【離れない】繋がりっぱなし【離したくない】

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284繋がりの掌by唐突に(ry
「……怖いから、手繋いでいい?」
「……うん」
 彼女の手を取る僕の手は、震えていた。 いや、これは彼女の方が震えてるんだろうか?
 初めて。初体験。初めてと初めて。
 何もわからない僕らは、わかる為に今、繋がろうとしている。
「ここでいいの?」
「……もうちょっと下、かな?」
「ん……あ、ここか」
「……下にもキスされちゃった」
「……じゃあ、上でもキスしよっか」
 彼女の唇に自分の唇を合わせ、僕らは事に及ぶ前に初めて交わした口付けに続く、
二回目の口付けをした。少しでも彼女の身体に入る力を取り除こうと思ってしたその口づけは、
僕の身体に入った余計な力も抜いていく。
「なんか……気持ちいいね」
「……うん」
 見合って笑う僕と彼女。
 そして、瞳と瞳が絡んで……自然と、互いの視線が下へと移る。
「いくよ……」
「……うん」
 くちゅ。
 前戯によって潤んだそこに、先走りで濡れた僕のそこが押し付けられていく。
「んっ……!」
 やがて、押し付けられたそれは、徐々に、徐々に、彼女の中へと沈んでいく。
 彼女の眉が歪む。痛みを感じ始めたのだろう。僕は、そんな彼女を気遣いながら、
ゆっくりと、ゆっくりと彼女の中へと自分自身を沈めて行く。
 やがて、僕のそれが、弾性のある壁へと辿り着いた。
「いっ……っぁ……」
「……君の……触ってるの、わかる?」
「……う、うん……ちょっと痛いけど……何か、変な感じ」
「この先に行くと、もっと痛くなると思うけど……」
「うん……それは、大丈夫。私も、そうして……そうして欲しいから」
 彼女の手が、僕の手を強く握る。
 言葉とは裏腹の、恐怖と緊張が、僕と彼女の繋がるもう一つの場所から伝わってくる。
「……大丈夫だよ。きっと、大丈夫」
 何の根拠も無い言葉。だけど僕は、絶対の確信を持って、その言葉を彼女に送った。
「……うん」
 信じる言葉は魔法になる。
 彼女の全身から、力が抜けていく。
 僕はそれを掌と、あそこと、二つの繋がっている場所で感じた。
「いくよ……」
「……いいよ……きて」
 彼女の言葉と笑顔を受けて、僕は腰を突き出した。
285繋がりの掌by唐突に(ry:2007/11/30(金) 21:53:06 ID:VALKKKkK
「……っっぅぁ!」
「入った、よ」
 僕の視線が、僕と彼女の結合部に流れる証を捉える。
 彼女もまた、それを苦悶の表情を浮かべて見て、頷いた。
「……う、うん……」
「痛い……? ってそりゃ痛いよね、当然」
「……うん、痛い……けど、幸せ、かな?」
 痛みに顔を歪ませながら、彼女は笑った。
「動かない方がいい、よね?」
「……ごめんね、ちょっと……このままでいて欲しい」
「謝らないでいいよ……僕も、幸せだから」
 繋いだ手と手で、そして繋がった男と女で、僕らは互いの存在を感じあっていた。
「………………ふぅ……はぁ……」
 痛みを何処かへと逃すかのように、大きく息をつく彼女の背をさすってあげようと、
僕は手を離そうとした。
「だめっ!」
「……え?」
「……握ってて……ギュゥ、って」
「……わかったよ」
 苦笑しながら、僕は彼女の手を握り締めた。彼女の手も、僕の手を握り締める。
 温もりが、掌と掌を行きかい、まるで僕らが一つに溶けているかのような、不思議な
感覚が、生じ始めていた。
「……大分楽になってきた、よ」
「うん、わかる。何だか、君の中が動いてるから」
「言わないでよ……恥ずかしい事」
「……動いて、いい?」
「……うん」
 掌と掌を行きかう、二つで一つの温もり。
 それが、もう一つの繋がりでも、生まれ始めていた。
「私はイケないかもしれないけど……気にしないで、出していいからね?」
「なるべく、頑張るから」
「……その気持ちだけで嬉しい」
「じゃあ、動くよ」
 彼女を傷つけないように、ゆっくりと。彼女の様子を伺いながら、苦しくないように、
辛くないように、ゆっくりと。抽送の快感は、彼女のそこがまだ慣れていないからか、
そして僕の技巧が拙いからか、大きなものではなかったけれど。
「んっ……んっ……」
「ん……っ……」
 心の快感は、大きかった。彼女と繋がっているという事、ただそれだけで嬉しかった。
 彼女も、そうなのかな?
286繋がりの掌by唐突に(ry:2007/11/30(金) 21:54:19 ID:VALKKKkK
「……んっ!」
 心の中で尋ねた答えは、掌に返ってきた。
 彼女の手が、僕の手をギュッと握り締める。安心してと、そう口に出さずに、掌で伝えるように。
「……そろそろ……出るっ……」
「ん……いいよっ! 出して……いいからっ!」
 心の快感の大きさは、あっさりと僕に限界をもたらす。
「……っぁ!」
「くっ……んっ……あはっ、ぁ……!」
 どくどくという音が聞こえるくらいに、僕は彼女の中に注ぎ込んだ。
 思わず彼女の手を握り締めると、彼女もまた僕の手を握り締める。
 強く、強く、互いの手を握り締めあいながら、僕は彼女の胸の中へと倒れこんだ。
「……っ……は……ふぅ………………凄い、気持ちよかった」
「……私も、だよ」
「ごめん……イケなかっただろ?」
「いいの、気持ちよかったのは本当だから……また今度……頑張ってくれれば……
 それで…………」
「うん……次の時は、君もイカせてあげる」
「………………すぅ……」
「あれ、寝ちゃった?」
 彼女の寝顔は、安らかだった。性の頂点へと導いてあげられなかったのは
残念だったけれど、それでも、今日のこの交わりが彼女にとっても十分に満ち足りた
ものであった事がわかって、僕は安心した。
「……今日は、頑張ってたもんね……ゆっくり休んで、今度は……僕が……」
 その安堵が、僕にも睡魔をもたらして……
「……おやすみ」
 僕は、彼女と手を繋いだまま、あそこで繋がったまま、眠りに落ちた。




「さあて、今日も元気に学校へ行くよー!」
「元気だなぁ……昨日あんだけ頑張ったのに」
「私は元気だけがとりえだしね!」
「そっか」
 次の日、彼女はいつものように元気だった。
 あまりにいつも通りすぎて、まるで昨日あった出来事が……しおらしく、不安と
緊張に震えていた彼女の姿が夢であったかのような錯覚に、僕は陥った。
 でも……。
「今日は……手、繋いでいこ?」
 彼女の差し伸べる手が、
「うん、いいよ」
 僕が差し出す手が、
「……何だか、照れるね」
 二人が繋いだ手と手が、そこから感じる互いの温もりが、昨日の出来事が嘘ではない、
夢ではないという事を、僕らに教えてくれる。
 ぎゅっと彼女の手を握り締めると、彼女もまた、僕の手を握り返してくる。
「……昨日の事、思い出しちゃう?」
「だってぇ……してる時、ずっと手繋いでたから……どうしても、ね」
「なるほど。こうして手と手を繋げば、僕らはいつでも繋がれるわけだ」
「……うぅ……何だか顔が赤くなってきたぞぉ……」
「真っ赤になった君も可愛いよ」
「……も、な、え、あ………………馬鹿ぁっ! さっさと学校行くよっ!」
 彼女が、僕の手を引っ張って走り出す。
 彼女が握る、僕の掌。僕が握る、彼女の掌。
 温もりが、掌と掌を行きかい、まるで僕らが一つに溶けているかのような、不思議な
感覚が、生じ始めていた。
 そう。僕らはいつでも――僕らはどこでも――
 僕らは、繋がっていられる――きっと、この掌で。
                                         〜おわり〜