382 :
mark:
怒りの誠V〜裏切られた乙女B〜(352からの続き)
(現実及び原作・アニメではありえない設定・状況が多いですがご容赦下さい)
乙女「なっ…………!?」
ごめん。
夏美・みなみ・来実から言われた思わぬ言葉。それぞれ申し訳なさそうに
口々に語られた事実。なんの事はない。彼女達が自分可愛さの為に、乙女を裏切ったのだ。
もちろん夏美がメールで伝えた内容事体は事実だが、乙女の知らない所で、
彼女達は警察からの接触を既に受けており、事情聴取をしない代わりに、警察の捜査に
協力するという約束を交わしていたのだ。
余談だが、バスケ部の打ち上げが急に中止になったのも、澤永の事件や
乙女や七海による言葉苛めの件には無関係であるものの、いわゆる「裏の伝統」や「上映会」が
外部に発覚し、巻添えをくう事を恐れた上級生達が証拠の隠滅を図ったからである。
(特に、上映用の録画カメラやフィルム・DVDは盗撮という犯罪行為を示す証拠物であり、
発覚した場合、もちろんただでは済まない)
また、学校は夏美達への聞き取りとは別に、乙女や七海が所属しているバスケ部の
部員達にも言葉苛めの真偽を確かめるために、1年の女部員を中心に
情報をそれとなく聞き出し、概観は掴んでいた。
(こうした動きを知らないのは、今や乙女や七海だけとなり、あとは本人達が正式に
認めれば、全容が一気に解明されるであろう段階にまで達していた)
乙女は自分が置かれた状況をようやく理解し、メールを見た時に打算的な
考えを夏美達に抱いた事を忘れ、怒りの気持ちが湧き起こったが、
自分のすぐ近くにまでやってきた男達の姿を見て、それもすぐに掻き消えてしまう。
そして、乙女達の前で男2人の歩みが止まり、彼女に話しかけてきた。
刑事A(中年)「あなたが加藤乙女さんですね?こちらは(警察署の名前を告げる)
の(刑事の名前)と申します。あなたに少しお伺いしたい事がありまして、
申し訳ありませんが、一緒に来て頂けませんかねえ?」
やはり自分の想像通りの人間であった。予想に反して丁寧で穏やかな口調であるものの、
眼光は幾分鋭い眼差しであり、曖昧な返事で返す事は許されそうにない。
乙女「はい………」
観念した乙女は、小さな声で返事しつつ頷き、もう1人の屈強な体つきの
刑事が「では、私が車まであなたを案内します」とだけ言い、
乙女も大人しくそれに従い、公園の外に向けて歩き出す。その様子に、
いつもの強気な姿は感じられず、そんな彼女に来実・みなみ・夏美の3人は
気まずい思いを隠す事が出来なかった――――
383 :
mark:2007/12/13(木) 15:04:58 ID:4sEgT3e2
公園を出て少し歩いた所に、乗用車が1台停まっており、
乙女はその車に乗せられた。逮捕ではなく、あくまで任意同行なので
手錠を掛けられる事も腰に縄をつけられる事もなかったが、
後部座席の真ん中に座らせられた乙女には、案内役の刑事と、車内で待機
していた別の男性刑事が座り、当然ながら逃走は不可能だった。
(もっとも頭の中が真っ白な状態だった乙女にはそんな考えは無縁だったが)
前の助手席に居る、別の刑事が無線で何かやりとりしている。そんな姿を見て、
今日の公園での事が、ある程度仕組まれたものであったと実感し、
澤永の逮捕以来、自分の恐れていた事態が現実のものとなった事を思い知らされる
乙女であった。
(もちろん乙女が公園に現われなかった場合は、彼女の自宅に赴き、
任意同行という形をとる手筈になっていた事は言うまでもないが)
384 :
mark:2007/12/13(木) 16:25:00 ID:4sEgT3e2
公園内
刑事A「いやあ、話は(最初に夏美達に接触した別の刑事)君から聞いているよ。
君達のお友達をこんな形で連れていくのは忍びないんだけど、
これも仕事でね。嫌な役目をさせて申し訳なかったね」
夏美「いえ……」
みなみ「…………」
来実「うちらは………当然の事をしたまでですから……」
俯きながら、刑事にそう応える3人。先ほどとは変わって砕けた口調の中年の刑事。
刑事A「もしお友達(乙女)が、公園に来てくれなかったら、おじさん達も
ちょっと大変だったかもしれないけどね。素直な子で良かったよ」
夏美・みなみ・来実「………………」
刑事A「では、あんまり車を待たすわけにもいかないから、そろそろ失礼する
事にするよ。もう日も暮れ出してきたからね、あまり寄り道せず
家に帰りなさい」
夏美「わかりました………」
夏美に続き、来実、みなみも同じように応え、刑事は背を向けて、公園の出口へ
歩き出す。と、その途中、振り返って彼女達に話しかける刑事。
刑事A「そうそう、これは学校の先生方から言われた事なんだけど、先日の事件を踏まえて、
他にも学内で問題が起こっているかもしれない事を考慮して、後日正式に調査を
行い、何か問題があれば学校の権限で処理し、場合によっては警察に報告するとおっしゃっていてね」
夏美・みなみ・来実「……………!!」
さっと顔色が変わり、驚愕する3人。警察に協力さえすれば、自分達の苛めの件は
なかった事に出来ると思っていたのに、学校がそこまで動くなんて―――
刑事A「まあ先日の事件レベルの問題ならともかく、学内の問題は学内で出来れば
解決してほしい所だがね。こちらも色々案件を抱えていてね、そこまで時間を
割けるほど、残念ながら暇じゃあなくてね。警察仕事のつらい所だよ」
と、さらりと言いながら笑う刑事。乾いた笑いしか出来ない3人。
385 :
mark:2007/12/13(木) 17:36:53 ID:4sEgT3e2
強制力がないとはいえ、正式な調査となれば、自分達だけでなく
他の生徒にも苛めの真偽を聞き出すだろう。4組内で女子に影響力をもった乙女がいなければ、
一斉に手の平を返し、真相を教師達に告げるのは間違いない。
言葉に苦手意識や嫉妬的感情を持っている女子は他にもいたが、それは乙女達グループほど強くは
なく、乙女達の影響を恐れた女子たちが消極的に従っていたか、無関心を決め込んで
いたのが殆どであり、力で従わせるタイプの乙女や、その取り巻きである夏美達に
内心は反感をもっている人間さえいた。
来実・みなみ・夏美の3人には乙女のように良くも悪くも人を従わせられる程の
力はなく、結局のところ、乙女というリーダーが近くにいたからこそ、言葉に
やりたい放題出来たのが本当のところである。
もちろん、それでもあえてしらを切り通すという事になれば、恐らくは乙女から
苛めの事実を聞かされる事であろう警察が、再度自分達に接触し、
あらためて事情聴取を行ってくるだろう。そうなれば、警察から学校に通達され、
今度こそ言い逃れが出来ない状態に追いこまれるだろう。
嘘をつき、後からばれる事の方が、心証を悪くし、処分が重くなるのは言うまでもない。
来実・みなみ・夏美「…………………」
曖昧な表情を見せ、無言な状態の3人に刑事が、今度ははっきりと厳しい口調で話しかける。
刑事A「君達が学内でどういう生活を送っていたかは知らないが、安易な行動が
ひょっとしたら人の死を招いたかもしれなかった事、よく覚えておきなさい」
そう言い残し、夏美達のもとを去る刑事。やがて、公園の外から車の発進する
音が聞こえ、それもあっという間に小さくなり、完全に聞こえなくなり、
公園の草むらや樹木に潜む虫の声や、警察とのやり取りに気づかずに
遊びまわる子供の声だけが聞こえるのみであった――――
(続く)
386 :
mark:2007/12/13(木) 17:56:42 ID:4sEgT3e2
どーも。名前をいれてほしいとの要望がありましたので、
このスレッド内ではmarkという名前で勝手に通させてもらいます。
(282〜286、297〜302、322〜325、342〜352、そして今書き上げた
382〜385が怒りの誠シリーズと言う事になります)
やっぱり、自分の力量不足で物語的にどうしても学校や警察が万能過ぎてしまう
のが欠点ですね…… 辻褄があわない事も多いし(苦笑)
これくらい動ければ、現実のいじめも少しは解決しそうなんだけどな……
最初は誠が言葉の自殺を阻止するところで終わりのつもりが、現実に存在する
権力とでも言うのかな…… そういった「大人的」ものを介入させた場合、どうなるのかという
好奇心からここまでになってしまったわけですが。先は遠いなぁ………
次回で舞台は警察署に移り、このスレッドを見てる大方の想像通りでしょうが、誠を出す予定です。
それでは。