…ま、あれだ、どこのスレッドを意識したかはわかるだろ?
勿論わかるさ、グロスレだろ
需要はあるのか?
面白そうではある、と思う。
ある意味、定型的になりそうなシチュエーションだけど、
それを逆手に取ったりするアイディアが決まれば、面白くなりそうだ。
6 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 19:47:19 ID:MCz8R7j9
なるほど
「ふふっ。お嬢様のお前には何も出来ない……」
「そんな……」
「大事にしていた冷蔵庫のプリンも」
「いや…」
「せっせと貯めたジョージアの応募シールも」
「やめて……」
「お前の力が無いせいで消えてしまった」
「うっ…」
「あーあったかいなぁこのボスジャン」
「……」
「やっぱ風呂上がりには冷たいプリンだよなぁ」
「この……」
「たまんねぇよなぁ」
「くそぉぉおおお!!!」
「お?それで本気か?」
「俺は……俺は怒ったぞ男ぉぉお!!!」
「なんだと!?戦闘力が(ry
こういうことか
ありっちゃありだな
エロに結びつけにくい
王道展開としては
1.再会した幼馴染が不良ってるのを、内気な女の子がおっかなびっくりしながらも更生していく
2.犬に襲われている猫をふだんからおとなしい女の子がかばい、そこを男優が助ける。
こんな感じか?
えぇと、つっこみいれてごめんなさいですが、
男優って何ですか?優男の間違いじゃ‥‥
す、すいません。ちょっと気になっただけなんで‥‥そ、そんに怖い顔しなくても‥‥
こんな感じだろうか、気の弱い娘さんとは。
優男=雅な男、転じて軟弱な男
男優=男性の俳優、転じてAVに出てくる男
男優である意味合ってるんじゃね?
男優って言うなよww
中学のときの友人が、高校受験の為の集団面接の練習で、
先生「将来の希望に男優とありますが、俳優をやりたいのですか?」
友人「いえ、男優です」
先生「?俳優とは違うのですか?」
友人「はい。主に性的な演技をやっていきたいと思っています」
そこまで言って、部屋中の人間(先生3・生徒3)がAV男優のことだって気付いて、
先生から引くほど怒られてたの思い出した。
笑うわけにもいかないから苦しかった。
変則的なのだと
・いつもは内気で言いたい事も言えないけれど、ついに今まで想いを寄せていた男の子に告白しようとして
「じ……実は私あなたのことがすきゃ――」
「ど、どうしたの?」
「し、舌噛んでゃ」
・付き合ったは良いもののどちらも奥手なせいでキスさえしてなかったが、自分からといき込んで帰り道の別れ際に
「じゃあここで。また明日」
「あっ、待って!」
「え? ――っ!?」ガスッ
「〜〜〜っ(は、鼻が、鼻がぁ!)」
(な、何がしたかったんだこの子は!? 鼻いてぇ! あ、鼻血!)
みたいなドジっ子属性もプラスしてみたら面白いかも
インパクトのある出だしとかやりやすそうだな。
いきなり「あ、あたしとエッチしてくれませんか!(超赤面しつつ必死な声で)」みたいな感じで。
ここはエロ無しじゃ駄目なの?
いや俺が書くわけでも無いけど、エロは難しそうだなーって。
気の弱い娘が勇気を出してエロにチャレンジすればおK。
「あっ、あのっ!! わ、わ、わたしが、ふぇ、ふぇら・・・な、なんでもないです・・・」
保守
気の弱い女の子が(修学旅行の班別行動等で仲間とはぐれたとかで)好きな人と
一緒に行動することになって手を繋ごうと奮闘する話とか読みたい
出したのは勇気だけじゃなかったのね。。合掌
とりあえず書いてみた
このスレの趣旨に合っているのかわからないから、駄目だったら言ってくれ
1
「あ、あたし、もういいよぉ。や、や、やっぱり帰る!」
「何言ってんの。大丈夫、亜季ならやれるって」
学校からの帰り道、私は亜季をいい加減になだめながら、強引にその腕を引っ張った。
細くて柔らかくて、ポキン!なんつって、折れちまいそうに頼りなさげな腕。
顔を覗き込むと、既に半泣きになっている。
「ほら、泣かない泣かない。せっかくのメイクが台無しじゃん」
「だ、だってぇ……詩織ぃ」
「変わんないね、亜季の性格」
亜季と私は、かれこれ幼稚園からこの高校に至るまでの長い付き合いになる訳だけど、その関係は出会った頃とまったく変わってない。
進歩無し。
亜季がグズって、私が慰める。
その繰り返し。
私がいつも付き合ってやっているのは、幼馴染みってことで心配なのもあるけど、なんだかんだ言って面白いからだ。
「詩織ぃ、でもさ……あの、えと、えと、えと、えと……」
「えとえとえと、まどろっこしいなぁ!なんなの?十二支なの?」
「それは干支だよぅ」
「うん」
「だから、その、あの……」
「七海君を、エッチに誘うことなんかできないって?」
「!」
「ふふ、顔真っ赤」
七海君っていうのは亜季の彼氏で、サッカー部員の「そこそこイケメン」である。
「そこそこ」しかイケてないから、亜季の彼氏になんてもったいないくらいの男だ。
亜季は身長低くて(150ちょいだし)体も小柄で(50kあんのか?)、乳が無いのがマズいけど(Aカップ)、顔は可愛いし成績も良い。
男好きのする、清純派。
ちなみに、ふたりが付き合うことになったきっかけも、私のお膳立てによるものである。
「え、え、え、えっちだなんて、そ、そんな……」
「でもしたいんでしょエッチ、もといセックスを」
「……」
無言で頷く亜季。この淫乱娘め。
「やりゃーいーじゃん、セックス。もう高3なんだし、大学決まってるし」
「そ、そんな簡単に言わないでよっ!」
つって、亜季はむくれた。
2
亜季と七海君が付き合うようになったのは、高一の冬のこと。
めずらしく亜季の方から、私に恋心を打ち明けてきたから、手伝わないわけにはいかなくなった。
告白の時も、初デートの時もわたしが後押しした。
で、学校からの帰り道に私にまた相談してきたから、善は急げってんで(善か?)、今すぐ引き返して校庭で遊んでいるはずの七海君にぶっちゃけちゃいな、とそそのかすと亜季がごねだしたので、説得していたという訳です。
「今回もさ、Hしたい、っ言い出したの亜季じゃん」
「でももういいよ、七海君嫌がるよ」
「嫌がんねぇって。だってキスはしたんでしょ」
「……」
無言。これはしてるサインとみた。
「だったら行き着く先はセックスしか無いでしょ」
「……うん」
認めちゃったし。
「ていうかセックスしたいなんて相談、なんでまたしようと思ったの?」
「だって詩織はもう、え、え、えっちしてんるでしょ」
「うん」
「どう切り出すのか教えてよ」
「それはさ、切り出すようなもんじゃ無いし、雰囲気でしょ。なんか彼氏が煙草消しだした的な、そんなのよ」
「七海君、煙草吸わないもん」
「別に煙草縛りって訳じゃなくて……、とにかく雰囲気が大事なの」
「でもさ、七海君はアレだからさ」
つまり、天然なのよね。
亜季も天然系だけど、七海君はそれに輪をかけたド天然だった。
七海君はいつも遠いところばっかり見てて、何考えてるのか解らない。
亜季はかつて
「あ、あ、あの。な、七海は好きな食べ物とか、あ、あるの?」
といつものオドオドした口調で聞いたことがある。
七海君は
「生葱」
って答えた。
うん。ちょっと待って欲しいんだ。
一見して普通の答えに見える所に、この答えの底知れぬ恐ろしさがあるのです。
まず料理じゃないし、つーか素材だし、そもそも蕎麦の薬味かって話ですよ。
いつ食うんだろう、生葱なんて。
そして亜季は七海君の誕生日に、田舎から取り寄せた葱をプレゼントしたという。
七海君は満面の笑みで
「ありがとう」
って言ってたと、亜季は私にのろけた。
アホくさ。
3
そんな七海君が相手だから、亜季は不安なのだ。
それで思いきって、Hに誘おうとしたのである。
「まあとにかく、どうやって切り出すかが問題ね」
「さっき、大事なのは雰囲気って言ってたじゃん」
「相手がアレなんだから、アレな方法で攻めたほうがいいって気が付いたの」
私も段々ノって来たってことだ。
「まあ考えられるのはカンチ方式ね」
「?」
「カンチ、セックスしよう!つって笑顔で抱きつく」
「そ、そ、そんなことできるわけ無いじゃないのッ!」
「あ〜、やっぱり」
「やっぱりって……」
「でもまあ、いつも優柔不断で意気地無しの亜季には無理かぁ」
「んん、そんなこと、な、ないもんっ」
ちょっと怒った。
「た、たしかに私は優柔不断で勇気とか、そ、そんな大それたものないけど……」
「ほう」
「七海君のことは……すっごく、す、す、好きだしそれに、せ、せ、せ、せっくすもしたいし」
あ〜〜〜。
痛い。この子痛いわ。痛い子だわ。
まあ、そこが可愛いいし、面白いんだけどさ。
「じゃあできるよね」
「え?」
「カンチ方式」
「え?え?」
「あ〜やっぱり亜季には無理かぁ。そんなんじゃ一生処女のままだよん」
「そ、そんなことないよっ!やる、やる!」
亜季はそう宣言した後に明らかに、しまった、って顔をした。
さっきまで瞳ウルウルさせて顔真っ赤だったのに、もう青ざめてしまった。
そうして私たちは連れだって、今来た道を遡ってゆく。
下校する他の生徒とすれ違いながら、学校に向かう。
「抱きついて、七海君セックスしよう!だからね」
「へ、へんたいみたいだな」
気付くの遅ぇよ。
「変態ってゆうか、むしろ馬鹿みたいだよね」
「じゃ、やめようょう」
「いや、そこは愛の力でさ」
なんつって訳解んないこと言いながら、いつの間にか私たちは校門をくぐり、校庭にたどり着いていた。
4
「あ〜いるいる」
校庭のフェンス越しに、七海君とその友達とおぼしき人々が、サッカーボールで遊んでいるのが見えた。
「じゃあ行こうか、リトルカンチ」
「へ、変なあだ名付けないでよ」
亜季は既に、先が思い遣られるほどガタガタ震えている。
そういえば中学の頃の亜季、犬に吠えられただけで腰抜かして失禁してたな。
また失禁しねーかなー。
と邪悪でサディスティックな考えも浮かんでくるほどの震えっぷりだ。
「や、や、や、や、やっぱり止めようょ、ま、また今度にしょうょう」
「ふーん、また逃げるんだ」
これ以上追い詰めたら可哀想かな、とは思っものの私はこの状況が楽しくてしかたなくなっていた。
「中学の織田君の時もそうやってさ、逃げたよね」
亜季の顔が引き攣ってくる。
ああ、止められねぇ。
「小学校の浅井君の時もそうだったよね。亜季は意気地無しだからなぁ」
「そ、そんなこと無いよ!」
「じゃあ決まり。レッツゴウ。おーい七海くーん!」
さすがにあの衆人環境で告白させるのはあんまりだから、呼んであげた。
私が後押しできるのはここまで。後は頑張れ亜季。
七海君は私たちに気付くと、すぐに走ってきた。
友達が七海君を囃し立てている。
亜季はまたまた、しまったって顔して、異様なまでに震えはじめた。
人間バイヴレーター状態。
私が後ろに下がると、亜季はすがるように振り向いて、助けを求めているのか口をパクパクさせた。
私はそれを冷たく睨み返しながら、内心とにかく楽しんでいた。
しかしホントに東京ラブストーリーみたいに告白するのかね。
いや私がそそのかしたんだけど、まあそうなったらなったで、後ろで小田和正を歌ってあげるよ。
ごめん亜季。
私今完全に楽しんでるわ。
「どうしたの?」
と、七海君到着。
私は、後方にいてもばっちり声が聞こえた。
そよ風が吹いて、亜季の制服のスカートがはためく。
「あの……あの、あのあの」
もじもじする亜季を、七海君が不思議そうに見下ろしている。
七海君は身長170チョイある。
学生服を腕捲りするその姿は、腕白小僧がそのまま巨大化したみたいだ。
5
空が赤くなりかけている。
亜季は相変わらずで、この調子じゃ日が暮れてしまいそうだ。
「亜季どうした、調子でも悪いの」
何事も無いような軽い調子で、七海君は言った。
私はこの男の凄まじいまでの鈍感さに恐れ入らざるを得ない。
「う、うんあのね、ち、ち、ちょっとね……」
「流行ってるらしいよ」
「え」
「エボラウィルス……」
「ああ……は、はは」
このふたりはいつもこんな感じなのだろうか。というか本当に付き合っているのだろうか……
「あの、俺、どうしたらいいかな」
七海君が力無い笑みを漏らす。
それは途方に暮れたという感じではなくて、いたわるような優しい笑い方のように思えた。
「あの……あ、あの……」
「……」
「……」
…………。
沈黙は長く続いた。
辺りは下校途中の生徒共がはしゃいでいて無駄に騒がしく、ふたりの沈黙は際立って気まずいものになってゆく。
さすがの七海君も持て余しぎみで、髪をいじりながら空ばかり見ている。
しばらくして
「……俺、……行くわ」
「ま、待って!」
意を決したように、亜季は精一杯の言葉を絞り出した。
「ななな、七海く…ん。驚かないでね、き、き、聞いて欲しいんだけど」
「……うん」
「わ、わ、私と」
「うん」
「せ、せ、せ、せ」
「うん」
「せ、せ、せ、……っぁぁあああああ!」
「?」
「せせっ、ぜれこりjはdtjからgふじこっくすして欲しいのっ!!」
何言ってんのか解んねぇぇぇぇぇぇぇ!!
で亜季抱きついてるし!んで七海君神妙な顔して抱き返してるし!
「亜季、うれしいよ、君がはっきりそう言ってくれて」
意味通じてるし、その上許可までしてるし。
これじゃ小田和正、歌えねえだろう。
だってこんなのラブでもなんでもねぇもん。
いやラブか?一応、心は通じあったわけだし。
「詩織」
と、亜季は振り向いて叫んだ。
「愛って素晴らしいね!」
アホくさ。
エロ無しでスマン。
あと適当でスマン。最後とか。
マジ職人が降臨するのを願って逝ってくる
不二子www
天然っ娘は見てて可愛いなぁ
GJGJ、萌えた!(主に七海君に)
というかオチで笑ったw この調子で続きも頼む! 本番苦手なら
詩織が亜季から無理矢理初体験の様子を聞き出す会話とかでもOKなのでぜひ!
ひとつ気になったが女の子の身長150cmで50kgはわりとぽっちゃりだよ。
骨格細い娘がそんなに体重あったら見た目デブかもしれん。
亜季のキャラ描写的にはつっこみは(40kあんのか?)のほうがしっくりきそう。
GJ!
初めてこのスレにSSらしいSSが登場したなw
ついでに気の強い娘スレで詩織のSSも書いて欲しいところだw
GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGJ!!!!
作者だけど、レスしてくれた人ありがとう
で
>>32さんの指摘通り、体重は40kということで脳内補完してください。
体重とかよくわかんないから適当でした
葱に笑ったwww
いや、楽しかったです。いずれまた機会があればお願いします。
保守
38 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 15:42:26 ID:nuX/Tauh
あげ
39 :
某所のコピペ:2007/11/25(日) 23:52:02 ID:ANiwC4i9
11 名前:名無しさん@八周年 投稿日:2007/11/25(日) 23:08:32 ID:hvlmdoZx0
そうは言っても例えば・・・
コンビニでバイトをしてるオレ。この時期クリスマスイブのシフトが決定し、毎年恒例の
シフトを替わってくれ大会が始まる。まあいつものことだが取り立てて用事もないオレが夜のシフトに
入ることになった。飯を奢ってもらう条件付きだし、ま、悪くないね。
当日になり、もう一人の不幸な相棒がやってきた。オレはちょっと驚く。奥谷さんがやって来たからだ。
「あれ?この時間のシフトに入るなんて珍しいね」
「はい。店長に無理矢理頼まれちゃって。空いてるの、私だけだったみたいで・・・」
日が日ということもあり客はいつもより少なく、暇なオレ達は沢山の話をした。普段同じシフトに入る
こともない相手なだけにお互い知らないことだらけで話は尽きなかった。
ただ、時々大きなあくびをして眠そうにしてる彼女を見ると、やっぱりオレといるのは退屈なんだろうな、
と現実に戻されるわけだ。
数時間が過ぎたころ久しぶりの来客。カップルだった。どうもその彼女の方が奥谷さんと知り合いらしく
親しげに話し掛けてきた。
「あれ?禮子何してるの、こんな所で。今年のイブは好きな人と一緒に過ごせるんだってはしゃいでたじゃん」
そしてチラリとオレの方を見てはっと、そうセリフを付けるなら「ハッ!」しか有り得ないような顔をして
「ご、ごめん」とだけ言ってそそくさと店を出て行った。おい、ちょっと、どうするんだよこの空気。
奥谷さんの方を見る。真っ赤な顔でうつむいてる奥谷禮子。
すると奥谷さんがぽつりとつぶやいた。
「・・・昨日、ドキドキして一睡もできなかったんですよ」
=============
なんとなく、このスレを思い出した。
なんてことがあったら絶対に好きになっちゃうだろ?
いーシチュエーションだー!
で、なんで奥谷禮子なんだ?w
42 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 01:41:57 ID:yzxS/Lr6
保守
良スレハケーン!!
良スレ保守
保守
捕
47 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 22:36:28 ID:gOFm5km6
ほしゅあげ
誰かなんか書いてよ
よっしゃ、なんか妄想してみる
保守
保守
保守
保守!
ときめきがとまらない
保守
保守
56 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 17:23:07 ID:LE4/sZ2U
緊急保守
保守
保守
これはなんていうか、気の弱い娘にどう勇気を出させるかっていうシチュの問題もあるけど、
相方になる男をどんな奴にするか、っていうのも難しい所だと思う。
見た目、素行は不良だけど芯はお人好しとか微妙にビビリとかだと弄り易いかも。
なんとなく思いついただけだけど
気が弱くて言い出せない相手だと
・相手が強面・不良
・相手が目上
(先輩・教師・上司)
・相手の性格
(クール・朴念仁)
あとはシチュで、友達の元彼、駅で一目惚れの少年とか
やはり相方をうまく設定しないと難しい
個人的な理想としては。
付き合っているのは、自分よりも年下の少年。
「お姉さん」としてリードしなければいけないと意識しながらも、気が弱いため
いつも少年に振り回されている。
そういう感じ。
俺の理想はアレだな、教室の端で本でも読んでる目立たない感じの娘に突然告白されるとかだな。
前髪で目隠れ、かつドモりの気がある(or言語パニック系)とかだと個人的にはベスト。
ド近眼でグルグル眼鏡。
でも本当は美少女でスタイル抜群というのがセオリー。
>>64 お約束w
でクラスでも人気急上昇!というよりは眼鏡っ娘のままで「俺だけ知ってる彼女の真実」的な話が読みたい
上に出てる地味な女の子っていうのもいいけど、
見た目きつそうな感じで誰とも話さないような女の子が
実は人と話すのが苦手で恥ずかしがり屋とかもいいな。
昔のジャンプのワイ○ドハー○にそんな女の子がいた気がする
恥を知れ〜〜!
「…きょ、今日こそ男君に、こ、告白する…!!」
「女、やめとけ」
「女友!なんでよ!!」
「今までにそれ、20回以上聞いたが? で何時も『やっぱり無理』で終わってるからな」
「…き、今日こそはきちんと言うもん!」
「はいはい」
(校門前)
『…遅いな…男君…
いつもならもう帰る時間なんだけど…』
「あれ?女さん、どうしたの。人待ち?」
「お、男君!!う、うん。で、でももう帰ろうかなって…」
「…良かったら途中まで一緒に帰らない?女さんに聞きたい事が有るんだ」
「『告白フラグキター!?
う、うん。いいよ」
(帰り道)
「は、話ってな、何?(ドキがむねむね)」
「…女友さんって彼氏いるのかな?」
「えっ……!?」
71 :
70:2008/01/09(水) 20:32:17 ID:dGNdumfK
駄文投下すまん
ある意味定石の展開を会話文のみで表してみたんだが…質問
この後、どうしたら今までにない「気弱な女の子が勇気を出す瞬間」になるだろう?
考えてみたがワンパターンな展開しか思いつかないので、住人の意見を伺いたい。
気弱な女の子がヤンデレになる瞬間なら簡単に話が思い浮かぶんだがw
女友に男が告白するも、手痛くふられるわけだ。
それを影で見ていた女が、あまりに非道い女友の様子にキレて文句をつける。
その際勢い余って男が好きであることを叫ぶ。
けっこうありきたりだし、勇気とは違うけど。
でも、気弱な女の子が好きな男のために戦うのは勇気といえなくもないかもだ。
あと、ありきたりとはまたの名を「王道」とも言うんだぜw
普段は気弱でも、何か習い事とか好きなことをやってるときは
凛としてカッコよくなる、っていうのはこのスレ的にありなんだろうか?
ありだね
むしろそのギャップがいいなぁ…
弱気な幼女 怒鳴られて立ち去る
強盗に入った幼女が店の男性経営者に怒鳴りつけられ、計画を断念する強盗未遂事件が発生した。
当時、1人で店にいた男性は「何をしとるんや!ふざけるな!」とどう喝するとともに諭した。
その迫力に圧倒された幼女は反省の表情を浮かべながら店を立ち去った。
弱気な幼女のターゲットとなったのは「ファミリーマート」。
幼女は黒いパーカにサングラス、白の野球帽と軍手という、いかにも不審者といういでたちで入店。
その後、タイミングをうかがうように店内の物色を始めた。
幼女が入店した直後から見た目と行動の怪しさを感じていた経営者はじっと観察。
「何かお探しですか」と声を掛けたところレジに向かってきた。
幼女は、カウンターの中にいた経営者に向かって「おにぎり1つください」と注文をするふりをして、
ポケットから出した刃渡り約20センチの包丁のような刃物を男性に突き付けた。
しかし、幼女は6歳ぐらいで、身長も1メートル程度と小柄。迫力に欠けていたため、経営者は
「何をしとるんや!」と一喝。幼女がひるんだため「コンビニに金はない」と大目玉をくらわせた。
すると、幼女は突き付けた包丁をゆっくりと下ろし「お金がないんです、おにぎりでも…」と懇願。
おにぎりをもらえないと分かると、しょんぼりとしながら店から立ち去ったという。
元ネタ
ttp://www.sponichi.co.jp/society/news/2008/01/12/04.html
なんて阿漕な店主だ。
つうか、虐待(ネグレクト)の疑いがプンプンするんだが…
その子が心配だ。
ぼくは駅前南口のとあるコンビニでアルバイトをしている。
学校もあるので土曜日に6時間だけだが、小遣いくらいは稼げているので満足している。
あれは確か始めてから半年くらい時のことだっただろうか?
あの日ぼくは、手違いで北口の店に届けられてしまった書類を取りに行き、戻ってきた時に
野球帽を被った少し妙な格好の少女がとぼとぼ店から出ていくのを見た。
(ご、強盗…!?ハハ、まさかね…あんな女の子に強盗なんて無理だよ)
それでもちょっと心配しながら店に入ると、店の中はいつも通り。
シフトリーダーの伊東さんが競馬新聞の整理をしているだけだった。
「伊東さん、書類ありましたよ」
「おう、やっぱり北口にあったか…ご苦労さん。今日は上がっていいよ」
「はい、お疲れ様です」
「あぁお疲れ。こっちはさっき変な子が、店長に
『金を出せ』とか言ってきて大変だったよ…全く
まあ店長に一喝されてすぐ逃げ帰ってったが」
「え!?…まさかあの野球帽の子ですか?」
「ああ。なんだ、お前も見たのか?」
「はい、店から出て行くのを」
「そうか。あんな子が強盗まがいの事とか嫌な世の中だなぁ。
お前もあんな風には…え?おい?」
「ほ、本当に大変でしたね!それじゃ失礼します!」
ぼくはすぐに店を出た。あの子を追い掛けるために。
食事も与えられない子供がいる。
親に万引きさせられる子供もいる。
育児放棄なんてことをされる子供までいる。
ネットでそんな話を見たことがあったので、
まさか今の女の子もそれが理由では?…なんて思ってしまったからだ。
あの子は確かこっちに行ったよな…見つかってくれよ!
数分間、彼女が行ったと思われる道を走っていくと、
先程と同じようにとぼとぼ歩いている彼女を見つけた。
(だが、声を掛けてどうするんだ?高校生のぼくに何ができる?)
(それに只の万引き常習者かも知れないぞ?)
(…でも本当に虐待とかを受けてるとかだとしたら…)
ぼくは躊躇したが、意を決して声を掛けた。
「ね、ねえ、君」
「…え?」
情けないことにうまい言葉が見付からないので直球で聞いてみる。
「君…なんで店の物を?」
「ご、ごめんなさい!謝りますから…家には…」
「あ、いや、別に告げ口しようってわけじゃないんだ。
君みたいな小さい子がそんなことをするのは、何か困ってるんじゃない?違う?」
長い沈黙の後、彼女は呟くように言う。
「お腹が…空いてて。昨日から何も食べてなくて…
お母さんもお父さんも…お金も何も置かないで昨日からどこかに出掛けてて…」
消え入りそうな声で言う。よく見れば顔色も良くないし、体つきも細い。やっぱりこれは…
ぼくは財布を取り出す。二千円程度しか入ってないが、ないよりはいいだろう。
そしてそれを彼女の手に握らせた。
「…これで何か食べなよ。」
「え?で、でも『いいから!』」
次に僕は携帯を取り出した。こういう子は確か児童相談所に言えば何かしてくれるはずだ。
児童相談所の電話番号を調べた後ノートの切端に書いて、それも渡す。
「ここに電話すれば、良いおじさんやおばさん達が何とかしてくれるはずだから
そのお金でお腹いっぱいにしたら電話しな?このままじゃ絶対良くないよ」
「う…うん」
「あと…これはぼくの携帯番号。相談くらいになら…乗れるかも知れないから」
「ありがとう…お兄さん」
彼女は少しだけ笑った。
そしてぼくは彼女と別れた。彼女が何度も頭を下げていたのが心に痛い。
かなり気掛かりではあったが、もうそれ以上は何も出来そうにない。
でも何もしないよりはよかったはずだ。きっと、そうだ。
そう自分に言い聞かせ、ぼくは帰った。
携帯で衝動的に書きながら投下スマン…一レスに入りきらないとは予定外だったァー
>>80 GJ
>>75 得意分野と苦手分野がはっきりしてる女の子は庇護欲をそそられる女の子萌えという気持ちと
アグレッシブな女の子にぐいぐい引張られたいという気持ちの両方を満たしてくれるよね。
とピントのずれた意見を行ってみる。
83 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 11:40:07 ID:qIDjduMj
ほす
>>80 勇気を出したのが、男の方だったのか。
GJ
……あの、…………………………………保守……します…。
保守
>>80 ネタでないとしたら、お前さんの男気と好判断に乾杯!
88 :
80:2008/01/23(水) 13:58:07 ID:BGXdgBZP
保守
あ、あの那梨くん。
ち、ちょっとだけいいかな…?
うん、ありがとう。
え、えとあのほ、ほ、保守させて下さいっ!!
あ、上げは…ど、どうかな?
内気な美術部員が家で姉に好きな男君のことを話しまくっている
お弁当忘れて姉が学校に届けに来る
姉、男君と遭遇→いつも妹が貴方の事話してるとかなんとか
美術部員顔真っ赤
とかいうシチュで萌えたな
かなり前にやった糞ゲーなんであいまいだけどwww
>>91に刺激をうけて書いてみた。
四時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。お待ちかねの昼休みの到来だ。
僕は机の横にかかっている鞄に手を伸ばした―
「あっ…」
隣から落胆の混じった声が。
「どうしたの?三上さん」
「工藤君…お弁当忘れちゃった…」
僕の右隣の席に座っているのは三上さん。小柄でおとなしい女の子だ。
「急いで購買で買ってきなよ。今なら間に合うし」
「…余分なお金持って来てないの」
今時珍しい女子高正だ。
「んじゃさ、僕の弁当貸すよ」
「えっ!?ど、どうして!?」
「お金持ってるから、パンでも買って食べるよ。その分弁当は浮くし」
この後少しやりとりが有ったものの、三上さんは弁当を受け取ってくれた。
さて購買に行くか。
購買には大したパンはなく、結局外のコンビニまで買いに出た。
下駄箱の所まで戻ると人影が。一人は三上さん、もう一人は…?
「あっ工藤君…」
三上さんの手にはピンクの布に包まれた楕円形の物体が。
察するにおそらくは弁当。という事は横の女性は三上さんの身内だろう。
「三上さん、届けて貰ったの?良かったね」
「う、うん。…ごめんね、工藤君」
「いいさ、気にしないでよ。僕の弁当は食べちゃった?」
「ま、まだ。机の上に置いてるよ」
「へぇ、君が工藤君?」
突然横の女性から話しかけられた。
「は、はい」
見た所、僕より二、三才年上の綺麗な女性。
そんな人に声をかけられたので、自分の声が上ずるのは仕方ない。
「私はこの子の姉。いつも妹から聞いてるから、初対面の気はしないけど」
「お姉ちゃんっ!?」
「あの…僕の事を?」
「そ。毎日一回は『工藤君』を聞くし」
「別に僕は人気者でも有名人でもないですが」
至って普通の生徒だ。
それに三上さんとは単なるクラスメートで、話題になる方が珍しい。
「…はぁ、苦労する訳だ」
お姉さんはなんか呆れてる模様。
一方三上さんの方は。
「はわわわ…」
意味不明の言葉をしながら顔を赤く染めている。
「じゃあ僕はこの辺で」
ご飯食べたいし。
「うん、妹を宜しくね。今なら安くしとくよ」
「お姉ちゃん!!!!」
何か言い争う姉妹を残して僕は教室に戻った。
その日以来、なんとなく横からの視線を感じる様になった僕。
同時に三上さんを意識した始まりでもあった。
反省も後悔もしてる。
あと気の弱い娘の天敵は極度の朴念仁だと思う。
GJ!
酷いヘタレ野郎だw
うおおおお超GJ!
なんという萌え展開
GJ!
これは萌える
98 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 00:37:38 ID:OueqJ/B4
やばいので上げ。
ほ、保守ですっ!
保守
保守
無口な娘とはまた毛色が違うのかね
キミキスの星乃さん くらいしか思い浮かばない
中里さんを忘れないで…
103 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 01:07:08 ID:a/dnVGJh
あげ
保守
保守
投下します。
107 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:53:24 ID:LtwKzk04
部屋はやけに静かだった。
彼ともっと踏み込んだ関係になりたくて、なけなしの勇気を出して自分の部屋に誘った。
けれど勇気はそこで尽き果て、今は彼と二人でベッドに並んで腰掛けだんまりが続いた。
お互い恥ずかしくて、怖くて、嫌われたくなくて、どこか少し距離を置いた関係。
私たちは恋人同士なのに、想いが通じ合って一月が経とうというのに、いまだにキス一つできていない。
手を繋ぐことで精一杯で、腕を組むことに躊躇してしまう。そんな関係。
せっかく恋人同士になれたのに、これじゃああまり前の関係と変わらない。
だから、変えようと思った。
顔を真っ赤にしながら告白してくれた彼。
どれだけ想いを伝えることに苦労しただろう。
だから今度は私の番。
そう思ってがんばって放課後の帰り道、別れ際に彼を呼び止めて言った。
「あ、あの、ね? その……今日、一人、なんだ」
「え?」
「お、お父さんもお母さんもいなくて、だから……」
数秒、言葉が詰まる。もうこれだけで顔から火が出てしまいそうに熱かった。
でも、ちゃんと言わなきゃいけない。一度大きく深呼吸。そして――
「今晩だけ、い、一緒に……いて?」
このとき二人とも、きっと夕陽に負けない赤で顔を染めていただろう。
そうして彼は家に宿泊の許可を貰うと、二人で私の家に向かった。
――そして、この有様だ。
家に向かう途中、何度か会話をしたけれど部屋に入ってからは一度として口を開いていない。
感じないはずの空気の重さをずしっと感じてしまう。その重さで何もできないでいる。
口が開こうと思っても開いてくれない。私の勇気は、家に誘うときに無くなってしまい、
もう一欠けらも残っていなかった。
自分が情けなかった。いつもそうだ。人と話すのが恥ずかしくて、口数が少なくって、
そんな自分が大っ嫌いで。
でもそんな私を好きと彼が言ってくれた。照れた顔が可愛いと言ってくれた。
大人しくて物静かな君が好きだと言ってくれた。
そんな彼に答えたくて、頑張って今日はもっと積極的になろうと決めたのに。決めたのに……。
と、彼が動いた。
108 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:54:30 ID:LtwKzk04
「やっぱり、今日は帰るよ。……無理しなくて、良いから」
彼の気を遣った様な優しい微笑みが私の目に映った。
駄目だ。彼は優しいから。いつも私に無理をさせまいとしてくれるのは嬉しい。
だけど、今回は駄目だ。きっとこのときを逃したら私はもう一歩を踏み出すことができない。
けどもう私には勇気なんて――
ううん、違う。
勇気は無いわけじゃない。一欠けらなんて大きいものじゃなくていい。
一粒。そう、砂のように小さな一粒だけでいい。
その一粒を必死で掴もうとする。掴もうとして――
「……え?」
立ち上がりかけた彼の袖を掴んだ。いや、掴んだと言うほどでもない。摘むといった方が適切だろう。
震える親指と人差し指が、彼の制服の袖をなんとか申し訳程度に挟むように摘んでいた。
彼の顔を見ようと今まで俯かせていた顔を上げる。が、彼の顔は水面のように揺らいではっきりと
その表情を窺うことができない。そのときになって、自分が泣きそうになっていることに初めて気付いた。
ぐにゃぐにゃと歪む視界で、彼の顔を正面から受け止める。
「……ょうぶだから」
「え?」
「大丈夫、だから」
掴んだ一粒の勇気を振り絞って、ゆっくりと言葉を紡いでいく。声は緊張で震えてしまっていたけれど、
それでもはっきりと声に出す。
「私は、大丈夫だか、ら。だから……」
あと一言。その決定的な一言を思い、頭も体も今までに無いくらい熱を帯びる。心臓の胸を叩く音が
聞こえてしまいそうで、彼の袖を摘んでいない方の手で胸を押さえつける。手を痛いくらいぎゅっと
握りしめる。言葉を続けようとして震える唇に気付き、震えよ治まれとばかりに強く噛み締める。
そして、言った。決定的な一言を、
「――しよ?」
頬のてっぺんが熱い。
彼はどんな顔をしているのだろうか? いやらしい女だって呆れていないだろうか?
一度言ってしまってから心を占めるのは消極的なことばかりで、頭の中がぐちゃぐちゃに
なってしまった。そんな混乱からはっとしたのは私の両腕を掴んだ彼の両手だった。
彼は体ごとこちらに向き直し、視線の高さを同じにしてくる。
「本当に、いいんだな」
「うん……いい。君じゃなきゃ、やだ」
一度確認すると、彼が顔を近づけてくるのが分かった。何をするのかは、すぐに分かった。
目を閉じる。溜まった涙が頬を伝った。
私と彼のファーストキスは、ぎこちなくて、遠慮がちで、震える唇でほんの少し触れるだけの、
だけど優しいキスだった。
109 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:55:41 ID:LtwKzk04
「ふっ……んっ、はぁ……ちゅ、っん……」
何度か拙いキスを繰り返し、徐々に深く端無いそれへと変わっていく。
軽く触れるだけだったものが強く押し付けるものへ。
触れ合う時間は刹那の瞬きから息の続く限りへ。
私も彼も今までの分を取り返すように、がむしゃらに相手の唇をむさぼり続けた。
私のだか彼のだか分からない、荒れた鼻息も口の隙間から漏れる吐息も、どれも熱くて蕩けそうだった。
と、突然彼が私の下唇に吸い付いた。
「んんっ……!?」
思わぬ快感に、背中にぞぞっと震えが駆け抜ける。その後も彼は何度も何度も嘗めるように私の下唇に
吸い付き咥えた。
「はぁ、はぁ……っんぅ……! あ、んっ……ふぁ、あ……っ!」
連続して与えられる甘い刺激に、頭の中がふわふわと夢心地になり、白く霞み掛かってゆく。
私はいつの間にかベッドの上に倒れ、彼に組み伏せられていた。
でもそんなことはどうでもよくて、ただそこにある情欲を喰らうことに上手く回らない頭で集中した。
何十回と重ねたキスでもう口の周りは唾液でべとべとだった。
「んぁ、ふ……っ! ひゃっ!」
唇の気持ちよさに集中していたせいで、胸を這う感覚に思わず声を上げてしまう。
「ご、ごめん。痛かった?」
彼が心配そうな顔で見つめてくる。
「だい……じょうぶ。はぁ、ん……ちょっと、びっくりした……だけ」
「本当?」
「うん。だから……はぁ……つづ、けて?」
私の言葉に、恐る恐るながらまた手を胸に添え、ゆっくりと撫で回していく。
それは胸を撫でるというより制服のセーラーを撫でているという方が正解で、どちらかというと
くすぐったい。
「もう、すこし……つよくして、だい、じょうぶ……ふっぅ……だから」
「分かった。……これくらい?」
「うん……はっ、あぁ……」
今度は制服に皺が付いてしまいそうなほど強く揉みしだく。新たな快感にさっきまでよりも
少し声が大きくなる。やがて彼の動きは大胆になっていき、揉みやすいように私の両腕を頭の横に動かし
両手で大きく円を描くように捏ねくり回す。
「ん、んんっ……! はぁ、あっ……っんん!」
大きく動かされることで下着もずれ、それが乳頭を微かに擦らせてぴりぴりと痺れるような刺激を
与え続ける。その刺激に二つの乳首は固く起立し、より過敏に刺激を感知するようになる。
「ひっ、ん、ぅ……あ、んっ! ン、ンン……ゥンンッ!」
熱い吐息を漏らすだけだったのが喘ぎ声も増え、急に声を出すのが恥ずかしくなりシーツを手繰り寄せ
口に押し付けて声を出さないように必死に我慢する。
顔も彼から反らすように横に向け、両目をぎゅっと瞑る。だがそうすることで感覚がより鋭敏になり、
背筋をぞくぞくっと寒気に似た震えが走る。
110 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:56:48 ID:LtwKzk04
だというのに、体の芯はずぅっとぽかぽかと火照っている。最初は胸の辺りが一番熱かったのが、
だんだんと下腹部へと移動していくのが分かった。今では私の臀部をむずむずと蠢いていて、
何かを求めるような切なさが襲う。その切なさをどうにかしたくて太ももの内股をもぞもぞと
擦り合わせる。少しは治まるが、それでもまだ足りない。もっと強い刺激が――
そんな私の期待に答えるように、胸を揉んでいた片方の手がゆっくりと下腹部へと下りていく。
彼の手がスカートの端に辿り着くと、するするとスカートを捲り上げる。太ももから伝わるスカートが
たわむ感じと外気の冷たさに、彼に私のもっと奥の方を知られることへの恥ずかしさと興奮が入り混じり、
変に気持ちが昂ぶる。そして完全に太ももがスカートからの加護を失いその全てを晒すと、彼は
その太ももに手を滑らせた。
「はあ、ああ……んっ、ふあ……っ!」
彼の手は私の触れて欲しい所ギリギリまで指でなぞると、すぐ膝の方へと戻る。その往復を何度かされ、
私はもどかしくて。その間も片方の手は私の胸に継続して刺激を与えるので、どうにかなってしまいそうで
無意識にシーツを強く握りしめていた。
「すごい……すべすべしてる」
「や、だぁ……っ! いわ、ないでぇ……はずか、しぃ……ぅんあっ!」
「でも本当のことだし……」
そう言って太ももを撫でてばかりで、なかなか触ってくれない彼に痺れを切らし、撫でていた彼の腕を
掴むとそこに彼の手を押し付けた。
「んんぁっ!」
「あっ!?」
思いがけず強く押し付けてしまい、電流が背中を突き抜けるような衝撃を受ける。
「大丈夫っ?」
「うん……あっ、もっと、そこぉ……触って、ぇ……!」
あまりの強い衝撃に淫らな言葉をつい漏らしてしまう。
その言葉に彼も高揚したのか、胸を揉みしだきつつショーツの上から割れ目に指を這わせる。
先ほどまでより更に甘美な衝撃が体中を駆け巡る。
「んんっ! ふぁあ、んぁ! いい……いい、よぉ……ああっ!」
もう恥ずかしいとかそういうのはどうでも良かった。ただただこのまま快感に身を任せて
しまいたかった。
なにもかんがえられない。
きもちいい。
もっといじってほしい。
「あっ、そこっすご、あぁっ! もっと、いじっ、あぁあっ!」
彼の這っていた指が陰核の上を撫でる。私の要求に彼は忠実に応え、そこを念入りに責める。
軽くトントンと突付いていたと思うと、今度は潰さんばかりに強く押し付けてくる。
勃起して下着の上からでも分かるようになると、摘んだり転がしたりと更にバリエーションを増やす。
111 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:57:59 ID:LtwKzk04
クリトリスを弄りながら彼はセーラーをブラと一緒に捲し上げ、私はあまり発育が良いとは言えない
乳房を露出させられた。そしてそこへ直にさっきまでやっていたように手を乗せた。彼の手は汗で
しっとり湿っており、少し冷たかった。軽く数回揉み上げると、彼はその中心にある小さな突起に
狙いをつけた。クリトリスを弄る要領で乳首も摘んで捻ったり転がしたり押し付けたり変化に富んだ
責めを続ける。更に彼は弄られていない乳首の方へ顔を持っていき、吸い付くように口に含んだ。
生暖かい息のかかる口の中で甘噛みされ、舌でピチャピチャとやらしい音を立てて舐められ転がされる。
「ああっ、やぁっ、ちくび、なめちゃっ、だめぇっ! だめ、なのぉっ!」
乳頭の左右で違う刺激と、弄られ続けるクリトリスとの刺激に頭がおかしくなる。
すごい。
きもちいい。
でもだめ。
でももっとほしい。
もっとほしい。
だめ。
ほしい。
いじって。
なめて。
ほしい。
ほしいっ。
ほしいっ!
「やあっ! くるっ! なにかくるぅ! ふぁあぁ、ああっ! くる、よぉっ!」
甘い痺れ。
白く靄が掛かる頭。
自分の体が自分の体で無いような錯覚。
奥底から押し寄せてくる何か。
「ああぁっくる、くるぅううっ!」
そして……
「あ、ああぁ――っ!」
今迄で一番の、体を弓なりに反らせてしまうほど強い衝撃が全身を巡った。
「はぁ……ぁあ……はっ……はあ……」
「ご、ごめん。俺も無我夢中でやってて」
「はあ……んっ、はぁ……ううん……だい、じょぶ……はぁ……」
彼はわたわたと慌てて私の容態を気にする。確かに、いきなりすごい声上げたあとぐったりしてたら
何かあったのかと思うだろう。
それにしても、これがイくって事なのかな。すごかったなぁ……。
あ……それに私、何か変なこと言わなかっただろうか……。うん、何か言った。すごく恥ずかしいことを
言ってた気がする。うぅ……なんか、すごく恥ずかしい……。
「えと……少し、休憩する? まだ疲れてるみたいだし」
「うん……ありがとう……ふぅ……」
彼の優しさが身に染み渡る。
そうだ、まだ終わりじゃない。まだ、彼と繋がっていない。
112 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:59:07 ID:LtwKzk04
私が体を休めている間に、彼は彼で準備を始めた。
制服を脱ぎ、避妊具を装着する。その時ちらっと彼のそのち、ちん……を見たが、あんな太い物が私の中に
入ってくるのを想像して、ぶるっと身震いしてしまう。ここまで来て、少し怖くなった。
でもやめようとは思わなかった。確かに怖いけれど、ここでやめたら絶対に後悔すると思うから。
私も十分に体を休め終わると制服を脱いだ。さんざん彼に触られたけれど、それでも恥ずかしかったので
彼には後ろを向いてもらい脱ぐことにした。そして全て脱ぎ終わると彼にこっちを向いていいように
呼びかけた。こっちを振り向いた彼は私の体を見て大きく目を見開くとそのまま硬直してしまった。
「あの……どこか変、かな……?」
「ち、違う違うっ。その……綺麗、だったから」
「う……」
あんまりにもあんまりなストレートな褒め言葉に私は照れて顔を背けてしまう。
背けていると、彼が近付く気配を感じ顔を上げようとしたが、
「ひゃっ」
そのまま押し倒されてしまう。
「……いくぞ?」
「うん……」
「なるべく、優しくするから」
「うん、あのね、そのことなんだけど」
「? なに?」
「私はいいから、好きなように動いて」
「えっ?! でも」
「うん、痛いのは知ってる。だから……」
なるべく彼に心配をかけないように、精一杯の笑顔で、私は言った。
「君だけでも、気持ちよくなって欲しいの」
「……おまえ」
「今は私も痛いかもしれないけど、いつか一緒に、気持ちよくなれるから」
いつも私は自分から何かするような子じゃない。
告白も彼からだった。
だから、今回は自分が頑張ろうって決めた。
それがどんな痛みでも耐えようと思った。
彼に、気持ちよくなって欲しいから。
「だから……ね?」
彼は少しの間、思案顔で色々考えていたが、やがて応えた。
「……分かった」
「ありがとう」
その時の私の顔は、今までに無いくらいとびっきりの笑顔だっただろう。
113 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 06:00:19 ID:LtwKzk04
私たちはその後、軽くキスをして彼は指を割れ目へと伸ばす。
くちゅ……と、湿った音が部屋にやけに大きく響いた。
「ふっ……く、ぅ……あぁ……」
下腹部に異物感を覚える。それが彼の指であることは分かっていたが、それでも少し居心地の悪い
感じだった。けれどもそんな感じなどすぐに薄れていく。彼が少しでも私の感じる痛みを和らげようと
一生懸命に膣をほぐす。彼の指がぐにゅぐにゅと私の中で蠢いている。指の腹が敏感な部分を摩るとき、
思わず甘い吐息が口から漏れてしまう。
「あ、少し濡れてきた」
「んぅ……言わなくて、いいってばぁ……はぁ、あ……」
そうこうしている内に更に一本、指が挿入されぐにぐにと押し広げるように膣を弄る。
「は、ああ……んっ……」
そうして一通りほぐすと、遂にその時がやってきた。
「……じゃあ、本当にいいな?」
「うん……きて」
彼の亀頭が、入り口を探そうと押し付けて割れ目に沿うように撫でる。
「ん……はぁ、ああ……」
その動きに腰がびくっと震える。そしてようやく探し当てたらしい彼が前へと挿入していく。が――
「くっ、ぅんんっ!」
突然体が割れんばかりの痛みが襲った。目に涙がじわりと溜まるのが分かった。
「お、おいっ」
「だい、じょう……ぶ……くっ。だから、つづけて」
「でも」
「お願い……やめないで。ううっ……それが一番……嫌、だから」
「……分かった」
その後も彼はどんどん押し進めていく。その間も私は自身の肉を削ぎ落とさせていくような痛みに耐えた。
「くっ……全部、入った、ぞ」
「うん……すごく、熱い……」
「ああ、お前の中もすごく熱くて……気持ち良い」
最後の気持ち良いはなんだか申し訳なさそうに口にした。それでもそれを言ってくれて私は嬉しかった。
ああ、ちゃんと私で気持ちよくなってくれた。
それが一番嬉しかった。本当に。
「ねえ……私は、大丈夫だから……動いて」
「……いいんだな」
「うん」
「……動くぞ」
そう宣言すると彼はゆっくりとピストン運動を開始した。
「ひ、ぃいああ……あぁ、んんぅ……!」
最初に入れたときほどではないがそれでも痛みが強烈なのは変わりなかった。
114 :
一粒の勇気:2008/03/09(日) 06:05:56 ID:LtwKzk04
やがて彼も自分の欲求に逆らえなくなったか、徐々に前後運動のスピードを上げていく。
早く動くことで私の千切れるような痛みも更に劣悪になる。
正直、泣きたかった。泣き喚いて、止めたいって言いたかった。
でも言いたくなかった。それが私の覚悟だから。
「はあ、はあ、好きだ、お前がすきだっ」
「くっ、うん、私も……うぅっ、君が好きっ、大好きっ!」
「くっ、出すぞっ!」
「うん、きて! いっぱい出して!」
彼が大きく一突きすると膣でびくびくっと脈動するものを確かに感じた。
※ ※ ※
「大丈夫か」
「うん、もう大分平気」
お互いに初体験を終え、今は二人で寄り添うようにベッドで包まっている。
シーツには私が汚したであろう赤い斑点がぽつぽつと浮かんでいた。
それを見て私は彼に見えないように静かに微笑んだ。
良かった。
頑張って、一歩を踏み出せて。
あの時、彼の袖を掴めて。
私は、あの時の一粒の勇気に心の中で感謝した。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
私は彼の腕の中で、ゆっくりと眠りについていった。
以上です。では。
gj
gj!
gj!!
保守
書いてみたいんだが、どうしてもヒロインの押しが弱くて。
親友の強気っ娘が食ってしまう展開に…
あと何故か貧乳で小柄になってしまう…
わざわざそんなこと書いてどうするの?
なんでもいいから投下してくれ
さあ、勇気を出すんだ
>115
無口っ子は可愛いな
GJだぜ!
ところで>94の続きはまだかな
…我ながら柄にもない事はするもんじゃない。
久しぶりに料理(と言ってもパスタを茹でただけだ)を始めたら、
粉チーズを切らしていた事に気が付いた。
無くても構わないのだが、無いと気になるのが人の悲しい性。
……仕方ない。
五分後、僕は夜道を自転車で走っていた。
運良く閉店間際のスーパーで目的の品を手に入れた帰り道。
「あれ…?」
僕の通う高校の前を通りかかった時に気付いた。体育館に灯りが付いてるのだ。
『こんな時間に何部?』
既に時刻は八時を回っている。この時期の部活動としては随分熱心だ。
ぐるぐるきゅー
…腹の虫が抗議の声を挙げた。早く帰ろう。
再び自転車を走らせる僕の結論は『明日聞いてみよう』と無難な物に落ち着いた。
「ああ、そりゃ演劇部だよ。多分な」
「えんげきぶ?」
昼休みにフルーツ牛乳を飲む悪友の意見は意外な物だった。
「俺達が練習終わってからステージ使ってるぜ。それまでは教室で練習してるとか」
「ふーん…何で?」
「春休みに大会だとさ。それ以上は知らん。そうそう…」
バスケ部の悪友・俊哉の情報も種切れの様で、話題は僕の貸したゲームの話に変わった。
「………」
気のせいか、隣の席の三上さんが何か言いたそう顔をしていた。
……気のせいだな。
最近三上さんによく見られている様な気がするのも、多分気のせい。
自意識過剰な男なんて滑稽極まりない。僕、工藤亮太は至って普通の
目立たない平凡な高校生なのだから。
【GIRL SIDE】
「…であんたは何も言わずに収穫なし…と」
「お姉ちゃん…分かってはいるけど…気が弱い」
演劇部の練習を終えて帰宅した私を待っていたのは、夕食と容赦ない姉と妹だった。
「でもさぁ、その『工藤君』はどうなの?由梨姉」
妹の由奈が私に興味深々で訪ねてくる。
「ど、どうって…普通の男の子よ」
「顔は悪くないわね。でも結構鈍いのかも」
彼と面識のあるお姉ちゃんが失礼な感想を吐く。
……でもちょっと同感。
「イケメン好きの由真姉がそう言うならかなり期待出来そうね」
「…口の悪い女はもてないわよ」
いつもこのバターンで口喧嘩が始まってしまう。でも、私を含めた姉妹仲は良い方だろう。
「話を戻すけど」
しばらく由奈と口喧嘩をしていたお姉ちゃんが私に向き直る。
「どうするの?」
「ど、どうって…?」
「彼、工藤君との事よ」
そんな事を言われても私にも困る。
「いい、由梨。あんたが気弱なのは知ってるけど、いざという時には
口に出さないとダメ」
「そうね。由梨姉は口に出せないから。…後悔しない様にしないと」
そんな事は私にだって分かってる。でも怖い。彼に拒絶されたら…彼に恋人が出来たら…
彼の事を好きになってから抱いている、この思いが私を悩ませる。
ほんの少しでいい。
勇気が欲しい、彼、工藤君に告白する為の勇気が。
もっともその前に彼ともっと親しくならないと告白どころの話ではない。
…前途多難だなぁ。
投下終わりです。
しかし話が進まない。
前途多難だなぁ…
続きキタ!
演劇部の伏線がどうなるのか、由梨は勇気を得ることができるのか、
そして姉と妹は今後どう二人の仲を暗躍するのか、続き楽しみにしています。
自分のペースでゆっくり書いていってください。
>128
この二人キテタコレ!
二人の進展をwktkしながら待ってるよ!
ガラガラ… カチャン
図書室の入口扉を閉め、鍵を掛ける音が人のいない廊下に響く。
窓から差す夕陽の光が弱く、まもなく日没間近であることがわかる。
僕は鍵を手に職員室へ足を向けた。
僕が何故図書室の鍵を手にしてるかって?
簡単な理由だ。図書委員の当番だからだ。元々本好きな僕が図書委員になった理由。
それは「委員になれば本を読む時間が増える」
と安直な発想から来た物。実際は書棚整理や雑務で逆に減ってしまったが。
先生に図書室の鍵を返し、薄暗くなった外へ出た僕の目に映ったもの。
「…まただ」
明かりの付いた体育館。
悪友俊哉の情報では演劇部の練習が行われているらしい。
帰宅部の僕には今まで縁がなかったが、正直言えば脚本や演出方面には興味がある。
…気になるな、行ってみるか。
校門に向いた足を体育館へと進路を変える。しかし我ながら好奇心の強さには呆れるばかり。
…ほんとこの好奇心を他の方面で生かせればいいのに。
鉄製の重い扉の前で立ち止まる事3分。足を踏み入れるのが何だか躊躇われる。
ええ、小心者だよ…
辺りに誰もいないのにそんな事を考えてしまう。しかし、ここまで来て帰るのは惜しい。
小心者は扉の隙間から覗く事にしよう…
入口からは響く声こそ聞こえるものの、ステージ上の人間までは判別できない。
「……よ、……へ…」
声と遠目でも判る範囲から、練習しているのは女の子ばかりの様だ。
そういえばあまり男子の演劇部員て聞かないな。
そんな偏見からくる感想を抱いた時。
「行きましょう、パリへ!!」
一際大きな声がステージから聞こえてきた。
しかしその声は僕にとって聞き覚えのある声だった。
今の声……三上さん?
扉の隙間から必死に覗くものの、ハッキリとは分からない。
しかも部員はゆっくりとステージから降りて、一ヶ所に集まり始めた。
どうやらミーティングに入るらしい。ここまでか。
帰り道でも気になるのは先程の声の持ち主。
教室でおとなしい女の子とステージ上での声では、ギャップが有りすぎた。
でも別人とも思えない。
肉まんを頬張りつつ考えてみて、結論はひとつ。
『明日聞いてみよう』
「えっ!!く、工藤君聞いてたの!?」
「やっぱり三上さんだったのか」
翌日の朝、登校した三上さんを捕まえて尋ねた所、やはり本人だった。
「…うぅ…」
何故か分からないが顔を赤くする三上さん。なんで?
「でも凄いな、主役?」
「う、うん。一応…」
「でも実力が認められたんでしょ?やっぱり凄いよ」
「…そ、そんな…」
「自信持って良いよ、かっこいいなぁ」
「…………」
困った…会話が続かない。目の前の女の子は顔を赤くするばかりで、多くを話してはくれない。
「おはよっ。三上っちにクドー」
救いの神が現れた、ただし僕の背中に力一杯の平手を入れて。
「おはよう、杏奈ちゃん」
「………」
挨拶を返した三上さんに無言の僕。
「挨拶も出来ないなんて…クドーが人間が出来てない証拠だね〜」
そこまで言われたら挨拶せざるを得ない。出来る限りの笑顔で答える。
「おはよう、王子様」
ゴスッ
二分後、脳天へ突き刺さる痛みに耐えて僕は文句を言う。
「爽やかに挨拶を返したクラスメートに肘を落とすのは酷くないか?」
「お前…喧嘩売ってるのか」
「いえいえ、滅相もない」
横目に映る三上さんがオロオロしている。
…この辺りで辞めとこう。
「おはよう、星野」
「出来るなら初めからやりゃいいんだよ…」
僕の前でブツブツ愚痴るのはクラスメートの少女、星野杏奈。
ショートカットに中性的な美貌、細身で170cm近い外見から一部の女子に熱狂的なファンがいる。
僕と星野は中学からの知り合いで、顔を合わせれば今の様なやりとりをする間柄だ。
「そういえば、星野演劇部だよね?」
「何を今更…あたしの仇名を知ってるその口が言うのか!!」
「王子様」。星野の仇名の由来は、昨秋の文化祭での演目からだ。
元々女子に人気のあった星野の「王子様」役が見事ハマり、演劇部の評価と
星野の仇名は定着し現在に至る訳だ。
「ひろひろひひたひほほはあっへは…」
それと頬をつねるのを辞めて欲しい…
ニヤニヤ笑いながらつねるその顔、王子様というより魔女っぽ…
ギューッ
頬をつねる手へ力が更に入り、痛みは冗談抜きで痛い。
「クドー、今失礼な事考えただろ!!」
…何故わかる?
「お前の考えなんてあたしにはお見通しだ!!」
それ某女優の真似か?ちっとも似て……
「…であたしが演劇部員でどうした」
おい、腫れた頬はスルーかよ。
「…まあいい。今…」
僕は事の経緯をかいつまんで話す。
「ああ、新人コンクールの事か。三月末に新東京劇場でやるんだ」
「意外に凄そうだな」
星野は人指し指を立てて顔の前で振る。
「分かってないなぁ。予選を勝ち抜いた全国の十校しか出れないんだよ」
「げっ!?本気で凄いぞそれは!!」
「ふふん、クドーでも分かるかい」
失礼な言い分だが、凄いのは良く理解できた。…道理で練習熱心な訳だ。
ふと僕は気になった事を尋ねてみる。
「で、星野はどんな役なんだ?出るんだろ」
演技力は素人の僕が見ても優れた物だ。間違いなく主要人物を演じるはずだ。
「………」
「どうした?出るんだろ?」
「ああ…笑うなよ」
「うん。……で?」
「………敵国の王子役」
一時間目の授業、僕は頭の痛みに耐えるしかなかった。
恨むべくは自分の笑いの堪え性の無さだ……
時折隣の席から三上さんが、同情と呆れ半々の視線を送るのが辛かった。
【GIRL SIDE】
先生の声が聞こえる中、私はそっと隣の席を見る。
視線の先には工藤君がかなり辛そう(痛そう?)な顔で授業を聞いている。
あんなに大笑いしたら杏奈ちゃんだって怒るよ…
それにしても…羨ましいな。
再び私は視線を動かし一番前の杏奈ちゃんを見る。
……私にはあれ程楽しそうに工藤君と話せない。緊張で心臓がバクバクして言いたい事の1割も言えない……
結局原因は私の気の弱さなのだ。お姉ちゃん達に言われた事が頭をよぎる。
『口に出さないとダメ』
分かってはいるんだけどな…
誰にも聞かれない様、内心で溜め息を吐く。
『はあ…』
!!工藤君がこっちを見てる!!私は恥ずかしくなってつい下を向いた。
…ますます落ち込んでしまう…はぁ……
投下終了です。
感想を頂きありがとうございました。
なんとかちょっとずつでも書き溜めて、再び投下したいと考えてます。
では。
GJ !!
でも杏奈ちゃん、撃墜されちゃうんでしょうか?
GJ!
続きが楽しみ
関係ないが最近プレイしたゲームでほぼ
>>91 と同じシチュに遭遇してわろた
,r;;;;ミミミミミミヽ,,_
,i':r" `ミ;;,
彡 ミ;;;i
彡 ,,,,,、 ,,,,、、 ミ;;;!
,ゞi" ̄ フ‐! ̄~~|-ゞ,
ヾi `ー‐'、 ,ゝ--、' 〉;r'
`,| / "ii" ヽ |ノ
't ←―→ )/イ
ヽ、 _,/ λ、
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,. -‐ '| |
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/ :::::::::::::| 衆議院解散しろ rニ-─`、
. / : :::::::::::::| `┬─‐ .j
〈:::::::::,-─┴-、 |二ニ イ
. | ::/ .-─┬⊃ |`iー"|
,r;;;;ミミミミミミヽ,,_
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彡 ミ;;;i
彡 ,,,,,、 ,,,,、、 ミ;;;!
,ゞi" ̄ フ‐! ̄~~|-ゞ,
ヾi `ー‐'、 ,ゝ--、' 〉;r'
`,| / "ii" ヽ |ノ フフン
't ←―→ )/イ
..!ヽ、 _,/ λ
| ̄ ̄ ̄〉,ァ''" .\` ̄//゙ア´ ̄`/ ̄ ̄ ̄ ̄| ビリィィィ
| `r´、、__ l ! ィ彡,ャァ'" ,,..,,、\ |
,-┴-、 〈.,, ``''ヽ,,, ''"´ ゙''ヾミ,r/.く |__
/ .-┬⊃衆議< ,;,, ;;; ,,;; ,fr::<,しろ rニ-─`、
! ;;ニ| / ';;;;;;;;;;;' ,!;V:.:ノ `┬─‐ j
\_| < ':;;;;;:' ,;;/;;:.:/:〈 |二ニ ノ
| < 人__,,,;;;;;ノ/N/:/:.< |`ー"
∧∧ ∧∧
カタカタ../支 \ カタカタ/支 \
(`ハ´# ) カタカタ < `ハ´*> カタカタ
_| ̄ ̄||_)____ _| ̄ ̄||_)____ ___| ̄ ̄||__ ___
/旦|――||// /| /旦|――|l// /| / |――|l// /|
| ̄ ̄挑発 ̄| ̄| . | | ̄ ̄煽り  ̄l ̄| . | | ̄ ̄逮捕 ̄| ̄| . |
|_____|三|/ |_____|三|/ |_____|三|/
∧∧ ∧∧ ∧∧
カタカタ../支 \ カタカタ/支 \ カタカタ../支 \
( `ハ´*) カタカタ (`ハ´# ) カタカタ (`ハ´# ) ウェハッ
_| ̄ ̄||_)____ _| ̄ ̄||_)____ ___| ̄ ̄||_)___
/旦|――||// /| /旦|――|l// /| /旦|――|l// /|
| ̄ ̄ 釣り ̄l ̄| . | | ̄ ̄否定 ̄| ̄| . | | ̄ 荒らし. ̄l ̄| . |
|_____|三|/ |_____|三|/ |_____|三|/
∧∧ ∧∧ ∧∧
カタカタ../支 \ カタカタ/支 \ カタカタ../支 \
( `ハ´*) カタカタ (`ハ´# ) カタカタ (`ハ´# ) ウェハッ
_| ̄ ̄||_)____ _| ̄ ̄||_)____ ___| ̄ ̄||_)___
/旦|――||// /| /旦|――|l// /| /旦|――|l// /|
| ̄ ̄擁護 ̄| ̄| . | | ̄ ̄誘導 ̄| ̄| . | | ̄マッチポンプ| ̄| . |
|_____|三|/ |_____|三|/ |_____|三|/
∧∧ ∧∧ ファビョ━(´ ⌒`)━ン!!
カタカタ../支 \ カタカタ/支 \ ∧||||∧
( `ハ´*) カタカタ (`ハ´# ) カタカタ <`Д´; > アイゴー
_| ̄ ̄||_)____ _| ̄ ̄||_)____ ___| ̄ ̄||/_)__
/旦|――||// /| /旦|――|l// /| /旦|――|l// /|
| ̄ ̄自爆 ̄| ̄| . | | ̄削除依頼| ̄| . | | ̄ ̄火病 ̄| ̄| . |
|_____|三|/ |_____|三|/ |_____|三|/
死ぬとか死ねとか……
お前らさ・・・実際に死体とか見たことある?
あるわけないよな
あったらこんなスレ気軽に立てないもんな
俺はあるよ
昔俺がまだ小学生だったころ首吊り自殺の死体を見たことが
すげぇ怖かったよ・・・野次馬根性丸出しで見に行ったのを心底後悔したね・・・
顔も体もガスでパンパンに膨れて・・・
目がキツネ目になってて・・
体中土気色で・・・
何か体が動いたと思ったらそれは蛆だったよ・・・
そんでな・・・怖くて泣きながら帰っておじいちゃんに抱きついた・・・
そしたらおじいちゃんポンと俺の頭のうえに手を置いて撫でてくれた・・・
おじいちゃんの手はゴツゴツしてて撫で方も荒っぽかったけど温かかった・・・
そして飴を一粒くれた・・・
美味しかった・・・・
その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、
きっと特別な存在なのだと感じました。
今では私がおじいちゃん。孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら彼もまた特別な存在だからです。
思うんだ。
荒らしは、このスレにだけは絶対にいてはいけないと。
何も言えない、気の弱い娘たちしかいないから。
震えながら、
「そ、そゆことするの‥‥良くないです」
大きくないけれど、なんとか声を振り絞ることしかできない。
怖い思いをしながら、それでも勇気を振り絞る娘っ子たちしかいない場所だから。
「そ、そゆことするの‥‥良くないです」
その言葉に見たからにワルそうな男(便宜的にARASHI君と名づけよう)は過剰に反応した。
「あぁ!?んなめってんのかコラァ!?」
「ひっ・・・」
大声に思わず情けない声が出てしまう。
それを見たARASHI君とその他大勢は口々に囃し立てた。
「ヒュー!カーワイイ!ひっ・・・だってよ!」
「なんだよなんだよ、震えてんじゃん!」
「あんま脅かしてやんなよ!カワイソウだろ!」
「ってか俺結構タイプなんだけど。ヒヒッ、お持ち帰りとかしちゃっていいわけ?」
容赦なく降りかかるからかいと蔑み、それは言葉の暴力。
さっき固めた決意が恐怖で溶け出しそうになる。
だが、それでも―
「・・を・・・・は・・・・・・い」
「あん?聞こえねーよ!」
囲まれ、圧力を受け、恐怖で挫けそうになる心を奮い立たせ、
彼女は言った、自分の好きな場所を、自分の手で守るために、大きく、力強い声で
「スレを荒らすのは止めてください!」
けだるい午後の昼下がり。
ヴェルタースオリジナルを舐めながら新刊のラノベを読む。
普段なら友人の音くんと喋って昼休みを過ごしているが、昨日買ったばかりのこれを早く読みたかったのだ。
それになんか音くん、今日は朝から不機嫌だし。
「あらしは死ね‥‥氏ねじゃなく死ね」とか物騒なことを執拗につぶやいているし。
それもあって読書にいそしんでいたが、今回のはハズレっぽい。
好きな作家の新シリーズだったんだけど、続刊は買わなくてもいいかな。
僕がそんなことを考えながらページを進めていると、か細い声が聞こえてきた。
「どぉしよう、友ちゃん‥‥」
不安そうな声で小さくそう言ってきたのは、幼なじみのナオだった。
時折ちらちらと少し離れた席の音くんを見ている。
やれやれ。
「また、なにかやったんだ?」
「うっ」
全て理解した。
言葉ではなく心で。
ナオ=気が弱くドジっ娘設定。
僕の中で「ドジっ娘」はかなり萌え度が高い。高いと言うよりもむしろ、クィーンオブMOEと言っても過言ではない。世界はドジっ娘で埋め尽くされるべきだ。
だが、そんな僕をもってしても「現実のドジっ娘ってウザイナー」そんなことを思わせる少女、それがナオだった。
妹がいる人間は妹萌えにならず。
姉がいる人間は姉萌えにならない。
なら、ドジっ娘が側にいる人間はドジっ娘萌えにならないかといえば否。
現実のドジっ娘に絶望するからこそ二次元に‥‥至高の次元にて夢を追いかけるものなのだと、僕はこの齢にして悟った。
ちなみに音くんはツンデレ派であり、ドジっ娘とツンデレ。どちらの萌え度が上かを時折議論している。
それはともかく。
「で、今度はなにしたの?」
静かに聞いてみる。
うっ、と何度か僕から目をそらし、未だ不機嫌そうな音くんに視線を向けると。
「その‥‥あらし」
小さく答えた。
146 :
nao:2008/03/28(金) 11:47:17 ID:W0KfirwO
おんなに面識がない
と、こんなツンデレ萌えーツンデレサイコーってなって
くんの?そもそもツ
ンデレの女って何?たんに気持ちに正直じゃないってだけで
すね?そんな女って、なんか
きもち悪くない?
147 :
nao:2008/03/28(金) 11:47:44 ID:W0KfirwO
縦読みにてなんとか許せるかもしれない冒涜を‥‥ツンデレに対してだから僕はなにも感じない文章を、目の前のドジっ娘はなんと改行に失敗してレスしたらしい。
音くんがよくいくツンデレ板で。
それであれか。
『あらしは死ね‥‥氏ねじゃなく死ね。あらしは死ね‥‥氏ねじゃなく死ね。あらしは‥‥』
まだつぶやいてるよ。
席が離れてるから直接声が聞こえてくるわけでもないけど、唇が動いているのは見える。
THE・読唇術。
いや嘘だけど。単純にまだつぶやいてるんだろうなと予想しただけ。
「それで、何でそんなことしたの?あらしはメッて教えただろ?」
メッ、と改めて軽く叱っておく。
「‥‥うん、音くんってどんなのが好きなのかって思って‥‥それでユウちゃんに相談したら、なにか印象に残る書き込みすればって言われて‥‥」
それで結果はあらし?
「はぁ‥‥」
深いため息を付く。
やれやれ、どうしたものか‥‥
とりあえず、保守代わりに。
お目汚しですいません。
ステージの上で演技をする星野を見て思う。
…やっぱり凄いと。
軽口を叩き、手がすぐに出る普段の姿からは想像出来ないが、演技を目の前にすると
感嘆の言葉も憚られる。
いつしか僕は時間の経つのも忘れ、演技に引き込まれていった。
「遅くまで悪いな、付き合って貰ってさ」
「いいさ。それに良かったよ」
「ほうほう…中々クドーも分かるじゃない」
もっとも素直に僕は誉めたりしない。
「星野、才能あるよ。
男役させたら日本一だ」
乾いた音が響き、僕の頭に衝撃が走った…
授業が終わってすぐ、僕は星野と三上さんに呼び止められた。
「クドー、ちょっと付き合えよ」
「僕にも都合と…」
「あるのか?暇人に」
…不本意だが目の前の(男役)少女の言う通り。暇ではある。
「も、もし良かったら…み、見に来て欲しいな…」
三上さんが躊躇いがちに声を掛けてくる。
「演劇部の?」
三上さんは首を縦にコクコクと何度も振る。その動作が何となく小動物を思わせ、微笑ましい。
「でも、邪魔にならないかな?練習とはいえ、部外者が…」
「そ、そんな事ないよ!!」
三上さんの意外なまでの強い声に僕も星野も驚く。
「あ、ご、ごめんなさい…で、でも見に来て欲しい…」
「う、うん。そう言ってくれるのは嬉しいんだけど…」
「あー、ごちゃごちゃ言うな。クドーは黙って付いて来い!!」
首の後ろを捕まれ、そのまま引っ張られる僕。
「って、星野…絞まってる…は、はな、せ…」
「あ、杏奈ちゃん。工藤くん苦しそうだよ…」
おろおろしながらも後をついてくる三上さん。
…三上さん、止めて欲しいんだけど………
かくして僕は演劇部の練習を見学をし、現在三上さんと星野の二人と
一緒に下校している訳だ。
幸いにも他の部員から邪険にされる事もなく(逆に生暖かく見られた?)、
僕は見学に集中できた。
「にしても…三上さん」
「えっ?な、何か!?」
「僕いない方が良かったかな?」
「えっ!!な、なんでそんな事言うの!!」
本日二度目の三上さんの意外なまでの大声。
…さすが演劇部。
「三上っち、ちょっと声大きい…」
「あ、ご、ごめんね…でも、どうして…」
「いや、なんかさ」
堂々と演技を行っていた星野と比べ、明らかに三上さんはあがっていた。
台詞は何度も噛むわ、何もないステージ上で転ぶわ。その度にこっちに目をやっては
慌てて視線を反らす。
誰が見ても僕の存在が三上さんの集中を乱していた。
「まあ、仕方ないさ。人に見られると緊張するのは、あたしもだし」
星野が三上さんをかばう。
「…星野が緊張?」
「お前な、あたしだって緊張位するんだよ。今日だって二度程トチったし」
それは気付かなかった。何よりこの心臓に毛どころか針が生え…
ギューッ
「いひゃひゃひゃ!!」
「お前が失礼な事考えてるのは分かるんだよ!!」
これまた本日二度目の制裁で腫れた頬をさする。今日一日で何mmか顔が大きくなった筈だ…
「く、工藤くん」
三上さんに声を掛けられる。
「た、確かに今日あがってたけど…で、でも見に来て欲しいの」
「三上さん…」
「わ、私、が、頑張るから明日も…また次の日も…見に来て…」
「クドー、歓迎するからさ。暇な時は顔出してくれよ。皆に張り合いでるからな」
いつもよりハッキリと意思を表す三上さんに同意する星野。
…ただ、星野の顔は『お前何時だって暇なんだろ』と言ってはいるが。
「お前な…失礼な事考えてるんじゃないよ、殴るぞ」
「星野、せめて殴る前に言えよ…」
やれやれ今日何回目だ。
交差点で三上さんと別れた後、少し星野と歩く。
「…そういやさ」
「うん?どうした?」
「クドーと帰るの久しぶりだなと思ってさ」
しみじみと星野が語る。
「…そんなに久しぶりかな。精々一年位前の話だろ」
「まあね。中学以来だしさ。………」
星野が何かを呟いた気がしたが、気のせいか?
「クドー、明日も来るんだよな?」
「多分ね。星野や三上さんを見に行くよ。でもさ…」
「ん?何だよ」
「一回、星野のヒロイン役を見たいもんだなと」
どうしても女性ばかりの部員だと、長身の星野は男役に回ってしまう。
本人の希望は分からないが、こいつなら堂々とヒロインを務める筈だ。
「一応、練習はしてるんだ。いつも…」
「いつもって…?」
「今までの台本で。あたしだってヒロイン役やりたいけど、ワガママ言えないし」
星野の顔から無念さが伝わる。そうだよな…
「なんか台詞言ってみてくれよ」
「えっ!?」
「お前のヒロイン振りを見たいからな」
星野は少し躊躇っていたが…
「ちょっとだけだぞ……『あなたをお待ちしておりました』」
「…ほぉ」
「…合わせろよ。ほら」
「え、…『おお、うつくしいひめぎみよ』」
我ながら台詞を棒読み、かつ陳腐なのが情けない。
「『何故、貴方は訪ねて来てはくれなかったのですか?…寂しくてなりませんでした』」
「『すまぬ、ひめよ』」
「『でも、貴方は私に会いにきて下さいました。それだけで…』」
夜道の街灯に星野の顔が照らされ、その整った顔に思わず視線が釘付けになる。
「……ぷっ、あはははっ」
突然星野が笑いだした。
「な、なんだよ。いきなり…!!」
「だってクドーが間抜け面で見るからさ…ぷ」
思わずむっとなる。
「笑うなよ、仕方ないだろ。つい見とれたんだから」
「何にだよ?エロ看板なんてあったか?」
「お前だよ」
多少の意地悪さを込めて言い放つ。同時に防御姿勢をとる自分が悲しい…
しかし、反撃は来なかった。
「………」
しばらく星野は無言だったが、
「また明日な、来いよ」
の一言を残し、先に帰ってしまった。
なんかまずい事言った…って最後のアレで気を悪くしたか。
明日朝一で謝るか…
どうも僕、工藤亮太の欠点は調子に乗って余計な事を言ってしまう。
今までそれで何度か失敗したのになぁ…
【GIRL SIDE】
お風呂から出た私を捕まえたのは、お姉ちゃん。
「由梨、今日はどうだったのかな〜?」
途端に私の顔が赤くなるのが自分でも分かる。
だって…
「その顔は…!!由奈、おいで!!由梨に進展が!!」
止める間もなく、お姉ちゃんは妹の由奈を呼んだ。
と手を引っ張られて部屋へ連れこまれる。
「お、お姉ちゃん…」
「由梨姉に進展って!!」
ああ、由奈まで…
私の話が終わると二人は溜め息を着いた。
…失礼な。
「…由真姉、あたし思うんだけどさ」
「わかってる…やっぱり私達が…」
二人は私に背を向けて何やら内緒話を始めた。普段は口喧嘩する割りにこういう時は仲が良い。
私は今日の事を思い出して一人嬉しくなる。
『工藤くんとお話出来ちゃった…それにまた明日も』
「由梨姉…また浸ってるけど?」
「しっ。由奈、だから明日…」
何か話す二人の声も気にならない。私にとって今日は実りある一日だった。えへへっ。
思わず笑いが溢れてしまう。日記につけよ。
「…たくあのバカ…」
あたしは今日何度目かのこのフレーズを口にする。
本当に危なかった。
『お前だよ』
あの言葉があたしを堪らなく揺さぶり、そして危うくさせる。
恐らく本人は無自覚に言ったとは思うが。
つい言われた瞬間に爆発しなかった物だ。
あたしの忍耐強さを自分で褒めたくなる。
あいつクドー、工藤亮太はただの友達なんだ。
友達でいたいんだ。
友達じゃなきゃ…
でも……でも……でも!!
思考はグルグル回るだけで、一歩も進まない。
…あたしには勇気がない。思った事を素直に言うだけの勇気が…
投下終了です。
タイトルを付けたいんですが、思い付かない…
>155
GJ!
つか、星野まで絡んで来るのか
由梨ちゃんピンチだな
ガンバレ!
GJ!
ここだけでなく、「気の強い娘がしおらしくなる瞬間に…」スレも好きな俺のためとしか思えない展開!
勇気を出すそのときを2人分wktkできるなんてたまらん。
連投スマンす。
>>155さん、愚案だけどタイトル案「アクトレス」はどうかな?
本来の意味と、アクションをなかなか起こせない(actress/act-less正しい英語か知らんけど)ってことで。
いいもの読ませて貰えるお礼に、せめてタイトル付けのヒントにでもなれば…
159 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/31(月) 07:57:39 ID:no9OV3yg
保守上げ
なんというwktkな展開
是非とも三上さん√と星野さん√を用意して欲しいw
161 :
155:2008/04/02(水) 21:56:44 ID:IJOETPjV
>>154の続きです。
なお、タイトルを
「アクトレス」とさせて頂きます。
>>158さん、素晴らしい名前をありがとうございました。
では投下します。
「………」
言葉も出ない。小テストとは言え、0点というのは果てしなく不味い。
「…おい」
まして期末試験を一週間後に控えたこの時期に。
「聞いてるか?」
これは大問題だ。かなりの試験勉強が…
ゴン!!
痛みで現実に帰る。
「あんまり人のテストで現実逃避するな!!本気で悲しくなるだろが!!」
星野の怒った顔が視界に入る。
この0点の答案は僕、工藤亮太の物では無い。目の前に立つ、星野杏奈の物だ。
休み時間に昨日の失言を謝ろうとした、僕の視界に入った物。それがこの答案だった訳だ。
「かなり不味いだろ、その点は…」
「わ、わかってるさ!!そんなのは!!」
「でもお前頭は悪くないだろ?実際のところ」
僕の通う高校、つまりこの学校は一応進学校とされている。
入るのにもある程度の学力は試される筈だ。
「あ…実は、この所…」
「寝てたな」
「違う!!内職して台詞の勉強してただけだ!!」
…別に威張る事じゃないだろ。
予鈴が鳴り席に戻ると
「く、工藤くんはテスト出来たんだよね?」
三上由梨さん―僕の隣の席だ―に声を掛けられた。
「あ、今の見てた?」
「う、うん。それに確かテストの時もわりとすぐ出来たみたいだし…」
「まあね。でも僕の様子なんかよく覚えてたね、三上さん」
「ふぇっ!?あ、あわわ」
「…カンニング?」
「ち、違うよっ!!」
意外なまでのリアクションに驚いていると…
「工藤、三上。授業を始めたいんだが良いか?」
いつの間にやら先生が教卓の前にいた。しかも笑いを堪える表情だ。
「あ、すみません」
「なんなら、もう少し続けても構わんぞ」
教室は大爆笑。ちぇっ、また失言しちゃったよ…
本日最後の授業が終了し、放課後の解放感を味わう。
「クドー、あたしら先に行ってるから来いよー」
「忙しかったら別にいいけど…出来たら…」
演劇部員二人に声をかけられる。僕はそれには直接答えず、小さく手を振る。
「格好つけても似合わないぞ―!!」
…うるさい、王子様め。
今日の練習見学も終わり、昨日に引き続き二人と一緒に帰る。
「三上さん、今日は落ち着いて練習してたね」
「ううっ…き、昨日は偶々だもん…」
ちょっと膨れる三上さんの頬。小さい子がよくやる仕草だ。
「まあ確かに昨日は……三上っちの上がりっぷりベスト3には入るからねぇ」
「あ、杏奈ちゃんまで!?酷いよ!!」
星野とまるでタイミングを合わせたかの様に、三上さんをいじる。
……結構楽しい。
もっとも効果があったのか、三上さんの口調が少しくだけた物に変わりつつある。
いい傾向なのかな?
「でも、今日でひとまず練習は休みなんだろ?試験前なんだし」
どこの学校でも、試験一週間前は部活動を休む筈だ。建前上は学業優先なのだから。
「いや、それがさ…」
顧問の先生が学校に許可を取り、短時間ながら毎日練習とは……
「……………」
「そんな目で見るな!!」
「赤点取ったら真剣に不味いんじゃないのか?」
「ううう…」
星野は今回頑張らないと相当不味い。進級はともかく、補習が入れば
練習どころでは無くなる。
「ね、ねえ工藤くん?」
三上さんが僕を見る。
「あ、あの…べ、勉強教えて貰える?」
「おおっ!!三上っち、冴えてる!!そうだな、クドーは性格悪いけど頭はそこそこ良いからな」
失礼な奴だな…
「私も今回不安だから…土日のうち一日でも……駄目かな?」
三上さんが上目遣いで僕にすがりついて来る。
……正直ちょっと可愛いので困る。
「クドー、あたしからも頼む!!教えてくれ!!」
星野も少し真剣に頼んできた。断れないね。
「いいよ、どうせ勉強はするんだし。土曜でも構わないかな?」
この後、土曜の昼から三上さんの家で勉強会をすることが決まった。
最初三上さんが僕の家を希望したが、僕と星野の反対で三上さんの家に決定。
しかし星野。
「クドーの家に行ったら何されるか分からない」
…いくら何でも酷くないか?
【GIRL SIDE】
帰って来るなり部屋の掃除を始めた由梨姉。
私が尋ねると
「なんと工藤くんが土曜来るの〜♪」とかなりのハイテンション。
やれやれだ…
しかも詳しく聞いてみると、もう一人女の子が付いて来るらしい(ライバル?)。
浮かれて洋服なんか出してる場合じゃないよ……由梨姉……
やっぱり由真姉と相談しないと。…由梨姉には幸せになって欲しいしね。
ああ、そっちの可愛い系は止めなよ。もっと大人っぽい服を……
えっ?持ってない?
由真姉ー!!服を貸してあげてよ!!
由梨にも困ったものね…
せっかくの勝負服(下品にならない程度のセクシーなやつ)を貸す羽目になってしまった。
あれまだそんなに着てないんだけどな。
結構高かったし…
由奈の話では彼、工藤君と一緒に友達も来るようだ。しかも女!!
…私の桃色の脳細胞では恋のライバルに間違いないわ。
由奈と相談して、由梨をしっかりアピールしないといけないわね…
ん〜っ!!燃えてきたぁ!!
はあ…クドーの奴絶対気を悪くしたよな……
あんな酷い事を言われたら、あたしだったら間違いなく殴る。
もう少し、もう少しだけ…素直に「ありがとう」が言いたいな…
それに…三上っちはやっぱり……あいつの事を………?
投下終了です。
おいしくいただきました
168 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 00:03:58 ID:dXHHDKgn
165
姉妹がアピールしてくれるのか
いいお姉ちゃんと妹を持ったな、由梨ちゃんは。
少しだけど書いてみました。
投下します。
「はあ…」
昼休み。
私は本日何回目かわからないため息をついた。
彼を見ながら…
「ち〜あ〜き!」
「あ…ひかりちゃんとゆかちゃん…ご飯食べたの?」
二人は私の親友のひかりちゃんとゆかちゃん。
二人とも明るく元気でいつも私は二人に振り回…いえ、引っ張ってってくれます。
「いま食べてるじゃん。…また真田くんの事見てたね。由夏」
「じっと見つめてたね。いやらしく…」
「そんな目では見てないよ〜…ていうか見てないよ…」
「顔真っ赤だし。」
「本当ちあきは顔に出るねーまあそこが面白いんだけど♪」
私はいつも二人に弄ばれています。
というかクラスの女の子からは大体そんな感じです。
でも二人がいなかったら私は他の人と話せなかったでしょう。
だから二人には感謝してて、大好きです。
「千秋ならいけるよね。意外とスタイルいいし。」
「背はちっちゃいのにね…羨ましい」
「そ、そんな…」
「でもな〜あと二百倍積極的にならないと…真田くんバ…いや天然だから気付かないよ?」
そ、それはわかってるんだけど…
クラスでも結構人気だから…私じゃ無理だよぉ…
「が、頑張る…」
「その台詞、50回は言ってるね」
由夏ちゃんは容赦ないなあ。
「絶対千秋にもチャンスはあるから頑張りな!」
「ひかりちゃん…ありがとう…」
確かにもっと話したいなあ。
今のままじゃダメなことは分かってるんだけど…
席隣なのに…
辛うじて「おはよう」って言えるぐらいだもん。
前に進まなきゃ…
前に進む勇気ってのは与えられるものじゃないから自分で掴まなきゃダメだよね…
「ただいま…」
「おかえり〜」
出迎えてくれたのは唯お姉ちゃん。
私とは正反対の性格で彼氏もいて、憧れちゃいます。
お姉ちゃんを見習わないとな。
「何でもいいのよ。とにかく喋ること。数が大事よ!」
「た、例えば?」
「そう言えば彼バスケ部だったよね…今度の試合いつ?とか」
真田くんはバスケ部でバスケをしている時は別人みたいに格好いいのです。
結構有名みたい…
普段の彼もバスケをしてる時の彼も好きです//
「まあなんでもいいけど話さないと始まらないからね!」
「は、はい!」
やっぱり話せてないのね。
う〜ん。まあ急に話せと言っても無理な話か。
なんかきっかけがあればいいんだけどね。
あの子の悲しむ顔は見たくないし。
ま、私もアドバイスぐらいはするからがんばんなさいよ。
ふう。
もう寝よう。
そろそろテストと文化祭だ。
明日はしゃべれますように…
大好きな真田くんと…
やべぇ…
テストのこと忘れてた。
赤点だと部活出れねぇし。
なんでそんな漫画みたいなルールが…
よし。早く行って勉強しよっか。朝練ないし。
よっしゃ行くか!
あれ?早過ぎた。
誰もいねぇや。
ま、いいか。それじゃ数学から…
ー十分後ー
「くっそぉ…なんだこれ…」
やっぱ一人じゃこうなるのがオチか。誰か来ねぇかな…
ーガラガラー
来た!
川元さんだ。
ん……?なんかすごいキョロキョロしてるぞ。
なんだ犬でもいんのか?
お、やっとこっち来た。
なんでそんなに下を向くんだ?
ま、いいや。これ聞こう。
急がば回れだ!
「おはよう。川元さん」
「あっ…お、おはひょ!き、今日は早いんだね…」
「うん!明日テストだからね!あ…そうだ!ここ教えて」
「ええっ!わ、私がそんな大役…」
「えったい焼き?好きなの?」
「そ、そんな嫌いではないような…」
「まあそれはどうでもいいから教えて!」
「は、はい…!」
「うん!わかった!川元さん教え方上手いっす」
「……!そ、そんなこと!」
ん?顔赤いぞ?
熱あんのか?
「本当にありがとね!あ、風邪には気をつけてね!」
「う、うん」
これで何とかなるかな。
川元さんに感謝だ。
それにしてもすごくオドオドしてたな。
なんでだろ?
ひゃ〜。
真田くんと話してしまった。
しかもたぶん過去最長だ!
凄い緊張したけど凄い嬉しい!
神様ありがとう!
「…ねぇ由夏。」
「うんわかるよ。だって一人でニヤニヤしてるもん。真田くんも不思議そうな顔して見てる…原因作ったのあなたですけど」
「もっともっと二人を近付けないと…あっ、そうだ!」
「なに?」
「今日文化祭の係決めじゃん。それで…真田くんと…」
「ほうほう。それいいね!」
「ち〜あき!」
「ん?なに?」
「文化祭の係の事なんだけど…あの係一緒にやろう!」
ひかりちゃんがビシッと指を指します。
「うん…いいよ!」
二人が一緒なら楽しくやれそう!
その時二人がなんかニヤリとしたけど…まあいいや!
係決め…六時間目か…ふ〜ふ〜ふふ〜ん♪
以上です。
今後も期待
176 :
保守代わりに:2008/04/13(日) 23:05:36 ID:FLpbiG6W
「……気の弱い娘ねぇ」
母が私を評していつも発する言葉。
身内にも言われるまでもなく、本人である私には十分分かっている。
でも、
「私、○○君の事好きなんだよね。……応援してくれるかな?」
親友の口から彼の名前が出た時に、
「……真菜?」
どうして私は、
「う、うん。応援する」
片想いしてる、自分の気持ちを、
「ありがとう!!」
正直に言えなかったの?
親友の恋が上手く行かない事を願う、なんて私は嫌な女なんだろう。
こんな女を好きになってくれる筈もない…
私は心を殺して親友を応援することにした。
した筈だった。なのに。
「真菜、振られちゃったよ。○○君、好きな女の子いるんだって」
そう言って泣く親友を慰める私の心は弾む。
『もしかして』
私の手による一通の手紙。
『放課後、教室で待っています』
短い一文を、彼の机に忍ばせるだけでもドキドキした私。
……でも、もう後悔はしたくない。
今からありったけの勇気を振り絞って。
「あ、△△さん…!?」
私は彼に告げる。
「○○君…貴方が好き」
告白と、昨日までの気の弱い私に決別するための言葉を。
うーん、なんかこの展開だと振られた友達が襲ってきそうだな
もちろん性的な意味で
保守
保守
保守
保守
182 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/01(木) 13:01:02 ID:2XrNmyOc
過疎につきage
う〜ん、住人が少ないとは思えないんだけど過疎ですな…
質問で流れを変えてみようか。
「気弱な子が勇気を出すスイッチとなるシチュとは一体何か?」
誰かの書く材料になるかもしれないし。
>>183 声フェチの男にエロ小説読んでくれと頼まれる
その男が好きな弱気娘は途中から登場人物の男・女を男・自分に
置き換えて読み始める→やっちゃう
とかマンガであった
部屋掃除したらでてきて久しぶりに読んだら悶えたw
「お母さん……」
晩御飯の献立を考えていた私に、娘の香織が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「私に…料理を…教えて欲しいの」
…本当に珍しい。香織が自分から物を教わりに来るなんて。
「いいわよ。でもどうしたの?急にそんな事を言うなんて」
「う、うん。実は…」
私は娘の発言を手を挙げて遮り、台所へと向かった。
長くなりそうな話の御供へお茶とあるものを準備するために。
「永井、母さんの具合どうなんだ?」
「お陰さまでな。なんとか手術は成功した」
「良かったな!!退院はいつ頃なんだ?」
「う〜ん、あと半月だろうと医者は。でもなぁ、もっと早くなんねぇかな…」
「無茶言うなよ。無事だっただけ有難く思わなきゃ」
「分かってるさ…でも実際俺の食生活も分かってくれよ…」
香織の話を聞いた私は一旦整理するため、口に出して香織に確認を取る。
「クラスメートの子、永井くんのお母さんが入院して、今永井くんは家で一人と…」
「うん、お父さんは単身赴任中だって」
「年頃の男の子だから料理はできず、食事は大体外食なのね?」
「う、うん。でも…」
「お金がかかるから最近は出来合いのお弁当が朝昼晩と続いている…か」
食べ盛りの子がそれではきついに違いない。
「その永井くんには嫌いな物はあるの?」
「特に…ないみたい」
「そう。…で」
私は気になる点(とは言え分かりきった答えだが)を香織に聞く。
「香織は永井くんの事が好きなのね?」
ベフーッ
盛大にお茶を吹き出す我が娘。…人前ではやらないでね。
「おおおお母さん!!」
「別に隠さなくてもいいじゃない。違うの?」
「うう〜」
そんな顔してもだめ。そんな状況で料理を習おうなんて、余程母性のある子かその男の子を好きな子でしかない。
香織は…明らかに後者の方だ。顔は真っ赤だし。
「ならいい料理があるわよ。男の子の心をがっちり掴む、お母さん必殺メニューが」
「ひ、必殺!?」
「これを食べればあら不思議な事に、作った女の子へベタボレ」
「だから…そうじゃないってば…」
だから、真っ赤な顔だと説得力ないわよ、香織。
「だってお母さんもお父さんをゲットした料理だもんね〜」
「そ、そうなの!?」
「ええ。それが…このページに」
私はお茶と一緒に持ってきた、レシピノートを開きあるページを指差す。
「……勇気シチュー?」
もちろん、名前がオリジナルなだけで普通のビーフシチューだ。
「作り方にコツがあるのよ。お母さんもお婆ちゃんから教わった、由緒ある料理よ」
「…作りたい…かも」
なら決まりだ。
「じゃあ、今日作ってみましょう。香織、手伝って貰うわよ」
あれから二ヶ月。
「行ってきます、帰りは永井くんの家に寄ってくるから」
「あんまり遅くならないようにね」
「うん…行ってきます」
香織と永井くんの交際は順調のようだ。
あのシチューを作って持っていった香織は、どうやらその日に告白されたらしい。
泣きながら帰ってきた時は、真剣に心配したが。
なんでも「こんなに旨いシチューは食ったことがない」とひどく感動してくれたらしい。
あのシチューには特別な秘密はない。ただ、女の子が好きな人の為にじっくり愛情を込めて、
丁寧に作った物だ。
不味い訳はない。
「今日……作ろうかな」
香織は遅いだろう、久しぶりに夫婦二人でシチューも悪くない。
早く帰って来てね、あなた…いや亮太くん。
書きかけた物を放り出してまで、ついやってしまった………
投下終了したし、少し反省の旅にでてくるよ……
料理と一緒に食べてもらうわけですね、わかります。
GJ !!
GJ!!
ただ気になったと言えば、不味い訳はない、ってところ
それよりは、美味しくないはずがない、って言い方のほうがいいような気がする
ガヤガヤ…
「あ、あの〜……」
ガヤガヤガヤ…
「み、みんな〜静かにしてよ〜」
教卓から俺の幼馴染み、梨香が声を掛けるが、一旦騒がしくなった教室は止まらない。
「あ、あう〜…」
梨香が情けない顔で困っている。
あいつ童顔だから、ますます幼く見えてしまうのは気のせいなのか?
「ううっ…どぅして…」
まずい。あの表情は……
「ぐすっ…ひどいよ……もう知らないもん」
教室を飛び出した梨香を俺はあわてて追い掛ける。
背後から冷やかしの声が聞こえたが、そんなものは気にしない。
…あとで殴るが。
「ぐすっ……ぐすっ」
校舎の屋上に上がると梨香はべそをかいていた。
「おいおい、いつもの事なんだから慣れろよ。うちのクラスが騒がしいのには…」
「ぐすっ…謙ちゃん……わたし、一生懸命やってるのにぃ…」
「わかってる、梨香は真面目にやってるさ。
…あいつらだってそれは分かってる筈さ」
「…だったらどうして…(ヒック)…わたし…(ヒック)…どうして…」
むっ、意外に重症かもしれんな。
「泣きやめよ。泉挽屋のパフェ奢るからさ」
「…わたしのことまた子供扱いしてる…ぐすっ」
……しまった。選択を間違えたか。
「謙ちゃん、いつも食べ物で機嫌とる…やっぱりわたし…(ヒック)子供っぽいんだ…」
「そ、そんな事はない。俺にとっちゃ十分魅力的だy」
「…証明して」
そういうと目を瞑って、心持ち顔を上げる梨香。
…アレだよな。この姿勢と期待する顔付きは。
「…………」
仕方ない。俺は梨香の柔らかい唇を見つめ、ゆっくりと顔を近付けた…
この後、教室に戻った俺が首謀者三人(男子二人に女子一人)の頭をどついた事は言うまでもないだろう。
「謙ちゃん横暴!!」
「こらっ、星野!!
ちゃんと『上杉先生』と呼べって何回も言ったろーが!!」
>>185の『エロ小説を読む女の子』のネタが出来なかったので、これを。
キャラ造りはむずい…
>>191 アドバイスどうもです。そっちの方がしっくりきますね。
年の差スレでも大丈夫そうなネタですね。投下乙!
196 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/11(日) 22:00:47 ID:ioDwclgU
上に行く
>>193 GJ!!もっとやれ
お願いします。続きが読みたいです
保守がてら好きなシチュを妄想してみるw
・肝試しでペアを組まされる
・体育祭の2人3脚
・姉とか友人を通して男君への好意がばれる
>>198 下段かな、姉とか明るい友人に盛大に好意をばらされその場で固まるとか萌える。
200 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 00:54:54 ID:bGAm9tb1
上に行く
このスレはつまりアレか
逆レイプ
>>201 逆レイプと言うかエロい事を忌避してそうな女の子が勇気を出して自分から男を誘うのに萌えるとかかな?
ほしゅ
自分の中のギャルゲー気弱娘3強を挙げてみる
キミキス 星乃さん
Lの季節 弓倉さん姉←マイナー
エチュード 鮎瀬さん←超マイナーw
上の3人は全て最初から主人公のことが好きなのが萌えるw
気弱なのに3強とはこれいかに?
キミキスでは、まおねえとえりりんに転んだからなぁ……
あんまりヒロインの印象がなくて。
質問。気弱娘と合う属性ってのは何だろう?
>>205 鈍感で良い人、もしくは孤立気味の人でも良いかも
>>206 気弱娘に付加する属性という意味では?
幼馴染とか、クラスメイトとか、部活の後輩とか。
どじっことか、照れ屋とか、勘違い娘とか。
ふと思ったんだが、
気弱なツンデレというあえて真逆な属性はどうだろうか?
と自分で書いてて思ったがどんなものか全く想像できないw
>>207 そっちか!
たしかにそのほうがしっくりくる
>>208 気が弱いけど素直になれないとかはありだと思う。
気の弱いお姉さん(・∀・)イイ!!
基本は後輩や年下の幼馴染みのように、主人公より立場的に下の人物とかだな
年上の場合は事故に巻き込んだとか、主人公に負い目を感じている場合とかが思いつく
たとえば
主人公は人よりホンの少し正義感が強いだけのごくごく平凡な男子高校生
ある日近くの商店街で買い物をしていると、目の前でボール遊びをしていた子供がボールを追いかけて車道に飛び出してしまった
運転手はすぐに気付いてブレーキを踏むが間に合わない
主人公がとっさに車道に飛び出して子供を歩道に突き飛ばしたが、車を避けきれずに左手足を骨折してしまう
幸いそれほどひどい骨折ではなかったため、ドライバーの女性に対しては治療費の半分だけで良いと話したが、
「それでは申し訳が無い」と全額支払い、慰謝料なども払うと言って聞かない
そこへ事故の発端となった子供の姉がやって来て……
>>212 「彼の治療費は私が払います」
「いいえ私が」
「二人共落ち着いて」
こうでry
「僕が払います」
「「どうぞどうぞ」」
主人公名:竜兵
>>212 1、2歳ほど年上の幼馴染で気の弱い娘とかならありかも
>>216 結構年の差あっても平気じゃない?
新人女教師と教え子とか
>>217 見た感じクールで気の強そうなお姉さんだが、実は気が弱くて無口になりがちなだけとか?
誤解殺気?
220 :
名無しさん@ピンキー:2008/06/05(木) 00:55:33 ID:aFJOBFxX
上げ
>>219 何の事かと思ったら、こんなジャンルがwww
あずまんが大王の榊さん?
時刻表が貼ってあるだけの、簡素なバス停。
座席を確保して悠々と通学する為に、一時間も早いバスを待つのは俺くらいのものだと思っていたが。
今日も俺の隣に並ぶのは、早起き仲間(?)の少女。
といっても別段親しい訳でもなく、何となく目が合えば軽く会釈を交わす程度の間柄。
そのはずなのだが。
今なぜか、その少女に袖を摘まれている。
何事かと顔を向けると、不安げな、それでいて何か意思の篭った表情で。
「あの……」
ぽつり、と少女は語り出す。
「わわ私困ってて…でも…他に相談できそうな人居なくて……それで……」
見ず知らずとはいかないまでも、赤の他人のはずの俺に相談事を持ち掛けてくれるとは。
俺で良ければと頷き、続きを促す。
「わ…私と…」
一瞬間を置いて、やがて意を決したように、ぎゅっと拳を握り、言った。
「スレッドを保守してくださいっ!!」
そんじゃ俺も
いやここは俺が
「アクトレス」の続きが読みたいなぁ
保守
232 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 21:32:14 ID:5vB7xyWU
上げ
保守
234 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/16(水) 02:16:52 ID:/6pzfhA+
あげ
235 :
名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 18:47:31 ID:9nf2faYw
だ
い
す
け
>>238 …………分かってました。絶対こう言うって分かってました……。
だが、こう考えるのはどうだろうか。
普段は名字でしか呼べない片思いの男の名前を呼ぶ練習をしていると。
言った後は真っ赤になって恥ずかしがるも良し、
言えるわけないよね……、と落ち込んでいたところその相手に聞かれていて何か用?と言われて慌てるも良し。
主人公の名前を「だいき」や「だいすけ」にして「だいきだいすき」とか「だいすけだいすき」とかのダジャレ言わせるの禁止な
・・・じゃあ・・・・・・
だ・・・
る
し
む
…………分かってました。絶対こう言うって分かってました……。
保守
ヨーガッファイ
249 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/01(金) 01:52:51 ID:+Zst+rgA
保守
>>241 だが、こう考えるのはどうだろうか。
おにゃのこが「だいき」とか「だいすけ」とかいう名前の男に片思い中。
勢いで告白しようとするが土壇場でビビり言えずじまい…
結局名前を呼ぶことで逃げてしまうと。
「…だ……」
「なんだよ」
「…だ…い……」
「んだよ〜」
「…だ…い…す……」
「だからなんだってんだ!」
「…だいす……け……」
「おぅよ、オレがどうかしたかよ」
「だいすけだいすけだいすけだいすけ!!」
「わーったわーった、泣きながら人の名前を叫ぶんじゃねぇよ」
「ううぅぅ……」
正直、サンデー読んでて脳内に聞こえてきた音を別の状況に当て嵌めようと文字にするのは難しいw
252 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/05(火) 01:13:53 ID:EW9pPpN+
保守
253 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/07(木) 02:09:00 ID:zSFK3/YJ
保守
保守
保守兼投下
1
「・・・なんか飲む?」
いつも以上に無口になっている彼女に飲み物を勧めるが、予想通り返事はない。
緊張してるのかな?困ったものだ。
苦節18年。我が人生初めての彼女が出来て3ヶ月が経過した。
ウチに両親はいない。
自分(社賢治:やしろけんじ)が15歳の時、航空機事故で資産家だった両親が他界した。
親戚もいないので手元には莫大な財産と身体的、精神的な大きな傷だけが残された。
しかし、独り身になった自分にとって両親と過ごした館はあまりにも広く、そして寂しかった。
生前の両親が指名した担当弁護士さんと相談した結果、
館を引き払いワンルームのアパートを借りて生活することになった。
高校進学当初は寂しさに耐えきれず、
何度かホームシックになったこともあったがそれも克服した。
自分でいうのもなんだが、よく屈折せずにここまでやって来たと思う。
そんな自分にもついに春が来た。
同じクラスの高瀬七海(ななみ)さんに一目惚れしたのだ。
告白しようか迷っていたとき、大人しい性格である彼女の方から想いを伝えてくれた。
「き・・・・・・・・・君の事が・・・す、すす・・・・・・好きになっちゃった・・・」
途切れながらもまっすぐな告白だった。
勿論断る理由はない。自分も七海さんが好きだったから。
七海さんに続いて自分も想いを伝え、晴れて二人は付き合うことになった。
2
付き合い始めて3ヶ月になろうとした頃
「今週の日曜、俺のウチに来ない?」
と自分から誘ってみた。
案の定、七海さんは顔を真っ赤にして「あ・・・う・・・」と口をパクパクさせていたが
「予定があるなら無理しなくて良いよ?」と追加で言うと首を横に振って
「い・・・・・・行かせていただきます・・・」
とだけ答えた。
嬉しくて飛び上がりたい気持ちだったが我慢して、来る時間だけ約束してその日は帰宅した。
当日の日曜の朝、七海さんのために散らかった部屋を掃除中にチャイムが鳴った。
ピンポーン
まさかもう来たのか?まだ準備できてないよ?!
「ハーイ!今出まーす!!」
通常の三倍の速度で山積したエロ本を片付ける。
某赤い人も真っ青だろう。
大部分をクローゼットに放り込み、残った数札はマット代わりにベッドの下に敷いておいた。
ピンポーン
証拠隠滅は完璧だ。
フッ・・・独り暮らし3年目の名は伊達ではないのだよ!
ピンポーン
いかん、ついつい自画自賛する癖がついてきたな。
準備もできたし、そろそろ出ますか。
万を辞してドアを開ける。
3
ガチャ
「お待たせしま(ry」
「宅急便でーす。判子お願いしまーす」
目の前にいたのは、山猫トマトの作業着をだらしなく着た兄ちゃんだった。
「慌てて片付けて損をした。謝罪と賠償を請求するニダ!!」
心の中でそう叫び、恨みと憎しみを込めて判子を押す。
「ぁざーしたー」
荷物を渡し終えた山猫の兄ちゃんがドスドス立ち去る。
ダルそうにトラックに乗り込みエンジンをかけると、黒煙を上げながら走り去っていった。
その様子を不満げに見つめる自分。
ふと走り去ったトラックのところに目を向けると、本来の訪問者が立っていた。
腕時計をしきりに見ている。
約束の時間まで待っているつもりだろうか?
とりあえず手を振ってみたが全く気付いてくれなかった。
しかし、約束の時間まで放置するのもあれなんで、下まで降りて連れてくることにする。
階段をカンカン音をたてて降りたのに七海さんは未だに気付かなかった。
仕方ないので脅かしてみる。
「わっ!」
「ひゃっ・・・!」
彼女は思いがけない襲撃に体をビクッと震わせるが、
その襲撃者が賢治だと分かるとプウッと頬を膨らませて無言の反抗をした。
「ごめんごめん。玄関から待ってる姿が見えたからさぁ。
・・・もしかして約束の時間まで待ってるつもりだった?」
図星を突かれたのか、顔を真っ赤にした七海さんは下俯きモジモジしている。
いや、あまり喋らないのはいつものことなんだけどね・・・
「まだ約束の時間まで大分あるし、ここで話すのもなんだからまずは上がってよ」
返事が返ってくる前に彼女の手をとり、自宅まで引っ張っていく。
最初は手を触れたことに驚いたのか少し抵抗する様子だったが、
やがて手を引かれて後を追う形になった。
4
それで自宅にたどり着き今に至るんだけど・・・
七海さんを部屋へ招き入れ、ソファーへ座らせる。
ガチガチに緊張している彼女は何をするわけでもなく、
ただ手を膝の上に乗せたままチョコンと座っているだけだった。
何か飲むか尋ねてみたけどさっきから返事がない。
どうしようか決めかねていると不意に七海さんが声を出した。
「あ・・・あのっ!」
「どうしたの?」
「コーヒーと紅茶どちらにしようか迷ったけど・・・こ、紅茶が飲みたいな・・・!」
ウチへ上がってすぐに飲み物を尋ねたが、まさか30分も悩んでいたとは・・・
七海さんの注文を苦笑しながら確認する。
「アイスティーでいい?」
「うん」
「じゃあ少し待っててね」
そう言い残すとキッチンに置いてあるポットから、お湯を出し紅茶パックを投下する。
手抜きだと批判されるかもしれないが、独り暮らしを始めてから
ずっとこれを愛飲してきたので今更このスタイルを変える気はない。
お金が有り余っているからといって贅沢するわけにもいかないしね。
そうこうしているうちに紅茶がいい具合に煮出て来たので、ティーカップに移して持っていく。
「はい。お待ちどうさま」
「あ・・・ありがと」
食卓を挟んで向かい合うように座り一口啜る
うん、美味い。
七海さんの方を見ると小動物のようにチビチビと紅茶を飲んでいた。
視線を感じたのか、カップを食卓に置くと彼女が申し訳なさそうに口を開く。
5
「あの〜」
「何?」
「そんなに見つめられると飲みづらいよ・・・」
「ご、ごめん!あまりにも可愛くてつい見とれちゃって」
「か・・・!か、か、か、かわぃって・・・・・・」
臭い事を言って死ぬほど恥ずかしい。
七海さんも恥ずかしがってまた無言になっちゃったし。
あ、でも嬉しそうな顔してる・・・良かった、引かれないで。
再度室内が沈黙に覆われる。
今度は何話そうか悩んでいると
俯いていた七海さんが顔をあげ、頬を赤く染めながらこう言った。
「・・・社君もとっても格好いいよ」 と。
その瞬間、自分の顔がカァと熱くなるのがわかった。
気恥ずかしさに耐えきれず、お茶のおかわりを持ってくると言ってキッチンに逃げ込んだ。
一度落ち着かないと高揚で体がどうにかなってしまいそうだった。
ヤカンに溜めた紅茶をガブガブ飲んで気持ちを落ち着かせると、
再び七海さんの元へ戻ろうと振り返った。
するとそこには目を丸くして固まっている七海さんがいた。
手にはベッドの敷物代わりにしたエロ本が握られている。
「あ、いや、それは・・・あの・・・」
必死に言い訳を探すが、まともなものが見つからない。
七海さんは手にしていたエロ本元の場所にしまうと口を閉ざしてしまった。
「ごめん!」
何に対して謝っているのか自分でも分からないが、とにかくひたすら謝る。何度も繰り返して。
永遠とも思える沈黙の後、七海さんが口を開いた。
6
「しょ・・・正直に答えてね・・・・・・やっぱり・・・こうゆうのに興味あるの?」
「ま、まあ人並みにはあるかな・・・」
「そうだよね・・・男の子だもんね・・・」
そう言うと七海さんは自身の体をギュッと抱き締めて身を固くした。
言い訳がましいが彼女には誤解してほしくなかった。
ただ、自分の正直な気持ちを知ってほしくて優しく話しかける。
「確かに七海さんの言う通り、そうゆう事に興味が全く無いって言ったら嘘になる。
でも、七海さんが嫌ならもうそんな本は見ないよ。約束する!」
「違うよ・・・そうゆう訳じゃない・・・」
七海さんは体を抱き締めたままモジモジしていたが、
やがて意を決したように自分の顔を見据えてこう言った。
「もし・・・もし社君が良いのなら、私にこ、こここうゆう事しても良いんだよ!?」
「でも俺は身体目当てで付き合ってるわけじゃないし・・・」
自分のいつまでも煮え切らない態度に遂に七海さんが叫んだ。
「違うよ!付き合ってまた短いけど、君がそうゆう人じゃないこと位私だって分かってる!
私ね、社君に告白した時から決めたの。いつまでも臆病じゃダメだって!
もっと積極的になってあなたに相応しい彼女になろうって!
・・・私にここまで勇気をくれたのは社君なんだよ?
でも、まだ一度も帰りに手を繋いでくれた事も無いし、キ、キスだってしてないし・・・
本当に私の事好きなのか不安でしょうがないの!
それに・・・わ、私だって・・・好きな人の身体にずっと触れていたいんだから!」
告白した時のように顔を真っ赤にしながらそこまで言うと、
七海さんはすすり泣き何も喋らなくなってしまった。
7
自分はどうしようもないバカだ。
自分も七海さんの事が好きなのに。
彼女の事だからこうだろうと勝手に決めつけて、本当の気持ちに気付いてやれなかった。
今もこうして七海さんを泣かしてしまった。
もう同じ過ちは繰り返さない。
泣いている彼女の顔に両手を沿えて優しくキスをする。
「ゴメンね。七海さんの気持ちを分かってあげれなくて」
「社君・・・」
「俺、本当は七海さんにも本に書いてあるようなことをしたくて堪らなかった。
でもそれを拒まれて嫌われるのが怖くてずっと言い出せなかった」
「・・・うん」
「七海さんが正直な事を言ってくれてとても嬉しかった。
だから俺も正直に言うよ・・・・・・七海、お前を抱きたい」
それ以上の言葉はいらなかった・・・二人とも求めているのは同じだから。
再び優しくキスをする。
今度は七海が俺の顔に両手を沿えて。
三度目は激しく舌を互いの口に入れあい歯や歯茎を刺激する。
「はぁはぁ・・・」
口内を愛撫され目がトロンとした七海の胸を続けて揉みし抱く。
彼女の息遣いと服が擦れる音だけが室内に響いた。
「あん・・・胸触られるの結構好きかも・・・」
「じゃあこれからは毎日マッサージしてあげるよ」
そう囁くと照れたような表情をして「もう・・・・・・バカ・・・」と言う七海。
そんな七海を見ながら秘所へと手を伸ばして驚いた。
「もう濡れてる・・・」
「い、言わないで・・・・・・社君の手があまりにも気持ち良かったから・・・」
愛撫するのは始めてで自信が無かったから、そう言ってくれると嬉しい。
「社君のココも苦しそうだよ」
そう言うと彼女は自分のズボンのチャックを下ろし、
隙間から準備万全となった肉棒を取り出した。
ソファーに座り互いの性器をいじりあいながらキスをする。
「七海・・・そろそろ挿れてもいいよね?」
我慢できなくなってそう尋ねる。
コクンと頷いたので七海を膝の上に乗せ、後ろから抱き締めながら肉棒を秘所にあてがう。
8
「あの、は・・・初めてだから優しくしてね?」
「辛くなったらすぐに言えよ」
「分かった・・・」
そのまま七海の体をゆっくり降ろしていき、少しずつ貫いていく。
「はぁん・・・痛ぅ!」
七海の体を降ろすにつれプチプチという音が聞こえたような気がした。
肩で息をしながら、必死に痛みに耐えている七海が苦しそうな声を洩らす。
少し貫くのを止め、辛いなら止めよう聞こうとする前に七海が口を開いた。
「私には気を使わなくていいから・・・ちゃんと最後まで続けて・・・」
「・・・そんなこと言ったらもう加減なんて出来ないぞ?」
「良いよ・・・や、社君になら激しくされても平気だから・・・!」
その言葉で最後の抵抗を続けてた理性を打ち砕かれ、
途中で止まっていた剛直を七海の秘所に一気に挿しこんだ。
最後の膜がプツンと音をたて破れる。
七海がまた苦しそうな声を出したが、構わず腰を動かし続けた。
「ふっ・・・は、つ!・・・・・・あ・・・ん!や、社君・・・!」
「俺だけ名前で呼ぶのは名前で言ってくれないか・・・七海?」
「あん・・・あ、あ・・・賢治、賢治ぃ!」
がむしゃらに腰を突き動かし、肉棒の先端を七海の子宮口に叩きつける。
「七海・・・俺、もう無理・・・」
「賢治なら良いよ・・・!私の・・・私の中で気持ち良くなって!」
「な、七海っ!」
最愛の人の名を叫び、その胎内に己の愛情と欲望が入り交じった熱い物を流し込む。
七海の身体は流し込まれた熱い物を全て受け止めていた。
9
行為を終えた後も彼はそのままの体勢で
「七海」と「好きだ」という言葉を交互に囁きながら優しく抱き締め続けた。
剛直していた分身が萎み、秘所から抜けると七海の胎内から赤と白の混合物が垂れてくる。
七海はそれをウットリと見つめながら呟いた。
「あ・・・こんなに沢山出したんだ・・・」
「ごめんな。避妊具も着けないで中に出しちゃって」
「もう・・・気にしなくて良いって言ってるでしょ?
・・・私は賢治がいっぱい感じてくれただけでとても嬉しいんだから」
「七海・・・」
「そ、それはそうと・・・そろそろ降ろしてくれないかな?
抱き締めてくれるのは嬉しいけど・・・私だって賢治に抱きつきたいんだからね!」
そう言われて初めて自分が1時間近く七海を膝の上に乗せっぱなしな事に気が付いた。
ごめんと謝り慌てて七海をソファーに降ろす。
「クスッ・・・さっきから賢治君、あ・・・賢治謝ってばっかだよ?」
「ご、ごめん」
「ほら、また謝ってる。フフフ・・・」
これほど笑ってる七海を今まで見たことがなかった。
いや、これが彼女の本当の姿なんだな。
そんな事を考えていると七海が体を刷り寄せて、俺をソファーに押し倒した。
「ねぇ・・・賢治?」
「何?」
何か言いたそうな彼女の頭を撫でながら、次に彼女から紡ぎ出される言葉を待つ。
「・・・・・・賢治にどんなに辛い過去があっても、私はちゃんと受け止めてみせるからね」
「え・・・?」
「こ、こ、これからは色んな事を2人で共有していきたいから・・・
悲しい事は半分こ、嬉しい事は2倍にしていけたら良いな」
そう言って七海は顔を赤くしながら唇を重ねると、
ホッとしたのか俺の胸でスヤスヤ眠ってしまった。
俺も七海の背中に手を回すと目を瞑る。
・・・あの事故で負った体の傷は一生消えることは無いだろう。
でも心の傷は癒えるかもしれない・・・近いうちに必ず。
七海は勇気を出して気持ちをぶつけてくれた。俺も勇気を出して過去を乗り越えなくては。
睡魔に意識を奪われる瞬間、
「二人でならきっと乗り越えていけるよ」という七海の声が聞こえた気がした。
以上です
改善点とか色々教えて頂けると今後の励みになります。
駄文&お目汚し申し訳ない
>>264 GJ
敢えて言えば、
> 自分(社賢治:やしろけんじ)が15歳の時、航空機事故で資産家だった両親が他界した。
> 親戚もいないので手元には莫大な財産と身体的、精神的な大きな傷だけが残された。
この文で主人公自身も航空機事故に巻き込まれたと解釈するのはちょっと苦しいかも。
>>264 主人公へたれすぎてる気がしたけどGJ!
>>264 GJ
>>その襲撃者が賢治だと分かるとプウッと頬を膨らませて無言の反抗をした。
ずっと賢治のモノローグだったのに、
ここだけ第3者の視点になっているのが変な感じがする。
賢治の一人称が地の文で「自分」になっているのも。
268 :
名無しさん@ピンキー:2008/08/30(土) 02:02:03 ID:WvnlyFr3
保守
保守
270 :
名無しさん@ピンキー:2008/09/07(日) 00:40:37 ID:LNXJ9rMq
くぁwせdrftgyふじこlp;@:
女「ペシペシ…大丈夫ですかー?ペシペシ…すいません!
>>270は意識がないので誰か119番通報お願いします!!」
わかった、すぐに呼んできてやる。
>>271さんは人工呼吸してやってくれ。
……人工呼吸のやり方くらいはわかるよな?
緊急を要するんだ、頼んだぞ……。
同じクラスの好きな男君を見つめる
視線感じた男君振り返る
気弱娘あわてて視線そらす・本とかで顔隠す
とかいうシチュエーションがああ^〜たまらねえぜ
それも良いが。
誤解殺気な内気娘の話が読んでみたい。
275 :
174:2008/09/14(日) 02:16:57 ID:0C1EkrHr
だいぶ間が空きましたが
>>173の続きです。
携帯からなので見づらいと思います。すいません。
投下します。
276 :
174:2008/09/14(日) 02:17:53 ID:0C1EkrHr
六時間目。
文化祭の係決め。
わたしは由夏ちゃんとひかりちゃんと同じ係をやることになります。
そろそろ順番かな…
「えーじゃあこの係やる人いますか?」
わたしが手を上げると、周りは誰も上げてません。
やった!
あれ?
ひかりちゃんと由夏ちゃんも手上げてない。
なんで…しかもなんかニヤニヤしてる…
ひかりちゃんがわたしに隣を見ろって指さしてる…なんだろ?
「かかったね…」
「うん。これで二人は付き合うね…」
「そこまで行っちゃう!?」
「たぶん…」
ん。なんだ野上のやつ騙しやがったな。
ま、いいや。
川元さんと一緒か。
「よろしくね。川元さん。」
「あ、あ、う…はい…」
…なんかすげぇおびえてる…俺のこと嫌いなのか?
めっちゃ口パクパクしながらキョロキョロしてる。
魚みたいだな。
ま、なんとかなるか!
277 :
174:2008/09/14(日) 02:20:30 ID:0C1EkrHr
「二人ともひどい…よく見たらあの係ふたりだし」
「それはちゃんと見なかったあんたが悪い!まあ、でもいいじゃん。真田くんと同じ係になれたんだから」
「…!そ、そうだけれども…二人きりだし、なに喋ればいいかわかんないよう…」
「こらこらすぐ泣きそうにならない。これはチャンスでしょ。早速放課後から準備はじまんだからがんばんなさい」
「う…うん…」
そして放課後。
私達がやるのはこのクラスの出し物(お好み焼き屋さん)を宣伝するポスターを作る係です。
絵を書くのは好きなんですが、真田くんと二人きりなんて…
「じゃあ始めよっか。」
「あっ、は、はい…よろしくお願いします…」
取りあえず挨拶からだよね。
「そ、そんな俺偉い人じゃないから、敬語じゃなくていいよ」
しまった!気遣わせちゃったかな…
「あぅ…ごご、ごめんなさい…」
ドキドキして上手く喋れない。
「…………………」
さっきから気まずい沈黙が続いてる…
こんな暗い女の子じゃだめだよね…
絶対もっと明るい女の子の方が…
「できた!」
「…え?…っぷ!…ふふふっ!」
突然真田くんがわたしに見せたのは一枚の絵。
たぶんポスターのイメージみたいなのかな。
真田くん…絵あまり上手くないのかな?
278 :
174:2008/09/14(日) 02:23:13 ID:0C1EkrHr
わたしが笑いをこらえていると、
「あ、笑ったな…」
「…あ!ご、ごめんなさいっ!」
またやっちゃった。
真田くんだって頑張って描いてるのになんと失礼なことを…
「まあそれはいいとして…やっと笑ってくれたね」
「……え?」
「さっきからずっと下向いてたり、黙ってたからさ、笑った顔見てみたかったんだ」
そう言って真田くんがニコっと笑う。
「あ、ありがとう…」
その笑顔にドキっとしながらお礼を言う。
わざとわたしの緊張ほぐすために描いてくれたのかな?
優しいな…ますます好きになっちゃう…
「じゃ、川元さんも描いてみよう」
「は、はい!」
よし。
これでわざとへたくそに描いたって思ったかな?
それにしても…見た瞬間笑われるとは…結構自信あったんだけどな…
でも、川元さんの笑った顔、かわいかったな。
もうちょい見てみたい気もする。
取りあえず、俺が絵描くのはやめようか。
客来なくなる。
279 :
174:2008/09/14(日) 02:24:24 ID:0C1EkrHr
今日の所は以上です。
失礼しました。
>>279 俺的には話は良いと思うんだけど
誰の視点で話が進んでるのかがカオスなことになっちゃってるから
次からそこ注意してみてくれ
保守
ここがビクデレスレか
ビクデレって上手い事言うなぁ
一瞬、比丘尼がデレるのかと思ってしまった
ほ
し
287 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/03(金) 17:37:54 ID:6k4eWXhG
く
ず
え
の
291 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/04(土) 02:41:52 ID:fyojOR8i
ぐ
で
き
み
を
か
き
た
す
↓↓以下職人さんのターン↓↓
星くず絵の具で君を描き足す…
きれいなお題だがむずいな
間違えて二人きりスレに来てしまたかと思った
ちょw覗いてるスレ被ってるw
ベタだが林間学校で肝試しとかツボ
ほ
307 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/18(土) 21:58:01 ID:JzkzKRaa
し
い
っ
ぱ
311 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/22(水) 17:07:04 ID:bZ8FfHd/
ん
とぅ
313 :
名無しさん@ピンキー:2008/10/29(水) 07:53:13 ID:/gTxV+Y6
新作期待
314 :
名無しさん@ピンキー:2008/11/03(月) 02:17:47 ID:6hKnEBxr
星くず絵の具で君を描き足す…
これ凄く良いお題なのにめちゃくちゃ難しいよwww
スマン。
>>301への妄想が止まらず書いてしまった。後悔はしてる。
窓から見える空はすっかり暗い。
私、遠藤美紀はさっきまで教室で補習を受けていた。
机の上のノートとペンを片付けつつ溜め息をつく。
今日は美術班に出れなかった。大好きな川崎君が出ると言っていたのに…
そう言って数学の先生に呪いを掛けながら、教室を出る。
美術室の方を見る。まだ明かりは付いているようだ。
コンクール間近なので案外真面目な川崎君はまだ残っているかもしれない。
そんな自分でも訳の分からないことを思いながら美術室へと向かった。
「あの…入ります…」
「ん?……あ、遠藤?ずいぶん遅いな」
美術室には、少年一人。私のクラスメイトの川崎空君だ。
川崎君は絵の才能がある。言葉はぶっきらぼうだけど絵からは優しさが感じられるような…いつまでも見ていたいような…いえ、何でもないです。
私は絵なんて得意なわけないのに川崎君と一緒に居たいから入ってしまったようなものだ。
「ちょっと補習が…あったんです…それより絵の進み具合は……どうですか?」
二人きりという状況に胸を躍らせながらも、質問してみる。
コンクールに出場するための油絵を描くと川崎君は昼間言っていた。
「それがさぁ…大前提の書きたいものが決まらねぇんだよ」
「書きたい…もの…?」
「何かねぇかな?ごめんな、遠藤も自分の書かなきゃいけねぇのに…」
「…私は絵下手ですから…コンクールには出場しません…」
「何言ってんだ。大丈夫。上手いって。俺が保証する」
「そんな…」
顔が赤くなる。二人きりの状況で川崎君にこんなことを言われたらもう恥ずかしさで死にそうになる。
「あれ…俺はそんなに信用ねぇか…」
「そんなことありません!川崎君はとっても頼りになります!」
自分でも驚くような声を出してしまった。
「え?へ?あ、ああ。まあそう言ってくれると嬉しいな」
川崎君も驚いている。と、とりあえず誤魔化さなきゃ…
「え、えと、夜空がきれいですね」
外を指さす。完全に日が沈んで暗い。
「え、ああ、そうだな…」
「お星様がたくさん…ロマンチックです…」
「……そうだな…星空か…そいつもいいな…」
この綺麗な星空を川崎君が描いてくれる。考えただけで素敵だ。
「川崎君!ぜ、ぜ、是非星空を描いてくれませんか?お願いします。私、その、えと、それを見てみたいというか何というか…」
「なら、俺からもお願いがある」
いきなり真正面に立って私を見つめてくる。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「な、な、な、何ですか!?い、いやらしいことじゃないなら…」
「何言ってやがる…その絵にお前をモデルにして描いてもいいか?何て言うか、イメージ的にはスターダスト・・・星屑に願いをささげる少女的な感じのを…描いてみたくて…」
「川崎君、案外ロマンチスト…ところで…その少女は何を願っているんですか?」
「そりゃアレだ。ダイエットと甘いものと成績UPだ」
「そこだけ現実的過ぎです…」
「じゃあ何だ?」
「…す、す、す、好きな人と結ばれたいに決まってるじゃないですか!」
「へぇ…遠藤が…好きな人、ねぇ…ま、応援してやるよ」
「にやにや笑わないで下さい!…それに私はこ、告白する勇気さえありませんから…」
本人の前で何てこと言わせるんですか…もう…
「そんなの流れ星に願え……いや、約束だ。俺が描いた絵が入選したら遠藤は好きな人に告白しろ。」
「か、関係ありません」
「見ろよ、流れ星だ」
川崎君が空を見上げて突然言った。見ると夜空に一筋の光が消えていくのが見えた。
「願えた?」
首を横に振る。
「星屑ってほんの数秒しか、空に見えないから願いにくいじゃん。でも絵に描いておきゃ何回でも願える。…遠藤の願いは俺の絵の星屑に願えばいいだろ…ごめん、このセリフ臭い」
そう苦笑いしたあと、川崎君は本当の夜空の下、キャンパスに自分だけの夜空と星屑を描きだした。
投下した後、スレチだと自覚した。首括ってくる
構わん、もっとやれ
続きマダー?
319 :
315の続き:2008/11/05(水) 21:32:50 ID:PfQzKRmz
「星空って夜にしか描けないから大変だな」
描き始めてから五分もしないうちに川崎君が呟いた。
「遠藤は無理しなくて帰ってもいいぜ?風邪ひいたら大変だし」
優しい言葉を言ってくれているが、川崎君も寒そうだ。
「川崎君も寒くないんですか?」
「寒くないわけがないだろ」
そう言ったあと、一回くしゃみをして体を震わせた。
「……何か温かいものでも買ってきましょうか?」
「ココアでも頼む。お前のも奢ってやるよ…見回りの先公に見つかんなよ」
適当にお金を投げ渡して川崎君はそのまま、作業を再開した。
美術室を抜けるとそこは真っ暗な廊下が広がっていた。
一人で突っ立っていると恐怖しか感じられない。
怖くなって美術室に戻る。
「か、川崎君。怖いから…その…一緒に来てくれませんか?」
言ったあとに、とんでもないことを言ってしまったと思い、ハッとする。
川崎君は突然のことにキョトンとしている。
「す、すいません!やっぱり一人で行ってきます!」
「…怖いんだろ?」
「いや、怖くは……怖いですけど」
「はいはい、俺も行ってやるよ」
クスクスと笑いながらそう言った。
夜中の学校を二人で歩く。ちょっとぐらい、抱きついたりくっついたりしてもいいよね。
「自販機はたしか一階にある。ここは三階だけどそんな遠くはないか…」
物音がしたら、キャッて言って抱きついて「大丈夫か?遠藤は怖がりだなあ」とか「俺が守ってやるよ」とか……
「おーい、大丈夫か?とっとと行くぞ」
「ご、ごめんなさい……」
二人であろうと寒いものは寒いし、怖いものは怖い。
「寒いです…」
「寒いって言ってもくっついてるしかないぞ」
「……くっついてもいいですか?」
「そういうのは好きな人と付き合ってからするんだな」
好きな人はあなただからいいんです!と、怒鳴りたくなってくる。
「それぐらい良いじゃないですか!どうせ彼女いないくせに!ケチ!」
「ほっといてくれ…てかそんな大声出すな。先公にばれたらどうすんだ」
カツーンカツーンという足音。どうやら誰かが階段を上ってきたらしい。
たぶん見回りの先生だろう。懐中電灯の明かりまで見えてきた。
「誰かそこにいるのか?」
(ヤバい!とりあえずそこの教室に隠れるぞ)
川崎君は焦って私ごと近くの教室に押し入れる。思わず倒れ、声を上げそうになる私。
(声を上げんな。静かにしてろ)
川崎君は手を伸ばして私の口に当てる。
「…気のせいか?声がしたはずだが…」
そう言って見回りの先生はどこかへ行ってしまった。
「行ったな」
「……」
口をふさがれた私にのしかかる川崎君。どう考えても男が女を襲っているとしか考えられない。
「ご、ご、ごめん!わ、わる、悪気はない!」
すぐに手をどけ、私の上から下りる川崎君。顔は見えなくても絶対焦っているのが分かる。
「いや、今のは不可抗力だ。スマン、スマン、マジでスマン!」
「…川崎君はHなことしたことあるんですか?」
男にのしかかられるなんて初めてだ。しかも好きな男にされた。恥ずかしくてたまらない。
「お、男の人に乗られるなんて…」
「いや、別にいやらしいことしようと思ったわけではないんだ。不可抗力で…」
「……私は、私は川崎君となら…え、Hなことしても…良いんですよ…」
スマン。もう無理。
>>319 直ぐじゃなくていいけど、できれば続きを付けて欲しい
ほ
し
の
い
ろ
が
き
え
は
う
む
し
ほしのこえがきえはうむし
星の声が消え這う蟲?
こえ じゃなくて いろ だった orz
星の色が消え這う蟲
すごく…………クトゥルフっぽいです
>>335 気が弱くてハードSF好きな無口っ娘とか何となく新境地な気がする・・・
みんな!こう考えるんだ!
っ「星の色描き絵は有夢紙」
…要は星の色が描いてある絵は夢が有る紙なんだよってことだ。
話の流れを無視して、投下させていただきます。
今回の投下にはエロはありませんので、エロなしが嫌な方はタイトル名「トシウエのカレシ」をNGにして下さい。
「本日はパーラーアクシズにご来店頂き、誠にありがとうございます。当店ではお客様一人一人に……」
女性店員の丁寧なマイクアピールを背に、店を出る。
夜9時。仕事終わりに立ち寄った、いつものパチンコ屋。いつものように財布を軽くした帰り道。
店を出て、駅へと向かう途中、星の見えない夜空を見上げ、ため息を吐く。
「はぁぁぁ〜……俺、何やってんだろうな。他にやることないのかよ」
今年で三十路を迎えた独身男。30になったということは……彼女いない暦が10年を越えたわけだ。
そりゃ彼女なんか出来ないよなぁ。給料もあんまりよくないし、実家住まいだし。
何より出会いがまったくない!これが一番痛いな。……はは、そんな訳ないのにな。
会社の同期は皆結婚してる。フラフラしてるのは俺だけだ。
暇つぶしの為のパチンコで負け、ネットで趣味の合う奴らと話してダラダラと過ごす日々。ぬるま湯に浸かっているような毎日。
仕事に生きがいを感じることが出来ず、かといってやりたいことがあるわけじゃない。
ただ無駄に時間が過ぎていくだけの毎日。変わらない日々。
「ホントに俺、何やってるんだろうなぁ」
再度ため息を吐き、駅へと向かおうとする。
……いや、今日は久しぶりに風俗にでも行くか?
こんなモヤモヤした気持ちで家に帰ってもあれだしな。おし、久しぶりの風俗に行くか!
モヤモヤした気分を晴らすため……自分に言い訳をしながら、風俗店の立ち並ぶ繁華街の外れを目指し、俺は歩きだした。
「あ、あの、おじさん!」
賑わいを見せる繁華街の外れ、お目当ての女がいる店に向かう途中、突然声をかけられた。
キャバクラの呼び込みか?警察に見つかったら捕まるのに、仕事熱心なもんだな。
けど今日は残念ながら、キャバクラって気持ちじゃないんだよな。
今日はヌキたいんだよ、ちゅぱちゅぱしてほしいんだよ。
俺を呼び止める女の声を無視して店に向かえばよかったんだが、女の顔をチェックするために立ち止まった。
俺に声をかけてきた女の顔を見る。
……いや、女じゃないな、女の子だな。そこにはまだ幼さが残る女の子が立っていた。……怯える目をしながら。
「俺、まだ30だから、おじさんってのは止めてくれない?で、お嬢さんは俺に何のようかな?」
俺の問い掛けに、なかなか口を開くことが出来ない女の子を観察してみる。
……少し汚れた服装。後ろには大きなカバンが置いてあるのが見えた。
あぁ、そうか……この子、家出してきたんだ。ということは……俺に援交を持ちかけるつもりか?
「あ、あの、そのですね……おじさん!あ、あたしを、あたしを……か、買って下さい!」
ギュッと目を瞑り、両手を握り締めてのストレートな援交の誘い。
普段の俺なら、警察沙汰になるのが嫌だから、軽くあしらっていただろう。
しかし俺は、少女の勇気を振り絞っての援交の誘いに興味を惹かれた。そして今夜の俺は、今の俺に嫌気がさしていた。
……ふと、頭をよぎった。この子は、今の自分をどう思ってるんだろうな?
自分のこれからをどう考えているんだろうな?
俺は俺と同じような人間と、話がしたいだけだったのかもしれない。
自分と同じように、漠然とした不安……けど流されるままの人間と話し、安心したかったのかもしれない。
少女と話をしたくなった俺は、少女に提案をした。
「君を買うことは出来ないけど、お腹いっぱいご飯を食べさせてあげることはできるよ。
どうだい?ファミレスで少し遅い晩ご飯でも?」
深い意味はなかった。ただ、少女と話がしたかった。そんな軽い気持ちで誘った晩飯。
この一言が俺を変えた。俺の人生を変えてくれた。どう変わったのかはまだ分からない。
だが、決して悪い方向ではない。いい方向に変わったはずだ。
俺は、この出会いで……この姉妹との出会いで人生を変えることが出来たんだ。
これが俺の物語の始まり。俺達の物語のスタートだった。
母の再婚相手だった父は、とても優しい人だった。血の繋がっていない私達姉妹を、本当に大事に育ててくれた。
それはきっと母のことが本当に好きだったから。母のことを愛していたからだと思う。
けど母が死んでから父は変わった。……変わってしまった。
お酒に酔うことが増えた。突然壁やタンスを殴ったりするようになった。時々、姉さんや私を叩いたりもした。
……私達との会話がなくなった。
ある日、いつものように酔っ払って帰ってきた父は、以前のような優しい口調で私に話し掛けてきた。
『久しぶりにマッサージをしてくれないか?』と。
私達は父の大きな背中が好きだった。
母が亡くなる前は、二人でよく肩を揉んであげた。だから私は喜んで肩を揉もうとした。
……とても怖い目をした父の肩を。私は何故か寝室に連れていかれた。……服を脱ぐように言われた。
とても怖い顔で服を脱げと言ってきた父が怖くなり、嫌だと言った。
こんなのおかしいよと、父に訴えた。……叩かれた。何度も何度も叩かれた。
叩かれて、無理やり服を脱がされた。母が買ってくれた服は、父の手でビリビリに破かれた。
私はベッドに押し倒され、とても怖い目で私を見つめる父に、体を触られた。
胸や足。お尻にお腹。身体中、いろいろと触られた。
胸を吸われ、噛まれたりもした。父がとても怖くてガタガダと震え、私は声を出せないでいた。
父が怖い笑顔を見せ、スボンを脱ごうとした時に、姉さんが来てくれた。
寝室に飛び込んできた姉さんが、フライパンで父を殴り、私の手をギュッと握って寝室を飛び出した。
姉さんは震える私に『ごめんね、ごめんね』と謝りながら、大きなカバンに私達の服を詰め、
裸の私に服を着させてくれて、父の財布を勝手に持ち出し、家を飛び出した。
私達は家から逃げ出した。……父から逃げ出した。
父は、母が死んでからお酒ばかりを飲んでいた。だからお金はあまり持っていなかったみたい。
父から盗んできた財布のお金は、すぐになくなり、私達姉妹は無一文になった。
またあの父の元へ帰らないといけない……そう思い、震える私の手を、姉さんがギュッと握りながら励ましてくれた。
『お姉ちゃんに任せてね、大丈夫だから。大丈夫だから』と。
……ギュッと強く握られた姉さんの手は、かすかに震えていた。
賑やかな、夜の繁華街の外れ。母が死ぬ前には、家族そろって何度も食事に来たことのある繁華街。
あの時は賑やかで、とても楽しいところといったイメージだった。でも今は、とても冷たく感じる。
この賑やかな街は、私達なんか、どうなってもいいと思っているんだろうな。
私はそう思いながら、姉さんの後姿を見ていた。
通り過ぎる大人たちに、 声をかけようとして、躊躇し、また声をかけようとしている。
私は姉さんが何をしようとしているのか、分かってた。
でも、止める事が出来なかった。……お金がないと、あの家に帰らなければいけないから。
親戚のいない私達には、あの家しか帰る場所がないのだから。
何度も何度も躊躇してた姉さんは、大きく息を吸い込んで、私達の前を通り過ぎようとしていた男の人に声をかけた。
「あ、あの、おじさん!」
少し離れたところで待っていた、私にも聞こえる大きな声で。
「あ、あの、そのですね……おじさん!あ、あたしを、あたしを……か、買って下さい!」
私が想像していた言葉を口に出して。
けど私は思いもしていなかった。
この賑やかで冷たい繁華街で、姉さんがこの人に声をかけたおかげで、私達の運命が変わることを。
想像なんて出来なかった。この人との出会いが、私の素敵な物語を始まりだったなんて。
これが私の物語の始まり。私と彼との物語のスタートだった。
「ほら!起きなさい!いつまで寝てるのよ!お味噌汁、冷めちゃうわよ?」
布団の中で、昔の夢を見ていた私は、姉さんの声で起こされる。
「む〜……まだ眠いぃぃ」
「もう!早く起きなさいってば!直人さんに本を貰ったからって、夜遅くまで読んでるからよ!
ほら!シャキっと起きる!美佳!いい加減に起きなさい!」
この部屋の最大権力者の姉さんは、暖かな布団を私から引き剥がし、無理やり起こそうとする。
「むぅぅ〜……権力の横暴だぁ〜……眠いよぉぉ」
「ほらほら、早く起きないと学校に遅刻するわよ?」
「むぅぅぅ〜……今、何時なのぉ〜?あと5分くらい寝させて……え?えええええ〜!」
寝ぼけ眼で目覚まし時計を見てみたら、朝7時40分。
いつもは7時に起きて、7時40分に部屋を出る。……まずいよぉ!これは遅刻だよぉぉ〜!
「わ!わわわ!ち、遅刻!遅刻するぅぅ〜!姉さん、私、ご飯いらないから!」
慌ててパジャマを脱ぎ、制服の袖に手を通した私を見て、姉さんはお腹を抱えて笑っている。
姉さん、妹の不幸を笑っちゃいけないと思います!
「あっははははは!直人さんの言った通りね。目覚ましを進めてて正解だったわ」
「え?直人さん?直人さんが何を言ってたの?」
直人さんの名前が出てドキリとする。
昨日会ったばかりだというのに、名前を聞くだけで、もう会いたい。
私より10歳以上年上の、とても優しい人。私達を救ってくれた恩人。……大好きな人。
今日は懐かしい昔の夢を見た。
直人さんと初めて会った時の夢だ。姉さんが裏返った声で、直人さんに話しかけたのがきっかけだった。
あれから5年。12歳だった私は、今では高校3年生になった。
17歳だった姉は、専門学校まで卒業させてもらい、専門学校で知り合った安田さんと、今年、結婚する。
姉が結婚すれば、この5年間、2人で過ごした少し狭い部屋も、私一人で生活することになる。
姉さんと婚約者の安田さんは、一緒に住もうと言ってくれた。
私は姉さん達の生活を邪魔したくはなかった。
でも、いつまでも直人さんの優しさに甘えてはいられない。
だから姉さんのお世話になるつもりだった。でも、直人さんが止めてくれた。
『新婚生活を邪魔しちゃ悪いだろ?お金なら大丈夫だから、美佳ちゃんの好きにすればいいよ』と。
私は凄く悩んだけど、一人で暮らすことに決めた。
姉さんには怒られちゃったけど、今まで私のために頑張ってくれた姉さんに、幸せになって欲しかった。
姉さんの幸せな結婚生活を、邪魔しちゃいけないと思った。だから少し不安だけど、一人で頑張ることにした。
「直人さんがね、『美佳ちゃんは夜更かしするだろうから、目覚ましを進めておいたらきっと面白いことになるぞ』
って言ってね、目覚まし時計を進めて帰ったのよ。あ〜、慌てる美佳、可愛かったわぁ」
「へ?進めてた?……あああ〜!ひっど〜い!姉さんも直人さんも酷い!まだ7時前じゃないですか!」
「そ、いつも通りの時間よ。さ、早くご飯食べて学校の準備をしなさいね?」
「むぅぅ〜、今度直人さん来てくれたら、文句を言ってやるんだから!」
「はいはい、むくれてないで、さっさと食べる!……こんな調子で一人での生活、大丈夫なのかしらね?」
「大丈夫に決まってます!私は大丈夫だから、姉さんは結婚してさっさと部屋を出て行っちゃってください!」
いつもの会話。毎日続いた他愛もない会話。
けど、あと少しでこの会話も出来なくなる。……少し、寂しいな。
「……姉さん」
姉さん手作りの、直人さんのおばさん直伝のお味噌汁。
とても美味しいなめこ入りのお味噌汁を口に含み、姉さんに話しかける。
「ん?どうしたの?」
にこやかな笑顔を私に向けてくれる姉さん。そんな姉さんを見て、言葉が勝手に口からこぼれてくる。
「姉さん……おめでとう。絶対に幸せになってね」
思わずこぼれた言葉に、姉さんはとても優しい笑顔で頷いてくれた。
「……うん、幸せになるわ。あたしが幸せになったら、次はあなたの番。……頑張ってね」
姉さんの言葉に無言で頷き、お味噌汁をすする。……顔を真っ赤に染めながら。
「けど直人さんは強敵よぉ〜?なんせこのあたしが落とせなかったんだからね」
姉さんは、真っ赤な顔の私を見て、イジワルな笑顔で話しかけてくる。
え?落とせなかった?ま、まさか姉さんも直人さんのことを?
「あはははは、そんなにビックリした顔、しないでよ。落とせなかったって言うのは、初めて会った時のことよ」
「はぁぁ〜……姉さんはイジワルです。可愛い妹をビックリさせて喜ぶなんて、イジワルすぎます!」
抗議のために、姉さんのお皿にあるかまぼこを一枚、口に放り込む。
「あっはははは!ゴメンゴメン。……夢でね、見たのよ。久しぶりにね、あの日の夢をね」
……姉さんも見たんだ。直人さんと出会った日の夢を。私達2人を救ってくれた人と、出会ったあの日の夢を。
辛かったあの頃を思い出し、姉さんと2人で頑張ってきた日々を思い出した。
その姉さんもこの部屋から出て行く。……幸せを掴むために。
「……私も、見た」
「あなたも見たの?ふふふ、偶然ね」
「……姉さん、絶対に、絶対に幸せになってね」
「うん、ありがと。……美佳、泣いてないで食べちゃいなさい」
「……うん」
「ねぇ、美佳。お味噌汁、美味しいかな?」
「……うん」
「慎介さん、美味しいって言ってくれるかな?」
「……うん」
「ふふふ、ありがと。さ、いつまでも泣いてないで、早く食べちゃいなさいね」
姉さんがせっかく作ってくれたお味噌汁。涙で味がよく分からなくなっちゃった。
「おい、上杉。久しぶりにいっぱい行くか?」
午後6時。仕事を終えた同僚が、飲み屋への誘いをしてきた。しかし、いつものように俺はそれを断る。
「悪いな。いつも通りの万年貧乏だからさ、残業代を稼がなきゃいけないんだよ」
「また残業引き受けたのか?お前はほんっとに働くようになったよな。昔は仕事より遊びってヤツだったのにな」
「え?上杉さんってそんな人だったんですか?」
入社同期である高橋の話に、驚きの声を上げる後輩。驚く後輩に、あることないことを色々と話す高橋。
「おう、コイツは遊びのために仕事をするみたいなヤツでさ、そのうち絶対リストラされるって思ってたからな」
「勝手にリストラ候補にすんなっての!」
「お前、倍率4倍の本命だったんだぜ?」
「おいおい、賭けが成立してたのかよ!」
「ははは、ま、無理しないように頑張れや。おし!上杉の分までしっかりと飲むぞ!」
軽い冗談を言い残し、後輩を引き連れて飲みに向かう高橋。……チクショウ!奢るとか優しい発想はないのかよ!
俺だってな、可愛いお姉ちゃんと飲みてぇよ!お姉ちゃんのおっぱいを見ながらちびちびと飲みてぇんだよ!
ツインテールの可愛い女の子の太ももを、撫で撫でしながら飲みたいんだよ!
むしろ撫で撫でしてほしいんだよ!太ももを撫で撫でしてもらいながら、耳元で囁いて欲しいんだよ!
っていうか、俺、餓えてるなぁ。そういや女と最後にヤったのって、いつだったっけ?
……うわ、5年前だ。準ちゃんと美佳ちゃんに会う前だった。
そのうち俺の愛息は、腐って千切れちまうんじゃねぇのか?……ま、あの2人のためだしな、我慢しなきゃな。
準ちゃんはいい相手に恵まれて結婚するし、後は美佳ちゃんが大学に行って卒業して、就職したら俺の役目も終わりだ。
……あと5年位かな?俺があの2人の世話を出来るのも。
いや、準ちゃんはもう結婚するんだから、美佳ちゃんだけか……なんかゴールが見えてきたら少し寂しいような気がするな。
……いやいやいや!まだ安心するのは早い!大学受験には金がかかるんだから、稼がなきゃな!
おし!いっちょ頑張るか!頑張って稼ぐぞ!
俺は大量の資料に悪戦苦闘しながら、5年前を思い出す。
それまでのぬるま湯だった俺の人生を、変えてくれた恩人との出会いを。
5年前の繁華街で偶然知り合った2人の女の子……小日向準、美佳姉妹との出会いを思い出した。
「驚いたなぁ。君、妹を連れてたんだね。さ、お嬢ちゃんも好きなものを食べていいよ」
援交少女を誘ってのファミレス。その少女が妹も一緒にいいですかと聞いてきた。
妹がいたことに内心驚きながらも、もちろん構わないよと、大人の余裕を見せつけた俺。
……やるな、俺!さすがは大人の男だ!
俺の言葉にその妹さんは、おどおどした目で、俺と声をかけてきた女の子を見比べていた。
しかし妹を連れて援交をしようとするかね?……それだけ切羽詰ってたのか?
「うん、いいのよ、美佳。お腹いっぱい食べようね」
「……うん」
ふぅ〜ん、この子は美佳ちゃんという名前なのか。まだ幼さの残る、年のころは12,3歳といった位かな?
姉と同じく、少し薄汚れた服を着て、背中には大きなリュックを背負っている。
少し表情の暗い、けどなかなか可愛い女の子だ。
もっと明るい顔をしていればかなりモテるんだろうけど、この暗い表情じゃ、あんまりモテないだろうな。
「うん、たくさん食べなさい。で、君達の名前はなんていうのかな?」
嬉しそうにメニューを選んでいた、女の子に声をかける。
お互いまだ名前も名乗っていない。ま、本当の援交なら名乗る必要なんてないんだけどな。
「え?あ、あの、私の名前は、その……」
「俺は上杉直人(うえすぎ なおと)。一応まだ30歳だ。
君から見れば十分おじさんだろうけど、お兄さんといって欲しいな。で、君達の名前は?」
初対面の俺に名前を教えるのが怖いのか、躊躇する姉に、俺から名前を教える。
援交を持ち掛けといて、名前で躊躇するってのが意味が分からねぇが、ま、仕方ないだろ。
着てるものからして、家出少女っぽいからな。
「……あたしは小日向準(こひなた じゅん)。この子は妹の美佳(みか)です」
「そっか、準ちゃんに美佳ちゃんか。ま、話しはお腹がふくれた後でいいや。とりえずはお腹いっぱい食べなさい」
話は聞きたいけど、まずは打ち解けないとな。
警戒されたままだと、なんで家出をしたのか、訳を話してくれないかもしれないしな。
……俺、なんでこんなことしてるんだろ?
援交を持ちかけてきた家出少女に飯を奢る、か。……我ながらヒマなんだな。
メニューと一生懸命睨めっこしてる妹さんに、横からこれが美味しそうねとメニューを指差すお姉さん。
でも妹が食べる物を決めるまで、自分の食べたいものを選ばないお姉さんに好感を抱く。
「えっと……姉さん、これ、いいですか?」
「ん?どれどれ……地鶏のステーキか、美味しそうね。あたしもそれにしちゃおうかな?」
5分ほどメニューと睨めっこしていた美佳ちゃんは、メニューを指差した。
「お、やっと決まったかい?あまりに遅いから、お腹が減りすぎて、お腹と背中がくっつくところだったよ」
定番のギャグで場を和まそうとする健気な俺。
オヤジギャグのあとに、はっはっはと笑い、場を和まそうとする。……全然和まねぇ、なんでだ?
「……ゴ、ゴメンなさい。せっかくご馳走してくれるのに、選ぶのに時間がかかちゃって……ゴメンなさい!」
突然頭を下げる妹さん。え?なんで?なんで謝るんだ?しかも涙声だし。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ったぁ!……なんで頭下げるの?もしかして俺のギャグ、面白くなかった?」
おかしい!俺の必殺のオヤジギャグだぞ?現役女子校生というunaさんにもウケる、とっておきなのに!
「え?ギャグ?……冗談、ですか?……怒ってないの?」
上目遣いで俺を見る妹さん。うわ、マジでギャグと思ってなかったのか……こ、これは恥ずかしいぞ!
「怒ってない怒ってない!ゴメンな、つまんないギャグで驚かせちゃったよな?
驚かせたお詫びで、好きなデザート食べていいから。どれでもいいから選んで食べな」
会心のスベリをみせたギャグを誤魔化すために、メニューを見せて、デザートを勧める。
食いもんで誤魔化すなんて、俺は汚れた大人だな。……誤魔化されてくれ!っていうか、忘れてください。
「え?でも……ケーキ、300円もします。お金が……」
「え?お金?いいからいいから、お金のことは俺に任せろって!お〜い、店員さ〜ん、注文お願いしま〜す」
照れ隠しの為、慌てて店員を呼ぶ俺。うん、俺ってカッコ悪い!
……ギャグを本気に捉えたらいけないって、法律で決めてくれないかな?
「お待たせ致しました、ご注文はお決まりでしょうか?」
教科書どおりの対応をする店員の姉さんに、『決まってなかったら呼ばねぇよ!』と毒づきたい気持ちを抑え、注文を頼む。
「俺はビールとから揚げセット。この子達は……2人とも、地鶏のステーキセットでいいのかな?」
俺の問い掛けに、2人同時に頷く。……か、可愛いじゃねぇか。
「じゃ、地鶏のステーキセットを2つ。あとは……ケーキをメニューに載ってるのを全部持ってきて」
「全部、でございますか?」
「うん、全部。甘いものは別腹っていうだろ?あれがホントかどうか、実験するの。お姉さんも実験に協力してくれる?」
「あ、あはははは……申し訳ありません、仕事中ですので」
「あらららら、残念だなぁ。じゃ、2人には頑張ってもらわなきゃな」
引きつった愛想笑いで去っていく店員の女の子のお尻を目で犯し、見送る。
う〜ん、この店の制服はいまいち萌えないな。髪形もよくないしな。
やはり飲食業で働く女の子にはツインテールを義務付けるというwinさんの提案は、国が真剣に検討する段階なのかもしれないな。
「あ、あの……ケーキ全部って?」
チャット仲間の素晴らしき妄想に相槌を打つ俺に、恐る恐るといった感じで話しかけてきたお姉さ……準ちゃん。
「ん?聞いたとおりだよ。2人とも、頑張って食べてくれよ?俺、甘いの苦手だから」
「「ええええ〜?」」
仲良く驚きの声をあげる姉妹。
けどその表情は楽しそうな顔で、妹さん……美佳ちゃんのこんな楽しそうな笑顔は、はじめて見た。
……いい笑顔だな。その笑顔を見るためならケーキ代くらい安いもんだな。
「は、はははは……すごい食べっぷりだったね。2人の協力で、甘いものは別腹ってのは立証されたよ」
乾いた笑いで2人を見る。目の前にはテーブルに突っ伏して動かない、仲のいい姉妹が。
けどその表情はとろんと惚けており、幸せそうだ。
あれだけの量のケーキをマジで食いやがったよ、この姉妹。……別腹ってホントにあるんだな。
「姉さん……お腹がいっぱいで動けません」
「……あたしもよ。あたし、こんなにケーキを食べたのって、生まれて初めて」
「私もです……はふぅ〜、苦しいけど、幸せですぅ」
「あたしも……苦しいけど、幸せぇ〜」
トロンとした目で会話を続ける別腹姉妹。
やべえ!メチャクチャ面白い!……ア、アイスとかはいけるのかな?
この状態でアイスも食べたりしちゃったりするのかな?やべえ!試してみてぇ!俺、なんかドキドキしてきたぞ!
「う〜ん、話を聞きたかったけど……まぁいいや。面白いものを見させてもらったし、今日はこれで解散しようか」
アイスを食べさせてみたい欲求を押さえ込み、大人の対応をする俺。
この状態で食えたのかな?食っちゃうのかな?試してみてぇ〜よぉ〜。
「え?か、解散?」
「そ、解散」
俺の解散と言う言葉で、また暗い表情に戻った準ちゃん。
ついさっきまでテーブルに突っ伏し、お腹いっぱいの幸せな笑顔を見せていたとは思えない表情だ。
……しゃあねぇなぁ、乗りかかった船、だ。それにいいもの見させてもらったからな。
「食べ過ぎて苦しいだろうけど、そろそろ出ようか」
「は、はい、ご馳走様でした、上杉さん。美味しいケーキまでたくさん食べさせてもらって、ありがとうございました。
……美佳、立ちなさい。もうお店、出るわよ。上杉さんにお礼を言いなさいね」
「は、はい、姉さん。上杉さん、お腹いっぱい食べさせてくれて、ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ面白いもの見させてくれて、ありがとうな。じゃ、行こうか」
不安な表情を浮かべる2人を連れて、ファミレスを出る。
そりゃ、不安だよな。援交を持ちかけた見ず知らずの男に飯を奢ってもらい、お腹いっぱいになったはいいけど、
これから何をするのか、何をさせられるのか分からないんだからな。
ははは、2人とも、力いっぱい手を繋いでさ。……怖いんだろうな。メチャクチャ不安なんだろうな。
何があったかは知らないけど、2人で大きな荷物背負って家出してきて、けどお金が尽きてどうしようもなくなって。
……準ちゃん、怖いけど、妹の為にお金を稼ごうと俺に声をかけてきたんだろうな。
……いい子だな。準ちゃんは妹想いのいいお姉さんだな。
美佳ちゃんはちょっと表情が暗いけど、素直でいい子みたいだし……なんでこんな2人が家出なんかしたんだろうな?
「さて、と。2人は家に帰るつもりとかはないのかな?」
ギュッと手を繋いだまま2人はフルフルと首を振った。
2人のその表情からは、絶対に家には帰りたくないという思いが読み取れる。
しかしなぁ……このまま2人を連れまわしてたら、俺が誘拐犯として逮捕されそうだしな。
かといって、こんな素直でいい子達を放っておけないし……しゃあねぇか。
「……そっか。なら仕方ないな。しばらく落ち着いて、自分達の今後をどうするか、考えなさい。
さ、いこうか。駅前のホテルでいいだろ?あそこは2人で一泊1万円くらいだったはずなんだけどなぁ」
「え?ホ、ホテル、ですか?……あ、あたしはいいですけど、妹は止めてください!
あたしは何をされてもいいけど、妹だけは……美佳だけは!」
何かを思いつめた表情で俺に詰め寄る準ちゃん。
美佳ちゃんだけはって……俺はカワイイ子は好きだけど、ロリじゃないの!
……あれ?美佳ちゃんって中学生くらいだよな?中学生はロリに入るのか?
体型は……残念ながらロリの部類に入りそうだな。
う〜ん、これは今日の議題になりそうだな。ロリとは年齢で分けるのか、それとも体型で区別するべきなのか。
早く家に帰ってチャットに入らないとな。今日も熱いトークで盛り上がりそうだ!
「……はははは、準ちゃんはいいお姉さんだな。美佳ちゃん、いいお姉さんを持ててよかったね。
さ、もう夜も遅い2人ともお腹いっぱいで横になりたいだろ?
俺も家に帰って風呂に入りたいし、準ちゃんだって、シャワーでさっぱりしたいだろ?」
「そ、それはさっぱりしたいですけど……あ、あたしから声をかけておいてなんですけど、やっぱりあたし……」
申し訳なさそうに視線を逸らす準ちゃん。その手は美佳ちゃんの手をギュッと握り締めている。
「はははは!準ちゃん、目の前であんなに大食いされちゃ、どんな男だって性欲は失せるよ。
ま、俺は最初からそんな気はなかったけどね」
「え?えええ?で、でも、ホテルって……」
「俺さ、親元で暮らしてるんだよね。だからさ、見知らぬ女の子を泊める事は出来ないの。
ってことで、君達は駅前のホテルに泊まるように。ホテルのフロントに何泊か連泊出来るようにお願いしてみるから。
その間に、ゆっくりと考えてみな?自分のこと、家のこと。家族のことをゆっくりと考えてみな。
相談だったらいくらでも乗ってやるからさ、身体を売ろうなんて自棄になるなよ?」
準ちゃんに携帯番号を書いた名刺を渡し、頭を撫でる。
最初は俺がなにを言っているのか理解できていないようだったが、しばらくしてようやく理解したのか、涙声で抱きついてきた。
「う、上杉さん……あ、あたし、あたしぃ〜!」
俺に抱きつき泣きじゃくる準ちゃんに、そんな準ちゃんを心配そうに見る美佳ちゃんを連れて、駅前のホテルに連れて行く。
3連泊分のお金と3日分の食費、計5万円を準ちゃんに渡し、今後のことをゆっくりと考えるようにと言い、2人と別れた。
もしかしたら、もう二度と彼女たち姉妹と会うことはないかもしれないと思いながら。
けど次の日に、準ちゃんから連絡が来た。少し相談に乗って欲しいと。
俺は何の相談か、よく考えもせずに、仕事帰りに彼女たちが泊まっているホテルに立ち寄った。
ホテル近くの居酒屋で、2人に飯を食べさせながら話を聞いた。
……2人の話を聞いた俺は、自分の中で何かが変わったことに気がついた。
「……じゃ、なにか?準ちゃん達は、父親に暴力を振るわれていたのか?」
仕事帰りのサラリーマン達で賑わう居酒屋で、昨日知り合った姉妹の身の上話を聞いた。
妹思いの準ちゃんと、少し表情が暗いけど、素直な美佳ちゃん。こんないい子達に暴力を振るう父親、だと?
「……はい。でも、叩かれるのはまだいいんです。
父は、叩く以外にも、その、美佳に……あたしにするんだったら、我慢できたんです!
でも美佳に……あたし、我慢できなくて……後先考えずに美香を連れて家を出たんです!」
準ちゃんの隣で、俯いている美佳ちゃん。
その肩は微かに震えており、父親にされた行為を思い出しているみたいだ。
……だからか。美佳ちゃんが暗い顔してるのは、そんな理由があったからなのか。
いくら実の子じゃないとはいえ、我が子に暴力を振るうだけでなく……自分の欲望をぶつけようとしたのか。
こんなに素直でカワイイ子に、なんてひでぇことをしやがるんだ!
「あたし、家を出てくるときに父をフライパンで叩いて財布を盗んで出てきちゃったんです。
あたし……ドロボウ、ですよね?警察に捕まるんですか?」
膝の上に置いた両手をギュッと握り締め、ポロポロと涙を零す準ちゃん。
これからの生活が不安なのか、それとも今までの事を思い出したのか、ポロポロと泣き続ける。
そんな準ちゃんを手を、横からギュッと強く握り締める美佳ちゃん。
美香ちゃんの大きな目には、涙がいっぱいに溜まっており、今にも零れ落ちそうだ。
それなのに、準ちゃんを励まそうとして必死に泣くのを堪えて、励ますように準ちゃんの手を握っている。
……いい子なのに。2人とも、こんなにいい子なのに!
こんなにも妹想いで、姉想いの2人なのに!なんで酷い目に遭わなきゃいけねぇんだ?
……ふざけんな。2人の父親だかなんだか知らねぇけどよ、この2人を泣かせるてめぇはクソだ!俺がぶっ殺してやる!
「……もう大丈夫だ。2人で頑張って、不安だっただろ?もう大丈夫だよ。……俺に任せなさい。
君達が安心して暮らせるように、俺が掛け合ってあげるよ。君達の父親と話してあげるよ」
「え?で、でも……」
「乗りかかった船だ。俺に任せてくれないか?」
怒りを抑え、笑顔を見せる。辛い話をしてくれたんだ、笑顔を見せて安心させてあげなきゃな。
「で、家はどこなんだい?俺がちょっと行ってきて、2人の父親と話してくるよ」
「え?ええ?でも……またお酒で酔ってるかもしれないし、あたしがお財布を盗んじゃったから、
警察に通報してるかもしれないし……」
俺の提案に視線を泳がせ、戸惑う準ちゃん。美佳ちゃんは大きな目を大きくまん丸に広げ、驚いている。
2人の対照的なリアクションに好感を抱きながらも話を続ける。
「……なんでだろうな?2人とは知り合ったばかりだけど、力になりたいって思っているんだ」
そんな2人の頭に手を載せ、優しく撫でる。
頭に手を置いた瞬間、ビクッと身体を硬直させ、ギュッと目を瞑った美佳ちゃん。
叩かれるとでも思ったんだろうな。彼女の反応から、日ごろから暴力を振るわれていることが分かる。
「でも、上杉さんに迷惑がかかるし……」
「いいっていいって!昨日、面白いものを見せてくれたお礼だよ。
年頃の娘2人が、お腹いっぱいになって動けなくなるまでケーキを食べるなんて、滅多に見れないからね」
ニヤリと笑い、昨日のことでからかってみる。
俺の言葉に、涙ぐんでた2人は顔を真っ赤に染めて俯いた。
ははは、さすがは姉妹だな。恥ずかしがる様子がそっくりだ。
照れて顔を真っ赤に染めている準ちゃんから、2人の家の住所を聞き出すことに成功した。
準ちゃんから、家出の経緯を聞いた次の日、俺は動き出した。
俺は、2人の話を聞いて変わった、自分の中の何かに突き動かされるかのように、動いた。
会社を休み、2人の父親のところへ行き、酒に狂った父親から2人を引き取る話をつけた。
……あの人も分かっていたみたいだ。このままじゃ2人にとんでもないことをしてしまうと。
だから俺に泣きながら頼んできた。『2人をよろしくお願いします、どうかよろしくお願いします』と。
そして、用意していたであろう封筒を渡された。
中には50万円が入っており、今用意できる精一杯のお金だと言っていた。
俺はその金を使い、すぐに2人が暮らす部屋を借りた。
部屋を決めてから、すぐに2人を連れて荷物を取りに父親が住む家に戻った。
2人は俺の背中に隠れるようについてきたんだけど……父親はいなかった。
ガランとした家具も何もない家。どうやら父親は、この家を売りに出したようだった。
ただ2人の荷物と……母親の遺影だけは残してあった。
俺達はそれを無言で持ち帰り、新しく借りた、2人が生活をする部屋に持ちこんだ。
2人はこの少し狭い部屋で始まる新しい生活に、期待で胸を膨らませ、俺に何度も頭を下げお礼を言ってくれた。
準ちゃんと美佳ちゃんが、慣れない2人だけでの生活をスタートさせ、もう5年が経ったのか。
明日までに仕上げなければいけない書類を前に、昔を思い出していた俺。
俺がこんなに働くようになったのも、あの2人のおかげなんだよな。
あの2人の生活費を稼ぐために、メチャクチャ働くようになったんだったよな。
……2人の父親は、あの後連絡が取れなくなった。生活費を少しくらいはよこせってんだ!
そのおかげで俺が2人を養わなきゃいけなくなったんだからな!
……でもいなくなったおかげで、俺は2人とこうして付き合っていられるんだな。
あのロクでもない父親がいなくなったおかげで、俺は準ちゃんと美佳ちゃんの2人と仲良く出来ているのか。
そう考えれば、いなくなった2人の父親に感謝、なのか?
そういや準ちゃん美佳ちゃんが2人で暮らしだした最初の頃は、ゴキブリが出たってよく電話してきたよなぁ。
ははは、可愛かったなぁ。鳴きそうな声で『う、上杉さん、た、助けてぇ〜!』だもんな。
それが今では……出てきた瞬間瞬殺するんだぞ?女は怖いよなぁ。
準ちゃんはお袋に料理を習ってるから料理上手になってきたし。ありゃいい嫁さんになるな。
美佳ちゃんは、出会った頃の暗い表情が、ウソのように明るくなってきた。
元から可愛かったけど、表情も明るくなったことにより、かなりのべっぴんさんになった。
女の子は短い時間で変わるよな。……正直2人ともメチャクチャ綺麗になったもんな。
そういえば美佳ちゃんには浮いた話はないのか?もう17歳だろ?高校3年生だよな?
あれだけ可愛いんだ、恋人の1人や2人いてもおかしくないと思うんだけどなぁ。
……俺も歳を取るわけだよなぁ。もう35だぜ?完璧に婚期を逃したな。
……いや!まだだ!諦めるんじゃない、まだ希望はある!
美佳ちゃんに大学に行ってもらい、おじ様スキーなお金持ちお嬢様を紹介してもらうんだ!
そう、お金持ちで、ツインテールで、ちょっと強気で、時々メガネで、スラッとした足でコキコキしてくれるお嬢様を……
俺はまだ見ぬ恋人とのプレイを妄想し、顔をほころばせる。
やっぱニーソも入れなきゃいけないよな?
強気にツインテールは標準装備だしな!メガネは顔シャの時にかけてもらってと……
あれ?顔シャと足コキって両立するのか?出来るのか?いったいどうなんだろ?
「……上杉君、なにをニヤついているのかね?」
「……へ?あ、ぶ、部長!えっとですね、これはですね……」
俺の妄想をぶち壊す部長の声。しかも妄想中の顔まで見られちまった!
「……まぁヘンな顔をしてても、しっかりと働いてくれれば文句は無いんだがね」
「そ、それは任せてください!明日までにはこの書類、しっかりと仕上げますから!」
「うむ、頼んだよ。じゃ、私は先に帰るから」
新しい書類を俺の机に置いて、爽やかに帰っていく部長。……さりげなく仕事を増やすなよなぁ。
……ま、金になるなら何でもしますよ、っと。頑張って稼いで、美佳ちゃんの学費を稼がなきゃな!
美佳ちゃんには頑張って大学に進学してもらい、俺の将来の嫁となる、素敵な子を紹介してもらわなければいけない。
そのためにも……俺がしっかりと稼がなきゃいけないんだ!
5年前、2人と知り合った俺は、小日向準、美佳姉妹のために、身を粉にして働くと決めた。
何故赤の他人の2人の為にそう決めたのか、今でもよく分からない。
しかしそう決めたことにより、ぬるま湯のような俺の人生は、刺激的でとても有意義なものに変わった……と、思う。
このことが俺の人生にとっていいことなのか、まだ分からない。
けど俺が死ぬ時には、きっと満足して死ねると思う。
人生満足して死ねるやつなんて、そうはいないんじゃないか?そう考えたら俺って幸せなのかもしれないな。
……さ、そろそろ着合い入れて頑張らなきゃ、家に帰るのが遅くなっちまう。
早く帰ってチャットに入り、足コキと顔シャは両立するのかを話し合わなきゃいけないからな!
unaさんならきっと分かるはずだ、ヘンタイ女子大生のunaさんならな。
……2人がunaさんのように育たなくてよかったよ。俺がunaさんの親なら号泣するな。
俺はチャット仲間に失礼なことを考えながら、小日向姉妹のため、今日も一人で残業に励んだ。
……2人にチャットでの俺を知られたら自殺もんだな。
投下は以上です。
おいおい、普通に良い話じゃねーか!
GJ!出来れば続きを……
マジでGJ!!
続きwktkしてもいいですよね!?
ログ削除しようと思って久々に覗いたら何だこの良作は。
消せなくなったじゃないか。
ただGJとだけ……ですよね
>>351 GJ。
主人公の親御さんはどうなのかが知りたいね。
最初の内は(最後までか?)内緒にしていたのかも知れないけど
「30過ぎても結婚もしない息子が未成年の女の子を2人も連れて」というのは
親ならばびっくりして心配もするだろう。
と話とは直接関係ない、余計な妄想をしてしまう。
親父も似たような過去を持ってたんだよ
「小日向さんも、たまにはカラオケいかない?いっつもバイトしてるし、お金はあるんでしょ?」
授業が終り、ファストフード店でのアルバイトに行こうとする私に、声をかけてくれたクラスメート。
クラスでもあまり友達のいない私に、いつも声をかけてくれる優しい人。
「あ、ありがと。誘ってくれたのは嬉しいんだけど……」
「そっか、今日もバイト入ってるんだ?小日向さんは頑張り屋さんだからねぇ」
「ゴ、ゴメンね、西原さん。また誘ってね」
誘ってくれた西原さんに頭を下げて教室を出る。
背中から聞こえる、『あの子っていつも付き合い悪いわよね〜』というクラスメートの声を無視して。
「……はぁぁ〜。頑張って働かなきゃ」
駅前のバイト先への通り道。溜め息を吐きながらトボトボと歩く。
私、将来は何になりたいのかな?何をしたいのかな?
今の私は今を生きるのに精一杯。姉さんのように自分の道を決められない。
このバイトも姉さんがしていたから、マネをしただけ。姉さんは高校生の時、毎日遅くまで働いていた。
直人さんが食費に学費、家賃まで出してくれていたけど、切り詰めたらどうにか生活できるという金額だった。
だから姉さんは、いつも遅くまでバイトをしていた。これ以上、直人さんに迷惑はかけられないから、と。
だから夕御飯は、いつも姉さんが貰ってきてくれたハンバーガー。
お金の無い私たちには、贅沢なんて出来ない。だからいつも2人で冷えたハンバーガーを食べていた。
そう、冷えたハンバーガーは、私たち姉妹の思い出の味。
ハンバーガー食べながら、いつも話すのは直人さんにご馳走になった、レストランでのケーキのこと。
ケーキをお腹いっぱい食べて、動けなくなったのはあれが最初で最後。
ハンバーガーを食べながら、『ケーキ、美味しかったね。楽しかったね』と話すのが2人の日常だった。
でも、直人さんが、私たちの食生活を知り、それも終わった。
『お前ら馬鹿か!そんなジャンクフードばかり食って、身体壊したらどうするんだ!』って、叱り飛ばしてくれた。
とても優しい直人さん。その月から生活費を増やしてくれた。
無理して働かなくてもいいように、美味しいものを食べられるようにと、生活費を増やしてくれた。
姉さんは高校を卒業したら、小さな町工場で働くつもりだった。
少ない給料だけど、高卒でも働かせてくれるところを見つけたって喜んでた。
でも、直人さんがそれを止めた。
『それが準ちゃんの本当にしたい仕事なら、俺は止めない。
でも、お金がほしくて仕方なく働くんだったら、ぶん殴ってでも止めさせる!
なぁ準ちゃん。俺な、30過ぎて結婚してなくて、彼女も無し。おまけに実家住まいなんだ。
ということは、結構金は持ってるんだよ。だから、さ。遠慮せずに進学してもいいんだよ?』
ニコリと微笑んで、姉さんの頭を優しく撫でながら話す直人さん。
姉さんは、断わろうとした。でも、直人さんのおじさんとおばさんも、進学しなさいと叱ってくれた。
赤の他人なのに、とても親切にしてくれた直人さん達。
姉さんは嬉しくて泣きじゃくり、私もつられて泣いてしまった。
姉さんは、直人さん達の好意に甘え、美容師になりたいと美容系の専門学校に進学した。
本当はそんなにお金を持っていないのに、学費も全額出してくれた直人さん。
返済はお金は出世払いでいいよ、と笑ってた。
私たちの為に、お金を稼ぐ為に頑張って遅くまで働いて、買いたい物を買わずに、いつも同じ服を着ている直人さん。
仕事でとても疲れているはずなのに、そんなそぶりも見せずに、いつも冗談を言ってくれる優しい直人さん。
……いつからだったかな?そんな優しい直人さんが、大好きになったのは。
大好きな人の笑顔を思い浮かべる……ただそれだけで胸が温かくなり、とても幸せになる。
いつかはその笑顔を、私だけの笑顔にしたいな。
「ありがとうございました。いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりでしょうか?」
夕方のハンバーガー店。学校帰りの学生や、買い物帰りの主婦達で賑わう店内。
ひっきりなしに訪れるお客様の対応に、バタバタとする毎日。
人見知りの私は、働き出した頃、よく接客に失敗して叱られたりもした。
でも姉さんや直人さんに、接客の練習相手になってもらい、どうにか普通に働けるようになった。
「テリヤキバーガーのLサイズのセットで、500円になります。どうもありがとうございました。
次にお待ちのお客様どうぞ〜」
こうしてバタバタとしていると、時間が早く流れて、その分早く大人になれる気がする。
……大人になったら私のこと、子供扱いしないのかな?1人の女として見てもらえるのかな?
「いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりでしょうか?」
「いや、今日は持って帰るよ。そうだなぁ……ハンバーガーセット3つと、サラダを3つ。
あ、セットの1つはLサイズで頼むよ」
「かしこまりました。ハンバーガーセット3つと、サラダを3つ。セットの1つはLサイズでよろしかったでしょうか?」
「うん、後は……スマイルを1つ注文しちゃおうかな?」
こういう注文をする方は、時々いる。でも恥ずかしがり屋の私は、こういうお客様はちょっと苦手。
だから注文された笑顔は、いつも不器用な愛想笑いになっちゃう。
「ス、スマイル、ですか?……って、え?ええええええ!な、直人さん?」
「はははは、美佳ちゃん、気づくの遅いよ。顔を忘れられてるのかと、泣きたくなったじゃないか」
スマイルの注文で戸惑う私に、笑顔を見せる大好きな人。
ビックリする私の顔を見て、ニコニコ微笑んでくれている素敵な人。
私が大好きな、直人さんが……上杉直人さんがそこにいた。
「ど、どど、どうしたんですか?」
「いや、どうしたと言われても……オヤジとお袋のお土産に、ハンバーガーを買いに来ただけなんだけど」
「そ、そうなんですか……」
「オヤジ達さ、美佳ちゃんが作ったハンバーガーが食べたいってうるせぇんだよな。
作ってるのは別のバイトなのに、気づかないでやんの。ははは、馬鹿なおっさん達だろ?」
「そ、そうなんですか……」
物凄く会いたいと思っていたのに、いざ会えると、何を話せばいいのか分からずに、ろくな会話が出来ない。
そんな私を優しい顔で見つめてくれる直人さん。優しい直人さん……好き。
「で、美佳ちゃん。急に来て驚かせた悪かったけどさ、そろそろ働かなきゃ叱られるんじゃないの?」
「え?……はわ!そ、そうでした!テリヤキバーガーとフライドポテト、それと、ケンタッキーでしたね?」
「はははは!全然違うよ、ハンバーガーセット3つと、サラダを3つ。セットの1つはLサイズ、だよ」
「ゴ、ゴメンさない!すぐに持ってきますから、少し待っててください!」
自分が何を言っているのか、分からない。
きっと後で思い出したら赤面するような、恥ずかしいことを言っちゃったんだろうな。
……今日も湯船の中で、1人反省会かな?
「お、お待たせしました。ハンバーガーセット3つと、サラダを3つ。セットの1つはLサイズでございます」
「ありがと。じゃ、仕事頑張りなよ。次は注文したスマイル、見せてくれよな?」
はははは、と笑いながら、素敵な笑顔を残して帰っていった直人さん。
……はぁぁぁぁ〜。失敗したなぁ。こんなに慌ててるとこを見せて、何が大人の女、よ。
はぁぁぁぁぁぁ〜、大人への道は険しいなぁ。
「何、あのオヤジ?『注文したスマイル』だって?キモ!気持ち悪いオヤジね〜。
小日向さん、なに落ち込んでるの?キモイオヤジにセクハラでもされちゃったの?」
直人さんと上手く会話できずに落ち込む私に、次にお待ちのお客様が話しかけてきた。
いけないいけない、落ち込むのは1人反省会で!今はしっかりと働かなきゃ!
「お待たせしました。いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりでしょうか?……え?西原さん?」
落ち込む気持ちを振り払い、接客をしようとしたら、次に待っているお客様はクラスメートの西原さんだった。
どうして西原さんがここに?クラスの人たちと、カラオケに行ったんじゃなかったの?
「あははは、小日向さんって可愛いからねぇ。セクハラしたくなるオヤジの気持ち、分かっちゃうな」
「セ、セクハラなんて……西原さんは、クラスのみんなとカラオケに行ったんじゃ……」
「うん、行ってきたよ。でもさ、今日はなんかカラオケって気分じゃなくなってさ。
家に帰ってもヒマだし、どうせなら小日向さんのバイトを見学しようかなって」
「わ、私を見学ですか?どうして見学?」
「ヒマだから」
ヒマだからと言う西原さん。ヒマだからって、なんで私のバイトを見に来るのかな?
……直人さんの会話、全部見られてたんだ。恥ずかしいよぉ〜。
「けどこういうところでのバイトも大変だねぇ。ああいうキモい客の相手、イヤになっちゃうでしょ?
あ、ポテトと、烏龍茶ね」
「フライドポテトと、烏龍茶ですね?……慣れればたいした事無です。え?キモいって?」
「さっきのおっさんよ。おっさんが最後に言ったキモいセリフ、聞こえちゃったのよね。
『次は注文したスマイル、見せてくれよな?』ってなによ?キモ!って感じだよね!
思わずおっさんに『スマイル?……おっさんキモ!』って言ってやったもん」
おっさん?……おじさんのことだよね?誰の事を言っているのかな?
……そ、そりゃ直人さんは、その、年齢的にはおじさん……でも優しいんだもん!
「ああいうキモイおやじは、警察が逮捕しなきゃいけないわよね。
おっさんのくせに、可愛い小日向さんに手を出そうなんて……あぁ〜、キモ過ぎる」
直人さんはいつも優しくて、私達を大事にしてくれて……そんな優しい直人さんのことが、私は……キモいってなに?
「え?キモい?それって気持ち悪いってこと、かな?」
「そ、あんなオヤジにお金貰っても、笑顔なんて見せたくないよね?あぁ〜、思い出しただけでキモイわ」
「き……気持ち悪くなんかないです!直人さんはとっても優しくて、いい人なんです!」
いつも私に声をかけてくれる西原さんでも、直人さんを馬鹿にするのは許せません!
直人さんを馬鹿にされ、ムキになった私はつい大声で叫んでしまう。
直人さんは……直人さんはとっても優しくて、素敵な人なんです!
「……し、知り合いだったんだ?ゴ、ゴメンね?知り合いって知らなくてさぁ……怒っちゃった?」
「怒っちゃいました!直人さんは優しくて、素敵な人なんです!気持ち悪くなんかないんです!」
直人さんのことをよく知らないのに、悪口を言うなんて……最低です!
「……素敵な人?」
「そう、とっても素敵な人なんです!」
「……もしかして小日向さん、今のおっさ……お兄さんが好きなの?」
「……へ?……はわ!そ、そそそそんなこと、な、ないでふ!」
「ないでふってなによ?……そっかぁ、小日向さんは、年上が好きなんだぁ?年上のカレシが好きなんだぁ?」
「はう!しょ、しょれはぁ〜」
西原さんの質問攻めに頭が真っ白になる。
私は頭が真っ白になったまま、バイトの上がりの時間までどうにか働き続けた。
自分ではどうやって働いてたのか覚えてないんだけど、失敗無く働けてたみたい。
……友達が来たからって騒ぎすぎと、店長に怒られちゃったけど。
「ただいま〜、遅くなってゴメンね?すぐに夕御飯用意するから……って、あら?お友達?」
「お邪魔してま〜す。美佳ちゃんのクラスメートで親友の、西原まどかで〜す。
今日は美佳ちゃんの恋の悩みの相談を、聞きに来ました!」
「こ、恋の悩み?さ、西原さん!何を言っているんですか〜!」
バイトが終り、家に帰ってから姉さんに、直人さんが来てくれたことを話そうかと考えていたら、
何故か西原さんが部屋までついてきた。
『親友の恋の悩みは聞いてあげなきゃね!アタシ達、親友でしょ?』って言いながら。
……いつの間にか親友になっちゃってるんだね。一緒に遊びに行った事も無いのにね。
「あら?直人さんのことで?美佳、よかったじゃないの、心強い味方が出来て。
あたしは美佳の姉の準よ。よろしくね、まどかちゃん」
「よろしくお願いしま〜す!ところでお姉さんも相手のこと知っているんですか?
美佳ちゃんが言ってたんですけど、相手の『優しくて、素敵な直人さん』ってどんな人なんですか?」
「はわわわ!さ、西原さん!」
西原さんの言葉に耳まで真っ赤になる。
た、確かにそう言っちゃったけど、なにも姉さんに言うことないじゃないですか!
「直人さん?そうねぇ、とっても優しくて、いい人なのよ。そんな優しい直人さんに美佳はゾッコンなのよねぇ」
「はぅぅぅ!ね、姉さん!」
西原さんの言葉に、姉さんも悪乗りをしだした。今度は首まで真っ赤に染まってると思う。
直人さんに影響されたのか、姉さんはだんだんとイジワルになってきました!
「へぇ〜!あの大人しい小日向さんが、ゾッコンですか!やるねぇ、小日向さん!」
「はぅはぅはぅ〜」
西原さんにからかわれて、もう全身が真っ赤になってるかもしれない。……は、恥ずかしいよぉ〜。
「あっははははは!落ち込む美佳ってやっぱり可愛い!」
ギュッと強く抱きしめてきた姉さん。姉さん、苦しいです!
「あ、いいなぁ〜。準さん、アタシも抱きしめていいですか?」
「うん、いいわよ。どんどん抱きしめちゃって」
「やったぁ〜!いっただきま〜す」
「ふぐふぐふぐ〜!」
何故か西原さんも抱きしめてきた。二人の胸に顔を挟まれて、苦しいです!
柔らかくて気持ちいいけど、苦しいんです!た、助けて直人さ〜ん!
20:42<anan> こんばんは
20:42管理人 |> ananさん、いらっしゃい。
美佳ちゃんのバイト先で夕飯を買い、おやじとお袋に食わせた後にPCを立ち上げる。
そして、チャットソフトを起動させ、いつものチャットのチャンネルに入る。
女子校生にキモイと言われて落ち込んだ、今の俺を癒してくれるのは、この場所しかないんだ!
この……『下半身紳士同盟』という名のチャンネルしかないんだ!
ここで俺は『anan』と名乗り、色んな馬鹿話をしている。普段の生活では言えない様な事を、悪乗りで話すんだ。
それがもう楽しくって、俺は時間さえあればここに入り浸っている。
本当はネットを止めて、2人の為に金を節約しなきゃいけないんだろうけど、こればっかりは俺に残された最後の娯楽なんだ。
ここで馬鹿を出来るから、頑張ってこれたんだよ。
20:42<Agi>こんばんわ
20:42<win>おつー
20:42<gan>オコンバトラー
20:42<kero>こんー
20:42<una>コンドームは穴あきが一番!!
20:43<gan>らめぇ〜!孕んじゃうぅぅ〜!
20:43<anan>コンしか合ってないしww
20:43<una>穴あき以外は法律違反です!
20:43<kero>どんな法律だよww
20:43<Agi>ダメだ、この人早くなんとかしないとw
あぁ、癒される……このチャンネルに集うのは、俺と同類、いや、俺以上のヤツ等ばかりだ。
ここはちょっと人様の前では言えないことを、好き勝手に言える場所。
そう、ここは『下半身紳士同盟』……ここでは世間のしがらみなど一切無い。
思いつくままに、欲望のままに話せばいいんだ。
20:43<anan>今日は女子校生にキモイと言われたお(´・ω・)
20:43<kero>なんだと!キサマ……いくら払ったんだww
20:43<win>何発抜きましたか?ww
20:43<anan>マジ凹みで抜けないっすorz
20:43<una>ええ〜! せっかく美味しいおかずを頂いたのに、使わないのぉ? じゃあアタシが頂こうかな?
20:43<anan>unaさんは相変わらずHENTAIですねぇw
20:43<gan>ふっ…人は皆、心の中にHENTAIという刃を隠し持っているのさ
20:43<Agi>前面に押し出してたら捕まりますからねww
20:43<kero>黙れ、股間がライオンキングなくせにww
20:43<una>そうだ、そうだ! 股間が肉食獣なAgiさんはオナ禁2週間の刑ねww
20:43<anan>出た、オナ禁祭りww
20:44<Agi>( ´・ω・`)<うん、分ったお。オナ禁するお
20:44<gan>慣れてやがるww
20:44<win>諦めの境地かww
20:44<anan>ww
あぁ、癒されるなぁ……俺はこのチャットで仕事での鬱憤を晴らし、明日への活力としている。
ここで話すことは、8割方がシモネタだ。ここでは好き勝手なことを話せて、馬鹿を言える。
準ちゃんや美佳ちゃんの前では、決して見せることが出来ない俺を見せることが出来る。
そう、ここは俺の隠れ家のような場所かな?
20:45<kero>そういえばunaさん、パパ様をレイプする計画は上手くいったんですか?
keroさんが、ここの主催者であるunaさんに問いかける。
そうだった。unaさん、数年ぶりにパパと会えるって喜んでたんだった。
今回こそはパパをレイプして孕んでやるって意気込んでたもんなぁ……冗談だとしても、ファザコンにも程があるな。
20:45<una>ママに叩かれた。しかもガチで( ̄□ ̄;)!!
20:45<gan>チャレンジしたのかよ!ww
20:45<Agi>ダメだ、この人本当に早くなんとかしないとww
20:45<anan>もちろん迫った時はツインテールにニーソ、メガネを装備したんですよね?ねね?
20:45<win>でたww ananさんの赤い彗星理論ww
unaさんと初めてここで会った時、彼女は女子校生だって言ってた。
あれはもう6年ほど前か……ちょうど準ちゃんや美佳ちゃんと会う1年ほど前だったかな?
その頃からここに集うメンバーは変わらない。
時々新規さんが来たりもするけど、なかなか定着しないんだよな。
まぁ、ここのメンバーは頭のネジがぶっ飛んでるからな、新規さんにはキツイよな。……俺は普通だよな?
『ツインテールにニーソ、メガネを着用した女の子の魅力は3倍になる』
これを『赤い彗星理論』と呼ぶ事にしようと言ったのは、確かに俺だけど、当たり前のことだよな?
みんな賛同したし、あとはこの理論に世間がついて来れるかなんだけどな。
20:45<una>うん、したよ。ananさぬの大好きなツインテールにニーソ、メガネにスク水で迫ったけど、ママに阻まれた
20:45<win>そりゃ阻むわww
20:45<anan>スク水がいけなかったのかな?ブルマー様を装備してたらきっと上手くいったんじゃないかな?
20:45<una>そ、そうだったのかort
20:45<kero>次は体操服の下にスク水を着て迫ることですね。きっと母上に撲殺されるでしょうww
20:45<una>撲殺らめぇ!ww せめて絞殺でww
20:46<Agi>ダメだ、この人達、本当に早くなんとかしないとww
20:46<gan>黙れ、股間が野生の王国のくせにww
20:46<Agi>(´・ω・)
20:46<anan>ww
20:46<kero>股間がサバンナww
20:46<una>え?股間がサバンナ? サバンナということはゾウがいるよね? 股間にゾウ……Agiさぬ包茎?
20:46<Agi>ズル剥けだい!(頭を押えながら)
20:46<anan>そっちかよww
20:46<win>否定はしないんだw
20:46<una>Agiさぬの包茎おてぃんぽをむきむきしてあげて、カラシを塗りこんであげたいおΨ(`∀´#)
20:46<Agi>だから剥けてるっての!
20:47<gan>やべぇ!羨ましい!
20:47<anan>してほしいのかよ!ww
20:47<una>HENTAIには付き合いきれませぬ
20:47<kero>アンタが一番HENTAIだぁぁぁ〜!
20:47<Agi>ダメだ、この連中、本当に早くなんとかしないとww
20:47<anan>ww
やはりみんな変態だな!こいつらを見てると、なんか安心するというか、なんというか……
まぁ準ちゃんと美佳ちゃんを、unaさんのようにしちゃいけないということは確かだな。
こうして俺は、今夜もチャットで楽しい会話をし、仕事で疲れた心と身体を癒した。
早く美佳ちゃんに大学生になってもらい、ツインテールでニーソでメガネの可愛い女子大生を紹介してもらわなきゃな!
……unaさんはみたいな子だけは勘弁だけどな。
「ぶくぶくぶくぶく……」
湯船に浸かり、顔を半分お湯に沈めての1人反省会。今日は反省することばかり。
まず一つ目。バイト先に直人さんが来てくれたのに、緊張してあまり会話が出来なかった。
せっかく会えたのに……はぁぁぁ〜。自分がイヤになります。次こそはもっとスムーズに話せるように頑張らなきゃ!
いきなり会えても焦らないように、話す内容を考えておこう。
うん、事前に考えておけば、きっとスムーズに話せるよね?
何を話そうかな?う〜ん……話す内容はまた考えよう。
次に二つ目。……西原さんに直人さんが好きってことを知られちゃった。
直人さんを気持ち悪いと言われて、ムキになって大きな声で叫んじゃったし……これは大反省です。
学校で何か言われたりするのかな?……はぁぁぁ〜、気が重いよぉ。
西原さん、こういうこと大好きそうだし、色々聞かれちゃうんだろうな?
今日も姉さんに色々聞いてたし……姉さんも姉さんです!なんで妹の恋の話を楽しそうに話しちゃうのかな?
そのおかげで、西原さんに全部知られちゃったじゃないですか!
……あれ?全部知られちゃったから、もう学校で色々と聞かれる事はないのかな?
そ、それはそれで少し寂しいような気がします……はわ!な、なにを考えているんですか!
こういう話は人様に話すようなことじゃないと思います!……けど西原さん、協力するって張り切ってたしなぁ。
「ぶくぶくぶく……ぷはぁ!はぁはぁはぁはぁ、し、死んじゃうかと思いました」
いけないいけない、反省しすぎました。危うく溺れちゃうところです。
ふぅぅ〜……どうせ溺れるなら、直人さんとの恋愛で……はうぅ!
な、なにを考えてるんですか!そ、そんな、直人さんと溺れるなんて!
……反省です。これは姉さんと西原さんに影響されすぎです。猛省しなきゃいけません!
息を整えてから、もう一度湯船に沈む。反省会、第2ラウンドの開始です。
「ぶくぶくぶくぶく……」
……でも、恋愛に溺れるって、どんな感じなのかな?
姉さんは、安田さんとそういうことあったのかな?西原さんはどうなのかな?
直人さんは……どうなのかな?そういうこと、あったのかな?
もしかしたら私達が知らないだけで、実は好きな人がいて、今もその素敵な女性との恋愛に溺れて……
「ぶくぶくぶくぶく……ぷはぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!お、溺れるところでした!」
いけないいけない、考えすぎはダメです!
いつも姉さんに叱られてる通りです。私は物事をネガティブに考えすぎなのかな?
そうです。きっと直人さんは女性に人気がなくて、モテないんです。
だから恋愛なんて出来なくて、寂しい一人身なんです!きっと女性とお付き合いしたこともないんです!
私が彼女になってあげなきゃ、女性と縁のない、寂しい暮らしをすることになるんです!
……とても失礼なことを考えてる気がするけど、気のせいかな?
湯船の中での1人反省会。姉さんに、早く出てきなさいと叱られるまで、反省会を続けちゃった。
はぁぁ〜、また湯船を独占してしまいました。これは反省しなければいけません、また1人反省会です。
「こっひなったさ〜ん!愛しの直人さんの写真、見せてよ!」
「小日向さんの好きな人、素敵な大人の男性なんですって?そうかそうか、小日向さんは年上が好みだったのか」
「それがさぁ、アタシが準さんから仕入れた情報によると、メチャクチャいい人なのよね!
あ、準さんってのは、小日向さんのお姉さんね。美容師してて、小日向さんに似て超美人なのよね!」
「あ、あのぉ〜、西原さん……何故私は皆さんに囲まれているのでしょうか?」
朝、いつものように登校したら、クラスのみんなに囲まれた。
その中心にいる人物は、西原さん。……はぁぁぁ〜、皆さんに喋っちゃったんですね。
「だってさ、美人で、大人しくて、男子に人気もある小日向さんの初スキャンダルだよ?
こんなに面白いこと、皆に教えなきゃダメでしょ?」
「そうそう!小日向さんがその男とくっついてくれたら、ライバルも減るってもんだしね」
「あっはははは!確かに言えてる〜!だってさ、クラスの男子、小日向さんに好きな男がいるのを知って、凹んでるしね」
へ、凹んでいると言われても……なんだか申し訳ないような気がします。
「昨日は驚いちゃったね!だってさ、バイト先でいきなり大声で叫んじゃうんだもん」
「はわわわわ〜!それは言っちゃダメです!西原さん、それは秘密です!」
「小日向さん……秘密っていうのはね、バラすためにあるのよねえ〜」
とてもイジワルな顔で微笑む西原さん。秘密は守る為にあると思います!
「そ、そんなの初耳です!」
「小日向さん、何を叫んだの?わたし達親友じゃないの、教えてよ?」
し、親友って!……直人さん、この2日間で、親友がたくさん出来ました。これはまるで親友の大安売りのようです。
「昨日アタシね、怒鳴られちゃったのよ。『直人さんは優しくて、素敵な人なんです!』ってね」
「あうあうあうあうあうあう〜」
「へぇ〜!大人しい小日向さんがそんなこと怒鳴っちゃったの?うっわぁ〜、ラブラブじゃないの!」
「あうぅぅぅ〜」
「あっははははは!恥ずかしがってる小日向さん、可愛い!抱きしめちゃいたい!」
「あ、それは大丈夫よ。準さんから抱きしめていいって許可貰ってるから、思う存分抱きしめちゃいましょ!」
イジワルな笑顔の西原さんの言葉で、昨日の悪夢を思い出す。
イ、イヤです!柔らかくて気持ちいいけど、窒息はイヤです!
逃げ出そうとする私を捕まえて、その胸にギュッと抱きしめるクラスの皆さん。
「やっりぃ〜!いっただきま〜す!」
「はぐぅ〜!」
「うっわぁ〜!小日向さん、結構胸あるんだ?足も綺麗でスベスベだし……耳たぶ噛んじゃお」
何故か胸や足を触るクラスの皆さん。
や、んん!も、揉んじゃダメです!触っちゃダメです!噛んじゃだめですう〜!
「ひゃっぐ!」
「あっはははは!照れてる小日向さん、可愛い!」
「や、やめてください〜!」
……姉さん、西原さんにいつでも私を抱きしめていいなんて許可を、何故出したんですか?
おかげで私は……朝から揉みくちゃにされちゃいました。
でも……こういうことは初めてですけど、なんだか凄く楽しかったです。
クラスのみんなも私の恋を応援するって言ってくれたし……でもみんな、楽しんでいるだけのような気がします。
いつかは、みんなにじゃなくて、直人さんにも抱きしめてもらえたらいいな。
……とりあえず、この首につけられたキスマークは、どうすればいいのかな?
今回は以上です。
テラ乙
ヘンタイ女子大生のumaさんは
相変わらず肉食獣のagiさんと付き合ってるんだろうか
知らない間に続編が・・・GJ!!
保守・・・誰もいないのか・・・?
373 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 04:20:31 ID:2jxTrT95
あ……あのっ、その……な、なんでもな――いえ、大丈夫です。
わたしでも、勇気を出して頑張ったら保守ができるってことを……お兄さんに見せたいんです!
保守
375 :
名無しさん@ピンキー:2008/12/28(日) 21:11:40 ID:lk2U5HXt
スレ数がやばいのでアゲておきます。
>>375 あの、その……あ、ありがとう……ございます……。
上げたいけど…・・・そこまで勇気が出ないから・・・保守だけでも・・・・・・。
378 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/06(火) 21:53:54 ID:vbi7T8wP
「で、愛しの直人さんの写真はいつになったら持ってきてくれるの?」
「愛しの直人さんを秘密にしたいのは分かるけど、もういいじゃないの。アタシ達にも見せてよ?」
「や、その、それはですね……えっとですね」
お昼休み。姉さん手作りのお弁当を広げようとしたら、クラスメートの皆さんに囲まれてしました。
はぁぁ〜……西原さんに直人さんのことを知られて以来、毎日こうです。
以前とは違い、賑やかでちょっと騒がしい気もしますけど……楽しく思っちゃってる私がいます。
「もぉ〜、小日向さんは恥かしがり屋さんなんだから……あ、もしかして携帯の待ち受けが愛しの人だったりして?」
「やわ!そ、それはですね、あ、あれなんですよね!……ちょっとおトイレに行ってきま……」
まずいです!これは非常にまずいんです!
携帯の待ち受けを直人さんとの写真にしていると知られちゃったら、皆さんに何を言われちゃうか分かりません!
どうにか誤魔化さないといけません!
「動きが怪しすぎるわねぇ?やっぱり待ち受けにしちゃってるんだ?」
「へぇ〜、待ち受けにしちゃってるんだぁ?やっぱり小日向さんは可愛いねぇ〜」
「どれどれ〜、携帯チェックしちゃいましょうかねぇ?」
「やわわ!それはダメです!個人のプライバシーです!個人情報保護法違反です!」
そんな名前の法律があると聞いた事があります!法律を破ると罰金です!お金取られちゃいますよ?
法律は弱い人を助けるためにあるんです!法律さん、助けてください!
「ええ〜?見せてくれないの?じゃあさ、ここは一つ民主主義的に、多数決で決めようじゃないの」
「え?多数決、ですか?」
まるで直人さんがイジワルをする時のような微笑みを見せる西原さん。
多数決ですか、確かに民主主義っぽくていいかもしれません。
皆さんも笑顔で頷いていますし、多数決でなら大丈夫かな?
え?皆さんも笑顔で頷いている?……はわ!よく考えたら皆さんも見たがってます!
多数決しても絶対に負けちゃいます!ダメです!いけません!却下です!
「ダメです!そんなの却下です!」
「多数決で決めるのがいいと思う人〜!」
「「ハイハイハ〜イ!」」
……数える必要すらなく、皆さん手を挙げちゃっています。
こ、これは罠です!西原さんに仕組まれた罠なんです!皆さん、罠に引っかかっちゃってます!
「はい、多数決で決める事になりました!では、西原さんの携帯をチェックする事に賛成の人〜?」
「「ハイハイハイハイハ〜イ!」」
……何故かクラス全員が手を挙げ賛成しちゃってます。
話した事もない男子まで手を挙げちゃって……これは民主主義の暴挙です!数の暴力なんです!
数の暴力に負けちゃった私は、携帯電話を取られちゃいました。
ごめんなさい、直人さん。直人さんに買ってもらった携帯を、皆さんに見られちゃいます。
……個人情報保護法さん、もっとしっかりしてください!
「へぇ〜?これが愛しの直人さん?っていうか、この写メの小日向さん、可愛いねぇ〜」
「一緒に写ってるこの人がお姉さんの準さんなの?ふ〜ん、確かに美人ね……負けたわ」
「愛しの直人さん本人は、この写メよりもう少ししょぼくれて……じゃなくて、もうちょっと大人っぽいかな?」
携帯の待ち受けを見て、好き勝手に言っている皆さん。
西原さんが皆さんに直人さんの情報を教えたりもしています。……直人さんはしょぼくれてなんかないと思います!
皆さん好き勝手にワイワイ楽しそうに話しています。
けどこういう雰囲気は初めてで、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しい気がします。
「ねぇ小日向さん。前から思ってたんだけど、このストラップってなんなの?
あまり可愛くないね〜。……もしかして小日向さんって、変なもの好き?」
直人さんの写メに飽きちゃったのか、西原さんが私の携帯に付けているストラップの事を聞いてきました。
着物を着た侍が、頭に丼を乗せ、その中にはうどんが入っている。……今思うと、確かにヘンなストラップです。
でも、そのストラップは、私達姉妹と、直人さんの思い出のストラップなんです。
「確かにヘンなストラップです。今はもう売っていませんし。でもこれは……思い出のストラップなんです」
「え?こんな変なストラップに思い出があるの?あ!もしかして愛しの直人さんに買ってもらったの?」
誰に貰ったのかをズバリ正解しちゃった西原さん。
西原さん、凄いです!クイズ番組に出れば、賞金をたくさん稼げちゃいそうです!
「……はい、それは直人さんに初めて貰った物なんです。
直人さんが私達姉妹を連れて、初めて連れて行ってくれたドライブで、買ってくれた思い出の品物なんです」
そう、あれは直人さんと知り合ってまだ間もない頃です。
あの頃の私達は、まだ直人さんのことを警戒していました。そのうちイヤらしい事をしてくるんじゃないか、って。
でも、直人さんはそんなそぶりも見せずに、
私達をたくさん、本当にたくさんいろんなところに連れて行ってくれました。
最近は姉さんが働きだしたせいもあり、あまり一緒にお出かけは出来ません。
でも、このストラップを見ていると、初めてのドライブを思い出します。
そう、あれは姉さんとの二人での生活を始めてまだ間もない頃です。
三連休の初日に、直人さんが私達の様子を見に来てくれたんです。
色々な物を買ってきてくれた直人さん。なんと、お昼ごはんはピザを頼んでくれました!
美味しかったなぁ……熱々で、チーズがトロトロの美味しいピザ。
それに、なんとですよ?チキンを一緒に頼んだら、オレンジジュースが無料で付いて来るんですよ?
これはもう、チキンも頼まなきゃいけません!う〜ん、お店の見事な戦略にやられちゃってます。
でも、美味しいものは仕方がないんです!オレンジジュース、美味しいんです!
「……ねぇ、小日向さん。オレンジジュースが美味しいってなに?さっきから握りこぶしで何をブツブツ言ってるの?」
……はわ!く、口に出しちゃってました!
「真っ赤な顔で、何を慌ててるの?ところでさ、ドライブってどこに連れてってもらったの?」
「そ、その、あれです!ちょっと考え事してただけです!……え?ドライブ、ですか?」
そうでした、ドライブの思い出に浸っていたんでした。
そう、あれは熱々のピザをご馳走になった日に、誘ってもらったんでした。……ピザ、美味しかったなぁ。
「上杉さん、掃除機に洗濯機まで買ってもらって……本当にありがとうございます!」
遊びに来た上杉さんに、深々と頭を下げる姉さん。
上杉さんと出会ってから二週間。私達姉妹の日常は、目まぐるしく変化していった。
狭いアパートに姉さんとの二人暮し。二人で布団を並べて寝るこの部屋には、必要最低限の生活用品しかなかった。
掃除機もなければ洗濯機もない。炊飯器もないけど、冷蔵庫は備え付けの小さなものがあった。
でも、中身は何も入っていない。お金がないし、私達は料理が出来なかったから。
だからご飯はいつも姉さんがバイト先から貰ってきてくれる、売れ残りのハンバーガー。
時々温かいご飯を食べたいと思うけど、今の私達にはそんな贅沢は言えない。
直人さんが住むお部屋を用意してくれた事でさえ、奇跡のような事だから。
「ははは、気にしなくてもいいよ。で、他に必要なものはないかな?」
「い、いえ!もう十分です!上杉さん、本当にありがとうございます!ほら、美佳もお礼言いなさいね」
姉さんの後ろに隠れるように直人さんを見ていた私に、お礼を言いなさいと言う姉さん。
私もお礼を言いたいと思っていた。でも、この頃の私は、まだ上杉さんのことが怖かった。
……違う。大人の男が怖かったの。大人の男の人の大きな手が、父さんの手に見えて怖かったの。
「あ、あの、上杉さん……ありがとうございました」
視線を合わせないままお礼を言う。目を見たら、何を睨んでいるんだと、叩かれるかもしれないから。
「いいって、いいって。そんなに気にしなくてもいいから」
私達にお礼を言われて、少し恥ずかしいのか、照れながら顔の前で手を振る直人さん。
そんな直人さんを見て、この時の私達は、早く帰ってくれないかなと、不謹慎なことを考えていた。
「そうだ!準ちゃんに美佳ちゃん。お昼は食べたのかい?まだだったら、一緒にどうだい?」
「え?お昼ごはん、ですか?まだ食べてないですけど、その、恥ずかしい話ですけど、材料とかまったくないんです。
料理も作れないし、その……ゴメンさない!」
「ゴ、ゴメンなさい!」
姉さんが頭を下げたから、慌てて私も頭を下げる。
この頃の姉さん、直人さんに嫌われないようにしようと必死だった。
直人さんに嫌われちゃったら、私達の居場所がなくなっちゃうから。
きっと直人さんが体を求めてきたら、応じたはず。そのくらい、姉さんは覚悟を決めていた。
そんな姉さんにおんぶに抱っこだった無力な私。
でも直人さんはそんな考えは微塵もなく、それどころか、私達を楽しませてくれる事を考えてくれていたの。
「はっははは!ま、準ちゃんと美佳ちゃんの手料理は、そのうち食べさせてもらうとするよ。
今日のところは宅配ピザでも頼んじゃおうか」
直人さんは、頭を下げる私達姉妹を見て軽く笑い、ピザを注文すると言ってくれたの。
ピザ……母さんが生きていた頃に、何度か頼んだ事のある、とても美味しい食べ物。
私はゴクリと唾を飲み込み、姉さんは『クゥ〜』とお腹を鳴らした。
「はっははははは!そうかそうか、準ちゃんはお腹ペコペコか!よっしゃ、今日はたらふくピザを食わせてやる!
この上杉直人さんに任せなさい!」
お腹を鳴らし、恥ずかしくて顔を真っ赤に染め涙目の姉さんの頭を、くしゃくしゃと撫でながら笑う直人さん。
笑いながら、電話でピザを注文してくれて、チキンまで頼んでくれた。
おまけで付いてきたオレンジジュースを飲みながら、姉さんと二人でLサイズを一枚食べきりました。
直人さん、それを見て、楽しそうにほほ笑んでいた。
『年頃の女の子二人が、我先にと争いながらピザを食べるのは、初めて見たよ』と言いながら。
直人さん……今でもそれでからかうのは、止めてくれませんか?
「う〜ん……今年はどこへ行くかなぁ?準ちゃんが来れるのも多分今年が最後だし、オヤジ達からも急かされてるしな」
昼休み。国内旅行の情報誌を見ながら、毎年恒例のドライブで、今年はどこに行くか考える。
準ちゃんが就職するまでは、年に四、五回、オヤジにお袋、準ちゃん美佳ちゃんを連れて、ドライブに行ってたんだよな。
最初は二人を敵視してたオヤジにお袋も、今では実の息子以上に可愛がっている。
ま、蔑ろにされてる実の息子は俺なんだけどな。……息子にも少しは愛情をくれよ。
「お?また親を連れてどこかに行くのか?お前はホントに親孝行だな」
横から情報誌をぶん取り、チャチを入れる同僚の高橋。
「どうせ連れてくなら、可愛い女でも探していけばいいのにな。お前、いつまで独身を貫くつもりだ?」
「うっせぇ!てめえのように尻に敷かれるよりはマシだ!」
「はいはい、負け犬の遠吠え遠吠え。お前、もしかしてホモか?」
旅行誌をぺらぺらとめくり、興味なさそうな顔をして、俺に返す高橋。
勝手にホモ認定するんじゃねぇ!俺は女の子大好き人間だ!
「しっかしお前、ホントに女の噂、ないよな?マジでホモか?同期の仲だろ?オレだけに言ってみな?」
「出会いがないだけだ!出会いがあれば、俺だってなぁ!」
そう、俺に足りないものは出会いだけなんだ!出会いさえあれば、俺も結婚して幸せな生活を……チクショオ!
「ふぅぅぅ……なぁ上杉よ。今お前が言った事、なんていうか教えてやろうか?」
額に手を当て盛大なため息を吐き、やれやれといった顔をする高橋。
「いーや、教えていらねえ!どうせろくでもないことに決まってんだ!」
「『出会いがない』。お前が言ったこの言葉はな……負け犬の遠吠えって言うんだよ」
「チックショォォォォォォォォォォ〜〜〜!」
苛められた!同期の同僚に苛められた!会社での虐めだ!虐めはしちゃダメなんだぞ!
「三十を超えて彼女なし。おまけに親元住まいのクセに万年貧乏。……これを負け犬と言わずなんと言う?」
「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜!!」
「はぁ〜、ヤダヤダ。同期が人間じゃなく、こんな負け犬でヤダヤダ」
「……女子高生」
あまりにも言いたい放題だから、ちょっとした復讐に出る事にした。
コイツの嫁にバレたら、離婚も有り得るとんでもない事だけどな。
「はぁ?お前、ついに頭壊れたか?女子高生って、幻覚でも見え出したか?はははっ、上杉だけに女に餓え過ぎだな」
まだ俺を馬鹿にする高橋。クックック……もう許せねぇ!今の俺を止める事は出来ねぇぜ!
「……九州遠征」
「九州遠征?お前、本当にどうした……って、女子高生で九州遠征?お、おいお前!何言い出すつもりだ!」
「……出会い系サイト」
「お、落ち着け!会社でそれはまずい!お前、オレの家庭を壊すつもりか!」
「……そして、一夜の恋。でも、体重80キ……んぐ!」
「な、なぁ上杉君!お腹、空いてるだろ?美味しい美味しいお寿司、食べたくないか?奢っちゃうよ?」
封印された過去を喋られたくない為か、慌てて俺の口を塞ぎ、寿司を奢ると言い出した高橋。
九州に行く前は、女子高生ゲットだってはしゃいでたもんな。
嫁さんには出張だって嘘ついて、いざ会ってみたら、体重80キロオーバーの横綱級!
でもそんな女とSEXするお前の冒険心に完敗だよ。
それにしても寿司かぁ……寿司を奢ってもらえるのなら、もっと早くに言えばよかったな。
寿司寿司……寿司といえば海の幸。海の幸は美味いもんなぁ。
……海の幸?それだ!今年は豪勢に海の幸を食いに行こう!
海岸沿いの道を車を走らせて、美味い物を食う!最高じゃないか!
「ふぁぁ〜……姉さん、お腹いっぱいですぅ」
「あたしもぉ〜。でもお腹いっぱいだけど……」
「はいぃ〜……幸せですぅ〜」
美味しいピザをお腹いっぱいに食べて、床にへたり込む姉さんと私。
トロトロのチーズ、美味しかったですぅ……熱々のチキン、とても美味しかったですぅぅ。
「う〜ん、何度見ても面白いな。はは、お前等食いすぎ姉妹だな」
く、食いすぎ姉妹?女の子に対してそれは言いすぎだと思います!
「上杉さん、ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「美味しかったですぅ」
満腹で動けない姉さんと私。お腹がいっぱいになるだけで、凄く幸せになれるなんて……人間って凄いです。
「お礼なんて言わなくていいよ。お礼は……体で払ってもらうから」
お腹いっぱいで動けない私達を見てニヤリと笑った直人さん。
今思うとあの笑顔は、直人さんが悪戯を思いついた時に見せる笑顔。
でもあの時は、ついに体を求められる時が来たんだと、物凄く怖くなったんです。
私だけじゃなく、姉さんも怖かったみたい。その証拠に、少し震える手で、私の手をギュッと握ってきました。
「あの、上杉さん!その、あ、あたしだけでいいですよね?美佳は……美佳はまだ中学生です!
お願いです、あたしだけで我慢してください!」
震える手で私の手をぎゅっと握り、震える声で訴える姉さん。
私はそんな姉さんの手を握る事しか出来なかった。私はいつも姉さんに守られてばかり。
でも、あの時は怖くて、また父さんの時ように叩かれたりするのかなって、震えていました。
「んっふっふっふ……ダメだ。今日は二人にご奉仕してもらおうか。俺が一から全部教えてやろう。
なぁに、すぐに一人でも出来るようにならさ。おっと、二人でしたほうが早く終わるけどな。
ぐわぁ〜っはっはっはぁ!」
今考えると、とても不自然な直人さんの笑い声。
でもあの時は、姉さんと二人で、ブルブル震えながら、直人さんの後について行き、部屋を出るしか出来なかったんです。
部屋を出た時に直人さん、持ってきた手さげカバンを差し出しニヤリと笑いました。
『さぁて、二人で綺麗にしてもらおうかな?隅から隅まで丁寧に洗うんだぞ?』って。
私は直人さんが何を言っているのか意味も分からず、ただ姉さんの手を握り震えるだけでした。
「美佳、そこ、まだ白いの付いてるわよ。しっかりと拭きなさいね」
「あ、ホントです。しっかりと拭いてっと……ゴシゴシゴシ、出来ました!きれいピッカピカです!」
「あたしも……っと!これで終了!中も綺麗にしたし、これで完璧ね!」
ふぅ、初めてでしたけど、上手に出来ました。
……はたして上手に出来たのでしょうか?直人さんにチェックしてもらわなきゃいけません。
「上杉さん、言われたとおりに出来ました。これでいいですか?」
雑巾を絞り、ドキドキしながら直人さんの判定を待つ。
私たちが精魂込めて綺麗にした自分の車をじっと見る直人さん。
洗車なんて初めてでしたから、緊張しちゃいました。
ワックスというものを初めて使いました。ヘンな匂いがするのに驚いちゃいました。
「……うん、合格だ!二人ともご苦労さん。おかげで綺麗さっぱりピカピカの新車みたいになったよ」
私たちが綺麗にした車を撫でて嬉しそうな笑顔を見せる直人さん。
その笑顔に、私たちもホッと胸を撫で下ろしました。
「しかし二人とも洗車が上手いな。これからも時々頼んじゃおうかな?」
「は、はい!いつでもします!あたし達に洗車をさせてください!」
「させてくださいです!」
両手で握りこぶしを作り、力いっぱいお願いする姉さんと私。
直人さんの機嫌を取り、二人でも生活できるように援助してもらわなきゃいけない!嫌われたらダメ!
この時は真剣にそう思っていたんです。直人さんに嫌われたら、私達は終わりだって。
だから、姉さんも……私も、直人さんに体を求められたら差し出そうと考えてたんです。
『お礼は体で払ってもらう』。そう言われた時、きっとイヤらしい事をされるとビクビクしてた姉さんと私。
……まさか洗車をさせられるとは思いもしませんでした。
そういえば直人さん、私たちが怖がっているところを見てニヤニヤしていました。……ダメだと思います!
女の子を苛めて喜ぶのはいけないと思います!直人さんはイジワルです!
「しっかし綺麗になったなぁ。準ちゃん美佳ちゃんは洗車が上手いな。
こんなに綺麗だと、どこか遠くに車を走らせたくなるな」
「そうですね、綺麗な車に乗って、どこかに行けば楽しいでしょうね」
姉さんが直人さんに話を合わせる。
あの時まだ中学一年生だった私は、姉さんが話しを合わせていると気づかずに、
車に乗ってどこかに行くのは楽しいのかなって思っていました。
「……じゃ、行こうか」
「え?」
「明日迎えに来るから。俺、美味しい饂飩屋知ってるんだよ。本場讃岐饂飩が食える店なんだ。
きっと準ちゃんも美佳ちゃんもお腹いっぱい食べて動けなくなるぞ?」
ニヤリと笑い、饂飩を食べに行こうと誘ってくれた直人さん。
きっとこれが目的だったんです。直人さん、私達をドライブに誘うため、来てくれたんです。
直人さん、いつも私たちのことを考えてくれて、とても優しいんです。
私、とても優しい直人さんが、大好きなんです。
次の日、約束どおり、直人さんは綺麗になった車で迎えに来てくれました。……朝の六時に。
まさか本場讃岐饂飩が食べられるお店というのが、ホントの本場の香川県だとは思いもしませんでした。
車で長時間揺られ、遠い香川県までの日帰りドライブはとても疲れました。
でも、すごく楽しかったです!美味しい饂飩をお腹いっぱい食べて、楽しかったです!
私達を楽しませるために、ずっと運転してくれた優しい直人さん、大好きです。
「……ということがあったんです。
その時に直人さんが姉さんと私に買ってくれたのが、このサヌキチ君です。
ちなみに姉さんと直人さんも同じ物を使っています。
姉さんのストラップの名前はサヌキノスケ。直人さんのはサヌキエモンです。
でも携帯ストラップを貰っても、私たちは携帯電話を持っていませんでした。
でも直人さん、ストラップだけじゃダメだろと笑いながら、携帯まで持たせてくれたんです。
きっと最初から、携帯を持たせてくれようと考えて、サヌキチ君を買ってくれたんです。
……優しい直人さん、大好きです」
携帯ストラップのサヌキチ君を皆さんに見せながら、初めてのドライブの思い出を話す。
楽しかったなぁ……美味しいお饂飩をお腹いっぱい食べて、とても楽しかったです。
また、どこかに行きたいなぁ……直人さんにお願いしてみようかな?
「なるほどねぇ、つまりは『優しい直人さん、大好きです』ということね」
うんうんと頷き、簡単に纏める西原さん。……はわわ!さ、西原さん!急に何を言っちゃってるんですか!
「んな!何を言い出すんですかぁ〜!」
「だって小日向さん、『やさしい直人さんがぁ〜だいしゅきですぅ〜!』って言ってたじゃん」
「そ、そんな風には言っていません!」
「じゃ、どう言ったの?」
「え?い、いや、それは、そのですね……や、優しい直人さんが……大好き、です……は、恥ずかしいです!」
い、言っちゃいました!皆さんの前で大好きなんて言ってしまいました!
こ、これは本当に恥ずかしいです……直人さんに聞かれたりしたら、恥ずかしくて死んじゃいそうです。
「あははははは!小日向さん、ホントに可愛いねぇ」
「真っ赤に照れて『大好きです』って……あぁもうたまんない!」
「わわ!皆さん、抱きつかないでください!って、やぁ!胸、触らないで!やん!揉んじゃダメ!耳噛まないでぇ〜!」
とても美味しい、姉さん特製の手作りお弁当を楽しむはずのお昼休み。
何故か笑顔の皆さんに、もみくちゃにされちゃいました。
……胸を揉むのはダメだと思います!耳を噛んじゃうのは意味が分かりません!
23:22<anan> こんばんは
23:22管理人 |> ananさん、いらっしゃい。
高橋に美味い寿司と酒を奢らせて、いい気分になって帰宅する。
家に帰り、風呂で汗を流した後にPCを立ち上げ、『下半身紳士同盟』のチャットチャンネルに入る。
ふぅ〜、高橋のヤツ、気にしてることをズバズバ言いやがって!
……いかん、マジで泣きたくなってきたぞ。
23:22<gan>オコンバトラー
23:22<una>コンドームはイチゴ味がゴハンが進む!!
23:23<anan>コンドームがおかずかよ!ww
23:23<una>お尻に入れたらある意味カレー味!
23:23<gan>シモネタにも程があるww
23:23<Agi>こんばんわ
23:23<anan>今日はAgiさんの突っ込みがありませんね
23:23<Agi>もう突っ込みにつかれたお(´・ω・)
23:23<una>え?突っ込むのにつかれた?ということは、今度は突かれるほうになったんですね?(主にお尻のアナルに)
23:23<Agi>黙れこの腐れド変態が(´・ω・)
23:23<anan>突っ込んでるしww
23:24<gan>顔と突込みがあってないww
23:24<una>心外な!変態なんて初めて言われた!( ̄□ ̄;)!!
23:24<gan>黙れヘンタイ!
23:24<Agi>黙れ変態
23:24<anan>黙ってろHENTAI
23:24<una>わぁ〜お、3人から突っ込まれたww まるで4pだww
23:24<anan>やっぱりHENTAIだww
コンドームがおかずって……ははは、あいかわらずunaさんは飛ばしてるな。
これで紅一点の女だってんだから、世も末だな。
さて、と。今日は高橋に傷つけられた心を癒してもらおう。
みんなに話を聞いてもらい、癒してもらうとしよう。
23:24<anan>みなさんちょっと愚痴を聞いてください。今日は同僚に苛められましたorz
23:24<una>ムチで?
23:24<gan>ロウソク?
23:25<Agi>知るかタコ(´・ω・)
23:25<anan>今日のAgiさんは冷たいおorz
オーマイガッ!Agiさんにまで苛められてしまったよ……
23:25<una>で、どう苛められたの?っていうか、相手は女の子?
23:25<anan>いいえ、男です。結婚できない負け犬と言われて落ち込みますたorz
くっそぉぉ〜、高橋めぇ〜。思い出しても腹が立つ!
こう見えてもな、俺はお前の嫁よりもずっと可愛い子に慕われてるんだぞ!……準ちゃんと美佳ちゃんだけどな。
23:25<gan>女の子だったらよかったのにねw
23:25<Agi>女の子代表でunaさん、苛めてあげてww
23:25<una>さあanan、這いつくばってワンとお鳴き!ww
23:25<anan>負け犬は言いすぎですよねぇ
23:26<gan>確かに。実生活で負け犬なんてめったに言われないですよね
23:26<anan>冗談だろうけど、心に刺さるものがありましたよorz
23:26<una>あ、あれ?なんで無視するの?
23:26<Agi>気にしない気にしない!気にしちゃ負けですよ
23:26<una>無視はらめぇ〜!っていうか、こんな放置プレイはヤダヤダヤダぁ〜 ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
23:26<anan>ww
23:26<gan>発想の転換をすればいいんですよ
23:26<anan>発想の転換、ですか?
23:26<gan>実はその人が男装した女の子で、ananさんのことが好きで好きでたまらないんです
23:27<una>なるほど。つまりは好きな人に振り向いてほしいからつい言っちゃったってやつですね
23:27<Agi>で、今頃はベッドの中でananさんに酷いことを言ったと転がりながら後悔してるんですね?
23:27<anan>やべぇ、萌えてきたww
みんなさすがだな、高橋が実は女の子だったと妄想しろってか?
どれどれ……ダ、ダメだ!この妄想はレベルが高すぎる!今の俺にはまだ到達できないレベルだ!
23:27<una>職場では男装し、スーツできめてる彼女だけど、家に帰ればツインテールでニーソ
……ツインテールでニーソ、だと?
23:27<gan>ベッドの横には写真立てにananさんと撮った写真が
23:27<Agi>朝起きて「おはよう、anan。今日こそはアタシの気持ちに気づいてね?チュ」とかしてるんですよ?
23:27<una>さぁananさぬ、まだ彼女の事が許せませんか?
23:27<anan>……ちょっと告白してくる
23:27<una>おめでとう、これで君も立派なホモですww
23:27<anan>だ・ま・さ・れ・た!
23:27<gan>負け犬は放っておいて、女の子の二の腕について語りませんか?
23:28<Agi>そうですね、負け犬はのたれ死ねばいいですしね
23:28<una>今日のAgiさぬは荒れてるお。でもそれがカッコいい!(まるでゆで卵大好きの元中日の選手みたい)
23:28<Agi>どんな褒め言葉だww
23:28<anan>のたれ死ぬのはイヤっすorz
こうして俺は、みんなと馬鹿話をして憂さ晴らしをした。
次の日に高橋を見て、少しときめきそうになった事はみんなには秘密だ。
「う〜ん……うう〜ん」
どうすればいいのでしょう?
学校で皆さんにドライブの思い出を話していたら、ドライブに連れて行ってほしくなってきました。
直人さんと姉さん、それにおじさんにおばさんとの楽しいドライブ。
姉さんが就職するまでは、年間行事になっていました。
でも最近は直人さんと姉さんの時間が合わず、行っていません。
忙しい直人さんに、ドライブに連れて行ってくださいとお願いするのは、少し厚かましい気がします。
「どうしたの?さっきからウンウン唸って……お腹でも痛いの?便秘?」
「ち、違います!少し考え事をしていただけです!」
姉さん、下品です!下品なことを言ったら、ダメです、いけません!
慌てる私を見て、イジワルな笑顔を見せる姉さん。
最近の姉さん、イジワルなところが直人さんに似てきた気がします。
「で、何を考えてたの?あたしに相談できない事?」
「え?その……最近直人さんとお出かけしてないなぁって」
「お出かけ?そうね、最近あたしも直人さんも忙しくて、出かけてないわねぇ」
ふぅ、とため息をつきながら、何かを考え込む姉さん。
やっぱり無理かな?姉さん、仕事も忙しそうだし、なによりも結婚間近だし。
……結婚、しちゃうんですよね。ますます一緒にお出かけできなくなっちゃうのかな?……寂しいな。
「こら、何泣きそうな顔してるのよ?」
コツンとおでこを叩く、優しい顔をした姉さん。な、泣きそうになんかなってません!
「泣きそうになんてなってません!イジワル姉さんは早く結婚して幸せになっちゃえばいいんです!」
「美佳、ありがとうね。……そうね、あたし、もう結婚しちゃうんだもんね」
そう呟いた姉さんは、財布の中から何かを取り出しました。
それは……スーパーのポイントカードかな?もしかしてポイント貯まったのでしょうか?
た、大変です!ポイントが貯まっちゃってたら、500円の金券になっちゃいます!
おかずが一品増えちゃいます!……お刺身、食べたいなぁ。
「んっふっふっふ……美佳、これがなんだか分かるかしら?」
「え?スーパーのポイントカードじゃないのですか?……ああああ!ね、姉さんいつの間に取ってたんですか!」
「ふっふっふっふ……美佳と直人さんを驚かせようと考えてね、内緒で教習所に通ってたの」
姉さんの手に光り輝く真新しい運転免許証!
免許証の姉さんの顔写真が、ちょっと緊張しているみたいでなんだか可愛いです!
だからですか!だからここ最近、帰ってくるのが遅かったのですか!
てっきり安田さんとデートしてるとばかり思っていました!
「ね、姉さん凄いです!運転免許取っちゃうなんて凄いんです!」
「どう?ビックリした?ま、オートマ限定なんだけどね。ところで、美佳。あなたのバイト代、いくらくらい残ってる?」
「へ?あまり使っていませんから、そこそこは残っていますけど……もしかして借金して教習所に?」
「バカ、違うわよ。あたしね、前から免許を取れたらやりたいことがあったの。美佳も協力してくれるかな?」
私のおでこをコツンと叩いた後、前から考えていたというやりたいことを話してくれた姉さん。
姉さん……大賛成です!私、ヘソクリ全部出しちゃいます!
結局この日は、姉さんと二人、旅行雑誌を開けて、どこにしようかと夜遅くまで話し合いました。
直人さん、喜んでくれるでしょうか?……また一緒に写真を撮ってくれるでしょうか?
今度は二人きりで撮ってくれたら嬉しいです。
「んっふっふっふ……へぇ〜っへっへっへ」
「何だ、上杉?ニタニタ笑って……気味悪いぞ?」
「ふっふっふ、高橋よ。俺が何故笑ってるか、知りたいか?さぞや知りたいだろうなぁ?」
会社の昼休み。昨日の夜遅くに携帯に届いていたメールを見て、ニヤニヤしてしまう。
まさかあの二人がこんな嬉しいことを考えていたとはな。
「い〜や、まったく、全然知りたくない」
「そうかそうか、なら教えてやる。ありがたく聞くがいい。
俺と仲良くしてる二人が、来月の連休に温泉旅行に連れてってくれるってメールしてきてな。
免許を取ったから、俺の車でドライブがてら温泉に行きましょうってな!いやぁ〜、うれしいねぇ〜」
美佳ちゃんから届いたメール。
『姉さんが運転免許を取りました。
ですので日頃のお礼もかねて、姉さんが運転する車で一泊二日の温泉旅行に行きませんか?
姉さんも私も、直人さんとおじさんおばさんの三人に、お世話になっているお礼をしたいと思っています。
旅行プランは姉さんと私でたてます。旅費も私達持ちです。
旅行の際、直人さんのお車をお借りできないでしょうか?よろしくお願いいたします。 小日向美佳』
真面目な美佳ちゃんらしい、丁寧な文面。
そういや美佳ちゃんが顔文字や絵文字を使ってるの見たことないな。ま、美佳ちゃんらしくていいけどな。
「お前の車って、あの十年近く乗ってるオンボロマニュアル車だろ?ドライブなんか行って大丈夫なのか?」
「オンボロっていうな!せめてクラシックっぽい車って言え!
その二人の姉のほうの結婚が近いからな、いい思い出になるよ」
結婚したら、そう簡単に一緒に遊びに行けないもんな。準ちゃん美佳ちゃんも考えてたんだな。
ホントに嬉しいな……いい思い出になりそうだ。いかん、なんだか泣きたくなってきた。
「……お前、知り合いの子にも先を越されたのか。っていうか、知り合いに女がいたんだな。
お前が口説き落とせばよかったのに……もったいねぇな」
「ばっかやろう!なんで俺が準ちゃんを口説かなきゃいけないんだよ!
俺はあの子に幸せになってほしいんだ、俺みたいなのと一緒になったら不幸確実だろ?
……いかん、自分で言ってて泣きたくなってきた」
「……大丈夫だ。お前の分まで俺が幸せになってやるから。思い残すことなくあの世に行けよ」
優しい笑みを浮かべ、俺の肩を叩く高橋。
……言ってる事、優しくねぇじゃん。むしろ残酷じゃねぇか!なんで死ななきゃいけないんだよ!
「しかしそうか、お前にも女の知り合いがいたんだな。で、他にはいないのか?」
「いるけどそれがなんだ?言っとくけど、お前に美佳ちゃんは紹介せんからな!
結婚してるヤツはお断りだ!……もしかしてお前、離婚間近なのか?人妻とのアレがバレたのか?」
「う、上杉くぅん!面白い冗談を言っちゃって、今日はどうしたのかなぁ?あっはっはっは!」
汗をダラダラと掻きながらの不自然な笑い。
高橋よ、それじゃ自分でやましいことをしてますと言ってる様なものだぞ?
後輩達の刺すような視線を誤魔化す高橋を無視し、準ちゃん美佳ちゃんとの温泉旅行を考える。
……やべえ!マジで嬉しい!オヤジとお袋もうれし泣きするんじゃねぇか?
それにしても準ちゃん、知らないうちに免許を取ってたなんて……ビックリさせようと考えてたな?
俺の車で準ちゃんの運転で温泉旅行か……こりゃあピッカピカに洗車しなきゃいけないな。
準ちゃんが運転しての初めてのドライブなんだ、綺麗な車に乗せてやらなきゃな。
以上です。
GJ!
続き待っててよかった。
恥ずかしがりながらも口にだす妹がよすぎる。
>>390 GJ!
……それにしても、
限定免許……
GJ!
すげー面白い!
GJすぎる!!
これはwktkせざるを得ない
美佳ちゃん可愛いなあ可愛いなああ
お願いします。
今連載しているツクバ薪割り氏は個人でHP持ってるからツクバ薪割り氏が書いた分は氏に聞いたほうがいいと思うぞ?
他の人が書いたのは誰が書いたか特定できないからいいとは思うけどね。
保管庫やるって言って1年もしないうちに管理人いなくなるってザラなんだが……
>>396 あ、あの! 応援・・・してます。私がずーっと応援してますから!
>>399が期待してたのはこんな感じだと予想
>>398 ツクバ氏の女性上位スレのSSはスレ保管庫に保管されてるな。
いちいち許可を取ったのかは知らない。
403 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/18(日) 10:43:47 ID:1ZxYYw/o
保守age
で・保管庫の件はどうするよ?
意見は集まるけどyesかnoがはっきりしないと結論出しにくいんじゃね?
あっしはいいと思うが
>>404 おまえ…保管役を申し出てる奴がいるのにどうしてそういう事書き込めるのか不思議でならんよ
違った。ツクバさんのSSの扱いをどうするかの話が問題なんだった。
論点ずらしスマソ
>>406 ご本人のサイトに掲載しているから、断りを入れてリンクさせて貰う。
ツクバ氏のご了承を得てからでも遅くは無い。
408 :
名無しさん@ピンキー:2009/01/29(木) 00:31:40 ID:jH7lyLMd
苛めっ子♂と気弱な苛められっ子♀の純愛を読んでみたい。
>>408 それ冒頭は間違いなく鬼畜な展開になりそうだな
だがそれが良いって感じだが
苛めっ子と苛められっ子の関係からどう展開していくのか…
なんつーかレイプから始まる恋愛になりそうなw
オーソドックスに考えれば
いじめの度が過ぎで苛められっ子♀が怪我
いじめっ子♂回転説法でオールレンジ土下座の後改心
苛められっ子♀に優しく接するようになる
そこから芽生える恋、みたいな
ここから先を考えようとするとなぜか苛められっ子♀がドMにクラスチェンジしそうになる
純愛って難しいね
苛められっ子が苛めっ子の弱みを握ってしまって
苛められっ子側が謝りながらいろいろさせるって漫画があった気がするが・・・
なんだっただろう。
>>411 別にドMにクラスチェンジするのはエロパロ的には最高だと思うが?
それにその状況での純愛もありの筈
414 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/07(土) 00:44:53 ID:GT6C1JV2
>>411 苛めっ子♂に気弱な苛められっ子♀が貴方になら性的な意味で度の過ぎた酷い苛めを受けたいと
告白するのは気の弱い娘が勇気を出す瞬間なんだろうか?
キョウハクdogsかな?
苛めっ子というか、不良くんだけど。
417 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/08(日) 14:22:12 ID:BpKYBxnj
改心した苛めっ子が、「お前の味わった苦痛の分だけ俺を殴ってくれ」みたいなシチュが好きかも。
で、一発だけパチーンと。
ローブロウを入れて。
「反省…して下さい」
気弱な苛められっ娘なら、相手は苛めてる男より助けに入った男ってのがポピュラーだよな。
>>420 あえて苛めてる男とっていうのが良い!!
422 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/15(日) 23:47:39 ID:3V94l+4h
純愛ってのがミソなんだろうな。
>>422 ストックホルム症候群的な歪んだラブラブ依存症な関係も良いと思うんだ・・・
424 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/20(金) 09:28:07 ID:+Td8Fzrp
自分が苛めたせいで何事にも消極的になってしまった幼馴染みを、
贖罪のつもりで必死に支える、とか。
完全に元苛めっ子に依存してるんですね
依存スレにGO!☆
気弱であれば此処でも良いと思うが。
属性なんて複数に渡って簡単に被るものだしな。
そしてネタ投下。
新ジャンル「気弱ツンデレ」
>>427 か弱な小動物が必死に警戒してる感じで凄く萌えそうだな>気弱ツンデレ
ツンデレにすりゃいいと思うなよ。だいたい気弱ツンデレなんて
女の子がプルプル震えながら睨みつけたり
警戒して隠れてたら死角から話しかけられ「ひぃっ!?」とか叫んで硬直したり
誤解もとけて謝りたいけど何か言われるんじゃないかと怖がったり
そんなこんなで相手から逃げたり遠くから見てたりを繰り返したり
そんな程度だろ
…良いなそれ
気弱ヤンデレになった途端、驚くほど自然! ふしぎ!
>>431 気弱ツンデレってデレたら速攻で気弱ヤンデレにクラスチェンジしそうだなw
トシウエのカレシの第4話、書き終えましたので投下します。
今回もエロ無しですので、読むのが嫌な方はスルー願います。
「ほら、準ちゃん美佳ちゃん、外を見て見なよ。新緑の時期だからな、山が緑で綺麗だよ」
「本当に綺麗ねぇ。準ちゃん、いい季節に誘ってくれてありがとうね」
運転席でハンドルを握る直人さんが、私たちに話しかけてきました。
明子(あきこ)おばさんも外を見て、嬉しそうにほほ笑んでいます。
ハンドルを握る直人さんに、助手席に座る晋介(しんすけ)おじさん。
後部座席には両窓側に私と姉さんが座り、その間におばさんが座っています。
直人さんが運転する車での、温泉旅行。
久しぶりの皆さんとのドライブでとても楽しいはずなのに……車内は微妙な空気になっちゃっています。
「……はぁぁぁ〜」
窓ガラスにおでこを当て、虚ろな眼差しで外を見ている姉さん。……景色、見えているのかな?
ため息を吐いた唇には、髪の毛が数本咥えられてて、なんだか色っぽいです!
「……そ、それしにてもいい天気になってよかったな!いやぁ〜、最高のドライブ日和だ!わっはっはっは!」
「そ、そうです!天気がよくて最高なんです!いい天気だととても気持ちがいいんです!」
明るい声を出し、車内の空気を盛り上げようとする直人さん。
私も直人さんに乗っかっちゃって、盛り上げちゃおうと頑張っちゃいます。
「……はぁぁぁぁぁ〜」
……でも、失敗しちゃいました。姉さん、とてつもなく落ち込んじゃってます。
朝4時に起きて、張り切ってお弁当を作った姉さん。私もお手伝いをしちゃいました!
お世話になりっぱなしの直人さんに明子おばさん、晋介おじさんに少しでも恩返しをしたい、
その一心で姉さん、今日のドライブを企画したんです。
隠れて取りに行った運転免許。いつも直人さんに運転させてばかりだから、今日はあたしが運転して、
直人さんに楽をさせてあげると張り切っていました。
……運転免許って、種類があったんですね、知りませんでした。
姉さんが取った免許はオートマ限定というものでした。
その免許証では、なんと!……直人さんの車は運転できないらしいんです。
それを知った姉さん、膝から崩れ落ち、がっくりとうな垂れちゃいました。
姉さんと二人で一生懸命に考えた今日のドライブ。いきなり躓いちゃったんです。
私はそこまでダメージは無かったのですが、結婚を間近に控え、張り切ってた姉さんは、かなりのダメージを受けちゃってます。
その証拠に……車が走り出してからは、ため息しか吐いていません。姉さん、落ち込みすぎです
「……こら、準ちゃん!結婚して妻になろうかという者が、ちょっとした失敗で落ち込んでどうするんですか!
いつまで落ち込んでいるつもり?シャキっとしなさい!」
ため息を吐き、窓の外を眺めている姉さんに雷を落とす明子おばさん。
おばさん、怒るととても怖いんです。物凄く説教されちゃうんです!正座は足が痺れちゃうんです!
「ス、スミマセン!そ、そうですよね、いつまでも落ち込んでちゃダメですよね!」
おばさんに叱られて、初めて言葉を発した姉さん。
姉さんもよく叱られてましたから、反射的に反応しちゃったのかな?
姉さん、お料理を失敗しては、よく怒られてました。食べ物を粗末にしちゃダメって。
おばさんに鍛えてもらうまで、姉さん、お料理とても下手でしたから。
「そ、そうだぞ、準ちゃん。俺、運転大好きだからさ、気にする事ないって!」
「……おばさん、直人さん、ありがとうございます。こんな馬鹿なあたしを励ましてくれるなんて……グス」
ダ、ダメです!姉さん、まだとんでもなく落ち込んじゃってます!
どうすれば元気になってくれるんでしょうか?おばさんも困った顔をしています。
「まったく……つまらんことでいつまでも落ち込んどるんじゃない!」
落ち込む姉さんに厳しい突込みが入っちゃいました。
晋介おじさん……とても厳しいんです。怒るとおばさんよりもおっかないんです!
私達は叱られた事は無いけど、一度おばさんが叱られちゃってる所を見たことがあります。
あのおばさんが、シュンとして、泣きそうになっちゃってました。
……おじさんを怒らせるといけないんです!姉さん、早く立ち直ってください!
「は、はい!立ち直りました!もう全然大丈夫です!」
姉さんもおじさんを怒らせると怖いって分かってるから、すぐに立ち直っちゃいました。流石です、姉さん!
「うむ、ならいい。ところで、さっきからいい匂いがしてるんだが、何か作ってきたのかな?」
「あ、そ、そうです!おじさんやおばさんの為に、美佳と二人でお弁当を作ってきたんです!
たくさん作ってきましたので、いっぱい食べてくださいね」
慌ててかばんから二人で作ったお弁当を取り出す姉さん。
私も慌てて水筒を取り出します。昨日作って用意していた麦茶。
ペットボトルのお茶は、高いんです。お茶は作ると安いんです、お金は大事なんです!
「へぇ?美佳ちゃんも一緒に作ったの?ちゃんと作れてるのかしらね?」
「そ、それはもう安心しちゃってください!私が作ったの、玉子焼きだけですから!」
「……それは胸を張って言う台詞なのかしらね?」
私の言葉に首を傾げるおばさん。
おじさんも外を見ながら低い声で笑ってるし、直人さんに至っては、大きな声で笑っちゃってます。
なぜ皆さん笑っちゃってるのでしょうか?不思議に思い、姉さんを見てみます。……姉さんも笑っちゃってます。
「あっはっはっは!そうかそうか、美佳ちゃんが玉子焼きを作ったのか!
どれ、俺に毒見……味見させてくれよ。美佳ちゃんの作った料理、初めて食うからメチャクチャ楽しみだな」
笑いながらハンドルを握る直人さんが、私が作った玉子焼きを食べたいと言ってくれました。
や、やりました!姉さん、作戦通りです!
手作り料理で直人さんの気を引く……古典的だけど、効果抜群って西原さんが教えてくれました!
……毒見ってどういう意味なんでしょうか?深く考えてはダメなような気がしますので、考えるのは止めておこうかな?
「美佳、直人さん運転中だから、食べさせてあげなさいな」
お弁当箱を開けようとしたら、ニコニコほほ笑んでいる姉さんが話しかけてきました。
姉さん、元気が出てきました!運転できないって分かった時の落ち込みようとは全然違います、まるで別人です!
……へ?た、たたたたた食べさせてあげる、んですか?
「俺も腹減ってきたから、早く食わせてくれ〜」
運転しながらア〜ンと口を開けている直人さん。
こ、これは、この状況は……大チャンスです!直人さんに食べさせてあげられるなんて、夢のようです!
「で、ではいきますね?……ど、ど、どうぞ」
ドキドキしながらちょっと形が不細工な玉子焼きを箸でつまみ、直人さんの口へと運ぶ。
大きな口を開け待っていた直人さんはその玉子焼きにパクリと食いつきました。
や、やりました!ついに、ついに手作り料理を食べてもらっちゃいました!
しかも、しかもですよ?あ〜んって口を開けてる直人さんに食べさせちゃったんですよ?
これはもう、恋人といっても過言ではないのでしょうか?
「……うん、カルシウムが豊富に取れそうな玉子焼きだな。
準ちゃんが初めて作った時と同じだ。はははは、さすがは姉妹だな、こんなところまでそっくりだ」
ジャリジャリと音を出し、玉子焼きをほうばる直人さん。
姉さんに似てと言ってもらえて嬉しいです!……え?何でジャリジャリ?カルシウムってなんでしょうか?
「……うん、本当にそっくりだわ。これは美佳ちゃんも鍛えなきゃいけないわね」
「……やはり卵の殻は美味くないな。砂糖を入れすぎているし、焦げてるのもある。23点だな」
「な、な、ななな……ななななな?」
に、にに、にじゅうさんてん?
晋介おじさんが口に出した言葉……23点。どういう意味でしょうか?
もしかして……もしかしなくても、私が作った玉子焼きの点数なんですね。
「親父、厳しいこと言うなよ。一応は食えるんだしさ、40点ぐらいだろ?」
直人さんも採点してくれました。……よ、40点ですか。
「直人、それは千点満点でかしら?二人とも甘いわね。こんな玉子焼き、0点よ。
準ちゃんと一緒に教えた事もあるのに、こんな出来だなんて……教育のし甲斐があるわね」
……あぁ、新緑の山々が綺麗です。とても綺麗なんです。
私の玉子焼きを食べて、批評を続ける直人さんたちをよそに、景色を楽しむ私。
何故か姉さんまで批評に加わっちゃってます。……姉さん、マイナスはないんじゃないでしょうか?
姉さん……さっきまでの姉さんの気持ち、分かっちゃいました。
窓の外の景色、見たくて見ていたんじゃないんですね。見てなきゃやってられなかったんですね。
……愛情って、味には伝わらないんですね、勉強になっちゃいました。
「ふぅ……いい湯加減ね。温泉に浸かりながら見渡す景色もいいし……二人とも、本当にありがとうね」
直人さんの運転で、姉さんと二人で予約したホテルに到着し、早速温泉に浸かるおばさんと私たち。
姉さんと二人おばさんの背中を流し、肩揉みまでしちゃいました。おばさん、とっても気持ちよさそうでした。
「ホントに綺麗ですね……景色を眺めていると、あっという間に時間がすぎてしまいそうですね」
「ホントです……とっても綺麗な景色なんです」
おばさんに習い、私たちも景色を堪能する。
行きのドライブでは失敗をしてしまった姉さんと私ですが、ホテルでは失敗できません!
おばさんもとても穏やかな表情で、満足してそうです。……やりました!恩返し作戦成功です!
「ふぅ……あなた達とこんなのんびりとした時間が過ごせるなんて思いもしなかったわ。
直人が初めてあなた達を連れてきた時、父さんもわたしもあなた達の事を、直人を騙してる極悪人と思ってたからね」
「ふふふ、そうでしたね。初めの頃は、あたし、苛められてましたからね。
怖くて悔しくて、何度もトイレで泣いてましたから。あの頃のおばさん達、とても怖かったですからね」
「それは仕方ないでしょ?ぐうたら息子に突然、身寄りのない子達の生活費を支援してるなんて言われてごらんなさい?
この子騙されてるんだ、って思っちゃうわよ」
昔を懐かしむように話すおばさんと姉さん。
そうでした、今でこそ仲良くさせて貰ってるけど、初めて会った頃のおばさん達は、とても厳しくて、怖かったんです。
だから姉さん、直人さんの家に招待されるの怖がってました。行きたくないなぁってよく愚痴を零していました。
私も、怖かった。……でも、父さんとは違う種類の怖さだったから、そこまで気にはなりませんでした。
よく叱られたり、怒鳴られたりしたけど、それは私がドジだったから。
父さんのように意味無く叩いてきたり、蹴飛ばしてきたりはしませんでした。
人見知りで、恥ずかしがりやな私は、おばさん達の目を見て話せませんでした。
そんな『私を人と話し時に俯いてどうする!このバカもんが!』と怒鳴ってくれたおじさん。
あの時は泣きそうになったけど、叱ってくれたおかげで、少しは人見知りが治った気がします。
姉さんと一緒に『自炊も出来ないのに二人で暮らそうなんて、何を甘い考えをしているの!』って叱ってくれたおばさん。
姉さんは料理を。私は掃除洗濯を叩き込まれちゃいました。
失敗ばかりする私たちを、何度も何度も叱りながら、でも見捨てずに毎週家に来なさいと言ってくれたおばさん。
あの時に鍛えてくれたおかげで、姉さんは安田さんの心を射止めることが出来たんです。
おばさん仕込みの手料理、安田さんに好評だったみたいですよ?
……私も料理を仕込んでもらってたら、今日のような失態は無かったのでしょうか?
…………はぁぁぁぁ〜。これは反省です。反省会をしなきゃいけません。
「ふぅ、いつまでも綺麗な景色を眺めてる場合じゃないわね。美佳、そろそろ準備していくわよ。
って、なに湯船に顔を沈めてるの?ぶくぶく泡を立てて、どうしたの?」
「ぷはぁ!はぁはぁはぁ!な、なんでもないです!早く直人さんとおじさんの背中も流しちゃいましょう!」
危ない危ない、つい一人反省会をしちゃいました。
反省会をするのは、部屋に帰ってからです。今は直人さんたちに楽しんでもらう事を考えなきゃいけないんです!
「……待ちなさい。あなた達、もしかして父さんと直人のところへ行くつもりなの?」
姉さんと二人、綺麗な景色の温泉から上がり、直人さん達のところへ背中を流しに行こうとした時、
声のトーンが低いおばさんに話しかけられちゃいました。
この低い声のトーン……懐かしいです!昔、姉さんと二人で叱られてる時によく聞かされてました!
おばさん、怒っちゃうと声が低くなるんですよね。……ふえええ?お、怒っちゃってるんですか?
「……二人とも、正座」
「え?い、いや、その、おばさん?なぜ正座なんです……」
「いいから正座しなさい!」
「美佳!今すぐ正座よ!」
「はいです、姉さん!」
ゴツゴツした湯船の床に、二人そろって裸で正座をする姉さんと私。
こ、これはいけません!足がとても痛いです!正座は足が痛いんです!
でも我慢です!おばさんの怒りが収まるまで我慢なんです!
「若い娘が二人そろって、男の背中を流しに行くですって?準ちゃん!貴女はもう妻になるのよ?
旦那以外の男に肌を見せていいとでも思っているんですか!」
「い、いやおばさん、水着を着ていくつもり……」
「言い訳はいいです!それと美佳ちゃん!貴女までなんですか!
女の肌は、一生着いていくと決めた男にだけ見せればいいんです!それなのに、あなた達は……覚悟なさいよ。
二人とも、今日はその水着を着ていればいいという、間違った考えを正してあげますからね!覚悟しなさい!」
正座をしながら姉さんと目を合わせる。姉さんも涙目です。きっと私も涙目になっちゃってるはずです。
あぁ、お背中流して、感謝の気持ちを伝えようと考えただけなのに……作戦失敗です。
それから30分、おばさんのお説教は続きました。
一人の女としての嗜みから、妻としての心得。夫婦生活についてまで、姉さんにはとても有意義なお説教でした。
姉さん、途中から正座をしている事も忘れて、質問までしちゃってました。
……姉さんに結婚生活について教えたいのなら、あとで教えてほしかったです。
私、足が痺れてそれどころじゃなくなってました。おばさん、話し出すととても長いんです。
おばさんのお話が終わったとき、姉さんと私は、身体が冷えちゃってました。
おばさんには先に上がってもらい、私達はまた湯船に浸かり、冷えたからだと痺れた足を癒しました。
……せっかく直人さんと温泉に入るチャンスだったのに、ちょっと残念です。
(う〜ん、明日はどこに行こうか迷うな。準ちゃん達に任せてもいいんだが、今日のような事も考えられるからな。
一応は予備として、明日の行き先を調べておかなきゃな)
景色のいい温泉に浸かり、仕事で疲れた身体と心を癒した俺は、
窓の外にはいい景色が望む部屋に戻り、念のために持ってきた愛用のノートPCに電源を入れて、明日の為の観光先を探す。
いつもは家でチャットに使ってるんだけど、『Oh!モバイル』ってのと契約してるから、持ち運びが出来るんだ。
ま、画像を見るのには速度が遅くて気に入らないが、ちょっとした調べ物や、チャットをする分には全く困らない。
そこそこ安いし、持ち運びが出来て、出張先でもチャットが出来るから、俺は気に入って使っているんだ。
……ま、安かったってのが一番の理由だけどな。
さて、大丈夫だとは思うけど、念のために明日の観光先を調べておこう。
準ちゃんが隠れて運転免許を取っていて、俺の車を運転するって言ってくれた時は驚いたけど、まさかAT限定だったとはな。
はははは、準ちゃんの落ち込みようったらなかったな。俺の車、MT車だからな。AT限定では運転できないんだよ。
……二人で色々考えてくれたんだろうな。俺達を喜ばせようと、一生懸命に考えてくれたんだろうな。
まぁ美佳ちゃんの玉子焼きは、はっきり言って不味かったけど……嬉しかった。
美佳ちゃんは、大人しいと言うか、口下手と言うか……あまり口を利いてくれないからな。
俺との会話は、簡単な受け答えしかしてくれない。知り合って結構経つが、今だに俺には遠慮して話している。
そんな美佳ちゃんが、俺達のために慣れない料理を作ってくれたんだ、嬉しくないわけがない。
……まさか玉子焼きでカルシウムを大量に取るとは思いもしなかったけどな。
しかし美佳ちゃんの落ち込み方は、準ちゃんと同じだったな。
はははは、さすがは姉妹だな。落ち込み方までそっくりだ。……準ちゃんが結婚したら、一人で大丈夫なのか?
新婚生活の邪魔になりたくなさそうだから、一人暮らしを進めたはいいけど、不安だな。
俺達の家に居候しないかと勧めても断ってきたしな。美佳ちゃんにも思うところがあるんだろう。
……きっと、準ちゃんに頼らず、一人で頑張りたいんだろうな。
……おし、これからはもっと顔を見せるとするか?美佳ちゃんは嫌がるかもしれないけど、不安だしな。
「直人、お前さっきからなにを調べているんだ?こんなところまでパソコンを持ってきて、何をしとる?」
PCで付近の観光先を調べてた俺に、同じく風呂上りで満足げな表情の親父が話しかけてきた。
……むさ苦しい親父と同じ部屋ってのが、残念だな。
「んん?念のために明日の行き先を探しているんだよ。ま、大丈夫だとは思うけど、念のために、な」
「ふむ、確かに念には念を入れておいたほうがいい。あの二人、まだまだ抜けてるところがある。
準ちゃんはだいぶんマシになってきたが、美佳ちゃんが不安だな。……直人よ、本当に一人暮らしなどさせて大丈夫なのか?」
親父も俺と同じ不安を感じているのか、表情を曇らせ話しかけてきた。……だよなぁ?不安になっちまうよな?でも、
「俺も不安だけど、本人が頑張りたいって言ってるんだ、外野は見守るしか出来ないだろ?
ま、ちょくちょく顔を出すようにはするし、お袋も料理を教えるって口実で、家に呼び出すつもりだろ?
かなり不安だけど、ここは黙って見守ろうぜ」
「あんな不味い料理を作っているようでは、身体を壊さんか心配だな。……料理本でも買って渡そうか?」
う〜ん、確かに料理は作れなそうだな。昔みたいにファストフードばかりになっちまうんじゃねぇのか?
料理本か……本よりもネットが出来たらすぐに調べられて、便利がいいんだけどな。
二人の部屋にはPCがないんだよな。……俺に買ってあげる金銭的な余裕がなかっただけなんだけどな。
「ま、そこら辺はお袋に任せるしかないな。なんせあの準ちゃんを料理上手にしたんだ。
料理が下手くそな美佳ちゃんも、きっと上手くなるさ。……何度泣かされるか知らないけどな」
料理を習い始めた頃の準ちゃんも、ため息ばかりだったからなぁ
最初は二人のとこを、俺を騙してると目の敵にしてた両親も、二人の真面目さと一生懸命さに惹かれて、仲良くなっていったからな。
ま、仲良くなってもお袋の厳しさは変わらず、親父もおっかないままだった。
二人にとってはそれがよかったんだろう。自分のことを本気でしかってくれる人なんて、そうはいないぜ?
親父もお袋も、それを分かってわざと厳しく当たってたんだろうな。二人を紹介して正解だったよ。
「……おし!明日は蕎麦を食いに行って、近くの漁港で買い物ってパターンかな?」
念のための行き先を調べ、PCの電源を落とす。二人にこんなことをしているところを見られちゃ悪いからな。
せっかく俺達を招待してくれたんだ、二人に任せなきゃな。……ま、念には念をってヤツだ。
「直人さん、おじさん。夕御飯の準備が出来たそうですよ。あれ?それってパソコンですか?」
PCの電源を落としていたら、準ちゃんと美佳ちゃんが晩飯だと呼びに来た。
湯上りで浴衣姿の準ちゃん。……色っぽくなったよな。メチャクチャいい女に育ったもんだ。
浴衣を着て、髪をアップに纏めている準ちゃん。……正直色っぽい。
こんな色っぽく成長した準ちゃんが、もう嫁に行ってしまうのかと思うと、なんだか悔しいな。
……これはもしかして父親の気持ちってヤツなのか?
「直人さん?険しい顔をして、どうしたんですか?」
「ん?い、いや、なんでもないよ。お?美佳ちゃん、その浴衣、似合ってるじゃないか。メチャクチャ可愛いよ」
準ちゃんが着ている浴衣は白色の浴衣に赤い花柄模様の浴衣を着ており、
美佳ちゃんの浴衣はピンク色の浴衣に金魚が描かれている。
なかなか可愛い模様で、美佳ちゃんに似合っているな。
この旅館、風呂上りの浴衣にも結構いい物を使ってるんだな。
……温泉も豪華だったし、宿泊費けっこうしそうだ。一泊いくらするんだ?
「え?カ、カワイイ、ですか?そ、その……あ、ありがとうござい、ます」
褒められた事が恥ずかしいのか、頬を赤く染め、俯きながらお礼を言ってきた美佳ちゃん。
その態度も可愛いな。こんなに可愛いのになんで彼氏が出来ないんだ?
……よく考えたら俺、美佳ちゃんに彼氏が出来たって紹介されたら、泣いてしまうかもしれん。
いかんなぁ、この年で父親気分満載じゃないか。結婚もしてないのに父親気分か。これはヤバイな。
「美佳、よかったわね?直人さん、美佳の事が可愛いって」
「も、もう姉さん!イジワルは止めてください!」
う〜ん、いいねぇ。じゃれ合う浴衣姿の美人姉妹。もっと見ていたいが、今のうちにPCを隠さねば。
じゃれ合う二人をよそに、鞄にPCを詰め込む。
「さて、そろそろメシに行こうか。お袋待ってるんだろ?」
「はい、行きましょう!……海の幸満載の、豪華な御飯ですよ?」
「ほほぉ、それは楽しみだな。直人はなかなかこういう親孝行をしてくれないからな。二人を見習わせたいものだ」
俺と同じく二人がじゃれ合うのを嬉しそうに見ていた親父が口を出す。
うるせぇ!老いぼれ親父を孝行しても、嬉しくないんだよ!っていうか、お金がないのよ。ゴメンね、パパ?
「とっても美味しそうなお刺身が、いっぱいありました!なんと、お船の入れ物に入っているんですよ?」
「船盛りかぁ……ははは、腹ペコ姉妹にはたまらんだろうな」
嬉しそうに話す美佳ちゃんの笑顔を見て、今までの二人の食べっぷりを思い出してしまう。
初めて二人に会った夜、大量のケーキを目の色変えて食べきった準ちゃん。
ピザをパクパクと口に運び、『美味しいね美味しいね』と頬をケチャップで汚しながら嬉しそうにほほ笑む美佳ちゃん。
香川県への初めてのドライブで、何軒か饂飩屋をはしごしたけど行った店全部で饂飩を食べきり、
最後はお腹いっぱいになり動けなくなるまで食べ続けた準ちゃん美佳ちゃん。
ふと頭に過ぎった二人との思い出が、俺の心を温めてくれた。
「もう!直人さん、イジワルは言わないでください!」
「はははは、親父、今夜は楽しみにしとけよ?二人の本性が見れるから。きっと呆れるぞ?」
「な・お・と・さ・ん!」
「ほぉ?本性が見れるのか?それは楽しみだな。温泉に来たかいがあるというものだ」
「もう!おじさんまで苛めないでくださいよ!おばさん待たせてるんですから行きますよ!」
からかわれて恥ずかしいのか、真っ赤な顔で抗議してくる準ちゃんに、首筋まで真っ赤に染め、俯き恥ずかしがる美佳ちゃん。
温泉に浸かり、身体の芯から暖まった俺は、二人との会話と思い出で、心の芯まで暖まった。
……ありがとな。礼を言うのは俺のほうだ。二人に出会わなければ俺、つまらん人生を送ってたと思うよ。
俺と親父を先導して歩く二人に心の中で頭を下げる。……いかんな。準ちゃんの結婚式では号泣してしまうかもしれんな。
そういやいつになったら結婚式の日取りは決まるんだ?向こうさんに任せっきりで大丈夫なのか?
「はぁ?式を挙げない?そりゃどういうことだ?」
目の前に並べられた豪勢な料理に手をつけようとしたとき、準ちゃんが衝撃の告白をした。
一生に一度の(中には二度三度する人もいるけど)結婚なのに、式を挙げないと言い出したんだ。
俺も両親を驚き、声を上げてしまう。何でだ?向こうさんが段取りをするって話だったじゃないか。何で挙げなくなったんだ?
「準ちゃん、何故式を挙げなくなった?もしかして向こうさんとなにかトラブルでもあったのか?」
「……金の事なら心配しなくてもいい。直人と違い、式を挙げるくらいの余裕はある。
一生の思い出になるんだ、式は挙げなさい」
「そうよ、準ちゃん。結婚式は女にとって一生に一度の晴れ舞台。その舞台に上がらなくてどうするんですか!」
俺と親父、お袋。三者三様に驚き、問いただす。
俺達準ちゃんの花嫁姿を楽しみにしてたんだ、その楽しみを奪ってくれるなよな。
「直人さん、おじさん、おばさん……ゴメンなさい!けど、慎介さんと相談して決めたの。
式は挙げずに、お金を貯めて頑張ろうって」
真っ直ぐに俺達を見つめ、何かを決意したような表情で話し出す準ちゃん。
その表情に押され、口を挟めない俺達。
「あたし達、いつになるか分からないですけど、一人前の美容師になったら……二人の店を持ちたいんです」
「え?み、店を持つ?店を経営するってことか?」
準ちゃんの言葉に驚き、つい口を出してしまう。
安田君と二人で店を経営するのか……だから式を挙げないんだな?
「慎介さんのご両親にもこの話はしています。ご両親には店を出す時に、資金をお借りするようにお願いしています。
結婚式を挙げるお金を、お店の開店資金にするために、式は挙げません。
せっかく楽しみにしてくれてる直人さんやおじさん、おばさんには悪いんですが……二人で相談して決めたことなんです」
真剣な眼差しで話す準ちゃん。……そっか、準ちゃん、これからの生きる道を決めたのか。
準ちゃん、大人になったな。もう俺の助けは要らないな。彼女はもう立派な大人だ。
「……そっか。うん、二人で決めたんなら頑張りな。ただし!俺達にもその店に融資させてもらう。それが式を挙げない条件だ」
「ええ?で、でも、そこまで迷惑は……」
「そうだな、直人の言うとおりだ。せっかく楽しみにしていた式を挙げないと言い出したんだ。
そのくらいさせてもらわねば割に合わん。安心しなさい、貧乏な直人と違い、私達夫婦は金を溜め込んでいる。
もちろん融資した金は返してもらうよ。借金返済できるよう、二人で力をあわせ、一生懸命頑張るんだ」
「お、おじさん……ありがとうございます!あたし……あたし達、一生懸命頑張ります!」
ポロポロと涙を零し、泣きじゃくる準ちゃん。そんな準ちゃんを心配そうに見つめる美佳ちゃん。
美佳ちゃんの目にも涙が溜まっている。準ちゃんが自分の将来を決めてたことが嬉しいんだろうな。
美佳ちゃんは将来なにをするのか、何をしたいのか考えてるのかな?今度話を聞いてみるかな?
「まったく……まだ店を持った訳でも、ましてや一人前になったわけでもないでしょ?
泣くのは自分の、自分達の店を持ってから泣きなさい!さ、美味しい料理があるんだから、早く食べましょう」
同じく涙目のお袋がパンパンと手を鳴らし、泣きじゃくる準ちゃんを元気付ける。
はははは、言ってる本人が泣きそうになってるじゃねぇか。お袋も嬉しいんだろうな。
「失礼します。ご注文のビール、お持ちしました」
「あ、ありがとうございます。さ、美佳。直人さんに注いであげてね」
「はいです、姉さん!直人さん、どうぞ」
仲居のおばさんが持ってきた冷えたビールを受け取る。
ビールを見るのも久しぶりです。ビールだけじゃなく、アルコールが入った飲み物を見るのがとても久しぶりなんです。
「え?い、いや、準ちゃん、俺達はほら、酒、飲まないから。二人とも、知らなかったっけ?」
突然持ってこられた瓶ビールに驚く直人さん。
おじさんもおばさんもビックリした顔をしちゃってます。
直人さんやおじさん、おばさんがお酒を飲まない……嘘です。
直人さん、初めて会ったあの日の夜、美味しそうにビールを飲んでました。
次の日に、ホテルの近くの居酒屋で相談に乗ってもらった時もビールを注文してました。
……その日が最後でした。直人さんが私達の前でお酒を飲んでいるのを見たのは。
おじさんとおばさんもそうでした。初めて直人さんの家に招待された時、冷蔵庫の中にはビールがたくさん入れてありました。
棚には日本酒やウイスキー、いっぱいお酒が飾ってありました。
でも、次に招待された時、全部なくなっちゃってました。……皆さん、とても優しいんです。
私達がお酒に酔った父さんにいっぱい叩かれたりしてた事を知り、私達の目の前でお酒を飲むのを止めてくれたんです。
「美佳、ちょっとこっちに来なさい」
「はいです、姉さん」
直人さん達から少し離れた場所に二人並んで正座をする。
今回のドライブの目的……お世話になりっぱなしの直人さん達に、恩返しをすること。
もう私達は大丈夫です、強くなりましたとお礼を言う事なんです。
「直人さん……見ず知らずのあたし達を助けてくれて、本当にありがとうございました。
直人さんと出会っていなかったら、あたし達、どうなっていたか、わかりません。本当にありがとうございました」
直人さんを見つめ、今までの感謝の言葉を述べる姉さん。
ホントにその通りです。あの時直人さんに出会わなければ、姉さんと私、どうなってたか、考えたくもありません。
姉さんに続き、私も感謝の言葉を口に出します。
「直人さん、おじさん、おばさん……私達に気を使ってくれて、ありがとうございます。
私達、お酒に酔った父さんに、いっぱい叩かれたり蹴られたりしてました。……だから、ですよね?
私達がお酒にいい思い出がないから、お酒、我慢してくれてたんですよね?
でも、もう大丈夫です!姉さんも私も、もう大丈夫なんです!だから、今日はたくさん飲んで、酔っ払っちゃってください!
今日はたくさん、たくさん飲ませちゃいますから!」
驚きの表情を浮かべる直人さん達。
私と姉さんはそんな直人さん達のコップにビールを注ぎます。
「さ、直人さん、おじさんにおばさん。今日はたくさん飲んでくださいね?
お酒に対する嫌な思い出……今日でいい思い出に変えさせてください」
ニコリとほほ笑んでお酌する姉さんに注がれたビールを、無言で一気に飲み干したおじさん。
「直人さんも飲んでください。私、どんどん注いじゃいますから!」
直人さんも無言で一気に飲み干しました。二人とも、無言で飲み干し、頷いてます。
「……美味い。こんな美味いビールは初めてだ。二人とも、ありがとうな」
目に涙を浮かべた直人さん。おじさんとおばさんも涙ぐんじゃってます。
「……おし!今日は飲むか!こんな美味い酒は、滅多に飲めないからな!」
お酒で少し酔っ払った直人さんはとても明るくて、面白い話ばかりをしてくれました。
おじさんは普段と変わらず黙々とビールを飲むだけでしたが……おばさんがおじさんに甘えだしたのには驚いちゃいました。
宴会というものを初めて経験しましたが、とても楽しかったです。
料理もとても美味しくて、お腹いっぱい食べちゃいました。
……お刺身、新鮮でコリコリしててビックリしました。スーパーのお刺身とは比べ物になりません。
とても美味しくて、姉さんと二人で『お刺身コリコリしてるね、美味しいね』と唸っちゃいました。
……直人さん、コリコリ姉妹というのは止めてくれませんか?ちょっと恥ずかしいです。
「……直人さん、とても美味しそうにビール飲んでました」
楽しい宴会も終わり、直人さん達と別れて部屋に戻り、いつの間にか用意されてた布団に寝転がります。
凄いです!知らないうちにお布団が敷かれてるなんて、至れり尽くせりです!温泉旅館は凄いんです!
美味しいお料理でお腹いっぱいになった私と姉さん。
宴会での嬉しそうな顔の直人さん達を思い出し、話します。……少しは恩返し、出来たのでしょうか?
「そうね、おじさんも美味しそうに飲んでたし、おばさんも嬉しそうだったわね」
「直人さん、美味しい美味しいと言って、ぐびぐび飲んでました」
「そうね、美味しいばかり言ってたわね」
「美味しいと言えばお刺身!とってもコリコリしてて美味しかったです!……でも直人さんにコリコリ姉妹と言われちゃいました」
そうです、また直人さんにヘンなあだ名を付けられちゃいました。
腹ペコ姉妹の次は、コリコリ姉妹……直人さんはヘンなあだ名ばかりつけるイジワルさんなんです!
「……クスッ、さっきから美佳、『直人さん直人さん』ばかりね?そんなに好きなら思い切って告白しちゃえば?」
「な、なにを言ってるんですか!姉さんはイジワルです!姉さんも直人さんもイジワルなんです!」
「ほら、また直人さんって言った。ホント、美佳は直人さんが大好きなのね」
「はわわ!……うぅぅ〜、イジワルなんですぅ」
イジワルされて、真っ赤になった顔を隠すため、ふかふか布団に顔を埋める。姉さんも直人さんもイジワルです!
「……ねぇ美佳。少しは恩返しできたかな?直人さん、喜んでくれたかな?」
「きっと大喜びです。直人さん、美味しい美味しいって、ビールを飲みすぎて、おばさんに怒られてました。
きっと嬉しかったから飲みすぎちゃったんです」
「そうよね……きっと喜んでくれたわよね?うん、恩返し第一段、大成功ね!」
少しは感謝の気持ち、届いたのでしょうか?……私のこの気持ちも、届いてほしいです。
……ええ?恩返し第一段、ですか?ということは第二段も考えちゃってるんですか?姉さん、流石です!
「姉さん、第二段はなにをするんでしょうか?私、張り切って手伝っちゃいます!」
「ふふふふふ……残念ながら、美佳には手伝い出来ませ〜ん」
「うえええ?ね、姉さん!イジワルしないでください!」
イジワルな笑顔で、イジワルを言う姉さん。
ヒドイです!仲間はずれはいけないんです!姉さんはイジワルなんです!
「いい美佳?絶対に秘密よ?誰にも話しちゃダメなんだからね?……あたしね、前から決めてたの。
子供が生まれたら、直人さんから一文字貰おうってね」
……はい?こ、子供、ですか?生まれたら?……ふえ?ええええええええ〜〜?
「ね、ねねね、姉さん!子供、出来ちゃってるんですか?おめ、おめでとうございますです!」
「あはははは、コラ、慌てすぎ。まだ出来てないわよ。結婚前に出来ちゃったら、おばさんに叱られちゃうでしょ?」
「そ、そういえばそうです。物凄く怒られちゃいそうです」
「でしょ?だから美佳も、直人さんとえっちする時はしっかりと避妊するのよ?
……美佳は直人さんといつになったらえっちできるのかなぁ?」
「ね、姉さん!え、えっちとかそんな……へ、ヘンなことを言うのは止めてください!イヤらしいこと言うのはダメなんです!」
姉さんのイジワルな言葉に顔を真っ赤に染めてしまいます。
な、直人さんと、その、え、えっちなんて……は、恥ずかしくて想像も出来ません!
「こら、いつまで赤くなってるのよ?女はいざという時のために、色々用意しなきゃいけないのよ?
美佳もそろそろ考えておきなさいね?
……子供はね、絶対の欲しいんだけど、まだ作る予定はないの。ほら、あたし達、自分のお店を持つのが夢だから。
だからね、子供はまだまだ作れないわね。でもね、子供には直人さんの名前一文字つけたいの。
直人さんのように、優しくて、素敵な人に育ってほしいの」
「姉さん……」
とても優しい笑顔で話す姉さん。その表情はまるで死んだ母さんのように優しい笑顔でした。
……いつか私も母さんや姉さんのような優しい笑顔で笑える日が来るのでしょうか?
「でね、大きくなった子供にね、この人から名前をもらったのよって、直人さんを紹介したいの。
この人のように優しい人になりなさいってね」
「グス、ね、姉さん」
姉さんの笑顔で、最近は思い出すこともなくなった母さんの笑顔を思い出し、涙が溢れ出ちゃう私。
グス、やっぱり姉さんはイジワルです。妹を泣かすなんてイジワルなんです!
「美佳、逃がしちゃダメよ?直人さん、絶対に物にしなさいね?姉さん、応援するからね?」
「グス……はい、直人さん、物にしちゃいます。絶対に物にしちゃいます!」
泣きじゃくる私をギュッと抱きしめて頭を撫でてくれる優しい姉さん。
姉さん……姉さんの胸、とても温かいです。まるで母さんに抱きしめられているようです。
「……あたしが慎介さんを落とした方法、聞きたい?」
姉さんの言葉にピクリと身体が反応し、涙も止まっちゃいました。
「……聞きたいです!」
「んふふふふふ……まずはね、相手の趣味思考を探るのよ。でね、それに合わせつつね……」
さっきまでの涙はどこに消えたのでしょうか?その夜は、姉さんからの直人さん落とし講座で夜更かししちゃいました。
姉さんとこんなに話したのは久しぶりでした。とても有意義で楽しかったです!
……結局その日のドライブが、姉さんと私、直人さん達と一緒に行った最後のドライブになりました。
最後のドライブから2ヵ月後。姉さんは結婚し、部屋を出て行ったんです。
「ただいま帰りました〜。今日はお客さんがたくさんで、とても疲れちゃいました」
電気の点いていない、暗い部屋。ただいまと言っても誰からの返事もない寂しい部屋。
初めてこの部屋を見たときは、狭い部屋だと思っていたのに、今は私一人でも、その広さを持て余しています。
そんな部屋に帰りついた私は、誰も聞いていないのに、寂しい空間に話しかけてしまう。
「そんな疲れちゃってる私に、ご褒美があります!なんと、なんとですよ?……月見大福で〜す!」
帰りにコンビニによって買ってきた、冷たいアイスを袋から取り出す。
モチモチとしたお餅の食感と、中身の冷たいアイスがとても美味しくて、とても美味しいんです!
夏になると姉さんと二人で、一個ずつ分けて食べました。二個入りで、私達にはちょうどよかったんです。
「さて、問題です。この月見大福、今すぐ食べちゃうか、お風呂上りに食べちゃうか。どっちがいいんでしょう?」
いつもは姉さんと二人、一個ずつ分け合って食べていたこのアイスも、姉さんが出て行ったので一人で二個食べちゃえます。
う〜ん、とても贅沢な悩みです。一個だったものが二個食べちゃえるんですよ?二倍です、二倍なんです!
「……やっぱり一個で十分です。もしかしたら姉さん、安田さんと喧嘩して帰ってくるかもしれません。
うん、お風呂上りに食べちゃいましょう。お風呂で汗をかいて、美味しいアイスで身体を冷やしちゃいましょう!」
もしかしたら姉さんが帰ってくるかも?そう考えて、私はお風呂上りに一個だけ頂くことにしました。
冷凍庫に入れて冷え冷えに冷やしておこうとしたんですが……そこには封をあけ、中身が一個だけの月見大福が入っていました。
「あ……そうでした。一昨日も買ってきてたんでした。一昨日も姉さんのために一個残しておいて……」
目の奥が熱くなって来たのが分かります。
いけません!姉さんと約束したんです!寂しくても頑張るって約束したんです!
頑張るんです、私!頑張ってください、私!
頑張ろうとしてる私の脳裏に、この部屋での姉さんとの思い出が蘇ってきました。
その楽しい思い出の一つ一つが頑張ってる私の涙腺を苛めます。
グス、姉さんは思い出でもイジワルです。頑張ろうとしてる妹を苛める姉さんは、ひっく、イジワルなんです!
「ね、ねえさ……ひっぐ、ねえさぁん……グス、寂しいです。一人は寂しいんです!」
イジワルな姉さんのせいで、涙がポロポロと溢れ出てきます。
……これは思い出の姉さんがイジワルなせいです。泣いちゃった事にカウントはしません!
冷凍庫から残していた月見大福を取り出し、パクパクと口に運びながら涙を零す。
ひっく、冷たくて、グス、美味しいんです。でも、この美味しさを、姉さんと……寂しいです、姉さん!
『ピンポーン!……ピンポピンポピンポーン!』
突然の呼び鈴に身体がビクリと反応しちゃいました。
え?だ、誰ですか?こんな夜遅くに……と言ってもまだ8時過ぎですけど。
ゴシゴシと涙をふき取り、恐る恐るフライパン片手にのぞき穴からドアの外を覗きます。
ヘンな人だったら、フライパンで叩いちゃいます!姉さんが言ってました。ヘンな人はフライパンで叩いちゃえって!
ビクビクしながら覗いドアの向こうには……スーツを着た男の人が立っていました。
その顔を見た瞬間私はドアの鍵を開け、飛び出しちゃってました。
「グス、直人さん、直人さん〜!ひっく、直人さ〜ん!」
胸に顔を埋めて泣きじゃくる私に、何も言わずに、私が大好きな大きな手で頭を撫でてくれる優しい直人さん。
その優しさに甘えて泣きじゃくり、直人さんのスーツ、涙で汚しちゃいました。
「あ、そ、その……ゴ、ゴメンなさい。スーツ、汚しちゃいました」
「ああ、気にしなくていいよ。美佳ちゃんのような可愛い子の涙で濡れたなんて、男の勲章だよ。
ところで料理中だったのかい?フライパン持ってたけど、料理の練習してたのかい?」
ぐぅ!い、言えません。ヘンな人だったら叩いちゃうつもりでしたなんて言えないんです!
そんなことを言っちゃったら、ヘンな子だと思われちゃいます!
「そ、その……どうぞ」
話を逸らすために冷蔵庫から冷えた麦茶と、買ってきたばかりの月見大福を取り出す。
そうです、余っちゃう一個は直人さんに食べてもらえばいいんです。
姉さんが帰ってきたら、一緒に買いに行けばいいんです。
「お?気が利くなぁ。ありがとうな、美佳ちゃん」
冷たい麦茶を一気に飲み干した直人さん。まるで皆で行った温泉の時のようです。
あの時の直人さん、美味しそうにビールを飲んでました。
皆さんとっても楽しそうでした。私も楽しかったし……姉さんも、楽しそうでした。
「……今日、俺が来た理由なんだけどね、そろそろ美佳ちゃんが寂しくて泣いちゃってるんじゃないかと思ってさ。
暇つぶしになるかなって、いいものを持ってきたんだよ。これで寂しくもなくなるぞ?」
「な、泣いてなんか……すみません、泣いちゃいました」
姉さんのことを思い出し、涙ぐんでしまった私をからかうような口調で励ましてくれる優しい直人さん。
直人さんに心配させちゃってる私はまだまだダメな子です。
早く一人前の女になって、直人さんと……直人さん、それまで待っててくれるのでしょうか?
「はははは、今日来て正解だったな。でもな、今日からは一人でも暇せずにすむよ。
俺が使ってたお古で悪いんだけどな……これ、使ってみな?結構楽しいから」
ニヤリと笑みを見せた直人さんが鞄から何かを取り出しました。
その何かは、四角くて薄い物でした。あれ?これってどこかで見たことがあるような?……あ!思い出しました!
「これって、もしかして……パソコン、ですか?」
そうです、温泉で見ました!直人さんがこのパソコンを触ってるのを確かに見ました!
パソコンって高価な品物で、私達姉妹には手が出なかったんです。ですから学校で触るくらいしかした事がありません。
「安物のノートPCだけどな、インターネットもすぐに来るようにOh!モバイルの端末もついてるし、いい暇つぶしになるぞ?」
「え?インターネットも、すぐに出来ちゃうんですか?」
「おお、出来るぞ。これで調べたいものもネットで調べればすぐに分かる。料理のレシピも調べたい放題だ。
ネットで勉強して、お袋をギャフンと言わせてやれ!」
「え?ええ?ギャフン、ですか?よ、よく分かりませんけど……が、頑張ります」
直人さんが持ってきてくれた小さなノートパソコン。
このパソコンのおかげで私の世界が広がり、今まで知らなかった事をたくさん知るようになりました。
そして、直人さんが消し忘れた一つのソフト。何ヶ月も使っていなかったために消し忘れてたチャットソフト。
このチャットソフトのおかげで、私は直人さんを今まで以上に知る事が出来たんです。
姉さんと西原さん達クラスメート以外にも、私の恋を応援してくれる人が出来ちゃったんです。
……応援、なのかなぁ?unaさん達は面白がってるだけじゃないのかな?
今回は以上です。
一番槍GJ!!!!!
GJ!
ここからチャットルームが絡んでくるのか……
GJなんだぜ
それにしても
>>439 >『Oh!モバイル』
なにこのソフトバンク系の雑誌みたいなキャリア名
かわいくてけなげな美佳ちゃんが早くシアワセになればいいとおもう
ので続きを一刻も早くPlz
ツクバさんキテター!
相変わらず続きが気になるGJ
やべえ続きが気になるんだぜ!
GJ!
続きが楽しみで仕方がないぜ
456 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 02:07:48 ID:GNq/eEVo
気弱ツンデレに続く(俺的)新ジャンル
・気弱甘えんぼう
何気に気弱と甘えんぼうって相反しないか?
気の弱い甘えん坊な女の子が勇気を出して好きな男に甘える瞬間ですね、わかりました
458 :
名無しさん@ピンキー:2009/02/27(金) 12:20:34 ID:ZwCwAXuy
「かんぽの宿疑惑」が表面化しても、小泉竹中売国一家が日本郵政批判の先鋒に立っていたなら、
「偽装」を通すことも可能だった。ところが、小泉竹中売国一家は軽薄にも、
慌てふためき日本郵政とオリックスの全面擁護に回り。自らの化けの皮を剥いで、
売国一家の本性を国民の前に曝してしまった。
外資系保険会社から巨額の資金が注がれているTVメディアは売国一家の片棒をなりふりかまわず担いでいる。
彡ミミミミ))彡彡)))彡)
彡彡゛゛゛゛゛"゛゛""""""ヾ彡彡)
ミ彡゛ ..小鼠小僧 ミミミ彡 あのアメリカを愛し
((ミ彡 '´ ̄ヽ '´/ ̄ ` ,|ミミ)) この日本をぶっ壊す。
ミ彡 ' ̄ ̄' 〈 ̄ ̄ .|ミミ彡
ミ彡| ) ) | | `( ( |ミ彡
((ミ彡 | ( ( -し`) ) )|ミミミ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゞ| ) ) 、,! 」( ( |ソ < 売国をとめるな
ヽ( ( ̄ ̄ ̄' ) )/ \_____________
_/ |\、) ' (イ
/ `──'´ // ̄`ヽ
ヽ\\/ \/ \
\ \
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l \
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\ \:::::_ヽ__ _\
\ ヽ/, /_ ヽ/、 ヽ_
\ // /< __) l -,|__) >
\ || | < __)_ゝJ_)_>
\ || | < ___)_(_)_ >
\_| | <____ノ_(_)_ )
>>456 「あ、えと…」
「どうした?」
「その…手」
「手?手がどうしたんだ?」
「手を…」
「手を?」
「その、えと、手をね。その」
「…」
「手をえっと、つ、つな…」
「あーもう!はっきり言えはっきり!」
「ひぃっ!?ごごごごごめんなさいごめんなさい手を繋いでくださいごめんなさい!」
「その程度最初から言えっての!たく手を繋ぐぐらい…手?」
「あう…」
「あー…」
こうですか!?わかりません!
破壊力高いなw
>>459 「…満足か?」
「ひ、ひゃい…」
「そりゃ良かった。しかし、これ結構恥ずかしいな」
「うう…」
「あ、あの…」
「ん?」
「その、実はもっとしたい事が…」
「おう、もうここまできたらどんと来い。何でも聞いてやる」
「えっと、その…」
「おう」
「ギュって、してください」
「おう…おう?」
「だ、だだだ駄目ですよね!?そうですよね!ごめんなさい!」
「あ、いや、そうじゃなくてな」
「あれですよね私調子こきすぎですよね!?ウザいですよね!目障りですよね!?」
「いや、ちょ、話聞けって」
「ちょっと都合よく話が進んだからってわがまますぎですよね!?もういなくn」
「聞けー!!」
「ひぃ!?」
「…落ち着いたか?」
「お、お、おちおおおちおちつ…」
「あーうん。永遠に無理そうだから落ち着かなくて良い。とりあえず聞け」
「はははははいぃ…」
「駄目も何も。抽象的過ぎて何すれば良いかわからなかったんだ。」
「へ?」
「だからさ、詳しく説明してくれ」
「く、詳しく?」
「うん詳しく」
「え、それはその、私の体を」
「体を?」
「か、体を…その…えと…ゴニョゴニョゴニョ…」
「…駄目だこりゃ」
こう続けば良いんですか!?ちっともわかりません!
新ジャンルすりー
気弱淫乱娘
いいかげんにしろ
466 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/06(金) 01:38:19 ID:CqdFM1pW
気弱で人見知りな子猫みたいな子に、服の裾をぎゅって掴まれて上目遣いで見つめられたい。
気弱
だけどエッチな
>>466 従妹ならなお良し!
うん、「気弱従妹属性好き」という極めて特殊な性癖なんだ。
>>469 また奇特な設定がお好きで……。
…………しかし何だろうな、気弱従妹と言う言葉から感じるこのなんとも言えない心地良さは。
初めて会った時は逃げられ
次に会った時は遠くから覗かれ
その次はびくびくしながら話しかけられ
次は散歩し、遊び、寝て
いつしかお兄ちゃんと呼ばれる
そんな従妹が私は欲しい
現実は従弟しか居ないorz
ボク、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?
気弱従姉でどっちが年上かわかんないってのはどうだ
体型がロリならどっちでもいいよ!
475 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 08:10:25 ID:2dTE6RJE
このロリコンめ!
476 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/19(木) 17:49:07 ID:LJF/7R/f
現実にそういうポジションの女の子が居る俺は勝ち組なのか?
八つ墓村はいい従妹がいる
気弱スレ気弱スレ言ってたけど、正式名称は「気の弱い娘が勇気を出す瞬間」スレなんだな、ここ。
なんてこと!?
「勇気を出す」にそこまで拘らなくても良いと思うけどな。
とりあえず気弱なおにゃのこが出てりゃ良し。
481 :
名無しさん@ピンキー:2009/03/28(土) 00:32:15 ID:6PhWC6Fm
そもそも、気弱っていうのはどういうレベルまでが気弱なのか。
名前呼ばれるとビクッってする
間が空きましたが、『トシウエのカレシ』の続きが書けましたので投下します。
今回もやはりエロはありませんので、エロナシが嫌な方はスルー願います。
21:42<anan> こんばんは
21:42管理人 |> 生はダメェ〜!せめてサランラップで!ananさん、いらっしゃい。たくさん会話してね^^
準ちゃんが結婚して早2週間。
一人暮らしをはじめた美佳ちゃんは、日に日に元気がなくなっている。
ずっと一緒に頑張ってきた準ちゃんがいなくなったんだ、口では『大丈夫です』と言ってても、寂しいんだろうな。
毎週末に、お袋に料理を習いに家に来ているんだが、帰り際の寂しそうな顔ったら、正直見ていられない。
お袋は本人が強くなるためだから放っておきなさいと言っているが……そんなこと出来るかよ。
かといって俺が毎日遊びに行くわけにもいかない。
付近住民が俺と美佳ちゃんの関係を勘違いするかもしれないしな。
美佳ちゃんに、俺とのデキてるなんてヘンな噂がたっても困るだろうからな。
美佳ちゃんのような素直で可愛い子に、俺のようなおっさんとの噂がたったら大変だ。
……はぁぁ〜、自分で言ってて悲しくなってきたな。そうだよなぁ、俺、おっさんだよなぁ。
準ちゃんにも先に結婚されて、俺だけが彼女もいなく、空しく年を取っていく。
はぁぁぁぁ〜……世の中は無常だよなぁ。
そんなことを考えながら、いつのようにPCを立ち上げ、いつものチャットチャンネルに入る。
入って早々に、挨拶に反応して自動的に言葉を発する変態マクロが、俺を癒してくれた。
はははは、こんなヘンタイなマクロを仕込むのはunaさんだな?相変わらずいいヘンタイしてるぜ!
顔も知らない、本名も分からない、PC画面の向こうの変わらぬ友人に感謝をし、話を切り出す。
21:42<kero>こんー
21:42<win>おつー
21:42<anan>実は皆さんにちょっとした悲しいお知らせがあるんです
21:42<gan>オコンバトラー。悲しいお知らせ?切れ痔にでもなったんですか?
21:43<Agi>こんばんわ。何かあったんですか?
21:43<una>コンドームが包むのはティンポコではありません、真心です!
21:43<anan>もはや挨拶と何の関係もないww
21:43<gan>切れ痔は痛いですよねぇ。だから言ったんですよ。なすびは止めておけとww
21:43<anan>誰が切れ痔だww っていうか、なすびなんてハードル高すぎww
21:43<win>お尻がなすび貯蔵庫にww
21:44<kero>みんな待て!入れたことが問題じゃない!入れたサイズが問題なんだ!ww
21:44<una>アナルになすびを入れるなんて……こんな変態見たこと無い!
21:44<Agi>黙れ変態、今すぐ鏡を見やがれ(´・ω・)
21:44<una>ん?鏡には物凄く可愛い女の子が映ってるよ?
21:45<anan>それがHENTAIです
21:45<gan>そいつがヘンタイだよ
21:45<kero>今すぐそいつを通報しろ!そいつが変態だww
21:45<win>鏡の精霊もそいつがHENTAIだと言ってますww
21:45<Agi>変態以外の何者でもない(´・ω・)
21:45<una>うわぁ〜お、皆さん息ピッタシww
いつも通りの楽しい会話。顔も知らない仲間との、楽しい会話。
今日でここともサヨナラと思うと……寂しいな。
21:47<una>えええええ〜!ananさぬ来れなくなるの?
21:47<anan>完全に来れなくなるという訳じゃないですよ。ネットできる環境じゃなくなるから、来るとしたらネカフェからかな?
21:47<gan>でもいつものようには来れないんですよね?寂しくなるなぁ
21:47<Agi>急な話ですね…とても残念です
21:47<kero>なんで?なんでなの?
21:47<win>ananさんが来なくなるなんてヤダヤダヤダ〜 ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
俺は顔も知らない友人達に、美佳ちゃんを励ますためにすると決めたことを話す。
一人で住む部屋で寂しさに耐えて頑張ってる美佳ちゃん。
そんな彼女に少しでも寂しさを紛らわせてもらおうと、俺はPCをプレゼントすることにした。
俺がこの愛すべきド変態たちと知り合って、今まで頑張って来れたように、
美佳ちゃんもPCを使うことによって世界が広がり、きっと頑張れるはずだ。
だから俺は、PCをプレゼントしようと思っている。ま、新品を買う金がないから俺のお下がりになるけどな。
で、今俺はこの小さなノートPCしか持っていない訳で……となるとこのPCを手放した時点でネットが出来なくなるって訳だ。
ネットが出来なくなると、この変態な友人たちとも会話が出来なくなる。
何年も話し続けた顔も知らない俺の友達。
まさかこんな形で別れの時が来るとは思ってもいなかったが、そろそろ潮時かもしれない。
これを機に、ネットの世界から足を洗い、仕事に精を出し、美佳ちゃんを立派な大人へと導かなきゃな!
……いくら友人とはいえ美佳ちゃんの事はこいつ等には秘密だ。
美佳ちゃんの様な純粋な子を、こんな人類に分類されているのが何かの間違いなヘンタイ達に教えたら、
なにを妄想されるか分からん!
妄想とはいえ、美佳ちゃんを汚すような輩は俺が許さん!
21:47<anan>急な話でゴメンね。でも時々はネカフェから来るから。仲間はずれはしないでね
21:48<gan>ネットが出来なくなる環境って仕事の関係ですか?
21:48<Agi>ananさんの仕事って確か…
21:48<una>右手と左手でジャンケンしてどっちが強いか調べる仕事だったね
21:48<Agi>そうだったそうだったww
21:48<anan>なにその意味のない仕事ww
21:48<una>じゃあ右手と左手でオナヌーしてどっちが気持ちいいか調べる仕事だww
21:49<gan>ハァ?unaさんアナタバカですか?両手でこねくり回すほうが気持ちいいに決まってるでしょうが!
21:49<anan>おいおいおいおい、それは同意しかねるな。3Pだなんて粋じゃねぇぜ!男は黙って左手だろうが!
21:49<Agi>おっと、右手を忘れちゃいけねぇぜ!
21:49<win>待ちな!先っぽをこねくり回すのも忘れちゃいけねぇぜ!
21:50<kero>床にこすり付けるのも忘れちゃいけねえよww
21:50<una>掃除機で吸うのも忘れちゃいけねえww
21:50<gan>それはないな
21:50<anan>ありえないですな
21:50<win>掃除機?無理!
21:50<kero>ないない、それはない
21:50<una>え?ええ?なんで?なんでアタシだけ仲間はずれ??すっごく気持ちいいって聞いたよ?
21:51<win>……さぁ夜だけど掃除しようかな?
21:51<kero>奇遇ですな、ワタクシも掃除がしたくなってきたところです
21:51<anan>掃除機どこにしまってたっけなぁ?
21:51<una>アタシも掃除しようっとww
21:51<gan>お、おまえら…お前等だけにいい格好はさせねぇぜ!おいらも掃除機出さなきゃw
21:52<Agi>ダメだこの人たち、本気で何とかしないとwww
こうして俺の憩いの場、下半身紳士倶楽部での最後のチャットはいつも通りの楽しい会話で終わった。
みんな俺に気を使って、いつも通りに騒いでくれたみたいだ。……みんな、ありがとう。
皆からもらったこのエロ動画、宝物にするよ!っていうか、PCなくなるんだからエロ動画みれねぇじゃん。
仕方がない、会社でこっそりと見ることにしよう。せっかくの皆からのプレゼントだ、大事に鑑賞しなきゃな。
……掃除機って結構高いのかな?
「はぁぁ〜……子猫さん、とても可愛いですぅ。こんなに小さいのに動くなんて可愛すぎなんですぅ」
パソコンの画面に映る、可愛く動く子猫さん。その可愛さに思わずため息が出ちゃいます。
みゃーみゃー鳴いて、とても可愛いんです。小さくて、暖かそうで、モコモコそうで、とても可愛いんです!
最近はバイトから帰ったら、直人さんからもらったパソコンで、毎日子猫さんの動画を見ています。
直人さんからパソコンをもらって、一週間がたちました。
西原さんから教えてもらった、動画サイト。そこで子猫や子犬を見るのが日課になってしまいました。
西原さん、とてもいいサイトを教えてくれました、感謝感激です!
……西原さん、教えてくれました。インターネットをするにはプロバイダーというところにお金を払わなきゃいけないって。
私、お金を払ってません。お金を払わなきゃいけないなんて知りませんでした。
でもこのパソコン、インターネットできるんです。……直人さんがお金を払ってくれてるんです。
お金が必要なんて、全然言ってませんでした。直人さん、黙って払ってくれてるんです。
「……直人さん、大好きです」
画面の子猫さんを見ながら、つい口に出しちゃいました。
直人さん……とても優しい直人さん、大好きです。
大好きな……とても大好きなあの人の顔を思い浮かべるだけで、胸が温かくなる。
とても大好きな直人さんの顔を思い浮かべ、想いを口に出しちゃいます。
「直人さん、好きです、大好きです。直人さん、愛して……は、恥ずかしいです!
さ、さてと、お風呂に入っちゃって、さっぱりしちゃいましょう!さっぱりしてから今度は子犬さんを鑑賞です!」
顔を真っ赤染めたまま、慌ててパソコンの電源を落とそうとしました。
お風呂に入って火照った顔と頭を冷やさなきゃいけません!
暖かいお風呂で頭を冷やすというのもおかしな気がしますけど、気にしちゃいけません!
慌ててスタートと書かれたマークをクリックして、電源を落とそうとしたんですけど……西原さんの言葉を思い出しちゃいました。
「そういえば……西原さんが言ってました。このパソコンを調べたら、直人さんことが色々と分かるんじゃないかって。
……ゴクリ。ちょ、ちょっと見ちゃいましょうか?
勝手に調べるなんていけないと思います、でも少しくらいなら……い、いいですよね?」
ドキドキしながら、すべてのプログラムと書かれたところをクリックします。
西原さん、ここを見れば、このパソコンに入っている色々なソフトが分かると言ってました。
直人さんが、このパソコンに入れたソフトが分かると言ってました。
そのソフトを見れば、直人さんがどんな趣味かも分かるんじゃないかって教えてくれました。
……私、直人さんのことが大好きなのに、直人さんのことをあまりよく知りません。
私が知っている事といえば、直人さんはとても優しくて、素敵な人だってことくらいです。
とても素敵で優しい直人さん……大好きです!
「えっと……とくに変わったソフトは入ってませんね。というか、なにが変わったソフトなのか分かりません。
これは……失敗ですね。あまり知識がないのに調べようなんて考えた私の失敗です。……あれ?これってなんでしょうか?」
色々なソフトがある中、目に留まった『lemonchat』という文字。
これは……レモンチャット、かな?
レモン、ですか?直人さん、すっぱい食べ物が好きなのかな?
チャットとは、いったいなんでしょうか?これも食べ物に関係あるのかな?
……私のカンがこれは怪しいと言ってます!これはちょっと調べてみましょう。
こういうときインターネットが役にたちます。ネットで調べればすぐに分かっちゃうんです。
検索エンジンに『lemonchat』と打ち込んで調べてみます。
私の知らない直人さんのことが、少しでも分かるかも?とドキドキしながら検索結果に目を通します。
どれどれ……あ、このソフトって、ネットを通じていろんな人と話すソフトだったんですか。
直人さん、このソフトを使ってレモン好きな人と話してたのかな?
……このソフトを使えば直人さんが話してた人たちを話す事が出来ちゃうのかな?
もしかしてその人たちに直人さんの事、色々聞けちゃったりするのかな?
これは……直人さんのことを知るチャンスではないのでしょうか?
そう思った私は、ついそのソフトをクリックしてしまいました。
……この簡単な思い付きが、私のこれからを大きく変えるとも知らずに。
「えっと、この『紳士同盟』っていうチャンネルに入ってたのかな?」
レモンチャットを立ち上げてみると、そこには『紳士同盟』と書かれた文字がありました。
ネットでレモンチャットの使い方を調べてみると、その『紳士同盟』と書かれた所が、チャットルームらしいのです。
この『紳士同盟』というところで直人さんはお話をしていたのかな?
紳士同盟……直人さんのような優しい人たちが集まっちゃってるところなのでしょうか?
きっとそうです!皆さん直人さんのような親切で優しくて、カッコよくて素敵な人の集まる場所なんです!
は、入っちゃってもいいのかな?は、入っちゃいましょうか?……入っちゃえ!
えっと、まずは挨拶をしなきゃいけないんですよね?こんばんわでいいのかな?
あ、ニックネームを決めなきゃいけないんですか?どんな名前にしようかな?
ネットでレモンチャットのことを解説しているページとにらめっこしながら、
カーソルを『紳士同盟』という文字に合わせる。
よし、名前は名字をいじって『kohi』にしちゃいましょう。……ドキドキしてきました。
直人さんの事、教えてもらえるのでしょうか?直人さん、ここでどんな事を話していたのでしょう?
ドキドキしながら『紳士同盟』と書かれた文字をクリックする。
……え?えええ?いきなり繋がっちゃいました!名前、書いてませんよ?
画面には私の名前が『anan』と書かれたチャット画面が映ってました。
『anan』、ですか?もしかしてこれが直人さんが名乗ってたニックネームなのかな?
直人さん、『anan』って名乗ってたんですか……なんだか可愛い名前です。
……って、ダメです!すぐに挨拶をしなきゃいけません!挨拶をしてから直人さんじゃないと説明をしなきゃ!
21:40<anan> 失礼します、こんばんわ
21:40管理人 |> 掃除機オナニーは人類の進化の証です。ananさん、いらっしゃい。たくさん会話してね^^
挨拶成功、なのかな?この管理人って人、なにを言っているのでしょか?
掃除機オナニー?掃除機はあのお掃除をする掃除機ですよね?オナニーとはのことなんでしょうか?
どこかで聞いたことがあるような気もしますけど……思い出せません、後で調べてみましょう。
21:40<kero>ananさぬキター!
21:40<win>HENTAI帰ってキター!
21:40<gan>オコンバトラー!エロ動画、足りなくなったかww
21:41<Agi>一週間ぶりですね、お帰りなさい!
21:41<una>掃除機オナヌーでオティンティンが抜けなくなり、そのまま会社に行ったananさぬが帰ってキター!
21:41<kero>チンコ、抜けなかったのかよww
21:41<win>それで会社に行くとはさすがはHENTAIだww
21:41<gan>ある意味ヌけたはずだww
21:41<una>掃除機でドピュドピュ出して、ティンポコに装着したまま出勤するなんて、ヘンタイだねぇww
21:41<Agi>黙れ変態(´・ω・)
21:41<kero>お黙り、変態!ww
21:41<win>HENTAIは口を出すなww
21:41<gan>ヘンタイの、ヘンタイによる、ヘンタイ認定ww
21:42<una>うぅぅ、みんなに一斉にヘンタイ扱いされちゃったよぉ……これはヘンタイ、じゃないや、タイヘンだぁぁぁ〜ww
え……っとぉ、これはいったいなんなのでしょうか?
ここにいる皆さんが、この『anan』という名前の人を歓迎しているのは判ります。
で、その『anan』は、直人さんが名乗っていたニックネームなのですよね?
……チ、チンコって!んな?んななななな、なにを言ってるんですか!
21:42<win>で、どのエロ動画で抜いたんですか?
21:42<kero>もちろん私があげた女子高生パンチラ全集ですよね?w
21:42<gan>いやいや、オイラのあげたOLさんお尻特集に決まってるでしょ?
21:42<una>チッチッチッ、甘い甘い!アタシのあげた、女の子の食事風景に決まってるでしょ?
21:42<Agi>食事風景ww レベルが高すぎるww
21:42<una>実は全部アタシの食事の時の口元を映したものだったりしてww
21:42<win>…チッ
21:42<kero>チッ!
21:43<gan>あ〜あ、台無しだな
21:43<Agi>……カスが!(´・ω・)
21:43<una>え?何この冷たい反応?感じちゃうじゃないのww
21:43<win>ww
21:43<kero>さすがだww
21:43<gan>ヘンタイにもほどがあるww
21:43<Agi>ダメだこの人早く何とかしないとww
21:43<una>わぁ〜い、褒められたぁ ヾ(=^▽^=)ノ
画面に写る、不思議な言葉の数々に、頭の中がグルグルとなってしまってます。
え?ええ?えええ?な、なにを言っているんですか?この人たちはいったいなにを話しているのでしょう?
紳士同盟、ですよね?直人さんが会話を楽しんでいたであろう、チャットですよね?紳士なんですよね?
私、入るチャンネルを間違っちゃったんでしょうか?
21:43<Agi>ananさん、どうしたんですか?さっきから黙ってばかりで。今日は元気ないですね?
21:43<una>はっはぁ〜ん、さては新たな属性を身に着けたね?
21:44<kero>ツインテールにニーソにメガネ。それに金髪に足コキ。さらに身に着けたのかww
21:44<gan>黙ってると言う事は……無口か。無口娘をヒィヒィ言わせたいのかぁぁぁ〜!
21:44<win>ananさんの理想像…ツインテールで金髪メガネ無口っ子に足コキをされること。やっぱりHENTAIだww
21:44<una>ええ〜?それってまんまアタシのことじゃない! ananさん、アタシに足コキされたいの?ww
21:44<win>…チッ
21:44<kero>チッ!
21:45<gan>あ〜あ、台無しだな
21:45<Agi>……寝言は寝て言え!(´・ω・)
21:45<una>ああ〜ん、冷たくされると感じちゃうww
21:45<gan>ほどがあるほどのヘンタイだwww
21:45<win>どうしようもないHENTAIですなwww
21:45<kero>この変態め! ……が、アンタ一人に変態はさせねぇぜ!
21:45<gan>俺達も一緒にヘンタイさせな!ww
21:45<win>ふっ…お前等だけじゃ不安だな。俺様もHENTAIするぜ!
21:45<una>ア、アンタ達……嬉しくて股間から愛液が溢れて、じゃなかった、目から涙が溢れるぜ!ww
21:45<kero>ww
21:46<gan>物凄い間違え方だww
21:46<win>この間違え方…奇跡が起きたww
21:46<Agi>どうしようもなくダメなこの人達を早く何とかしないとwww
「…………あ、あはは、は、はぁぁぁ〜」
画面を見つめていた私は何も考えずにチャットを閉じ、パソコンの電源を落としちゃいます。
……さ、お風呂に入って、明日に備えて寝るとしましょう!嫌な事はさっぱりと忘れて、明日も頑張っちゃいます!
……さっきのチャットは、なんだったんでしょう?あんな人たちと直人さんは会話をしていたのでしょうか?
直人さんもあの人たちと同じような事を話して……そ、そんなことないですよね?
あの人たち、一週間振りだって言ってました!
私のことを直人さんだと思っちゃってて、驚かそうとしてヘンなことばかりを話してたに決まってます!
そうですよね?直人さんがあんなヘンな人たちと会話してるなんて、ありえないですよね?
混乱する頭をさっぱりさせるために、お風呂に入る私。……直人さん、ホントにあの人たちと話してたのでしょうか?
明日もう一度あのチャットに入ってみて、話を聞いてみようかな?
「ふぁわぁぁぁ〜……ヒマだ。家ではもう寝るしかないのか」
仕事から帰ってきて、熱い風呂でさっぱりとした後、部屋へと篭る。
前まではPCを立ち上げ、チャットで楽しい一時を過ごしていたのだが、今ではもうそれも出来ない。
美佳ちゃん、PCをちゃんと使えてるのか?ヘンなサイトに行ってないだろうな?
ま、美佳ちゃんのことだ、きっと可愛い動物の写真や動画でも見てるんだろうな。
美佳ちゃんが妖しいサイトに行くなんて、考えられんからな。
……俺が行ってたサイトの痕跡は消したはずだ。
もちろんダウンロードしていた画像など、妖しい物はすべて消した。証拠は何も残してないはず。
エロ画像や動画はUSBメモリーに落として、会社でも見れるようにしたし、チャットソフトも一緒に入れておいた。
俺のお気に入りソフト、『Takチャット』。
コイツがある限り、いつでもみんなと話すことが出来るんだ。ま、ネカフェに行かなきゃいけないけどな。
以前に一度、違うソフトも試してみたが、俺には合わなくて一度使っただけで使うのを止めたんだ。
あのソフト、なんて名前だったっけ?……ま、いいや。すぐに消したはずだしな。
しかしヒマだな。チャットが出来ないと、ここまで暇になるとは思わなかったな。
「今頃皆、何の話をしてるんだろうな。ふあぁぁぁ〜……もう寝るかな?」
チャット仲間のことを思い浮かべながら、布団に寝転がり天井を見つめる。
……あれ?あのチャットソフト、ホントに消したか?
確かAgiさんが薦めてくれたから、一度だけ使ったんだよな?
で、使ったのはもう一年位前の話だ、それ以降あのチャットソフトは使ってない。
……消したっけ?もしかして消し忘れてるのか?いや、確かに消したはずだ!
そう、使わないから消しちまえって……ヤバイ、消した記憶がない!
もしかするとまだPCに入ったままか?ま、不味くないか?非常にヤバクないか?
もしあのチャットソフトを美佳ちゃんが見て、起動させたら……あのHENTAIの巣窟に踏み込んじまうんじゃないか?
もしあんなところに俺が入り浸ってたなんて知られたら……俺、生きていけないぞ!
不味いな……どうにかしてPCを調べなきゃいけないな。
……今度の休み、顔を見に行くついでに調べてみるか?
今回は以上です。
おつですー
急展開!急展開!!
薪割りの人が来たぞー!乙&GJだ!!
これは一体、どうなってしまうのかー!?
相変わらず面白いなー。こうまで続きが気になって引き込まれるなんてくやしい、でも……!
GJでした。
GJ!
ああぁぁぁ……何てこった!
この娘はいったいどうなるやら
続きが凄く気になる!
おいおいおいおい
おまいさんはどんだけ読者をwktkさせれば気が済むんだ!
>>490 とっとと続きを書きやがってください!
書いてくれたらアンタに固定寿司をおごってやってもいい
気弱娘とエイプリルフール
エイプリルフール……終わっちゃった……。
嘘でもいいから、告白……したかった……な。
いや嘘じゃ良くないんじゃ……?
エイプリルフールの冗談だと思われてもいいから想いを伝えたかった
ってことかもしれない
なけなしの勇気を振り絞ってさ
500 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/05(日) 00:00:41 ID:3RHD2Yfw
500
501 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/06(月) 22:49:19 ID:DMTBCkk9
501
好きな男の子のために思い切ってヌードモデル(絵画or写真)になる、みたいなシチュの話ってある?
お前がこれから書くんだよ!
504 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/07(火) 15:45:15 ID:YOKNSIqo
べ、別に貴方の為にモデルになる訳じゃ……その……ないんだからね?
505!
>>502 なかなか惹かれる題材だな。
でも、そこに至るまでの経緯が全然思い浮かばない……。
508 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/16(木) 06:51:25 ID:9oi98s9t
二人だけになるとテンパっちゃって、思わず相手に抱き付いちゃう気弱っ娘。
おっ良スレハケーン
古文の伊勢物語、第45段「ゆく螢」はこのスレにぴったりだと思う
510 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/18(土) 19:40:32 ID:kvuLAkvr
さあ現代語訳して適当にまとめて教えるんだ。
ストーリー的にはここが肝なんだろうがどうしてもつっこみたい。
直人、なんでOS再インスコしなかったんだ…!
513 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/25(土) 08:39:41 ID:TG/Glqyp
あの、えっと……あげ、です。
>>512 正直、一般人はそんなの気にしないで人にあげる
かなりの間が空きましたが、トシウエのカレシの続きが書けましたので投下します。
今回もエロ無しですので、エロなしが嫌な方はスルー願います。
「こっひなったさん、おはよ!……ど、どうしたの?物凄く眠そうな顔をしてるよ?」
直人さんからもらったパソコンを調べて、たどり着いたチャットルーム。
……まさかあんな会話がされてるとは、思いもしませんでした。
直人さんも、あの会話の輪の中にいたんでしょうか?そ、そんな事ありませんよね?
だって直人さん、物凄く優しいし、私達にヘンな事、したことないですから。
「うわ!目が真っ赤に充血してるじゃないの。もしかして寝てないんじゃない?ほら!目薬でも差して、スッキリしなよ」
「あ、西原さん、おはようございます。え?目薬貸してもらってもいいんですか?あ、ありがとうございます!」
あのヘンなチャットでの会話の中に出ていた、いくつかのキーワード。
気になったので調べてみちゃいました。インターネットってこういうときに便利ですよね?
ツインテール……これは髪を頭の両側で縛って纏めている髪形だと分かりました。
直人さん、こういう髪型が好きなんですか。……姉さん、お金を取らずにセットしてくれるかな?
メガネ……文字のままの眼鏡のことだと思います。直人さん、眼鏡をしている女性が好きなのでしょうか?
知的に見えるのがいいのかな?……た、大変です!両目ともに視力1,5です!
眼鏡をかけれません!どうすればいいのでしょうか?
ニーソ……ニーソックスのことみたいです。検索してみたら、一番上にオーバーニーソックスというものが出てきました。
どうやら膝上まである靴下のことをそう呼ぶみたいですね。……直人さん、靴下にこだわりでもあるのでしょうか?
金髪……調べなくても分かっちゃいました。髪の色の事ですよね?直人さん、派手な髪の色が好きなのでしょうか?
足コキ……………………
「小日向さん?固まっちゃってどうしたの?ね、ねぇ、瞬きしないと、目が乾くよ?ど、どうしちゃったの?」
エロ動画…………………
「こ、小日向さん?ホントにどうしちゃったの?ねぇ!ねえってば!」
そ、掃除機、オ、オナ…………
「ホントに小日向さんどうしちゃった……って、息してないじゃん!ちょっと!息しなきゃ死んじゃうってば!」
「……ぷはぁ!はぁはぁはぁはぁ!あ、はぁはぁ、西原さん、おはようございます」
い、今一瞬、白いお花畑が見えました。とっても綺麗なお花畑でした。
学校で夢を見ちゃうなんて……寝不足です。姉さんに知られたら叱られちゃいますね。
「よかったぁ〜。小日向さん、死んじゃうのかと思ったわよ。今日は様子がメチャクチャ変よ?何かあったの?」
「へ、変ですか?特に何か有ったという訳じゃな……」
そうです!直人さん、きっと何かがあったんです!何か辛い事があって、直人さん、グレちゃったんです!
だから金髪が好きになったりしちゃってるんです!ま、不味いです!直人さん、このままじゃ不良です。怖い人になっちゃいます!
「だからどうしたのよ?急に握りこぶし作っちゃったりして。……もしかして愛しの直人さんと何かあったの?」
「わ、わわわわわ!直人さんは優しいんです!不良さんなんかじゃないんです!」
西原さん、凄いです!何故私が直人さんの事を考えてるか分かっちゃったんでしょうか?
……あれ?クラスメートの皆さん、何故私を見ているのでしょうか?皆さん呆れた顔をしているのはどうしてでしょうか?
「なるほどねぇ。もらったパソコンを調べたら、愛しの直人さんのえっちなところが見えてきちゃったと」
「は、はい、そうなんです。……あの優しい直人さんが、そんなことを考えてたなんて、ビックリしちゃって……」
お昼休み。朝早起きして作った、手作りのお弁当を広げて、西原さんとお話をします。
うぅぅ……お弁当、我ながらあまり美味しくないです。姉さんのお弁当が、懐かしく感じちゃいます。
西原さんに様子が変だと問い詰められて、白状しちゃいました。
は、白状したといっても、あのチャットのことは言ってませんよ?
ただ、パソコンの中に、ちょっとえっちな物が入ってたって言っただけです。
……あのチャットは、ちょっとどころじゃない気がしますけど。
「で、小日向さんはショックを受けちゃった、と。……でもね?男だったらえっちで当たり前なんだよ?」
「そ、そうなんでしょうか?でも直人さん、今まで私たち姉妹にはそんな様子を全く見せませんでしたよ?」
直人さん、出会ってからずっと、私たちにそんな事はしませんでした。
初めて会った時も、姉さんにイヤらしい事をするどころか、美味しい御飯を食べさせてくれて、ホテル代まで出してくれました。
そして、ホテル代どころか、あれからずっと生活費を振り込んでくれて……とても優しい直人さん、大好きです。
だから……信じられないんです。優しい直人さんが、あんなヘンな人たちと話してたなんて……信じたくないんです!
「そりゃ準さんと小日向さんが、そういう目で見られて無かったってことよ」
「え?そういう目で見られていなかった?それはいったいどういうことでしょうか?」
そういう目ってどんな目なんでしょうか?直人さんの目はとても優しい目をしています。
いつも優しい目で私たち姉妹を見つめてくれた直人さん、大好きです!
「つまりはね、準さんも小日向さんも、愛しの直人さんからすれば、性的対象外ってことよ」
「性的対象外、ですか?」
「ま、簡単に言えば、異性として見てもらってないってことね。自分の子供みたいに思われてるんじゃないの?」
「な?んな!な、なななな?」
「だって小日向さんも準さんも、メチャクチャ美人でスタイル抜群でしょ?
そんな女の子が二人も自分を慕ってたのよ?普通の男なら間違いの一つや二つ、起こしちゃうわよ」
そ、そんな、子供と思われちゃってるなんて……直人さん、酷いです!
私、確かに子供っぽいところが少しはあると思いますけど、立派な女性です!女の子なんです!
……言い過ぎました、我ながらかなり子供っぽいところあると思います。
だからでしょうか?子供っぽいところがあるから、直人さんは私を子供みたいに思ってるのでしょうか?……ま、間違い?
「ま、間違いって何ですかぁ!」
「簡単言うと、セックス」
「か、簡単に言わないでください〜!」
「じゃあ子供を作るための性的行為」
「難しく言ってもダメですぅ〜!」
「まぁぶっちゃけ小日向さんに女としての魅力を感じてないのは確かね」
「そ、そんなぁ〜」
ガックリと肩を落とし、落ち込んじゃいます。
グスッ、直人さん、私に魅力を感じてくれないんでしょうか?どうすれば直人さんに女として認めてもらえるのでしょうか?
「愛しの直人さんの女性の好みが分かればねぇ。ま、今の小日向さんは直人さんの好みじゃないのは確かだけどね」
「グスッ、酷いです。西原さん、物には言いようがあります!もう少し優しく言ってくれてもいいと思います!」
「今は希望がなくても、きっと大丈夫だって!生きている限りは希望はあるってば!」
「うううう〜!優しく励ましてくれるのか酷いのか、よく分かりません〜!」
「あっはははは!ま、頑張んなよ?努力しなきゃ何も始まらないからね」
あははは、と笑いながらお弁当をパクつく西原さん。
西原さん、他人事です!相談に乗ってるフリをして、楽しんでるだけではないのでしょうか?
それにしても、私、直人さんに子供と思われちゃっているんでしょうか?
ま、マズイです!これはマズすぎなんです!どうにかして直人さんに女性としてみてもらわなきゃダメなんです!
でも、いったいどうすれば私を女性としてみてくれるのでしょうか?
西原さんは直人さんの好みが分かればと言っていましたが、そんなの恥ずかしくて聞けません!
どうすれば直人さんの女性の好みが分かるのでしょうか?
どなたか知っている人がいればいいのですが……あ、いるかもしれないです。
そうです、そうなんです!アソコに行けば、知っている人がいるかもしれません!
あの、チャットに行けば、直人さんの事、詳しく教えてもらえるかもしれないんです!
あのヘンなチャットに行けばきっと私の知らない直人さんのことが分かっちゃうはずなんです!
早速今日にでも行って、色々聞き出しちゃいます!
……あんなところで聞いちゃって、いいのかな?
19:50<anan> 失礼します、こんばんわ
19:50管理人 |> Agiさぬ絶賛オナ禁中!残り13日!ananさん、いらっしゃい。たくさん会話してね^^
勇気を振り絞って再び紳士同盟というチャットルームに入ってみたのですが……
この管理人さんは、危ない人なんでしょうか?昨日来た時もヘンな事を言ってました。
オ、オナき……イヤらしい事は言っちゃダメだと思います!
19:50<una>あああ〜!ananさぬ、昨日は酷いんじゃない?何も言わずに落ちちゃうなんて!みんなananさぬが来て喜んでたのに!
た、大変です!昨日、ショックのあまりに何も言わずに出て言っちゃった事に怒っちゃってます!
ど、どうすればいいんでしょうか?怒っちゃってるのに直人さんの事、教えてくれるのでしょうか?
19:50<una>せっかく喜んでたのに……放置プレイするなんて、やっぱりananさぬはHENTAIだね^^
19:51<anan>放置プレイですか?すみません、意味がよく分かりません
19:51<una>(`・д・´)ウソハイクナイ
カ、カワイイです!可愛い顔で注意されちゃいました!このunaって人、こんな顔を書けるなんて凄いんです!
19:51<una>ananさぬがすぐ帰っちゃった責任を取って、Agiさぬがオナ禁2週間に刑になっちゃたんだよ?ww
そ、そうだったんですか。私が何も言わずに帰っちゃったせいで、Agiという人に迷惑をかけて……オナ禁?
ん、んな?なにを言い出しちゃうんですか!この人やっぱりヘンです〜!
19:51<una>最近はAgiさぬもオナ禁に慣れちゃってるからねぇ。反応が可愛くないんだよねぇ。
皆のアイドルとしての自覚がないね、Agiさぬはww
ア、アイドル?アイドルという事は女の人、なのかな?
もしかして直人さん、そのAgiという人と話をしたいからここに来ていたのでしょうか?
だとしたら、そのAgiというような人が直人さんのタイプなんでしょうか?
19:54<anan>Agiという人は、アイドルなんですか?直人さんも好きだったんでしょうか?
どんな人なんですか?背は高いのですか?それとも低いのですか?服装とか髪型とか教えてもらえないでしょうか?
直人さんはAgiという人のどこが好きなのでしょうか?教えてもらえませんか?
19:54<una>え?えええ?ananさぬ、なに言ってるの?
19:56<anan>Agiという人はどんな性格なのでしょうか?明るい人でしょうか?それとも大人しい人でしょうか?
直人さんはその人とどんな会話をしていたのでしょうか?教えていただけないでしょうか?
これはチャンスですよ?大チャンスなんです!
チャットルームに来てすぐにこんなチャンスが来るなんて、ビックリです!
19:57<una>えっとね、間違ってたらゴメンね?……アンタ、誰?ananさんじゃないよね?
なんでananさんの名前、語ってるの?アンタ誰よ?
……し、失敗しちゃいました〜!
ついテンションが上がっちゃって、ananって直人さんが使ってた名前で話してた事、忘れちゃってました〜!
20:05<una>なるほどねぇ、それでananさぬのこと、聞きに来ちゃったんだ?
20:06<anan>はい、そうです。昨日はすみませんでした。
……色々と聞かれちゃいました。
何故私がこのチャットルームを知ったのか。何故ananという名前を名乗っているのか。
何故ananさん……直人さんのことを知りたがっているのか、を。
20:06<una>自分は貧乏して生活費を援助するなんて、やっぱりananさぬいい人だったんだねぇ
20:07<anan>え?やっぱりとはどういう意味でしょうか?
20:07<una>んん?そのままの意味だよ?ほら、チャットって顔が見えないし、匿名だからね。
なかにはメチャクチャ口の悪い人もいるわけなんだよね。いつも悪口ばかり言ったりする人とかね。
でもね、ananさんはそういったことを言った事もないし、チャットを盛り上げようと面白い話をしてくれたりしたしね。
ananさん、とってもいい人だよ
色々と聞かれちゃいましたけど、直人さんに親切にしてもらってるお礼がしたくて、
情報を仕入れに来ましたって言っちゃいました。
……ウソは言ってませんよ?その、す、好きな人の好みを知りたいなんて恥ずかしくて話せません!
そんな私にこのチャットルームでの直人さんの様子を教えてくれたunaさん。
直人さん、ここでもいい人だったんですね。直人さんはやっぱりいい人なんです!素敵な人なんです!
20:08<una>とくに赤い彗星理論を提唱したのにはビックリしたね。思わず唸っちゃったもんww
20:09<anan>赤い彗星理論、ですか?どういう理論なのでしょうか?
赤い彗星理論、ですか?直人さん、理論とか難しそうな事、考えていたんですか。
……さすがです、直人さん!優しくて素敵なだけでなく、理論とか難しい事も考えちゃってたんですね!
これはもう、物凄くカッコいいです!
20:09<una>『ツインテールにニーソ、メガネを着用した女の子の魅力は3倍になる』
20:10<una>ananさぬが今まで生きてきて悟った事らしいよww いいHENTAIでしょ?ww
……へ?
20:10<una>他にも名言いっぱいあるよ?『パンツはモロ見えだと戦力半減。チラリズムだと戦力10倍増!』
…………ふぇ?
20:10<una>『メガネはかける為にあるんじゃない。ブッかけるためにあるんだ!!』
20:11<una>あ、ブッかけるって言うのは、ガン射の事だからねww 顔に精子をドピュドピュかけちゃうのww
……………ふぇぇ?
20:11<una>極めつけは、『俺は絶対にこの目で見てやるぜ……HENTAIの向こう側ってヤツをよぉ〜!』
20:11<anan>もういいdwし1!!
なにを言っているのかよく分かりませんけど、ヘンなことを言ってると言うのは分かっちゃいます!
このunaさんという人、ウソばかりです!ウソツキさんです!
直人さんが、あの優しくて素敵でカッコいい直人さんが、そんなこと言うわけないんです!
20:11<una>あはははは!反応がカワイイねぇ。そんなにananさぬのことが好きなんだ?ananさぬのどこが好きなの?
20:11<anan>直人さんはとせもうあさしくていいひとんさんです!
20:12<una>落ち着きなさいってww
20:12<anan>直人さんは渡したししまいをたすけてくれたとてもいいひとなんでsづ1!
ひどいです!このunaっていう人、とてもひどいんです!
何故直人さんを貶めようとするんですか!そんなことをしちゃいけないんです!
……ふぇぇぇ?んな、なんで私が直人さんが好きって分かっちゃったんですか?
20:13<anan>なんでわたしがなおとsじゃんをすいきだって分かったんですか
20:14<una>( ゜Д゜)⊃旦 お茶でも飲んでもちつけww
……カ、カワイイですぅ、お茶を出してくれるなんて、とっても可愛いんです!
この人はどうしてこんなカワイイ顔を書けるのでしょうか?羨ましいです。
20:15<una>少しは落ちついたかな?
20:16<anan>はい、取り乱してすみなせんでした
20:16<una>あはははは、まだ焦ってるね(^−^)
はうぅぅ、字を書くのを失敗しちゃいました。
チャットというのは読んだり書いたり、忙しいんです。だから失敗しちゃっても仕方がないはずなんです!
……はぁぁ〜、これは練習しなきゃいけませんね。
20:16<una>そういえば自己紹介してなかったよね?アタシはここのチャットを主催してるunaで〜す(^-^)ノ゛
このチャット唯一の女の子で〜す(*/▽\*)イヤン
で、アナタは本当はなんて名前なの?あ、本名じゃなくて、ニックネームでいいからね?
いつまでもananさぬの名前、使ってちゃダメだよ?ananさぬが来るかもしれないからね
このunaという人、女の人なんですか?
……姉さん、世の中は広いです。私たちが想像もしないような変わった人がいるんです!
……え?直人さんが来るかもしれないんですか?そ、それはマズイと思います!
直人さんのことを調べてたなんてバレちゃったら、嫌われちゃいます!
20:17<Agi> こんばんわ
20:17管理人 |> Agiさぬ絶賛オナ禁中!残り13日!ananさん、いらっしゃい。たくさん会話してね^^
20:17<Agi>(´・ω・`)ショボーン
20:17<una>(^o^)こ(^_^)ん(^O^)ば(^_^)ん(^〇^)わ♪
20:17<Agi>あ、ananさんが来てる!
ひ、人が来ちゃいましたよ?
しかもこの人は、昨日私が何も言わずに帰っちゃったから、お、おな……迷惑をかけちゃった人です。
昨日はチャットの会話でショックを受けて、何も言わずにパソコンを落としちゃいました。
これは皆さんに謝らなきゃいけませんね。とても失礼な事をしちゃった気がします。
20:17<una>あははは、Agiさぬ、残念ながらこの人はananさぬじゃないの、別人だね
20:18<Agi>へ?別人ってどういうことですか?
20:18<win>こんこん〜
20:18管理人 |> Agiさぬ絶賛オナ禁中!残り13日!winさん、いらっしゃい。たくさん会話してね^^
ま、また来ちゃいました!このチャットルームは大盛況なんです!
20:18<una>(*^ー゚)ノ ぃょぅ
20:18<Agi>こんばんわ〜
20:18<win>あ!ananさんがいる!昨日はどしたの?急にいなくなるなんてなんかあったんですか?
20:18<una>んん〜、人が来るごとに説明するのは面倒だから、みんな来てから話そっか?
それでいいよね?え〜っと、アナタの事はなんて呼べばいいのかな?
20:18<win>??unaさんなに言ってるんです?
20:19<Agi>なんかね、ananさんが別人なんだって。自分も来たばかりだから意味が分からないんだけどどういうことですか?
20:19<anan>はい、それでお願いします。私のことはkohiと読んでください
20:19<una>ウンウン、kohiちゃんね(^-^) じゃあkohiちゃん、まずはananさぬの名前からkohiに変えてきてね。
で、みんなが集まったらここに来た理由を教えてね?
20:20<anan>教えるのですか?
20:20<una>ここにいる皆は、ananさぬと何年も話してる友達だからね。きっと役に立つよ?
あ、あとね、ananさぬの本名、ここでは使わないこと!匿名で話す事が前提なんだからね、これからは気をつけてね
20:21<anan>はい、わかりました。では名前を変えてきます。
た、大変です!自己紹介しなきゃいけなくなっちゃいました!
どうしたらいいのかな?皆さんに直人さんの事、相談したほうがいいのかな?
昨日の会話を聞いてたら、ここでは相談しちゃいけない気がします。
でも……unaさんの言うとおり、直人さんはここで何年もお話をしていたんですよね?
だったらここの皆さんに相談をすれば、直人さんの事、色々と教えてもらえるのかな?
……教えてもらっちゃってもいいのでしょうか?
物凄くヘンな事を教えられるような気がしちゃいます、ちょっと不安です。
「おお〜、相変わらず整理整頓されてるな。さすがは美佳ちゃんだ、偉いぞ。
いきなり押しかけてきてゴメンな?ほい、これお土産だ」
仕事帰りにコンビニでお土産のアイスを買って、美香ちゃんの部屋を訪ねる。
突然の訪問も、戸惑いながらも部屋に入れてくれた美佳ちゃん。
俺が手渡したアイスに頬を緩ませ、嬉しそうに冷蔵庫にしまっている。
いきなり押しかけてきたけど、部屋は相変わらず綺麗に掃除されていた。
散らかり放題の俺の部屋とはエライ違いだ。
前から時々は二人の生活態度を見るために何度か突然の訪問はしてたからな、突然の訪問も怪しまれてはいないようだ。
……まさかPCを調べに来たとはも思いもしていないだろう。
「美佳ちゃん、ちょっと調べ物したいからパソコン使ってもいいかな?」
「え?パソコン、ですか?は、はい、どうぞです」
「すぐに終わるから、ちょっと借りるな」
PCを立ち上げ、お茶の用意をしてくれている美佳ちゃんにバレないようにプログラムをチェックする。
……おし!怪しいソフトはなんにも入ってない!全部消去済みだ!
はぁぁ〜、安心した。心配しすぎたな。やはりあのチャットソフトは消してたんだな。
「直人さん、冷たいお茶です、どうぞ」
「お、ありがとう。さすがは美佳ちゃんだな、気が利くな」
ガラスのコップに注がれた冷たい麦茶を一気に飲み干し、美佳ちゃんの頭をワシャワシャと撫でてあげる。
頭を撫でられるのが恥ずかしいのか、頬を少し赤く染める美佳ちゃん。
うんうん、もう完璧に大丈夫だな。出会った頃のように身構えたりしないもんな。
あの頃は俺が自分の頭を掻いただけで、ビクッと身体を硬直させていたもんな。
それが今では頭を撫でても嫌がったりしない……あれ?
「おや?美佳ちゃん髪型変えたんだ?とても似合ってるよ」
頭をワシャワシャ撫でて、初めて気がついた。美佳ちゃんの髪型、ツインテールに変わっているじゃないか。
美佳ちゃん位の綺麗な子になると、どんな髪形も似合うと思うけど、ツインテールはとてつもなく似合ってるな!
「に、似合ってますか?あ、その……ありがとう、ございます」
「うんうん、似合ってる似合ってる。可愛さ倍増だよ」
あまりの可愛さにワシャワシャと頭をなでまくる。
やはりツインテールはいいな!俺の未来に出会うはずの恋人にも髪型はツインテールにしてもらおうかな?
そんなことを考えながら、美佳ちゃんの触り心地のいい小さな頭をワシャワシャと撫で続ける。
……イ、イカン、会話が続かない!前までは準ちゃんがいたから三人でワイワイ話せたけど、今では二人だけだからな。
美佳ちゃんはまだ俺との会話に遠慮をしているのか、二人きりになるとあまりしゃべらなくなるんだ。
喋らないからといって、俺のことを嫌ってるというわけでもないらしい。
いつも俺が帰るときには寂しそうな顔をしてくれるしな。美佳ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだな。
ははは、だからかな?こんなにカワイイのに男ができないのは?
……男?もしかして急に髪形を変えたのは、男ができたからか?
「しかし急に髪形を変えるなんてどうしたんだい?……もしかして、好きな男でも出来たのかな?」
「んな?や、その、それはその、えっとぉ……」
顔を赤く染め、俺の顔を恥ずかしそうにチラチラと見ながら俯く美佳ちゃん。
とてつもなく分かりやすいリアクションで、答えを教えてくれたな。どうやらズバリその通りのようだな。
ははは、まったくこの子はウソをつけない素直な子だよな。
「はははは、そうかそうか、好きな男が出来たのか。今度、俺にも紹介してくれよな」
「や、その、好きな人というか、その……」
「そうかそうか、好きな男の気を惹こうと髪形を変えたんだな?
うんうん、恋愛にはそういう努力が必要なんだよ。きっとその男も可愛くなった美佳ちゃんの魅力にメロメロになるさ!
俺が保障してやるからさ。ははは、ま、俺の保障なんて何の役にも立たないけどな」
「あ、あの、その、髪形を変えたのは、その……」
俺に好きな人が出来たことを知られたのがよほど恥ずかしいのか、ワタワタと慌てふためくカワイイ美佳ちゃん。
こんな可愛い子に好かれる男が羨ましいな……チクショー!神よ!俺にも素敵な出会いを与えたまえ!
「さて、と。今日はそろそろ帰るわ。美佳ちゃんに好きな男が出来たって言う情報も仕入れられたしな」
「や、その、直人さん、あの……」
「じゃ、俺は帰るわ。そっかぁ、美佳ちゃんにも好きな男が出来たかぁ。
このままじゃ準ちゃんだけでなく、美佳ちゃんにも先を越されそうだな。俺も気合入れて相手を探すかな?」
探そうにも俺の年で、しかも貧乏人相手に付き合ってくれるような女、いないだろうなぁ。
はぁぁ〜、知り合いの子に抜かれていくって、きっついなぁ。
……ま、準ちゃん美佳ちゃんが幸せになってくれるのならどうでもいいんだけどな。
「な、なな!あ、相手を探すとか、その……」
「今日は急に来てゴメンな?じゃ、いい恋しろよ?はっははは!また来るから、その時はどう進展したか聞かせてくれよな?」
「や、その、直人さん、その、……」
「じゃ、準ちゃんにもよろしく言っといてくれよな?じゃ、またな!」
慌てふためく美佳ちゃんをそのままに、部屋を出る。
ふぅ〜……そうかぁ、美佳ちゃんにも好きな男が出来たのかぁ。
ちょっと寂しいような、嬉しいような。複雑な心境だな。これが親の気持ちってヤツなのかな?
……結婚もしてないのに、親の気持ちになるってのはどうなんだ?かなり空しいような気がする。
クソ!この心の空しさを癒してくれるのは、エロい女しかいない!
しかし俺にはお店に行く金がない!どうする!……エロ本でいいや。
コンビニでエロ本を買って、部屋でヌこう。
はぁぁ〜。美佳ちゃんに好きな男が出来た、めでたい日だってのに、エロ本で癒されたいだなんて、俺ってヤツは……
今夜はナースさんで抜きたい気分だな。
20:17<kohi> こんばんわです
20:17管理人 |> Agiさぬ絶賛オナ禁中!残り11日!kohiさん、いらっしゃい。たくさん会話してね^^
夕御飯を食べて、お風呂に入った後、USBメモリーをパソコンに刺し、チャットソフトを立ち上げます。
unaさんに教えてもらいました。『念のためにチャットのソフトは外部のメモリに移してたほうがいいよ』って。
見られたくない物は外部メモリに入れてたほうがいいよって教えてくれました。
……確かに直人さんや姉さんには知られたくないんです。チャットの皆さん、ごめんなさい!
挨拶をすると、管理人さんが自動で挨拶を返してくれます。
この管理人さん、実は人間ではなく、挨拶に反応して言葉を返すように設定されているプログラムなんだそうです。
この言葉はunaさんが気分によって変えてるって言ってました。そんな事が出来るなんて、unaさん凄いんです!
直人さんも毎回挨拶して、unaさんが設定した挨拶の言葉を楽しんでたのかな?
直人さん、今日部屋に来てくれました。いっぱい頭を撫でてくれて、とても嬉しかったです!
でも……はぁぁ〜、unaさん達のアドバイスで髪形を変えてみたのですが、失敗です。
可愛いと言ってもらえて、これは大成功と思っちゃったんですけど、まさかあんなふうに思われちゃうなんて。
これは相談をしなきゃいけません。……みなさんちゃんと相談に乗ってくれるんでしょうか?
20:17<win>いや、だからお尻は最後の秘境なんだって!男だったら冒険したいでしょ?w
20:18<una>(*^ー゚)ノ ぃょぅ
20:18<Agi>kohiさんこんばんわ〜
20:18<gan>こんこん〜
20:18<win>こんです〜
unaさんに私は直人さんじゃないとバレちゃった後、皆さんに何故このチャットに来たかを説明しました。
皆さん、事情を知り、協力するといってくれました。
で、皆さん、直人さんが好きな女の子のタイプを色々と教えてくれたんです!
皆さんの意見を参考にして、髪形をツインテールに変えてみたんですが、
直人さんに可愛いと褒めてもらえて大成功!……なのかな?
……winさんの言う、お尻が最後の秘境とはいったい何のことでしょうか?
意味が分かりませんけど……聞かないほうがいい気がします。うん、無視しちゃいましょう。
20:20<kohi>今日ananさんに髪型が可愛いと褒められちゃいました
このチャットでは直人さんの事をニックネームのananさんと呼ぶことにしています。
つい直人さんと呼んじゃう私は、unaさんに怒られちゃいました。
『本人が名前を名乗るのはいいけど、他人がネット上で本人の許可なく実名を挙げるのはマナー違反だよ』って。
確かにその通りです。直人さん、今までずっとニックネームで話していました。
それを私が皆さんに教えるのはマナー違反なんです。
20:20<Agi>おお!よかったじゃないですか!
20:20<gan>おめ!
20:20<win>おめ! こw
20:20<una>ツインテールはananさぬの大好物だからねぇ。で、進展はあった?犯されたりした?
っていうか、むしろ犯したりしたのかな?ww
20:20<gan>だまれ変態!w
20:20<win>黙ってろ、HENTAI!
20:20<Agi>このカスが(´・ω・)
20:20<una>oh〜!一斉に突っ込まれたww まるで4Pww
20:20<Agi>ダメだこのHENTAI、本気で何とかしないとww
皆さん息もぴったりで凄く楽しそうに会話しています。直人さんもそうだったのかな?
よ〜し!私も早く皆さんと楽しく会話できるように頑張っちゃいます!
……みなさんごめんなさい。みなさんと楽しく会話できたらダメな気が物凄くしちゃってます。
20:22<kohi>皆さんに相談なんですが、ananさん、私が髪型を買えた理由を勘違いしているんです
私に好きな人が出来たって思い込んで、頑張れって言われちゃったんです。どうすればいいと思いますか?
20:22<win>あらら、逆効果w
20:22<gan>あながち間違いじゃないけどねw
20:22<Agi>ananさん、一人が長かったからなぁ。自分に好意を寄せてるなんて思いもしないんじゃないかな?
20:23<una>ユー、もう告っちゃいなよ( ̄ー ̄)ニヤリ
わ、悪そうな顔です!unaさん、とても悪そうな顔しちゃってるんです!
……え?こ、告っちゃう?こ、ここここ告白の事ですか?んな?なななななな!
20:25<kohi>告白なんて無理です。嫌われちゃうかもしれません
20:25<una>kohiちゃんはananさぬと恋人になりたいんだよね?ananさんから好きだって言ってほしいの?
20:25<gan>ま、今の状況だと、ananさぬからの告白はありえないと思うよ?
20:26<win>そうだよねぇ。ananさぬにとってkohiさんは、自分が育ててきた子供のような存在だろうからねぇ。
自分の子供に告白なんて……いや、近親相姦プレイと思えばありえるか?
20:26<una>それだ!近親相姦に興味を抱かせるために、今度ananさぬが来たら近親相姦物を見せまくるんだ!!
20:26<gan>黙れ変態!
20:26<win>黙ってろ、HENTAI!
20:26<Agi>このカスが(´・ω・)
20:27<una>うわ〜お、winさぬのネタにのっただけなのにフルボッコww これ、なんてドMプレイ?ww
20:27<Agi>ww
……みなさん相談に乗ってくれているのでしょうか?ただ楽しんでいるだけに思えちゃいます。
そ、そんなことないですよね?だってunaさんのアドバイス通りに髪形を変えたら可愛いって褒めてもらえちゃいましたから!
20:28<Agi>ま、今までが今までだから、急に関係が代わるなんてないと思いますよ?
20:28<gan>だね。ま、一歩前進だと思えばいいんじゃないかな?
20:28<win>ツインテールだけでは落ちぬか…さすがはanan、我が認めたHENTAIじゃww
20:28<una>じゃ、次はニーソにしてみよっか。……ツインテールとニーソ。
これにあるシチュを咥えると、魅力が爆発的にアップするんだよねぇ( ̄ー ̄)ニヤリ
ニーソ、ですか?靴下のニーソックスの事ですよね?ニーソックスを履いたらいいんでしょうか?
そんな簡単なことで、直人さん、喜んでくれるんでしょうか?
……み、魅力が爆発的にアップする?んな、なんですか!それはぁ〜!
20:30<kohi>魅力がアップするって何ですか?押してください1!
20:30<gan>……unaさぬ、まさかアンタ、伝説の『アレ』をさせるつもりか?
20:30<win>確かに『アレ』は威力は半端じゃないが、周囲にも被害が……
20:31<Agi>確かにananさぬは『アレ』の属性を持っていた。しかし、だからこそ彼にそれを見せるのは危険なんじゃないか?
20:31<una>ええ、確かに危険だわ。でもね……危険を冒さずに、求める物を手に入れることは出来ないわ!
きゅ、急に皆さん真剣な会話になっちゃいましたよ?
え?ええ?unaさんの言ってる事はそんな危険な事なのでしょうか?
どんな事をしなきゃいけないのかな?でもそれで直人さんと、その、恋人になれるのなら……
20:33<kohi>私やります!ananさんと恋人になるためだったら、危険でも頑張ります!
20:33<una>そう、覚悟はいいのね?なら、教えてあげるわ。……男を惑わす究極のシチュを。
キーワードは……『ツンデレ』よ( ̄ー ̄)ニヤリ
ツンデレ、ですか?ツンデレとはいったい何のことでしょうか?
「おっはよ〜、小日向さん!髪形変えてから、可愛さにますます磨きがかかったね!
愛しの直人さんにも褒めてもらえた?」
「あ、西原さんおはようございます。い、愛しの直人さんって呼び方、その、止めてもらえませんか?
その……恥ずかしいです」
「う〜ん、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがるその仕草、たまらないねぇ。同性から見ても、ギュッとしたくなっちゃうわね」
朝、登校して、席に座ってunaさんから教えてもらった作戦を頭の中で復習していると、
いつも元気な西原さんが今日も声をかけてくれました。
西原さんと友達になる前は、静かな朝を過ごしてました。それが今では毎日とても賑やかです!
ちょっと恥ずかしい気もしますが、毎日がとても賑やかで、学校がとっても楽しくなっちゃってます!
「あれ?小日向さん、ニーソックス履くようになったの?」
「は、はい、その、知り合いに似合うから履いてみたらって薦められて……その、似合ってないでしょうか?」
姉さんが昔に履いていたお古のニーソックス。借りて履いてきちゃいましたけど、ヘンなのでしょうか?
「おおお〜!いいねぇ、いいねぇ!メチャクチャカワイイよ!
その下着が見えそうなスカートの短さと、ニーソックスとスカートの間に見える輝くような白い太もも!
これでこそ女子高生!って感じだよね!愛しの直人さんもこれでイチコロだね!」
昨日の夜、unaさん達に色々教えてもらった後、姉さんの残していった荷物の中からニーソックスを借りちゃいました。
姉さんが昔、少しの間だけ履いていたのを思い出して、勝手に借りちゃったんですけど……怒られちゃうかな?
……はぁぁ〜。何故ニーソックスを履く時はスカートを短くしなきゃいけないんでしょうか?
unaさんに、『スカートを短くするのは当たり前。ニーソを履く者としての礼儀なんだよ』
って言われちゃったから、スカートを短くしちゃったんですけど……なんだか男子の視線を感じちゃいます。
「で、でも、その……下着が見えちゃいそうで、その、ちょっとイヤです」
「はぁ?小日向さん、アンタなに言ってんの?下着なんて見せればいいじゃないの」
「んな?な、なななな?」
「愛しの直人さんにも下着を見せて悩殺しちゃいなよ?直人さん、意外とえっちっぽい顔してたから、喜ぶかもよ?」
「な、なななな、んななななな?」
「でも小日向さん、あまりかわいい下着、穿いてないからねぇ。
短いスカートにするんだったら見えちゃってもいいようなカワイイのを穿かなきゃね。
あ、そうだ!今度の日曜日にさ、一緒に買い物行かない?……直人さんを誘ってさ。
奥手な小日向さんに、アタシが男の扱い方の見本、教えてあげちゃうから」
み、見せてもいいような下着を穿かなきゃいけないんですか?
そういえば西原さんが穿いている下着、とってもカワイイ物ばかりでした。
クラスの皆さんもそうだし……私もそうしなきゃいけないのかな?
……え?ええええ?直人さんと買い物に行くんですか?そ、それは……い、行きたいです!
「ぜ、是非お願いします!直人さんとお買い物、してみたいです!」
「そ、そんな力いっぱい言わなくても……じゃさ、早速連絡とってみてよ。直人さんに予定が入ってなかったらいいけどね」
「そ、そうでした。直人さんに予定が入っていたら、一緒に行けません。ちょっとメールしてみますね?」
善は急げ、です!早速メールしちゃいます!っと、忘れるところでした。
unaさん達から教えてもらった『ツンデレ』をしなきゃいけないんでした。
……物凄く不安なんですけど、大丈夫なんでしょうか?
『今度の日曜日、彼女のいない直人さんにはどうせ予定は寝るくらいしかないですよね?
だったら、友達と買い物に行くので、荷物持ちで来てください。
あの古い車で部屋に迎えに来てください。お礼は夕御飯で手料理くらいは食べさせてあげますから。
おばさんに習った料理を作るだけだから、ヘンな勘違いはしないでください』
朝、出社途中に携帯に送られてきたメール。珍しく美佳ちゃんから送信されたものだった。
珍しいな?こんな朝早くにいったい何のようだろうな?
そう思い、会社についてからメールを読んでみると……急に訪ねて行ったのが、ダメだったのかもしれん。
あの素直な美佳ちゃんから送られてきたメール。
あの素直で丁寧な言葉遣いだった子が、こんなメールを送ってくるなんて……俺、嫌われちまったのかな。
『了解、車で部屋に行くよ。手料理楽しみにしているよ』
返事を送信し、デスクに突っ伏す。
はぁぁ〜……調子に乗って、頭を撫ですぎたのかな?まだ男の手に恐怖感を抱いていたのか?
とりあえずは買い物の時に、挽回しなくては!
「なんだなんだ?おい、上杉、朝からどうした?まるで女にフラれた見たいな顔をして」
「……キャバ嬢にモテモテで、既婚者にもかかわらず、店外デートをしまくってる高橋さんにはかないませんよ」
「お、おま!い、いやだなぁ〜、上杉くぅん!今日のお昼は一緒にどうだい?美味しい鰻、奢っちゃうよ?」
「お?奢ってくれるのか?いや〜わりいな」
「なんのなんの!……てめぇ、絶対喋るなよ!」
同僚から軽く昼飯をゲットして、気を紛らわす。
今度の日曜日か……失敗は出来んな!美佳ちゃんからの買い物の誘いなんて初めてだしな、失敗は出来ん!
……あれ?友達と買い物に行く?ま、まさか、その友達というのは……彼氏か?
もう男が出来たのか?準ちゃんだけでなく、美佳ちゃんまでにも恋人が……
「お前、オレからたかるのいい加減止めろや!……おい、どうした?すげぇ汗かいてるぞ?」
「……あ?あ、ああ、なんでもない。さ、今日も頑張って働きますか!」
あぁ、神様!どうして真面目に働いてる俺に出会いを与えてくれないのですか!
おぉ、神よ!……お金もほしいが愛も欲しいです。
「……なんかすげぇ空元気ってヤツだな。また振られたのか?」
「うっせぇ高橋!あることないこと全部ばらすぞ!」
「う、上杉くぅん!鰻は特上でかまわいないよ?なんだったら、おかわりしてもいいからね!」
昼飯に特上鰻重ゲットして、仕事に励むオレ。
とりあえず買い物の時に、その男をしっかりとチェックしなきゃいけないな。
今回は以上です。
530 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/28(火) 20:48:24 ID:zQEp3JCF
ここで会ったが百年目!GJしてくれる!
すれ違いというか空回りというか……ともかく面白すぐる
変態チャットにワロス
性癖を100パーバラされたanan危うし!
ツンデレ……?
この不器用さがたまらんのぉ
次回まで全力で待機してます!
毎度GJ!
535 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/02(土) 06:45:29 ID:Tfx9eKqj
こう、人の背中に隠れて顔だけ出してる感じの女の子って可愛いよな。
自分の(主人公の)背中にしがみついて離れないってのも良い。
HENTAIチャット面白すぐるw参加してえwww
538 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/14(木) 22:45:49 ID:VPzMD1Uw
そうか…
539 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/18(月) 21:59:15 ID:oJgU56lA
なんとなく覗いてみたところに神作品。
続き待ってます。
さすが禁断少女うなさんw
ナイスアシストw
542 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/23(土) 22:15:48 ID:+EMTaq8M
気弱な幼馴染み
気弱な幼馴染♀は王道だな
苛められてたりしたら更に来る
544 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/26(火) 00:42:43 ID:2IbkPXyq
過疎ですね・・・
寂しいね
>>529 初めて覗いて見たらこんな超GJ作品が。お互いの空回りっぷりとへんたいチャットが秀逸すぐるww
後美佳たんの動揺したタイプミスの嵐がリアルでよかったww 次も楽しみにさせてもらいますぜ
気弱な女の子萌える
可愛い
怯えてる気弱娘萌える
怖がらせたい
>>548があんまり怖がらすもんだから、
気弱っ娘が怯えて俺の背中に隠れて、
服をギュッとつかんで離さないんだけど
550 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/28(木) 20:55:39 ID:5Eu1SBMI
保守
保守
553 :
名無しさん@ピンキー:2009/05/30(土) 23:04:48 ID:nelN2Ofj
割れ目の中で舌を動かす度に葉月の太股がプルプルと震える……やがてボクは割れ目の上にある突起に気が付く。
(これって……クリトリス…?」
昔、お父さんが隠していた本でチラッと見た事あるけど本当に豆みたいになっているんだ…。
ボクは指でちょんとクリトリスをつついてみる。
「んああああああ!」
誤爆すいません…
何処の誤爆なのか詳しくw
ボクっ娘が勇気を出してクリトリスに触ってみたのかと……
幼馴染みスレの誤爆だったみたいだな。
558 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/06(土) 06:32:01 ID:BWRSvhEr
気弱で幼馴染みか。良い響きだ。
でもなんか高確率でヤンデレ入りそうだなw
560 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/07(日) 21:12:52 ID:2XU3eVTt
新作期待
勇気出す方向がズレて、
彼氏の部屋にノーブラノーパンミニスカで訪ねる女の子
>>561 残念思考の気弱っ娘大好きw
ついでに自分の行動を恥ずかしがってて半ば錯乱状態だとなおよし
563 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/10(水) 02:23:27 ID:FBdTlOZf
上げ
低血圧な気弱っ子
566 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/14(日) 23:30:27 ID:FX1UD+su
寝ぼけて好きな男の前で恥ずかしい行動を取っちゃうのか>低血圧な気弱っ娘
低血圧な弱気っ娘
+眼鏡は如何?
ほしゅだあああああああああああああああああああああああああああああああ
569 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/17(水) 22:34:57 ID:Rq4kxTRr
このスレ萌えるから盛り上がって欲しい
萌え盛り
友人達の策略で肝試しペアとか2人3脚組まされるとかがツボ
572 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/20(土) 21:24:19 ID:9reWsTUh
上げ
大変お待たせしましたが、トシウエのカレシ続きがかけましたので投下します。
やはり今回もエロはありませんので、エロなしがいやな方はスルー願います。
「始めまして、上杉さん。小日向さんのクラスメートの西原です。今日はよろしくお願いしますね」
買い物に付き合うと約束をした日曜日。
美佳ちゃんの部屋に車で迎えに行くと、下着が見えそうな位に短いスカートを穿いた、カワイイ女の子がいた。
こ、これはもしかして『じょしこうせい』という生き物ではないのか?
てっきり美佳ちゃんが好きになった男を紹介されるのかとドキドキしていたんだが、そうじゃなかったんだな。
やっぱり紹介されるなら、女の子のほうがいいもんな。
あれ?紹介?……は!も、もしや、この買い物は、美佳ちゃんが俺に同級生を紹介してくれようと企画してくれたのか?
「上杉さんと二人で買い物をするのもあれですので、付き添いに来てもらったわたしの友達の西原さんです。
西原さん、こんな古い車でゴメンね?でもね、この車……」
「わ、わぁ〜!とっても素敵な車ですね!ピッカピカに磨いているし、大事に乗られてるんですね!」
準ちゃんや俺の両親と、何度も一緒にドライブに出かけた思い出の詰まっている愛車を、古い車と言い切る美佳ちゃん。
美佳ちゃん、この思い出の詰まった車を、ただの古い車だと思ってたんだ。
はぁぁ〜……どうやら俺は、本格的に美佳ちゃんに嫌われているらしい。
この間、頭を撫ですぎたのが原因か?もう男の手に恐怖感を感じていないと思ったんだけどなぁ。
……あ、だからか?恐怖感を感じなくなった代わりに、鬱陶しく感じるようになったのか?
それなのにあんなに撫で回したのがいけなかったのか?
そりゃそうだよな?美佳ちゃんの様なカワイイ子の頭を、グシャグシャと好き勝手に撫で回したんだ。
普通は嫌がるよな?俺のようなおっさんに触られたりしたら、嫌になるよなぁ。
はぁぁ……今日の買い物、付き添うのが憂鬱になってきた。
それにしても、俺をフォローしてくれる西原さん、いい子だよなぁ。
最近の女子高生って感じでカワイイし、何よりも、短いスカートから覗く、輝くような太ももがタマラン!
もうね、俺の首を三角締めで絞めてきても、抵抗せずにそのまま昇天してもいいくらいだ!
むしろ、下着を見ながらある意味昇天させてくれぇ〜!
「は、ははは、じゃ、行こうか。荷物持ちは任せてくれよな。こう見えても俺、結構力持ちだから」
美佳ちゃんの言葉にちょっと凹んだ俺は、軽く力こぶを作り、荷物持ちをアピールする。
いつまでも嫌われたと落ち込んでちゃダメだよな、今日で少しは挽回しなきゃな!
「西原さん、本当にこんな古い車でゴメンなさい。でもね、この車、とっても乗り心地が……」
「わ、わぁ〜!腕、かたぁ〜い!上杉さん、ホントに力持ちなんですね!」
俺の作った力こぶを触り、硬いと褒めてくれる西原さん。
毒を吐こうとした美佳ちゃんの言葉をさえぎり、俺をフォローしてくれる。
うぅぅ、ホントにいい子だ。君のその優しさが心に染みるよ。
……美佳ちゃん、俺の車嫌いになっちまったのか。はぁぁ〜、嫌われても買い換える金、ないしなぁ。
「や、そ、その、この車、古いけど、乗り心地はさいこ……」
「今日はいっぱい買い物しちゃおうかなぁ!上杉さんの素敵な車のあるし、たくさん買っちゃおうね、小日向さん!」
「え、あ、は、はい。たくさん買っちゃいましょう。で、この車なんですけど……」
「う、上杉さん、あたしたち後ろに座りますね?運転よろしくお願いしま〜す!」
「え?や、でも、私は助手席が……」
「いいから後ろに座りなさい!」
「ひゃわ!西原さん、無理やり押し込むのはいけないと思いますぅ!」
なぜか助手席に座りたいと言っている美佳ちゃんの頭を抑え、無理やり後部座席に詰め込む西原さん。
んん?美佳ちゃんも今日は珍しく短いスカートを穿いているんだな。
おいおい、押し込まれる時に下着が見えたぞ?こんな短いスカートを穿くなんてけしからん!あとで注意をしなくちゃな。
(ちょっと小日向さん、あなた何考えてるわけ?確かに古臭い車だけど、何も直接言う事ないでしょうが!)
(や、その、ゴメンなさい。でも、作戦で……)
私を無理やり後部座席に押し込み、直人さんに聞こえないようにコソコソ話をしてくる西原さん。
物凄く怒っちゃってるのか、眉間にしわを寄せ、私の太ももをギュッと抓りながら話してきます。
い、痛いです!太ももはギュッとしちゃいけないと思います!
(作戦?あなたねぇ、アタシがフォローしないと上杉さん、怒って帰っちゃったかも知れないわよ?
大事に乗っている車を貶されて、喜ぶバカはいないわよ!どんな作戦か知らないけど、そんなの止めなさい!)
(や、でも、せっかく皆さんが考えてくれた作戦が……いぎゃ!痛いです!)
一段と力を込めてギュッと抓ってきた西原さん。い、痛いです!とてつもなく痛いんです!これは暴力なんです!
(どんな作戦か知らないけど、男を落とす作戦ならアタシが実践してあげるわ。……いい?しっかりと見ておくのよ)
お、落としちゃうんですか?西原さん、凄いです!男の人を落としちゃうなんて凄いんです!
でも痛いです!太ももが物凄く痛いんです!
(ひゃ、ひゃい、しっかりと見ておきますです!)
(しっかりと見て、勉強しなさいね)
(ひゃい!勉強します!ですので、そろそろ太ももを抓るの、止めてくれませんか?)
(あ、ゴメンゴメン、つい強く抓っちゃったね。痛かったかな?痛いの痛いの飛んでいけ〜)
抓るのを止めて、痛いの飛んでいけと撫で撫でしてくれる西原さん。
や、その、西原さん?その、撫でてくれるのはありがたいんですけど、内腿まで撫でるのはどうしてなんでしょうか?
(小日向さん、男なんて生き物はね、ちょっとしたスキンシップですぐに勘違いする悲しい生き物なのよ)
(や、ん!その、西原さん?内腿までさわるにはどうかと思うのですが……)
その、西原さん、ですから教えてくれるのはありがたいのですが、その、そろそろ触るのを止めてくれませんか?
(ま、このアタシにかかれば冴えない親父なんてイチコロよ!……よぉく見ておくことね!)
(あ、んん!その、西原さん?いつまで触ってるんですか?その、かなり恥ずかしいです……)
結局目的のショッピングモールに着くまで、サワサワと太ももを触り続けた西原さん。
着いた後に謝ってくれました。『スベスベで触り心地がいいものだからつい触っちゃった』って。
……つい触っちゃうってなんなんでしょうか?触られる身にもなってほしいです!
(……俺はとてつもない勘違いをしていたのかもしれん。
美佳ちゃんはやはり好きな人を紹介するために、今日の買い物を企画したんじゃねぇのか?)
美佳ちゃんと、美佳ちゃんの友達の西原さんを連れて、買い物先へと車を走らせていた時、俺は恐ろしいものを見てしまった。
二人とも後ろの席に座り、コソコソ話をしてたので、何を話しているんだとバックミラーで様子を見ていたのだが……
そのバックミラーには、赤い顔をしている美佳ちゃんの耳元で囁きながら、
短いスカートから覗く、美佳ちゃんの白い太ももを撫でる西原さんが映っていた。
……そ、そうなのか?美佳ちゃんはそっちの趣味だったのか?いつの間にそんな趣味に走っちまったんだ?
目の前でファストフード店のメニューと睨めっこしている美佳ちゃんを見て思う。
……わ、悪ふざけしてただけだよな?最近の女子高生の間じゃ、あのくらい当たり前なんだよな?
「う〜ん、フライドチキンセットにしちゃいましょうか?それとも、チキンカツセットがいいかな?
う〜ん、悩んじゃいます……どれも美味しそうで悩んじゃいます」
いつもように、一生懸命悩んでいる美佳ちゃん。
うん、こうしてみると、いつもの美佳ちゃんだ。何事にも一生懸命な、美佳ちゃんのままだ。
「小日向さん、いつまで悩んでるの?早く決めなきゃ時間がもったいないわよ?」
「でもチキンが凄く美味しそうなんです。でもでも、チキンカツも物凄く美味しそうなんです!」
「や、そんな握りこぶしで言われても困るんだけど……」
……ははは!やっぱりいつもの美佳ちゃんだな!
ちょっと様子が変だったけど、やっぱり美佳ちゃんは美佳ちゃんだな!
「おし、じゃあ美佳ちゃんはチキンカツセットを頼んだらいいよ。俺がチキンのボリュームセットを頼むから。
何個か分けてやるから腹いっぱい食いな」
俺の言葉に目を輝かせ、力いっぱいチキンカツセットを注文する美佳ちゃん。
うんうん、こうでないと美佳ちゃんじゃないよな。……西原さんが呆れた顔で見てるけど、気にしちゃいけないぞ?
「西原さんは何を食べるんだい?好きな物を頼んでいいよ、奢っちゃうから」
「え?いいんですか?ありがとうございま〜す!え〜っとぉ、どれにしようかなぁ?」
俺の隣でメニューに目を落とし、どれを注文しようかと悩む西原さん。
……いい香りがする子なんだな。これはシャンプーの匂いか?女の子らしい、いい香りだ。
そういえば女の子とこんなに接近するのって久しぶりだよな?
鼻腔いっぱいに香りを吸い込み、久しぶりの女の子の匂いを堪能する俺。
「上杉さんはチキンボリュームセットにするんですよね?」
「あ、ああ、そうだよ」
「じゃあアタシはチキンカツにしようかな?ご馳走になってもいいですか?」
小首をかしげ、ニコリと微笑む西原さん。
い、いい!若い娘のこの仕草、いい!女に餓えてる俺は、この何気ない仕草にも感動してしまう!
「お。おう、何でも食っていいぞ。好きなだけ注文しなさい」
「やったぁ、ありがとうございまーす。ご馳走になりますね」
奢ってもらえるのが嬉しいのか、俺の腕に抱きついてきた。
……い、いかん、俺としたことがこんな小娘に惑わされるとは!
し、しかしだな、いくら小娘といえど、おっぱいに罪はない。
だからこの腕に押し当てられているおっぱいの感触を楽しむのはいいと思う。
腕に抱きついてきた西原さんの胸の感触を密かに楽しむ俺。
……ファストフード店で、夜のおかずまでゲットできるとは、思いもしなかったな。
(むぅ〜、直人さん、顔がデレデレですぅ……西原さん、くっつきすぎだと思います!)
直人さんとの買い物中、お昼御飯に立ち寄ったフライドチキン屋さん。
そこで西原さんが、男を落とす方法を実践してくれているのですが……直人さん、顔が緩みっぱなしですぅ!
西原さん、わざと身体をくっつけてます!さっきから直人さんと身体が触れるか触れないかというところで、話してます!
美味しいチキンカツバーガーも、楽しそうに会話する二人を見ていたら、美味しくありません。
直人さん、私と話す時にこんな顔見せてくれません。ヒドイです!直人さん、とっても酷いんです!
「あははは!上杉さんって、とっても楽しい人だったんですね。
いつも小日向さんにお話を聞いてて、どんな人なのかなぁって想像してたんですよ。
優しくて大人な人かなって想像してたんですけど、とっても愉快な素敵な人だったんですね」
「そ、そうかい?西原さんのような若い子に褒められると嬉しいよ。
君のような若い女の子と話す機会なんてないからね、今日はとても楽しいよ」
むぅぅ〜、西原さんの話術に直人さん、デレデレです!
「若い子って……もう、上杉さん、そんなこと言ってたら、小日向さんに怒られちゃいますよ?」
「え?ああ、そういえばそうだった。ははは、美佳ちゃんも立派な女子高生だったんだ」
「上杉さんヒドーイ!小日向さん、こんなに綺麗になってるのに、子ども扱いはヒドイですよ〜」
そうです!子ども扱いは酷いんです!私も女の子扱いをしちゃってください!
「ははは、ゴメンゴメン、そんなにむくれるなって。美佳ちゃん、お詫びに俺のチキン、喰ってもいいよ」
「え?い、いいんですか?」
「おう、喰え喰え!ほら、お腹いっぱい食べな」
わ!わわ!直人さん、フライドチキンを2つもくれました!
熱々の、ジューシーフライドチキンを2つもですよ?直人さん、とっても気前がいいんです!
「どうだ美佳ちゃん、美味しいかい?」
「はひ!熱々でジューシーでとっても美味しいです!」
お口が火傷しそうなくらい熱々で、ジューシーでとても美味しいんです!
美味しさのあまり、ついパクパク食べちゃいます。
「こ、小日向さん、あなた……」
なぜかため息を吐く西原さん。西原さん、ため息なんて吐いてどうしちゃったんでしょうか?
あ、もしかしてお腹いっぱいになっちゃったんでしょうか?
でも西原さん、チキンカツしか食べてません。西原さんって食が細いんですね。
「ははは、西原さんはこんな美佳ちゃんを見るのは初めてかな?面白いだろ?」
「や、確かに面白いけど……」
美味しいです!熱々チキン、とっても美味しいです!
かみ締めるほど溢れてくる肉汁、いくつでも食べられちゃいそうです!
あまりの美味しさに、1個目を食べ終わり、2個目に手を伸ばしちゃいます。
……西原さんの、何か悲しいものを見るような視線が、気になっちゃいます。
もしかして西原さんも熱々ジューシーチキン、食べたかったんでしょうか?
「小日向さん!あなた自分が何したのか分かってるの?好きな男の前で、バクバク食べる子がどこにいるのよ!」
「ひゃ、ひゃい!すみまふぇんでひた!」
美味しい熱々フライドチキンでお腹いっぱいになった私を、トイレへと連行した西原さん。
トイレに入るなり、ほっぺを抓ってきて、お説教が始まっちゃいました。
「小日向さんがこんなに食い意地が張っているなんて、思いもしなかったわ。……少しは慎みなさい〜!」
「いひゃいいひゃい!ほっぺがひちれちゃいまふ!」
「は・ん・せ・い……しなさい!」
「ひぎゃ!」
反省しなさいと言いながら、ほっぺを引きちぎるように引っ張った西原さん。
い、痛すぎです!千切れちゃうかと思いました!西原さん、酷いんです!
「まったくもう……上杉さんのあなたを見る目、まるで自分の子供を見ているようだったわよ」
「い、ひゃいですぅ……ぐすっ、とても痛いんです」
「はいはい、いつまで痛がってるの。問題はこの失点をどう挽回するかね。……どうしよう?」
「ふえ?し、失点ですか?」
「……普通ね、御飯をバカバカ食べる女の子には、男は恋をしないわよ」
「ふええ?」
「美味しい美味しいって、首をブンブン振りながら食べてるところは可愛かったけど……恋愛対象外ね」
「た、対象外、ですか……」
西原さんの冷徹な言葉にがっくりと膝をついちゃいます。
そ、そうだったんですか……好きな男の人の前で、お腹いっぱい御飯を食べちゃダメだったんですね。
……た、大変です!ダメだったこと、今までたくさんしちゃってます!しまくっちゃってます!
「ど、どうすればいいでしょうか!私、今までたくさん失点しちゃってます!」
「これが野球ならすでにコールド負けね」
「ま、負けちゃってるんですか?そ、そんなぁ〜」
コ、コールド負け……すでに勝負がついてるなんてヒドイです!む、無効試合なんです!再試合をしちゃってください!
「でもね、恋愛にはコールド負けなんてないわ。ここから挽回しなきゃね!」
「ば、挽回、ですか?」
「そう、挽回よ!頑張ってね、小日向さん!」
そ、そうです!負けてなんてないんです!途中まで負けてても、最後に勝てばいいんです!
私、頑張ってたくさん得点しちゃいます!……何点くらい点を取らなきゃいけないんでしょうか?
「頑張っちゃいます!……頑張るとは言ったものの、どうすれば挽回できるんでしょうか?」
「頑張ってね、小日向さん!」
「ねぇ西原さん、どうすれば挽回できると思いますか?」
「頑張ってね、小日向さん!」
「あ、あれ?西原さん、私の話を聞いてますか?」
「頑張ってね、小日向さん!」
「あ、あの、西原さ……」
「頑張ってね、小日向さん!」
「さいば……」
「頑張ってね、小日向さん!」
「はいぃぃ〜、自分で考えてがんばりますぅ〜」
きょ、拒否です!相談を拒否されちゃいました!言葉では応援してるけど、拒否してるんです!
西原さん、ヒドイです!友達の相談は聞かなきゃいけないと思います!
こ、こうなったら……チャットで教えてもらった作戦をするしかないです!
皆さんに聞いた、直人さんの好みに合わせて、がんばっちゃいます!
皆さん、直人さんはツインテールにニーソ、メガネに金髪にツンデレが好きだって教えてくれました!
ツインテールにニーソはすでにしちゃってます!あとはメガネとツンデレと金髪です!
いっぱいツンして、たくさんデレちゃいます!直人さん、覚悟してくださいね!……私、間違ってない、ですよね?
「買い物も終わったことだし、約束どおりに晩御飯食べさせてあげますね。
お礼で作るだけなので、ヘンな勘違いはしないでくださいね」
夕方近くになり、買い物を終えた俺たちは、西原さんを家まで送るついでに、近くの大型スーパーへと向かう。
かなりの時間をかけて買い物をしていたため、結構遅くなっちまったな。
ま、ほとんどが西原さんの買い物だったんだけどな。
美佳ちゃんも西原さんに勧められるがまま、いくつか服を買っていた。
最近の女の子が着るようなカワイイ物ばかりだ。
で、買い物を終えて、西原さんを家まで送ろうとしていたんだが……やっぱり俺、美佳ちゃんに嫌われちまったんだなぁ。
昼飯食ってる時はいつもどおりだったんだけど、また言葉に棘が出てきた。
はぁぁ〜、何で嫌われちまったんだろ?
「こ、小日向さん!お料理上手なの?すっごいなぁ!」
「や、その、上手というか、どうにか作れるというレベルですよ?」
「で、でも作れちゃうんでしょ?よかったですね、上杉さん!
小日向さんみたいなカワイイ女の子に手料理作ってもらえて幸せですね」
「あ、あぁ、そうだな。美佳ちゃんみたいな子には普通は作ってもらえないもんな」
「ヘンな勘違いはしないでくださいね」
「きょ、今日は何を作るつもりなのかなぁ!アタシも用事がなければ食べたかったなあ!わぁ〜、ざんね〜ん!」
美佳ちゃんの冷たい言葉に心が折れそうになる俺を、慌ててフォローしてくれる西原さん。
あぁ、この子、いい子だなぁ。こんないい子が彼女になってくれたら最高だろうなぁ。
「今日はカレイの煮つけを作るつもりです。
べ、別に直人さんの大好物だから作るとかじゃないですから、勘違いしないでくださいね」
「お?カレイの煮付けかぁ。俺、大好きだから楽しみにしてるよ」
「へぇ〜、小日向さん、そんな料理作れるんだぁ。直人さん、きっと小日向さんっていいお嫁さんになれますよね」
「ははは、そうだな。料理は苦手なはずだったのに、いつの間にかレパートリー増えてるんだな。
カレイの煮付けはよく作るのかい?準ちゃんにでも習ったのかな?」
そっか、美佳ちゃんも色んな料理が作れるようになってきたのか。一人暮らしの成果が早くも出てきたんだな。
準ちゃんと2人で暮らしてた頃は、食事の準備は準ちゃん。掃除洗濯が美佳ちゃんと分担してたもんな。
この前の旅行の時に食べた玉子焼きは、殻が入ったままで正直不味かったけど、どれだけ作れるようになったのか、楽しみだな!
「え?や、その、実は今日が初めてで……ネ、ネットで調べて完璧に作っちゃいますから!」
「は、初めてなのか?カレイの煮つけって結構難しいと思うぞ?」
「だ、大丈夫です!ネットで調べちゃえばきっと大丈夫なんです!簡単にパパッっと作っちゃうんです!」
「そうそう!大丈夫ですよ!だって小日向さん、最近お弁当とかも自分で作ってきてますからね!
上杉さん、小日向さんは素敵な女の子になろうと色々と頑張ってるんですよ?」
な、なるほど。お弁当も自作なのか。ということは、前よりは料理の腕も上がってるはず……だよな?
俺の大好物のカレイの煮付け……淡い期待でもしておくかな?
……素敵な女の子になろうと頑張っている?それってもしかして、惚れた男のためか?
「は、ははは、期待させてもらうよ。美味しい御飯、食べさせてくれよな。
そういえば美佳ちゃん、最近髪型変えたり、流行の服を着だしたりしだしたね。
今日の買い物も、洋服だったし……最近はおしゃれに気を使いだしたのかな?」
前までは準ちゃんの買ってきた服やお下がりを着ていた。
準ちゃんにしても、安い服を探して買ってきてたんだ。……俺の稼ぎが少ないばかりに、2人には苦労をさせているなぁ。
金をもっと稼ぐために気合を入れて頑張らなきゃな!
準ちゃんのお店の開業資金に、美佳ちゃんの進学のための学費。まだまだ金はいるんだ、もっともっと働いて、稼がなきゃな!
「それなんですけどね、上杉さん。小日向さん、好きな人の気を惹こうと頑張ってるんですよ。
上杉さんから見て小日向さんはどう見えますか?彼女にしたいとか思っちゃいますか?」
「んな?な、ななななにを言っちゃうんですか、西原さん!」
「はっはっは、そうかそうか、美佳ちゃんは惚れた男の気を惹こうと頑張ってるのか?
そうだなぁ……美佳ちゃんは十分に可愛いと思うよ。素直でいい子で頑張りやさんだしな。
髪形を変えてから、ますます可愛くなったもんな。こんだけ可愛いんだ、周りの男が放っておかないんじゃないか?」
そうだよなぁ、髪型をツインテールに変えてから、ますます可愛さに磨きがかかってきたよな。
素直で頑張りやさんで可愛くて……こりゃモテモテだろ?
「そうなんですよ、学校でもすっごく人気があるんですけど……小日向さん、好きな人一筋なんですよね。
好きな人しか見えてないみたいなんですよ。ね、小日向さん?」
「さ、さささ、西原さ〜ん!ヘンな事、言わないでください!」
「髪型を変えたのだって、好きな人の気を惹こうとして変えたらしいですよ?」
「ほぉ〜?美佳ちゃんの好きな人はツインテールが好きなのか。ま、男なら誰しも好きだと思うよ?」
「もしかして上杉さんもツインテール好きなんですか?小日向さんを見て、ドキッときたりしちゃいませんか?」
はぁ?美佳ちゃんを見てドキってするってか?俺がか?ないない!それはない!
そりゃこんだけ可愛いんだ、今までの美佳ちゃんを知らなければそういう気持ちも沸いただろうけどな。
今はもう、準ちゃん美佳ちゃんのことは、自分の娘のように思ってるからな。
「ははは、そうだなぁ、もっと磨きがかかったら、そのうち来るかもしれないな」
「だそうよ?頑張ろうね、小日向さん!」
「さ、さいぶぁらさぁぁぁ〜ん!」
「はっはははは!どうした美佳ちゃん?何を慌ててるんだ?」
「な、なんでもないです!直人さんの為に綺麗になろうとしてるんじゃないですから!勘違いしないでください!」
「なんだか今日の美佳ちゃん、言葉に棘があるね。なにかあったのかい?」
「なんにもないです!そ、それよりも、メガネでもかけちゃおうかな?」
何でか知らないが、とんでもなく慌てている美佳ちゃん。
きっと好きな人の事を聞かれるのかと恥ずかしがってるのかな?ははは、カワイイなぁ。
こうしていると、美佳ちゃんも普通の恋をする立派な女の子に成長してきたんだな。
嬉しいような、寂しい様な妙な気分だ。これが父親の心境ってヤツなのかもな。
……へ?メガネ?美佳ちゃん、目が悪くなったのか?もしかして勉強のし過ぎか?
「え?美佳ちゃん視力悪かったのかい?それはいけない、すぐにでも眼鏡屋に行って買わなきゃな。
今の視力、いくつくらいなんだい?」
「え?や、その、両目共に1,5ですけど」
「は?1,5?メガネかける必要ないじゃないか?」
「な、直人さんには関係ないです!で、でも直人さんがそう言うならかけるの止めちゃいます」
「かけるもなにも、目がいいんだから必要ないんじゃないのかい?」
「も、もうメガネはいいです!あ〜あ、なんだか髪を染めたい気分になってきちゃいました。
思い切って染めちゃおうかな?……金髪に」
どうも様子がおかしいな?今まで大人しいけど素直でいい子だった美佳ちゃんが、急に棘のある話し方になったり、
かけなくてもいいメガネをかけようかななんて言い出したり。いったい何なんだ?
……き、きききき、金髪?か、かか髪を金髪に染めるだってぇ?
「こら美佳ちゃん!髪を染めるのはまだしも、金髪に染めるだって?ダメだ!絶対にダメだ!ぶん殴ってでも止めるからな!」
「そ、そうよ、小日向さん!せっかく綺麗な黒髪なのに、何で染めようとか考えちゃうわけ?
それも金髪なんて、ありえないわよ!」
「あ、や、その、えっとぉ……じょ、冗談、です!冗談で言っちゃいました!」
「冗談?本当だろうな?もし本当に染めようと考えてるんなら、本気で怒るからな」
「や、その……グスッ、ゴ、ゴメンなさい」
俺の怒りの言葉に、シュンとして、半べそを掻く美佳ちゃん。
さっきの反応からして、どう考えても冗談とは思えない。俺の怒りに慌てて誤魔化したって感じだ。
……もしかして美佳ちゃんの好きな男ってのは、ヤンキーなのか?
そいつは純粋な美佳ちゃんを、不良に引きずり落とそうと考えてやがるのか?
やはり一人暮らしをさせてのが失敗だったのか?
でも今さら準ちゃんのところへ行けなんて言えないし、かといって、家に来たらおふくろの前で萎縮してしまいそうだし。
一体どうすりゃいいんだ?俺が常に監視できればいいんだけど、仕事もあるからあまり合いにはいけない。
いったいどうすれば……そうだ!西原さんに見ていてもらえばいいんだ!
普段の美佳ちゃんが、どういった暮らしをしているか、西原さんに教えてもらえばいいんだ!
「さて、食材の買い物は美佳ちゃんに任せるよ。その間に俺は西原さんを家に送るから」
「は、はいです。西原さん、今日はどうもありがとうございました」
「うん、また一緒に遊ぼうね?じゃ、上杉さん、家までお願いしま〜す」
美佳ちゃんを大型スーパーに降ろし、西原さんを家へと送る。
おし!今がチャンスだ!普段の美佳ちゃんの事を監視してくれるようにお願いするぞ!
信号待ちで車を止めた時、西原さんに話しかける。西原さん、協力してくれるだろうか?
「西原さん、美佳ちゃんの好きな男ってどんなヤツか知っているかな?
男の趣味に合わせるためなんだろうけど、金髪に染めたいだなんて……もしかして不良とかじゃないだろうな?」
「え?ふ、不良?や、それはないない!年上の彼氏だそうですよ?」
「年上か……そいつは大学生とかなのかな?そいつは信用できるのかな?」
不良じゃない?だったらさっきの金髪発言は本当に冗談だったのか?
年上だって言ってたな、美佳ちゃんよりも年上というと、大学生か?
……もしかして、元ヤンキーなんじゃないのか?
「は?し、信用、ですか?信用は……出来るんじゃないかな?」
「……西原さん、お願いがあるんだけどいいかな?」
「え?お、お願いってなんですか?」
「俺、仕事が忙しくて、あまり美佳ちゃんまで目が届かないんだ。
こんな事お願いするのなんだけど……普段の美佳ちゃんを俺に教えてほしいんだ!」
「へ?教える、ですか?」
「そう、教えてほしいんだ。今日だって言葉に棘があったり、急に金髪にするとか言い出したり。
俺にはあの大人しいけど素直で優しい美佳ちゃんが、あんな態度を取るなんて信じられないんだ。
きっと何かあったと思うんだよ。俺じゃなく、友達の西原さんにしか分からない事もあると思うんだ。
何かおかしいと思うことがあったら、俺に知らせてほしいんだ。
こんな事お願いするのは失礼だとは思うけど、君にしか頼める人がいないんだ。
俺は美佳ちゃんが道を踏み外さないか心配なんだ。頼む!協力してくれ!」
俺の急なお願いに、驚いている西原さんに頭を下げる。
こんな年下の女の子に頭を下げるなんて思いもしなかったな。
でも美佳ちゃんのためだ、大人しいけど素直で優しい美佳ちゃんのためだったら、何だってやってやるさ!
「ええ?や、ちょっと頭上げてください!わ、分かりました、分かりましたから頭を上げてくださいよ、上杉さん!」
「ほ、本当かい?協力してくれるのかい?ありがとう!本当に助かるよ!」
「ちょ、ちょっと上杉さん、そんなに頭、下げないでくださいよ!」
あまりの嬉しさに、信号が変わっていることも忘れ、頭を下げる。
おし!これで美佳ちゃんの情報が入ってくるぞ!
……いったい何処のどいつだ?美佳ちゃんを悪に道に誘惑するボケは!
「いやぁ〜、よかったよ!本当によかった。無理なお願いをして、ゴメンな?」
「い、いえ、ちょっとビックリしちゃいましたけど、気にしないでくださいね。
……でも上杉さん、小日向さんのために必死ですね。
前に準さんが、上杉さんは自分の買いたい物を我慢して、生活費を削ってまで私達に支援してくれているって言ってましたけど、
どうしてそこまでするんですか?」
俺が二人の為に支援している事を不思議に思ったのか、問いかけてくる西原さん。
俺は西原さんの問いかけに、昔の……二人の出会う前の、何もない俺自身を思い出し、口を開いた。
「んん?どうして?そうだなぁ……自分のため、かな?」
「自分のため、ですか?」
何もなかった、ただ毎日を漠然と過ごしていたあの頃を思い出し口を開く。
「そう、自分のためだよ。……二人と出会うまで、俺には何もなかったんだ。
自慢できる事、胸を張れることが一つもなかった。俺には誇れるものなんか、何もなかったんだ。
あの夜、あの繁華街で、少し汚れた服を着た二人と……妹の為に我が身を犠牲にしようとしていた妹思いの準ちゃんと、
暗い表情で、その姉を見つめていた妹の美佳ちゃん。あの二人と出会うまで俺には何もなかった。
……それが今はどうだい?確かにお金はなくなったけど、毎日充実している。
二人の成長が楽しくて楽しくて仕方がない!準ちゃんなんて、人生の伴侶と目標まで見つけてくれた。
美佳ちゃんも真っ直ぐに成長してくれて、君のようないい友達にも恵まれた。
二人と出合ったことで、何にもなかった空っぽの俺が……うん、俺の人生の目標っていうのかな?
そう、目標が出来たんだ。二人を一人前にするっていう、人生をかけてもいい目標がね。
……二人はいつも俺に感謝してくれてるけど、感謝したいのは俺のほうさ。
俺のつまらなかった人生を、やりがいのある、楽しいものに変えてくれたんだからな。
二人を一人前にしたら、きっと死ぬ時は満足して死ねると思うんだ。
満足して死ねる……多分だけど、そんな人間、滅多にいないぜ?」
そう、二人を立派な一人前の人間に成長させる。俺の人生をかけてもいい、大事な目標だ。
この目標を達したら、きっと満足して死ねると思う。
俺のような空っぽだった男が、準ちゃんに美佳ちゃんのようないい子を一人前に育てる事が出来たんだからな。
準ちゃんはもう立派な一人前の人間だ。目標の半分は達成した事になるのかな?
あとは美佳ちゃん……美佳ちゃんが人生の目標を見つけてくれて、
それに向かって歩き出してくれたら、こんなに嬉しいことはない!
美佳ちゃんが自分の人生を、自分の意思で歩き出してくれたら、俺の役目も終わりだ。
……その時は、きっとメチャクチャ美味い酒を飲めるんだろうな。
早く飲みたいような、飲みたくないような……ははは、少し寂しいような妙な気分だな。
「上杉さん……小日向さんと準さんから、上杉さんはとても素敵な人だって聞いていたんですけど、
その意味がやっと分かりました。
上杉さん、携帯貸してくださいね?アタシのアドレス、登録しておきますので」
俺の携帯を手に取り、慣れた手つきで自分の携帯アドレスを登録する西原さん。
おお、さすがは女子高生だな。正直な話、俺、携帯の機能はあまりよく分かってないんだよな。
だから登録なんてすぐには出来ん。……こんな事で感心しちまうなんて、俺もおっさんになったなぁ。
「はい、登録しておきました。……上杉さんには役目の終わりなんてないと思いますよ?
小日向さんも準さんも、これからもずっと上杉さんと一緒にいたいと思っているはずです。
だから、ずっと小日向さんと一緒にいてあげてくださいね。あ、ここで降ります」
いつの間にか、西原さんの自宅前に着いたみたいだ。
……でけぇ高級そうなマンションに住んでるんだな。もしかして結構な金持ちなのか?
それにしても本当にいい子だな。準ちゃん美佳ちゃんが俺と一緒にいたいって?
嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか。
「んん?ははは、二人が嫌がらなければ喜んで、だよ。今日はありがとう、これからもよろしく頼むよ」
「はい、こちらこそありがとうございました!素敵な上杉さんと知り合いになれて嬉しかったです!今度メールしますね?」
「おいおい、俺を褒めても何もでないぞ?美佳ちゃんのこと、よろしく頼むよ。じゃ、またね」
「はい、今日は本当にありがとうございました!いい話をたくさん聞けて嬉しかったです!」
「ははは、なんだか照れるな。じゃ、また今度遊ぼうな」
輝くような笑顔を残し、マンションへと入っていった西原さん。
西原さん、カワイイよなぁ。あんな彼女がいたら、人生変わるだろうな。
美佳ちゃんになにかあればメールで教えてくれるだろうし、ホントにいい子だ。
……メール?あれ?もしかして俺、意図せずして女子高生のメールアドレスゲット?
これって上手くやれば、西原さんと……お、おおぉおおぉおぉおぉおぉおぉ〜!
きたぁ〜!俺にも春が!長い冬を耐え忍んだかいあって、春がきたぁぁぁ〜!……かな?
ま、そう上手くはいかないだろうけど、生まれて初めて女子高生のアドレスゲットだ!
いやぁ〜、嬉しいねぇ。こんな年下の女の子のアドレスゲットできるなんて!
「うまく二人で会えるように持って行けば……ヤレちゃったりして?いやぁ〜、夢が広がるなぁ!」
女子高生とヤルんだぜ?同僚の高橋のように80キロの横綱とかじゃなく、メチャクチャ可愛い子とだぜ?
あの太ももに顔をすりすりしたり、足首をペロペロしたり、手でコキコキしてもらったりするんだぜ?
Tシャツ一枚になってもらって、シャワーで水をかけてTシャツから透けて見える素肌を眺めたりできるんだぜ?
おいおいおいおい……大事な事を忘れてた、足コキも仕込まなきゃいけねぇな!
タマランなぁ、夢が広がるな、おい!
「……ま、無理な話だけどな。夢を見るのは自由だから、もう少し見させてもらうとするかな?
さて、そろそろ美佳ちゃんを迎えに行かなきゃな。
結構時間をくったから、一人でいるのが寂しくて涙目になってるかもしれんな」
西原さんとのバラ色の恋人ライフを妄想しながら大型スーパーへと向かう。
美佳ちゃんを迎えに行ったら、案の定涙目で俺を探してきょろきょろしていた。
俺を見つけて笑顔を見せ、しばらく楽しそうに会話をしていたんだが、何かを思い出したように文句を言われた。
『直人さん、迎えに来るのが遅いです!女の子を一人で待たせるなんて最低ですね。
私でしたからいいですけど、他の女の子だったら嫌われてるところですよ。
ですから私以外の女の子とは買い物には行かないほうがいいですね。絶対に嫌われちゃいますから』と。
はぁぁ〜、美佳ちゃん、ここ数日でホントに様子がおかしくなったよな。
やっぱり好きになった男の影響か?前までは絶対に言わなかったようなことを平気で言ってくるようになったもんな。
西原さんからの情報では年上の男って話だったけど、それだけじゃよく分からんな。
もっと詳しい情報を教えてもらわなきゃな。
それにしても男を好きになっただけでこうまで性格が変わるものなのか?
前までだったら、絶対に文句なんか言ってこなかったぞ?やっぱり相手の男がダメなんじゃないか?
誰かに相談してみるか?しかし女のことで相談できるようなヤツはいないしな。
う〜ん、西原さんにでも相談するか?いや、知り合ってばかりで相談するってのもヘンだよな。
誰か女の気持ちが分かるようなやつで、気軽に話せる人、いないのか?
……よく考えたら俺って、女の知り合いいないんじゃねぇか?
どうしよう?お袋にでも相談するか?いや、相談なんかしたら美佳ちゃんがとんでもない説教を食らう気がするな。
やっぱり西原さんに相談するか?でもなぁ、知りあったばかりの子に相談ってもの、やっぱりおかしな話だしなぁ。
でも女の気持ちが分かるような人、俺の知り合いには他にいないし……あ、いた。
そういえばあの人も女に分類される生物だったな。
そうだそうだ、俺には長年バカ話をしてきた、あの残念な人がいるじゃねぇか!
あの人、ああ見えて相談事とかは結構真面目に答えてくれるしな。相談相手にはうってつけだな。
うん、久しぶりに俺もみんなと話したいし、久しぶりに行ってみるかな?
俺が長年入り浸っていた、あの居心地のいい空間……下半身紳士同盟へ。
俺は美佳ちゃん手作りの残念なカレイの煮つけをご馳走になったあと、ネットカフェへと車を走らせた。
久しぶりにみんなとバカ話ができる、そう考えただけでなんだかワクワクしてきたぞ!
ネットカフェに着き、はやる気持ちを抑えて通いなれたいつものチャットチャンネルに入る。
みんな元気にしてるかな?俺のこと忘れてねぇよな?……忘れてないよね?
ちょっとした緊張感を持ちながらチャンネルに入る。
俺がチャンネルに入ったのは結構早い時間だったんだけど、チャンネルには二人、人がいた。
一人は俺が相談をしたいと思っていた人物、unaさんだ。
そしてもう一人は、最近ここにきだしたという、kohiという人がいた。
こんなところに来るなんて、この人もよっぽどなHENTAIなんだな。おっし!今日は久々にHENTAIトークを楽しむか!
久しぶりに楽しむことの出来る、友人達との遠慮のいらない会話に胸を躍らせる俺。
やっぱり週一くらいで遊びに来るかな?バカ話をしないとストレスが溜まっちまうもんな。
今回は以上です。
GJなのはGJなんだけど、
どうしてここで終るんだよ〜
続きが気になって全裸待機しなきゃならないじゃないかw
風邪をひいたらどうしてくれるんだww
素晴らしい
ツクバさん毎回GJ
俺も、フル・フロンタルで待機してるぜ…。
ついに二人が・・・wktkが止まらないGJ!
次スレは(あれば、だが)スレタイを「気の弱い女の子のSS」とかにしてみない?
全裸待機は大人の特権だ
594 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/28(日) 01:23:36 ID:5C7qMQH6
びくびくおどおどしてるのが萌えるんだよな。
袖をぎゅって摘んでくる描写なんて最高だ。
ふとスレタイに魅かれて開いてみたら…
俺の一時間半をどうしてくれるんだコンチクショー
そして全力で高橋萌え
GJ、ついにHentaiチャットで出会ってしまうんだな、二人が。wktkがとまらないじゃまいか、どうしてくれるw
保守
いいシチュだ
600 :
名無しさん@ピンキー:2009/06/30(火) 22:51:10 ID:72TenUFJ
600
満員電車の中気の弱い娘は痴漢されても恥ずかしくて声を出せない
それを気づかれたのか、痴漢はスカートの中を触り放題
恥ずかしくて必死に声を出すのをこらえてるのを尻目に
痴漢はセーラー服の裾から手を入れて
小柄で童顔な中学生には不釣合いなくらい発育しきった胸をねっとりと揉みはじめる
で、
新ジャンル「武道系気弱っ子」
>>602 『腕組みたいな…でも恥ずかしい…組みたいな…でも嫌がらないかな…』
「腕組んでみない?」
スッ
「う、うん…」
ギュッ
『細身なのに、意外と筋肉付いてる…男らしい体なんだなぁ…』
グイッ
「…ん…ちょっと」
『この後キスなんかされちゃったり…まだ…早いけど…でも迫られたら断れないよ(///)』
グニュン
「あだだだ!!腕極まってるってば!!!!関節技かけるの禁止!!!!」
こうですかわry(>_<)
き、今日の剣道の試合に勝ったら・・・誉めてくれるかな?
その後で・・・あ、あんな事やこんな事をしてくれたら良いな〜。で、でも嫌な顔されたらどうしよう?
「始めぃ!」
『しゃぁぁぁっ!!』
「・・・アイツ試合になると人が変わるよな」
なんという至高
606 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/09(木) 23:05:12 ID:8LhhtmV0
あげ
漢らしい女の子だな
608 :
名無しさん@ピンキー:2009/07/11(土) 14:14:45 ID:P7NIS4Iu
試合中、競技中で性格が変わる気弱っ子はギャップ可愛い。
キリっ
続き気になる
道場師範の娘で、気が弱いけど才能があるせいで父に道場を継いでほしいとしつこく言われているとか保守
613 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/03(月) 22:54:46 ID:dv/lefkB
その設定で書いて
武道は弓道しか分からんなあ……。
・気弱で、大会等で人に見られてるとあがってしまって矢が的に中らない
・普段は気弱だが、弓を持つと人が変わったかのように凛々しくなって的中連発
どっちがより萌えるだろう……。
上はなんかすごく報われねぇ気がするが
下はすごくこち亀の本田を思い出すwwww
すごく……下が見てみたいです。
自分も下の方がいいな。
表彰の時顔真っ赤にして俯いてたりするところを幻視した。
全裸待機を始めたんでヨロシク
619 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/12(水) 09:12:13 ID:YHDWV4Rm
年下なら尚良し。ちちゃい子が弓構えてる姿って良いよねw
俺は上の方が萌えるな。
自分では試合なんかに出たらあがってしまって当たらない事がわかってるけど
練習では当たるからメンバーに入れられてしまうのは自然な流れ。
本当は嫌なんだけど気が弱いから、監督に「嫌です」とは言えずにそのまま
ずるずる行ってしまう。
個人戦だけなら当たらなくても自分の戦績が悪くなるだけでまだ救いはある
けど、団体戦では自分が当たらないと他の人に迷惑を掛けてしまう。
気は弱いけど責任感はあるから、他の人に迷惑を掛けまいとなおさら人一倍
一生懸命練習して、一生懸命練習するから練習での成績は良くなる。
そうするとますます期待されるが、試合では絶対に当たらなくなることを
他の誰が知らなくても自分だけは知っている。これは切ない。
で、試合当日。
奇跡を期待して射位につくが、奇跡など起こるはずもなく…。
こんなのはどこの道場にでも転がってる、よくある話のひとかけらなん
だけどね。男がうまくフォローできれば良い話になるのかもしれないけど
俺は無理だった。ちくしょう…。
控え室で男が熱烈なキスをして
「続きは優勝したらな」
って言えば上気した頬のまま
あたりが全然見えず
的しか見えない状況で優勝するよ
それって的も見えなくなるんじゃまいか。
それでも的中しまくって悟りの境地に達し
世俗の欲望から解放されてしまうんじゃないだろうか。
嗚呼先輩涙目。
むしろ試合当日全然だめで、思い詰めた気弱っ子が後日先輩かコーチに
手取り足取り腰取りw集中する為の特訓をお願いしちゃえばいい。
>>621 「はあ…緊張する…どうしよう…」
「先輩なら大丈夫ですよ!いつも通りやれば」
「で、でもみんな見てるし、人たくさんいるし、ああ…」
(本当に…この人は…いつも通りやれば優勝だって出来るのに)
「あああ…ううっ…」
―ちゅっ―
「ふ、ふえっ!?ゆーきくん!?」
「優勝したら、続きしましょうか?」
「へ、へう…あ、あう」
(逆効果かな…顔真っ赤だし)
「はる先輩おめでとうございます!優勝なんてすごいです!」
「はあ…え、えへへ。ゆーきくんのお陰でもう的しか見えなかったんだ」
「いやいや、俺なんてなにもしてな」
「だから…これから試合前はいつもちゅーして欲しいな」
「へ?」
「あと…今から続きして欲しいな…」
「せ、先輩!?胸大きい…じゃなくて!なぜ前をはだけさせるんですか!?」
「次はここにちゅー、して?」
「人の話を聞(ry」
終われ
こうですかわかりません
626 :
621:2009/08/16(日) 03:43:21 ID:5youhEDh
いやむしろ終わるな
続け
627 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/23(日) 21:30:05 ID:4lmq0VaX
あげ
やっぱり袖とか裾をきゅっと握るってのは外せないよなw
そして涙目で、何かいいたそうに見上げてくるんだ
そこで「どうしたの?」と聴いてみると。
「あのね……生理が来ないの……」
632 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 06:29:59 ID:tWwfKVHq
「確かに十五歳になっても来ないのは遅い方だと思うけどね。
でもきっと大丈夫だよ。君はちょっと体が小さいだけだから、すぐに始まるさ」
633 :
名無しさん@ピンキー:2009/08/28(金) 08:08:15 ID:u6UZVByT
勇気を出してぶん殴る
しかしそれを華麗に避けつつ一言
俺はボインちゃんが好きでな
彼女は服を脱ぎ捨て言い放つ
「葉っぱ一枚あればいい」
教育してやる
>>635 気の弱い巨乳っ子なんだろ
毎日毎日電車の中で痴漢されまくってしまい
抗議どころか声すら上げられない彼女は
勇気を出して大好きな男の子に一緒に通学してくれるよう頼むんだろ
駅のホーム。
大好きな男の子を見つけたまではいい。
だがいざ対面すると、身体がにわかに硬直し始めた。
「あっ……あの……」
「ん? なんだ?」
「あのっ、ですね……その……一緒、に」
ちゃんと伝えなきゃ。
鏡相手に、ペットの犬相手に、何度も練習したセリフを。
手を胸に添え、声を張り上げる。
人生で一番、大きな声を!
「今日から一緒に、つうがきゅしてくれまひぇんひゃっ!」
ガタンゴトン、ガタン、ゴトン―――……
(さ、さいあくだー!)
「…………ん? 今日から一緒に、なんだって?」
「あ、あうあ……」(し、しっぱいちゃったぁ……はずかしいよぉ……)
「お、おい、顔真っ赤だぞ!? 大丈夫か!?」
―――電車が閉まります、ご注意ください。
「あっ、閉まっちまう! ほら、早く乗らねぇと遅刻するぞ!」
「えっ? えっ? ちょっ、待って……!」
ぐい、と制服の袖を引っ張られ、二人は電車内へと滑り込んだ。
(願いはかなったの、かな?)
最低の告白だったけれど、最高の結果が得られたのかもしれない。
触れられた腕が、別の生き物のように燃え上がっていくのを感じた。
あれ? 青春モノっぽくなってしまった (;´Д`)
うん、まぁなんだ?話を広げて続きをかきあげようか?
是非、とも
勇気を出して!!
投下!!
して…下さいね…
・・・ごめんな。無理・・・なんだ
好きな男の子と一緒に通学してる最中に
後ろからスカートをまくられてぷりぷりのお尻(大きめなのを気にしてる)を弄られまくっちゃうんだろ
>>649 即席ですがよければ
日常、だった。
連綿と続き、何事もなく繰り返す、平和な日々。
いつも通りの朝陽を浴び、いつも通りのホームで、冬奈は整然
とした列の最後尾に並ぶ。
「あっ……ごめんなさ……」
見知らぬ誰かにぶつかられ冬奈は小さく謝ったが、小鳥のさえずりよりも
矮小なその呟きは、通勤ラッシュ時の喧噪にかき消された。
よれたスーツ、だらしなく着た学生服、見るのも憚られるような派手な服、
地味なジャージ。
様々な服を身につけた人間が、今か今かと電車を待ち続けていた。
変わらぬ光景。記憶の片隅にも残らないであろう、単なる通過日。
冬奈にとってもまた、同様であった。
一人で登校し、誰にも気取られず授業を受け、何の起伏もないまま日常を終える。
――はずだった。
(えっ……な、なに……?)
違和感が冬奈を襲った。
乗車率200%超の車内状況は見るも無残な混雑加減。他人と触れ合うどころか
身体を圧迫し続けられるのも別段不思議なことではない。
何かの拍子で鞄やスーツケースの類がぶつかる……あり得る話だ。
だがそれでも、冬奈はその短躯を震わせていた。
(や、やだ、おしり、撫でられてる……?)
思春期になり、気になりはじめたやや大きめな冬奈の臀部を、誰かが蹂躙している。
勘違いではないかと必死に思いこんでいた冬奈だったが、決定的な事実が冬奈を
確信へと至らしめた。
(いやらしく、動いて……それにこれ、人の温もり――)
尻を這う指先と人間の体温が冬奈から声を奪い去っているようで、救援どころか
悲鳴さえあげられないほど少女は恐怖を感じていた。
(い……いやぁ……誰か、助けてぇ……)
痴漢しているのは誰なのだろうか?
脂ぎった中年男性? 筋肉質な男? 体臭のきつい小太りな人?
目的の駅までは4駅分で、時間にしておよそ10分程度。
たかが10分。されど10分。長い長い人生の、ほんの10分。
絶望と恐怖の、10分――
(助けてぇ……誰かぁ……!)
乗車口の脇にある無機質な手摺りを、冬奈は力強く握りしめた。
それが、弱気な冬奈が咄嗟に思いついた唯一恥辱に耐えうる方法。
乗車口付近は、痴漢者にとって行為をしやすい場所のひとつである。
とりわけ冬奈と痴漢者が乗り合わせてしまった1両目は、痴漢スポットとして
一部の犯罪者に熱狂的な人気を誇っていた。
(早く、駅に着いて……早く……!)
懇願する冬奈の思い虚しく、手は純白のショーツをやんわりと撫で続ける。
頬肉からゆっくりと中央に接近し、尻の割れ目を執拗に擦る。
(だ、だめっ! そこ、汚いとこ……)
冬奈は、生まれて初めて恥辱による涙を流した。
けれど見知らぬ痴漢者はお構いなし。むしろ、その涙さえも美味な食糧となり得るのだ。
悲鳴をあげないと理解したのか、電車の揺れに合わせ、強弱をつけながら指は
徐々に下へと降りていく。
(やだっ、やだやだっ……いやだよぉ……)
純粋無垢な冬奈は貞操観念が人一倍強い。本当に好きな人が現れるまで、自分の
純潔を守り通している幻想主義的な少女だった。
(浩介くん、浩介くん……わたし、汚れちゃう……)
そう、冬奈が脳内で連呼している人物こそ、冬奈が本当に好きな男。
一途な片思い。勇気がなくて会話すらしたことのないクラスメート。
名前を呼ぶ度に冬奈をときめかせている少年の姿が何度も浮かび、そして、何度も
消えていく。
(きゃっ!)
その時、電車が大きく揺れた。
車内に犇き合う人間が、遠心力によりドミノのように倒れこむ。
瞬間、冬奈の周囲に身体を動かせるスペースが生まれた。
冬奈は揺れの混乱に乗じ、ちらりと後ろを振り返る。
「え、あ、あ……浩介、くん…………?」
見上げた先には、冬奈の憧れの少年。普段なら恥ずかしくて見つめることのできない
凛々しい顔立ちが、今は冷酷な笑みを張り付けていた。
「続けるぞ……高島冬奈」
倒れた人たちが元の位置に戻り、再び冬奈は身動きが取れなくなる。
しかも今度は、逆向き……つまり、正面に浩介がいる状態になり……。
「こ、浩介くん……どう、して……?」
「……さあな」
浩介は感情のない声をあげ、冬奈の下着の中に手を突っ込んだ。
「ひぁっ!」
細くて長い浩介の指が、冬奈の陰部に触れた。絹のような滑らかな肌を伝わり、
薄っすらと生え揃う茂みへと辿る。
「あ、あ、あ……」
下腹部を這う、浩介の指と爪。陰毛をかきわけ、柔肌を堪能しながら緩慢な
動きでクリトリスへ――
「……えっ?」
は、いかなかった。
自分ですらきちんと触れたことのない女の子の大事な部分を穢される、と覚悟
していた冬奈にとって、それは予想外の出来事で。
冬奈は、恐る恐る様子を窺った。
「ふふ……」
冬奈が見つめた浩介の表情に、獲物を食らいつくす獣はいなかった。
むしろ、いじめっ子のような悪戯めいた態度だったのだ。
(もしかして……意味もなく、愛撫、されてる……?)
戸惑いが、冬奈の胸に広がってゆく。
痴漢という強引な行為をした浩介は冬奈の秘部に直接触れることなく、ただ
優しく、飴玉を転がすように、延々とじらしていた。
「はぁ、はぁ……もっと……もっと……」
冬奈は蕩けた目で浩介に訴え続ける。
大好きな彼に優しく責められていると自覚した瞬間、心に占めていた恐怖は去り、
羞恥と昂奮が冬奈の中に渦巻いていった。
「冬奈……冬奈……」
「こうすけ、くぅん……」
”電車”という、二人以外にも他者の存在する特殊な環境が、幼い男女の性癖を
刺激し、築きあげていく。
だがそれも、終焉を迎えてしまう。
『間もなく〜○○駅〜。お降りの際には、忘れ物のないよう〜』
無慈悲なアナウンスが、昂奮冷めやらぬ耳に届いた。
電車は速度を落とし、見慣れた駅のホームへと流れ込んでいく。
「あの……」
「…………」
無言のまま浩介は冬奈の秘部から手を抜きとり、開かれた扉から駆け出して行った。
駅のトイレで、浩介は手を洗い流していた。
手にこびりついた少女の汗と温もりが、排水溝へと吸い込まれていく。
「はぁ……やっちまった」
後悔と、安堵と、微量の幸福感が入り混じった、溜息。
同じクラスの高島冬奈は、松野浩介にとって気になる存在だった。友達がいないのか
いつも一人で行動し、物静かで、薄幸そうな少女。浩介から何度か声をかけてはみたも
のの、毎回何故かすぐに逃げられてしまっていた。
恋に恋い焦がれる年ごろでもないのだが、冬奈とどうしてもいい関係になりたかった。
たまたま今日同じ電車に乗り合わせたのだが、幾度もはぐらかされていたので、浩介の
腹底にわだかまっていらもやもやとしたもの(性欲)が暴発したのだ。
「だって、すげえいい匂い……」
疲弊した表情でトイレを出て、学校へと向かう。もう遅刻決定だ。
(嫌われたよな)
項垂れる浩介だったが、不意に振動したポケットに驚き、顔をあげた。
「え……これは、誰の携帯?」
中には、浩介のものではない、可愛らしい携帯電話があった。電話がかかってきている
のか、激しく震動している。
「何だろう……もしもし」
『でっでたっ……!』
「あの、どちら様で?」
『あの、あのあの……松野浩介くん、ですか?」
「は、はい。そうですが」
『私です、高島冬奈、です』
「え、あの、高島さん!?」
『驚きました? それ、私の携帯です。今、公衆電話からかけていて……』
「ということは、さ、さっきの拍子で……ポケットに……」
『違うんです! ……それ、わたしがわざと入れたんです。あなたとすぐに連絡
がとれるように』
「……連絡」
『はい……あの、落ち着いて聞いてください……松野浩介くん』
「うん……」
『明日も、お願いします』
(終)
お目汚し失礼しました。萌えはあまりないですがご勘弁を^^;
痴漢ものではなく、あくまで気弱な子が勇気を出すスレなので
そういうオチに。
ちょっと待てwwwww
658 :
649:2009/09/06(日) 00:56:19 ID:KDO1hD5r
えええええええーーー???!
でもまあ、これはこれでw
む、
送信してしまったorz
やっぱこの展開は驚くか…('A`)
あえて言おう、王道であると。
そして、だからこそ素晴らしいとw! GJ!
hoshu
気弱な後輩を車から庇って抱き締めたい。
勇気を振り絞って「触らないで下さい!」って叫ぶわけですね
その後輩は走り去りながら
「あぅぅ、お礼したかったはずなのに……私のばかばかっ」
と後悔するんですね
あまりのことに先輩は服毒自殺(未遂に終わる)をするわけですね
もうすぐ3ヶ月じゃないか…orz
そう言えば
671 :
名無しさん@ピンキー:2009/09/19(土) 02:55:19 ID:/iI6PdMO
部活の合宿で肝試し。気弱な後輩とペアを組むことになり……。
>>671 トイレを我慢していた後輩がいつも以上にもじもじと…
せ、せんぱいと二人きり…
でもお化け怖い…
しかも、トイレ行きたいよぉ…
で、頭パンク、と。
先輩「うちの部長が密かに部費を使い込んでるらしい…」
さらに混乱して頭が真っ白になった後輩は…
ぶひぃと呻く。
後輩は豚の霊に憑かれてしまった!
しかも憑依した豚は発情期のメス豚だった!!
豚はあんま可愛くないな。
気弱でご主人様にもなかなか甘えられない子猫か子犬が一番可愛い。
頑張ったから頭なでなでして欲しいにゃん。
けど、ご主人さまにお願いするなんてボクには無理だにゃぁ……
出しゃばってる子だって、思われたくないにゃぁ……(うじうじ)
と言うことでツンデレな子猫の霊に取り憑かれた。
>>679まで纏めると
部活動の合宿中、肝試しで憧れの先輩と一緒に回ることになった少女。
少女は生来気が弱く怖がりであったが、このチャンスを逃す訳にはいかないと思い告白を決意。
しかし肝試しで緊張が限界に達した少女を尿意が襲い、いつも以上にもじもじしてしまう。
空気の読めない先輩は部費の使い込みについて相談してしまい、少女はパニックに陥る。
そんな少女の精神的な動揺から動物霊が彼女に舞い降り、彼女の口から呻き声が漏れる。
なんと動物霊は豚、それも発情期に不遇の死を遂げた雌の豚だった!
「せ、先輩…わたしもう我慢できません!」
少女は憧れの先輩に背を向けると、腰に手を掛けゆっくりと下におろす。
両手の指にはそれぞれ下着がかかっており、白く飾り気のない布きれが足を這う様にずり落ちる。
「先輩…私を…私を犯して下さい!」
(続きは省略されました。読みたい方は自分で書いてください)
「ふっ、下等霊か…今すぐ彼岸の地へ送ってやるぞ…
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!」
ウオォォォオォォォォ!
雌豚の霊は浄化された。
気弱な後輩が、勇気を出して先輩にアタック。
ただしバレー部の。
>>685 せ、先輩が目の前に…はぅ…
で、でも、勇気出さなきゃだめだよね…!
よし!!私がんばる!!
「せぇぇぇい!!!!」
バン!ピー!
「よっしゃオラあああああ!!」
ナイスキル!!!
なんか違う
ほっしゅ
ツクバ薪割りさんマダー?(・∀・ )っノシ凵 ⌒☆チンチン
>>688 せかしちゃだめだ!
俺も待ってます。全裸で。
勇気を出して、裾ぎゅーから袖ぎゅーへ。
「いつになったら手を繋げるのかなあ……」
勇気が勢い余って、なぜか襟ぎゅーへ
チョークチョーク
693 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/13(火) 12:07:12 ID:TJTkLet0
腕ぎゅー>ω<!
さらに余って球をギュー
ふたつあるほうね
精一杯の勇気を振り絞って真っ赤な顔で俯いて
上着の裾を指できゅってつままれたら俺はもう
惚れてまうやろーッ!!!
結構人いてワロタ
>>695 ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って、って奴だな
勇気を出して飛び付いて、
「――――っ!」
「おー? どうしたうぼあっ!?」
見事に腹にヘッドバット。
あっ……あの……700GETしちゃいます!
701 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/21(水) 01:02:26 ID:N8dOW+or
進学する近所のお兄さんの袖を、泣きそうな瞳で、だけど何も言えずに掴む少女。
702 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/24(土) 11:49:21 ID:5Um6b32K
そういや保管庫の話ってどうなった?
気の弱い女の子は萌えるけど、
気の弱い男はゴミ以下の存在
>>705 乙
良スレ発見
ってことで軽く短編書きあげるつもりが、日付変わっちまった/(^o^)\
もう眠いから投下は後日にするよ
709 :
名無しさん@ピンキー:2009/10/28(水) 16:05:53 ID:+3KBBHve
服の裾をぎゅってする仕草がたまりません
あの……ほ、保守ですっ
ごめんなさいっ
(タタタタタドタッ タタタタタ…)
>>711 そういや気弱っ子ってよく転ぶイメージがあるな。
なんでだろ?
713 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/05(木) 17:11:54 ID:I7ucd0xF
いつもいっぱいいっぱいだから
転んじゃう
小ネタ
いつもの時間、いつもの場所、天気は薄曇り、微風良好!
あの人が来るまであと数分。私はいつもルンルン気分だ
まぁ本人を前にすると何も言えなくなってしまうんだけれど…
それも今日まで、今日こそは想いを伝えるんだ!
と色々考えてるうちに彼が来た
わ、わたしとつk
「なんだ、今日は積極的だな?よっぽど腹空かせてたのか?ここんとこご無沙汰だったしな。ほれ、今日は新しいカリカリだぞー」
…つきあ…カリカリ美味しいからまた今度でいいや
結論:気の弱い猫が勇気を出したらご飯美味しかった
717 :
649:2009/11/09(月) 02:29:46 ID:KmCOm97o
気の弱い娘(ニャン)とおもったら猫(マオ)だってござるの巻
うっかり名前欄を消し忘れていたので
今後二度とそのようなことがないように自戒するの巻
他の女の子とアクセサリーショップで買い物をしていた男の子と二人になって今しかないと勇気を出して告白したら
一緒にいた女の子のアドバイスを受けて自分へのプレゼントを買っていた。
…………何を言っているかわからないだろうけど、私にも何がなんだかわからないの……。
新ジャンル「ジョジョ好き気弱っ子」もしくは「オタク系気弱っ子」
心無い同級生にオタク趣味を馬鹿にされて以来、その趣味を隠してびくびくしながら生活してる気弱っ子
そんな彼女の秘密を偶然知ってしまって……
みたいなシチュが好きだ
>>722 乃木坂春香を物凄い気弱っ娘にすればなんとか…
乃木坂春香は結構気弱な部類じゃなかろうか?優人以外には猫被ってるわけだし
>>724 まぁ確かにそうなんだが春香はハイスペックだし人気者だからなぁ
なんというかもっとおどおどしてて教室の隅っこで縮こまってるみたいな娘が良い
726 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/17(火) 11:38:14 ID:lrqXfJIJ
気の弱いおたく美少女ハァハァ
十分可愛いけど自分に自信が無いから、「自分とは違って可愛いから」って理由でフィギュアを集めてたり、
「勇気があって格好良い」って理由で魔法少女ものが大好きだったり、
読書好きの延長でドキドキしながらエロゲをプレイしてたりする、
そんな気弱っ子。
最近プレイしてるゲームで、このスレ的な男女達が…。
>>727 顔真っ赤にしながらエロゲプレイしてる美少女中高生萌えるw
はわわ……せ、せっくすって、こんなことまでしちゃうの……?
えっ、そんなとこも舐めたり……きゃぁぁ、えっちすぎるよぉ。
あ、あぅ、だんだん私もえっちな気持ちに、なって、きちゃった……
ちょ、ちょっとだけならいいよね。ちょっとだけ……
「由香、入るぞー」
「あひゃぃあああぁっ、拓人君!? いつからそこに!?」
「たった今。つか、何だ? 今更幼なじみの間に秘密でもあるのか」
「ないよ! 一ミリも、うん、ぜんぜんなんにも!!」
「その割には、必死に隠してるその画面は何だ?」
「こ、これは……」
「見せろよー、エロゲーでもあるまいし」
「あっ……!!」
続かない。誰か続けて。
>>730 錯乱してウィンドすら閉じれない状態かw
ALT+F4すら押せないほどあせってる
>>730 エロゲなんて単語がさらっと出てるところを見ると由香たんがオタになったのは拓人の影響かw
凌辱ゲーを恐る恐るプレイして、まさかの激ハマりした気弱っ子
勇気を出して、幼馴染みに告白します
「わ……わたしを虐めてくださいっ!」
>>734 興奮のあまり気弱っ子を犯してしまうだろ
いや、まず2人の間で「虐める」の意味に齟齬が出るんじゃねえか?
その上昔幼馴染が気弱っ子を虐めてた(無論、性的でない意味で)経験があるならさらに面白くなる
>>736 男のほうが昔いじめっ子で気弱っ娘をいじめてたって設定は良いなぁ
罪悪感から好きだけど男からは告白出来ず女は気弱で告白出来ない
そしてその負い目があるからこそ、彼女のオタク趣味が周りにバレそうになった時に、
彼女がまたいじめられないように必死にフォローするんですねわかります
739 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/25(水) 01:05:21 ID:IM/03z5Y
気弱っ娘のほうはその男から性的にいじめられたいと
ごごごごごめんなさいぃ!?
わわわわたし何も見てませんからごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!
こうですか分かりません
おませだけど気弱なロリっ子
今でも夢に見る。
胸糞悪いというか、いい加減にしろって言いたくなる夢だ。
「やだよぅ……りゅーくん……ゆるしてぇ……」
「ダメ」
偉そうに両腕組んでふんぞり返っているのは、短パン姿の
ガキんちょだ。同い年の女の子をイジメている。女の子は目
に涙を浮かべて、顔を真っ赤にして泣いていた。
「ほら、はやくしろよな」
「……むりだよぅ……」
「五回連続で蹴られたら、罰ゲームだって言ったろ。負ける
のが悪いんだ」
「……だって、だってぇ、りゅーくん、はやいんだもん……」
「美香が遅すぎるんだよ、このノロマ。つまんなかった」
「……ごめん……」
いや、美香は謝らなくていい。謝るのは、そこで当然のよう
にお前を苛めている、七歳当時の「俺」だ。
おい、岡野竜一。
いくら夏休みで、友達がみんな家族旅行に行って暇だからって、
幼馴染みの子をイジメてんじゃねぇよ。帰って勉強しろ、夏休み
の宿題が、たっぷり残ってんだろうがよ。
「ほら、さっさとやれよ。罰ゲーム」
「……やだ、そんなの……できないよぅ……」
「おまえさー、サイアクだよなー。約束も守れねーのかよー」
最悪なのはてめーだ! 喋りがウゼェ!
無理やり相手を遊ばせておいて、なにがつまんねーだ。相手の
子が運動苦手なのを知っていて、サシで缶蹴りの勝負持ちかける
とか、どんだけだ。この卑怯者。
「美香のひきょうもん」
「……ゆるしてぇ、りゅーくん……」
「ダメったら、ダメ。罰ゲームやるまで、帰さないからな」
勝つのを承知でやってたんだから、罰ゲームもあったもんじゃ
ない。しかもこの炎天下、マンションの日陰で遊んでたからって、
体力が続くのは男だけだろ。一時間近くも走らせ続けた上に、説
教するとか何様だ。このバカ野郎。
「ほら、はやくっ!」
そんな「俺」の気も知らず、バカは相変わらず腕を組んだまま、
吐き捨てるように言いやがる。
「まだかよー」
「……むりだよぅ……」
「じゃあいいよ。美香は約束も守れない奴だって、夏休み終わっ
たら、みんなに言いふらしてやる」
「……やだ……いやぁ……」
「だったら、ちゃんと罰ゲームやれよ」
「……」
ぎゃー、改行ミス多すぎで、作品紹介入れ忘れた。orz
ごめんなさい。
730付近のレスが壺だったので、ss書いてみました。
趣味に走り過ぎて、スレ違いと感じたら申し訳ないです。
※エロ描写なしです
次は745に続きます
このガキ、マジ外道か。
本当に、この夢を見るたびに死ねって思う。
七歳の「俺」の首を絞めて、今この夢を見ている十七歳の俺ご
と、死んでしまえばいい。叶うことならば、上手く夢から覚めた
いのに、その方法が分からない。
過去の夢の再現は続いていく。
「はやくその黄色い "でかスカート" めくれよなー」
「これ、ワンピースっていうの。スカートじゃないよぅ……」
「うるせー、どっちでもいいだろー」
「よ、よくない、と、思う……」
「いいってば。もうめんどくせー、俺がめくっちゃっていい?」
「ダ、ダメぇ……っ!」
「それなら、自分でめくれって言ってんの。罰ゲームなんだから」
「うぅ……」
誰か、マジで、警察を呼んでくれ。
そこのガキはまだ七歳だが、立派な変質者と言っていい。
捕まえろ。今すぐにだ。今この夢を見ている俺が許す。任意同
行だ。
子供だからといって、なにをしても許されるわけじゃない。そ
こはしっかりと、分別のついた大人が諭していくべきなんだ。
いいか、よく聞け。七歳の岡野竜一。男子が女子のスカートを
捲るのと、女子が自分でスカートを捲り上げる事には、富士山よ
りも高い隔たりがある。
「……りゅーくん、そんなに、みかのぱんつ、みたいの……?」
「ちげーよ、お前のパンツなんて見たくねーよ。罰ゲームだから
やれって言ってんの」
いや、お前は間違っている。見たくないはずがなかろうが。見
たい。すごくみたいに決まっているだろうが。パンツは良い物だ。
かわいい女子が頬を染めて恥らいながらも、自らの手で、そっと
スカートをたくしあげてくれる―――。
よく訓練された高校男子学生でなくとも、その程度の妄想なら
日常茶飯事だ。よく訓練された男であれば、その上からしゃぶり
つくすがな。
「……あ、あんまり、じっとみないで……ね……」
そうそう、そんなことを言ってもらえると、いいよな。
夢だよ。エデンの園だよ。パンツ見たいよ。
まて、違う。俺のいいたいことは、そうじゃない。
危なかった。やはりこの夢は危険だ。誠実な高青年と呼ばれて
いる俺の本心を曝け出してしまいそうになる。恐ろしいぜ……。
違うだろ。変態か俺は。よし、落ち着け俺。
まずはなんの話をしていたのか思い出せ。えぇと、パンツ?
「や、やっぱり、恥ずかしいよぅ……できないよぅ」
「恥ずかしいから、できないんだ?」
「うん……」
思い出した。スカート捲りについての是非だ。
さっきも言ったが、女子が顔を真っ赤に染めながら、涙目になっ
てまで自分のスカートを捲り、その下に隠された秘境を見せてく
れるとしたら、俺はもう死んでもいい。
しかし、しかしだ。相手が嫌がっているにも関わらず、それを
強要するのはただの変態だ。そして俺は変態じゃない。紳士だ。
警察に連行されてしまうわけにはいかない。
現れるのが「犬のおまわりさん」ならいい。だが待っているの
は冷たい檻と、冷ややかな一般世間の眼差しなんだ。
七歳の俺よ、お前はまだ間に合う。今すぐその女の子をイジメ
るのをやめろ。罰ゲームは、ほっぺにチューでもしてもらえ。
「ほら、こっち。ついてこいよ」
「……えっ?」
「はやくしろよ」
「ど、どこ行くの……?」
目をぽかんと見開く女の子。その手を引っ張って、我がもの
顔で歩いていく「俺」。相手の歩幅なんて考慮もせず、早足だ。
「ここ」
「……えっ?」
そこはマンションの自転車置き場と、ブロック塀の間に挟まれ
た、死角となっている場所だった。
「ここなら、誰にも見えないだろ」
「……え、えっと……?」
「ここなら、恥ずかしくねーだろ」
「…………ぅ」
「まだダメ?」
確かに、そこは子供ならどうにか入りこめるといった程度の場
所だ。自転車の雨避けとなっている天井が、マンション上層から
の視線も隠してくれる。ここに子供が二人いるのを見つけられる
としたら、この隙間を覗かない限り、無理だろう。
「ほら、スカート、めくってみせろよ」
「……だれにも、いわない……?」
「ちゃんと出来たらな」
「………や、やくそく、だよ……っ!」
「ほら、指きり」
「……うん」
指きりげんまん。うっそついたら、はりせんぼん、のーます。
そして、指が離れた。
俺は相変わらず偉そうに腕を組みなおし、女の子はその両手を
そっと、ワンピースの裾へと伸ばした。
待望の待ちわびた瞬間が今、目の前に―――いや、違う。そう
じゃない。俺は変態じゃない。だが見たい。
「……だ、だれにも、いっちゃ、めっ……!」
罰ゲームにこだわる、バカな男子の命令だった。
気の弱い少女は、自分のワンピースの裾を手に持って、持ち上げ
ていく。顔を真っ赤にして。
そして、白い、パンツが見えた。
素晴らしい―――ではなく、いや、実に素晴らしい、うん。
パンツっていいな。なんて可憐なんだ。
「……りゅ、う、くん……」
恥ずかしさからか、ぼそぼそと、呟くように喋る女の子。
俺の視界が滲んでいく。
「――――――――――」
女の子が、何事かを呟いた。確かに、呟いたのに。
夢はここで終わる。
何故かと問われたら、簡単なことだ。
「……あ―――?」
「りゅ、りゅーくんっ!?」
バカな男子が鼻血を拭いて倒れ、意識を失ったからだ。
どうしてお前はそこで倒れるんだ! バカか!
立て! 立てよ! 諦めんなよ、俺―――!
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリイ!!!!
さて、実に今日も素晴らしいタイミングで、目ざましの野郎
が喚きだしている。
「……ぁー」
また見てしまった。ここ最近、ずっと同じ夢だ。
「……くそぅ、もう少しだったのに……」
いや、これは寝ぼけているから出た言葉で、ノーカウントだ。
俺は変態じゃない。夢の中の台詞も、あれは夢だけの妄言であ
って、違うんだ。信じてくれ。
「誰に言ってんだよ……」
喧しい目ざましを止めて、ベッドから出る。
あの夢にでてきた当時から、ずっと暮らしていたマンションの
一室は、今は誰も住んでいない。去年中三の時に、親父が会社から
海外出張を言い渡されたのがきっかけだった。
今でも、思い出す。
『竜一、お前はまだ、働く気はないんだろ?』
『……まぁ、うん……高校いきたいっつーか、働ける自信がねぇ』
『だろうな。母さんはついて来るって言ってるが、お前はどうす
るよ』
『いや、どうするって言われても、ついてくしかねーだろ』
『いいのか。お前物心ついてた時から、ずっとここに住んでただ
ろ。今回の出張、というか仕事は俺の希望でもあったからな。嫌
なら無理せず言え』
『正直ここに居たいけど、この辺りで寮のある高校は市立で高い
しな。わざわざ入りたいってトコでもないし、色んなもんのため
に、入りたくない高校受験するよりは、二人と一緒にいくよ』
正直、まだ三年は悠長に出来るだろうと思って構えていたので、
親元を離れるのが不安に思えたせいもある。しかしそう言うのは
恥ずかしいので黙っていた。黙っていたら、
『よくぞ言った。お前は残れ。そして行きたい高校に行くがいい』
『いや、格好つけんでいいから。で、引っ越しはいつよ』
『最後まで親の言うことぐらい聞け。お主に道は残されておるぞ』
『オヤジ、いい歳してゲーム被れすんの止めろよ』
『だって懐かしいじゃないか、最新機種で、当時のゲームが八百
円でダウンロードできるんだぞ。良い時代になったよなぁ。当時
は一万円もしたのに。8メガバイトの、カセットロムが』
『なんの話だよ……』
話が良く逸れるのは、遺伝だと思ってる。
まぁそんなわけで、俺は残った。やっぱり物心ついた時から、
ずっとここで暮らしていたから、離れたくはなかった。
「志望校に寮があったら、よかったんだけどな……」
十八未満だと、親からの援助があったとしても、一人暮らしは
難しい、というか普通は無理だ。義務教育が終わっていても「高
校生」という身分では、まだまだ大人とは認めてもらえない。
少なくとも学校法人様は「不許可」を言い渡してくれるだろう。
保護者代理人とか、そんな伝手でもない限り。
残念ながら、親族と呼べる人達は離れたところに住んでおり、
伝手と呼べるような間柄は、身近なところには居ないはずだった。
だったのだが。
俺は今、こんなところにいるわけだ。
扉を叩く音。軽く二回。
『―――りゅーくん、起きてる?』
「おー、今起きたとこ」
『朝ごはんできたから、降りてきてね』
「分かった、顔洗ってすぐ行くから」
『うん』
俺は今、マンションの家主であった、柏木さんご夫婦の家に
居候している。うん、半年経った今でも、にわかに信じ難い。
「……かーちゃん、とーちゃん……」
ありがとう。この空の向こう、星の瞬くどこぞにいる二人へ。心
からありがとう。いや、死んでねーけどな。
二人が、家主である柏木ご夫婦と築いた絆のおかげで、俺はこう
して地元を離れることなく、高校生活をエンジョイしています。
半年が経ち、当初のギクシャクした感じも薄れ、ふと、家族に近
い錯覚まで覚える今日この頃です。自惚れではなく、俺はまぁまぁ、
上手くやれているんじゃないかと思うわけです。
でも、だからこそ、だ。
「……いつかちゃんと、礼を返せる大人にならんとな」
俺はあくまで居候。ご厚意に甘えさせてもらっているのも、両親
のおかげ。俺はまだ、なんもできていない。しっかりと戒めなきゃ
いけない。
「うっし!」
頬を一度叩いて、気分を入れ替える。
居候の身で寝過ごすなんぞ、論外だ。
顔を洗って、勝手知りつつある階段を下り、食卓へと向かう。
「おはよう、りゅーくん」
「おはよ。……あれ、信二さんと彩華さんは?」
信二さんと彩華さんは、美香のご両親。つまり俺が世話になって
いる柏木家のご夫婦だ。二人とも普段から仕事で忙しく、帰宅が遅
い。結局昨日は、二人が帰ってくる前に就寝した。
「……仕事が長引きそうで、事務所の方に泊まり込むんだって……」
「そっか、相変わらず大変だな」
「みたいだね」
美香がそう言って、困ったように笑う。慣れているからという感
じの笑顔だった。
「それにしても……」
「えっ、なに?」
「いや、なんでもねー。朝食の準備手伝うよ。飯注ごうか」
「うん、お願い」
――それにしても、だ。
血縁関係でもない、単なる「賃貸者」の息子を引き取ってくれる
だけあって、二人は豪気な性格をしていると思う。
(一応、俺だって高一なんだけど。それなりに盛ってますよ?)
互いの両親にとっては、俺と美香が幼稚園に通っている頃から見
知っている仲だ。とはいえ、この状況はどうなんだ。
多少は信頼されてるのかもしれないが、男の俺としては、嬉しい
やら悲しいやら、正直微妙でもある。
ちらりと、お二人の一人娘を覗き見る。薄いピンクのエプロンを
つけて、菜箸を使って弁当をもりつけしている。
(……すげー細いよなぁ。同じもん食ってるとは思えん)
食う量が違うとはいえ、なんでそんなに細いんだ。首筋から背中
にかかるラインとか。健康的に伸びてんのに、華奢で折れてしまい
そうに思える手足とか。あと、微かに漂ってくるいい匂いとか。
俺の語彙だとこれが限界。一言で率直に言えば、美香は美人だ。
俺みたいな凡百の顔立ちの男なんざ、遠くから眺めてるのがせいぜ
いのはず。
最近、頻繁に「てめぇは幸運を使い果たした。そろそろ死ね。む
しろコロス」と言われているが、色んな意味で冗談じゃないなと思
う、今日この頃。
「りゅーくん?」
「あっ、悪いっ!」
「なにが? はい、しゃもじ」
「あ、うん、ありがと」
「どしたの? 顔赤いよ?」
「いやいやいやっ! 大丈夫っ! 俺はご飯を注ぐのに全力を費や
すからっ!」
「うん、炊き立てだから美味しいよ」
「いいね!」
俺はガッ! と茶碗を取り出し、ガッガッガッ! と飯を盛って
いく。挙動不審もいいとこだ。
半年もすりゃ、二人きりになっても、多少は平気に喋れるかと思
った。思ったんだが、そんなことはないぜ。
自然体で話せる機会が増えるごとに、いらんところで緊張する。
(正直なところ……)
美香は、俺のことをどう思ってるんだ。
嫌われてはないみたいだが、せいぜい、幼稚園からの幼馴染みと
思っている程度だろう。
こんな事を言うと世の女性を敵に回すかもしれないが、俺は普通
の男子高生らしく、美人に弱い。万が一にも告白されようもんなら、
迷わず頷くに違いない。
しかしこうして、二人だけで話せているだけでも「おいしい」と
満足しているのも事実だ。もしこの役が他の男に渡るなら、俺も今
の友人と同じく、「そろそろ死ね、むしろコロス」とのたまう程度
だろう。
ようするにヘタレだ。チキンハートだ。
逃げても攻撃力は上がらんがな。
「……よし、箸も並べたし、茶も入れた。後なんかすることある?」
「これおかず。お皿に乗せたから持ってって」
「おう。洗い物は後で俺がやっとくから、先に食おうぜ」
「だめ、ちゃんと手伝うよ。そっちの方が早いんだから」
「じゃあ、まぁ、食べる?」
「うん」
そして俺達は、食卓で向かい合わせになって、手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
うん、やっぱこれでいい。俺はヘタレでいいっす。
少なくとも、充分幸福なんだから。面倒を見てくれる人たちがいて、
同じ屋根の下で、綺麗な女子校生と朝飯を食っている。そんな男子高
生なぞ、レアモノだ。俺はどう見てもイケメンでないのだから、スー
パーレアと言っていいだろう。これ以上望めば、幸運値がオーバーフ
ローを起こして、天罰が下るやもしれん。まだ死にたくない。
(それに……)
あの夢。
昔、俺は彼女にとんでもないことをやらかした。
あの夢が一番ひどかったが、他にも些細なことで美香を苛めていた。
イラついて、頭を殴って泣かせたこともあったし、作ってくれたチョ
コレートを、おいしくない、固いと連呼しながら食ったこともある。
二人でマリカーを熱中していた時なんぞ、赤亀が最後の風船を狙って
飛んできたところを、強制リセットで引き分けにしてやった。
あの時の美香の顔は忘れられない。呆然としてコントローラを握り
しめたまま、暗転した画面を見つめ、そして世界的に有名なロゴマー
クが出現した瞬間に、無言で泣きだしたのだ。かわいかった。
「……我ながら、ろくでもない」
「えっ、なんていったの?」
「い、いや別に……っ!」
「もしかして、今日のご飯、おいしく、ない……?」
彼女の目が、少し揺れたように見えた。
なにやってんだ、俺は。
「ち、違うっ! 俺のことだってばっ!」
「……りゅーくんの?」
「そう! ほら、昔よく、美香のことイジメてただろ」
「う、うん……」
「なんか、今、ふと思いだして。それで俺、ろくでもなかったなって」
「たとえば?」
ここでパンツ事件を語れば、俺は下手すれば海外に飛ばされること
になる。そう判断した俺は、無難にマリカーのことを話すことにした。
「マリカー、覚えてる?」
「覚えてるよ。りゅーくん、私に無理やりクッパばっかり使わせてた
よね。上級者向けで難しかったのに」
「……え?」
「でも途中から私の方が上手になったよね。りゅーくん、普通のレー
スで勝てなくなって、ノコノコじゃ勝てるわけないだろ、なんて言っ
てた。うふふ」
「……よく覚えてんな」
「よく覚えてるよ。レースで全然勝てないから、最後に風船割りバト
ルで、リセットボタン押したよね。私、勝ってたのに。というか、勝
ち確定だったのに、ねぇ?」
「……あー、うん、そうだっ、けー?」
「そうだよ、ちゃんと覚えてる。日記にも書いたから、日付までわか
るよ」
「すいません、すいません! 本当、あの頃は調子乗っててすいませ
ん! ここを追い出されたら行くとこないんで、許して! 夕飯の後
片付けと、風呂掃除を勤しんでやらせて頂きます!!」
「うふふ、そうだよね。仕方ないよね。子供だったもんね」
言って、口元に手を添えて笑ってくれる。
あぁ、やっぱ可愛いな。墓穴掘ったかと思ったが、朝からこんなも
んが見れるとは。
「りゅーくん、覚えてる?」
「へ? なにを?」
「ワンピース捲り」
「……えっ?」
「罰ゲームだから自分で捲れって、言ったの」
(うわああああああああぁぁぁぁあっっっ!!)
思わず、飯が吹き出た。
「ふふっ、ほっぺにご飯粒、ついてるよ」
美香が目を細めて、少し首を傾げて笑ってみせる。
「取ってあげるね」
「ア、アリガトー……」
「なんでカタコト?」
「イヤ、ベツニ、トクニ、イミハ、ナイ、ヨー」
「皆には、内緒だよ?」
「ミンナニハ、ナイショ、ダヨー」
ご覧ください。皆様。
昔、バカな男子にイジメられて、なきべそばかりかいていた女の子
は、今ではこんなに強くなりました。にっこり微笑んだその笑顔は、
仲間を呼べないチキンなぞ、余裕で斬り刻む破壊力でありましょう。
「りゅーくん」
「う、うん……?」
「今でも、私の……」
左手にお茶碗。右手に箸。テレビはお天気おねえさん。
いつも通りの穏やかな朝食の時間のはず。そうだろう?
「私の……パンツ……見たい?」
「ばっ、ばかやろっ! おまっ! 俺をなんだと……!」
「りゅーくんは、りゅーくんだよ。ずっとずっと、変わらないよ」
「……それ、どういう」
「えへへ」
頼むから、そんな顔で笑うな。朝になったばかりだろ。
これから学校で、一日楽しく、お勉強するんだろー。
「りゅーくんの、エッチ」
「うるせぇ! お前のパンツなんて、み、見たいわけねーだろっ!
大体、安易にそういう事言うなよっ! なにかあっても知らねぇぞ!」
「ごめん」
「謝るなら、最初から言…………」
なにいってんだ、俺は。全然成長してねぇ。
夢に見る、あのバカな男子のままだ。
「俺も、ごめん。い、色々と、本当、ごめん」
「……りゅーくん」
それに引き換え、美香は変わった。
本当綺麗になったし、強くなった。女って怖い。
「お願い……」
「な、なに?」
なんかもう、そんな眼差しで見られたら、本当、無理。
朝だとか、柏木さんご夫婦にどう言い訳するのだとか。
そんなの、もう、どうでもよくなる。
「あのね、りゅーくん、今日、学校終わったら……ね?」
「……うん」
アレだ。ここで答えなきゃ、男じゃねーだろ。
深呼吸、深呼吸だ。大丈夫。俺は昔から、やればできる子だと言
われてきた男だ!
「美香!」
「えっ!?」
「どんなこと言われても覚悟はできた。来い!」
「ほ、本当に……?」
俺は頷いた。頷いたとも。
「あ、あのね……っ!」
「うん」
「今日、学校終わったらねっ……!」
「うん」
「モンスターファイターの、G級ガガシャンロン、やっつけに、行こ……っ!」
「………………うん?」
「素材がね、ほしーの。欲しくて欲しくてたまんないの。でもたまらないの」
「うーーーーん???」
「武器がねぇ、できないの」
「待て、あれ、三十分はかかるだろ。めんどい」
「えーっ! だってあれ、一人じゃやっつけられないよぅ……!」
「チート使え。コード教えてやるから。全素材99個になるやつ」
「ズルいのはダメっ! ちゃんと自分で集めるのっ!」
「じゃあ即死技使って……」
「ダメだってばっ! りゅーくんのバカぁ! もう知らないっ!」
「……えー?」
それから美香は、ぱくぱくぱくと、卵焼きを食べていく。
怒った顔がまた可愛いなぁと思っているんだけど、うん。
なんだかな。おかしいな。
「はぁ……」
「どうしたの、りゅーくん。食べないならちょーだい」
ぱくっと、たこさんウインナーを盗まれた。
これ以上食べられてなるものかと、俺も一口。
「おいし」
「うん、おいしい」
おいしいんだけど、溜息が零れるのは何故だろう。
理由は明白。俺と彼女の仲が進展する可能性は、限りなく低そうだから。
それでも良いと思えるのだから、やっぱり俺はヘタレです。
おわり。
ちくしょー続けよー!
「昔いじめてた」位しかないじゃないか
>>753 超GJー
面白いよー
続きあるならよろしくー
>>753 美香たんが昔いじめられてた時の事を思い出しながら凌辱エロゲでオナニーしてるシーンを幻視
758 :
名無しさん@ピンキー:2009/11/29(日) 23:25:45 ID:LbaZyKU0
続き期待
759 :
743:2009/12/01(火) 06:18:50 ID:2LnRf37R
ss投下したものです。
レスしてくださった方、ありがとう。
亀の如き鈍足ですが、続き書いてみました。
※今回もエロ描写なしの上、おにゃのこほとんど出ません。
続き書けそうなら、きちんと入れます。申し訳ないです。
760 :
743:2009/12/01(火) 06:19:56 ID:2LnRf37R
*2
(よし、できた)
シャーペンを静かに置いて、小さく一息ついた。名前よし。回答欄のズ
レもなし。それなりに解けたという実感もあるから、赤点はまずないだろ
う。窓際の席である特権をいかして、外を眺めた。運動場の周辺に生えて
いる木々は、既に葉を散らしている。
十二月。高校と、居候の生活が始まってから、九ヶ月近くが経っていた。
高校生活には溶け込めた実感があるのに、居候させて頂いている家には、
未だに慣れない。むしろ時間が経つほどに、息苦しいと感じることが増え
てきた。
(失礼なのは、承知だけどさ……)
俺は柏木さん一家の家族ではない。まだどうしても慣れないこともある。
それはこれから改善していけばいいんだが、残り二年間と少しの間、上手
くやっていける自信がない。
淡泊な言い方かもしれないが、学校という場所は結局、「他人」との交
流を深めるだけの場所だろう。でもそれが心地いいんだ。だらだら毎日を
過ごしていればいい。バカやって、中身の無い会話を続けて、お互いに笑
い合えば充分だ。けど、あの家では、そんなこと出来るはずがない。
距離を開きすぎず、かといって極端に近づかない。互いにとって居心地
の良い環境を築くのに慣れていた。だから、少しずつ距離が縮まっていく
のを感じる度に、焦るんだ。
得に美香。
あいつは昔から世話を焼きたがる。バカな俺がすぐに勘違いしてしまい
そうになるぐらいだ。単なる幼馴染みに過ぎないのにな。しかもガキの頃
にやらかした「罰ゲーム」のせいで、何度泣かせたことやら。本当に、俺
はろくでもないガキだった。
(だって、なぁ……)
普段はおとなしい癖に、時々、自覚なしに暴走する天然だ。本当に困る。
冗談でも「パンツ見たい?」とか言わないでほしい。
お前みたいな美人にそう言われて、頷きたくならない男は、ホモか特殊
性癖の持ち主だけなんだよ。
つまり見たいんだ。お前のパンツとか。その他モロモロ!
ただでさえ環境のせいで、普段からアレを我慢してるっつーのに!
(よし、落ち着け、落ち着くんだ、俺)
今は授業中である。しかも大事な大事な、期末試験の最終日だったりす
る。いらんことを考えて、やや固くなり始めているアレを、とっとと戻せ。
761 :
743:2009/12/01(火) 06:21:59 ID:2LnRf37R
「……ふぅ……」
静かな教室のなか、どうでもいいことを考えていたら、地味に危なかっ
た。誤魔化すように欠伸しているフリでもするか、と思った時だ。ちょう
ど授業終了の鐘が鳴った。
「はい、そこまでー。後ろからテスト用紙回収しろ。静かにな」
答案用紙を机の隅にどけて、黙って次の合図を待っていた。既に隣のク
ラスからは、緩んだ声が流れてくる。
『やっと終わったぜ〜。お前できたかよ』
『うっせ、ボケ。追試確定に決まってンだろーがぁ』
『ねぇねぇ、昼からどこ遊びにいく〜?』
『おなかすいたぁ〜』
そして一分も経たないうちに、今度は俺達のクラスの号令が終わる。
「日直。号令よろしく」
「きりーつ、れーい!」
『ありがとうございましたー』
「はい、お疲れさん。お前らまっすぐ帰れよ?」
試験のおかげで、学校は午前様で終了。
教師も本気で言っておらず、その言葉を素直に聞く俺達でもない。
「テスト最終日なのに、部活があるから帰れませーーんっ!!」
「へっへ、ざまぁ。なぁ、帰りにゲーセン寄ってこーぜ」
「そんな金ねーよ」
「おごってくれるなら行くけどなー」
「お腹空いたよねー、ねぇねぇ、ハンバーガー食べていかなーい?」
「いいわね。五十円割引あるわよ。一枚だけど」
「素敵っ! 貴女のこと、五十円ぐらい愛してるわっ!」
「やっす! そして分かりやすっ!!」
あちこちから、浮かれた声が連鎖する。
金欠なのは、高校生共通の悩みだ。俺も例に漏れず。
「さーて、どうすっかなー」
三日連続のテストが終わったのだ。しかも明日から土日の連休が続き、
さらに冬休みまで残り三週間。幸いなことに、冬休みはクリスマスの日と
重なっていた。まぁ、俺には関係ないことですが。
「おい竜一。なぁに憂鬱な顔してんだぁー?」
「うん?」
振り返ると、中学からの悪友である、牧田和也がいた。俺より頭一つ高
い位置から、ぽんぽんと肩を叩いてくる。
「なんだよ。俺、そんな顔してたか?」
「自覚ないんかー、ぼんやりしてたらいかんだろー。危機感もてよ」
「……いきなりなんだよ?」
付き合いはそこそこ長いのに、相変わらずよくわからん奴め。しかし言
うなれば、それが牧田の特徴だった。
「彼女、欲しいよなー」
「またそれかよ。空から降って来るのを、一生待ってろ」
「今日、午後から雨ふったっけ?」
「予報だとゼロパーセントだな」
「じゃあ無理だ。おらぁ、紹介しろー、女紹介しろぉー!」
「俺に言うな!」
762 :
743:2009/12/01(火) 06:22:40 ID:2LnRf37R
まだ、お前の方が可能性あるだろうが。
牧田は身長175を超えている長身だ。顔立ちも「そこそこ二枚目」だった
りする。するのだが、
『俺はこの身長をいかし、中学の時からバスケをやっています! 理由は
モテたいからっ! バスケをして彼女を作りたいんだぁっ!! そんなわ
けで熱く、激しく、彼女募集中ーーーーッ!!』
迂闊にそんな電波を発信する男なので、彼女はまだいない。
高校に入ってからは、まだ試合のレギュラーにもなっていないが、それ
でも中学の時から真面目に続けているだけあって、バスケも「そこそこ上
手い」との評判を耳にする。二年に進学すれば、ちゃっかりレギュラーと
して活躍してることだろう。
「牧田、お前もうちょっと黙ってたら、彼女できるんじゃねぇか」
「それは無理だな! 俺のハートがヒートしてバーニングしている限り、
俺は黙るということを知らない男だあああああぁぁぁっっっ!!」
「わかった。テストが終わってテンション高いのは分かるが、黙れ」
「おうよ」
色々と勿体ないアホである。しかし先に彼女を作られて、自慢話を聞か
せられるのも癪だよな。
「なんかさー。竜一って最近、変わったよなぁー」
「今度はなんだよ、さっきからやけにつっかかってくるな」
「いやいや、本音ですよぉー?」
「んだよ。テストの出来がマズかったのか?」
「そんなのいつものことだ。むしろ、俺は見たぜ?」
「なにを見たんだよ」
「さっきのテスト中、すっげー退屈そうに外見てたじゃねーか」
「……っ!」
内心焦る。いらん妄想をしていたのが、見抜かれていたのかっ!?
顔なじみとなったクラスメイトが集まった中、一人、幼馴染のパンツを
妄想していたのが、バレていたというのかっ!?
「真面目にテスト受けろよなー」
「い、いや! じ、じかんが! 余ったからっ!」
「マジでー? 結構ムズかったのに」
「手は抜いてねーぞ。一通り解いて見直しもやったし。まぁ、でも、うん。
ちょっと後半は、ぼんやりしてたかもしれないような気がしないでも……」
「――――む」
「うん?」
「むきょーーーーっ!!」
「ぐふっ!?」
まて。
何故に突然奇声をあげて、チョークスリーパをかましてきやがるんだ。な
まじ背が高い分、しっかり首に巻きついてきて、真面目に苦しいっ!
「やめっ! お前のはシャレにならんっ!」
「なにがあったんだよー、中学の時は、俺と成績大差なかったくせによー。
高校入ってから、いきなり賢くなりやがってぇー」
「んなことねぇよ! えぇい、離せ! ロープロープッ!」
「ちぇー」
どうにか離してくれたので、息を整える。
牧田を見上げると、眉をひそめて、俺の方を見下ろしていた。
「竜一、本当なんで、そんな成績あがったわけー?」
「普通に勉強したんだよ」
「幼馴染みと一緒にか? 一つの屋根の下で?」
「そう―――……」
しまった。余計なこと言った。
全身が石みたいに固くなる。
「ふーん、やっぱー?」
「う、うるせぇっ!」
顔が熱くなってくる。それと同時に、近くで聞き耳を立てていたらしい
連中が集まってきた。揃って、彼女という都市伝説が存在しない、一人身
の野郎どもだ。
763 :
743:2009/12/01(火) 06:23:10 ID:2LnRf37R
「……聞いたぜ?」
「つまりここまで出来たら、ご褒美アゲルってわけか」
「そんなわけあるかっ!」
「リュークン、頑張っちゃったんだー? 実にけしからん。テメェは死ね」
「けしからんことなんざしてねえっ! ……勉強は、まぁ、一緒にしたけ
どっ! 妄想全開の桃色展開なんざ起きてねーよっ!」
「あらやだ、自慢し始めましたよ」
「最悪だな、このヒモ男が」
「ヒモじゃねぇっ!」
「じゃあナニをぶら下げて、勉強に勤しんだわけー? ぶら下げるのはテ
メェのニンジンだけにしろ。この駄馬が。死ね」
「下ネタ連発してんじゃねーよっ!!」
「ほー、余裕ですな」
「モテる男は流石っすねー」
「……あのなぁ……」
場の空気に、殺意が芽生え始めている。三枚目の野郎どもが、並んで微
笑している光景は、とても不気味だ。
「―――まぁ、待て。諸君」
そして、その時だった。
深みのある重厚な声。しかし不思議と耳に馴染む声が、響き渡った。
「法隆寺……」
片手で眼鏡をなおす仕草をしながら、一人の男子が群れを割って現れる。
俺や牧田を含めた連中が全員、ごくりと息をのみ込んだ。
法隆寺 益孝。
珍しい名前のそいつは、このクラス随一のイケメンであり、学年トップ
の成績を持つ、俺達とは別世界の住人である。
身長こそ牧田には及ばないものの、170は越えているし、なにより鋭利な
顔のラインに、冷やかな目線と、落ちついた表情が似合いすぎている。
美形といっても、一言に色んなタイプがいるのだろうが、こいつはテレ
ビのタレント達とは対極にある美形だ。正に「絵になる」男だった。
「岡野竜一、貴様は、神の存在を信じているか……?」
「か……かみ……?」
いきなり突拍子もねぇ。しかしこいつに睨まれると、蛇に睨まれたカエ
ルの気分になってしまう。
「そう、神だ。運命を司る……フラグの神、だ……」
「……は?」
「フラグの神は、選択肢という形で、貴様に運命を投げ与えたのだ。岡野
竜一。貴様は特に意図することなく、その運命を勝ち取ったのだよ。世の
男共が妄想する世界の住人になる権利を……な」
「すまん、全然意味がわからん」
「うむ、本人には自覚がないものだ」
「そ、そうか……」
場の空気が、再び固まっていく。
全員、首を傾げている。だが、マズいことを聞いてしまったというよう
に、一歩後ずさっていた。
「どうした諸君、こちらの世界は楽しいぞ、さぁ、ついてきたまえ」
「や、やめろっ! 俺達を引きこむな……っ!」
「そう遠慮することなかろう?」
「ひぃーーっ!?」
法隆寺は、このクラス随一のイケメンであり、学年トップの成績を持つ、
俺達とは別世界の住人である。ただ一つ言うなれば、残念な男だ。とても
残念な男なのだ。
その男の視線が、俺をまっすぐに捉えた。
764 :
743:2009/12/01(火) 06:23:41 ID:2LnRf37R
「岡野竜一。貴様のような、完璧な男を他には知らん。貴様は他のどんな
男よりも……素晴らしい……」
「やめろっ! 真面目にキモいわっっ!!」
「ふふっ、やらないか」
「なにをだっ!?」
「まぁいい。俺はまだそっちの趣味はないからな。それよりもフラグの神
の解説を続けよう。神の加護を得るには、様々な要因があると言われるが、
そのほとんどは先天性だと言われている。我々三次元の住人には、その資
格を得ることは、そもそも出来ないとさえ言われている程だ」
「……三次元?」
「この世界の別の名称だ」
「……へぇ」
「話を続けるぞ。偉大なる先人たち――我々と同じく三次元の住人であり
ながら、自らを『二・五次元』と呼ぶ、狭間の世界に住む妖精たちがいる。
彼等の研究により、三次元の住人にも、神の加護を得られる可能性が浮か
びあがったのだ」
「……ほー」
それにしてもこの男、実に楽しそうである。
帰りたい。
「悪いけど、話長くなりそうなら、帰るぞ」
「神の加護を得られる可能性を一言でまとめると」
「無視かよ」
「ヘタレである必要がある」
「……ヘタレ?」
「そうだ。これはダメな男という意味ではなく、あくまでヘタレでなけれ
ばならない。たとえば、極限の状態になるまで、相手の好意に気がつけな
いというのが、最も王道だな。ふふ、ふふふ……モニターに映る可愛いあ
いつとの出会いが、俺の人生を変えてくれたのだ……ふふふふふ……!」
「……」
よし。悪いがトリップしている間に、帰らせてもらおう。
鞄を手に取って、一歩踏みだした時だ。
「待て、岡野竜一」
しかしまわりこまれてしまった。
狼狽する俺に、法隆寺は人さし指を突きつけ、叫んだ。
「貴様こそ、伝説のヘタレ野郎なのだっ!!」
「んなっ!?」
場の空気が、これ以上ないほどに静まりかえる。
しかし次の瞬間、全員の視線が俺に集まっていた。しかも深く頷き合っ
て。
「なるほど……ヘタレ、か……」
「ヘタレか。納得だぜ……」
「竜一、ヘタレだもんなぁ……」
「うるせぇっ! そんなこと、俺が一番わかってるわっ!!」
「自覚があるのか。これは驚いたな。二次元との相違点だ……」
「そこっ! なんかわからんが、嫌な納得をすんじゃねぇーっ!」
「では聞こう、岡野竜一。貴様は彼女のことをどう想っているのだ」
「―――!?」
再び、全員の視線が俺に集う。しかもさっきのような、どこか冗談を孕
んだ気配ではない。息を呑むような、真剣な眼差しになっている。
「ほら、答えろ。彼女のことが好きなのか、嫌いなのか」
「な、な、なっ!?」
「……(じーっ)」
「……(じーっ)」
765 :
743:2009/12/01(火) 06:24:13 ID:2LnRf37R
なんか遠くにいた女子の奴等まで、こっちを見ている。
帰ったんじゃなかったのか。おい、やめろ。俺を見ないでくれ。その手
に持った五十円の割引券を持って、仲良くハンバーガーでも食いに行けよ。
見るな、俺を見るなっ! 見ないでぇぇぇぇっ!!
「ヘタレだなぁ」
「素晴らしいヘタレっぷりだ」
「へタレねー」
「ベスト・オブ・ヘタレだわ」
散々だ。何故、こうも言われなきゃいかんのだ。
自覚もあるんで、ほっとけ!
「岡野竜一。腹を割って話そうではないか。柏木美香の容姿は確かに可憐
だ。彼女に好意のある言葉を告げられたら、大半の男は無条件に頷くだろ
う。俺は別だがな」
「お、お前の趣味なんぞ、どうでもいいんだよっ!」
「聞き捨ておけんが、まぁいい。"ふわふわマシュマロたん" の愛くるしさ
の講義は、また別の機会に聞かせてやろう」
「聞かねぇよっ!!」
「まぁともかくだ。正直傍から見ていると、彼女がお前に好意を持ってい
るのは、明らかだと思うがな」
「だよなー」
「許せんことにな」
「なんでこんな奴を……」
「幼馴染、か……」
「そろそろ死ねよ、むしろコロスぞ?」
ヤバイ。全員の目の色が変わっている。
ヒトを一匹ぐらい殺めたところで、構わんという気配だ。
「岡野竜一。実際のところどうなんだ」
「ど、どう……って?」
「告白ぐらい、されたことはないのか」
「はぁっ!?」
んな、ストレートに聞くんじゃねぇ!
昼間だぞ! 学校だぞ! 周りの目が集まってるんだぞ!
あいつのクラス、隣だぞっ!?
「ね、ねぇよっ! 俺達は、本当、只の幼馴染で……っ!」
「お前自身はどう思っているんだ。彼女のことが好きなのか、嫌いなのか。
ほら、答えてみたまえ」
「……ぁ、ぅ……」
なんだこれ。
気がつけばありふれた教室が、裁判所に早変わりしているんだが。
俺が、あいつのことをどう思ってるかだって?
そんなこと、そんなこと決まって、
「知るかっ!!」
好きでもなく、嫌いでもなく、そのどちらでもない。
俺には分からない。ただ、少なくとも、子供の頃は。
「罰ゲーム」を強制していた時は、もっと――――イジメたかった。
もっと、もっと、見ていたかった。
あいつの泣きじゃくった顔を、俺だけが見ている。
俺だけが自由に出来るんだ。ほら、もっと泣いて、叫んで、謝れよ。
愉快そうに笑っていた。本当に、ろくでもない、ガキが。
766 :
743:2009/12/01(火) 06:25:19 ID:2LnRf37R
「りゅーくん!」
その声に振り返った。俺を含めた、全員の視線が廊下の方に。
一瞬、なんて間の悪い奴だと思ったが、これはチャンスだ!
「美香! 帰るぞっ!!」
「あっ、うん。用事がなかったら、夕飯の買い物―――」
「荷物持ちなら任せろっ!!」
「あっ! ヘタレが逃げたぞっ!」
「まてこらっ! ヘタレーーっ!」
後ろから男子共の罵声が飛んでくるが、無視だ、無視。しかしよく澄ん
だ法隆寺の声だけは、どうにもならない。
「諸君、休みが明けたらバーベキューをしよう。肉は現地調達で、キャベ
ツは応相談だ――期待しているぞ? 岡野竜一」
思わず振り返ってしまうと、にやりと笑っている法隆寺の顔がある。
なんつー奴だ。まわりくどい言葉回しの意味が分かってしまって、思わ
ず焦った。そんなこと、あるわけねーだろ。
美香の両親である柏木さん一家だっているんだぞ。それにお互いの気持
ちだって、分かんねーっつってんだろーが。
そんなことで悩んでいるんだから。
俺達はまだまだ、許される大人には程遠い。
(ここまで)
>>760-766 投下乙です
しかしりゅーくんは生粋のドS鬼畜野郎ですね、ヘタレの擬態を解き放つべき
後、美香ちゃんSIDEも読みたい
GJ!
ヒロインが出て無いのに面白い!。
続き期待してます。
>>760-766 遅ればせながらGJ!
そして
>「フラグの神は、
>「神の加護を得られる可能性を一言でまとめると」
>「ヘタレである必要がある」
何という説得力!!
GJ
続き待ってるぜ
772 :
743:2009/12/04(金) 00:08:51 ID:+1glKGLG
こんばんは、ヘタレss書きです。
続きができましたので、投下します。
やらしー描写入るまで、もう少し……です
毎回、毎回、エロなくて申し訳ありません。
>>757 ネタバレは(ry
773 :
743:2009/12/04(金) 00:10:17 ID:+1glKGLG
逃げるように学校を出て、美香の買い物につきあった。
店の自動扉を抜けると、暖かい温風が流れてきて、ほっとする。
「今日の晩御飯、りゅーくんの好きなカレーにしようと思うんだけど、
いいかな?」
「もちろん。楽しみだな」
「えへへ、じゃあ、カレーにするね」
笑ってくれて、内心ほっとした。
以前、「なんでもいいよ」と言ってしまった時の、美香の落ち込み様
は酷かった。それを迂闊にも学校で話してしまい、俺自身も酷い目にあ
った。男女問わず、冷たい視線を浴びせられた数日間は、生きた心地が
しなかったな。
「海鮮カレーもできるけど、お肉入ってた方がいいよね?」
「そうだな、やっぱり肉は食いたいな」
「うん、じゃあ普通のカレーだね」
「頼んだ」
「中辛と激辛だと、どっちがいい?」
「……半々、かな?」
「うーん、ル―を混ぜるのも、いいんだけど……」
俺の第六感が、危険を感知。
「中辛で頼む」
「はーい」
回避に成功。なんでも曖昧に済ませようとするのが、ヘタレの悪い癖
だ。
(それはともかく……)
今の俺達は、周りからどう見えるんだろう。私服なら兄妹に見えたり
するのかもしれないが、今は学校帰りで、同じ制服を着ている。
あわよくば、デートとか、しているように、見えるんだろうか。
『さかな、さかな、さかな〜♪ さかな〜を〜たべ〜ると〜♪』
「…………」
しかし悲しいかな。ここは新鮮な食材が並ぶ、地元の老舗スーパーな
のですよ。奥さん。制服デートというには、少々無理がある。
もっと、高校生のカップルといえば、こう……
774 :
743:2009/12/04(金) 00:13:58 ID:+1glKGLG
『きゃっきゃ、うふふ』
『はははははっ』
『つかまえてごらんなさーい』
『まてよぉ、こいつぅ〜』
だろ? でもこの場所には、そんな要素がなに一つ見当たらない。両
肩を落として歩いていると、店の広告が目に留まった。氷の上に並べら
れた魚達が、赤く血走った眼で、俺を見ている。そんな気がした。
『このヘタレ野郎が。エイコサペンタエン酸が足りてねーぞ』
『ド、ドコサヘキサエン酸も忘れないでよねっ! バカッ!』
『ボウヤ。イコサペンタエン酸のこと、お姉さんが教えてあげるわ』
『お兄ちゃんっ! タンパク質とカルシウムも忘れないでねっ!』
「……!」
そうだ、こんなところで、諦めるわけには、いかない。
「美香」
「なぁに?」
「海へ行こう」
「えっ、今から?」
「できれば」
「……りゅーくん、今、何月だと思ってる?」
「十二月だ。あと二週間もすれば、クリスマス・イブだ」
「寒いよ?」
「寒いだろうな」
「…………」
「…………」
やってしまった。
選択肢を間違えてしまったようだ。軌道修正っ!
「そ、そういえば! 今日は! 実にいい天気だと思わないかっ!」
「そうだね、学校いく前に、お布団干してきたら良かったねぇ」
「……あぁ、そうだな……」
美香は可愛い。時々頭に花が舞うような天然っぷりも、大変可愛い。
だが、今だけは悲しかった。素直に「遊びに行こうぜ」と言えない俺自
身は、もっと悲しいわけだが。
「美香、その、さ。一度、家に帰ってから―――」
「りゅーくん。帰ったら、ポケミョン集めるの手伝ってくれる?」
「ポケミョン?」
「うん。もうちょっとで、図鑑が全部揃うんだ〜」
「あぁ……面白いよな、ポケミョン……」
「リスチュー、かわいいよね。絶対進化させないよ」
「あぁ、俺は……ゼリリンが可愛いと思うよ……」
今日も流される俺。なんというヘタレ。
法隆寺が、三次元がどうのこうの言ってたが、それならばこの後どう
すればいいのか、奴は知っているのだろうか。
一体、フラグの神とやらは、どこにいるんだ。
(いや……何かに頼ったところで……)
所詮、ヘタレの域をでないのだ。ならばこの場所で、さりげなく、男
らしさをアピールすればいいだけのこと。少々ハードルが高いような気
もするが、俺ならやれる。やればはずだ。
「美香――」
「りゅーくん、買い物カゴ、カートに乗せて持ってきてくれる?」
「あ、うん。わかった」
颯爽と、買いものカゴをカートに乗せる。颯爽と美香の下へ戻り、颯
爽と二人並んで歩きだす。
「りゅーくん、次、こっち」
「はいはい」
カラカラカラ。
俺は買い物カートを押して、ついていく。
775 :
743:2009/12/04(金) 00:16:26 ID:+1glKGLG
「えーと、買うのはこれと、これと……」
「……」
「はい、次はこっち〜」
「お、おう……」
「これとこれ。次はこっちだね」
「……あ、うん、オッケ……」
「るんるる〜♪ 次はタマネギです〜♪」
「はやっ! ……ちょ、待っ……!」
なんという手際か、この幼馴染。無意識の領域で、最先端のルートを
選択してやがる。
思えば美香は、小学生の頃から一人で、料理を作ってきた経験と知識
があるのだ。対して俺は、食に関する買い出しは、全て母親に任せきり
だった。
正直言うと、一人でスーパーなんぞに入った経験は、ほとんどない。
下手すると、一度もないかもしれない。
「美香っ!」
「えっ?」
「ちょっと待って。このカート、ちょっと動かしにくいから」
「あっ、ごめんね。速すぎた?」
「そんなことない。そんなことはないが、もう少しだけ、ゆっくり」
「うん、ごめんね」
カラカラカラ……。
少し寂しげな音を奏でる、買い物カート。
俺はよくやったよ。ただ、ちょっと相手が悪かったよな。
「はぁ……」
躾のよく出来た忠犬のように、彼女の後をついていく。
自分が一人、空回りをしているのが分かって、とても空しかった。
探索すること、およそ十分。腕時計を眺めると、ちょうど昼食時と重
なっている時間帯だ。
周辺には、買い物に来ているおばちゃん連中や、総菜目当てに訪れた
のだろう、スーツ姿の男も見える。そして一度は珍しそうに、俺達の方
を振り返っていた。
(まぁ、そうだよなぁ……)
平日の昼間に、学生服を着た男女が食材を買い込んでいるのは、珍し
い光景なんだろう。美香が美人だからというのも、あるんだろうけど。
「りゅーくんって、昔からカレー好きだよね」
「うん、まぁ……美味いじゃん?」
「小さい頃、口の周り、カレーでベタベタにしてたよね」
「忘れろよ」
「やだよー」
女子と二人、仲良さげに話をしている。それだけで優越感を感じてし
まう。内容が、カレーのことだったとしても。
結局、俺が一人、浮かれているだけってのは分かってる。
美香は基本的に、誰とでも話を会わせられるタイプだ。自分から積極
的に話しかけることはないが、話を振られると、きちんと最後まで付き
合ってくれる。それ故に、男子連中は、彼女を高値の花として見てしま
うんだろう。
実際、美香が告白をされたという噂は、よく耳に入ってくる。そして
その全てを、断ってるということも。
※(なんか変な改行が入ってしまうorz 773読みづらくてすいません)
776 :
743:2009/12/04(金) 00:19:07 ID:+1glKGLG
噂には『俺が……』というのもあるが、所詮、根も葉もない噂だ。
俺に、特別なものなんて、無いんだ。
凡百の容姿に、普通の知性。とりわけ好きだと言えるものはなく、ど
こかのスパイ映画のように、突出した能力を隠してもいない。
なんとなく日々を過ごしてきた。珍しい要素があるとすれば、異性の
幼馴染がいるだけ。でもそれは間違いなく、高校を卒業すれば切れてし
まう縁だろう。むしろ今まで続いてきたのが、不思議なぐらいだ。
「りゅーくん」
「はいよ」
手招きされて、俺もそっちへ向かう。ちょうどすれ違ったスーツの男
が、美香のことを、ちらりと横目で追っていた。
彼女の容姿は、男の視線を否応なく集める。高校を卒業するまで、美
香に恋人がいないというのは、想像がつかない。
「えへへ、ジャガイモが安いね」
「買ってくか?」
「うんっ!」
ほくほくと、嬉しそうにジャガイモを持って歩く美香。こんな姿も可
愛い。けど、俺だけの物じゃない。きっといつか、釣り合う男が現れて、
この笑顔も、そいつだけのモノになる。
(なに考えてんだ……こんな時に……)
気持ちを切り替える。
今こうして、美香の隣を歩けている。それで満足だ。ヘタレで一向に
構わない。
「うーんと、後は……」
「肉、まだ買ってなくね?」
「そうだね、お肉で最後かな」
「なら、それ買って、レジ行こう」
カラカラカラ……と、カートを押しかけた時だった。
「ごめんね、りゅーくん」
「なにが?」
「お買い物に付き合わせちゃって。助かっちゃった」
「俺はなんもしてねーよ。むしろ飯作る手間が一人増えてる分、美香の
方が大変だろ」
「そんなことない」
珍しく強い言葉だった。驚きはしないが、つい、その横顔を覗き込ん
でしまう。少し赤くなった顔で、こっちを見ていた。
「りゅーくんが、おいしいって、言ってくれるから……」
「うん、本当に美味いよ。世辞じゃなくて、美香の作る料理は好きだ」
「……っ!」
「どした?」
比喩でなく、美香の顔が突然、真っ赤に染まった。
もしかして、あれか。新型インフルとかいう。
「おい、大丈夫かよ」
「あっ!?」
片手を、美香の額に添えた途端、その熱が掌に伝わってきた。
「あちぃ。お前、具合悪いんじゃないのか」
「そ、そ、そそそそそそそそっ!」
「そ?」
「そんなこと! にゃっ……っ!!」
「……アホ」
舌を軽く噛んでしまったらしい。
俯いて、きゅっと目を閉じる。それから少しだけ、ぺろりと舌を出し
て、すぐに「しまった」という顔をする。
「や、やらぁっ!」
反射的だったんだろう。顔をさらに赤くして、その舌を引っ込めた。
俯いてしまって、顔を合わせられない。
「具合悪いなら、俺が買っておくから。美香は先に帰ってろ」
「だ、大丈夫……っ! 具合が、悪いんじゃないから……っ!」
777 :
743:2009/12/04(金) 00:22:06 ID:+1glKGLG
「無理すんな」
「聞いてよっ!」
「はい」
反射的に口を噤んでしまう。居候になって九ヶ月、俺の忠犬スキルは
最高レベルに達している。
「りゅーくん、自覚ないんだからっ!」
「……は?」
俺、なんかしたか。別になんもしてねーぞ。
今だって、美香の身体を心配して、熱を確かめてるだけだし。
それにしてもこいつの耳朶、柔らかそうだなぁ……。
「ひゃっ!?」
「ここも熱いじゃん、普通じゃないぞ、この熱」
「ふ、普通じゃないのは、りゅーくんだよぅ……っ!」
「…………ぁ」
普通じゃない。
その言葉が、ざくっ、と。
不意をつかれたが、大丈夫だ。顔には出さない。
「……あ、あの、ごめん。手、離して……」
「はい」
美香の顔から手をどけて、やっと気が付いた。
あぁ、なるほど。これはアレだ。セクハラじゃないか。
「すまん、訴えないでくれ。俺は本当に、お前のことを心配してただけ
なんだ。けっして、不埒な事を考えていたわけじゃない」
「う、うん……っ!」
「美香。俺にはまだ、公園でダンボールを被って、ミッションをこなせ
るほどのハングリー精神はない。だから……ごめんっ! なんでもする
から、許してくれっ!!」
ご町内の皆様の目があろうとも、土下座も辞さない覚悟である。
「……りゅーくん」
「はい!」
「なんでも、してくれる、って……ほんと?」
「はい!」
「じゃあ、お願い……します……」
「はい!」
「……」
「はい?」
それに、なんの意味があるのか、わからなかった。
美香は赤くなった顔を逸らしつつ、小さな掌を差しだしている。
「繋いで……」
「へっ?」
「手を、繋いで……」
本当に微かな声。どうにか聞こえるぐらいの声だった。
「美香……?」
「い、いやだったら……ごめん……」
「あ……」
きっと、俺の顔も赤くなっている。油断すると口元がにやけてくる。
想像せずとも、気持ち悪いことは明白なので、どうにか片手で覆って隠
す。
778 :
743:2009/12/04(金) 00:23:24 ID:+1glKGLG
まともに顔が見れず、明後日の方を向いて、言うしかなかった。
「……カート、返してくるわ」
「えっ?」
「ほら、片手運転は危険だから。カゴだけ持ってりゃいいだろ。あとは
肉だけだしな」
「そ、そうだね……」
「すぐ、戻ってくるから」
「待って。私もいく」
カラカラカラ。
少し寂しい音のする、買い物カートを押していく。
隣には、美香が並んで歩いていた。なにを話せばいいのか、思いつか
ない。
「……今日の夕飯、カレーだったよな?」
「そうだよ。お昼に食べるお惣菜も、買っていこうね」
「忘れてた。そういえば、昼飯まだだったな」
「ねぇ、りゅーくん」
「なに?」
「どこかで……食べてく?」
「いいね、奢るよ」
「ダメ。ちゃんと半分にしなきゃ、行かない」
「了解」
一つ、一つ、何かを確認するように、歩いていく。
不意に、これでいいんだと思えた。
彼女の掌は、温かい。
「……久しぶりだね」
「だな」
言葉少なくとも、言いたいことが分かってしまう。それが嬉しい。
手を繋いだのは、夢に見る、あの頃以来だ。
(ここまで)
779 :
757:2009/12/04(金) 04:51:40 ID:Z5hMqjOy
>>772-778 え、ネタバレだったの?
おじさん期待しちゃうよ?
まぁ、それはともあれ投下乙です!
乙です。
続き期待っす。
781 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/05(土) 00:38:50 ID:yyaNuwdY
昔ながらの男尊女卑家庭で育った気弱っ子
鈍感とヘタレの違いについてご教授願いたい
相手の想いに気付かないのが鈍感
好きなのにモーションかけられないのがヘタレ
でないの?
>>777 昔の罰ゲームでMが開花してる美香に期待
ドSで鬼畜な変態野郎であるりゅーくんの今後の奮起にも期待
美香ちゃんが可愛い
勇気を出して、誰かに見られてないかとびくびくしながら傘を隠し、
勇気を出して、傘が無くて困ってる男に傘を差し出し「一緒に、かえろ?」。
そんな策士系気弱っ子。
「…………なあ、それ俺の傘なんだが」
(まちがえたっ!?)
恋に一途な腹黒い気弱美少女ですね
気が弱いから謀略に走らないと安心できない、と解釈すれば萌えなくもない
普段は普通なのに策略が1つ、また1つと破られる毎に気弱な本性がジワジワと
謀略系気弱娘と言えば、
主人公の弱みを握った気弱娘がそれをネタに脅迫して
一緒にお弁当したり一緒に登校したりするって漫画があったな・・・
>>743 です。
続き書けましたので、投下いたします。
これ含めて、あと二回で終わる予定です。
最後の方にえちぃシーン入ります。エロ薄くてごめんなさい。
買い物の荷物が邪魔になるので、家に帰って片づけてから、もう一度
外にでることにした。
「やっぱ、十二月にもなると、さみぃよな」
部屋に戻って、普段から着ているジャケットを羽織る。下はジーンズ
に履き替え、首元にはマフラーを巻いておく。財布を持ったのを確認し
たところで、部屋をでた。
「美香。玄関先で待ってるからな」
「あ、うん。すぐいくね」
返事を聞いた後で、階段を降りて外にでた。
今日は快晴で、十二月にすれば暖かい。むしろマフラーを巻いている
と、暑いぐらいだ。
しばらくぼんやりしていると、玄関の扉が開いた。
「お、おまたせ……」
「……?」
美香が顔をだした時、返事が出来なかった。その姿に目を奪われたか
らだ。
黒のロングブーツと、膝上までしかない黒コート。襟元が大きく開か
れているうえに、コートの裾が異様に短い。着やせする美香のボディラ
インを、艶めかしく強調していた。
(……胸、でけぇ)
ゴクリと、生唾を一つ。慌てて弁明する。
「め、めずらしいなっ! お前が、そんな服着るのってさ!」
「こ、これね……前の日曜日に、買ったの……」
身を捻って、恥ずかしそうに俯いた。「コツ、コツ」と、履いた黒ブ
ーツの爪先で、庭の飛び石を軽く叩く。
やめろ、脚動かすんじゃねぇ!
後ろに回りこみたくなるだろうがっ!
「お、お母さんがね……これぐらいの方が、いいよって……」
彩華さん!
失礼なことは承知だが、今だけは「グッジョブ!」と、叫ばせて頂き
たい。その衝動を必死に抑え、脳内だけで親指を立てておく。
「……や、やっぱり似合わない……よね、着替えてくるねっ!」
「まて、待つんだ!」
「……えっ?」
「似合ってるから」
「ほ、ほんとう……?」
深く頷いた。そして思わず言いかけた。
でも寒くないのか、その格好は。
「……いや……」
言ったら、男として失格だろう。黒ブーツとコートの間には、男子連
中から『女子の本気』と称されている、素のふとももが見えているのだ。
健康的な肌の色が、眩しいのだよ。
これは隠すべきではない! 異論は認めん!
「美香」
「ふぇ?」
普段から控え目の格好が多いのに、美香の『絶対領域』を拝める日が
やってくるとは。彩華さん。本当にグッジョブです。今だけは「お義母
様」と呼ばせて頂きたい。
「好きだ」
「……えっ!」
「大好きだよ。君の、その服が。とても素敵だ」
「……あ、ありが……と……ぅ……」
「うん」
俺はもう一度、深く頷いた。
小物を入れたバッグや、ネックレスなどの貴金属。美香を飾り立てて
いる物もまた、それなりの値段がするのだろう。
二人で出掛ける時のため、そんな格好をしているのであれば。
(死ねる……っ!!)
天罰が下されても、空からメテオが四回降り注いできても、今なら後
悔はしない。
そのせいか、ヘタレな俺が、前にでた。
「り、りゅーくん……?」
「寒いだろ、その格好」
「え……?」
「貸してやるよ」
「はわわっ!?」
美香の声を無視して、自分のマフラーを解いた。彼女の首元へと巻き
つけてやる。相当にキザったらしいことをしているのが分かったが、一
度動いた手は、止まらなかった。
「あ、あの、えと、その……っ!」
「苦しくないか?」
「へ、へいきっ!」
「お前さ、そんなに身体強くないんだし、無茶すんなよ」
「うん……ありがと……」
「っ!」
マフラーに手を添えて、上目遣いに覗きこまれた。
自我が壊れていくのが分かる。よろしくない妄想が、頭の中を駆け巡
る。理性が叫ぶ。『落ちつけ、落ちつけ、落ちつけっ!』
「りゅーくん……」
「なに?」
「お願い……クリスマスも近いから……その……」
「うんうん。もうすぐだよな、クリスマス」
「よかったら……」
「うんうん」
「……ク、クリスマスケーキ……予約、していい……?」
「いいよ」
「それから、お父さんとお母さんへのプレゼントを、ね?」
「うん」
「探すの……手伝って……くれません、か……?」
「〜〜〜〜ッ!!」
あぁ、畜生。この天然娘っ!
世の野郎どもが望む解答と、微妙にズレ過ぎているっ!
いっそ、強引に奪ってやろうか。
「ダメ……?」
「あ―――」
よせ、やめろ。そんな綺麗な眼差しで見ないでくれっ!
最後の一言に、行動に、踏みきれねぇーーーっ!
「美香っ!」
「うん」
「俺でよければ、付き合うよ……その……プレゼント、買いにいくの」
「ありがとうっ!」
「……ふっ……」
はいはい。どうせ俺はヘタレですよ。ヘタレキングですよ。でも、こ
の幼馴染みの天然さも罪だろう。可愛さと同居しているのだから、本当
に性質が悪い。
「プレゼント買うなら、いくらか持ってた方がいいよな」
「うーん、そんなに……」
「一応、カード持ってくるわ」
「……えっ? だ、大丈夫っ! そんなに高いもの買わないよっ!」
「気にすんな。食費は固定で、光熱費も支払ってもらってるんだしさ。
こんな時じゃねーと、お礼かえせないし」
「そんなことない。お父さんもお母さんも、りゅーくんがいるの、むし
ろ楽しんでるもの」
「でもなぁ……」
「それに、りゅーくん。普段から遠慮してるんだから、ダメだよ」
「へ?」
美香が、じっと顔を覗き込んでくる。逸らせなかった。
「りゅーくんって、娯楽になるような私物を、ほとんど買ってないでし
ょ? 部屋、物がほとんど増えてないもん」
「いや、べつに……」
「息苦しかったり、するよね? 私がこんなこと言っちゃダメなのかも
しれない。でもね、りゅーくんにはね、もっと、自由にして欲しいなっ
て、思ってるんだ」
「平気だよ」
「そんなはずない。りゅーくんの幼馴染だから、わかるもん」
「……」
目が空を泳ぐ。耐えきれず、認めてしまった。
居候を初めて九ヶ月。模範的な「いい子」を演じることに、気苦労を
感じていた。だけどそれは、勝手な思い込みと行動による結果に過ぎな
い。それも分かっていた。
「りゅーくんはね。もっと自由に、好きな物買って、食べて、散らかし
てくれていいんだよ。自分で許せないなら、私が許してあげる」
「ありがとな……」
「うぅん。ねぇ、りゅーくん」
「なに?」
「私、生意気なこと言ったから……罰ゲーム、して?」
「勘弁しろ」
「えへへ……」
美香が笑う。その顔を見て、思った。
やっぱり自由になんて、できないじゃないか。
「―――それじゃ、飯食いに行こうぜ」
「うんっ!」
嬉しそうに、腕を掴まれた。外してしまうわけにもいかず、彼女の歩
みに合わせて歩く。心の中で、何度も、何度も、繰り返した。
『手ぇ、だすなよ』
抑えておかないと、簡単に、一線を越えてしまう自信だけが、ある。
幼馴染みとか、居候とか、そんなの関係ない。
好きだった。ずっと、好きだった。
はやく、壊してしまいたい。
家に帰ってきてから、しばらくは居間のソファーで、ぐったりしてい
た。緊張の糸が解けたら、頭が上手く回らん。
「あー……」
幼馴染みと昼飯食って、クリスマスケーキを予約して、ご両親へのプ
レゼント(美香はセーターとネクタイ、俺は小さな置き時計にした)を
買っただけなのに。
「……ぁー」
失敗はなかったか。次の機会があれば、反省点はあるか。
そんなことばかり、一人でうだうだ考えていた。
本当ならここで、「彼女」に電話の一本でもすればいいのだろうか。
「りゅーくん、今日は本当に、ありがとう」
「いいって。俺も楽しかった」
「よかった。それじゃあ、ご飯の支度するね」
「手伝うよ」
「お願い」
ただ、彼女は、同じ屋根の下にいる。
いつもの私服に着替えた美香に続いて、台所に立つ。緊張した。
「なにすればいいかな?」
「ちょっと待ってねー」
花びらが描かれた、薄いピンクのエプロンだ。昼間の艶っぽい気配は
もう、完全に消えていた。『女は怖い』と告げた、先人たちの言葉が今
なら分かる。
「りゅーくん、お野菜だしてもらえる?」
「おぅ」
言われた通り、食材を冷蔵庫から取りだす。ジャガイモ、ニンジン、
タマネギ。ついでに肉もだしとくか。今日の夕飯は予定通りカレーだ。
「じゃあ、まずは皮剥きしよっか」
「ういっす」
美香からピーラーを受けとって、流しに二人並ぶ。野菜を水洗いして
、ジャガイモやらニンジンの皮を剥いていく間、お互い無言だった。
(あー、地味に難しいんだよな……これ)
手慣れてない俺は、ちまちまと細かいクズを積もらせていく。対して
美香は、実に手際が良い。
「やっぱ、上手いよなぁ」
「これぐらいなら、すぐできるよ」
「そんなことねぇよ。見ろよ、俺のなんか、こんなだぞ」
「りゅーくんって、昔から不器用だよね」
「ほっとけ」
眉をひそめた振りをして、再び手元に集中した。楽しそうな顔が可愛
くて、気をつけていないと、指の皮まで剥きかねない。
シュル、シュル、シュル。
ある程度の数をこなすと、慣れてきた。
美香がまな板と包丁をとりだして、今度は野菜を切っていく。タン、
タン、タン、と、その音が不思議と心地良い。心地良くて、つい声をか
けてしまう。
「美香」
「なぁに?」
「カレーってさ、野菜切って、軽く炒めて、水沸かした鍋に突っ込んで
、次に肉入れて、最後にルーを溶かしてやったらいいんだよな?」
「……うーん、とね」
美香の手が止まり、音も止む。
困ったように小首を傾げて、俺を見た。
「間違ってはないよ。でもね、料理は大体じゃおいしくならないの。愛
情と努力だけでもダメ。料理は知識だよ。どれだけ勉強したかで、すっ
ごく味が変わってくるんだからね」
「ほ、ほう……?」
「隠し味なんかも大事だよ。でもね、なんでもかんでも入れていいわけ
じゃないの。多すぎても、少なすぎても、ダメ。さじ加減が少し変わっ
ちゃうだけで、全然、味が違ってくるんだよ」
「なるほど、奥が深いな」
「うん」
にっこり笑って、また野菜を刻んでいく。天然の癖に、妙なところで
細かいやつだった。勉強も理数系の方が得意だったりする。まな板の上
の食材は、彼女の計算によって刻まれているのかも。
「これ切ったら、材料炒めるからね。その間に、お米洗ってもらえるか
な?」
「よっしゃ、任せろ」
米櫃の前で屈み、ざざーっと、米をだす。
「カレーだから、量あった方がいいよな。えーと……五合ぐらい?」
「そうだね〜。えへへ」
「どした、なんか楽しそうじゃん?」
振りかえると、口元に手を添えて笑っていた。正直、その仕草だけで
も、かなりやばい。なにがやばいって、ほら、今、俺は屈んでるわけで
すよ。角度的に、見上げるしかないじゃないですか。
美香は、スカートを履いておりましてね。エプロンが邪魔なんですが
、その横から見える脹脛が、実に艶めかしいわけですよ。
スカートと、ソックスの間にある、絶対領域、再びですよ。
パンツが見えそうで見えない。
「りゅーくん?」
「―――い、いやっ! 米の量、間違えてたかなと思ってっ!?」
「ううん、それでいいよ。あのね、りゅーくんが来てから、ご飯が沢山
減るのも、慣れっこになってきたなって、思ったの」
「……えっ、俺、もしかしなくとも、食い過ぎ?」
「ごめん、そうじゃなくって。ほら、お父さんも、お母さんも、基本的
に小食でしょ。だから―――」
「おかわり、一杯までにした方がいい?」
「うぅん、もっと食べてもいいよ。……えぇと、あの、お買いものの時
にも言ったけど、りゅーくんがおいしいって食べてくれるから、嬉しく
て……だから……その、ね?」
美香の顔が、どんどん赤くなっていく。
夕暮れの日差しが窓から入ってきて、とても綺麗に写った。
目が離せない。
「気がつけば、側にいてくれる。それを当たり前みたいに思ってた。幼
稚園に通ってた時は、ずっと、一緒にいたよね」
「……あー、うん」
たまらん。ふとももたまらん―――じゃなくて。
美香が楽しそうに紡いだ過去は、俺にとって、唾棄すべきもの。
思い起こせば、美香の泣きじゃくる顔が浮かぶ。
その隣でせせら笑うクソガキ。嬉しそうに、彼女の頭を撫でている。
『よしよし』
『……ひどいよ、りゅーくん。どうして、イジワルするの……?』
『だって、お前の泣き顔が、見たいんだもん』
最低だ。胸が、抉られるように痛い。
ガキでありながら、美香の泣きべそを見るのに、快感を覚えていたん
だ。こいつは一生、俺が泣かせてやらなきゃ気が済まないって、本気で
思っていた。
「りゅーくんと一緒だった。ずっとずっと、一緒だったよね」
「うるさい」
「えっ?」
「……いや、ごめん。なんでもない」
俺は、昔から、どこか、歪んでる。
ガキの時に自覚できたのは、本当に幸運だった。思いだしたくないの
に、過去を蔑む限り、忘れられない。フラッシュバックするように、目
の前に広がっていく。
『――――にゃあお』
うるさい。
黙れよ。クソが。
タン、タン、タン。
シュル、シュル、シュル。
『にゃあお』
記憶の中から、一匹の黒猫が現れる。
野良の、汚い黒猫だ。ガリガリに痩せていて、いつも後ろ脚を引き摺
っていた。美香の家のブロック塀にさえ飛び移れない。じたばたと足掻
いては、無様にアスファルトの上に転がり落ちるような、まぬけだ。
『にゃあお……』
当時、その声が、心底憎かった。
美香の家で遊んでいると、庭先から、彼女を呼ぶのだから。
『りゅーくん。ねこさん、またきてるー』
『ずうずうしい奴だな。ここ、美香の家なのに』
俺は、自分だけが例外のように言う。
『あのね、おかーさんがね。かってもいいって。だから――』
『やめろよ、あんな、汚いの』
『えー、でもでも、かわいいよ?』
『可愛くねーよ。お前、俺の言う事、きけねーの?』
『……あぅ』
『罰ゲーム、一つ残ってたよな。美香、絶対あの猫と喋るなよ。それか
ら俺の前で、猫のこと話すな。話したら、絶好だ』
『やだっ!』
『嫌だろ? 俺の言う事、聞けるよな?』
『…………は、い……』
女の子の顔が曇っていく。偉そうな俺の言葉に、返事ができない。そ
れを見て、満足げに頷いた。
『よしよし』
小さく揺れる頭を、撫でていた。
数日後だった。
幼稚園からの帰りだった。
運送しているバスが、道の途中で止まった。
一匹の黒猫が、死骸となって道を塞いでいた。
すぐに、あの猫だと分かった。
気持ちが、良かった。最高だった。
『あぁ、よかった。ウザいのが消えた。
美香は、これで、俺のだ』
愉快でたまらなく、笑っているクソガキ。
猫が相手でも嫉妬してしまうぐらい、大好きな女の子がいた。
その子が、本当に悲しむ顔を見て、心の底から喜んでいた。
始めて、自分が、歪んでいることに気がついた。
『―――――――――!!』
美香は綺麗だ。泣きじゃくっている、その顔が良い。
大粒の涙が、ぽろぽろ、零れ落ちる。夕日によく映えた。
心に焼きついたんだ。大人でさえ怯むような、血に塗れた野良猫を、
愛しそうに抱きしめる少女の姿が。
夕焼け空の下、何度も、繰り返し、叫んでいた。
『おいしゃさんを、よんでください。
たすけて。ねこさんを、たすけて。
しんじゃう、しんじゃう、しんじゃう……』
タン、タン、タン。
シュル、シュル、シュル。
針が巻き戻るように、視界はまた、元の世界へ戻っていく。
あの時から変わらず、さらに綺麗になった彼女が、見ている。
私は君のこと、ぜんぶ知っているよ。そんな風に微笑んでいた。
「楽しかったよね、あの頃。今も楽しいけど」
「……そんなに、いいことなんざねぇよ」
「えっ?」
「確かにさぁ、ガキの頃はよく一緒にいたけど。お前、いつも俺に酷い
ことされて、泣いてばっかりだったろ?」
「それは、そうだけど……」
「だろ? お前はちょっと、過去を美化しすぎなんだよ」
「……そんなこと……」
やめろ、やめろ、やめろよ。
ガキみたいに不貞腐れて、格好悪ぃ。
愛想よく笑って、流しておけばいいものを。
「……でも、イジメられたのだって、大切な……」
「忘れとけ。俺は後悔してるんだから」
「……りゅーくんは、優しいよね……」
「は?」
美香の言う事が、理解できなかった。
「小学生になってから、りゅーくん、私にも、他の誰にも意地悪しなく
なった。誰かが困ってる時には、こっそり手を貸してあげてた。私、知
ってるよ」
「誰だってするだろ。そんなこと」
「中学生の時だって、いじめられてた子を庇ってた。代わりにいっぱい
殴られたのに、仕返ししないで、じっと耐えてた」
「……それは、俺がヘタレだから……」
やめろ、やめろ。
お願いだから、もう、やめてくれ。
「うぅん、違うよ。りゅーくんはヘタレじゃない。そういう風に自分を
作って、周りに見せてるだけだよ。りゅーくんは、ヘタレじゃなくて、
怖いんだよ。誰かを傷つけるのを、すごく怖がってる」
「あのなぁ……」
「見てたから。先生呼びにいって、戻ってきた時。りゅーくん、相手を
思いっきり睨んでた。手を握り締めてた。だけど、相手のこと絶対殴ら
ないって顔してた。殴れなかったんじゃ、ないよね?」
胸が痛い。
頭がチリチリ痒い。恥ずかしさと、後悔と。
美香は本当に天然すぎる。恥ずかしい台詞が、よくもまぁ、スラスラ
でてくる、でてくる。
「あの時、私ね……」
「もういいよ、カレー作ろうぜ」
「……りゅーくん」
「んだよ」
いつもならこの辺りで「そうだね」とか「ごめんね」とか言って、会
話打ち切りだろ? それなのに今日は、なんでそこまで踏みこんでくる
んだよ。俺達、ただの幼馴染みだろ。
「りゅーくんは、格好いいよ」
「……へ?」
「誰よりも、格好いい」
「ねーよ。俺は、ただのヘタレだって」
「違うもん。りゅーくんは、ヘタレじゃないもん」
「あぁ、そうかよ。ありがと」
「どういたしまして」
「――――ッ!」
やば。「線」が、一本切れた音がした。
腹の底から、感情が迫りだしてくる。
立ち上がって、正面から彼女を睨みつけた。
「お前さぁっ! さっきから、なにが言いたいわけっ!」
「えっ!?」
「なんか言いたいことがあるんだろ。遠まわしにネチネチと、正直、ウ
ゼェ!」
「…………あ、ごめ―――」
「謝るなよ。それより言いたいことがあるなら、ハッキリ言えよ」
「……わかった、言うね」
「おう」
息を、一つ吸い込んで。
唇が、動いた。
「私は、りゅーくんのことが、好き」
すっと、熱が冷めた。
声がでなかった。間の抜けた返事すら、できなかった。
これ以上ないぐらい冷静に、真っ赤に染まった顔を前にした。
柏木美香が、エプロンの裾を強く握りしめて、俯いている。眼元には
微かな涙が浮かんで、揺れていた。
「りゅーくんのこと、ずっと、ずっと、好き……です……!」
伏し目がちな瞳が、少しだけ持ちあがる。
今すぐに、抱きしめてやりたいと思った。
「返事を、くれませんか……」
身体が熱い。血が滾るように燃えてる。喉がひどく渇く。
まっすぐな瞳。ようやく心臓が動きだす。
「……あのね、今日のテストが終わった時ね。りゅーくんの教室での話
、聞こえてたの……」
「法隆寺たちに絡まれてたやつか」
「うん。りゅーくん……私のこと、好きか、嫌いか、分からないって、
言った……」
「言ったよ」
「あれ、本当……?」
「本当だ」
「……他に、好きな子いるの?」
「いねーよ」
「じゃあ……」
目の前の女の子が、懸命に言葉をだしているのが分かる。痛いほどに
通じてくる。それなのに、俺は今すぐこの場を逃げだして、耳を塞いで
しまいたかった。
「じゃあ……私じゃ、ダメ?」
身体が震えている。今にも倒れてしまいそうだ。
「私、りゅーくんのこと、好きだよ。ずっと、ずっと、好き」
「そっか」
おい、なんだそれ。
いかにも「わかってましたよ」的な、口ぶりは。
お前だって、ずっと好きだったくせに。
これはチャンスだぞ。なんつーか、勝利確定みたいなもんだろ。人生
に一度訪れるか否かの、千載一遇のチャンスだろーが。
「りゅーくん……私ね、結構、告白とかされるの」
「知ってるよ」
「とっても嫌な言い方するとね。本当は、煩わしいよ。だって、私、好
きな人いるもん。りゅーくんが好きなんだもん。でもね、りゅーくんの
気持ちが分かんないから、言えないの」
「……」
「これから、男の人に告白されたら、私、言いたい。りゅーくんの彼女
だから、貴方とはお付き合い出来ませんって。そう言いたい」
「……うん」
アホか。なにが「うん」だ。「はい」って、答えろよ。
本当、俺はどこまでヘタレなんだ。
「岡野竜一さん。私を、貴方の……彼女にしてくださいっ!」
「ごめん」
―――あれ? なんでだよ。なに言ってんの。
一瞬、なにもかも、止まってしまった気がした。
「!!」
びくりと震えた美香の両肩。
俺まで、同じ挙動をしてしまいそうになる。
なんでだ。なんで。本当に、なんでだよ。
「いや……」
心臓が、早く謝れと叫んでる。
まだ間に合うって。「今の間違い」とか「照れちゃって」とか言えよ。
最悪、時間もらって、覚悟決め直せってば!
ヘタレなら、ヘタレらしく、言い訳の言葉があるだろう!?
「りゅーくんは……私のこと、今でも、キライ……?」
「違う。そんなことない。絶対にない」
「返事、あとからでも、いいからっ!」
美香の顔が持ち上がる。縋るような眼差しが向けられる。
それだけで背筋が震えた。気持ちがいい、と思った。
この目が、これからも真っ直ぐに向けられたら、どれだけ最高なんだ
ろう。俺だけが、彼女を壊してやれる。ずっとずっと。だから、
「―――ごめん、無理だ」
「どうして……?」
「俺は、自分のこと嫌いだから」
「え?」
「美香は綺麗だからさ。俺なんかより、いい相手がいるよ」
「……それ、本気で言ってる?」
「本気だよ」
言ってしまった時だ。美香の眉尻が、思いっきり釣り上がった。
彼女に睨まれている。初めてだった。
「バカッ!!」
怒鳴られた。当然だった。
目から、涙が散った。いたたまれず、同時に気持ちいい。
彼女を泣かせたのだという快感に、溺れそうになる。
「バカッ! りゅーくんの――――ごめん、通してっっ!!」
「あっ」
押し退けるようにして、俺の側を通って台所を後にする。
「ダン、ダダンッ!」と、普段は絶対に立てない険しい音を以て、階段
を上っていく。続けてすぐ、部屋の扉が荒々しく閉められた音が、耳に
届いた。
それから、彼女の嗚咽が、微かに聞こえた。
泣いているんだ。また、泣かせてしまったんだ。
俺はあの時から、全然変わってない。
『楽しいよなぁ。やっぱ。美香の泣き顔は、いいよなぁ』
「違うっ!!」
握り締めた手を、横に薙ぎ払う。払ったところに冷蔵庫があって、中
でなにかが潰れた。
「……げ」
自分の手も痛いが、それどころじゃない。
冷蔵庫の扉をゆっくりと開けると、卵が落ちて、黄身がぶちまけられ
ていた。黄色い液体が、冷蔵庫の表面を滴り落ちていく。
「……アホか。なに、やってんだよ」
振り返って、流しにかかっていた布巾を、手に取る。
割れてしまった卵を、生ゴミ入れに捨てておく。
「あーあ……」
卵、買いにいかないとな。
まぁ、一パックぐらいなら、コンビニでいいだろ。
そんな、たいした出費じゃねーし。うん。
「……財布、どこにしまったっけ……?」
独り言でも言わなきゃ、落ち着かない。
なんでもいい。原型を留めないぐらい、ブチ壊してやりたい。取り返
しのつかないところまで。でも、自分が痛いのは嫌だ。だから、好きな
ものを壊したかった。一番大切なものを、壊してやりたかった。
「―――財布、みっけ……」
あぁ、意味わからん。
なんか、ダメだ。
とにかく、もう、なにもかも、ダメだ。ダメダメだ。
玄関の扉を開けて、ポケットから家の鍵を取りだした。
今では当然のように入っている、柏木さん家の鍵だ。
「大丈夫、いつかは他人だ。今だって、他人なんだから」
少し、距離が近かっただけ。
美香の告白を断ってしまった、ついさっきまで。
これからは、今まで以上に距離が開く。それでいい。
「いってきます」
小さく告げて、玄関の扉を開いた。鍵をかける。
庭の片隅には、墓がある。小さな花が、揺れていた。
『ねこさんの、おはか』
美香は優しい。あの時から変わらない。
だから、ここは、俺の家じゃない。
(ここまで)
(前回、前々回、GJレスくれた方、ありがとうございます)m(_ _)m
投下乙です!!!
しかしりゅーくんが予想以上に歪んでて吹いたw
ヘタレの擬装を解除したら凄そう
これは・・・本気のりゅー君に期待w
美香たんはドMだから大丈夫だと思ってたら
それを圧倒しそうなりゅーくんの鬼畜っぷり、マジパネェっすw
807 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/14(月) 03:59:04 ID:CZKjxFSC
美香ちゃんがその暗く歪んだ性癖も私の魂が引き受ける!って勇気を出して告白するんですね。
貴様のその歪み、この私が断ち斬る!
810 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/16(水) 00:44:13 ID:5r9UrFZP
祝新スレ
さよなら現行スレ
「もう行ってしまうのですか・・・?」
彼女はそう言いながら、スカートの裾をきゅっと掴み俯いてしまう。
ああ――そんな顔をしないでおくれ
「大丈夫、次スレでもきっと会えるさ」
「でも、絶対会えるって保証は無いじゃないですか!
それに最近は私に会いに来てくれる機会も少なくなっているし・・・」
今にも泣き出しそうなそうな顔で叫ぶ。
いつもは気が弱く後ろで控えてるようなこの娘が、これほどまでに感情を露わにしたことがあっただろうか?
押し黙り、小刻みに震える彼女を抱きしめながら僕は呟く。
「きっと――いや、絶対に会いに行くからそれまで次のスレで待っていてくれないかい?」
そして彼女に優しくキスをした。
キスをした後のことを新スレでkwsk
埋めのつもりが保守
814 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/19(土) 23:46:05 ID:sxFo0J+S
埋め立て
815 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 11:50:10 ID:nCjql/tf
続きマダー?
817 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 20:28:26 ID:4gOISV0q
次いこ、次。埋め
梅
ウメーィ
820 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 22:23:05 ID:tbKr54zz
埋まった
821 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/20(日) 22:36:01 ID:exx170Fs
ume
822 :
名無しさん@ピンキー:2009/12/21(月) 00:35:34 ID:tt+Jt1R9
ここってまとめありますか?
Unlimited
Mental
Energy
眠い
・・−
−−
・
初めて会った時のこと、覚えてますか?
私は覚えてます。
多分、ずっと忘れられません。
あんまり物覚えのいい方じゃないけど、そのことだけは忘れません。
急な雨に襲われて困っていた時、あなたは見ず知らずの私に傘を貸してくれました。
あなたにとってはきっと何でもない、当たり前の行動だったのかもしれません。あなたは
困っている人を見掛けたら放っておけない性格ですから。
でも私にとっては大きなことだったんですよ?
あなたが私と同じ学校の制服を着ていたから、すぐに私はあなたと再会できて、傘を
返せました。あなたは私を律儀な性格だと思ったのかもしれませんけど、本当にそれだけの
ことだと思いますか?
なかなか勇気を出せなくて結局傘を返せたのは二週間も後のことだったけど、その間
あなたのことばかり考えていたのは本当に律儀なだけですか?
傘を返してそれで終わりにならなかったのは、とても運がよかったと思います。
友達になれたことがすごく嬉しかったのを覚えています。
でも、本当はそれだけで終わりたくない。
私はもっとあなたに近付きたい。
だから、勇気を出して言います。
あなたが、好きです──
「ん、どうしたの? ぼーっとして」
かけられた声に私ははっと我に返りました。
「えっ!? あ、その……何でもない、ですっ!」
力いっぱい叫んでしまってから、存外大きな声が出てしまったことが恥ずかしくて、
私は小さくなりました。
「ご、ごめんなさい……大きな声出して」
「いや、いいよ。こっちもごめんね。急に声かけて驚かせてしまったみたいで」
「う、ううん。違うんです。本当にちょっとぼーっとしてただけだから」
気遣わしげな彼の様子を嬉しく思いながら、私は答えます。
彼は、小首を傾げました。
「考え事? 悩みでもあるの?」
「えっ!? いや、えっと、あの……」
悩みというか、その、
「もし困ってることがあったらいつでも言ってね。できるかぎりのことはするよ」
そう言って、彼は優しい笑顔を浮かべました。
ああ、優しいな。本当に彼は優しい。
でもその優しさが、今はちょっぴり憎らしいです。
「う、ん……ありがとう。でも大丈夫です」
「本当に?」
「うん。これは、私が頑張らないといけないことですから」
「──そっか。何のことかはわからないけど、頑張ってね」
「うん」
離れていく彼の後ろ姿を見送りながら、私は溜め息をつきました。
鈍すぎです。本当に。
そんな彼だからこそ、私は好きになったのかもしれませんけど。
でもこのままではダメです。あの人が私の想いに気付くなんてどう考えても有り得ません。
ならば私から告白するしかありません。
未だにそれは果たせてませんけど……臆病な己の性格が恨めしいです。
さっきもずっと頭の中で想像していたのです。いつか彼に想いを伝えるために。
とりあえず中断したシミュレーションを再開しましょう。
さっきのだとちょっと台詞回しが長たらしくて回りくどいような気がします。
もっとシンプルに想いを伝えた方がいいですよね、きっと。
ああ、頭の中ならいくらでも告白できるのになあ……。
誰か私に勇気をください!