投下 長いけどいいかな?
砂と岩ばかりの枯れ果てた地、旅人も近寄らぬ辺境の地、
そこにおよそ似つかわしくないきらびやかな一軍が月光を浴びて進んでいた。
大きな荷物をくくりつけた馬とラクダが十数頭、
どれも派手な装飾をされておりキラキラと音が響く。
中央のラクダの背にはヴェールで顔を覆った女性が月を眺めていた。
「美しいわね」
つぶやくと、形のよい胸を突き出して天を仰ぐ。
「シャラ様」
傍らの侍女が彼女のマントをはぎ取った。
現れたのはシャラの見事な褐色の肌。マントの下は裸だったのである。
シャラはヴェールも脱ぎ捨てると、侍女に放り艶やかな黒髪を風に流した。
女神のように美しい彼女の裸身は月の光をいっぱいに浴びていた。
「この身体、セリムは気に入ってくれるかしらね」
誰に問うともなしにつぶやくと、傍らの侍女がもんちろんですわとほほ笑んだ。
シャラは顔をほころばせるとまだ見ぬ夫の姿を想像する。
六つ年下の美しい青年だと聞いている。
彼はこの寂しい地の果てで神の使い人として俗世を捨てて暮らしているという。
さあ、どう堕とそうか・・・、シャラは豊満な唇を舌なめずりした。
セリムは五人の僧侶と寂れた寺院で暮らしていた。
以前は城として使われていた遺跡を神の住処として祀っている。
毎日神に祈り、供物をそなえ、そしてまた祈る。
禁欲を己に強い、怠惰な生活を嫌いそれを確実に実行していた。
精神修行が日々のつとめである。
今日も明けた太陽に感謝をささげようと寺院から姿を現した。
「セリム様!」
ただならぬ形相で、同じく神の使い人である男がセリムの元に駆けつけた。
「どうしました?」
「はあ、はあ、み、都から・・・使いが・・・」
彼の指さす方向に馬を従えた人影が二つやってくるのが見えた。
「都から・・・?」
眉をひそめてセリムは彼らに近づいていく。
人相が確認できる所まで来ると、はっと振り返り男に叫んだ。
「院長様を!」
男はうなづくと足早に寺院の中へと消えていった。
セリムはゴクリと唾を飲み向き直ると一言、「そこで止まって下さい」
二つの人影は女性であった。
「この寺院には女性は入れません。要件ならここで伺います」
寺院の境界線、石畳の終点でセリムは手を広げて立ちはだかった。
彼女達は顔を見合せてやっぱり、というようにうなづく。
「これは失礼いたしました。私達は南の宮様からの使いで参りました。
寺院へは足を踏み入れませんのでご安心を」
使いの女はニッコリとほほ笑んだ。続いてもう一人の女が語り出す。
「南の宮シャラ姫様はここから半日ほどの所からこちらに向かっております。
まずは寺院の端でよろしいので仮宮を設営させていただきますがよろしいですか?」
こちらの女はニコリともせず矢継ぎ早に話す。
セリムが返答に困っていると背後から声がかかる。
「南の宮様ですと!?」
この寺院の長である老人の声だ。
天変地異でも起きたかのような驚愕した表情だった。
院長は高齢とは思えない早さでやってくると彼女達を交互に見てうつむいた。
「南の宮様からの書簡です」
女が懐から巻ものを取り出して院長に手渡した。
震える手でそれを読み進め飲みこむと、院長は長い白眉毛の間からセリムを見やった。
「どういう事ですか?」
心配そうに老人をのぞき込み、セリムが問うが答えはなかった。
「初めてまして、セリム」
薄いカーテンの向こう、彼女の声は凛と響いた。
絹のソファに横たわる人影に無礼な視線を送らぬよう、セリムは足もとだけを見つめていた。
「お初にお目にかかります。南の宮様」
セリムは小さな声でそうつぶやくだけで精一杯だった。
彼女だけではない周りを取り囲む数人の美しい侍女達、これらも視界に入れたくなかった。
むせかえるような香の匂いが鼻に付く。
ただ、不快ではなかった。
懐かしい気がする香りだった。
「いやね、シャラと呼んでくださる?」
「恐れ多くてそのような・・・」
クスクスと女達の笑い声が響く。
セリムの頭は真っ白だった。
今まで女性には接点のない禁欲的な生活を送ってきただけに、高い女の声を聞くだけで驚いてしまう。
しかも彼女達は一様に肌を露出した格好をしている。
大きくあいた胸の谷間やスラリと伸びた手足が、薄暗いテントの中でも眩しかった。
「こちらへ」
視線を上げず、ひざまづいたまま微動だにしないセリムにごうを煮やしたシャラが手まねきした。
侍女達がカーテンを開け、一人がセリムを促す。
初めて目にした都の姫君は美しい女性だった。
長い黒髪に褐色の肌、気の強そうな瞳がじっとセリムを見据えた。
薄い絹の民族衣装をゆるく着こなしていて、下品にならない程度の貴金属が揺れている。
「セリム、もっとこちらへいらっしゃい」
この妖艶な美女に手を取られ引きよせられて、セリムの動悸は止まらなかった。
彼の真っ赤な顔を両手で包み、シャラは観察するようにセリムを見つめる。
「セリム、おいくつになったのかしら?」
「・・・じゅ、十九になりました」
「そう」
「あの・・・なぜ私を?」
なぜ自分の事を知っているのか、セリムの質問にシャラは微笑むだけだった。
セリムの長い銀髪をシャラの手がすく。
びくりと震えたセリムに微笑んで、シャラは質問を続けながら彼を触っていく。
「あなたはご両親をご存じ?」
「私は孤児だと聞いています」
「誰から?」
「・・・院長様から・・・、あ、宮様・・・!」
シャラの手は踊るようにセリムの首を這い、いつの間にか鎖骨辺りへと降りていた。
拳をぎゅっと握り、この甘い攻めにセリムは耐えていた。
「なぜ私がここへ来たか、その院長様はなんて?」
「うかがっておりませっ・・・、んっ・・・。手厚く、ご接待せよ、と・・・」
耳元で囁かれてセリムの身体は面白いように跳ねた。
シャラはクスクスと笑うとセリムの耳に息を吹きかける。
「わっ!み、宮様、何を・・・」
「接待してくれるんでしょう?ねえ・・・」
するり、とシャラの手がセリムの胸元へ降りた。
「まあ、意外にいい身体してるじゃない」
これは身体検査なのか?セリムは素直に礼を言ってしまう。
「ありがとうございます。心身共に鍛練する事も修行のうちなので・・・」
するとシャラは声高に笑った。
「そうだったわね、あなたは神の使い、浮世離れした存在」
再びセリムに手を延ばしてその背中を抱きよせた。
「あなた方は女を抱かないというのは本当なの?」
ギュウっとその突き出た胸を押し付けられて、セリムは息をのんだ。
「宮様・・・!」
「一生セックスをしないでいるとか?」
囁きながら、ペロリとセリムの耳を舐めあげる。
「あっ・・・!はっ、はい、神の、使い人は、俗世の男達とは違って・・・」
震えながらセリムは顔をそむける。
女性とここまで接近した事がない彼にはこのアプローチは刺激的すぎた。
不甲斐ない事に下半身が反応してしまっている。
女性達の匂いとこの柔らかい身体がセリムに神への罪悪感を感じさせた。
「申し訳ありません・・・、これ以上は・・・」
身体を離そうとするセリムをシャラはソファに押し倒した。
「これ以上は、なあに?」
「私は、神の使い人です・・・」
「だから?」
「これ以上触られると、私は・・・」
弱々しく、本当に困った顔でセリムは訴える。
いくら禁欲的な生活を送っているとはいっても、性に関しては自分の意思で操作できない事は知っている。
自慰はご法度だが夢精や不慮で射精してしまった場合には寛容だった。
身体が大人になるにつれて性衝動が一番強いこの時、特に己を厳しく戒める必要がある。
この事をシャラに組み敷かれたまま必死に訴えた。
つまらなそうにその高説を聞き流してシャラはセリムの顎を取る。
「ではこれは?」
「んう・・・!」
突然の口づけ。
柔らかな唇がセリムの言葉を遮った。
「んん、んあ・・・、み、み宮さ・・・ま・・・」
生まれて初めての口づけに驚いてセリムがそのまま喋ろうとすると、
偶然にもその舌がシャラの舌をなぜた。
「うん、ん・・・、自分から舌を入れてくるなんて・・・、やるじゃない」
「ちが・・・、ん」
セリムの上に乗ったシャラの太ももに固く猛るセリムの存在を感じた。
心の中でシャラはほくそ笑む。
同時に自分の下半身にも熱が集まってくるのも感じていた。
初めてづくして自分の下で悶える銀髪の美しい青年、
「かわいいわ」シャラの言葉は吐息で消えた。
激しいキスのせいで太ももで軽くこすっただけでセリムは吐精してしまった。
「あああ、ああっ!」
ビクビクと震えてセリムは力なく横たわった。
「あら、修行が足りないわね」
唾液濡れた口元を侍女に拭わせてシャラは微笑んだ。
「も、申し訳ございません・・・、ご無礼を・・・」
我に返ってセリムは濡れた下半身をかばいながらひざまづいた。
姫君の戯れとはいえ、臣下であり神の使い人である自分があられもない姿を見せてしまった。
本当に修行が足りない、セリムはくやしくて唇をかみしめた。
「あら、無礼な事なんてなにも?」
「ですが・・・」
「私の身体が気持ち良くて達してしまったんでしょう?私の舌が気持ちよくて」
シャラは自分の胸を片手で揉みしだき、指を舐めてみせる。
「嬉しいわ」
ドキリとしてセリムはまた眼をふせた。
「失礼いたしました。都での礼節などに疎い私にどうかご容赦を」
「いいのよ。それに、私の身体も悦んだみたいよ、ほら」
はあ、と切なげに下半身に手を入れて自分の蜜で濡れた指を差し出してみせた。
女性の性の知識のまるでないのに、セリムの顔がなぜか真っ赤になり恥じらってしまう。
「宮様が、喜ばれたならば、私も大変嬉しゅうございます」
意味がわかっているのか、セリムのたどたどしい口調に侍女達から笑い声が上がった。
「これは『不慮のなんとか』ね」
シャラの冗談めいた言葉に侍女達がついに噴き出してしまう。
女達の笑い声にセリムは頭がクラクラした。
「またここへ遊びに来てちょうだい」
シャラはそう言うと再び降りたカーテンの向こうに消えていった。
みじめに濡れた下半身をおさえてセリムは寺院へと帰った。
皮肉にも彼女の言葉で罪悪感は軽減された。
しかし、セリムはその日は一晩中神に祈り許しを請う事になった。
シャラ達の仮宮の天幕は寺院のセリムの部屋から見下ろせる場所に設営されていた。
だがセリムは女達が視界に入らないようにあえて見ようとはしなかった。
寺院の背後には森があり、奥に水源があり小さな川が流れていた。
その水を利用して日中女達が水浴びをするのが日課になっている。
寺院に住まう神の使い人である男達は、
心を惑わされないようにと細心の注意を払わなければならなかった。
都からぞくぞくと物資が届き仮宮は日に日に大きくなっていた。
セリムの不穏な気持ちも大きくなっている。
なぜ自分はシャラに興味を持たれているのか。
彼女は何が目的でここへやってきたのか。
院長に問いただしても、お仕えしろ、お世話しろとしか言わない。
そしてあの日、女達と接点を持ってから淫らな夢ばかり見る。
シャラの身体と唇を忘れようと神に祈ったがうまくいかなかった。
あきらめて武術の修行に精を出すが心が乱れてミスばかりする。
そんなある日、再び宮からセリムに呼び出しがかかった。
以前より人の増えた仮宮はそれでも広く感じた。
増設により密接した天幕内は迷路のようだった。
女ばかりだった以前より男の姿も目立ちセリムを安心させた。
奥へ奥へと進むと以前嗅いだあの香の匂いがした。
広い部屋に大きなベッドがあり、高価な絨毯が敷かれている。
そこへ何人もの女達が寝そべっていた。
また女ばかり、セリムはぎゅっと目をつぶって深呼吸する。
「お呼びでしょうか宮様」
ベッドの上には侍女に香油を塗られてくつろぐシャラがいた。
前より彼女が美しく思えてセリムは胸が高鳴った。
「いらっしゃいセリム」
にっこりと笑うとシャラは手まねきしてセリムをベッドに座らせた。
と、いきなりシャラはセリムに口づけた。
「あ・・・ん」
セリムはなされるがまま口を開けて耐えた。
「眼は閉じるものなのよ」
シャラが優しく諭すとセリムはおとなしくそれに従った。
「私の舌だけ感じて」
「んん、んむ・・」
言われたとおりに踊るシャラの舌に集中させた。
ぬめぬめと口内で出入りを繰り返す甘いそれに、気負ってやってきたセリムの心はすぐに手折られた。
真似をしてセリムも舌を差し出した。
ああ、気持ちいい。
ぴちゃぴちゃと鳴る音に淫らさを感じながらセリムはうっとりしてしまう。
ちゅ、ちゅと舌を交換しあう中、シャラの手がセリムの服を脱がせにかかった。
熱中のあまりそれに気付かないセリムは時折ビクビクと震えるばかりだった。
「ん、はあ・・・」
お互いの間に糸を引き、唇を離すと潤んだ目でシャラはセリムを見つめた。
「わ、私、なにか失礼を・・・!?」
シャラが泣いているのかと思いセリムの顔が蒼白になる。
「ぷっ、違うわよ」
台無しね、とシャラは笑った。
「え、私、服が・・・」
自分の服の前が広げられているのにやっと気づき、セリムは慌てて身繕うのをシャラの手が止めた。
「脱いで見せて」
「え・・・!」
「服を全部脱ぐのよ」
ぴしゃりとそう言ってセリムに詰め寄った。
どうしよう、助けを求めるようにセリムは周囲を見まわした。
が、侍女達は促すような仕草でほほ笑むか、好奇な目でじっとこちらを見つめるだけだった。
セリムは今まで自分の裸を見られて困るような事はなく羞恥にも無頓着だった。
しかしこの状況は、恥ずかしい、顔がさらに真っ赤に染まる。
下半身が盛り上がっているのに女達に見られると思うと恥ずかしかった。
「宮様、どうか・・・」
「シャラと呼んで。さあ、早くなさい」
彼女の眼は笑ってはいなかった。
姫君には逆らえない。
セリムは覚悟を決めて震える指で衣服を脱ぎさっていく。
優しげな顔に似つかわしくない筋肉質の上半身が現れると、侍女達からため息がもれた。
質素な食生活のおかげだろうか、無駄な肉はなく細身なのに均整のとれた身体だった。
盛りあがった腰巻に手をかけて迷っていると、全部よ、とシャラから声がかかる。
諦めて紐をほどいていくと見事に反りたった濡れた彼自身が現れた。
シャラはゴクリと唾をのんだ。
「きれいな身体ね」
女達のため息とひそひそ声と笑い声、恥ずかしくてセリムは死にそうだった。
「おそれ、いります・・・」
「後ろを向いて、髪を上げて頭の上で手を組んで」
後ろ、侍女達の控えている方へと身体を向ける。
言われた通りにその長い銀髪をかきあげて手を組んだ。
セリムの眼前には恥ずかしげに自分の身体を見分する女達。
ことのほか下半身に集中する視線に、屹立した自身はますます熱を持った。
「後ろ姿もステキね」
えくぼのある尻から視線を昇らせて、首筋でシャラの目が止まった。
本人は気づいているのだろうか。
セリムの首筋に赤い痣のような模様があった。
それを確認して満足げに微笑むと、よろしい、とシャラは再びセリムをこちらに向かせた。
シャラはすっと立ち上がりセリムの前に立ちはだかった。
手をセリムの胸へと滑らせて、筋肉の筋をたどった。
「ほんとうに、まだここは女を知らないのね?」
いきなり手が猛るセリム自身を撫で上げた。
「はっ!シャラ様・・・!」
ビクリとセリムの腰がひける。
「ダメです!」
抗議の声をあげてセリムはあとずさった。
「女を抱いた事はないのね?」
シャラは逃げ腰のセリムににじり寄ると彼の乳首を指ではじいた。
「・・・はい」
このような事を自分にした女はシャラが初めてだった。
シャラはぎゅうっとセリムに乳房を押し付けると楽しそうにセリムを見上げて笑う。
「・・・・っ」
途端にセリムの腰が激しく疼いた。
セリムの股間にシャラのなめらかな肌が当たる。
「いけません、シャラ様・・・ああ・・あ!」
シャラの両肩を掴んで身体を離すと、同時にセリム自身が暴発してしまった。
ガクリと腰を落としてひざまづいた。
絨毯に白い精が飛び散った。
「ああ、はあはあ・・・あ」
大きく息を吐きながら快感に耐える彼の顔はシャラの目に美しく映った。
ああ、なんて美しいのかしらこの子は。
早く犯してしまいたい・・・。
と、同時に関心してしまう。
神の使い人は自慰をした事がないというのは本当らしい。
これしきの些細な刺激で達してしまうとは面白い。
彼のせいでシャラの秘所は先ほどから潤んできている。
甘い疼きに我慢ができなくなってしまっている。
「も、申し訳ありませ・・・。汚してしまいました」
息を整えながらセリムは小さく言った。
うっとりとセリムを見下ろしていたシャラはその声で我に帰った。
「いいのよ。どう?気持ちよかった?」
「はい・・・」
「ふふ、かわいいわ。さあ、こっちへきて」
二人でベッドに座るとシャラはセリムの手を取った。
「どう?今の気持ちを正直に話して?」
少し落ち着いたセリムの顔を優しく見つめた。
「あの、気持ちよかったです・・・」
「何が?」
「口づけが・・・」
「どんな風に?」
「舌が、熱くて、とろけるみたいに柔らかくて・・・」
そう言いながらセリムはあの感覚を思い出してしまう。
「シャラ様の、身体が柔らかくて・・・」
顔を真っ赤に染めてうつむく。
「・・・でも、罪悪感があります。私は神の使い人です」
「わかっているわ」
「こんな事はいけません。神に背く行為です」
「こんな事って?」
「・・・・・・」
何も言えないままのセリムの手をシャラは自分の乳房にあてがった。
「こういう事?」
「い、いけません!シャラ様!」
ふふふ、と楽しそうに笑うとシャラは肩紐を取り上半身をあらわにする。
しっとりとしていて柔らかいその感触にセリムは驚愕する。
「これが女の胸よ。柔らかいでしょう?さあもっと触って」
「ダメです、シャラ様・・・」
そうは言っても健全な青年の性的好奇心には勝てず、手を離す事ができなかった。
手のひらを包むふわふわとした感触と、指に当たる乳首の固さ。
「・・・そう、上手よ」
拙い技巧で触られてシャラは吐息をもらす。
「ああ・・・」
ふとセリムは気づく。
自分が触れば触るほどシャラははあはあと荒く息を吐く事を。
「く、苦しいのですか?」
この反応がどんなものなのかわからず、手を止めてセリムはとまどった。
「ああ、だめよ続けて・・・」
「ですが、お苦しいのでは?ご病気では・・・」
本気で心配するセリムの顔にシャラは苦笑する。
「そうね、たぶん病気だわ。でもあなたがもっと触ってくれたら治るかも」
「どこを」
そうね、とシャラは侍女に命じて服を脱がせてもらうと全裸になった。
見てはいけない、とセリムは慌てて視線を落とす。
目に飛び込んだのは再び頭をもたげた自分の下半身だった。
「あら、あなたの治療が先かもしれないわ」
それに気付いてシャラは笑った。
視線をもどすと、初めて見る女の裸体に目が離せなくなった。
全裸になったシャラは例えようもなく美しかった。
のびた長い首飾りが彼女の胸の谷間を降りて股間を通っている。
これは都で流行っている装飾品だった。
陰部の毛は処理するのが高貴な女性のたしなみだった。
大粒の真珠が数珠つなぎに性器の部分にあてられていて、
先ほどからシャラのそこはぬめりを帯びているのを感じていた。
「さあ・・・」
ぎゅっとセリムの性器が握られた。
「シャラ様!」
驚いてセリムは抗議の声を上げたが、すぐに言葉を飲んだ。
自分でもこすった事がなかった未熟なそこは、シャラの手で驚くほどの快感を得ていた。
「あ!?ああ・・・ああああ、・・・っ・・・」
初めての感覚にあっけなくセリムは達する。
「はあはあ、・・・シャラ様、いけませ・・・ん」
がくがくと膝を揺らして快感が消え去るのを耐えているセリム。
「拭いておあげなさい」
クスクスと笑い声をあげながら侍女達が汚れを処理していく。
涙目のセリムの顔を取ってシャラは頬にキスをする。
「ああ、かわいい・・・」
銀髪に緑の瞳、やはりあの方に似ているわ。
シャラの呟きにセリムは首を傾げる。
「気にしないで。さあ、次はあなたが触る番よ」
妖艶な笑顔にセリムの理性は鈍っていく。
シャラの言われるがままに彼女の身体に指を這わせた。
「そう、そこよ・・・」
シャラが導いた場所はひどく濡れていた。
両手を後ろ手に付いて、ベッドに大きく足を開いて腰かけている。
目を閉じて感じているそんなシャラの姿を侍女達は見守っている。
「あああ・・・、ん・・・」
這わせたセリムの指に温かくぬめる蜜がからんでいく。
「シャラ様・・・、苦しいのですか?」
女が感じている様など見た事もなく、セリムはシャラを苦しめているのかと思っていた。
その為命じられた事に自身の持てない指は遠慮がちにそこをさ迷っていた。
「そう・・・、あん、やめないで。苦しいから、あなたの指で鎮めて・・・」
大きく胸を上下させて喘ぐシャラの姿が、再びセリム自身を興奮させている事に気づいた。。
不謹慎な、とセリムはお門違いな罪悪感で自分を戒めた。
「そこ、わかる・・・?小さな突起が、あるでしょう?」
「ここ・・・、ですか?」
飾りに隠れていたシャラのクリトリスを探し出すと優しくつついた。
ああ!とひときわ声を荒げてシャラの腰が踊った。
「申し訳ありません!痛いのですか?」
「ちがっ・・・、ちがうのっ・・・、ああ・・・」
下半身に集中する疼きを確実に解消できないもどかしさにシャラは見悶える。
セリムはどうしてよいのかわからずにいると、見かねた侍女が優しく囁いた。
「まず、シャラ様の蜜をもっと指に絡めて下さい」
「は、はい」
蜜とはここから溢れる体液の事だろうか。
割れ目に指をあてがって、二本の指ですくう。
「先ほどの突起に蜜をこすりつけて下さい」
侍女の言葉に素直にうなづきふくらんだ突起に濡れた指をこすりつけた。
「ああああ!ああ!」
喘ぐシャラに驚いてセリムは心配そうに侍女を見た。
「大丈夫ですよ。こうやってシャラ様の苦しみを癒すのですよ」
セリムの爪の長さを確認してうなづくと、次に、と侍女は二本の指を立てて見せる。
「蜜壺に指を差し込んで下さい」
「ここに指が入るんですか・・・?」
そんな事も知らないのかと侍女はあきれてしまった。
「そうですよ。ご存じないのですか?ここが女性の性器ですから」
セリムはセックスに関しては男性の性器を女性の性器に入れる、とだけしか知らなかった。
それが女性のどこにあるのか今初めて知ってしまった。
「お早く、シャラ様が苦しんでおられます」
侍女にうながされて意を決して指を差し込んだ。
途端、シャラの身体が大きく跳ねた。
中は熱く柔らかく濡れている。
肉の壁は伸縮を繰り返しセリムの指を包み込む。
「指の出し入れを繰り返して下さい」
クチュ、グチュと音が響いて、キスをした時の音と似ているとセリムは思った。
「ああ、ああ、もっと・・・セリム・・・」
眉根を寄せて喘ぐシャラ。
「シャラ様は喜んでおられるのですよ」
侍女がそう言うので、セリムは嬉しくなってくる。
濃厚な女の匂いに頭がクラクラする。
ここに・・・、男性の性器を?
セリムはゴクリと唾を飲んだ。
先ほどシャラにすられてあっけなく達したというのに、
もしここに自分の性器を入れてしまったらどうなるってしまうのだろう。
「また、突起をこすって下さい」
「はい・・・」
シャラの身体がビクリと震えた。
突起に直接襲い来る快感に、腰を突き出して喘ぐ。
シャラの恥態にセリムの胸は高鳴る。
「ああ、セリム、セリム!もっと・・・」
そしてひときわ高く喘ぐとシャラは達してベッドに倒れ込んてしまった。
「シャラ様」
「ああ、セリム・・・よかったわ・・・」
そう言われてセリムは単純に嬉しかった。
呼吸を整えてシャラは快感を霧散させていく。
そしてセリムをベッドに引き込んで押し倒すと、裸の彼の足をまたぐ。
「わかる?」
セリムの顔が真っ赤になった。
「あなたのせいでこんなに・・・」
シャラが腰をゆするとヌルリとした感触が足に当たる。
「シャラ様!」
これがいけない事だとはさすがのセリムも気付き始めた。
これは大変な状況なんだとじわじわと悟ってきた。
「ああ、あなたのせいよ」
「申し訳ありません、ですが・・・」
もう帰らせて下さい、とシャラの下でセリムは訴える。
「ほら、ぬるぬる」
彼の話を無視して、セリムの足を使ってシャラは再び快感を得ようとする。
「シャラ様、こ、こんな事は私には、いけない事なんです」
あっあっとシャラは小さく喘ぐ。
未熟なセリム自身は言葉とは裏腹に、またしても頭をもたげている。
「あん、いけない事お・・・?こんなにして?」
「シャラ様!」
するりとシャラの手がセリムのそれを撫でた。
「お戯れは・・・、あ、なぜ・・・」
なぜ禁欲を信条とする神の使い人である自分を堕とす真似をするのか。
そして不甲斐なく快感を覚えてしまった自分に腹が立ってきた。
「私では、シャラ様のお役に立てません」
性技を要求するなら都にも男はたくさんいる。
これは、姫君の気まぐれなお遊びなのだろうか。
「そんな事ないのよ。あなたにしか役に立てないわ」
意味ありげにそう言って、シャラはセリムの股間に顔を沈めた。
「あああ!シャラ様!?」
すでに二回果てたとは思えないセリムの猛りにシャラの舌が這う。
「やあ・・・、ん、いけませんっ、そのようなこと・・・」
ぬめる舌の感覚、これも初めての体験。
先ほど自分の舌で味わっていたシャラの舌が、今は自分の性器を嬲っている。
ゾクリと背筋に快感が走った。
セリムは腹筋を使って上半身を起こして彼女の顔を見る。
「あ、あ、ダメです、そんな汚れたところを・・・」
シャラはとりつかれたようにその肉棒に舌を上下させている。
この卑猥な光景にセリムは気が狂いそうになった。
「くっ・・・、やめっ・・・!」
いやいやをしながらセリムは腕を噛んで快感と声を耐えた。
舌は先端でつつくように刺激を与え、筋の軌跡をなぞってく。
「んふっ・・・・」
知らずにセリムの腰が上下する。
逃れたいのか求めているのかわからなくなる。
そしてそれは、くぷ、とシャラの口内にそれはおさまった。
「んんんー!」
温かい、気持ちいい、噛んだ腕が痛い、こんな事はいけない、でも気持ちいい。
セリムはグルグルと回る思考に飲み込まれる。
こんなに気持ちのいいものは生まれて初めてだった。
「さすがに三回目だともつわね」
れろれろと嬲りながそう言ってシャラが口をすぼめた瞬間。
「ああ!口を、離して・・・、シャラ様!」
吐精してシャラの口を汚すのを恐れてセリムは叫んだ。
「んあ、お願いです!ああ、また・・・」
ビュルッ、そんな音がした気がした。
「あ、あ、あ・・・」
何度か腰を揺らして達したセリムの精をシャラは飲みほした。
頭が真っ白になったセリムはぐったりと身を横たえたまま動かない。
あ、あ、と小さく痙攣しながら視界が真っ黒になっていくのを感じた。
「セリム?」
口をぬぐいながらシャラが肩を撫でたが反応がない。
「血圧があがったのでしょうか、失神したようですね」
侍女が冷静に言った。
「あら、刺激が強すぎたかしら」
しょうがないわね、とシャラが笑うと侍女がうなづく。
「自慰もなさらないお方なのですよ。無理もありません」
「そうね、少しづつ慣らしていくしかないわね」
「食べ物なども改善しませんと、シャラ様とのひと晩は持ちませんよ」
冗談めいて言った侍女の言葉にシャラは笑い出す。
性に貧弱なセリムの姿を見て女達が嘲笑する。
そんな女達の笑い声は、可哀想なセリムの耳には届かなかった。
今日はここまで