ヤンデレの小説を書こう!Part10

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484訂正 ◆KaE2HRhLms :2007/10/16(火) 12:21:20 ID:3EWtNrIn
>>481
>とは言わない。実はすでにあなたに朝電話をかけたのは私です、とも言わない。ただ、私は頷いた。



 とは言わない。実はあなたに朝電話をかけたのは私です、とも言わない。ただ、私は頷いた。

が正しいです。ごめんなさい。
485名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 12:46:16 ID:NfLTFKjL
>>483
まさかこんな時間に投下とは
何はともあれgjです
大学生?
486名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 13:00:59 ID:rM+gaJC/
GJ
487名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 13:15:09 ID:xCwHIbeW
>>483
お兄ちゃん幸せになれそうでよかったよかった。
続きでは葉月さんにさらなる暴走をしてもらいたいと思いつつ、GJ!
488名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 18:35:56 ID:kpXaB/if
ヤベェヤベェ超おもしれー
この兄弟と妹と恋人の今後がメッチャ気になる!
489名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 21:12:23 ID:pWcIKRX8
GJ!!
もうこの一言に尽きるぜ・・・
これから先が楽しみだよ。
490名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 21:18:44 ID:P7zVYwGF
おおう、どうにか葉月さんへの誤解が解けたようで何よりです。
いや、堪能させていただきました。
491名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 21:23:45 ID:pfIzEAwx
GJ!
マジ面白いな、お兄ちゃんもいい奴だし
幸せになって欲しいな……本当に。
492名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 21:43:49 ID:F4ndi607
GJ

こんなに応援したくなる主人公は、初めてだ
是非ともhappy endで終わってほしい
493名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 22:00:49 ID:tLrM1eow
GJ
しかし最後の方の文からまたなにか一悶着ありそうな悪寒
494名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 22:02:55 ID:tQuJ9TfI
GJでした

休日の前になると、お父さんはお母さんを連れ出すのか
お父さんは子供たちに気を使っているんだね
三十代越えで子供も三人いるけど、ラブホ(推定)を利用する夫婦、か
ラブラブっぷりに萌えた

お兄さんも幸せになれるといいな
妹も最後で少し心を開いてくれたみたいでよかった、よかった
495名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:31:59 ID:SusfvChO
なんとなく妹フラグ?の予感が・・・しないかw
496きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 :2007/10/16(火) 23:42:17 ID:uxqAZiLX
短編ながら投下します。
497【兄貴のお嫁さん】 ◆DT08VUwMk2 :2007/10/16(火) 23:44:18 ID:uxqAZiLX
「君が涼一くん?」
「そうですけど…えぇ〜っと、どちら様ですか?」
学校の帰り道、見知らぬ女の人から声をかけられた。
長い黒髪に季節はずれの白いワンピースを着た綺麗な人だった。
こんな綺麗な人、男なら忘れるはずが無い
だから多分、人違いなんだろうけど…でも俺の名前、知ってるから
やっぱり、知り合いなのかな?
「お姉さんね君のお兄さんのお嫁さんになる人なの」
女の人は、そう言って頬を赤く染めた。
うちの兄貴がこんな綺麗な人と結婚だって?
俺の兄貴は、お世辞にもカッコいいとは言えない
っというか大人のくせにオモチャ(ガンプラとかTFとか)を買い集めるようなオタクで
世間一般的から観るといかにも『モテない男』の分類に入る
そんな兄貴がこの人と結婚するなんて……邪気眼でも使ったのか?
「君のお兄さんから君の事やお義父様やお義母様の事、色々と聞いたわ」
「そ・そうなんッスか?」
どうやら兄貴の奴、俺や家族の個人情報をこの人にペラペラと話してるようだ
まったく、プライバシーという言葉をあの男は、知らないのだろうか?
「ねぇ涼一くん?今から君の家に行く予定だったんだけどあの人とはぐれちゃって
涼一くん、道案内してくれる?」
俺は、女の人の頼みを断る理由がないので我が家に案内する事にした。
498【兄貴のお嫁さん】 ◆DT08VUwMk2 :2007/10/16(火) 23:45:59 ID:uxqAZiLX
家には、兄貴がいた―――が、自分の嫁(になる人)を見るなり
「夕、なんでお前がここに」と手足を震えながら叫んだ(全く、近所迷惑だぞ兄貴)
「だって、私はあなたの妻になる人間なんですもの
妻が旦那様の実家に行かないなんておかしいでしょ?
っと、兄貴のお嫁さん(になってくれたらいいなぁ)は、
兄貴に(ちょっと不気味ながら)微笑みながら答えた。
あぁ愛し合う二人…って兄貴が逃げ出した。
本当に兄貴は、『超』が付くほどの恥ずかしがり屋だなぁ〜
それを追いかける兄貴のお嫁さん(そして俺のお義姉さん)…あっ、あっけなく捕まった。
そして兄貴のお嫁さん(予定)は、兄貴とともに2階の寝室に入ったいった。
それから1時間、上から地響きが聴こえて来た。

――甥と姪、どっちが生まれるんだろうか?
やっぱり、正月になったら叔父としてお年玉をあげなきゃいけないのかな?
…などと今後の金銭心配をしていると
ぐったりとした兄貴とお腹を優しく擦る俺のお義姉さんが戻ってきた。



それから3ヵ月後、二人は、めでたく結婚しました。
ついでに生まれた子は、『姪』でした。
俺は、この子を兄貴夫婦と同じぐらい可愛がってやろうと思います。
499きゃの十三 ◆DT08VUwMk2 :2007/10/16(火) 23:50:49 ID:uxqAZiLX
投下終了です。

『ヤンドジさん』を執筆中にふっと思いついたネタで
他にも2〜3作ぐらいショートストーリーを書いたけどそれは、
『ヤンドジさん』を書き終わったぐらいに投下予定です。
500名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 00:28:46 ID:3u/82pIu
乙。
涼一くんはいずれこの姪と……
501名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 00:58:40 ID:f952zCMT
兄貴に『超』が付いたら超兄貴か

なんて思ったせいで姪の顔が変になった
502名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 01:39:30 ID:YUhQMOO6
確か妊娠させると何ヶ月たつと男のほうは責任を断れないんだよな。
503名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 20:40:25 ID:sl24bS4L
>>501
貴様よけいな事をwww
504名無しさん@ピンキー:2007/10/17(水) 22:50:54 ID:q5UcbRK8
アニメシグルイ最終回の三重様の美しさは異常
505名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 17:06:49 ID:YH69nSOT
ほトトギすはまだかな
506名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 01:21:37 ID:3DvqVgSJ
507羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:49:04 ID:3TS5tHRm
 私のことを好きだと言い、私にキスをして、私の友達を殺して、私のことを『親友』と呼んだあきら。
 そのあきらによって、私は、犯された。
 生まれてはじめての性行為が強姦の上に、その相手が同性とは、私の人生はどうなっているんだろう。
 混乱している。頭の中がぐちゃぐちゃになって、ゴミだらけの絶海の孤島に一人だけ取り残されたような。
 押し倒された後のことは、思い出したくない。気持ち悪さと痛みだけが鮮烈で、性行為が気持ちのいいものだなんて誰が言ったんだ。
 私はあきらに抵抗した。腕と脚をばたつかせて、必死であきらを突き飛ばそうとした。
 なのに、あの細腕に一体どんな力が隠されていたのか、私の抵抗など無意味だと嘲笑うかのように、私以上の力で押さえつけられた。
 そうして私の体力が尽きて、身体中に不快感と痛みが駆け巡って、ようやくあきらは拘束を解いた。
 私はこれからどうなるのだろう。ほとんど私は諦めていた。
 ああ、そういえば私のことを親友だと言ってたな。ということは私が小学生の頃、親友を口実にあきらのことをいじめていたことを憶えていたのか。
 なんて凄い記憶力だろう。私だって忘れてたのに。いじめた子よりもいじめられた子のほうがいじめの内容を覚えているらしいけれど、そういうことだろう。
 けれど──あきらはなんて言った? 私のことが好きだって? 愛しているって?
 何を言ってるのよ、あきら。なんで私を。

 動く気力もなくて、しばらく私はベンチに寝かされたまま、ようやく退きはじめた不快感を存分に味わっていた。拷問のようだ。
 あきらは私を見下ろして、ひたすら謝っていた。
 ひたすら、謝っていた。
 「ごめんなさい」と。ただひたすら。
 謝るくらいなら、最初からやらないでよ。
 あきらがようやくベンチから立ち上がる。
 このまま帰るのかと思ったら、私を抱き上げた。片方の手を私の肩に回して、もう片方の手で私の腿を支える。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
 これからあきらは何をするつもりなんだろう。私を殺すのだろうか。
 いじめられた復讐か、殺人をしたことの口封じか。
 私は願わくば、この二つのどちらかであることを祈った。もうこれ以上、私を苦しませないで。
 本当に、あきらの細腕のどこにこんな力があるのだろう。私を抱き上げたまま、歩き出す。
 公園を出て、しばらく暗闇の中を進む。誰か人は通るだろうか。できれば通らないでほしかった。こんな姿、見られたくない。
 やがてあきらは、『石橋』という表札を掲げた家の前で止まった。そうか、あきらの姓は石橋だったっけ。
 そうして私は初めて、石橋あきらの住まう家へと入れられた。
508羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:49:37 ID:3TS5tHRm
 石橋家の中は灯りを一切点けておらず、外の方がよっぽど明るかった。
 あきらは私を一度床に降ろして、ひとりでに閉まっていく扉が閉じたことを確認して、鍵をかけてチェーンロックもかけた。私を逃がさないということだろうか。
 もう一度私を抱き上げ、奥に進んでいくあきら。自分の家だからか、こんなに暗くてもどこに何があるのかわかるらしい。
 そういえば、なんで灯りを点けないのだろう。それに、あきらの両親はどうしたのだろう。
 ────かすかに、肉が腐る臭いがした。

 どこかの部屋に入るあきら。私をベッドらしき毛布の上に寝かせると──どうやらここは、彼女の部屋らしい──ドアの鍵を閉めた。
 ようやく体力が戻ってきていた私は、なんとか上半身だけを起こそうとした。
 この部屋は、暗い。廊下も暗かったけれど、この部屋は……なんだろう、漆黒の闇の中だというのに、あきらの姿だけが鮮明なのだ。
 寒い。これから暖かくなっていく時期だというのに、この部屋は真冬のように寒い。
「ここはね、私のゆりかご」
 あきらの声がして、再び私は押し倒される。硬いベンチとは違う、やわらかい毛布の上。
「この部屋で、ずっときみこちゃんのことを想っていた。この部屋にいつか、きみこちゃんを連れてきたかった」
 夢がかなったよ。そんなふうに笑う。その笑顔は、相変わらず私の神経を凍りつかせるのだ。
「ん……」
 口付けをされ、あきらの舌が私の口内を蹂躙する。公園で押し倒されたときに何度もされたけれど、そのときは不快感だけしかなかった。
 私がもう諦めているからだろうか。長い永いその口付けは、何故だか不快感はなかった。
 何分経ったのかわからないけれど、何時間もそうしているような気がした。この部屋は時計がないのだろうか。
 あきらが口を離す。唾液が糸を引いている。こんな光景を目にするなんて、本当に私の人生はどうなってしまっているのだろう。
「きみこちゃん」
「……あきら、これだけは聞かせて」
 ようやく回復した体力を全て、この問いにそそぐ。どうしてもこれだけは聞かなくちゃいけない。

「私を、憎んでないの?」

「え?」
「私は、あんたのこといじめたんだよ? 勝手にあんたのものを持ってって、責任を押し付けて。
 あんなにいじめたんだよ? なのになんで私のことを、好きだとか、愛してるとか、言えるの?」
「…………」
 あきらは黙って、ベッドから離れる。
 何をするのかと思ったら、机らしきものの引き出しを開けて、小物をいくつか取り出していた。
 教科書、シャーペン、消しゴム、ボールペン……。
「私の?」
「そう」
「……ストーカーはあきらか」
 あきらに押し倒されてからだけど、予想はしていた。
「親友だから、勝手に持ってったよ」
 ……実はあきらは、私への復讐を考えているんじゃないだろうか。それはほとんど私へのあてつけだ。
「復讐なんか考えてないよ」
 私の心を読んだような発言をするあきら。
509羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:50:32 ID:3TS5tHRm
「きみこちゃんがね、最初だったんだよ」
「は?」
「私のこと、親友って言ってくれたの」
 でも私は、あきらのことを親友とは思っていない。
「私みたいな悪魔を、親友だって言ってくれたの。嬉しかった」
「あ、悪魔?」
 いきなり何を言い出すのだろう。
「そう、悪魔。
 小さい頃に読んだ絵本の登場人物はね、みんな優しい目をしてるんだよ。なんでそんな優しい目をしてるかっていうとね、『愛してるから』なんだって。
 その絵本には悪魔が出てくるんだけど、絵本の登場人物たちは絶対に悪魔に優しい目は向けないの。悪魔はひどい奴だから。
 だから私は、悪魔なの。父も母も、私に優しい目を向けることはないのよ」
「…………」
 私は何も言えなかった。彼女の壮絶な、いや絶望的な孤独に同情などできやしないのだ。
 生まれてから一度も愛されたことがない少女に、人々から愛されることを望んで愛されるようになった少女が言える言葉など、無い。
「だからね、決めたんだ。ううん、誓ったの。私はきみこちゃんのことを、絶対に裏切らないって」
 だから、きっかけは私だったんだろう。愛されないなら、愛してしまおう。そのきっかけが、私だっただけなんだ。
「きみこちゃんのこと、愛してるの。きみこちゃんが私のことをどう思っていようと、私はきみこちゃんのことを愛してる」

 けれどあきらは気付かないのだろうか。自分がいかに矛盾しているかということに。

 あきらが自分の服を脱ぎだす。私はそれを眺めたまま、尽きてしまった体力を諦めて、この漆黒の闇に埋もれることにした。
 これから、公園のベンチでされたことを再び、何十回とされるのだろう。
 私が、壊されそうだ。
 あきらは何日間私を監禁するのだろうか。そういえば親に何も言わなかった。電話を貸してくれるとは思えないし、諦めよう。
 もう、壊れてしまいたい。いっそ何もかも考えることをやめて、死ぬまであきらの人形になってしまいたい。
 そうすればどんなに楽だろう。
 けれどそれは、私の理性が決して許そうとはしないのだ。ヒトであり続けろと、懇願し続けているのだ。
 泣きたくなった。涙は出なかった。私は誰のために泣きたいのだろう。殺された玲? 残された友達? 孤独なあきら? それとも自分?
「きみこちゃん。服、脱がすね」
 いつの間にか全裸になっていたあきらが、私にのしかかっていた。
 全身のラインが異様に細い。贅肉どころか筋肉があるのかどうかさえ疑うほどだ。本当に、なんでこんな細い身体で私を押し倒せたんだ。
 公園でブラウスのボタンのほとんどを引き千切られていて、私が着ていた服は案外あっさりと脱ぎ捨てられた。下着まで剥ぎ取られ、私もあきらも、一糸まとわぬ姿になる。
 暗闇に浮かび上がるあきらの裸体は、少しだけ、綺麗だと思った。
510羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:53:12 ID:3TS5tHRm
 目が覚めたとき、私は知らない天井の下にいた。
 すぐに昨日のことを思い出して、後悔した。公園でされたときよりももっと激しいコトを……あー、恥ずかしい。忘れよう。
 私は裸のまま毛布に埋もれていた。頭を横に向けると、同じく裸のあきらがいる。小さく空気が流れる音がして、何故だかそれが寝息だと気付くまでに数秒かかった。
 カーテンから光はもれてない、ということはまだ夜中なのだろう。机の上に目覚まし時計があったので見てみたら、時計は止まっていた。
 大きく息を吸い込んで、吐き出す。私は呼吸をしているということに、いまさら実感。
 あきらを起こさないようにベッドから抜け出す。床を見ると、あちらこちらに制服が脱ぎ捨てられていて、どうやら私の着ていたものらしい。
 なるべく音をたてないように、衣擦れの音に注意しながら散乱した服を着なおす。
 裸で寝る、というのも変な感じだったけど、裸から直接服を着るのもなんだか変な感じがする。
 下着、ソックス、ブラウス、スカートと順番につけていく。ブラウスはボタンがほとんど残っていなかったので、隠さないと下着が見えてしまう。
 着衣終了。ふと、スカートのポケットに入れっぱなしにしていた携帯電話に、留守電とメールが入っていることに気付いた。お母さんからだった。
 ……心配するよなぁ。殺人事件の第一発見者の娘が散歩に出かけたきり帰ってこないんだから。
 しかしここで電話したりメールを打ったりすれば、あきらが目覚めてしまうかもしれない。
 多分あきらは、私を帰さないだろう。
 玲を殺した犯人が誰なのか知っている私を、玲を殺した犯人であるあきらが逃がさない、という以上に。
 あきらの異常なまでの愛情が、私を逃がさないだろう。
 携帯電話をポケットに押し込み、ゆっくりと、音をたてないようにドアの鍵を開ける。
 不思議なことに、あきらの部屋に入るためのドアには鍵がとりつけられている。恐らく、あきらの両親がつけたのだろう。直感だけど、なんとなくそれが真実のような気がした。
 ドアを開けて、閉める。それだけの作業が、音をたてないという制約をつけるだけでおそろしく難しいものになる。
 私は石橋家の廊下にいた。すべての音が何もない。静寂という音が聞こえてきそうなほどに、だ。
 やはり音をたてないように、すり足で廊下を進んでいく。
 廊下は一直線で、真っ直ぐに進めばもう玄関だ。傘たてと下駄箱、消火器のある玄関は、この家に出入り口があることを示していて、安心した。その玄関のすぐ横に、扉があった。
 扉は開けられている。私の位置からだとその向こうはさっぱり見えないのだけど、なんとなく居間だな、とわかった。

 そしてどうやら、肉が腐ったようなこの臭いは、その居間から漂ってくるらしいのだ。
 電気を点けない石橋家。見かけないあきらの両親。もう、その扉の向こうに何があるのか、わかってしまった。

「どこにいくの」
 不意に──全身の神経が、凍りついた。
「きみこちゃん」
 私の全身が、見えない腕で押さえつけられる。
「ねぇ、どこにいくの」
 私は振り返らなかった。

「家に────帰るのよ」
511羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:54:06 ID:3TS5tHRm
 私の言葉に、あきらは何も言わなかった。
 ただ黙って、私の背中に抱きつく。
 あきらは裸だった。白く細い、骨のような腕で私の身体を撫で回す。その右手に、カッターナイフが握られていること、そのカッターナイフが私のものだったことに気付いた。
「帰らないで」
「帰る」
 カッターナイフが私の首に近づく。
「おねがい、きみこちゃん。私は、私はきみこちゃんがいないと」
 いないと、どうなるのだろう。
「……お願い。そばにいて」
「いやよ」
 もう、恐怖心も消えてしまっている。頭の中は嫌になるくらい冷静だ。
「私はあきらの所有物じゃないのよ」
「そんなこと、思ってないよ」
 あきらは、自分の矛盾に気付かないのだ。自分の意思で、気付かないのだ。
「だったら私を帰して」
「お願い。私のそばから離れないで」
 そうして、私は。

「離れたら──殺すの?」

 あきらを振り払う。カッターの刃が私の頬をかすめ、鋭い痛みが小さく疼いた。この程度の痛みなら、ひるみはしない。
 一気に玄関へと走る。開いていた居間への扉の向こうには視線を向けない。玄関の扉のノブに手をかけて、──扉は動かない。
「きみこちゃん……!」
 あきらがふらふらとした危なげな足取りでこちらに歩いてきてる。暗くてあきらの表情は見えない。
 鍵を開けて、もう一度ドアノブに手をかけて押す。扉は開いて、動かなくなった。
 チェーンロック。
 執拗なまでに閉じ込めようとする短い鎖が、私を嘲笑う。おまえは逃げられない、ずっとこのまま人殺しと一緒に暮らせ、と。
「きみこちゃん……」
 あきらがすぐそこに立っている。
 嫌だ。気持ち悪い。身体が勝手に動く。怖い。あきらが怖い。さっきまで冷え切っていた頭が、一気にぐつぐつと沸騰していく。
 私は振り向き────
512羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:54:41 ID:3TS5tHRm
 ────振り向き際に、居間の中が見えて、
 そして血だまりの中で横たわる二つの肉隗が見えた。

「あああああぁぁっ!」

 わけのわからない衝動に突き動かされて、私は何か重いものを掴んで、それを振り回していた。
 鈍い音が響く。衝撃が私の腕にまで来て、思わず掴んでいた重いものを放した。

 放り出された消火器──私が振り回したものは、消火器だった──には、赤黒い何かがべっとりと付着している。
 気付けば、私の足元には、あきらが横たわっていた。
「あきら、?」
「きみ、こ、ちゃん……」

 あきらの頭からは、その髪と同じ色の血が流れていた。
「あきらっ! 嘘よね? そんな、嘘よ!」
 何が嘘なのかもわからず、とっさに私はあきらを抱き上げた。血が、私の身体中に降り注ぐ。
「きみこ、ちゃん……」
 あきらの声が、私を呼ぶ声が、次第に小さくなっていく。
 私は。
 私はあきらに。
 ひどいことを。

「ごめんなさい……
 ごめんなさい……っ」

 私は、あきらに謝っていた。
 小学校のころ、あきらをいじめたことを。
 そして今、あきらを殺そうとしたことを。
 なんでこんな簡単な言葉が、今まで出てこなかったのだろう。
 私は被害者なんかじゃない。友達を殺されて、強姦されて、それだけで被害者のふりをしていた。
 私は加害者だった。
 あきらの体も心もこんなに傷付けた、加害者だ。
 許されたくなかった。
 こんな酷い私を、許されたくなかった。

「別に、いいよ」

 だから、あきらのその微笑みは、報いなのだろう。
513羊と悪魔:2007/10/20(土) 22:55:30 ID:3TS5tHRm
 そうしてあきらは死んでしまっていた。
 頭からその髪と同じ色の血を流しながら、私に殺された。

 あきらのフルネームはもう忘れてしまっていた。そして、もう二度と記憶することはないだろう。
 最後の最期に、あきらは奇妙な単語を呟いた。
 『カールクリノラース』。
 その言葉の意味するところは、私にはわからない。
 冷たくなっていくあきらの身体を抱きかかえたまま、ふと私はあきらのことを愛おしく感じていることに気付いた。
 ガラスの窓が少しずつ赤みを帯びてくる。ようやく、夜明けらしい。
「おはよう、あきら」
 私はあきらに口付けした。
 これからどうしよう。迷うほどに、私はあきらから離れたくなくなっていた。

「──あはっ」
 そうだ。ずっとあきらと一緒にいよう。私が死ぬまで、私が死んでも、ずっと一緒に。
 私はもう一度あきらに口付けした。目の前に玲の顔が浮かんだけれど、もうどうでもよかった。
 昨日あきらにされたように、あきらを押し倒した。
「あきらと私は──ずっと、親友だよ」
 ぞっとするほどの感情がわきあがってくる。私は壊れてしまったのだろうか。
 くすくすと漏れてくる自分の笑いをどこか遠くで聞きながら、私は三度目の口付けをする。
「愛してるわ、あきら」

 窓から入り込む朝日に伸びた影が、私を見つめている気がした。
514羊と悪魔:2007/10/20(土) 23:04:24 ID:3TS5tHRm
羊と悪魔、これにて完です。
完璧な自己満足で書き始め、GJの言葉で栄養を貰いつつ書き終わりましたが、
どうにも最初の予定とは違う作品になってしまいました。まぁ、これもまたよしということで。

蛇足ながら、カールクリノラースについて。
ご存知の方もいるかもしれませんが、カールクリノラースはグラシャラボラスの別名です。
悪魔グラシャラボラスは屠殺・殺人の元締めで、殺人を行い、人間を不可視にし、全ての科学を教え、過去と未来の知識を与える力を持つそうです。
凄いですね、悪魔って。

最後に、書いている間にまた別の話を思いついたので、形にしようと考えています。
次にエンカウントしたら、適度に生暖かい視線を送ってやってください。
それでは。
515名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:09:49 ID:J4jWC/9W
乙でした

てかもう480kb越えてる件
516名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:10:39 ID:2rUD4987
>>514 GJ!!でした。ヤンデレキャラじゃなかったキャラが最後はヤンデレ(ぽく)になるという見事な展開。
あなたは神ですね!!
517名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:19:35 ID:UvcGtOhK
>>514
GJGJ!
感動した!
なんというか、これが二人の幸せなんだろうな、と。
518名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:20:54 ID:UvcGtOhK
あ、もう484KBか。
次スレ立ててきますね
519名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:28:28 ID:UvcGtOhK
立ててきますた

ヤンデレの小説を書こう!Part11
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1192890392/
520名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:31:07 ID:6KsXIxps
あーもうしわけない。
保管庫の方で編集ミスって違うの上げちまった
521名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:35:17 ID:UvcGtOhK
>桜の網 第3話

かな? 分かった、消しとく。
522名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 23:39:00 ID:6KsXIxps
すんません頼みます。
キモ姉スレの方の保管庫作ろうとして参考にして見てたら間違えたorz
523名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 08:18:42 ID:zYPu+Vb7
力作お疲れ様でした。
毎度毎度どうなるかと思っていたらこう持ってきましたか……。いや、ヤンデレは奥が深い。
524名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 09:01:50 ID:p7SlmnIC
>>519
525名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 10:38:13 ID:aEGEGORW
ここのスレ消化スピードは異常
526名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:22:21 ID:+cTgI7ky
あまりの遅さにか
527名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:35:44 ID:Swbz8svb
新スレの勢いは13だぜ?
528名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 12:38:40 ID:JpTjnmqX
こうして新スレに魅かれ、七氏君は10スレにさよならを告げるのであった
529埋めネタ:2007/10/24(水) 00:34:49 ID:MCAGqZ0B
 うふふ。今日もお弁当を片手にして、来ちゃった。
 名無し君の、お・う・ち。
 あ、ちょっと訂正。――私と名無し君のおうち。もしくは2人の愛の巣。
 やだもう、私ったら。まだ結婚もしてないのに……エッチはしちゃったけど。
 しかし、愛の巣とは言うけど、私と名無し君はまだ同棲していない。
 もちろん私だって名無し君と一つ屋根の下に暮らしたかった。

 私は、今は向かいのアパートの2階、名無し君の部屋を窓から一望できる部屋に住んでいる。
 名無し君は私がどこに住んでいることまでは知らないみたい。
 だから、部屋のカーテンは開けっ放し。私の部屋からは名無し君のライフスタイルが丸見え。
 朝、寝ぼけ眼でベランダに出て伸びをするところとか、可愛くって仕方ない。
 抱きしめて押し倒して服を脱がして唇を奪って体中を撫でて局所的に執拗に舐めてあげたい。
 名無し君が部屋の中を歩き回りながら歯磨きをするとき、私はいつもあの歯ブラシ役を買って出たいと思っている。
 もちろん、私の舌で口内、歯、歯間、歯茎を隙間なく磨いてあげる所存です。
 恥ずかしいからまだ名乗り出ては居ないけど、いつかは……ぅふうふぅふふふぅ。

 おっといけない。つい鼻血を出してしまった。
 だめだめ。想像の中の名無し君で血を無駄遣いしちゃ、もったいない。
 私は名無し君のものなんだから、鼻血で白いセーターの胸元を真っ赤に染めたりしたら怒られちゃう。
 それに、早くお弁当を名無し君に食べさせてあげなくちゃ。
 まだ秋なのにめっきり冷え込んできたから、風邪をひかないよう栄養をたっぷり摂らせないと。
 最近の名無し君、体重の減るスピードが異常に早いからなあ。
 悪い病気にでもかかってなければいいけど。
 うん、決めた。今日は一晩中名無し君に元気を分けてあげよう。
 私がいっぱいご奉仕すれば、きっと元気を出してくれる。
 だって私、名無し君の恋人だもん。

 さ、いざ名無し君の部屋へ!
 ドアノブを掴んで、思いっきり鼻から息を吸い込んで――
「名無しくーーーーん!」
 叫びつつ、全力でドアを開け放つ。そして愛しの名無し君の待つ部屋の玄関へ。
 ん…………あれ、あれれ?なんだか、足の踏み場がないんですけど?
 靴とかスリッパとか、箒とかちりとりとかが一杯玄関に散らばっている。
 どうしたんだろう。もしかして――強盗?!
 そんな!名無し君に強引なことをしていいのは私だけなのに!
 どこの牡豚?それとも雌豚?
 どっちにしても、許すわけにはいかない!
「名無し君! どこっ!?」
 再度叫んで名無し君を呼ぶ。
 すると。
「……いるぞ。部屋に」
 名無し君の声だ。ああ、よかった。
 でもなんだか声に元気がないなあ。どうしたんだろう。
530埋めネタ:2007/10/24(水) 00:36:22 ID:MCAGqZ0B
 物が散乱している部屋をかき分けつつ進むと、たしかに名無し君がいた。
 どうしてかわからないけど、部屋中に段ボールが一杯ある。
 部屋に置いてあったはずの机やテレビ、タンスとかは全部どこかへ行ってしまっている。
 私の腰より背の高い物は一つも置かれていなかった。
「どうしたの? この部屋の惨状は何?」
「ああ。実は俺、引っ越すことにしたんだ」
 …………え?ひっこ、し?引っ越し?
「な、何? よく聞こえなかったよ。もう1回言ってくれる?」
「だからあ、俺は明日この町から引っ越すんだって。だからお前との仲も明日で終わりだよ」
 なん……で?なんでそんな冗談を言うの?
 それに、どうしてそんな軽い口調で、そんな重い台詞を言えるの?

「もう。やめてよ名無し君。そんな、冗談ばっかり……」
「冗談じゃねえよ。本当だ。もうでかい荷物なんかは運び出したし、新居も見つけて契約したし。
 で、悪いんだけど。俺と別れてくんない?」
「別れるって、私が? 名無し君と?」
「ああ。自然消滅でもいいと思ったんだけど、今日来ちまったんならしょうがない。すっぱり別れようぜ」
 今の私は、どんな顔をしているんだろう。
 名無し君は手元にある本を段ボールに入れる作業に集中していて、私の顔を見てくれていない。
 私だけを見てよ。どうして見てくれないの?私の顔を見て、微笑んでよ。ねえ。
 名無し君の肩を掴んで、軽く揺らす。
 それでも名無し君は私を見てくれない。
「何だよ、十子(とおこ)」
「私、名無し君の恋人なんだよ? ちゃんと見てよ。ずっと見ていてよ。目を逸らさないでよ」
 私の必死な問いかけに対して、名無し君は顔を上げずに――舌打ちをすることで応えた。
 チッ、て何。チッて。なんでそんな嫌そうな顔をしてるの?
「お前は俺なんかよりいい男と付き合えるって。だから俺のことなんかさっさと忘れちまえ」

 泣いちゃ駄目。泣いたら、もう声が出せなくなる。
 名無し君と、これっきりで終わってしまう。
 あんなにたくさん好きだって言ってくれたのに。
 私が好き、って言ったら強く抱きしめ返してくれたのに。
 そんな暖かい記憶が、額に飾られた絵画みたいになってしまう。
 名無し君への愛しさや恋しさが全て心の中から出ていって、形のある物になって――いつかは風化してしまう。

「――嫌! 絶対に嫌! 私、名無し君じゃなきゃだめ! 名無し君以外の男となんか、話したくもない!
 私は名無し君が大好き! 名無し君が一緒にいなきゃ、寂しくって生きていられない!
 引っ越すっていうんなら、私も一緒に行く! どこまででも、付いていくから!
 だから……別れるなんて、言わないで……お願い……」
 涙が勝手にこぼれてきた。きっと、言いたいことを全て言ってしまった安堵からこうなってしまったんだ。
 名無し君の手を握る。両手で、絶対には慣れないようにしっかりと握る。
「一緒に……来てくれ、って……言ってよ。じゃなきゃ…………離さない、から……」
 肩のふるえが止まらない。お願い、名無し君。抱きしめて、震えを止めて……ね?
 名無し君の顔を見上げる。涙でぼやけた視界には、名無し君の顔があった。
 彼は――とっても嫌そうな顔をしていた。
531埋めネタ:2007/10/24(水) 00:39:04 ID:MCAGqZ0B
 また、舌打ちの音。名無し君は続けてため息を吐いた。
「はっきり言ってやろうか、十子」
 言って。好きだって。俺の傍から離れないでくれって。
「俺、お前に飽きた。お前、重い。いちいち構ってくるな」
 首を振る。嘘よ、嘘。名無し君がこんなこと言うはずない。
「俺が引っ越そうって思ったのはな。新しい女ができたからなんだ。
 そいつ、俺の会社の後輩でな。かなり大人しい性格なんだけど、すっごい可愛いんだ。
 誰に対しても、新人の初心を忘れないって感じで、礼儀正しいんだよ。俺、ああいう子が好みなんだ」
「そん、なのっ……私だって……名無し君がそうしろって言うんなら、そうするよ……?」
「いや、お前の性格とかとっくに知ってるし、俺。いきなり変えられても困る」
 もうだめなの?私……名無し君と別れなくちゃ、いけないの?
 ――嫌だ。嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。絶対に嫌。
 今こうしているだけでも胸が張り裂けそうに痛むのに、これ以上切なくなったりしたら、絶対に耐えられない。
「なんでも言うこと、聞くから。一緒に居て。名無し君」
「……まだわかんないみたいだな」
 名無し君の顔が、正面にある。私の目をまっすぐ見てる。
 いつもみたいにキスしてよ。一緒にいるときは、飽きるほど――1回も飽きたことないけど――キスしたじゃない。
 今ならさっき言ったことも全部許してあげるから。忘れてあげるから。
 だから、キスしてよ。

 突然、名無し君が私のセーターの襟を掴んだ。
 強引にキスされるかも――という期待は、もろくも崩れ去った。名無し君の辛辣な言葉によって。
「もう、お前のこと好きでもなんでもないんだ。嫌いでもない。
 なんとも思ってないんだよ。俺にとってのお前は、あってないような存在なんだ」
 その言葉は、一番言われたくなかった。
 私の育ちは平凡で、変っているのは名前だけ。それでも私は生きてきた。
 誰かの特別になりたくって、ずっと頑張ってきた。
 そして、ようやく見つけられた。私だけを特別に思ってくれる人を。

 名無し君。ああ名無し君。名無し君。
 初めてあなたに会ったのは、繁華街のバーだった。
 お酒も飲んだことがなかったあの頃の私は、人生経験の一環として入ったお店でカクテルを飲んでた。
 頭がグラつくようなほろ酔い加減のときに、名無し君は隣の席へやってきた。
 そして、あなたは私の容姿を褒めちぎってくれた。
 あなたの言葉は私の心に、体の芯に、染みこんでいった。
 チョコよりも甘くて、お酒よりもクラクラして、お風呂に入ったときより気持ちよくて。
 あっという間に私はあなたに恋してしまった。
 あなたに手を引かれてバーを出て、次に入ったファミリーレストランのトイレで、私は初めてセックスした。
 名無し君はとっても乱暴で、強引に私を組み伏せて、一気に私の体を貫いてくれた。
 無理矢理ブラをたくし上げておっぱいを揉んで乳首を吸ったよね。
 私の名前を呼びながら、たっぷり精液を注いでくれたね。
 あの時は言わなかったけど、痛かったんだよ?文句を言いたくても言えなかったから、黙ってたけど。
 だけど、だけど――とっても安心した。ようやく満たされた、って気がした。
 きっと、名無し君が私の運命の人なんだ。そして、名無し君は私を見つけてくれた。
 名無し君はずっと私を探してくれていた。それは、私を本能で求めていたから。
 そう――私たちが出会ったのは、必然のことだったんだよ、名無し君。
 相手の姿を知らなくても、お互いの匂いを知らなくても、出会う運命にあったんだよ。
 出会って、番い(つがい)になって生きてゆくことを宿命づけられていたんだよ。
 名無し君。鳥は片翼じゃ飛べないよね?片っぽだけじゃ、落ちちゃうよね?
 私たちも同じように、どちらかが欠けてしまったら――――死んじゃうんだよ。
532埋めネタ:2007/10/24(水) 00:41:39 ID:MCAGqZ0B
 涙が止まった。喉から痛いくらいに声があふれ出てくる。
 絶叫した。行き場のないエネルギーを全て注いで激しく叫んだ。
 名無し君が、右手で耳を押さえた。左手は私ががっちりと掴んでいる。
「うるせえよ! こんな近くで叫ぶな!」
 名無し君の顔が不快をあらわすように歪んでいる。
 今度は、とってもおかしくなった。だから、私は大きな声で笑った。
 名無し君が嫌そうな顔をしているだけで、他には面白いことなんか何一つ無かったのに、
発作でも起こったように笑いが止まらなかった。
 また、名無し君の顔が変化した。そんな、どぶ川を見ているような目で見ないでよ。
「どうしてそんな目で見るのかな? 本当は私のこと、大好きなくせに」
「てめえ、人の話聞いてないのか? 俺はお前のことなんかなんとも思ってないんだぞ!」
「あ……それ、もしかしてツンデレ? あっははっ――――可愛い! 最高!」
 お互いの体を隅々まで知っている仲なのに、まだ中学生みたいに自分の気持ちに正直になれないんだね。
 でもまだまだ。そういう台詞を言うときは、あさっての方向に視線を向けながら、照れ隠しの表情で言わないと。
 仕方ないなあ。お手本を見せてあげるよ。
「何がツンデレだ! ふざけてんじゃ――」
「べっ、別に名無しの手を握りたい訳じゃないわよ! ただ脈を測っているだけなんだから、勘違いしないでよね!」
「……あ、ああ? なんだそれ?」
 うん、我ながら完璧。脈を測っている時点で相手の体調を心配している――いわゆるデレを見せているのに、
照れながら否定してみせる。ずっと手を握ったままでいるのがポイントね。

 ぽかんと口を開けている名無し君に話しかける。
「わかった? 名無し君」
「――は? 何がだよ。いきなりわかった? って言われてもわかんねえよ」
「もう。だめだよ、名無し君。私たちはこれからずっと一緒に暮らすんだから、心も一つにしなきゃ」
「だから、俺はお前と別れるって言っただろ! ついさっき、こんな近くで!」
「――別れられると、本気で思ってる?」
 ちょっとだけ、名無し君の手を握る腕に力を込める。
「こうやってずっと繋がっていれば、どうやっても別れられないよ? それでも別れることができる?」
「んなもん、お前の手を離せばいいだけ、だ……ろ? あれ?」
 名無し君の腕が私の手から逃れようと、暴れている。
 ぶんぶん手を振っているから、なんだか名無し君がはしゃいでるみたいに見える。
「あは。そんな弱い力じゃ、私との繋がりを断つことなんかできないよ?」
「ちっ…………くそ! おい、いい加減に離せよ!」
 がつん。名無し君が私の顔を殴った。グーで。
 でも、ちっとも痛くない。これに比べたら、指圧マッサージの方がずっと痛い。
 名無し君は立て続けに私の顔を殴ってくる。頬、鼻、唇、目、こめかみ。
 暴力を振るっているくせに、名無し君は怯えた表情のままだ。
 何に怯えているんだろう。あとで頭を撫でながら聞いてあげよう。
 あれ、また鼻血が出てきちゃった。あ、そうだ。
「名無し君」
「んだよ! 早くその手を離せよ!」
「私、鼻血が出てるよね? 見える?」
「ああ? ……ああ、それがどうしたよ」
「えへ。舐・め・て」
 極上のスマイルを浮かべながら、おねだりする。
 けど、名無し君は舌を近づけるどころか、背中を反らして私の顔から距離をとった。
「どうして逃げるの? 舐めてよう。名無し君に綺麗にしてほしいなー。私」
「よ、よせっ……近寄るな……」
「うわ、ひっどーい! 言っていいことと悪いことがあるよ! そんで今のは言ったら悪いこと!」
「やめろ! 手を離せっ! この…………変態!」
533埋めネタ
 変態?私のこと?まあ、名無し君は私だけしか見てないから、私のことだよね。
「変態かあ……。でも、名無し君の方がずっと変だよ?
 初めての時も強引だったし、しょっちゅう人の居る場所で興奮して私に襲いかかってきたし。
 恥ずかしかったんだからね、私」
「あ…………ぅ」
「それでも私が変態だというのであれば! 私は、名無し君をレイプしちゃいます!」
 声高らかに宣言する。別に変態と言われた仕返しじゃない。
 名無し君の体を満足させてあげるのだ。きっと、別れ話を持ちかけたことを後悔するはず。
 名無し君に調教された私の体は、すでに名無し君を喜ばせる方法を熟知している。
 どんな喘ぎ声だったら興奮するのか、どこを舐めたらびくってなるのか、そんなことまで知っている。

 油断していた名無し君の体をうつぶせに倒す。両手を後ろに回してガムテープで縛る。足首も同様に。
 そうだ。口にもガムテープを貼っておこう。
「やめろ、とおっ――むぉ! おーお、ああいああえ!」
「いくらあがいたって、無駄だよ。名無し君は、この町でずっと私と一緒に暮らすの。
 どこぞの女狐のことなんかすぐに記憶から消してあげる。私だけで頭の中を一杯にしてあげる」
 ベルトを外して、ズボンとパンツを脱がせる。――あは、縛られてるのに勃ててるの、名無し君?
 やっぱり名無し君の方が変態だね。
 肉棒を右手で包み込んで撫でるように上下させる。
 舌の先で、裏スジを辿っていくように這わせる。カリの手前で、名無し君の体が小さくびくっと震えた。
 亀頭にキスの雨を降らせる。1回する度、肉棒が縦に動く。
「すっごい興奮してる……。そんなに私の舌とキスが好きなんだね。えっちな名無し君。
 でも、それでいいよ。私もいつもよりえっちになるから。一緒にえっちなことたくさんしよう?
 さあ、誰も邪魔しない2人だけの世界へ!」
「ぃああーーーー! ぁえおぉぉぉーーー!」




 その後で、名無し君は涙を流しながら私を一杯突いてくれた。
 私はいつもと違う背徳感に酔いながら幾度も絶頂に達した。
「素敵だったよ、名無し君……さいこお……」
「ぅ…………ぅ……」
 名無し君は疲れ切って眠ってしまったようだ。閉じられたまぶたからすでに涙は流れていない。
 私はバッグからあるものを2つ取り出した。
 2つある錠付きの金属の輪っかと、それを繋ぐ鎖で構成されたもの。簡単に言えば手錠というものだ。
 名無し君の両手首と、両足首に手錠をかける。捕縛、完了。
 今までにない達成感が私の脳を痺れさせる。とうとう私は願いを叶えたんだ。
「これからは、ずっと一緒にいられるね。一生、名無し君は私がお世話してあげる。
 お礼は、今日みたいに激しく抱いてくれたら、それでいいからね?
 名無し君。一緒に、幸せになろうね」

 手錠の鍵は手元にある。さて、どこで捨てようかな、これ?