☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第26話☆

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553名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:32:36 ID:5xlwPUNq
はいはいどうせなのはMADと同レベルですよ
なんなんだ、ここはキャラ叩き系は嫌がられるのか?ネタでも
ナッパスレだって悟空とか叩かれてるぞww
554名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:37:21 ID:dPuz37Tu
いい加減自重しろよ
555名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:39:14 ID:pmWhYgF5
>>553
なら投下するとこはシグナムスレかなのはスレだろw

別に俺は何とも思ってないぞ・・・司書長はぶにしたこと以外には
556名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:39:55 ID:396dYK7q
                                       
         ___                         
         ヽ=☆=/    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄              
        ∩ xωx)^) < チハタンばんじゃーい
         ゝ  : ノ    \_______          
          u-u'                             
          l l l                              
       #((;;;l l l      ドッカーン!!                      
 (;;;;;;;;);;;;; \((从⌒从;;;)) /                    
 (⌒;(:;;曝ク;:;:;,...´) )::::-从 *(/            
 (⌒);;;⌒)*(;::: (;;从 ;::..+ :::)ヽ┴──o               
  ___(⌒;;;;__ヽ从;;;;);;; ;)_(从ζ‐ ‐ ―
  |ミ///(_)W)W人;;)  ̄・|丘百~((==____           
 └┼-┴─┴───┴──┐~~'''''-ゝ-┤           
 ((◎)~~~O~~~~~O~~(◎))三)── )三)            
  ゝ(◎)(◎)(◎)(◎) (◎)ノ三ノ──ノ三ノ             
557名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:41:32 ID:KymaKfVp
ナッパとかヤムチャが何故弱いのか?みたいなコピペで同じようなの見たな
558名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:42:50 ID:396dYK7q
誤爆・・・スマソ
559名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:12:20 ID:tAYBNX/b
>>558
チハたんだったら
そのあまりにもプリティな性能で機動六課はもとより
ナンバーズにもモテモテじゃよ?
560名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:13:21 ID:Z8xFOSQS
レスが伸びてるので新作投下かと思えば……
561名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:16:47 ID:QcrSpwEJ
>>534
GJ!
はやてテンション高っw
562名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:19:49 ID:40gbRDe+
>553
あんたのは叩きじゃない、誉め殺しだ。

叩くというのは、

「ガジェットはバーサーカー、それも『究極超人あ〜る』のパクリ」とか、
「カートリッジシステムは『天羅万象』の珠式武器のパクリ」とか、
こーゆーのを言う。
>559
あと、オライオンがモテる。
563名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:25:11 ID:4UnRW0H0
>>553
キャラ叩きは嫌がられるのか、ってお前、キャラスレならともかく、ここはSSスレだぞ
幼稚園児でもそんくれーわかるだろーがカス
564名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:56:45 ID:396dYK7q
>>559
チハたんを知っている人がいるなんて・・・感動した
565名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 17:15:48 ID:DMv33laO
>>564
なのは関連スレに軍オタが居ないと思ってるのかw
ゴキブリの格言を思い出せ
鬼戦車ネタや扶桑ネタもイケるぜwww
566名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 17:19:14 ID:VSlXDZKN
とりあえず扶桑萌えと叫んでおく
567名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 17:47:26 ID:Qje//Dt5
>>556
軍板住人誤爆乙w
突然のチハタン登場に盛大に噴いたわ
568名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 18:42:09 ID:dPuz37Tu
さて皆さん、職人を待とうではないか
569111:2007/09/03(月) 19:43:20 ID:ntPv3nt3
投下予告です。使用レス数16レス

事件後、ナンバーズが丸ごと6課に引き取られたという妄想設定でお送りします
基本的には前回の話の2番煎じ。スマソ。ナンバーズ姉妹が初任給を受け取ってゴタゴタする話

エロ無し、ギャグとしては半端、感動するかどうかは人それぞれ。ぶっちゃけスレ汚し

では、行きます
570初任給の使い途は・・・? ◆joNtVkSITE :2007/09/03(月) 19:44:02 ID:ntPv3nt3
「んーふ、ふっふふー」

調子っ外れな鼻歌を口ずさみながら廊下を歩くのは、ナンバーズの六女:セインである
普段から陽気で、何かとテンションの高い彼女がこんな風に上機嫌なのは別段珍しくも何ともないのだが、今日は少し違う
その原因は、彼女のジャケットの内ポケットに収められた茶封筒にあった
時代錯誤にも「給料」と書かれたその封筒は八神はやて部隊長から姉妹全員に、直々に手渡しで渡され、

『無駄遣いはアカンよ!』

という一言と共にいただいた。生まれて数年の人生で、初めての働いて得た給料である
そこに至る経緯を説明すれば、まず事件が終わって、彼女達の父親であるスカリエッティは逮捕。ナンバーズ、ルーテシア一行は全員捕縛された
捕まった時は、全員地の底に届きそうなほど落ち込み、絶望していた物である。自分達の処遇など、処刑か実験材料かそんなところだろう。と

しかし、現実はその予想とは大きく外れていた
何を思ったのか、機動6課の部隊長である八神はやてが、ナンバーズ全員の身柄を丸ごと預かると言い放った為である
恨み骨髄に極まる“陸”の上層部は勿論、猛烈な抗議を叩きつけた。だが最後の最後には、本局内で大きな発言力を持つハラオウン提督親子に、
“ゆりかご事件”では老体に鞭打って事態の収拾に当たった三提督もはやてを支持した為、最終的にははやてに軍配が上がった

その後の彼女達の生活は大きく変わった
ナンバーズの生みの親であり、広域指名手配次元犯罪者であるジェイル・スカリエッティは、現在本局のラボの一角に軟禁状態である
本来ならば即座に投獄、あるいは極刑でもおかしくはないスカリエッティだが、現在ミッドチルダ全域に溢れる“はぐれガジェット”の鎮圧の為、特赦が出された結果である
事態の解決に協力し、結果を出せれば、後の懲役刑が軽減されることになっている。だが、何の結果も出なかった場合は即座に刑が執行されるだろう

もっとも、そんな綱渡りな状況の中でも、彼はマイペースに研究を続けているらしい
軟禁中でもスカリエッティに付き従っているウーノ曰く、憑き物が落ちた。とのことだが、『父親』の内心についてまでは彼女は何も語らなかった

ルーテシア一行の処遇はもっとあっさりしたものだった
ルーテシアは、『スカリエッティに洗脳されていた被害者である』と言う主張がすんなりと通った為である
そんなのアリかよ。とルーテシアの守護者を自称する融合騎:アギトがぼやいたのも当然と言えよう
無茶な主張が通った理由としては、現役の執務官である、フェイト・T・ハラオウンが保護を申し出た為でもあるとか何とか
“他人”に対しては警戒心の強いルーテシアも、同じくフェイトの被保護者であるエリオとキャロには懐いているらしい。初めての、同年代の友人だからだろうか
571初任給の使い途は・・・? ◆joNtVkSITE :2007/09/03(月) 19:44:36 ID:ntPv3nt3
セインとしては、実の妹達と同じくらいに可愛がっていたルーテシアに厳しい処罰が下らなかった事は本当に嬉しかった
だが、騎士:ゼスト、本名:ゼスト・グランガイツに関してはもっと意外な判決が下された
厳罰を主張する“陸”の上層部を押さえ込んだのは、意外にも同じ“陸”のトップ。レジアス・ゲイズ中将だったのである
いきり立つ子分共睥睨して黙らせると、レジアス中将は何を思ったのか、ゼストの前までずかずかと歩み出て、

「この者は既に鬼籍に身を置いている者。死者に処分を下すことなどできはせん!」

と、言い放ったのである。更に、

「仮に、この者が咎めを受けるというのなら、それは全て私の責任である!」

被害者を一組織のトップが庇うなど、前代未聞の逆ネジであった
彼らの過去を知るものは少ない、その数少ない過去を知る人物からの口添えもあって、レジアスの主張は罷り通ってしまったのである
管理局の暗部、最高評議会の思惑が絡んだ人造魔導師という存在を表沙汰にしたくなかったという本音もあるだろうが、ゼストは晴れて無罪放免となったのだ
だが、彼の裁判はそれだけで終わらなかった

「ゼスト!!俺を殴れぃっ!!」

唐突に、レジアスがそう吼えたのだ
巌のような表情に僅かな笑みを刻んで、ゼストは様々な想いを乗せた拳を力一杯レジアスの頬桁に叩きつけたのであった
仮にも“陸”のトップであり、数年前までは前線で現役の魔導師だったレジアスである。多少足腰にガタが来始めている自覚はあったが、たった一撃で脚に来るような醜態は晒さない
レジアスは唇を捲り上げて獰猛な笑みを刻み、最高礼服を投げ捨てるや拳骨を握り締め、ゼストの腹を殴り付けた

あとはもう、てんやわんやであった

妙なテンションで盛り上がる傍聴席にはどこからかゴングが持ち込まれ、レジアスにはオーリス秘書官がセコンドに付き、ゼストにはルーテシアとアギトが付いた
賭け金がそこら中で飛び交い、オッズは秒単位で書き換えられる。終いには裁判長の木槌がゴングを鳴らし、レジアス対ゼストの無制限一本勝負は引き分けに終わったのである
双方とも顔の形が変わる程に殴り合った末にぶっ倒れ、担架で退場していったのだった
そんな、祭りのような空気が明けると、「あれ?俺達、何の話をしてたんだっけ?」とその場に居た全員が思い始めていた

そうして、前代未聞の大犯罪者一味の裁判劇は、前代未聞の珍事を経て、禍根を僅かに残すことも無く、満場一致で閉会したのであった
572初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:45:12 ID:ntPv3nt3
そんな裁判を経て一月
管理局員として保護観察下にある身分は変わらないものの、ナンバーズ姉妹は現在クラナガンの治安維持に一役買っている。主な任務ははぐれガジェットの撃退
ニュースで顔が流れたノーヴェ、ウェンディ、ディードの市民受けはあまり良くないようだが、周りからの野次にめげることなく職務に励んでいるのはエライ
お姉ちゃんとしては褒めてやりたいくらいなのだが、素直に褒められてくれるのはウェンディくらいなので自重している

三女:トーレを筆頭に、肉体派な姉妹は治安業務に精力的だが、ドゥーエとクアットロの頭脳派二名は隊舎での雑用を主にこなしているらしい。ディエチも時には手伝っているか
ドゥーエははやての秘書官の様な仕事しているが、クアットロはその能力と性格を警戒されてオフィスには一切入室を許されていない
故に、主に清掃員として隊舎の清潔を守る仕事に従事している。意外にマメな仕事振りに同じくらいクア姉の心も清潔になれば良いのに、と悪意無くセインは思う

セイン本人はと言うと、戦闘系のISを持っていない為に主に現場に取り残された一般市民の救助などが主な任務となっていた
なんせ、彼女が居れば最短且つ安全な経路で避難が完了するのである。一度に大人数は運べないが、ウェンディと協力することでなかなか効率の良い仕事だと褒められた
セインお姉ちゃんの密やかな自慢である

ドクターの庇護下で暴れるのも楽しかったが、こうして色んな人と触れ合うのも悪くないと、こちらに来てからそう思っている
トーレやセッテ、ノーヴェは訓練への参加も積極的だ。思う存分暴れられるのが楽しいだけなのかもしれないが

「んー、しかし、どうしたもんかねー。このお金」

改めて、茶封筒を取り出して見る
中に入っているのは高額紙幣が数枚。金銭の価値くらいは心得ているが、セインとしてはあくまでそれは知識の中にあるものであり、実感は一つも湧かない
廊下の真ん中に立ち止まって考えていると、向こうの角から見知った顔が洗われた

「あら、セイン」
「あ、ドゥーエ姉だ。給料もらった?」
「えぇ。服でも買いに行きたいところだけど、許可無く隊舎からは出られないから・・・今は我慢ね」
「ふーん・・・買い物かぁ・・・それって、楽しい?」
「は?私は楽しいと思うけど、どうしたの?」
「うーん、実は、お金っていう存在が良くわからなくてさぁ」
「あぁ、貴方達はまだ生まれてあまり時間が経って居ないし、ずっとドクター達と一緒だったものね」

10年近く前から潜入任務に従事していたドゥーエからすれば、セイン達の世代もオットー達末っ子世代も同じ程度のものらしい
573名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 19:45:42 ID:MPUsbFic
>>556

チハタン=ランスター?
574初任給の使い途は・・・? ◆joNtVkSITE :2007/09/03(月) 19:45:44 ID:ntPv3nt3
「そうね。お金って言うのは・・・一言で言うと、文明社会での“可能性”ね」
「・・・判りやすく言うと?」
「それをただの紙切れで終わらせるか、そうじゃないかを良く考えなさい。ってことよ」

じゃあね、と言い残してドゥーエは歩き去った
最も長い間、人間社会に身を置いていたドゥーエは、何だか機人というよりも既に“人間”なんじゃないか。とセインは常々思っていたりする
自分達の機人という存在と、人間という存在に対しても線引きをしないそのスタンスは、容易には真似のできないものだった

「あ、セインさん。お疲れ様です!」

突然、そんな言葉を後ろから投げ掛けられた
わわっ、と振り返ると、そこには機動6課のチビッココンビ改め、チビッコトリオが居た

「おぅ、エリオ少年じゃんか。キャロちゃんにお嬢様も一緒でどうしたの?」
「今月のお給料をいただいたので、ルーちゃんも連れて街に出ようと思ったんです」
「へぇ、良かったですね。お嬢様」
「うん・・・セインは?」
「へ?アタシが何か?」
「セインは・・・一緒に行かない?」

ルーテシアの言葉にセインは苦笑しながら両手を顔の前で振って、

「あー、駄目です駄目です。私はまだ、えっと、保護観察って言って、つまり勝手に出歩いちゃ駄目ってことになってるから」
「・・・そう、なんだ」
「えぇ、お供できないのは残念ですけど、3人で遊んできてくださいね」
「うん・・・ごめんね。セイン・・・あれ、セインも・・・?」
「あ、これですか?」

ルーテシアの視線を辿ると、ポケットからはみ出している茶封筒に注がれている

「私も晴れてお給料いただきました。でも、ちょっと困ってるんですよねー」
575初任給の使い途は・・・? ◆joNtVkSITE :2007/09/03(月) 19:46:16 ID:ntPv3nt3
「困ってるって、何でですか?」
「よく聞いてくれたエリオ少年っ!」

ばんばん、とエリオの肩を叩きまくるセインである。彼女としては普段通りのリアクションというつもりなのだが、キャロとルーテシアが妙にじっとりとした視線でこっちを見ていた
何となく冷や汗をかきながらセインはあっけらかんと言ってのける

「お金って、何に使えば良いの?」
「へ?あの、別に無理に使わなくても。貯めておくのだって立派な選択肢ですよ?」
「んー、でもさ、いっぱい貯めておいて、それで何かに使うの?」
「え、え?」
「わっからないんだよねー。今まで、自分で決めた事ってあんまり無かったからさぁ。好きなように使えば良いって言われて困ってて」

困り顔のセインに、エリオとキャロは顔を見合わせて、一つ頷いた

「セインさん、初任給のお約束と言えば、大切な人へのプレゼントですよ」
「え?プレゼント?でもキャロちゃん。大切な人って?」
「例えば、ご両親とかは?」
「えー、ドクターには今何にも送れないし、あんまり喜びそうにもないし」
「じゃあ、お姉さん達とかはどうでしょう?助けてくれたことがある人とかいるでしょう?」

助けてくれた人・・・
あぁ、そういえば

「・・・ん、良いこと思いついたっ!!サンキュ、エリオ少年!キャロちゃんアーンドお嬢様っ!」

んーっ、と三人の頬にキスを押しつけセインは沈み去っていった
頬に手を当ててボーッとしているエリオの背中に、キャロとルーテシアのとげとげしい視線が突き刺さっている
慌てて弁明の言葉を述べようとするエリオだが、その言葉は悲鳴に変わった
突如、足下の床からセインが顔を出したからだ

「ところで、プレゼントって何が良いんだろ?」
576初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:46:48 ID:ntPv3nt3
セインが何やら奔走している

その噂は瞬く間にナンバーズの間に広まった
いや、セインが自分でアレコレと誰彼構わず話し掛けているので嫌でも耳に入ってきたのだけれど
話に寄れば、何でも箱がいるのりだのはさみだのカッターナイフだの、リボンと包装紙が付き物だと思いつけば倉庫の中を引っかき回して去ってゆく
ちなみに倉庫の後片付けはクアットロの割り当てである
一体何をしてるのか。姉妹は誰もが一度は尋ねた。その問いにセインは同じ返答を返している

「ん、初任給のプレゼント作り」

何の事だ、と再び問い掛ける姉妹達に、セインはエリオ達に教わった事をそのまま伝えた
曰く、初任給っていうのは家族だの恩人だのにプレゼントをする為にあるのだ、と
やや歪んだ解釈が為されているが大筋は間違っていない
やがて、ドゥーエとトーレを除く全員が6課隊舎をバタバタと奔走し始めた
ちなみに、クアットロが奔走する主な要因は掃除当番だからである



「随分、妹たちは騒いでいるみたいだけど・・・収拾しなくても良いの?トーレ」
「・・・止めようとしたところ、好きにさせてやるように。という八神部隊長からの指示を受けました。このまま静観するつもりです」
「真面目ね、トーレは」
「は?」
「ううん、ウーノや私が居なくてもしっかりお姉ちゃんしててくれたんだって、安心しただけよ」
「私などよりも、五女のチンクの方が余程、姉として慕われていますが・・・」
「慕われるだけが姉の役目じゃないわよ。時には厳しく律する存在も必要じゃなくて?」
「それは、そうですが・・・」
「うふふ。まぁ、私から見れば、トーレ。貴女も下の妹たちもみんな一緒。可愛い妹だわ」

かなり居心地が悪そうに、トーレは視線を逸らした

「申し訳ありませんが、ドゥーエ姉様。そういう形容は私には似合いません」
577初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:47:21 ID:ntPv3nt3
「・・・そういうところが可愛いのよ」

悪戯っぽく笑うこの姉にだけは赤くなった頬を見せたくなくて、トーレは無礼とは思いながらも席を立って踵を返した
そんな姿を目敏く見つけたのは、直属の上司であるはやてだ

「なんや、どないしたん?ドゥーエ。喧嘩か?」
「あ、いえいえ。そんなじゃないですよ。姉妹同士の軽いコミュニケーションです」
「そっか?そんならええねんけど・・・」
「あ、昨日の緊急出動のレポート。できていますよ。やはり、現着が一番早かったのはトーレでしたね。続いてセッテ、ノーヴェ、オットー、ディード。
チンクとセインはウェンディが運んだ為にこの三人が一番最後。三人が到着した時点でトーレとは2分近い差がありました。
要救助者の存在を考慮にいれるならセインの投入タイミングを早める為にノーヴェ辺りに預けてはどうでしょう?」
「そうやなぁ・・・戦闘と救助を両立せなあかんときは、空域の制圧も大事やから・・・せやね、ノーヴェかディードくらいが適任やろな」
「そうですね、それと、大規模な敵集団に遭遇した場合のフォーメーションですが、ディエチの長距離砲撃を軸とした ―――――



ナンバーズの12人姉妹に割り当てられた大部屋は、元々は大会議室だった部屋を無理矢理改装したもので、
二段ベッドを6つ持ち込み、机や椅子などを12組置けば部屋としての体裁は整う
一応、それぞれのデスクはパーティションで区切られており、小さいながらもそこはプライベートな空間だった
毎日提出する義務がある報告書を書く以外に、セインが机に向かっているというのは、ぶっちゃけ驚天動地の事実である。クラナガンに本局が落ちてくるかもしれない

「熱心ッスね。何やってるッスか?セイン姉」
「んっふっふー。プレゼント作ってるのよ。プレゼント」
「・・・プレゼント・・・ッスか?」

ウェンディが不審そうにセインの机の上を眺めながら言った
彼女の気持ちは非常に同感である。何故ならセインの机の上は厚紙や色紙の切れ端、チューブから溢れたのり、ちらばったはさみやカッターナイフなどの道具で散らかっているからだ
今日日、小学生の図工の時間でも、こんなにどっ散らかった机の上は珍しいだろうに

「いよーっし!できたーっ!!」
578初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:47:55 ID:ntPv3nt3
じゃじゃーん、とセルフ効果音を付けながらセインは件のプレゼントとやらを両手に掲げて見せた
どっ散らかった机は何なのかと思えるほどに、その手に持っているのは綺麗な包装紙で包まれ、ご丁寧にリボンまで掛けられた、考古学的スタイルのプレゼントボックスだ
IS:ディープダイバーの力を使い、指先を箱の中に突っ込んで、ペリスコープアイで中身の出来映えをもう一度確認する

「よっし!完璧!!」
「はぁ、良かったッスね」
「さっすがウェンディ!この仕事の素晴らしさがわかるとは一味違うねぇこのこのこの!」
「う、うわぁ、セイン姉。揺さぶるのは勘弁ッスぅ!!」

ひゃっほーぅ、いぇーぃ、と何やら無駄にハイテンションなセインはそのままディープダイバーを使って床に沈んでいった
きっと事務局に真っ直ぐ向かったのだろう。隊舎内でのIS発動は基本的には自粛が求められているのだが、今のセインには多分何を言っても聞かないだろう

「全く、あんなに浮かれて。どうしちゃったんッスかねぇ」

溜息を吐きながらも、あんなにも上機嫌なセインの姿を久しぶりに見れたことが、少し嬉しいウェンディである


ところ変わって事務局

「こんちゃー」
「qあwせdrftgyふじこlp;@:!!?」

事務仕事をこなしていたルキノは、椅子からひっくり返りそうになるほど驚いた。そりゃ天井からセインがいきなり顔を出してきたのである。普通は驚く

「うっすルキノ。これ、暴力シスターに送ってくんないかな?」
「セ、セインさん。心臓に悪いから、普通に入ってきてくださいよ・・・」
「え、何が?普通じゃん」

普通の人間は壁・床・天井をすり抜けたりしないのだが

「そんなことよりさ。これ送って欲しいんだってば」
579初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:48:28 ID:ntPv3nt3
「あの、暴力シスターって、どちら様ですか?」
「えーっと、暴力シスターの名前って何だったっけ・・・?あ、そだ。シャッハ!シャッハに送って!」
「・・・あぁ、聖王教会の、シスターシャッハ・ヌエラさんですね」
「そうそう。セインからの、初任給のプレゼントってことでね」

その言葉に、ルキノは頬を綻ばせて、

「初任給のプレゼントですか・・・懐かしいなぁ。私も両親にプレゼント贈りました」
「へぇ、ちなみに、何を?」
「父も母も紅茶が好きだったので、揃いのカップを。安物だったんですけど、すごく喜んでくれたんです。こういうのはやっぱり物の値段よりも気持ちですよね」
「気持ち?」
「そうです。感謝の気持ち。ここまで育ててくれてありがとう。っていう気持ちが大事ですよ」
「んー、でも、私の場合は暴力シスターに育てられたわけじゃないし・・・感謝はしてるところもあるんだけど・・・それでも大丈夫かな?」
「勿論!ちゃんと気持ちを込めた贈り物なら、きっと喜んでくれますよ」
「そっかそっか、感謝の気持ちね・・・あ、メモ帳とペン借りるね」

そう言うや否や、返答も待たずにセインはメモ帳を一枚不器用に引きちぎり、ボールペンで一言何かを書き殴ると、ディープダイバーを使って開封せずに直接メモを箱に入れた
極めて便利な能力である

「・・・あの、セインさん。何を入れたんですか?」
「感謝の気持ちをちょこっと上乗せ。そんじゃヨロシクねー」
「あ、はい。わかりました・・・相変わらず、不思議な人・・・」


翌日


ミッドチルダ北部、聖王教会の一室に、暴力シスター・・・もとい。シスターシャッハと騎士カリムの姿があった

「おはようございます。騎士カリム。今日も晴天に恵まれましたね」
「おはようシャッハ。今日は特別な予定があったかしら?」
580初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:49:02 ID:ntPv3nt3
「いいえ、特別な予定は入っていませんよ。ただ、書類の決裁が少々多目に入っています」
「わかったわ。手早く片付けてしまいましょう・・・そうそう、シャッハ。貴女宛に小包が届いていたわよ」
「・・・私宛の荷物が、何故騎士カリムの執務室に?」
「昨日貴女には本局に向かってもらっていたでしょう?その間に届いたのよ。事務の方が受け取って持ってきてくれたのだけれど、貴女ならここだろうと思ったみたいね」
「・・・勘が良いのは感心ですが、個人的な荷物を執務室に持ってこられても困るでしょう・・・」
「あら。個人的な荷物だからこそ、早めに手渡したかったんじゃないかしらね。こちらで預かると言ったのは私だしね」

微笑みながら、カリムは執務机の引き出しから、それほど大きくない箱を取り出して見せた
きっちりと包装紙でラッピングされ、ご丁寧にリボンが掛けられた箱は、どこからどう見てもプレゼントの箱である

「どちら様からでしょう・・・?」
「ええと・・・機動6課のセインさんから。お知り合い?」
「・・・・・あぁ、あの子からですか・・・・・」
「何でも、“初任給のプレゼントであることをお伝えください”という伝言も受けていたそうよ。はい」

こんな風に贈り物を受け取るなど何年振りの事だろうか
一月前のあの子との出会いは・・・決して、思い出したくはない類のものであったが
しかし、形はどうあれ、自分が保護した子からのプレゼントである。しかも初任給の。そう思うと、シャッハの胸にも少し込み上げてくるものがあった
ちなみに、ロッサの初任給はクロノとの飲み会にて綺麗に消えていた

「・・・すみません、騎士カリム。職務中に不謹慎とは思いますが、開けて見てもよろしいでしょう?」
「えぇ、どうぞ。私も中に何が入っているのかすごく気になっていたのよ。早く開けてみて」
「はい、それでは・・・」

リボンを解き、包装紙を丁寧に剥がし、紙製の箱の蓋に手を掛け、ぱかっと開けた

「どわひゃぁぁぁああぁっ!!!?」

その瞬間、シャッハの顔面に襲い掛かったのはバネ仕掛けで飛び出してきたセインの顔(厚紙&色紙製)である
あんまりと言えばあんまりな不意打ちに、シャッハは尻餅をつくほど驚いてしまった
突然の大声にカリムも驚いたが、ひっくり返っているシャッハの姿には、ついつい噴き出してしまった
581初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:49:41 ID:ntPv3nt3
「き、騎士カリム!笑わないでくださいっ!!」
「ご、ごめんなさい、シャッハ。でも、あなたのそんな姿、小さい頃のロッサに悪戯された時以来だから・・・」
「むうぅぅぅっ!!!まったくふざけた真似をしてくれましたねセイン!!今度あったらお尻百叩きです!!!」
「まぁまぁ、シャッハ。どぅどぅ」
「馬ですか私はっ!!?」
「ほら、まだ何か入ってるわよ・・・あら、これは、香水かしら?」
「ラベルが何も貼られていない辺りに凄まじい怪しさを感じますが・・・少しだけ・・・ん、あぁ。これはすごく良い香りが・・・」
「あら、本当ね・・・それにこっちは、お手紙かしら?」
「・・・全く、あの子は、感謝の言葉を述べるなら殴り書きじゃなくせめて綺麗な字を書きなさい・・・」

くしゃくしゃのメモ帳に視線を落とし、シャッハはその紙片も丁寧に畳んで、香水の小瓶と共にポケットに仕舞い込んだ
ついでにびっくり箱は両手で以て握りつぶしてゴミ箱に叩き込んだ

「シャッハ・・・貴女は今感激しているの?それとも怒っているの?」
「両方です。感激の方がほんの少しだけ強いですけどね。今回は・・・まぁ、百叩きは勘弁してあげましょう。さ、お仕事お仕事!」
「えぇそうね。今日も頑張りましょう」
「はいっ!」

シャッハのポケットに仕舞われているくしゃくしゃのメモ帳には、ミミズがのたくったような字で彼女なりの感謝の言葉が書き殴られていたそうな
過去には敵であった少女から寄せられた、ぶっきらぼうな感謝の言葉。それは、セインの中でどんな変化があって生まれた言葉なのだろうか

「そういえば、セインさんとシャッハはどういう経緯で仲良しになったの?
「・・・今現在の関係を仲良しとは言いたくありませんが・・・スカリエッティ一味を逮捕した時のことです。最初、私はあの子の間抜けな罠に掛かってしまって・・・
ですが、その後何故か腰を抜かしてへたり込んでいるあの子を確保したんです。そうしたら、狭い通路の向こうからV型と呼んでいる大型ガジェットが転がってきて・・・」
「まぁ、大ピンチだったのね。まるで冒険映画の一コマみたい」
「えぇ、大ピンチでした。必死で逃げましたよ。あの子を脇に抱えて全力疾走です。どういうわけなのか通路にはレーザートラップがあるわ落とし穴があるわトラバサミがあるわで」
「・・・大変だったのね」
「後で問いただせば、全部あの子が自分で仕掛けておいたんだそうで・・・聞いたときには放っておこうかと思いましたが・・・見捨てるわけにも行かなかったもので。
それで無事に安全な場所まで連れ出したら今度は泣き出したんですよ。『他の姉妹に知られたらお姉ちゃん失格だから言わないで』とはどういう意味なのかと思いましたよ」
「・・・」
「その姿があまりに不憫だったので、了承してやりました。そうしたら、あっさりと機嫌を直して、その、懐かれてしまい・・・現在に至っています」
582初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:50:14 ID:ntPv3nt3
6課の隊舎の中。渡り廊下のど真ん中
言っちゃあ何だが異常な事態である。ナンバーズの姉妹達にとっては見慣れた光景だが、6課の隊員達は思わず脇を通り抜けて廊下を渡るのを躊躇うくらいに

オットーとディードが抱き合っていた。熱烈に

「・・・ウェンディ、何があったんだ?」
「あ。トーレ姉。おはようッス。何か、オットーとディード。二人ともプレゼント買ってたらしくって、感激のあまり。ってところッスかね」
「ちなみに何分くらいになる」
「さて、かれこれ30分ってところッス」

ひし、と抱き合う二人には周りの状況など目に入らないのだろう
ちなみにオットーはディードに新しいカチューシャを贈り、ディードはオットーにヘアブラシを贈ったようだ
一般職員は二人の姿を目の当たりにした瞬間、気まずそうに目を逸らして来た道を引き返していった

「通行の妨げになっているようだな。そろそろ実力で排除するか・・・?」
「あぁ、心配ないと思うッスよ。さっきリィン曹長が部隊長に報告に行ったみたいッスから」

ウェンディがそう言った時、廊下の向こうから鬼気迫る形相のはやてがハリセンを片手にやって来た
ずかずかずかずかと渡り廊下の真ん中で抱き合うオットーとディードの頭に、すぱぱーん!と小気味の良い炸裂音が鳴り響いた

「オットー!ディード!そういうのは自分らの部屋でするもんやで!!」

綱紀粛正を求めない辺りがはやてらしいと言うべきか

「・・・嫌だ。今ここが良い」
「・・・」

オットーの言葉に賛同してこくこくと頷くディードに、はやてはこめかみに青筋を浮かせながら、

「ほっほーぅ、そんならこの渡り廊下が二人の部屋っちゅうことで良ぇんやね。二段ベッドとかはすぐ運んでくるからな。あとは好きに「ごめんなさい。部隊長」「・・・戻ります」
「わかればよろしい。ほらほら、みんなにも謝るんやで」
583初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:50:47 ID:ntPv3nt3
「トーレ姉さん。少しお時間よろしいでしょうか?」
「・・・ん、セッテか。どうかしたか?」
「先日、セインから“初任給とは恩人への贈り物の為に使う物”と聞きましたので、姉さんにこれを・・・」
「わ、私は・・・お前に恩を売った事など無いつもりなのだが・・・」
「いいえ、戦技の師として、末娘の私などを目に掛けてくださったことに、深い感謝を抱いています」
「・・・そうか・・・これはタオルか?」
「スポーツタオルというそうです。吸水性と速乾性に優れ、抗菌素材で作られている為防臭効果が期待できます。そして何よりそのブランドが一番丈夫でした」
「よし、では早速使わせて貰おうか・・・セッテ。訓練服に着替えてこい。私は訓練場の自主訓練使用許可を取り付けてくる」
「はい!よろしくお願いします!今日こそは、一本取って見せます!」
「そう簡単に私を追い越すことなど許すものか。行くぞ」


「どうしたノーヴェ。熱でもあるのか。さっきから顔が真っ赤になっている」
「い、いや、熱なんか無いよ。機能も正常だし、あぁ、人間風に言うと体調か。別におかしいことなんて何も無いって」
「ならば、悩み事か?姉で良ければ相談に乗るが・・・まぁ、これでも食べると良い」
「え、何コレ?食べ物」
「クッキー、というお菓子・・・食事とは別の、嗜好品だな。間食とも言う。概ね甘い味に仕上げられる様だ。先日、厨房でいただいてな、その味に感激して私も作ってみた」
「へぇ、じゃぁ一つだけ・・・(ポリポリ)」
「どうだ?」
「・・・おいしい・・・これ、ホントにチンク姉が作ったのか!?」
「あ、あぁ。喜んで貰えて光栄だ。たくさんあるから遠慮はいらないぞ」
「マジで!?・・・あぁ、いや、違う違う。あの、そのチンク姉!これ、受け取ってくれ!」
「・・・ノーヴェ?何なんだ急に・・・?」
「いや、昨日セインの奴に聞いたんだ。“初任給ってのは恩人の為に使う物”だって」
「それで、わざわざ私にか?至らぬ姉だというのに・・・ありがとうノーヴェ。開けてみても良いか?」
「も、勿論!」
「・・・皮革製のハンチングキャップか、高価だっただろう?」
「い、いや、そんな、全然。チンク姉のコートの色と良く似てるし、その、何となくよく似合いそうだったから・・・」
「ありがとうノーヴェ。大切に使わせてもらう。安いお返しだが・・・茶でも淹れるか。クッキー、全部食べても構わないぞ」
「マジで!?」
「あぁ、姉は嘘など言わない。まぁ、もう少し味わって食べてくれると嬉しいが・・・」
584初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:51:23 ID:ntPv3nt3
「あー、もう。毎日毎日掃除掃除。なーんでこの頭脳明晰・権謀術数に長けたクアットロさんが雑用ばっかりやらされなきゃならないのー?」
「・・・自分の心も綺麗にしなさいっていうことなんじゃないかな」
「ちょ、直球がガラスのハートに命中したわ・・・ディエチちゃんが冷たくなって、お姉ちゃん悲しい、ヨヨヨヨヨ」
「クアットロ。嘘泣きは禁止・・・それに、シンデレラっていうお話知ってる?」
「灰被り小汚い女の子が怪しい魔女に助けられてエロ格好良い王子様のモノにされちゃうお話でしょ。はっ、ということはこうして清掃に励んでいればいつか私もうっふふのふ〜。
・・・何てことがあるわけないでしょうがっ」
「うん、そうだね」
「ディエチちゃん、泣いても良い?」
「嘘泣きは禁止。マジ泣きはもっと禁止」
「妹がいじめるーっ!!」
「ランチ奢ってあげるから、元気出して。出撃や訓練が無いときは私も手伝えるし」
「うぅ、そう言ってくれるのはディエチちゃんだけ・・・すまないわねぇ、ゲホゲホ」

何だかんだと良いながらも、やっと本音で話してくれる様になった姉の事が嬉しいディエチであった



「たのもーっ!ドゥーエ姉居るッスかー!?」
「ウェンディ、オフィスでは静かになさい。それで、何か用?」
「はい、プレゼントのお届けッス!!」
「あら、ありがとう。口紅?嬉しいわ」
「えへへーッス・・・それで、あたしにもお化粧教えて欲しいっすよ」
「あらあら、あなたもそういうお年頃?」
「そ、そんなんじゃ無いッスよー。ドゥーエ姉みたく美人になりたいだけッス!」
「じゃあ、簡単なメイクをしてあげるから、少し目を閉じていて」
「あいッス」

素直に目を閉じたウェンディの顔に、極太マジックで泥棒ヒゲと極太眉毛を書き込むのも楽しそうかと一瞬考えてしまったドゥーエだったが、流石にそれはマズイと自重する
淡いメイクにしようかと思ったが、ここは変身願望に応える為にもややケバめの色彩で臨むと決めた

「じゃぁ、少しじっとしててね、んふふふ」
585初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:51:58 ID:ntPv3nt3
(何なんッスかその含み笑いはーっ!?)

戦々恐々とするウェンディだが、ドゥーエは慣れた手付きでアイメイクを施し、頬紅をはたき、口紅を塗りつけた
色調としては少々ケバめ、しかもアイラインとリップはラメ入りなのでキラキラである

「ん、こんな感じ。自分でする方法は、また落ち着いたときに教えてあげるわ」
「うっひょー!!ドゥーエ姉はやっぱり凄いッスー!!!」

小さな手鏡の中に写る自分の顔を矯めつ眇めつしながらウェンディは狂喜乱舞だ
みんなに自慢してくるッスー!ぃやっほーぃ!!という言葉を残してエリアルレイヴ発動。ライディングボード代わりのベニヤ板(制限速度20km/h)に飛び乗って行った

「ドゥーエはなんや、お姉ちゃんっちゅうか、お母さんみたいやね」
「10年以上も、実家を離れてましたからねー。その間、色んなものを見てきましたから・・・まだまだ子供みたいなあの子達は、見ていて放っておけないんですよ」
「その10年間、何しとったん?」
「ごめんなさい部隊長。それについては黙秘権を行使します」
「つれないなぁ」



「トーレ姉トーレ姉!ドゥーエ姉にお化粧して貰ったッス!どうッスか!?」
「ウェンディ、唇が血塗れだぞ。何を喰った?」
「チクショーーーッス!!」

「チンク姉チンク姉!ドゥーエ姉にお化粧して貰ったッス!美少女っぷりを見て欲しいッス!!」
「ウェンディ、頬が赤いのは風邪か?体調が悪いなら安静にしていた方が良いと姉は思うが」
「ドチクショーーーッス!!!」

「ノーヴェ!こうなったらノーヴェでも良いッス!どうッスかこのお化粧!良いッスよね美少女ッスよね!?」
「うわ、キモッ」
「うわぁぁぁぁあんッスーーーーー!!!!!!
586初任給の使い途は・・・?その2:2007/09/03(月) 19:52:32 ID:ntPv3nt3
本局、ドアの前には24時間態勢で警備員が張り込んでいるラボの一室

「やれやれ、一月もすれば少しはマシな機材を入れてくれるものだろうと思っていたけど、これでは進む研究も進まないな」

研究室の端末に向かってぼやいているのは、現在執行猶予中のジェイル・スカリエッティである
そんな彼の傍らでは、紙の書類にレポートを書いているナンバーズ長女:ウーノが居た

「ドクター、あまりぼやかれませんよう・・・減刑にも繋がるのですから、妹達の努力に応えてあげてください」

少しだけ、穏やかな微笑みを浮かべてウーノは『父親』をそう諭した
ナンバーズは全員、八神はやての保護観察下にあり、スカリエッティからは一切切り離された関係といえるが、治安維持業務の遂行に当たって一つ条件が出された

「自分達は何があろうと命令に服従し、任務を遂行する。だから、その働きに応じて、ドクターの減刑をして欲しい」

という条件である。はやては少々悩んだモノの、その条件を快諾した。そして、ここ一ヶ月の姉妹達の働きは申し分のないものである

「結局、私は・・・何もしなくても良かった。ということだったのかな。これは・・・」

生命倫理を踏みにじり、数多の命を踏み台に生み出され、確立した人造魔導師創造技術:プロジェクトF。その技術を更に進化させた戦闘機人計画
スカリエッティ自身も、管理局の黒幕であった最高評議会によって生み出された人造魔導師である
コードネーム:無限の欲望。数多の思惑と野心によって生み出された、生まれながらに汚れた命。それが自分だ
そんな風に生まれた自分だからこそ、『娘達』が受け入れられる為の世界を作りたかった。狂った枠組みを破壊したかった
だけど、この世界はスカリエッティの妄執とは裏腹に、実にあっさりと『娘達』を受け入れてくれたのである

「一番の道化は、この私だった。か」
「ドクター。何か仰いましたか?」
「・・・あぁ、ウーノの淹れてくれた紅茶が飲みたくなったと思ってね」
「では、すぐに用意しますね」

いそいそと、ウーノは席を立った。その顔は少しだけ喜色を覗かせている
――― 『父親』として、君達だけは私が護ろう。世界の全てを敵に回してでも護りたかった、私の愛おしい『娘達』
587111:2007/09/03(月) 19:53:57 ID:ntPv3nt3
以上です

エリアルレイヴの扱いは妄想です
そうじゃないと、ライディングボードがウェンディの本体になってしまうじゃないデスカ・・・

では、スレ汚し失礼しました
588名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:18:24 ID:pZO8dzBk
>111
素晴らしい!かつて総統が装甲部隊の演習を初めて目にした時に叫んだ有名な言葉を贈ろう!

「これだ!これが欲しかったのだ!」
589名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:23:31 ID:mFxTpKvN
>>111
GJ
しかし眼鏡さんだけはどーにも許せなくなってきたw
乙!
590名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:30:42 ID:uEOjBSx3
>>587
蝶GJ!!
あー、ナンバーズはやっぱ可愛いなぁ。
サウンドステージ04あたりナンバーズ主役でやって欲しいぜ。

>意外にマメな仕事振りに同じくらいクア姉の心も清潔になれば良いのに、と悪意無くセインは思う
>「・・・自分の心も綺麗にしなさいっていうことなんじゃないかな」
www
やっぱり姉妹内でもそういう評価なクァ姉吹いた。
クァ姉って凌辱担当だけじゃなくてオチ担当としても優秀だなぁ、ということを発見させてくれて有難う。
ココ最近下げてたクァ姉の評価を少し上げてもいいかも、と思った。
591名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:43:43 ID:+CMVy871
111氏GJ!!
ええ話や(つд`)
しかし本編はどうなるんだろうか・・・
まさか、ここに来てやらないだろうと思ってた事を平然とやってのけるし。

>>590
けど来週にまた下がる可能性がwww
592名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:05:08 ID:HQrWxXY4
 111氏GJ!本編ではどうしてもありえなさそうだが、クァ姉や博士まで幸せそうで
良い話だった!
 あと、23話を見た直後だったので、中将と旦那のシーンはなんか嬉しくなってしまった。
本編ではこの二人、どんな決着をつけるのやら…
593名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:24:35 ID:VeckCsQS
ナンバーズ死亡・[・]・]T・]U・]V
594名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:31:14 ID:7lKX1KtS
死んでねえええええええ
595246:2007/09/03(月) 22:09:51 ID:NT91f7e+
んー大変 GJ な作品の後で投下するのは、気が引ける……

でもとりあえず、続き書けたので投下します。

注意

鬱展開鬱エンドです。
誰も死にませんが誰も救われません。
エロあり。なのは×ユーノです。
596Nameless:2007/09/03(月) 22:11:03 ID:NT91f7e+
 目の前で肩を落として飛ぶリインフォースに、はやては堪え切れない溜息を吐き目頭
を押さえていた。
 その様子に、リインフォースがここ何日か続く激務を思い出しながら、それでも自分
が言わなければとはやてに振り返る。

「はやてちゃん……急がないと」
「ん、ごめんな……ちょっと休憩させて……」

 地上部隊の制服をだらしなく着込んだはやてが、耐え切れず壁に背を預け、崩れそう
な身体に残る力をかき集めていた。
 責任は、全て部隊長であるはやてに降りかかっていた。聖王教会での会議。三提督と
の会談。ゲイス中将からの一方的な罵り。
 もうそれは、既に耐え切れる限度を超えている。精神的にも肉体的にも。
 それが分かっているリインフォースがそれ以上はやてに何か言えるはずもなく、艦船
クラウディアの通路で涙を堪えた。

「はやて、大丈夫か?」

 いつまでも来ないはやてに業を煮やしたのだろう。艦長室から来たクロノが壁に背を
預けたはやてに、声を投げかけた。
 声に視線だけを動かしたはやてが、クロノの姿を視界に納め肩を震わせる。疲れきっ
た体に鞭を打ち、背筋を伸ばして頭を下げた。

「期待に添えられず申し訳ありませんでした」

 はやてが身を包んだ地上部隊の制服。そこにある筈の二佐の称号は、自体が表に出た
と同時に抹消された。
 残ったのは一身に降りかかった責任と、起動六課の最後の任務への不安だけ。

「とりあえず艦長室まで行こう。もう、取り繕う事も無い。楽にしてくれ」

 その声に小さく礼を言い、艦長室へと足を入れたはやてが目の前にソファに崩れるよ
うに身を任せた。
 クロノはその向かいに座り、ソファに横たわるはやての様子を見て息を吐く。
 徹夜続きのその目には濃い隈。普段よりも香る香水は、風呂に入る時間がないと嘆い
ているよう。だが香水以上気を使う余裕も無いのか、艶のある綺麗だった髪はくたび
れ、髪飾りもなくなっていた。

「はやて、大丈夫か?」

 もう一度、今度は強い口調でクロノが言う。
 それにはやてが頷きかけ、残った責務に止められた。
 眠りたい欲求を抑え、ソファに座りなおし何回下げたか数えるのが面倒になった頭を
下げる。

「この件は、僕にも責任がある。済まなかった」

 それは、提督としての立場ではなく一人の兄の言葉。頭を下げ続けるはやてがゆっく
り首を横に振り、何もしなかった自分を責める。
 たが今日は、そんな話をしに来た訳じゃない。もう明日に迫った公開意見陳述会の話
しをしに来たのだから。

「僕のほうからも出来るだけ武装隊を投入する。母さん達にも話はつけてある」
「……迷惑掛けてばっかりやな。情けない」

 部隊長として。十年続いた親友として。何もできなかった自分を嘆き、呟いた。
 
「夢って……こんなに簡単に壊れるものやったんやなぁ……」
597Nameless:2007/09/03(月) 22:12:20 ID:NT91f7e+
魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Nameless―
(11)


「はぁぁっ、んんっ、凄いっ、凄いよぉぉぉ!!!」

 貫く肉棒に嬌声をあげ、一心に腰を振り、なのはがようやく結ばれる事のできたユー
ノの全てを味わっていた。
 むせ返るほどだった血の匂いを、性の匂いが掻き消していく。赤く染まったシーツに
二人の体液が染みていく。

「はぁっ、くぅっ!!」

 そんな中、未だ痛みの残る身体に鞭を打ってユーノは腰を動かし続けていた。
 身体に走る無数の傷は、彼が涙を流して頷いたともに消されている。だが、なのはが
自分で裂いた手首の傷は、彼への戒めとして跡が残されたまま。
 これは、自分がユーノを愛している証拠だからと、なのはが痛む手首に歓喜の笑みを
浮かべていた。
 もう、どうなってもいい。
 この、今の幸せを味わいたい。
 やっと、ユーノが自分のモノに戻ってくれたから。

「んっ、んっ……ユーノ君もっと強くしてぇぇぇ! きもちいのぉっ、ユーノ君ので凄
い気もちいのぉっ!!」

 ユーノに跨ったままなのはが喘ぎ、涎を垂らす。ユーノの目の前でぶるんぶるん、と
胸を揺らし羞恥も無く求め続けた。
 それは、ユーノにとって苦痛以外の何者でもない。残酷に押し寄せる快楽に板ばさみ
にされ、心を焦がした。
 ただ、それ以上に耐えられないものがあったから崩れなかっただけ。
 
「ねぇスバルなんかより気持ちいいでしょっ!? スバルより胸だって大きいし、スバ
ルより愛してるし、スバルなんかいらないでしょっ!?」

 絶えず叫び続けるスバルの名前。喘ぎながら腰を振り、なのはは溢れた涙を零してい
く。
 なのはがこうなった原因を知らないユーノにそれは分からない。ただ、フェイトが関
係しているのだろうと思っただけ。
 なのはは何故変わってしまったのか。
 なのはに何があったのか。
 なのはを、こんな風にしたのは誰だったのか。

「な、なのはっ……!」

 思考を中断させたのは再び限界に達したから。迫ってくる快楽の波。それは、ユーノ
に堪えられるものではない。出来るのは、なのはから滾った肉棒を引き抜く事だけ。

「だ、だめっ、ユーノ君の全部貰うのっ! いっぱい私に出してぇっ!」

 それをなのはは許さない。ユーノの体に腰を深く下ろし、子宮を突かれ走った快感
に背筋を反らせた。
 欲しかったのは、彼の全て。
 心も体も全てを自分の物にしたかった。
 それは、なのはの真の望みに他ならない。ただ、それを表に出せなかっただけだから。

「ひゃんっ……も、もっとっ!」
598Nameless:2007/09/03(月) 22:13:54 ID:NT91f7e+
 不意に、ユーノに胸を鷲づかみにされ、そのから駆け巡る快感になのはが悶えた。
 汗が飛ぶ。涎が糸を引いて落ちる。愛液が、溢れてユーノの身体を汚す。
 幸福感と征服感。興奮が際限なく高まっていく。それは、なのはの体に如実に現れて
いた。
 その全てが、ユーノにとって未知のもの。初めての女の体は、壊れそうなほど気持ち
よくて、涙が流れるほどに苦しくて、射精を止めさせない。
 吐き出した精液が子宮に叩きつけられ、なのはが快感に身体を震わせ恍惚な表情のま
ま囁いた。

「ユーノ君いっぱいでたね……もっと、出したいでしょ?」

 その表情にユーノが喉を鳴らし、なのはがクスリと嗤った。荒い息を吐くユーノの
唇。自分だけの唇にしゃぶりつき、舌を絡ませる。
 沸き起こる感情が止まらない。スバルなんかの姿を使わないで、自分の姿で強引に押
し倒せば良かったと思うほど。
 肉棒を引き抜けば、ゾクリと背筋が仰け反った。太ももを汚すのはなのは自身の愛液
と、ユーノの精液が混ざり合ったもの。

「ユーノ君見て。ユーノ君の……こんなに溢れてるんだよ?」
「う、ん……」

 ユーノを跨いだまま、なのはが陰唇を左右に割り開く。ドロッとした白濁はユーノの
胸に零れ、なのはがそれに笑みを浮かべながら、ユーノの眼前で膣を刺激した。

「はぁんっ、んんっ、ゆ、ユーノ君ちゃんと見てる? んくっ!」

 くちゅくちゅ、というよりもグチュグチュとした卑猥な音が目の前でしていた。いつ
の間にか膝立ちになっていたなのはが、ユーノに見せ付けるように腰を突き出し、自慰
に没頭した。
 ユーノはそれを見る事しかできない。限界まで勃起した肉棒に痛みすら感じながら、
目の前で露になっているなのはの秘所に釘付けになった。
 真っ赤に充血した陰唇と、ひくつく膣口から掻きだされた精液と愛液が顔に落ちるの
も構わず、それを凝視した。

「うんそうだよ……ユーノ君は私だけを見てればいいの……私だけに触ればいい……私
だけの名前を呼んでればいいの……私だけのものなんだから……それ以外の誰かなんて
みんないなくなればいい」

 呪いと共に漏れる嬌声に、ユーノの肉棒が震え上がった。ただ漏れる先走りは、もう
我慢できないと訴えているよう。体は既になのはに支配され、心までもを侵されそうだ
った。

「なのは、そんな事言わないでよ……お願いだから」

 その叫びに抗って訴えかけた。目を見開いたなのはが表情を変え、その瞬間なのはの
手が伸びてきてユーノの首に指を食い込ませていた。

「ねぇユーノ君……あれだけ痛い思いしてまだそんなこと言うの?」
「あっ、がぁっ……!?」

 息の出来ない苦しさにもがくユーノの唇を奪い、心を奪う。ユーノの瞳がなのはの淀
んだままの瞳を映す。
 骨が軋む音に恐怖を感じながら、なのはの手を外そうとその手を掴むが外れない。体
重かけたなのはと、下からもがいているユーノでは力の差がありすぎる為。
 だからその手を外すのを諦めた。
 諦めて。なのはを真っ直ぐ見つめ、言葉を絞り出した。

「今はっ、分からなくてもいいからっ、くぅぅっ……いつか……ちゃんと笑わせてあげ
るからぁ……がはっ!」
599Nameless:2007/09/03(月) 22:16:08 ID:NT91f7e+
無表情のままのなのはの指が、微かに震えた気がした。なのはも気づかないほどの動
揺なのかもしれない。だが、確かにユーノは感じていた。
 それから、まるで逃げるかのように、不意に苦痛が和らいだ。

「ユーノ君舐めて」

 なのはの手が力を失い、代わりに目の前に差し出されたなのはの秘所。肺に酸
素を届けながら咽ていたユーノが、なのはの感情が感じられない笑顔を見た。

「舐めて。それでちゃんと味わって。私の味」
「んぐっ……!?」

 突如顔面にかかった圧力に、ユーノが四肢を震わせた。もがいて、口の中に広がる味
に再び咽そうになって、瞳だけを動かした。

「はぁ、ゆーのくん、ゆーのくんの口に押し付けちゃってる……」

 ユーノに見つめられる中、焦点の合わない瞳を虚空に揺らし、恍惚しきった表情でな
のはが腰を前後に揺らし始める。
 それに合わせて揺れる左右の乳房を掴み、痛みが走るほどに抓り身体を仰け反らせた。

「こんな事できるのも……全部私だけ……んんっ!」

 ――――それから、どれくらい時間が経ったのか。
 涙を流して腰を打ち付けるユーノと、それに嬌声を上げて求め続けるなのは。既に、
空は夜とは表情を変えている。
 疲れなんて感じない。彼以外、感じるものなんて何も無い。
 もうそれ以外はどうでもいい。彼以上に素晴らしいモノなんてこの世に無いから。
 そして迎えたのは、終わりの日。新たに始まる為の最初の日。


* * *


 すっ、と差し出された封書に、はやてが縋るようになのはを見上げた。

「これ、起動六課と管理局の辞表。はやてちゃんよろしくね」
「せ、せめて、公開意見陳述会まででも、後少しやないか……」

 そう言わずにはいられない。部隊長としてではなく、人として。眼前に迫ってしまっ
た夢の終わり。その事実に耐え切れず、縋っていた。
 きょとんと、そんな言葉が似合う表情でなのはが首を傾げた。ユーノを手に入れたか
らか、スバルを襲ったときよりも幾分か落ち着いているが、もう前とは見る影も無く違
いすぎていた。

「邪魔するの?」

 その表情から、段々と感情が消えていく。暗い瞳に危険な光りが漂い始める。
 思わず肩を震わせたはやてに、なのはが無表情のまま呟いた。

「私の邪魔したら許さないよ? もう何したって大丈夫なんだから」
「し、しない! なのはちゃんの邪魔なんかせえへんからっ、お願いやからそんな目で
見ないで……」

 こんなものは耐えられない。
 こんななのはは見たくない。
 フェイトもスバルもユーノも。こんな感情を向けられていたのかと寒気がした。

「そう、ならいいや」
600Nameless:2007/09/03(月) 22:17:23 ID:NT91f7e+
 胸を撫で下ろしたはやてがなのはに促され、震える指を封書に向ける。
 触ったら終わってしまう。手に取ったら、終わってしまう。それならいっその事、思
い切って破り捨てたい。
 そんな欲求に駆られ、その直後に血まみれでボロボロになった自分を幻視した。

「た、確かに受け取りました……今まで、ご苦労様……でした……」

 なのはから返って来る言葉は無い。もう用済みのはやてが視界に映ることもない。
 踵を返し、そのまま部隊長室を出ようとするなのはに、はやての強張った声が投げら
れた。

「何……? ユーノ君が待ってるの」
「あ、あのっ……管理局辞めてなっ、民間人に戻ったらなっ……その……」

 はやての視線はなのはの胸元。同じようになのはも視線を下ろし、ようやく気づく。

「あぁ、これね」

 なのはの魔力は某大だ。それは、一般人のレベルを遥かに超えている。その魔力は、
通常管理局の管理下に置かなければいけないほど。
 そのなのはが、カートリッジシステムを導入した護身用以上の規格のデバイスを持つ
ことが許されるはずも無い。

「はい」

 はやての目の前に差し出された赤い宝石が、悲しげに光りを反射した。
 首から下げられるよう備え付けられていた紐は、なのはの手によって千切られた。
 それは、まるで絆までもを断ち切っているようで。
 だが、なのはにとっては間違いなどなくそのつもりで。

「ええの? ずっと一緒やったのに」
「そっちが言い出したのに……もう、いらないものだから」

 特に沸いてくる感情は見つからない。唯一惜しむとしたら、これがユーノからの最初
の贈り物だという事くらい。
 だが、ユーノに比べれば価値なんて無いに等しい。
 はやては固まったまま動かない。手を伸ばせず俯いたまま。溜息を吐いたなのはがレ
イジングハートに無表情で呟いた。

「さよなら」

 コロン、と小さな音が床に一つ響いた。それがレイジングハートからの最後の返事。
 もうこれで本当に最後。無言のまま踵を返したなのはが部隊長室を後にする。直後、
はやての泣き声が聞こえたような気がして不快だった。
 そのなのはが、更に表情を歪ませて視線を落とす。

「あ、あのなのはさん……」

 なのはが出てくるのを待っていたのか。恐る恐る手を繋ぎながらなのはに歩み寄るエ
リオとキャロ。
 何度も視線を逸らし、再び戻して。それでも耐え切れずに視線を逸らして。意を決し
てなのはを見上げた頃には、なのはの視線は凍りつくほど冷たかった。
 それを無視してエリオが前に出る。キャロはエリオの服を掴み俯いたまま。
 その不安を取り払うように頷き、言葉を紡ぐ。

「な、なのはさん今までありがとうございましたっ! 僕もキャロも――――」
「邪魔」
「あ……」
601Nameless:2007/09/03(月) 22:18:50 ID:NT91f7e+
 言葉を失い、立ち尽くしたエリオをキャロが引き戻す。それになのはがかける言葉は
ない。ただ邪魔な障害物が消えただけ。これ以降きっと思い出すことも無い。
 隊舎の入り口まであと少し。ユーノの所まで駆けていこうか考え、はやる気持ちを抑
えられずに一人頷いて。

「なのはままぁ……」

 また呼び止められて俯いた。

「なのは、ままぁ」

 もう一度、今度は涙を堪えてヴィヴィオが呼んだ。それを無視してなのはが歩く。向
かうのは隊舎の入り口。ユーノの所。
 それをヴィヴィオが追いかける。振り向いてくれない母を呼び続け、足を縺れさせた。
 それで。

 ――――なのはママ、ここにいるから。おいで。

 そんな、日常を思い出した。

「なのはママ! ヴィヴィオ大丈夫だからっ!」

 だから、今度は一人で立ち上がろうと歯を食い縛る。膝に手を当て、擦りむいた痛み
にバランスを崩しそうになって。

「ちゃんと一人で立つから!」

 それでも、滲んだ視界の奥にいるなのはを見つめ立ち上がった。
 なのはは立ち止まり、視線をこちらへ向けている。それが、待っていてくれている気
がして。笑顔で走ろうとして。

「ママなんて呼ばないでよ。私はあなたのママなんかじゃない」

 今度こそ、涙を零して膝を砕いた。
 なのははもう振り返ってはくれない。もうその頭の中には、ユーノのことしか出てこ
ない。それ以外は、全て余計なものと消し去った。

「行かないでぇぇぇぇ――――!!!」

 そんな、もう絶望しか見えない中彼女は叫んだ。
 床に頭を擦り付けて泣き続けるヴィヴィオを無視して、フェイトがなのはの元へ駆け
ていく。

「いかっ、行かないでっ、なのは行かないでっ……!」

 フェイトを連れ戻そうとシグナムに羽交い絞めにされ、時折殴り飛ばされながらそれ
でもフェイトは呼び続けた。

「待ってお願いだからっ、お願いだから行かないでっ! 私を一人にしないでっ! 何
でもするからっ、何でもするからぁぁぁ――――!!」

 目の前、ユーノはすぐそこにいた。車を停め、ハンドルに頭を擦りつけながら唇を噛
んでいる。
 早く行かないと、ユーノが寂しがっている。

「ユーノ君、ごめんね。ちょっと遅れちゃった」

 助手席に乗り、いつまでも動いてくれないユーノに首を傾げる。
602Nameless
「ユーノ君どうしたの? 泣いてるの?」

 ただ、そんな気がした。ユーノが首を横に振ってもその考えは拭えない。

「なのは……絶対――――」

 ――――いつか、みんなと笑えるようにさせるから。

 もう、それしか考えられない。今はただ、その想いで身体を奮わせてでしか、な
のはの事を抱きしめられない。
 エンジン音を響かせ、逃げるように車が発進する。
 終ぞ、彼女が顔を見せる事が無かったのは、何も出来ないと知っているから。

「ごめん、なさい……ごめんな……さい……」

 傷だらけの身体を抱きしめ、スバルは涙を流し続ける。その傍らには、包帯を巻かれ
意識を戻さないパートナー。
 シグナムに傷つけられた体が痛むのか。それとも、別のものが痛むのか。我を取り戻
したスバルは、ただ痛みに耐えていた。
 願うのは、彼女の幸せ。
 呟くのは、それを奪ったと自分を陥れる言葉。
 ――――彼女はまだ知らない。まだ、誰一人として知る者はいない。
 今はただ静かに。

「ユーノ君、これからはずっと一緒だから」

 これから起こる終焉を、笑顔で待ち望むしか許されない。