「外伝」の三作目投下します。少し長いです。
上でエロが少ないと言いましたが、実際あまり多くないのですが、
ただ、6歳の少女の性的なシーンがあるのでご注意下さい。
俺の名は丑下太助。もうじき三十に手が届く歳だが、定職に就かずに職を
転々として、金が貯まれば辞め、金がなくなるとまた働く、という不真面目な
生活を送っているはぐれものだ。少なくとも世間的にはそういうことになっている。
だが実は俺には「アンチショッカー同盟」という秘密組織の外部構成員という
「裏稼業」がある。最近「ゲルショッカー」に看板を変えた恐るべき悪の組織と
戦うための集団だ。この裏稼業に力を入れすぎる余り、何の仕事をしても
長続きしないのである。少なくとも自分ではそう思っている。
先月も俺はある職場をクビになった。生活費も底をついてきたのでそろそろ
新しい職を探さねばならない。それで今日は東城北大の地下にある「同盟」
東北支部仙台基地の厚生課に、何か職はないかと顔を出したのであった。
俺の後ろには同じく外部構成員の飯野麦子さんが6歳になる娘の青子ちゃんを
連れて順番を待っている。彼女たちは同じ「外部構成員」とは言っても、俺とは
だいぶ違う。「世界の平和」のために自発的にボランティアを買って出ている
酔狂な俺とは異なり、彼女は夫をゲルショッカーの前身組織「ショッカー」に
殺されている。二人は不幸な遺族として「同盟」から経済的援助と身辺の保護を
受ける立場なのだ。今日は娘の青子ちゃんの就学関係の相談で来たのだそうだ。
窓口に出てきた、ちょっとお色気のある白松モナ子ちゃんと、秘密組織の中に
しては所帯じみた色気のない会話をしているさ中、館内に、決してあっては
ならない出来事のを告げる放送が鳴り響いた。
「基地内の諸君。本館はただ今よりゲルショッカーの制圧下に入った。
無駄な抵抗はやめ、おとなしく我が組織に服従を誓うのだ」
放送と同時に、窓口の奥にいた女子職員3人が部屋を出て俺たちの方に
近づいてきた。最初、常駐職員として外来の構成員の安全確保でもしにきたのか
と思った。だがそうではなかった。2人の女の子が人間離れした力で
俺の体を拘束した。そしてモナ子ちゃんが麦子さんと青子ちゃんの方に
向かった。モナ子は歩きながら自分のベストとブラウスを引きちぎり、
スカートのホックを外し、ブラジャーを外してパンツ一枚になり、最後には
そのパンツも片手で破り捨て、完全な全裸となった。
以前一度だけ連れ込みで見たときのままの、やたらスタイルのいいその裸身は、
次の瞬間、おぞましい化け物の姿に変貌した。血管や内臓が透けて見える半透明の
皮膚、神話のメドゥサのような触手へと変じた髪の毛。今の彼女はまさに
旧ショッカーが作り出した恐ろしい「改造人間」そのままの姿だった。
俺を拘束している二人の女の子もほぼ同時に、服を着たまま「変身」した。
モナ子だった怪人は青子ちゃんをぐいと後ろに放り出すと、麦子さんを
押し倒し、スカートをまくりあげ、パンティを引きずり下ろした。
青子ちゃんは泣きながら駆け出した。俺は迷ったが、青子ちゃんを引き留め、
俺の元に来させた。この子が一人で逃げおおせる筈はない。俺が何とか隙を見て
この子を連れて逃げる方がまだ助かる見込みは大きい。そう思ったからだ。
拘束されている俺に青子ちゃんがしがみついた。俺を拘束する女子職員たちも
特にそれ以上どうこうすることはなかった。
麦子さんを怪力で押さえ込みながら、モナ子だった怪人は振り向き、俺の方を
向いた。その乳首はアサリから生える管のような形に変形して、ぱくぱくと
動いていた。股間からは半透明のゼリー状の男根のようなものが伸びていた。
怪人はモナ子の声で声で言った。
「わたしはゲルショッカーの準怪人・ホヤ女1号。今からこの飯野さんを
わたしたちの仲間に改造するわ。ふふ。知ってるわよ。お二人は相思相愛
なのよね。だからサービス!丑下さん、あなたの改造は飯野さんにお願いする。
改造って要するにセックスすることよ。楽しみでしょ?青子ちゃんはどちらか
好きな方が改造してあげてね。その前にわたしが先に飯野さんと寝てしまう
ことになるけど、それは見逃してね」
モナ子は以前通りの気さくで情に厚い口調で話しかけた。だがその内容は
あまりに非人道的な、そしてモラルとか社会通念とかを無視したものだった。
ゲルショッカーに弟を殺され、悪への怒りをたぎらせた、正義感に満ちたあの
モナ子の姿はもうどこにもなかった。変わってしまったモナ子への悲しみと、
モナ子をこんな風に変えてしまったゲルショッカーへの怒りが、俺の心を
満たした。そして愛しい麦子さんが同じ化け物に変えられてしまう姿を、
しかも、女性に強姦されるという悲惨な手段でそうされてしまう様子を、
何もできずに見せつけられるしかない、という自分の無力さが、
どうしようもなく腹だたしかった。つまるところ俺はヒーローに憧れる
ただの風太郎である、という冷厳な事実が胸を突き刺した。
怪人は片手で麦子さんの女性器をもてあそびながら、麦子さんのワンピースを
胸までまくり上げ、ブラのホックを外し、少し小振りのその乳房を外気に
さらした。そして麦子さんの上半身にぴったりと自分の体を合わせた。
恐らく、あのぱくぱくと開閉する、ホヤの出水口に変化した自分の乳首に
麦子さんの乳首をかぶせたのだと思えた。
「ああああぁぁぁぁぁ…いや!だめ!らめ!ら…め…」
麦子さんは聞いたことのない嬌声をあげ身をよじらせた。何かとてつもない
快感をモナ子から与えられたに違いなかった。
「青子ちゃん、見ちゃだめだ。僕の方に顔を向けておいで」
俺はなんとか青子ちゃんを俺の方に向かせてしがみつかせつつ、しかし俺自身は
麦子さんから目を離せずにいた。
モナ子は足を使って麦子さんの太ももを強引にこじ開けた。麦子さんは全力で
抵抗したが、改造人間相手の無駄な抵抗に過ぎなかった。
「さあ、改造細胞を挿入するわ。これが根付けば、あなたもわたしたちの仲間。
早くそうなって、丑下さんを改造してあげてね」」
「いやです!お願い、白松さん!やめて!改造人間になんてなりたくない!
お願い!いや!…あ…あ…あ…い…や…いや…ぃゃ…ぃ…ゃ…」
モナ子は改造細胞を挿入し、腰を動かし始めた。麦子さんの「いや」が
徐々に異なるニュアンスのそれに変わっていくのを俺は聞きたくなかった。
だが俺の両腕は怪人たちにがっしりと掴まれ、耳をふさぐこともできなかった。
やがて切ないあえぎ声と共に、ここから見てもはっきり分かる激しい痙攣が生じた。
モナ子は体を離し立ち上がるとぐったりした麦子さんに呼びかけた。
「さあ、立ち上がって、最初の任務を果たしなさい」
麦子さんはゆっくりと起き上がり、こちらにぞっとする笑顔を向けながら
近寄ってきた。そして俺とガクガク震えながら母を見ている娘に話しかけた。
「ふふふ、どちらを先に改造してあげようかしら。やっぱりあなたからかな」
そう言うと左手で青子の腕をがっちり掴んで横にどかし、右手でら俺のベルトを
外し、ズボンとデカパンを下ろして、俺の下半身を丸出しにした。それから
俺を拘束している二人に話しかけた。
「あなたたち、手を放して。あとは私がやります」
女子職員二人はやれやれという様子で俺の腕を放し、脱ぎそびれていた服と
下着をいそいそと脱ぎ始めた。そのときだ。ぼすっという鈍い音が響いた。
麦子さんが二人の女子職員の股間に、恐らくすでに強化され始めている
腕力を最大にふるって、鋭い突きを繰り出したのだ。
「太助さん、青子を連れて逃げて!わたしはもうだめ。快楽で脳がしびれてるの。
あとちょっとで弾けてしまう。早く逃げて!モナ子たちから、そして、
わたしから!」
うずくまった女子職員は早くも体勢を立て直し始めた。モナ子は怪人の本性
むき出しの形相で麦子さんに組み付き、再び彼女を犯そうとし始めた。
俺は下半身丸出しの状態で青子ちゃんを抱きかかえながら逃げ出すしかなかった。
得意の逃げ足で二人の女子職員を引き離し、通路の曲がり角でうまく
身を隠しながら、二体の怪人を撒くことに成功した。
青子ちゃんは腕の中で震えながらしがみついている。俺は空元気をふるい
彼女を励ました。
「青子ちゃん、大丈夫、君だけはお兄ちゃんがきっと助ける」
俺が向かったのは地上ではなく地下だった。拘束されている間に、逃げ場の
当てはつけておいた。正直、あまりいい作戦とは言えない。しかしうまくいけば
一番堅実な作戦のはずだ。
踏んだ通り、地下に逃げる人間は少ないようで、俺たちは怪人とはち合わせずに
最下層の地下四階までたどりついた。そして俺は最下層のどん詰まりと言える
区画に入っていった。俺と同じ作戦を思いつく構成員が先に来ていなければ、
あるいは、そんな作戦を先読みする敵がいなければ、誰もいないはずだ。
そして多分七、八割の確率でそうなるはずだという見込みを俺は立てていた。
こんな作戦をあえて選ぶ臆病者は「同盟」の構成員にはまずいない筈だからだ。
案の定、俺たちは敵の一人にも出会わずに目的地にたどり着いた。そこに
あるのは、通称「天の岩戸」と呼ばれる個人用核シェルターだ。「同盟」本部
から支給され、とりあえず義務として設置はしたが、基地自体にシェルター機能
があるせいもあり、ほとんど無用の長物として放置された代物である。放置と
言っても本部からの支給品だから最低限のメンテナンスは常にしてある。
このシェルターに立てこもり、「同盟」の援軍がこの基地を解放してくれるのを
待つ、というのが、俺が立てた、ひどく消極的だが堅実と思える作戦なのだ。
悪がいつまでもはびこるはずはない。これほど大規模な基地乗っ取りは
早晩「同盟」本部に知れることになるだろう。そして「同盟」本部が本腰をあげ、
できれば仮面ライダーの協力も要請してくれれば、多分半月程度、早ければ
一週間以内に、基地の解放はなされる。その間この中でじっと耐えればいい。
そのずっと以前に俺たちは敵に発見されるだろうが、内側からロックをかけたこの
シェルターを破壊するのは相当の手間だ。幼女一人と、何の目立った功績も
あげていない無能な外部構成員一人を捕らえるために、そこまでの労力は
払うまい。中で飢え死にするにまかせ放っておかれることになるだろう。
――後ろ向きだ。俺は仲間を守ることを一切放棄し、自分だけ助かる道を
選んだのだ。しかも完全に他力本願で、敵との戦いは味方の援軍に丸投げだ。
そして何より、これは自分の無能さ・無価値さを勘定に入れて初めて成り立つ
作戦だ。これほどカッコワルイ作戦もないだろう。だが俺はさっきの一件で
自分の限界を悟った。俺はどうあがいてもヒーローにはなれない。だがそれでも、
俺にはこの青子ちゃんを守る義務がある。ヒーローならざるこの俺が、青子
ちゃんを守るヒーローの役を務めねばならない。そのためには、こんな
カッコワルイ作戦を選ぶしかないのだ、と俺は自分に言い聞かせた。
シェルター内の床下には巨大なタンクがあり、大人一人三ヶ月分の飲料水が
備えてある。同じく三ヶ月分の丸薬食の備蓄もある。基本的には電力で稼働し、
基地の電力の停止後も稼働可能なように、大容量の蓄電設備と自家発電装置がある。
予備用の自転車式の人力発電機も備えている。電力完全停止後も密閉効果は変わらず、
換気については外気をそのまま取り入れるモードと、完全密閉の上で酸素ボンベを
使用するモードがある。人力発電で水を分解して酸素を取り出すという非常手段も
水が残っている限りは可能だ。排泄物の乾燥に電力を使わない場合には、大人一人
一ヶ月分程度は収容できる穴に捨てられ、微生物による分解がなされる。
俺たちはとりあえず、敵に見つかるまでは電源を全停止し、外気を取り入れて
過ごすことにした。最終的に敵が毒ガスか何かをまいてくる可能性はある。
その場合は空気清浄設備を用いるか、最悪、酸素ボンベに頼らねばならない。
それでも半月程度しのげばいいということであれば、多分楽勝である。
外部の音は特殊な伝声管で拾える。外部との双方向の会話も可能だ。
外を見たい場合は、扉を開けた状態で、開口部に物理的な扉と同等以上の
遮蔽効果をもつ電気的なバリアを張る、という装備がある。電力は食うが、
基地の電源から電力を取り入れられている内は、このモードで外を見張るのが
いいと思えた。
俺は起きている間中外を見張り、眠くなると扉と換気扇を密閉して電源を
停止し、酸素ボンベを開く、という作戦をとることにした。酸素は減るが
寝ている間は最大限の用心が必要だからだ。青子ちゃんに見張りを頼む
などという発想は湧かなかった。
シェルターに入り、とりあえず落ち着いたとき、ずっと黙っていた
青子ちゃんがようやく口を開いた。
「…お母さんは?お母さん、怪人になっちゃうの?ゲルショッカーになっちゃうの?」
俺はどう話していいかわからなかった。麦子さんはもうだめだろう。だが、
ありのままを話すことはためらわれた。かといって、気休めのウソを話す気にも
なれなかった。それに、彼女の安全のためには、青子ちゃんは真実をきちんと
知っていなければならないのだ。「以前のお母さん」のふりをした怪人が
青子ちゃんを誘惑する、という罠を敵が張ってくる可能性は大きかったからだ。
「青子ちゃん。お母さんはね、立派に戦って僕たちを逃がして、そして
どこにもいなくなったんだ。お母さんはきっと天国に行ったはずだ。
青子ちゃん、ひょっとするとこの先、お母さんに化けた怪人が来るかも
しれない。だけどそいつは恐ろしい怪人だからね。信じちゃ駄目だよ」
青子ちゃんはまた黙ってしまった。そして無言で泣き始めた。賢い子だから、
脳改造による完全な怪人化、という事実をちゃんと理解していた可能性があった。
俺はもう何も言えなかった。
一夜が明けた。今のところこの区画には誰も来ていない。いや、怪人の姿は
何度か見かけたが、がらくたに埋もれたこのシェルターの前まで来て中を覗く者は
今のところいない。とはいえ、そう遅くないうちに俺たちは見つかるだろう。
その時から本格的な根比べと生き残りのゲームが始まるのだ。こんな俺の、
俺なりの「敵との戦い」の始まりだ。
だが昨夜の短い眠りの前あたりから、重大な問題が生じていた。それで俺は
単純に敵への闘志を燃やすという心境にはなかった。青子ちゃんの体調が
明らかに異常をきたしつつあったのである。夜になって苦しそうに咳き込み、
少し熱が出始めていたのだが、起きてみると昨晩よりもずっと熱が上がり、
息をするのも苦しそうになっていた。俺は布団を厚くし、濡れタオルを頭に当て、
救急箱の中の風邪薬を飲ませる以外に気の利いたことができなかった。
あの人がこの区画に現れ、このシェルターにまっすぐ向かってきたのは、
その一時間ほど後のことだ。麦子さんは全裸で、人間の外形をしていたが、
股間からはみ出している半透明の改造細胞が、彼女がもはや以前の麦子さん
ではないことをはっきりと示していた。俺は念のため換気装置を
停止し、酸素ボンベを開き、電磁バリアの出力を最大限に上げた。
かつて麦子さんだった怪人の人間態は扉の正面まで来た。俺はもう姿を隠す
ことはせず、バリア越しに怪人と向き合った。多分ここを最初に探し当てるのは、
俺という人間を誰よりも知っているこの人だ、という淡い予感があった。
怪人は麦子さんそのままの口調で、伝声管越しに話しかけてきた。
「太助さん、お願いがあるの」
「残念だが、あんたはもう麦子さんじゃないんだよな。以前みたいに話を
聞くわけにはいかない」
「そうよ。今のわたしはゲルショッカーに忠誠を誓ったホヤ女」
そう言うと怪人は変身し本来の姿に戻った。後ろで熱にうなされていたはずの
青子ちゃんがいつの間にか上体を起こし、母の変貌をじっと見ていた。
「わたしはゲルショッカーの怪人として、敵であるあなたと交渉に来たの。
お願いします。青子を怪人に改造してあげて」
「はっ。何を言い出すかと思えば。そんな要求、飲めるわけないだろ。麦子さん、
脳改造を受けるとそんな簡単なことも分からなくなっちまうのか?」
「お願い。聞いて。昨日、改造が完了したわたしには、あの状況であなたが
どこに逃げたかはすぐにわかった。だけど改造後しばらくの間は、わたしは
ホヤスズメバチ様のただの操り人形。一晩経ってようやく脳改造が進行し、
自律行動可能な準怪人に成熟したわ。そして真っ先にここに来たの。
脳改造の間、わたしは『悪の心』と『ゲルショッカーへの忠誠心』を植え付けて
頂きながら、一つの気持ちだけは手放さなかった。それは青子への愛情。
だけど、この気持ちがいつまで維持できるか、自分でも分からないの。青子を
敵として殺してしまうなんて絶対にいや。だけどこの気持ちがもしゲルショッカー
への忠誠心と矛盾したら、それはいずれ消えてしまうの。そんなのはいやなの。
それに、時間がない。青子はとても病弱な子。内蔵のあちこちに先天性の
欠陥を抱えている。昨日みたいな激しい運動と環境の変化があって、お薬も
飲まなかった青子は、多分今頃とても深刻な状態になっているはずなの。
すぐにも手術が必要な程のね。いや、もう手術も手遅れかもしれない。
でも、もし青子に改造細胞を植え付ければ、そうして青子がわたしと同じ
改造人間に生まれ変われば、青子は助かるの。他に道はないの!」
怪人は…いや、怪人の姿をした麦子さんは、涙を流していた。話の内容は
明らかに脳改造を受けた怪人のそれだったが、それと同じくらい、飯野麦子
という母親の気持ちの素直な表明であることにも疑いはなかった。
「あなたは多分、ゲルショッカーは多大なコストを費やしてシェルターを破壊し
あなたと青子を捕らえるよりも、あなたと青子を放置する方を選ぶだろう、と
踏んだのでしょう。正解よ。ホヤスズメバチ様はあなたを放置して、自滅するか
降伏して出てくるかするのを待つ、と念波でおっしゃっている。それは命令。
だからわたしはこれ以上あなたに何もすることができない。わたしにできるのは、
あなたに、青子を救うための唯一の手段が何であるかを理解してもらうこと、
そしてその手段をあなたが行使してくれること、それに希望を託すことだけ」
そう言うと麦子さんは何かを握りしめている左手を電磁バリアの中に差し入れた。
「やめろ!黒こげになっちまう!」
思わず制止した俺の声にうなずきながらも、麦子さんは手を止めなかった。
半透明の握りこぶしがぶつぶつと焦げながらバリアを通過した。麦子さんの顔は
苦痛に歪んだ。そしてバリアのこちら側に、ごとん、と黒こげの握りこぶしが落ちた。
「その中に青子用の改造細胞が入っているわ。決意が固まったら開いて、
それを青子のおまんこの中に入れてあげて。そうすれば青子の命は助かる。
外気に触れるとすぐ溶けてしまうから、取り扱いは慎重にね」
苦痛をこらえながらそう言い残すと、麦子さんは去っていった。
俺はあまりにも意外な展開に、頭の整理が容易にできずにいた。青子ちゃんの
命を助けたい。だがその唯一の手段というのは青子ちゃんを改造することだという。
青子ちゃんを、憎むべきゲルショッカーに忠誠を誓う、おぞましい改造人間に
作りかえること以外の手段はないという。「同盟」の一員として、すぐにでも
殺さねばならないような存在に青子ちゃんを作り変えねばならないと。
青子ちゃんは「ゲルショッカーになる」ことなど望んでいないはずだ。だが、
母親の元に「帰る」ことは、青子ちゃんにとっての一つの幸せではないのか。
たとえそれが人類の敵になることだとしても。
俺は何をすべきなのか。俺の役目は何だっただろうか。俺は「世界の平和を守る
ため」に、アンチショッカー同盟の構成員として活動している。世界平和のためには、
改造素体として以外に生き延びるすべのない少女の命など、奪うべきなのだ。
…だが、それは違う。目の前の罪もない少女の命を奪うことで得られる世界平和
など、ゲルショッカーの掲げる「改造人間による世界支配」とかいう「理想」と
大差ないではないか。そんな遠大な「正義」や「理想」のために罪もない命を
奪うなどというのは、結局同じ穴のムジナではないか。
そう。俺は人類を守るヒーローにはなれない。だが青子ちゃんを守るヒーロー
としての義務を背負った筈だ。だとしたら取るべき道は一つだ。青子ちゃんを
救う、唯一の手段を行使することだ。
――実のところ、気持ちの上での結論はとうに出ていた。俺はその気持ちを
正面から直視するのを恐れていただけだったのだ。
俺は青子ちゃんの横に行き、半ば朦朧としながら苦しそうにうなっている
青子ちゃんに話しかけた。
「青子ちゃん、お母さんのこと、好きか?」
こくんとうなずく青子ちゃんに、俺は続けて言った。
「お母さんはやっぱりお母さんだったよ。いいお薬をくれたんだ」
そう言って俺は青子ちゃんの布団をはぎ、ズボンと下着に手をかけた。
朦朧としながらも、賢い彼女は先ほどのやりとりを聞き、自分が怪人に
改造されようとしているという事実を察していたようだ。
「…い…や…。青子…このまま死ぬ。その方が…みんなのため。…怪人なんかに
なったら…みんなに…迷惑をかける…から」
青子ちゃんが途切れ途切れにしぼり出す声を聞き、俺はまた深い迷いに苛まれた。
――この子はこんな小さいのに、正義のために自らの命を犠牲にしようとしている。
それに比べて、俺は何をしようとしているのか?色々ときれい事をひねりながら、
結局は単に目の前で人が死ぬのを見るのをいやがっているに過ぎないのではないか?
だが、苦痛に身をよじる青子ちゃんをただ見ていることは、どうしても
俺にはできなかった。
「青子ちゃん、ごめん」
おれは青子ちゃんを抱き上げて入り口横に運び、強化繊維でできたネクタイで
青子ちゃんの両手を手すりにしばりつけた。彼女はこれから怪人に生まれ変わる。
辛いことだが、そのための自衛手段だ。
それから俺は、まだ弱々しく抵抗する青子ちゃんの股を強引に開いた。
「青子ちゃん、さあ、お薬を入れるよ」
――「お医者さんごっこ」だ――。悪趣味なたとえが頭をよぎった。
俺は麦子さんの黒こげの握り拳を開き、小指大の小さな改造細胞を取り出した。
そして青子ちゃんのほのかに青い割れ目を左手の指で開いた。
麦子さんは「おまんこ」と言っていた。上品な女性がそんな卑語を、と一瞬
ぎくりとしたのだが、多分彼女は「おまんこ」を一種の幼児語として、
「幼女の性器」を指すために使っていたのだ。ちょうど男児の「おちんちん」のように。
恐らく彼女は青子ちゃんとお風呂に入るときなどに、彼女の排泄器を指す言葉
として、特に疑問もなく日常的にその語を使っていたのだろう。
そして俺は、いわゆる「おまんこ」はいくつも見たことがあったが、この
意味での「おまんこ」を間近で見たのはこれが初めてだった。幼女の性器と言えば
肌色で中央にスリットが入っていて…というイメージしか持っていなかった。
その奥にこんなピンク色の開口部が開いている、という事実は、考えてみれば
当たり前であるが、結構な衝撃だった。それはたしかに大人のように完成した形
ではないが、基本的な部品が揃い、ちゃんとつるつるの潤った粘膜でつくられた、
小さな女性器であった。
俺はまだ指すら入ったことのない筈の小さな開口部を強引に押し開いた。
熟れていない果実。そんな感触と共にぱっくりと奥までの道が口を開けた。
それから右手に持った改造細胞をそっとその口に押し込んだ。ぴくぴくっ
と動いた改造細胞は、あろうことか青子ちゃんの未発達のクリトリスに
入水口を覆いかぶせた。青子ちゃんが熱によるうめき声とははっきり異なる
声を上げ、身をよじらせた。
俺は何かとても間違った選択をしてしまったのではないか、という深い後悔に
とらわれた。だがもう何もかも遅かった。改造細胞はみるみる成長し、
青子ちゃんの幼い膣の内部を満たした。まるで…射精された精液が
あふれ出しているようだった。未発達だった筈の「おまんこ」からは
今や愛液が垂れ始め、突然目覚めた快感にのめり込んだ青子ちゃんは
誰に教わったわけでもないはずなのに、上着をまくりあげ、いぼのような
乳首を指でこね回しながら明らかな快楽のあえぎ声を上げ始めた。その代わり、
即効性の強心剤でも投与されたのか、病による不正な息切れは引いていった。
やがて膣内のどこかを刺激されたらしい青子ちゃんは激しい「潮吹き」まで
やってのけた。それから改造細胞はどういう仕組みなのかピストン運動をはじめた。
未熟だった筈の胸が少しずつふくらみ始めた。完全に性欲の虜になってしまった
らしい青子ちゃんは大人顔負けのあえぎ声を出しながら悶えていた。
「ふう、ふう、あああああ、いくぅ、いくぅ、いっちゃうぅ…」
びくんとオーガズムに達した青子ちゃんは、数秒間その余韻を堪能し、
それからぱちりと目を開けた。その目にもはや愛らしい少女の影はなかった。
そこにいたのはゲルショッカーに忠誠を誓った、一体の悲しい操り人形だった。
――麦子さん…これでよかったのか?…そうか。俺が話していたのはもう
「麦子さん」じゃなかったんだな。あそこにいたのは一体の怪人だったんだ――
自分がしてしまったことの意味を受け止めきれず、俺の心は動揺やや後悔やら、
他にどうしようもなかったはずだという自己弁護やらでぐちゃぐちゃになった。
だが、じっくりと自己反省している暇などはなくなっていた。青子ちゃん
だった怪人は、強化繊維製のネクタイをあっさり引きちぎると、すくっと立ち上がり、
俺に近寄ってきたのである。
シェルターの奥に後ずさりする俺に、逃げ場などあるはずもなかった。小さな
怪物は壁を背に立つ俺の下半身に、もはや人間のものではなくなっている
恐ろしい力でしがみつき、腰に巻いていたタオルを引きはがして、俺の
下半身をむきだしにした。
言い訳はしないが、そのときの俺の股間の一物は激しくいきり立っていた。
先ほどの青子ちゃんの狂態、そしてもう今にも自分が改造されてしまうという
切迫感が俺の快感中枢を強烈に刺激したのだ。
サルのように俺の胴体にしがみついた青子ちゃんははじめ面白そうに
俺のペニスの先をぺろぺろと舐めた。カウパー氏腺液が滝のように流れ、
青子ちゃんの口のまわりをべとべとにした。それからサルが木に登るように
青子ちゃんは俺の胴体をよじ登り、ちょうど「駅弁」の体位になって、
改造細胞の詰まった「おまんこ」を俺のペニスにあてがった。人間の
体温よりも数度高い、熱い肉塊が俺の亀頭を覆った。それから青子ちゃんは
少しずつ腰を沈め、俺のペニスを奥へと運んでいった。さすがに膣内に
半分程度までしか入らなかった俺のペニスは、穴かはらみ出た改造細胞によって
根本まで覆われた。そして青子ちゃんは妖しい笑みを浮かべると、やはり
人間離れした筋力で腰を激しく振り始めた。
「…や、やめろ青子ちゃん…おかしく…おかしくなっちまう…ああぁぁ…」
俺は精神力をふりしぼって快楽の波をこらえた。哀れなゲルショッカー
の犠牲者、いたいけな幼児が、ゲルショッカーの陰謀によって無骨な
三十男とセックスをさせられている。自分はそんな悲惨な事件の当事者なのだ。
その自覚を失ってはならない。自分にそう言い聞かせた。
そのとき、頭の中に聞いたことのある声が響いた。
<<あっぱれな精神力よ。丑下太助さん。あなたの精神力に敬意を表して、
わたしが直々にあなたを導いてあげます>>
麦子の言っていた怪人のボス、ホヤスズメバチの声だと思えた。
<<脳改造はもう始まっています。さあ自分の心を覗いてご覧なさい。
いまのその姿こそ、あなたの真の欲求だったはずでしょ?違うかしら>>
――ゲルショッカーの怪人はいずれも犯罪者的な性格、しかも快楽犯罪者
のような危険で反社会的な性格の持ち主である。一部の怪人は改造前から
そのような性格の持ち主だが、大半の怪人は脳改造によってそのような性格に
変えられてしまった一般人だ。ゲルショッカーは改造素体の精神に倫理的な
抑制力を麻痺・減退させ、同時に反社会的な欲望を肥大させることで、人工的に
素体を「悪人」に変え、あるいは「悪」の心を植え付ける。
その目的が何であるかについては諸説ある。一つの説は、ゲルショッカーの
当面の目的が拉致、殺人、大量破壊などの反社会的行為であることに理由を求める。
もう一つの説は、「悪」の心に怯える一般人に「ゲルショッカーへの忠誠」
という安らぎを与えることで組織から離れられなくさせるためだと言われる。
今の俺はまさにその脳改造の犠牲になろうとしているところだった。
俺の心の奥深く、こっそり封印していた欲望が急激に成長し、同時に自制心が
麻痺していった。
――そうだ。俺は麦子さんに惚れ、いつか結婚したいと思っていた。だが
その気持ちは本当に麦子さんに向けられたものだっただろうか。いやむしろ
俺の本当の気持ちは、麦子さんの横にいる愛らしい小悪魔に向けられていたのでは
なかっただろうか。おれは青子ちゃんと一緒にお風呂に入る日を心待ちにしては
いなかっただろうか――
急激に膨らむ隠された欲望に俺は戸惑いと恐れを感じていた。
<<恐ろしい?ならばゲルショッカーにすがりなさい。ゲルショッカーは
あなたの欲望に唯一の正しい使い道を与えるわ。あなたは心ゆくまで
幼女を襲い、しかもそれは理想社会建設への道に連なるのよ>>
「……断る!」
俺はきっぱりと言い放った。
「あんたは俺を誘惑する美名として「理想社会建設」を口にしたのだろう。
だが今の俺はもう『正義』やら『平和』やら『理想』やらという美辞麗句が
大嫌いなんだ。余計なセリフを言ってくれたおかげで目が覚めたよ。
こんなものこうしてやる!」
俺は不意をつかれている青子ちゃんを強引に持ち上げて挿入されたペニスを
抜き取り、青子ちゃんをそっと床に下ろすと、ほとんど改造細胞に置き換えられて
いるペニスを力まかせに引きちぎった。猛烈な痛みと共にぶちっという音がして
俺の息子は体から離れた。
俺の姿をしばらく呆れた顔で見ていた青子ちゃんはやがてくっくっくと笑い出した。
「すごいわ。そこまでやれたのはあなたが初めてよ。わたしの片腕にスカウトして
あげてもいいくらい」
「…あんた、青子ちゃんじゃなくて、さっき頭に話しかけていた怪人のボスだな」
「そうよ。第二次性徴前の青子ちゃん一人じゃ色々不安があったから、リードして
あげていたのよ」
「六歳の少女を凌辱していたということか。この鬼畜が」
「ふふふ、怪人には最大の賛辞だわ」
「俺の名を知っていたな。麦子さんから聞いたのか」
「違うわ。東北支部人事部長として全構成員の顔と名前を覚えていただけよ」
「あんた…広瀬葉子か」
「ふふ、だからわたしの片腕ということは『正規職員』、しかも副人事部長よ」
「ふざけるな。怪人の片腕になる気はない。悪いが、青子ちゃんと話をさせて
くれないか」
「強情ね。いいでしょ。時間はたっぷりあるから、ね」
そう言って「人事部長」は青子の体の主導権を解除した。青子ちゃんの顔に、
以前と全く同じとは言えないが、それでもだいぶ青子ちゃんらしい表情が帰ってきた。
青子ちゃんは哀願するような目で俺を見て、こう言った。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんもカイジンになって!一緒にゲルショッカーに
なって、そうしてお母さんとケッコンして!お願い!ゲルショッカーに
テキタイする者は殺さなきゃいけないの。でもわたし、お兄ちゃんを
殺したくないの!殺すようになりたくないの!お願い!!」
青子ちゃんは澄んだ目で俺を見ている。痛む心を押さえて、俺はしゃがみ、
青子ちゃんの肩に手をやりながら言った。
「…青子ちゃん。悪いけどお兄ちゃんはやっぱりヒーローになりたいんだ。
カイジンにはならない。青子ちゃんはお母さんのところへお行き。
悲しいことだけど、次に会うときは敵同士だ。でも、できれば…無理かも
しれないけど、さっきの『人を殺したくない』という気持ちを忘れない
カイジンになっておくれ。さあ、お行き」
俺は電磁バリアを解除し、青子ちゃんの肩を押した。人事部長が今すぐ
俺をどうこうするつもりはなさそうだった。彼女の操り人形である青子ちゃんは
母親の待つ場所へ帰るしかないだろう。青子ちゃんは歩き出し、一度こちらを
振り向いて手を振った。俺は大声で呼びかけた、
「お母さんと幸せに!そして、さよならと伝えておくれ!」
青子ちゃんはこくりとうなずくと、くるりと振り向き、走って去っていった。
俺は彼女がいなくなるのを見送ると、シェルターの物理扉を閉めた。
よかったのか悪かったのかわからない。しかしともかく俺は青子ちゃんの
命を助け、しかも当初の「立てこもり」作戦を継続できる。俺はこれから
退屈で後ろ向きで他力本願な「戦い」を何日も続けねばならない。とんだ
情けない「ヒーロー」もいたものだ――シェルターの中で、助けがくるのを
ひたすら待ち続ける無力で下半身むきだしの男、それが今の俺の客観的な姿だ。
せめて改造細胞で筋肉の強化でもされていたら仮面ライダーを気取ることも
できたのだが、ペニスを失った以外、これといった身体的な変化もないようだ。
俺は何だか投げやりな気分になり、青子ちゃんの寝ていた布団に横になった。
二十日近く過ぎた。俺は「立てこもり」作戦を続けていた。「同盟」の
援軍は一向に来なかった。あの広瀬葉子という女性はCIAにいたとか、KGBに
いたとか、その両方にいたとか噂される、敏腕の人物だ。あの人が脳改造されて
怪人になったとすると、ゲルショッカーによるこの基地の占拠も簡単には
突き崩せないのではないか、と思えた。ひょっとして、見捨てられたのかも
しれないな、という思いが日増しに強くなっていた。
そんなある日、伝声管からすばらしい知らせが響いてきた。
「同盟構成員丑下君だね。無事ならば返事をしてくれたまえ。この基地は
解放された。同盟の手に戻ったのだ」
もちろん、グリム童話よろしく、敵の罠の可能性がある。いや、その可能性
の方が大きい。俺はまず電磁バリアを起動し、それから恐る恐る物理扉を開放した。
ドアの前に立っていたのは意外な人物だった。他でもない仮面ライダーが
すっくと立っていたのだ。そうか、ライダーが来てくれたのなら、さすがの
広瀬葉子もかなわなかったのだろう。
「ライダー!来てくれたんですね!ありがとう!お噂はかねがね伺っています。
僕は僕なりに戦い抜きました。僭越ですが、握手してください」
雲の上の存在。しかし今の俺は自分が彼と同じ「ヒーロー」だという幻想に
酔いたい気分だった。ライダーは快くうなずき、手を差し出してくれた。
俺は電磁バリアを解除し、その黄色い手袋をしっかり握りしめた。
<了>
…お粗末様でした。長くてすみません。
結局、後半18禁板じゃないと書けない描写が多くなりました。
あのシェルターは多分同盟の偉い人が自分で使うために
各地の基地に据え付けているんです。にしてもちょっと無理のある
「作戦」だったので、矛盾等あるかもしれません。
ネーミングですが、昔からある牛タン屋の名前にちなみました。
(72年の段階であったかどうかまでは知りませんが)
僕が子供の頃はまだ全国的な名物ではなく、知ってる人は知ってる
うまい店(うちの場合、親が好きだった)という程度でした。
定食で麦飯と青唐辛子のみそ漬けが付くので「飯野麦子」と「青子」ですが
麦子はともかく、「青子」はちょっとわからないですよね。
ついでに外伝2に出てきた鐘崎「笹子」「マコ」「カー坊」の3きょうだいは
「鐘崎の笹カマボコ」が元ネタでした。書きそびれていたのでここに追加。
それでは…