/20(火) 22:17:06 ID:W2VG2Vs/
とにかく、様子が著しく異常な妹に何か声を掛けようとすると
彼女は不意に、その場を素早く立ち上がった。
「お……」
「お?」
「……お姉ちゃんのばかぁぁぁ〜!!」
そして近所迷惑も顧みない程のシャウトを放つと、彼女は何故か泣きながら部屋を飛び出してしまったのだ。
「なっ! つ、つか──…」
「………。」
引き止めようと咄嗟に出した右手は宙に孤立し、それはそれは寂しいものだった。
突然走り去った妹、絶えずムッスリ猫のこなた。
求めても誰も状況を説明してくれない現状故、私はただ呆然とするのみに時間を費やした。
─────
夜もお風呂に入った私は、現在ホカホカになってベッドの上で仰向けだ。
といっても寝るわけではなく、溜まっていたラノベを刻々と消化している。
今日は来客もあって疲れたし、そろそろ仕事に備えて切り上げようかな。
などと片手間に考えていると、辿って思い出すのは
結局何をしに来たのか、我が妹つかさの事だった。
「ハァ……ま、何かの聞き間違いかもね。
つかさが私をバカだなんて──」
「……どーかな。」
隣に寝転び、私の広げる文庫本を見上げるこなたが呟く。
私のブカブカパジャマを纏って、それが布団のようでもあった。
皮肉るその口はほくそ笑むでもなく、やはりムッとした猫の口だ。
可愛い奴め。と撫でてやると、顔面に枕をぶつけられた。
295 :
2-390:2007/11/20(火) 22:19:26 ID:W2VG2Vs/
つづく
つかさが「こなたちゃん」と呼んだのは仕様。
今後仲良くなれば「こなちゃん」に変わるでしょうな。
枕投げまくりのこなたがかわいい(..´▽`)
リアルタイムGJです!!
結構お気に入りのシリーズなのです。
続きをwktkして待ってますねww
>>295
このシリーズだいっっっっ好きです!!!
あーもーむすっとした猫こなた可愛いよもふもふしたいよ
そんでもって枕を顔面にクリーンヒットさせてほしいよおおおお!!
とにかくぅ!GっJ!!!でしたああああああああ!!!!!!
>>295 GJッス!
かがみに頭をなでられてるこなた(顔は不機嫌だけどどことなく気持ち良さそう)を想像して勝手に悶えましたwww
出来るならこのままほのぼので、と思ってしまう俺ガイル
>>299 おもちかえりやああああああーーーーーー!!
こ、これは可愛い…。二人ともGJ!
あと、ちょっと質問なんだけど、こなたとかがみが子どもの頃に出会ってて、
でもお互いそれに気づいてなかったんだけど、こなたがかがみに上げたトレカか何かが
見つかったのを切っ掛けにそれを思い出した、みたいなSSって心当たりありますか?
ずーっと捜してるんだけどみつからない…。
ぬわぁぁぁ、そっちかぁぁあぁ! 盲点だった…マジありがとう。
止められなければつかさは脱がしていたんだろうかww
こなたの過去も色々ありそうだし、これからも期待してます
VIPのらきSSからきました。
たびたび話題に上ってるので見に来ましたが、作品数の多さに驚いてます。
なにかお薦めがあれば教えていただけますか?
すべてだ
というのが本音だが、あえて一つ上げるなら『てけてけかなたさん』シリーズではないかと思っている
まとめすらーっと眺めて「泉こなたの寂莫」というのがあったのでとりあえず、見てみました。
エロだけじゃないんですね!
せっかくここまできたので
>>307さんのお勧め見てきます。あじゅじゅした〜
むしろエロの方が少ない不思議なエロパロスレ
>>309 いま、てけてけ読んでます。すっごい面白いです!
VIPのほうがクオリティ低いような・・・orz
慣れてきたらこちらで投下を試みたいと思いますw
VIPの方ですか。
漏れがSSの存在を知ったのは、実はVIPに以前あった「余命つかさ」というSSスレッド。
元々はアンチネタらしかったけど、名作が何本かあり、泣かせて貰ったことを覚えている。
で、その後に別の場所にSSスレが立って、そのスレからこの「らき☆すたの女の子でエロパロ」スレを見付けたという訳。
ここは面白い作品が沢山あって良いです。
チラシの裏スマソ。
てけてけいま、19話まで来てます。
面白すぎます。目から汗出てくるしw
>>311 余命つかさは現在らき☆すたSSに名前を変えてがんばって存続してますよ。
いろいろありますが、VIPはVIPで面白いところです。
気が向いたら足運んでみてくだされw
ちょっと自分を追い込むために
日曜までにこなゆたSS完成させる!と宣言しておこう…
チラ裏スマソ
>>313 最近は、CP別スレにも力作良作が上がるようになってるね。
ここへの投下が減ったのはちょっと残念だけど、両方見てれば問題ないし、
まとめの人の手間も減るから、悪いことばかりじゃないのかもな。
そういえば最近、まとめwikiに絵が上がってないような?
個人的にあっちの雰囲気は超苦手だ。昔はよくみてたんだけどなぁ。
投下が減ってるのは、単純に放送終わって時間経ってきたからでは
それにしては定期的に作品投下されてるよな
それも続き物ばかりw
あと、俺みたいに携帯と共に書きかけのSSが水没して
モチベーションが急降下した作者さんが山ほどいたり
……しないよな
質が全然落ちてないのが凄いよね。
むしろ最近気になるのが、作品投下ペースより作品への反応の鈍さかなぁ。
いいな、と思う作品でもなかなかレスつかなかったりして、あれ? って思う。
>>317 つかさ乙
なんか投下しても、GJの有無の差が激しすぎる…気がする。
まぁそれなりのものしか書かない俺が悪いんだが…
いいよ、精進するっさ…!
チラ裏マジスマソ
カプスレ見てきたけど
こっちの職人がいて驚く反面、最近のこっちでの作品投下頻度を見て心配になってきた。
移住とかしないよね?
名前は出さないけど、作品投下数がベスト3に入る人なだけに
いなくなられると困る・・・・・・
カムバック!!こな☆f(ry
>>319-320 草野球みさおとか折鶴みゆきとか読んで思わず泣いたところでGJしようとすたところ、
見事に規制で撥ねられたのですがどうすればいいでしょうかorz
>>313 ぐおおおおおおっ、楽しみにしてますっ!
では自分も貴殿に倣って、このスレが埋まるまでに書きかけSS一段落しようとするぞっ
昨日からお邪魔してますが、基本ノンジャンルと考えてもいいですか?
もしそうであれば、一つネタがあるので書きあがり次第投下したいと思ってます・・・
エロでもグロでも原作まんまのマターリでも純文学でもSFでもパラレルでもなんでもあり
小ネタだろうが連載だろうが50レスだろうがなんでもあり
ただ前書きはちゃんと書こう、みたいな感じ
期待してます
ここの懐の深さは 異常(良い意味で
非エロで長編ものとか他では敬遠されがちなのも受け入れてくれるので、重宝してます!
鬱モノ書きの自分としても大変ありがたい空気
今から投下します。
非エロで、つかさとかがみがメインです。
長めになりますが、よろしくお願いします。
329 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:23:30 ID:jkkRWIBV
『心変わり』というのは、案外とつぜん訪れるものなのかもしれない。
特に、雨降りの日がつづいて、気持ちが晴れないようなときには。
わたし――柊つかさは、ある日とつぜん、みんなの態度の変化に悩まされることになったの。
それは、七月に入ったばかりで、そろそろ梅雨も明けようかという日のことだった。
「こなちゃん。帰ろ?」
放課後、わたしはいつもみたいに帰り支度をすませると、まだ机の上にノートや鉛筆を散らけているこなちゃんに声をかけた。いつもなら帰り支度が早いこなちゃんなのに、その日は珍しく遅かったの。
わたしたちは毎日、かがみお姉ちゃんを加えた三人で登下校をしている。待たせたりするとお姉ちゃんはうるさいから、わたしはこなちゃんに早く支度をして欲しかった。
でも……。
「あー、ごめん。つかさー。今日はみゆきさんと一緒に買い物に行く約束をしてるから、かがみと二人だけで帰ってくれないかなー?」
少し意地悪っぽい笑みを浮かべて、こなちゃんはそう言ったの。
「えっ? う、うん。わかった。お姉ちゃんにも言っとく。…でも、珍しいね。こなちゃんがみゆきさんと二人で買い物なんて」
「いやー、ちょっとねー」
正直に言うと、ちょっとびっくり。
まだ自分の席に座っているみゆきさんに視線を送ると、にっこりと笑顔が返ってきた。
わたしは、きょとんとしてしまう。
結局、こなちゃんとみゆきさんは、そのあと二人で教室を出ていったの。
330 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:25:14 ID:jkkRWIBV
わたしはそれから少しのあいだ、教室に残って、お姉ちゃんが来るのを待ってた。
お姉ちゃんはすぐに教室にやって来た。それで、わたしから事情を聞くと、
「へえー。珍しいこともあるもんね。こなたとみゆきが二人で買い物ねー」
と、あっさりした反応。うん、そんなに気にすることじゃないよね。
でも、そのあとで少し首を傾げて、
「……ふーん。奇遇ね」
って、呟いたの。
「……えっ? お姉ちゃん、どうかした?」
わたしがそう訊ねると、
「ううん。なんでもないわ」
って首を振って、ごまかすようにして笑った。
その日は、だから久し振りに、姉妹二人で仲良く下校したの。
だけどそれが、今から考えると、わたしたちを悩ませることになる事件の始まりだったの……。
その次の日。
「こなちゃん。帰ろう?」
わたしが声をかけると、またしても、こなちゃんは首を振った。
「ごっめーん、つかさー。今日もわたし、みゆきさんと一緒に帰る約束をしてるんだよねー。悪いケド、かがみと二人で帰ってくんないかなー?」
昨日と同じように少し意地悪な笑みを浮かべて、こなちゃんはそう言ったの。
ええっ、またぁ?
なんだか驚いてしまって、わたしは言葉を出せずにコクリと頷いただけだった。
みゆきさんを見ると、こちらも昨日みたいに、にっこりとした笑顔。
でも、心なしか、なんだかいつもと笑顔が違うような……。
「――では、かがみさんによろしく言っておいて下さいね」
みゆきさんに言われて、わたしは愛想笑いで返事をした。
二日つづけて一緒に帰っちゃうなんて、なんだか変だなぁ…って思いながら。
331 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:26:06 ID:jkkRWIBV
教室で待っていると、すぐにお姉ちゃんがやって来た。
「あれー? こなたは?」
開口一番、そう訊いてくる。わたしはあいまいに笑って答える。
「えーとね、今日もみゆきさんと一緒に帰るって言ってたよ」
「……そう?」
お姉ちゃんは不思議そうに顔をしかめた。やっぱりそうだよね。二人とも、なんか変だよね?
教室を出て、肩を並べて廊下を歩く。お姉ちゃんは眉をひそめたまま。
「……なんかおかしいわね。みさおとあやのも、二人で帰るって言って、放課後になるとサッサと帰っちゃったのよ。――実は、昨日もそうだったの。偶然にしては、タイミング良すぎよね」
腕を組んで、お姉ちゃんは唸った。
うーん。でも、そんなに気にすることなのかなぁ……。
最初は戸惑ったけど、お姉ちゃんが真剣になってる姿を見ると、なんだか冷静になってしまう。
……わかんないや。
そのあと、下駄箱の前で、わたしたちは偶然ゆたかちゃんとみなみちゃんが立ち話をしてるところに行き会ったの。
思わぬ偶然が嬉しくて、手を振って笑って挨拶をする。
「あっ、つ、つかささんと、かがみさん……ええっと、い、いま帰りなんですか?」
なんだかひどく慌てながら、ゆたかちゃんが挨拶を返してくれた。
なんだろう。表情には出ないけど、みなみちゃんも少し慌ててるように見える。
お姉ちゃんが気さくに二人に話しかけた。
「どうしたの? 二人ともこんな場所で。これから帰るんだったら、一緒に帰らない?」
かがみお姉ちゃんは、二人にそう声をかけたの。
でも……。
「あっ、あのっ。今から、みなみちゃんと一緒に寄りたいところがあるので……ご、ごめんなさいっ」
顔を真っ赤にしながら、ゆたかちゃんは深々と頭を下げた。その姿はとてもほほえましかったけど、わたしの心には釈然としないものが残ったの。
だって、変だよね?
「――もしかして、わたしたち、避けられてる?」
ゆたかちゃんたちが去ってしまってから、お姉ちゃんがポツンと呟いた。
わたしも、実は少しだけそう感じていた。
みんな、とつぜんよそよそしくなってしまった気がする。
332 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:26:56 ID:jkkRWIBV
「これって、いじめなのかな?」
不安になって、訊いてみた。
「……わかんない。でも、みんな感じ悪いわね。仲間はずれにするくらいなら、正面から堂々と文句を言ってくればいいのに」
お姉ちゃんはそう言ったけれど、かすかに肩が震えていた。わたしの前だからって、強がってるのかな。わたしも、ちょっとだけ怖い。
わたしたち、仲間はずれにされちゃってるのかな……。
その日は二人とも、いつもよりも無口で、話も弾まないまま家まで帰ったの。
その次の日の朝。
こなちゃんはとうとう、登校のときにもわたしたちを避けた。
早朝に、こなちゃんから電話があって、
「ごめーん。用事があって、今日は一緒に登校できないや。悪いんだけどさー、かがみと二人で行ってくんないかなー?」
って言ってきたの。わたしは、目の前がまっくらになりそうだった。
ひどい。
今まであんなに仲が良かったのに、とつぜん、みんなで避け始めるなんて……。
涙目になってお姉ちゃんにそう話すと、くしゃくしゃと髪をなでてくれた。
はぁ…。学校に行くのが憂鬱だよ。
かがみお姉ちゃん。わたしだけは、なにがあっても裏切ったりしないからね。絶対だよ。
それでもその日、わたしたちはいつもみたいにお昼ご飯を一緒に食べたのだけど、あまり会話は弾まなかった。こなちゃんもみゆきさんも、わたしとお姉ちゃんに対して、どこか対応がぎこちなかった。
うぅ……。もう、一体なんなの?
そして、その日の放課後。
こなちゃんたちは、やっぱりわたしたちを避けるようにして、そそくさと下校してしまった。
お姉ちゃんが言うには、みさおさんたちも、そうだったらしい。
もう、誰も信じる気になれないよ……。
「いつまでも、そんなの気にしてても、しょうがないわ。さ、帰ろ。つかさ」
こんなときでも、お姉ちゃんは落ち込んだりしなかった。
やっぱり、お姉ちゃんはすごいなぁ。
二人寄り添うようにして、廊下を歩いて階段を下りる。
そして、下駄箱を開けたときだった。
ひらりと、中からメモが舞い落ちたの。
『本日五時、みゆき邸にて待つ。かがみと二人で来られたし。――こなた』
メモには、そんな風に書いてあった。
こ、これって……。
「――つかさの下駄箱にも入ってたか」
振り向くと、いつの間にいたのか、お姉ちゃんがすぐ後ろに立っていた。
「は、果たし状、なのかな?」
恐る恐る、わたしは言った。
もしかして、わたしたちは喧嘩を売られているのかな。
行ったら、そこにはみんなが待ち受けていて、わたしたちはリンチを受けてしまったりして……。
そんなに、みんなを怒らせるようなこと、しちゃったのかな……。
それは一体、いつのどんな出来事だったんだろう?
333 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:28:00 ID:jkkRWIBV
お姉ちゃんは、わなわなと拳を握り締める。
「いいわ。やってやろうじゃない。喧嘩上等よ。こなたもみゆきも、みんなまとめて殴り飛ばしてやるわ」
お姉ちゃんがやる気だ。……わたしも、微力ながら応援するよ。
それにしても、まさか、こなちゃんたちと喧嘩することになるなんて。
人生って、なにがあるのかわからないよ。
気合を入れるためのハチマキを額に巻いて、わたしとお姉ちゃんは五時ぴったりにみゆきさんの広い屋敷を訪れた。
握った手の中がじんわりと汗ばむ。
あぁ、緊張する。ケガしたりしたらどうしよう。
意を決したように、お姉ちゃんが玄関のチャイムを押す。すぐに来客用のインターフォンが音を立てた。
「はーい。どちらさまですか?」
この声は聞いたことがある。確かみゆきさんのお母さんだ。
「あの、わたしたち、みゆきさんに呼び出されて来たんですけど」
強い口調でお姉ちゃんが答えた。
「あ、はいはい。みゆきから聞いているわよ。あがって?」
そう言われて、わたしたちは門をくぐり、玄関に侵入して、廊下を歩いた。
こなちゃんたちは、どこだろう?
たぶん、みゆきさんの部屋にいるんだと思う。
わたしたちは少し歩いて、そのドアの前に立った。
「つかさ、準備はいい?」
お姉ちゃんに訊かれて、わたしは深く頷いた。
柊つかさ、戦闘準備は万端です。……ちょっと怖いけど。
「……いくわよ!」
そして、お姉ちゃんは勢いよく部屋のドアを開けた。
334 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:28:44 ID:jkkRWIBV
パァン。パパン、パン!
ひっ!
ドアを開けると、わたしたちを出迎えたのは、そんな感じの破裂音だった。
びっくりして、わたしは思わず目を閉じる。
け、拳銃っ?
そんなぁ。武器まで用意してるなんて反則だよ。
頭を抱えて、わたしはうずくまってしまう。
…………?
でも、それきり音は止んでしまったの。
不思議に思って、そろそろと瞼を開けると――。
壁全体にいたるまで、きれいに飾り付けられた、みゆきさんの部屋が目に飛び込んできた。
そして、部屋の中には着飾ったみんながいた。
こなちゃん、みゆきさん、みさおさん、あやのさん、ゆたかちゃん、みなみさん……。
手に手に持っているのは、小さな三角型のクラッカー。さっき鳴ったのは、これだったんだ。
隣りを見ると、お姉ちゃんも、すごくびっくりしていた。
「あ、あんたたち! 一体なんなのよ、これ?」
そう言って、どうしたらいいかわからない様子で、オロオロとしている。
わたしにも、なにがなんだか、さっぱり。
「あっれー? まだ気づかないかなー?」
こなちゃんが、やっぱり意地悪い笑みを浮かべて、からかうように言った。
そして、こなちゃんはわたしをビシッと指差して、
「つかさ、さて問題です。今日は一体なんの日でしょう?」
えっ? ええっ?
「わ、わかんないよっ、そんなの」
なんだか耳まで赤くしながら、わたしは首を振った。
今日? 今日、七月七日は……。
「あっ!」
隣りで、お姉ちゃんが雷に打たれたように体を硬直させた。
「な、なに? お姉ちゃん、どうかしたの? 今日は、なんの日だっけ?」
お姉ちゃんは、呆れたように肩をすくめる。
「……うかつだったわ。わたしとしたことが」
なんだかすべてを理解したみたい。わたしはまだ、事態がよく呑み込めていない。
お姉ちゃんはポンとわたしの肩に手を置くと、溜め息を吐きながら言った。
「――つかさ。今日は、わたしたちの誕生日よ」
336 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:29:24 ID:jkkRWIBV
……。
……。
…………。
え、えええっ!?
思わず目が点になってしまった。
そうだ。今日、七月七日は、わたしたちが産まれた日だったっけ。
こなちゃんたちの不審な行動が気になってて、考える余裕もなかったよ。
「え? それじゃあ……」
わたしは、こなちゃんを見る。
「ひょっとして、これって、わたしたちの誕生会なの?」
「そうだヨ?」
にやにやと、こなちゃんは頷いた。
「つかさー、かがみー、それにしても、なんで二人してハチマキなんて締めてるのさ?」
「ばっ、ばかっ! これは、なんでもない!」
顔をまっかにしながら、お姉ちゃんがごまかした。
わたしも、慌ててハチマキを取る。
うわぁ。なんて恥ずかしい勘違いをしちゃってたんだろ。
「じゃあ、最近ずっとわたしたちを避けて帰ったりしてたのは……」
「プレゼントを買いに行ったり、この部屋の飾り付けをしてたからに決まってるじゃん。あ、みんなでケーキを焼いたりもしたケドさー」
「そ、そうだったの?」
「いやー最後は間に合わなくてさ。今朝も早起きして、みんなでここの飾り付けをしてたんダヨ?」
ああ。それで一緒に登校できなかったんだ。
なんだか、納得。
そして、すごく恥ずかしい。
それから、こなちゃんは後ろを振り返って、テーブルに乗っている大きなケーキを指差した。
「あれ、苦労してみんなで焼いたんだヨー? まぁ、ほとんど、あやのさんが作ってくれたんだケドね。さあさあ、バースデーキャンドルに火を点すから、二人ともテーブルの前に立ってよ。――みゆきさーん。電気消してー?」
はーい、という声とともに、みゆきさんが部屋を薄暗くした。
わたしたちは一緒に歩いて、二人でバースデーケーキの前に立つ。
キャンドルへ次々に火が点されていく。
みんなが、わたしたちを囲むように立って、ハッピーバースデーを歌い始めた。
歌が終わるころ、わたしたちは、暗がりに浮かぶ火を吹き消すんだ。
暗がりの中で、お姉ちゃんが、ぎゅっとわたしの手を握った。
目の前のキャンドルの火は、滲んでしまってよく見えない。
うぅ、みんな、本当にありがとう。疑っちゃってごめんね。
そして、歌が終わる。
上手に息を合わせ、わたしたちは二人、薄い闇の中に浮かんだ蝋燭の火を吹き消していく。
それに、みんなの揃った声が重なる。
「――ハッピーバースデー!」
END
337 :
心変わり:2007/11/21(水) 12:30:49 ID:jkkRWIBV
以上になります。
そんなに長くはなかったかな。
ベタな話ですけど…。
ありがとうございました。
338 :
335:2007/11/21(水) 12:31:01 ID:GhhEVOAx
割り込んでスマン
>>325-326 レスありがと。
現在は別スレで公言してしまった作品を書いてるので、
それが終わり次第、着手しようと思ってます。
その際は賛否両論お聞かせ頂けるとありがたいです。
>>337 乙。あとでゆっくり読ませていただきます。仕事の合間だったりw
>>337 果し合いと思い込んで空回る双子が可愛いね。ぐっじょぶ。
あと、つかさ→みゆきの呼びかけは正しくは「ゆきちゃん」。蛇足まで。
>>337 おつかれさま、丁寧な描写でいい感じ。
あと、みなみも『みなみちゃん』かな。
基本つかさはちょっとでも仲良くなったら『ちゃん』づけっぽいね。
みゆきさんじゃなくてゆきちゃんじゃないん?
なわけで、GJ!
>>337 GJ!ベタだけどよかったよw
果し合いワラタ
>>337 あぁ、鉢巻ねぇw
あるあr・・・・・ねーよ!www
ハチマキのおかげで既存のものとの差もあってよろしいかと。
つかさ視点ならではの文章の柔らかさも心地いいです。
>>337
今、オレの頭の中で繰り広げられている光景。
鉢巻→応援団→学ラン着たかがみとつかさ→おにゃのこだから当然サラシ
→・・・・////
ちょっとした変態気分ですよ。ええ。とにかくGJでした!!
同じ学ランが似合うでも、
確かにかがみはツインテール女体学ランという
ギャップ的な萌えがあることはその通りなんだが、
別の意味で学ランが似合う奴がいる。
寸足らず元気っ子こなただ。
下駄履いてちょっとボロな学ランを着込み長鉢巻でも巻けば、
一昔前の少年マンガ風長髪わんぱく坊主。だが中身は少女。
そんなギャップに萌えがあるとは思いませんかみなさん(みゆき鼻血)
こなた「それなんて十兵衛?もしくはどろろ?」
>>346
わんぱく学ランこなた、、、。
あれ、なんか鼻から赤い液体が、、、。
みゆきさん「ふふ♪こちらの世界にようこそ♪」
オレ「!!!!!!!!」
泉さんかわいいです泉さん
>>349
みゆきさん乙wwwwww
んでもって、チビ学ラン葉っぱくわえこなたと
番長学ランのみさおが
マドンナかがみを巡って喧嘩して
そして「なかなかやるねぇ」「おめぇ、強ぇじゃん」と
友情を確かめ合い、仲間になる、そんな少年漫画。
みゆき「え!?え!?マドンナは私じゃないのですかっっ!?!?」
>>351
途中までニヤニヤしてましたが、最後で顔筋がとけましたwwww
オレのほっぺ返してwwwwww
>>337 かなり遅くなったがgj!こんな誕生日を過ごしたかったな〜
>>348 俺「俺も一緒に逝くよ・・あの光の彼方に!」
俺もついにこなフェチ病!こなフェチ病万歳!!
えっとね、>>とsageは半角のほうがいいと思うんだ
一つ 人より足早く〜
二つ 普通を飛び越えて〜
花のアキバ〜で、萌え試し〜
三つ 見た目は小学生
こなちゃん ペッチャリ 人気者
ひんひん 貧乳 こなた〜っぺ〜
四つ 夜中はネトゲして〜
五つ いつでもアニメ見て〜
鍛えぬけ抜け、ヲタ魂〜
六つ ムシャクシャ するときは〜
こなちゃん ドバッと まるはだk
こなた「しないって!脱がないって!みゆきさん鼻血鼻血!
こらかがみ!脱がそうとするな〜〜アッー!!」
>>356 脳内で天童よしみがこなちゃん数え歌を歌ってる!!
>>355
おお、ありがとうございます。気付いてませんでした。
ここらで空気を読まずにこなかがssを投下したいのですが、よろしいでしょうか。
やっちゃいな!
はい、了解も出たところで、さっそく投下したいと思います。
・2〜3スレお借りします。
・少し重めですが、最後にはハッピーエンドの予定です。
・かがみ→こなたで非エロです。
362 :
361:2007/11/21(水) 22:19:24 ID:ooWd0UX0
>>360 割り込んでしまったゴメン!
…と思ったら、ちょと時間空いてますね…?
ちょwwwwwwwwww仕事ハヤスwwwwwwwwwwwwwwwwww
かがみ大先生wwwwwwwwwwwwwwwwwww
割り込みすまぬ(´・ω・`)
作品どぞー(´・ω・`)
なんなのよ・・・なんだってのよっ・・!!
わたしはずんずんと、廊下をふみしめながら進んでいく。途中で日下部が峰岸に、おびえながら
抱きついてるのが見えたけど、知ったこっちゃ無い。今のわたしは、それこそ一睨みすれば
人を殺せそうなくらいに怒っていたからだ。
まったくあいつったらなに考えてんのよ!!!
とにかく、何もかもが目障りだった。いつの間にか玄関の外に出ていたわたしは、
落ちていた空き缶を、力いっぱい蹴っ飛ばした。
――いつもわたしをからかう、青い髪のあいつにみたてて。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
喧嘩、時々仲直り 〜かがみよりこなたまで〜
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
キーンコーンカーンコーン・・・・
間の抜けた鐘の音が校内に響き、学校生活の終わりを告げる。それと同時に、教室の中が
息を吹き返したようにざわめきが立ちこめる。そのまま教室にとどまり、仲間たちと談笑する者。
友達と連れ立って教室を出て、帰路に行く者・・。わたし、柊かがみは、後者の群れに混じっていた。
向かう先は、家などではなく、もちろんB組み。妹のつかさ、そして・・・。
「おーっす。こなた、帰るわよー。」
そしてわたしが想いをよせる、泉こなたを迎えに。
まあ、想いをよせると言っても、そんなにアタックしているわけでもない。
超鈍感オタちびこなたが、わたしがあいつに抱いている感情に気付いているわけが無い。
いや、もしかしたら気付いているのかもしれないけど。毎日、気付かれないかどきどきものだわ。
B組みの教室に入ると、他の生徒はおろか、いつもは大人しくわたしを待っているはずの
こなた達もいない。
「変ね・・・。」
今日は放課後に用事があるから一緒に帰れない。と言っていたみゆきが居ないのは当たり前だけど、
何の用事も無いはずの2人が居ないのはおかしい。もしかしたら先に帰ったのか。とゆう考えが
一瞬頭をよぎったが、すぐに「それはない。」という結論がはじきだされた。万が一あったとしても、一言わたしに
「ごっめーんかがみ〜。今日は一緒に帰れないんだョ。」
とでも言いにくるだろう。まさか何かの事件に巻き込まれて・・!?そんな危ない想像が
が、画像となって頭を支配する。
・・・我ながらゆかいな脳みそをお持ちのようね・・・。
ふいに。本当に突然、がたっ!という、何か机がずれたような音がした。それに続くように衣擦れの音もする。
それにつられて、マイワールドから帰還する。
「何?今の・・・?」
確かに、音がした。こんな密室で聞き逃すほど小さな音では無い。まだ、微かにだけど、
衣擦れの音はする。ガスを入れられている風船のように、だんだん不安が膨らんでいく。
妹思いでこなた想いの脳みそは、さっきまで上映されていた映像をリピートしている。
―――まさか何かの事件に巻き込まれて・・・
「こなた!つかさ!」
気がついたら、わたしは吸い寄せられるように音源に駆け寄っていた。そして、見た。見てしまった。
つかさのマウントポジションをとっているこなたと、頬にひとすじの涙を流している、つかさを。
これで第一章は終わりです。長文、駄文すみませんでした。
しかもまちがってるところが、、、。orz
訂正しときます。「そんな危ない想像がが、画像となって〜」
を、「そんな危ない想像が、画像となって〜」に変換いたします。
なにぶん初投稿なので、なれない作業にとまどってしまいました。
迷惑でなかったら、またここで続きを書かせていただきたいです。
>>367 ごめん、割り込みを承知で言わせてもらうけど、作品はきっちりした形にしてから投下するべき。
見直しとかまで全部含めて完成させてからじゃないと、他の人も書き込めないし。
言い方がキツいかもだけど、まだ完成してない作品を仕上げながらの投下は
他の職人さんや住人さんに失礼だと思う。
>>368 >>369も言ってるように、投下宣言から一時間以上専有されちゃうと、ねえ…。
まあとりあえず乙。完成してからの投下なら全然迷惑じゃないですぞ。
>368
細かいけど、『とゆう考え』は『という考え』ね。
「画像」というのが今一つ分からなかったけど、初めてにしては上出来だと思うよ。
……ただ、書き終ってからまとめて投下した方が後がつっかえなくて宜しいかと。
続きを期待してる。
久しぶりの新作投下。今度はこなかが、Loving Starsの続編と番外編。
番外編は同時に投下こそするけれど、他のシリーズと一切関連性はない。
ちなみにどっちも微エロ。こなかがはガチエロよりほんわかの方が良いんじゃないかと思ったり。
楽しんでくれたら幸い。ちなみに次は想い出じゃないかなたさんを出してみたいと考えている。
例によって来月や再来月の投下になっても勘弁して欲しい。
それでは、お楽しみ下さいませ。
追伸
今度、拙作「Black Heart」を大幅に加筆修正して同人イベントに出展する運びとなりました。
「タダで投下した作品を今更カネ取るのか」なんて言わないで生暖かく見守って下さい、元の3倍近いんで。
ttp://makihime.org/luckystar/
>>367
すみませんでした。言い訳がましいのですが、時間がかかったのは、書き込もうとしたら
人大杉で書き込めなかったりしたからです。
>>367さん、他の職人さん、住人さん、どうもご迷惑をおかけしました。
「ねぇこなた、何見てるの?」
こなたの家へ遊びに来たかがみは、分厚く大きな本のようなものを取り上げ、読んでいる後姿に声をかけた。
「ん〜? これだよ」
長い髪がはさり、と振り返ると、そこには穏やかな顔をしたこなたがいた。
ちまこんとした身体に支えられたバインダーには、いくつもの写真が貼ってある。
「へぇ、アルバム?」
かがみが覗き込むと、こなたそっくりの女性が手を振っていたり、赤ん坊を抱き上げていたりする写真ばかりだった。
頬に泣きぼくろが無いのを見ると、どうやら別人らしい。
「うん、お母さんの。ほら」
そういってこなたが閉じたアルバムの表紙には、「泉かなた S62〜H1」と書かれていた。
色褪せた水色の筆跡は、世代を経た往年の丸みを感じさせる。
こなたはぺーじをめくって、次なる笑顔の束をかがみに見せた。公園でこなたを抱いているかなたの写真、
こなたが一人でハイハイをしている写真、こなたとかなたが一緒に入浴している写真……
「ホント、多いわね」
「私にはお母さんとの想い出が殆どないからね、お父さん、家にある全部の写真を頑張って集めてくれたんだ」
こなたはそのアルバムを閉じると、別なアルバムを開いた。
「泉かなた メモリアル」
中には、白黒の写真やセピア色の写真が所狭しと雑多に詰め込まれていた。
日付のない写真もあり、感光が飛んでほぼ真っ白な写真もあり、何もかもがてんでバラバラに配置されているアルバム。
「私にはお父さんがいるし、今はゆーちゃんもいるし、全然寂しくないんだけど、最近お父さんがねぇ……
『頼むからお父さんの葬式には出席してくれよ?』なんて縁起でもないこと言い出して。私そんなに身体弱くないのにね」
母の不在を事も無げに、否、笑いながら話すこなたに対して、かがみは心中複雑な思いだった。だが、
「こなた、アンタ……」
言おうとした言葉は、こなた本人に遮られた。
「あー、かがみんや。それ以上言うでない。私は、こがみにつかさ、みゆきさん、あとひよりんにパティも。
皆みんないるんだから、本当に寂しくないんだよ?」
「こなた……」
優しく紡ぐ言葉以上に、自分のことを真っ先に挙げてくれたこなたにちょっぴり嬉しくなったかがみだったが、
それも一瞬のことで、次の言葉には閉口せざるを得なかった。
「でもさ、かがみ、もし……」
「もし?」
「もし、今日一日だけお母さんになってくれたら、私嬉しいなぁ……」
「ハァ?」
言葉は遠くにこだました。そして、帰ってこなかった。
「今日だけだからね……まったくもう」
数分後、部屋にはゴロゴロとかがみに懐きっぱなしのこなたがいた。
胸元に頬を寄せて、何度も擦る仕草はまるで子猫のようで、鏡も少しばかり悪い気はしなかった。
「おかーさん……あったかい……」
「しょうがないんだから、この子は」
小さくて丸くて、心地よさそうに甘えてくるこなたの頭をかがみは優しく撫でる。
しばらくはうにゃうにゃと寄り添っていたのだが、突然こなたはかがみのツインテールを弄るのを止め、切り出した。
「おかーさーん、おなかへったー」
「おなかへったー、ってね……それくらい自分でやりなさいよ」
「おなかへったー!!」
駄々っ子のように我侭を言いながら、力の入っていない拳でかがみの胸をこなたはぽこぽこと叩く。
離してくれそうにも泣く困ったかがみへ、すっかり幼児退行した追い討ちがかかる。
「おかーさんのおっぱい、のみたい」
「ちょ、こなたいい加減に──」
「のーみーたーいー!!」
全く聞く耳持たずで、こなたは口を尖らせてかがみの胸に顔を埋める。胸間でイヤイヤ首を振るこなたに辟易したかがみは、
『そろそろ辞めなさい』とばかりに肩を掴んで、こなたを無理矢理引き剥がした。が、それがいけなかった。
「おかーさんのおっぱい、のむのー!!」
こなたはいたずらっぽくほくそ笑むと、かがみの服に潜り込んだ。どこか慣れた手つきでかがみのシャツを捲り上げ、
ブラのホックに手を掛けた。かがみが驚いて声を上げる前に、さっさとこなたはホックを外して、
蛍光灯の元に晒された乳房に触れた。
「こなたっ、やめなさっ……いっ……ひゃうっ」
「おかーさんのおっぱい、やわらかいね」
『出ないと分かっているはず』、そう考えていたかがみの思惑とは裏腹に、こなたは唇を小さく開いて、
かがみの乳首をはむ、と咥えた。
「きゃっ、こなた、止めて……」
「おかーさん、おっぱい出て来ないよ?」
そのまま、ちゅうちゅうと音を立ててかがみの乳首を吸い上げるこなた。
甘噛みして、吸っていない方の胸を手慰みに揉みしだき、こなたはますます深くかがみの胸に頭を押し付けていく。
かがみは長く抵抗していたが、やがてトロンとした目になって、こなたのするがままに任せるようになってきた。
「こな、た……私が胸弱いの知っててやってるわよね?」
「んー、どうしたの、おかーさん?」
可愛げな瞳を上目遣いに向けられると、かがみもついつい、何もかもを許してしまいそうになる。
それを必死に堪えている心も、もう蕩けそうだった。
「こなた、おっぱい美味しい?」
「うん、おいしいよ、おかーさん」
実際は何も出ていないのに、満面の笑みでこなたは答える。そして一際大きくかがみの胸を吸うと、
そのままかがみの方へ倒れこんでいった。
「こなた……! ま、まだ早い時間だしご近所さんの目もあるしそれ何より……って、ん?」
こなたはかがみに寄りかかって、静かな寝息を立てていた。最後の力を振り絞って乳を飲む仕草をしたのか、
その寝顔は満足そうに安らかで、かがみも身体がポワンと温かく、釣られて眠りそうになった。
「おっとっと……こんなところで寝ちゃ失礼よね。あー、でも……」
こなたの温かさに少しずつ睡魔に精神を削り取られて、かがみはいよいよ根負けしてしまった。
「やっぱり寝ようっと。おやすみ、こなた」
かがみはこなたに寄り添ってゆっくりと目を閉じた。幸せな瞬間をできるだけ長く味わっていたかった二人だが、
気付いたら二人とも夢の中で幸せの続きを噛み締めていた。
「あー、おはようかがみ。もう向こうには電話しといたから、今日は泊まっていきなよ。日も暮れて遅いしさ」
「おはよう、こなた……? え、私、寝てた?」
かがみが気付けば、随分と遅い時間で、飯時もとうに過ぎていて昼寝というには些か以上に長かったようだ。
「そりゃあもうバッチリ。良い寝顔を見せてもらったよ」
「またアンタは人の顔ばっかり。何が付いてるっていうのよ」
「かがみの顔ねえ?」
こなたはかがみにぐいっと顔を近づけて、まじまじと見つめる。
「な、何よ」
「今探してるの。かがみの顔に付いてるもの」
「改めて探してどうするのよ……」
はぁと溜息を吐いたかがみに、こなたはこっ恥ずかしい台詞を言い出した。
「うーん、強いていうなら、私の幸せ?」
「なっ……」
「可愛いよ、かがみ」
近づけた顔を更に近づけて、鳥が啄むような軽いキスを交わした。
「かがみ、大好き」
「こなた、そういうことはね」
かがみは小さな額に向けてデコピンを打つ。
「いったー、なんでそんなことするかなあ」
突然の行動に戸惑ったこなたは抗議するが、かがみは当然のように切り返した。
「いい、そういうのはね、もっとムードがある時にするものなの。例えばお風呂上りの夜とか……ね」
頬をポリポリと掻いて照れ隠しにそっぽを向くかがみ。こなたはニンマリと微笑んでその柔らかい場所を突つく。
「かがみったらまた素直じゃないんだから」
こなたはクスクス笑ってかがみの手を取る。
「ほら、ご飯だよ。ちょっと遅いけど、かがみが起きるまでみんな我慢してたから」
「あ、ありがと」
そして二人は部屋を出てリビングへ向かった。そこにはそうじろうとゆたかが、食事を今か今かと待ち構えていた。
「さ、食べよ」
「い、いただきます」
「遠慮しなくていいんだよ」
そうじろうが心からの言葉を告げて、更にゆたかが受ける。
「今日は腕によりをかけて作ってみました」
肉じゃがに温野菜のサラダ、豆腐の味噌汁。かがみを加えて食べる夕飯は、誰にとっても、何倍も美味しい一品だった。
「かがみってさぁ」
「何?」
「私のこと、好き?」
「……ぶっ」
かがみは口に含んだ麦茶を盛大に噴出した。中途半端に生温い水がこなたの全身に降りかかる。
ぐっしょりと濡れたこなたは皮肉めいて、
「ねぇ、かがみん。冗談言った私も悪いけど、流石にこれはないんじゃないかなぁ……」
と上目がちにかがみを見上げた。
「あんたの自業自得でしょ。ったく……タオル持ってくるから、身体拭きなさい」
そう言って立ち上がりかけたかがみの手を、こなたは寄っていって強引に押さえた。
「気にしなくていいからさ、キスしたら許してあげる」
「ちょ、アンタ……んむっ」
言うが早いか、こなたはかがみに唇を寄せた。そのままかがみの口を押し開いて舌を深く挿し入れていく。
ちゅぷちゅぷと水音が部屋中に響いて、二人分の口で支えきれなかった唾液が服にゆっくりと垂れ落ちた。
何秒かして──かがみには何時間にも思えたのだが──こなたが口を離すと、銀糸が一本、二人の間に架かって、
やがてぷつんと切れた。
「ごちそうさまでした」とおやつのクッキーでも食べたかのように両手を合わせるこなたに対し、
「わ、私、ファーストキスだったのにぃー!!」ともう一人は憤慨していた。
こなたはかがみの頬をぷにぷにさせながら、
「まったく、かがみは照れ屋さんなんだからっ♪」
とからかい続けるが、一方かがみは真赤な顔をしたまま俯くばかりだった。
「ご、ごちそうさまはこっちの方よ……」
「何か言った?」
「な、何も言ってないわよ!!」
今日もこなたとかがみの日常はゆっくりと過ぎていく。
という訳で投下完了。4ヶ月くらい空いてしまったがどうだろうか?
感想など頂けると嬉しかったり。
>まとめサイト管理人さんへ
一緒に投下してますが、「episode3」と「extra1」は別物ですので、ご注意下さい。
最初にも書きましたが念のため。
>>372 専用ブラウザって知ってます?
まあ、なんだ、乙
すみません。皆さんにご迷惑をかけた上に>>377さんの作品の前に書き込んで
しまいました。本当にすみませんでした!今後はこのような不始末がないように
いたします。
>>378
すみません、知らないです。
>>380 閲覧だけならともかく、投下するなら専用ブラウザは必須ですZE☆
人大杉と戦いながら投下ってのは無しですな
>>382
アドバイスありがとうございます。
一つ質問があるのですが、専用ブラウザとはなんですか。
、、、新参ですみません。
「ゆきちゃん、専ブラってなーに?」
>>377 4ヶ月ぶりに投下してもらえるってのはなんか凄い嬉しいね。
文章綺麗だし、シチュエーションも話の持っていきかたも上手いと思ったよ。
続きも期待してます。
>384
「専ブラ――正式名称2ch専用ブラウザというのは、掲示板への閲覧・投稿をサポートするツールの総称です。
有名どころでは『ギコナビ』『Jane Doe Style』『Live2ch』『かちゅ〜しゃ』などが挙げられます。
また、携帯用に改良された『imona』や、『(べ)っかんこ』『orz(がっくし)』などのサービスもあります」
「……みゆきさん、いつの間にそんな知識まで備えたの?」
>>386
ご説明ありがとうございます。
ところで専用ブラウザはどうやったら使うことができますか?
自分で調べることを覚えようぜ。
…ここってpinkだよな…?
394 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 00:10:07 ID:/0o5l72N BE:134366786-2BP(3209)
>>388 「このようなブラウザを使用する利点は、サーバの負荷を軽くすることやSamba規制にかかりにくくなる(つまり連続投稿しやすくなる)ということです。
前者は『人多杉』エラーが出るのを回避し、後者は『とかげの尻尾切り』『バーボンハウス』などのアクセス拒否を未然に防ぐことが出来ます。
特に後者の場合、作品の投下中に発動されると終了宣言も出来ないまま、掲示板に書き込めなくなりますので、お気をつけください。
使用に関しましては、基本的にどのブラウザも無料でダウンロード、インストールできます。
詳しくは検索エンジン(GoogleやYahooなど)で
>>386の『 』でくくられた単語を検索してください。
必要な機能、使いやすさなどを比べて、あなたに合ったブラウザをお選びください」
「あのー、どうしてこんなに詳しいの?」
「泉さんとの共通な話題を持ちたいと思いまして……」
「え、それはどういう――」
>>389 ちょwwwwww間違いすぎwwwwww
だが…も っ と や れ
「専ブラ、というのは"泉さん専用ブラ"の事で、(がさごそ)これです」
「みゆきさん?どこからそれを…?(=ω=.;」
>>389 つまり「裁くのは私のお母さんだっ!」とか「みゆメッド・高ドゥル!」「Yes I am!」とか
その辺におけるいわゆる一つの第三部ですか。GJ。
そして専ブラなしで投下してた俺がここに一人……DLしてくるかorz
>>361 割り込みでごたごたしてたけど、見た瞬間爆笑した、ってか歳がバレルってw
>>389 ラッキー☆スタープラチナきたこれ!!
>>355 すみません。携帯からは慣れてないもので・・・
今度から気を付けます
>>389 いつもいつもGJです!
こなたもかなたさんかっこよすぎwww
>>399 誰がうまいこと言えと(ry
>>390さん、>>391さん、>>394さん、どうもありがとうございました。
ちょっと骨を折りましたが、なんとかインストールできました。
今度からは自分で調べることを覚えます。皆さん、かさねがさねご迷惑をおかけしました。
403 :
23-251 :2007/11/22(木) 00:38:33 ID:Q0D8M4xU
「星に願いを」を書いている者ですが、現在アクセス規制に巻き込まれており、続きの投下ができません。
再開は、規制の解除後になります。お待たせしてしまいますが、よろしくお願いいたします。
>>389 いつもながら素晴らしい絵ですね。楽しませて頂いております。
>>402 あとはネタにしてもちと情けないコテをどうにかしてくれればな…
俺がNGにすりゃいいだけの話だが
役にも立たん糞コテは消えろ
おまけに教えて厨だし
ここはみんな優しいので誰も言わないだろうから俺が言う。
糞コテの402は氏ね
コテといえば、ここの職人さんの数字のコテには何か意味あります?
まとめ流し見たけどそれらしいこと書いてあるんですかね?
>>407 たぶんだけど…
1-123とかだったら1スレ目の123レス目に投稿した人、って意味じゃないのかな。
間違ってたらゴメン…予想でしかないんだ
>>408 それで合ってる
実際に名前つけてくれてるのは、
まとめWikiの管理人さんが管理用につけてる一時的な名前だが、それをそのまま使う人が多い
>>377 ぐはっ…エロスwすごい良かった…!!
俺も何かエロ書いてみようかな
>>406もう少しだけ優しさ持とうぜ。人間経験が無ければ全然上手くいかないものなんだからさ。
>>402とりあえず色々と。
作品は書き溜めて一気に投下。
作中の・・・は半角の・・・の方がいい。
レスアンするなら数字も半角で。
名前に関しては、自分の主観としてはとりあえず変えた方がよいかと。(色々なコテ名を見て来たけど比較して少し名前長いし、もっと単純な方がいいかと)
作風はとても好感が持てました。続き楽しみにしています。
>>398 なるほど、第三部「ラッキー☆スターダストクルセイダーズ」かw
>>398 俺も専ブラなしで投下してるわけだが。
専ブラなしでも、人大杉を回避する、というだけなら、夜の混雑時間帯の投下を避ける、
というのも一つの手かと。まあ、生活リズムとの兼ね合いもあるので、必ずしもそれが
可能とは限らないだろうけど
もう300KBか…
前スレまだ落ちてないよな・・・。
なんと言う祭り状態
418 :
377:2007/11/22(木) 08:46:17 ID:nr/JYj2m
誤字(誤変換)発見。。。すまんかった。
1/3 12行目
こなたはぺーじをめくって 誤
こなたはページをめくって 正
2/3 12行目
離してくれそうにも泣く 誤
離してくれそうにもなく 正
>>412 いやいや、アドバイスするなら「・・・」は「…」の3点リーダ使おうよ。
「・」は全角だろうが半角だろうがあくまで区切り記号なんで、
厳密にいうと余韻として使うのは間違ってる。
>>418 誤字なら他にも
>私は、こがみにつかさ、みゆきさん、あとひよりんにパティも。
と
>鏡も少しばかり悪い気はしなかった。
もありますね。
420 :
377:2007/11/22(木) 09:35:25 ID:nr/JYj2m
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
IMEはしっかり調教しておきます。「鏡」って何回変換されたことかOTL
つか「こがみ」ってなんやねん(汗
吊ってくる
>>420 「つ、ついにあきらにも、SS内で本編キャラとまともに話す機会が…!
やったー!うれしー!
>>377さんGJ!ありがとー!」
「あ、あの、あきら様?それは……」
「あぁん?何よ白石」
「あ、いえ何でもありませんー!(い、言えない…。あれが誤字だったなんて…!)」
「あたし、なかったことにされてる!? みゅ〜、あやの〜」
「まあまあ、みさちゃん元気だしなよ」
1レスネタなんだけど、そういった需要はありますか?
1レスの小ネタや短編も、もちろん大歓迎だ。
>>423 ありがとう。
投下場所探して、さまよっていたのでw
みなみ妄想編
かがみ「もう!ゆたかちゃんったら!あははは」
ゆたか「えへへ、ごめんなさい、かがみ先輩!」
こなた「それにしても、昨日のゆーちゃんには萌えた!ぐっじょぶ!」
みなみ「・・・」
ゆたか「やめてよ〜、おねーちゃ・・・あ!みなみちゃん、おはよう〜」
みなみ「おはよう・・・.。
(くはぁーっ!なに?なに!?今の会話?昨日のゆたかがどうだったの?は!そうか、かがみ先輩とこなた先輩はもっぱら百合関係との噂だったはず!
こなた先輩の部屋にはとんでもないおもちゃがあるとかないとか、
風の噂に聞いた!なるほど!謎は全て解けた!
ゆたかの家にこなた先輩目的で出かけたかがみ先輩は、熱にうなされ、額に汗をしながら悶えるゆたかのはだけたパジャマから覗く白い柔肌を見て思わず欲情してしまった!
それは必然。ゆたかのあの白い柔肌が熱によりうっすら桃色に紅潮した様を想像するだけでwktkが止まらなくならない人間の方が異常であり、そういった意味から考えればかがみ先輩は普通の人間で私はその同類。
許せないのはその後、弱ったゆたかを既にエロゲ、ギャルゲ等でテンションを最高潮にまで高めながらかがみ先輩の来訪を待ち焦がれていたこなた先輩は、ゆたかを見て興奮するかがみ先輩を見て嫉妬しつつも
サディスティックな感情を抑えきることが出来ずに、そのままゆたかの部屋に押し入り内側から鍵をかけると、いつもそうするようにかがみ先輩の上にのしかかり、二人は崩れるようにしてゆたかのベッドに潜り込むと、
二人がかりで嫌がるゆたかのパジャマを剥ぎ取り、その大理石のようにつややかで、それでいて柔らかく弾力もあり、神々しく輝く神聖な柔肌を蹂躙したに違いない!!!!)」
ゆたか「み、みなみちゃん、どうしたの?」
みなみ「・・・風邪は、汗をかけば治る・・・」
みなみにひよりんが憑依してるぞww
あぁそうか、ひよりんかこれw
ギャップがおもろいと思って作ってみたw
また出来たら、顔出しますね〜
こういう腐テンションのみなりんもいいなあ
この調子で次は、みなりんを思う余り、
邪悪テンションになる小早川さんとか…
みなみの視線が、ひよりんに浴びせられてます。
何かつぶやいてます。
「今度の…体育…確か…ドッジ…」
>>413 つかさ(花京院)「バルサミコ・酢プラッシュ! スタンドうにょ〜ん」
かがみ(ポルナレフ)「何をされたのか、さっぱりわかんないわよ!」
みゆき(アブドゥル)「あれは私の変装です。お恥ずかしながら……」
そうじろう(ジョセフ)「でもウォークマンは好きだがね。きしめぇぇぇんでも聴くか」
チェリー(イギー)「……(あごのせ〜)」
ひより(ディオ)「徹夜何日でも平気っス! でもイベント出られないっス! YURIIIIIIIIII!!」
こなた(承太郎)「やれやれだネ」
>>429 その構図だと、
・こなたVSみゆき@留置場、もとい生徒指導室
・こなたVSつかさ@陵桜学園
・みゆきVSかがみ@旅行先のどこぞの庭園
・こなたVSかがみwithアヌビス神@床屋
な展開がある訳だなw
>>430 当然のようにかなたさんを救う旅なわけだね?w
こなた「この肩のペン入れの跡は!?」
書き込んだ後に、こなたがふゆき先生に濃厚なキスをして、
つかさのスタンドを引きずりだす光景を想像してしまった。
反省はしていない。
ズキュウウゥン!
まあ、ここはエロパロだし、こっち系のネタも程々にしとこう。
YURIIIIIIIII!!
連打技「薔薇薔薇薔薇薔薇薔薇薔薇薔薇!」
ペンでカリスマだッ!!
止め技「ザ・百合ワールドッ!!」
潰し技「ビッグサイトだッ!!」
その他、百合の芽とか、腐女子化とか・・・
すげえっ!高校生の身で壁大手とっちまうなんてことを
平然とやってのけるっ!そこにシビれる憧れるゥ!!
ごめんなさい、自重できませんでしたorz
●短編4レスほど投下させていただきます。
●そうじろう×かなたの非エロ話。
●キャラソン発売記念で、二人の過去のお話。少々独自設定があるかもしれません。
「見て見て、そう君!」
目覚めかけている意識の中に、聞き慣れた声が響いてくる。
「んー……?」
「ほらほら、そう君ってば!」
それは、いつになくはしゃいでいるあいつの声。
こんな声を聞いたのは、大学が受かったときとか、たまにするデートのときぐらいで……
あんまり、聞いたことが無い。
「わかったよ……」
俺は目を擦りながら、布団を捲り上げようとして、
「寒っ!!」
あまりもの寒さに、また布団の中に潜り込んだ。
布団の中が二人分暖かかったせいか、余計身に染みるんですけど。つーか、こっちに
来てこんなに寒いのって初めてだぞ!
「もうっ、そう君ったらだらしないわね」
布団から顔だけ出すと、窓際に立っていたかなたが呆れたようにこっちを見ていた。
「さ、寒いんだからしょうがないだろ」
「このくらい、石川にいたときは暖かいぐらいだったじゃない」
「こっちの気候に慣れちまったからな。今や俺も埼玉住人。埼玉は石川よりずっと南国。
今の俺は南国人。つーわけで、まだ布団にいる」
そう言いながら布団を被ると、またぽっかぽかの温もりが身体に広がっていく。
こんな寒さで目が覚めても、後々また眠くなるだけだっての。
「そんなこと言うんだー」
布団越しに、少し拗ねたかなたの声とカラカラと窓を開ける音がきこえる。
スマンな、朝の安眠の時間はかなたとの生活の次に大事な時間なのだよ。なんてったって、
次の新人賞のネタ出しで昨日はあんまり眠れなくて……
そう心の中で言い訳してから、もう一度あのめくるめく安眠の世界へ向けてうとうとし始めた――その時。
「……えいっ」
「うひゃあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
つ、冷たいっ! 足の裏が冷たいっ! 寒いっていうより冷たい! 凍るっ!
「ふうっ、やっと起きた」
「あっ、あのなぁ! 足の裏に雪ってのはいくらなんでも非道な起こし方だと思うんだが!」
布団を跳ね上げた足の上には、雪の残骸らしき水滴が光っていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
小さき祈り
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「……って、雪?」
「うんっ、雪」
俺の怒声なんて気にもせず、かなたは嬉しそうに頷いて見せた。
「雪、ねえ」
雪なんて、石川にいた頃はいつも見慣れていたから珍しいもんじゃない。こっちでも、
あんまり積もることは無くてもちらちら降るのは見かけていたわけで。
「確かに昨日の夕方頃から降ってたけど、どのぐらい積もってるんだ?」
すっかり目が覚めた俺は、軽く伸びをしてから立ち上がると、ゆっくりと窓を開けた。
「おおっ?」
そこに広がるのは、一面の白。
雑草が生え放題のアパートの庭も、すっかり雪に覆われて小さな雪原になっていた。
「こりゃまた、よく降ってるなぁ」
空を見上げてみれば、どんよりと曇った空からは細雪が舞い続けている。
「ほらっ、ここまで積もってるの」
「縁側の下まで……北陸並とまでは行かなくても、こっちじゃ大雪なんだろうな」
「こっちに来てから長いけど、ここまで降ったのは見たことないものね」
そう言いながら、かなたは縁側に積もった雪を手にとって弄んでいる。
「楽しそうだな、かなた」
「だって、久しぶりじゃない。こんなに積もった雪を見たのは」
「確かに」
雪国出身の俺たちにとって、雪は当たり前のような存在だったけど、こっちに来てからは
うっすら積もるぐらいの雪しか見たことがなかった。
「♪〜」
ついには、鼻歌を歌い始めたかなた。
「ほれ、風邪ひくぞ。これ着とけ」
「あっ、ありがとう」
俺は苦笑しながら、お揃いの半纏をかなたに着せてやった。
いくら厚手のパジャマを着ているとはいえ、こんな寒いんじゃ体調を崩しちまうからな。
半纏を着てからも、かなたは相変わらず雪をぎゅっと握って雪玉を作っている。
「懐かしいか?」
「んー? 何で?」
「いや、妙に嬉しそうだからさ」
そう言うと、かなたの手の動きが止まる。
こっちに住み始めてから、俺たちは実家にはほとんど帰っていない。いや……帰れない、
と言った方が適切か。
俺が目指している職業のことを、かなたの親御さんは全く理解してくれなかった。
そりゃそうだろう。安定した収入どころか、いつまとまった収入が入ってくるかもわからない。
そんな男に、可愛い愛娘を嫁がせるだなんて誰が思うか。
半ば駆け落ち同然に結婚した俺たちが、実家へ帰ることが出来るわけがないんだ。
少しずつ、後ろめたさが頭の中にもたげていく。
「だって、初めてでしょ? 私たちが暮らし始めてから、こんなに雪が積もったの」
そんな時に向けられる、かなたの無垢な笑顔。
「あ、ああ、確かに」
暗い思考は、それだけですぐに消え去っていった。
こんな風にかなたが笑ってくれるだけで立ち直るなんて……全く、現金にも程があるな。
「故郷で見る雪もいいけど、こうして二人で見る雪もいいかなって」
「……そっか」
その笑顔に安心して座ると、かなたはくすっと笑ってからまた雪を手にした。
「あまり、気に病まないで」
「…………」
「今こうして一緒にいられて、私は幸せなんだから」
「……ありがとう」
ホント、かなたにはかなわないな。
いつだって、かなたは俺が欲していることを言ってくれる。
笑ってくれたり、怒ってくれたり、励ましてくれたり、指摘してくれたり……俺には、
もったいなすぎる嫁だよ。
「はいっ、出来た」
「ん?」
かなたはそう言うと、雪が払われた縁側の上に白い何かを置いた。
「……雪だるま?」
「うんっ」
それは、雪玉で作られた小さな雪だるま。
ソフトボールがくっついたような雪だるまに、野球用のボールがくっついたような雪だるま。
それに……
「こりゃまた、えらい小さいのを作ったなあ」
その間に、ピンポン球がくっついたような雪だるまがちんまりと鎮座していた。
「私たち、家族の分の雪だるまだもの」
「えっ?!」
「いつか生まれてくる、子供の分よ」
「あ、ああ、そういうことか」
俺が思わず胸を撫で下ろすと、かなたはいたずらっぽく笑って見せた。
「ふふふっ、びっくりした?」
「いきなりそう言われたらなぁ……」
「でも、いつかは欲しいでしょ?」
「そうだな」
かなたは体があまり強くないし、自身の体が小さいから危険が伴う可能性がある。
だけど、かなたが望むなら……いつかは、そういう日が来るのだろう。
真面目に育てようとするかなたと、オタク魂を注入しようとする俺。それをめぐって
ケンカして、いつしか秀才とオタクのハイブリッドとして成長するとか、そんなイメージが湧いてくる。
もしそんな未来だったら、どんなに素敵なことだろう。
「でも、一人だけじゃちょっと寂しいな」
「うーん……そうかも」
「んじゃ、もう一個作るか」
俺はかなたの横ににじり寄ると、縁側に積もっていた雪を手にしてぎゅっと握った。
じんわりと冷たい感触が手に広がって、残っていた眠気もすぐに霧散する。
ピンポン球ぐらいの大きさだから、ぎゅっぎゅっと握って二つ合わせれば……っと、
「ほいっ、完成」
そう言って、親子雪だるまの間に出来上がった雪だるまを置いた。
「四人家族のほうが、もっと賑やかだろ?」
「確かにそうね。私そっくりの子と、そう君そっくりの子なんていいかもしれないわ」
その姿を想像しているのか、かなたが嬉しそうにくすくす笑う。
「二人とも、俺そっくりの子だったらどうする?」
「……ちょっと勘弁してほしいかも」
「うわっ、えらくストレートだな!」
「冗談よ、冗談」
いや、今のかなたの目、ちょっとマジだったぞ。そう君ってばハートブレイク。
「そーですねー、二人ともかなたそっくりだったらいいですねー」
「まったく、そう君ったら拗ねないの」
ぷいっと顔を背けていると、かなたがぺたぺたと小さな手で俺の顔を触ってきた。
さっきまで雪玉を握っていたせいか、えらく冷たく感じる。
「まあ、俺たちなりにいつか育てていければそれでいいか」
「そういうこと……くしゅんっ」
って、あまりにも寒すぎたか?
「おいおい、そろそろ暖まったほうがいいんじゃないか?」
「う、うん」
見ると、かなたは寒そうにかたかたと震えていた。
「朝から子供みたいにはしゃいでるからだっての。待ってろ、今俺がお茶を淹れてやるから、
かなたはこたつで暖まってろ」
苦笑しながら立ち上がると、かなたは半纏の裾をくいっと引っ張って俺のことを見上げた。
「えっと……雪だるまはどうする?」
「うーん、中に入れたら溶けるだろうし……そのまま、外に置いておいたほうがいいだろ。
また雪を纏って、大きく成長するかもしれないしな」
「そっか」
かなたは愛おしそうに雪だるまの頭を撫でていくと、からからと戸を閉めていった。
「いつか、そんな日が来るといいわね」
「ああ」
二人で笑い合いながら、俺もかなたの頭をそっと撫でてやった。
* * *
窓を開けると、空から白い雪が舞い降りていた。
我が家の庭も、一面の雪化粧。
「おー、積もってる積もってる」
あの頃とは違って、一戸建てですっかり狭くなった我が家の雪。
それでも、あの時のような銀世界には変わりない。
「今年もやりますか」
窓際に座り込んだ俺は、縁側に積もっていた雪をぎゅっと握り始めた。
少し節くれ立った手に、冷たい感触が広がっていく。
ソフトボールがくっついたような雪だるまに、野球用のボールがくっついたような雪だるま。
それと、ピンポン球がくっついたかのような雪だるまが二つ。
……でも、ちょっと違うか。
そう思いながら、二番目に大きいゆきだるまを除けて、もう一つピンポン球がくっついたような
雪だるまを作っていく。
「かなたの身長、二人とほとんど変わらないもんな」
少しだけ申し訳ないと思ったけど、やっぱりこっちのほうがお似合いだ。
「よし、出来た」
俺とかなたと、あと二人分の雪だるま。それを用意しておいたお盆に載せて、冷え切っていた
居間へと持っていく。
「ほら、今年もまた降ったぞ」
俺はお盆を仏壇の横に置くと、遺影に語りかけた。
「お前が願った形とは違うけど……あの時の通り、もう一人家族が増えたよ」
かなたのように、ちんまりとした女の子。
少し病弱なところがあるけれど、元気に振る舞おうとする姿もかなたと重なる。
姿形が、かなたにそっくりに育ったこなた。
境遇が、どことなくかなたを思わせるゆーちゃん。
その隣に、母親であるかなたがいたらどんなに幸せだったんだろうか。
だけど、それは今やifでしかない。
「ゆーちゃんとかなたのこと、見守っててくれな」
俺とかなたが願った『家族』。
かなたが逝ってしまっても、その在り方が変わることはない。
「俺も、ずっと忘れないから」
あの時と同じように、毎年雪が降るたびに小さな雪だるまを作る。
お前は心配してるだろうけど、俺にとって妻は一生お前だけだからな。
これからも、いつまでも、ずっと。
「うー、寒っ……お父さん、おはよー」
「ああ、おはよう」
ずっと遺影を眺めているうちに、こなたが起きてきた。
寒さのせいか、はっきりと起きているようだ。
「今日は積もったみたいだねー」
「ああ、膝下ぐらいまでは積もってるぞ」
「うおっ、そんなに?! 今日は学校なのに、これじゃ駅まで行くの大変だぁ」
「後で連絡網が回ってくるかもしれないけど、とりあえず準備だけはしとけよ」
「はーい」
めんどくさそうに言うと、こなたはリビングへと姿を消した。
「さて、俺もそろそろ朝飯でも作るかね」
俺はお盆を手にすると、窓を開けていつものように縁側にそれを出した。
雪はまだ、細く強く降り続いている。
「かなたは、雪が好きだったもんな」
だから、こうして在るべき場所へと戻しておこう。
かなたが好きだった、雪の中へ。
そして、俺は在るべき日常へ。
「んじゃ、俺も行ってくるよ」
俺は遺影に軽く手を挙げると、こなたに続いてリビングへと入っていった。
というわけで「小さき祈り」をお送りしました。
泉夫妻キャラソン発売記念のSSとなります。
ここ最近の冷え込みは厳しいですね。北国では大雪になった所もあると聞きます。
雪国出身の二人には、こんなお話があったんじゃないかな、ということで一つ。
ちなみに「かなたさんは雪が好き」という設定は、入学案内書のある箇所から頂いてます。
お楽しみ頂けましたら、幸いです。
>>439 投下直後に早速拝読する男、スパイダーマッ!
二組の雪だるまにちょっとの切なさと、たくさんの温もりを貰いました。
ていうかぺちぺちかなたさん可愛いよ島本ボイスで脳内再生だよウヒョー!
……もとい。とにかくともかくぐっじょぶでした。
追伸:ある箇所であろうページと出身を思い返してすごく納得。
ここ三重でも、山並みがうっすらと白く染まっています。
>>439 いい話ですなあ……GJ!
コンパクトにまとまっているのもいいですよ。
アイディアの段階では短そうな話が、書いてるうちに伸びていく身としてはうらやましい限り。
GJです
風に吹かれて冷たくなった体が、ほんのり暖かくなりました
……ちょっとCDショップに行ってk(ry
かがみ「ちょ、ちょっと、こなた!昨日約束したでしょ?」
こなた「ほへ?」
かがみ「あんたスタンド覚えたんでしょ!?で、そ、その、お、オラオラしてくれるって・・・」
こなた「おやおや〜?かがみん真っ赤ですぞ?そんなに焦んなくても、すぐしてあげるってぇ」
かがみ「ば、ばか!覚えてるんなら、早くしなさいよ!」
こなた「はいはい、わかってますよ〜。でも、今日はオラオラ以外にもう一つプレゼントがあるのだよ!」
かがみ「え!?」
こなた「つかさぁ〜、いいよー」
つかさ「はぁい。はいエロふぁんとぉ〜!」
かがみ「つ、つかさぁ!?あ!いやっ!なにこれ!?」
こなた「むふふふふ〜、かがみんあの時になると動きが激しいから、ちょっと縛らせてもらったよ?」
つかさ「えへへ、お姉ちゃん、とってもキレイだよ!」
かがみ「ちょ、あ、いや、へ、変なところに、食い込んで・・・」
こなた「ぐふふふ!たまりませんなぁ〜!」
つかさ「やだ、私も変な気分になってきちゃった・・・」
こなた「では、いきますぞ?オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
かがみ「あ!そんな!だめ!おかしくなっ、ちゃ、ヒグッ!」
こうですか?わかりません><
て、考えてる間にとてもいいお話が投下されてて自分ハズカシスorz
冬の話なのにほんのり暖かくて、よかったです。
まともなの考えてきます;;
エルジア軍の一部の将校が開発中だった最終兵器メガリスを占拠した。
メガリスはロケット発射施設であり、いまだ軌道上に残る小惑星のかけらを人為的に落下させる兵器である。
この恐るべき要塞施設を破壊するには内側からダメージを与えるほかない。
ミサイル搬入路の溝の奥にある3つのジェネレーターを破壊すれば、中央の廃熱口が開く。
そこから内部に進入し、中央サイロにある大型ミサイルを破壊しろ。
突入後の脱出口は、潜入部隊が開ける。
ジェネレーターの破壊による停電を待って、サブコントロールルームを制圧する手はずだ。
彼らを信じて穴蔵に飛び込め。
これが最後の出撃任務となるだろう。
必ず生き残れ。戦後には英雄が必要なのだ。
出撃。
445 :
444:2007/11/22(木) 17:06:41 ID:KPEN3g9P
すみません、誤爆しました;
>445
どどんまい
>>445 問題ない、俺に任せろ。
らっきー☆ちゃんねるの一部のスタッフが開発中だった最終兵器ミノルスを占拠した。
ミノルスは白石発射施設であり、いまだ軌道上に残るらっきー☆すたーのかけらを人為的に落下させる兵器である。
この恐るべき要塞施設を破壊するには内側からダメージを与えるほかない。
白石搬入路の溝の奥にある3つの鼻血みゆきを破壊すれば、中央の廃熱口が開く。
そこから内部に進入し、中央サイロにある大型白石を破壊しろ。
突入後の脱出口は、アニ研部隊が開ける。
鼻血みゆきの破壊による停電を待って、サブコントロールルームを制圧する手はずだ。
彼女らを信じて穴蔵に飛び込め。
これが最後の出撃任務となるだろう。
必ず生き残れ。戦後にはこなたんが必要なのだ。
出撃。
……ごめん。
>>439 ぐっじょぶです!
あなたの作品は暖かくてとても綺麗で、いつも楽しみに読ませていただいてます。
またじさく
>>448 途中投稿…俺死ねばいいorzでも感想だけは言わせて…
また次作も楽しみにしてます!
じゃ、吊ってくる…
>>433 ……ああああああ!いくら時を止められても、1分そこそこじゃ何の足しにもなんないっス!!!
締め切り前の田村DIOり先生ですたw
こんばんわ。先日、皆さまに多大なご迷惑をかけてしまった、
>>402です。
遅レスですが、
>>406さん、すみませんでした。なにぶん新参なもので、
分からないことばかりなんです・・。あやまっただけで許していただけるとは
思いませんが、私には謝罪するしか方法が見当たりません。本当にすみませんでした。
言葉で何度も謝るくらいなら態度で示せよ、
>>451 具体的に言うなら続きwktk
453 :
402:2007/11/22(木) 19:12:50 ID:Is80YaHM
>>412さん、
>>414さん、本当にありがとうございます。
皆さんに駄文を見せてこのスレの黒歴史を作ってしまいました。
ですが、せめて今書いているシリーズだけでも、全部投稿させていただけないでしょうか。
まことに勝手な考えだとは承知していますが、けじめだけはつけさせてください。
空気を悪くしてすみません。このレスのことは忘れてください。
>>439 じーんときました!
良い話をありがとう。GJ!
455 :
451:2007/11/22(木) 19:15:10 ID:Is80YaHM
>>452 はい!ありがとうございます!続きが出来次第、投稿させていただきます。
>>455 あと上のほうでも言われてたけど
『将来ニートになるかも』ってコテが見てて情けないからさ
作品投下したレス番
>>365を入れて
『24-365』
とかにしたら?
というかむしろひよりんは岸辺露伴…
「百合ヘブンズドアーッ!」
みなみ(どさっ)
ゆたか(ばさっ)
「こ、これはっ!入学式以降はいきなりスゴイっす!」
とかいいつつ、妄想ネタを二人の記憶ページに書き込むひよりん…
458 :
23-49:2007/11/22(木) 20:41:45 ID:JOvZJjY2
どうもです
「みさお&ゆたか」の第三話Aパート、完成しました
次スレを待とうかと思ったのですが、週末は忙しくなりそうなので
今のうちに投下させてください
・みさお&ゆたか
・今回は先にみさお視点
・エロ無し
・10レス使用
「あはは、そうですよね。暑いとよけに臭いですよね」
「なんかもー臭いのか良い香りなのかわっかんなくなるよなー、ははっ」
他愛もない会話がテンポよく交わされる。
最初はイマイチつかめなかった距離感もなんとなくわかってきて、すっかり打ちとけた感じだ。
いやー楽しい。
一人じゃこの楽しさは味わえないよな。
「孤独を愛する」とかって生き方にもたまーに憧れたりすることもあるけど、
やっぱ私にはこっちの方が合ってるね。
そんな私は、日下部みさお。
会話の相手、小早川ゆたかとは、今日がほとんど初めてだ。
学校が同じで、ついでに知り合いの従妹だったりもするからお互いに顔ぐらいは知ってたけど、
直接話したのは二十分ぐらい前が最初。
聞くと友だちの家まで行くところだってんで、こうしてお送りさせてもらってるってわけ。
まぁ正確には、無理言ってついてってるんだけどな。めちゃくちゃヒマだったから。
さすがにその友だちの家にまで上がりこむつもりはないけど。
「あ」
ふと見ると、道行く先の信号が点滅を始めていた。
確かあれ渡るって言ってたよな。
「やべ。行くぞ」
会話を中断して一つ呼びかけ、返事は待たずに走り出す。
あっという間に小早川を置き去りにして、赤に変わる直前に渡りきることができた。
「……って、置き去り?」
振り返る。
横断歩道の手前で立ち止まっている小早川が、道路と車の向こうに見えた。
「――めんなさーぃ」
謝罪と思われる声がかろうじて届く。
あちゃー、出遅れちまったのか。何やってんだ……って、悪いのは私か。私だな。
ちょっと反省。
とりあえず手をぶんぶか振って謝意を伝えた。
そしてなんとなく周囲を見渡す。わりと緑が多くて、高い建物が少ない。が、別の意味で高そうな
大きくて立派な家が余裕たっぷりに並んでいる。あんまり馴染みのない風景だ。
車の数も少なくて……って全然いないじゃん。
「どーしたんだよー! 来いよー!」
「…………、……だ赤ですー」
呼びかけると、戸惑ったような仕草と返事。
いやま、そりゃそうだけどさ。時間いいのか?
「車来てないってー!」
再度呼びかけるも、やっぱり動く様子はなく、代わりに小さなお辞儀が一つ返ってきた。
ヘンなところで頑固だな。
やがて信号が変わり、ようやく小早川は歩き出す。いや、小走りか。
左右を不安そうに確認しながら、歩くのと大して変わらない速さで駆けてくる。
「なんだよー。足遅いなー」
「あうっ」
「まー、ちっこいもんな。あ、でもちびっ子――」
って、紛らわしいな。
それにたぶん失礼だし。ちびっ子本人じゃなく小早川に対してなっ。
「泉は、速よな」
「はうー……で、でもー、危ないですよ」
「マジメだなー、小早川は」
……ん?
あれ、なんだろこの感じ? なんかすごいよく知ってる気がするんだけど。
「そんな、だって……それに、その。走ったら、また気分が悪くなっちゃう気が……」
「あ、そか。さっき倒れたもんな。わりぃ、忘れてた」
「いえ、大丈夫ですから」
む、でもちょっと違うな。
いつもならもっと、こう……「もう、みさちゃんは」みたいな感じで……って、そっか。
ちょっとだけ似てんだ、あいつに。
幼馴染の、峰岸あやのに。
「じゃ、行こうぜ。道こっちでいいんだよな?」
「はい」
でも今のじゃなくて、もっとずっと小さいころの。
大人しくって泣き虫で、そのくせ頑固な正直者だった。
周りから言われたことをいつも守って、私が手を引かなかったら知らない場所に行こうとはしなかった。
ずっと妹みたいに思ってた。
だけどいつの間にか追い抜かれて「お姉さん」になっちまったんだよなー。
わりと誰とでも仲良くできる代わりに、誰とも深い関係になることがほとんどない、
そんな「広く浅く」タイプな私の、唯一の例外。
――いや、唯一じゃないか。
柊かがみ。
中学になってからできた、今じゃあやのと同じぐらい大切な、二人目の親友。
最初は口やかましいヤなヤツだと思ったけど、実は優しくて面倒見のいいヤツだってすぐにわかった。
あやのとは別の意味で頼りになる「姉ちゃん」だ。
でも最近冷たいんだよなー。
なにかってゆーと隣のクラスのちびっ子のとこに行っちまうし。昼休みとか、下校のときとか。
最後に一緒に帰ったのっていつだっけ? やっぱ強引にでも陸上部に誘えばよかったかな。
いや、違う。
悪いのはあのちびっ子だ。
どうにかして排除――いやいや、排除は言いすぎ。もうちょっと遠慮させる方法はないものか……
ちらり、と隣を歩く人物を盗み見る。
そうだ。こいつに、小早川に訊いてみよう。
なにしろ従妹なんだから、親兄弟ほどじゃないにしろ、色々と知ってるはず。
よし、やっぱ今日の私は冴えてるぜ。
「なあ、小早……かわ?」
あれ?
そういえばさっきから一度も喋ってなかった小早川が、なんかわたわたしてる。
てゆーかパニくってる。なんで?
今回は別に何もおかしなこと言ってないよな。てゆーか喋ってないし。
「おーい、小早川。小早川? おい、どした?」
「えっ!? あ、いえ! 大丈夫です!」
おう、帰ってきた帰ってきた。
「ごめんなさい……ちょっと、ぼーっとしてました」
「ふぅん。別にいいけど……なんてぇか、元気だよなあ」
「はい」
訊こうとしたことも忘れて、思わず笑いがこみ上げる。
やっぱ似てないかな。あやのはこんなに面白くないってゆーか、わりと無表情だし。
なんて思っていると、不意に、
「――……え? 今、なんて……」
驚いたような声。
見ると、驚いたってゆーよりは理解できないって顔。
「んぁ? 何が」
「元気って……わたしがですか?」
「? そーだけど……?」
信じられないものを見るような目を向けられて、さすがに戸惑う。
まだちょっと距離感が掴みきれてないのかな。行動が、読めそうで読めない。
「え、と……ど、どこが、ですか?」
真剣な、期待と不安が入り混じったような声。
どこがって、えーと、「どこが元気なのか」ってことだよな。そんなの……んん?
そうだな、身体弱いらしいしな。さっきも倒れかけたし。言われてみれば変か。
「……さあ? でもなんとなくそう思った」
そうとしか言えない。
当然だけど満足できなかったんだろう。小早川は見るからにガッカリと肩を落とした。
「…………そうですか」
むう。
しかし落ち込んでいるところを悪いけど、今はそれよりも確認しなきゃいけないことがある。
「んでさ、道ってまだこっちでいーの?」
「あ、はい。……あ、向こうのあの、レンガの家のところで、右です」
「りょーかい」
よし、これで一安心。
それにしても、どこが元気か、か。
まあそれは追い追い考えるとして、もう一つ。メインの質問をしなくては。
「でさぁ。泉とは、イトコなんだよな? 家近かったりすんの?」
「へ? えっと……家、は、近いっていうほど近くはないですけど……今は、一緒に住んでます」
「へぇー?」
それは嬉しい情報ですよ。
思ってたよりも詳しい話が聞けそうじゃん。
「そーなんだ?」
「はい。春から。わたしの実家からだと今の学校は少し遠くて、だから居候させてもらってるんです」
「ふぅん……」
四月からってことだろうな。
ということは四ヶ月か。そりゃいいや。それだけ一緒にいれば裏も表も十分見えてるだろう。
「お姉ちゃんがどうかしたんですか?」
おっと、やばいやばい。気取られないようにしなくては。
いやいや、別に騙そうとか思ってるわけじゃねえぞ?
ただ正直に話すのが恥ずかしいだけで。
だって親友を横取りされて寂しいんです、なんて、なあ? 年長者としてどうよって思うだろ。
ともかくここは、慎重に。
「うん。んじゃあさ、アイツって家だとどんな感じ?」
「家だと……? う〜ん……」
こめかみに人差し指を当てて考え込む小早川の姿に、嫌がおうにも期待が高まる。
何が出るかな♪ 何が出るかな♪
「たぶん、学校にいるときと変わらないと思いますけど……」
って何も出ねーのかよ!
……いや待て、落ちつけ。
考えてみれば、こいつは愚痴とか悪口とかを簡単に言いそうなタイプじゃないんだし、
私の方からもっと具体的な質問を――
「……って言っても、 そういえばわたし、学校でのお姉ちゃんって、まだよく知らないかもです。
どんな感じなんですか?」
「え!?」
ってオイ! 訊き返されるとは思ってなかったぞ!
やっべ、どうする? どうするよ、私?
「や、えぇっと…………」
いや待て。大丈夫だ落ちつけ。小早川に疑ってるような様子はない。だから落ちつけ。
ただの普通の質問だ。だから普通に返せばいいんだ。
「ん〜〜……いゃあ、よっくわっかんねぇんだよ。話するようになってまだそんな経ってないし。
話してても、なんかよくわかんねぇことばっか言うし。だからどんなヤツなのかなって」
よぉし、上手いぞ。声の調子も内容も不自然じゃない。
まあウソは言ってないしな。最後のところ以外は100%本心だ。
小早川も思案モードに戻ったようだし、一安心。
「そうですね……」
うんうん。
「えっと、すごい人です」
「なんだそれ」
「あう……」
しまった本音が漏れた。しっかりしろ私。
とりあえずその口、ぎゅっと閉じとけ。
小早川は「ええっと」と前置きするように呟くと、考え考えって感じで話し始める。
「色々なことを知ってて、教えてくれるし……」
そうかぁ?
確かに偏った知識の持ち主ではあるっぽいけども。
「体の大きさはそんなに違わないのに、わたしと違ってスポーツも得意だし……」
ああ、それは知ってる。足なんかめちゃくちゃ速いし。
たぶん空気抵抗が少ないんだ。
「いつも明るくて前向きで……」
ふぅん? どっちかっていうとヤル気なさそうなイメージだったんだけど。
まぁだいたいいつも笑ってるかな。
「あ、あとお料理も上手なんですよ?」
なんですって?
料理? アイツが?
それはちょっと、かなり予想外。てゆーか信じられない。
「マジで?」
思わず尋ねていた。
小早川は、どこか怯えたように戸惑いながらも肯定を返す。
「え、えとその……本当です。少なくともわたしにとっては……」
「……そーなんだ」
ふぅむ……試しにシミュレーションしてみよう。
あのちっこい身体にエプロンと三角巾を着けさせて、台所に置く。
包丁を手に取った。ニヤリと笑ってこっちを向いた。うわぁ追っかけてきた。
――って違うだろ。
まあ、とにかく想像もつかないってことはハッキリした。
しかし小早川にウソをついてる様子はない。てことはちびっ子の方が見栄でも張ってるのか?
そーゆーの気にしないタイプだと思ってたんだけどな。
でも、もしそうだとしても、一緒に住んでるんだ。どっかでボロが出てるはず。
もう直球で訊いてみるか?
「なあ、だったら例えば――」
あれ? 小早川が立ち止まってる。……って私か。止まったのは。
思ったより考え込んじまってたみたいだ。
「あ、と。ごめん。行こ」
歩みを再開し、さっき言われた角を曲がったところで、
小首をかしげながら小早川の方から訊いてきた。
「例えば、なんです?」
「うん、いやさ。例えば、弱点とかってないのか?」
って直球すぎだろ!
やっちまった。一拍空いて油断した上に向こうから来られたせいだ。
ううっ、怪訝な顔してるよ。
「弱点? ……ですか?」
「あ、あー、いやぁ……今言ったのって良いとこばっかだろ? だから弱点とか苦手なモノとか、
逆はどーなのかなぁ、って。あはは。そゆのってなんか気にならねぇ?」
く、苦しい……!
一見筋が通ってるけど明らかに言い訳くさい。
小早川は「はあ」とか曖昧にうなずくと、そのまま考え込んでしまった。
私の言ったことを信じて返答を考えているのか、それとも発言の内容そのものを吟味しているのか。
……後者だろうな。
いや、いいよ小早川。別にそんな真剣に考えてくれなくて。ちょっと訊いただけなんだって。
それにそういうの、考えてみれば本人のいないところで言ったら陰口みたいじゃん。イヤだろ?
だからさ、こんど泉に直接聞いてみるよ。あはは。ところでこれから行く友だちってどんなヤツ?
って口に出して言えよ私! 思ってるだけじゃ伝わんねーよ!
余計なことはいくらでも滑らせるくせに、なんで言わなきゃいけないときに動かないんだよこの口は。
「――ヤキュウチュウケイ、かな?」
唐突に。
まるで脈絡のない言葉が聞こえた。
「はぇ?」
「野球中継です。テレビの。えっと……試合が延長して放送時間が延びると、深夜番組の時間がずれて、
ビデオの予約録画が大変になって困るって、ときどき言ってます」
…………ええと。
なんてゆーか、それはつまり。
「だ、ダメですか?」
「ダメってぇか……」
信じたのか。そして納得したのか、さっきの苦しい言い訳を。
そしてその答えをあんなにも真剣に考えてくれてたのか。
そして今もまた、さらに考え続けてくれているのか。
……なんかどっと疲れた。
悶々とした感じが消えて、代わりにだんだん罪悪感がわいてきた。
「あのっ」
「んー?」
我ながら気のない返事だなあ。しっかりしろよ。本当に悪いと思ってるのか?
てゆーか早くこの話を終わらせようぜ。
「お姉ちゃんは、たぶん、わたしには弱いところは見せないようにしてると思うんです。
前に風邪をひいて学校を休んだときも、わたしにはずっと大丈夫だって言ってましたから」
ほら。
ちびっ子は、私にとってはアレなヤツでも、小早川にとっては良いお姉さんなんだ。
そして小早川自身も良いヤツなんだ。
「だから、わたしにはわからないんですけど、」
だからな、ほら。今話してるのをちゃんと聞いて、終わったらお礼を言って。
それから変な話を振っちまったことを謝って――
「かがみさんなら、何か知ってると思います」
……
…………は?
ちょ……と、待てよ。
小早川、何を、今、おまえ。かがみ? 柊? なんで名前で――じゃなくて、
それは別に良くて――いや良くは――ああ、違う違う。
ってゆーか、なに、なんで――え、あれ?
待てって――柊が――柊?
――いや、待て。待て待て待て。
待てって。
なんで。
「なんでおまえ……そこでひいらぎが出てくんだよぉ〜〜……」
視界がゆがんでる。ひどく情けない声が口から漏れた。足に力が入らない。へたり込んじまった。
小早川、今なんて言った?
なんでそこで柊の名前が出てくんの?
なんでそんな、ちびっ子といえば柊、みたいな発想すんの?
「ど、どうしたんですか?!」
「うぅ……だってさぁ〜〜……」
どうしたじゃねぇよ。
泣いてるよ、私。なんで泣いてんだよ。泣くほどかよ。ああ泣くほどだよ。
不意打ちもいいとこだよ。
「あの、ごっ、ごめんなさい!」
なんで謝るんだよ。
いやそりゃ謝るか。いきなり泣き出されたらな。でも謝るなよ。
悪いのは私なんだから。
「わたし、何も知らないのにいいかげんなこと言っちゃって……だからその、とにかくごめんなさいっ!」
だから、おい。
そんなぺこぺこ頭下げるなよ。気分悪くするぞ。
って、ほら。おまえまでへたり込んじまった。顔青いし。ごめんな。私のせいだよ。
「本当に、ごめんなさい。わたし、ばかだから、何もわからないんですけど、
でも、悪気はなくて……だからって許してほしいとは言えませんけど、えっと……」
話聞けよ。私のせいなんだって。
てゆーか。
声出てねーよ私。えぐえぐ言ってるだけだよ。何語だよ。いいかげんにしろよ。
ここで声出さないでいつ出すっていうんだよ!
「ゔぅ〜〜……違う、違うんだよぉ」
げぇ、ノド痛ってぇ。
でも出た、声。
「え……?」
「悪いのは、私なんだよぅ……」
そして私は、主に恥ずかしさでつっかえつっかえになりながら、全部話した。
柊がちびっ子の方ばっかり行っちまって、寂しかったこと。
私の方が長く友だちやってるのにって、悔しく思ってたこと。
どうにかしてこっちに戻せないかと悩んでたこと。
そして、ちびっ子の近くにいる小早川から上手い情報でもゲットできないかと思ったこと。
(あとついでに、「柊」が姉の方だってこと。言ってなかったっけ?)
小早川は、笑わなかったし、怒らなかった。
それどころか、すっげぇ優しい声で「わかる」とまで言ってくれた。
「えっと……わたし、昔から身体が弱くて、いつも周りの人に迷惑かけてばっかりで」
優しい声で。
優しい顔で。
「ずっとそんなだから……たぶん疲れたり呆れちゃったりしたんでしょうね。
最初は頑張ってお世話してくれてた友だちも、他の元気な子の方に行っちゃった、なんてこと、
今まで何度もありましたから」
つらい話のはずなのに、そんな様子は一切見えない。場違いな照れ笑いすら浮かべてる。
なんでだ?
おまえはわかるって言うけど、私には全然わからない。
身体だけ無駄に健康で、へらへらとテキトーに生きてきた私には、
それだけの目に逢いながらも笑顔で人に優しくできる、その強さの理由が。
「でも、先輩はすごいです」
「へ? な、何が?」
すごいって、なんで? どうしてそうなる?
こんなに情けなく泣きじゃくっている私を、こんなに強くてまっすぐな小早川が、
どこをどうすごいなんて言う?
「だって、元に戻そうとしたんでしょう? 私は、全部諦めちゃったから……だからすごいと思います」
ああ……こいつは……
そんなんじゃない。そんなんじゃないって。
そんな目で見るなって。ますます自分が情けなくなっちまうから。
「わたし、応援します。先輩のこと。だから頑張ってください」
いや、だから。
「こばやかわ……」
「そうだっ。わたしの方からお姉ちゃんに言ってみましょうか。
かがみさんを独り占めしすぎないようにって……なーんて」
……もう駄目。限界。
なんかもう情けなさとか申し訳なさとか嬉しさとか、あとよくわかんないけど他にもいろいろ。
「こばやかわぁ〜〜!!」
とにかくわけわかんなくなって、我慢できなくて。
もはや抱きつく以外になかった。
「ひあっ!?」
さすがに驚いたようで、小早川が悲鳴を上げる。
あ、ヒザ擦ったかも。座り込んだまま急に動いちまったから。小早川は大丈夫かな。
確認したいけど、今は無理。
「ごめんな〜! ありがと〜! ありがとぉ〜! こばやかわあ〜〜!」
「せ、先輩、あの、落ち着いて――」
ごめん、それも無理。
もうちょっと待ってくれ。あともうちょっとだけ――
「――ゆたか!」
「へ?」「えっ」
突然、すごい声がした。
驚いて顔を上げると、目に入ったのはスラリと背の高い女の子。
どこか見覚えのある顔で、けど見たこともないような恐ろしい目で私を睨んでいて。
なんでそんな目で、ってゆーか、
「……だれ?」
ぽろっとこぼれた私の声は、その子の眉をますます高く吊り上げた。
こわっ。
469 :
23-49:2007/11/22(木) 20:57:55 ID:JOvZJjY2
以上です
ありがとうございました
とうとう待ちきれなくなったのか、向こうから来てしまいました
みなみ家とおいよみなみ家
・・・・・ごめんなさいorz
次回・・・・・は朝顔のターンなので、その次こそは・・・・・
空気抵抗が少ないんだに吹いたww
みさおの語りに違和感がなくてよかったです
脳内再生が非常に容易でした
>>469 >あのちっこい身体にエプロンと三角巾を着けさせて、台所に置く。
>包丁を手に取った。ニヤリと笑ってこっちを向いた。うわぁ追っかけてきた。
吹いちまったじゃねえかどうしてくれるっ(笑)
けど、すごい。ゆーちゃん眩しすぎるわみさおは楽しいわ。もう心の底からGJなんだってヴぁ!
>>469 GJ!
でもみさお、排除ってのは考え過ぎww
とにかく続き待ってます!
これDA!これなんだよNA!
みさおが一番魅力を発揮するのって、
こな×かがな関係に嫉妬してうみゅ〜;;とする時なんだよNA!
そしてついにゆたかのナイトみなみ登場!
三角関係勃発か!?
続きはネットで!!
パティ「ここは元からネットですヨ、ひよりん」
>>469 初見でいきなりこの話を読ませていただきました。
自分の抱いてるみさお像とも重なる部分があり、納得しながら読ませてもらいました。
1話、2話も早速読みに行きたいと思います。GJでした!
476 :
2-390:2007/11/22(木) 23:36:22 ID:p2Vn1Igz
良作の後で気が引けるけど、そろそろ起きてらんないので投下。
『残し物-海』
・かがみ&こなた
・社会人かがみ視点
・いずれ鬱展開
・二人が知り合ったのは最近
苦手な人はスルー推奨
>>299 まったくもって素晴らしいなアナタ
477 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:38:36 ID:p2Vn1Igz
──夏。
例年に見ない程の冷夏となりそうな七月中旬。
ヒートアイランドと謳われる日本は心地よい空気に満たされていて、うだるような暑さとは未だ程遠い。
それでいて快晴である現在の午後二時過ぎは、おそらく近所のご家族方にとって絶好のレジャー日和なのだろう。
だが、無論私には関係ない。
言い直そう。でもそんなの関係ねぇ。
週に一度の休日くらい、自宅でゆるりと過ごしたいと願うのが社会人と云うもので。
私もその例外には当てはまらず、部屋の小さなテーブルにへばっては
流れる空気に身をほぐしていた。
静かだ。とても心地よい静寂だ。
セミの声すら分厚い窓が遮断して、私がこのまま眠ってしまおうとしても
何らとて邪魔にはならなかった。
ならいっその事、眠ろうか。
と思うが早いか目蓋が早いか。
テーブルのその冷たいプラスチックに頬を寄せると、従うようにして目が閉じていった。
呼び鈴の音にふと気が付いた頃には、それから一時間程経っていた。
478 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:39:53 ID:p2Vn1Igz
─────
「突然にお邪魔してすみません。
以前、火曜日がお休みだと伺ったものですから。」
単身で訪ねてきた高良みゆきは、相変わらずの淑やかな雰囲気を纏って対面に座る。
軽くウェーブした長い髪、豊満な身体は見紛う事なく高校時代からの友人のそれであり
仕事や日常の風景に廃れてしまった私の視界には、とても新鮮に映った事を覚えている。
「いいっていいって。
それで? 今日はわざわざどうしたのよ。」
電話機の完全に普及した日本に住まいながら、大層にも徒歩で用件を伝えに来るという事は
それ相応の内容と予測してよい。
インスタントながら紅茶を用意し差し出すと
私は重ねた両手の甲に顎を乗せて、話を聞く体制をとった。
「いえ、今日は自宅からタクシーで参りました。」
このブルジョアめ。
「実は、日々の慰安も兼ねて海岸までの遠出を計画していまして。
つかささんもご一緒にお誘いしているのですが。」
おっとりと話す彼女の口からは、何とも意外な内容が告げられた。
みゆき曰く
昔の誼で集まって、海にでも遊びに行きませんか
との事らしい。
海水浴となると高校時代以来なので、私個人としては非常に懐かしく感じる所だ。
「海かぁ…、昔も三人で行った事あったわよね…。」
だからといって、こうしみじみしてしまうのは いかんせん歳のせいだろう。
若年ニ十四にして、老いを感じてしまうのは些かどうかと思うのだけれど。
「スケジュールは皆さんのご都合の良い日に決めようと思っていますし
車も私の方で用意できますので、是非近日にでもいかがでしょう。」
と、完璧なまでの好条件だった。
私としても、また三人で遊びたいとは思っていたし
手筈はみゆきが受け持ってくれるとなると、どうにも食い付かずにはいられない。
ここで一人の顔を思い浮かべていなければ、迷わずそうした事だろう。
479 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:41:00 ID:p2Vn1Igz
「あー…、でも……」
とたんに私か言葉を濁すと、みゆきはハテと首を傾げた。
私が悩むのも無理はないはずだ。
全国の子を持つ親御さん方なら特に理解してくださる事と思う。
この部屋には衆知の通り同居人がいて、それも膝で立って並ぶような小さな子だ。
彼女を置いて出掛けてしまうのは後ろ髪を引かれる思いだし、それだけはしたくないと思っている。
故に腕を組んでまで悩み、断ってしまおうかとさえ考え始める私がいるのだ。
ふと、太股の辺りがくすぐったいと感じた。
ハッとした私は考慮を中断し、その足元に視界を下ろしてみる。
テーブルの下に見えたのは青い髪で、それが私の脚を這い上がってきていた。
「……むー…。」
噂をすれば影というやつで、こなたが眠い目をこすりながら私の身体をよじ登り
うつらうつらと、そのとろけそうな表情をテーブルの上に覗かせたのだ。
お前ずっとこの下で寝てたのか。と言うか恥ずかしい登場の仕方禁止。
よじ登られた身体が妙に疼くのは気のせいという事にしておいて
ゆらつくこなた身体を軽く抱き支え、寝癖だらけの髪を手で撫でてやった。
「宜しければ、泉さんもご一緒にいかがですか。」
様子を見ていたみゆきが微笑んで、さも当然のようにそう言った。
私は呆然だ。何故みゆきがこなたを知っている。
「つかささんからお伺いしていまして。
是非彼女もお誘いしたいと思って来たんですよ。」
こうして、私の心配事は無事解消。即日了解する事となった。
当日についてみゆきとの会話が弾む中、膝の上に座るこなただけが首を傾げていた。
480 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:42:23 ID:p2Vn1Igz
─────
──そして八月。
冷夏といっても、流石にこの時期となるといよいよ暑くなって来る。
地を照らす太陽は嫌味に微笑み、アスファルトを蜃気楼でぼかしていた。
この時ぞとばかりに有給休暇を取った私は、つかさにみゆき。
そして泉こなたと供に海へと出発した。
みゆきの運転するボックスカー、その後部座席に私とこなた。
助手席には妹のつかさが腰を掛け、空いた道路の左車線を走り抜ける。
チェンジレバーを巧みに操作する良いとこのお嬢さんは、見惚れてしまいそうな程にカッコ良かった。
隣に座っていたこなたは、丁重に靴を脱いで座席に膝をつき
窓に両手を貼り付けての自然観賞だ。
流れゆく遠方の山を目に映しては追うその姿に
座席に座る犬や猫を思い浮かべてならない。
動きを見せるこなたに、いちいち興味を引かれては振り向き
やはり犬猫を観察するかのように眺めてみるつかさ。それに気付いて、凛々しくも微笑を浮かべるみゆき。
気付けばずっと隣を見ている私も含めて、車内はこなたの空気で和やかに時を刻んだ。
─────
愛らしい小動物に癒されている間に、車は小さな駐車場に停車した。
ここからは徒歩で向かうらしく、みゆきが言うには4〜5分で浜辺に到着するとのこと。
さっそく降りて荷物を分担し、交通のきわめて少ない田舎道をゆく。
ところでこなた、パラソル持つのは私なんかに任せてくれると安心できるんだけど。
481 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:43:19 ID:p2Vn1Igz
時折涼やかな風が吹き、歩道のさらに奥の林がさっと靡く。
その隙間からか漂ってくる潮の香りに、向こうは海なんだと感じた。
もうすぐかな、と嬉しそうに振り向くつかさを見ると
昔の私達がここを歩いているような気分になって、何処か可笑しかった。
歩きながらにしてふと目を閉じてみると、感じるのは風。そして歩く音。
葉の擦れ合う音と砂利を踏む音が、心地よい風景を浮かび上がらせた。
当時と歩調の変わらない三つの足音に、必死についてくる一つの足音がある。
それが今までの私達に加わった者を示していて、私の心を何よりも浮かれさせるのだ。
不意に林に覆われた右側の視界がぱっと拓けると、そこに映るのは人もまばらな砂浜だった。
奥には綺麗な海が広がっていて、音と供に潮風を運んでくる。
「着きました、こちらです。」
みゆきの分かりきった内容の言葉を合図に、私とつかさは砂の上を駆け出した。
空は抜けるように青い。
きっとアンタの事も、笑顔にしてくれると思う。
─────
海に到着してからというもの、それこそ子供のようにはしゃぎ通した。
つかさと、私と、私に手を引かれるこなた。
波打ち際よりも少し深い所に膝まで浸かり、水を弾いて掛け合った。
みゆきはせっせとパラソルを立てて、その下に茣蓙を敷いて寛いでいる。
時折手を振るつかさを見つけると、流石は上品に手を振り返してみせた。
彼女の淑やかな素行は逆に際立っており、若干田舎染みた海岸がリゾート地のように思えてくる。
私や、とくにつかさと同い年には到底見えなかった。
482 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:44:14 ID:p2Vn1Igz
私は、一頻り遊んだ後にみゆきの隣を失礼した。
くたびれた脚を海に向けて投げ出し、パラソルの影に身を休める。
つかさとこなたは依然水を掛け合っていて、休む気配は一向に無さそうだ。
つかさが一方的にはしゃいでは、時たまこなたに大技をいただくという戦況だった。
「お疲れになりましたか?」
隣のみゆきが静かに問いかけてくる。
その温厚な声質は、それだけでヒーリング効果があるような気がした。
「いやいや…、年甲斐もなくはしゃいじゃったわね」
苦笑いして頬を掻く私は、本当に疲労した顔に見えるに違いない。
子供のように元気に遊ぶ、海辺の二人が羨ましい。
……あ、一人は紛れもない子供か。
「本当に楽しそうですね、二人とも…。」
向こうを眺めて、みゆきがそんな事を言う。
「……楽しそう?」
「えぇ。」
そこで、私は聞き返さずにはいられなかった。
何でもない事なのだけれど、私にはそれが重要な気がして。
「…こなたも、楽しそう?」
「はい、そう伺えますよ。」
私は、もう一度二人の姿を目で探す。
すぐに見つかる青い髪は、海に馴染んで輝きを帯びていた。
483 :
残し物-海:2007/11/22(木) 23:44:55 ID:p2Vn1Igz
─────
次第に日が暮れる頃となり、水面やそれにかかる山々が若干の紅を帯びて陰りだす。
まばらだった人も一層数を減らし、赤らんだ砂浜はその姿を広々と晒していた。
未だ波打ち際で波を蹴っていたつかさは、ふと見つけたみゆきの手を引いて行ってしまい
空いた茣蓙には、代わりにこなたが膝を抱えて座っている。
薄着の彼女に掛けてやった上着は、私の物である限り必然とサイズが合わないようで
小柄な身体を覆うそれは、バスタオルの如くユッタリと着こなされた。
「………。」
私もこなたも、となり合うのに口数は皆無だ。
お互い、視野に入れるのは夕焼け景色で、耳に入れるのは風や波の音。
それらが会話の代わりを為してか、無言でいるこの時間は寧ろ心地よい。
こなたも日頃から喋る方ではないが、おそらくは私と同じ心地だと思う。
「………。」
視界の下の方では、つかさとみゆきが水を掛け合って賑やかだ。
最もみゆきは、じゃれてくるつかさの相手をしているだけのように見えるが。
掬い上げた海水が、途端に宙にばら蒔かれて紅の粒となり
同時につかさの楽しげな声が聞こえてくるのだった。
「──いい、のかな」
ふと、隣の少女が呟いた。
幼げな外見と似つかない声は、とても静かに夕闇と調和する。
「…私が、ここに座ってる事だよ」
さっと柔らかな風が吹いた。
その横顔は赤い日に照らされて、儚げな表情を示している。
彼女の言わんとする事は、自然と流れ込んできた気がして
私はだから悲しいと思った。
夏の暖かい空気は変わらなくて
絶えず浜は波にうたれて。
それが必要である限り、きっと永遠に続くのだろう。
「私の隣は嫌かぁ〜?」
そうであって欲しいと願うのは
「……………
………どーかな。」
私と、もう一人くらいは居て欲しい。
不意にこなたが微笑んでくれた気がして、つられるように私も目を細める。
互いの髪は等しくなびいて、紅い海辺を彩っていた。
484 :
2-390:2007/11/22(木) 23:47:37 ID:p2Vn1Igz
つづく
必要以上にレス数多くなってすまそ
お話は折り返し地点を過ぎました
>>484 GJ!今回も和ませてもらいました
これからも頑張ってくださいね
>>484 GJ!続きがああああ!!
今もっとも続きが気になる連載作品です!
もう本当に、こんな綺麗なSS見るとにゃんにゃんシーン書いてる自分
なにやってんだって気分になりますね?
>>484 GJでした。
続き早く読みたいです!
がんばってください!
>>469 こなたに対してヒドいイメージ持ってるみさおに吹いたwww
みさおが泣き出したシーンをみてほのぼのしちまったぜ、GJ!
>>484 こちらもGJ!綺麗な流れを作れるあなたがうらやましい。
ふと思ったんだけど、題名の忘れ物ってもしかして…?
この予想があたらないことを願いつつ、ぜんらたいき!
>>488 …2-390氏のタイトル、残し物ですねorz
作品名を勘違いしてしまうとは申し訳ない…
吊ってくるノシ
もし、他になければ一つ投下したいのですが、いいですか?
>>484 GJした。
なんでこう、人を引きつけるようなSSが書けるかなぁ…
続きが気になるお年頃。
>>486 俺なんぞにゃんにゃんが無駄に長いから
今日中にうpできるかも微妙なんだぜ?
文章が稚拙なのもどうにかならんかのー
492 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 00:47:31 ID:5116IvrJ
>>484 gjでした!!!!
いつか鬱展開になってしまうのか…
まぁ、どんな展開になるにせよ、wktkして続き待ってます
>>490 おk! 全裸待機!
>>491 お、俺なんか連休中にうpできるかも微妙だもんね!
最終回のほうは終わったのにエピローグがなんとも……絞り出ろ俺の小宇宙
おkが出たようなので。
・ゆたか、みなみ
・非エロ
・6レスほど
はじめに、作中の文節が別のところにありますが
盗用ではなく、誓って自分のものですのでご了承ください。
また、その文節に関しては本来この文章を書くために作られたものです。
495 :
春夏秋冬:2007/11/23(金) 01:00:22 ID:8ybaYBih
冬―――
風が冷たい。身体が切れるようだ。
凍死と言うのは綺麗な死に姿と聞いたことがある。このまま寒さで死んでしまっても良いだろう。
そう、思った。私は生きていることに実感がわかない。
この世に生まれて15年しか経過していないのに、私はすでにこの世界に嫌気が差していた。
自分に責任がある。そう、私もそう思う。
上手く喋れない。上手く気持ちを伝えられない。
あんなに伝えたいことがたくさんあったのに、今は何も感じない。
周りからの嘲笑や蔑みの声にも動揺しなくなった。
私は私であることをやめた。私であり続けるには、私は弱すぎる。
この世界で一番嫌いなもの、それは私。
寒いな。早くお家に帰らないとまた風邪ひいちゃう。
お母さんにもお父さんにも迷惑をかけちゃう。
大好きなお姉ちゃんにも心配かけちゃう。
早く帰らなきゃ。でも、私は走るのが苦手ですぐに息切れしちゃう。
遠足も運動会もいつもそう。友だちは私に気を使ってそういうことには誘わない。
気がついたら誰も私を誘わない。
鳴らない携帯。使わないままの古いアルバム。
ダメだな。身体の調子が悪くなると気分まで悪くなる。
早く春が来るといいな。いつか、元気に外を走りたいな。
496 :
春夏秋冬:2007/11/23(金) 01:01:01 ID:8ybaYBih
春―――
一年の中で一番憂鬱な季節がまたやってきた。
暖かい陽光、柔らかな風、明るく眩い景色。
その全てが私の全てと正反対のもの。
当て付けの様に咲き乱れる桜の花びらが嫌い。
そんなことを考えている私がもっと嫌い。
一年中で一番大好きな季節がまたやってきた。
暖かい陽光、柔らかな風、明るく眩い景色。
その全てが私を元気にしてくれる。病は気からだね。
毎年、毎年ほんの少しだけ姿を変えるあの桜の大きな木が大好き。
大きくなりたい、元気になりたい、自分をもっと好きになりたい。
何も考えてはいなかった。
また迷惑をかけちゃう。
目の前の女の子に自然と手を差し伸べた。いや、自然と手が伸びていった。
優しくされるとうれしいな。迷惑をかけると悲しいよ。私に優しくしてくれるの?
春の暖かさ、ううん、違う。もっと、もっと暖かい、そして優しい。
だから、自然に手が伸びていった。
悲しいのかな。寂しいのかな。こんなに優しくしてくれるのに、とても辛そう。
こんなに暖かい日なのに、なんで凍えてるの?
私は考える、差し出した両手の理由を。
私は考える、差し出された両手の理由を。
497 :
春夏秋冬:2007/11/23(金) 01:02:03 ID:8ybaYBih
夏―――
”楽しい”と心の底から思えたのはいつ以来だろう?
この子といるだけで私は”楽しい”気分になれる!
これはなんていうんだろう?うまく言葉で表せない。
生まれてから一度も感じたことのなかった感覚。
これは何だろう?
”楽しい”!大切な人と一緒にすごせる時間は”楽しい”!
この人といるだけで私は”楽しい”気分になれる!
これはなんていうのかな?頭で考えても出てこないよ。
生まれてから何度かすれ違い、何度も通り過ぎていってしまった感覚。
これは何だろう?
―――ともだち―――
そうか、これがともだち・・・。
そうだよ!ともだちだよ!
秋―――
もう怖くない。何も恐れない。唯一つあるとすれば、あなたとの別れ。
だから、あなたに贈っておきたい詩がある。受け取って。
「強い、強い風が吹いていた。
ずっと、ずっと吹いていた。
私は飛ばされぬよう、必死で足に力を入れ、
上着を身体に巻きつけるように両腕でしっかりと掴んだ。
理由は分からないが進まなくてはならない。
何も教えられないまま進まねばならない。
休むことも許されず、ただ、ただ進まねばならなかった。
疲れていた。あらゆることに。
強い風にこのまま飛ばされてどこかへ飛ばされてもいいと思った。
ふと顔を見上げると少しだけど太陽の光が差し始めていた。
力強く、清らかな、暖かな光。
次第に風は弱まり、上がる体温に上着は要らなくなった。
進むことが楽しい。もっとこの光を受け続けていたい。
私が進む理由はただ一つ、この光を浴び続ける為だけに進む。
出会えたことに感謝する。ありがとう、ゆたか。」
みなみ
私にも出来ることがある。こんなに小さくて、弱い私でも出来ることがある!
だから、あなたに贈っておきたい詩を作ったの。私の気持ちを詰め込んで!
「ずっと待っていた。
その日が来るのを待っていた。
長い長い、悠久の呪縛から解き放たれるその日を待っていた。
誰かが迎えに来るのを待っていた。
深い深い海の底から見上げる世界はどんな世界なの?
私がいる世界と何が違うの?
光り輝いて、眩しくて見えないけれど、とてもきれいな世界が広がってたら素敵。
太陽があるって、空があるって、果てなく広がる大地があるって。
海の底からでは決して見れない世界があるって聞いた。
誰か私に二本の足を下さい!
眩き太陽の下を歩ける足を!清清しき空の下を歩ける足を!暖かい大地を踏みしめる足を!
私に足をくれたのはあなた?
ありがとう!私はずっと付いて行く。あなたにずっと付いて行く。
私に二本の足をくれたあなたに。私に世界をくれたあなたに。
迎えに来てくれたんだね!ありがとう!みなみちゃん!」
ゆたか
冬―――
「ねえ、雪だよ!」
「うん」
「きれいだね!ふふふ、いっぱい着てるから、顔に当たると気持ちいいなー」
「うん。私もそう思う。でも、寒くなったら無理しないで」
「えへへ、寒くないよ、みなみちゃん」
「うん」
肩を並べて歩く公園の並木道が見る見るうちに白く染まり、
太陽の光を反射する雪がモノクロな景色に輝きを与えた。
「冬も・・・いいね、ゆたか」
「うん!」
了
すんません、名前欄のレス表示数を間違えてました、申し訳ありません。
他所ではいくつか落としてますが、こちらでは初投下となります。
自分的にいろいろと試行錯誤した結果、こういった形になりました。
文章の構成として微妙な感じはしますが、いかがでしょうか?
ちなみに、みなみの詩が出来て、この文章の大枠を思いつき、ゆたかの詩を作り、まとめたといった流れで製作しました。
甘言苦言頂ければ物書き冥利につきまするm(__)m
なんだかミュージカル見てる気分になりましたぜ。GJ
>>469 GJ
泣きながら「みゅぅぅ〜」って言ってるみさおを妄想して萌えたw
続き期待してます
>>469 うぅむ…ゆーちゃんさすがだ…
日下部も泣くなー。話せばわかってくれるはず。
続き待機っ
>>484 例え高校時代に一緒にいなくてもやっぱり同じことは起こるんだなぁ…
さ、続きをwktkしながら待つといたします。
>>483 キャラ云々っていうか普通に文章がうまいですね
あとこのクオリティと長さで連日投稿できるのが信じられない
俺はいっつも一週間以上かかってしまうのに……
>>501 とってもよくまとまってると思う。
構造も綺麗だし、言葉の選択も堂に入ってる感じ。
で、文芸的に大志を持ってそうだからいうのだけれど、
詩としては外連味がなくて素直すぎて、
小説としては構造主義的すぎる印象が。
まあ、あんまり詩を追求しすぎると、さすがにこのスレでも
浮いちゃうので難しいかもね。
あ、追記だけど、特にゆたかとみなみが
詠んだ詩はクオリティ高いと思います。
>>506-507 ありがとうございます!
お褒めの言葉は今後の創作意欲の糧として素直に受け止めます!
構造主義ですか・・・。なるほど心当たりが無くもないですね。
今回の作品に関しては詩に重きを置いたので、この感想はとても励みになります。
少しずつですがまとめの作品を読み進めてますので、今後スレにあった作風も取り入れたいですね。
今後もがんばりますので、その際はよろしくです!あじゅじゅした〜!
投下します
みなみ×ゆたか
エロ無し
5〜6レス予定
〜Minami side〜
今私は酔っている。自分でそれを自覚している。
何で酔ってるんだっけ? ……どうでもいいや。
だってとても……そう、とても気分がいいから。
──理由のないことなんていくらだってある。理由のいらないこともいくらだってある。──
誰かがそんなことを言ってた気がする。
誰だっけ? ……うん、それもこの際どうでもいい。重要なのは内容だから。
だから私は……溢れる欲望に身を任せよう……。
「ゆたかぁ……」
「みなみ……ちゃん?」
自分でも驚くくらいの蕩けた声が出た気がする……どうでもいい。……それと、ゆたかの驚いた顔、可愛い……うん、これは重要。
ただ無性に、ゆたかにキスをしたいと思った。理由なんてないし、いらない。
だから、ゆたかを抱きしめる。でも逸らずに、焦らずに、壊れ物を扱うように、赤ちゃんを抱くように、そっと。……すごく重要。
ゆたかはそのまま、私の腕の中に収まった。……逃れようとはしてない。もがく素振りも見せない。
(なら、いいよね……)
私はそのまま、吸い寄せられるように、その柔らかそうな頬にそっと唇を当てた……
〜Yutaka side〜
最初は、こなたお姉ちゃんの持ってきたお酒だった。どこから持ってきたのかは分からないけど、チューハイ……だっけ? そうゆう飲みやすいものだったと思う。
私は、お姉ちゃんに言われるままに一口だけ試してみた。普通に飲めそうな感じだったけど、やっぱり未成年だしそれ以上はやめておいた。
でも、みなみちゃんは結構飲んでた……と言うか飲まされてたみたい。
そして気づけば私は、
「ゆたかぁ……」
「みなみ……ちゃん?」
上気した顔のみなみちゃんに抱きしめられて、
「……っ!? みなみちゃん!?」
ほっぺに……キス……された……?
その事実を飲み込んで初めに心に浮かんだのは、戸惑いでも疑問でもなくて、
ただ、嫌じゃない…そう思うだけで……
〜Minami side〜
(柔らかい……)
ゆたかの頬の第一印象、予想通り……ううん、予想以上かもしれない。
柔らかくて、このままキスし続けるのもいいな、とも思ったけれど、やっぱりそれだけじゃ物足りない。
柔らかくて、その心地よさに便乗するように、私を睡魔が浸食し始める。まだ、私を許す訳にはいかない。
一度唇を離して、ゆたかの顔を改めて見つめてから、少し髪を手でよけておでこに、それから啄むようにもう一度頬に。
本当に柔らかい。柔らかくて、癖になりそう。
(手も……柔らかかったなぁ……)
普段よく繋いでいるゆたかの手が、小さくて、温かくて、とても柔らかかったことを思い出す。
意識に昇れば止まらない。ゆたかの手をとって、手のひらと甲に一回ずつ。
(やっぱり、柔らかい……)
そのことを確認した後、今度はその白い首筋にキスを落とす。
「んっ……」
ゾクリ……
ゆたかの声を聞いた直後、薄ら寒い『なにか』が私の中を駆けた。そして、
この白い肌に、自分の、自分だけの痕(あと)を残したら……
そんな考えが浮かび、再び、ゾクゾク……と私の中を『なにか』が駆け巡った。
今の私は、欲望に抗うことを知らない。ゆたかの首にキスをしたまま、少し強く吸ってみる。
「ひあっ!?」
ゾクリ……
それはまた、訪れた……
〜Yutaka side〜
(あったかいな……)
次に思ったことは、みなみちゃんのあったかさが安心出来て、心地よかったこと。
(……って、そうじゃなくって!)
突然のキスは、嫌じゃなかった。ううん、むしろ……気持ちよかった。
でもとりあえず、現状を把握しないと。
少し高ぶった気持ちを落ち着けて、少しだけ冷静になろうとして……なれなかった。
みなみちゃんがまたキスを始めたから。
場所は手のひらと甲、そして首。
「んっ……」
少しむず痒いような、くすぐったいような……!?
そう感じた直後、
「ひあっ!?」
突然の吸引感に、私は声を上げていた……
〜Minami side〜
さっきと同じ感覚。ゆたかの声が引き起こす、『なにか』が駆け巡ってゆく感覚。
ゆたかの首から唇を離し、そこに刻まれた赤い痕を見たとき、
(ああ、そうか……)
ようやく、その『なにか』の正体に気がついた。
それは、ゆたかに対する少しの罪悪感や、ゆたかを征服しているような錯覚がもたらす優越感、私自身が持っている嗜虐心の一部……
それらが綯い交ぜになって作り出した、高揚、多幸感、快感……
そして、それらを引き起こさせ、欲望を駆り立てるゆたかは、差し詰め私にとっての……麻薬。
「みなみちゃん、どうしたの……?」
ゆたかは……怯えていると言うより、戸惑っている様子だった。
もはや、その表情も、声も、仕草も、ゆたかのありとあらゆる動作が、私を狂わせ……いや、正しい反応へ導く。
そして私の意思は、最後の、故に最も重要な部分へと、視線とともに移る。
もう、我慢なんて出来ないし、するつもりもなかった。だから私は……
「ゆたかぁ……だぁいすき」
そう言って瞼を閉じて……
〜Yutaka side〜
唇を離したみなみちゃんは、私の首の、今さっきまでキスしていた場所を見て、何かに気づいたような顔をした後、満足そうに微笑んだ。
私だって何も知らない訳じゃない。
きっと私の首には、キスマークが付いている。……髪を下ろせば隠れそうな位置だろうけど。
ようやく、少しだけまともな思考が出来るようになって初めに思ったのは戸惑い。
理由は『何もしてこない』から。
「みなみちゃん、どうしたの……?」
その言葉で気づいたのかはわからないけど、みなみちゃんの顔がまた近づいてきて、
「ゆたかぁ……だぁいすき」
そう言葉を紡いでから、口を結び、私が言葉を紡ぐ前に、
「みなみちゃ……んっ……」
口で、塞がれた……
〜Minami side〜
ゆたかの唇に、そっと、自分のソレを重ねた。
今、私の全ては幸福の二文字で満たされている。
十秒くらいたっただろうか、重ねていた唇を離し、自分の胸にゆたかをかき抱いて、もう一度囁く。
「だいすき……ゆたか……」
囁いた直後、今の今まで抗い続けていた睡魔に飲み込まれ、ゆっくりと意識が闇に落ちてゆく。
意識がなくなる前に、
「……わた…も……きだよ……お…すみ…みな…ちゃ………」
そんな声が聞こえた……
〜Yutaka side〜
「……わたしも大好きだよ……おやすみ、みなみちゃん……」
キスの後、ゆっくりと眠り始めたみなみちゃんに、私も自分の気持ちを伝える。でも、聞こえてなかったかもしれないから、後でもう一度言わなきゃね。
結局、私も酔っていたのかもしれない。普段の私なら、みなみちゃんの行動の全てを受け止めることは出来なかっただろうから。
それはそれとして、私を抱きしめたままでみなみちゃんは眠ってしまったので、私は身動きを取ることが出来ない状態だった。
いや、抜け出ようと思えば抜けられるけど、
(でも、あったかいなぁ……)
みなみちゃんの腕の中は、とてもあったかくて、優しくて、抜け出るなんて勿体ないとしか思えなかったから、
(みなみちゃんが、起きるまで……)
このままでいよう……そう思った……
〜Minami side〜
……
………
…………
……………
………………
……少し眠ってしまっていたらしい。時間を確認しようと思った所で、腕の中にゆたかがいることに気づいた。
「ゆたか……? ………………ぁっ!?」
思い出した。自分の行った行動の数々を。ゆたかに、その……キス……してしまったことも……
「みなみちゃん、起きた?」
「その、ゆたか……ごめんなさい!」
とんでもないことをしてしまった……。ゆたかのファーストキスを自分勝手に奪ってしまったのだから……
「?? なんで謝るの? みなみちゃん」
「なんでって! その、ゆたかのファーストキスを……んんっ!?」
最後まで言い切ることが出来なかった。言い切る前に、ゆたかの唇で塞がれてしまったから……
「私もみなみちゃんのこと大好きだから、いいの」
二度目のキスの後ゆたかは、眠る前に聞こえた声を、私が聞きたかった言葉を、ハッキリと聞かせてくれた。
そしてゆたかは言葉を続ける。
「けど、そのかわり……」
〜Yutaka side〜
「責任……とってね?」
私は、そう続けた。
みなみちゃんは、迷わずに、戸惑わずに、躊躇わずに、
「……うん」
そう答えてくれた。
顔を赤く染めながら、でも、しっかりと。
了
おまけ
「いやー、良い物を拝ませてもらったヨ」
その言葉に世界が、というよりゆたかとみなみが凍り付いた。
「お…姉…ちゃん…?」
ここに来て、ようやく二人は自分たちのいる場所に気がついた。
酒を持ってきたのはこなたなのだから、こなたがいるのは当然。
それだけではなく、かがみ、つかさ、みゆき、ひより、パティがそれぞれ別々の表情で二人の一部始終を見守っていた。
元々は盛大なお泊まり会として集まっていたのだから、当然と言えば当然なのだが。
「いやー、眼福眼福。今時アニメでも拝めない良いシーンだったヨ」
と、いつものネコ口でこなた。
「なんてゆうか、ここまで見せつけられるとこっちが恥ずかしいんだけど……、とにかくおめでとう」
と、思いっきり赤くなりながらかがみ。
「二人ともおめでとー」
と、ちょっと赤くなりながらつかさ。
「ゆたかさん、みなみさん、おめでとうございます」
と、いつもの微笑みを全く崩さずみゆき。
「やめて!! これ以上私をオカシクさせないでー!!」
と、床をのたうちながらひより。
「Oh! コレはナントいうNice Lily. オ持チ帰リしたいくらいデスネー!!」
と、ややどころか大興奮のパティ。
さて、当事者の二人はと言うと、
「「…………」」
両者とも真っ赤になって沈黙していた。
その後二人は、まわりの六人から『質問』という名の『言葉責め』を小一時間ほど受け続けたとか。
終われ
異常です……じゃなかった以上です。
うん、書いてるうちにみなみが変態っぽくなった気がする。
どうも俺が書くと、メインにしたキャラが多かれ少なかれ変態になるようですorz
タイトルの「A Drunk Kiss Devil」は「酔いどれキス魔」と訳してください。無論みなみのことです(ヲイ
このネタは、二つ前のみなみスレで誰かが言ってた「酔うと饒舌になったり、キス魔になったり」って案を元に2時間ででっち上げた小ネタをリメイクしてみたものです。
小ネタのままお蔵入りは勿体ないと思ったので。ネタ提供者に無情の感謝を。
楽しんでいただけたら幸いです。
では。
私信
保管庫管理者様、HNの方をトリップの◆XUsT8DjZckに変更お願いします。
Mac使ってるのが原因なのか、ウィキの編集が一切出来ないものでしてorz
>516
朝からGJ!
いやぁ…朝からいいものを拝ませてもらいましたw
こ れ は ひ ど い (性的な意味で)
GJでした。みなみが変態っぽく感じないのはここがエロパロ板だからだろうか?
受け入れたゆーちゃんも可愛いぜ!
ってか祝日の朝なのにばっちり目が覚めちまったじゃねーかwwwwwwwwww
さて、一週間で500越えとかどういうことだ。今から全部読むのが大変ジャマイカ!
あらかじめ言っておくけど職人GJ!米者もGJ!
>>516 GJ!
>「やめて!! これ以上私をオカシクさせないでー!!」
壊れてるひよりんワロスw
>>516 GJ!朝から頬が緩みまくりですよ、どうしてくれるんだ!w
>>516 自分が詰まってるSSをグレードアップしたような感じでちょい欝に(笑)
でも欝の分を補って余りありすぎるくらい悶えた。
エロいというかすげえ綺麗に感じた。「責任……とってね?」に撃沈。そしてひより&パティじじゅう。
つまりGJです!!
「だからと言って駄目じゃない 駄目じゃない〜♪」
「こなた、それいつの曲よ……その古臭いアニメーション……」
「んー、これはね、20年位前の。『オアネミスの翼』よりは後のはずだよ。ユリアが死ぬ前かな、あとアテナが……」
「アンタの言わんとしてることがさっぱり分からないわ……」
「取り敢えず私たちが生まれる前だね」
こなたの部屋には、何とも大きな箱が三つも置かれていた。そのうち一つが開け放たれ、中にはDVDが5枚も入っている。
「これが、世に言う『DVD-BOX』ってヤツなのね」
「そうだよ、高かったんだから」
かがみにクレジットカードの明細を渡す。父親のそれは、他の支払いもいくつかあったが、
「へ、15万!?」
『それ』だけは桁が飛び抜けていた。
「バイト半年もして貯めたんだから。今はもう生産停止でオークションとかマーケットプレイスで高値がついてね」
「こなた、アンタの執念には時々感心させられるわ。たまには勉強に向けなさい」
「うっ……いっ、今はこれを消化するのが私の役目なのさー」
こなたはジト目で迫られるかがみの目線を避け、頬をポリポリと掻きながら、それでもやはり目はPC画面に戻った。
丁度前回のナレーションが終り、本編が始まらんとしているところだった。
「これ、動物モノ? これ、カバ? こっちは……なに? 植物? サボテン?」
「違うよー、スペースオペラだよ。OPじゃ『主役になれない』とか言ってるけど、今じゃ立派な主役だよね?」
「私に同意を求められても困るんだが」
しかし、如何にも人間臭い活劇や巧みな心理描写、未知の世界に対する浪漫が詰め込まれたこの作品を見ているうち、
かがみも何だか続きが観たくなってきてしまった。
最後は、『これが宇宙で一番上手な火薬の使い方です』と大きな花火を打ち上げるシーンで終った。
ED曲は非常に綺麗なバラードで、それがかがみの心を捉えて離さなかった。
「ただ古いだけじゃなくて結構面白かったわね」
「でしょ〜? 萌えの中にどっぷり浸かるのも良いけど、たまにはこういうのもね」
それを聞いて、かがみは絶妙に切り返す。
「そうね、アンタもアニメばっか観てないで、勉強の一つもしないといけないわよね?」
「そっ、それは禁則事項ですよかがみさん」
額に嫌な汗の玉を浮かべながら、こなたはオドオドと言う。
「実は黒井先生に世界史のレポートを貰っちゃってね……これ手伝って? 私一人じゃどうしようも……」
鞄の中からゴソゴソと取り出されたプリントには、『オスマン帝国の盛衰についてレポート用紙3枚程度に纏めること』と
書かれていた。
「ンなもんやるか、バカ」
「えー、そんなーっ! アニメ見せてあげたじゃないー!」
「アンタが勝手に見せたんでしょうが。もう、帰るわよ」
そっぽを向いて立ち上がろうとしたかがみに、こなたは最後の手段に出る。
「アレ、もう見なくていいのかな? 次回からまた面白いシナリオが始まるっていうのに」
「ぐっ……」
BOXに付属した冊子をひらひらさせながら、ニマニマと笑って誘惑するこなた。
「ち、ちょっとだけだからね」
かがみはいとも簡単に屈して、こなたのレポートを手伝うことにした。それほど、どこか魔性の中毒性があるアニメだった。
「ふふふ。それじゃま、取り敢えず次回を見てからにしますか。『宇宙船サジタリウス』」
言うが早いか、こなたはリモコンを手に取ってPCに向けた。再生ボタンを押すと、途端に次の回が始まる。
「いやー、テープの頃は巻き戻しとか早送りとか面倒だったけど、今は楽だねー」
「そ、そうね……」
画面の中で、年代の違う三人の主人公達が踊り、笑い、泣いて、そして冒険を続けていく。
「私たちも、あんな風になれればいいわね」
「何か言った、かがみ?」
「な、何にも! っていうか見てないでさっさと始めるわよ!」
「えーもうちょっと〜」
「いいから止めなさい!」
暫くして、シャーペンをカリカリ言わせると参考書の頁をめくる音が部屋に満ち始めたが、かがみの心はこなた以上に、
あの古臭くて人間臭いアニメのことが気がかりなのだった。
GJ!
大人が懐かしがることもな〜い〜♪
……と、歌いつつも、今じゃ立派な「なつかしのアニメ」になっちゃいましたね。
>>525 あまりの懐かしさに吹いたじゃねーかwww俺のラザニア返せwwwww
…本当に何が飛び出すか分からんなこのスレ…
だが、それがいい
529 :
kelkel:2007/11/23(金) 12:03:26 ID:SCw6daaI
どうもはじめまして。
SS初心者どころか、2chに書き込むのも初めてなkelkelです。
短文で見苦しいかもしれませんがどうぞ。
「ただいまー」
学校から帰ってきたひかげはリビングのソファで寝ているひなたを見つけた。
「お姉ちゃん帰ってたんだ。今日早番だったのかな?」
ランドセルを部屋に置き、ひなたの部屋から毛布を持ってくる。
布団をかけ、改めてひなたの寝顔をじっと見つめた。
お父さんとお母さんがいなくなってから毎日頑張ってるお姉ちゃん。
変なもの買ってきたり、そのせいでお金がなくなってご飯が塩粥だけになったりするけど。
この家を出ていかなくていいのも
何とか食べていけるのも全部お姉ちゃんのおかげ。
目を覚まさないひなたの頬に顔を近付け、そっと唇を落とした。
愛情でも、友愛でもない
「ありがとう。お姉ちゃん」
感謝の証。
ひかげが部屋に戻った後、ひなたはすっと起き上がると頬を指で撫でた。
「デレフラグ、ねぇ」
今からこっそり投下させて頂きます。
みゆきとつかさで、2〜3レス使ったアホネタです。
うああ、ごめんなさい。
割り込んじゃいました。
また今度にします。ではっ。
532 :
530:2007/11/23(金) 12:23:35 ID:o433J+n0
……。
どうやらつづけて投下がないようなので、ごめんなさい、投下させて頂きます。
前の方へのGJも気軽にどうぞということで。
533 :
ねこみみ病:2007/11/23(金) 12:25:03 ID:o433J+n0
なんでもないような、天気の良い日曜日。
わたしはゆきちゃんと遊ぶ約束をして、近所の公園で待ち合わせをしていたの。
その日は早めに家を出たから、わたしは約束の五分前に着いて、ゆきちゃんを待っていた。
ゆきちゃんは、すぐに来た。
清楚な感じの白いワンピースを着て、にっこりと手を振りながら。
「おはようございます、つかささん。待たせてしまってごめんなさい」
わたしは、ううん、気にしなくていいよー。って言うつもりだった。
でも……。
「ゆ、ゆきちゃん。どうしたの、それっ?」
思わず、そう叫んでしまったの。
だって、ゆきちゃんの頭からは、立派なねこみみが生えていたから。
「ええ…。ちょっと、ねこみみ病にかかってしまったみたいで」
ゆきちゃんは右手を頬にあてながら、おっとりと言った。
「えーっ、ねこみみ病…!? そんな病気があるのっ?」
「ええ」
初めて聞いたよ、そんなの。
でも、ゆきちゃんが落ち着き払っていたから、わたしも少しだけ冷静になれた。
それで、ゆきちゃんに生えたねこみみを、わたしはじっくり観察してみる。
ゆきちゃんは恥ずかしそうに俯いているけど、ねこみみを見る機会なんて、そうはないんだし。
そのねこみみは茶色くて、柔らかい毛がふさふさと生えていて、ふわふわで、もふもふしてそうだった。
「さ、触ってみてもいいかな?」
そう訊くと、ゆきちゃんはコクンと頷いた。
やっぱり恥ずかしそうにしていたけど、ねこみみを触る誘惑に、わたしは勝てそうになかったの。
手のひらで、そっと触れてみる。
撫で撫で……。
「あっ!」
不意に、ゆきちゃんが上擦った声をあげた。
わたしはびっくりして手を引っ込める。
「な、なになにっ!?」
ゆきちゃんは、ほう、と大きな息を吐いた。
「いえ、なんでもありません。その、少し気持ちよかったので……」
「……そうなんだ」
……撫でられると気持ちいいんだ。
「えっと、もうちょっと触ってみてもいいかな?」
「え、ええ。どうぞ」
心なしか、ゆきちゃんの顔が赤い。ねこみみを触られると、そんなに気持ちいいのかな?
もう一度、わたしはねこみみを触ってみる。
今度は、親指と人さし指でつまむようにして。……うわぁ。ふわふわだ。
さわさわ……。
「……あっ、ふっ……」
ゆきちゃんが、なんだか、艶っぽい声を出す。
わたしは戸惑って、また手を引っ込める。
「ど、どうしたの、ゆきちゃん」
ゆきちゃんは、頬をかすかにピンク色にして、わたしを見上げる。
なんとなく、瞳が潤んでいるような……ううん、きっと気のせいだ。
「いえ、なんでもありません。その、……もう少し触って貰っても、いいですか?」
う、うん。別にいいけど…。
手触りとか、ふわふわで気持ちいいしね。
今度は、両手で包み込むようにして、両方のねこみみを優しく撫で撫でしてみる。
「……あふっ。……だ、だめ、です。つかささんっ……」
ゆきちゃんの体がびくびくと震える。
撫でられると、そんなに気持ちいいいんだ。ねこみみ病、恐るべし。
534 :
ねこみみ病:2007/11/23(金) 12:25:55 ID:o433J+n0
ねこみみの手触りが気持ちいいので、わたしは丁寧に、撫で撫でしてあげた。
「ふわ……、きもちい、……も、もうだめです。……あぅ」
撫でつづけてると、そのうち、ゆきちゃんの体から力が抜けてくる。
立っていられないみたいで、その場にくたっと、しゃがみ込んでしまった。
そして、ゆきちゃんは切なそうにわたしの顔を見上げる。
「つ、つかささん。その、ここは人目もありますから、もっと人のいない場所で触って貰えませんか?」
別にいいけど……。
ゆきちゃんの目の端には、小さく涙が浮いていた。呼吸だって、いつもより荒い。
ねこみみを触るくらいで、なんだか大げさだなぁ。
それで、わたしたちは、映画館へと移動した。
もともと今日は二人で映画を見る約束をしていたの。
それに、映画館なら暗くて他の人から見られる心配だってないしね。
……ということで、お洒落な感じの恋愛映画を見ながら、わたしはゆきちゃんのねこみみを撫で撫で。
「……つ、つかささん。あぁ……そんなに触られると。……ひぅ」
映画のセリフや効果音に、隣りに座っているゆきちゃんの声が混じる。
そうして撫でているうちに、なんだか、ゆきちゃんがすごく可愛く思えてくる。
撫で撫で……。
「ふぅ……あっ……」
ちょっと強めに撫で撫で……。
「ひっ……やぁっ……」
優しく撫で撫で……。
「はぁ……ふっ……」
可愛いなぁ、ゆきちゃん。
結局、映画を見終わる頃には、ゆきちゃんはぐったりとなってしまっていた。
「ほら、ゆきちゃん立って。もう映画は終わっちゃったよ?」
「……はぁ。だめです。立てません……ちからが抜けてしまって」
暗かった上映室が、明るくなる。
もうじき、次の回のお客さんたちが入場してくる頃だ。
仕方なく、わたしはゆきちゃんに肩を貸すようにして立ち上がらせて、映画館を出た。
うーん。ちょっと撫ですぎちゃったかなぁ。
映画館のそばの喫茶店に入り、二人分の飲み物を頼む。
535 :
ねこみみ病:2007/11/23(金) 12:28:14 ID:o433J+n0
向かい合って席に座ると、わたしはゆきちゃんに微笑んだ。
「ふふっ。今日のゆきちゃん、とっても可愛かったよ? これからも、またねこみみを撫で撫でしてあげるから、楽しみにしててね?」
なんだか、あたらしい嗜好に目覚めちゃった気分だよ。
わたしは、ゆきちゃんを苛めるのが楽しくて堪らくなってしまっていたの。
えへへ、と意地悪くゆきちゃんを見る。
ゆきちゃんは、おっとりと微笑んで右手を頬にあてた。
「あら。それは、こっちのセリフですよ、つかささん?」
そうして、わたしの頭の上の方を見た。
……なんだろ?
わたしは何気なく、みゆきさんのねこみみに目をやって、とても驚く。
だって、さっきまで生えていたはずのねこみみが、いつの間にか跡形もなく消えてしまっていたの。
「あれぇっ!?」
思わず、声に出してしまう。
「ゆきちゃん、ねこみみはっ!?」
ゆきちゃんは首を傾げる。
「さあ。わたしのねこみみ病は、もう治ってしまったみたいですね」
そ、そうなの? 治ると、ねこみみは自然と消えてしまうんだね。
そして、ゆきちゃんは相変わらずニコニコと笑っている。その視線はわたしの頭の上だ。
えーと、なんだか悪い予感がする。きっと気のせいだよね?
「も、もしかして……」
わたしは、頭の上を両手で探る。
ふわふわで、もふもふとした何かが、そこから確かに生えていた。
「これから、たっぷり可愛がってあげますからね、つかささん?」
ゆきちゃんが、嬉しそうにそう言った。
「そんなぁ……」
全身に汗が浮かんでくるのを感じながら、わたしは、ぎこちなく笑ってみせた。
END
536 :
ねこみみ病:2007/11/23(金) 12:30:01 ID:o433J+n0
以上です。
では、ありがとうございました。
>>529 こんなひかげもいいなぁ……
癒されました。GJ!
>>536 こちらもGJ!
萌えましたw
みゆきさんかわいいよみゆきさん
今日はまだ金曜なのに投下が多いなぁ……ああそうか祝日だったか
だからこんなに午前中から客が来てたんだな……と思った涙目で今日も仕事の俺参上
お前様方の投下が荒んだ俺の心を癒してくれるんだぜ、休憩中で時間がないから、一括GJの無礼を許してくれ
ってわけで、皆GJ
>>539 なんという仕事の早さ……
あなたは間違いなく萌神
ってなわけでGJです!
541 :
18-490:2007/11/23(金) 14:48:40 ID:PYXO6a5i
>>536 ねこみみwikiさん萌えwww
>>539 仕事早っ!GJっすw
さて、連休初日から投下させて頂きます。
>>48の「黄昏の君」の続編「黄昏の貴女」です。
一応かが×こなのつもりです...orz
非エロです。
5レスお借りします。
542 :
黄昏の貴女:2007/11/23(金) 14:51:12 ID:PYXO6a5i
『こなた』
電話越しから聞こえてきたかがみの声は、いつもよりちょっとだけ恥かしいそうで、いつもよりちょっとだけ優しかった。
―――黄昏の貴女―――
好きなるのに理由はいらない、なんてよく聞く言葉だけど…
理由はいらなくても、きっかけは必ずあると思う。
私の場合、かがみを好きになったきっかけは、一年生の時夏休みだった。
柊家に遊びに行ったある日、珍しくかがみがいなくて、某ロボット大戦をしながら何気なくつかさに尋ねた。
「そーいえば、今日かがみは?」
「同じクラスの友達と出掛けてるよ」
クラスの友達、誰だろう。
いや、誰だろうとか考える前にかがみのクラスメイトを全く知らないや。
日常茶飯のようにかがみは私達のクラスに遊びに来るけれど、私がかがみのクラスに行った記憶はほとんどない。
「そっか…」
と、返事をするも胸の奥らへんがモヤモヤする。
なんだろう、この感じ。
胸の中に膨張剤でも含まれているのだろうか?
「なんか、こう悔しいというかもの足りないというか…」
例えるなら、気に入って隠してた保存用の特典DVDを友達に見つけられて成り行きで貸してしまったような…
じゃがいもが入ってないカレーのような…
コレって結構ショックだよね。ルーに深みがないってゆーか、コクがないってゆーか…
「寂しいんだね」
苦笑しながら呟かれたつかさからの言葉。
寂しい…
確かに、寂しいという言葉があっているのかもしれない。
高校に入ってからというもの、社交性0だった私にもつかさやかがみやみゆきさんという友達が出来た。
特にかがみとはほぼ毎日一緒にいるわけで、かがみが傍にいることが当たり前になっていた。
そのかがみが私の知らない友達と遊びに行っている。
なんか嫌だ。
……って、え?
別にかがみが誰と遊びに行ってもいいじゃん。
「???」
自分の中で疑問が生じる。
今、私は何て思っていた?
かがみが他の友達と遊びにいくことを……嫌だと思った?
いやいや、なんで?
543 :
黄昏の貴女:2007/11/23(金) 14:52:53 ID:PYXO6a5i
自問自答しているせいで集中力が切れたのか、手元が狂ってしまい、いつの間にかYOU LOSEという画面になっているTVを見つめる。
「珍しいね。こなちゃんが負けるなんて」
ほら、とTV画面を指しながら意外そうな顔をしている。
まさかかがみの事を考えてたから負けました、なんて言えるはずもなく「熱いから集中力切れたかなぁ」なんてとぼけてみせる。
「あれ?」
横にいるつかさを伺い見ると、ん〜?と首をかしげている。
「どったの?つかさ」
「ん〜っと…」
「?」
「う〜ん、なんていうんだっけ?前にも似たようなことを体験した記憶があるーみたいなこと」
「デジャブ?」
「そうそう、ソレ!」
「デジャブがどうしたの?」
「いや、なんかね。前にもおんなじ状況でおんなじ事言われた気がしたなーって思って」
いつだっけ?と記憶を辿り始めたつかさから視線を離し、夏真っ盛りで雲一つない空を見上げる。
かがみは今何をしているんだろう…
って、だからなんでかがみの事がそんなに気になるのだろうか?
大事な友達が他の友達と仲良くしてたら少し嫌な気持ちにはなる、なんて漫画やアニメの世界じゃ有り余る位ありがちなデフォだけど、私はそんなキャラじゃないし、そんな一般的感情を抱く程、女の子女の子した性格ではない。
じゃあ、この落ち着かないようなでも少しイラつくような感情はなんなのだろう。
「あっ!!!」
探していた本が見つかったような声を出したつかさの方を向くと、満面の笑みでこっちを見ているつかさと目があった。
「思い出したよ!この前、えっと…こなちゃんが風邪で休んだ時、お姉ちゃんもおんなじ事言ってたんだよ」
「同じ事?」
「うん、『アイツがいないと静かだけど、なんていうか、少し物足りないわね…』って」
私には『どうせズル休みだろ』とか『なんとかは風邪ひなかないって言うのにねぇ』とか言ってたのに…
さすがツンデレ、可愛いのぉ。
「それにその日、お姉ちゃん珍しく小テストの点が悪かったらしくて…どうしたの?って聞いたら慌てながら『最近熱くなってきたから、集中力が切れたのよ』って言ってたんだよ〜」
真っ赤になって反論しただろうかがみを想像して思わずニヤニヤしてしまう顔を片手で隠すと、ニコニコと笑うつかさと目が合った。
544 :
黄昏の貴女:2007/11/23(金) 14:55:43 ID:PYXO6a5i
「こなちゃんって、お姉ちゃんの事好きでしょ?」
「んなっ?!!!えっ、えぇ…?!」
いきなりの爆弾発言を繰り出すつかさ。
その爆弾発言に思わず落としてしまったコントローラーを拾うことも出来ず、あははと笑うつかさを見る。
「こなちゃん分かりやすすぎ」
はい、と落としたコントローラーを渡される。
いや、もはやゲームところではないんですが…
というか、分かりやすすぎって、何を分かってしまったのですか、つかささん?!
「つ、つかさ?…え、あの…えっ?」
状況を理解出来ず、かといって何て聞いていいのか分からずにつかさを見ると、心底楽しそうな笑顔で答えられた。
「こなちゃん、気付いてないかもしれないけど…さっきからずーっと玄関の方、見てるでしょ?」
「え?」
気付かなかった。
確かに、かがみ帰って来ないかなぁとかは心の隅の方で思っていたけど…
「それにお姉ちゃんがクラスの友達と遊びに行ったって言った時からちょっと変だし」
「うっ…」
普段のつかさからは想像もつかない程の洞察力に図星の私は言葉がつまる。
え、図星?何が?どれが?
私がかがみの事を好き?
まぁ、そりゃ好きだよ。友達として。
……友達?なんだろ、なんかひっかかる。
あーとかうーとか言葉にならない声を出した後、意を決して目の前で仏の如く笑顔が絶えない友達に向かって聞いてみる。
「えっと、私はかがみが…その、どの…好き、なのかな」
なんかよく分かんない質問だけど、自分でも分からない感情の行方を知りたくて、つかさに尋ねるとつかさは首をかしげた。
「どの?」
「う、うん…」
やっぱり伝わらないか、えっと…なんて言えばいいんだろ。
友達的の好きなのか、恋愛的の好きなのか、かな。
「こなちゃんは、お姉ちゃんといつも一緒にいたいって思わない?」
「え、あ、うん。思う」
リアルツンデレだし、なんだかんだ言って面倒見いいし、ツッコミするどいし、一緒にいて飽きないし…
「多分、それが答えなんじゃないかな?って私も人のこと言えないんだけどね」
「え?」
人の事言えないって…?
もう一度聞き返そうと口を開くと「何か冷たい物持ってくるよ」と席を立てて部屋から出て行ってしまった。
「はぁ…」
一人残された部屋でモヤモヤする気分を晴らすように溜め息をつくけど、晴れるところかますますモヤモヤが増す気がする。
「かがみ…」
外でせわしなく鳴いている蝉の声でかき消される程小さな声で脳裏から離れないかがみの名前を呟いた。
545 :
黄昏の貴女:2007/11/23(金) 14:56:31 ID:PYXO6a5i
『あの答えだけど…』
過去に意識を飛ばしていた私を現実にもどしたのは受話器から聞こえるかがみの声。
落ち着くんだけどドキドキする声。
あの答えとは一昨日出た宿題の答えではなくて、私が告げたかがみへの告白の返事なのだろう。
『私、かがみのこと…好きかも』
好きかもなんて曖昧な告白があるかー、なんて脳内でつっこみを入れてしまうほど余裕がない告白だった。
いや、告白するのに余裕ある人なんているのだろうか。
『かがみと一緒にいたい』
ただその気持ちだけが日に日に膨張していく中、私の気持ちを確証する事件が起きた。
名付けて《またかがみとクラスが離れちゃったよ事件》
二年生になった春、モヤモヤとしたスッキリしない感情を持ちながら迎えたクラス変え。
黒井先生にネトゲ内でレアアイテムをたくさん上げてそれとなーく「かがみと一緒のクラスになりたい」ということを伝えていたのだが、やはり私とかがみは別々のクラスになってしまった。
その時のかがみの寂しそうな顔がどうしても脳裏から離れなかった。
一昨日の帰り道、ステーキの焼き加減について話していた時、傾きかけた夕日に照らされるかがみが不意にその日と同じ、少し寂しそうな顔を私に向けた。
その表情に胸の奥のモヤモヤが肥大していって喉のあたりまで上昇して息が出来ない。
かがみが好き、ただ6文字だけの言葉の羅列が私の頭に浮かび上がる。
寂しそうなかがみを抱き締めたい、笑っていて欲しい。
だめだ、止められない。
『私は、アンタの事…』
自分の弱い理性に嫌気がさす、かがみから少し考えてさせて、と言われた時から答えは出ていた。
かがみは優しい。
だから私を傷付けないように断るのだろう。
546 :
黄昏の貴女:2007/11/23(金) 14:58:01 ID:PYXO6a5i
『好き』
あぁ、ついに幻聴まで聞こえてきたよ。しかも恥かしさを押し殺したようなかがみの声。幻聴のくせにやけにリアルな…。
『……こなた?』
「ふぇ、へっ?!」
『な、なんか反応しなさいよ!!』
「へっ、え、うん…これからも今まで通りともだちで…って、え?」
あれ、なんか現実と妄想の区別が出来ない。今かがみ、何て言った?
『なっ、に、二回も言わせるなっ!!!』
ん?二回?
さっきの『好き』が一回目ってことは、次が二回……って、ええぇぇっ?!
「な、なんで?」
『なんでって…元々アンタから言ってきた事だろ』
いや、まさか好きなんて言われるなんて思ってなかったよ…
え、やばい、すんごい嬉しい。
「かがみ…」
『ん〜?』
前に呟いたようにかがみの名前を呼ぶと、間延びしたいつもの声で返される。
それが嬉しくて何度も何度もかがみを呼んでしまう。
「かーがみん」
『な、何よ』
「かーがーみー」
『だから何よ』
えへへと自然に笑みが零れる。
少し呆れているように溜め息をするかがみさえも愛しくて、電話していることが焦れったく感じてしまう。
「かがみ様ー」
『ソレはやめろ』
「好きだよ」
『……知ってるわよ』
冷静に言葉を紡ごうとしているかがみの声に少しの優しさが含まれていた。
それが私の存在を認めていてくれているようで、満足感と幸福感が胸を占める。
フと耳から携帯を離すと電池が2から1へ変わっていた。
気分を紛らわすためにやっていた宿題をチラっと見て、まぁ明日かがみに写させてもらおうと思いながら、携帯に充電器を繋げる。
さぁ、何から話そうか。
黄昏のように綺麗な貴女と。
547 :
18-490:2007/11/23(金) 15:00:31 ID:PYXO6a5i
以上です。
うん、やっぱりこな×かがですね(泣笑)
読んで下さった皆さん、ありがとうございました。
よい連休を ノシ
これであと10年は戦えるな
GJ
俺はどちらかと言えばかがこな派だからすんごい萌えた
GJ
やばいよこれかなり萌えるよこれ
あんまりレスたってないんですが、もう少ししたらの方がいいかな?
>>547 GJ
やはりこの二人は最高だ
>>551 時間的にはけっこうたってるので投降してもいいと思いますが
では、お言葉に甘えていかせて頂きます。
どうも、お久しぶりです。313=18-306です。
まとめの方で「はつこい」に続編希望と書いて下さった方がいて、嬉しくて調子にのってやってしまいました。
・一応「はつこい」の続編ですが読んでなくても大丈夫だと思います。
・エロ有り
・本編4レス失礼します
すいません、書き忘れましたがこなた×ゆたかです
555 :
ふたりの秘密:2007/11/23(金) 18:22:07 ID:Dp8XSXt6
部屋の前で深呼吸をして息を整える。もう、すでに日課になりつつある行為なのに
この瞬間だけは、未だに慣れることが出来ないでいた。
コンコンと目の前にあるドアを数度ノックすると中から
「どぞー♪」
という声が聞こえて私は中に入ることにした。
私、小早川ゆたかは実の従姉妹である…こなたお姉ちゃんと…その、付き合っている。
まだ誰にも、みなみちゃんにだって言っていない私とお姉ちゃん二人だけの秘密。
何歩か足を踏み入れるとパソコンの電源を切ったお姉ちゃんが椅子を回転させて体をこっちに向ける。
「ささ、座って座って」
「あ、う、うん」
部屋の真ん中にある小さなテーブルの方を指で指し示されて、私は慌ててそこに腰をおろした。
すぐにお姉ちゃんも隣に座って来て、私の心臓がどくん、と
音をたてて高鳴ったのがわかった。それに気付いているのかいないのかは
わからないけれど、お姉ちゃんがくすりと笑った。
「いつまで経っても慣れないね、ゆーちゃんは。
まあ、そこが可愛い所でもあるんだけど」
「……だって……きな人の部屋に入るっていうのは……なんだか恥ずかしい、よう…」
「ああもう!!」
「わ……!?」
ぷるぷると肩を震わせたお姉ちゃんが、がばっと抱き着いて来て
支えきれずに私の体は後ろ向きに倒れそうになる。
反射的に目を閉じたけれど、すんでの所で頭の後ろに手をまわされて痛みを感じることはなかった。
――そう、これが私とお姉ちゃんの『デート』。
クラスはおろか学年すら違う私たちは、平日の日中に時間を取れることはほとんどないし
休日だってお互いの友達と遊ぶことがあるから、普通にしてたら二人きりの時間は意外に少ない。
だから、夕食を食べ終えお風呂に入った後の時間が私たちのデートタイム。
今日のようにただ抱きしめあうだけの日もあれば、取り留めのない会話をして終わることもある。
たった一時間足らずの時間だけれど、私もお姉ちゃんも満足していたし
これからもそうなんだと思っていた。
556 :
ふたりの秘密:2007/11/23(金) 18:24:08 ID:Dp8XSXt6
首筋にほっぺを擦り付けていたお姉ちゃんが、思い出したように顔をあげて
目だけでいい?と聞いてくる。
私も返事の代わりにまぶたを閉じて、いいよっていうサインを送った。
何秒もしないうちに柔らかい感触を唇に感じてぴくん、と背中が震えた。
羽のように軽いキスを何度かした後は、肩の辺りに顔を埋めてぎゅううと抱きしめられる。
告白した時にお姉ちゃんは『キス以上もする』みたいなことを言っていたけど
あれから一ヶ月以上たった今でも、キスより先に進んだことはない。
私の体調を思ってのことなのか、それとも違う理由があるのかはわからない。
でも、まるで私から求めるのを待ってるみたいだ…と思ったのは私の考え過ぎなのかな。
……だけど、もしそうだとしたらその作戦は成功だと思う。
この前からキスされるたびに体の奥の方…自分でもよくわからない所が、
熱くなってどうしようもなくなってしまう。
――もっと触れられたい、って思ってしまう。
それでも恥ずかしさが先だって口には出していなかったけど
それもそろそろ限界みたいで。
じわりと体の芯に熱が灯るのを感じて、私はこくんと一つ唾液を飲み込んだ。
「…あ、の…こなたおねえ、ちゃん…?」
「んー?」
服の裾を少しだけ引っ張って名前を呼ぶとお姉ちゃんが顔をあげる。
首をちょっと動かせばキスだってできる距離。近すぎて目を逸らすこともままならない。
そのかわりに目を固くつぶって言葉を紡いだ。
「…っと……して……?」
「え…………?」
「も……なん、か…がまん…できな……っ」
さっきよりもさらに鼓動が速くなる。普段は聞こえないはずの自分の心音が聞こえて来る。
「ゆー、ちゃ……いい、の?体は?」
「いい……から、だいじょうぶ、だから…っ」
顔がら火が出そうなくらい熱くて、無駄だと知りつつも
私は自分の顔を見られないようにぎゅっとお姉ちゃんに抱き着いた。
お姉ちゃんのベッドの上に横たえられ、間を置かず唇が塞がれる。
薄く開いた唇の間からお姉ちゃんの舌がぬるんと入って来て私の舌を搦め捕って行く。
「んっ……ふ、ん……」
深いキスは初めてというわけじゃなかったけれど、慣れたと言うほど経験が有るわけでもない。
いつもよりも長いそれに、だんだんと頭がぼうっとしてくる。
557 :
ふたりの秘密:2007/11/23(金) 18:26:31 ID:Dp8XSXt6
「ん、んんっ!!?」
くちづけをしながら器用にパジャマのボタンを外して、お腹の辺りをさ迷っていた
手が薄い胸の頂点に触れて、声があがった。
ぴりっとした刺激に戸惑っていると、唇を離したお姉ちゃんがもう片方の胸に舌を這わせて来る。
「んあっ…は、あっ……あ…っ」
これが『キモチイイ』ってこと、なのかな?前にお姉ちゃんが
「小さいと感じやすいんだよ」
と言っていたのは本当だったみたい。
…それともこんなに気持ちいいのは好きなひとにされているから、なのかな。
つままれたり、吸われたり、歯をたてられたりするたびに
体の奥にある熱が大きく強くなっていって、ただもう声帯を震わすことしか出来ない。
少しして、お姉ちゃんの右手が脇腹を通ってもっと下のほう……大事な所へと伸びていく。
「ぁ、……ひゃっ……やぁ…」
「大丈夫だから……任せて…?」
「ん…うん…っ」
緊張をほぐすように鎖骨や耳、ほっぺたにくちづけられて、少しだけ力が抜けた。
恐怖感はなかった。お姉ちゃんになら何をされてもよかったし
なにより、早くこの熱から開放されたかった。
下着ごと下のパジャマを膝まで下ろされて指がそこに触れる。
ちゅぷ、と恥ずかしい音が漏れて私はいたたまれなくて、顔を背けてシーツを握りしめた。
「わ……ゆーちゃん…すご…」
「…やぁ…っ…いわない、で…」
「可愛いよ、ゆーちゃん。…初めてだし、いきなりするのは難しいだろうから
今日は一本だけ、ね?」
何度か、ぬるぬると入り口の所だけを行き来させていた指がゆっくり入ってくる。
覚悟していたけれど、十分に潤っているせいか思っていたより痛みは少なかった。
それよりも圧迫感とか異物感の方が大きくて、肺から空気が押し出される。
「…はっ…ふあ……ひゃ、ああああっ!?」
探るように中で蠢いていた指がある一点を掠めた途端、ぴりぴりが……
キモチイイが、これまでにない大きさで背筋を駆け抜けてびくん、と意図せず体が跳ねた。
「ここ?」
「んあっ、ひあああっ!あ…お、ねぇ、ちゃ……そこ、だめぇ……っ」
その周辺を細い指が刺激するだけで、頭の中が真っ白く塗り潰されていって涙が滲む。
558 :
ふたりの秘密:2007/11/23(金) 18:28:45 ID:Dp8XSXt6
「そかそか、ゆーちゃんの感じる所はここかー」
いつもみたいに猫口で嬉しそうに笑うお姉ちゃんに対して、ちょっとだけ
自分ばっかり弱い所を見つけられて悔しいな、
なんて思ったけどそんな思いもすぐに掻き消されていく。
「…じゃあ、ここは?」
「ふぁあ!?ぁんん…っ…な、にっ…!?」
「気持ちいいでしょ?ここ、クリトリスっていうんだよ」
中の指はそのままに、親指でそこをぐりぐり押し潰されて
許容範囲をはるかに越えた快感に、目の前が白くスパークする。
「んうっ……ぉねぇ…ちゃ…なんか、わたし…っ」
「ん、いいよ。イっても」
寒くもないのに、ぴんとたった胸のてっぺんを甘噛みされて
右手が感じる場所を二カ所とも一際強く擦った瞬間、お腹の下のあたりで
なにかがはじけたみたいな感覚が私を襲った。
「――――――っ!!」
びくびく勝手に背中が浮いて、それが治まると虚脱感と達成感が私の体を包んだ。
「んー、やっぱ可愛いねぇ。ゆーちゃんは。
…さて、冷えない内に拭いちゃおっか」
そう言って、どこからか持って来たタオルで汗や…いろんなもので
ぐちゃぐちゃになった私の体を丁寧に拭っていく。
…………あれ?
「……は、あ……お姉ちゃん、は……?」
そういえば、お姉ちゃんはTシャツ一つ脱いでいない。
「ん?あー私、は……まあ辛いといえば辛いけど…最初から飛ばすのはゆーちゃんがキツイでしょ?
だから今日はここまで」
…今日よりも激しいなんて…最後までされたら一体どうなっちゃうんだろう?
感じたのは少しの不安と、期待。
「…時間はこれからもまだたっぷりあるんだし、私は急がなくても平気だから……多分。
あんまり無理、させたくないし…。…好きだもん、ゆーちゃんのこと」
お姉ちゃんはずるい。私を嵐のように翻弄したと思ったら、次の瞬間にはこんなにも優しくされる。
お姉ちゃんがもっともっと好きになって、どんどん溺れて行くのが解る。
でも、それは嫌な気分なんかじゃなくてむしろ…。
まだちょっと力が入らない腕をお姉ちゃんの首に回して自分からキスをする。
そして、ありったけの想いを込めて囁いた。
「好き……。好きだから…ずっといっしょにいてちょうだい?」
次の日二人して寝坊して遅刻したのは言うまでもないこと、かな?
以上です。読んで下さった方ありがとうございます!
まとめを見て自分の作品のエロ含有率にちょっとだけ(´・ω・`)…こんな感じになりました。
(;゚ω゚)ムッハー
激しくGJでした、ちょっとティッシュ取ってきます。
大丈夫、十分エロい。自身を持って。
まぁ、あれだ。続編希望www
>>559 GJ!
ゆたかの受けは他のキャラのよりエロく見えるような
今から投下しても大丈夫でしょうか…?
誰もいないなら20:20から開始します。
563 :
17-234:2007/11/23(金) 20:23:01 ID:eLRnkX3M
誰もいない!
というわけでこんばんは、17-234です。
介抱と悪戯の境界線Cパート
以下注意事項
・白石×あきら
・無駄に長いエロパート
・A→B・Cパートで中途半端に終わったBの続きです。
エロなので見たくない人は飛ばすよろし。
7レス使います予定。
ではいきます↓
564 :
17-234:2007/11/23(金) 20:24:19 ID:eLRnkX3M
介抱と悪戯の境界線Cパート
「じゃ、立って下さい。」
「……うぅ」
「足は肩幅にしてくださいね。」
僕はあきら様を立たせる。後ろには白いソファ、前には正座を崩したように座る僕。
「なんで、そこに座ってるのよ…」
彼女は僕の鼻をつん、とつついた。それもそのはず、僕の顔は彼女の腰の前にあったからだ。
「なんでって、悪戯するために決まってるじゃないですか。」
僕は彼女ににっこり笑ってあげる。しかし彼女は不安そうだ。
なにが起こるか分からないのだから。
僕は彼女のスカートを捲りあげ、その下へ潜り込む。
「ふぇっ?!」
彼女のちょっとマヌケな声が聞こえる。
僕の目の前には、黒いストッキングと可愛い柄の下着しか見えない。
「すっごいですね、ストッキングに染みてますよ?」
「ばか、そんなこと、言っちゃ、んっ!」
口数の多い子には実践が一番早い。
僕は、太股まで濡れさせている原因の場所を、指でぷにぷにと押す。
しかし、このままの状態では、自分が保ちそうにない。
僕はストッキングをひきちぎる。びりっ、という音が、静かな部屋の中に響く。
「お、今日はピンク色なんですね、」
「確かブラと合わせたはずよ」
「可愛いですよ…」
「何、あんっ!!」
僕が布越しにそこに舌をつけた瞬間、びくん、と体を震わせる。
同時に手は彼女のおしりを撫で回し、揉んでみる。
「ここ、良いんですか…?」
「はぁ、あぁぁ!」
舌をぷっくりとした箇所で滑らせると、彼女の高い声がする。舌がそこを優しく
撫でる度、彼女の腰は震える。
と、彼女は僕の肩を掴む。
「みのるぅ…あたし…が…我慢できないぃ…」
僕は彼女のスカートから抜けだし、彼女をみてみる。涙目で僕を見つめる。
…やばっ、
可 愛 い !
「じゃ、どうすれば良いですか?」
にやにやが押さえ切れませんどうしましょう。
「あの時みたいに…してよぉ…」
「じゃ、そうしましょうか…」
あの時っていつ?って聞かないこと。
僕は彼女のスカートのホックに手をかける。
ぱさり、と音がしてグレーのスカートが落ちる。
ピンク色の可愛い下着と、セーラー服。
下着に指をかけて、ゆっくりと下ろす。
下着からとろり、と糸をひく様子を目の前で見せられる。
「感じてくれてたんですね…嬉しいなぁ…」
「ばかっ、そんなに、見ないでよ…」
彼女はセーラー服の裾をひっぱり、見せないようにと精一杯の努力をしているらしかった。
その裾の下から手を伸ばし、濡れたそこを触ってみる。
それが無駄であることをわからせるために。
「っぅ…ん!」
「もう、我慢できそうにないですよね?」
ぴちゃ、と卑猥な音がする。
人差し指の腹でそっとくぼみをなぞり、指が飲み込まれる感触を確認する。
指の先をちょっと食い込ませるだけで、きゅん、と締め付けられる。
「や…だぁ…」
「相変わらず、きっついですね…」
僕は唇を近づける。
「ん…あ、あぁっ!」
舌でその愛液を舐め取ると同時に、彼女の声が漏れる。
くちゅ、くちゅという音をさせて指先をかき混ぜるだけで、あっという間に愛液まみれになる。
鼻に直にくる彼女の匂いとその味に、自分を抑えられるか不安になる。
舌の先を尖らせて、ゆっくりと、慎重に、ぷっくりと膨らんだクリトリスに舌を這わせる。
「あっ…ん、んぁぁ!!」
がくり、足の力がなくなり、両肩に一層力がかけられる。
何かすがるものが無いと辛いのだろう。でもそれでも僕はやめない。
指先は既に1本飲み込まれ、動かせば水音が響く。キツく締め付けられていると
ころを、ほぐすように動かせば、くちゅ、くちゅっ、とイヤらしい音がする。
舌先は、その赤く膨らんだ蕾を弄ぶ。軽く舌が触れるだけでも彼女は悲鳴をあげる。
「ひっ…あ、やっ、あぁ…!」
徐々に声が大きく、高くなってくる。
しかし問題がひとつ。
両肩に力を入れられているせいで、若干舐めづらい。
仕方ないので、僕は彼女から指を引き抜き、腰をとん、と押す。
どさり、とその体はソファへと落ち、僕は膝と膝の間に座る形になった。。
きゃ、と声をたてるが、その声は恐怖からではなく、力が抜けたような声だった。
足を開いたままソファに座る形にすれば、僕も彼女も楽になる。
まぁ彼女には色々な意味で楽になってもらいたいのだが。
肩で息をする彼女に、僕はまたひとつ細工をする。
「ほら、あきら様、僕にちゃんと見せて下さい。」
膝の間に座っているとは言え、これは非常に舐めづらい。
僕は彼女の膝をつつきながらそう告げた。
「ほら、腰こっちに出して、膝も立てないと…」
「やっ、ばか、恥ずかしい…!」
「今更なにをおっしゃるやら…正直じゃ、ないですねぇ…」
僕はいい加減じれったくなり、両足を持ってソファの上に置く。いわゆるM字開脚、ってやつだ。
「あんっ、もう…」
「素直にならないと…ダメですよ?ここはひっくひっくしてて正直なのになぁ…」
「う…うるさいっ!だいたい、あんたは…そうやっ、てぇ、んあ、あぁぁ!」
その言葉に構っている余裕が、僕にはなかった。
僕は目の前に晒された、物欲しそうにひくつくそこに、指をねじ込む。
すぐに愛液は絡み付き、締め付け方が先程に増してキツい。
まぁ指が2本入っているのだから当然かもしれないが。
「あ、あぁ…気持ち、良いよぉ…っ」
「じゃぁ…もっと、気持ち良くしてあげますね…」
左手で軽くクリトリスを撫でてから、唇をつける。
舌で転がして遊んであげると、彼女は甘い声をあげる。
「んっ…あ、ひぁぁ!んあぁ!!!」
くちゅっ、ぐちゅ、と卑猥な音は一層大きく鳴り、
それと比例するように彼女の声も激しく、高くなる。
「みの、ダメ、おかしく、なっ、やぁぁ!」
おかしくなって、良いんですよ?
そう答えられない代わりに、僕は指を1本増やして更に出し入れする。
奥まで指を入れ、少し引っ掻くと、僕の指が今まで以上に濡れていく。
「あぁぁ、だ、だめ、あぁ…!」
舌が疲れてきた。
でもきっともうすぐだろう。
なにがって?
彼女は僕の腕を握る。
無意識なのだろうか、腰が動いている。
僕はそれに合わせて優しく舐めたり、甘がみしたりする。
彼女の声が、また高くなる。
「みの、るっ…だめ、あきら、おかしく、なっちゃう、よぉ!!」
そして今までにないくらいの強さで、僕は彼女のクリトリスを思い切り吸う。
「ふあぁぁ、あ、あぁぁぁぁぁ!!!」
ぐったり。
彼女はソファに背中をべったりとつけている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
上を向いて、息を整えている。
「大丈夫…ですか?」
僕は彼女の顔に自分の顔を近づける。
顔が赤いのが、ちょっと気になった。
「……このやろー!」
「ぬおあっ?!」
ぽかぽか殴られた。
あんまり痛くないけど、恥ずかしがるあきら様がかわいくってかわいくって。
ぎゅっと抱きつかれる。
耳元でそっと囁かれる言葉に、意識してしまう。
「こんどは、一緒だよ…?」
「そう、ですね…」
いつのまにか彼女の背中はソファにくっついていた。
背もたれじゃなくて、座るほうにくっついていた。
そうしたのは自分以外の何者でもなかったのだが。
「白石さーん、なにあわててるの?」
「……そんなことないですよ?」
「限界なんじゃないですかー?」
「…バレバレユカイでしたか」
「なにそれ」
「なんでもありません!」
くすくす、なんだかよくわからないけど、2人で笑ってしまった。
僕は彼女の頬にキスをする。
ぷにぷにして気持ちいい。
「しらいしー」
「なんですか?」
かっ、と彼女の顔が赤くなる。
何だろ?
「……?」
彼女は僕の下半身をみている。
「あの、」
「やっぱりこうだよね」
「へぇ?!」
ぼす、と僕の体はソファに静められた。
今度は彼女が僕を見下ろしている。
あれ?おかしいな…
「白石さんがーもう限界っぽいのでー」
かちゃかちゃと僕のベルトをはずす音がする。
「あきらはいじってみます!」
ズボンのファスナーがはずされる。
止める間もなく、僕のモノは晒される。
「うお、すごいたっちゃってますよー?」
「それは!だってあきら様がっ…っ!」
裏筋を撫でられ、声が詰まる。
「いっただっきまーす!」
「どーぞ…ってちょっとまった!!」
「?」
僕は思わず叫んでいた。
彼女の頭の上には「?」が浮いている。
あぁ、その顔かわいいです。
「あの、あきら様。」
「んぐ?」
咥えたままこっちを向かないでください。
なんか半端なく恥ずかしいです。
「脚、こっちにしてください…」
「な…!」
何を僕がしたいかはわかってしまっているらしい。
まぁいいや、そっちのほうが…
「ほら、僕の上に跨ってくださいね?」
「ばか、こっぱずかしいことをさらっと言わない!」
先程いってしまったばっかりだからだろう、
目の前には濡れすぎた彼女の秘部がある。
なのに、まだ何か欲しそうに、透明な液を滴らせている。
「まだ、満足してなさそうですね…」
「んあぁ!なに、いきなりぃ?!」
容赦なく僕はそこに口付ける。
しかし同時に、先を優しく愛撫される感覚に、一瞬自分の舌が止まる。
上下に擦られながら受けるやわらかい舌の攻撃は、
慣れてはいないものの、一生懸命な感じがして。
いつもの彼女である、攻める姿勢は、自分の理性を崩すには十分だった。
「さってと…あきらさまー?」
「ん?」
僕は彼女のおしりをぺたぺたと触る。
彼女はそれが何の合図か知っている。
だから僕の視界には、今彼女の顔がある。
さぁ、どうやって、犯してあげようか。
「あきら様は、こっちが好きでしたっけ?」
僕はすばやく彼女を抱き、彼女をソファに寝かせる。
「ちょっ…あせんないで、よぉっ…!」
そんなことをいいながら、しっかりと足は僕の体に絡み付いている。
すみませんね、もう限界点突破してるんですよ。
「いただきっ」
「ちょ、あぁぁっ!」
狙いを定めて、彼女の秘所に自分をねじ込む。
「ひっ、あ、みのっ…!あ、ああぁぁっ!」
ずず、と肉棒が、きつい壁を掻き分けながら奥に進む。
思い切り、その壁に打ち付ける。
「ひぁぁ!」
ぱん、と奥を突く音が響く。
「あきら様…しょっぱなから僕に射精させる気ですか?」
「だって、気持ち、いっ…あ、あっ」
ゆっくり腰を動かす。
一度そこに飲み込まれた自分の分身は、
さっきまで根元まで濡れていなかったはずなのに。
「そんなに、欲しかったんですか?」
「聞かないでよっ、ばかっ」
動くのをやめる僕。
見つめられ、顔が赤くなるのはわかるが、
あなたを下にしている以上は、僕に主導権をください。
「わかったわよ、言えばいいんでしょ言えば!」
彼女の顔が赤い。
まったく、つんつんしていてかわいいんだから。
「ずっと、欲しかったわよ…」
「何して欲しかったんですか?」
「…ずっと、みのるの、欲しかったの…!」
「あげましたけど?」
「もっと、してよ…あたしと、一緒に、いってよぉ…!」
もうその一言で十分だった。
「仕方、ないですね…」
壁を壊すくらいの勢いで、僕はそこを突いた。
「ひっ、あ、やだ、もっと、あ…んっ」
突かれる度に漏れる水音と彼女の甘い声は、
徐々にひどくなっていく。
それに伴って、自分も限界が近づいていく。
「みっ、ひあ、あ、気持ち、い、壊れ、ちゃうぅ!」
締め付けられる、その強さが強くなっていく。
やばい、これは、
「そんなに、締め付けたら、中に、出してしまいますよ?」
「いい、の、出して、あ、いっちゃうぅ!」
もう、駄目だ。
「あき、ら、さまっ…!」
「あ、ああああぁぁぁ!!」
実はここで終了です。
ここから先はどうなるか、
今度はFパートになると思います。
何でそんな飛ぶのかって?
いろいろあるんっすよw
上の二人GJ!!
あれやな、今夜が噂のエロ祭りやな。
>>570 エロ過ぎGJ!
でも生殺しは……ぐはっ
GJ
エロ祭りバンザイw
さて、エロ祭りに便乗させてもらってもいいでしょうか
少し待って、投下が無ければ逝ってしまいたいと思います
「らき☆すた、秋のエロ祭り〜!さぁ、始まるザマスよー!」
「イクでがんすー」
「ぶばーっ(鼻血)」
「……まぁ、残った皆でまともに始めるか」
エロ神様達、GJだぜ
575 :
18-19:2007/11/23(金) 22:28:46 ID:qAJMIzhf
投下後すぐで申し訳無いですが、そろそろ眠気が限界なので逝かせていただきます
どうもお久しぶりです、18-19です
携帯と共におすかがと秋、ついでにVIP投下用の書きかけ原稿が水没してモチベーションが暴落し、
でもなにか書かなければという強迫観念のもとにできたSSを投下します
◆かがみ視点
◆前後編、今回は前編のみ投下
◆エロ有
◆気にするほどでもないと思いますが、オリキャラ(?)注意。
◆若干キャラ壊れしてるかも。
かがみんはこんなこと考える子じゃありません!って思ったらスルーで。
◆5レス使用予定
それでは。
「……はぁ」
溜め息をひとつ吐いて、左手に持っていたシャーペンを開いたノートの上に転がす。
時計を見ると、11時を少し過ぎていた。
机に向かって既に2時間半。それだけの時間を使って解いた数式はたったの2問。
「…………」
清々しいほどに白いノートに左の頬をくっつけて、解くべき問題が山積みの参考書を睨む。
「はぁ〜……」
そしてまた溜め息をひとつ。今度は肺の中の空気を全て押し出すくらいに盛大に。
頭の中では、またもや悶々とした想像が繰り広げられる。それに抵抗しようと数式との闘いを始めても、私の敗北が決定しているのはノートを見れば明らかだろう。
「…………」
お風呂にでも入ろうか、と考えるがそんな気力は無く、三点リーダの使いすぎだ、とツッコミを入れる余裕も無い。
今日の私はおかしい。いや、正確には今日の昼休み、あの話を聞いてからの私はおかしい。
……峰岸。全部あいつのせいだ。
やり場のない理不尽な苛立ちを覚えながら、私は回想を始める。
─ かがみん☆スランプ ─
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
昼休み。私は自分のクラスで日下部、峰岸と一緒にお弁当を食べていた。
珍しくB組のあの3人と一緒ではないのは、日下部の強引な勧誘があったからなのだがここでは割愛させていただく。
──というかこの作者、昼休み大好きだな。昼休みしか書けないのか?
「ひいらぎぃ、なんか言ったか?」
「別になんでもないわよ」
「なんかブツブツ言ってた気ぃすんだけどなー。でさーあやの、やっぱ初めてって痛いのか?」
心の声が出てしまっていたらしい、気をつけないと──っておい!
「な、なななんて話してんのよ!?」
「んー、やっぱりちょっと痛かったかな? でもひとつになれたっていう感動のほうが──」
「ちょ、普通に返事してんじゃないわよ!」
「ひーらぎ、うるさいぞ。メシ食ってんだから静かにしろよぅ」
え、なにその反応? 私がおかしいの?
「柊ちゃん、過剰に反応しすぎだよ」
峰岸が諭すように言う。私、ちょっとパニック。
「いや、いやいやいやでも、まだそういうのって早いんじゃ」
それを聞いた二人は顔を見合わせて、衝撃的なことを口にしやがった。
「そんなことないと思うけどなぁ?」
「それにこんな話、別にしちゃいけないわけでもねーだろ」
日下部はそう言って、私の後ろのあたりを箸で指した。
私のすぐ後ろではC組で一番の規模を誇る女子グループが輪になって弁当をつついている。大袈裟な笑い声が休憩時間の始めから響いていた。
神経を背後に集中させて、会話の盗み聞きを試みる。
「でさー、どうだったの? 例の先輩」
「それがさー聞いてよ、あの先輩やたら前戯長くてー」
「うん」
「それでさ、私言ったの。『指はもういいから』って。そしたらさー」
「うんうん」
「すっげぇ悲しそうな顔で『もう入れてんだけど』って言われて」
あははは、と笑い声が聞こえる。笑えるかっつの。
「え、マジで? みたいな。もー萎えちゃって大変で──」
ふぅ、と溜め息を吐いてみる。日下部が「な?」とニヤケ顔を向けてきやがった。
「柊ちゃんは純粋だから」
「あんたたちが穢れてんのよ」
そう言い返してはみるが、なにかスッキリしないモヤモヤしたものが胸の奥に渦巻くのを感じる。
それが「不安」なのだと気付くのに、さほど時間はかからなかった。
峰岸は日下部にせがまれて、体験談を語り始めた。卑猥な表現は伏せてはいるが、想像はできるくらいの代物で──
聞いている私のモヤモヤは、少しずつ肥大していく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『彼氏』が私の部屋のベッドに腰掛けている。
付き合い始めて……そうね、2ヶ月くらいかな。
「かがみ」
優しく、私の名前を呼ぶ。付き合う前は「柊」と呼んでいたのに、下の名前で……
その些細な変化を嬉しく思いながら、それでも何故か素直になれず、「なによ?」と返事をする。
「なぁ……いいだろ?」
なにが、なんて訊くほど空気が読めない訳じゃない。そんなの言われなくてもわかっている。
無言で隣に座る。きっと私の頬は真っ赤になっている筈だ。──目を合わせることが、できない。
『彼氏』は私の肩を抱いて、ゆっくりと、唇を……
「あーもうっ!」
机に突っ伏したまま、髪の毛をグシャグシャ掻き乱す。そうやって考えていたことを霧散させてから、何度目かの溜め息を吐く。
回想が、いつの間にか妄想になっていた。今日の私を変にさせている妄想。
顔もわからない『彼氏』にあんなことやこんなことをされて、そして、その……私の、初めてを……
「って、だから違うってば!」
もうなにが違うのかもわからないが、とりあえずそう叫んでみる。
本格的に私はおかしいようだ。ノートを退かして、ひんやりとした机におでこをくっつけてみる。
原因はわかっている。今日の昼休みの一連の出来事と、峰岸のあの赤裸々な体験談だ。
あれから私の頭の中はずっとこんな調子で、胸の中にはモヤモヤした不安が居座り続けている。
不安の正体は、「私は遅れているんじゃないか」ということ。同級生があんな会話を平然としている傍ら、私は赤くなる頬を隠すことしかできない。
そしてその不安が、おかしな妄想の背中を後押しして、頭の中は常にピンク一色。
「これじゃまるで、変態みたいじゃない……」
更に困ったことに、頭と身体は直結しているもので、厄介なことに身体の方はその妄想を嫌がってはいないようなのだ。
下半身に、鈍く切ない痛みのようなものがじんじんと響いている。こいつもなかなかの強敵で、闘い続けて既に1時間が経過する。
「どうすりゃいいってのよ、もう」
少し熱っぽいのは風邪のせいじゃないはずだ。頭の中と下半身以外は至って正常なのだから。
「…………」
やっぱり、あれしかないのかな。
何度かその結論には行き着いたものの、実行できずにいた、あれ。
好奇心はあったし、この状況を打破するにはそれが一番に思えたものの、どうなってしまうのかわからない恐怖でなかなか手の出なかった、あれ。
「神様、勇気をくださいっ」
自慰をする前に神に祈ったのは私が初めてかもしれないな、とふと思いつつ、スカートの中へ手を差し入れる。
「うわ、熱い……」
まだ誰にも許したことのない、自分でも殆ど触れることはないそこを、下着の上から恐る恐る、撫でる。
幾度となく繰り返す妄想のおかげで、私のそこは既に熱く、濡れていた。
椅子から腰を浮かせて、下着を下ろす。そこを見るのが怖くて、すぐに机に突っ伏して、火照った頬を冷やす。
指先で探るように、熱いそこを弄ってみる。さすがに指を入れる勇気は無く、穴の周りを指で辿る。
「……あんまり、気持ちよくないわね」
触れる箇所を変えながら、そう呟いてみる。ゾクゾクとした快感はあるものの、この程度か、と肩透かしを食らった気分だった。
「指……入れてみ、ぅひゃあっ!」
そこの、一番おへそに近いところにある突起。それに触れた瞬間、身体がびくっと痙攣して、頓狂な声を上げてしまった。
「え……なに、これぇ……」
指の腹でそこをぐっと押し上げてみる。
「ぃ、やぁ……んぁっ」
背筋と首筋に、ゾクゾクと快感が駆け上がってくるのを感じる。
「止められ、ない、よぉ……」
左手でそこを摘まんで、くりくりと弄りながら、快感に身を任せる。いつの間にか右手は乳房を揉んでいた。
はっ、はっ、はっ、という荒く断続的な呼吸で、机が曇っていくのを視界に捉えながら、まるで犬みたいだな、とふと思う。
その背徳的な想像が、快感を加速させてしまう。
「あ、んぁ、ダメ、もう、だめぇ……っ」
もう自分がなにをしているのか、なにを言っているのか、何もわからない。
ただ、快感だけが──愛しい。
「イク……イっちゃう、よぉっ」
押し寄せてくる快感の津波に、どうにでもなれ、と身を投げかけた、その時。
ガチャ。
「お姉ちゃん、宿題終わっ……た……」
津波と血の気が、サーっと引くのがわかった。
参考書とノートを抱えて、私の部屋を開けた状態でフリーズしているつかさに掛ける言葉を、火照った頭は導き出してくれるだろうか。
(つづく)
581 :
18-19:2007/11/23(金) 22:42:23 ID:qAJMIzhf
以上です。
ありがちな上にどうでもいい前置きが長いのは仕様です
というか前編自体が前置き(ry
エロ有とか書いといてこの程度ですすみません
許して!後編はガチエロにするから!
そして久々の投下なのに新作でごめんなさい
ああ、続き物がこれで3作……
まぁとりあえず、読んでいただいた方あじゅじゅしたー
>>559 エロ――(゚∀゚)――イ!
ゆたこなって背徳的に書く人が多いけど、
普通に甘々なゆたこなで和めてよかったですよ
>>581 エローイ! そしてつかさキタ――(゚∀゚)――!!
や、真面目な話、エロスってのは「していること」にあるのではなくて
「している人」の中にあると思うのですよ。
その意味で、自慰をしている心理的葛藤を丹念に描いたこれはとてもエロイ。
大丈夫、君はエロイ。とてもエロイから誇って良い。
583 :
18-19:2007/11/23(金) 23:11:31 ID:qAJMIzhf
今更ですが訂正を
>>580 私の部屋を開けた状態で→私の部屋の扉を開けた状態で
です
584 :
530:2007/11/23(金) 23:34:46 ID:o433J+n0
>>539 気付くのが遅れてゴメンナサイ!
超GJ!でした!
ねこみみ絵ありがとうございます。可愛いです!
>>581 ちょっww
つかさ好きの自分としては、その先こそを書いて欲しかったです。GJ!
なんだこの投下祭りは
しかもいい作品ばかりじゃないか!
みんなGJなんだぜ
>581
「見られた」っていう修羅場は最高だぜ! 後編を楽しみにしてる。
さて、今度はそうじろう&かなたのSSを投下する時間がやってきた。
1日でこんなに書けるなんて前代未聞だぜヒャッホイ。
ちなみに、劇中に登場する「樹本はるか」はオリキャラ。
「かなたさんの親友役で、三人とも幼馴染っていう女の子はよさげだなぁ……」と、
しばらく温めていたネタを放出したいと思う。
エロスを放出するのは次回までのおあずけですすいませんごめんなさい。
スーパーエロタイムに出展できなくてすまん。
「ヒーローからHを抜くとエロになるね」
「そんな下ネタで締め括るなっ!!」
それでは、お楽しみ下さいませ……
追伸
はるかさんの口調が微妙にブレてるのは作者の力量不足です。。。
場合によっては続編と共に修正版を投下する可能性もあります。
かなたさんの口調が丁寧語じゃないのは仕様です。
中学生の頃から幼馴染にあそこまで行儀良すぎるなんてありえない!
っていう作者のエゴです。多分。
まったくお前らと来たら……。
作品が素晴らしすぎるから漏れが睡眠不足になってしまうではないか!!
つまり、だ。激しくGJ!!
そうじろうは久方振りにアルバムをめくっていた。病弱でいつも寝込んでいた姪のゆたかが来て、
急に妻のことを思い出したからだった。
「かなた、天国で元気にしてるか?」
目を閉じれば、セーラー服を翻して手を振っている妻が──当時の幼馴染がどこまでも鮮明に浮かび上がって、
手元の白黒など、まったく及びもしないものだった。
それでも、在りし日の追憶に浸ってページをめくるうち、遠くで鐘が鳴った気がした。
厳密には、そんなぼんやりした声が、そうじろうの耳元で聞こえた気がしたのだった。
「そう君、私は今も、元気で、幸せですよ。こなたもすくすく育って、そう君も元気そうで……」
ハッと気が付くと、もう宵闇が迫っていた。思っていたよりアルバムに見入っていたらしい。
もうすぐ、エプロン姿のこなたがドアをノックするだろう。
「たまには、こなたに呼ばれる前に行こうかな」
そうじろうはゆっくりと立ち上がって、部屋を出た。階段を降りると、こなたが目の前にいた。
「あ、お父さん、丁度良かった。今からご飯だよ」
「だから来たんだよ。もう腹ペコでな、今なら二人前食えるかもしれないぞ?」
「変なお父さん……まぁいいや、すぐ来てね」
こなたの後を着いていって、ダイニングに入ると、香ばしいチーズの匂いが漂ってきた。
「今日はラザニアだよー」
「おお、また懐かしい一品を持ってきたな。お前あのBOX欲しがってたもんな」
「だって萌えばっかりじゃ飽きちゃうでしょ。たまにはレトロなのも欲しいからね」
「うむ、それでこそ俺の娘だ」
「ところが、今月は倹約のために肉は入ってないんだよ」
「なにっ、そんなところまで再現してるのか!? 流石こなただっ!!」
明らかに年齢を超越した会話が親子でなされているので、一つ世代が違うゆたかは困っていた。
「え? へ? こなたお姉ちゃんもおじさんも、何言ってるの……?」
それを聞いてそうじろうはコホンと咳払いを一つして、年不相応にはしゃぎたい気持ちを抑え、二人に言った。
「そうだな。早く食べないと冷めるから、まずはいただきますだ」
食卓がそうして囲まれた後も、そうじろうの頭には色々な想いが渦巻いていた。
「かなた……」
食事の間にも終始ニコニコと笑っているところで、二人の少女に「どうしたの?」と頻りに何度も問われたが、
まさか「かなたが『元気にしてる』って言ってたぞ」とは言えなかったので、適当にはぐらかすことに決めたそうじろうだった。
昭和5*年。ある秋晴れの土手。
鉄筋コンクリートがそろそろ珍しくなくなってきて、1ドルが250円に届いていた頃。
「かなたー、こっちこっちー!」
「かなたちゃーん、早く来てねー!」
「速いよ、そう君。ちょっと待って──きゃあっ」
まだまだ新しいセーラー服を着た小さな女の子と、少しずつ汚れ始めた学ランを着た大きな男の子が、走っていた。
もう一人、土手でポニーテールとスカートを揺らしながら、精一杯手を振っている少女もいる。が、
女の子が一人転んで、男の子の動きが止まる。悲鳴と共に『そう君』と呼ばれた男の子が振り返り、転んだ女の子に走り寄る。
「かなた、大丈夫か?」
「大丈夫だけど、そう君、速いよ〜」
プクッと頬を膨らませて、『かなた』と呼ばれた少女は立ち上がろうとして、膝を折った。
「どうした、かなた!?」
「足を挫いちゃったみたい……」
泥こそついてはいないものの、膝頭を擦り剥いて、うっすらと血が滲んでいた。そこに足首を捻挫したとなると、
『そう君』はしゃがみこんで口を開いた。
「な、何するのそう君?」
「こういうのはな、ツバつけとけば治るんだよ」
そう言ってかなたの膝に唇を触れさせたのだから、たちまちかなたの顔は真赤になった。
「そそそ、そう君、な、なにやってるの!?」
「こうして舐めときゃ良いんだって」
そして砂混じりの唾液をペッと吐くと、かなたの腕を取って立ち上がった。
「ほら、掴まれ」
「掴まれって……そう君、どうするの?」
「いいから早く」
「う、うん」
『そう君』はかなたに肩へと手を回させ、首を通してしっかりと掴ませた。すると『そう君』は徐に座り込み、
かなたの両太股を抱えて立ち上がった。
かなたが悲鳴を出す暇も与えず、『そう君』は颯爽と走り出した。背負っていた鞄は今、歯でガッチリと咥えている有様で、
かなたの鞄は胸に抱えていた。
二人が走り出すと、先に河原まで下りていた少女が手を振りながら叫んだ。
「ほらほらー、早くしないと遅れちゃうよー!」
「おーう、あっえおー!!」
恐らく『待ってろー』だと思われる声を閉じた歯の間から搾り出すと、一層スピードを上げて土手を駆け下りていった。
「おそーい、泉君。かなたちゃん軽いんだから、もっとスピード出しなさいよね」
「おい、おい。はるか、それはないん、じゃないか? はぁ、はぁ……」
ビシッと指を突きつけられたそうじろうは、息も絶え絶えに呟いた。いくらかなたが軽いとはいえ、
鞄を歯で挟んだ上に走るのは重労働が過ぎる。
「それに、かなたちゃん真赤だよ」
「え?」
後ろを振り向くと、太股を抱えられたかなたが首まで紅に染まってぼけらっとしていた。
目の焦点は合っていない。身体を降ろした後もぺたんと座り込んで、二人が目の前で手をひらひらさせても、無反応だった。
「はるか、これは……俺が悪いのか?」
「ええ、悪いわね」
『はるか』と呼ばれた少女は辛辣に言うとかなたの傍らまで歩いていき、ほっぺたをむにーっとつねった。
かなたにはそれで効いたらしく、涙目になって抗議する。
「はるははーん、はんでふねるのー?」
はるかはそれが面白いと思ったらしく、『はめへー』と繰り返すかなたの頬をうにうにと弄ぶ。
「なぁ、はるか。お前の方がひどくないか?」
「え、何が?」
ケタケタと如何にも楽しそうな笑い声を上げた後、かなたを解放するはるか。かなた本人はそれで正気に帰ったのか、
「ひどいよ、はるちゃん……」と拗ねた。
「あのね、かなたちゃん。そうでもしないといつまでもここに座ってたでしょ? まったくウブなんだから、もう」
抓った場所を労わるように擦るはるかと、何も出来ずに事の成り行きを見守るだけのそうじろう。
苦笑いを浮かべて立ち上がろうとしてまたふらつき、支えてもらうかなた。
「いつまでもこんな日が続けばいいね、泉君、かなたちゃん」
「そうだな、はるか」
冗談を言い合って笑い合ううちに、はるかが西の空を大きく指した。
「ほら、見えた!!」
指の先には、先程のかなたに負けず劣らずの真赤な太陽が雲の切れ目から顔を出して、今まさに沈もうとしていた。
お互いの顔を見ると、皆々オレンジ色に染まっていて、些細な顔色の変化ならもう読み取れないほどだった。
夕焼け。もうじき高層ビルが立ち並びそうな気配を帯びていて、ここからの景色はいつまでも見れる程、
ありふれた存在ではもうなくなっていた。
「ねーねー、もしマンションが建っちゃったらさ、みんなでそこに住まない?」
「あ、それグッドアイディア! いいな、いいよ、はるか!」
早速そうじろうは同意を示した。もし三人の日々がいつまでも終らないとしたら、どんなにか楽しいだろう。
「でしょ? 交代でご飯作って、家賃とかも三人で頑張って払ってさ……そうだなぁ、大学になったら引っ越そう!」
「気が早いね、はるちゃん。ひょっとしたら就職するかもしれないんだよ?」
目を落とせば川の水もオレンジ色に輝き、横を向けば電車が高架線の上をガタゴトと走り去るのが見える。
銀色の車体もまたオレンジを照り返して、川向こうのグラウンドも、その向こうの屋根も、そのずっと向こうの雲まで、
何もかも鮮やかなオレンジ色だった。
「いやいや、かなたちゃんの場合は……泉君と結婚してお嫁さんだ、人妻だー!!」
「ななっ、何言ってるの、はるちゃん!?」
「そうなれば扶養何とか? で家賃払わなくても何とかなるかもねー。
……そうしたら私は独身かー、誰かステキな男の子を見つけなきゃね」
「は、はるちゃん!」
「冗談だよ。私たちはいつまでも一緒。ね、泉君?」
「あ、ああ」
だが、『もしかなたと結婚できたら……』という想いは、少しずつそうじろうの心に広がっていった。
『いやいや、はるかも悪くないんじゃないか?』と心のどこかが反論して、思わず口に出してしまった。
「俺は、どっちも選べないなぁ……」
それを敏く聞きつけたはるかは尋問を開始する。
「それじゃ、どっちと結婚するのよ?」
「選べない、俺には、選べない……!」
血の涙を流すそうじろうに、更なる追い討ちがかなたからかかる。
「そう君、私たちのこと、嫌い?」
そう言われて、慌ててそうじろうは修正に入った。
「そ、そんなことはないぞ! ただ、一人としか結婚できない世の中を変えてやりたいだけだ」
調子のいいことを、とはるかに小突かれながら、三人は夕日と、夕日に染まる世界をいつまでも眺めていた。
東の空はもう藍色になりかけていて、そこに一筋伸びている飛行機雲が少しずつぼやけていくのを、三人は見つめていた。
そしてすっかり日が暮れると、はるかは二人を夕食に誘った。学校を出てから『先に行ってて』と言ってどこかへ消えたのは、
その食材を買うためだったらしい。そうじろうが袋の中をのぞくと、確かに将来『料理』になりそうなものが入っていた。
「今日、お父さんもお母さんもいなくてね、一人なんだけど、三人分のご飯を作った方が美味しいから」というのが理由だが、
かなたは本音をちゃんと知っていた。
「はるちゃんってね、すっごく怖がりで、一人でトイレに行くのがやっとなの」とは、かなたの弁。
実際問題、はるかは修学旅行の時もわざわざ隣で寝ていたかなたを起こして、
旅館という施設では廊下に出る必要すらないトイレへと無理に付き添わせたくらいだった。
「元気印のはるかが、ねぇ……信じられない」
「それは昼のうちだけみたい」
はるかの家はそうじろうやかなたの家とは学校を挟んで反対側にあり、更に土手ははるかの家から近かった。
だから、二人は家へ帰らずにそのまま土手を──かなたの鞄ははるかに持たせ、そうじろうは胸に鞄を抱えて──登り、
電車の立てる音がけたたましい高架線の下を潜って、もう暗くなった路地から団地の一角へと滑り込んだ。
そしてそのままはるかの家まで行き、家の電話を借りて、各々の家へ『今日ははるかの家で食べるから』と伝えた。
家に入る直前に、そうじろうはかなたの痛そうな顔を見るのが辛くて、はるかに聞いた。
「はるか、包帯とか、とにかくテーピングできるもの持ってないか?」
「あ、はいはい。ちょっと待っててね」
返事のない『ただいま』もそこそこに、はるかは家の中へ入って行き、薬箱を持ってトテトテと玄関に戻ってきた。
「いや、家の中でいいから……」
「あ、そうだったね、ごめんごめん」
てへへ、と笑ってはるかは引き返していく。それが薬箱のあった方向だったものだから、
「だから、しまうんじゃないよ!」
「あー、そうだったそうだった」
無駄な二度手間が重なった。それでも、慣れた手つきで幼馴染の足首をテーピングする段になると、
そうじろうは途端に真剣な顔になった。
「捻挫は下手するとずっと痛むからな、かなたは笑ってた方がいい」
「そう君……」
手早いテーピングが終ったのを見届けると、はるかはエプロンを取り出して着込んだ。
「それじゃ、ちょっと待っててね。おいしいご飯作るから」
そしてダイニングに二人を招き入れて椅子に座らせると、腕をまくり、気合を一つ入れて台所へ入っていった。
「おう、楽しみにしてる」
「楽しみだね、そう君」
そう言ってテキパキと……否、はるかは相当にノロノロと準備を始めた。まるで他人の家にいて、
どこに何があるのか良く分かっていないかのようにあっちこっちを歩き回って包丁、まな板、鍋などと取り出していた。
洗米をするのもぎこちなく、誤って洗剤を入れようとするのを慌てたかなたに止められる始末で、
炊飯器に至っては散々迷った挙句、「これだ!」と適当にボタンを押したが、明らかな間違いに気付くのはもう少し後のお話。
そして、大根を輪切りのつもりで乱切りにしている最中、そうじろうがぼそっと言った言葉が、本格的な波乱の始まりだった。
「そういえば、お前の苗字って『樹本』だったんだな。忘れてた」
「あぁ、泉君それひどーい」
後ろを振り向いた瞬間、打ち下ろした包丁は大根をすり抜けて、親指の爪に沿うように根元の皮膚を切り裂いた。
「う、うわぁっ!!」
一瞬のことで思わずはるかは包丁を投げつけ、それは危うくそうじろうの耳たぶを突き抜けそうなギリギリの場所を、
どういう訳かまっすぐ飛んでいって、壁に突き刺さった。そして包丁は自重で柄からポロリと床へ落ちた。
ゴツ、という木の音に続いて、金属音が部屋に響く。
「そう君、大丈夫!?」
そうじろうは直立不動で突っ立っていた。かなたに肩を軽く揺すられて、やっと恐怖世界から現実世界へ帰還した。
「い、今のは流石に死ぬかと思った……」
「そう君、大丈夫、どこも怪我してない!? あぁっ、はるちゃん、血出てる、大丈夫!? 救急車呼ぼうか?」
かなたはすっかりパニックでさっぱり要領を得ない。逆に頭がまともになってきたそうじろうはかなたを宥めすかした。
「おい、かなた。俺は元気だ。はるかもちょっと指を切っただけだ。な、大丈夫だ」
ボディビルダーのようにポーズを作って、そうじろうは自分が健全であることを全身で告げた。一方、はるかにも言う。
「いいか、はるか。料理が初めてならそう言えば良いだろ……かなた、ボケボケに見えて結構料理できるんだぞ?」
「そう君、ボケボケはちょっと私にシツレイじゃないかな?」
ジト目で迫られるかなたに、「ああ、そうだな。かなたはそんなにボケてないよな」と曖昧な訂正をした。
一方で完全に放置され気味のはるかは、自分の指をペロペロと舐めながら、
「とりあえず、その包丁取ってくれないかな……いたっ」
料理の続きをしようとして、指を押さえた。少々舐め取っただけでは止血しないほど傷は深かったようだ。
それを見かねてかなたも現実に復帰して、他人の家ながらに陣頭指揮を執り始めた。
「まずは消毒ね。そう君、はるちゃんをお願い。私は料理を作る、から……?」
制服のまま台所に入ったかなただったが、非常に不思議な光景に溢れていた。何故か乱切りにされている大根。
まだ包装がかかったままの鶏肉。塩抜きされていない乾燥ワカメ。小ぶりの白菜、ジャガイモ、豆腐。
白菜にもジャガイモにも土がついたままで、豆腐は買ったままにボウルの中で水と遊んでいた。
「はるちゃん、何を作ろうとしてたの……?」
「えーっとね、肉じゃがと、豆腐の味噌汁」
あっけからんとはるかは言うが、材料は微妙以上に合致していない。
「それじゃ、鶏肉と白菜はどう使うの?」
「え、肉じゃがの肉って鶏肉じゃないの? あとジャガイモの他に入ってるアレって白菜でしょ? あと大根」
「お前は普段どんな肉じゃがを食ってるんだ……豚肉だろう、肉じゃがは。それに一緒に入ってるのはタマネギだ」
どうやら、食事に関する知識は『出された食事を受け取るだけ』のものだったらしい。
味噌汁に入れる具が昆布ではなくワカメだと分かったのがむしろ不思議なくらいだった。
「あれ、そういえば味噌汁のダシは?」
「え、ダシ? なにそれ?」
「……ダメだこりゃ」
流行りの言葉でオチを括った後、そうじろうははるかを連れて居間に引っ込んだ。
暫くしてマキロンが沁みる悲鳴が聞こえてきたが、かなたは溜息を吐くばかりだった。
「さあ、何を作ろうかしら……豆腐の味噌汁はいいとしても、肉じゃがという訳には……ん?」
何故か、ブルームがついているキュウリが乱切りで皿に乗っていた。これは一体何に使うのか最初は想像しかねたが、
「まさか、味噌汁に入れる気だったんじゃ……」
今考えれば十分ありえる話なのが、かなたをぞーっとさせた。ひょっとしてワカメをダシに使う気だったのだろうかと思うと、
断って家に帰っていたら次の日にはるかが欠席することも、簡単に思い浮かんだ。
しばらく頭を捻っていたかなただったが、ふと思いついて手をパチンと叩き、早速作業に取り掛かった。
「これなら大丈夫だわ!」
戸棚を探すと、ちゃんと調味料も道具も一式揃っていた。かなたは目の前の材料に挑戦の眼差しを向けた。
「さぁ、あなたたちを今から美味しく料理しますからね〜」
心なしか、材料たちが『助かった』と安堵しているように見えたのは、かなたの気のせいではなかったのかもしれない。
それは、既に切られた大根とキュウリも例外ではなかった。
居間に、心地良く刻まれる包丁の軽いリズムが聞こえてくる。それが終ると、ガスコンロに火を点けるカチッという音がして、
何かを水の中に入れたのがはっきり聞こえた。
「何を作ってるんだろうな……」
「分からないけど、多分肉じゃがじゃないモノ」
「あはは、それは言えてるな」
「むぅ……泉君のバカ」
本人としては事実を肯定したに過ぎない言葉で、はるかは拗ねてしまった。
親指に巻かれた包帯を解けないように弄りながら、そうじろうにプイと背中を向ける。
「おいしいご飯、作ろうと思ったのに……」
「わ、悪かったよ」
「ホントに悪いと思ってる?」
「あ、ああ」
それじゃ許してあげる、と言ってはるかはそうじろうへと向き直った。なんということもない、いつもの学校生活、
そんな他愛ないおしゃべりをしているうちに、えも言えぬ匂いが家中に拡散していった。
「お、そろそろできるんじゃないか?」
「そうかもねー……」
給食を食べてから相当の時間が経っているはずで、誰も彼も腹ペコのはずなのだが、はるかは曖昧に返事をした。
そして、さっきの話を忌避したのか、それとも土手の続きなのか、食べ物の代りに、突然話題を切り替えた。
「ねぇ、泉君。私と、かなたちゃん。結婚するなら、どっちがいい? いーい、絶対、どっちか。『どっちも』はなし。
『どっちとも結婚したくない』も、もちろんダメ」
「え……?」
そうじろうの心臓が、バクンと動いた。そのままどんどん鼓動が強くなっていって、頭に血が昇っていく。
のぼせかかった頭を必死に深呼吸をして、この前習ったばかりの『素数』を数えて、何とか何とか落ち着きを取り戻そうとした。
「ねぇ、どっち?」
ぐい、と顔を近づけて、はるかは詰問する。
「どっち!? 私? かなたちゃん?」
どうしてこんなにも強い口調で言われるのか、まるで今のそうじろうには理解できなかったが、顔を背けて、ボソリと言った。
「か……かなた。かなた……かな、多分。いや、かなただ」
「どうして!?」
尚も続く詰問に、そうじろうは辟易した。だが、ここではっきりさせておかないと、はるかが暫く口も利かない状態になるのを、
そうじろうは良く知っていた。だから、不自然に思われないくらいゆっくり、ゆっくりそろそろと答えた。
「そうだな……かなたの方が女の子っぽい、から……?」
そうじろうは、未来の自分にぶん殴られそうな、最悪の回答をしてしまった。
「……」
答えがない。はるかは何も返さない。恐る恐るそうじろうがはるかの方を向くと、目に涙をいっぱい溜めたはるかが、
突き刺すような鋭い視線をそうじろうに送っていた。
「は、はるか……?」
「確かめてみる?」
そうじろうがはるかの言葉を全く飲み込めないでいる間に、傷のない左手でそうじろうの左手を取った。
そしてそのまま、自分の胸に当てる。
「ほら。ブラの上からじゃ分からないけど、ちゃんと私だって胸、あるんだよ?」
そうじろうの手を掴んだまま、服の上から胸のラインを行ったり来たりさせる。突き刺すような視線は今や緩み、
潤んだ瞳でそうじろうを見つめる。肝心のそうじろうは、ゴクリと唾を飲み込んで、口を真一文字に結んでいた。
そして、
「いい、泉君。もしかなたちゃん以外と結婚したりしたら、」
そうじろうの口へと、自らの唇を寄せていく。
「絶対許さないからね……」
涙の混じったファーストキスは、そうじろうにとってもはるかにとっても、ちょっぴりしょっぱかった。
「ご飯出来たよー……あぁーっ!!」
お互い紅色に染まった顔と視線をあっちこっちに向けていた二人は、突然の悲鳴に意識が覚めた。
「何よ、何よ、何なのよぉー!」
こそばゆくてもじもじとした、しかし何時までも保持しておきたい空間をぶち破られて、はるかは喚きに喚き立てた。
「は、はるちゃん……これ……コンセント……?」
居間へと入ってきたかなたは、蒼い顔をして炊飯器へと指を向けた。そこには、沈黙した炊飯器が横たわっていた。
普通湯気を立てているはずのそれは、温かさのアの字も見せてはいなかった。
「一体、どのボタンを押したの?」
「こ、これ……」
はるかが指差したのは事もあろうに「保温」のボタンだった。炊く前に押しては意味がない。
蓋を開けると、何とも冷たそうな『米』が、水に浸かったままで食べられない硬さの方を保有していた。
「どうしようもないから、今から炊くしかないわね……」
さっきとはまるで違う涙を両の目に浮かべながら、「炊飯」のボタンを改めて押した。
三人分の米飯。炊き上がるまで、まず以って40分はかかるだろう。
「……ど、どうしよう、そう君?」
かなたはオドオドとそうじろうに聞く。もちろん、名案は出てこない。
「食べ物のことを考えなければ、お腹は減らないはずよね……」
はるかは腕組みをして考え、そして単純な結論に辿り着いた。
「では、トランプやろう! ね、二人とも。そうしよう?」
「トランプ?」
かなたが聞き返すと、はるかは大きく頷いた。
「そう、トランプ。待っててね、今取ってくるから」
ダイニングから消えて暫く経つと、はるかはトランプを持ってきた。54枚の、ありふれたカードを、よく切り混ぜる。
「3人でババ抜きってのもねぇ……大富豪もそうだし……あ、7並べはどう? ルールは大丈夫?」
「大丈夫だよー。そう君も大丈夫だよね?」
「ああ、なんとかな」
蓋の閉じた鍋と炊飯器を一先ず置いて、三人はトランプに興じることにした。
例え3人でも「8」や「6」を出さない限りは以降のカードは全て場に出ないため、中々の戦略性が求められる。
「パスは3回まで、出せるカードがある時は必ず出すこと」と高らかに宣言し、カードを配り始める。
「ところではるちゃん、ジョーカーは?」
「……あ」
結局、全員に行き渡ってからジョーカーを取り除く形になった。ペナルティとして、52÷3の余り1ははるかが持つことになった。
「それじゃ、行くぜー!」
3人でもこれが結構熱中し、4回ほど勝負が終ると、もうご飯は炊き上がっていてふっくら、それでいて全戦全敗のはるかも、
膨れっ面でムスッとカードの山を見続けていた。
「それじゃ、改めてご飯ね」
食器係にはるかが任命され、来客用の茶碗やコップを取り出そうとする。が、それがどこか分からず結局全員で探した。
食器が見つかると今度はかなたがやや固めのご飯を茶碗に盛る。はるかが水の分量を間違えた結果がこれで、
『ベチャベチャしてるよりずっと美味いから大丈夫だ』と、そうじろうは微妙にフォローし切れていないコメントをした。
さて、かなたが腕によりをかけた今日のメニューは、大根が入った鶏の水炊きと、ジャガイモが新たに加わった味噌汁。
そして、どうにも御せないキュウリは軽く水洗いした後に味噌を添えて、漬物代りにした。
冷蔵庫の中に幸運にも残っていた長ネギを鍋に入れて、あのハチャメチャな肉じゃが計画からはかなりましな組成になった。
「おー、白菜をこう使うとは、流石だなかなたは」
「えへへ、そんなことないよ」
テレながら味噌汁を椀に入れてそうじろうへ出す。並々と注がれていて気を付けないと零れてしまいそうだ。
「ちょっ、かなた、これは零れるって」
「わっ、わぁっ」
何とかかんとか零れずに食卓には運べたが、今日何度目かの冷や汗に二人とも苦笑いした。
「さぁ、食べよ。いただきまーす」
「「いただきます」」
丁寧に手を合わせたり、言うだけ言って箸を伸ばしたりと三者三様の『いただきます』の後、楽しい食事が始まった。
「今日の買い物の時ねー、どうしようか迷っちゃったのよ。味噌汁の具は何にしようかなーって。
そしたら突然、人にぶつかっちゃって。謝って前を向いたら、キュウリが『私を買ってー』って私を見てたのよ」
「そりゃ病気だ、はるか。眼科に行くんだ」
「あー、泉君それはひどいんじゃない?」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
はるかにとって、一人で寂しく、明らかに色々間違った夕食を摂るよりは、よっぽど素敵な時間だった。
そうじろうが男らしく振舞おうとして三回もお代りした後に自爆してエビオスのお世話になったり、
作ったはずの本人が少食で余り食べなかったりと、ややあって見事に全部空になったのは偶然の為せる技か。
「「ごちそうさまー」」
「はい、お粗末様」
かなたが洗い、そうじろうが拭き、そしてはるかが片付ける。そんなローテーションで始まった食器洗いはしかし、
なぜかどうしてか、はるかはコップが並んでいる場所に茶碗を置いたり、箸入れにしゃもじを入れたりで、
またしても首になり、風呂の湯が溢れていないか監視する係に変更された。というよりか、自分で立候補して飛んで行った。
食器は、洗って拭き終ったものをあとでまとめて片付ける方針に変更した。
「なぁ、かなた」
「なに?」
そうじろうは、さっきもう一人の幼馴染に問い詰められた質問を、ソフトに変えて聞いた。
「もし、将来結婚するなら、どんなタイプがいい?」
「どうしたの、急に?」
「いいから、どんな人だ?」
焦り気味に聞いてきたそうじろうに対し、かなたは洗う手を止めて、顎に指を止める仕草をした。
「うーん、……そうだなぁ、私のことを『好きだー!!』って言って、毎日抱きしめてくれる人、かな」
そう微笑んで、かなたはまた洗い物に戻った。ついでに、『そう君はどんな女の子が好み?』と聞くのも忘れない。
「俺は……だな、こう、背が低くて、髪が腰まであって、そう、あと、可愛いんだ」
「随分具体的なのね」
全部の食器をテキパキと洗い終え、そうじろうが受け持つ籠へ次々と入れていったが、渡された手は遅々として進まない。
「もちろんだ、だって俺が好きなのは……」
好きなのは……とあと2回ほど言って尻すぼみになり、意を決して深呼吸をした頃、はるかの大声が家中に響いた。
「はるかちゃーん、泉くーん、お風呂できたよー!!」
「うおあぁっ!!」
出てきた声は、残念ながら絶叫だった。
「はるかのヤツ……覚えてろよ」
悪役の逃げ口上にしか使われない台詞で毒づいて、ギュッギュッとそうじろうは食器を拭き始めた。
一方はるかは、大事なことに気付いたようだった。
「あ、二人とも下着とか持ってきてないじゃん。私だけ先に入るのか……嫌だな……」
余計なことを考えているうちにお湯は溢れそうな程に張り詰め、慌ててはるかは蛇口をキュッと捻った。
はるかが居間に戻って、ばつが悪そうにさっき気付いた話をすると、途中でそうじろうは話を切り上げ、
「……で、俺たちの着替えがないことにも気付かないでお湯を張っていた、と」
呆れた目線をはるかに送った。
「まぁまぁ、急げばお湯は冷めないよ」
かなたは頑張ってフォローするが、そうじろうは話に流されていることに気付いた。
「いやいや、そのまま家に帰って自分の風呂に入れば良いんじゃないか?」
「そう君、さっきの話、忘れたの?」
肘でチョンチョンと脇腹を突かれ、そうじろうは確かに思い出す。しかし、
「だったらかなただけでも……」
「ダメ。二人いるなら、必ず三人。この先も、ずっと一緒」
かなたにピシャリと言われ、どうしようもこうしようもなくなったそうじそうは渋々了承した。
「んじゃ、着替え取ってくるか。明日は日曜日だしな」
「そそ、そうだよ、そうこなくっちゃ!」
はるかはお泊り会が確定したのを受け、引きつった笑いを浮かべていた。
「それじゃ、行ってくるな、はるか」
「え、ま、待って!」
秋の夜長、少しずつ底冷えが厳しくなり、外に出るのを些か躊躇うような時間になって、はるかは二人にくっついて外に出た。
「お前は中にいていいんだ……ぞ。あ、いや、なんでもない」
ついさっき釘を刺されたことを思い出す。『はるかは一人ではいられないタイプ』なのだと。
「はぁ、ついて来い」
「うんっ!」
嬉々としてそうじろうの右腕に飛びつく。それを見たかなたも、はるかに倣って、
「それじゃ、私も……」
左腕にそっと寄り添った。これが空想なら文字通り両手に花、男なら是非一度体験してみたいのだが、これは現実、
「離してくれ、歩きにくい」
三人で手を繋ぐことに落ち着いた。
「手を繋いで家に帰るのって、小学校のちっちゃい頃以来だね」
「そうだな。幼稚園の頃はこうやって三人で手を繋いで通園バスに乗ってたりしたな」
「私たちはあの頃とおんなじ……ううん、ちょっとだけ変わったけど、色々おんなじ」
街灯は少なく、工事も今は止んで、静かな住宅地の静かで綺麗な夜空が、大パノラマとなって三人の頭上に花開く。
沢山の星が数え切れないほど輝いている様子は、環境問題が叫ばれている今、次の世代では見れないんだろうなと、
そうじろうはぼんやりと頭で考えていた。
「ねぇ、そう君、はるちゃん。私たち、ずっと一緒だよね?」
唐突にかなたは言い出した。多分、同じ事を考えていたのだろう、はるかは力強く同意した。が、
「けどねぇ……泉君、私は泉君とはいつまでも一緒にいられないかもね」
「突然どうしたの、はるちゃん?」
「いや、なんでもないんだけどさ……そうだ!」
はるかは何かを思いついて、そうじろうにまたもや指を突きつけた。
「もしあの星を、この空で一番明るい星を取ってきてくれたら、私、ずーっと一緒にいる!」
そんな無茶な、と嗤う二人に、はるかは必死に言う。
「絶対だからね! あの星を、取ってきて。ねぇ、泉君?」
そうじろうは、無理だ無茶だと思いつつ、何とかその思いを飲み込んで「ああ」とだけ言った。
それだけだというのに、はるかが飛び上がって喜んだ理由がそうじろうには分からなかった。
「ふぅ、ただいまー」
「あらおかえり。お風呂入る?」
泉家ではさほど困った顔もせず、そうじろうの母は淡々と聞いてくる。
「いや、それがはるかの家の風呂に入ることになって……」
「あ、そうなの。それじゃ今日は泊まり?」
「そういうこと」
「分かった。はるかちゃん家なら大丈夫でしょ。行ってらっしゃい。行儀悪いことするんじゃないよ」
「分かってる、分かってる」
そうじろうは鞄を机にひっかけると素早く着替え一式をバッグに入れ、玄関へと戻る。
そこでは、立っているばかりではガタガタと震える二人が座っていた。
「あ、ごめんね泉君。玄関借りちゃって」
「いや、別にいいけど……ごめん」
「どうしたの?」
突然謝るそうじろうに、かなたはキョトンとして聞き返す。
「この寒い時期に二人を置きっぱなしにしちゃってさ。ホント、ごめん」
「あぁ、そのことね。大丈夫、大丈夫。ほら、今はこんなにあったかいから」
手袋を嵌めた両手を広げて、そうじろうを抱かんとするかなただが、それをやるには如何せんかなたは小さすぎた。
それにそんなことをやっていると、
「かなた、急がないと風呂が冷めるんじゃなかったか?」
「あ!」
自分で言ったことを守れそうになくなってきたので、こんどはかなたの家までは少し早歩きで、
帰る時にはそこそこの走りになっていた。足を庇うように動くかなたを見かねて、またも背負って走り出したのだが、
それによってかなたは『あったかい』から『熱くて仕方がない』に変っていった。
しかしお陰でそこそこに早く着くことができ、お湯も「ちょっとぬるいけど、まぁ入れる」くらいで収まっていた。
「ほらほら、さっさと入っちゃうわよ」
はるかは、かなたも『そうじろうも』急き立てて、さっさと全員を脱衣所に追い込んだ。しかしここは二人が精々で、
とにかく一人は風呂場まで行かないとちょっと狭かった。
「ま、うちのお風呂そんなに広くないから、ここにいてもそっちに行っても大して変らないんだけどね」
そう言ってそのまま服を脱ぎ出すはるかに、かなたは真赤な顔で反駁する。
「そそそ、そう君と一緒にお風呂だなんて……む、無理だよ……」
「何言ってんの。早くしないと冷めちゃうよ? それとも、冷え切ったお風呂に入りたい?」
「そういうことじゃなくて……」
面倒くさいとばかりに『それじゃ、早く入ってきてね』と言い残し、素っ裸になったはるかは意気揚々と風呂場へ入っていった。
「そ、そう君……」
「な、なんだ?」
非常に気まずい沈黙が流れる。どうしようもない二人の心がどんどん高まっていって、そのまま心臓が破裂してしまいそう。
「そう君……出てって。良いって言うまで、入って来ないで」
「え、何で……どうせ裸になるんだから結局一緒……」
「出てって!!」
「は、はい!」
『女の子』の心を掴み切れなかった悲しい『男』は、さっさと追い出されてしまった。暫くして、「い、いいよ……」という声がして、
風呂場らしい引き戸がガラッと開いて、そしてまた閉じる音が聞こえた。
「一体なんだったんだ……?」
そうじろうは独りごちた後、どうしようもなく制服を脱いだ。一体何が恥ずかしいのか、そうじろうに理解できないことが、
これでまた一つ増えてしまった。
「うーん、分からん。……それにしても寒い。さっさと入って、って、ん?」
間違えて何かを蹴飛ばしてしまったようだった。ふと足元に目を下ろすと、かなたとはるかの制服が目に留まった。
普段なら見飽きているはずのものでも、こう無防備な姿を晒していると嫌が応にも男の欲望は高まる。
しかも、蹴飛ばされた足先に絡まっているスカートをどけると、
「……うわぁ」
純白の布地が露になる。あどけない少年にはまだ刺激が強すぎるのか、綿で出来た『女の子』の代物を見ただけで、
鼻からぬるりとした液体が溢れ出る。思わず指でゴシゴシとこすると、そこは暗赤色に染まっていた。
「こ……これは……」
左手で鼻を必死に押さえながら、右手をかなたのショーツへと伸ばす。ぴと、と指が触れた瞬間、下半身に血流がどっと行く。
「うぉ、お……」
未知なる現象のお陰で鼻血は辛うじて止まったが、腰が砕けそうになる不思議な高揚感に、
そうじろうは立つのもやっとだった。無論、それは足の話である。
温かい、そう温かいのだ。例えばデパートの下着売り場に売っているそれとは比較にならない、人肌の温かさ。
そうじろうは意を決して──明らかに決し方を間違えているが──むんずとかなたのショーツを掴んだ。
瞬間、体温が微上昇し、下半身にますます血液が集まっていく。
「なんなんだ……これは……立てない、足が、膝が……」
このまま動けない姿で現場を見られるのは不味いと、理性が警鐘を鳴らしていた。まだまだ幼い少年は、その言葉に従い、
かなたの下着や制服を元通りに直すと、ほうほうの体で股間を押さえ、前屈みになって風呂場のドアを開けた。
そしてそこには、凡そ少年にはありえない程のワンダーランドが待ち構えていた。
「はるちゃん、くすぐったいよ」
「ほらほらー、覚悟しなさ〜い。あ、泉君来たの。シャワーだけでも浴びちゃって。私たち今髪洗ってるから」
『でもかなたちゃんにはシャワー浴びせないでね、包帯緩まっちゃうから』、と言うと、
はるかはまたかなたの髪を洗うことに没頭した。ボリュームのある艶やかな髪は、肩口を少し超えているだけのはるかには
大きな挑戦に映ったらしく、料理以上に気合を込めて何度もかなたの髪を梳いていた。
そうじろうは曖昧な声で返事をすると、なるべくかなたもはるかも見ないようにして、且つ自分のも見られないようにして、
シャワーを全身に掛けてボディソープをさっと手に乗せ、全力で身体を洗い出した。鏡の向こう側に何かが見えた気がするが、
気にせず自分の二の腕を見つめ続けた。
「シャワー借りるわよー」
横からシャワーホースを取っていってかなたに掛けている。その様子が目に浮かんだ時、
湯煙の向こうに桜色の何かが見えた。あれは、まさか……
「ふいーっ、これでオッケー。それじゃ、次はリンスね」
だが妄想は中途ではるかに遮られた。『それ、取って』と背中を突かれたら、覚めるものも覚めようというものだった。
リンスを取って背中に送ると、『サンキュ』と小さく言ったはるかがまた引っ込んでいく気配を見せると、
そうじろうは急速に冷静そのものになっていった。厳密には、色々と振り切れて感情が抜け落ちた。
しかし、世の中振り切れようがそれでも尚無理矢理引き出させる要因というのもがある。
一度沸騰しきったはずの感情が再燃し始めたのは、こともあろうにかなたの手がタオル越しに背中へと触れてからだった。
「な、何してるんだ、かなた!?」
「何って、そう君の背中を流してあげようと思って」
そうじろうは酸欠の魚がそうするように、口をパクパク開けて手を止めた。シャンプーの容器に伸びた手が、固まった。
「ん、どうしたの、そう君?」
「あ、ああ、いや、なんでもない、うん、なんでもないぞ」
もうちょっと手を伸ばしてシャンプーをだばだば手のひらにぶちまけると、そのまま頭に乗せてわしゃわしゃと泡立てた。
「変なそう君……」
『変なのはお前だ』と言いたい心と、言いたくない心が複雑に交錯する中で、かなたはそうじろうの背中を擦り始めた。
人の背中を流すのは初めてなのだろうぎこちない動きで、丁寧に丁寧に擦っていく。
「そう君の背中、大きいね」
改めてしみじみと言われると、そうじろうも悪い気はしない。つい、声を大きくしてしまう。
「ああ、気持ちいいぞ。かなた、ありがとな」
「そ、そう君、声が大きいよ……」
「はぁーっ、みんなでお風呂に入るのって修学旅行以来だね〜」
「そうだね〜。泉君もそれくらい〜?」
「ああ、それくらいだ〜」
三人が三人ともぐでんと湯船に浸かっているのを見たら、仲の良い兄妹か何かだと思うだろう。
だが実際は幼馴染三人である。簡単には済まない話も、ある。
一番困ったのがそうじろうの目のやり場。テーピングされた足は慎重に湯船から引き上げられているが、
一方でもう片方は湯船に沈んでいる。それはつまり足を広げている訳で、その付け根に見えるものがなんであれ、
そうじろうは目を向けることなどどうしても出来なかった。
かといってはるかは悟りすぎている。夕食前のことがあったからか、目の前にそうじろうがいても物怖じせず、
むしろからかうくらいの勢いでそうじろうにしなやかな肢体を見せ付ける。が、もちろん彼は見向きもせず目を泳がせていた。
「まったく、泉君は意気地なしだねぇ……」
『どういう意味だ』と言いかけたそうじろうを軽くかわして、ニマニマと笑い続けるはるか。
そうじろうは辟易しながらも一度だけチラリと見て、なんとも美しい丘陵がはるかにしっかりあることを、目に焼き付けた。
ちなみにかなたのはといえば、まな板の方がまだましだった。
「へ、へ……へくちっ」
湯船で半ば微睡んでいたはるかがくしゃみをする頃、湯はそこそこに冷えてしまっていた。
「上がろうよ、はるちゃん。風邪引いちゃうよ」
「ん、そうだね……取り敢えず泉君はここに残るよーに」
「へいへい」
「はいは一回」
「へい」
まずははるかに手伝ってもらってかなたが、次いではるかが浴槽から出て行った。
暫く布擦れの音が聞こえたかと思うと、『もう上がってもいいわよー』とはるかの声。
そうじろうが脱衣所に戻ると、残念ながらかなたの服もはるかの服もどこかへ消え去った後だった。
「残念……」
「んー、何が、泉君?」
「い、いやなんでも!?」
どうやらドアのすぐ外で聞いていたらしいはるかが質問してきたが、そうじろうは答える訳にもいかず、
さっさとトランクスを穿いてジャージをその上に着た。
廊下に出ると、火照った身体を具合良く冷ましているはるかとかなたがいた。
かなたは水色のパジャマで、はるかは桃色のネグリジェ。なるほどそうじろうの簡素すぎる寝巻とは違って、
『女の子』は寝る時でもオシャレ心を発揮するものだと初めて知ったのだった。
「うっわー、泉君その格好で寝るの? お父さんのパジャマ貸すよ?」
「大きなお世話だ……」
「そう君はジャージの格好で寝るんだね〜」
「まぁ、これは寝る時用で、他で着るのとはまた違うけどな」
寝巻談義は続くかと思いきや今度はかなたがくしゃみを連発したので、さっさと布団に入ることにした。が。
「ごめんねー、そういえば来客用の布団がどこにあるかわからないんだ……」
はるかの致命的ミスで、三人が同じベッドに押し込まれることになった。
「お父さん達の部屋を使ってもいいんだけど、あんまりオススメできないから、ごめんね、ホントにごめんね」
両親の部屋は中学に入るずっと前から一度も立ち入っておらず、下手すると模様替えしている可能性もあるとの事で、
「別にいいよ、はるちゃんと同じベッドでも。ね、そう君?」
「お、俺は床でいいよ……」
斯様な状況なのだが、『床で寝る』という発言は、はるかの『風邪引くから、ダメ』という家主命令により却下された。
「まぁまぁ、取って食われるのとは違うわよ? それに、三人寄り添えばあったかいんだから、早く入ってきなさい」
今度は添い寝命令まで下ってしまった。そうじろうはもう抗う術を思いつけず、期待七割、不承不承三割で、
はるかのベッドに入っていった。
「はぁ、あったかいねぇ。お風呂とはまた違うあったかさがあるわよ、ここ」
「そうだね〜、はるちゃん」
女同士でパジャマパーティーに花を咲かせているのはいいが、如何せん男にはちょっと入り辛い雰囲気だった。
「はるちゃん、さっきの話だけど」
「どうしたの? さっきの話?」
「うん、私たちが一緒にいる、っていうお話」
「ああ、あれ」
「もし私たちが離れ離れになるとしたら」
「うん」
「その時は、誰かが天国に行った、ってことだよ」
「え……かなたちゃん?」
「つまり、私たち三人は、死ぬまでずーっと一緒、ってこと!」
「そういうこと! そうだね、私たちはずっと一緒だわよね」
「そう、ずっと一緒。ね、そう君? ……そう君?」
そうじろうは雰囲気に耐えかねて狸寝入りを敢行した。バレた瞬間から何が起きるか、はるかに何をされるかは、
この時絶対に考えないようにしていた。
「うーん、やっぱり面白くない話だったのかな?」
「私を背負って走ったりしてたから、疲れちゃったのかも」
「あー、それはあるわね。それじゃ、泉君はそーっとしといてあげましょ」
「そうだね」
ふふっと笑う二人の女の子。だがそれも束の間のことで、十分もしないうちに二人は会話も少なくなり、
段々とまぶたが重くなっていって、ついには全員が寝静まった。
だが、二時間もすればはるかが目を覚まし、
『うー……トイレ、行きたい……どうしよう……このままじゃ、漏れちゃうかも……』
苦しみの時間が始まるのは、この時の誰もが予想できない領域の出来事なのだった。
……あ、「Elder youth -episode1-」でした。
管理人さんごめんなさいごめんなさいごめんなさい
・板に負荷掛かりすぎて飛んだ(これはsakura03鯖に共通の状態だった模様)
・字数制限(4096byte/1レス)にひっかかった
・突然腹痛に襲われてトイレに駆け込んだ
以上の理由でかなり時間が掛かりましたこと、お詫び申し上げます。
メインは2番目です、不可抗力じゃないので。
というか字数制限の関係で削ったり足したりを繰り返していたので、
ひょっとしたらどこかに抜けてる部分があるかもしれません。
その時はホントごめんなさい。
なにぶん今までレス制限に引っかかったことなかったので……
見つけ次第修正部分を告知(+既にまとめサイト転載の場合は自分で修復)します。
今回、はるかさんを出したのは個人的には正解だと思っている。
スレ住人はどんな感想を持っているのか、是非教えて欲しい。
次の投下は来週か、来年か、どちらかだ。非常に低いが明日の可能性もある。
ではまた。
ついにきた、そうじろうモテモテルート(゚∀゚)
すばらしき過去風景でござった!
つうか、続きがほしい、続きが欲しい、これはぜひ続きが見たい
とにかくGJだぜ!!(・∀・)b
こなた「ったく、お父さん、自分にsnegきたからってGJしすぎだよぉ・・・」
とにかくGJ!それと乙
あと、もう容量やばいんですが
は、早く次スレの準備を!!
よしっ携帯からだがスレ建て頑張るぞー
俺で良ければ立ててくるよ
〜読者の方へ〜
余りにも長いので「レス間は行間なのか」、「それとも容量の関係でレスを改めたのか」はご自身で判断して頂けるとありがたいです。
〜管理人さんへ〜
全部改行ミスですね、「誤」と書かれた2行の間に一行追加して下さい。
尚、長いので「〜〜〜」で省略してます。
修正箇所1
誤
それは、既に切られた大根と〜〜〜
居間に、心地良く刻まれる〜〜〜
正(例、以下同)
それは、既に切られた大根と〜〜〜
居間に、心地良く刻まれる〜〜〜
修正箇所2
誤
涙の混じったファーストキスは、〜〜〜
「ご飯出来たよー……あぁーっ!!」
修正箇所3
誤
作ったはずの本人が少食で〜〜〜
「「ごちそうさまー」」
修正箇所4
誤
それだけだというのに、〜〜〜
「ふぅ、ただいまー」
修正箇所5
そしてそこには、凡そ少年には〜〜〜
「はるちゃん、くすぐったいよ」
10行も抜けてた……ホントすみません、昨日に続き二度も。吊ってきます
修正箇所6
誤
「そ、そう君、声が大きいよ……」
「はぁーっ、みんなでお風呂に入るのって修学旅行以来だね〜」
正
「そ、そう君、声が大きいよ……」
実際は誰かに聞かれるわけでもないが、何となく気恥ずかしいのもまた事実。その後は、はるかも含めて全員無言で、
最後にかなたのリンスが洗い落とされるまで、張り詰めた緊張の沈黙が重く立ち込めていた。
「ふぃーっ、洗い終ったー。さ、入ろ入ろ」
沈黙を最初に突き破ったのは、やはりというかはるかだった。まっさきに浴槽の蓋を開けて湯船に飛び込む。
「くはーっ、いい湯だねぇ」
「お前はオヤジか……」
「いいから、泉君もかなたちゃんも、入ってきなよ。気持ちいいわよ〜」
「まずその前にどこうね、はるちゃん……」
一人で広々と浴槽を占有されているのに、更に後二人入るのは無理な相談というものだった。
はるかがどくと、かなたとそうじろうも寒いのなんのと我先に入っていく。
修正箇所7(これは改行追加)
誤
ちなみにかなたのはといえば、まな板の方がまだましだった。
「へ、へ……へくちっ」
気持ちは判るが、スレ立てまで少し待たないか?
そんな奴だからミスるんだろ
610 :
603:2007/11/24(土) 01:26:16 ID:HymyrEx3
>608
うちの専ブラは残り容量がバイト単位で分かるので、
レス投下に踏み切りました。
(611レス現在504192バイト、512000バイトまでOK)
それでは、激しく失礼しました。m(_ _)m
全く、なんてこったい
こうまで名作ラッシュが続くおかげで
容量オーバーの為のMAXレス番がどんどん減っちまうじゃねえか
なんという勢い。これが幸運星に恵まれた
女子高生たちの力だというのかい。
さぁて、次回のらき☆すたエロパロは?
>>612 いや、指摘したかったのは空き容量を確認してるかどうかじゃなくてだね…
「まだ残り容量あるから投下しても大丈夫」って仮に何十人も勝手に投下したらどうなる?
スレ立ててくる、て言ってくれてる人が居るんだから、
>>610を待ってから投下するのが
住人へのマナーだと思うんだ。埋めにもなるし
オリキャラはNGだといわれるけれど、キャラが立ってる上に狂言回しに徹してるこれは認められるべきだと思う。
スバラシス!
たまには俺もSS書かないとなぁ……すっかり壊死、もとい絵師状態だorz
現在494KB
600を少し越えたところだと言うのに、この速さ……シャアか!?
いいえ、赤い人ではありません、青い人です
その名も、泉こなた
あのアホ毛は隊長の証!
みゆき(鼻血)「えぇい、泉家のオタクは化け物か!」
こなた「ちょ、鼻血で真っ赤、アッー!」
コナタスキー粒子で判断能力がきかなくなった周囲の人間が一斉に迷走するわけだなw。
スレ立て乙です
さて、現在、エロパロ板には800のスレがあります
801スレ目が立つと、圧縮によってこのスレが落ちる可能性があります
dat取得なさる場合はお急ぎください
>>622 何!?801に落ちると申したか
……吊ってくる
【国語教師の憂鬱】ライトノベルが国語教材に【教育委員会の暴走】
名古屋市教育委員会は来年度より高校国語の教材として読みやすい文体で書かれた小説、いわゆる「ライトノベル」を導入することを決めた。
このような試みは全国で初。
湯川教育委員長は、「ある程度の理解力のある生徒は『こころ』などの古典文学も理解してくれるが、一部の生徒は文学そのものに興味を持たない。
ならば興味の持てる、理解しやすい作品を導入することにした」とコメント。ライトノベル作品の導入は現場の教諭の判断に任せるという。
導入されるのは、直喩が特徴的な「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズ(著・谷川流 角川文庫刊)と隠喩、擬人法が特徴的な「キノの旅」(著・時雨沢恵一 電撃メディアワークス刊)。
どちらも文庫本で刊行されている。
角川文庫、電撃メディアワークスともにコメントは差し控えているが、角川文庫は教育目的に限り、名古屋市教育委員会に恒久的に同社が所有権を所持する作品ををコピーする権利を認めたと発表した。
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news7/1193322888/【国語教師の憂鬱】ライトノベルが国語教材に【教育委員会の暴走】
名古屋市教育委員会は来年度より高校国語の教材として読みやすい文体で書かれた小説、いわゆる「ライトノベル」を導入することを決めた。
このような試みは全国で初。
湯川教育委員長は、「ある程度の理解力のある生徒は『こころ』などの古典文学も理解してくれるが、一部の生徒は文学そのものに興味を持たない。
ならば興味の持てる、理解しやすい作品を導入することにした」とコメント。ライトノベル作品の導入は現場の教諭の判断に任せるという。
導入されるのは、直喩が特徴的な「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズ(著・谷川流 角川文庫刊)と隠喩、擬人法が特徴的な「キノの旅」(著・時雨沢恵一 電撃メディアワークス刊)。
どちらも文庫本で刊行されている。
角川文庫、電撃メディアワークスともにコメントは差し控えているが、角川文庫は教育目的に限り、名古屋市教育委員会に恒久的に同社が所有権を所持する作品ををコピーする権利を認めたと発表した。
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news7/1193322888/
釣れますかー?
626 :
あなたの日1/3:2007/11/24(土) 13:39:54 ID:nY5KYCED
前回は間違ってタイトルのところにPNを書いてしまったkelkelです。
ちなみに、前回のタイトルは「ありがとう」です。
今回もマイナーカプ、ひかる×ふゆきで投下します。
最近、桜庭先生がおかしい。
一度気付けば、そのわずかな違和感を払拭するのは難しい。
暇さえあれば保健室に来るし、たまにはプロポーズしてくる。
何も変わらない。いつものひかるなのだが
「ん?どーした?」
手入れしてない髪、そばかす、丸い眼鏡、やさぐれた顔。
足りない。
「いえ、何でも」
足りない。
口に、煙草がない。
「禁煙でもしてるのかしら?」
浮かんだ答えを即座に消す。
学生時代から、真似事はするが禁煙のきの字も知らないヘビースモーカーだったことはふゆき自身よく見てきた。
今更健康を気遣う気はさらさらないだろう。
でも、ひかるはここ最近全く煙草を吸ってない。
ひかるの口から煙草がなくなっただけで、ひかるを作っている部品が一つ欠けてしまったような。
失礼だがそんな気もした。
「失礼しまーっす」
聞き慣れた声がして、保健室のドアが開く。
けど、それは噂の人ではなく
「黒井先生。珍しいですね」
「まぁ、何と言いますかちょい野暮用で」
同期の、黒井ななこだった。
「それよりどないしたんです?何や考えごとしてるみたいでしたけど」
「わかります?実は、桜庭先生のことなんですが」
ふゆきはななこに自分が気付いたことを全て話した。
「そない言われてみたら、最近吸うてへんかったような気もしますわ」
ななこは納得したようにうんうんと頷いた。
「何か心当たりありませんか?」
「そないなもんはありませんなぁ。せや。桜庭先生言うたら、この話とはなんも関係あらへんのですけど。今週、誕生日ちゃいました?」
言われて壁にかけてあるカレンダーを見ると、今週末のところに赤い丸が付いている。
ひかるが自分の誕生日を忘れないよう書いていたのだが、当の本人は全く見向きもせず、その日はもう目前に迫っていた。
「そうですよ」
「やっぱりかぁ。あの人何も言わへんさかい、忘れるとこやったわ」
そういえば、もうそんな日なのね。
忘れていたわけではない。ただ、いつの間にか時間は進んでいることに今更感慨を覚えているだけだ。
「ところで、黒井先生はなんのご用で?」
「めっちゃ眠いからちょっと寝かせてもらいますわ」
ななこは既にベッドに入っていた。
「職務放棄ですよ」
次スレにすれば?
てす
てすと