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参考文献・姫騎士アンジェリカスレ
ということで一つ。今回は一応エロあり。そうは見えんかもしれませんが。
ルイズが変態なので、そういうのが嫌な人はスルーでヨロ。
寝台の上でか細い寝息を立てるルイズの傍ら、憔悴した才人が椅子に座ったままじっとしている。
その背中に、シエスタはそっと声をかけた。
「サイトさん、そろそろお休みになってください。もう三日も、ほとんど横になっていないじゃない
ですか」
こんなことを言うのは、今日でもう何回目だろうか。そして、返事もやはり一緒だった。
「ダメだ、ルイズがまだ起きてない」
シエスタはそっと息を吐く。才人の気持ちは分からないでもないが、このままでは彼の方も参って
しまうだろう。
(ミス・ヴァリエール)
眠り続けるルイズの顔を、シエスタは複雑な気持ちで見つめた。
(早く、またわたしたちに元気な顔を見せてください。サイトさんは、この一ヶ月、ずっとあなたの
ことばかり考えていたんですよ)
紆余曲折、様々な冒険を経て、コルベールが指揮するオストラント号は、ついに東方へと旅立った。
この船には才人とルイズ、そしてシエスタも同行し、他にもキュルケにタバサ、ギーシュにモンモラ
ンシーなど、見知った顔が多数参加している。
だが、当初のどこか浮き立つような冒険気分に反して、この旅は実に過酷なものとなった。
東方のエルフは、予想以上にこちら……特に、虚無魔法を操るルイズに対して、強い敵意を持って
いたのである。そのためにオストラント号も頻繁に襲撃を受け、シエスタ自身何度も危険な目にあった。
一度西方へ引き返した方がいいのではないかという声が上がり始めた頃、事件は起きた。オストラ
ント号に急襲をかけてきたエルフ達の手によって、ルイズがさらわれてしまったのである。
当然、才人は半狂乱になった。すぐにでもルイズを探しに行くと一人で飛び出しかけた彼をなだめ
つつ、一行は根気強くルイズの行方を追った。そして、彼女があるエルフの一団の本拠地に捕われて
いることが知れたのが、四日ほど前。それを聞いた才人が止める間もなく突撃し、そのエルフの本拠
地を壊滅させ、無事ルイズを救出して戻ってきたのが三日前である。
以来、才人はほとんど一睡もせずに、ルイズのそばに付き添っているのだ。
ルイズの行方が知れなかった間の才人を思い出すと、シエスタは今でも胸が痛くなる。それは、才
人の苦しみを思っての痛みであり、才人がどれだけルイズを愛しているかを決定的に悟ってしまった、
女としての心の痛みでもあった。
だからと言って、「このままミス・ヴァリエールが帰ってこなければ」などとは考えなかった。シ
エスタにとっては、自分が一番に愛してもらえないという悲しみよりも、ルイズを失った才人の苦し
みの方がずっと重要だったのである。
それに、ルイズだって、恋敵とは言っても長い間共に過ごしてきた友人である。無事を祈る気持ち
は、シエスタとて一緒だった。
戻ってきたルイズは、予想に反して無傷であった。体に拷問の跡などの外傷は見られなかったし、
意識を失っていることを除けば、体の方は至って健康と言ってもいい状態だ。今眠っている彼女の顔
を見ても、その寝顔は安らかであり、うなされたり苦しげに呻いたりといった様子は少しも見られない。
(後は、目を覚ましてさえくれれば)
シエスタが、祈るような気持ちでそう思ったとき。まるでその願いを神が聞き届けでもしたかのよ
うに、ルイズが低いうめき声を上げながら、ゆっくりと目を開けた。
「気がついたのか」
憔悴しきって嗄れた声に隠しきれない嬉しさを滲ませながら、才人がルイズの顔を覗き込む。ルイ
ズはしばらくの間虚ろな瞳で才人のことを見上げていたが、やがてぽつりと、呟いた。
「……サイト?」
「そうだ。俺だよ」
「……ここは?」
「船の中だ。お前、戻ってこれたんだよ。可哀想に、怖かっただろ。もう大丈夫だぞ」
声に優しさを滲ませて、才人がルイズの頭を撫でる。ルイズは一瞬詰まったような吐息を漏らした
あと、頬を赤らめた。
「……夢じゃないの?」
「ああ。悪い夢はもう終わったんだよ」
「本当?」
「そうだって。信じられないのは分かるけどな、安心していいぜ」
才人がそこまで言ってやっても、ルイズは何故か疑うように、何度も何度も「本当?」と繰り返し
た。あまり何度も繰り返すので、それが何かを待つような、あるいは期待するような態度にも思えて
くる。シエスタは怪訝に思ったが、ルイズは十数回ほどで問うのを止め、安堵したように長く息を吐
いた。
「そう。わたし、戻ってこれたんだ」
自分がいる場所を確かめるように呟いたあと、ルイズは才人を見上げて微笑んだ。
「ただいま、サイト」
「ルイズ、ルイズ……!」
たまらなくなったように名を呼びながら、才人がルイズを抱き起こし、そのまま強く抱きしめた。
ルイズが短く悲鳴を上げる。頬が少し赤く染まった。
才人の激しい抱擁に、シエスタの胸がまた少し痛んだ。だが、耐えられないほどではない。
「サイトさん、サイトさん」
シエスタは苦笑気味に笑いながら、才人の肩に手をかける。
「ミス・ヴァリエール、今起きたばかりなんですから。もっと優しく扱ってあげてください」
「あ、悪い、つい」
才人が慌てふためきながらも、丁寧にルイズの体を横たえなおす。優しい手つきから、相手のこと
を最大限労わろうとする気持ちが滲み出ているようだ。シエスタの胸に、痛みを覆い隠すような暖か
さが生まれた。
(よかった。わたし、嫌な女にならずにすみそう)
内心ほっとしつつ、シエスタはふと、横たえられたルイズを見る。そして、かすかに眉をひそめた。
どうも、ルイズの様子がおかしい。顔が熱を帯びたように赤く染まり、瞳は焦点を失ったまま潤ん
でいる。眉は悩ましげに下がり、半開きになった唇からは湿っぽい吐息がかすかに漏れ出しているよ
うだ。それに、よく見ると、体が小刻みに震えている。
(……お風邪でも召されたのかしら)
だとすると、汗ばんだ服を着替えさせないといけない。シエスタは、椅子に座って一息吐いている
才人の両肩に手を置いた。
「ほら、サイトさん、ミス・ヴァリエールも目覚めたことですし、ひとまず安心できたでしょう。サ
イトさんにもお休みが必要ですし、わたしもミス・ヴァリエールのお世話をしなくちゃいけません
から、一度お部屋に戻られてはどうですか」
「でも」
才人は少し迷う様子だった。本当は、一時も離れずルイズのそばにいたいのだろう。
だが、「ミス・ヴァリエールのお世話」という単語を聞いて、気を遣ったらしい。彼は不意に大き
く欠伸をした。
「いや、そうさせてもらうかな。なんか、ほっとしたら急に眠くなってきた」
「ええ、ゆっくり休んでください」
「じゃあルイズ、俺……っと」
才人はルイズに声をかけようとして、途中で止めた。彼女はもう、布団の中にもぐりこんでいたのである。
「また寝てしまったみたいですね」
「だな。無理もないか、精神的な疲れが半端じゃねーだろうし」
小声で話しながら、二人は部屋を出る。
シエスタが後ろ手にドアを閉めると、才人が疲労の濃い顔に真剣な表情を浮かべて見つめてきた。
「じゃあ休ませてもらうけど。シエスタ、何かあったらすぐ俺を呼んでくれな」
「ええ、分かっています。と言っても、何もないと思いますけど」
現在、オストラント号は西方に向けて帰還する針路を取っている。ルイズが奪還されたことを受け
て、指揮者のコルベールが一度引き返すことを決定したのである。エルフ側にもかなり損害が出てい
るはずだし、おそらく逃げる敵を追う余力は残っていないだろう。
それでも才人は、なおも不安そうな面持ちであった。
「でもな、やっぱ安心できねえんだ。またルイズに何かあったらと思うと、俺」
それから才人は少しの間目を閉じてから、決心したようにシエスタを見た。
「シエスタ。俺、君に謝らなくちゃならない」
「え、どうしたんですか、急に」
才人が言おうとしていることが何かはすぐに分かったが、シエスタはあえて分からない風を装って、
きょとんとした表情で首を傾げた。
「俺、今回ルイズがいなくなって、改めて思い知ったんだ」
才人は少し躊躇いながらも、力強い口調で言う。
「俺が、どれだけあいつのことを、その、好きなのか、ってことをさ」
また、胸に鋭い痛みが生まれる。
「ああ、そのことですか」
だが、シエスタは何でもないことのように、にっこりと笑って才人の言葉を受け取った。
「今更何を仰るんですか。そんなこと、わたしはずうっと前から知ってますよ」
「シエスタ?」
才人が驚いたように目を見開く。シエスタは唇に手をやって笑った。
「もう。急に謝らなくちゃ、なんて言うものだから、びっくりしちゃいましたよ」
「ええと、あのさ、それで」
「分かってます」
喋りにくそうに口ごもる才人の声を、シエスタはすまし顔で遮った。
「お二人のお邪魔をする気はありませんよ。ミス・ヴァリエールだって、ずっとさらわれてて不安
だったはずなんです。今、彼女の心をかき乱すようなことは絶対にしません」
「ごめん」
「謝らないでください。お二人とも、わたしにとっては大切なお友達なんです。ちゃんと、お二人の
幸せを祝福してあげますから」
「シエスタ。俺、なんて言っていいか」
才人が悔やむように俯く。シエスタは苦笑して彼の肩を叩いた。
「そんな顔しないでくださいよ。ミス・ヴァリエールのこと、全力で見てあげるって決めたんでしょ
う? だったら、そんな顔しちゃダメです」
「そうか。そうかな、うん」
才人の顔に、少しだけ元気が戻ってくる。シエスタは「そうですよ」と頷いてから、手を打ち合わせた。
「さ、そろそろミス・ヴァリエールのお世話をしなくちゃいけませんから。サイトさんはお部屋に戻って何も考えずにお休みになってください。今後のことは、それからゆっくり話し合いましょう」
「そうだな。それじゃ、シエスタ、ルイズのこと……」
「大丈夫です。サイトさんの……いえ、わたしたちのお姫様は、ちゃんとお守りしてみせますから」
シエスタが自分の胸を叩いてそう言ってやると、才人はもう一度だけ「頼むな」と言い置いて、二
つほど離れた船室に戻っていった。
才人が船室に消えたあと、シエスタは長い吐息を吐き出した。同時にこらえていた感情が、胸の奥
からせり上がってきて、瞳の奥から涙を滲み出させた。才人に聞こえてはいけないと思い、シエスタ
はしばらくの間その場にしゃがみ込み、声を押し殺して泣き続けた。
「大丈夫?」
と、不意に声をかけられた。慌てて涙を拭いながら顔を上げると、そこに見知った少女が立ってい
た。小柄な体と、肩の辺りで切り揃えられた青い髪、そして湖のように静かな、青い瞳。
「ミス・タバサ」
「これ、使って」
タバサが差し出したハンカチを、シエスタは遠慮なく受け取った。それで完全に涙を拭ったあと、
小柄な少女に問いかける。
「あの。もしかして、さっきの会話」
「聞いてた。立ち聞きになってごめんなさい」
「いえ、それはいいんですけど」
その先を言うのは、少し躊躇われた。シエスタの知る限り、タバサもまた才人に恋焦がれていたは
ずである。だとすれば、彼女も自分同様の胸の痛みを抱えているのではないかと思ったのだ。
だが、そんな気遣いなど無用と言うように、タバサは静かに首を振る。
「わたしは、サイトが幸せならそれでいい。ずっとそう思ってきたし、これからだってそう」
迷いのない声で断言されると、泣いていた自分が少し恥ずかしく思えてくる。「あーあ」と息を吐
き出し、シエスタは照れ笑いを浮かべながら立ち上がった。
「ダメですね、わたし。もうとっくに、諦めはついてたはずなのに」
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
今度はちゃんと返事が返せた。泣いたおかげか、少しだけ心が軽くなっているように思える。
「あ、そうだ。ミス・タバサ、お願いがあるんですけど、聞いていただけますか」
「なに?」
「この部屋……ミス・ヴァリエールの船室の周りに、あの、音が聞こえなくなる魔法、かけていただ
けないでしょうか」
この冒険に参加し、間近で貴族と接することによって、シエスタも多少魔法のことを知るように
なった。今タバサに頼んだ「サイレント」の魔法も、以前何度か見たことがあって、思い出したの
だった。
「静かにしてあげたいの?」
「はい。ミス・ヴァリエールも、なんだか少し様子が変でしたし。もっとお休みが必要なのかもしれ
ません」
「分かった」
タバサが詠唱して杖を振る。見た目には分からないが、それで魔法がかけられたらしい。
「これで、部屋の中の音は外に聞こえないし、部屋の外の音は中に聞こえない」
「ありがとうございます」
「わたしは隣の部屋にいる。他にも、何か協力できることがあったらいつでも言って」
「はい、分かりました」
シエスタがお辞儀をすると、タバサは黙ってその場を去り、隣の船室に入っていった。
「さてと。ミス・ヴァリエールのお世話をしてあげなくちゃ」
気持ちを切り替えるように呟き、シエスタはルイズの船室に戻る。部屋に入った途端、航行中はい
つも聞こえる風の音や、階上で誰かが歩き回る音なども聞こえなくなり、シエスタは感心した。
(これなら、ミス・ヴァリエールにもゆっくりと休んでもらえそうだわ)
そんなことを考えたとき、ふと、シエスタは部屋の隅から音が聞こえてくることに気付いた。
かすかな音であった。「サイレント」で部屋の外の音が遮断されていなければ、聞き逃していただ
ろう。
聞こえてきた音は、小さな衣擦れの音。それに混じって、切ない喘ぎ声と、湿っぽい水音がかすか
に聞こえてくる。
(え、なに?)
一瞬状況が分からず、シエスタは困惑する。喘ぎ声の主が寝台の上で寝ているルイズであることを
悟ると、その困惑はさらに大きくなった。
(どうしたのかしら。苦しくて呻いてる、って訳ではなさそうだし)
シエスタは息を潜め、出来る限り足音を立てないように注意しながら、部屋の隅の寝台に近づく。
だが、そこまで注意深くなる必要はなかったようだ。ルイズは寝台に横たわったまま、何かに夢中で
没頭しているようで、そもそもこちらが部屋に入ってきたことにすら気付いていないようだった。
近づくにつれ、音も大きく聞こえるようになる。やはり、衣擦れの音がする。寝台を見る限り、ル
イズが布団の中で何やらもぞもぞと動いているようである。水っぽい音は、先程よりもさらに湿っぽ
さを増しているように見える。
(……これ、ひょっとして)
シエスタの背筋に悪寒が走る。何か、猛烈におかしなことが起きているような気がする。
そして、ルイズの喘ぎ声がさらに明瞭に聞き取れるようになったとき、シエスタの悪寒は背筋から
這い出して全身を駆け巡った。
「だめぇ、指なんかじゃ全然ダメなのぉ……もっと太いの欲しいよぉ……」
頭がクラクラした。何がなんだか分からないまま、不吉な焦燥に駆られて、シエスタは寝台の上の
布団に手をかけた
「何やってるんですか、ミス・ヴァリエール!」
叫びながら布きれを引っぺがすと、その向こうからルイズが現れる。その姿が悪い予感通りだった
ので、シエスタはその場で卒倒しそうになった。
赤い頬と潤んだ瞳のルイズは、薄手の寝衣を激しく乱したまま、左手で小さな乳房を弄り、右手で
股間をまさぐっていたのである。陰裂深く二本の指が差し込まれており、その奥から水っぽい液が失
禁のようにあふれ出して、寝台の敷布を濡らしている。
要するに、自慰の真っ最中なのであった。
(何やってんですかあなたは)
口に出しては何も言うことができず、シエスタはルイズを見下ろしたまま目を白黒させてぱくぱく
と口を開く。
その間もルイズは指を動かし続け、露骨な視線を浴びながらも一向に自慰を止める気配を見せな
かった。それどころか、その指使いはより一層激しくなっているようにも見える。
「シエスタぁ、どうしよぉ」
指で陰裂の奥をまさぐり、時折声を詰まらせながら、ルイズはぐずるように言う。あまりに常識を
超えた状況に頭がついていかなかったが、シエスタはかろうじて返事をした。
「どうしようって、何がですか」
「あのねぇ、さっきからこうやって指でたくさん弄ってるんだけど、どうしてもイケないのぉ」
(何言ってるんですかあなたは)
だが、やはり口に出しては何も言えない。シエスタは軽く現実逃避していた。
彼女が頭の中のお花畑で遊んでいる間にも、ルイズの自慰は休むことなく続けられていた。だがい
つまで経っても絶頂にはたどり着けないらしく、ルイズはその内切なく啜り泣きを始める。そして、
一旦指を陰裂から引き抜いた。
(何やってるんだろこの人)
虚ろな意識で、シエスタはルイズの動きを見守る。陰裂から愛液で濡れそぼった指を引き抜いたル
イズは、その手をそのままさらに下の方に持っていき、
「って、何やってんですかミス・ヴァリエール!」
さすがに今度ばかりはシエスタも声に出して叫んでいた。指を肛門に突っ込む寸前だったルイズの
腕を無理矢理引っつかみ、その常識外れの蛮行を何とか止める。すると、ルイズが狂ったように泣き
叫び始めた。
「やだ、離してよぉ、シエスタぁ!」
「離しません! なんてところに指をいれようとしているんですかあなたは!」
「だって、イケないんだもん、おマンコじゃイケないんだもん。だからケツ穴ホジホジするのぉ!」
「お、おま……けつ……」
ルイズの口から飛び出した卑猥な単語に、シエスタは絶句するしかない。
(い、一体何がどうなってるの……?)
さっきまで己の失恋について傷ついたり、泣いたりしていたところにこれである。この状況はほと
んど非現実的であり、悪夢のようにしか思えなかった。
だが、これはまごうことなき現実なのだった。シエスタが才人との恋愛にケリをつけている背後で、
ルイズは夢中になって自分の性器をいじって、獣のように快楽を貪っていた訳だ。まるで悪い冗談の
ようだが、重ね重ね、これは現実である。
未だ失恋のショックから立ち直りきれていないシエスタの前で、勝利を収めた恋敵は、自分の尻の
穴に指をいれたいと言って泣き叫んでいる。
(なんなのこれ。なんなのこれ)
答えてくれる者はいない。シエスタは呆然としつつも、まだ自分の指を肛門にいれたがってジタバ
タ暴れているルイズを抑えるのだけは忘れなかった。
(落ち着いてシエスタ。ミス・ヴァリエールは、あまりにも状況が目まぐるしく動きすぎて、激しく
錯乱なさっているのかもしれないわ)
無理のある理論で心を落ち着かせつつ、シエスタはルイズを安心させるような笑みを浮かべた。頬
が引きつっているのが自分でも分かったが、さすがにそれはどうしようもない。
「ねえ、ミス・ヴァリエール?」
「やだぁ、離してよぉ」
「じゃ、お尻に指をいれようとするの、やめていただけますか?」
「いやぁ。ケツ穴で気持ちよくなるのぉ」
まるで異常者と会話しているような気分。「もうイヤ、何もかも忘れて逃げ出しましょう!」と叫
ぶ理性を根性で押さえつけて、シエスタはなおもルイズと会話を続けた。
「いやですわミス・ヴァリエールったら。いくらなんでも冗談が過ぎますよ」
「やだぁ、お尻ぃ」
話が全く通じない。仕方がないので、別のアプローチから攻めてみることにする。
「どうして、お尻をいじりたいんですか?」
よもやこんな質問を口にする日が来ようとは、予想もしていなかった。なんとなく泣きたくなりな
がら、シエスタはルイズの答えを待つ。
ルイズは、「えっとねえ」と童子のように呟き、目をとろんとさせた。締まりのない半開きの唇の
隙間から涎を垂れ流しつつ、だらしない口調で言う。
「ケツ穴ホジホジするとねえ、とってもいい気持ちになるのよぉ。わたし、おマンコも大好きだけど
ケツ穴も大好きぃ」
「そうですか」
頭が痛くなってきた。シエスタは歯軋りをしながら、何とかルイズを説得しようと試みる。
「いいですか、ミス・ヴァリエール。お尻の穴はね、とっても汚いんです。そんなところに指を突っ
込んじゃいけませんよ」
なんでこんなことを説明しなくちゃならないんだと、心の中で地団駄を踏む心境である。シエスタ
は噛んで含めるような口調でルイズに言い聞かせた。するとルイズは、「そうよぉ」と、うっとりし
た口調で呟く。
「わたしのケツ穴ね、とっても汚いの。わたし、汚いの。薄汚いメス豚の、精液便所なの。えへ、えへへへ……」
自分の言葉でさらに興奮してきたのか、ルイズは自由な左手をまた陰裂に突っ込んで、夢中で中を
かき回し始める。
このまま発狂してしまいたいと思いながらも、シエスタは寸でのところで踏みとどまる。そして、
有無を言わさぬ口調でルイズに命令した。
「ミス・ヴァリエール! 今すぐ、そんなことをするのはお止めなさい!」
「どうしてぇ」
「どうしてって、考えれば分かるでしょう!?」
「えっとねぇ」
ルイズは唇に濡れた指を当てて、しばらく考えていたが、やがて何かに気付いたように、目を輝か
せて叫んだ。
「分かった、シエスタが弄ってくれるのね!」
「は?」
予想だにしない答えに呆然とするシエスタのことなど全く気にせず、ルイズは寝台の上で四つんば
いになって、こちらに尻を向けてきた。
「え」
「お願いシエスタ、わたしのだらしないケツ穴、たくさんいじめてぇ」
「ちょ」
「早く、早くぅ」
ルイズが待ちきれない様子で尻を振りながら、病的に紅潮した横顔でこちらを見つめてくる。
シエスタはそのルイズの横顔と、自分の目の前に突き出された小ぶりな尻を見比べた。幼い弟や妹
などを除けば、人の尻をマジマジと眺めるなど初めての光景である。ひくついている肛門を見ている
と、この世の理不尽について滔々と考えたくなってくる。
だが、いつまでもそうしている訳にはいかなかった。もしも、才人が気まぐれでおきだして、再び
この部屋を訪れたりしたら。
(破滅だわ……!)
凄まじい恐怖に駆られて、シエスタは思わず自分の左手でルイズの尻をつかまえる。肌と肌が触れ
合った瞬間、ルイズの体が大きく跳ねて、彼女の口から聞いたこともないような激しい嬌声が上がった。
その声を聞いた瞬間、シエスタの中で何かが切れた。
「ふふ、ふふふふ……」
「シエスタ?」
「わたしが真剣に真剣に悩みぬいて、サイトさんをあなたに譲り渡そうと決めた途端に、これですか……」
この一ヶ月間の苦しみと悲しみ、先程までの痛みが、一気に胸の中を駆け抜けていく。
(もう、どうにでもなれ)
シエスタは目を見開き、思いっきり右手を振り上げた。
「そんな悪い子には、たっぷりお仕置きして差し上げます!」
「してぇ、お仕置きしてぇ!」
シエスタの怒りの声に、ルイズがむしろ悦びの声を上げると同時。振り下ろされた平手が、小ぶり
な尻を思いっきり打った。
ルイズが声にならない悲鳴を上げる。だが、シエスタは躊躇せずもう一度手を振り上げ、何度も何
度も憎い尻肉に向かって振り下ろした。そのたび乾いた音が鳴り響く。その響きがあまりにも快いも
のだったので、シエスタはなおさら怒りを募らせる。
「この、いきなり変態になって帰ってきて、本当に、悪い子、悪い子、悪い子……!」
「ごめ、ゴメンなさいぃ、悪いメス豚でゴメンなさいぃ……!」
そうやって、十分ほどの時間が経過しただろうか。
すっかり精根尽き果てて、シエスタは寝台のそばに座り込んでいた。散々ルイズの尻を打った手の
平がひりひりと痛み、腕が痺れたような感覚に包まれている。
病的な怒りと興奮が去ったあとに残ったのは、凄まじい疲労と絶望感である。シエスタはのろのろ
と首を巡らし、寝台の上を見る。
そこでは散々打たれて真っ赤になった尻をさらしたまま、ルイズが半ば白目を剥いて倒れ伏してい
るのであった。尻を叩かれている途中で失禁まで始めたので、異臭と尿に包まれて、目も当てられな
い状態である。
だが、何よりもシエスタの心を重くしたのは、そんな状態にあってもなお、ルイズの口元に締まり
のない幸せそうな笑みが浮かんでいることであった。
「えへへぇ、お尻ぃ、気持ちいぃ……」
そんな、寝言だかうわ言だか分からない言葉まで聞こえてくる。
(どうしよう、これ……)
寝台の上を片付ける気にもなれないまま、シエスタは頭を抱えて長い長いため息を吐き出した。
391 :
205:2007/09/11(火) 02:06:30 ID:rvYfeHEl
ごめん、さすがに「妊娠確実ぅ!」とか言わせる気にはなれんかった。
コンセプトは「調教ゲームのヒロインが、調教完了と同時に元の日常に返されたら」みたいな?
似たタイトルのSSが保管庫の自分のとこにあると思いますが、
それの書き直しみたいなもんなので、元のはその内消そうかなと思います。