とりあえず即死回避のために、一本投下します。
スクイズで大層評判の悪いレイパーものです。苦手な人はスルーしてください
私は自分の身体を洗いながら、もの思いにふけっていた。涙さえこみあげようとするのを押さえつけながら。
湯船の中でじっと顔を伏せる。そして、いくら念入りに洗おうとも、もう二度と手垢の落ちることの無いだろう
胸や秘所にそっと手を触れると、またミジメな気分がこみ上げてきた。
澤永さんは自分が選んだ男性だろうにと自問しました。
どうやら私は、男女が付き合うということは「そういうこと」なのだという認識が不足していたように思います。
例え、自分が愛せそうにない男の人であっても、 わずかでも自分が求められてることに意味を見出したかった。
辛いときにこんな無愛想な自分にも笑いかけてくれる人が、ただ傍にいて欲しかっただけかも知れません。
それでも、ほんの一瞬でも、誠くんのことを諦めさせてくれるなら、黙って身を任せるのもいいかなと思ってしまったんです。
あの晩、あの人は私にお酒を飲ませ、服を脱がし、この胸を念入りに楽しんだようです。
今思うとずいぶん卑劣な真似をする人だと思います。以前の私ならまず張り倒していたはずです。
しかし、例え自暴自棄だったとは言え、無理やりだったとは言え、学祭で半分でも身体を許したということが尾を引いていました。
もう今は以前の自分とは決定的に違ってしまったような気がします。人は常に変わり続けるなどという話ではなく、
以前の桂 言葉の場所に立って、以前のように振る舞っていける自信がなくなってしまいました。
あの学祭を機に変わったのは澤永さんも同じらしく、以来我が物顔で私を連れ回しました。
あのときは荒々しく胸を揉みしだくだけで止めてしまうような小心者だったくせに、次の夜には
“しゃぶってくれ”
などと言い出す始末です。全く単純な人だと思いました。以前の私なら調子に乗らないでと怒って噛み付いていたかもしれません。
しかし今の私はもうどうしたらいいのか分からなかったんです。結局されるがままにそれを口に含み、
言われるがままに舌を動かしました。頭の中は真っ白でした。動きが激しくなり、来るかと身構えていたら、彼は突如私を突き倒しました。
“ちょっ、と、ひど…”
取り付く島もありません。彼は私の股を裂き、濡れてもいない秘所に逸物を突きたてました。ハッキリとは実感できませんでしたが
その瞬間私は澤永さんのものになってしまったようです。それまでと異なって、私は男の手がついた女になってしまいました。
痛い!痛い!!痛い!!! 大粒の涙を流し、激痛を訴える私の口を澤永さんは右手で塞ぎ、一心不乱に腰を打ち付けました。
澤永さんはすぐに私の中に出すものを出しました。見たことも無い恍惚を浮かべたその顔を、私はただひたすら恐いとだけ感じていました。
「いや〜! 最っ高に気持ちよかったよな、言葉!」
「はい…そうですね…」
彼はすっかり私を自分のものにしたつもりなのでしょう。この私の弱気で言いなりの様からすればそれは事実かもしれません。
とはいえ、あの人は私の…自分の彼女の恐れや怯えなど一生理解することはないであろう愚かな人で、そう生まれついた定めの人です。
彼が他の女の人から敬遠されてる事実もそれを証明しています。哀れとも思えました。そのような男の人のものとなったこの私も。
「言葉、俺たちって最高に相性のいいカップルだよな?」
「…はい…私は…澤永さんの…彼女…です」
今は、自分の思いなど無視してこの震えを隠さなければならない時でした。
それから、彼は何度も何度も私の身体を求めました。
己が肉欲を満たすだけのSEX。愛情の通う余地の無いSEX。互いの意思の疎通の無いSEX。
「いいだろ?気持ちいいって言えよ、言葉!」
澤永さんの声がやけに遠くに聞こえる気がします。荒々しい愛撫と野獣のようなピストンにももう慣れました。
要するに、心を通わさなければいいのです。私はひたすら人形に徹しました。彼が終わってくれるまで耐えればいいのです。
そうして彼は、出すだけ出して、ひとしきり満足すると私を置き去りにしてさっさと帰ってしまいます。
そのような彼の姿勢は、むしろ私には気が楽でした。ヘタに愛情を求められても、私にはどんな顔をすればいいのかわからないから。
皮肉ですよね。誠くんを諦めるためにこの人と付き合ったはずなのに。
どうしてだか、彼に抱かれるたびに無性に誠くんに会いたくなります。誠くんが……欲しくなります。
何度も何度もこの人が誠くんだったら、と目を瞑ってじっと誠くんの顔を思い浮かべて耐えてきました。
でもダメなんです。目を瞑って浮かぶ光景は西園寺さんと抱き合ってる誠くんの顔。
こうしてる今も、誠くんは西園寺さんと愛し合ってるのかと思うと身が焼けそうな思いがします。
ねえ、誠くん?
どうして…こうなっちゃったのかな?
私は、あの日誠くんと出会って、誠くんが好きだって言ってくれて、私も好きですと返したのに。
あの日から、私たち、不器用でもちゃんと前を向いて進んでいる恋人同士だったよね?
時々すれ違うことはあったけど、ギクシャクすることもあったけど、それでも想いはひとつだったよね?
うちの家の別荘である高原の白いペンションで、一緒に夕焼けを見ながら私は言います。
『誠くん、私、幸せです』『俺もだよ、言葉』
そうして二人は抱き合います。お互いのぬくもりが何より心地良い時。
自然とどちらからともなく、ゆっくりと唇を重ねあいます。
興奮した誠くんは、ゆっくりと私の胸に手を伸ばし、そっと愛撫をしてくれます。
そんな誠くんを、私は全て受け入れます。誠くんが私を求めてくれるのが、たまらなく嬉しいから。
『言葉…本当に俺でいいのか?』
『はい、誠くんがいいです。誠くんじゃなきゃダメなんです』
ゆっくりと一枚一枚服をはぎとられ、私は生まれたままの姿になります。
『言葉…綺麗だ…』
『誠くん…嬉しいです』
ずっと夢見てきました。こうして誠くんと結ばれるときを。
私は大事な初めてを誠君に捧げ、誠君も初めてだと言ってくれて、
不器用な私たちは、それでも二人で頑張って共同作業でSEXをするんです。
今までずっと、このような行為は汚らわしい行為だと嫌悪していました。
でも相手が誠くんなら、少しもイヤじゃありません。
痛くても、我慢します。我慢できます。だって誠くんだから。
誠くん。好きです。大好きです。愛してます。誰よりも。誰よりも。誰よりも…。
ジャ――――――ッッッ………
頭の上から打ちつけてたシャワーが、地面に落ちる音を聞いた気がする。
その音のせいか、手に持っていたカッターナイフが滑り落ちる音は聞こえなかった。
あはは、入浴剤なんか入れてないのに湯船はこんなにも真っ赤。
ダメだよ。長湯してる場合じゃないのに。だって誠くんが私を待ってる。
誠くんが携帯におやすみ、ってメールを入れてくれて、私もおやすみなさい、ってメールを返すの。
私たちはいつまでもずっと恋人同士で、この愛はきっと永遠に続いて。
そして、色々と問題もあったけど、障害もあったけど、二人はそれを乗り越えて、
辛いときも病めるときも健やかなるときも、ずっと一緒にいることを丘の上の教会で誓い合うの。
西園寺さんも、澤永さんも、加藤さんも、甘露寺さんも、みんなみんな私たちを祝福してくれて……
…あれ?おかしいな?目の前がぼんやりと霞んで見えなくなってきちゃった。
もう何も見えないよ、見えないんだよ。
……誠くんっ……