【涼宮ハルヒ】谷川流 the 54章【学校を出よう!】
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由に書いてもらってもかまわんが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたりしたんだけど…
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人ならまず気にしません。 あなたも干渉はしないで下さい。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど…
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。 必要なのは妄想の力だけ… あなたの思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aふみぃ… 読み飛ばしてくださぁーい。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろ。
Q〜ていうシチュ、自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 だっていきなり言われていいのができると思う?
Q投下したSSは基本的に保管庫に転載されるの?
A拒否しない場合は基本的に収納されるのね。 嫌なときは言って欲しいのね。
Q次スレのタイミングは?
A460KBを越えたあたりで一度聞いてくれ。 それは僕にとっても規定事項だ。
Q新刊ネタはいつから書いていい?
A最低でも…………一般の――――発売日の…………24時まで――――待つ。
A一般の発売日の24時まで待ってもらえますか? 先輩、ゴメンナサイです。
Q1レスあたりに投稿できる容量の最大と目安は?
A容量は4096Bytes・一行字数は全角で最大120字くらい・最大60行です。
Aんふっ。書き手の好みで改行をするのも揃えるもバッチリOKです。
なんかバタバタして申し訳なかったです。
ありがとうございました。
乙
乙
>>1 お疲れさまです。
あなたのおかげで創作意欲がわきそうです。
>>1 前スレで長編投下して、さらにスレも立てて
乙です
ナイス神田川でした
9 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 00:22:21 ID:yy2uw4L/ BE:393439853-2BP(0)
>>1 一万年と二千年前から乙してるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!
>>1 八千年過ぎた頃からもっと乙したくなったぁぁぁああああ!!!
僕の地獄に
>>1乙は絶えなぁぁぁぁぁぁい!!!!!
それだけ感動したってことだよね
>>1乙!泣いた!やはりみくるは不幸でこそみくるだな
>>15 いや、なんか乗らないと負けた気がして・・・
正直スマンかった
あ
>>1のスレ立てを見るとやっぱ@う的な力の差を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……
本当に感動したのに誤字でぶちこわし(´・ω・`)
……「コピペ汁」?
甘いなBOY……俺は一字一字心を込めて書き込むことで己のq3WpIy8Q乙を表現しているのだよ!
非単調とは違う書き手さんだったの?
このレベルの書き手さんが増えてるってのは読み手にとっちゃありがたいことだけどさ
GJ
このスレは廃れたとみせかけて良作が投下されるから困る
小ネタいきます。
つい先日ですが、私にとって非常に心躍るエピソードがございまして、この場を借りて少し語らせていただきたく思います。
私が彼らと行動を共にしていた時でございます。
私は常に殿を歩いており、温かく彼らの楽しむ様を見守っておりました。
「皆さん、そろそろお腹空きません?」
こうして、いつも行動の先陣を切るのは橘殿です。なかなか小さな体で、よくこれほどの活力を持てるものかと、私はいつも感心している次第でございます。
私ももう数十年若ければ、彼らを引っ張っていく力を有していたかもしれません。ですが、それも叶わぬ夢です。
「そうだね。実は僕も先程から空腹を覚えていたんだ。時間的にも適切だしね。キミはどうだい?」
「どっちでも構わん。僕は昼食を済ませてきたんだ。好きにしろ」
彼は非常に口は悪いのですが、心の奥には熱いものが眠っていると私は信じております。
私以外に男性は彼しか居ませんゆえ、腹を割って話せる仲になりたいのですが、いやはや、どうも彼は心が固い。
「――食事――――米…………」
私も少々小腹が空いてまいりました。
「じゃあ、決まりですねっ。何食べます? ちなみにあたしはハンバーガーに一票」
「特にこれといった希望はないね。意見が出たのなら、僕は黙っておくことにするよ」
「僕は食べない。勝手に決めておけ」
「…………米――――」
この季節ですと、私はやはりこれを推させていただくとしましょう。
「今の時期の鯖は非常に脂が乗っておりまして、その塩焼きは絶品でございます。よければ私が調理して差し上げましょう」
先日手に入れた三浦半島産の物を、ぜひ皆様にも味わっていただきたいものです。
「じゃあ、ライスバーガーも扱っているハンバーガーショップでどうだい? これならハンバーガーと米の両方をクリアしているだろう?」
ふむ。
「あ、いいですね。やっぱりあたしもライスバーガー食べようかな」
こうして、彼らと私はハンバーガー店へ赴くこととなりました。
昼時だからでしょうか、店内は混雑しておりまして、苦心の末にようやく席を確保したのは私でございます。
しかし、橘殿も私とほぼ同時に別席を確保したようでして、
「ご苦労なことだ。自分から進んでこんな役割を担うなど、僕には到底理解できん」
「……な、なんですかそれっ! そんなこと言うんだったら、ここには座らないで勝手に自分で席を探してくださいっ!」
「くくく、相変わらずだねキミたちは。僕は素直に橘さんの隣に座らせてもらうことにするよ」
「――――空き…………ひとつ――――」
私も彼らの席へ移動することにしましょう。
そうして食事も終わり、私も含め彼らが席を立つ準備をしていたところです。
「ゴミ捨てるの、じゃんけんで負けた人にしません?」
またもや橘殿がひとつの提案を出しました。
なるほど、このような定食屋ではお盆のゴミを自ら捨てなければならないようです。これは従業員の怠慢ではないかと、私には感じる次第です。
「いきますよ。じゃーんけーん、」
みなさま拳を構えておられます。もちろん私とて例外ではなく、拳を構えて備えます。
「ぽんっ」
なるほど。
パーがお二人、グーもお二人、そして私がチョキでございます。やはり人数が多いと、どうしてもあいこが多くなるのは仕方がないことでしょう。
「まるで何かの示しがあったかのような結果だね。じゃあ、僕は外で待ってるとするよ」
ふむ。
「あははっ。残念ですねぇ、藤原さん。じゃ、あたしも佐々木さんと待ってますねっ」
嬉しそうな表情です。
「……ちっ。くだらない。おい、橘の分はあんたが捨てろよ」
「――――運ぶ………」
私は自分のゴミを捨て、佐々木殿の待つ外へと向かいました。
日中の陽射しは執事服の私には少々暑く、ですが、こればかりは季節が過ぎるのを待つ以外に方法はございません。風鈴の音色が恋しいところです。
ゴミを捨てたお二人がお戻りになられ、次の行動を何か提案して差し上げようと私は考えておりました。
そうですな、空き地でオナモミを集めるのも趣があってよろしいのではないかと。
「僕はもう帰る。一日を丸々あんたたちと過ごすのは勘弁だ。気が滅入る」
残念です。私も若ければ、これから両手に花だと喜んでいたのかもしれないでしょうが、今はそうはいきません。
「私では、若い女性三人のお相手に少々不安があるかもしれませんが、どうぞお任せください」
「実は僕も用事があってね。さほど急ぐようなことではないのだが、この時間帯に帰るのがベストだね」
「……そうですか。佐々木さんもなら、しょうがないですね。今日は解散にしましょう」
それがいいでしょう。
さて、私も蝶ネクタイを緩め、帰ることにしましょう。
まだ陽は高いですが、明日も彼らの笑顔が楽しみでなりません。彼らの笑顔を守ることができるのを、私は非常に誇りに思っております。
こうして彼らの笑顔を思い浮かべながら、ベランダに敷くダンボールを二枚ほど探し、私の一日が終わるのです。
以上です
ちょwwwwwww新川さん空気極めたwwwwwwww
同人ゲーム「SOS雀」のサイトのSSにある「鶴屋が男達に犯されている?シーン」を見て、
純愛的な3Pものを書きたいけど、なかなかいい案が思いつかない……orz
なんだこれwwwww
タイトルで噴いたwwwww
そして新川さん何者wwwwww
新川さんステルス能力覚醒ktkrwwwwwww
どうコメントしたらいいんだw
しかもなんで佐々木団の方をスニーキングしてるんだw
全く関係ないが
>>34、IDがnice boaT.
これはいいスネークですね
>>29 三日前からきたキョンと三日後からきたキョンと長門
そして三日後からきたキョンは何故か血塗れのナイフを所持
>29
谷口×鶴屋×国木田の名字なしキャラで3P
名字オンリーと言えば
阪中、中河、佐々木、藤原もそうたぞ
>>41 だったらクラスメイト全員当てはまるんだが。
1年5組時の。
1年5組はハルヒと朝倉以外、誰も下の名前わからんよな
キョンなんて名字すらわからんぞ
面倒くさい。
いっそのこと皆『涼子』でいいよ。
『山根涼子』
谷口はみのるでいいよな
キョンの本名は「李 敬恵(リ・キョンヘ)」だって言ってた。
これはひょっとして「校庭〜」の人か?
>>49 その作者さんっぽいな。
あと未来ワリ人形も。
荒川さん…普通バレるだろうwwww
,. -一……ー- 、
/::::{:/::::‐-:、:::丶:\
/:::::/´ ̄ ̄__\、::::l,. -―、
/::::// /:: ̄、:\::::ヽヽ≦、ス=、、
/::::/::|,.イ:l::丶::::::::\:X:::',:::ヽ、 ヽハ ',ヽ
f´ ̄!:::::l:_|_|\::\--/,r=ミ|::::::lヾく:l::', | |
ヒア_|:l::::|::N,≧ミ、トゝ ハ心}!::::::K:ヾニ二ヽ
,r=ヽレ|:|::::l::|{ ト心 `'" !::::::|::!',::|ハ::! `
// |:|:::::ハ!、::ヾゝゞ'′ _'_,.ヘ /::::/:::|_!:l リ オナニーは一日一回だぞ!
// !ハ//|:|::ヽ::::丶、__丶 _ノ/|:::/イ::ハヘ!ヽ_ わたしでオナニーしたら次の日、500円払えよ!
L! /ヘ |:|ミニ='⌒ (⌒ヽ´ _ !イノl/ |:! ! !L_
〈_{ ヾ.,!/ , ´ \ ∨,.‐、| l:| |ノ !
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/__レ-〈 / f´ ヽ. '. __! //./-‐ '´ /
ヽ! |r' \l__ V/ /-‐ /
「 ! { `\_f_ノ∠ミヽ! /
/ ヽ`ヽ.二ニァ'V∠二ハ }},!-'
/ ヽ---/´/レ!ト--'/‐'
/ / ̄ヽ二ノ´l:ヽノ_
r‐! / l:/ `ヾ==、ー-- 、
/ ̄| ヽ./ 〃 /人 `ト、::::\
', / ,!\ |l \ / \
53 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 07:54:46 ID:WTZWbDZo
原作者の新作読むとやっぱ圧倒的な力の差を感じてしまう。
これはもう如何ともしがたいね……
シュールから感動作まで手懸けるのは凄い
新川さんは神の不在証明の使い手
来未割り人形の最後の鶴屋さんの語りはどうゆうこと?
あとなんで長門が人形持ってたの?
もう1回音読してこい
>>60 俺はいつもくるみ割り人形をベッドについている棚の端に置いている。
ある日の事。
夜中に目が覚めると何故か俺の頭のそばにくるみ割り人形が置かれていた。
何でだろうと思いつつ俺は棚の端へと置き戻す。
しかし夜中もう一度目が覚めてみると、やはり俺のそばに人形がやってきていた。
どういう事だ。なぜ人形が近づいてくる。
俺はもう一度棚の端にやり眠る。
そして目が覚めると、やはり俺のそばに人形があった。
そんなやり取りを何度か行い、俺は寝不足と恐怖で朝を迎えた。
「……き、キョンくぅん! 怖かったですよぉ…」
横で朝比奈さんが天使にに使わぬ青ざめたお顔を見せていた。やはり人形の呪いだろうか。
それでどうしましたか?
「えっと、夜中に目が覚めたとき人形と目があったので何となくキョンくんの方に置いといたんです。
でもそれなのに気づくと私の枕元に……」
つまりこういう事だ。
「失礼ですが、僕の表現以上に話が全くわかりません」
>>60 >今のわたしに出来る、精一杯のイタズラ。
長門の家に人形を置いたのはみくる。
>「安心して。終わったわけではない」
「まだ始まったばかり」
「転移するには媒介が必要。その媒体としてこれが非常に適切だった。だからそれに使用した」
>顔も服装も全然似てないのに、なんであの二人と間違えたのかぜんっぜんわかんないよっ。
二人から消えた「10ヶ月の記憶」が、あのカップルに"転生"したのでは?…イミフなのは自分の語彙力不足のせいだ。スマソ。
修正
○転移
×転生
>>62 呪いの黒人人形乙。
>>63 おじいちゃん全然チャウよ。
朝比奈さん(小)はくるみ割り人形を過去のキョンに送った。
長門はそれをいつの間にか回収して何かに使用しただけ。
ただ、長門の「終わったわけではない。まだ〜」の下りは俺もよくワカンネ。
あのカップルは未来のキョンと朝比奈さんの姿なのかもしれないし、全くの他人なのかもしれない。
でもまぁ切ない展開の中に希望が見えるENDだってことは確かだわな。
保守のため小ネタを投下
俺とハルヒは閉鎖空間に閉じ込められた。手掛かりは、白雪姫とsleeping bautyの言葉だけ。長門に朝比奈さん、俺に寝ている女性にキスするという変態行為をさせるのか?
「キョン、何そわそわしているのよ」
「いや、そろそろ寝ないかなー、って思っただけ」
しまった。思わず本心をしゃべってしまった。フゴ・良いパンチが俺の顔面を直撃した。
「あんた、二人きりになったから即女の子を抱けると思っていたの?この変態が。団長として教育的指導してあげないとね」
ハルヒさん、グーはやばいですグーは。
「そんな深い意味じゃなくて、夜だし眠くならないかな〜、なんて」
ハルヒの顔がさらに怒りに満ちて、まずかったかな?さっきの言葉。
「ふーん。つまり寝込みを襲おうというわけね。さらに変態だわね。」
恐いよー、どうやって言い逃れようか?
「そうじゃなくて。俺は眠いから寝たいのだけど、団長より先に寝るのはどうかと思って。」
その瞬間、ハルヒの顔つき、というか怒りの質が変った気がした。
「そんなに眠いの?」
「ああ」
バキ。また良いパンチが俺の顔面に直撃した。
「こんな不思議をこんな美人といっしょに経験しているのに、眠いって何?そんなに寝たいのならあたしが永眠させてあげるわ。」
すまん、古泉。世界が終わりそうだ。その前に俺の命が、
くるみ割り人形良いね。
まさに神田川だねえ。朝比奈さんでやられると破壊力凄い。
食費を一万以下に切り詰めるなんて泣かせるじゃないか。
>>60 鶴屋さんの方は考え方がいくつもあると思う。ってか俺が絞れてないだけだが(笑)
何故長門が人形を持っていたか
俺の解釈ではだが、長門が渡した人形はあの時の人形とは別で、長門が渡した人形には二人の十ヵ月の(ryが入っている。
それをキョンに渡すことで人形がそろう→記憶のはいった人形は一緒にいられる…みたいな…
わりぃ、イミフorz
ここであまりエロのない古泉×みくるを投下するのはKYだろうか
住人の方々の反応を見てから判断します
ちなみに反応がよかった場合投稿します
が、全く文才がないので構成とかが難しく、出来上がってないので投稿するのは遅いと思うが勘弁してください
>>69 期待。
でもフルボッコにされるのは覚悟しとけよ。
てゆーか前スレの終わりのほうに現れた長文批評家はなんなの?
やたら偉そうだし、何日も前のSSにいまさらもっともらしいレスくれたりして
>>72 専用ブラウザ導入してNG対象に登録するべきだよ。 by佐々木
>>72 内容はどうあれ、埋めてくれた事実は変わらんから
「埋めd」としか考えなかったw
まぁ次スレに来てまで言及することもないだろう
>>72 新参乙。
ああいう人が居るから書く方もやる気が出る事もある。
ただ褒めればいいってもんじゃあないからな
やたら上から物を言うのも考え物だが気になった部分を指摘したりするのは良い事だ
ただ以前の方がしっかりとした批評だった気がするがな
>>77 確かに。
改行位ブラウザ側で設定しとけよと毎回思う。
橘がキョンにレイpされるやつは保管庫のどのへんにあるんだろう
>>80 古みくは普通にアリだろう…常考。
つーか古長のエロなんてあるのか?
あのカプはエロがNGのvipにしか生息してないと思ったが…
>>81 確か長門が古泉に強姦されかかったやつならあったとおも
後にキョンが乱入してくるやつ
閲覧環境って難しいよねー。見づらいページっていくらでもあるけど、
究極的にはユーザCSSで徹底改変できないことは無いわけだし。普通しないけど。
朝比奈さんは自分語で批評するから意味わかんないことも多いなぁ。
明らかによく出来てた「セイクリッド〜」とかスルーだったし。
朝比奈さんの話題はやめとこうぜ
すぐしゃしゃり出てくるんだから
あれは批評や感想でもなく自分語りといった方がいいからな。
本人も自分語りウゼェと言っていたように、そういうものは大抵ウザイ。
そういえば批評家がいなくなっちゃったな
成る程と頷けるような批評はありがたかったのに
だって最近は批判的に対応されるとファビョるのがいるんだもの。
vipに毒されてんじゃねーのか。
そんな奴いたか?
>>69 誘い受けは勘弁
投下の判断は自分でどうぞ
書き手でも読み手でもそんなおかしなやついたっけか……俺の目に入ってないだけかな
都合が悪くなると無かった事にするんだな、ここの連中は
本当に子供の集まりだ
>>95 それではお前の書き込みも無かったことにさせてもらおう。
ぶっちゃけ2chで正論なんて言ったって無意味なんだよ。
>>83 それって8-791と8-830のことをいってるのかな。
寸止めだし古泉が完璧にかませになってる奴だけどな。
妄想前提のSSスレでいうことでもないが、原作だとSOS団周辺ではキョンが大人気過ぎて
「ああ、妄想だなあ」と感じられるのがきついんではないだろうか>>古泉絡みのカプ
永遠の後出しじゃんけん会場だからな2chは。
しかし、自分が面白いと感じたSSをボロクソに言われるのは、きついものがあるぞ。
例えその批評がある程度的を射ていたとしても。
>>97 古泉おすやつは女臭いし妄想度高いしで嫌がられるんじゃね?ここは原作重視する人多いし。
誘い受けするぐらいまわり気にするんならVIPに投下したほうがいい
>>97 古泉も名無しキャラからは大人気らしいんだけどなぁw
メインキャラからはそうでもないって辺りはギャルゲの脇役っぽいw
もっと端的な、メインキャラからは総スカンだが
名無しからは大人気のキャラがいるぞ
谷口とか
104 :
69:2007/10/21(日) 23:04:20 ID:PL3rhTZn
皆さん意見等ありがとうございます。感謝!
よければ近いうちに投下させていただきたいと思うのでどうぞよしなに。
でも本当に期待はしないでください・・・orz
がんばってきます。
>>100 あんまり人様の気分を害するような言葉使うべきじゃないが、
馴れ合いするのもアレだと思うがな。
ボロクソに言われるだけの欠点があったなら、それも仕方ないんじゃねーの。
まあ言われるだけマシってのもあるなw
朝比奈さんはスルーすることもよくあるしな
誰か…燃料を…
古泉よりどうでもいいことだ とキョン
半年振りにまとめ見て〜人形呼んでほろりときた
1乙 みくる版消失だと思って心に残す
>>110 むしろあれはみくる版非単調な気がするんだけどなw
112 :
愛の天使:2007/10/22(月) 03:45:15 ID:fVmtaB3a
最愛の妹を無くした頃、行き倒れの小学生つまり無き妹と同世代の女の子を助けた。
そいつは、自称「愛の天使」だった。
「お礼に女の子にモテモテにしてあげるよ―、キョン君―、じゃ―行ってくるねー」
奴は電波な話をしながらおとなしく自分の家に帰った、とその時は思った。
しかし、夕方には俺の家にまたやってきた。
「キョン君、今日からハーレムだよ―。良かったねー
えーとねー、カチューシャが似合うすっごい美人と、巨乳で優しい女の子と、知的でチャーミングな女の子と―
それから―、日本一の金持ちのお嬢さんと、太股がムチムチして色っぽい子と、ついでに眼鏡の無口属性の女の子に矢を当ててきたよ―」
こいつ、精神病院行った方が良いな。
「ありがたいが、俺には眼鏡属性も無口属性も無い」
それから、俺はハーレムなんか疲れるので恋人は一人で良いのだが、
「そうなのー?でね―、あたし今日からキョン君の妹だよーよろしくねー」
こうして、天使は俺の妹になった。
という夢を昔見た。全く我が妹が死ぬなんて縁起が悪い。
「それは夢ですね。涼宮さんと行った閉鎖空間と同じで」
お前それ現実だったろ
「あなたが自分の妹だと思っている人物は普通の人間では無い」
超能力者に宇宙人、今日は4月1日じゃない。冗談はいい加減にしろ。しまいには怒るぞ
妹は人間だ。その証拠に俺は全然モテてないじゃないか。
そう、俺が不自然にモテることなど全く無い、だから妹は愛の天使でなく人間なんだ。判ったか。
キョン・・・・w
要約しながら読むと、アメリカンジョークのコピペ改変に見える。
ちょっとワラタ。
もし本当だったら妹は死んじゃってるんだもんな。
妖怪とか宇宙人とかTFEIは天涯孤独or家族全員それ、と考えたら駄目だよ。
死んだ人の代わりに情報操作で入りこんでいる可能性があるんだよ。
キョン鈍いww
>>112 >最愛の妹を無くした頃
それなんて Escape from The School ?
ちょいと数レスの短編
120 :
自己判断:2007/10/22(月) 19:43:52 ID:wlbSZN81
自己判断
「まぁ、物事って言うのは、何にしてもずばっと自分で決めることが大事よね。その点あたしはいつでも何でもずばっと一人で全部決めて
いるんだから自分で言うのもなんだけど大したもんだわ。流石はSOS団の超団長よね! それに比べたらキョンなんて優柔不断の神祖みたいな
もんなんだから、ほんっとあたしが色々決めてあげないとダメなのよね」
「お前は色々失礼なことを言いすぎだ」
「何よー本当のことじゃない」
放課後、私達はいつもの様にキョン君、涼宮さん、長門さん、古泉君のメンバーでいろんなお話をしています。
で、今日はさっきみたいなお話になったんですけど…。
「そうよね? みくるちゃん、有希、古泉君も」
「ひゃい?」
私達を見て同意を求める涼宮さん。
でも…。
私達は、お互いの顔を見て、しばらくの間沈黙しちゃいました。
「な、何よ? そこは深く頷くところでしょ?」
そうすればいいんですけど…。
でも…。
ある晴れた日の市街探索の日の事でした。
自由時間が出来たので、私はデパートの紅茶売り場で新しい紅茶を探して悩んでいました。
「う〜ん、どの紅茶がいいんでしょう…?」
たまにこういうお店に来ると、どうしてもみんな美味しそうに見えて悩んじゃいます。
「みくるちゃん! そんなんじゃダメよ! こういう事はずばっと決めなくちゃ!」
突然、涼宮さんが人差し指をずばっと突き立てて言いました。
いつ見ても心臓に悪いです。
「ふひゃい! そ、そうですね…ええと…ええと…」
はわわ! ええと、どこを見ていたんでしょう? あれ? あれれ?
「ああもう、見ていられないわ。これと、これと、これと!」
「すす、涼宮さん、そんな三つもいっぺんには…」
涼宮さんは目に入った紅茶を片っ端から三つ手に取りました。
しゅごいけつだんりょくでしゅけど、そんなにかえましぇーん。
「キョン! あんたこの中から一つ選びなさい!」
…はえ?
「おいおい、いきなりなんだ?」
キョン君がまた困った顔で言っています。
いつも大変ですね。…私もですけど。
「いいから選びなさい!」
対して涼宮さんは我関せずとキョン君の眼前に紅茶を突き出します。
「紅茶か? んー…それじゃ、これだな」
キョン君が一つ決めました。すると。
「はい! これよ!」
涼宮さんは残り2つをキョン君に押しつけ、キョン君が決めた紅茶を私に渡しました。
「あ、ありがとうございましゅ」
「何か迷ったらあたしに言うのよ!」
涼宮さんは得意げに言ってしまいました。
「……」
「……」
私とキョン君はお互いを見て、なんと言うか…やれやれ、と力なく笑いました。
「キョーン! なにみくるちゃんにちょっかい出してんのよ! あんたはこっち来なさい!」
「…やれやれ」
キョン君は私に向かって本家『やれやれ』を出してから、行っちゃいましたとさ。
お疲れ様です。
121 :
自己判断:2007/10/22(月) 19:44:27 ID:wlbSZN81
…二週間前の市街探索、その日は午後二時十三分から、私と彼、他三名で珍しく図書館に行くことになった。
有機生命体には物質から直接受ける影響による感情の変化以外に、目に見えない、実際には存在しない『雰囲気』から影響を受ける
精神状態の変化が確認されている。
私にとって図書館は視覚から得られる情報を無尽蔵に受け取れる場所という意味以外を持たなかったが、彼が隣にいる事によって
それとは別の…一種のエラーとも思えるが、精神的なくすぐったさと落ち着かない気持ち、そして多分…嬉しさと言う感情を感じる。
以前ならエラーとして消去していた。
でも、この『感情』は彼と出会い、こうして二人っきりで図書館に来た時に顕著に私の精神に現れ、『心』に影響を与える。
だがそれは決して不快でも邪魔でもない。
私は、この『感情』を…大切にしたい、と思う。
だからだろうか。
図書館に来ているのに、なかなか読む本が決まらない。
どうしても視線が時折彼を追ってしまう。
そんな時。
「あら、まだ読む本を決めていないの?」
涼宮ハルヒが近づいてきた。
そういえば彼以外のSOS団も一緒なのだった。
残念。
「ふーん、相変わらず難しそうな本の棚ね。でも、早く決めないと時間が来ちゃうわよ」
「……」
私は視線を本棚に戻し、本を探した。
「ふーん、珍しいわね。それなら、あたしが本をえらんであげるわ」
涼宮ハルヒが胸を叩いて言う。
…別にいいんだけど。
「キョン! ちょっと!」
…図書館では静かに。
「大声を出すなハルヒ。何だよ?」
「これとこれとこれとこれなら、どの本が有希に合う?」
「…どれも同じに見えるが…これはどうだ?」
そう言って彼が取ってくれた本は、幸いまだ見たことのない本。
「ありがとう…」
「ふふん、あたしにかかればこんなもんよ」
…私は彼に言った。
「キョン、ちょっとこっち来なさい! 上の本が届かないから取って!」
「踏み台使えよ…」
二人は行ってしまった。
…今度は確実に二人きりで来よう。
「さて、どこにしましょうか…」
「何? 古泉君、今度はどんな不思議を提供してくれるのかしら?」
とある日のSOS団部室。
僕がパンフレットをいくつか広げていると、涼宮さんが嬉々とした表情で問いかけてきました。
「ええ、僕の親戚の叔父や知り合いが、偶然にも同時期にいくつかの施設を作りましてね。記念に僕らを招待してくれるらしいんです。
贅沢な悩みですが、どこが楽しそうかと思いましてね」
「ふーん、全部順番ってわけには…あ、ダメ? それじゃ仕方ないわね。でも古泉君、副団長たるものこういう楽しみは悩んじゃダメだわ」
「すいません。どうにも難しくて」
「まぁ、色々魅力があると悩むのは当然よね。でも、こういうのは直感が大切なのよ! よーし! あたしがさいっこうの選択で悩みに
終止符を打ってあげるわ!」
「それはそれは。助かります」
「キョン! ちょっと!」
…あれ?
「何だよ。いまサイトの更新中だぞ」
「そんなのいつでもいいのよ。団長命令よ! ちょっと来なさい!」
彼がため息をついて団長席からこちらに来ます。
「で、何だ?」
「どこに行きたい?」
122 :
自己判断:2007/10/22(月) 19:45:03 ID:wlbSZN81
「あ? 何だこれ? て言うかこういうのは…」
「あんたがどこに行きたいかって聞いているのよ! 別に聞くだけなんだからさっさと答えなさい! そのあとどうせあたしが
あんたの決めたハズレじゃなくって、本命をきっちり決めてあげるから!」
「どこまで不躾かお前は」
「いいから!」
「分かったよ。それじゃ…ふむ、ここはなかなか面白そうだな。よし、俺はこれだ」
と、涼宮さんは彼の手にしたパンフレットをぱっと奪い取り、じっくりと眺めます。
「…平凡ね」
「悪かったな。どうせお前がばしっと本命を決めるんだろ。俺はサイト更新の続きをするぞ」
「ま、いいわ。さっさとやりなさい」
「やれやれ」
彼はお得意のポーズをとってから団長席に戻りました。
その後涼宮さんと言えば…。
先ほど彼が選んだパンフレットを手から離さず、他のパンフレットを見ている様な気はしますが視線は遠くです。
どうやら、もう彼の選んだパンフレットの場所で何をするか頭の中であれこれ考えているようですね。
「……」
「……」
「……」
「な、何よ。なんでみんな、えー? みたいな顔する訳?」
涼宮さんが珍しく戸惑っています。
「みんなには、思い当たる節があるんじゃないのか?」
キョン君が言います。ええ、その通りなんです。
きっと気付かないし気付いても認めないんでしょうけど。
「失礼ねー! 生まれてこの方人の意見なんか頼りにしたこと無いのよ! 自分の意志だけで生きて来ているんだから! ねぇ! キョン!」
「……」
「ちょっと! うんって言いなさいよ! あんたがうんっていえばいいのよ! あんたが!」
「分かった分かった。そうだな。お前は自分の意志で全部決めているな」
「ふふん、そうよ! キョンの言うとおりなのよ! あたしは自分の意志で全部きめているんだから! 分かっているじゃない。キョンが言うとおりね!」
とっても満足そうにキョン君に微笑む涼宮さん。
えーと…。
とりあえず…。
「ご、ごちしょうしゃまです」
「…ごちそうさま」
「ごちそうさまです」
「へ?」
涼宮さんは何? と言う顔で私達を見ていましたとさ。
おわり
ちょwwwwwww萌え死んだwwwwwwwwwwwwwGJ!
なかなか良作ですね!
良いねー
良いね良いねー。
胸やけがするほどGJ!!!
ご馳走様ですwwww
これは良いニヤニヤ。こういう小ネタ、日常は好きだ。
微笑ましいな
萌えたw
GJ&乙です
ごちそうさまです GJ
ごっそうさん、GJ
みくるに萌える日が来ようとはw
ひゃ〜い
嗚呼…もうお腹一杯だから寝るよ
こういう部下が決めたことをさも自分が決めたかのように振舞う中間管理職いるよねー
ハルヒだと萌えるから不思議
>>112 >えーとねー、カチューシャが似合うすっごい美人と、巨乳で優しい女の子と、知的でチャーミングな女の子と―
>それから―、日本一の金持ちのお嬢さんと、太股がムチムチして色っぽい子と、ついでに眼鏡の無口属性の女の子に矢を当ててきたよ―」
スマン、どれが誰かよく分からん俺に、判りやすく教えてくれ、エロイ人。
>>137 ハルヒ、みくる、喜緑さん?、鶴屋さん、朝倉、長門じゃないかな?
てかハルヒ、みくるときて何で長門が最後なんだろう?
間違いかもねwww
最後誰なんだ
ハルヒ、みくる、佐々木、鶴屋さん、朝倉、長門じゃないかな
今思いついたけど三番目は長門で最後は消失長門じゃないかな?
>>142 ネタで言ってるだろwww
まあそれはそれでおもろいけどなw
>>120 これ、「朝比奈ミクルの冒険」の最後の試写終了シーンから
ヒントを得たでしょ。
普段からキョンを下っ端扱いしときながら、
何かと同意が必要な時に「ねぇキョン?」と・・・
実はキョンに頼りきりなのが分かる
微笑ましいエピソード、GJ
>>138 俺も喜緑でなく佐々木だと思う。
長門が最後なのは、トリをつとめる重要な役だからか?
作者がそこまで考えているかは知らないが。
>>120 なんで今までこういう話がなかったのか不思議な位ハルヒのイメージぴったりだ。GJ
>120
久しぶりに覗いたら、いいのが来てるなぁ。ニヤニヤしてしまうぜ!
>145
あれは良かったね。第一回なのに謎の自主制作映画で始まって、
視聴者の頭が「???」であふれているときにこの台詞で〆。
話の筋はサッパリだが、この子はべったり依存してるんだなって
いう一点だけしっかり伝わるシーンでした。
「ちゅる屋さん」が公式のネタじゃなかったことを知って軽く驚いた俺が来たのだが
名前の順番ぐらいでいちいち突っ掛かるから長門厨なんて呼ばれるんだよ
佐々木厨と別ベクトルのうざったさがあるよな、長門厨には
キモいっつーか近寄りたくねーっつうか
主要キャラが並んでいないのを不思議に思うのは普通の感覚だと思うが?
ていうか、そんなことで突っ掛かるなよ、厨厨。
うざいんだよ。
どっちもうざいな。
なんでもかんでも不思議不思議って、お前はどっかのヴァカか。
>>152 そんな攻撃的な態度をとるから嫌がられると気付いてほしいもんだ
最近アスタリスク見ないな。
あ、NG専用の方ね。
ID:6EkkBS7i
ID:4vSLY8eR
ID:sxXAJTpO
ID:Zg84azNb
投下します。
5レス分。
学校を出よう!
エロなし。
昼下がり。暑い夏が終わり、過ごしやすい季節になった頃のこと。
ここは第三EMP学園。EMP、いわゆる超能力を発現した少年少女たちが住む場所。
そこに、彼はいた。
「あいつ……俺との約束、忘れてるわけじゃないよな」
端整な顔立ちに張り付いてるのは不機嫌そうな感情。
「連絡もつきやしないし、どうなってやがる」
不満そうな彼、蜩篤志は、ある野望のためにやって来た。
「やっぱり何処の学園もそんなに変わらないもんだな」
独り言を呟きつつ、ここへ来た目的のために歩く。
その目的とは、ある夏の事件の際、奇抜な笑顔を浮かべた白衣の男と交わした約束にあった。
しかし、約束がいつになっても実行されないのだ。
彼はあの手この手で催促を試みたがまったく相手にされない、まさしく門前払いである。
この間などは酷かった。あちらから電話をかけてきたと思ったら、一方的に用件だけを言い
状況を把握する間もなく切られてしまった。
電話で話題となったルームメイトが帰ってきて、詳細な事情を聞くまでは、何だったのかとイライラしたものだ。
それでも我慢を重ねて、何度目かも分からない電話を宮野にかけ、やっと繋がったと思ったら、
『そんなにもそれを欲すると言うのなら、私を倒してみたまえ。この宮野秀策はいつでも戦いを受け付けているぞ!』
こんなことを言いやがった。それ以降は音信不通だ。
そして蜩少年は非常に短絡的な性格だった。その結果、約束の白衣男、宮野秀策が居る第三EMPまで遠征をしているのである。
上の方に遠征の理由を聞かれたときは困った。まさか本当の事を言うわけにはいかないだろう。
この事態の発端となった、夏の事件の相談といった風に理由をでっち上げたのだ。
「テレパスがいなくて幸運だったな」
彼の能力はそっちに疎いので、読心を防御する手立ては無い。とても危険だったが、それを冒す価値が、ここにはあった。
「待ってろよ、あの野郎」
「んん?」
しかし目的の部屋を探そうにも場所が分からない。そこらにいる奴に話を聞こうとしても、宮野の話になると皆逃げていくのだ。
あいつ、何やってやがる。
そのために、生徒会執行部にまで足を運んだわけである。執行部の位置なら第二と同じだ。
「ふぅん、へえ? あんた第二から来たの。遠いところからご苦労様」
扉から正面、といっても植物で遮られ直接は見えない。その見えないところから猫をなでるような声が聞こえてきた。
何だ、俺は何も言ってないし、そもそもこっちは見えてないはずだ。
「あんた、EMP学園に何年いるのよ。早くこっちに来たら? 別にあたしはこのままでもいいけど?」
……テレパスか。また厄介な奴がいたもんだ。
植物を掻き分け、奥に進むと、ソファでだらしの無い格好をしたポニーテール女がいた。
「はあい、第三EMP生徒会執行部会長代理、縞瀬真琴ちゃんでーす。よっしくー」
奥歯が軋む。
「怒らない怒らない。話は聞いてるわ、目的は何なの?」
真琴が寝転んだまま聞いてきた。
「話を聞いてるならその質問は必要はねえだろ、この間の仲嶋数花の事件の……」
「本当の目的よ、本当の。あたしにかかれば分からないことなんてないのよ。自分で言うのもなんだけど、あたし、トリプルAだからね」
くくく、と押し殺した笑いをしながらこちらを見てくる。
そんなら、なおさら質問する必要がねえだろと蜩は思う。
「いや、一応聞いてあげようと思ったんだけどさ。ふうん、そんな理由で行動するのも悪くないかもね。嫌いじゃないわ。好きでもないけどね」
更にニヤニヤを強くして視線を送ってくる。そんなので顔が良いのだからなお悪い。
「はいはい、分かったわよ。宮野の居場所ね」
そう言うと同時に蜩の頭の中に部屋の番号が貼り付けられた。
「これでおっけー。後は勝手になさいな。あ、ユキちゃんによろしく伝えといてね」
とんだ遠回りだった。エライ奴がいたもんだ。第三は変人の集まりってのは本当なのかもしんねえな。
そんなことを考えながら、目的の部屋に立つ。ノックをしてしばらく待った。
「誰だ」
扉を開けて登場したのは、いつか会ったことのある気難しそうな男。
さっき名前を聞いたな。
「どうも、ユキちゃん」
相手の顔が思いの他歪んだ。
「高崎佳由紀だ」
真琴か、などと呟いている高崎に問いかける。
「宮野って奴がここにいないか? 同室だと聞いたが」
「不本意ながら確かに同室だ。だけど今はいないな。ちなみに居場所も知らない。予測も出来ない」
「そうかい。それじゃあ失礼したな」
軽い音と共に扉が閉じられる。
それじゃあ、どうしたもんか。
『あ、あーこちらブロードキャスティングセンター。 エマージェンシー!
旧部室棟二階で、想念体の発生を確認! 周囲の対魔班はすぐさま駆けつけ、これを排除せよ! 以上」
「……そういえばあいつは、対魔班の班長だったな」
「久しぶりの想念体だ。私たちの力を試す良い機会である!」
「遊びではありません。 さっさと準備なさってください」
学校の廊下をバタバタと走る白衣と黒衣。
「不安かね、茉衣子君。大丈夫だ、私に任せたまえ! 美しい君を守るためなら世界を敵に、いや、世界を味方に付けて見せよう!」
「班長が味方に出来る世界があるとは思えませんわ」
妙な言い合いをしながら、白衣の宮野秀策と、黒衣の光明寺茉衣子は想念体が発生した地点に向けて移動していた。
「しかし、また想念体が発生するようになりましたわね。この間までは大人しくしてましたのに」
「ふむ、この頃、事件続きだったからな。想念体も出る機会を失っておったのだろう」
「想念にそんな意思があるとは思えませんが」
「確かにそれは想念の意思ではない! それを操る者の意思なのだ!」
そしてこれだ。吸血鬼の事件から、宮野の物言いは少し変わった。
あの時した誓約。もう思い出したくもありませんが、まだ、あれは有効なはずです。
私が縛っておかないと、メタンガスが入った風船のようにふわふわと何処かへ行ってしまいそうですから私は班長といるのです。それ以上でも以下でもありません。
「茉衣子君! ぼうっとしていてはいかんぞ。ほれ、すぐそこに想念体がいるのだ!」
「ぼうっとしてなどおりません。 ちゃんと把握しております」
「では行くぞ」
白衣の袖を振り、虚空に大きな黒の円を描く。自分の心を疑わない、信念の力でそれは完遂された。
複雑な模様が描かれたマジックサークルを手で押し出し、想念体近くの壁に貼り付ける。
「昏い余剰の力よ。 私に対なす者を捕らえたまえ!」
円から噴出する黒煙の勢いに乗って、何本もの鎖が人の形をした想念に絡み付く。
縛鎖が敵を捕らえたのを見据えて、茉衣子は精神を集中させる。
突き出した腕の指先から淡い光を持つ、対想念体の蛍火が生み出された。
狙いを定め、EMPを解き放つ。鎖に捕らえられ、動けない想念はどうすることもなく、それを受け入れる。
EMP保持者にしか分からない爆発があり、その後、物理的な物体から成り立つ想念が爆散した。塵が舞う。
「今回、想念体が取り憑いておったのは廊下に繁殖していたカビであったようだな。ここらは通気が悪くていかん」
咳を繰り返しつつ茉衣子は言う。
「何故班長は平気なんですか! こんなにカビが舞い散っているのに!」
「私には吸いたい気体しか吸い込まないフィルターが常備されているのだ! 故に問題ないのである」
「問題は班長にあります!」
いた。ついに見つけた。
部室棟の場所を聞いて、大急ぎした甲斐があった。
爆発が起こって、ゴミが降り注いだ時は驚いたが、それ以上に宮野を見つけたことが大きい。
宮野の背後の通路の隅から、蜩は二人を見ていた。
前回のお返しをしてやる。奇襲だ、一気にいく。気づかれたら前の二の舞だ。卑怯もくそもあるか。
蜩はEMPを開放した。時間が粘性を帯びる。
塵を吹き飛ばす強風が吹いた。
「――っ」
飛ばされそうになるのを堪え、茉衣子は風の吹いた方向に目を向けた。
こちらを向いた宮野はいつも以上の邪悪な笑みを浮かべ、茉衣子を見つめている。
その向こうには、腕を宮野に突き出して、その届かない腕の先を悔しそうに見つめる蜩が宙に浮いていた。
いける。気づいていない。30倍に加速させた主観時間の中で、水のような空気と格闘しながら茉衣子の横を通り過ぎ、宮野の背後を取った。
首を軽く突き、気絶させようとしたところで、ブラックサークルが白衣の周りに浮かんだ。
またか。これなら大丈夫だ。踏むと動きを停止させられるが、空中なら平気のはず。
軽くジャンプをし、サークルの中に入り、攻撃をしようとした瞬間、蜩は身体の自由を奪われた。
「くそ! どうなってやがる!」
蜩が空中で固まったまま喚いている。
振り返った宮野が勝ち誇るように叫ぶ。
「いつまでも平面にとらわれてはならない。
隙あらば、立体を狙うのが良いだろう! 私は三次元方向にも魔法円の効果をもたらすようにしただけのことだ」
「蜩さん。 何故貴方がここにいるのですか」
「あ、いや、それはだな……」
「彼にも色々とすべきことがある。例えばそれが、茉衣子君のあられもない写真集を奪取することだったりな!」
「何ですかっ、それは!」
茉衣子は急激に顔色を変え、悲愴な声を上げる。
「班長、そのような物の存在を私は全く存じ上げておりません!」
「知らなくて当然だ。あれは君であって君でない君を被写体にしたものだからな」
「処分してください、今すぐ!」
「ははは、全霊で断る!」
「うるせぇ――!」
「蜩くん、迎えに来たよ」
「……ああ」
「そうだよねぇ、茉衣子ちゃん、可愛いもんね」
「……」
「縞瀬さんから聞いたよ。蜩くんの目的」
「そ、そうか」
「それに第二EMPの生徒会自治の皆にも伝わってるよ」
「なんだと!」
「帰ったらこってりだねぇ、うふふ」
「……お、おぅ」
もうすぐ日が沈む。
茉衣子は第二から迎えに来た喜夛高多鹿のニコニコした表情と
完膚なきまでに自業自得な影を落とす蜩の去り行く背中を見つめていた。
隣に立つ白衣の木偶の坊から鈍重な声が聞こえる。
「写真とは、時間を排斥した空間を写すものであり、写真の中の情景に変化は無い。
もちろん媒体自体の劣化はあるだろうが、今は考えなくとも良いことだ。
時間とは何であろう。静止した瞬間が重なり合って、混ざり合い
それが時間のように見えているだけではないのだろうか。
あたかもアナログな映画のフィルムのように、動いているように見える映像の
本当の正体は、ただの停止した画像なのだ。
しかし、静止には時間が無い。零に零を足しこんだとしても、答えは零だ。
それではなにも動きはしない、何も変わる事がない」
宮野は何時ぞやの真面目な顔でちらりと茉衣子を見て、また空を見上げる。
「ふふん? しかし、静止した物体ほど操りやすいものはあるまい。
写真とは貴重な瞬間や稀少な物体を捉えるために最適なのだ。
それを持つものはいつでもそれを見ることが出来る。好きにする事が出来る」
白衣はこちらを向き直り、いつもの自分を思い出したかのような不気味な笑いをしだした。
「もちろん、そのときの感慨に浸る事も可能なのだ……そう!
あのときの茉衣子君(優)のような私の英知を絶するような瞬間に!」
「また意味の分からない話をしたと思ったら最後はそれですか!
早くよこしなさい。班長がそれを所持することは主に私の精神に悪影響を及ぼします!」
宮野は馬鹿笑いをしながら大声で叫ぶ。
「無駄なことだ。写真を奪ったとしても、私の記憶までは奪えまい。
この記憶を消すためには、より刺激的な体験をしなければならないだろう!
茉衣子君にそれが出来るのかね。むしろさせて頂けるのかな!」
「ばっ、アホ班長! それ以上喋ると吹き飛ばしますわよ!
いえ、もう十分でした。吹き飛ばさせていただきます!」
「ははは、全身で断る!」
彼らが望むならいつまでも。期間限定の気侭な生活を。
学校か。珍しいね。
GJ!
上手いな〜。
面白かったよ
投下いきます。
エロあり、ハルヒVS佐々木(性的な意味で)モノ
25レス程度を予定
なぜ俺たちの関係がここに至ってしまったのか――。
今時こんなに作動音を立てるエレベーターも珍しいと年代を感じさせる階数表示をぼんやりと眺めながら、今更ながら何をと呆れ返る自己を制して、今一度真剣に考えてみた。
奇蹟と呼ぶには余りにふしだらでおこがましく、だが天文学的な数字が分母に来るくらいに低確率な事象であることには変わりなく、数多の偶然が重なって幾千の障害を乗り越えて辿り着いてしまった俺たちの関係だった。
……なんだか切り出しが大河ドラマのような語り部仕立てになってしまったのはまったくの不可抗力だぜ。
実際スケールそのものは負けちゃいない。こっちは歴史どころか時空を超えてるんだからな。
世界改変あり、時間遡行ありの大立ち回りだった。死線を潜り抜ける修羅場もあったしな。映像に取り込めばそこそこに見所あるフィルムが出来上がったんじゃないだろうかね。
…………まぁ、死線っつっても金塊をミクロン単位の薄さに箔打ちするように平たく言えば、死なない程度に酷い目にあったりした、って事で、修羅場は命の取り合いというよりは主に俺の取り合いってのが講釈なんだが、そこは多くを語らずが華というもんだろう。
そこに目をつぶれば、あと決定的に違うのは心震わす感動があるかないかくらいなもんだ。言うまでもなく俺たちのはない方だがね。
「なんかドキドキするわ。初めて遊園地に来たような気分なのよね」
「異様に縦長で階段が野外の非常階段しかない違法建築や、点検が行き届いてるとは思えない老朽化したエレベーターはどうにも馴染めそうにないけれどね。お互い気分が高揚してるのはきっと背徳と不安に心煽られているからじゃないかな」
俺の両隣で佇むハルヒと佐々木がそう言いながら所在なさげに辺りを見回す。落ち着かないのは分かる。うらびれた雑居ビルと何ら変わりのないこの雰囲気じゃ無理もないぜ。
「キョン、知ってるかい? こういう負の心理体験を共有した者同士は無自覚のうちに絆が深まるそうだよ。『つり橋効果』というやつさ。もし、ここの経営者がそれを狙ってこんな演出をしてるとするなら、それはとても面白い話だと思わないかい?」
佐々木よ、俺は今考え事をしてるんだ。分析や感想を述べるのは自由だが俺に振ってくるのは遠慮してくれ。
「なに格好つけてんのよ。どうせロクでもない妄想がめくるめくる炸裂しちゃってるんでしょ?」
佐々木を諭したのも束の間、今度はハルヒがとんでもない偏見を押し付けてきやがった。
なんてことを言うんだお前。
肘でピンポイントに肋骨の一番下を小突かれる形になり、非難の一言でも投げかけてやろうかと視線を下げると、迎え撃つように悪魔のような含み笑いが在った。
お前のそういう顔を見ただけで危機感を感じられるようになったのは悲しい条件反射だな。
見なかったことにしようと無視を決めこもうとすると、間髪入れずに左側から声がかかった。
「キョン、それは聞き捨てならないな。本当にそうなのかい? 差し障りがなければ僕にそのめくるめくの内容を教えてくれないか? 可及的逐一詳細に希望するよ」
追及しようとしても無駄だっつーの。無い袖は振れん。
あらぬ疑惑をかけられて慌てて振り返ると、案の定佐々木は狙ってやったらしく長い睫毛を震わせてくつくつと笑っていた。
……ちくしょう、一瞬でも本気で焦ってしまった自分が情けないぜ。
レトロなエレベーターは上昇速度が相当遅いらしく、ノロノロと階数ランプを右に移していく。
俺たちの部屋は802号室だっけか? 最上階じゃないか。
しばらく時間がかかりそうだなと思考を戻そうとしたその時、不意に左腕を柔らかいモノにくるまれた。
まるで俺の腕を抱き枕にするかのように目をつぶって、佐々木がしなだれ掛かるように身を寄せてきていた。
信じられないくらいに白くキメ細かい柔肌と控えめながらも十分に肉感のある胸の感触が半そでから出した素肌に直に伝わってきて、考え直そうとしていたことがまるごとぶっ飛んだ。
頭の中で繰り返されるのは、「低反発素材なんぞお呼びじゃねぇえぇぇ――――!」のシュプレヒコール。……分かったから、ちょっと落ち着け俺。
なんとか理性の手綱を手繰り寄せようとするが、追い討ちのように襲ってきたのは今度は右サイドからの圧力だ。
何をそんなに対抗する必要があるのかハルヒが倣うように身体を預けて寄り添い、入学当初から比べて格段にサイズアップした胸を押し付けてきた。
「ここをこんな風にしてちゃ何言っても説得力ないわよ? 素直になりなさい。……そうしたらさ、……あ、あんたのそのとんでもなくイヤラシイ妄想を、っ、全部現実にしてあげるから」
「――――っ!」
ビクリと俺の身体が脊髄反射で撥ねた。ハルヒのやつがためらいながらもいきなりに俺の股間に手を這わせてきやがったからだ。
インフルエンザでも患ってるんじゃないかと疑いがかかるくらいに顔が紅い。なんか佐々木を意識して無理しているような感じだな。そんなに照れるくらいならやるなっての。
俺の妄想がどうとか言ってるお前のが勘違いが先走ってるぞ。
そうツッコんでやりたかったが、自分を疑うことなど露知らず挑戦的な強い眼差しを突き刺されて封殺された。
佐々木に中てられて早くも半勃ちになっていた眠気まなこの愚息がこんなことをされて黙ってるはずがなく、ムクムクと本格的に起き出してくる。
「わっ、また大きくなった。このエロキョン」
生理現象なんだよ。恥女も顔負けのことをやらかしといてエロ呼ばわりとはどういう了見だ?
「どうやら涼宮さんの指摘は図星みたいだね。実に息子さんは正直だよ。頑なな親御さんとは大違いだ。もっとも『かたい』って意味では親譲りみたいだけれど……ね」
そんなことを言いながら佐々木も左側から手を伸ばしてきた。
上等な言葉遣いで一瞬何を言ってるのか見失ってしまうが、よく噛み砕いて理解すりゃその実は低俗なオヤジギャグとなんら変わりのないことに気づかされる。
何かの間違いかと目を剥いて左に首を傾けたが、すぐに顔に出るハルヒとは対照的に佐々木の表情はまったく動いていない。面だけ切り取れば教室でクラスメートと談笑中ですと胸を張って偽れるくらいに、可憐で涼しげなままだった。
水面下で動いている手つきはねちっこくてむしろハルヒよりもいやらしいくらいなんだがな。
そんなギャップを意識すると俺の胸の奥で熱いものがじわりと熾る。
ズボン越しに2つの手でいいように弄ばれて、俺の愚息は息つく間もなくギンギンに仕立て上げられてしまった。ブリーフの中は早くも我慢汁でペトペトになっちまってるかもな。
愚息のアップが完了したのと同時に、エレベーターが止まって8階の扉が開いた。
右側の拘束が解かれる。
扉が完全に開ききる前に廊下に一番乗りで飛び出したハルヒは、キーホルダーを鳴らしながら一目散に部屋へと駆けていった。
やれやれ、いかにもやりそうだと思っていたら本当にやりやがった。いい歳こいて走るんじゃない。誰かに見られたらみっともないだろうが。
さんざ気を持たされた息子も「ヤル気にさせといてほったらかしていくんじゃない」、と抗議を申し立てたが、こちらには即座にフォローが入る。
「大丈夫。お愉しみはすぐそこで待ってるよ」
何もかもお見通しの佐々木はまるで小学生の男の子を宥めるかのような手つきで愚息を撫でた。
そしてそっと背伸びをして俺の耳元で囁くように付け加える。
「今日はこの中に溜まってるキョンの精液が尽きるまでしよう――――、ね?」
少し掠れたような声と、熱い吐息が耳朶を打って俺の身体が震えた。武者震いってやつだろうか。どちらかと言えば今のは不覚にも感じてしまったからかもしれない。いずれにせよ俺の心身が興奮のるつぼに肩までどっぷり漬かっていることは確かだね。
花に惹かれる蝶のようにふらふらと安っぽい赤絨毯が敷かれた廊下への一歩を踏み出す。
少し前の冷静な自分はどこへいっちまった? いつの間にか2人のペースに巻き込まれて乗せられてるな。
最早定番のパターンだと分かっちゃいるのに抜け出せない自分が嘆かわしい。どこかのスナック菓子のキャッチフレーズのようなハマりっぷりだ。
ここまで考えて冒頭の自問の解につながることを自覚した。
そうか――――、なぜもなにもなかったな。
こうなっちまったのは全部この俺の不甲斐なさのせいなんだから。
ハルヒと佐々木、結局最後の最後までどちらも選べなかった俺のどうしようもない優柔不断さが根源にある。
今回の件、言いだしっぺはハルヒとはいえ、3人でするなんてことになっちまったのは俺ありきのことなんだよ。
我ながら情けない未来を拓いちまったもんだ。痛烈に批判されても然るべきで、弁解の余地もない。
世界が終わっちまうよりは幾分マシな選択だっただろう、なんて言い訳にならねぇな。
自業自得ながら学生の分際でこんな爛れた男女関係を、外堀が埋められる前の豊臣大阪城のように堅固に築き上げてしまっていいのかという不安はある。
あっという間に最終学年の半分が過ぎ去ってしまった。
年が明ければ受験本番だぞ? こんな風にサルみたいにヤリまくってて大丈夫なのか俺の人生。
これからのことを思えば思うほど頭が痛くなるばかりだが、すっかり焚きつけられちまって俺は佐々木に手を引かれるままだ。あるはずの歯止めはバカになっていた。
ここまで来てしまった以上やっぱなしとか――――、ないよな。2人の気持ちとか、お膳立てとか、俺の甲斐性とか、色々な意味でない。
やっぱり進むしかないんだよ。と自分に言い訳しながら今日も俺は流される。
早くも入室を済ませてしまったのか、なにやら騒ぎ立てているハルヒの歓声を遠くに聞きながら、俺は内心初めてのラブホと3Pに胸を躍らせてしまっていた。
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部屋は予想していたよりもずっと馴染みのある内装だった。ここにくるまでの造りが今ひとつどころじゃなかっただけに安堵したぜ。部屋のリフォームと維持だけで手一杯なのかと経営状況を邪推する。
人工大理石がトップの洗面台がホテルちっくなのと、床面積の大部分を大きなダブルベッドが占めていることを除けば、フローリングアパートの一室とほとんど変わりがない。ちゃんと靴を脱ぐ玄関もあるしな。
ハルヒはベッドの真ん中で尻をつけて正座するような、女子特有の座り方のままスプリングを撥ねさせて遊んでいた。
「一目見たときボロいからちょっと不安だったけど、内装はしっかりしてるのね。掃除も行き届いてるし。さすが佐々木さんが選んでくれただけのことはあるわ」
「友人のつてを頼って教えてもらったのさ。私たちみたいな学生でも使えるこういうホテルはこの辺りではここだけみたいよ」
進学校に通うお前さんの友人がこういう情報に明るいとは少し意外だったけどな。
「キョン。それはいささか見識が浅いな。猛勉強の反動故かこういうことでガス抜きをする人たちは少数派ではないんだよ。
ほら、普段勤勉で真面目な人ほど性欲が強かったり、異常な嗜好を持ち合わせてたりするのはよく聞く話じゃないか。それと通じるところもあるんじゃないのかな」
なるほどね。相変わらず筋の通った論理展開だ。
だが、まるで他人事のような口ぶりはいただけない。もちろん自分もばっちりその例に当てはまってることの自覚した上で言ってるんだろうな?
「不満を言うつもりはないんだけど、ちょっと拍子抜けのところもあるのよね。こういうとこ特有の設備が全然見当たらないじゃない。ガラス張りのバスルームとか! プールとか! 回転ベッドとか! 愛のゆりかごとか!」
テーマパークにアトラクションがないといったノリでハルヒはまくしたてる。
ったく、ちょっとは恥じらいってもんを見せてくれよ。
「そんなもんがこの料金で揃ってるわけないだろうが。3人までなら追加料金も取らないようなとこだぞ。贅沢いうんじゃない」
現実を諭されてハルヒは口を尖らせた。「むー」と唸りながら駄々をこねるように乱暴に身を跳ねさせる。
「逆に考えたらどうかな。この雰囲気ならまるでアパートに3人暮らししてるような気分になれるじゃないか。僕個人としては同棲は憧れるんだけどな」
そう言いながら前に回りこんできた佐々木が下から覗き込むように俺を仰ぎ見る。
桑染色をした穏やかな色彩の瞳には、少し不釣合いなくらいに燦々と煌く輝きが灯っていた。
こんな目どこかで、と思えばなんのことはない。とどのつまりこいつら表裏正反対で本質は一緒ってことか?
「ねぇ? キョンもそう思わない?」
口許に手をやって半開きになった唇から舌を覗かせて、上目遣いにこちらを窺ってくる佐々木は……、文句なしに男の本能直撃で治まりをみせていた欲望に再び火が点いた。
何年も前から知ってるくせに、こいつがこんなにも愛らしくて可憐だったと気づけたのはほんの最近だ。
この過失はごめんなさいくらいじゃ済ませられねぇぞ、数年前の俺。
抱きしめたい衝動に駆られるままに、俺は両腕の中に華奢な身体を強く納めた。
瞬時に佐々木がキスをせがんできたのでそれに応える。
「ちゅっ。んむっ、あむっ、んんん……、ぴちゅっ、れるれるれる、んんっ」
数分前の余裕に満ちていた様子からは想像を絶するほどの激情が唇越しに伝わってきた。
少しでも接触面積を増やしたいのか、音を立てることをまったく厭わずに強く押し付けながら一心不乱に舌を絡めてくる。
そう、ここ数ヶ月で分かったことだが、情事のとき佐々木は激しく乱れるんだよ。それこそ人格が切り替わったんじゃないかと疑いがかかるくらいにな。
「んんんんんっ、っちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……、はぁっ……、キョン、もっと強く抱いて。切ないの……。んむっ、れるっ、んちゅっ、ちゅるちゅるちゅる」
そしてユニセックスな言葉使いをどこかにしまって、こんな風に女言葉を披露する。一人称も僕から私に変わってしまう。
性欲を本能とするならこっちが本当の自分ってことなんだろうな。
そんな分析は差し置いて、こんな風に切羽詰まった様子で求められてとぼけてられる野郎なんていないだろう。
あまり強くしすぎると本当に折れてしまうんじゃないかと思えるくらい細い腰に腕を深く回してそっと引き寄せる。
そうすると佐々木の眉根から少し力が抜けた。さて、キスに本腰をいれようかとしたそのとき、
「コラッ! 二人だけで盛り上がるの禁止! いつまでも突っ立ってないでこっち来なさいよ」
寸でで待ったがかかった。
横目を流すとベッドの上で我らが団長様があぐらをかいて鎮座し、腕を組んでむくれていらっしゃる。
流石に無視することはできず、キスに没頭して吸い付いて離れようとしない佐々木をやんわりと引き離す。
名残惜しげに「あっ」と漏れそうな顔が在った。
「続きは向こうで、な」
「……うん」
そんな顔をするなよ。と言いかけたが、なにやらエレベーターに居たときと立場が逆で噴出してしまいそうで止めた。ここで笑っちゃ雰囲気が壊れちまう。
しおらしくなってしまった佐々木の背を軽く押してベッドの縁までやってくるとハルヒが迎える。
俺を挟む形でベンチのように3人並んで腰掛けた。
普通ならシャワーを浴びてからってところだが、今回は示し合わせて家で風呂に入ってきていた。
佐々木曰くこのホテルはバスルームが狭くてしかもシャワーしか付いてないのが最大の欠点らしい。
学生の悲しい金銭事情により今回は宿泊じゃなくてご休憩なため時間も限られてるってことを受けての2人からの提案だった。
こんなときまでしっかりと事前計画を立ててくるお前らに脱帽するぜ。
改めて妙に感心してると、ハルヒが膝に手を乗せてきた。しっかりモードが切り替わって潤んだ瞳で斜交いに俺を見上げてくる。
「キョン。あ、あたしにも……して」
「……ああ」
言ったは良いが少し恥らうように俯いてしまったハルヒのおとがいをクイと上げさせて、そっと口づけた。
そのまま動かさずに唇を合わせるだけの長いキスをする。
上薬でも塗ってあるんじゃないかと思うくらいに滑らかで艶やかな唇の感触を堪能しながら俺は考えを巡らせる。
これがまたおかしな話なんだが、普段姦しいハルヒはこういう雰囲気になると借りてきた猫みたいに大人しく消極的になるんだよ。
証明して見せるわけじゃないが、まぁ少し見ててくれ。
試しに閉じた唇を舌でこじ開けて口内への侵入を試みると、ビクリと身を震わせておずおずと受け入れる。舌を差し込んで誘ってもハルヒは半端に引っ込めたままだ。俺が少し強引に舌を絡ませてようやく応えてくる。こんな始末だった。
拒否ったりせずに応えてくれるあたり厭ではないんだと思うんだが、実際のところは分からん。ただ佐々木と全く逆のリアクションだな。
「はぁむっ、んんむっ、っ!! っちゅっちゅっ、んんれる、れるっ!! んんん……、るちゅっ、れちゅっ……、っ!!」
あくまでも舌を控えめに伸ばしてチロチロと先を走らせる程度のハルヒだが、こちらが攻勢に出て口腔を蹂躙するように大きく絡ませてやると、エレキテルによる電流療法を受けたみたいに大きく身体を振るわせる。
きっと口の中のどこかに性感のツボがあるんだろうね。
奥歯の裏側のどこかだと踏んでるんだが、まだはっきりと分かってないんだよな。
今日こそは探し当ててやろうかと意識を集中させようとしたとき――、腰の辺りに手が掛けられた。次いでかちゃかちゃと金属音が鳴る。
見るまでもなく佐々木の仕業なわけだが、さほど手間取ることもなくベルトが外されてあっという間にブリーフを露わにされてしまった。
愚息はすでに臨戦態勢で下っ腹に付かんばかりに怒張していた。下着の緩い拘束でさえ窮屈と思えるくらいだ。
「ああ、こんなに熱く猛って……、脈打ってる……。ふふっ、心なしかいつもより逞しくなってるね」
陶然と呟きながら佐々木は生地越しに愚息に手を這わせてきた。手のひらをあてがってブリーフに一物の形を浮き上がらせるように竿を撫でて、時折細い中指の腹を絶妙の接触加減で睾丸に滑らせる。
堪らず息を詰まらせると気を良くした佐々木は一層手の動きを速める。一方、ハルヒは逸らされた俺の気を手繰り寄せるかのようにより腕の力をこめて強くしがみついてきた。
「んむっちゅ、ちゅる、んっ、……もっとぉ、はむっああむっ、れるれるん、んん……、はぁっ、キョン……、好きぃ……」
息継ぎで顔を離した眼前には熱に浮かされたように頬を桜色に染めたハルヒの顔があった。どこか幼くなってしまったようなそんな印象を受ける。心の壁を崩して険が取れてるせいなのかもな。
それがどうにも愛しくて頭を撫でると、心底嬉しそうに目を細めた。
素直に『可愛い』と、平素の自分じゃ考えられないそんなボーナスワードが口を突いて出ようとしたその瞬間だった。
愚息を直撃した快感に台詞を奪われた。
奇襲一転、佐々木が攻めを先端に移してきやがった。指先で穿つように鈴口を執拗に弄んで、雁首に軽く爪を立てて敏感な箇所を引っ掻く。
「――――っ! ああっ!?」
思わず声が出てしまった。慌てて佐々木を窺うと無駄の無い動きでベッドから降り、床に膝立ちになって俺の股の間に潜り込んできた。
「そんなに気持ちよかった? ふふっ、カウパー氏腺液の分泌がすごいね。染みになってしまってるよ」
愉快満面に佐々木はそう言い放つと顔を近づけて、今度は下着越しに愚息を舌で舐め上げてきた。弱点は徹底的に攻めると言わんばかりに、舌先で何度も先端を弾く。
くそっ、気持ちいいけどこのままじゃいいようにやられっぱなしだ。
ふと横を向くとハルヒがすごい形相で睨んでいた。……分かってるよ。何とかするって。
砕けそうになっていた腰に力を戻して、俺は戦局を戻すために反撃に出る。
ハルヒの頭を抱き寄せて額と髪、耳にキスの雨を降らせた。遊んでいた右手をシャツの裾から進入させて豊かな胸を愛撫する。
一方佐々木に対しては膝立ちになっているふとももの間につま先ねじ込んで、ミニスカートの下から局部を足の指で弄くってやることにした。
「……ふぁっ、あんっ、んっ……、キョン気持ちいいよ……、胸ももっと触って」
「ひぁっ、あああっ、んっ! んむっ、れるれる、っちゅ、ずっちゅっ、んんっ……あっ! ひゃんっ!」
がむしゃらの攻めは思ったよりも効果的で、ハルヒを再び快感の渦に沈めて、佐々木から余裕を消すことができた。
しかしこれは諸刃の剣な部分もある。どうにも嬌声のアンサンブルは耳に毒で、聞いていると異様に気持ちが昂ぶる。
いよいよ理性のタガが緩んできて、黒い慾が競り上がってきた。抑えきれずに俺は邪魔くさいハルヒの水色のシャツをたくし上げる。ハルヒがその動きをいち早く察知してやり易いように両腕を上げてくれたおかげて何の抵抗もなくするりと脱げた。
燈色の照明の下に晒されたハルヒのボディーラインは何度見ても刺激的に写る。
ベジェ曲線で描いたような絶妙の腰のライン、張りがあって灯りを照り返すように光る肌、余分な肉の付いてない細い腕、そしてその腕で隠された奥に潜む立派に実った白桃のような胸。
無意識のうちにゴクリと喉が鳴った。
「あんた今自分がどんな顔してるか自覚できてる?」
…………。
そりゃあお前、アレだろ。まるで網走名産のニポポのように欲の抜け落ちた柔和な――――、
「ケダモノのように血に飢えたヤバい表情よ」
我ながら無理のあると思えたボケは案の定言い切らせてくれさえもらえなかった。
「ポジティブにとらえてくれ。それだけ、その……、なんだ……」
ハルヒは僅かに身を寄せて俺の台詞を待ったが、この自分でわざわざ墓穴を掘り進めてるような気分はどうにもいただけない。
喉の奥でつっかえてる言葉は分かってるんだけどな。この素に近いシチュエーションで素直に口に出してしまうことが憚られるんだよ。
「何よ、早く言いなさいよ」と無言で急かして来るハルヒの視線に困惑していると、その隙を急襲するかのようにブリーフに手が掛かって、愚息がひんやりと外気に触れた。
佐々木が愚息を引っ張り出していた。竿を握って反ってる方向に沿うように器用な手つきで扱き始める。
「はぁっ、キョン……、好きぃ……」
__ __ _
. _ , '"´ ,. _ ___`丶、
/ ` / /´-‐ァー-ヽ \ ミシッ・・・
. / /下7 ..///.:.::/ .:.:ト、 ヽ -‐''´'´ ,、
/ └イ_j/ .://;へ、/!.:.::/:.} ,__-‐'''´-‐'''-‐''´
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/ ヽ \\ \´ ̄`ヽ、
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. | ', \`ヽ、 ∨n| } ト、
実に悦ぶやり方をよく心得ていて自在に俺の快楽を引き出していく。あまりの気持ちのよさに腰が浮くような感覚がした。
そしてさらに追い討ちをかけんと、手を休めずに愚息の先端にキスをして先走りを啜りながら咥え込んできた。
「ちゅっ、ずちゅっ、ずず……んあむっ、ぢゅっ、じゅるるるるる――――」
「うう……、っくっ!」
脳髄を突き抜けるような快感にうめき声が漏れ出る。
耐えるようにつぶった目から佐々木を覗き見ると、愚息を頬張りながら「んふふ」と微笑んでいた。
その瞳はえらく挑戦的で、ともすれば佐々木の虜になっちまったような錯覚に陥る。
ハルヒのために用意していたはずの言葉はすっかり脳みそから抜け落ちていた。
「――――っ!」
と、鋭く息を呑む様な声を聞いて少し我に返ると、弾かれるようにベッドを離れたハルヒが視界に滑り込んできた。佐々木と並んで床にひざまずく。
「ちょっと佐々木さん! なんかさっきから悪意を感じるんだけどっ!」
眉を跳ね上げたハルヒに詰め寄られても、さして動じもせずに佐々木はゆるりと俺の愚息を解放した。口許の唾液を拭って呼吸を整えてからハルヒと目を合わせる。
「――っはぁっ……、それは言いがかりかな。私はキョンを気持ちよくさせたいだけ。夜伽の基本だよ。き、ほ、ん。そもそも、してもらうばっかりで自分を見て欲しいなんて虫が良すぎるんじゃない?」
……佐々木よ、なんて恐ろしいことを言うんだ。そんな挑発をしたらハルヒがどうなっちまうのかお前も分かってるだろうが。猛獣の前に生肉をぶら提げるも同然の行為だぞ。
「甘く見ないでよね、キョンはいっつもあたしにしてってせがんでくるんだから」
「私とするときもキョンはたっぷり三十分はされるがままになってるけどね」
2人は必要以上に瞳に強い力を宿らせて視線をぶつけ合う。俺の息子の前で火花を散らすのはやめてくれ、そこはかとなく場違いな上に構図が間抜けなんだよ。
「キョン! ズボンが邪魔よ。脚あげて」
「ついでに腰も浮かせてくれない? ブリーフも無い方がいいと思うんだ」
いや、この状況でわざわざお前らにやってもらわなくてもいい。それくらい自分でやるよ。
勝負に使われる道具のような心地はお世辞にもいいものじゃないが、2人にしてもらえるという盛んな期待には抗えず、今は障害物としかならない下半身の衣服を全て取り払った。
煮るなり焼くなりの心境でドカッと腰を落として2人に向き直ると、変身した佐々木の姿に自分の目を疑った。
瞳に飛び込んできたのは一糸纏わぬ佐々木の上半身。シミ一つ見当たらないミルク色の肌とツンと上向いたバスト、そしてその頂点を彩る薄紅色の蕾に目を奪われた。
服は丁寧にたたんで近くの椅子に置かれていた。全く脱いでる気配が感じられなかったぞ。忍者、いや九ノ一かお前。
下半身にはミニのスカートだけが残ったいた。よく見りゃ椅子の上にはショーツがある。下着を脱いでなぜスカートだけ意図的に残したのかさっぱり見当がつかん。
そんな俺の反応が楽しいのか佐々木はくつくつと笑った。
ちくしょう。まんまと遊ばれてるようで気に食わんね。
ちなみにハルヒの衣服に変化はない。上着は俺が脱がしたので肌を晒していたが、ブラはつけたままだった。
しかし、それはそうと、なんて光景だ……、ミニスカートで半裸姿の2人の美少女が俺の前にひざまずいてるとは……、ね。
シチュエーションに圧倒されてしまって、愚息に更に血液が集まってくるのが感じられた。
無言の内に2人の顔が近づいて、行為は再開される。
「っんちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、んれるっ、れるれる」
「はぁ……、あぁっ、……ん、んっ、んっ……」
ハルヒが亀頭と竿にキスをして、佐々木が舌先で袋のシワを伸ばすように弄ぶ。
柔らかい舌や唇の感触もさることながら、断続的に感じる2つの熱い吐息が愚息を刺激する度に怒張が漲った。
正直、想像してたよりも遥かに気持ちいい。少しでも油断すれば暴発してしまいそうだぜ。
このまま2人にぶっかけて、そのアイドル顔負けの端正な容貌を思い切り汚してやりたい、俺の臭いをマーキングしてやりたい、といったどす黒い衝動が沸き立つ。
気の強い娘2人をひざまずかせて奉仕させているという征服欲が俺の理性をぐちゃぐちゃに塗りつぶしていた。
ハルヒは一旦口を離すと、俺に問いかけてくる。
「キョン、この前『最高に気持ちいい』って褒めてくれたアレ……、やったげるね」
「あ? ああ……。頼む」
と、夢うつつで頷いたものの直後に後悔する。背中が粟立った。
ハルヒは口をもごもごと動かして唾液を目いっぱい口の中に溜めて準備を始める。
さすがの佐々木も何が始まるのか分からず、舌の動きを止めてハルヒを見守った。
ヤバい。この状況でやられたら一瞬で出ちまうぞ!?
しかし俺が腰を引くのを待たずして、ハルヒは口を大きくあけると餌に食い付くように息子を丸飲みにしてきた。
くじゅぷっ!
と、口腔の空気が押し出されるような一際大きな音を立ててハルヒの口撃が始った。……始っちまった。
まるで俺専用にあつらえた様にハルヒの口から喉にかけてのスペースに愚息がピッタリと納まって、全体が柔肉に包まれ、僅かな隙もたっぷりの唾液で完全に埋めつくされた。
ハルヒは、大きく鼻で息を吸い込むと頬を窄めて頭を振り出す。
じゅぽっ、じゅっるっぽっ、じゅるじゅるっ、じゅぽっじゅぽっじゅぽっ――――。
淫靡な水音を響かせてハルヒはリズミカルに頭を振り、一心不乱に愚息を吸い立てる。
「っあぁあぁぁぁ!? ハルヒっ! っくっ、うぅぅぅっ……」
我ながら随分情けない声をあげちまったが勘弁して欲しい。これは別格なんだよ。
苦痛と紙一重とも言える夥しい快感に俺はシーツを握り締めていた。
ハルヒがつい最近習得したディープスロート。『殿堂入りフォルダ』の中に保存していたエロ動画を盗み見られたのは迂闊だった。
いや、そりゃ俺だって嬉しくないわけじゃ――、
じゅるっ、じゅむむむっ、んじゅっぱっ、んんっじゅっ、じゅるるるっ――――。
――などと悠長に言い訳している余裕などなく、あっという間に射精感が高まってきやがった。
「っハルヒ! ……出るぞっ」
やっとの思いで搾り出したそれだけを聞いて、ハルヒの動きがラストスパートに入る。
時折、『グポッ』とか『ゴポッ』とか日常ではまず耳に入ってこないような異常な音が入り混じる。
溢れ出たカウパーとハルヒの唾液が混ざったような詳細不明のゲル状の白濁がハルヒの下あごでプラプラと揺れて、それが落ちるのが合図のように俺は欲望をぶちまけた。
「――――っぷっはぁっ!」
愚息が膨れ上がる感触で計ったのか射精の直前で口を離したハルヒの顔に盛大に精液が降りかかる。
ハルヒは心底満たされたような穏やかな顔で目をつぶったまま全てを受け止めた。その間休みなく愚息を扱き上げて、一滴も残さず完全に搾り取っていく。
はあっ、はあっ、はあっ…………。
ろくすっぽ動いてないくせして息が上がっていた。やかましいくらいに鼓動が鳴り響いてやがる。興奮と倦怠感が尋常じゃない。
一段と気合の入ったハルヒの献身的なウルトラテクニックに翻弄されたせいか?
佐々木が傍で見ているアブノーマルなシチュエーションに高揚していたせいか?
とんでもない量を迸らせた反動でガタの来た身体が回復を要求しているせいか?
……多分、全部なんだろうな。
目の辺りだけ拭って顔面にゼリー状の精液を貼り付かせたまま、佐々木に視線を移したハルヒは得意満面。対する佐々木はさっきから唖然となったまま身じろぎ一つできないでいたようだ。
「どう? こんなこと佐々木さんにもできるかしら?」
「…………驚いたよ。こんなすごい技を持ってるなんて、ね。挑発してしまったことを少し後悔してるくらい。……キョンは私には教えてくれなかった」
そう呟いた佐々木は俺と目を合わせた。その瞳には非難めいたものが漂っている。
「待て待て。違うぞ? 俺が指導したんじゃない。こいつが自発的に練習やら研究なんぞをやりだしたんだ」
「ちょっと! なによその言い草。あんたの意見だって随分取り込んだのよ。あんたに仕込まれちゃったのよ。こういうの何て言うんだっけ? そうっ、『開発』よ。あたしキョンに『開発』されちゃったってことなんだから」
……くそう、後ろめたい部分が全くないとは言い切れないだけに言い返せねぇ。
ハルヒはいたく気に入ったらしく、やたらとその不健全な単語を強調する。
どうでもいいがそれって誇らしげに語ることなんだろうか。
佐々木は憮然としたままそれを見守っていた。
「ふっふーん。でなきゃ、こんな風に上達できるはずないじゃない。それにしてもすっごい量ね。今までで一番多いかも。……匂いが濃いわ。粘り気もすごいし、ほら糸まで引いてる」
こらっ、生々しい感想をつらつらと実況するんじゃない。
つーかいつまで顔面に引っかけられたものをプルプル震わせてるんだよ。
いい加減顔を拭けと、俺は枕元にあるティッシュを取ろうと身を捩ろうとしたそのときだった。
「んちゅっ」
「っさ、佐々木さん!?」
目の前の展開に脳の理解が追従しない。
何を思ったのか佐々木がハルヒの頬の輪郭に舌を伸ばして、垂れ下がった白濁を掬い取るように舐めていた。
「んあむっ、っちゅ、ちゅっ……、ちゅっ……、んくっ、んっくっ、……、ちゅぷっ、んっ……んむんっ」
「ひゃん!? え? えぇっ!?」
見てる俺が動けないくらいに錯乱してるんだ。いわずもがな当事者のハルヒは目を白黒させたまま戸惑いまくっている。
顔の周辺部に付着した精液をあらかた啜り取り終えた佐々木の舌先は、徐々にハルヒの顔の中心部へと向かっていた。唇の真横で塊になっていたモノを吸い上げた瞬間、妖しい雰囲気を感じ取ってまさかと奔った予感が的中する。
夢でさえ見たことのない展開が次に待っていた。
金縛りにかけて身動きを封じるに乗じて、なんと佐々木はハルヒに口づけてねっとりと舌を絡め始めたのさ。
ハルヒは目を見開いて少し抵抗の意を表したが、生半可でない佐々木の舌技によってあえなく攻略されてしまった。
くちゅくちゅとやたらと淫らな音が耳につくと思えば、2人の舌先で俺が放出した白濁が唾液と混ざって糸を引いていた。卵白のように泡だった精液をお互いの舌の上で踊らせる様は、これ以上になくエロチックで、勢いを失っていた愚息が反応してしまう。
支援とか、最初に言い出したの誰だよ?
「はぁっ、んちゅぷっ、……ちゅぷっ」
「ふぁむっ、はぁむっ、んんぅっ……」
佐々木が口移しで運んだモノをハルヒが何度も喉を鳴らして嚥下する。息が続かないのか、飲みづらいのかしきりに苦しそうな表情をみせた。
初めて目にするハルヒと佐々木のレズプレイ。神々しくさえ思えてしまうほどの美しさに圧倒されて俺はただただ見入る。
五感が麻痺してるので正確には分からないが、2人は随分と長い時間をかけて濃厚すぎるディープキスを交わし終えた。
ハルヒを解放した佐々木の表情には完全に力が戻っていた。長い睫毛に縁取られた瞳を万華鏡のようにキラキラと光らせて、さも満足げに微笑む。
それに対して、
「――――、っはぁ……」
と大きく息を吐いたハルヒの目は我ここに在らず。虚ろに視線を漂わせたままだらしない表情を浮かべていた。
こりゃあ完全に形勢逆転だな。
「ダメだよ涼宮さん。ちゃんと一滴残さず飲まないと……、やっぱりなってないね」
離れ際にそんなことを言ってのけた佐々木は妖艶な流し目を寄越してきた。まるで獲物を狙う雌豹のような目で俺を強く射抜いてくる。
ここまで入りこんじまった佐々木は中々お目にかかれない。軽く戦慄さえ覚えるくらいだぜ。
佐々木はすくりと立ち上がって俺に近づいてくると、いきり立って脈打つ愚息を愛しげに見つめて手に取る。
顔を近づけたついでに軽いキスを交わした。
「……涼宮さんは私が先でいいってさ。このまましよう?」
よくもまぁあることないことを、とツッコみたくもなるが、未だ放心状態のハルヒを見るにつけ前哨戦はどうやら佐々木の勝ちってことになるのか。
そんな風にちょっと、いや、かなり強引に自分を納得させて頷いた俺の腰の上に佐々木がまたがってきた。
//////////
「ああぁぁん、あぁん、んんっ、……はぁん、んんぅっ!」
佐々木の華奢な裸体が俺の上で踊るように跳ねる。
細い腕を俺の首に回して身体を密着させてくるせいで、ときおり俺の胸板を硬くしこった乳首が撫でる。佐々木はその度に感じてビクビクと身体を震わせつつ、俺の愚息を貪るのかように行為に耽っていた。
「あぁぁっ、あああぁ、キョン、キョンっ! もっと、もっと激しくしてっ、奥まで突いてぇ!」
平素からは想像を絶するような高い嬌声、激しい律動、女の子してる言葉遣い、そして回り道をしない直情的な言葉はあまりに刺激的でそれだけで脳髄がイカれそうになる。
あの理知的な佐々木が理性をかなぐり捨て去って、獣に化けたように貪欲に俺を求めてくるんだぜ? 興奮しないほうがどうかしてる。
億尾なくぶつけてくる灼けつくような情熱に俺はただがむしゃらに応えた。
ベッドに腰掛けたまま、向かい合う格好で繋がる対面座位。佐々木が二番目に好きな体位だ。
前戯もろくにしてないのに佐々木の秘裂は挿入前からトロトロに濡れそぼっていて、あまりに気持ちの良い蜜壷の感触に挿入直後からいきなりギアはトップに入っていた。
……ちょっとガッつき過ぎかもな。
「キョン……」
佐々木が軽く胸を押して、潤んだ瞳で訴えかけてくる。
このまま後ろに寝ろってことか? と察して俺は仰向けになって佐々木を見上げる格好になる。佐々木が一番お気に入りの騎乗位への移行となった。
ちなみに好きな理由は、普段見上げてばかりの俺を見下ろしてじっくり表情を見ながらできるということと、一番感じるところに擦れることの2つらしい。
素っ裸にされてしまった俺に対して、佐々木はなぜか茶系のスカートだけつけたままという、相変わらずなんとも変態的な格好をしていた。
もちろんこうやって繋がる前に問い質したさ。それに対してこいつは、
「しいて言えば着衣プレイの一環、かな。こうすると繋がっているところだけが隠れるようになるでしょ? でもこんなの簡単にめくれちゃうわけで……、そこがミソなの。フェチズムとチラリズム、両方に通じるところがあると思うよ」
などとよく分からないことを自信ありげに言い放った。
「まぁ、やればきっと分かるから」と言われるままに始めてしまったわけだが……、これがまた予告通りになってしまった。
佐々木が俺の上で跳ねるたびにクチュクチュとイヤらしい音が鳴り響き、いやが応でも俺の聴覚はその発信源へと集中した。だけどもそこは短い薄布に隠れてしまってる。
その布地の奥でナニとナニがどうなってしまってるのか、そこはかと気になる。ひらすら気になる。
だが自分でめくってしまうのはあまりに無粋で情緒に欠けるような気がした。
穴を開けそうな勢いで視線を佐々木のスカートに釘付けにして、そんなもどかしさに苛まれていると、
「ふふふっ」
と微かな笑い声を聞いた。顔を上げると見透かした佐々木のしたり顔。
「んんっ、あああっ……、ああんっ、んっふふ、気になる?」
佐々木は喘ぎながら淫蕩に染まった目を細めると、自ら裾をたくし上げた。たっぷりと焦らすように必要以上にゆっくりと。
意図せずして俺の喉がゴクリと鳴る。
オレンジ色の薄暗い照明の元についに晒された結合部。薄い茂みの下方に在る佐々木の小さな秘唇に俺の愚息が痛々しいほどに食い込んでいた。
濡れそぼった俺の竿と佐々木の局部がぬらぬらと妖しい光を照り返してる様はとんでもなくエロくて、温暖化の煽りを受けた南極の氷床のように音を立てて俺の理性の一部が崩壊を起こした。興奮有り余って思わず腰のグラインドが乱暴になる。
「きゃっん! んあっ、あああぁんっ、やぁっ、はぁぁん、激しっ、んんっ、ああぁぁん」
「くっ、佐々木っ!」
ぱちゅぱちゅと腰がぶつかる度に溢れこぼれた愛液が飛び散る。
這い回るように締め付けてくる佐々木の起伏に富んだ秘肉の感触は夢心地に居るかのように気持ちよくて、下腹部が痺れて脊髄まで侵されるような感覚がした。
こうなると長くは持たない。
対する佐々木はまだ上り詰める気配はなく、瞳を閉じて口をだらしなく弛緩させたまま薄い胸をふるふると震わせて快感に身を委ねている。健気にも両手は裾を掴んだままだった。
ここで俺が果ててしまうのはあまりに情けない。
しかし熱い塊が確実に押しあがってきてるのが感じられた。
くそっ、なんとかならねぇのかっ!
そう観念しかけたとき――――、
「――――っ! ぇあ!? ひゃぁあっ! やぁあぁぁぁ!」
規則正しかった嬌声のリズムを断ち切って、突然佐々木は目を見開いて身の毛をよだたせてながら叫ぶように喘いだ。
同時に蜜壷が収斂して搾り取られるような感覚が愚息を襲ったが、何とか歯を食いしばって耐え抜く。
何だ? 一体何が――、と前方の様子を伺うと、佐々木の背後から太ももをまたぐようにして腕が伸びている。その指先は的確に佐々木の秘所を捕えて、まるで知ってるかのような絶妙のさじ加減で秘裂の縁で硬くなったクリトリスを弾いていた。
一瞬怪奇現象かと見間違えそうになるが、佐々木の腰の辺りでぴょこぴょこと黄色いリボンが揺れているのを見てようやく事態を把握する。
説明するまでもなく正体はハルヒだった。
「ちょっ、やぁぁっ、ダメっ、涼宮さんっ! そんなにしたら私っ、わたしぃっ!!」
再び感極まるような佐々木の声。火の手は俺にまで及び、
「――――、くっ、ああぁっ!?」
漏れなく俺も声を上げる羽目になった。
どうやらハルヒのやつが陰嚢にキスをして吸い付いてやがるらしい。
ハルヒ悪戯はとどまらず、今度はチロチロと玉を転がされるような刺激に襲われた。何をやってるのかはまったく見えないが、きっと舌先でつつく様に舐めてやがるんだろう。
予期できないハルヒの愛撫は快感が五割り増しで、あまりの気持ちよさに金玉が竿の根元まで浮き上がる。
下っ腹に集めていた力が腑抜けになって、堤防が決壊するかのように一気に射精感が高まってきた。
ハルヒが操るままにぴったりと呼吸を合わせて俺たちは同時に上り詰める。
「やぁぁっ、はぁぁぁんっ! イクっ、イクよぉ! イッちゃうぅぅうぅぅ――――――――!」
ビュクビュクと際限なく脈打って、薬で護られた佐々木の膣内に下から容赦なく白濁を噴き上げる。
魂を突き抜けるかのような快感にぎゅっと閉じた瞼の裏側で極彩色の光がチカチカと揺らいだ。
気持ち良すぎて声が出ないなんてことあるんだな。こんなの初めてだ……。
絶頂の残滓に酔いしれているところへ、糸が切れた人形のように佐々木が俺の胸に倒れこんできた。慌てて受け止める。
危ねぇ。おい、佐々木、しっかりしろ。
ペチペチと頬を叩いてみたが、酸欠の金魚のように呼吸だけでいっぱいいっぱいの様子だった。
息切れを起こしているのは俺も同じで、まるで体力測定の持久走を自己新を狙って無謀に走り終えた直後のような息苦しさに見舞われていた。
無碍に佐々木を押しのけることなんてできず、胸に抱いたままとにかく呼吸を整えんと深呼吸した。
ビュクビュク
だが、そんな俺の試みも空しく視界に割り込んでくる影。
「お前な。何て不意打ちをっ、かましてくれたんだ。心臓麻痺を起こしたら、どうしてくれるんだよ」
憎さ余って絶え絶えの呼吸を縫って恨み節をぶつけてやる。
するとすっかり色を直したハルヒは少しも悪びれた様子も見せずに、
「ふんっ、仕返しよ仕返し。だいたいね、あたしがおとなしく出し抜かれてたままでいると思ってるわけ?」
と言い放つ。それに関しては何のコメントもあるはずもない俺が黙りこくっていると、ハルヒは思い出したかのようにいっそう鼻息を荒げて続けた。
「ったく、あーんな変態的な半裸えっちにノせられて興奮しちゃうなんて、あんたも単純なんだからっ」
…………とんだとばっちりだ。しかし事実なだけに言葉が無い。
一瞬さらに罵られることを覚悟したが、ハルヒはそこからは無言でただ熱い眼差しを仕向けたまま俺の出方を伺う。
アイコンタクト、なんて上等なもんじゃない。
猫缶を手に取ったときのシャミセンの目と似たようなもんだ。
とにかくどうやら俺の休憩はもう少しお預けらしいね。
やれやれと俺は丁重に佐々木を横たえると、本当に重いと感じる腰を上げてベッドの中央へとハルヒを誘った。
…………ところで、なんでお前靴下だけ履いたまますっぽんぽんなんだ?
//////////
ハルヒをやんわりと押し倒して、その勢いのままキスをした。挨拶代わりに軽く舌をじゃれ合わせてスイッチが入るきっかけを作ってやる。
顔を離すとハルヒの瞳はか細く揺れていた。
「一人のけ者にされるのって切ないんだからね。その分ちゃんと……、ちゃんと……」
分かってるっての。ちゃんと……、可愛がるよ。
照れを承知で言ってやる。ようやく言えた。いまの佐々木は邪魔立てできるような状態にないが、二度も阻まれただけに安い達成感さえあるぜ。
髪を撫でてやると強張っていたハルヒの表情が幾分和らいだ。それでも素直になれずに「……バカ」と呟いて無理やりに得意のアヒル口で唇を尖らせるあたりが実にこいつらしい。
俺はハルヒを両腕に抱いて、その意外に厚ぼったい唇を啄ばむようにキスした。
効果は覿面、すぼまった唇が雪解けのように柔らかく軟いでハルヒは俺を受け入れ出す。
「ふぁむっ、はぁ……、んちゅっ、キョン……、目いっぱい、んあむっんっ、優しく……して」
舌を差し出すと待ち構えてたように纏わりつかせてきた。慌てず強すぎず、じっくりと互いの気持ちを確かめ合うような濃密なディープキスを終えると、ハルヒはトロンとまなじりを下げて頬から耳まで桜色に染めていた。
完全にモードが切り替わったサイン。
淋しい思いをさせちまったお詫びじゃないが、心行くまでサービスしてやろうとハルヒの好きなところを重点的に攻めることにした。
どうにも身体が気だるい。だが、ここでおざなりにするのは男として間違ってるように思えて俺は気負った。
手始めに耳に口づけて軟骨に沿って舌を滑らせてやると、身をわななかせてハルヒが甘く喘ぐ。
耳を弄びながら右手でハルヒの乳房を捏ねる。潤った肌は吸い付くような手触りで、片手ではとても収まりきらないボリュームのある胸が自在に形を変えた。こればっかりはいつまで触っていても飽きない自信があるね。
「っ! ふぁあぁぁん、はぁん! んんんぅっ!!」
大声を出すのを恥らうように口許を結ぼうとするハルヒだが、押し寄せてくる快感の波には抗えず可愛らしい声が漏れ出る。
耳から顔の輪郭、首筋を経由して、鎖骨から胸まで舌を走らせて、親指の腹で擦って硬くした乳首に吸い付いた。
サイドポジションに身体を移して乳首を口で攻め立てながら、もう片方胸を揉みしだき、右手をハルヒの秘所に滑らせる。ハルヒの秘裂はすでにぐっしょりと潤っていた。
「――――ああぁぁぁ! やっ、やぁぁ、感じすぎちゃうっ! はぅぅんっ!」
弱々しいハルヒの制止を振り切って中指を差し入れると、『くちゅん』と音を立てて肉襞が締め付けてきた。
胸への愛撫を緩めずに手首の回転を使って中指で蜜壷を抉ると、ハルヒは俺の頭を掴んで大きく喘いだ。
「ふはぁんっ! ああぁっうぅ! ダメッ、ダメダメッ!」
制止を振り切って、止め処なく湧き出してくる濃厚なハルヒの蜜の香りに朦朧としながら俺は腕の動きを激しくした。
「はぁあぁぁうぅっ、速すぎっ……んんぅっ、キョン、……ダメッ、とめてっ! おかしくなっちゃう! おかしくなるからぁあぁぁぁ――――!!」
ハルヒが足の指先まで突っ張って啼いた瞬間、『ピュッ』と一条の潮が吹き出た。
……もしかして潮吹きってやつ、なのか?
こんなことは初めてで俺は少し戸惑った。
手を休めてハルヒの顔を窺うとその瞳は閉ざされていて、手の甲を額に押し当てて肩で息をしていた。
イッた直後は身体全体が敏感になっててツライということくらいは心得てるので、落ち着くまで待ってやることにする。
ほどなくして息を整えたハルヒは薄目を開けて、
「……軽く、ィっちゃった」
焦点の定まらない瞳のまま、ボソリと呟いた。
その様はかなり俺的にツボで、やり場のない欲望が沸き上がってくる。二度も放出して萎えていた俺の愚息が力を取り戻して奮い勃っていた。
「ハルヒの中に入りたい!」という愚息の代弁を引き受けるのに先んじて、俺の股間に熱い眼差しを向けていたハルヒが懇願するように言った。
「キョン……、来て」
テンパってるのはお互い様か……。おかげで少しだけ落ち着きを取り戻せたぜ。
ハルヒの女の子の部分に滾った愚息を押しつけた。後は腰を押し進めれば目も眩むような快楽が――――、と、ここでふと俺は踏みとどまった。
久しぶりにハルヒに『ホンキのおねだり』をさせてみるのも悪くない、と。
剛直に手を添えて淫水に塗れてヒクついている花弁をめくるように先端を動かした。くちくちとわざと音を立てさせてひたすら入り口をいじりたおしてやる。
「……んんぅっ、んぁっ……、キョン?」
「ん? どうした?」
すっとぼけてやると、ハルヒは口許に手をやって押し黙る。
口で言うのは憚られるのか、腰を動かして彷徨ってばかりいる俺の先端に自ら照準を合わせて挿入を促した。俺は悉くそれをかわす。
正直今すぐにでも挿れたくてウズウズしまくってるわけだが。そこは勝負ってもんだ。
「んっ……、はぁ、やぁ……、どうして焦らすのよ?」
「前みたいに上手におねだりできたら考えてもいいぞ」
核心をついた俺の一言にハルヒはのぼせた様にさらに顔を紅くして逡巡する。動体視力のトレーニング中かのように視線を目まぐるしく泳がせるが、やがて観念したのかうつむき加減に言葉を紡ぎ出した。
「――っ、キョ……、キョンのこれを、あ、あたしのっ、……あたしの、アソコに、……入れて……」
過呼吸なんじゃないのかってくらいにハルヒは切羽詰っていた。
少し心配にもなるが俺は妥協せずにきちんと言わせることに徹する。
「指示語が多くて分かんねぇよ。だれの、どんなナニを、どんな風になってる何処に、どうして欲しいって?」
耳元で囁いてやると、「ひんっ」と啼いてハルヒの身体が震えた。
軽く俺のキャラが変わってるって? そりゃそうだ。バリバリ演技なんだからな。
まったく最初はちょっとした冗談でやっただけなんだけどな。
まさか本気で隠れマゾだったとはね。ハルヒにしては少々ヒネりがないと思わないか?
馴れ初めの頃が思い出されてサドの仮面がずれそうになるが、気を引き締めて俺はハルヒをなぶった。
腰を空振って竿を滑らせて、たっぷりと局部をほじくってやる。
そうしていると、いよいよ余裕が無くなったハルヒが急き立てられるように口を開いた。
「……ぅ、ぁ……はっ……、キョンの、堅くて大好きなお○んちん……、あ、あたしのトロトロに濡れちゃってて、はしたない、……お、おま○こに突き入れてっ、……あ、頭が真っ白になっちゃうくらいに突きまくってぇ!!」
淫語にまみれた哀願が引き金になって俺は自らを縛っていた鎖を解き放つ。
未だ指を咥えた痕を残してだらしなく口を開けて琥珀色の液体を零しながらヒクついているとんでもなくイヤらしいハルヒ秘裂に愚息を宛がって狙いを定めると、慾に任せて一気に貫いた。
「ぅぅんんんっ、ぁぁぁあああああ――――!」
シーツを掴んでハルヒが絶叫する。一見すごく苦しげに見えるが、こういう表情はすごく気持ちいいってことの裏返しってことは今までで確認済だ。だから、遠慮はせずに抽迭を開始する。
クチュン、クチュンと水気をたっぷり含んだ音を立てながら、俺はひたすらハルヒの奥を目指した。
「ああぁん! やぁぁあぁぁんっ! いっぱい擦れてっ、気持ちいいよぅ! もっとあたしにキョンを刻み付けてっ! はぁっ、ふぁあぁぁっ!」
たっぷり焦らした分、恥じらいよりも快感が勝るのか、ハルヒは厭わず大声で喘いだ。
ハルヒの膣内は佐々木とは一風違ってて、佐々木の這い回るような襞に対して、吸い付くようなフィット感がある。
ここで、どっちが気持ちいいかなんてのはあまりに野暮ったい。一つだけ言えるのは甲乙つけがたく双方とも病み付きになりそうなくらいに気持ちいいってことだけだ。
夢中になってハルヒの秘所を攻め立てていると、傍らでもそもそと動く人影を捕えた。佐々木が起き出していた。
佐々木は座った体勢で俺の右手を取ると、手のひらを精液と愛液で蕩けきった秘裂に宛がって仰向けに横たわる。
「私も指でシて欲しいな……」
とだけ呟いた。その眼差しはひどく心押しつぶされそうなくらいに頼りなさげでなんとかしてやりたい気持ちに駆られた。
……ああ、分かってるさ。2人同時攻めなんて無理があるってことくらいな。
それでもこんなになっちまってる佐々木を放っておくことなんて、もっと無理があるんだよ。
俺は腰を動かしながら、無茶を承知で佐々木の秘裂に指を這わせた。
動きがぎこちないのはどうしようもない。
この難しさは、言うなれば何だろうか。そうだな、右手で宙に三角を描きながら、左手で四角を描くようなそんな器用さとリズム感が必要とされている気がする……、いや何か違うか? よく分からん。
なんにせよ平等に2人を愛でるなんてことは容易じゃない。
変化をつけて陰核を撫でようと気を回すと、たちまち腰の動きが雑になって、
「んんっ、キョン! もっと動いて!」
とハルヒから不満の声が上がる。それを収めるために腰を深く突き入れてハルヒを悦ばせようとすると、手が疎かになって、
「キョン、切なくて辛いよ……、もっと激しく」
と佐々木から叱られる板ばさみだ。
あー、もうワケがわからん!
開き直って俺はとにかく強さを優先させて、両者ともピストン運動に終始することにした。同じリズムで腰と手首を動かして2人を少しでも早く絶頂へと導くことにする。
そうでないと俺の体力がいい加減もたん。
「あああっ、あぁんっ! はっ、あっ、んんっ、あああっ、いい、いいよぅっ!」
「ふぁん! あうぅんっ! あっ、あぁっ、ああぁぁんっ!!」
ソプラノがハモって二重奏のスタッカートを奏でる。
俺は終わりが近いことを悟って、腰に抉るような回転運動を加えてハルヒの膣内を入り口から奥までくまなく擦りあげる。
並行して佐々木に人差し指と中指を突き入れて腹側の壁を掻き出すように高速で往復させた。
「キョン! キョン!! イキそう……、イクよっ、一緒にイって! あたしの膣内にキョンのせーえき、いっぱい注ぎ込んでぇ! ぁぁあぁあぁぁあぁ――――――――!」
「またイっちゃう! キョンの指でイかされちゃう! っあぁあぁぁぅぅぅっ! イクイクイクイク――――――――!」
室内に大きく響き渡った2人の叫び声を鼓膜に染み渡らせながら、俺の本日最後の白濁がハルヒの膣内で爆ぜた。
ハルヒは脚を俺の腰にギュッと巻きつけて最奥で俺の奔流を受け止める。佐々木と同様ピルを飲んでるので俺はハルヒを獣欲の赴くまま塗りつぶして擦り込むように蹂躙した。
一方、佐々木は盛大に潮を吹いて絶頂を迎えていた。
無我夢中で見届ける余裕が無かったが、大量に迸った液体が俺の腕まで濡らしていた。
波が治まるまでそのまましばらく呆けて過ごす。
「つ、疲れたぁ……」
あらゆる意味に於いて自分を出し切った俺に、視界が霞むくらいの疲労感と虚脱感が襲ってきた。
そりゃそうだよな。頑張り過ぎだぞ、俺。
休む間もなく三連射。その上3人でするのが初めてにもかかわらず、2人を同時にイカせたんだぜ? まぐれなんだろうけど、快挙と言っても過言じゃないだろう。
今日ばかりは自分を褒めてやってもいいんじゃないか?
そう思えるくらいに俺は表現の及ばない充足を感じていた。
余韻に浸っていると途端に意識が遠くなって身体から力が抜けていく。産卵を終えた鮭の気持ちが分かるような気がした。
力尽きて天に召されるなんて縁起でもないが、少しだけ、ほんの少しだけ今しばらく休ませてくれ。
分解しかかってる意識をなんとかかき集めて気を失っている二人の間に着地だけ定めて、俺は受身もとらずに盛大に倒れこんだ。
//////////
意識が戻って目を開けると、眠気まなこにオレンジにライトアップされた見知らぬ部屋が写った。
んん? どこだ、ここは……。
股間に鈍い痛みを感じて、前後不覚だった起きぬけの脳が正常に機能し始める。
……そうだった、俺、ハルヒと佐々木と…………、で、疲れ果てて寝ちまったんだ。
身を起こすと2人は穏やかな寝息を立ててまどろんでいた。
初めて見るわけじゃないが、相変わらず両者とも起きてるときじゃ見当もつかん素直な寝顔だね。こうして並べて見ると面白い。
……って、和んでる場合じゃない。時間っ!
ベッドの傍に置いてあった安っぽい目覚ましを引っつかんで俺は青ざめる。
時刻は午後4時半過ぎ。確か入ったのが2時前だったはずだ。だから休憩の設定時間である3時間まであと15分程度の計算になる。
いくら取られるのか知らんが金に余裕なんぞビタ一文ないぞ。延長料金とられたら終わりだ。
「お前ら起きろ! 下手すりゃシャワー浴びる時間ないぞ? おい! ハルヒ! 聞こえて…………、うおっ!?」
手の甲でハルヒの頬を叩いてやってやったが、どうやらやり方が生ぬるかったらしい。
腕に抱きつかれてベッドに引き込まれちまった。
「んふふ、えへへ……、キョン、キョン、キョ〜ンッ!」
寝ぼけたまま意味不明に俺のあだ名を連呼してしがみついてきやがった。ったく幸せそうに口を綻ばせやがって、あーあ、ヨダレが……って、違うだろ!
「目を覚ませ! こら! こんなことやってる場合じゃ…………、うわっ!」
不意に今度は背後から首に腕が巻きついてきて焦りまくった。
「ぅう〜んんん…………、キョン、だめだよ。まったくキミは女性の扱いのいろはを分かってないな。
……ソコはね陰部神経終末が高密度に分布しているため非常に感じやすいんだ。だからそんな風に無遠慮に扱ってくれては困る。例えるならベーゼンドルファー・インペリアルを調律するかのように丁重かつ繊細に……、むにゃむにゃ……」
佐々木! 一体何の夢を見てるのか知らんがとにかく目を開けろ!
ついでに言ってやるとな、お前いい加減キャラを固定させろ。対応するこっちが混乱しそうだ。
強制的にベッドに貼り付けられた俺は、もがいてこの手間のかかるお転婆供をひっ剥がそうとするが、誤ってくっ付けてしまったネオジム磁石のように離せやしない。
残された手段は叫ぶことだけだった。
「あー、もうっ! シャワーなんて悠長なこと言ってられねぇ。 お前ら! 何でもいいから服着ろ――――――!」
//////////
「はぁ――――――」
石造りのベンチに力なく腰掛けて、大きく息を吐く。
秋口に差し掛かって和らいだ西日が少し長目の影を作っていた。
結局シャワーをあきらめて寝ぼけたままの2人になんとか服を着せて引きずるようにホテルから駆け出ることで追加料金を免れた。
しかしこの英断は報われず、身づくろいはおろか、汗やらナニやらでベトベトの酷い有様のまま外に連れ出したことに関して2人から散々ぶーたれられる羽目に逢った。
……まったく、やれやれだ。
もちろん色々と言って聞かせてやりたいことがあったが、とにかく最低限の身だしなみを整えるのが先と立ち寄ったのがこの公園。
お世辞にも大きい公園と言えないが、水飲み場があったため、とりあえず手と顔を洗って、佐々木から借りた鏡を見ながら服や髪を軽く整えて一息ついたところだった。
女性陣はさすがに時間がかかるらしく、俺は少し離れたところで一人待ちぼうけを食っていた。羽休めにはちょうどいい。
無茶をやったツケは早くも身体にキていて、丹田から気が抜けたように腰に力が入らない。尋常じゃない気だるさが身体に纏わりついていた。
思い起こしてみると最初の戸惑いもなんのその、途中からはむしろノリノリでハマってたよな……。
気恥ずかしさがこみ上げてきて軽く自己嫌悪に陥った。
思わず両手で顔を覆ってうな垂れると、ポケットの中の携帯が鳴った。フロントの液晶に表示された名前を確認して余計に憂鬱になる。
正直な話、今の俺にはヘビーな相手だ。疲れた頭に奴の回りくどい台詞回しは害の他なんでもないと思えたが、適当に相槌を打っていれば気が紛れるかもしれんという一瞬の気まぐれで通話ボタンを押してしまった。
「俺だ」
「こんにちは。お休みのところすいません」
テレアポのように妙に滑舌の良いスカした声が受話器から流れ出てきた。馴れ初め当初は軽い嫌悪感すら抱いたもんだが、今ではすっかり耳に馴染んでしまった。まったく慣れってのは恐ろしい。
「こんな週末の中途半端な時間帯に何の用だ?」
「いえ、特に用件があるというわけじゃないんですが、お疲れ様ですの一言を差し上げたかった、といったところでしょうか」
このたわ言をたっぷり数秒間聞き入って、俺は弾かれたように立ち上がって辺りを見回した。
ブラフであってくれと祈るも空しく、樹木を抜けた向こう側、公園を出てさらに車道を隔てた歩道で優雅に手を振るスマイル野郎の姿を見つけて俺は肩を落とした。
ちくしょう、のっけの「お休みのところすいません」の時点で気づくんだった。
睨みを利かせてやったが涼しげな瞳で軽くいなされた。ガードレールに格好をつけて腰掛ける姿がさらに鼻につく。
やるかたないと俺は乱暴にベンチに腰を据え直す。
だが、この開き直った態度とは裏腹に心はざわいついていた。そりゃそうだろう、今日の所業が古泉に筒抜けだったと思うだけで、ぞっとできる話だと思わないか?
ハルヒと佐々木は水飲み場のそばで、身体を拭くのもそこそこに水遊びなんぞに興じている。古泉は狙ったようにその死角に陣取っていた。
「せっかくの日曜だというのにお前もよっぽど暇だね。機関が解散してもう随分経つというのに染み付いた監視癖が抜けんのか?」
皮肉たっぷりに放ったジャブを古泉は笑って叩き落とす。
「まさか。今日のあなた方の様子を草葉の陰から気にかけていたのは確かですけど、理由あってのことです。見守っていたと表現する方が適当でしょう」
「一級河川に迷い込んできたアザラシじゃあるまいし、見守られる覚えなんぞないんだがね」
電話の向こうで古泉が軽く息をつく気配が感じられた。
さぁ、ここからが本題だ。正直今のところ見当は全くついていない。どこから切り込んでこられても動じないように俺は身構える。
しかし、元超能力者は俺のガードの隙間を縫うように、
「不可抗力ではあるものの、結果的に背中を押すことになってしまった責任が僕にはありますからね。せめて見届ける義務があるということです」
俺を絶句させるに足る鋭いストレートを見舞ってきやがった。
「……背中を押した、だと?」
言ってしまってからこの鸚鵡返しはポーズだと気づいた。既に自分の中に漠然とした答えが在ることを認識すると、個別で存在していると思われていた幾つもの事象が直感的に急速に繋がってストーリーラインが見えてくる。
それは目を背けたくなるような酷い筋書きで俺は眩暈さえ覚える始末だった。
「ええ。詳しい説明をご所望ですか?」
「……一つだけ確認させろ。ここ最近ハルヒの相談にのったことがあるか?」
「お察しの通りですよ。どうやら説明は不要のようですね」
……なんてこった。
つまりはこうだろう、ハルヒがいきなり3人でしたいなんて突飛なことを言い出したのは、この人形師の真似をしたペテン師が裏で糸を引いてたってことで、まんまと俺はつられて一緒に踊っちまったってわけだ。
お前なぁ、これは冗談じゃ済まねぇぞ?
「開き直るつもりはないので誤解しないで冷静に聞いてもらいたいのですが、今回の件はあなた方にとって必要な通過儀礼だったんじゃないかと僕は思っているんです」
アブノーマルの階層を掘り下げるのが通過儀礼なのか?
「……前提が違うかもしれません。考えてもみてください、学校を代表するような才媛を2人も独り占めしてる時点ですでにあなたはアブノーマルの領域に踏み入れていると判定できませんか?」
…………。
その件に関してはさすがに返す言葉がない。
頭に上りかけていた血液が「やっぱやーめた」とヤル気をなくしてトボトボと惰性で降りてくるのを感じながら俺は古泉の言葉に耳を傾ける。
「涼宮さんは3人で付き合う関係に不安を感じ始めていたようです。
あなたとは恋仲なのに佐々木さんと居る時のあなたには想いは届かない、理屈で理解できていてもどうしようもないのが感情ですよ。
少しずつ鬱屈が溜まっていったのでしょう。佐々木さんも似たような想いを募らせていたのかもしれません。」
古泉は冗談交じりに、「一年前なら言葉どおり僕が裏で飛び回る羽目になっていたでしょうね」、と付け加えたが、俺はそれを流して記憶を辿ることに腐心する。
そう言われれば確かにこの数週間ハルヒの様子が不安定だったな。
急によそよそしく俺を避けたり、3人で会うのを躊躇ったりってのが何回かあったのさ。
どうせいつもの気まぐれだと決め付けて気づけなかった自分を恥じた。
ハルヒのやつ、真剣に悩んでいたんだな。
「事態を打開するためには3人の仲を深める必要があった。ゆえにほんの例えとして件の話を涼宮さんにさせてもらった次第です。事が事だけに即実行に移されるとは思いもよりませんでしたけどね」
「涼宮ハルヒフリークのお前にしちゃらしくないね。あいつを下手に刺激するのは自滅行為だってことはもはや摂理に数えてもいいくらいに身にしみて分かってるはずだろ」
さすがにこの俺の返しに対しては古泉も苦笑を浮かべるだけだった。
「とにかく丸く収まったようで何よりです。ホテルからどんな様子で出てくるのか気が気でなりませんでしたが、涼宮さんと佐々木さん、そしてあなたの晴れやかで活き活きとした表情を見て溜飲を下げました」
そうかい、そりゃあ心配をかけたな。
……だがなぁ、なんか釈然としないんだよな。
色々と世話を焼いてくれたことに対しては感謝すべきなんだろうが、通過儀礼で片付けられてしまうのがどうにも受け入れられない。
選択肢は本当にこれしかなかったのか? もっと健全風味漂うのマシな展開にする手立てはなかったのか? どうにも嵌められた感が――――、
「キョーン! タオル持ってきて」
……お呼びがかかっちまった。思考を一時停止させて水飲み場に目をやる。
何用かと思えば、全身水しぶきに濡れて更に酷い有様になったハルヒと佐々木がつっ立っていた。子供かお前らはっ。
軽い頭痛を覚えながらよろよろと立ち上がる。切るぞと告げようとしたときだった、計ったような絶妙のタイミングで古泉の前に黒塗りのタクシーが音を立てずに滑り込んできた。
淀みの無い動作で古泉はそれに乗り込む。
「どうやら長話が過ぎたようです。邪魔者は早々に立ち去ろうと思うのですが、最後に一つだけ。……2人を同時に悦ばせるのは難しくありませんでしたか? あなたさえよければ、今度僕がコツを……」
ピッ。
さて、2人のフォローに行くか。
ハザードを切ったタクシーが動き出す。後部座席はスモークが貼ってあるので古泉の姿はこちらから見えないが運転席の見知った顔と目が合った。
人としての年輪を重ねることでしか醸し出せないダンディズム漂う壮年の紳士、俺の中で運転手といえばこの人、新川さんだった。
ご無沙汰してますと軽く会釈すると、新川さんは引き締まった表情のまま力強く親指を立てて応えてくれた。
なんだ? 若人よ頑張れとでも励ましてくれてるのかね?
なにやらよくよく見ると親指が中指と人差し指の間に挟まってるような気がするのは…………、見間違いだな。きっと疲れが目にきてるんだよ。
半ばそう思い込ませ、俺は見送りを切り上げて視線を前に戻した。
向こうからは棒立ちに呆けていたように見えたのか、ハルヒがいっそうバカでかい声で急き立ててきた。佐々木は傍らでびしょ濡れになった服の裾を楽しそうに絞っている。
お前らなぁ、まだ暑さが残ってるとはいえすぐには乾かないぞ、それ。
一刻前の淫らな艶姿が夢だったかと錯乱するほど、くったくのない無邪気な顔で2人は微笑んでいた。
――女ってすげぇ役者だよなぁ。
つくづく思い知らされる一コマだね。
とにかく3人でするのはしばらくいいだろ。たとえ俺たちにとって必要なことであったとしても、いかんせん俺の身体がついていかん。……半年に1回とか、いや3ヶ月……、いやいや1ヶ月に1回……、うん、それくらいでいいぞ。
「はいはい」と、かなりおざなりな返事の裏側でそんな不埒なことを考えながら、俺は肩に掛けていたタオルを抜き取って困ったやんちゃ娘達の元へと歩みを進ませる。
心持ち先ほどよりも身体が軽くなっているような気がした。
ああ、そうそう。エレベーターの中でやった自問自答だけどな、答えを訂正しておくことにする。
――半分そこそこは古泉のせいだ、ってな。
―完―
以上です。最後まで読んでくれた人ありがとう。
リズミカルに抜けました。ありがとう。
お前の文才に俺は泣いたwww
違う抜いたwww
これであと3日分は戦えるwww
なんか見たことがあるようなシチュエーションが……
以前保管不要の実験作と称して小ネタ投下してくれた人か?違ったらスマソ
新川さんwwwww
>>191長編投下ご苦労様です。そしてなんというエロさ、あなたに惚れた(掘れた)
神GJ!!
これはGJとしか言いようがない。
3人で付き合うことになった経緯も読んでみたいな。
最近ガチエロが再来してるな。
なんでブリーフって設定にしたのかが気になって本編に集中できなかった俺は負け組
学校へ行こうは読んだ事無いな。今度読んでみるか
>>200 エロ無しSSが大半を占めている自体、この板にとってこのスレは閉鎖空間そのものなんですよ。
>>191 GJよ
思わず副団長に任命しそうになったじゃない
>202
どこのゴールデン?
>>191 GJ
ところで、きょこたんにはレイプが似合うと思うのは俺だけかな?
きょこたん『を』レイプ
きょこたん『が』レイプ
どっちかによって俺の返答は変わるぜ?
レイプはあまり好きではないが、くるくる橘を読んで以来、俺の中できょこたんは完全に受けだな。
けどパンジー相手だと攻めになる予感
ノ
きょこたんかわいいよきょこたん
きょっこきょこにされちまったぜ……
俺もくるくる橘にやられた口さ
きょっこきょこにされちまったぜ
ひつまぶしも良かった
何て言えば良いんだ、きょこぱん?
巨根たん
橘話か…難しいよな
こういうシチュを想像した
なんとか佐々木団に引き入れようと新聞の勧誘よろしくいろんなおまけをつけてキョンを勧誘しようとする橘。
キョンは橘に ”考えてやる” といいながら色々エロいことを要求する。
いやいやながらも要望に答える橘。「これで(佐々木団に)入ってくれますか?」と尋ねるとキョンはニヤリと笑って
「ああ、挿れてやるさ」と橘を組み伏せ無理やりレイプ…
悲しくならないか?
そういうレスを送信し終わった後って
橘が二期のアニメに出たら
『機関』連中に捕まって林間される同人誌が出るだろうな
まだあったのかこのスレ
>>225 HAHAHA何を言っているのかね。我らの妄想力はそう簡単には尽きないよ?
ところで、本スレではここの存在はあまり知られてないようだな。いや、2日前あたりにSSの話持ち出してきた馬鹿がいたもんでな?
本スレってアニメスレ?それとも谷川スレかな?
まあ二次創作に興味のない人間も居るんじゃないか。
本スレって言ったら普通谷川スレじゃね?
二次創作が生理的にダメっていう人もいるしな。
そういう人とは価値観が違うんだろ。俺は、二次創作については結構雑食だし。
ただ、SS系統だけは「ネタに走ってるものじゃない限りは基本原作準拠派」というよくわからない立場にいるが。
なんとなく分かるよ。あちらはどうも合わない。あくまで個人的に。
新刊が出ないので寂しくて二次に手を出す人も居るみたいだけど。うわさでは1月らしいけど…。
ゲームも12月、1月と出るから、内容はともかくネタは増えるね。
まあ、全くのオリキャラに名前すげ替えても違和感ないようなSSモドキにGJは出せんわな。
ハルヒ二次創作は、何よりもまずキョンフィルターの再現が死ぬほど難しい
俺も一度挑戦して挫折し、それ以来読み専に回っている
というか、「キョン一人称」かつ「SOS団=絶対正義」が守られていないと評価は低くなる。
ちょっと前に古泉が機関側に傾くSSがあったけど、住民総スルーだったし。
自己判断は面白かったぜ?
流れブッタ切りますが、キョンとハルヒが喧嘩して、おたがい謝れず、
ハルヒが無意識の内にキョンに能力を上げちゃう話ってなんだっけ?
>>234 シチュは全然違うが、10-42の「I want to be here」にあるな>キョンへの能力委譲
>>229 原作至上主義ってのは、エースの漫画なんかも駄目な口なんだろうか。
あれは下手うつと同人よりひどいオリジナル要素を埋め込むからなあ。
特に最近始まった4コマの方は、宇宙人さんがダメな人たちになっとるし。
副団長にはその気がないのはある意味意外だったが。
俺は本スレ行かないな。
なんつーか、大体どのアニメにしてもマンガにしても「本スレは荒れてる」ってイメージが払拭できないんだよなぁ
アニスレも谷川スレも踏み入ったないかもw
>>228 ナカーマ。特にキョンに関してはあんまり熱くなられても困るw
だからvipのSSはあんまり馴染めんかった
本スレは昔はよく巡回してたんだ流れが速くて見るのやめたな。
このスレも去年の六月頃は凄まじい勢いだったから付いていくのに必死だったわw
今は投下が減って少し寂しくもあるけどこれぐらいのマターリ具合がちょうど良い。
そういえば去年の今頃も新刊マダー?だったなぁ……。
また四月まで延びるんだろか。
ゲームの方は公式アンソロと割り切ってるが、発売されればそのネタのSSも増えるんだろうな。
なんだかんだでこのスレが居心地良く感じるのは、自分と似たスタンスのヤツが多いからなんだろうな。としみじみ思った。
今ハルヒ関連スレでよく見るのはここと後もう一つだけだ。
俺もここと流スレくらいしか見ないな。
大抵のキャラスレは初期→中期までなら読めるSSが結構出る。
それ以降は、じゃあ俺も書いてみよう駄文→マンセーレスの流れが続き、
まともな感性+文章力のSS書きはどっかに逃げる。
それ、今の佐々木スレじゃないか。
>>242 初期のものも駄文は多いぞ。そういう駄文は誰の記憶にも残らず忘れ去られ、名作だけが記憶に残る。
昔は良かったというのは、昔の名作と比べるからで、
昔の名作>>>>今の普通の作品
となるのは当たり前。
245 :
52-265:2007/10/27(土) 21:12:21 ID:lG97okLV
投下します。
エロなし。23レス予定。
続き物です。
__ __ _
. _ , '"´ ,. _ ___`丶、
/ ` / /´-‐ァー-ヽ \ ミシッ・・・
. / /下7 ..///.:.::/ .:.:ト、 ヽ -‐''´'´ ,、
/ └イ_j/ .://;へ、/!.:.::/:.} ,__-‐'''´-‐'''-‐''´
,' ///!l .::j f --,ノ_-γ--''´ ̄ / /
, '〈/f`| l ::l!(◎弋 / /// `
| l:l :!:{、| l ::|リ ゞノ"} l l | |
| l:l::i个| l ::lヽ//ノ"}| l | 丶
| lハ:l::{::', ::::{、 '| ,. -'´ - -'
l !:|:::',::',::ヽ:::ヽ\.`//) / \ :_
. ',::{:{、:::ヽ\:\;ゝ `「丶、__ ./ ̄>-'⌒ー‐r;┬' \
. ヾハj>''´ ヽ ト、_..上くイ::::{ {::{/
/⌒ヽ、\ ` \-ー ̄\ヾ
/ ヽ \\ \´ ̄`ヽ、
. l ', \\ \ __| \
. | ', \`ヽ、 ∨n| } ト、
Prologue.
「では、今回は『世界の話』をしましょう」
「開口一番、何とち狂った事を言ってるんだ、お前は」
返答の代わりに、どむっ、とニブめな音を立てつつマイ鳩尾に食い込む握り拳。
ああなるほど、これは『反論は許さない』というエネルギッシュなボディーランゲージというわけですね、………チクショウめ。
「んじゃ、言いなおすわよ。さて、今回は『ちょっとウルッときた話』をしましょう」
「待て、その二つはどう考えてもイコールじゃないぞ」
「残念でした。あたしの中じゃあこれ以上ないってくらいイコールなの」
溜息しか出ない、そんなお前こそが本当に残念だよ、俺は。
というか、………だな。そんなピカソが叫びを上げるくらい前衛的すぎる思考飛躍にゃあ誰もついていけないだろうし、なにより………、
「ようするに、迷子になったっていう事からの現実逃避だろ、それ」
「ふふふふふ、甘いわね。最近の携帯にはちゃんと地図ってやつが付いてるのよ! あたしと同じ万能戦士ってやつね」
「あー、そうかい」
『別に胸を張っていうことでもないぞ』とか、『突撃しか知らない戦士は早死にするだけだぞ』などというツッコミは封印しておこう。突撃対象に設定されちゃかなわんからな。
あー、でもそうか。地図、………ね。
俺の携帯にはそんな局所的な便利機能はついていないと思うのだが、一応確認のため自分のをポケットから取り出す。
「あ、圏外だ」
「あらまあ、貧弱な携帯ねえ。やっぱり持ち物は持ち主に似るのかしら」
やかましい。そういうお前のはどうなんだ。
「何よ! このあたしの携帯よ。宇宙空間にいても使えるに決まってるでしょ! ………あ」
「どうした?」
「………電池切れ」
「………」
「………」
なるほど、持ち主に似て『問題外』なわけだな。
「やんのか、コラー!」
「俺は悪くないだろうがー!」
結局失言を止められず、突撃を食らう俺であった。
秋も終盤に入ってきた頃、夏休みの合宿から続いていた一連のなんやかんやに一通りの決着という名のお茶濁しをつけた後のある日、不思議探索中に迷子になって名も知らぬポニテ少女に攻撃される。
こう書くと、なかなかデンジャーな素敵生活を送っているように思われる方もいるかもしれないが、女性に襲撃されるのは比較的よくある事なので俺にしてみれば別に普通って感じである。………深くはつっこむなよ。
ただ、こいつがいきなり『世界』とか言い出した時は、何かに気付いているのかと思ってちょっとドキドキしたけどな。
「あ、そうだ」
『秋の日はつるべ落とし』ということわざに花丸をあげたくなるほど急速に広がっていく夕焼けの中で、彼女は俺に、こんな『俺にとっては何の意味もない質問』を投げかけてきた。
「そういやアンタ、名前は?」
―――――――――――――――――――
喜緑江美里の溜息〜The sigh of fake star〜
―――――――――――――――――――
1.
「それでは、映画を撮りましょう」
「………は?」
放課後、SOS団の部室で、いきなり江美里が前置きなしの意味不明提案をぶっこんできた。
ちなみに展開的にデジャブを感じるのはこれが『いつも通りの事』であるからであり、それはようするに、俺がいつもこんな風に事後承諾的に巻き込まれているという事を証明するものである、………そろそろ訴えたら勝てるんじゃないだろうか。
何? 『反対すればいいじゃないか』だって? 当然しているさ。………まあ、最近になって『例外』が出てきたけどな。
ただどっちにしろ、SOS団には積極的に江美里にたてつくやつが俺しかいないので、結局は多数決という名の数の暴力に押し負けてしまうのである。えみりん政権は磐石なのだ、………俺的にはとっとと退陣して欲しいのだが。
しかし、である。今回、部室には団員以外の存在が三名ほどいる。これは上手くいけば4対4のタイスコアくらいには持っていけるかもしれんな。………どちらにせよ『勝ち』はないのだが、これは気分の問題だ、許せ。
まあとりあえず、一人目。
「あっははは、おもろそーだねっ、それ!」
この本当に天に昇ってるんじゃないかと思えるほど高らかな笑い声を上げる人は鶴屋さんといって、朝比奈さんのこの時代に来てからできた友人らしい。
彼女は夏休みの途中あたりからよく朝比奈さんと一緒にいるようになり、SOS団の活動にも何度か参加してもらっている常連さんだ。
そして、二人目。
「ふむ、映画ですか。まあ私は執事役しかできませんが」
この人は新川さん。古泉が属しているらしい『機関』とやらの一員で見た目、性格ともにダンディーとしか言いようがない人である。一昔前の表現を用いるならば『ナイスガイ』とでも言うのであろうか。
ただし、常識人かどうかという事は校内に執事服で堂々と入り込んでいるという今の状況を見て察していただきたい。
ついでの三人目。
「おい喜緑、お前放課後いきなり人を呼びつけておいて、いきなり何を言ってるんだ」
谷口だ、以下略。
まあ、こんな感じで何の統一性もない三人ではあるが、みんなおそらくは何も聞かされずに呼び出されたクチだろうし、反対役に回ってくれるのを期待するとしよう。三本の矢ってやつだな、毛利家バンザイ。
そんな感じで俺が見ず知らずの戦国武将に感謝の念を捧げていると、江美里が机の上に座ってぶーたれている谷口に、何故か一昔前のコメディーに出てくる外国人のようなカタコトで話しかけだした。
「ヘーイ、ミスタータニグチ。リピートアフターミー、ギンマクデビューウッハウハ」
「ん、ああ、ギンマクデビューウッハウハ」
「ワンモアタイム」
「ギンマクデビューウッハウハ」
「ハラカラコエダセ!」
「ギンマクデビューウッハウハ! ………おお、何だかやる気が出てきたぜ」
ああ、所詮谷口か。早速一本矢が折れた、と。
折れた矢をあっさり見捨てて、何とかして他の反対派を得ようと新川さんに話しかける。
「新川さん、何かないんですか?」
「いえ、私は執事役であるのならば、それで」
「もし、執事役でなかったら?」
「ミ・ナ・ゴ・ロ・シ・ダ!!!」
生物学的にありえない光り方をする目で、普通に口から出ているはずなのに何故か地の底から響いてくる感じの声で、暴走ワードを発射するダンディー新川。
「駄目だ! 思考回路が意味不明ですよこの執事馬鹿!」
「はっはっは、執事だなんて、照れますな」
「後半の方を重視して欲しかった!」
あと、執事は褒め言葉ではありません。怖いので言いませんが。
かくして二本目の矢は『あさっての』どころか『来世紀の』方向に飛んでいくのであった。
「にょろっ、あたしにゃーなんかないのかいっ?」
「ははは、それでは『時間の無駄』、という言葉をさしあげましょう」
「むー、そりゃちょっとひどくないっかなー?」
ちょっと睨みながらの笑顔という顔芸レベルに器用な表情でこっちを見る鶴屋さん。
すみません。でも最初から折れている矢に期待するほど楽天家にはなれないですから。
「にょろー、んじゃあ仕方ないっさね!」
………つーか、自分で言っといてなんですが、『折れている』っていう自覚はあるんですね。
と、いうわけで三本の矢は元就もびっくりなほどあっさり残骸と化し、『結局いつも通り俺が無駄な反対をする事になるのか』と、溜息を吐きながら無謀な決意を固めようとしたその時、
「えっと、あの、それで、いい、ですか?」
親に怒られた子供のような上目遣いと捨てられた子猫のような弱弱しい声で、江美里が俺にそう聞いてきた。
これが演技なら、俺は『アホか、お前は』などと言って適当に流すのだが、残念ながら江美里は本気で聞いているのだ。
演技でない事くらいなら分かる。『どうして?』と聞かれても、『分かってしまうんだから仕方ないだろう』としか答えようがないのだが。
「………それが、愛?」
「長門、人のモノローグを勝手に読んだうえ、嫌なツッコミまでいれるんじゃありません」
「………教えて、お兄ちゃん」
「いやーん! お兄ちゃん、もう100%ラブですよー!」
………取り乱した、すまん。
とにかく、このセリフは騙されたくなる演技じゃなく、騙しようのない本気を俺に感じさせるのだ。
7月終わりの、合宿の時から、もっと正確に言うと朝比奈さんが江美里の言う事に反対してから、たまにこいつはこんな風に、暴走しかけては、最後に思いとどまって俺に確認を取ってくるようになった。
だから、ここで俺が首を横に振れば、映画撮影はおそらく制作発表前に中止とあいなるだろうし、そうなればみんな何事もなくラブアンドピースな文化祭を迎えられるのだろうけれど、
「おう、いいと思うぞ」
江美里にこんな風にされると、何故だか俺は必ず頷いてしまうのだ。
これが、俺が反対しない『例外』であり、
「そ、………ですか」
そして江美里はといえば、俺がその『例外』を行うと、何故だか必ず泣きそうな顔を浮かべるのだ。
そんな微妙な空気を周りに振りまきつつ、
周囲の仲間に気を使わせながら、
多分、お互いに相手を気遣いながら、
それでも、どこかボタンを掛け違えたままで、
こうして、俺達の映画撮影が他走者完全無視でスタートしたのである。
はてさて、一体どうなるんだろうかねえ、いろいろと。………やれやれ。
2.
さて、いきなりではあるが、ここでクエスチョンだ。
映画撮影に必要なものとは一体何だろうか?
俳優? 確かに。
カメラ? 必要だよな。
照明、その他小道具? うん、大事大事。
ただ、『これ』がないとそのどれもが弐千円札ばりに意味のないものになってしまう、という存在があるのだ。
で、それがない今の状況では到底撮影なんて開始出来ないと思うのであるが………、
「そのへんどうなんだ、監督さん?」
「問題ありませんよ、俳優をカメラの前に出してしまえば、物語なんてのは自然に動き出します」
「なるほど! 『シナリオ』がないのは『アドリブ』でカバーしろ、とそういうわけだな! ………一つだけ言わせろ」
「何ですか?」
「全国の映画関係者に謝ってこい!」
そんな俺の優位に立った国会議員のような攻めの姿勢を崩さない追及に、江美里は守りを固めようとは微塵も思っていないような口調で、胸を張ってこう答えた。
「わたしはわたし以外の存在を映画関係者だとは認めません!」
もの凄い大物アンサーが飛び出してきた。ええい、リコールはまだか。
「わたしは生涯現役ですよ。この作品を撮り終わるまで、ですけどね」
「一生かけて何を撮り続けるつもりだ、お前は!」
つーか他人を認めないのならまずその理由を言え、理由を。
「それはわたしが超激スーパーウルトラデラックスレインボー監督、略して『えみりん』だからなのです!」
「どう略したら『えみりん』になるんだよ! オーバーな形容詞付けすぎで逆にへぼそうだよ! それにそもそもそれってお前が他の人間を関係者と認めない理由になってねーよ!」
とりあえず今やもう習慣となっている三段突っ込みをかましつつ、仕事と配役だけは決めさせておく事にした。
こんな感じでなんかもう、撮影前からいきなりのグダグダ展開である。
『何とかせんとなあ』とは思うのだが、俺に出来る事といえば『ボロボロ』とか『スカスカ』といった他の言葉がつくのを防ぐ事くらいしかないのだ、………それももう、手遅れかもしれんが。
///
とりあえず仕事と配役を、ジャンケンやアミダなど明らかにグダグダ臭がただよう方法で決めさせた結果、
江美里:超激スーパーウルトラデラックスレインボー監督、略して『えみりん』
俺:カメラ、照明、その他雑用
長門:俳優(正義の魔法使い)
朝比奈さん:俳優(悪の女幹部)
鶴屋さん:俳優(悪の大総統)
新川さん:俳優(謎の執事)
古泉:古泉
谷口:空気
と、なった。江美里の『えみりん』枠と俺のその他雑用枠は最初から決まっていたようだが………。つーかこれ、なんか俺だけ仕事多すぎねーか?
「いえ、あの、それよりも僕の『古泉』というのは一体何なのでしょうか?」
「ん、ああ、隅の方で古泉ってればいいんじゃないか」
「ははは、これは手厳しい。………ところで実は僕、最近藁人形作りに凝ってまして」
ああ、なるほど。肩に付いてる藁くずはそれか。………ヤベえなあ、もう。
「………とりあえず俺の手伝いをしておいてください」
目が病んでる人のそれになってる古泉に対し、思わず敬語でそう答える俺。
「あー、じゃあ俺の『空気』って何すりゃいいんだよ」
張り詰めた空気を何とか破裂することなく抜ききれそうになったところで、『空気』がそんな空気読めてない質問をかましてきた。
「………んなもん知らん。強く生きればいいんじゃないか」
藁人形に釘打たれない程度にな。
「うおー! 何か俺、居る意味ナッシングって感じじゃねえかー!」
ようやく気付いたらしく頭を抱えて床を転がる谷口。なんか、いろいろすまん。マジで強く生きてくれ。
そんな感じでいろんな問題を適当に流しつつ、適当な川の近くの並木道に適当に移動して、適当に持ってきた衣装を適当に合わせてから、適当な物語の冒頭部分、テイク1、アドリブのまま適当にスタートである、………適当に溜息、やれやれ。
///
長門ユキはどこにでもいる普通の高校生………のようには見えなくもないかもしれないと曖昧な表現になる程度には普通ではないのだが、それを言い出すと物語が始まらないので、ここでは普通の高校生である、という事にしておく、てかしておけ。
たがしかし、そんなユキには、一つだけ周囲に秘密にしている事があったのだ。
実はユキは宇宙から来た正義の魔法使い『魔法少女スペースゆきりん』だったのである。初っ端からネーミングセンスゼロな衝撃の展開だ。
ちなみに『どうして宇宙から来たのか』とか『どのようにして魔法使いになったのか』とかの、割と大事な原因っぽいなんやかんやはこの先、一切、出てくる事は、ない。
この作品を鑑賞するには、まるでその場で思いついたかのように突然出てくるトンデモ設定を『まあ、そんなもんか』と笑って受け流すだけの度量が必要となるのである、………そういう事になってしまった、すまん。
とにかく、物語はその長門ユキが学校へと向かう途中の、春になったら桜が満開になる並木道をゴスロリファッションに身を包みながら一人でテクテクと歩いている場面から始まる。
衣服につっこんではいけない。『可愛いだろう、ゴスロリ。ならそれでいいじゃないか!』と、これはそういう話なのである。
「おや、長門様ではありませんか」
ユキに丁寧語で話しかけてきたこの男性は、アラカワという何故かいつも執事服で敬語を使う同級生の男子生徒である。見た目はダンディーな初老男性なのだがあくまでも彼は高校生なのである、………信じろ。
そんな彼を華麗にシカトするように歩を進めるユキに、アラカワはまるで人生の悲哀を知り尽くしたような顔で言った。
「いよいよ、最後の戦いですな」
待て待て待て待てー!
///
「おや、どうなさいましたか?」
新川さんはどこが間違いなのか分からない、という顔でこっちを見ている。
「これ冒頭のシーンですよね! いきなりラストバトルって早すぎますよねえ!」
「展開はスピーディーな方が燃えるかと思いまして」
ダメだこの人、と思いながら監督の方を向く。
「なるほど、それは確かに燃えますね!」
「こっちもダメだー!」
というか、ダメなのはこの状況全部、か。ははははは、………帰りたい。
///
「緊張しますか?」
「………別に」
アラカワの問いにそっけなく答えるユキ。
アラカワはユキの瞳を見つめながら言葉を続ける。
「それは、愛、という事なのですかな?」
「………別に」
あくまでそっけないユキ。
「ふふふ、愛というものはこの老いぼれには少々こたえるもののようですな」
「………そう」
アラカワの唐突かつまわりくどすぎるアプローチに対しあくまで自分を貫くユキ。素で気付いていない、という可能性のほうが大ではあるが。
あ、あと、老いぼれとか言っているがアラカワはあくまで現役男子高校生である。………なんか、そろそろフォローを入れるのも面倒くさくなってきたな。
とにかく、そんな二人の間を何とも言えない空気が、
「何とも言えないー、何とも言えないー」
………通り過ぎて行ったあと、
「おい、俺の熱演はスルーかよ」
………通り過ぎて、
「『空気』でーす、俺は『空気』でーす」
………通り、
「だから主役の周りをカメラを塞ぐように蠢きまくっても、誰にも何にも言われませんー」
………、
「く、う、き! く、う、き!」
………あひー!
///
「じゃあ古泉、これ縛り終わったんで、そこの川に沈めてきてくれないか、あひー!」
「はい、了解しました」
「んー! んんー!」
空気の言葉は聞こえんなあ、あひー!
ま、そんな感じで撮影再開だ、あひー!
///
「にゃっはっは、よく来たねっ! スペースゆきりんとその仲間達よ! あたしが悪の大総統、その名もツルヤサンっさ!」
………いきなり着物姿のラスボスが爆誕していた。
///
「はえーだろ! 何分で上映終わる気だよ!」
あまりの展開に逆に冷静にさせられつつも、敬語を忘れてつっこんでしまう程度にはパニクってしまう俺である。
「にょろー、そこは監督さんと編集さんの腕の見せ所ってやつじゃあないっかなー?」
「ふふふ、それはわたしへの挑戦ですね。よろしい、受けてたちましょう!」
「………あれ、何でだろう? 俺が苦労する未来しか想像できないや」
おそらく想像ではなく確定の類なのであろうそれを、今は考えないよう頭の四つ角に分散させつつ追いやりながら、撮影を続ける事にする。………戦わない、現実と。
///
「おはようございます、ユキさん」
普通の人ならば呆然とするしかない一方的に圧倒的な急展開に平然とついていくユキ達の前に、彼女等のクラスメイトである朝比奈ミクルが話しかけてきた。
ちなみに彼女の服はバニーガールである。………しかし、考えても無駄な事だとは思うのだが、もしラストバトルがなかったらこいつ等はこのまま登校するつもりだったんだろうか。
「実はわたしが悪の大幹部ワルワルミクルンだったんです」
そんな疑問を予想通り銀河系のどこかに置き去りにしつつ、ここで衝撃の新事実である。初見の人はもう何が何だか分からなくなっているだろうが、既に作ってる俺達にも分からなくなっているので安心して欲しい。あなたの脳は正常だ。
さて、こんな急展開にも程があるツッコミ放題な状況ではあるのだが、俺はもう早く終わって欲しいとしか思っていないので、サクッと全てを受け流し、場面を進める事にする。
「あきらめなさい、どうせユキさんはあたし達には敵わないのです!」
自信満々にポーズをとりながらユキを指差すミクル。うん、実にノリノリである。
「………何故?」
「それは」
チラチラとこちらを見てくるミクル。カメラが気になるのだろうか。
「それは、ユキさんがあたし達に作られた存在だから、なのです!」
「おー、そうだったんだっ! そりゃすごいねっ!」
………どうやら大総統も知らない超裏設定のようだった。
最後の戦い前だというのにマジグダグダのこの状況、果たしてユキとアラカワの、そして世界の、何よりこの無茶苦茶フィルムを編集しなきゃならんこの俺の、未来は一体どっちの方向なんだろうか! 続きたくない!
///
グイッと袖が引っ張られ、俺は近い未来、具体的には文化祭前二、三日ほどの自分の惨状を、締め切り前に原稿のデータが全部トんだ作家のように嘆いていた状態から強制復帰させられた。
引っ張られた方を見ると、江美里がまるで絵の具で塗り潰したかのように蒼白な顔で俺の袖を掴んでいた。
「おい、大丈夫か」
「ええ、大丈夫です。………わたしは大丈夫、ですか?」
いや、俺に聞かれてもなあ。つーか多分、疑問詞出る時点でちょっとヤバ目だと思うぞ。
みんなも心配しているのか、演技を止めてこっちを見ている。
「………ごめんなさい」
江美里は、誰に向けて言っているのかも何をさして言っているのかも分からない、そんな謝罪の言葉を口にして、
「ちょっと気分が優れないので、今日は帰りますね」
送っていこうとする俺を『一人で帰れますから』と制しながら、本当に一人で帰っていった。
「意気地なし」
江美里の姿が見えなくなってから、微風にすらかき消されそうなほど小さな声で、ボソリ、と長門がそう呟いた。どっちに向けた言葉なのかは分からない。
「なあ、何の事なんだ」
なんつーか、あの合宿から俺の知らないところで良くない何かが進んでいるような気がするんだが。
「それは、喜緑さんが自分であなたに伝えないといけない事、です」
『背中を押す事くらいならやりまくりですけどねー』と、のほほんと優しく、しかし反論を許さない、そんな口調で朝比奈さんが言う。
「まあ、あなたなら大丈夫だと僕達は信じていますけどね」
いつもの胡散臭さマックスな笑みで古泉が言う。
やれやれ、と溜息を一つ。
「ようするに、江美里がなんか言ってくるまで待ってろって事か?」
本当にやれやれだぞ。んなもん、朝に日が昇って夜に沈む事と同じくらいいつもの事だろうに。
「だから、あなたなら大丈夫、なんですよ」
………男がウィンクするな、キモい。
そして監督不在の元ではあるが、撮影は順調に迷走しながらも特に問題なく続けられる事になった。
………もしかしたら一番存在意義がないのは『古泉』でも『空気』でもなく、あの超ナンタラ監督なんじゃないだろうかね。
そろそろ支援しとくか。
///
撮影を終え、川原で膝を抱えて拗ねていた谷口を慰めて(おだてあげて、とも言う)から家路に着く。
みんなと別れ、一人帰る家路の途中で、
「にょろー、待つっさ!」
「えっと、あの、待つの? 待ってもらうの?」
進行方向に鶴屋さんが弁慶のごとく仁王立ちしていた。
隣には桃太郎に理由も聞かされず無理矢理従者にさせられた犬のような戸惑いを全身で表現している朝比奈さんがいる。………ようするに凄いキョドってるって事なんだが。
「なんですか、鶴屋さん、朝比奈さん」
「え、えっと、ごめんなさい。あたしも鶴屋さんに引っ張ってこられただけでよく分からないの」
朝比奈さんの予想通りの言葉を受けて、主犯格であろう鶴屋さんのほうを向く。
鶴屋さんは彼女にしては珍しく真夏の太陽を思わせる笑顔以外の表情を浮かべて言った。
「んー、どうしよっか迷ったんだけどねっ! やっぱりキミには一言断っておいたほーがいいかなって思ったんさ! ………何となくだけどねっ!」
と、言われましても俺にはこれっぽちも思い当たる節がないのですが、一体何に許可を出せばいいんでしょうかねえ?
彼女は笑顔0%の真面目フェイスを崩さないまま、俺に向かってこう言った。
「みくるを、あたしにください!」
「「えええー!」」
………とっても的外れで温帯を中心に分布する多年草っぽい爆弾発言に俺と朝比奈さんの爆発音のような叫び声が夕焼け空に放散していくのであった。
「いや、そんな人生踏み外しそうな許可を俺に求められても」
明らかに人違いというか、人選ミスである。早期退陣を求められる羽目になりますよ。
「そ、そうですよ。あ、いえ、確かにそう言われるのは嬉しいですけど」
………つっこむな、つっこむと泥沼だぞ、俺。
「ごめんよっ! でも、キミの他に筋を通すべき相手ってのが居なかったのさ! 多分だけどねっ!」
「いや、まあ「あたしは」
とりあえず『なあなあ方針』で誤魔化そうとした俺の言葉にかぶせるように、鶴屋さんははっきりと、自分の想いを宣言した。
「あたしは言ったよっ! みくるの居場所になるって、あたしはあたしの意志で、あの時そういったんだっ!」
「………鶴屋さん」
自分の発言には責任持たなきゃいけないって事だねっ、と表情を崩さずに続ける鶴屋さん。………どうやらマジのようである。
つーか、許可を求めているはずの俺を真っ先に置いてけぼりにして二人の世界に突入するのは、人としてどうかと思いますよ?
そんな経験上答えが出ない事が分かっている疑問は十二指腸あたりまで飲み込むとして、とりあえず鶴屋さんの言葉の意味を、目の前の二人の事を真面目に考えてみる。
あの夏合宿の間、江美里が告げた真実がショックだったのか、朝比奈さんは心ここにあらずといった感じで笑う事も泣く事もなく、ずっとボーとしていた。
そんな彼女がここまで立ち直ったのは、やっぱり鶴屋さんがそばにいてくれたおかげなのだろうと思う。
だったら、俺の答えは決まっている。
ただその前に確認はとっとかないと、一方通行の変愛ほど危ないものはないからな。
「朝比奈さんは、それでいいんですか?」
「あー、………ううー、………はい」
うん、通行可能、視界良好。まあ、何の問題もない、よな?
「じゃ、俺もオーケーですよ」
心の疑問詞を見せないようにそう告げた後、見えたのは真っ赤な顔で俯く朝比奈さんと満開の花を思わせる笑顔を浮かべる鶴屋さんだった。
『何で俺なのか』は最後まで分からなかったけど、二人が幸せそうならそれでいい。
―――うん、これは疑問詞なし、だな。
3.
「くそっ、何で俺が主役じゃないんだよ!」
翌日の放課後、クラスでの展示物『ふはははは、ゴミが人のようだくん1号』を作っている俺と江美里に、谷口がこんな勘違い発言とともに絡んできやがった。
ちなみに俺達のクラスはゴミのリサイクルをテーマとした真面目な展示会をするはずだったのだが、………もう展示物の名称からしてイロモノ感バリバリ状態である。
まあ、みんなで何かを作るという行為はそれなりに楽しいのか、誰もがそれなりの真剣さを持って制作に参加している。………もしかしたらうちのクラス自体イロモノ臭が強いってだけなのかもしれんがな。
「んなこたどうでもいいから、今からでも俺を主役にしろって。絶対に後悔はさせないからよ」
ある意味うらやましい性格をしているな、こいつ。まあ、絶対こうはなりたくない性格でもあるのだけれど。
「と、言われましても正直、あなたは主役というタイプではないと思うのですが」
「能力値低そうだしなあ。必殺技ってやつもないし」
とりあえずこういうやつには正面からバッサリと、切り捨て御免が一番である。
「ああん? よく見とけよ。これが俺の必殺技、『谷口パトラッシュ』だ!」
切り捨てられた谷口は、めげる事なく全世界のネロくんに土下座しに行かなきゃならんようなひどい名称を叫びながら、自分の近くにあった人型の何かに蹴りを入れる。
人型の何かは床に水平に吹っ飛んで教室の壁に激突、そのまま粉々になった。
「ははは、どうだ! 『谷口パトラッシュ』の威力は!」
「ああ、本当に見事に粉々ですね」
「………俺達の血と汗と涙の結晶がな」
「あ、あれ?」
ちなみに谷口が完膚なきまでに破壊したのは俺達が文化祭用に作っていた人型のゴミ『ふはははは、ゴミが人のようだくん1号』であり、
「………み、みんな。何でそんなA級戦犯を見るような目でクラスメイトを見るんだい?」
現在、教室は一気に冷凍庫要らずの氷点下状態である。
「さて、他人の振りをするか」
「ちょ、おい、見捨てる気かよ! この状態を何とかしていけよ!」
「完璧に自業自得だと思うのですが」
ああ、むしろクラスのみんなと一緒に氷点下の視線を向けなかっただけありがたいと思え。
「そこを何とか、お慈悲をー」
足元にすがりつく谷口。今の自分が雑魚キャラを全身で表現している事には、どうやら気付いていないようである。
………てかまあ、しゃーないか。見捨てても寝覚め悪いしな。
「よし、みんな。提案がある」
凍りついた視線が次々と俺に突き刺さる。みんな怒ってるよなあ、当然だろうけど。
「文化祭中には一号くんの代わりに谷口にここに立っていてもらう」
で、と言わんばかりの空気が流れる。とりあえずこの空気を何とかしよう。
「それで名前欄を『WAWAWA、人がゴミのようだくん一号』に変更すれば万事解決だ」
「それ、俺すげーイヤな奴じゃねえか!」
「む、そうか。じゃあ『WAWAWA、ゴミのような人だくん一号』ならどうだ」
「一気に底辺まで落とされてるよな、それ!」
注文の多い谷口だなあ。最期は猟犬にやられるのか?
「みんなはどうする?」
とりあえずある程度場の空気をユルユルにしてから、最終判断は他のクラスメイトに任せる事にする。
「丸投げする、とも言いますね」
………やかましい。
「そんなあなたが好きですよ」
………さんきゅー。
「ふふふ、ちょろいですね」
………ふぁっきゅー。
「別に名前を変更する必要なんてないんじゃないか」
「それは既に俺イコールゴミという数式が成り立っているって事ですかねえ!」
「じゃあ略して『ゴミ口くん一号』っていうのがいいと思うのね」
「じゃあの意味も略する必要性も分かんねーよ!」
さて、周囲はいつの間にかグダグダでまったり温かないつもの俺達のクラスである。
「ほら、谷口。言わなきゃならん事があるだろ」
このままでも別に喧嘩とかなく収まるだろうけれど、でもまあ、これだけは言わさんとな。
「ああ、その、みんな、………ゴメン」
結局、みんなで頑張って修復する事になった、………やれやれ。
///
谷口の馬鹿の尻拭いに時間を取られたため、帰る頃にはあたりがすっかり暗くなっていた。
男としては悲しい事に必要ないと確信出来てはいるのだが、俺は一応女性(つーか彼女)である江美里を家まで送ってから帰る事にした。
「うふふ、最近は送られオオカミというのが流行のようですね」
「いや、それすげー初耳だから! つーか俺食べられるほうかよ!」
「うふふ」
「否定しろよ、なあ!」
予定通りにいつも通りな、仲良くいたぶられる俺である、………はあ。
「あ!」
俺がため息をつくと同時に、江美里はタイムカプセルを埋めようと地面を掘っていたら犯罪臭満載の拳銃が出てきてしまったような声をあげつつ、その場に一瞬で足が縫い付けられたかのように急停止した。
彼女の視線の先に目をやる。そこに一組の、どう見てもカップルにしか見えない光陽園学院の二人組みがいた。
………つーか、うち一人は思いっきり顔見知りである。
カップル(推定)二人組みは痴話喧嘩ウェーブを全方向に放出しながら俺達の手前を歩いている。………あれはもう一種の天災かもしれんね。
「だから、遅くなったから送ってやるってだけだ。それ以上の意味は砂漠の中の砂粒一粒分くらいしかねーよ」
「一粒もあれば送りオオカミには十分じゃない! エロキョン!」
「あーもう、じゃあ一人で帰るのか?」
「そんなわけないでしょう。ちゃんと責任持って家まで送り届けなさいよ、バカキョン!」
「どうしろってんだよ、お前は、………やれやれ」
「まあ、だから………、ねえ、キョン。送ってくれるんならもう一つの方は許可してあげなくもないかもしれないわよって事も、その、あったりなかったり?」
「あー、お前の言っている事はよく分からんが、まあこう見えて俺は紳士的なほうだ。大丈夫、お前にゃ、一切、手をださねーよ」
「………」
「どうした?」
「あほんだらげー!」
「何でだー!」
ああ、青い春だなー、などとかなりどうでもいい事を思いながら、知り合い(?)のポニテ少女とどうみてもその恋人にしか見えない俺と同じあだ名の少年のやり取りを眺める。
「………あの」
そんな俺に江美里が話しかけてきた。
「ん、何だ?」
「………! ……、………」
「???」
江美里は餌をねだる雛鳥のように口を必死で動かして何かを言おうとしているのだが、どうやらそれが言葉として出てこないようだ。
「『彼女』はちゃんと『彼』を呼べるのに、何で、言えないのよう。わたし、こんなに………、こんなに………」
言いたい事が言えないっぽい状態のまま、それ以上言葉を発する事なく、うつむいたままの江美里。
いつの間にか俺達の周りには青い二人組みどころか、人っ子一人いなくなっていた。
二人っきりのはずなのに、
何故だか、『遠いな』と、
そう、感じた。
///
どこか危うげな雰囲気を展開している江美里にどう声をかけていいか分からず、けれど放って置くわけにもいかず、ただ『ふたりぼっち』を続ける事しか出来ない俺。
秒針がトラックを規則正しく何周かした後、江美里は飛び立つ事を決めた若鳥のような顔で、そんな俺を見上げてきた。
そして俺は、
「ねえ、fake star」
と、江美里に聞いた事のない自分の名称を呼ばれたので、
「おう、何だ」
と、当たり前のように返事をした。
………、
………………、
………………………あれ?
fake starって、………俺、なのか? いや、………俺、だ、よな。
聞き覚えのない、しかし自分のものであると確信出来る、そんな名称を聞かされ、脳内が疑問詞やら感嘆符やらで埋め尽くされる。
「う、あ」
声が聞こえ、それにつられるように視線を上げる。
飛び立つ事に失敗したのだろうか?
江美里の目から涙が、ポロポロと、地面に零れ落ちていた。
「ちょ、どうしたんだ!」
ごく自然に脳内の疑問詞や感嘆符をはじき飛ばしつつ、慌てて声をかける俺。
そして、その行動がどうやらスイッチ、しかも強ボタンだったようだ。
「違う! それが、違うんです!」
いきなりの、魂から搾り出されたかのような、絶叫にも近い、そんな声。
突然の事態に呆然とする俺を尻目に、彼女の叫びは続く。
「嬉しい、けどっ! わたしを見てくれるのは、嬉しいけど!」
そして嗚咽交じりのその声により、あまりにもあっさりと、残酷でどうしようもない、この世界の秘密が明かされた。
「それは、あなたがそう作られたからじゃないですかっ! あっちの『わたし』が、あなたをそう作ったからじゃないですかっ!」
意外と泣き虫な彼女の叫びは、俺の心臓に風穴を開けつつ、最近ググッと冷たさを増してきた秋の空に響き渡って、そのまま消えた。
4.
あるところに一つの世界があり、そしてその世界には神様のような力を持っている一人の『少女』がいた。
『少女』は続いていくつまらない日常というものに嫌気がさし、周囲の人が引くくらいの変な行動を取ったり、自分が面白いと思う人間を勝手に巻き込んで同好会のようなものを作ったりしていた。
そんなある日、ある些細な出来事をきっかけとして、彼女は自分の世界に絶望し、それを、自らの世界を創り替えようとした。
その騒動は『少女』が(自分でも気付いていなかったようではあるが)想いを寄せるある男性の手によって無事灰燼と帰したのではあるが、その時に彼女はこう願ってしまった。
この人と二人きりで、ずっと一緒にいられますように、と。
そして、一つの世界が、『俺達の世界』が、創られた。
自分の世界のコピー、ただしちょっとだけ彼女が思うような面白さをスパイスとして加えた、そんな世界を。
だが、ここで一つ、問題が生じた。
『少女』は、元の世界で彼女自身が作った同好会の存在を否定できなかったのである。
彼と二人きりでいたい。
でも、自分と彼がいないと同好会は作られない。
それが、『彼』以外の他者を求める行為が、『少女の成長』なのか『神様の退化』なのかは分からない。
ただ一つ確かなのは、この世界には最初から問題が、矛盾が、嘘があったという事である。
「その矛盾に、あっちの世界の『わたし』が目をつけました」
向こうの江美里はその状況を思念体とかいう自分の親玉に報告し、情報収集の目的でこの世界に潜り込んだ。
「といいますか、この世界では朝倉さんは死なずにすむと、無意識のうちにそう思っていたみたいですね。………結局はダメだったんですけれど」
そして江美里は持ち込んだ『長門有希』と『朝倉涼子』の情報因子のコピーを用いて二人を作り、サポート役を得た後、この世界での『少女』の位置に自分を置き、『彼』を思念体の協力の下で自分に都合のいいように作り上げた。
「でも、どうやらそれは彼女の逆鱗に触れる行為だったようです」
『少女』は無意識のうちに、『彼』が自分以外の存在に都合のいいように作られるのを感じ取り、………そしてそうしてしまった存在に、これまた無意識のうちに、神としての鉄槌を下したのだ。
「思念体は即座に元の世界に弾き飛ばされ、そしてわたしは、この世界の『わたし』とあっちの世界の『わたし』に分断されました」
それ以降、あっちの世界とは繋がる事が出来なくなり、この世界は独自のものとして存在するようになった、らしい。
「これが、この世界の全てです」
「………そうか」
何かを言おうとして、でも言いたい事も言うべき事も思いつかず、結局それだけを言った。
だってしょうがないだろう。いきなりこんな重い話を聞かされてとっさに気の利いたセリフが出てくるほどの人生経験なんて、一生かかっても積める自信なんてないぞ。
「同好会の名は、SOS団」
それでも、俺の都合なんて関係なく、彼女の話は続いていく。重さはどんどん積み重ねられていく。
「『少女』の位置についたのはわたし」
「『彼』の位置についたのは、あなた」
そして彼女は、
「あなたは、『わたし』が作りました。『『わたし』に都合のいい方向に考え、動くように』という設定で」
そう、自らを引き裂くような声で、最後の重りを俺に乗せた。
「ああ、そうか」
理解したところで重さがなくなるわけじゃないけれど、理解してしまった。
「ようするに、さっきの二人が本物で」
ポニテ少女と俺と同じ名の少年、あの二人が本物で、
「俺達は『偽者』なんだな」
答えはなかったが、江美里の沈黙は何より雄弁にそれを肯定していた。
「ねえ、fake star」
『偽者』の彼女からの呼びかけの言葉。
嘘の始まりである、俺だけが持つ固有名称。
「神様の逆鱗に触れ、接頭語も接尾語も冠詞も形容詞もなく、ただfake starと、『わたし』が適当につけた名前でしか他者に固有名称を呼ばれる事が許されていない、あなた」
その上に、積み重なっていく、嘘、虚構、幻影。
「『別の世界にいる存在』もしくは『この世界から消えていく存在』からしか、自分のちゃんとした名前を呼んでもらえない、この世界唯一のオリジナルであり、『彼』と認められていない『偽者』のあなた」
俺の上に積み重なっていく、積み重なっていた嘘の重みを、感じる。
「あなたは、本当のあなたは、わたしの事をどう思っているんですか?」
だから、そんなの、答えられるはずがない。
だって元の世界の、この世界にもう一人いるであろう本物の俺がこいつの事をどう思っているのかなんて、そんなの『偽者』の俺に分かるわけがないんだから。
俺の『答えられないという答え』を感じ取ったらしく、
「そ、ですか」
江美里は流れる涙を拭おうともせずに、俺から視線を外した。
「………ごめんなさい」
そんな今最も聞きたくない言葉を残して立ち去っていく彼女を、俺はただ見送る事しか出来なかった。
///
江美里がいなくなった後も、体中の運動神経が引き抜かれたかのように動く事が出来ず、ただその場に不恰好な石像のように立ち尽くす俺。
『『神様』は『偽者』を許さない』
頭の中に、いつかの誰かの言葉が蘇る。
『このまま続けても不幸になるだけよ』
がすっ、と近くにあった自販機を殴りつける。
「いてぇ」
八つ当たりプラス自爆のコンボ、最悪だ。
でも、その痛みだけが自分の存在を証明させてくれるような気がして、そう痛む事で自分が背負ってるものが軽くなるような気がして、俺はしばらく無言で自販機を殴り続けた。
………結局重みは消える事なく、ただ、それに痛みが加わっただけだった。
5.
何かを考えなきゃいけないけど、それが何なのかが分からない、という袋小路まっしぐらな状況で、頭の中はグチャグチャのドドメ色な状態で、でもじっとしてはいられなくて、ただ闇雲に、歩く。
気付くと、そこに希望を求めたのか単にいつもの習慣どおりに動いてしまったのかは分からないが、俺は部室の前に立っていた。
扉のわずかな隙間から光が漏れており、中からは誰かの話し声も聞こえてくる。
『偽者』という言葉に追い立てられるように、藁をも掴む感じでドアノブを握り、光に吸い寄せられる虫のようにフラフラと、俺はドアを開けた。
部室の中には江美里を除くSOS団の三人が、夜も遅いというのに集まっていた。
何故だろう? 会って何を話せばいいのか分からないというのに、ここに江美里がいない事が、寂しい。
そんな俺に三人が視線を向け、
「あ、こんびゃひゃひゃあ!」
いきなり、朝比奈さんに怪鳥の鳴き声にも似た奇怪極まりない挨拶を食らわされた。………もしかしたら、これが未来流なのだろうか?
「………いつもの事」
「そうですね」
まあ、未来流というより、これはもう朝比奈流ってやつなんだろうな。
「ひ、ひどいですよー。………じゃなくて、手、その手、血まみれじゃあないですか!」
言われてみて初めて気付いた。まあ、自販機素手で殴り続けていたらこうなるわなあ。あまり痛みを感じなかったのでたいした事ないと思っていたんだけど、………うわー、結構出てるな、これ。
「痛み感じないって、それ、神経まで傷ついてるかもじゃないですかー!」
「いや、ツバつけとけば治りますって、こんなの」
「駄目ですー! あなたには不死身なんていうオモシロ属性は付いてないんですからねー!」
ああ、オモシロ属性という自覚はあったんですね、少し安心しました。
………まあ、これも向こうの世界のあなたは持ってない属性なのかもしれませんが。
『あなたは、本当のあなたは、わたしの事をどう思っているんですか?』
江美里のセリフが脳内レコーダーで勝手に再生され、少しだけ勝手に落ち込む。
それを吹き飛ばそうと、学級崩壊を食い止めようとする若手教師のように努めて明るく話を切り替えた。
空元気も元気である事にかわりはない、………と、いいなあ。
「そういやみんな、こんな遅くになんで集まってるんだ?」
「わたしが呼んだ」
「………長門が?」
意外な人間が幹事を務めた会合のようだった。てかどうやって二人に連絡つけたんだ? 俺には電話の前で氷づけにされたマンモスのように無言を貫いているお前しか想像出来ないんだが。
「こうやって、袖を掴んで」
ふんふん。
「お願い、来て、お兄ちゃん」
「いやーん! お兄ちゃん、どこへだって逝っちゃいますよー!」
破壊力抜群の萌えっぷりだった。
「あたしの時は『お兄ちゃん』の部分が『お姉ちゃん』になってましたよ」
『それもアリですよねー』とよく分からない事を呟きながらクネクネと不気味に蠢く朝比奈さん。………正直、ちょっと怖いです。
「………僕にはメールで『部室に来て』の一文だけでしたけどね」
『ふふ、ふふふふふ』と乾いた笑い声をあげながら夜にたそがれる古泉。………正直、かなり不憫である。
///
とりあえず長門に手を治してもらいながら、集合をかけた理由を聞く。現実逃避と言われようが、今はとにかく何かをしていたい気分なんだ。
「先程、喜緑江美里が泣いていた」
………いや、その件から、逃げたいんだけどなあ。
逃避行ダッシュ早々の出会い頭での正面衝突に表情どころか全身が固まってしまう俺。
そんな俺をそのどこまでも深く黒い瞳で見上げるように見つめながら、長門は話を続けた。
「………聞いた?」
「何をだ」
「この世界の話」
心臓が鷲掴みにされるような感覚。
治った手はもう痛くないのに、それでも確かにある痛み。
ああ、そうか。こいつ等があの夏合宿の夜から隠してたのは、これ、か。
「………お前は、知っていたのか?」
確認にもならない、ただ発声しただけの意味しかない問いに、頷きという最小限の答えが返ってくる。
「じゃあ、どうして」
『もっと早く教えてくれなかったんだ』と俺が言う前に、長門からはっきりとした答えが返って来た。
「それは、あなたと、喜緑江美里の問題だから」
「んなわけないだろう! 世界だぞ、世界!」
「………違う」
そう、違う。それは分かっている。理解はしているつもりだ。
「違うって何が!」
それでも、自分でも分かる八つ当たりの詰問が口から勝手に飛び出してくる。
「上手く言語化出来ない。………責任はわたしにある」
すまなそうな無表情で、でも視線を俺から逸らさない長門。
『お前は悪くないよ』と言いたいのに何故かその言葉が出てこない俺。
上手く言語化出来てないのは俺の方だし、責任だって多分俺にあるのだろう。
だってのに、………あーもう、弱いな、俺。
「あたしは」
そんな風に互いに自己嫌悪に突入している長門と俺の間に割り込むように、朝比奈さんが言葉を挟んできた。
「あの夏合宿の夜、あたしはこの世界の真実と自分の正体について聞かされました」
『いきなり何を言っているんですか』と、また俺の意思に反して動こうとした口が、本当に切れそうなくらい真剣な、彼女の瞳に止められる。
「あたしは自分の事を未来人と思い込んでいる、ただ不死身なだけの少女みたいです」
ややこしい属性ですよね、と彼女は笑う。
笑いながら、続ける。
「だから、未来にいるはずのあたしの家族とか、友達とかは、みんながみんな、本当は存在しない『偽者』なんですよ」
そう、残酷な現実を告げる。
自分の信じていたものが全部砂上の楼閣に過ぎなかったと、それももう崩れてしまったと、そう、告げる。
そして、そんな残酷な世界の中でも救いがあると言わんばかりの笑みで、彼女は話を続けた。
「居場所をなくしたあたしは、この世界で、鶴屋さんに居場所を作ってもらいました」
それは、彼女が見つけた『光』の話。
「『あたしは、ここにいるよっ! 本物だよっ! んでんで、ほんもんのあたしがみくるの居場所になる。うん、決めた! みくるはあたしに帰ってくればいいのさっ!』って感じです。似てました?」
著作権侵害を訴えられてもネタもとの人が敗訴するほど似てない物まねを使いながら、自分の大事な『光』について話してくれた彼女は、俺にこんな問いを投げかけてきた。
「あたしの問題は、居場所をなくした事でした」
まっすぐに、まっすぐに。
「さて、あなたの問題は何ですか?」
「………」
考える。彼女の瞳に同調するよう、まっすぐに。
問題なら、たくさんある。
俺の存在の意味だとか、
世界の不安定性だとか、
これからの自分の在り方だとか、
でも、一番の問題は、
俺の居場所ってやつは、
「江美里が何を望んでいるか、わかんねーんだ」
結局、彼女に収束するのだ。
だから、まあ、俺の『光』は、江美里なのだろうな。
「なら、大丈夫、ですよ。おねーさんが保証します」
笑顔で、胸を張って、はっきりと言い切る朝比奈さん。なんだか最近、鶴屋さんに影響されているようだ。
それはいいんですが、一つだけつっこませてもらいますと、『何が大丈夫なのか』がまず分かんねーっすから。
「あなたは喜緑江美里の元に行くべき」
朝比奈さんの真似なのかささやかな胸を精一杯張ってそう俺に伝える長門、………うん、微笑ましい。
「この世界のわたしには、未来を知る機能はない。でも、あなたは、そうするべきだと、わたしは、そう思う。………それと、その微笑ましいものを見るような目は、何?」
………もろバレだった。さっきから俺、雑念入りまくりである。
まあそれはやっぱりそれとして、根拠なしのすすめに『はい、そうですか』ってのるのは、やっぱり、なあ。
「長門さん、それじゃ伝わりませんよ」
今度は古泉が口を挟んでくる。………つーか、居たのかお前。
「………さて、髪の毛を一本だけ頂けませんか」
「謹んでお断りさせていただきます」
ポケットから聞こえる一端をとがらせた金属の細い棒っぽい金属音がリアルに怖いっす。
「まあ、それは今後のお楽しみという事で」
今後の付き合い方を真剣に考えさせるような前ふりをかましつつ、古泉はいつもの底の読めない爽やかスマイルでこう言った。
「僕からは、一つだけ質問を。あなたは喜緑さんのところに、行きたいですか?」
ストン、と心に一本、何かが打ち込まれる感覚。
ああ、そういう事か。
凄くシンプルなその質問に、凄くシンプルだったはずの見失っていた答えが導かれた。
「行きたいに、決まってるだろ」
『偽者』だろうが『本物』だろうが、『俺』はただ、江美里のそばに居たい。
ああ、思い出した。
『このまま続けても不幸になるだけよ』
と、俺に言ったいつかの彼女は、
『それまで、喜緑さんをよろしくね』
そう、俺達を不器用に祝福していたじゃないか。
そして、そんな彼女を消した俺は、俺自身の意思で、あいつのそばにいると、そう、決めたんだった。
「そういやそれが、俺の答えだったな」
分相応にアホな事やってたり、分不相応な重い話くらわされたりですっかり忘れてたんだけどな。
「ははは、分かりましたよ。長門さん、喜緑さんは?」
「以前撮影した桜並木の下」
「はい、了解。では、校門で新川さんが車を用意していますので」
………こいつらに言いたい事はたくさんあった。
でも、その前に江美里に伝えなきゃいけない事があるから、
「すまん、ありがとう」
それだけ言って、俺は走り出した。
………いろいろ迷いはしたけれど、どうやら後悔だけはせずにすみそうである。
///
「いやー! 新川さん、前! 前ー!」
「男でしたらこの程度のスピードでお騒ぎになられませぬように」
「200キロオーバーを公道で出しといてこの程度って何だー!」
「本気で行くと普通に音速を超えてしまいますので」
「普通の車なんですよねえ、この車!」
「はい、と言いますか、………男なら惚れた女のとこにゃあ最速でつっぱしりゃあならんだろうが!」
「いいから前見ろ、前ー!」
………訂正、早速思い切り後悔する羽目になる俺であった。
6.
以前撮影で使った桜並木、そこで一本だけ満開な桜の下にあるベンチに、江美里が本当に世界で一人ぼっちになった人間のような雰囲気をかもし出しながら座っていた。
近づいてくる俺の姿を見かけて、ゆがみそうな顔を正そうと努力しているのがバレバレな表情で、彼女は俺にこう言った。
「今更、何をしに来たんですか」
そんな彼女に俺は、俺にしては珍しく、素直に出てきた言葉を告げた。
「………あひー!」
「って、大絶賛暴走中ですか!」
おっといかん。新川運転によってまた暴走しそうになってた。
とりあえず、落ち着くために『今日はいい天気ですね』ばりに無難な話題を振る。
「何変な力使ってんだよ」
「一本だけですよ」
「本数の問題じゃねえだろ」
「うーん、じゃあ開き直って日本中の桜を満開に」
「悪化したー!」
いつも通りの会話が普通に出来る。
それが、少し嬉しかった。
―――『それでいい』と、そう、思った。
余計な事を考える余裕は、新川さんの運転により吹き飛ばされている。………案外、それが彼の狙いだったのかもしれないな。
『ちょ、前、前! おばあちゃんにぶつかるー! 誰かおばあちゃんを助けてー!』
『執事なめんなー! とうっ、執事ジャンプ!』
『すげー! 車って飛べるんだー! すげー!』
『ちなみに、着地は運任せでございます』
『誰か俺を助けてー!』
………いや、ないな、うん。
ま、狙いはなかっただろうけど、結果オーライだったのであとでお礼でも言っておこうかね。
そんなどうでもいい回想を地平の彼方まで流しながら、深呼吸を、一つ。
「答えを、告げに来たんだ」
「………え?」
「『俺』が、お前をどう思っているのか、その答えをな」
「あ、あの………」
「俺は………んぐ」
江美里が俺の口を塞いでくる。………手で、だ。………残念ながら。
「あ、え、えと、その前に、ですね。わたしの答えを、聞いて、ください」
『あなたの答えがどちらであっても、伝えたいと思う』と、彼女はいつかそらした視線を、おどおどとではあるが、再び俺に向けながら、そう言った。
///
「この世界が始まったのは今から3年前、あっちの世界で『彼女』が力を持った時、からですね」
俺と同様に気を落ち着かせようとしたのか、深呼吸を一つした後で、ぽつぽつと江美里が話し始める。
「あっちの世界のわたしは世界中の情報を感知出来ましたし、未来の自分と同期する事で未来を知る事も出来る存在でした」
どちらも今のわたしには出来ない事なんですけどね、と言いながらちょっとだけ笑う。
「だから、わたしはこの世界が怖かったんです」
今年の初夏、向こうの世界で『少女』が世界を創り替えようとしたその日までしか未来が分からなかったし、その未来も変動する可能性があったから、と江美里は言う。
出会った頃のこいつの言動を思い出す。………いや、とても怖がっているようには見えなかったけどなあ。
「だって、『彼女』はあっちの世界でそう振舞っていたんですから、嘘でもそう振舞うしかないじゃないですか、………確かに、最近は結構それがわたしの『地』になってきた感はありますけれど」
明らかに成長方向間違えてるぞ、それ。
「いいんです。だって、あなたがいますから」
………俺か?
「はい、わたしがそう振舞う事が出来た理由。高校に入学してからは、あなたが側にいましたからね」
俺がした事といえば、お前の側でブツクサ文句言ってるだけだったような気がするんだが。
「ええ、でもあなたは、結局はわたしの味方をしてくれる人、わたしのそばに居てくれる人、そういう風に作られた人、ですからね」
本当に言葉通りであるという事実があったとしても、なんか改めてそう言われると照れるよな。
「『あなたがどんな人なのか』と、わたしはずっとそれを考えていました。『この怖さを消してください』と、わたしはずっとそう願っていました。そして、実際あなたがそばにいてくれるようになってから、世界は本当に楽しくなりました」
泣きそうな笑顔で、『楽しい』と彼女は言う。
「3年間あなたを思い、そしてこの半年ほどあなたを、想いました」
ポロリ、と笑顔の端から涙が零れ出した。しかし本当、泣き虫だよな、こいつ。
「わたしは、あなたの名前を呼べません。あなたを勝手に生み出して、勝手に放置して、勝手に巻き込んだ、そんな存在です。でも」
泣き虫の少女は『楽しい』と、笑いながら泣きつつ、
「大好きです、ごめんなさい」
そう、
「愛してます、ごめんなさい」
悲しい告白を行った。
あひー!とか悪化したー!とかきめぇww
///
さて、今度は俺の番なのだろうが、その前にこの泣き虫宇宙人を泣き止ませないとなあ。
とりあえずポスッ、と頭に手を置く。
「ふえ? あ、あの、うにー」
そのままぐしゃぐしゃとかき回すように撫でる。
「にゃー」
「楽しいぞ」
程よく猫化させたところで、俺の答えを返す。
「え?」
「作られた感情かもしれない。そうプログラミングされたからかもしれない」
泣こうが叫ぼうが、現実は変わらない。俺が『偽者』である事に変わりはない。
「でも、俺は、今楽しい。楽しくて、楽しいから、お前のそばにいたいと思う」
でも、それでも、『楽しい』と、そう思う現実もまた、変わらないのだ。
俺が『俺』である事にも、変わりはないのだ。
「俺は、作られた存在だ。名前だって変な英語名くらいしかない。でも」
告げる。
「大好きだぞ、ありがとう」
想いを込めて。
「愛してるぞ、ありがとう」
ジオラマの世界でのプログラムされた想いでも、俺達にとってそれが『真実』になるのなら、それでいい。つーかそれがいいんだ、と思う。
たとえ『偽者』の星だとしても、
光源を塞いだら消えてしまうような儚い『光』でも、
それでも、今、輝いている。
それだけは、きっと『真実』だろうからな。
「そう、………ですか」
「そうだよ」
江美里は黙って俺によりかかってくる。
ま、これが俺と江美里なのだろう。
俺達は、
違う世界の住人という関係なんかじゃなく、
製作者と制作物という関係なんかでもなく、
単なる恋人同士だった、と、
結局はそれだけの事なんだろうさ。
肩にもたれかかっている、世界創世に関わった宇宙人ではなく、俺の泣き虫な恋人の、その温もりを感じながらそんな事を考える俺であった。
(あ、そういえば)
『偽者』の温もりに『本物』の幸福を感じながら、気付いた事がある。
ちゃんと言葉に出して『好きだ』って言ったのは、これが初めてかもしれないな。
Epilogue.
「では、機関紙を作りましょう」
「………は?」
確実なるデジャブを感じさせる一言である。まあ、以前の同じ状況を年月日まで正確に言えるのをデジャブと言っていいのかどうかは知らんけどな。
もう11月も残りわずか、いろいろあったという言葉だけでは言い表せないこの秋も、いよいよラストスパートである。
文化祭のついでに起こったゴタゴタも、終わってしまえば昔の事のように思えるから不思議なものだ。
そんなゴタゴタの中で、俺と江美里の関係も一段階前に進んでもよさそうではあったのだが、
「機関誌というのは『ある団体や組織が、その主義・主張や活動の宣伝などのために発行する新聞、または雑誌』の事ですよ、勉強不足ですねえ」
「言葉の意味に疑問詞をつけたわけじゃねーよ! 作るに到った経緯が『は?』なんだよ!」
「むー、黙ってわたしについてくればいいんですよ」
「時代が古いわ!」
こんな感じで結局は、あんまり進んでないわけである。まあ、変わらない方がいい事だってあるのだろう、………負け惜しみじゃないやい。
「さあ、とりあえずみんな書きたいものを言っていって下さい。じゃ、朝比奈さんから」
「分かりました。じゃああたしはSOS戦隊ラブレンジャーを書きますね」
「ぬおおおおお!」
「ウニャアアア!」
床を転がりまわるバカップル。
つーか、こういうところは本当に少しだけでいいから変わりたくはあるのだが。
「で、長門は何を書くんだ?」
「………恋愛小説」
おや、珍しい。どんな話なんだ。タコもどきとバッタもどきが愛を育むとかいうカオス感あふれる話じゃないだろうな。
「秋に一本だけ満開になった桜の木の下で、僕らは愛を語り合った」
………おい、待てや。
「………何? これから感動的なセリフの応酬が」
「何となくなんだが、俺が聞いた事あるような話になりそうな気がするぞ」
しかもつい最近だ。具体的な年月日時分秒まで言ってやってもいいぞ。
「任せて」
「何をだよ」
「わたしは一言一句暗記しているから」
「って、やっぱ盗み聞きしてたんかい!」
「萌えた?」
「萎えた!」
そんな俺の叫びにあわせるように『どごあっ』という破壊音を立てつつ、新川さんがロッカーから飛び出してくる。
「なるほど! 機関紙といえば萌え! そして萌えといえば執事! ようするに、私の出番ですな!」
「あんたは脈絡なくどっから飛び出してきてんだ! そしてそのセリフの脈絡のなさは何だ!」
これまた俺の叫びにあわせるように、ズパーン、と音を立てて部室のドアが開き、鶴屋さんが顔を出す。
「じゃあ正面から、やっほほーい!」
「あ、いらっしゃい、鶴屋さん。今お茶入れますね」
「むー、なんかノリ悪いねっ! エビバリセイ、やっほほーい!」
「や、やっほほーい」
引きつった笑顔で返す朝比奈さん。
「………やっほほーい」
無表情に返す長門。
「やっほほーい、です」
最近みんなの前でも見せるようになってきた自然な笑顔を浮かべながら返す江美里。
「や「やっほほーい、ですな」
返そうとしたところで言葉をかぶせられる古泉と、ダンディズム全開のまま言葉をかぶす新川さん。
ああ、世界が『やっほほーい』に染まりかけている。
「にょろー、キミはしないのかいっ! やっほほーい!」
「しませんよ! というか鶴屋さん。あなたはいきなり登場してどこにみんなを連れて行く気ですか!」
「ははは、まあいいじゃないですか」
「何がだよ、古泉」
「………最初からいたのに今までセリフが『や』しかない存在もこの部屋にはいるんですよ」
「ああ、まあそんなキャラ付けなんじゃないか、お前」
「ははは。………すみません、ちょっと髪の毛を一本いただけますか?」
「正直、すまんかった」
右ポケットから飛び出している藁製の何かが不安をガシガシと掻き立てまくりだった。
そんな不安を煽り立てるかのように窓から谷口が入ってくる。………つーかここ、二階だよな。
「そして満を持して俺、登場」
「何だ馬鹿か」
とりあえず先制攻撃を食らわす。
「ひどっ! 一言がひどっ! ちょっとみんなも何とか言ってやってくれよ」
「あ、あのー、あんまり谷川くんにひどい事言っちゃダメですよー」
「谷口っス! 俺、谷口!」
朝比奈さんの天然攻撃。
「そうですよ、えっと、馬鹿川さん」
「悪化すんなー! つーかお前は同じクラスだろうが!」
江美里の偽天然攻撃。
そして息も絶え絶えな谷口に止めとばかりに突き刺さる三連撃。
「そもそも、………誰?」
「ふむ、同意見ですな」
「はっはっは、強く生きるにょろよ、名も知らぬキミよ」
「ちくしょー! グレてやるー!」
言いながら窓から飛び降りる谷口。丈夫だねー、あいつも。………つーか、
「古泉、お前あいつにキャラ食われてないか?」
「いやいや、問題ありませんよ」
そうか?
「彼の髪の毛ならもう手に入ってますからね」
不穏当極まりないセリフだったが全力でスルーさせてもらう事にする。………まあ、谷口なら大丈夫だろうしな、多分。
///
「楽しいですか?」
いつの間にか俺の隣に来ていた江美里が、俺にそう聞いてきた。
何とはなしに周囲を、自分が今存在している『世界』を、見る。
「にょろろんジャンプ!」
「ちょ、鶴屋さん。なんでいきなり飛び掛ってくるんですか!」
「うーん、『遅れてきた発情期?』」
「ふえー、何の前振りもなくあたしの貞操が大ピンチですよー! な、長門さん、助けてー!」
「………にょろろんジャンプ」
「はい大ピンチ、倍率ドンって、いやー!」
そう言いながらも満更でもなさそうな朝比奈さんであった。
「………新川さん。僕も『にょろろんジャンプ』とか言えればキャラが立つんでしょうか?」
「ふむ、失礼ですが、私には『後ろに手が回る』という結果しか想像出来ませんな。………と、言いますか」
「言いますか?」
「キャラは立つものじゃない、立たせるものなんだぜ!」
親指を立たせてそう断言する新川さん。あなたはキャラが立ちすぎです。
「でも、僕は………」
「受け入れられるかどうかというのは誰にも分かりません。最初は怖いのが当たり前だと存じます。しかし、それを乗り越えてこそ真のキャラ立ちと言えるのではないでしょうか」
その正しそうに聞こえるが明らかに間違えている言葉によって、火が灯されたかのように古泉の目が光り輝く。
そして古泉は、
「これが、僕のキャラだー!」
と、叫びながら藁人形に釘を打ち付けだした。
『うぎやーーー!!!』
遠くから谷口の断末魔の悲鳴が聞こえてくる。
何というかキャラが、その、立ったというか思い切り転んだような気がしてたまらないのだが、そう突っ込んだところで俺という名の屍が一つ増えるだけだろうからそっとしておいてやる事にしよう。………さらば谷口、お前の屍は越えていかない。
まあ、細かいところはとにかくとして、これが俺の『世界』である。
「楽しいですか?」
繰り返される質問に、
「決まってるだろ」
どっちなのかはあえて口にせず、ただ。そう答える。
「そうですか」
江美里もあえて聞き直す事なく、わいわい騒ぐみんなの姿を、眩しそうに微笑ましそうに、ただ、見ていた。
今、こいつは何を考えているのだろうか?
それを、何とはなしに、考える。
目の前の騒ぎにまざりたいとでも思っているのかもしれない。
それとも、いつでもまざれるから今はいいと思っているのかもしれない。
あるいは、いつか消えた『友人』の事を思っているのかもしれない。
まあどうであれその中に、比率1%以下でもいいから俺の事が入っているのなら、それだけで俺は『幸福』なのだ。
それだけで、続いていく俺の『世界』に、『不幸』は、ない。
「萌えますねー」
江美里が呟いたどうでもいい問いに、
「萌えますなー」
どうでもよさそうに返しながら、
俺は『こんな日が永遠に続けばいいな』と、ただ、願うのだった。
『終わりは必ず来るわ、それも近いうちに、ね』
―――忘れちゃいけない誰かの言葉を、心の片隅に押し込めながら。
272 :
52-265:2007/10/27(土) 22:06:17 ID:lG97okLV
以上です。
では、また。
乙
結局、全くのオリキャラだったのか。あだ名がキョンの。
『俺』の存在が明らかになって、ようやく真っ当な視線で読めるようになった。
取り敢えず読み飛ばしがちだった今までの分を読み直してくるかなーと。
いや、個人的な意見だけども。
ふむ、意外な展開だった。
コメディー+シリアスですか。なかなかよかったです
大筋として、予想通りに物語が落ちたので安心してる。
GJ
俺の今一番楽しみにしてるSSキター!
続き超期待してる、GJでした
このスレにいると、時々自分の忍耐を試されてる思いがするな。
>>279 同志よ、わざわざ書き込むな
スルー技能の習得を急げ
流れぶったぎって質問
エロパロ的にオリキャラや過去捏造ってどうよ。
>>281 オリキャラはさておき過去捏造は名作と呼ばれるSSでもしょっちゅうやっているだろ。
オンザだってそうだし。
ID:xWHuls6n
ID:RlO5zZ7U
ID:fBsFwybK
>>282 やっぱオリキャラは危ないのか……
オンザkwsk
>>285 やべー目から鼻水が
感動した。284じゃないが教えてくれてありがとう
う〜ん、そうか。
今詰まってる過去捏造もので時間軸が合わなくて、帳尻を合わせるためにオリキャラ出してみたんだけど、
ただでさえ過去捏造なのにくどいよな、と。
しかも喋りまくる。少しは黙って欲しい。
おお、オンザってこれの事か、d
来未割りは過去捏造では無いだろ。
このシリーズは普通に面白いんだし、そんなに反応しなくてもいいんじゃね?
言っちゃえば♀国木田もキョンの消失もほとんどオリキャラみたいなもんだったし。
>>281 上手くやらないと通常の3倍痛々しくなるんじゃね?
大概の人が見たいのはその作品のパロであって
オリジナルじゃないからさ
>>287 >来未割りは過去捏造では無いだろ。
ん、過去捏造ってのは原作では語られていない部分を勝手に捏造するという意味合いで捉えていたんだが。
『来未割り』はキョンとみくるが過去に戻って(以下ネタバレ自粛)、野球場で(自粛)な訳だから。
>>289 だよな、俺もそう思う。
しかも一歩間違ったら俺々設定になる悪感。
俺設定は……痛いよな?
様は諸悪の根源である時間軸を何とか出来ればいいんだが……
嗚呼、これがスランプか。
とりあえずみんな、ありがd
>>290 あれ、そうなのか?
来未は過去に戻るわけだけど、戻るのは現在のみくるとキョンだから、違うんじゃないかな。
俺はてっきりそのキャラの過去に纏わる話に限定して過去捏造って言うのかと思ってた。
他のSSみたいに、本流から分岐するんじゃなくて遡っていく話だから、人によっては拒否反応起こすのではと。
>>285のレス見て『少年オンザグラウンドゼロ』はじめて見たけど、いやー感動したわ
こういう斜術トリック的なやつ大好き
過去捏造とかオリキャラとかの話だけど
俺は二次創作自体が捏造といえば捏造だからそこまで気にしないけどなー
面白ければ、楽しめればよい。もちろん「涼宮ハルヒの〜」の題材、ルールの中でっていうのが前提だけど
極論すると、納得させる書き方すればOK。って側面もある。
もちろん、個人的なネガティブ要素が出てきた瞬間にアレルギー発症するケースもあるけどな。
カプ物とかはこういうケースありがちだが。
現に俺はあるSS読んでて、途中まで面白かったんだが、唐突に謎のカップリングが発生して読む気失せた。
いや、そりゃ面白ければ俺も良いと思うけど、何処までがエロパロ的にはアウトって線引きが知りたかったんだ。
曖昧で良いから。
くそ、カプ物は許容範囲外なのか。
みんなレスありがとう。おやすみ。
296 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 05:33:36 ID:lzvG49t1
普通のSSは未来捏造だが(原作者なら創造)。
過去捏造が駄目で、未来捏造は良いというのは何故ですか?
個人的には、過去捏造も未来捏造も原作から考えてほとんどの人が有り得ると思える範囲ならOKだと思う。
そーですね
まだ寝ぼけててうまくスルー出来ないから書き込んでしまうのだが
みんな「俺は気にしないが過剰に反応する人も居るから、ボコボコに叩かれても挫けるなよ」と言っている様に思うのだが…
ムキになって反論してる奴らも俺みたく寝ぼけてるのか?
まさしく。その通り。
「気がついた!
どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかしら!」
「何に気付いたんだ?」
「気に入らなければ無視すればいいのよ!」
「何を?」
「糞レスよ!」
あひー!
ウニャー!
ひっ、ひゃ〜い
ふんもっふ!
変なのが湧いてきているなww
つまりまだまだどんどん湧いてくる訳だな
>>273 オリキャラかなぁ?
たとえば元は生徒会長だったとか。
生徒会長も名前が出てきてないから普段は「キョン」、
で真の名前が「fake star」ということにしたとか。
喜緑だからな
生徒会長とくっ付かないとな
こうですか?わかりません!
多分キョンをベースにした疑似人格だと思われ。
んでキョン←喜緑←fakeという流れ。
ここまで来て今更会長とか言われても困る。
いや、あれは明らかに会長ではないw
てか
>>308気づいてなかったのか>fake=複製キョン
元々ギャグ路線だから、キャラが崩壊してるんだよな。
何だけどシリアスな要素も十二分にあるから素直にネタとして捉え辛い。
他の面々のキャラも危ないのに、複製キョンがオリキャラにしか見えないのも無理はないと思うよ。
面白いから別に良いんだけどね。
>>308 本文からすると、SOS団からハルヒを押しのけて、キョンを『改造』するのが目的だったところ、
ハルヒの抵抗(鉄槌)によりハルヒとキョンは光陽園の生徒として存在を続け、改造された存在が
「fake star」というキョンではないキョンという形に固定されてしまったって感じなんだけどな。
おそらく風采はキョンと別人で、心のありようについてを含め喜緑への「神罰」として存在させられている。
今のところ改造されたとおりの「fake star」であるかどうかは不明瞭だし、すべては続き待ち、といえそう。
思い切った切り口で攻めてるだけに、続きがあれば楽しみにしてます。GJ!
>>272
この世界でハルヒはキョンと二人きりになりたかった。
しかし、SOS団を捨てることもできなかった。
喜緑さんはその矛盾を突いてSOS団のハルヒになりかわり、SOS団のキョンを自分の都合のいいように作りあげたが、
ハルヒはそれを許さず、偽者のキョンは「fake ster」といういい加減な名前以外の固有名詞を失った。
こういうことじゃないの?
fakeはどちらかと言うと本人をリモデリングしたというより、データを元に一から作ったって感じだが。
オリジナルはハルヒが持ってるし、本当の貴方は〜云々言ってるし。
そして最後は世界が崩壊してキョンの夢おち、
現実世界ですれちがった喜緑さんを呼び止めて振り向いた瞬間でエンディングロール、と。
キョンについて:喜緑さんがキョンを基に自らの理想とするキョンを作ったが、ハルヒの能力により「fake star」と言う名称以外の固有名詞を失った。
喜緑さんについて:長い観測生活に嫌気がさしてこのような事を行った。オリキョンの事が好き(?)である。
こんな感じじゃないか?
偽キョンはオリキャラではあるが、性格などが殆どそっくりなので、あまりそう言う気がしない。
喜緑さんはハルヒポジションである為に性格を大きく変えているが定着した模様なので、ある意味オリキャラとしている。
ってことは元々喜緑はキョンが好きだったって事だろ?
そこが釈然としない。いつフラグを立てたんだ……
あんまりそっくりって感じもしないけど……
>>317 その辺は突っ込み所でもあるな。
SSの前提条件的な御都合主義とも言える。
まあこのSS作者とは全く関係ないところ、つまり読者の脳内のヤバげなところで、
キョンが無作為にフラグを立てまくる場面を想像するネタになるんだけどな。
基本的にギャグだからキャラ壊れてて、大事なシーンでも別キャラのように感じるのも同意。
320 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 03:12:32 ID:WuYZKZaA
名作絵本「100万回生きたねこ」をモチーフにしたSS無いのけ?
ないのでアル
キャラ板のほうの100万回生きたハルヒか?
投下します。
エロなし。小ネタ。3レス。
――――――――――――
そんな彼女の『さようなら』
――――――――――――
「情報連結解除、開始」
「そんな……」
長門有希の、自らの体を貫いている触手の影響を全く感じさせない平坦な言葉とともに崩壊を始めた周囲の景色を見て、朝倉涼子は驚愕の声を上げた。
「あなたはとても優秀」
有希の言葉を聞きながら、『彼女に褒められたのは初めてかな』などと詮無い事を思いつつ、涼子は自分の敗北を悟る。
「だからこの空間にプログラムを割り込ませるのに今までかかった。でももう終わり」
「……侵入する前に崩壊因子を仕込んでおいたのね。どうりで、あなたが弱すぎると思った。あらかじめ攻性情報を使い果たしていたわけね……」
彼女がそうやって今更な説明台詞を口にしている間も、彼女を含めたこの空間の崩壊はどんどん進んでいっている。
かくして『鍵』を壊そうとした『盗人』は巡回中だった『警備員』に見つかり、あえなく退治されてしまったのである。
(出来ると思ったんだけどなあ)
涼子が『彼』を殺そうとした理由は『急進派の命令で仕方なく』などという情状酌量を含むものではない。
それは、紛れもなく彼女の意思に基づいた行動であり、歯車でしかなかった彼女が、初めて自分の意思で起こした行為であった。
ただし、いや、だからこそ、その代償は大きいものだった。
歯が欠け装置から外れた歯車は、その装置を必要とする存在にとっては既にもうゴミでしかない。
だから、彼女はここで、完膚なきまでに完全に、消え去る事になるのだ。
(でも、出来なくてよかったなあ)
だというのに、涼子の胸に去来していたのは安堵に似たそんな感覚だった。
涼子が思い出しているのは、いつかの教室の隅、机にグタッと倒れこむようにしている『彼女』と、それを『しょうがないな』と言わんばかりの顔で見守る『彼』。
(壊れなくて、よかったなあ)
そう思える事、そう思えてしまう事。
おそらく、その甘さこそが彼女の本質であり、そしてそれ故、彼女はバックアップであったのだろう。
そんな残酷さと甘さという往々にして相反してしまう二つを組み合わせてしまった自分の性質を、人生にサヨナラホームランを食らった後で改めて見直し、
(あー、こりゃ失敗して当たり前だったかもね)
と、思った彼女は、
「あーあ、残念。しょせんわたしはバックアップだったかあ。膠着状態をどうにかするいいチャンスだと思ったのにな」
その言葉とともに、さっぱりと全てを諦めた。
そして彼女は最期に、情報統合思念体急進派インターフェイスとしての朝倉涼子ではなく、ただの『朝倉涼子』として、言葉を残す事にした。
どうしてそのような事をしようとしたのかは、彼女自身も分かっていなかったのではあるが。
(とはいえ、何を言ったものかしらねえ)
こんな時に言う台詞なんて涼子の持つデータにはない。当然であろう。彼女の操り主にとって、そんな台詞は必要ないものであるのだから。
どうしたもんかなー、と思いながら首を傾げようとしたところで涼子の視界に『彼』の姿が入り、
「わたしの負け。よかったね、延命できて」
何故かスルッとデータにはないはずの言葉が、彼女の口から飛び出してきた。
(あー、まあ、何も言わないよりはマシよね)
行き当たりばったりに、流れに任せる事を選択する彼女。………そのせいで自分が消える羽目になったという事には、本当に最期まで彼女は気付かなかった。
「でも気を付けてね。統合思念体は、この通り、一枚岩じゃない。相反する意識をいくつも持ってるの」
『あ、わたしもそんな感じだなあ』と、自分の事を考えた彼女は、
「ま、これは人間も同じだけど」
と、自分でも気付いていない、『望み』を含んだ言葉を口にした。
これもまた、最期まで彼女は気付かなかった事である。
既に胸の近くまで消滅している状態では、気付かなかった方が幸せだったのかもしれないが。
「いつかまた、わたしみたいな急進派が来るかもしれない。それか、長門さんの操り主が意見を変えるかもしれない」
いつも見ていた彼女にしか分からないくらいに微かではあるが、その言葉に対し表情を変える有希を見て、
(さて、歯が増えた歯車は、どんな風に装置を動かすのかしらね)
涼子はそう、ぼんやりと思いながら、
自分を消した彼女へ、当て付けと応援を込めて、
自分が消そうとした彼へ、祝福と嫌味を込めて、
「それまで、涼宮さんとお幸せに」
最期の言葉を口にしながら、満面の笑顔を浮かべた。
「じゃあね」
そして彼女は一握の砂となり、風に吹かれて消え去った。
それが彼女の『さようなら』であった。
///
「………会長、どうしてわたしの日記を勝手に読んでいるのでしょうか?」
わたしが生徒会室に戻ると会長がわたしのプライベートを読みふけっていました。フィッシュ! ………あ、いえ、何でもありませんよ。
「いや、というか生徒会日誌に何を書いているんだい、喜緑くん?」
「………」
じたばたしている釣られた魚に沈黙と言う血抜きを行います。
「あ、ええと、………ごめんなさい」
「分かって頂けたのでしたら、いいです」
ふう、ようやくまな板の上に乗りましたか。
「………えーと、私は生徒会長として生徒会室に置いてある生徒会日誌を読んだだけのはずなんだがなあ」
「あらあら、トラップに引っかかったんですから観念して頂かないと」
往生際が悪いですね。大人しく三枚におろされちゃってください。
「てかやっぱトラップかよ!」
「というわけで、今からちょっと付き合ってください」
「ふむ、華麗な流しっぷりだね、これは」
何とか誤魔化そうとしている彼に、少しだけ真面目な顔で、本気の言葉を伝えます。
「今日が、命日なんです」
だから、ちょっとでいいから一緒にいて欲しいと、思うんです。
9の冗談を混ぜないと、1の本気が伝えられない。………悪い癖だと分かってはいるんですけどねえ。
「………そうか」
溜息をつきながら立ち上がり、帰り支度を始める会長。
伝わらなかったんでしょうか? それとも伝わったけれど、ダメだったんでしょうか?
何故だか急に世界で一人ぼっちになったような気がして、少しだけ泣きそうになります。
会長は生徒会室のドアの所でそんなわたしを振り返り、言いました。
「何をしているんだ、喜緑くん。誘ったのだから行き先くらいは決めているのだろう?」
「………あ、はい、………はい!」
行き先を知らないと言いながらわたしをほっぽいて先に行く会長。
わたしは彼を追いかけながら、彼女の事を思います。
彼女のいた意味について、考えます。
結論は、いつも同じ。
すなわち、『そんな事を考える事自体が、意味のない事だ』、と。
それでも、です。
わたしが彼女の事を覚えているのなら、
あの日の夜、何もせずにただ自室から窓の外を眺めていた長門さんが、彼女の事を覚えているのなら、
それは、凄く素敵な事だと思うのです。
それだけで、そんな彼女の『さようなら』にも、意味があったと思うのです。
そう、わたしは、信じたいのです。
突き抜けるような青い空の下、わたしは『見守っていてくれるのだろうか?』などと非科学的な事を考えながらも、彼と並んで歩いていくのでした。
以上です。
では、また。
もしかして電気少女のひと?
喜緑さん…
>>317 サマーデイト(ryでも読んで妄想してみれば?
突然で申し訳ないが、どなたかハルヒがとてつもなく可愛く
感じられるSSをご存知の方はおられるか?
喜緑は会長が好きに決まってんじゃん
フラグ?知らねえよ
決まってるんだよ
だってオッペッピーしたいんだもん。
お主、俺がエクスカリバーをエクスキャリバーと本気で間違えたの知ってて言いおったな
>>334 私見だが、22-81なんかどうだろう。
ところで、今月発売のエースを読んで思ったんだが、消失Ver.でない奴にさせちゃいかんだろ、
あんな表情は、と大声で突っ込みたくなってしまった。
後で原作を読み返したら、確かに『迷うような表情』をしているとは書かれていたんだが、
何でかすごく違和感がぬぐえない。どうしたものか。
>>342 漫画版のことを真面目に絞殺するなんて珍しいな…
アレに出てくるキョンはキョンじゃないし、他の連中も勿論別人DEATH。
もし似ていたとしても、それは他人の空似です。
>>342 ばっかでー! こいつ漫画版信じてるよー!!
>>345 すっげー!こいつの書き込み時間が00秒だよー!!
そいつはお父さんだ。いつもちよがお世話になっています。
ここ数日でハルヒにはまったんだが、オンザとかスゲーな!
保管庫にもお邪魔します。
学生時代国語が得点源だったものでね、描写と表現には気を遣ってしまうのさ。
とりあえず、住民的に漫画版の評判がいまいちな傾向にあるのはわかった。
しかし、せっかく公式に妄想を具現化する権利を得ているのだから、次回のオリ展開は
是非がんばってもらいたいものだね。住民の創作意欲的に。
そういえば、何故ここの保管庫はwikiに移行しないんだろうな
と、ふとそう思った
だが作品読んでて誤字直せないのはね…
「小泉」とか書かれてたら一気に萎えるんだが。
355 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 19:17:45 ID:eqLrwwN2
>>354 小泉はハルヒSS書く上での最初のトラップだからなぁ……俺も小ネタで一度踏んだ。
まぁそれ以上に投下する度に色々踏んでるので保管庫見る度に穴を掘りたくなる。
「情報思念統合体」とか直してぇーw
元総理が出てくる自分は異常ですね。
>356
デフォ
>>354-356 安心しろ、角川も通った道だ。
つーか、原作で中編一本中まるまる誤字られたダンディ執事さんをお忘れではないか。
あれっていったい何だったんだろうか。
>>358 いや角川は今でもその道を歩いてるぞw
なんかワザとな気がしてきたが。
ハルヒが「例のアレ」に誤植される日も近いな
>>360 そうなったら角川の編集部にソレと圧縮送ってやるわ。
それを逆手にとって
誤植と思わせておきながら、「小泉」という新キャラを投入
小泉
朝日奈あたりは結構あるね
原作の方で谷口を谷川と誤植されたら軽いお祭りになりそうだな。
逆の表紙に谷口流の方がおいしいかもしれんが。
いくらなんでもそれはないか。
谷川作品用IME辞書とか作らないか?
ドコモ用がどっかにあったな。
誰かウィルコム用とかも作らないかね。
喜緑さんは変換に苦労するから困るw
小泉
朝日奈
長戸
浅倉
鶴谷
ハノレ匕
≠эソ
あたりを登録
涼みや
虚ン
あたりも
鈴宮
立花
代々木
とか
>>374 かぶるとは思うが、3番目ちょっと待て。
しかし、新刊が年内に出るのは完全に絶望の様相を呈してきたな。
ま、アニメ2期に合わせたいという商業的意識は仕方ないとは思うが、さすがにこうも露骨だとなあ。
これで「驚愕」が滑ったら笑うに笑えないぞ、多分。
一月に出るらしいとか月面で見たなそういえば。
12月、1月とゲームも出るし、話題だけはなんとかって感じか。
>>375 アニメじゃなくて単に谷川の筆が止まっただけだろ。
キャラが暴走して収集付かないから書き直してると以前のザ・スニーカーに書いてあった。
誰か学校を出よう!の春菜×佳由季がどこかにないか教えてくれないか…?
この前投下されたやつじゃなくて?
春奈×佳由季はないので自分で書かれるのがいいかと。
ハルヒ×由悠季、に見えた。
>>378 春菜はないなぁ……春奈ならあるかも知れんがw
やっぱ春奈が一番間違えて覚えられてるだろうな。
若菜が"菜"なだけに混同しやすい。
佳由季×真琴を希望。
>>381 ハルヒが無限力を発動させるビジョンが浮かんだ
高崎ハルヒ……ユキちゃん苦労しそうだな
ハルヒはね、キョンに惚れてるからマンコが濡れてんのよ、
でもこの絵からはそんな匂いがしないじゃない!
御大は自重して下さい。
ところで今日夢でハルヒのパーティに改造人間が加わる夢をみたんだが、さすがにないか?
>>389 その夢を展開してSSにしてしまえばいいじゃなーい
>>390 夢は改造人間の回想メインで父との別れで目が覚めちまったからな。
あれをどう展開させようか…。ともかくやってみるぜ!
オリキャラを出した上で話の整合性を取るのは難しいようです。
いっそ古泉一樹が改造人間にされて、ボードゲームが強くなったりするのはどうでしょう。
>>394 改造されても強化点がボードゲーム強くなるだけってwwwwww
でも、なんか逆に面白そうw
無駄な能力が向上かい?
ボードゲームが、ほんの少し強くなる。
字が綺麗になる。
男性からもてる。
朝いつもより五分前に起きれる。
改造人間か…
「神人の数は多いですね…でも大丈夫でしょう。今夜は僕と貴方でダブル●ですからね」
ってのが浮かんだ。
>>396 ●「機関の総力をあげて改造された新しい古泉一樹……そう、僕は新泉一樹となったのです」
能力が向上したのはいいが副作用にて…
女性に嫌われる。
少し馬鹿になる。
喋ると舌を噛む。
ちんこが小さくなる。
匂いがきつい。
髪が薄くなる。
デメリットがでかすぎるぞwww
>>401 「僕はそれでもあなたにゲームで勝ちたいのですよ…」
古泉は、真剣な顔をして俺との対戦に没頭している。しかし匂いはきついし、髪は薄くなっていて既に中年になっている。
だからといって俺が負けてやる筋合いはないからな。気の毒ではあるが
「ちょっと古泉くん!きもいし臭いの何とかしなさい!」
「ふぇぇ…禿ちゃびんでしゅう…」
「…ウザ…」
部室内の女性からは、気味悪がられている…俺ならもう死んでいるね。
でも、古泉の変わった姿を見ていると、少し可愛いと思えてきているのだ。この際内緒だが
確かに今までと違う。将棋の腕はかなり上がっているが、それでも俺に適わない。
「古泉!スマンが王手だ!そして詰んだぞ」
するといつもの0円スマイルが、10000円位値上げした顔を輝かせていたのだ。
「どうやら、またボクの負けらしいですね。ありがとうございます」
お互いの戦いの奮闘を讃えあい。お互い抱き合った
この日から俺と古泉は無二の親友になった。
いい話だなあ
こいずみいつきは かいぞうされた
HP(ホモパワー)が 801あがった!
ゲームのつよさが 3あがった
じの うつくしさが 1あがった
だんせいからの もてやすさが 225あがった
じょせいからの もてやすさが 225さがった
かみのけが 23232323ほんぬけた
においのつよさが 108あがった
かしこさが 28さがった
したの かみやすさが 6あがった
じゅもん ふもっふLV6 をおぼえた
まっがーれver.ふぉーく をおぼえた
キョン いのちだいじに
ハルヒ いのちだいじに
ユキ いのちだいじに
ミクル いのちだいじに
イツキ ガンガンいこうぜ
のいぢって読んでしまったorz
のいぢ大事に!いのち大事に近いようで遠いなwww
投下します
エロなし 2レス予定
連日騒いでいる日本シリーズのことをふと思い出し、
無性に部屋いっぱいにバランスボールを広げヨガを極めたいという衝動に駆られ、携帯とトンカチを三つほど握り締め家から飛び出した。
先ほど時計で時刻を確認したところ二時だったのだが、運悪く今は真夜中らしい。
二分の一での博打にはずれ、嘆くようにひざをつくと見せかけ前転し、おれは駆け出した。
目標は谷口の家、あいつならこの世界を救ってくれるだろう。
今日中にバランスボールを集めないと世界がどうなってしまうかもわからない事態に直面していることに加え、
おれの行動は邪魔なトンカチによって妨げられている。
考えるよりも早く二つのトンカチをお隣に投げ込み、再び駆け出した。
あいつの家まではかなりの距離があり、無駄な時間を省くため谷口に送るメールを一文100字以上で制作し、保存しておく。
なに、時間がある限り続けてやるさ。
途中、しゃぶしゃぶで満たされている人たちと仲良くなったので一緒に写メしておく。
もちろんこの写メをメールに添付する。これ常識。
谷口の家が見えてきたところで溜まりに溜まったメールを片っ端から送信していく。
家の前に着いたら間髪入れずに呼び鈴を連打連打、もちろん谷口の家電へのコールも忘れない。
そんな俺の視界を遮るように突然何かが降ってきた。
バランスボール
ふと見上げた窓には谷口が親指を立ててかっこつけている。
決まってるぜ、谷口。
そういう意図を込めてチョキで決めポーズをとる。満足げに引っ込んでいく谷口。
ありがとよ、この恩は忘れないぜ。
バランスボールのお返しにトンカチを谷口めがけて投げ込む。
谷口の部屋から幻想的とも思える秋の夜長にふさわしい音色が響き渡っている。
どこまでも演出家なやつだぜ。
やっと目的のバランスボールを手に入れるも絶対的に数が足らない。
ここから一番近くでどうにかなりそうな場所、あそこしかあるまい。
おれは一人バランスボールを駆使し、東中を目指す。
ところどころ寂しそうに建っている自販機を見つけては下をのぞくことは忘れない。
そして七つ目の自販機を確認し終わったところで古泉がバランスボールを三つ操って現れた。
こいつも狙っていたのか。
「おや、あなたもでしたか。奇遇ですね。ボクシングタイトルマッチの影響ですか?」
「おれは日本シリーズだ」
「それはまた新たな理由付けですね、メモしておかねば」
そう言いながらサインペンで地面に日本シリーズと書き出した。
おれは何も持っていなかったので月にボクシングと書きなぐって後で清書することにする。
「それよりそこをどけ、おれは東中に行かないといけないんだ」
「東中のバランスボールは涼宮さんのものです。あなたが手を出そうものなら世界がどうなってしまうか考えただけでも目頭が熱くなります」
「それじゃしょうがない、地元で集めるとするよ」
「お供します、ムエタイを学ぼうとする同士ですからね」
「ムエタイ、か……どうやらおまえは敵らしいな」
「おや……まさかこのような勘違いがあるとは。どうです? お互いのバランスボールを賭けてじゃんけんで決着というのは」
「ああいいぜ、短く最初はグー抜きでの一発勝負な」
「ええ、いいですよ」
お互い全身全霊を賭けての一発勝負
「「じゃんけん、ぽん」」
おれのチョキが古泉の目に炸裂した。のたうちまわる古泉から戦利品としてバランスボール三つをいただいた。
いい試合だったぜ。
どうにか四つまで増えたバランスボールを巧みに操る様はジャグリング選手権秋田代表は確定といったほどのものであろう。
だが、スペイン代表レベルには遠く及ばない気がしたような気がするのでジャグリングの道は閉ざされた。
そんな油断がおれの危機探知能力を著しく低下させていたのであろう。気が付けば目の前はコンクリート。
頭には激痛が走っていて何も考えられないことにしておく。
これは急進派の仕業に違いない。
ここのところおれを洗脳しようとちょくちょく攻めてくる。
二日前も夜中に右足が痛み出して突然起こされてしまった。
不屈の根性でどうにか撃退したがこうも油断しているときではどうしようもない。
だがこんなところで転がっているわけにはいかない。
おれはヨガを極めないといけないんだ。
それにここで諦めたら戦死していった猛者たちに失礼だろうがっ!
そう自分に言い聞かせバランスボールを操り帰路に着く。
長い道のりを乗り越え、我が家にたどり着いたところで妙な人影が目に付く。
「やぁ、奇遇ですね」
「おまえか」
さわやかな笑顔で古泉が現れた。再びバランスボールを1つだけ携えて。
「もう一度勝負していただきたくてですね、どうです? 再びシャンケンでも」
「あぁ、かまわないぞ。最初はグーでいいよな?」
「えぇもちろん。いきますよ」
その瞬間古泉のチョキがおれめがけて飛んできた。
が、たかが古泉程度の動き、秋田の星の前では止まって見える。
懐に潜り込み驚く古泉にチョキを見せつけながら華麗に鼻フック。
そのままお隣さんの家に放り込む。
リベンジはスペイン代表になったら受け付けてやる。
そう言い放ち、邪魔になった谷口ボールもお隣に放り込む。せめてもの情けだ。
どうにか家に帰ってくることが出来たおれは、
とりあえず疲れたし邪魔になったバランスボールを妹の部屋に押し込んで今日は寝ることにする。
次の不思議探索はおごりたくないな。
おやすみなさい
以上です
吹いたwwwwwwww乙wwwwww
腹筋壊れたwwwwwwwwww
GJ!wwwwwwwwwww
416 :
ボーゾック一の名無し野郎:2007/11/01(木) 22:41:08 ID:8uHebjZ+
いつになったら驚愕でるんだあーーーー
懐かしい匂いがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
俺の腹筋が崩壊したんだぜwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
GJ!
何がなんだか分からない。
だがそれがいい。
ちょwバランスボールwww
なんというカオスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
お隣さんカワイソスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
現人神じゃwwwwwwwwwwwwwwwwwww
現人神であらせられるぞwwwwwwwwwwwwwwwww
アナルに着たかと思った
えーと、どう見ても『校庭は、いつもにまして』の人だよな?
あいかわらず、ぶっ壊れていらっしゃるwwww
御所路(ごせろ)に通じていらっしゃる様子
喉いてぇwwwwwwwwwwwwwww
この板でしか読めない作品だからね。古泉www
何このカオスwwwwwwwwwwww
今更ながらにおもったんだが朝倉カウンセリング内での新婚夫婦プレイでの会話って
作者の小ネタだよな?
変態佐々木の妄想ネタも含めて全部書き起こしたら1スレぐらい埋まっちゃうんじゃないか?
何を今更
妹と喜緑さんはどちらが腹黒なんだろうか…
ハルヒ「えー、足で踏ん付けただけなのに勃っちゃったの?」
佐々木「大丈夫?痛くない?よしよし、良い子良い子」
ハルヒ「うわぁ・・・ビンビンじゃない、少しだけ、ほんの少しだけしてあげようかしら」
佐々木「あ、今すごく気持ち良さそうな顔したね」
ハルヒ「足でしごいたら喜んでるし・・・そんなに気持ちいいのかなぁ」
佐々木「ぼ、ぼくのおっぱい触りたいの?・・・少しだけなら」
ハルヒ「!」
ハルヒ「あ、あたしが許可するまでイッちゃダメなんだからね!」
佐々木「いいよ、イキたくなったら僕に言ってくれれば」
ハルヒ「ちょっと、もうイッちゃったの?」
佐々木「すごい・・・こんなふうにして出るのか・・・」
ハルヒ「気持ち良かった?ちょっとまって・・・すぐ拭き取るね」
佐々木「・・・今度は僕がお口で綺麗にしてあげようか」
続かない
>>432 人の数だけ答え(妄想ともいう)があるのさ。
個人的には、藤原が本当に偽悪趣味なのかどうかが気になるがな。
朝比奈裏切りフラグが「陰謀」で立ったからそれをもし使うときが来れば、連鎖的に明らかになるかもしれんが。
投下します。
エロなし。2レス。
悪質な鬱ものです。
――――――――――――――
気分はもうタンデミングダンディー
――――――――――――――
気分はもうタンデミングダンディー、
―――真っ赤な太陽目指すのさ。
満月にネジを巻いて三日月にした後で今が世界の危機だと気付き、とりあえず練馬区あたりを救おうと邪神を呼び出す事にした。
拍手をタンタカタンタとドナドナのリズムで打ち鳴らしながら町内を一周、一輪車でバック運転しつつ太陽を目指す。町から一歩でも出たらインドが滅びるのだが、一輪車なら問題ない。ブラボースマトラ島。
ふとアクロバティックな姿勢で横を見るとハルヒがピンポンダッシュしながら、軒先にテルテル坊主を逆さまに吊り下げながら、裸足スキップで町内を歩いていた。
そこで俺は気付いた!
『ピンポンダッシュ』でも『テルテル坊主』でも『裸足スキップ』でもなく、俺が今アクロバティックにあいつを見た事に意味があるのだ。
何と! あいつはどうやら俺を使って四国を救うつもりらしい。あまりのスケールの大きさに感動したのでとりあえず一輪車で轢いておく事にする、グリグリ。グリとグラって食べると美味しいのかな?
おお、知らない間に世界の中心、自分一人になった気がする、そんな深夜の夜明け前。
『寂しい』とか『楽しい』とか、自分の右手と会話しながら、あの太陽を目指すのさ。
言いながら指す、俺の指先に、逆さに吊られたテルテル坊主。
やり場のない怒りに我を忘れて、民家に向かって華麗なドリフトを決めつつもう一度ハルヒを轢いておいた、ガリガリ。アイスが食べたくなった。
気分はそうさタンデミングダンディー、
―――深夜の宵闇を走るのさ。
町内を3周したと俺が感じたところでやり方が間違っていた事に気付き、農協あたりに軽く絶望した。
俺は、はるかさっきのあの時、右側のペダルを踏み込まなければならなかったのだ!
このままでは世界が救われてしまい、邪神が呼び出せなくなってしまう。
駄目だ! 邪神が呼び出されなければ世界の危機じゃないか!
だがみんな心配するな。俺には心強いかもなあってフィーリングの仲間がいる。
そこでさっき朝比奈さんと長門が融合して古泉になった事を思い出して萎えた、バッドフィーリングだ。
そこで俺は気付いた!
『バッド』で気付いたのではない。『フィーリング』で気付いたわけでもない。『ッドフィ』という響きが俺にそれを気付かせたのだ。素晴らしきかな、カタカナ文化。
そうなのだ。
やはり、俺にはハルヒしかいないのだ。
そしてそのハルヒはさっき何故か道路の上で痙攣していたはずだ。
それを思い出した俺は、民家に飛び込み寝ていた大型犬の口を無理矢理開いて、その中にハルヒへのメッセージを残す事にした。
おお、はるひよ。ねむってしまうとはなさけない。
気分はいつもタンデミングダンディー、
―――犬に咬まれても心は錦。
犬に咬まれたのは軽症だったのだが、いきなり顔見知りの女性に殴られて俺は意識を失ってしまった。
殴られてもしもバカになってしまったら如何してくれるんだ! プンプン、………ところで、今って何時だろうな?
そう思い、確認ついでに損害請求を賠償するために裁判所を雇おうと目を覚ましたところで隣にハルヒがいる事に気付く。
そこで俺は気付いた!
が、今はどうでもいいのでスルーする。
とりあえず俺は大至急陪審員に立候補する必要があるのだ。駄目ならペットフードを作る人でもいい、その場合は至急だ。急ぐに至る、キミの町まで、高速道路を走るのさ。
………一輪車で。
どちらにせよ急がば回れな必要性があるので、まずは手ごろな民家のチャイムを鳴らし、選挙運動を開始する。
ピンポーン。 ………はい、どちらさまでしょうか?
ゲゲゲのゲッツ! と心の奥底からの自己主張。
気分はだけどタンデミングダンディー、
―――心の奥に封じた想い。
どうやらそのチャイムは異空間と繋がっていたらしい。
今、俺の周囲は一気に氷河期だ。凍りそうな体、凍りそうな心。ブルブルブー、マンモス!
そこで俺は気付いた!
『ブルブルブー、マンモス!』という台詞は俺にしては珍しく意味がない、………という事ではない。
草木も眠る都会の一角。11月のクリスマス。全てが凍りつき熱を失くす中で、一つだけ、いや、一人だけ、熱を発する存在があったのだ。
―――ハルヒだ。
なるほど、どうやら彼女こそが、俺の太陽だったらしい。
感動のあまり一輪車で彼女を轢く、ゴリゴリ。知ってるかい? ゴリラの先祖って、アレなんだぜ!
ついに動かなくなってしまった彼女だが、それでも熱は確かに発せられていた、マーベラス! そう、それがゴリラの先祖なのだ!
そして太陽に辿り着き、練馬区を救う事に成功した俺は、次に絶滅寸前のトキを救うために新たな星を目指すのであった。
あ、この一輪車、一人乗りだった。すまん、やっぱりヤンバルクイナを救う事にするよ。
そう決めて、最後にもう一度だけ彼女を轢いておく事にする、ギリギリ。そういや最近、妹の歯軋りがうるさくて眠れない。………もう一度だけ轢いておくか。
ターン、という間抜けな音とともにブラックアウトする視界を抜けて、心だけが一輪車に乗って夜の闇の中に漕ぎ出していった。
―――よかった。今度はちゃんと、前向きだ。余所見運転は事故の元だからな。
気分はそしてタンデミングダンディー、
―――冥王星まであと何メートル?
以上です。
では、また。
(・ω・)何か奥が深いのか何もないのかよくわからんな…
ん?なにやらデジャブを感じた…なんだろうな?
意味がわからんポエムって感じなんだがw
カオスwwwww
難解すぎる……わからんwww
444 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 14:45:52 ID:HKYya3qg
良いカオス具合だwwww
どこが鬱なのかがさっぱりわからねーw
鬱というよりカオスだな。麻薬患者の話の内容をそのまま文章にしたような。
どうせならもう少し間をあけてほしかったな
前のがインパクトありすぎたしw
449 :
54-435:2007/11/03(土) 19:40:02 ID:P4OEsiHE
投下します。
エロなし。2レス。
前にも言いましたが、かなり悪質な鬱ものです。
――――――――――――――――――――――
気分はもうタンデミングダンディー〜オルタナティブ〜
――――――――――――――――――――――
気分はもうタンデミングダンディー、
―――真っ赤な太陽目指すのさ。
ああ、太陽だ。
それが、涼宮ハルヒを初めて見た時、古泉一樹が思った事であった。
そしてその瞬間、彼の運命は決定したのだ。
すなわち、決して手に入らないものを、それでも守り続ける、という運命が。
さて、運命に殉じた生活といえば聞こえはいいが、現実とは厳しいものである。
『機関』の仕事は表に出て良いものではない。その全てが裏から裏、世界の闇、夜の世界へと葬り去られていく。
「そこはわたし達の仕事場です。あなたは目の前の神人を倒す事だけに集中しなさい」
『機関』内で彼が最も信頼する女性、森園生はこう言って一樹が夜の世界に入ろうとするのを拒み続けた。
それは、目の前の子供に対する、何も出来ない大人からの贖罪であったのだろうか?
どちらにせよ『現実』がそんな甘さを許すはずもなく、一樹もまた自らの手を汚す事になったのではあるが。
その時に一度だけ、園生は一樹に謝罪の言葉を告げ、一樹はそれを告げたことに対し初めて本気で彼女に怒った。
彼女の気持ちは彼女にしか分からない。だがまあ、それ以降、園生は一度も謝罪の言葉を口にしていない。………裏で行動はいろいろと起こしているようだが。
そんなわけで、一樹は夜とも朝とも付かない宵闇の世界を、彼女とともに『彼女』のために、走り続ける事になったのである。
気分はそうさタンデミングダンディー、
―――深夜の宵闇を走るのさ。
『そして今まで、走り続けてきたわけですか』と、最後の戦いを終えてから、一樹は今までの事を回想していた。
「………古泉」
「やあ、森さん」
何かをこらえるような無表情で一樹の方を見る園生は、はっきりと一樹に告げた。
「あなたは、ここまでですね」
そうだろうな、と一樹は思う。なんせ、内蔵がごっそり持っていかれていて、もう痛みどころか感覚すらない状態なのだ。
長門有希は消え、朝比奈みくるは帰還し、そして自分はおそらく死ぬ。
だがそれでも、『彼』と『彼女』は、どんな形であれ、残ったのだ。
それなら、周りから見てそれが悲劇であったとしても、一樹に後悔は、ない。
そうやって、自分の走り続けてきた道を振り返った一樹は、最期の最後でようやく、自らとともに走ってきた存在に目を向けた。
目の前の園生は謝罪の言葉を、後悔の涙を必死で堪えている。
それをさせているのは自分だと感じ、申し訳なく、ありがたく、思う。
森園生は笑わない。
それでも、だから、古泉一樹は笑う。
これが自分だから、と。
これが『彼女』の望んだ自分だから、と。
そして、これが彼女とともに在った自分なのだから、と。
意味なんてなかったとしても、自分の生きてきた道を、関わってきた人を否定するような真似だけはすまい、と。
気分はいつもタンデミングダンディー、
―――犬に咬まれても心は錦。
「最期に何か、言い残す事は?」
そんな一樹を誰よりも理解していたから、だから園生はそれだけを聞いた。
一樹は考える。
自分の事を。
―――何もない。
彼女等の事を。
―――もう伝えてある。
友人である『彼』の事を。
―――ありがとうございました。
太陽である『彼女』の事を。
―――あ、でも、最後に、
自分の目の前にいる彼女の事を。
―――願い事を、一つだけ。
最期に言いたい言葉、目の前の彼女に向けた言葉を思いついた一樹は、しかし、それとまったく別の言葉を、彼女に告げた。
「涼宮さん達を、よろしくお願いします」
それが彼女の生きる、自分の生きた、その意味になってくれれば、と、一樹は祈る。
結局、一番言いたかった台詞は、このまま持って行く事にしたようである。
気分はだけどタンデミングダンディー、
―――心の奥に封じた想い。
「分かりました」
軽く請け負う園生ではあるが、一樹の頼みはそんなに簡単なものではない。
『鍵』であった少年は度重なる情報負荷に精神を病み、『扉』であった彼女は力が消失したため『絵に描いた扉』となり、長門有希、朝比奈みくるといった事情を知りつつ手助けをしてくれそうな存在はもうこの世界、この時空には存在しない。
『機関』のフォローも『思念体』のバックアップも『未来人』の手助けもなく、力を失ったとはいえ世界から注目される存在である『彼』と『彼女』の面倒を見る。
それは、誰もが避けて通ろうとする、茨の道であるだろう。
それでも、園生は迷う事なく、告げる。
それが、一樹の生きた証になると、信じて、告げる
「フォローアップから最期の幕引きまで、『森園生』の名にかけて、お引き受けいたします」
その言葉を聞きながら、一樹はもう開く事がないであろう目を閉じた。
『最期の幕引き』という言葉とその時に見せられたベレッタが少し気になったが、それはもう、今の自分にはどうしようもない。
それに、『機関の彼女』ではなく、『森園生』が請け負ってくれるというのなら、一樹に疑う理由はない。
(結局、太陽には手が届かなかったなあ)
そう思い、それとは別の事を想いながら、一樹はこの世界での意識を手放した。
うすぼんやりと消えていく、最後の想いのひとかけら。
もしも生まれ変われるならば、次はどの星を目指そうか?
気分はそしてタンデミングダンディー、
―――冥王星まであと何メートル?
452 :
54-435:2007/11/03(土) 19:43:51 ID:P4OEsiHE
以上です。
意味が分からない人は前作を読み直してみる事を推奨しません。
それでは。
単体ならおkだけど続けて見ると訳わかんねえwww
気分はそして
途中送信or2
気分はそして〜のところ以外共通点ねえじゃんwww
ある意味鬱だな。
理解出来ない自分がw
むしろ理解したいと思わせないレベル
様は、ハルヒ←古泉→←森で、長門消失、朝比奈帰還、キョン発狂、古泉死亡でFA?
人知を超えた鬱展開乙wwwwwwwwwwww
いや、みんなが笑ってる中で
「なんだこの重さは」
とか思う自分は多分KY
>>460 空気読めてないけど、
作品読めてるからいいんじゃね?
誰がうまいこ(ry
463 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 00:46:46 ID:1ODERrI/
絵師を探すのは板違いです
465 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 00:48:54 ID:1ODERrI/
アヴリルのガールフレンドの歌詞のノリでハルヒを描いてくれる人いらっしゃらないでしょうか?
森さんキョン殺したな
ハルヒは壊れたキョンに牽かれ
キョンは森さんに撃たれて死んだ
確かに質が悪いな
森さんがキョンを殺すのは兎も角、
一輪車にひかれて死ぬハルヒってどうよ。
一輪車に見えたのはフジ〇レビの球体じゃね?
471 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 20:48:57 ID:lr8G6dCo
最近保存庫の中の作品を片っ端から読み漁ってたんだが、
ここのみんなのおすすめ作品とか教えてくれないか?
俺は31−566様の『二度目の選択』とか
結婚後の話とか好きなんだが
くるくる橘はガチ
ざっと思い出せるやつは、
セイクリッドカプリチオ
少年オンザグラウンドゼロ
電気少女は〜シリーズ
くるくる橘、サイクリッドカプリチオ(もうこれが驚愕でいいよ)、鶴屋さんといっしょ!
他には一番最初のみくるのやつとか
ほとんどエロしか読んでないけどな。エロなしで何かいいのがあったら教えてくれ。エロありで52スレまでなら読んだ
官能小説大戦だな
今なら言える
45-879の続きは出ないのだろうか
個人的に気になってしょうがない
あれは尖ったネタだったからなぁ
誰か本気で書いてくれないかな
『この世界いっぱいのさよなら』とか好き。
あと名前忘れたけど鶴屋さんの奴とか。
エロなら『一万年と二千年前から愛してる』とか、朝倉青鬼のやつか泣けた。
非単調ラブロマンスは微笑まない(あってるかわからん)が好きでしょうがない
『二涼辺三角関係』『北高を出よう!』『高速暴走三人乗りーズ』『ワンダリング五人』
今の気分で思いついたのはこのへん。
検索すんのめんどくさいからリンクはれよ
いい大人が・・・
長編なら『ループタイム』
短編なら『長門と古泉と雑談』
キャラごとにどの作品が好きかあげていっても面白いかもナ
あと変態佐々木シリーズもガチ
エポックメイキングと呼ぶに相応しい作品群だたw
『SOS団』
『校庭は、いつにもましてストライク』
『イノチ カケテト』
全部43
長門伝説と○天だな。
>>471 俺個人としては11-16氏の作品をお勧めしたい
>>479 微笑まない じゃなくて 微睡まない だな
微笑で思い出したが確かVIPに投下された大長編にそんな名前のあったよな
>>471 だけど、皆さんありがと
あげられた作品全部見てみるよ
>>483 10-724氏の作品は、完膚無きまでに宇宙人萌えにシフトさせてくれたんで好きだな。
未来人ネタとしては13-344氏、団長殿なら22-81氏のがベストかなあ。
団長殿ネタとしては、同棲中に妊娠させて結婚する事を決意し、その時まで待ってもらうために
過去にキョンがとばされる話も好きだったんだが、リンクが切れてて読めなくなっちゃったんだよね。
欲張りな人には34-693氏の話もおすすめかな。
基本純愛路線なのは、個人的趣味として見逃してください。
>>487 あれに触れるのはちょっと……
イノチ カケテトとセイクリッドカプリチオはガチ。
あとは校内放送、●●タイムシリーズ、涼宮ハルヒのパン工房くらいか。
『校庭は、いつにもましてストライク』
わけわかめです。
常識だろ…常識的に考えて…
セイクリッドカプリチオとくるくる橘って
ここの保管庫探してもないんだけど、
どこにある?
検索しろよ
もう何回このやり取りやってんだよ
50回はループしてるだろ
だが、それが(ry
消失の長門SSってあるもんかね?
超人長門はあんまり好きじゃないけど、消失の長門には不覚にもトキめいてしまった。
長門有希の暴走-消失が俺の中で公式消失長門視点モノ
長門がキョンの行動について色々考えてて面白い
>>476 今確認できないから教えてくれ。
どんな話だっけ?
>>494 くるくる橘46-424
セイクリッド49-587
>>500 長門がキョンにメモを渡す話。どうみてもエロゲです。
もう教えないからな。
ここのは『スレッド番号-レス番号』がタグみたいになってて便利だよね。
保管庫見てもないけどループタイムってどこにあるんですか?
ちゃんと探そうぜ。25-41。
>>483 長門と古泉と雑談はかなり好き
ラブもいいけど、ああいう普通に仲が良さそうな作品て読んでて楽しい
>>501 サンキュ。
今やっと確認できた。
すげー続きが気になるわwww
>>471 エロパロのSSではないが
『涼宮ハルヒの愛憎』が良かったよ。
愛憎・回想・孤独は三点セットでお奨めですね。
>>506 多分書き手は続きを書く気など無いんじゃなかろうか、と思ったのは俺だけ?
キョンがひたすら耳掃除するやつが萌えて仕方ないんだが・・・
イヤーズクラーンコンサルタントか?確かに!
それよりも涼宮ハルヒの演奏はまだなのか?
○イヤーズクリーンコンサルタント
×イヤーズクラーンコンサルタント
すまん修正。クラーンって何だよwww俺〜?
>>510 アレはいいものだ。
あと、犬がキョンの声で喋る奴とかが個人的にいいものだ。
38-694のジョジョネタとか、45-879の小ネタとかはアホすぎて個人的に好き
ここまで日常無しか…
もしかして俺は少数派?
印象が強いものから挙げてるだけだし、必ずしも少数派というわけではないかと
2つ続いている小ネタで2作目で最後古泉が神人に「お前は俺をおこらした」って言われてボコボコにされる作品ご存じありませんか?
妹ネタが好きだぜ?あのミヨキチが真っ赤になるのがよい!
>>518 『涼宮ハルヒの日常』のことではないかと。
今なら言える。
『ワンハングドグラウンドゼロ』も好きだが、
それよりも『「少女オンザグラウンドゼロ」ダイジェスト版』の方が好きだという俺はたぶん少数派。
作者様ごめんなさい。
妹と言えば黒妹な俺参上
『少年オンザ〜』はすでに原作の一部
『三人乗り〜』の「お・に・い・ちゃ・ん」の下りが最高
『イヤーズ〜』が激しく素敵
『二度目の選択』に号泣
『イノチ カケテト』はとても綺麗
『セイクリッドカプリチオ』が驚愕
『ループ』シリーズの長門が可愛すぎる
『SOS団』の『』の有無について
『最後の挨拶』の朝比奈さんを愛している
『パパは高校一年生』を読まねば始まらない
原作の一部wwwwwwww
『涼宮ハルヒの演奏』の続きが気になってしかたねえええええヽ(`Д´)ノ
>>522 お前がそう思うのはまったく勝手だがね。
「原作の一部」なんてのは両方の作者に失礼なだけだからやめとけや。
「素晴らしいパスティーシュ」くらいにしとけ。
526 :
54-435:2007/11/06(火) 02:06:01 ID:F3Szk6vJ
投下します。
エロなし。2レス。
意味なし。ただのシュールもの。
ウツナンテナイヨ。
――――――――――――――
気分はそうブレイバーレイディー
――――――――――――――
気分はそうブレイバーレイディー、
―――熱い魂燃やすのよ。
起きてすぐ斜め30度に曲がる側転を行いつつ窓を開けたあたしは、ベランダに立てていたトーテムポールとベランダに立っていた喜緑さんの間から日の光が差し込んでくるのを幻視した。
側転を37度にしておくか逆回転にしていたら喜緑さんは助かったのに………。
太陽の、光で彼女が溶けたから、今日の前日はナイフ記念日。
うん、これで喜緑さんも報われるわね。
そう思い、登校しようとしたあたしだが、トーテムポールの角度が気に入らないのでやっぱり今日は休む事にする。
そこであたしは気付いた!
実は今はまだ深夜のミッドナイトで、太陽の光と思っていたのはトーテムポールの目が光っていただけだったのだ!
しかもよく見ると、これはトーテムポールではなくチュパカブラではないか!
おのれチュッパー、喜緑さんの敵!
とりあえず江戸の敵はスリランカあたりの明日にでもとることにして、今日はデネブを目指して寝るわ、夜ってそういうものだしね。
気分はああブレイバーレイディー、
―――眠れぬ夜に決めた事。
どうにも眠れないので風船ガムで東京タワーを作る方法を模索していたら、炊飯ジャーに笑われたような気がしたので、シュレディンガーの条件反射で月に向かって真上にナイフを投げてみる。
落ちてきたナイフはあたしの右手を2倍にしてくれた。これでチョコレートで富士山を作る野望が1歩バク転したわね。
―――計算どおりよ、当然ね!
希望あふれる明日に向けて、さあ寝ましょうと思ったら布団が赤い液体でビチョビチョだった。これだと仰向けに寝る事が出来ないじゃない! ………うつ伏せなら寝れるけど。
―――計算違いよ、残念ね!
仕方ないので長門さんと将棋をしながら2番枠の桂馬に全財産をつぎ込んだ時、ノストラダムスの大予言が的中した事に気付いたので、試合をオセロに変更する事にした。
わたしが四隅を取ることが出来れば、予言ははずれ、3丁目の山田さんの円形脱毛症も治るのよ。
それは、世界と天秤にかけても、遜色ないほどブレイバー。
でも長門さんは強い。試合相手をキョンくんに代えてもいいのだけれど、それで治るのはアフリカの神楽さん宅のガスコンロだけだ。
それは、宇宙と天秤にかけても、お釣りがくるほどブレイバー。
『あら、だったら涼宮さんを刺激したらいいじゃない』と、気付いた今日がナイフ記念日。………喜緑さんも浮かばれないわね。
そんなこんなで決めて決定した決心を、即決して今発表します。
愛しのあなたの下駄箱へ、届けあたしのブレイバー。
気分はついにブレイバーレイディー、
―――振り向く事はできないの。
教室の扉を開けて、キョンくんっぽいキョンくんが入ってきたわ。
ようこそ、ここは通天閣、腐って終わって始まった、そんなあたしのマイセルフ。
―――あれ?
『腐って』という事はこの道はいつか来た道?
『終わって』という事はやっぱりわたしは正しかった?
『始まった』という事はそれでもわたしは間違った?
でもまあ夕日が差し込んできてる事だし、どうでもいい事よね。あたしはこう見えて過去を5分5分の確立でしか振り返らない女なの。これが朝日だったら絶望的だったけどね。
とりあえずキョンくんとの勝負はチェスにするわ。だって、それがあたしの生きる道なんだもの。
だから先攻後攻を決めるために、あたしはキョンくんを殺すわね。
あなたが死ねばわたしが先行、わたしが殺せばあなたが先行、我ながらブリリアントなローカルルールね。
あたしがナイフでキョンくんの腕を三枚におろし、キャンディーで人工衛星を作れるようにしようとした時、長門さんがあたしのナイフを素手で掴み取ったの。
凄く情熱的な求愛行動ね、涼子もう困っちゃう!
気分はいつもブレイバーレイディー、
―――犬に咬まれても心は錦。
長門さんの気持ちはとても嬉しい。
―――嬉しいから悲しいわ。
思わず北京原人を進化させてしまいそうよ。
―――進化したから退化するわ。
だけどあたしはブレイバー。
―――ブレイバーだから殺すわ。
その気持ちには応えられない!
―――応えられないから殺されるわ。
以上の三段論法による帰結法からあたしは長門さんの胸を貫き、長門さんはあたしを分解するのね。
仕方ないか、これが火星のゴミ捨て場に書かれてある法則だものね。
あーあ、結局あたしにはアヴァロンの八百屋さんをリストラから救い、トラリスにする事は出来なかったみたいね。これがバックアップの限界かしら。
世界各国へ左遷され、宇宙各銀河へと右遷されるあたしのカケラ達、全部集めると一つだけ願いが木彫りの熊に変化するわよ、人生と天然物の何かをかけて集めなさいね。
それでは世界中でシャボン玉を突付いて割っている同志達へ、最後に長文と見せかけた一言を。
「じゃあね」
気分は結局ブレイバーレイディー、
―――それでは皆さんマタアイマショウ。
529 :
54-435:2007/11/06(火) 02:09:34 ID:F3Szk6vJ
以上です。
それでは。
なんだこりゃw俺も困っちゃうぜ。なんかこのリズミカルなのがツボにくるものが…
毎度重いな…それでいてシュールなんだもんねぇ
全く面白さが感じられないのは私だけ?
わからん。
普段ああいうのを書いてると、こういう作風に走りたくなるもんなんだろうか?
校庭のアレとかもそうだが、俺はこういうあからさまなシュールレアリズムは評価しない。
>>532 俺もだ。
こういうシュール系を連発されても正直お腹いっぱい。
そしてなにより途中にある歌みたいな一文がどうにも受け付けんw
一見意味のない言葉の羅列に見えて比喩になっている、
あるいは何か作者の表現が隠されている、
それが読者になんとなく伝わってくる
とかなら『シュール』と呼んでもいいと思うんだけど、果たして
俺は好きだけど…
ちょっとグロ描写がきついな……
でも嫌いじゃないぜ!!
俺には単語の羅列的な感じがしてシュールにもカオスにも感じられねーな。
それにこの系統は薬味的に時たま見るのが良い物であんまり連発されても食傷。
>>535に同意
まぁイヤなら読まなければいいし、実際俺は流し読みさせて貰いました。
これ書いてる人は『校庭は〜』のと同じ人?なんか雰囲気違う気がしたんだけど…
『校庭は〜』は大好きなんだがなw
俺もシュール連発は正直おなかいっぱいだが
お薦めで50レス消費する流れよりはマシだわな
だな、おすすめとか。
全部読めよ
答える方も答える方だ。
校庭の人とは明らかに別人だろ。
あのシリーズの凄い所は、全くストーリーが無いのに何故かストーリー性を感じるところ。
カオスながらも文章としては破綻してないあたりが秀逸なんだよな。
単に支離滅裂なだけの、文になってない文を並べられても
面白みもなんにも無い。
>>544 いやいやいやいや、それはどうかと。
俺は
>>528の妙にポエミーなところは嫌だとは思うけど、校庭のアレと異なる物かと言われると、そうでもないとしか。
あっちは逆にストーリー性がほぼ皆無で、キョンと小泉がなんとなくだらけてるだけに見えるから、
そのカオスっぷりが面白く感じるんだと思うけど。
ただ、校庭の桜云々の下りで、なんとなくもの悲しいストーリー性を感じたのも確かだが。
結局、どんな意味を内包してても、カオスに分類される作品はごくたまにでいいってこと
私見だね
家元の優秀な点は最初にやったこと、乱発しないことの二点。
548 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 14:41:36 ID:L5h92pGP
校庭の人の作品には、うまく言えないんだが
「涼宮ハルヒの憂鬱」の本質に迫るパロディというか、そういう何かがある。
ほかの人の作品には、それがちょっと薄いような感じ。それだけじゃないか。
私見だね
ごめんageちまった
申し訳ナス
これはナーサリーライムの人じゃないかな。
後ストーリーがどうの言ってるけど、これも校庭もそういうのを主観においてない作品だから、ストーリー性を求めるのは筋違いだろ。
論点がずれてる。
俺は電気少女の人かと思ったが
校庭を改めて読み返してみた
……うん、全然さっぱりまるで理解できねぇw
でも何だか物凄く壮大なストーリー性を感じてならない。
単なるカオスの一言で片付けられぬ何かがありそうでやっぱりカオス。
電車の中で校庭を読んではいけない。大変な事になる。
orz
●<マッガーレ!
>>553 昼飯食いながらもヤバいぜ。
気管に入って死にかけた。
そしてまた学習せずに昼飯食いながらバランスボールの話を読んで(r
ネジ式を読んだことのあるやつだったら、なんとなく同じ雰囲気を感じ取れるんじゃないかと。
夢を見ると破綻したストーリーの流れになるやつとかあるじゃない。あんな感じ。
校庭は他の人の作品よりコントに近い感じがする。
作中に仕込まれるネタに波がある。
大きく笑いを取る山のところと、次の山まで軽く笑いを取って流す部分と。
他の人の作品はずっと平行線に近い感じがする。
何この校庭マンセーな流れw
まあ確かに校庭は面白いけど557みたいに他の人の作品と比べたりすんなよ……。
他の職人が投下しににくくなるだろ。
スマンかった…
まあシュールな作品は校庭も含め、たまにでいいってのは俺も同じだ。
連発はきつい。
校庭は面白いがそこまでマンセーされるほど面白くない。
読んだ後一頻り笑うが、もう一度読み返そうとまでは思わないから。
あと抽象的な解説はチラ裏にでもやってて下さい。
自分の感覚やフィーリングであんな感じだよね、とか言われても意味が分からないしつまらない。
自分の感覚のフィーリングって、具体的に言うとこんな感じだよね。
シュール作品は、いわば福神漬けだからな。
箸休めに食べるのは良いが、ルーやライスを駆逐するような分量があるのはだめ、
ってことだな。
福神漬けならいくらでも食べれちゃう俺への当てつけか?
らっきょうならいくらでもいける
じゃあ ばんごはんは べにしょうがー by眠り姫
カレーにはマヨネーズ一択だろうまろやかさ的に考えて
あれ?またスレが変な方向に行ってない?
チャーハンやピラフを思い出したのは俺だけなのだろうか
572 :
長門:2007/11/08(木) 01:54:38 ID:Q2t4mXP2
カレーと聞いて・・・飛んできた・・・。
なんでお前らはメシの話になると盛り上がるんだよw
本能に忠実なんです
つまり空腹って事です
涼宮ハルヒ32歳
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1194249633/ 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/11/05(月) 17:00:33.29 ID:RSRbVfELO
独身である
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/11/05(月) 17:05:31.62 ID:RSRbVfELO
髪はボサボサ
化粧もしない
服装も地味
素材の良さを全く生かしていないのである
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/11/05(月) 17:06:39.49 ID:BCgAgi340
ハルヒ「もう宇宙人も超能力者もいらない・・・男が欲しい・・・」」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/11/05(月) 17:12:25.33 ID:hu6P4kZmO
「最近セックスしてないなぁ…」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/11/05(月) 17:13:18.51 ID:S3RMVete0
ちょっと出かけたら
子供連れたキョンを向こう側の歩道で見かけたり?
チャーハンと焼き飯を書いた者だが福神漬けも書こうか?
お願いします。
歳を経るほどハルヒの能力が弱まっていくSSなら結構あるが
逆にどんどん凄まじいものになっていくSSはない?
>>578 最近だと「涼宮ハルヒの結婚生活」かな。
>>578 現状の「もしもボックス」で既に何でもありの最強だと言うのにこれ以上何をどう凄まじくするというんだ。
それともアレか、世界改変能力程度の力ではフラクラに勝てないと言うのか。
>>580 やっぱり、どんなにハルヒが暴れても、所詮キョンの手のひらの上でってことなんかねぇ
583 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 15:39:21 ID:zCAJ24fS
こっそり書き手だけどこうやってオススメを言い合う場で自分の作品の名前が出てると
小便漏らしそうなほど嬉しい
いや、だからなんだって訳じゃないんだけどね
>>583 その気持ちを編集長一直線!な感じに書いてみるというのはどうよ?w
583=キョンみたいな視線とかでさw
>>583 まぁそう焦って書き込まんでもよろしい
sageようぜ
>>580 確かにある意味最強だが、宇宙人がその気になれば分捕りもできそうな設定なんだよな。>ハルヒの能力
『消失』が可能性として妄想をかき立てるには十分すぎる素材なんだが。
ところでSSのために原作を断片的に追っているんだが、原作の長門って三点リーダを発言中に挟んでたっけ。
無言かやけに歯切れがいいかのどっちかのイメージがあるんだが。
キョンがモノローグで言いまくるだけで、長門のセリフ自体にはあまり使ってない気がする。
てかその読み方は本末転倒っぽくね?いや目的にはあってるのか。
588 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 06:37:33 ID:Rgt2/E4M
>>587 説明が不足していたな。原作そのものは全巻読んでいるんだ。
可能な限り原作の言い回しを生かしてみたいんだが、他人の創ったキャラをトレースするのはしんどいなあ、という話で。
一人称や二人称を間違えると、それだけで別人になる恐れがあるからな。
……原作でも意外と不安定で、推敲しろよといいたくなる部分があるけどさ。
初代についていえば投稿小説だからわざと原文ママだったのかもしれないけど、それ以降はまずいだろ。
「既定」と「規定」とかテクニカルタームは統一してくれんといまだにどっちが正しいのかよくわからんし。
特筆すべきは人名のミスだと思うが。
>>578 強すぎる力をコントロールできなければ自分自身を傷つけるから、地球が破壊されてバットエンドが想像できるな。
>>590 なるほど、風水師ということか。成功より失敗を恐れて使わせないことを前提で進むあたり、ぴったりだな。
この痛々しい流れはいつまで続くのか
変えたければ投下すればいいじゃない
遅レスすまん。
>>429 妄想語り部分の小ネタは基本的に自前ですが、その多くが書こうとしたけど力尽きたものです。
全部を書き上げるのは絶対無理なので、もしよかったら誰かが引き取って完成させてくれw
ということで空気を読まずに、没ネタをベースに大幅な加筆訂正を加えたバカエロ小ネタの投下いきます。
保管庫様に保存してもらっている48-154の一番下『朝倉涼子のカウンセリング(53-264)』の続きというか、妄想部分の拡大版です。
朝倉+α×キョンで、バカ中心の軽めなエロですが、前作を覗いてみて苦手な方はスルーヨロ。
11レス予定。
『委員長便女の性活』
突然だが、諸君は『委員長便女』という単語をご存知だろうか? なに、知らない?……ってまあ当然だ。
その存在に関する人権を含めた、ありとあらゆる権利を無理やり押し付けられた俺だって、ついさっきまで知らなかったわけだし、
何よりも、どこぞの急進的エロ娘によって作成されたばかりの新語だからな。
つまりこれは……いや、無駄に言葉を連ねるよりも実物の説明をした方が早い。
ということで、今、俺の隣にいる朝倉は、真っ赤な顔で俯きながら、短すぎるスカートが翻らないように両手で必死に抑えつつ、
照れと媚びと怨嗟が5:4:1くらいに入り混じった複雑な上目遣いで俺を睨んでいる。
とは言うものの、こいつの羞恥の主要因であるこの制服は、
2年5組の女子生徒にのみ適用される校則にのっとったものであり、俺が特別に強制したものではない。
もちろん、俺の偏った嗜好をど真ん中ストライクではあるが……。
改めて説明するまでもないかもしれないが、暴走した朝倉のトンチキな妄想に基づいて
賛成1棄権1の民主的な多数決で決められてしまったルールにより、
この淫夢世界における我が2年5組には、SOS団関係者を除く学校中の谷口ランキングAの美少女が集められ、
特進クラスの9組と同じような特別クラスとして扱われている。
裸エプロンの脇からB地区をチラ見せしつつ、朝勃ちを臈たけた上目遣いでねっとりと咥えながらの射精直前の強行採決は、
どう考えても民主的なプロセスとは言い難いが、とにかく我が北高には、めでたく『精液排泄専用被虐奴隷特別選抜クラス』、
通称『便女クラス』の設置が決定されちまったってわけだ。
なぜ中途半端な5組が特別クラスなのか?とか、俺が女子クラスに在籍するのはまずいんじゃないか?とか、
そもそも公立高校が性奴隷を養成してどうすんだ、等々のツッコミは『無駄なの』という一言によりすべて却下され、
俺の性欲処理だけを目的に選抜された精鋭美少女30人を相手に、俺は毎日、組んづ解れつで酒池肉林な肉弾戦を絶賛実行中である。
まぁこのバカ夢世界自体が俺に溜まったエラーとやらを獣性全開の性欲で処理する為に作られた情報制御空間らしいし、
何発砲撃しても一向に萎える気配のない愚息を宥めるには、これ位の思い切ったバカエロが必要なのかもしれんがな。
ということで、その人望と責任感はもとより、新学期最初のLHRで行われた『棒倒し』競争を圧倒的なタイムで制した朝倉は、
無効票一票を除く満場一致で、このバカエロクラスでも委員長に推挙され、めでたく『委員長便女』の称号を手に入れた。
俺はといえば、制限時間が一人5分とはいえ、30人が自己紹介を兼ねて得意技を持ち寄った結果……
最初の20分くらいまでは天国だった、とだけ言っておこう。
ちなみに、副委員長の座を獲得したのは、意外な伏兵、中学時代の同級生でもある岡本だった。
さすがに新体操部員だけあって、抜群のリズム感と身体能力の持ち主だったってことだな。
全身がバネで出来ているんじゃないかと思われるほど、しなやかに鍛え上げられたスリムな体を駆使した奔放でアクロバティックな腰振りは、
その癖っ毛を振り乱しつつ……ってナニ?岡本は女子高に進学したんだから、北高にいるわけないだろうって?
そいつはごもっともな指摘なんだが、主催者である朝倉曰く、定員を満たすためのやむにやまれぬ措置だそうで、
我がクラスには、当該の女子高以外にも坂下の光陽園学院や、なぜかはるばる埼玉の某高校からも幅広く猛者が招集されている。
ところで、このクラスのメンバーは『SOS団関係者を除く』谷口ランキングAを基準に集められた精鋭たちであり、
以前のバカ話で小耳に挟んだ情報によれば、アホの谷口は自分の成績の悪さを他人のせいに出来る相対評価の信者であったはずだ。
つまりあのアホウは、上位1割をA、2割をB、3割をC、残りの4割をDと規定し、同学年のみならず、各学年の厳密なランキングを作成した上で、
クラスごとのランク分布率、出身中学、学業成績、所属部活との相関、更には、いったいどこから入手したんだか知らんが、
彼氏の有無や確度の高い推定3サイズ等々の情報をかき集め、金融工学のアナリストも顔負けな分析を行って、
俺たちに傾向と対策を得意満面でレクチャーしていたはずだ。
その情熱と調査能力には感嘆を通り越して呆れ返ったもんだが、国木田に『で、その対策とやらは、いつ実行するんだい?』と指摘され、
彫像のごとく固まっていたあたりが谷口の谷口たる由縁だろう。いや、今はそんな事はどうでもいい。
つまり、約30人×9クラス×3学年=810人のうち、半分をランキング対象の女子としても、その1割は約40人であり、
どう考えたってクラスの定員を楽々満たせるはずなのだが、結果を見れば、我がバカエロクラスは定員割れによる外人部隊の大量招聘を余儀なくされている。
その点を指摘した途端、驚いた猫のような顔で俺をまじまじと見つめていた朝倉は、目を泳がせつつ下手くそな口笛を吹き始めた。
要するに、根が真面目すぎる堅物委員長が『SOS団関係者』を律儀に除外した結果、
他校に進学した中学の同級生達から羨ましがられる北校の異様な美少女率の高さの原因が明らかになっちまったってわけだ。
そういや谷口は、絶対評価なら俺たちの学年は、Aランクが3割を軽く超える大当たりの年だぜとか言ってたっけな。
知らぬが仏とは正にこのことで、古泉曰くの『何人ものエージェント』、長門の言うところの『けっこう』とは、
つまりこういう意味であり、いまの北高は各勢力の百鬼夜行が跳梁跋扈する人外魔境だったってわけだ。
それはともあれ、旧2年5組からは、阪中、成崎、由良、高遠といった面々が参加しており、
チート抜きのレベルの高さを再確認するとともに、俺の心の平安を保ってくれている。
特殊能力者に完全包囲されるは、SOS団だけで十分だからな。
さらに付け加えるならば、愛すべきハンドボールバカの岡部は紛れもない一般人にも関わらずあっさり無視されて、
担任は黒井ななこ(27)独身にすげ代わっただけでなく、なぜか昨年卒業されたENOZの皆さんが教育補助ボランティアに……
って色々とツッコミどころがありすぎてどうにも困るが、とりあえず登場作品が違うのは異世界人じゃないのか、オイ!?
……話を元に戻そう。
委員長便女こと朝倉涼子が顔を真っ赤にさせている原因は、その制服にある。
これは一見するところ一般性との制服とそんなに変わらないが、
俺の思考パターンを勝手に汲み取った朝倉によって制定された2年5組の女子生徒にのみ適用される校則にのっとり、
我がクラスの女子全員は、電車の吊革に掴まったらおヘソがちらりと見えてしまう短じかさの丈で、
サイズは1ランク小さめ、ウェストラインが分かりやすいように絞り込まれた夏服を着用している。
また、北高セーラーの秀逸なデザインは崩されていないものの、その襟元や袖口は限界ぎりぎりのレベルまで大きく開けられ、
あからさまに露出過多というか手を突っ込みやすいように改造された上に、積極的な前屈みや挙手が推奨されている。
さらには、本体部分の素材が急な短期出張で慌てて買った1500円のワイシャツを3回洗ったような布地で出来ており、
風俗店のチープな似非セーラーとは異なる実用的な頼り無さを醸し出している。
しかも、ブラジャーやキャミソールをはじめとしたインナー類の着用は禁止されている上に、『健康のため』に発汗を伴う運動が奨励されている。
何というべきか、突っ込みどころは数あれど、この日常の中の一瞬の非日常を煎じ詰めたような、
ごく自然な不自然さが、俺のニッチな嗜好性をブルズアイってわけだ。
さらに、スカート丈は『股下』10cm以内、下着は純白コットンまたはストライプのみ可。
ただしTバックに限り赤や黒といった煽情的な色調も認められ、挑発を目的とした場合はレースやシルクといった高級素材、
また、性癖次第でエナメルや本革等のテカり系素材を許可。
もちろん非着用または結び目付き麻縄一本を強く推奨する、といった馬鹿げた条項の数々が当たり前のようにまかり通っている。
違反者はその場でスカートごと没収、放課後職員室に取りに来い(エセ関西弁)って、黒井せんせー無茶じゃありませんか?
その上で『性活必需品』としての首輪や皮手錠、荒縄をはじめとする拘束具の着用が認可されており、
各種バイブやローター、アナルビーズ、乳首クリップ等の諸道具は、各学年ごとにスールに引き継がれ……ってこのネタはよそう。
要するに、これらを遵守するアホウ共がどういう格好をしているかというと、窮屈な上に頼りない素材とノーブラの相乗効果によって常時ポッチりつつも、
そのサイズに合わせて胸部がプルンプルンからたゆんたゆんまで幅広い擬音を発生させながら暴れまわり、
そのくせ隙間の多い各部からは、基本的にはきちんと隠されているにも関わらず、ちょっとした動作のたびに谷間だの腋だの臍だのがチラ見えするだけでなく、
直立不動でなければいつでもパンチラ、下手すりゃスヂチラまたは菊チラという気合の入った戦闘服になるわけだ。
ちなみに、学校指定のスクール水着は、ストッキングの着用を前提としたエアロビレオタードも真っ青な鋭角を誇る競泳用で、
必要以上に体にフィットしているくせに、当然のごとく内部のサポーター類の着用は厳禁。
色は水に濡れたら透ける白ではなく、敢えて濃紺を基調とした正統派をチョイスすることで俺のぶっカケ属性を見事にサルベージしている。
まぁ敢えて近い例を挙げるならば、GJ過ぎるぞアルターってか田中冬志(@08年3月)!!ってことだ。
しかしながら、体操着のブルマだけは古式ゆかしい正統派どノーマルな辺りが、誰の趣味だか知らないが、
同好の士以外には理解不能な世界観を形成していると言えよう。さあ素直に挙手しようぜブラザー。
さらにタチが悪いことに、朝倉によって再構成された精鋭部隊は、各種のガチMな性癖を『ほとんどブーストする必要がなかったわ』とされており、
基本的には本人の性格に一切の改変は加えてられていないために、羞恥心や常識や趣味嗜好といったものがきっちり残されている。
これがつまりどういう効果を生むかというと、我が2年5組の特別選抜痴女どもは、ただの爛れた淫乱肉便器の集団にはならず、
普通の県立高校の適度に乱れた規律の下で、ごく一般的な明るさと恥じらいを保ちつつ、スイッチが入ると徹底的に壊れるマゾ便女と化すわけだ。
……何を言っているのかわからないと思うが、俺も正直、何を言っているのか分からん。
ただ、AVだとか風俗だとか、そんなチャチなもんじゃ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗が掻き集められていると思ってくれ。
ちなみに校内における、このバカエロ選抜クラスに対する扱いは、特進の9組に対するものと同じく、
ある種の羨望をにじませた軽い疎外とでも言うべきか、中間期末の上位成績者発表は、特進は別枠でやれよ的なあの空気だ。
ということで、9組の連中が休み時間に小難しい本を読んでいても誰も気にしないのと同様に、
どこでナニをしようとも『まぁあいつらなら』という扱いでスルーされるために、俺の戦場は教室を飛び出して多岐にわたる。
例を挙げるならば、空き教室やトイレ、なんたら準備室、体育倉庫、校庭のど真ん中、廊下、階段、
果ては職員室から校長室の豪華応接用ソファーに至るまで。
それどころか、あくまで学業と同じ扱いを受けるために校外の課外活動も重視され、静寂が求められるはずの市立図書館や、
某所の単館系映画館にさえ甘い喘ぎ声が響き渡り、さてさて我が市内の性的モラルはいったいどこに行っちまったんだろうね?
というわけで、委員長便女の性活その1。
毎日昼休みには、教壇の上で奉仕実技の模範演技を行う。
月曜は口、火曜は胸、水曜は膣と来て、木曜は尻、金曜は手コキ髪コキの合わせ技で白濁まみれになりながら、
淫蕩な女神の微笑を浮かべつつ午後の授業を受ける。
週末にはどんな……って毎週末は俺と露出調教デートだったな。
性活その2。
ブルマの体操着はノーマルであるが、委員長だけは特例で上半身は裸がデフォ。
50m走で縦横無尽に揺れるまくる豊饒な朝倉乳の迫力は、2本目にクラウチングスタートで構えた委員長のブルマを思わず引き摺り下ろし、
そのままの体勢で結合してしまったくらいに強烈だったと言っておこう。
性活その3。
放課後はあらゆる部活に仮入部しつつ、そのあられもない姿を全校生徒に曝しながら俺にかしづくことが義務。
昨日はバスケ部でタンクトップに収まりきらない乳に頬を染めていたと思ったら、
今日は手芸部でスカート丈を更に短くする為にチクチクと縫い物をさせられ、
明日はラクロス部でフレアスカートをノーパンで着用させられるという具合。
もちろん野球部のバットグリップでオナりながら念入りに俺のバットを咥えさせられ、
そのすべてで派手に快楽失神をやらかした挙句、委員長は結局もう一回りを志願した。
何回イきたいんだろうな、こいつはよ。
と、まぁこういった調子で委員長便女を筆頭に、欲望がおもむくままに精鋭たちの肢体を有効活用しまくっている俺なのだが、
我がクラスの急進的バカエロ娘たちが、いつでも股を濡らしているかというと、そう簡単には首肯できないさまざまな理由が横たわっている。
もちろん朝倉をはじめとした便女クラスの面々の穴の所有権は俺にあり、精液排泄専用被虐奴隷の名の通り、いつでもどこでも自由に利用できるし、
学生が勉学を本分とするように、こやつらも俺に奉仕することを無上の喜びとしているわけだが、
各員には個性というか性癖があり、自由意志に基づきのびのび行動している為、
円光と違って体温つきダッチワイフを淡々と抱くような単純な性行為ではないわけだ。
例えば、性感帯にしても多種多様であり、乳を制服の上から揉み潰されただけで失神するホルスタインが、
そのメカニズムについてwikiを参照するかのごとく語ってくれるかと思えば、
俺の代わりに活発に突っ込みを入れてくれるツインテールが、たった10回のスパンキングでイく敏感な桃尻の持ち主であったことは新鮮な驚きであるし、
雌穴派と裏穴派が激しい駆け引きを繰り広げている横で、喉穴が一番気持ちいいと主張する少数派閥が、なぜかイタリアンな酢の名前を自称していたりもする。
さらには、膣内発射が一番人気なのは当然といえば当然であるが、直腸白濁洗浄から温泉浣腸のコンボこそが天国だと強硬に主張するソフト部員もいれば、
顔にスペルマをべちゃべちゃと注がれる陶酔感こそが一番であると言って憚らないフワフワ髪とポニテの眼鏡コンビもいるし、
口内射精からゴックンへの醍醐味が分かってこその大人の女だという意見はなかなか根強く、
母性本能を充足させるという点においては、パイズリ胸射に勝るものはないとする議論はそれなりの支持を得るのだが、
これはBカップを境に賛否が真っ二つに分かれ、貧乳のステータスを力説する一派がやや優勢な模様である。
ついでと言っちゃーなんだが、リード付きの首輪で引っ張られながら、床に撒き散らされた精液を舐めてお掃除させられるのが、
犬扱いされているようで堪らないのね、と涙ながらに主張する原理主義者も約1名だが存在することも付記しておこう
ちなみに、体位の嗜好性は最も議論の分かれるところであり、密着感が高く、大人のキスで愛してもらえる正常位こそが王道であるとする意見に異論は少ないが、
やはりケモノのように犯される後背位こそが、メスの本能的な喜びを最も刺激するという意見もまた根強く、
同じ後背位でも、四つん這いで蹂躙されたときに腰砕けでへたり込める満足感が一番であるとする一派と、
まるで立小便のような気軽さで犯される立ちバック惨めさが堪らないとする一派に分かれ、それぞれの主張に一定数の賛同が集まる。
もちろん、ご主人様への負担の少なさを考慮に入れれば、雌が上に乗る体位の習得は義務であるとする意見には全員が首肯するところであるが、
自らの技術を存分に生かせる騎乗位系を推すテクニシャン組の正論も、やはり正統派女性上位で密着感に陶酔したい甘えんぼ組の率直な意見に立ちふさがれ、
テクを披露した上で膣内発射をいただいた後にぴとっと覆いかぶさって甘えればいいではないかという折衷案は、
イき潰される確率を考えれば現実的ではないと却下される。
では、月見茶臼から炬燵かがりに移って、逆手からみ、仏壇返し、碁盤責めと来て、後櫓でまぐわるのがベストと言うことでいかがでしょうか?
って議論をまとめたつもりかもしれんが、四十八手なんてwikiにもそこまで詳しく出てないぞ?
ちょっと長くなりますがコホンって表裏合わせて九十六手を延々詠唱されても俺を筆頭にみんなの頭に???が浮かんでるし。
ちょっと先生!なに当たり前のように解説始めてるんですか!
いや待て!じゃあ今日中に全部試してみればいいんだってヴぁ!って無茶言うな!
ってこら、クールなふりして動揺しつつ、四十八手満貫全席とか板書するな!だいたいお前は書記じゃなくて保健委員だろ!?
おい、そこの腐女子!眼鏡光らせながらデッサンの準備するな!薔薇でも白夜でもないだろうが!
ちょい待て委員長!真っ赤になって俯きつつ、そのゴーフルの缶に入ったクジは随分多いが、まさか96枚あるんじゃないだろうな!?
……という具合に、我がクラスでは、たびたび開催される臨時LHRのたびに議論百出、
民主主義の原点とでも言うべき活発なディスカッションが展開されるわけだが、
毎回最後には、百聞は一見にしかずだから、実際に試そうという結論に至り、俺がげっそりと疲労困憊させられた挙句、
けっきょく幸せそうな顔で全員が轟沈することで、俺の努力の成果は空しく先送りされる。
えーと、このバカ夢って俺のストレスを解消する場じゃなかったのか?
ちなみにこれらの熱のこもったバカ会議は、喧々囂々とした刺々しい雰囲気で行われているわけではなく、
むしろ好きなことを好きなだけ言いたい放題に言える場として、約一名を除いて全員が喜んで参加しており、
その司会進行の腕こそが委員長としての朝倉の真骨頂と言えよう。
では、議長として自らの意見を封印している委員長便女がどのような派閥に属するかというと、
よく言えばオールマイティー、悪く言えば淫乱色情狂であり、
生真面目で急進的な委員長は、有機生命体の体液交換による進化の過程を日々熱心に勉強中ってわけだ。
ちなみに、アパートに戻れば喜緑さんの間違った蔵書に沿った裸エプロンの新妻でもある朝倉は、
二人で過ごせる時間が多いことから、学校では常に一歩引いて遠慮気味に俺に接してくる。
とはいえ、クラスメート達が次々に甘美な天国に旅立っていくのを、ただ指を咥えて見ているわけではなく、
むしろNTR属性を発動させながら、自らを慰めつつ、
ライバル達が全員轟沈したのを見届けてから登場するラスボス的存在と言うべきだろう。
もちろん、機関砲クラスの腰振りとドラムマガジンすら空になる連射で数々の淫魔達を撃破した俺は、
委員長を相手にする頃には、すでに気力体力精力のすべてのゲージがエンプティーに近いわけだが、
それでも尚、朝倉の媚びと期待と心配と遠慮を含んだ上目遣いは、俺の弾倉にガンシューティング並みの容易なリロードを促し、
気が付けば俺は、委員長便女の首根っこを掴んで無理やり机に押し付け、
ツンと突き出された艶尻を隠す役目すら果たしていないスカートを気分だけでも捲り上げて、
純白のコットンパンティを一気に足首まで下ろしてるってわけだ。
まぁ一応のお約束として、形だけの抵抗を示してみせるものの、十二分に濡れぼそった朝倉の女淫は、
雄を求めてパクパクと蠢きながら、熟れた人妻のような色気を醸し出す太ももに幾筋ものヨダレを垂らしている。
その浅ましさを咎めるように、愚息でニチャニチャと内腿をなぞれば、
机に両手をついて振り返る朝倉の瞳には、涙と共に許しを請うような不安げな光が溢れ、
その弱気ですがる様な委員長の表情を十分に堪能した俺は、片手で掴めそうなほどにきゅっと締まったウエストに手をかけ、
体ごと引き寄せるようにして一気に狭い胎内へ侵入するって寸法だ。
その試合場として、最も使用頻度の高い文芸部室は、暇人以外の利用者の少ない施設ではあるが、
当然のことながらコンピ研をはじめとするご近所さんからは、時折楽しげな声が響いてきたりもするわけで、
そのたびに真面目委員長の朝倉は背筋を凍らせ、せめて少しでも音が小さくなるようにと、自らの制服の袖に噛み付いて必死に喘ぎ声を抑えようとする。
しかしながら、そのいじらしい行動とは裏腹に、精液を糧とする淫魔のように奔放な雌穴は、
他人の声に反応してきゅんきゅんと締まりを強め、射精をねだるように蠕動しながら、ねっとりと絡みつく。
その正直すぎる体の反応にご褒美をあげるように深々と愚息を突き挿し、反動でタプンタプンと揺れる釣鐘型のEカップを揉み潰せば、
意地っ張りで我慢強い委員長様といえども、媚びを多量に含んだ甘美な苦痛の呻きを上げざるを得ず、
一度開いてしまった口から甘い嬌声が漏れ始めるのは時間の問題である。
やがて文芸部室には、腰が絡み合うパンパンというリズミカルな音と、一匹の雌と化した朝倉が奏でるアンアンという甲高い喘ぎ声が充満し、
その甘い媚声が熱したフライパンに垂らした水滴のごとく俺の理性を蒸発させることで、腰振りの速度を累乗的に加速させる。
長机に両手をついた真面目委員長の細い腰を掴んで立ちバックで犯す。
捲り上げられた水色のスカートから覗く眩しいくらいに白い下半身が、サーモンピンクの口を全開にして牡竿を溶かすように咥え込み、
直角に折られた上半身からぶら下がることでその存在感を増した美巨乳が、一突きごとに制服を突き破らんばかりに、たゆんたゆんと暴れまわっている。
そのあまりにも異質で淫らであるはずの情景は、このバカエロ世界では極めて当たり前な日常であり、
生殖行為としての敬意を払う必要性は全く考慮されず、朝の歯磨きと同じくらいに当たり前な行事として俺に膣内発射を誘発する。
生で胎内にドプドプと子種を仕込まれる朝倉は、俺の大臀筋が精液を送り出すために収縮するたびに軽い絶頂に達し、
愚息を子宮に引きずり込むような連続的な痙攣によって、俺の精巣に新たな援軍の増産を促がす。
そして、子宮から溢れた大量の精液を股間から滴らせつつ、へたり込む性処理便女委員長のあられもない姿は、
俺に更なる魔虐的な興奮をもたらし、壊れた人形のようにぐったりした朝倉を駅弁で抱え上げた俺は、
その媚尻に息づくセピア色の可憐な菊門に剛直を突き立てるってわけだ。
しえん
レイプ目で桃色天国に漂っていた委員長も、排泄器官を無理な体位でかき混ぜられる痛みと歪んだ興奮によって無理やりたたき起こされ、
甲高い喘ぎ声を響かせながら喘いでいたと思ったら、直後の甘美な昇天によって、これでもかと言わんばかりに括約筋を締め上げる。
宇宙的存在の愛娘を徹底的に堕とすという大役を終えた俺の愚息は、朝倉の全身から、くたっと力が抜けた瞬間に、
脳髄の奥底から溢れる狂った性欲を白濁としてぶちまけ、射精後の虚脱状態から我に返ったときには、
毎回、嬉しそうな笑顔でお掃除フェラをしつつ、わが子を見守る母親のような優しい光を宿した目ににっこりと微笑まれている。
ということで、淫獄レポート終わり。
まぁこうして俺は苦笑とともに、あと何回こんな行為を繰り返すんだろうと自問自答する性活を送っているってわけだ。
さてさて、このバカ夢は本当に終わりがあるのか?そもそもこのバカエロ世界は、俺のエラーとやらを解消させるために存在するのであって、
決して俺の股間にかしづきながらも、嬉しそうに微笑む委員長他29名の趣味じゃないんだよな?
という至極真っ当な疑念を抱きつつ、俺は今日も全身全霊の力を込めて腰を振っているのさ。
えーと、普通の射精じゃ有機情報爆発にはカウントできないから、もっと頑張ってねキョンくん!ってどういう意味ですか委員長?
やれやれ。
・・・・・・・・・・・・
\(^o^)/オワタ てか、人としてもうムリポ orz
吹いたwww相変わらず壊れていますね!
佐々ハルの3Pまだ〜ぁ?
>>594 MA☆JI☆KA
……あんた凄えよ。きっと人間じゃなくてエロの魔神か何かだよ。
>>606 むしろ人として\(^o^)/オワタ な希ガス。無論良い意味で
というか、らき☆すたから出張し過ぎ吹いたwwwww
>>606 この大馬鹿者めがwww新スレ初っ端から吹いたわwww
すまん他のスレと混同した
落ち着け俺
昨日、変態佐々木シリーズと朝倉のカウンセリングを初めて読んで
この作者は凄ぇ・・・と、ドン引きを通り越して畏敬の念すら抱いてたんだが
すぐに新作が読めるとはw
そして相変わらずのドン引き展開www
>>606あんたやっぱ凄いわwww
電波系エロスの神に愛された作者ktkr
もう
>>606の暴走は誰にも止められないことを心底実感したよwww
激しくGJなんだぜwらき☆
615 :
614:2007/11/10(土) 14:15:08 ID:yg8RlvCn
ぶwwwww「らき☆」ってなんだww
ここは谷川スレなのに
数少ない正統派ハルヒキャラである阪中の扱い方がこれでいいのか?
否っ!!
きっとこれからとんでもないことになってくれるはずだ
大いに期待して待機してますっ!!
今度はきょこたんか九曜でお願いしたい
>>606 GJ!
あんたに変態魔人の称号を与えたいぜwwwwww
じゃあ俺も、ぜひとも九曜でおねがいしたい。
このスレの校庭意識したやつだがなぁ
カタカナと!を多用しすぎなんだよなぁ
カタカナ自体面白みがあるけど多用されるとかなりくどくなるし
!の多用は厨が狙って書いたっぽくなるし…
少なくともシュールさはあまり感じられないな
この上ないチラ裏すまそ
宇宙人同士のレズや超能力者同士の○○も見たいな
藤原総受けと申したか
624 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 00:09:41 ID:8OC5K4SS
あっけにとられたハルヒの顔というのも初めて見るような気がする。だがその顔に次第に憐憫と怒りと呆れが
混じり始めた。何かを言いたそうに俺の顔をまじまじと見つめていたが、はあ、とため息をついた。
「アンタに期待したあたしがバカだったわ。アンタよりもこのぺらぺらの観光雑誌の方が、よっぽど役に立つ
って事ね。分かったわ。古泉君、こうなったらこっちで行くとこ決めましょ」
「分かりました。こちらに父の友人が関わっている観光施設が幾つかありますから、そこに連絡を取ってみま
しょうか。では、ちょっと失礼します」
古泉は携帯を取りだし、店の外へ出て行った。
「キョン」
ハルヒが小声で語りかけてきた。長門に聞かれたくないのかもしれんが、多分筒抜けだぞ。
ちらりと長門を見たが、何時の間に取り出したのか新書サイズの文庫本を読んでいるようだ。
……なんだ?俺もハルヒに合わせて小声で返事をする。
「アンタも、古泉君くらい気を配れとは言わないけど、もうちょっと考えなさいよ……」
あー、そうだな。悪かった。お前らが来るって認識はあったが、そのあとのこと何にも考えていなかったのは
事実だ、スマン。古泉にも後で礼を言っとくから。
「全くよ……」
「お待たせしました。何とかなりそうです」
いつもの0円スマイルを顔に貼り付けた古泉が戻ってきた。開いていた観光雑誌をめくりながら指さす。
「今日の夜はこのホテル、明日はこちらの温泉宿へ宿泊することにしました。ただし、明後日は駅への移動
時間のこともありますので、市内のホテル──ああ、コレは当初予定していたところです──に泊まります」
古泉が指さした観光雑誌のページには、今日宿泊予定らしい立派なホテルが写っていた。海の幸満開の豪勢な
食事が売りらしい。明日宿泊予定のところは、写真を見る限り鄙びた温泉宿で食事は質素だが温泉はかなりの
ものだと記載されている。
「ああ、それで移動手段も父の友人が手配してくれました。1時間ほどでこちらに来るそうです」
「あ、そうなの?凄いわね、古泉君!貴方のお父様のご友人とやらにも礼を言っといて!」
盛り上がっているハルヒと恐縮する古泉……『機関』の方々、お察しします。本当にお疲れ様です……思わず
心の中で合掌してしまう俺。そして、俺の向かいの席からぶつぶつ独り言が聞こえる。
すいません、624は誤爆です。
>606
長門から朝倉に乗り換えマスタ。
朝倉が可愛すぎる。
変態佐々木シリーズ内での朝倉の活躍も楽しみにします。
何処スレ?
VIPでしょ
>>628 前スレでも誤爆してしまった人のだな。結構な長編な上超展開の話だから、断片だけだとびっくりすること請け合い。
前スレの誤爆分だと、なんちゃって破局オチにしか見えないしな。
>>606 ほぼ状況説明だけでこれだけ濃いネタを出してくるとは、やはり恐るべし。GJ!
630 :
54-435:2007/11/11(日) 11:11:50 ID:QQ+MnLLE
投下します。
エロなし。5レス。
やや鬱ものです。
――――――――――――――――――――
気分はそうブレイバーレイディー〜リグレット〜
――――――――――――――――――――
1.
ずっと記憶領域から消えない、そんな風景が、わたしにはあります。
この星の言葉では、そのように記憶の底にいつまでも残り、その人が何らかの形でこだわり続ける事になる幼少期の風景を原体験、あるいは原風景と呼ぶようですね。
あ、はい、そうですね。確かにわたしはインターフェイスですので、幼少期というものはありませんよ。
ですがそれでも、消そうとしても消えずに残っているのですから、やはり『それ』がわたしの『原風景』なのだと思うんです。
―――わたしは、そう、思うんです。
///
それは、夕焼けが悲しいほど赤く感じられた、そんなある日の話になります。
夕飯の買い物を終え家路についていたわたし達の目の前に、『ヒカリ』がふわふわと漂いながら近づいてきました。
「あ、シャボン玉ね。ほら、喜緑さん、あそこ」
朝倉さんが指差す方向を見ますと、わたし達から近くと遠くのちょうど中間くらいの位置で、子供達が楽しそうにそれら『ヒカリ』を大量生産していました。
「楽しそうね」
そうですね。何でしたら、シャボン玉セットでも買って帰りますか?
「別にいいわよ。何か、あたし達が『作り出す』っていうのは、こう、………変な気分にさせられるのよね」
………そんなものなんですか?
「そうよ。だって、ほら………」
思い出される、いつかの風景。
ゆらゆら漂うシャボン玉、つついてパチンと割った彼女は、
『まるであたし達みたいじゃない』と、
そんな台詞を告げながら、綺麗に笑ったのでした。
///
『それ』が多分、わたしの『原風景』で、
そして、それを綺麗だと思ったわたしは、今、割れそうな、割られそうな、彼女を見て………、
///
気分はそうブレイバーレイディー、
―――熱い魂燃やすのよ。
2.
この世界に生み出されてから3年目の春、一緒に暮らしてきた同型のインターフェイス『朝倉涼子』が、壊れました。
表面上は普通に見えると思います。学校でも特に問題は起こさず、クラス内に溶け込んだ状態で過ごせているようですしね。
でも、それは応急処置としての全自動行動がそう見せているだけであり、彼女の思考ルーチンはもはや回復不能なレベルまで壊れているのです。………『表面が正常に見えるだけで、中身はもう』ってやつですね。
わたし達の上位存在(この世界の言葉で表すと上司にあたるのでしょうか?)である情報統合思念体はそんな彼女を処理しついでに、それを自分達の最優先課題である『彼女』の観測に利用する事を決定しました。
当然の選択、ですね。
だって、わたし達はそういう風に作られたんですから。
狂っていく、その過程は問題ではなく、
おかしくなった、その内容も必要ではなく、
ただ一つだけ、重要なのは、
―――『壊れた』という、その事実のみ。
でも、だったら、
今、わたしが感じている、
―――『これ』は、………何?
///
「眩しいわね」
深夜2時、明日消される事が思念体によって決定されている朝倉さんは、そう言いながらベランダへと通じる窓を開けました。
ここ最近、思考ルーチンの乱れが全自動行動にさえ、こうして影響を及ぼすようになってきました。………どうやらもう本当に、彼女は限界のようですね。
彼女の行動は普通の人間から見ると完璧に異常行動で、対応に困るものであるのでしょう。
ですがまあ、眠らなくても平気なインターフェイスであるわたしにとって、夜起こされるのは苦にはなりませんから。
だから、辛くなんてないですよ。
「うん、これで喜緑さんも報われるわね」
朝倉さんの視線はベランダの向こう、暗闇の中。
「………わたしは、ここにいますよ」
朝倉さんから答えは返ってきません。おそらく、彼女の視線がわたしを捉える事は、もうないのでしょう。
何故なら、彼女の中では、わたしはもう死んでいるのですから。
だから、仕方のない事だから、辛くなんて、ないんです。
「おのれチュッパー、喜緑さんの敵!」
敵討ちをしてくれるんですね、ありがとうございます。
でも、でもね、
辛くなんて、ないけどね、
―――わたしは、ここに、いる、よ。
///
気分はああブレイバーレイディー、
―――眠れぬ夜に決めた事。
3.
「長門さん、将棋は止めて、オセロにしましょう」
朝倉さんがいきなり自分の腕を真っ二つにしたせいで床一面が血の海になっている部屋の中、その処理方法を検討しているわたしに向けて、彼女はそんな意味不明の提案をしてきました。
ちなみに朝倉さんの中では、存在しているインターフェイスが長門さん、存在していないインターフェイスがわたし、という事になっているようです。
もう存在しない『わたし』に、彼女が振り向く事はありません。
「ええ、やりましょう。それで、どっちが先行ですか?」
それでも、『長門有希』として扱われたとしても、彼女とともに在れる、それだけで………、
「それは、世界と天秤にかけても、遜色ないほどブレイバー」
本当ですね。………本当、ですね。
沈みそうな気分を何とかしようと、もうありえない未来の話を、彼女に投げかけます。
「今度、もしわたし達に休みというものが許されたらですけど、どこか旅行にでもいきませんか?」
「ノストラダムスの大予言が的中したのよ」
「北海道なんていいですね。美味しいものがたくさんありますよ」
「長門さんは強いわね」
「そういえば、長門さんへのお土産は何にしますか? 彼女はどうも最近生意気盛りなので、木彫りの熊でもお土産にして置き場所に困らせてあげようと、わたしはそう思うのですけれど」
「相手をキョンくんに代えてもいいのだけれど、それで治るのはアフリカの神楽さん宅のガスコンロだけなのよね」
かみ合わない会話。互いの足を踏み抜くダンス、互いに贈る一方通行。
それでも、そんな一時は………、
「それは、宇宙と天秤にかけても、お釣りがくるほどブレイバー」
本当、その通り、………だからわたしは、決めたんです。
………いえ、ちょっと、違いますね。
わたしは『最初から決めていた事』を、初めて口に出して彼女に伝えたのです。
「決めました。わたしは、あなたを守りますよ」
「あら、だったら涼宮さんを刺激したらいいじゃない」
軸からしてずれている、このやり取り。
それでも、これは『誓い』なんです。
過去を振り返れない彼女へと、未来に振り向かないわたしが誓う言葉です。
わたしにとってはおそらく、後悔しか残らない、残酷な誓いなのでしょうけれど。
「喜緑さんも浮かばれないわね」
思わず笑みが出る。誰のせいだと思ってるんですか?
愛しのあなたの心には、届かぬわたしのブレイバー。
そんな変なフレーズを思いついた瞬間、
わたしは思念体によって特異的情報制御空間に閉じ込められました。
///
気分はついにブレイバーレイディー、
―――振り向く事はできないの。
4.
どうやら思念体にとって、わたしは修理する価値のある個体らしいですね。
彼等はリペアと称してわたしから、朝倉さんを狂わせたであろうエラーを、彼等が理解できないもの全てを、強制的に取り除くつもりでいるようです。
消えていきます。
あの時彼女の微笑を、綺麗と思った記憶が消え、彼女が笑みという表情を作ったという、そんな記録のみが残ります。
消えていきます。
消えていくのです。
記憶が記録に、変質していくのです。
「あ、あ、う、あー!」
意味のない叫びとともに、わたしはありたけの攻性情報を空間壁へと叩きつけました。
それでも情報空間には、何の変化も起こりません。当然ですね。一介の端末であるわたしと本体である思念体。スペックの差は歴然としているのですから。
だから、何をしても無駄なのですから、効率を何より重視するわたし達が本来とるべき行動は、『何もしない事』なのでしょう、けれど。
「やめて、ください」
それでも、わたしは、あがきます。
「やめて」
攻性情報が尽きたので、有機体部位を直接、空間壁にぶつけます。
「やめて、ってばあ」
有機体部位から血が吹き出しても、わたしは止まらない、………違いますね。
「あなた達は、どうして、許してくれないのですか?」
止まれない、………これも違います。
「どうして、わたしに、後悔する事すら、許そうとしてくれないのですか!」
後悔すると知って、誓った想いが、あります。
だからわたしは、
せめてわたしは、
後悔だけは、しないとダメなんです。
だから、止まるわけには、いかないんです。
それでも、わたしの力は無限に湧き出てくるわけではありません。
現実は欠片ほどの優しさすら見せず、残酷な限界は、非情な結論は、すぐに訪れました。
「………どう、………して」
力尽き、倒れこみ、そこでわたしは止まってしまいます。
それでもわたしの思い出が、消えていくのは止まりません。
意識が途切れる前に、わたしは彼女の笑顔を、それだけを自分の情報制御中枢に焼き付けました。
たとえ、それに意味が見出せなくなったとしても、
忘れる事がないように、
忘れる事が、出来ないように。
―――、
――――――、忘れたく、ないよう。
―――――――――、
――――――――――――、パチン。
///
気分はいつもブレイバーレイディー、
―――犬に咬まれても心は錦。
5.
「喜緑江美里、再起動して」
長門さんの声に従い、わたしは再起動します。
起動と同時に現在の状況を確認。本日夕刻に朝倉涼子は予定通り消滅。これにより長門さんは『鍵』の信頼を得るに至った、と。
なるほど、順風満帆、世は全て事もなしという感じでしょう。
「朝倉涼子は消滅した」
そうですね。当初の予定通りです。これでだいぶ『観測』も行いやすくなりますね。
「わたしが、消した」
いや、ですから、別にわざわざ聴覚情報で伝達しなくても、もう知ってますよ、わたし。
「………あなたも、消えた?」
??? 意味が、分からないのですけれど。
「そう」
ボソリ、と呟く長門さん。………予想はしていましたが、やっぱり説明なしですか。
まあ要するに、長門さんが伝えたいのは、大勢いるわたし達インターフェイスのうちの一体が消えたという事、それだけでしょう?
そんな事でしたら、わざわざわたしの部屋にまで来て情報伝達する必要はありませんよ、時間の無駄ですからね。
「………そう」
長門さんは不必要と思われる沈黙の後、結局前と同じ言葉を呟きながら、制服のポケットから何かを取り出しました。
「渡すものが、ある」
そう言って、長門さんはわたしに、何の変哲もないちっぽけなキーホルダーを渡してきます。
「………これ、は」
ちっぽけでみすぼらしい、ゴミと言っても許されるほどの、そんな物体。
「朝倉涼子から、あなたに」
その先端で、揺れているのは、
―――小さな小さな、木彫りの熊。
(ああ、伝わっていたんですね)
わたしの頬から床に、水滴が落ちる音がします。いえ、わたしの意志ではありませんよ。だってわたしにそんな理由はないんですから。
わたしに、泣く理由なんて、ないんですから。
「あなたには、明日からわたしのバックアップになってもらう。………明日からで、いい。それが、あなたの勝ち得た時間」
そう、最後まで意味のない事を告げながら、長門さんは自分の部屋に帰っていきました。
///
彼女が帰った瞬間、とすん、という音とともにわたしは膝をつきました。
そのまま蹲り、キーホルダーを握り締め、目から水を流し続けます。
わたしが今行っている事は意味も、理由も、必要もない、そんな行為です。
だから、あの日シャボン玉をつついて割った時浮かべた朝倉さんの笑顔が、どうしても記憶領域から消去できないのも、意味のない事に違いないのです。
きっと、再起動したてで上手く情報処理が行われていないせいでしょうね。
だから、明日には元に戻るから、今夜一晩だけ、そんなわたし自身を、許してあげる事にします。
たとえ、明日忘れてしまうものだとしても、
―――どうか、幸せな後悔を。
―――神様どうか、今夜だけでも。
わたしはそんな意味不明な願いを、それでも確かに祈りながら、キーホルダーを握り締めたまま、布団の中に潜り込みました。
目を閉じ、まぶたの裏側に映る、消えない笑顔の彼女に向けて、最後の言葉を。
それは、『サヨウナラ』でも『アリガトウ』でもなく………、
///
気分は結局ブレイバーレイディー、
―――それでは皆さんマタアイマショウ。
636 :
54-435:2007/11/11(日) 11:19:22 ID:QQ+MnLLE
以上です。
それでは。
100レス前の流れを完全に叩き割ったなwww
>>636 お前は……
不覚にも泣いてしまった。
もし電気少女の人だったらまた泣かされてしまった。
これはイイ。
呼び方・呼ばれ方とかのまとめってある?
コンピ研部長のやつ
ちょっと書こうと思ったんだが
何処かにあった希ガス……
ごめん忘れた
>>636 なるほどな。
住人の反応を逆手に取ったすばらしい作品だと思う。
ピンク鯖が死んでたようだ
645 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 00:14:14 ID:Q+uyGTKN BE:472128236-2BP(0)
誰か感動系のSS紹介してくれ。
騙されたと思って古泉一樹のある種の罠を最後まで読め
そして本当に騙されるわけか。
なんという罠
いや感動できるだろ。あれを全て読み終えたときの達成感は凄いものになると思うよ。
>>650 嘘は言ってないな。
ある意味感動するし、ある意味すごい。
ある意味か
失礼だろう!
>>653 作者降臨。
凄かったですよ。二度と無いと思います、あの作品は。
ハルヒSSの三大超長編って言ったら
舞輪曲、微笑、そして古泉一樹のある種の罠だよな。
いろんな意味でよく話題になる三大作品でもある。
はいここテストに出るぞ〜
微笑みつかんねぇ・・・
>>656 訂正、舞輪曲ではなく輪舞曲でした。
テラハズカシスorz
>>656 舞輪曲だけ出所が分からん。ココではないよな?
あと『喜緑江美里の○○〜The××of fake star』も完結したら一角に入りそう。
>>660 あれは分量的にまだ長編の域かと。
超長編とまでは行かない気がする。
ある種の罠は連載形式じゃなくてあの分量というのが凄まじい。
書き手も大変だったろうな。ちゃんと早漏せずに書き上げて投下したコトには素直に敬意を表したい。
>>660 輪舞曲は長門スレだ
「機械知性体たちの輪舞曲」
人間的には、意外と尊敬できる人物だよねw
>>663 あれの投下をリアルタイムで経験した時は色んな意味で驚いたわw
まさか丸々1スレ消費するとは思わなかった。
その上何回リロードしてもまだ新着レスはあるし読んでも読んでもまだ続きはあるやら異常に読み辛いやら。
何というか人の記憶に強く残るのは良作よりも異端作なんだろうな。
単にできが良いだけじゃなくて、それを越えた執念を感じられて記憶に深く刻まれるのだろう。
それは良い印象かも知れないし、否定的な感情かも知れないが。
668 :
660:2007/11/12(月) 23:32:19 ID:qmnso23S
>>662-663 確かに罠は一気にスレ容量無くなったからなぁ…
リアルタイムで読んでた時は正直ビビッたなw
>>664 おぉ、そうか!時間があるときに読みに行くわ。dです
669 :
660:2007/11/13(火) 00:51:29 ID:nKZHXJVb
今、長門スレのまとめで検索掛けてみたんだけど
さすが超長編というだけあるな……34+3話ってなんだよwwwwww
読み終わった頃には4話の朝倉消滅を涙なしには見られない体になってること請け合い
>>669 誰かが前本にしたらしくてな。
ハルヒと同じフォント・サイズに合わせて製本してみたら500ページくらいの文庫本が出来上がったそうだ。
>>671 >500ページくらいの文庫本が出来上がった
ちょw終わクロにでも対抗する気かよwww
とりあえずおまいら、読む時は厚手のハンカチかティッシュを用意しておけ。
つ□
誰か↑の三つのSSのおおまかなあらすじを頼む。
せめてこのスレの「古泉一樹のある種の罠」だけでもいい。
キョンのチンコが折れる
>>675 全俺が泣いた
携帯からの投稿はありなんだろうか…等とのたまってみる
個人的には短く綺麗にまとまってるほうが好きなんだけどねぇ。
長いとなぜか存在感があるのは確か。
上で話題になってた輪舞曲を読んでみた。
もーそろそろクライマックス。
……あれ、なんか画面が歪んで見えないんだが。
キョンのエスクカリバーを、誰が先に抜くかを競争するハルヒ達。
エスクカリバーを抜いた女の子はキョンを自由にできる。
って普通のSSか
>>674 ・輪舞曲
長門、朝倉、喜緑を主軸とした話。とにかく泣ける。
各種方面から絶賛されているが、いわゆる青鬼説を題材とした作品なので、反青鬼派には支持されていない。
・微笑
ハルヒを生き返らせようとキョンが奮闘する話。SF色が色濃い。
特にタイムトラベルが良く作りこまれており、一時期『もうこれが最終回でいいよ』とする微笑信者と作品内の矛盾を指摘するアンチの対立が耐えなかった。
・ある種の罠
古泉がキョンとハルヒの仲を取り持つため異世界にはめる話。
おすすめのSSについて聞かれたとき、騙されたと思って『古泉一樹のある種の罠』を読め、との一文で紹介される。
だから騙されたと思って読んでみなって
ある種の罠はタイトルが完全に問題だよなw
どうみてもアァーーーーーにしか見えないw
輪舞曲はあまりの長さに引いて
微笑はオーパーツのあまりのdでも設定に引いて
ある種の罠はあまりの文体に引いた
全部読んだけど微笑だけはオーパーツで読むの止めた。
変態シリーズや二涼やグランド等の長さでいい。
687 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 16:58:13 ID:EqE4rE+V
○天国もガチ
ここの長編は長さが丁度いいよな。
ちょいと短編投下
不許可を不許可
「許可を」
今日も聞いちゃったわ。
この言葉、なんかいつもいつも聞く気がするんだけどどうしてかしら?
理由は簡単よね。
有希が本当に許可許可言っているからだわ。
「…ああ、…だな。…で」
小声でキョンが耳打ちしている。
顔近付けすぎなのよ。
有希もピサの斜塔みたいに体を傾けてキョンの顔に耳を近付けようとしない。
今度ギネスに載るドイツの教会よりは斜めってないのは褒めてあげる。
うっかり…えーと…ほっぺにその…アレがくっついたらどうするのよ。
そうしたらあたしに言いなさい。て言うか言え。
エロキョンにはパンチ。
有希のほっぺには消毒液をあげるわ。
あのバカには、他の人と絶対に間違いを起こさせない様にちゃんとあたしがついていないとダメなんだから。
…まだ顔をくっつけているし。
「何だって? 聞こえなかった?」
「…そう」
有希が頷いてもう一度顔を近付けている。
逢瀬を重ねようってんじゃないんだからもっと堂々と話なさいよ。
…聞こえないじゃない。
「了解」
有希はそう呟いて、ようやくキョンから顔を離す。
ほっとしたのは有希の危険が去ったからよ。
気のせいだと思うけど、有希はなんとなく頬を赤くしている。
耳にそっと手を添えてどことなく色っぽく見えるのは何故かしら?
パイプ椅子まで数メートルなのに有希の歩みが妙に遅く感じる。
ほんの一瞬、あたしを見て目を細めたように見えたのもきっと気のせい。
「……」
なんか気分が悪いわね。
ん? 古泉君、青い顔してものすごい勢いでメールしているけど何かあったの? どうでもいいけど。
あら、古泉君もキョンに用事?
個人の趣味にケチ付けるつもりはないけど、そっちの趣味は公園のベンチとかでやってね。
キョンになんかしたら…風紀的な意味で死刑ね。マジで。
あ、一人で帰った。副団長なのに良くないわね。
え? ちゃんと断った?
別にいいや。
…そう言えば、サイトの更新してないわね。
昨日やったから、きっともう情報が古くなっているわね。僧に違いないわ。
「キョ」「キョン君、ちょっといいですか?」
「……」
何よ何よ。
今度はみくるちゃん?
キョンもハイなんですか? なんて背筋伸ばしてるんじゃないわよ。その素で嬉しそうな顔をちょっとはあたしに向けなさい。
別に人間、不快よりは楽しい顔の方がいいっていうだけよ。
で、何を話しているのかしら?
「…紅茶……今日…終わっ…そっと…緒に…きりで…」
ばき。
「キョンっ!」
「ひゃにゅっ!」
あたしは思わず立ち上がる。
パイプ椅子が乾いた音を立てて転がった。
みくるちゃんは怯えた猫みたいに毛を逆立てている。
みくるちゃんにも色々あるけどとりあえず。とりあえずね。
「何だ?」
何だじゃないわよこの浮気者。さっきは有希でこんどはみくるちゃんにちょっかい出そうなんてお天道様が許してもこのあたしが許さないわ。
あんたはあたしが監視していないとダメなんだからね!
で、あんたもあたしの傍にだけいればいいのよ。あんたもその方が色々と何かしら有意義に人生過ごせるわ。
あーもー! 何涼しい顔しているのよ!
さっきまでの微笑みはどこいったのよ!
たまにはあたしに見せなさいよ! て言うかあたしだけに見せなさいよ!
…キョンの監視はあたしの仕事だからその権利があるって言うだけよ。
別に見たいとか独り占めしたいなんてちっとも毛頭も1ミクロンだってタキオン程だって無いんだから。
ほら、昔のアニメにもあったじゃない。
あんまりそわそわしないでって。
よそ見をするのは止めてよ。
私が誰より…って違うわよ! 出だしだけ! 出だしだけの話なの!
「だから何だ? パントマイムしたい訳じゃないだろう?」
え? パントマイム? 何のこと?
「…いや、いい。それで?」
「あ! えっと…これからみんなで出かけるわ!」
「どこに?」
あたしは部室の棚にある紅茶の瓶をびしっと指さして言う。
「そろそろ紅茶が切れる頃でしょ? だからみんなで紅茶を買いに行くの! たまにはみんなで行くのもいいわ!」
「あぅ…」
みくるちゃん、あからさまに残念そうな顔しているわ。
ふふーんだ。
キョンを独り占めなんてさせな…じゃなくて、キョンと二人きりなんてあのケダモノが何するかわからないから助けてあげるわ。
「有希もいいわね」
ってもうカーディガン着て本仕舞っているじゃない。
流石呑み込みが早いわ。
ほらほら、キョンも用意しなさい。
みくるちゃんも着替えてね。
「は、はいっ!」
さてお出かけね。
あたしはコートを羽織った。
あら、なんでマウスが割れているのかしら?
「…さむ」
あたしはいつもの様にいの一番で外に飛び出る。
超団長たる者常に団員を引っ張らなくちゃいけないわ。
でも寒かった。
うう…何よこの天気。
部室出るまで晴れてなかった?
なんで数十メートル歩いている間に鉛色の雲が空を覆い尽くしている訳?
ん? なんかキョンがあーあ、みたいな顔している。
あんたが悩んでも天気は変わらないでしょ。
雲の上の雷様にでも文句言いなさい。
ってなんであたしを見るのよ?
とにかく寒いわ。
えーと。
「キョン!」
「何だ?」
「寒い」
「そうだな」
「手袋ある?」
「持ってないよ」
キョンは濃いグレーのチェスターコート。
でも手は素だわ。
「じゃ仕方ないわね」
あたしは単純な防寒対策としてキョンの手をぎゅっと握った。
「…何よその顔は」
「いや」
「寒いからよ。それだけ! あんたはヒラ団員としてあたしに体温を提供しなさい」
…なんか自分で言ってちょっと恥ずかしいセリフがあったけど気にしない。
んー、意外に柔らかいし、それにあったか…有希、何で反対側でキョンの手を握っている訳?
「寒い」
…暖かさが半分に減った気がする。
「あ、あのあの…わ、わたしもさむ…あの…手がしゃむいでしゅ…」
みくるちゃんが手持ちぶさたに涙目で訴える。
可愛いんだけど…今日はダメ。
「手は2つよ。早い者勝ち」
「ふえ〜…」
さっきは抜け駆けしかけたんだから今日はゆずってなんかあげない。
どうやら有希も手を離す気はないみたいね。
「…許可を」
何の?
有希がキョンの顔を見上げて呟いた。
あたしの眉がぴくり、と勝手に動いたのがわかる。
有希はキョンのコートのポケットを見ていた。
「手?」
キョンの一言に有希はこくりと頷く。
なんかツーカーみたいじゃないのよそれじゃっ!
「いいぜ」
何がよ! わからないじゃない!
と、有希はキョンの手を握ったまま、その手をポケットの中に入れた。
「暖かい」
自然に体もキョンにくっつく。
キっキョン! あんた有希に変なこと吹き込んでないでしょうね! そのポケットにつっこんだ手はどうなっているのよ!
まさか指絡めたりなんかしてないでしょうね!
ポケットの中から体触れたりなんてしてないでしょうね! むきー!
違うわよ!
キョンのアホがやましい考えを起こしたりしないかって心配なだけよ!
ああもう! あたしも…じゃなくてええと…。
「…マジか?」
失礼ね! あたしがそんないい加減な気持ち…え? 雪?
キョンが空を見上げていた。
いつの間にか、雪が降り始めている。
「おいおい」
気むずかしい顔を見てちらっとあたしを見るキョン。
だからなんで天気の事なのにあたしを見るのよ!?
別の時に見てよね。
「か、風まで出てきましたぁ…」
みくるちゃんが体を抱きしめながら訴える。
それだけおっきいカイロが胸にふたっつもあるんだから寒くないでしょ。
「しぇ、しぇくはらでしゅー」
気のせいよ。
…でも、本当に寒くなってきたわ。
これは手を握るだけじゃダメね。
あーあ、やりたくないけど、仕方ないわ。
「せいっ!」
あたしは勢いを付けてキョンの手ごと大きなポケットに手を突っ込んだ。
「おっと」
その勢いのせいか、もう積もり始めている雪でバランスを崩しそうになるキョン。
危ないじゃない。
あんたはどうでもいいけど、今転んだらあたしまで転ぶのよ。
ほんとうにしょうがないわね。
あたしはポケットの中で握っている手の力をちょっと緩めて、さっと指を全部絡めた。
これなら、簡単にバランス崩したりしないでしょ? それだけよ。こんな寒い雪の上でキョンなんかと一緒に転ぶのはゴメンだわ。
…ん。なんだか気持ち、風が弱くなってきた様な。
「くちゅ!」
みくるちゃんがくしゃみとは思えないくしゃみをした。
ってコラ! キョン! なんでいきなり手を離すのよ!
有希もあきらかに非難の目で見ているわよ!
…そうじゃなくて、寒いから。
それだけよ。
「朝比奈さん、大丈夫ですか?」
キョンはみくるちゃんの傍によって…ちょ! なんでほっぺに手を当てるのよ! みくるちゃんも拒否しなさい! 何で顔を手にすりすりして
目閉じてんのよ!
「ありがとう、キョン君。ちょっと今日は薄着だったから…」
あら、その皮下脂肪なら南極でビキニだってOKじゃないかしら。
喋ってないのに有希が頷いた。
心が通じたみたい。
「こんなところで風邪なんてひいたらシャレになりませんよ」
ちょ! あんた! 何コート脱いでるのよ!
そして何みくるちゃんに羽織らせているのよ!
みくるちゃんも何で躊躇せず当たり前の様に羽織るの!?
「…暖かいです。キョン君の温もりですね」
……。
バカ。
…………。
キョンのバカ。
次の瞬間、周囲は吹雪になった。
「し、死ぬかとおもいまひたぁ…」
雪だるまみたいになったみくるちゃんが息も絶え絶えにマンションのエントランスに転がり込む。
「みんな無事か?」
最後に入ってきたキョンが扉を閉め、ようやく冷気が和らぐ。
とんでもない吹雪に見舞われたあの後、あたし達は一番近い有希のマンションに逃げる事にした。
すごい風であたしが転んだ時、キョンが真っ先に手を掴んで起こしてくれた時は嬉しかったけど、その後みくるちゃんはともかく有希まで
豪快にすっころんで同じように助けられたのが何となく納得できなかったわ。
「はぁ…まったく、なんなのこの天気! 異常気象どころじゃないわよ! 中国のオゾン破壊が原因かしら?」
「不穏なこと言うな」
「あり得るじゃない」
「部屋へ」
有希が誘導する。
うん、そうしましょ。
「おじゃましまーす」
「お邪魔するぞ」
「おじゃましまぁす」
エレベータで有希の部屋へたどり着いたその時、今度は電気が消えた。
「ひゃうっ!」
みくるちゃんが驚いてキョンに抱きつこうとしたから、とっさに間に入る。
するとみくるちゃんはぴたりと動きを止めた。
…この子、思ったより食わせ者かもしれないわね。
みくるちゃんに対する認識がちょっと変わったわ。
て、それはそれとして何? 今度は停電!?
「ブレーカーは正常。周囲一帯が停電になった」
嘘でしょ?
少しして目が慣れ始めた頃。
「ラジオ」
有希がキョンにラジオを渡した。
キョンはそれを手に取り、NHKに合わせた。
その結果は…言いたくないわ。
「暫くの間…少なくとも今夜一晩は外に出ない方がいい」
有希が冷静に言う。
その通りね。
「…なんか、部屋も寒くなってきませんか?」
そうね、断熱しっかりしている筈なのになんとなく寒くなってきた気がするわ。
「長門」
キョンが有希に耳打ちしようとしている。
こんな時まで何よぉ!
「こらキョンっ!」
「…何だよ」
「こんな時に内緒話なんてしなくていいでしょ! 堂々と話なさいよ!」
「いや、みんなで話す様な話じゃ…」
「不許可! 今は団結が必要なのよ!」
「……」
ため息をついてやれやれ、のポーズのキョン。
何でそんなあたしを仲間はずれにしたがるのよぉ…。
その後、まだ冷気の残る冷蔵庫から火を通さなくても食べられるものでお腹を満たしてから、あたし達は薄闇の中で横になる事にした。
でも、キョンはしきりに有希やみくるちゃんに何かを話そうとする。
あたしはそれが気に入らなくてとにかく妨害。
団結って言っているのになんで…。
正直、あたしは寂しさで胸がつぶれそうだった。
布団を敷く時、かなり下がってきた室温を考慮して、布団を固めて寄せ合って寝ることになる。
でも、あたしは何となくみんなとくっついて眠る気にならなかった。
確かに有希の言うとおり、布団を被っても一人じゃ寒い。
キョン達を見ると、ほとんど体を寄せ合っている。
当たり前の様にキョンが真ん中。
二人の頭はキョンの肩にぴったりくっついていた。
多分、体も…。
外の吹雪はますますひどくなっている。
まるで今のあたしの気分。
何で?
昼間っからそうだけど、何で天気があたしの気分みたいにどんどんひどくなるのよ。
子供みたいに体を丸めても、全然暖かくならない。
…寒い。
枕に涙が落ちた。
やだ。
どうして?
強く目を瞑っても、逆にどんどん涙がこぼれ続ける。
「…う…」
声が出かけて咄嗟に口を塞ぐ。
聞かれちゃダメ。
とにかくダメ。
「…ふ…う…」
あたしは必死に嗚咽を抑えながら、ぽろぽろと涙をこぼし続けた。
「ハルヒ」
不意に声。
心臓が止まるかと思った。
なんでよりによって一番今のあたしを見られたくない奴が来るのよ!
「こっちに来い」
「……」
あたしは無視を決め込む。
声なんてまともに出せないし、夜目が慣れてきたからあたしが泣いているのも絶対にばれる。
なのに、キョンはいきなりあたしの布団をはぎとり、あっけなくあたしを抱っこで持ち上げる。
「キョっ…キョン!?」
あたしは間抜けな声をあげてしまった。
「おかしな事しないから、とにかく一緒に寝るぞ。分かったな」
ものすごく力強いどっしりとした声。
思わずはい、と言いそうになるその声。
でも。
「ふ、不許可よ! そんなの勝手に…かって…」
キョンの胸の暖かさが急に離れ、あたしは息をのんだ。
一人に戻される。
そう思うと、寂しさより怖さが襲ってきた。
あやまりたい。
声が出かけた時、キョンが言った。
「不許可が不許可だ」
キョンはあたしを抱き直し、抱き枕みたいにして布団に入ってしまう。
「ひあ!」
みくるちゃんみたいな声を出すあたし。
背は小さくない筈なのに、あたしこんな簡単にキョンに抱っこされちゃうんだ…。
あたしは、自分がものすごく女の子なんだって意識してしまい、かーっと頭に血が上る。
無抵抗になったあたしは、子供を巣穴に戻す狐みたいにキョンの布団の中に入れられてしまった。
布団は、暖かい。
あたしはキョンの胸に顔を埋めたまま、恐る恐る手を背中に回す。
拒否、されなかった。
安堵が胸を満たす。
急に周囲が静かになった気がして、外の吹雪の音も消える。
あたしの耳には、キョンの胸から聞こえる心臓の音だけが響いた。
「キョン…」
その声に、キョンが答える。
背中に回した腕を更に深く回してくれ、あたしの体は本当にキョンの腕の中に包まれてしまう。
怖いくらいの安心感が襲う。
あたしは背中に回した手に力を込め、胸の中でまた涙をこぼした。
「安心していいから、寝ろよ」
キョンが優しい声で言ってくれた。
嬉しい。
素直に嬉しい。
やがて、キョンは寝てしまう。
ちょっとつまんないけど、でも、いい。
こんな風に一緒に眠れる。
それだけでいい。
ふと、背中に回した手が柔らかな感触に包まれる。
ちょっと驚いたけど、それはみくるちゃん。
みくるちゃんの性格をそのまま絵にした様な柔らかな感触。
「一緒ですよ。」
小さな、でも優しい声。
「みんな一緒です。仲間はずれなんて無いです」
あんまり柔らかくて悔しい気もするけど、あたしはその柔らかさと暖かさに心地よさを感じる。
そして背中には有希が寄り添ってくれた。
「私達は仲間」
言葉が胸に響いた。
「同じ位置にいる。だから安心して」
分かっているんだね。
みんな、気持ちは同じなんだ…。
あったかい…。
「うん…うん…」
もう、言葉が思い浮かばない。
あたしはみんなに暖かさを貰いながら、心地よい眠りに落ちていった。
「ん…」
朝日がまぶしくて目が覚めた。
少し顔を上げると、遮光カーテンの裾から光が差していた。
漏れる光は外が晴れていることを教えてくれる。
吹雪…止んだ。
まるで今のあたしの気分みたい。
そんな訳ないのに、おかしくなったあたしはキョンの胸に顔を戻してくすりと微笑む。
見上げるとキョンはまだ寝ている。
…まだ、寝ているよね。
あたしはそっと顔を近付けて…。
…ええと、きっとキライならこんな風に抱き合って寝たりしないし、いいわよね。
でも…やっぱり最初はお互いちゃんと向き合って…。
それに、有希もみくるちゃんもずるはしないって言ってくれた。
うん。
そうよね。
でも、ちょっとだけマーキングしとこっと。
あたしはシャツの胸元を開いて、そこにキスマークを付けることにする。
確か、強く吸えばいいのよね?
ちょっとだけ、ちょっとだけね。二人とも許してね。
ええと、どこがいいか…。
ナニコレ?
ふわふわしていた頭が急に冴えた。
ナニコレ?
キョンの胸の上にいくつもあるこの小さなアザみたいなのは何?
よく見ると首筋の後ろにもたくさんある。
ふーん。
同じ位置…一緒…ね。
ふーーーーん…。
「おかーさーん、またふぶいてきたよー」
「あらあら、まったくあのバカ息子はどこほっつき歩いているのかしらね」
「キョンくんだいじょうぶかなー」
「晴れたら帰ってくるわよ」
そのあと、ゆうがたごろにやっとかえってきたキョンくんのひろうこんぱいのすがたをあたしはわすれません。
あっちこっちにちいさなアザをつけて、しかもひっかききずだらけのキョンくんがいたそうでかわいそうでわたしはなきました。
でもおかあさんはすごくふくざつそうなかおをしていました。
キョンくん、きょうはいっしょにねてあげるね。
え? こわい?
なんで?
こわくないよ?
やさしくしてあげるからぁ。
あ、またふぶきが…。
終わり
以上。
おそまつ。
一つ屋根の下の者には勝てぬかw
GJ!
古泉君の姿が見えませんね
佐々木なら吹雪じゃすまない。ダイヤモンドダストが見えるくらい寒くなりそうwww
>>697 GJ!!!
両袖の人かな?積極的なみくると長門が(・∀・)イイ!!
あと古泉の空気っぷりに噴いたwww
ぜひぜひシリーズ化してくれ!
>>694 GJ
このスレ的には短編はどこまでを言うの?
俺のいつもいるキャラスレでは5レス超えれば長編だが。
>>696 こういうの大好きだ。
是非シリーズ化をおねがいします。
>>697 みくる信者というわけではないけど、みっくるんるんが台頭してくるSS好きだぜ。
GJ!
>>702 ギリギリ短編かねぇ…いや、中短編くらいか
>>704 原作ですら空気だからな、朝比奈さんは。
SSでも大抵いらん子と言うか…扱い悪いの多いし。
みくるはそれほどでも無いが、朝比奈さん(大)はかなり好きなタイプ。
もう少し出番多かったら間違いなく惚れてた。
>>702 確か何文字以上なら長編ってのをどっかで見た気がするがWAすれた。
Wiki上での分類での話でだったと思う。
とりあえず1スレ以上が超長編でFAだと思う。
今、谷口の存在を思い出した。いや、だからどうって訳でもないが
キョンがモテモテの話は多々あるが古泉がモテモテの話がないことに気づいた。
なんかある?
誰にモテるんだ?
機関の人じゃね?
>「いいぜ」
>その手をポケットの中に入れた。
この流れは長門の手を入れるのは初めてではないようだがそこはどうなんだ?キョン。
とりあえずGJなんだぜ。
>>708 VIPのガールミーツガールは、TSキョンと長門に好かれてる
>>712 アレは結構カオスだったよな。
最終的には
みくる→TSキョン←ハルヒ 長門→古泉⇔TSキョン
↑ ↑
谷口 国木田
とかだったか…
後vipは何でか知らんけど古長も多いな。
715 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 04:46:46 ID:d1ZfpRIc
ボーイミーツボーイ
アッー!!アッー!!
>>697 GJ!
こういの大好きだ。もっとハーレムキョン頼む
>>708 俺もハーレム古泉見てみてぇな
意外と新鮮なネタな気がする。
古泉なら森さん、鶴にゃん、阪中、橘きょこたん
>>718 場合によっては、長門、朝比奈さん、九曜も入れてもいいと思うけどね。
さすがにハルヒを入れるのはどーかと思うが。
>>720 オチにハルキョンをつかえなくなるから。ってのは冗談で、
立場の問題かなと。
機関が不用意にハルヒと接触するなって制約かけてたと思うし。
所詮脇役だしなぁw
脇役がヒロインからモテモテの作品って面白いか?
古ハルってのはそれはそれでありだと思うけどね。
ハーレムネタにそこまではどーかなと私は思っただけで・・・
まぁ、思いついたネタが古泉ハーレム自慢vsハルキョン自慢合戦な感じだったから、ってのもあるがw
>>723 抜けてる・・・
「ハルキョン自慢」→「ハルキョンノロケ自慢」
ってことで。
それ良いじゃないか。ぜひ頼む
>>725 期待させて悪いが、ハルキョンのロケ部分はともかく、古泉ハーレム部分は無理ー
俺としては、他の人に期待させてもらう・・・・ってのはだめですかー?
>>719 朝比奈さんは古泉がアプローチしている分まだ分かるが、長門と九曜はキツイ。
特に九曜は接点が無さすぎるだろ……
まだ副団長自慢をするハルヒの方が容易に想像出来るのだが。
>>721 それを言うと、機関が今後敵対する可能性もあるみくる、長門、九曜
と深い仲になることも駄目だと思うな。
ただ単にハルキョン以外認めたくないだけだろ。
カプ論じゃなくて、ネタとしての古泉ハーレムの話してんのにな。
古泉ってあんまり本心をみせないキャラだからな。
恋愛というと微妙だ。
あえて現時点敵な橘なら、話の構成次第かな?
>>730 藤原橘はあるというのに、古泉橘は見たことがない怪奇。
さすがは古泉というべきなのかどうなのか。
実は幼馴染みでした、とか?
734 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 21:10:32 ID:AMZq72xr
カプ議論をここでするのは止めようね。
本スレやキャラスレに投稿していると言う輩は多いが、この板に投稿していると自慢する奴はいない。
なぜならば、ここは文章表現力のみが支配する世界だからだ。
ネタっつってんのに古泉の話すると何か湧くよな。
大抵はハルヒと長門がらみで。
>>734 『“のみ”がついた選択肢はバツ』の法則発動。
古泉×みくるはどっかのサイトで漫画描いてるよな
>>734 それはただ単に自分は●●を書きましたというだけでフルボッコにされかねないほど
作者の自己主張を嫌う伝統があるからだけじゃないか?
かもね。
○○の人? と聞かれて、そうと言っただけで酷いことになりかねん。
だから書き手名乗らないのかね。
伝統っていうか、なんか自己主張に過敏な人がいるってだけじゃないの。
>>738の例なんて普通は自己主張と言わないだろうが、それでも癇に障るって人が。
よくよく考えるとろくでもないとこだな
殺伐毒舌ツンデレスレだからな。
逆に言えば真面目に読んでくれるから、職人だってある程度覚悟して投下してるんだろうし。
ある意味職人がどうあるべきかを思い知らせてくれるスレなのかも知れん。
職人は投下したら後は何も語らず、ただ作品の良し悪しを住人に問うのみ、という。
投下した作品に作者本人がどうこう言うのはあまり好きではないが、
この作者は何を書いたのかすら答えられない殺伐さは問題だと思うが。
実際、住人の方が○○を書いた人か?と詮索を始める始末だし。
個人的には投下した直後にチラ裏を書きなぐってくれた方が好きなんだよなw
名前欄にでも「あとがき」とか書いてもらってNG対象とか出来んもんか
そういうのは作者専用のスレでも立ててやって、そこで存分に語らせてあげてくれ
馴れ合いは御法度だ
この殺伐とした環境が低レベルの職人を淘汰し、常駐する職人のレベルを上げていったとは考えられないだろうか?
オチがそして誰もいなくなったになりかけたんじゃダメだろ。
新規職人は入りづらいスレになったおかげで、常連がいなくなったとたんに投下量が激減してしまったんだから。
最近はゆるめになっているせいか、また投下が増えているが、去年の今頃の状態が続いていたら、
完全な過疎スレになっていた可能性もある。一週間以上投下されなかったような時期があったことを考えると。
何事もほどほどが一番、って事か
良作がいくつもあるこのスレはかーなーりいいトコだと思うが、
言われてみれば確かに厳しすぎる嫌いがあるよな
ここはこのままでいいよ。
だからこそ、上手いこと他のスレと住み分けできてんのに。
最近はその住み分けが多少崩れつつあるけどな
実際問題、ヒドイ作品でもそんなにあからさまに『叩く』ってコトは無いような。
そりゃ叩く人は叩くけどさ。
>>746 逆に言えば古参を贔屓して新参の芽を摘み取るスレだがな。
まあでも今のところハルヒはSS投下する場所たくさんあるし、今のままでも何ら問題無いだろう。
流石に旬が過ぎても殺伐としているのは問題だが。
書き手としては自分語りは極力避けたい、でも批評はほしい
だからここ大好きなんだが批評家が減ったな
まぁ悪いことと断言できないが
↑を書き込んでから
>>746>>747を読んで、そうかも知れないと思った俺です。
そうだな。今は新規の書き手さんと古参の書き手さんの力量の差がちと激しいかもしれない。
つまり、その、なんだ。
馴れ合いつつまったりと辛口で批評しろと言うのか?
ぶっちゃけなるようにしかならないんだし
こんな話題してる方が古参も新参も投下しづらいだろ
とだけ言っておく
流れ読めてない携帯厨から質問。
保管庫にある作品の中で最も感動できるものを教えてくれ。
>>756 同じく流れを読めてない携帯厨からの回答、つべこべ言わず全部読め
二度目の選択
レベルは初っ端から高かった気もするけどな。
保管庫の最初のほうなんかは、他の作品のSSを書き慣れててハルヒでも書いたみたいなのが多そう。
皆サンクス
最初からじっくり読んでみるわ
出来はともかく印象に残ったSSと言うと、『キョンの泣く頃』とかいうのがあった。
VIPで新スレを1スレ丸々使った作品。
回りのギャラリーの盛り上がりが異常だった。
どっかの保管庫に残っているかな?
正直スレ違いの話は聞き飽きた
長いの投下します。
36レスぐらいです。エロくないです。
容量が微妙なので、ひょっとしたら新スレを立てて、そっちまでまたいでしまうかもしれません。
SOS団が結成されてから一年が過ぎ、一つ一つ数え上げていけば何本の指が必要なのか考えたくもないぐらい様々なトラブルに見舞われ、人として成長したかどうかはともかく非常識を受け入れる寛容さだけは育んだ自信がある。
しかしそんな俺のカスピ海より広い心を以ってしても断言できるぐらい、今回は酷かった。
結果として俺自身は何一つ得るものもなく、ただ濡れ鼠も真っ青の雨ざらしになってまで散々な目に遭遇した過程が身体のあちこちにできた擦り傷や全身を絞り上げられるような筋肉痛となって残っただけ。
その上、最後の仕上げがこれだ。
俺は先ほど朝比奈さんから未来発の指令として渡された書状、あの二目と見れないような文面が一杯に書かれた忌まわしき手紙を、頭に思い浮かべた。
内容を述べることは死ぬほど憚られるのでここでは黙秘するが、ただ結びとして書かれていたのは、
『心を込めて言わなきゃダ・メ』
という朝比奈さん(大)の筆跡であろう丸っこい文字と、その隣に添えられたレアステーキから染み出る血を垂らしたように情熱的なキスマーク。あれが無ければ即破り捨てていた。
やはり世の中は理不尽の塊なのだ。ハッブル天文台でも観測できない遠くの未来まで俺に無茶な要求ばかり突きつけてくる。
そろそろ度重なる心身創痍のお見舞いとして朝比奈さん(大)もしくは(小)からの三次元的なベーゼが欲しいんだが、こういうのはどこに届け出ればいいんだ? 市役所か?
「有希ったら遅いわね。どこまで探しに行ったのかしら。……ちょっとキョン、もともとはあんたが悪いんだからね! 一体どこまでジュース買いに行ってたのよ! 言い訳ぐらいなら一応聞いてあげるから、粛々と説明しなさい!」
俯けていた顔を上げれば、団長机に腰掛けたまま大岡裁きを下すような目つきで俺を睨みつけてくるハルヒと、
「でも、長門さん本当に遅いですよ。やっぱりあたし達も探しに行ったほうがいいんじゃ……」
メイド姿の朝比奈さんが、心配そうにミントのような香りがするであろう息をつく姿。俺からすれば、ほんの少しだけ過去の二人だ。
ちなみに俺とともに時間を跳んでやってきた方の朝比奈さんは、部室の外で待機して下さっている。やる事やったら、手に手を取り合って逃亡を図る手はずだ。あぁ麗しき命綱。少しばかりご機嫌斜めなのが玉に瑕である。
「ていうかあんた、さっきから何でぼけっと突っ立ってんの。反省の意思表示のつもり? 甘いわよ。せめて石を抱えてプールに飛び込むぐらいしないと相手に誠意など届かないと知るがいいわ」
「あの、キョンくん、ひょっとして具合悪いんじゃないですか。顔色よくないですし、ね? 大丈夫?」
異端審問官のように容赦なく攻め立てるハルヒボイスに、会ったこともないナイチンゲールを彷彿とさせる朝比奈さんの声が被さる。たしかに具合は悪いです。
しかし、いつまでもこうしちゃいられない。
俺は唾をごくりと飲み干し、いい加減に覚悟を決めた。
もういい。どうせやるって決まってるんだ。あとのフォローも俺がやってくれるんだし。というかやったんだし。
間違いなくストレス性の偏頭痛を無理矢理意識の外に追い出した俺は、狭い部屋に漂う湿った空気を苔が生えそうなぐらい胸いっぱいに吸い込むと、じっと二人の顔を見つめたまま、
「……ちょっと、聞いて欲しいことがあるんだ」
今にも崩れそうなボロ窓のガラスには、空が涙しているような雨粒が累々と流れ続けている。
言っとくけどな、泣きたいのは俺の方なんだ。
さて、始まりは何の事も無い六月の平日。
空は梅雨という季節を額面どおりに受け取ってしまったかのように大雨続きで、なめくじやカタツムリはともかく俺としては非常に鬱陶しい気分にさせられるため、さっさと晴れやしないだろうかと文句交じりに考えていた。
六年に一度ぐらいは、さわやかな風と暖かな陽射しが降り注ぐ梅雨があればいいのに。そうすりゃ低地に住む人も、床下浸水の事なんて考えずにぐっすり眠れるだろう。
「馬鹿だなキョン。それじゃ、そこかしこで水不足が起きるに決まってるじゃん」
ノーベル賞もののアイディアを一言のうちに打ち据えたのは、隣で顔を埋めてしまいそうな量のプリント束を抱えながら歩く国木田だった。窓が閉め切られているせいで、乾いたシューズの足音がことさら大きく聞こえる。
俺は、同じく自分の顎まで届きそうな大量のプリントの幾何学的バランスを維持しながら、
「いいだろ。たまには現実の理力に縛られない空想の内で遊んだって」
何せ現実なんてロクなものじゃないからな。脳裏では、ハルヒが何か企む時のドクダミ草っぽい笑顔が宵の明星のように輝いていた。望遠鏡を叩き割りたい気分だ。
「ほら、キョン。そっちじゃないって。こっちこっち。生徒会室だろ?」
プラチナのように固い接眼レンズを石で叩く妄想を浮かべている間に、どうやら歩き過ぎてしまったらしい。呆れ顔の国木田の隣に戻った俺は、再び生徒会室へと進路を取った。
何故生徒会室なんて物騒な所に向かっているのかと言えば、理由は簡単。
俺達がいま抱えている、よくわからない数字の羅列で埋めつくされたプリントが、あのインチキ眼鏡会長率いる生徒会への届け物だからだ。
今年同じクラスになった男子のうち、生徒会に入っている物好きが一人いるのだが、そいつは国木田と仲が良く、たまに教室で自分の仕事を手伝ってもらっているらしい。
で、今回は国木田繋がりで俺もその手伝いをしているわけ。どうせ暇な昼休みだし、善意から成る無償労働もたまにはアリだろ。つっても、ただプリントを運んでるだけなんだが。
ちなみに、頼んだ当人は印刷室でつい先ほど煙を吐き始めた古めかしいコピー機と絶賛格闘中だ。勝てるといいけどな。俺には祈ってやる事しかできそうにないよ。南無阿弥陀仏。
心の中で合掌しているうちに、生徒会室のプレートが視界に入ってきた。
あんまりいい思い出のある場所ではないが、最近は生徒会、というか古泉が妙なちょっかいをかけてくる事も無かったし、実際の所、極端な苦手意識はまだ芽生えていない。
春先の出来事を思い返しつつも、俺たちが部屋の目と鼻の先まで到着した時、折よく扉を引いて姿を見せたのは、ヒューマノイドインターフェイス兼生徒会書記の喜緑江美里さんだった。
長門とも朝倉とも異なる落ち着いた柔和な表情と顔を合わせるのも、久方ぶりだ。
喜緑さんは俺たちを見つけると、一足早目に来た夏の日陰のような微笑を浮かべて会釈をした。溶けたプラスチックみたいに柔らかい。
「あの、喜緑さん、悪いんですけどドア開けといてもらえますか」
両手が塞がっているので、と俺が言うと、喜緑さんは小さな体を一杯に使って引き戸をスライドさせる。
俺は会釈を返しつつ生徒会室に入ろうとしたのだが、
「うわっ!」
背後で悲鳴が聞こえたと思ったら、間を置かずに新品のレンガをバチで無理矢理叩いたような鈍い音が廊下中に響き渡る。
身体ごと振り返ると、どこぞの新年行事のごとくばら撒かれたプリントの真ん中で、国木田が頭を抱えつつ蹲っていた。腰をつけた廊下はかなり濡れているらしく、そこだけ蛍光灯の光でやわく切り取られている。
おいおい、滑って頭でも打ったのかよ。
手が塞がっていて出遅れた俺の代わりに、静々と歩み出てきた喜緑さんが、国木田の手を取って立ち上がるのを手伝ってやっている。それを横目に、俺も無人の生徒会室に駆け込んで適当な机の上にプリント束を乗せ、すぐに廊下に戻った。
「大丈夫だったか?」
駆け寄って問いかける俺に、先ほどの位置から微動だにしていない国木田は返事を返そうとしない。というかこっちを見てもいない。
その代わり、喜緑さんがむき出しの膝をリノリウムに置いてプリントを一つ一つ摘み上げている様を、デッサンの遠近感を鉛筆で計る画家のように注視していた。
何で喜緑さんがプリントを拾ってて、こいつが突っ立ってるんだ。まさか、打ち所がまずくて動けないとか?
「国木田、保健室行くか?」
俺の真剣な声を聞くに至り、そこでようやくどこかから戻ってきたらしい国木田は、自分の腕と白い紙が散らばった廊下を交互に見ると、
「……ご、ごめん!」
慌てて膝を突き、プリントを掻き集め始めた。
ごめんって言われてもな。本当に大丈夫なのかね、こいつは。俺は不安を覚えながらも、ともかくサルベージ作業に加わった。
あちこちに散らばったA4のプリントは結構な量だったが、三人がかりで集めればそう大した時間はかからなかった。何分も経たずにプリントを揃えると、会長の机の上に改めて乗せて、お使いボランティアは終了となる。
最後に廊下に出た喜緑さんが部屋の鍵を閉めるなり、それまでずっと俯き加減だった国木田は、尻を金属バットで叩かれたように顔を上げると、
「さっきはごめん、キョン。それと、その、あなたは」
「生徒会書記の喜緑です」
「あ、く、国木田です! よろしくお願いします! ……じゃなくて、どうもすいませんでした!」
「こちらこそ、お手伝いさせてしまったみたいで。どうもありがとう。本当に怪我、しませんでしたか?」
「はい! 何の問題もございません!」
特殊部隊に入隊したばかりの新兵のように角張った国木田を、俺は口を半開きにして見つめていた。何かキャラ変わってんぞ、こいつ。
喜緑さんは特に驚くことも無く、念のためと言いながら国木田に保健室を勧めたあとで上品に会釈をすると、こちらに白い背中を向け、あくまで静々と三年生の教室棟に向かって歩を進めていく。
揺れながら小さくなっていく、飛び立つ水鳥にも似た後姿を見送る国木田の表情を眼下にするにつけ、俺は嫌なデジャブを感じはじめた。
この雰囲気というかオーラと言うか、こう、粘着性の高いゼラチン質のものに、たしか以前も身近で当てられたような気がする。アメフトっぽい何かで。
「……なあ、国木田。あんまし聞きたくないんだけどさ、お前ひょっとして」
妙な予感で背筋をざわめかせる俺に対し、国木田は妖精の国に迷い込んだ夢見がちな少年のように瞳を潤ませ、一言だけ呟いた。
「凄く、可愛い」
外では今も雨が降り続いていて、灰色に濡れた校舎なんて、梅雨にしては珍しくも何とも無い風景だった。
そう、事件の引き金ってのは、大抵何でもない日に起こるんだ。そこらにばら撒かれた枯れ木の枝に擬態するナナフシみたく、不意打ち気味に、何の音も立てずに。
もっとも国木田からすれば、ただの雨だと思っていたそれが、空から降る大輪の薔薇の花びらに姿を変えていくのが見えていたのかもしれない。
廊下を歩けば恋に落ちる。たった今考えた諺だが、結構使えるんじゃないだろうか。辞書に登録しといた方がいいと思うぜ。
「……で、あれなわけか」
放課後になり無人となった俺の隣の席に偉そうに君臨し、谷口は言う。
指の先は、一番前の席で流れる雨をじっと見つめている国木田の方を向いていた。コインランドリーに行く度に乾燥機に張り付く妹みたいだ。何が面白いのかナノピクセルほどもわからん。
あいつとは中学の時から一緒だし、お互いに思春期の秘密とも言うべき急所を握り合っている部分もあるのだが、それでもここまで浮ついた姿を目にするのは初めてだった。新たな一面を発見したと喜ぶべきなのか、ここは。
「何ていうか、教科書どおりの恋煩いだな」
まったくだ。三分に一度、タイマーでもセットしてあるかのように漏れる悩ましげなため息は、聞いてる方までむずがゆくさせてくれる。サトイモ色のため息って感じ。
「ところでキョンよ。その彼女って可愛いのか?」
「ああ、かなり」
「マジかよ! あいつ、結構面食いなのな」
谷口は同好の士を見つけた下着ドロのような笑みを浮かべた。
国木田が面食いかどうかはともかくとして、この前の中河といい、どうして俺の周りにはこう極端な奴が多いんだ。ヒトメボレ? どこの国の食べ物デスカー? って感じの俺にとってみれば、ほとほと理解に苦しむね。
それともまさか、今まで気付かなかったけど国木田にも中河と同様の特殊な眼力が備わってしまっており、情報統合思念体とやらが喜緑さんの背後に透けて見えるってんじゃないだろうな。
早急に部室へ向かい、長門に確認を取らなくては。
俺は机にぶら下がった鞄を、旬の野菜を収穫するかのようにもぎ取って立ち上がると、
「そろそろ行くわ。じゃあな、谷ぐ……」
ガタンっ、と不意に響いた音に、真心がまるで入っていない別れの挨拶はかき消された。
音の発信源である国木田は、引き過ぎて後ろの机と一体化してしまっている椅子もそのままに、長門のようにレーザーを跳ね返しそうなほどメタリックな無表情で俺の方にツカツカ歩み寄ってきたと思いきや、
「キョン。喜緑さんとは、どういう関係なの?」
妙に迫力のある口調だ。俺は内心面食らいながらも、
「どうもこうも、ほら、お前らにも手伝ってもらった機関誌があっただろ? あの件でちょっと顔を合わせただけだよ」
本当は去年の今頃、やたらとでかい昆虫採集をさせられたのが初めなんだが、それを言う必要はないだろう。
「それはつまり知り合いってこと?」
「そうだ」
宇宙人相手にただの知り合いもクソも無さそうなものだが、正鵠を得た表現が思いつかない。
「だから、どうぞ俺なんかにお構いなく……」
「手伝って!」
蚊でも止まってたのかと一瞬思ってしまったぐらい勢いよく机に平手を打ちつけ、目玉が引っ付くほど接近してきた国木田に、またしても尻を踏まれる俺の声。悲鳴をあげる暇も無い。
教室の中央に固まって談笑していた男女数名も、すわ何事かとこちらに目を向けてくる。
俺は片手を踏み切りの遮断機みたいに九十度で上下させて、好奇心でテカテカと光る視線を散らした。嫌らしいものは大抵テカテカ光っているものなのだ。金持ちの前歯とか。
「手伝うって、何をだよ。引越しでもすんのか?」
そう聞くと、国木田は視線だけで一瞬きの間を作り、
「友達になりたいんだ、喜緑さんと。でも、僕はあの人と接点ないから、キョンに間に入ってもらいたい」
「はぁ? ともだちぃ? お前、そりゃ付き合いたいの間違えじゃねえほは」
下手なラッパーのように無理なオフビートでしゃしゃり出てきた谷口の口元を抑え、俺は答える。
「お前の言うことは解るがな、生憎と俺も喜緑さんとはそこまで仲良いってわけじゃないんだ。だから俺に頼むより、自分で何とかした方が早いと思う」
やりようなんて幾らでもあるさ。それにもう見ず知らずの相手ってわけじゃないだろ。お前が花咲か爺さんばりにプリントを振りまいたのは、そこそこインパクトがあったと思うぜ。
国木田は、それからしばらく考え込んだ様子で下を向いたまま固まっていたが、やがて蛇口から漏れた水滴のようにぽつんと頷くと、
「今の時期から生徒会って入れるのかな……」
呟きを残して、早々と教室から出て行った。
しばらく他のグループのさんざめく話し声を耳の中で遊ばせていると、頬杖をついた谷口が、何が面白いのか知らんが、誰のデザインだこのステキ生物はと皮肉を口にしたくなるような公共機関のマスコットみたくニヤついた顔で、
「あーあ、いいのかキョン。無責任なこと言っちゃって。あいつが本当に生徒会にでも入ったらどうすんだ。あそこって、お前らの団と敵対関係にあるんじゃなかったっけ?」
俺は鞄を肩の裏で担ぎ直して、
「ねえよそんな関係。春秋戦国時代じゃあるまいし。敵対してるつもりなのは」
放課と同時に第一宇宙速度で空になった後ろの机を指で小突き、
「こいつだけだ。毎度のことだろ」
黒板の上に据えられた時計を見やると、長針が想像以上に上向きになってしまっていた。
遅いわねあのアンポンタン、なんて毒づきながら指先をイライラと上下させる団長の姿を心の団扇で吹き消しながら、俺は今度こそ谷口に別れを告げ、はるか旧館へと足を向けた。
とりあえず、国木田の感じたそれが本当に一目惚れなのかどうなのか、はっきりさせる必要がある。あとできれば、喜緑さんに彼氏なり彼氏役に割り振られた奴がいないかって事も。
部室に到着した頃には、既に俺を除くSOS団の全員が揃っており、結局長門に相談を持ちかける事はできず終いだった。
普段から行動を共にしている谷口には一応きちんと説明したものの、反恋愛派のハルヒをはじめ、完全に無関係な朝比奈さんと古泉の前で、国木田のプライベートに関わりまくった話をするわけにもいかないしな。
というわけで、気もそぞろだった団活が終了し全員が解散してから、俺は改めて長門のマンションを訪れていた。
家具の一つどころか埃さえ見つけるのに苦労しそうなほど物の少ない部屋で、静かなる長門とテーブル越しに向かい合う。薄い緑茶で喉の粘膜を潤してから、俺は話を切り出した。
恒常的に無口なヒューマノイドインターフェイスは、やはり口を挟まずに黙って耳を傾け続け、やがて北極の氷壁がじわりと溶けるみたいにようやっと口を開いた。二酸化炭素の恩恵だ。
「彼は普遍的な意味で、有機生命体の一個体に過ぎない。情報統合思念体にアクセス可能となるような特異能力の類は一切所持していない」
じゃあ、国木田は俺と同様に正真正銘の一般ピープルだと?
「そう」
ってことは、あいつのあのアレっぷりは、正真正銘の一目惚れだってわけか?
参ったな。八割以上の確率で中河と同じパターンだと踏んでいたが、どうやら当てが外れたらしい。あいつの頭をゴツンとやってやれば、すぐに醒める夢のような話だとばかり思っていた。
むしろ、そっちの方が何かと穏便にすませられそうだったんだが。
俺は一度窓の外に視線をやり、滑り流れる電車の明かりを辿ったあと、改めて長門に向き直り、
「喜緑さんの交友関係とか、わかるか?」
国木田が、あいつ風に言うとお友達になれるような隙はあるのか。個人的な好奇心も混じらせ、尋ねてみる。
「彼女と共有している情報は少ない」
長門はそう前置きしてから、
「現在の様子から総合的に判断すると、有機生命体に対して必要以上の関係性を成立させようとはしていないはず」
それっきり、ブレーカーが落ちたかのように押し黙る。俺は沈黙に答えるように、またひとくち緑茶を啜った。
知りたい事は大体わかった。国木田はどうやらマジで喜緑さんに一撃KOされ、そして幸運にも、喜緑さんは現在フリーだ。
しかし、ああ、何だかなあ。俺はまた、最近癖になりそうなため息を吐いてしまう。
他人のことだし、どうでもいいと言えばどうでもいいんだが、ウサギ並に年中発情している谷口ならまだしも、国木田だしな。いかんせん情報のエントロピーが高すぎる。
しかも相手が意味不明宇宙存在作のアンドロイドと来たもんだ。まだ旅行先でカナダ人とかに一目惚れしてくれた方が安心できる。電話代の請求額が桁上がりするぐらいで済むだろうし。
俺は、身近なモデルケースとして長門が誰かとお付き合いしている場面を想像してみた。
『ヘイ有希! どこか行きたい所はあるかい?』
『図書館』
『オーケイ! さあ、そこのタンデムシートにシットダウンしな! 国道を風のように飛ばすぜ!』
『素敵』
はい、許せません。
というか何だお前は。誰の許可を貰ってそんなヘチマみたいな事言ってやがるんだこの野郎。図書カードの作り方知ってんのか?
……いや、まあ、例えばこんな具合にだな。色々難しいんじゃないかと心配してしまうわけさ。
週末の株価チャートみたく眉を上げ下げする俺の様子をどう取ったのか、長門は再び桜色に染め抜かれたお猪口のような唇を開いた。
「彼女が自身の行動の障害になると感じた場合、彼の情緒に対し何らかの形で干渉することは有るかもしれない」
そしてまた、じっと俺を見つめる作業に戻った。
そうか。こいつらは自分の役割を果たすためにハルヒの周りに集まってるんだもんな。
なら長門の言うように、喜緑さんは宇宙的かつ超現象学的な力で以って、国木田に覆い被さったピンク色の憑き物を払い落としてしまうのだろうか。
それは、どうなんだ。良いのかそれとも悪いのか。俺にはさっぱりわからない。
ただ、アメフトの帰りに公園で聞いた、長門の衣擦れのように微小な声を思い出す。
「友達になるぐらい許されそうなもんじゃないか? なあ、長門」
長門は頷きもせず、鏡の中の自分と対するように、俺を見つめてくる。
「お前だって、結構友達多いのにな」
わざと目を細めて言うと、長門はやはり無言のまま、薄いお茶を静かに啜った。俺もそれに倣い、湯飲みを持ち上げる。
見目麗しいメイドさんもいいけど、照れ屋な宇宙人が淹れるお茶だってなかなかの物だ。
後日、なんと国木田はマジで生徒会に入った。
時期的に正式加入は不可能であり、名目上は自主的なボランティアということになっているらしいが、それにしても大した思い切りの良さだ。
普段落ち着いた奴ほどいざという時の行動力には目を瞠るものがあるというが、どうやらそれを地でいく男だったらしい。
俺は面白半分で頑張れよとか何とか適当に応援しながら、残りの半分は心配だったわけで、いつか国木田が「喜緑さん? 誰だっけ?」とか言い出しやしないかと危ぶんでいたのだが、今のところ杞憂で済んでいた。
しかし、そのあいだ平和な時間を堪能していたのかと問われれば、谷口共々首を横に振らずにはいられない。
問題は主に昼休みの下らないおしゃべり。
国木田が語る、喜緑さんと何回言葉を交わしただの、目の前で失敗をやらかして憂鬱だの、ウェーブ掛かった髪から香る芳醇な調べは教会に響き渡る子供達の聖歌を髣髴とさせるだの、超指向的なトピックスだ。
この世でどうでもいい話はそれこそノイズワードをいくら定義し直しても足りないぐらいあるのだが、その中でも他人の惚気にすらなっていない話は間違いなくピラミッドの頂上付近に位置している。
しかも本人は自然な流れで話しているつもりらしいが、実際は超変則的話題転換を用いており、どうして昔集めていたセミの抜け殻の話から喜緑さんの睫毛のカール具合の話に至るのか未だにわからない。
それでも、友人の夢見るような言葉の数々に水を指すのは憚られるわけで。
俺は江戸時代のカラクリじみたぎこちなさで、片や谷口はバレンタインにもらった変な味のするチョコを無理矢理頬張っているような笑顔で黙って聞いてやるしか術が無かった。
正直、辛かったね。そのうち外耳に緑色のタコができるんじゃないかと思ったぐらいだ。
好成績を旗印に俺たちの前を颯爽と歩いていた国木田はどこに行ってしまったのだろうかと、谷口と二人で慨嘆する事しきりだったのだが、俺はその内、頭を悩ませる余裕すら無くなってしまっていた。
それは珍しく晴れた日の放課後、例によって後ろの席でハルヒがぶちまけた言葉による。
「ねえ、キョン。来週は何のイベントがあるか知ってる?」
イベント? 株主総会か?
弁当箱しか入っていない鞄をいじくりながら適当に応じる俺に向かって、ハルヒは愛想が尽きたとばかりにため息をつくと、
「ばっか、あんたの記憶は一体どこに蓄積されてんのよ。三日に一度ぐらいの周期で燃えるゴミにでも出してんの? これよこれ。じゃーん! 野球大会!」
そんなに近づけられたら逆に見えねえだろ。
ボールとバットの描かれているらしきプリントを中国産妖怪のように額に貼り付けられながら、俺はしみじみと言った。
「今年も出ちまうのか、それ」
「当ったり前じゃない。去年も勝ったんだから、今年も勝たないとね。それが勝者の義務であり責任でもあるわ。早速練習に入るから。制服のままじゃ動きにくいし、めいめいちゃんとした体操着に着替えて部室に集合!」
虚数空間からはみ出してきた責任感を振りかざしつつ、部室で着替えるつもりなのだろう、巾着袋を手にしたハルヒは、チーターのように飛び出して行く。
俺はどうして今日に限って晴れてるんだと日干しされた校庭を恨み、まさかハルヒが願ったせいかと古泉的な勘繰りを巡らせつつ、結局はジャージに足を通している自分に対して悲嘆に暮れながらその後を追った。
それからしばらくは野球漬けだ。
北高野球部に乗り込んだ俺たちは、前回同様無理矢理な手口で、もしくは裏から古泉が手を回していたのか、とにかく練習権を接収せしめた。
ハルヒは去年より表情こそ柔らかいもののその極悪さは少しも劣ることの無いノックを俺たちに課し、やはり朝比奈さんは早々と退場めされ、長門は黙々と自分の方に来た球をグローブに収めていく。
心なしか普段より生き生きとしている古泉はともかく、俺は運動部でもないのにどうしてこんな事を? と自己の存在に対する思索を錨のように深く沈めながら嫌々白球を追っていた。
つくづくスポ根には向かない性格だ。
多分気まぐれなんだろうが、前回より気合が入ってしまっているハルヒに比喩抜きで尻を蹴られつつ、連日授業が終われば野球部の連中に混じって打つの投げるの球を拾うの。終いには朝練とか言い出す始末。
お陰さまで、俺の一日は十時に寝て五時に起きるという七十代前半の老人みたいなタイムスケジュールさ。あいつは俺たち全員を賢いエミールにでもするつもりなのかもしれない。
そんな調子で数日が経てば、俺の一車両分しかない体力ゲージが電子顕微鏡じゃないと確認できないぐらいミニマムになるのも自明だろう。
かくして、学生生活の醍醐味とも言える昼休みは、オーバーワークで火を噴きそうな体を休めるための睡眠時間へと観念的変容を遂げたのであった。めでたしめでたし。
谷口、聴衆役は任せたぞ。緑色のタコができたら見せてくれよ。
朝練の最中、ハルヒの投げるバカに早いストレートを長門が無表情でホームラン軌道に乗せまくっている間、俺は見る影も無くなってしまった体力を少しでも回復させようと、ネット裏で背中を休ませていた。
長門は最初、自身がスピードガンと化したかの如く球が来ても不動の姿勢を貫いていたのだが、ハルヒの「真面目にしなさい!」という言葉を受け、本人なりに真面目にやる事にしたらしい。
やりすぎではあるが、まあいいさ。日頃溜まったストレスの解消になってくれてれば尚いいけど。
俺は宇宙まで飛んでいってそのまま衛星にでもなるんじゃないかと危惧してしまうぐらい高く伸びる白球に導かれ、顔を上に向けた。
ハルヒが野球熱中宣言をぶちかまして以来の数日、湿りを孕んだ空はそれでも乾いた布で磨き上げたような晴天続きであり、梅雨明けだとかニュースキャスターが言ってたが、それもどこまで本当なんだかね。
青空の下で響くカキンカキンという携帯サイトの登録数を思わず確認してしまいそうな効果音を聞くとも無しに聞いていると、古泉がご自慢のニヤケ面をぶら下げたまま、すぐ傍まで近寄ってくる。
蚊取り線香を常備しておくべきだった。
「聞きましたよ、あなたのご友人が生徒会に入られたようで。会長もひどく喜んでいました。使える猫の手は多いに越したことは無い、とね」
机に足を乗せ、タバコをふかす会長の姿が目に浮かぶ。それなら、今度シャミセンでも貸してやるよって伝えてくれ。
「シャミセン氏は非常に賢いですからね。意外といい仕事をしてくれるかもしれません」
ああ。少なくとも、妹の遊び相手は十分こなしてくれてるよ。
「それで。何か用なのか、古泉」
さすがに一年も一緒に行動していると、雑談する雰囲気かそうでないかぐらい俺にだってわかってしまう。
予想通り、古泉は腐りかけたトマトみたく柔い言葉に僅かな真剣さをトッピングして、
「良い知らせ、というわけでもないので甚だ恐縮ではあるのですが……あちら側の組織について、少しお耳に入れたい話があります」
お前が良い知らせを持ってきたことなんて、これまでに幾つも無かっただろ。
軽口を叩きながらも、シリアスな空気にあてられて少しばかり身を強張らせつつ、
「あちら側っていうと、橘京子たちのことか」
「ええ、まさしく」
古泉は一層声を落とすと、
「最近になって、彼女らの動きが妙に慌しくなっています。何か行動を起こそうと考えているのか、それとも別の目的があるのか、ともあれ落ち着きの無い状態であることは確かなようです」
喫茶店で熱弁を振るっていた橘京子の姿を思い出そうとしたのだが、勝手に朝比奈さんが誘拐された時の忌々しい記憶まで浮かび上がってきたせいで、俺は苦りきった表情を作ってしまう。
ちなみに朝比奈さんは現在ねんざで療養中、という事にして、ハルヒの魔の手から遠ざけていた。あの方だけは守らなければならない。俺は中世の騎士のような使命感に現在進行形で燃えているのである。
「事によっては、僕も色々と動き回らなくてはならない場合があるやもしれません。ああ、もちろん野球大会には這ってでも参加しますよ。これまでの練習を無駄にしたくは無いですからね」
安心しろと言わんばかりの気色悪い視線をよこす古泉から目を逸らしつつ、
「心配せんでも、お前がいない間ぐらいハルヒの面倒は俺たちでみとくさ」
だから心置きなく超能力合戦でも陰謀渦巻く組織抗争でも何でもやってくれ。
「非常に心強いお言葉です。ですが、気遣っていただく必要は無いと思いますよ」
何だよ、留守を頼むって事を言いたかったんじゃないのか?
古泉はいえいえ、と高級外車のワイパーのように両手を振りながら、
「涼宮さんの内面については、現在小康状態にあると評して良いでしょう。言いたいのはむしろその逆です。僕が学校を休んだりしても、それは今話した件に従事しているのであって、神人が大発生しているなんて事ではありませんので」
ああ、別にそこまで心配性じゃないさ。それにな、トラブルが起きる時はどうしたって起きるもんだ。
俺にはそれを事前にどうこうできるような力は無いが、いざとなれば長門も朝比奈さんもいるし、ジョーカーを五十二枚重ねたようなハルヒだっているからな。
「しかし、お前もえらく暢気な様子だけど、そんなんで大丈夫か? あっちは何か企んでるんだろ?」
他人の心配ばかりしている場合なのか。灯台の下はいつだって暗いのだ。
「以前も言った通り、彼女があなたや涼宮さんに直接手を出してくるような真似をする可能性はまずないでしょうから。喉元を掴まれないのなら、どこまでいっても小競り合いの域をでません。お互いにね」
古泉は金庫に鍵が掛かっていると信じきった様子で言うと、
「それに、向こうはどうも機関の人間を呼び出したがっているような気配がありまして。特にあなた方の近くにいる僕とは、何がしかの話し合いを持ちたいのかもしれませんね。無駄になる可能性が大きいと思いますが」
革命で敗れた権力派閥に供するにも似た同情の気配を言下に見せたものの、それをすぐに打ち消し、
「あちらにどのような意図があるにせよ、アクションには違いないので。ここで彼女たちに対応するのは僕の役回りでしょう。彼女たちとは肩書きも似たようなものです。お茶会でも何でも、出席するのにやぶさかではありませんよ」
擬古的なレトリックを身体で表現するかのように芝居じみた動きで肩を竦める。しばしの沈黙。
会話の切れ目ってのは、どうしてこうも他の音が目立とうとするのか。部活生のただでさえ大きな声が殊更大きく聞こえる。耳が寂しがっているのかもな。そういやでかい耳を持つウサギなんか、よく寂しがり屋だと表現される。
「お前らの事情はよくわからないけど、俺としてはまた朝比奈さんが攫われるような事態に陥らない限り、何でもいいってのが本音だな」
俺は場を繋ぐために総括的な感想を述べ、
「ええ、あなたらしくて実に結構です。僕もその認識が最も正しいと思いますよ」
愉快そうな古泉の言に不愉快な含みを感じつつ耳を傾けていると、距離が近い分、他を圧倒してドでかいハルヒの声がフェンスを叩いた。
「何よ有希、やっぱりできるんじゃないの。全弾ホームランにするなんて、いっそ清清しいわ。あんたって何か苦手なこととかないわけ? ……さ、次は古泉君よ! あたしの魔球を見事打ち果たしてみせなさい!」
疲れも見せずに腕を回す。魔球もくそも、ど真ん中ストレートしか投げれないだろうがお前は。
散々バットを振り回してもやはり汗一つかいていない長門は、白鷺のように静謐な足取りでベンチに下がると、辞書にしか見えないハードカバーを捲り始める。
古泉は片手を上げてチェンジ申請に同意を示し、バットを持った方の肩をしゃくるように動かした。
「いやしかし、朝からこうして体を動かすのも悪くないものです。少なくとも、あれこれと考え込まずに済みますし。ああ、勿論たまにならの話ですよ。要らぬ考えを巡らせるのも、そう嫌いなわけではありません」
お前の趣味嗜好はどうでもいいが、まあせいぜい頑張って打率を高めてくれよ。インチキ能力を抜かせば、まともにスポーツできる戦力なんてハルヒかお前ぐらいしかいないんだからな。
「お任せ下さい。これでも球技は得意なもので」
自分の超能力に引っ掛けたつもりなのか、微妙なニュアンスの言葉を残して、バッターボックスに向かう古泉。
俺はただぼんやりとそれを見送りながら、橘京子と古泉が森の中の喫茶店でティーポットを分かち合う様を想像しようとしていたのだが、なかなか上手くいかなかった。
湿った空気を長く吸ってたせいかな。想像力だって錆びるのかもしれない。
「キョン」
「あー?」
「相談に乗ってくれないか」
アスパラのベーコン巻きを口に運んでいると、向かいでパンを貪っていた谷口が珍しく深刻な顔で持ちかけてきた。
「何だよ、またフラれたのか?」
「またって何だよ! 国木田の事だ国木田の! お前はいつもグースカ寝てるからいいけどな、最近のあいつってば本当ヒドイんだぜ」
ちなみに、当の国木田は生徒会絡みの仕事があるらしく、人間になれると聞いたピノキオのように勇んで生徒会室に出向していた。鯨の腹では書類仕事が待っているのだろう。
俺はベーコンのせいで赤みがついてしまっている玉子焼きを咀嚼しつつ、
「じゃあ、何だ。ひょっとして、関係が進み過ぎて生々しい話にまでいっちゃってるとか?」
ガラスでできた大人の階段を恐る恐る登っているというのか、あの童顔が。割と下の方にいる俺としてはできれば蹴落としてやりたいね。他人の不幸は玉子味。
「いや、そういうドキドキ要素があるならまだいいんだ。かなり腹は立つけど今後の参考になるし」
すんなよ。
「そうじゃなくてだ! あんな幼稚園児の砂場遊びみたいにやれ指の先が触れ合いそうになっただの数センチの距離で目が合っただの言われ続けてみろよ。プラトニック至上主義に宗旨変えしちまいそうだぜ、俺は」
甘いな谷口よ。最近の幼稚園児はママゴトしてても平気で浮気とか愛人とか離婚とか口に出すらしいぜ。これも欧米化の一様相と取れないこともない気がするな。ろくでもないものばかり輸入してる。
「欧米化でも過酸化水素水でもいいけどよ、とにかく何とかしないと、もうこの国はお終いだ。少子化に止めの一撃を打ち込みかねないんだよ」
一国を滅ぼす純情だ。どう考えても言い過ぎである。
呆れている俺目掛けて、谷口は口の端からパンくずを飛ばしながら、
「つまり、今のあいつらの距離感が全ての元凶だ。そこで俺は考えた。昨日は寝ずに考えた。そして、もういっそ爆発させてやろうじゃないかという結論に至った」
プルトニウムの新しい活用法を見出してしまったマッドサイエンティストのように目を見開く。爆発って、二人の間を無茶苦茶にする気なのか?
「おいおい、それはいくら何でも」
「おーっとっと、勘違いすんなよ。爆発っていっても、何も吹き飛ばそうってわけじゃない。これはあいつの為でもあるんだ。いいか?」
谷口はいかがわしい睡眠術の大先生にでも師事したのか、人差し指をゆらりと揺らすと、
「このままじゃどっちみちジリ貧だろ? だから、ここらでパーっとイベントを提供してやってだな、それで二人の距離が近づくならよし。ダメになるならそういう運命だ」
なんか去年も似たような台詞を聞いた気がする。ナイフの光沢のようにギラついた夕暮れ時の思い出だ。
俺は最後に残ったから揚げを口の中に放り込み、冷たい油のかたまりを噛み締めつつ、
「そういうのは他人がどうこうしたらダメな部分だろ。第一、俺は今野球に賭ける青春なんだ。忙しいんだよ。何かやるんなら、一人でやってくれ」
ただし、あんまり邪魔立てするんじゃないぞ。馬に蹴られたくないならな。じゃあ、俺はもう寝るから。
「待て待て、まだ相談の部分まで達して無いんだって。今寝たら、お前が長門有希と放課後の教室で抱き合っていた事を涼宮にチクるぞ」
そりゃ完全に誤解だし、ハルヒに言ったからといってどうなるわけでもない。
だが、この調子で騒がれでもしたら眠れるわけがないのも確かで、俺は沈めていた顔を上げ、渋々と聞いた。
「……何なんだよそのイベントってのは」
「だから、それをお前と今から考えようって相談だよ。ドゥーユーアンダスタン?」
すっげえうざいイングリッシュで返される。ひどい昼休みだな、今日は。
「まま、そうため息をつくなよ。幸せが逃げていく足音もきっとそんな音に違いないぜ。ちゃんと俺なりに案を考えてきたからよ」
その案がまたひどかった。不良っぽい格好をした谷口並びに何故か俺が喜緑さんを襲い、そこをわざとらしく通りかかった国木田が助けにはいるという、完全に二十世紀的発想だ。
土佐日記と同じぐらいの古典っぷりに舌を巻く俺の方を見もせずに、谷口は自信を溢れ出させ、
「グラサンとタトゥーシールさえあれば、俺たちゃ北高のギャングスターだぜ」
こいつの頭は常に引き潮なのだ。脳みそはもうカピカピ。
「俺たちがギャングスターになるより、永久機関が発見される方がだいぶ早い。もっと現実的な話をしてくれ」
「じゃあ合コンでもセッティングして、飲んだ勢いでこう、何かいい感じに……」
「それは色々とまずいだろ。あと、国木田は下戸だ。すぐに寝るぞ」
中学が終わり遊び呆けていた春休みに勢い余って少し飲ませた事があるんだが、ビールを舐めただけで即入眠だった。
「ちっ。なら、もういっそ川原で殴り合わせるしか……いや待てよ。その前に、図書館で同じ本に手を伸ばす二人ってのはどうだ。不意に重なりあう指先、そこにはいつの間にか恋の花が」
「咲かねえよ」
っていうかそもそもプロセスをはしょりすぎだろ。
その後も、当然と言えば当然だし別にそれでまったく構わないのだが、谷口のミカンを包装する網みたく用途の限られた頭からは瞠目すべきアイディアなど出てはこず、いい加減眠らせてくれとボヤいていると、
「谷口!」
食堂にいるはずのハルヒが、ロケット花火みたいな勢いで教室に飛び込んできた。散る火花のような目線は谷口を焦がしている。
「あんた、今週の日曜空けときなさい。野球大会に出してあげるから。……あれ、もう一人のちっこい奴はいないの? キョン、あいつにもちゃんと伝えとくのよ。もち、妹ちゃんにもね」
それだけ言うと、せわしなくも廊下に戻り、またいずこかへと駆けていった。
後で聞いた話によると、助っ人として参加するはずだった野球部の連中が、揃って辞退したらしい。
野球部の監督を優に越えたハルヒの鬼コーチっぷりに恐れをなしていた彼らだから、安請け合いしといてもし負けでもしたら何されるかわかったもんじゃないと思ったんだろう。
非常に正しい判断だ。もれなく世界が壊される。今はそんな事しでかさないと信じたいものだが、さて、どうなのかね。日曜日を乞うご不安だ。
「おいおい! 俺はまだ出るなんて言ってねえだろ!」
ハルヒの足音も聞こえなくなってから遅すぎる抗議を口にする谷口を横目にしながら、俺は胸の内でふと湧き出した思いつきにすっかり気を取られてしまっていた。
野球大会、か。
放課後になり、シャナンハムも凍えそうなほど厳しいハルヒの野球特訓も終了する時間になると、忘れ物をふと思い出したかのような唐突さで、小さな雨の銀幕が空を覆った。
もう少し早く降ってくれていれば、ヘッドスライディングを強要されて泥まみれになることも無かったかもしれないのに。
下駄箱の前で突っ立ったまま口を尖らせる俺の脇を、幾人かの生徒が頭に鞄を乗せながら通り過ぎていく。教科書よりも自分が大切なんだろう。わかるねその気持ち。
勝手に同調しながら、せんでもいいのに無理して成長しようとする筋肉の痛みをもみほぐしていると、背後から声がかかった。
「あれ、ここで会うのって珍しいよね。今帰り?」
「ああ。たまには一緒に帰るか」
振り向いた俺を一瞥し、靴を履き替えてすのこから降りた国木田は、傘立の中から手探りで一本、体の割に大き目な藍色の傘を選び出すと、
「キョン、ちゃんと持ってきてる?」
俺は頷いて、鞄の中から親父臭い折り畳み傘を引き抜いた。備えあれば憂い無し。最近天気予報が信じられなくなってきたからな。自分の機嫌を鏡に映すように空模様を変えてしまいかねない奴がいるせいだ。
国木田は気の知れた感じの無表情で軒先に出ると、藍色の傘を広げて一歩踏み出した。俺もその後に続く。
軽微な雨粒が弾ける、潮が流れるような間断ない一音を聞きながら、坂を下る足並みを揃えた。
「野球大会の話聞いたか?」
「ああ、聞いた聞いた。去年は勝っちゃったからねー。今年はどうなるだろ」
どうやら出る気まんまんらしい。相も変わらずノリのいい助っ人だよ。昔から無駄に付き合いのいい奴だからな。たまには迷惑賃を払ってやらないとバチが当たりそうだ。
切り出すタイミングを考えようとして、途中でやめた。面倒だし、俺はそういう気の使い方があんまり得意じゃない。
「どうせお前が出るんなら、誘ってみたらどうだ? 喜緑さん」
我ながら何の脈絡も無い提案は国木田にとってもよほど不意だったらしく、縄張りの草が全て枯れる夢をみたせいで寝違えたヌーのように俺目掛けて首を捻ると、
「……なんで?」
目をむいたまま口パクした末、端的に疑問を表現した。
俺は事前に用意していた口上を述べる。
「どっちにしろ補欠が欲しかった所なんだ。ハルヒはあんなんだから勝たなきゃ済ませられない性分だし、特にうちの妹なんて野球に関しちゃそこらのダンゴムシといい勝負だからな。もう少しまともな人材が欲しい」
「それで、何で喜緑さん?」
「知り合いだからに決まってる。俺は他にも探してみるつもりだし。補欠は何人いたっていいだろ? だから、お前には喜緑さんをあたってみて欲しいって、そういうことだ」
もちろん俺にしてみれば野球の勝敗の行方など新聞の地方芸能欄以上にどうでもよく、他の補欠を探すつもりなんて最初っから無かった。
谷口に釘を刺しといてなんだが、学外でプライベートな時間を共有すればもうちょっと仲良くなれるんじゃないかという短絡的な考えに基づいた、これは完全なお節介だ。
都合のいいことに野球大会が目前に迫っていることだし、こいつを利用しない手はないさ。ドラマチックベースボールだ。たまには汗臭くない異性間のドラマだってあるかもしれないだろ?
ま、あれだ。あんまり自分に縁がないと、他人の中にそれを認めるだけで満足してしまうものじゃないか。こういう心理状態って何か名前がついてたような覚えがあるな。負け犬シンドロームだっけ。
ああ、どこかに俺の愛の矢を朝比奈さんの胸の真ん中に突き刺してくれる親切な代理狩人はいないのだろうか。
切ない気持ちになりながら、俺は続ける。
「誘うだけ誘ってみてくれよ。SOS団からの頼みって言えば、多分来てくれるような気がする。もしダメでも、いい話の種になるんじゃないか」
部長氏の件を貸しなんて言うつもりはないし、向こうもそう思っちゃいないだろうけど、ひょっとしたら、な。
それに、大会には長門だって出場するわけだから、あいつの監視が喜緑さんの役割だとしても職務違反ってことにはならないだろう。
薄い雨は止まない。干されたシーツを何枚も潜るようにしてしばらく歩いたあと、国木田は傘の下に戻ると、
「わかった。誘ってみるよ」
何でもない風に答えているが、どうなんだろう、本当は。やっぱ青臭い葛藤とかその他諸々が煮詰まっているのだろうか。背丈の関係上、表情を窺う事はできなかった。大は小を兼ねないな。
「国木田」
気付けば、俺の口は開いていた。あんまり自然に開いたもんだから、自分でも少し驚いたぐらいだ。
「なに?」
「お前、どうしてそんなに喜緑さんと、その、あれだ、友達になりたいんだ?」
こういう事は誰にだって滅多に聞いたりしないんだけど、今回は成り行き任せの特別の特例ってことで勘弁してくれ。
なんせ相手があの喜緑さんだからな。俺たちSOS団の今後にダイレクトに関わるキャストであることはもう間違いなさそうな人だ。
これ以上俺の知らない所から張り巡らされた蜘蛛の巣状の複雑な関係図に、不用意な線を引くのはおっかない。
例の如くポロスの意見に反駁するソクラテスのような舌好調喜緑トークを覚悟していた俺に向かって、しかし国木田は静かに呟いただけだった。
「さあ、どうしてだろ」
どうしてだろって、お前な。いつも散々あーだのこーだの言ってるじゃないか。
「それはそうなんだけどさ…………じゃあ、一年前のキョンはどうして涼宮さんに声をかけたの?」
はあ? どうしてあいつの名前が出てくるんだよ。
「いいからほら、きちんと答えてよ」
何だか妙に強気だな、最近のこいつ。そもそも先に尋ねたのはこっちの方なんだが。
納得いかない部分もあったが、わざわざ口に出すほどのことでも無いし、痛くも無い腹を藪医者に探られるのは真っ平御免なので、至って普通に答える。
「そりゃ、たまたま席が後ろだったからに決まってる。あいつの苗字が涼宮だったせいだ。明治維新が悪い」
「嘘だね。そんな理由じゃなくて、もっと色々考えた上でだろ? ああしたいとか、こうなればいいなとか、色々と」
雨にも負けずに断定口調で返されてしまった。俺は半ば反射的に、痛くも無いはずの腹の辺りを掻いてしまう。
言ってくれるじゃないか。しかし、ギブアンドテイクなのはどこも一緒だ。聞くには聞かせなくてはならないのだろう。例えそれが身体の内側の話でもな。
俺はいらん事を聞いてしまった自分の気まぐれを呪いながらも、実際に耳にしたことなんてないが、いわゆる蚊の鳴くような声で言った。
「わかんねえ。色々と言われれば、色々かもな。説明できるようなものでもないし、もう大して覚えてない」
それからしばらく何のリアクションも返ってこず、雨音に被って聞こえなかったのだろうか言い損だなチクショウなんて思っていると、やおら隣の傘が喋りはじめた。揺れる藍色は紫陽花のようだ。
「僕もそんな感じ。僕らは生きて動いてるんだから、言葉だけじゃ伝えきれないものも、やっぱりあるんだよ」
どうやら、恋は人を詩人にするってのは本当らしい。何言ってるのかさっぱりわからない。随分スピリチュアルだが、魂の在り処とかその辺の難しいことを言いたいのか?
見栄を気にする年頃の俺は、それらしく詩的な表現で答えようと、おがくず頭をクランクで捻ってみる。
母は言う 洗濯物が 乾かない 俺の恋人 濡れたTシャツ
マーヴェラス。どこかの賞とか狙えるかもしれない。
「キョンってさ、照れ隠しは結構下手だよね」
去り際に国木田がそんな言葉を残したのは、俺の才能に嫉妬したためだろう。
歳月が流れるのは早いもので、いよいよやってきてしまった日曜日だ。
天気はまさにピーカンと叫びたくなるほどの晴れ晴れとした青空で、阪中家の飼い犬を髣髴とさせる白くて浮ついた雲が産卵期のメダカの群みたいに漂っている。
朝も早くからジャージ姿で市営グラウンドに集合したメンツは、SOS団の五人と、谷口と国木田の二人。そして毎度御馴染みの、
「よーっし、頑張っぞーっ! 目指せ三冠王だっ! 打って投げて……もっかい打つ!」
ハルヒに次いで元気大爆走なジャージ姿の眩しい鶴屋さんと、
「あ、みくるちゃん、見て見てこのジャージ! お母さんに買ってもらったんだよー」
いい加減見飽きた感のある俺の妹。明るいピンク色のジャージに身を包んでいる。ガキっぽくてよく似合ってるじゃないか。
そしてさらに、その見事な直線を描く胸に抱かれているのは、
「にゃごる」
シャミセンである。何で連れて来たんだよお前は。銀河鉄道にも乗れなそうな猫だぞ。バットなんか持てやしないだろ。勿論グローブも以下同文だ。
「シャミはね、十番目のナインなの。すっごく上手なんだよ。こないだ石鹸でバスケットボールしてたもん。ねー、シャミー?」
そりゃ凄いな。でも、野球にドリブルテクニックは必要ないんだぞ。
「いいじゃないのキョン。ベンチに猫なんて、何か縁起が良さそうだし。シャミセン、あんた小判持ってないの?」
「にゃぐ」
おい、あんまりヒゲを引っ張ってやるな。機嫌が悪くなるんだよ。
「意外とデリケートなのね、あんたって」
ハルヒはシャミセンの頬を指で弾くと、
「ところで」
そのまま上半身をぐるんと一捻りし、芋ほり遠足かよと突っ込まれそうなジャージ集団の中にいつの間にやら佇んでいた喜緑さんを目ん玉に収め、
「なんであなたがここにいるの? ……まさか、あのメガネ野郎の差し金! スパイガール!」
もちろんスパイガールなどではなく、国木田の緩んだ口元から察するに、喜緑さんは快くお誘いに乗ってくれたのだろう。相変わらず、長門とは目を合わせようともしないが。
俺は一人で会長陰謀論を唱えだした妄想大好き女子高生の手首を素早く捕まえ、即席チームメイトとなった八人からキャリーバッグを運ぶようにして引き離す。車輪が無いせいで重いったらない。
「ちょっと、何すんのよいきなり」
数歩分離れた所で、思い出したように腕を振り解かれる。お前がいつも俺にしてる事だろうが。
殺意さえ感じてしまいそうな程筆舌に尽くし難いハルヒの視線を気にも留めず、もう慣れたからな、曲芸師のような軽やかさで俺は言う。
「ときにだ、ハルヒよ。野球に必要なものは何か知ってるか」
ハルヒは靴下を耳にはめる奇人に遭遇したかのような顔を一瞬見せたが、気を取り直したのか不機嫌面に戻ると、
「バットとグローブと根性よ。決まってるじゃない」
大事なものが色々と足りない気がするが、まあそれはいい。俺はやれやれとばかりに額に手をやり、
「甘いなハルヒ。お前は野球のことを原形質ほども理解していない」
「はあ?」
「いいか、俺たちの野球には、決定的に欠けているものがある。それは」
何言ってんのかしらこのタコ、って感じの表情を浮かべるハルヒの後方、はじめから描き込まれていたのではないかと疑ってしまうほど周囲の風景に自然と溶け込んでいる喜緑さんを指差して、
「マネージャー、もしくはそれに準じて違和感の無い人材だ」
見ろよあの純朴で清楚な感じ。ヤカンでも持って立ってたら、そりゃもう校庭のマドンナとして汗臭い連中の完璧なマネージメントをしてくれそうじゃないか。
「…………」
これはハルヒ。ノーリアクションである。あれ? おかしいな。こいつのことだから、
『なるほど、あんたにしては気が利いてるわ。たしかにマネージャーは必要よね』
なんて言いつつ納得すると思っていたのに。いつもの嫌になるぐらいインフレ気味なテンションはどうしちまったんだ。
それどころか、ハルヒは一瞬で目の形を杭の底のような鈍角三角形に整形すると、
「あんた、ひょっとしてああいうのがいいわけ?」
見当違いなことを言い出す始末。いや、俺はどうせ年上なら朝比奈さんの方がよりアバンギャルドにトキメキを、
「うっさいバカ。長口上はいいのよ」
フリーズドライされた声色。花の保存には適しているかもしれないが、言い草としてはあんまりだ。自分が振ってきたくせに。
俺は心なしか殺意五十パーセントアップな視線に晒されて流石にたじろぎつつ、
「そういうんじゃねえよ。前にたまたま会った時に野球のこと話したんだ。そしたら観に行きたいって言うからさ、別にいいだろ? ベンチも客席も大して変わらないし」
最近、出任せばかりが上手くなってる気がする。周りが秘密主義の奴らばっかりなせいに違いないね。
「……ふうん。ま、追い返すわけにもいかないしね。どうせだから、たっぷりとマネージメントしてもらおうじゃないの」
待て、何だその表情は。口元は笑ってる癖に目が三角のままじゃないか。もうちょっと丸めなさい。
「あんたがマネージャーって言ったんでしょうが。さしあたってコスチュームチェンジしてもらわないとね。本当はあたしが着るつもりだったんだけど、譲るわ。ジャージの方が締まって動けるから」
ハルヒはそう宣言すると、受付に向かい歩き出す。
野球とコスチュームという二つの概念から止揚されうるものなんて、俺の頭には一つしかなかった。それが少し悲しい。
「お前、またあの衣装持ってきたのか」
「たまには袖を通さないと生地が老けるでしょ。それに、そっちの方が気合も入るみたいだし」
ハルヒは振り返らなかったが、おそらくアヒルみたいな口をして言ったのだろう。
「あんたみたいなマヌケは特に」
俺はマヌケ面のまま、慣れないお節介なんて焼くとろくな事がない、と早くも後悔していた。
今回の対戦相手は、幸か不幸か上ヶ原パイレーツではなく、中年のおっさん達がボルボックスのようにひしめき合ってできた即席チームだった。
聞く所によると全員が近所の商店街の店主らしく、かつて白球を追いかけた者同士がセンチメンタリズムを介して繋がり合い、今回出場に至ったという。
わざわざ発注したと思しき真新しいユニフォームからはみ出し気味の腹はこちらの油断を誘うが、全員が野球経験者であるという事実を鑑みるに、弱小というわけではないはずだ。
しかし、和やかな練習の様子を見ていると、勝ちに来たというより楽しみに来たって感じで、去年みたいに大人気の欠片も無い大学生よりは都合のいい相手だと言えるだろう。
「さあみくるちゃん! それと生徒会の人も! 今まさに戦へ赴かんとする猛者どもの士気を高めるの! あたしが昨日わざわざ作り直した頑丈ボンボンなんだから、心配しないで振って振って振りまくりなさい!」
「ひええぇ〜、振ります、ちゃんと振りますからぁ〜! そ、そんなに揺らさないでくださ〜いっ」
「みなさん、頑張ってくださいね」
十人と一匹しかいないくせにチアガールを二人も擁したうちのチームが相手からどう見えるかってのは、このさい考えない方が良さそうだ。人間万事知らぬが仏。
さて、それで肝心の試合内容なのだが、結論から言ってしまえばごくごく普通の健全な草野球だった。
打順とポジションは面倒くさいからというハルヒの超個人的な理由により前回と同じままで決定し、両チーム整列の後にスポーツマンらしく短い挨拶を交わして試合開始。ジャンケンで負けた俺達は後攻だ。
はじめはハルヒの女子高生らしい細腕とはとても結びつかない球速にビビっていた相手チームも、バカ正直なストレートしか投げることができないと見抜くや否や、バカスカ打ちはじめやがった。
下手に球威があるもんだから飛距離が伸びる打球もまま有り、俺と谷口は色んな体液を撒き散らしながら、得点板に致命的な数が描かれないよう、音楽室の防音壁のように穴だらけの外野に走りこみ続けた。
何とかかんとかアウトをもぎ取り一転して攻撃となると、こちらも負けてはいない。
長門には事前にやりすぎないよう注意しておいたおかげでぶっちぎりホームランは遠慮しているらしかったが、それでも打率十割のヒット製造機と化し、ハルヒ、古泉、さらに鶴屋さんも安定したバッティングを披露している。
相手ピッチャーも朝比奈さんや妹に投げる時はまるで愛娘に接すように柔い球を放ってくれて、それでもまったく打てないわけだが、少なくとも怯えたリスのような表情を朝比奈さんが浮かべる事は無かった。
俺と谷口の体内における水分量の著しい減退を除けば、試合は一進一退。
神風のごとき幸運に加えて猛練習の成果もあったのだろうが、長門の魔法に頼ることもなく、去年に比べれば風のない湖面のごとく穏やかに進行していたのだ。
やっぱり草野球ってのはこうでなくちゃいけない。去年のようなどこもかしこも凍った水面みたいにギスギスした試合なんて、それこそテレビの中でやってくれれば十分だ。
というわけなので、以下、あんまり普通じゃなかった所だけダイジェストでお送りする。
ハルヒはまだ投げ勝っていたのだが、守備の連携が十分に整っておらず先制点を許してしまい、1−0で迎えた一回裏。
三塁上ではしょっぱなから気持ちのいいスリーベースを放った背番号一番ハルヒがふんぞり返っており、打席では朝比奈さんが落ち着かない様子で子ウサギのように小刻みに震えている。
「みくるちゃーん! 絶対当てるのよ! 当てるにはいつもより早く振るの! 早く振らなきゃ当たらないんだから、早めに振りなさい!」
三段論法で真理を証明しようとするハルヒの声に背中を押され、おっかなびっくりバットを肩の位置まで上げる朝比奈さん。
「よ、よろしく、おねがいしまぁすっ」
丁寧な挨拶に笑顔で頷いた三十代後半であろう小太りのピッチャーは、下投げでゆーっくりとした球を放る。綺麗な弧を描き朝比奈さんの下へと舞い降りる白球。目さえ開けていれば確実に打てそうな球なのだが、
「は、はわああぁ〜っ」
目を頑なに瞑っていた朝比奈さんはバットを思いっきり空振った末に、自分の方がくるくると振り回され、地面に尻餅をついてしまいそうになる。あわやパンチラ!
夢と希望の名の下に思わずしゃがみこんでしまった俺と谷口の視界に入ったのは、清純な白でも大胆な黒でもなく、回転しながら高速で飛来する土色の三塁ベースだった。
いかん。俺は咄嗟に地に伏せる。
「へぶっ!」
ベースはそのまま谷口の頭にぶちあたり、
「うわぁっ」
たまたま隣にいた国木田の体に落下。
「こらー! パンツなんかその気になればいつでも見れるでしょうが! 今この時ぐらいは試合に集中しなさい!」
並外れた反射速度でベンチに走り込みながら投擲したらしい。息を上げたハルヒが叩き起こされた猪のように突貫してくる。にしてもさすがピッチャー兼強打者。驚くべき豪腕とコントロールだ。
どうすればいいのかと固まっている相手チームとアウトを宣告するタイミングを逸したらしい塁審を意に介さず、ハルヒはベースを拾い上げてのっしのっしと三塁に戻っていく。
というか、あいつ思ってた以上に真剣だな。こりゃ負けたらやばいかもしれん。
「うっわ……キョンが避けたせいで泥だらけだよ」
それは俺のせいではなくて多分パンツのせいである。
二回表。朝比奈さんの後に控えていた長門のヒットで一点を返したため、現在1−1。
三塁側にゴロ気味で跳ねた打球を、鶴屋さんが素早く追いかける。
「よっしゃっ! もらったっ!」
さすがに器用な鶴屋さん。上手くグローブが球を掬い上げた、と思いきや、
「にゃおん」
「あれ? わ、ま、待つにょろ〜!」
飛び出してきたシャミセンが滅多に見せない野性を発揮し、玉ころがしの要領でボールを追いかけやがった結果、相手チームにもう一点献上。
数分後、球場には妹により捕獲されハルヒの手で丁重にリュックに詰め込まれるシャミセンの姿が。
十番目のナイン、退場の瞬間であった。
さらにその裏。古泉が右中間に抜けるヒットを放ち一塁に出て、続く国木田は三振。次打席の鶴屋さんがバントを上手く転がして古泉を走らせる。
ツーアウト二塁。一番のハルヒに繋げるため、何としてもヒット性の当たりが欲しい所なのだが、
「チアガール……いいじゃないか」
続く打者であるはずの谷口は、ベンチ前でウェルテルの如き苦悩の表情を浮かべつつ、遠い目のまま見えない誰かに話しかけていた。おっかない。
「なあ、キョン。友人の想い人を盗るのって、アリだと思うか?」
んなもん盗る暇があったら塁の一つでも盗ってくれ。
「……すまん国木田。俺、あの子のハートにホームスチールをかけてくる!」
ナイスセンターフライだった。
ブーイングも何のその。一皮剥けた男の顔でベンチに戻ってきた谷口は、
「いやー、やっぱり友達は裏切れないじゃん?」
結果的に友情の勝利である。
続いて四回表、4−2で、ツーアウト二塁一塁の場面。
バッターはいかにも強肩といった風体のオッサンで、バットの芯から僅かにずれた打球がレフトに飛び、あわやホームランかというぐらい高く伸びる。妹はそれを見て、
「うわー、たかーい」
本気で感心していた。まるで花火気分だ。谷口が全力疾走し、何とかキャッチ。走らされすぎて倒れこむ谷口を横目に、俺は妹の頭をはたいた。もうちょっと頑張りなさい。
「きゃは、ごめんなさーい」
ノーダメージである。
五回裏。ノーアウトのまま俺の三打席目が回ってきた。
四回裏に鶴屋さんが活躍して下さったおかげで4−4のスコアまで追いついており、今も二塁には長門の姿がある。逆転するチャンスだ。
ちなみに、俺の今までの成績は二打席ノーヒット。一打席目は緩いピッチャー返しをあっさりと処理され、二打席目は三振だった。
ピッチャーはどうやら変化球、下に抜けたのでフォークか? とにかくそれを持ち合わせているらしい。そこまで切れがいいわけでもないし直球も大して速くないのだが、素人の俺からしてみたらやはり厳しかった。
前打席の三振も散々揺さぶられた末の空振りだ。
しかし、今は流れを変える重要な場面。いい勝負なだけに、かかるプレッシャーも超重量級である。
「キョン! 火星までぶちかますのよ! NASAには事後承諾でいいからね! 打てなかったらローラーで轢くからそのつもりで!」
特に約一名が応援紛いの脅迫をくれるせいで、その重さはねずみ算的に増す一方だった。背ローラーの陣。
俺は一度素振りして気を落ち着けたあと、白線で縁取られたバッターボックスに入る。
さあ、俺のピタゴラスもビックリな明晰頭脳よ、今こそ目を覚ますときだ。
球筋を読め。あのヘラクレスも嘔吐するような猛練習を思い出すんだ。相手の肩部筋肉の動きやその他のあらゆる癖から次の球種を判断し適切なバッティングを、
「ットラーイク! バッターアウト!」
「ばかキョーーン!!」
ぶっちゃけ無理である。
五番の妹が三振に終わった頃、試合の残り時間はあと五分を切ろうとしていた。
一試合目には九十分の時間制限が課せられている。途中でシャミセンを追い回したりしなきゃもう少し余裕があったのかもしれないが、今更猫科の習性に文句をつけたところで始まるまい。
古泉が打席に立ち、バッターズサークルでは国木田が待機の姿勢に入る。
俺は一通りハルヒに罵声を浴びせられたあと、隅のベンチで深い森のような静けさをたたえつつ試合を見守る喜緑さんの隣に腰を下ろし、何とはなしに尋ねた。
「見てるだけで退屈じゃなかったですか?」
「いえ。とても興味深く観戦させてもらっています」
タオルで瞼の汗を拭ってから試合に目をやると、古泉がまだファールで粘っている。
せっかく隣に座ったんだし、俺ももうちょっと粘って喜緑さんと話してみるべきなのかもしれないが、これ以上は話題が続きそうにない。どうせつまらない男さ。
ポップかつティーンでメンズっぽい自虐を弄しながら、タオルの陰から喜緑さんの方をちらと窺ってみても、頑ななまでの微笑からは何も読み取ることはできなかった。
長門と対する時のように瞳の動きだけで真意を察するなんて真似はもちろん不可能だ。
だから、喜緑さんが何を考えて今ここにいようが俺には全然関係無いし、たまに視線を寄越してくる国木田のことをどんな風に捉えているのかなんてのも、知ったことではない。
「今日、来てもらえて良かったですよ。人が増えたお陰で、みんな去年より騒ぎやすかったと思います」
俺はただ、二人のチアリーダーを並べてサイケデリックな動きを指南していたハルヒの姿を思い浮かべながら、苦笑交じりに礼を述べる。
すると喜緑さんはこちらを向くなり、牡丹のように座ったままで軽く会釈を返してくれた。雅なり花鳥風月と女子高生。国木田が惚れ込むのもよくわかるね。
見惚れているうちに、やにわに快音が響き渡り、グラウンドでは人が慌しく動いていた。どうやら古泉がヒットを打ったらしい。
これで一塁三塁になって、試合を勝ちで終わらせる最後のチャンスがやって来た。しかもバッターは国木田。今日いいところ無しだったあいつがカッコいい姿を見せるチャンスでもある。
ただ難を言うと、ノーヒットの俺が言うのもなんだが、あいつはそこまで野球が上手いわけではない。あんまり期待をかけてやらない方がいいのかもしれん。
同点のままで終わってもまだジャンケンがあるはずだし、必要以上のプレッシャーを感じたりはしていないだろうが……ま、何はともあれ応援しないと。
俺はベンチから立ち上がろうとして、
「付き合ってほしいと言われました」
中腰のままロダンの作品のごとく静止するのを余儀なくされた。
チームメイトが一際大きな声援をあげる。国木田がバッターボックスに入ったらしい。俺は騒音のせいで突飛な聞き間違えを犯したのかと思い、
「あの、今何か言いました?」
「はい。先ほど付き合って欲しいと言われました。彼に」
チアガール姿で微笑む喜緑さんの視線の先には、バットを構える国木田の姿がある。
「つ、付き合ってって、あいつからですか?」
「ええ。次の打席でヒットを打てたら、明日の放課後付き合って欲しいと」
「……そっちですか」
肩透かしを食らったせいで項垂れた俺は、だが喜緑さんに気取られないよう、わずかに首を捻った。
いくら浮ついてるからって、あいつがそんな漫画の読みすぎで青春を曲解したような台詞を吐くものなのだろうか。
らしくないと言うか、まあそう言ってしまえば最近のあいつはずっとらしくないのだが、今一つ納得し難い部分がある。
そもそも先も述べたとおり国木田の野球センスは決して磨かれているとは言えず、都合よくヒットを打てるなんて本人も思っているわけ無いのに、と、疑念が最後まで形になる前に、バットが硬球を捉える音が鳴り響いた。
「マジかよ!?」
湧き上がるベンチから一歩遅れて身を乗り出すと、放たれた打球は前に出ていた外野の裏をかくように鋭く飛びすさり、フェンス間際でようやくバウンドする。
相手チームがボールを追っている間に長門は早歩きでホームベースを通過した。
逆転のタイムリーヒット。
呆然とする俺の隣で、喜緑さんはギリシャ彫刻のような微笑みを欠片も崩そうとはしない。
すぐさまタイムアップが宣言され、国木田の凱旋のあとでひとしきり甘美な勝利に酔った俺たちだったのだが、次の試合ができるほどの体力なんて微塵も残っちゃいない事にも誰とも無しに気付いていた。
そのため俺は皆を代表してハルヒに二回戦の辞退を進言し、初めぐずっていたハルヒも俺の妹が空腹を訴えはじめる段になるや、
「そんじゃ、昼ごはん食べにいきましょうか!」
ということで、去年と同じファミレスを利用することと相成った。
それこそ去年の焼き回しのような展開なのだが、一つだけ違うのは、今回俺の財布に何らかの札の類、いやさ硬貨すらも入金されず、要するに出費を喜んで受け入れられるほどのキャパなんて皆無だということだ。
「さあみんな、じゃんじゃん頼んでいいわよ! 今日はうちのキョンがご馳走してあげるから!」
「おい待てこら。どうしてそうなるんだ」
隣で暢気な鼻歌を奏でつつメニューを手に取るハルヒに、俺はしごく真っ当な疑問をぶつける。今モノローグで金無いって言ったばっかりだぞ。
「ヒットも打てないようなへたれの声なんてあたしの耳には聞こえないわ」
何だよ、谷口だってノーヒットだったじゃないか。どうして俺ばかり親戚がやたらと多い旧家の正月みたいにお年玉的な費用を、しかも大半が同級生であるこの場で納めなければならないんだ。疑問は尽きない。
「あんたは仮にもSOS団の正式メンバーでしょうが。不甲斐ない団員を持ってしまった団長の無念に満ちた心中ぐらい察しなさい」
邪魔な雑草でも間引くかのようにすげなく返したハルヒは、『今月のスペシャルハンバーグ』と題されたラミ入り一枚紙のメニューを眺める長門に向かって、
「有希、何でも好きなやつ頼んでいいわよ。そうね、これなんてどう? ファミレスのくせにえらく高い価格設定が食欲をそそるわ」
こいつ、四番である俺が活躍しなかったのを根に持ってやがる。どうせ十人分なんて絶対払えないし、何とか誤魔化して割り勘にさせる術を考えないと。
料理を選ぶ前に金策を講じなくてはならない俺の内心を正に嘲笑うように、背後からは楽しげな笑い声が聞こえてくる。
さすがに十人で一テーブルは狭すぎたため、SOS団以外のメンバーは後ろのテーブルに固まってもらっている。国木田と喜緑さんもそっちの方で向かい合わせに座っているはずだ。
「いい? あんたは普段ボケっとしてるくせに、バッティングとなるとせっかち過ぎるの。一回で打てなくてもいいから、投球をじっくり見て、打てる球を見極めるなりタイミングを覚えるなりしなさい。そうすりゃ猛打賞ぐらい軽いわよ」
俺はハルヒが繰り広げる野球論に耳を傾けるフリをしながら、背後の二人の会話を聞き取ろうとしていた。
考えてみれば、俺は生徒会の手伝いをした日以降、二人が会話しているところを見たことが無かったのだ。よからぬ好奇心を抱くのも無理からぬことさ。
しかし、聞こえてくるのは妹のはしゃぎ声や鶴屋さんの大爆笑や谷口のどうでもいい話ばかり。国木田も相槌を打ったり話題を振ったりはしているものの、喜緑さんと直接言葉を交わす様子は無い。
気になって背後を窺ってみても、国木田の後頭部越しに見える喜緑さんの表情はさっきと何ら変わりないように見える。決定事項となった明日のお付き合いについて、思う所は無いのだろうか。
ま、そうそう隙を見せるような人ではなさそうだしな。心臓の辺りがわかりやすく光ったりも勿論しない。
夜明けの海でイカの一匹も釣れなかった漁師みたくすごすごと引き下がろうとした俺は、しかし後ろのテーブル全体を視野に入れる段になって、はたと思い至った、というより、思い出した。
そう言えば、試合中の俺は何か気にしていた事が有ったはずだ。あれは……何だったっけ? 覚えたと思った英単語が次のページに移るとすぐに零れるように、今の俺はそれを忘れてしまっている。
もう一度、今度はじっくりと後ろのテーブルを確認する。
小さな引っ掛かりを逃がさないように、しきり板から浮いた全員の姿を順に探り、そしてもう一度国木田に、一人だけ妙に浮いた肩の色によく目をやると、ようやくそれに気がついた。
「おい、国木田」
「うわっ、ビックリしたー。何だよキョン、人の頭の後ろから」
「お前、ジャージはどうしたんだ」
俺のせい、ではなく罪作りなパンツのせいで泥まみれになったってやつ。あれがさっきから見当たらない。他の連中は全員ジャージを着ているのに、国木田だけが夏に取り残されたかのように白かった。
「は? ジャージ?…………あ」
この様子だと、忘れてきてしまったらしいな。こいつは最近色々と熱を上げすぎだ。そりゃメモリだって振り切れる。
「どうすんだよ。ここを出てから取りに戻るか?」
ここからグラウンドまではそう遠い距離じゃないし、普通ならそうするだろう。どうしてもって言うんならそのまま俺が引き取ってクリーニングしてやってもいいけど。
しかし国木田は、なぜか考え込むような間を置いてから、
「いや、今日はいいよ。今度自分で取りに行くからさ」
そうか? せっかく近くにいるんだから、今日のうちに取りに行った方が良いのに。
「いいって。でも迂闊だったなー。全然気付かなかったよ」
まったくだ。今の今まで気付かなかった他の奴らもだし、うっかり忘れていた俺も俺だが。
「そうですね」
自分の記憶力に呆れていると、思わぬ人から声がかかった。
「私も、今あなたから指摘されるまで気付きませんでした。ずっと正面にいたのに、どうしてでしょう。不思議ですね」
いきなり会話に参加してきた喜緑さんに笑いかけられ、国木田は苦笑いで体操着を引っ張っている。
「こらキョン! あんたちゃんと他人の話を聞きなさい! 誰のために必勝打法について語ってあげてると思ってんのよ!」
「いってえ! 耳を引っ張るなよ耳を!」
耳朶を万力じみた握力で引っ張られながら、涙の染みた視界にもう一度喜緑さんを映したのだが、柔らかな笑顔に揺らぎは無い。誰も今の言葉に疑問を持っていないようで、話は谷口の失敗談へと転がっていってしまった。
正面の長門は、気がかりなど欠片も無いといった無表情で黙々と豪勢なハンバーグを口に運び続けている。
だけど俺の頭の中では、ハルヒのトンチキな打法を無理矢理伝授させられている間も、何も燃えていないのに煙だけが撒かれているような妙な違和感が燻っていて、なかなか消えようとしなかった。
月曜日になると、外はまたしても雨だった。ショートの髪が風呂上りに水滴を散すようなささやかなものだったが、やっぱり俺が危惧していた通り、梅雨に逆戻りしたみたいだ。
野球地獄も終わったことだし、夏男である俺は爽やかな陽射しを何一つ憂うことなく浴びられるだろうと期待で胸躍らせていたのだが、あえなく空振りだな。
昨日散々暴れまくったお陰で餓鬼のように尽きぬ騒動欲求を少しは満足させたのか、俺とは対照的にご機嫌な感じで教室の桟をくぐったハルヒは、湿った腕を柄にも無く可愛らしいタオルで拭いながら席に座ると、
「あたしさ、このサーっていう音を聞いてるとメチャよく眠れるのよね」
というどうでもいい個人情報を開示するなり、一時間目から大爆睡。
教師の視線もお構い無しの大物っぷりに却って感心してしまいながらも、こいつ内申とか大丈夫なのか、なんて至極どうでもいい心配を持て余す俺を乗せて、いつになく静かに時間は過ぎていった。
前方で真面目にノートを取っているらしき国木田に目をやると、赤ペンでラインを引く手先も浮ついているように見える。
先の休み時間、正体の掴めない違和感も手伝って、俺は本日執り行われる予定の『お付き合い』とやらに関して国木田に真偽のほどを尋ねたのだが、
「えぇ?」
何でそれを知ってるんだ、とでも言いた気に固まった国木田は、妙な早口で取り繕うように、
「いや、今日は仕事も無いからね。先週のうちに一段落したんだ。しばらくは学校行事も無いし、これからは今までより暇になるみたいだよ。だから、ほら、折角だしさ」
努めて飄々を装った顔に、それ以上突っ込むことはできなかった。声が普段と比べて弦を張り直したように弾んでいるのは確かだったし、俺自身、何を聞き出そうとしていたのかよくわかっていなかったからだ。
さすがに気を回しすぎなのだろう。後ろの寝息に耳をそばだてながら考える。ただでさえ今回はいらんお節介を焼きすぎた。俺に間を取り持ってくれと頼んできたのはもう過去の事で、そろそろ逆にウザがられる頃合と見える。
やれやれ、まるで思春期の子供を持つ父親のような心境だ。お払い箱になる時は間近。昔から見知った仲としては置いていかれたような気がするし。
俺だっていい加減、それらしいデートの一つでもできるチャンスが来たっていいんじゃないか。朝比奈さんとかに誘われてさ。
ジェットコースターばりの超常現象ラッシュじゃなく、今日みたいに静かな一日が連綿と続いて、その中で一喜一憂できる教科書通りの青春を、一度ぐらいは経験しておきたいもんだよ。
「ぅ、んー……ちゃんとキャッチしなさいっての……」
と思ってはみたものの、夢の中でも好き勝手に千本ノックをかましてくれる労働基準法ガン無視女との縁を切らない限り、それは無理な相談か。
俺は一つ欠伸をして、教科書を立てて教師の視線をブロックしつつ、退屈な授業から逃れるために目を閉じた。
わかっていてもやめられない事なんて、誰にでも山ほどあるんだぜ。身に覚えあるだろ?
放課後。部室に行くと、古泉は親戚絡みの所用があるとかで(実際は橘京子の件だろう)早退していたため、俺は朝比奈さんとテーブルゲームに興じることにした。
相手が相手だけに俺のテンションは普段より上がり気味で、途中で首を突っ込んできたハルヒも加えて騒々しく遊んでいると、あっという間に時間が過ぎる。
区切りのいいところで飲み物を買ってくるとだけ言い残し、後を追って聞こえてきた「あたしオレンジ!」という声はマタドールのようにスルーして、俺は部室を離れて学食の傍にある自販機へと向かった。
その途中、
「あ、丁度良かった」
階段の踊り場でばったりと顔を合わせた阪中他見知らぬ女子一名は、俺を指差して言った。
「よう、おつかれさん。ハルヒならまだ部室にいるけど」
「違う違う。今あなたを呼びに行こうと思ってたのね。だから、丁度良かったの」
「俺?」
ハルヒじゃなく俺になんて、珍しいな。阪中の隣にいる女子は多分コーラス部の後輩なのだろう。大して興味も無さそうに、俺たちの会話を黙って聞いている。
「うん。あたし達さっき買出しから戻ってきたんだけど、下駄箱で声をかけられてね。あなたを呼んできて欲しいって言われたの。裏門の所で待ってるからって。私服姿の女の子だった」
私服姿の女の子、って誰だよ。こんな雨の中わざわざ俺を訪ねてくるような若い女性の知り合いが、しかも学外にいたか? 考えられる可能性は妹ぐらいのもんだが、そうにしても理由が見当たらない。
「妹さんって小学生だったよね? その人、あたし達と同じぐらいだったの。それにあなたの友達だって言ってたしね」
「名前とか聞かなかったのか?」
「ちゃんと聞いといたよ。名前はね、えっと、あの、あれなのね…………何ていってたっけ?」
急に水を向けられた後輩は、阪中の耳元で何かを囁く。先輩を一々介さんでも、自分で言ってくれればいいんじゃなかろうか。くすぐったそうにしていた阪中はテントウムシでも捕まえるように両手をぽんと合わせると、
「あ、そうそう。佐々木さんね。うん、佐々木さんっていう人だった。すごく可愛い人」
佐々木だって?
「本当にそう言ってたのか?」
「うん、間違いないよ。この子もそうだって言ってるしね」
阪中と後輩はしきりに頷いている。聞き間違いの線は薄いな。
しかし、だとしたら佐々木がどうして、こんな急勾配の坂の上なんかにある北校にまで来るんだ。普通なら塾に通ってる時間のはずだよな。一体俺に何の用なんだろう。
これまで道端でばったり会ったり、そうでなくとも事前に連絡が来ていたんだが、よほど急を要する事態でも、それこそ考えるのも嫌になるような事態が発現したのだろうか。
あいつもハルヒ同様にてんで普通じゃない性質らしいし、それを証明するかのように周りには妙な連中がジュガービーンズを発見したアリのように集まってる。可能性が無いわけじゃあるまい。
こないだ会った時にでも携帯の番号を交換しとけば良かった。気を使って奥手になるような仲でもないのに。
「あたし達はもう戻るけど、あんまり待たせない方がいいと思うのね。雨がひどくなってきたから」
「ああ、わかってる。わざわざありがとう」
阪中に礼を述べ、急ぎで階段を下りていく俺の背中から、あれがSOS団の、とか、あの涼宮さんの、などと不穏な単語が漏れ聞こえてきた。
レッテルで人を見るのは良くないとあの後輩に教えてやりたいところだが、その想いを振り切って一階に着くと、来客口に置きっぱなしにされていた黒い傘を拝借して、正面玄関よりずっとこじんまりとした裏口から外に出る。
たしかに空模様は悪化していた。煙るように結び合う可愛げのない雨のせいで、ズボンの裾が早速色を変えていく。
ぬかるんだ砂利道を踏みしめながら、装飾の欠片も無い寂寞とした裏門へ。視界が悪くはっきりとは見えないが、門柱の傍に傘を差した淡い人影が確認できる。
低温の炎のような浅葱色の傘に、俺は声を掛けた。
「どうしたんだ佐々木、こんな所まで。何かあったのか?」
答えの代わりに、静かな数秒を置いて佐々木は傘をずらし、口元だけを覗かせて可憐な笑みを向けてきた。
俺は疑問に思う。
こいつ、こんな顔する奴だったっけ。
いや、というか、何かフェイスラインが微妙に、むしろ全体的に違和感が、そもそも全然別人のような……
「……ぁあ! お前!」
「はい、ストップ」
顎のすぐ下。首筋に冷たいモノが押し当てられる。またナイフかよ。何かと縁がある凶器だな。
引きつる頬に導かれるように、古泉の無駄に爽やかなアルカイックスマイルが脳裏を過ぎった。
俺やハルヒには直接手を出してこないって言ってたくせに。これだから顔のいい奴は信用できないんだ。今度から防犯グッズを持ち歩くことにしよう。さらば蒙昧なる安全社会。
「ちょっとだけ、一緒に来てもらうからね」
以前も強引な手段で朝比奈さんを掻っ攫っていった前科者、橘京子が悪戯っぽい笑顔のままで次の時間割を確認するかのようにしどけない口調で言うと、塀の影から男たちがわらわらと湧いて出てくる。
俺の青春はむさくるしい。
あれよあれよと言う間に荷台部の中へ大量発注の冷凍食品みたく詰め込まれた俺を乗せたまま、小型の箱トラックは発進したらしい。
バッテリー灯のおかげで暗闇に震えずにはすんでいたが、窓が無いせいで外の景色を楽しむことはできない。まったく、気が利かない奴らだ。
「で、佐々木の名前まで騙って、一体何の用だよ。俺の手足を封じないとできないような話なのか」
両手足を麻縄で縛られている俺の前には、橘京子がいるだけだ。他の奴らは俺の梱包作業が終了するなり、どこへなりと消えてしまった。一対一の状況のお陰で、冷静なフリをする努力ぐらいは放棄せずに済んでいる。
橘京子は下ろしていた髪を結いなおしながら、
「ごめんなさい。こんな事しといて何だけど、あなたに用は無かったりします」
理由無き犯罪。行く当ての無いストレスの爆発だ。そんなもんに巻き込むな。
「用は無いけど理由はある、らしいわ。その辺はあたしにもよくわかりません。ただ、あなたがずっと学校にいるままだと、後々あなた自身が困るそうよ」
「意味がわからん。そもそもお前、自分でここまでやっといてよくわからないって、何のつもりだ。ひょっとして健忘症でも患ってたりするのか」
それとナイフの切っ先を向けるのは是非ともやめろ。トラウマが発動して胃の辺りがきゅんとするから。顔色を信号機のように変える俺を見て、橘京子はくすくすと笑い、
「そんなに怒らないで。それにこれはニセモノよ。ほら」
自分の手首に刃先を滑らせる。咄嗟に顔をしかめた俺をバカにするかのように、白い肌には傷一つつかない。悔しいような一安心なような。
「ね? まかり間違っても、あなたに傷をつけるわけないです。……あ、それと言っておくけど、この件に佐々木さんは無関係だからね。あたしの名前じゃ呼び出しに応じてくれないだろうから、苗字を使わせてもらっただけ」
そりゃ当然だ。あいつがこんな非常識的な行動を容認するなんてことはまず無いだろう。
「たしかに非常識だけど、意味のある行動です。今日のため、結構前から準備に準備を重ねてたんだから」
以前聞いた古泉の言葉が思い出される。
「お前らが何か企んでるって聞いたが、これのことなのか?」
「うーん、まあ、そうですね。その辺の事情を含めて、いま古泉さん達にも説明を行なっている最中です。あなたを攫った事に関しては結果的に事後承諾になってしまうけど、それはしょうがないわ。普通に頼んでも時間がかかりそうだし」
小数点第三位じゃあるまいし、しょうがないで切り捨てられては堪らない。
「なら、その事情とやらを聞かせろ。それが十分納得いくものなら、反省文程度で許してやらんでもない」
納得できないものなら、お前らにトンボ持たせて校庭の整備作業をやらせてやるからな。野球部に混じってやらされたが、結構きついぞあれ。
しかし目の前の誘拐犯は怯えるでもなく腕時計に一旦目を落とすと、ペットショップの子犬を吟味するようなほがらかさで、
「ふふ、強気ね。でも説明する時間にはちょっと早すぎるのです。一度で済む事をわざわざ二度に分ける必要はありません」
「は? お前な、いい加減にせんといくら俺でっ……!」
車が大きく揺れた。中央で寝そべっていた俺は頭をバウンドさせて底部に軽く打ちつけ、運転手側に寄りかかっていた橘京子は、不服そうに薄壁を叩く。
どこ走ってんだよ一体。まさかUSAラリーに参加してるんじゃあるまいな。
「大丈夫? 怪我とかしなかった?」
「ちょっと打っただけだ。なんとも無い」
「そう。ごめんね、窮屈な思いさせて。そろそろだと思うから、もうちょっと我慢しててください」
労わるような表情を浮かべる橘京子。何がしたいんだこいつは。人を強引に拐かしたかと思えばささいなことで心配したり、情緒不安定に陥っているとしか思えん。
と、今度は金属をかきならすようなブレーキ音が鳴り響く。
車体が上下に揺れ、俺の頭に再びの衝撃。そろそろってのは俺の歯痒さが今世紀最大のピークを迎えるまでの時間だったんだな。さすがにいつまでも黙って転がされているほどこっちだってお人よしじゃない。
やがて完全に停止した車内で、待遇についての不満をボルケーノさせてやろうと身体を捩ると、橘京子の目は俺の頭を素通りして背後に向けられていた。
「来たみたい」
「だーかーら! 誰が来たんだよ! 迂遠なセンテンスでなく固有名詞をはっきり言え!」
「長門有希さんが」
「ながっ…………長門?」
パキっと薄いプラスチックが割れるような音が鳴り、次いで扉口が開く気配がする。フライパンの上に落とされた芋虫のような挙動で振り返ると、雨に濡れて普段より小さく見える長門が、軽やかに荷台へと飛び乗ってくるところだった。
いつもと同じく気配を感じさせない足取りで歩み寄ってきた長門は、突然のことで何も言えずに転がっている俺を手早く解放すると、いつもとあからさまに違う目の色で橘京子に向き直る。
「…………」
どうやら凄く怒っているらしい。横で座り込んでいるだけの俺でさえ、ナイフを突きつけられていた時の方がまだ平和な心持だった。
「うん。やっぱり来てくれた」
当の橘京子は笑顔のまま、道端で知人にばったり会った時のように暢気な相貌で頷いたりしている。
かと思えば、わざとらしく咳払いをしたあとへなへなと座り込み、昨日旗揚げしたばかりの劇団の入門生も顔をしかめるぐらい作ってるのが見え見えの声色で、
「ああ、参りました。あなたが来たとなると、あたし達は手も足も出すことができず、思うままに嬲られるほかありません。この場を許していただくためには、どんなことでも白状いたします」
身売りされた貧乏長屋の娘のように、よよよ、と泣き崩れる。
いきなり何言い出すんだこいつ。いや、待てよ。この拡解釈的思考パターンはこないだテレビで観た誇大妄想の症状とまったく同じだ。 さっき冗談で情緒不安定などと不謹慎な発言をしたが、まさか、こいつが本当にその類の病に罹っていたなんて。
「あの、何ていったらいいのか……ごめんな。そういう事情があると知ってたら、怒鳴ったりしなかったんだけど」
「何勝手に勘違いして謝ってるの! 可哀想な人を見る目で見ないでください! 病気とかじゃないから! もう、あなたはちょっと黙ってて。ただでさえややっこしいんだから」
できたてのツインテールをせわしなく揺らしていた橘京子は、赤らんだ顔を真剣な表情に切り替えて長門と対峙し、
「先に言っておきます。現在あなたのお仲間に手を出しているのは、九曜さんではありません。確かに彼女らの一部ではありますが、それらはあくまで自律的な部分による運動である、という旨を九曜さんから聞かされています」
またしても意味不明な話をはじめる。
「ただ、彼女らの一部であるために、こっちから手出しができる状況でもありません。申し訳ないのですが、そちらの方で対処していただくしかないみたい」
蚊帳の外の俺をちらりと一瞥して、
「彼を連れ出したのは、あなたとこうして話をする時間を作るためです。それだけってわけでもないみたいだけど、どちらにせよ必要な行為だったの。あ、もちろん危害なんて一切加えていないので、ご心配なく」
過疎化が進んだ地方でお年寄りにすら存在を忘れ去られたお地蔵様のごとく黙って聞いていた俺は、そう言えば発言を控える必要は皆無だったと思い当たり、やっと口を挟む。
「待った。これのどの辺がご心配なくと言える状況だ。人を置いてけぼりにするのも大概にしてくれ。長門、どうなってんだこれは。こいつさっきから何の話をしてるんだよ」
すると長門は、錆びない鉄のような声にフラットもシャープもつけず、
「天蓋領域の調査にあたっていたTFEIの一個体から、先ほどまで統合思念体に送られていた情報が突如として途絶えた。また同個体の通常空間からの消失も確認されている」
言葉の意味を吟味するうちに、昼の隙間に落ちる影を固めた九曜の姿が脳裏に浮かぶ。あいつらがまたしても、ちょっかい出してきやがったってわけか。
長門は一度瞬きをして、
「今の彼女の話も含め考慮すると、こちらの解析行動に対する彼らなりの反動的対応行動、とりわけ全体ではなく刺激に対応する部分の原意識的なリアクションとも考えられる」
向かい合う橘京子は、俺に向かって頷きを返す。詳しい意味はわからないが、先の話からして九曜の仕業ではないと言いたいのだろうか。
「今の我々では彼らの思考連続性を解釈可能な概念の単位に分割するのは不可能である。個体の保護を目的として行動する他ない」
「保護? 消えたっていうお前らの仲間は、まだ……その、無事なのか?」
「存在が解体されたわけではない。あくまでこの空間からの消失」
雪山の時、俺たちが豪華なトラップハウスに引きずり込まれたのと似たようなものなのか。
「おそらく。ただ、現状では彼女が捕らわれているであろう位相に繋がる空間が把握できていない」
長門は今、彼女と言った。
その代名詞の内に既知のニュアンスを嗅ぎとった俺は、背中を氷でなぞられるような感覚を覚える。外から入ってくる空気の冷たさが原因ではない、内からの低い熱だ。
「その消えたTFEIってのは、誰だ」
長門は言った。
「喜緑江美里」
やっぱりだ。悪い方のビンゴ。
「国木田は? 喜緑さんと一緒にいたはずだぞ。あいつはどうした」
「不明」
となると、ますますまずい状況だ。こんな所で油を大安売りしている場合じゃない。開きっぱなしの扉口から、濡れて黒く光る緑が雨の奥に見えた。強い風が木々を揺らす。どうやら人気の無い山道らしい。
たしかに秘密の話をするにはうってつけだが、下りるのにも苦労しそうだ。
「長門、ここを出て、何とかその空間とやらを探そう。古泉たちにも連絡を取るぞ。あいつらなら、おかしな所にぶちあたればそれと気付けるかもしれない」
「その必要はありませんよ」
構っていられないと睨みつけた俺の視線を、橘京子は聞き飽きたヒットチャートのように歯牙にも掛けず、
「だってあたしは、その場所が九曜さんの口から漏れるのをたまたま耳にしていたから」
くすりと笑って、合図するかのように壁を叩く。停止していた車体がゆっくりと動き始めた。
「かくしてあなた達に乗っ取られたトラックは、目的地へと走り出すのです」
もどかしくも車中で座り込んでいた俺は、橘京子に疑問をぶつけた。喜緑さんの居場所を教えるのに、どうしてこんなまどろっこしい方法を取る必要があったのか。普通に連絡をとってくればよかったんじゃないか。
「だって彼女たち……って言っても、この件で九曜さんの立ち位置は微妙だし、何ていえばいいのかな? まあとにかく、九曜さんを作り出した宇宙人さんと我々は、腐っても協力関係にあるんです」
両手を合わせて一人で握手するようなジェスチャーを交えつつ、
「だからこれはあくまで、あなたに何とか取り入ろうと無茶な計画を、古泉さん達を呼び出したのも含めてね、それを実行したあたし達の失敗。その結果、図らずしもあちらの行動が漏れてしまった、と」
「……つまり、建前ってわけか」
天蓋領域とやらには、そこまで人間的で煩雑なやり口が通用するのか? 俺の印象や長門の話と随分違うが。
「いいえ。九曜さん達相手にそんなのは意味がない。文字通り、意味が存在しないのです。下らないものにこだわっているのは向こうではなく、それこそ人間の方。どこもかしこも、一枚岩っていうわけにはいかないの」
身内の恥を吐き出すように言った橘京子の顔は、事実、憂いに満ちていた。
なるほどな。大方、要らん手出しをするなとごねる連中が同胞の中にもいたのだろう。どんな組織でも人が集まればコンプレックスを抱えてしまう。集団の性だ。
「あたしとしてはあなたの心証をこれ以上悪くしたくないし、古泉さん達にも有益な情報を提供していますから、良くすれば貸しも作れる。話し合いの場を持てること自体にも価値はあるしね。多少無理にでも動くべきだと判断しました」
幼さの残る顔に、俺よりもずっと年上に見えてしまうぐらい真摯な色を浮かべた橘京子は、
「わかって欲しいのは、あたしや、多分九曜さんにとっても今回の件は思う所では無かったということ」
お前が俺に悪印象を与えたくないっていうのはわかるけど、九曜に限ってはその真意など理解するべくもない。まだその辺に群生してるぺんぺん草の方が気持ちを読み取れそうなものだ。
「でも、あたし達に今回の件を教えてくれたのも九曜さんよ。しかも何日も前にね。まるでこうなる事がわかってたみたい。いえ、決まっていたという方が正しいのかな。あの未来人さんもだけど、どうもその辺はよくわかりませんね」
「ますます信用し難い。今こうしている状況も含めて、全てあいつらの手の内で踊らされてるって話かもしれないじゃないか」
「違うわ。もっとシンプルに考えた方がいいのです。彼女があたしに情報を与えてくれたおかげで、あなたはこうして仲間を助けに行ける。今はそれだけが事実。他はあなたの穿った推測に過ぎません」
今までよりも強い語調だった。眉がピンと弓なりに張っている。よくもまあ、あの応答可能性を根こそぎ奪われたような奴を信用できるもんだな。
「あたし達は手を組んでいます。だから表面的で頼りない繋がりを、それでも信頼しなければならないのです。あなたにならよくわかるんじゃない? 涼宮さんやそこの彼女に、あからさまな過度の信頼を置いているあなたなら」
ね? と朝比奈さんの足元にも及ばないウィンクを一つ。
納得のいかない気持ちはまだあったが、そう言われては黙るしかなかった。SOS団なんていう、胡散臭くていまだに個々の正体の全貌が見えない集団を、俺はバカみたいに信用しているからだ。
確かに、偉そうに説教垂れる立場じゃなかった。ミイラがミイラ取りなんて、身の程知らずな話さ。
朝比奈さんを攫った件に関してはもちろん許せないが、今回の件に限れば、こいつと、そしてあのショッキングブラックな宇宙人を責める道理は無いのかもしれない。少なくとも今の所は、だけどな。
「わかった。タクシー代わりになってくれた事に関しては、とりあえず感謝しとくよ」
「あ、ならついでに、今後あたしや佐々木さんに協力してもらえると助かるなぁ」
「それは無理だ。調子に乗るな」
にべも無く答えてやった。しかし橘京子は堪えた風もなく、顔なじみのエスパー野郎とどことなく似た笑いを浮かべ、
「ふふ、わかりました、と今は引き下がりましょう。だからそんな、彼女がいるのに言い寄られて困ってるみたいな顔はしないでよ」
前言撤回。やはりこいつらは少しぐらい痛い目に遭うべきだと思うね。
俺たちが降ろされた場所は、昨日出向いたばかりの市営グラウンドだった。橘京子はすでに走り去ってしまっている。
さっきまでとは段違いの激しさで叩きつけてくる風雨のせいで借りていた傘は即座にめくれてしまい、「後で弁償しますから」と手を合わせつつ建物の陰に放置して、俺と長門は濡れ鼠のまま球場の門を潜る。
車を出てからひっきりなしに古泉からの着信が入っていたのだが、今は一刻を争いかねない状況なので、長門と一緒だから心配不要とだけメールにしたためて送信し、携帯を閉じた。
「しっかし、本当にこんなとこにいるのか? あの二人」
入場口から見渡す雨に降られたグラウンドは、朽葉色の海のようだ。風にさらわれ荒れ狂う。当然人影も見当たらない。
だが長門は、歩いて見て回ろうとする俺の裾を掴んで止めた。虚空を静かに見る目は鋭い。
「天蓋領域のものと思われる情報制御空間の存在を確認。解析が終了しだい、侵入する。予測される危険は未知数であるが、あなたは」
「一緒に行くよ」
間髪入れずに俺は答える。こんな豪雨の中に一人で置いていかれたんじゃたまらないからな。
長門はじっと俺を見上げ、それ以上は何も言わず、ピッチを上げすぎた小人の歌みたいな声を発生させる。
俺は目を瞑り、雨の音がだんだんと遠ざかっていくのを聞いていた。
白紙にインクを垂らすように瞼の奥まで染みて広がっていく光を感じ、目を開く。
俺たちは相変わらず野球場に突っ立っていた。以前のようにいきなり茶色の空間にほっぽりだされずに済んで安堵したのも束の間、髪を焼く陽射しの熱さに目をそばめる。
すっかり雨は止んでいて、見上げれば昨日の天気を再生しているような晴れた空が広がっていた。濡れて奪われていた体温にお釣りとキックバックがくるほどの暑さは昨日よりも断然激しいが。
靴の裏で感じていたはずのぬかるんだ地面も元の固さを取り戻し、ただ生物の目玉に似た太陽だけが不自然なほど天頂に位置している。
手の平を額に被せながら、俺は改めて辺りを見渡す。誰もいないスタンドが、たった今通ってきたはずの入場口まで飲み込んで、円状に切れ目無く続き俺たちを囲っていた。その外側にある景色は書割りのように動いていない。
対して球場内の様子にこれといった変化は見られず、まっすぐに引かれた白いライン、置きっぱなしのベース、オアシスのような陰が吹き溜まるベンチ、そして、
「……いたぞ。喜緑さんだ」
隣に立っていた長門の肩を叩いて促し、照り返されたバッターボックスに駆け寄る。
白線の内側で、制服姿の喜緑さんは身体を丸めたまま眠っていた。どうしてか傍には金属製のバットと白いメットが落ちており、まるで打席の途中で熱射病を患い卒倒したバッターみたいな有様だ。
表情の消えた寝顔はちっとも快適そうには見えない。長門が熱を出した時とまったく同じ。
大丈夫なのか?
「この空間が我々に与える負荷は強い。自衛のために意識レベルを低下させている」
かがみながらスキャニングでもするような仕草で喜緑さんに触れている長門に、
「お前も、ここに長く居ちゃまずいんだな?」
「かもしれない」
俺も同じだよ。六月にしてもここはちょっと暑すぎる。いくら夏男でも服を着たままサウナなんて御免だ。
喜緑さんを担ぎ上げて日陰になっているベンチまで運び、ゆっくり寝かせると、俺たちは再び日の当たる所まで歩み出てもう一つあるはずの人影を探す。
どこにいやがるんだ、あいつは。歩き回っても周囲には気配すらなく、雨音さえ切れた明るい球場はかえって打ち捨てられた廃墟のように佇むだけだ。色のついたフィルムを眺めている気分だった。
俺は長門に確認しようと、
「なあ、国木田もここにいると思うか?」
沈黙だけが伝播し、俺の耳には何も返って来ない。
「……長門?」
振り返った先のマウンドでは、長門が今にも膝を突きそうにゆらゆらと揺れていた。
「なっ……!」
転がりながら飛び込んで長門の肩に手を回し、倒れ伏すのを何とか防ぐ。思わず息をついた。まったく、ついて来て正解だったな。見えない所で倒れられたら肩を貸すこともできない。
しかし、目を瞑ったままの長門を見るにつけ、一瞬の安心感はすぐに消えた。俺はやたらと軽い身体を抱きかかえて陽射しから庇い、ベンチに走る。
湿った制服の向こう側は、つけっぱなしのブラウン管のように熱い。
長門だけじゃなく、いつの間にか陽射しそのものが強くなっているのに、俺は気付いた。湿っていたYシャツの背中が急速に乾き、じわじわと妙な不快感が這い上がってくる。
そして俺の不快感に拍車をかけるように、傷のついたテープにも似たノイズだらけの低い音が、スタンドの支柱に巻きつけられたスピーカーから漏れはじめた。
長門をベンチに運んでいる間にやがてその音はチューニングを合わせていき、女性の、ウグイス嬢のように高く、しかし音域の異なる素材を継ぎはぎしたかのように素っ頓狂な声で、
『二ばン、ばったー、ナがトさん』
スピーカーが鳴り止むと同時、今しがた離れたばかりのマウンドに、降って湧いたような思いがけなさで人影が出現する。
「国木田……今までどこにいたんだよ!」
思わず呼びつけたあと、俺は国木田の様子がおかしいことに気付いた。
半袖のカッターシャツを羽織った国木田は、グローブの中に硬球を収め、動力部を引っこ抜かれた玩具のように動かないまま、視線だけがバッターボックスに向けられている。
「国木田!」
もう一度呼んでみても返事は無い。じっと止まっている。何でだよ。
混乱しながらも、とりあえず長門を寝かせようとすると、肩にそっと手を添えられた。今まで閉じていた瞼が開き、濁らない長門の瞳が覗いている。
そのまま俺の手をすり抜けるように身体を離した長門に、
「長門、無理しないでいいって。もう少し休んどけ。俺が国木田を連れて来るから」
ここは気温に目を瞑ったって快適とは言い難いが、俺なら少なくともぶっ倒れることはない。お前は日陰でゆっくりと帰り支度でもしておいてくれよ。
だけど長門は、かくしゃくと直立したままで、とんでもないことを言い出した。
「用意していた脱出経路に、特殊な条件付けがなされた未知のコードによる強固な情報封鎖が敷かれた」
閉鎖とか封鎖とかは、俺の聞きたくない言葉ワーストワンに去年からこっち輝き続けている。閉じ込められるのが好きな奴なんて滅多にいないはずだ。
「……ひょっとして、出られないのか?」
「そう」
驚きはしたものの、俺は結構落ち着いていた。この類のトラブルは何事もないまま終わる方が今までの経験からしてイレギュラーなケースであり、長門を一人で行かせなかったのもこういう事態を見越してのことだ。
かと言って何か出来るってわけでもなく、いざ事が起きても結局は長門に頼るしかなかったりするのだが。
「入って来た時みたいに、無理矢理には?」
「困難。条件を正規的にパスしなくてはならない」
何かを伝えたがっているように、こっちの目を見据えてくる。スピーカーから長門を呼び出す狂った音が再び流れはじめた。二番、バッター、長門さん。
長門は琥珀の視線を、降る陽に焼かれているせいで滲んだ色のマウンドにゆっくりと移した。俺もそれに倣う。ピッチャーがいるべき場所には既に国木田がいて、今もしっかりとボールを握っている。
長門は呟いた。
「あれを打てば」
「……あれって、あのボールを?」
首肯が返ってくる。
いやいや。頷かれても、こっちにはさっぱり意味がわからん。
「待ってくれよ長門。打つ打たない以前にな、どうして国木田があんなとこでピッチャー役なんてやってるんだ。もしわかるんなら説明してくれ」
割と長い付き合いだが、趣味が草野球だなんて聞いた事が無いし思えもしない。
「おそらく我々が確認できない経路によって脳組織と神経系の一部に操作を加えられている」
長門は恐ろしいことをさらっと言い、そこに重ねて、
「我々が彼らを解析しようとすれば、それに応じて彼らのうちでも我々を解析しようとする動きが表れる。特に喜緑江美里は彼らの一部である周防九曜と直接的な接触を持った最初の個体。故に彼らはまず彼女を選んだのだろう」
焦点を国木田に定め、
「彼を操作する事で喜緑江美里に刺激を与え反応を観測していたと思われる。今はその過程で新しく得た概念を自身の内で構築化させるべく、模倣の段階に入った。それは自己を拡大させるための極めて原始的な欲求」
模倣って、まさか野球をか? んな馬鹿な。
小難しい言葉を咀嚼しようと頭を回すのに必死な俺を置いて、先ほどまでふらついていたとは思えないほどしっかりとした足取りでベンチを出た長門は、バッターボックスへと向かっていく。
慌てて後を追おうとした俺は、しかしベンチから出ることすら叶わなかった。いつの間にかベンチ全体が膨らませたビニールのように柔らかい空気の膜に覆われている。叩いても引っ張っても千切れそうに無い。
実際のビニール袋もこれぐらい丈夫ならいいのにな、くそ。
膜の向こう側では、落ちていたメットを被り、同じく落ちていたバットを持ち上げた長門が、腕を上げて構える。キャッチャーすら不在のままで勝負が始まろうとしていた。
どうしても破れない膜を俺は諦め、とにかく事態を見守るしかない。
長門の話を聞く限り、俺たちをここに閉じ込めた奴らは、野球をやってみたくてしょうがないらしい。投手と打者しかいないのでどちらかと言えば一騎打ちの体だが、にしてもわざわざ出口を塞いでまでの強制参加とは恐れ入るね。
しかし、だとすれば、だ。
こんな馬鹿げた状況はすぐに終わると、俺は思っていた。その気になれば隕石だって打ってしまえるような長門に、国木田があっさり敗れてゲームセット。勝負になんてなるわけがない。
俺が自分の間違いを悟ったのは、国木田がやたらと綺麗なフォームで左足を振り上げて右腕を引き、そして左足を踏み出したところで、ようやくだった。
放たれたボールはその白さがギリギリ視認できるスピードで長門のストライクゾーンを貫いて、キャッチャー代わりのネットに突き刺さる。スピーカーが耳障りな音を鳴らした。
『ストらいク、わン』
俺は顎を落とす他なかった。
何キロ出てるかなんてわからないが、少なくとも今まで見てきたどんなピッチャーよりも速い。テレビの中も含めてだ。だけど俺が驚いたのは、そんな事じゃなかった。
長門が明らかに投球に追いつけていないのだ。
まるでバットに振り回されているような、それこそ朝比奈さんと大して変わらないスロースイングは、ネットが揺れてから一拍置いた後だった。
あいつ、全然調子戻ってないじゃないか。何事も無かったみたいに出て行くもんだから、マシになったものとばかり思っていたのに。無理矢理にでも寝かせておいた方が良かったんだ。
どういう仕組みなのか、跳ね返って転がっていたボールが消えて再び国木田の手元に戻る。
バットを地面にくっつけたまま休んでいた様子の長門は、苦いものを飲み下す俺をよそに、打つ構えをとった。さっきより目に見えて力が入っていない。当然、速球を打てるはずも無く、
『スとらイク、ツー』
「長門!?」
長門は地に付けたバットにもたれかかる。今にも倒れそうだ。火をくべられたように、太陽がぎらぎらとした輝きを増している。
俺は眠ったままの喜緑さんを顧みる。二番打者が長門なら、一番は喜緑さんだったのだろう。打席の途中で強い陽に耐えかねたかのように倒れていた。
「おい待てお前ら! タイムだタイム! 長門、いいからこっちに戻って来い!」
項垂れていた長門はまたしても顔を上げた。国木田が振りかぶる。
「やめろって!!」
俺は体当たりをしても破れない膜に腹を据えかね、いっそ噛み千切ってやろうと中空に歯を立てる。しかしすでにボールは投げられ、長門はとうとうバットを振ることもできず、ゼンマイの切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
『バったー、アうト』
突然消えた膜を気にする余裕も無く、長門の元へ走る。白く燃え残った木炭みたく芯から熱い身体を抱き上げても、目を覚ます様子は無かった。
スピーカーからは、三番バッターとして俺の名前がアナウンスされている。長門の額は今までに無く熱いままだ。俺はスピーカーを睨みつけた。やかましいんだよクソッタレ。
「ふざけんのもいい加減にしろ。長門も喜緑さんも熱が出てるんだ。これ以上付き合ってなんていられるかよ。なあ、日本語ぐらいわかってんだろ? さっさと俺たちをここから出せ」
馬鹿にするような角度でこちらを見下ろすスピーカーは、再三に渡って俺の名前を呼びつける。
いいさ。そっちがその気なら、力づくでやってやる。
長門を喜緑さんの隣に横たえた俺は、ピッチャーを引き摺りおろしてやろうとマウンドに登る。
だがまたしても空気の膜に阻まれ、国木田を中心に球形を形作っているらしきそれは、バットで叩き壊そうとしても、出来のいい綿毛の塊でも打っているように手ごたえが無かった。
諦めきれずに振り回していたバットは、やがて汗で滑り、俺の手を離れて焦げた地面に落ちる。むき出しの腕を焼く気温は、さっきよりも明らかに上がっていた。カラカラの喉が絞られたように痛んだ。
疲れと暑さで立っていられず、とうとう俺は蹲った。頬を伝い唇の先から落ちた一滴の汗をじっと見つめる。
さて、どうする。
あんな球は打てるわけがない。長門と喜緑さんはただでさえやばい状態だ。この上スリーアウトを取られたらどうなるかなんて想像したくもない。いや、今のままでも一緒か。俺も含めて暑さでやられちまうのは時間の問題だ。
携帯を取り出してみてもウンともスンとも言わず、助っ人も呼べない。球場の外には出れないだろう。つまり逃げる事すら叶わない。
なるほど、どうしようも無いな。お手上げだ。何てこった。茹った頭からは、ネガティブな考えしか浮かんでこない。希望は水と同じく真っ先に渇いて消えていた。
それでも俺は、すがるように顎を上げた。
「国木田、いいのかよ? 喜緑さん苦しそうだぞ」
無言のままの国木田は、焦点が合っているのかいないのか虚な目でバッターボックスをねめつけている。
こいつ、厄介なものに取り憑かれてるみたいだけど、それは一体いつからだった? あの日、廊下で頭を打った、最初の時からか?
じゃあこんな事言っても無駄だろうな。頭をもう一度ゴツンとやれば、すぐに醒める夢みたいなものに、こいつは罹っていただけなんだから。ほら見ろ。一目惚れなんて病人の譫言と何も変わりゃしないじゃないか。
しかしだとしたら、俺は何のための余計な節介を焼いてたんだろう。少なくともベンチで寝てる二人に夏風邪を引かせるためじゃなかったと思う。
並んで横たわる二人は、遠くで陽炎に溶けていくように映る。逆に昨日のファミレスで感じていた煙のような違和感は、俺の中でだんだんと形になっていった。
どうしてわざわざ喜緑さんは、あのタイミングであんな事を言ったのか。
決まってる。喜緑さんは、国木田の背後に何かがいると気付いてたんだ。
目の前にあってもそれと気付かせない、特定の事物に対する認識能力を低下させる隠密能力は、あいつらの十八番だ。九曜と初めて会った時もそうだし、喜緑さんだって以前喫茶店で鉢合わせした時、似たような能力を行使していた節があった。
少なくとも昨日の段階で、国木田が普通の状態にない事ぐらい察しがついたはずなんだ。誰も、それこそ喜緑さんですら気付かなかったのかもしれない汚れたジャージという忘れ物を、俺が指摘したから。
或いはずっと前。初めからわかっていたのか。
じゃあ、どうしてそうとわかって国木田に付き合ってたんだ。今日だってあいつについていかなければ、多分こんなところに閉じ込められたりしなかっただろう。
どうして。未知への探究心か。向こうから接触してくるのなら、情報を集めるにはいい機会だとでも思ったのだろうか。向こうもそう考えていたのかもしれないな。わかっていたって乗ってくるはずだ、と。互いの腹を探り合うチャンスなのだから。
喜緑さんの同僚でもある長門はどうだ。俺がマンションを訪ねていった時は何も知らない様子だったが、それ以降はわからない。途中から気付いていたが、聞かれなかったから言わなかっただけとか。有りえそうで困る。
それと九曜。あの漆黒の宇宙人。あいつは関係無いとか何とか言っていたが、今のザマを鑑みれば結果的に罠に嵌められたような気もする。何の思惑があって俺たちをここに導いたのか。
それから橘京子。古泉たちと何を話し合ってるんだ? やはりこいつも腹に一物抱えていて、俺たちをダシに無理な要求を突きつけてるんじゃなかろうか。疑いたいわけじゃないが普段の素行が悪すぎる。自業自得だ。
この際だから言ってしまえば、古泉たちの機関にしても大概わけがわからない。もう一年ちょっとの付き合いになるが未だほとんどシルエットの状態だし、優秀な人たちが揃ってるのはわかるけど、活動資金とかどうなってるんだよ。
朝比奈さんはどうだ。もちろん俺の心のアイドル。だが大きくなった彼女の思惑はまったく読めないし、もう一人の未来人であるあの不愉快な野郎に関しては語る言葉を俺は持たないしこれから持つ予定も無いし必要も感じない。
……いや、待て。そもそも何考えようとしてたんだ俺は。もうわけがわからなくなってきた。途中からただの愚痴になってる。
まあいいか。とにかく俺の知らないところで、色々な思惑がぐるぐると回っているのだ。暑さで目玉もぐるぐる回るし、そうやってぐるぐる考えてると、だんだん腹も立ってくる。
世の中はどうしてこう正体のわからない雑多なものが入り混じって暗い雨雲のようにわだかまり、理不尽にも俺に降りかかるのか。
ただでさえジメジメした梅雨のこの時期に、掘りごたつの底みたいな炎天下で、何の因果でエイリアンと野球なんてやらなきゃならない。イロモノ三流映画のシナリオかっての。
ひょっとしたら、ハルヒも中学の時はいつもこんな気持ちだったのだろうか。だとしたらあの無駄に不敵な態度の理由も少しはわかる気がするね。
「……ほんと、全部投げ出したくなるよな。そうでもしないとさ」
頭を軽くはたいて回っていた目玉を止め、俺は立ち上がる。
何より一番理不尽なのは、そんな世の中も悪くないと思ってる俺自身なのかもしれない。
ハルヒがこの面白みに欠ける世界を捨てられなかったように、クリパで食った鍋みたいにごちゃ混ぜの世界の中にも、俺にだってわかるぐらい易しくてシンプルな答えがあると、勝手に思い込んでいる。性質の悪い病気だ。
だからSOS団の雑用係である俺は、団長含め他の団員を馬鹿みたいに信用しているし、これまた厄介なことに、いらん世話を散々焼いてしまったピエロな俺としても、最後まで信じなくてはならないものがある。
別に勘違いでもいいのさ。
俺たちがこんな場所でくたばる事が無いのは勿論、国木田は理解不能な一目惚れとやらにマジで陥っていて、そして喜緑さんはそんな譫言に付き合うのが、きっと楽しかったんだ。
――少しだけ。
俺は国木田の凝り固まったつまらない顔を一瞥し、バッターボックスへと向かう。
考え続ける事に価値のある場面とまるで無い場面があるが、今は間違いなく後者だ。
要はあの雪山とおなじ事だ。あっちは頭を使ったが、こっちは身体を使えばいい。ややこしい定理だの公理だのも出てこないし、最初っから鍵はあって、それを打てば開くのだ。数学の苦手な俺には正にうってつけ。
一度素振りして頭に凝る靄を晴らし、白線で縁取られたバッターボックスに入る。白いメットを被ると、頭を焼いていた熱は大分マシになった。
「さあ、投げて来いよ、へぼピッチャー」
国木田の、さらに頭上で澄ました顔のままかつ偉そうにのさばっている太陽にバットを向ける。熱に浮かされておかしなテンションのまま、心の内で頑固な汚れのようにこびりついている根拠の無い自信をかき集めて唇をへし曲げ、
「ボッコボコに打ちまくってやる」
こう見えても強打が売りの四番バッターなんだ。もし打球が飛んできてもキレるんじゃねえぞ。スポーツに怪我は付き物だからな。
バットを構えると、国木田も左足を上げて投球の姿勢に入る。
俺は白い球だけを見つめる。大丈夫、特急電車並に速いだけの直球だ。コースもストライクゾーンに限定されている。ハルヒの球と一緒で、タイミングを覚えればすぐに打てる。
こちらが一度瞬きを終えると同時に、国木田の腕が振りぬかれる。目で追えない。感覚だけでバットを振った。遅い。一瞬と経たずにネットが揺さぶられる。ワンストライク。
ニヤついた顔のまま、先ほどの球を反芻する。ベンチから見てた時よりもずっと速く感じる球だ。特急電車というより新幹線と言ったほうが正しい。タイミングを掴むのはおそらく不可能だ。どうする。まぐれ当たりを願うしかないのか。
国木田はこちらの準備を待たず、ピッチングのモーションに入っている。慌てて構える俺を笑うように球を握った腕がしなった。急な動きにつられて、こちらもバットを動かしてしまう。
馬鹿。今度は早過ぎだ。
タイミングもフォームもちぐはぐなバットとすれ違いに、ボールはベルトラインを縫う完璧なコースでホームベースの真上を通過する。ツーストライク。
あっという間に残り一球。しかめ面を作りそうになるのを堪えつつ、顔中に浮いた汗を袖で拭う。
シャツ越しにも熱気を感じる。気温はいよいよ真夏日をはるかに上回ろうとしていた。目を閉じると、心臓が痛いほど鳴っている。もう後が無いと思うと気ばかりが逸ってしょうがない。バットを握る手が小刻みに揺れていた。
やれやれだよ、まったく。
ゆっくりと深呼吸したあと、目を開いた。眩い白に輪郭を縁取られた国木田の表情は、影に喰われたように無い。喰われたってことは喰った奴がいるってことだ。
俺はバットを構える。
同時に、国木田の腕が三度振り上げられた。思わずバットを動かそうとするせっかちな俺の腕を、何とか抑えて、言い聞かせる。
逸るな。焦るな。球を見ろ。可能な限りギリギリまでじっくりと。二回でタイミングを覚えられなくても、三回目で覚えて、そのまま打ってやればいい。
国木田の左足が上がる。球を握った右手が引き絞られる。
張り詰めた空気の中、俺はじっと白い球だけを見詰める。
ずん、と強い地鳴りが起こった。
陽射しが突如現れた巨体に遮られ、マウンドに日陰が降りても、俺は白い球だけを見つめる。足場ごと姿勢を崩した国木田の腕からすっぽ抜けて、放物線を描く遅い球。
ところで、テレビでもろくすっぽお目にかかれないような剛速球を見極めろだなんて、素人に向けるにしては難易度の高すぎるアドバイスだとは思わないか?
俺は今度こそ本当に笑いながら、妹でも打てそうな速度で暗い陰の上をゆっくりと走る白球めがけ、渾身の力でバットを振り抜いた。
『大脱出劇の後でお疲れのところ、申し訳ないとは思うのですが』
事の経緯を説明し終えた俺に、携帯の向こうの古泉は普段より若干ハイペースな語調で、
『迎えをやるので、至急学校に戻ってください。涼宮さんの心を乱しているものの正体を突き止めて、もし可能なら、それを除去していただけると非常に助かります』
「やっぱり出てたのか、閉鎖空間」
『ええ。それも、最近では珍しいほど大規模のものが。今あなた方のいる市営グラウンドもすっぽり覆われていますよ』
ベンチから顔を突き出して見回してみても、水を司る蛇神様か何かが蛇口の調節をミスったかのように暴れまわっていた雨足が常識の範疇に収まる程度に弱まったぐらいで、特に変化は認められない。俺が一般人である証拠だな。
『あなたが目にした巨体というのは、間違いなく神人でしょう。たまたま市営グラウンド付近に発生した涼宮さんの閉鎖空間が、天蓋領域の展開していた特異空間を喰い破った結果、危機に瀕していたあなたの元に神人が現れたと』
えらくドンピシャのタイミングだったんだが、本当にたまたまって言っていいのか。
『さあ、どうなのでしょうね。僕なりの事態に対する解釈を披露しても良いのですが、今はそう余裕のある状況ではありませんし、事実はどうあれ、僕たちがやらなくてはならない事に変わりはありません』
僕たちってのは、ひょっとして俺も含まれてるのか。まだ税金を払わなくてもいい身の上なのに、いつの間に厄介な義務を背負わされたんだろうね。
『ずいぶん水臭いことを言いますね。ところで、桃李成蹊という熟語をご存知ですか?』
あいつが桃や李って柄か。食虫植物っていうんならわかるけどさ。
だがまあ確かに、今更文句を言うのも筋違いではある。
空気を読んで黙る俺に、古泉は降伏の意を感じ取ったらしく、
『では重ねて、あなたは涼宮さんの方を、どうかよろしくお願いします。出現済みの閉鎖空間の方は我々が確実に処理しておきますので』
「あ、待て待て古泉」
不意に、不愉快誘拐犯橘京子のこしゃまっくれた顔が脳裏を過ぎ去ったため、俺は切られる寸前だった電波の糸を引っつかむ。
「お前ら、向こうの組織と話し合いしてたんだろ? そっちの方はどうだったんだよ。何か進展はあったのか?」
手を取り合うとまではいかなくとも、俺の周囲が少しでも平穏になるような類の平和条約が締結されていたりしないだろうか。
しかし古泉は、俺の甘い期待に額面だけでも沿おうと努めるかのように、いつもより息多めの、乳白色の入浴剤を溶かし込んだぬるま湯のようにゆったりとした声で、
『なかなか良いお茶を出していただきましたが、やはり朝比奈さんが淹れて下さったものとは比べるべくもありませんでしたよ。どうにも、舌が肥えてしまったようです』
半笑いで煙に巻きやがった。着信拒否にしてやりたい。
腹立ち紛れに携帯の電源を強めに切ってから、振り返ってみれば、ベンチに横たえられたままの国木田は、まだ目を覚ます気配が無いようだ。
野球空間を脱出し、揃って大雨の中に投げ出された俺たちの内で、長門と喜緑さんは直前まで昏倒していたとは思えないほどケロッとした顔で立ち上がったのだが、国木田だけがなぜか目を覚ます様子を見せず、今もこうして眠り続けている。
「長門、こいつ本当に大丈夫なのか?」
行儀のいい姿勢でベンチに腰掛けていた長門は、立ちっぱなしの俺の顔を見上げるため首の角度を少し上向きにして、
「問題ない。彼らによって加えられていた操作信号が消失し、一時的なショック状態に陥っているだけ」
「いや、だけって言われても……」
普通に心配なんだが。後遺症とか大丈夫なのかね。
長門より奥まったベンチで、寝かされた国木田の横に腰を落ち着けている喜緑さんに目を向けても、こちらもまるで心を砕く様子も見せず、能天気に笑うてるてる坊主のようにマウンドを濡らす雨を見つめているだけだ。
そう言えば、天蓋領域による操作が消えちまったってことは、つまり国木田の上に被さっていたピンク色の憑き物も消えちまったってことなんだよな。
俺は静かな表情の喜緑さんを見つめ、そして今更ながら女性陣の薄い夏服が肌にはりついているのに気付くや、ピーピングの汚名を避けるための名案を探りつつ、とりあえずは髪から一滴垂れた水の慎ましさに倣い下を向いた。
雨天だろうと何だろうと、眩しいもんは眩しいんだよ。
傘を持って迎えに来てくれた新川さんに連れられ、球場に横付けされていたタクシーに乗り込むと、法定速度を二十キロほどオーバーしているような気がしないでもない速度で一路北高へ。
校門前に到着すると、まずは国木田を担ぎ出して保健室のベッドに寝かせる。一人にするのも心配だったのでその場は喜緑さんにお願いし、俺と長門はとるものもとりあえず文芸部室へと向かった。
ハルヒが閉鎖空間を発生させている。原因は一体何なんだろう。あいつまさか、自分の頼んだオレンジジュースをシカトされたぐらいで腹を立ててるんじゃないだろうな。
反応の乏しい長門に壁打ちテニスのごとく自分の推測をぶつけていると益々不安になってきたので、途中で一旦引き返し自販機でオレンジジュースを購入してから、文芸部室の扉を叩いた。
「あっ、キョンくん……」
部屋に入った途端、筆の穂先で耳をなぞるような切ない呟きに出迎えられる。
何事かと思えば、朝比奈さんがいつもの椅子に座ったままで唇の形をちょこちょこと動かしつつ、こちらにちらちらと視線を送ってくる瞼の下では、赤く艶やかに熟れたパプリカのような頬が薄暗い部屋の中で瞬いている。
「キョン」
こっちはなぜか窓の方を向いたまま腕組みしているハルヒが、くそ真面目な声色で俺を呼びつけてきた。
その背中はどこかしら俺たちを突き放すような雰囲気を纏っており、何か知らんがまずいと思った俺は不機嫌な取引先の社長をなだめんとする営業部長のように土産を差し出すと、
「すまんハルヒ。ちょっと遅くなったけど、買ってきたぞ。ほら、オレンジジュース」
「そんなものはどうでもいいわ」
オレンジ畑の人たちに謝れ。
バレンシア州の人々の嘆きに耳を貸しもせず、ハルヒは弔問でも述べるかのように端厳と、
「あたしはね、恋愛なんて精神病の一種だと思ってるし、ひどく馬鹿馬鹿しいとも思っているわ。正直な所。そんなものは、他人におもねることでしか生きていけないひ弱な奴らの言い訳に過ぎないってね」
相も変わらずエロースの涙もちょちょぎれそうなほど醒めた恋愛論だが、どうしていきなりそんな話を始めるんだよ。
「だけど、自分の価値観を他人に押し付けるつもりなんて、あたしには更々無いの」
話は俺を置き去りにずんずんと前に進んでいっているようで、
「同じ団体内での恋愛なんて、色々ややこしくなりそうだし、団長としては厳しく取り締まりたいところなんだけど。……でも、お互いが本当にそうしたいのなら、誰にも止める権利なんてないっていうのもわかってる」
それまで向けていた背中を突如として反転させて、現れたハルヒの顔は恐ろしいほど無表情だった。
普段がやかましい分、星の無い夜空を髣髴とさせる。寂しいと思うのは純朴なガキぐらいのもんだろうが、生憎と俺もまだまだガキだ。こちらと決して目を合わせようとしないのも気に掛かるし。
「さっき怒鳴って追い出したのは、まあ、突然だったからビックリしただけよ。別にあたしも、あんた達の事を邪魔しようってわけじゃないわ。だから」
「なあ、ハルヒ。話が盛り上がっているところに水を差すのも、我ながらアレだとは思うんだが」
いい加減黙って聞くのに痺れを切らした俺は、沸騰しそうなやかんの蓋を押さえる具合で団長机に手を置いて、
「お前、さっきから何の話してるんだ?」
「いいってば、別に誤魔化さなくても。あんたみたいな唐変木がこっちの耳を腐らせるような言葉をあれだけ吐くってことは、よっぽどの決意だったんでしょうよ。変な気を使ってふいにしたりしちゃ勿体無いじゃない」
ハルヒは歪に唇を歪めると、
「答えをちゃんと聞きたいでしょ? いいわよ。今日の団活はもうおしまい。古泉くんだって欠席してるし。有希もあたしが連れて出ていくから、あとは二人でごゆっくりどうぞ」
「あ、ちょっと、待てって。長門まで連れ出してどうするってんだよ」
大股で歩き出したかと思えば長門の手を取ってさっさと部屋を出て行こうとするハルヒの肩を、掴んで止めた。
途端、触れられた事が我慢ならないとでも言わんばかりに痴漢のまたぐらを蹴り上げるかのごとく俺の手首を捻り上げ、
「だから! あんたがさっきみくるちゃんにこ…………コクった事に関して、あたしは別に怒ってないし邪魔もしないし気を使って今すぐ出て行ってやるって言ってんじゃないのこのビッグバンバカっ!!」
鼓膜を突き破り、くるりと捻じ曲がった内耳を一直線に伸ばしてしまいそうなほどでかい声を浴びせられる。かわいそうなのは俺のカタツムリだ。
つうか、こいつ今何て言った?
「お前な、わけわかんないこと言うのも大概にしろよ。俺がいつ朝比奈さんにコクったっていうんだ」
んなことできるんならな、去年出会ってすぐの時点で熱い想いを打ち明けてるっつーの。
捻られた手を引き抜いて庇いつつ、己の甲斐性の無さを露呈する俺の羞恥に対し、いささかの注意も払わないままでハルヒは静かに牙を剥く。
「いつもクソも、ついさっきここで、あたしがいるのもお構い無しに、リルケもボードレールも泡を食らうほどロマン情緒たっぷりにあんたがみくるちゃんに抱く愛情とやらを謳い上げてくれたじゃないのよ」
……ついさっきここで?
朝比奈さんは、俺と目を合わせるやいなや、こっちが心配になるぐらい真っ赤な顔をさらに炎上させて、すぐさま俯いてしまった。一方のハルヒは自らの激昂を恥じるように顔をしかめると、冷えた表情に逆戻り。
二人の様子からして何かあった事は間違い無さそうだが、しかし、今ハルヒが口にしたことが事実であるはずもない。
「いいか、ハルヒ。俺はな、飲み物を買いに行くためにこの部屋を出てから、今の今まで、国木田の用事に付き合って学校の外にいたんだ」
ハルヒは昏黒の眼光を寄越してくるが、実際に俺は今しがた学校に到着したばかりだ。嘘をついているわけでもないし、口の滑りは好調だった。
「つまり、俺がついさっきもこの部屋に来てたなんてことは、絶対にありえないわけだ。嘘だと思うんなら長門に聞いてみろよ。長門も途中から合流して、俺たちと一緒に行動してたから」
な? と同意を求めると、かくりと長門は頷いた。
しかし、ハルヒは尚も信じる素振りすら見せず、
「下手な嘘に有希まで付き合わせるんじゃないわよ。あたしもみくるちゃんも、あんたの事をはっきりとこの目で見て、あんたのトンチキな声だってこの耳で聞いてるの。今更誤魔化されるわけないじゃない」
「んな事言われても、こっちだって身に覚えが無いんだよ。お前も朝比奈さんも、幻覚でも見たんじゃないのか? ほら、雪山の時みたいにさ」
俺は古泉の真似をして、強引なこじつけを、さもそれらしく、
「極限状態ではないにせよ、等間隔に響く雨の音、それに、朝比奈さんのお茶でも飲みながらまったりしてれば、嫌でも眠くなってくるだろうし。どっちかの寝言が耳に入って、結果的に二人とも同じ夢を見てたとか、ありそうな話だ」
自分の言葉に頷きながら、
「どうだ。もう一度冷静に考えてみろよ。さっきここに来た俺とやらは、本当に俺だったのか?」
思い当たる節があったのだろう。不機嫌そうな面は崩さないまでも、唸るような様子を見せたハルヒは腕組みしつつ、
「……確かに、変ではあったわ。あんたなら口にする前に首を吊りそうな台詞を惜しげもなく言い放ってたし、そうね、雪山で遭難した時の夢に出てきた偽者のあんたと、似たような感じだったかも」
「だろ? とにかくな、それが俺じゃないのは確かなんだって。神様なんて信じちゃいないが、何なら家族と親戚一同に誓ったっていい。俺は無実、無罪、冤罪だ」
両手を上げて身の潔白をアピールする俺を見ても、朝比奈さんの方は今ひとつ状況が飲み込めていないのか、顔を桃色に染めたまま、ほのかに咲いた唇に指を当ててキョトンとしていた。ヴィーナスも真っ裸で貝を譲るね。
そう。俺ふぜいが朝比奈さんに向かって愛を訴えるなんて、罪悪に他ならない。聖書の目録に載ってたって不自然じゃないほどのな。
おそらく、朝比奈さんに告白したとかいう罰当たりな俺の方は、雪山の館と同様に、長門なり統合思念体なりが用意した幻覚なのだろう。
俺たちが天蓋領域の作り出した空間から脱出できたのは神人が発生したおかげだし、仮に俺があの場で球を打てなくとも、神人がちょっと暴れるだけで、あんな野球場ぐらいすぐにぶっ壊れてしまったに違いない。
言うなれば今回の閉鎖空間の発生は正に救済処置であり、そのためにハルヒのストレスを爆発させてやらなければならなかったわけだ。
そして、今回ハルヒがストレスを爆発させたのは、さっき本人も言っていた通り、俺と朝比奈さんが特別な関係を結ぶことで、SOS団内部に何らかの軋轢が生じるのではないかという危惧によるものだった。
別に、組み合わせが俺と朝比奈さんだったからというわけではない。たとえそれが古泉だったにせよ長門だったにせよ、団員同士の関係が変化すること自体が、こいつにとっては不安だったんだろう。
しかし、と俺は苦笑する。
変化を恐れる、か。裏を返せば、現状にはそこそこ満足してくれてると思っていいのかね。
気取られぬよう肩を竦めつつ、長門に事の真偽を正す算段をつけていると、
「でも、あの時の偽者とも雰囲気が違ってたのよね。上手く言えないけど、照れてるんだか開き直ってるんだかわかんないような中途半端に拙い感じが正にあんたらしかったし、少なくともあたしは、本物のキョンだって思ったもの」
ハルヒにかかった疑念のヴェールは未だに晴れないらしい。今度は俺の周りをぐるぐると歩き回り始めた。じろじろと無遠慮な視線を感じる。出荷される直前に健康チェックを受ける牛になった気分だ。
やれやれ。こいつをどう説得したもんか。
俺は頭を悩ませつつ、
「だからさ、考えてもみろよ。俺が学校の外にいた時間に、俺がこの部屋にやってくる。矛盾してるだろ? 一人の人間が、別々の空間に同時に存在できるわけがないんだから。それこそ、SF的な小道具でも使わない限り無理な……」
そこまで言って、はたと気付いた。
待てよ。
朝比奈さんに告白した俺は本物だと言うハルヒと、そんな事にはさっぱり身に覚えが無い今現在の俺。
両方の主張をまるっと肯定し矛盾を解決してくれるような、一人の人間が別々の空間に同時に存在するという事象を可能にするSF的小道具にバリバリ心当たりがあるのは、俺の気のせいなんだろうか。
銀を円形の鋳型に流し込んだような長門の虹彩は、何も語ろうとはしない。というか別段、俺に伝えるべきものを抱えてはいないように見えた。
一方で、未だに話の要旨が掴めていない様子の朝比奈さんの、その薄っすらと濡れた双眸の向こう側には、朝比奈さん(大)が悪戯っぽいウィンクを俺に投げかけてきているような、これは多分錯覚だろう。
「……ひょっとして、今のあんたの方が偽者だったりしないわよね?」
さんざんっぱら悩んだ挙句にハルヒが導き出したトンチンカンな回答がほんの少しだけ魅力的に聞こえたのも、きっと気のせいに違いないのさ。
俺が抱く希望的観測は、やや外れ易い傾向にあるらしい。
それから数日と経たないうちに、歯医者を恐れる園児のように項垂れた俺は、未来からの指令書を携えつつ頬を膨らませた朝比奈さんに連れられて幾度目かの時間跳躍を行ない、冒頭の状況に至るってわけだ。
あの後のことを詳しく語るつもりはないが、穴があったら入って即身仏になってしまいたいほどこっぱずかしかった、とだけ言っておこう。
肉体的ではなく精神的な意味で命からがら任務を遂行し、ほうほうの体で元の時間に戻ると、涙目になった朝比奈さんはもみじで撫でるような軽いビンタを俺の頬にぺちりと当てて、
「あたしの気持ちを弄んだ罰ですよ」
男子のうちの誰かに聞かれでもしたら盛大な誤解を招き闇討ちされた挙句縄で縛られて国旗専用のポールに全裸で掲揚されかねないような朝比奈さんの言葉は、真摯にして俺の胸を打った。
過去の辻褄を合せるためにやむを得なかったとは言え、不誠実な告白をされた方は堪ったものではないだろう。最高に失礼な話だ。こういった形で不満を表明されるのも当然だと思う。
マジでへこむ俺を前に、しかし朝比奈さんはすぐに優しい笑顔を見せてくれた。やっぱ女神だ。
「あの手紙に書いてあった台詞、もう一回あたしの前で言ってくれたら、全部許しちゃいます」
贖罪の道は予想以上に険しかった。
さて、国木田の一目惚れがどのような顛末に至ったのかについても、少しは語っておかなければなるまい。
とは言え、語るべきことなんてほとんどありはしないんだが。
なぜならばそれは最初から一目惚れなんかではなく、中河と同様、宇宙的存在の仲介あってこそ発生した恣意的な感情であり、干渉が途絶えれば醒めてしまう夢のようなものだったからだ。
保健室で目を覚ました国木田は、喜緑さんに看病の礼だけ述べると、すぐに帰宅してしまったらしい。
翌日登校してきた国木田に、俺は訊ねた。
「よう。昨日はどうだったんだ?」
国木田は何のことだか分からなかった様子で、ひょいと小首を傾げながら、
「どうもこうも、昨日は僕、放課後になってから熱出しちゃったみたいでさ、夕方までずっと保健室で寝てたよ。一昨日の疲れがたまってたのかも。本当は野球場までジャージ取りに行きたかったんだけどね」
「……喜緑さんと出かけるって話は、どうなったんだよ」
「は? 何それ」
心底不思議そうに、国木田は言った。
俺は、何でもない、と首を振って、
「よかったじゃないか。すぐ治って」
「あぁ、うん。その喜緑さんがさ、熱出した時にたまたま近くにいたらしくて、保健室にまで連れて行ってくれたみたい。先生がいなかったから薬も飲ませてくれたんだって。ぼーっとしてたから、僕はあんまりよく覚えてないんだけど」
そりゃラッキーだったな。せいぜい生徒会の仕事にでも励んで、恩を返してさしあげろよ。
わかってるよ、と頷いてから自分の席に着こうとしていた国木田は、鞄を置いてから俺の方を振り返ると、
「でも、僕ってどうして生徒会の手伝いなんかしてるんだろ」
今まで一緒にいた誰かに置いていかれたような戸惑いが、ぽかんと寂しく浮かんでいた。
「さぁな。俺が知るわけないだろ」
窓の外を見ると、白い汚れが目立つ窓の向こうに雲一つ無い晴れ間が広がっていた。
散々な目に遭った今年の梅雨も、そろそろ終わろうとしている。
国木田が廊下ですっ転んでから始まり、俺が散々な目に遭い続けた一連の騒動も、そろそろ幕の終い時だ。
古泉たちと橘京子連中の会談の内容がどのようなものだったのかとか、結局天蓋領域とやらは何がしたかったのかとか、統合思念体は何を考えているのかとか、この辺の肝心な部分はいつもと同じくわからないまま。
こっちを波間に浮かべた棒切れか何かのように好き勝手巻き込んでおいて、去っていく時は挨拶もなしだってんだから、ふてぶてしいもんだよ。
しかしまぁ、あれだけうざったかった雨音も、消えてしまえば寂しいものだ。
惚気にすらなっていない他人の話だって、ひょっとしたら似たようなものなのかもしれない。
最後に、これは何の事も無い、七月初旬の平日の話だ。
その日は久方ぶりの大雨模様。いつものごとく文芸部室でだらだらと青春を浪費したあと、朝比奈さんが着替えを始める前にと思って適当な所で部室を後にした俺は、下駄箱で国木田と鉢合わせになった。
「あれ、ここで会うのって珍しいよね。今帰り?」
「ああ。そっちは、まだ生徒会の手伝いやってるのか」
この前は、そろそろ辞めようと思うって言ってたけど。
「せめて今学期の間ぐらいは続けることにしたよ。今やめるにしても、切が悪いしね」
応じながら靴を履き替えてすのこから降りた国木田は、傘立の中から手探りで一本、体の割に大き目な黒い傘を選び出す。
同じく靴を履き替えようとした俺は、思わず手を止めた。
「……お前、傘変えたのか?」
「うん。まぁ、もらい物なんだけど。にしてもキョン、結構目敏いんだね。普通他人の傘なんてそんなに気を払わないのに」
別に目敏くはないさ。その傘と似た傘を、俺も前に使った覚えがあるってだけの話だ。
「これ、こないだ球場にジャージ取りに行った時さ、変な女の子にもらったんだよ。もらったっていうか、握らされたっていうか、いつの間にか受け取ってたっていうか、そんな感じなんだけど」
変って、具体的にはどんな風に変だったんだよ。
「それが、自分でもよくわかんないんだよね。その女の子、結構インパクトの強い外見をしてたような気がして、だから変だって思ったんだけど、でも具体的にどんな外見だったのかよく思い出せないんだ」
俺は追及しようかどうかわずかに迷ったが、やはりやめておいた。
あんなにボロボロだった傘を直したのが誰だったかなんて、至極どうでもいいことだ。大方どっかの暇な宇宙人辺りが、気まぐれを起こしたってだけの話だろう。
ただ、国木田でなく俺に渡してくれていれば、家の高級傘を弁償代わりとして来客口に寄付する必要も無かったのに。どうしてあの類の連中は気が利かないんだろうな。
「キョン、どうする? たまには一緒に帰る?」
国木田の背後。偶然だろう、校舎から雨を切り取る玄関の前で、ペンキで塗り固めたように濃いホワイトの傘を開く、水鳥にも似た優雅な後姿を見つけて、俺は首を横に振った。
「いや、俺はもうしばらく皆を待つよ。じゃあな、国木田」
「うん。じゃあ、また明日」
黒い傘が、見る見る遠ざかっていく。
先を行っていた白い傘とゆっくり差を詰めていき、並ぶか並ばないかの所で、俺を呼ぶ声がした。
「あんた、先に帰ったんじゃなかったの?」
少し気を取られている間に、二人の姿はもう雨の向こうに消えてしまっていた。残されたのはモノクロの海に沈んだ、雨に煙る灰色の風景だけだ。
二つの傘は、ただすれ違うだけなのか、それともどちらかが足を止めるのか。
ほんの数十メートル先の情景すら、俺にはきっとずっとわからないままなのだろう。
「ちょっと、何シカトしてんのよ」
「してねえよ。見ての通り大雨でな。傘を忘れたのに気付いて困ってるところだ」
ハルヒは「あ、そ」とブラジルの天気予報でも教えられたかのように興味の欠片も残さず俺の横を通り過ぎると、洒落っ気の無いビニール傘を差して、さくさくと歩きはじめる。
興味が無いのなら聞くなと言ってやりたいね。
ため息をつきながら、ふと、湿った廊下に消えないまま残っている国木田の足跡に目を落とし、以前自作した諺のことを思い出した。
ハルヒはいつかそれを病気の一種だと喩えたが、なるほど言いえて妙かもしれない。唐突で曖昧でわけがわからず、第三者どころか当人にしてもそれと気付かない場合だってある。
特に今日みたいな暗くてジメジメしてる時は要注意。
気は滅入るし、廊下だってよく滑るしな。
「こら、何ぼさっと突っ立ってんの。置いてくわよ」
俺はせいぜい妙な病気にかからないようシャツのボタンをきちんと閉めると、家に忘れてきたはずの折り畳み傘のせいで無駄に重たい鞄を片手に、雨の中に向かってゆっくりと歩きはじめた。
GJ!!
こういう板見てると新作が余計に待ち遠しくなるな〜
ちなみに俺は涼宮ハルヒの疾走とか言う二次で待ち遠しさをごまかしてる。
この作者も全然更新しないがw
まだ読んでないがGJ
では読んでくる
以外と時間を喰ったが読み切った
久しぶりにちゃんとした橘をみたような気がする
あと3日ぐらい後に50k切ってそこで埋めネタ投下かなと
どんぶり計算してのんびり書いてた俺負け組orz
家帰ったら読ませてもらうよ。
古泉が妙に生き生きしててワラタw
それはそれとして久々にハルヒSSらしいSSを読んだ。
どっかで「ミイラがミイラ取り」って書いてあったけど、逆かと。いや、仕様か?
まぁ特に咎めることではないし、
読み応えのあるSSを久しぶりに読めたのが良きかな。
>>808GJです。そしてスレ立て乙です。
GJ!!
なんか橘に久し振りに萌えた気がするw
てか冒頭のキョンの告白はハルヒを不機嫌にして閉鎖空間を起こさせる為ってことでおk?
橘のイメージがヘタレ仕様なんだよなwww
どうも橘のイメージって固まらないな。
殺気受けても平気でスルーするわりには、なんかキョンと話すとヘタレな部分も見えるし。
>>817 それはわざとヘタレな部分を見せてとっつきやすく思わせる、
橘流の人身掌握術なのですよ!
…と思いたい
819 :
818:2007/11/15(木) 23:51:33 ID:TyW0r/H/
忘れてた、
>>808GJ。
キョン語りが職人芸ですな。最後まで一気に読まされました
のですのです してないきょこんが良かった
珍しい
>>808 GJ!! &スレ立て乙!!
ここまで正統派なハルヒSSは久しぶりに読んだ気がするw
キョン語りも上手いし、キョコタンを含め、原作キャラの再現度もお見事!
なんちゅーか、谷川仕事しろ!てか、こんなとこでSS書いてないで驚愕マダー(AA略
今読み終えた、GJ。
キョンのくどい位にくどい自分語りがとにかく原作を読んでるような
そんな懐かしい感じがしてよかった。
触発されたので埋めネタで書いてたのをもう少しまじめに仕上げよう。うん。
>懐かしい感じ
まだ分裂が出て半年ぐらいしか経ってないのにそんな悲しいこと言うなよw
以前から思っていたのだが、氏の書くキョンはちょっとIWGPのマコトっぽいな。
そういう読み取りに自信はないから、違う作者さんだったりするかもしれないけど。
GJでした
懸案事項がいくつかあって、それが同時進行してくとこが原作っぽくて良かったです
>808
GJ、原作ハルヒを読んでるって感じがした。
二次創作として完璧というか、本当にすごいなと思う。
キョンの語りが巧いなぁと素直に感心。
その分事件の真相が中途半端でうやむやになってしまったのが残念だ。
そこまでながるんに似せなくても良いよw
連載じゃなくて一話完結なら、落ちももう少し詳しく説明してくれないと、霧に巻かれた気がしてすっきりしない。
で、二人のうちどっちなのこれ。作者。
非単調の人と見た。
お久しぶりな気がするが、相変わらずいい物を書かれる。
GJでした。
>>830 それはもちろん。
ただ、継続してよいものを提供してくれる作者に敬意を表したい、というかね。
まぁそんな感じ。他意はないよ。
それをやろうとすると変なのがわくという
あしくもわるくも2ch。
よくもあしくもじゃないのかw
圧巻でした、GJ
あと一言、ひょっとしたら喜緑さんがまんまとトラップ空間に入ったのは
仮初とは自分に好意を抱いてくれた国木田を自分で助けてやりたいという無意識の欲求ではなかったのかと
愚考して見る次第
なんだろ、お話(もちろん上手いよ)や小ネタ(センスあんね)ってより、
端々の言い回しがいいなと思った。もっとすごいのはキャラ造型。ちびるね。
うん、こりゃ真似ようとしても書けないわ。橘すらまともに魅力的だし。
>>808 いろいろと感想の言葉は浮かんでくるのですがとりあえず一言だけ、素直に面白かったです。
そして埋めネタ。意味なしヤマなしオチよわし。2レス。
――――――――――――
とあるバカップルの恋愛事情
――――――――――――
「さあ、不純異性交遊の現場をばっちり押さえたわよ! 覚悟しなさいバカ会長!」
放課後の生徒会室、書類の紙で切れてしまった指を江美里に手当てしてもらっていると、カメラを片手に脳内年中花咲き女が意味の分からん事を言いながら突入してきた。
「バカかねキミは?」
別に『バカと言った方がバカなんだ』なんていう子供理論をぶちかますほど若くはないつもりだが、それでもあえて口にしておく。
「何よ、バカって言った方がバカなんだからね!」
………ああ、ほんとガキだな、こいつ。
カメラを持っていない方の手で引きずってこられたであろう、傍から見るとどう考えても彼氏にしか見えないキョンとかいう名の男子生徒が溜息をつく。
気持ちは察するがこのバカ女がその溜息をこっちに伝播させるような真似をしようとしたら止めて欲しいんだがな。感染症を国外に持ち出すんじゃねーよって事だ。
「私は喜緑くんに切った指を手当てしてもらっているだけなんだがね」
とりあえず冷静に対処するとするか。病気も怪我も早期治療が大切だからな。
「ふんだ、どうせ治療にかこつけてお医者さんごっこでもしてたんでしょ!」
………ちっ、随分悪性度の高いウイルス様だな。どこかに特効薬はないもんかね。
「とりあえずキミの幸せそうな脳内での不純異性交遊の定義を教えてくれないかね?」
まあ、出来れば何もせずにそのままお帰り願えるとありがたいのだが。
「あんた、生徒会長なのにそんな事も知らないの? あきれたわね。じゃ、あたしが詳しく教えたげるからよく見てなさいよ」
もの凄い勢いで余計なお世話メーターが上昇する。大丈夫、まだ自制内だ。
「まず、こんな感じで抱きつくとか」
………隣の彼氏に抱きつくバカ。
「ん………、ってな感じでキスしたりとか。あ、………ん」
………そのままディープキスに移行。
「あ、そうそう、今のキョンみたいに押し倒したりだとか」
そのまま机の上に押し倒されるバカ。………ここはどういった異次元ですか?
「ちょっと! 人の話を聞いてるの!」
「………とりあえず、今の自分を見つめなおす事をお勧めするよ」
俺の言葉にキョトンとした顔を浮かべた後で、生徒会室のど真ん中で彼氏に押し倒されているという自分の状況を認識し、
「え、ちょ、何やってんのよ、キョン!」
………どうやら今までの行為は全部無意識だったらしい。時代遅れかもしれんがあえてこう表現しよう、どんだけー。
「や、ちょ、キョン! 放しなさいってば!」
「いや、なんつーか、アリだろ」
「ない! これっぽっちもカケラほども砂粒ほどもありえないわよ! アンダスタン!」
「あふがにすたーん」
「ちょ、斬新的すぎる答え返しながら服脱がせるなー!」
ああ、なるほど、これは確かに不純異性交遊だな。
「見てないで助けなさいよ! この役立たず!」
「ふむ、確かに生徒を助けるのは会長の役目だからね。任せたまえ」
そう言ってスプレー缶を取り出し、机の上に置く。
「………何、これ?」
「超強力消臭スプレーだ。煙草の臭いも1発で消えるほどの一品だからね。アレの臭いも何とかなるだろう」
「アレって何だー!」
答えたいのは山々なのだが、その前にブラジャーが外されたので回れ右、江美里と一緒に生徒会室から退散する事にする。ピーピングの趣味はないからな。
「ちなみに防音はばっちりだ。扉には鍵をかけて使用中の札をかけておくよ。見回りの教師にだけ注意したまえ。ではな」
扉を閉める時に喜びいっぱい嬌声いっぱいの罵詈雑言が飛んできた。うん、我ながらナイスアシストだな。
///
さて、生徒会室が使えなくても仕事は出来るのだが、バカップルの放つ空気に当てられてどうにもそんな気分になれない。
「本当に、無自覚なバカップルほど対処に困るものはないね。キミもそう思うだろう、喜緑くん」
「ん、ひょうでひゅね」
「ああ、すまない。もういいよ」
俺の言葉に反応し、江美里はずっと舐め続けていた俺の指から口を放した。
「えと、もう傷は残ってないみたいですよ」
「うん、ありがとう。助かったよ」
「いえいえ、生徒会書記として当然の事を行ったまでです」
にこやかな笑顔で真面目に答える江美里。職務に忠実な書記を持って大助かりな会長の俺である。
「しかし、涼宮くん達の事とは別件なのだが、それよりさらに困った事に、どうやら最近私達が付き合っているという根も葉もない噂が飛び交っているそうだよ」
「まあ、失礼な話ですね! わたし達はただの会長と書記でしかないというのに」
「本当だね」
実際、行動も会長と書記っぽい事しかしてないと思うんだがなあ。
「ところで会長、駅前に美味しいケーキを出す喫茶店ができたので一緒にいきませんか?」
「ああ、いいよ」
「ちなみにわたしのバイト先ですのである程度なら値引きしてもらえますよ」
「何と! バイトかね!」
服装は普通のウェイトレスで是非! まんまメイドさんというのもそれはそれで素晴らしいのだが、アレは自分の家の中で着てもらうものなんだよ、………私見だけどな。
「………あー、その、普通のウェイトレスの服だと思うのですけれど」
よし、と思わずガッツポーズしてしまった俺を誰が責められようか!
「今確実にわたしが着ているところを想像しましたよね?」
「いや、私の妄想力では半脱ぎが限界のようだよ」
「いきなりトップギアですね!」
「無念だ」
「わたしは残念ですよ」
はあ、と二人同時に溜息をつく。
………いや、待てよ? ………そうか!
「よし、生徒会の仕事の一環としてその服を持ち帰ろう!」
「いや、いきなりどこへ羽ばたいてますか、あなたは?」
いきなりスコールに降られた観光客のような戸惑いを見せる江美里に、俺は赤道直下の炎天下じみた笑顔で告げた。………なんとなくだが。
「気が付いたんだよ!」
「何に気が付いたんですか?」
「妄想できないのであったら自分で現実にすればいいのだよ!」
「何を」
「ウェイトレスだよ!」
ああ、今の俺の目は白鳥座α星くらいの輝きは見せているに違いない。………これまたなんとなくだが。
そんな俺をまじまじと見つつ、溜息交じりで江美里は言った。
「まあ、そんな会長の変態さを受け止めるのも書記の役目ですからね」
こうして受け止めてくれる彼女に心からの感謝を捧げつつ、我が生徒会は駅前のウェイトレスに向けてノリノリで舵を取るのであった。………ひゃっほーい!
///
夜遅くに家に帰って一息つく。
古泉から『桃色閉鎖空間』という題名で『恨みますよ』という一文だけのメールが入っていたが華麗に無視し、必要以上に頑張りすぎてヘトヘトな体を休めるために早めに眠る事にした。………とはいえ、もう12時は過ぎていたりするのだが。
眠りにつく前に今日の事を少しだけ回想する。
………しかし、放課後の会話内容を吟味してもらえれば分かると思うが、本当に会長と書記という関係でしかないのに、どうして俺達が校内一のバカップル扱いされているのかね?
本当、世間ってのは見る目の無いやつらばっかりだよ。
あ、あと、ウェイトレスの件なのだが、まあ、なんだ。一言で表すと、だ。
とてもおいしかったです、いじょう。
以上です。
それでは。
どいつもこいつも…古泉乙www
>837埋めGJ
23:23:23の投下とは・・・ウホッ!いいタイミング
>>808 原作的ないい意味での「はぐらかし」、無茶をしないキョン、原作エッセンスを用いつつオリジナリティをもたせる。
当方が目標としている原作的な作品、ありがとうございました。
>>839 バカップル×2、非常に結構!惜しむらくはキョンの冒頭の溜息とその後の行動のギャップだ。
スイッチが入ると、ということなのかもしれないけど。
>>808 今読み終わった。
GJ!
久し振りに「良いもの読んだな」って感がするぜw
>>839 暴走バカップル乙w
>>839埋め乙
誰も突っ込まないので、
> 実際、行動も会長と書記っぽい事しかしてないと思うんだがなあ。
う、嘘つけ〜!!
あと桃色閉鎖空間は、vipネタかな。
>>808 あなた様の書く、追いつめられて切れたキョンはとても素敵で魅力的です。
ホントにGJ
対照的な2作品来たな
そのものと別人
おい!感想の人はどこだ!
今こそいつものアレをやるんだ!
原 作 者 の 新 作 読 む と や っ ぱ 圧 倒 的 な 力 の 差 を 感 じ て し ま う 。
こ れ は も う 如 何 と も し が た い ね ……
っておまえじゃなぁーいっ!!
AAで埋めるのはほんのり罪悪感あるな…しかし背に腹は替えられん
_, r─===-- 、_
_, ‐''´ 、 丶、 `丶、
, '´, , \ \ \
/ / / , / i ヽ. ヽ 丶
/ ,.イ / / | | Y ヽ ヘ ヽ
// / / /! l ! l i │i ',
′i イ i7⌒Y ト ヽ ─-、j | │| i
| / || ト ,r=ュ、j 、\ ハヽ/ / j │
|' ヾ. { f'みラ! ヽ \ 示ミュイ / / !
! \ハ じク iクルハj / / j 埋め
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/ / j 、 「` ¬ / ´ {リ , l
/⌒∨ ,′ ノ 丶 ヽ _ ノ / l / l
ハ`Y !. i _,. ィ ´ / 丶 _, -‐' 7 j / ',
/ { ヽ ヽ | _, -‐''´ / / _,厶イ / / ,' 、
ヽ_ト/〉 ` j‐' ¨´ / i , / ̄ , -┘ / /ヽi | ヽ
i / / _ !ハ! /| ,' 厶二 `\f // >、| ヽ
| lテ' ´ /ヽ' N 厶-、 \,イ イ´ /´ >、 ヘ
∧__/i / i // / ヽ/ l / / , -‐' ¬ 、 l
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:. |i .i i .i / ヽ ト 、 \、:.:.:. ',:.',:.:.lヽ}
|i .i l :N_, -弋 \弌弋ナ:}:.:}
:. |i∧ ', :{ ,ィjモト \ イjミトイイV :. ./ここ、どこですかぁ…?
.| :メヽ.', `ozZ} izN。ハ::{ / わたし、なんで連れてこられてるんですかぁ?
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/ ∧l;l ! :.:.:.://{二 ̄ .} ..:..::リ//ハ.:\ \
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{ /| .:.:ハ : : :i Y {ヾ`Yヽニン'ノ}: : } : : : :/:.:.:/ }:.}
V | .:.:/:.:|_,ィ' ̄ ヽ三{ `ー-ノ : イ : : :/:.:i.:{ リ
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【涼宮ハルヒ】谷川流 the 55章【学校を出よう!】
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