1 :
●:
スレ立て乙
ということで早速投下。2レス
非エロ
陵桜学園高等部。そのグラウンドで野球部員たちが練習を重ねていた。
ノックを受ける野手たちの横でピッチャーとキャッチャーが約十八メートルの間隔を
開けて向かい合っている。
なぜか距離を置いて女の子二人がバッテリーを見つめていたが、彼は特に気にすることも
なく、おおきく振りかぶってキャッチャーミットめがけてストレートを投げた。
「オッケー、いつもどおりいけてる」
キャッチャーの返球を受け取って、そのサインに従い、次はスライダーを投げた。合図も
なしにとれるほど甘いスライダーを投げるつもりはない。球は鋭い曲線を描きキャッチャー
ミットに収まる。並みのバッターなら間違いなく空振りさせられていただろう。
彼は伸びのあるストレートとキレのあるスライダーでもってエースナンバーを託されていた。
彼自身、その自覚は持っている。陵桜学園は何度も夏の甲子園に出場し、準優勝まで
行ったことのある名門だ。そして彼もまた甲子園を目標としていた。
「次はアレの練習だ」
彼は返球を受け取って構えに入った。ストレートとスライダーには自信を持っているが、
それだけでは埼玉にひしめく強豪には通用しない。変化球のバリエーションを増やせば
戦うための手札を増え、打者にとっては選択肢が一つ増えることになる。目下の課題は
スローカーブの習得だった。これを極めれば、速球により脅威を与えることになる。
彼は手の感触を確認し、その一球を投じた。ボールの回転は球速を殺し、そのまま緩い
弧を描いてキャッチャーミットに収まった。
その一球だけを見れば完璧と言っていい出来だったのだが――
「だめだ、余計な力が入ってる!」
キャッチャーは叱責した。わざと遅い球を投げるスローカーブは、投げる側にとっても
勇気のいる球種である。その気負いはピッチングフォームにそのまま現れていた。目線、
球の握り、フォーム、全てがぎこちなく、見る者が見れば一目でわかってしまう。どんな
球であろうと来るとわかっていれば打ちごろでしかない。
それから彼は何度もスローカーブを投げた。理想的なのは、全ての球種を全く同じ
フォームから投げられることだ。しかし、二十球、三十球と投げても、彼は理想には
近づけない。
「お前なあ、とりあえず力抜けよ」
キャッチャーは痺れを切らして立ち上がり、ピッチャーに歩み寄る。
「そんなんじゃすぐ疲れて、五回ももたないぜ」
キャッチャーはピッチャーの肩を叩き、背中を叩いた。無駄に力が入っているのが、
筋肉の固さから伝わってきた。
「女の子が見てるからって緊張すんなよ」
「バカ、そんなんじゃないよ」
相棒の言葉に、ピッチャーは苦笑した。そちらの方にちらっと目線をやる。
「結構かわいいじゃん。後で声かけてみねえ?」
「やめとくよ。どうせお前目当てだろうし」
お前は昔からモテるからな、と心の中で付け加えた。それに、男子高校生たるもの
人並みに女の子に興味はあるが、今はスローカーブの習得で手一杯だ。
「――っ!」
なぜだか急に体が震えた。
「どうした?」
「いや、なんか悪寒が」
「悪寒? いや、実は俺もなんだけど……」
一体どんなときに悪寒がするのか、彼らの人生の経験則から知ることはできなかった。
「それより練習戻ろう」
「はいはい」
それを受けて、キャッチャーは元の位置に戻った。いつのまにか全身の緊張が抜けて
いることをピッチャーは自覚していた。
(まったく、お前はよくできた女房だよ)
わずかに微笑を浮かべ、彼はおおきく振りかぶった。
彼らを見つめる見物人が二人いた。田村ひよりとパトリシア・マーティン。
「あのキャッチャー、なかなかの美形デスね」
「ピッチャーのほうも純朴そうな感じで好感もてるね」
彼女らに投球とそのフォームから実力を推し量るだけの眼力があるはずもなく。
「ニホンゴではキャッチャーのことをニョーボーと呼ぶらしいですネ」
「女房、妻のことね。バッテリーには特別な信頼関係が必要だから」
「となると、やぱりピッチャーが攻めでキャッチャーが受けですネ」
「セオリー通りに行けばそうなるね」
男を品定めする女が可愛く見えるほどに、その目線は汚れきっていた。
『だめだ、余計な力が入ってる!』
キャッチャーの叱責が聞こえた。
「ナニがダメなんですカ?」
「さあ?」
彼女らに彼らの練習の意図はわからず、しかしその表情から真剣さだけは伝わってきた。
彼らが黙々と練習するので間が持たなくなり、ひよりが口を開く。
「そういえば、例えで会話のことをキャッチボールって言うんだよね」
「コブシとコブシで語り合うってヤツですね!」
「そうそう。こうしている間もあの二人の間では……」
と、そこで再びキャッチャーの叱責が響いた。
『とりあえず力抜けよ』
力抜けよ。力抜けよ。力抜けよ。
そのフレーズがひよりの脳内で何度もリフレインする。
「おおおおおおおおおおお……」
「ヒヨリ、どうしたのデスカ?」
一人わななくひよりを、パティは不思議そうに見つめた。
「キャッチャーの攻めもいけるかもしれないっス」
「おお、ナニか思いついたのデスネ!?」
パティは歓喜の声をあげ、何かのきっかけになったらしいバッテリーに視線を戻した。
『五回ももたないぜ』
(ご、五回ももたない!? 四回はもつんスか!?)
ひよりの腐女子フィルターは都合のいい音声だけを脳に通した。
「オー! 腰に手を回してマス!」
実際には肩や背中に触っているだけなのだが、パティの腐女子フィルターは以下略。
「練習再開したのかな? ああいう言葉少なに分かり合うのって男同士って感じだよ」
「と、いうコトは……」
「よし、行ける……今回はこれ決まりっス!」
「久しぶりにボーイズラブの新作ですネ!」
「うん、早速ネームを描かなくちゃ!」
自分と同じく何かに打ち込む者に勝手にエールを送って、ひよりはグラウンドを
後にした。
――その夜、彼らは一晩中謎の悪寒に襲われたという。
7 :
3-283:2007/09/15(土) 18:29:58 ID:YKwFJEmS
野球部員を題材にしたBLものなんて読んだことないので
本当にセオリーかどうかは知りません。あしからず。
ぶっちゃけ「おおきく振りかぶって」って腐女子向け漫画だと(ry
誤爆かとオモタwスマンw
GJ
11 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 19:48:50 ID:w9uemudV
>>1乙
そういや、最速組みは明日最終回か orz
ここではネタバレがないことを祈ろう・・・・orz
そういえば陵桜学園のモデルの春日部共栄って甲子園常連の名門校だったよな
そこまで考慮してのネタGJ
>>1 スレ立て乙です
前スレで「らっきー☆すたーであんらっきー!?」を書いた者です
上記のおまけSSを書いたので投下したいと思います
・7レスほど
・非エロ
・こな×かが(っぽい)
・コメディ
15 :
(1/7):2007/09/15(土) 20:06:32 ID:C4rS6mDy
翌朝。柊家では、いつもと同じようにかがみとつかさが朝食をとっていた。
昨日は結局、学校には遅刻したものの、事情が事情であるため特にお咎めは無く、その
後もぴたりと不幸な出来事は止んでいた。かがみ的には何となく不本意だったらしいが。
そんな忌まわしい記憶はすでに頭の片隅に追いやってしまったのか、かがみはトースト
の最後の一欠片を口に入れると、コーヒーカップ手に取った。牛乳は昨日で懲りたらしい。
そして置いてあった新聞を広げると、一面に目を通す。
世はなべて事も無し。目立って大きなニュースも見当たらず、天気は今日も快晴のよう
であった。
「うんうん」
熱いコーヒーを一口啜り、思わずしみじみと頷いてしまう。昨日と比べて、今朝の何と
平穏なことか。日常の有り難みを改めて思い知るかがみであった。
「……お姉ちゃん、何だかお父さんみたい」
そう呟くつかさも、どうやら食べ終えたようで、こちらは昨日と同じように牛乳を口に
運んでいる。両手でコップを持つ仕草が小動物チックで微笑ましい。
「つまり、それだけ平和だってことよ」
そう言ってつかさの額を軽く指で弾きつつ、かがみは新聞を置いて席を立つと、洗面所
へ向かった。
鏡の中の自分にどこもおかしいところがないことを確認すると、ホッとしたように軽く
息を吐き、歯磨きを始めた。歯ブラシによって押され、形を変える頬を見ていると、昨日
のこなたの頬とその感触を思い出し、思わず生唾を飲み込む。歯磨き粉入りの。
かがみは2分ほど激しく噎せた。
何事もなかったように居間に戻ると、入れ替わりにつかさが洗面所へ入る。その間に、
かがみは自身の支度を整え、時計で時刻を確認した。昨日よりは若干早い。これならば、
余程のことが無い限り、今日は遅れずに済むだろう。さすがに二日連続で遅刻するわけに
はいかない。
つかさも用意を終える頃、テレビから脳天気な声が聞こえてきた。
「それでは、今日の占いーっ、らっきー☆すたー!!」
思わずかがみとつかさの肩が跳ね上がる。どうやら昨日のあの悪夢は、二人の中で拭い
がたいトラウマとなっているようだ。
ぎぎぎ、と音がするようなぎこちなさで、心底嫌そうにテレビへ顔が向けられた。
「お、お姉ちゃん……」
「大丈夫よ、つかさ。この手の占いコーナーで二日連続最下位だなんてこと、絶対にあ
り得ないから」
震える声で問うつかさに、そう力強く答えつつも、どこか怯えを含んだ瞳でかがみも画
面を見つめている。視線の向こうでは昨日と全く同じCGタイトルが、心なしかやけにおど
ろおどろしく表示されていた。
16 :
(2/7):2007/09/15(土) 20:07:22 ID:C4rS6mDy
「さて、今日、最も良い運勢は…」
昨日と同じ女性アナウンサーの声。同じ言葉。始まりを意識して、思わず手に力が籠も
る。ここで蟹座が呼ばれてくれれば、そう願うが、世の中やはりそう上手くはいかないら
しい。かすりもしない。気を落としかけ、いやまだ始まったばかり、と顔を上げたところ
で、立て続けに2位、3位、4位と外れた。
さすがに嫌な予感がしてきたのか、堪らずつかさは顔を覆い、かがみが「今日、学校休
もうかなー」などと現実逃避を始めた時、それは訪れた。
「第6位は、蟹座のあなた」
語尾が消えない内から、無意識にかがみは立ち上がっていた。つかさと目を合わせると、
喜びのあまり無言でひしと抱き合う。
「お姉ちゃん!」
「つかさ!」
正に阿吽の呼吸。どこからともなく祝福の鐘が鳴り響いてくるような気がするほど、美
しい姉妹絵図であった。具体的に言うと、全裸の天使が舞い降りてきてパトラッシュと一
緒に何処かへ連れて行かれそうになるくらい。
しかし、そんなことをしている間にも世界は回り、蟹座へのコメントは続く。
「……思わぬハプニングで気になるあの人と急接近!? ラッキーアクションはボディ
ブロー」
「ボディブロー!?」
驚いたかがみとつかさの声がハモる。ボディピローの間違いではないかと画面を見て確
認するも、そこにはしっかりとボディブローの文字が。ご丁寧にハートマークまでついて
いる。いかにも、気になるあの人と急接近するためにはボディブローをよろしくね、とい
った感じだ。何をどうよろしくすればいいのかは不明だが。
二人は同時に顔を見合わせると、力なく笑い合った。
「所詮、占いなんてこんなものよね」
「そだね」
何となく拍子抜けした様子でいつの間にか床に倒れていた鞄を拾うと、かがみは「そろ
そろ行こっか」と声を掛けた。つかさも気の抜けたような顔で「うん」と頷き、ふらふら
と二人で玄関へ出る。
ぼんやりと靴を履いていると、最後に居間から例の女性アナウンサーの声が漏れ聞こえ
てきた。
「そんなあなたを助けてくれるおまじないは……、恋人とキスをする!」
再び顔を見合わせると、何となく苦笑を浮かべながら、二人は家を後にした。
17 :
(3/7):2007/09/15(土) 20:08:06 ID:C4rS6mDy
いつもの待ち合わせ場所。昨日のこともあるので、今日は少し早めに約束をしておいた
のだが、こなたの姿は普段の時間になった今でも見られなかった。
「まったくもう、昨日あんなに言っておいたのに!」
かがみは先程の疲れのためか、早速ツンデレギアをサードにまで入れ、こなたがいつど
こから現れてもいいようにツンツンしている。
対照的につかさはギアが上がらないのか、姉を宥める気力も湧かず、「あはは」と笑う
ことで、少しでも場を和ませようとしていた。
そんなつかさの健気な思いが通じたのか、ようやく道の向こうに小さな、しかし特徴的
なシルエットが現れた。普段から小さく見えるのは事実小さいので正しいのだが、今日は
何故かいつも以上に小さいように思われた。シンボルであるアホ毛もしなびているように見える。
「……ちょっと、あいつどうしたのかしら」
途端にかがみのギアがデレに入る。実にいいエンジンだ。音が違う。
そうしてこなたが横断歩道の前に辿り着くと、見計らったように信号は赤に変わった。
更に、その眼前をもうもうと排気ガスを撒き散らしながら、大型トラックが勢いよく通
り過ぎる。ついでに、何故かある水たまりの水を思い切り跳ねながら、誰に向けたものと
も知れないクラクションを大音量で響かせて。
煙が晴れると、足をずぶ濡れにしたこなたは、咳き込みながら不機嫌そうに顔を顰めつ
つ、鼻先を手で扇いでいた。
「……ねえ、お姉ちゃん。あれって」
「言わないで、つかさ」
漠然とした不安。しかし、それを口にすると認めてしまうようで、かがみはあえて思考
を封じる。嫌でも答えはやってくるのだ。泉こなたの形をして。
信号が青になると、人混みに揉まれながら、こなたがよろよろと近づいてきた。段々と、
その疲れ切った表情がはっきり見えてくる。
髪の乱れ、セーラー服には所々ほつれやかぎ裂きなどが見られるが、普段が普段なので、
どこまでが「それ」なのか判断がつかない。
しかし、かがみとつかさの中にあった疑問は、今や確信に変わっていた。
そのまま、あと数歩という位置まで近づいた時、不意にこなたは立ち止まった。表情は
俯いているので確認出来ない。
「ちょっ、こなた。大丈夫?」
そう言って、かがみが一歩踏み出した瞬間。ゼンマイをフルに巻いて手を離したチョロ
Qのような勢いで、こなたが飛びついてきた。つかさが「お姉ちゃん、それはこなちゃん
の罠よ!」と叫ぶ暇もない。いや、彼女も昨日まったく同じ事をしているのだが。
「かがみ様ぁーっ!!」
タックルは腰から下。実に基本に忠実な、美しいフォームのタックルである。ここまで
低く、さらに素早く組み付かれては、いかにかがみと言えど逃げようはあるまい。つかさ
も思わず見惚れていた。
状態としては、サムソンティーチャーとサタンクロスが前後逆に合体したような感じだ。
かがみは振り払おうと試みるも、がっちりと決まったクラッチにそれを断念し、とにかく
状況の説明を促した。
18 :
(4/7):2007/09/15(土) 20:08:44 ID:C4rS6mDy
「後のこなタックルである」
「いや、そっちの説明じゃなくて」
どうしても茶々を入れずにはいられないこなたに、条件反射でかがみからツッコミが入
る。それが嬉しくてたまらないのか、こなたはようやく今日初めての笑顔を見せた。
「まぁ、薄々は分かってるけどね。……例の占いでしょ?」
かがみがそう指摘すると、こなたは腰にしがみついた状態から身を起こし、素早く真正
面からかがみに抱きついた。昨日に引き続いてのハグである。そのままいつものにんまり
スマイルを浮かべると、必死に離れようとするかがみに顔を近づけながら言った。
「そこまで分かっているなら話は早いね、ワトソン君。そう、我が双子座は今日最下位
だったんだよー。おかげで朝から散々な目に遭ってねぇ。だからサ、ほら」
こなたの手に力が込められる。それと同時にかがみの両手がこなたの額と顎を掴んだ。
引力と斥力。両者の力比べが始まる。一方はより近づこうと、もう一方はより遠のけよう
と。プロレスで言う手四つにも似た、原始的で厳かな戦い。つかさはかぶりつきで熱く様
子を見守りながら、脳内で実況と解説を展開している。
「ちゅーしてよー、かがみん。私は昨日してあげたじゃん」
「誰もあんたにキスなんてされとらんっ!!」
それまで出来るだけ距離を取ろうと必死で顔を背けていたかがみは、叫んだ拍子にこな
たの顔を見てしまった。額と顎を捕まれたまま口をすぼめているため、それはもう物凄い
ことになっている。アニメならモザイクとか必要なくらい。これでキスしようだとか言う
のだから、たまらない。例えるなら、映画のラブシーンでヒロインの顔がアップになった
瞬間、鼻毛が飛び出ていることに一人だけ気が付いたようなものだ。
「ごふっ!」
堪らず思い切り吹き出すかがみ。それぞれ両手が塞がっているために遮る手立てもなく、
無防備なこなたの顔面に聖なる唾液が降りかかる。グレートかがみの毒霧攻撃だ。
虹が、見えた気がした。
「ちょっ、かがみっ、いきなりひどいよっ」
慌てて手を離し、こなたが文句を言う間も、かがみの遠慮無い高らかな笑い声が響き渡
る。5分も続ければ腹筋が6つに割れるのではないかと思えるくらいの大笑いだ。
「ごめん、ごめん。何か、色んな意味で凄くてさ」
ひーひーと息切れをし、それでもまだ収まらないのか、ところどころ吹き出しながら謝
ると、かがみはむくれているこなたの顔を、取り出したハンカチで優しく拭った。
今度こそ笑いを収めて、「ごめんね」と呟く。途端に何も言えなくなり、「うー」と唸
るこなた。
そんな二人を見つめながら、「仲がいいなぁ、まるで姉妹みたい」と思う実の妹。不憫
な子である。
19 :
(5/7):2007/09/15(土) 20:09:42 ID:C4rS6mDy
「じゃあ、お詫びにちゅーしてくれたら許すよ」
「何でだよ。元はと言えばあんたの所為でしょ」
人差し指を立て、これでどーだとばかりにこなたが言うも、かがみの反応はけんもほろ
ろだ。ギアがツンに入ったままなのだろう。
しかし、そう来るであろうことを予測していたこなたは、すぐさま次の策で畳み掛ける。
「うぅ……、かがみんは私が不幸な目に遭い続けてもいいって言うのね」
よよと泣き崩れる振りをして、ちらりとかがみを横目で見る。案の定かがみは言葉に詰
まっていた。昨日のかがみの不幸っぷりと言ったら、それはもう悲惨なんて言葉じゃ足り
ないくらいのものだったのだ。目の前で同じ状況に陥っている人がいれば、何とかしてあ
げたいと思うのが人情と言うものだろう。例えそれが策略だと分かっていても。
後一押し、そう睨んだこなたは追加の策として、目を潤ませながら雨の日の子犬のよう
な目でつかさを見上げる。それだけではなくふるふると震えながら、「つかさぁ」と呟くことも忘れない。
勢いよくつかさの胸に見えない矢が突き刺さる。こうかは ばつぐんだ!
「こなちゃんっ」
思わずひっしとこなたを抱き寄せるつかさ。「計画通り!」とばかりに、つかさの胸の
中でこなたがほくそ笑む。同時にかがみは自分が窮地に立たされたことを悟った。
「お姉ちゃん、こなちゃんにキスしてあげて」
つかさは胸にこなたをしっかりと抱えたまま、かがみをはったと見据えて言った。つか
さもかがみほどではないにしろ、十二分に不幸を経験しているのだ。こなたを助けたいと
思う気持ちは決して小さなものではない。
かがみもそれが分かるだけに、返す言葉が浮かんでこない。出来ることなら自分だって
何とかしてあげたいのだ。
しかしキスは嫌だ、断じて嫌だ、天地がひっくり返ったって嫌だ、雨が降ろうが、槍が
降ろうが、例え5kg痩せたとしても……それならいいかな――、という思いも胸にある。
何故そんなに嫌なのか、こなたのことが嫌いなのかと言えば、そうではない。ここでキ
スをしたらこなたに屈したようで嫌というのが7割、2割が行為そのものに対する躊躇、そ
して残りの1割が、出来れば、もしそういうことをするのであれば、ムード溢れる夕暮れ
の海辺で、波打ち際を二人きりで歩いているうち、
「あっ」
「ん?」
「ほら、あれ。イルカが跳ねてる」
「本当だ……」
「……綺麗ね」
「うん、でも」
「何?」
「かがみの方が、もっと綺麗」
「な、何言ってるのよっ! こなたったらもうっ、いつも冗談ばっかり」
「こんな時に冗談なんて言わないよ」
「え……?」
「かがみ……」
「……ん」
とか、そういうシチュエーションじゃなきゃ嫌だとか、むしろいいとか、なーんてね、
なーんてねーという願望であった。
20 :
(6/7):2007/09/15(土) 20:10:21 ID:C4rS6mDy
「……お姉ちゃん?」
「はっ!?」
心配そうな妹の声で我に返ると、かがみは慌てて口元を拭った。知らない間に涎が垂れ
ていたらしい。二人から浴びせられる冷たい視線を誤魔化すために、かがみは第2位の理
由を捲し立てた。
「いや、だからほら、私たち女同士でしょ。それにそういうことって、こういう理由で、
しかも人前ですることじゃないと思うし」
ね、と強引に押し切ろうとするも、二人とも引き下がる気配はまったくない。無言のま
ま見つめ合う三人。こなたはかがみに弱く、かがみはつかさに弱く、つかさはこなたに弱
い。これが俗に言う「三竦み」の語源であった。じゃんけんを行う際に、「最初はこなた!
」と言うのも、これに由来すると考えられている。嘘である。
そんな中、突然つかさがこなたを見つめると、真面目な顔で口を開いた。
「パリイ!」
あまりに予想を越えた行動に狼狽するこなた。
「……ど、どったの? つかさ」
「え? だって、何か閃いた時にはこう言うって、昨日こなちゃん言ってなかった?」
どうやら電車でのことを言っているらしい。ようやく思い出したこなたは、曖昧に笑っ
て誤魔化した。あまりに純粋なつかさの夢を壊すまいと思ったためだ。
つかさも深くは追求せず、何故かこなたを解放すると、その腕を取ってかがみの前に誘
導した。細かく指示を出し、二人を向かい合わせに立たせると、近づいたり離れたりしな
がら位置を確認し、微妙な修正を行う。綺麗に真向かいではなく、少しねじれたような位置。
「二人とも、ちょっとこのまま動かないでね。あ、こなちゃんはもうちょっとだけ上を
向いて。うん、そんな感じ。絶対に動いちゃダメだよ。ぜぇーたいっ」
あまりに真剣な眼差しに、二人がこくこくと頷くのを見て、うんうんと満足そうにつか
さはかがみの右隣に移動した。こなたから見ると左隣だ。
「つかさ?」
「何してるの?」
訝しげに訊ねる二人に、「いーから、いーから」と手を振り、
「じゃあ、行っくよー」
と声を掛けた。二人とも心底不思議そうな表情を浮かべている。
しかし、そんなことはこれっぽっちもお構いなしに、つかさは思い切りバックスイング
を行うと、渾身の力を込めたレバーブローをかがみの右脇腹にお見舞いした。鈍い音が響
き渡る。手首の辺りまでめり込むような、それは見事なボディブローだった。
つかさの突拍子もない行動に、思わず目が飛び出るこなた。そしてかがみは「ぐえっ」
と呻いたかと思うと、体を「く」の字に折り曲げた。
苦しそうに歪んだ顔が必然的に下がる。そこには、狙い澄ましたようにこなたの顔があ
った。勢いよく顔がぶつかり、結果、二人はキスをした。もし、これをキスと呼べるので
あれば、だが。
21 :
(7/7):2007/09/15(土) 20:10:54 ID:C4rS6mDy
「やったぁー!!」
あまりの痛みに蹲って呻き続ける二人を余所に、ひとり計画通りに事が運び、はしゃぎ
回るつかさ。両手をあげてぴょんぴょんと飛び跳ねる。BGMは呻き声。何と言うか、非常
にシュールな絵面であった。
「……つ、つかさ? これは一体、何のつもりかしら」
ようやく混濁した意識から回復したのか、緩やかに身を起こすと、とても肉親に対する
ものとは思えない目つきでかがみが声を振り絞るように問う。夜叉もかくや、という眼光
である。父のただおが目にすれば、ショックのあまり心中を図るかもしれない。
かがみに答えを聞く気はまるでない。もし仮にこれが三択クイズでも選択の結果は全て
同じ、DEAD END直行、それ一つきりだろう。
こなたはまだ顔を押さえてのたうち回っていた。
「いやー、上手く行くか冷や冷やものだったよー。何か一つ、少しでもずれたらおしま
いだからね。頑張ったよー」
つかさはあくまであどけなく、ほのぼのと答えた。その笑顔には一点の曇りもない。状
況を考えると、心から戦慄を覚える答えだ。
かがみは言いたいことが、山で言えば富士山58個分くらいあったが、ほんの少し多すぎ
て、どれから口にするか考えるのも面倒だった。だから、代わりに小さく一つため息をつ
いた。同時に脇腹に激痛が走り、再び声を上げて蹲る。慌てて駆け寄るつかさ。
「お姉ちゃん! 大丈夫!?」
「って、あんたがやったんでしょうがああぁーっ!!」
間髪入れない大絶叫。あまりの怒りのためにギアがトップを振り切り、痛みも忘れたの
か、この後しばらくかがみのオンステージであった。ずっとかがみのターン。あちこちで
破壊音や悲鳴が聞こえる。
「大体キスさせるのにどうしていきなり人のお腹を殴るのよ!」
「だ、だって、今朝のおまじないでボディブローがいいって言ってたから」
「私にゃ全然良くないわーっ!! 何が占いよ、何がらっきー☆すたーよ! 私の不幸
は一体いつになったら終わるって言うのよーっ!!」
かがみの叫びに全世界が涙した。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。きっと明日はいいことあるって」
「だからあんたが言うなーっ!!」
気が付けばいつの間にか、こなたは隅の方で小さくなってぷるぷると震えていた。
「今までかがみが一番怖いと思ってたけど、本当に怖いのはつかさだったよ……」
しみじみと呟く言葉は、世界中の何よりも真実味が溢れていた。
【終わり】
以上です
前スレを埋めることなく、新スレへお邪魔してしまい、すみません
あと、みゆきさんを結局一度も登場させることが出来ず、申し訳なく思っています
大好きです、みゆきさん。何番目か訊ねられたら目を逸らして答えられないくらい
本当です
タイトルは、最初に書いたとおり、
らっきー☆すたーであんらっきー!? のおまけ
です。センスがなくてすみません
つかさが重装歩兵にwww
>>22 あなたにらっきーアタック興奮度無限大乙
この占いはどんな根拠で占ってるんだw
ギャグ満載で面白かったです
とりあえずこなたのラッキーアイテムはイルカですな
26 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 20:36:54 ID:OYTkgfeX
>>22 かがみのエンジンはTRDチューン4A-Gですか!?
しかも、ツンデレギアはラリー用のクロスミッションを組んでやがる・・・・これならボディブローのシーンで2速がぴったり合う。
要するにGJ!!
GJ!
つかさwwwwwwwwwwwwwww
パンチ力けっこーあるんだねwww
料理人足るもの、中華鍋を振り回すために筋トレですよ
>>7 某おお振り(某になってねぇ)髣髴してフイタwwwwwwGJwwwwww
ひよりってどうみても両刀使い系だよなーまさに節操なしwwwww
だがそれがいい!
ちなみにまだ前スレが20k以上あまってるんだ・・・ちゃんと埋めてからこっち使ってクレヨン
ちょwwwwwwテラインペリアルクロスwwwww
面白い上しっかり萌えさせてくれて、しかも『らしい』
これはいいものだー
刀、 , ヘ
/´ ̄`ヽ /: : : \_____/: : : : ヽ、
,. -‐┴─‐- <^ヽ、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
/: : : : : : : : : : : : : :`.ヽl____: : : : : : : : : : : : : : : : : : /
,. -──「`: : : : : : : : : :ヽ: : : : : : : : :\ `ヽ ̄ ̄ ̄ フ: : : : :/
/: :.,.-ァ: : : |: : : : : : : : : :\: : : : :: : : :ヽ \ /: : : :/
 ̄ ̄/: : : : ヽ: : : . . . . . . . . . . .、 \=--: : : :.i / /: : : : :/
/: : ∧: \: : : : : : : : : : ヽ: :\: : : 〃}/ /: : : : :/ 、
. /: : / . : : :! ヽ: : l\_\/: : : : :\: ヽ彡: : | /: : : : :/ |\
/: : ィ: : : : :.i: : | \!___/ ヽ:: : : : : : :\|:.:.:.:/:! ,': : : : / |: : \
/ / !: : : : :.ト‐|- ヽ \: : : : : l::::__:' :/ i: : : : :{ |: : : :.ヽ
l/ |: : :!: : .l: :| \: : : l´r. Y {: : : : :丶_______.ノ: : : : : :}
l: : :l: : :ト、| 、___,ィ ヽ: :| ゝ ノ '.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
|: : :ト、: |: :ヽ ___,彡 ´ ̄´ ヽl-‐' \: : : : : : : : : : : : : : : : : : イ
!: :从ヽ!ヽ.ハ=≠' , ///// ///u /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
V ヽ| }/// r‐'⌒ヽ イ〉、
ヽ、______ー‐‐' ィ´ /:/:7rt‐---、 こ、これは
>>1乙じゃなくて
ィ幵ノ ./:/:./:.! !: : : : :!`ヽ ポニーテールなんだから
r‐'T¨「 |: | !:.∨:/:./: :| |: : : : .l: : : :\ 変な勘違いしないでよね!
/: : .|: :| !:.!ィ¨¨ヾ、:.:/ !: : : : l: : : : : :.\
>>22 個人的にはこなタックルに吹いたww
とにかくGJ!!
>>22 >何か一つ、少しでもずれたらおしまいだからね。頑張ったよー
あー、なんだ。
つ か さ 頑 張 り す ぎ 。
だがぐっじょぶ。
前スレじゃもうだめっぽそうなのでこっちに投下おkですか?
どぞどぞwktk
やばい、今確認したら全部で24レスも使う…
一レス一レスの中を長くすればもう少し短くなりそうっぽいから
ちょっとまとめてから投下します
前スレでも話題でてたけど30レスでもかまわないって結論になっただろ。
いいから投下すれば
まあまあマターリ待とうヨ♪
42 :
14-319:2007/09/15(土) 23:00:14 ID:385Ys8Qr
はいわかりました
隠し事最終話行きます
20レスになりました
ちなみにエロと鬱ありです
こんなもん投下していいのか心配ですが行きます
ある日の夜…
私は机で勉強をしてたら突然ドアが開く音が聞こえた
「つかさー?いる?」
「お姉ちゃん?」
「つかさ、ちょっと来て」
「お姉ちゃん何か用?」
私はお姉ちゃんの傍に行った
「ねえつかさ…家族だからって安心しないことね」
お姉ちゃんが突然私の口を塞ぎながらベットの上に押し倒してきた
「んっ…んーーー!」
「つかさ、黙ってて。みんなに知られたくないでしょ?
それにつかさ、無防備すぎるのよ。少しは警戒しなさいよ
これじゃいつ殺されても文句言えないわよ?」
お姉ちゃんが言ってる様に私はいつもそうだった
私は知ってる人の近くにいると安心して警戒もせずに近寄ってしまう
とにかく私はお姉ちゃんから離れようともがき始める
しかしお姉ちゃんは紐みたいなもので私の手などを縛ってきた
「お姉ちゃん…なんで…やめてよ…」
「なんでって簡単な事よ。つかさが私に…」
「私は…私はこなちゃんしか好きになれないの…お姉ちゃんの事は好きになれないの…」
「それでも私はつかさの事が好きなのよ。
ついでに言うけど私は狙った獲物は逃がさないわよ」
「や…やだぁ…やめてよぉ…」
私はもうあきらめた。抵抗しても無駄みたいだったから…
お姉ちゃんは私と口付けをしながら手を私の胸においてきた
私の呼吸が徐々に激しくなるのが自分でも良くわかる。お姉ちゃんもわかってるだろうな…
時々舌を入れようとしてくるけど口を閉じて強く拒む
突然お姉ちゃんは顔を私の胸の前まで持って行き乳首を指弄くりながらもう片方の乳首を舐め始める
「ひゃうっ!」
「つかさ可愛いね…もっと声を聞かせてよ…」
「んっ…やめてよお姉ちゃん…」
「やだ。つかさがもっと素直になるまでやるんだからね。
それにもっともっと激しくするから。」
「ん…や…」
ちゅっ…ちゅっ…といやらしい音と私の声が部屋に響き渡る
お姉ちゃんはもっと激しく私の胸を弄んでそれに伴い激しく胸を舐める
私の意識が少しずつなくなっていた…
「んぁ…ぁぁ…」
お姉ちゃんはもう一度私とまた口付けをしてきた
しかし今度はお姉ちゃんの舌を私は受け入れてしまう…
「ちゅ…んちゅ…んあ…っちゅ…」
お姉ちゃんは私の舌を求めるように激しく動かしてきた
そして私の舌がお姉ちゃんの舌と絡み始める…
私の息が少しずつ激しさを増して行った…
私はいつのまにか我慢出来なくなっていた
「お姉ちゃん…もっと…」
「分かったわ。つかさが望むならもっとやってあげる」
なぜか私はお姉ちゃんを求めてしまった。
こんなに嫌なのに求めてしまった…
そしたら突然お姉ちゃんが私のあそこを下着越しに触ってきた
「やっ…」
私から甘い声が漏れてしまう…
「つかさ…とても濡れてるじゃないの」
「やだ…言わないで…」
お姉ちゃんは私の下着の中へ手を入れて…
「んぁ!」
そして下着を脱がされた…
「やだ…恥ずかしい…見ないで…」
「つかさかわいいからもっと見たくなっちゃうの…」
「え…い、…んあああっ!」
お姉ちゃんは突然私の中に指を入れてきた
指を入れられた瞬間私の体がびくっ!っと動いた
どうしてだろう…お姉ちゃんにやられてた方がとても気持ちいい…。
お姉ちゃんは突然指を中で激しく動かしたり回したりしてきた
「あぁ!…んぁぁ…ああぁ…やぁぁぁ…」
やらしい水音も私の声もさらに激しくなる
お姉ちゃんはそこでもう一本指を入れてきた
「あんっ……やめてぇ…お姉ちゃん…」
「つかさ、もっと声出して…。私はつかさの声聞けるだけで満足…」
「やっ…」
「つかさ、そろそろ逝かせてあげようか?」
「お姉ちゃん…もう…やだ…やめて…」
私の言葉などお構いなしにお姉ちゃんは私を責め続ける
そして、指の動きがどんどんはやくなって…
「もう我慢出来ないでしょ?」
「あぁぁ!…もう…やだ!…んっ!…やめてぇ!…」
くちゅくちゅと私のいやらしく激しい音が響き始めていく…
「もう…やだ…なんで…
あっ…私…やっ…な…んか…んぁっ…なんか…っ…いやっ…んーーーーーーーっ!」
私が逝く直前にお姉ちゃんは私の口を口で塞いだ
しばらく私の体は痙攣をして意識がどっかに飛んでいた
少し落ち着いてから指を抜かれてもまた少し痙攣していた
お姉ちゃんは私のがついた指をゆっくり味わいながら舐めていた
なんでこんなに嫌なのに気持ちよかったんだろう…
いつのまにか私を縛っていたものがなくなっていた
「お姉ちゃん…なんで…」
「つかさが振り向いてくれないから私は…」
「…」
「つかさが私に…」
「お姉ちゃん…?」
「もういいわ。もういいよね。おやすみつかさ。」
「…?」
お姉ちゃんの最後に残した言葉の意味がわからなかった
どういう事だろう…?
でも今日の事どうしよう…誰にも相談できないよぉ…
今までのお姉ちゃんとの…家族としての関係を崩したくないから…
それにこなちゃんもいるから…
今日の事と言いお姉ちゃんは最近ずっと変だった。
やっぱり私が…やだ…こなちゃんの事しか考えられない…お姉ちゃんは好きになれない…
他の人から見たらお姉ちゃんと私は仲良い様にに見えるけど…
私はお姉ちゃんと一緒にいるのが嫌になってるんだろうな…
もしかしたらお姉ちゃんの事自体が嫌いになってたりするかもしれない…
もう全て忘れたい…寝たらリセットできるかな…?
眠って何もかも忘れたかった
やっぱり色々考えてもキリがないため私は着替えをして寝ることにした
私は寝れば今日の事は全て忘れると信じてベットの中に潜った
しかしなぜか私はこの前の夢の事を全て思い出せていた
―近い内にとても大変な事が起こる
それも自分の身の回りで…
翌朝…
なんだろうこの感覚…
それに昨日の事は…
やっぱり記憶から消えてなかった…
寝ても忘れる事は出来なかった
これからずっとこの記憶を持ったまま生きていくんだろうな…
それにまた夢の事が気になった
前に夢の事はずっと思い出せなかったのになんで今更…
…
ふわぁ〜…
昨日の夜は初めてハルヒのラノベ見てたから眠いなぁ…
やっぱ慣れないラノベだったから読むペースがとても遅かったのが自分でも分かったなぁ…
とにかくラノベは見るもんじゃないな
でもどこまで読んだっけ…確か古泉君が出てきた所で読み終わったっけ?
あそこは…確かアニメで言うと5話だったかな
それにしても今日は朝から変な予感がしたけど
私の予感ってあまりあてにならないんだよねぇ…
昨日ずっと起きてたから変になってるんだねきっと。
そんなこと考えてるうちにつかさとかがみが一緒に歩いていたのが見えた
こころなしかいつもより二人の距離が離れてるのはきのせい?
なぜかつかさがかがみの事を避けてる様に見える。
「つかさ〜、かがみ〜、おはよ〜」
「あ、こなちゃんおはよう」
「なんだこなたか」
「なんだとは相変わらずかがみはひどいなぁ」
二人共いつもの調子の様で私は安心した
いや、安心できた?と言うべきだろうか
そこらへんはよくわからないから別にいいや
色々と二人と話してるうちにかがみが
今日買いたいものあるから放課後あんたについてくね
と言ってきたからとりあえずおーけーと言っておいた。
あれ?でも良く考えてみると最近は特になんも発売してなかったけど…
まぁ細かい事はきにしないでいいよね。
なんか買い逃した物でもあるのだろう。
そんなこんなで学校についてかがみと分かれた後
私とつかさは教室に入った。
「ねぇ、こなちゃん?」
「うぉ、びっくりしたぁ」
朝から全然話さなかったつかさがいきなり話かけてきたからびっくりしてしまった
「あ、ごめんね」
「まぁ、いいよ。それで何?」
「うん…お姉ちゃんね、この頃なんか変だから今日二人っきりの時は少し気をつけて欲しいなぁって」
「なんかかがみにされた?」
「ん〜、大丈夫。なんもされてないよ」
「うん、わかった。気をつけるよ
でも、つかさも隠し事下手だね、私でも分かるよ。かがみになんかされたんでしょ?」
「う…なんでわかったの…?」
「今日の朝二人で歩いてる所見てたけどつかさがかがみの事避けてるように見えたから…」
「やっぱりこなちゃんはわかったんだ…。でも、特にそんな心配するような事じゃないよ」
「え〜、そう?つかさと私の二人だけの内緒で…」
「それでもだめ。ほんの小さな事だからきにしないで」
「おはようございます泉さん、つかささん」
みゆきさんが来たようだった
「ゆきちゃんおはよ〜」
「おはよう、みゆきさん」
「二人で何を話されてたんですか?」
「特に何も話してないよ〜」
「あら、そうでしたか、もしお話の邪魔をしてしまってたらごめんなさい」
「そんな気にしなくて大丈夫だよ、ゆきちゃん」
1時間目から4時間目の間も今日は何事も無く授業が終わった
弁当の時間だけど、かがみは…お、来た来た。
「それじゃあみんなで食べようか」
「…」
「ゆきちゃんどうしたの?」
「あ、失礼しました。それでは、いただきましょうか」
かがみが来た時のみゆきさんの様子が少し変わっていた
いつもは見せなかったみゆきさんの反応が凄く気になった
ふぅ…やっと今日の授業おわったぁ
なんか授業がいつもよりとても遅く感じたなぁ
とりあえず帰りの準備をしよっと
ふぅ…やっと今日の授業おわったぁ
なんか授業がいつもよりとても遅く感じたなぁ
とりあえず帰りの準備をしよっと
と思ったら突然かがみがやってきた
「こなた〜?」
「何?」
「朝の約束忘れてないでしょうね?」
「大丈夫だよ〜」
「そう、あんたの事だから忘れてると思ってね。
放課後誰もいなくなった後私のクラス来なさいね」
かがみそう言ってすぐ自分のクラスに帰ってった
適当に答えてたけど今日かがみと一緒に帰るんだった。忘れていた。
でもその後すぐにみゆきさんが来た
「泉さん…かがみさんに気をつけてください…」
「ん…?なんで…?」
なんか朝にも聞いた様な台詞をここでも聞いた
「かがみさんの様子がなんか…変なようなので…」
「…?」
廊下の方を見たらかがみが少しだけ顔を出してこっちを見ていたが
私がかがみの事を見たらかがみはすぐに顔を引っ込めた
なぜか今日、みんなの行動に不可解な点が多かった。
HRが終わりつかさと教室でさよならした。
あれ?つかさ忘れ物してる…でももう行っちゃったしどうしよう…
まぁ、つかさならちゃんと気づいてくれるよね…
とりあえず誰もいなくなるまで私は教室でハルヒのラノベの続きを読んでいた。
えーっと、お、ここは朝倉さんと長門の宇宙人的な戦闘の話じゃないか
このときの長門、殺されそうになったキョンを助けにやってきてかっこよかったなぁ。
私は教室を見回して誰もいなくなった事を確認し
そしてしばらくしてから私は隣のクラスへ向かった
夕焼けに染まる教室と廊下が眩しかった。
「うん、来たね。」
「んでさぁ、かがみ買い物行くのになんでいちいち人いなくなるまで待つの?」
「うん、ちょっと周りの人に聞かれるのがいやだから。
つかさの事でどうしても話して置きたい事があってね。」
「つかさがどうしたの?」
「つかさってどうしてこなたの事が好きになったのかなぁって」
「んー、つかさが私の事好きになった理由?
それはつかさに聞いてみないとわかんないなぁ。聞いた事もなかったかな。」
「へぇ…。じゃあさ、もしこなたがいなかったらつかさも私の事見てくれるかな?」
「まぁそうなるのかな…?でももし私がいなかったらって…私はいらない子発言ですか…」
「え、かがみなに言ってるの?特別な日?なんかあったっけ?」
「そうよ、今年からこの日が特別な日よ」
「私にとってはみんなに会えるだけで特別な日だけどなぁ」
「あんたばかね、特別な日はたまに来るから特別って言うんでしょ。
毎日来てたらそれはもう特別じゃなくてただの普通の日よね」
「あぁ、そう言ったらそうだね。かがみん頭いいねぇ」
「少なくともあんたよりはましよ」
「で、さっきの話に戻るけどなんで今日が特別な日?」
「たまにさ、やらなくて後悔するよりやって後悔しろって言うよね」
そう言いながらかがみは隠しておいたナイフを私に向ける
私は死ぬかもしれない状況なのになぜか冷静でいられた
なにがあってこんな冷静でいられるのだろうか
「だからね、今日はあんたの命日よ」
「面白いねかがみ。ヤンデレは流行んないよ?それかアニメの影響?」
「あんたよくこんな状況でそんな事言えるわね。冗談だと思う?私は本気なんだけど?
死ぬのっていや?殺されたくない?私ね、ずっと前からあんたの事がね…」
なんかどっかで見た事あるシチュエーションだなぁ…
めんどいから考えるのやめよう。
かがみの目が少しずつ虚ろになってるのに気づいた
「お姉ちゃんっ!やめて!」
「つかさ?」
かがみの注意が突然教室に入ってきたつかさに向いた
かがみに隙が出来る。そこで私はかがみを取り押さえる。ついでにナイフも奪っておく
「くっ…つかさ!邪魔しないで!」
「お姉ちゃん、こなちゃんの事ナイフで刺そうとしたでしょ…?」
「つかさには関係ないでしょ!」
「関係あるよ!こなちゃんは友達だから!私が大好きな人だから!」
「うるさいわね!こなたもどきなさいよ!」
そう言うとかがみが抵抗を始める
「やだね、だってかがみ私を本気で殺すんでしょ?
かがみもなんだかんだ言ってあるものに影響されてんだねぇ。」
「っ…私はあんたみたいに影響なんかされてないわよ」
「へぇー、怪しいもんだけどね…」
「お姉ちゃんおかしいよ…こんなこと…」
「おかしくて悪かったわね…」
かがみの抵抗がだんだんと激しくなってきた
「くっ…」
「落ち着いてよお姉ちゃん!」
「つかさ、昨日私が言った事覚えてるでしょ?私は狙った獲物は逃さないって。」
かがみより体の小さい私はいくら格闘技経験者でもやっぱりだめか…せめてナイフを…
拘束を外した私はナイフをかがみの手に渡る事の無いように外へ投げ捨てた
「こなた何してるの?意味無いわよ?」
「えっ…?」
振り返るとかがみはそう言いながら起き上がり懐に隠しておいたらしい
もう一つナイフを取り出しながらこっちへ向かってきていた
「こなた、今度こそ…」
「………っ!」
突然向かってきたかがみに反応できなかった私
最後に聞こえた言葉が良く分からないけどこの教室に響いて…
そしたらもうかがみが近づいてきて…
やっぱ私はかがみにはかなわないんだな…
格闘技では相手の考えてる事を読み取る事が必要なのに
格闘技経験者の私はかがみの考えてるを読み取れなかったよ。
かがみの方が私より一枚も二枚も上手だった。
頭がいい人がこの世に生き残るんだね
弱肉強食とはよく言ったもんだよ。
そんな事考えてたら目の前が真っ暗に…
あぁ、もう私は…
つかさ、ごめんね…今まで何もしてあげれなくて…。
あれ?痛くない…?もう私の体にナイフが刺さっててもいいきがするけど…
あぁ、そっか、死ぬ時は痛くないってどっかで聞いたような事あるな…
もう私は…やっぱり宿題しないでネトゲばっかりやってたバチがあたったのかな… 13
「こな…ち…今…で…何…て…あ…なく…ごめ…ね…
最…ぐら…は…ね…」
「つ…?…んで…」
「お…ちつ…て…よ…お姉…ちゃん」
喋ってる内容は把握出来ないけどかがみとつかさの声が聞こえて来る…
え…?誰かが倒れた音が…
私は倒れてないし…なんで…もしかして…
怖いけど目を開けよう…
目の前には誰もいなかった…
目を下へやってみたら頭に黄色のリボンをつけた少女が胸から血を流して倒れてる
そのすぐ近くで髪に二つリボンをつけた少女がいた
ふとその少女の目を見るとさっきの虚ろな少女の目ではなくなっていた
「お…ねえ…ちゃん…?」
「つか…さ…なんで…」
「だ…ら…さ、や…よう…よ…も…」
「わかったから…わかったから…」
「お…ちゃん?最後…まで私…は…迷…か…たね…」
「やだ…つかさがいない日々なんて…私は…」
「こ…で…さ…お姉…も…勉…に…集…出来…ね…」
「そんな事言わないで!私はつかさの笑顔でいつも元気取り戻してたんだから…」
「そ…か…私も…姉ち…の…役に…た…って…だね…でも…さ…もう…お別…だ…ね
こな…ちゃ…ん…ず……好き…た…よ…。わ…たし……とを…好…にな…く…て嬉……った…よ…。」
私はというと何も言わないでずっと立ち尽くしてた…
つかさが声を頑張って出そうとしていて私は泣きそうになったけど堪えた
私は何も出来なかったね…
ふと廊下の方を見ると人の影が動いた様に見えた
「こ…こ…ちゃ…お……ちゃん…」
「や…やだっ…つかさ…?え?嘘…でしょ…?ねぇ、嘘だと言ってよ…またさ、笑顔を見せてよ…
この間のことさ…私…ごめん…ね…」
「つかさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
かがみの声が教室中に響き渡る
私はいつのまにか涙を流してた…
もう…
「私は…私は…」
かがみがつかさからナイフを抜いて…あれ?何をしようと…?
「つかさ、最後ぐらい…一緒にね…」
もしかして…かがみ…
「かがみっ!ここで死んじゃったらだめだよ!つかさだってそれを望んでいないよ!」
「私は…つかさと…いつも一緒だから…一緒じゃなきゃ…」
かがみには私の声が届いていないようだった…
私はかがみを止めようとするけどかがみはすぐ私を突き飛ばして…
そしてかがみはつかさの胸に刺さっていたナイフを自分の胸に…
「かがみ!」
「ねぇ、つかさ?聞こえる?私たちは…いつも一緒…だよ…ね…」
「…」
私はもう何も声が出なくなっていた
ねぇ、ほんとに死んじゃったの…?冗談だと言ってよ二人共…演技でしょ…?
朝に感じた嫌な予感ってこれの事だったのかな…
なんでこんな時に限って私の勘ってあたるのかな…
ねぇ、つかさ…かがみ…私は…どうすればいいの…?
私にはどうする事も出来ないの…?
なんで…なんでこんなことが起こっちゃったの…?
私はただ見てるだけしか出来ないの…?
こんなことが起きたのも…私のせいだよね…
だめだね…私のせいなのに…いざとなったら何にも出来ないじゃないか…
結局私は役に立たないダメ人間だったんだ…
私が生きてても誰も幸せになんか出来ないだろうし…
こんな私が生きるよりつかさやかがみの方がもっと社会のためになるのに…
なんでみんな勝手に死んじゃうのかな…
もし私がつかさの事を守れたなら…みんな幸せだっただろうな…
でももう過ぎた事にもしもの話なんてあったら都合が良過ぎるよね…
長門みたいに助けてくれたつかさも
朝倉みたいにキョンを殺そうとして失敗したかがみも
もういないんだ…
ここがアニメの世界ならあるいは…
はは、私は何言ってるんだ、ここはアニメの世界じゃないんだよ
なんで私はいつもアニメの話に例えてしまうんだろうか
「こんな私の事を好きになってくれたつかさ…ありがとう…
こんな私の買い物とかボケとかいつも付き合ってくれたかがみ…ありがとう…」
私は何を考えたのか突然既に意識が無い二人に礼を言ってしまった
何も音がしない教室に私の声が混じった
二人がいなくなった後に礼を言うって私はどんだけバカなんだろ…
生きている内に二人に言っておきたかったな…
結局は分からなかったな…つかさが昨日かがみに何されたのかも…
かがみは昨日狙った獲物は逃さないってつかさに言ってたらしいけど
もしかしてつかさはかがみに襲われたのかな…?
でももう過ぎた事は仕方ないよね。過去にとらわれてても意味ないよね…
それにしてもなんで人って隠し事をするんだろうね…不思議だなぁ…
親しい人に知られたくないから?好きな人に嫌われたくないから…?
かがみの本当の隠し事っていうのは私の事を憎んでるって事だったんだろうね
つかさはそれを感じられたんだろうけど言うタイミングがなかったのかな…
あれ?いつのまにか外から救急車のサイレンが聞こえる…
なんでだろ…タイミングがいいね…
二人共…絶対に…
もういいや…
いろいろ考えてたらなんだか疲れちゃった…
次起きたら私は何処にいるんだろうか…
ちょっと休もう…
…
教室の中は何も聞こえなくなっていた
外では虫の声に混じり救急車の音も聞こえていた
何も聞こえなくなったその教室には青く長い髪の少女が眠ったように座りこんでいた
しかし少女の目の前では血が大量に流れて・・・
その血が流れ出ている所では…
頭に黄色のリボンをつけた少女と髪に二つリボンをつけた少女が二人抱き合いながら倒れていた…
終
ありがとうございました
なんというかすみません
もう少し短く出来そうでした
次からはちょっと斜め上なカップリングで行きたいと思います
後
>>55にある 13 って言うのは
投下する時のレス数の目安をはかっていたもので一緒にコピペしてしまいました
66 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 23:34:19 ID:n1A46rrW
リアルタイム遭遇GJ
かがみがこなたに憎しみを向ける、というのはなんとも衝撃的で……
iTunesでBGM流しながら読んでたんだけど、トラックがちょうど「ケンカ予報の時間だよ」で、余計に切なかった件についてorz
-------------------
長さについては、長さ的に1レスにまとめられそうなところが結構ありますな
演出としてレスを分けたいという場合もあるけど、まとめWikiに載ったら意味なくなっちゃうから、
セパレート線を入れるとかしたほうがいいかも。
(その場合、半角の「-」はWikiの仕様で変換されちゃうので要注意。全角の「−」とか「―」を使ったほうがよさげ。
とりあえず、コロスノイクナイ(・A・)!!派の俺ガイル
>>63 乙!
いい感じに切なくなったぜorz
>>66 俺のとこのiTunesは刺殺のタイミングで奈落の花が流れて、
iTunesの空気の読みっぷりに吹いたがw
ずっとサンホラ聞いてた
で、「そこにロマンはあるのかしら……」
ともかくGJ
>>67 最初に書いとけばよかったですね
すみません
最終話=4話目?
>>63 某虐めドラマの最終回放送中にこんな鬱を投下するとは・・・両方見てしまった俺涙目orz
誤解されそうだがなにを言いたいかというとGJ!!
注意書きを軽くしか見てなかったけど、
こっちまで鬱をこじらせそうなSSですた。
覚悟が足りずに読んでしまったけどGJ
蕎麦を茹でてるときに降りてきたネタをちょっと。
いえ、決して鬱な雰囲気に耐えられなかったというわけじゃありませんよ?
『しりとり』
ある昼下がり。
勉強会という名目で集まっていたいつもの4人……だが
そのうちの2人は、既に集中力が切れていた。
まぁその2人は言わなくても分かると思うけど、つかさとこなただ。
こなたは漫画を読みだし、つかさは寝息をたて始めている。
少しはみゆきを見習ったらどうなんだ。
ほら、あんなにも熱心に勉強……あれ?違う。何見てるんだろう?
写真?……あれは6才こなたの写真じゃないか。いつの間にとったんだ。
じゅるりと音が聞こえたけれど、どうやらみゆきが垂れてきた涎を吸い込んだ音だったみたいだ。
みゆき落ち着け。
「ねぇねぇかがみ、しりとりしよーよ」
「はぁ?なによいきなり」
「暇な時のしりとりは定番じゃん」
「そうか?」
「ってなわけで、こなたの『た』!!」
「ちょ、いきなり始めるなっての!!た〜……たこわさ」
「なんのかんのいいつつ付き合ってくれる優しいかがみ萌え……えっと、さ〜さ〜……サルサ!!」
「うっさいわね、ん〜と……触りたいよこなたのお尻」
「ふぇ?……り、倫理!!」
「リミッター外れて襲っちゃいそうだよこなた」
「………た、たぬき」
「君は私の太陽だよこなた」
「…………た…誕生日」
「微々たる胸が逆に可愛いよこなた」
「……………タスマニア」
「あぁ〜もう可愛いなぁこなた」
「………………七夕!!」
「たっぷり可愛がってあげるよこなた」
「…………………たこ」
「こなたぁああぁぁあああぁあぁぁぁあああああ!!」
「かぶったからかがみの負けぇ……ぎゃあぁああぁああぁぁあぁぁぁあああ!!」
叫び声と同時に目を覚ましたつかさと、正気に戻ったみゆきによってこの場は静められた。
もうちょっとだったのに……
※しりとりは名詞のみで行いましょう。
蕎麦関係ないじゃんとかいう突っ込みは抜きで。
さぁ忘れましょう その未来が (=ω=.)プェー
また血塗られてゆくなんて (=ω=.)プェー
生温い風 塒を巻いたら (=ω=.)プェー
それがたぶん合図
抜け出してって 抜け出してって
悲しすぎる運命から
あなたは奈落の花じゃない
そんな場所で
咲かないで 咲かないで
絡めとられていかないで
音もなく飛び交う時のカケラ
>>75 ちょwww鬱気分台無しwww
でも俺の大好きなシリーズなのでGJ!!
6才こなたの写真をちゃっかり撮ってるみゆきにワロタw
>>75 こ、このHENTAIめ! もっとやれ!! ぐっじょぶ。
>>75 かがみ、つかさ、みゆきの3人でしりとりやったら
すごいことになりそうだw
来るたびに新スレになってる……。
四、五章は短いので一度に投下します。
想いを乗せて の続きです。
気づけば十二月。コートを手放せないほど、寒い毎日が続いていた。
かじかんだ手を座席の下からでる温風にあて、手のかじかみを和らげる。
「バスから降りたくないよ〜」
こなちゃんは両手をお尻の下に敷き、体を丸め駄々をこねる。
「何行ってるのよ、早く降りるわよ。つかさもいつまでもそうしてないの!」
お姉ちゃんだけは元気だ。
「はぁ〜い」
お姉ちゃんに続いてバスから降りると、冷たい風が髪をなびかせ、耳を赤く染まらせる。
露出した足と頬が寒さのせいでヒリヒリと痛みを感じ、ふぅ……と小さく吐いた息でさえ真っ白に広がっ
ていった。
―冷たい風と暖かい手―
「さぶぅ〜」
「ほんと嫌になるよねぇ、この寒さ」
バスを降りてから学校までのほんの短い時間でさえ、苦痛なほどの寒さだった。
同じように学校へ向かう生徒達もマフラーを目の下まで持ち上げたり、スカートの下にジャージを着てきたりと、工夫をして寒
さを凌いでいた。
その中にカップルもいて、手を繋ぎ男の子のポケットに入れて女の子は嬉しそうに微笑んでいる。彼女達だけはまるでこの寒さ
さも楽しんでいるように見えた。
「ねぇねぇ! 手繋ごうよ!」
すごいいいこと思いついちゃった! って思ったのに、お姉ちゃんは「はぁ?」の一言でつれない。
「ラブコメなんかであるあれ?」
でもこなちゃんは、言葉のキャッチボールを受け取ってくれた。
「うん、ポケットの中で手を繋いだら暖かいかなって」
「やったことないけど、あれってそんなに暖かいのかな?」
「だからやってみようよ! ね、お姉ちゃんも」
「なんでそんな恥ずかしいことしないといけないのよ! 絶対嫌!」
お姉ちゃんは頑なだった。
「むぅ、じゃあこなちゃんしよ?」
「うん、いいよ」
こなちゃんは、ポケットから出した手を、私に差し出し、私はその手を取った。
握り締めたその手を自分のポケットにいれる。
初めは冷たかった手が徐々に熱を持ってくる。なんだか心まで温かくなってくる。
やっぱりドラマとか漫画のように好きな人と繋いでるからなのかな?
「あったかいもんだねぇ意外と」
「うん、手だけをポケットに入れててもなかなかあったかくならないのにね」
「かがみもやればいいのに、ほらほらこっちの手があいてますよ」
こなちゃんは右手をお姉ちゃんに差し出す。
「だから嫌よ! 恥ずかしい」
しかしお姉ちゃんは顔を真っ赤にしてぷいっと顔を背けてしまう。
「もう〜素直じゃないんだから〜」
「高校生が3人で手繋いでるとか変でしょうが!」
「寒いから手を繋いでるんだなーとしか思わないよ、ねぇつかさ」
「そうだよ」
こなちゃんを援護してみたけれど、
「あんたらの基準はあてにならん」
結果は変わらず。
「じゃあ後でみゆきさんにも聞いてみよう。三対一ならさすがに私達が正しいって証明できるでしょ」
「できねーよ。ってか、みゆきまで巻き込むなよ」
お姉ちゃんはうなだれて知り合いだと思われたくないと私達の少し前を歩き出した。
「もう……、手ぐらいいいじゃんか。繋ぎたかったのになぁ」
こなちゃんは残念そうに小さく呟く。
聞こえてしまった。
聞きたくなかった。
暖かく感じていた手が冷たくなる錯覚。
「つかさどうかした?」
「え? どうもしてないよ?」
私は作り笑いを向ける。
そしてその冷たくなった手を温めなおすように、ぎゅっと握り締めた。
その時ビューっと一際強い風が吹いた。
「さっさと行くわよ。私だって寒いんだから」
お姉ちゃんは走り出す。
「だったら手を――」
「それとこれとは話が別!」
追いかけるように走りだすこなちゃんにつられ、私も走り出した。
その手を離さない為に。
走ったおかげか、学校に着いた時には、体全体がホカホカとあったまっていた。
かなりの体力と引き換えに。
「どうしたんですか、お二人とも息を切らして」
「はぁ……はぁ……お姉ちゃんが走るから……」
「一緒に走って来たんですか?」
「うん……あったまったけど、それ以上に疲れたよ……」
こなちゃんはカバンを机の横にかけると、机に突っ伏した。
「でも泉さんがこんなに疲れるなんてめずらしいですね」
「それはね……たぶん、私を引っ張ってたから」
「つかささんを、ですか?」
「うん、手を繋いでたから、自然とこなちゃんに引っ張ってもらう感じに……エヘ」
「なるほど、それで」
ゆきちゃんはクスっと笑ってから優しく微笑む。
「よかったですね」
「うん」
私もそれに応えるように微笑んだ。
「手を繋ぐという行為は、人間だけに与えられたもので、まだ人類が直立歩行に進化したくらいのころ手で
気持ちを通じ合わせていたそうですよ。『人間の手は人間のこころときわめて密接に連関していて、手は人
間の頭脳の触知しうる所産のみならず、触知しがたい思想までもかたちづくった』と人類学者のカッシング
は言ったそうです」
「なんだか難しいね……」
「えっと……、つまりですね、言葉では伝えにくい事や、伝わらない事でも、そうやって手を繋いだりする
ことによって、心が伝わるものなのではないかと、私は思いますよ」
「そういえば子供の頃とかお母さんと手を繋いでると安心したよね、それと同じようなもの?」
「そうですね。手を繋ぐというのは簡単そうに思いますが、手というのは体の中で一番感覚が鋭い部分なん
ですよ。だからこそ、一番気持ちが伝わる部分でもありますし、そこを相手に預けることによって相手にと
って心を開くのと同義なのかもしれませんね、それが安心に繋がるのではないでしょうか」
「ゆきちゃんすごいねぇ〜」
「い、いえそれほどでは、医学の勉強の予備知識としてたまたま読んだ本に書いていただけですよ」
「手ってすごいんだね」
私は手のひらをまじまじをみる。なんの変哲も無い手に見えるけど……。
「でも手を繋ぐのは一人ではできないんですよ。掴んだり握ったりすることはできますけど、繋ぐっていう
のはお互いが相手の手を握るという行為を継続させた結果なんですよ。二人の気持ちがないと成立しないん
です」
ゆきちゃんはふふっと笑って言った。
「それに冬はカイロ代わりになりますからね」
「ゆきちゃんには何でもお見通しなんだね」
「あら、何の事でしょう?」
ゆきちゃんは手を頬に添えにっこりと微笑んだ。
繋いだ手から私の気持ちが少しでも伝わっていればいい。
そう願わずにはいられなかった。
私も席につき、椅子を少し横に向け、後ろの席のこなちゃんの頭を見下ろす。
「こなちゃん、ありがとね」
私の声にぬっと顔を上げたこなちゃんは
「え? 何が?」
不思議そうな顔をしていた。
「いろいろ」
私は微笑んでみせた。
こなちゃんは益々わからないといった様子で首をかしげた。
こなちゃんにとっては、何気ない事だったのかもしれない。だけど私は、上手くいえないけど、心が温
かくなるような、そう、お母さんに手を繋いでもらったときのような穏やかで優しい気持ちになっていた。
昨日より今日、今日より明日。私はこなちゃんを好きなっていく。
前はそんな自分が怖かった。なのに今は、こんなにもあたたかい気持ちなのはなんでなんだろう?
私はこの気持ちを忘れないように、こなちゃんの温もりが残る手をぎゅっと握り締めた。
第五章へ続く。
雪が降っていた。
このへんではあまり積もるという事はないのだけど、今回は積もりそうなほど降り続いていた。
白い結晶達が庭一面を白く染めていく。
ただ雪が降っているだけで、いつもの景色が幻想的に変わる。
「つかさーちょっと手伝ってー」
「はーい」
クリスマスイブの今日。お姉ちゃんはクリスマスケーキを作ろうと言い出した。
―雪が溶けたら何になる?―
終業式が終わった後、私はこなちゃんに全てを明かした、そしてクリスマスの日、私とお姉ちゃんは別の
場所で待っていると伝えた。
驚いていたけど、あの時の私のように、どこか妙な冷静さがあったように思う。
私の話をただ、うん、うんと頷いて聞いていた。
その表情はいつに無く真剣で、そこから思考を読み取る事はできなかった。
あれから三日があっという間に過ぎ、運命の日は明日へと迫っていた。
「いつも買ってくるのにどうして作ろうなんて思ったの?」
私は生クリームを泡立てながらお姉ちゃんに聞いてみる。
「なんとなくよ、なんとなく」
しかし、質問しながらも私の心はさっきの幻想的な世界に囚われていた。
「ふーん、ねぇ作り終わったらちょっと外でない?」
「えーこんな寒いのに?」
お姉ちゃんは本当に嫌そうな顔で答える。
「私も寒いのはいやだけど、雪積もってるから、ね、ちょっとだけ」
「わかったわよ、ちょっとだけね」
「うん!」
「あっそれはもうちょっと少な目の方が綺麗に焼けるよ」
私は砂糖の継ぎ足そうとするおねえちゃんを制した。
「そうなの?」
「うん、本とかはちょっと多めだからうちのオーブンだと焦げちゃうの」
「へぇ〜さすが良く作ってるだけあるわね」
「へへへ、まあね」
お姉ちゃんはこなちゃんの話をしなかった。だから私も話さなかった。
今日は、ただの姉妹でいたかったのだ。なんも考えずただ、大好きなお姉ちゃんといたかったんだ。
自惚れかもしれないけど、お姉ちゃんも同じ気持ちだったんだと思う。
こなちゃんの言葉を借りれば、シンクロ率400%ってとこかな?
完成したケーキを冷蔵庫へ入れ、私達は玄関から靴を履いて庭へとでた。
「やっぱり寒いね」
さすがに雪がふっているだけある。
「当たり前でしょー。ほら、つかさもコート来なさいよ」
「ありがと」
お姉ちゃんは二階から二人分のコートを持ってきてくれていた。
それに腕を通すと再度呼び止められた。
「それと……、これもね」
ふわっと首に巻きつけられる。
「これまだあったんだ……」
小さい頃お揃いで買ってもらったピンクのマフラーだった。本当は違う色がよかったんだけど、お姉ちゃ
んとお揃いにしたくて、お姉ちゃんと同じピンクにしたんだっけ。
「この前部屋の掃除してたらでてきてねー。つかさ、ずいぶんあったかくなるまでしてたわよねーこれ」
「うん、だってすごくお気に入りだったから……エヘ」
使い込んだそれは、すこし色あせていて、なんだか懐かしい匂いがした。
私は綺麗に敷かれた白い絨毯の上を歩きだす。おもしろいくらいくっきりと足跡が残った。
子供の頃よく、お姉ちゃんの足跡の後を歩いたっけ。
「すごい真っ白……」
お姉ちゃんは同じピンクのマフラーを巻きながら呟いた。
「うん、綺麗だねー」
「ホワイトクリスマスになったわねー。あ、でも正式には明日だから明日まで降らないとか」
「この分だと降り続きそうだけどね」
空を見上げると、絶え間なく白い雪が降り注ぐ。
「小さい頃よくここで雪合戦したよね、お姉ちゃん達と」
「そういえばそうだったわねー、雪で壁作ったりして」
「またやりたいなー雪合戦」
ポフッと背中に物をぶつけられる感覚に振り向いた。
お姉ちゃんはにやりと笑っていた。
そして新たな雪玉を私に向かって投げようと――。
「わー! ま、待ってよー」
「戦いに情けはかけない主義なのよっ」
その手から離れた雪玉がまっすぐに向かってくる。
「うあっ!!」
顔面ストライク。雪とはいえ、固めてあるだけに少し痛い。しかも冷たさが痛さを増加させる。
「ほらほら、早く玉作らないと、こっちの独占場になるわよー」
顔の雪を払いのけ、でてきた視界には、また新たな武器を手に入れた敵が居た。
「ま、待ってってばー」
奇襲なんて酷いや。やりたいって言ったのは私だけど……。
「っと、うあっ――」
今度は胴にヒット。そして私は尻餅をつく。
「あうっ冷たいよ……」
「あはは、もーつかさとじゃ張り合いなさすぎてつまんないじゃない」
お姉ちゃんはお腹をかかえて大笑い。
「みんなが強すぎるんだよ」
「そんなことないわよ、いのりお姉ちゃんも結構弱いわよ」
「でもお姉ちゃん達、いのりおねえちゃんには絶対あてないんだもんっ、だからいつも私ばっかり標的にな
ってたし……」
「へー気づいてたんだ」
「お姉ちゃんとまつりお姉ちゃんがペアだったときとか悲惨だったもん……」
「そういえばそうだったねー」
お姉ちゃんは二ヒヒと笑う。
でも、私とペアのときは必死に私を守ってくれたよね……。
笑いながらもお姉ちゃんは私に手を差し伸べてくれ、私はその手をとって起き上がる。
「ありがとう」
そう、昔からお姉ちゃんは優しかった。
「お姉ちゃん」
「……ん?」
「私達は何があっても姉妹だよね?」
「何言ってんのよ、あたりまえでしょ」
「ふふ……そうだよね。私おねえちゃんと姉妹でよかったよ」
「え……」
「お姉ちゃんは一人っ子がよかったんだっけ?」
ちょっと意地悪。
「あっあれは……。そういう風に思ったこともあったけど、つかさやお姉ちゃん達がいてよかったって思っ
てるわよ……」
お姉ちゃんは少し照れて顔が赤くなっていた。
「そっか……よかった」
私は微笑んだ。そんなお姉ちゃんをかわいいって思ったんだ。
その時、ガラガラという音が聞こえた。
「あ、お母さん達帰ってきたかな」
「ケーキ見せて驚かせよっ」
私はお姉ちゃんの手を取ると、靴を脱いで縁側を登った。
「ちょっ、つかさ――もう……しょうがないなぁ」
私はこなちゃんが好き。
私はお姉ちゃんが好き。
こなちゃんの好きになった人が、他の誰でもないお姉ちゃんでよかったと、この日、心の底からそう思えた。
第六章へ続く。
>>93 GJです!!
つかさ健気だよ〜
思わず応援したくなります!!
>>93 GJ
姉妹愛ですね。つかさ健気。
恋の行方も気になるところです。
ちょwwもう100近くまで消費したのかwwwwwww
なに、らきすたスレではよくあること
>>93 gj
99 :
ぶーわ:2007/09/16(日) 02:40:49 ID:V2KGdnnW
前スレ
>>482-487「人として袖が触れている」の続きです。
盛り上がりがちょっと少なくて グダグダしてるかも。
↓7レスほど拝借
>>93 この言葉しか送る事が出来ない自分に嫉妬
GJ!
「遠いー。暇っ、暇ぁー!」
牛車(ぎっしゃ)の中に、わがままお姫様の声が反響する。
その耳を劈く声と揺れる牛車が、まだ私がこの世界に居ることを思い知らせる。
……どうしてだろう。
もう起きて、私は学校に行く準備をしている時間なのに。
今はこのわがままお姫様を連れて、はるばる遠くのみゆきの邸に向かっている。
確かに、私は昨日寝たはずだ。
なのに目が覚めても……夢が続いている。
「ねー、かーがみぃー」
「もう少しだから、我慢しなさい」
体に絡み付いてくるこなたを、体が勝手に宥める。
昨日の夜は自由だった体も、今ではまた元通り。
また第三者観点から傍観するしか出来ない。
それがまた歯痒くて、勝手に動く自分の体が恨めしい。
しかも今また、こなたに引っ付かれて顔が熱くなってるよこいつは。
はぁ……どいつもこいつも。
「うーいいもん、つかさ遊ぼー」
と、私から離れて今度はつかさに甘える。
だから残念がるなっつーの!
「んぎゃぁっ!」
と、その時こなたから雑巾を絞ったような悲鳴が聞こえる。
突然牛車が止まり、その勢いで壁に突っ込んだからだ。
まぁ、静かになっていいか。
「どうかしたの? 文彦」
「いえ、それが……」
牛車の前簾から、牛を牽引していた雑色(ぞうしき:小間使い)に声をかける。
だがすぐに原因は分かる。
牛車が通ろうとしている狭い道を、違う牛車が塞いでいるのだ。
「訳を聴いてきます」
と雑色の男性が塞いでいる牛車に駆けて行く。
「どうしたんだろうね」
「多分牛車の調子でも悪いんじゃない? 妙に車輪が傾いてるし」
「えー! じゃあ通れないじゃん!」
前簾から他の二人も外を覗き、予想通りにこなたが不平を言いだす。
はぁ……こうなると手がつけられないんだ。
「大丈夫よ、少し迂回してもそんなに距離は変わらないから……」
そうこなたを宥めようとするが、その言葉が止まる。
何故か雑色が慌てて戻ってきたからだ。
「どうしたの? 牛車が壊れてるなら迂回して……」
「た、大変ですっ! こ、こちらの牛車は、内大臣姫君様の牛車です!」
「……へ?」
素っ頓狂な声が、自然と口から漏れた。
この雑色が慌てるのも当然だ。
内大臣……つまりは、当今様(天皇)の側近。
その姫君が、どうやら困っているらしい。
はぁ……どうやら、こなたの愚痴は今日は一日中聞かないといけないことになるかもしれない。
「はぁ……仕方ないわ。文彦、姫君様をこちらにお連れして」
「は、はいっ」
私の意図を汲み取ってくれたのか、足早に雑色が駆けて行く。
「え、どうするの? お姉ちゃん」
「……一度お邸まで、お連れしましょう」
「えー! みゆきさんの家はー!?」
一番に悲鳴をあげたのは……予想通りこなただった。
はぁ、まぁそうなるわよね。
今から邸に戻ってたら、丁度夕方ぐらいになってしまう。
もちろん、みゆきの所には行けなくなってしまう。
「分かって、こなた……内大臣様の姫君を見捨てて遊びに行ったなんて知られたら、それこそ大問題になるの」
貴族社会とは、そういうもの。
身分の低いものが高いものを蔑ろにしただけで、その家の浮沈に関わってくる。
それも内大臣の姫君?
島流しってレベルじゃねーぞ!
「雪姫様の家には文使いを送るわ、また日を改めてってね」
「し、仕方ないよ……こなちゃん」
「……うん」
見る見るこなたが落ち込んでいくのが分かる。
まぁそれも仕方ない。
前々から楽しみにしてたのは、私がよく知ってるから。
体の方の私が、だけど。
今の返事で、また落ち込んでるし。
どうにもこっちの私は、憎まれ役が多いらしい。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
問題は、その後だった。
数名の他の雑色に連れられて、この牛車お姫様がやってきたわけ。
……とんでもない違和感の塊を引き連れて、ね。
「この度は助けていただいて、真にありがとうございます。内大臣が妻……あやのと申します」
私たち三人の向かい側に座っている女性が、深々と頭を下げる。
拾かった牛車も、さすがにこれだけ人が乗ると狭く感じる。
気品に包まれた出で立ちは、うちの甘えん坊とは雲泥の差。
まぁそれはいい。
うん、どうでもいい。
ここに峰岸が出てきたことは、些細な事だ。
今まで散々色々出てきたわけだしね。
問題は……その隣りの、違和感の塊。
「いやー助かったぜっ、あんがとなーっ」
「みさちゃん駄目よ、ほらちゃんとお礼言わなきゃ」
無理矢理頭を掴まれて、それの頭を垂れさせる。
それ、と言っていいものか。
とにかくそれは……日下部だ。
峰岸と同じ、クラスメイトの一人。
でも、心が違和感で押しつぶされそうになる。
私は知らない……『こんな』日下部を。
「こちらは、ええと……何て言ったらいいかな」
「みさお。でいいぜ!」
峰岸が言いよどむ間に、日下部が間髪いれず叫ぶ。
相変わらずのテンションも、笑う口から見える八重歯も、全部私の知ってる日下部だ。
そのはず……なのに。
彼女は、いや……その言い方は今はおかしい。
この世界の日下部は……。
男、らしい。
http://bbs.freedeai.com/src/up5802.jpg 鮮やかに紫に染められたそれは……束帯。
つまり、男性の着物。
さらには冠に、脇差まで。
性格が多少違うくらいなら、今までにもあった。
こなたは甘えん坊だし、おじさんは何処かこなたを邪険にしてるし。
なのに今度は……性別かよ。
「え、えと。みさおさんは……雑色の人、なんですか?」
そのハイテンションに押されながら、つかさがおずおずと尋ねる。
「んー、違うようなそうのような……まぁそんなもんだ!」
また豪快に笑う。
そんなもんだ、って答えになってない気がするんだが……。
そして笑いながら、目の前の席のこなたの表情に気がつく。
「おー? なんだチビっ子ー。元気ないなー」
まだ機嫌が直ってないのか、頬を膨らませている。
その頭を笑いながら撫でる。
「そっか、予定駄目になったのかー。ごめんなぁー、あやのの所為で」
「みさちゃん、その子一応大納言家の娘よ。あと、牛車が壊れたのはみさちゃんが中で暴れたから」
「んおお? あー、あの噂のお姫様ねー」
どう噂になってるのか気になるところだけど。
っていうか何なんだ、この軽さは。
確かに私の知ってる日下部だけど……この軽さはどうだ?
大納言の娘のこなただけじゃなく、内大臣の奥さんの峰岸まで居るのにまるで気を遣わないじゃないか。
ただの馬鹿なのか、それともはたまた……やっぱり馬鹿か。
とりあえず、ただの雑色でなさそうなのは認識しておこう。
「ほらほらチビっ子ー、仏頂面してないで遊ぼうぜー」
「やだ。みさお嫌いー」
と、視線を日下部から外へ逸らすこなた。
どうやら事の原因が日下部にあるのを知って、さらにむくれているらしい。
はぁ……こりゃ半日は不機嫌かも。
「そんな事言わずにほれほれぇー」
「きゃわっ! くっ、ひ、ひゃははははっ!」
だがその不機嫌な表情が、緩む。
日下部の手が、こなたの脇を襲っている所為らしい。
脇が弱かったのか、帰ったら試してみよう。……帰れたらだけど。
「あらあらみさちゃん、いじめちゃ駄目よ?」
「いやはは、可愛いからついさー。あやのも昔はこんなだったのになー」
と悶絶するこなたの頭をゴシゴシと撫でる。
完璧子供扱いされてるわ。
まぁ、幼児体系だからしかたないか。
「ちなみにみさちゃん、確かその子……私たちと同い年よ」
「嘘ぉっ!? こんなチビなのに!?」
「チビって言うなぁっ!」
「ぐへぇー!」
今度はこなたが日下部を襲う。
不機嫌だったこなたも、少しは発散したのか笑顔で日下部の脇を集中砲火している。
もしかして相性いいのか、この二人。
でもその辺にしといて欲しいな。
体のほうの私がどうにも、やきもちを妬いてるみたいなので。
はぁ……いい加減にして欲しいよ、本当。
邸に帰り着くと、わざわざ大臣様が直々に迎えてくれた。
彼からしてみれば、内大臣に媚を売るいい機会なのかもしれない。
それもあってか知らないが、峰岸や日下部他雑色は一晩うちに世話になるらしい。
こなたは結構喜んでいたからいいか。
何でもまた日下部に遊んでもらう約束をしたらしい。
案外お似合いな二人なのかも知れないわね、同い年なんだし。
……向こうは素性が怪しいが。
邸は突然の来客に慌ててはいたが、それほど忙しくはなかった。
まぁ大納言の家ともなれば、突然の大物の来日など少なくないのだろう。
なので元よりみゆき邸に行くはずだった私やつかさには、すぐにお役御免。
私は部屋で、つかさと眠くなるまで暇を潰していた。
「こなたは?」
「遊びつかれてもう寝ちゃったみたい、みさおさんがずっと相手してくれてたんだって」
そりゃまた何とも。
みゆきの所に行けなかったから、溜まってた分を発散したのかしらね。
「あ、ほら。見てお姉ちゃん」
「うん?」
するとつかさが外のほうを指す。
見ると、そこから淡い光が伸びてくるのが分かる。
そして……昨日の感覚。
「あっ……」
「ようやくお月様出たねー。最近こんな天気ばっかで嫌になるよね」
「……」
つかさが笑いながら、宴の余りものの煎餅を頬張っている。
私のほうはまた……『動く』。
昨日と同じ、私の時間がやってきたのだ。
『月夜の降り注ぐ夜のみ、貴方に自由が許されます』
……。
昨日、適当に読んだ一文が頭を掠める。
そう……全ては、あの大学ノートの手紙の通り。
二回目ともなれば、その実感も増す。
『これは夢ではありません』
ああそうだったわね、夢じゃないんだとさ。
分かったわよ、それは納得してあげる。
この感覚を現実だと、享受してあげるわよ!
それでなんだっけ? 何か探せ……とか何とか。
はぁ……馬鹿な私。
ビリビリに破いて捨ててしまうなんて。
朝起きたらもう、風に吹かれて何処かに行っちゃったみたいだし。
うろ覚えなのになぁ……。
だ、だって仕方ないじゃない!
あんなの信じろってのが無理な話よっ!
今だって、まだ完全に信じてるわけじゃない。
でも……あれに書かれているとおり、今私は自由に動けている。
この、月夜の光によって。
分かった……そこまでも信じよう。
それが私が、平成の朝に目覚めるための架け橋なんだそうだから。
あとはええと……何て書いてあったっけ。
「ねぇ、お姉ちゃん聞いてる?」
「へっ?」
目の前につかさの顔が広がった。
「あ、ああ。ごめん、何だっけ?」
考え事をしてたので、まるでつかさの話を聞いていなかった。
ああもう、相変わらず空気詠み人知らず。
こっちは帰ることで頭が一杯なのにっ!
「昨日の文さ、何て書いてあったの? たまには教えてよー」
「え、ああ。あれ?」
ロクでもない内容だったわよ。
とか言いたかったけど、どうせ曖昧にしか覚えてない。
本当のことを言っても信じないだろうし、適当に答えておこう。
「ごめん、つまんなかったから破って捨てちゃったわ」
「えー、でもあるよ? そこに」
何言ってるのよ。
言ったでしょ? 捨てたって。
しかも包んであった紙ごとビリビリに引き裂いて。
だからもう形も残ってるはずが……。
「っ!!!!!」
思わず、血の気が引いた。
私の部屋の、脇息(きょうそく:座った時肘をかける台)の上。
そこには……あった。
私が引き裂いたはずの、白い文が。
急いでそれに近づき、素早く手に取る。
「もー、見せてよー」
それが隠すような仕草に見られたのか、つかさが頬を膨らます。
「いいもんっ、明日こそ見せてもらうからねっ」
と、頬を膨らませたまま部屋を出て行った。
いや、そんなのはどうでもいい。
問題は、これ。
これがここに、あるはずがないっ!
だって、絶対に引き裂いた。この手でっ!
……。
い、いや待って、待て私。
落ち着け私。
クールになれ私。
深呼吸、深呼吸……。
これが昨日と同じ文とは限らないじゃないか。
じゃあ、また私に文が?
……開けるしか、選択肢がないのが辛い。
この文の主は、知っているんだ。
私が、この世界から抜け出す方法を……。
それが誰であれ……私には、頼るしか道はない。
「……へっ?」
その手紙を開けて、一瞬私は躊躇した。
というか、狼狽した。
逡巡した。
そこには、昨日と同じ大学ノート。
それはいい。
問題はそこに書かれていた内容。
……それが一瞬、意味が分からなかった。
でも、この状況に重なる意味はすぐに頭に浮かんできた。
意味は……そういう事でいいと思う。
なら、どうすればいい?
私のすることは決まってくる。
そうだ……足掻いてみせる。
私は、帰ってみせる。
あの、平成の朝に……絶対に。
そう心に決め、部屋を抜け出した。
辺りを照らす月夜がまるで、私を嘲笑っているかのようだった。
(続)
108 :
ぶーわ:2007/09/16(日) 02:50:27 ID:V2KGdnnW
続きます。
みさおやあやのって初めて動かしてみたので、違和感があるかもしれません。
ドンマイ俺!
>>108 GJ!読めば読むほど続きが楽しみになります。
続きも頑張ってください!
>>108 GJ
…なんかかがみも性格違ってないか?w
リアルにやたら固執するし、なんか冷めてるしw
>>108 GJ!!
束帯姿のみさおも似合う!
みさお好きのおれは嬉しい
続きが楽しみでたまらないZE!
>>108 GJ!純粋に続きが気になる!!
>>110 現実世界から本来自分が関われない世界に来て、
それがほぼ第三者的な視点から始まったことを考えれば
冷めてるというか、どこか物事を他人事っぽく捉えてしまうのも無理ないのでは。
…と解釈してるので、個人的にはぶーわ氏の書く
かがみの性格に違和感は感じないかな。長文スマソ
>>112 いや物語の最初っから妙にリアリスト臭い感じだったからさw
批判とか違和感とかじゃなく著者の味として楽しませてもらっている。
>>108物語の全容が気になりすぎる・・・
いずれ真実が全部明かされるのを楽しみにしてる。
超GJ!!!
てかスレ建って10時間足らずで110超えwwwww
このままいけばあと3日位で新スレがwwwwww
前スレが500KBに到達!入力を受け付けませんっ!
埋めSSの皆様GJ〜。埋め間近の単発作品もまた楽しみなのが、このスレのいいところ。
>>108 みさお「くん」と来たか! というか冠も帯も怪しさの塊ですな、みさおくん。
きっと美味しいところを持って行ってくれるのでしょう。わくわく。ぐっじょぶ!
埋め乙です
前スレ稼働時間は105時間46分
100時間切りはなりませんでしたが、それでも最速ですかね
118 :
12-512:2007/09/16(日) 10:00:51 ID:PS9jZlEF
さよなら魔法使いシリーズの続きです。
つかさメインで、人によっては鬱に感じるかもしれません。
4か5レス頂きます。
119 :
12-512:2007/09/16(日) 10:01:23 ID:PS9jZlEF
7月7日は「私たち」の誕生日。
18歳を迎えるこの年まで、つかさはずっとそう思っていた。
小さい頃は家族でささやかな誕生日会が開かれていた。
二人で一緒にロウソクを吹き消し、お揃いのおもちゃを貰う。
中学生になるとかがみは友達と誕生日を過ごすこともあったが、夜は必ず二人揃って
一つのケーキを分け合った。
高校に入ってからの二回はつかさにとって、とても幸せなものだった。
大好きな姉と、気心の知れた友達。自分の焼いたお菓子、個性的なプレゼント。
だからつかさは7月7日が大好きで、今年も待ちわびていた。
お菓子は何を作ろうか、ケーキはどんなものを買おうか。プレゼントは何を貰えるのか。
つかさの楽しい悩みは尽きなかった。
姉の浮かれた声を聞くまでは。
「今度の誕生日、こなたがケーキ作ってくれるんだって。
なーんか知らないけどあいつ張り切っちゃってさ……えへへ」
そして当日、かがみは傍目にみっともないくらいにそわそわしていた。
鏡の前を何度も往復して、身だしなみのチェックに余念がない。
対照的につかさは朝から気分が晴れなかった。
気だるい身体に鞭打って焼いたクッキーもなぜか美味しく感じられない。
自分がなぜこんなに落ち込んでいるのか、それすらわからなかった。
「つかさ、どうしたの?気分悪いの?」
つかさの暗い表情を見かねて、まつりが声をかけた。
「あ、ううん大丈夫。ちょうどあれが来ちゃって」
「つかさって今ごろだったけ?ちょっと早くない?」
「今月夜更かしが多かったからかな……少しずれちゃったみたい」
つかさは咄嗟に嘘をついた。
自分でも下手な嘘だと思ったが、まつりはそれ以上追求してこなかった。
「大丈夫だって言うならいいけどさ。
……にしてもかがみは何なんだろうね、彼氏が来るわけでもないんでしょ?
まあいいや。じゃ、私は出かけるから、あんた達で好きにやんなさい」
彼女が来るんだよ、とは流石に言い出せなかった。
まつりが出て行ってすぐに、こなたとみゆきがやって来た。
こなたは丁寧にラッピングされた大きな箱を抱えていた。
去年のこなたのプレゼントを思い出して、つかさは自分だけが時間から取り残されてし
まったように感じた。
四人がかがみの部屋に集まると、すぐにそのケーキの包装が解かれた。
「……これあんたが作ったの?」
「すごいですね」
ケーキはポピュラーな生クリームとフルーツのケーキだった。
表面はレースのようにデコレーションされ、その上でコーティングを施された果物がそ
れぞれの色に輝いている。
そしてサイズの方もホームメイドとは思えない程立派だった。
趣味でお菓子をよく作るつかさも、ここまでのものは作ったことがなかった。
「すごいでしょー。これ結構作るの大変だったんだから」
「そこらのお店のより綺麗に見えるな。で、味のほうはどうなのよ?」
「百聞は一見にしかずだよ、かがみん。ま、食べてみればいいんじゃない」
食べずとも、つかさはこのケーキがかがみにとって最高の味であること、そして自分
が素直には味わえないことを確信していた。
微妙にずれた空気の中、みゆきはマイペースに自分のバッグを広げていた。
「あのー、私泉さんがケーキを作ると聞いて紅茶を買ってきたんですよ。
折角だから一緒に頂きませんか?」
「あ、私入れてくるよ。ちょっと待ってて」
つかさはみゆきが差し出した紅茶缶を、引ったくるように手にとって部屋を出た。
こうなることをつかさは予感していたが、実際に目の当たりにするのはやはりこたえた。
あのケーキは絶対的にかがみの物だった。
勿論こなたにつかさを差別する意志はないだろう。
しかしそれでも、あれは姉妹のためのケーキではあり得なかった。
つかさは台所に来ると缶を開けることもせず、気の抜けた顔でシンクに寄りかかった。
「つかささん?お湯は沸きましたか?」
しばらくそうしている内に、みゆきが専用のポッドを持ってやって来た。
持参してきたのは茶葉だけではなかったらしい。
はっと我に返るとつかさは慌ててコンロに火をつけた。
「やっぱりああ仲むつまじい所を見せられると、ちょっと妬けますね」
「…………ありがとう」
みゆきの気遣いに感謝しつつも、つかさはそれを受け入れなかった。
「つかささんが遠慮する必要なんてないんですよ。前にも話したじゃありませんか」
「そうだね。うー、でもやっぱり今日は無理かも……」
それっきり会話は続かなかった。
しばらくしてお湯が沸くと、みゆきは慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。
嗅ぎ慣れない、繊細な香りが立ち上る。
「いい香り……」
「つかささんのために、心をこめて淹れましたから」
みゆきはなんのてらいもなく言い切った。
「ゆきちゃん……」
「さあ、行きましょうつかささん。誰のためでも、ケーキはケーキです。
私たちも食べてあげないと、かがみさんがまた体重で泣くことになっちゃいますよ」
微笑んで背を向けたみゆきに、つかさはついて行かざるをえなかった。
まるで手品師のようだとつかさは思う。
あの笑顔に気をとられている内に、全ての仕掛けは終わっているのだ。
日付は変わって午前二時、つかさは息を忍ばせてかがみの部屋の様子をうかがっていた。
「うん、今日はちょっと感動しちゃった……ああもう、だから茶化すな!
私は本気で言ってるんだからさ……うん、ありがとう。それじゃおやすみ」
扉越しに携帯が閉じる音が聞こえると、ようやく部屋の明かりが消えた。
「やっと寝た……何時間話せば気が済むんだろ……」
家中を回って全員が寝静まったのを確認すると、つかさはそろそろと台所に向かった。
音を立てないように、気をつけながら調理器具を棚から引き出す。
そして一度自分の頬を打って気合いを入れた。
「眠い……でも、やらなきゃ……」
つかさは片手で素早く卵を割ると、セパレーターで卵白と卵黄を別々にボウルに入れた。
次に卵黄の入ったボウルに上白糖を入れ、ハンドミキサーで攪拌する。
充分に粘りがついて確認すると、あらかじめ煮出しておいた紅茶と、その葉を混ぜ合わせた。
それから幾つかの工程を経て出来上がった生地を型に流しこんで、レンジに入れるとオ
ーブンにセットしてスイッチを入れた。
ここまで僅かに15分程だったが、夜更かしに慣れていないつかさは、糸が切れたように
床にへたり込んだ。
つかさとみゆきが部屋に戻った時、かがみはもうケーキを食べ始めていた。
口の周りに付いたクリームを指で拭って舐め取るその仕草は、つかさの記憶にある誕生
日会のかがみ、そのままのように見えた。
あの唇や指が、こなたの身体の上ではどういう風に動くのか、つかさはそんなことを想像して一人赤面した。
「あ、つかさっ!これとっても美味しいよ。つかさも食べてみなよー」
「えっ……ああ、うん」
つかさは恐る恐るケーキに口をつけた。ゆっくりと咀嚼し、舌全体で味を確かめる。
かがみはにこにこしながらその様子を見つめている。
「ほんとだ、美味しいね」
「やっぱりそうだよねー!美味しいよね!」
つかさはかがみの期待に応える嘘をついた。
不味かったわけではない。しかし今のつかさには、ただ出来の良いケーキとしか感じら
れなかった。
「つかさから見てこのケーキどうかな?なんか失敗してる所とかない?
何回か作って練習はしたんだけど」
「どこもおかしくないよ。正直私もこんなうまく作れないかも
こなちゃん、すっごい頑張ったんだね」
「うん、まあ私って凝り性じゃん。なかなか水準に達するものができなくてさ」
こなたは、今のクオリティを実現するまでの苦労を話し出した。
つかさは一々相づちを打ち質問に答えて、誠実に接したが気疲れは溜まる一方だった。
そこへみゆきが控えめに割って入った。
「あの、泉さん、つかささん、ケーキもいいですけど紅茶も飲んでくださいね。
冷めると香りが落ちてしまいますので」
「あ、そうだね。よしどれどれ……ってうまー!何これ!?もしかしてめちゃめちゃ高かったりするんじゃないの?」
「いえいえ、大したものではないんですよ。ただちょっと淹れ方にコツがありまして……」
「むぅ、なんというお嬢様スキル。さすがはみゆきさんだね」
「なんていうか、みゆきらしいわよね。ちょっと私にも教えてくれない?」
「ええ、いいですよ。少し長くなるのですが……」
会話の中心はいつの間にか、すっかりみゆきに移っていた。
おしゃべりから離れ紅茶をすすって、ようやくつかさは一息ついた。
僅かな期待と共にケーキを再び口にしてもみたが、やはり味は変わらなかった。
誰のためでもケーキはケーキ、頭では解っているのに、身体はついて行かなかった。
そして散々思い悩んだ末、つかさは一つの結論に達した。
自分で、自分のためにケーキを焼こう、と。
耳障りな電子音でつかさは目を覚ました。
「わっ……!そっか、私寝ちゃってたんだ……」
レンジを覗きこむとそこには、天井につかえそうな程に膨らんだ、シフォンケーキが出
来上がっていた。
レンジの扉を開いて取り出すと、昼間と同じ紅茶の香りがつかさの鼻をくすぐった。
そして身が崩れないように慎重に型から剥がして、最後の仕上げに取りかかる。
クリームを絞りだし、丁寧にケーキの表面をならしていく。
ほどなくして、つかさの誕生日ケーキが完成した。
こなたの華麗なデコレーションケーキとは対照的な、新雪のように無垢なケーキ。
つかさはそれを切り分けもせず、直接スプーンで削り取って口に運んだ。
「良かったぁ、ちゃんと美味しい……」
しっとりしたシフォン、生クリームの滑らかさ、紅茶の風味。その全てが素直に美味しいと感じた。
つかさは涙を流しながら、夢中になって食べた。
美しい調和を見せていたケーキが、次第に残骸となっていく。それすら快感だった。
その全てを食べきると、つかさは糸が切れたように眠りに落ちた。
7月8日。つかさが初めて迎えた「私」の誕生日。
ここで終了です。
関係無いんですがここしばらく、頭の片隅でいつもらき☆すたのことを考えてたんで
終わると思うと虚脱感がきついっす……。
>>123 リアルタイム遭遇GJ!!
> 私たちも食べてあげないと、かがみさんがまた体重で泣くことになっちゃいますよ
みゆきの心遣いと、それを自然に表現できる作者さんが秀逸だと思った。
>>123 GJ!
仕事場で読んでニヤニヤしてる俺確実にキモイ…
周りに誰もいなくて良かったwww
>>123 GJ
あなたの作品はなんていうか、キャラクターに対して
誠実な感じがして凄い好きだ
放送終わってもずっと書き続けて欲しいな
>>!23
gj!
や、やっと追いついた・・・・・速度はやすぎwwwww
みなさんGJです!!
今日で俺生きがいのひとつが終わるんだなあと思うと、なんか泣けてきます・・・・
放送終わるって事がそんなに深刻なことか!?
足りないところは勇k……じゃなくて、妄想力で埋めればいいじゃないっスか!
動画切り貼りとか手描きで「自作で真・らき☆すた30分作っちゃいました〜。 てへっ☆」くらいの勢いを持った奴はいないのか!?
……と、無責任にスレ住人を奮い立たせてみたり。
うん、ごめん。
要するにこのまま終わるのが寂しいだけだわ、俺。
こんなこと書いてもきいてくれないんだろうけど
MAD作りたいなら草草動画の中だけでやってくれ
VIPで死んでくれ
ちょっとそれは過剰反応気味じゃないかね
手描きFLASH動画なら違法性も薄いだろう
そんなことより、
>>131のIDを逆から読んだらsseXな件について
そんな事気にするなよw
―――以上が、原因不明の糟日部共栄高校生徒百合事件の真相であり、
らき☆すた4人娘と呼ばれる少女たちの、戦いの真実である。
―――この戦いに正義はない。
そこにあるのは、純粋な願いだけである。
何があったwwww
などと意味不明の言動をとっており、動機はいまだ不明
>>123 ヤバイ。GJ。携帯から長文失礼します。
私今までROMだったんですよ。このスレが2桁になるくらいからの新参ですが。
今まで面白いと思う時は数え切れないくらいあったんですが、
書きこみたいと思ったのは初めてです。
面白いというより、(いや、面白いんですがw)上手い、ですね。
題材、表現、終わり方まで。上の方も言ってますが、みゆきさんの使い方とか、
下手にハッピーエンドにしなかったあたりがとくに私の好み。(ハッピーも好きですが)
今書きたいと思う題材があるんですが、中々表現が上手くいかなくて。
でも近い内に頑張ろうと思います。数書かなきゃ上手くなりませんもんね。
参考にさせていただきます。
長々と失礼しましたが、何が言いたいかと言うと、
GJ、もうなんかGJってことです。
次のニュースです
今日午後2時30分ごろ、頭京都の一部地域で停電が発生しました
これにより、自宅においてあったファイルサーバがお釈迦になったとの事です
現場の苗山さん?
>>135 通りがかった幼女ひかげを助けようとして致命傷を負い、
駆けつけたかがみの腕の中で安らかな眠りにつくこなた
不治の病により短い生涯に幕を下ろしたゆたかと、最後まで彼女を気遣いながら散っていったみなみ
ただ二人に少しでも近づきたかったひより、追い詰められた彼女はゆい姉さん率いる警官隊によって……
激しい戦いの末、この世界を創り出したそうじろうを倒したかがみは眠ったままのつかさの元へ向かう
守れなかった約束を果たしたかがみは、とても穏やかな顔つきでベッドの脇に横たわっていた
――みんなが傷付けあう事なく、みんなが悲しまずにいられる世界
それは過去にそうじろうの愛情が生んだかなたの幻影が望み、誰もがどこかで願っていた世界……
つい書いてしまった、お目汚し失礼・・・・
龍騎は名作だと思うです
・・・以上現場の苗山からでした。
結構あるだろうなと思って保管庫探したんだけど
みさおとかがみの絡みってないんだね。それとも俺が見逃してるだけかな?
折角最終回寸前だってのにまたかがみんかよ
144 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 16:04:22 ID:F6Ca2wch
最終回の一話手前で主人公が雑魚に殺されるよりマシだろ!
はいはい龍騎龍騎
145 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 16:23:40 ID:MRfsMR01
ストーカーレイプ・狙われた柊四姉妹
何てタイトルを連想してしまった。原作にはマトモな男キャラが居ないせいだー!と暴言を言ってみる
男キャラなんてだしてみろ、それこそ作品が崩壊するぞ
ストーカー=そうじろう
やるのはせいぜい妄想・覗き程度。口癖は『ちちしりふとももー!』
みつかると『堪忍やー!仕方なかったんやー!』と泣いて謝る
どうしよう
純愛・ハッピーエンドなSSが書きたいのに
浮かんでくるプロットは鬱モノか陵辱モノばかり
最終回直前で病んでるのか
スレの流れがさっぱり分からんぜ
みんな最終回だから情緒不安定なんだ
最終回直前でみんな頭がどうにかなってるんじゃw
>>148 個人的には鬱モノも陵辱モノもドンと来いなんだが純愛とかが書きたいなら
保管庫を参考にしてみては?
あああああああああああああああ最終回まであと6時間んんんんんんんんん
かがみん愛してるううううううううう
俺、らきすたスレって居心地のいいここしか見てないんだけど、本スレと呼ばれるような場所はもっと阿鼻叫喚なんだろうか
そんなことを思いながら仕事をしつつネタを考える日曜の夕方
最終回最速1時間前にいいといえるかわからないネタを投下予定
まぁ、前スレの埋め用として作ったネタをちゃんと再構成して作ったものだけど…
>>148 鬱とか陵辱モノって少ないから、俺としては読みたい。
書きたいものを書いてもらうのが一番だとは思ってるんだが
今日が最終回、ということより表紙買いした同人誌がハズレだったことが悲しい
表紙がこな&かがで中身がただのイラスト集(他ジャンル含む)って詐欺じゃねえのか(´・ω・`)
SS初投下したいのですがレス数算出とかどうしていいもんか分からずに途方に暮れ中。
7300字くらいの地味で暗いかがこな話です。
1レス分をどこで区切るかにもよるけど、行数を60で割ってみるといい。
大体はじきだせるよ。
確か1レス全角2048字60行が限界だったよな
>>151>>155 ・かがみ、こなた、つかさ3人がレイプされ心身に深い傷を負うも
みゆきやゆい、ゆたからの支えでじょじょに立ち直っていく話
・むしろ「こなた自殺スレ」向きな、かがこな悲恋モノ
うぅっ、病んでる俺の頭が憎い…
24話を見ればマトモに戻れるかな
161 :
157:2007/09/16(日) 19:29:33 ID:M/qJ3H+u
たぶん7レス程度頂きます
地味で暗いんでご注意を。題はありません。
近頃は、夕方になれば急に気温が下がる。こなたと一緒に本屋を出ると、辺りはもう薄暗くなりはじめていた。日だけじゃなくって、世界自体が暮れていってるような、口にし難い感情が心をよぎる。ちょうどそんなときに秋風が、身震いする私をほんの少し黙らせた。
途切れた会話を拾うように、私はもう一度口を開く。
「んで、結局、進路はどうすんのよ?」
「んー……どうなんだろ?よくわかんないや」
呑気すぎる表情には、受験生らしい緊張感のかけらもない。私は参考書コーナーに用があったのだけれど、こなたが覗いたのは漫画コーナーだけだった。
あまりに呆れたので、言ってやった。
「あんたももうちょっと焦りなさいよ。置いていかれかけてるの分かってる?」
「んー、そーだね」
正直に言うと私は、いつになく苛立っていたのだ。どうする気だよコイツ、とか、心配してやってるのに、とか、なんで本人より私の方が焦ってるのよ、とか色々な感情が混じり合ってぐちゃくちゃで。それで止まらなかったのだ。
「あんまりふらふらされてても、みんなに迷惑だって分かってる?」
すぐ後ろを歩いていたこなたの足音が止まった。
「……うん。そだね。かがみんにこれ以上迷惑かけられないや」
「へ?」
私はびっくりして振り向いた。うつむいて立ち止まっていたのは、いつも以上に小さく見えるこなただった。
もっと、笑って適当にごまかすとか、そんなゆるいリアクションを予想していたのに。真面目に返されて、私は言葉を失ってしまう。
「もう歩調合わせようとしないでいいよ。置いてっていいよ」
風がいちだんと冷えた気がした。枯れかかった街路樹が散らした葉が、小さな音を立てて傍らをすり抜けてゆく。私の少し後ろで立ち止まったままのこなた。数メートルの距離がなんでこんなに遠いんだろう。
遠すぎて、なんて言っていいのか全然思いつかなかった。
「いやっ、えっと、そっ、そういう意味じゃ……」
「私、好きだよ。かがみんのこと」
小声でぽつりとつぶやくのがあまりにも唐突だから、危うく聞き逃しそうになった。
「な、なによいきなり改まって……?」
「かがみ、好き」
こなたの表情を見た時、私には直感的に理解できてしまった。もっと鈍感だったらよかった、と思った。気付かなければよかった、と思ってしまった。
「そ、そんなの、わ、分かってるわよ、一応、友達なんだし……」
顔が赤くなる。しどろもどろ。歯切れ悪く言って、後悔した。大失敗。分かり切ってるのに。その「好き」とは別の「好き」だと、こなたは言っているのに。
たぶんこなたには私が理解していることもばれている。私が理解して、その上で全力でいいかげんにごまかして返事をしたことだって分かっているだろう。
「……ああ、うん、そだね、あはは」
その上でこなたは笑った。笑ったのだ。それから私がなにか言う前に、あ、そだ、アニメの録画予約忘れてた、早く帰んなきゃ、じゃあねかがみ、なんて、早口で言って走り去っていってしまった。
ちょっと呆然として、それでも混乱を収めようとしながら、私は軽く血の気が引いていくような気分だった。
これってつまり、拒絶、ってことじゃないか。全力でぶつけてきたこなたを、言葉ではっきり断るより酷いやりかたで拒絶したってことじゃないか。
自分がどれくらいこなたを抉ってしまったのか、見当もつかなかった。
せめてもっと慎重に言葉を選べなかったのか、と苦々しい気分になりながら、そこにすら幾分かの保身ぽい感情が交ざっていることに気付いて自己嫌悪はますます深まった。胸のどこかが、罪悪感に似たもので、きりきりと痛んだ。
家に帰って新聞を見た。こんな時間帯、アニメなんて、どこのチャンネルも流していなかった。
*****
さらさら、とペンが流れる音がする。珍しく無駄話もせずに、こなたはずっと問題を解き続けていた。時折、分からないところを私に訊いてくるくらいで、お互い口もきかずにもう3時間ほどになる。
数学の過去問を先に解き終えた私は、こなたがペンを置くのを待った。
「答え合わせ終わったら、休憩にしよっか」
「あ、うん」
赤ペンに持ち替えたこなたに声をかけたけれど、素っ気ない返事ばかりだ。
少しして、こなたがお茶を取りに部屋を出ていった。そこでようやく緊張の糸が切れた私は大きくため息をついた。
本当はこの週末、3人で勉強会をすることになっていたのだった。言い出しっぺのつかさはというと、風邪をひいて家で寝ている。そんなわけで、私たちは2人きりなのだった。
……まったく、なんで私ここに来ちゃったんだろう。
昨日の今日だ、気まずくないわけがない。なんで私がここにいるのか、自分で自分の理解に苦しむ。
つかさの具合が悪いと分かった時点で、なんのかんのと理由をつけてキャンセルしてしまえばよかったのに、と私は思う。それなのに、気付いたら1人で、普通にインターホンを押していたのだ。
「最っ低……」
独り、部屋の中で自身の判断ミスを呪う。こなたと二度と笑い合えなくなるかと思うと、じくじくとしつこく続く胸の痛みが、いっそう気になった。
ドアが開く音が聞こえて、私は急いで強張った表情を解きほぐす。少なくとも、その努力はした。
入ってきたこなたは、お盆を器用に片手で支えて部屋の扉を閉めた。麦茶の入ったグラスが揺れて、氷が小さくからんと鳴る。アンバランスなお盆を受け取りに立つタイミングすら逃して、私は結局座ったままでいた。
こなたはお盆を机の上に置いてそのまま、席には着かず離れていった。窓際まで歩いていくと、レースのカーテン越しの空を見て今ようやく気付いたように小さく声を上げた。
「あ、雨」
私は黙っていた。それはこなたの独り言だと思っていたからだ。
小さな声で、ねえかがみ、と呼ばれて、やっと話しかけられていたことが分かった。
「あのさ、傘、持ってきた?」
「天気予報、見たから。折り畳みだけど」
窓際で外を眺めているこなたは、決して私の顔を見ようとしなかったけれど。それは、今日初めての会話らしい会話だった。
「かがみはさ、いっつも、私に迷惑かけないよね」
確かに今まで、こなたに頼み事とかをした覚えはほとんどない。だからって、ああそうね、なんて返してしまえるような気分でも空気でもなかった。
昨日の話だ、と私は悟った。そして、その話題を持ち出すということは、こなたが自分で自分の傷口を掻き回すということなのだ。
ぽつぽつと、語り始める。
「今まで私がどんなに迷惑かけても、結局かがみは優しいかがみだった」
──だから、嫌われはしないかな、って。そう見越してあんなこと言ったんだけど、と、何でもないことのように言ってのけるこなたが、少し震えているのに私は気付く。
「だから、私はずるい。ずるいし、卑怯だ。」
どうして、こいつは。前の日にめいっぱい自分を傷つけた人間に向かって、自分が卑怯だなんて言えるんだろう。
「でもほんとは迷惑だったよね。ごめんね、怒っていいんだよ。嫌っていいんだよ。迷惑だって切り捨ててよ」
そんなわけない。言葉が出ない。なんで謝るんだろう、なんで私が優しいなんて思えるんだろう。私はこんなにもエゴイストで、本当に優しいのはこなたのくせに。
「かがみんが優しいからできないって言うんなら、そんな優しさは痛いから、ごめんね、もういらないよ?」
くるり、と窓に背を向けて、こなたは私に顔を向けた。昼なのに急速に薄暗くなりつつある部屋の中では、こなたの表情がまるっきり量れない。それでも、酷く追いつめられているのは間違いないのだ。
違う、って言いたかった。こなたの肩をつかんで、そうじゃない、って言いたかった。だけど、一歩前に出た瞬間にはもう動けなくなった。落雷があったみたいな気分だった。
「来ないで」
こなたが私に向けて、はっきりと拒絶の言葉を吐いたのだ。静かな声だった。
「ごめんかがみん、触んないで。だってそれだけで期待しちゃうよ、私」
そう言いながら柔らかく笑うこなたは、笑ってるのになんでこんな泣いてる顔してるんだろう。声のトーンだって穏やかなのに、なんでこんなに悲鳴なんだろう。
聞こえてないはずのこなたの悲鳴が頭の中には大音量で響いて、ぐわんぐわんって鳴ってる。その音が私の呪縛を解いた。
「……うるっさいわよ」
わざと乱暴に言う。強引に手をつかんで、こっちに勢いよく引き寄せた。バランスを崩して倒れ込んでくる小柄な身体を、力いっぱい抱き留める。身構えていたせいか、思ったよりよろめかなかった。
私の腕の中で、こなたはしばらく黙っていた。完全にくっついているせいで、表情とかは全然見えない。でも分かる。肩に頭を当てたこなたの、くしゃりと歪んだ顔が見える。
「かがみん、だめだよ。だめだって」
相変わらず静かに、だけどさっきよりずっとかすれた声でこなたは言った。
「ねえ、離してよ?私のこと分かってなんて欲しくないんだよ……」
だったら、おずおずと伸ばしてきたその手はなんだ。小さなてのひらはこんなに必死で私の背中にすがりついているのに。
問い詰めるかわりに、抱く力を強めた。腕の中の存在は、消えてしまいそうな、儚い脆い、なんて、たよりない。そのくせ熱っぽい、ほそっこい、身体。ぎゅうっ、ときつく抱きしめても、圧力のままにそのちっこい肩が内へ内へと自然消滅を起こしそうな気がする。
「ああ、だめだ、私。またこんなに、甘えちゃってるよ」
どこか諦めたような口調で、こなたはつぶやく。私は返事をしなかった。
ただ、こいつが今何を言っても、この手は離すまい、とだけ思っていた。
「私は、卑怯、だよ、ずるいんだよ、こんなに頭悪いんだよっ……」
息を詰まらせながら、こなたが言葉を吐き出す。静かになったり、昂ぶったり、ひどく不安定なこなただった。
「それでもかがみんがこうやって抱いてくれるなんて……思わなかったよ、ははっ」
いつもの自分をなぞっているのか、口調と内容が全然合ってない。ひどいもんだった。自然に言えないなら、そんなへたくそな演技しなくたっていいのに。私だって、言えた義理じゃないけれど。
「……っ……思って、なかったんだけどな……っ」
そうやって声を震わせるこなたは、私の胸に顔を埋めたまま静かに泣いているのだった。 私はそんなこなたを抱きかかえたままで、視線だけで別のところを眺めていた。雨に濡れた窓ガラスは、薄暗い外の景色をモザイクみたいに滲ませている。
──ほんの少しの衝撃で、水の粒どうしがくっついて、零れて。
ガラスの表面を見つめながら、浮かんだのはそんなイメージ。
私はずっと表面張力の限界ギリギリのところにいたのだ。そして今、私の体はすでに答を示しているじゃないか。
毎日わざわざ他のクラスにお昼を食べに行ってしまう私の習性とか、こなたに対する苛立ちとか、罪悪感の表れだと思っていた胸の痛みとか。
つまりは、そういうことだったのだ。
……ああ私、零れちゃったんだ、今。
ちゃんと自覚して、心の中でつぶやく。心臓の辺りのきりきりじくじくした痛みは、いつの間にか治まっていた。
だから私は、逃げっぱなしの臆病な私は覚悟を決めたのだ。
「こなた」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。って、こいつなら言うだろうな、と思った。
「こ・な・た」
「……返事、しないよ?」
「してるじゃない……」
腕の中のこなたの頭のてっぺんにおでこをつけて、なるべく簡潔に聞こえるように言葉を選んでいく。
「ごめん、謝る。私、誤魔化した」
私の胸のあたりで、小さく息を呑む感じがした。まるで箇条書きだったけど、そのまままた黙り込んでしまったこなたに、体ごと語りかけるように、話し続けた。
「分かってたのに、誤魔化した。たぶん、ほんと酷いこと言った。ごめん」
「それから、全然迷惑じゃない」
「私は間違いなく、あんたに支えてもらってる」
「私は優しくないし、あんたは甘えてない」
「それで、好きだから」
「…………へ?」
少しの間があってから、こなたは妙な声を上げた。
だから私は深呼吸する。昨日私が逃げた場所へと立ち戻るために。腕の中の存在に告げるために。どんな言葉よりはっきりと、聞き返されることのないように。
「こなたが、好き」
ひゅうっ、と息を吸う音を立てて、こなたは硬直した。
私は、ただ待った。しばらくして、ようやく硬直が解けたこなたが、警戒した様子で見上げてくる。問いかけは、詰問口調の鋭い声だった。
「かがみん、それは優しさ?」
信用されてないな、私。当然か。
首を横に振る。
「違う」
きっぱりと言い切れた。優しさだけで世間的な茨道を行こうとは思えない。私は、だってエゴイストだから。
「じゃあ何?」
視線が少し厳しい。こなたはもう、はっきりと目を合わせてきた。
少し考えて、答えた。
「ただこなたを離したくないだけ」
そのままこなたの後頭部を押さえ込んで、私を見ているその顔を胸に抱え込んだ。思ったより素直にされるがままになっているこなたは、頭をこっちに預けたまま、大きく息をつく。途端にふっと、あたりの空気が和らいでいた。
「あんたが思ってるより、ずっとエゴイストなのよ私は」
「ん、そかもね」
軽く同意しておいて、でもね、とこなたは続ける。
「それでも優しいんだよ。かがみんは、やっぱり私のかがみんだから」
そんなことを言いながら、まだ涙目のこなた。昨日の夜からさっきまで、ずっとすごく痛かっただろうに。私を責めるなんて思いつきもしなかったくせに。優しいのはどっちよ、と心の中で軽く悪態。
「あのさ、かがみん。迷惑じゃなかったら──」
「迷惑とかはもういいから」
まだ言ってやがるよ、こいつ。と、ちょっと呆れる。意外にネガティブな、こなたの側面だった。
「うん、じゃあさ……えっと、なんていうかその……」
こなたが、もごもご言いよどむ。顔が赤い。
「かがみ、キス、しよ」
黙って頷く。こういう時、なんて言っていいか分からないから。
そっと手を伸ばして、こなたのほっぺたに触れた。あったかい。ぷにぷにと柔らかい、すごく安らぐ感触が、掌から私の体に流れ込んでくる。心の中が、こなたで満たされていく。
それが合図だったみたいに、こなたは目を閉じる。心臓がわけの分からない音を立ててる気がする。私も目を閉じて、そっと唇を重ねた。
じわりと熱が伝わる。唇って、こんな柔らかいんだ。私もこなたも息は止めたままで、どきどきして、胸が詰まって、足の先から私の中に幸せな感情が溜まっていった。
ああ、幸せだ。……なのに、これはなんていう空虚なんだろう。
底なしの空腹のような、こなたへの飢え。触れた唇は、抱き寄せている身体はあったかいのに。なんでこんなに孤独なんだろう。苦しくて、こなたの細い腰を、折れるんじゃないかと思うほど力任せに抱きしめる。
触れあえる身体は、逆に言えばこなたと私を隔てている。1+1はやっぱり1+1で、2になれればまだいいほう、ましてや決して1にはなれないのだ。
触れ合う部分をさらに強く押しつけながら、私は悟ってしまった。
私はやっぱり独りで、こなたもやっぱり独りなんだ。私の思いこみかもしれないけど。
そう思っていたら、唇を離したあと、戸惑ったように、こなたがほんの少し笑ったのだ。すごく寂しそうな、でも澄み切ったきれいな笑顔だった。
それで判った。たぶん、こなたも同じところにいる。向かい合って触れ合っていて、でもガラス越しで、体温だけは伝わってくるような。そんな場所にいる。
急に照れくさそうな顔になったこなたが、吹っ切るように明るい声を出した。
「あは、かがみん真っ赤ー」
「あんたもね」
笑って応えると急に現実に引き戻された気がする。それはたぶん、こなたなりの気の遣いかただった。けれど、2人とも気付いていたのだ。私たちはもう、元の場所にはいない。
酸素不足で上がった息を落ち着けて、どちらともなく床に座り込んだ。お互い少し体重を預けて、ただ触れ合う。こなたの長い髪は触っているだけで気持ちいい。しばらく撫でていたら、こなたの手が私に伸びてきて、髪のリボンをするりと解いていった。
ほどけた髪がこなたのものと混ざり合う。それはなにかを暗示してるみたいで、私は考えてしまう、ああ、これからどうしよう。
……私は、なんてものを覗いちゃったんだろう。こうなったらもう、こなたのことを考えるしかないじゃないか。
それはなんて絶望的なんだろう。
目眩のするそんな考えに、私の口は反射的に動いていた。
「こなた」
こなたは小さく、うん、と頷いただけで黙っている。同じものを抱えたこなたには、何もかも見透かされてるんだろう。
外はまだ昼間だというのに私は、月のない夜の海を思い浮かべていた。濃紺の平坦がどこまでも続いているみたいな気分。静かだけど、凪ぎすぎていてかえってざわめくのだ。
手を伸ばした先のこなたの頬はキスの前と変わらず柔らかくて、ようやく私は安心する。こなたも私の腰に手を回して、背伸びするように頭をすりよせてくる。
大丈夫だ、と私は思う。私は独りでも、私たちは一人じゃない。
今日こうして行き詰まったとして、明日になったらきっと、こんな孤独のことは忘れて歩いていける。きっとそうだ。
「こなた」
また、呼んだ。
呼ばずにいられなかった。他の選択肢はなかった。私はその正解を確かめるように、抱きしめて指でなぞる、何度も。
今日はもう勉強どころじゃない。そう思いながら私は、重心を移してこなたの上に体を預けた。
麦茶の氷はすっかり溶けてしまっている。机の上でぬるい麦水に成り果てている。倒れ込む衝撃で、グラスの表面の水滴が一気に流れ落ちるのを横目に認識しながら、私たちはもう一度唇を合わせた。
「ねえかがみ」
熱っぽくなりはじめた息に混じって囁きながら、こなたは私を見上げる。
「かがみは、いなくならないでね」
こなたの手が少し震えている。励ますように、自分に言い聞かせるように、私はその手をそっと握った。
以上です。スレ汚し失礼。
最初にエロなしって書くの忘れてました、すみません……
綺麗な文ですね
GJです。
なんかちょっと切なくなりました(´・ω・`)
いや、直接的な描写はないけど、これはエロい!
微妙な心の振れがなんともいえませんな。GJっす!
……ところで、「最終回からが本当に美味しい時期」だと思ってる俺は異端でつか?
設定が出揃ったところで、ここからが妄想のお時間ですよ、みたいな。
今までいくつかの話をネタにして書いてきたけど、続編の期待できないマイナー系ゲームばっかりだったからかな……
172 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:07:33 ID:m8lhKGJJ
>>169 GJです!!
そして連続投稿すいません…
拙作「甘い甘いこなた」の続きが思いつきましたので、投下します
めちゃくちゃ長いです
こなた×かがみ、非エロです
死ネタありますが救済措置ありです
8レスお借りします
私が砂糖菓子になってから1か月が過ぎた
その間に、私たちの生活がほんのちょっぴり変わった
一番変わったのが、つかさだった
砂糖菓子になりたての頃、私の指を折ってからはつかさは私を舐めることを禁止された
それでもよほど味が忘れられないのか、時たま私のほうを何かおいしそうなものでも見るような目で見てくる
みゆきさんは、私の体の心配をするようになった
あの事件が起こってから、みゆきさんは自分のロッカーにこっそりと砂糖の袋を置いてある
「また私の体が欠けた時のために」と言って、5袋も持ってきた
そんなにしょっちゅう私の体は欠けないよみゆきさん…
っていうかそんなに頻繁に欠けてたら恐ろしい…
そして最後にかがみ
かがみはたまに私の体を舐めるようになった
みんなの前で舐めるのは恥ずかしいのか、私に頼んでくるのは二人っきりのときだけだ
私に頼む時のかがみは、すこし顔を赤らめて俯きながら頼んでくる
この時のかがみの表情はかわいくてたまらない
私だけが知っているかがみのもう一つの表情だった
もう一つ変わったものがあった
それは、雨の時の私の登校スタイルだ
砂糖菓子になってから、体が水で濡れると体がだんだん溶けていってしまう
ある程度は放っておいても元に戻るけれど、やはり傘では不安になる
そんなわけで、長年クローゼットの中にしまっておいたレインコートを使用することになった
使うのは小学生以来だけれど、問題なく着れた
小学生のころの水着がまだ着れる私には、着れないはずがない
万全を期して長靴も履け、とお父さんは言っていたが、さすがに高校生で長靴はない
「おっす、こなた」
「やふー、かがみん、…あれ?つかさは?」
「それがあの子、風邪ひいちゃってね…今家で寝てるのよ」
天気は雨模様
私はレインコート、かがみは傘
二人で並んで歩きだす
「それにしても、台風が来てるってのに何で学校があるのよ…」
かがみが少し不満げに話し出す
「でも台風って、来ると何かわくわくしない?」
「あんたね……まあ、その気持ち分からなくもないけど」
「山小屋に泊っている時に台風が来ればね…道路が土砂崩れで崩れれば殺人事件フラグが立つんだけど…」
「そんな物騒なもの立てるな!」
かがみと二人だけの登校
いつもより人数が一人少ないだけで、少し寂しい
「……ねえ…こなた……」
ためらいがちにかがみが切り出す
こういう時にかがみが言いたいことは大抵決まっている
「あ…あのさ……あんたの体……少しなめさせてくれない…?」
ああもうなんでかがみはこんな表情で頼んでくるのかな?
こんな表情されたらNOとは言えないじゃないか
「ん…いいよ……少しだけね…」
「あ…ありがとう、こなた…」
そういうとかがみは、私の顔を手で押さえると、頬を一舐めする
「あ…ありがとう……」
かがみが私を舐めた後は必ずこう言う
この照れながらいう表情がまた何ともたまらない
私の体を少しだけ削ってこの顔が見れるなら、私は指一本くらいは喜んで差し出すかもしれない
174 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:08:42 ID:m8lhKGJJ
「ああもう…かがみはかわいいんだから!」
思わず抱きついてしまう
「ちょ…ちょっと、やめなさいよ!」
「え〜なんで〜?かがみこんなに可愛いのに〜」
「あ…あんたね……みんなが見てるのよ…それにあんたはレインコートなんだから私が濡れちゃうでしょ」
「あ……」
私は急いでかがみから離れた
「全く…もっと考えて行動しなさいよ。ほら、いくわよ」
今さっきの事がまるでなかったかのように平然としながらかがみは再び歩き出す
レインコートは靴箱の角に引っ掛けて置いておく
風もだんだん強くなってきて、吹き飛んでいかないかどうか少し心配だった
まあ大丈夫だろうとたかをくくって、自分の教室に向かう
…やっぱりつかさがいないと少し寂しい
いつも揃っている人がいないって、こんなにさみしかったんだな…
まあ、でもつかさなら明日には治ってるでしょ
そうだ、帰りにお見舞いにでも行こう
台風は天気予報の予想より速く進んでいるらしく、午前中で学校は終わりになった
今日は気分が乗ったからお弁当を作ったけれど、こんな時に限って午前中で終了なんてついてない
いっそ教室で食べていこうかな
そんなことを考えているとかがみがやってきた
「こなたー、みゆきー、一緒に帰るわよー」
「ええ、そうしましょうか」
「待ったみゆきさん、かがみんや」
私はそこで待ったをかける
「何、どうしたのよこなた。まさか、ゲマズに行こうとかアニメイトに行こうとか言い出すんじゃないでしょうね?」
「まさか、私もそこまで常識知らずじゃないよ。ここでお弁当を食べていこうっていう提案なんだけど」
「ここで、ってあんた購買は今日は空いてないわよ」
「私は今日は気分が乗ったからお弁当を作ってきたのだよー!」
「へえ、珍しいわね。どれどれ、見せてもらおうかしら」
そう言うとかがみは近くのいすを持ってきて座った
「泉さんの手作り弁当、私も興味がありますね」
そう言うと、みゆきさんもお弁当を取り出した
「あれ?みゆきもお弁当出してどうするの?」
「いえ、せっかくですからここで食べていこうかと。それにお弁当はみんなと一緒に食べたほうがおいしいですしね」
みゆきもそう言うなら、といいながらかがみも弁当を取り出した
なんだかんだ言って、かがみだってしっかりと付き合ってくれる
そういうところがツンデレのかがみであり萌えポイントであり私の好きなところでもある
こうして、いつも通りの雰囲気の昼食が始まる
つかさがいなかったのが少しだけさびしかったが、それでも楽しかった
そしてみな食べ終わり、食後の雑談をしていた
「あれってなんであんなにくさいんだろうね〜」
「そうよね〜!疑問に思うわよね!」
「確かに、あのくさみの原因は気になりますね」
とりとめもない話をしていると、黒井先生がやってきた
「お前ら!まだ残っとったんかい!もう外は雨が激しくなっとるで!はよう帰り!」
「「「はーい」」」
三人見事に声が重なり、弁当をかばんにしまう
175 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:09:15 ID:m8lhKGJJ
「ない…」
確かに靴箱の隅に引っ掛けてあったはずの私のレインコートがなくなっていた
風で吹き飛ぶことはないだろうとたかをくくっていたけれど、甘かった
見事に風に吹き飛ばされていた
「こなた…どうするのよ…」
かがみも不安げに聞いた
「この雨の中、帰れるの…?」
「たぶん…無理……だと思う…」
「じゃあ…あんた…」
「かがみの傘に入れてもらうよ。今日はかがみの家に泊めてもらうことにする」
「それでも私の家まで距離はあるのよ…?平気なの…?」
「…やってみるしかないよ。かがみ、頼むよ」
かがみは無言でうなずくと、傘を差し出した
「あんた、これ使いなさいよ」
「かがみの分の傘は?」
「それ。あんたが持ってるやつよ」
「それじゃあかがみは…濡れて帰るってこと?」
「しょうがないでしょ?折り畳み傘も持ってきてないんだから」
「それじゃあ、かがみが風邪ひいちゃうよ!」
「あんたの体が欠けることを考えれば、安いものでしょ」
「そんなの…そんなの嫌だよ!一緒の傘に入ろうよ!」
「それならあんたの体が入りきらないでしょ」
「いやだ、私は何としてでもかがみに風邪をひかせたくない。無理矢理でもかがみを傘の中に入れるからね」
「…………わかったわよ」
かがみはとうとう折れて、私と一緒の傘に入ることになった
外は横殴りの雨
無事に帰れないかもしれない
それでも、私は行くしかなかった
「…こなた、走っていくわよ」
かがみが傘を持ち、残る片手を私の体に回して、雨が降りしきる外へ走り出した
やっぱり傘だけでは体に降りかかる雨をすべて防ぐことはできない
もしこれが普通の雨だったら、一晩もすれば治っているはずだ
でもこれは横殴りの激しい雨
私の足をじわじわと削っていった
かがみも私ももう息がすっかりあがりきっていた
たぶん止まったらもうしばらくは動けないんじゃないかっていうくらい
それでもかがみは走り続けた
私の体を抱えるようにして走り続けた
すべては私の体が溶けてしまわないように
私のために
「はあ……はあ…こなた…もう……少しで…駅だから……」
「うん…わかった……」
176 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:09:46 ID:m8lhKGJJ
何とか駅にたどり着いたとき、私たちはもう倒れそうだった
それでも何とか頑張って駅のホームまで向かう
私はかがみに悟られないよう、そっと自分の足を見た
雨が当たり、水たまりにも数回足を踏み入れてしまったから、どんな状況なのか気になった
足には、ひびが入っていた
水で濡れて弱くなった足でずっと走っていたから、その衝撃に耐えられなかったらしい
この様子では、もう走るのは無理そうだった
だからと言って、歩いて帰れば雨でひびがが進行してしまう
私は、無事に家に帰りつけないと悟った
「あんた、大丈夫?足は?」
「うん、全然大丈夫だよ!平気平気!」
私はとっさに嘘をついた
いつも私のことを心配してくれているかがみに、これ以上の心配は掛けさせたくなかった
「さ、また行くわよ」
かがみの家の近くの駅を降りた。雨は一段と強くなっていた
雨の降る音が大きすぎて、他の音がよく聞こえない
それでも、かがみの声ははっきりと聞こえた
「何としてでも家まで間に合わせてみせる…!!」
そして、再び走り始めた
でもさっきのようにうまくは走れない
足の感覚がだんだんと無くなってきた
足の細かい破片がだんだんと無くなっていくのがわかる
それでもひたすら走る
いつ折れるかわからない足で、走り続ける
とその時
バシャッ!!!
前から来た車が水たまりの水を飛ばしてきた
私はその水を頭からかぶってしまった
「あ…あの車…!!!!!!」
「いいんだよ…かがみ……」
いまにも車に飛びかかろうとしているかがみを抑えた
「ほら……早く行こう…」
今度は私がかがみの手を引いて走り始める
今ので決定的となったけれど、私はもう生きてたどり着けるかどうかさえ危ない状況だった
足だけではなく、湿気った空気と濡れた制服で体にもひびが入り始めていた
この様子じゃ、きっと足はもうもたないだろう
そんなことを考えていると
「あっ!!」
何もないところで、突然こけた
そして、その瞬間
ボキッ
足が、折れた
177 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:10:57 ID:m8lhKGJJ
「こなた!大丈夫!?行くわよ!!」
かがみが寄ってくる
「ううん…かがみは先に行っていいよ…」
こけた原因は、足にひびが入りすぎていたことらしい
「あんた何言って……こなた…その足…」
「うん…わたし、もう動けないみたい…」
「な…何言ってんの!!私があんたをおぶっていくわよ!!」
「でもそうしたら、傘させなくなるよ?」
「う……」
「それに…もう私の体…ひびだらけだよ……たぶん体が崩れるのも時間の問題だと思う…」
そう言って、自分の腕を見る
不気味なひびが腕を覆っていた
「そ…そんな……そんなのいや…」
かがみがなきながら私の体を抱きかかえる
「こなた…こんな所なんかで死なないでよ…」
「ごめんねかがみ…それだけはかなえてあげられそうにないな…」
「そ…そんな……
いやだ、そんなの嫌だよ…こなたぁ……っ…えぐっ……」
かがみが顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくっている
ああ…私ったら、最後の最後でかがみを泣かせちゃったな…
かがみにはずっと笑ってほしかったけどね…
かがみが傘をさしてくれてるけれど、体のひびがどんどん進行しているのがわかる
もう私の人生ここまでみたいだ
右手の手首が折れる
「かがみ…今までありがとう…」
「こなたぁ……そんなこと言わないでよぉ…今すぐ死んじゃうみたいじゃない……」
「もしここで私が死んだら、私の最期を看取ってくれるのはかがみ一人なんだよ…?お願いだから聞いて…」
「っ…わかった…」
これで安心してかがみに最期の言葉を伝えられる
少しほっとした
そして、それと同時に左手が肩からとれる
「ねえかがみ…私の人生は短かったけど、すっごく楽しかったよ…」
かがみは、静かに聞いてくれた
聞こえるのは、ただ雨の音
周りの音が全部消えてしまったかのように、静かだった
「私ね、中学時代は、かがみ達みたいに「親友」っていえる友達なんかいなかった
時々言葉を交わす程度の友達しかいなかったんだ…
だから、高校に行って、友達ができるかどうかすごく不安だったんだ…
でも、そんな心配いらなかったな…
だって、かがみ達と親友になれたんだもん…」
かがみは唇をかみしめて、私の言葉を聞いてくれている
かがみの目から、涙がぽたぽた零れ落ち、私の頬に当たる
「かがみ…今から言う言葉を、みんなに伝えてくれる?」
かがみは無言でうなずく
私は、大切な人達一人一人の笑顔を頭の中で思い浮かべながら、話し始めた
178 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:11:31 ID:m8lhKGJJ
「お父さん…ごめんね…
お母さんみたいに、お父さんを置いて行っちゃうことになっちゃった…
でも、私はお母さんと一緒に待ってるから…
お父さんはもっと人生を楽しんでから、来てね…
ゆーちゃん…短い間だったけど、一緒に生活できて楽しかったよ…
ゆーちゃんと一緒にゲームやったり、マンガを読んだりしたこと、絶対に忘れないよ…
みゆきさん…いろんなことを教えてくれてありがとう…
私が何か分からないことがあったら、すぐに教えてくれたよね…
教えてくれるたびに、ありがとうっていいそびれちゃってたんだよね…
ごめんね…
つかさ…そういえば一番最初の出会いは、すっごく変わったものだったよね…
私が勘違いして、全然知らない人を殴っちゃったもんね…
でも、そのおかげでつかさと仲良くなれたんだよね…
今まで、ありがとう…
そして…かがみ…
一番迷惑かけちゃったね…
宿題を何回も写させてもらったし、待ち合わせに遅刻したり、帰りにいろんな所に行くのに付き合ってもらったりさ…
私、かがみがいなかったら今までみたいな楽しい毎日はなかったと思うんだ…
私、かがみと出会えただけでも今までの人生、生きてきて良かったって思うんだ…」
「私…私だって…こなたと出会えて、本当によかった…
あんたみたいな人とは初めて会ったけど、すっごい楽しかった…」
その言葉が聞けて、私はすごくうれしかった
「私さ…もし生まれ変わるなら、かがみの子供になるよ……絶対に、ね」
私の体のひびが音を立てて広がっていく
もうそろそろみたいだ
「だから…待ってて。また会いに来るから…」
「馬鹿…私は、あんたのためなら何十年だって待ってやるんだから…!」
何ともかがみらしい言葉だ
「かがみ…大好きだよ…」
「私も…こなたのこと大好き…」
かがみが言い終わると同時に、私の体は崩れ落ちた
それと同時に、私の意識も消えた
179 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:12:02 ID:m8lhKGJJ
私は、崩れ去ったこなたの体の破片を手に持ちながら、呆然としていた
いまさっき、この手の中で私の一番の友達が「崩れ去って」しまった
私はこなたの体の破片を残らず集めると、家に向かって歩き出した
不思議と涙は出てこなかった
家に帰ると、つかさが出迎えてくれた
もう風邪はよくなったらしい
そして、こなたの残した最期の言葉を伝えた
つかさに切り出した瞬間、私はあの時の悲しさがよみがえり、涙と嗚咽でまともに喋れなくなってしまった
それでも、何とかつかさに伝えた
つかさは最初は信じなかったけれど、こなたの体の破片を見せてようやく受け入れたらしく、私にしがみついてわんわん泣いていた
ひとしきり泣いた後、他の人達にもこなたの遺言を伝えた
みんなとても悲しんでいたが、何よりもそうじろうおじさんが悲しんでいた
自分の奥さんに先立たれ、忘れ形見の娘にも死なれたのだ
悲しみは相当のものだろう
そのあとの記憶が、私にはあまりない
気が付いたらもう翌日だった
昨日の夜のことはところどころ覚えているものの、それも曖昧だ
今日は学校に行きたくない
私は、休むことにした
つかさも同じ気分のようだ
家にいても勉強する気にも本を読む気にもゲームをする気にもなれなかった
ただ、何もせず、何も考えずに、ベッドに横になっていた
と、その時
ピンポーン
チャイムが鳴った
誰か来たらしい
誰が来たか確認する気にもなれず、ドアを開ける
すると、そこには…
180 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:12:47 ID:m8lhKGJJ
「え……こ…こなた…?」
昨日私の腕の中で崩れ去っていったはずの、こなたがいた
「な…なんでここに……?」
「いやー、昨日気付いたらあの場所で倒れててさー、そのまま家に帰ってもよかったんだけど、昨日あんなこと言った直後に帰るってのは気が引けてさー、ネカフェに泊ってたんだよ」
「あんた……体は?」
「元通りだよ。砂糖じゃなくて、ちゃんとした肉体だよ。ほら!」
そう言って、手をこちらに向ける
疑いようのない、ちゃんとした体だった
ほっとしたと同時に、うれしさと涙が込み上げてきた
「こなたあああああああぁぁぁ!!!!!!!」
思わずこなたを抱きしめていた
「うおっ!?どうしたのかがみ!?」
「よかった……また会えてよかった…」
「え…ちょ…ちょっと……」
「あんたが死んだとき…ものすごく悲しかったんだから……」
「ちょ…かが…み…」
「もうあんなことしないでよね…」
「く…苦しい…」
その言葉でふと我に返ったけれど、こなたを押しつぶしそうな勢いで抱きしめていた
「ごめんごめん、つい力が入っちゃって…」
「つぶされるかと思ったよ―…」
「でも…よかった……本当に…」
再び涙が出てきた
私は、こなたを今度はそっと抱きしめた
「心配かけちゃって…ごめんね」
「かけすぎよ…馬鹿…あんなことまで言っておいて…」
と、その時奥の扉が開いた
「どうしたのおねえちゃ…え…?こなちゃん…」
「やふー、つかさ。生き返ったよ」
私は、こなたのそばを離れた
「こなちゃああああああああああん!!!!!」
思ったとおり、こなたに抱きついてきた
「うおっ!かがみと同じ行動を!!さすが双子…」
そこのところは、双子じゃなくても同じ行動をすると思うけどな…と思いつつ、電話に向かった
昨日悲しみを知った、こなたの大切な人たちに、喜びを伝えるために…
181 :
アリアン:2007/09/16(日) 20:14:54 ID:m8lhKGJJ
以上です
今日の夜から出かけるかららきすた最終回見れねええええええええええ!!!!!
悔しいかららきすたonlyイベントに行こうかな…
相当迷ってます
最後になりましたが、タイトルは「甘い甘いこなた・終」です
>>181 GJ!なんてレベルじゃねえええええええええええええええええええええ!!!!!
あのネタイラストからこんな話がうまれるとは!
>>181 …………ぐっじょおおおおおおおおお!!
ほんのネタで描いたつもりの絵が、こういう感動的な話に発展するとはっ!!
崩れるこなたはあまりにも痛々しいので、さすがに挿絵描くのは躊躇しますがorz
凄すぎる
GJ!!!!!!!!!!!!
186 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:16:34 ID:J9sj/WFg
おお!リアルタイム遭遇!
とにかくGJ!
>>169 GJ!
また凄い上手い人が……。このスレ異様にレベル高いなぁ
>>181 ちょwwwどうみてもネタなのにここまでふくらませるとはwwなんつー豪腕だ
両氏のあとで気が引けるけど、SS投下させていただきます
かがこなでエロスのかけらもありません。ネトゲネタなので、
全然やったことないと厳しいかも。7レスほど。
「二人とも、おはよ〜…」
「おはよ〜…って、こなちゃん!?」
「ど、どうしたのよ、その顔。何かあったの?」
かがみとつかさが驚くのも無理はなかった。その朝現れたこなたの目ははれぼったく充
血し、顔色は真っ青。どうみても一晩泣きはらした後という態だった。
「はふぅ〜、それがさ、私の嫁が引退するんだよぉ……」
「は、はぁ? 嫁が引退って、離婚するってこと? そりゃ、あんたみたいな甲斐性なし
は離婚されても仕方ないと思うけど……よくわからんな……」
「お、お姉ちゃん何気に酷いね……」
「う……」
つかさにいわれて、かがみは少し後悔する。こんな風に本気で落ち込んでいる友人をみ
るのは初めてだったから、どういう態度をとればいいのかわからなかった。迷った結果、
ついいつも通りのきつい物言いをしてしまったのだ。
「違うよかがみ、失礼だなぁ〜。今やってるネトゲの私の嫁がね、ゲームやめるっていう
んだよね……」
「あ、ああ、そう……ゲームの話なのね……」
“なんだ、また二次元の話か……。まったく、心配して損しちゃったわよ”
「うぅ……かがみ、わかってくれないんだね……。ゲームっていっても、中に人がいるのは
リアルと変わんないんだよ? 一緒に過ごした時間は仮想じゃないんだよ?」
「さよけー……」
「ああ、思い起こすのは二人で過ごした楽しい時間ばかりだよ。闇将軍戦のとき全滅直前
にアドリブで連携だしてぎりぎりで倒したこととか、苔が出なくて朝まで巣で過ごしたこ
ととか、一緒に飛行鯨から地上を眺めたこととか……」
うるうると涙を流すこなたをみて、かがみは友人が可愛そうだと思う気持ちと同時に、
何か名状しがたい感情がわき上がるのを感じていた。こなたがネットゲームの話をするた
びに感じるその感情がいったい何なのか、かがみはあえて深く考えようとはしなかった。
それがわかった瞬間、自分の中で何かが変わってしまう予感がしていたから。
「ふーん、で、なんでその人はゲームやめるんだって?」
「それがね、受験があるからだってさぁ、あ〜あ〜……」
「そっかー、そりゃ大変だー……って、あんたもその受験生だろがーっ!!」
「お姉ちゃん、ノリ突っ込みもできるんだね……」
■100% D-Drive Love
“まったく、あいつには受験生っていう自覚がないのかよ!”
かがみは腹を立てていた。
結局こなたは一日ずっと元気がなかった。かがみはそんなこなたをみるたびにいらいら
し、その二人を見比べてはつかさとみゆきがおろおろする。そんな一日だった。
何に腹が立ったかといえば、普段は友達の感情に敏感で気配りが効くこなたが、そんな
周りの状況に無頓着だったことだ。そして、それだけこなたを落ち込ませたそのゲーム内
の相方に対しても腹が立った。こなたが落ち込む理由がいまいちぴんとこないことも、い
らだちに拍車をかけた。
“私たちみたいに毎日顔を合わせてるわけでもないのに、そんなに大事な友達だったのか
な?……あ、そういえば嫁は男だっていってたっけ。……もしかして、恋愛感情があった
りして?”
そう思った突端、かがみは胸に突き刺さるような痛みを感じた。そしてその痛みが、ま
たかがみをいらいらさせるのだった。
“あー、もう、やめやめ!”
振り払って勉強に励もうとするけれど、気がつけば思考はまたもこなたのことに舞い戻
っていく。
“そういえばこなたがやってるゲームってどういうのだろう、面白いのかな?”
ふと思い立ってパソコンで調べてみる。この間の模試が良かったからと買ってもらった
パソコンだった。検索ででた公式サイトをみると、よくある感じのファンタジー物で、二
週間の無料期間があるようだった。
“ふーん、ちょっと試しにやってみようかな。土日もあるし……少しくらいいいよね?…
…あいつのことも、ちょっとはわかるかもしれないし”
“あら、なかなか可愛いじゃない”
自分が作ったキャラクター『Kyocyan』を動かしながら、かがみは思った。小さくて可愛
いらしい種族があったのでそれを選んだ。クラスはドルイドというものを選択。回復魔法
や敵を弱体する魔法が得意らしい。
とてとてと跳ねるように走るKyocyanを動かしているうちに、かがみはなんとなく楽しく
なってきた。なんといっても、周りのキャラクターを皆プレイヤーが操作しているという
のが新鮮なのだ。広場の噴水で雑談している集団、何かの売買の呼びかけ、なぜか一列に
なって川でひたすら釣りをしている人たち。交わされている言葉の内容は全く理解できな
かったけれど、それもまた、かがみを都会にやってきた新米の冒険者という気分にさせる
のだった。
気がつけばかがみは没頭していた。
ただ敵を倒すだけではなく、NPCの依頼に応えることでもお金やアイテム、経験値をも
らえることを知った。敵を倒して拾ったアイテムは、店に売らずにオークションを通して
他のプレイヤーに売ることを覚えた。その変化する相場は株取引のようで面白く、何より
他の誰かと繋がっているという気持ちにさせてくれた。
“ふふん、私も随分強くなったんじゃない?”
巨大いもむしの死体を漁りながらかがみは思う。このいもむしの触角がポーションの素
材になるため、オークションで高く売れるのだ。
“あ、あんなところに洞窟。中になにがあるんだろう?”
見ると、山腹に大きく口を開いた洞窟があり、今しも強そうな冒険者たちが入っていく
ところだった。
“ちょっといってみようかな。装備も新調したし、私も強くなったから、だいじょうぶだ
よね”
“って、なんなのよこれはー!”
かがみは大量の敵に追いかけられていた。
見たことがないそのゴブリンに会ったとき、もっと警戒するべきだった。そいつは、か
がみに会うとまっしぐらに逃げだし、近くにいた敵全部を引き連れて戻ってきたのだ。初
心者エリアでしか狩りをしたことがないかがみには、敵AIに対する知識が欠けていたのだ。
“と、とりあえず洞窟から外にでれば助かるかも”
かがみはこれまでの経験から、敵キャラクターはダンジョンなどの入り口を超えてまで
追ってこないことに気づいていた。
そのとき、誰かのチャットがとびこんできた。
Konakona:「Kyocyan、止まって止まって! 剥がすから逃げないで〜」
“あれ、私話しかけられてる? って、止まれってっていわれてもー!”
移動をオートランにして、かがみは慌てて返信をする。
Kyocyan:「と、止まったら死んじゃいます!」
Konakona:「大丈夫だから! わたしを信じて!」
“信じる信じないの前に、あんたのこと知らないわよ!”心のなかでつっこみをいれなが
らも、かがみはしぶしぶ立ち止まった。ふりかえってみると、最初は四、五体だった敵が、
いつのまにか十数体にまでふくれあがっていた。
“げ、こんなにいたんだ…”
呆然と立ちつくすかがみに迫るゴブリンの群れ。今にも攻撃が届きそうになったそのと
き、突然全ての敵が踵を返してどこか別のほうに駈けだしていった。
“あ、あれ、どうしたんだろう?”
みると、ゴブリンたちは誰か別のキャラクターに殺到し、猛然と攻撃を始めていた。醜
悪なモンスターに囲まれて、青い長髪がちらちらとみえている。
“あ、さっきの人がなにかスキルでひきつけてくれたのかな? って、あの人が死んじゃ
うじゃない!”
慌てて回復魔法をキャストしたとき、青髪のキャラクターがスパークを発しながら剣で
回転攻撃を繰りだした。一瞬閃光が走ったかと思うと、次の瞬間、気がつけば全てのゴブ
リンが地に倒れ伏していた。
“い、一撃で、一撃で撃破!? なんかすごいわね”
男ながらも腰まで伸びた青色の長髪。金象嵌細工の板金鎧は白銀に光り、対になったタ
ワーシールドにはなにかの紋章が刻まれている。深紅に染め上げられたマントは不思議な
色合いの毛皮で裏打ちされていて、名のある逸品にみえた。そして腰に佩かれた長剣は、
絵にも描けないほどなんか凄そうだった。
見るからに高レベルのキャラクターだ。今日始めたばかりのかがみとは比ぶべくもない
だろう。
“でも……なんでだろう、私、この人を知ってる気がする…”
かがみはなぜか、不思議な安心感を覚えていた。人混みのなかに家族をみつけたような、
失くしていた大事なものがみつかったような、そんな安堵感だった。
“って、あれ……? Konakonaって……もしかしてこの人……こ、こなた!? この間チャ
ットしてるの横でみてたとき、確かそんな名前のキャラだったはず……”
Konakona:「むふ〜、ヒールありがdヽ(≡ω≡.)」
“こなただー! 絶対こなただー! ってかどんだけ再現率高い顔文字なんだよ!”
まさか実際に会えるとは思っていなかった。ちょっと試してみるつもりでゲームを始め
たかがみは、こなたも同時にプレイしている可能性を完全に失念していたのだ。
“ど、どうしよう……私だっていったほうがいいのかな…でも、あれだけいっといて私も
ゲームしてるなんてあれだよなー……”
Kyocyan:「いえ、こちらこそありがとうございます、助かりました〜」
迷ったあげく、かがみは他人のふりをすることにした。友人をだますようで、少し罪悪
感を覚える。
“でもこいつも、昨日の今日でまたゲームやってるのな……”
そう思うと、会えて嬉しかった気持ちがほんの少ししぼんだ気がした。
Konakona:「よいよい。それよりKyocyan、今ZONEしようとしてたでしょ? だめだよ
ー、ゾーン際にAggroのMOB放置すると、洞窟入ってきた人がおそわれてMPKになっ
ちゃうよ?」
“日本語でおk”
Kyocyan:「あ、うん……えっと、所々わからない単語があるんですが…」
Konakona:「あ、あ〜、エリアが切り替わるところに逃げると、追ってきた敵はしばらく
そこに留まってるの。AggroなMOBは相手から襲ってくる敵って意味で、MPKはモンス
ターを使ってプレイヤーを殺すっていうことだよ」
Kyocyan:「あ、そっか、入ってきたところにあれがいたら、すぐ死んじゃいますね……。
ごめんなさい」
Konakona:「Kyocyan、もしかして、始めたばっか?」
Kyocyan:「は、はい、こういうゲーム自体初めてで……」
Konakona:「おお〜! すごい、本物の初心者だ、久しぶりに会ったよ〜。最近低レベル
の人もみんな廃人のALTでさ〜」
“何が嬉しいのかわからん、ってかまたでたよ謎単語! alternativeのことか?”
Konakona:「ね、よかったら一緒に狩りしない? わたしMentorするし!(≡ω≡.)b」
Mentorとは自分のレベルを相手に合わせて下げることらしい。高レベルのキャラクター
のままだと、弱いMOBを倒しても経験値やアイテムがもらえないとのことだった。
Konakona:「ホメロスの『オデュッセイア』からきた単語なんだよね」
“ほんとにこいつ、こういう単語だけは詳しいのな……。少しはその労力を勉強にも振り
分けろよ!”
こなたと一緒に狩りをしながら、かがみはどうしてこういうことになったのかと首をひ
ねっていた。まさかこなたとパーティを組む日がくるなんて。
こなたが敵を連れてくる。かがみも一緒に攻撃しながら敵に弱体魔法をかけ、こなたに
は強化魔法を唱え、回復魔法で傷ついたこなたを治していく。
“これじゃ、私こなたの保護者みたいじゃない。……なんか、リアルと関係同じなような
……?”
「わたしがTankでTauntするから、KyocyanはHateに気をつけてDebuffとHealして
てね」
(こなたが防御力高いから敵の注意をひきつける技をつかうので、敵の攻撃を受けないよ
うに弱体や回復をしててね、ということらしい)
「ADDしたら、DRUはRootがあるからCCしてDOTで持ちこたえるんだ〜」
(複数の敵におそわれたら、ドルイドの足止めする魔法でうまく引きずり回して、毒のダ
メージでなんとか倒すということらしい)
「CasterはAoEDDあるからかならず先に倒すんだよ。MeleeはRootかけて無視しちゃお
う」
(魔法使いの敵は範囲攻撃のダメージ魔法を使ってくるから、近接攻撃をする敵より先に
倒すらしい)
「遠距離から弓で撃たれたら、関節を外して腕を伸ばして攻撃するの。その激痛は波紋で
和らげてね……ごめんウソ」
(漫画かなんかのネタらしい)
楽しかった。
戦闘は、ただクリックして敵を倒すだけではなく、状況に応じて的確な判断をしていく
必要があって、知的な面白さがあった。
なによりこなたと一緒になにかをするのは楽しかった。
戦闘中は忙しく、頻繁にチャットをすることはできない。自然とお互いの動きを予測し
てそれに合わせて行動する必要があった。
こなたはどう動くんだろう、こなたはなにを狙っているんだろう、こなたはなにを考え
ているんだろう。
自分が予想した通りにこなたが動いて、上手く連携を重ねられたときはわくわくした。
不意のADDであわてて操作を間違えてしまい、こなたを死なせかけたときはどきどきした。
“なるほど、こいつがネトゲにはまってるのはこういう部分なのかも……。顔はみえない
けど、行動で相手のことがわかるんだね”
Konakona:「よーし、あとはボスを倒すだけだー!」
二人は洞窟の最深部まできていた。広大な地底湖のほとりにピラミッド状の遺跡が建て
られている。その頂上にゴブリンが三体ほど佇んでいるのがみえた。そのうちの一体は他
よりも体が大きく、巨大な戦斧を持っていた。焚かれたかがり火がその青銅色の肌にぬめ
ぬめと光り、かがみは忌まわしさを覚える。
Kyocyan:「あれ倒すとなにかいいアイテム落としたりするの?」
Konakona:「むふ〜、ひ・み・つ。でもいいことあるよ〜?」
Kyocyan:「そうなんだ、楽しみっ。でも三体いて動きそうもないなー。全部一遍にきそう。
……だ、大丈夫かな?」
Konakona:「大丈夫、あなたは死なないわ、わたしが守るもの……」
“はいはい、綾波綾波。こないだ一緒に新劇場版見にいったもんねー。って、そういうの
はみなみちゃんのが似合ってると思うよ”
Konakona:「じゃ、いくよー! 大丈夫、今まで通りにやればいいんだよ〜」
そういってこなたはボスに向かっていった。こなたが範囲Tauntを発動するのに合わせ
てボスと片方のMOBにRootをかけていく。スロウで敵の攻撃速度を遅くして、攻撃タイ
ミングに合わせてシールドをこなたにかける。ヒールワークはリジェネとヒールを重ねて
効率よく。
Kyocyan:「倒した! あと一体だー!」
取り巻きの二体を倒し、残るはボス一体だけになっていた。
Konakona:「楽勝、楽勝〜♪」
そのボスもあと少しで倒せるというときだった。ボスの持っていた斧が赤く光ったかと
思うと、こなたの鎧に向けて打ち下ろされる。すると、こなたの鎧がこなごなに割れて飛
び散った。
Konakona:「うあ、やば、アーマーブレイク! こいつこんなの使って来たっけー!?」
その技の効果はかがみにも一目瞭然だった。こなたの被ダメージは格段に跳ね上がって
いた。
“やばい、回復おいつかない! 次に食らったらこなたが死んじゃう!?”
咄嗟にかがみはある回復魔法をキャストする。
コンプリートヒール。
『これ、HPは全快させるけどHateが極大で、使ったら確実にヒーラーにタゲいっちゃう
の。使っちゃだめだよ?』こなたがそういっていた魔法だった。
案の定、ボスはかがみへ猛然と攻撃する。一撃ごとに受けるダメージはヒールの回復量
を上回っていて、死は目前だった。こなたも賢明に攻撃していたが、ボスを倒しきる前に
かがみのHPが尽きることは、二人ともわかっていた。
“あーあ、だめかー。ま、こなたが無事ならいいかな? なんか私ってやっぱこういう役
割なんだよねー”
かがみがそう諦めかけたとき、こなたの剣が青白く輝きだした。
光輝を纏ったその剣が振り下ろされると、炸裂したような効果音と光の爆発を放ち、ボ
スに大きなダメージを与えた。
“…あ、あれ? こなたのスキル技、リキャストまだじゃなかったっけ?”
あわててかがみも自分のスキル技を繰り出す。二つの技が合わさって、派手なエフェク
トが発動した。
その連携による追加ダメージが、ボスの息の根を止めたのだった。
Konakona:「やった〜!!」
Kyocyan:「倒せた〜!」
Konakona:「ふひ〜、ぎりぎりだったね」
こなたの隣に座って体力を回復しながら、かがみは心地よい充実感を感じていた。
Konakona:「ほら、Kyocyanみてみて、はじまるよ〜」
こなたがそういったとき、二人がいた地底湖に変化が起き始めた。静謐な水面の奥のほ
うから、細かな光の粒が大量に浮き上がってくる。それはハッブル望遠鏡が写した銀河の
写真のように、ほのぐらい洞窟を青白い光で満たしていった。
Kyocyan:「わ! 綺麗〜。これって、なんの光?」
光の粒は水面から浮き上がり、蛍のようにあたりを飛び交っている。そのうちの一つが
かがみの近くまできたとき、その正体がわかった。
Kyocyan:「あ、もしかして妖精? 可愛い!」
体長十cmほどのその生き物は、すらりとした少女の姿態に昆虫のような羽をもっていた。
体のところどころに宝石のような発光器官を持ち緑色の体色をしたそれは、ルネ・ラリッ
クの工芸品のようだった。
Konakona:「うん。ここ、もともとは妖精の住処だったんだけど、ゴブリンが住み着いち
ゃったんだよ。それで、わたしたちが解放してあげたってわけ」
Kyocyan:「こな…さんがいってた『いいこと』ってこれのことね。確かに凄い綺麗……」
Konakona:「でっしょ〜? わたしもこれ初めてみたときは不意打ちだったから泣きそう
になったよ。あ、実利もあるよ。あとでチョプロン村に戻ったとき、徴税官からいいアイ
テムもらえるの」
かがみは不覚にも深い感動を覚えていた。それは眼前の夢幻的な光景から受けたものだ
けではなく、二人でなにかを成し遂げたという達成感からもきていた。
“これは……思い出になるわね……”
きつかったり、難しかったり、眠かったり。そういうことに耐えて誰かと成し遂げたと
いう経験は、それがどんなことであれ思い出になるのだ。
“今ならわかるよ、こなた……。だって私も、今のあんたと別れたくないって思うもん…
…”
そう思ってこなたの方をみたとき、かがみはあることに気づいた。
Kyocyan:「あれ? こなさん、持ってた剣どこいったの?」
敵のスキル技をうけて壊れていた鎧は直っていたが、腰に下げていた強そうな剣は、い
つのまにかなくなっていた。
Konakona:「あー……うーん、あれね〜……。あの、最後に出した技あったでしょ? あ
れってウェポンスキルっていって、武器壊して出す技なんだよね」
Kyocyan:「え……あの、よかったの? あれ、なんか凄い強そうだったよね」
Konakona:「うん、大丈夫だよ。レアっちゃレアだけど……どうしてもKyocyanにこの光
景みせてあげたかったんだ〜」
かがみは嬉しい気持ちと同時に釈然としないものを感じていた。こなたがなにか凄い剣
を拾ったという話を、黒井先生と話しているのを聞いたことがあったのだ。なにをいった
ら良いのかわからずだまり込んでしまったかがみに、こなたがぽつんといった。
Konakona:「実はさ、わたしこのゲーム辞めようと思ってるんだよね」
Kyocyan:「え……」
かがみの背筋に冷たいものが走る。確かに辞めろといったのは自分だった。いつまでも
遊んでないでリアルの将来のことも考えろと、口やかましくいい続けてきた。
Konakona:「わたしも昔凄い仲良かった友達がいてね、ゲーム内で結婚もしてたんだけど、
その人受験で辞めちゃって……。ショックだったよ」
Konakona:「この洞窟もさ、実はその人と初めて会ったところなの。で、辞める前に最後
の思い出巡りしてたとき、Kyocyanと会ったってわけさ。……そのときはわたしが逃げよ
うとしててね、その人がヒールしてくれたんだけど、ヒールTauntで跳ねちゃって、逆に
その人を殺しちゃったんだよ。だから……Kyocyanのことも放っておけなかったのかな」
いつものかがみならこういう話を聞いていらついていただろう。今なら自分がいらつい
ていた原因がよくわかる。自分の知らないこなたが、自分の知らない人に思いを寄せてい
ることが嫌だったのだ。
でも今は、このこなたも知ることができた。そして多分、その人に寄せた思いと同じよ
うなものを、かがみにも寄せてくれている。
Kyocyan:「ショックなのはわかるけど……だからって辞めることないんじゃない?」
“せっかく私に会えたのに”
その言葉はいえずに飲み込んだ。
Konakona:「ん〜ん。辞めようと思ったのは、それが原因じゃないんだ。そんなことで落
ち込んでたら、リアルの友達に心配かけちゃってね……。考えたらわたしも受験生なんだ
よ。なのにわたしゲームばっかやってて、呆れられちゃったの。その人はほんとにいつも、
わたしのこと考えてくれてて、心から心配してくれて……。ネトゲの世界は居心地いいけ
ど、やっぱり大事なのはリアルの友達かなって……ね」
“そ、それって……私のこと……だよね……”
不意打ちだった。こなたがネトゲ内でかがみの話を持ち出してくるなんて思わなかった
“やば……私顔超赤いよ……”
そう思うと、今まで自分が正体を隠してこなたと話していたことが急に恥ずかしく、ま
た後ろめたく思えてきたのだった。
それでも、こなたがこんな風にかがみのことを考えていたことを知って、かがみは喜び
を抑えることができなかった。いつもきつい物いいばかりしてしまう自分のことを、心の
どこかでこなたは嫌がっているのではないか、そういう不安をぬぐうことはできなかった。
つんつんしてる自分のこともこなたは『ツンデレ』だといって受け入れてくれる。そのこ
とにあぐらをかいていたのではないかと、眠れない夜を過ごしたこともあった。
“でもこなた……私はそんなにできた人間じゃないよ。ネトゲやめろっていうのだって、
多分……嫉妬混じりだ。だから……”
Kyocyan:「でもこなさん、私……私はまたこなさんに会いたい。……その人だって、こな
さんがやりたいことできなくて辛い思いしてることを望まないと思う。こなさんが落ち込
んでるのを心配してたんでしょ? それってこなさんが悲しい顔してるのをみたくなかっ
たからじゃない?」
Konakona:「Kyocyan…わたしもKyocyanに会いたいと思うけど……でも……」
Kyocyan:「別にさ、すっぱり辞めなくてもいいじゃない? 土日だけとか時間きめて、の
んびりやってけばさ。思い悩んで無理に勉強するより、そのほうがこなたらしいわよ」
Konakona:「……そ、そうなのかな…って!? Kyocyan、なんでわたしの名前……!」
“……え?”
一瞬なんのことかわからなかったかがみは、ディスプレイをみて青ざめた。そこには『こ
なた』の文字が燦然と輝いていた。
“……あああああああぁぁー! しまった、手が滑ったー! やばい、ごまかせー!”
Kyocyan:「……え、えっと? こな、こなた……こなたん。そうそう、こなたんってあだ
名で呼ぼうかなっておもっただけで……え? もしかして本名こなたっていうんだ!?」
Konakona:「……え、あー! そういうことだったんだね。しまった、本名ばらしたー!」
Kyocyan:「……あ、あっはっはっは」
Konakona:「あっはっはっはっはー!」
“た、たすかったー!”
Konakona:「それじゃ、わたし落ちるねー」
Kyocyan:「うん、私も。今日は本当にありがとう!」
二人はチョプロン村に戻っていた。もらったアイテムを整理し、新しく魔法もいくつか
覚え、そうして、お別れの挨拶をする。
Kyocyan:「また明日も……会えるかな? 多分私、土日の夜くらいしか入らないと思うけ
ど」
Konakona:「うん! わたしもそのくらいのペースにするよ〜。INしたらTELLするから
ねっ!」
Kyocyan:「うん、私も入ったら教える!」
Konakona:「じゃあねー、バイバイ(≡ω≡.)ノシ」
そういってこなたは落ちていった。
“うぅーーん、疲れたー!”
かがみはログアウトして大きく伸びをする。ずっと同じ姿勢でいた体はこわばっていて、
ばきばきと音を立てた。
“楽しかったなー。……って、でもあんな約束しちゃって、私も受験大丈夫なのかよ!?”
今のかがみにはこなたのことがよくわかった。ついのめりこんでしまう魅力がネトゲに
はあった。事実、落ちようとするときも身を切られるように辛かったのだ。
“まあ、いいや、悩んでも仕方ないし。さ、寝よ寝よ”
そう思ってベッドに向かったかがみは、窓の外をみて驚愕する。
“あ、あれ……ナンデダロ……外、明るいよ……?”
月曜日。
眠い目をこすりながらかがみはつかさと共にこなたのことを待つ。
「お姉ちゃん大丈夫? 夜遅くまで根つめすぎなんじゃないかな? あ、あたしはすぐ寝
ちゃってるからわかんないけどね……」
“違う、違うのよつかさー! そんなまともな理由じゃないのよー! ああ、そんな目で
私を見ないでー”
泣きながら顔を逸らすかがみをみて、つかさの頭に疑問符が浮かぶ。
「? ま、いいやー。あ、こなちゃんきたよー!」
みると、人混みの中からぴょこぴょこと青色のアホ毛が飛びだしている。
“なんだ、こっちのこなたはほんとちっちゃいなー”
そう思って、かがみはどうしても口元がほころぶのを止められなかった。
今日もいろんなことを話そう。土日も沢山話したけど、こっちのこなたとも話したいこ
とがいっぱいあるんだ。
待ってられなくて、かがみは駆けだした。腕をふりながらこなたに呼びかける。
「おーっす、こなたー!」
以上です。読んでくださった方、ありがとうございます。
こういうの書いたの初めてなので拙いところあったらすいません。
かがみのキャラソンがあまりに不憫なので書いてみました。
>>195 PSOやってたころ思い出して不覚にも
こなかがでもあるし、ネトゲのいいとこも表現できてるし、こいつはいい仕事だぜ
>>197 PSOかww久しくやってないな…
今ネトゲにはまると間違いなく廃人だから自重だが。GJ!
>>195 なかなかGJ
しかしどう見てもベースがEQでところどころに最近のヤツが入ってるゲームだな。
CCBが懐かしくなった…。
>>195 UOのアカウント暦もうすぐ4年、絶賛放置中の俺にクリティカルヒット。GJ。
ネトゲか…何もかもが懐かしい…
GJ!これはおもしろいwwwwww
俺もやってみようかな
ネトゲ名はUOでおk?
204 :
195:2007/09/16(日) 22:26:02 ID:ukv9R3b/
おほめの言葉ありがとうございます。
無駄に時間はかかったので、凄い嬉しい。
>>202 199氏がいうように、元ネタはEQをベースにしたごちゃまぜです。
UOはまた雰囲気違うかも。
EQも一世代前のやつなんで、一番近い国産ものはFF11かと。
たぶんアニメのネトゲネタもFF11ベースのごちゃまぜだと思う。
>>204 わざわざありがd^^
ググッてみる^^
>>195 ところで、CCB BB Befallen どこで育った人ー?
私はCCB Oasis Unrest Guk Solbっつー王道でしたが。
207 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:40:47 ID:qwvfbLGa
208 :
14-319:2007/09/16(日) 23:01:14 ID:Oqeuw9LY
えーっと、前スレの埋めネタとして活用した
最終回に向けてのSS?がたった今完成しました
ただ会話だけが最後まで延々と続くので嫌な人はスルーとかNGとかしてください
それに、文がいろいろとゴチャゴチャのグダグダだと思います
カップリング?そんなの関係ねえ!
11レス程度使用します
先に謝っときます
いろいろとすみません
気づけばTVアニメらき☆すたが放送してからもう23回目
もうそろそろ最後。そう、らき☆すたは24回目で最後なのだ。
さぁ、始まるザマスよ
いくでガンス
ふんが〜
はいはい…
―最終回に向けて―
「と言うわけでみんな〜、今までの放送を振り返ってみよう〜」
「また唐突ね…まぁ最後だからだろうけど…」
「ねぇ、最後だからみんなとお別れしちゃうの・・・?」
「つかささん、大丈夫ですよ。これからも4コマ漫画として色々な雑誌に掲載されるようですから」
「うんうん、きっと大丈夫だよ」
「きっとってあんたね…」
「まぁまぁ、それより1〜12話の中で気になった事ってある?」
「う〜ん…みんなの中で一番初めに喋ったのが私だったよね、私あの時すごく心臓がバクバクしてたんだ…」
「主人公の私よりつかさが先に喋るなんて思いもしなかったなぁ」
「原作の通りだから仕方ないわよ」
「でも泉さん、一番最初に映りましたね」
「まぁ、そこは主人公だからね〜」
「自慢げに言う所が少しむかつくわ…私も登場が遅かったし…」
「それになんといってもチョココロネの会話にその他色々な会話!」
「私はそれのせいで出番遅れたからその話はやめてよ…」
「でもあれは延々と話し続けてるだけだったからなんか不評だったらしいよ」
(みんな私の出番待っててくれたのかな…?)
「お姉ちゃんどうしたの?」
「何も考えてないわよ!」
「う〜ん、否定する所がかがみらしい〜」
「誰がツンデレよ!」
「誰もツンデレって言ってないけどねぇ」
「うっ…」
「後目立つ所と言えばOPのダンスですね」
「あれはすごかったねぇ、私全然ダンス覚えられなかったんだもん…」
「でも最後はちゃんと踊れてよかったじゃん」
「あれはほんといろいろな意味で疲れたわ…」
「OPの途中の会話もみんなちゃんと喋れてるのに私だけ喋る言葉を忘れて変な事言っちゃってるし…」
「つかさらしいわね。それにこなたもこなたらしかったわね」
「それとEDだとカラオケでしたよね」
「カラオケねぇ…こなたのアニソンメドレー聞かされた時はどうにかなりそうだったわ…」
「でもこなちゃん、歌結構上手かったよね」
「私からしたらなんか満足いかなかったんだよね」
「自分が出して聞こえる声と人に聞こえる声は違うらしいですからね」
「次回予告も色々な意味で凄かったねぇ」
「あれはきっとあるアニメをマネたんだろうね」
「次回予告の時間の中で話してる事って結構キャラが出るわよね」
「みんないっぱい喋ってるのに私だけいつも時間がなくて全然喋れ無かったよ…」
「でも、みんな普通の事話してる中では一番存在感があった気がするけどね」
「え、そう…?一番印象に残らない気が自分でもしたんだけど…」
「つかさはもう少し自信を持った方がいいわよ」
「う…うん…」
「後2話から始まった臭いよね〜って会話はなんの事なんだろう〜」
「今も謎のままですね…恐らく最終回が来ても謎のままでしょうね…」
「それにしても3話あたりから色々なネタが多くなったわね」
「ドラ○エにコ○ンに金田○にぱにぽ○に…」
「全部分かるあんたって…」
「泉さん、凄いですね。私にはそちらの話は良く分からないのですが…」
「いや、みゆき、知らなくても生きていけるわよ
と言うより誕生日会で貰ったこなたのプレゼントは全然使えないわね…と言うか使い所が…」
「あれは飾っておくだけでいいよ〜」
「飾っておくだけって…つかさに渡した制服はどうすんのよ、つかさが間違ってあれで登校しようとしたんだから…」
「え!?そんな事あったっけ…」
「あったわよ、そのせいで遅れそうになったし…」
「おー、お前ら全員揃って何しとるんやー?」
「「「「あ、黒井先生、こんにちは」」」」
「もうすぐ最終回なので今までの事を振り返ってるんですよ」
「へぇ、それにしても4話での泉の遅刻の言い訳に突っ込んでやろうかと迷ったわ」
「あれ、私も良く分からなかったけど何?ネトゲの事はなんとなく分かったけど」
「あれはねぇ○anonでの話なんだ」
「やっぱそっち系の話なのね」
「でも先生、うぐぅって言ってたって事はネタ知ってるんですねぇ」
「泉と一緒にされたくはないわ
まぁ振り返る事もいいけどな、ちゃんと文化祭の準備もしろよー
ほな、ウチは仕事があるから戻るで」
「「「「さよなら〜」」」」
「夏祭りの時に会ったこなたの親戚の成実さんだっけ?
あの人警察なのにすごい人よねぇ」
「まぁゆい姉さんは元からあんな感じだからね」
「あの時捕った金魚はまだ元気ですか?」
「うん…一応元気よ」
「かがみみたいに太ってないか心配だねぇ…」
「うるさい!余計なお世話よ!ちゃんと普通に育ってるわよ!」
「でもお姉ちゃん、ぎょぴちゃんだっけ?結構太ってたよね」
「っ…!つかさはまた余計な事を…」
「へぇ…とっても太ってるんだぁ…」
「あ、あのそろそろ話を戻しても…」
「あぁ…ごめんごめん」
「でもさ、つかさ夏休みの時変な事言ってたわよね。バルなんだっけ?」
「あ…あれはちょっと、なんか急に言葉になって出ちゃったから…」
「へぇ、つかさもアドリブするなんてねぇ」
「6話もすごかったですよね」
「あぁ、原作にないオリジナルの話ね、てぃもて〜てぃもて〜」
「私はいろいろと思い出したくもないわ…」
「う…うん…私も…虫が…思い出しただけで…」
「ちょ、ちょっと急に抱きつかないでよ」
「7話や8話は特に目立った所はありませんでしたね」
「でもこなたのマリみてモードは二度と見たくないわ…」
「あら、かがみさん二度と見たくないなんて酷いですわね…」
「だからそれはやめろって!」
「8話の体育祭はやだったなぁ…私嫌な思い出ばかり…」
「いやいや、つかさそれはいい萌えだよ萌え」
「え?萌え…?」
「なんでお前はいつもそっち系の話になるんだ」
「9話ってどんな事やってましたっけ…?」
「そういえば…9話の話が印象薄いかも…」
「う〜ん…どんなことやってたか思い出せないね…」
「まぁ、みんなそんな感覚だったのね」
「みんな思い出せないなら次行こう〜」
「そう、10話と言ったらあれね、こなたと行ったアニメイトの店長さん?なんかすごいテンションよね」
「あ〜、あれね、あの人はいつもあんな調子だよ」
「成実さんより凄いわね…」
「確かにあの人はいろいろな意味でゆい姉さんより酷いね」
「でもゆきちゃん、一緒にこなちゃんの家に遊びにいけなくて残念だったね…」
「事情があったので仕方ありません。すみませんでした。また機会あれば是非行きたいですね」
「それにしてもこなたのお父さんも酷いわね、あれはいつ警察に捕まってもおかしくないわよ」
「うん、私もそう思うね」
「あんたは女だから心配なさそうだけど別の意味でも危ないわね…」
「ま、まぁさ、この話はそろそろやめにしようよ」
「11話はクリスマスの話でしたよね」
「クリスマスって言ってもあまりそんな実感なかったし話もなかったよね」
「私はそれよりも静電気の方が印象深いわ」
「なんであの時静電気起きたんだろうね」
「静電気とは床と人体との間で静電気が生じたり、
特に化学繊維を用いた衣服がこすれることによって帯電したりすることがあるようですよ。
なお、静電気は湿度の低い季節におこりやすいようですね。
ちなみに雷もまた、雲に蓄えられていた静電気によって引き起こされる放電現象らしいですね。
「でもさ、みゆきさんの雑学知識もすごいよね、1〜12話でほぼ毎回と言っていいぐらいやってたよね」
「ゆきちゃん凄い物知りでいいなぁ。でもその後の話で全く機会がないのが少し残念だけどね…」
「毎回やるのも少しあれでしたから…
でもみなさん、12話では楽しそうでしたよね私は行きたかったのですが行けなくて残念でした…」
「いや、みゆき、行かなくて正解だったわよ」
「いや〜、ほんと楽しかったよ」
「コ…コミケ…?」
「つかさ、また抱きつかないでよ…子供じゃないんだから…」
「それに初詣にかがみさんたちの所に行きたかったですね
かがみさんたちの巫女姿一度見てみたかったですね。東京にいるので遠くて行けませんでした…」
「いやぁ、巫女服可愛かったね二人共」
「こなたよりみゆきに着て欲しかったわほんと…
にしてもネタが多すぎるわね…」
「そこは京○ニに言おう
でもらき☆すたよりネタとかが豊富なアニメもあるけどね」
「そんなアニメあったらなんか少し見てみたくもなるわね…」
「でも13話からなんか雰囲気が変わったよね?気のせいかな?」
「多分それはEDの影響だろうね。なんでアニメに実写のEDを持ってくるんだろうね」
「私にはあまりわかんないわ」
「おもちうにょ〜ん」
「つかさ…どうしたの?」
「え…いや…私その時初めての台詞だったから…なんか突然言いたくなって…」
「夢の話も結構長かったわね。みゆきの初夢がいじめみたいでなんか気まずくなったわ…」
「すみません、あの時は少し…」
「ゆきちゃん、大丈夫だよ。私は気にしてないよ」
「かがみがそんな目で見てる方が気まずいけどね」
「あーもう…」
「あー、お姉ちゃんたち何してるの?」
「おぉ、ゆーちゃんにみなみちゃんじゃないか」
「こんにちは…」
「「「「こんにちは」」」」
「えーっとね、そろそろ最後だから今までのこと振り返ってたんだ」
「そういえばゆたかちゃんとみなみちゃんってどう出会ったの?」
「あー、少し気になるわね」
「私は既にみなみさんからお話して貰いましたね」
「…」
「うん、私がね試験中に少し気持ち悪くなっちゃってその時みなみちゃんがトイレまでついてきてくれたの」
「あぁ、いいなぁ…私たちにもそんな出会いないかしらね…」
「誰とですか、か・が・み・ん」
「うっ、うるさいわね!」
「じゃあ、ちょっと私たち用事があるからまた後でくるね」
「では…」
「もう少しゆっくりしていけばよかったのにね」
「でも用事があるのでしたら仕方ないですね」
「まぁいいじゃん続きをやろう。
はい三年B組〜」
「「「黒〜井せんせ〜」」」
「はいはい…
そういえば15話から変わったのよね」
「私たちが3年生になったからね。原作の方では2巻からもう3年生だけど」
「という事は漫画では3年生の時の話なのにアニメでは2年生のままで話が進んでるって事になってるのよね」
「そうだよ〜、そのままやってるせいで色々矛盾が起きてる所とかたくさんあるらしいよ」
「矛盾なんてあった?私は気づかなかったけど…」
「おーっす、柊たちなにやってんの?」
「なんだ日下部たちか…」
「結局柊にとって私らは背景扱いかよ…」
「日下部さんこんにちは」
「妹はこんな可愛いってのに…ほんとに双子なのか…」
「まぁまぁ、みさちゃん、そんなにいじけないで
それよりなにしてたの?」
「あぁ、それはもうすぐ最後だからって理由でこなたが今までの話を振り返ろうって言ってきたから
仕方なくつきあってあげてるだけよ」
「楽しそうな事してんなぁ、時間あったら私らも入りたいけどな」
「うん、そうなの時間がないから…またね」
「みなさん文化祭の準備で忙しいのでしょうか?それだとしたら私たち…」
「大丈夫だよ、みゆきさん他の人達がちゃんとやってくれてるよ」
「それより、こなたのバイトのコスプレ喫茶は酷かったわね…」
「どこもあんな感じだよ」
「それはほんとか…」
「でもこなちゃんのコスプレ可愛かったよね」
「いやぁ、つかさに言われると嬉しいね」
「それにしてもこなたの書いた地図、あれじゃわかんないわよ…
あの時はみゆきがいてくれたおかげでなんとかなったけど…」
「いえいえ」
「そういえばこなた、進路はちゃんと大丈夫なの?」
「あの後再提出くらったよ…」
「当たり前よ」
「でもこなちゃん、記憶力いいよねー」
「その記憶力を勉強に生かせばもっと…」
「いやぁ、ゲームじゃないとどうしてもやるきでないんだよねぇ」
「もういいわよ、あんたはずっとゲームでもしてなさい」
「でさかがみ、前にあげたあのウェハースチョコって全部食べた?」
「もちろん。つかさと一緒に食べたわよ。でもちょっと量が多かったから上のお姉さんたちにもわけたわ」
「ふ〜ん…かがみ太ったかなぁ…って思って…」
「あんたが思うように太ってはないわ。でもつかさはなんでそんなに太らないの?」
「特に私はなにもやってないんだけどね」
「太りやすい体質の方と太りにくい体質の方がいらっしゃるんでしょうね。
かがみさんは前者で、つかささんは後者のようですね」
「かがみたちってほんとに双子なのか心配になってきたよ…」
「あんたには心配されたくはないわね」
「お姉ちゃ〜ん」
「お、ゆーちゃんまた来たね」
「うん、田村さんとパトリシアさんもきたよ」
「先輩たちこんにちはッス」
「みなさん、コンニチハ」
「「「「こんにちは」」」」
「いやぁ、騒がしくなったね」
「そういえば私たちとパティちゃんはこなちゃんのバイト先で会ったよね」
「そうデスネ」
「…」
「みなみちゃんどうしたの?」
「いや…なんでもない…」
「ひよりんの部屋も色々アッテ楽しかったデスネ」
「それは思い出さなくっていいッス!あぁ…思い出しただけで…」
「でも田村さんの部屋漫画とかいっぱいあったね
お姉ちゃんの部屋と同じぐらいかな?」
「にしてもつかさ、急にあんな事言ってビックリしたわよ…」
「え…?あんな事って…?」
「まぁ、あの話はもう口にだしたくはないわ…」
「しかし、泉先輩と泉先輩のお父さんの会話も面白かったッスね」
「あれは私含むここにいる5人が内容がよく分からないわね」
「みなさんもガ○ダムのコトにツイテ語り会いマショウ」
「いやぁ、それはやめとこうよ…」
「エ?ソウデスカ?スミマセン」
「そうだひよりん、あの時メロンパン食べてたらしいけど何の影響かな〜?」
「い…いやぁ…あれはッスね…言わないでくださいッスよ先輩…」
「後、田村さん、あの時やおいの意味を教えてもらえなかったけどほんとは何?」
「なんでみんなで私を攻撃をしてくるかなぁ…」
「ユタカ、ソレハデスネ…やめて、お…」
「ストップ!ストップ!
ゆーちゃんにそんな事教えたらちょっと…ね…
私が教えてあげるよ。やおいってね、山なし、オチなし、意味なしって意味なんだよ」
「へぇ〜、ありがとお姉ちゃん!」
「礼には及ばんよ」
「みなさん揃って行った花火大会も良いものでしたね」
「ほんとに楽しかったねぇ」
「パトリシアさんも日本の花火大会初めてだったでしょ?」
「ハイ、始めて見マシタネ」
「あの時のゆたかちゃんとみなみちゃん、ほんといい雰囲気だったよね」
「…」
「私たちだけ蚊に刺されなかったよね」
「うん…」
「それにひよりんもちゃんと空気読めるなんて知らなかったよ…」
「先輩…それは…」
「でも修学旅行はなんで三年生にやるのかな?」
「つかさ、それは言わないお約束」
「え、言っちゃだめだった?」
「でも不思議よね。なんでなのか」
「かがみ、それはね…」
「まぁ、もういいわ言わなくて宜しい」
「ワタシも京都に行ってミタイデスネ」
「みなみちゃん、田村さん、パトリシアさん、私たちも一緒に回ろうね」
「今からとっても楽しみだね」
「…うん」
「思ったけどつかさ、
良く考えたら目覚まし時計なんていらないわよね…私たちがいるし…」
「だって私あれがないと眠れなくって…」
「目覚まし時計ないだけで眠れなくなるもんなの?
こなたは論外だけど」
「私は論外ですか!?」
「うん、論外よ論外」
「修学旅行にゲーム持ってくる奴なんて聞いたことないわよ」
「でもネットとかだといろいろ持ってきてる人いるらしいよ」
「…そんなにゲーム持ってくる人いるのか…」
「にしてもつかさも最後まで魅せてくれたね」
「え?何を…?」
「いやぁ、こっちの話」
「…?」
「でも私のお父さんもかっこいいんだかかっこよくないのかよくわかんないね」
「娘にそう言われてるって事はこなたのお父さんはとても酷いという事が改めて良く分かるわ」
「え、お姉ちゃん私が、風呂に入ってる時おじさんとどんな話してたの…?」
「ん〜、それは内緒。今度いつか話すよ」
「こなちゃん、私たちには話してくれないの?」
「ん〜、お父さんのやばい事を話すことになるからちょっとねぇ…」
「そんなにあんたのお父さんやばいのか…」
「それにしてもゆーちゃん、あの時ノリノリだったねぇ」
「お姉ちゃん…あ…あの話はもう…」
「先輩、小早川さんなんかしたんスか?」
「うん、ひよりん実はね…」
「やめてやめて!ストップ!」
「わかったよ、ゆーちゃん。」
「ん〜、聞きたかったッスね…」
「そういうとなんか私たちも気になってきましたね」
「お姉ちゃん、言うのやめてよ…?」
「わかったから、わかったから」
「でもほんと人のパソコンって使いにくいわね。いや、こなたのパソコンが使いにくいだけなのかもしれないけど」
「人のパソコンは使うもんじゃないよ〜」
「こなたのパソコン使おうと思った私がバカだったわ…」
「でも最近は迷惑メールとかほんとに多いよね」
「そんなこといわれてもわからんわ…」
「小早川さんのお姉さんの成実さんだっけ?岩崎さんしか目に入ってなかったみたいで
私とパトリシアさんは背景扱いだったよね…」
「うん…、ごめんね…」
「いやいや、ユタカが謝る様なコトジャナイデスヨ」
「ごめん…」
「だからって岩崎さんまで謝らないでいいよ。こっちまでなんか悪いことした気がするから…」
「だけどガム食べて歯に入ってた詰め物取れるってみゆきさんらしいよね」
「はい…やっぱりやめとけばよかったですね…」
「でも…そろそろ…ほんとに次で最後なんだね…悲しいな…」
「ほらほら、始まる前からそんな弱気でどうするのよ」
「そうだよ、最後だから今までより元気でならなきゃきっと後悔するよ。つかさ」
「そうですね、涙して後悔するよりも笑顔で後悔した方がいいですよ」
「みんな…ありがとう…そうだよね…みんなだって寂しいよね…」
「先輩、私たちみんなついてますから」
「そうッス!そんな心配しなくても大丈夫ッス!」
「そうデス、きっとマタドコカデ会えるデショウ」
「だから…先輩…今の事より…前を向いて歩いた方が…いいと思います…」
「ほら、つかさ、泣くのはやめ。これからだって言うのにあんたがそんなんじゃみんな心配するわよ?
私たちだって終わるのは寂しいわ。だけどあんたがそんなんじゃこれから始まる事に集中できないわよ」
「おー、おまえらまだいたのか、さっさと文化祭の準備せえや」
「黒井先生」
「なんや泉」
「空気読んでください」
…
「なんだ柊はそんなことで泣いとったのか。そんな最後なんてきにせんでええわ。
続きはお前達が信じてる限りあることを忘れるなよ。それよりはよ文化祭の準備を進めろな」
「むぅ…」
「ほら、つかさ、先生もそう言ってるしさ、そろそろやりましょ」
「う…うん…」
続きはテレビで!
読んでくれたあなた、ありがとうございます
スルーしたあなた、ありがとうございます
こんな事起こったら一番最初に泣くのはつかさだろうなぁと思いながら書いた。反省はしていない
しかし、書いてる途中に思ったことはどうやって終わらせるかが困りました
挙句の果てにこんな終わり方になってすみません
ちょ う G J !!!!!!!!!!
ほんとにこれで終わりなんですねえ・・・・俺、絶対泣くと思います><
黒井センセーの扱いに吹いたw
キスしたって抱きしめたって挨拶みたいに思ってるからね
>>222 かがみ「ねぇこなた」
こなた「な、何かがみ?」
かがみ「これってさぁ、求めてるってことでいいのよね?」
こなた「え、ちょ待くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!!!!!!!」
最終回……悲しいなぁ
最終回はまさかの展開だったな……
こなたは、かなたを失いその代わりを生み出すために禁忌に手を出したそうじろうが誕生させたホムンクルスだったなんてな
しかもかがみとつかさはこなたを監視し、有事の際は抹殺するために退魔組織から送られてきた刺客だったとは
みゆきの機転がなければバッドエンドだったぜ……
空気嫁wwwwwwwwww
>>227 そんな事言うとほんとに書いちゃいますよ?
か、かんべんしてくだしあ('A`;)
>>227は嘘言ってます!
本当は、埼玉エリアを制覇したこなたたちプロジェクトLが次の茨城エリアでパープルシャドウに苦戦ししたものの、
前半のヒルクライム・ダウンヒル複合コースでななこ先生のR34にかがみがなんとか勝って2戦目のダウンヒルで
ゆい姉さんとこなたがバトルするという話ですw
俺が見た最終回は勇気がなくてこなたとの関係に踏み切れないかがみを
恋のライバルであるみさおが笑いながら背中を押して(あとであやのに泣きついてたけど)
全校生徒の見守る前でこなたに告白してキスするっていう内容だったはずなんだが
らき☆すた\(^o^)/オワタ
俺は明日組だからまだ明日までwktk待機出来るんだっぜ!
違うぜ!
本当の最終回はかがみの心臓部に太陽爆弾が埋め込まれていた事実が発覚。
黒部ダムを量産型みゆきさんから守るためにかがみは爆弾を解放して、
最後こなたを庇って溶鉱炉の中に消えてしまうって話だよ。
最終回が終わったというのになんというSSネタ祭りw
ネタバレが酷すぎるwww
そっかー、まさかアニメでマルチエンディングなんて…狂兄、恐ろしい子
1時間後が楽しみー…なんだけどとっても眠いよお姉ちゃん…
自分でネタ投下してなんだが、何?このニッポン放送の月〜木の24時からの番組みたいなノリw
とりあえず
「最終回」「ネタバレ」「CTC」「TVS」「埼玉」「千葉」「24話」「nicovideo」「youtube」
をNGに突っ込んどいた
あとは何を突っ込めばいいんだ?
「こなた」「かがみ」「つかさ」「みゆき」「白石」「あきら」辺りもお勧め
>>239 とりあえず、「バイソンマグナム」と「ロデオソニック」は入れておけw
全部突っ込んだらほとんどのSSが消えたよ\(^o^)/
みんなありがとう!!
千葉だが、一度生で放送を見たかったぜ
TVってやっぱり必要だよね(´・ω・`)
>>244 オレ、松戸だからワンセグの電波不安定で一部しか見れなかったorz
>>244 テレビっていうより、UHFのアンテナじゃね?w
最終回は大体こんな感じ
こなたは『病気』により、もう現実は見えなくなってしまった。
大好きなかがみや、かがみをとりあう親友でありライバルであるつかささえも
『見え』なくなってしまい、療養のために別れを決意した。
こなたとつかさの間で揺れるかがみは、ついにこなたを選ぶことを決意した。
それを告げられたつかさは、泣きながらも……
「お姉ちゃんがこなちゃんを選んでも、お姉ちゃんの妹は私一人だから。
お姉ちゃんが『ずっと守る』って言ってくれた妹は私なんだから……」
二人は野原を駆け回り、屈託の無い笑顔ではしゃぐ。
幼い頃、二人でそうしていたように……。
一方、別離のための駅に向かうこなた。
もう彼女の眼には現実は見えない。見えるのはネットの世界だけ。
そんなこなたの前にかがみが現れると、途端に病気は治り、
現実が正しく見えるようになった。かがみはこなたへの想いを告げる。
夏休みが明けたある日、こなたは言う。
「あのね」
そしてさらに数ヵ月後、かがみはつかさに言う。
「あのね」
>>247 ・自分の部屋にテレビがない
・携帯持ってない
・家族(父・俺・弟)で自分以外は非オタ
・ビデオデッキは故障中
UHFのアンテナはある
チバテレビのロッテ戦とか三国志を弟の部屋で見てる
言い忘れたw
元ネタはアニメ版「かしまし」
あのね商法自重www
ひよりと某興津高校の中山が被ってしまうのは俺だけでいい・・・
さいご白石死ねよボケ
こなたでしめろよ
白石とかマジつまんないからリアルで死ね
最終話見た後に私の先ほど書いたSSの
>>210みると違和感が…
いやー終わった
そしてこれからが始まりだ
いやマジで
259 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 01:32:02 ID:jdT7LaMr
アニメ終わってもここは終わらないよね?
まぁ人は少なくなりそうだけどね
まだ書いてる途中の人もいるし
次のアニメに興味が移ってSS書けるようになるまで
時間があるだろうし
2,3週間は勢いが続くんじゃないかな
数字に根拠は無いけど
まだ原作は終わってないんだから大丈夫でしょ。
というか、アニメ見れないけど出てきてしまった行事ネタ(文化祭とか)を
書くのってアリデスカ?
最終回とは全然関係ないのですが、
天原ふゆき先生、誕生日おめでとう。
もともと漫画から入っている俺にはまったく関係ない
アニメのボイスイメージは良い感じだったから、そこには大感謝
俺はアニメから入ったが、元々ガチの4コマ読みだからアニメが終わろうが関係ない!
でも、アニメ終わったから近いうちにマンガも終わりそうな気もするんだけどな
ものが売れるうちに
自分はなぜからき☆すたしかSS書く気になれなかったな
他に色々行ってるけどただ見てるだけって感じ
なので多分これからもSS作ると思う
例えそれがまらんを貰っても…
炊いたのNG設定するの忘れていきなり寝たバレ踏んだ\(^o^)/
もう俺にもう怖いものはねえ是
アニメが終わってせいせいしたぜorz
ハルヒ2期にこなた達でないかなぁ……。
んで、ハレ晴れ共演とか?
そういやハルヒ達より年上なんだよな
何か妙な感じ
さて、アニメ終了後初の投下は誰になるのかwktk
あきら様早く白石と仲直りしてくれ・・・
275 :
ぶーわ:2007/09/17(月) 02:55:14 ID:WgPMC5KF
最終回ラッシュの波に乗れない俺が来ましたよ。
空気も読まずに投下します。
人として袖が触れている
>>101-108の続きです。
また話があんまり進まないのは、みさおの所為に違いないっ! ぶっちゃけ、扱いにくいです!
↓6レス拝借します。
■ノート その2
『同じものに甘えてはいけません。
それは貴方に、何も与えてはくれません。
違うものを恐れてはいけません。
それは貴方に、鍵を与えてくれるでしょう。』
その短い手紙の内容が、頭の中で暴れる。
……それは最初、意味がまったく分からなかった。
でも、この状況に重なる意味はすぐに頭に浮かんできた。
これは私の推理だが……要は認識の差、じゃないかと思う。
つまり、私の……『平成』と『平安』の認識の差。
『同じものに甘えてはいけません』
同じもの……。
二つの世界の、『同じもの』。
……これはつかさや、峰岸を指すのかもしれない。
彼女たちは『同じ』だ。
私が知っている彼女たちが、そのまま映し出されている気がする。
じゃあ『違うもの』って何?
そう……答えはずっと出ていた。
その『違うもの』が出るたびに、私の心は違和感に包まれていった。
例えば……って例を挙げるのも馬鹿らしいか。
私はその違和感の一つに接触するために、こんな月夜に部屋を抜け出したのだから。
月夜に照らされる渡殿(わたりどの)を足音を殺しながら歩き、来客用の対屋(たいのや)に辿り着く。
今この対屋に居るのは内大臣様姫君の峰岸、その女房雑色数名。
……そして、もう一人。
そう、違和感の塊……日下部だ。
「あはははっ!」
場所はすぐに検討がついた。
日下部の笑い声が、邸に響いてたから。
その声を頼りに対屋を進むと、一つの部屋の前に辿り着く。
「いやー、今日は楽しかったなぁー」
「うふふ……みさちゃ……いぶんと……」
部屋の近くまで来るが、上手く会話が聞き取れない。
主に峰岸のが。
日下部のは無駄に響いてるけど。
どうやら部屋で二人、仲良くお喋りらしい。
峰岸が居るのは少し都合が悪いな、手紙にもそう書いてあるし。
……日下部が一人の時がいいかな。
「でも……目よ、……を忘れちゃ」
「大丈夫だってばっ、こちとら春宮の……むがぁっ!」
辺りに人影がないのを確認し、耳をすます。
だがその時、軽快に叫んでいた声が止まる。
どうやら峰岸に口を塞がれたらしい。
でも、確かに聞こえた。
春宮(はるのみや)……?
これは所謂、特殊な言い回しだ。
現代で言うところの『皇太子』……つまり天皇の第一子、次期帝候補のことを指す。
そりゃ、内大臣の妻ともなれば関係くらいはあるだろう。
でも今、何でその話題が日下部から?
やっぱり日下部もよほどの位の人物なのか?
それも春宮の直属とか、それほどの。
「みさちゃん、駄目よ。注意しないと……」
「へいへい、今日はもう寝よっかな。明日も早いし」
その声と共に中の音が激しくなる。
私の動悸も同じだ。えとえと、か、隠れなきゃっ。
今ここで見つかるのは、かーなーりまずいっ!
「んじゃ、おやすみー」
「ええ、おやすみなさい」
蔀戸(しとみど)が開くと、峰岸の声もはっきり聞こえる。
そしてそこから日下部が現れ、自分の用意された部屋まで歩いていこうとする。
曲がり角の死角に隠れていた私も、ゆっくり日下部の後をつけていく。
さて、どうしよう。
違うものに接触しようと決めたのはいいが……どうしたらいいかはまだ考えてない。
何より日下部の素性すら、完全には分かっていない。
はたしてあれを信用していいものか。
『違うものを恐れてはいけません』
恐れるな、って言われても。
いや、それより問題なのは次か。
『それは貴方に鍵を与えてくれるでしょう』
……鍵、ねぇ。
鍵といっても千差万別だ。
それが絶対に必要である、というのがしっくりくる。
でもヒント、ともとれなくもない。
そう考えると……この行動は早計な気がしてきた。
こんなことをするより、昨日破り捨てたノートを探したほうが建設的かも。
肝心な一文が未だに思い出せないんだよなぁ。
ええと……『何か』を見つけるのが必要なんだっけ。
……駄目だ、まるで思い出せない。
それが分かれば、『鍵』の意味も汲み取れるかもしれないのに。
「あ……」
その時だった。
視界に入っていた日下部が消える。
消えたというか、曲がったわけだ。
それを見失わないように、私も駆け足で曲がり角まで急ぐ……はずだった。
「!」
「はーい、止まった止まった」
首筋に冷たいものが当たる。
それが最初何か分からなくて、戸惑う私の前に居たのは……日下部だった。
「動いたら掻っ切るよー」
「ひっ……」
声を失った。
私の喉元に突きつけられているのは、脇差……鈍く光る、刃だった。
「あれ? なんだ、ちびっ子のお付じゃん」
私の顔が月夜に照らされてようやく見えたのか、何とか脇差を収めてくれた。
はぁ……生きた心地がしなかった。
「何か用? 尾けるのはよくないぜー?」
「あ、え……と、少し、話があって」
「話?」
まだ首に残る感触に戸惑いながらも、何とか言葉を振り絞る。
「へぇ、ふぅん、ほー」
と何故か変な声を漏らす。
「そっか、じゃあいいよ。部屋そこだから入んなよ」
「えっ……う、うん」
そして何故か、部屋に誘われた。
も、もしかして何かの光明?
普通自分を尾行してた人を部屋になんかあげないわよね?
やっぱり、日下部には何かある。
もしかしたら『鍵』の存在も分かるかもっ!
自分の推理が当たった喜びから、私は浮かれる。
だから……忘れてた。
相手はあの、日下部みさおだということを。
「まぁ適当に座んなよ、ってそっちのが詳しいかー。あははっ」
笑いながら蔀戸を閉める日下部。
確かにこの来客用の邸も、体の方の記憶にはある。
なのでまぁ、私は知らないのと同じか。
とりあえず腰掛けると、その対面に日下部も腰を下ろす。
「それで、えっと……話っていうのが、ね」
……と、そこで考えが固まる。
しまった、まるで整理してなかった。
違う人? 鍵? 手紙?
ええと、どうしようどうしよう。
やばい、テンパってきた!
早くしないとまた、いつ月光が雲に遮られるか分からないのに。
ああ、なのに考えれば考えるほど頭がこんがらがって……。
「あははっ、大丈夫大丈夫」
「え……」
「何も言わなくていいぜっ、分かってるってば」
ポンッと、日下部の両手が私の両肩を叩く。
慌ててる私を、落ち着かせてくれようとしているみたい。
まさか、日下部に気を遣われる日が来るなんて……。
でも落ち着いたのは、本当だ。
……私は誤解してたのかも。
日下部はもっと適当で、人のことなんて考えてないヤツなのかと思ってた。
でも今はこうやって私を慰めてくれて……ん?
何だか、顔が近くないか?
ゆっくりこっちに寄って来て、そのまま……。
「って何をしてる何を!」
唇が触れそうなくらい、日下部の顔が近くにあった。
そこで私の声に気がつき、勢いが止まる。
「何って……接吻?」
「なんであんたとんなことせにゃならんのよっ!」
「えーだって、夜這いに来たんじゃないの?」
……。
ええと。
まず深呼吸。
そして肩の力を抜いて、脇を絞って、えぐりこむように……打つべしっ!
「みぎゃぁっ!」
思い切り顎を打ち抜いてやった。
どうやら……私の推理は、はずれだったみたいだ。
「な、何すんのさーっ。そっちが誘ったのにぃ」
「誰が誘うかっ!」
つまりは、無駄足。
見直した自分が馬鹿だった。
今のこいつはただの節操のない猿と一緒じゃないか!
「はぁ……こんなのが春宮の直属のはずないか」
「?」
思わず口からため息と共に。愚痴が零れた。
すると、妙な表情をみせる日下部。
「へー、ふぅん、ほー」
と、最初の感嘆の言葉を口にしながらまた日下部が近づいてくる。
身構えたが、今度は正面ではなく横から。
「おっかしいなぁー、春宮の話なんて君の前でした覚えがないんだけど」
「あ……」
そして……気がついた。
口を滑らせたことを。
「何で君、知ってるのかな?」
「うっ……」
私の肩を脇息にみたてて、そこに肘を置く。
http://bbs.freedeai.com/src/up5857.jpg いまや、立場逆転。
冷や汗が流れ、返事に躊躇してしまう。
「まさか、大納言家の女房が盗み聞きなんてしないよなー? それも、内大臣姫君様のを、なんて」
確実に答えの出ている質問で、私の真綿を閉めていく。
「えと、いや、だからそれは……」
「返事は、考えてからのほうがいいぜー?」
今朝の牛車のことが頭を過ぎる。
そこでこなたに、私が説いたじゃないか。
貴族社会というものの、重さを。
大納言家の女房が、内大臣姫君の会話を盗み聞きしていた?
そんなのが知れわたっただけで、大納言家の問題にすぐに発展する。
下手をすれば……うう、あまり考えたくない。
「んー、そだなー。黙っててあげてもいいけど」
「えっ?」
日下部の提案が、私の耳を通り過ぎる。
え、と……今、何て?
「ちびっ子が可哀想なことになるのも、目覚めが悪いしなぁ」
と、私の後ろから私の体に手を回す。
ま、またこいつは何をっ!
「でもタダって言うのは、虫が良すぎるだろー?」
「……」
日下部の言葉が耳元で聞こえる。
今や後ろから羽交い絞め、と言った感じ。
でもまだ拘束されているわけじゃない。
右手は私の髪を弄び、左手はただ私の体に絡み付いているだけ。
少し前に力を入れれば、簡単に抜け出せるだろう。
でも、それをすれば……。
「い、いい……わよ」
声を必死に振り絞った。
怖くないはずがなかった。
今から私は、体を預けるんだ……日下部に。
「へー? 即決かぁ、女房の鏡だね」
「……自分の尻拭いぐらい、自分でするだけよ」
「ふぅーん」
と、日下部の手が私の頬に触れる。
それにビクンと体が反応するのが、妙に恥ずかしかった。
「震えてる……初めてとか?」
「……」
答えてやる義理は、ない。
「うん……強情なところも可愛い」
ゆっくりと日下部の顔が近づいてくる。
最初と、同じ状況。
違うのはもう、逃げられないということ。
それに私は……目を閉じることしか出来なかった。
「……ぷっ」
だが、その唇が触れる直前……日下部から声が漏れる。
「あっははは、いーね。気に入ったー!」
そのまま、私の体を解放した。
その感触に気がつき恐る恐る眼を開けると、日下部の笑顔が迎えてくれた。
「冗談だってば冗談、いくらなんでもそりゃ卑怯だよなー」
「なっ……」
悪気のない笑顔に、怒りのやり場を失う。
うう、人が折角覚悟を決めたのにっ!
今頃になって思い出して顔が熱くなってきた。
いつか仕返ししてやるっ。
ってそんなことよりっ!
「そ、それで結局……黙っててくれるの?」
「んー、どうしよっかな。それはそれ、これはこれだし」
なんだそりゃ!
恥のかき損かよっ!
「あ、そうだ」
するとそこで、わざとらしく棒読みで日下部が思いついたような仕草をする。
「実は今手が足りなくてさー、手伝って欲しい事があるんだよなー」
そのままもったいぶって、私の返事を待つ。
……この野郎。
「何よそれ……手伝えってわけ?」
「あははっ。まぁ、そんなとこかな」
とまた笑う。
もしかしてこいつ……それが狙いだったな、口を滑らせた辺りから。
その後のくだりはじゃあ、遊んでたのかっ!
くぅ、手玉に取られた。
かなり悔しいっ。
「はぁ……いいわよ。何をすればいいの?」
どうせ断れないのを分かって言ってるんだ。
乗ってやろうじゃないか。
「ああ、明日にまた伝えるよ。『正式に』」
「?」
またもったいぶった言い方。
正式に?
何それ、どういうことよ。
「明日になってのお楽しみかなーっ、あはははっ」
この笑い声がまた憎らしい。
結局これだけからかわれて……収穫は、恥だけ。
なんという時間の無駄!
「分かったわ……じゃあ、また明日に」
どうせ夜まで私は出てこないけど。
月が出るまでに終わらないかな、その用事。
ぶっちゃけもう、関わりたくないのが本音だし。
「んー、あれ? 話があったんじゃないの?」
「……もう、いい」
酷く、疲れた。
何が鍵だ、何が違うものだ。
馬鹿な推理で突っ走るもんじゃない。
調子に乗ると良くないな、今度から気をつけよう。
……いや待て、収穫がもう一つあったか。
日下部との約束。
何をさせられるかは知らないけど、どうせロクな事にはならない気がする。
まぁ適当に相手して、適当に事を荒立てないよう、適当に乗り切ろう。
日下部相手なんだ、それで十分でしょ?
はぁ……名前出しただけで疲れた。
いいから早く部屋に戻って寝よう。
体のほうの私も、少しは休ませないといけないしね。
――違うものを恐れてはいけません。
――それは貴方に、鍵を与えてくれるでしょう。
(続)
282 :
ぶーわ:2007/09/17(月) 03:07:53 ID:WgPMC5KF
続きます。
最終回以降もこのスレの伸びが変わらないことを 祈ります。ザーメン
GJ!とにかくGJ!
どういうラストになるのかが気になりまくりですね
うはwwww最wwww終wwww回wwwwEwwwwDwwwww
>>282 うひょー、続きが楽しみッス〜!!
さて、一部地域は既に最終回来たわけだが
静かだ、静か過ぎる……
これが、嵐の前の静けさと言うものなのか……
単に緘口令が敷かれているだけだとは思うが
やっぱり時効になればブワっとくるのかね
ニコ動でみた。
以上。
みさおの声が強烈過ぎてみんなの書き込みがみさおボイスで脳内に響くってヴァwwww
こんなのって、私だけ・・・?
でもそんなの関係ねえってヴぁ!
>>282うはwwwちょいワルみさお萌えwwwwwwww
そして挿絵を見た瞬間パン工場〜ネタが思い付いた俺は世界一のみさおスキー。
異論は断じて認めない。
そしてwktkGJ!
子供のころ 懐かしい記憶 ヨーグルトの時に スプーンでかきまぜ
パン工場 パン工場 はずっ…
あ、黙れって?すいません
>>292 でも今じゃ そんなことも 忘れて
何かに 追われるように 毎日エロパロ
最高じゃないか最高じゃないか
>>293 SSを読んで俺 萌え死ぬ 萌え死ぬ
もう何回死んだのか 分からない
続編まだなのかな? wktk wktk
神作のすぐあとでは 投下できない
>>295 > 神作のすぐあとでは 投下できない
そのプレッシャーは誰もが感じてると思うが、貴方も、そう考える数多くのSS作家のうちの一人に過ぎない。
なにが言いたいかというと、このスレはそういう作家さんで持っているのだから
そんなちっぽけな事気にせずじゃんじゃん投下するといいんだってヴぁ
俺(292)が言うのもなんだが、292から293、295が続いているとしたら、
「かがみが毎日このスレをのぞいて萌え死んで、さらに作品を投下しようともしている」
という文脈になりそうなんだがw
>>292,293,295
おっくせんまんの歌詞になっててワロタ
ふと、らきすたキャラは将来、「先生」と呼ばれそうな人が多いことに気付く。
こなた→作家?
かがみ→弁護士
つかさ→料理講師(厳しいか?
みゆき→医師
ゆたか→作家
みなみ→医師?
ひより→作家?
パティ→英語講師(これまた厳しい?
ネタに出来そうだと新聞を見て、旅行中で放送曜日が違うのに気付いた…orz
日曜日カムバーック!!
文化祭ネタが止まらない
しかしなぜ自分が書くSSはつかさが中心になってしまうのだろうか…
つかさ好きだからしょうがないと言えばしょうがないけど
他のキャラ中心のも書いて見たいぜ
>>297 確かにww
けど、もし実際に題材にされているキャラがこのスレ見たらどうなるんだろうな?
かがみん辺り瞬時に真っ赤になりそうだww
一つだけ言えるのが、『ひよりだったら書かれたことをドジンシのネタにする』ってことだね
こなた→かが×こな系SSをプリントアウトして、かがみいじりのネタにする
かがみ→「わ、わたしとこなたが恋仲って、馬鹿じゃないの!?」とか言いながら、ケータイにブックマークする
つかさ→「わあ、すごい量だね〜」と感心したあと、自分が壊れてるSSに行き着いて「どんだけー」とつぶやく
みゆき→「6才こなたん」を読んで新たな性癖に目覚める
みさお→「……うわ ……えろっ」
あやの→自分と彼氏を描いた作品がないかこっそり探す
ゆたか→「じ、実体験……(ボッ)」
みなみ→いきなりガチ百合SSにぶち当たり、真っ赤になって硬直
ひより→ネタを探しに来たはずが、いつの間にか専属絵師になっている
パティ→まとめWikiを英訳しようとして、あまりの物量に押し負ける
あきら&白石→お互いの内心を知って仲直りする
そうじろう→本職の小説書きに詰まるとやってきて、こっそりSSを書いてる
かなた→「てけてけかなたさん」を見て、神様に陳情に行く
おい、ここみてるそうじろう、手をあげろ
最終回見たら「欝SS書きたい病」が吹き飛んだぜ
やっぱり友情っていいな
シキュウレイプモノヲモトム
「レイプものが見たいんだってさ」
「な、あ、あんた何言ってんのよ!?」
「いやー、そういう需要もあるんだよ、かがみ」
「ゲームのやりすぎじゃないの!?絶対にイヤよ、どこの誰とも知らない男にやられるなんて!」
「じゃあうちのクラスのセバスチャ……」
「訂正!知ってようがいまいがレイプなんて絶対にイヤ!」
「我侭だなー……かくなる上はわたし自ら……」
「っ……こ、このバカ!バカバカ!!」
「あはは、冗談だよーかがみ。もう、焦る顔もかわい……」
「あんたにされても、レイプなんて思えるわけないじゃない……」
「……はい?」
「だって、こなたとだったらわたし……」
「あ、あのー……かがみ?」
「襲いたいって思ってたのなら、これは合意よねっ!こなたぁー!!」
「ひぇえぇぇぇ!?止めて許してかがみ様っ!レイプ反対ーーー!!!」
これが本物の職人か・・・
実は
>>309こそこっそりSSを書いてるそうじろう
短めのSSを投下します。2レス使います。
みなみ&ゆたかの微々エロ(?)で、ゆたか視点です。
ちょっとゆたかが黒いです。
「みなみちゃ〜ん、『アレ』やらない?」
「アレって……『アレ』……?」
「うん! 『アレ』だよ〜」
「ゆ、ゆたか、ここ、学校……」
「大丈夫だよっ、ここなら人……あんまりこないし」
「そ、そういう問題じゃ……」
「今日だけでいいから……駄目? みなみちゃん……」
「今日だけなら……わかった」
「わぁい! ありがとう、みなみちゃん」
「本当に……今日だけだからね、ゆたか……」
「わかってるよ〜……んっ」
あまり人気の無い階段の途中、私達はそんな風に会話を交わして、キスをした。
私達の言う『アレ』とはキスのことで、もっと厳密に言うなら『キスの遊び』。
さらに言うと遊びっていうよりはゲームに近い感じで、
どっちかが耐えられなくなったりして先に口を離しちゃったらその人が負け。
その日は勝った人の命令を何か一つ聞かなきゃいけない。
この遊びはかがみ先輩がこなたお姉ちゃんの部屋にきた時によくやってるみたいで、
私は二人がこの遊びをやっているところを
ドアの隙間から(ホントはいけないんだろうけど)何回か見たことがある。
私の見た限りではこなたお姉ちゃんのほうが『強い』みたいで、
お姉ちゃんが勝った日のかがみ先輩は語尾に「にゃー」とか「わん」とか
かわいらしい言葉を付けさせられて顔を真っ赤にしている。
私とみなみちゃんはこの罰ゲームの部分はあんまりしないようにしていて、
いつまでキスしていられるかの部分を特に楽しんでいる。
私達がこの遊びを始めたのは大体1ヶ月くらい前。
それまで私はお姉ちゃん達のキスを見てるだけだったんだけど、
なんだか楽しそうなお姉ちゃん達を見ているうちに私もしたいって思うようになっちゃって、
ついついみなみちゃんにこの遊びのことを持ちかけてしまった。
もちろんその時私はみなみちゃんとキスなんてしたことがなかったけれど、
私は誰よりもみなみちゃんとキスがしたかったし、
みなみちゃんなら私とのキスを拒まないだろうっていう変な自信もあった。
みなみちゃんの返事は今の状況を見てもらえば一目瞭然なんだけど、
最初はみなみちゃんにも結構抵抗があったみたいで、
私が「遊びみたいなものだから……」ってお願いしてなんとか最初のキスにもっていった。
今思うと遊びでもキスはキスなんだけどね。
ちなみにその時から少し思ってたんだけど、みなみちゃんはどうも私の『お願い』に弱いみたい。
さっきも誘うときにちょっと意地悪なお願いの仕方をしちゃった。
「ん……んふ……」
みなみちゃんの息が少しずつ乱れてきて、なんだか体をそわそわさせている。
みなみちゃんがそろそろ限界みたい。
私は絡ませていた舌をすばやくみなみちゃんの舌の裏側に滑り込ませた。
「んふっ……んんんっ……!!」
ここを刺激してあげるとみなみちゃんはすごく敏感に反応してくれる。
私だけが知っている、みなみちゃんの弱点。
みなみちゃんは体をびくんと震わせた後、足の先から崩れるようにして階段に座り込んでしまった。
「また私の勝ち……だね、みなみちゃん」
「ゆたか……なんだか、上手く、なった……」
みなみちゃんは手すりを持って体を支えていて、少し苦しそうに息をしている。
いつもの綺麗な目はなんだかちょっとぼやけているみたいだった。
「そう、かなぁ……みなみちゃんが敏感すぎるんじゃない……?」
私はまたちょっとみなみちゃんに意地悪をしてみた。
みなみちゃんの顔が目に見えて分かるくらいに真っ赤になっていく。
可愛いなぁ、みなみちゃん……。
私は普段では見られない可愛いみなみちゃんが見たくて、ついつい意地悪をしてしまう。
……またちょっと意地悪しちゃおうかな。
「あと、今日は特別に私の言うことを一つ聞くことっ!」
「え、そんな……聞いてな……」
「『明日から学校でも毎日この遊びをやること』が私からのお願いねっ?
それじゃあ明日からよろしくっ、みなみちゃん」
「ゆ、ゆたか……!」
「ほらほら、急がないと次の授業が始まっちゃうよ〜」
そう言って私は有無を言わさずにみなみちゃんを引っ張って教室へと駆けていった。
みなみちゃんはすごく困った顔をしているけど、明日になったらきっとまたこの遊びをやってくれる。
なんてったって、私の『お願い』だからね。
317 :
9-727:2007/09/17(月) 20:14:03 ID:jsbQgzE5
以上で終わりです。
入学案内書の「意地悪なゆたか」のイラストを見て、こんなゆたかもアリかなと…。
読んでくださった方、ありがとうございました。
これがリアルタイムか。
小悪魔チックなゆたかが良いですね。
GJ!
ゆたかはお姉ちゃんの背中を見てすくすく育っているのだな
>>317 GJ!
実はみなみも楽しんでるやってるに50スペランカー
それって反面教s…
誰か来た
>お姉ちゃんが勝った日のかがみ先輩は語尾に「にゃー」とか「わん」とか
>かわいらしい言葉を付けさせられて顔を真っ赤にしている。
俺 を 殺 す 気 か
まさか最終回で、こなたが「銭まくど!銭まくど!銭まくさかい風流せい!」
と別れを告げて去っていくとは思わなかったぜ……
俺はかがみがあそこで「アイルビーバック」って呟くとは思わなかったぜ。
これなら2期も期待できるな。
おかしいな、俺が見たのはゆーちゃんとみなみちゃんを脱出カプセルに乗せて、
崩壊しつつある宇宙から熱いメッセージとともに送り出すレギュラー陣だったんだが。
あれ?
ラストは周りのセットが崩れ去って、いつもの4人を出演者総出で囲むように喪服歌ってラストだろ?
俺の見た最終回は
つかさが「いかほど〜」と口走った瞬間に
「盆回り」のBGMとともに地球にメテオが落ちてきて(ry
328 :
11-618:2007/09/17(月) 21:52:51 ID:4Jmh64X5
ここで流れをぶった切って最終回見てない俺が投下しますよ。
王冠〜の続きで、一応ラスト。
4レスぐらい頂きます。
時間もそれなりにたっているので、ラスト一回ってことになったっス。
周りを見渡すと、さりげなく寄り添い合うようにしている泉先輩とかがみ先輩、
恥ずかしそうにしつつ、チラチラお互いの顔を見合う小早川さんと岩崎さんが見えるっス。
さっきまでのゲームが効果を発揮したようっスね!
今日生まれしカップルは2……いや、3、組っスか?
つかさ先輩と高良先輩も、もじもじと意識し合ってるようっス。
…神よ!私は今、これまでない程に感動しているっス……!
見よ同士達!世界はこんなにも美しいっス!
素敵だ…… やはり百合は、素晴らしい……
「じゃあ、ラストゲームの始まりだね!さあ、ひよりん!」
あ、そういえば割り箸係になってたっス。回収回収っと。
全ての割り箸が回収され、再び引かれたっス。
私の手に残るのは、……まあいいっス。この際何番でも。
今日はもう満足っスから……!
「オゥ、ワタシ王様デス!」
そう言って割り箸を高く掲げるのはパティ。
「最後にふさわしいの頼むよ、パティ?」
「モチロンわかってマス!そうデスね……」
ふふふふふ……いや、それにしても今日は本当にいい経験をしたっスねえ……
私はまさに奇跡の体現者になったっス!
とりあえずきっかけを作ってくれたパティには感謝の極み。
あとで菓子折り……いや、秘蔵の同人誌でも持っていかねばっス!!
考えている間に、命令が決まったようっス。
「イエス、決まりマシタ!……このパトリシア=マーフィンが命じマス!」
パティはそう言うと、何故かちらっと私に微笑んで、
「ラッキーセブンの7番の人に、全員がキスするデス!」
そう言ったっス。
……7番?誰っスか?
全員からキスされるなんて、本当にラッキーな人っスねー!うらやましいっ!
……ってあれ?誰も手を上げない?
おかしいな、どうしちゃったのかな……
「……ハッ!?」
…………ま、まさか…………!?
い、いや、そんなはずは無いっス!
うらやましいとは言ったものの、私はただの傍観者。路傍のペンペン草。
単なる一介の同人女に過ぎない私が、そんなラブコメ主人公みたいな目には……!
この番号を見てしまった時、私は、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
死ぬ、気がするっス!
まさか、まさかァーーーーーー!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ハァー、ハァーーー……!」
……き、急に息苦しくなってきた……
徐々に、奇妙な擬音も聞えてくるっス……!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ハァ、ハァ、ハァーーーー……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
私がゆっくりと手を開くと、割り箸の先には、
「な、7番ッ…………!」
そう、7、の数字がしっかりと刻まれていたっス!
な、ななななななななななななな……なんですとーーーーーーーーーーーー!?
「オゥ、ヒヨリデスカ!ユーアーラッキーガール!」
どこかわざとらしくパティが叫ぶのが聞こえたっス……
「違うっス、これは、これはきっと何かの間違いっス!」
でもそんな私の言い分を聞いているのかいないのか、
「パティさん、もちろん唇じゃないわよね?」
「そうデスネ、ドコでもOKデス。…デモみんな別々の場所に、デス!」
「つまりひよりんは体中キスされるわけだ!さすが分かってるねパティ!」
ちょ、先輩方!パティ!勝手に話を進めないでっス!
「そういう事でしたら……」
「そだね。どこでもいいんだもんね」
高良先輩につかさ先輩まで!?
で、でも小早川さんと岩崎さんなら!恥ずかしがり屋のこの2人なら!
「田村さんに、キスかあ……」
「………………まあ最後、だし……」
あれ?何で2人とも乗り気なの!?
まさかさっきまでのゲームで羞恥心が薄れているんスか!?確かにそれがこのゲームの面白さっスけど!
「受身になると弱いな〜ひよりん!せっかくだし、冒険でしょでしょ!」
そ、そんな事言われても……
「王様の命令にはゼッタイジュンシュの力が込められていて、その命令にハ全力デ従わなくてはならナイのデス…ソウ、全力デ!
命令から逃げるナンテ、王様ゲームデハありまセン!庶民のゲームデス!」
パチパチパチ、と周りから賞賛の拍手が。
でも、ええええええええええええええええ!?
何スかその妙に説得力のあるフレーズ!?本当に外国人っスか!?
「確かにそうよね。私もその命令で変な目にあったんだし?」
「か、かがみ先輩……そりゃないっス!」
ていうか根に持ってたんスね……
「そりゃそうでしょ……そのせいであんな…………お、思い出させないでよっ!」
バシッ!って音をたて、先輩の平手が私の背中にヒット!そ、そんな理不尽な!
ていうか普段とテンション違いません!?
「ああもうじれったいなあ!
かがみん!つかさ!みゆきさん!」
そんないつまでたっても腹の決まらない私に業を煮やしたのか、泉先輩が叫んだっス!
「さあ、始まるザマスよ!」
すると条件反射のように、
「いくでガンス」
「フンガー!」
「…まともに始めなさいよ!」
何故か張り切った様子で(約一名はしぶしぶと)先輩方が立ち上がったっス!
ていうか皆さんキャラ違いません?…激しく今更っスけど…
でも、でも先輩方だけなら……
この私の紙のような装甲でも、何とかいける……
しかし、そんな私の考えは、
「デハ、私たちも行きまショウ!ユタカ!ミナミ!」
「は〜い、パティちゃん」
「……わかった」
1年生3人の登場で、完全に崩れ去ったっス。
ノオオオオオオオオオオオオオオオウ!!
「……………………」
じりじりと近づいてくるみんな。それに合わせて後ずさる私。
「ひ、ひぃぃ……」
だ、駄目っス!あの悪の手先ならぬ、萌えの手先に捕まっては……
さらに近寄ってくるみんな。逃げる私。
じりじり……じりじり……じりじり……じりじり……どぅん。どぅんどぅんどぅんどぅんどぅんどぅん。
どぅん…って、もしかして行き止まりの効果音っスか今の!?
「さあ、ひよりん。覚悟はいいかな?…私たちは出来てる」
見ると確かに、(数名除いて)みなさん目が怖いっス!
「か、勘弁してくださいっス…!」
やっとのことで私の喉からでたのは、そんなヘタレ極まりない、ゆえに感情がこもりまくった言葉。
しかしそんな私の必死の懇願も空しく、
「かかれぇ〜〜〜〜!」
泉先輩のその一言で、みんなが一斉に私に飛び掛ってくるっス。
私には、その光景がスローモーション再生されているように感じたっス。
「ひよりん覚悟!」
首筋に吸い付くようにキスしてくる泉先輩。
「……ん」
触れてるのか触れてないのか、って位に、軽く右手の指先にキスするかがみ先輩。
「いくよ〜」
「失礼します」
両耳に、どちらかというと咥える感じでキスするつかさ先輩と高良先輩。
「フフフ」
余裕たっぷりに、おでこにキスするパティ。
「た、田村さん…」
「………………」
恥ずかしそうに、片方ずつのほっぺにキスする小早川さんと岩崎さん。
私、可愛いおにゃのこ達に囲まれて、抱きつかれて、キスまでされちゃってるっス……
あったかくて、やわらかくて、いいにおい……
私は自分の人生の中で、まさに絶頂といえるだろう幸福を自覚したっス。
パトラッシュ、ぼくは、ぼかぁもう…………!
プッツンと、私の中で何かが切れた音がしたっス。
「び……」
「ヒヨリ?どうしまシタ?」
「びゃあ゛あ゛ぁ゛゛ぁ百合ぃ゛ぃぃぃ゛!!」
我ながら意味不明なことを喚きながら全力でのけぞる。
「ひよりちゃん、うしろうしろー!」!
何のことスかつかさ先輩……って思う前に、
ゴンッ!っと頭に鈍い衝撃。
そういえば、後ろはどぅん……じゃなくて、か、かべ……
「田村さん!?田村さん!?」
ああ、めのまえが、まっしろになっていくっす……
「ひ、ひよりん、鼻血出てる!衛生兵―!じゃなくて保健委員―!」
これが『萌死』……?
「……ていうか白目剥いてない!?」
わるくない、むしろさいこうの、きぶんっす……
み んな 、あ りが と
「ヒ、ヒヨリーーーー!!」
薄れ行く意識の中、私はその金髪の少女の心配そうな顔を、今まで見たこともないぐらい真剣な顔を見たっス。
田村ひより―――萌えを全身にくらってリタイア。
そんなフレーズが、頭をよぎったっス……
【完】
332 :
11-618:2007/09/17(月) 22:01:21 ID:4Jmh64X5
きっと好きなものに囲まれて死ぬのはこんな感じだと思う。
実際想像してみると絵的にヤバいんだぜ。ひよりん合掌。
というわけで一応、最終回でした。なぜ一応が付くかというと例の金髪のあの娘のエピソードが残ってるからっス。
書いたはいいもののあまりにコレとは方向性が違うんで、
頃合を見計らって投下することにしました。
まあとりあえず、ここまで書けてよかった…
こんなノリだけの作品に感想をくれた皆さん、
挿絵を書いてくださった職人さん、それから読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
これは…
マスオ…?
とにかく笑ったww
GJ!
面白かったw
リアルタイムGJ!
>>332 久々のリアルタイムGJ!
あなたは本当にジョジョが好きですねwww
いろいろなネタがちりばめられてて毎回楽しみながら読んでました。
例の金髪のあの娘のエピソードも楽しみにしてますぜwww
GJです
受けに回ると弱いひよりんがええ……
この百合はたまらねぇ
>>332 百合ぃ゛ぃぃぃ゛!!
うん、GJ。さらにGL。
そしてさりげなくパティにフラグが立っているって言うことは……!
全力かつ全裸で続きをお待ちします。
俺が見た最終回は、こなたがア・バオア・クーからコアファイターで
脱出するラストシーンだったが?
>>332 GJ!
よし、ひよりん、その立場ちょっと代わってくれ
―――あれ?周囲から殺気が……
>>317 ゆーちゃんが見たもの予想?
↓ ↓ ↓
「は……ダメ……」
「……っふ、また私の勝ちだね、かがみん」
「く〜、悔しいっ! あともうちょっとで勝てると思ったのになぁ……」
「これで通算私の56勝1敗5引き分けだね」
「……それで、今日は何を命令するつもりなのよ?」
「う〜ん、それなんだよね問題は……。 じゃあ定番だけど、語尾に『にゃ〜』って付けるとか?」
「それは1回目と28回目でやったわよ? 本当にそれでいいの?」
「え……じゃあ、語尾に『ぴょん』とか」
「それは16回目にやった」
「……ハルヒの物真似、とか」
「それは23回目! もう、人が恥ずかしい思いしてやったんだからしっかり覚えてなさいよね!」
「……あのさ、かがみ」
「何?」
「普通そんなに覚えていられないと思うのですが……そこんとこどうでしょう、かがみさ〜ん」
「えっ! そ、そう? そうかな? は、はははは……」
本当は段々と命令されることにハマって来ているかがみん萌え〜。
>>332 >>317へのコメント打ってたらリアルタイム見逃したorz
とりあえずGJした!
>>332 ムチャしやがって……(AA略)
てか
>どぅんどぅんどぅんどぅんどぅんどぅん。
何かと思ったらドラクエかよw
我々が全力で萌えればきっと死んだひよりの魂も浮かばれることだろう
>>332 ギャグでは一番好きだったから終わるのが残念だぜ
343 :
11-618:2007/09/17(月) 22:54:25 ID:4Jmh64X5
見直してたら間違いに気付いた。
×パトリシア=マーフィン
○パトリシア=マーティン でした。
はいここテストに出まーす。
…正直スマンかったorz
金玉ふぃんふぃんフィンランド
やあマーフィン!
私の計算通りなら、君は電波を受信した直後にこれを受け取るはずデス
心配していると思いまスが、BLは健在デス
陵桜に来て1年、ニホンで萌えを学んで過ごしていまース
CPの違いにより、脳内のTime Circuitに過度の負担がかかり、
乱れた理性の働きで、ワタシは乙女Roadへ飛ばされたのデース!!
改変している途中で気づいたんですが、
これマーフィンじゃなくてマーティー……(´・ω・`)
マーフィンったらアレだよ、紅茶と一緒に頂く洋菓子。
つまり、パティは甘々な砂糖菓子展開で
紅茶の如くエレガントに頂かれてしまう運命。
それはマフィンだ
波に乗るやつ
それはサーフィンだ
>>347 ツッコミのレス全てがかがみんボイスで再生される。
>>346-347 「そうそう、マーフィンって言ったらあれだよね
紅茶と一緒に食べる洋菓子の事だよね」
「こなた何か勘違いしてない…?」
「え?マーフィンって洋菓子の事じゃなかったっけ」
「それはマフィンだよ、こなちゃん」
>>348-349 「マーフィンって海で波に乗っていく奴だよね
かっこいいよねあれ」
「つかさ、それ、サーフィンの事よ」
352 :
sage:2007/09/17(月) 23:46:28 ID:vUxbZaLq
ドクター・ドリトルとかシュレックのひと
353 :
sage:2007/09/17(月) 23:47:23 ID:vUxbZaLq
ドクター・ドリトルとかシュレックのひと
それある意味間違ってないからツッコミにくいなぁw
355 :
sage:2007/09/17(月) 23:51:02 ID:vUxbZaLq
ドクター・ドリトルとかシュレックのひと
「マーフィンって言ったらあの人だよね
ドクター・ドリトルやってた人だっけ?」
「それはマーフィーよ…」
「パティのファミリーネームってなんだかおいしそうじゃない?」
「どのへんがオイシソウなんデスカ?コナタ」
「ん〜とね、紅茶に合う洋菓子と同じ名前だし」
「こなちゃん、それってマフィンじゃないの?」
「あれ?」
「もーこなちゃんったら♪マーフィンって、ボードに乗って波乗りするやつだよね」
「つかさ、それサーフィンだから」
「あれ?」
「サーフィンと言うのはですね、もともと古代ポリn(ry」
「マーフィンってあれでしょ?ドクタードリトルとか」
「かがみ、それはマーフィーだと思うよ」
「え?いや、その……冗談よ冗談」
「♪(ニマニマ」
「くっ、馬鹿にして」
「結局マーフィンってなんなのかなぁ」
「ただマーティンを間違っただけではないのでしょうか」
「あ、みゆきさん戻ってきたんだ」
暫く見てなかったら・・・ 今日は寝れるかな・・・・・
上手くまとめられた・・・!
くやしいっ!ビクビクッ…
>>332 GJ
そして、ナイスジョジョ&ナイス百合。
しかし、思わず、グリルパルツァーを思い出したのは俺だけでいい。
額へのキスは友情、頬へのキスは厚意、首へのキスは欲望、だっけ。
指と耳はなかったけれど、今回の場合は狂気の沙汰というわけでもないか。
>>360 ちょうど別スレでメモしといたものがあったので甜菜
手なら尊敬 額なら友情 頬なら厚意 唇なら愛情
瞼なら憧れ 掌なら懇願 腕と首は欲望
それ以外は、狂気の沙汰
最終回オワタらやっぱ勢い落ちたNE!
>>361 つかさとみゆきは狂気かぁ…
黒つかさと黒みゆきというわけだねっ。
わーい 良作投下の嵐だー、とか思ってのんびりしてたら
>>279の挿絵を見逃したorz
だれか最upしてもらえませんか……
1日で3作品ですか……
久しぶりに静かな1日でしたね。
変わりに住民のレスが大変なことになってますけど……
つっても気合い入ったやつは一日で仕上がるようなもんじゃないしな
最終回までに投下しようとみんながんばってたのではなかろうか
レイプモノ書いてみました。
至急とはいきませんでしたが…
5レスほど拝借。
初めてなので、微妙。
中途半端に痛いです、ご注意を。
かが×こなです。
信頼していた者に裏切られたことがあるだろうか?
「絶望の淵に落とされる」「絶望の海に沈む」「絶望のドン底に突き落とされる」−−
どんな言葉を尽くしても足りない。
これはそんな絶望を経験した少女の物語。
泉こなたは走っていた。
「あ〜もぅ。これじゃ、アニメに間に合わないよ〜。」
時間は日がトップリと暮れた頃。
部活もしていない彼女が、何故こんな時間に下校しているのかと言うと……
「黒井先生〜。間に合わなかったら恨むよ。」
…補習だった。完全な自業自得の逆恨み。高三にもなってふらふらされては、担任も本気になるというものだ。
そんな彼女を待ち受ける影があるとは、彼女が知る由もない。
「あぁも〜。なんで携帯持ち歩いてなかったかなぁ……」
今更悔やんでも仕方が無いことをぼやきながら、こなたは走り続ける。
こなたは人通りの少ない道に入ると、疲れたのか、足を緩める。
「はぁっ…ハアハア…っ……そういえば…駅前に、公衆電話あった気が……。」
…徒労に気付いただけらしい。
「無くても……お父さんが気付くだろうし。」
彼女の頭の中には今、アニメのことしか無いようだ。
そんな彼女にゆっくりと近付く影。影はこなたの至近距離まで近付くと……手に持った棒で彼女の後頭部を殴った。
「ぐっ……!」
鈍い声と音を残してこなたは地面に倒れ伏した。
影がこなたに近付き、側にしゃがみ込む。
「まだ、生きてる…。そうだ…。」
影は物陰に棒を捨て、鞄からタオルを取り出すとこなたに目隠しをした。
そして、こなたを背負うと人通りの少ない方へと歩いて行った。
「ひぐぅっ……」
こなたは下半身からの痛みにより目を覚ました。しかし、目隠しの所為で周りの様子は伺えない。
「え?…っ……何?…痛っ……誰?」
下半身と頭のの痛みに呻きながら、疑問を投げ掛けるこなた。しかし、答える者はいない。
「ひぐぅっ……うっ…あっ……」
代わりに突き上げが激しくなる。周りがそういうことをする雰囲気になった公園のベンチで、こなたは背面座位で貫かれていた。
「…うっ……あっ…痛っ、やめっ……」
貫いている者はあの影だった。下からの突き上げをそのままに、腰を掴んでいた手で制服の中をまさぐる。
「……んっ…あっ、んっ……やぁ、痛っ…」
まさぐっていた手がこなたの薄い胸の頂点を探り当てる。その手は探り当てた頂点を少し刺激すると、強く摘み上げた。
影は快感よりも痛みを与えようとするように、引っ掻き、摘み上げ、突き上げ続ける。
こなたの貫かれた部分からは鮮血、破瓜の証が流れている。
「…んっ……っ…やぁっ…」
テクニックも何もない激しいだけの突き上げだったが、こなたの声には甘い色が混じり始めていた。
股間の鮮血にも愛液が混ざり始めている。
女の本能か、はたまた、肉体の防衛反応か。
−−ずりゅっ、ずりゅっ
水音が聞こえるような動きを続ける。
影の左手が胸から下りていき、こなたの股間、結合部をまさぐる。
「はぁぁっ……あっあっ…」
まさぐっていた手がこなたの陰核にたどり着き、愛液で濡れた指で刺激を与える。
本当は摘み上げようとしたのだが、愛液で滑り良い感じの刺激になったのだ。
そのまま、三点に刺激を与え続ける。
「あっあっあっ…」
影は今度こそこなたの陰核を摘み上げた。同時に右手で乳首を摘み上げる。
「あああぁぁぁぁ……」
その刺激でこなたは体を反らせ、小さくイってしまった。
影はこなたの腰を両手で掴み直すと、ピストンの力を利用してこなたを持ち上げながら激しく突いた。
突きの激しさに、こなたの目隠しをしていたタオルがズレた。それに気付いたこなたが影の正体を見ようと振り返る。
「……あっ…え?…か、がみっ…?」
影の正体は、こなたの親友で恋人のかがみだった。かがみは何も言わず更に激しく下から突き続ける。
「あっあっ…かっ、んっ…が、あっ…みっ……?」
かがみはもう一度こなたの陰核を摘み上げた。それでこなたはイってしまう。
「あっあっ…いや…、あっ、ああああぁぁぁぁぁ……」
それと同時にこなたの膣は締め付けられるが、中のモノが精液を吐き出すことはない。
それもそのはずで、挿入されていたモノは張型、所謂ディルドーだった。
「なんで……かがみが…?」
朦朧とする意識の中、こなたは聞いた。
「あんたが悪いのよっ…!あんたが…!あんたなんか、死んじゃえば良いのよっ…!」
それは悲痛な叫びだった。かがみは行為の間中、涙を流し続けていた。そして、今も。
かがみは続けた。
「…こなたは、私のこと好き?」
「……もちろん。」
「嘘だっ!!!私、聞いたんだからっ!あんたが、クラスの男子とかつかさにも『好き』とか『愛してる』とか『付き合って…』とか……」
かがみは傷ついていた。信頼していたものに嘘を吐かれて。本当は自分は愛されていないと知って。
「ちょ、ちょっと待ってよ。何、それ?」
「まだ、とぼけるの?つかさにはこの前にあんたがうちに来たとき!クラスの男子にはたった昨日!」
「…かがみ?勘違いしてるようだから言うけど…。」
段々と意識が戻ってきたこなたは、ゆっくりと告げていく。
「確かにつかさからは告白されたけど…、やっぱりかがみが好きだからって断ったし。
あの男子が好きだって言ってたのは、かがみだよ?」
「んっ…へ?」
「あの人ね、かがみが好きなんだって。でも、私はかがみを愛してるし、かがみと付き合ってるんだって言って追っ払っちゃった。」
「え、え?ええぇ?」
「多分、ちょっとタイミングが悪かったんだね。」
ニャハハと笑うこなたをかがみは抱きしめ、やはり泣きながら言った。
「…ごめん、こなた。痛かったよね、怖かったよね。」
「……正直言うとね、かがみだって分かったときが一番怖くて、でも、一番安心した。」
「こなた…。」
「かがみ…。」
二人は抱き合ったまま見つめあった。先に口を開いたのはこなた。
「でさ…そろそろ抜いてほしいんだけど。」
「え?」
ふとかがみが目を遣ると、ディルドーがこなたに深々と刺さったままになっていた。
「ご…ごめん。」
かがみは急いで、しかし、ゆっくりこなたを持ち上げてディルドーを抜いていく。
「んっ…」
ぬちゃっという音がして抜け、ソレが姿を現す。
かがみはこなたをベンチに座らせると、ディルドーを外す。
「本当にごめん。私の早とちりの所為で…。」
「もぅ良いって。大好きなかがみに初めてをあげれたんだから。」
「こなた…。」
こなたに抱き着くかがみ。
「かがみ…。」
そのかがみの頭を撫でるこなた。
雨降って地固まるとはこういう事をいうのだろう。
二人はこれからも色々な事件に出くわす。
しかし、それはまた別のお話。
「でも、かがみ?何であんなもの持ってたの?」
「あ、あれはこなたの部屋から…。あんたこそ、なんであんな…?」
「そ、それは…」
そんな会話を残して二人は街に消えた。
4つで済みました。
お目汚し、スレ汚し失礼しました。
それでは、失礼致します。
>>373 リアルタイムGJ!
これで初めてとは恐れ入る…
攻守逆バージョンも是非見てみたいwww
GJ
俺も攻守逆バージョン見てみたい
>>374 まさかかがみの勘違いだったとは・・
レイプものなのに鬱展開からの急変に感動した、GJ!
あと保管のことも考えてタイトルはつけたほうがいいかと・・・・
ふぅ精神的ダメージ受けると思ったが嬉しい誤算だった
レイプものでもレイプで終わらない、それがらき☆すたクオリティ!
王様ゲームで萌え死にしたひよりんもGOODディースネィ!
急に思い立ってMAD作ってたもんで、CGは下塗りどまりだわSSはあらすじレベルだわで散々ですたorz。時間がほしい……
明日から仕事ですが、なんとか時間作って本スレへ復帰します。
ちょw音痴なくせに得意げに歌うあの豚人間誰?
すげーイヤなおわりかたなんすけど…
382 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 02:06:22 ID:vRzqNzUO
ぁーわかるわかるしるいしだったっけ
あの終わり方はないよねー
>>374です
えと題名は「こころあめ」ということに。
攻守逆ですか…。何とかやってみます。
384 :
14-205:2007/09/18(火) 02:22:41 ID:LbxgTurO
多くの地域じゃ最終回。でもそんなの関係ねえ! うちの地域じゃまだ23話すら(ry
というわけで。相当前に中途半端に投下してしまった分の続きを。
タイトル:こなたの企み(保管時の暫定タイトルをそのまま採用します)。 4レス。
こな×かがエロあり。……言っておくけど、376氏の要望に答えたんじゃないんだからね!
でもその前に、ここまで(といっても1レス分)のあらすじ。
昼休み。こなたはかがみに、帰りに家に行っていいかと尋ねる。別にそれ自体は珍しいことではない。
だが、その日は、ちょうど台風が近づいてきていた。さらに、こなたの発言にも不審な点が。
こなたは何を企んでいるのか。不審がりながらもかがみは、こなたに家に来る許可を与える。
というわけで、本編は次から。
今日の授業が全て終わり、放課後。こなたは、すぐにかがみのいるC組の教室に駆け込んだ。
「はやっ!もう来たのかよ。」
「まあまあ。でも急がないと、台風は待ってはくれないのだよ」
「ん?柊、どっか行くのか?」
かがみが答える前に、こなたが割って入る。
「いやー、これからかがみとの愛を育みにだね―――」
「な、なんと!ひ、柊とちびっこって、そういう関係だったのか…」
「ち、違うわよ!」
まだショックで固まっているみさおを見捨て、かがみはこなたを引っ張って教室を出た。
「こなた!あんた、あんな変なこと言っちゃって、誤解されたらどうするのよ!」
顔を赤くするかがみに対し、こなたは大して動じる様子はない。
「もう手遅れなんじゃない?かがみもほとんど説明もせず飛び出しちゃったし。そりゃ変に思われるって」
その言葉を聞いてかがみが表情を変えるのを見て、こなたは楽しんでいるようにさえ見える。
「でもまー大丈夫でしょ」
「大丈夫じゃないって」
「なに かがみ? みさきちにあらぬ誤解を与えたかもしれない?それは無理に嘘だと思い込むからだよ
逆に考えるんだ あの発言こそが真実だったと 考えるんだ」
妙に自信たっぷりなこなたの発言は、数秒後にかがみに効いてきた。
「で、結局一緒にうちまで来るのね?」
駅へと向かうバスの中、かがみがこなたに確認を取る。
「うん、午後の授業でほんとに課題出されちゃったしね」
朝に比べたら風は強くなってきているが、今のところ雨はほとんど降っていない。まあしばらくなら
大丈夫だろう、ということで、かがみはこなたに、家に来ることを許した。
「ちゃんと家に連絡しときなさいよ?おじさんとか心配するだろうし」
「わかってるって。でもその辺ちゃんと心配してくれるあたり、さすがはかがみ」
「そ、それぐらい気にかけるのは、当然でしょ」
「ただいま」
「こんにちはー」
「おかえりなさい。あとこなたちゃん、いらっしゃい」
かがみ、つかさとこなたが柊家に到着すると、みきが迎え入れた。かがみが連絡を入れてあったので、
こなたが来ることは知っていたから、特に慌てる様子はない。
「さ、上がって。さっさと課題済ませないと」
「はいはい、おじゃましますよ」
「こなた、そんなにくつろいでる場合じゃないでしょ」
「えー?ちょっとくらい休憩しようよ。学校から帰ってすぐ勉強なんて疲れるじゃん」
「おいおい……。そんなこと言っていたら、帰るのがどんどん遅くなるぞー?」
「大丈夫だって。晩ごはんはこっちで食べてくってお父さんには言ってあるし」
「そう……って、なんでそんなつもりでいるのよ!というか、そういうことは先に言いなさいよ!」
こなたはさらっと言うけど、こっちはそうもいかない。急いでお母さんの所に行き、そのことを伝えた。
でもお母さんは、この急な申し出を案外平然と、受け入れてくれた。この余裕はいったいどこから来る
んだろう。まあでも、自分の親がこんな性格でほんとによかった。
めでたく柊家(うち)で夕食にありつけることになったこなたは、うれしそうにバンザイをした。でも
もし、ここで夕食の申し出を断られていたら、どうするつもりだったのだろう。こなたのことだし、無理
にでも居座っただろうか。
「ところで、こなたちゃんは帰らなくても大丈夫なのかい?」
家族みんなにこなたを加えて夕食を食べた後、課題がひと段落着いたので休憩と称して3人でテレビを
見ていると、お父さんが声をかけてきた。
言われて思い出したように時計を見ると、もう夜の8時を大きく過ぎている。いや、今見ている番組が
8時から始まる番組なのだから、分かってはいるのだけれど。
せっかくだから、せめてこの番組が終わるぐらいまでは一緒に……くらいは言っても大丈夫なのかも
しれないけど、そういうわけにもいかないだろう。明日は平日。(臨時休校とかになる可能性もあるけど)
それに、いくらこなたでも、今日は泊まる、とまでは流石に言ってないだろう。台風は近づいてきてる
わけだし、実際さっきから急に雨が強くなってきた。帰すなら早めに帰さないと。
「そうよ、こなた。電車止まらないうちに、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
「ふーむ……、そうだね。じゃ、荷物をかがみの部屋に置いてるから、取ってこようかな」
そういうと、こなたは居間を出て行った。
「こなちゃん、遅いね」
あれから5分以上経った。たしかに、ただ荷物を取りに行ったにしては遅すぎる。何してるんだろう。
なにか変なこととかされても困るし、私は、こなたがいるはずの私の部屋に行ってみた。
「こなたー?何してんのよ」そう言って部屋のドアを開けた私は、一瞬我が目を疑った。こなたが、私の
ベッドに勝手に寝ていたのだ。しかも、寝息たててるし、ほっぺたつっついてみても起きないし。それに
しても、こなたの寝顔、けっこうかわいい……、って、そんな場合じゃないから。
しょうがない。あの手、使っちゃおうかな。こんな時だし、…いいよね?
私は、こなたが占領しているベッドにそっと上がって、そして布団にもぐりこんだ。
……一応言っとくけど、下心があってこんなことしてるとかじゃないんだからね?前に、裏ワザを紹介
する番組で、どうしても起きない人を起こす方法、っていうのでこういう方法が紹介されてたのを覚えて
たから、実践しているだけなんだからね?
で、この状態でこなたの名を呼ぶ。……なんか、自分がものすごく緊張してるのが、声から分かるわ。
でも効果は抜群だったみたい。こなたはすぐ起きた。
「こなた、あんた、なに勝手に人のベッドで寝てんのよ。起きなさい。――って、ちょっと!? うわ!」
かがみです。……なんか、こなたに襲われたとです。よくわからないけど、下着姿で寝ていたこなたが
起きたと思ったら突然私の上に乗っかってきて、私の腕を掴んで、動けないようにしてきてるとです。
「……こ、こなた?なにしてんのよ、やめれって」
「ベッドに潜りこんできて、寝ている私を襲おうとしたかがみに言われてもねぇ」
「襲おうとなんかしてないって!あんたを起こそうとしただけよ!」
「じゃあなんで私は下着姿になってるのかなー?」
「それは自分で脱いだんだろうが!」
「こうされた以上、かがみにはおしおきを受けてもらうしかないね。速攻魔法発動!」
「ちょっ、――!んっ!」
私がつっこむより速く、こなたは顔を私の顔に近づけ、私はそこで目を閉じたんだけどその直後、
なにかが私の唇をふさいだ。さらにそこからなにかが私の口の中に入り込んできて、私の舌に……ああ、
きっとこれは舌だ。……えっ、と、いうことはぁあっ!? これって、こなたの―――!!
あと、さっきから私の上に乗っかっているものが少し重みを増して、さらに擦りついてくるんですけど!
なんか、これ、胸とか地味に刺激されるんですけどっ!……もしかして、それを狙ってる!?
この間、私は自分の身体に異変が起こってきていることに気付かざるを得なかった。からだがあつい。
気温とかとは別の原因で、火照っている。「こんなとき」の対処法ぐらいは、私も知ってるけど……。
私の唇をふさいでいたものが、ようやく離れた。目を開けると、すぐ先にこなたの顔があった。
「おー、だいぶ効いてきたね。かがみの顔真っ赤」
「ば、ばか!あんたがいきなりあんなことするからでしょ!せ、責任取りなさいよ!」
次の瞬間、こなたの顔が極限までにやける。……あ、あれ?今わたし、もしかして、やばいこと言った?
「おーう、かがみがついに『こっち』に目覚めたというのか!いいよー、かがみ様のお望みどおり責任を
取らせてもらいますとも、えーもうそりゃ朝までかけて!」
「あ、朝までって、あんた帰らなくていいの!?」なんかつっこむ所を間違えた気がするけど!
「なに言ってんのかがみー、そのためにわざわざ台風が来てる今日を選んだんだよ。夜になってどんどん
天気が悪くなって、これじゃ帰れなーい、今日泊めてー、ってことになってさ。そこでイベント発動だよ!」
「最初から泊まるつもりだったのかよ!」
「そゆこと。ま、肝心のイベントはかがみが起こしてくれたから、手間が省かれたんだけどね。じゃ、
かがみの熱が冷めないうちに続きいきますか!さ、かがみもそろそろ脱いで」
「なんで私が脱がないといけないのよ!」
「なるほど、かがみはそんなに私に脱がせて欲しいのか」
「ち、違うってーっ!」
しばらく後。 ―――結局、脱がされてしまった。……というと語弊があるか。上は捲り上げられ、
下はきわどいところまで下ろされた。
「それにしてもかがみ、普段のイメージと違って意外と抵抗弱いよね。女の子がそんなんでいいの?」
……そりゃ、私だって、もし見ず知らずの男にいきなりこんなことされたりしたらその時はもっと全力で
抵抗するわよ!ただ、その……ほら、服とか破れたり、こなたにケガさせても困るし、ね?
「ま、いっか。それじゃ続きを―――」
そのとき、どこからか不可解な(!?)歌が聞こえてきた。これって、こなたの携帯の着メロだっけ。
でもこなたは電話に出ようとしない。一旦は携帯のほうを見たが、またこちらに向き直った。
「電話でしょ、出なくていいの?」
「お父さんからみたいだし、放置しとくことにする。今はかがみ攻略のほうが優先」
どうやら、こなたの着メロを歌う、みんなの夢を運ぶ未来からやってきたおしゃまなキューピッドも、
こなたのおじさんの言葉までは運べなかったようだ。なんか、私のほうが悪い気がしてくる。
「かがみぃ、乳首、勃ってるよ。感じちゃってるの?」
「……」
私は何も答えず、ただ抵抗もせずに、こなたに弄ばれている。え、なんで答えないかって?
そりゃ、……こんな、きっと声が上擦っているに違いない状態で、本当のことを言えるはずが―――
「何も答えないってことは、まだ足りないのかな?ならつかさ呼んで、二人で責めてあげるけど」
「や、やめ…!か、感じてる、ちゃんと感じてますっ!感じてますからっ!」
……負けた。でも、つかさにこんな所を見られるわけにはいかないし。それを考えると、こなたに恥を
さらす方がいい。……というか、私。こなたに弱み握られすぎだろ。
「おぉーう、かがみいい声出してるねぇー。さすが、ここをこんなに濡らしちゃってるだけのことはある」
「んっ…、ぁっ……!」
本当はこんな声、出したくはなかったはずなのに。でも、下着の中に手を入れられ、しっかりと濡れて
いるアソコの辺りを撫でられて我慢できるほど、私は強く出来てはいない。こなたが指を止めてからも、
私が自分で腰を動かして、まだそこにあるこなたの指で刺激を得ようとしたほどなのだ。
いつの間にか私は、自分から、こなたに「やられ」たがっていた。刺激されてしまった本能を前に、
理性はあってないようなものとなってしまっていた。
私はそのまま、絶頂に達する、はずだった。
「あれ、つかさ。どうしたの?」
えっ……?
「あ、あのね、さっき、こなちゃんのおじさんから電話があって、これから迎えに行くから、って」
この声は、確実につかさ。まだこの目では確認していないけど、すぐ近くにいるんだろう。声から判断
すると、かなり近くにいるはず。ていうか、つかさ!入ってくるときはせめて合図くらいしなさいよ!
「はーい。じゃそろそろ帰る準備しますかね。……お父さんもうちょっと空気読めっての」全くだ。
「ところでこなちゃん、そんな格好で何してんの?あとお姉ちゃんも」
はぅ。―――こなた、後は頼む。
「つかさ。……そんなに知りたい?後悔してもしらないよ……?」
「えっ……いや、私はただこなちゃんのお父さんからの電話の内容伝えに来ただけだから」
こなたの脅しを受けたつかさは部屋から退散したようだ。こなた恐るべし。いや、よくやった。
「しょうがない、続きはまた今度だね」
「ええっ!? で、でも、迎えが来るまでにはまだもうちょっとぐらい時間あるでしょ?こんな中途半端な
状態で終了なんて―――」
「別にかがみは無理して我慢しなくても、この場で、一人で続きをしちゃってもいいんだよ〜?」
こなたのその悪魔の囁きに、私はほとんど抵抗なしに耳を貸しそうになってしまっていた。気がつくと、
私の手は本能のままに、濡れたままの秘部へ―――
「はい、ストーップ」突然こなたが私の手をつかむ。なんでまた止めるのよ!
「かがみがいやらしい子だというのはよーくわかったよ。これで、次の時には確実かつ徹底的にかがみを
攻略できそうだ」
「私はエロゲーのキャラか!」
「でも私だって、誰とでもいいってわけじゃないからね。攻略はやっぱり好きなキャラを、でなきゃ。ね」
えっ……と、それって……!? やばい、私は今、猛烈に赤面しているーっ!?
「でも今すると、私まで興奮しちゃって、お父さんに気付かれちゃうからね。それは私も困るのだよ」
そう言いながらこなたは、手際よく服を着ていく。
「ま、そういうわけだからかがみ。私が帰ってからゆっくり続きをしたまえ。あ、その時はちゃんと部屋
のドア閉めたほうがいいよ。じゃないとまたつかさとかに見られちゃうし」
しばらくして、こなたのお父さんとゆたかちゃんが、こなたを迎えにきた。一応私も、みんなと一緒に
玄関まで出て見送ったけど、自分でもよく平静を装えたものだと思う。……いや、意外と周りから見たら
おかしかったのかもしれないけど。
その後、「さっきの事」に関するつかさや、それを聞きつけたまつり姉ちゃんからの質問責めからなん
とか逃げた私は、すぐさま自分の部屋に戻り、今度こそちゃんとドアを閉め、電気も消して、さっき満足
しきれなかった自分の身体を、慰めにかかった。
【fin】
389 :
14-205:2007/09/18(火) 02:34:41 ID:LbxgTurO
今度こそ以上です。
あれ、変だなぁ。これを書いてるときは確か台風9号がどうとか言ってた気がするのに、
今は何号だっけ?……やっぱり一度流れを切ると辛いものがあるな
では、お目汚し失礼しました。
>>389氏
一番槍は頂く!
超GJだぜ!攻略されるかがみが可愛くてしょうがない。萌え死ぬかと思ったぜ。
……そして、あなたも最終回の放送がまだな同胞だったんだな……。泣ける。
かがみの素直振りが良い。GJ!
完全男こなた需要ある?
あるなら執筆しますが
>>390かえして一番槍!
てなわけで
>>389氏GJ!!!
これは続きがあるのでしょうか?このまま寸止めは辛すぎるんだってウ゛ァ。
最終回はネタの宝庫だな。特にアニメ終わった後の普通の想像、いけない妄想が地獄の底から沸き上がってくる。
てなわけで語られなかった本番でも書いてみますか
>>391 完全男というのはスレ的にちょっと・・ふたなりにはできないかい?
>>393 保管庫に「泉こなたは大変なフラグを立ててしまったようです」という名前で男化は存在している。が、エロは無い。
>>389 なんてことするんだ・・・!君のせいで寝れないじゃないか。
GJ!
396 :
ぶーわ:2007/09/18(火) 03:07:18 ID:tTYkKiW2
>>389 GJ!
エロとギャグの軽快さがいいね!
え?最初に宣言すればスレ的にも問題ないんじゃないの?
俺は読みたいなー。
>>393 既にその2つの違いが分からないっすwww
399 :
14-319:2007/09/18(火) 03:48:20 ID:AFoLISTs
いまからちょっとパティ×ひよりもの行きます
2〜3レスですぐ終わります
これは微エロ?なのかな?
う〜ん…
「今度タムラさんの家に行ってもイイデスカ?」
同人のネタを捻り出しているときにパティが来た
「あ、パティ、いつでもオーケーだよ」
「ソレデハ、明後日に行キマスネ」
「うん、待ってるからねー」
パティと二人で遊ぶのは初めてだった
それまでゆたかちゃんやみなみちゃんも入れた4人で遊ぶ事がおおかったからね
とりあえず家捜しされないようにしないと…
この前の事は…思い出したくない…
…
とにかく約束の日になって
私とパティは二人きりで私の部屋にいた
「ひよりん、今度出すドウジンシのネタは思いツキマシタカ?」
「いやぁ、それが中々大変でねぇ…」
「フーン、ソウナンデスカー」
「うん、そうなのよ」
「デハ、ワタシも一緒に考えてアゲマショウ」
「おぉ、ありがとう」
「イエイエ、礼にはオヨビマセンヨ」
私たちはその後ずっと考えてたが
中々いいネタが浮かばなかった
「コナタにも相談シテミテハイカガデショウカ?」
「泉先輩かぁ…迷惑だとおもうからやめて方がいいとおもうな」
「ソウデスネ…」
「うー…どうしよっか…」
「ひよりんの家にあるドウジンの本からネタを少しカリマショウ!」
「いくらなんでもそれは…」
「ソウデスカ?」
流石外国の人…
しかしこれは偏見になってしまうのか…?
「んー…」
「デハひよりん、思いツカナイノナラ、体験シテ見るのはドウデショウカ?」
「え?体験してみるって?」
「イマココデやってみるっていうコトデス」
「ちょ、おま…」
とおもってたらパティがもう既に私の目の前にいて…
いきなりベットに押し倒されてしまった
「ン〜…ひよりんのメガネってカワイイデスネー…」
「や…やめ…」
「Oh!メガネっ娘の恥らう姿は至高デスネ!」
私は急な事でとても焦っていた…
どうすればこの状況を乗り越えられるのか…
このままやられるしか道はないのか…
今家には誰もいない…困った…
どうする…?どうするよ私…!
まさか書く側から体験する側になるとは…
と言っても書く側からすれば99%ぐらいは妄想なんスけどね…
ってなんで私はこんな冷静なんだ!?
「と、とにかくやめてくださいッスよ!」
「ンー…、ひよりんソンナコト今更行っても遅いデース
もう我慢出来なかったのデス。実はワタシは前からヒヨリのコトが…」
「んっ…」
いきなりキスをされてしまった…
「初めてのキッスはドウデスカ?」
「わ…私はそんな…リアルでの趣味はないッス!見て書くだけの趣味だけッスから!」
「ヒヨリ、服脱がしてもイイデスカ?」
もうパティは聞く耳を持っていないようだった
「だめッス!」
「ンー、拒否されるとさらに萌えマスネー…」
そんな事言いながらパティは私の服を脱がしていった
なんて強引な…
抵抗してもさらに興奮させて逆効果だろうからあまり抵抗しないようにした
「大人しくなってはダメデスヨ、ヒヨリ。
もっと抵抗をしてクダサイ」
そんな事言ってほんとに抵抗する人いるのかな…?
なんで私は服脱がされてもこんな冷静なのか…
「ヒヨリの小さな胸もカワイイデスネ。メガネっ娘にはカカセマセンヨ」
「関係あるのか…」
そしてパティは私の胸に顔を近づけて…
残念!私の冒険はここで終わ(省略されました。続きはここを押してもあるかわかりません)
…
「ひよりん、コレデドウジンシが書けマスネ。この体験をモトに作ればいいのデスカラ」
「これを書けって言うのか…そんなの無理…」
「イヤイヤ、ひよりんなら簡単にデキルハズデス」
「簡単に出来ないから言ってるんじゃないッスか…」
はい、お後がよろしいようで…
すいません、後題名忘れました
題名は「パティの暴走」でお願いします
>>403 GJ!
パティのエロはもしかして 始めてかもしれない!
405 :
ぶーわ:2007/09/18(火) 05:00:31 ID:tTYkKiW2
女房の朝は早い。
主人より早く起き、朝餉の準備をし、寝殿を片付け……。
こっちの私は変に生真面目らしく、女房の中でも早くに勝手に眼を覚まし仕事に入る。
おかげで、まだ寝たりない。
昨日の日下部の馬鹿の所為だ。
さんざん振り回したあげく、結局成果はなしときたもんだ。
収穫三つ目ね、寝不足よ。
「お姉ちゃん」
朝餉の準備も終わった頃だった。
妹が私の元にやってくる。
「どうかしたの? つかさ」
「大臣様が呼んでるよ、急な話だって」
「そう、分かった。ありがとう」
体のほうの私は何も気がついてないが、私にはピンと来た。
昨日言ってたっけ、日下部が。
正式に、手伝いを頼むって。
「おお来たか」
一家の主らしく、すでに大臣様も起きていた。
まぁこんな時間まで寝てるのは、我侭お姫様ぐらいか。
「実は、困った事になってね」
と、少し眉間にシワがよる。
「内大臣家の女房が最近人手不足らしく……今度の宴の準備に手を貸して欲しいらしくてね」
「それを私が、ですか?」
「ああ、他にも数名に頼んである。悪いが頼めるかい?」
これが日下部の言ってた頼みごと?
手が足りない、って言ってたしね。
何だ、そう難しいことでもないみたい。
ようは今とやることは一緒でしょ?
「はい、分かりました」
体の方の私も、即決。
相変わらず何と言うか、従順だ。
でもまぁ、中に居る私は分かってる。
我侭お姫様と別れるのが寂しいー、ってのがダダ漏れなのが。
はぁ……あんなチンチクリンの何処がいいんだか、皆目分からん。
「よろしく頼みますね、かがみ」
「はい、奥様」
大臣様の隣りには、彼女も居た。
かたなさん……こなたの母親だ。
ふと、頭を過ぎるのは彼女の存在。
こちらの世界の彼女は、『生きて』いる。――これは、『違う』こと。
でも性格は穏やかで、ほとんどこなたに聞いたとおり。――これは、『同じ』こと。
うーむ、保留しておこう。
こうやって知り合いを区別していくことしか、今の私には出来ない。
今のところ、推理は全然進歩なし。といったところだけどね。
「え……かがみ、居ないの!?」
「ええ、数日かそこらだけどね」
次はようやく起きてきたお姫様の朝の身支度にとりかかる。
寝癖で反り返った髪を櫛で梳かしながら、こなたについて考えてみる。
大納言家の一人娘、こなた。
性格のほうは少し『違う』。
でもこれだけ甘やかされて育てば、こう育つのも納得がいく気がする。
つまり、もし甘やかされた環境で育ったら私の世界のこなたもこうなっていたとか?
それならこなたはこなた……『同じ』?
むぅ……やはり保留。
じゃあこなたのおじさんは?
確か私の知ってるあの人はもっと、こなたを溺愛してた気がする。
でもあまりこっちでは……なんか邪険にしてる。
やっぱ高い役職だと、ストレスが溜まるとか?
小説家よりは大納言って、忙しいわよねそりゃ。
その他の感じは同じ印象だし……やっぱり『同じ』?
うーん、やっぱ保留で。
……そうやって消去していくと、どうだろう。
今のところ、やっぱり日下部が有力候補。
彼女は……いや『彼』は確実に『違う』。
でも接触してみたところ、襲われただけ……未遂で良かった。
つまりは、なにもなし。日下部も『同じ』?
あーもう、全然訳が分からんっ!
じゃあやっぱ……私の推理が間違ってるのかな、やっぱり。
それとも、もうちょっと接触してみないと分からないとか?
でも相手にすると疲れるんだよな……あいつ。
「じゃあ少しの間だけど、一人で大丈夫よね? つかさ」
「が、頑張ってみるねっ」
私の妹が鼻息を荒くする。
それはそれで……不安だ。
今日で三日目だけど、こっちでも相変わらずつかさはどんくさい。
私が見えないところでフォローしてるから何とかなってるようなもの。
宴の席だって運んでた酒をひっくり返すわ、篝火にぶつかって火事未遂になるわ。
家事とかは上手い癖に、どっか抜けてるのよね。
完璧シロ、『同じ』だわ。
「あんたも、つかさの稽古から逃げたりしたら駄目だからね」
一応こなたにも釘を刺しておく。
まぁ今まで何度も言ってきてるので、意味はないだろうけど。
「……」
ん、あれ?
何かさっきから静かじゃないか?
いつもなら私をからかう一言でも出てきていいのに。
「? どうかしたの? こなた」
「……別にぃ」
体の方の私もそれに気がつく。
どうやら……不機嫌らしい。
あれ、さっきは楽しそうにしてたんだけど。
「数日ってどれくらいなの? お姉ちゃん」
「そうねぇ、二回宴があるって言ってたから三日か四日ってところじゃない?」
詳しい話は向こうにいかないと分からないようなことを大臣様も言っていた。
それを聞いて、さらに不機嫌オーラが増す。
「あ、ほ、ほらこなちゃん。私が一緒に遊んであげるからさっ」
その元凶につかさが気がつき、慌てて気を遣う。
それにワンテンポ遅れて、私も気がつく……あと、さらに遅れて私の体のほうも。
もしかして……寂しいのか、こいつ。
「……馬鹿ね、すぐ帰って来るわよ」
口から漏れた声とは反対に、落ち込んでいるのが私にだけ分かる。
はぁ……自分の事ながら、素直じゃないな。
自分のほうが寂しがってるくせに。
「……ほんと?」
「ええ、終わったら牛車飛ばしてもらうわ」
暴れていた寝癖も丁度整え終わり、頭を撫でてやる。
「だからつかさと待ってて、ね?」
「……うん、待ってる」
ようやく納得してくれたらしく、笑顔が戻る。
にしても……甘やかしすぎだろ、こりゃ。
どうやらかなり、我侭お姫様にご執心のようで。
まぁ、体が勝手にやってる事だ。私には関係ないか。
「じゃあ、私準備があるから。よろしくねつかさ」
「うん、いってらっしゃい」
「すぐだからねっ、絶対すぐだからね!」
体が後ろ髪を引かれながら、こなたの寝室を後にする。
離れるのが嫌なら断ればいいものを、真面目ね。
まぁそしたら日下部との約束を守れなくて大変なことになるんだが……いいか、結果オーライってことで。
内大臣の邸までは、それほど時間はかからなかった。
朝にすぐ出発したので、午後にはもう到着したといったところ。
だけど問題はそこからだ。
到着するなり、私と他の女房を襲ったのは……雑用の山。
なんでも今日の晩には宴だというのに、まだ準備が終わってないらしい。
おかげ様で食事の用意から寝殿の清掃、はたまた公達の服装手入れまで……寝不足の体に鞭打って、覚えのない邸を奔走する。
しかし……いくら人手が足りないとはいえ、さすがにこれはこき使いすぎだろう。
明日は筋肉痛だぞ、確実に。
まぁともあれそんな私や他の女房の苦労の甲斐あって、宴は無事催されることになったわけ。
内大臣家の宴……と銘打ってはいるが、それほどこなたの所と違いはなかった。
でもこなたの側近で後ろに控えてるのとは違い、右にお酌し左に食事を運び……こんなのがもう一回あるのか、頑張れ私の体のほう。
それからようやく片づけまで全て終わり、用意された寝室に案内された頃には……すでに月夜の光が差していた。
はぁ……折角の自由の時間なのに、疲れて動けない。
「よぉっす、おつかれさーん」
「!」
そのままもう寝てしまおうかと思った矢先だった。
騒がしい声が、耳を劈いた。
「あ、あんた!」
この気遣いのない適当な挨拶。
決まってる……日下部だ!
牛車の中では少し見かけたが、ここの邸に来てからはまるで姿を現さなかった。
なのに今頃、何故私の寝室に現れるっ!
「な、何の用よ……」
昨日襲われた記憶が頭を過ぎり、また身構える。
「んー? 約束したじゃん、手伝って欲しい事があるって」
「だから、こうやってこの邸の手伝いに来てるじゃない」
「あー、それはほら。こっちに来る口実みたいなもんだし」
何だそりゃ! 聞いてない! 詐欺だ!
「あれ、言わなかったっけか。あははっ、ゴメンなー」
ケラケラと笑い飛ばされる。
くそぅっ、適当にもほどがあるだろっ!
「じゃあとりあえずここじゃあれだし、あやのの所行こぜー」
峰岸の所?
何、あの子も一枚噛んでるわけ?
ああ、もしかして私がこの邸に来る事になったのは峰岸の口添えか。
「結局……何させるわけよ、一体」
「まぁまぁ、話はあやのの所で」
月夜に照らされた廊下を日下部と歩く。
他の女房や雑色たちも疲れて寝ているらしく、人影はない。
はぁ……私もはやく寝たい。
「あやのー、来たぞー」
「あ、みさちゃん」
日下部が豪快に蔀戸を開く。
すると、中には峰岸が居た。
宴にも出ては居たらしいが、生憎御簾の向こう側。
なので始めてみる正装は……可憐だった、後ろに花が見えそうなくらい。
http://bbs.freedeai.com/src/up5925.jpg うちのお姫様とは可哀想なので比べないでおこう……泣けてくるから。
しかし何で正装?
ああ、日下部が来るのが分かってたのか。
……だとするとやっぱり気になるな、こいつ――日下部の正体が。
「いやー、ようやく来れたぜー。色々忙しくてさー」
と部屋に上がり、適当に腰を下ろす。
私の時もだが、よくもまぁそうズケズケと異性の寝室に踏み込めるものだ。
その辺もだが昨日といい、節操がないよな。
だからみさおなんて名前なんだきっと!
「あら、そちらが大納言家の?」
「そうそう、手伝ってくれるって言うからさー、無償で」
ケラケラと笑っている日下部。
くぅ……峰岸が居なかったら幻の左だったのに!
「ど、どうも……」
おずおずと挨拶をする。
峰岸相手だと、どうにもやりにくい。
なにせ私はただの女房で、相手は内大臣姫君。
下手すれば昨日の二の舞だ!
「でも大丈夫? 危険な仕事なのに……」
「あははー、大丈夫だってば」
またこいつは適当に笑って……って危険!?
それは始めて聞くんだけど!
「あれ、言ってなかったっけー。ゴメンゴメン」
お前そればっかじゃねーか! と首でも絞めてやりたい気分。
「み、みさちゃんもしかして……何も説明してないんじゃないの?」
「おうっ、してないぜ!」
自信満々に言いやがった!
駄目だこいつ、速くなんとかしないと!
「でも、もう出発しないと時間無くなっちゃうんだけど……」
「うんっ、じゃあ説明しながら行けばいいだろ!」
と、私の発言権もないまま話が進んでいく。
というかいくら姿は峰岸でも、内大臣姫君。
女房の私が軽々しく発言できるかいっ!
てゆーか出発? 何処かに行くわけ?
「んじゃあ、早速行ってくる!」
ってだから私に説明の一つぐらいしろよ!
「馬は外に用意させておいたから、急いでね」
「うっしゃあ、行っくぞーっ」
と、私を置いて外に行きやがった。
仕方なくそれを追いかけ、とうとう何の説明もないまま私は邸の外に。
そこには……本当に用意してあったよ、馬が。
「よっし、ほら乗れよ」
「へっ……きゃっ!」
すでに馬にまたがっている日下部の手が伸び、私の体が宙に舞う。
そのまま、日下部の前に座らされる。
日下部の体が、妙に近くに感じる。
な、何なんだこの状況は……って突っ込む前にもう馬を走らせてるし!
だから何でもかんでも急なんだっつーの!
「ちょ、ちょっと、結局何しに行くのよっ!」
「ん、あれ。言ってなかったっけ……みぎゃぁっ!」
峰岸も居ないので近距離から黄金の右を食らわせる。
もうそれは聞き飽きたっつーの!
「ちょ、ちょっとその……お忍びに」
「はぁ?」
お忍び?
つまりは……忍び込む、ってこと?
「何処に? 何しに?」
無意味に適当な邸に忍び込む馬鹿なんていない。
泥棒か、はたまた夜這いか……どっちも怪しいな。
節操ないし、後者かな?
「すぐそこの邸、すぐ見えてくっからさ」
「邸? 誰の邸よ、一体」
「……」
ここで、一度言いよどむ。
いつもは言葉が止まらない癖に、珍しい。
「と……」
「と?」
そのまま悩んだあと、一つの言葉を搾り出した。
「当今様の」
……。
覚えているだろうか。
一度、その話が出たことがある。
当今(とうぎん)様。
つまりそう……天皇様、だ。
(続)
412 :
ぶーわ:2007/09/18(火) 05:08:59 ID:tTYkKiW2
続きます。
最近は帰宅→小説→投稿→就寝の 無限ループです。
無限ループって、怖くね!?
>>412 原作を読んでいるとこなたに向かってもうちょっと甘えていいのにとか言いたくなる自分としては、
甘やかされたこなたが可愛くて仕方がありません。
可愛いなぁ、こなた。本当に可愛いなぁ。
マジでGJです。
>>412 、朝から大変に良い物を拝見させていただきました。
う〜ん、しかし続きが気になる、かがみの知る「現実」と今いる「平安?」との違いがどう鍵になるのか……そして天皇様役って、誰?
ともかく楽しみに待ってますね。
416 :
ぶーわ:2007/09/18(火) 12:45:27 ID:tTYkKiW2
417 :
14-205:2007/09/18(火) 12:58:54 ID:LbxgTurO
両氏ともGJです!
さて、
>>392氏あたりから問い合わせのあった続きについてだが…
実は俺、エロ描写書くの苦手だったり(寸止めなのはそのためでもある)なので、
…できるかどうか。
まあでも、全く構想がないわけでもないので、忘れた頃に「続き」を書くかもね。
こなたを襲うゆーちゃん
という夢を見たので、夢を元に書いたやつ投下します
でも思いっきりプラトニックなゆたか→こなた
7レス使用します
書いておいてなんだが需要はあるのかこの組み合わせは?
私が『言霊』という単語を知ったのは具合が悪く散々寝込んだ後。
寝すぎで寝れなくなって、暇つぶしに読んでいた本によってだったと思う。
言霊の正確な意味を、その時まだ幼かった私は完全には理解していない。
ただ、言葉には凄い力があるのだ、と感覚的に理解しただけだった。
そんな昔の事を思い出した。
久しぶりにちょっと実家に帰ってきて、懐かしい匂いのする自分の部屋でその本を見つけたから。
古ぼけたハードカバーの本はあの頃より成長した今の自分にも少し重く、ページを捲って見ても少なからず子供が好き好んで見るような文体ではなかった。
子供の頃これを読んだのは、少しでも難しい本を読んで早く寝ようと思ったからだった気がする。
『言霊』
その単語の説明をして黒く踊っている文字を目で追った。
自分はその単語の正確な意味を分かっていないのが分かっていたから、知りたくて読んでいた。
妙に小難しく書かれていた説明文を何度も読み直し頭の中で自分流に租借する。
完全に租借する前に、私はお姉ちゃんに呼ばれたために急いで本を閉じた。
そうだった、忘れ物がないかを確かめに来ただけだった
自分がこの部屋にきた理由を思い出し、本を持っていこうか迷ったけど全部読みきることは無いのだろうと元の場所に戻した。
車の中で待っているはずの姉の元へと駆け出す。遅くなってごめんね、それとお母さん行ってきますと叫びながら私は玄関を開けて外へ出た。
助手席に座ると「さぁ行くぞわが妹よ!」とつい最近聞いたことがあるようなセリフが横から発せられ、
危険なデジャヴュを感じた私は慌ててシートベルトへ手を伸ばした。
だけどシートベルトを締めるより早く、車に乗ると暴走すると有名らしいお姉ちゃんはアクセルをふかして急発進した。
「た、ただいま〜」
「ヤッホー! またゆたかをよろしくね! ゆたかもあんまり無理しちゃダメだよ」
帰宅早々、私は小さく、お姉ちゃんは手を横にブンブンと振りながら玄関で叫んだ。
慣れなのか、居候させてもらっていた当初はお邪魔しますと言っていたが今では普通にただいまと言うようになった。
「おかえりゆーちゃん、そしてゆい姉さんもこんちゃー」
黒いタンクトップというラフな格好をしたこなたお姉ちゃんが一本だけ飛び跳ねている髪の毛を揺らしながら玄関まで迎えにきた。
家にいるだからか、学校で見る時よりもゆったりしている感じがする。
あとおじさんに挨拶……と思ったけど出てこない。買い物かもしれない。
「ゆい姉さんはお茶でも飲んでく?」
「もっちろーん!……って、いつもなら言うけど今日は遠慮。きよたかさんと会う約束があるのっさー」
ハイテンションジェスチャーを繰り返しながら「じゃあねー」と笑顔で『☆』や『♪』を周りに振りまいて(私にはそう見えた)車に乗り込み帰っていった。
エンジン音を轟かせて車が見えなくなる。相変わらずのゆいお姉ちゃんだけど、あのテンションが少し羨ましい。
「ゆい姉さんは相変わらずだなぁ……ところでゆーちゃん何か飲む? それとも横になる?」
「え?」
「ただいまって言った声に元気なかったからね。気分悪いんじゃないかなって」
「ん、ちょっと酔っちゃって……でも、そんなに酷くないよ」
こなたお姉ちゃんは、私の体調が悪いとすぐに気づく。それも、ゆいお姉ちゃんより早く気づく。
ちゃんと見てくれてるのは嬉しいんだけど、迷惑かけてばっかりだと落ち込んでしまう。
「そかそか。それならいいけど……んじゃ飲み物でも持ってくるからリビングでのんびりしててー」
ペタペタと私よりも少しだけ大きいお姉ちゃんが台所へ向かう。
その背中が、非常に遠く思える。きっと気持ちの問題だと分かっている。
だけどその気持ちは私には見えない。声も聞こえない。
言葉にすれば、何かが変わってしまうから。
それだけの力が『言葉』にはあるから。
絶対に言うつもりはない。
翌日、お姉ちゃんは柊先輩達と遊ぶ約束をしているらしく朝の早いうちに起きていた。
いつものようにラフな格好で遊びに行こうとしているお姉ちゃんの体が妙に左右に揺れている気がして。
「お、お姉ちゃん。なんだかフラフラしてない?」
「いやぁ、ちょっと寝不足みたいで。って、そんなにフラついてる?」
「目に見えてじゃないけど……いつもより歩幅が狭いような気がして」
お姉ちゃんがビックリしてる。何で分かるの?って言われているようで。
どう答えていいか分からない。見ているから、としか言えない。
お姉ちゃんがすぐに私の具合が悪いときに気づくのと同じようなものだと思う。
「ゆーちゃんって洞察力凄いんだねー。探偵なれるよ。バーローとか言ってみて」
「バ、バーロー……?」
「うーん……やっぱ蝶ネクタイとメガネつけたほうがいいのかなぁ」
お姉ちゃんや田村さんと話しているとそういう知識が増えたから、お姉ちゃんが何のアニメの事を言っているのか分かった。
前にお姉ちゃんとちょっとしたアニメの話をしていたらおじさんが複雑そうな表情をしていた。
嬉しいような、困っているような、そんな表情。
ゆきのやつ、怒るだろうなぁって私のお母さんの名前を言っていた。
「それじゃー行ってくるね。夕飯までには帰ってくるつもりだよ」
「分かった。でも、気をつけてね」
お姉ちゃんが玄関を開けると、隙間から蒸し暑い空気が入り込んできた。
うへぇとお姉ちゃんが変な声をあげて、一回こっちへ手を振って外へと出て行く。
一瞬呼び止めそうになった。だけどそれが何でかは認めなくて、言葉を飲み込む。
今日は何をしよう。外に出る気分ではなかった。具合が悪いわけではないけど、気分が重い。胸が痛い。
幸いか、今日は遊ぶ約束をしていなかったからリビングへと行ってテレビをつけた。
そろそろニュース番組が終わる頃で、画面にはここら一帯の天気予報が流れている。
ぼんやりと眺めていて、この地域の上に表示された晴れのち雨マークに気づいた。
お姉ちゃん……傘持って行ってないよね……
窓を開けて空を見上げる。眩しいぐらいに晴れていて雨が降るとは思えなかった。
ただ……蒸し暑くて気持ち悪い。すぐに窓を閉めて畳に横になった。
怠惰な一日になりそうで、これがもしこなたお姉ちゃんだったらかがみ先輩に叱られてるんだろうなと考えた。
簡単にその光景が想像できてしまって目を閉じる。
意識が暗闇に落ちる感覚が怖くて……でも、すごく落ち着いた。
昼ご飯はカップラーメンだった。おじさんは追い込み作業? らしく食べる時間も早くすぐに部屋に戻って行った。
テレビも面白いのが無くて、出されていた課題を少しでも終わらせようと机に向かう。
分からない問題が多くて、でもおじさんにも聞けないしお姉ちゃんは居ないしで飛ばしていたら空白が多くなってしまった。
お姉ちゃんに聞いても分からないままで空白のときは多いけど……聞くって事をしないだけで落ち着かない。
どこかに似たような例題が無いかなと教科書を見ていると屋根を叩く雨音が聞こえていた。
かと思えば太陽が雲に隠れたみたいで一気に部屋の中が暗くなり始める。
時計を確かめると3時で、そろそろ雨が激しくなるんじゃないかと思ってお姉ちゃんが心配になった。
傘を届けたほうが良かったのかな。
しとしと、ぽつぽつ、ざーざーと。
だんだん雨が強くなってきて、心配になって私は玄関へ向かった。
お姉ちゃんが今何処に居るのかも分かっていないのに、傘を持って玄関を開けた。
「うぁああ! び、びっくりしたぁ。どしたのゆーちゃん、そんなに慌てて……」
「お、お姉ちゃん!?」
開けたら丁度お姉ちゃんが目の前にいて、びしょぬれだった。
走ってきたのか肩を上下させて、肌に張り付いたTシャツを手で引っ張っている。
急いでタオルを持ってくるべきだったのに、前にお姉ちゃんに見せてもらった
田村さんが描いたという本みたいな事を考えてしまった。
一回首を横に振って、お姉ちゃんを家の中に入れる。
「待ってて、タオル取ってくるね!」
「ありがとー」
小さいタオルを一枚、あとそれだけじゃ足りそうになかったから、バスタオルを一枚掴んだ。
玄関に戻ると、お姉ちゃんが長い髪をぎゅうっと握って水を落としていた。
手を、足を、水滴が垂れていく。
普段跳ねている髪の毛もしっとりと落ち着いていた。
じっと見てしまい、それでも普通にタオルを渡す。
「……はい。お姉ちゃんタオル」
バスタオルを渡して、お姉ちゃんが体を拭いている間に私は小さいタオルでお姉ちゃんの頭をがしがしと拭いた。
すぐに水分を吸い込んで冷たくなるタオル。かなり濡れているらしい。
私の方が一段高い場所に居るから、そうされているお姉ちゃんが私を見上げてお礼を言った。
「いやー、大変だったよ。体や髪は重いし、暑いんだか寒いんだか分からないし」
「柊先輩から傘借りなかったの?」
「ん。今日は家じゃなくて外にいたし……雨が降る前に別れたから」
「……どうして? 晩御飯にはまだ時間があるのに」
髪を拭いていた手を止める。
お姉ちゃんの髪が雨で肌に張り付いていて、そっと手を伸ばして肌から剥がした。
触れた表面は少し冷えていたけど、その奥が妙に熱い気がする。
「やっぱ寝不足だと調子でなくて……少し頭痛がしたんだよね」
「だ、だったら早く着替えないと!」
あの時。
お姉ちゃんが出かけるときに、やっぱり呼び止めればよかった。
何となく、体調が良くない事は気づいていたのに。
手を掴んでお姉ちゃんの部屋へと引っ張る。
「ま、待って。まだ完全に拭いてないから床濡れちゃうし」
「私が後で拭くから! それより早く着替えないとダメだよ!」
お姉ちゃんが慌てて靴を脱いで上がった。
リビングだとクーラーがきいているからお姉ちゃんの部屋へ。
座らせて、着替えるように言うと台所へ戻って牛乳をレンジに入れた。
おじさんが何事かと思って見にきたから、お姉ちゃんが雨に打たれて寒そうだからと伝え、私に任せてくださいというと頼むよと部屋に戻った。
レンジが鳴り、牛乳を取り出しお姉ちゃんの部屋へ。着替え中だといけないからちゃんとノック。
入っていいよ〜、と間延びした声が中から聞こえて、私はコップ片手に戸を開けた。
着替え終わって体は拭き終わっていたけど髪はまだ濡れていて、タオルで挟んで叩いている。
「はい、熱いかもしれないけど」
「ありがと」
「今はまだ体が冷えてるから体温が分からないけど、もうちょっとしたら体温計持ってくるから。
熱があったら薬飲んで、ゆっくり寝てないとダメだよ」
「お、おー……ゆーちゃんがてきぱきしてる……」
やっぱり寒かったのか、お姉ちゃんはホットミルクが入ったコップを両手で持って鼻をすすった。
濡れたタオルとお姉ちゃんの服を抱えて洗濯機へ持っていこうとするとお姉ちゃんがストップをかけてきた。
「ゆーちゃん、心配しすぎだって。ちょっと具合悪くなったぐらいでそこまでしなくていいよ。看病フラグは嬉しいけど」
「いいの。お姉ちゃんだって私の具合が悪くなったらこれぐらい心配してるもん」
そ、そーかなー? とお姉ちゃんが首をかしげた。
私にはそう思えているからそれでいいの。
自己完結させてタオルと服を抱え、洗濯機へ持っていく。
水分を吸った布は重かったし、私の服も少し濡れたけど何とかなった。
再びお姉ちゃんの部屋に戻ると、タオルを頭の上に乗せたまま携帯を弄っていた。
「お姉ちゃん、寝てないとダメだよ」
心配して言ったのか、それともメールの相手への決してプラスではない感情の所為か。
分からないけど、言い方に刺を含んでいたのはすぐに分かった。
「いや、かがみからメールで。『雨酷いけど大丈夫だったか』ってメール。それに大丈夫って返信してただけ」
大丈夫じゃ、ない。
朝から具合が悪かった。雨に濡れて余計に悪化した。
もし、かがみ先輩が傘を貸してくれていたら悪化しなかったんじゃないか。
今日、遊ぶ約束をしてなかったら悪化しなかったんじゃないか。
自分でもわかっている。酷い解釈だって。
かがみ先輩に悪意はない。あるのは私の方。
でも、感情に蓋が出来ない。出来るのは、その感情を見ないこと。聞かない事だけ。
「そっか。でも……」
「わ、分かってるって。体調管理してなかった自分が悪いし。だから心配しないで」
お姉ちゃんがコップとタオルを床に置いてもぞもぞとベッドに潜り込む。
すでに眠そうに見えるのは寝不足だったからなのか、具合が悪いからなのか。
「今日は私が晩御飯作るから寝てて。お姉ちゃんは食べれる?」
「ちょっ、ゆーちゃん本当に心配しすっ……ぅう、寒い」
「ほら。風邪は引き始めが肝心なんだよ」
「風邪……なのかな。バカは風邪引かないって言うじゃん?
あれって風邪を引いてることに気付いてなくて……つまりバカがつくほど鈍感なだけなんじゃないかな?
でも夏風邪はバカが引くっていうし……つまりやっぱり私はバカ? かがみによく言われるん――」
いつもより小さい声で、雨の音で消えそうな声で語るお姉ちゃんの唇に人差し指をつけた。
そんな恥ずかしい事、するつもりはなかったんだけど。
「お姉ちゃん、喋らないで」
ただ、ゆっくり休んでって意味だったはずだけどお姉ちゃんは驚きで口を閉じていた。
急に恥ずかしくなってタオルとコップを拾って部屋を出ようとする。
「ねぇ、ゆーちゃん」
しっかりした声で。
心配そうに、私の名前を呼んできた。
「何?」
「なんか悩み事あるならきくよ?」
どうして、そう思うんだろう。
そう口に出そうとして、出なくて。
首を少し傾げた。
「ゆーちゃん……私よりも苦しそうに見える」
「――何もないよ、ありがと。お姉ちゃん」
お姉ちゃんは鋭い。
体調が悪い時、悩み事がある時、すぐに気付く。
でも自分に向けられている好意にはひどく鈍感だと思う。
いっそ、この思考にすらするのも恥ずかしい秘密をさらけ出してしまえば……一瞬だけそんな事を考えた。
その一瞬の間でも、思わず赤面してしてしまうようなシーンを思い描いてしまった。
全部お姉ちゃんや田村さんによって与えられた知識がのせいだ。
お姉ちゃんの顔を見ることが出来なくて、部屋を出た。
タオルを再び洗濯機に入れて、コップを洗おうと台所に向かう途中おじさんに会った。
「こなたのやつ、大丈夫か?」
「はい、今は寝てます。今日の晩御飯は私が作りますね」
「ご、ごめんね」
おじさんがすごく申し訳なさそうに頬をかきながら謝ってきた。
忙しいのは仕事をしているからだし、私は自分でお姉ちゃんの看病をしたいからしてるわけで、謝られる要素はどこにもない。
おじさんの仕事は作家だったっけ。
ふと昨日の本を思い出した。本というより、意味があんまり理解できていない言葉を思い出した。
おじさんなら、言葉を扱う職業だから知ってるんじゃないかな。
「おじさん、『言霊』ってどういう意味ですか?」
「んお? こ、言霊……? 言葉には力があるってやつだろ?」
「はい。どんな力があるのかなって」
「うわぁい、難しいな……んーとな」
やっぱり感覚的に理解しているのか、説明するのが難しいのかおじさんが目を閉じて考え込む。
「例えば……良い言葉を発すると良い事が起こって、悪い言葉を発すると悪い事が起こる、とか。
あと、自分の意志をはっきりと声に出して言うことを「言挙げ」って言うんだよ。
で、それが自分の慢心……あ、思い上がりって事な。そうだった場合は悪い結果になる信じられたんだよ」
よく覚えてたなオレー、なんて腕を組んでうんうん頷いている。
「でも、なんでいきなり?」
「実家にあった本に書いてあったけど、意味が完全には理解できなくて気になってたんです」
「ほー……そういうのを調べるっていうのはいい事だぞ」
職業柄言葉に興味を持ってくれることは嬉しいのか、おじさんは笑顔だった。
でも急にはぁとため息をつく。追い込み作業中だったのを思い出したのかもしれない。
トホーと言いつつ自分の部屋へと戻っていくおじさん。背骨が曲がってる。
私はさっきのおじさんの説明を思い出していた。
私は、お姉ちゃんに嫌われては無いと思う。
心配してくれたり可愛がってくれたり、むしろ妹として好かれていると思う。
これは……思い上がりになるのかな。
良い方良い方に考えて、自分の気持ちを言ったら……悪い結果になる。
もちろんそれがこの世の心理じゃないだろうし、例外もある。分かってる。
でも、今の私の気持ちをお姉ちゃんに言ったほうが良いか、良くないか。
そんなの……良くないに決まってる。良い結果なんか望めない。望めるはずが無い。
従姉妹で、妹としか思われてなくて、同性で。
みなみちゃんなら、こういう時どうするんだろうか。
言うのかな、言わないのかな。こんなの相談なんか出来ないけど。
まだ晩御飯の準備には早かったから、体温計を持ってお姉ちゃんの部屋を訪ねた。
もう寝てしまっているらしくて、ノックをしても返事が無かったから起こさないようにゆっくりと戸を開ける。
「お姉ちゃん……?」
もう一度読んでも返事は無い。
そろそろと近づいて顔を覗き込んでも、反応は無い。
私より子供っぽいんじゃないかと思う寝顔だった。
体温計を持ってきたけど、起こして熱を測るのも悪い気がする。
だからと言って寝ているお姉ちゃんを起こさないように熱を測るのも悪い。
しょうがないからベッドの端に体温計を置いた。
お粥を作って、食べてもらうときに測ろう。
じっと寝顔を観賞していたら、急に変な音がした。
音がする方を見ると机の上でお姉ちゃんの携帯が震えていた。
電話かなと思って音を切ろうと携帯を取った瞬間に震えが止まってしまった。
メールだったのかなと、悪いと思いつつ携帯を開く。
『メール着信 かがみ』
慌てて、閉じた。
苦しい。痛い。重い。そんな決して良いとは言えない感情が塊でやってきた。
携帯を元の場所において、もう一度お姉ちゃんの寝顔を覗いた。
私は、この胸の中にある感情の正体を知っている。
でもこの気持ちを言葉に出す事も、思考にすらしないつもりだった。
言葉には力があるとどこかで信じていたから。
言う事によって現実世界に何らかの影響を確実に与えると知っていたから。
そしてそれは……悪い結果だろう、とも。
「……こなた」
お姉、ちゃん。
途切れ途切れで名を呼ばれたお姉ちゃんは、呼ばれたことにすら気づかずあどけない寝顔のまま寝息を立てていた。
それでいいと、私は思っている。
聞かれなくて、聞こえなくていいと思っている。
この気持ちは、一生言うつもりも、心の中で伝えるつもりもないから。
こなたお姉ちゃん、 るよ
それは誰にも――――自分にすら聞こえないコエ
以上です
お泊り会の最後のかがみ視点のペンが(というかタイピングが)進まず他のネタだけが完成する
良くある事良くある事
ゆ、ゆーーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
せつないのう、せつないのう
>>426 おー、やはり相視点のかただったか。
なんとなく文面が似てたからもしやと思ったけど。
需要?あるあるw
ギャップ萌えの俺にはストライクでした!!
GJ!!
そんなすばらしい夢を見たのかw
GJ!
>>426 あなたの作品は心理描写や文体がしっかりしているので本当に読んでて勉強になります
GJです
みなみ→ゆたか→こなた⇔かがみ
と脳内補完された。
俺のSSが糞みたいに見えるから困ってきた
>>432 世の中にはスカと炉趣味というものがあってだな…
>>262で書いた者ですが、一部の方からOKが出ていたので体育祭ネタで書いてみました。
●中編30レスほど投下させていただきます。
●みなみ×ゆたかの非エロ話(ただし触れあいはあり)。
●原作準拠で体育祭話。少々独自設定があります。
秋の朝の、糟日部駅前。
「みなみちゃん、おはようっ」
「……おはよう」
スクールバスのバス停にたたずんでいると、ゆたかが駅の方からとてとてとやってきた。
「今日はちょっと涼しいね」
「うん……風邪をひかないようにしないと」
「もうすぐ衣替えだから、それまで気をつけようっと」
いつものように、ほんわかとした笑顔を私に見せてくれるゆたか。
「……ちゃんと、あたたかくしたほうがいい」
「みなみちゃんも気をつけないとだめだよ?」
「……わかってるよ、ゆたか」
そう言って、ゆたかに小さくうなずいてみせると、
「うんっ」
ゆたかも、私に元気よくうなずいてくれた。
いつも通り、私のことを慕ってくれるゆたか。
そんなゆたかを見ていて……最近、ふと思うことがある。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
プリンセス・ブライド
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
いつも、私といっしょにいてくれるゆたか。
笑顔で、私を見上げてくれるゆたか。
そんなゆたかを見ていると、とっても幸せになれる。
青ざめた表情で、机にうずくまるゆたか。
保健室のベッドで、穏やかな寝顔を見せるゆたか。
そんなゆたかを見ていると、守ってあげなくちゃと思う。
時には、逆に私のことを守ってくれたこともあった。
私のかわりに、学級委員に立候補してくれたことも。
心が冷たいと言われていた私を、ゆたかはそうしていつも慕ってくれる。
だから、私は他の人に何を言われても平気だった。
そんな言葉に立ち向かう勇気を、いつもゆたかがくれるから。
「今日の体育は、体育祭の練習かぁ」
「……大丈夫?」
「うんっ。今日は体調もいいから、ダンスも出来そうなんだ」
確かに、顔色もいいし声は元気そのもの。
「気分が悪くなったときには、ちゃんとみなみちゃんに言うから」
「…………」
ゆたかが見せる笑顔は、強がりじゃなくて約束。
一度倒れて以来、ゆたかは気分が悪いときには私に言ってくれるようになった。
学校では、いっしょにいるのが当たり前な私たち。
家にいても、時々電話をくれたり、遊びに来てくれたりする。
それは、友達として当たり前のことなのかもしれないけど……
「……みなみちゃん? どうしたの?」
「?」
「ずっと、私の顔なんて見ちゃって」
「……な、なんでもない」
何故なんだろう。
ゆたかを見ていると、ときどきぼーっとしてしまうのは。
「やあ、みなみちゃんおはよー」
「みなみちゃん、ゆたかちゃん、おはよう」
「おはよう。二人とも、今日は早いのね」
ぼーっとした頭を振り払っていると、泉先輩と柊先輩姉妹がバス停にやってきた。
「あっ、おはようございます」
「……おはようございます」
ゆたかと二人して、ぺこりとあいさつ。
「あれっ? 今日はゆきちゃんはいっしょじゃないの?」
「……体育祭のクラス代表の件で、職員室に呼ばれていたらしくて」
「あー。大変だね、みゆきさんも」
「そう言ってないで、たまには手助けしてあげなさい」
「人には出来ることと出来ないことがあるもんなんだよ」
「威張ることじゃないっ!」
いつも通り、にぎやかな先輩たち。
こうして見ているだけでも、仲がいいんだとよくわかる。
私も、ゆたかと田村さんとも、こんな関係になれたらと思う。
……でも、いいのかな。
本当に、ゆたかとそんな関係で。
「そうだ、みなみちゃん」
…………
「みなみちゃん?」
「っ?!」
気付くと、泉先輩の顔が私の間近にあった。
「どしたのさ、ぼーっとして」
「い、いえ……」
突然のことに驚いて、飛び退く私。
だけど、それに構うことなく泉先輩は話しかけてきた。
「ほら、今日は体育でしょ? ゆーちゃんのこと、よろしく頼もうかなって」
「は……はいっ」
「大丈夫だよ。さっき、私と約束したんだから」
「いやー、姉代わりとしては、ここらへんきっちり筋を通さないとね。じゃないと、
ゆい姉さんに申し訳が立たないからさっ」
「そういうものなの?」
「そういうものなんです」
小首を傾げながら見上げるゆたかに、泉先輩がうんうんとうなずいてみせる。
やっぱり、泉先輩もゆたかのことが心配なんだろう。
泉先輩、も……
「とゆーわけでみなみちゃん、ゆーちゃんをよろしく」
「最近、こなちゃんもすっかりお姉さんだね」
「私にとって、ゆい姉さんとかがみっていう身近な先輩がいるからねー」
「ちょっと、私が先輩なのっ?!」
「だってそーじゃん、かがみは私よりずっとお姉さんやってきたんだもん」
「だ、だからって、突然そんなこと言わなくても……」
「かがみってば照れちゃって。かーわいいっ」
泉先輩はそう言いながら、かがみ先輩の背中にぎゅっと抱きついた。
「〜っ……もう、こなたってば……」
楽しそうにぶら下がる泉先輩に、顔を真っ赤にしながらされるがままになっているかがみ先輩。
なんだかシュールだけど、見ていてほのぼのする。
「お姉ちゃんたち、仲良しさんだね」
「……本当、仲良し」
泉先輩は、心を許した相手にじゃれつく猫みたいで、かがみ先輩は、そんな泉先輩を
しょうがないなという感じで見つめていた。
二人のほのぼのとした雰囲気が、私たちにも伝わってくる。
「ゆーちゃんもやってみるといいよー、みなみちゃんに」
「っ?!」
「お、お姉ちゃんってばっ!」
泉先輩の声に、私もゆたかも顔が真っ赤になる。
「冗談冗談。ほら、そろそろバスが来るみたいだから準備しよ、準備」
「もう、お姉ちゃんったら……ごめんね、みなみちゃん」
頬をぷくっと膨らませながら、ゆたかが私に謝ってきた。
「う、ううん……別に、気にしてない」
だけど、私の心臓はドキドキしたまま。
ゆたかに首を振ってからも、全然治まってはくれない。
先輩に言われた姿を、少し想像しただけなのに……
* * *
そんな心が治まったのは、授業が始まって少しした頃。
ゆたかを見るたびにドキドキしていたけど、今はもう平気。やっぱり、恥ずかしかっただけなんだと思う。
「みなみちゃん、よろしくね」
「岩崎さん、よろしくー」
「……こちらこそ」
あいさつしてきた二人は、上が体操着で下がジャージという姿。もちろん、私も同じ格好。
校庭でグループを組んだ私たちは、体育祭の練習に挑むことになった。
「でも、創作ダンスかー。小学生の頃はやったけど、中学生の頃はやってなかったから久々だよ」
「見ていただけだけど、私の小学生はライディーンとかフラッシュダンスとかやってたなあ」
「えーっと……ライディーンって、超者? それとも勇者?」
「???」
「あっ、わからないならいいよ。わからないなら」
首を傾げているゆたかに、焦っている感じで手のひらをひらひらと振る田村さん。
ライディーンは、YMO……の、はず。
「岩崎さんは、どうだったのかな?」
「……私も、二人と同じような感じ」
「そっかあ。やっぱり、中学ってどこもそうなのかな?」
「だけど、今度のは難しそうなんだよねー……覚えられるか、ちょっと心配」
授業前に配られたプリントを見ながら、田村さんが苦笑いする。
確かに、側転やリボンダンスといったダイナミックな動きが要求されるダンスで、しかも
七分ぐらい踊り続けないといけない。
特に激しい動きは、運動部のエース級がやることになっているみたいだけど……本当に、
ゆたかの体に耐えられるのかな。
「ゆたか……大丈夫?」
「うーん、できるだけやってみるよ」
「……今朝も言ったけど、無理は禁物」
「うんっ!」
元気にうなずくゆたかの顔色を見ても、確かに大丈夫そう。
私たちはプリントを見ながら、一つ一つ動きを確認し始めた。
「えーっと、最初はロボットダンスで……だんだん動きが激しくなっていくんだね」
「……曲の盛り上がりに合わせて、ジャンプや側転」
「高校のダンスってすごいんだねー。お姉ちゃんに聞いておけばよかった……」
なんだか、話しているうちに気分が重くなっていく。
他にも、走って向かいの人とすれ違ったり、ペアでダンスをしたり……これは、キツいどころじゃない。
「……あの、ゆたか」
「どうしたの? みなみちゃん」
きょとんとしながら、私のことを見上げるゆたか。
「……本当に、できる?」
「できるところまで、挑戦してみたいな」
「……そう」
そんなゆたかに、言えるわけがない。
『このダンスを踊るのは無理』だなんて……
『はーいっ、ちゃんと三人一組になってるわね? 今から音楽を流すから、軽く合わせてみて』
そうこうしているうちに、先生がスピーカーからダンス練習の指示を出してきた。
ゆたかも大丈夫だって言っていたんだから、今はただ信じて踊ろう。
「それじゃあ、いこっか」
「うんっ」
「……うん」
ゆたかに導かれて、私と田村さんがプリント通りに三角形の形に並ぶ。
それからしばらくすると、先生が言ったとおりに重厚な音楽が流れてきた。
まずは、それにのって足、手、首の順番で動かして……
始めはゆったりとした動きで、ゆたかもついてきているみたい。
まわりのみんなも、同じようにダンスを進めている。
そうして安心しているうちに、音楽のテンポが上がって動きも早くなっていく。
「ゆたか……」
「大丈夫っ、だよっ」
プリント通り、体を何度も翻しながら元気そうに言うゆたか。
だけど、その顔にはもう幾筋も汗が流れている。こういう激しい運動には慣れていないみたいだから、
止めたほうがいいのかもしれないけど……
「んしょっ……えいっ」
一生懸命踊る姿に、止めるのをためらってしまう。
止めてしまえば、ゆたかの頑張りを無にしてしまう。
止めなければ、ゆたかの体力が限界に近づいていく。
どっちも、相反することで――
「えっと……っ?! きゃっ!」
「小早川さん?!」
「っ?!」
体をまた翻した瞬間、突然ゆたかの体がぐらついた。
しかも、後ろ向きに……このままだと、頭をぶつけるっ!
「ゆたかっ!!」
私は急いで、宙をさまようゆたかの手をとって――
「きゃっ?!」
一気に、自分のほうへと引き寄せた。
ゆたかの小さな身体を、勢いよく受け止めると……
「あ、あはははは……し、失敗しちゃった……」
力なく笑いながら、ゆたかは私のことを見上げていた。
「……無理は、禁物。そう、言ったはず」
「ご、ごめんね……? 出来るかと思ったんだけど……」
そんなゆたかの額を、また汗が流れていく。
しかも、顔色はさっきと違って蒼白で、息も荒くて……幾度も見てきた、貧血の症状だ。
「みなみちゃん……ごめんなさい」
「……保健室、行こう」
そうすべきだと思って、私はそのままゆたかを抱きかかえて立ち上がった。
「小早川さん、大丈夫?」
「う、うん……ごめんね、田村さん」
私の腕の中にすっぽり収まっているゆたかが、申し訳なさそうに田村さんに笑う。
「ううん。それより、早く保健室に行ったほうがいいよ。私が先生に言っておくから」
「……おねがい」
「ありがとう……」
私は田村さんに頷いて、そのままゆたかを抱きかかえながら保健室に向かった。
走らないように。だけど、できるだけ早く。
「ごめんね……こめんね……」
今にも泣きそうな声で、ゆたかが謝ってくる。
謝るようなことを、ゆたかがしたわけじゃないのに……
「大丈夫」
「……?」
「大丈夫……わかってるから」
そんなゆたかを見ていられなくて……私は、できるだけ優しくそう言った。
「みなみちゃん……」
ゆたかは、ただ私たちと踊りたかっただけ。
いつも体育館の隅っこで見ているだけじゃなくて、いっしょに踊りたかったんだ。
「……大丈夫だよ、ゆたか」
「……うん」
私の言葉に、ゆたかが小さくうなずく。
そして、私の肩に頬を寄せると、笑顔を浮かべて目を閉じた。
初めて間近で見る、ゆたかの顔。
それは……まるで、眠り姫みたいで……
「っ……?!」
朝にした想像と、今のゆたかの顔が重なっていく。
抱きつかれているのと、抱き上げてるのと違いはあるけど……こうやって、間近にいるなんて。
……だめだ、だめだだめだ。こんな邪なことを考えてちゃ。早く、ゆたかを保健室に連れて行かないと。
頭を軽く振って、私はひたすら保健室を目指した。
胸の高鳴りを、強引に抑えつけて……
「……失礼します」
「あら、岩崎さん……って、小早川さん、どうしたの?」
保健室のドアを開けると、私たちの姿を見た天原先生がぱたぱたと駆け寄ってきた。
「……創作ダンスの途中に、貧血になったみたいで」
「確かに、顔色があまり良くないですね。岩崎さん、小早川さんをベッドに寝かせてくれます?」
「はい」
私は頷いて、カーテンが開け放ってあるベッドにゆたかを寝かせた。それから、備え付けの
清潔なタオルで額の汗をそっとぬぐう。
「ちょっと失礼しますね」
天原先生は手早く白衣を着ると、ゆたかの額、首、頬に手を当てた。
「……どうなんです?」
「急激に運動して、ちょっと身体がびっくりしたみたいですね。軽度の貧血でしょう」
「……そうですか」
よかった、そんなに重い症状じゃなくて……
「きっと、安心して気が抜けたんだと思いますよ。しばらくしたら、目を覚ますはずです」
「ありがとう……ございます」
「いえいえ。それより、どうします? 授業に戻りますか?」
「……えっと」
先生に言われて、保健室にある時計を見やる。
授業が始まって、まだ半分ぐらいだけど……
「……目が覚めるまで、側にいます」
さっきのゆたかを見ていて、一人にはしておきたくなかったから。
「そのほうが、目が覚めたときに安心するかもしれませんね」
「すいません……」
「気にしなくて大丈夫ですよ。先生には、私から言っておきます」
優しく微笑みながら、先生がゆたかにそっと毛布をかける。
これであったかくすれば、血の巡りも良くなるかな。
「それでは、私はお仕事がありますから。何かあったら呼んでくださいね」
「……はい」
私が頷くと、先生はカーテンを閉めて外へと出て行った。
「……ふう」
一息ついて、備え付けの椅子に腰掛ける。
その途端に、さっきまでの慌ただしさが嘘のように静まりかえる。
「…………」
聞こえるのは、鉛筆を走らせる外からのささやかな音。
あとは、私の息の音と……
「すう……すう……」
小さな、ゆたかの息の音。
倒れたときの息の荒さが嘘みたいな、穏やかな寝息。油断は禁物だけど、このままならきっと大丈夫だろう。
あどけないゆたかの寝顔が、そう確信させてくれる。
「んっ……」
寝返りを打とうとするように、身体をよじるゆたか。そのとき、ぶらんと右手がベッドから外れた。
その右手をとって、両手で優しく包み込む。
「……大丈夫、大丈夫だから」
それから、耳元でそう小さくささやきかけた。
ひんやりとしたその手が、少しでもあったかくなってほしい。
目が覚めたとき、またあの笑顔を見せてほしい。
そう思いながら、私はしばらくゆたかの寝顔を見つめていた。
やがて、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
そうか……もう、お昼休みになるんだ。
遠くから聞こえるざわめきに、今の時間をふと思い出す。だけど、まだお腹はすいてないし、今はそれどころじゃない。
ゆたかをこのままにして、教室には行けないし……
「失礼します」
そんな思案に暮れていると、保健室のドアの音といっしょに聞き慣れた声が響いた。
「あら、田村さん」
……田村さんも、ここに来たんだ。
「小早川さんだったら、そこのベッドで寝ていますよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
外からそんなやりとりが聞こえてすぐ、田村さんがカーテンの隙間からそっと入ってきた。
私が小さく頷くと、田村さんも小さく頷いて私のそばへとやってくる。
「小早川さん……調子、どうかな?」
「……今は、大丈夫みたい」
小声で尋ねてくる田村さんに、私も小声で返す。
「そうみたいだね」
ゆたかの寝顔をのぞきこんだ田村さんは、うんうんと安心したみたいに頷いた。
「田村さん……お昼は?」
「えっ? ああ、そんなのはあと、あと。岩崎さんに任せっぱなしにしちゃったからね」
「……そんなこと、ない」
先生に伝えてくれただけでもありがたいのに、真っ先にここに来てくれたんだから。
「ところで岩崎さん、その手は?」
「……?」
田村さんが指さした先には、ゆたかの右手を包み込んでいる私の手があった。
「ああ……手を握っていれば、ゆたかも楽になるかと思って」
「ほうっ?!」
……なんで、そこで顔が真っ赤になるのかな。というか、大声厳禁。
「そ、そっかー。小早川さんを想って……」
「それと……目が覚めたとき、安心するかなって」
「はうっ!」
「……大声は、ダメ」
「あ、ご、ごめんごめん」
私がちょっと睨むと、田村さんは手をパタパタ振って凄い勢いで謝りだした。
「あらあら、にぎやかですね」
「……天原先生」
そんなやりとりをしているうちに、天原先生がカーテンの中へと入ってきた。
「ずいぶん顔色も良くなりましたね。午後の授業は……起きたら、本人に聞きますか」
「……そのほうが、いいかと」
「ですねー」
天原先生の言葉に、私も田村さんもこくりと頷く。
「ところで、先ほどの声は?」
「いえ、岩崎さんが小早川さんの手を握ってて、ほほえましいなーと」
「手を? あらあら、確かにほほえましいですね」
私とゆたかの手を見て、にっこりと笑う先生。
「そういえば、二人が入ってきたときもどこかほほえましかったですね」
「……?」
「お姫様抱っこで、保健室まで運ぶだなんて」
「ひょえっ?!」
お姫……様……?
「……っ?!??!?!?!」
一瞬、天原先生の言葉がわからなくて……思い出した瞬間に、頭が爆発しそうになる。
そうだ、私はゆたかを抱っこして……でも、あれは仕方のないことで……
「まるで、王子様とお姫様みたいでしたよ」
「た、確かに、そう言われてみると、そんな格好だったよーな」
「…………」
そんな、王子様とお姫様だなんてっ!
頭をぶんぶん振るけど、頭の中の想像は全然消えてくれない。
確かに、小さな頃はそういう絵本をよく読んだけど……私が、王子様だなんて!
「う……う〜ん……」
心臓がバクバク言ってる間に、ゆたかが軽く身じろぎをして目を開ける。
「ゆ……ゆたか?」
「みなみちゃん……田村さん、天原先生……」
慌てて顔をのぞきこむと、ゆたかは申し訳なさそうに苦笑いした。
「ごめんね……わがまま言って、迷惑をかけちゃったね」
「ううん……そんなこと、ない」
「大丈夫だよ、心配しなくても」
「もう少し休んでいれば、起きられそうですね」
安心させるように、私たちは口々にゆたかに話しかけた。
「……みなみちゃん」
「……?」
「ずっと、手を握ってくれてたの……?」
ゆたかは横になると、私が包んでいた手に左手を重ねた。
「手がぽかぽかしてて、目が覚めたときもほっとしたから……」
「……楽になるかなって思って」
「うん……ありがとう」
「っ?!」
にっこりと、目を潤ませながら笑うゆたか。
「とっても安心したよー」
少し潤んだ目で私を見上げるその姿は、とても儚げで――
「……う、うん」
見ているだけで、さっき以上に心が高鳴っていく。
「あらあら、二人は仲良しさんですね」
「二人とも、お互い好きすぎだよー」
「だって、私はみなみちゃんが大好きだもん」
大好き……?
「ゆたか……」
ゆたかが、私を好き……?
「みなみちゃんは、大切な友達だから。もちろん、田村さんも大好きだよー」
「いやあ、ありがとありがと。というか、ふたりともお熱いねー」
「???」
ああ、そういうことか。
友達として、私が好き……
……どうして、落ち込む必要があるんだろう。
いつものように、ゆたかが好意を向けてくれているのに。
どこかもやもやとした気持ちを心に秘めて、私はそのままお昼休みを過ごすことになった……
* * *
がたごとと、揺れながら走るスクールバス。
外に広がるのは田園風景。バスの中にいるのは、私とゆたか、田村さんだけ。
「♪〜」
その中で、ゆたかは私の手を握って嬉しそうに笑っていた。
「……そんなに、手を握るのが気に入った?」
「うんっ。みなみちゃんの手、ぽっかぽかしてて気持ちいいんだもん」
「……そう」
あれから少し休んだゆたかは、すっかり元気になった。
最初は無理してるのかと思ったけど、元通りの顔色を見てそれは心配しすぎだとわかった。
「もうさー、小早川さんも田村さんもほほえましすぎるよ」
「そうかな?」
「手を握り合って、にこにこ笑ったりあたたかく見つめてたり……おいしいネタすぎ……
いやいや、とってもほほえましいって」
「田村さんも、みなみちゃんの手を握ってみる?」
「いやいや、二人のお邪魔はやめときますよー」
「邪魔なんかじゃないのにー」
ゆたかの言葉に、手をひらひらと振る田村さん。その頬は、なんだか赤く染まっていた。
もしも、私の手でゆたかが元気になったのなら……それは、とっても嬉しいこと。
この笑顔が見られるなら、私はいつでも手を握ってあげたい。
「でも、残念だなぁ……体育祭、先生からストップがかかっちゃった」
「ありゃりゃ、ダメだったんだ」
「ダンス以外の種目、全部埋まってちゃってたから」
「……まだ、来年も再来年もある」
あんなに踊りたがっていたのに、出られないのは残念だけど……これで、学校生活が
終わりっていうわけじゃない。
「うーん……そうだよね。来年は、ちゃんと出られるようにがんばろっと。そういえば、
みなみちゃんと田村さんは何に出るか決まったの?」
「私は……ダンスと、午前最後のチーム対抗スウェーデンリレー」
「あー、あのランナーごとに距離が増えていくリレーかあ。でも、1年生から出るのって珍しいよね」
「……400mのタイムがよかったからって。長距離のほうになりそう」
「そうなんだー。めいっぱい応援するからね、みなみちゃん」
「……うん」
ゆたかの笑顔に、力強くうなずいてみせる。
きっと、その笑顔を思い出せばがんばれるから。
「私は障害物走なんだよねー。アメ食いもあるらしいし、顔が真っ白になりそうだよ」
「あー、あれってやっぱりそうなっちゃうよね」
「……助清」
「『犬神家ー!』とか言って客席に突っ込んで、勝負を捨てるのもアリかなー……いや、
そんなことやったら会場ドン引きだろうからやめとこ」
私の言葉に、一人宙を見つめたり頭をふるふる振ったりする田村さん。もしかしたら、
その光景を想像したのかもしれない。
「応援してるからねっ、田村さん」
「小早川さんの笑顔があれば百人力だよ。ねっ、岩崎さん」
「うん……っ?!」
何気なく頷いたけど、まるで心を見透かされたかのような言葉に、心臓がドクンとさざめく。
確かに、ゆたかの笑顔は私も大好きだけど……いきなり、話を振られても……
「どうしたの? みなみちゃん」
「い、いや……なんでもない」
慌ててそう言って、首をぶんぶんと振る。
いつもはしないことだけど、こうでもしないと胸の鼓動はおさまりそうもない。
「ふむ……ま、いっか」
何故か、納得するようにうなずく田村さん。よかった、これ以上追求されなくて……
……って、追求? 私が、何を追求されたらいけないんだろう。
突然湧き出てきた考えに、落ち着きかけた頭の中がまた混乱していく。
「とりあえず、まずは目の前の体育祭をがんばるってことで。そろそろ駅に着きそうだから、
また明日だねー」
「うんっ。みなみちゃん、そろそろ降りるころだよ」
「……えっ?」
言われて外を見ると、バスはロータリーをぐるっと回って駅の前につこうとしていた。
「ほら、行こう?」
ゆたかは立ち上がって、にっこり笑いながら私の手を引っ張った。
「う……うん」
それにつられて、私もゆっくり立ち上がる。
「いつもしてもらってるから、お返し」
「……そう」
いつもは、私がしていることなのに……反対にされるのはなんだか不思議で、とても気持ちいい。
「ううん、今日はみなみちゃんにいっぱいお世話になったから。私には、こんなことしかできないけどね」
「ううん……」
手を握ってくれてるだけでも十分すぎるのに、そんなお礼まで言われるなんて……
『はーい、着いたよー』
運転手の人が、マイクで私たちに到着したことを告げる。
いつの間にか、ドアまで開いてたんだ……
「あっ、ありがとうございます」
「お疲れさまですー」
「……ご苦労様です」
口々に言いながら、私たちはぞろぞろとバスを降りた。
その間も、ゆたかの右手は私の左手を握ったまま。
「はいっ、みなみちゃん。気をつけてね」
「……うん」
先に降りていたゆたかに頷いて、ゆっくりとバスを降りる。
「ありがとう、ゆたか」
「どういたしまして」
そう言って、お互いくすっと笑い合う。
「ふぉぉぉぉ……」
そんなゆたかの後ろで、何故か悶絶している田村さん……大丈夫なのかな。
「それじゃあ、ここまでかな」
「……えっ?」
ゆたかはそっと私の手を離すと、自分のカバンに手を入れて定期入れを取り出した。
そっか……ここでお別れなのはさみしいけれど、そろそろ帰らなきゃ。
私も、ゆたかにならうようにしてカバンから定期入れを取り出した。
田村さんも取り出したのを確認して、自動改札を通る私たち。そのまま階段を昇って、
それぞれの乗り場への降り口の前で立ち止まって……
「みなみちゃんと田村さんは、向こうのほうだよね」
「そうだねー」
下りホームへの階段前。そこで、今日はゆたかとお別れになる。
「今日は本当にありがとう。みなみちゃん、田村さん」
「……気にしないで」
「どんまいどんまい」
「うんっ。じゃあ、また明日ね!」
ゆたかは手を振ると、ぱたぱたと階段を下りていった。
「ここまで元気なら、明日も大丈夫そうだね」
「……うん」
田村さんの言葉に、私はこくんと頷く。
ゆたかには、いつも元気であってほしいから。
「それじゃあ、私たちも帰ろっか」
もう一度頷いて、私たちは上りホームへの階段を下りていった。
手にはまだ、ゆたかが握ってくれていたぬくもり。それが、心までぽかぽかにしてくれる。
このぬくもりは、ずっと大切にしよう。
私はそう思いながら、田村さんといっしょに階段を下りた。
「あっ、岩崎さん」
「……?」
「ほらほら、向こうのホーム」
「……ゆたか?」
田村さんに言われて下りのホームを見ると、ラッシュ前のまばらな人影の中にちょこんと
ゆたかが立っていた。
笑顔で、私たちに手を振りながら。
「やっほー」
田村さんも、笑顔でゆたかに手を振る。
ゆたかが振っていた手は、さっきまで私の手を握っていたのとは違う左手。
右手は、胸の前できゅっと握られたままで……
「あっ……」
慈しむかのようなその仕草を見た瞬間、私の左手のぬくもりが強くよみがえる。
だから、私もその手をきゅっと握りしめて……
「また、明日……」
右手で、そっと手を振り返した。
そんなゆたかの仕草が、私は好き。
私たちを想ってくれるゆたかも、好き。
だけど……それ以上のことが、心に浮かんでくる。
一人の女の子として、ゆたかのことが好きになっていくと。
友達としてだけじゃ、だめなの?
今までどおりのほうが、いいかもしれないのに?
自問自答してみても、答えは出てこない。
私にしかわからないはずのことなのに……
穏やかになりかけていた心を、迷いのしずくが波立たせる。
そんな気持ちを抱えたまま、私たちの間を滑り込んできた電車が遮った。
* * *
「みなみちゃん、おはよう」
「お、おはよう……」
次の日の、朝の教室。
ゆたかがいつも通りに話しかけてきただけなのに、心臓がどくんと跳ね上がる。
「? どうしたの?」
「う、ううん……なんでもない」
「そう? だったらいいんだけど」
小首を傾げて、わたしの顔をのぞき込むゆたか。
「そういえば、昨日古典の先生が出してた宿題なんだけど――」
好きだとわかった瞬間に、その一つ一つの仕草がかわいくてたまらなくなっていく。
「……みなみちゃん?」
「っ?!」
「さっきからぼーっとしてるね。顔が真っ赤だよ?」
「う、ううん、大丈夫……」
「本当? 無理しちゃだめだよ?」
「……わかってる。続けて」
いつもとは、全く反対の立場。
こんな些細なやりとりもこそばゆくて気持ちいいけど、心が追いついていかない。
「昨日の宿題なんだけどね、ここの現代語訳がちゃんと出来なくて」
「……どこ?」
なんとか心を落ち着かせようとしているうちに、ゆたかが向かいの席に座る。
「えっとね、ここ。どうしても片言な訳になっちゃって……」
「……ここは、変格活用をするべきところ」
「あ、そっか」
「前後の語感をしっかり捉えていけば、ちゃんと訳が出来るはず……がんばって」
「うんっ。ありがとう、みなみちゃん」
「……ど、どういたしまして」
『ありがとう』という言葉が、心にしみていく。
昨日までとはまた違ったその感覚に、なんだか目が潤みそうになった。
「じゃあ、あとは自分でやってみるね」
「……うん」
私がうなずくと、ゆたかは笑顔で手を振って自分の席へと戻っていった。
好きな人にそう言われる気持ちって、こういう感じなのかな。
とっても幸せで、ふわふわして……
「みなみちゃん、ごはん食べよ?」
いつものように、お弁当を持って席にやってくるゆたか。
小さなお弁当箱が、ゆたかにとっても似合っていてかわいらしい。
「体育祭のお弁当? 学食がお休みみたいだけど、お姉ちゃんも忙しそうだから……作ろうかな」
田村さんの問いに、本気で考え込むゆたか。
指に頬を添える姿が、どことなくゆたからしい。
「来週は暗誦かあ。ちゃんと覚えないと」
古典の授業のあと、お礼に言いに来たゆたかが拳をつくって意気込む。
小さい身体で頑張る姿は、見ているこっちまで微笑ましい。
いつも見ていたはずの姿がどれも新鮮で、どんどん「好き」が深まっていく。
だけど、それをゆたかに伝えることはできない。
私もゆたかも、同じ性別だから。
私が好きだと言っても、ゆたかに迷惑をかけるだけ。そう思うだけで、幸せだった心が後悔に蝕まれていく。
――好きだなんて、気付かなくてもよかったのに。
気持ちが浮かんだり沈んだりしているうちに、いつの間にか放課後を迎えていた。
思えば、ゆたかの姿ばっかり追っていた気がする。落ち込むとわかっていても、見ていたくなって……
そんなことを考えてる間に、教室にいる人はまばらになっていた。
「みなみちゃん、今日はどうするの?」
いつものように、ゆたかが私のところへやってくる。
「今日は……スウェーデンリレーの練習があるから、居残り」
「そっか。それじゃあ、いっしょに帰れないね」
「あ……」
何気ない、ゆたかの言葉。
だけど、それは今の私にとってはとてつもない誘惑だった。
「……みなみちゃん、本当に大丈夫なの?」
「えっ……」
「なんだか、無理してるみたいだよ」
心配そうに、ゆたかが私の顔をのぞきこんでくる。
そして、手のひらを私の額に乗せて……
「うーん、熱は無いみたいだね」
さらりとした手から、ひんやりとしたゆたかの温度が伝わってくる。
それとても気持ちよくて……頭の中に、しびれのように広がっていく。
ダメだ、これ以上されたら……
「ひゃあっ!」
パシッ!
そう思った瞬間、教室に乾いた音が響いた。
「み……みなみちゃん……?」
「あっ……」
呆然とした、ゆたかの表情。
少し赤く染まった、その手のひら。
それから……いつの間にか動いていた、私の手。
「……ご、ごめんね。突然おでこを触っちゃったから、びっくりしちゃったんだよね?」
無理矢理笑顔を作って、私に向けるゆたか。
だけど、その目尻には涙が浮かんでいて……
「いや、その……」
もしかして、私は……ゆたかの手を、振り払ってしまった?
そう認識した瞬間、心の中が罪悪感で染まっていく。
「みなみちゃん、ごめんなさい……私、今日は帰るね」
「あっ、ゆたか!」
いつもは出すことのない、大きな声。
だけど、ゆたかはぱたぱたと教室から出て行ってしまった。
「い、岩崎さん、どうしたの?」
「…………」
まわりからの言葉にも答えられないまま……私は、ずっと固まっていた。
ゆたかが出て行ったドアを、じっと見つめることしかできずに。
私は……ゆたかを、傷つけてしまったんだ。
「岩崎さんっ、ねえ、岩崎さんっ!」
その声で、私は身体が揺らされていることに気付いた。
「……田村……さん?」
目の前にいたのは、心配そうな表情の田村さん。
「どうしたの? 突然、小早川さんの手を振り払ったりして」
「……わからない」
「えっ?」
「どうすればいいか……わからない」
今頃になって、手に払いのけた感覚がよみがえってきた。
やっぱり、私はとんでもないことをしてしまったんだ……
頭を抱える私の向かい側で、椅子を引きずる音が聞こえる。
「小早川さんと、何かあったの?」
「ゆたかは悪くないっ!」
「岩崎さん……」
「私は、ただ……ゆたかに触られて、頭の中がぐるぐるして……わけが、わからなくなって」
「それで、小早川さんの手を振り払っちゃったの?」
田村さんの問いかけに、私は頭を抱えたまま頷いた。
「……ねえ、岩崎さん」
「…………」
「クラスのみんなはもういないから、聞いてもいいかな?」
「……なに?」
いつになく、優しい田村さんの声。
「ケンカしたわけじゃないんだよね?」
その言葉に、小さく頷く。
ケンカなんて全然していない。悪いのは、全部私。
「なにか、気分でも悪かったの?」
今度は、首を横に振る。
ただ、気分が昂ぶっただけ。むしろ、気持ちよかったと思う。
「突然のことで、驚いたの?」
少し考えて……小さく頷く。
好きな子から突然おでこを触られて、とてもびっくりしたから。
「ねえ、気分を悪くしたらゴメンなんだけど……」
耳元で、突然田村さんのささやき声が聞こえてくる。
「もしかして……岩崎さんは、小早川さんのことが好きなの?」
優しく問いかける声に、思わずまた頷いてしまいそうになった。
「……わからない」
何もかもを吐き出したくなる衝動を抑えて、ただそれだけを呟く。
「最近、岩崎さんが小早川さんを見る目がちょっと変わったかなーと思ったんだけど……
そっか、気のせいならいいんだよ」
どうして、そんなことまでわかるんだろう。
私たちと、よくいっしょにいたから? それとも、それが女の子の「カン」?
まるで、何もかもを見透かされてるみたい……
「でも、叩いちゃったのは確かだよね。明日、ちゃんと小早川さんに謝らないとダメだよ?」
「……わかってる」
ゆたかを傷つけたくなんてなかった。
だけど、私の迷いがゆたかの体と心を傷つけて……
「でも……」
「でも?」
「ゆたかは……許してくれるのかな」
私のひ弱な心が、声を震わせた。
「大丈夫だよ。小早川さんと岩崎さんはとっても仲良しなんだから。でもね、ちゃんと
伝えたいことがあったら伝えないとダメだよ」
「…………」
「岩崎さんは、あまり小早川さんに言うことはないよね。でも、伝えたいことはいっぱいあるんでしょ?」
「……うん」
「だったら、ちゃんと言わないと。でも、もし自分で言っちゃいけないと判断したことだったら
……それは、岩崎さんの判断に任せるけどね」
「田村さん……」
顔を上げると、田村さんは優しく微笑みながら私の顔をのぞきこんだ。
「とりあえず、まずは仲直り! 明日会ったら、ちゃんと言おう?」
「……うん」
まずは、ちゃんとゆたかに謝って……今は、私の気持ちは心の奥底にしまっておこう。
ゆたかと離れるのだけは、絶対に嫌だから。
「田村さん……ありがとう」
「い、いやぁ」
ぺこりと頭を下げると、田村さんはぱたぱたと手を振った。
「やっぱり、仲良しさんは仲良しさんのままじゃないと」
いつも、私たちの側にいる田村さん。
もしかしたら、私たちのことを見守っていてくれたのかな……早く仲直りして、安心させてあげないと。
だけど……
次の日、ゆたかが学校に来ることはなかった。
* * *
バトンゾーンに、前のランナーが近づいてくる。
それを確認して、スタートラインから一歩、二歩と軽く走り出す。
あとは、バトンを受け取って、スピードを――
カランッ
「あっ……」
と思っていた矢先、そのバトンが私の手からこぼれていった。
「あっちゃー、また失敗だね」
「す……すいません」
急いで立ち止まって、そのバトンを取りに行く。
「んにゃ、あんまり気にしない気にしない。短距離は得意でも、バトンリレーは苦手って人は多いからさ」
C組・D組連合のリーダー、日下部先輩がにぎやかに笑いながら近づいてきた。
「まあ、慣れだよ、慣れ。ただ、ぼんやりするのはダメだかんね」
「……本当に、すいませんでした」
昨日は、田村さんとのやりとりの後ですぐには立ち直れなくて、ポロポロバトンを堕としていた。
今日もゆたかに会えなくて不安だけど……今は、しっかりしないと。
「いいのいいの。それじゃ、もう一本行ってみよっか」
「はい」
私が頷くと、日下部先輩は足早に来た道を走っていった。
元陸上部のエースだけあって、本当に速い。先生たちが、アンカーの400mを安心して任せるのもよくわかる。
「いくよーっ!」
そう言って、日下部先輩がコーナーの途中から走り出す。
大きなストライドで駆けてきた先輩は、あっという間にバトンゾーンに近づいてきた。
先輩がリレーゾーンに入ったら、軽く走り出して……
「今だよっ!」
「っ!」
今度は、落とさずにしっかり受け取れた。
「ストップ! そうそう、今の感じだよー」
反転して戻ると、日下部先輩がうんうんと頷きながら出迎えてくれた。
「あとは受け渡しだけど、これはしっかり手を伸ばせば大丈夫だから。今はそれよりも、
受け取るときのタイミングをしっかり掴んだ方がいいね」
「……わかりました、なんとなく」
「うんっ、その意気その意気。それじゃ、一旦休憩してからみんなで練習してみよっか」
「……はいっ」
「じゃあ、二十分休憩ねー! 時間になったら、またここに集合ってことでー!」
「「はいっ!」」
日下部先輩の呼びかけに、他の先輩たちが元気よく返事する。
私も頷いて、バトンゾーンの内側に入って腰を下ろした。
「ふぅ……」
息をつきながら、まわりを見回してみる。
広い校庭では、いろんな生徒がいろんな練習をしていた。
私みたいにリレーの練習をしていたり、クラス全員が集まって棒倒しの練習をしていたり、
男子の先輩たちが組体操の練習をしていたり……どこも、活気にあふれている。
だけど、ここには大切な人がいない。
「ゆたか……」
目を閉じながら、今朝からの出来事を思い出す。
先生からはゆたかの欠席を告げられて、公衆電話から電話をしてみても、泉先輩のお父様が
「熱を出して、今はぐっすり寝てるから」と言っていた。
昨日のことで、落ち込んでしまったのかもしれない。だけど、ちゃんとゆたかと会って謝らないと。
練習が終わったら、泉先輩の家に行ってみようかな。でも、ゆたかの調子を悪くしても
いけないし……本当に、どうしよう。
昨日までのように、また頭の中で思考がぐるぐるとループする。
全然まとまらないまま、気分を変えようと目を開けると……
「やあ、みなみちゃん」
「……泉先輩?」
その泉先輩が、私の顔をのぞきこんでいた。
「隣、いいかな?」
「……ええ、どうぞ」
「んじゃ、ちょっくら失礼してっと」
そう言って、私の隣に腰を下ろす泉先輩。
体操着姿で、長い髪をポニーテールでまとめているのは初めて見るかもしれない。
「みなみちゃんも、スウェーデンリレーの練習?」
「……はい、そうですけど……先輩も?」
「春のタイムで引っかかっちゃってさー、無理矢理黒井先生に連行されちゃったよ。まあ、
後でネトゲで色々助けてもらうって契約したからいーけど」
「そうなんですか……」
確かに、ゆたかも泉先輩は走るのが速いって言ってたような気がする。ということは、
先輩はA組・B組連合のチームだから……私たちのライバルになるんだ。
「みなみちゃんは、何m走るの?」
「……まだ、これから決めるんです」
「そっか」
それっきり、泉先輩は口を閉ざした。
聞こえてくるのは、まわりの喧噪だけ。
「……あの、先輩」
「ゆーちゃんのこと、聞きたいの?」
「っ?!」
先のことを言い当てられて、心臓がドクンと高鳴る。
やっぱり、聞きたいことがわかったのかな……
「……はい」
先輩から話を切り出してくれたということで、私は素直に頷いた。
「ゆーちゃんだったら、今日は家でぐっすり寝てるよ」
「そう……ですか」
やっぱり、具合が悪かったんだ。
私が……私が、ゆたかを追いつめてしまったのかな。
「ちょっと熱が出ただけだから、何日かしたら学校には来れると思う」
「……わかりました」
「ただ、さ」
「……?」
突然、泉先輩の声のトーンが変わる。
「昨日、ゆーちゃんが帰ってきたときに目が赤かったんだけど」
「えっ……」
慌てて先輩のほうに振り向くと……
「何か……あったの?」
いつになく真面目な表情で、先輩が私の顔を見据えていた。
「あの、その……」
「ゆーちゃんは何でもないって言ってたけど、無理して笑ってた。ごはんも食べなくて、
ずっと部屋にいるままなんだよ」
「えっ……?」
泉先輩の、切実な声。
まるで私を責めているような気もしたけど、聞かれているということは……ゆたかは、
昨日のことをしゃべっていない?
言わないでいたのか、それとも……それほど、しゃべりたくなかった?
「ただ、みなみちゃんの名前を出したら、妙に動揺してたから」
「……っ!」
「もしかしたら、みなみちゃんなら知ってるのかなって思ったけど……何か、あったの?」
それは、心から絞り出すような切実な声。
泉先輩が、ゆたかのことを心配しているという証……
「……――めんなさい」
「うん?」
「ごめんなさいっ!」
私は泉先輩に向き直って、思いっきり頭を下げた。
「昨日……ゆたかにおでこを触られて……突然のことだったから、反射的にはねのけて
しまって……私、ゆたかにそんなことしたことなかったから……ゆたか、ショックを受けてたみたいで……
ごめんなさい……私が、ゆたかを……ゆたかのことを、傷つけてしまいました……」
細切れになりながら、なんとか言葉を紡ぎ出す。
先輩には、嘘をつきたくない。大切な子の……傷つけてしまったゆたかの、お姉さん代わりなんだから。
そのまま、あたりに沈黙が流れる。
怒っているのか、それとも呆れているのか……頭を下げているから、先輩のそんな表情も伺えない。
罵倒でも、侮蔑でも何でも受ける。私は、それだけのことをしてしまったんだから。
「……なーんだ、そんなことか」
あっけらかんとした、泉先輩の声。
「えっ?」
顔を上げながら、私は間抜けな声を出してしまった。
「私もさ、慣れるまでかがみによくやられたもんだよ。頭ひっぱたかれたり、ほっぺた
ぎゅーぎゅー引っ張られたり。まだまだスキンシップが足りないってことなんだろーね。
慣れればなんとかなるなる!」
「……はあ」
表情を緩めて、いつも通りにネコのような口でしゃべりだす泉先輩。
これって、怒ってないっていうこと……?
「まあ、ゆーちゃんもショックを受けただけと思うから。あんまり心配しないでいいよ。……ただ、さ」
そう思った瞬間、また先輩の表情が変わる。
「いつものみなみちゃんだったら、そんなことしないよね」
私の目を射抜くかのような、鋭い視線。
「ゆーちゃんを傷つけたりは、絶対しなかったよね」
「あ……」
許してはいない。
泉先輩は、まだ私のことを怒っているんだ……
「みなみちゃんは、ゆーちゃんのことを友達って思ってる?」
「……はい」
自信をもって、頷ける。
高校に入ってから……ううん、高校に入る前から出会った、かけがえのない友達。
「それじゃあ、ゆーちゃんのことが大切?」
「……もちろん、です」
これも、自信を持って頷く。
ゆたかの苦しむ表情は見たくないし、いつも笑顔でいてほしいから。
「ゆーちゃんといっしょにいて、楽しい?」
「……楽しいです」
いつも、私になついてくるゆたか。
いろんなところに行って、遊びに来てくれたりして、そんな日々が楽しかった。
「それじゃあ」
私がまた頷くと、先輩は言葉を句切って、
「ゆーちゃんのことが、好き?」
「……はい」
私は、その言葉に深く頷いた。
ゆたかのことが、大好きだから。
ゆたかのことが……だいす……き……
「っ?!?!」
い……言ってしまった?! ヒミツのことなのに!
大好きなのは確かだけど、心の中にしまっておかないといけないのに!
「みなみちゃん、素直になったほうがいいよ」
「えっ……?」
「ゆーちゃんのことが好きなのを隠していて、ゆーちゃんのことを傷つけちゃったんでしょ?」
「そ、それは……はい……」
私は覚悟を決めて、深く頷いた。
泉先輩は、何もかもお見通しなんだろう。
「素直になれないまま悶々としていたら、またゆーちゃんのことを傷つけるかもしれないんだよ?」
「あっ……」
言われてみれば、そうだ。
またゆたかに触れられて、舞い上がって、パニックになって……また、手を出してしまって。
恐ろしいことだけど、先輩が言うとおりゆたかを傷つけてしまうかもしれない。
「そんなことをまたしたら……少なくとも、私は絶対に許さない。私はゆーちゃんの
姉代わりだけど、大切な妹には変わりないんだから」
じっと私を見つめる、泉先輩の真摯な瞳。
「たとえみなみちゃんでも、ゆーちゃんを傷つけたら絶対に許さない」
それが、私の心をじりじりとえぐっていく。
「想いを捨てるか、それとも伝えるか……そうでもしないと、またこういうことが起きるかもしれない。
みなみちゃんは、どうしたいの?」
「え、えっと……」
そう言われても……今、すぐには……
「決められない?」
「いえ……その……」
「そっか、決められないか……じゃあ、勝負で決めよ」
「……勝負?」
「うん」
泉先輩は立ち上がると、ぐるりと校庭を見渡した。
「体育祭のリレーで同じ距離の走者として戦って、みなみちゃんが勝ったらゆーちゃんに
想いを告げてもいい。でも、もし私が勝ったら――」
そして、私のことを見下ろして……
「みなみちゃんは、ゆーちゃんへの想いを諦めること」
挑発するように、小さい声で言い放った。
「そ、そんなっ!」
「だって、ずっと迷ったままだったら、またゆーちゃんを傷つけるかもしれないんだよ?」
「…………」
「その前に、決着をつけよう。みなみちゃんと私が戦うことで」
泉先輩と、私が戦う……?
ゆたかのお姉さんと戦うだなんて……考えたくもないし、したくもない。だって、もしかしたら
またゆたかが傷つくかも――
「あっ、ちびっ子! なんでお前がここにいるんだよー!」
「えっ?」
突然、日下部先輩の叫び声があたりに響く。
「やあ、みさきちもリレーの練習かい?」
泉先輩は、さっきの冷笑が嘘のように日下部先輩にのほほんと向かい合っていた。
「私もかって、もしかしてちびっ子も?!」
「そーだよー」
「そっか。だったら、勝負だ勝負! 私と勝負して勝ったら、柊は一週間私たちとお弁当だかんな!」
「ああ、それに関してなんだけどさ。実は今、みなみちゃんと約束しちゃったんだよね」
「なにぃっ?!」
「い、泉先輩……?」
なんで……? まだ、返事してないのに……
「そっか、岩崎さんと勝負かー……約束だったらしょうがないか。でも、岩崎さんはウチの
エースなんだから、楽に勝てると思うなよっ!」
「えっ……えっ?」
日下部先輩、なんで指をびしっと……?
「私だって伊達に記録持ちじゃないからさー。ま、300mランナーとして待ち受けてますよ」
「くっそー! 岩崎さん、こうなったら特訓だよ、特訓!」
「あの、その……私は……」
なんで、二人の間でトントン拍子に決められていくの……?
「んじゃま、そんなわけでがんばってねー」
「あっ、あの……泉先輩?」
私の問いかけを振り払うようにして、泉先輩は手ひらひら振りながら別のリレーの集団のほうへと行ってしまった。
……どうしよう。
「さっそくみんなを集めないとね。ほらっ、みんな、練習やるよーっ!」
「「はいっ!」」
日下部先輩と他の先輩たちの声が、またあたりに大きく響く。
……どうしよう。
泉先輩と、勝負だなんて……
私は呆然としたまま、泉先輩が去っていったほうをただ見つめていた。
* * *
『糟日部、糟日部です。野田線はお乗り換えです』
ドアが開くのと同時に、人混みに流されるようにして外に出る。
同じ制服の人たちに混じって改札を出て、スクールバスのバス停へ。
いつも通りのはずの、通学の喧噪。だけど、みゆきさんは今日も委員会のお仕事があって
もう先に登校している。
バス停で待っていても、泉先輩や柊先輩、田村さんはやってこない。
そして……ゆたかの姿も無い。
みんなの姿を追っていたけど、誰も来ないままスクールバスに乗り込んだ。
がたんごとんと、揺れるバス。おしゃべりしたりする人たちもいたけど、私はただ黙っているだけ。
学校に着いて、校門前であたりを見ても誰かがいるわけでもない。
教室に入っても、人はまばら。軽くあいさつはしても、それだけで終わり。
「せ、先生はっ?! 先生はまだだよねっ?!」
始業のチャイムが鳴っている最中、目の下にくまを作った田村さんが飛び込んでくる。
申し訳なさそうに笑う田村さんに、会釈を返す私。
少しだけ気が楽になったけど……やっぱり、ゆたかは来ない。
ホームルームに来た担任の先生からも、ゆたかの欠席が告げられる。
今日も、ゆたかがいないんだ……
落ち着きかけた心が、また沈んでいく。
そこまで、ゆたかはショックを受けていた。
そこまで、私はゆたかを傷つけた。
そう思い知らされたみたいで……心が、強く痛む。
授業のかわりの体育祭の準備も、手につかない。
創作ダンスは、細かい失敗の連続。
リレーも、バトンリレーは出来てもうまく走れない。
うまく走れたと思ったら、今度はバトンを渡しそこなって……
「うーん、どしたの? 悩み事? そんなの走って忘れて、全部吹き飛ばしちゃいなよ!」
日下部先輩はそう言ってくれたけど、吹き飛ばせない。
だって、ゆたかとことだから。忘れて吹き飛ばすことなんて、できるはずがない。
でも、迷惑はかけないようにしないと……明日は、もう本番なんだから。
お昼になって、田村さんといっしょにお弁当。
時々話したりもするけど、会話が続かない。
いつも三人いっしょだったお弁当なのに、ゆたかがいなくなっただけで噛み合わない。
そういえば……いつも、ゆたかがお話の軸になっていた気がする。
ゆたかがいない今になって、それに気付くだなんて……
お弁当を食べた後、いっしょに飲み物を買いに行った道のりも、今は一人。
友達と連れ立って買いに行ったりする中で……私だけが、ぽつんと歩いている。
味気ない、ただの行き帰りの作業。
いつも楽しみにしているミルクティーも、今日はおいしくない。
午後の練習も、放課後のホームルームも。
ことあるごとにゆたかの姿を追って……その度に、ゆたかがいないことを思い知らされる。
いつも、そこにいるのが当たり前だったのに。休んだ次の日でも、お見舞いに行った
次の日には元気な姿でここにいたのに。
もちろん、お見舞いに行きたいとも思った。
だけど、そこは泉先輩の家。私と勝負をしようと言った、泉先輩の……
『たとえみなみちゃんでも、ゆーちゃんを傷つけたら絶対に許さない』
無表情に言い放ったその言葉を……忘れられるはずが、ない。
何もかもが、八方塞がり。
からっぽになった心が、音を立てるように軋んでいく……
「あら、岩崎さん。ちょっと遅かったですね」
「……えっ?」
突然の声に、私は思わず声を上げた。
どうして、目の前に天原先生が……?
「おー、珍しいな。岩崎がこんな時間に来るとは」
それに、桜庭先生……?
見回してみれば、開け放たれたカーテンと、ベッドと、薬品類と……見慣れたものが
たくさん置いてあった。
そっか……明日の保健委員の担当のことで呼ばれたから、保健室に向かっていたんだっけ。
「……すいません、遅れました」
「いえいえ。ただ、早い者勝ちということで救護テントの担当が決まってしまったので、
空いた時間しか入れられないんですよ」
申し訳なさそうに言う先生から、タイムシートが書かれたプリントを渡される。そこには
ぎっしりと名前が名前が書かれていて、ほんの少しだけ虫食いのように空白があった。
「……では、私はダンスとスウェーデンリレーがあるので……午前一番で」
「助かります。準備運動や体調管理を怠った生徒が、案外怪我をしたり気分が悪くなったりして
来る時間帯でしたから」
「……そうなんですか」
「いつもふゆきはそれで目を回していたからな。ま、頼む」
何故か、桜庭先生にもお願いされてしまった。
「もうっ、学校じゃせめて先生をつけてって言ってるじゃないですか」
「別にいいだろー、知らない仲でもあるまいし」
「公私の区別はしっかりつけないといけません」
「そんな堅苦しいこと言わんでも」
小気味のいい、二人の弾むような会話。
まるで、ずっといっしょにいたみたいに……
「……お二人とも、仲がいいんですね」
「ま、腐れ縁といったところだ」
「ひかるちゃん……ちっ、違いました、桜庭先生とは小さい頃から顔見知りなんです」
「言ったー、今ひかるちゃん言うたー」
「気のせいです、気のせいですよ?」
「つーか訂正しろよ。幼なじみだってさ」
「似たようなものじゃないですかー」
幼なじみ……ということは、二人とも、いつもいっしょにいて……だから、こんなに仲がいいのか。
「い、今のはなかったことにして……それでは、明日はよろしくお願いしますね」
「は……はい」
珍しい……天原先生が、こんなにあたふたするなんて。
「学校でひかるちゃんって言った記念に、今日はふゆきのおごりな」
「なんで、いつも名前を呼んだだけでそんなことになるんですかー?」
気軽に言う桜庭先生に、いつも通りといった具合に返す天原先生。それだけ、二人が
が
親しいってことなのかもしれない。
私も、ゆたかとそんな風になれたら……
でも……
ゆたかは、ここにはいなくて……
泉先輩に負けたら、ずっと、友達のままで……
『だって、私はみなみちゃんが大好きだもん』
ここでゆたかに言われた言葉を、今でもはっきり覚えてる。
ゆたかは、私が好き。
でも、それは友達として。
私は……どうすれば……
「――岩崎、どうしたんだ? ぼーっとして」
「……えっ?」
その言葉に気付くと、桜庭先生と天原先生が私のことをきょとんとした顔で見ていた。
「あの、いえ……ちょっと、疲れただけです」
「今日も練習がたくさんありましたからねー。明日に備えて、ゆっくり休んだほうがいいですよ」
「はい……えっと、失礼します」
慌てて頭を下げて、私は保健室を後にした。
先生たちに、今の想いを全部吐き出してしまいそうで……だけど、こんな想いを話せるわけがない。
それに、ゆたかとの想い出がありすぎる場所で……心が、苦しくて……とにかく、今は頭を冷やそう。
私は近くのお手洗いに入って、洗面所に向かった。
顔を洗ったら、きっと気分も晴れて――
『……大丈夫? 保健室まで、いっしょに行こうか?』
『あ……ありがとうございます』
「……っ!」
鏡を見た瞬間、頭の中で想い出がフラッシュバックする。
それは、ゆたかと初めて出会ったときの記憶。
大丈夫かなと思って、小さな子の顔をのぞきこんで……
その時のことを思い出した私は、急いで廊下に出て――
『会えて良かったです。ずっとハンカチ返そうと思って……』
『……あげたつもりだったから』
今のは……制服の採寸のときの想い出。
同学年だと思わなくて、それをぽつりと漏らしたらむくれてて……
それから、次は――
だんだん、歩みが早くなっていく。
靴を履くのももどかしくて、昇降口の扉を開けるのも鬱陶しくて、いつの間にか駆け出していたほどに。
『これから三年間、よろしくお願いしますっ!』
そこは、夕暮れの校門前。
初めて出会った日の、初めての別れ。
手を振るだけだった私に、そう言って笑いかけてくれた。
校門前のバス停で、宿題のことでいっしょに悩んだこと。
バスの中で、手を握ってくれたこと。
駅前のバス停で、私を見つけると駆け寄ってくれたこと。
駅のホームで、手を振って別れたこと。
電車に乗って、いっしょにお出かけしたこと。
好きになっていった軌跡が、どんどん心の中で花咲いていく。
想い出の中のゆたかは、いつも笑顔で。
凍り付いてた私の心を、あったかく溶かしてくれて。
ゆたかのことを、いつしか追いかけるようになって。
どうして、こんな大切なことを忘れていたんだろう。
眠っていた想い出に誘われるように、私は校門の前に出た。
振り返ってみれば、大きな陵桜学園の校舎が見える。
毎日通っている、大好きな場所。
そして……大好きな人との、たくさんの想い出が詰まった場所。
『みなみちゃん、ごめんなさい……私、今日は帰るね』
だけど……最後の想い出は、ゆたかの無理矢理作った笑顔。
そんな表情で、ゆたかへの想いを断ち切るのは嫌だ。
ちゃんと謝って……ちゃんと、ゆたかへ今の想いを伝えよう。
ゆたかのことが、大好きだと。
「……日下部先輩」
「おっ?」
一旦教室に戻った私は、体操着に着替えて校庭にやってきた。
「あれっ? 岩崎さん、保健委員のほうは大丈夫なの?」
何度も走ったのか、日下部先輩は疲れたようにトラックに座り込んでいる。
「……はい」
小さく頷いて、私も日下部先輩に向かい合うように座った。
「で、どしたの? これから練習する?」
「はい。それで、あの……」
「うん?」
不思議そうに、首を傾げる日下部先輩。
「……お願いします」
「い、岩崎さん?」
私は日下部先輩に向かって、深く頭を下げた。
「……泉先輩に勝てるよう、特訓して下さい」
「ちょ、ちょっと、頭は上げよーよ!」
そういうわけにはいかない。だって、先輩に教えを請うんだから。
「……お願いします」
「ま、まいったなぁ、そこまでするなんて。
まあ、断る理由なんて何もないし、私もあのちびっ子には負けたくないし……うんっ、いいよ!」
「ありがとうございます」
日下部先輩の快諾に、私は顔を上げてもう一度頭を下げた。
「わわわっ、そ、それはいいって!」
それを、日下部先輩が私の肩を揺すって手を止めようとする。
ただ、礼儀を尽くそうとしただけなのに。
「あのさ、岩崎さん。悩み、吹っ切った?」
「……いいえ、まだまっただ中です」
「そっか……でも、昼間よりずっといい顔してるよ!」
そう言って、日下部先輩は私に笑いかけてくれた。
「……はいっ」
私も精一杯笑おうとしたけど、うまくできない。
そのかわり、強く頷き返してみせた。
――泉先輩。
――私は、絶対負けませんから。
* * *
体育祭の朝は、慌ただしさから始まった。
いつもの電車よりも数本早く登校して、教室に荷物を置いたらすぐに保健室へ。
「……おはようございます」
「あっ、おはようございます。ぐっすり眠れましたか?」
保健室に入ると、いつもの白衣姿で天原先生が立っていた。
「……はい」
「それならよかったです。それでは、用意を始めましょうか」
「……テントのほうは?」
「もう設営されてますよ。あとは荷物を運び出すだけです」
「……わかりました」
先生の指示通りに、まとめられていた応急措置用のセットを外へと運び出す。
クーラーボックスに入れられた氷嚢、保冷剤や、包帯や絆創膏、消毒液といったもので、
何回かに分けて持ち出していった。
少し大変だったけれど、保健室と校庭が繋がっていて助かった。
外への持ち出しが終わったら、今度は設営。
机に持ち出したものを並べたり、ビニールシートの上に毛布を敷いたり。
それが全部終われば、あとは保健委員としてのお仕事を待つだけ。
でも、最初から来る人はいないわけで……少し、暇。クラスのほうにも顔を出したかったけど、
持ち場を離れるわけにもいかない。
――ゆたかは、今日来ているんだろうか。
数日間休んでいただけに、今日も休んでいるのか。
それとも、ちゃんと来れたのだろうか。
休んでいたとしても、泉先輩には勝たないといけない。
来ていたとしたら、必ず泉先輩に勝って……ちゃんと、謝ろう。
それから、想いをちゃんと伝えないと。
「よーしっ、みんなちゃんと集まったね!」
創作ダンスを終えて、午前に残るのは最後のプログラム。
日下部先輩を始めとした三人の先輩といっしょに、私は入場門に集まっていた。
「ウチらC組・D組連合は今三位! でも、これで勝てば一気に逆転の目もあるよ。
ここで一気に追い越して、午後の男子競技にバトンを渡そう!」
「「はいっ!」」
「……はいっ」
「まあ、ここまで来たらあとはちゃんとそのバトンを渡すこと。それが一番大事だから、
しっかり繋いでいこうね!」
「「はいっ!」」
「……はいっ」
他の二人の先輩といっしょに、力強く頷く。
確かに私は泉先輩と勝負してるけど、これはあくまでも団体競技。和を乱すことだけは、絶対してはいけない。
「それじゃ、最後に行くよっ!」
そう言って、開いた手の甲を差し出す日下部先輩。
私たちは、その下に同じように開いた手の甲を差し出して――
「勝つぞーっ!」
「「おーっ!」」
「……おーっ!」
先輩達につられて、いつになく大きな声。
これで、気合いも十分。
「岩崎さん、頑張ろうねっ!」
「昨日いっぱい練習したもん、きっといけるよ!」
そのままの元気で私に話しかけてくる、二年の成瀬先輩と、三年の藤井先輩。
「……はいっ」
だから、私も精一杯元気を込めて頷いた。
いつも失敗していた私を温かく見守ってくれていた、二人の先輩。日下部先輩もそうだけど、
二人の先輩にも感謝しないといけない。
「岩崎さん、昨日の成果思いっきり出そうね!」
「はいっ……あの、先輩」
「うん?」
「その……ありがとう、ございました」
ぺこりと、小さく頭を下げる。
「だっ、だから、そーゆー堅っ苦しいことはやめよ? それにさ」
困ったように笑いながら、日下部先輩が私の肩にポンと手を置く。
「まだ始まったばっかりだよ。そーゆーのは、全部終わってから」
そうか……まだ、今は始まりなんだ。
「そんじゃ、がんばろーね!」
「……はいっ」
私が頷くのを見て、日下部先輩は満足そうに笑いながら入場列に並んでいった。
私も、それにならって列へと並ぶ。
「……あっ」
隣には、別のチームの走者として泉先輩が並んでいる。
だけど、泉先輩は私を一瞥しただけで何も話そうとはしない。
――今は、言葉はいらない。
まるでそう言っているように、すぐに視線をそらす。
『次の種目は、チーム対抗の女子選抜スウェーデンリレー。午前最後の種目です』
そのアナウンスが流れた瞬間、心がぐっと引き締まる。
もうすぐ、勝負の時。
門が開いて、まわりからの歓声が聞こえてくる。
自分の出番が終わってまわりで遊んでいた人たちも、客席に集まって私たちのことを見ていた。
……まるで、焼き付くような緊張感。
その中で、私は泉先輩に個人的な勝負を挑もうとしている。
決して許されないことだけど、もう、決めてしまったから。
絶対に、泉先輩には負けないと。
『各チーム、走者はスタート地点についてください』
アナウンスとともに、走者ごとにそれぞれ異なるスタート地点へと散っていく。
最初に走る藤井先輩はスタートラインに。200mを走る成瀬先輩はその反対側に。300mを走る私は
成瀬先輩についていって、最後に400mを走る日下部先輩は、藤井先輩についていった。
そして……私の隣には、同じ走者の泉先輩がいる。
私が今、絶対に勝たないといけない人が。
スタートラインのほうを振り返ってみると、藤井先輩はもうスタートラインについていた。
私たちのチームは現在三位ということで、三番目のレーンをとることが出来たみたい。
それを確認しているうちに、最初の走者がクラウチングの体勢を取り始めた。
さっきまでざわめていた生徒席も、今はもう静まりかえっている。
もうすぐ、始まるんだ……
『位置について……よーい――』
アナウンスから一瞬間を置いて、
パァンッ!
ピストルが鳴るのと同時に、一斉に走者が飛び出していった。
静まりかえっていた生徒席が、また歓声を取り戻す。
……もう、後戻りは出来ない。
バトンゾーンでは、もう成瀬先輩がスタンバイしている。
コーナーに差し掛かって、藤井先輩は二位に上がっていた。
そのままコーナーを曲がりきって、バトンゾーンへと駆け込んでいく。
成瀬先輩も、軽くバトンゾーンを走り始めて――
「……あっ!」
そう思った、次の瞬間。
手を伸ばした藤井先輩が、追い抜こうとした別のチームの人に煽られて……
カランッ
バトンが、先輩の手からこぼれていった。
「先輩っ!」
私が叫ぶのと同時に、藤井先輩がすぐさま振り返る。
慌てて走り出して、バトンを拾いに行って――
「ごめん、成瀬!」
渡したときには、最後のバトンリレーになっていた。
「せ……先輩……」
「どうしよう……やっちゃった……」
呆然と座り込む、藤井先輩。
あれは、不可抗力のはずなのに……先輩のせいなんかじゃ、ないのに……
「ごめんなさい、岩崎さん……」
「藤井先輩……」
先輩はうなだれて、そのままうずくまってしまった。
どうにかしないとと思ったけど、私は次のランナーで……
それに気付いた私は、慌ててトラックを見やった。
第一コーナーを曲がりきっても、まだ成瀬先輩は最後尾を走っている。一位のA組・
B組連合はもう第二コーナーを曲がっていて、泉先輩がバトンゾーンに立っていた。
その走者が、バトンゾーンに差し掛かろうとした直前……
「っ!?」
泉先輩が、挑戦的な視線で私を見つめてきた。
『その前に、決着をつけよう。みなみちゃんと私が戦うことで』
あの時と同じ、挑発的な目。
一瞬感じたその視線を残して、泉先輩はバトンを受け取って走っていった。
不安になんか、なっていられない。
私は、泉先輩に勝たないといけないんだから。
「……行ってきます」
私は藤井先輩の肩に一瞬手を置くと、何人もの走者が走り去っていったバトンゾーンに立った。
最後のコーナーを、成瀬先輩が全力で駆け抜けてくる。
それを見て、軽くバトンゾーンを走り出して――
「岩崎さんっ!」
先輩の言葉とともに、バトンを力強く受け取った。
そのまま、大きなストライドでストレートを駆け抜けていく。
ただひたすらに、足に力を込めて。
第一コーナーに差し掛かって、五位の選手の背中が近づいてくる。
少し大回りに走って、私はその選手を抜き去った。
でも、まだあと四人。
バックストレートで団子になっている人たちを、なんとか抜き去ろう。
向かい風の中、呼吸も忘れてバックストレートに向かう。
関係者席の前を駆けて、もう一人の間近に迫る。
今しないといけないのは、歯を食いしばって抜き去ること。
次に、泉先輩を抜き去ること。
その前の一人一人は、ただ邪魔なだけ。
100mを過ぎて、三位に立つ。
それでも、まだ泉先輩との距離は10mぐらいある。
次の第二コーナーで、少しだけでも差を詰めておかないと……
だけど、先輩は二位の走者を引き離し始めている。
大きなストライドを保って、私は先輩に食らいついていこうとした。
でも、差はほとんど縮まらない。
とんでもない速さで、先輩がバックストレートに入っていく。
「……はぁっ」
食いしばっていた歯が開いて、呼吸が漏れる。
速く走るための無呼吸が、終わってしまう。
「はぁっ、はぁっ」
それでも……先輩に負けたくない。
ストレートに入って、勝負をかけて……
でも……全然、縮まってくれなくて……体中が、悲鳴を上げていく。
足も痛くなって、肺も急に全力で動き出して……
意識が……遠のきそうに……
――みなみちゃんっ!
まさか……幻聴まで聞こえてきて……
――みなみちゃん、がんばって!
あれっ……声が、鮮明……?
千々切れになりそうな意識をつなぎ止めて、前のほうを見ると――
「がんばって! もう少しだよっ!!」
ゆたかが、救護テントから身を乗り出していた。
しかも、大声を張り上げて。
ゆたかが……応援してくれてる……
そう思った瞬間、体に力が戻っていく。
まるで、ゆたかの言葉が染み渡っていくように。
大きなストライドのまま、最後のコーナーを曲がる。
先輩とは、ほんの少しだけ差が縮まっていた。
あとは、このコーナーで仕掛けよう。
せっかくのゆたかの応援を、無駄にしたくない!
六メートル、五メートルと先輩の背中が近づいてくる。
でも、決定的には捉えられない。
あともう一歩なのに……もう少しで、届くのに!
じりじりと近づくうちに、私たちはバトンゾーンに突っ込んだ。
もう、時間がない。早く、先輩を抜かさないと……勝たないと!
また、ほんの少し差が縮まる。
その向こうでは、日下部先輩が手を伸ばしていて……
――お願い……届いて!
でも、その願いも虚しく……
私よりも少し早く、泉先輩に先にバトンを渡されてしまった。
「…………」
先にバトンを渡されたということは……私は、負けたということで……
トラックの内側へ倒れ込みながら、その事実を確認する。
負けたということは……
私は、ゆたかには想いを伝えられない……ということ……?
「はぁっ、はあっ……はあっ……」
肺が、酸素を求めるために激しく波打つ。
荒い呼吸と、額を幾筋も流れる汗。
それといっしょに……涙が、流れ出てくる。
ゆたかへの想いを、捨てないといけない。
私のことを、応援してくれたのに。
想いを通わせられると……そう、思ったのに……
「ううっ……」
やだよ……そんなの、やだ……
想いを告げられないまま、友達のままでいるだなんて……
「――なみちゃん、みなみちゃん」
遠くから、聞こえてくる声。
顔を覆っていた手をどけると、そこには泉先輩がいた。
「泉、先輩……」
さっきまでの挑発的な顔が嘘みたいな、いつも通りの穏やかな笑顔。
――その笑顔は、勝ち誇った笑顔なんですか?
そう言いたくなる心を抑えて、私は先輩のことを見上げた。
ゆたかのことを守れて、安心したんだろう……
私に絶望を与えられて、よかったと思っているんだろう……
暗い感情が生まれる中、先輩はいつものようにネコ口を見せると――
「……ふうっ。やー、お姉さん、すっかり負けちゃったよ」
「……え?」
って、えっ……? どういうこと……?
私は、先にバトンを渡せなかったのに……
「ほら、見てごらん」
先輩に促されて、私はトラックのほうを見た。
「あっ……」
日下部先輩が、わずかにリードしたまま走っていて――
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
大歓声の中、真っ先にゴールテープを切った。
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
大はしゃぎで、私のところに駆け寄ってくる日下部先輩。
「ありがとう岩崎さんっ! ううんっ、みなみっ、ホントにありがとっ!」
強引に引っ張られるまま、私はその場に立たされた。
「えっ? ……あの、その」
「すごいよ岩崎さん、あの差をあそこまで詰めるなんて!」
「ありがとう岩崎さん……私、あのままだったらどうしようって……」
藤井先輩と成瀬先輩も駆け寄ってきて、私に抱きついてきた。
「えっと……先輩……?」
「なにボーッとしてるの! 一位だよ、一位! 喜ばないとっ!」
「さっすがウチのエース!」
「なんてったって、MVPは岩崎さんだよ!」
え、えっと、優勝……?
なんだか、よく把握出来ないというか……
「やいちびっ子、ウチのみなみの実力を見たか! 文句は言わせないぞ!」
「やー、負けました負けました。まさかあそこまでみなみちゃんに迫られるとは」
確かに差を詰めはしたけど……でも、それで……勝ちで、いいの?
頭の中で、さっきまでの落胆と戸惑いと驚きが混ざっていく。
「約束通り、柊は一週間ウチのだかんなっ!」
「ええっ?! ちょっとみさきち、これは私とみなみちゃんの個人勝負なんだよ?」
「なーに言ってるんだ。これは代理戦争、仁義なき戦いだ!」
「ちょっ、おまっ、そ、それはないよーっ!!」
るるるーと涙を流してる泉先輩だけど……私のほうは、もういいの?
なんか、どうしたらいいかわからない……
「みなみちゃんっ!」
「えっ……?」
「おや、勝利の女神様のお出ましですかナ?」
泉先輩の言葉に振り向いた瞬間、
「みなみちゃん、すごいよっ!」
「わっ!」
ゆたかが、凄い勢いで私に抱きついてきた。
「ゆ、ゆたか……?」
「おおっ、ちびっ子妹! って、ウチのチームの子なんだよな。同じちびっ子なのに、感心感心」
「あのさーみさきち、ウチのゆーちゃんをちびっ子呼ばわりはやめてよね」
「ちびっ子妹はかわいさいっぱいなちびっ子だけど、お前はかわいげのないちびっ子だ!」
「なにをーっ!」
わははと笑っている日下部先輩に、ぷんすか怒っている泉先輩。
「……くすっ」
「あはははっ」
それにつられて、私もゆたかも思わず笑ってしまった。
本当、ゆかいな人たちだ。
「あー、楽しいところ悪いんやけど」
って、黒井先生がどうしてここに?
「これから表彰と中間得点発表やから、とっとと並んでくれへんかなー?」
「あっ!」
「ごっ、ごめんなさいっ!!」
黒井先生の額に浮かぶ青筋を見た私たちは、慌てて表彰台のほうに並び始めた。
「みなみちゃん」
その途中に、ゆたかが声をかけてくる。
「うん?」
私がゆたかのことを見下ろすと、ゆたかは両手で私の右手を包んでくれた。
「おめでとうっ!」
それは、久しぶりの感触。
私が大好きな、ゆたかの少し冷たい手。
そして、あたたかいゆたかの言葉。
「……ありがとう」
私は少しだけ笑って、ゆたかに小さく頷いた。
* * *
「「ごめんなさいっ!!」」
「……あ、あの?」
午前の部が終わった、その直後。
泉先輩に連れられて裏庭に来た私は、何故か先輩と田村さんに頭を下げられていた。
「あの……よく、わからないのですが」
「えーと、その……ですねー」
おずおずと顔を上げる、泉先輩と田村さん。
「ここ最近の、ゆーちゃんとのことなんだけどね?」
「……はあ」
その当のゆたかは、裏庭の入口近くで待ってもらっている。
でも、なんで私だけここに……?
「実は、その……全部、私とひよりんで仕組んでたことなんだ」
「……はい?」
えっと、仕組んでいたって……今回の勝負のこと?
「実は、みなみちゃんにゆーちゃんのことを聞く前からひよりんから連絡があって、
どうしてゆーちゃんが泣いてたかを聞いたんだけど……それで、みなみちゃんに
ゆーちゃんへの迷いを晴らしてもらおうと、おねーさんが一肌脱ごうと思って」
それって、もしかして……
「だから、あの勝負を仕掛けた……と?」
「ほ、本当にごめんね! みなみちゃんにゆーちゃんへの気持ちを再確認してもらおうと
思ったんだけど、あそこまで落ち込むと思わなくて……でも、なんか引っ込みがつかなく
なっちゃってさ……あのね、最初からゆーちゃんとみなみちゃんを引き離そうとは思って
なかったんだ。だけど、その、今日もみなみちゃんが本気を出してたから、私も本気を
出しちゃって……えっと、本当にごめん。私、みなみちゃんのことを煽るような真似しちゃったよね」
いつになく、しおらしく頭を下げる泉先輩。
ぴょこんと飛び出ている髪の毛も、まるで私に謝っているみたい。
「私もごめんね、岩崎さんの気持ちを探るような真似しちゃって……でも、このまま二人が
ぎくしゃくするの、どうしても見てられなかったから……」
田村さんも、半泣きになりながら私に頭を下げる。
「……謝らなくて、いいです」
「えっ?」
そう言うと、二人はきょとんとした顔を私に向けた。
「私こそ、ごめんなさい……自分の勝手な気持ちで、二人を振り回してしまって」
一旦言葉を句切って、そのまま話を続ける。
「むしろ……感謝させてください。私は、泉先輩と田村さんのおかげで、ゆたかへの気持ちに
向き合うことが出来ました」
「みなみちゃん……」
「私は……ゆたかのことが、好きです。でも、それに対する迷いでゆたかを傷つけるのは、もう嫌です。
だから……ちゃんと、伝えようと思います。その上で、ゆたかが望むなら……友達のままでも、
私はいいと思っています」
自分で確かめるように話す私を、暖かい目で見つめてくれる二人。
二人とも、私のことを心配してくれたんだから……感謝こそすれ、怒ることなんて一つもない。
「これから……ゆたかに、ちゃんと話そうと思います」
「……そっか」
「がんばってね、岩崎さん」
頷く泉先輩と、両手で拳を握る田村さん。
「……うん」
せっかく、二人が私に想いを気付かせてくれたんだ。
この想いを、無駄にはしたくない。
「じゃあみなみちゃん、あとはお二人で」
「また、後でね」
泉先輩と田村さんは、手を振りながら昇降口のほうへと向かっていった。
ここに残されたのは、私と……入口にいる、ゆたかだけ。
高鳴り始めた胸を心の中で押さえながら、ゆっくりと歩き出す。
やがて、だんだん見えてきた木のアーチの下には――
「あっ、みなみちゃん」
いつもの笑みを浮かべたゆたかが、私のことを待っていた。
「もう、お話は終わったの?」
「……うん。二人とも、教室に戻っていった」
「そっかあ。私たちも、教室に戻ろっか」
「いや、その……」
「うん?」
今は、教室には戻れない。
「……ちょっと、いっしょに散歩しようか」
「そういえば、久しぶりに会うんだもんね。うんっ、いいよ」
かわいらしく、こくんとゆたか。
……ゆたかの仕草ひとつひとつが、心の琴線にふれていく。
そのまま、私たちは裏庭を歩き始めた。
いろんな植物がある小高い丘には、秋桜がたくさん咲いている。
木々は少しだけ色づいていて、みんな静かに風にゆられていて……二人きりで話すには、
とてもいい場所だった。
「その……調子は、大丈夫?」
「朝はちょっと悪かったんだけど、寝ていたら気分が良くなったから。それで、天原先生に
頼んで救護テントで見させてもらったんだ」
「……そっか」
だから、あの場にゆたかがいたんだ。
「みなみちゃんが走るって言ってたから、絶対応援しなくちゃって思って」
「……ありがとう」
ゆたかの言葉は、いつも私の心を暖かくしてくれる。
高鳴っていった鼓動も、少しだけ落ち着いて……
「その……ゆたか」
「なあに?」
「……この間は、ごめん」
植物の小径のまっただ中で、私は話を切り出すことにした。
「ゆたかの手を、突然払ってしまって……」
「えっ、えっと、それはあの、突然の事故で、私のほうが悪かったから――」
「ううん、違う」
ゆたかの言葉を遮って、首を横に振る。
「あれは、私の心の迷いのせい。私が、はっきりしなかったから……ゆたかを、傷つけてしまった」
「そ、そんなことないってば! みなみちゃんは、何も悪く――」
「ううん、私が悪い。もっと早く、自分の気持ちに気付くべきだった」
「……えっ?」
「初めて会って、採寸の日に再会して……それから、ゆたかはずっといっしょにいてくれた。
私も、いっしょにいたくて、守ってあげたくて……気付いたら、ゆたかの姿を追っていた。
休んでる日はさみしくて、来てくれると嬉しくて……でも、会えなかったこの数日間、
ずっと心が痛かった。あんな形で別れたまま、仲直りもできないだなんて」
「みなみちゃん……」
「その中で、私はやっと気付いた……いつもゆたかが、私の心の中にいたということ。
ゆたかに、いっしょにいて欲しかったということを」
私はそう言いながら、小高い丘から見える校門を指さした。
「あの場所でゆたかに『三年間よろしく』と言われたとき、いい人と巡り会えたと思って
……それは、間違ってなかった」
そして、ゆたかのほうに向き直る。
「ゆたかは、いつも心をぽかぽかさせてくれて、笑顔をくれて……私は……」
言わないと。
今、ちゃんと想いを伝えないと――
「私は……ゆたかのことが、好き。
一人の女の子として……大好き」
さあっと、冷たい風が通り抜けていく。
私とゆたかの髪を、わずかになびかせて……
「あの……えっと……」
それに反発するように、頬が赤く染まっていった。
「私は、ね」
やがて、視線をさまよわせていたゆたかが私の目を見つめた。
「みなみちゃんのこと、友達として好きなんだ」
――そうか。
やっぱり、ダメか……
その言葉が、私の心の中に影を落としていく。
「だけど……」
「……えっ?」
一瞬外しかけた視線が、またゆたかへと戻る。
「みなみちゃんはいつも、私のことを守ってくれて、いっしょにいてくれて……この間、
私が自分のわがままで倒れたときも優しく抱きしめてくれたよね」
それは、まっすぐな瞳。
私が大好きな、ゆたかの意志。
「私のことを保健室に運んでくれて、ずっと手を握ってくれて……その時のみなみちゃんの
手のぬくもりが、どうしても忘れられないんだ。みなみちゃんが、そばにいてくれるみたいで」
「ゆたか……」
「でもね、休んでる間にそのぬくもりが消えていって……さみしくて、みなみちゃんとお話ししたくて……
みなみちゃんは私が心をぽかぽかにしてるって言ったけど、みなみちゃんも、私の心を
ぽっかぽかにしてくれてたんだよ」
ゆたかの言葉、一つ一つが私の心を高鳴らせていく。
「今、みなみちゃんに好きだって言われて、すっごく嬉しかった。みなみちゃんも、私と同じなんだって」
「……っ!」
突然、ゆたかが駆け寄ってきて……私の真っ平らな胸に、ぽふんっと抱きつく。
「私も、大好きだよ。
みなみちゃんのことが、大好きっ!」
私が、ずっと待ち望んでいた言葉。
それが、花咲くような笑顔といっしょに私の心を包んでいった。
「ゆたか……」
震える右手で、ゆたかの肩に手を回す。
それから、左手も肩に手を回して……
「ゆたかっ……!」
たまらなくなった私は、ゆたかのことをぎゅっと抱きしめていた。
ダメだ……もう、嬉しすぎて泣きそうになる。
「えへへっ……大好きだよっ」
すっぽりと私の腕に収まったゆたかが、幸せそうに笑いながら私のことを見上げた。
「私も……大好き」
私も、精一杯の笑顔をゆたかに向けてみる。
ちゃんと笑えてるかわからないけど、ゆたかの笑顔を見てると大丈夫そうだ。
「みなみちゃんの体、あったかいね……」
「ゆたかの体も……あったかいよ」
短い間触ってなかっただけなのに、ずっと待ち望んでいたゆたかの温もり。
大好きな温もりを、体で受け止められる日が来るなんて。
体の中がぽかぽかしてきて、幸せだらけになっていく。
「ねえ、みなみちゃん」
「……なに?」
「私たち、好きな人どうしなんだよね……?」
「……うん」
ゆたかの言葉に、顔がどんどん熱くなっていく。
まさか、ゆたかにそれを先に言われるとは。
「だったら……」
私のことを見上げながら、目を閉じるゆたか……って、えっ?
これって、まさか……まさか……!?
だけど、ゆたかは私に顔を向けたままで、顔を真っ赤にしてる。
「……いいの?」
私の問いかけに、ちょこんとうなずくゆたか。
その仕草が愛おしくてたまらなくなって……私も、目を閉じた。
それから、そのままくちびるを近づけて――
「……んっ」
「ふぁっ……」
ふれあったくちびるから、ぬくもりが流れ込んでくる。
体中で感じられる、ゆたかの温もり。
私だけの、大切な温もり。
このぬくもりを、ずっと守っていこう。
いつも、ゆたかが笑顔でいられるように。
いつも、ゆたかが元気でいられるように。
ずっと、ゆたかが私といられるように。
だって……
ゆたかは、私の恋人なんだから。
風に吹かれて、植物たちがざわめく。
まるで、私たちを祝福しているかのように。
* * *
見上げてみれば、高い青空。
風も少しずつ冷たくなって、秋の気配が深くなっていく。
「みなみちゃん、寒くないですか?」
「はい……大丈夫です」
いっしょにバス停に並ぶみゆきさんの問いに、私は小さく頷いた。
体育祭という忙しい日々が終わって、いつもの日常が戻ってきた。
二人での登校も、本当に久しぶり。
「あっ、ほら、みなさん来ましたよ」
みゆきさんに促されて駅のほうを見ると、泉先輩に柊先輩たち、それにゆたかがこっちに向かっていた。
中でも、ゆたかは私のほうにとてとてと駆け寄ってきて……
「みなみちゃん、おはようっ!」
「……おはよう、ゆたか」
ぽふんっと、また真っ平らな抱きついてきた。
「あらあら、仲良しさんですね」
「ほんと、二人とも仲がいいよねー」
にこにこと、私たちのことを暖かい目で見てくれるみゆきさんとつかさ先輩。
「もうっ、ゆたかちゃんったら朝から甘えちゃって」
「しょーがないよ。二人は完全無欠の仲良しさんなんだから」
手を繋ぎながら、こっちに向かって歩いてくるかがみ先輩と泉先輩。
――……先輩たちも、とっても仲良しだと思います。
ということを言ったら、また体育祭の午後みたいなことをされそうだから黙っておく。
まさか、あんな罠が待ってるとは思わなかった。しかも、先輩たち二人とも、それを喜んでやるなんて……
もしかしたら、かがみ先輩のことを見る目が変わるかもしれない。
「だって、今日からまたみんなでお弁当を食べたりできるんだもん。ねっ、みなみちゃん」
「……うん」
あどけない笑みを浮かべるゆたかに、私もうなずいてみせる。
抱きついてくっついてる場所から、ゆたかのぬくもりが伝わってきて気持ちいい。
「はいはーい、桃色空間を広げるのはそこまで。ほら、バスがそろそろ来るから、ちゃんと準備しましょ」
「はーいっ」
かがみ先輩の言うとおり、スクールバスがバス停に滑り込んできた。
ドアが開くと、ぞろぞろと中に入っていって……でも、
「……ゆたか、このままじゃ乗れない」
「あ、そっか。ごめんね?」
そう言うと、ゆたかは名残惜しそうに私から離れた。
抱きついたままだと、ゆたかがバスのボディにぶつかってしまうかもしれないけど……
「これだったら、大丈夫」
「あっ……」
代わりに、ゆたかに右手を差しのべる。
それを見たゆたかは、一瞬ぼうっとした顔になったかと思うと、
「うんっ!」
笑顔で頷いて、左手を私の右手に絡めてきた。
私も頬をゆるめて、その手を優しくにぎる。
ぬくもりからは、ゆたかの優しい想いが伝わってくる。
私の想いも、ゆたかに伝わっていてほしい。
そう思うほど、このぬくもりは気持ちよかった。
まだまだ、幼い私たちの想いだけど……
少しずつ、二人のペースで育てていこう。
想いをのせた手をいっしょに繋いだまま、
「行こう、みなみちゃん!」
「……うんっ」
私たちは、ゆっくりとバスに乗り込んだ。
プリンセス・ブライド 完
というわけで「プリンセス・ブライド」をお送りしました。
時系列的には、拙作「プリンセス・ブレイブ!」と「きみにとどけ」の中間のお話となります。
いつか「ブレイブを書いたならブライドも」というレスを頂きましたので。
今回は、ちょっとこなたに損な役回りをやっていただきました。
途中少し暗めで、キツい方も多かったのではと思います。
その分、また後でフォローできる何かが書ければいいかなと。
お楽しみいただけましたら、幸いです。
>>465 こなたが憎まれ役を買って出たのは気づいていましたが、ひよりんまでぐるだったとは。
この孔明どもめ。危うし危うし。
リレーの場面では、みなみちゃんにシンクロして読ませていただきました。お見事!
さて。
書くべき事も書いたので、人を超え砂糖菓子を超え、グラニュー糖になって崩れ去ろうと思いまs
時は一巡するッ!
>>465 バイト前になんてものを読ませてくれるんですか!!
おかげでバイトに遅刻しそうに(ry
みなみの心情がすごく細かく伝わってきました。本当に心があったまります。
友情、そして愛情って素晴らしい!
あとみなみちゃんがYMOを知っているのには少し驚きましたw
このスレに巣食う百合厨どもよ
いくら自分が異性に全く相手にされないキモメンブサヲタだからってこなたと
自分を置き換えて妄想するのいい加減やめないか?
例え叶わなくても俺の嫁と言ってる二次ヲタの方がまだ健全に見えるぞ
30レスの大作……すげぇ
あなたの脳内のSS世界は底なしですかッ?
>>1も読めないでグダグダ言う人はNGIDにポイなのです
と言うか男が全然いない作品で百合を妄想するなと言う方が無理があるかと
もしかして釣られた?
>>472 >いくら自分が異性に全く相手にされないキモメンブサヲタだからってこなたと
自分を置き換えて妄想するのいい加減やめないか?
この時点で釣り確定
「ねぇこなた、あんたにいろんなオタクが憑依してるって本当?」
「ふぇ?なにそれかがみ」
「なんか、SSの作者は自分をこなたに見立てて『女の子いっぱいうはうは』を実現してるんだって書き込みがあったんだけど」
「んなわけないじゃん、私は私だよ」
「そっか、よかった。私のこなたが別の人間になってるんじゃないかって心配したわよ」
「……『私のこなた』?」
「こなたん……ハァハァ……」
「憑依されてるのかがみじゃん!!」
かがみ危ねぇよw
ちなみに、このスレの住人は第三者の視点から「らき☆すたの登場人物達」を
見守ってる人達がほとんどだろうと。
だからこそ「○○は俺の嫁」とか、バカな発言する人も少ないんだろうし。
てか、『もし自分が「らき☆すたの登場人物」だったら』ってどんだけだよww
うむ、もし俺がらき☆すたの登場人物だったらこなたのコスプレ喫茶の名無しの常連だっただろう
・・・って何を言ってるんだ俺は・・orz
>>465 GJ以外の言葉が思いつかない。敢えて言うなら
穏やかな心を持ちながら激しいSSによって目覚めたスーパーGJ。
この二人は相互補完が凄まじい。
初出時のかなたさんが何気にアホ毛生えてることに今さら気がついた…
初期のらき☆すたでは、かがみんにも小さなアホ毛が生えていたみたいですよ?
(みwikipediaより引用)
初期のらきすたでは泉さんは別人みたいだったらしいですよ?
(みwikipediaより引用)
さすがにゆっくりになったな
こんぐらいが一番いいけど
そんな俺は今気合いいれて頑張ってます
ムッチムチのプリンプリンだったのか
これがゆっくりとかww
初代スレの(ry
でも最終回前よりは静かになった気が…
勘違い?
すみませんちょっとひよりみたいに自重します
お母さんが言っていた
あたし(こなた)の進化は光より速い
全宇宙の何者も、あたしの進化には付いて来れない……!
>>486 最終回の悲しみを乗り越えて執筆してる人もいれば、
最終回を見て以来顔面を流れる謎の液体によって画面がぼやけて執筆不可な人もいるのであろう
>>488 >>171みたいに最終回を新しい始まりと捉えてる人もいるしな。
というわけで僕たちのらき☆すたはこれからだ!
遅れてしまったが
>>465 GJ!!!!
そのボリューム、すでにSSの域を超越している…!!
俺にはそんなボリュームのあるSSなんて書けない
>>465 すんませんでした……!『うへ、30レス……読むのだるそ……』とか思ってすんませんでした……!
読み始めたらするする引き込まれて、気付いたら爽やかに読み終われてた。すげーよ
>>486 最終回前よりは確かに静かかもしれんが、それは最終回直前がとんでもないハイペースだったし…。
あと、昨日は比較的ゆっくりだったかもしれんが、今日はだいぶ速くなってると思うぞ。
というわけで?2スレ以降の、スレ立ち日とスレ消費所要時間(「移行期間」を含まないので実際の消費
時間とは異なる)をちょっと調べてみた。所要時間のほうで計算ミス等あるかもしれんがそれはスルーで。
番 スレ立ち日時 次スレ立ちまで所要時間(現スレは、現在までの所要時間)
2 5/07(月) 11:46 20日19時間8分
3 5/28(月) 06:54 13日3時間30分
4 6/10(日) 10:24 10日11時間33分
5 6/20(水) 21:57 8日23時間45分
6 6/29(金) 21:42 8日1時間56分
7 7/07(土) 23:38 12日19時間33分
8 7/20(金) 19:11 6日0時間58分
9 7/26(木) 20:09 8日4時間28分
10 8/04(土) 00:37 7日19時間44分
11 8/11(土) 20:21 7日1時間45分
12 8/18(土) 22:06 7日22時間21分
13 8/26(日) 20:27 8日2時間39分
14 9/03(月) 23:06 7日19時間18分
15 9/11(火) 18:24 3日23時間55分
16 9/15(土) 18:19 (3日3時間20分) スレ進行度78%
(最速エリアの最終回:「16」スレ立ちからおよそ1日6時間後 そのときレス番約230)
>>492 乙
こうやって見るとだんだん速くなっていってるな
特に15スレの4日弱は異常なほどのスピードだな
>>465 乙&GJでした!あなたの作品は本当に素晴らしい!
悪こなたかわいいよ悪こなた
ところで、みなみが言ってたかがみの罠についてkwsk
1年放送だったら、25〜30スレあたりで消費速度が光速を超えてたな(←大ボラ)
>>496 大ボラボラボラボラボラボラボラーレ・ヴィーア
だから謝って(ry
しっかし、第2期まで何して暮らそう。庭いじりでもするか。
>>495 うおっGJ!
>>497 ナランチャ自重w
最近雑談だけする住人が増えた気がする
ここはSSスレなのを忘れてはいけない
>>494 予想:こなたの妹分とその恋人なら人類皆兄弟
最速組が最終回終わってもここは勢い凄いな。
スレが過疎ったら、保存してある9スレから順番に読んでみるか。
百合好きがこなたに自己投影してるって、アホか
ひよりだよ
的確だ
かがみ「こなた出ないわねぇ……もう一回かけてみるか」
某日夜・泉家
こなた「あ、着信だ。誰からだろ?」
9/18 22:54 柊 かがみ
9/18 22:55 柊 かがみ
9/18 22:56 柊 かがみ
9/18 22:57 柊 かがみ
9/18 22:58 柊 かがみ
9/18 22:59 柊 かがみ
9/18 23:00 柊 かがみ
9/18 23:01 柊 かがみ
9/18 23:02 柊 かがみ
9/18 23:03 柊 かがみ
9/18 23:04 柊 かがみ
9/18 23:05 柊 かがみ
こなた「……」
着信☆アリ
>>504 こんな感じの、他のスレで見たことあるな
…もっともこれとは逆で、
かがみがこなたの着信履歴見て、電話かけすぎな自分に自己嫌悪する感じのだったが
違うんだよ本当なんだよさっきえろえろーなSSを投下しようとしたんだよ
かがみ&つかさがこなたを2000行に渡ってあんなことやこんなことする内容で
こりゃ今年の裏世界芥川賞はミーのものだぜ解かるだろスティーヴ?とかいいながら
テキストファイルにまとめてたら、いきなりデスクトップ上にかなた似のお姉さんが
出てきて「あらあら♪」とかフキダシで喋りながらファイルをゴミ箱送りに以下略ーー!
違うんだよ本当なんだよさっきえろえろーなSSを投下しようとしたんだよ
かがみ&つかさがこなたを2000行に渡ってあんなことやこんなことする内容で
こりゃ今年の裏世界芥川賞はミーのものだぜ解かるだろスティーヴ?とかいいながら
テキストファイルにまとめてた/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\プ上にかなた似のお姉さんが
\出てきて「あらあら♪」とかフ| うるさい黙れ |ルをゴミ箱送りに以下略ーー! /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\_______/ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∨ (゚д゚ )
<⌒/ヽ-、__ノヽノ |
/<_/____/ < <
ワロタw
「ねぇみゆきさん……ちょっといいかナ」
「??何ですか、泉さん?」
「その、さ……もしかして私のこと苦手とか嫌いとかだったりする?」
「えっ!?そんな事ないですよ!?いきなりどうしたんですか……?」
「うん……いやさ、みなみちゃんを『みなみさん』って呼んでるの聞いてね、みゆきさんも親しい人なら下の名前で呼ぶんだなって思って、ね。
かがみやつかさはわかるよ、苗字同じだから柊って呼んだら紛らわしいもんね。
私はそこまで親しくないのかなぁ……って思ったらなんだか寂しくなっちゃって……」
「………………」
「あ、ご、ごめんネ?変な事言っちゃって。あまり気にしな……」
「……くすっ」
「ふえ?」
「ふふっ……すみません、笑ったりして……でも、おかしくて……うふふっ」
「むー、ひどいよみゆきさん。こう見えてわたしも結構悩んだりすることもだね――」
「私も同じように悩んでいたんですよ?」
「――え?」
「泉さんは私にだけ『さん』と付けていましたから……距離を置かれているのかな、と寂しく思っていました」
「ち、違うよっ!会った最初の頃は『お嬢様相手だからさん付けしよう』位の軽い気持ちだったけど、最近のは慣れというかいまさら変え辛かったっていうか……あ」
「ね?お互いがお互いを誤解していたんです……それがわかったんですから笑ってしまうのも無理はないと思いませんか?」
「……うん、そうだね。あははっ、なんだー……悩んで損したっ!」
「ふふ、そんなことはありませんよ。改めて宜しくお願いしますね――こなたさん」
「ぁ……うん、よろしくみゆき!」
「……まずい、想定外よ……強力すぎるライバルが生まれてしまったわ……」
「お、お姉ちゃん……これはわたし達が奪い合ってる場合じゃないよ!」
「ええ、分かってる。双子の力を合わせないと、あの歩く萌え要素には勝てないわ!」
「うん、頑張ろうね!負けないよゆきちゃん……!」
「……どうかしましたか?」
「な、なんか寒気が……」
こなたとみゆきはもう少し歩み寄るべきだと思うんだ
>>510 禿しく同意。
こなたの頭脳内では、
みゆき=歩く萌え要素=観賞用
になってるに違いな(ry
という事は第二・第三のみwikiさんが存在して、布教用・ブッかk(ry
みゆき⇒歩く萌え要素
かがみ⇒こなたのマタタビ
マタタビw確かにwww
まとめサイトより転載〜
> 申し訳ありません。諸事情で今日のところはここで打ち止めとさせて頂きます。
> 作者一覧の更新と画像関連のフォローは明日夜の更新予定です。 -- ましまろ(管理人) (2007-09-19 00:16:35)
お忙しい中、また連日投下ラッシュの中、まとめお疲れ様ですm(_ _)m
みゆき>かがみ&つかさ
よって
こなた×みゆき
ないな
518 :
11-618:2007/09/19(水) 01:03:15 ID:AuABqdNI
まとめサイトの管理人さんの行動、僕は敬意を表するッ!
本当にご苦労様です。
そしていつも思うけど、神作の後って投下し辛い…
しかもそれが30レスの大作だったら尚更。
というわけで、
>>465 超GJっス。
そんなプレッシャーに負けつつ、王冠〜のホントの最終回投下。
金髪のあの娘のエピソードです。4,5レス頂きます。
……あれ?
もしかして、私死んだっスか?
だとしたら、『萌死』で死んだのは私が人類初じゃないっスかねえ?
へへ、歴史に名を残してしまったっス……
……にしても天国ってのはとってもいい匂いがするもんなんスねえ……
それになんだかあったかくて懐かしい感じっス……
まるで誰かにおぶられてるような……
……ん!?
く、くすぐったいっス!
せっかく人が気持ちよくしてるのになんスか!?
このサラサラのブロンドヘアーは!!
……ブロンド?
「…………ん?」
ボンヤリと瞳を開くと、目の前には見慣れた金髪の同級生の姿、もとい後頭部が。
「……ってパ、パティ!?」
「オゥ、ヒヨリ!目が覚めマシタカ」
私、パティにオンブされてるんスか!?
っていうかここはどこ?天国ではないんスか?
「ダイジョブ、もう少しでヒヨリの家デス!」
あ、そう言われてみると、夕暮れの中に見慣れた風景が広がっているのが見えるっス。
私、まだ生きてるんスか……とりあえず一安心っス。
にしても……
「な、なんでこんな……?」
何故こんな状況になったかさっぱり分からないっス。
とりあえずみんなに抱きつかれたトコまでは覚えてるんスけど。
「ヒヨリは最後のゲームで突然奇声を発シテ後ろの壁に頭をぶつけて、鼻血を出して気絶してしまったんデス!」
あっけらかんと説明するパティ。
にしても、それはひどい……我ながら情けないっス……
「その後解散するコトになっテ、ヒヨリの家の方に帰るワタシがオンブしていくコトになったんデス」
「なるほど、ありがたいっス!」
でも……あれ?確かパティの家ってこっちの方向じゃなかったような……
まあ気のせいスかね?
ってそういえば、おぶられたままだったっス。
「あ、もう降ろしてもらって大丈夫っスよ」
私がそう言うと、
「そうデスカ?…フフ、残念デス」
少し名残惜しそうなしぐさを見せた後、パティは優しく降ろしてくれたっス。
「……疲れなかったっスか?」
いくらパティが私に比べて大柄だとはいえ、泉先輩の家からここまでは結構あるっス。
それに…バスとかではどうしたんスか?
でも、
「イエイエ、とても貴重ナ体験にナリマシタ!」
そう言ってニッコリと笑うパティを見てると、そんな気遣いや疑問もどうでもいいことのような気がして。
「フフフフフ!」
「はははははっ!」
気が付くと2人、声を出して笑っていて。
それは、とても心地よいものだったっス。
それからは、新しく始まるアニメのこと、好きなアニソンの話など、他愛のない会話をしながら歩いたっス。
そして話題は今日のことに。
「にしても、今日は凄い経験をしたなあ…」
ふう、と実感をともなった、軽いため息。
「フフ、そうデスネ!」
今日一日で、一生分ぐらいの経験値が溜まった気がするっス。
何の経験値かはともかく。
「特に、最後のアレは死ぬかと思ったっス…」
目を瞑ると蘇ってくる最後の光景と、聞かされた醜態を思うと、つい苦笑が漏れたっス。
「やり過ぎマシタ?」
ションボリした感じにパティが尋ねてくるっス。
そんなパティの表情を見てると、なんだ悪いことをしてる気分になるっス…
「私には少し刺激が強すぎたってだけで、嬉しかったっスよ!もちろん!」
「…ソウ言ってモラえるなら嬉しいデス!」
今度は本当に嬉しそう。パティは裏表がなくて、見てて気分が良くなるっスね。
そんな事を考えているうちに、私の家への曲がり角にさしかかったっス。
もうお別れ、か……そう思うと少し寂しいような、もう少し話していたいような。
「そういえばパティ」
そんな気分に駆られて、話の種に、私はなにげない疑問を口に出していたっス。
「せっかく最後の命令だったんスから、『みんなで王様にキス』とかにすれば良かったのに……もったいなかったんじゃないスか?」
その疑問には別に深い意味はなかったっス。
パティそういうの好きそうなのになー、とかなんとなく思っただけで、
「オゥ!しまった、ぬかりマシタ!」とかそういう反応が返ってくるのを期待してたんスけど。
…帰ってきたのは、
「ゴメンネ、ヒヨリ……実はワタシ、ヒヨリが7番だって知ってたんデス」
そんな予想外の返答だったっス。
「え?」
私の番号を知ってた?何故?
「ワタシがくじ引くトキ、偶然見えたんデス…ヒヨリ、ボーッとしてテ、手が緩んでマシタカラ」
なるほど……確かにあの時は気が緩みまくってたっスから……
「じゃあ、私だと分かってあの命令を?」
「ハイ、そうデスね」
ハッキリと言い切るパティ。
いや、そうデスねって……
「……私なんかのために使ってよかったんスか?」
次の瞬間、私の口から出たのは、そんな疑問。
…だってそう思わずにはいられない。
私なんか非じゃない位、可愛い反応してくれる娘があの場にはいくらでもいたじゃないスか。
私なんかじゃなくったって、もっと別の―――
でもそんな私の思考は、
「『王冠をかけた恋』って話を聞いたことがアリマスカ?」
パティの突然の問いで途切れたっス。
「……王冠をかけた恋?」
「ハイ」
突然何を……?
なんかのゲームのシナリオ?それとも実話?
……もしかして、王様ゲームとかけてる?
私の頭の中が疑問符で埋まる。
でもパティは私の答えを待つことなく、
「ある国の皇太子が身分違いの愛する人のタメニ、王冠を捨てた話デス」
真剣な顔でそう言ったっス。
「…………え?」
王冠を捨てた?
…愛する人のために?
その『愛する人』というフレーズに動揺を隠せない。
いや、そりゃ考えすぎかもしれないけど、
このタイミングでそんな話をするなんてそれじゃまるで――――――
パティの表情を伺おうと目を向けると、バッチリ視線が合ってしまったっス。
「パティ……」
「フフ、ヒヨリはイツモ他の人のコトばかり考えてマスから、スキンシップの良さを伝えてアゲヨウと思ったんデス!」
その言葉は、いつもよりほんのちょっと本気のような。
「…ヒヨリがあんまりオクテだと、ワタシも困ってしまいマスからネ」
な、なんだか含みを持たせた口調っス……
「それから、ワタシ『なんか』なんテ言葉、ヒヨリには使って欲しくないデス」
「……え?」
そういえばそんな事さっき言ったっけ……
魅力的過ぎる人達に囲まれて、知らない間に自嘲癖がついてるんスかね?
そんな風に自己分析してみる。
でもそんなの何処吹く風、とばかりにパティが自信満々に言い放ったっス。
「確かに他のみんなも可愛いデスけど、ワタシにとってはヒヨリが一番なんですカラ!」
と。
「…………え?」
最初は意味が分からなかったっス。
でも。
「聞こえませんデシタか?ダカラ、ワタシにとってはヒヨリが一番可愛いって言ったんデス!」
何度も言わせナイで下サイ、そう恥ずかしげにパティが言うのを聞くと、ゆっくりその言葉が機能停止していた頭に染み渡ってきて。
「……え?……え!?」
な、何?私が一番何だって?……可愛い……!?そんな事言われたの初めてじゃ……!?
頭がまるで呪文をかけられたように混乱して、顔が勝手に赤くなる。
…な、なんスか!?このマンガみたいなシチュエーション!?
似合わない、似合わないっスよ私には!
と、とにかく!!
「そ、それはどういう意味で……」
混乱する頭で、私がパティの真意を確かめようすると。
“DAN DAN 心魅かれてく その眩しい笑顔に ♪”
パティのポケットから、そんな懐かしい曲が聞こえてきたっス。
なんだか一気にクールダウン。ほっとしたような、少し残念なような。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、
「オゥ!大変デス!ソロソロ夕方のアニメが始まってしまいマス!」
さっきまでの真面目な表情はどこへやら、パティが叫んだっス。
どうやらアラーム設定にしてたみたい。
携帯で時刻を見てみると、確かに私も見ている夕方アニメが始まる30分前。
うう……一体どこまで本気か分からないっス。
「ヒヨリも見てるんでショウ?早く帰らないト!」
「そ、そうっスね」
「ワタシ、家こっちデスから」
そう言ってパティは反対側の道を指差したっス。
ああ、やっぱり家近くなんかないじゃないっスか……
これじゃパティ、アニメ見逃しちゃうっスよ……わざわざ遠回りして……
でも何故か口には出せず、じゃあね、とそれだけ言って私は家の方に向かって歩き出したっス。
「…ヒヨリ!」
数歩行ったところで突然そう呼ばれて、反射的に振り向くと。
目の前にはパティの青くて大きい、綺麗な瞳があったっス。
えっ、と驚いた次の瞬間には、ちゅっ、と軽い音がして。
それが私の唇にパティの唇が触れた音だ、と気付いたのは全てが終わった後だったっス。
「フフ、ヒヨリのファーストキス、頂きデス!」
悪戯が成功した子供のような顔をこっちに向けながら、
「バイバイ、ヒヨリ♡」
そう言って楽しげに走り去って行くパティ。
私は夕日の中輝くその金髪を、だんだん小さくなっていくその見惚れるような後ろ姿を、ただ呆然と見つめるしかなかったっス。
その日の夜。
「ふう…………」
愛娘であるパソコンのウィンドウを磨きながら、私は今日の出来事について考えていたっス。
本当に今日一日で、信じられないような経験をしたもんだ、と。
岩崎さんから小早川さんへの、愛の告白(仮)。
つかさ先輩と高良先輩のポッキーゲーム。
泉先輩とかがみ先輩のキス。
死ぬかと思うほど幸せだった、全員からのキス。
そして……夕焼けの中見た、パティの笑顔。
目を閉じると、熱いような、胸がキュンとなるような、そんな複雑な感じがするっス。
この気持ちはなんだろう。
そんな詩をどこかで読んだことがあるけど、まさにそんな感じ。
「ふう…………」
ボンヤリとしたままデスクトップを磨き続けていると、
「あ……」
私がいつも使っている、お気に入りのシャーペンが目に入ったっス。
……書きたい。
私は久々に、心からそう思ったっス。
この気持ちを誰かに伝えたい、と。
綺羅星のように輝いていた今日の出来事を、
いや今日だけでなく私がかけがえの無い日常の中で見て感じているたくさんの事を、より多くの人に知って欲しい。
そして何かを感じて欲しい。それが誰かの元気になってくれたら嬉しい。
そんな思いがとめどなく溢れてくるのを感じたっス。
「……よぉし!」
気合を入れて、転がっている愛用シャーペンとルーズリーフを拾い上げ、パソコンのスイッチをオン。
「一丁、頑張りますかっ!!」
ウィィィン、と起動音をたてる私の愛娘。
その音は、なんだかいつもより嬉しそうに聞こえたっス!
その日から、私は真剣に漫画家への道を志すことになるっス。
それから数年後、金髪の美人アシスタントと一緒に日本の漫画界に旋風を巻き起こすことになるのは……また別のお話っス!
【完】
524 :
11-618:2007/09/19(水) 01:13:58 ID:AuABqdNI
【誰がために王冠は輝く?】今回で完結です。
結局最後まで、っス語使い続けてしまった…
いや、正直このエピソード位普通の一人称にしようと思ったんだ。
パティ同級生だし。でもそれをしたら、この作品じゃなくなる気がして…
まあチェリー相手でも っス語だしまあいいか(ぉ
ちなみに今回出た、王冠をかけた恋ってのは実話らしいっスよ。
それと携帯のアラームは……まあ、雰囲気です、雰囲気。
最後に、ノリだけで拙い部分が多かった本作だったとは思いますが、完結できて良かったです。
感想をくれた皆さん、そして読んでくださった皆さん本当にありがとうございました。
なんというパティ×ひより……
これは素晴らしいGJ!
>>510 かがみ「あれ? こなたとみゆきだ」
つかさ「あ、本当だね。 何話してるんだろ?」
こなた「それでさ、ゆっきー。 あれがクサくってさ〜」
みゆき「え、そうなんですか?」
かがみ「こなたが私以外の女をニックネームで、ニックネームでぇぇぇぇぇっ!!」
つかさ「お、落ち着いてお姉ちゃん!」
みゆき「それでですね……あ、あの……。
こ、こなちゃん……」
こなた「おお! ゆっきー、ぐっじょぶ♪」
かがみ「……つ、つかさ?」
つかさ「あははは、バルサミコ酢ぅ〜♪」
かがみ「ダメッ! それやったら本当に犯罪者になるから!
止めなさいって! つかさぁ〜っ!」
……とか妄想した。(どんだけ〜)
>>524 パティ×ひより、GJした!
王冠シリーズ、もっと色々な命令が見たかったですが、これ以上を求めるのは酷ですねー。
とりあえず、乙です。
>>524 完結乙!
このシリーズは実に様々なカップリングが見れて俺も幸せだった。GJ!
>>524 GJ
しんみりしてるのもいいけど
LILYYYYYYYYYYYYYYYYYとか叫んでた女子がこうなるという
ギャップがすごいw
あれだけバカなノリのコメディをやって最後にこんな風に落とすとは……GJ!
あとパティの口調大変じゃなかった?俺も書こうとして困ってるんだが
>>529 実はそこが一番苦労したとこだったっスwww
>>524 GJ
きっとまた後で更に話が追加されることを望む
誰がために王冠は輝く?−Period -
とか
いや別に深い意味はないぞ
真っ赤な誓いも叫ばないし
それなんて貫け俺たちの武装〇金?
>>524 GJ
いいパティ×ひよりでした。
4組もカップリングが成立するとはなんていい作品。
>“DAN DAN 心魅かれてく その眩しい笑顔に ♪”
これがFIELD OF VIEWのかZARDのか気になったのは俺だけでいい。
>>524 おつかれさま、すごい楽しかった
最後、ひよりんがこのスレに投稿して終わるのかと思ったw
535 :
ぶーわ:2007/09/19(水) 04:28:50 ID:U6pQn45S
人として袖が触れている
>>406-411の続き投下します。
またまたみさオンステージで、また話が進まないっ。絶望したっ!
↓9レスほど拝借。
「あ、あんた本気で言ってるわけ!?」
「おーぅ、本気も本気よー」
揺れる馬の上で、いつものように笑う日下部。
どうやら……本気らしい。
今からこいつは、帝の邸……宮廷に忍び込むそうだ。
……私を連れて。
「春宮って知ってるだろー? あの男前の」
「そりゃ、まぁ」
知るはずもないが、体の方の記憶には残っている。
春宮(はるのみや)……帝様の第一子、皇太子様のことだ。
男前なのは知らないけど。
「確か、病床に伏せてるって話だけど……」
「そうそう、酷い話だよなー」
「酷い?」
病気じゃどうしようもないでしょ。
この時代は瘧(おこり:マラリア性の熱病)が流行ってるってみゆきに聞いた覚えがあるし。
「それはまぁ表向き、本当はさ……盛られたのさ、一服」
盛られた?
塩とか?
「唐渡りの妙薬、って言えば聞こえがいいかな?」
「そ、それって……毒、ってやつ?」
「ご名答ー」
と、軽く言いやがった。
じゃあ何。
春宮が、毒殺されそうになったって? 一大事じゃない! 次期天皇陛下様よ!?
「まぁ大事には至らなかったけどさ、酷い話だぜー」
「でも……それが関係あるわけ? 天皇の邸に忍び込むのと」
「んー、ここまで来たらいいか」
妙にもったいぶる日下部。
「簡単簡単、春宮が居なくなれば誰が得をするか。って話」
「誰って……」
ここで一度、話を整理しよう。
現在の春宮は、帝と皇族の姫の子……それがもし死んだとしよう。
当然、次の春宮が決められる。
それは……春宮の、弟宮。
「そうか、左大臣家の……!」
天皇には二人の妻が居る。
一人は皇族の姫君、そして左大臣の姫君。
春宮が前者、その弟宮が後者ってわけ。
「そそ、調べはほとんどついてんだけど証拠がなくてなー」
なるほど、そこまでは分かった。
つまりは春宮……皇太子様が、左大臣家に縁のものに命を狙われてると。
なので忍び込んで、証拠を掴もうと……。
強引だなぁ相変わらず……だが問題がもう一つ。
「……ねぇ、そろそろいいでしょ? あんた、何者なわけ?」
「ふぇ?」
間抜けに開いた口から、八重歯が光る。
表向きに公表されない事実を、なぜ知ってるんだこいつは。
しかもそれを阻止しようと、今から宮中に乗り込むだなんて。
「もしかして本当に、春宮直属の……?」
「あははっ、どうだろーなぁー」
と、また笑って誤魔化された。
でももう、確信だろう。
そこまで知ってるやつなんて、それぐらいしか居ないじゃない。
はぁ……でもこんなヤツが、そんな大役だなんて。
「よっと、この辺でいいかな?」
馬の速度が遅くなり、人気のない陰で止まる。
そこから見える大きな邸が、その帝の邸らしい。
そのまま馬を飛び降りる日下部。
私もそれに習おうとするが、上手くいかなかったので手を借りた。
「よし、じゃあ行ってくるから」
「え……ちょ、ちょっと。私はどうすんのよ!」
「あー、最近は夜盗が多くてさ。馬がいつでも出れるよう待ってて欲しいんだよな」
夜盗はおめーだろ!!
「丑の刻(深夜二時)までに戻らなかったら、帰ってあやのに伝えてくれっかな?」
「何よ、それだけでいいわけ?」
「んー、これがなかなか適任が居なくてさー。見つかったときあやのの所だと顔見知りとか居て足がつきそうだし」
それで、顔の知られてない私……というわけか。
まぁ、それほど難しい仕事でもない。
これで昨日の失態がカバー出来るなら、いくらでもやってやろうじゃないか。
「んじゃ、また後でなー」
と気楽に駆けて行く日下部。
今から帝の邸に侵入する顔じゃないよなあれは。
いいや、丑の刻まであと一時間ちょっとか。
それまで呑気に待つことにしよう。
……。
遅い。
一時間を軽くこえ、もう二時間は過ぎようとしていた。
なのに未だに、日下部は帰ってこない。
ったく、適当にもほどがあるだろ!
……まさか、捕まってたりしないわよね?
いくら春宮の直属なんて言っても、帝なんてのはレベルが違う。
その邸に踏み込もうものなら反逆罪で島流し、最悪極刑もの。
そんなのに巻き込まれるのは正直ごめんだ。
とっとと峰岸のところに戻って報告しよう。
それで終わりだ。
私はこなたの邸にまた戻らなきゃ。
そうだ、次こそ破いた手紙を探すんだ。
いいじゃない、日下部のことなんて。
どうせ私の知ってる日下部とは違うんだ、どうなろうと私の知ったことではないじゃないか。
……なのに。
そのはずなのに、まだ体が動いてくれない。
駄目だ……心がいくら否定しても、あれは日下部だ。
体が違えど、私の知ってる日下部……そう認識したら、逃げられない。
……今私は、間違いを犯そうとしている。
安全な道があるというのに、あえて苦難の道を行こうとしている。
私が行って、何かなるわけ?
そんなはずないでしょ、一緒に見つかるのがオチよ。
そして極刑かはたまた島流しか。
そんなの駄目。
私は帰るんだ、平成の……本当の私の世界へ。
だからこんなところで道草を食っている場合じゃない。
とっとと探すんだ、鍵を。
私の失くした、何かを。
……でも、まただ。
足は、後ろには動いてくれない。
……。
ああ、そうだ。
私には、馬なんて操れない。
そう、きっとそう。
だから、日下部が居ないと帰れない。
そうだ、だから仕方なく、だ!
そう心に決め、覚悟も決める。
そして足を一歩、前に踏み出した。
2000坪以上もある邸は、塀も長い。
だがその分、門も大きく、目立つ場所に発見する。
その前には守衛が二名ほど。
……いいのか、私。
引き返せる最後のチャンス……でも足は、ただ前に進むだけ。
ああくそ、何とかならぁ!
大事なのは、勢いだ!
日下部の適当ッぷりがうつってきた!
「あいたたた!」
「!」
わざとらしく聞こえる声で呻き、門の近くでうずくまる。
すると想定どおり、何事かと守衛が寄ってくる。
はぁ……こんなことをしないといけないとは、情けない。
もう後戻りは出来ない。
いいわよ、やってやろうじゃないっ!
そのまま私は邸の何処かの一室で看病されることになった。
まぁそんな好意も、今から台無しにするわけだが。
最初は数人の女房が看病していたが、狸寝入りするとすぐに姿を消した。
もう丑の刻を過ぎたあたりなのだから、眠いのも当然だろう。
私はそのまま行動を開始する。
とりあえず髪は邪魔だから、首元で一くくりに。
単もいくら着ていたって邪魔なだけだ、脱いでいこう。
はぁ……こなたにあれだけ小袖姿で歩き回るなって説教したのに、皮肉なものだ。
そんな格好で私は今、帝の邸を闊歩しようとしてるんだから。
ああいいわよ、恥はかき捨てよっ!
言っとくけど日下部のためじゃないから!
私が帰るためだから! と、誰かに言い訳しながら。
2000坪をゆうに超える邸は、さながら迷宮。
助かるのは夜中なので、ほとんど見回りがいないぐらいか。
にしても静かだな、この邸。
日下部が忍び込んだのがまだばれてない、ということか。
じゃあ何やってんだよあいつ!
人がわざわざ忍び込んだってのに!
いや、いいさ。確か左大臣あたりが怪しいと言ってたっけ。
じゃあ対屋?
だいたい寝殿造りってのは構造が一緒だから、大体の方角は分かる。
問題は……どうやって行こうかな。
このままどうどうと廊下を歩くのは……さすがに駄目か。
小袖姿の女房なんていないだろうしね。
仕方なく、庭に降りて縁の下に潜り込む。
はぁ……地面の土で手や服はドロだらけ。
何でこんな事をしてるんだか……。
「……は、どうなっ……」
「?」
適当に縁の下を四つん這いに進んでいる時だった。
上の部屋からボソボソと声が聞こえる。
こんな夜中に?
っとと、また悪い癖が。
昨日も聞き耳を立てて酷い目に……
「……春宮はまだ……」
「えっ」
その時、聞こえた。
今言った、確かに言った。
春宮……皇太子様のことを。
思わず聞き耳を立てると、さらに声が聞こえる。
男性と……女性が居るかな。
床下でも、耳をつければなかなか会話は聞き取れるものだ。
「それでは如何いたします? ……また毒を?」
「駄目ね、それじゃあ……次は警戒してくるはずよ」
毒?
今、そう言った?
日常会話で、普通毒なんて単語が出ると思う?
まさか……春宮を殺そうとしたっていう、毒?
じゃあ、まさか……。
この上に居る人物が、その犯人……。
あはは、まさか。
そんな都合のいい事がそうそう……。
「大変ですっ!」
その時、上の部屋から戸が開く音が響く。
「どうしたの、こんな夜中に騒がしい」
「そ、それが……夜盗ですっ!」
その言葉に、心臓が跳ねる。
ま、まさか日下部!?
とうとう、見つかったわけ!?
「具合が悪いと言う女性が居たので部屋で休ませていたところ……もぬけの殻でっ」
……。
違った。
私のほうか。
……ってやばいじゃん!
「起きてる雑色を警護に回しなさい、特に当今様の部屋には厳重に」
「はっ」
とテキパキと指示を出しているのは、女性のほう。
どうやら男性よりは此方の女性のほうが位が高いらしい。
……誰なんだ一体。
「ど、どうしましょう。まさか春宮の手のものが?!」
慌てているのは男性のほう。
こりゃ、小物かな。
「構わないわ、いくら嗅ぎ回ろうとも『これ』さえ見つからなければ……ってあら?」
「そ、そうですね……その『連書』があれば」
「な、ないっ!」
「へ?」
今度は女性のほうが慌てている様子。
ない? 連書?
連書ってあれよね、色んな人の歌を箇条書きにしたようなの。
テーマを決めて歌を詠みあう、宴の余興とかによくやってるやつ。
歌って言っても、この時代のは短歌だけど。
「や、やはり夜盗が!? 春宮様の手下がっ!?」
もう男性のほうはパニック。
どうやらその連書が、とても重要らしい。
でも、それがない。
まさか……日下部?
「や、邸の雑色を全て起こしなさいっ。門は全て閉鎖、縁の下までひっぺがしなさいっ!」
「へっ!?」
思わず声が漏れる。
そ、それはもしかして、非常にやばい?
てゆーかじゃあ、日下部は潜入に成功してその連書とやらを手に入れたわけだ。
なら……また私はやってしまったわけだ。
あのまま待っていれば、日下部は戻ってきたのに!
邸の様子はもう一変。
篝火は豪快に燃え、雑色は溢れ……さながら宴。
それも全て、私を探して……。
ど、どうしよう。逃げる? どうやって? と、とりあえずここはやばい、もろ縁の下。
え、えと。一番近い門はどれだっけ。
西門? そうだ、そっちに確かさっき入り口が見えた。
逃げるならまだ雑色が起ききってない今しかない。
伝令なんてのは命令してすぐに実行されるものじゃない。
数が多いならなおさら。
そうだ、今しかない。
西門から逃げて、えと……どうしよ。馬が居るのが北門だから、そこまで逃げて……。
ああ、だから馬なんて乗れないって!
いやもう、そういうのも後だ。
今は、ここから西門まで……走り抜けるだけ!
「居たぞっ、あそこだ!」
私が駆け出すのと同時に、声が響く。
それに反応し、雑色が集まってくるのを背中に感じる。
怖い……怖い、怖いっ!
捕まったらどうなる? 島流し? いや、さっきの女性の口ぶりだと極刑は免れそうにない。
それとも日下部が盗んだ連書の場所を吐かされる拷問の日々とか? 誰かSSにして!
いやでも、ここから見える西門には予想通り人がまだ集まってない。
この勢いで蹴れば、鍵ぐらい閉まってても壊せるはず!
大丈夫、いける! こんなところで私は終われないっ!
そうだ、絶対帰るんだ……皆の居るところに!
私の世界にっ! 絶対っ!
「!」
その時、だった。
私の顔の横を、『何か』が通り過ぎる。
空気を切り裂く音が耳を劈き、一瞬私の体が硬直する。
私の体を外れ地面に突き刺さるそれは……矢。
恐怖に体が固まり、地面に膝がつく。
「……外したか」
背後から声がする。
さっきのあの、男性の声。
ゆっくりと振り返ると、目があった。
そんな余裕なんて、あるはずないのに。
刻一刻と、雑色が邸を埋め尽くしていく。
もう、西門も雑色の壁で塞がれてしまった。
私の逃げ場はもう……ない。
「どうした? もう逃げぬのか?」
男性がゆっくりと私に向けて弓を引く。
もう、取調べなんてする気はない。
このまま私を……殺す気なんだ。
駄目だ。
殺される……!
「!」
ビンッと、弓を射る音がスローモーションで聞こえた。
ああ、死ぬんだ。
こんな、場所で。
こんな風に……。
「ぐはぁっ!」
「えっ……?」
だが、まだ頭には悲鳴が響く。
手も、足も何処も痛くない。
私はまだ……生きてる?
「ぐ、ぅ……」
見ると、私を射抜こうとしていたうずくまっていた。
その彼に突き刺さっているのは……また、矢だ。
どうして?
誰が?
だって今にも射抜かれそうなのは、私のはずだったのに……!
「いやはや、間にあったかー」
「!」
馬の蹄の音が響くのと同時だった。
そして私の体がフワッと宙に舞う。
出発の時と……同じ感覚。
「み……みさおっ!」
思わず声が張り裂けた。
しかも慣れない名前で呼んでしまった。
私を抱きかかえてくれたのは……日下部だ。
今はまた、馬の上で……その腕の中。
「まったく、動くなよーって言ってあったのにさー」
「し、仕方ないじゃないっ! アンタも戻って来なくて、一人で……」
さんざん文句を言ってやろうと決めていたのに。
さんざん殴ってやろうと決めていたのに。
なのに出たのは……涙だった。
「怖かっ……た」
安心と嬉しさから、緊張の糸が切れる。
あとはただ、その胸に顔を埋めて泣いた。
声を荒げて、みっともなく。
抱きしめてくれた左手が、ただ温かかった。
「あーよしよし、帰ろうなー。いい子いい子ー」
そして日下部がいつもの調子で笑いながら、私をあやす。
でもそれが茶化してるようにしか聞こえなくて……拍子抜け。
http://bbs.freedeai.com/src/up5967.jpg 人が泣いてるのに、この適当っぷり!
でもそっか……そんなやつよね、あんたって。
「き、貴様っ。何者だっ!」
日下部に腕を射抜かれた男性が、何とか雑色に手を借り立ち上がる。
辺りにはさらに雑色が増え始め、私たちを囲んでいく。
そうだ……この状況はまだ、何も変わっていない。
ど、どうするのよっ。
ってまた笑ってるしっ! ちったあ不安そうな顔しなさいよ!
「馬で乱入するなど無礼の極みっ! ここが帝様の邸と知っての行いかっ!」
雑色を掻き分け、先程の女性の声の主も現れる。
さらには弓兵も辺りに散らばり、私たちを狙う。
状況は最悪。
手は……尽きた。
でも、こうやって日下部の腕の中で死ねるなら……いいかな。
って何考えてるのよ私!
「痴れ者がっ!」
「!」
だがその時だった。
声が……響いた。
天を引き裂かんばかりの、大きな声。
それも日下部から、だ。
「なっ、何を……あぁああっ!」
その時、女性が何かに気がつく。
今の日下部の顔は、いつものふざけたものじゃない……威厳に溢れた、凛々しい顔つき。
その顔に少し……頬が染まった気がした。
「左馬頭、私を見忘れたか!?」
先程矢で射抜かれた男性が、声に反応する。
左馬頭(さまのかみ)……馬寮を取り仕切る長だ。
「貴様程度にお目通りなぞ許すはずもないだろう。だが、声くらいは覚えがあるだろう!」
「あ、ああ……!」
その男性も地面に膝をつく。
「雑色の中には僧侶も居ろう、度重なる法会で私の顔を覚えているものもいるであろうっ!」
日下部の声が響き渡り、全体を侵食していく。
法会(ほうえ)とは会合のことだ、僧侶がやる集会みたいなもの。
そして一人の僧らしき人物が……声をあげた。
「はっ、春宮っ……日下部親王さまっ!」
その声が、私の耳に反響した。
あとはもう、雪崩式だ。
次々と雑色はバタバタと頭を下げていき、とうとう全ての人間がひれ伏す。
あと立っているのは……目の前の女性だけだ。
「毒入りのお粥は美味しかったですよ……お母様」
「く……っ、うぅ……」
その女性だけは屈服せず、まだ日下部を睨んでいる。
お母様?
そうか、分かった。
彼女こそ……左大臣姫君、その人なんだ。
つまり、自分の息子を春宮にしようとしていたのだ。
日下部を……貴族の姫君の正当後継者の、春宮を亡き者にして。
「苦労しましたよ、この連書を手に入れるのは……これで貴方も、終わりです」
とりだした連書を広げる日下部。
そこから見える文は、漢文混じりでよく読めない。
だが体のほうの記憶から、必死に読み解いていく。
そこにあったのは……確かに短歌だ。
でもその内容を読み解くだけで、それが何か分かる。
内容は簡略化すれば……全て、『春を待つ』という短歌。
新しい春、つまり新しい春宮を支持する。というわけ。
これはそう……連判状。
裏切りを防ぐための、結託の印だ。
つまりここに名前を連ねる人物全てで、春宮暗殺を企てていたのだ。
これであとはもう、芋づる式。
計画は全て、水の泡ということ。
「その二人は恐れ多くも春宮暗殺を企てた首謀者……捕縛せよ!」
「あ……はっはい!」
その日下部の声に周りの雑色が慌ててその二人を取り囲む。
もう抵抗する様子すら、なかった。
日下部の前にそれが通用しないと、肌で感じたのだろう。
「うっし、仕事終わりーっと」
凛々しい顔つきが、また緩む。
……まだ、信じられない。
こいつが、春宮?
次期……天皇陛下!?
あ、駄目だ。
疲れと眠気と衝撃で……意識が飛んだ。
「あ、あれ? お、おいっ。しっかりしろって! おーい!」
日下部の声だけが、私の頭に反響していた。
(続)
545 :
ぶーわ:2007/09/19(水) 04:42:48 ID:U6pQn45S
続きます。
昔の言葉とかばっかりで、ゴメン!
いい加減話進めますっ!
546 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 05:08:07 ID:Cs0ysDYu
GJ!
>>545 プリンスみさお来たぁぁぁ! みさおかっこいいよみさお。GJ。
>>545 遅れながらGJ。
ひょっとして、このSSの元ネタはなんて素敵にジャパネスク(タイトル合ってる?)ですか?
懐かしいッスw
>545
GJ〜。
飯食いに行ったら店内に流れてた曲がふっと
どんだけファンファーレ→ケンカ予報の時間だよ
になって吹いた
次は夜逃げでリセットかとおもったら、その次は何事も無く邦楽が流れた
きっと、こなかが好きが店員に居たに違いない
というか前もショッピングセンターでもってけセーラー服流れたり、りみっくす流れたり
うちの地元にはスレ民がきっと居ると思う
>>551 >夜逃げでリセット
それなんて夜逃げ屋本舗?
>>551 そんな町に私は住みたい。
さて、容量注意報です。
現在このスレは432kbに達し、スレ立ての目安の480kbに間もなく到達しようとしています。
いつでもスレ立てできるよう各住民は準備をお願いします。
職人の方々はお気になさらず投下を続けて下さい。
以上、容量注意報でした。
>夜逃げでリセット
深いな…
今度エロゲで『キラキラ』とやらが出るんだが、それのOP曲がマキシで発売されるんだ
で、それのカップリング曲がなぜか『かえして!ニーソックス』っぽい
販売がランティスだからほぼ間違いないっぽいが……ゲームにもさながら背景として出たりすんのかね。ないか
>>551 大学の生協で曖昧ネットダーリンが流れたときはビビった
夜逃げでリセットワロタwwwwwww
ぶーわ氏GJ!
こなかが分が(私的に)足りないので、自家発電
携帯からなのでPCの方、改行とか見にくかったら申し訳ありません
●こなかが中途半端にエロ1レスですが失礼します。
――与えられる刺激に力が入らなくなって来ているとはいえ、その細い腕のどこにそんな力があるんだ、という程強のさでがっちりと太ももを固定されている。足を閉じる事もままならず、背をのけ反らせ手で口を覆ってひたすら与えられる刺激に堪える。
ここは学校なんだ、というその認識だけが私の理性を繋ぎ留めていた。
「ふ・・・っ・・・ん・・・」
時折抑え切れない甘い声が唇の隙間から漏れる。
「声、聞かせてよ」
「あ・・・・・・」
私の足の間に顔を埋めていたこなたが顔を上げる。
同時に、ぴりぴりとした電撃も止んで思わず残念そうな声を上げてしまった。
それを耳聡く聞いたこなたがいつものような猫口で笑う。
「どうして欲しい?」
「そんなの・・・いえな・・・っ 」
「じゃあ、このままだよ?」いいながら指で濡れそっている私のそこをなぞるけど、決定的な刺激にはならない。
今や私の頭の中は早く解放して欲しい、その思いで一杯だった。
「ひゃ、んっ・・・も・・・イかせてっこなたぁっ!」
「ふふーよく出来ました」
言い終わるのと同時に指と舌で攻められる。
「ふぁ、あああっ、こなたっこなたあっあああっ!!」
すでに限界寸前まで追い上げられていた私は呆気なく一度目の絶頂を迎えた――
「よしっ次の新刊はこれでいくっス!」
現代文の授業中電波が降りて来た私、田村ひよりは授業そっちのけでルーズリーフに書き起こした。
もちろん文章でっスけどね。
先輩達をネタにしたという少々の罪悪感はあるけどそれでも部室へ向かう足取りは軽い。
「あれ?これ、落としたわよ」
後ろから声をかけられ振り向くとかがみ先輩がいた。どうやら鞄のチャックが開いていて、中身が落ちたらしいってそれはあああああ!!!
「これって・・・・・・」
そう、それはこな×かがネタを書いたルーズリーフ・・・
かがみ先輩の顔がどんどん赤くなっていく。
「あ、あの、それは・・・!」「み・・・見たの!?」
「――――――は?」
「え・・・・・・?」
私と先輩の間に長い、とても長い沈黙が訪れた――・・・
>>551 そりゃあ、夜逃げでリセットなんて曲名ないからな
読んで下さった方、ありがとうございます
書き込むのは初めてなので緊張しました・・・
スレ汚し失礼しました
事実は虚構より奇なり
>>560 なんだーひよりの妄想オチかーと思ってたら、そうきたかw
GJ
>>560 GJ !
応援してるから、がんばってね
だがオチが「こなかがでらぶらぶちゅっちゅする本」と同じ…
まぁ、皆考えることは同じなんだよ、そういうことだ
思わず「夜逃げでリセット」のSSというか小ネタを書いてしまった
>>551が気分を害さないならば、投下するけれど…
>>568 [;´Д`]<Love Love!Chuっ Chuっ!lalala Chuっ Chuっ!♪
さっき、その「夜逃げでリセット」が100円ショップでかかってた・・・・
今日昼にリサイクルショップにいったら
>>551みたいにどんだけファンファーレ→ケンカ予報の時間だよが流れていた
有線かなんかなのかねえ
俺の近所の本屋とか
どんだけファンファーレ
↓
ケンカ予報の時間だよ
↓
しすたーうぉーず
↓
萌え要素ってなんですか?
の順に流れたよ……普通の本屋なのに。
全部流すとかどんだけ〜
なんでそこでしすたーうぉーずなのかが気になった
キャラ損は財政的に考えて買うことが出来なかった俺が流れに乗れず涙目
>>575 ネット漁ればうpしてる所あるよ。あとは、伝家の宝刀ニコ動やね
>>541 >誰かSSにして!
ちょ、かがみテンパりすぎだろwww
>>576 そういうことを言いたいわけじゃないんだが……
ニコって草草動画とか呼ばれててここでは嫌われてるようだし
あまり犯罪を幇助させるような発言はやばいんじゃないかと
ニコ厨アホすぎワラタwww
何でもうpだのニコだの、乞食すぎるwwww
死ねよwwwwwwww
このスレの住人としては、かがみのキャラソンだけは買っておくべきかもしれない
過疎ってるな
ここまで急激に過疎るか?普通
この過疎を打開するために今俺は頑張って書いてる
いままでどれだけアニメで騒がれてたかよく分かったじゃないか
原作のコンセプト通りまたーりと進んでくれれば御の字だよ
SS大量投下=職人弾丸放出で、今はリロード中なんだとなぜ前向きに捉えないのだ
ここ数日の勢いは、最終回付近でほぼすべての職人の投下が被っただけだとしか思えないんだが
最近SSの雑談とかがないよね
ここ最近はいくら何でも投下されすぎだろ。
これで過疎とか言ったら他スレはどうなるんだよと。
職人に恵まれてるだけいいと思わないと。
一人明らかに異常すぎる人がいるが・・・
SS書くの遅くてごめんね(´・ω・`)
俺一つのSSに4日とかかかっちゃうんだ、そんなに長くもないのに……
そして最近ネタ切れぎみの俺は、いままで書いた自分のSSの続きとか書くしかないんぜ。
逆に考えるんだ
今は神たちのリロード期間と考えるんだ
確かに。前スレとか、それまで7〜8日かかっていたところを僅か4日で1スレ消費
してしまったわけだし。その時に投下時期がかぶったと考えれば、その後2〜3日全く
投下がなくても不思議じゃないほどなわけだ。(だが実際にはそうではない)
リロードに見せかけて実は武装解除・・・
>>590 大丈夫。解除してちゃんと回復したらまた武装錬金してくれるさ(違
1週間経たずに440KB行ってるスレが過疎とか正気ッスか?wwwww
>>591 回復しないで一人の住人と化した俺もいるけどなw
書きかけで二つ止まっちゃってるぜ
九割がた完成しているんだが、
シーンのつなぎとかセリフが不自然で目下修正中
しかも、その話の続きがまとまらない罠
こうして見るとやっぱり書きかけの人が多いんだな
最終回迎えて職人が減ったわけじゃなさそうだし焦らずマターリ待つとしようか
しばらくしたらまた一斉に投下が始まりそうだw
そしてよく見ると一週間経つまでまだけっこうあるのに容量が危険w
第五章雪が溶けたら何になるの続き投下します。
クリスマス。運命の日。
音も無く降り続く雪の粒が視界を綺麗に彩っていた。
その中を楽しそうに歩いていくカップルや家族達。
今日という特別な日を大切な人と過ごせることが、本当のクリスマスプレゼントなのかもしれない。
あたりが少し薄暗くなってきた頃、私は公園のベンチに座っていた。
大切な人を待つ為に。
「つかさ」
呼ばれた方を見ると、こなちゃんは雪が降る中、少しはにかんで笑っていた。
「こなちゃん……」
「おまたせ〜さすがに寒いね〜」
こなちゃんは肩を縮こまらせポケットから缶コーヒーを取り出し「はい」と私にくれた。
「ありがと」
かじかんだ手にその温もりがじわっと沁みこんでいく。
こなちゃんは「ん」と答えて、私の隣に座った。
―本当の優しさ―
同時にたつ、二つの白い息。
手に落ちた雪がじわっと溶けた。
少しの沈黙の後、こなちゃんは口をゆっくりと開く。
「あれからずっと考えてた。つかさのこととかがみのこと」
「……うん」
「本当は言いたい事とかいっぱいあったんだけど、回りくどいのは私らしくないと思うから、はっきり言う」
こなちゃんは大きく息を吸い込む。そして白く変わった息が広がった。
「私はつかさのこと好きじゃない。私はかがみが好き」
「……うん」
「だから私はつかさを選べない」
「……うん」
「だから……ごめん」
最後のごめんは、消え入りそうなほど小さかった。
また「……うん」しか言えなかった。
こなちゃんの横顔を見ると、目尻から顎の下まで涙の線が出来ていた。
その涙は同情? それとも自分がかわいそうだから?
最後の希望だったのに、それすら許してはくれないんだね。
見抜かれていないなんて思っているバカな人に私は微笑んであげた。
「……行って」
「つかさ……」
こなちゃんは、潤んだ目のまま私の顔を見て、私の名前を呼んだ。しかしそれに続く言葉は出てこない。
「……お願いだから。最後のお願いくらい聞いてよ……」
こなちゃんは下唇を噛んで、何もこたえずに立ち上がり歩き出した。
私は空を見上げる。何かがこみ上げてくる事に気付いたから。
こなちゃんの雪を踏む音が徐々に小さくなっていく。それがわかるほど音は澄み切っていた。
その足音が聞こえなくなったと思ったら、
「うぅ……」という声が聞こえ、自分が嗚咽をもらすほど泣いてる事に気付いた。
「空をみたら涙が止まるなんて嘘だよ……」
正面から降り注ぐ雪が滲む。昨日見た雪はもっと綺麗だったはずなのに、今日の雪は昨日とは違っていた。
わかっていたことなのに……。
こなちゃんがお姉ちゃんを選ぶことなんて、わかってたことなのに……。
足元が崩れていくってこういうことを言うんだね。
息が苦しい、何も見えない、何も聞こえない。
私は今いったいどこにいるの……?
たどり着いた場所はいったいどこなの?
努力はきっと報われるなんて言ったのは誰?
たとえ遠くても見ていたかったあの背中はもうない。
私は何を頼りに歩いていけばいい……?
誰か教えてよ……。ねぇ……誰か、お願いだから……。
こんなことになるなら好きにならなきゃよかった……。
私はやっぱり弱いよ……。こんな風に思っちゃう。
…………。
「――っ」
納まりかけた涙は、さっきのこなちゃんの表情と共に蘇る。
こなちゃん泣いてた……。
「ずるいよ……あんなの……」
こなちゃんの優しさ無駄にしちゃってるね。
こなちゃんのことこれっぽっちも嫌いになんてなれてないよ。
だって……、この目も鼻も耳も手も、全部がこなちゃんを覚えてる。
忘れないといけない。
忘れたい。
忘れたくない。
忘れられない。
往生際悪いね。
だけど次に会うときはきっと笑顔で会うから。だからもう少しだけ好きでいさせて……。
手に握った、こなちゃんに貰った缶コーヒーは、もう冷たくなっていた。
カイロ代わりだったそれを開けて、一口飲んだ。
「苦い……」
飲んでからブラックだと気づく。でもその苦さが今の私には丁度よかった。
* * *
* * *
頭からぴょんと飛び出したアホ毛をしょんぼりとさせてとぼとぼと歩いてくる人影。
「こなた……」
私の声に顔を上げたこなたは、酷い顔をしていた。
「か……がみ……。私、私……」
その表情を見て、ある程度の想像はつく。
「無理に話さなくていいよ」
その言葉をかけたのは間違いだったのか、こなたの目からは更に涙が溢れ出す。
「あぁもう、あんたがそんなだと調子くるうなぁもう……」
私はこなたを抱き寄せた。
こなたは私のコートを子供のようにぎゅっと握り締めた。それでも収まらないくらいに、こなたの肩は
震えていた。それでもこなたは言葉を搾り出す。
「つかさ、絶対泣いてる……」
「……だろうね」
「私……ひどいことした」
「そんなことないって」
「つかさ……っ……笑ってた……」
「そう……あの子もがんばったんだね」
つかさは強い子だ。でもあの子は自分のこときっと弱いと思ってる。
でも自分を弱いと思える人間は強いってことなんだよ。
「ありがとう、こなた」
「え……」
「つかさの為に泣いてくれて」
「……っ」
「あの子のこと真剣に考えてくれて」
「……うっ……」
「あの子の姉として礼を言うわ」
「うぅあぁ……かがみ……あぁああ……」
こなたの膝は力を無くし崩れそうになる。
私はそれを抱き上げるようにもう一度その手に力を入れた。
「それと、ごめん。試すような真似して」
こなたは私の胸に顔を埋めたまま首を振る。
どれくらいそうしていただろう。こなたが泣き止むまで私は抱きしめ続けた。
肩の引きつりもおさまり初め、しばらくして私はこなたをゆっくりと解放した。
「ひどい目だぞー」
私はこなたの目からあふれ出る涙を親指で拭った。
こなたの目はお岩さんとまではいかないが、酷く腫れていた。
「家帰る?」
こなたは首を振る。困ったものだ。いつまでもここに居ては凍え死ぬ。
「とはいってもうちにはつかさがいるし、さすがにね……」
しかたないか……。
「どっか行く? 24時間やってる漫喫とか」
こなたはコクンと頷く。
「おじさんに心配かけちゃまずいから、私の家に泊まるとでもメールしときなさいよね。私もあんたんち
泊まるってメール打つから」
まだ放心状態がとけないこなた。いつもとは違うこなたに正直なところ戸惑っていた。
「……携帯どこ?」
「……カバン」
「あけるわよ」
またコクンと頷くだけ。
私はカバンをあけ、携帯を取り出すとこなたに渡した。
「メールくらいは自分で打ちなさいよ」
「……うん」
私達は何も話さずに駅まで歩いた。手を繋いで。
正確にはこなたを引っ張る為にこなたの手を掴んでだけど。
漫喫についてペアシートの席をとり、こなたを部屋に押し込んだ。
ソファに座ると自然と溜息が零れた。
「いい加減にしゃきっとしなさい、しゃきっと」
「……うん、ごめん」
謝るだけで全然変わってないんだけど……。
私は隣に聞こえない程度に声を抑えつつ話し始める。
「ねぇ、こなた。こなたにはまだ、つかさにしてあげないといけない事があるでしょ」
「……え?」
「笑う事。明日からも笑う事。つかさの為を想ってくれるなら頑張ってよ」
「かがみ……」
「それと、つかさの作り笑いに気づかないフリをする事、私達にはつかさを癒してあげる事はできないんだから」
「うぅ……」
こなたは漏れそうになる嗚咽を必死に堪えていた。
私はこなたの頭をポンポンと軽く叩いた。
「かがみはつかさのことよくわかってるね……」
「当たり前でしょ。何年双子やってると思ってるのよ」
「……ごめん。かがみだって辛いよね……私以上につかさと向き合わないといけないから……」
「……覚悟してなきゃこうしてないわよ」
「かがみは強いね……」
「私が強いと思うなら、それはつかさの強さよ」
「……え?」
「私は一度諦めたもの。前を向く事も真剣に考える事も。でもつかさが逃げるなって私に言ったの。自分が
不利になるのによ? 見ててわかるでしょ、あの子本当にこなたのこと好きなのよ。好きで好きでしょうが
ないの。なのに……あんたが私を好きなのに、私にちゃんと向き合えって。そんなこと言えるつかさが弱い
って思う? 私は怖いくらいに強いと思った。だから私も強くなったのよ。じゃないとつかさに失礼でしょ」
「つかさが……」
「そもそも私達って、つかさが居なかったらこうやって出会ってすらいなかったんだよ」
「……うん」
初めてこなたに会った日のことを思い出していた。
つかさが嬉しそうに、友達ができたーっていうから、どんなやつか見に行ったんだっけ。
「それに、つかさが私に逃げるなって言わなかったら、私はこなたを受け入れられなかった。今があるのは
つかさがいたから……」
私は自分の手のひらを見た。あの日のことを思い出す。
あの時のつかさの気持ち。私に頑張れと言ったつかさの気持ち。
それを考えると目頭が熱くなる。
「――っ」
自分が泣いているのかと思った。こなたに先に泣かれてしまった。いや、泣いてくれて助かったのかもし
れない。
「本当にあの子は運が悪いというか……、がんばってるのに認められないことが多いのよね……」
頭の中に小さい頃のつかさがでてきた。無垢な笑顔でお姉ちゃんお姉ちゃんっていつも私の後ろにくっつ
いて……。ドジなとこもあるけど、何にでも一生懸命だったよね。
「でも……かがみはわかってあげてたんでしょ、つかさの努力」
「いつも見てきたからね。つかさがどれだけ頑張ったか、一番わかってるつもり」
「そうだよね……」
「だから、正直言うとね、あの子にあんたを譲ろうって気持ち無かったとは言えない。もちろん、問題が多
いことも理由ではあったけど、それだけじゃなかったと……思う。でもそれってすごく最低。もうムカつく
くらいに。つかさに対してはもちろんだけど、あんたに対してもすごく失礼なことしたって思ってる」
私は一つため息を吐く。つかさの顔が頭に浮かんだ。いつもの笑顔で。
「そんなつかさだから……きっと笑ってると思うし、こうなることもわかってたはずよ。だから私はあの子
の為に泣かない。あの子に同情だってしない。そう決めたの」
「アハ……二人とも強いや……」
こなたは乾いた笑いと共に呟く。
「こなたも頑張ったよ」
「え……?」
こなたはきょとんと少し驚いた表情を見せた。
「人を振ることの辛さは知っているつもりだから」
「かがみ……。うん……、だってつかさの事好きだもん……好きじゃないなんて嘘でも言いたくなかった……」
きっと、本当につかさのことを考えて、言った言葉だったのだと思う。
私も人のこと言えないけど、こいつも結構不器用なところがあるから。
コツンと頭を私の肩に乗せたこなたは、目を閉じた。
その頭を抱えるように私は手を回し、こなたの頭を撫でた。
泣き疲れたのか、こなたはすぅすぅ寝息を立てながら眠り込んでしまった。
そんなこなたの寝顔を見て思う。
なんで私なんかを好きになったんだ。と。
初めからつかさを好きになっていれば、みんな上手くいっていたのに。
私がこなたを好きにならなきゃ、きっとこなたはつかさを好きになっていたのに。
でも、つかさを選ぶこなたを想像して、少し寂しくなった。
私はこいつのことを好きになっているのだと自覚する。
ここまで私を好きになってくれたこなたを愛おしく思う。愛したいと思う。
つかさが愛そうとした分も。つかさ以上に。
それがつかさの為でも、こなたの為でも、私の為でもあると思うから……。
そんな思いを抱きながら、私もこなたの頭に自分頭を乗せて眠りについた。
***
―本当の優しさ エピローグ―
誰かに見られている気がしてふと見ると、小さな雪だるまがこっちを見ていた。
「こんなとこ見られてかっこ悪いね」
話しかけてみる。
「でもね、本当に好きだから、かっこ悪くもなるんだって思うの」
プライドや建前なんてとっくの昔に置いて来た。
「好きにならなきゃよかった。そう思う気持ちもあるけど、でも……、こなちゃんのこと好きになった私を、
褒めてあげたいんだ。本気で人を好きになれたことを褒めてあげたいんだ」
雪だるまはただ黙って話を聞いてくれる。
「だけど、私はもう少し君といていいかな?」
こなちゃんとお姉ちゃんは新しい道を歩き出す。あの二人だから絶対に幸せな道に違いない。
だって、お姉ちゃんの良さも、こなちゃんの良さも、一番知ってるのは私なんだから。
だけど私はまだ、ここにいたい。まだ少し怖いんだ、踏み出す事が。
みんなで作ってきた思い出が私を暖めてくれるから。
瞼の裏に走馬灯のように鮮やかに蘇る。
今はまだその温もりの中にいたいんだ。
雪だるまが微笑んでくれたような気がした。
「ありがとう」
もう少し、もう少しだけ……。
そう、雪が溶けて春になるまで……。
そしたらきっと、こなちゃんとお姉ちゃんに”ありがとう”そして”おめでとう”って
笑って言えると思うから。
fin 〜本当の優しさ〜
ということでまずはかがみ編エンドということになりましたが。これで終わりではありません。
初めの時点で結末を言わなかったのは、最後をいくつか書いていたからでして、これを読んだ後に次を読んでほしいという
意図があったからです。1章でパンドラ入れたのもそのためです。
ということでもうしばらくお付き合いいただければ幸いです。
ついでに今回も挿絵書いてみたので つ
ttp://freedeai.com/up/src/up5358.jpg
リアルタイムキタコレ!
GJ!
強いなぁ、つかさ
きっとつかさなら乗り越えてゆけるだろうなぁと思いました。
頑張れ、つかさ!
流れを読まずに失礼します。今までこのスレに大変お世話になったものデス。
今放送されてるらき☆すたを見終わったら、このスレに別れを告げようと思います。
このスレに出会えて、素晴らしい職人様達の作品の数々に出会えて、本当に幸せでした。
こんなに暖かい住人達が居るスレは初めてです。
これからもこのスレがいつまでも続くことを願っています。
本当にありがとうございました☆。
>>609 えー、このスレはこれからますますらき☆すたワールドが展開していくのにw
>>607 じーじぇい!
つかさ健気だよつかさ
原作でも好きな人はいたって話も出てるし、ぽやぽやしてるようで実は大人なのかもなぁ
今後の別展開もwktkだぜ?
612 :
14-319:2007/09/20(木) 02:04:45 ID:tRpygYWX
>>607 GJ!
いやぁ、ほんとに凄いですね
こんな流れで申し訳ないのですが
こなたとひよりの作戦の続きを投下させていただきます
前回の続きなのでかがみ×つかさのままです
とりあえずエロありです
>>609 アニメが終ろうとも原作は不滅なり!
それでも去るというならとめはしないが
いつのまにかつかさ先輩はかがみ先輩の服の下に手を入れていた
ちょっとやりすぎ?な気もしないと言ったら嘘だけど
まだ始まったばかりだから気にしないでおこう
それにまだ私自信が満足出来ていないッス!
しかし、なんかまぁ、終わり気配がなさそうな気がしてきた…
だけどずっと見ていたい気もした自分が怖くなってきたッス…
とにかく私はノートにペンを走らせている
この手が止まる気配が全くない。ないに等しかった
「先輩、チャイム鳴ったらどうするッスか?」
「ん〜…終わるまでずっと見ようよ。たとえチャイムが鳴ってしまっても」
「当然といえば当然ッスね」
授業の事なんか気にしていなかった
今気にするとしたら目の前の光景しか気にしていられなかった
妹になすがままにされている姉…
姉を好き放題にしている妹…
う〜ん…いつ見ても最高ッス…
しかし、チャイム鳴ってしまったら先生が入ってきてしまったりして…
「ひよりん」
「なんスか?」
「心配ごむよう〜」
と言いながら先輩は保健室の鍵を見せてきた
って、なんで先輩は私の心の中を読めるんスか…
超能力者か…
「いや、ひよりんすぐ顔に出てるし」
また…色々な意味ですごい先輩ッス…
「すぐ顔に出てるんスか…
だけど私たちの会話が向こうに聞こえてないか心配ッス」
「大丈夫だよ、あっちはもう本気モードだから小声程度なら聞こえないよ」
「しかし、なにからなにまで用意周到ッスね…」
「ひよりん、こうじゃなきゃ社会では生き残れないよ」
「んっ…お姉ちゃん…」
「つかさ…んっ…」
ふと二人の方を見てみるといつのまにかに責め受けが反対になってた
簡単に言えばかがみ先輩がつかさ先輩の上にいた
先輩たち…いつまで私を萌えさせれば気がすむんスか…
「う〜ん、エ○ゲでも双子の絡みは見れるけど実際見てみるとすごいねぇ」
「私も同人誌でも色々見ましたがやっぱり生で見ると違うッスね…」
妄想で書くのとの違いが分かった気がした
「お姉ちゃん…もっと…やって…」
「分かったわよ、こうでもしないと収まらないんでしょ…?」
「うん…お願い…」
「ったく、誰よこんな事したの…
わかったらただじゃおかないわよ…」
一瞬私の背筋に冷や汗が出てきた
おそらく先輩もそれを感じてるんだろう…
「いや、ひよりん心配しなくても大丈夫。
かがみはああ見えて暴力は振らないから」
「そ、そうッスか…心強い助言ありがとうッス…」
付き合いが長いからこんな自信のある発言が出来るのだろう…
先輩は凄い心強くてなぜか安心した
って、なんで先輩はそんな冷静でいられるんスかー!?
「大丈夫だから」
また読まれた…すぐ顔に出る癖直さないとやばいッスね…
「んっ…おねえちゃ…ん…あっ…」
おぉ!ついに本番モードに入ったッス!
かがみ先輩はつかさ先輩とキスをしてたようだ
しかも良く見ると舌も入れてる様だ
そのたびに二人の音が響いてくる
さらにかがみ先輩の手はつかさ先輩の胸をいじってるようだった
「ん…はぁっ……ちゅっ…」
「や……っ…」
「もっと…やって…」
つかさ先輩の息遣いが荒くなってきていた
ん〜…やっぱ最高ッスね…
これ以上の言葉が見つからないッス…
なんだか自分が同じ事しか思ってないような気がしてきた
「しょうがない子ね。まったく…」
そう言ってあきれながらもずっと妹を責め続けていた
「んんっ…やぁ…ん…」
「つかさのここ…すごい勃ってるわね…」
かがみ先輩はつかさ先輩の胸を触りながら言った
「やっ…触らないで…んぁっ…」
「しかし手馴れてるッスね、先輩たち」
「もしかしたら普段もやってたり…」
「そんな事言われると妄想が止まらなくなるッス…」
妄想ではなくても私のペンを動かす手も本当に止まりそうになかった
「お姉ちゃん…下も…」
「はいはい、わかったわ」
嫌な顔一つせずにつかさ先輩の要望に応えるかがみ先輩
そしてかがみ先輩の手がつかさ先輩のスカートの下へ伸びて…
「つかさ、とても濡れてるじゃない?」
「お…お姉ちゃんだって…さっき少し…」
「やっ…その事は…言わないでよ…」
恥らう姉妹…なんなんですか…この方達は…とても…とっても…
凄い姉妹じゃないですか…。仲良すぎてやばいッスね…
私のリミッターが解除されそうッス…
そしてかがみ先輩はつかさ先輩の既に下着を脱がして触り始めていた
「んんっ…!」
相変わらず二人はキスもずっとしていた
あの顔の間でチラチラと舌が見えたり糸をひいてたり…
それだけで絵になるから凄いッス…双子パワー恐るべし…
泉先輩もとても見入っているようだった
「ふわぁ…ぁ……お姉…ちゃん…んっ…」
つかさ先輩は手でベットのシーツを掴んで我慢をしていた
あぁ〜…つかさ先輩もかがみ先輩もかわいすぎるッス…
「も…う…我慢でき…ない…」
そう聞いたら何も言わずにかがみ先輩はもっと激しく責め始めた
「や…ん……おねえ…ちゃん…は…ぁっ…」
「やっぱかがみとつかさは家でもやってるね!絶対!」
「確かに馴れてるってレベルじゃないッスね…」
「…っ、んっ…あっ いやぁぁ……」
「つかさ、逝きそう?」
「う…ん…なんか…やっ…」
と言いながらかがみ先輩は指をつかさ先輩の中に…
って…ちょっ…そこまでやるんスか…
「あぁぁぁんっ!」
指を入れられた瞬間につかさ先輩の声が保健室の白い部屋に響いた
「はぁ…んっ…ま、まだ…でも…気持ちいい……んっ…」
喋ってる途中でもかがみ先輩は遠慮なくつかさ先輩にキスをした。
強引な感じにやるのっていいッスねぇ…
そう思っていたらかがみ先輩は手をゆっくり動かしていたが
しばらくしたら次第に早くなって行った
「くぅ…んんんんっ…あぁぁっ…!」
「ほら、つかさ、我慢しなくていいから…」
「うぅぅ…んんっ…やぁぁぁぁぁぁん…っ!」
その瞬間、つかさ先輩の体がビクビクッ!と震えた
「つかさ、気持ちよかった…?」
「はぁ…はぁ…お姉ちゃん…」
「なんか言葉にできないッスね」
「そうだねぇ」
ノートも完璧…
これで…いい同人が作れそうッス…
「つかさ…あんたが求めてくるからやっただけよ…
私は…やりたくなかったんだから…」
ここまで来ると…ほんと凄いッスね…
「う…ん…また…今度やろ…?」
「またやるの…?別にいいけど…」
「やっぱり二人はたまにやってるっぽいね」
「確信がついたッスね、先輩」
今夜は徹夜覚悟ッスね…
こういう場合は少しでも徹夜をしないと…
さらに続くかも?
619 :
14-319:2007/09/20(木) 02:14:29 ID:tRpygYWX
ありがとうございました
続くかも?なので続かないかもしれません
さて、464kb そろそろ次スレ立ててくるかなー?
次スレは、まだ「現在、アニメも放映されていて」のままでいいかな?
>>607 GJ
みんな強いなぁ。
恋愛って難しいなぁ。
>>619 GJ
続きも期待してますよw
テンプレ案だしてー?
出してくれたら1分で立ててくるよ。
>>619 ∧_∧
( ;´∀`)
人 Y /
( ヽ し
(_)_)
寝ようとしてたのにちんこ勃っちゃったじゃないかwwwどうしてくれるwwww
GJ!
>>620 まだちょっと早くない?
480kbくらいでいつも立ててたし、それでも微妙に余ってたし。
最終回も放送されたんだし
「アニメも好評のうちに終了し、」とかじゃない?
>>609 あなたが一体誰なのか、明かしていってはくれないのか…。
>>620 俺もまだ早いと思う。
投下が再開したといってもラッシュにはなりそうじゃないし。
同じく470〜480kbくらいで立てればいいんじゃない?
テンプレは
>>625のを改造して「アニメも好評のうちに終了し、原作も大好評連載中の・・」ってのは?
かがみん盗られてヤンデレ化するみさお。
幽体離脱を覚え、皆の私生活を覗くひよりん。
たかが40分の昼寝で、こんな夢を見てしまう俺はもう手遅れだと悟った。
お二方ともGJです。
きれいな文章とかえちぃシーンとか書ける人が羨ましい……
さて、前スレでてーそを書いた者です。
続きが少し書けたので、投下します。
展開が遅いです。まだ、カップル成立しません。
それでも読んで頂けたら幸いです。
630 :
きもち:2007/09/20(木) 03:05:57 ID:IDXzQdPi
泉こなたが貞操観念について尋ねた日。
柊かがみがこなたの告白されたあと。
やっと、こなた以外の三人の間に時間が戻ってきた。
「え?ちょ……おま…。」
「あうあうあう…。」
「い、ずみ…さん?」
時間が戻っても混乱は続いたままだったが。
三人も、混乱をもたらした本人も一様に頬が赤い。
最初に混乱が解けたのはかがみだった。
「こなた…。あんた、冗談よね?」
こなたに尋ねるというよりも、そう信じたいというようにかがみは言った。
「冗談で初めてなんてあげないし、もらおうなんて考えないけど。
あ、かがみも初めてだよネ?」
しかし、こなたはかがみの言葉を否定した。
こなたの口調こそふざけた感じだが、瞳は真剣そのもの。
「そう、だけど。」
「やたー。」
少し視線を合わせていた二人だったが、先に目を逸らしたのはかがみだった。
キスの名残からか、先程からかがみは自分の唇を触り続けている。
かがみの目を逸らしながらの肯定に、こなたは万歳をして喜ぶ。
そのこなたを混乱が治ったつかさが諌めた。
「こなちゃん…。やっぱり、お姉ちゃんの気持ちも考えなきゃ。」
「それは考えたよ?考えて考えて…、でも分からなくて、怖くて。
でも……だって…。もう我慢できなかったんだよ。
夏になったら、かがみのことだから勉強に専念するでしょ?
そうなったら、もうチャンスは来ないと思ったから…。
かがみが、ずっと好きだったから。」
徐々に俯きながらのこなたの独白。静かだが悲痛な叫び。
「泉さん…。」
「こなちゃん…。」
こなたの悲痛なモノローグに、みゆきとつかさはかける言葉が見付からなかった。
実は、二人ともこなたの気持ちは知っていた。
つかさはこなた自身から、みゆきは雰囲気から。知らなかったのは、本人だけ。
ギャルゲのようでマヌケな状態だが、他人からの好意とは意外と気付かないものだ。
「ハハハ…。こなた、そんなこと言っていいの?そのうち、あんたに、他に好きな人が出来るかも知れない。あんたが誰かに告白されるかも知れない。今、そんな簡単に−−」
「お姉ちゃん!それ以上言ったら、私、怒るよ!?」
こなたの行動が、言葉が受け入れられず、必死に、
それほど暑くはない部屋で汗をかきながら言葉を重ねるかがみをつかさが一喝する。
こなたが真剣だと知っているから。
暴走であっても簡単に決めたのではないと伝わってきたから。
そして、真剣なこなたからの気持ちを誤魔化し、こなたも自分も傷付けるかがみを見ていられなかったから。
「なんでつかさが……」
突然のつかさの言葉にかがみは呆然とするしかなかった。
631 :
きもち:2007/09/20(木) 03:08:35 ID:IDXzQdPi
「取り敢えず、お菓子でも食べながら落ち着きませんか?お腹が空くとイライラすると言いますし。」
険悪なムードが漂う中、みゆきが提案した。
机の上には、つかさお手製のリーフパイがのった皿と空になったカップが残されている。
「そだね…。それじゃ、私、飲み物入れてくるね〜。」
みゆきの言葉ですぐに落ち着いたのはつかさだった。
つかさはカップをお盆にのせてドアに向かう。
手の塞がっているつかさのためにみゆきはドアを開けてあげた。
「ありがと」と言って台所に向かうつかさに微笑み、みゆきは部屋を振り返る。
「ふぅ…。泉さん、いくらかがみさんが好きでも、
時間がなくてもかがみさんが納得してなければ、後悔するのは泉さん自身です。」
「でもっ…。」
一息つき、諭すみゆきにこなたは反論しようとする。
しかし、続きが告げられない。
沈黙が降り、台所から湯の沸く音が聞こえてきた。
再び、みゆきが口を開いた。
「それと、かがみさんも。
泉さんの決断が簡単ではないのはあなたが一番分かっているのではありませんか?
心にも無いことを言って後悔するのは、かがみさん自身です。」
「だって…。」
かがみも反論できずにいると、廊下から「開けて〜」と言う声が聞こえた。
再び、みゆきがドアを開ける。
「おまたせ〜。新しい紅茶だよ〜。」
「つかささん、ご苦労様です。」
「えへへ…。私もカッとなっちゃったし。ほら、こなちゃんもお姉ちゃんも。
紅茶の香りって落ち着くよね〜。」
困ったような笑みを浮かべて、そう言いながらつかさが紅茶を配る。
「「…ありがと、つかさ。」」
紅茶を受け取っても、しばらく紅茶に映った自分を見詰めた二人だったが、
突然示し合わせたようにハモった。
こなたとかがみはポカンと見つめあい、そして、同時に吹き出した。
二人につられてつかさとみゆきも笑いだす。
「プッ…ククク……。ごめん、こなた。」
「ククク…。いやぁ、私の方こそかがみの気持ちも考えないで……ごめん」
笑い始めたら、気持ちがほぐれたようで、二人は謝り合う。
二人の表情が和んだのを見て、みゆきは告げた。
「フフフ…。仲直りも出来たところで、おやつの続きにしましょう。」
632 :
きもち:2007/09/20(木) 03:12:24 ID:IDXzQdPi
泉こなたが柊かがみのファーストキスを奪った日。
高良みゆきがこなたとかがみを諭したあと。
かがみの部屋は四人がパイを食べるサクサクという音と紅茶を飲む音で占められていた。
−−サクサク…。
−−クピクピ…。
そして、最後の一枚。
こなたとかがみが同時に手を伸ばしかけ、同時に手を引っ込めた。
「…かがみ食べなよ。」
「…私は良いから、こなた食べなさいよ。」
「さっきのお詫びだと思って。」
「それは私の台詞。」
そんなことを言い合いながら、皿を押し付け合う二人。
−−ひょい、パク
−−サクサクもぐもぐ、ゴックン
−−クピクピ
机の上を行き交う皿に手を伸ばして、最後のパイを咀嚼し嚥下したのは…つかさだった。
唖然とするこなたとかがみ。その二人につかさは笑顔で告げる。
「仲良く、ね?」
決して怒っている訳では無いのに、何故かその笑顔には威圧感が。
「「は、はい。」」
二人は頷かざるを得なかった。
633 :
きもち:2007/09/20(木) 03:16:08 ID:IDXzQdPi
その後、休憩は終わりということになり、形の上では勉強会に戻った。
しかし、集中できる筈もなく。
こなたとかがみはお互いにチラチラ見ているし、
つかさはそんな二人を心配そうに見ている。
そして、みゆきはその三人の様子を困ったような笑みで見ていた。
「こなた、何であんなことしたの?」
痺れを切らしたのはかがみだった。
なんでもないような風を装いながらも、ノートに向かったシャーペンは文字を綴る事は無い。
「かがみが好きだから。」
「なら、今じゃなくても…。」
さも当然と言うように答えるこなたに、かがみは反論する。
「…ホントはね、かがみに私の気持ちを知ってもらうだけでも良かったんだよ。」
「だったら…!」
シャーペンを置き、告げるこなたに、かがみは噛み付いた。しかし、こなたは落ち着いて言う。
「キスは悪かったって、思ってる。でも、最後に欲が出ちゃったんだ。
受験だ、卒業だって考えるとなんだか居ても立ってもいられなくなってね…。
それでね、伝えるなら今回がチャンスだって思ってたんだ。
つかさには私の気持ちは言ってたから、みゆきさんにも知ってほしかったし。」
かがみはハッとつかさの方を振り向く。
そのつかさは困ったようにかがみに笑いかけた。
「いやぁ。いい思い出になったよ。これからも、四人で仲良くやっていこうよ。
今日のことは犬にでも噛まれたと思ってさ。」
吹っ切れたような表情でこなたは言うと、シャーペンを持ち、勉強に戻る。
しかし、かがみとつかさは釈然としていない様子で、そんなこなたを見ていた。
「ちょっと、つかさとみゆき、外してくれない?」
しばらく考えるようにしていたかがみだったが、唐突に二人に告げた。
「え?でも…。」
「つかささん。行きましょう。」
「また、喧嘩になるのでは」と不安になるつかさの手を引いて、みゆきはドアに向かった。
部屋から半分出てから、みゆきが告げた。
「それでは、15分程つかささんの部屋にいますね。くれぐれも喧嘩だけはなさらないように、お願いします。」
その後、かがみがデレになったり。
つかさが嫉妬したり、自己嫌悪したり。
みゆきが羨んだり、嫉妬したり。
そして、こなたがかがみと一線を越えてしまったり。
それらはまた、別のお話。
最初に何レス使うか書き忘れた…orz
一旦はここで切ります。
元々、二つだったけど二つ目が字数が少ないので合体と相成りました。
次回は多分……予想はつきますかね。
では、お目汚し失礼致しました。
>>634 GJ では立ててこよう。
アニメも好評のうちに終了し、原作も大好評連載中の・・で
>>634 GJ!
こういう普通の日常みたいなのが書けないんだよなぁ…
新しいネタが浮かばない…
最近は修正、加筆ばっかりだな…
ふんがー!
埋め代りに
>>569で言ったネタを
こなたたちが高校を卒業してから10年後
みんなあの時と同じようにまったりとした生活を送っていた
唯一人を除き…
プルルルルル……プルルルルル……
ガチャ
「はい、もしもし」
「あの…『リセット』をお願いしたいんですけど…」
「あ、『リセット』ですね?わかりました〜」
リセット…彼女と彼女の元に来る人たちの間で使われている隠語
平たく言えば、「夜逃げ」のことだ
「住所はどこですか?」
「あ、○○県××市…」
「うーん、そこなら1日で行けちゃうな〜…じゃあ、それまでに荷物まとめといてね。本当に必要最低限のものだけね。
あ、どこに逃げたいとか、そういうのはある?」
「いえ…そちらにお任せします」
「わかった〜。じゃ明日の夜中2時に行くから。正確にいえば明後日ね」
こうして、仕事の契約は成立した
電話が切れると同時に、オーブンから電子音が響く
「あっ、ケーキが焼けた!」
声の主、柊つかさはミトンを手にはめつつ、ケーキを取り出した
草木も眠る、と言われた午前二時…の一時間前
つかさは客の家の目の前にいた
「1時間前だなんて、そんなの聞いてませんよ!」
客はわめく
「あのねー、あの会話を盗聴されてたらどうするのよ?私たちの仕事は1時間前行動が普通よ」
口調は普段と変わらないが、発せられる言葉は「夜逃げ屋」そのものだ
「あと3分で出るから、それまでに積みこめなかった荷物はあきらめて。それまでに乗ってないと、お客さんも置いて行くから」
その言葉を聞くと、客はあわてて荷物を積み込む速度を上げる
何とか荷物を積み込んだ客は、あわてて助手席に乗り込む
「じゃ、行くよ〜」
その言葉と同時にアクセルを踏み込み、車を発進させる
「あの…どこに行くんですか……?」
客が恐る恐るたずねる
「ん……甑島列島(こしきじまれっとう)にしたよ」
「こ…甑島?」
今まで聞いたこともない島の名前を出され、慌てふためく客
「ああ、安心して。無人島じゃないから」
「ど……どこにあるんですか…?」
「鹿児島。後で地図をみせるから、それで確認して。あ、あと今からできるなら寝るか気絶してて。騒がれると面倒だから」
高速道路の入り口に入ったつかさは、そういった
「え…それってどういう……?」
「うん。だって今から大体時速200キロくらいで走るもん」
さらりと恐ろしいことを言われた客は、恐怖にひきつる
「エンジン改造しておいたんだよね。それに、これくらいの速度なら追手が来ても振り切れるし」
死の恐怖を始めて体感した客は、その場で気絶した
「あれ?もう気絶しちゃった。まあいっか!れっつごー!」
ギアをオーバートップに叩きこみ、一気にアクセルを踏み込み、加速する
夜逃げでリセット!
それが合言葉の、つかさの闇の仕事は今日も忙しい
甑島列島の皆さん、そして
>>551氏、気分を害したらすいません
パティのエロパロって意外と無いのな
>>641 ・こなた→「♪殺っちゃった、殺っちゃった!♪」(仕事人)
・つかさ→『夜・逃・げでリセット』(夜逃げ屋)
・かがみ→『ケンカ予報の時間だよ』(ストリートファイター)
・みゆき→『たぶんかなり普通の報酬』(元締め)
……なんというアウトサイダーガールズ
>641
あ、ありのまま昨日起こった事を(略)
間違わないようにジャケ引っ張り出して見て確認したのに
指は夜逃げと打っていたんだ
決して催眠術t(略)
弄られるならネタ一本になるまでなったほうが本望なので
GJ&ありがとうなのですよ!
そして実はそこら中で流れてるらしいのでまた少し日本が好きになった
次スレたったんだし早く埋めよーぜー
では、ウメクサ行きますね。3レス。
カップリングなし。やや鬱展開?
-----------------------------------------------
647 :
(1/3):2007/09/20(木) 16:18:31 ID:TUkfWc5X
「……でさ〜、またそれが臭いんだよね〜」
「まだやってたのか、アンタは」
いつものように、泉さんが元気に話していらっしゃいます。
今日は睡眠時間も足りているようですね。頭のてっぺんに飛び出した、ひと房の髪の毛も、生き生きとされています。
かがみさんも、つかささんもお元気そう。とても微笑ましい、朝の光景です。
だから……今日は、今日こそは言えるかもしれません。
今までずっと、いつかは言おうと思ってきた、あの言葉を。
泉さんのテンションが、上がってきているのがわかります。
私の鼓動も、高まっていくのがわかります。
……そして、ついにその時がやってきました。
「あの臭さは、もはや芸風と言っても過言じゃないね〜、うん」
人差し指を立てて、泉さんがそう言い放ちました。
――い、今ですっ!
「な……何でですかっ!」
……『ぴしっ』と言う音が、聞こえたような気がしました。
泉さんが、かがみさんが、硬直したまま私の顔を見つめています。
横で笑っていたつかささんも、目が点になっています……
緊張が後悔に変わり、背筋をぞくり、と冷たいものが走っていきます。
「……あ、あの、その……」
「あの……みゆきさん?」
遠慮がちに口を開いたのは、泉さんでした。
「私、何か気に障ること言っちゃったかな? ……だったらその、ゴメン」
視線を落として、つぶやくような小さな声で。
ち、違うんです、泉さん。そうじゃないんです……
「みゆき……あんたが声を荒げるなんて珍しいわね。……何かあったの?」
気遣ってくれるような、優しげなかがみさんの声が心に刺さります。
「ゆ、ゆきちゃん……?」
つかささんの声も、心なしか震えています……
「……こなた、あんた悪乗りしすぎなのよ」
眉をひそめ、となりの泉さんに視線を送るかがみさん。
「あうぅ……」
泉さんの頭の毛が、まるでお塩を振った青菜のように萎れてしまっています……
「……いえ、あの、……そうじゃないん……です……」
やっとの思いで、声を絞り出すまでに、どれほどの時間が経ったのでしょうか。
時間的にはほんの数秒なのでしょうが、私の中ではまるで永遠にも思える、その時間。
「そうじゃない、って、何が?」
かがみさんの声も、どことなく遠慮がちで。
……まるで、私と皆さんの間に、まるで深い亀裂ができてしまったような……
648 :
(2/3):2007/09/20(木) 16:20:31 ID:TUkfWc5X
「……すっ、すみませんっ! 本当にすみませんっ! ごめんなさいっっ!!」
皆さん……本当に、本当にごめんなさい。
ただ、ただ私は……
「み、みゆきさん?」
「私……一度、その、かがみさんのように突っ込んでみたいと思ってたんです! それだけなんですっ……」
私は、ただ頭を下げることしかできませんでした。
目頭から零れた雫が、少しずり落ちたテンプルに滴り落ちて……
「ほぇ?」
涙で歪んだ視界の隅へ、青い何かが覆いかぶさってくるのが見えました。
「……なぁぁぁんんだ、そーゆーことだったのかぁ」
まるでスイッチが切り替わったかのように。泉さんの声が、明るさを取り戻しました。
「もう……びっくりさせないでよ〜」
かがみさんとつかささんの声が、穏やかなハーモニーを奏でます。
「私、いつも皆さんの『ノリ』についていけなくて……気も利かなくて……だから、私……わたし……」
「みゆき、そんなコト気に病んでたんだ……ほら、涙拭いて」
鼻と耳から眼鏡の感触が消えて、代わりに柔らかいハンカチの感触が、私の目元や頬を優しく拭っていきます。
「無理しなくてもいいんだよ、みゆきさんはそのままが萌えるんだから。自分のスタイルでいくのが一番だよ」
泉さんの優しい声が、私の心をほぐしていってくれます。
「そうだよ、ゆきちゃん」
肩に感じる暖かい感触に視線を向けると、つかささんが私の横で、そっと肩を抱いてくれていました。
「そうよ、みゆき。無理して突っ込む必要なんてないわよ、こんなのに」
いつもの調子を取り戻して、かがみさん。
「そうそう、ツッコミならここに強烈なのがいるから十分だよ」
かがみさんを横目で見ながら、こなたさんのにんまりとした顔。
「ちょっと待て、おい」
すかさず、かがみさんの声が被さります。
それは本当に自然体で、どこにも無理がなくて……
「そうですね……やはり、慣れないことはするものではありませんね」
それぞれの自然体に戻った、皆さんの雰囲気に支えられて。
私もやっと、いつもの微笑を浮かべることができました……
649 :
(3/3):2007/09/20(木) 16:22:40 ID:TUkfWc5X
「……でも」
人差し指を立てて、泉さん。
「その意気や良し!だよ、みゆきさん。ツッコミっていうのは、これでなかなか奥が深いもんでね〜……」
「はぁ?」
「……あの、泉さん?」
「みゆきさんの場合、普段とのギャップを強調したほうがよさそうだから、関西弁で言ったほうがいいかもね」
「ちょっと待て、アンタついさっき逆のこと言ってたトコでしょうが!」
かがみさんのジト目にも怯まず、泉さんのテンションが再び上がっていきます。
「あと、ジェスチャーもあったほうがいいヨ。肘をこう曲げて、相手の脇腹めがけて……『何でやねん!』」
どこで会得されたのでしょうか。一分の隙もない、完璧なポーズから繰り出された左手が、私の脇腹を軽く叩きます。
「って、こんな感じね。じゃあ早速、まずは素振り100回!はい、やってみよー」
「あ、あの〜……」
「ちょっと、こなた!どこまで悪乗りする気よアンタは」
会話に割り込むように、かがみさん。
「んー、そだね、桜藤祭の演し物にできるぐらいまではレベルアップしてほしいかナ」
「演し物にすんなっ!」
「おお! これ! これだよ、今の呼吸! みゆきさん見てた? この『間』が大事なんだよ!」
「おーーーいっ! 話を聞けーーっ!!」
……『適材適所』という言葉があります。
私たちの間にも、それぞれの立ち位置、というものがあるのだと思います。
無理はしないで、自分の立ち位置をキープしていくのが、結局一番なのでしょうね……
素直に、そう思えました。
……泉さんは、まだ私の新たな立ち位置を模索されているようですが……
― おしまい ―
------------------------------------------
以上です。
みゆきさんのキャラソン『萌え要素ってなんですか?』の一節、
『お笑いも練習します/突っ込んでみたいです今度』から妄想。
……我ながら、妄想するにもほどがあると思うorz
タイトルをつけるなら『突っ込んでみたいです今度』なんですが、
激しくネタバレだよなぁこれだと。うぐぅ。
651 :
14-319:2007/09/20(木) 16:29:17 ID:tRpygYWX
まだ埋まってなかったのか
とりあえず全然埋めにならない埋め小ネタ
「ねぇ、かがみ」
「何?」
「最終回の雰囲気をぶち壊すEDっていやだよね
この前気に入ってたアニメがね…」
「また急に…」
「アニメなのにEDで実写はないよ…
アニメにまで三次元を持ち込まないで欲しかった…
最後ぐらいちゃんとやって欲しいよ…」
「はいはい、あんたの言いたい事はなんとなく分かったわ」
「かがみさ、好きなアニメがもしいきなり実写化したらどうする?」
「うっ…かんがえただけでいやだわ…
まぁとりあえず見ないわね」
「でしょ?ただの三次元のドラマだったら見なくてすむけど
好きなアニメのEDでいきなり三次元の人間が歌ったり踊ったりしたらどう思う?」
「とりあえず面白かったら許すけど最終回までずっと続けられたら見たくなくなるわね…
…と言うかもうその話はやめて…聞きたくもないわ…」
「うんうん、かがみもそう思うよね」
「と言うか最後までそういうの続けられて嬉しい人っているのか…?」
「少しだけどいるみたいだね」
「まじか…そんな奴の感覚がわからん…」
「その人にとっては好きなアニメじゃないんだろうね。きっと」
「もうこの話はやめましょ…なんか他人事の話の様な気がしなくて…」
652 :
14-319:2007/09/20(木) 16:32:27 ID:tRpygYWX
もう一つ入ります
キャラクターソング収録後・4人の会話 その1
「いやぁ、キャラソンの収録終わったねぇ。みゆきさん、どうだった?」
「私は、中々でしょうか…けどみなさんよりダメだと思います…」
「ゆきちゃん、もっと自信を持っていいよ」
「そうだよ、みゆきさん。かがみはどうだった?」
「う〜ん…ちょっと恥ずかしかったわね…」
「もしかして曲の内容もツンデレとか…」
「違うわよっ!少なくともこなたよりはマシだと思うわ」
「う〜ん…否定する所が怪しい…」
「っ……!」
「こなちゃん、どうだった?こなちゃん歌結構上手いし…」
「私はかなりノリノリで歌えたからとっても満足だね」
「きっとこなたの事だからネトゲの事とかでしょうね」
「やっぱお見通しだったか」
「つかささんはどうでしたか?」
「私のは…みんなの中で一番ダメかもしれない…
けど私らしい歌だったかな…?」
「でも自分らしく歌えたならそれでいいじゃないの」
「うん、そうなのかな…?」
変な所で止まるのはきのせいです
その2も発売されたら…
>>641、そして
>>644 本当にすまない。
>>641のネタに勝手に続きを作ってしまった。(同じ日の話とは限らないが)
高速に入ってからどれだけの時間が経っただろうか。
車は、片側三車線の高速道路を、制限速度などお構いなしに走り続ける。夜のうちにできるだけ先に
進んでおかなければならないのだ。
その時、ハンドルを握るつかさの目に一つの案内標識が映る。
『 5 」 加須 栗橋 500m先 出口 』
それを見たつかさは、少し車のスピードを落とす。…といっても、相変わらず制限速度よりはるかに速い
速度を出しているのだが。
別にここで下りるわけではない。ただ、つかさには少し思うところがあったのだ。
この辺りからだと、つかさの実家が近い。そのためだろうか、仕事中、このあたりを通るときにいつも、
楽しかった高校時代の思い出が頭をよぎり、少し感傷的な気分になってしまうのだ(かといって、運転が
疎かになったりはしていないので、その辺りは大丈夫)。そして、私はなぜ、今こんな仕事(こと)をして
いるのだろう、と、少しだけ考えてしまう。 もっとも、その答は出てこないのだが―――
今日もまた、そのつもりだった。―――あの邪魔が入るまでは。
「前のトラック、停まりなさーいっ!」
赤色灯をつけた一台のスポーツカーが、つかさの運転する車を追いかける。覆面パトカーだ。
それに気付いた車は、停まるどころかさらに加速する。
「トラックがあんなに速く走れるなんて……びっくりだ。―――でも、…負けるかぁっ!」
「な、成実先輩っ!お、落ち着いてください!」
残念ながら、こんな状況におかれた成実ゆいが、後輩のその言葉に耳を貸すはずなどなかった。
「こんなところで邪魔するなんて、ひどいよーっ」
つかさは思わず声をあげてしまうが、しかしアクセル全開を続ける。なにしろ、文句なしの速度超過・
50km/h以上。捕まったら、なにもかもが台無しになってしまう。それだけは、避けなければ。
もう数分間もの間、二台の命がけの追いかけっこは続いていた。
「追いつけても、このままじゃそれ以上は手出しできないや。池谷、応援を要請して」
一台ではどうしようもないというこの現状を打開しようと、ゆいは助手席にいる後輩に指示を出す。
しかし、返事はなかった。
(あぁー、白岡ジャンクション過ぎちゃったよー。圏央通って東名に出ようと思ってたのにー。というか、
あの警察しつこいよー。このままじゃ浦和に着いちゃうよー)
つかさは、このカーチェイスが、この先の浦和本線料金所に着くまで長引くことを恐れていた。もし
そうなった場合、料金所ではETCがあるとはいえ、相当減速しないといけない。そして、その先の再加速
勝負になると、いくら改造車とはいえ、トラックに勝ち目はない。そうなれば、一巻の終わりだ。
(しょうがない、一か八か、「あれ」に賭けるしかなさそうだね)
「こらー、池谷ーっ!気絶してる場合じゃないでしょーっ!―――…って、ぅわあっ!」
ゆいの目に、前を走る暴走トラックのブレーキランプの光が飛び込む。そして直後、そのトラックが、
ものすごい勢いで自分に接近してくるのに気付いた。
時速80キロなら80m、時速100キロなら100m。安全のためには、そのくらいの車間距離が必要だ
とよく言われる。では、時速200キロで走る場合、200m以上の車間距離を、いま現在後ろを走るゆいが
保っているのか―――答はノーだった。
トラックとスポーツカー、衝突すれば負けるのは後者。ゆいは咄嗟に急ブレーキをかける。しかしトラ
ックの制動力は予想以上のもので、さらに迫ってくる。次の瞬間、ゆい最後の手段。―――スピン、停車。
トラックは停まらず、再加速してそのまま走り去った。しかしゆいは追わなかった。もうそれだけの
気力が残っていなかった。ましてや、後輩・池谷のライフはとっくに0、という状態でもあったし。
「あれ、そういえばさっきの車のナンバーとか記録したっけ?」
しばらく後、詰所
ゆいの運転する覆面パトカーが戻り、この話は署内に広まることとなった。―――もっとも、一部の人の
間では、あまり重要でないはずの部分だけが有名になって、当人が困惑してしまうこととなるのだが。
「い、池谷先輩……コーナー3つで……失神事件っ!」
「だからそれを言うなっ!」
>>650 いやーやっぱりいいねー違和感がない感じで綺麗にまとまってる小噺って感じ最高!GJJJ
最終回迎えた今だといつもの4人が何気なく会話してる
日常がふと頭をよぎってなぜか目から汗が・・・(´;ω;`)
>>651 悪い方のあるあるネタかよっ!
埋めの為に書いてたSSが思いの外長くぅ〜……
切れそうなので自重して、新しいのを書くか……。
「ねぇ、こなた?」
「何、かがみ?」
「私、この作品の準主人公に過ぎないわよね?」
「ん〜…。背景でも脇役でもないけど…。準主人公なんて言葉あるの?」
「多分ないわよ?所謂、造語よ、造語。他に何か、良い言葉ある?」
「メインヒロイン!」
「何?そんなヒロインが要る話でもないでしょ?」
「いやぁ、一部ではそんな扱いを受けてるけど?」
「一部って何処よ?」
「ホントに知りたい?」
「いや、いいわ。激しく後悔しそうだから。」
「それで、どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、主人公のあんたより、私の方が地の文を担当することが、多い気がして。」
「あぁ、それで今、地の文が無いんだ。」
「所謂、ストライキ?」
「多分、扱いやすいからだよ。あ、でも、ツンとデレの加減が難しい気も…。」
「何の話だ!?」
「いや、あっちの話。」
「あっちって……。それを言うならこっちじゃない?」
「いやいや。あっちであってるヨ?まぁ、メインヒロインなら地の文を担当しても、妥当なんじゃ?」
「なら、つかさやみゆき達はサブヒロイン?寧ろ、つかさがメインなんじゃ?」
「分かってないなぁ。かがみがメインだよ。」
「てか、男があんたのおじさんくらいしかいないのにヒロインも無いんじゃ……?」
「そこは大丈夫!だって……」
「だって?」
「こういうことさ!」
「んっ!…ん〜……んっ。あんっ……ちゅぱっ……。あんた、何を−−」
「私がこの話の主人公でかがみがメインヒロイン。なら、すべきことは一つだよ!」
「ちょっ…こな、んっ!…あんっ−−−」
(続かない)
埋めにはもったいないほどのクオリティの作品がこんなにも…
ホントにここにくるとニヤっとさせられてばっかりですな。
残り7kbか
微妙に埋まりそうで埋まってないな
埋めついでに……携帯からですが
かがみ「いい?こなた。忘れないで。
あんたを信じて。 私が信じるあんたでもない。あんたが信じる私でもない。
あんたが信じる、あんたを信じなさい……」
こなた「?……かがみ?」
かがみ「ギガァァ……ドリルゥ……ブレイィィィィクゥウ!!」
こなた「その日私は、かげがえのない物を失った……」
こなた「天を衝くドリルで処女膜を破られました」
何となく書いてみたかっただけ
>>698 エロパロはレズ話ばかりだから見たくない
これはひどい
みゆきスレの誤爆かw
ほぼレズしか期待できないスレでそれを言うのは無理がある
なんでエロパロスレにいるのかと小一時間…
ちょっと和んだ
見たくないと言いながら覗いていることが明らかにw
>>659 こなたのアホ毛がドリルのように回ってるの想像してフイタw
埋めネタ
「それにしても最近はほんとアニソンがオリコンに入る事多くなったよね」
「え…あれってアニソンも入ってたの…?気づかなかったわ…」
「うん、普通に入ってるよ。例えば三○路○とかね」
「え…あれって演歌じゃなかったの…?」
「まぁ演歌は演歌だけど、あるアニメの挿入歌だね」
「私が知らないうちに音楽業界は凄い事になってるわね…」
「最近なんて凄いよ、あるアニメのキャラクターソングが4枚全部TOP20入りしたし
その中で二つTOP10入りもしたんだから。一つは惜しくもTOP10を狙えなかったんだよね…」
「もういいわ…あんたの話は聞くだけで疲れてくる…」
「今度もまた4枚同時出るけど入るかなー?」
「だからその話はもういいわよ…」
埋めネタ
「なんか最近色んな所で私とかがみを絡ませるのが流行ってるらしいね」
「なんで私があんたなんかと一緒にされるのよ…」
「まぁ、しょうがないよね。ツンデレだし」
「関係あるのかよっ!」
私がこなたと…悪い気はしないわ…むしろとても嬉しいぐらいね…
「どうしたの?」
「な…なんでもないわよっ!」
「ふ〜ん…実は内心嬉しかったりするんじゃないの?
私は嬉しいよ。だってそこでもかがみと一緒にいれるから…」
「私は嬉しくないわよ!あんたなんかと居れて嬉しいはずがっ…」
「おやおや…?」
「っ…」
「ん〜…かがみもそう思ってるなんて私も嬉しいね…」
>>669 「泉さん、その話、詳しくお聞かせしていただけませんか…?」
埋めネタ
「ねー、かがみ。ポータブル・ワンセグTVとか買う予定ないの?」
「ないわよ。……ていうかいきなりだな」
「えー?せっかく、かがみにぴったりのがもうすぐ発売されると言うのに」
「どういう意味だ、それは」
「いやね、ネットで見たんだけど、こんど「ツンデレTV」たるものが発売されるんだってさ。使い込めば
使い込むほどだんだんデレになっていくっていう。ま、「ツンデレTV」は正式名称ではないんだけど。
ツンデレの鑑であるかがみにはぴったりじゃん?」
「誰かツンデレの鑑か!っていうか、そんなに興味あるんならあんたが買えばいいでしょ」
「わかってないねぇ〜かがみは。私には、もっと扱い慣れて自分にぴったりになった本物のツンデレが
いるから、機械に頼らなくても……。さーてかがみ、じゃ今度はデレモードいってみようかー」
「いい加減にしなさいよ!私はあんたのおもちゃじゃないの!」
「ほら、ご覧のとおり、こうすればツン成分が強くなります。……ほんと私も、扱いに慣れたもんだ。
これもひとえに、かがみへの愛がそうさせちゃったんだねぇ。私も夜な夜な、かがみを想いながら―――」
「い、いきなりそんな、こっちまで恥ずかしくなるようなこと、言わないでよ……」
「はい、こうすれば今度は(ry)」
「待て、あんたはこれ、誰に説明してるんだ……?というか、人で遊ぶなと何度言えばだな」
埋めネタ
「で、この前アニメの実写EDがどうのこうの話したじゃん?」
「またその話か…」
「その実写EDで歌った歌がなんかアルバムとして出されるらしいよ」
「ったく、なんでもかんでも出せば売れると思ってるのね」
「だよねぇ、でもなんかその中の4曲がプロの作曲家がアレンジするらしいよ」
「でもそれはなんか少し聞きたいわね…」
「かがみああいうの聞きたいの?今度買ってきてあげようか?
言って置くけどたぶん80%ぐらいの歌が酷いと思うよ
私は…微妙かな…でも買わないとヲタクとしてのが…」
「しかし、あんたそういう話とても好きね
ついていけないわもう…」
500KB!
「500キロバイトですね」
「それなに、ゆきちゃん?」
「500キロバイトとはスレの容量の限界の事ですよ、これを超えると書き込めなくなるんです。」
「そうなんだー、すごく太った人の事かと思っちゃった」
最後
「そうだ、オリコンといえばあの曲が2位に入ったけど
惜しかったなぁ…その後その曲のRemixが出たけど3位だったね」
「そんな事急にふられてもわからんわ」
「でもそのRemixが001って書いてあったけどこれからRemixが99枚以上出るのかな?」
「そんな出したら作詞家や作曲家さんたちが疲れるわよ」