hackのエロパロ vol.15

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1名無しさん@ピンキー
過去スレ
.hackのエロパロ
http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1033821005/
.hackのエロパロ Vol.2
http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1046059657/
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http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1053232107/
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http://same.u.la/test/r.so/www2.bbspink.com/eroparo/1060727903/
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.hackのエロパロ vol.14
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179135908/l50
関連スレ
【G.U.】.hackシリーズ総合スレ【SIGN・Roots】
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/ascii2d/1159414538/
801ネタはこちらでどうぞ↓
□■.hackシリーズで801 vol.2■□
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/801/1160417132/

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関連
hack 人物辞典
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.hack//G.U. Wiki データ保管庫
ttp://www13.atwiki.jp/gu_backup/
2名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:55:12 ID:3I+kHPOJ
3名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:56:10 ID:3I+kHPOJ
GU関連の連載中断 その1  2006年


【ハセヲ×揺光】
777 : ◆PzDeastE6E :2006/07/20(木) 01:16:32 ID:MCXYWrIj
以上。一週間以内には続きを投下できる、といいなぁ('A`)


【エン様主役?】
195 :(・∀・)エン様インしたお:2006/08/18(金) 01:47:50 ID:bPMS/XPz
ルミナ・クロス。午後5時。


【ハセヲ×揺光】
343 :ハセヲ×揺光 リアル:2006/09/04(月) 00:08:53 ID:ZH9G63j0
ネットゲームで仲良くなった(惚れた)人がたまたまリアルでの年齢が近く、
進学校に通っていたため、勉強を教えてくれと頼んだのだ。


【亮×智香×千草】
661 :KAN・NA:2006/10/04(水) 03:54:47 ID:pJmoTbV5
>>615の続き。
「…剥いちゃおっか?」
「そうですねぇ…。乙女心の機微が分からないハセヲさんには、やはり何らかの罰を与えるべきだと…」


【ハセヲ×アトリ】
742 :KAN・NA:2006/10/07(土) 19:37:30 ID:Gg2HAzn0
鋭意製作中。
出来なかったら、出来ないってことなので気にしないでw
4名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:56:59 ID:3I+kHPOJ
GU関連の連載中断 その2  2006年


【AIDAハセヲ×揺光】
126 :揺光モノ「光の中に咲き誇る花」 ハセヲ?編5:2006/10/23(月) 00:30:15 ID:PLedxmlh
>>27の続き
「さて。 じゃ、まずはしゃぶってもらおうか」


【ボルドー×揺光】
278 :悲しみの揺光:2006/10/31(火) 20:38:24 ID:fJjW6HdH
パソコンがあぼーんしてしまった・・・。
と言う訳で、しばらくの間携帯から、投稿しまっす!

パソコンがあぼーんして超バッドな気分なのでここまでです


【不明】
464 : ◆PzDeastE6E :2006/11/06(月) 03:43:26 ID:12E3vtX8
ハセヲと揺光の斬撃、更にクーンの銃撃が当たったにも関わらず――
仰け反るわけでもなく。声を上げるわけでもなく。反撃すらも、してこない。


【ハセヲ×揺光】
470 :揺光モノ「光の中に咲き誇る花」 東京編1:2006/11/06(月) 15:03:32 ID:nfGX8QDU
「お母さん? …それ、アタシ宛の荷物?」


【ハセヲ×揺光】
517 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 22:13:27 ID:S07KrVX6
なんかハセヲが形成逆転しちゃった。てかハセヲの攻めって珍しいかな。
次回に続く。


【ハセヲ×揺光】
653 :めそ:2006/11/12(日) 06:44:41 ID:W5HrAhGO
久しぶりに.hackをやって突発的に思い付いたので初投下。
このクオリティが高すぎる流れに乗るのは気は引けますが…(´・ω・`)
一応ハセヲ×揺光。今は途中まででエロ無し。
5名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:58:12 ID:3I+kHPOJ
GU関連の連載中断 その3  2006年


【ボルドー主役?】
669 :ボル子話・0:2006/11/12(日) 21:34:12 ID:uwnPc21p
前注釈:
・作者はG.U.しかやっておらず、その他は基本未プレイ&未読。
・キャラ構成その他設定はなるべく本編準拠したいと思ってはいる。
・異常で異様で電波で遅筆で誤字脱字上等でエロなし(未定)であっても気にしない。


【ハセヲ×志乃】
689 :ハセヲ×志乃:2006/11/13(月) 20:51:55 ID:0F1L77w4
「これでよし・・・っと。」
とりあえずさっきの火事(?)の後片づけをする


【ハセヲ×タビー】
776 :REAL:2006/11/19(日) 00:26:41 ID:YDM0fBZb
昔パロスレで微妙に投下してそのまま放置プレイだったハセタビを、
微妙にエロパロ路線にアレンジして投下しようと思う。
エロまで行くのに歩くような速さを要するが、よろしく(^ω^)


【ハセヲ(亮)×志乃】
107 名前: ハセ×志乃 [sage] 投稿日: 2006/11/28(火) 19:31:35 ID:BUN7MQEL
「ハセヲ」
「ん?」
階段を上りながら志乃が話しかけてきた。


【ハセヲ×朔】
157 名前: がらす玉 [sage] 投稿日: 2006/12/02(土) 07:29:34 ID:E28SB3EM
もう一度、小さく胸の中で呟いた刹那、
「ハセヲさん、そろそろお開きにしませんか?」
アトリが解散を切り出したこととメールが着たことが見事に重なった。


【ハセヲ×朔】
299 名前: 264 [sage] 投稿日: 2006/12/18(月) 02:06:21 ID:ys/KO4BR
冒頭はこんな感じになります。
改善点等ありましたらどんどん指摘してください
6名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:58:58 ID:3I+kHPOJ
GU関連の連載中断 その4  2007年



【ハセヲ(亮)×志乃】
608 名前: 亮志乃3 [sage] 投稿日: 2007/01/22(月) 07:30:50 ID:DAnhRKih
「俺、タオルとか着替え…準備すっから…先、入ってろよ。」と亮が言えば、
「うん、ありがとう。」いつもと同じ笑顔で志乃は微笑む。

途中でゴメン。亮ヘタレでゴメン。続きは後ほど・・・


【八咫(拓海)×パイ(令子)】
104 名前: 拓海&令子 [sage] 投稿日: 2007/02/20(火) 02:13:44 ID:Qu1dyYYS
肝心なエロまで道のりが長い…。
お付き合いくだされば幸いですorz


【ハセヲ(亮)×タビー(萌)】
291 名前: カラシ [sage] 投稿日: 2007/03/15(木) 16:48:37 ID:rcOWrSfM
なんだかAIDAがまた来ちゃったけど投下してよかったのかな?
アンケートは勝手ながら@のナースコスプレにさせてください。
話の流れ的に他のは難しいので・・・


【ハセヲ(亮)×志乃】
382 名前: 名無しさん@ピンキー 投稿日: 2007/03/27(火) 15:28:31 ID:iluNbIYw
亮×志乃・・・無駄に長い
7名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:00:17 ID:3I+kHPOJ
GU関連の連載中断 その5  2007年


【ハセヲ×朔】
454 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/04/02(月) 01:48:13 ID:tkdzeiCK
ホントに導入部だけや、エセ関西弁でゴメン。
これからなるたけ可愛い朔を目指してして書いて行くので、執筆トロいんやけど長い目で見ておくんなはれちゅーワケや。
ではまた、失礼します。


【ハセヲ×楓】
530 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/04/12(木) 00:31:50 ID:mXhWcZfn
エロが始まりそうな感じなんだけど……まだ始まらなかったり。
エロパロなのにもうしばらく非エロですまん。
それでも期待してくれる方がいるなら、また、次回お会いしよう……


【オールキャラ?】
191 名前: アトリの暴走編5 投稿日: 2007/06/22(金) 16:39:17 ID:oURFxKBo
「あ、あ、あぁぁ、あ、あひっ!」


【アトリ主役?】
367 名前: アトリとAIDA 投稿日: 2007/07/24(火) 19:24:07 ID:Em6K6QDO
『ウォオオ!碑文の力が!!ミチテイル』


【亮×ニナ(ハセヲ×ボルドー)】
372 名前: GORRE 投稿日: 2007/07/28(土) 01:13:47 ID:dHaYsZPR
お茶菓子も食べ終わり、再び勉強に取り掛かってから約3時間。
8名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:01:18 ID:3I+kHPOJ
GU関連のSS投下予告あるも未投下 その1  2006〜2007年


246 :O:ゼロ:ZERO:2006/08/26(土) 23:47:54 ID:tGYAs+1Q
いまオリキャラ×ハセヲのSS考えてるんですけど
出来たら載せても良いですか?


318 :名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 00:53:29 ID:1JBLaF/u
今回もとても善かったと思います。
今、エロパロageようかと友達とはなしあってます(ネタがネエ!!)
職人さんはどうやってネタを作ってるんですか?ネタが出来たらageようと思いますがいいでしか?
もしageたら初めてなので変でもカンベンして下さいm(__)m


589 :名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 22:33:46 ID:gMEqbl/I
G.U.続編―――
新連載「どきどき☆はっぴぃライフ♪」w
第一話:通い妻は電波とツンデレ娘
請うご期待!


656 :名無しさん@ピンキー:2006/10/04(水) 00:27:19 ID:NGJ0WJGh
どうも、オリキャラ登場でハセアトハセな小説を書こうと思います。
ギャグ主体です、アトリ電波です、クーン人間やめたほうがいいです、
パイは胸デカです(変わってない)、揺光はツンデレです、
オーヴァンはとりあえず警察に捕まったほうがいいです。
あとほかのキャラも少々
…エロモアルヨ?

とりあえず…そんなやばげなネタを出そうか考えている俺がいる
基本的にハセヲ被害者…だからどうした!?
他人の不幸は蜜の味それが俺の座右の銘!
9名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:02:21 ID:3I+kHPOJ
GU関連のSS投下予告あるも未投下 その2  2006〜2007年


81 :名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 15:16:42 ID:4Rq4+me8
エン揺を書くことになってしまった
書きかけ2本を含めて全揺光関連なカオス


【オーヴァン×志乃】
380 名前: 名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 投稿日: 2007/07/29(日) 13:18:05 ID:9t6qHu3O
>>375-378
オーヴァン×志乃、鋭意製作中です。
余り期待はしないで下さいね?
10名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:04:01 ID:3I+kHPOJ
>>1の過去ログはどれも死んでいるので過去のGU関連SSを見たい場合は
>>2を参照。携帯だと表示に時間がかかる可能性あり。
11名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 03:04:01 ID:CKqhJu08
>>1乙!
途中で連載止まってるの多すぎてフイタw
過去ログ貼ってくれるのはありがたい・・・
12名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:14:29 ID:euOPhldW
はいおんはいなぁほーん
れぇざれぇくしょんなっひぃあろ〜ん
13名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 20:58:13 ID:9Mo4oEbE
小説読んだ
これはいいオーヴァン×志乃
14名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 22:43:41 ID:WfexLTRL
あの冨樫ですら連載再開したし
そのうちみんな帰ってくると期待
15名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 23:43:22 ID:EhdU9z4A
>>13
朔が消えたのが何とも言えない>小説3巻
こっちの朔もヤバそうだけどw
16名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 02:47:54 ID:nzAtt8HP
おまいらああああぁぁぁぁ
これ見たかアアアアァァァ?
http://www.famitsu.com/game/news/1210973_1124.html

B-stフォーム獣数字関連ってことか?
つか榎本かよ司会ww
17名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 04:59:56 ID:EiogiCBq
保守。規制からの開放でウハウハ
18名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 13:59:43 ID:G+ILBnoo
土日・連休になると、投下が来そうな気がしてつい全裸待機してしまう自分がいる
19名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 15:09:01 ID:bHYnNjrP
あるあるw
20名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 20:46:51 ID:djID/570
「うんうん」と頷く自分がいるw
21名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 23:07:01 ID:NpIMyffX
今北
>>1
そしてまたスレタイ「.」抜けたままなんだな・・・
22名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:50:29 ID:LAHKdCJ/
おまいら乙
トーナメント3日目・朔VSカール編&亮×智香編投下(亮×智香は前スレ>>557-558の続き)
23名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:51:44 ID:LAHKdCJ/

『しっぺい太郎は来てないな。今夜ここには来てないな。
 しっぺい太郎はおりませぬ。今夜ここにはおりませぬ。
 今宵今晩このことは、しっぺい太郎に知らせるな。
 信濃の国の光善寺、しっぺい太郎に知らせるな』

                             【藤田和日郎原作 『うしおととら』 第三十八章「あの眸は空を映していた」より】



















「だぁ〜れが迷い込んで来たかと思ったら……アンタかぁ。朔?」
「カールねえさま……」

Δ 隠されし 禁断の 聖域、グリーマ・レーヴ大聖堂。
かつて少女の像があったと噂される大聖堂の教壇の前に、黒衣の女は立っていた。
艶やかな銀色の髪も今では黄昏とも薄明とも区別のつかぬ陽光に照らされ、
まるで彼女自身が大聖堂に予め存在していたオブジェクトの様……ほんの刹那であったが、朔にはそう思えた気がする。
その後に感じたものは……まるでじわじわと針で全身を突付かれるかの如き怖気と寒気。

「あたしが試合前、いつもここで瞑想してるのはアンタも知ってるだろう? ……何の用だ、朔」
「……ねえさまを」

止めに来たんです。
そう言おうとして朔は思わず口を噤んだ。
カールとは彼女が碧聖宮の宮皇になってから彼女が一旦《The World》を引退するまでの
短い付き合いだったが、おっかけをしていた朔としてはエンデュランスや揺光ほどではないが
カールへの思い入れもちゃんとある。
ウザがられてはいたが、決して邪険にされることもなかった。
彼女が再び復帰して揺光やハセヲとパーティを組んで遊んでいたことは
朔も知っていたが、まさかこんなカタチで相対することになろうとは思ってもいなかったのだ。
それに加え大聖堂内を蠢く、この何とも言えない薄気味悪い気配。
……エルディ・ルーでエンデュランスがAIDAと戯れてきた時でさえ、こんな寒気はしなかったのに。

「あたしを……なぁに?」
「カッ……カールねえさまを、止めに来たんや!」

やる気のない半開きの目でこちらを見つめていたカールの
瞳が文字通りカッと開き凄んだかと思うと、つられて朔も今言わなければならないことを
ありったけの声で、恐怖を払いのけながら大聖堂中に響く声で叫ぶ。
有り得ない程の緊張感と恐怖。猛獣の入った檻の中に閉じ込められると言うのはこんな気分なのだろうか……。
24名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:52:47 ID:LAHKdCJ/

「あたしを止める……? 朔、アンタが……? 冗談にしちゃ笑えないな」
「冗談ちゃう! ウチは本気やねんからな……ねえさま、ハセヲを殺そうとしとるんやろ!?」
「……ふふん。大方の事情は知ってる、ってコト?」
「……ハセヲ本人から聞いたわ。
 ねえさま、ハセヲの中の楚良っちゅー奴を目覚めさせるために……ハセヲを……!」

楚良の再誕、それがカールの目的。
そのためにはまずハセヲに心的なショックを加えなければならない。
憑神を開眼した時と同様に、本人の精神(こころ)を揺さぶる程のショックを。
ならデータドレインがてっとり早い。
何しろ揺さぶるどころか精神自体をリアル(現実)から切り離し、この世界に溶け込ませてしまうのだから。
ハセヲが居なくなれば、きっと楚良が還って来る。
根拠はない、強いて言えば“女の勘”。
ハセヲがかつての楚良だったと判明した今、カールに躊躇はない。
楚良を取り戻す為ならば悪魔とだって契約するだろう。それを確信させる程の狂気が、彼女の全身から放たれている。

「じゃあ聞くけどさ……朔。アンタ、あたしと同じ立場だったらどーしてる?」
「なっ……」
「ハセヲでもエンデュランスでも、アンタの弟でもいい。
 もしあたしと同じ立場で、好きな人を取り戻せる方法がそれしかなかったら……アンタ、どうする?」
「ウ、ウチ、は……ッ」

……同じことをしたかもしれない。
エンデュランスが榊側に付いた(と見せかけた)時、
朔は迷うことなくエンデュランスと共にハセヲから離反し、榊に組した。
別に後ろめたさも後悔も全くなく、裏切ったと言う感覚も皆無。
あの時はあれが当たり前、自分にとってベストな行動だと思った、だからああしたのだ。
では今回は?
もし朔がカールの立場だったらどうしただろう? ……好きな人を取り戻すために、世界中の人間を敵に回せるか?
……回せる。いつだって貧乏クジを引くのは女。女の性(さが)には逆らえない。
カールのやろうとしていること、それをが全に間違ったことだとは決して朔も言えなかった。

「アンタだって同じことをするだろ。
 これがあたしなりに考えに考え抜いた結果なんだよ。
 ハセヲは楚良だった頃のことを思い出そうとする気配もない……
 だったら、あたしが無理矢理にでも楚良を目覚めさせればいいだけのハナシ。
 ハセヲには悪いけどね、あたしは楚良さえ居てくれればそれでイイの」
「そんな……」
「朔だってそーだろ。
 弟とエンデュランスが居てくれれば、それで満足なんじゃないの?」
「前のウチやったら、そうやったかもしれへん……けど、今はちゃうねん!
 今は……今は、ハセヲが、エン様が、望が、皆が居ってくれる、この世界が好きなんや!
 一つでも欠けたらあかん……つまらんこと、ヤなこともあるかもしれんけど……皆と一緒がええんです、ウチはっ!」

ハセヲが、自分をこの世界に繋ぎ止めてくれたことが嬉しかった。
そのハセヲが今夜の試合でカールに殺されるかもしれない。
敵わぬと分かっていても自分にだって何かができはず。
今のカールを見ていると、まるで少し前の自分を見ている様で……朔の胸が痛む。
だから分かってほしかった。当たり前であることが、本当はとても大切な時間だったことを。

「……馬鹿だ馬鹿だとは思っちゃいたけど、そこまで馬鹿とは思わなかったよ。
 このクソみたいな世界が好き? 皆と一緒がいい? 頭大丈夫?
 朔……アンタ、ハセヲ達に毒され過ぎたね。あたしを追っかけてた頃の方が、まだマシだ」
「あの頃のウチとは、もうちゃいます……!」
「話すだけ無駄だったな。
 アタシはハセヲを殺したい。アンタはハセヲを守りたい。さあ、どうする?」
25名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:53:35 ID:LAHKdCJ/

「……ッ! ゴレッ!!!」
『□□□―――――――――――――――!!!』

先手を打ったのは朔。全身に光の紋様が浮かび上がると同時に憑神を展開、
大聖堂内に通常のバトルフィールドとは異なった異空間……憑神空間を創り出す。
無論、朔とて同じ空間内に2体以上の憑神が存在していると暴走する確率が高くなるのは知っている。
朔も以前AIDAに感染し暴走の経験があるからだ。碑文使いと言えどAIDAに完全な耐性があるワケではなく、
実に5人もの碑文使いがAIDAに侵食、感染されてしまった事実からもそれは見てとれる。
攻撃と防御、2つの顔を持つ第五相・策謀家ゴレ……どこまで肉薄できるのか。

「へぇ。それがアンタの憑神か」
「……ここまでしとうなかったわ。
 ウチ、ハセヲもエン様も好きやけど……カールねえさまも好きやから」
「ふぅん。でもさ、ハセヲはこのコト知ってんの?」
「……知らへん。今宵今晩このことは、アイツは知らんでええねん!」

朔のありったけの強がり。
こうやって憑神を顕現させても、優位に立っている気分になどなりはしない。
逆に憑神を出してしまったことで逆に追い込まれてしまったような―――――そんな錯覚すら覚える。
それにカールのあの落ち着き様は何だ? 嫌な胸騒ぎは止まることを知らない。

「それじゃ、ま……ちょっとだけ遊んであげようか」

大聖堂の中を蠢いていた、あの薄気味の悪い気配は憑神空間の中であっても健在だった。
その嫌な気配がどんどん収束していき、やがてカールの背後に浮かびあがってカタチを成して行く。
この世界のあらゆる不吉と悪徳と毒を孕んだソレは、彼女の呼びかけに応え――――――――――――。


「おいで……おいで……あたしを……追いかけてこいっ!!! スケェェェェェェェェイスッ!!!!!」
『■■■■■■■■■――――――――――――――――――――――!!!』


朔の憑神空間をブチ破り、全身を渋柿色……見様によっては血塗られているかの様にも見て取れる
布で拘束された巨人が踊り出てきた。闘牛の如く突き出た巨大な角とギランと紅く輝く3つの眼球。
差異はあれど、確かにハセヲが使役するスケィスそのものである。
だがハセヲのスケィスが彼のXthフォームへのエクステンドによって
白い荘厳な姿へと進化したのに対し、カールのスケィスはまさに“死の恐怖”を体現、死神か悪魔を連想させるに十分な風体。
ただそこに“居るだけ”のはずなのに、凄まじいまでの威圧感と恐怖を感じさせる化け物。
こんな化け物を使役するカールは……もはや異常だ。不可解以外の何者でもない。

「(これが……大聖堂の中に居った、薄っ気味の悪い気配の、正体……!?)」
「可愛いだろ? あたしのスケィスは……」
「(ま、まさか……い、いや、でも……似とる、AIDAに感染しとった時のウチに……! これは、この気配は……ッ)」

何もかもが負の方向へと導かれる、あの何とも言い難い感染時の気分。
それにこの気配……嫌と言う程にAIDAの相手をしてきた碑文使いのとしての朔の直感が告げている。

「これは……AIDAの気配や!」
「ご名答」

ボコボコと憑神空間内を飛び交う無数の黒点。
黒点が収縮を行う度に何処かの空間へと軌跡が繋がっているのだろうか。
溢れる黒点はグルグルとカールと紅いスケィスの周囲を廻り、彼女と憑神に溶け込んでいく。

「ねえさま、アンタ……AIDAに感染しとったんかっ!?」
「あれ、知らなかった? あたしはAIDAを制御することにおいても……頂点に立つ女だ」
26名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:54:52 ID:LAHKdCJ/

AIDAはオーヴァンが起こした再誕によって全て死滅した。
なのに、どうして彼女が……カールがAIDAに感染を?
少なくとも彼女はAIDA騒動が起こっていた時期、《The World》にログインしていなかった。
ログインしていないPCが感染するはずがない。
では何時、カールはAIDAに感染した……!?

「(AIDA……スケィスの気配にばっか気ィ取られて、全然気づかへんかった! 
  な、なしてAIDAが今頃になって……っ!?)」

朔もネットワーククライシスの解決に一枚噛んでいる以上、AIDAについては
多少の知識はある。何よりも碑文使いとしての本能が敵の正体を悟らせるのだ。
けれど今眼前に佇む黒衣の少女は
これまでに遭遇した数多くのAIDA感染者達と全く別物に感じられるのだ。
ボルドー、天狼、太白、榊の様に己の欲求に素直な所は似通ってはいるが、
妙な落ち着きがあるのが合点がいかない。
確かに狂ってはいる……ハセヲの中の楚良を求め、どんなことでもやってのけるという決意も感じる。
だが、もしかするとその強靭な決意がAIDAの侵食を押さえつけ、逆に完全に制御できているとしたら?
榊がAIDAを80%制御出来ていたと仮定した場合、カールの制御率は120%を超えているだろう。
つまりはオーヴァンがAIDAを「危険な友人」と比喩しながら
アイナ救出まで耐えたように、カールもまた「楚良を取り戻す」という強い精神によって
AIDAを“飼い慣らしている”と考えれば……。

「朔、アンタは運が良い。
 あたしのスケィスを間近で視たのは、ハセヲに続いてアンタが2人目だ」
「(ハセヲはXthフォームやったから何とか勝てたらしぃけど、ウチは……!)」

無理だ、絶対に勝てっこない。
ただでさえ狂気染みた強さを感じるスケィスに加えAIDAまでもカールの味方をしているのは想定外。
策謀家として知略を駆使した戦いといきたい所だが
冷静な判断をするにはあまりに異常な事態が多すぎる……!

「どした? 来なよ。遊んであげるから」
「うっ、うわああぁぁあああぁぁぁぁああぁあああぁぁぁッ!!!」

堪り兼ねず、声にならない声を上げながらゴレを疾らせる朔。
恐怖とかそんなも感情はとっくに枯れ果て、ただ「カールを止める」という気迫だけが
彼女を突き動かすのだ。……絶対に勝てないと分かっていながらも。


「ガトリングゥ―――――ブリッドッ!!!」


攻撃モードの赤いゴレの身体から一斉放射される無数の光弾。
ハセヲのスケィスもこの技を全て回避することは出来なかった。
カールは!?

「スケィス」
『■■■――――――――――――!!!』
「なッ……なんやてっ!?」

全弾命中したかと思った瞬間スケィスの全身を拘束していた紅布の一部、
腕部の布がシュルシュルと解け、そのままムチの如く撓ったかと思うと
全てのガトリングブリッドをあらぬ方向へと弾き返してしまう。
勿論、カール自身も全くの無傷。
全く無駄のない統制のとれた完全防御……彼女は、憑神を完璧なまでに使いこなしている!
27名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:55:44 ID:LAHKdCJ/

「これならどうやっ!?」

ゴレの周囲をクルクルと回転していた日輪がチャクラム状に変化、
ブーメランの様に飛び、対象をズタズタに切り刻む「因縁の大輪」。
カールのスケィスの武装もハセヲのスケィス同様に鎌ならば
鎌でチャクラムを弾き返すために多少の隙が生まれるはず……そうなれば即接近して、突進しながらの痛恨の一撃を!
だが―――――――――――――――。


「子供の戯れと書いて……児戯」


てっきり朔はスケィスが攻撃を弾き返すとばかり思っていた。
だが実際に鎌を顕現させ、前に進み出てチャクラムを弾き返したのは……カール!

「そぉ〜〜〜〜〜〜れっとぉっ!」
「!?」

それもただの一振りではなく、チートとAIDA、
そしてスケィスからの力の供給による渾身の一振り!

「(アホなっ! 憑神の攻撃を、直接弾き返すやなんてッ……!?)」
「(つまらない固定概念は捨てろ朔。あたしにアンタの常識は通用しない)」

チャクラムで攻撃、間髪いれず格闘戦に持ち込みスケィスを殴ろうと接近していたゴレは堪らない。
カールに弾き返されたチャクラムをモロに喰らい、遥か後方に吹き飛ばされてしまう。
腹部にチャクラムが突き刺さったまま身体は大きくバウンドし、憑神空間の中でのたうち回るのだった。

『□……□□□―――――――――――――――――!!!』
「あぐっ! いっ、痛ったぁ……ッ!!!」

途端に朔は腹部を押さえて倒れ、苦痛の叫びをあげる。
どうやら先程のカウンターで弾き飛ばされたゴレのダメージが
憑神とリンクしている朔にも回ってきたらしい。
攻撃を回避できないと判断した刹那、ゴレをとっさに防御モードに変更(主人格は望ではなく朔のまま)
していなければ、もっと手痛いダメージを受けていたに違いない。

「おんやぁ? さっきと憑神の色が違うな。戦闘中に形状を変化させるタイプか……面白い」

カールの方は全然余裕。
いくらチートやらAIDAやら巫器(アバター)の力でステータスを
強化しているとは言え、PCが憑神の攻撃を受け、跳ね返すなどという芸当をするとは
朔の想定外だった。故に生じた隙が仇となり、ダメージを受けるに至ってしまう。
憑神は心の強さが形作る、《The World》でのもう1人の自分。
故にこれは意地と意地の張り合いでもある。
楚良を手に入れたいというカールの想いと、ハセヲを守りたいという朔の想い。
……女の闘い!

「(ハッ、ハァッ……ダメや! 防御モードのゴレじゃあ、ねえさまには勝てへん……こうなったら!)」
「あっはぁ〜ん? 逃げるの?」

青い防御モードのゴレはシャボン玉を次々と発しながら距離を置き始める。
防御モードのゴレ唯一の技・シャボンショット。
目くらましと幾ばくかの時間稼ぎにしかならないけれど
カールは自身でそれを追わず、紅いスケィスに追わせて様子見。
本来ならばスケィスも動かす必要はないのだが憑神での戦闘は神経を削るのがしんどい。
ハセヲとの戦いの前にこれ以上無駄な力を使っておきたくないカールは、さっさとケリを着けたかったのだ。
28名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:56:59 ID:LAHKdCJ/

「(青い時は赤い時程のスピードもパワーもない……。
  恐らく完全な防御型か、こちらの攻撃に対してカウンターを仕掛けてくるタイプの憑神だろう。
  ……網にかかってみるか)」

カールに促されるようにして紅いスケィスはゴレを追って突進する。
スピードは完全にスケィスの方が有利、だがあえて攻撃せずに相手の出方を待つ。
切り札と言うまのは、最初に見せた方が大抵の場合、負けるのだから。

「今や! 汝の在るべき姿に戻れっ、ゴレッ!!!」
『□□□□―――――――――――――――――――――!!!!』

いつの間にか紅いスケィスの周囲をシャボン玉が覆い尽くし、
結界とも呼ぶべきシャボン空間が出来上がっていた。
追い込んだと思わせておいて、逆に敵を追い込む……策謀家としての朔の知略が試される時。
朔の叫びに呼応し、ゴレも“本来有るべき姿”に戻る!


「ゴレ、攻防一体モードッ!」
『□■□■□■―――――――――――――――――!!!!!』


赤と青の攻撃モードと防御モード、どちらか1つの戦闘形態でしか戦えなかった従来のゴレ。
だが朔がこれからも望を守り、この世界で生きていくと決意した結果
新たな戦闘モードがゴレにも備わる。本当の意味での姉弟の絆が生み出すに至った、新形態のゴレが
シャボン玉の壁によって逃げ場の無くなった紅いスケィスに、渾身のパンチを放つ!


「いてかませぇぇぇぇぇぇっ!!!」
『□■□■□――――――――――――――――――――!!!!!』
「……スケィス!」


おおきく振りかぶって、絶妙のタイミングで繰り出される攻防一体モードのゴレの拳。
この距離ならば絶対に外さない、致命傷とまではいかないが確実にスケィスにダメージを―――――――――与えるはずだったのに。

「……ど、どないした!? ゴレ、動かんかい! ゴレッ!?」
『□■□■□■―――――――――――――――!!!???』

ゴレの拳はスケィスまであと少しの所でピタリと止まっていた。
拳だけではない……ゴレの身体全体が麻酔でも打たれたかの様に麻痺し、全く動こうとしない。
朔が動け、はよ動けと何度叫んでも、結果は同じだった。
何だ? 何が起こった? どうして憑神(ゴレ)は動かない? 何かされたのか? 朔の頭に動揺が駆け巡る。

「機能停止(フリーズショット)」
「ッ……!?」

フリーズショット。
朔の記憶が確かならば、Xthフォームへと改造されたハセヲが有していた反則技。
文字通り対象を完全凍結させる禁断のチートアーツ。
何故、Xthフォームでもないカールが……!?

「ハセヲだけの専売特許だと思ったら大間違い。
 あたしもXthフォームの強さは身をもって知っている。
 だからあたしもXthフォームに対抗できる力を手に入れた。楚良を取り戻せる力……刻印の獣の力を……ね」
「(! AIDAが……ねえさまとスケィスに……更に侵食していきよる……! な、何が起こるっちゅーねん……!?)」
29名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:57:54 ID:LAHKdCJ/

『考えてばかりいないでとにかくやるべきことをやれ。
 人生とは頭で考えたり難癖をつけたりして変わるようなものではない』
 
                                  【ラルフ・ワルド・エマーソン  アメリカの哲学者】


















風呂に2人で一緒に浸かって10分近く経ったか。
智香の声が艶っぽくなった頃合を見計らって、俺はある提案の進言を思いつく。
昨夜は智香にばっか攻められたし、今日は俺の攻める番……みたいな?
つーか昨夜試せなかったコト、やってみたくなったんだよ。

「なぁ、智香」
「う、うん……?」
「一旦立ってさ、後ろ向いたまま壁に手ェ付けてくれね?」
「え……そ、それって……バッ、バッ……!?」

バック……トゥ・ザ・フューチャーじゃなく、ただのバックだぞ。念のため。
……何かマズイことでもあんのか? 昨夜は普通にフェラとか正常位でヤらせてくれたのに。
それともアレか? 暗闇心理ってヤツか。真っ暗だと人はオープンになりやすい、って説。
確かに暗いと一目とかあんま気にならねーし、大胆になるかもだが……。

「りょ、亮って……そそそそういう趣味が……!?」
「いや、バックって普通だろ……常考」
「ふふふ普通じゃないよ! な、何か動物とか虫っぽくてヤラしいもん!」
「(えぇ〜!?)」

そうかぁ……? 
向きがちょっと違うってだけで正常位とか騎乗位と違わねーじゃん……挿れるのは同じなんだし。
まぁ……昨日初めてヤッた相手にこういうコト言う俺も外道っぽいけどな。
だが断じて変態じゃねぇぞ。
智香からすりゃ変態かもしれねーけど、これも俺流の愛情表現ってコトで勘弁。な?

「だ、大体……何でバック、したいの?」
「そりゃ……ヤってみたいから」
「うぅ……変態がいるよぉ……」

嫌がる相手に強制はしたくねーけど、逆に嫌がってる仕草とか照れてる顔とか見てると
ますます試したくねんだよな……ある意味、智香の言う通り変態なんだろうか、俺……?
なワケねーよな。ちゃんと説得すれば智香だって分かってくれるって。
大丈夫、アイハブコントール。実戦だハレルヤ。
30名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 03:59:30 ID:LAHKdCJ/

「智香は嫌かもしれねーけどな、俺はもっとお前と繋がってみたい」
「で、でもさぁ……」
「色々試してみなきゃ分かんないだろ?」
「そ、それは、そうかもしれない……けど」
「ホントに嫌だったら途中で抜くから……な?」

出来るだけ恐怖感を与えないよう、極力優しく説得してみる。
ハセヲん時だったら確実に「いいから言う通りにしやがれ!」とか荒っぽいこと言ってただろーな。
うわ、それ最悪じゃん。鬼畜すぎ。人権無視だな。

「うぅ〜。じゃ、じゃあ……ちょっとだけなら……いいよ」
「マジで?」
「メチャクチャ恥ずかしいけど……そ、そこまでしてみたい、って言うから
 特別にさせてあげるんだから……その辺、忘れないでよね……?」
「あぁ」

とりあえずファーストフェイズは無事完了、か。次はセカンドフェイズだな。
バックってコトは智香はずっと壁の方向いたままか……やっぱ挿れてる間は目ェ閉じてるんだろうか。
浴槽に這わせるよりも立たせた方がヤりやすいよな、やっぱ
(仮に浴槽の中でヤるとしても、水中抵抗で腰が動かし辛いし……智香にも負担かかるかもだしな)。
……考えてるよりは行動か。

「壁に手を付けるって……こう?」
「ん。もうちょっと尻、突き出せるか」
「うん……あぅぅ、やっぱ恥ずかしすぎ……!」
「(うわ。実際にさせてみるとホント背徳感っつーかヤラしさ全開だな……)」

智香の程よい感じでくびれたウエストと
突き出されたヒップを見てるとヤバイくらいに下半身に血液が集まってくるのが分かる。
今、智香に俺は見えてない。
俺の方を向こうとしても、体勢が体勢だけに首はせいぜい横くらいまでしか向けられないから。
ずっと壁を向いたまま後ろからヤられるって、ヤられる智香からしてみりゃ
それなりに怖いんだろうか……怖い、ってよりも智香はバック自体の動作が嫌っぽいらしーけどさ。

「可愛い尻してんのな」
「ひゃうっ!?」

軽く尻を撫でながらペチペチ叩いてやると、つられて智香がブルッと震えた。
それから尻の柔らかい部分を伝って腰の方にまで手を伸ばすと、くすぐったいのか
あれ程嫌がってた智香が押し殺したように小さく笑う。

「りょ、亮……く、くすぐったいよぉ……」
「? 智香、腰弱いのか?」
「よ、弱いってゆーか……自分以外に触られたら、くすぐったい場所って誰にでもあるじゃん……!」

あー、それ分かるかも。
足の裏とかその代表だよな。あと女の場合は……胸とか?
でもま、こんなコトばっかやってないでさっさと次のステップに行かねぇとな。
あんまり長く風呂に入ってるとのぼせちまうし……。

「さっき指挿れた時、十分濡れてたから……大丈夫だよな」
「多分……ゆ、ゆっくりね? 昨日が初めてだったし……まだ中に挿ったままみたいな感じだから……」
「ん。わーった」

智香の腰からやや下辺りに手を添えて、今の体勢を固定。
間違ってアナルセックスになっちまわないよう、挿れるべき場所へと下半身を誘導していく。
31名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 04:00:25 ID:LAHKdCJ/

「(昨夜よりも……ちょいキツイかな。まだ2回目だしな……)」
「はぅ……あっあっ、は、入って……ったぁ……!」

全体を包み込むヌルッとした感触と膣内の温度。昨夜、初めての時もそうだったけど
俺は全然痛くなくて気持ち良いくらいなのに、挿れられてる智香は痛いと来てる。
そういや昼間、腰痛いって言ってたもんなぁ……無理させたか?
声にならない声であまりに智香が喘ぐもんだから、思わず腹の辺りに手をやってさすってやる。
……意味があるかどうかは分かんねーけど。

「智香の中……昨夜と同じくらい……熱くてイイな……」
「ぅあ、っ、ふっ……あぁあぁぁぁ……!」 

膣の肉壁が智香の喘ぎに呼応して締め付けてくる。
出たり入ったりをゆっくり繰り返すと、自然に中で擦れてヤバイくらいに気持ちイイ。
正常位の時と違って立ってるから、思わずゆっくり出し入れすることを忘れて
速度を速めたくなっちまう。もっと速く、激しく動かしたらどうなるんだろうか。
今よりももっと、気持ちよくなれる?
そう思うと無意識のうちに智香の腰を掴んでいた手に力が入っちまう。

「智香のエロくて可愛い声……もっと聞きたい」
「ヤ、ヤダぁ……!」
「ヤダじゃない」

突き上げるように挿入角度を変えると、
智香の尻と俺の身体が今まで以上にぶつかりあって
風呂場の中にパチュパチュと卑猥な残響が木霊するようになる。
互いの身体が触れて音を立てる度、水滴と汗が浴槽の中へと落ちてゆく。

「胸……触りたい」
「え、えっ……!?」

そろそろいいかと思って両腰を抑えていた手を一旦離し、
俺が出し入れしている間にプルプルと目のやり場に困るのもお構いなしに
揺れていた智香の胸に手を伸ばす。寄せるようにして掴んでみると、先端もちゃんと硬くなってた。
……動物とか虫っぽいとか言いながら、結局感じてんじゃん智香も。
こういう風に説明すると俺が強姦してるように見えなくもないが、これは飽くまで
互いの同意に基づいた行為なんで誤解しねーでくれよ。
これも苦行の一種だと思ってほしい(苦しいのは智香だけだろうけど、そのうち気持ちよくなって欲しいとも思ってる)。
“その行為、崇高なる者の苦行か”って言うだろ。
何処ぞのソレスタルビーイングと違って俺は紳士なんでね。
戦争を武力介入で解決しようなんて野蛮な考えは持っちゃいない。智香に対する扱いも同じだ。

「やっぱ智香の胸……やわくて触り心地イイ……」
「挿れながら……そ、そんなコト……!」
「ん? どした」
「ゆ、ゆっくりって言ったのに……は、速すぎぃ……っ!」

クニクニと智香の胸に指を這わせ、指が減り込むくらいに掴んでやる。
時折硬くなった先端を掴んだり指で撥ねたりすると、身体を捩って抵抗する仕草が可愛い。
勿論、智香だって本気で抵抗してるワケじゃない。
本気だったらちゃんとイヤってハッキリ言うだろうし、
何よりもさっさと抜いてビンタの一発見舞われても可笑しくないこと、俺は今してるんだしな。
口じゃ嫌って言ってても、深層心理じゃこうなるのを何処かで期待してた……とか。

「……嫌なら抜いて、止めるか?」
「え……や、止めちゃう、の……?」
32名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 04:01:33 ID:LAHKdCJ/
次回も朔(さく)らと一緒にレリーズ? 獣の槍……カール“B-stフォーム”登場の予感? 何のことです?
おやすみおまいら
33名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 04:06:05 ID:y1RAeL3F
流石GJ
34名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 04:19:36 ID:JWM/ezN4
00ネタ早すぎwwTRILOGYまでwwGJ
ただ、実際ネトゲでここまで濃い愛憎劇展開されたらぶっちゃけ引くわwwwフジテレビの昼ドラもビックリだぜww
ちょっと話の内容つかカールの性格の設定が行き過ぎてる感が否めんが、やっぱGJww
俺も文才があったらなあ・・・投下とかしてみたいけど。
ストーリーやら設定は出来てるんだよなあ、ただそれを面白く魅せたり解りやすい説明をしたりとか
そこら辺の文才が皆無なんだよorz
神職人よ、あなたが羨ましい
35名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 23:54:41 ID:3Be2wWg9
新スレ早々ネタ盛りだくさんだったなw
36名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 19:01:44 ID:H3j4FIL+
.hackのエロパロ保管庫ってないんですか?
37名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 19:03:09 ID:H3j4FIL+
.hackのエロパロ保管庫ってないんですか?
38名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 19:30:17 ID:cogVG6CB
智香いい加減飽きてきたぞ


πを出せπを
39名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 20:10:08 ID:Rg6AWN+w
自分で書くという発想はないのか
40名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 00:03:30 ID:43HIoBpc
どうでもいいがageんなカス共
41名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 10:15:58 ID:FX3OTMI4
>AIDAの気配や!
>汝の在るべき姿に戻れっ、ゴレッ!!!
>次回も朔(さく)らと一緒にレリーズ?


ちょっwカードキャプターさくらwww
俺をオタに引きずり込んだあのアニメがww
42名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 18:01:39 ID:lJENIhFf
>>31
GJ!
続きも楽しみにしてるぜ
43名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 01:39:22 ID:XnwaQ7KK
そろそろ投下来るんじゃないかと思ってやってきますた
つーかニコニコにTGSでのTRILOGY、PV盗撮動画がある件ww
44名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:39:32 ID:/drvlrSU
おまいら乙
トーナメント3日目・総まとめ編投下
45名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:40:48 ID:/drvlrSU

『(永田は、幼い頃に見たカレンダーの中の町を自分の故郷だと思い込んでいた
  ただの風変わりな男だったのかも知れない。でも、もしかしたらウクバールは何処かに本当にあって……
  永田は、ようやくそこに戻ったのかも知れない。
いずれにせよ、永田という男が生きて行くには恐らくウクバールという町が……何よりも必要だったのだ……)
  ……あの男にはウクバールが必要だったのかな』
『えっ、ウクバール?』
『遠い町さ……』

                                          【ウルトラマンガイア 第29話「遠い町・ウクバール」より】


















ヤスヒコも、バルムンクも、晶良さえも……この世界から居なくってしまった。
僕は独りきりだ。それでも構わない――――――――もう、あの頃の僕じゃない。
そう思っていたけれど……違っていたらしい。
ワイズマンもエルクも楚良も……なつめも居た(ついでにぴろしさんも)。
だからこそ僕は独りきりで戦える力が欲しい。独りでも、みんなを守り通せるだけの力を。




『カイト選手の爆炎ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!!!
 もしや“天壌の劫火”アラストールと契約を交わしているとでも言うのでしょうかっ!?
 雨の日には不能になってしまう何処かの炎の錬金術師もビックリだァ――――――――――――ッ!!!
 釘宮理恵嬢がこの場に居ないことが、非常に残念であります!』
『うるせぇ、うるせぇ、うるせぇっ!!! ツンデレキャラ専用声優なんざ、呼ぶこたぁねぇ!』
『大火様がデレてどーすんですかっ!?』


バトルフィールド全体を覆っていた蒼炎の幕を解除、天狼との接近戦に臨む。
双剣に炎を宿らせての斬撃と時折、炎による威嚇。
けれども天狼のスピードは更に加速を増してゆき、いつの間にかリーチも随分と縮んだ。
既にカイトは天狼の領域(テリトリー)に足を踏み入れてしまっている……いつ致命傷を喰らっても可笑しくない状況下。
だが瞳に宿った意志は揺るがない。
天壌に許された孤高の時間が砕け散る刹那、
更なる追撃をとカイトの間合いに踏み込んだ天狼は一瞬だけ躊躇し、身震いする。

「触ると……火傷するよ?」
「(コイツ……ッ!?)」

踏み込めない、いや……踏み込めなかった。威圧する闘気と眼差しに、全てを見透かされてしまったかの様に。
46名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:41:54 ID:/drvlrSU

「君がこの世界に望むものって……何?」
「……どういうことだ」
「どんなにレベルを上げても、どんなにレアなアイテムや武器を手に入れても……
 これがゲームである以上、いつかは飽きるかもしれないし、サービス事態が停止してしまうかもしれない。
 なのに、これ程までに君がこの世界(ゲーム)に固執する理由は……何?」

互いにいつ攻撃を受けてもおかしくない
ギリギリのラインで間合いを取りながらカイトは天狼に問う。
少年時代、仲間達と共に世界を駆けたあの頃。
もう自分にはあの頃の様な情熱はない、他の仲間達も次々と引退してそれぞれの道を歩んでいる。
中には7年前からずっとプレイを続けている者も数名いるが……
カイトは勇者としてとかそんなコトよりも前に、1人のプレイヤーとして碧聖宮まで登りつめた男に問いたかったのだ。
この世界に、何を望むのかを。
女神から腕輪を託された者として、今の世界(The World R:2)の住人に問いたいのだ。

「……勇者らしからぬ言葉だな」
「みんなは僕をそう呼ぶけど……そんな称号は何の価値もない。
 勇者ってのはさ、世界が大変な時だけ必要な存在であって……世界が平和だと、居てもしょうがないんだよ」
「しかし、貴様を目標にして高みを目指すプレイヤーが居るのも事実だろう?
 まさか勇者としての重圧に耐え切れない、などと言うつもりじゃないだろうな」
「そこまで腐ってないさ。 
 でもね、時々思うんだ……もうこの世界に僕は……いや、ドットハッカーズは必要ないんじゃないか、って。
 そろそろバトンを渡す時が来たんじゃないか、って……ね」
「フン。そのバトンとやらを渡す相手は、俺ではないのだろう?」

かつて紅衣の騎士団に属していた槍使いの言葉。
『俺達は、次の誰かにバトンを渡すことができればそれでいい』
その言葉の通り7年前、バトンはカイト達に渡された。
そして今(2017年)、新たにバトンを託せるだけの人物をカイトは探している。
いや……もう見つけていた。
自分よりも、この世界に必要で、この世界に愛された少年を。

「渡したければ誰にでも好きに渡すがいい、俺にはどうでもいいことだ。
 だがその前に、今は俺との試合に集中してもらおうか……こんな機会は二度とはない」
「……そう」
「それと先程の問いだが……特に理由はありはせん。
 強いて言うなら、ここに来れば強い奴らが居る……そんなところだ」
「……いいね、それ。もっと燃えてきた」

カイトの周囲に狐火の如くボウッと浮かぶ無数の蒼炎。
防御のために出したのではない、抑えきれない程のカイトの闘気が蒼炎となって溢れているのだ。
勇者としてではなくプレイヤーのカイトとして問うた結果、天狼は良い答えを出してくれた。
その彼に敬意を払い、押さえていた力が徐々に解放され始めている。
彼が《The World R:2》にログインしたのは昨夜が初めて……これから、これからだったのだ。
勇者(彼)が強くなるのは―――――――――――!

「炎よ、僕の力となれ!」

狐火達がクルクルと高速で回転を始め、闘気に変換されて燃え上がる。
これは炎の精霊神「ウルカヌス」の、加護持つ者への祝福の炎。
炎の精霊神だけではない。
水の精霊神「メロー」、木の精霊神「クラケ」、土の精霊神「ヤースキン」、
雷の精霊神「ライネック」、明星の女神「アヌ」、そして光の女神「アウローラ(アウラ)」。
八人の精霊神がカイトに無限の力を与えてくれる。彼が勇者サヤであり続ける限り。世界が彼を必要とする限り。

「そして精霊よ……我が力となれ!」
47名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:43:22 ID:/drvlrSU

*******************





「何だったんだ朔の奴……?」

朔と分かれて、俺はカオスゲートから再びアリーナに向きを変えて歩き出す。
まだ決勝が始まるまで時間はあるにはあるが、登録だけは済ませておかねーと。
今日の試合に出場すんのは俺となつめ、あとカイトの野郎で良かったんだよな?
ぴろし3の野郎は結婚記念日とかでログインしてねーらしいし……。
ったく、何がドンドンドコドンだ。
八咫の奴もパーティ組ませるなら
ちゃんと一緒に試合するメンツのスケジュールとかもチェックしとけよな。
ま……カイトの奴が強ぇのは事実だし、別に不満はねーんだけどサ。
……にしても。

「(デートって呼べるかどーかも分かんねぇが……久しぶりだな、ああいうの)」

望と、そして朔と。
フィールドに出てバトルをするワケでもなく、ただ一緒に歩き回って時間を過ごす。
人の生涯ってのは無限ではなく有限。
三爪痕(トライエッジ)を追いかけてた頃じゃ考えたれなかった
“ゆとり”みたいなものが俺にも生まれつつあるらしい。
勿論、リアルの方の無教養なゆとり野郎は御免被るけどな。
昨夜は智香と一緒にドル・ドナを散策したりしたけど、ありゃデートって呼べる程のもんでもなかったし。
あとは……碧とかな。

「(碧……アダマス……。アイツら……今どこで何やってんだろーな……?)」

灼眼……じゃなくて、碧眼の撃剣士の碧と斬刀士のアダマス。
殴られ屋をしながらPK相手に小銭を稼いでいた碧と彼女のマネージャー、アダマス……
いつの間にかアイツらの姿もBBSの書き込みも見かけなくなっちまったな。
まぁ、碧とのはデートっつーかトライエッジのコトを聴く為に勝負しただけなんだが。
……強かったな、アイツ。
竜華樹だったか……大剣とは思えねぇくらいに速ぇ斬撃だった。
俺の知ってる限り撃剣士の中でも5本指に入るぜ、碧は。
前に大聖堂でカールと戦った時も思ったけどこのゲーム、強い女が多すぎだろ……常識的に考えて……。
って、さっきカイトの奴に「常識を疑え」って忠告されたばっかだったな。
やべぇやべぇ。

「トーナメントの受付済ます前に、もう一度シラバス達のとこに行ってみるか」

クーンも居るとは言え、やっぱギルマスの俺が居ねぇとダメだろうしな。
……最初の頃はあんなに嫌だったのに、いつの間にかギルドマスターが板について来たよなぁ、俺。
煩わしいだけで用が済んだらさっさと抜けようと思ってたんだが……恨むぜ、全く。
ホント、俺をとんだ甘ちゃんにしてくれたもんだ、シラバス達はよ。
……悪くはねーんだけどな。
ここ3日の間に思うことが多すぎて頭の中の処理が追いつかねーって言うかさ。
もし、俺が楚良のままだったら……アイツらとも出会えてたんだろうか?
モルガナ因子を持ってる以上、碑文使いとしてG.U.に加わってたのは間違いねぇだろうけど
……今以上に、みんなと接することが出来ただろうか?
それに……志乃を好きだった気持ちとか、志乃を未帰還者から救いたいとか……
もし俺が楚良のままだったら……そういう気持ちに、なれたのかな……。
48名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:44:29 ID:/drvlrSU

――――つまんないお利口さんとおもしろいバカ、どっちがい〜い?
――――指名手配。懸賞金かけて、イベントにしちゃってもいいな。
――――オレ、裏切るね♪
――――クリムは気をつけた方がいいよ。
――――黄昏の眼が開くのを待たなくても、伝説の地に至る3つの言葉と司の力があれば、行けるだろう。


《Come with me in the twilight of a summer night for awhile.》
(夏の夜の黄昏に少しの間だけ私と共に行こう)

《Tell me of a story never ever told in the past.》
(語っておくれ、今まで何処にも無かった物語を)

《Take me back to the land where my yearnings were born.》
(私を連れ戻して、私の憧れが生まれた彼(か)の地へと)

《The key to open the door is in your hand.》
(扉を開く鍵は君の手の中に)

《Now fly me there.》
(さあ、連れて行って)


――――銀漢を押さえといてよ。
――――気ぃ、抜いてると死んじゃうよ〜。
――――もしかして見つけちゃった?
――――司のためでしょ。仲良くしよーよw
――――いっち抜っけた〜♪
――――クリムゥ、決着つけようぜェ〜!


《Fanatics find their heaven in never ending storming wind.》
(狂信者達は終わることの無い嵐の中で、彼らの楽園を見つける)

《Auguries of destruction be a lullaby for rebirth.》
(破滅の前兆が、再誕のための子守唄であるようにと)

《Consolations, be there in my dreamland to come.》
(来たる私の夢の国に、どうか安らぎを)

《The key to open the door is in your hand.》
(扉を開く鍵は君の手の中に)

《Now take me there.》
(さあ、連れて行って)


『キー・オブ・ザ・トワイライト?』
――――んっ。カールきゅんの腕で光ってるソレ♪
『この腕輪が……?』
――――それさぁ〜。ボクちんにくんねぇ〜かなぁ〜?
『で、でも、アウラが誰にも渡しちゃダメって……』
――――……カールきゅん、ボクちんのコト好きって言ったよねぇ?
『言ったよ! 言ったけど……』
――――ボクちんも好きになってあげるからさぁ……くれよ、その腕輪
『……ッ!』
49名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:46:21 ID:/drvlrSU

――――ねぇ。いいっしょ?
『……ヤダ』
――――あっはぁ〜ん?
『楚良になら、あげてもいいと一瞬だけ思った。
 でも、ダメ。これが無くなったら、もうきみはあたしを追いかけてくれなくなる……違う?』
――――ん〜。モルガナのオバちゃん、アウラと腕輪始末したら帰って来いって言ってたしぃ〜そうなるねぇ〜。 
『なら渡さない。アウラも、腕輪も、楚良には……渡さない!』
――――……そ〜言うコトはさァ。……キャラ見てモノ言えよ!


《I belive in fanatasies invisible to me.》
(目に見えぬ幻想を私は信じているから)

《In the land of misery I'm searchin' for the “SIGN” to the door of mystery and dignity.》
(この苦痛の地で、私は神秘と尊厳に通じる扉へのサインを探す)

《I'm wandering down the secret sun....》
(秘密の太陽の下を彷徨いながら……)


『姉ちゃん! ブラックローズって、姉ちゃんだろ!?』
『バルムンク! アンタだけにいいカッコはさせないぜ!』
――――ばっ、みゅんっ! ちゅばっ!
『待って……楚良、待って! 行っちゃダメ!』


《Come with me in the twilight of a summer night for awhile.》
(夏の夜の黄昏に少しの間だけ共に行こう)

《Tell me of a story never ever told in the past.》
(語っておくれ、今まで何処にも無かった物語を)

《Take me back to the land where my yearnings were born.》
(私の憧れが生まれた彼(か)の地へ、私を連れ戻して)

《The key to open the door is in your hand.》
(扉を開く鍵は君の手の中にある)

《Now take me there.》
(さあ、連れて行って)

《To the land of twilight....》
(かの黄昏の地へと)




『お友達……だよ』
――――……うんっ。





                                   【key of the twilight   作詞・作曲:梶浦由記 vocal:Emily Bindiger】
50名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:47:24 ID:/drvlrSU

「(ッ……!? クソ、またかよ……!)」

あの時と同じだ。
カオちんや“がび”との試合と同じ様に、頭がズキズキ痛みやがる……!
クソ、マジで俺の頭ン中はどうなっちまってるんだ!?
日に日に身に覚えのねぇコトや風景、知らねぇ連中の顔や声が聞こえるようになってくる。
未来を見通す幻の拳を放たれて未来が視えるようになったバーダックみたいな気分だぜ……!
冗談じゃねぇ、このままイカレちうまワケにゃ……いかねぇんだよ。
智香と約束したんだ……カールとも、決勝で戦うと約束した。
あと少し、あと少しだけ……待ってくれ!

「はぁっ、はぁっ……クソが! 決勝前に何やってんだ俺は……」

頭痛は何とか気合で治まった。
でもまたいつ起こるか分かんねぇ。
試合中に頭痛くなったら厄介だな……別に言い訳にするってコトじゃねーけど、頭痛を理由に負けたくもねぇ。
それもこれも楚良が初日のカオちん戦で俺の身体を乗っ取ってからだ、こんなことになっちまったのは。
……カールはあんな奴の何処が良いんだろう。
俺も自慢できる程に人間出来てるワケじゃねーからあんまこーいうコト言えねぇけどさ。
いや、他人じゃなくて俺自身……7年前に俺が無くした記憶。
両親が喋りたがらない封印された真実……それが楚良だってのは俺も
やっとだが理解はし始めてる。でも、理解はできても存在を認めるか、っつーのとはまた別問題だ。
……今夜の決勝で、全てにケリつけてやるよ。
今度こそ取り戻すんだ……全てを。

「ハセヲ〜!」
「おぉ〜い」
「シラバス……ガスパー……?」

コイツら……。

「お前ら……ショップは……?」
「商品殆ど売れちゃったから、早めに店じまいしたんだよ^^」
「アリーナで席を確保しようと思って大通りに出たらぁ、丁度ハセヲが見えたから走ってきたんだぞぉ」
「……そっか」

ったく……ホントにお節介な奴らだな。
大丈夫だよ、俺は。
まだ、大丈夫だ……。

「いよいよトーナメントも今夜で終わりかぁ。
 なんか、たったの3日間だけなのに、もう半年くらいトーナメントが続いてる気がするよ^^;」
「シラバスもぉ? オイラもだぞぉ〜」
「あぁ、うん……まぁ……最初は一ヶ月ちょっとで終わらせる予定だったらしーんだけど……気づけば8ヵ月も……」

たった3日の間に色んなコトがあったよなァ……。
勇者が……カイトの野郎がこの世界に戻ってきたり、俺の中の楚良が目覚めそうになったり……。

「とにかく頑張ってね、ハセヲ。僕達も一生懸命応援するよ^^」
「勇者もついてるし、きっと大丈夫だよぉ」
「あぁ……そだな」

でも……何か引っ掛かる。
何か大事なことを見落としてるんじゃないか……そんな薄く粘っこい不安。
俺は目先の……楚良やカールのことに囚われ過ぎて、何かを忘れちまってるんじゃないだろうか。
……杞憂か。シラバス達の言う通り、今は数時間後に迫った決勝にだけ専念しねぇと。
51名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:48:40 ID:/drvlrSU

「でもぉ、オイラもハセヲが決勝まで勝ち進んで、同じカナードの一員として、とっても鼻が高いよぉ。
 冨樫先生が2007年にHUNTER×HUNTERの連載を再開したのと同じくらい、嬉しいぞぉ〜!」
「さすがガスパー。カナードきってのハンタマニアだね^^(※ 『.hack//G.U. The World vol.08』 40ページ参照)」
「冨樫と同レベルって、喜んで良いのか悪いのか……」

確かに長期休載の理由の1つに「ネトゲにハマってる」って説もあったけど……ど、同類なのか?。
つーか2007年ってガスパーその頃まだ3歳くらいだろ。……いや、深く考えたら負けな気がする。
でもまさかゴンがあんな奇抜な方法でネフェルピトーに勝っちまうとは、当時誰も予想できなかったよな……さすが冨樫。

「何だか、ハセヲと出会ったのが、随分と昔のような気がするねぇ」
「お前らが俺を初心者と間違わなきゃ、今頃はこうしてるコトもなかったかもな」
「あぁ〜うん。そのコトなんだけどね^^;」

何だよ、気まずそうな顔しやがって。

「今だから言えるんだけど……僕達、ホントは知ってたんだ。
 ハセヲが初心者なんかじゃなく、PKKの“死の恐怖”だってコト」
「えっ……?」
「クーンさんにねぇ、頼まれたんだぞぉ。
 そのうち“死の恐怖”が困ることになるからぁ、助けてやってくれないか、ってぇ……」
「クーンが……?」

何だよ、それ……初耳だぞ。
つか、え? 俺のコト、“死の恐怖”のハセヲだってちゃんと分かってて……えっ?

「ハセヲ、クーンさんを怒らないであげてほしいんだ。
 クーンさん、カナードを立ち上げたばかりなのに急に他に専念しなきゃいけない大事なコトが出来て……
 僕にギルドマスターの座を譲って、最後にハセヲのことを頼んでカナードを抜けて……」
「オイラ達、ホントに“死の恐怖”がレベル1になっちゃってたなんて、あの時は思わなくて……」
「結果的にハセヲを騙したことになるね……ゴメン!」
「ゴメンだぞぉ〜!」
「お前ら……」

そうだ、最初はただの成り行きだった。利用するだけ利用して、さっさと断ち切るつもりだったのに。
それが一緒にダンジョン行かされて初心者講座やらボルドーに襲われるやら
パイに出会ったりやら碑文使いへの開眼やらで有耶無耶になっちまって……気づいたら、ギルマスになってて。
いつの間にか、コイツらと一緒に居るコトが当たり前になっちまって……
コイツらが誰かに馬鹿にされたりするのが、無性に許せなくなって……
コイツらが《The World》を心底楽しんでることを知っちまって……俺は。

「……バーカ。今更、何言ってやがんだか」
「ハセヲ……」
「ハセヲォ……」
「……仲間っつーか……友達だろ、俺達」
「! ハセヲ……!」
「ハ、ハ、ハセヲ〜ッ!!!」

だから、そんなオーバーな声出すなって。

「オ、オイラ、オイラ……オイラ、ハセヲと友達で、ホントに良かったぞぉぉぉ〜〜〜!!!」
「ハセヲ……これからも僕達の……カナードのギルドマスターで、居てくれるかい……?」
「……あぁ。たりめーだろ」
「うわ〜〜〜ん! ハセヲォ〜〜〜〜〜!!!」

違う、違うんだ。
逆なんだ。2人とも、俺の方なんだよ。
シラバス。ガスパー。俺……お前らに会えて――――――――――――本当に良かった。
52名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 02:50:43 ID:/drvlrSU
確か釘宮ってデビュー当初は「日本一の妹声優を目指します」と公言していた気が……?
クリアまで100時間かかるRPGは後にも先にもアークザラッドUだけ? 何のことです?
おやすみおまいら
53名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 03:00:19 ID:aIiLC1Ps
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
毎度ながらGJ
54名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 09:05:51 ID:Vx3R1zke
GJ
55名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 11:27:02 ID:MDLVToyk
GJ!!
56名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 16:12:33 ID:uuzuhd6b
sage
57名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 16:14:51 ID:uuzuhd6b
ミスったorz

GJ!

今回はシャナとハガレンかw
わざとかもしれんが焔の〜なんだぜ
まあいいや。

釘宮はたまごっちに出るっぽいが。
58名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 21:14:31 ID:ehHZr+4l
GJ!!

しかし、今回はネタが豊富だと思ってたらラストのハセヲの台詞も何気にH×Hネタなことに気づいた
59名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 22:57:25 ID:zn+vQLJi
>「炎よ、僕の力となれ!」
これアークUの主人公のエルクがレベルアップした時のセリフww
もしかして今回のテーマは「炎」か?シャナ、マスタング、エルク…どれも炎に関係してるキャラ
ガスパーのハンタマニアクソワラタww本引っ張り出して読んでみたらホントにハンター試験とか言ってるwwww
エルクの職業もハンターか…毎回よく読まないと見逃しそうなネタ大杉ww
60名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 07:43:17 ID:PQu0GNFC
GJ!つかカイトどうなるんだwバトンがどうのこうのって聞くと何つーかアレだなwスパロボなんかで若い者たちに未来を任せて散りゆく司令官的な物を連想してしまうw
この時は未だ誰も知る由もなかった…カイトがGガンよろしくハセヲの腕の中で永遠の眠りにつくなんて…しいしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
61名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 17:01:05 ID:xfvYKCGS
62名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 20:49:13 ID:O9LeGB1p
>>61
なんぞこれ、一番上はうででん?
63名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 20:56:11 ID:hSy5/Ahk
うででんの人が描いたカールじゃないか?
64名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 15:22:04 ID:S3xyxVWt
保守
65名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 20:41:36 ID:u2DdlPwz
66名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 22:45:16 ID:iKUW8r6Q
夜中あたりにくるかな
67名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:22:41 ID:KZigxKlp
おまいら乙
トーナメント3日目・志乃復帰&フィアナの末裔編投下
68名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:23:30 ID:KZigxKlp

『醜きもの、形悪しきものの害
 甚大にして言うべからず
 蒼天のバルムンク
 蒼海のオルカ
 共に疾駆す
 わが胸の深きおくがに、その名を留む
 汝らこそフィアナの末裔
 共に三倍もの偉大なものなればけり
 天も地も水も、黄金の小箱とならまし』

                                         【W.B.イェーツ  WEB詩人】









「初心者狩りは最も恥ずべき行為の一つだぞ。覚えておくといい」
「うるせぇっ! PKがCC社公認になった以上、何しようが俺の勝手だろうがッ!!!
 初心者ビビらせて愉しんで狩って、何が悪いってんだ、あぁっ!?」
「……それが貴様の恐怖か? 脆いな」
「なッ……かはっ!?」

何が起きたのか、サッパリ分からなかった。
以前からネットゲームに興味があり、日本の商社に赴任が決まったついでに
暇つぶしも兼ねて1200万人がプレイするという話題の《The World R:2》に登録、
キャラエディットも完了しいざログイン、ルートタウン【マク・アヌ】をブラついていると
親切なプレイヤーから一緒に冒険に誘われ、共にカオスゲートをくぐってみると―――――――――。
彼は豹変し、自分に剣を突きつけてきた。
抵抗しようにも回復アイテムも所持していなければレベルも1のまま、
現実ではテコンドーの有段者である民も、この時ばかりはPK(プレイヤーキラー)と呼ばれる行為に恐怖する。
だが……いつまで経ってもPKの剣が民に―――――――民の操作する天狼に届くことはなかった。
ゆっくりと、目蓋を開けてみると、今にも振り下ろさんとされていたPKの剣を
2本の指だけで摘み取って不適に哂う女が立っているではないか。
出で立ちからして天狼と同じ拳術士(グラップラー)にして獣人。
そして何よりも――――――――――恐ろしく強い!

「フン、PKと言えどあの程度か。おい、大丈夫だったか?」
「……」
「以前はあんな不貞の輩は居なかったんだがな。
 去年からシステムが変更になってPKがCC社公認になった影響で、あんな奴らが増えているのさ」
「……」

女の一撃で戦闘不能となったPK……見事とと他言いようがなかった。
民もテコンドー以外に様々な格闘技に精通しているが、あれほど美しい流れの拳を見るのは初めての体験。
武道家としての本能が、女への恐怖よりも好奇心を押し上げてゆくのが自分でも判る……!

「最近は私のようにヘルプする者も少ない……PKからの報復を恐れてね」
「……なぜ、おれを、たすけた?」
「おっと、やっと喋ってくれたな。その片言の日本語からすると、あんた外国の人かい」
「かんこく、じんだ。おれは……てんろう、という……」
「てんろう……天狼か。良い名だな。
 私は凰花、人狼族(ワーウルフ)だ。よろしく!」
69名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:24:46 ID:KZigxKlp

すぐさまルートタウンに引き返し、天狼はひとまず安堵する。
ログイン早々にPKに遭遇するとは運が悪い……やはり日本人は嫌いだ。
沈むことのない夕日を称える街の中で、天狼ともう1人……凰花と名乗る女は、橋に佇む。
最初は凰花が天狼に合わせて橋に辿り着いたカタチだったが、やがて天狼の方から口を開き――――――――問う。

「もういちど、きかせてくれ。なぜ、おれを、たすけた?」
「ふむ……そうだな。私自身がPKという行為を嫌っていることもあるが……
 何より、お前が私と同じ獣人で、なおかつ拳術士だったせいだろう」
「それ、だけのりゆうで、たすけたのか?」
「初心者が嬲り者にされる、というのも気分のいいものじゃない。
 たまたまタウンに戻ろうと思ってポートに向っていたら、お前が襲われていた。だから助けた、それだけさ」

なるほど、一理ある。天狼は完全な獣人タイプで、“狼”と名乗っているが
実際にはアフガンハウンドをモデルに作成されたPCだ。
一方の凰花は半獣人と言った風体で、頭部にケモノ耳、
足部に3本づつ爪があると言うこと以外は人族の女性にほぼ近い外観をしている。
彼女が天狼をあの場でPKからヘルプしたのは、いわば同属のよしみのようなものらしい。

「……わーうるふ、とは、なんだ? おまえは、ぐらっぷらーでは、ないのか?」
「元、拳術士だ。前のバージョンでは拳闘士と呼ばれていた。
 人狼族(ワーウルフ)というのは高レベルの拳闘士が、ある転職アイテムでなれるレア職業のことさ」
「……きいた、ことがない」
「それはそうだ。今の《The World》には存在しない職業(クラス)だからね」
「ちーと、なのか」
「……CC社にはちょっと借りがあってな。
 去年の火災事故でも、私は“凰花”のデータを失わずに済んで、今も使ってる……それだけだよ。
 このPC自体は2011年からずっと使用していて……私の分身のようなものだ。神拳の凰花と言えば、そこそこ有名だったんだぞ?」

2011年……5年も前から、彼女はこのゲームをプレイしているのか。
確かにそれだけの歳月があれば、高みに登りつめる事も……可能。
天狼の目指さんとしていた至高の強さの体現者が、まさに今、目の前に居る。
もしかしたら彼女に師事すれば、自分も彼女のようになれるのではないか?
追い求める強さを、ネットでも手に入れられるのでは……。

「おうか」
「ん、どうした」
「おれを、おまえの、でしに、してくれないか?」
「……弟子、か」

一瞬、凰花は顎に手をやって考え込むそぶりをみせるものの、すぐに顔を上げた。
顔は笑っている。先程の戦いでPKに見せた表情とはやや異なるが、
高みを極めつくした兵(つわもの)の顔で、天狼に向けてこう言うのだ。

「それは出来ない」
「なぜ、だ……?」
「ふふ、決まっている。私も、そしてお前も、誇り高き“狼”。
 狼ならば群れず、常に孤高であれ! 狼は一匹だけで誇りを守り抜くもの……違うか?」
「……!」
「だが、苦楽を共にする“仲間”であれば話は別。
 お前さえよければ私のメンバーアドレスを教えてやろう。パーティに誘いたい時は誘え。
 しかし私は時期に《The World》を離れなければならん……リアルで就活が待っているんでな。
 ……私なき後は天狼、お前が私の意志を継げ。
 そして満足できるだけの強さを手に入れた時、名乗るがいい。かつて私が呼ばれたように……《神拳》と」
「……わかった。よろしく、たのむ」
「その前にもう少しだけ日本語の勉強が必要だな。私が教えてやろう。
 以前、小さい子の家庭教師のバイトをしていたことがあってね……まぁ、その子は4歳にして天才だったんだが……」


天狼が碧聖宮・宮皇に君臨する、約1年前の出来事――――――――――。
70名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:25:56 ID:KZigxKlp

****************





「(勇者の炎が更に燃え上がる……俺を近づけさせない算段か)」

トーナメント3日目、カイトVS天狼戦。
今回の決勝戦に限り3対3のバトルロイヤルではなく、ブロック分けされた
個人同士での戦いとなり、リーダーを倒せば勝利、という条件も無効となったせいもあり
アリーナに集った観客達はブロック分けの抽選を固唾を呑んで見守った。
結果はハセヲVSカール、カイトVS天狼、なつめVS揺光の3ブロック戦に決定。
その中でも異彩を放つのがカイトVS天狼戦だった。
伝説の勇者と元碧聖宮宮皇の戦い……オッズはややカイトが有利か。
だが前評判など天狼は全く気にならない。
勇者と呼ばれ、高みに上り詰めた漢(おとこ)との戦い……これこそ、天狼が待ち望んでいた戦いに他ならない。

「(奴が舞台全体を覆っていた蒼炎のヴェールを解除したことと関係しているのは確実。
  俺が攻撃を仕掛けると同時に発動する性質の防御型かカウンター型の能力だろう。
  昨夜の試合でIyotenとアスタはそれによってフィールドの壁に叩きつけられ、大ダメージを負ってしまった……)」

踏み込むタイミングを見誤らぬようにして、カイトの領域(テリトリー)へと
天狼はジリジリと近づいてゆく。その間にもカイトの蒼炎は力強く燃え上がり、猛っている。
だが……恐れは、もうありはしない。

「(秘めた能力が未知数である以上、俺も覚悟を持って挑む他ない。
  何よりも……もう誇りを失うような戦いだけはしたくはない……!)」
「(来る……!)」

先に動いたのは天狼。
数十秒前にカイトの炎によって負傷したにも関わらず、恐れを抱くこともなく間合いを一気に詰めてきた。
同時にカイトの蒼炎が火柱となって天狼に向かって疾り出す。
しかしそれは勇者の防御が手薄になったことも意味する。
蒼炎を掻い潜りながらカイトに接近する天狼と、双剣を掲げて身構えるカイト。
拳術士(グラップラー)と双剣士(ツインソード)、どちらもスピードにかけては全職業の中でもトップクラス。
攻防も一瞬、互いの思惑を見抜くのも、一瞬!
天狼の手刀とカイトの双剣、交錯する2つの“刀”が風を凪ぐヒュッヒュッという音が、不気味に数回木霊するのみ。
そして間合いをとり、再び無言の睨み合いとなる。

「(やはりな……炎を身体から離すと次の炎を打ち出すまでに少々のロスがあると見た。
  故に常に接近し戦えば恐るるに足らず……曇りなき眼で立ち向かえば、勝てぬ相手ではない!)」
「(迷いがなくなっている……。
  僕にブランクがあるとは言え、ここまで肉薄してくるなんて……少し旗色が悪くなってきたな……)」

何よりも怖いと思ったのは、天狼の拳の軌道が全く視えなかったこと。
カイトは攻撃を喰らう刹那、危機的状況における第六感とでもいうべき反射神経によって
天狼の手刀による連続攻撃の全てを、ほぼ勘によって嗜めた。
ただし最後の攻撃だけは受けきれず、頬を紋章以外の紅が一本線となって彩っている。
超高速のスピードで繰り出された手刀が掠り、勇者に傷をつけた決定的瞬間。
やはり本気を出すに相応しい相手……。
野生動物は本能によって一瞬で互いの力量を察知、弱者は強者の前から去ると言う。
だがこの戦い、互いの力量を推し量ってもなお、底の知れぬ言いようの無い心地よい緊張感がある。
少なくとも7年前は体験できなかった、未体験の面白さ。

「(神の見えざる手……《神拳》ってところか。僕の攻撃を全て回避しつつあの反撃……僕より速い……!)」
71名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:27:23 ID:KZigxKlp

「(俺の攻撃もちゃんと当たり、ダメージを与えることができる……
  勇者と言えども無敵キャラではない、ということか……いける!)」
「(天狼の闘気が更に鋭さを増した……今までの数倍、いや数十倍もの攻撃が来る……!)」
「(……奴も察したか。臨戦態勢に入ると同時に奴にも力が漲ってゆくのが分かる……!)」


背中に耳をピッとつけて 抱きしめた
境界線みたいな身体が邪魔だね どっか行っちゃいそうなのさ
黙ってるとちぎれそうだから こんな気持ち
半径3メートル以内の世界でもっと ひっついてたいのさ


「(しかしながら俺は今、心底嬉しくもある。悪くない気分だ。
  このゲームに是ほどの気骨のある男が居たこと……その男と戦えること……。
  日本のサムライはとうの昔に滅んだと思っていたが……見当が違ったらしい。
  俺の神拳と貴様の蒼炎、俺の武道家としての誇りと貴様の勇者としての誇り……
  どちらが強いか……いざ尋常に勝負ッ!!!)」

「(炎を発動させず、攻撃を待って回避に懸けるか?
  いや、それじゃダメだ。それじゃ逃げたことになる……逃げる手は無しだ。
  彼の踏み込みの速さを見る限り、コンマの遅れが命取り……
  純粋な格闘勝負となると彼は僕よりやや上……! 接近戦では手数の多さで彼が勝るだろう。
  戦いに絶対なんてものはない、一瞬の気の緩みが勝敗を決する。揺蕩っていて当たり前……。
  ならば僕も、もう一度君の覚悟に敬意を表して迎撃させてもらうッ!)」


かわりばんこでペダルをこいで 
おじぎのひまわり通り越して
ぐんぐん風を飲み込んで そう飛べそうじゃん
初めて感じた君の体温 誰よりも強くなりたい
あったかいリズム 2個の心臓がくっついていく


『て、天狼選手とカイト選手、互いに睨み合ったまま、こう着状態が続いております!
 い、一体いつまで続くのでしょうかッ!?』
『……たまらねェな。互いが自分(テメェ)の必殺の一撃を出し合う瞬間の“空気”ってのは……!』


唇と唇 瞳(め)と瞳(め)と手と手
神様は何も禁止なんかして無い 
愛してる 愛してる 愛してる


「(参る……この一撃で決めるッ!)」
「(やっぱり速い! 炎の次弾発動が、間に合わないッ……!?)」


あたしまだ懲りてない 大人じゃわかんない
苦しくて 切なくて 見せたくて パンクしちゃう
そっぽ見て待ってるから ポッケの迷ってる手で ほっぺに触れて
恋してるチカラに魔法をかけて 太陽がずっと沈まないように



                                            【1/2   作詞・作曲・vocal:川本真琴】
72名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:28:27 ID:KZigxKlp

***************





「なぁ。今だから聞けるんだが……お前ら的に“死の恐怖”って聞いてどうだったよ」
「う〜ん。PKKってのは噂に聞いてて知ってたけどね」
「実際にハセヲと会ったのは、あの時が初めてだったしぃ、噂だけが頼りだったからねぇ」
「そうそう^^; “ネトゲ界の人斬り抜刀斎”とかさw」
「死の恐怖の決めゼリフは『悪・即・斬!』だって、オイラも聞いたことあるぞぉ〜?」
「(……言い訳しても1/3も伝わらねーんだろーな、俺の苦労)」

思い出はいつもキレイだけど、それだけじゃお腹が空くの。
本当は切ない夜なのに―――――――そんな風に考えていた頃が俺にもありま……ねぇな。
剣心みてぇに生きるのは無理だわ俺。

「で、でもハセヲ、ハンターになってからはカオティックPKとか
 悪いPKしかやっつけてないじゃない。ハセヲから助けてもらって感謝してる人、結構いるよ?
 この前もカナードにお礼のメールやギルド加入希望のメール着てたし……」
「何だかんだでハセヲも、ギルドマスターが板に付いてきたよねぇ」
「ま、まーな」

カオティックPK討伐か……CC社から雇われた公認PKってだけあって
手強かったよな、どいつも。
カオちんとかぽこたん、キラークイーン……じゃなくてジアハートみたく
トーナメントに出場して俺にリベンジ挑んでくる様な奴らもいたし。
まぁ、俺もPKKやってた以上は奴らと似たようなもんか。
そのおかげでネトゲ廃人化、学校の成績も一気に下の下までダウンしたけどな……ハハハ……ハァ……。
夏休み明けの試験で卍解……いやいや挽回しねーとマジでやべぇ。
志乃を助けるためとは言え、勉強時間まで削ってゲームやってたツケが今頃になって来ちまうとはな……参った。

「あぁ〜。もうすぐ夏休み、終わっちゃうんだねぇ」
「僕の大学は9月下旬まで夏休みだからまだまだ遊べるよ^^」
「どーせなら秋にも『秋休み』っての作っちまえばいいのにな」
「あるあるw」

スポーツだの、食欲だの、芸術だの、読書だの言ってる割には
秋って期間短ぇからすぐ冬来るよな。
秋になっていいことと言えば、深夜アニメが総入れ替えになって後期番組が始まるくらいのもんだ。
野球の延長で深夜どころか早朝アニメになっちまう場合もあるけどな……。

「ガスパーは夏休みの宿題、もう終わらせたのかい?」
「う、そ、それが……ま、まだちょっと残ってるぞぉ……」
「大丈夫だろ。カツオも毎年マスオや波平に手伝ってもらってんだ、ガスパーも親に手伝ってもらえよ」
「え、でもそれ、先生にバレちゃわないかなぁ〜?」
「いざとなったらジェバンニが一晩でやってくれるって^^」
「ガスパーはまだしも、お前の場合はバレたら単位もらえなくて留年確定じゃねーか……」

もう何でもありだな。
デスノの中身を一晩で書き写して掏りかえるより、俺の課題手伝ってくれよジェバンニ……。


「―――――面白そうな話をしてるね。留年がどうとか……私も、混ぜてくれないかな」
「その声は……志乃!?」
73名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:30:40 ID:KZigxKlp

「し、志乃……!?」
「久しぶり。ハセヲ」

志乃……しばらく会わねぇ間にギアスのナナリーみたいな声になっちまって……
……って、そりゃ元からか。俺もスザクだし。アレだ、久しぶりに会ったせいで俺もちょっとテンパってんな。
おちけつ、いや、落ち着かないねーと………………よし、もう大丈夫。

「えっと……その……元気だったか?」
「とりあえず夏休みが終わったら、大学に復帰するつもり」
「そ、そっか……」
「ふふ。ハセヲ、心配してくれてるんだ?」
「そ、そういうワケじゃねーけど……レ、レベルとかどーなってんのかな、とか……」
「大丈夫だよ。経験値、上昇中だから」
「minami-ke(みなみけ)!?」

苺ましまろの「いちごコンプリート」並に中毒性の強い歌とは思っちゃいたが……
志乃まで聴いていたのは俺の想定外――――――!

「あれっ、アトリちゃんどうしたの!?
 ディスプレイの故障かな……アトリちゃんだけ白黒テレビみたいだよ!」
「バッ、バカッ! 志乃はこういうカラーなんだよっ! 
「あっー! って、ええっ!? 人違い!? アトリちゃんじゃないの!?」
「……はっ!?」

ズッ ズズズ...

「(うわっ、志乃めっちゃ怒ってる! 怖っ!!!)」
「貴方……シラバス、さん?」
「は、はい」
「人違いは」

ズズズ...

「誰にでもあることだから」

ズッ...

「次、間違えないようにすればいいだけだよ」

ズズズズズズ....

「だって見分け方くらい、“赤ちゃんにだって分かる”でしょう……?」
「つつつ、次からは気をつけますぅ〜!!!」

な、何てこった……!
シャウアプフのオーラを見ちまって精神(こころ)が折れちまったノヴよろしく、
常にマイペースなシラバスが完全に志乃に圧倒されちまっているッ……!
この何とも形容しがたい威圧感とカリスマ性……オーヴァンがいなくなっても
しばらくは旅団を率いていただけのことはあるぜ……。
つーかシラバスがここまでビビってんの見たの初めてだ……や、やっぱ志乃はすげぇ。

「うわ〜ん、ガスパァ〜!」
「えええぇぇぇっ!? い、いつもと逆パターンな気がするぞぉ〜!?」


【シラバス、再起不能(リタイヤ)】
74名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:32:26 ID:KZigxKlp

「(と、とにかく志乃を何とかして宥めねーと……!)」
《おねえちゃん……》
「えっ……?」
「ハセヲ? どしたぁ〜?」

こ、この頭にガンガン響く声はまさか……
一難去ってまた一難な予感が……!


《おねえちゃん! わーいわーい! おねえちゃんだ、おねえちゃんだ!》
「(リュウタロス……い、いや、楚良!? てめっ、こんな時だけ出張ってきやがって!!!)」
《ねぇねぇっ、おねえちゃんにメンバーアドレス聞いてもいいよね? 答えは絶対聞いてない!》
「(ま、待てコラ! 志乃とは絶対に……)」 
《お宝ゲ〜ット! きーみもゲ〜ット! おねえちゃんもゲ〜ット!》


「……ハセヲ、何してるの?」
「オイラ達にもよく分かんないんだけどぉ、2日くらい前からこうなんだぞぉ……」
「髪に緑色のメッシュ入ってるしね、こういう時だけ」
「(シラバスも立ち直り早いぞぉ……)」
「あ、震えが止まったみたいだよ」

突然頭を抑えて何やら独り言を始め、ブルブルと震えていたハセヲ。
ようやく震えが収まったかと思うとスタッと立ち上がり、普段滅多に見せない満面の笑みを見せる。
ステップは軽やかに、それでいて厳かに。口の端を釣り上げ、新しい玩具を見つけた子供のような声で―――――――。

「おねえちゃん、メンバーアドレスちょ〜だいっ♪」

と。キラキラと瞳を輝かせて、そう言うのだ。

「お、おねえちゃん……?」
「うんっ。僕ちん、おねえちゃんのメンバーアドレスほしーの。おせーておせーてw」
「あ、そっか……。 レベル1に戻っちゃった時、メールとかメンバーアドレスも消えた、って言ってたっけ。
 ……これでいい? もう失くしちゃダメだよ?」
「わーい! やっりぃ〜w」
「(い、いつものハセヲじゃないぞぉ……キャ、キャラが違い過ぎるしぃ……ネネちゃんのママみたいだぞぉ……!)」
「(……ハッ、分かった! ハセヲはついにデレ期に突入したんだよ!)」
「(ぜ、絶対違う気がするぞぉ……)」

こここ、この野郎はァ〜ッ!!!
よりにもよって志乃の前で何てことしてくれんだコラァ!?

「(いーじゃんいーじゃん♪ アンタもおねえちゃんのメンバーアドレス、もっかい欲しかったんだろ〜?)」

うっ、ま、まぁ……そりゃ、確かに、そうだけどよ……(つーか智香がコレ見てたら絶対誤解するぞ!)。

「(それに僕ちん、髪が銀色で黒い服着た女の人がタイプだしぃ? アンタもそーでしょ)」
 
髪が銀色で黒い服……それ、志乃のコトか? それともカールのコト言ってんのか?

「(少なくとも、アンタが最初に“ハセヲ”のエディットした時は
  カールきゅんのコト考えてたんだろーね、無意識にィ〜)」

銀色の髪で、黒装束……黒い錬装士(マルチウエポン)のハセヲ……。
カールも銀髪で、黒いドレス着てて……俺は……気づかないうちに、カールを意識して……
ハセヲのキャラメイクをしていた……? そんな……そんなコト……。7年前、カールのとの間に起こったことと関係してんのか……!?

「(んふふ〜ん。それはまだシ・ミ・ツ♪ 自力で思い出した方がドラマチックじゃ〜ん?)」
75名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:34:10 ID:KZigxKlp

**************




「いよいよ今夜決行かぁ……準備も万全、どんと来い超常現象!だね」
「だが不安要素がなくなったワケではない……。
 常にあらゆる事態を想定し、理想郷(アヴァロン)探索を遂行したい。
 君の助けがあるとは言え……拭えない不安、というものはあるものだな……」
「大丈夫だよ。助っ人を呼んでおいたから♪」
「助っ人……?」
「うん。最っ高に頼りになる仲間!」

不思議だ。
これから7年前の戦いを遥かに越えるだろう激戦が待っていると言うのに
カイトには些かの不安も感じられないように見える。逆に自信に溢れているようにも。
けれど彼が先ほど口にした助っ人とは? 彼が最も頼りにする仲間と言えば……まさか―――――――――。


「旅人よ、心せよ。夜明け前がもっとも暗いのだと」
「暗闇に負けて目を背けるな。希望は―――――――“黄昏”の光はそこにある」
「――――――!?」


知識の蛇に新たな客人達が脚を踏み入れる。
無論、八咫にとっては予期せぬ客。思わず呆気にとられてしまっているようだった。
だがカイトはさも当然のように客人達に笑顔を見せ、歓喜の声を挙げ、駆け寄る。

「来た来た。遅いじゃない、2人とも」
「……まさか君が、彼らを喚んだのか……?」

1人は上半身と顔を緑色でペイントした大柄な体躯の斬刀士で
剥き出しの筋肉が歴戦の雄姿を感じさせる。だがその未開部族の様な見かけとは裏腹に、知的な笑みが印象的だ。
もう1人の男は銀色の髪と白い翼、そしてタカラヅカの様な衣装が嫌でも目につく、やはり斬刀士。
かのゲルマン神話の英雄ジークフリートを思わせる、白鳥にも似た優雅さを漂わせる荘厳な雰囲気を持ち合わせていた。


「3年前とは立場が逆になったなワイズマン。いや……今は八咫と呼ぶべきか」
「面白そうなことをやってるじゃないか。久しぶりに腕が鳴るぜ」


2009年――――「ザワン・シン」なるイベントがあった。
《The World》の前身、《フラグメント》のテストプレイヤーとして
選出された2人の剣士は力を合わせてイベントをクリアし、WEB詩人W.B.イェーツから
ケルト神話に伝わる伝説の騎士団・フィアナ騎士団を元に“フィアナの末裔”の称号を送られる。
1人は蒼海、そしてもう1人は蒼天の称号を。
「ザワン・シン」以外にも「ソール・トトルの門」「赤のイテリア」等の超難関イベントをクリア、
名実ともに最強コンビとして《The World》に彼らはその異名を轟かせてゆく。

「同窓会ってさ。大勢でやった方が楽しいでしょ?」
「オルカ……バルムンク……!」

蒼炎のカイト、蒼海のオルカ、蒼天のバルムンク……合わせて、三蒼騎士。
7年前の“黄昏”と呼ばれた事件を解決した功労者にして
《The World》の生ける伝説として名を残す勇者のオリジナルパーティ。
彼らこそ世界に、女神に最も愛された者達。
人(プレイヤー)は彼らをこう呼ぶ―――――――――――ドットハッカーズ(.hackers)と。
76名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:35:43 ID:KZigxKlp
うででんと聞いて飛んで来ました?
うででんキャラでG.U.に(アプカルルとは言え)登場してるのが凰花だけってのが黒歴史チックで寂しい? 何のことです?
おやすみおまいら
77名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 04:19:15 ID:BdGb1sTk
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!
何かもうネタがすごいよ話も濃いよ熱いよ凰花カッコいいよ!

続きを……
78名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 04:40:48 ID:47MKQK4R
ktkr!!!
GJ!!!
79名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 09:26:35 ID:QCKHK8Ny
姐さんキタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
GJ過ぎますよ(*´д`*)=3
80名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 13:40:39 ID:QKTB0z+7
腐女子が釣れますた
81名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 14:27:28 ID:yHDa5HPg
カイトの性格がwwwもう誰だよwww
82名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 14:31:36 ID:yHDa5HPg
カイトの性格wwもう誰だよwww
だがGJ、後な、腕伝は黒歴史じゃねーよ!おっ俺は絶対に認めないんだからねっ!www
黒歴史はアニメだけだろww漫画が正史だしおk。ゼフィたん(*´Д`)ハァハァ
83名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 20:07:10 ID:FJWNMgxI
最初のハセヲ×パイからもう一年以上
週一回の割合で投下してんだよな…すごすぎw
84名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 21:51:33 ID:hj5H7rGb
そうなるとこの作品で小説つくれそうだな。いやぁ良い作品だ
85名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 22:57:11 ID:F2idoAYQ
このトーナメントの話を読んで、今ハセヲVSカイトの話を書いているんですけど、完成したら投下してもいいですかね?
86名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 23:59:34 ID:ksNc7rTW
>>84
作れると思うぞ
以前のハセヲ×カールの話とか揺光の話で分岐したかんじだったし
どっちかというとエロゲに近い気がしてる

>>85
おkおk
wktkまってるぜ
87名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 00:03:39 ID:M3JaNtJu
>>85
どうぞどうぞ
そのための作品発表の場だし




前スレのオーヴァン×志乃を書くって言ってた人は結局どうなったのか・・・
88名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 05:36:41 ID:rso9LMmw
パイ×ヤタも待ってるんだ
(あれ、前後どっちだっけw)
89名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 10:54:52 ID:djG1dFn+
遅れてけどGJ!!

けど気になったんだが
カイト以上に世界愛される奴なんて存在すんのかな?
まぁそんなの個人の解釈か
90名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 15:17:17 ID:D0YY9bge
別にカイトそんな愛されちゃないだろ・・・
腕輪だってわび助が受け取った奴、たまたま自分に回されてきただけだし、
むしろ初めてやったネトゲでこんなわけわかめな展開に巻き込まれて不幸な少年にしか見えん。
91名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 21:54:24 ID:sU6z5jUD
いやそんな状況なのに投げず他人のせいにもせず
やり通したカイトは彼女の目にもさぞ格好よく見えたろう
92名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 22:28:17 ID:Xl+tKO/Q
>>86-87
頑張ってみます、まだ2レス分ぐらいしか書けてないですが。


ところでわび助の上の名前って田中でしたっけ?
93名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 01:07:37 ID:HUphofbj
『た、田中です』
94名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 15:12:19 ID:DdwUfIkP
>>90
アウラに愛される=世界に愛されるといってもいいから
そういう意味ではカイトは世界に愛されてるって言ってもいいんじゃない?
95名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 15:43:33 ID:azQ8695v
なんでそんな必死にカイトを特別視したがってんの?
96名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 20:09:19 ID:S/frAJ/B
>>95
何だかんだで初代主人公だし
思い入れある人もそりゃいるだろう
97名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 21:06:53 ID:9xBznEHz
http://www.cc2.co.jp/hack_link/hack_link.html

「The World R:X」ねえ・・・
G.U.から三年、2020年か。
カイト24歳・・・バル27歳・・・皆おっさん、おばさん化で無印メンバー\(^o^)/オワタ

もう、,hackシリーズは新作出るたび年月流れまくって毎回バージョンアップの嵐になったりせんだろうなwww

.hackシリーズ十何作目とかなると無印から五十年とかぶっ飛んだ展開になったりするんじゃ・・・

(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

てか天城妹?キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
98名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:20:13 ID:w33IVwur
カイトはまだ許容範囲だ,バルはキツいが
てかカイトとハセヲの共闘が見れんのか?
99名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 23:40:25 ID:9xBznEHz
つーか「R:X」はねーわwww
何で3じゃねーんだよwwwもう終わっちまいそうな雰囲気がww
後で普通に3にしとけば良かったとか後悔しそうだなww
100名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 01:12:07 ID:TbW8YMx7
RXね。         太陽の光を浴びてパワーアップしそうだな     怒りの王子とか悲しみの王子とか
101名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 02:36:24 ID:I9QOnhdB
でも3、て言われたら言われたでくどい気がするんだよな。
102名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 17:27:56 ID:15RAlpzO
それでは、トキオ×彩花をお願いします
103名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 18:06:07 ID:UhFIGvOi
何十もの本屋見て回るもケロケロエース売ってねー
オワタ
104名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 03:38:32 ID:vS+0EeIh
サイズが小さいから見逃してるのかもよ
105名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 18:19:51 ID:pWaAIs8p
他の漫画がつまらな過ぎて泣いた
106名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 23:27:17 ID:v0gh02Ex
っていうか、公式サイトのLINKのサンプルに出てるカイトの帽子のマーク間違えてねぇ?
Uのなかに◎だろ
107名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 00:07:22 ID:waXawmUm
雑誌移さねーかな

正直,公式設定でカイトとハセラが共闘とか脳汁出まくるんだが
108名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:08:49 ID:TXHxHXZo
おまいら乙
トーナメント3日目・R:X編投下
109名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:10:02 ID:TXHxHXZo

『この世には、目には見えない闇の住人達が居る。
 奴らは時として牙を剥き、君達を襲って来る。
 彼は、そんな奴らから君達を守るため
 地獄の底からやって来た、正義の使者……なのかもしれない』

                              【地獄先生ぬ〜べ〜(アニメ版)  OPナレーションより】



















「エマ・ウィーラントは20歳の誕生日に体調不良に陥り、以降は南フランスの療養所で過ごす。
 療養所内での生活中、エマはその後の人生を左右する神秘体験を得た。
 その体験こそが彼女にネット叙事詩『The Epitaph of the Twilight』……
 『黄昏の碑文』の執筆を思い立たせた要因であることは間違いないだろう。
 だが……神秘体験とは何だ? エマに何が起きた? クソ、資料が少なすぎる……」

幾つものPCと配線コードが犇く研究室に歳若い男が1人。
何かに取り憑かれたかの様に一心不乱にPCモニターに羅列された文章を読み取りつつ、思考を巡らせていた。
部屋から出るのも億劫なのか、既にゴミ箱の中には携帯食の箱や袋が散乱、
いかに彼が長い日数をこの研究室で過ごしていたかを静かに物語っている。

「しかし……確かに神秘体験でもしなきゃ、こんなイカれた叙事詩は書けない。
 ハロルドもよくゲーム化を試みたものだ……恋は盲目? ハッ、くだらない」

エマ・ウィーラントとハロルド・ヒューイック。
どちも故人ではあるが、その道の者ならば知らぬ者はいない天才だった。
けれどエマは交通事故で死亡、ハロルドもCC社にエマの執筆した黄昏の碑文をゲーム化した
『フラグメント』を売り込んだ直後に失踪(恐らくもう生きてはいまい)と、彼らに関する資料は少ない。
ただその名前だけが伝説となって一人歩きしてしまっていた……あたかも、絶対に越えられぬ壁の如く。

「見ていろ……私の方が利口だということを教えてやるよ。
 頭の硬い上層部の奴らにも、番匠屋さんにも、私の誘いを断った馬鹿勇者にも……
 RA計画が成功すれば全てが上手くいく……天才ハロルドに、私の知恵が通用すると分かれば……ハハッ」

計画は順調だ、問題はない。
既に2015年春の段階でモルガナ因子、即ち八相の碑文の回収には成功している。
あとはRA計画を実行するために碑文使いPCと、そのPCを操るプレイヤーを選出せねばならないが……。

「せっかくスケィスの碑文使い候補として声をかけてやったのに……
 やはり精神的にガキだったなァ、彼は。マハが消えたくらいで何を怒っていたんだか……。
 勇者と言えども仲間が居なければ何も出来はしない……カイト、アレはもう要らない」
110名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:11:58 ID:TXHxHXZo

その後もスケィスを操れるだけの人材探しは続けたつもりだった。
既に他のモルガナ因子を宿したPCの作成は終了、操作するプレイヤーも用意出来ている
(その中の1人、【第七相 復讐する者 タルヴォス】の適合者が番匠屋だと言うのが気に食わないが……)。
だがどうしてもスケィスの碑文使いだけが見つからないのだ。
何故だ、どうしてスケィスだけはこうも特別なのか?
資料によるとモルガナがアウラをデリートするために仕向けた刺客の様だが、
勇者カイトとそのパーティによって撃破されるまで何人もの未帰還者を生み、
また撃破後も被害はそう大きくなかったがネットワーククライシスを引き起こすなど、
まるでモルガナの怨念が詰まっていたかの様ではないか。

「碑文使い候補……スケィスの関係者で……最も適合に相応しいのは……」

スクロールする画面に見入りつつ、机の上に置いてあった携帯食を齧り、貪る。
モゴモゴと口を動かしながら資料を見続けるうち、1人の少女の名が彼の眼に止まった。
……良い。すごく良い。
プレイヤーの個人情報はいかにCC社社員と言えどもプライベートなことまで閲覧することは
許されていないが、彼となれば話は別。彼は特別なのだから。

「仁村潤香……元CC社『The World R:1』日本語版移植作業班チーフ・徳岡純一郎の娘……。
 PC名カール……スケィスにデータドレインされ未帰還者になった経験有り……!
 おいおい、どうして誰も彼女の名を挙げない!? 信じられない程の上玉じゃないかッ。
 元PK? アウラを連れて逃亡? 放浪AIソラ? ここまでモルガナに関わっていたとは……面白い!」

データドレインによって未帰還者になったのなら、CC社が彼女の入院時の資料を持っているはず。
それが元CC社社員で重要なポジションに居た男の娘なら尚更……
かつてはアウラを害悪としか考えていなかった上層部も今ではアウラの《The World》への帰還を望んでいる始末、
そのアウラの関係者とあれば、碑文使いとして最も相応しい人材に決まっている。
どうして番匠屋は彼女をスケィスの碑文使いとして自分に推薦しなかったのだろうか。
八相によってデータドレインされた者、あるいは戦って勝利した者を勧誘するならば
仁村潤香は一度は通る道のはず……あえて誘わなかった? 馬鹿な、千載一遇のチャンスをか?

「あった……5年前の資料だが……」

仁村潤香。
当時小学5年生なら、今は15〜16歳と言ったところか。
PKやチーターとして活動していた時期はほんの僅かで、
後は全てアウラ、スケィス、そしてソラという単語が所々に見受けられる。
昏睡状態から回復後は家族と共に引越し、北海道へ……北海道!?

「そういうことか……これじゃダメだ。
 無理矢理にでも東京に連れてくるか、北海道から直接アクセスさせるかなら話は別だが……クソ!」

療養のために仁村潤香は退院後、2011年時点で北海道へと引っ越している。
せっかく見つけた優良な実験対象だったのに……口惜しいったらない。
“第二の黙示録”を開始するには、スケィスを操れるだけの才を持った人間の協力が―――――――――――!

「……まぁいい。まだ時間はあるさ」

そう呟きながら男――――――天城丈太郎は
長い時間を費やした椅子からややよろけながらも立ち上がり、いつの間にか白けていた朝空を
締め切ったカーテンから差し込む光によって確認する。今日も完徹か。
問題はまだ山積みだが徐々に消化は出来るはず……焦るな。必ず成功させてみせる。
RA計画……天才の証明……!

「彩花……全部終わったら……また一緒に遊ぼう……」

                                                 【A.D.2015年 春】
111名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:12:49 ID:TXHxHXZo

*****************




「シラバスにも悪気があったワケじゃねーし、許してやってくんねーかな……」
「許すも何も、私、別に怒ってないよ?」
「(メチャ怒ってたじゃん……)」

よぉ、俺だ。
あれから何とか楚良を押さえ込むことは出来たのはいいが……状況はあんま芳しくねぇ。
シラバスにアトリと間違えられて白黒テレビなんて言われて怒り心頭の志乃を宥めるのに
えれぇ神経使っちまった……決勝前からこんなんで大丈夫なんだろうか、俺……。

「とにかく、お前ももう間違えんじゃねーぞ(でねーとマジで首飛ぶぞ)」
「ははは、分かってるって^^(き、気をつけるね……^^;)」

シラバスの奴もやっとのこと志乃とアトリの区別が付くようになったみてーだし……
ったく、あんま命知らずなのも困りモンだな。

「そう言えばぁ、ハセヲと志乃さんってぇ、前は同じギルドに居たんだよねぇ?」
「あ、それ僕も聞いたことある。キー・オブ・ザ・トワイライトを捜してた伝説のギルドだよね!」
「ん、あぁ。まーな」
「ギルドの名前は確か……えーっと……帝國華撃団!」
「幻影旅団じゃ、なかったけぇ?」
「あれ、ハセヲの反応を見る限り違うっぽいなぁ……分かった、SOS団だ!」
「どれもちげーよ……つーか団(旅団)しか合ってねー……ハッ!?」
「黄昏の旅団、だよ」

ズズ...ズズズ...

「ひぃっ!?」
「あわわ、あわわわわわ……!」

うわ……せっかく鎮めたはずの志乃の怒りメーターがまた上昇しているッ!?
そりゃそうだ、志乃からしてみりゃ旅団はオーヴァンとの大事な思い出、
それを“太正櫻に浪漫の嵐!”だの“ウボォーさん聞こえますか?”だの“マッガーレ!”だのと
一緒にされちゃ、俺だってキレるに決まってる……ッ!

「確かにイロイロないざこざがあって解散しちゃったけど」

ゴゴゴゴゴ

「それでも、私とハセヲにとっては思い出の詰まったギルド、なんだよ?」

ドドドドド

「黄昏の旅団……こんな簡単な名前……“赤ちゃんにでも分かる”でしょう……?
 それが分からないなんて……君達、赤ちゃん以下なのかな……? 精子からやり直した方が、いいんじゃないかな……?」

「ひぃぃぃっ! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!!! 二度と間違えませんから許してくださいィ〜!!!」
「ごごごご、ごめんなさいだぞぉ〜!」
「(またこのパターンかよ……)」


【シラバス、ガスパー、再起不能(リタイヤ)】
112名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:14:49 ID:TXHxHXZo

…………。
………。
……。
…。

口じゃ怒ってねーなんて言っても、鈍感な俺にだって志乃がキレてたのは分かる。
そこそこ付き合いは長ぇつもりだしな。
シラバスとガスパーを退散させて志乃をもう一度宥めるのに、俺がどんだけ疲れたと思う?
試合前から胃が痛くなっちまったよ。
旅団編でゼノじいさんが300mの“円(エン)”を使うと神経使ってしんどいって言ってたが、まさにアレだ。
エン……そーいや、エンデュランスの奴は何処に行っちまったんだ?
いつもならどっからか俺のコトをストーキン……いやいや、視てるはずなんだが。
……気配感じねーな。そんな日もあるか。

「わ、悪く思わねーでくれ。
 アイツら、確かにあんなだけど根は悪くねー奴らってゆーか……」
「ハセヲが気を許してるお友達だもんね……分かってたよ、ホントは」
「じゃあ……」
「ちょっと、ふざけてみただけ」
(そーは見えなかったけどな……ありゃ本気だった)」

志乃はオーヴァンが居なくなっても旅団を維持しようとしてた。
TaNの連中が居なくなって、やっと普通に遊べると思った矢先に解散なんて……ねーよな。
俺も、タビーも、匂坂も……空中分解した旅団から、離れざるを得なくなっちまった。
志乃はオーヴァンにPKされて未帰還者にされちまって……俺は蒼炎のカイトをトライエッジと思い込んで
追っかけ回して……何も気づいちゃいなかったんだ。
真実の行方……こんなにも傍に居たのに。

「オーヴァンの左腕」
「えっ?」
「ハセヲは、最初に見た時どう思った?」
「俺は……」

……ぶっちゃけ、何コイツってのは思ったな。
タビーは「腕の中で仔猫飼ってる」とか匂坂は「最終兵器彼氏」とかワケ分かんねぇコト言ってたし……。
まさか、あの腕の中にAIDAが詰まっててトライエッジ化してたなんて誰も想像出来ねぇだろ……常識的に考えて。

「ハセヲは何だと思ってたの? オーヴァンの左腕……」
「……鬼の手、とか?」
「……“ぬ〜べ〜”じゃないんだから。……ある意味、間違ってない気もするけど」
「だよな……」

何故だろう。
今、匂坂が経文を唱えてる声が聞こえたような……げ、幻聴か……?
……幻聴だよな。あいつ、もうこのゲーム辞めちまったんだし。

「志乃は……後悔、してねぇんだろ。オーヴァンに、PKされたこと……」
「……少しでも、あの人の役に立てればそれでよかった」
「……」
「それに」
「……?」
「オーヴァンがハセヲを信じていたのとおんなじ。
 私も……ハセヲを信じてたから。オーヴァンの左腕を通して、私もハセヲを見ていた。
 ハセヲが私のために頑張ってくれてるんだって……嬉しかったんだよ?」
「志乃……」
113名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:16:03 ID:TXHxHXZo

****************




「3年前はあれ程に“黄昏の再来”を恐れていたCC社が
 今度は逆にアウラを求めるとはな……相変わらず、上の連中のすることは分からん」
「バルは嫌いだったもんな、CC社の上層部」
「辞めてよかったの? 結構高給取りだったんでしょ?」
「人の心は金で買えんよ。幸い、俺以上の適任者も見つかったようだしな」
「フッ……大人になったねェ、バルムンク」
「……今頃になって3年前の嫌味を返すか」

カイト、オルカ、バルムンク、八咫(ワイズマン)。
伝説のパーティ、ドットハッカーズの中核を担った者達が時を越えて集った。
八咫は敢えてなつめ、ぴろし3をハセヲのパーティに組み込むことで
トーナメントを勝ち進ませようと初期段階では考えていたようだが……この3日間の間に状況は一変。
特にカールの異変と深淵(アビス)の勢力、2つの問題を抱えてしまった今、
オルカとバルムンク、フィアナの末裔の2人に助力を求めたカイトの判断はベストと言える。
もし八咫がカイトと同じ立場だったなら、やはり旧友の力を借りただろう。
それ程までに今回のミッション……RA計画の遂行は困難。

「で。俺達は何をすればいいんだ?
 楚良……今はハセラとか言う、そのPCのサポートに回ればいいのか」
「バル、ハセラじゃない。ハセヲだ」
「ケロケロエースと同じ間違いしてる(笑)」
「……そのハセヲが、今回の作戦のカギなんだろう?」
「然り」

八咫の指先に合わせて展開する知識の蛇のモニター群。
これまでに碑文の発掘調査を進めたロストグラウンドの数々、カイトによって発見された旧世界への扉、
出撃の時を静かに待つ闘竜マグメルド、理想郷(アヴァロン)への扉が開くのと同時に進撃を開始せんと
蠢く深淵(アビス)の魔物ども……今夜決行されるRA計画の全てについて、知ってもらう必要がある。

「マグメルド……お前、あんなのと1人で戦ったのか?」
「まーね。結構苦戦したよ」
「なんだ、まだまだ現役じゃないか」
「ヤスヒコも勘、取り戻しといた方がいいかもよ?」
「おまっ、ゲームの時はヤスヒコ禁止だってガキの頃からいつも言ってるだろうに……」
「アハハ」

そうだ、カイトがコシュタ・バウアから上空に浮かぶマグメルドの封印を解き、
戦力として従属させたことは大きい。
一応は八咫も敵勢力との戦いに備えて鉄巨人シリーズなるメカを
マク・アヌのドクター・ケペルに開発を依頼、更には紋章砲まで装備させるに至ったが、
それでも不安要素はあった。
だがいける、オルカとバルムンクも賛同してくれた今、作戦成功率は更にグンと上がったはず。
あとはハセヲだけ。2本のキー・オブ・ザ・トワイライトが揃わなければ
理想郷(アヴァロン)への扉は開かない。
今夜の決勝、カールとの戦いの最中に楚良としての記憶を完全に取り戻してくれさえすれば……
いや、油断は出来ない。もしもカールが怒りに駆られてハセヲを殺してしまったら、それこそ全ては台無しだ。
今の彼女はどうやったかは知らないが、以前よりも遥かに強い力を手に入れている……。

「ハセヲ君は、きっと大丈夫」
「カイト……」
「あの子が……絶対に守るから」
114名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:17:27 ID:TXHxHXZo

『高慢は常に破滅の一歩手前であらわれる。高慢になる人はもう勝負に負けている』

                                           【ヒルティ   ドイツの工学博士】

















「なッ……何やの、それ……ッ!?」

朔は驚愕する。
攻防一体モードに変化させたゴレが“機能停止(フリーズショット)”なる技で
全く動けなくなってしまったのにも驚いたが……今、目の前で起こっていることに比べれば差は明らか。
何だ……何なのだ、アレは……!?

「(AIDAが……完全に侵食……ッ!?)」

カールの全身に疾る紅。
群青色のドレスが見る見る紅に染まっていく、その過程。
血染めの紅。
女が、異形へと姿を変えるプロセスは醜くも美しさすら感じる程に流麗。
あれだけ息苦しくかった憑神空間が、更に吐き気を催す位の異空間へと変わるのが分かる!

「ふぅ〜。B-stフォーム……参上ぉ〜」
「(B-stフォーム……ッ!?)」

ハセヲで言うところのXthフォームのようなものだろうか。
いや、この禍々しさのレベルは寧ろ3rdフォ−ムに雰囲気が似ている。
アレの何万倍、何十万倍も気味の悪いの気配だが……この静けさが逆に恐怖を引き立てるのが不気味だ。
しかしAIDAに侵食されても尚、カールの自信は揺るがない。圧倒的な実力差を、否応なしに感じさせてくる……!

「侵食率40%ってところか……ふむ」
「(40%やて……? 40%で“アレ”なんかッ……!?)」

以前、カイトが腕輪を使ってウイルスバグをデータドレインしていた頃。
あまりにデータドレインを繰り返すと侵食率が進行、その都度、予想も出来ない異常が
カイトに現れていたのは記憶に新しい。
カールもまたアウラによって選ばれた“腕輪持つ者”。
アウラは最終的に黄昏の書を蒼海のオルカに渡し、彼に腕輪を使用してもらおうと考えていたが
結果的に腕輪はオルカではなくカイトの手に。
つまりはカール→カイトの順番で腕輪のバトンは続いていたワケだ。
腕輪を使用し尚且つAIDAも完全制御できるカールならば、侵食率の増減コントロールも容易いはず。
敢えて40%に留めたのは、今夜のトーナメント決勝にてハセヲと戦う時に余力を残しておきたいからに
他ならない。
AIDAとの完全な同調(シンクロ)……榊やオーヴァンですら成し得なかった、まさに異形の偉業……とでも言えばいい
115名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:18:42 ID:TXHxHXZo

「紅は血の色、死は闇の色……ってね。
 あたしもここまでしたくなかったんだよ……朔ぅ?」
「っ……!?」
「でもさ……アンタがあたしの邪魔するとか言い出しちゃうから……こうなったワケだし?」

紅(あか)だ。空間の全てが紅に染まっている。
カールのドレスも紅、大鎌も紅、憑神も紅、憑神空間も紅。
唯一、銀色の長い髪だけが彼女のアイデンティティを誇るかの如く、異彩を放っている。
眼に焼きつく異様で異常な光景。朔が碑文使いでなかったら、とっくに発狂していてもおかしくなかった。
これが……カールの深層世界! なんて痛々しく、残酷で、自虐的な世界なのだろう!
眼に見えない針で全身を幾度も突き刺されている……そんな幻痛(ファントム・ペイン)すら感じる。

「ごめんねぇ……クスクス」
「(こっ、殺される……ッ!)」

ブォンと妖しく光るカールの右腕。CGながらも美しく処理された細腕に、薄碧色の腕輪が浮かぶ。
碑文使いならば誰もが扱える必殺中の必殺――――――――――――データドレイン。
AIDAを完全消去し、プレイヤーを意識不明にさせ、最悪の場合は精神的な死をも齎す禁断に秘技。
今の彼女ならば躊躇無く、朔を消すだろう。
自分の障害になる相手ならば慈悲は無用……あの笑みは、そんな笑みだ。


「おやすみ……朔」
「あぁ……あああああああああああああぁぁああああああぁぁああああああぁぁぁ!!!」


逃げ場なんてない。ここはカール(彼女)の世界なのだから。
頼みの綱のゴレもフリーズショットによって機能停止状態、もう朔に成す術は残っていない。
呪紋を唱えようにもこんな不安定な精神状態では焼け石に水、到底データドレインを防ぐことなど出来はしないだろう。

「(あかん……ダメや……ハセヲ……ウチ、役に立てんかった)」

死を覚悟した。
特に朔は精神生命とも呼べる存在、データドレインを喰らえば完全に現実(リアル)と切り離される。
死だ。死ぬのだ。望と一心同体である以上、望が歳をとって死ねば、朔も共に死ぬ。
それは遥か遠い先の話だと思っていた……いや、一度は自分で消えることを選んだこともあるけれど。
アイツの……ハセヲのおかげで、もう一度踏みとどまることが出来たのに。

「(ごめんなぁ……ごめんなぁ……)」

あの光がこの身を貫いた時、消える。
だが……寸での所で、もう一条の閃光が、カールの放ったデータドレインに割り込み――――――――。


「……ナニコレ。薔薇の花びら?」


データドレインに割って入った光は、極彩色の紅空間を更に美しく彩る無数の薔薇の花弁と成る。
一枚一枚が朔を守るように舞い、巨大な花弁の盾となってデータドレインを弾き返してゆく!


「フィナーレには……まだ早い。それでもいいなら……僕に釣られてみる……?」
「あっは〜ん? これはこれは……元紅魔宮宮皇のおでましぃ?」


吹き荒れる薔薇の花弁の嵐の中、かつてドットハッカーズと呼ばれた碑文使いの参戦。
旧PC名はエルク。現PC名は――――――――――エンデュランス。
116名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:20:26 ID:TXHxHXZo

「エッ……エッエッエッ、エン様っ!?」
「大丈夫……?」

もうダメかと思ったその時、朔の周囲を優しく取り囲む薔薇の花弁。
それが何であるかを理解するのに数秒かかってしまったが、朔はやっと理解した。
これは第六相 誘惑の恋人マハの薔薇の花弁!
そして、その憑神を操るPCと言えば《The World》で唯1人!

「エン様ぁ……エン様ァァァァァァァァァッ!!!」

溜めに溜め込んでいた恐怖が決壊して、朔を叫ばせていた。
この危機的状況で、自分1人で何とかすると臨んだ決死行に、エンデュランスが駆けつけてくれた。
こんなに嬉しいことはない。彼が居てくれる、それだけで……恐怖が拭われていく。

「ハセヲを遠くから視てたら……君が、ハセヲと別れてカオスゲートを潜るのを視た……。
 気になって後を追ったら……こんなコトになっていた……だから、助けた」
「うぅ……ぐすっ、エン様ァ〜」

朔に抱きつかれながらもエンデュランスの臨戦態勢は崩れない。
既にマハを召喚、カールのスケィスと無言のままの睨み合いを開始していた。
紅魔宮宮皇に甘んじていたとは言え、エンデュランスこと一ノ瀬薫もR:1時代からのヘビーユーザー。
経験だけならカールと同等と言えるだろう。

「おい。チート野郎がココに何の用?
 ま、チートに関しちゃ、あたしもあんま他人のコト言えないけどねぇ」
「僕の嘘を安っぽく解釈されるのは……許せない……。
 僕の嘘は……嘘のための嘘なんだから……そして、彼女と、ハセヲのための嘘……!」

エンデュランスの周囲を渦巻く空気が徐々に変質してゆく。
カールの憑神空間を、エンデュランスの憑神空間が侵食しているのだ。
憑神が2体以上同時に憑神空間に存在すると暴走の可能性が高くなると言うが、今の時点で3体が
同一の憑神空間に存在していることになる(朔のゴレは完全にフリーズ状態ではあるが)。
だが敢えて暴走の危険を冒してまで朔を助けに来たエンデュランス。
ハセヲとの出会いを経て、そしてカイトとの邂逅を果たし、エンデュランスの心は光を完全に取り戻した。
もう、部屋の中に閉じこもっていた頃の彼ではない。
閉ざしていた窓を開くことを決めたあの時。
自分を、世界さえも変えてしまう瞬間はいつもすぐ傍にある……だから、守りたい!

「君がハセヲを大事に想っているように……僕もハセヲを大事に想っている……。
 哀しいね……君とは……分かり合えると思っていたのに……」
「じょ〜だんキツッ! つーか、ありえない」

朔を仕留めるためにデータドレインまで出したのに、それを妨害されて
ややカールはヒス気味なようだ。
いつも感情を読まれないように奇妙な言動でポーカーフェイスを装いながらも
常に冷めた眼で周囲の人間を観察していた彼女。
ハセヲと揺光、ついでに三郎だけが唯一の例外、後はみんなカールからしてみれば空気に近い。

「君もハセヲの大事な人だから……出来れば傷つけたくはないけれど……」
「よく言う……揺光と戦った時だって容赦なんかしなかったクセに……w」 
「でも……同じハセヲを想う者だからこそ……僕は、君を止めたい……!」 
 
巻き上がる花弁の嵐。エンデュランスは本気だ。
元紅魔宮宮皇のエンデュランスと元碧聖宮宮皇のカール……肩書きを越えた、もう1つの戦い。

「行こう……ミア!」
117名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:22:02 ID:TXHxHXZo

*******************









「(右目のダミー因子が疼く……この反応は……仁村潤香……カールか)」

灰暗い深淵の闇。
玉座に踏ん反りかえって頬杖を付いていた隻眼の少年は、偏頭痛の如く疼き始めた右目を
抑えつつも自嘲気味に笑って見せた。
この痛みはスケィス成長の証……いずれダミー因子に変わり手に入るスケィス因子の産みの痛み。
そのためにも、もっとカールのスケィスには闘ってもらわなければ。
出なければ彼女にAIDAを仕込んだ意味がない。
全ては順序良く、完全な旋律……そう、完全調和(パーフェクト・ハーモニー)を奏でるように美しく。

「ハヴシー、アンクウ、クルーウァッハ」
「はっ!」
「ははっ」
「お呼びでございますか、バロール様!」

バロールと呼ばれる少年の呼びかけに呼応して駆け寄る3体のヴァイタルビスタ。
かつて幾度と無くハセヲによって暗黒神の復活を邪魔された、あの3人の闇の呪紋使い達である。

「理想郷(アヴァロン)侵攻計画はどうなっている?」
「只今、深淵(アビス)より最後の亡者の軍勢を蘇らせている最中でございます」
「今夜中に全ての復活は完了いたしまする」
「“天落とし”についても準備は万全、後は奴らが扉を開くのを待つだけかと……」
「結構。下がれ」
「「「ははっ!」」」

理想郷(アヴァロン)……何かがそこから始まる場所、“境界線”。
そこに行けば完全な存在が待っている。
女神アウラをも超える存在として、この世界に君臨し、ネットワークに安定を齎す自分が……!

「(2年……長かった……あと数時間だと言うのに、待ちきれない……“第二の黙示録”の開幕……ッ!)」

マントを翻しつつ、呪紋使いらによって次々と蘇ってゆく魔物達を遠目で見ながら
バロールは口元を押さえ、必死で笑いを堪えているように見えた。
どういう経緯でこのバロールが3人のヴァイタルビスタを従え、
かのケルト神話における大悪神と同じ名を名乗っているかは定かではないが……これだけはハッキリ言える。
この少年のもう片方の瞳に宿った野心と悪意は類を見ない程に邪悪で歪、
カールも目的達成のためならば手段を選ばないが、バロールの前ではそれも霞むだろう。
それ程の悪意。この世界の悪徳の権化とも呼ぶべき存在が、
カイト達と同じように理想郷(アヴァロン)を目指しているのだ。いや、目指すと言うよりも横取りに近い。


「(もうすぐ……もうすぐ戻るよ。待っていておくれ……彩花……)」


トーナメント決勝戦開始まで、あと3時間―――――――――――――――――。
118名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:29:46 ID:7rAmJtix
南無大慈大悲救苦救難……我が左手に封じられし鬼よ、今こそその力を示せ?
>>82 カイトの性格は4KOMAを参考に多少のブラック要素を加味? 何のことです?
おやすみおまいら 
119名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:43:47 ID:NXg7DkG2
(´・ω・`)bGJ
120名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 05:50:30 ID:NXg7DkG2
>>117それとIDスゲェ
121名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 06:43:27 ID:irNOYZei
GJすぎ
122名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 07:01:05 ID:VYiMyS7Z
GJ……なのかもしれない

「地獄先生ぬ〜べ〜OPより」
123名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 07:05:11 ID:SWNIp3Mz
ちょっと無理のある設定がおおくなってきたな。
ヴァイタルビスタ共を話しに絡めるのはなあ・・・ネトゲの設定はどこへやら・・・
完全にただの魔法の世界になってるよな
じゃあ、もうそう思って読めば?とか言われるかもしれんがそれだとリアルの話が矛盾全開になるし・・・
いや、それでも読むんだけどねww

つかもうLINKネタ取り込むのかww無茶だろww

だけどGJ!!!!!!!!!!次も楽しみにしてるぜ!




ああ!いい考え思いついた!
普通の世界もありつつ魔法の世界もあってそこに行けば(行く=ログイン)魔法使えます的な設定の話だと思えばいいんだ。
リアルでPCカタカタやってんのは魔法が科学的に解明、研究されてる世界ってことにすればイケる!!
あれ、これってなのは???(細かくは違うが

魔法(エマがした神秘体験より)及び魔法の世界の原案者(黄昏の碑文)がエマ、
魔法の世界の開発、製作者がハロルドでアウラがハロルドに作られた魔法世界の女神様って事でwww

完璧に別作品wwwつーかこの設定で話書けとか言われたら腐るほどアイディアが沸くんだがwww
文才無いから書きはせんがwwがんばれ!職人!!応援してるぜ!!
124名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 09:05:44 ID:Drg7Vm/l
GJ!
侵食率の進行具合は今後のお楽しみかw
LINKを早速取り込んだってことは
この話の結末はR:2終焉のきっかけかそのものに向かってるってことだな
次もwktkして待ってるぜ
125名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 22:57:10 ID:/SMF5fv4
GJなお手前でした。
浸食率40%と聞いたときに幽々白書の戸愚呂(弟)の筋肉思い出した。
カールが「やるねぇ…」とかいってわざと負けたりしないよな!?ww
126名無しさん@ピンキー:2007/10/31(水) 22:55:01 ID:8qM7+Qcz
ま、カールは天城のかませ犬だろ。展開的にみても因子取ったらおさらばの捨て駒扱いされそうだな。
つか今の時点で既にそうとも取れなくもない。
127名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 11:00:25 ID:xuVbbdu/
GJ!
まさかのエンデュランス登場、次も期待せざるを得ないwww
128名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 16:12:31 ID:WfUMpGGQ
あれ?天狼とカイトの試合はどうなったんだ
129名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 02:17:19 ID:uAOTG2Q/
小説で揺光がオーヴァンにレイープされたらしき描写があってちょっと激しい妄想しちまった
130名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 01:22:00 ID:3sTECrlD
そろそろ来るかね、夜中辺り。
131名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 07:27:19 ID:3sTECrlD
そろそろ来るんじゃないかと一晩中待ってたがこないっぽい、もう眠さが限界である
  ∧∧ ∩ お
 ( ´∀`)/ ∧∧ ∩や
⊂   ノ  ( ´∀`)/
 (つ ノ  ⊂   ノ  ∧∧ ∩す
  (ノ    (つ ノ  ( ´∀`)/
        (ノ   ⊂   ノ
             (つ ノ  ∧∧ ∩みー
             (ノ  ( ´∀`)/
                _| つ/ヽ-、_
              / └-(____/
               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                  <⌒/ヽ___
                /<_/____/

132名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 00:10:55 ID:46BQRETC
機能停止(フリーズショット)なんて技あったっけ?
133名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 00:34:24 ID:bpHsrCAq
コンプ嫁
134名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 03:12:28 ID:QtuRZWkk
>>132
コンプのGU+でハセヲがCC社員に使ってた
135名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 18:50:58 ID:vpbmfj5/
エンジュのチート双剣みたいな感じなんだろうな
碑文には通じないみたいだが
136名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:02:03 ID:Zm1Ko8Uq
おまいら乙
トーナメント3日目・ちょっと先の話だけど今のうちに投下しとけ編投下
137名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:05:17 ID:Zm1Ko8Uq

『大きな過ちを多く犯さないうちは、どんな人間でも偉人や善人にはなれない』

                                        【ウィリアム・グラッドストン  イギリスの政治家】

























「CC社も都合がいいものだ」
「? どういうこと?」
「3年前、俺が管理者だった頃はアウラをあれ程に煙たがっていた連中が……
 今度はそのアウラを求めようとはな」
「利用価値が分かって考えを改めた、ってとこじゃないのか?
 今回のRA計画ってのは2年前に失敗したって計画のやり直しなんだろう?」

バルムンクが《The World》の管理者としてCC社に勤めていた2014年頃。
ドットハッカーズの限定PC抽プレに当選した2人のプレイヤーが居た。
シューゴとレナ、カイトとブラックローズのPCを引き継いだ2人の前に、
かの番匠屋淳が“《The World》最後の日”に遭遇したというサフラン色の髪の少女が現れた。
腕輪に惹かれた少女と共に仲間達の協力を得てCC社の妨害を退けたシューゴは、世界の秘密の一端を知る。
彼も漸く気づいたのだ。ハロルドの作ったこのゲームの、本当の遊び方に……。

「微妙に違うよヤスヒコ。
 Project Return to Avalon....これが僕達のRA計画。
 八咫の前任の天城って人がやろうとしてたのは Project Recall of Aura....ほら、同じRA計画でも全然違うだろ?」
「納得。でもヤスヒコ禁止」
「だがその天城とかいう男の計画……本当に失敗したのだろうか……」
「? 失敗したからCC社で火災事故が起きたんじゃないのか?」
「表向きはな。……俺はどうも嫌な予感がしてならん」

勘の鋭さでは3人のうちで最もバルムンクが秀でている。
伊達に一介のユーザーからCC社に入社して《The World》の管理者になってはいない、ということか。
内部事情に詳しいのも元社員の特権だろう。

「決勝が始まると完全に別行動になるからそのつもりで。
 僕はトーナメント、バルムンクとオルカはタルタルガで待機、八咫は知識の蛇で試合の監視。OK?」
138名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:07:49 ID:Zm1Ko8Uq

「タルタルガでもココ(知識の蛇)同様の操作が出来る、と聞いたが?」
「八咫、助手の人とこっちにギリギリまで残るんだってさ」
「ワイズマン……じゃなかった、八咫にも八咫なりの考えがあるんだろう、バル」
「……ふむ」

ネットスラムが巨大な1つのタウン、タルタルガとして機能していることに
最初は驚いていたバルムンクとオルカだが「まぁ、そういうこともあるか」とばかりに
既に順応、カイトから伝えられた通り、トーナメント終了と同時に侵攻してくるであろう深淵(アビス)の軍勢に
備えての待機となる。
ハッカーのヘルバが作り上げた楽園に対してまだ少しばかりの憤りが
バルムンクにはある様だが彼も大人だ、気にしたら負けの精神で今回のミッションに挑むつもりであるらしい。
CC社側が容認しているのならば、もう彼が口を挟むこともないだろう。

「にしても……でっかい亀が空を飛ぶのって……結構シュールだよね(笑) ガメラみたい」
「ほう。カイトは知らなかったのか」
「何が?」
「タルタルガってのは黄昏の碑文の一節に登場する
 “真の冥府に住まう太古の知識を持つ亀”のことだ。だから、アレの外観は亀でいいのさ」
「へぇ。僕てっきり、おぼっちゃまくんのオマージュかと……へけけっ」
「ぽっくんは歩く身代金!?」


と、こんな感じで数年ぶりの再会に3人が盛り上がっていた頃――――――――――――。


「ケペル博士、始めてくれ」
『了解じゃ。ではこれより鉄巨人シリーズの起動実験を開始するぞい。
 チム玉のエネルギー供給問題は何とか解決できたが、紋章砲の設置にえらい時間がかかってしまったのぅ……では、動かしますぞ!』

八咫らのRA計画に欠かせない存在、それが12体の鉄巨人シリーズである。
ドクター・ケペルの協力によってプレイヤー達から回収した「鉄巨人のパーツ」を元に
古代戦争において人族が開発した伝説の戦闘兵器の復活を試みたのだ。
いかに勇者とフィアナの末裔が加勢してくれると言っても限度がある。
八咫も彼なりの方法でこのミッションを成功に導けるように苦心した挙句の選択が、鉄巨人の復活だった。

「紋章砲の充填時間問題の解決は?」
『各機体の残存チム玉次第ですな。メカ・グランティとは比較にならん程の消費ですからの』
「戦況に関わる。起動実験終了次第、スムーズな充填方法の模索を頼む」
『出来ることは全てやったつも……むむっ!?』

八咫とドクター・ケペル……2人が起動実験を見守る中、突如として
チム玉エネルギー供給ケーブルから火花が走り、今にも起き上がろうとしていた12体は
その動きを止めて再びピクリとも動かなくなってしまう。
起動実験は失敗だったのか? NPCとは言え、ケペルにはそれ相応の機械工学の知識が新たに与えられているはずなのだが……。

「……ケペル博士。事情を説明してもらおうか」
『今少し時間と予算をいただければ……』
「……弁解は罪悪と知りたまえ」
『も、申し訳ない! すぐに再調整および再起動実験にとりかかりましょうぞ!』

どうやらまだ完全ではないらしい。
無理もない、フィールドに配置された固定ボスならまだしも
この鉄巨人達には紋章砲が内蔵されている……エネルギーを食い過ぎ、動くことすらままならないのでは?
という懸念は八咫にもあったこと。だが、今は時間がない。
もうすぐ日が暮れる。そうすれば逢魔ヶ刻……夜がやってきてしまう。夜は闇の住人の世界――――――――――異界への扉であるのだから。
139名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:11:05 ID:Zm1Ko8Uq

「聞いておきたいんだが……そもそも理想郷(アヴァロン)ってのはどういう場所なんだ。
 ガンダーラみたいなものなのか? 最後のロストグラウンドってコト以外、分かってないんだろ」
「ガンダーラは実在してる場所だけど……バルムンク、パス」
「……ケルト神話に登場する伝説の島、というのはお前達も知っているな。
 初期は美しいリンゴで名高い島だったようだがアルスター伝説のアーサー王物語の流布と共に
 12世紀頃、アーサー王の遺体が眠る場所とされるようになった」


哀しみの詩(うた)を口ずさむ時 人は誰でも旅人になる
視えない糸を辿り遥かな君のもとへ 信じあう心は誰にも負けないから


「古くから理想郷、楽園と呼ばれる場所は東西問わず存在している。
 沖縄のニライカナイ、中国の蓬莱や崑崙、チベット密教に伝わるシャンバラ(シャングリラ)、
 ギリシャのアルカディアやエリュシオン、南米の黄金郷(エルドラド)、
 ケルト神話なら他にもティルナノーグ、影の国…… 多種多様なものがな。
 ムーやアトランティス、レムリアと言った伝説上の大陸も、解釈の仕方によっては理想郷や楽園と呼べるかもしれん」
「まさにユートピア(何処にも無い場所)、か」


愛は死なない 夢は消えない 哀しみ越えて 目指せ黄金卿(エルドラド)


「ある意味、創造主……エマとハロルドへの挑戦かもな。
 ブラックボックス扱いってことは、誰にも見せたくないってことだろ」
「僕達の計画は“バベルの塔(※)”ってコト?」                  ※空想的で実現不可能な計画のこと
「俺もオルカに同意見だ。最初から敵との争奪が想定されている、ということは相当に危険な場所だと言っているのと同意……」
「……誘わない方がよかった?」


遠くに煌く星が君なら 僕は夜空を渡る風になる
切なく溢れてくる涙が知っている 傷ついた心を癒せるその場所を


「いや。怖い反面ワクワクしてるのも事実だからな」
「怖いもの見たさ、それだけだ。CC社に加担する気は毛頭ない。
 これは……俺達の同窓会、だろう?」
「……そうだね。うん、そうだった」


愛は死なない 夢は消えない 涙を拭いて 目指せ黄金郷(エルドラド) 
君を求めて 遠い黄金郷(エルドラド)


「しかしお前の口から“バベルの塔”なんて言葉が聞けるとはな……意外だ」
「そう?」
「思い入れでもあるのか」
「塔には全然無いよ。どっちかって言うと、塔の絵を描いた人かな」
「絵? バベルの塔と言えば16世紀に“ピーテル・ブリューゲル”が描いた絵画が有名だが……」 
「ブリューゲル……うーん。ちょっと惜しいかな」
「(どういうことだ?)」
「(さあ……)」
「(――――――――――――――フリューゲル)」


                                            【エルドラド  作詞・作曲:高見沢俊彦 vocal:THE ALFEE】
140名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:13:34 ID:Zm1Ko8Uq

『私も物語を―――――ネット小説もどきを書いたことあります。
 設定を考えたり書き始めは楽しいんですよね!
 でもうまくつづかなかったり矛盾を解決するのがめんどくさくなって
 結局飽きて放置しちゃう……でもオーヴァンさんは書き上げた。
 たとえ望まれない物語であっても……』

                                          【コンプティーク2007年9月号  『.hack//G.U.+』 第5話 雛形 より】




















「ハセヲ……きみを独り占めにできる快感が、こんなにも凄いものだなんて……自分でもビックリしてる。
 これから死ぬまで一緒だって思うだけで、全身に稲妻が落ちたような刺激が走るよ……。
 ハセヲ……。大好き……超好き、凄い好き! 死んでも好き! 殺したいくらい好き!!
 言葉には言い表せないくらい……好き……でも、楚良はもっと好き……!」


遠くで、カールがアルトネリコのオリカみたいなコト言ってやがる。
つーか原文まんまじゃねーか、パクリはヤメロ……もうそんなツッコミ入れる力すら俺には残っちゃいない。
スケィスはカールにデータドレインされて元の石像の姿に戻っちまった。
俺もXthフォームから1stフォームへ……あの時、大聖堂でトライエッジにデータドレインされた時と同じ……。
さっきからずっと身体を動かそうとしてんだが……どんどん意識が遠くなって……。


「ん〜? 楚良はまぁだ出て来ないのかな?」


抜け殻同然になったハセヲのPCを蹴り転がしカールが愉快そうに哂う。
侵食率100%のB-stフォームの力……舐めてたぜ……。
AIDAに身ィ委ねるってだけで……あんな化け物染みた力、出せんだな……すげ。
……俺がカールに対してとった行動は総てが悪手。
憑神と異邦神、2つの力を完全に使いこなすカールに対して俺は無力だった。
Xthフォームになってたし、スケィスも3rdフォームに進化してて
前回大聖堂で戦った時同様、優位に立てるとか思ったのが……そもそもの間違いだったかもな……。
まさかカールがAIDAに感染してたなんて思ってなかった。
想定外の出来事や突発的なアクシデントに弱いのが俺の悪いところ。……カイトの言ってた「常識を疑え」ってのは、このコトだったのか……?


「あぁ、そうか。憑神を仕留めただけじゃダメ……本体にブチ込まなきゃいけないんだ……
 そうすれば今度こそ再誕完了……楚良はきっと還ってきてくれる……」
141名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:17:04 ID:Zm1Ko8Uq

************




「八咫様、ハセヲの強制ログアウトを! 八咫様っ!!!」
「まだだ。……まだ“彼”が目覚めていない。女神も現れていない……試合は続行させる」
「っ……ふざけないで!」

知識の蛇。
ハセヲとカールの試合を見守る八咫とパイ。
ここで初めて両者の意見がすれ違った。八咫は試合続行を望み、パイは試合の終了を望む。
パイは八咫らのRA計画(アヴァロン帰還計画)を知らされていない、故に。
今までパイは八咫を信じ、彼の行動に間違いはないと思ってきた。
だが今日、パイは初めて八咫の言葉に異を唱える。
八咫としては想定内の、パイとしては想定外の反逆劇―――――――――――――――。

「このままでは彼女に殺されてしまう!
 スケィスも石像に戻った今、あんな状態でデータドレインされればあの子の心身は確実にボロボロになる!
 オーヴァンの起こした再誕の比じゃない! 貴方、それで本当に良いの!?」
「責任は全て私がとる」
「責任!? 命が、ハセヲの命が懸かってるのに!?
 八咫様、今の貴方は天城丈太郎と何ら変わらない……いいえ、むしろ天城そのものだわ!」
「……」

あの冷静なパイがここまで声を荒げて取り乱している。
どうやらハセヲに強く惹かれすぎたようだ。
地球の引力に魂を引かれるのと同じ、決して口には出さなかったが
彼女もまたハセヲを強く想っていたのだろう。仲間だとか、異性だとか関係なく、ただ純粋に――――――――――。。


「タルヴォス……!!!」
『■■■―――――――――!!!』


顕現する《第七相 復讐する者 タルヴォス》が臨戦態勢となってパイの傍に傅く。
憑神空間を展開していないのはパイの最後の譲歩。
2体以上の憑神が同一の憑神空間に存在すると暴走の危険性が高くなってしまう……
パイのタルヴォスも八咫のフィドヘルも暴走経験がある以上、避けて通れない配慮だった。

「何の真似だねパイ」
「八咫様……いいえ、火野拓海。
 調査員兼監視役として、貴方の行為を見逃すことは出来ない……
 もう一度言います、ハセヲを強制ログアウトさせなさい!」
「それは出来ない。今回のRA計画は上層部の許可に基づいたもの……
 ハセヲの中の“彼”が完全に目覚めること、それが計画開始の合図……理想郷(アヴァロン)への扉を開くための……」
「アヴァロン……!?」

パイは怒気を込めながらも瞬時に八咫の言い放った言葉を1つずつ汲み取って理解してゆく。
ハセヲの中の“彼”、RA計画、理想郷(アヴァロン)への扉……
もしや義兄、番匠屋淳の残したパソコンのHDD内にあったアレのことだろうか。
いや、RA計画は女神ことアウラを《The World》へと呼び戻し、再び恩恵と繁栄を与えてもらうためのものだったはず……
ならば八咫の言うRA計画とは何だ? 彼は、いや、彼らは何をしようとしている……!?

「必要なことなのだ。《The World》のため、女神のため、そしてハセヲ自身のためにも……」
「……傲慢だわ!」
142名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:21:59 ID:Zm1Ko8Uq

死ぬ瞬間って走馬灯が走るっつーけど……ありゃ嘘だな。
意識は途切れ途切れだってのに、一向に走る気配すらねぇでやんの。
カールの声以外は……なぁんにも聴こえねぇな。
アイツの憑神……紅いスケィスの展開した憑神空間に隔絶されたせいか。
いや、もう紅くねぇか。
カールがスケィスの全身覆ってた渋柿色の布、全部剥いじまったんだし……。
AIDAに侵食された憑神とは結構戦ってきたけど……アレは次元そのものが違う。
と言うよりも憑神であるのかどうかすら怪しい。
憑神空間展開して俺のスケィスをデータドレイン出来たってことは憑神なんだろうが……妙な矛盾に苛まれて困る。
生きるか死ぬかって時だってのに……。
そういや楚良の奴、カールがいくら呼びかけても出て来なかったな……何してやがんだよ……。
てめえのおかげで今にも死ぬぞ、俺。
ちくしょう……智香との約束、守れなかった……。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……。



『い、一体、何が起こっているのでしょう!?
 ハセヲ選手、カール選手の放った怪光線を浴びた途端に紅魔宮参加時の1stフォームに戻り、
 動かなくなってしまいました……! も、もしやリアルで何かあったのでしょうか?
 し、しかしカール選手の先程の技は紅魔宮トーナメントで元宮皇のエンデュランス選手が
 使用していた技に酷似していたような……更に、一瞬だけ視えたあの2体の巨大モンスター……
 あ、あれは竜賢宮PKトーナメントで榊氏が指摘していたハセヲ選手のチート疑惑と思われる
 映像に映っていたモンスターとソックリでした……カ、カール選手もあのモンスターを使用可能だった、ということなのかァ――――――――――ッ!?』
『……』
『大火様、今の状況をどう思われますか!? 大火様っ!?』
『……雨だ』
『はっ?』
『雨がよ、降って来やがったんだよ』



「シ、シラバスゥ〜! 雨が、雨が降ってきたよぉ〜!?」
「ルミナ・クロスに……アリーナに雨だと……?」
「クーンさん、一体これは……うわ、ホ、ホントに冷たい……!?」
「そ、それよりもハセヲさんを早くっ!
 こっ、こっ、このままじゃ、カールさんに殺されますっ、殺されちゃいますっ! 急いで助けないと!!!」
「ダメだ、一気に憑神が4体も同一空間に存在したらそれこそ何が起こるか分からない!
 第一、真っ向勝負であのスケィスに挑むのは危険すぎる……失敗したらアトリちゃんだって……アトリちゃん……?」
「聞こえる……歌が……誰かが歌ってる……?」
「(歌!? こ、こんな時に何言ってんだ、この子……!)」
「ね、ねぇ、何だかぁ、いつものアリーナのBGMと、違う気がするぞぉ……」  
「本当だ……BGMが勝手に変わってる……ど、どうして……!?」



「きみのスケィスはお人形に戻っちゃったのか……。
 もう誰も邪魔出来ない……今度は、あたしがきみをお人形にしてあげる。
 楚良が戻ってくるまでずっと待っててあげるよ。一万年と二千年経ってもね……ふふ」


つまんねー冗談言いながら、カールと……全身の拘束を解かれて本領を発揮したスケィスが迫る。
ゴポゴポとカールの身体やスケィスから噴出すAIDA。
いつもの喪服みてぇな黒いドレスじゃなく、AIDAに侵食されてB-stフォームの紅いドレスで着飾ったカールは……
こんな時にこーいうコト言うのも何だけどさ……すげー綺麗に見えたんだ……。

「ちゃお。ハセヲ」
143名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:25:33 ID:Zm1Ko8Uq

感覚が、ない。
例えば「色」の概念があるとする。空は晴れてりゃ青、青空だよな。
でも生まれつき眼が不自由で盲目だった場合、「空は青い」と言われても、
そもそも青ってのがどんな色か分からなけりゃどんなに説明されても分からないだろう?
概念が想像つかねぇんだから。光がねぇってコトは、最初から真っ暗なワケだ。
故に、唯一理解できる色は「黒」しかねぇ。……そんなの、哀しいと思わねぇか?
今の俺がそれだ。どうやらマジでカールのデータドレインを喰らっちまったらしい。
だってそうだろ? お迎えが来やがった。誰かが歌ってる。
遠い場所から、微かに耳に届く創造詩(メタファリカ)。聴覚はまだ生きてるっぽいな……。
走馬灯は走らなかったけど、天のお迎えってのはマジだったんだな……
でも冷静にンなコト考えてる俺って何なんだろ……智香との約束、守れなきゃ意味ねーってのに……。

…………。
………。
……。
…。

妙だ。今……誰かが、怒鳴ってる声が聞こえた。
とおーい、とおーい所で、誰かが。目の前で玩具を壊されてしまった子供のような叫び声が……聞こえる。


『何だよ、これはぁっ!?
 アンタまで……アンタまで、あたしの邪魔をするの!?
 あとちょっと、あとちょっとって時にどうして……どうして今更、出てくるのぉ……!!!』


あぁ、あの声……カールじゃんか。ったく、黙ってりゃ美人なのに勿体無ぇ。
いっつも本気か冗談かも分かんねぇコトばっか言って本心隠しやがって。
アイツがおかしくなったのってこのトーナメントが始まってからだよな……それまでは俺と、智香と……3人で馬鹿やってたのに。
他の連中だって、お前のこと嫌ってなかった……ずっとあのままで居られるって思ってたんだけど……そーもいかなかったな……。
俺にとって、きっとあれが……思い描いていた穏やかな世界……
ギルド作って、イベント参加したり、パーティ組んで遊びに行ったり、バカ騒ぎしたり……
俺の《The World》は……俺の旅は……ここで、終わりか……こんな終わり方……サイテーだな……。


「《The World》ではすべてのひとは祝福されているの。あなたも……おばあちゃんも」


誰、だ……? 眼はもう視えねぇってのに、声だけはハッキリと聞こえた。
さっきから聴こえてたあの歌は……お前が歌ってたのか……?

「そうだよ。ママから教えてもらったの」

っ……失ったはずの視力が……戻った? ぼんやりだが……俺の前に誰かが立っているのが視える……。
“色の概念”が徐々に戻ってくる……サフラン色の髪の……白いドレスを着た……素足の女の子……?

「お前……誰、だ……?」

少女は満面の笑みを浮かべながら、ドレスの端っこを掴んで恭しくお辞儀をし―――――――――――――――



「わたしは、『ゼフィ』。はじめまして……おじいちゃん?」



―――――――――――――――――――――――――――……サラリと、とんでもねーことを言いやがったワケだが。
144名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:28:52 ID:Zm1Ko8Uq
>>128 毎回時間軸が過去だったり未来だったりするので過去ログも合わせてモザイクカケラ、一つ一つ繋ぎ合わせて描いてゆく?
次あたりに小休止のエロ入れたい、だってここはエロパロだもの? 何のことです?
おやすみおまいら
145名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:30:01 ID:v7sTpqq4
GJ
それにしても超大作だなぁ
146名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:31:02 ID:U+YIoeOM
リアルタイム乙&GJ!

アルトネリコか……2はダメらしいけどねぇ

ともかく次回を裸で待ちます
147名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:42:56 ID:qq2KpM2R
リアルタイムGJ
モンタナジョーンズにアクエリオン噴いたwww
偶然とはいえ早起きした甲斐があった
148名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:49:46 ID:7ktp64Cw
あれ?ゼフィは成長無し?
G.U.じゃ、アウラは随分成長してたが・・・(成長か、デザイナーが違う事から来る雰囲気の変化かどうかは知らんが・・・
149名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 06:50:53 ID:7ktp64Cw
つーか、カール、ゼフィのこと知ってんの?
150名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 11:20:23 ID:WO4jGD4e
カイト指差して
「あ,お父さん」
でなつめエッジktkrな展開を期待したい
151名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 12:29:08 ID:Unk2JUdd
ついにはH2Oネタまで
152名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 03:37:32 ID:DnBDyXof
http://www.cc2.co.jp/hack_link/hack_message.html

職人!これからもTRILOGYネタ入れてくんだよな!楽しみにしてるぜ!
153名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 14:50:57 ID:aA/tiNVb
ちょっwゼフィーって腕伝かよ!?
あ〜ビックリした。
154名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 20:33:54 ID:pDz6lvSG
>「……ケペル博士。事情を説明してもらおうか」
>『今少し時間と予算をいただければ……』
>「……弁解は罪悪と知りたまえ」


ゼロ卿www


>>152
待てそれはTRILOGYじゃない
ケロケロエースの漫画だ>トキオ
フリューゲルも名前だけ出てるけどカイトとの関係は12月まで保留だろうな
155名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 20:54:41 ID:PkPVIKv6
フリューゲル=翼=バルムンク
156名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 08:55:28 ID:UX0YNYdJ
ほし
157名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:44:35 ID:EVSeueAK
おまいら乙
トーナメント3日目・キオクノカケラ:アトリ補完ルート前編投下
158名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:47:26 ID:EVSeueAK

己の活動能力とレベルに限界を感じ
悩みに悩み抜いた結果、アトリがたどり着いた結果(さき)は――――――――「感謝」であった。
自分自身を育ててくれた“月の樹”への限りなく大きな恩
彼女なりに少しでも返そうと思い立ったのが


一日一万枚 「感謝」のPK撲滅チラシ配り!!


チラシを整え、拝み、祈り、構えて、差し出す。
一連の動作をこなすのに当初は5〜6秒。
一万枚を配り終えるまでに初日は18時間以上を費やした。
配り終われば倒れる様に寝オチ。起きてまた配るを繰り返す日々。
数ヶ月が過ぎた頃、異変に気付く。


一万枚を配り終えても日が暮れていない
(マク・アヌで配っているのだから当たり前だが)。


齢16を越えて、完全に羽化する。
そして「感謝」のチラシ配り一万枚、1時間を切る!!
かわりにログインする時間が増えた。
2年以上昔のことである。






「―――――と言うことが亮クンと出会うちょっと前にありまして」
「……付き合い始めて1年近く経つけど、お前ホント宗教気質だよな」

よぉ、俺だ。
久しぶりに千草が千葉から来たんで会ってみりゃ……のっけからコレだ。
何つーか……俺としても千草と会う時は極力《The World》のハセヲとアトリじゃなくて
三崎亮と日下千草として話がしてぇってのに……毎回こーいう話題になっちまうんだよなぁ。

「お前さ。もう駅前で通行人に声かけて祈ったり……してねぇよな……?」
「ももっ、勿論ですよ! ソレは卒業しましたっ」
「(ソレってコトはまだ他にやってるコトあるんかい……)」

嘘かホントか知る由もねぇが、コイツは俺と出会う前から
駅前なんかにくり出しては見ず知らずの通行人に声かけては3分程
そいつの幸せを祈ったりするっつー“趣味”があったらしい。
……俺と付き合う条件の1つとして、無理矢理止めさせたけどな。
電波はネットの中だけで十分だろ……常識的に考えて……。

「あ、そう言えば亮クンはあの噂、もう聞きましたか?」
「《The World》がもうすぐサービス停止して、新バージョンの《R:X》に移行するってヤツだろ。聞いたよ」
159名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:50:05 ID:EVSeueAK

「いきなりですよね。まぁ、キャラとかセーブデータはそのまま引き継げるらしいんですが……」
「またユーザーの数、減るんじゃねぇの?
 《R:1》から《R:2》に移行した時は2000万人から1200万人にまで減ったんだろ」
「それは《R:1》のデータを《R:2》に引き継げなかったせいかと。
 他にもPKやPKKの横行が著しくユーザーの数を減少させた最も大きな原因だと思いますケド……」
「何故そこで俺を見る」

俺がPKKやってたのは志乃を未帰還者から救う手がかりを探すためにだな……。
まあ、そのついでに暴れてたのも否定しねぇけど。
学校の成績も一気にガタ落ちしちまったし。

「あーぁー。どうしよっかなぁ」
「何が」
「だって……会えなくなっちゃうじゃないですか」
「? 今、会ってるだろ」
「いえ、リアルでじゃなくて、ゲームで、です!」
「あぁ……そゆことな」

確かに……千草の言ってることも一理ある。
俺達はまだ会えるからいい(付き合ってんだし)。
でもシラバスやガスパー達とは……サービスが停止しちまったら、しばらく会えなくなるだろうな。
別のネトゲに登録して一緒に遊ぶっつー手もあるにはあるが、正直無理があるだろう。
俺も今年高3で大学受験控えてるし……。

「やっぱり、他の人達も止めちゃうんでしょうか……?」
「さーな。クーン辺りは別のゲームに登録し直してでもナンパしてそーな気もするが……」
「……亮クンは、どうします?」
「どうかな……まだサービス停止が確定してねぇ段階だから、何とも言えねぇだろうよ。
 仮にマジでサービス停止しても、いつ新バージョンが解禁になるか分かんねーんだし」
「でも、心構えは必要だと思うんです。
 私は……“アトリでいられる”のがあと何ヶ月残ってるのか分からないのが……怖い」
「……そんなもんか」

そりゃ俺にだってハセヲには思い入れがある。
何っつっても2年近く俺のもう1つの姿として《The World》で活動してたワケだしな。
つか、俺だけじゃない。
《The World》に登録してる奴らほぼ全員がアトリと同じ気持ちなのかもしれない。
……いつかは、卒業しなきゃなんねぇ日が来るって分かっちゃいたが。
まぁ、キャラ引き継げるんだったらそう悲観的になることもなくね?

「サービス復帰したら、また始めりゃいいじゃん」
「それも一応は考えたんですけど……やっぱり、納得いかないです」
「しばらくアイツらとも会えなくなる、か。引退しちまう奴とか多そうだもんな」

匂坂みてーに他のネトゲに移ってもキャラ残してるような希少な奴も居るには居るが、そりゃ稀な例か。
どうしたもんかな。

「……だから、私決めたんです」
「何を」
「私、東京の大学に進学します! で、で、亮クンのおうちのそばにアパート借りて住みますから!」
「……」

えぇぇえぇぇぇえぇえー。
マジか? つーかもう《The World》関係ねぇだろ絶対!

「そのためにもいっぱい勉強しなきゃいけませんね……はい!」
160名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:53:18 ID:EVSeueAK

「いや、でもお前、何も俺の家のそばに住まなくても……」
「大学に行ったら、志乃さんのおうちのそばに住もうとしたの……誰でしたっけ」
「俺です。スンマセン」

くッ……俺もヒトのコト言えなかったんだったッ。

「よくそんなコト言えますよね……。
 『大学に行ったら、志乃の家のそばに住むよ』なんて……。
 メールでそんなコト言われたら普通はドン引きですよ……?」
「そ、その頃はまだ志乃に未練があったってゆーか……」
「亮クンは揺光さんやカールさんとも仲良かったですよね……。
 お2人とはまだ連絡を取り合ってるんですか?
 そうですよね……いつもパーティ組んでますもんね……」

ヤベェ、千草の欝モードスイッチが……!
コイツ、俺と付き合ってもう1年経つってのに未だに人間不信っつーか
俺に近づく女を警戒しやがるんだ。
それこそ「亮クンの身体から、あの女の匂いがプンプンしますよ!」とか言い出しそうな勢いで。

「あ、あいつらとは! ……ただのトモダチだっての」
「……私は?」
「……カノジョ」
「聞こえません」
「かっ……カノ、ジョ、だよ」
「もっとハッキリ」
「彼女だよ!」
「……よろしいです」

……なんか最近、立場が逆転してね?
最初に会った頃はどう考えても俺の方が立場上っつーか、そういう視線で千草見てたはずなのに
いつの間にか俺の方が立場弱くなってね? アレ……?

「亮クンの口からやっと聞けました……全然言ってくれないから、不安になっちゃうじゃないですか」
「口で言わなくても態度で示してるだろ……」
「足りません」
「欲張りめ」
「男の人って『好きだよ』って言われなくても生きていけるかもしれませんけど
 女の子は誰かに『好きだよ』って言ってもらえないと、死んじゃうんです。知りませんでしたか?」
「……じゃー千草が死なないように定期的に言わねぇといけねーワケか」
「はい。そうなりますね」
「……」

……リスカの痕、結構キレイになってはきちゃいるんだが、な。
まだ手首に包帯巻いてんのか、千草の奴……。
そう簡単に全部が全部、めでたしめでたしで片付くワケでもねーもんな。
コイツが俺と会う前にいじめられたり自殺サイト覗いてカキコしてたりしてた過去までは消せねぇ。
……俺はどうだ?
俺はこの1年……何をしていたんだろうか。
あれ……俺……どういう経緯でアトリと……千草と付き合うことになったんだっけか……あれ……?

「亮クン? どうかしました?」
「いや……何か、今が現実じゃねーみたいな気分で……」
「? ゲームのやり過ぎで疲れてるんじゃないですか?」
「そうだ……トーナメント……! あの時のトーナメントの結果、覚えてるか?」

あの3日間! 勇者が現れたり楚良が目覚めたりした、あのトーナメント……!
161名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:56:18 ID:EVSeueAK

「トーナメント……って、何ですか?」
「……はぁっ?」

コイツ……まさか覚えてねーとか言わねぇだろうな!?

「だ、だからトーナメントだよ。
 去年の夏、3日間だけ開催されたトーナメントがあったじゃねぇか。
 俺の試合に勇者が乱入したりしただろ……? 決勝は俺のチームと揺光とカールと天狼のチームが戦って……」
「あの……ごめんなさい。亮クンの言ってること……よく分かんないです」

……千草?

「あの、でもそんなに大きなトーナメントなら
 《The World》にアクセスして検索すればすぐ分かると思いますけど……」
「あ、ああ……そうだな」

そうだよ、千草がいくら知らないって言い張っても
ちゃんとトーナメント開催の記録が残ってるはず……。
すぐに携帯デバイスからCC社の《The World》公式ページにアクセス、
あの3日間のトーナメントのことを検索してみた。して、みたけど……。

「……残って、ねぇ。
 そんな……去年開催されたはずなのに……検索しても……出て来ない……!?」
「あの、ですね亮クン。勇者ってもしかして勇者カイトのことですか?」
「……そのカイトだ」
「そんな有名な人が出場したトーナメントだったら、いくら私でもちゃんと覚えてます。
 それに他の人達だって覚えてるはずだし、記録にだって残るはずですよね。
 ……でも、残ってない」
「……あぁ」
「じゃあ、そんなトーナメントは、きっと無かったんです」

無かった?
勇者カイトも、紅いスケィスを従えたカールも、俺の身体で好き勝手やってた楚良も……
最初から……居なかっただと?

「千草……碑文使いを全員言えるか」
「えっ? な、何で?」
「いいから、言ってみろよ」
「えと……まず私、亮クン、パイさん、八咫さん、クーンさん、エンデュランスさん、
 朔ちゃんと望くん、オーヴァンさん……全部で八人です、けど」

おい、ちょっと待て。カールはどうしたよ。
九人目の碑文使いのカールがどうして居ない……!?

「カールは……碑文使いじゃ……ないのか……?」
「? カールさんが? 
 碑文使いは八相のモルガナ因子を宿したPCですし……八人しか居ないんじゃ……」
「でもアイツ、紅いスケィスを……!」
「スケィスは亮クンの憑神じゃないですか。
 ホ、ホントに大丈夫ですか? 何だか、いつもの亮クンじゃないですよ……?」
「(……どうなってやがる!?)」

俺と千草の記憶に、明らかな食い違いがある……!
いや、違う。
俺の記憶だけがおかしいんだろうか?
千草にとってはそんなトーナメント、有りもしなくて……でも俺にとっては、ついこの間の出来事のような……。
162名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 03:58:50 ID:EVSeueAK

ザッ ザザーッ


「……亮クン?」
「(今、ノイズが……)」

……あれ。俺、何してたんだっけか。

「亮クン、あの、もしもし? いいですか?」
「あ、あぁ……何が?」
「今日もいつも通り、亮クンのおうちに泊まりに行ってもいいんですよね?」

あぁ、そっか。
千草と話してたんだっけか。
つかもう、千草が東京来る度におれんちに泊まるのがデフォになっちまったな。
さすがにもう親にもバレてるか……?

「そのことか。いーぜ、どうせ親も帰って来ねーし」
「じゃ、またいつもの百貨店で夕飯の材料買いますね」
「また牛丼かビーフシチューの二択じゃねぇだろうな……」
「今日は肉じゃがの予定ですよ」
「(また牛肉と玉ねぎ使った料理かい……偏食治ってねぇんだな)」

相変わらずだな。
ピーマンとかグリーンピース使った料理は絶対にやりたがらねぇんだぜ、コイツ。
そのうち強制的に俺が食えるようにしてやんねーとダメかな、やっぱ。

「あとな」
「はい?」
「去年の冬、俺に言ったよな。
『人が人を好きになるのは、とても自然なことだから。
 ですから、いちいちそんなコトに怒ってたらキリがないんです』
 ってよ。さっきそれで怒ってたのは誰だ? あん?」
「よ、よく覚えてましたね……」
「自分で言ったコトにゃ責任持てっつーこった」
「……彼女がいるのに他の女の人と節操なく遊んじゃう
 亮クンにも責任はあるんですよ? それに志乃さんへのメールは私とお付き合いする前のことでしょ?」
「(げっ、薮蛇だったか……)」

下手こいた……でもそんなの関係ねぇ。
まぁ……わざわざ千葉からこっち来てくれるコトにゃ……感謝はしてるつもりだぞ。
それにさっきだってちゃんと「彼女だ」って言ってやったじゃねーか。
女って、難しいな。

「あ、去年の冬で思い出しました」
「何を」
「……亮クン、私が台所でシチューを作ってる時……うっ、うっ、後ろから……む、胸を……っ!」
「……あー。あったな、そんなコトも」
「そんなコト!? “えっちなのはいけないと思います”っていつも言ってるじゃないですか!」

今、まほろまてぃっくのまほろさんの声が聞こえたような……げ、幻聴か!? ってか、この幻聴も久々に聞いたな。
……にしても、だ。さっきのは何だったんだ?
何で俺、ありもしねぇトーナメントのコトとか口走ってたのか……。
夢でも見て記憶がごっちゃになってる、とかか? まさかな。俺に限ってそりゃねーよ。
163名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 04:01:25 ID:EVSeueAK

*********************




――――千草。
『……汚いんです』
――――構わねぇ。
『……見るたびに厭になるの』
――――それでも。

床に落ちた千草の血がポタリと音を立てる。俺は腕を掴んだまま直視を続けた。
こんな血に染まった包帯なんか巻く必要はない。早く包丁で切った傷を治療してやりたい。
薬がなければ買いに行けばいいし、包帯が欲しけりゃそれも買ってやる。だから――――――――――――。

――――こんなコトくらいで、お前が泣く必要はねぇんだ。




「今思うと……カッコつけ過ぎですよね」
「仕方ねーだろ……緊急時だったんだし……。
 それに、あーでも言わねーとお前包帯の交換だってさせなかっただろうが」
「むっ……そうかもしれませんけど……」
「それに―――――――――――」
「きゃっ……!?」
「これくらい強引な方が千草だって……好きって言ってた」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!」

晩飯も食い終わって、だいぶ夜も深けた。
付き合いだして最初の頃の思い出話やら《The World》での苦労話、俺達は色んな話をする。
でもその中に例の“3日間のトーナメント”の話題はない。
俺も千草も、もうそんなコトはどうでもよくなっていたから。

「主体性がねーから、強く言われるとクラーッとクるんじゃなかったのか?」
「そ、それは……そうです、けど……」
「今日だってお前の方からこっちに来たい、って言ってきたよな?」
「……はい」
「最初からおれんちに泊まるつもりだったんだよな?」
「……も、もう! ……いぢわる」

別に意地悪してるつもりはこれっぽちもない。
だってこれって千草が望んだ結果だろ。
お前がおれんちに泊まりたい、って言うから泊めてやって風呂にも入れてやって、
言ってもないのに俺の部屋に上がりこんで来たの、お前だし?

「左手のリスカ痕、見たい」
「あの、でもまだ傷、残って……」
「今見たい。俺、そういう顔してるだろ?」

クッと腕に力を込めて千草の左手首をベッドに叩きつけてやる。
スプリングの反動で痛みはねぇはずだけど、千草は目尻の端っこに涙浮かべて小さくイヤイヤしてる。
いつものコトだから軽くスルーだけどな。
さて……包帯解いて、消毒開始。ただし、俺流のやり方でだが。
もう昼間のノイズ音は聞こえない。こっからは……俺と千草だけの時間だから。
164名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 04:03:44 ID:EVSeueAK

「細くて華奢なのは相変わらずか」
「ひうっ……!?」

左手首の包帯だけじゃなく、ついでに上半身も剥いてやった。
あれだけ“えっちなのは何たら”言ってた割に順応早ぇし……
俺、ちょっと仕込みすぎただろうか。千草、毎回受けだもんな。
マンネリ化して飽きられ始めたとか、そんなコトはねーよな? な?

「なぁ」
「はっ、はい……?」
「その……お前、毎回こんなんでいいのか」
「……?」
「部屋に来るのはいつもお前の方からだけど……
 押し倒してこういう流れにすんのは……いつも俺だし……」

だから何だって話なんだけどな。
これが俺らの日常になっちまってるせいで今の今まで気にしなかったんだが……
いや、“日常の中にキラキラがある”ってみなみけ三姉妹も歌ってるし
それはそれでいいんじゃないかと思ってたんだが……やっぱダメか。

「……私、亮クンにこうされるの……好きですから」
「そ、そうか?」

さっきまで嫌がられてなかったっけ、俺……。
千草はいじめられてた経験もあるし、あんま強引すぎるのもアレだと思っちゃいたが
実は結構マゾっ気あったりすんのか……?
だって無理に押し倒したり抱こうとすると風王結界張られそうになるし……。
1年付き合ってるけど今頃になって彼女の性癖に気づくって、彼氏としてどうよ俺。

「じゃあ……再開すっから」
「は、はい……」

舌先でそっと千草のリスカ痕に触れる。
もう傷薬の類は塗ってねぇみたいだけど包帯特有の匂いが手首に残ってた。
電灯に照らされて薄らと浮かんで見える傷痕を目視しつつ、ゆっくり舐めて……。
っと、せっかく上半身裸にしたのに手首ばっか攻めちゃ勿体無ぇか。

「少しはおっきくなったか?」
「……えっちの度に毎回それ言ってますね、亮クン」
「別におっきいのが好きってワケじゃねーけどな」
「その割にいつも触って……っ……触り方までえっちです……!」

一番敏感な先端の突起を軽く抓っただけで千草はこの有様。
痙攣みてぇに身体震わせて、俺の背中に右手の爪を食い込ませてくる。
……痛ェ。
でも俺もこれだけで引き下がるつもりはない。
先端だけの刺激の範囲をもっと大きく……ちょうど俺の掌に収まる千草の胸を
さっきの背中に食い込まされた爪のお返しとばかりに、くにゃっと鷲掴みにしてやった。
当然千草は暴れる。
でもいつものことだと割り切って、そのまま押さえつけながら胸への愛撫は続く。
俺だってこの1年、何も考えずに千草と付き合ってたワケじゃねぇ。
どうすれば千草が悦んで、どうしたら厭がるか……の最低限のラインは知ってるつもりだ。
語り始めるのは最もたやすく、語り終えるのは最も難しい……人間関係だってそうだろ?
俺は、お前がバアサンになっても一緒に居るって決めたんだ……お前のコト、大切にしてやりてぇって。

ザッ ザザーッ                                                      【TO BE CONTINED....】
165名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 04:06:00 ID:EVSeueAK
>>38 残念、アトリでした? 
9ヶ月ぶりにアトリとの絡み書いた気がする、2人のやりとりが意味不明な人は過去ログ参照? 何のことです?
おやすみおまいら
166名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 09:07:49 ID:4i7BJgrC
GJGJGJ!感謝のチラシ配り一万枚ワラタww
167名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 13:48:33 ID:tFvKfPkA
俺、職人の投下した話全部読めてねえんだよなー。
千草編は最近機能してないまとめサイトで読んだが・・・
一変、職人が投下した作品のリストとか、
この話はこう、分岐しててコレがコレにつながって〜的なことが分かる相関図?シナリオチャート?
何て言えばいいのか分からんが、そういうルート分岐とかが全部分かる表、うpしてくれねえかなあ・・・
168名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 13:51:28 ID:tFvKfPkA
そういや、職人は何時から(何スレ目から)投下し始めたの?
169名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 15:57:59 ID:6Oh00okg
職人GJ!なんかノエインみたいだなぁとふと思った
漏れが職人の読み始めたのは11スレ目(?)のハセアト話の中編からだった気がする。
ところで過去ログは
ttp://www.geocities.jp/mirrorhenkan/
使えばサルベージできるかもしれないよ
170名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 00:33:01 ID:ryozIF/8
いきなりアトリとの話になっててびっくりだがいよいよまとめに入り始めたの?
今回の話はてっきり去年投下された揺光との話の続きだと思ったんだが…
俺らが揺光ルートの続きだと思ってただけで微妙に時間軸の違う別ルートなのか?

>>168
専ブラの過去ログで検索したら9スレ目で最初の「おまいら乙」発見
もう投下開始から1年1ヶ月以上経過してて根気と言うか1年も続けられるガッツにフイタ
9スレ目の>>634が「ハセヲはまだしもパイも薔薇乙女知ってんのかよw」とつっこみ入れてたが
パイの声優の小林沙苗がアニメ化される前のドラマCD版ローゼンメイデンの主人公役で
出演してたことをwikiで知り最初の投下から既に中の人繋がりのネタが展開されてたことにまたフイタ
パイとの話は2つともノーマルエンド扱いだし、ひょっとして補完くる?くれば万歳
171名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 01:13:35 ID:dzTMTMfI
よく分からんな。今回の話とさっきのアトリの話は別ルートの事の筈なのに……別ルートのハセヲの記憶が混濁してる?まさか時空間の壁すら越える?それとも本ルート以外は泡沫の夢に過ぎんのか?あー訳が分かんなくなってきた。先が気になりますよ!
172名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 20:11:29 ID:YzkKWZXZ
>>171
ほら、あれだあれ
時の改変で何か色々変わっちゃった世界なんだよ
きっとハセヲは特異点なんだよ


・・・はい
今週真っ赤になったゼロノスと真っ赤な衣装のカールが脳内で被ったんです
本当にそれだけなんです
173名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 01:52:47 ID:WZXECepF
は! オーヴァン×アイナを受信したぞ!
174名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 01:55:21 ID:/J4LL3PH
兄弟なうえ、アイナの実年齢を考えると凄まじく犯罪です
王道っぽいオーヴァン×志乃が一個もないってのも驚きです
175名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 10:26:07 ID:ni/A9+qb
オーヴァンと志乃の関係はイメージがつかみづらい
176名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 10:42:59 ID:VngZs7DK
電王信者って本当にどこにでも湧くなあ
皆が皆見てるわけじゃないのに
177名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 11:50:29 ID:Pys7O2yT
>>176
しょうがないよ、今年は声優が豪華すぎるから
腐とか厨房が多いんだよ。>>172もその一つだって。
178名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 15:29:30 ID:vFAAgsQh
>>165
最初テラH×H吹いたwwwwww
続きが気になる終わり方wktkGJ
179名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 17:47:17 ID:/xd1jlor
>>174-175
>>9で前スレの>>380が「オーヴァン×志乃を鋭意製作中」と宣言して既に4ヵ月が過ぎたが…
もしかして俺たち釣られた?
180名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 18:11:09 ID:w/SkyY6M
>>179
愛葬を尽かしちゃったのかもね…
このスレに
181名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:29:03 ID:VngZs7DK
エロ無しでいいんだったら何か書くお
182名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:35:47 ID:SePX3XSG
本当に、あそこに>>380がいたのか、それとも幻だったのか…
何だったんだろう…
183名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 00:54:48 ID:ZACDW0ac
アイナじゃないけど、ミチルの声を聞いているとミストラルと被るのは俺だけか…
184名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 17:34:07 ID:4L3UV07v
>>181
裸で待ってる
185名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:35:44 ID:sc81sMzl
おまいら乙
トーナメント3日目・ゲート・オブ・バビロン編投下
186名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:38:32 ID:sc81sMzl

「最低な母親ってどんな奴のコトだと思う?」

寝っ転がってスナック菓子をバリバリ齧りつつ、油分と菓子カスのついた
指を舐めながら、女が俺に問う。
いつものことながらコイツの言ってくることは唐突だ。
それも模範的な答えとか当たり触りの無い答えを極端に嫌ってる。
女の名前は仁村潤香。1つ年上の……何つーか、俺の彼女(のはず)。

「いきなり何だよ」
「さっきさ、亮が来る前にニュース見てたの。
 何日か前に起きた、男と再婚した母親が子供が邪魔になって殺しちゃった……って事件の話してたのね」
「……」
「……何で殺したのかな、って」

相変わらず答えに困ることを言ってくれるもんだ。
何てゆーか……潤香は他の同年代の女と比べても、頭のキレ具合が普通じゃない。
普通じゃないから普通じゃない回答を俺に望む。
人一倍「死」に興味を持つ潤香が東京の医大に進むことを決めた理由も
単に母親が整形外科医だった……ってだけじゃない。
でなきゃわざわざ東京の大学に北海道から進学して来ねぇだろ……多分だけど。

「……子供より男を取ったんだろ」
「世間一般はそう見るかもだけど……あたしは、きみにそんなフツーの答えは求めちゃいないよ」
「なら潤香の考えを聞かせろよ。俺が納得するようなヤツな」

質問に質問で返すとテストで0点になるってことくらいは俺も知ってる。
けど、このテの質問は俺よりも潤香の方が分かってるだろ?
その子供殺したっつー母親と同じ、女なんだし。

「……少なくとも、生んだ時は『愛して』たんだと思う。
 だって産む気がないなら妊娠が分かった時点で中絶すりゃいいんだし。
 中絶の仕方、知ってる? 子宮の入り口広げて麻酔かけて、器具で中の赤ん坊を引っ張り出すの。
 腕とか足とか千切れちゃうけどね」
「……晩飯の前に聞くんじゃなかった」
「生んだ、ってことは同時に『親』になるってことでもあるでしょ。
 それ相応の社会的責任を負わなくちゃいけなくなるワケだ。
 その子供殺しちゃった母親はさ、『母親を辞めたかった』んだと思う。
 母親であるよりも1人の女で居たかったんだよ」
「……だから殺した?」
「かもね」

違う見方をすりゃ、潤香の回答は
その子殺しの母親を擁護しているようにも捉えることが俺には出来た。
でも、きっとそれはない。
何故ならそういう類の女は、潤香が嫌う人種の1つだからだ。
潤香がこのテの質問を俺にしてきたのは初めてじゃない。
学校だか自宅で子供産んでそのまますぐに殺した母親、
旦那とグルになって子供を死ぬ寸前まで虐待した母親、育児放ってネトゲにハマってるどうしようもねぇ母親……
潤香は色んな母親の話を俺にした。
その時の潤香の眼、できることなら見せてやりたい。
いつもは俺にだけ見せてくれる笑顔、他の奴には仏頂面か愛想笑い。
笑うと華が咲いた様に可愛い潤香。
その潤香が、そういう話をするときだけ……いつもと全く違う眼になる。
そんな子殺しを平気で出来る連中と自分が同じ“女”であることを、絶対に認めてやるもんかという――――――――阿修羅の眼。
《The World》でカールとして過ごした月日は潤香に独自の“本当の母親らしさとは何か?”というテーゼを
心の枷の如く生み出すに至っていたことを……俺は、最近になって……やっと気づいた。
187名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:40:39 ID:sc81sMzl

「納得できた?」
「そこそこな」
「ん。よかった」

納得できたのはいいが……晩飯の前にする話でもねぇだろ、とも思う。
今日は肉嫌いの潤香にたまには肉でも食わそうか、とスーパーで色々買ってきたんだが……
そういう話は違う時にしてほしいもんだ。
いつものことだから慣れたけどな。

「世の中にはさ。
 子供欲しいって思ってるのに色んな理由で産めない人だって、たくさんいるのにね」
「そりゃな」
「あたしもその1人、だし?」
「……」

ゴロンとベッドに寝転んでいた潤香は僅かに身体を起こし、
同じくベッドに寄りかかって話を聞いていた俺を背中から抱きしめてくる。
ふわりと髪から甘い匂いがして、耳元で潤香の息遣いが聞こえる……他の男じゃ絶対にここまで潤香には近づけないだろう。
嫌でも目立つこの長ったらしい髪と出るとこ出てる部分が
少しでも俺の身体に触れるだけで……普段は平静を保ってる心臓が自然とリズムを乱し始めるから不思議だ。
潤香の髪の甘い匂いと香水の匂い―――――――嫌いじゃない。むしろ、すげー好き。
大学で使ってる薬品とかで臭くならないよう、そこら辺は気を使ってるそうだ。
……なんて俺が考えてるうちに潤香は小さなため息を一つ吐く。

「亮はいつも中に出してくれてるのに……なかなか止まってくれないんだよね」
「何が」
「生理」
「……」

平然とこーいうコト言える、ってのもアレだよな。
いや、でも最近は彼女の月経周期を把握してる彼氏も多いって話だし……
俺も理解しておくべきなんだろうか? 生理が近いと不機嫌になる女も結構いるらしいしな。

「……止まったら困るだろ」
「あたしは困んない。男には分かんないだろうけどね、生理の辛さ」
「俺が困るんだよ。俺まだ18だぞ? どう考えても早ぇだろ」
「そう? あたしは欲しいな」

キリリとした大人びた顔やスタイルとは裏腹に潤香は無邪気だった。
強引に子作りを迫って来ないだけ、どこぞの地上最強のヨメよりはマシだとは思っちゃいるが……
まぁ、街中で妙にベタベタしてこねぇし、こういう時だけだもんな……潤香が甘えてくるのは。
特に頭を撫でてやると喜ぶっぽい。
俺を通して、母親の腹の中にいる間に離婚しちまった親父さんを見てるんだろうか……?
一度聞こうと思った時もあるけど、潤香自身が父親に関してあまり触れてほしくなかった様にも見えたんで止めた。
誰にだって聞かれたくねぇこと、知られたくねぇことくらいあるからな……俺にだって、それくらいはある。

「ね。舐めて」

そう言いながら、潤香が背中越しに指先を差し出してくる。
舐めろ、って……指をか? って、指しかねぇよなこの場合……。

「……晩飯の前にスナック菓子は止めろって、いつも言ってんだろ」
「亮が舐めてくれるって分かってるから」

さっきまで潤香の口にスナック菓子を運んでいた、潤香の指。
スナックのカスと油分で汚れた指先は、さっき一度潤香が舐めていたはずだが……
これも一応は間接キスってことになんのか? とか考えながら、潤香の手をとって指先を俺の口の中に入れてやる。
すると俺にもたれかけてた潤香の身体がピクッと僅かに強張った。耳元の吐息は少し、荒い。
188名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:42:42 ID:sc81sMzl

「お前の指、綺麗だよな」
「そう?」

舌先で潤香の人差し指を舐るのを一旦止め、フリーの左手の指を見てそう思う。
指の長さとか爪の形や艶……それに驚く程に白い肌の色。
あまり野外活動は好まない潤香だけに、北海道での7年がここまで成長させたんだろうか。
これでマニキュアを塗ればもっと綺麗になると思うんだが、あまり潤香はそういうのをしたがらない。
確かによくスナック菓子食ってるしな……理由は何となく分かるけど。

「ふふ。亮に褒められちゃった」
「……ん」

頃合を見て、口から潤香の指を解放する。
さすがにこれだけ舐めれば指先の油分なんかも俺の胃の中に消えちまっただろう。
見た目はいい歳した大人なのにこういうトコはまだ子供っぽいよな、潤香は。
……それとも、俺にだけこうなんだろうか。

「ほら。終わったぞ」
「もっと長く舐めてもよかったのに」
「バカ」

いくら何でも節度ってもんがある。
他人の……潤香は彼女だけど、まだ結婚前だから他人っちゃ他人だと仮定するが、
自分以外の指舐めたのは初めてなんだよ、俺は。
まだ物足りなさそうな声をあげる潤香から一度身を翻し、俺は床から改めてベッドに座りなおす。
2人分の体重がかかったせいか、スプリングが小気味よくグラグラと揺れた。

「亮ってさ、黒っぽい色の服……好きだよね」
「まあ……そう、だな」
「……あたしも黒いっぽい色の服、着るの好きだよ」
「知ってる」

だからお前は、《The World(あの世界)》で“カール”だったんだろう?
俺とお前、ジョブもPCデザインも性別も違うのに……同じ黒衣と銀色の髪。
俺は紅い瞳、お前は金色の瞳で。

「……亮が違う感じの服着て欲しい、って言うんなら……そうするよ?」
「どうしてだよ」
「亮の好みに合わせてあげてもいいかな、って……」
「……」

珍しいことを言うもんだ。
でも、俺は別に潤香の服装についてあれこれ言うつもりなんてない。
俺の好みに合わせなくてもいい、お前が好きな格好でいれば、それでいいじゃねぇか。
お前らしさを損ねてまで、んなコトする必要はねぇんだから。

「潤香が俺に合わせるコトなんて、ねぇだろ。好きな服着ろよ」
「そう思う?」
「思うから言ってる」
「じゃあ今度、一緒に服買いに行こっか。あたしと亮の服……ね?」
「……そだな。たまには、2人で出かけるか」

ネットにどっぷり浸かって一日中部屋の中で過ごすよりはよっぽど健康的だ。
そういや最近は潤香の方が忙しくて一緒に買い物とか行ってやれてなかったっけか……
俺がこうしてコイツのアパートに来ない時は《The World》でしか会えねぇワケだし。
もう半年くらい経つってのに全然コイツの彼氏らしいコト、やれてなかったんだな、俺。
189名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:45:16 ID:sc81sMzl

*************



「余った肉と野菜、ラップしといたからな」
「んー」

安物の牛肉を使った焼肉は、潤香があまり肉を食べなかったのも手伝って少し残った。
明日の晩も食えるようにラップ巻いて冷蔵庫に入れとけばまぁ大丈夫だろう。
もっとも潤香自身が冷蔵庫を開けることなく、ドラッグストアで買ってきた栄養食なんかで
明日の晩飯済ませちまったら意味ねぇワケだが。

「亮、今日は泊まるよね」
「いや、その……今日は……」
「泊まってくでしょ」

バスタオルに身を包んだ風呂上りの潤香が風呂場から出てくる。
長い髪についた滴をミニタオルで拭き取りながら
潤香はさも当然の如く笑顔で「泊まってくでしょ」なんて俺に言ってくるが……どうしたもんか。
確かに明日は土曜で学校もねぇけど……。
そこで問題だ。どうやって潤香を怒らせることなく泊まるのを拒否して家に帰る……か。

3択―――1つだけ選びなさい

答え@《The World》最強プレイヤーの“死の恐怖”ハセヲこと三崎亮は突如帰宅の言い訳を閃く
答えAリアルのアトリか揺光かパイか志乃が来て助けてくれる
答えB帰れない。現実は非情である

俺がマルをつけたいのは答えAだが期待は出来ない……
今思い浮かべたうちの誰かがあと数秒の間にここに都合よく現れて
アメリカンコミック・ヒーローのようにジャジャーンと登場して「待ってました!」と
間一髪助けてくれるってわけにはいかねーゼ……。
逆にんなコトになってみろ、潤香のスイッチ入ってたちまち修羅場になっちまう……。

「……Bか」
「? 酸化?」
「いや、こっちの話……わーった、今日は泊まるわ」
「ふふん。でしょ」

帰る言い訳も思いつかねぇし……泊まってくっきゃねーっぽい。
この辺のヘタレ具合はどーも治んねぇなぁ俺。

「亮が泊まってくの久しぶりだよね」
「そうだっけか」
「うん」
「その……ご無沙汰で……悪かった」

俺が潤香のアパートに来れる日って限られてるしな。
最近はヤれてねーし……。

「んぐっ、んぐっ……ぷはぁ〜。いいって、亮もお風呂入ってきなよ」
「……そうするか」

おまっ、またビールなんか飲んで……俺より1つ年上っつってもまだ19だろ。
しゃーねぇ、とりあえず風呂入って考えるか……。

ザッ ザザーッ
190名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:47:49 ID:sc81sMzl

『理解し合うためにはお互いに似ていなくてはならぬ。
 しかし愛し合うためには少しばかり違っていなくてはならぬ』

                                               【ジェラルディ   フランスの詩人】




















「俺がもしお前に負けたらどーなるんだ?」
「さあどうだろう? 跪いて脚でも舐めてもらおうかな」
「へっ……笑えねェ」

ついにこの日がやって来た。
長いようで短かった3日間の終わりが。
俺の7年分の時間を、清算する日が……。

「朔とエンデュランスに感謝しておくんだね。
 きみを心配して、あたしに攻撃を仕掛けてきたぞ……ま、返り討ちにしてやったけど」
「……殺してねぇだろうな」
「まさか。きみとの試合の前なのに余計な力を使うと思う?」
「……」

どっちの姿も見えねぇと思ったら……やっぱそういうコトかよ。
けど今は試合に集中だ。
エンデュランスが付いてるなら朔は十中八九無事だろう。
アイツらはどっちもそう簡単にやられるような奴らじゃねぇしな……。

「(カイトは天狼、なつめは揺光……智香と対戦か。
  3対3じゃなくて1対1の舞台別の試合になって、正直助かったぜ)」

遠慮なく……戦うことが出来るから。


『面白ぇ試合になりそうだな。かっかっ!』
『どちらのチームも準備はよろしいですかッ!?
 それではこれよりトーナメント・決勝戦を行います!
 ワールドファイトォォォォォォ、レディィィィィゴォォォォォ―――――――――――――――――――――ッ!!!』

鳴り響く試合開始のゴング。
同時に、2つの影が、舞台上空で早くもぶつかり合った。
191名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:50:36 ID:sc81sMzl

先に仕掛けたのはどちらなのか、そんなことはどうでもいい。
今は眼前の「敵」を捻じ伏せる……ただそれだけ。
どちらが「狩る者」でどちらが「狩られる者」なのかを、相手に知らしめるために。

「(――――――!)」
「(――――――ッ)」

錬装士と鎌闘士、互いのジョブは違えどハセヲとカールのレベルは共にカンスト、
即ちレベル150に達している。
ここまで来ると力が拮抗しがちと思われようなものだが、実際は大きな差異がある。
ハセヲは欅によってXthフォームへと改造され、更には八相のモルガナ因子を喰らった
スケィスを従えている影響で、一般PCを大きく越えた力を手にするに至っている。
一方のカールも独自の才能で紅いスケィスを憑神(アバター)から巫器(アバター)へと
変形、ダイレクトに碑文の力を行使できるようになり、更にはAIDAへの感染によって
大幅なステータスの底上げに成功しており、どちらもチートどころの騒ぎではない。
ではこの勝負の決め手になるのはプレイヤースキルか……と言えば、そうでもない。
ハセヲがPKKの“死の恐怖”として過ごした八ヶ月とカールがPK、そしてハンターとして過ごした日々は
必ずしもイーブンとは言えないからだ。
HPの削りあいならば簡単だったかもしれない。
だがこの試合は違う。
これは……互いの心の削りあい!

「(速ェ……それに鎌闘士のクセになんつー馬鹿力だ……掠っただけでもやべぇかもな)」
「(前に大聖堂で戦った時と明らかに違う……成長してる……)」

激突の瞬間、互いの大まかな力量を察知。
すぐさま次の手を何パターンも脳裏に浮かべ、浮かべた瞬間にまた攻撃。
先手の先手の先手……そのまた先手の裏をかいた戦法。
どちらも確固たる意志を秘めた者である以上、絶対に退く事はない。
互いに宙で激突、更には落下しながらの攻防。
ハセヲは大剣、カールは大鎌。
金きり音と火花を撒き散らしながら落下する両雄を、アリーナの観客達はただただ唖然と見守るしかなかった。
次元が―――――――――――違う。
観客達が試合開始の合図と共に見たのは、ハセヲとカールが落下しながらぶつかり合う場面から。
見えなかった。
いつ彼らは跳んだ? いつ空中でぶつかりあった? 落下するまでに幾つの攻防があった?
ハセヲやカールの試合を見慣れていた観客達、
しかもこれまでの2日の間の試合でハセヲとカール、どちらも圧倒的な勝利とは言えない勝利を収めている。
ハセヲはカオちんチーム、“がび”チームとの試合で苦戦し、カールも太白チームとの試合で苦戦していた。
だから例え決勝で両者が対決することとなっても、そう激しい試合にはならない……
どちらのチームに賭けていた者らも、そうした楽観的な考えの者が殆ど。

だが、結果はどうか。

「えっと……い、今、何が起きたのかな^^;」
「よ、よく分かんないけどぉ……すっ、すっ、すごいぞぉ〜!」

全く今の攻防が視認できなかった者、シラバス達の反応はこうだろう。
むしろ、これが大部分の観客の代弁であると言える。

「始まった……あぁ、始めちまった!」
「ハセヲさん……ホ、ホントに大丈夫なんでしょうか……!?」

かろうじて今の攻防が見えていた者、クーンやアトリと言った碑文使いの面々は気が気では無い。
試合が始まる直前から妙な胸騒ぎがして仕方がないのだ。
このトーナメントが無事に終わっても、まだ何かが起こりそうな……そんな僅かな胸騒ぎが。
192名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:53:42 ID:sc81sMzl

「昨夜の試合、三郎に苦戦してたのが嘘みてーじゃねぇか」
「あれ、最初に言わなかった? あたしはかーなーり……強いって」


『ハセヲと揺光の戦いの邪魔はさせない。あんたの相手は、あたし』
『碧星宮・元宮皇のカール……相手にとって不足は無い』
『あたしは強いよ、電柱狼』


「(そうだな……あの時の竜賢宮トーナメントでも……お前は同じようなコト、言ってたっけか……)」

かつて揺光・カール・三郎の3人がチームを組んで
ハセヲ・太白・天狼の竜賢宮チームに戦いを挑んだ時も、彼女はそんなことを言っていた。
でも今はどうでもいい。
気持ちの切り替えを終えないと……殺されてしまう。
彼女の目的はハセヲの中の楚良の再誕。
つい数日前まではあんなに仲の良かった相手を平気で切り捨てられるドライさが、今のカールにはある。
ハセヲへの興味を完全に失くし、楚良を取り戻すことで頭がいっぱいの彼女に
対話による説得など愚の骨頂。
ならば、こちらも応えるしかない。7年前の清算のためにも―――――――――――――――。

「……来いッ!」
「スケィス!!!」

決勝が始まってまだ10秒も経過してはいない。
しかし両雄共に出した結論は「早期決着」であった。
この戦いの先にあるのは、どちらかが勝利せねば互いの未来は有り得ない、ということ。
手段は選ばない。そのためのモルガナ因子、碑文使い(エピタフマイスター)の……憑神の力!



『□□□……□□□□――――――――――――――――――!!!!』
『■■■、■■……■■■■―――――――――――――――――!!!!』



両者の招来の呼びかけに応え、ハ長調ラ音が同時にハモり、2つの異形の影が空間を砕き咆哮をあげる。
ハセヲのスケィス。Xthフォームの進化と同調し、八相の碑文を喰らった最強の憑神。
カールのスケィス。全身を渋柿色の布によって拘束され更にはAIDAの力をも得た最凶の異邦憑神。
両憑神とも碑文使いの呼びかけに応じて顕現した瞬間に憑神空間を発動、
互いが互いの憑神空間を侵食し、取り込もうとぶつかりあう。
2体以上の憑神が同一の憑神空間に存在すると暴走の危険性が高くなることは
ハセヲとカールも承知済み……ならば、暴走を起こす前に倒す!

「(……!? カールの様子が……この気配、AIDAかッ!?)」

憑神空間が展開された途端、空間内をAIDAが徘徊していることにすぐハセヲは気づいた。
同時に、カールの著しい変化も。
ドレスに紅いラインが血管の如く浮かび、同調するかのように彼女の全身を紅のオーラで覆い、憑神空間をも紅く染め上げてゆく。
いつしか彼女がその腕に握っていた紅い大鎌は消え失せ、狂ったように彼女の憑神は吼え、その身を拘束していた布を解いてゆき――――――――――。

「ついに本性現しやがったな……バケモノ!」

コントローラーを持つ手が震えるのも気づかぬまま、ハセヲはかつてない“悪意”の権化を目の当たりにする。
193名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:56:14 ID:sc81sMzl

「どぉ? B-stフォームって言うんだよ」
「お前……AIDAに感染してたのか…!?」
「そう。きみを手に入れるためなら何でもするもの」
「……俺じゃねぇだろうが」

彼女の目的は、楚良。
そのためにカールはAIDAにまで感染してしまった。
どういう経緯で感染したのかは分からない。
碑文はAIDAを呼ぶ……エンデュランスも、パイも、アトリも、朔も、オーヴァンさえも
AIDAに感染してしまった事実を踏まえれば、イレギュラーな碑文使いとは言え
カールが感染してしまっていても何らおかしいことはない。
だが……1つだけハッキリと分かることがある。


「てめェは……カールじゃねぇ。今喋ってるお前は、AIDAなんじゃねぇのかッ!?」
「どうかな? カールかもしれない、でもAIDAかもしれない。
 どうでもいいことじゃない、どうせ……きみは今日、この世界から消えるんだから」


戦慄。
一瞬にして全身に走った悪寒と前後して、カールの憑神空間が侵食に打ち勝ち
ハセヲを自らの空間に引きずり込む!
憑神の操作は碑文使いの精神状態によって大きく左右される。
何らかの精神的動揺などが原因で本調子にならないこともあれば、今回のように一瞬の同様が命取りとなって
結果的に敵憑神に憑神空間を展開させる、という主導権を握られてしまうこともある。
AIDAは感染することで感染者の心の闇や欲望を増幅させる特性を持っているのは
件のアトリや榊、ボルドーや天狼の事例で明らか。
今回はカールの心が、AIDAに付け入る隙を与えてしまった。
いや、もしかすると逆でカールが力を得るため、AIDAにわざと感染したのかもしれない。
どんなに月日が流れても癒すことのできない渇き……楚良を求めての彷徨の日々。
その目的達成が今、最悪の形で成されようとしている。

「(オーヴァンや榊でさえ、完全にAIDAを制御することはできなかったってのに……馬鹿野郎がッ!)」

カールを狂わせたのはAIDAかもしれないし、彼女自身がそれを望んだのかもしれない。
自分ならどうだろう。
あの“死の恐怖”として過ごした時間……志乃を未帰還者から救う方法が、AIDAしかなかった、としたら?
……きっと、自分もカール同様にAIDAに身を委ねた。
今なら間違ったことだ、と言える。でも当時の自分はそれが一番ベストな答えだと信じて疑わなかったはず。
目の前に最良の方法があるのに、何故ベストを尽くさないのか?
そう思うはずだ。けれど……ここまでの異形に身を窶してまで得た結果に、何の価値があるだろう。
この戦いが終わった後、下手をすればカールは心身ともに傷ついて二度とゲームが出来なくなる可能性だってある。
なのに……。

『■■■……』
「スケィスの言う通り。きみ、あたしを批判できる立場じゃないだろ」
「……かもな」

紅布の拘束から解放された、カールのスケィスの真の姿。
ハセヲのスケィスよりもややクラシックな雰囲気ではあるが、その姿は紛れもなく7年前に
多くの未帰還者を出したあのスケィスそのものである。手にするのは鎌ではなく、矛先がケルト十字と化した杖。
ギラリと三つの目玉を光らせ、これまでカールがその心のうちに留めていたであろう
悪意を放出しながら低く、だが地獄の底から響くような声で吼え、ハセヲを威嚇している。
邪悪さは7年前の比ではない。AIDAによって増幅されたカールの悪意や憎悪を糧にし、より禍々しさを増している。
アウラの守護者としてモルガナの尖兵たるスケィス(楚良)と戦っていたカールとスケィスの因縁……
7年目にして勝利したのは、モルガナ・モードゴンの執念!
194名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 05:59:01 ID:sc81sMzl

「(思った以上に厄介だ……AIDAのせいでますます手がつけられなくなってやがる……!)」
「来ないなら……こっちから仕掛けようか?」

仕掛ける? いくら憑神を召喚して憑神空間も展開しているとは言え、彼女は手ぶらだ。
何も武器を持っていない。まさか昨日の試合で見せたように魔法で勝負を挑むつもりだろうか?
AIDAによって力が増幅されているなら、確かに脅威ではあるが―――――――――――――――。

「(武器も持ってねぇってのに、どうやって仕掛けんだ? 憑神同士で殴り合いでもさせるつもりか……!?)」

直後。


「アデアット(来たれ)」


ズン!と何かが何かを突き破るような音が聞こえた。
最初は何の音か判断するのにコンマ数秒かかったものの、すぐにハセヲは理解する。
カールの、彼女の背後の空間が、鋭利な何かによって引き裂かれていたのが視えたからだ。
引き裂かれた憑神空間の向こうは赤黒く光を放ち、否応なしにも嫌な予感を抱かずにはいられない迫力がある。
カールはその空間に手を伸ばすと、徐に1本の鎌を取り出して手に携えた。
いや、最初は1本だった。1本のはずだったのに。
いつの間にか空間の切れ目から、数え切れない程の鎌が文字通り顔を出しているのに気づき―――――――――――――。

「(なッ――――――――――――――)」
「行け」

瞬間、無数の鎌が爆ぜた。まるで押し寄せる鉄砲水! 異
空間を勢いよく飛び出して、うねりながら蛇の如くハセヲに向かってくる無数の鎌、鎌、鎌!
100本? 1000本? 1万本? いや、この世界に存在する全ての鎌が、今この場にあるのかもしれない。
マズイ、と判断したが既に遅く、回避行動を取る余裕などハセヲにはなかった。
試合開始前、あれだけカイトに「常識を疑え」と言われていたのに。
どうする? 決まっている。迎撃あるのみ!


「(……カァァァァァァァルゥゥゥゥゥ!!!)」


メインウエポンを大剣から双銃にチェンジ。
とにかく弾切れまで撃って撃って撃ちまくる!
幾つかはこちらに向かって来る前に叩き落すことができたが、それでも勢いは衰えることもなく
ターゲット、即ちハセヲに向けて突き進んでくる無数の鎌。

「スケィスッ!!!」
『□□□□□――――――――――――――!!!!!』

スケィス3rdフォームの大鎌から放たれるスラッシュウェーブ、衝撃波を伴う斬撃。
轟音と共に薙ぎ払われていく鎌の群れ、この状況下に置いてもハセヲのスケィスの強靭さは健在。
だがやはりそれでも群れを突き崩すことは出来ず、結果―――――――――――――


『□□……□□□……□□□□――――――――――――――――――――――!!!!』
「痛(ッ)……がっ、あ……ぎぃっ……!!?」
「まずは左腕。次は……右腕かな? それとも脚? クスクス……」


スケィスの左腕が切り落とされると同時にハセヲの左腕の感覚が、消えていた。
195名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 06:01:21 ID:sc81sMzl
その女、ゼロ(ZERO)のスタート? 
あのPVのB-stフォームの技が「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」に見えてフヒヒ、サーセン? 何のことです?
おやすみおまいら
196名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 06:03:10 ID:cSW49RHb
リアルタイムGJ
どんだけネタの幅あるんすか…w
197名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 13:25:56 ID:sCctvXsS
千草がリスカしてるって公式設定なのか?
あんまメンヘラをコケにした内容にしない方が良くね?
198名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 14:07:28 ID:U2p8rk8C
本スレでも時々こういう質問がくるな
小説や漫画版で確認しろ
199名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 16:44:19 ID:CL943FNJ
早くもトリロジーネタはいってない? GJ
200名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 18:07:39 ID:dGJY8VT8
ネトゲの設定ネックになり過ぎててワロスwww
しかし、GJ!!つか憑神とPCは別々に行動してるのか?
ところで、ニコニコに上がっていたPV視て、ゲートオブバビロンwwてコメしたら、
月厨死ね死ね言われまくったんだが過剰反応しすぎじゃね?
俺、全然月厨じゃねーのに・・・
201名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 18:13:21 ID:PljlJqO5
>>198
たぶん>>197は数見、フリーズショット、巫器、バルボル美術館とか言われても全然分からない子の予感…
202名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:33:42 ID:/eAYGuY3
>>200
どうせアンチ型月厨だろ
あいつらは月厨と同じくらいうざいからな
203名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:39:36 ID:GEQySjLg
しかし収集つくのかい?これ
204名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 21:57:11 ID:tmWUyHP9
ハセヲのスケィスが「スケィス3rd」なら
カールのは、「スケィス・アーキタイプ」もしくは「スケィス・ゼロ」とか言うのかね
もう紅くないし
205名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 23:44:07 ID:MEROkUfW
教えてくれ。あと何人頃せばいい?
あと何回…あの子とあの子犬を頃せばいいんだ…
教えてくれ!ゼロは何も教えてくれない
206名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 02:23:05 ID:NIqJoDQy
>つか憑神とPCは別々に行動してるのか?
憑神の戦闘スタイルはゲームよりも漫画のGU+が基盤っぽい
あれもジョジョのスタンドみたくPCと憑神が独立してる
それ以前にCC2社長のぴろし本人がジョジョ好きだし…カオティックPKの「無敵爆弾娘ジアハート」は
4部に登場した吉良のスタンド・キラークイーンの「シアーハートアタック(爆弾戦車)」が元ネタなのはvol.3発売時から有名
「GUザ・ワールド」のvol.10の「おしえて!ぴろしさん&なつめっち」でもぴろし3が腹のアーマー部分を開口して
アニメで志乃が飼ってた植物を取り出して「空気弾が撃てるかと思いましてね…」って言ってるシーンあるけど
あれもジョジョ4部で吉良のスタンド・キラークイーンが腹の中で猫草のスタンド・ストレイキャットを飼ってたことが元ネタ(ストレイキャットの武器は空気)
ぴろしのキラークイーン好きは異常

>俺がマルをつけたいのは答えAだが期待は出来ない……
ポルナレフwww    ヴァニラアイス戦か

あと前スレのカイトの「天狼……君の命がけの行動に、僕は敬意を表するッ!」 ってセリフ、これは5部のフーゴ(ビミョーに変えてあるケド)
長々とスマソ
207200:2007/11/21(水) 04:16:19 ID:n19si6kY
>>206教えてくれてありがとう。
俺、漫画も小説も未読なんだ・・・何も知らなくてゴメンよ・・・
自分で調べてはいるんだが、中々自分の欲する情報には行き着かなくて・・・
ちくしょおおおおお!!!金よ、出てこーい!!
208名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 23:09:03 ID:bRM6lI8G
>王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)
オーヴァンに一発で破られそうなあれか
209名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 14:39:59 ID:kvJuL3+l
>何故ベストを尽くさないのか?
…トリックの上田教授?(ボソッ
210名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 16:07:08 ID:uMFwl/U4
>>209
よく見ろ。既に>>75でカイトが

>どんと来い超常現象!だね

と発言しているゾw
211名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 16:54:44 ID:3N8O4Drk
つまりカイトは巨○だということか!
212名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 19:07:31 ID:bsPY471c
バんなそかな!!
213名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 23:36:00 ID:QmgIdndO
>>209
何故ベストを着ているのか
214名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 06:20:46 ID:lOfFRngB
寒いから
215名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 04:22:02 ID:1sveTDZb
 ――もう一度『彼女』に会おう。 大丈夫、きっと大丈夫。 僕はもう あの『世界』では絶対に間違わない。

   どんなに人が不完全だって、何度も間違いを犯してしまう生き物だって、僕はもう、あの『世界』では絶対に間違わない。

      あの『世界』が涙の訳にならないように、 あの『世界』が笑顔の訳になるように。

   たとえ あの『世界』が元で 涙を流す人が居ても、最後にはそれが笑顔になるように・・・。

      そのためには、嘗て この『世界』を管理し、あの『世界』その物でもあった『彼女』が幸せでないと駄目だ。

   『旧世界-彼女-』が暗闇に囚われ 涙を流し続ける今のままでは、『新世界-R:2-』にも、本当の幸せは やって来ない、そう思う・・・。

     そして・・・何よりも僕は『彼女』に謝りたい、償いたい。 だってそれは、僕が『彼女』を追い詰め、傷つけ、殺した張本人だからだ。

       『彼女』はただ生きたかっただけなんだ。 だからと言って、『彼女』がした事が許される訳でもないのは分かってる。

     だけど、もっと別なやり方があったはずなんだ・・・!! 誰も悲しまないで済む、もっと別な方法が・・・!!

        それなのに 僕は、『彼女』を殺す事でしか あの事件を解決する事ができなかった・・・。

      それが、こんなにも強い後悔を生む事になるなんて、その時 僕は、これっぽっちも思いもしなかった。

          だから行くんだ。 謝る為に、償う為に、『彼女』の幸せの為、今 僕に出来る事を果たす為に――


                         ――『新世界-R:2-』へ!――
216名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 04:30:58 ID:1sveTDZb
以前から書いてみたいと言いつつ、文才ないからと言って書かなかったんだが、
人も居ないしやっちゃえ!という考えの下ついにやらかしてしまった・・・
稚拙な文章で申し訳ないが勘弁してくれ・・・俺にはコレが限界だ・・・
ただの保守代わりだと思ってくれて構わん。スレ汚しすまんかった。チラシの裏でやってろカスって話だよな。ホントすまん
ちくしょおおおおおおおおおおお!!(屮゚Д゚)屮 神よ!俺にも文才カモォォォン!!!はぁ・・・orz

あ〜あ、神職人まだかな〜
217名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 08:21:39 ID:IePTKwYc
本文はともかくあんまり自虐通り越して誘い受けな事を書かない方が良いと思うぞ


218名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:22:22 ID:qmVbnuoR
おまいら乙
トーナメント3日目・レギオン襲来編投下



>>167

【パイ(佐伯令子)ルート】
《1話(9スレ目) Nomal End 》 → 《2話(10〜11スレ目) Nomal End 》 → 《???》 
≪パイをパートナーとして選んだハセヲ。2人の戦いはモルガナ因子が枯れ果てようとも続く≫


【アトリ(日下千草)ルート】
《1話(9〜10スレ目) True End 》 → 《2話(11〜12スレ目) Normal End 》 → 《???》
≪亮と千草の穏やかな日常。それは籠の中の小鳥が夢現に見た現実逃避の幻想だったのか≫


【揺光(倉本智香)ルートA】
《1話(10スレ目) True End 》
≪北海道から東京に遊びに来た智香。イレギュラーな少女の存在が新たな分岐世界を構築する≫


【カール(仁村潤香)ルートA】
《1話(10スレ目) Bad End 》 → 《2話(11スレ目) True End 》 
≪黒衣の少女と赤い死神。無限に繰り返す8日間。ハセヲが楚良だと気づかぬまま少女は大人になる≫


【揺光ルートB(揺光ルートAクリアにより解放) & カールルートB(カールルートAクリアにより解放)】← 今ココ
《1話(10スレ目) True End(揺光) Bad End(カール)》 → 《2話(12〜15スレ目、以下続行) ???》
≪楚良の記憶が戻り始めたハセヲ。帰還した勇者カイト。壊れていくカール。新たなRA計画を巡る約束の3日間≫


【アイナ(犬童愛奈)ルート】
《???》 → 《???》
≪クリアデータが不足しています≫


【朔(中西桜)ルート】
《???》
≪クリアデータが不足しています≫ 


【志乃(七尾志乃)ルート】
《???》
≪クリアデータが不足しています≫ 


【三郎(永井康夫)×カール(仁村潤香)ルート】
《???》
≪クリアデータが不足しています≫


【エンデュランス(一ノ瀬薫)ルート】
《???》 → 《???》 → 《???》
≪スレ違い≫
219名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:25:06 ID:qmVbnuoR

『主が、「お前の名は何か」とお尋ねになると、それは答えた。「我が名はレギオン。我々は大勢であるが故に」……』
『聖書か』
『マルコ第五章です』
『……レギオン』
                                            【金子修介監督作品  映画「ガメラ2 レギオン襲来」より】



























「R:X? またバージョン変えんのか」
「今日の会議で、上層部はAIDAの根絶宣言を正式に発表したわ。
 それに伴ってしばらくR:2のサービスを停止、様子を見計らって新バージョンのR:Xへ移行準備を開始する……だそうよ」
「よーやく俺もお役御免ってワケだ。お払い箱とも言うんだろうがな」

気がつけばクビアとの戦いから1年以上が過ぎていた。
オーヴァンが……犬童雅人が起こした「再誕」で死滅したと思われていたAIDAは
実はまだ《The World》内に生き残っていて――――――――――――――――――――――――。

「つーか“根絶宣言”って何だ。天然痘かよ」
「……嬉しくないのね?」
「俺とれーこにだけAIDA狩りさせといて礼の一つも言って来ねぇ連中じゃねぇか。
 ヘドラみたいに第2、第3のAIDAがまた現れないとも限らねぇだろ」
「貴方だってCC社がそういう組織だってことは分かってるでしょう?」

クビアとの戦いでモルガナ因子を失った他の碑文使いの連中は、普通の生活に戻っていった。
今でも一緒にクエストしたりイベント参加したり、前と変わらず馬鹿やってる。
でも俺と令子のPCだけは……ハセヲとパイのPC内のモルガナ因子、碑文は何故か枯渇せず、
未だに憑神の召喚やデータドレインを可能としている。
以来、俺と令子はクビアを倒した後もG.U.のメンバーとして、2人だけでAIDA狩りを続けた。
ここ最近はXthフォームになれる時間もどんどん減ってきて、内心もう長くねぇとは思っちゃいたが……
それもやっと、終わりってワケだ。
220名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:27:56 ID:qmVbnuoR

「……亮。1年間、本当にお疲れ様」
「れーこが礼言ってどうすんだよ」
「……正直、貴方が私達に協力してくれるとは思ってなかったもの」
「そりゃな。何度死に掛けたか分かんねーし」

今思えば……結構死線とか修羅場、潜り抜けてきたよな。
特にクビアとの戦いは生きるか死ぬか、ギリギリだったし……。
欅の呼びかけに応えて集まってくれたプレイヤー達がクビアゴモラを食い止めてなかったら
正直、今こうやって令子とだべってることもできなかっただろうしな。
碑文の反存在たるクビア……ったく、AIDAだのクビアだの次から次に問題ばっか起きやがって。

「けれど貴方は協力してくれた。
 G.U.にスカウトした頃は聞き分けが無くて、周りが全然見えてなくて、ホント頭の悪いガキだったのに……
 この1年で随分成長したと思うわ」
「……褒めてんだよな?」
「勿論」

全ッ然褒められた気がしねぇのはなんでだろーな。
まぁ令子の言う通り、あの頃に比べりゃちっとは俺もマシになったか?
今は周りを見る余裕も出来たっつーか……何つーか……俺が変われたのは多分、令子の影響だと思う。
何だろ……がむしゃらに突っ走ってたあの頃よりは……令子と居ると、落ち着く気がする。
最初に会った頃はただのガミガミ煩ェオバサンって認識だったし。
変われば変わるもんだ。

「令子に1年扱かれて、やって良いことと悪いことの区別がつくようになったんだよ。
 ボクシングの試合中にレスリング紛いの投げ技使ったり、友人の友人がテロリストなんて発言したり、
 自分の主演映画の舞台挨拶で仏頂面しつつ『別に……』とか言ったりするのはマズイことだ、ってな」
「そう……」

……えらく元気ねぇじゃん。

「れーこ」
「何?」
「いや……何か、いつものれーこっぽくねぇから……」
「ここのところ、ちょっと立て込んでたから……義兄さんの残した資料の処分とか……ね」
「……そっか」

番匠屋淳。令子の腹違いの義兄。
俺が令子にフワラーギフトを送った時
「花にはあまりいい思い出がない。花を買うのは、お墓参りの時くらいだから」
って素っ気無い返事返されたの、覚えてるか? 墓参りの墓ってのは、番匠屋の墓のこと。
番匠屋淳は……2年前の春に死んでる。俺は今年、令子と初めて墓参りして聞かされた。
令子が前勤めてた会社辞めて、番匠屋の妹であることを隠してCC社に入社した経緯、
HDDの中に隠されていたタルヴォスの碑文使い・パイのPCデータの秘密……
兄貴の死の真相を知るためにここまでする妹、今の世の中に居ると思うか? 
普通は居ねェと思うだろう? けど居るんだよ、実際。
令子は……俺が志乃を失うずっと前から……たった一人で、戦ってたんだ。 ザザッ ザーッ

「AIDAとの戦いが終わったら処分するつもりだったの。
 放っておいても上層部が嗅ぎつけたら徴収されてしまうだろうし……ならいっそ、私の手で処分したかった」
「お前、そーいうコト全然俺に話さねぇのな」
「……これだけは私1人で最後までやろうと決めていたことだから」
「まぁ、れーこにもれーこの都合があるんだろうけど」

俺と令子は似てる。だから、自分で全部背負い込んじまうとこも、似てるってのが分かる。
けど、けどよ。頼れよ、俺を。何のために俺がお前と一緒に居ると思ってんだ……バカが。
221名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:30:40 ID:qmVbnuoR

「で、これからどうするの? 一緒に食事でもする?」
「白々しいこと言いやがって。最初からそのつもりで下校途中の俺を拾ったんだろうが」

信号が赤から青へと変わり、それまで淡々と話していた令子が
アクセルを強く踏んでマセラティを前進させる。
俺も免許取ったら運転してみたいもんだ。時速88マイルのスピードでブッ飛ばしたら気分も爽快だろう。
さすがに高速道以外でそれやっちまったら間違いなく違反切符ものだろうけど。
ま、違反切符切られる前に過去か未来へ飛べりゃ問題ねぇだろ。                       ザッ ザザッ

「ビュッフェ形式のバイキングなんかどう?
 割と格安で美味しいもの食べられる所、何件か知ってるんだけど」
「バイキングか……いつもれーこと食事の時はシーフードばっかだし、それもいいけど……限度考えて食わねぇとな……」
「あら? 貴方、前にメールで『大食いで勝負だ! フードファイトだぜ!』とか言って
 私に勝負を挑んだことあったでしょう? いい機会だし、勝負してみる?」
「お、お前、よくそんなコト覚えてんな……」

やべー、すっかり忘れてた。
そういやグリカの「挑戦状」、冗談半分で令子に送ったことあるわ。
かと言って「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー・これができたら100万円」の
大食い大会で大会収録中に皆の前で逆流して全国放送されちまった出場者みたいなコトにはなりたくねェ……。
いや、待て。確か大食いの前にも何か勝負のメール、送った気が……。

「あと貴方確か『お笑いで勝負だ! 俺は、こう見えてもクラスの人気者なんだぜ!』とか
 言ってたりもしてたわね。自称クラスの人気者の亮君がどんな笑いを私に提供してくれるか、
 とても楽しみだったのよ」
「……だから何で覚えてんだ」

しまった……確かに「お笑いで勝負だ!」とか送ったな……。
くそ、何てこった……あの頃に戻れるなら戻りてぇ……戻って、送信ボタンを押す前の俺をブン殴ってやりたい。
よりによって何つー相手にくだらねぇメール送ってんだ俺は……。自分で自分の首絞めるとか、最高に笑えねぇだろ……。
今ほどタイムマシンがあったらいいのに、と思った瞬間はねぇぇ。

「だって、残してるもの」
「は?」
「最初に食事した時、言わなかった? 貴方が私に送ったメール、全部削除せずに残してる、って」
「あ……」


『俺があんたに今まで送ったメール……まだ、削除せずにとってあんの?』
『……ええ』
『消さないんだ? それとも消せない?」』
『一応、削除しようとはするの。でもね、何故か消せない。
 どのメールも内容はすごくガキっぽくて、くだらないものばかりのはずなのにね』


そうだ……あの時、れーこは……そう言ってた。
俺も、志乃から貰ったメール全部とっておいたから分かる(トライエッジにDDされて初期化した時、全部消えたけどな……)。
れーこの奴……まだ消さずに残してたのか……。

「消さずに残して、たまに見ながらニヤニヤするのよ。
 ホント、コイツはどうしようもないガキね、って」
「……いい趣味じゃねぇか」
「亮はメールを送る時、どんな気持ちで送っていたのか……私は知らない。
 どれも本気か冗談か分からないものばかりだもの、内容が子供っぽいのが多すぎて」
「……」
「でも……貴方からのメールが届く度、開く度……不思議と私の心は躍っていた。それも事実」
222名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:33:44 ID:qmVbnuoR

「ほんと……何故かしらね」
「冗談っぽいのは……まぁ、認める。悪かったよ。
 けど、結構本気なのもあったんだぞ、割と……」
「本気、ね。私が居れば安心できる、ってアレのことかしら?」
「すいません、もう勘弁してください」

れーこに送ったメールの内容これ以上思い出したら、俺がおかしくなっちまう!
厨房丸出しすぎて憤死しそうだ……こんなことならクーンとロリ巨乳の話題で盛り上がってた方が
マシだったかも……どこで選択肢間違えちまったんだろうか……。                          ザザッ ザーッ

「れーこ。お前性格悪すぎ……」
「メールを送ったのは貴方で、受け取ったのは私。
 私の所に着信した時点で貴方の送信したメールは私のものになったワケだし……何も問題ないと思うけれど?」
「いや、あるだろ。俺の精神衛生状態とかに」

俺の心臓に悪影響だっつってんだろうがよ。
た、頼むからこれ以上の拷問はやめてくれ……泣きたくなってくるから。
マジな話、ここまで自分が厨な野郎だとは思わなかったぜ……き、気づいて良かった……!
大人になってもたまに居るよな、いつまでも厨房みたいな奴。






******************






「どう? たまにはイタリアンも悪くないでしょ」
「こっ!! こんな美味い水、俺生まれてこのカタ……飲んだことがねーぜッ!
 令子、お前も飲んでみろ! 何つーか、気品に満ちた水っつーか、
 例えると“アルプスのハープを弾くお姫様が飲むような味”っつーか、スゲーさわやかなんだよ!
 “3日間砂漠をうろついて初めて飲む水”っつーか……」
「(水がそんなに美味しいのかしら……? イタリア直輸入の水らしいけど……)」

れーこは怪訝な顔して俺を見てるが、知ったこっちゃない。
あの後も車ん中で散々精神的なダメージを負った俺にとって、辿り付いたイタ飯屋で
喉に通したこの水はまさに天の救いだった。枯死寸前だった心が正常に戻って行くのが理解(わか)るッ……!
すごい水だ。素晴らしい神の水、と書いて“超神水”と名づけたいくらいだぜ。

「水ばかり飲んでないで他のものも食べたら? モッツァレッラチーズとトマトのサラダとか」
「! これは……この味はッ! 
 サッパリとしたチーズにトマトのジューシー部分が絡みつく美味さだ!
 チーズがトマトを! トマトがチーズを引き立てるッ! 『ハーモニー』っつーのか『味の調和』っつーのか!?
 例えるなら中原麻衣と清水愛のデュエット! ウッチャンに対するナンチャン!
 PEACH-PIT原作のローゼンメイデンに対する宝野アリカ作詞のアリプロ曲!」 
「ちょ、ちょっと……静かにしなさいってば……!」

サラダがこんなに美味いもんだとは知らなかった……。
いつも適当にレンジでチンして食えるようなもんばっか食ってるせいだな……
くそっ、何て時代だ。
223名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:37:21 ID:qmVbnuoR

…………。
………。
……。
…。


「あー。美味かった」
「水やサラダであそこまで感動した人を見るの、初めてよ」

いや、お前は全然分かっちゃいねェよ。
毎日あんなもんばっかり食ってるお前からしてみりゃ、さも当然かもしれねぇけど
初めて食う俺にとっちゃかなりのインパクトだった。
そもそも俺は和食派だ、朝は御飯と味噌汁と相場が決まってる。
だから、れーこみたいにシーフードだの中華だのイタリアンだの洋食にはちょっと抵抗があったワケだ。
でもそういうのってやっぱ偏見だったんだよなァ……。

「最初は『おいおい、こんなのマジで大丈夫かよ? ありえねーだろ』って思っていたもんが
 慣れちまうと『これはこれでありなんじゃないか?』って思えてくること、あるだろ?
 実写ドラマ版の魔法先生ネギま!とか……」
「貴方……そういう深夜番組を子供の頃から見てたから年上好きになったの?」
「なワケねーだろ」

まぁ……確かにあの見えそうで見えないカメラアングルは……消防にはちょい刺激が強かったかもな。
出演者の演技力は二の次だが。
って、11年も前の作品にケチつけてもしゃーねぇか。

「れーこだって、消防の頃にローゼン見てたって言ってたじゃねーか」
「あれは……義兄さんが見てたから……私もつい、何となくと言うか……仕方なく……」
「……」

そーいや令子のPC……パイって、番匠屋がエディットしたんだよな。
だって令子がHDDを覗いた時、既に用意されてたっつうし……。
ピンク髪にツインテール、メガネにネクタイ、巨乳にハイレグ……
何つーかこう、色んな萌え要素が交じり合って生まれた結果がパイなんだろうが……いい趣味とは言えねェよな。
初音ミクのパチモンかと最初思ったぞ。

「で、れーこはこれからどーすんだ? もう義兄貴の死の真相も掴めたんだろ」
「大方は、ね。中にはブラックボックス化していて、解明できないファイルあったけれど……」
「碑文使いの力でも解読できねぇってのか」
「かなり難解なプロテクトがかかっていたわ。
 もう1年くらい解除を試みてるけど……諦めたもの。分かったのはブラックボックスのフォルダ名くらいね」

令子が弱音を吐くくらいなら相当のもんだろう。
俺達が気づかなかっただけで、番匠屋淳はもっと多くのメッセージを《The World》に残していたのかもしれない。
令子と2人だけでAIDAを狩る日々が続くうち、俺はふとそんなことを思うようになった。
ただの杞憂かもしれねェけどな。


「フォルダ名まで分かってんのに中身が分かんねぇってか。
 何てんだよ、そのフォルダ名」
「――――――――――――第二の黙示録」


ザッ ザザッ ザザーッ
224名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:39:33 ID:qmVbnuoR

***********************









世の中は結果が全てだ。
例えどんな虚勢を張っても結果を出すことできなければ誰も認めてくれはしない。
「自分はやればできる人間だ」「自分が認められないのは自分のせいじゃない」「自分を認めない奴らが悪い」
誰しもそんな結論に達してしまうのは、案外容易いこと。
彼も、とある男に出会うまでは一度もそんな挫折を味わったことのない天才であった。
あの男にさえ出会わなければ、自分はもっと違う自分で居られたのではないか……そんなことすら思う。
自分を越える天才との出会いが、彼の心に暗い影を落とすまでそうそう時間はかからなかっただろう。
何故? どうして? 認められるのは自分ではなく彼ばかりなのか?
彼に与えられた知恵は、神からの授かりものだとばかり思っていた。
だが、現実は違った。
神が選んだのは彼ではなく……あの男だったのだ。
彼は思いつめる。
どうすれば、あの男を越えることが出来るのだろう。
どうすれば、皆は自分を認めてくれるのだろう。
迷った挙句、彼は彼なりの、最良の結論を導き出すことが出来た。
即ち――――――――――――――彼自身が、神と成ればいいのである。
彼のような天才の前では、対象(カミ)こそが従わねばならないのだから。



「バロール様!」
「クルーウァッハ……何かな」
「はっ。たった今、深淵(アビス)の亡者の復活が全て完了いたしましたことをご報告に!」
「そうか」

アビスの軍勢、召喚完了。短期間でここまで作業を短縮できたのは幸運だった。
これまでプレイヤー達に倒されてきたモンスター達の怨念とでも言うべきバグやウイルスの数々……
言われてみれば、それは亡者が亡霊となってこの世にさ迷い出るのと同意義。
そういう意味では彼もまた現世に迷い出ようとする亡霊なのかもしれない。

「クルーウァッハが深淵より召喚、アンクウが魂を管理、ハヴシーが不死たる腐敗の力の授与……
 幸いなことに器なら文字通り、腐る程あるからねェ……私が生み出す限り―――――――――――――」

彼は神(Aura)に成れなかった。しかし、違うものには成れた。
正確には約一ヶ月前のハセヲとクビアの最終決戦、オーヴァンが最後の力を振り絞って駆けつけた瞬間――――――――――――
大悪神バロールは《The World》に生を受けたのだ。言うなれば、反存在の反存在。
無論、予めそうなるように彼は2年も前から準備をしていた。八相の碑文が揃ったあの日から。
あと少しでも早く番匠屋によってパイのPCが秘匿されていれば彼は生まれることすらできなかったはず。
けれど、神は彼に味方した。神は神でも死神でもあったが……。

「絶対運命黙示録……“世界を革命する力”って言うのは本当に良いものだ。
 身も心も穢れたコトの無い人間じゃあ、この境地に辿り着くのは無理ってものさ。
 だが、おかげで私は理想郷の門(Geteway Utopia)にまで至る道を見つけることが出来た。
 こんなくだらない物語は即打ち切りに限る。センチメンタルなエンディングは……もうお腹一杯だ。だろう?」
「バロール様の仰る通りでございます!」
「さぁ深淵(アビス)の亡霊ども……宿れ、我が仔らに。お前達の魂は私が有効活用してあげよう。
 我が神の軍団 Cubia-Legion(クビアレギオン)……それがお前達の新たな名。第二の黙示録の幕、お前達が下ろすがいい!」
225名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:41:58 ID:qmVbnuoR
>>38 >>170 お待たせ? ルート表は本気にしたら負け? 何のことです?
おやすみおまいら
226名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 09:56:44 ID:CSR7ESCt
GJ
ルート表吹いたwww
小ネタ仕込みが多すぎてもうどれがどれだか判らんwww
227名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 11:07:20 ID:1sveTDZb
うおww職人マジで来たwww
GJ!!!!
つーか>>167の我侭、俺だ。わざわざありがとうございます。
ルート表見た感想。 


「やっぱり貴方が神だったのか」

ちょっと俺、この御方に仕えて来る!ノシ
228名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 11:35:29 ID:1sveTDZb
>>217

>本文はともかくあんまり自虐通り越して誘い受けな事を書かない方が良いと思うぞ

ですよね・・・気をつけます。指摘dクス!せっかく頑張って書いたんだし少しは堂々としてよう!(つっても自虐ったつもりは無く素で書いたんだが^^
初めて投下した上に、話書くのなんて初めてだったから緊張してしまった。投下した後に恥ずかしさと文のイタさ加減に泣きそうになったわ。
でもせっかくだし最後まで投下しきりたいとは思う・・・書き溜めとか全然してないから次書くのまだ時間かかるだろうけど。
話の全容は頭の中にはっきりイメージがあるので割りとサラっと書けるんだがA型故か、その後の見直し・修正に異様に時間が掛かってしまうorz
お話書くのって、こんなに大変だったのね・・・。でも凄い楽しくもあった・・・!!

所で全然関係ない上スレチだが絵ってどうやったら上手くなれんのかね?(じゃあ、質問すんな!って話
オリ設定にはなるがR:2版アウラ、モルガナ、カイトのキャラデザとか頭にイメージ出来てるしデザイン画みたいなの描いてみたいんだけど、
肝心の絵が描けないっていうww

スレ住人様方、よかったらここをああしろ、こうしろ等、アドバイスして貰えると素人な俺としては大変助かります。
なのでよかったら感想下され。参考にさせていただきます。
229名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 11:48:17 ID:CSR7ESCt
>>228
つ同人ノウハウ板
該当のスレは自分で探してくれ

イラストネタ自体は自分は歓迎
描き上がったら是非w
230名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 16:41:15 ID:VO5pawUm
うわああああああ神いらしてたああああ
今回もGJでした!
しかしレギオンと聞くとガメラにうぞうぞ群がってた
ソルジャーレギオン達を思い出してしまうww
231名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 18:53:48 ID:CpftXoYZ
職人様GJ!
ホント、神作品ですわこれ
232名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 04:14:15 ID:/qNRi4cI
>>218
チャートありがとうございますでもスレ違いに吹いた!

いやいや、好き嫌いはだめだな野菜もちゃんと食べやさい……
233名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 16:20:11 ID:zAex2clc
もりもりたべやさい
234名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 19:25:19 ID:L+GaGbXJ
>>230
>しかしレギオンと聞くとガメラにうぞうぞ群がってた
>ソルジャーレギオン達を思い出してしまうww

>『主が、「お前の名は何か」とお尋ねになると、それは答えた。「我が名はレギオン。我々は大勢であるが故に」……』
>『聖書か』
>『マルコ第五章です』
>『……レギオン』
>【金子修介監督作品  映画「ガメラ2 レギオン襲来」より】

>>219冒頭で既にレギオン出てきてるだろw
235名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 19:34:03 ID:GkoH23BT
ひとつ職人に聞いてみたい
完結するのか!?
236名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 04:45:51 ID:RBAruysR
おまいら乙
トーナメント3日目・TRILOGY劇場公開決定記念・この前投下出来なかった分でございます編投下
237名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 04:48:10 ID:RBAruysR
『勇者とは勇気ある者ッ!! 
 そして勇気とは打算なきものっ!!
 相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本当の勇気じゃあないッ!!!』

                           【ダイの大冒険(TVアニメ版) 第16話「ふるい起こせポップ! ひとかけらの勇気を!!」より】


















『て、天狼選手とカイト選手、互いに睨み合ったまま、こう着状態が続いております!
 い、一体いつまで続くのでしょうかッ!?』
『……たまらねェな。互いが自分(テメェ)の必殺の一撃を出し合う瞬間の“空気”ってのは……!』


「(参る……この一撃で決めるッ!)」
「(やっぱり速い! 炎の次弾発動が、間に合わないッ……!)」


まず最初に再確認しておかなければならないことがある。
それはカイトがプログラムの天才でもなければ重度のネトゲ信者でもない、普通の青年であるということ。
2010年、14歳にして初めて《The World》に触れ、年内にクビアを撃破し
アウラを再誕させ未帰還者をリアルに復帰させ、伝説のパーティ・ドットハッカーズのリーダーとして
勇者と呼ばれるようになった彼だが、決して非凡なる才能の持ち主であった、というワケでは、ない!
ひとえにバルムンクやワイズマンと言った優秀なプレイヤーらが彼を支えたからこその、偉業。
彼がカイトとして《The World》に登録したのは2010年の夏であった。
2010年12月24日にクビアを消滅させたことを視野に入れると、彼は半年もしないうちに
世界に完全順応した計算となる。
彼の活躍は“月の裏”でのミア救出劇以降不明であるが、2014年の夏にシューゴ、レナの兄妹が
カイトとブラックローズのPCを手に入れた経緯から推測するに、少なくとも2014年の春頃には引退していたのだろう。
2015年に天城丈太郎がカイトにRA計画の助力を求めているが、カイトはそれを断っている。
もう自分は《The World》に必要ないと思ったから。
サウスダコタ在住の友人宅にホームステイしながらの留学も決まっていたし、彼も自分の道を歩んでみたかったのだ。
大丈夫、もう《The World》に勇者はいなくてもいい。
だが、世界は再び彼を欲した。
また、彼の勇気が必要になったのだ。
あれから7年の歳月が流れ、彼は21歳になっていた。
照れる様に「もう勇者って歳でもないから」と笑っていたのを、覚えているだろうか。
だが、それはカイトの誤解である。
勇者とは、勇気ある者。皆の心に勇気と希望を与える存在、それが勇者。
まだ世界は彼の勇気を必要としている。蒼い炎は勇者の証……友との絆の色。
勇者最大の武器は勇気と希望、そして友情!
238名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 04:50:19 ID:RBAruysR

「(僕は最初、天狼との勝負はどうでもいいと思っていた。
  今夜ハセヲ君がキー・オブ・ザ・トワイライトとして覚醒して
  アヴァロンへの扉が開けば、僕自身は勝っても負けてもどうでもいいと……)」
「(片方の剣を捨てた……ッ!?)」
  

『こ、これはどうしたことでありましょうか!?
 カイト選手、双剣のうちの1本を捨て、残った1本の剣を逆手で右手に持ちつつ
 上半身を時計回りに捻り……こ、この独特のポーズはまさかッ!?
 かつて全国の少年達がリコーダーやホウキで真似をしたと言われる、伝説のオーヴァン流盗撮法……
 もとい、アバン流刀殺法・最高奥義ッ、アバッ、アバッ、アバンストラッ――――――――――――――――もががっ!』
『試合に集中できねぇだろうが! にしてもあの野郎、何つぅ闘気だ……底なしか……!?』 


恐らくあと0.5秒足らずで、間合いに踏み込んだ天狼の拳が飛んでくるだろう。
それも今しがたカイトの頬を掠った数十倍の威力を持った剛拳が。
残念ながらスピードは完全に天狼の方が上、更には近距離の格闘戦もやや天狼が有利。
カイトに残された選択肢のうち、勝利を得るためのものは限られている。
それでなくとも昨夜、来たる深淵(アビス)の軍勢との戦いに備え
コシュタ・バウア古戦場上空に浮かぶ闘竜マグメルドを従えるため
“蒼炎の守護神”形態へ変身して戦った影響が尾を引いているようだ(蒼炎の守護神形態についてXXXXコミックス2巻P200参照のこと)
絶好調を100とすれば、今のカイトは50〜60……いや、下手をすれば50未満の可能性もある。
ブランク期間が長かった影響と《R:2》に移行してのシステム変更など彼の枷は多い。
だがそれでも尚、彼をこうやって突き動かす信念。
理想郷を、目指す。
そこに行けばどんな夢も叶うという、誰もが皆行きたがるが遥かな世界。
その国の名はアヴァロン。何処かにあるユートピア。
《The World》の新たな可能性が待っているかもしれないロストグラウンド……エマとハロルドの、アウラへの最後の遺産。
そのアヴァロンに辿り着くまでは――――――――――――――――。

「(退かない……!)」

既にカイトの間合いへの踏み込みを開始していた天狼にも理解(わか)った。
眼前の少年の瞳に宿った、力強い輝き! 彼は全く戦意を喪失するどころか、勝利への執念に燃えている。 
天狼も同時に自身の拳の闘気の鋭さを増し、征く。勝つために。
互いに攻撃態勢に入りあとコンマ数秒で決着が着こうとしている中、
カイトと天狼の体感時間は非常にゆっくりとしたスローモーションのようなものであった。
交通事故などにあった際、動作や時間を極めて遅く感じることがあると言う。それは脳の処理による誤差である。
それでなくとも天狼は昨夜の準決勝にて
0.5秒先の未来を予測する太白に痛烈な一撃を見舞った実力の持ち主。
それに対抗するためカイトも自らの一挙一動を0.5秒以内に限定、それでもなおここまで対等に戦えるのは賞賛。
勇者の称号に全く固執しないカイトと、宮皇の座に執着したがためにAIDAへの感染を許してしまった天狼。
両者が戦うのは勇者としてとか元宮皇としてではなく、漢の意地のぶつかり合い。
性欲にも勝る闘争本能! 男は女以上に強い者に惹かれる……ただそれだけのこと。


「八咫……(大地を斬り――――)。
 オルカ……(海を斬り―――――)。
 バルムンク……(空を斬り――――――)。
 みんなの力……この瞬間だけでいいから僕に!!!(そして、全てを斬る――――――!)」


カイトの全闘気が剣に蓄積されてゆく。
その間は0.1秒未満と言ったところか。
一般的なプレイヤーがスキルアーツを発動させるよりも遥かに早く、発動!
だがそれでも尚、まだ攻撃を仕掛ける時ではない。
239名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 04:52:21 ID:RBAruysR

アリーナに集った観客達にとってカイトの実力は全くの未知数。
しかしながら彼も“勇者”と言う名の想像を遥かに越えた――――――――――怪物。
7年前に怪物・クビアを倒した時より、彼もまた怪物の仲間入りを果たしていたのだ。


『怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。
 おまえが長く深淵(アビス)を覗くならば、深淵(アビス)もまた等しくおまえを見返すのだ』


ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェ著「善悪の彼岸」の一節である。
カイトの敵は大悪神バロール率いる深淵(アビス)の軍勢。
どちらも人智を超越した至高の存在であるが故、相容れること、無し!
今回の理想郷(アヴァロン)争奪は言わば、カイトとバロールの私闘。
アウラを守護する者と、アウラを越えようとする者。
そのどちらも自らが正義であることを信念とし、行動している。
まだ目的の達成はされておらず、その過程での妥協は遠からず敗北を意味する。
故にカイトは自身を律し、この決勝で負けることを……良しとしないのだ。
アウラが見ている前で彼女の期待を裏切りたくはない。
それもある。
けれどこの大観衆の声援を聞いて初めて実感できたことがあった。
自分は「勇者」。
皆に希望と勇気を与える存在。
どれだけのことが自分に出来るかはカイト自身にも分からない。
だが……一度始めた以上、途中で放棄はしたくなかった。
彼もまたオーヴァン同様に物語の編纂に情熱を燃やす人間の1人だったから。
彼を非難する人間も当然のことながらいるだろう。目障りだと思っているはずだ。
それでもいい。
文句は終わった後に、幾らでも聞いてやる。
今は……この試合に勝利することだけに集中したい。
天狼が間合いに踏み込むまで、あともう少し。
常人からすれば瞬(まばた)きした瞬間に決着がつくであろう刹那の刻。
己の体感時間を極限にまで凝縮したカイトにとっては気の遠くなる程の思考時間。
必殺の一撃を天狼に叩き込まんとする絶妙のタイミングがやって来るまで、ただひたすらに。
大地を斬り、海を斬り、空を斬り、そして全てを斬る……その瞬間が、今!


「(来るッ!)」
「(殺った!)」


直後ッ。閃光。静寂。
あれだけ騒がしかったアリーナが、僅かな時間だが静まり返った。
攻撃を仕掛けた天狼と迎撃したカイト。
両者はいつの間にか、コンマ数秒前まで立っていた場所から姿を消し
全く別の場所に瞬間移動したかのように佇んでいる。
カイトは剣を振り切り、天狼は拳を突き出したまま、まるでそのまますれ違ったかのように微動だにしない。
このたった1秒にも満たない静寂の何と不気味なこと。
観客達は唖然。もはや勝敗の行方さえ、気にするのを忘れていた。
何か、自分達はとんでもないものを見てしまったのではないかという
心を根元からグサリと突き刺すような恐怖すら感じる不思議。
やがて……カイトと天狼、両者がすれ違って1〜2秒経っただろうか。
観客らにとっても、とてつもなく長い時間に思えたそれは、まるでゼンマイを巻かれた時計の針が回り始めるが如く――――――


「……見事だ」


天狼の一声によって、破られた。
240名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 04:54:59 ID:RBAruysR

『あ……ありのまま、今起こったことを話させていただきます……。
「天狼選手はカイト選手に接近したかと思いきや拳を突き出してすれ違い、そのまま倒れてしまった」……!
 な、何を言っているのか分からないと思いますが、私も何をしたのか分かりませんでした……!
 催眠術だとか……超スピードだとか……そんなチャチなものでは断じてありませんッ……
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わった……そ、そんな気分です……!
 た、大火様、今のは一体……大火様……!?』
『……』
『大火様ッ!?』
『――――――――怪物!』


潜在能力(ポテンシャル)……完全開花!
結果、闘争本能と防衛本能が瞬発的にではあるが同時に働き、敵を迎え討った。
天狼の拳も確かにカイトを捉えている。
あと数ミリでも届いていれば、カイトは致命傷……いや、この試合の敗者となっていたかもしれない。
だがそれよりも疾く、カイトの剣が……天狼を斬り裂いていた!


『天狼が繰り出した一撃、ありゃどう考えても掠っただけで悶絶ものの
 とんでもねぇ威力の拳だったはず……だが勇者の野郎はあえて真正面から攻撃を受け、
 天狼が拳を見舞おうとした瞬間ッ――――――――――――――――――――――――――――』





≪オォォォォオォォォォォォォオォォォォォオッ!!!≫
≪はぁぁぁぁぁああぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁッ!!!≫




咆哮が重なり。
天狼の神拳が勇者の身体を貫くかと思われた刹那、すれ違いざま剣が閃光となって疾っていたッ。


『とんでもねぇ野郎だ……別格の底知れねぇ強さを秘めてやがる。
 潜在能力だけなら……このゲームのプレイヤーの中でも最強かもな……
 昨夜の闘いはほんの準備運動みてぇなもんだったってコトかい……正直、ただ試合見てるだけで
 ここまでコントローラー持つ手が震えるたぁ思ってなかった……天狼が負けるワケだぁな!』
『えッ、て、天狼選手が、ま、負けッ……?』
『見ろッ!!!』


大火の指差した先に佇んでいた天狼。
……ゆっくりと舞台に崩れ落ちてゆく。
天狼のHPは――――――――――――――0。
カイトの放った渾身のクリティカル。
友と理想郷(アヴァロン)への想いを込めた斬撃(ストラッシュ)。約束された勝利の剣。
しかし、決して天狼が弱かったからではない。今回ばかりは……カイトの覇気が、天狼に勝っていた!
無論、カイトがこの試合に心を燃やしていなければ勝利していたのは僅差で天狼であっただろう。
互いに五分と五分、カイトは規格外の力をあえて使わず、一プレイヤーとして天狼の挑戦に応え……狼の牙を砕くに至った。
彼を特別視しているワケでも、贔屓目に見ているワケでもない……どちらが勝っても可笑しくなかったはず。
蒼炎の力だけでは天狼に対抗しきれないと判断し、直ちに迎撃態勢を切り替え……
カイトは最後の武器を使い天狼に勝利した。勇者に残された最大最後の武器……それが勇気と希望と、友情の力!
241名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 04:57:51 ID:RBAruysR

『てッ、天狼選手、ダウ――――――――――――――ンッ!!
 HP0、戦闘不能ッ! よってこの勝負、カイト選手の勝利です!!!』


我を忘れて見入っていたアナウンサーも正気を取り戻し、
まずはカイトの勝利をアリーナの観客達に高らかに宣言する。
どんな時も常にクールであれ、と自分にいつも言い聞かせてはいたが、こんな試合は前代未聞。
ジャッジマンも兼ねる彼も、これが試合であることをすっかり忘れてしまう程の極限バトル。
どちらの選手も応援したいが、贔屓はしてはならない。


『ハセヲチーム、まずは1勝目! しかし勝利したカイト選手も残りHPは1ケタ……
 何と言う、何と言う激しい攻防だったことかッ!? 
 本当にどちらが勝ってもおかしくない素晴らしい試合でしたッ!!!
 私もジャッジマンであることを忘れ、思わず両選手とも応援したくなる程のスーパーバトルッ!
 しかし私も審判者の端くれッ!
 一つ、贔屓は絶対せずに! 二つ、不正は見逃さず! 三つ、見事にジャッジする!
 審判ロボ・キャプテントンボーグ、只今参上ォ――――――――――――――――――――――ッ!!!』


アナウンサーが饒舌に実況を進める最中にも
大火は静かに今の攻防を脳裏でリフレイン、勝敗を分けたのが何であったのかを分析する。
彼が今回のトーナメントに参加せずあえて解説者の立場を取った理由。
強者同士の戦いの中で起きうるあらゆる状況を冷静に分析、この闘いに集う猛者らの強さを見極めるため――――――――。


『天狼の奴は確かに惜しかった……。
 攻撃が当たってりゃ勝てたかもだがよ、当たった所でそれが“残像”だったらシャレんなんねぇからな』
『ざ、残像と申しますとッ!?』
『勇者の野郎が瞬間移動したみてぇに見えただろう?
 こりゃワシの推測だがよ、互いの攻撃がぶつかるかぶつからねぇかって瞬間、勇者の野郎のスピードが
 捉えきれねぇ程の速さになり……CG処理が追いつかずに“そこに居るはずのない実体”を作り出しちまったのよ。
 天狼も天狼で0.5秒先の攻撃を見通せる人間離れした野郎だが、勇者は自身の行動を0.4秒以内に抑え、実行したってワケだぁな。
 恐らくあのまま天狼が勇者を殴っていても手応えはあったはずだ……ただし、飽くまで残像に蓄積された勇者の闘気の残り香(カス)だがよ……』
『“質量を持った残像”……というコトでしょうかッ!?』 
『ま、そういうこった。勇者の称号は伊達じゃねぇな、かっかっ!』


先程ジャッジマンは
「催眠術だとか……超スピードだとか……そんなチャチなものでは断じてありませんッ……」
と説明していたが、カイトは大火の予測通り「超スピード」によって天狼の神拳の速度を凌駕した。
闘気を込めた剣以外に、カイトも無意識のうちに発動させていた第2のスキル――――――――――――――「縮地」。
Xthフォームとなったハセヲの「ダッシュ」に似た能力であるが、そのスピード差は歴然。
発祥としては中国拳法もしくは沖縄武術であるとされ、古くは明治時代に「天剣」と呼ばれた
少年剣士が使えたとか、沖縄代表の中学生テニスプレイヤーが使っていたとか、10歳の魔法先生が使用していた等の
未確認情報もあるが定かではない。それ以前にネトゲで縮地を再現できる人間がいようとは、誰が想像できるだろうか。
しかしカイトはそれを(無意識とは言え)やってのけた。
潜在能力を解放させ己の限界を突破した時、新たな世界への入り口が開けたのだ。
これはチートではない。
カイトの勇者としての資質の開花によって生まれた新たなスキル。
危機的状況によって発動した“限定解除”である(解除許可は必要ないが)。

「お疲れ」
「……チッ」

ダウンした天狼の手を取り、カイトが笑う。
負けてしまった。けれど……彼の笑顔を見ていると、それもバカバカしく思えてしまう。
全力を出し切り負けた。悔いは無い。それよりもこの強者と出会い、拳を交えることの出来た歓喜が勝る……そんな気分だった。
242名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 05:00:08 ID:RBAruysR
劇場公開はまだしもDVD発売延期とかマジアリエネー?
>>235 「この1作品で完全に完結しています。最初から最後まで、1本の映像作品として終わっています。
    (中略)ただ、第2部、第3部に関しては、誰も知らない展開と結末が待っていますんで(ファミ通.com 2007/11/30 松山洋インタビューより抜粋)」?
何のことです?
おやすみおまいら
243名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 05:09:05 ID:/+e9MkMo
何処まで風呂敷広いんですか(*´д`*)ハァハァ
アバン様テラナツカシスwwwwww
GJ
244名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 17:46:31 ID:m97T0vlQ
トwwwンwwwボwww−wwwグwwwwバロスwwww
懐かしいってレベルじゃねーwwww
つかカイトどこまで強くなんだよwwwアバンに縮地、質量を持った残像に・・・って主人公補正の域を飛び出しまくってんぞwwww
もうそのうち闘気だけで星が崩れそうになるとかそんなとこまで行くんじゃないかと不安になってきたわwww
カイトさんよぉ、精々、龍玉と一体化して消滅しないように気をつけるこったwww
実にGJだった。もう自分の投下する気失せたわwww
245名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 19:23:31 ID:sEZqN1mV
やはり21禁に戻すべきだな
246名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 16:24:17 ID:4RH+3Vaz
第二部三部ってなんなんだー
247名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 20:54:55 ID:mNnhN+Lo
特訓して赤くなったあの男かw
248名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 22:47:05 ID:G5uCYg5b
保守
249名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 01:47:10 ID:8PBv0fNu
いつまでやってんのこれ
こういうこと書くとお前が書けと返ってきそうだが
この作品を否定しているのではなく
ちょっと場所を間違えてるような気がする
250名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 02:47:32 ID:qd8hrDpl
>>249エロ要素あるし、いんじゃね?
251名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 04:40:30 ID:aJ4hNYgq
んー、他の職人がいるならまだしも
現存してるのが氏だけだからなぁ

サイトつくってやるSS向きな気もするけど
まとめないと最初から読んでる人以外ついてけないし
252名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 05:31:26 ID:saqm3j1D
わかった。じゃあ投下すればいいんだな?後悔すんなよ
253名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 17:24:01 ID:tBotGrTm
どんと来いや
254名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 02:48:01 ID:4Z9b6BjB
どんと行きます。携帯からの投稿なので見辛いかもですが、ご了承ください
255名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 02:49:10 ID:4Z9b6BjB
「はっ…あ…んぁ…あ…っっ!」

ぴちゃぴちゃと淫雑な音をたてて俺に股がり腰を振る『彼女』を眺めながら行為に没頭出来ない自分に気付く

「あ…駄目…!はげしぃよ…ぉ…」

苦し気に出される吐息とは裏腹に『彼女』の頬は薄い桃色に染まり、口元を見れば嬉しそうに歪められていた

―しかしその瞳が映すモノが俺じゃないと気付いたのはいつの事だったろうか―

「くそっ…」

小さな悪態を1つついて俺は『彼女』の柔らかな臀部を両の手で鷲掴み、乱暴に俺と彼女を繋ぐ秘部同士を上下させる

「ぁ!?だ…駄目…そんなにされたら…わた、私イっ……!」

二の句はつむがせない、俺の胸に倒れ込み体を預けようとする『彼女』を押し上げて「ちゃんと見せてくれよ、イキそうなあんたの顔をさ…」と『彼女』の羞恥心を煽るように囁いてみる

「やだ…やだよ…恥ずかしぃ…よ…」
「はっ、そんな事言いながらギチギチに俺のを締め付けるのは誰だよ」

『彼女』の肉が俺の男根をキュウキュウに締め付ける、言葉では嫌がる『彼女』だが腰の動きは止まるどころか益々勢いを増し…容赦なく俺に射精感を促し続ける。
『彼女』は両手を俺の顔の横に起き体を安定させ腰の動きに一工夫を付け加える。
八の字に廻しながら腰を上下させたり、上下だけではなく前後にも動かしよりお互いの体を擦り合わせる。

「なんだよ…嫌だなんて言っておいて自分からいやらしい動きしてんじゃねぇか」
「うっく…らっ、らって…きもひぃ…んらも…あぁっ!」

『彼女』が淫らに腰を振る度に揺れる少々小振りだが形の良い乳房を右の手のひら一杯に包み、左手桃色の突起した乳首をクリクリと弄ぶ。
絶頂間近の『彼女』は全身が性感帯へと変貌している。耳たぶを甘噛みすれば細く短い吐息を吐き出し、鎖骨をなぞればぶるりと体を震わせ、背中を腫れ物を触るように撫でれば反り返り綺麗な曲線を描く。
ぷるんと一際激しく揺れた『彼女』の胸に魅せられた俺は衝動に駆られそれにむしゃぶりつく。

「あっ!や…乳首…駄目だ、よ…!」

ちゅるちゅると音をたてながら吸い付くと音に合わせて『彼女』の息が荒々しくなり、より扇情的な女の姿を晒す。
俺と『彼女』を繋ぐ秘部の辺りに空いた手を伸ばすと形は小さくとも爆発するのではないかと心配する程に腫れた豆に触れた。その瞬間――
256名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 02:50:48 ID:4Z9b6BjB
「はぅぅ――っ!?」

『彼女』は小さく、且つ小刻みに絶頂を迎えた。プルプルと『彼女』は膣内を痙攣させ、愛液を止めどもなく溢れさせる。

「イッた?」
「はっ…はっ…はっ…あっ…!」

もう受け答えする気力も無いようだ。しかし俺は『彼女』を突き上げるその行為を辞めようとは思わない。

―今日こそは―

そんな儚い期待を胸に『彼女』の柔らかくも張りのいいお尻を両手で掴み激しくピストン運動させる。

「駄目…駄目だ、よぉ…私、今…イッたばかりな…のに。またイッ…ちゃ――」
「何回でもイケばいいだろ?イカせてやるよ、ほら…顔あげろって」
「ふ…んん…!」

羞恥に魅せられ真っ赤に染まった顔を『彼女』はゆっくりと上げて俺に見せてくれた。
サラサラで柔らかい黒髪がふわりふわりと揺れ、まるで俺を常闇へ誘うよう手招きしているようにも見える。『彼女』が望むなら其処へ足を踏み入れるのも一興――むしろ本望でもある。
しかし『彼女』が望むのは俺ではない。俺じゃない…『彼女』がいつも見ているのは『あいつ』の後ろ姿だけ。
そこで思考はストップ。フリーズした筈の脳内神経はアドレナリンを大量に分泌させ、俺の心に支配欲と悲壮感を刻み込んだ。

―イヤだ…そんなのイヤだ!『彼女』に見て欲しい、俺を…俺という存在を!―

焦燥感にも似た想いが俺を更にたぎらせ、『彼女』の肉体に埋め込み出し入れしている肉棒が膨張を極める。

「志乃―――!!」
「あ…」

堪らず俺は上体をお越し、志乃を抱くよう対面座位の形へ持っていく。
少し意外そうに驚いた顔をした志乃は(恐らくは―自覚はある)涙目の俺をその黒い澄んだ瞳で捉えてから微笑んで見せてくれて、そして自分の両腕を俺の首に巻き込み今日初めてのキスをしてくれた。

「志乃!志乃!!志乃――!!」
「はっあん…ぁぁ…ん…は――あぁ!」

次第に視界がボヤけ霞んでいく、もう耐えられない。俺の分身が暴発しそうなくらい膨れ上がっているのが分かる。

「あ…ちょ…おっき…おっきくなって…あ!駄目!!イク――!」
「志乃…このまま…イクよ!」
「ああああぁぁぁぁぁ―――!!!」

257名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 02:53:00 ID:4Z9b6BjB
志乃の中に俺の心と体に溜まっていたドロドロとしたモノを吐き出した。
ビクビクと小刻みに震える志乃は焦点を合わせず天井を見上げながら恍惚の笑みを浮かべている。
そんな『彼女』の胸に俺は顔を置き、きつくきつく抱き締めて一言だけ…志乃の心に届くよう、心から心を込めて呟いた。

「俺は…ここにいるよ――」

とうとう、今日も『彼女』が俺の名を呼ぶことは無かった。










続く?
258名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 02:54:55 ID:4Z9b6BjB
以上です。
タイトルは入れ忘れました。ちなみに『その名を呼ぶ声を』と言うタイトルを入れようと思ってました。

機会があればまた
259名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 19:41:17 ID:lJ9QyDph
グッジョブだ。
260名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 21:35:10 ID:kkT2MMfW
>>258
志乃分補給補給w
このスレ人少ないけど
ネタ浮かんだらまたよろしく願います
261名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 05:50:18 ID:pcn7xIoz
おまいら乙
トーナメント3日目・「もものしゃけは静かに暮らしたい」編投下
262名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 05:52:22 ID:pcn7xIoz

『あるのはただ、前進してゆく力だけだ。
 その力を創造しなければならない。解決なぞ、そのあとで見つかる』

                                【アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ  フランスの作家・飛行機乗り】























「赤ちゃんみたいですよ、亮クン……」

胸を吸い続ける俺を千草が小さく笑いながら揶揄する。
反論することもなく、俺は千草の胸の突起を吸い続けた。
すると千草が俺の髪を撫でながら、両腕を背中に廻してくる。
さっきは少しばかり攻めすぎたかと思ったが今日の千草は割と機嫌が良いらしい。
相変わらず大きいとは言えねぇが、俺は千草の胸が好きだ。
現にこうやって吸ってると落ち着くし……アレだ、おしゃぶり咥えたり指咥えたりする赤ん坊の感覚に近い。
が、さすがに赤ちゃん呼ばわりされるのは
志乃にならまだしも千草から言われるっつーのは……ちょっと納得できない。
こりゃ今夜もおしおき確定、だな。

「っ!? りょ、亮クンッ……!?」

打って変わって強く突起を吸われたのに驚いた千草の腰がベッドから僅かに浮く。
今までの経験から言って、俺が千草の胸を吸っている時に吸う力を強めるってコトは
不機嫌気味になってるってコトを、千草だって理解してるはずだ。
なのに、千草はあえて刺激を求めて俺を不機嫌にさせようとする。
元々Mっ気があるのか、それとも俺と付き合いだしてこうなっちまったのか……そこまでは分かんねーけど。

「赤ちゃんとか言った、お返し」
「だって……ホントのコトじゃないですか」
「千草だって乳首こんなに硬くしてんじゃん」
「それは……亮クンが吸うから……ッ……」

言うじゃねぇか、俺が吸う前から硬くしてたくせに。
よくよく考えると千草、“えっちなのはいけないと思います!”とか言ってる割に
自分から進んで俺んちに泊まろうとしたりと積極的なトコロもあんだよな。
メールでしょっちゅう呼び出されて、千草のお気に入りのエリアにホイホイついてった俺も俺だが……。
263名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 05:54:25 ID:pcn7xIoz

「亮クン……自分がえっちだからって、それを私のせいにするのは……ダメだと思います!」

膨れっ面の千草。
コイツもこうなると頑固なところがある。
どうあっても自分を正当化したいらしい……付き合った頃に比べると、随分自分の意見率直に出すようになったじゃねぇか。
平常時になら感心してやるとこだが、今はそうもいかない。
せっかく気持ちよく胸を吸ってたのにそれを無理矢理中断させられたら
それこそ俺だって続行を要求したくなるってもんだ。
千草の胸の突起はさっきまで俺が舐めたり吸っていたせいで唾液にまみれている。
さっさと再開したいのに千草はくどくどと説教ばかり……やっぱ、まだコイツ宗教気質抜けてねーなぁ。

「千草」
「な、何ですか」
「説教とかいいから、ヤりたい」

俺を一旦引き離して一定の距離をとっていた千草に再接近、
ただし正面だとまた引き離されそうになるので、今回はバックをとってみる。
幸いベッドの上なもんで、多少荒っぽい動きをして倒れこんでも衝撃は無い。
形勢逆転、千草を後ろから抱きしめる体制でロックすることに成功した。
千草はしまった、とばかりに小さく声をあげるも後の祭り。

「俺にこういうコトされんの、さっき好きだって言ったじゃん」
「い、言いました、けど……でも、えっちが好きってワケじゃ……」
「まだ言うか」
「はふぃふふんれふかぁ〜(なにするんですかぁ〜)!?」

反論する千草の両頬っぺたを、背中越しに両手で引っ張ってやった。
嘘をつく口はこの口か? あん?
勿論、本気じゃなくて軽く引っ張ってるだけだ(つーか本気でやるほど俺も鬼じゃねぇ)。
む……何だかんだで頬っぺたもやーらかいな、コイツ。
初めて抱いた時も思ったけど、女の身体ってのは男と違って華奢だし、何より軟らかい。
何処の軟体動物かと……そう思うほど。

「うぅ。何で引っ張るんですかぁ」
「千草が嘘つくからだろ」
「……だって」
「だって、何だよ」
「亮クンと一緒に居ると……
 ど、どんどん、私が私じゃなくなっていくみたいで……へ、変に、なっちゃいそうで……」
「なりゃいいじゃん。変に」

最初に千草とヤった時は


『そんなコトよりっ! 亮クンはいつからこんなエッチなコトを覚えたんですかっ!
 女の子の身体に興味があるのは仕方ないですけど、こ、こんなコトやってたら……ば、馬鹿になっちゃいますよ!』
『なりゃいいじゃん。一緒に馬鹿に』


こんな感じだったか……。
1年経ってもこーいう部分っつーかやり取りだけは変わってねーな、俺ら。
ま、どーでもいいか。
2人でこーいうコトやってる時点で変だし?
うる星やつらの初期ED風に言うと「変と変を集めてもっと変にしましょ」ってヤツだ。
264名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 05:56:29 ID:pcn7xIoz

「俺もとっくに変になってるし……問題なくね?」
「亮クンが変態さん、っていうのは私も知ってます……って、問題ありまくりじゃないですか!」
「ねーよ」

あんまり千草がつべこべ言うんでちょっとだけ強硬手段。
黙らせるのも兼ねて、後ろ向きのまま両手で胸を鷲掴みにしてやる。
俺の手が大きいだけかもしれねーが、千草の胸は俺の掌に十分納まるサイズ。
ぶっちゃけると貧相。だがそれがいい。
今の世の中、でかいおっぱいが幅を利かせちゃいるがミニサイズにもミニサイズの良さがある。
例えば……えっと……肩が凝らなくて済むとか……そう、色々だよ。

「変態のカレシに胸、揉まれる感想は?」
「……もう、変態どころかケダモノに降格ですっ!」
「そりゃどーも」

ついにケダモノ扱いかよ。ま、いいけどな。
俺はこうやって触れりゃ問題ねーし?
それに……気のせいかも、だが1年ちょっと前に比べると千草の胸、ちょっと大きくなってねーか。
……会う度に毎回ヤってりゃ大きくもなるか? ホルモンとかの関係で……。
そーいや、彼氏とヤりまくってる女は足首細いって言うしな(千草の足首は最初から細いから区別つかねーが)。

「なぁ、もう付き合って1年くらい経つよな? 慣れろよ千草」
「そうは言いますけど……わわわ私だって、すごく恥ずかしいんです……!」
「ホントにそう思ってんのか」
「ひゃうっ……!?」

両胸を捏ねるように大きく動きをつけて揉んでやると
素っ頓狂な悲鳴をあげて肩を震わせた。
体温が上がり、肌は熱を帯びてほんのりと赤い。嫌だ嫌だと言いつつもやっぱ身体は正直だ。
そのまま追い討ちをかける様に、今度は胸を揉みながら千草の真っ白な背中にキスをしてやる。
さっきまで着けていたブラの後が残っていたから、そこもラインに沿って舌を這わせて舐めて。
たまらず千草はもがく。
が、その度に俺が手に力を入れて揉む力を強めたり、背中を吸い上げる力を強めると大人しくなる。
そのうちどんどん息も荒くなって、自然と肌の上に汗も浮かぶようになってきた。
千草の黒い髪から香るシャンプーの残り香でクラクラするのに耐えながら、俺は手と口を動かし続け……。

「あっ、あのっ!」
「? どした」
「せ、背中……あんまり吸わないでください」
「どうして」

吸うなって言われても……なぁ。
お前があんなに抵抗するから、抵抗した分だけ吸っちまったし……
もう結構な数の内出血の痕跡が背中にチラホラあるし。

「うぅ〜、わ、分からないんですかっ!?
 た、体育の着替えの時……ほ、他の子に、見られちゃうからです!」
「隠しながら着替えればいいだろ。理解不能、理解不能」
「ふ、普通は胸を隠すために後ろ向きになるんですよっ!
 私みたいな胸の貧相な子は特にっ! でもそうしたら背中のキスマーク、丸見えじゃないですかっ!?」
「あ。理解『可』能」

なーる。
でも会話に花が咲いていいじゃねぇか。
それに女同士だし、別に裸見られるってワケじゃねーし、んなの見られたくらいで……なぁ?
265名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 05:58:48 ID:pcn7xIoz

「見られたら見られたでいーじゃん。
『彼につけてもらったんです、いいでしょ?』くらい言ってやれよ」
「そ、それ、絶対私のキャラじゃないです……」
「他の女だってお前みたく、彼氏とヤって、その時にキスマークくらいつけてるって」
「そ、そうかなぁ……」
「そうそう」

と、口からとんだデマカセを言ってしまったワケだが。
まぁ実際そんなもんだろ。
千草はイジめられてた経験のせいで、周りの視線をちょっと気にしすぎているだけだと思う。
あんま神経質になると被害妄想とかに取り付かれかねねーからな。

「でも亮クン……さっき私の胸を触ってる時……失礼なコト、考えてませんでしたか……?」
「例えば」
「この大きさなら肩も凝らないだろうな――――――とか」
「(うへぇ。バレてる)」

いや、この頃少しだけ大きくなったかも? とかも思ったんだぞ。
ゲームで巨乳を見慣れちまった俺にとっちゃ、お前の胸の貧相さというか慎ましさが逆に新鮮と言うかだな……。

「そうですね……私、一度も無いですよ。“肩が凝ったコト”なんて……」
「け、結構じゃねぇか」
「ブラも着けるだけ無駄って感じです……うふふ」
「あはは……は……」

……全く成長なしってコトかい。
そりゃ開き直るわ。

「亮クン……私にメールでスリーサイズを聞いてきたコト、ありましたよね」
「き、記憶にございません」
「ありましたよ。私、ちゃんと覚えてます」
「(クソ、興味本位であんなメール送るんじゃなかった……ッ)」
「……やっぱり、大きい方が亮クンの好みですか?」
「それはない」

ない、と言うか、お前と付き合うようになって
「このサイズも意外といいかも」とか思えだしたからな……。
最近はコンビニでマガジンとかチャンピオンの立ち読みしても
巻頭グラビアの巨乳アイドルの写真とか見ても「ふーん」って程度しか思わなくなったし……
な、慣れって恐ろしいぜ。

「胸のデカさで女の価値が決まるってワケでもねーだろ?」
「悟ってますね……周囲に胸の大きい人が多いせいですか? 
 パイさんとか揺光さんとかカールさんとか志乃さんとか楓さんとか……」
「お前のPCだって……アトリだって、それなりにデカいじゃねぇか」
「あ、あれは……が、願望の現われと言いますか……り、理想のサイズと言いますか……」
「(あの大きさが理想なのか……まぁ……現状がコレだと、理想の大きさもああいうサイズなんだな……)」

とまあ、こんな感じで俺が千草の胸を揉んでいる間にも問答は続く。
あんま口に出さないけどやっぱ大きさ気にしてんだな……この年頃の女なら誰でもそうかもしれねーが。
けど、さすがに外人とかみたくシリコンとか詰め込んでまで……は行き過ぎと思うワケだ。
自然なままが一番良いと思うけどな、俺は。
千草に関しちゃダイエットの必要は全くないみたいだし……むしろもうちょっと肉つけてもいいくらいだ。

「千草は千草のまんまでいいんだよ。無理する必要はねーって」
「亮クンがそれで良いなら、そうしますけど……」
266名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:01:06 ID:pcn7xIoz

「って……カッコいいコト言いながら、胸は揉み続けるんですね……」
「千草が胸大きくしたいなら手伝ってやんねーとダメだろ、彼氏として」
「……(さっきは『千草は千草のまんまでいい』って言ってくれたのに……亮クンのえっち)」

こーいうどーでもいいコトで怒る千草はホント可愛いな。
最初に知り合った頃……まだハセヲとアトリだった頃はあんなにウザかったのに。
でも、三爪痕にデータドレインされて3rdフォームから1stフォームに戻った俺を
ハセヲだと理解してくれていたのは、コイツだけだった。
「どんな姿でも、ハセヲさんはハセヲさんじゃないですか」だって……。
榊のせいでお互いが理解し合えるまでに時間はかかっちまったけど……俺はお前に会えて良かったと思う。
お前を通して志乃を見ていたのもホントのコトだけど……今は、お前だけだから。

「千草」
「……何ですか」
「ありがとな。大好きだ」
「えっ……」

お前が頑張ったの、俺は知ってる。
頑張ったから辛かったことも知ってる。
お前が俺に見せた、あの精神世界。
お前の逃げ場は《The World》にしかももう残されちゃいなかった。
でもな、逃げて何が解決するワケでもねぇ。
目ェ逸らせば逸らした分だけ、自分を追い詰めちまう。
人間の心を食い物にするAIDAに付け入る隙を与えちまう。
千草、言ってたよな。もっと自分を見てほしい、って。
榊がお前に与えてた偽りの優しさや暖かさなんかじゃなくて……日下千草としての自分を見てくれる奴が欲しかったんだろう?
俺は……正直、志乃のことしか頭ン中になくて……お前が抱えてる悩みなんか
これっぽっちも分かってやれてなかった。他の奴のことだってそうだ。
一番辛いのは、俺自身だ、って。志乃を助けるために頑張ってる俺が、一番辛いんだって。
勝手に自分でそう思い込んで、誰のことも心の底から信用できずに突っ走ってた。
けど、お前の心を垣間見て、お前の心の闇を知って、気づけた。
届かない声なんて―――――――――――きっとない。                               ザッ ザザーッ

「千草の全部が好きだから」
「ぜ、全部……ですか?」
「千草の眼も、鼻も、口も、耳も、手も、脚も、胸も、腹も、尻も……ココも」
「ッ……!?」
「全部な」

思った通り……俺が胸吸ってた辺りから濡れてたんだな……。
千草の下着に指で触れてみると、独特の湿り気を感じることができた。
更に指で押してみると内側から淫水が染み出してくるのが分かる。
感じやすい体質の千草と幾度もこういうコトやってるせいか、徐々にではあるが俺も女の扱いに慣れてきたと思う。
が、そんな感慨に耽る前に一旦指を引き抜いておく。こっちにも段取りあるしな。

「もうこんな濡れてるじゃん」
「み、見せないでくださいよぉ……!」
「でも千草が出したんだろ」
「知りません、知りませんっ……いぢわるしないでください……」

俺自身、千草と数えるのも忘れるくらいヤってるが……千草の反応はいつも面白い。
気分が良い時はそれなりにノってくれて、俺が多少無理なコトを言ってもヤらせてくれる。
が、機嫌の悪い時もたまにあって、そういう日はあまり積極的に俺の頼みを聞いちゃくれねぇんだ。
千草とヤる時の約束は1つだけ、膣(なか)出しはNG。
射(で)そうになったらとにかく引き抜いて射(だ)すか、事前に抜いておいて千草の身体にかけるか口の中に出すか……
パターン的には毎回そのうちのどれか。
でも付き合ってもう1年近くになるし……そろそろ、俺も我慢が効かなくなったワケで。
267名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:03:16 ID:pcn7xIoz

「千草……」
「っ、ふぁ……っ……は、い……」

淫水に濡れた指先で千草の胸をなぞる。
慎ましやかだが指で触れればちゃんと軟らかいし、僅かだがぷにぷにとした弾力もある千草の小さな胸。
耳元で微かに俺が囁くだけで千草の吐息が甘いものへと変化してゆく。
嬉しがっているような、少し怖がっているような、そんな声。
千草はいつも節度ある交際を求めているせいかちょっとばかりこういう行為に関して潔癖なとこあるからなァ。
ま、俺以外の男にゃこんなコト出来ねぇだろうし、させる気もねぇ。
可愛い千草。俺だけの千草だ。他の誰にもやらねぇからな。
……俺、将来千草との子供が出来たら、自分の子供にも嫉妬とかするんじゃねーだろうな。
まさかな。

「今、俺が何考えてるか分かるか」
「わから……ぅ、ない、です……っ……」
「千草とのこれからのこと」
「えっ!?」

俺の口からンな言葉が出たのがそんなに意外か?
千草は喘ぐのも忘れて、首を傾けながら俺を凝視する。
身体はもう十分に火照り、汗が流れて肩まで伸びた髪が千草の肌に貼り付いていた。
汗の匂いと千草の匂い、それと淫水特有の匂い、俺の匂い……俺の部屋に充満している。
そのせいかもしれない。
俺が普段滅多に口にしねぇようなコトを口走っちまったのは。                         ザザッ ザーッ

「俺達、去年から付き合ってるよな」
「はい……」
「でも千草、まだ一度も……その、膣(なか)で出させてくれねーし……」
「そ、それは……赤ちゃんが出来た時、困るから……!」
「お前、昼間言ってたよな。
『女の子は誰かに「好きだよ」って言ってもらえないと、死んじゃうんです』って。
 男もな。女に受け入れてもらえねーとな……すげー不安になること、あるんだぞ?」
「うぅ……言いたいことはごもっともですけど……」

その気になれば、コイツの言うことなんか無視して
無理矢理にでも膣出しする機会はいくらでもあった。
力づくでベッドに押し倒して俺に従わせることだって、いつでも出来た。
けど、それって違うだろ? 何か違うよな? 俺が欲しいのは、そんなんじゃなくて……。
いじめられてた経験のある千草にそんなコトしてみろ、どう考えても俺がサイテーじゃねぇか。
俺はそんなこと、力づくで千草を自分のモノには絶対にしない。
何故か? 俺は本当の紳士を目指しているからだ。好きな女の前でくらい、カッコつけたいんだよ。
言ってることは千草にとっちゃ滅茶苦茶理不尽だろうけどな。
もしかしたら妊娠しちまうかもしれねぇし、しかも本人は「絶対に中絶せずに産む」とか言ってるから尚更だろう。
実は俺も千草の安全日ならOKじゃないか?と思った時が、あるにはある。
が、面と向かって本人に生理の周期を聞くのも恥ずいし、何かもうヤることしか頭にない馬鹿としか思えず
ズルズルと1年の月日が流れちまったって経緯がある。

「今日はもう、俺、歯止め効かねぇと思う……」
「……コンドームじゃ、ダメなんですか」
「今まで一回も使ったことねぇだろ。今更、そんなの使いたいと思うか?」
「うっ」

もう下半身には十分な程の血液が集まって、生地越しに千草の身体に熱を宛がっている。
今日こそ千草に全部ブチ撒きたいという衝動で、自分でも制御できるかどうかちょっとばかり不安になるくらいの……熱。

「何と言いますか……その、私……えぇと……」                                      【TO BE CONTINED....】
268名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:05:30 ID:pcn7xIoz


『この岸辺露伴が 金や ちやほやされるために マンガを描いてると思っていたのかァ――――ッ!!
 ぼくは 「読んでもらうため」 にマンガを描いている!
「読んでもらうため」 ただそれだけのためだ。単純なただひとつの理由だが それ以外はどうでもいいのだ!』

                                            【岸辺露伴  荒木飛呂彦原作「ジョジョの奇妙な冒険」 コミックス34巻より】














「ごめんね。決勝の前なのに時間とらせちゃって(志乃さんはもう居ないのか……^^;)」
「まだ結構時間余ってるし問題ねーぜ。で、相談って何だよ」
「うん^^ 実はさ、そろそろカナードも専用ホームページ作ろうと思うんだよね」
「ホームページィ?」

何の相談かと思ったら……んなコトか。

「ハセヲが頑張ってギルドランクを上げてくれたおかげで、カナードもかなり知名度が上がってきたんだよ。
 もっと大勢の初心者をサポしたいしさ、僕らのやっていることを色んな人達に教えたいんだ」
「へぇ」
「まだ思案段階なんだけど、やっぱりこういうコトってギルマスのハセヲの許可がいるしね^^
 ハセヲも手伝ってくれるでしょ?」
「だが断る」
「えッ!?」

あのなぁ。俺がそーいうのに全ッ然興味ねーの、お前だって知ってるだろ?
つーか“死の恐怖”がホームページ運営とか……BBSの格好のネタじゃねぇか……。
開設したその日に荒らしが来るぞ、間違いなくな。

「……シラバス。
 俺が“自サイトの運営とか管理とか、ンな糞面倒なコト”好んでやるような人間に見えるか?」
「見えないね^^;」
「だろ」

こうやってログインして“フツーにプレイすんのが一番性に合ってる”しな。
そーいうのは全部お前らに任すわ。
って……前にシラバスに紅魔宮でのトーナメントのメンバー募集させた時、
BBSに俺の名前使ってカキコしてたコトあったっけ……しかもメンバー見つかったと思ったら罠だったし……。
……全部任せるのも考えモンだな。

「うーん。
 確かに月の樹やケストレルみたいにメンバーがいっぱいならともかく、
 いくらギルドランクが高くてもメンバーがたった4人じゃ、やっぱり今はまだ無理かな^^;」
「時期尚早ってこった。
 そのうちギルドに入りたい、って奴も現れるかもしれねーし今年いっぱいは見送ったらどうだ?」
「そうだね……もうちょっと待ってみるよ」
269名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:07:40 ID:pcn7xIoz

トーナメント3日目。
志乃と別れ、シラバスと再合流したハセヲを遠方より見つめるプレイヤーが1人―――――――居た。
桃色の髪と魔女っ子風のコスチュームが特徴的な女性魔導士PC、ギルド・トライフル所属の“しゃけ”である。

「こんにゃー(・〜・)ノ」

各ルートタウンで彼女を見たことがある、というプレイヤーも多いだろう。
ギルドショップにて彼女が店番をしている姿も目撃されている。
トライフルはギルドマスターのニンジャトを筆頭に、しゃけ、へな子、朔、そして最近新たに加入した
アイナを含めて全5人という、カナードに負けず劣らずの少数ギルドである。
にも関わらず、トライフルの認知度は意外な程に高い。
ギルドマスターのニンジャトは「よもやまBBS」における奇妙な書き込みで知られているが、
特に《The World》内にて目を惹くような活動を行っては、いない。
むしろ彼以外のギルドメンバー、しゃけとへな子、朔による創作活動がギルドの名を広めるのに一役買っている、と言える。

「ありがつごじます(*==)」

朔に誘われトーナメントに出場したはいいが、2日目の試合でまさかの
前竜賢宮宮皇の太白のチームと対戦、呪紋を詠唱する間もなく瞬殺されてしまったことは記憶に新しい。
そもそも魔導士3名というチーム編成が最初から無謀であり、1回戦で勝利出来たのは本当に運が良かっただけなのだ。
最初からこの無謀な賭けに乗ることを拒否した、トライフルのもう1人のメンバー
へな子の判断は正解だったワケだ(へな子が朔のチームへの加入を拒否したため、しゃけがトーナメントに参加するハメとなった)。
ちなみに全く関係ないが、へな子がタウン移動中にたまに口ずさむ
「ゆうてい宮皇(みやおう。チャンピオン、ではない)きむこう」とは
「ドラゴンクエストU(ファミコン版)」における復活の呪文の1つで
「ローレシアの王子がゲーム開始直後からレベル48」という前代未聞の裏技として一世を風靡した。
何故へな子がそんなコトを知っているのか? ネトゲ暦19年のしゃけにも分からない。
ひょっとしたら、しゃけよりもへな子の方が年上の可能性もあるが……それを詮索するのは無粋であろう。

「歳とか気にしていてはダメです。愛は数値で表すことができないんです(*゚ー゚)」

そんな彼女のインスピレーションを大いに刺激する存在、それが宮皇のハセヲ。
最近はよく朔とパーティを組んで遊んでいるようだがしゃけ自身も彼との交流がないワケではない。
現にこれまでトレード、ギルドショップでの売買と、彼と接する機会は何度もあった。
彼の活躍はしゃけとて知っている、と言うより《The World》中の誰もが知っている。
しゃけの観点から見れば見るほどハセヲの活躍は興味深いものがあった。
「うなる2丁拳銃 驚愕の早撃ち」「インディニャンうそつかニャイ(ドラクエV?)」
脳内興行成績堂々の1位!! 全米が泣いた!!(色んな意味で)
言わばロードムービー。壮大な大河ドラマの一節を垣間見ているかのような、そんな気分。
“死の恐怖”と恐れられた最強のPKKが仲間と共にアリーナに挑戦し
あれよあれよと言う間に紅魔宮、碧聖宮、竜賢宮の三階級を制覇、更には一連のAIDA騒動を鎮静化させたのは
彼とその仲間達ではないか、という噂まである。

「*おもしろす* (´▽`)」

7年前に勇者カイトとその仲間、ドットハッカーズが
《The World》で起きたウイルスバグ事件を解決したという噂とよく似ている。
しゃけは当時《The World》ではなく《Ultra Online》に登録して遊んでいたが、
前述したドットハッカーズの活躍が《The World》に興味を持った最初の理由かもしれない。
そして2017年現在、ハセヲとの出会いによって彼女の中で大きな変化があった。
ただひたすら、がむしゃらに仲間達と共にタウンを駆けるハセヲを見て
「若いのう(´・ω・`)」と思う半面、自身の中に何かフツフツと沸き立つものを感じたのだ。
それは、忘れかけていた”情熱”!
自分が本当にやりたいものは何だったのか? ハセヲはそれを彼女に教えてくれた。
AIDAによる事件沈静後、しゃけは新たな境地を開拓すべく遠からずハセヲを“(色んな意味で)見守っていた”のだ。
270名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:10:19 ID:pcn7xIoz

彼を見守り続けた結果、しゃけの達した結論は“歩くような速さでもいいから、立ち止まってはいけない”ということ。
それはつまり“自身もまた芸術家(アーティスト)である”―――――――という信念がそう思わせるに他ならない。
仮に彼女の創作活動を止められるものがあるとすれば
“現在使用しているPCがHDごとブッ壊れる”か“突然の事故・病気”、
もしくは“完全に絵のネタ切れになった時”くらいのものだろう。
幸いなことに今のところは“どれもまず、ありえない”。
自己を表現する場として《The World》、そしてアプカルルを彼女は選んだ。
言い方は少々下品になるが、彼女にとってアプカルルとは

“止め処なく溢れてくるどうしようもない妄想を垂れ流す場所”

とでも言えばいいのか。ぶっちゃければ“チラシの裏”だ。
無論、古参のユーザーからすれば彼女は“いつまでゲームやってんの?”と指摘をされかねない程
長期的に《The World》という世界にのめり込んでいる。
しかし、アプカルルに絵を投稿したところで報酬が得られるワケでもなし。
ましてや、ちやほやされるコトなど最初から求めては―――――――――――いない。
ただ単に“自分の妄想の一部”を他者に見せるのも悪くないと思った、それだけだった。
全てのユーザーからの理解など、求めはしない。
他者の思考は難解である。
生まれも、育った環境も、趣味趣向も、全く違う他人。
しかもネットでは顔や性別すら分からない。
彼女とて自分がどんな人間かを完全に把握、理解など出来ているはずもなく。
そんな未熟な自分が他人を理解し、また理解されようと思う……それは到底解けることのない難解なパズルに似ている。
19年のネトゲ生活が彼女に合理的かつ建設的な思考を与えるに至っていた。

「しゃけは静かに暮らしたいのでごじるます(・〜・)ノ」

気の合う仲間と共に気ままに絵を描き“気の向いた時にアプカルルに投稿できればそれでいいのだ”。
これは遊び、趣味の一環である。
だが“やるからには誰が何と言おうと最後までやり通す”という信念に基づいた“それなりに本気の趣味”でもある。
けれど、ここに矛盾が生まれる。
しゃけ自身はただ“見てもらうため”に絵を描いていると自負しているが
決して他者の理解を求めているワケではない。
が、“見てもらうため”という行動の延長に“他者に理解されたい”という淡い願望があることも―――――――事実!
この矛盾を押し殺すため“彼女は常に道化を演じ、自身の心を悟られないように振舞う”。その点では、へな子と気が合うのも道理。
しかしながら彼女も人間。
生活の中で空いた時間に気ままに《The World》へとログインし、ギルドの仲間達と共に
イベントに参加してみたり、クエストをしたり、見知らぬ誰かとアイテムをトレードしたり……
その合間に絵を投稿できればいい、それが“彼女の小さな幸せ”なのだ。
一連のAIDA騒動で《The World》に嫌気がさした時もある。
前々からメンバーアドレスを交換していた親しい者達の中にも、他のネットゲームに乗り換える者が居なかったワケではない。
ネトゲ暦19年の彼女にとっては、そんな別れは幾度も経験してきた恒例行事のようなもの。
彼らは“《The World》は自分の居るべき場所ではない”という結論に達し、このゲームを去った。
ならば彼女はどうか。「退」屈と断ずるに些かの躊躇も持ってはいない!
何故なら自分もまた“《The World》の住人の1人であるという思いが、彼女を踏みとどまらせているから”。
他者から見れば傲慢そのものだろう。“その信念を貫く場所を違えているのではないか”と。
しかし、彼女のアイデンティティは今限りなく“《The World》とアプカルルに注がれている”と言える。
愛(アモーレ)。彼女が《The World》を愛しているからだ。無論、偉大な先人達と同輩への敬意も忘れてはいない。
しゃけの愛が“何処に向かおうとしているのか”、それは彼女の絵を見たユーザーの受け取り方次第。
着実に彼女は“自身が進むべき終着点”へと歩みを進めている。その歩み、止められるか否か? 否だ。
“自身を表現するにはココこそが唯一にして最高の場”であり“ココ以外の場所など有り得ない”と“彼女は確信している”のである。
故に、“もものしゃけは動かない”。

「すまんのう(´・ω・`) 」
271名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:12:28 ID:pcn7xIoz
“ま…そんなことはどうでもいいか……ぼくは学者じゃなくジャーナリストでもないし漫画家だからな……”?
しゃけのように考え、しゃけのように行動? 何のことです?
おやすみおまいら
272名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 06:41:29 ID:bak71Gc8
毎度乙
273名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 13:40:29 ID:yiiV4o8n

サブキャラ掘り下げイイヨイイヨー
もっとやっちゃえ
274名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 17:23:23 ID:K2EbCtpZ
今まで投下したものひとつにまとめてくれないかな
ついていけん
275名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 20:15:16 ID:u8q/rR/s
>>167の要望に応えて>>218でルート表とその話が載ってるスレ番号まで書かれてるのにお前ってやつは・・・
過去ログが見つからないからカリカリしてんのか?職人のリアルの都合とかも考えろよ・・・
一度しか言わないぜ?  
http://snapshot.publog.net/にアクセス。見たい過去ログのURL貼れ。>>1に載ってるURLだと12スレ目と14スレ目しか見れんがな(ログ保存の鯖が変わったせい)。
>>2に8スレ目〜11スレ目の過去ログ貼られてるからGUのSSだけ見たいなら問題ないだろ。他の職人の過去作品も見れて一石二鳥。職人が投下した>>218に載ってるSSは全部見れる。
ホントならGUまとめブログの管理人が投下作品を編集すればいいんだろうが8月末から完全に姿消して機能してないのが・・・俺もお節介に何やってんだか・・・。
276名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 21:10:35 ID:UsnQJ+gk
>>271
脱線なげーよwww(GJ
次回もwktk
277名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 00:14:48 ID:ACl6JoFQ
GJです。

何か読んでたら創作意欲が湧いてきました。
書いてみようと思うんですが、
「即行でエロに入るハセヲ×揺光」か
「ある程度ストーリーのできた亮×志乃」の
どっちがいいですかね?
両方書く時間がないので、どちらかの意見がもらえたら嬉しいです。
278名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 00:53:37 ID:h03ffyyz
>>277
単純にエロいだけのがひさしぶりに読みたかったり
ハセ×揺希望
そしておっぱい星人のためにパイズリを入れてくれると嬉しすぎてもう
279名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 19:42:33 ID:Hb6T4TIi
亮×志乃
280名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 20:18:37 ID:/Bcj7Vpx
ハセ×揺で
281名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 00:45:09 ID:18a1lP2a
頭悪いのより、亮×志乃がいい。
282名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 02:14:53 ID:RBP/pkLd
ハセ×揺を…
283名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 03:28:43 ID:4GH2Tp3w
亮×志乃かな
284名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 03:55:57 ID:MfNCdzow
GJ。
だがコンドームも着けない者に本当の紳士もクソもあるか!って話だが・・・
285名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 13:45:09 ID:WxWom3df
ハセ揺
286名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 17:08:40 ID:MgrAAQHt
本スレにあったvol.2の榊に手懐けられたアトリで書こうかなと思うんだがどうだろう
287名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 18:17:34 ID:JEPUDBxW
>>286
ぜひ、書いてくれ
288277:2007/12/14(金) 23:37:15 ID:iLl2+UAy
ハセ×揺という意見が多かったのでそっちを書いてみます。
亮×志乃はまた時間を見つけて。

>>286
お願いします。
289名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 05:12:45 ID:1Bq+9WJ4
おまいら乙
これまで投下したSSのまとめサイトhttp://wiki.livedoor.jp/jojogu/d/FrontPageが完成したので
以降はスレでの投下を打ち切り、まとめサイトで活動続行します? 
1年二ヶ月ご愛読ありがとうございました、なお今週は作者取材のため休載とさせていただきます?
何のことです?
おやすみおまいら
290名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 05:56:38 ID:HjhNEv5t
まとめお疲れさまです!
揺光スレの以外は全部読んだんですがやっぱりお蔵入りなのですか
蔵出しのご予定あったらうれしいです。
これまでの1年と2ヶ月ありがとうございました
291名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 11:12:47 ID:oFeTDH1I
1年2か月有難う御座いました!
これからも楽しみにしてます
292名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 17:59:45 ID:vnAL6UiW
ほほおとうとう個人サイトか
293名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 22:51:45 ID:oGxFJsLI
これでこのスレも過疎って終わりか…
294名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 00:29:05 ID:YIEr0cas
いや、始まりだね。
295名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 02:36:29 ID:Mm1ZmdUV
始まりとは終わりの始まり、つまり始まった時点でもう終わってるのさ
296名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 22:46:12 ID:EaaY0jBv
このスレの栄枯盛衰を2年ばかり見続けてきたが
新たな境地を開拓するものもいれば志半ばに消えていったものも多い
おっさんとかがらす玉とかカラシとかGOREは今何をやっているんだろうか
そして「オーヴァン×志乃を鋭意製作中」と前スレ>>380が宣言して五ヶ月近くになろうとしているが…音沙汰なし
やるならやる、やらないならやらないでハッキリしてくれ
297名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 02:42:06 ID:LoiDlPsq
そんなに粘着しているお前もきもいよ
298名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 09:13:59 ID:Ok+StISF
>>296
完成間際でもちょっとしたことが気に入らなくてボツになることだってあるんですよ
そこんとこ分かってる?
299名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 17:12:47 ID:apS8oQrF
短いけど投下
榊×アトリ。
苦手はスルー
300名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 17:13:44 ID:apS8oQrF
「んっ……ぅあぁ……」
ピチャピチャと淫らな水音が響く。
時は2017夏、場所は『月の樹』@HOME。
高校一年の少女、 日下千草のPC・アトリが、卑猥な声をあげていた。
「どうだいアトリ? 気持ちいいだろう?」
耳元で囁く声はPC・榊の物だ。
PC同士が性交渉をしているという異様な光景。しかし、アトリは――日下千草は確かに快楽に身を任せていた。
「ぁん……あっ、ぅあん……」
感覚のないはずのPCに触れられて感じている。
だが、その異様な感覚は、逆にある恐怖を隠蔽することができていた。
今、日下千草は、リアルの所在を失っていた。
自らが『TheWorld』の中にいる、そのように感じられる状態に、千草はあった。
「榊……っさん……」
「綺麗だよ……私のアトリ……」
アトリの唇に、そっと口付ける。始め触れ合い、互いに唇を湿らせ、舌を絡める。
呼吸を忘れるほどに、熱く。激しく。
顔を離すと、銀糸とともに、黒い気泡がアトリの口から零れる。
榊はアトリのパンツの中へ手を入れ、本来はあるはずのないショーツをずらし、秘部へて触れた。
「んぁっ……」
「もうこんなになって……いやらしいなアトリは」
301名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 17:14:48 ID:apS8oQrF
「だって……榊さんが、榊さんがぁ……」
アトリ自らショーツごとパンツを下ろし、濡れそぼっている割れ目を開く。
「入れて、ください……。もう、耐えられません……」
榊は口許に笑みを浮かべ、アトリを見つめた。
「いいだろう……愛してあげるよ……君の周りの不足した愛の分まで……」
榊は袴に似たズボンを下ろし、いきり立った肉棒をアトリの秘部にあてがった。
「行くよ」
ズブリ、と、アトリの中に深々と突き刺さっていく。
「あぁ! ぁうぁぁっ、ふぁぁぁ!」
今までとは違う快楽がアトリを襲う。
本来避けては通れない破瓜の痛みも感じない。ただ純粋な快楽のみ。
榊は腰を縦横に突き回した。
「だめぇ! 榊さん、さかきさんっ! わたし、もうらめれすぅぅっ!」
余りの快楽に、アトリの舌は回らない。
「いいよアトリ……もっと愛してあげよう……君を私の物に……」
より強く、より速く腰を動かしていく。
「だめっ、わたし、イくっ、イっちゃう、イくっ、イくっ、イくぅぅぅぅっ!」
アトリの絶頂とともに、アトリの中にある物が注がれた。ただ、それは白くない。
ただ真っ黒な、泡。
「アトリ……君は私の物だ……」
そして、アトリは虜になる。
榊の――AIDAの虜囚に。

302名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 17:15:49 ID:apS8oQrF
終わり。
リクエストがあれば書くよ。長編も可
303名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 18:24:28 ID:bvmxTOOq
gjです リクは揺ハセですかね
304名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 04:12:39 ID:pQ8snofW
GJです!!
被るけどハセ揺を…
305名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 22:44:17 ID:/dtebOhb
GJです
できれば亮志乃お願いしたい
306携帯の人 ◆0yDabgA/0. :2007/12/20(木) 17:12:39 ID:YjvcJ+mL
どうも。
もとがらす玉だよ。
鳥付けてなかったから成り済まし、とか言われたらそれまでなんだけどね。
俺がここに来なくなったのって何だかよくわからない荒らしが発生したからと、携帯が水没してデータがぶっ飛んだからなんだよ。
何回新しくしてもいつの間にか全部埋まってたからねーやる気がガシガシと削られてって。
とりあえず朔のネタがあれだったから、イフ物ってことになっちゃうけど、時間かかってもやるつもりだからさ。
期待せずに待っててよ。
307名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 00:50:15 ID:KHZ9Q2+7
>>306
トオルちゃん事件懐かしいわ
新作期待してる
あとこんなスレがあるんだが、
http://hobby10.2ch.net/test/read.cgi/phs/1194162047/
次水没したときのためにも、一読の価値はあると思うぜ
308名無しさん@ピンキー
>>215ですが、地道に書き進めております。
ただ、エロ描写が全然出てこないストーリーになってしまっており、
スレチどころか、板違いも甚だしく、ここではない別の.hack小説掲示板等での投下を続ける事にします。(たぶん
まだどこで続けるか決まっていませんし、ほとんどの方が見ておられないと思いますが、
一応報告をば、と思いましたので。それではノシ