>>912 触手職人の朝は早い。
「・・・おはよう、みんな」
朝の光が皮膚粘膜に映えて、ヌルヌルと輝く。
陽光を取り込むための大きな天窓から、早朝の光が惜しみなくその部屋に注がれる。
その光が、部屋におかれたいくつもの触手達に、生命のエナジーを与えている。
ここは、アスガルド大陸でも随一の触手工房。
手桶サイズの木鉢に土が詰められ、まるで鉢植えの花のように、触手が植えられている。
大きなものは、人の身の丈を超えて、小さなものはまだ土の上からちょこんと芽を出しただけと、育ち具合は様々だ。
それらの触手達は、朝の光を受けて、ゆっくりとざわめいている。
良く育った鉢の触手は、その一本一本が肉付きも良く、見るからに素晴らしい弾力を持ち合わせていることが窺える。
触手達は、鉢植えにされてはいるけれども、れっきとした雑食性の植物モンスターであり、言葉こそ話さないものの、生物としての感情を持っている。
あまり馴染みのないものにはややこしい話になるのだが、『触手』とは、何本もの触手を生やしたモンスターの種族名である。
『触手』という呼び方に関して、その個体を指すのかはたまた一本一本の腕を指すのか、ややこしいのが難点なのだ。
世間に良く知られるように、切っても切ってもすぐに新しい手を生やす触手は、生命力の強い種ではある。
しかし、野に育った触手、その若い個体はよく、下級モンスターの主食として食べられてしまうため、成体まで無事に育つ個体数は意外と少ない。
ここは、そういった貴重な触手達を、きちんとした環境で成体に育てるという工房なのである。
触手職人、アニェ・スピーダモが今日も定刻通り職場に姿を現した。
アニェはまだ年若いエルフであるが、この仕事について50年はすぎている。
その仕事は高く評価され、こうやってこの工房を一人で任されているのだ。
まるで我が子にするように、朝の挨拶を投げかける彼女。
彼女の、触手達に注がれる真心が窺える行為である。
まず彼女が行う仕事は、湿気の補充である。
触手達は、湿気のある環境を好む。常にその表面を粘膜でヌメヌメと覆い、乾燥を避けているのもそういう習性からである。
アニェは霧吹きで触手達一本一本に丁寧に水分を含ませていく。
「・・・さて、次はあなたの番ね」
そういってアニェは、数日前に芽を出したばかりの幼い触手の鉢に向かう。
こういった幼い触手は、霧吹きのようなやり方では十分な水分が与えられず、かといって直接水をかけるようなやり方も効果が少ない。
そこでアニェは、こういった若い芽にはより丁寧に接するようにしているのだ。
鉢の上の若い芽、土の上から10センチほど飛び出し屹立した触手はまだ枝分かれもしていない。
アニェはその屹立した半透明の柱に、愛情を込めてキスをした。
「・・・・・・今日も一日、元気に育ってね」
そして彼女は、自分の唾液でたっぷり湿らせた舌で、その触手を舐めあげていく。
「ん、・・・・・・は、はぁん・・・・・・」
触手のぬめりに唾液をからませ、たっぷりと水分を与えていく。
ここで特筆すべきは、彼女の唾液であろう。
エルフであるアニェは、生まれて辛いままで、一度も肉を食べたことがない。
雑食化が進むエルフ達の中でも貴重な存在である彼女、その唾液は、まるでフルーツの果汁のような甘さがある。
その甘美で貴重な唾液を、触手達は喜ぶのである。
十分に唾液を纏わせ、水分を与えたアニェは、今度はマッサージを始めることにした。
「・・・だんだんと大きく育って、逞しくなってきたね」
アニェはその若い触手に優しく指をあてがい、唾液と粘液でヌルヌルになった彼の身体を優しくもみほぐし始めた。
くにゅ、くに、にちゅ、きゅむ・・・・・・
優しく、丁寧に、愛情を込めて、アニェは若い触手を指で扱きあげる。
そうして、ぶにょぶにょとした体の中に、硬い芯のようなものが出来上がり、さながらそれは勃起した男性器のようになってきた。
アニェは頃合い良しと見て、その男性器のような触手を、大きくあけた口中に含んでいった。
「あむ・・・・・・・・ん、んふ、ん、」
そして、喉奥に侵入しようとする触手をその喉で締め付け、頬をへこませ懸命に、咥内をぴっちりと触手に密着させた。
彼女の、喉と口内粘膜によるマッサージによって、触手はさも気持ちよさげに脈動するのだ。
アニェはその、ひくつく動きに気をよくして、彼を口に含んだまま頭を上下させ、マッサージをより激しくしていった。
びゅく!びゅくうっ!!
そしてとうとう、若い触手の芽はその先端から、苦い体液を吹き出した。
それを喉で受け止めたアニェは、こくり、こくりと詰まらせることなく嚥下する。
幼い触手にこの体液を吐き出させる行為、それにおいてはさすがに職人といわれたアニェである。
手さばきから舌使い、そして触手にかける愛情、どれをとっても極上のものであるといわざるを得ない。
ぬるり、と若い触手の幹を口内から解放したアニェは、その愛おしい若者にそっとキスをした。
先端から吹き出した体液をすべて胃袋に押し込んだアニェは、満足そうに微笑んだ。
この、男性器を口で愛するフェラにも似た行為によって、この若い触手はさらなる成長を遂げた。
マッサージと絶頂、それにより数センチほど体長を伸ばしたのだ。
若い触手には、最高の育成方法である。
アニェが先程の行為によって唾液と粘液で滑った口を布で拭き取っていると、しゅるりと彼女の服が衣擦れの音を立てた。
「あん、もう・・・」
隣の鉢に居座った別の触手が、その腕の一本を彼女の胸に這わせたのである。
服の上を蛇のように這い回り、彼女の身体の輪郭をなぞる。
その触手を皮切りに、まわりにあった触手達が、こぞって何本ものの腕を彼女に伸ばしだした。
「もう、ちゃんと服を脱ぐまで、がまんしなさい」
そうやって小言を言いつつ、アニェは手早く服を脱ぎだした。
若いエルフらしく、まだ胸は大きくないが、その慎ましさとは裏腹に、素晴らしい感度を秘めている。
桜色をした乳首も、先程の口唇愛撫によりすっかり気分を盛り上げていた。
そうやって衣服を脱ぎ去った彼女ではあるが、それは完全な全裸と言うべきものではなかった。
彼女の、幼い見てくれの女性器には、そのスリットを覆うように一枚の『呪符』が貼られていた。
「ごめんね、みんな。『あそこ』は使わせてあげられないけど、他のところはいっぱい使っていいからね」
そういって彼女は、自分の女性器をマエバリの上から押さえた。
触手職人は、処女でなくてはならない。
それは、育成に効果的な彼女の体液が、処女であるが故の純度であるから、という理由だ。
それを護るために、特別な『処女守護』の呪法がかかったマエバリを貼っているのだ。
たとえいかに触手が滑ろうとも、その呪符の下に潜り込んで彼女の穴を蹂躙することは出来ないようになっている。
「私のお口も、お尻の穴も、いっぱい触手を入れていいからね。
私の指でも、いっぱい扱いてあげる。
だから、いっぱい『お汁』を出して、どんどん大きく育ってね」
そして、彼女の言葉に応えるように、彼女の胸に触手が絡みついた。
「あっ」
最初の一本に継いで、何本もの腕が胸に絡みつき、その桜色の乳首に触手先端が吸い付く。
すっかり成熟した触手の先端には、常にだらだらとした透明の粘液がわき出す口のような器官があった。
内部には無数の繊毛がざわめき、捕らえたアニェの乳首を嬲りだしていく。
「ひッ!」
敏感な突起に与えられた刺激に、彼女は短く悲鳴のような嬌声をあげた。
その時にはすでに、他の触手達が彼女の全身に絡まっていた。
そして先程の乳首への刺激から間を空けず、全身を滑つく腕で撫で回し始めたのだ。
「ひあああっ! み、みんな、げんきっ・・・」
そうやって自分を求めてくる触手達が愛おしく、アニェは喜んで身体を明け渡した。
「んっ、んぐっ、んんんんんんんんんんん!!!」
彼女の喉を犯したいものには、大きく唇を開いてそれを受け入れ、ちゅうちゅうと吸い付くような愛撫で彼を喜ばせる。
喉奥深くに潜り込み、彼女をえづかせるやんちゃな触手もいたが、それでも彼女は歯を立てたりせずに、口全体を使って彼を愛してあげた。
「ぐ、ひいあっ!、ああああっ、お、おしりの、あな、どう? きもち、いい・・・?」
穴を犯したい触手には、膣を与えてやれないかわりにアヌスを捧げて彼を迎え入れてやる。
尻の穴はきつく、触手を千切らんばかりに締め付ける。
それでも触手達は、そのきつくしまったアヌスを喜んで蹂躙する。
「ふああっ、あん、あはあん、もっといっぱい、あっ、あは、・・・きて、いいのよ?」
彼女の胸はおろか、身体全体に絡まった触手達。
自分のぬめりを彼女の肌に纏わせるように、絡まった多数の触手が肌をすべり、締め付ける。
アニェも、それらの触手達がじゃれついてくることに喜び、したいがままにさせている。
まるで恋人同士の愛撫、ともすれば親子のスキンシップに似た、触手達との戯れである。
「・・・うん、わ、わたしがもっと、しごいてあげるから、いっぱい、いっぱいイって、いいんだよ?」
両手にそれぞれ触手の先端付近を握ったアニェは、彼らのぬめりのままに指を滑らせ、扱き立てていった。
クチュクチュと泡立つような激しさで、男性器に見立てた触手に手扱きの愛撫を加えるアニェ。
けして単調にならず、指を怪しく絡めるように蠢かせながら、愛しそうに愛撫を続ける。
そして、彼女の身体を嬲っていた触手達が、次々と限界を迎えていく。
まずは、絶えず彼女の指によって愛されていた触手の先端がぼこりと膨れあがり、弾けるように白い粘液をぶちまけた。
「あん!」
代わる代わる彼女の口を犯していた触手が、再び彼女の喉に潜り込み、喉奥を圧するように膨れあがったあと、どぶりと大量の粘液を彼女の胃袋に送り込んだ。
「んごおっ!!!」
彼女の尻の穴に潜り込んでいた触手達が、勢いをつけた速度で何度も出入りを繰り返し、彼女の直腸の中に熱い粘液を吐き出した。
「ぐひいいっっ!!!」
そして次々と、彼女の肌を這い回っていた触手達が、その先端から大量の白濁を吹き上げて、アニェの全身をべとべとの知るまみれにしていく。
「はあああっ、みんな、もっと、もっといっぱいだしてっ!!
わたしのからだ、もっとみんなの汁まみれにしてぇぇぇぇっ!!!」
彼女の声に応えるように、新たな触手がどんどん彼女に絡まり、次々と彼女の身体を嬲り回した。
そして次々と射精し、白い粘液を彼女に飲ませ、浴びせ、注ぎ込み、どろどろに犯していった。
粘液を吐き出した触手は引っ込み、そしてかわりに次の触手が彼女に絡みつき、また射精していく。
休みなく噴き出す液体に溺れるような錯覚と共に、彼女は何度も絶頂を迎え、狂わんばかりの嬌声をあげた。
その触手達の饗宴は、夜遅くまで続いた。
アニェはその間、数え切れないくらいに気をやった。
彼らに身体を嬲られる性感の高まりによってアクメを迎えた彼女だったが、その絶頂は必ずしも肉欲のみからなるものではない。
愛しい触手達が自分を求めてくれる、自分が彼らの成長を手助けしてやれる、その嬉しさが、彼女を幸せにしているのだ。
一日の仕事を終え、水を浴びてさっぱりしたアニェの元に、一人の男が訪ねてきた。
「遅くまでご苦労だな」
そういって、落ち着いた声でねぎらいの声をかけたのが、彼女の上司であるグレーターデーモンである。
今は人間の青年の身なりに変化している。それほど大きくない工房の中、巨大な正体を曝すわけにはいかないからだ。
「あっ、ドギアス様、お疲れさまです」
アニェは上司を前にして、身を正して返事をする。
それを、ドギアスと呼ばれた上司が、軽く手をかざして緊張を解くように促した。
「新しい砦に、触手を10匹ほど配置したいんだが、大丈夫か?」
ドギアスがそういって室内を見渡した。
たくさんの鉢にたくさんの触手達。数だけ見れば充分以上に揃っているのだが、彼が求めているのは、あくまでも成熟した成体であり、その中でも能力の高いものを求めていた。
彼も上級の悪魔である、魔物の目利きには長けていたが、今ここでは自分よりも専任の職人であるアニェの言葉を尊重する冷静さがあった。
それだけ彼はアニェの腕を信用しているのだ。
「砦の、どこに配置するのですか?」
アニェが、真剣な職人の目になって上司に確認する。彼女に問われてドギアスは、その条件を可能な限り伝えていく。
「そうですね、そのような場所だと、ある程度隠密が出来る子の方がいいですね」
「うむ、そうだな。では、そういう奴を10匹ほど・・・」
彼女の言葉を受けてドギアスがそう望むと、アニェは、いえ、と言葉を遮った。
「いえ、むしろ、少々騒がしくても元気で人目に付く子を数匹混ぜておいた方が、他の子達の隠密が活きます」
彼女の提案に、ドギアスはなるほど、と唸った。確かに、自分が提案した触手達の配置だと、彼女の言うように役割を分けた方が効率的だ。
「なるほど。では、まかせるぞ?」
「はい、おまかせ下さい。元気な触手が育ってますから、ドギアス様のお役に、きっと立ってくれます」
そして、早速触手の選別にかかったアニェを眺めながら、ドギアスは彼女に語りかけた。
「この間の、アーカリア攻城戦に寄越してくれた触手達の働きは素晴らしかった。
我ら魔王軍の進撃も、奴らあってのものだと、私もつくづく思い知ったよ」
若い人間の青年に化身したその悪魔は、そういって彼女に数日前の戦果を報告した。
彼の言うとおり、触手をはじめとする多数の魔物達の力あってこそ、最前線を優勢に維持できるわけだ。
彼はそれを十分理解していたし、その魔物達の質を上げることに労力を裂く重要性を常々まわりに説いていた。
故に、アニェのような優秀な職人には一目置く主義を貫いているのだ。
自分が育てた愛しい触手達が頑張っている、そんなことを聞いて、アニェは嬉しくなった。
「ありがとうございます!」
そうして、上司が工房から去った。
自分が育てた触手が手を放れ、戦場に旅立っていくのを見送るのは、やはり寂しい。
きちんと真心を重ねて育てた触手達だ、きっと元気に戦ってくれるだろう、とはアニェも信じている。
だが、相手は狡猾で、忌まわしい人間達だ。
いかに強力に育て上げた触手達といっても、無惨に切り刻まれ、火を放たれて命尽きてしまうこともあるだろう。
だが、もうこうなっては、自分の育てた触手達を信じるしかない。
彼らならきっと、たくさんの人間達を絞め殺し、引きちぎり、貫き殺していくだろう。
そうやって、魔物達の世を作るために頑張って戦うのだ。
そしてアニェは、工房の灯りを落として帰路に就いた。
多くの触手は旅立ったが、替わって新たな触手の幼体が届けられた。
戦場で何人もの人間の女を犯し、孕ませ、産ませた触手の幼体だ。
アニェにはこれからもまだまだ、新しい触手達を育てる仕事が続いていくのだ。
(でも、いつかはわたしも・・・)
アニェは想う。
いつかは自分にも、お役目から外される時が来る。
エルフとしての身体が成熟するに従って、体液にも不純なものが混ざり、触手達を育てるのにそぐわなくなってしまう。
それまでに新たな職人を育てて、その確かな後継者に、触手達の育成を委ねることになる。
その時こそ、自分は喜んで、自分の身体に貼られた呪符を剥がすのだ。
(いつか、きっと私が、みんなの子供を、たくさん産んであげるからね・・・)
そうして、今日も彼女の一日が終わる。
明日もまた、忙しい一日が訪れるだろう。
だがそれでも、アニェは元気に働くのだ。
愛する触手達に孕まされ、その子を産み落とす日々を夢見て。
END OF TEXT