混乱する上条のすぐ横から声がした。
上条の顔を見上げて、身体を起こそうとする。
「痛うっ…」
が、苦しそうに重い嘆息を吐いて背中を丸めた。それはそうだろう。上条にしてみれば未だ幼さ
が見える身体なのに、お互い止まらなくなって最後まで『致して』しまったのだから。
苦しくないはずがない。苦しいだろうし、痛くもあるだろう。
「お、おい、大丈夫か…?」
声をかけた上条に、美琴は不安げな表情で視線を向けて再び問いかける。
「嫌だった…?」
泣きそうに瞳が揺れる。
その揺れる瞳の奥で、美琴の本気が同じように揺れているのが見えた――ような気がした。
「嫌なわけ、無い」
「本当?」
嫌かどうかと言われれば、嫌なはずはない。
むしろ上条としては、美琴のほうが自分としてしまったことを思い悩まないかと感じている。男と
女の初めては等価ではない、と何となく上条は思った。
「俺は、ちっとも、嫌じゃない。それより御坂は……」
上条の言葉を美琴が遮る。
「簡単に、好きだなんて言わないもん…。それでも私は、アンタが好き」
何とはなしに、負けたような気分になった。
ベッドの下に落ちた上着を拾って美琴の裸の身体に掛けると、やれやれと溜息を吐きながら言う。
「苦しいだろうけど、落ち着いたら服、着ろよ? 風邪、ひいちまう」
それを聞いて、美琴はくすりと笑うと、
「へへ…。アンタの、匂いがする……。しばらく裸でも良いかな…?」
と言いつつ、上条の上着の中で丸くなった。そこから再び顔を出して上条を見上げると、頬を染め
ながら、それでも目を逸らさずに言う。
「ねえ、私のこと、アンタの彼女にしてよ」
聞いて、上条は再び溜息を吐く。わざとらしく、演技臭く、大仰に溜息を吐いてみせた。
「ったく……。順番が、逆だろうに」
−*-
校門の方がなにやら騒がしい。
ちらりと目をやると、どうやら上条よりも少し早くに教室を出ていた青髪ピアスらしい人影がナンパ
に励んでいるようだった。相手の姿は門柱に隠れて良く見えない。
しかし、上条にとっては正直なところ特に気にするようなことではない。
ぼんやりと夕食のメニューなどを考えながら通り過ぎようとした。
「あ、来た! ってちょっと、待ちなさいよ! こっち見もしないって何?!」
どうも、ナンパをされていた女の子はこの学校の誰かを待っていたらしい。誰かに待たれる憶え
はないしとりあえず自分は関係ないな、と上条は足早に騒ぎを抜ける。
と、背後から、
「こ、この期に及んでまたスルーとは良い度胸してるじゃないのって、待たんかいこら!」
女の子の声にしては品のない台詞が聞こえたと思うと、ボスッ!と背中に体当たりを貰った。
そのまま、腕が回ってくる。
「へ?」
慌てて振り向いた。
「ま、待ちなさいって言ったでしょ! こっち見もしないで帰ろうなんてどう言う了見?」
見れば、常盤台中学の制服を来た少女――いや、回りくどい言い方は止めよう、御坂美琴が上
条の背中に抱きついていた。
上条を見上げる顔が、少し赤い。
それを見て途惑う上条の耳に届いたのは、野太い叫び声だ。
「か、か、か、カミやんが常盤台の女の子に抱きつかれとるうーーーっ!!」
青髪ピアスが抱きつかれた上条の姿を見て叫んでいる。
「なんで選りにも選って『また』カミやんやねんんっ!!」
「な、何言って――」
我に返って抱きつかれたまま青髪ピアスのほうに振り向こうとするも、目に映るのは、
「ちょ、あれ、マジ……?」
「ま、また上条が…」
「あの子、上条君を待ってたの?」
「ど、どこまで旗立てりゃあ気が済むんだ上条……!」
などと口々に呟いたり好奇(――だけではないだろう、おそらく)の視線を投げかける無責任な
ギャラリーの姿である。さらに慌てて周囲を見回して、ちょうど下校してきた二人のクラスメイトと目
があった。
そのうちの一人が、例によって例のごとく上条が騒ぎを起こしたと断定したのだろう、顔を引きつ
らせながら言う。
「貴様は教室のみならずこんなところでも騒ぎを起こしてっ! しかも、『また』女絡みっ?!」
上条に非難の言葉を浴びせるのは吹寄制理である。上条もまた顔を引きつらせた。
「ま、またって…ちょ、そういう誤解を生むような……」
「またかこの野郎」
反論しようとした上条だったが、耳に飛び込んできた言葉にさらに顔が引きつる。
その声の主のその言葉に、一緒にいた吹寄も驚いたのだろう。ギョッとした表情で横を見た。
「あ。声に。出て」
表情をあまり変えないままに姫神秋沙が呟く。
「ひ、姫神までそんな誤解をっ? か、上条さん泣いちゃいますよっ?」
一人慌てる上条を我に返らせたのは、背後に抱きついていた御坂美琴の声だった。
腕の力を強めて、幾分か怒気のこもった声を投げつける。
「あ、アンタはーーっ! この状況でさえもスルーするかっ! こっち向きなさいよっ!」
振り向いた。
「と、とにかく! ここじゃ騒がしいから来なさいッ!」
御坂美琴は振り向いた上条の手を握ると、周囲の人混みを掻き分けて走り出した。なんか、こい
つと会うと走ってばっかりだな…と思いつつも、手はしっかりと握られているし、あの人垣からは抜
け出したいところだった。上条当麻も、その手を引く御坂美琴に付いて走った。
しばらく走ってやって来たのはショッピングモールの遊歩道である。
手を離した美琴が、スカートのポケット(そんなのあったんだ、と上条は思った)をごそごそと探り
出す。
「なあ御坂、ウチの学校まで来て一体何だったんだ? あんなところで常盤台の制服が待ってるの
を見たら、御坂じゃなくっても騒ぎになるって」
上条の言葉に、美琴はちらりと視線を上条に移すと、照れたように赤くなってぷい、と今度は目を
逸らす。目を逸らしたまま、小さな声で呟いた。
「だって、アンタに用事があったんだもん」
「いや、それにしても――」
上条がその言葉に反応しようとしたそのとき、美琴がポケットから手を出して、すっ、と上条の目
の前にその手のひらを差し出した。
「こ、これ…」
おずおずと御坂美琴が差し出したのは、2つの銀色の指輪だった。大小ふたつあるところを見る
に、ペアリング、と言うものであろう。
が、それを見ても上条当麻はピンと来ない様子で、
「? …これが…何か? 指輪、だよな?」
などと惚けた言葉を呟く。そんな上条の様子に、美琴も表情を硬くした。しかしそれも一瞬で、何
かを思い出したように再び顔を赤くすると、俯き加減に呟いた。
「あ、あのね、この前の……あ、アレ、バレちゃったのよ」
「へ?」
美琴の言葉に、呆然と考え込む表情になった上条だが、そのままサアーッ、と顔色を青くする。
「アレって、アレ? あの、お前の寮で――んむぐゅっ」
「そ、それよっ! それで合ってるから、い、言わなくても良いからっ!」
真っ赤になりながら、美琴が慌てて上条の口を塞ぐ。それから、きょろきょろと周囲を見回すと、上
条の口から手を離し、その手で袖の端を掴んで小さな声で言葉を続けた。
「ちゃ、ちゃんと話すから…」
真っ赤になって俯きながら美琴が言う。
「さっきも言ったけど、あ、アレ、バレてて…。ば、場合によっては放校、ってことになっちゃって…」
放校、と言う言葉が出て逆に慌てたのは上条だ。
「ほ、放校って…! そんな無茶な、どうしたら…、くそ」
「あ、あのね、だからその話は、ほら、うちの学校としてもレベル5は手放したくないし、私も思うとこ
ろがあったし、それで、親父に連絡して」
顔を真っ赤に染めたまま――さらに赤く顔を染め直したようにも上条には見えた――美琴が説明
を続ける。上条の心中に何か悪い予感が芽生えてきたのもこの辺りである。
「婚約者と会ってるうちに若気の至りが暴走しちゃったことにして、親父に頭下げさせる約束して、
一応放校は無し、ってことになったの」
「へ?」
どうも不穏な言葉が聞こえたような気がする。
「何度も言わせないでよね、恥ずかしいんだから…」
どちらかと言えば、ダメ押しにしか聞こえない言葉が続いた。おそるおそる聞き返す。
「う、嘘も方便?」
上条の絞り出した言葉を聞いて、美琴が詰め寄った。
「ち、違うもん!」
怒った、と言うよりむしろ泣きそうな声で美琴が叫ぶ。その反応と否定の言葉に途惑ってしまって、
上条は声が出ない。美琴を、というよりむしろ自分を落ち着かせようと、目の前の少女の肩に手を
置いた。そうしてみると、あらためてこの少女の細さに意識が移る。落ち着こう落ち着こう、と息をし
て、なぜかさらに気持ちが混乱した。
しかし美琴は肩に手を添えられて、上条とは逆に冷静さを取り戻した様子で、落ち着いてしまった
ためにかえって気恥ずかしさを憶えたのだろう、再び恥ずかしげに頬を染める。
「違うもん。私が、アンタじゃないと嫌だって、親父に言ったんだから」
声は小さくとも語調に澱みはない。
「だから、何日かの内に親父が日本に帰ってくるから、アンタと一緒に親父に会うの」
諦めるよりも恐怖感が上条の心中に広がる。
美琴のことは本当に可愛いと思った。彼女にして、と言われて、順番が逆だろうと思いつつも、こ
の素直でない少女を愛おしく感じた。
が、男性諸氏には言っておこう。
身を固めることを迫られたときに感じるものは恐怖感であると。
まさに、上条の感じているものがそれである。顔が引きつる。が、美琴はそれに気付かない。続く
言葉には、声に出すことに恥ずかしさを感じたのだろう、声を詰まらせながら絞り出す。
「だ、だって、わ、私、あ…アンタとしか…でき、ないし…。それに、アンタじゃないと嫌だって言うの
も、ホントのことなんだもん……」
美琴が上を向いた。
「彼女にしてくれるって、言ったでしょ? でも、もうそれだけじゃ、嫌。お嫁さんに――して?」
目を潤ませて美琴が言う。上条にすれば、正直なところ震えだした身体がガクガク言うのを止め
られない。言葉は――出てこない。
「嫌だ、なんて言わせないから。それからこれ、親父のカードで作らせたけど、アンタがちゃんとした
の…って、アンタが選んでくれたらどんなのでも良いんだけど、買えるようになるまでの間に合わせ
なんだから、ちゃんと、買ってよね」
照れ隠しのように一気に言って、美琴が手に持ったリングの片方を無理矢理上条の左手の薬指
に差し込む。
「わ、私も、大したもんじゃない、やっぱりピッタリ」
確かにピッタリである。手を握っただけでサイズまで、と上条はさらに震えが止まらなくなる。
そんな上条の様子を厭わず、美琴はもう片方の指輪を上条に握らせた。そのあと、左手を差し出
す。
「アンタが嵌めて」
見れば、なにやら内側にアルファベットが刻んである。目をこらして。それが、T.K.×M.K.となって
いるのに気が付いた。
「エム…美琴、ケイって、お前御坂だから…なんで?」
ぼそりと、口から声が漏れた。目の前の少女は一瞬きょとんとして、それでもさも当然といった風
な表情になると、
「やだ。み・こ・と、か・み・じょ・う、じゃない。当然でしょ……、か・み・じょ・う・み・こ・と。…かみじょう、
みこと。かみじょうみこと。上条美琴…えへへ」
言って、今度は遠くを見るような目線で表情を緩ませる。
「は、はは…ははは……」
上条の口から漏れるのは乾いた笑いだ。後には引けないことだけが、実感としてのし掛かる。ま
まよと美琴の指に銀色のリングを差し込んだ。
リングを差し込まれた美琴は、その薬指を自らの目の前に掲げるとみるみる表情を緩ませる。
「親父が帰ってくる段取り付いたら教えるから。って、そんなのもいちいち面倒だし、二人が毎日会
わないなんて変だし、学校終わったら、そうね、必ずここにいること。いいわね。それから、アンタ私
のこと御坂御坂って呼ぶけど、名前で呼びなさい。絶対よ? それからそれから――私もアンタの
こと、名前で、ね? 当麻? で、えっと――」
レールガンならぬマシンガンのごとく、美琴の口が動く。
呆然とする上条をよそに美琴の言葉は続いて、
「……今日はこれでおしまい、わ、私もちょっと心の整理ってもんがあるんだからっ! じゃ、じゃあ、
今日は、これで――」
後半はよく判らなかった。とにかく御坂美琴が表情をくるくると変えながら滑らかに舌を回転させ
ていた、という印象が残るのみだ。が、最後になって美琴は上条をじっと見つめると、
「明日、ちゃんと、ここに来るのよ? じゃ、明日ね、……ダンナサマっ!」
頬に美琴の唇の感触。
気が付くと、すでに美琴は数メートル先で手を振っているところだった。
呆然と、手を振り返す。美琴が駆け去った。
「………」
手をだらしなく上げたまま、思考を取り戻そうとして、上条当麻は背後の気配に気が付いた。
そういや、明日またここでと美琴は言っていたけれど、会うのはここじゃなくて病院になりそうだな
あ、とぼんやりと考える。
まだ、振り向けない。
背中を汗が伝った。
おしまい。
空白部分は…あー、冗長すぎて、カットしました。許せ。脳内保管してくれ。といって逃げるノシ
乙!GJです!
すごいなあ、自分のなんかより凄いです・・・
次作も期待してます
マジでGJ!!!
乙でした!
うははぁぁぁぁ!!
僕はきっとこんなデレデレな御坂さんを待ってたに違いなぃぃぃ!!
>>948 GJですた
そろそろ次スレの季節でしょうか
前の人の投稿からあまり感覚短いと前の人の感想つけにくくなるから注意だぜい
お二方GJ!
どちらも次を楽しみにしています
お二方共にGJ!
なんですか、あなた方はわたくしめを糖分多量接種で抹殺する気ですか
今日は祭りですかwwwGJ!
燃え尽きる蝋燭の如く、スレの温度が急上昇ですよ
はいはいどーも携帯の人だよん。
なんか二人ともやり方が上手くて凹む…orz
さてさて、ハーレム?編の前編が出来たから投下しに来たんだけど…途中でなんか一杯になっちゃうとあれだから、次スレに投下するね。
じゃ、投下してきまー。
>>967 はいはいはいワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルry
なにこの生殺し…………いや、充分ニヤケさせてもらいましたが
電車の中で携帯見ながらニヤケる怪しいやつになりましたが
GJ!GJGJGJ!
埋め
次スレ立ったし梅
それともなんか雑談でもする?
問題はカミジョーさんが何式のクリスマスを過ごすかということですよ
天草ハーレム式
クリスマスはもとはゾロアスター教だっけ?
カトリックかプロテスタントか
他にもイスラム教とかユダヤ教とか
神道・仏教は関係なしだな
クトゥルフ式
上条「わしのクリスマスは108式まであるぞ」
とりあえず選択肢として
・クラスメイツ&小萌
・御坂&ジャッジメンツ
・アニェーゼ部隊
・神裂
・オルソラ
・天草式
・御坂妹
・インデックス
・ステイル
くらいだと思うんだが
>>976 青ピと土御門とのドキッ!漢だらけのクリスマスパーティは?
>>977生理的嫌悪感がwwwwwww
俺は、クリスマスに一時退院させてもらった御坂妹が、相手のいない上条と出会いそのままデートというのが。
>>978 御坂妹に逆ナンされてホテルに連れ込まれる上嬢さんとな?!
……ところでなんで上条が上嬢とか変換されたんだ俺のAtok……
>>971 23日の夜に「どーせボクにはクリスマスなんて関係ないのですよー!」とヤケ酒を煽った上条さんが
翌日学園都市に襲来したケーキ魔術師を撃退したりしながら世界中の事件に首を突っ込んで
フラグを立て直したりするんだけど酒のせいで覚えてないとか多分そんな日。
きっと日記に換算したら三冊は埋まるくらいイベント満載だぜよ。
>>982 馬鹿、違うだろ
X'mas当日になんだかんだ言って全ヒロインが上条宅に集まるんだよ
で、ごたごた発生→不幸だぁぁぁあ!!
「上条当麻っ、今年のクリスマス会には絶対参加してもらうからねっ!」
「絶対。来るべき」
「どうせクリスマスも暇なんだろうから映画にでも誘ってあげるわよ!」
「クリスマスはお暇ですか、とミサカは期待を込めつつ問いただします」
「冬休みも先生と楽しく透け透けみるみるなのですよー」
「クリスマスはローマ正教式をおすすめするっす」
「あらあら。相変わらず大人気なのでございますよ」
「かかかかかか上条当麻!くくくくクリスマスにはぁぅぁぅぁぅ…」
「だからとうまはわたしとクリスマスをすごすんだよっ!」
「なんかわからんけど不幸だなあ」
こうですかわかりません(><)
>>983 > X'mas当日になんだかんだ言って全ヒロインが上条宅に集まるんだよ
妹達も含むんだよな。
「ひい、ふう、みい・・・1万人余りか。
なら全員でその部屋の中に入ってもらおう」
>>984 よく解ってるじゃないか……上条さんがもみくちゃにされてるとベスト
>>985 そこは厳選された代表一名が(ry
上条さんとのクリスマスイブをベッドの上で過ごすわけですね
これが本当の性なる夜
>>984 小萌の台詞から、補習と言いながら
冬休み中ずっと上条とやりっぱなしになる電波を受信した
「えへえへへ……上条ちゃん、奥まで見えるです?
隅から隅までしっかり見ないと明日も明後日も補習なのです。
もし見えないんだったら、指でも棒でも……
上条ちゃんのをなんでも使っていいのですよ?」
今日の休みが終わるとしばらく働きづめなおいちゃんです。
>>963氏の言うとおりだねえ、間開けずにゴメンなさい、KATU氏m(_ _)m
言い訳はしないでおこう(汗)
でもって。
−次回予告-
娘を奪われた御坂父―――その相手はどこの馬の骨ともしれぬ落ちこぼれの高校生だった!
その怒りと悲しみに、娘をも上回る隠された雷撃使いの力が御坂父に発現する!
漆黒の闇を照らす、怒りと悲しみの『雷の巨神』を前に、御坂美琴はその愛を貫けるのか!
m9(´∀`) <次回もみっこみこにしてやんよ!
……ウソです。
…書かないよ。
3時間ほど反応がないな。
よし、今の内に美琴に占拠されかけた脳内を掃除するのですよ。
『羅馬十字教は如何にして弐拾億信徒となりし乎 Every_Sperm_Is_Sacred』
「ローマ聖教ってのも、一大勢力どころじゃないよな、何億だっけ? 結局のところ、一番の大勢力
なんだよな。それにしても何でそんなにも大きくなれたのか、だよな」
今日、上条は骨休みと言うことで何もすることがないらしい。
さっそく暇を持て余していた午前中。
10時のお茶をしましょうと誘われて、上条的「寮」の概念ではあり得ないような英国式庭園(いや、
この女子寮自体がイギリスにあるのだから『英国式』もないのだが)に設えられたテーブルに着い
ていた。
手作りらしいスコーンやクッキーが香ばしい香りを立て、これも同じく手作りらしい数種類のジャム
が彩りを添える。紅茶はよく判らない上条だが、良いお茶なんだろうな、ということは、オルソラが微
笑みながらカップに注いでくれた緋色の液体から、日○のティーバックからは想像も出来ないような
芳醇な香りが立ち上ってくることが教えてくれた。
しかし、シスターさんってのはみんなヒマなのか? などと不謹慎にも考えてしまうほど、周囲のメ
ンバーは変わらない。
ベンチ式の木製の椅子の両側にインデックスと神裂が、向かい側にはアニェーゼ、ルチア、アン
ジェレネが座った。かいがいしく給仕をしてくれているのはオルソラだ。
庭園の向こうに見える寮の建物では、庭が見える廊下の人通りが妙に増えた気がする――が、
気のせいに違いない。
ともかくもそんな中、紅茶の香りと少女たちの笑い声に気分も緩んで、ふと出た台詞だった。
それを聞いて、アニェーゼが突然真剣な顔になる。
「それはっすね上条さん、ローマ聖教というものは――受胎からやってくるからなんすよ」
「へ?」
上条にとって意味不明な言葉に、しかしルチアが続いた。
「そうです、主は仰いました、
『全ての精子は神聖にして、全ての精子は偉大である。
もしも精子が無駄にされれば、汝の神はぶちキレるであろう』、と」
ルチアの声に、アニェーゼが再びそれを受けてさらに続ける。
「――『異教徒たちには実りなき荒地の上に射精させておけ。
汝の神は必ずや彼らに報復するであろう。
彼らを種なしにすることで』」
再びルチアがそれを受ける。
「――『全ての精子は有用なものである。
全ての精子は素晴らしい。
汝の神は皆の精子を必要とされている。
もしも山や谷や平原に異教徒どもが射精したとしたら、
汝の神は必ずや裁きを下すであろう。
精子を無駄にせし罰として』」
アニェーゼが締めた。
「ってーわけっすから、為されればそれは受胎に繋がらないとならないんっす」
二人が朗々と――上条には、うら若き乙女が恥知らずにもイタイことを言っているようにしか聞こ
えないのだが――歌うように語るのを聞いて、アンジェレネが無邪気に言った。
「まあ、それでポコポコ産めよ増やせよで食い扶持もなくなって、人体実験に売られたりとか、修道
院に捨てられたりとかするんですけどねー、私たちみたいに」
「なっ……」
その、あまりの無邪気さにかえって上条がドン引きする。
言ったアンジェレネは、え、と周りを見回し、アニェーゼらが顔に縦線を引いているのを発見して、アニェーゼ部隊の三人を痛い沈黙が包む。
その、元ローマ聖教のシスターたちの痛い沈黙を上条が呆然と見守っていると、横から乾いた笑
いとともに引きつった声が聞こえた。
「こ、これだからローマ聖教批判が出るのです、そ、その点、イギリス清教は旧教と新教の良いとこ
ろを合わせていますから、ひ、避妊だって構わないのですから」
突然何を、というか、どんなことを言い出すんだっ! と上条は声の方向を向く。
神裂火織だった。
さらに呆然となって、神裂を見つめた。
神裂本人は、自分が何を言っているのかも良く判っていないのだろう。何か必死に取り繕おうとし
たという努力の跡がその表情に見えて、さらにイタイ。
しかし、あんまりだと言えば確かにあんまりな展開に油断して、思わずエロ本の知識が上条の口
から漏れた。
「……は、はは…。じゃ、じゃあ、今は避妊用のゴム製品っても色々あるから、超極薄でお互いに生
感覚! とか、段々付きだったり、イボイボが付いてるような変わり種でもオッケーなんだな?」
言ってしまってから、上条も我に返る。
(なっ、何言ってるんだ俺ッ! 土御門や青ピとかじゃないんだぞ相手ッ)
慌てて周囲を見回す。
しかして、その言葉はしっかりと耳に入っていたのだろう。実はウブな子羊ちゃん揃いな少女たち
が真っ赤に顔を染めて上条を見つめていた。
アニェーゼやルチアはもじもじと気まずそうにしているし、アンジェレネなどは自らの想像の範疇
を越えてしまったのだろうか、今にも湯気でも出してパンクしそうである。
慌ててオルソラの方を向いてみた。さすがオルソラ、何ら変わった様子はなく微笑んでいる――
のではなく、そのまま固まっていた。
じゃあ、神裂……と思い振り向こうとしたとき、ベンチのすぐ隣りに座っていた少女がぴったりと身
体を寄せて来るのに上条は気が付いた。
すぐ隣りに座っていた少女――インデックスが顔を真っ赤に染めつつ、それでいて、何故か艶め
かしさを覚える表情で、上条に寄りかかる。服越しに体温が伝わってきた。
寄りかかりながら、インデックスが上目遣いでもじもじと呟く。
「と、とうま? わ、私はイギリス清教だから、そ、そんなのでも、いいかも」
えーと、元ネタが好きなんです。許してください。
丸投げおやじの女子寮リレー番外ってことで。
リレー続くと良いなあ。
お風呂編とか期待して待ってるのですがおいちゃん。
>>994 とりあえず再び全裸逆立ち土下座ネクタイでお待ちしております
で、GJ!
発言内容が卑猥過ぎますよ
埋めた方がよいのかね?
その幻想をぶち壊す
1000
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。