“散る言葉”エンドの次の日
「あのさ、澤永。
桂さん自殺したって聞いた?」
「え!?」
「マジらしいわよ。
朝校庭に現場検証のバリケード張られてたのあれって桂さんらしいよ」
「そんな…」
澤永は顔面蒼白となり自然と一歩後ずさる。
「澤永…?
あんたいったいなにしたの?」
「俺はおまえがやれっていったから!!」
「まさか!?
あんたアレを本気にしたの!?」
「だって…!」
その言葉は続かなかった。
突如入ってきた警察の姿に教室内はしんと静まった。
「あー、澤永 泰介くんだね。
私たちがここにきた理由はもうわかっているかな?」
「え、あ・・・」
「その様子だとわかっているようだね。
婦女暴行の容疑で逮捕する。
一緒に署まで同行してもらおうか」
「あ、あ…」
澤永はがくがくと足を震わせ一歩も動けなかった。
「どうしたんだね?
動かないのなら強制的に連行させてもらうが、あまりこちらも手荒なことはしたくないのだが、私にも娘がいてね。
今回の事件にはこれでも私は怒りを抑えているのだよ」
「うあ…」
澤永はそれでも動けず、その場にへたり込んだ。
それを見て刑事は同行していたもう一人の警察官にむかって目で合図をすると澤永の腕をもって強制的に連行し始めた。
「それと、加藤乙女くんだったかな?
君にも署まで同行してもらおう」
「え?
なんでわたしまで!!」
「昨日の澤永くんとキミの会話を聞いていた人からの連絡があって…とここまで言えばもうわかるかな?
こちらとしては任意同行という形を取らせていただきたいのだが。協力してくれるかな?」
「…はい」
かすれる声で加藤はうなずき、警察官とともに表のパトカーに向かって歩き出し、去った後の教室は騒然となるのだった。
「さて、何があったか話してもらえるかな?」
警察署につき、取調室ですわせられた澤永はうつむいたまま何も語らなかった。
「・・・」
「勘違いしないで欲しい。
キミが婦女暴行の容疑者であることはもうわかっている。
状況証拠も固まっている上、桂言葉さんの体内に残っていた精液と、先ほどキミから採取したDNAとの鑑定結果はあと1時間もあれば確認できる。
さきほど逮捕しなかったのはキミのためじゃない。
我慢しなければキミを殴り倒してしまいそうだったからだ」
「あ、あ・・・そんなつもりはなかったんです。
加藤にそそのかされて…」
「そうか、そそのかされたとしてもいくら悪質なことばとはいえキミはやっていいこととやってはいけないことの区別はつかないのかね?」
「…」
こうして、容疑は固まり、澤永は刑に処された。
数年は社会復帰は不可能であろう。
もしかすれば、成人した瞬間に刑も延びるかもしれない。
しかし、確実にいえることは今後彼がまともな社会復帰はできないということだけだった。
加藤乙女
「では、キミはそんなつもりはなかったといいたいのだね?」
「はい」
「ふむ、先ほど澤永くんからも話を伺ったのだが、キミのは教唆に当たる可能性もでてきた。
もしかしたら裁判になるかもしれないが、覚悟しておきたまえ」
今回の事件にたいして警察官は表面上は冷静だったが、誰もが怒りを抑えていたのだ。
特に、娘をもつ者は爆発しそうな感情を押さえつけるのに必死だった。
「な・・・!?」
「キミも自分の言葉に責任をもちたまえ。
キミの悪質な言葉で一人の人間の命が奪われたのだからな」
「あれはそんなつもりもなくて!!!」
取調べは続く。
仮に彼女が罪に問われなくても、彼女のしたことは立派な犯罪である。
今後、彼女がどうなるかはわからないが、彼女もまた二度とまともな生活は送れないであろうということだけであった。