女の子と二人きりになってしまった 2回目

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1名無しさん@ピンキー
・雪山で大雪崩に遭い遭難。とりあえず寒さしのぎに入った洞窟に女の子が
・巨大地震が発生し、崩れた建物の瓦礫で閉じ込められる。ふと隣を見ると女の子が
・核戦争が勃発し(ry


(お、女の子と二人きりになってしまった・・・)

「私達・・・このまま死んじゃうのかな・・・」

「え!?あ・・・分からないけど・・・だっ、大丈夫・・・きっと助かるよ」

(そうだ、それどころじゃない。どうにか助かる方法を考えないと・・・)


《前スレ》
【不可抗力】女の子と二人きりになってしまった
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153831562/
2名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 18:02:03 ID:ENg5QBDE
>>1
乙!
前スレ埋めに行ってくる。
3名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 19:06:59 ID:OSIQTYhJ
4名無しさん@ピンキー:2007/08/23(木) 23:10:43 ID:gCL0GSxi
>>1 乙&新作にw-kt-k-
5名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 00:03:04 ID:JiUjQ7jr
女の子と二人きりになってしまった まとめ
http://www38.atwiki.jp/hutarikiri/
6名無しさん@ピンキー:2007/08/24(金) 21:12:56 ID:Uifjz+s8
それでは新スレ一発目。


 ワ ー ク ・ テ イ カ ァ ァ ア ッ !
7小さな新スレ物語:2007/08/25(土) 00:20:00 ID:dYNphL2H
乙。
では職人様が来るまでに小ネタを


1「よっし、新スレ立てたぞ」
2「乙、>>1!」
1「どうもどうも」
3「あ、あの、お疲れ様。これ、追加リンク」
1「おぉサンキュー」
3「……ぅん(///)」
2「ふむ……んー…俺ぁ前スレ埋めてくるゼ」
1「いってらー」
2「おぅ…あ。そうそう、>>3」
3「ぇ?」
2「…うまくやれよ?(ボソ)」(退場)
3「……!?(///)」
1「どーした?」
3「……あ、あのね!」


2「まさに…スレタイ通り(ニヤリ)」


勢いでやった。だが私は謝ら(ry
8名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 01:10:13 ID:ncgNdZjk
 似たようなのを

「あれ、ここ新スレじゃん?」
「そだよ。知らないできたの?」
「あー、うん。いつものスレかと思ってさ。なんだ、誰もまだ来てないのかよ」
「あたしがいる」
「そうだけどさ」
「なに、きょろきょろしてるの」
「いや、べつに」
「座れば?」
「あ、うん。って、椅子ねぇし。しゃがむだけかよ」
「いいじゃない」
「なんか立ってる方が楽じゃね?」
「男のクセに、文句ばっか」
「うるせぇなぁ……あのさ、もうちょっと足閉じろ」
「……」
「うわ、なんで石投げるんだよ! 確かにちらっと見えたけどさ、スカートが短いお前が悪いてっ!」
「ばーかっ」
9名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 17:22:30 ID:rcdDHl74
即死回避用の適当


「ダメだ、やっぱり機体は動かないし、通信機も反応なし。」
「ふん!当然だ、あの高度から墜落して、機体が無事であるはずがない。」
「…………ハッキリ言うね。」
「だいたい貴様は、なぜ敵である私を殺さなかった、それに拘束するでもなく、武器も奪わん、あまつさえ怪我の手当てまでして。」
「まぁ、あんたとは何度も戦ったけど、別に恨みはないし、目の前で怪我をしている女性を助けるのは当然だろ?」
「…………軍人失格だな。」
「うーんそうかもね、でも俺、民間からの補充要員だから。」
「待て!ではお前は正規の訓練を受けていないのに、エース級の機体に乗っていたのか!?」
「乗るはずだった人に頼まれてね、それから他に乗り手がいないから俺が使ってるだけだよ。」
「……信じられん、そんな奴に私は苦戦していたのか!」
「………………」
「?、なんだ、私の顔など覗き込んで。」
「……キレイだな、って思ってな。」
「ッ!な、なにを考えている!わ、私は敵だぞ!!」
「敵でも味方でも、君がキレイなのは関係ないよ。」
「〜〜〜〜!!、も、もうお前など知らん!!」
「やれやれ。」
「………………ありがとう…」
「ん?なんか言ったか?」
「べ、別に私は何も言っておらん!」
「そんなにムキにならなくても……」
「た、ただの空耳だろう。」
「……ま、そういう事にしておきますか、それより…」
「な、なんだ…」
「この地方は日が暮れると、一気に気温が下がるんだが…」
「その通りだが…だから、なんだ。」
「寒さを防ぐ毛布は一枚、人は二人……どうする?」
「ッ!」
「やっぱり、二人でくるまる?」
「……お、お前を殺して、私が使う……とは考えなかったのか…」
「あー…それは盲点だったな…………で、俺を殺す?」
「………………お前の案でいく。」
「…やっぱり君は優しいんだね。」
「ち、違う!体温を保つなら……ひ、一人より、二人のほうが、効率が、良いから……そ、それだけだ!!」
「それじゃ、日も暮れてきたし……ヨッと。」
「キャッ!」
「キャッ?」
「う、うるさい!ちょっと驚いただけだ!」
「かわいいところもあるんだ。」
「〜〜〜〜!!」
「ゴメンゴメン、からかいすぎたよ、だからそっぽ向かないで。」
「………………」
「ほっ…」
10名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 17:23:47 ID:rcdDHl74
「…………」
「…………」
「……なぁ…」
「な、なんだ…」
「俺って、家族以外で女の人と夜を一緒に過ごすの初めてなんだ…」
「…………私だってそうだ…」
「…………」
「…………」
「…それで、その…」
「な、なんだ…」
「…ゴメン!」
「キャッ!」
「……俺……我慢できそうにない…」
「……………………いいぞ…」
「え…?」
「寒い……から……身体を……暖めるためだ…」
「それって……いいってこ…」
「聞き返すな!!」
「…………」
「…………」
「……」
「……ン……ア……」


「ううん、あれ……俺……ここは…」
「……すぅー……すぅー」
「うわぁっ!」
「……ん、なに…」
「あ、そっか……昨日…………卒業したんだっけ…」
「…………?」
「お、おはよう…」
「………………!、〜〜〜〜〜〜!!」
「あ、えっと、その…」
「……………おはよう。」
「あ、うん…」
「…………」
「…………」
「………………あ、あの…」
「!」
「!」
「今のは…」
「お互い、迎えが来たみたいだな。」
「…………」
「俺はこっち、君はあっちか…」
「…………」
「……俺達、敵同士なんだよな…」
「…………」
「……じゃあな。」
「…………ま、待ちなさい!」
「え?」
「あなたは死んじゃダメ!」
「…………」
「……あ、あなたの命は……私が貰うんだから!」
「…………わかった、でも、その前に俺が貰う!」
「…楽しみにしてるわ。」
「…俺もだ。」
「……じゃあね。」
「……ああ」

書ける人求む
11名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 18:04:01 ID:spsmDZB5
スレ立て乙です。
前スレ980です。申し訳ない。
書いた後から今までスレ見れなかった。

あと>>7-10も乙。
>>9-10見て某種G思い出したの俺だけ?w
12前スレ最後にあった原案:2007/08/25(土) 18:25:42 ID:fsLOVHbT
・図書室の奥、どこからも死角になる場所で
・海で浮き輪に掴まった二人が離岸流で沖に流されて
・家出してきて深夜の公園へ行くとクラスメイトと遭遇
・片想いをくっつけようと友人が仕組む
・きもだめし中に道に迷って二人だけ違う荒地に出てしまう
・核シェルターで二人きり
・誘拐されて狭い部屋に二人きりで監禁 妖しげなクスリを使われたりなんだり
・戦争か何かで町の人間がほとんど疎開して、近所に自分と相手のみ
・ウィルス災害でまだ感染していないor免疫があるふたり
・戦闘機からベイルアウトしたパイロットと地上にいた、隊からはぐれた敵兵士
・地震か何かでトンネルに閉じ込められた男女(ドラゴンヘッドw)
・沈没した船から脱出したふたり
・スペース・デブリの衝突事故で脱出艇に乗り込んで辛くも生き残った男女
・毎朝神社で会うふたり。次第に親しくなっていく
・通勤(通学)電車で一駅分だけ二人きりになる二人が、少しずつ親しくなる
・廃工場か何かに探検に行く悪ガキグループと、それを咎めようと追いかける委員長が、何かの原因(何かを幽霊と見間違えた)でリーダー格と委員長だけ取り残される
・二人だけの補習授業。担当教師は課題だけ言い渡して丸投げ
・教師と生徒の二人だけの補習授業。二人とも互いに恋心を抱いていた
・単純に残業。委員会や生徒会の仕事だったり、あるいは普通の企業の残業だったり
・これは厳密には違うかもしれないが、いつも同じ時間、同じコースで犬の散歩をする二人
・戦争中、防空豪で
・密航中、船員が知り合い
・工事中、マンホールに墜落、誰にも気付かれず
・長距離トラックのコンテナの中
・お見舞いに行ったら、個室で出入口のドアがぶっこわれ
・殺人犯とそれを匿う変り者
・戦闘機の前席と後席
・一人旅中、予約していた旅館の手違いで相部屋に
・放課後、ほとんどのやつがサボタージュして、二人で掃除。
・樹海で自殺しようと歩いていると、同じような目的の人とばったり。
・雨宿りで人気のない公園の休憩所に駆け込んだら、先客が。
13sage:2007/08/25(土) 20:38:08 ID:GcATrp2h
倭阿琥帝禍ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
14名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 21:40:53 ID:mX5kMELt
1乙
15白い牢獄 番外編 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 22:59:38 ID:E6vf38KJ
◆白い牢獄 番外編

 留美は、自分に向けられている、絡みつくような視線に覚えがあった。
 それは――あまり思い出したくはない、一ヶ月ほど前の記憶。
 留美は、電車の中で、痴漢にあってしまった。その痴漢は粘着質で、留美が何度車両を移動しても、後をつけてきて、胸や太股を撫でてきた。
 いい加減、抗議の意を示そうと、勇気を出して、男を見上げた。そして……目が合った。
 その時の男が、丁度、こんな目をしていたように思う。
「たっ、大変なことになったねえ。これからどうしようか……?」
 男は、部屋の中を一通り歩き回った後、留美の頭の天辺から爪先までを値踏みするように眺め回しながら、留美の隣に座った。
 縦横共に大きい、太った男である。その重みに耐えかねて、ベッドがキィ、と、踏み潰された蝙蝠のような悲鳴をあげる。
 それから男――多々良朝人(たたら あさと)と名乗った――は、留美に肩を押し付けながら、一方的なマシンガントークを繰り広げた。
 しかし、それは多々良の身の上話であったり、留美のプライベートを穿り返すような話……所謂『どうでもいい話』ばかりで。
 驚くべき事に多々良からは、この閉塞状況を打開する為の提案どころか、状況そのものへの言及すらありはしなかった。
 おかげで、留美まで話を切り出し辛くなってしまい『この状況をどう思っているのか』など、本当に大切な質問はできなかった。
 多々良は、この不条理な状況から、意識して目を逸らしているように、留美には思えた。正面から向き合ったら、きっと、心が折れてしまうから。
 その気持ちはわからなくもないけれど、やはり、先程の下心満載の視線と併せ、二人きりで閉じ込められるには不安な相手だと言えた。

16白い牢獄 番外編 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 23:00:31 ID:E6vf38KJ
 その日。眠っていた留美は、足に虫が這うような感覚で、目を覚ました。
 ベッドに横たわったまま、視線を下に向ける。と、多々良が、息を荒げながら留美の太股を触っていた。
 スカートは、もう、下着が見えるか見えないかというところまで捲り上げられている。
 どうやら多々良は、留美を起こさないようそっと近付き、スカートを捲りながら、太股の感触を楽しんでいたらしかった。
「な、何するんですか……!」
 慌てて、捲れ上がったスカートの裾を直し、ベッドの上に座る。
 そんな留美の抗議に、多々良は最初こそばつの悪そうな顔をしたが、すぐに開き直った。
「ちょっとさあ……興奮しちゃって……これ、どうにかしてくれないかなあ」
 そう言って、右手でジーンズの前を擦る。股間の部分が、膨らんでいた。
「ほら、素直に言うコト聞いてくれればさあ、乱暴したり、無理矢理入れたり、そういう汚すような真似とかしないから……要は、留美ちゃんのカラダでさあ、鎮めてくれればいいんだよ、これを」
 どうせ、ここには俺の行為を咎める者はいない。そういう不遜な自信が、多々良の態度を大きくしていた。
 その口振りは、先程までのものとはまるで別人のようで、目も据わってしまっている。
 逆らわない方がいいのはわかっていたが、だからと言って「はい」と従順に受け入れる気にもならない。
 留美は黙って、目を逸らした。無言の抵抗のつもりだった。
「じゃあ……そうだなあ、口でしてもらおうか」
 そんな留美には委細構わず、多々良は勝手に話を進める。ジーンズとトランクスを脱ぎ捨て、下半身を露出させる。
「わかる? これを咥えるんだよ、口で」
 勃起したペニスを軽く扱きながら、多々良が言う。
「返事は?」
 留美は俯いたまま、答えない。
「もう一度だけ聞くよ、返事は?」
 多々良は苛立ちながら、再び同じ言葉を繰り返す。それでも、留美は答えなかった。
 と。強烈な平手が、留美の頬を打つ。小さな悲鳴をあげて、留美はベッドに倒れ込む。
「返事は!?って聞いてるんだよッ!」
 そのままブラウスの襟元を掴んで捻り上げ、至近距離で怒鳴る。
「…………はい」
 その剣幕を前にして、留美も屈する他なかった。
 どちらにせよ、多々良が本気であるならば、留美には抗う術はないのだから。
17白い牢獄 番外編 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 23:01:41 ID:E6vf38KJ
「そうそう、いい子いい子」
 襟元から手を離すと、子供番組の司会者よりわざとらしい作り笑顔で、多々良は留美の頭を撫でた。
「でも困ったな、留美ちゃんがぐずるから、折角勃ってたのに、萎えちゃったよ」
 多々良の言う通り、ペニスは先の半分程度の大きさになっていた。
「誘惑してみてごらん。それで、もう一度これを大きくするんだ」
「は……はい」
 今度はすぐに答えを返す。もう、従うしかなかった。
 留美はカーディガンを脱いでベッドに畳むと、太股に両手を置いて、パンツが見えるくらいスカートを捲った。
 続いて、ブラウスのボタン上四つを外し、ブラジャーのフロント部分を露出させる。
 それが、今の留美にできる精一杯の、稚拙な誘惑。
 それでも、多々良は満足したようだった。羞恥心が伝わってくるようなたどたどしい動作が、興奮を高めたのかもしれない。
 ペニスは先よりも大きく屹立し、刺激を求めてびくびくと震えている。
「そのまま咥えて」
 多々良は、留美の唇にペニスの先端を押し当てる。数秒の逡巡の後、留美はペニスを口に咥えた。
「舐めたり、口を窄めたりして、刺激して」
 言われるがまま、亀頭の周辺を舐め、竿を口内に出し入れする。
「口から抜かない。咥えたまま唇で扱く」
 最初こそソフトクリームを舐める動きと大差なかったフェラチオだったが、指示に忠実なおかげか、時間が経つにつれて、十分に男を射精に導けるものへとなっていく。
「そう、いいよ」
 多々良もいつしか指示を忘れ、快楽に身を委ねていた。腕を下に伸ばして、服の上から、手の平サイズの胸を撫で回す。
 次第に抽送のスピードが速まり、ちゅぱちゅぱと卑猥な水音が部屋に響く。そろそろ、我慢の限界だった。
「ああ、いきそうだ」
 射精が近付いてくるに従って、快感を搾り取ろうとでもするように、胸を触っている手の動きも激しくなる。
 もう、撫でているとか揉んでいるとか言うより、鷲掴みにして揺さぶっていると表現した方が正しい。
「いっ……く!」
 両胸を揺すっていた手の動きが止まり、指先に力が込められる。
 同時に、ペニスが脈打ち、大量の欲望が、留美の喉奥めがけて勢い良く吐き出された。
「……っ! げほっ、けほっ!」
 精液が気管にでも入ったのか、留美はまだ放出を続けるペニスを口から吐き出して、激しく咽る。
 口で受け止め切れなかった精液が、留美の顔や髪を白く汚した。

18白い牢獄 番外編 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 23:02:37 ID:E6vf38KJ
 溜まっていたものを出し終え、多々良が自分のベッドに戻った後も、留美は暫く放心状態だった。
 開放されてから数分間、乱れた衣服を直すことすら忘れていたくらいだ。
 まだ、喉の奥に何かが付着しているような違和感がある。乱暴にされた胸が、少し痛む。
 つい昨日までは、こんな目に遭うなんて、夢にも思っていなかった。
 明日も同じ朝が来て、学校へ行って、勉強をして、友達と遊んで……そんな、退屈だけれど平和な毎日が、当たり前のように続くのだと。
 何故、こんな場所に閉じ込められた挙句、見ず知らずの男の玩具にされなければならないのだろう。
 悔しくて、悲しくて、知らず頬を涙が伝った。

 一時間も経たない内に、多々良はまた留美のベッドへとやってきた。
 ぎらついた視線と、ジーンズのホックを外す仕草で、留美は多々良が何をしようとしているのか察する。
 多々良は、抵抗できないよう留美の両手首を掴むと、そのままベッドに押し倒した。
「い、いや! もういや……!」
「入れないから……! そのまま大人しく寝てるだけでいいから!」
 多々良はスカートを引き上げて、拒否するように閉じた太股の間にペニスを挟みこみ、腰を動かす。
 薄布一枚越しに、大切な部分にペニスを擦り付けられ、留美は、自分が犯されているような錯覚に陥る。
「あっ、や、やっ」
 多々良は留美の両腕を封じながら、上半身を傾けて、強引に抱き着く。
 両腕を押さえ付けられた状態で、無遠慮に多々良の全体重をかけられて、留美は押し潰されそうになる。
 暑くて、重くて、息をするのも苦しい。
「……ん、うっ」
 そんな留美の唇から、小さな声が漏れたのを、多々良は聞き逃さない。
「感じてるの? 可愛いねえ」
 耳元で囁く。留美はその台詞に、背中を無数の虫が這い上がってくるような生理的嫌悪感を覚えた。
 こんなの気持ちいいわけない! 息ができなくって声が出ただけなのに! 変態! 最低! 人間失格!
 留美は心中であらん限りの罵詈雑言をぶつけるが、多々良は誤った解釈で、勝手に興奮しているようだった。
 留美の首筋に獣のような吐息を吹きつけながら、腰を動かすペースを速める。
 ペニスの痙攣と、内腿を伝う生暖かい感触で、留美は多々良が達したのを知った。
 多々良は暫くの間、留美に覆い被さったまま、射精の余韻に浸っていた。
 やがて、名残惜しそうに体を離し、横たわる留美を見下ろす。
 内腿と、パンツのクロッチ部分に、濃い白濁液がたっぷりと吐き出されていた。
 今日二度目とは思えない量の精液だった。多々良はそれを確認すると、満足そうに踵を返した。

19白い牢獄 番外編 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 23:03:45 ID:E6vf38KJ
 それからことある毎に、多々良は留美を求めた。
 最期まで一線を越えることこそなかったが、多々良はあの手この手で、留美の体を弄んだ。
 いつしか、一着しかない洋服は、下着を含めて、精液特有の黄ばんだ染みだらけになっていた。
 水色の箱の中身である飲料水と食料は、多々良が独占、管理しており、留美が従順に多々良の欲望を満たせた時に『ご褒美』と称してそれらを与えたりしていた。
 留美にとっては、地獄のような日々であっただろうことは想像に難くない。



「そんな、享楽的な生活の末に、二人は飢えて死にましたとさ。めでたしめでたし」
 どこからか、くすり、と女の笑い声。
 それは、物語の終わりを示す合図だった。


 project whitebox 『多々良朝人編』

 ――GAME OVER――
20TIPS ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 23:04:54 ID:E6vf38KJ
TIPS『多々良朝人』
自信過剰にして攻撃的な、三流大学生。
彼はまだ生きている。が、死ぬのは時間の問題だと思われる。
色欲に溺れたのが運の尽きだった。
余談だが『白組』でない『勇一』は、彼に同情的らしい。

TIPS『眠っていた留美』
留美は『智信編』では、最初の夜を泣き明かしていた。しかし『朝人編』では、大人しく眠っている。
その理由はと言えば、この男には弱みを見せられない、と、無意識の内に留美が判断したからに他ならなかった。
極度の緊張が、不安と恐怖を抑え込んだのだ。

TIPS『興奮しちゃって』
多々良ほど手が早くなくとも、密室に若い男女が閉じ込められれば、何れこうなることは自明の理。
そういう意味では、智信は比較的紳士だったのかもしれない。

TIPS『カーディガンを脱いでベッドに畳む』
どんな状況であっても、人の本質は変わらない。几帳面な人間はとことん几帳面だ。

TIPS『人間失格』
言わずと知れた、太宰治の名著。
21 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/25(土) 23:05:48 ID:E6vf38KJ
この物語(番外編)は本編と関係がないわけではないですが、別にあってもなくても問題はない、蛇足的なお話です。
このまま本編だけで進行しては性描写の入る余地がなさそうで、それは流石に不味いのでは?と思い、番外編を書いてみました。
22名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 23:33:31 ID:+uk6eZd+
番外編面白かった。

ご馳走様でした
23名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 00:34:25 ID:VglvDlDE
>>21
これから氏をS^4(エスフォー)氏と呼ばせていただきます。
というワケでGJ!
少しずつ情報が与えられる感がワクワクさせてくれる。
24名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 03:07:39 ID:9DUMfAn5
GJ!
だが言わせてくれ

少しだけ「辱め系苦手な人はヌルーで」 くらい書いておいたらどうだろう

処女がレイプとかショボーンになるし。。。

あくまで参考程度に
25名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 08:24:54 ID:saFH9oNk
>>24
私もその意見に同意です。
少なくとも、エロ描写がある時は、どういったシチュなのかは書いた方が良いと思います。
やっぱりこういうのは、好みが分かれますから。
26名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 08:28:16 ID:saFH9oNk
>>25
書き忘れた。
内容はGJです!
本編の続きを期待!
27名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 09:08:13 ID:JDZREuOO
work taker
28名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 19:20:47 ID:mHtBFE6s
S4氏=WorktakerMaker                                        直訳すると、wktkを創る者。兎に角、GJ!
29名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 19:23:58 ID:mHtBFE6s
>>28  スマソ改変ミスった。
30名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 21:02:22 ID:9DUMfAn5
前スレ>>76の気持ちが五臓六腑に染み渡るぜ
31名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 11:01:56 ID:K+8Oop01
>>24
>>25
しかしですね、ただでご飯食べさせて貰ってる分際で、
自分の好みに合う料理だけを口までわざわざ
細かい様式で運んで貰わないと美味しく食えないとか、
人としてどうかと思う訳ですよ。
32名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 14:09:12 ID:Ym1kOFtC
荒らすな。
33名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 15:41:53 ID:OAxAXCSr
>>25
シチュってのはスレごとに大まかに分かれていると思っていたが、違うのか?
34名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 17:31:26 ID:p96ENhEf
>>33
逆に言えば大まかにしかわかれてないからな
好みが大幅にわかれそうな要素に関しては注意書きを入れとくに
こしたことはない
35名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 19:07:51 ID:tylywMtc
>>31
そんなつもりはない
気に障ったなら謝る。
ただ、もしこのスレを女性がみるなら、過去に辛い目にあった人がいたら、と。。。

まぁ杞憂だとは思うが

そして更に不快に思ったとしても、容量がアレだから押さえてください

こちらもこれ以上の反論はしないし、言い争いたくないので

長々とスマソ
3625:2007/08/27(月) 19:09:34 ID:Wrac3i8B
すいません、自分がシチュって言葉の使い方が間違ってただけです。
やっぱり、レイプとか、無理矢理とかは受け入れにくい人もいると思うので、
一言入れておいた方がいい、って言いたかっただけです。
37白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:07:20 ID:bZA+mqY5
 結局、少しばかりうつらうつらとしただけで、昨日は殆ど眠れなかった。
 昨日、と言っても、ここには時間を知る術なんて一切ないから、本当に日付が変わったかどうかなんてわからない。
 二人がベッドに横になって数時間(これも概算だが)を過ごしたことから、便宜上『昨日』と呼んでいるだけだ。
 僕の言う『昨日』とは、体内時計と、ほんの少しの直感に頼った目安のようなものに過ぎなかった。
 しかし、こんな朝も夜もない部屋に缶詰にされていたら、体内時計だって狂うに違いない。これから先、時間の感覚はどんどん曖昧になっていくだろう。
 とうとう時間までも『わからない』か……まったく、どうしたものか。
 失笑しながらも、立ち上がる。
 彼女はまだ眠っているようだった。箱を抱えたまま、ベッドの上で体を丸めている。
 僕は部屋の中を、あてどもなく歩き回り、天井を見上げたり、壁や床に触れてみたりしながら時間を潰した。
 天井も壁も床も扉も、昨日二人で穴が空くほど調べたのだから、まず新しい発見は望めないと自分でも思うのだが、何かしら前向きな行動を起こしていないと、心が折れてしまいそうだった。
 僕がその『変化』を発見したのは、半ば無駄と諦めつつも『開かない扉』のノブでも回してみようかと、近付いた時だった。
 液晶画面に表示されていた数字が『三十』から『二十九』になっている。
 それは、憎らしい程に代わり映えのしないこの部屋の中で、唯一の『変化』だった。
 彼女のベッドを見ると、彼女はもう起きていて、寝起き特有のぼうっとした目でこちらを見ていた。
「ちょっと、来てくれないかな」
 僕は彼女に声をかけて、手招きした。
「どうしたんですか?」
 目を瞬かせて、小走りでこちらに向かってくる。
 近くで顔をよく見ると、泣き腫らしたのだろう、瞳は兎みたいに真っ赤だった。肌が白いから、余計に痛々しい印象を与える。
「ここ、見てほしい」
 僕は、液晶画面を指差す。彼女もすぐに気付いたようで、目を丸くする。
「数字が……減ってます?」
「そう、二人がそれぞれベッドで休む前は、確か『三十』と表示されていた」
「はい」
「これは――」
 どういうことなんだろう? そう言いかけて、慌てて言葉を引っ込めた。
 状況に呑まれて震えている年下の女の子に、自分の考えも提示しない内から意見を求めるなんて、いくらなんでも情けない。
 そもそも、質問そのものがこれ以上ないくらいの愚問で、彼女に聞いたってわかる筈がないのだ。勿論、逆もまた然り。
 そういう意味では、隣で、黙って考え込んでいる彼女の方が余程賢い。
 しかし……考えた所で、それらしい答えが見付かるのかといえば、また別の話なのだが。


38白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:08:06 ID:bZA+mqY5
 何の手も打てないまま、時間は刻々と過ぎていった。
 智信も留美も、亡霊のような表情でベッドに座り込み、時折思い出したかのように部屋を徘徊。そして、何の変化も見られないことに落胆する。
 いや、厳密には、変化はないわけではなかった。最初の『三十』から『二十九』へと変わっていた表示は、何時の間にか『二十八』となっていた。
 だが、そのカウントダウンめいた数字が何を意味するかなど、二人には検討もつかなかったので、だからと言ってどうしようもなかった。
 ただ、ちびちびとペットボトルの水を飲んで、カロリーメイトを齧る。そんな先の見えない、絶望的な時間を過ごすだけだった。
 与えられた僅かばかりの食料が尽きた時が、二人の最期である。それはわかっている。打つ手があるかどうかは怪しいが、このままでいいわけはない。
 それでも二人は、ベッドの上に置物のように鎮座するだけ。渇きと飢えが、二人から常識的な思考能力、判断能力を奪っていた。
 大きな『変化』が訪れたのは、そんな時だった。
 ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
 けたたましい電子音が、二人の鼓膜を揺さぶった。
 二人は外敵に発見された小動物のように体を震わせると、今やすっかり指定席となった感のあるベッドから飛び降り、アイコンタクトを交わす。
 そして、音の出所を探して、視線をあちらこちらに彷徨わせる。音はどうやら『開かない扉』の方から聞こえているらしかった。
 と、それを認識した途端、唐突に音は止んだ。部屋は、元の静寂に包まれる。
「い、今のは……?」
 留美が独り言のように零す。智信は黙って首を振ると『開かない扉』へと向かう。
 変化は二つあった。
 一つは、液晶画面に表示されている数字が『二十八』から『二十七』になっていたこと。
 もう一つは、画面下部、空白だった『ルールA』の部分に、一行の文章が追加されていること。
 二人して、画面を覗き込む。智信が枯れかけた声で、それを読み上げた。
「ルールA……鉄扉の正面に表示されているのは残り日数である。残り日数がゼロになった時、扉は開かれる……!?」
「最初は『三十』だったから……私たちがこの部屋に閉じ込められてから、三日が経っている計算になるんですね……」
 留美が言った。でも、智信には経過日数など正直言ってどうでも良かった。
 何故なら、この『ルールA』は、二人にとって、死の宣告にも等しかったからだ。
 この扉が部屋からの唯一の脱出口、自由へと繋がる扉だとしよう。そして、扉がルール通り、三十日の経過で開くとしよう。
 合計、七百二十時間。その気の遠くなるような時間を耐え切れれば、扉は開かれて、二人は助かる……?
 冗談じゃない、と智信は思う。あまりの理不尽に、行き場のない怒りが込み上げてくる。
 無理難題を、さらりと言ってのけてくれるものだ。足りない。圧倒的に食料が足りない……! 
 この限られた食料で、三十日だって……!? 正気の沙汰ではない。最大限持ちこたえられたとして、十五日がせいぜいだ。
 扉が開く頃には、僕らは干し柿みたいな不様な姿を晒して、部屋に転がっている……!
39白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:09:00 ID:bZA+mqY5
 滲み出した負の感情は、留美にも伝播したようだった。二人とも、お通夜のように黙り込んでしまう。
 智信も、留美も。お互いに、この絶望的なルールに気付いていた。だから、どちらが先に重い口を開き、その事実を公然のものとするか、それだけだった。
 ……やがて。意を決したように、智信が口火を切った。
「持久戦、と言うわけか。食料が……厳しそうだけど、留美ちゃんは今、どのくらいの食料を残している?」
 露骨に『足りない』と表現するのは躊躇われた。仕方なく『厳しそう』との言葉でお茶を濁す。
「ペットボトルの中身は八分目くらい……カロリーメイトは一箱半です」
「僕も似たようなものかな。水七割、カロリーメイト一箱と三本」
 何の情報もなしに三日間を過ごしたにしては、上々の節制だった。
 先の見えない中、食料を切り詰める互いの姿が刺激となり、消費を最小限に抑えたのかもしれない。
「かなり、節約する必要があるね」
 言いながら、智信は『三十日』という日数について考える。
 水は、一リットルのペットボトルが一本だから、一日あたり約三十三ミリリットルしか飲めない計算になる。
 しかも、ルールを知らない三日の間に、三十三ミリリットル以上飲んでしまっているから、実際飲める量はもっと少ない。
 人間が一日に必要な水分量は、安静にしていても、八百〜千二百ミリリットルとされる。
 畜生、わかってはいたが、てんで話にならないじゃないか……! 智信は乾き切った唇を噛み締める。
 と、そんな智信に、留美が話しかけた。
「あの、つ、辛いですけど、目指すべき目標ができましたから。頑張りましょう、一緒に……」
 気遣うような、優しい口調だった。その言葉で、智信は我に返る。
 まさか、初日の夜を泣き明かしていた留美に慰められるとは思いもしなかった。絶望が顔に出ていたのかもしれない。
 智信は、しっかりしろ、と自分自身を叱咤する。そうだ、僕はこんな場所では死ねない。死ぬならせめて、一級市民を目指してからだ……!
「……ああ。希望を捨てず、できるだけのことをしてみよう」
「はい!」
 智信の宣言に、留美は弱々しい、けれど確かな微笑を浮かべるのだった。

40白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:09:45 ID:bZA+mqY5
 ベッドに二人並んで座り、目を皿のようにして観察しているのは、カロリーメイトの箱だった。
「『一本百キロカロリー、四本入り、計四百キロカロリー』って書いてあるね。二箱で、八百カロリーになるか」
 智信が言うと、留美が腕を組み合わせて、むーと唸る。
「生きる為に最低限必要なカロリー……基礎代謝だけで考えても、私たちくらいの年齢だったら、男性で、約千六百キロカロリー。女性で、約千三百キロカロリー……」
「やはり、と言うのはどうかと思うけど……足りないか。それにしても、よく知ってるね、そんなこと」
「体重とか、気になりますから。だから、そういうの普段から……」
 どこか歯切れの悪い返答だったが、言いたいことは大体伝わった。
「なるほどね」
 とは言うものの、留美のスタイルを見ている限り、ダイエットの必要性は微塵も感じない。
 性別に関わらず、身長が低い人は太っていると目立つものだが、身長の低さを差し引いて考えても、かなり痩せているように思えた。
 だが、この状況ではそれは、必ずしも喜ばしいことではない。蓄積している脂肪の量が少ないということは、それだけ弱り易いということだ。
「まあ、基礎代謝分が不足したからって、直ぐに命が危ないって訳じゃないけど、確実に、体力は削られていくね」
「今まで、食べ物のカロリーなんて、少なければ少ないだけいいって、そんな風に思ってました」
 そう言って、くすくすと笑う。先程までの陰鬱とした雰囲気は、大分払拭されていた。
 生存が可能か不可能かなんて問題にしない。できるだけ足掻いてみる、抗ってみる。それが、二人で決めた基本方針だった。
 それにあの後、智信が言ったのだ。明らかになったのはルールAだけで、BもCもDも、まだ内容は不明のままだ……と。
 つまりは、今は公開されていない隠されたルールに、この窮状を打開する何らかの救済措置があるのではないかと想像した。
 例えば、食料の追加であったり、日数の短縮であったり……それは決してありえない話ではないと思った。
 智信は最初、扉の前で『ルール』という言葉を目にした時から、頭の片隅に釈然としない、引っかかりみたいなものを感じていた。
 ルールがあるのなら、これは、何者かによって企画された、とびっきり悪趣味なゲームなのではないだろうか。漠然と、そんな予想が頭を過ぎったのだ。
 そして、これがルールによって支配されるゲームだとするなら、とんでもないワンサイドゲームだ。
 ルールAが公開された時点で、智信や留美には一欠片の勝ち目もない、最低最悪のゲームだ。
 そんなゲーム、ゲームとして成立しないし、面白いわけがない。
 だから……ルールA以降に控えるルールで、その絶対的不利が、多少なりとも和らぐのではないか? 智信は、そんな結論に至ったのだった。
 ルールAに絶望して自暴自棄になり、欲望の赴くまま、水、食料を全て消費してしまったら敗北……
 僕らをこんな場所に閉じ込めるような、底意地の悪い人間が考えそうな罠ではないか。
 勿論、そうであるという保証はどこにもない。全ては智信の想像の中のことだ。
 しかし、ルールが後三つ残っているのは紛れもない事実。
 残るルールへの期待が、生還への希望に繋がっていたと言っても過言ではなかった。

41白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:10:28 ID:bZA+mqY5
 足りないものが多いこの部屋ではあるが、時間だけには不自由しなかった。
 二人は、有り余った時間を磨り潰すように、色々な事を話した。
 特に頻繁に話題に上ったのは、ここから帰ったら、最初に何をしたいか、というもの。
 思考にまで空腹が侵食してきていたものだから、必然的に、食べ物の話が多くなった。
 智信が『海猫亭』の海老ドリアが食べたい、と言えば、留美が『paix』のチョコレートパフェが食べたい、と返す。
 留美が小声で、智信にも聞き覚えのあるメロディを口ずさみ始めたのは、そんな遣り取りが一段落してからだった。
「諦めていたら 何も始まらない♪ 可能性は低くても やってみるまでわからない♪ だから もう少しだけ あと少しだけ 諦めないで 前に進んで……♪」
「ああ、それは『インフィニティ』の曲『前に進んで』だね。なんというか……今の状況にピッタリな歌詞だ」
 インフィニティ、とは女性一人、男性二人で構成されるメジャーバンドだ。
 誰もが知っている、と言う程ではないが、マシン・シティ内での知名度はそれなりに高い。
「はい。この前発表されたばかりの新譜です。多作で知られている『インフィニティ』ですけど、私は、この曲が一番お気に入りです。特に、こんな時は、勇気を貰える気がして……」
「え……?」
 留美が、何気なく発した言葉を聞いて。智信の目が、驚愕に見開かれる。
「ど、どうかしたんですか?」
 智信が、何をそんなに驚いているのかわからず、留美はきょとんとしている。
「……新譜なんかじゃない。今きみが口にしていた曲『前に進んで』は、インフィニティが二年前に出した曲だ……!」
「そ、そんな……!?」
 今度は、留美が驚く番だった。
 留美には、二年以上もの記憶の欠落はない。ただ、ここに来るまでの経緯が思い出せない、それだけだ。
 そして、話を聞く限り、それは智信も同じはず。なのに、二人の時間には、二年以上のズレがある……!?
「インフィニティが次に出した曲は『夢を追いかけて』で、その次に出した曲は『揺れない心』」
「全然、記憶にありません、そんなの……! それが本当なら、智信さんは、未来から来たって言うんですか!?」
 何が何だかわからない、と言った風に、留美が首を振る。
 どう答えていいのかわからず、智信は黙り込んだ。
 ありえないはずなのだ。智信は十九年間、留美は十四年間、それぞれの人生を歩んできた。
 勿論お互い『空白の二年間』なんてない。その二人の間に、大きな時間認識の齟齬が発生している。
「信じられない……」
 思わず、智信が呟く。この不可解な現象には『時間軸が歪んでしまった』と言う突拍子もない説明しかつけられないからだ。
 それ以外で考えられる可能性としては、智信、留美のどちらかが嘘をついているというものだが……それもありえないだろう。
 そんな嘘をついた処で、何の得にもならないことは、二人が一番良く知っていたのだから。
42TIPS ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:11:14 ID:bZA+mqY5
TIPS『海猫亭』
海沿いに店舗を構えるファミリーレストラン。
その名の通り、海の幸を惜しみなく使用したメニューに定評がある。

TIPS『paix』
フランス語で『安らぎ』の名が冠せられた、軽食専門のカフェ。
果たして、二人に安らぎの時は訪れるのだろうか。

TIPS『インフィニティ』
メビウスの輪の内側を前に向かって進んでも、同じ場所を延々と回るだけだ。
鋏で、輪そのものを断ち切ってしまわなければ、脱出はできない。

TIPS『時間軸が歪んでしまった』
智信が未来から飛ばされてきたのだろうか?
留美が過去から飛ばされてきたのだろうか?
それとも……?
43 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/28(火) 22:12:33 ID:bZA+mqY5
本編。前スレ977からの続きです。
そろそろ物語も佳境。

>>24>>25
了解です。今後留意します。

ルールA 鉄扉の正面に表示されているのは残り日数である。残り日数がゼロになった時、扉は開かれる。
ルールB ???
ルールC ???
ルールD ???
44名無しさん@ピンキー:2007/08/28(火) 22:54:51 ID:Jd9yAOGs
>>43
S^4氏GJ!
「海猫亭」で大神思い出した俺イズヒア。
45名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 00:58:15 ID:Q+7+6YPy
GJ!
スレ急激に伸びてるの見た時は涙モンだったぜ
46名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 08:50:02 ID:JjCG/DO5
>>9-10で書き始めた。別のSSが終わりしだい本格稼働予定
4710:2007/08/30(木) 19:26:15 ID:oyYZXoPG
>>46
書いてくれますか!ありがとうございます!
毎日スレ覗いてて良かったぁぁぁぁ!
好きにヤっちゃって下さい!
でも、出来れば女性のツンデレなトコ、残してくれたらry
とにかく期待!今日は寝れないな…
48白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:12:33 ID:JKtEqSSK
■幕間二『あるオフィスビルの一室で』

 都心の一角にある、オフィスビルの二階角部屋。そこがゲーム会社『グロックワークス』の事務所だった。
 皆、黙々とパソコンに向かい、作業をこなしている。使い古された空調の音だけが、嫌に大きく響いていた。
 田崎弘(たさき ひろし)は、大きく伸びをして、腕時計を見た。時刻はもうすぐ、正午になろうとしている。
 そろそろ昼食を摂りたいな。そう田崎は思った。だが、皆が追い込みをかけている中、自分だけ真っ先に席を立つのも気まずいものがある。
 他の社員も巻き込んで、自然に『そろそろ昼食にしよう』という空気に持っていきたい。
 だから田崎は、隣のデスクで仕事をしている新入社員の男に粉を撒いてみることにした。
「いやー、気付いたら、もうこんな時間ですね。腰が痛いわけですわ」
 田崎は精一杯の、フレンドリーな笑顔で語りかける。
 そのあからさまな言葉に、男――朝霧良夫(あさぎり よしお)は、パソコンの右下にある時計を見た。
 時刻は丁度、十二時になったところだった。
「そうですね。一段落ついたら、昼にしましょうか」
 一段落ついたら……か。まったく、真面目なものだ。田崎は笑顔を崩さないまま、心中で軽く悪態をついたが、朝霧に伝わるわけもない。
 朝霧は涼しい顔で、淡々粛々と作業を続ける。田崎は何とはなしに、パソコンの画面を覗き込んだ。
 そこには――人間の心臓と思わしきモノが、大写しになっていた。
「これは……何に?」
 余程小さなゲーム会社でない限り、ゲームの製作は完全に分業だ。担当が違えば、知らないことも多い。
 田崎も、朝霧の仕事が3DCGモデリングである、と言うことくらいは知っていたが、この、やたらリアルな臓器のグラフィックがゲームのどこに使われるのかまでは把握していなかった。
「ロード画面に使うそうです。とびっきり怖そうなのを……と、リクエストされましたからね」
「しかし、これは凄い……実写と見間違えてもおかしくない」
「昔、医療機器関連の会社で企画をやってましてね。人体模型めいたCGを、よくプレゼンで使ったんですよ。十八番ってやつです」
「なるほど、それで……」
 田崎は感心したように頷いた。それならば、この心臓の異様な作り込みにも、納得が行くと言うものだ。
49白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:13:09 ID:JKtEqSSK
「それでも、ここまでリアリティのある表現が可能になったのは、ここ数年です。最近のCG技術の進歩は目を見張るものがありますからね」
 視線は正面を向いたまま。マウスを忙しなく動かしながら、朝霧は続ける。
「腕のいいグラフィッカーが携われば、もう、現実の人間の写真と、CGで作成された人間の写真を二枚並べたとして、どちらが実写でどちらがCGなのか、判断がつかないでしょう」
 朝霧はそこで、マウスを置く。どうやら、作業はキリのいい所まで進んだようだった。
「さて……昼にするとしますか」
 そう言うなり、立ち上がる。それを追うように、田崎も席を立った。一人が先に席を立ってしまえば、後に続くのは気楽なものだった。
 ――と。田崎は、朝霧が右手に持った財布から、ひらり、と、何かが落ちるのを見た。反射的に拾い上げ、声をかける。
「朝霧さん。何か落としたみたい」
「ああ、どうもすいません」
 朝霧が落としたのは、一枚の写真だった。咲き誇る花々を背景に、可愛らしい少女が、こちらに向かって微笑んでいる。
 田崎は、その写真を朝霧に渡す。田崎が写真を見たのは、時間にして僅か数秒のことだったのだが、少女の姿は鮮烈に目に焼き付いた。
 何故かはわからない。わからないが……その少女には、人を惹き付ける不思議な魅力があるように思えた。
「その写真も、もしかしてCGですか?」
「はは、違います。これは、朝霧留美……私の娘の写真です」
「ほう、それは。可愛いお嬢さんで羨ましい。家なんて、反抗期真っ只中の坊主が一人ですから。いま、いくつになるんです?」
 そこで、朝霧の表情が曇る。まずいことを聞いた、と田崎は確信したが、口にしてしまった質問を撤回するわけにもいかない。
「娘は……二年前に、交通事故で亡くなりました」
「ああ、余計な事を聞いたようで……それでは、今は奥さんと二人ですか。寂しいでしょう」
 田崎は咄嗟に、フォローを入れた……つもりだった。
「父子家庭でした。妻とは、とうの昔に別れています」
「それは……」
 田崎は、流石に返す言葉が見付からず顔を引き攣らせた。二人は気まずい雰囲気を残したまま、事務所を後にした。
50白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:13:56 ID:JKtEqSSK
◆生還の条件

 部屋中に、聞き覚えのある電子音が響き渡った。
 無駄なエネルギー消費を抑える為、ベッドに横になっていた二人だったが、同時にベッドから起き上がり『開かない扉』へと駆け寄る。
 液晶画面に表示された残り日数は『二十四』だった。そして……新しく『ルールB』の部分に文章が一行追加されていた。
 二人は、目を見開いて、ルールの文面を追う。今や、二人の興味は、新しく発表されるルールの内容だけだった。
 ルールB以降のルールが、ルールAの絶対的不利を覆してくれなければ、生還はありえないのだから。
「ルールB……ルールは、日数が三日経過する毎に一つ明らかになる……」
 読み上げる智信の声には、落胆が色濃く滲んでいた。はっきり言って、二人にとっては肩透かしな内容だと言わざるを得なかった。
「言われてみればそうか、ルールAを知らせるブザーが鳴った時、表示は『二十七』だったから……次は『二十四』その次は『二十一』……」
 気が付いてしまえばなんということはない、単純な法則である。
「このルールは、毒にも薬にもならない、か……残念だが、次のルールを待つしか――」
 そこで、智信の言葉に、留美が割り込んだ。
「私……もう……だめです……後三日なんて、そんなの……」
 留美は、どさりとその場に膝をついた。目の焦点が合っていない。
 ここ三日で、肉体的にも精神的にも、かなり衰弱してしまっているようだった。
 また、あの不可解な『時間の歪み』も、答えの出ないままで、留美の心に影を落としている。
 留美は、両手で肩を掴み、自分を抱き締めるような姿勢で蹲る。その体は、小刻みに震えていた。
「何でこんなひどいことをするんですか……私たちが何をしたって言うんですか……もう許してください……許して……許して……許して……!」
 智信も、留美の手前、平静を装ってこそいるが、ルールBの内容にかなりのショックを受けていた。
 留美がその場に座り込まなかったら、智信が似たような行動を起こしていたかもしれない。
 取り乱している留美の姿を客観視することで、何とか正気を保っている。
 暫くの間、智信は留美を呆然と見ていた。が、意を決したように頭を振って、動き出す。
 留美と同じように、扉の前で座り込み、覆い被さるような形で肩を抱く。
 それは、親鳥が翼を大きく広げて、外敵から雛を守る光景を連想させた。
「落ち着いてくれ、ルールが全部公開されるまで、諦めたら駄目だ……! 二人で散々話したじゃないか! 絶対家に帰るんだって! それで、paixのチョコパフェを食べるんだって! 友達と一緒にウォーターアイランドに行くんだって!」
 震える留美に向かって、必死で言葉を投げかけながら、智信は涙を流していた。
 頬を伝った雫が、口の端まで流れてくる。智信は舌を伸ばして、それを舐めとった。
 畜生、水分が勿体ない。でも、どうしようもないじゃないか、理屈なんか関係なく、涙が止まらないんだから……!
 智信は、くしゃくしゃになった顔を留美に見られたくなくて、顔を背けた。最も、涙声で、泣いているのはバレバレだっただろうが。
「もう少しだけ、頑張ってみよう! それで、二人で一緒に、ここから生きて帰るんだ! そうすれば、いつか……今日の出来事だって、笑って話せるようになる!」
 智信は、留美の震えが治まるまで、肩を抱いたまま、付き添っていた。

51白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:14:32 ID:JKtEqSSK
 ようやく恐慌状態から回復した留美をベッドに寝かせて、智信は一人考える。
 精神的に追い込まれて当然の状況ではある。水、食料、共に残りは雀の涙なのだから。
 決して、浪費しているわけではない。むしろ、これ以上ないくらいに節約している。
 それが証拠に、二人はここ数日でみるみる内に窶れ、表情から生気を失い始めている。
 ゆっくりと、しかし確実に、終わりが近付いてきているのだ。死神の鎌は、二人の喉元にまで迫っていた。
「気は進まないが……水だけでも確保できれば……」
 智信は一人ごちながら立ち上がると、水洗トイレに向かった。トイレの便器に補充される水を、飲料水として使えないかと思ったのだ。
 二人とて馬鹿ではない。今までも、それは選択肢の一つとして考えられていたことだった。だが、結局は理性が邪魔をして、口をつけるまでには至らなかっただけだ。
 しかしながら、もう、汚いだとか何だとか、形振り構っていられるような、余裕のある状況ではない。
 水だけでも無制限に使えるとなれば、大分楽になる。
 少なくとも、最後のルールであるルールDの発表までは、確実に生きていられる。
 智信は覚悟を決めて、便器に頭を突っ込む。
 便器に顔を近付けた瞬間、正体不明の違和感が智信を襲ったが、智信は水のことで頭が一杯で、それには気付けなかった。
 接吻をする時のように唇を突き出して、溜まっている水を啜る。利用者は二人しかおらず、比較的清潔なのが唯一の救いか。
 が、口に含んだ水を、すぐに便器に向かって吐き出す。
「かはっ……! 何だこれ、しょっぱ……」
 半端ではない濃度の塩水だった。とても飲み水にはできそうもない。海水だろうか。
「畜生め、意地でも水は飲ませないつもりか……!」
 憤怒に任せて、智信はトイレの壁を殴りつけた。痺れるような拳の痛みが、少しだけ、やり場のない怒りを紛らわしてくれた。

52白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:15:14 ID:JKtEqSSK
 智信はトイレから部屋に戻ると、留美が横になっているベッドに近付く。
 留美は智信の気配に気付いたのか目を開けて、申し訳なさそうに、声をかけてきた。
「あの……さっきは、ごめんなさい……取り乱して。もう、大丈夫です。私、迷惑かけてばかりで……」
「そんなことない。ルールA発表の時、死にそうな顔をしていた僕を、きみが励ましてくれただろう? 『一緒に頑張りましょう』って。だから、これでお相子、貸し借り無しだ」
 そう言って、不器用ながらも微笑むと、留美は安心したように、目を閉じるのだった。
「それから……これは報告しておかなくちゃいけないか。トイレの水、試しに飲んでみたんだけど、駄目だった。塩が濃くて飲めない。海水みたいだ」
「そう、ですか」
「残念ながら、ね。……立ち直って早々、気が滅入るような話をしてすまない」
「……智信さんって、優しいですね。それに、いつもしっかりしていて。すごいなって思います」
「そうでもないよ、さっきなんか、思いっきり泣いてたから。それに――これはお互い様かもしれないけど――きみが傍に居るから、冷静でいられるって言うのもある。一人だったら、とっくに発狂しているかも」
「そ、そうなんですか?」
 先程、智信が留美を励ましていた時、留美はかなり平静を失っていた。だから、智信が自分の為に声をかけてくれているのはわかったけれど、彼が泣いているか否かなど、意識にのぼらなかったのだ。
「そうだよ。こう見えても、気は小さい方なんだ。子供の頃なんか、絵に描いたような泣き虫だった。飼い猫にひっかかれて大泣きしてたりしたくらいでね」
「ふふ、智信さんが泣き虫だったなんて、何だか意外な感じです。じゃあ、私と一緒ですね」
「ああ。一緒だ」
 そこで、会話は途切れた。でも、初日、二人でベッドに並んで座っていた時のような、得体の知れない息苦しさは覚えない。
 二人の周囲に流れる空気は、この殺伐とした状況を忘れてしまうくらいに、緩やかで、穏やかなものだった。
 留美の手が、智信の手の近くに置かれる。智信はそれに気付くと、そっと、その手を握った。留美もまた、握り返した。
 智信は、留美に倣うようにして、目を閉じる。そして、一時、全ての思考を放棄する。一切の情報が遮断された暗闇の中、確かなのは、留美の手の温もりだけ。
 二人は一時間ほど、そのまま目を閉じて、手を繋いでいた。
 その無言のコミュニケーションは、この過酷な日々を共に生き抜いたことにより、二人の心理的な距離が縮まった証なのかもしれなかった。
53TIPS ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:16:11 ID:JKtEqSSK
TIPS『グロックワークス』
ゲーム製作会社。社名の由来は自動拳銃の『グロック17』と『ぜんまい仕掛けの時計(Clockwork)』の捩り。
PC、コンシューマーをプラットフォームとして、主に、FPS、ホラーゲーム等の開発を手がける。

TIPS『ウォーターアイランド』
水をシンボルとした巨大遊園地。
ジェットコースターやメリーゴーラウンドと言った一般的なアトラクションの他、色々な種類のプール、果ては水族館まである。
アイスクリームショップ『フローズン』のチョコミントと、水族館の熱帯魚コーナーが留美のお気に入り。

TIPS『正体不明の違和感』
トイレに使用されている水が塩水であった事実に気付けなかった、と言うわけではない。
もっと重大な見落としを、智信はしている。
54 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:17:39 ID:JKtEqSSK
>>41からの続きです。そろそろ物語の落とし所があからさまに読めてきます。
>>43海猫亭は意識したわけではありませんが、大神はマイフェイバリットゲームの一つです。大神降ろしの美麗さといい、ラスボス戦前の展開といい。
しかし一番気に入っているのはミカン爺が舞を舞うシーンだったり。

前回投稿分、>>38の四行目訂正です。
見当○
検討×
55 ◆SSSShoz.Mk :2007/08/31(金) 01:18:53 ID:JKtEqSSK
>>54二行目、レスアンカー訂正。
>>43ではなく>>44でした。失礼。
56名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 01:56:08 ID:aKMzKEgX
GJ!続きが気になって気になって仕方がなく、毎日確認に来てますわ…
57名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 06:56:59 ID:IKUj79jH
はてさて二人に太陽は昇るのか?

お後は次のお楽しみ…
58名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 13:45:59 ID:XD6KWkzd
>>47
曲がりなりにも軍オタの端くれなため、元となった>>9-10で変な描写があったらそれを直して書く
また、自分は遅筆である事を報告しておく
5910:2007/08/31(金) 22:17:54 ID:CHnQtKdu
S4氏、GJ!
ストーリーをきちんと、楽しませてくれますね。
これからどうなるか気になります!

>>58
元々オーバーテクノロジーなメカを想像してたんで、リアルに直されるならけっこうガッチリ変えちゃって下さい。
一月、二月くらい待つ覚悟はあるんで、存分にやって下さい。
60名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 11:59:16 ID:w5u5jKgP
どうでもいい豆知識
救命いかだなどで運動量を制限される場合、気候などの条件が良ければ
一日に必要な水は百数十cc(非常用飲料水アルミパック一本分)まで減らせるらしい

…33ccは厳しい過ぎ
続きが気になってしかたがない
61名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 21:25:25 ID:Ypki+bV+
GJだとは思う。だがエロくねぇ。
62名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 22:15:58 ID:wB07n3he
>>61
エロの有無を問わず楽しめるよう精進しろ。
63名無しさん@ピンキー:2007/09/02(日) 22:47:51 ID:5pZM9f2D
エロゲの全年齢対象版が修行にオススメだ。
64A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/03(月) 15:27:01 ID:hGL75/TV
>>58です。>>9-10にてまずは冒頭を。

 機体番号52-8590の33式21号ハ戦闘攻撃機「剛雷」がアフタ・バーナを焚いてバレル・ロールにて回避機動をとる。同機の6時方向に位置する、機体シリアルFT8-71のJ-25G「ソーコル」戦闘攻撃機が機銃掃射。命中せず。追跡者もアフタ・バーナを焚いている。
 52-8590のパイロット、東遼介空軍即応予備中尉――コールサイン「レインボウ3」、TACネイム「オーリエント」――は瞬時にスロットル・レヴァを引き、減速。同時にエア・ブレイキを展開。体に6Gの負荷。FT8-71、オーヴァ・シュート。
 ヘルメットに備え付けられているヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)に、FT8-71を囲むように正方形、ターゲット・ボックスが表示される。それはすぐに、新たな表示に変化。ロック・オン。現在選択されている兵装は27式短距離空対空誘導弾。
 同様に表示されている円形のガン・レティクル内にターゲット・ボックスが入る。ガン・クロスが敵機に重なり合う。アズマ中尉はサイドにある操縦桿のトリガを引く。同時にコール。
「レインボウ3、ライフル。――」
 毎分1000発、つまり毎秒約17発が敵機に突き刺さる。敵機、左エンジン発火。1秒満たず爆発。
 敵機からのベイルアウトは確認出来なかった。敵機が錐揉みで墜落し、空中分解するのを確認する。
「――スプラッシュ1」
 この間約10秒。
 アズマはレーダを見て周辺に敵機が居ないか再度警戒する。下方を0時から6時に4機通過。IFF作動。敵機。JQ-15C「プリヴィデニエ」戦闘攻撃機2、Q-10B「ブーリャ」攻撃機2。
 スプリットSにて追跡。一瞬ブラック・アウト。僚機が1機追随。
『アズマ! 俺が「幽霊」のエレメントを殺る。お前は「嵐」を殺れ』
 追随している僚機、レインボウ4、「ブーメラン」、浪川進太郎空軍中尉がアズマ機に追い付いて言う。
「ウィルコ」
 アズマ機、アフタ・バーナ点火4秒。「嵐」に近付く。兵装は先刻と同様、27式短距離空対空誘導弾。ロック・オン。バンディット・イン・ガン・レンジ。
「レインボウ3、ライフル」
 コールと同時に銃撃。右側の敵機に命中。両エンジン発火、爆発。パイロットは脱出。
「フォックス2」
 回避行動をとろうとしていた左側の敵機にミサイルを撃つ。5秒後に命中。爆発四散。
「レインボウ3、スプラッシュ2」
『スプラッシュ2! やったぜ!』喜びに満ちたコール。ナミカワ中尉も敵機を片付けたようだった。
 アズマは再びレーダに目をやる。敵機の表示は映っていない。光学探査。探査可能な範囲に敵機は無し。
『当該空域の敵機全滅を確認。レインボウ隊、帰還を許可する』
 AWACSからの通信。現空域からの離脱の許可が下りる。
『ラージャ。レインボウ隊、RTB』
 燃料は基地まで保つ。彼らは現空域に来たときのように編隊を組み、復路を南へと飛び去っていった。
65A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/03(月) 15:27:57 ID:hGL75/TV

 東山道陸奥県、三沢。ここがこの国の、防衛の要だ。
 8年前、ひとつの国が滅び、ひとつの国が生まれた。その新生国家は次々に大陸の国々を滅ぼし併合し、ついに2年前、この国へと侵攻を開始した。
 北から攻めてきた彼らは、まず北海道の樺太を占領した。当時、樺太にはその新生国家との国境があった。次に千島、次に北見、次は天塩と、彼らは怒涛の勢いで南下していく。
 この国の軍隊は、奮戦した。しかし、石狩県札幌にある北海道方面司令部への核攻撃により総崩れとなり、結局北海道はその全土を、1年余りかけて占領されてしまったのだ。
 現在、津軽海峡の南北で、両国はにらみ合っている。

 今回の戦闘は「こちら側」、下北半島の上空で起こった。
 このあたりはたびたび、あの国の航空機が飛んでくる。数度に渡り、爆撃機の編隊がADIZ(防空識別圏)内に侵入し、基地や都市を爆撃していった。そのたびに、彼らが駆り出されるのだ。
 空軍第3防空団航空群第8飛行隊、通称「レインボウ隊」。それが、彼らの家である。

  *  *  *
66A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/03(月) 15:29:13 ID:hGL75/TV
  *  *  *

 空中給油を終えた機体シリアルMM14-92のJ-27A「ジュラーヴリ」戦闘機が、給油機HY-9から離れる。それを確認し、HY-9は上空へと移動、反転して基地に帰っていった。
 オリガ・ニコライエヴナ・ザパドノポリェワ空軍大尉の異動先は、現在この国による占領状態にあるホッカイドーと呼ばれる地域の、チトセ飛行場だ。そこには、この国のエース・パイロット達が集まり始めているという。
 彼女は明日から、第11航空軍第67防空軍団第3戦闘機連隊第5戦闘飛行隊3番機、コールサイン「スピルト3」という身分になる。最前線への異動だ。だがそれは、彼女自身が認められているという事である。その事が、彼女にとって名誉であった。
 彼女は愛機である最新鋭のJ-27Aを従え、東へと向かっていった。後ろには、同機によって構成されている編隊が居る。
67A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/03(月) 15:31:42 ID:hGL75/TV
以上、冒頭。このSSには多数の航空軍事用語が出てきます。それらを予めまとめておきます。

A/B…After Burner。アフタ・バーナ。戦闘機などで、燃料を急激に燃焼させて大きな推力を生む事。
機体番号…本編に出てくる「52-8590」は、納入年号の1の位が「5」で、登録順位が「33式21号ハ戦闘攻撃機」を示す「2」、ハイフンのあとに「戦闘機」を示す「8」、最後3桁が、機体の製造番号。航空自衛隊も同様の尾翼番号をもち、登録順位「2」はF-15J/DJを示す。
バレル・ロール…樽(バレル)の内側を回るように機体を操作する機動。
6時方向…真後ろ。時計の文字盤の中心から「12」の文字のある方向を正面とすると、後方は「6」になる。他の方位も推して知るべし。
機体シリアル…本編中に出てくる「FT8-71」はまったくのでっち上げ。しかしこれだけははっきりしている。製造番号は「71」である。
コールサイン…個々の航空機に割り振られる、何処の所属かを示すサイン。
TACネイム…Tactical Air Command name。タック・ネイム。軍用機パイロットが作戦行動中に名乗る名前。通常、発音のしやすい3音節以内の語を用いる。
オーヴァ・シュート…Over shoot。追跡中の後方の機が対象となる機を追い抜いてしまう事。空戦で最もやってはならない機動。
ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)…Head Mount Display。パイロットが使うヘルメットに、機体の状態や敵機の位置を表示するための装置。正面を向かなくても、敵機の居る方向に顔を向ける事でロック・オンが可能。
ガン・レティクル…機銃用の照準。
ライフル…機銃の射撃をするときのコール。
ベイルアウト…航空機から脱出する事。
スプラッシュ1…「敵機を1機撃墜」を意味するコール。
IFF…Identification Friend or Foe。敵味方識別装置。
スプリットS…機体を180度ロールさせ、その状態で縦にターンして方向転換する機動。ある程度の高度がないと墜落する。
ブラック・アウト…脳への血液が遠心力などで足りなくなるとき、視覚が暗くなる事。
エレメント…航空機の編隊。通常2機でひとつのエレメントになる。
ウィルコ…Wilco。「Will comply」の略で、「了解。実行する」ほどの意味。
バンディット・イン・ガン・レンジ…Bandit in gun range。「敵機が機銃の射程に入った」の意味。
フォックス2…Fox 2。赤外線誘導ミサイルを発射するときのコール。「Fox」のFは「Fire」のF。
AWACS…Airborne Warning And Control System。「エイワックス」と読む。空中警戒管制機。
ラージャ…Roger。「ラジャー」の方が一般的だが、実際の発音は「ラージャ」
RTB…Return to base。「帰還する」ほどの意味。
空軍即応予備中尉…我々の知る陸上自衛隊にのみある階級・制度。この国の空軍にも同様の階級と制度があり、1年以上軍務に就いた者が普段は民間人として働きながら年数度の訓練を受け、有事の際には出頭して軍務に就くというもの。中尉は即応予備役の最高階級。
68名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:18:08 ID:z4/Lz54v
専門用語使い過ぎじゃないか?
オレだけかも知れんが、凄く読みづらい
カンに障ったら謝るが、もう少しかみ砕いて書いて欲しい
69A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/03(月) 16:52:21 ID:hGL75/TV
>>68
あえて専門用語を多用してみた
平易な語で書いてもいいけど、空戦のスピード感を出したかったので
まあ、あとで投下する続きはここまで暴走しないように気をつけたい
70名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 16:53:00 ID:c7mKiBhh
「雪風」とか読んだから文字で状況を想像できるけど、興味が無い人にはきついかな?
今後に期待。
71名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 17:09:56 ID:s5oKPN+i
「〜をする」等を省略した体言止が多すぎ。鼻に付くぜ
7210:2007/09/03(月) 17:56:39 ID:tQGeRNWh
>>67
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
初っ端からスピード感抜群の戦闘!次回も激しい戦いを期待します!
上にもありますが、確かにに少々専門用語が多いですね。
自分が読みながら分かったのは、半分程度ですが、前後の文でだいたいどんな感じかは想像がつくので、多少は大丈夫だと思います。
分からない言葉も、あとがきで説明してくださったので分かりますし。
そして、リアルに書いてくれてありがとうございます!
では、名無しに戻りますが、あなたがくるのをお待ちしております。
73名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:58:06 ID:DQ/PrSIa
専門用語分からねぇ('A`)
二人っきりに期待
74名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 21:13:04 ID:FbS4xLZq
詳しすぎてなんかすげえな。
読み手を選ぶ感じ?でも俺は好き。
一気に投下してくれたら勢いで全部読めそうだ。逆に途切れ途切れだと疲れるかも。
新しい形の二人っきり、続き期待。GJです!
75名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 22:56:35 ID:MWVGPpAW
>>64
読む人のことを考えない文章ですね
76名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 00:16:10 ID:t3vonxhU
専門用語解説あるだけでも十分だと感じるけどな。
俺が雪風慣れしてるだけかな?
77名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 09:27:43 ID:zGRSLiPP
awacs
<<ここはどこだ? どうやら迷い込んでしまったようだ…>>

↑を連想した自分エスコン厨
78名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 16:11:20 ID:dBJtWx+A
はっきり言ってつまんない。はじめて読み飛ばした。
79名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 23:11:11 ID:GEj1Z6NG
つまらないなら読み飛ばしてもいいと思う。
しかし、それを書き込むことによって、書き手さんが書き込みにくい空気になるのが問題だ。
書き手が書き込み易い空気を作ることも、読み手として為すべきことではないだろうか?
80名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 23:21:30 ID:2qqFDPpv
荒らしに構うな。
居座られるぞ。
81名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 01:44:44 ID:R0aUXCj5
構想を練ってるが
今仕事だからなにもできん

ネタとしては
車の運転中に車内に隠れていた相手に
自分の首筋に堅い冷たい物をおしあてられて
行き先をめちゃくちゃに指示されて・・・

って言うものなんだが
こういうものもありなのか?
82名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 02:41:16 ID:1YNFJ0hM
>>81
いいかも
期待してます
83名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 13:29:20 ID:IyCtiYWz
>>81
お化けの女の子と二人きりで深夜ドライブってのもいいなw
ちょっと前に流行ったツンデレ幽霊みたいなのだったら面白そう。
84名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 13:59:54 ID:xYXBwO6O
>>81
堅い冷たい物が本当にヤヴァイ代物か実は…かで又違った展開が(ry
85名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 17:52:06 ID:3AmC102M
新スレをお気に入りに登録し忘れてるのに気付かず、更新チェックから漏れてた…orz

>白い牢獄の人
ドキワクがとまらねぇww
色々情報が増えてきたけど、肝心なところはサッパリで、(少なくとも自分には)先が読めん。
GJ!

>架空戦記な人
大好物キタコレ!! GJです。
我々の歴史とは微妙に違った経緯をたどってるのかな?
樺太が日本領だったり、機体が国産だったりするみたいだし、
第二次大戦で日本勝ってるとか、対米開戦しなかったとかそんな感じか?
でも用語は英語ベースだし、この世界でもアメリカは大きな影響力持ってるんだな。
ともかく、続き楽しみにしてます。

用語多くて読みにくいって件は、この手のは専門用語無いとしらけるし、仕方ないかな。
やっぱり「らしさ」の演出って大事だと思う。 ちゃんと用語集付けてるから、いいんじゃない?
ただ、改行はもう少し増やしてもいい気はする。1行がちょっと長めかも。

>>81
そのシチュだと、車も立派な「二人きり」だね。
完成待ってます。


以上まとめ&長文で失礼しました。
8681 ◆DlPgAmm21I :2007/09/05(水) 19:19:10 ID:VFMoom29
−−−なんでこんなことになっているのだろうか…

ことの始まりは、
取得しづらい会社の夏休みをやっとのことでもらった1週間休暇。
日ごろの鬱屈を発散すべく、「そうだ、一人旅でも!」と勢い込んで4日分の準備…
そして記念すべき旅行の一日目、一番目の目的地コンビニで、
車の鍵をうっかり閉めずに買い物を済まして、戻ってきた。
当時は、閉め忘れたが別段気にせず、目的地である長崎への1200kmの旅に出たところであった。
(順調にいけば14時間だな)
と、いろいろ思いをめぐらせる。
隣では黒塗りの車の周りで大男があわてていた。
(? なにをあわててるんだ? まぁいいか)

おれはかまわず出発した。鍵を閉め忘れたことで予定変更を余儀なくされることも知らずに…

自分の車は軽バンだ。上司に「そんな車で長崎まで行くな! 新幹線使え!」
しるか! おれは長年付き添ったこの車でいくんだっ!
ふと、会社に道程予定表を提出したら上司に言われた言葉だ。
会社としては、死なれたら香典代がもったいないそうだ。あと手続きと、派遣先への謝罪などいろいろ。
普段の生活まで拘束するのか 会社ってやつは…
(・・・いかんいかん)
一人旅だと物思いにふけってしまいがちになる。
<<ピンポーン 料金ハ¥700円 デス>>
ETCがそう告げる。志村料金所を通過した音だ。
ここから長崎まで、高速で行くのだ。片道1200km ETC3割で約15000円の道のり…
8781 ◆DlPgAmm21I :2007/09/05(水) 19:20:43 ID:VFMoom29
池袋の手前で車体がぶれた。軽なので、ちょっとした貧乏ゆすり、体重の移動や荷崩れで簡単に揺れる。
首都高独特のつなぎ目による揺れじゃない。ましてパンクであろうはずもない。
車体後ろで気配がしたので思わず振り向こうとしたら、チクリとした痛みが首筋に走った。
「!? ?!?」
なにがなんだかわからない。パニクって壁に激突しなかっただけマシかもしれないと、思う。
すると、透き通るような、でもしたったらずな声が耳朶にささやく。
「おとなしくしなさい・・・」
あきらかに女の声だった。自分は首筋になにか当てられ、ちょっと痛い。
「なっなんだおまえはっ」
驚く。当たり前だ。なぜ自分の車に赤の他人が乗っている…
「質問は許さない。私の言うことだけ聞いてなさいっ」
「そんなふざけたとこあるかっ!」
運転で前を向きつつも反論を試みる。しかし…
チクチクッ!
首筋の痛みが増す。
「いいから私の言うこと聞きなさい! 死にたくないでしょっ!」
少女(と思われる)は手に持ってると思われる何かをつきたてる。
痛みが増し、高速運転では危険なので周りの速度にぎりぎりまで合わせるように速度を落とす。
「なにしてるの!? 止まれなんていってないわ!」
東池袋パーキングエリアに近づいたので、すかさず車を滑りいれ、停車する。
「あのさ… 目的はな………んだい…?」
と、ルームミラーで後部座席を見る。
金髪碧眼の少女がそこにいた。容姿端麗な彼女に思わず言葉が詰まってしまう。
「千葉までいきなさいっ これは命令よ!」
「千葉ぁ!?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
チクリ。
「いいからいく!!」
「ぐっ… わ、わかったよ!」
ちくりとした痛みがなくなった。
「わかればよろしい♪」
すごくうれしそうな声だ。
(千葉なんてふざけんなよ! おれは長崎に…)
「早く行く!!!」
チクチクッ!!
「はっ、はいいいい!」
脅迫にちかい状態で、おれはパーキングを出発した。
(旅行早々カージャックかよ…)
心のつぶやきは誰にも聞かれず消えていった。

#ロング金髪碧眼でなくても、黒髪ロングポニーかホワイトヘアにルビーアイとか、妄想がとまらない。
#ある程度まとまってからとか思ったけど 台風の影響とか仕事とか家庭とかでorz
#金髪碧眼は、Lia(「Mori〜!」)ちゃんの影響(作者氏ごめんなさい
#よろしくです
88名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 19:25:32 ID:VFMoom29
#おかしい…2度くらい推敲したのに文が変だ…
#夜勤明けで今日も夜勤だからか?
#(脳みそくさってやがる… 早すぎたんだ…)
89名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 23:39:13 ID:wYivWKDK
くそっ!続きが気になる。
マジでGJだ!
90名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 08:37:50 ID:Ltbk/XAm
焦らしプレイですか?
9181 ◆DlPgAmm21I :2007/09/06(木) 20:02:34 ID:rnlKcqFl
いあ あの 今夜夜勤でその上台風でこれから出勤でっ!
今起きた。
プロット5割作ったんで、肉付けは台風が関東を過ぎたあたりにでも…

というか、他の作品も続きwktkwktk!!

てか雨すげぇ…
92名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 20:52:05 ID:AwgERNAw
明日の夜には上がってますように>雨

ところで卓球部の合宿の続きを未だに待っているのは俺だけだろか・・
いや、それも含めた全ての作品が漏れなくwktkなんだが。
93名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 22:41:07 ID:BxMWqC+L
>>92
卓球は俺も待ってるよ。結構いいところまで進んでるし。
このスレには本当に期待してる



あー、俺も「Mori〜」って呼ばれてぇ。名前に「もり」とか入ってないけどさ…
94白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:35:56 ID:/V4euhHC
 部屋に、三度電子音が響き渡る。液晶画面に表示されている残り日数は『二十一』だ。
 ルールBの時と違い、二人はすぐさま『開かない扉』の前に駆け寄るようなことはしなかった。
 最早、走る気力もないくらいに、疲労困憊していたというのもあるが……何より、ルールCの内容を知ってしまうのが怖かった。
 もし、ルールCの内容が、何の救いもないものだったら……? それを考えると、足が竦んでしまい、その場から動けなかったのだ。
 何故なら……口にしなくとも、二人が一番理解している。ルールCの発表が、事実上のデッドラインであると。
 この分では、まず間違いなく、後三日は持たない。だから、きっとこれが、智信と留美にとっての、最後のルールになる。
「智信さん……」
 ブザーが鳴り止んでも、一向にその場を動こうとしない智信に、留美が心細そうな視線を送る。
「……わかってる。見なければ、始まらないものな。一緒に、見よう」
 二人は寄り添うようにして『開かない扉』の前まで歩く。そして――新しく発表されたルールを確認した。
 今回に限っては、智信はルールを朗読しなかった。いや、できなかったのだ。その文面に、目を、心を、奪われてしまったから。
 時間が、凍りついてしまったみたいだった。智信も留美も、立ち尽くしたまま、一言も発しない。
 ルールCの内容は、以下の通り。

『ルールC この部屋の中にいる生存者が一人となった時も、残り日数がゼロになった時同様、扉が開かれる』

「これって」
 長い沈黙の後。留美が、搾り出すようにして、言葉を発した。
「智信さんが先に死んじゃったら、私が助かって……私が先に死んじゃったら、智信さんが助かるってことですよね……」
「……文章を何度読み返しても、そうとしか、解釈できそうにない」
95白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:36:43 ID:/V4euhHC
「こんなの! こんなのってないです! どうして……!」
 それ以上は、言葉にならなかった。留美の喉から、嗚咽が漏れる。
 智信も、留美も、心のどこかで、二人は一蓮托生であると思っていた。
 助かる時は二人一緒。死ぬ時も二人一緒。それは小さな連帯感となり、二人の間に絆を生んだ。
 しかし、ここでルールは無情にも、二人を引き裂いた。
 助かるのは一人。死ぬのも一人。つまり……絶対に『どちらか片方しか助からない』のだ。
「どうする?」
 泣き笑いのような、複雑な表情を浮かべながら、智信は留美に聞いてみた。
「……どっちも、嫌です。二人で、一緒に、帰りたい……」
 服の袖で涙を拭いながら、留美は答える。リップクリームなんて塗れるわけがないから、唇はかさかさで。喉は渇き切って、満足に声も出せない。それなのに……流す涙だけは尽きないのが、何だか無性に恨めしかった。
「僕も、同じ気持ちだ。でも……こうなってしまった以上、どうしようもない。むしろ、片方だけでも助かることを喜ぶべきなのかもしれない」
「そんなのって……」
「僕の考えを、話してもいいかな」
「……はい」
「このゲームを仕組み、ルールを決めた人間は、おそらく……僕たちが仲違いして、憎みあったり、殺しあったりすることを望んでいる」
 留美は悲しそうな表情で俯いたまま、答えない。
「ルールCを読み替えれば『一緒に閉じ込められたもう一人が死んでしまえば、自分は助かる』と言うものになるからね」
 智信は、少し間を置いてから、続ける。
「僕だって、こんな所で死ぬのは嫌だ。……生きたい! だけど、ルールを作った人間の思うように動かされるのは、もっと嫌だ」
 留美は首肯する。留美も、ルールCまで来てようやく、ルールに潜む明確な悪意に気が付き始めていた。
「だから、基本方針の維持を提案したい。丁度、水も食料も、底をついた。ここから先は……我慢比べになる。どちらが先に脱落しても、恨みっこなし。そして……最期の瞬間まで、お互いを尊重しあう。どうかな?」
 留美としても、異議があるわけもなかった。力比べを始めたら、智信が勝つに決まっているのだから。
 卑劣なルールに屈せず、最後まで、フェアプレイを貫き通そうとする智信の姿勢を、留美は嬉しく思った。

96白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:37:32 ID:/V4euhHC
 留美は、水色の箱を下敷き代わりに、A四判の用紙を広げ、ボールペンを握った手を一心不乱に動かして、何かを書き記していた。
 三十分くらい、そうしていただろうか。留美は小さく息をつくと、動かしていた手を止め、智信へと向き直る。
「智信さん……」
「なに?」
 壁に寄りかかって、どこを見るでもなく目を開いていた智信は、不意に声をかけられて、留美の方を見る。
「智信さんに、一つ、お願いがあるんです」
 言いながら、ボールペンを置く。紙を小さく折りたたみ、箱に入れて蓋をする。
「もしも、私が、先に死んでしまったら……扉の外に出る時に、この箱を持っていってください」
「何を入れたの?」
「……遺言みたいな、ものです」
「そう、か」
 そこで、ふと、智信は気付いてしまった。自分も思い残しがないわけではないが、遺言を書くような相手も、書くべき内容も、見付からないということに。
 両親とは、進路の問題でこじれて以来、ろくに口も聞いておらず、だからと言って、親友と呼べるような、深い仲の友人もいない。
 ああ……もしかしたら。毎日、死に物狂いで勉強して、一級市民、一級市民と復唱してきたのは、他人より上を目指す以外に、アイデンティティを証明する手段がなかったからなのかもしれない。
 それは、とても空しいことのように思えて、智信は盛大な溜め息をついた。ただでさえ失われかけていた気力が、完全に失せていくようだった。

97白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:38:44 ID:/V4euhHC
 ルールCの発表から、二十四時間が経過した。液晶画面に表示されている残り日数が『二十』を示す。
 智信は、ベッドに座ったまま、魂が抜けてしまったような表情で中空を眺めていた。
 留美は、ベッドの上に仰向けで横たわったまま、ぴくりとも動かなくなっていた。
 智信はのろのろと立ち上がると、留美のベッドに近付く。生気のないその顔は、近くに寄っても生きているのか死んでいるのか判断に困るほどだった。
「……留……」
 名前を呼ぼうとしたが、声が掠れて言葉にならなかった。しかし、その呼びかけに反応するように、留美の唇が微かに動く。
 留美の瞳に光はなく、目線も、呼びかけた智信の方ではなく、明後日の方を向いている。生きているのが不思議なくらいの衰弱ぶりだ。
 この様子を見るに、もう……独力では、立ち上がることすらもかなわないだろう。
 智信は、ずるずるとその場に座り込み、ベッドの側面に背中を預ける。マットレスを肘掛け代わりに使うと、指先に何かが触れた。ベッドに力なく投げ出されたそれは、留美の手だった。
 前にもそうしたように、智信は留美の手を握って、目を瞑った。
 智信とて、立ち上がり、動くことくらいは出来る、と言うだけで、それ以外は、留美と大差なかった。
 いつ何があってもおかしくはない、最悪のコンディションである。
 現実と幻想が混じり合って溶けたような混沌とした思考の中、智信は思う。
 どちらが先に逝くにしても――もうすぐ終わる、と。

98白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:39:42 ID:/V4euhHC
 智信は、液晶画面の前に居た。残り日数は『十九』である。
 留美はもう、植物人間のようになってしまい、話しかけても何の反応も示さなかった。
 心臓は動いている。息もしている。だが――それだけだ。留美はもう、喜ばない、怒らない、泣かない、笑わない。
 智信も自分自身、体の自由が利かなくなりつつあるのを感じていた。このままでは、智信もすぐに、留美と同じ運命を辿るだろう。
 ――――すぐに、同じ、運命?
 その言葉が頭を過ぎった瞬間。智信の心の奥底で、悪魔がそうっと囁いた。
『このままでは共倒れになる』
『佐々野智信。お前はこんな場所で死んでいいのか?』
 妄想の中の悪魔は、みるみる内に明確なイメージとなって脳内を駆け巡り、ついには智信の隣に、その醜悪な姿を現した。
『見ろ』
 悪魔は横たわる留美に、鋭利な刃物のように尖った指先を向けた。
『もう留美は動けない』
『お前が先に死んでも、どの道助からない』
『そうすれば、留美の残した遺言とやらも、結局は無駄になる』
『お前の取るべき最善の選択が何かわかるな?』
「僕は……約束した。最後までお互いを尊重するんだって」
 悪魔は、部屋全体が振動するような大声で笑った。その声が煩くて、智信は思わず耳を塞ぐ。
『くはははははははははは』
『何を遠慮する必要がある』
『動けなくなった時点で死んでいるのだ』
『後はお前が生きるか死ぬかを選ぶだけだ』
 悪魔は智信の手を引いて、無理矢理立ち上がらせる。そして、そのまま留美のベッドへと引き摺っていく。
「でも、こんなのは駄目だ、間違ってる、やりたくない」
 悪魔は、無言のまま首を振る。そして今度は一転して、優しげな口調で語りかける。
『もういい。お前はよくやった。俺は知っている』
『一気に食料を消費してしまいたかったが、食欲に抗い、長い日数を渇きと飢えに耐えながら過ごした』
『本当は留美を抱きたくて仕方が無かったが、性欲に抗い、手出しはおろか、性的な視線を向けることすらしなかった』
『留美がこの状況に押し潰されて錯乱状態に陥った時、一緒に泣き喚いてしまいたかったが、留美を気遣い、励ました』
『そして、ルールCの発表により、二人の対立が明確になっても尚、互いを尊重しようと言い、留美に生還の可能性がなくなるまで耐えた!』
 悪魔の手が智信の腕を掴む。智信の腕が留美の首にかかる。
 智信はしきりに頭を振って抵抗する。本当はこんなことはしたくないのだと。
『意地を張るな。もう楽になれ。緊急避難だ。誰もお前を咎めはしない』
 留美の首にかけられた智信の手に――力が、こもった。
 目を固く閉じて、歯を砕けるくらいに食い縛って、智信は留美の首を絞めた。
99TIPS ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:40:35 ID:/V4euhHC
TIPS『最悪のコンディション』
実質『どちらかの死亡待ち』であるルールCの存在が、二人から生きる気力を奪い、急激に衰弱させた。

TIPS『悪魔』
智信のエゴが妄想により具現化したもの。
100 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/07(金) 00:41:12 ID:/V4euhHC
>>52の続きです。次回以降解決編。

ルールA 鉄扉の正面に表示されているのは残り日数である。残り日数がゼロになった時、扉は開かれる。
ルールB ルールは、日数が三日経過する毎に一つ明らかになる。
ルールC この部屋の中にいる生存者が一人となった時も、残り日数がゼロになった時同様、扉が開かれる。
ルールD ???
101名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 02:03:04 ID:InXfF/ON
>>100
S^4氏GJ&>>100ゲットオメ!

すげーハラハラドキドキする。
102名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 10:13:53 ID:+PFXljIe
>>100
GJ!なんという絶望感…ハラハラさせるわほんっとに
続きを待とう。誰かと。二人っきりで。いないけど。
10381 ◆DlPgAmm21I :2007/09/07(金) 10:45:44 ID:9E1ip7TH
チクチク… チクチク…
「あ、あの…」
「なに?!」
俺は、カーブの度に首に刺さる何かに耐えかねて、少女に問いかける。
しかし、彼女は怒ったように言葉を返す。
「いや、その…なんでもないです…」
「…なにか言いたいならはっきり言ったらどうなの?!」
「いえ…」
「「・・・・・・・」」
微妙な沈黙。くそっ、俺がなにしたんだよ…
「あーもうじれったいわね!!! なんなのよあなたわっ!」
容姿に似合わず、流暢な日本語だ。
「…こっちとしては、脅迫というか、命握られてる身なので、ほんとはなにもいえないのですが、
 ひとつだけ… お願いしてもいいでしょうか?」
「な、なによ…?」
あ、なんかミラー越しでも可愛い…
「なにぶんカーブの多い高速で速度でてるので、ゆれるたびにチクチクささるのですが、それ、
 収めてもらえませんか?」
「いやよ!」「なぜ!?」 
すかさず切り返す俺… 死んだな…
「収めたら、あなたきっと警察にいくでしょ!!」
「いや、そりゃ、まぁ…当然というか、ハンドル握ってるの俺だし…」
至極まっとうな意見を述べる。
「なおのことダメよ。これは保険なの。わかった?」
「だからってだなぁ… もし事故になると、逆にあんたのほうが危険だと思うのだが…」
「あら、私なら大丈夫よ? いざとなったらシートベルトかけるもの… って… あれ? …ない?」
なにかに気がついたようにあたふたしはじめる。長い髪がふわふわつられて動くのが見えた。
「ああ、この車は8年前のモデルチェンジ〜云々〜で、貨物仕様だから後部にベルトは無い」
「ちょっ、ちちちちょっと! それは困るわ!!!」
「勝手に困ってくれ… 俺は知らない…」
ぎゅっ!
「こーのー!!! 今すぐベルトだしなさい〜!」
「ぐえっ! 首っ、首つかむなっぐえぇっ! むっ むりだっぐええぇ!」
「なんとかしなさい! 命令よ!!」
「ぐえええ! いやなら助手席こいっ! そこならあるからっっっ!」
ふっと首を絞めていた手が離れた。と思ったら、俺が運転してるのに前にでてきやがった!!
「はじめからこうしていればよかったのね♪」
チクチク。
またチクチクが始まった… って、今度は獲物がちゃんと見えた…
「って、ナイフかと思ったらシャーペンかっ!!!」
俺は盛大にツッコミしてしまった。
「あ・・・」
「〜〜〜っ!… はぁ〜…」
思いっきりため息を吐いてしまった。
こんなのも見抜けなかった自分が情けない…
10481 ◆DlPgAmm21I :2007/09/07(金) 10:46:27 ID:9E1ip7TH
獲物がわかった瞬間、少女の態度が変わったのが見て取れる。
あきらかに身を縮こませ、凶器としての役を請っていたシャーペンを握り締めている。
運転のためちらちらとしか見えないが、彼女はなんだか守りたくなるような可憐さを漂わせている。
その様子に、俺も毒気を抜かれてしまったようだ…
「…まぁいいさ、警察には言わないでおこう。」
少女が顔を上げ、笑顔になったのを感じる。
「ほ、ほんと!?」
猫のようにも、小動物のようにも受け取れる目を俺に向けてきた。
くっ、こっちみんなっ! 俺がワルイコトしてるように思えてくる!
「あっ、ああ。まさかシャーペンで脅されました なんて警察に言えるか」
「……ご…さい…」
「ん? なんだって?」
聞こえなかった。聞き返すと、今度は耳をつんざくような声で
「ごめんなさい!!っていってるのっっっ!」
俺に身を乗り出しつつ耳元で大きい声をはりあげた。
正直鼓膜が破れるかと思ってしまう。奥でキーンと鳴っている。
「あー、はいはい! わかりましたっ! わかったから、シートベルト締めろ!!」
俺がそういうと、少女は助手席に座りなおし、シートベルトを締めた。
 :
 :
「…渋滞…か」
竹橋に近づくと、渋滞掲示板から「この先渋滞 追突注意」の文字が見えた。
ここで渋滞となると…首都高抜けるのに1時間か…
「あ、と、君… 千葉…方面だったよな?」
「え?! い、行ってくれるの?」
「まぁ… 不本意ながら乗せちまったワケだし、もともとは長崎までの道のりだ。
 千葉くらいなら、+150kmってとこだろ… 別にいいさ」
少女が笑顔になる。後光がさすような、そんな笑みだ。…いま、華が舞ったぞ?
「ただし、送るだけだからなっ?」
「ありがとうっ!」
抱きつかれた。だからあぶねぇって!
10581 ◆DlPgAmm21I :2007/09/07(金) 10:50:03 ID:9E1ip7TH
渋滞にはまっていてしばらくすると、少女が妙にソワソワしだした。
「なに? どうした?」
「えっ?! いやそのっ…」
「はっきり言ってくれ。さっきみたいになりたくない」
「その… 〜〜〜に…」
「は?」
「トイレっ! おしっこっ!!」
は・・・ マジデスカ?!
「う、うわわわ おまっ、ここ渋滞の中だからトイレないぞ!?
 先が事故でふさがっているからしばらく動かないし!
「こまる! もうでちゃうぅ!」
くっ、この手だけは使いたくないが…
過去に同じ経験したことがあるだけに、常にダッシュボードには穴の開いていない
スーパーのビニール袋が常備してある。それを使えば…
「いやよ!」
そのことを説明したら拒否られた。
「断ってる場合か!漏れたらどうすんだっ!」
「でもでも!」
「でももへちまもねぇ! やれ!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」
完全に決壊寸前だったらしい。ベルトをはずすよう指示して、
座席を後ろまで後退。足をまげ腰を座席の前までもってこさせ、ビニールを持たせてやった。
「あとはできるな?!」
こくん。
少女は耳まで真っ赤にしながらうなずいた。
背に腹はかえられないらしい。あれ?表現違うか?
”ぱしゃっ ちょぼぼぼぼぼぼぼ…”
極力見ないように努力する。見たら俺、変態だ。うん、みるな。みちゃだめだ。だめだったらだめだ。
「んっ、くふっ、ふぅぅぅっ」
吐息が聞こえる。
くっ… 逆に見ないほうが妄想たくましい俺に…
「やぁ…」
嫌がる声が耳にうるさく届く。
「ナっ?! なニドうシタッ!??」
動揺するな動揺するなドウヨウスルナ・・・
「と、とまらないのぉ! こんなにいっぱいぃ〜…」
ちょぽぽぽぽぽぽぽ…。
たしかに袋半分はきてるだろうか?
どれだけ我慢してたんだよ… って、あ… 見てしまった…
「ひっく…臭いが…」
少女は恥ずかしさのあまり泣き出していた。
(だぁー! もう!!)
すかさず換気モードで風力全開にする俺。窓は…全開にできないな。
…これでどうだ!? 俺はあまり臭いを感じないがこれだけすれば問題ないだろ?!
10681 ◆DlPgAmm21I :2007/09/07(金) 10:51:57 ID:9E1ip7TH
ガサ…ガサガサゴソゴソ…きゅっ。
少女は泣きながら自分のを受け止めた袋を締めた。
「は、恥ずかしすぎるよぉ… こんなこと初めてだし…」
「がまんしろ。俺も過去に1度だけやったことがある」
「み、見てないでしょうね?」
「おお、み、見てないぞ? うん」
「黒いパンティ、見たでしょ?!」
「い、いや、白かっただろ! 赤いリボンのっ!」
「「・・・・・・・・・・」」
「…へんたい」
ぐはぁ! なんか! なんかイケナイ道に進もうとしてないかオレ!!
「むりやり車のなかでオシッコさせたうえにその姿を見て喜んでるなんて…スケベ! へんたいっ!」
「うおっ!? 喜んでなんかいっ、いないぞ?! 何を言い出すんだっっっ!」
「………まぁいいわ… がまんできなかった私が悪いんだし… 送ってもらえるんだから文句言えないし…」
あ…焦った… オレが逆に警察のお世話になるところだった…
「とりあえずこの袋、どうするの?」
ちゃぷん。
袋に詰まったモノの処分は、ココでは不可能だ。
しょうがない…
「取っ手を引っ掛けるものが後部座席の手すりにあるから、そこに引っ掛けて…」
「ん… わかった」
とりあえず、引っ掛けてもらった。


一応騒動はひと段落する。渋滞は、抜けるまであと少し・・・

#軽バン…99年式ダイハツ ハイゼット・アトレー 貨物仕様車 は、後部座席にシートベルトがありません。
#(主に ○○ 40 ナンバー車) ウチの車だけかもしれませんが、後部にはローラーコースターばりの手すり
#(買い物袋引っ掛け用爪付き)があり、移動中はそれを握ってもらいます。
#ディーラーに確認したら、ベルトは後付けも不可で、車検証には乗車定員 2(4) 人 と明記してあります。
#
#過去に1度だけ…作者経験談です。関越道でいつか昔に女性が生きたまま手枷つけられて100km走行時の車から
#投げ捨てられた事件(婦女暴行死亡事故事件)があったときに、自動車道が閉鎖されてしまい、
#その煽りをくって川越街道(成増〜所沢BP)が激混みしたときに、仕方なくやってしまったことがあります。
#いつかネタにしてやるとか思ってたので、ここで登場です。
#
#なんだか、こんなネタでいいのか自分の脳みそくさってんちがうか? とか…
#まだ序章も終わってないのにorz
#よろしくお願いします。
107名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 11:14:20 ID:BBBEzzoq
なんだかんだでGJですわ

はてさてこの珍道中どうなるのか…
(…作者さん女の方?同じビニール袋使うっても男と女じゃ使い勝手違うし)
10881 ◆DlPgAmm21I :2007/09/07(金) 19:07:29 ID:9E1ip7TH
>107
gjありです。
>女?
男です。ビニールの使い方のヒントは、10年位前にFujiQ→新宿の高速バスで、
隣に座ってた女の子がトイレ我慢できずに決壊寸前までいって、
親の指示でその場で局部にビニールを密着させて"した"という目撃例があるので…
それを数年後に自分で実践することになるとはいやはや…
男だと筒先を調整するだけで済みますが、女の子って大変だなぁと…
109名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 19:54:48 ID:GZnJxSy7
>81 ◆DlPgAmm21I 氏
乙です。それにしても出発早々にニョーホーとは..。目的地が千葉とはいえかなり濃い旅が期待できそうw
「ローマの休日」ならぬ「総武の休日」とでも呼びましょうか?w車板住人でもあるので、期待してます。
110名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 20:24:27 ID:QiUxCSQ6
車が爆発とかしたら、帰りは京葉線で帰るのかな?wkwk
111名無しさん@ピンキー:2007/09/07(金) 21:58:49 ID:x6/tf4fD
お二人様共に、GJ!

方や大詰め、方やワクワク・・・

シャーペンは受けましたw
この流れはよめませんでした
11281 ◆DlPgAmm21I :2007/09/08(土) 09:28:55 ID:UfQTHTXa
#えと、妄想が止まらないです。
#じゃんじゃか物語が紡がれていくのですが、
#基本へタレなのでおいしい物語にならなかったらごめんなさい…

<<ピンポーン 料金ハ\200エン デス>>
−京葉道路・船橋料金所を通過した。
「なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」
「なに?」
「とりあえず、方面はわかったが、正確にはどこなんだ?」
「館山よ」
「そうか、館山か… 何しに行くかわからないが、住所はわかるか?」
「○○よ。○○の××の△△△△」
「まてまて… よし、これだな」
車に取り付けた自慢のPSPナビが起動する。
少女から微かな笑い声が聞こえる。こら、わらうな!
そんな顔をしてたら
「ちいさくてかわいい機械ね」
だと… くっそ、ボーナスでHDDナビ買ってやる!
今年の7月に館山まで高速一本でいけるようになったから、古いナビも新調しなくちゃな…

「・・・そういえば、名前、まだだったな。俺は康平。君は何ていうんだ?」
「まりよ。真理って書くの。友達からは”まーちゃん”とか”マリー”とか呼ばれてるけど…」
「マリーか… たしかにしっくりくるな」
「な・に・か・い・っ・た・か・し・ら?」
まずい、逆鱗に触れたらしい…
「こんな成りしてるから”なるほど”とか思ったんでしょ!」
ばれてるらしい… 金髪碧眼でそのあだ名は誰もがソウ思うだろう? よし、フォローを試みよう…
「いやでも、きれいな髪だしふわふわだし、かわいいからなんというのかな・・・」
「そんな言葉は聞き飽きてるっ! しらないっ」
「おいおい…」
「・・・・・・・ぷっ、あははっ、くすくす、あはははははっ」
真理はコロコロと笑い始めた。
「な、なんだよ」
「私のあだ名を教えたら、だれもが同じ反応するから、ついおかしくって…」
ちぇっ… なんだよそれ…
「ふんっ… 高速降りるぞ」
「え? ちょっ! なんで高速降りるのよ!」
俺は幕張ICで降りてそのまま14号に合流した。
長年の経験からいうならば幕張IC〜アクアライン連絡道までは14号・16号を使ったほうが、
穴川の渋滞も、遠回りする上に金もかかる高速も回避できるのだ。
「何で降りたのよ? しかもなにニヤニヤしてるの? 怖いわよ?」
ニヤニヤしている顔を見られてしまった。
「う、うるさいっ、経費節約だっ この道の方が得だしっ!」
ガソリン代も馬鹿にならない。
出発した埼玉南西部では136〜142円/Lだが、千葉は133〜138円/Lだ。(07/09/01調)
入れるとしたら市原近辺の製油所前のスタンドがベストだろうと、思っている。
ただ、メーターを見たらさほど減っていないので、今回はパスすることにする。
11381 ◆DlPgAmm21I :2007/09/08(土) 09:32:12 ID:UfQTHTXa
くーきゅるきゅるきゅる・・・
「・・・?」
ん? なんの音だ?
くぅ〜・・・きゅるきゅる・・・
なんだかマリー(もう確定だな)から聞こえてくる。
幕張ICからだいぶ走ってきた。40kmくらいか?
彼女をみると、おなかを押さえて顔を赤くしている。
「どうした? おなかへったか?」
「…うん」
「なんだ、なら、挑戦してみたい店があるんだが、いいか?」
「挑戦???」
「ああ、すぐそこだ」
「なに? 大食いでもやるつもり?」
「いや、ドライブスルーさ」
「ドライブスルー?! ええっ!? 経験したことない!!」
「おお、ならちょうどいい。行って見るか。ちなみに牛丼屋だ」
「えっ?! …私、牛丼って食べたことない…」
「おー、なら人生初挑戦、いってみようか!!!」
「うんっ!」

国道16号を南下し、アクア連絡道の袖ヶ浦IC数km手前に、その店はある。
日本全国に展開している牛めし屋 ”松屋”。
俺は今まで利用したことがなかったが、そこは生まれて初めて見つけた
ドライブスルーの利用出来る松屋だった。

「並2つ」
ドライブスルーでの牛丼は生まれて初めてだ。
マクドはしょっちゅう、ケンタのフラチンもちょくちょくだが、
牛丼は未経験だった。
隣ではマリーがまだかまだかと目をキラキラさせている… 思わず頭をなでたくなった。
はっ… いかんいかん…

弁当を受け取り、そのまま袖ヶ浦ICから高速に乗る。
高速走行中、となりでは、
”はぢめてのぎゅぅどん”と格闘しているマリーがいる。
「お、おいしい!! あたたかい料理ってあまり出ないから、すごくいい!」
お気に召したようだ。
ああほら、ほっぺにご飯粒ついてる…
「ご飯粒ついてるぞ?」
「んぅ、どこ?」
わたわたと探すマリー。
「ここだ。しょうがないな」
ひょい ぱく。
「・・・わたしの分、たべた・・・」
ええ?! そこでそうきますか?!
ってあれ? 顔真っ赤だぞ…
「マリー?」
ビクッ!。
「し、しらないしらない!」
あ、そっぽ向いた。
「・・・・・・」
なんか俺、やばいんじゃね?
11481 ◆DlPgAmm21I :2007/09/08(土) 09:35:26 ID:UfQTHTXa
#エロにもっていけないヘタレです。orz
#PSPナビ ナビは向いてないけど現在地の把握に役立ちます。
#去年長崎行ったときは地図片手に右往左往でしたが、これがあればもっと楽だったのかなあ…
#
#松屋のドライブスルー、実は未経験だったりします。
#きっかけは、深夜ドライブでアクアラインを神奈川から超えたところで発見しました。
#軽で深夜で1950円だったかな?ETCで←アクアライン。
#調べてみたら、ちょくちょくあるみたいで… こんど近場にないか探します。
#松屋ドラスルー、いつか行ってやる!
#
#これから寝ます。起きたらお出かけ。続きは週明けになるかと思います。
#よろしくお願いします。
115名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 20:02:34 ID:AvT11Ewg
おい!、そこで高速代ケチって渋滞回避なんて言い訳コクなら、
長崎へ行くのに5号線上るな!用賀まで下だろ!
え?違う?

とにかくガンガレ。
116名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 20:30:33 ID:oPDP56Dv
なあ、もしかして小便捨ててなくないか?
まさか伏線!
117名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 21:16:07 ID:slQ01Dho
work taker
118名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 21:29:43 ID:wwKMVvAd
>>116
追っ手にぶつける聖水爆弾と見たw
119名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 04:20:07 ID:0ybM1Hyr
うちのおじがPSPナビ使ってる件w
120名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 14:38:47 ID:sMtzC+37
コレはいい二人きり。
フリー鬱ゲームのナルキッソスを明るくしたみたいで面白い。
続きが楽しみ。
121名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 20:05:47 ID:YrS8iOTz
ナルキッソスって携帯電話用のエロゲじゃん。
いや、まぁエロシーンが邪魔なくらい面白かったけどね?
122名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 21:55:29 ID:16z4lCRz
電波を受信したので、思わず一本書いてしまいました。

しかし、SSを書いたのは初めてだったので、皆さんが納得できるような内容では無いかもしれません。

更に言うと、パソコンは今修理中ですので、携帯からの投下になってしまいます

スレ汚しになるかもしれませんが、投下してもよろしいでしょうか?(ダメなら帰りますので)

123名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 21:58:50 ID:YrS8iOTz
投下しろ、話はそれからだ。
124名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 22:57:05 ID:gvLlOHdW
作者さんはやくきてクレー!
125名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:04:25 ID:16z4lCRz
それでは、投下します。ただ、なにぶん初めてなもので…
チラ裏に書いとけとか言われそうな内容なので、ご容赦下さい




今日、俺は中学からの悪友、高岡亮太郎の家に遊びにきていた

しかし、亮太郎は妹を連れて、買い物に行くと言って家を出て行った。後に残ったのは……

(はぁ…、メッチャ気まずい……亮太郎〜、恵美ちゃ〜ん、早く帰ってきてくれよ〜!)

今、この部屋にいるのは、自分と、高岡の妹と同じ中学校の制服を着た女の子だけだった

(全く、高校生にもなって妹と同じ部屋なんて、あいつ絶対シスコンだな。今も二人仲良く買い物に行ってるし…)

目の前にいる少女は、遊びに来た時に何度か見たことがあるのだが、名前も知らなかった

とにもかくにも沈黙が気まずすぎるので、何か話題を振ってみよることにした

「ふ、二人とも遅いね」

「そうですね」

一瞬にして会話が途切れた。そして再び訪れる沈黙・・・

(俺は馬鹿ですか?それともアホですか?一秒も会話を続けられないなんて…)

話題が何も思いつかばないので、とりあえず名前を聞いてみる。

126名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:06:46 ID:16z4lCRz

「俺の名前は吉田由広。君の名前は?」

「・・・・石井加奈です」

少女は一瞬驚いた顔をしながら、返事をする。そしてまたもや沈黙が訪れる。

加奈はそれ以上話し掛けるな、とでも言わんばかりに本棚に入っていた少女漫画を読み出す。

(はぁ…。しょうがない、俺も漫画でも読むか。)

そう思い、同じように漫画を読み出す由広。

しかし、高岡兄妹はいつまでたっても帰って来ない。

時間はすでに6時を経過していた。

(…帰るか、ここに居ても気まずいだけだし)

そう思い、亮太郎にメールを打ち始める。

と、加奈もどうやら帰ると決めたようで、帰り自宅を始めた
「あれ?恵美ちゃんはメール打たないの?」

「携帯を持っていませんので」

この発言に対し、少し驚く由広。

(へぇ。今時持ってない子もいるんだ。でも、俺も中学までは携帯なんて持ってなかったしな。そういう子が居ても不思議じゃないか)と、納得する。

「じゃあ俺がメールしとくよ」

「…ありがとうございます」

ペコリと頭を下げる加奈。

それでは、私は帰りますので。そう由広に言うと、サッサと部屋を出て行ってしまう

127名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:12:18 ID:16z4lCRz
「あ、送ってくよ。」

「いえ、いいです。歩いて15分程度なので」

では、と言いながらドアを開けた加奈。しかし…


「凄い雨だね…」

外はどしゃ降りだった。

「傘は持ってるの?」

「持ってないです。まさか降るとは思って無かったので…」

とりあえず、二人は部屋に戻った。

と、その時、亮太郎からのメールが届いた。

「なになに…、『外はどしゃ降りだし、明日は学校休みだし、今日は泊まってけよ。今から夕食の材料買って帰るから。加奈ちゃんにも伝えといて。』だって。どうする?」

「でも、そこまでお世話になる訳には…」

加奈は遠慮しているのか、迷っているようだ

「大丈夫じゃない?アイツの両親旅行中だし」

しばらく迷っていたものの、それなら…、と加奈は泊まることを決めたようだ。


とりあえず、ここまで書き上げました。
できれば皆さんからの、批評、感想、アドバイスを聞いてみたいです。
皆さんからの反応で、今後どうするかを決めて行きたいです。
もちろん、このスレにはいらない、などの意見が大多数だった場合は、ROM専に戻り、他の作者様の邪魔にならないようにします。
128名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:17:29 ID:D+pJAYh3
続行希望
129名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:27:33 ID:DnAsB4Up
続行キボン

何かこのままだと4Pになりそうな(ry
130名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:42:43 ID:YrS8iOTz
句点、読点の打ち方が不自然だな。
一行空けるのは正直いらないと思う。
文章に緩急がないので、伝えたいところは説明を多く、説明が不要と思われるところは省く。
文章がブツ切れになっているので文の終わりに変化をつけてもいいと思う。『〜た』以外のも考えるべき。
説明の文は現在形になっていると臨場感が出る。(一人称視点は特に)
()の中身で思考を表現するのはどうかと。それこそ説明文に織り込むべき。
「〜?」ときたら答えとの間に文を挟まない。失速する。
一人称視点なら説明の文に感情を込めるべき。無機質すぎる。
視点がブレている。物語を書く上で一番やってはいけないこと。セリフ以外で主人公の名前を出すとほぼ確実に起こるから注意。

いろいろ言って見たけど、内容自体はGJ。続き希望。
131名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 00:10:41 ID:DBhoNmv/
>>127
GJ
だいたい>>130の言う通り。
後、投下前に「投下しても良いですか?」と訊くのは「誘い受け」と言われて、あまり良い顔されないから控えた方が良い。
改めて言うけれども、GJな作品だから、これらに気を付けて、自信を持って。
132名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 03:11:49 ID:x6RWXgUt
1行あけることについては、別に構わないと思う。読みやすいしね。
ただテンポが淡白になりやすいんで、文章に抑揚をつけないと難しい。
この1行空けは「満月」からの流れなのかな?
133名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 06:56:19 ID:+DXjF7wk
>>128-129ありがとうございます。これから続きを書くことにしました
ただ、4Pではないですw
>>130沢山のアドバイス、ありがとうございます。
自分は三人称のつもりで書いていたのですが、どうやら一人称とも三人称ともどっち付かずな文章になっていたようです。
以後は気を付けたいと思います
>>131GJありがとうございます。
確かに誘い受けと思われるような事を書いてしまって、すみませんでした。
>>132満月からの流れ、という訳では無いのですが、文が長いと読みにくくなると思い、一行空けました。
ただ、仰るとうり、淡白な文章になってしまいましたので、次は気を付けます。

長文失礼しました
134名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 07:45:07 ID:+DXjF7wk
書き忘れましたが、今週はなにかと忙しいので、続きを投下できるのは来週になりそうです。
遅筆なので投下に間隔が空いてしまいます。すみませんでした
135名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 14:47:45 ID:v+F2DFAT
このスレも盛り上がってきたな。500KB行くかもしれんな。



俺が行かせてやる。
136名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 17:27:23 ID:ngNYHDCJ
この切り込み隊長>>136様が此のスレを500kbまで突っ走ってやるよぉぉぉ!
13781 ◆DlPgAmm21I :2007/09/11(火) 02:10:08 ID:hyAgyWwY
#遅くなってすみませぬ。行きます。
<※作者注…この物語はフィクションです。実在の団体、名称等とは一切関係ありません>
お、パーキングエリアだ。

君津ICを過ぎてパーキングに入る。

「ちょっと休憩するぞ」
「え?」
「トイレだ」
「あ、うん…」
なにか考え事でもしていたのだろうか… 生返事っぽかった。
「私も、トイレいく…」
「おう、いっとけいっとけ。もう袋なんてないからな」
「ばっ!…」
ぐあ、言い過ぎたらしい… なみだ目だ(汗
おいおい、睨むな… こっちみんな…

車を降りて建物に向かう。
「ほぅ… さすができたばかり… いろいろとピカピカだな」
「トイレがきれい〜♪」
「じゃあ、15分くらい休憩したら出るから、そのつもりでな」
「は〜〜い」
ふぅ… 金髪がふわふわして遠目から見ても気を引くかわいらしさだな…
性格はいいんだろうけど無鉄砲なとこあるしな…
いっそマリーを家に飾りたい衝動にかられそうだ… いや、やめとこう…
トイレのなかで、ついでに、車からマリーの・・・が入った袋を処理にかかる。

用を済ませると、ふと、エリア内で街中で見かけない自販機をみつけた。
いや、街中のとはそっくりなんだが、奇妙な言葉が入ってる。
”災害支援ベンダー”…! なるほど。
言葉から察するのと、実際の説明書きとが合致する。
停電状態でも購入が可能なのか。

ガコン!
意識覚醒用に缶コーヒーを購入した。
しかし、停電状態でどうやって動くのだろうか…バッテリー? 発々? まさかカラクリ仕掛けとか…

自販機前で思案してるとマリーがやってきた。
「なにむずかしい顔してるの」
「いや、この自販機が停電しても買える機械だからどうやって動くのか考えてた」
「ふーん」
つまらなさそうだ。
機械の仕組みについてつい考え込んでしまうクセはどうにも抜けないなぁ。
と自嘲しつつも、さて… マリーに飲み物かってやるか…
「なにか飲むか?」
「んー… ほしい、かも。 同じのでいいよ?」
「え、ブラックコーヒーなんだが…」
「あ、だめ… 甘いのがいいな…」
「激甘コーヒーがあるけど、どうだ?」
「ん、それでいい」
13881 ◆DlPgAmm21I :2007/09/11(火) 02:12:19 ID:hyAgyWwY
ジョージア マックス コーヒー… これしかないだろ
「なににやついてんのよ?」
「いや? 激甘で後悔すんなよ?」
「ふん。(パカッ) んくんくっ、んく… あっま〜い!」
「甘いだろ? それ毎日飲んでたら、糖尿病になるぞきっと」
「おもしろい冗談ね? でも、すごい甘いねこれ…」
「昔、ジョージア名称がついてない時代のマックスは、もっと甘かった。
 マックス甘いコーヒーといっても過言じゃなかったんだよ…」
「うそ?!」
「ごめん、実体験してないから聞いた話しだ」
「なによ 知らないんじゃない」
「いや、友人から聞いた話だが、比べたら現在のやつより甘かったって言葉はあるんだよ」
「これより甘いの…?」
「うん。でも、苦いの苦手でもこれならのめるだろ?」
「…うん」

ここのパーキングの喫煙所はまだ建設中だった。
隣に青空喫煙所があったので、そこで吸うことに。
懐からタバコをだして、ライターを探す。
だが、探す手がマリーにつかまれた。
「なに?」
「タバコはやめて… おねがい…」
うあ、上目遣いに見るなって… 悪いことしてる気持ちになるんだって。
「う… あ…」
「体にも悪いから、ね?」
…吸う気が失せてしまった。日に2〜3本しか吸わない貴重なものだったが、
こんな美少女に抱きつかれて懇願されたら、吸う気も失せる…
「わかったよ… きみの前では吸わないよ」
「いや、そうじゃないんだけど… ううん、わかった」
わかってくれたか。送り届けたあと、めいいっぱい吸おう。
…ピアニッシモ・ペシェだけど。
13981 ◆DlPgAmm21I :2007/09/11(火) 02:14:00 ID:hyAgyWwY
タバコをとめられたので、ちょっと周りをみてみた。なんか人工的な丘がある。
マリーを促し、ちょっと上ってみることに。
「うわあ パーキングとか、いろいろ見渡せるねぇ〜!」
一人駆け足でのぼっていってしまったマリーを追いかける。といっても歩いてだが。
先に上りきった彼女が、こっちに大声で話しかけてきた。いや、感想か?
自分も登りきると、そこには先客がいた。
学生のグループ? がマリーを確認すると、友人たち(と思われる)で話あっている。
「カワユス」「超お持ち帰りケテイ」「こらこら やめとけ」など。
おいおい、おまいらも俺と同類ですか。
学生たちは俺を確認すると、丘から降りていった。
離れていく会話が細く聞こえる。
「今夜はきっと」「ラブホでしっぽり…」「金髪美幼女、たまんねぇ…」
こらこら…俺は一回、命狙われてんだぞ… そんなことしたらなにされるかわからん。
しかし… しかし、だ… 仮に〜
「なに? どうしたの?」
いつの間にか駆け寄ってきてたマリーに驚く。
「うわ! い、いや、なんでもない」
やばい、顔が赤いと思う。 彼女を凝視できない。
「へんなの」
いかんいかん…なに考えてんだ俺! 相手は2回り近く年が低いんだぞきっと!
それだったら対象にすらならんっ!!
「ねぇねぇ、それより、あっちにハンカチが結ってあるの。なんだろうね〜?」
考えを切り替えろ。ん? ハンカチ?
マリーに引かれるままその場所に至る。
鉄製の柵に、ハンカチがいっぱい結ってある。なんだ? これ。
「なんだかわかるー???」
彼女は本気でわからなそうだった。
よし、適当ぶっこいてみるか。
「きっと、どこかのカップルが二人で結って、末永く幸せになれるようにとか、願ったものじゃないの?」
「ええっ?! それホントっっっ!?」
やばい、目がキラキラしだしてる… 今”嘘だ”といわないと、フォローしきれなくなるっ。
「冗談だよ… 正直判らん」
「ええー? なんだよぅ!!」
ぶ〜! とふくれて抗議してきた。
はっはっはっは と笑いながら頭を撫でてみる。
「マリーは素直でいいこだな」
「笑いながらいうなあぁ!」
「ぐぇ」
みぞおちにパンチがはいった。いてぇ…
「あっ?! ご、ごごごごめんっ!!」
俺は丘備え付けの長ベンチに腰掛けた。
マリーも隣に座り、心配そうに覗き込んでくる。
…こういう仕草が俺にツボだ。
彼女はわかってやってるわけではないだろうが、ドキドキする。
14081 ◆DlPgAmm21I :2007/09/11(火) 02:23:22 ID:hyAgyWwY
「なぁ」
「なに?」
俺は落ち着いた頃、マリーに質問してみることにした。
「なんで、こんなことをやってんだ?」
「こんなこと って、ヒッチハイクみたいなもののこと?」
「そうだ」
初めはカージャックだったがな。 は心の奥にしまった。
「それは・・・・それはね・・・・・・」

#今日はここまでっ
#マックスコーヒー…コーヒーの分量よりも、練乳とか砂糖が上位に来ている缶コーヒー。
#初めはちばらき限定販売が、ここ5年ほどで全国区販売に展開。
#コーヒー飲めない友人が、これならいけると言い切った代物。冷たい状態ですんごく甘い。
#あっためたら…((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
#パーキングの丘…実在します。ハンカチもありますが、どういうためのものなのか未だに不明
#以下 意見感想へのレスポンス
#・「総武の休日」 いいなあ どうしようかなぁ… 「房総の」とか考えたけど 総武 にはかないませんでした。
#・バクハツはいやだなぁ…
#・5号線へ乗る理由は、以前友人が環八を超えるのにえらい混雑で、東京インターまで8時間掛かった経緯が…
#・小便は今回捨てました。シチュ考えたけど、=汚い イメージしかわいてこなかったので処理処理!
#・PSPナビは、現状把握とルート確認には良い物です。でも、UMD読み込みなので通過してから「そこ右」とかしょっちゅう…
#・ナルキッソス 検索完了。初めて見る作品です。なんか読み応えありそうなのですが、自分、読んでしまうとめちゃくちゃ影響うけるので、この作品終わるまでは読まない様にします。すみません。
141名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 03:11:26 ID:GfknvrLX
GJ。GJだがこの焦らし。81!貴様、わざとやっているな!
まあ小便は捨てるよなw
142名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 03:23:06 ID:dVf5g8SV
何この気になる終わり方マリーカワユス
143名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 11:51:15 ID:eHusbk4y
良いねコレ! 素晴らしい二人きり。楽しみです。
あ、あと関係ないけど前言ってたナルキッソスって携帯用のエロゲじゃ無いよ。
車で二人だけで旅する鬱なフリーゲームだよ。1しかしらないけど。
144A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:31:06 ID:oXsD9FBU
A/B投下。>>66の続きです
前回の反省や意見等を取り入れて書いてみました(取り入れたつもりになっているだけかもしれないが)

まずは今回説明が必要と思われる用語をあらかじめ以下に示します。「こんな言葉知ってるぜ。馬鹿にすんな」っていうやつもあるかもしれませんがご容赦を
前回使用した用語は改めて説明しません。>>67を参照

ブリーフィング…航空機に搭乗する前に、隊内や同じ機の乗務員らと行う簡易の(その割には30分かかる事もざららしいが)説明会。
動翼…文字通り、動く翼。垂直尾翼のラダ、水平尾翼またはそのエレヴェータ、、主翼のエルロンなどがある。どれも航空機の機動に関係する。
ギア・アップ…航空機の車輪(ランディング・ギア)をしまう事。逆は「ギア・ダウン」。
ピッチ角…機体の前後軸が左右軸に対してなす角。機首の上下を表す。
データ・リンク…正確には戦略デジタル情報リンク(TADIL)。軍事行動の情報を伝達、配信、共有するための通信システム。兵士や兵器の効果的な運用を意図している。
クラック…ハッキングの一種。対象のコンピュータや通信網に打撃を与え、使用を困難または不可能にする行為。
耐Gスーツ…高G下に於いてブラック・アウトを防ぐために下半身に血液が溜まらないようにするための衣類。脚をきつく締め付けるように作られている。
エプロン…ハンガ前の広場。
キャノピ…風防。航空機のコックピット部分を風圧から守るためのガラス。ちなみにF-15Cのキャノピはマッハ2.5を越えると吹っ飛ぶ事があるらしい。
エンゲージ…「交戦開始」のコール。
対電子戦防御(ECCM)…敵の電子戦に対抗して逆にその妨害電波を打ち消す行動。電子戦というのは妨害のし合いの繰り返しである。
ブレイク…「今とっている進路から離脱する」というコール。回避行動を促す意味(命令形)や、急な進路変更で使われる。
一ノ谷…かの有名な源義経による「逆落とし」で敵陣を背後から急襲したもの。それにちなむ。
マズル・フラッシュ…銃撃の際に銃口(マズル)から出る炎(フラッシュ)。
エア・インテイク…空気取入口。これが無いと航空機は飛べない。
近接信管…目標の機体とある程度接近すれば爆発するように設定されている信管。
ドッグ・ファイト…戦闘機同士の格闘戦。現代では起こる事がまず無いが、ステルス技術が進歩すると格闘戦が復活するだろうという意見もある。
ヨー…正確には機体の上下軸に対する機首の左右の運動。通常、垂直尾翼にあるラダを使ってヨーによる方向転換をする。
ポジティヴ…「肯定」のコール。否定するときは「ネガティヴ」。
145A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:33:04 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 10月に入った。
 敵による防空識別圏(ADIZ)への侵入は9月上旬からその回数を増し、基地や施設、都市が爆撃されていった。
 爆撃機の編隊は、必ず護衛の戦闘機を連れているが、それらによって要撃機が次々と落とされていった。
 爆撃機についてくる戦闘機は、J-27A「ジュラーヴリ」が6機。上面が蒼く、下面が灰色に塗装されている。
 その飛行隊は、驚くべき機動で要撃機を翻弄した挙げ句、正確な射撃で狩る。その姿は愛称の訳語、「鶴」とは似ても似つかない、まるで「猛禽」だ。
 このまま敵からのダメージが蓄積していくと、津軽海峡以南の制圧も時間の問題になってしまう。
 そこで、今ブリーフィングが行われている。
 いつものブリーフィングとは違い、今回は大会議室で行われている。そしていつもは数名で行うのに対し、今回は30名ほどが参加していた。
 それもその筈、今回の作戦は、北海道の奪還を目的としている。
 ここに集まったのは、全てが制空戦闘機のパイロットである。敵航空戦力を相手にする、対地・対艦攻撃はお門違いの人材だ。
 国土が侵され、その領域が敵に占領されたのはこの国の歴史において、2年前にあの国が侵攻してきた戦争のみである。なればこそ、この国土奪還作戦は完遂させなければならない。
 ブリーフィング参加者には、北海道の出身者が多かった。
 東遼介空軍即応予備中尉は、この戦争が始まるまでは陸奥県内の大学で軍事学の助教授をやっていた。その大学の学生は、北海道出身者の割合が多い。
 彼本人は塩釜市の出身なので、北海道への直接的な思い入れは無い。しかし――
 国土の奪還は、奪還する側にとって圧倒的に不利である。
 というのも、占領している側はその土地から攻撃の矛先を様々に向ける事が出来るし、いざとなればその土地に居る人民を人質に取る事だって可能なのだ。
 そんな作戦を、今からこの国は行う。「楓作戦」。そう名付けられた。
146A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:34:45 ID:oXsD9FBU

 空軍第3防空団航空群第8飛行隊、通称「レインボウ隊」は、道南の敵航空部隊を無力化する事を、他の航空隊と同様に任命された。危険な任務だ。真っ先に会敵するのだから。
 アズマ中尉らレインボウ隊は1ヶ月ほど前、新しい機体を受領した。
 40式22号イ戦闘機「蓬風」。対地攻撃能力は無いが、その分空戦に集中出来る戦闘機だ。ステルス性よりも機動性を重視した形状で、現時点ではこの機動性を凌ぐ機体は存在しないとされている。
 先に上がった36式4号ロ電子戦機「嵐霧」、33式21号ハ戦闘攻撃機、31式2号警戒管制機(AWACS)「星雲」に続き、彼らは上がる。
 滑走路手前で待機している40式戦は、その胴部のウェポン・ベイに27式短距離空対空誘導弾を左右2本ずつ4本、30式中距離空対空誘導弾を4本装備している。また、翼下のパイロンには27式が2本、30式が2本装備され、計12本のミサイルを搭載している。
 それに加え、小型予備燃料タンクも左右にひとつずつ装着している。
『レインボウ隊、離陸を許可する。風は方位220から10ノット』
 管制塔からの連絡。彼らは滑走路手前で一列に並んで、正確には少しずつ交互にずれながら、滑走路に進入した。
 航空機の操縦は、点検に次ぐ点検である。彼らは滑走路上で、滑走路の点検、エンジンを大出力にしたときの点検、電子機器の点検、油圧系統の最終的な点検などをこなす。動翼が動く。
 キャノピに雨粒が付き始める。この雨粒も、巡航速度になれば風圧で全て飛んでいってしまうだろう。
『雨が降り始めた。迅速な離陸を請う』
『了解。レインボウ隊、離陸する』
 1番機と2番機がギア(車輪)のブレイキを外して動き出す。最初はアイドル状態で3、4番機から離れ、少し自走したらアフタ・バーナ点火、心持ち長く滑走し、離陸する。
 3、4番機は1、2番機が過ぎるまで、その排気で大きく揺れる。今その揺れがなくなった。滑走路上を陽炎が揺らめく。
 アズマは右を見る。隣にはレインボウ4、浪川進太郎空軍中尉が繰る同型機だ。アズマは一度管制塔を見る。そして敬礼し、今度は僚機を見て頷く。これが合図だ。
 アイドル状態の位置にあるスロットル・レヴァを前に押す。アフタ・バーナ点火。滑走を開始する。右にレインボウ4が併走。
「V1」アズマはそう呟く。
 決心速度、つまりこれを過ぎれば、あとはエンジンが不調でも飛ぶしかない。幸い、エンジンに異常は発生しなかった。改めて整備員に感謝する。
 練習機に乗っていた時分、あらゆる事を、声を出して確認せよという教官の教えを反芻する。即応予備役になってから、そうする事が常だった。
「VR」
 操縦桿を軽く引き、カナード翼が動く。景色が空だけになる。ノーズ・ギア(前輪)はすぐに上がり、メイン・ギア(後輪)も地面を離れる。同時にナミカワ機も機首が上がる。
「V2」
 燃料節約のためアフタ・バーナを切る。それ無しでも安定した上昇が出来る速度だし、スーパ・クルーズ性能が備わっているためこのままでも音速が出る。
 ギア・アップ。完全に、彼は空の人になった。
 ピッチ角を50度にして上昇、雲の上に出る。1番機と2番機が旋回中。スムースに合流し、北を目指す。
147A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:35:58 ID:oXsD9FBU
 後方、奥羽山脈上空で旋回飛行するAWACS、コールサイン「オライオン」が戦闘空域までの航路をレーダ上に転送する。それに従い、彼らは飛ぶ。
『オライオンよりレインボウ、君たちはこのまま、上がってきた敵機を叩け。現在スコール隊が敵航空基地及びレーダ・サイトを無力化中だ』
『敵機は確認出来るか?』レインボウ1が問う。
『千歳と奥尻から戦闘機が上がった。奥尻組はスリート隊が対処している。君たちは千歳組だ。到達まで10分』
『今の時期、海に落ちたら悲惨だな』レインボウ4、ナミカワ中尉が軽口を言う。
 今は秋、紅葉の季節だ。次第に寒くなっていく。温度の低い海水は、体力を急速に奪っていく。しかもこの日は雨だ。気温の低下は著しい。しかし今は雲の上、実感は無い。
「じゃあ、落ちないように飛べよ」アズマはナミカワの言葉にそう声をかける。
『オーケイ、じゃあ、出来るだけ陸の上空で戦おうぜ』
『落ちる事を考えるな、アホ』
 隊長、後藤明人空軍中佐が会話に割り込む。
『お前ら、いくらアクティヴ・ステルス下にあるからって、油断してるなよ。いつ「タイフーン」が落ちるかわからねえんだから』
 現在、「タイフーン隊」の36式電戦「嵐霧」6機によって、敵防空レーダや海上レーダでこの作戦の動向が捕捉されないように電子戦が行われている。そしてそれと平行して敵のデータ・リンクをクラックして虚偽の情報を与えている。
 こうする事によって、実際には存在しているものをモニタ上では存在していないものとして扱わせ、逆に存在しないものをあたかも存在しているように見せる事で、敵の目を欺くのである。
 この欺瞞情報で敵が四苦八苦している間に、敵拠点、例えばレーダ・サイトや滑走路、変電所や通信網などを潰す。
 これがアクティヴ・ステルスだ。
 2年前、この国がこの戦術によって敗れていた。今度はこちらがそれを、しかもより堅牢なシステムで用いるのだ。
 タイフーン隊はその護衛として33式戦攻を、各電子戦機に2機付けている。しかし護衛にも限度はある。今や敵地となった北海道の深くにまで侵入し、無事で居られるはずがないと考えるのは妥当な事である。
 まだ、タイフーンの墜落は報じられていない。
『レーダに機影を確認』ゴトウ中佐の一言で、隊の全員に緊張が走る。『数は12。いや、16。全機、方位010、ヘッドオン』
『航空隊全隊、交戦を許可する』とオライオン。
『スリート隊、エンゲージ』
 奥尻島方面に向かっている手筈のスリート隊の交戦宣言が混線によってヘッドフォンから聞こえる。
 アズマは唾を飲み込んだ。
148A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:37:09 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 スクランブル。敵の先制攻撃。オリガ・ニコライエヴナ・ザパドノポリェワ空軍大尉はそれを基地内の食堂で聞いた。
 この日、彼女の所属するスピルト隊はスクランブル配置ではなかった。それでもいつでも飛び立てる準備だけはしてある。スクランブル配置の機が飛び立っていく。
 ザパドノポリェワ大尉はロッカ・ルームに即座に移動し、フライト・スーツを着る。つなぎの上に耐Gスーツを装着し、パラシュート、ヘルメットを持って部屋から出、機械類の点検を完了させたらハンガに向かってまっすぐ歩いていく。
 愛機J-27Aジュラーヴリは既にハンガ前のエプロンで雨に濡れていた。交互に並んでいる。周りは整備員たちが雨具を着けつつ忙しい。
 その中のファイルを持ったひとりの男がザパドノポリェワに気付いて彼女を一瞥した。彼女はその男のいる主翼の下に行き、手荷物を地面に置く。
「整備は上々だ。一応故障箇所は見当たらなかった」
「ダー。じゃあ、確認するから」
 男からファイルを受け取り、彼女は時計回りに機体を見て回る。
 「見て回る」と作者は書いたが、正確を期する表現にするなら「異常個所が無いかを隈なくチェックして回る」である。
 兵装はウェポン・ベイにP-12「ストレーラ」長距離ミサイル4本、翼下パイロンにP-17「ドロティーク」中距離ミサイル2本、P-13「ソスーリカ」短距離ミサイルが2本だ。
 チェックが終わり、彼女はファイルを男に返す。そして互いに敬礼しあった後、ザパドノリェワは梯子を上って操縦席の中に納まる。梯子が外される。彼女はキャノピを閉める。
 チェック項目を消化していく。動翼やエア・ブレイキの動作確認もここでなされる。消化しつくした頃には、スクランブルから20分が経過していた。
 整備員が有線インカムのプラグを機体から引き抜く。誘導員が機の前に出て誘導する。
 まもなく、彼女は空の人になる。
149A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:37:38 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

『敵航空機、ミサイル発射』
 AWACSからの警戒通信。
 敵からの攻撃は中距離射程のセミ・アクティヴ・レーダ誘導ミサイルである。母機が目標にレーダ電波を照射し、その反射波を頼りに標的に向かっていく。
『ミストA[アルファ]1、エンゲージ』どこかからのコール。
 ミストA隊は33式21号ニ電子戦機「剛霧」によって他の飛行隊機に混じって飛び、細かい電子戦を行うのが任務である。今はレーダ電波を逆の周波数で打ち消している。
 誘導を失ったミサイルは、ただまっすぐ飛行するだけのものに過ぎない。
『道を空けろ。ミサイル様のお通りだ』
 冗談交じりに、ミサイルの予測航路がAWACSから送られる。そしてそこを、高速でミサイルが通り過ぎる。
 間もなく、短距離赤外線誘導ミサイルの射程範囲になる。アズマがそう考えた瞬間、ゴトウ中佐が宣言する。
『クロッカより全機へ。これより自由戦闘を開始する。だが単独で戦闘はするな。必ず2機1組で敵を狩れ。分かったか?』
『レインボウ2、ラージャ』
「3」
『4』
『よし。じゃ、生きて会おう。タケ、着いて来い。クロッカ、エンゲージ』
 それに続いて編隊機もコール。タケこと石塚健も続ける。
『ウィルコ。タケ、エンゲージ』
 1、2番機が降下する。3、4番機の指揮はアズマに一任された。
「そちらも、生きて会いましょう」
『帰ったら隊長の奢りっすからね』
『俺から2万借りてる分際で何を言う!』
 隊長機が機体を振る。それを見届けてから、彼らは上昇した。
150A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:38:09 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 チトセから離陸して10分、間も無く会敵する。レーダ上の進行方向には、敵の姿が時折現れては消えていく。
 味方の警戒管制機や電子戦機は既に上がっているはずだが、対電子戦防御(ECCM)が作動していない。オリガ・ニコライエヴナ・ザパドノポリェワ空軍大尉は訝しく思う。
『スピルト1より警戒管制機、対電子戦防御を要請する』
 隊長機も異変に気付いていた。しかし警戒管制機の応答は、それを拒否するものだった。
『敵のクラックにより、こちらのデータ・リンクにコンピュータ・ウィルスが流された。過負荷状態のため、無線による通信しか出来ない』
「役立たずね」ザパドノポリェワは一蹴する。「隊長、データ・リンクの解除を進言します」
『君は黙っていろ』
 隊長、アンドレイ・ユーリイエヴィチ・グレブネフ空軍少佐が嗜める。
『敵を引き付けるだけ引き付ける。機動性ではこちらの方が上だ。それと、今からスピルト隊は警戒管制機とのデータ・リンクを一次的に解除する』
 宣言の後、編隊は高度を下げる。眼下は雲海。天気予報では、下界は雨だ。GPSの反応が無い。位置が分からない。この機のコンピュータにもウィルスが入り込んでいる。
『火器管制システムは無事だな。ストレーラを発射する。誘導は発射8秒後に設定』
「設定完了」他の編隊機も同様に返す。
『発射準備。発射後は分散しエレメントで行動しろ』
 ザパドノポリェワは操縦桿の親指で撃つ兵装を選択する。HMDの表示が変わる。そしてその表示が「П-12 СТРЕЛА ДДР」になったのを確認し、スイッチに親指を添える。
『撃て』
 発射スイッチに添えていた親指に力を入れる。彼女はこの瞬間、いつも思う。このスイッチは軽すぎる、と。
151A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:39:16 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

『第二派攻撃! アクティヴ・レーダ誘導ミサイル! 全機ブレイク!』
 オライオンが叫ぶ。ミサイルがレーダ電波を目標に発し、その反射波によって自身を目標に向かわせるものだ。このような攻撃は、大抵電子戦機に向けられる。
 戦闘機を電子戦機に改造した33式ニ電戦はともかく、電子戦のみを想定した36式電戦にはミサイルを避けるような機動性など望めない。
 それに回避行動をとっている最中は、どうしても電子戦・情報戦どころではなくなる。
『最終誘導開始を確認! 周波数特定! いけます!』そう、混線で現状が聞こえる。
 そんな中で、高高度を飛行中のレインボウ3、4はその進路を変えずに北上する。
『あいつらかね、今のアクティヴ・レーダの連中』ナミカワ中尉からで通信が入る。
 あいつら――件の蒼灰J-27Aの編隊だ。
「そうだろうな。ぶっちゃけ出来る事なら手合わせしたくない相手だ」
『ンな事言っちゃって、あいつらを落としたの、お前が初めてなんだぜ?』
 半月前、レインボウ隊はスクランブルで爆撃機と例のJ-27Aの編隊を相手にした。戦果は、爆撃機6、戦闘機2。その半数、爆撃機2、戦闘機2を、アズマが落としていた。
 また、墜落こそしなかったものの、戦闘機1機の右の垂直尾翼と水平尾翼をもぎ取っていた。
 損害は、2番機と4番機の被弾のみ。2人とも無事だった。
 「蒼灰の飛行隊」にそこまで損害を与えたのは彼らが初めてだし、蒼灰相手にそれだけの損害しか受けなかったのも彼らが初めてだった。
「奴らは息が合ってるからな、下手な機動じゃ落とされる。それにミサイルの機動性に頼るばかりじゃ、あの時の二の舞になるしな」
『へいへい、肝に銘じとくぜ。で、どうする? そろそろ敵の上だけど』
「挟み撃ちしようと思う。このまま敵のいる高度にスプリットS」
『オーケイ。一ノ谷戦術だ』
「逆落としか、面白いな。オーリエント、エンゲージ」
『んだべ? ブーメラン、エンゲージ』
 予備の燃料タンクを切り離す。そして機体を同時に反転、背面飛行でしばらく直進してから、彼らは花火の中に飛び込む。
152A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:40:02 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 雲の下では、混戦が繰り広げられていた。
 ザパドノポリェワ機の追いかける機が右に旋回する。減速が甘い。
 彼女はそれよりも小さい半径の旋回をする。体にかかる大きなG。眩暈にも似た一瞬を過ぎ、彼女の機体の前を敵機が横切る。
 咄嗟に彼女は操縦桿のトリガを引く。HMDの表示に従えば、機首表示の方向に20ミリメートル口径の弾丸が流れていく。
 一瞬、敵機のパイロットと目が合う。いや、それはザパドノポリェワの錯覚か。しかし、そのパイロットは確実にこちらを見た。
 この時点でマズル・フラッシュを確認しても、もう遅い。両機の距離は100メートルを切っている。1秒未満で弾丸は狙った場所に到達する。そこは、コックピットだ。
 敵機の機首が折れる。破片がエア・インテイクに入り、エンジンが異常燃焼、爆発する。パイロットは既にただの肉塊になっているはずだ。
 彼女はそれを無視し、僚機に合流しようと上昇する。
 雲を抜ける。目の前には太陽。いつの間にかあんなに高い。眩しさに思わず瞬く。そのせいで、4番機が被弾した事に一瞬遅れて気付いた。
153A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:41:14 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 正面の雲の白を背景に、蒼い機が横切る。あの塗装は、「蒼灰の飛行隊」の機だ! ロック・オン状態になっている。それに気付いたのか、回避行動を始めた。
 アズマはそちらに方向を調整する。背後には太陽。いい条件だ。トリガを引く。
「オーリエント、ライフル」
 レティクル内のガン・クロスが敵機に重なる。一瞬の事だ。
 だが、弾丸は敵機の双垂直尾翼の間、双発のエンジンのどちらかを直撃した。火を噴く。その脇を2機は通り過ぎる。雲の中に入る。
「やったか?」
『うんにゃ、まだっぽい。俺がやる』
 機体を再び上昇させ、雲の上に出る。そして確認する。命中したのは左のエンジンだ。
 ナミカワ機が敵機の背後を取る。アズマはその上で後方を警戒する。こちらに一直線に向かってくる敵機1。
 ナミカワ機が銃撃。敵機の胴部に命中。爆発する。
『ブーメラン、スプラッシュ1! やったぜ、蒼灰!』
「ナミカワ、ブレイク!」
『うおっと!』
 ナミカワ機がロールした後、そこを銃弾が通り過ぎる。次の瞬間には蒼い機も。
「あれは……さっきの奴の僚機か?」
『だとしたらおもしれえ!』
 その蒼灰はエア・ブレイキを開いて旋回、こちらに機首を向ける。同時に、互いにロック・オン。敵機体下で動き。ウェポン・ベイを開いたのだ。そこにあるのは――
「SRAAM[エスラーム]!」
 アズマはすかさずアフタ・バーナ点火。兵装はこちらもSRAAM、つまり短射程空対空ミサイルのはずだ。発射。そして敵機の上を通り抜け、上昇する。ナミカワ機も同様にミサイルを撃つ。
 ミサイル発射のコールをする間もなく、敵からミサイルが来る。現代のSRAAMの機動性は、目を見張るものがある。
 ロック・オンしたのであれば、目標が後方にあっても反転してそれを追尾する。どんな回避機動をとっても、追尾してくる。
「ナミカワ! フレア!」
 SRAAMはその性質上、赤外線誘導である。航空機のエンジン部分や排気、そして機体と大気の摩擦熱から放射される赤外線をシーカで画像として探知し、それに向かっていく。
 いくらミサイルそれ自体の記憶領域に目標の情報があっても、赤外線誘導であれば比較的簡単に欺瞞出来る。フレアはその欺瞞のひとつで、航空機と同様の周波数特性を持ち、強力な熱源を短時間発生させるものだ。
 機体胴部のチャフ・フレア・ディスペンサから長方形のフレアが3つ射出される。瞬時に1000℃にもなったそれらに、ミサイルはおびき寄せられる。
 これで先ほどのミサイルの脅威は少なくとも去った。アズマは機を立て直す。そして後方を見た。
 こちらのミサイルが近接信管によって敵機の間近で爆発したようだ。破片によってダメージを被ったらしい。右主翼から燃料が漏れている。
 彼らはその機を追った。
154A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:46:52 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 2機の40式戦に追い回されたJ-27Aは、1機の40式戦の機動に翻弄された挙句に機銃弾の被弾によって航行不能になる。
 その愛機は空中分解の後、爆発。ザパドノポリェワはその様子を、ベイルアウト後、パラシュートで降下する最中にはっきりと目に焼き付けた。
 負けたのだ。それも、えらくあっさりと。
 一瞬見えた機体の機首横に書いてある「166」という番号が、頭を過ぎる。その機体は、以前、そう半月ほど前、僚機を2機も落とし、彼女の乗る機体から右の垂直尾翼と水平尾翼をもぎ取った機ではなかったか。
「2度も……2度も負けた……!」
 悔しさでいっぱいになる。パラシュートの紐を握る手に力が入る。それから10秒ほどして、彼女は紅葉の森に消えた。
155A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 12:49:18 ID:oXsD9FBU
  *  *  *

 しくじった。
 アズマはそう、歯ぎしりをする。
 ドッグ・ファイトの最中、敵機に接触し左の主翼を半分ほど失ったのだ。燃料が噴き出している。今はスロットルをアフタ・バーナぎりぎりまで押し、直線飛行中だ。
 40式戦は、極めてパワフルなエンジンを2基搭載している。1基当たり約15000キログラムという推力は、今のようにミサイルを数本搭載したままでも推力重量比が1を超える。
 これは揚力を生み出さずに、速度ゼロの状態からエンジン推力のみで垂直上昇が出来るという事だ。
 現在、700ノットで飛行中だ。左主翼を半分失った状態でも安定して飛行出来ている。例えるなら、主翼の必要無いミサイルのような飛び方である。
『おい、アズマ、大丈夫か?』
 平行して飛ぶナミカワ中尉が訊く。
「俺は何とか。でもそろそろ燃料が切れそうだ」
『あとどれくらいもつ?』
「5分もてばいいくらい」
 今、内浦湾の上空だ。そこから三沢まで、150キロメートルほどだろうか。間に合わない。
「隊長と合流してくれ。この戦況なら、このあたりに不時着しても大丈夫だ」
『アホかお前は!』ナミカワは叫ぶ。『お前を置いてけるかよ!』
「俺を護衛して飛んでたら、それこそお前が落とされるだろ。ほら、チェック・シックス(後方警戒)」
 後方に敵機。蒼灰ではない。2機編隊。よく今まで生き残ったものだ。銃撃。アズマ機は右にヨー(垂直尾翼で移動)。次の瞬間、その2機が爆発した。
『左が無いのはアズマか』
 隊長、ゴトウ中佐だ。続いてイシヅカ機。この2機によって先の敵機は落とされたのだ。
「ポジティヴ。敵にぶつけられました」
『まったく、下方注意を怠るなと言ったのに……。まあいい。燃料はどれくらいだ?』
「あと3分ほど」
『じゃあ仕方ない。先に帰ってるぞ。お前はその辺に脱出するなり何なりしてろ。すぐに救助をよこす。メシ奢るから、ちゃんと生きて帰って来い』
「ウィルコ。ありがとうございます」
『ちょっ、隊長!』ナミカワが抗議に叫ぶ。
『おいナミカワ、アズマとうちの上陸部隊を信じてやれ。お前がそんなんじゃ、助かる奴らが助からねえ』
 ナミカワは何も言わない。後藤が続ける。
『俺らは一時三沢で補給を受けてから、もう一度来る。救難信号を発しておけ』
「了解」
 3機編隊が左に遠ざかる。アズマはそれに敬礼をし、海岸線を目指すためヨーで移動する。
 内浦湾の西側に導滞着陸出来そうな場所が無いか探してみたが、結局それは見つからない。燃料切れまで1分を切った。
「受領したばっかだけど……」
 彼は仕方無しに高度を下げる。雲の下は大雨だった。高度100メートル。真正面に乙部山。渡島県と胆振県の県境にある山だ。
 スロットル・レヴァを引き、アイドル状態に。音速から亜音速に移行。500ノット。450ノット。400ノット。
 機体が前後軸に対して時計回りに回転し始める。左右で生み出す揚力が違うのだ。低速度域だと揚力の影響をダイレクトに受ける。
「レインボウ3、エマージェンシ、ベイルアウト」
 コールの後、左手にあるイジェクション・シートの安全装置を解除し、機首を60度上げる。相変わらず回転中。
 背筋を伸ばし、ラダ・ペダルから両足を離し、股の間にあるイジェクション・レヴァを引いた。
 ショルダ・ベルトが締まる。キャノピが火薬で弾け跳ぶ。背骨を縦方向に圧縮するかのような衝撃。座席ごと彼は機外に放出される。歯を食いしばり、12Gに耐える。
 急激な制動に一瞬目が回る。運よくコックピットが上方にきたときに射出されたようだ。姿勢が安定すると彼はパラシュートの紐を引いて、落下地点を調整する。
 風はそんなに強くない。雨に濡れた紅葉が美しい。彼は出来るだけ、広葉樹林のあるあたりを目指す。
 機体が回転しながら放物線を描いて遠ざかるのが見えた。もう噴き出す燃料すらない。
 遠ざかっていった機体は吸い込まれるように山の中腹に墜落し、爆発。遅れてその音が聞こえた。
156A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/11(火) 13:26:22 ID:oXsD9FBU
 以上、第2話(?)。
 次から「2人きり」スレ的に本番です。

 お察しの通り、「戦闘妖精・雪風」を読んだ事がありますし、空戦のシーンはこれに影響を受けています。
 ちなみに舞台設定としては、「国号が『日本国』『大日本帝国』ではない日本」です。行政区分を江戸時代以前のそれに準拠させたのは「っぽく」しようとしたから。
 敵国も、「ロシア連邦」や「ソヴィエト社会主義連邦共和国」ではないものですが、少なくともスラヴ系の人種によるロシア語の国である事は言っておきましょう。

 軍用機の名称は、「仮日本」の場合は制式配備された年号の下二桁、制式配備された同種の機体の通し番号、仕様の違いを正式名としています。
例:40式22号イ戦闘機「蓬風」…年号の下二桁(40式)、同型の機体の通し番号(21号)、仕様の違い(イ)。愛称「〜風」は戦闘機を意味する。
 また、戦闘機を他の用途として改造して使う事もよくあるので、(例:F-4EJ戦闘機→RF-4EJ偵察機、F/A-18E戦闘機→EA-18G電子戦機)それにも対応。
例:33式21号ニ戦闘攻撃機「剛雷」→33式21号ニ電子戦機「剛霧」。愛称「〜雷」は戦闘攻撃機、「〜霧」は電子戦機を意味する。
 「仮敵国」の場合は戦闘機を表す「J」とその通し番号、仕様の違いを正式名としています。なお、この機種を現すアルファベットは中国空軍のそれをそのまま使用しています。「J」は「Ж」にあたるのかな?
例:J-27A「ジュラーヴリ」:27番目に制式配備された戦闘機のA仕様。愛称は結構適当だったり。ちなみにロシアの戦闘機Su-27の愛称は「ジュラーヴリク(鶴ちゃん)」です。

 以上、チラシの裏でした。
 他の方の作品、期待しております。作者さんがんばって。
157135:2007/09/11(火) 15:24:26 ID:TSH1xwFe
ちょwマジで盛り上がってきたww

MAXは本当に甘いです。ブラック飲めない俺がいうんだから(ry

お二人とも続き頑張ってください。


俺も書かねば…。
158名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 17:14:41 ID:wTl1Hg6B
>>140
GJ!
マリーかわいいな。 てか、そこで切るのかよw

今回の舞台のPAをググって妄想の足しにしたw
出来て間もないからか、情報少なくてハンカチの件は判らなかったよ。


>>156
こちらもGJ!
いよいよ次回から”二人きり”シチュ突入?
あと、前回聞いた世界設定や機体名についての回答thxです。

…ジュラーヴリクちゃん (*´д`*)ハァハァ
159名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 19:24:22 ID:juJYBV2O
なんかキモい軍オタがいるな
160名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 20:20:43 ID:1E2OUiqb
某・スレで

なんか設定よくわかんないよ、ボケ

のレス二つも貰った自分的には十分神SS、GJ!!!
161初心者:2007/09/11(火) 21:34:58 ID:+khWhBhn
>>127です
来週投下と書きましたが、思ったより暇だったので筆が進みました
ただ、自分の好きに書いたので、かなり設定に無理があります…
気に入らなければ、読み飛ばして下さい




「……、とりあえず、お風呂に入りたいんですけど、入っても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だと思うよ。あ、服の替えはある?」
「あ、そういえば…」
どうしよう、と困った風に呟く
「確か…、そこのタンスに恵美ちゃんのが…。確認取るからちょっと待ってて」
「はい、ありがとうございます。・・・でも、なんでそんなこと知ってるんですか?」
「え!?い、いや、俺は何回か泊まったことあるし…、その…」
思わぬ質問に、俺はしどろもどろになりながら答える
「フフッ、冗談ですよ。先輩がそんな邪なことを考える人じゃないのは知ってますから」
そう言いながら笑う彼女に、俺は思わずドキッとしてしまう
そういえば彼女の事をしっかりと見たのは、これが初めてかもしれない
腰までかかる髪に、中学生とは思えない長身。今時の女の子にしては長めのスカートから伸びる脚は、足フェチの人にはたまらな(ry
162初心者:2007/09/11(火) 21:36:02 ID:+khWhBhn
とにかく、彼女はとても魅力的だった
やばっ、俺は何をドキドキして・・
「先輩、メールが来たみたいですよ」
気付けば携帯から聞き慣れた着信音が流れていた
「あ、やばっ」
急いでメールを見る
「好きなの着ていいって。あと、頑張ってって書いてあるけど・・・。なにコレ?」
「あ、い、いや、何でもないですっ!」
何故か解らないが、彼女が急に焦り出した。なんなんだ?
「ま、いいけど。風呂に入らないの?」
「えっと・・・その・・・」
どうしたんだろう?さっきからずっとボーっとしてるし。あ、もしかして・・・
「俺が風呂を覗くと思ってる?大丈夫だよ、そんなことしないから」
「い、いえ、そういう訳では無くて・・・」
「じゃあ、なんで?」
「・・・」
なんでもないです。そう言い残し、彼女はお風呂場に向かった
本当にさっきからなんなんだ?急に焦りだすし・・・
163初心者:2007/09/11(火) 21:37:46 ID:+khWhBhn
ま、いいか。考えても何か解るわけでもないし。考えるのを止めて、漫画を読み出した。



加奈が風呂に入ってから5分弱、腹が減ったなぁ、などと考えていると彼女が大きな声を出して、俺を呼んだ
「せ、先輩!ちょっと来て下さい!」
何かあったようで、彼女の声は若干涙声になっている
俺は急いで風呂場に行き、ドア越しに彼女に呼び掛ける
「加奈ちゃん、大丈夫!?何があったの!?」
「先輩、お願いです、シャワーを取って下さい!」
へ?シャワー?どゆこと?
いまいち状況が掴めず混乱する俺に、彼女は必死になって呼び掛ける
「先輩、お願いです!早く!」
「わ、わかった!」
そう言ってドアを開けると、いまさらながらここは風呂だということを思い出す。
風呂の中ということは、当然加奈も裸なわけで・・・
「う、うわぁぁぁ!」
思わず外に飛び出てしまった俺に、再び彼女が呼び掛ける
「先輩、早くシャワーを!」
164初心者:2007/09/11(火) 21:40:38 ID:+khWhBhn
「じ、自分でで取ればいいじゃないかぁ!」
「場所がわからないんです、早くしてください!目が痛くて・・・」
俺は彼女の方は見ないようにしながらシャワーを渡す





「・・・で、どうしたの?」
彼女にシャワーを浴びせられ、びしょびしょになった服を脱ぎながら聞いてみる
「・・・すみませんでした。実は私、一人で髪が洗えないんです・・・」
ん?なんだって?
「もっかい言って?」
「だから、一人では髪が洗えないんです!」
彼女はかなり恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしながら叫ぶ
しかし、中学生にもなって髪が洗えないとは・・・。これはかなり萌え(ry
じゃなくて、
「なんで一人で洗えないの?」
165初心者:2007/09/11(火) 21:41:34 ID:+khWhBhn
「お母さんが私とお風呂に入るのが好きで、ずっと一緒に入っているんです。それで、自分では髪を殆んど洗ったことが無くて・・・」
一人で洗うと、必ず目にシャンプーが入ってしまうそうだ
「じゃあ今日は洗わなければ良かったじゃないか」
「先輩は男だからわからないかもしれませんが、女性にとって髪はとても大切なものなんですよ。だから、洗わない訳には、いかなかったんです」
そんなものなのかな?実際男の俺にはよくわからない。ま、いいか。
「それじゃごゆっくり」
「ま、待って下さい!」
風呂場から出て行こうとした俺を呼び止める
「先輩、一緒に入りませんか?」
は?なんですと?
166初心者:2007/09/11(火) 21:43:48 ID:+khWhBhn
「べ、別に変な意味ではなくてですね!先輩ずぶ濡れですし、寒いと思いまして・・・。それに、まだ髪をしっかり洗えていませんし」
なるほど、俺に髪を洗って欲しいという訳か。
しかし、ここで素直にハイという訳にはいかない。
なぜなら、ここは風呂場で、彼女は当然風呂に入る格好をしているのだ。
俺は聖人ではないので、欲望を抑えるのは不可能な近い。
「無理に決まってるだろ?」
結論は、もちろん無理
「で、でも・・・」
「君は女の子で、俺も一応男なんだよ?慎みをもちなさい」
そう言って部屋に戻ろうとした俺の腕をを彼女が掴む。
え?さっきは風呂にいたじゃん・・
167初心者:2007/09/11(火) 21:44:59 ID:+khWhBhn
もう一度言います。いえ、何度でも言います。
ここは風呂場で、彼女はさっきまで風呂に入っていました
ということは・・・
「な、何してんだよ!ちょ、君は今裸じゃん!てか、服が濡れる!」
「お願いします、一緒に入って下さい!」
彼女の顔が赤いのは、風呂のせいか羞恥のせいかわからない。
しかし、俺の顔も真っ赤だった。これは風呂のせいにしておこう
「は、離してよ!」
「一緒に入ってくれれば離します!」
彼女はなぜか決意を固めた顔をしていて、俺がYESと言わなければ絶対に離そうとしなかった
「わ、わかった!わかったから離して!さっきから胸が」
「え?・・・キャッ!」
彼女は悲鳴をあげて胸を隠した
あぁもう可愛いな!
「す、すみません・・・。それじゃ、入りましょう」
「あ、ああ・・・」
しょうがない、入るか…。い、いや、決してやましい気持ちがあるわけじゃないですよ?
たただ、一度約束したことは守らなきゃ…、って誰に言い訳してるんだ?
「先輩?どうしました?」
「い、いや、なんでもないよ」
俺は覚悟を決めて、風呂に入って行く。
どうなることやら・・・
168初心者:2007/09/11(火) 21:48:30 ID:+khWhBhn
はい、という訳で、自分の欲望のままに書いてしまいました・・・
次回からは本番に入って行く予定です
しかし、二人きりという設定を全然生かせていませんね・・・
アドバイスも、一応気をつけたのですが、殆んど変わっていないですね
チラ裏から失礼しました
169名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 21:52:28 ID:GfknvrLX
>>156
GJ!なんかオリガさんはツンデレかもと妄想している。年齢がわからないけど。
170名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 22:15:57 ID:GfknvrLX
>>168
ごめん。更新せずに上の作品にレス返してなんかタイミング悪くなった。
GJ!強引な展開だけどなんかもう風呂場というシチュだけでご飯何杯も食える。
次は早くも本番…できれば風呂場ならではの不自由な二人っきり具合を見せてほしい。
浴室が狭くてどうしてもあちこち密着するとか、タイルが痛くて横になれず仕方なく浴槽内で座位、あるいは立位で初エッチとか。
17181 ◆DlPgAmm21I :2007/09/12(水) 01:36:35 ID:pajJQeiR
#ちょっと今日はお休みしようかと思って今までの分をwikiに放り込んだら、
#コメントをつけられないページ(TEXTonly)にしちゃって、その上削除ができないorz
#ドウシヨウ
#コメントはなくてもokかな・・・?
#それじゃ、また明日ー
#(つ、続きは頭の中にできてるんだからねっ?! ほんとだからねっ?!)
172名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 11:42:34 ID:hTcSYYSi
>>156
次から、遂に二人きり突入ですね!
エロシーンにも期待!

>>166
風呂場か…
青年よ、君の理性がどこまで持つか見せてもらう。

二人ともGJ!

>>169
>>9-10を見るとツンデレだけどね。
どこまでそれを元にするかは、作者さんに委ねてるし。
173A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/12(水) 14:59:48 ID:IlpO5BpS
ツンデレな人物を書いたことがないのでどこまでそれっぽく書けるかが今の課題
ただ、>>9-10よりかはツンデレ分を減らして書くかも
174”管理”人:2007/09/12(水) 16:16:42 ID:KS/lEp/w
>>171
差分から推測してコメント欄をつけてみたけど、これでおk?
175白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/13(木) 00:12:09 ID:ZNSz0XRP
 けたたましく響くブザーの音で我に返り、智信はようやく留美の首から手を離した。
 それは――留美の生命が尽きた証であり、同時に、扉が開く合図でもあった。
 気が付けば、悪魔は跡形も無く消え去っていて、もう、声も聞こえなくなっていた。
 智信は、留美の亡骸の横にある水色の箱を手に取り、ついにロックが解除された『開かない扉』へと歩を進める。
 と、その途中。智信は何かに躓いて、転倒した。どうやら、自分で適当に置いておいたペットボトルに足をとられたらしかった。
 その拍子に、持っていた箱を落としてしまい、蓋が開いて、中身が床に散らばる。
 空になったペットボトルとカロリーメイトの箱……小さく折りたたまれた用紙……
 智信は、それらを拾い集め、箱に戻すついでに、折りたたまれた紙を開いてみた。
 留美が外の世界に、どんな思い残しがあったのか、知っておきたかった。
 これから先。智信は、その無念をずっと、背負っていかなければならないのだから。
 用紙は、びっしりと、小さな文字で埋められていた。家族、友人に宛てたメッセージらしい。
 智信は夢中で文章を追った。その内容から、留美がどのような日常生活を送っていたのかを、ある程度窺い知ることができた。
 家は父子家庭で、年頃の女の子にしては珍しく、父親べったりであること……
 同級生の中でも、理香と秋の二人とは特に仲が良く、いつも三人で出かけること……
 この白い部屋でしか留美を知らない智信には、それらの記述はまるで、別世界の出来事のようで、とても新鮮に映った。
 読み進めていく内、智信の目が、ふと止まる。用紙を持つ手が、小刻みに震える。
 最後に書かれていたメッセージは……誰あろう、智信に向けたものだったのだから。

 智信さんへ。
 智信さんがこの文章を読んでいるっていうことは……私はもう、この世にいないのでしょう。
 残念ですけど、これも運命だと思って受け入れます。
 私は私なりに、一生懸命頑張って生きたつもりです。お父さんも、みんなも、わかってくれると思います。
 それに……私が死んでしまうのも勿論嫌ですけど、智信さんが死んでしまって、私だけ生き残るのも、同じくらい嫌ですから。
 やっぱり、どちらかしか助からない、なんて、そんな終わり方しかなかったのが、とても悔しくて、悲しいです。
 二人で一緒にここを出たかったです。それで、智信さんと一緒に、遊園地で遊んだり、食事をしたりしながら、この部屋で過ごした辛い日々を談笑の種にしてしまいたかった。
 と、そんなことばっかり書いても、智信さんの気が滅入っちゃいますよね。ごめんなさい。ルールを見た時のショックが、まだ抜けないみたいです。
 えっと、それから。智信さんには、心からの、ありがとうを言わせてください。
 思い返せば、智信さんには、最初から最後まで、励まされてばかりでしたね。
 私は、最後に智信さんみたいな人と会えて、嬉しかったです。こんな場所だけど、優しい智信さんと一緒でよかったです。
 もう、私はいないから……何を言われても、迷惑にはなりませんよね?
 だから、最後に、一言だけ。智信さん、大好きです。
 
 智信は、あらん限りの声を振り絞り、絶叫した。留美のベッドに駆け寄ると、そのすぐ横に跪き、拳で、床を何度も叩いた。
 自分への怒りと、この計画の首謀者への怒りが綯い交ぜになって、頭がどうにかなりそうだった。
 ……いや。もしかしたら、悪魔の幻覚に囚われ、留美の首に手をかけた時点で、智信は狂っていたのかもしれないが。

176白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/13(木) 00:12:54 ID:ZNSz0XRP
 どのくらいの時間、呆然としていただろうか。
 智信は立ち上がり、留美の手を取った。手からは温もりが消え、薄っすらと冷たくなっていた。
 智信はその手を、胸の上で組み合わせた。その姿に、智信は、留美と最初に出会った日のことを思い出す。
 脳裏に、このベッドで、気持ち良さそうに眠っていた留美の姿がフラッシュバックする。
 でも……今、目の前にいる留美は、あの時と違って、眠っているわけじゃない。心臓は止まっていて、息をしていなくて、体は冷たくて……
 そう。僕は、彼女を殺した。首を絞めて殺した。ずっと一緒にいたのに殺した。無抵抗なのに殺した。生き残る為に殺した……!
「僕は……優しくなんて……なかった」
 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。
「すまない……最後の最後で、弱かった僕を、許してくれ……」
 もはや永遠に返事をしない留美にそれだけ言うと、智信は水色の箱を抱えて、逃げるように『開かない扉』へと向かった。
 液晶画面にあった『十九』の数字は消えていて、残っているのは、智信と留美を最後まで苦しめた、ルールの表示だけだった。
 智信は震える手で、ドアノブに手をかける。開かないのではないか、などという根拠のない不安が頭を過ぎり、一瞬、ノブを回すのを躊躇う。
 それでも、思い切って、手に力を込める。何度回そうとしても、ぴくりとも動かなかったノブは、驚くほど簡単に回り――扉は、ゆっくりと、開いた。
 そして、扉の外に進もうとして、智信は、自分の目を疑った。何故なら、扉の外に広がっていた光景は――
177白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/13(木) 00:13:59 ID:ZNSz0XRP
■幕間三『一級市民』

 広く、長い廊下を、二人の人間が並んで歩いていた。
 二人とも白衣を身に纏っており、片方は長い黒髪を後ろで束ねた女性、片方は金髪の男性だ。
「本当にいいのですか? このまま叶派が実権を握れば『白組』であるマークスさんの地位は不動のものになりますが」
 女性が、隣を歩く男性に声をかける。と、マークスと呼ばれた男性は目を細めて、大袈裟に首を振った。
「私はね、私が正しいと思うものに賛成し、誤りだと思うものに反対する、それだけだ」
「それでは……どうしても、彼女、叶綾香博士に対して、一級市民資格、剥奪決議案を提出する、と?」
「百合女史。何度も言わせないでほしい。私の決意は変わらない。『白組』ではないが、叶派の貴女としては、利敵行為に見えるだろうが、ね」
 百合と呼ばれた女性は、眉間に深く皺を寄せて、溜め息をつく。
「……告発の決意は固いというわけですか。仕方ありませんね」
「そうだ。彼女のコンセプトには見るべき所はあるが、如何せん、方法に問題がある。公私混同も甚だしい」
 マークスは百合を振り切るように歩調を速めながら、続ける。
「それに――どんなに優秀であっても、犯罪者は、誇り高き一級市民たり得る資格はない」
 マークスの言葉に、百合は呆れと諦めの入り混じった表情を浮かべて、額に指先を当てた。
 もう、彼にはいかなる説得も無駄なのだと、悟ったのかもしれない。
「素晴らしい倫理観をお持ちで。流石は『白組』代表といったところでしょうか」
178白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/13(木) 00:14:32 ID:ZNSz0XRP
「同じような皮肉を、倉田にも言われた。心が荒む。謂れのない誤解があるようだが、私を含めた『白組』は、聖人君子でもなんでもない」
 倉田、とは、マークスが叶博士の犯罪の証拠集めの際に接触した、非『白組』の一級市民、倉田勇一(くらた ゆういち)のことである。
 マークスが、自身の後ろ盾である叶綾香を告発しようとしていると知った時の倉田の驚きようは、尋常ではなかった。
 ――地位や名誉には興味はない、ってわけか? まったく『白組』様の言うことは違うぜ……くそ、気に入らねえ。
 台詞と共に、倉田の、苦虫を噛み潰したような表情が思い返される。
 白組以前の一級市民であり、叶派とも袂を分かつ立場であった倉田は『project whitebox』発案による叶綾香の躍進の影響で、非常に肩身の狭い思いを強いられていた。
 このままだと、今に『白組』でなければ一級市民にあらず、と言った風潮すら出来てしまいかねない、そういう危機感も持っていた。
 だから、倉田にとって、身内であるマークスが告発の準備をしているという報告は諸手を挙げて喜ぶべきことで、ここは派閥無視の共同戦線を張って、情報を収集するのが賢い選択と言えた。
 そう、理屈では理解している。それでも倉田は、口をついて出る嫌味を止められなかった。敵に塩を送られているようで、気分が悪かったのだ。
 同時に、そんな些事に拘っているお前は、やはり矮小な人間なのだと指摘されたような思いにもなった。それは流石に、倉田の被害妄想だろうが。
「聖人君子かどうかは兎も角、あなたの結果が一級市民の間でも語り草である事実に変わりはありません。叶博士曰く『project whitebox』始まって以来の快挙、だそうですから」
「私の場合は、無駄に高いプライドが、結果的に良い方向に働いただけだ。それに……」
 マークスは、隣を歩く百合にも聞こえないくらいの、小さな声で呟く。
「『白組』だからこそ、願うのかもしれない。死して尚、辱めを受ける彼女に、せめて安らかな眠りを――とね」
179TIPS ◆SSSShoz.Mk :2007/09/13(木) 00:16:38 ID:ZNSz0XRP
TIPS『叶綾香』
一級市民。朝霧良夫の元妻であり、朝霧留美の母親。

TIPS『百合』
一級市民。叶派所属。フルネームは朽木百合。

TIPS『倉田勇一』
一級市民。草加派所属。

TIPS『叶派』
一級市民内での派閥の一つ。『project whitebox』発案者、叶綾香博士が会長を務める。
派閥所属者はやはり『白組』の人間が半数近くを占める。
180 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/13(木) 00:17:58 ID:ZNSz0XRP
>>98からの続きです。今回よりネタバレ開始となります。
CUBEZEROで舞台裏が明かされた時のようなガッカリ感ではありますが、どんなものでしょう。
181名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:03:41 ID:2vuzypZ1
まさか殺すとは・・・
182名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:21:47 ID:2vuzypZ1
忘れたGJ!!!!!
183名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:29:59 ID:VwaXco+0
CUBEやSAW好きだからワクテカしながらネタばらしを待つ。
184名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:42:30 ID:qc+cQQIm
これまでの情報から全体像を推測してたが、穴だらけな予想しか出来なかった
諦めておとなしく続きを待っております
185名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 01:54:10 ID:rClAvBgg
読んで愕然としたぜ…留美死んじゃったよ…今日は枕を涙で濡らそう…

でも外伝やこれまでの経過から考えると留美は何度も同じようなことを繰り返しているみたいだから
死ぬのも初めてではないのか?今回のは何回目のケースなんだろう。てか留美って何者?

次は真相編ですか。続き待ってます!
18681 ◆DlPgAmm21I :2007/09/13(木) 02:21:01 ID:QKF+BhVv
>174 おお、ありがとうございます。
wikiって弄ったのが初めてなので、ご迷惑おかけして申し訳ありません。
これでちょくちょく追加できたりできますね。
管理さん感謝です。

それと、私のタイトルを「総武の休日」にしようかと…
「ローマの休日」に似ても似つかないのですが、語感がいい感じでしたので…
>109さん ありがとうございます。 それ、頂きました。
187総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/13(木) 02:22:27 ID:QKF+BhVv
「それは・・・・それはね・・・・・・」
俺はそれから、ポツリポツリと喋るマリーに耳を傾けた。
「私ね…いままで心からの友達って、いなかったの…」
「え? 友達?」
ヒッチハイクと友達の因果関係が結びつかずにそのまま返してしまった。
「うん。…私のひいおじいちゃんって、すごいお金持ちで、周りの大人ってみんな私から取り入ろうとか思ってるのばかりで…
 その大人の子達は、みんな私よりもおじいちゃん目当てで… 結局最後は絶交しちゃってね…」
マリーは悲しそうな顔をした…
「うん……」
「それでかな… 小学校のときに… あ、小学校のときもお金持ちって理由だけで妬まれたりいじめられたんだけどね…
 それでも、私のことをあだ名で呼んでくれる女の子たちはいたんだけど、そこにアイツが転校してきたんだ」
なんか… 小説で読んだような状況だな… 事実は小説よりも奇なりってことか…
「そいつは、男子のなかでも大人びてて、でもとりつきやすくて、だれにでも平等に接してくれて…」
「それで?」
「それでね… そいつが来てから、私にも普通に接してくれてね… いつか靴が隠されたときも探してくれたし…」
「うん」
「で、そのすぐあとかな… クラスメイトに川に突き落とされて溺れたときに、そいつが真っ先に助けてくれたの…」
思い出しているらしい… 顔が真っ赤だ。
「ほうほう… なるほど、マリーには麗しの騎士様に映ったんだ?」
「・・・・・・」
恥ずかしがるなっ なんかごちそうさまな感じだよ
「で、でね? そいつがまたすぐに転校って話になって、思い切って告白…は出来なかったんだけど、
 メルアドの交換はできたの。それからかな… ちょくちょくメールしあってたんだけど、いきなり返信がこなくなったの」
「・・・・うん」
途絶えたことが気になるな…
188総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/13(木) 02:23:08 ID:QKF+BhVv
「2ヶ月位してからかな… 何度目かのメールを送ったら、メールがまた復活したの」
「ほぅ、よかったじゃないか」
「うん♪ でも、なんだか様子が変で… だから、思い切って会いに行こうって、家を出たの」
まてまて…
「それじゃ、手持ちの金がないとか、そういうことか? 交通費も?」
「ううん? お金はあるの」
驚いた… もしココで無いとなると、自宅まで送り届けなきゃ自分、鬼だ。
いや、そういうわけじゃない… 送りたくないわけじゃなくて、むしろ逆だ。
だがしかし、俺が理性を保てるか は別問題だ。いやいや、少女を相手にするな 落ち着けおれ!
「? どうしたの?」
だぁ!!!
「い、いやいや、続きをどうぞっ」
「それでね… お金はあるんだけど、おじいちゃんやおとうさんが、いっちゃダメって…」
「まさか・・・ 反対されて出てきたんじゃ…」
「・・・・・・・・・・うん」
うわわわわわ… 家出じゃないかっ!
「なぁ、家族の誰か、知らないのか? ここに居ること…」
「しらない・・・と思う」
うわー… 家族が心配してるぞ… 下手したら俺、誘拐犯?!
「で、山手線に乗っているところを見つかってね? 車で連れ戻されてるところに、コンビニに寄ってもらって、
 ちょうど康平の車の鍵が開いていて、チャンスと思ったの」
・・・だからかっ! 黒服の男が慌てていたのはっっっ!!!
どうしようどうしよう… 冷や汗が止まらない。
「大丈夫? 顔が蒼いよ?」
ペタ。
うわ、手が小さいっ… ひんやりして すべすべしてキモチいい・・・
・・・だあああああ!
「いっ、あっ、いあいあいあいあ、大丈夫だからっっっ!」
「そう?? アレなら、もう少し休憩しよう?」
「いっいやいや、いくぞっ! ほら、乗った乗った!」
俺はぬぐいきれない冷や汗を流しつつ、丘を降りて車に乗った。
「あ、まってよー!」
マリーもトコトコついてきて助手席に乗る。
・・・そして、俺らはパーキングエリアを後にしたのだった。



エリアの隅では・・・
「・・・見つけました。不明の男(成年)と思しき者と行動を共にしてます。はい、わかりました。後を追います」
セダンタイプの車がそこを後にした。

ほんと、俺、どうなるんだ?!

#とりあえずやっと序章終わり? な感じです。
#プロットは最後までできました。
#あとは肉付けをどうするか、矛盾が発生してないかを考えて組み立てていく感じです。
#よろしくお願いいたします。
189名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 06:32:12 ID:OF8y8K1h
sien
190名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 08:26:48 ID:ZO5WPk2u
しょんべん(←なぜか変換できない)の行方は!?
191名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 10:24:14 ID:rClAvBgg
>>190
もう処理されましたがw

黒服さんご苦労様です。マリーお嬢様のわがままに振り回されるのも大変でしょう。
でもかわいいから許してやって下さい。うん、真っ赤になるマリーお嬢様かわいいな。
これからどうなるのかな。カーチェイス始まるのかな。期待期待
192名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 14:55:47 ID:LKhHZehj
>>137
どうでもいいツッコミと言うか内容に無関係なトリビアですが

> ”災害支援ベンダー”
> 停電状態でどうやって動くのだろうか…バッテリー?

バッテリーがついてます
災害発生時には無料で中身が取り出せるようになるあたりが災害支援
ttp://www.reika.co.jp/02vending/vender.html
コカコーラの電光掲示板がついてる自販機もだいたいこれだったり
ttp://www.cocacola.co.jp/info/hello/special.html
193名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 21:41:48 ID:F3DQj98T
君津ってことは木更津は過ぎたのかな?
過ぎてなかったら、カーチェイスの末にアクアラインに
追い込まれて.."相武の休日"w

こちらまで妄想かき立てられる作品は久しぶりだな。
あんまり読み手がはしゃいじゃいけないんだろうけどさw

194名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 23:05:41 ID:MoRPVhzq
「二人きり」っていうと当初の作品みたいに、山で遭難してとか、閉じこめられて、みたいな
物理的に二人きりを解消できない、問答無用なやつを想像しちゃうけど、
最近の作品のような他人の家で知らない娘と二人きり、とか、車の中で二人きり、
っていうのもありなんだな。 GJです。

二人きりになるメンツやシチュ次第でそれでも充分に「二人きり感」を出せるんだな。
最終電車やローカル線に二人きりとか、お店で店員と客が二人きり、なんてのもいいかも?
195総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/13(木) 23:24:04 ID:RN0/p5dM
富津館山道の終点へ何事も無く到着した。
ナビの結果からの予測だと、あと数十分で目的地に到着するらしい。
「なんだか、どきどきしてきた…」
「会えるといいな」
「うん」
なんともほほえましい。応援したくなってしまう。
しかし、さっきからついてくる車がいるような… 気にしすぎか?
黒いセダン車がつかず離れずいることに気がついた。
気のせいだな。尾行だとしたら、ばればれだ。きっと違う。

何度目かの交差点を曲がる。目的地まであと少し。
後ろにいた黒い車も、いつの間にかいない。なんだかほっとした。
・・・なんで俺がほっとするんだ・・・? やましいことはしていないのに・・・。
<<目的地周辺です。ナビを終了します>>
PSPナビの欠点がこれだ。周辺になると、直前で終わってしまう。
どうせなら、この家の前です まで案内してほしいものだ。
あとは自力で探すしかない。
「住所の番地までわかったが、ここからは自力だ。一緒にさがしてくれ」
「う・・・ん、わかった」
「なんだ、元気がないぞ?」
「ううん、なんか、会うのが怖く」
「ここまできたんだ、覚悟決めろ」
「うん・・・」

目的の家はその後すぐに見つかった。
閑静な住宅街がかるく広がる高台のところにその家はあった。
家の前に車を停めて、エンジンを切る。
マリーとおれは車を降りて、呼び鈴の前に立った。
「さぁ」
「うん…」
<<ぴんぽーん♪>>
「はーい」
「み、御神楽真理です、ああああの、以前にゆゆ、悠太さんに助けていたただだいた」
「真理ちゃん???!」
ん? 相手はなんか大慌てだぞ?
「ちょ、ちょっとまってね!」
がちゃがちゃ、がちゃっ。
ドアが開く。出てきたのは、お姉さんと呼んでもおかしくない若い女性がでてきた。
「悠太くんのおかあさん」
「ま、まぁまぁ! こんな遠いところまでよくきたね! さぁさ あがってあがって!」
「は、はいっ」
こっちを向くマリー… 一緒にこいってことか?
「あ、あら、そちらの方は?」
やっぱ、男がいると気になるよな。
「いえ、その、おれはマリーの」「保護者みたいなものですっ」
おいおい。 まちがっちゃいないと思うが…
「あら? そうなの…?」
「ここまでつれてきてもらったんです」
マリーが言う。
「あらあらまぁまぁ… 遠いところからご苦労様です。 さぁさ、あがってくださいな」
「わ、わかりました。お邪魔いたします」
「どうぞどうぞ」
196総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/13(木) 23:25:21 ID:RN0/p5dM
俺らは応接間らしき場所に通された。
椅子に腰掛けると、麦茶をお盆に載せて先ほどの女性…悠太くんのお母さんが現れる。
俺にコップを差し出しているときに、マリーが口を開いた。
「あの、ゆ、悠太くんはいまどこに?」
その言葉に激しく動揺するお母さん。俺に手渡すべくコップを落としてしまった。
「うわっ」
「!? ご、ごめんなさいっ!」
カーペットに麦茶がこぼれている。
悠太母はあわてて奥にひっこみ、すぐにふきん片手にもどってきた。
「ああ、それは俺がやっときます。彼女はやっとのことでお子さんに会いに来たんで、
 早く会わせてあげてください」
さっきからマリーが落ち着かないんで、目的を達成させてあげたほうがいい。と、母に促す。
しかし、母は鈍重な動きをみせた。
「どうしたんですか?」
俺は聞く。
「い、いえ、わ、わわ、わかりました。悠太は奥にいますから、真理ちゃん、こっちへ…」
「は、ははは、はいっっっ」
ふぅ、行ってくれたか。
じゃあ、俺はこぼれた茶を拭きますか。
  :
  :
  :
197総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/13(木) 23:26:42 ID:RN0/p5dM
「いやああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
マリーの絶叫がこだまする。
俺は拭いていたふきんを手放し、声のした奥へ駆ける。
「マリー! どうしたっ!!!」
マリーがいたと思われる部屋に近づくと、部屋から駆け出してきた彼女に思いっきり抱きつかれた。
いや、タックルか?
おれは転倒してしまった。
「いやああああ!!! うそっうそっ!! うそよぉぉぉぉおおおおお!!!」
腹のあたりで顔をぐりぐりしてくる。彼女は泣きじゃくっている。
おれは、何があったのか、問う。
「どうした! なにがあった!!」
「いやあああああ!!」
らちがあかない。すると、部屋から申し訳なさそうな顔をした母が出てきた。こちらも、泣いている。
「・・・・・・なにが、あったんですか?」
おれはちょっとしかめっ面になっていたかもしれない。悠太母に問いかけた。
「・・・・・・・来ていただければ、わかります・・・」
母の言葉に、俺はマリーをつれて…というよりも、抱えて、部屋に入った…
そこには、立派な仏壇と位牌が佇んでおり、線香が煙をたてていた。
悠太母が位牌を手に取り、言った。
「これが、悠太です…」
俺は愕然としてしまった。
マリーの腕の力がいっそう強くなる。骨が折れるほどではないが、力いっぱいだというのが判る。
すでに声はでないようだった。低くくぐもった嗚咽が、マリーから漏れている。
俺は、このパターンは予想できなかった… いや、母の行動から気づくべきだった。
気づけと言われても気が付く要素はなかったんだが…結果的に、マリーを悲しませることになってしまった…

#またこのパターンかっっっ!
#なんだか長編になってしまって申し訳ないです。
#スレ汚しにならないよう、がんばります。
#
#以下レスポンス
#>190 >191の通りで、処分してます。 その件は>137の
#・トイレのなかで、ついでに、車からマリーの・・・が入った袋を処理にかかる。
#で処理してます。シチュ考えても、=汚いのイメージが払拭できなかったので…
#使いどころがあれば、まさしくバクダン とか、聖水 とか、インニョー とか、いろいろありますが、
#今回は見送りさせていただきました。
#>191 黒服さんはこれからの登場に期待UPUPです。 でも、最初に大男と書いてしまった手前、
#乱闘で服がちぎれたときに”実は女だった!”という展開にできないのが残念です。それだとスレ違いになるし…
#>192 おお?! UPSで動いてましたか! …ということは、後ろのコンセント抜けばジュース取り放題?
#そんなワルイコトしませんが、できちゃいそうだなぁ…
#>193 残念。アクア連絡道から乗りましたが、アクアラインとは逆方向に乗ってます。
#>194 おお?! 新作の予感???
198名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 01:26:12 ID:pu7L4W6w
がーんばれ。最近はこれが楽しみ。
黒服やマリーの今後の展開が気になる終わりですね。
199名無しさん@ピンキー:2007/09/14(金) 21:48:12 ID:4DnXJfes
ううむ、またしても予想とは違う展開に・・・
これは最後まで見届けるしかない。
200初心者:2007/09/15(土) 00:01:46 ID:5ulU3E+C
GJです!
まさか死んでいたとは…
予想外過ぎて最初はよく理解できなかった…
皆さんの作品を読んでいると自分の作品を投下しても良いのか、とか思います。
それでも投下しますがねw
201名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 00:55:43 ID:4ToD/4dh
あ、何だこれからもって事か
今から投下かと思ってwktkしてたぜwww
202名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 22:42:05 ID:DqMXXbzA
動きがないなんて珍しいな
203名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 00:10:16 ID:8XG0cUU+
>>202
きっとこれから凄いのが来るんだよ><
204名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:42:14 ID:arrcHaKL
205名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 21:54:15 ID:wkNv0+Oq
>>204
抜いた
206名無しさん@ピンキー:2007/09/16(日) 22:17:05 ID:FneUYUq5
>>204
変な物貼るなよ。
不幸の手紙のパチモンだからスルーね。
207名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 01:02:16 ID:xW5+S8cu
画像元はなんだろ、呪怨?
208名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 09:27:02 ID:v2o370kC
なあ、幽霊と二人きり、ってシチュはアリかな?
209名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 09:49:36 ID:s2P/Ce7M
>>208
こっちが適切かと

【妖怪】人間以外の女の子とのお話22【幽霊】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189137444/
210名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 10:01:04 ID:8/BSuR3L
幽霊であろうが女の子である事に変わりない
それで二人きりならいんでないの?
211名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 10:02:59 ID:bfJe2L2T
age
212名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 10:30:48 ID:KoZKZQkf
>>208
このスレに投下して>>209のスレにリンク貼れば、どちらの住人も幸せに(ry
213名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 13:47:09 ID:h9sec6iA
>>212
ネ申現る
214名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 16:14:28 ID:8s+NE/vP
おまえあたまいいな
215白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/17(月) 18:05:54 ID:qbs6MDNN
◆扉の外の真実

 扉の外に広がっていたのは――漆黒の闇だった。
 部屋の白とは対照的な、一面の黒が、行く手を覆い尽くしている。
 智信は最初、それを見て、単純に暗闇で先が見えないだけなのだと、そう思った。
 しかし、壁伝いに、外に手を這わせてみて、気付く。そこに『何かがある』が見えないのではない。ただ『何もない』だけなのだ。
 扉に手をかけて、一歩踏み出してみても、足は床に触れることなく空を切り、先の見えない闇の中に沈む。
 そこにあるのは、永遠に続く、虚無の世界。現実にはありえない、悪夢の中に入り込んでしまったかのような光景。
 馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な。こんなことがあっていいわけがない。
 この部屋はどうなっている!? そして、この果てしない闇はなんなんだ!?
 少しでも気を抜くと、狂気に侵食されそうになる思考を宥めながら、智信は自問する。
 そう。確かにルールには『三十日が経過した場合』或いは『生存者が一人となった場合』に『扉が開かれる』と書かれていた。
 しかし、よく考えてみれば、扉の外に関する情報は一切なかった。二人が勝手に『扉の外が出口である』と思い込んでいただけだ。
 そう結論付けてしまうのも、当然ではある。この部屋には、出入り口と思われる扉は二つしかなく、片方はトイレで、片方は開かなかった。
 それなのに『開かない扉』の先が行き止まりであると仮定すると、どうしても、説明がつかない点が出てくる。
 智信と留美は、どのようにして、この部屋に運び込まれたのか? という問題である。
 無理矢理にこじつければ、天井が開く仕掛けになっていて、ワイヤーか何かで吊り下げられてベッドに寝かされた、などという仮説も立てられるが……
 そんな凝った仕掛けを用意する意味は薄い上、仮にそうだとしたら、ベッドの真上の天井に細工の痕跡があるはずで、眠る時に気付かないのはおかしい。
 開かない扉が外と繋がっており、二人はそこから運び込まれ、ベッドに寝かされた、とするのが一番自然だった。
「……に……!」
 智信の口から、声にならない言葉の断片が零れる。
「そ……は……に……で、出口……な……だ……!」
 それなのに、そのはずなのに、なんで出口がないんだ……!
 そう怒鳴ったつもりだった。だが、乾燥して潰れてしまった声帯は、発声を拒否する。
216白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/17(月) 18:06:59 ID:qbs6MDNN
 智信は暫くの間、暗闇の向こう側に、何かが見えたりはしないだろうかと目を凝らしていたが、やがて諦めたのか、扉を閉めた。
 もう、この先、どうすればいいのかわからなかった。この部屋には、出口がない。あるのは、どこへ繋がるとも知れぬ深い闇だけだ。
 恐怖からか、体ががくがくと震え、吐き気まで催してきた。そのまま、不安定な足取りで、トイレへと向かう。
 智信は便器に頭を突っ込み、思い切り吐いた。とは言っても、胃の中には内容物は一切残っていないから、口から滴るのは粘ついた胃液だけだったが。
 レバーを引いて、水を流す。水が流れるのだから、少なくとも排水設備はあるはずで、外界から完全に隔離された場所とは考え難いのだが……
 そんなことを考えながら、智信は何気なく、水面を見た。
「……?」
 ふと、小さな違和感を覚える。智信は、その違和感の正体がなんであるのか、最初はわからなかった。だが……水面を見つめるうちに、智信は気付いた。
 違和感の原因は――水面にぼんやりと、揺らめきながら映っている、智信の顔にあるのだと。
「あ……」
 ぽかん、と。智信の目が、口が、大きく開かれる。それは智信にとって、この部屋に閉じ込められてから、一番の衝撃だったかもしれない。
 そうは言っても、第三者の視点から見れば、智信が何故こうまで驚いているのかを理解するのは難しかっただろう。
 だって、水面に映っている顔は、とりたてて語るところもない、ごく普通の顔なのだから。美しくもなければ醜くもない、平均的な、男の顔。
 客観的に見て、目に見える異常はない。だから勿論、留美とて、気付くわけもない。
 この『違和感』には、智信本人か、家族、親戚、友人――つまり『智信の顔を知っている人間』でなければ気付けない。

 ―― これは、誰の顔だ!? ――

 ―― これは、僕の顔じゃない! ――

「うわあああああああああ!」
 両手で頭皮に爪を突き立て、喉が焼き切れるような叫びをあげながら、トイレから飛び出す。扉を背に、その場に蹲る。
 がりがりと頭を掻き毟りながら、何とか現状を把握しようと試みるが、山積する疑問に圧倒されて、思考は正常に働かない。
 畜生! 畜生! 畜生! わからない! もう何もかもわからない!
 発狂寸前にまで追い込まれて、壁に側頭部を叩き付ける。ベニヤ板の上に物を落としたような鈍い音がした。こめかみの辺りを生暖かいものが伝う。
217白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/17(月) 18:09:00 ID:qbs6MDNN
 この痛みで目が覚めたなら、どんなに幸せだろうか、と智信は思った。
 これは、交通事故か何かに遭った僕が、生死の境を彷徨いながら見ている、長い長い悪夢で。
 僕は、病院のベッドの上で目を覚ます。まだ悪夢の残滓が燻っているのか、心臓の鼓動は早く、汗をびっしょりかいている。
 看護士さんがぱたぱたと走り回って、担当医に昏睡状態だった患者が起きたことを伝えにいく。
 僕は現実に戻ってこれたことに安堵しながら、天井を見つめる。そして、今まで見ていた悪夢について、ぼんやりと考えを巡らせる。
 白一色の内装に、鼻をつく消毒液の匂い。そりゃあ、こんな場所にずっと寝かされていれば、悪い夢の一つも見て当然だ……って。
 苦笑しながら首を横に向けると、右隣のベッドが視界に入る。そこで寝息を立てているのは――夢の中で見た少女だった。
 これが物語なら。きっと……そんな風に、綺麗に終わってくれる。
 何もわからないまま……部屋からも出られず……のたれ、死ぬ、なんて……そんな、終わり……認め、ない。認め……。
 智信は、精も根も尽き果てたとばかりに、その場に崩れた。そして、数時間も経たない内に、動くのを止めた。



 残されたのは、二つの骸。最早動くもののいなくなった部屋に、電子音だけが空しく響く。
 液晶画面に、最後のルールである、ルールDが表示される。
 それは、ここまで生き延びた強者への、最初で最後の助言。
 永久に出ることのできない袋小路に放り込まれた仮初の生命を、せめて意義あるものにする為の、唯一の解。

『ルールD 醜い生は死であり、潔い死は生である』

 ルールDを表示し終えて間もなく、再度、電子音が鳴り響く。
 今まで、ルールが公開される度に鳴っていた音とは違い、目覚まし時計のベルにも似た、激しい音だ。
 その音は、ゲームの終了を告げるものだった。
 音が鳴り止むと同時に、白い部屋はゆっくりと、物音一つ立てずに、崩壊していく。
 部屋と、部屋に存在するすべての物質が、原子単位にまで分解されて、飛散、消滅する。
 まるで、波打ち際に作った砂の城が、波に攫われて、元の砂に戻ってしまうように。
 ついには、部屋はその痕跡すら残さずに消え失せて、扉の外に広がっていた、あの、底知れぬ闇だけが残った。
218白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/17(月) 18:10:10 ID:qbs6MDNN
◆ようこそ、ラストステージへ

 智信の自室。ずっと机に向かっていた智信は、そろそろ小休止を入れようと、シャープペンシルを机の上に転がして、立ち上がった。
 立ち上がりついでに、大きく伸びをして、欠伸を噛み殺す。時計の針は、午前一時を指している。眠気がして当然の時間帯だ。
「畜生、眠い……コーヒー、飲むか」
 机の上には、書きかけのレポートと、乱雑に積まれた参考資料の山。
 間違ってコーヒーを零したりでもしたら洒落にならないから、前以てそれらを机の端に退かしておく。
 部屋を出て、キッチンに向かう。コーヒー豆をコーヒーメイカーに入れて、スイッチを押す。
 ブレードが豆を粉砕する音を聞きながら、食器棚からカップを取り出す。
 そこで、同じようにキッチンに出てきた父親とばったり出くわした。
 彼――佐々野敦(ささの あつし)も智信と同じく、コーヒー党であることは知っていた。
 大方、夜中に目が覚めてしまって、コーヒーの一杯でもと思いキッチンに出てきたのだろう。
 智信はドリップを完了したコーヒーメイカーからカップにコーヒーを注ぐと、コーヒーメイカーを敦の方へ差し出した。
 敦はそれを受け取り、コーヒーを淹れ始める。
 でも、互いに目は合わせない。会話もしない。智信と両親との関係は、お世辞にも良好なものとは言えなかった。
 智信と両親の仲がこじれたのには、ちょっとした原因がある。
 智信は、幼かった頃から、持ち前の要領の良さと吸収の速さで、神童と持て囃されていた。
 両親もその才能を生かそうと、智信を塾に通わせ、勉強を勧め、できるだけ良い学校に行かせようとしていた。
 そうする内に、智信は、誰に言われるでもなく、いつか一級市民昇格試験を受けるのだと心に決めるようになっていた。
 智信にとって、一級市民は目指すべき目標であり、自分の努力が報われる、一種の到達点なのだと思っていた。
 だが、大学に進学した直後、一級市民昇格試験を受けたい、と打ち明けてみると、両親は、口を揃えて反対した。
 なるべくなら、受けない方がいい。受けるにしても、今はまだ早過ぎる。もっと人生経験を積んでからがいい。それが両親の言い分だった。
219白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/17(月) 18:11:46 ID:qbs6MDNN
 思いがけない言葉に、智信は憤慨した。一級市民昇格試験の最年少合格者は、公式発表では確か、十三歳だったと記憶している。
 今日に至るまで、智信は出来る限り自分を殺して、命じられるがままに勉強に邁進してきた。
 数少ない友人とも、まともに交流する時間が取れない、そんな日々を、文句の一つも言わず過ごして来た。
 それなのに……お前はまだ十三歳以下だ、そう言われているようで、我慢ならなかったのだ。
 勿論、両親の意見にも、理がないわけではない。
 一級市民昇格試験。
 それは、知識、経験、人格……あらゆる側面から、受験者が一級市民として相応しいか試される、難関試験だ。
 試験を受けるに当たって必要な資格は一切ない。年齢、性別、学歴、階級……すべて不問。
 それでは受験志願者が殺到するのではないか、と思うだろうが、世の中そうそう甘い話が転がっているものではない。
 試験は一生で一度しか受けられず、不合格になった者は、自動的に五級市民へと降格されて、一生抜け出せない。無期懲役も同然の酷い扱いだ。
 そう、これは天国と地獄を分かつ究極の二択。天に昇って、天上の住人となるか、それとも、地の底まで落ちて、地獄の亡者となるか。
 そんなハイリスクな試験に若くして挑むのがどれほど無謀なことか。両親は、井の中の蛙である息子に、警鐘を鳴らしたかったに違いない。
 智信はカップ片手に、部屋に戻った。デスクチェアに寄りかかり、コーヒーを啜る。
 一口飲んでから、しまった、と思う。敦と長い時間顔を合わせていたくなくて、急いで部屋に戻ったものだから、ミルクを入れてくるのを忘れていた。
 苦味の強いブラックに少しばかり顔を顰めながら、机の上にカップを置く。
 まあいい。眠気覚ましには、丁度いい味かもしれない。気を取り直して、今夜中にレポートを片付けてしまおう。
 そう考えて、智信は再び机に向かい、レポート用紙の空白を埋める作業を再開した。
220 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/17(月) 18:12:27 ID:qbs6MDNN
>>178からの続きです。そろそろ終わりが見えてきました。
今までの話を読んでいる途中、少しでも「これはこうなってるんじゃないかなー」と考えてもらえたなら、作者冥利につきる次第であります。
221名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 20:20:23 ID:vzCCwl69
>>220
???だった頭が?…!…?くらいになりました。
GJです。少しずつ見えてきた真相。これまでの経過。その先にある結末。期待せずにはいられません。
222名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 22:27:59 ID:Z9biVNWF
奥深いですね・・・。こういう文章は好きです。
ラストまで頑張ってください。
223名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 01:21:53 ID:gwvS1IC1
『tips』がないのさえ何か意味がありそうだな
そう思えるからすごい
224名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 16:14:12 ID:JSwoXKaf
GJ!
水の違和感がそういうことだったとは全くわからんかった…

>>49の辺りで、閉鎖空間での試験?はヴァーチャルかと想像してたんですが、それでよかったのかな?
被験者は毎回男の方で、留美の方は既に無くなっている少女のデータを使用していて毎度同じ、と。
ただ智信の顔が違う理由がよく判らん…外見データ使い回しなのかと思ったけど、番外編の男は太ってたし…
試験?の理由も単純に一級市民の昇格試験って訳じゃ無さそうだし。

結論。まださっぱり判らんw 謎解き楽しみにしてます。
225名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 04:43:12 ID:Z3RxrPMP
一番の謎は
なぜ ◆SSSShoz.Mk さんがこの作品をエロパロのスレで披露しているのか?
ということ。
226名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 06:57:46 ID:auz5VQ8W
一応エロ入れたからいいんでねえの?
227名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 15:19:17 ID:R8Rxz7cu
エロがなくても良い作品はある…まとめサイトで読んでみ
と、最近住人が増えて戸惑っている俺が言ってみる
228名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 17:01:07 ID:auz5VQ8W
特に雪山とラピエスは最高だった

mori〜
229名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 17:10:25 ID:TMVljYBk
良作が一番多い板はエロパロではないかと最近思い始めた
230名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 18:31:14 ID:gPcATOkf
>>225
エロスの欠片も無いのに絶大な支持を得ている作品なんざこの板にはアホほどある。
231名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 19:52:15 ID:6SPvKr5g
>>227まぁそれが良スレの宿命かと

偉そうなこと言ってるけど俺も途中参加なのは秘密だが
23281 ◆DlPgAmm21I :2007/09/19(水) 20:59:31 ID:lA35ur4m
#やばい 話が変になってきた… つじつま合ってるか微妙な展開に…
#だがしかし 私はあきらめないっっっ
#読者が居なくなったって最後まであきらめないっっっ(?
#というわけで、ちょびっとですが続編を。
#なんというか、今週は職場の上司の目が光ってるので、あまりつくれません。
#夜勤とか遅番なら作れるんですが、今週は早番… すみませぬ。
233総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/19(水) 21:00:19 ID:lA35ur4m
しばらくマリーは俺に体を押し付けて泣き続けた。あたりが夕刻になるころ、少し落ち着いてきたのを見計らい、
俺は悠太母に「なにかあたたかい、おちつく飲み物をください」とお願いした。

「マリー…」
やさしく問いかける。だが返事はない。もぞもぞと動くだけだ。
「哀しいのはわかるが、このままじゃだめだろ… とりあえず、これ飲め…」
悠太母が用意してくれたのはホットミルクだった。色合いと匂いがそんな気がする。
このまま飲まないよりはマシだと思ったので、飲ませることにする。
マリーが顔をあげる。泣いたせいで顔がぐしゃぐしゃになっていた。
彼女は俺に促されるまま、ホットミルクを飲む。
んく。んく。んく。
飲み込む音が静寂な空間に響く。
そして彼女は、言葉を発した。
「う、うううううそ、嘘よ… こ、こここの間までちゃんとメールしてたのに…」
「・・・・・・」
そばにいた悠太母は黙ったままだった。
「き、きき、昨日だってメールし、したわ! 昨日のニュースのことも話題にっっっ!!」
「落ち着け」
残ったミルクがこぼれそうになったので、俺が掴んでテーブルに置く。
「だって! だって!! わ、わわ私っ」
マリーのメール話は車の中で聞いた。
楽しそうに先日までの話題をやり取りしていたことを話し、メールの中身を見せてくれた。
おれは、ふと気になる事があったので、悠太母に聞いてみた。
「…悠太君のお母さん。悠太君の携帯って、今手元にありますか?」
「えっ… 悠太の… ですか?」
「ええ。マリーがこんなに動揺するのも、亡くなった後でもメールのやり取りがあったことにあるわけで…
 本当にその履歴が残っているのか、確かめたいのですが…」
悠太母が何を思っているのか不明だが、悠太君が死んだというのは嘘で、
実は軟禁か監禁されててたまたま携帯を持ってたのでメールできている と考えられなくもない。
しかし、監禁状態なら電話すればいいことで… それが出来ないとなると面会謝絶の病室からメールをしている???
そもそも生きておらず、ファンタジックに霊界からの警鐘とか… いやいや、ありえないな。
「ないんです」
はい?
「は? ないとは?」
悠太母の言葉が最初は信じられなかった。
「悠太の携帯は無いんです。 …じつは…」
そこから先に聞いた言葉は、俺には信じられなかった。いや、常識的に考えて、ありえないだろう。
234総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/19(水) 21:00:55 ID:lA35ur4m
悠太母曰く、悠太は坂道でブレーキが故障してそのままカーブを曲がりきれずに反対車線に飛び出してしまったこと。
そして運悪くそのままタンクローリーが通りがかったこと。
打ち所が悪く、即死状態だったこと。
ノンブレーキということは警察と運転手の証言により確定し、日ごろから整備を怠っているのが悪いということを指摘された。
そんなことは信じられない。運転手を呼んでこいと訴えるも、警察にとめられたこと等、苦い思いを打ち明けてくれた。
そして悠太の49日法要が終わったころ、突然軒先に黒服スーツの男が現れて、「悠太君の携帯を売ってくれ」ときたこと…
「う・・・うそ?」
「その男に売ったんですか?」
「ええ… これ以上つらい思いをしたくありませんでしたので…」
でも、携帯譲渡…はできないだろうに…?
「大金を積まれて… 主人も始めは断っていたのですが… 額がどんどん大きくなって… 相手は本気だということに気がついて…」
「それで譲った…と」
信じられん。
「その後の手続きとかは?」
「任せてほしいと… 委任状を書いて、任せていたら携帯会社から訪問があって… ”異例ですが名義変更しないまま譲渡しました”と」
…ますます不可解だ。なぜ名義変更しない? なぜ? そんなの、マリーの為だけに大金積まれたって思えてくる…
マリーのためだけ? ん? なんだ、ひっかかるぞ?


えーと? マリーは悠太君に会いに出かけようとしたら親に止められて?
出かけたらなぜか山手線で見つかって?
そもそもなぜ山手線でみつかっ……… そうか!
「マリー! 君はまだ携帯もってるな?!」
「な、なによ突然… きゃっ!」
マリーの携帯を奪い取る。最新機種だった。
なるほど… GPS機能か。通りでマリーの後を追いかけられるはずだ。
ははは… バレバレってわけか。きっと携帯を買い取ったのは真理の親の意向だな。
親バカか… でも、本当に悲しませたくなかっただけなのか?
しかし、ここにいるって事は、すでにばれているんだろうな…
「なによ! なんなのよ 携帯返してっ!」
奪いかえされた。
235総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/09/19(水) 21:03:04 ID:lA35ur4m
「…あの」
悠太母が話しかけてきた。
「な、なんでしょう?」
「もし… よろしければ、悠太へお参りしていただけないでしょうか…」
「…マリー」
おれはマリーを伺った。
こくん。
無言ながらもうなずくマリー。
「では、準備してきますね」
悠太母は部屋を後にした。
「マリー?」
「…やっぱり …死んでるの?」
俺は言葉に窮してしまった。
「悠太君のお母さんが嘘をついているようには思えない。しかし、にわかには信じられない」
ゆっくりと、肯定の中に希望という名の否定を混ぜて言う。
「私、生きてると思う。ううん、絶対生きてる」
いや… 残念だがマリー… 彼は確実に死んでいると思う。
君はまだ現実を受け入れられないだけなんだ…
…きっと彼の携帯を買い取ったのはマリーの身内だ。
なぜこんな手の込んだことをするのだろうか…
それがすごい不可解だ…… なにか裏が… そう、裏があるのではなかろうか…

#今日はここまでっ
#えと、お断り入れます。
#悠太君の家は、実在しません。場所もです。
#ドラマで言うところのここの舞台はスタジオに入ってるって思ってください。
#地図で探されている方、申し訳ありません。
236名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 01:13:54 ID:RHK548xn
>>235
大丈夫、少なくとも読者はココに一人確実にいるからw
あとさすがに家は実在とは思ってないから大丈夫だ。

んーブルジョワめ。マリーのため思ってだろうが惨いことしやがる…
それとも何か別の理由があるのか?
続き待ってる。


…あと会社で書くのはやめといた方がw              俺も昔やったことあるけどさww
237名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 01:48:49 ID:3jl/rGCa
>>236
何があったのかくやしく
238名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 03:04:16 ID:fE5waJOV
>>236
ちくしょうを10回以上使って
239236:2007/09/20(木) 16:53:56 ID:RHK548xn
>>237
いや、何も無いw 大丈夫。バレなかったからw

でもこういうの書くための妄想って仕事忙しい程湧いてくるのはなんでだろうw
24081 ◆DlPgAmm21I :2007/09/20(木) 19:58:04 ID:4bL/qR22
>239
ほら あれです 試験前日に急に部屋の掃除をしたくなるアレと一緒。(違う
現実逃避したくなるほど、ネタが溢れてくる。と。
遅番は超忙しい。早番は超ヒマだけど監視がw 夜勤は眠い。
故に遅番がイチバン物語がすすみます。

>238
くやしいのう。くやしいのう。 で。
例題:くやしいのう。上司が見張っててくやしいのう。メディアに書き出し出来ない会社PCくやしいのう。
241名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 18:41:09 ID:ztfA45pU
期待上げ
242白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/23(日) 00:08:04 ID:NEniwn6D
 朝霧綾香は、コンピュータに向かい、苛立たしげにキーボードを叩いていた。
 納入の期日が迫っていて、早くプログラムを仕上げなくてはならないのに、どうしても冷静ではいられない。
 頭の中から一切の雑念を追い払い、仕事に集中しようとしても、昨日の夜の記憶がぐるぐると渦巻いて、作業に精彩を欠く。
 昨日は、娘――留美の誕生日であると同時に、良夫と綾香の結婚記念日だった。
 それなのに。良夫は留美にだけプレゼントを買ってきて、綾香にはプレゼントどころか、一言もなかった。
 綾香はその無神経加減に、心の底から呆れ果てていた。良い夫と書いて良夫と読むその名前が、妻である綾香への痛烈な皮肉のように思えてくる。
 良夫は昔から、こんなに冷たい人だっただろうか? そう自分に問いかけてみて、すぐに、いや、そんなことはなかった筈だと否定する。
 以前はもっと大らかで、それでいて、細かな気遣いの出来る人だった。そもそも、出会った当初からこんな態度であったなら、間違っても結婚しようなどとは考えなかっただろう。
 よくよく思い返してみれば、良夫の『変化』の切欠は明らかだった。歯車が狂い始めたのは……二人の間に、留美が生まれてからだ。
 留美が生まれて以降、綾香に注がれていた愛情はすべて、留美へと向かっている。それは間違いないと、綾香は確信していた。
 良夫の本質は、大して変わってはいない。ただ、愛情を向ける相手が変わっただけなのだ。
 しかし、それを綾香は認めたくない、許せない。良夫と結婚したのはあくまで綾香であって、留美ではない。
 留美なんて、結婚という甘いお菓子のおまけとして添付された、安っぽい玩具に過ぎない。
 大体、綾香は良夫と一緒にいたいと思ったことはあっても、子供が欲しいと思ったことはなかった。
 綾香が留美を生んだのは『子供が欲しい』という、良夫の強い要望によるものだ。本来なら綾香は、自由気ままな二人暮らしを望んでいた。
 良夫が子供が欲しいと言ったところで、誰が面倒を見るのかと言えば、それは結局、綾香の役目になるのだから。
 閉めた扉の向こう側から、留美の遊ぶ声が微かに聞こえてくる。プレゼントを買って貰ったばかりで、上機嫌なのだろう。
 無邪気で悪意のないその笑い声すらも、綾香には嘲笑のように聞こえた。
 唇を歪めながら、ヘッドフォンを装着する。ピンをジャックに接続して、自分で編集しておいた環境音楽を流す。
 だが、風に揺れる木々のざわめきも、可愛らしい小鳥の囀りも、刺々しくささくれ立った心を解してはくれなかった。
 相変わらず作業の進捗状況は思わしくなく、打ち込むコードも、自然とスパゲッティになる。
 いかにも虫の湧きそうな見苦しいソースコードは、まるで綾香の心中を代弁したかのようだった。
 今はこれ以上続けても、泥沼に嵌るだけだ。綾香はそう判断して、作業を一時中断する。
 気分転換に煙草でも吸おうと、上着のポケットを弄る。が、出てきたのは半分潰れたマルボロライトの空箱だけだった。
 仕方ない、買いに行こう。そう思って、疲れた目を左手で軽く揉みながら席を立った。
 途中、リビングに置かれた水色の箱が視界の片隅に入る。
 綾香はなるべくそれを見ないようにしながら、簡単な着替えを済ませ、外出した。

243白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/23(日) 00:08:48 ID:NEniwn6D
 一級市民専用施設『セントラルタワー』十階。一級市民昇格試験、最終試験場。
 智信が通されたのは、銀色を基調としたメタリックな内装の部屋だった。大して広くはなく、病院の待合室程度の面積だろうか。
 背もたれ部分の後ろに、大海原の荒波を意識したと思われる曲線が彫り込まれている、一風変わったデザインのベンチに腰掛けて、事前に受けた指示通り、名前が呼ばれるのを待つ。
 両親の反対を押し切ってまで挑んだ、一級市民昇格試験だった。
 尋常ではないプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、智信は筆記と面接をパス。後は今日行われる、最終試験を残すのみとなっていた。
 この最終試験さえ乗り切れば、智信は晴れて、一級市民資格を取得することができる。
 智信は、膝の上で組み合わせた手を僅かに震わせながら、落ち着きなく周囲に視線を泳がせる。
 同じ境遇の人間――胸に番号札を付けて待機している受験生は、智信の他に三人いた。
 スーツを着た、サラリーマン風の中年男性。白い髭を蓄えた、壮年の男性。智信と同い年くらいの、若い女性。
 他の受験者も、かなり緊張しているらしく、傍目から見ていても挙動不審だった。
 何と言っても、この試験は、天国行きか地獄行きかを決める、人生最大の分岐点なのだから、無理もないことではあるが。
「受験番号、五番、佐々野智信さん。三番扉前までお進みください」
 事務的なアナウンスが、智信の名前を告げた。三人の視線が一斉に、智信に集まる。
 智信は油切れのロボットのようなギクシャクとした動作で立ち上がり、扉の前に向かった。
「失礼します」
 そう一声かけて、プレートに『三』と記された扉を開く。
 部屋の中には、病院のCTスキャナーや、業務用タンニングマシンを連想させる、大掛かりな装置が設置されていた。
 そしてその隣に立っているのは、白衣姿の、一級市民らしい女性。胸元のネームプレートには『朽木百合』と書かれている。
「それでは、この器具を装着して、ここに横になってください。指示があるまで、動かないようお願いします」
 言いながら、彼女が差し出したのは、メカニカルなヘッドギアだった。
 ヘッドギアには、廃屋で際限なく生長した蔦のように、様々な色をしたコードが沢山絡み付いていて、それらは全て、一台のコンピュータへと繋がっていた。
 これを頭に被って、装置の上に横になれということらしい。智信は黙って、指示に従う。
 智信が装置の上に横たわったのを確認して、百合はコンピュータに向かい、スイッチを入れた。
 装置の駆動音と、コンピュータの起動音が重なり合い、微かなノイズが鼓膜を揺さぶる。
 装置の床は智信を乗せたまま上へとスライドして、智信の体全体を機械の中に収めた。間もなく足元の出入り口が閉まり、内部は完全に密閉される。
 何が始まるのか知らないが、閉所恐怖症には厳しいかもしれないな、などと呑気に構えていると、突然、光と色の洪水が襲ってきた。
 テレビのテストパターンのような、目の痛くなるくらいの原色である。智信の周りを、多彩な色をした光が、形を成して飛び回る。
 光は数秒毎に、休む間もなくその姿形を変化させる。それは花であったり、蝶であったり、雲であったり、鳥であったりした。
 智信は体を横たえたまま、目線だけをあちらこちらに動かして、暫しの間、その幻想的な光景に見惚れていた。
 そのまま、随分長い時間、寝かされていたように思う。
 昨日の夜、充分な睡眠時間が取れなかったこともあって、少々眠気を催して来た頃、出入り口が開いて、床が下にスライドした。
「お疲れさまでした。器具を外して、右手の扉へ」
 智信は呆けた顔でヘッドギアを外して、立ち上がる。
 あのヘッドギアと、装置の中で見た映像は、一体、何の意味があったのだろうか?
 この最終試験の趣旨がいまいち呑み込めず、智信は首を傾げる。まさか、ロールシャッハテスト、というわけでもないだろうが。
 考えてみた処で、今はわかりそうもなかった。疑問を頭の奥底に押し込めて、智信は右手の扉へと歩く。
244白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/23(日) 00:12:00 ID:NEniwn6D
 扉の向こうは、コンピュータルームと言って差し支えない様子だった。部屋の約半分が、無数のコンピュータで埋め尽くされている。
 その部屋の中央に配置された大きなデスク。そこに、白衣の女性が座っていた。ネームプレートには『叶綾香』と書かれている。
「そこにかけてください」
 綾香はデスクの向かいに用意されている椅子を手で示して、智信に座るよう促した。
 智信は椅子に座り、綾香と向かい合う格好になる。先の装置の中で横になっている内に和らいだ緊張が、また蘇ってきた。
 ごくりと生唾を飲んで、試験官だろう女性――叶綾香の、第一声を待つ。
「ようこそ、ラストステージへ」
 そう言って、綾香は微笑を浮かべ、大きく両手を広げた。嫌に、芝居がかった仕草だった。
「これより、最終試験『project whitebox』を開始します」
 綾香はそう宣言すると、デスクに積まれた書類を手に取り、ページを繰っていく。
 綾香の一挙手一投足に注目しながら、智信は考える。雰囲気から察するに、最終試験も面接になるのだろうか。
 もしそうであれば、下手な言葉は命取りになる。細心の注意を払わなくてはならない。智信は姿勢を正して、気を引き締める。
「筆記試験、用紙E、設問十九番の内容を覚えていますか?」
 書類に目を落としたまま、おもむろに、綾香は質問を投げた。
 何故今になってそんな質問を? 記憶力のテストなのか?
 質問の意図が掴めず、少し戸惑うが、答えに詰まるような問いではなかった。
 記憶力には、それなりに自信がある。智信は胸を張って答えた。
「はい。確か『自分よりも弱い立場の者の為に、命を投げ打てますか』でした」
「正解です。そして――」
 一拍間を置いて、綾香は唇の端を吊り上げる。
「あなたはその設問に『YES』と回答しています」
 手にしていた書類をデスクに戻して、綾香は続ける。
「あなただけが例外、というわけではありません。
実に九割以上の受験者が、その設問に『YES』と答えています。それが本当なら、とても素晴らしい世の中になるでしょうね。
それこそ、一級市民による管理など、必要ないかもしれません。ふふ……これは失言でしたか。忘れてください」
 どこか嫌味たらしい口振りではあったが、言いたいことはわかる。確かに、その設問への回答はどうしても、受験者の本音とは考え難いのだろう。
 実際、智信もそうだった。自分がどう行動するかなど関係ない。これは試験なのだからと割り切って、先方が望むであろう答えを書いただけだ。
 筆記試験や面接試験なんて、大抵はそんなものだ、と智信は思う。
 良く就職面接で、我が社の志望動機は?なんて質問があるが、あんなもの九割九分九厘嘘だ。
 面接官の前では『環境問題への取り組み等、御社の崇高な理念に心を打たれ〜』と云うような、歯の浮くような美辞麗句を並べ立てるが、本音を曝け出してみれば『仕事が楽そうだったから』だったり『給料が良いから』だったり『なんとなく』だったりする。
 聞いた話ではあるが『受付嬢に一目惚れしたから』なんて理由まで出てくる始末だ。そこまでいい加減だと、会社にとってはいい迷惑だろう。
「受験者の発言と行動が一致するか否かは、実際に試してみるまでわかりません。そして、この『project whitebox』は、言葉に潜む欺瞞を見抜いて、受験者が真に一級市民として相応しい人格を持っているかどうか試すものです」
「……それは、どういった形で試すのでしょうか」
 綾香は、よくぞ聞いてくれたといった表情で、頬を緩める。
「欺瞞を見抜くとは言っても、別に、ポリグラフのような前時代の遺物を使おうというのではありません。仮想空間内に生み出された『もう一人のあなた』に、極限状況を体験してもらいます」
 仮想空間。もう一人のあなた。予想もしていなかった展開に、智信は驚きを隠せない。
245白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/23(日) 00:13:17 ID:NEniwn6D
「先程、別室でヴァーチャルブレイン用のギアを身に付けましたね? あの時に、あなたの脳のコピーがコンピュータ内に作成されました」
「コピー……ですか」
「そう、コピーです。これから、そのコピーに簡単な記憶処理を施した上で、仮想の体を与え、極限状況の中に放り込みます。そして、仮想空間内でのあなたの行動から、その人間としての器を量ります」
 綾香はそこで一つ、咳払いをする。
「ここまで、理解できたでしょうか」
 智信は黙って頷くしかなかった。
「それでは、本題である、その『極限状況』の内容についての説明に入ります。こちらのスクリーンを見てください」
 綾香が手元のリモコンを弄ると、デスクの後方にある大きなスクリーンに、光が灯る。
 そこには、暗闇に浮かぶ真っ白な立方体と、一人の少女の姿が映し出されていた。
「コピーには、外部から隔離された部屋で、少女と二人きりになってもらいます。この少女も、過去に実在の人間からコピーされた脳で動いており、条件はあなたのコピーと同じです」
 言いながら、綾香はリモコンのスイッチを押す。と、カメラは、白い立方体に向かってズームインした。
 俯瞰視点故、宙に浮かぶ巨大なサイコロのようにしか見えなかった立方体が、スクリーン全体を覆い尽くす。
 カメラはそのまま壁をすり抜けて、立方体の内部に潜入した。
「部屋に存在するのは、ベッド、トイレ、それから、箱に詰められた僅かばかりの食料のみです。また、コピーを動揺させる、ルールと呼ばれる仕掛けも用意されています」
 パイプベッド、水洗トイレ、包装された箱、液晶画面。カメラは目まぐるしく切り替わる。
「これはサバイバルではありませんから、コピーの体調、生存日数などは一切評価に影響しません。評価対象となるのは、あくまで『行動』です」
「今まで合格された方は……どういった行動を取って、評価されたのでしょうか?」
 智信は恐る恐る、そう聞いてみた。
「そうですね。試験の趣旨、ルールの特性を併せて考えると『少女よりも先に死ぬ』のが最大の条件になってくるのではないでしょうか。生への執着は、大きな失点に繋がります」
「わ、わかりました……ありがとうございます」
「他に質問はありますか?」
 智信が、いえ、と首を振ると、綾香は一息ついて、椅子に寄りかかり、足を組み替える。
「さて……これで概要の説明は終了となりますが、現在、コピーの記憶処理中です。もう少し時間がかかりますので、それまで待機していてください」
 そこで綾香は、デスクに置かれたランプが点灯しているのに気付いた。
 もうコピーの記憶処理が完了したのかもしれない。綾香はボタンを押して回線を開き、相手からの言葉を待った。
 智信は、視線を下に向けて、綾香に聞こえないよう、小さく息を吐く。最後の最後でなんというテストだ……そう思わずにはいられなかった。
 はっきり言って、智信は率先して弱者を助けようと思うような人間ではないし、生への執着だって、人一倍ある。それは本人が一番良くわかっていた。
 それでも……ここまで来てしまった以上は、止めますとも言えない。もう、奇跡でも起きてくれることを願うしかないのだろうか。
 絶望に打ちひしがれながら、智信は口の中で、もごもごと呟く。

「畜生、なんてことだ……」

「なんてことだ……」

「頼む……!」

「頼む……死ぬんだ。死んでくれ……!」

 綾香は、おかしい、と思った。回線を開いた筈なのに、いつまで経っても、声が聞こえて来ない。そして、ランプの表示を確認して、自分の間違いに気付く。
 どうやらボタンを押し間違えて、タワー内を繋ぐ回線ではなく、仮想空間内への回線をONにしてしまっていたようだった。しかも、性質の悪いことにボリュームはマックスである。
 もしかすると、記憶処理済のコピーに室内の雑音が届いてしまったかもしれない。試験に影響を及ぼさないといいのだが……
 自分らしくない、馬鹿げた失態に眉を顰めてから、素早くボタンを押し直す。 
「叶博士。後一分弱で、五番コピーの記憶処理完了します。コンピュータの準備をお願いします」
「わかった」
 答えを返しながら、綾香はほっとする。まだ記憶処理は終わっていないらしい。 
 記憶処理の最終段階で、処理中の記憶は消去される。仮に、何か聞こえていたとしても問題はない。
246名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 00:13:39 ID:e8uJgLWz
リアルタイムwktk(・∀・)
247白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/23(日) 00:16:37 ID:NEniwn6D
「お待たせしました。それでは、これより試験を開始します」
 綾香は回線を切り、コンピュータを起動させると、智信に向き直った。
「左手の扉から退室して、案内人の指示に従ってください」
 智信は返事を返すと、力なく立ち上がった。目礼をして、部屋を立ち去る。
 扉の外には、既に案内人と思われる若い女性が待機していた。ベルガールのような衣装の上に白衣を着込んでおり、どこかミスマッチだ。ネームプレートには『草加碧』と書かれている。
 女性――草加碧は、智信の姿を認めるなり、早口で喋り始める。
「ええっと、最終試験の概要は中で、叶博士に聞きましたね?」
「は……はい」
 碧はごそごそと白衣のポケットを探り、メモを取り出して、朗読する。
「えっとえっと。機器にかかる負荷の関係から、等速以上の速度で処理することは不可能ですので、試験は長期間に及びます。
受験者専用の部屋を用意していますので、これより試験終了まで、そちらに寝泊りしていただきます。食事はこちらで手配しますので、心配は要りません。
また、室内に備え付けのモニターで、コピーの様子を二十四時間確認できます!」
「はあ……」
 受験者は部屋で、コピーの活躍をリアルタイムで見守るらしい。
 それにしても、なんというか……個性的な人だ。
 最終試験の内容を聞いて、気分が落ち込んでいた智信にとっては、彼女の妙なテンションは毒にしかならなかった。
 とはいえ、彼女も一級市民である。今回のような試験の場合、案外こういうタイプの方が、裏表がなくて良いのかもしれない……智信は疲労した頭で、そんなことを考える。
「それでは、一名様お部屋にご案内しまーす。ついてきてくださいね」
 ここには『一名様』以外来ないだろう……という突っ込みも空しく、智信を先導するようにして歩き出す。
 碧は廊下を歩きながら、先のメモをポケットに戻して、新しいメモを取り出す。
「それからそれから。仮想空間内における整合性保持の為、脳のコピーを取ると同時に、受験者の体格、網膜すい体細胞の感度等のデータも取得していますが、合否に関わらず、試験終了後それらは全て破棄されますのでご安心を!」
 読み終わったかと思うと、やおら立ち止まって振り向き、ノーリアクションの智信の顔を覗き込む。
「……ご安心を?」
「あ……はい」
 終始、そんな調子である。それほど長い道のりではなかったのだが、智信は部屋に到着する頃には、大分消耗していた。
「それでは、ごゆっくり〜」
 呑気な声と共に、ぱたん、と扉が閉められる。
 智信はがっくりと肩を落としながらも『project whitebox』と刻印されたモニタのスイッチを点ける。
 画面の中には、眠っている少女を起こそうとしている『もう一人の智信』が映っていた。
 データを取ったというだけあって、体格こそ似ているが、顔は殆ど別人のものだった。
 智信は化粧台の前に置かれていた椅子をモニタの前まで引き摺ってきて、そこに陣取り、固唾を飲んで、コピーの動向を見守った。
248 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/23(日) 00:18:28 ID:NEniwn6D
>>219からの続きです。長い間意味不明だったプロローグも含め、今回で八割方謎は解けました。次回か、その次あたりで終了かと思います。
「畜生」という言葉は智信の口癖ですので、ことある毎に使っています。それがプロローグと本編を繋ぐ小さな接点でした。
ちなみにTIPSが消えたのは終盤になって物語外での補足をしなくてもよくなったというそんな理由であります。
>>224
おお、すごい。今回の展開を見ればおわかりの通り、さっぱりどころかほぼ完全正解です。
あとは細部がどうなっているのか、の解説ですね。
249名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 00:21:46 ID:CdN3LxfI
リアルタイムktkr
250名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 00:51:20 ID:rYzXUCeo
リアルキタ→

GJです。こういう展開好きだわ
251名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 02:07:06 ID:eumIkMoc
>>248
続きまってましたー GJ!
お、どうやら大枠の想像(>>224)は間違ってなかったっぽいですね。
今までぶつ切り&小出しにしてきた「箱の外」の情報も、今回のでつながってきた感じ。
残り少ない続きもwktkでお待ちしてます。

…しかしこの試験、しかも結果を自分で見させられるってのは、もの凄い拷問だよな。
252名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 02:14:36 ID:xmppOMqM
俺的にはラピエス以来の超傑作だな。。。
他にも素晴らしいものはあったがコレは凄い。
期待しときまふ
253名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 10:24:06 ID:mbShhNot
なにこの超ハイクオリティスレ
エロパロの枠じゃないじゃん。大多数の一般小説より上じゃん。
254名無しさん@ピンキー:2007/09/25(火) 21:17:21 ID:Ar7BW4W4
推理小説て言って見せられたら本当にそう思うかも知れないクオリティ。GJの言葉しか贈れない。
255A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:12:01 ID:1Xsm51ok
A/B。>>155の続き


  *  *  *

 戦闘機が通過する音が過ぎ、直後に爆発音がする。その音にザパドノポリェワは振り返った。
「……クラッシュした?」
 黒煙が立ち上るのが見える。彼女はその方向に足を向ける。
 不意に、何か巨大な影が通過する。彼女は空を見る。白とオレンジのストライプ模様のパラシュートが降下していた。あれは、何度か見た敵パイロットのパラシュートだ。
 自然と、足はその方向に向いていた。
256A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:14:50 ID:1Xsm51ok

  *  *  *

 ヘルメットのヴァイザに付着した落葉を取り、そのヴァイザを上げてアズマは起き上がる。
 彼は予想通りの落下地点に降下した事で上機嫌だった。パラシュートが木に引っかかり、想定した降り方をせずに体を強く地面にぶつけてしまった事だけが心残りだったが。
 周辺は腐葉土と落ち葉なので、強くぶつけたといっても痛みはそれほどではなかった。彼はナイフで紐を切り、身軽になる。
 酸素マスクと耐G服を外す。防弾性もありいろいろ道具も入っている救命胴衣は捨てられない。ヘルメットは勿体無いから持ち歩く事にした。
 そしてパラシュートと紐でつながっている先にある保命生存用品が入っている鞄から29式自動拳銃とその予備マガジン2本を取り出した。
 着水したわけではないから、救命浮舟は開いていない。これも切り離して破棄する。救難無線機は既に起動していたが、端子を接続しても音が聞こえない。
 仕方無しに彼は端子を外す。そして鞄の中身を確認し、その中にある蒸留水の入ったボトルを取り出し、開けて飲む。水が染みてきている。体が震える。
「うう寒っ。これ耐水耐寒じゃねえのかよ。まあいい、その辺の民家にでも行ってみよう」
 移動しようとした矢先、発砲音。おもむろに後ろに29式自動拳銃を向ける。そこにはスラヴ系の女性が1人、こちらに拳銃を向けている。フライト・スーツを着ている。
 その女性は、恐らく彼女の国の言葉で何か呟いた後、彼に声をかけた。
「Throw your gun over.」
 武器を捨てろ。彼は確かにそう聞き取った。だが、彼女が持っているのはただの拳銃。その気になれば、自動拳銃を彼女に向けている彼が明らかに有利だ。
「What you do if I won't do it?」
 そうしなかったら?
「貴様を撃つ」
 アズマはため息をつく。足に力を入れ、瞬時に右に転がる。女性は拳銃を発砲。しかし当たらない。今度は彼が発砲。うち2発の4.6ミリメートル口径弾が彼女の左脚を貫通した。
 くぐもった悲鳴を上げ、女性の手から拳銃が滑り落ちる。そして彼女はうずくまる。
「ただの拳銃でこれ相手は、さすがに厳しいと思うぞ」
 アズマは彼女に近付き、落ちた拳銃を拾う。
 マガジン・キャッチを押してマガジンを出し、スライドを引いてチェインバの中の弾薬を排出する。
 そのまま銃本体を保命生存用品の方に投げ、落ちた弾薬を再びマガジンに入れ、そのマガジンをポケットに入れた。
「北海道土産が捕虜か。もっと土産っぽいものが欲しかったぜ。白い恋人とかビールとか」
「……殺せ。捕虜にするくらいならとっとと殺せ!」
「やだ。弾が勿体ない。あくまでもあんたは捕虜だ。まあ、そんなに捕虜になりたくないんだったら、自殺でもすれば? 俺は止めない。ナイフ、持ってるんだろ?」
 女性の言葉をアズマは意に介さない。女性はアズマから目を逸らした。
「自殺する勇気が無いんなら『殺せ』なんて言うな。そういえば、あんた、多分戦闘機のパイロットなんだろうけど、保命生存用品はどうした?」
 女性は黙ったままだ。アズマは彼女の来たと思しき方向を見る。それと思しき鞄が木に立てかけてあった。
「あるじゃん」彼は女性から離れ、箱に近付く。「捕虜として俺についてくるんなら、とりあえずナイフ以外はあんたのものだ」
 彼は箱を開け、その中に入っているサヴァイヴァル・ナイフをポケットに入れる。
「命の保障は、するか?」彼女はおずおずと訊いた。
「勿論。別に敵兵狩りやってるわけじゃないし。じゃあ、とりあえずナイフ出して」
 彼女は地面に、パラシュートと自分を継ぐ紐を切ったであろうナイフを突き立てた。
「交渉成立だな。俺はキョウスケ・アズマ。中尉だ」
「……オリガ・ニコライエヴナ・ザパドノポリェワ大尉」
 名前、正確には階級を聞いた瞬間、アズマは突き立てられたナイフを引き抜く手を止めた。
「階級俺より上かよ。これは、失礼しました」
「いきなり恭しくなるな、疲れる。さっきまでの対応でいい」
「ラージャ、大尉」
 彼らはその手を取り合った。
257A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:18:42 ID:1Xsm51ok

「あれ? 壊れてんのか?」
「どうした?」
 アズマは自分の救難無線機で連絡を取ろうとしたが、それが動かなかった。ビーコン波は出ているようで、それを確認する発光ダイオードは普通に点滅している。
 ここは胆振県八雲町の小さな神社の本殿だ。周囲に民家は無い。民家跡ならあるが。神社の背後は森だ。雨に濡れたハーネスや上着は床に広げてある。しかし乾く当ては無い。
「通信機が壊れてるっぽい。おばあちゃんの45度スパンキングでも反応無しだ」
「何だそれ? ん、Дерьмо(くそ)! こっちのは電池が液漏れだ。まったく、運が悪いなんてものじゃない」
 ザパドノポリェワも通信機を動かしていたが、それも壊れていた。電池がやられているのでビーコン波すら出せない。
 結局アズマは神社に放置されていた傘を自分の発信機にかぶせてそれを鳥居の下に置いた。
 救難無線機はその位置を周囲に伝えるための発信機の役割と、救助隊との連絡手段という役割を持っている。その内の連絡手段が封じられていた。
「このあたりの住人はみんな避難したみたいだしな、勝手に上がり込んで電話か何かを使うのも気が引ける」
「別にいいだろう。非常事態だ」
「あのなあ、あんたの国とは訳が違うんだ。ここは俺らの国で、住民は殆どがその国民なんだよ。制式に徴発しないと使えないんだ。あーあ、公衆電話くらい無いかな……」
「あっても使えないだろう。まったく発想が貧弱だな」
 通信機を脇にやり、アズマはザパドノポリェワを見る。
「はっきり言うね……」
「……アズマ、と言ったな。お前は私を捕虜にして、どうしようというんだ?」
 思いもよらない質問に、アズマは答えに窮する。
「敵から情報得る、というのは分かる。だが、自分の身の安全とそれとを天秤にかけたら、自身をとるだろう。明らかにお前に敵意を持っている私を確保しておくのは、無駄だ」
「本当にそうかな」
 アズマは反論する。
「少なくとも、俺はあんたを助けて正解だと思うけどな。あんたを捕虜として扱うのは、ただ俺が軍人っつー身分だって理由だけだ。別に恨みとかは無いよ」
 彼女は何も言わない。
「あとは、そう、俺が与えた怪我だし、そこらへんは俺が責任取らなきゃな。そうじゃなくても、目の前に怪我した女性が居れば、敵味方関係無く助けただろうし」
 あの後アズマはザパドノポリェワに応急の手当てをした。その間も敵意の視線は向けられていたのだが、彼はそれをあえて無視して止血をしたのだ。
「軍人失格だな」
「よく言われる。大学でも同じ事言ったら『敵を殺さずに何のための軍人だ』ってな、先生方にも生徒にも。殺したら殺したで『人道』がどうのこうの言うくせに」
 ザパドノポリェワはアズマを見る。
「大学? 生徒? お前は軍人じゃないのか?」
「即応予備役さ。一度軍人辞めて、あんたらが攻めてくるまで大学で軍事学を教えてた。で、俺のゼミの生徒に、北海道の出身の連中が結構居る。あいつら何やってるかな」
 アズマは格子の外を見る。1524時。そろそろ日が傾きかける頃だろうか。
 その様子を、ザパドノポリェワは多少の罪悪感を込めて見た。そして不意に、ある事に気付く。
258A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:19:22 ID:1Xsm51ok
「……アディーン・シェスティ・シェスティ」
 アズマの左肩。そこに、部隊のエンブレムがある。その下に、「24-8166」と刺繍してある1枚の布が貼り付けられていた。
「うん?」
「お前、機首番号が166の、カナード翼の付いた機体に乗っていなかったか?」
 アズマはその番号を復唱する。確かに、愛機の機首には166という番号が書かれていた。機体番号は24-8166だ。そして機体にはカナード翼が付いていた。
「なんだ、あんた俺の機体番号知ってるのか? これ、尾翼に書いてある番号なんだけど」
「……信じられん……。私を落としたのは、もしかしたらお前かもしれない」
 それは軽い驚きだ。アズマにとっては。ザパドノポリェワにとっては強烈だった。
「あんたは何に乗ってたんだ?」
「382のJ-27Aだ」
 アズマは自身の落とした機の番号まで確認しなかった。だがその機体の名前、J-27Aに反応する。彼が落としたJ-27Aは1機だけだったはずだ。
「もしかして、上が蒼くて下が灰色の塗装の機体じゃないか?」
「……そう、だ」
「マジ? 俺にミサイル撃った?」
「ああ」
「ひと月くらい前、俺に落とされた?」
「落とされてはいない! 右の尾翼を失っただけだ!」
「そうだっけ。いや何とも、凄い偶然だな。ははっ、世間ってのは狭いな」
 アズマは旅行先で友人に会ったときのように喜ぶ。それを見て、ザパドノポリェワは言う。
「お前は本当に軍人らしくない! お前みたいなのがあんないい機体に乗ってるなどとは、空の戦士に対する冒涜としか思えん!」
「ひでえなあ。まあいいか。俺の機体な、あれ、ヨンマルシキ・ニジュウニゴウ・イ・セントウキ、愛称を『ホウフウ』ってんだ。言い換えると『Type 40 F-22A』かな?」
 彼は指でその形を描きながら言う。
「機動性はあんたの『鶴』よりもいいって話だ。まあ、あんたのは『鶴』ってよか『猛禽』だけど」
「『猛禽』はお前の方だ」ぼそりと、彼女は呟くように返す。
 彼は不意に聞こえた言葉に目を向ける。そして微笑み、言った。
「お褒めに預かり光栄です、大尉」
「ああ。……いや、あの、お前じゃなくお前の乗る機体がそうだって事でな……」
 彼女は顔を真っ赤にして手を振る。それにアズマは笑い出す。
「なっ、何がおかしい!」
 ザパドノポリェワは真っ赤なまま激昂する。だが彼は笑ったまま、違うと言い、続けた。
「あんた、俺を軍人っぽくないって言ったけど、あんただってそうだぜ?」
「は?」
「あんた、かわいいよ。顔だってキレイだし、やっぱ美人は表情が豊かじゃないと」
 充分赤かった顔が、更に赤くなる。そして身を乗り出して叫ぶ。
「な、何言ってるんだ! 私は敵だ! 敵に対して……」
「それとこれとは関係無いって。美人は美人」
 反論した体勢で、彼女は彼を睨む。
「怒った顔もかわいいなんて、あんた反則だって」
 彼女は下を向く。そしてアズマに背を向けた。
「もうお前など知らん!」
 アズマはそれに苦笑すると、通信機の修理を始めた。
「……スパスィーバ」
 ザパドノポリェワはふと呟く。
 彼女自身、美人といわれた事は何度もあった。軍人になってからはしかし、そういわれる事も少なく、また彼女自身性別を関係無くして同僚と勤務中の付き合いをしていた。
 好意的に言われる事に対して、いつの間にか抵抗が出来てしまっていた。それを彼女は無性に悲しく思う。
 だが「ありがとう」と言ってから、やはり恥ずかしさがこみ上げてくる。
「何か言ったか?」
「何でも無い!」
「おいおい、何怒ってんだよ」
「何でも無いと言っているだろう!」
「はいはい。……どういたしまして」
 彼女は振り返る。
「……聞こえてたのか?」
「一応な。『スパスィーバ』って、『ありがとう』って意味だろ?」
 彼女は何も言えなくなる。頭を抱え、再び背を向けた。
259A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:20:52 ID:1Xsm51ok

 雨は止まない。遠雷のような戦闘機の爆音は1時間も前に聞こえなくなり、たまに爆発音が間延びして聞こえてきた。南の方で戦闘が繰り広げられているのだろうか?
 日が暮れてきた事で更に気温が低下する。アズマは出撃の前に見た地上天気図を思い出す。津軽海峡を停滞前線が横切っていた。秋の長雨だ。
 彼はとうに通信機の修理を投げ出していた。どういう衝撃が加わったのか、基盤が真っ二つに割れていたのだ。発信機部分は無事だが、最早ジャンクである。
 ザパドノポリェワの通信機は電池の液漏れが起きており、しかもその液がいろいろな部分に浸透していた。ジャンクにすらならない。
 アズマは壁に寄りかかり、口笛でいろいろな曲を吹いていた。また、ひとつの曲を吹き終わる。
 不意に、肌を摩る音を彼は聞く。彼は、鞄を枕にしているザパドノポリェワを見た。レスキュー・シート、つまり紙のような薄さの熱遮断シートが僅かな光を反射している。
「寒いのか?」
 彼女が彼を見る。レスキュー・シートの隙間から入る風。さぞ寒かろうに。
「お前に心配されるいわれは無い」
「あるよ。あんたは捕虜。俺は人権条約だか戦時人身条約だかで捕虜を丁重に扱う義務があるんだ。あんたが体調を崩してこっちを訴えられても困る」
 当該条約の捕虜条項では、捕虜の待遇を事細かに規定している。条約の批准国はこれに則らなければならない。
「しかし、お前は条約を遵守しているわけではない。私が許可した事だが、お前は私を上官として扱っていないではないか」
 捕虜は軍人である必要がある。軍人にはその指揮系統上階級が存在し、捕虜はそれに則した扱いを受ける権利を有する。
「上官として扱われる権利の一部を、あんたは捨てただろ。そんなあんたに条約の遵守云々について言われたくはないな」
 彼女は言葉を発しない。論では勝てない事が分かったようだった。
「あんたに傷を負わせたのは俺だ。出血だって、まだ完全には止まってないと思う。そのせいで失血死なり凍死なりされたら、俺の夢見が悪すぎる」
 ザパドノポリェワはアズマを見た。真剣な顔で、彼は目を合わせる。
「だから、死ぬな」
 彼女は顔を背けた。
「あれだけ、私の国の航空機を落としておいて、よく言う」
「機上から見る分には、生身じゃないからな。まあ、かなりの人数殺してるってのは自覚してる。だからって、目の前の今会話してる奴が次の瞬間に死ぬのを、俺は耐えられない」
「自分勝手だな」
 その一言に、彼は微笑む。
「そうさ。死なせたくない奴のためなら、俺は出来る事の全てをやるつもりだ。だからさ、俺を頼れ」
 ザパドノポリェワは起き上がり、壁にもたれる。
「では、緊急事態になったらそうしよう。でも私はまだ余裕がある。その状態で『頼れ』といわれても、了承は出来ない。それとも、捕虜の主張は受け入れられないか?」
「とんでもない。オーケイ、折れるよ。あんたの心情を尊重しよう」
 彼はそう言いつつ、鞄を引き寄せる。
「でもとりあえず、これ持っとけ」
 アズマは鞄から救命保温具と書いてある薄い袋を取り出してザパドノポリェワに投げる。
「何だこれは?」
「袋から出して、出てきた袋を揉んでやれば段々あったかくなるものだよ。振ってもいい」
 彼女は言われたとおりにそれを扱う。
「なるほど、確かに熱くなってきたな」
「だろ? 冬場は重宝するんだよな。さて、話もひと段落したし、ここらでメシといかないか? いい時刻だ」
 ザパドノポリェワは「メシ」という言葉に無意識に反応する。先ほどから空腹を訴える音は互いに聞こえていたが、今のは一切大きかった。彼女は硬直したままだ。
「訊くまでもないみたいだな」
260A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:23:33 ID:1Xsm51ok
 アズマは鞄の中から戦闘糧食の入った袋を取り出す。取り出した袋には「38式救命糧食・6食分」というレーヴェルが張ってある。アズマはそれを持ってザパドノポリェワに歩み寄る。
「隣座るぞ」
「なぜだ」
「あんたとよく話したいから」
「……」目を見開いてザパドノポリェワはアズマを見た。「……理由になってない」そう言って彼女は眉間を寄せる。
「なんだよ。明確な理由だ。向かいの壁だと、暗さと距離であんたの顔が見えにくい」
「別にいいだろう」
「駄目だね。会話は、互いの顔を見ながらやるもんだ。そうじゃないと、互いを理解出来ない」
「しなくていい」
「俺は理解したい。あんたを」
 彼女は顔を逸らす。
「……好きにしろ」
「オーケイ。じゃあ、隣りな」
 言ってアズマはザパドノポリェワの左側に腰掛けた。
「んでさ、これ、俺の国のレーション(戦闘糧食)なんだけど、あんたのは?」
 彼女は渋々と自分の用具入れから箱を取り出した。「В」と大きく書かれている濃緑色の小箱だ。彼らはそれぞれ持ち物を開ける。
 38式救命糧食の袋を開けて最初に出てくるのが、通称「がんばれ紙」というプリントだ。
 「がんばれ! 元気を出せ! 救助は必ずやって来る!」
 この文面で始まるそれを由来として、代々の救命糧食は空軍パイロットの間で「がんばれ食」と呼ばれている。
「そんなのが入っているのか」
 ザパドノポリェワは紙を見て驚いていた。
 「この救命糧食は、特殊環境においても速やかに心身の疲労を回復し、体力の維持をはかるために製造されたもので、糖類・脂肪・たん白質などの各種栄養素が有効に取れるように配合されています」
 「1食分のカロリーは約270カロリーあり、これを食べると熱とエネルギーを与え、直ちに元気百倍となります」
 この表記を、アズマは気に入っていた。見知らぬ土地、やもしたら外国かもしれない土地で自分の母語に触れるという事は、それだけで心が休まる事である。
「しかし、私のには入っていない」
「その代わりなのか知らないけど、パッケージは楽しいな」
 ザパドノポリェワの救命糧食には、その1食分の袋にコミカルな絵が印刷されているレーヴェルが張ってある。どの袋も違う絵だ。
「パイロットの間でも、これらの絵を集めている奴がいると聞いた事がある」
「へえ。でもこれ、被ったら凹むなあ」
 38式救命糧食の内容は、厚手のビスケットだ。「がんばれ紙」には励ましの言葉の他に糧食の内容も書いてある。
 それによると、「穀類を主原料とした加工食品で、糖質と脂肪及びたん白質を含み、ビスケット風な味と香りを持つ高カロリー食品です」との事だ。
 他方ザパドノポリェワの「救命糧食В[ヴェー]」は、クラッカだ。38式救命糧食と同様に栄養分を調整されており、同梱のジャムを付けて食べるのだという。
 彼らは同時に小袋を開ける。そして2人とも一口食べる。
「美味そうだな。半分くれ。半分やるから」
「何だ、いきなり」
「いや、これ口当たりはいいんだけどさ、ビスケットなだけあってやっぱぼそぼそしてるから、さっぱりしたもの食いたくて。や、ジャム分けてくれるだけでもありがたいけどさ」
 彼らは自分の糧食の半分をそれぞれ交換する。交換した38式救命糧食を一口食べ、ザパドノポリェワは言う。
「確かに、これは水分が欲しくなる糧食だな。個人的には塊がひとつだけ、というのが気に食わない」
「同感。ジャム付けてみたら? 以外にいけるかも」
「塩味が強調されそうな気がするが」
「じゃあ俺がやる」
 アズマは彼女の左膝の上にあるジャムの袋を取った。
「……誰が使っていいって言った?」
「じゃあ左膝に乗せるなよ。ご丁寧にこっちに切り口じゃない方を向けてさ」
 彼女はやはりアズマから顔を逸らした。
「ま、断りは入れとくべきだったな。すまん。で、使っていい?」
「……好きにしろ」
「おう。そうする」
 アズマはジャムをビスケットに塗り始める。
「……いや、少し残しておけ」
 唐突な呟きに、彼は笑う。
「な、何だ」彼女は怒ったような顔を向ける。
「いや、あんた、ホント、かわいいな、って」
 アズマはジャムの袋を彼女に差し出す。それをひったくって、彼女は言った。
「じょっ、上官をからかうのもいいかげんにしろ!」
261A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:26:27 ID:1Xsm51ok
 その時だった。爆発音と衝撃波が社を揺さぶったのは。
「……話する暇なんて無かったな。とっとと食っちまおう」
「ああ。同感だ」
 2人とも、軍人の顔になる。アズマは、いやザパドノポリェワも素早く糧食を完食する。アズマはそこから立ち上がり、出来るだけ足音を立てないようにしながら自らの鞄を持つ。
 そして立てかけていた29式自動拳銃を持って構える。ザパドノポリェワも鞄を閉じる。
「弾着が近い。もしこっちのだとすると、建物には必要以上に手をかける事は無い筈だ」
「だがこちらなら、容赦無く破壊するだろうな」
 意見が一致する。また爆発音。付近には戦車砲と思しき音。攻撃ヘリコプタの爆音もする。短いスパンで銃撃する音。いやでも緊張する。
 アズマは鞄の中から拳銃を取り出し、マガジンをグリップに挿入する。そしてそれを、ザパドノポリェワに渡した。
「どういう事だ?」
「ここが危険だという事だ。いくらビーコン波がレーダ波と違っても、ひと目見ても分からないかもしれない。ここがウチらの攻撃の対象になる事だって考えられる」
「逆に私たちから攻撃される可能性もある、という事か。それと私に銃を返した事と、何の関係がある」
「ここから避難しようと思ってな。あんたはまだ手負いだし、肩くらいは貸す。それで、避難の最中の互いの護身に、あんたに銃を返した、ってわけだ」
「そう、か。脚は大丈夫だ。多分。だが何処に行こうというんだ」
「もう少し標高の高い所だ。どっちの軍も、機動に向いてない場所には行かないだろ」
「分かった。だがビーコンはどうする?」
「置いていく。持って行くのは自殺行為だ」
「そうは思えない。周波数は確実に違うんだろう?」
「ああ。だが俺は戦車とかヘリとかのレーダ表示がどうなってるのか知らない。不明なものはリスクでしかない。だから切り捨てる」
「お前は馬鹿か。その不明なものがここにいるだろう」
 ザパドノポリェワは自分を指差す。
「お前は私がお前を撃たないと信じてこれを私に返したんだろう? 撃たないかどうか不明なのに。なら、ビーコンを持たないのはその主張に反する」
「人間とビーコンは違う」
「そうだ。だがな、私はこう教わった。戦場で大切な事は、憎しみを持たない事、生き残る事、そして自分の決めたルールを守り抜く事だ。お前は、そうじゃないのか?」
 アズマはザパドノポリェワを見た。そして再び社の入り口を見る。
「……アズマ……」
「俺の教官も、あんたの教官と同じ事言ってたな」
「そう、だったのか」
「思い出したよ。教官の第1声がそれだった。畜生、いい言葉じゃねえか。くそ、俺は馬鹿だな、忘れてたぜ」
 彼は空いた左手で自らの頭を叩く。
「よし、不確実なものを持とうじゃないか。俺はあんたを信じる。まあ、後ろからズドンとされればそれまでだけどさ」
 再び爆発音。至近だ。爆風で社自体が軋む。
「どっちのか知らんが、こりゃいよいよ出時だな」
 アズマはビーコンを回収して中に戻ってくる。ザパドノポリェワは既に立ち上がって待っていた。
「忘れ物は?」
「私は無い」
「じゃ、行くか。脚は?」
「歩かないと、どうとも言えないな。まだ痛むが」
「傷口が開いたと思ったらすぐに言え。無理すんなよ」
「分かった」
 言って、彼らは神社を出る。大雨が迎える。彼らは裏の森から山に入った。直後、戦車砲か何かが神社の前庭に落ち、爆風で神社が倒壊した。
「やべえ。ぎりぎりじゃん」
「命拾いしたな」
 2人は山を登っていった。
262A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/09/26(水) 10:54:10 ID:1Xsm51ok
以上、3話。

では恒例の用語解説

・救命浮舟・・・一人用の救命ボート。その形は靴に似ている。生存者の保温を意図したもの。
・4.6ミリメートル口径・・・ドイツのH&K MP7がこの口径。
・マガジン・キャッチ・・・弾倉を銃に固定しておくための装置。ここを押すと弾倉が取れるようになる。
・マガジン・・・弾倉。
・スライド・・・遊底。機関銃やオートマティック拳銃において、フレーム上部に位置し、銃身や撃発機構などを覆っているパーツ。
・チェインバ・・・「チェンバー」の方が馴染みがある語か。薬室。弾倉に弾薬が入っている状態でスライドを引くとここに弾薬が装填され、撃てる状態になる。
・レスキュー・シート・・・体を覆うアルミホイルのようなものだが、保温性は抜群である。ぺらぺら。
・人権条約だか戦時人身条約だか・・・我々の世界でいう「ハーグ陸戦条約」や「ジュネーヴ条約」といったもの。
・救命保温具・・・要はホッカイロ。
・「がんばれ! 元気を出せ! 救助は必ずやって来る!」・・・実際に書いてます。さすがに「がんばれ紙」とは言わないのでしょうが、「がんばれ食」とはちゃんといわれています。

小ネタ
>「ひでえなあ。まあいいか。俺の機体な、あれ、ヨンマルシキ・ニジュウニゴウ・イ・セントウキ、愛称を『ホウフウ』ってんだ。言い換えると『Type 40 F-22A』かな?」
F-22Aは、まあググれば出てくるわけですが、アメリカ空軍の戦闘機です。愛称は「ラプター」、つまり「猛禽」

>「機動性はあんたの『鶴』よりもいいって話だ。まあ、あんたのは『鶴』ってよか『猛禽』だけど」
>「『猛禽』はお前の方だ」ぼそりと、彼女は呟くように返す。
まあ、そういう事です。

次の投下で完結ですね
ではノシ
263名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 11:02:40 ID:Uhr0sASB
>>262
 GJ!!!

 今回の最萌えポインツは『おばあちゃんの45度スパンキング』(w
264名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 14:18:23 ID:TkLSr1Ps
GJ!オリガさんかわいいよオリガさん
いよいよ二人っきりですが、果たしてどうなることやら…

うん、やっぱりファーストネームの方が呼びやすいな。
265名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 20:28:06 ID:8zxelYmi
>>262
GJ!! オリガ大尉カワユスw

> 次の投下で完結ですね
えー もうおわっちゃうんすか?ナンカモッタイナイ…
あ、第一話が完結ってことですねw
266名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 23:32:22 ID:SN1GHgKt
>>262
GJ!
そういえばラテン語の「盗賊」がラプトル(raptor)だったな。
何がどうなって「盗賊」から「猛禽」になったんだか。

>>263
洗濯スレでそんなネタがあったなwww
267名無しさん@ピンキー:2007/09/26(水) 23:44:52 ID:bN8zOAIJ
>>262


ええい! くそっ! ちくしょう!
あまりの良さに身体がよじれてしまったではないか!!
ヤバいよ、ヤバいですよ! こんな萌えキャラにしてしまって!
明日は早いのに眠れないじゃないか!!
GJ! GJ!! 超GJ!!






最後に、あの時原案出して良かったと、自分を褒めたい…
ごめんなさい、あまりの良作に我を忘れた。
これ以上、よじらせないかぎり、もう出ない。
268白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/28(金) 00:15:43 ID:GI1AHl8r
 智信は一人、用意された部屋で項垂れる。
 智信の一級市民昇格試験は、最悪の形で幕を閉じようとしていた。
 先程まで、白い部屋が映し出されていたモニタは、黒く染まったままで、もう何の変化もない。コピー二人の死を以って、最終試験は終わりを告げたのだ。
 なまじ終盤までは期待を持たせる展開だっただけに、落胆も一入だった。
 食料を分け合い、手を取り合って過ごした。少女に手を出すこともしなかった。なのに……最後の最後、ルールCの罠にかかった。
 いくらなんでも、あれは反則だ。相手と一緒に死ぬか、相手を殺して自分だけ生き残るか、では、誰だって後者を選ぶに決まっている。
 生存本能にすら打ち勝てる強い精神力を持っていなければ、一級市民になる資格はないと言いたいのだろうが、それにしても理不尽だ。
「畜生……これで、人生終わりか」
 呟いて、窓際へと歩く。窓の外に目を遣る。セントラルタワーの十階からは、マシン・シティが一望できた。
 いつもは見上げるだけだったこのタワーから、一級市民となって街を見下ろす。それが、智信の夢だった。
 その夢はもう、叶わない。永遠に手の届かない処へと、消えてしまった。
 いっそのこと、この窓から飛び降りて死んでやろうか。冗談半分、本気半分でそんなことを考えて、智信は突き出し窓に手をかけた。
 そのまま、窓を全開にしようとしたが、半分も開かない内に止まってしまう。はめ殺しになっていて、一定以上は開かないようだった。
 腕は通るが、頭は半分も入らなくて、顔を出すことすらできない。
 もしかしたら、以前一級市民昇格試験に落ちた受験者が、ここから身を投げたとか、そんな因縁があるのかもしれない。
 と、後ろで部屋のドアをノックする音がして、智信は振り返る。
 顔を出したのは、智信をこの部屋に案内した女性――草加碧だった。
 例によって例の如く、白衣のポケットからメモを取り出して、読み上げる。
「お疲れさまでした。結果の発表は明日の朝になりますので、それまで自室で待機をお願いします」
 碧はそれだけ言うと、メモをポケットにしまって、智信の方を見た。
「……わかりました」
 智信が、大分覇気の失われた声で返事をする。碧は、ぺこりと頭を下げて部屋を出て行く。
 智信は、モニタの前に置いていた椅子を化粧台の前まで戻して、ベッドの上に倒れ込んだ。
 セントラルタワーの豪華な食事とも、今日限りでお別れだ。試験中はモニタが気になって満足に味わえなかったが、今夜くらいは、料理に舌鼓を打つとしよう。
 何せ、これが……智信にとって、最後の晩餐になるのだから。明日からは、ヒエラルキーの最下層、五級市民としての生活が始まる。そしてそれは、一生終わることはない。
 ふと、智信は、ギリシャ神話のイカロスを思い出す。イカロスは蝋で固めた羽を身に付けて天を目指したが、父親の忠告を無視して太陽に近付き過ぎた結果、熱で蝋の羽が融解、墜落死した。
 その神話は、両親の忠告を聞かず、分不相応にも一級市民を目指して、五級市民に落ちた智信の境遇と重なる。
 そんなくだらない感傷に浸りながら、智信は枕に顔を埋めた。

269白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/28(金) 00:16:31 ID:GI1AHl8r
「碧」
「は、はい!?」
 廊下を歩いていた碧は、急に背後から名前を呼ばれて、素っ頓狂な声をあげた。
 強張った顔をして振り向くが、声をかけてきた相手の顔を確認すると、途端に表情が緩む。
「なんだ、蒼兄かあ……びっくりした。仕事はどうしたのー?」
 碧に声をかけたのは、碧の兄、草加蒼だった。
 一級市民としては、蒼は碧の先輩で、一級市民内での地位も蒼の方が高い。一大派閥を指揮する蒼と比較してしまうと、碧はまだ駆け出しだ。
 本来なら立場上、顔を合わせることすら滅多にないのだが、そこはそれ、身内の好というやつで、蒼は時折こうして、碧の様子を見に来る。
 蒼は昔からそうだった。人一倍責任感が強く、いつも年下である碧を気にかけていた。子供の頃、混雑する場所に二人で出かける時などは、碧の手をぎゅっと握って離さなかった。
 碧は、そんな兄の背中を追いかけて一級市民になったと言っても過言ではない。
「少し早めの昼休みだよ。これから昼食を食べに行くところ」
 蒼はそう言って、視線を腕時計に落とす。
「それはそうと、本日の、最終試験経過について聞かせてくれないか」
「えーっとね……」
 碧はいつものように、白衣のポケットからメモを取り出す。
「新規入室はなしで、試験終了が、十三号室と、十八号室の二名かな」
「大丈夫そうか?」
「うん。多分。一人は大人しそうな女の人だし、もう一人の男の人も落ち着いてたから……」
 蒼の言う『大丈夫そうか』とは、つまり、本日試験終了を迎える受験者が、問題行動を起こす心配はないか?ということだ。
 一級市民昇格試験は、受験者の大多数が不合格となる、難関試験である。そして、不合格となった受験者を待ち受けるのは、ともすれば刑罰よりも過酷な運命。
 必然、受験者たちの精神状態は不安定になる。以前から、試験の結果を悲観しての自殺者、脱走者などは度々出ていた。中には、食事用のナイフで職員に襲い掛かる者まで居た。
 対応に苦慮した試験管理委員会は、試験期間中、食事に微量の鎮静剤を混入するなどの策を講じたが、それでも、トラブルは後を絶たなかった。
 受験者たちの案内人兼世話役として、試験の前後、受験者に直接接触する碧は、かなり危険な立場に置かれているのだ。
 勿論、不足の事態も想定して、碧が受験者の部屋に入室する際には、外に護衛を待機させたりしてはいるのだが……そんな措置では、とても安全とは言い切れない、と蒼は思う。
 大体、こういう危険を伴う仕事は、屈強な男性が適任だ。見た目が厳ついほうが、抵抗の抑止力にも繋がるだろうに。
 何故、碧が案内人兼世話役をやらされているか、と言えば、現在、新一級市民の人事決定権の大半を握っているのが叶派だからに他ならない。
 諸々のリスクを認識した上で、あえて、綾香は碧を受験者の応対に回させている。草加派の会長、草加蒼の実妹である碧を、だ。
 まったく、陰湿な真似をする……綾香のあの、嫌らしい笑みを思い浮かべて、蒼は背筋が薄ら寒くなるのを感じた。
「ならいい。頑張れよ」
 だが、そんな嫌悪はおくびにも出さず、蒼は碧に微笑んで見せる。碧も薄々勘付いているだろうが、派閥間の柵なんて、話して楽しい話題でもない。
「はーい」
 碧が元気よく返事をするのを見届けると、景気付けか、蒼は碧の肩をぽんと叩いて、廊下の奥へと消えた。

270白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/28(金) 00:17:21 ID:GI1AHl8r
 食堂で日替わり定食を食べていた蒼は、どこからか注がれる視線に気付いて、顔を上げた。
 見れば、蒼の座っているテーブルの真正面、食堂の入り口付近に、マークスがこちらを向いて立っていた。
 おかしい、と蒼は思う。いつもマークスは食堂ではなく、向かいのレストランで食事をするのではなかっただろうか……と。
 そんなことを考えている間にも、マークスは蒼のテーブルへと近付き、すれ違いざまに、一枚の紙切れを蒼に手渡した。
 そして、そのまま踵を返して、何事もなかったかのように食堂を後にする。
 蒼は右手で炭酸飲料の入ったカップを口元に運びながら、左手で器用に折り畳まれた紙切れを開く。
『重要な話がある 食後 誰にも見られず 八階第二会議室まで』
 八階の第二会議室と言えば、長い間使われていない部屋だった。そこならば、邪魔が入る心配はないと、そういうことだろう。
 マークスが叶派から重用される『project whitebox』導入後の合格者――通称『白組』でありながら、草加派と協力して、叶綾香が過去に犯した犯罪について調査しているのは知っていた。
 マークスから蒼に接触してくるとすれば、まず間違いなく、その件についての報告だ。
 蒼は手早く食事を終えてしまうと、急ぎ足で第二会議室へと向かった。

「一つ、頼みたいことがある」
 八階、第二会議室。入ってきた蒼の姿を見るなり、マークスはそう切り出した。
「まずは、これを見てほしい」
 鞄の中から、書類封筒を取り出して、束になった大量の書類を机の上に広げる。
 蒼はその中の一枚を手に取り、軽く内容に目を通して、仰天する。
「これは……『project whitebox』システム概要のコピーじゃないか……! 何の目的があるか知らないが、機密データをフロア外に持ち出したと知れたら大事になるぞ!?」
 書類を机に戻して、信じられないといった風に首を振る。
 マークスが持ち出していたのは、フロア外への持ち出しを禁じられている、機密データだった。仰々しく、書類の各所に赤い判が捺されている。
 これは派閥など関係なく、誰もが遵守しなければならない規律である。ただ、その規律の所為で、叶派の牙城である最終試験の暗部が隠蔽されている側面も否定できないが。
「まったく。今は叶博士告発へ向けての地盤固めをしている大切な時期なのに、何を考えているんだ? 最悪、叶博士の前に、君の首が飛ぶかもしれない」
「構わない。それより重要なことも時にはある」
271白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/28(金) 00:18:09 ID:GI1AHl8r
「構わない、か。剛毅なことだ」
 蒼は肩を竦めるが、マークスは構わず、話を先に進める。
「蒼は、叶博士に勝るとも劣らないくらい、プログラムに造詣が深いと聞いた」
「ああ。それなりに。使用言語も、名の知れたものは概ねカバーしている」
 蒼が答えると、マークスは、懐からプラスティックケースを取り出す。
「それを見込んで、頼みがある。このディスクには『project whitebox』の基礎データが入っている。このディスク内のデータと、システム概要が書かれた書類を参考にして――」
 マークスの頼みは、理解し難いものだった。一言で言ってしまえば、コピーして持ち出した『project whitebox』基礎データの大幅改鼠、である。
「できないことはないが……そんなものを俺に作らせて、どうするつもりだ? 持ち出された機密データから作成されたプログラムなど、公開できないだろう」
 それに、個人使用が目的だったとしても、セントラルタワークラスの設備がなければ『project whitebox』は走らない。一人で持っていても、宝の持ち腐れだ。
「できれば、何も言わずに頼みを聞いてほしい。それで、草加派への貸しは帳消しで構わない」
 マークスの言う『草加派への貸し』とは、言うまでもない、叶派であるマークスが、今回草加派に全面協力している件を指しているのだろう。
「……わかった。やってみよう。君を信用して引き受けるんだ。くれぐれも、悪用はしてくれるなよ」
「悪用などするつもりは毛頭ない。これは、私の自己満足だ。ともあれ、恩に着る」
 正直言って、腑に落ちない頼みではあったが、蒼は引き受けることにした。
 叶派のトップシークレットとして、名前とは対照的に、長らくブラックボックスになっていた『project whitebox』その中身を覗いてみたい、という知的好奇心もあった。
 尤も、この話を持ってきたのが、叶綾香や朽木百合あたりならば、機密データの持ち出しそのものが蒼を嵌める為の罠であると考え、書類に手を触れることすらしなかっただろうが。
 無愛想で、何を考えているか良くわからない男と取られがちなマークスだが、結局の処、大人の嘘――社交辞令が苦手なだけなのだ。それが、何度かマークスと顔を合わせての、蒼の結論だった。
「それでは、頼んだ」
 マークスは、机に広げた書類を手際よく封筒に戻すと、その上にプラスティックケースを重ねて、蒼に差し出す。
 蒼はマークスから受け取った書類封筒とデータディスクを自分の鞄に詰め、第二会議室を後にした。
272白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/09/28(金) 00:18:52 ID:GI1AHl8r
>>247からの続きです。おそらく次回が最終回になります。
273名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 01:27:26 ID:oTlMAFyn
すげー。としか言い様がない。
274名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 01:48:43 ID:uFTBrV0r
>>272
GJです。
いよいよ裏側の方のネタ晴らし開始といった感じでしょうか。
…まだ全然わからんけどw
最終回、wktkで待ってます。
275名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 02:09:45 ID:MuEElKD9
今フジでやってるドラマそれっぽいな
276名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 04:23:20 ID:Bqj7Pzy6
無粋なことイワナイっ
277名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 07:38:21 ID:izPYswog
ゴメン、GJとしか言いようがないわ。
278名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 10:53:39 ID:6mvp3Qzj
あげるよ
279初心者:2007/10/01(月) 19:04:45 ID:wq6uvdpp
皆さんお久しぶりです。
まぁ、ほとんどの方が覚えていないでしょうが…。
>>167の続きを書いたので投下します。




突然だが、君たちはサキュバスという悪魔を知ってるかい?
日本語では淫魔とか夢魔というらしいが、まぁ、ぶっちゃけるとエロい悪魔、ってことだ。
夢の中でエロいことをしてくるだけなのだが、そこはやっぱり悪魔なので落とし穴がある。
手を出すと、死ぬまで精を搾り取られるとか、夢から脱け出せなくなるとか、色々だ。
んで、俺の目の前にいるサキュバスの場合は、手を出すと社会的に抹殺されることは確実である。
そんな危険なことはもちろんできないな、うん。
でも…、華奢な肩とか、お湯で濡れた体とか、微妙に見えてる尻とか、思わず手を出してしまいそうで…
「先輩?手が止まってますけど…」
「あ、ああ。ゴメンゴメン、考え事してて」
彼女の声で俺に意識が戻る。
危ない危ない…。俺はもう少しで性犯罪者になってしまうところだった。
280初心者:2007/10/01(月) 19:06:20 ID:wq6uvdpp
「どう、痛くない?」
「ん…、大丈夫です。」
とりあえず、今の状況を説明すると…
友達の家で、友達の妹の友達(ややこしい)と、風呂に入っています(なぜ?)
まぁ、色々疑問はあるかもしれないが、作者の技量が無いのが原因なので、多少は許してほしい。
んで、今は彼女の髪を洗っているわけだが…
「また手が止まっていますよ」
おっと、また手が止まっていたようだ。
俺は彼女の髪を洗うことに集中する。
しかし、ホントに綺麗な髪だな…
一本一本がとても細く、枝毛など一本もない。髪を洗っているだけで危ない気分になってしまう…。
この髪は黒髪フェチにはたまらな(ry
281初心者:2007/10/01(月) 19:07:54 ID:wq6uvdpp
洗い始めてから10分弱、結構な時間もたったしそろそろいいだろう。
「髪、流すよ」
彼女は、はい、と言いながらギュッと目をつむる。
恐らくシャンプーが目に入らないようにするためだろう。
だが、その仕草が可愛過ぎて、俺の理性は飛びそうだった。
「先輩?」
「な、何?」
「さっきからどうしたんですか?一人言も多いですし…」
「いや、なんでも無いですよ!?俺は性犯罪に走るつもりは無いですから!!」
「は?」
「いやいやいや、だからなんでもないですから!」
こっち見んといてー!と叫びながら真っ赤になった顔を隠す。
しかし、こんなに狭い風呂場では、そんな行動は無意味だった。
282初心者:2007/10/01(月) 19:13:29 ID:wq6uvdpp
「………、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです…」
年下に対して、なぜか敬語に。
俺は何を妙なことを口走っているんだ?
全く…、相手は中学生だというのに…。
自分は高校生で、半分大人のようなものだ。
来年には大学生になるのだし、もっとしっかりしなければ。
…でも加奈ちゃんはとても中学生には見えないしな。身長は170近くあるし。
あ、そういえば友達が、彼女だ、と言って紹介してきた女の子は中学生だったな…。
そう考えると普通なのかも…。いやしかし…、でも…。
「……ぱい、先輩ってば!」
「ん、あ、あぁ。何?」
はっとして彼女のほうを向く
「早く流して下さい、髪が痛んでしまいます」
「ゴメンゴメン、今流すよ」
どうやらまた意識が飛んでいたようだ。
俺は言われた通りに、彼女の髪を流す。



今回はここまでです。
前回、次は本番とか言ってたくせに中途半端な所で終わりです。
本当に拙い文章ですみません…。
前回同様、皆さんからのご意見がありましたら、続きを書く時に反映させます。
それでは、このスレの過疎が終わることを祈りながら失礼させて頂きます。
あ、次回の投下は10の下旬になるかと思います。
283名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 22:09:28 ID:ym3Dtj3j
初心者さんgj
次回も期待してます
284名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 22:25:26 ID:pP3oOd03
>>282
GJ。今回は違和感なく読めました。

一応過疎ではないと思います。途中のが3つ(望みがある)ある時点で十分です。
エロパロはこんなもんだとこの板のどこかで誰かが言っていた気がします。


まったり、出来る範囲で続き頑張ってください。
285名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 23:16:46 ID:2c67kIkK
ただ「初心者」ってコテはすごくどうかと思う
286名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 01:59:17 ID:3EconPPa
「【初心者】は言い訳のための言葉ではない。精進のための言葉なのだ」(斎藤 1832〜1912)
287名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 19:04:39 ID:TWcxs+ib
つまり>>282氏は精進を怠らない素晴らしいネ申です←結論
288名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 19:40:48 ID:8aXrZpMt
つまりそれを支持しなきゃならないってことさ
289名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 23:06:37 ID:kSAosz0b
>>287
まだ神じゃないけどな。
290 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:17:49 ID:LjRGawoU
warning!
このSSには強姦表現が含まれています。ご注意下さい。
291白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:18:32 ID:LjRGawoU
◆合格者と不合格者

「あああ、どうするんだよ、これ……」
 多々良朝人は、受験者用に用意された部屋のベッドの上に座り込み、頭を抱えていた。
 最終試験の経過を映し出す筈の大きなモニタは、ポルノ映画同然の情景を映し出している。
 朝人の性格は、他ならぬ朝人自身が一番理解している。昼間、試験官から試験の内容を聞いた時から、嫌な予感はしていた。
 しかし、開始一日目の夜から、不合格を確信する羽目になろうとは、誰が想像しただろうか。
「酷過ぎる……いくらなんでも、こんなのは……」
 眠っている間に悪戯をしようとして気付かれた挙句、開き直って暴力を振るい、そのまま乱暴する。
 朝人のコピーが留美のコピーに対して取った行動は、この試験の趣旨を鑑みると、最悪の行動と言ってしまって差し支えなかった。
 朝人の苦悩を置き去りにして、モニタの中の朝人のコピーは、留美の小さな口にペニスを捻じ込み、恍惚の表情で胸をまさぐっている。
 その映像を見て性的興奮を覚えている現実の自分もまた同様に、情けなくて仕方がない。
「お前は知らないだろうが、これは一級市民昇格、最終試験なんだ! 人生がかかってるんだ! どうしてくれる! クソ!」
 マットレスに拳を叩きつけながら、モニタに向かって毒を吐いてはみるが、元々が自分の思考ルーチンの集大成である。
 正に、身から出た錆以外の何物でもなく、怒りをぶつけた処で、空しさが募るばかりだった。
 と、ベッドの端でゴトリ、と何かが落ちる音がして、画面全体が乱れた。今までコピーの蛮行を映し出していた画面に、白い部屋の壁が大写しになる。
 画面右上には『AUTO→FIX1』の表示が点滅している。
「な、なんだ!?」
 慌てて、ベッドから這い降りる。ベッドの下に、リモコンらしきものが転がっていた。
 朝人はそれを拾い上げる。どうやら、ベッドを叩いた所為でモニタを操作するリモコンが床に落下。その衝撃でカメラが自動から固定に切り替わったらしい。
「ああ、ったく! なんだよ! もうどうでもいい!」
 カメラを元に戻す気にもならなくて、朝人は頭まで布団を被り、不貞寝を決め込んだ。

↓ IN ↓

 朝人は、まだうとうととしている留美を起こすと、無理矢理手を引いて、自分のベッドの前まで連れて来た。
 そのまま、目の前に立っているように命令して、自分は服を脱いでしまうと、全身を執拗に触り始める。
292白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:19:11 ID:LjRGawoU
 髪から頬へ、頬から首へ、首から肩へ、肩から胸へ……
「また……するんですか?」 
 感情を失ったような、抑揚の無い声で、留美が聞く。
 昨夜だけで、二度も精を吐き出したのだから、今日は干渉しないでいてくれる。留美はそう思っていた。
 そもそも、こんな奇妙な状況に置かれているというのに、話し合いを持つわけでもなく、こう何度も体を求められるとは考えてもいなかった。
 軽蔑。嫌悪。忌避。羞恥。あらゆる負の感情を含んだ視線が、朝人に突き刺さる。
 しかし、異常なシチュエーションに理性の箍が外れた朝人にとっては、そんな視線は、興奮剤にしか過ぎなかった。
 返事もせずに、留美を抱き寄せて、首筋に吸いつくと、舌を這わせる。勃起した性器を、留美の下腹部に擦り付ける。

↓ OUT ↓

 朝人はのそのそと、ベッドから身を起こした。ベッドサイドに置かれた時計は、午前六時三十分を示している。
 点けっ放しのモニタは、まだ白い壁を映していて、そこから音声だけが流れてくる。
 洋服の生地が擦れる音と、拒絶する少女の声だ。
「朝から……何やってるんだ……」
 カメラは明後日の方向を映していたが、何が行われているのかは明白だった。
 肩を落としながら、リモコンを操作して、カメラを自動に戻す。
 映し出されたのは、全裸で留美に抱きついて、腰を振っている朝人のコピーと、顔を背け、それを引き剥がそうとささやかな抵抗をしている留美の姿だった。
 まるで、盛りのついた雄犬だ……そう朝人は思う。自分のことながら、ここまでくると呆れてしまう。
 確かに、女日照りだった。少女の容姿も好みだった。それにしても、人生の一大転機に、この、あまりにあまりな醜態はなんだろう。
 寝起きのはっきりとしない頭で、その様子をぼうっと眺めている内、朝人は自暴自棄になってきた。
 ああそうか、これが多々良朝人という人間の本質だっていうのか。それならそれで、上等だ。
 心の中で啖呵を切って、リモコンのボタンを連打する。
 画面右上の表示が、目まぐるしく切り替わっていく。
 ……『FIX1→FIX2』……『FIX2→FIX3』……『FIX3→FIX4』……
 固定カメラの視点を何度も動かして、留美の全身が映るアングルを探す。
 ベストのアングルを見付けると、ズボンのベルトを緩め、下半身を露出させる。
 朝人のペニスは、起床直後である所為か、或いは性的刺激を受けた所為か、最大限に勃起していた。
 画面を凝視しながら、それを扱く。直ぐに、亀頭周辺に粘液が溢れてくる。
 画面の中で、コピーが呻き声をあげた。留美を抱き締める腕に、力が籠ったのがわかった。
 朝人のコピーが留美のスカートに精液を吐き出すのと同時に、現実の朝人も果てた。

293白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:20:18 ID:LjRGawoU
 マークスは、朝食のサンドウィッチを齧りながら、浮かない顔でモニタを見つめていた。
 モニタには、マークスの亡骸に縋って泣く、留美の姿が映し出されている。
 一緒に閉じ込められた少女を助けて、少女よりも先に逝く。マークスにとっては理想の結末で、最終試験は幕を閉じようとしていた。
 それでも、マークスの気分は晴れない。
 永遠にこの閉じられた世界――白い牢獄に幽閉されて、死を繰り返す少女。
 今まで、そしてこれからの彼女の運命を思うと、素直に合格を喜ぶ気分にはならなかったのだ。
 そういった感情を抱くのは、おかしいことなのかもしれない。所詮、彼女の存在はデジタルデータ、無機質な数字の集合体なのだから。
 彼女は血の通った人間ではないのだ――そう考えようとしても、どこか、やりきれないものを感じてしまう。
 何故なら、彼女のデータは、無から生み出されたものではない。抽出元は、人間だ。ならば、構成要素が有機物か無機物かに何の違いがある?
 これでは人間の心を、コンピュータの中に封じ込めたも同じではないか……?
 マークスは、そう思わずにはいられなかった。

↓ IN ↓

 留美はベッドの上に横たわるマークスの亡骸に縋って、泣いていた。ぽろぽろと零れた雫が、マークスの服の襟元を濡らす。
「なんで……こんなこと……」
 留美は、日に日に衰弱していくマークスに気付けなかったことを、心の底から悔いていた。
 いくらでも、気付くチャンスはあったはずだった。
 それほど日数も経っていないのに、体が動かなくなって、声も出なくなってきて……明らかにおかしかった。
 なのに『私は子供の頃から病弱なんだ』そんな、今思えば見え透いた嘘を鵜呑みにしてしまっていて、それ以上追求しなかった。
 いかに自分のことだけで手一杯だったとはいっても、これは私の怠慢だ、そう留美は思う。
 もし、彼の真意に気付けたとしたら。そんなこと止めてください、二人で一緒に助かりましょう、そう言って、彼の行為を止めることができたのに。
294白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:21:15 ID:LjRGawoU
「私……こんなことより……マークスさんが生きていてくれたほうが……嬉しかった……」
 声をかけた処で、もうマークスは返事をしない。残されたのは、一枚のメモ。それから、水色の箱に丸々残った、水と食料。

 二人では三十日を生き延びられない。だが、水と食料を一人に集中させれば、生き延びられる可能性はある。
 ルールAを見た時点で、マークスはすぐにそう判断を下した。
 そして同時に、マークスは決意した。
 留美には秘密で、水と食料を全て残しておこう……と。
 マークスは自らの意志で、留美生存の為の捨て駒となる道を選んだのだ。
 水と食料を残しておくと一言で言っても、それは決して簡単なことではなかった。
 何といっても、殺風景な部屋である。互いの動向以外に、観察するものなどない。箱にまったく手をつけなければ、不審に思われる。
 故に、マークスは定期的に箱を開けては、水を飲んでいる振り、食料を食べている振りをしなければならなかった。
 ペットボトルに口をつけて、飲んでいる振り。カロリーメイトの箱だけ開けて、食べている振り。
 その度に、強烈な渇きと飢えに襲われた。本来の目的を忘れて、ペットボトルの中身を一気に飲み干してしまいたくなったのも、一度や二度ではない。
 それでもマークスは、何とか初志を貫徹した。折れそうになる心を奮い立たせて、水、食料を文字通り死守した。
 最後の数日間。死が足音を殺して忍び寄ってくるのを実感しながらも、恐怖は微塵もなかった。それどころか、達成感に満たされてすらいた。
 だからだろうか。マークスの死に顔は、極限状況の中で死んだとは思えないくらいに、とても安らかなものだった。

 留美はマークスの残したメモを手に取って、広げた。
『もっと一緒にいたかったが、ここまでのようだ 水と食料は残しておく 君は必ず生き残って、ここを出られると信じている』
 彼らしいと言えば彼らしい、簡潔な文章だった。でも、その飾り気のない一行に、マークスの優しさが凝縮されているような気がした。
 目の前がまた、涙で霞んで見えなくなる。
「マークスさん……」
 留美は途切れ途切れ、マークスに語りかけた。
「最初の日、マシン・シティの郊外にある小さな美術館の話、してくれたじゃないですか……」
「とっても素敵な場所なんだって。今度連れていってあげるって、約束してくれたじゃないですか……」
「だから、お願いです! 起きて……! 私を一人にしないでください……!」
 暫くの間、留美の嗚咽だけが、白い部屋に響いていた。

↓ OUT ↓

 サンドウィッチを食べ終え、皿をキャスターテーブルに戻すと、マークスは立ち上がった。
 モニタに近付いて、そっと手を触れる。微弱な静電気の感触が、手の平に伝わってくる。
「私は、ここにいる」
 そう呟いても、聞こえるわけもない。そんなことはわかっている。溜め息を一つついて、モニタに背を向ける。
 受験者である、マークスのコピーは死んだ。もうこれ以上は、蛇足に過ぎない。
 一刻も早く、モニタの中の閉じられた世界を終わらせてほしい。マークスはそう願った。
 一人残された少女の嘆きは、まるで、自分が犯した罪のようだったから。
295白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:22:30 ID:LjRGawoU
◆牢獄の崩壊

叶派会長逮捕! 戦慄の『娘殺害依頼』

 六日未明、一級市民、叶派会長、叶綾香博士が殺人教唆の疑いで逮捕された。
 今月四日、麻薬密売容疑で逮捕された四級市民、牧田享一が、取調べの際、二年前に発生した中二少女轢き逃げ事件に関与したことを自供。
 未解決のままであった轢き逃げ事件が、朝霧留美さんの実母、叶綾香博士によって依頼された『計画的犯行』であることを明らかにした。
 叶博士は全面的に容疑を認めており、五級市民への降格は決定的となりそうだ。
 叶博士が一級市民昇格試験の試験内容にも深く携わっていることなどから、各方面からは、一級市民昇格試験の内容の妥当性、透明性を問題視する声があがっている。
 一級市民の、常軌を逸した『娘殺害依頼』に、マシン・シティ全体に衝撃が広がっている。



 一級市民昇格最終試験、第一管制室。
 蒼は感慨深げに、部屋をぐるりと見回した。
「ここにも間もなく、捜査の手が入る。叶博士が管理していた機材も全て押収されるだろう。これで『project whitebox』も終了だ。技術だけは最高峰だったというのに、勿体無い」
「これでいい。もし『project whitebox』がこのまま続いていれば、女性にも同様の試験が採用される予定だった」
 と、マークス。
「今度は『幼い少年』を生贄にした試験だ。いかに俗世と乖離した世界とはいえ、こんなプランが高く評価されていたのは、狂気の沙汰としか言いようがない」
「手段はともかく、人格適性検査としての精度だけは、俺は買っているが」
「一級市民としての器を量る、というだけでなく、他方面での利用も検討されていた。メディア有害論の検証等も行うつもりだったらしい」
 言いながら、マークスは自分が使用していた机の引き出しを開けて、鞄へと私物を詰め込む。
「……見ての通り、叶派は会長の逮捕で総崩れだ。どうだ、マークス。草加派に宗旨替えするつもりはないか?」
「今回の件で、派閥というものにほとほと愛想が尽きた。私はもう、どこにも所属するつもりはない」
「ほう。尽きる愛想なんて、あったのか?」
「……ふん」
「さて。私物は大方、鞄に詰めただろう? 撤収といこうか」
 蒼はそう言って、部屋の入り口に視線を向けた。が、マークスは首を振る。
「いや……まだ、最後の仕事が残っている」
「最後の仕事?」
 怪訝な顔をする蒼に、マークスは意味深な笑みを浮かべてみせた。
「以前、私が蒼に頼んだ『project whitebox』のデータ、覚えているか」
「ああ、覚えているが……」
「全てが終わった今こそ、それの出番というわけだ」
 マークスは叶博士のデスクへ向かうと、コンピュータを操作した。
 データディスクをトレイに入れて、保存されている『project whitebox』のデータを、蒼が改鼠したものに差し替える。
「おい――」
 何をするつもりなんだ、蒼がそう口にする前に、マークスは、プログラム実行のボタンを押した。
 コンピュータの起動音が、部屋に響く。システムモニタを、文字列が流れていく。

 virtual brain ver1.3 ……ok
 virtual body ver1.5 ……ok
 datafile loading ……ok

 project whitebox start……
296白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:24:12 ID:LjRGawoU
◆エピローグ

 『私は誰?』
      『今どこにいる?』
              『何をしている?』

 気が付いたら、私は、大きな建物の前に立っていた。
 寝坊した朝みたいに、記憶がはっきりしなかった。
 私は……なんで、ここにいるんだろう? 暫く考えてみるけれど、どうしても思い出せない。
 そのまま、玄関の前で立ち尽くしていると、きいっと音を立てて、ひとりでに扉が開いた。
 まるで、中に入ってきてって誘っているみたい。
 私は吸い寄せられるようにして、その建物の扉をくぐった。
 建物に入って最初に目にしたのは、見るからに高価そうな調度品と、有名画家の描いた絵画。
 建物は、どうやら美術館みたいだった。
「すみませーん……だ、誰かいませんかー?」
 恐る恐る、声をあげてみるけれど、返事はない。広い館内に、私の声だけが反響している。
 受付にも、人の姿はなかった。
 今日は休館日なのだろうか? もしかして……鍵をかけ忘れてしまった、とか。
 それは、美術館にしては無用心過ぎる気もする。でも、もしそうなら、勝手に入ってしまってまずかったかなあ。
 そんなことを思いながらも、私は、美術品の数々を眺めながら、順路に従って進む。
 異変が起こったのは、順路の一番奥にひっそりと飾られた、花畑の絵を見た時だった。
「え?」
 目の前の花畑の絵が、美術館が、突然、消滅した。
 そして、その代わりに、私の目の前に広がっていたのは、一面の花畑。
「あ……」
 感嘆の声しか、出てこない。まるで、夢の世界に迷い込んでしまったみたいだった。
 そうだ。これはきっと、明晰夢なんだ。だから、美術館が消えて、花畑になったりするんだ。私は、一人で納得する。
 ふと、頬を熱いものが伝った。涙だった。
 どうして、私は泣いているんだろう?
 確かに、この花畑は、とても広くて、とても綺麗で……
 でも、泣くほどのことじゃない。それなのに……
“留美”
 不意に、誰かが私の名前を呼んだ。
 その声は、初めて聞いた筈なのに、どこか懐かしかった。
“――さようなら、留美”
 私に語りかけてくる、優しくて、少しだけ悲しい声。
 ……お父さん? いや、違う。この声は――
 その声の『正体』に思い至った瞬間、言葉を紡ぐ暇すらなく、私の意識はホワイトアウトした。

白い牢獄 ……END
297 ◆SSSShoz.Mk :2007/10/03(水) 00:25:15 ID:LjRGawoU
>>271からの続きです。そして、白い牢獄、これにて終了です。
ここまで付き合ってくれた方、ありがとう&お疲れさまでした。
298名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 00:41:48 ID:wgtLHr2D
なんだか胸にしこりの残る終わりだ
智信だとか碧だとか、思わせぶりに登場しておきながらいてもいなくてもよかったような立場のまま終わってしまった
急な打ち切りで連載終了した漫画を読んだ感覚と似ているなこれは
299名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 01:00:31 ID:SXmwhmLd
ディープブルーだっけ?
サメと戦いながら深海から脱出する映画。あれ思い出した。
終盤まではどうみても主演です的な活躍をしていたヒロインが、いざ脱出というときに何の前振りも意味もなくいきなり食われて死んじゃって、
男とオモシロ黒人の2人だけが生き残って、しかも死んじゃったヒロインについて一切コメントせずそのまま幕。
300名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 02:56:10 ID:/Pa3TbCT
>>297
S^4氏GJ
>>298の言うように、急な打ち切り喰らった漫画を読んだような印象が。
とても面白かっただけに、非常に残念でなりません。
301名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 04:02:23 ID:IHinaSLv
そうですかね。
私はこう言う終りも好きなんですけど。
まあこういうのって人それぞれですからね。
302名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 08:18:16 ID:EcxjkuSi
S4氏GJです!

マークスは留美との約束を守る為にコピーをとってもらったんですね。
てっきり、留美の人格を自分のコンピュータに入れたり、プログラム上の外の世界で自分のコピーと出会わせたりするのかと…
しかし実際の留美は死んでいるし、束縛されている状態からの開放が一番のグッドエンドなんでしょうね。
ただ、幸せな留美が見たかったのが心残りですが。
何はともあれ、GJ、おつかれさまでした。
303名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 12:51:29 ID:2NqoGAye
確かにマークスまではよかったが、終わり方がしっくり来ないなぁ。はっきりしないというか…。

まあ、何はともあれお疲れさまでした。
304名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 17:54:35 ID:prhgfxxV
アー、俺、頭悪いからよくわかんねーや。

でもたのしかったけど。お疲れさんでした。
305名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 19:06:22 ID:sHdnakf+
マリーまだー?
306名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 21:23:32 ID:dTOL4BBS
>>298が乳癌の件

>297 超長編お疲れさま。
本当に映画まるまる一本みてるみたいで良かった!ありがとうございました
307名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 22:07:49 ID:765r2W1q
うん、これだけの大作、お疲れ様でした。楽しませてもらいました。
確かにその後どうなったのか気になる人々もいますけど……
308名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 23:21:26 ID:en4Mt5QZ
少女を中心に円のように世界が、物語が広がっていって閉じていって
状況は最初から救いようがなかったわけで、ならこの終わりも妥当……でしょ?
切ないぜ
309名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:05:21 ID:o9VZGFh/
二人っきりと現実とが平行に描写されるのは初感覚で楽しめた(´∀`*)
310名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:07:05 ID:o9VZGFh/
すまん、あげちまったorz
311名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 00:33:35 ID:JxRzRME8
とても切なく感じた。
この作品は最早エロパロなどではなく、そこらの小説より遥かに質の高い作品だったと私は思う。
何はともあれ、超大作お疲れ様でしたよ。
312名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 04:12:56 ID:OgYsgspX
キャラ小説として読もうとするから文句が出るんだろうなぁ、とか

お疲れ様でした
大変楽しませていただきました
313名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 13:48:39 ID:x4G6dnn7
キャラ小説じゃなくても、主要キャラがふっと消えて彼らのその後は投げっぱなしジャーマンなんてそうそうないと思うが。
面白かっただけに、いらんモブキャラに逐一大量な設定付け過ぎて、話のメインが紛らわしいまま終わったのは残念。
314名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 16:38:18 ID:OgYsgspX
むぅ……そうか
感想は人それぞれだしな
要らん事言ったわ、すまん
全裸で反省させていただく
315名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 03:32:26 ID:0pAklLVY
そういえばマークスと一緒に留美の夢に出てきた老人はどうなった?
TIPSには死んだってあったけど結局本編に絡んだっけ?
俺が見逃してただけ?
316名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 01:12:52 ID:yC0vROdX
保管庫見てたら、途中で止まってるのやたらとあるな。。。
嫌な予感
317名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 11:27:57 ID:xzJo1ISy
age
318名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 13:39:31 ID:YddNkpzk
そういや保管庫誰か更新しとけよ……。
二度ほど保管したけれど、ぶっちゃけもうやりたくねぇ……。
319名無しさん@ピンキー:2007/10/07(日) 21:23:13 ID:ab7GjQSB
やり方が簡単なら俺がやりたいが・・・。時間もないしなぁ。
320319:2007/10/08(月) 18:50:11 ID:DoOGZmBl
一応「白い牢獄」だけやっといたが、メール欄がリンクになっているのはやめた方がいいのだろうか?
というか、アレでいいのだろうか?
取り敢えず他のもやっておくよ。
321名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 21:13:59 ID:izEP0Uql
>>320
今ざっと見たらメ欄には「sage」以外に何も書いてなかったけど。
「sage」しか無いなら無視して構わないんじゃないか?
「sage」以外に何か書いてあっても、大した用件じゃあないだろうし。
322名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 22:58:58 ID:89YgfQSi
>>321
取り敢えず消してしまったよ。苦労する作業でもないし。

全部まとめたけど、変なところあったら指摘or修正プリーズ
323名無しさん@ピンキー:2007/10/10(水) 20:04:44 ID:M8GqUhIM
>>322
まとめ乙です
324名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 16:53:09 ID:66fCkUeI
保守。

聞きたいんだが、ラピエスみたいな「mori〜」って主人公を呼ぶ女の子はダメか?一応今書いてるんだが
325名無しさん@ピンキー:2007/10/14(日) 17:24:15 ID:jwdCHTnp

w-k-tk-
326名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 21:48:21 ID:JH1p8SwH
このスレ見て宮部みゆきのレベル7思い出した
327名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 22:46:59 ID:CE3LZcGg
>>326
50ページくらいで投げた友人を3人知っている。
328名無しさん@ピンキー:2007/10/16(火) 23:54:42 ID:Vpm5f2bi
上げておく
329名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 02:54:47 ID:QPsNSSq4
オリガさんを待ちつつ、保守
330名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 22:46:55 ID:BQTNKnp7
だいぶ静かになったな。
俺とお前の二人きりだ。>>331
331名無しさん@ピンキー:2007/10/21(日) 22:53:36 ID:ZBi/jNE/
>>330
そうみたいね……
332名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 04:37:29 ID:vDxfsES9
すまん いろいろとあって止まってるだけなんだ。
だから俺もいるぞ>330 >331。

展開を大幅に変更せざるを得ないうえ、最近のニュースで自重したほうがいいのかなとか思えてきて…
大阪までつれてきちゃだめだろ… 常考…
最近、辱める夢ばかりみるんだ… 自分の作った世界の娘なのにな… やばいだろ?
333名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 04:42:15 ID:S0YTRur8
>>330-332
いや、俺もいるよ。
ちなみに書いてもいるんだが、処女作なので期待しない方がいい。書き終わったら投下するよ。
334名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 11:52:39 ID:SMFuCRg0
お前らどこに隠れてたんだよ。

>>332
長崎の小六女児が大阪の20歳会社員の家に転がり込んだ事件?
少女が自分の意志で男性宅に行ったような供述を少女本人がしてるらしいよ。
自身が開設したブログで男性と知り合い、悩みを打ち明けていたらしい。
男性は自宅に鍵もかけず、少女はいつでも外に出られる状態だったとか。
八日間指一本触れなかった男性の精神力と言うかに脱帽した。

ttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1043118.html
335名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 12:33:08 ID:yTAlr+ay
冷静に考えて消防にゃ手は出んだろ
336名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:10:15 ID:fxsyp82z
手を出す奴は出すんだよ。あ、出すのはチンコか。
337名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:33:02 ID:U5FBhilq
>>336
誰が上手い事言えとw
33881 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 02:46:38 ID:KGgGTqQH
で、書きました。1ヶ月ぶりでゴメンナサイ。

この一月であった出来事は以下の通り
・5年勤務初の夏期休暇取得 で、四国に一般道で行ってきた。(埼玉から)
・人生初の一人でフェリー乗船(宇野高松間)
・友人が入院で四国とんぼ返りの福島直行(四国−本州は淡路明石フェリー使用)
・福島から帰ると美味しい煮魚食べに金谷までドライブ(後に浜金谷久里浜フェリー乗船)
・各親族の法要
総走行距離3000km
ボクの軽はボロボロさ…(11万km超えたorz)

ちなみに、マリーの小水を処分したときに出てきたパーキングの丘、
ついでにまた行ったので調べてきました。
「君withの丘」というらしいです。
ハンカチは夜に訪れたときは判らなかったのですが、
マジックでしっかりと「絶対幸せになれますように」などの一文が書かれていて結ってありました。
なるほど・・・だから君withか… 君津と掛けたか… そーかそーか…
ttp://toku.xdisc.net/cgi/up/vcc/nm11811.jpg
ttp://toku.xdisc.net/cgi/up/vcc/nm11812.jpg
ttp://toku.xdisc.net/cgi/up/vcc/nm11813.jpg
ttp://toku.xdisc.net/cgi/up/vcc/nm11814.jpg
339名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 02:50:26 ID:KGgGTqQH
悠太の墓は、遠くを望むと海が見える高台にあった。
広めの墓地の一角に、海が眺められるように配置してある。
悠太家から徒歩で数分のところにあるそれは、まわりの墓と比べても大きすぎず小さすぎず、
平凡なたたずまいだった。

墓を目の前にして、マリーも現実を受け入れざるをえなかったようだ。
きゅっと俺の上着の裾を握り、隣に立つ身だからこそわかるぐらいに、震えている。
「…ゆ、ゆうたくん…」
震えていたが、泣いてはいなかった。でもその姿は、俺には…悲しく見えた。
俺は彼女に話しかけることができず、そしてそのままその場を後にした。

家にもどると、悠太母がきれいな貝殻をマリーに渡した。
「え? これは?」
マリーは質問を母にする。
「悠太の形見です… いつか、あなたに会えた時に渡すんだと言って、悠太が大事に取っていたものです」
「え」
マリーは絶句する。好きな人からの贈り物… すでに他界した人間からの贈り物。
彼女はまた… 泣き出してしまった。




他人の家にあまり長居するわけにもいかないので、帰る旨を悠太母に伝え、
「泊まっていかないのですか?」
と言う申し出に、赤の他人の俺まで厄介になるわけには行かず、丁重に断った。
「せめてマリーちゃんだけでも… お家に連絡とかしますから…」
マリーは… 泣き疲れて寝ていた。ここでマリーの家に連れ帰ってしまうと、
彼女には悔いが残ってしまうだろう… なにか、そう、なにかすぐに元気になれるようなことを
思い出として一緒に持っていってもらわないと… くそっ、こんなの自分のエゴだ…
だが…しかし……
340総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 02:51:15 ID:KGgGTqQH
#ぐあ 名前がっ

悠太母の願いも再度断り、俺は彼女を起こさないようにそっと抱きかかえる。
車の助手席に座らせて、旅行で使う予定だった肌掛けをかけると、彼女はおきた。
「ん… んぅ…」
一瞬まどろんだ感じで起きて、またすぐに寝付いてしまう。
一気に疲れが出てきてしまったようだ。

とりあえず、悠太母に礼を伝え、悠太宅を後にした。
ゆっくりと車を走らせる。
行くあてはない。ただ、俺はこのまま悠太宅に居座ると、マリーがまいってしまうことを恐れた。
とりあえず、南下することを決定した。何も考えない、純粋に房総半島を南下するだけの…

・・・マリーがおきるまで、そっと走るか・・・

あたりはもう、完全に夜のとばりが降りていた。



341総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 02:52:09 ID:KGgGTqQH
「ん… 康平、ここドコ?」
「ん、ここか? ここは…説明し辛いな… 千葉県の最南端に近いところだ。」
「そぅ…んー…  …すぅ」
寝ちまった… 運転してると時々あるんだが、同乗者が寝てしまうと、たまにこんなやり取りがある。
…俺の運転に安心してくれているならそれはそれでいいのだが…
そういえば、俺の友人は寝てしまうと申し訳なさそうに謝ってきたな。
俺は別に気にはしていないんだが。

それからしばらく走ると、でかい灯台の見える浜辺にやってきた。千葉県最南端の灯台が光っているのがみえる。

「ふぁ… あたし寝ちゃったの・・・?」
マリーが起きた。
「ああ、ぐっすりさ」
「…ごめん」
唐突に謝るマリー… 俺の友人を思い出した。別に謝ることでもないだろう…
「謝ることないさ。いろいろあって疲れたんだろ?」
「…うん。ごめん…」
「だから謝るなって」
「… …そういえば ここは? どこ?」
「ここか? そうだな、千葉県最南端かな? 灯台がみえるだろ? あれが最南端の灯台だ。野島崎の灯台」
「よくわかんない。 でも、波の音がきこえる…」
「ああ、暗いが、あそこは浜辺になってる。それでだろ」
俺は車外を指差した。エンジンを止めると、波のさざめく音が聞こえる。
「ふーん… ちょっと浜辺にいってきても、いい?」
断る理由がない。
「しばらく休憩するから、いいよ。」
「ありがと」
”ガチャッ… バンッ”
車の外にでていったマリー。
俺はそのまま彼女を見送った。 浜辺に座ったのを見る。 これが昼間なら絵になるんだが… 夜は…
なんというか、夜の海は怖い。吸い込まれそうで。

と、思っていると、彼女が立ち上がった。そして海へ近づいていく。
って、おいおい、海水が服につくぞ・・・・・・まて。なぜひざ下まで入る!?

彼女はどんどん海に入っていく。なにか追いかけるようにどんどんと。
俺はあせって車を飛び出した。
「マリィィィィィィ!!!!」
叫ぶ。
だが彼女は止まらない。振り返らない。
…まずい!
浜辺に足をとられつつも、必死に彼女を追いかけた。
342総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 02:54:11 ID:KGgGTqQH
”バシャッ! バシャッ!”
俺はしぶきをあげつつ彼女に近づく。彼女は既に胸上まで浸かっている。
残暑が過ぎた頃合の夜のせいか、異様に冷たく感じた。
俺自身が胸の辺りまで浸かると、マリーは既に見えなくなっていた。
「くそったれ!! マリーどこだっ!!!」
無我夢中で沈んだと思われるあたりを手で探る。
暗くてよく見えない。…だが、糸みたいな何かが手に絡まった。
ワラをも掴む思いでその絡まったものを強引にたぐリ寄せる。

・・・ひっぱったとき、すごい重みがあった。
と同時に、腹になにかがぶつかる。それを手で確かめる。
人肌に暖かい何かが手を通して伝わってくる。
暗くてよくわからないが、マリーだと信じて、急いで浜辺に向かった。

浜辺に近づくと、掴んでいたのが彼女の髪だと判った。
彼女の服に滲みこんだ海水の重みと自分の服が張り付いている。
すごく動き辛いが、なんとか上がると、彼女を抱え、安全な浜辺に彼女を横たえる。

「マリー! おいマリー!! 起きろ!」
"ベシベシ!" っとほっぺたを叩く。意識は戻らない。
彼女にぴったり張り付いた服の、控えめな胸元を眺める。
…胸が上下していない。
いそいで、息をしているか、口元に耳を近づける。
1、2、3、4、5。 息をしていないのを確認した。
脈をとる。
”トクン…トクン…”弱弱しいが脈はある。

「くっ…」
かばんの中のファーストエイドポーチを取りに言っている暇は多分ない。
急いで教習所で習った蘇生法の準備に取り掛かる。
うろ覚えだが、この際仕方がない。
こんなことなら救命講習に参加しとけばよかった!

マリーの口(口腔)を強引に開ける。異物は… ないな。気道確保。…まだ呼吸が回復しない…
…四の五のいってられん! マウストゥマウスを実行する。

”フゥ!・・・” !? 吹き込めない!?!
慌てて口を離す。すると、口から海水が溢れてきた。
だが呼吸は回復していない。
もう一度試みる。今度は呼気を入れられた。
343総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 02:55:09 ID:KGgGTqQH



2セットほど繰り返したくらいだろうか…
「ゲホッ! ゴホッ!!」
マリーの呼吸が回復した。と同時に、覚醒した。
「ゲホッゲホッ…ヒィィィ…ゲホッ…」
「マリー、大丈夫か?」
とりあえず、顔が鼻水と海水とよだれですごいことになってたので、手持ちのハンカチで拭ってやる…
しばらくしてマリーはつぶやいた。
「どう…して… げほっ …悠、太くんゲホッ、に、会わ…せてよぉ…」
俺は口をつぐんでしまう。
「悠、太くんがいな、い、この世界に、居たくはないの…」
すると、夕方までいい天気だったのに、雨が降ってきた…
「マリー… 雨だ… とりあえず、車に戻ろう?」
俺は彼女を促し、嫌がった彼女を強引に車に連れて行き、後部座席に乗せた。

空は、彼女の気持ちを代弁するかのように、雨風が強くなっていった・・・

34481 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 03:05:43 ID:KGgGTqQH
#展開が強引なのは御容赦をば…
#アクションというか、緊迫した場面って難しいね…
#こんなんで続けられるのかちょっと心配です。
#待っていた方、お待たせして申し訳ない。よろしくです。
#・・・遅れた理由にA.C.EとかA.C.E2とかエスコン6とか初音ミクとかもあったとか、言えません…
#しかし、旅先ですべて2chに書き込めなかったのは痛手だ… すごい痛手だ…

#それはそうと、A/Bがきになる今日この頃… 作者さんゲンキデスカー?
#続き楽しみにしてまってます〜
345名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 04:05:07 ID:T8EYK3jr
>>344
GJ! てか、いない間どんだけ移動してたんだwww

そして入水自殺未遂で生死の心配より、着替えor風呂イベントクルーーー
とか想像した俺は死んだ方がいい…
346名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 07:59:58 ID:5p5l60Z/
GJ

>>355
大丈夫。俺もだ
347名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 18:46:17 ID:7cIe8oeI
>>355の対応次第で>>346の言葉の重みが変わる。
つまり>>355が変態的な発言をすれば>>346もド変態に……ッ!
348名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 21:04:58 ID:5p5l60Z/
うわー、やってもうた・・・。初の未来レス・・・。

そうだ、自分で取ればいいじゃん。


勿論だが、レスは>>345な。
349A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/10/23(火) 22:38:29 ID:U5FBhilq
>>344
おかげさまで元気ですが、リアルの多忙により全然筆が進まない。
次の回がいつになるか分からんので、忘れた頃に投下になるかと。
申し訳ない
350総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 23:17:37 ID:+LzjmlNX
#そろそろ転かな… クライマックスにむけて盛り上げていかないと…
#というわけで、続き生きます。


−ビュウウウ… ヒュゴー… ザーー
風と雨が酷い。とてもじゃないが窓は開けられない。
フロントガラスや屋根に当たる雨の音が、バチバチいっている。

ポタ… ポタ…

マリーから滴が落ちる。涙なのか海水なのかわからないが。
俺は、彼女をそっとしておいて、
後部ハッチ(トランクルームのドア)を開け、簡易屋根として、荷物をあさる場所を作る。
こういうのを想定して購入した車だが、さすがに雨が強すぎるらしい。トランクの端がちょっと濡れてきた。
急いで目的のものを取り出して座席に放り、ハッチを閉め、外から後部座席に移動する。

「マリー、とりあえず、これで拭いとけ」
座席に投げたのは、タオルと俺の替えの服だ。座席に移動して、タオルを渡す。
「いや・・・」
「いいから拭けって。そのままじゃ風邪ひいちまう…」
「いいもん…」
「いや、よくないって」
ついさっきのことを思い出して押し問答になってしまう。
「ここでマリーに体調崩されると、君の家族に申し訳たたん」
「しらないっ!」
「ったく…」
俺はタオルを取ると、マリーの頭をぐりぐりと拭き始める。
「きゃっ! いったっ! 痛いってば!!」
彼女は抗議してくる。
「いやなら自分で拭けっ! このバカっ!」
「ばっ!?  だっ、だだだ、だれがバカですって?! あんたこそバカよっ!」
「なにぃ?! バカはお前だろう!? お前が死んで誰が喜ぶというんだよ!?」
「そんなのしらないわよ! 私は…」
「愛しの悠太くんに会うってか?」
「・・・」
「こんのバカっっっ!! そんな理由で死んだって会えるとは限らないだろう!」
「それは・・・」
マリーは黙ってしまう。
「大体だな、天国や極楽浄土があるかなんて、わからないだろう。まして、そこに彼がいるともな!」
「・・・」
「死んだ人間は二度と戻らないし、会えないんだ! かっこつけたって、思い出の中にしか現れないんだよ」
「・・・でも」
「だったら、思い出の中にいる愛しの人に恥じない人生を送るのが、供養とか、そういうのになるんじゃないのか?!」
「・・・」
「悠太君にほめられるような、そんな生き方をしろ! 自殺なんて誰もよろこばねぇよ! 悠太君もな!!」
「・・・ひっ・・ひっく・・・ひっく・・・・・・」
マリーは泣き出してしまう。
「まぁ… 気持ちはわからないでもないが… まだ人生長いんだ。安易に追いかけるとか、考えるな…
 ・・・とりあえず、そのままじゃあれだ… 着替えろ」
なきながらも、マリーはうなずいた。
351総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/10/23(火) 23:24:39 ID:+LzjmlNX
「しかし、まいったな… 外から丸見えだ…」
車は基本的に外から丸見えだ。この車も例外なく見えてしまう。
着替えるにしたって、女の子のストリップショーになりかねない。
俺は、トランクルームに転がり、俺の座っていた座席を折りたたむ。
こうすることにより、車の後部の半分はフルフラットになるのだ。
そこには布団のかわりに寝袋が畳んであり(車中泊でマットレス代わりに使っていたもの)
それをひろげて、そこに彼女を移動させる。
彼女も服もびしょびしょだ。・・・ぺったりくっついた服の透けて見える部分はがんばって見ないようにする。
ってかブラくらいしろと。 いかん 考えるな。般若心経・・・

なんとかもう片方の座席もフラットにすると、十分に着替えのできるスペースが完成する。
ついでにエンジンもかけ、暖房をONにする。
かばんから新聞をとりだし、ガムテープと共に窓に目隠しをする。
運転席の後ろのところは、むかしドンキ(ホーテ)でもらったレジャーシートを広げてカーテンにする。
そして照明をつければ、簡易更衣室の完成だ。
「とりあえず、室内照明はつけたから、問題なく着替えられるはずだ。君のサイズにあう物がないから、
 適当に袖とかめくってくれ。あとは下着以外は俺に渡せ。暖房でなんとか乾かすから」
「・・・ん・・・」
おい。なぜそこで顔を赤らめる。あ・・・服が透けてるのに気がついたのか。必死に胸隠そうとするな。
こっちがはずかしい。
・・・なに子供に情を抱いてんだ自分っ! おちつけ。相手はガキだ。ガキなんだ。


#短くて申し訳ない。 もっと文才がほしい… せっかくの萌えシチュなのに、萌えが足りない…
#なんか、マリーには一線を越えちゃならない気がするのですよ。自分の夢の中では天元突破してますが(まて
#というわけで、足りない萌え要素はみんなで補完ということでひとつ(こら

#ちなみに考えた>355ネタ。 355 「変態! ど変態!! 超変態!!!」 356「という言葉を釘宮ボイスでひとつ」
#しょーもないネタでスマヌw
352名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 05:09:13 ID:LZ6Vustj
GJ!
お着替えイベント期待通りにキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

> 自分の夢の中では天元突破してますが(まて
その夢、俺の脳内にコピーさせてくれwww

そして>>355に期待w
353名無しさん@ピンキー:2007/10/24(水) 17:28:31 ID:QGF5ESfL
GJ!
354名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 16:51:34 ID:d1CCl2VI
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 | 次でボケて   |
 |_______|
   ∧∧ ||
.   ( ゚д゚)||
   / づΦ
355名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 17:31:00 ID:077WrdLb
谷亮子は俺の嫁。
356名無しさん@ピンキー:2007/10/25(木) 18:39:51 ID:4wIvqBL2
…………正直、微妙……
357346:2007/10/26(金) 02:33:32 ID:OArwzRZD
まあまあ。

>>355
頑張れ
358名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 15:34:05 ID:rEyEZknO
山田くん、>>355の座布団全部持って行きなさい
359名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 18:41:02 ID:+NIPUeNV
360名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 18:54:29 ID:CiJ7/Vv4
谷を出しときゃ受けたのはかなり前の話だな
まあ今後頑張れ
361名無しさん@ピンキー:2007/10/27(土) 21:07:31 ID:AucSEeYO
それじゃあ>>355でどうボケるべきだったかを考えようじゃあないか。
362名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 04:04:10 ID:c31uu3z1
あげ

と書いてるけどsage
363名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 20:36:52 ID:VA6ZmHlN
パソコンの中に入ってしまった! そしてその中には、俺の嫁がいた!
パソコンの中はひどく狭くて暗いところだと思っていたが、逆に明るくて天国みたいな場所だった!
ずっと憧れだった俺の嫁と一緒に過ごせるのは夢見たいな時間だった!
仲良くご飯を食べたり、デートをしたりもしてみた!
だけど何日かするうちに、現実にも戻りたくなってきた!
嫁と相談した!
嫁は行かないでといってくれた!
でも俺は、その言葉を振り切るように
「もう一度会いにくるよ」といって、現実に戻ってきた!

あれから一年過ぎた!
結局、パソコンの中にもう一度入り込める方法は見つからなかった!
少しさびしい思いをした!
今では嫁の画像をデスクトップのど真ん中に飾っている!
昔と嫁は替わっているけど!

364名無しさん@ピンキー:2007/10/28(日) 20:44:27 ID:EJzEv84B
>>363
発想GJ

ただ、俺の場合6人いるがな!
んで、どうやって出たんだ?
365名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 01:07:41 ID:ZlBeb9wq
そろそろあげとくか
366名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 14:04:48 ID:lmmxV+ZR
もうYOUやっちゃいなYO
367名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 17:19:59 ID:7+aGZZuW
何を?
368名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 17:56:42 ID:l76IWUIh
や→ヤ
369名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 18:27:33 ID:Ao6Tx3pe
ヤッチマイナー!
370名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 18:48:41 ID:uCHWszLD
や→殺
371名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 20:12:01 ID:E5hpZtAv
それはマリーを犯れと… 犯れとおおおおおお!!?!
372名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 20:19:43 ID:ZlBeb9wq
それはやめておけ。それじゃあ白い牢獄の奴と同じだ(名前忘れたスマソ)


仲良くなってから合理的にやるのがいちb(ry
373名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 17:13:01 ID:6ArC2kLt
>>374
なんか書いて
374名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 21:00:54 ID:rP0n4bOs
>>373
俺物凄い遅筆だからいつになるかわからんよ。
375名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 22:32:35 ID:K0akJAqK
つまり・・・・>>374がその気になれば 執筆は10年後 20年後ということも可能だろう・・・・・・・・・・ということ・・・・!
376手術室:2007/11/03(土) 04:19:27 ID:sbdibNqV
>>374ではないですがいっちょ投下します。
白い牢獄という高クオリティなものがありながら、無謀にもサスペンスタッチなやつです。



377手術室1:2007/11/03(土) 04:20:58 ID:sbdibNqV


白い光がわたしの目蓋をこじ開け、敵意をもって侵入する。
それはやがて頭にまで達し、痛みを伴いながら次々に弾ける
わたしは不快感にうめきながら一つ息を吐く。
ついで鼻から同じく何かが侵入し、脳を揺さぶる。
「うぅ〜〜〜〜ん‥‥‥‥‥‥ぅうあ」
わたしは頭を攻撃し続ける刺激を追い出そうと、首を振り払うが、
途端に後悔と供に刺激が倍増する。
ズキズキと、光と匂いが頭痛という具体的な形となってわたしを攻める。

  何?

少しの不安とそれ以上の不快感。
風とまでも言えない微かな空気の流れが、わたしの身体を反射的にブルッと震わせる。
光に眩みまだはっきりと見えない目で一所懸命に、今自分の置かれた状況を理解
しようとする。

  まぶしい
  くさい(‥‥‥薬品の匂い?)
  なにも聞こえない
  寒い

そして、

 体が動かない

わたしは大きな椅子に座っているようだった。
両手首を肘掛の様な物に縛られて。

涙に滲む目を擦ることもできず、頭痛に揺れる頭を押さえることもできず、
苦痛がいつまでも自分を苦しめる
一通り体を揺すって現状を打破しようとするも、ただただ頭痛を増大させただけだった。
わたしは動けない。

もう一度目をつぶり、深呼吸して体と気持ちを落ち着ける。
匂いに慣れてくるとともに、頭痛も少しだけ治まる

  わたしになにがおこったのか

378手術室1:2007/11/03(土) 04:25:07 ID:sbdibNqV


フッとひとつ大きく息を吐くともう一度目を開けた。
今度は、視界ははっきりとしていた。何もかもが見えた。
でも、今自分のいる所がどういう場所なのかは確認できなかった。
自分がどういう状態なのかも。
なぜならわたしの目の焦点はある一箇所に固定されて外すことができなかったからだ。

そこには女がいた。

白衣を着た美しい女が脚を組んで座っており、眼鏡を通して興味深げにこちらを眺めていた。

束の間わたしを苦しめていた頭痛が吹き飛び、同じく思考が吹き飛ぶ。


  「あら、目が覚めた?」

低くも高くもない、よく通った滑らかな声で彼女は言った。
とても優しげな声で。

そう、わたしは目が覚めた。
この明るく薬品の匂い漂う白い部屋で。
身体を椅子に縛られたまま。
美しい女に観察されながら。

多大な努力を要し、女から目を離すと部屋をみわたす。
白いタイルに白い壁、緑のモルタルの床、飾りの一切ない蛍光灯の照明。
ガラスとステンレスでできたシンプルな棚。
何らかの医療機関の建物の一室だということはわかる。
薬品の匂いとあいまって自然のものは何も感じられなかった。
しかし同時に人の温かみも一切ない無機質な部屋。
右奥に見える両開きのスチール製のドアの取手は太い針金で硬く結ばれていた。
密室にわたしと白衣の女が一人。
 

二人きり
 



379手術室1:2007/11/03(土) 04:26:29 ID:sbdibNqV


  「大丈夫よ、落ち着いて」

ふと、思った。
わたしは一番大事なことを忘れている。一番大事なものを見ていない。
この部屋のことよりも、目の前の女よりも何よりも大事なこと。


 "わたし"だ。


そして、わたしは首を傾けてわたしをみる。
何も見えない。
わたしの身体には部屋と同じような無機質で白いシーツが掛かっていた。
ただその下が全裸だと言うことはわかる。
そして初めは椅子だと思っていたが、手術台のような物の上に乗っているようだ。

わたしはこのような状態になった時に、人が言うであろう最もありふれた、
そして面白味のないセリフを発していた。

 

  「ここはどこ?わたしは誰?」





わたしには記憶が何もなかった。


380手術室1:2007/11/03(土) 04:28:56 ID:sbdibNqV


自分の名前も分からない。
なぜ裸で手術台の上に縛られているのか。
この目の前にいる女は誰なのか。


  「まあ」


その女はわたしの言葉に少しだけ驚いたようだった。
その驚きの表情も美しい。
そもそも、わたしにはなぜ記憶がないのか。


  「ごめんなさいね、ちょっと強く殴りすぎたみたい」


即座にわたしの記憶がない理由は分かってしまった。
じゃあ、


  「あなたは誰なの?」

  「う〜ん、それはちょっと難しい質問ね」


少しだけ面白がるように半笑いで彼女は応える。
ただ、その笑顔はあまりにも美しく整いすぎていて、あまり温かみがなかった。この部屋と同じ様に。

その態度に少し苛立ちを感じる。
が、まだ不安や恐怖のほうが大きい。


  「お願いだからおしえて、わたしはだれで、ここはどこなの?
   なんであなたはわたしを‥‥‥‥‥‥殴ったの?」

381手術室1:2007/11/03(土) 04:30:33 ID:sbdibNqV


その女をじっと観察する。わたしがされているのと同じ様に。
どうやら来ている白衣は医者用のではなく、科学者が私服の上に羽織るもののようだ。
その下には白いブラウスと膝上のグレーのスカートとこれ以上ないくらいにシンプルな格好。
明るい金髪を束ねて無造作に結び、度の薄い眼鏡の向こうにはブルーの瞳。
化粧はしていないみたいで、それ故に彼女の素の美しさを余計に引き立てている。

恐ろしいぐらいに。


  「ふふ、あなたらしくもない、なにをそんなに不安げな顔しているの?」


今度は苛立ちが不安や恐怖よりも大きくなる。


  「いいから教えて、わたしは誰で、ここはどこ!?
   あなたはだれなの!?」


彼女曰く、あまりわたしらしくない不安げな態度で質問をとばす。


  「本当に全部忘れちゃったのね」

  「あえて名前というものがあるのだとすれば、わたしはメイ。
   そしてあなたはジュン」


彼女の表情が消える。


  「あなたは"スペア"だった。そして"マスター"に選ばれた」

  「?」

382手術室1:2007/11/03(土) 04:31:53 ID:sbdibNqV


何のことかはわからない。

それで全てが説明できるかのように、彼女、メイは沈黙する。
相変わらずわたし、ジュンをブルーの瞳で見つめながら。

慎重に言葉を選び、核心とも思える質問を静かに呟く。
わたしも彼女を見つめながら。


  「あなたはわたしに何をしようとしているの?」


彼女の表情が少しだけ崩れた。
心なしか完璧だった美しさが失われたような、しかしそれでいて先程よりも生気に溢れている。

  
  これは‥‥‥‥‥笑顔?


笑顔ならば、なぜわたしは怖いと思っているのだろう。


  「さあ‥‥‥‥なにをしようかしら」


わたしはあきらめてしまった両手の拘束から逃れようと、無意識にもう一度引っ張ってみる。

メイはどこか艶かしく両脚を組みかえる。
靴下もストッキングも履いてない、必要のない、なめらかで綺麗な両脚を。


  「あなたは誰なの?」


わたしは本当にその答えを知りたいのだろうか。
ただ、記憶喪失で、素っ裸で、縛られて、閉じ込められたわたしには何もなかった。
いま手にすることの出来るものは目の前の女から望むしかなかった。

383手術室1:2007/11/03(土) 04:33:07 ID:sbdibNqV


メイはわたしから眼を離さないまま、手を頭に持っていくと髪留めを外した。
2、3度首を振ると豊かな金髪が、結んだクセもなくふわりと広がる。
眼鏡を外す。
やはりわたしから眼をそらさぬまま。ブルーの瞳で。
無造作に髪留めと眼鏡を床に落とす。
ふっと微かに笑むと、それを顔に貼り付けたまま静かに立ち上がる。

わたしは、身体の自由がきいたならばきっと後ずさりしていただろう
一見完璧な彼女の表情にはそうさせる何かがあった。

白衣を脱ぎながら立ち上がる。
こんな状況じゃなかったらきっとわたしも見惚れてしまいそうな見事なスタイルを晒しながら。

ふと、思い出したかのように手を腰の後ろに回すと黒光りする何かを取り出した。
デザートイーグル。
装弾数8発、シングルアクション、破壊力重視の大型自動拳銃。

 
  なぜそんなこと、わたしは知っている?


それをゴトリと今まで座っていた椅子におく。
そして振り返るとなにかを決心したかのように一歩一歩私に近づく。
どこか熱に浮かされたように口で息をしながら。
わたしがなぜ身の危険を感じていたかを理解した。



彼女は静かに興奮し、欲情していた。
わたしを見ながら。
384手術室1:2007/11/03(土) 04:34:36 ID:sbdibNqV


もちろんそれを知った所でわたしにはどうする事も出来ない。


  「ひゃっ」


おもむろに身体を覆っていたシーツを剥がされ、小さな悲鳴もれる。
シーツの下の自分の裸が直に空気に触れ、鳥肌と供に縮こまってしまう。

わたしは女だった。
始めてみる自分の裸体はとても綺麗だった。
小ぶりながら形の良い胸に、それに似合った薄い色の小さな突起、くびれた腰、ごくごく軽く生えた恥毛、
必死に閉じようと震えているスラリとした両脚。



  「ふふ、相変わらずキレーな身体ね。
   うらやましいものだわ」


メイはやっと顔から目線を離すと、今度は足先からじっくりと舐め回すように視線を這わせる。
舌なめずりをしたように見えたのは気のせいか。


385手術室1:2007/11/03(土) 04:36:07 ID:sbdibNqV


わたしは突然に激しい悪寒を感じた。
目の前の女から感じる直接的な嫌悪感なんかではなく、
そんな小さなものではなく、
この部屋全体、この世界全体から向けられているような巨大な悪意。
背中から巨大な手で握り締められているような。
世界が揺れる。
ここしか知らない世界
およそ7メートル四方の小さな世界。
光が、闇が病室の壁や床でゆらゆらと波打つ。


  わたしを狙っているのはこの女だけじゃないの?

  助けて。

  わたしは逃げたい。
  どこへ?
  ここしか知らないのに。
  何も知らないのに。
  わたしは裸。
  閉じられた密室に、わたしの身体に欲情する女と二人だけ。
  そしてそれ以上に危険で大きな何か。
  何が始まる?
  そしてそれはいつ終る?
 

  ここはどこ?


  わたしはだれ?



386手術室1:2007/11/03(土) 04:38:12 ID:sbdibNqV


ドン、と突然の耳元の音と衝撃にビクッと身体が弾け、我に帰る。
メイが右手をわたしの頭のすぐそばについた音だった。
いつの間にかブラウスのボタンが全て外れ、黒いブラと形のよいむねが見えている
さらに至近距離でもう一度わたしを視線で舐めまわすと、ゆっくりと見上げる。
顔を近づけてくる。
頬を微かに上気させ、今ではその荒い息使いが直接肌で感じ取れる。

腰をくねらせながら、それでも直接には手を触れずに、わたしと身体を密着させ至近距離で
目線の高さが合う。


  「あなたがだれか、
  そして、わたしがだれか知りたいって言ったわよね」


さっきまでの落ち着いたなめらかな声とは違い、喘ぎまじりに言う。
彼女の熱い息が顔にかかる。
気がつかなかったが、メイは左手に鏡を持っていた。
飾りも装飾もない実用性のみ、やはりシンプルなもの。

387手術室1:2007/11/03(土) 04:40:24 ID:sbdibNqV


  「さあ、自分で確かめなさい」


二人の顔の間にその鏡をかざす。
もちろん鏡は十分にその役目を果たした。
わたしの顔をはっきりと鮮明に写した。


  「?」


わたしは目が覚めてから初めて自分の顔をみた。

しかし、数秒間そのことを理解することができなかった。


  
  なぜなら、わたしの顔は、目の前にいる女、メイの顔と、まったく 同じ だったからだ。



もう一度思う。


  ここはどこ?

  わたしはだれ?
388手術室1 あとがき:2007/11/03(土) 04:44:46 ID:sbdibNqV
本日はここまで。エロなし&中途半端ですいませぬ。

女×女で、しかもビミョーに本来のこのスレの趣旨とは少し違うような気がしますが、
よければ続けさせてくださいませ。


また後日。
389名無しさん@ピンキー:2007/11/03(土) 09:55:17 ID:6aRANUlR
おkおk
今後の展開に期待だな
390名無しさん@ピンキー:2007/11/04(日) 01:45:37 ID:zWH1vbiO
w-k-t-k-
391名無しさん@ピンキー:2007/11/05(月) 23:24:02 ID:OtOqs29C
人が少ないな…。
392名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 20:04:10 ID:5hcBCn13
…また2人きりになっちゃったわね
393名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 21:08:34 ID:4A40y1L4
寂しいか?
394名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 21:22:59 ID:KRKqohzm
マリーまだー?
395名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 21:50:33 ID:4A40y1L4
ゴメン、Gを大文字にしただけで上がるとは思わなかったもんだから…
396NIEneuNTE ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:07:24 ID:N08g9tZO
>>324です。
厨臭い作品なのは分かってますが、投下。
文体が某ラノベみたいなところがありますが、ご勘弁を。

初心者なので、文体に変なところがありましたらご指摘ください。
397enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:10:19 ID:N08g9tZO
「やっぱ無茶だったか」
 すっかり暗くなった空を見上げ、俺は溜息をついた。


 覡駿光。俺の名前だ。
 ちなみに、苗字の方は〔かんなぎ〕って読むんだが、男の‘みこ’ってどうかと思わないか?

 そんなアホらしい事を考えている俺ももう大学生だ。
 ずっと同じ場所に留まっているのがイヤで、大学は上京する事をメインに考え、勉強していたと言っても過言じゃない。現に夏休みに入ってからアフリカに一人旅に来てるくらいだしな。
 こっちに着いてからは、有名都市に行ってみたり、ピラミッドなんぞに行ってみたり、ずっと北の方にいた。
 んで、南の方にも行ってみるかと恣意した結果がコレだ。

 確か昼頃に森に入ったと思ったから、6,7時間程度か?流石にもう疲れたぞ……。
 どっかで野宿でもと思い、それに適した場所を探し歩いていると、暗闇の中に開けた場所が見えた。
 気持ち早めに歩を進めると、そこには湖が広がっている。そして、水面に月が浮かんで……いや、何か他のものまで浮かんでいるような……?
 それ…いや、そいつは空色の髪の少女だった。おまけに何故か裸だ。
 うーん、暗くてよく見えない……って、何目をこらしてるんだ、俺は……。
 俺がしばらく見惚れていると、その少女は目的を果たしたのか、満足気に微笑みながら水面から上がり、森の奥に消えていった。

 気付かれてないよな?いや、本当に綺麗な肌だった…って何考えt(ry
 というか、一体何だったんだ?
 あれこれと黙考してみる。が、判るはずもなく、ただただ少女の裸体を想像するだけで、話にならない。。
 俺は気を取り直して、湖で手を洗い、夕飯の準備を始めた。




「―――――(みーつけた♪)」
398enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:13:20 ID:N08g9tZO
「―――――」
ん?もう朝か?
「―――――!」
 もうちょい寝かせろよ……。
「―――――!!」
いてっ。何かがおでこに当たった。
「もう何だよ……」
俺は渋々、重い瞼を上げた。視界が黒から白に変わっていく……。
俺の眼前にいたのは、昨日の空色の髪の少女だった。身にはクリーム色の布をまとっている。
「うわっ」
当然ながら驚いた俺は、即座に後退りしようとした。しかし、木を背に寝ていたのを忘れていた為、頭を軽くぶつけてしまった。
そんな俺を少女がまじまじと見つめてくる。俺も見返してみた。
14,5歳ぐらいだろうか。何処か幼さが残っている。そして、その白瓷の顔には、何かの民族なのだろうか、赤や緑のフェースペイントが描かれていた。
体型の方はやや高めの身長と相俟ってスレンダーで、胸も中学生にしては……(ゴホゴホ
俺はそんな事を考えていて、少女の顔が眼前に迫っている事に気が付かなかった。
 互いの吐息を感じる距離。おまけに、彼女の柔らかい双丘が当たっている。
少女が頬をより一層赤く染め、瞼を閉じる。そして、俺も目を閉じ……

パチン!

「痛っ」
デコピンされた。
少女は、腰まで伸びた髪を振るわせて、腹を抱えて笑っている。
騙された。もしかしてさっきの寝起きのもか?おい、m9(^д^)ってするなよ。
くーきゅるきゅるきゅる……
ん?
少女の顔がみるみるうちに赤くなっている。腹の音だな。m9(^д^)し返してやったよ。
「ちょっと待ってろ、何か食うものを…」
野暮な事に、通じるはずもない日本語で話してしまった。
次はちゃんと現地の言葉でおはようと言ってみたが通じてないみたいで、少女は首を傾げるばかりだ。
どうしようかな、などと考えていると、少女が自分を指差しながら、
「tete」
「テテ?それがお前の名前か?」
また通じない日本語で話してしまった。それでも少女は頻りに自分を指差しながら、
「tete」
やっぱりテテが名前みたいだな。俺も自分を指差し、
「かんなぎとしみつ」
「kannagi…toshimitsu……?」
「そ、かんなぎとしみつ」
「kannagitoshimitsu…toshimitsu……toshi!」
「トシ?」
「toshi〜」
まぁ、それでいいか。昔そういうあだ名で呼ばれていたこともあったし。
「tete」
「toshi〜」
「tete〜」
「toshi〜♪」
 しばらくそのまま呼び合っていた。何か和んだ。
399enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:16:13 ID:N08g9tZO
俺はリュックの中から、密かに持ってきたプリッツを取り出し、箱を開け、テテに一本手渡した。
 テテは、それを見て数瞬訝しむ素振りをしたが、結局は口に入れ、嚥下した。
「どうだ?」
もう日本語がどうだのどうでもいいや。取り敢えず聞いてみた。
「―――――♪」
美味しそうに返答(?)し、俺に向かって手を差し出した。
もっとくれって言ってるみたいだな。
俺はそれに従い、テテにプリッツを手渡した。
テテはさっきより幾分か早い動作でそれを飲み下す。

そんな動作が何回か続き、残り数本となったところで、テテがプリッツを咥えながらその先端を指差している。
何だ?まさか俺に逆側から喰えと?
頷いてやがる。って、何お前は人の心を読んでんだ。たまたま頷いただけか?
これじゃあポッキーゲームならぬプリッツゲームじゃないか。けしからん。実にけしからん。
俺は迷わずプリッツの先を口に銜み、目を閉じた。

パチン!

 ああ、何で俺は一回で学ばなかったんだろうな。再びデコピンされてしまったよ。あははは……。
けど、さっきより若干威力が小さかったのは気のせいではないよな?

結局プリッツは全部なくなってしまった。最後にテテが俺に一本くれたのが少し嬉しかった。
俺にプリッツを食べさせ満足気な顔をしたテテは、突然俺の手を取り、湖の向こう側を指差す。指差す方向には…森しかない。
「森しかないじゃないか」
テテが、何か懇願するように上目遣いで俺を見つめてくる。俺はその視線に庇護欲を抱かずにいられなかった。
「俺と行きたい場所があるのか?」
 テテがコクンと頷く。こりゃ完全に心読まれてるな。

荷物やその他雑用を片付け、俺はテテの手を取る。
「連れていってくれ」
テテは俺を確かめるように一度正視し、そして、その足を踏み出した。
400enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:19:02 ID:N08g9tZO
歩き出してから1時間、俺たちは洞窟らしきものの前に立っていた。中から色々と異様な雰囲気がするのは気のせいだろうか。
テテがこっちを向き、真剣な眼差しで俺を見つめてくる。少しばかり目が潤んでいる気がする。
「大丈夫」
そう言って、テテに先導するよう促すと、テテは決心したかのように俺の手を強く握り、洞窟の中へ足を踏み入れた。

 中に入ってから数分経っただろうか、
ゴゴゴゴゴ……
何か音がする。
 しかし、テテは全く意に介さず、そのまま進んでいく。一体何の音だ?
ゴゴゴゴゴゴ……
段々音が大きくなっている気がするのだが。テテの肩を叩いても無頓着で相変わらずだ。何かが起こるんじゃないか?
……ドォン!
思わず後ろを振り替える。
 そこには、巨大な大岩が俺たちに向かって転がってきていた。距離にして約20メーターぐらい。
ちょ、流石にヤバいんじゃないですか、テテさん…って何で笑ってるんですか?後ろから大岩が転がって来ているんですよ?
「―――――♪」
クラ○シュバンディクーのゆき○まゴロゴロみたい…って、向こうは残機あるけど、こっちはこの身一つなんだから笑ってる場合じゃないですって!
「a...」
ほら、コケた…って、ヤバッ!
俺の方をちらちら見ながら走っていたテテは、何もないところで足を滑らせてしまった。
彼女を助ける為に俺も止まる。が、どうすればいい?周りに危険を回避する場所なんかな…あった。
俺はテテを両手で抱き上げ、地を蹴る。
文字通りの間一髪だった。大岩の方はそのまま転がっていき、しばらくして、
ドーン!
と、何かにぶつかったような音がした。
「大丈夫か」
テテの顔を覗き込む。彼女は俺に顔向けならないのか、真っ赤になった目を背けた。
「ま、気にするな」
そう言ってテテの頭を撫でる。そうしてやると、テテは満面の笑みを見せた。可愛いなぁ、もう。
しかし、この後はどうするんだ?やっぱりこのまま洞窟の奥へと進むんだろうか。
 今みたいな事があった以上、この後も色々な危険が訪れるかもしれない。勿論、今以上のだってないとはいえないわけで…。
しかし、俺の考えとは逆に、テテは立ち上がり、俺を連れていこうとする。怪我とかはないのか?
「―――――♪」
読んでいる。絶対にこいつは俺の心を読んでいる。
 でもいいか、怪我がないなら。
401enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:22:38 ID:N08g9tZO
結局、俺たちは掠り傷もなかった。不幸中の幸いって奴だ。
 岩が転がっていった方の様子を見に行ってみたのだが、岩が壁にめり込んでいた。もし押し潰されたら重傷どころじゃないな…。
そしてテテは今、何もなかったかのように俺の手を引いているのだが……。
いつまでこの状況が続くのだろうか?
 というか、彼女は何を目指してこんな薄暗い洞窟の中を進んでいるのか。その求めるものに価値はあるのだろうか。大体、何故俺を連れて…
そんな俺の思考は、テテが脇腹をつついた事によって遮断された。
「何?」
少しばかりテテに疑心が生じていたのだが、それが吹っ飛んだ。
なんと、俺たちの数歩前には地面がなかった。試しに覗き込んでみるが、漆黒の闇が広がっているだけ。
思わずテテを見る。流石にこれは恐いようで、膝が笑っている。当然だ。俺もそうなっているからな。
ドドドドドド…
今度は何の音だ?
 後ろを振り返ってみても、今まで来た道が続いているだけだった。ただ、また岩とかではなさそうだな。

 しかし、俺はすぐにその行動を後悔する。
 確かに後ろを確認するのも大事だった。背中は人間にとって盲点だからな。でも、それで別の盲点が生まれてしまっては意味がない。
 何が言いたいのかって?


テテが、俺を漆黒の闇が支配する穴の中へと、突き落としたのだ。
402enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:25:48 ID:N08g9tZO
凄まじい落下感。身体が闇に飲み込まれていく。俺の人生短かったな…
ザッバーン!
え?水??
どうやら俺は水の中に落ちたみたいだ。身体の節々が叩きつけられ、痛む。いくらなんでも骨は折れていないと思うが…。
水面に浮かび上がった俺は、岸に向かって泳ぎ、陸に上がった。
ドドドドドド……
さっきの音がより大きくなって聞こえる。
 辺りを見回すと、大きな滝があり、森の中のほどではないが、広い湖があった。
洞窟の中にこんな場所があるとは。おまけに何かクリスタルみたいに光っている石もある。綺麗な空色だ。そう、空色…。そういやテテは?
ザバーン!
湖の中に何か…テテが落ちてきた。彼女はしばらくして水面から顔を出し、こちらに向かって泳いできた。
 突き落とされていて当然の反応かもしれないが、思わず後退ってしまう。
陸に上がったテテは俺の方に歩いてくる。そして、肩を掴み、背伸びし、目を閉じ、キスした。
へ?何で??
しかも水を口移しで飲ませてくる。俺は思わずそれを飲み込んでしまった。
『ふう、やっと話せるね』
「……へ?日本語??」
『あ、やっぱり驚いてる?じゃあ、一から話そうか』
403enchart×ancient ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:30:53 ID:N08g9tZO
テテの話によると、この湖の水はあの滝の更に上流から流れて来たもので、とても神聖な水だという。巫女であるテテがそれに力を上乗せして、言葉を通じるようにさせたらしい。
「それじゃあ、ここまでの道中で俺の心を読んだっぽかったのは何なんだ?」
『ああ、あれ?あれは、確かに力も使ったんだけど、いろんな距離が近くなったから、自然と頭の中に入ってくるようなものなんだよ』
「いろんなって…」
『本当に距離が近くなって良かったね。二回もはめられてるんだもん。あれは面白かったよ〜』
「ちょwおまww」
『あ、あといきなり突き落としちゃってごめんね。こうやってコミュニケーション出来ないとどうしようもなかったから』
 何で一緒に飛び込まなかったんだ?
『だってすごい恐かったんだもん。許して♪』
「あのなぁ…。まあそれは置いといて、何でこんな場所に連れてきたんだ?」
『実は私たちの民族のしきたりで、15歳になった巫女は満月の夜に男性と結ばれなきゃいけないってのがあって…』
ちょっと待って、テテさん。今貴女結ばれるとか言いませんでした?
『その為には相手が必要でしょ?それで、昨日湖で月光浴して力を溜めていて君を見つけたから、今朝小手調べしてみたわけ』
 ああ、アレは調査だったのか。道理で都合がいいと思ったよ。
『そしたら見事にはまってくれたし……まぁ私的にもカッコよかったからよかったんだけど…』
「ん?何か言ったか?」
『ううん。それで、しきたりには試練が必要って事で、さっきの岩もそうだったみたいだけど、この洞窟の中にはいろんな罠があるらしいよ。詳しくは知らないけど』
「じゃあ、何ですか。この先も危険があるっていう事?」
『そういうことになるね〜。そういえば、長がラストは凄く強いから気を付けろって言ってたよ?』
長さん……。強いって事は生き物とか何かとでも言うんですか…?
「じゃあ、罠を乗り越えたらどうするのさ?」
『そりゃあ、洞窟なだけに偕老同穴じゃない?』
は、ははは、笑えんな、それ。
404NIEneuNTE ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 00:35:55 ID:N08g9tZO
取り敢えず、前編が終了って感じです。
場所が移動している割に文章が少ないのは勘弁してくださいorz



このSSのせいでプリッツを4箱も買ったのは自分だけでいい。
405名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 01:35:21 ID:pBiSJDIK
>>398
>m9(^д^)

何か和んだw
406名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 08:38:21 ID:Dwrd+hvu
まあなにはともあれ
擬音を多用するのはどうかと思う
407名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 20:54:04 ID:PLynYv/5
洞窟の中で20メートル先が見えるのはどうかと思う。
突き落とされた縦穴は「漆黒の闇が支配」してたらしいけど、それまでは天井に灯りでもあったんかと

まあ何はともあれ続きに期待
408neu♯Supermogu:2007/11/08(木) 21:56:55 ID:3r1Pghbj
名前を簡略化しました。

オノマトペですか・・・。考えたこともなかったです。。これから考慮します。

>洞窟の暗闇
最初は頭の中にあったのですが、メモに書くのを忘れていました・・・。
しかも、この後にまた暗闇に絡む展開が・・・orz


初めてで長編(?)を書くべきではなかった・・・。
早く投下したい欲望に負けて、完成させずに(あとちょっとのところ)投下したのはヤバかったですね。
どうしても矛盾が生まれるみたいですね・・・。

完成してから該当部分を訂正してもう一回投下しても容量増やすだけだし・・・。



完成して一週間寝かして確認してから投下した方がよかったですね。。
409neu ◆WkbUbgPYt6 :2007/11/08(木) 22:00:21 ID:3r1Pghbj
何やってんだ俺は・・・。もうgdgdじゃないか・・・。

コレからがあったらコテ変えますね・・・。
410名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 22:55:08 ID:QwPSsASp
>>407-408
ヒカリゴケでも生えていたことにすればおk
気にせず続きよろ
411名無しさん@ピンキー:2007/11/08(木) 23:22:44 ID:IDRUkPrF
3点リーダ使いすぎってのも一つ。便利なのは確かだけどな
まあこの板的核心部分を待つとしようかね
41281 ◆DlPgAmm21I :2007/11/09(金) 00:31:09 ID:aqZTeJqC
何かみんなの指摘が
凄く心にビクンビクンクル━(゜∀゜)━!!!!
・・・
携帯の辞書ガ━!


マリーにメロメロの主人公をどうしてくれるか
悩み中


もちょっと待って下さい。
413名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 03:06:04 ID:BHlwms44
>>412
安心しろ、待ってるぞw
414総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/11/09(金) 11:55:42 ID:kbtorSWa
#投下行きます


だいぶ時間がたった気がする。なにか彼女の動きが止まった気がするので、
「そろそろ着替えたか?」
俺はマリーに問いかけた。
「・・・まだ。ちょっとまって」
ちょっとの間の後、そう返事が返ってきた。
「そうか」

また衣擦れの音が再開する。
・・・なんだ? 何かおかしいのか?
「んー・・・」
なにか不満げな声が聞こえる。
すると、目隠し(カーテン)をはずしてマリーが顔を出す。
「なんだ どうした?」
「んー、康平の服がおっきすぎるんだよ…」
言われて納得する。彼女の手先をみると、見事に指が出てない。
というか、手首の位置あたりがもぞもそしてる。
俺は「あー・・・」といいながら、腕まくりをしてやる。
「ん、ありがと…」
といって、またカーゴルームにもどる。
「ぶ」
俺は吹いてしまった。
その、なんというか、カラーシャツだけ着た状態だったのだ。
四つんばいにカーゴルームに戻るとき、白いトライアングルが見えてしまった。
「マリー… しり隠せ…」
「え? っっっ!?」
慌てて抑える彼女。それは誘ってるのか? 誘ってるのかーーーっ?!
……いかん 自重しろ。平常心。
415総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/11/09(金) 11:56:21 ID:kbtorSWa
それからさらにしばらくして、彼女は俺のシャツとスラックスを履いて助手席に来た。
はっきりいうが、服が大きすぎる…
ぶかぶかのカラーシャツをスラックスにいれずに外にだし、スラックスは何回も折りたたんですそが短くなっている。
すると彼女から−−−
「… っくしゅん!」
くしゃみがでた。暖房がかかっているとはいえ、身体が冷え切ったままだ。
このままだと確実に風邪を引く、と思い、
「どこか銭湯かホテルかにはいろう?」
と彼女に問いかけた。
「うん…」
素直に返事をするマリー。さらさらヘアーだった髪が海水のせいでちょっとゴワゴワしてそうだ。
洗った後にドライヤーかなにかで乾かさないと、だめだなこりゃ。

いつもの一人旅ならば、車にセットした寝袋などで寝るのだが、銭湯が近場に無く、
さらに車にとって想定外の客(マリー=女の子)がいるため、
ホテルを探すことになった。

高級そうなホテルは金がかかるからだめだ。
観光地のためか、そういうホテルが目立つが、
一番近い駅に移動すると、ちらほらとビジネスホテルやら民宿があった。
そのひとつのしなびつつあるビジネスホテルに入る。

「2名さまですね? ツインルームですか?」
面倒なのでそのままツインに。
(自殺未遂のあとだしな…)
マリーは黙ったままだ。
「ん?どうした?」
「・・・・・・」
返事がない。聞こえてはいるようだが、俯いたまま、返事をしないようだ。
「部屋は・・・」
と受付とやり取りしつつ、受付にニヤリ顔をされてしまった。
おい、ちっ ちがうっ、ちがうぞっ?! 何にと言われればわからないが(タテ前)、違うんだっ!
ここで言い訳をするとドツボにはまる恐れがあるから、いわないでおこう…
なんかマリーに小声で「ばかっ」っていわれた気がするが… 気のせいだ。うん。

とりあえず部屋につく。
部屋に入った瞬間、マリーは濡れた服が入ったかばんを投げてきた。
「うおっ」
「ばかーーっ! な、ななな、なんでツインなんかにするのよ〜!!」
「だって、何もいわなかっただろうっ!? 金銭的にもリーズナぶふぅ?!」
マリーのキックが、俺の股間に命中した。
「ちょっ! お、おれの切ないところをををおおお」
くず折れる俺。
「あ、あたしだってお、女なんだからっ!! 一緒の部屋にしないでっ」
「だ、だってさ、お前のことが心配で… 自殺未遂してるし…」
くず折れてのた打ち回りつつも、言葉をつむぐ俺。
なんとか彼女を見上げる。あれ? 彼女、固まったぞ?
「おっ お風呂はいるっっっ!」

マリーは顔を真っ赤にしながら風呂に入っていった。
41681 ◆DlPgAmm21I :2007/11/09(金) 12:06:52 ID:kbtorSWa
#作者的脳内NGシーン
#<<<ホテルを探す場面にて>>>
#「ラブホテルしかないじゃないかっ!」
#その言葉に彼女は赤面して抗議してくる。
#「べっ べつに一緒に入らなくたっていいじゃないっ!
# ど、どどど、どうしてもっっていうのな、なら一緒に入ってあげなくもななな、ないわよっ!?」
#
#だめだwwwwwww 俺(作者)もうだめだwwwwwww
#どこぞのキャラとおもいっきし被ってる。 いや、むしろ参考にしてる(?
#Liaちゃんに会いてええええええ!(だまれ
#
#
#あちこちのスレ見ていてふと思いました。
#私の文章って読み易さと面白さとか、不満点はありますか?
#過去の不満点については極力直したりしていますが、
#どうしてもココが読みづらいとかありましたら、
#よろしく御指導いただけると幸いです。
417名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 12:42:04 ID:1MR/3LXr
一番槍GJ
続きwktk
418neu ◆yKZvp5gS1A :2007/11/09(金) 12:46:29 ID:0hX5Al20
いえ、相変わらずGJです。
自然とにやけちゃいますし。


三点リーダは勘弁してくださいorz
無論、これ→・・・でもダメですよね。

書いてて思ったのですが、いろんなところ端折りすぎて、何故登場人物同士が好きになるのか分かんなくなってしまいました。ダメダメですね……orz
419名無しさん@ピンキー:2007/11/09(金) 17:09:19 ID:CZdOOekD
>>416
ボクもこのスレの書き手だけど、面白くていいんじゃないかな?
ただ、もうちょっとマリーの描写が欲しい。

とりあえず部屋につく。
部屋のドアを閉じると、マリーの緊張が解かれたのか、いきなりむくれた表情でかばんを投げつけてきた。
「うおっ」
「ばかーーっ! な、ななな、なんでツインなんかにするのよ〜!!」
風邪気味でほてった顔を、よりいっそう羞恥の色に染めながら叫ぶ。
「だって、何もいわなかっただろうっ!? 金銭的にもリーズナぶふぅ?!」
有無を言わせないマリーのキックが、俺の股間に命中。
「ちょっ! お、おれの切ないところをををおおお」
「あ、あたしだってお、女なんだからっ!! 一緒の部屋にしないでっ」
「だ、だってさ、お前のことが心配で… 自殺未遂してるし…」
くず折れてのた打ち回りつつも、言葉をつむぐ俺。
「おっ お風呂はいるっっっ!」
なんとか上を向くと、彼女は身を震わせながら逃げるようにシャワー室のほうへ行くのが見えた。
あれ? 俺そんなに悪いことしたのかな……しまったなあ……

あくまでも自分だったらこう書くってだけで、するーするも参考にするもびーばのんのんだけど
ボク的には表情豊かなマリーたんが見たいな
このスレ内でも、最も面白いSSのひとつだと思っているから、
がんばって続けて欲しいっす











420名無しさん@ピンキー:2007/11/10(土) 08:22:30 ID:ASi6hhEI
>418
そういうときは、(いい意味で)ダレもせかさないので、
じっくりと推敲するといいと思うよ。
書いている時点で後悔が先にたっているならナオのこと一歩踏みとどまって、
読み直しをしてみよう。

私はその半分くらいしかやってないけどね(こらまてぃ
三点リーダは… 自分も多用します。 便利なんですもの…

>419
萌えたっ(!?

いあ、参考にさせていただきます。ありがとうございます。
・・・表情豊かなマリーかぁ… 自分のボキャブラリーのなさが露呈してしまいましたな。
描写とかを増やすことを念頭にがんばります。
421名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 03:02:31 ID:b0r+SyC2
マリーたんのシャワーまだー?
422名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 03:15:23 ID:KZWzbfl3
>>416
GJ! 待ってたぜ
風呂への突入マダーーー?                ってさすがにそれは無いかw  ( ゚д゚ )ナイヨネ?
42381 ◆DlPgAmm21I :2007/11/13(火) 00:32:15 ID:zaMPRvjE
"シャーーーーー…"
シャワーの音が聞こえる。時々、水が跳ねる音が響く。
マリーは問題なくお風呂に入れているようだ。
もしここでシャワーの音"だけ"だったなら、すぐさま風呂場に突撃するところだ。
突撃した中で、マリーが裸体のまま手首を・・・・・・裸体?
なっ、なに想像してんだ俺は! 風呂場の音が普通に聞こえるからいけないんだっ
・・・ん、 理性を保て。 って なにガキ相手にモンモンとしてるんだ・・・
しかし、聞き耳をずっと立てるわけにもいかないな…
TVなにかやってないかな…

おもむろにTVを付ける。国営放送がいちばん無難と思い、局を合わせる。
その局では、ちょうどニュースをやっていた。
しかし、なにも気に留めるようなニュースは放送されておらず、
ただボケッとしながらTVをみていた。

"ズズズズズ・・・・・・"

・・・ん?なんだ? なにか違和感を感じる。

"ズズズ・・・グラグラグラグラ"

地震かっ!?
とっさに出口確保の為、部屋の玄関を開けようとベッドから歩いていこうとしたときに、
風呂からドッタンバッタン! と大きな音が聞こえてきた。

(なんだ!?)
とっさに風呂のドアを開けるっ!
その直後、
「ふにゃあああああああああ!」
気の抜ける悲鳴と共に、マリーが飛び出してきた。
漫画にたとえるなら、目をぐるぐる状態にして必死になってる感じだ。
「こ、ここ、こ康平っ、じ、じじじ、地震、地震っ!」
マリーはパニック状態だった。自分の体が濡れていることも、
着るものひとつ身に着けていない状態なのも忘れて、
必死になって俺にしがみついている。
「地震! 地震ーっ! 怖いーっ!!」

人間、他人がパニックになるのを見ると、自分は冷静になれるというのがある。
まさに今がそのときなのかもしれない。
「マリー、落ち着け。落ち着けって。そんなたいした地震じゃない。安心しろ」
「いやいやいやいや」
マリーは嫌々言いながら俺の胸のあたりで顔をぐりぐりしてくる。
「こら! くすぐったい! やめろっ やめっ!!」
ガッシ! とマリーの頭をつかむ。
「ふぇ・・・」
顔を向けさせると、破顔させて瞳は潤み、いや、瞳の端で涙が決壊寸前のダムになっている…
ああ、こんな感じで見つめられると、俺やばいなぁ… いぢめたくなる…
「とりあえず落ち着け。大丈夫だから、風呂入りなおして来い。確実に風邪ひくぞ」
「う、うん・・・」
コクコクとうなずく彼女。俺は続けて言った。
「それに、素っ裸で出てくるな。目のやり場に困る」
「え? ええ? ーーーっ!?!?」
42481 ◆DlPgAmm21I :2007/11/13(火) 00:32:48 ID:zaMPRvjE
彼女はこれ以上にないくらいに顔を真っ赤に、体も羞恥で紅くなり、
長い髪を振り乱し小さいおしりをぷるぷるさせて風呂に戻っていった。
ほどなくして風呂場の中から「いやあああああ!」と悲鳴が聞こえた。
役得役得♪



違ぇ… おれはロリじゃねぇ…

いつの間にか地震は収まってた。
国営放送でも津波の心配は無いとか言ってたし、もう大丈夫だろ。


#表現をふやしてみたけど、だめだwwww
#何この犯罪者wwwwww 俺(作者)もロリじゃないと言い切りたいけど、
#この前友人にロリか否かを計ってもらったら、
#確実にロリらしい。 orz もうだめなのか?!
#(現年齢(28)で17歳以下に欲情するならロリ確定らしい。31超えると18以下とか)
425名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 17:32:42 ID:eyofAIXC
>>424
まさかマリーの方が(ある意味)凸してくるとはww GJ!

> #この前友人にロリか否かを計ってもらったら、
ttp://goisu.net/cgi-bin/psychology/psychology.cgi?menu=c021

…50%だった orz
426名無しさん@ピンキー:2007/11/13(火) 19:13:37 ID:/wdWUYVR
120%だった

>424つづきー
42781 ◆DlPgAmm21I :2007/11/13(火) 22:50:35 ID:SJTFAWNi
あなたのロリコン度は【120%】です。

あなたにぴったりの夢
お気に入りの作家に自分だけのキャラを作ってもらう

ちょま! それってマリー!?
というか、自身がSS書いてたら、しかもそれが願望の現われだったらっ…

orz オワッテマスナ


他の作家さん、元気ですかー!?
読みたいです…
428neu ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:16:36 ID:R0yBDR1d
現実世界で元気かどうかは分かりませんが(汗


実は書いていない残りがエロシーンだけだったのですが、前述べた通り、何故好き合っているのか分からなくなったので、急遽1シーン(罠?)追加しました。その為、余計に文が読みにくくなっている可能性があります。ご勘弁を。


応急処置ですが、暗闇の件をなんとかしました(あれでなってるのか?)

それではどうぞ。
429enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:21:36 ID:R0yBDR1d
 あのシュールな告白を聞いた後、俺たちは湖を起って、洞窟の奥へと進んでいった。
 さっきからずっと並んで灯されている松明をぼんやりと眺めながら、俺は思ったことを口にしようと、テテに問い掛けた。
「……なあ、テテ」
『ん、なあに?』
「あのさ、見知らぬ俺と一緒になる事に抵抗はないわけ?それも未来永劫」
 俺の言葉を聞いたテテは、少し考える素振りをしてから、
『しょうがないよ。それがしきたりだし。それに、トシは優しいし、さっきも助けてくれたじゃん』
「そ、そうか?」
『そうだよっ。早く先に進もっ!』
 テテがこっちを向いてにっこりと頬笑む。俺の手をしっかりと握りながら。

 しばらくすると、松明の明かりではなく、明らかに蛍光灯のそれが、先から見えてくる。俺はテテと顔を見合わせ、先を急いだ。すると、
「ヤッホー!遅いから待ちくたびれちゃったよぉ」
「誰だ?」
 突然の声に、俺は身構える。前方に得体の知れない奴がいる。
「そんな警戒するなよぉ。オレの名前はケリー。ここの番人をやってるようなもんだ」
『番人?』
「そうだよかわい娘ちゃーん」
 ケリーと名乗ったソイツは、驚くべき速さでテテの前まで来て……胸を揉みやがった!!
『キャッ!』
 咄嗟にテテが腕で胸を覆う。その端整な顔は、朱に染まっていた。
「何しやがる!」
 …羨ましい。
「かっかしないかっかしない。別に減るもんじゃないし」
『減る!アンタに揉まれたら確実に減る!!』
 あれ?テテさん、言葉遣いが……
「あら、嫌われちゃったみたい?」
 ケリーはお道化た顔をしてみせ、
「話を元に戻すか。君たちにはそこのエレベーターから下りて、下の迷路に挑戦してもらう。制限時間は30分。この時計が一周するまでに、再びエレベーターに乗り込めばOKだ。遅れたら……そうだねぇ。その娘にたっぷりお仕置きしちゃおうか!」
『ヒッ!』
 最後の一文を聞き、テテが自分の体を抱き締めるようにする。テテの目線は睨むようにしてケリーを見つめていた。テテにお仕置き……いいかm
『トシ、顔がにやついてる』
 何時の間にこっちを見ていたのか、思いっきり軽蔑の眼差しを向けられた。
「な、なぁっ。再びってのは何なんだ?」
 誤魔化すように、言葉を吐き出す。テテの視線が物凄く恐ろしい。
「あぁ。この迷路は四隅にチェックポイントがあって、そこに四分の一ずつ地図がある。それを持ってきて、真ん中のエレベーターに乗らなきゃダメだ」
 なるほど。
「時間としてはギリギリか?」
 聞いとかないと、後が怖いからな。色んな意味で。
「ちょっとは走らないとダメだが、キツいタイムではないはずさ」
 なら大丈夫か。
 テテが、ほーっと安堵の溜め息を洩らす。
「じゃあ、早速始めてもらうよ。エレベーターに乗って」
 ケリーが、エレベーター横のボタンを押す。すると、ぷしゅーっと扉が開いた。俺たちが乗り込むと、
「エレベーターのドアが下で開いた瞬間にこの時計が動きだす。それでは精々頑張ってね〜」
 扉が閉まる瞬間、ケリーがテテに向かってウインクした。何だかなあ。
『トシ、わざと遅れたら許さないからね!?』
 顔が怖い。流石に般若までとはいかないが。
 俺はゆっくりと下がっていくエレベーターの中で、生涯女の子を怒らせてはいけないと、心に強く誓った。
430enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:25:14 ID:R0yBDR1d
 エレベーターの扉が開く。テテが一目散に駆け出す。俺もそれに続いた。
 ここは壁と足元にほんのり明るいライトがあって、壁は高く、ベルリンの壁くらいあった。写真でしか見た事ないけど。
 テテが立ち止まった。道が二手に分かれている。左と右だ。
『どっちにする?』
「どちらかはテテが決めていいよ。ただ、何か目印でも置いておこう」
 俺はリュックの中からさっきのプリッツを取り出し、箱を広げ、角をちぎる。そして、切れ端を分岐の真ん中に置いた。
「これでいっかな。さあ、どっちにする?」
『左っ』
 テテは威勢よく、声を張り上げた。

 何回か行き詰まったが、プリッツによる地味な作業により、一つ目の隅に辿り着いた。
 地面に地図が置かれている。俺がそれを拾いあげるや否や、
「残り25分〜。いいペースだよー。オレにとっては残念だけどねぇ」
 何処かから放送が入り、洞窟内に響く。明らかにケリーの声だ。
『アイツ……』
 テテが自然と呟いた。もうテリーに対するテテのイメージは最低だな。
 逆に俺はイメージを崩さないようにしとかないと。例え生きて還れてもその後が波乱では意味がない。
「まあまあテテ。時間は放っておいても過ぎてくし、先に進むぞ」
『うん…』
 俺が歩きながらそう諭すと、テテは大人しくなった。なんかこの先心配だな……。
 とりあえずここの隣の隅(エレベーターを下りた方向から見ると南西か?)を目指さないと。地図に載っている境目まではヒントがあるのだから。俺が地図とにらめっこしていると、
『キャッ』
 突然、テテが俺にもたれかかり、肩に掴まってきた。
『なんか滑っちゃって…』
 テテの足元をよく見ると、何故かバナナの皮がある。まさかこれでコけたのか?
 テテにその事を伝えると、
『ま、またアイツ?』
「そんなに忌み嫌わんでも…。トラップとかかもしれんぞ」
 それもかなり人を馬鹿にした、な。
『じゃあ、他にもあるのかな?』
「可能性はあるな。例えば…ヘビとか」
『や、やめてよー。怖い』
「ハハ、ゴメンゴメン」
『もー…』
 テテがぷくーと頬を膨らます。可愛い。その頬を指でつつきたいくらい。
「さあ、先を急ぐか。この地図によると、このまま真っ直ぐ行って突き当たりを左に曲がって……」
431enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:26:39 ID:R0yBDR1d
 俺たちが二つ目の地図を獲得し、三つ目も取った時だった。
「はいはーい、ちょっと言うのを忘れていた事がありまーす。じつはー、天井にが開始と同時に下がってきてー、オレの時計がゼロになると同時に地面につくようになってまーす。だから、それまでにエレベーターに乗れるように頑張ってねー。あ、ちなみにあと13分でーす」
「なっ!?」
『えっ!?』
 俺とテテは、思わず上を仰ぎ見る。しかし、頼りない明かりではよく分からなかった。あの野郎……。
「テテっ!走るぞ!」
『うん!』

 ようやく四つ目の地図を見つけ、俺はソレを拾い上げた。
 やっと終わりか。なんか疲れた。
 しかしテテを見やると、女の子の割に疲れている様子はあまりない。しかも、さっきからちゃんと俺についてきていた。不思議に思った俺は、軽く息を整えながら質問してみた。
「テテは何か鍛えてるのか?」
 それを聞き、テテは一瞬きょとんとして、ぷっと笑いながら、
『何?いきなりどーしたの?』
「いや、走ったのに疲れてなさそーじゃん」
『鍛えるというより鍛えられた、かな。ほら、私、巫女だし』
「そっか。そういやそうだったな」
 女の子が鍛えてるってのも変だよな。
『そういやってなによー』
「ハハハハハ」
「はーい、あと7ふーん」
「やべっ。急ごう。天上が頭に近くなったら走れなくなるぞ」
 俺が走りだすと、
『うんっ』
 後ろから威勢のいい返事が返ってきた。

『さーて、どうしちゃおっかなー』
 今はエレベーターの中。そう、俺たちは無事だった。実のところ、最後の方の俺は、屈んで歩いてたくらい危なかったのだが。
「何の話だ?」
『アイツに決まってるじゃん。ケリー。逆にお仕置きしてあげちゃうんだから』
 そう言って、テテはうっすらとほくそ笑んだ。こ、こえー。一体何をするつもりなんだ……?女王様とかか?ダメだ、全く想像がつかん。
 俺が、やはり女は恐い生きものである事を再確認していると、エレベーターが止まり扉が開いた。
 俺が先に下りると、地面に紙が落ちている。それを拾い上げ読んでみると、
「なになに、『迷路から脱出できておめでとう。地図を手に入れたのは分かってるからお先に失礼♪』」
『逃げられた……』
 あのー、さっきからなんか性格変わってませんか、テテさん。
 ま、いっか。死ななかったし、テテもお仕置きされずにすんだし、万事OK…かな?
432enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:28:02 ID:R0yBDR1d
 あの後、俺は悔しがるテテを後ろに先に進んだ。しばらくすると、小ぢんまりした部屋らしき空間に到着した。
 本当に部屋みたいで、さっきまで岩壁だったのが、一転して煉瓦造りになっている。
 前方は扉のようなもので塞がれているが、その扉に何かあった。
 近づいてみると、何やら文字みたいなのが印された木版と、まるで時計のような−−−いや、どう見ても時計としか考えられない−−−が0時に設定されていた。針は動いていない。
「テテ、これ読めるか?」
木版を指差し聞いてみると、
『読めるよ。私たち民族の文字みたい。えーと、「正しい時刻に設定せよ。然れば道は開かれん。但し、もし間違えれば汝等に禍が降り懸るであろう」って書いてある……。正しい時刻?』
「ちょっ、それだけ?」
『うん、それだけみたい……』
マジかよ。禍って…しかも正確な時刻?。
 1分刻みで720分の1、5分だと144分の1、10分で(ry
『トシ!こっちに変なのが…』
テテの言葉に振り向くと、さっき入ってきた入り口の隣に、テーブルらしきものに置かれた水晶と、また木版があった。
「今度は何て書いてある?」
『「ヒントが欲しければ此の水晶に手を重ねよ。併し、更に危険度が増す事を此処に記しておく」って書いてあるわ』
更に…?ラストの強い罠とやらとどちらが危険なのだろう。
大体、水晶に手を重ねるだけで危険って…。しかも、それでヒントが出るって?んな馬鹿な。
『どうする?』
テテが俺に聞いてくる。俺がいくら考えても思案に尽きるだけになるだろう。
「テテはどうする?」
『トシについてく』
速答してくれた。何ていうか感慨無量だ。
「じゃあ、行くか?」
 そう聞いたはいいものの、不安がないはずがなく、顔に出てしまったのか、
『大丈夫?』
 と言われてしまう。
 何女の子に心配させてるんだ俺は。テテは俺について行くと言ってくれたじゃないか。俺が弱気になってどうするんだ。
 大体がここでずっと悩んでいたって何も変わらないしな。だったら、少しでも可能性がある方を選ばなきゃな。
「よし、行くか!」
『うん!』
俺たちは覚悟を決め、水晶に手を重ねた。
433enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:31:06 ID:R0yBDR1d
『トシ…』
アレ…?俺ら一体どうしたんだっけ……?
『トシ!』
揺り起こされた。
周りを見回すが、薄暗い。森みたいだ。さっきのか?
…いや、違うな。
 雨が降っている。それに土砂降りだ。洞窟に入った時は快晴だったのに、だ。
「テテ、ここは何処だ?」
『分からないの。私もトシもこの木の下で眠っていたみたい…』
「そうか……」
混乱する頭を整理して、状況を確認する。
確か俺たちは扉を開くヒントが欲しくて、水晶に手を重ねた。そして、気が付いたらここにいた。
そうだ、何かしらヒントがあるんじゃないのか?
「やいやいっ!」
そんな俺の思考を感じ取ってくれたのかくれなかったのかは知らないが、小柄な狐が現れた。

「なになに?お母さんを捜して来て欲しいって?」
「そうだいっ」
何で俺は狐と話しているこの状況に違和感を感じていないのだろうか。色々とありすぎたからか?
「母ちゃんは、昨日谷の向こうに用事があるって行ったきり、戻って来ないんだ」
 子ギツネが心配そうに言う。
「谷とは?」
「ここから西に行ったところ」
正直、こんな森の中では西も分からん。太陽も出てないしな。
「向こうだよっ」
そう言って、狐は西とみられる方向を顎で差した。
「もし逃げたら、このお姉ちゃん殺しちゃうぞ」
「はw?」
子ギツネのいきなりの暴言に、思わず吹き出してしまった。だって子ギツネなんかに人が殺せるか?
「バカにしたなっ!」
腹を立てたのか、子ギツネはすっくと立ち、指を立て…その先から青い火を出した。
「なっ…」
 当然ながら俺は驚いた。だってライターどころかマッチも何もないんだぜ?
「へっへーん。どうだ、驚いたか!」
434enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:32:18 ID:R0yBDR1d
「あ、ああ」
素直にそう返事する。
「じゃあ、早く捜してこい!」
 んな無茶な。
「ちょっと待て。ホントに手がかりは谷の向こうに行った事しかないのか?」
「あ、そういえばコレ」
そう言って、子ギツネは何処からともなく湯葉を取り出した。
「母ちゃんが大好きだから、見せれば分かると思うよ」
「ホントに俺一人だけで行くのか?」
「当然じゃん。お姉ちゃんは人質だもん」
子ギツネがテテを見遣る。テテの方はというと…脅えている様子もない。何故だ?
『トシ、こっちに来て』
不思議に思ってテテの方を見ていた俺を、彼女が手招き呼び寄せる。
「おい、逃げるのか」
『大丈夫。話すだけだから』
テテがそう言って、にっこりと微笑んだ。
「そ、それならいいけど…」
おいおい、赤くなってるぞ。
『トシ、早く』
「あ、ああ」
テテの言葉に、俺は子ギツネのそばから離れ、彼女の方へ向かった。

『ここは仮想世界よ』
「は!?」
俺と対面したテテの第一声がこれだ。誰だって俺のように返すだろう。
『つまり、ここは夢の世界みたいというかなんというか……。とにかく現実世界じゃないの』
「どうして分かる?」
『子ギツネが指から火を出したのを見たでしょ?ていうか、それ以前に喋ってたじゃない』
「テテの力じゃないのか?」
『ないわよ。大体アレは特別な条件が揃ったからで……』
テテがごにょごにょと口籠もった。何を今更赤くなってるんだか。こっちまで恥ずかしくなってくる。
「それでここから抜け出すにはどうしたらいいんだ?」
 正直、恥ずかしさを紛らわす為だけに聞いてみる。
『取り敢えず、キツネ君のお母さんを探すしかないんじゃない?それに、ヒントが欲しくて水晶に手を重ねたから、ここにそれがあると思う』
確かに。それは言えてる。
今は子ギツネのお願いを聞いてやるしかないか。他に宛てがあるわけではないしな。
「じゃあ、今から捜しに行くから湯葉を頂戴」
俺は子ギツネに振り向き言う。
「う、うん」
子ギツネから湯葉を受け取り、リュックの中から取り出したビニール袋に入れる。
『トシ、気を付けて』
「ああ」
折畳み傘を取り出し、差しながらテテに返答する。
「必ず見つけてこいよ!」
「分かってる」
生意気な子ギツネに即答し、俺はテテたちのもとを離れ、子ギツネの母親を捜しに雨の中を歩きだした。
435enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:33:43 ID:R0yBDR1d
子ギツネの母親を捜し始めてから20分ほど経ったのだが、未だに雨が降り続いている。
傘を差しているにもかかわらず、とっくにズボンは濡れてしまっていて、足とくっついて気持ち悪いったらありゃしない。
こんな雨だからかは知らないが、さっきの子ギツネ以来、全く動物を見ていない。森の中は動物の宝庫って感じがするのだが、俺の勝手な思い込みだったか?
「間違ってないよ」
気が付いたら同じ…元い、気が付いたら女の子の顔が前にあった……のだが、こんな所に人間がいるはずがないので、華麗にかわしてそのまま道を突き進む。
「ちょ、ちょっとちょっとー。無視しないでよー!」
だって何か身長が二歳児ぐらいだし浮いてるしきっと気のせいだ木の精…
「そうそう、私は木の精…ってちがーう!私は森の精!!」
ナイス、見事なノリツッコミ…ってマジで森の精?
「そう、森の精。森全体を司る精霊!」
「ふーん。で、名前は?」
「あ、ゴメン。忘れてた。シルフィよ」
そう言ってその場で一回転する。何の意味があるんだか。
「別にいいじゃん!」
ちょっと待て。何かまた心の中を読み取られてないか?
「読んでるよ」
「素直に答えるのかよ!」
「だって事実だもん」
そう言って、そいつはニカッと笑った。その性格に、着ている巫女服が似合っているとは思えない。
「じゃあ、変える?」
突然、シルフィの着ている服がメイド服に切り替わる。
「どんな魔法だよ、そりゃ!」
「アレ?気に入らなかった?この服は貴方が一番好きな服のハズだけど?」
「ほっとけ」
勝手に俺の属性を暴露するな。それに俺は別に巫女でもかまw(ry
「じゃあ、戻す?」
「もうええわ!」
そう言ったのにわざわざ巫女服に戻したシルフィは、
「貴方はキツネを探しているんだよね?」
「ああ」
流石に、何故?、とかはもう聞かない。
「そのキツネの居場所、私が知ってるよ」
「本当か!」
驚愕の事実に、思わず体が前に出てしまう。
「でも、タダでは教えてあげないわ」
「金でも取るのか?」
「まさか?この世界で金なんてものは無意味よ。物品ではなくこっちの願いも聞いてもらう事になるわ」
「何だ?森の精さんでも叶わないその願いって奴は」
ていうか、叶わない願いなんてあるのか?魔法みたいなのが使えるくせに。
「この森の全体を調整する『翡翠』って宝玉を取り返してほしいの」
誰から?って、ここに人間はいないか。仮想世界だし。
「この先にあるほら穴に住む熊からよ。アイツのせいでこの森はずっと雨続きだわ」
「何で一人で行かないんだ?」
「とある理由があるからよ」
 そうかそうか。相手は熊だし恐いか。
「ちがうわよ!!」
「はいはい。で、その翡翠って奴を取り戻したら、キツネの居場所を教えてくれるんだな?」
「ええ、約束は守るわ。どちらにしろ貴方に拒否権はないわね。キツネを見つけないと元の世界に戻れないから」
やっぱりそうなのか。という事は、それまでにヒントがあるっぽいな。
「そのヒントも知っているわ」
「何!?」
「でも教えてあげない。翡翠を取り戻し、キツネを子ギツネに会わせてあげれば自然と分かるはずだから」
「自然と?」
「そう。自然と、ね…」
そう言って、シルフィは灰色の空を見上げた。
436enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:37:00 ID:R0yBDR1d
「んで、ホントに森の中は動物の宝庫なわけだな?」
俺は今、シルフィの後についていってるところだ。
 ほら穴までは結構あるらしく、シルフィと歩き始めてから更に20分ほど経っていた。ちなみに、相変わらずの空模様である。
「そうよ。特にこの世界には人間なんてものはいなかったから、貴方が思ってる以上のたくさんの生物がいたわ。この雨ですっかり引っ込んじゃってるけどね。」
 なるほどねぇ。
「この雨はどのくらい続いているんだ?」
「ざっと一週間ってところかしら。だから、不思議に思ったキツネが私の所に来たんでしょうね」
「何で分かってて会ってやらないんだ?」
「キツネが熊に敵う?」
「いや、適わないな…」
「でしょ」
 それもそうだが…大体何でその翡翠って奴が奪われたのだろうか。管理とかしっかりしているのか?
「翡翠は私が持っているわけじゃなくて、ちゃんと祭る場所があって、そこから盗られちゃったのよ」
「へぇ。じゃあ、取り返したら俺はそこに行くのか?」
「その必要はないわ。取り返したら私は貴方をキツネの所に連れていって、後は自分でやるから」
なんだ。その祭る場所を見てみたかったのに。
「見ても得はしないわ」
「そんなもんかね」
「そんなもんよ」
何か釈然としなかったが、そのまま進んでいった。

 そこからはしばらく、互いに無言が続いていた。
 本当にしつこい雨で、このまま濡れた格好でいると風邪をひきそうだ。やっぱり翡翠を取り戻さないと止まないのだろうな。この雨は。
シルフィの方を見てみるが、コイツは全く濡れている様子がない。これも魔法か何かだろうか。自分ばっかズルいな…。
「濡れないようにして欲しい?」
シルフィが振り返り聞いてくる。そりゃ当然だろ。寒いったらありゃしない。
「貴方には必要ないわ」
「な!?」
 流石にそれはヒドいんじゃないだろうか。よくもそんな事が平然と言えるな。
「そうじゃないの。ここから出れば濡れていた状態は元に戻り、服は乾く。要は精神力を鍛えるようなもの。風邪とかはひかないから大丈夫よ。」
「本当かよ」
「嘘は言わないわ」
マジかよ……。これはかなり精神的にダメージを受けるのだが。やってられん。
「あ!」
「何だ?」
「やっと渓谷よ」
「うわ……」
向こう岸遠っ!!300mくらいは優にありそうだ。谷底を覗いてみるが、目算で測れそうもないほど深い。 しかも谷底を流れる川の流れはかなり激流で、もし落ちたらひとたまりもないだろう。
「ほら穴とキツネはこの渓谷の向こう。じゃあ、行きましょ」
「ちょっと待て!!」
「どうしたの?」
どうしたもこうしたもないだろ。どうやって向こう岸に行くんだよ?
「あー、ゴメン。そういえば貴方は飛んでなかったっけ」
お前にとってはそれが常識だろうがな。
「ちょっと待ってて」
そう言ってシルフィは、空を見上げ、天に祈るように、小さい両手を重ね合わせた。その姿は神に祈るシスターみたいで、思わず見とれてしまう。
そんな状態が数秒だか数十秒だか続いた後、突然突風が吹いた。シルフィの長い栗色の髪が揺れ…
「ふう、大きいから時間がかかっちゃった。これで向こうに行けるわね」
「なっ!?」
 俺は驚愕した。さっきまで何もなかったはずの空間に大きな橋が掛かっていたからだ。
「ちょっ、シルフィ…これは……」
「へへん、驚いた?」
驚いたとかそういうレベルじゃないだろ、これは……。
「立派な橋でしょ?」
「あ、あぁ。そうだな……」
見直したよ、シルフィ……。
437enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:39:29 ID:R0yBDR1d
シルフィ建造の立派な橋を渡った俺たち(シルフィは飛んでいたが)は降りしきる雨の中、未だに歩いていた。
「なあ、まだなのか?シルフィ」
 生意気な子ギツネの元を離れてから、もう2時間ぐらい経ってるんじゃないか?
「まあまあ、そんなに慌てないで」
「ずっと濡れているってのもかなりしんどいんだぜ」
「ゴメンゴメン。ホントにあとちょっとだから……ほら、見えてきた」
シルフィが前方を指差す。俺とテテが入った洞窟よりは一回り小さい入り口。その中は雨のせいか、よく見えない。
「あの中に熊がいるわ。さあ、行ってきて」
「お前は行かないのか?」
「私は…いいの」
「いいじゃん、飛んでるんだし」
それにいざとなったら魔法使えばいいしな。
「それもそうね……」
気付いてなかったのかよ…。
「じゃあ行くか」
「先に行って」
「わかったわかった」
ホントに恐がりな精霊さんだな。まあ、俺も恐怖がないといったら嘘になるが。

ほら穴の中に入ったのだが、周りが暗くていまいち状況が把握できない。さっき、外から見て暗かったのは雨のせいではなかったようだ。
「なあ、シルフィ」
「ヒッ…」
変な声を出し、シルフィが抱きついてくる。
「どうしたんだ?」
「も、もう!いきなり話し掛けないでよ!!怖いんだから……」
そんなに怖がるなよ。それに大声出したら熊に気付かれるぞ。
「あ……」
シルフィはそれを聞いて沈黙する。
「それよりさ、この暗さをどうにかしてくれないか?そうすれば怖くもなくなるだろ?」
「うん……」
 数瞬して一気に視界が開けた。明るさが外と同じくらいになった。それに伴って周りの状況も段々分かってくる。
まるでさっきの洞窟を模したかのような内部で、全てが岩壁だった。
 奥に進むと、左に通路が曲がっているのが分かる。
「熊はこの奥か?」
 曲がり角のところで一旦止まり、シルフィに聞いてみる。
「た、多分ね」
おいおい、多分かよ。居場所は分かってるんじゃないのか?つーか、怖がりすぎだろ。周りを明るくしたってのに。
「いいじゃない!別に!」
「さっきも言ったけど大声出すなよ。熊に気付かれるぞ?」
「あ…」
俺の言葉を聞いて、シルフィが完全に押し黙る。そんなに強張るなよ…。
そんな弱気な精霊さんを後ろに、俺は取り敢えず岩壁に手をついて、奥を覗いてみた。
438enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:40:52 ID:R0yBDR1d
寝ている。熊が寝ている。そいつ以外に他の熊は見当たらず、その熊の手前に緑色…何ていうかエメラルドみたいに透き通った石がある。おそらくあれが翡翠だろう。
「おい」
 俺は、後ろにいるシルフィに向かって呼び掛けた。
「な、何?いた?」
「寝てるよ」
「え!?ホント!?」
凄い嬉しそうな顔だな、おい。
「じゃあ、取り返してくるからな。騒ぐなよ」
「うん!」
シルフィの嬉々とした返事を聞き、翡翠を取りに向かう。一応念には念を入れて、抜き足差し足忍び足、と…。
翡翠が落ちている前まで来た。熊に気付かれていないか確認するが、相変わらず頭をうつ伏せにして就眠している。
ああ、これがもし起きてたら今頃俺は逃げ惑っているのか?考えただけでゾクゾクする。
そんな想像を尻目に、床にある翡翠に手を伸ばす。そして、静かに熊の前から歩き去る。
 何事もなくて本当によかった。ちょっとあっけなかったけどな。
「ほら、取り返してきたぞ」
曲がり角の向こうで待っていたシルフィに、そう言いながら翡翠を手渡す。
「ありがと♪」
「割と楽だったな」
「これで森が元に戻るわ」 そう言って、自分はさっさと出口に向かっていった。
さっきまでの恐怖は何処に行ったんだか。
「ギャース!!」
ん?後ろから悲鳴のようなものが聞こえたんだが…。
振り返ってみるとそこには、体長2mを優に越えるさっきの大熊が、俺に向かって突進してきていた。
「シルフィ!」
俺は逃げ走りながら、先に行っていたシルフィに向かって叫んだ。
「何?」
「熊が起きた!逃げるぞ!!」
「ホントだ…」
振り向いた顔が青ざめている。シルフィからだと俺より余計に大きく見えるのかもしれん。
すぐにほら穴から出た。動きが俺たちに比べて遅いからなのか、熊とは若干距離が出来ている。
「こっち!」
シルフィが森の中を進みながら叫ぶ。それと同時に、突然左に曲がった。
「逃げ道があるのか!?」
俺も曲がりながら、シルフィに聞く。
「道じゃないけどね♪」
シルフィは得意顔になってそう答えた。
439enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:43:32 ID:R0yBDR1d
目の前に熊がいる。ヤバい……はずなのだが。熊はそのまま進んでいってしまった。

あの後、少し走ってシルフィが、
「ここなら大丈夫。もう走らなくていいよ」
「は!?」
何故に?
「この辺り一帯が私の住処で、周りに結界が張ってあるの。だからもう大丈夫よ」
それは熊に気付かれないって事か?
「簡単に言えばそういう事。試しに熊が通り過ぎていくのを見てみれば?」

それから一分ほど経ったのが冒頭ってわけだ。大岩といい大熊といい、俺は何かに追われる運命なのか?
俺が自分の不幸について考えにふけっていると、
「それじゃあ、キツネのところに案内してあげる」
「おお、そう言えばそうだったな。んで、何処にいるんだ?」
「この結界の中よ。ついてきて」

シルフィについていく事数分(割と結界は広いらしい)、横になっているキツネが見えてきた。あの子ギツネよりも大きい。このキツネが母親で間違いないだろう。
俺はリュックの中から湯葉の入ったビニール袋を取り出し、
「大丈夫ですか?」
心配なので聞いてみると、母ギツネは即座に反応し、
「そ、それは日光印の湯葉!!是非恵んでください!!!」
「あ、ああ。これは貴女のお子さんから戴いたものでして…」
 母ギツネの懇願に、俺は自然と畏まってしまう。
「まあ、あの子から!」
そう言って母ギツネは、俺の手から驚くべきスピードで湯葉を取り、全部一気に食ってしまった。
「んー、やっぱり日光印の湯葉は美味しいわー」
しかも、すっくと4本足で立っている。回復早っ。
「あ、あれは凄い栄養があるみたいで…」
シルフィが説明するが……知らんがな。

「なるほど、そうだったんですか…。迷惑をおかけしまして本当にすみませんでした」
「いえいえ」
母ギツネに事の一部始終を話すと、丁重に謝られてしまい、こちらも畏まってしまう。
「じゃあ、あの子のところに行きましょうか」
「あ、はい……シルフィは翡翠を元の場所に戻しにいくのか?」
「ええ。ここでお別れね」
「淋しいな」
「ば、馬鹿なこと言ってんじゃないわよ!別に私は淋しくなんかないんだからねっ!!」
おお、見事なツンデレっぷり。
「ツンデレじゃない!」
「耳まで真っ赤だぜ」
「う、ウソ……?」
 シルフィが自分の耳に手をあて、確かめる素振りをする。
「嘘だよww」
「貴方ねぇ!」
「ゴメンゴメン。そんなに怒るなって。怒ると可愛い顔が台無しだぜ?」
「なっ…」
あーあ、ホントに耳まで真っ赤になっちゃった。てか何言ってんだろな、俺は。
「じゃあな」
若干照れ隠しだが、俺は素直にそう言い、母ギツネと一緒に歩きだす。
「うん、じゃあね」
シルフィが手を振ってくれる。すぐさま俺も振り返した。
「元気でな」
「貴方も」
こうして俺とシルフィは別離した。雨の中にしては清々しい別れだった。
440enchart×ancient ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:45:01 ID:R0yBDR1d
尚、ここから子ギツネのところまで行くのだが、母ギツネにこの森の事を色々と聞くだけの展開だったので、ここでは割愛させて戴く。


 段々とテテと子ギツネが見えてくる。テテが俺たちに気付いたのか、
『トシ〜♪』
 と、大きく手を振りながら俺のもとに駆け寄って、抱きついてきた。
『大丈夫だった?』
 テテが顔を上げ、心配そうに聞いてくる。若干瞳が濡れているように見えるのは雨のせいか?
「ああ。この通り、何ともないさ」
『そう…。よかったぁ…』
 そっと胸を撫で下ろす。
「まあ、危険といえば危険だったんだがな」
『えっ…?そうなの……?』
 テテが再度心配そうな顔付きをする。アホか。何俺は一々不安にさせてんだ。
「ゴメン。余計な心配かけちゃったな。無事に洞窟を抜けられたらいつか話すよ」
 そう言ってサラサラした髪を撫でてやる。そうしてやると、テテは嬉しそうに身体を寄せてきて、俺を見上げ、何かをねだるように顔を突き出してくる。俺はその表情にクラクラした。
 瞼が閉じられる。俺は愛しいその相手に口づけしようと…
「母ちゃん!!」
 思わずバッと離れてしまった。テテも、と胸を衝かれている。
 母ギツネがすまなそうにこちらを一瞥して、
「ごめんね、心配かけて」
 と、子ギツネに駆け寄った。
「ありがとな!」
 子ギツネが俺を見上げていう。俺は複雑な気持ちでそれを受け取った。
「本当にありがとうございましたこれはせめてものお礼です」
 母ギツネがあの湯葉を渡してくる。俺はそれを受け取り、
「いえいえ、無事でよかったです
「あ……晴れてきましたよ」
『あ、虹』
 テテの言葉に空を見上げる。雲の間から虹が出ているという、その事実を確認するや否や……


 俺とテテは水晶の前にいた。
441neu ◆yKZvp5gS1A :2007/11/14(水) 02:51:38 ID:R0yBDR1d
さて、長くなってしまいましたが。物語もそろそろ終盤です。

ちょっと現実の方で事情により書き込めなくなる可能性があるので、早めに投下させていただきました。

書くからには最上を目指したいのですが…。
今週中には完結させると思います。

あ、また変なところがありましたら御指摘ください。では。
442名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 04:14:16 ID:aCKxMTD9
ノーヒントで正しい時間を当てるなんて不可能に近いんだからヒント見るに決まってる、と突っ込んじゃいけないところに突っ込んでみる
ツンデレ精霊とこれでお別れってのは勿体ないので、テテの人格の一部分だったとか実はテテの姉か妹で掟上問題ないから二人一緒にとか妄想しながら続きwktk
443名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 00:49:29 ID:JiEh4rqv
あげ
444名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 14:32:08 ID:X9i3LRgl
さげ
445名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 13:59:41 ID:N3nuvjyl
まげ
446名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 17:25:19 ID:KvdjgYvz
こげ
447名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 17:26:22 ID:dA2Slgva
逃げ
448名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 17:48:02 ID:vy8ppvoD
げげ
449名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 18:33:04 ID:dA2Slgva
かるーく別作を書いてみた。
「延々と続く〜」がまだ完成してないのに、投下することお許しください
前編が今日で、後編を明日の夜投下します。
450自殺者:2007/11/17(土) 18:44:50 ID:dA2Slgva
 人生において、死というものが最も意味のあるものかもしれない。

 中学生ぐらいのころか。スギやブナ、ツバキやカラマツといった様々な木の絵画を描くことに夢中だった時期がある。
 
 一枚の紙を使って、木一本を綿密に書く。

 その行為に対して、最初は褒めてくれていたかもしれないが、

 学校の教師や親の言葉の中でとても印象深いものとしては、

「もっと意味のある行動をしなさい」

 だった。

 もしマンガやゲームに没頭している子供がいたら、そのセリフにも多少は力がこもっていると思っていたが、

 今考えると、それもマンガやゲームに対する偏見かもしれない。

 とにかく、勉強をさせたい大人の立場からの何気ない一言だったようだが、

 思春期真っ只中だった僕は憤りを強く感じた。

 そして、皮肉たっぷりの視線で教師や親がしている“意味のある行動”というもの見てみようと思った。

 先生はチェスが上手かった。

 県大会で何回か優勝をしたらしく、授業中に何度もその武勇伝を語ってくれたが、

 生憎、ポーン・ナイト・クイーン・キングぐらいしか駒の名前も知らない僕に取ったら、

 あの子のお兄さんが○○高校に進学したらしいわよという世間話を聞かされるぐらい、退屈だったのを覚えている。

 機嫌のいいときを選び、「チェスって先生にとってどんな意味を持つものなんですか?」

 と聞いたことがある。
451自殺者:2007/11/17(土) 18:45:41 ID:dA2Slgva
「チェスは生きがいそのものだな。俺からチェスをとってしまったら何もなくなる」

 と愉快そうに話していた。

 ここで、僕の木の絵も同じようなものです。と答えてやりたかったが、

 先生と口論する気も、なんでもかんでもを勉強不要論にもっていこうとするガキのような意見も持っていなかったので、

 この話はここで終わったような気がする。

 両親も似たようなものだった。賭け事に身を投じていた。

 パチンコや競馬にいそしむ人たちから、

「絵を描くことなんて、なんのプラスにもならない」といわれたって、

 はい、そうですかと、納得する気持ちには到底なれない。

 時が経ち、高校に入った。

 そこで、生物学的に本来人間の生きる意味とは性交渉で子孫を残すだけであるということを知り、

 僕の命題は、ますますと混乱を極めていった。

 すでに絵の具も筆も手に取らないようになり、僕は、

 他人から見たら、非常に空虚な三年間を過ごしていたなと見られかねない生活を過ごしていた。

 子供のときのような喜怒哀楽の感情が、銀行の金利ほどの割合まで低下していることも、まるで気にならなかった。
452自殺者:2007/11/17(土) 18:46:20 ID:dA2Slgva
 きっかけはなんだっただろう?

 ある日から、急に死が怖いものだと感じ始めた。

 テレビか本かインターネットからの情報が発端だったのかは、もう覚えていない。

 とにかく、途轍もない恐怖を感じた。

 この感覚は、何年ぶりなんだろう。いや、人生で初めてかもしれない。とてもとても強烈だ。

 その恐怖は、友達と遊んで楽しかったとか、親戚が死んで悲しかったとかの感覚に比べ、

 まるで大津波がヤドカリをさらってしまうように、とても絶大なるものだった。

 これが感情なのかもしれない。

 久しぶりに思い出した。木の絵を書いていたときのように、体が熱くなるのを。

 大学進学と時同じくして、自身の死を意識し始めてからは、生活……というよりも日常の思想感が、ガラリと変わった。

 そう、僕は死を意識できている。

 それからというもの、友人、先輩、講師、強いて言えば道に歩いているあらゆる人に対してまで、

 蔑視のまなざしを送ることができた。そして続けた。

 どうせお前らは、この感情を知らないまま過ごしているのだろうと。

 あらゆる他人に対して上位の存在にいることは、心地良いことだった。
453自殺者:2007/11/17(土) 18:47:14 ID:dA2Slgva
 チェス? パチンコ? 競馬? ふふ、それはとても意味のあることですね。

 さぞかし楽しいことでしょう。

 でも僕は、それ以上に楽しい感情の高ぶりの中にいますから。

 この思想論は発展性も秘めていた。

 さらに死に近づき、エクスタシーに浸ろうと。

 リストカットをしたり、睡眠薬を多量に飲んだり、パソコンコードで気が失ってしまう手前まで首を絞めたりしてみた。

 たまらなく気持ちいい。

 このようにして一年間を過ごし、僕は今、十九歳。

 たぶんこの数字が、享年になることだろう。

 自殺者募集サイトを見つけてしまった。
454自殺者:2007/11/17(土) 18:47:52 ID:dA2Slgva
 この一年間、何度も見てきた夢。

 それが死だ。

 その瞬間、僕の感情は爆発的に燃え上がるだろうなと考えると、エロ動画を見ているときより、自慰行為にせいが出る。

「ワタルさんですか?」 

 ある駅前で待ち合わせをしていたら、声をかけられた。

「……キアさんですね、こんにちは」

 頭二つ分目線を下げると女性……というよりも少女のいでたちをした人が現われた。

 ネットの書き込みから、女の人だろうなとことが予想できてはいたが、まさか中学生のような人だとは思いもがけなかった。

 紹介しよう。こちらが今日、一緒に死んでくれるキアさんだ。

 いくぶん背伸びをしたように髪の毛を茶に染めていて、それを後ろ一本でしばって垂らす。いわゆるポニーテール。

 背伸びをしてるのは髪だけではない。上下とも子供サイズの服は、素人でも一目でわかるほどの高級そうなブランドで固められていた。

 靴も靴下もおしゃれづくし。

 最近のガキンチョは金持っているなあと思うよりも、死に衣装としてめいいっぱいの格好できたんだなと感じさせた。

「じゃあネットに書き込んだとおり、行こっか」

「……はい!」

 どうせ死ぬんだから緊張することもないのにと思ったが、それは人それぞれだろう。

 ワタルというハンドルネームの僕と、キアさんは、タクシーで自室のあるアパートまで向かっていった。
455名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 19:26:23 ID:GNK7ECGo
気になる展開……
wktk!
456名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 23:15:13 ID:gNYFyRWv
主人公が意図的に中二病設定にされてるのは珍しい、展開が気になる。
45781 ◆DlPgAmm21I :2007/11/19(月) 17:52:40 ID:x6AzLHfs
#1週間掛けてこれしか書けないとか、どんだけなんだよ自分…
#
#いくら自分の頭の中でシーンが思い浮かんでいても、
#相手に伝える術は文章でしか伝えられず、
#如何にして相手に簡潔に確実に伝えられるかが、要である。
#仕事で相手に伝える場合も然り。
#それを目標に頑張ってはいても、推敲すればするほど、”表現が足りない”になる…
#なるほど、文章を起こすこと、且つ続けることは、想像以上に難しい…。
#以上、最近特に思ったことを徒然と連ねてみた。
#
#結論いくぞー!? 「「マリーは可愛い」」 そう、可愛いんだ。( 。ロ゚;)
458総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/11/19(月) 17:53:24 ID:x6AzLHfs
「まったくっっっ!」
バスタオルを頭に巻いて、ボディーソープ系のいい匂いを纏わせたマリーが
ベッドルームに現れた。
ビジネスホテルに設置してあるある意味無粋な業務用のものも、
彼女が使うと心地よい残り香が漂い、その上、気品があるように思えてくるから不思議だ。
そんな彼女は、まだ顔が紅い。
先ほどの言葉尻からも、風呂から飛び出した恥ずかしさが未だ残っている様子だ。
「ばかヘーもばかヘーよっ! じろじろ見ちゃって!! むーっ!」
”ぷぅ!”とほっぺたを膨らませるマリー。
「な、なんだよ、ばかヘーって… 康平と呼べよ…」
そんな彼女に対して俺は、先ほどの情景がよみがえり、マリーを正視できなかった。
「えっ、えええ、えっちなことしたんだから、ばかでいいのよっ! ばかっ!」
うぐ… 痛いところを突かれてしまった。
(…ってあたりまえか)
先ほどの”ぷるぷる”などを思い出す。・・・いかんいかん。
「ま、またえっちな事考えてる!!!」
「ばっ! かっ、考えてねーよ!!」
声を大にして反抗する俺。しかし
「鼻の下伸びてるわよっ!?」
そう言われ、俺はとっさに鼻元を抑えてしまった…
「・・・・・・・・・ふふーん・・・やっぱり・・・・」
「・・・・・・」
マリーの策略にはまってしまったようだ。
「ちっ、ちがっ、これはだなっ」
「えっち」
「ぐはっ?!」
「ドスケベ。変態! ド変態!! 超変態っっっ!!!」
マリーは目をぎゅっとつぶって、顔を紅潮させながら怒鳴った。
「ぐ、う、おおぉぉぉ・・・」
その声に耐えかねた俺は、風呂に逃げたのだった。
45981 ◆DlPgAmm21I :2007/11/19(月) 17:56:30 ID:x6AzLHfs
#とりあえずこんだけ…
#え、エロ漫画的展開いってもイイデスカッ!?
#断られてもやるけども…
#ただ、プロットから脱線している状態だから、早めに軌道修正したいのも本音
#ああああ
460名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 01:07:08 ID:gasoTMbp
>>459
GJ! マリーたんが顔真っ赤にして叫ぶ様が目に浮かぶんだぜw
エロ漫画的展開wktk

無理せずじっくり書いてくれていいんだぜ。 待ってるからさw
461名無しさん@ピンキー:2007/11/20(火) 01:13:17 ID:mcY+Kq8M
なんかもう漫画化したいよ総武の休日
462総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/11/20(火) 22:27:35 ID:znx5XLdo
…その頃、マリーが入水自殺未遂した現場付近では…
「はい…はい… いえ、海岸の辺りで電波が途切れてまして… はい、申し訳ございません」
黒服の男が携帯電話に向かって謝っている。
「ええ、お嬢様の痕跡は見当たりません。先ほど発見した乗用車も見つけられません。はい、それはもう…」
夜で雨が降っており、且つ傘をさしているにも関わらず、額をぬぐい相手にしきりに謝っている。
電話口から、すごい地響きを伴う怒号が辺りに響く。すごい音量なのがわかる。
「はっ!! 全力で探します。明日の昼か朝にはまたご連絡いたします。はい、はいっ!」
電話が切れたようだ。
「っはー… 御大もカンカンだな… はやく真理お嬢様を発見しないと、俺の命に関わる…」
雨は次第にひどくなっていった。
「朝には止むと言っていたが… 本当なのか?」
黒服のつぶやきか心を表すかのような荒天で、夜は更けていく…


−ガチャッ!
「うわっ?! わわわわ、マリー!!! ドアあけるなっ!!!」
俺は黒服がそこまできていることには気がつかず、今そこ(浴槽)にある危機に直面していた。
「う、ううう、うるさいうるさいうるさい! ばかヘーは私の裸見たんだから、
 わ、わわ、私にも見せなさいっっっ!! ふ、ふふふ不公平よっ!!」
いきなりマリーがトイレ兼浴室に入ってきた。
「あれは不可抗力…「違うわっ!」」
完全否定する彼女。顔を真っ赤にしながら言ってきた。
「だ、だからってだなぁ! 大人の裸を堂々と見にくるなっ!」
俺は見られるギリギリ前に、シャワー用の浴槽カーテンを遮蔽物にして、マリーに下半身を見せないように努力する。
「いいからみーせーなーさーいーーー!!」
カーテンに手をかけるマリー。
「こらっ! 離せっ! マジでやめっ!!」
必死に抵抗する俺。しかしマリーも目が据わってる。引く気がないらしい。
(ってか、女の子がすることじゃねぇ! あまりの出来事に見境なくなったのか?!
いや、見境じゃなくてなんだ?!)
考え込んでると、マリーがバランスを崩したのか倒れこんできた。
「「あ」」

#ここまで。
463名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 02:02:32 ID:wbG5eZ3W
>>462
ちょww そこで終わりとかw 引っ張りすぎだろwww

…まぁ待ってるけど
464名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 05:05:22 ID:VX7kviZt
これは次の次の次あたりに、ムフフな展開を期待していいわけですなwww
465名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 20:29:38 ID:TGLmxaKt
いいね。凄い良いね。なんつうか超良いね!
466マリーに憧れて@ピンキー:2007/11/23(金) 03:07:33 ID:CL87sYTN
総武線に憧れて書いてみる。
でもこういうタイプの話を書くのとか、掲示板で小説書くとか初めて尽くしだよ。
でも書くもん。

まず、考古学の知識ゼロの私が、考古学の研究室に居る人を主人公に書くね。
内容は、三つ目が通るとかインディ・ジョーンズとかの考古学の皮を被ったオカルトの予定。

本当に考古学とか、あと、大学の研究室とかどんな風か全く知らない私です。
内容はオカルトだけど、デティールで変なところあったらツッコミください! 
直せないかもだけど。
467魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:09:38 ID:CL87sYTN
 彼女は、ずっと憧れだった。
 美しい人。
 その長い髪。スレンダーで高い身長。整った顔立ちに涼しげな表情。美しい声に、そして明晰な頭脳。
 その全てが、俺にとっては眩しくて、憧れてた。
 
 クールで、強くて、感情を表さないその知性的な瞳にはいつも強い意志が宿っていた。
 そして、その姿があまりにも美しかったからだろうか。俺は、いつしか彼女と同じ道を歩くことを選んでいた。
 
 まあ、同じ道を歩んだところで彼女がずっと自分より上の存在であることに変りは無かったんだけれども。
 でも、それでも良かった。
 ただ、同じ道を歩けるだけで。

 だからずっと思っていたことがある。
 もしも、自分が彼女の為に何らかの役に立つ事が出来る日が来るのなら、その時は自分の全身全霊を持ってこの身を彼女に捧げ

ようと。
 この身を以ってして、その美しい人が歩む黄金の道の、そのための一つの礎にしようと。
 そう、誰に口にするでもなく、ただ独り、誓いを持っていた。

 何時だって、どんな時だって、彼女の為になるのならば、この命さえ惜しく無い。そう思っていた。

 ただ、まあ、一つ誤算だったのは、結構あっさりとその誓いを果たすべき機会がが来てしまったことなんだけれど。


468魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:10:44 ID:CL87sYTN

「明良ーっ、資料の整理終わった?」
「いや、後ちょっと」
「そうか、それじゃあ俺は帰るからな」
「うぃーっす。山田お疲れー」

 そうして研究室を出て行く山田を見送る。
 この東明城大学の考古学科研究室には佐々木明良(ささきあきよし)俺1人になった訳だ。
 時刻は午後十時を回っているし、まあ、皆帰って当然か。俺も帰りたいのだが……。
 だが今日はまだ帰れない。今度の学会でうちの研究室の主任の絢華さん使う資料に矛盾点や問題が無いかの裏調べの作業が残っ

ているんだから。
 まあ、とは言ってもあと2時間もあれば帰れるだろうし、大した量じゃない。
 はぁ、二時間……。帰りは0時過ぎるわけか。目薬さそ。

 そうして手元の資料とネットに繋がりっ放しのパソコンから目を離して目薬をさす。ふーっ、疲れたー。癒されるー。
 と、すぐ近くでコトリと言う音がした。
 ふと音のほうを見ると、何故か資料の隣に丁度欲しいと思っていたコーヒーが置いてある。

「な、突然目の前にコーヒーが。み、ミラクル!」
「君は何を馬鹿なことを言ってるのよ」
「あ、絢華さん!」

 そう、振り返るとそこには綺麗なお姉さんがいた。
469魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:11:53 ID:CL87sYTN

 まあ、アホな事を言っていても始まらない。そう、この人こそ俺がこの道へ進むキッカケとなった憧れの人。
 上園絢華(うえぞのあやか)さんだ。

 そのすらりとした高い身長と整った顔立ち、
 そしてその優秀な頭脳と行動力から考古学界では若手のホープとして齢25にして既に注目を集め始めている。
 そしてついた二つ名が「東明城の女インディ・ジョーンズ」
 女なんだからトゥームレイダーのララ・クラフトで良いような気もするんだけどなぁ。
 まぁ、そんな絢華さんが居るからと言う理由だけでこの大学を目指した物の、
 入試の時ですらギリギリの成績だった俺とは住む世界が違う、そんな人だ。

 涼しげな瞳と、美しい長い髪を後ろに結んだその美しい姿から男女共に憧れる人の多い絢華さん。 
 美人で超優秀。当然チョーモテる。
 モテるのだがその強い意志を秘めた瞳で片っ端から振っていくところから、
「東明城の浮沈艦」ともレズともアイアンメイデンとも噂されてる、そんな人だ。
 まあ、そんなふうに身持ちの硬いところも憧れていた訳なんだけど。

「で、どう。資料の方の確認は終わった?」
「いえ、あと2時間もあれば終わりますけど。でも、今のところ特に問題も誤字脱字も無いですけど」
「そう。それなら良いけど。あんまり根を詰めすぎないでよ?」
「はは、大丈夫ですって。あ、コーヒー、ありがとうございます」
「うん。ああ、いいのよ。あ、それよりね、明良君。今週の日曜日、空いてる?」
「日曜日ですか? 空いてますけどどうかしたんですか?」
「ああ、それは良かったわ。実は付き合ってもらいたい場所があるんだけど」
「付き合ってもらいたいって……も、ももも勿論空いてますっ! でも、それで、それって……」

 まさか、デートのお誘いって奴?

470魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:13:18 ID:CL87sYTN
「はぁ〜、いい天気。晴れてよかったわぁ。あ、ほらっ、明良君、目的地までまだあるんだからモタモタしないの!」
「うぃ〜っす」

 このクソ熱い夏の日に東明城山の登山道を長い後ろ髪を束ねて、
 長袖のTシャツと長ズボンと言う探検ルックで身を包んだ絢華さんがかなりのハイペースで歩いていく。
 そしてその後を必死で装備や資料を持って追いかける俺。
 うん、まあこんなことだとは思って居たさ。デートとか、夢見すぎだよなぁ俺。

 まあ、今回の用事は、言ってしまえばよく解からない建造物があると言うタレコミを地元の猟師の人からもらったので、
 それの調査と言う名目のフィールドワークだ。
 自然が豊かに残っていて、完全に文明の手が入り込んではいない東明城の山奥の方では今でもよく解からない遺跡モドキが見つかったりして、
 そのたびに大学のほうに調査依頼が来るのだ。
 まあ正確に言えば、調査依頼を出すように頼んでいるのはむしろ大学の方で、
 それが研究資料としての価値を持つ可能性がある場合があるので通報するように大学から懇願しているのだが。
 しかし、実際には見つかっても良くて遺跡モドキ。
 普段はせいぜいただの穴や防空壕や廃墟などの物が多くて考古学的価値を持ったものが見つかることは稀なのだけど。
 ただまあ、どんな些細な情報でも調査する事。
 調査しないところに発見は無いというのが信条の綾香さんはいつも助手を伴って調査に出かけている。
 あ、そう言えば今回は助手の人たちはどうしたんだろうか……。

「ねぇ、絢華さん。助手の方々はどうしたんですか? ほら、武田さんや片山さんたち」

 ちなみに助手は何故か全員が女性である。まあそこからレズと言う噂が出てきたわけだが。
 俺も絢華さんの助手になるのが夢なのだが、正直今まで一人も男性では登用されていないので諦めつつある。

「ん、あぁ、彼女たちは今休暇中で温泉に行ってるのよ。
 まあゆっくり遊んでらっしゃいと言っちゃった手前呼び戻す訳にも行かないしね、そこで君に助手代理を頼んだわけ」
「はぁ、そうですか。それは光栄です」
「ふふふっ、なに言っちゃてるのよ。もう君とは十年以上の付き合いじゃない。いい加減敬語じゃなくてもいいのよ?」
「いいえ、立場的にもそう言うわけには行きませんし」

 それに、俺は、十年以上前、俺が小学生で彼女がまだ中学生だった始めて出会った時。
 うちの家族が彼女の家の隣に越してきて、そして彼女の家に挨拶に行った、その初めて会った瞬間から。
 その時からずっと憧れていた相手だったのだから。
 コレが恋と言う感情なのか愛と言う感情なのか知らない。
 だが、この十年、俺は彼女以外の女性を女として見ていたことは無かった。
 だから、どんな立場でも、そばに居たかった。
 たとえ、俺自身が彼女に男として見られて居なくても。
471魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:14:56 ID:CL87sYTN

「あ、そろそろね。この地蔵のあたりで登山道から山の中に北北西の方向へ入って100m先にあるそうよ」
「そうですか」

 そうして登山道から山の中へ入っていく。
 獣道を物ともしないで行く絢華さんを見ながらふと思う。やはり、この人は綺麗だ。
 それは勿論容姿的な事だけではなく、いや、容姿もその綺麗な顔と涼しげな瞳、
 スラリとしたモデル体型に、考古学をするには不向きであろう長く伸ばして後ろで束ねた黒髪。全てが美しいのだけど。
 そうではなくて、その真摯に考古学を志すその姿。そして、その意志を通すだけの知識と解釈力と行動力と度量。
 全てが、俺にとっては眩しい。だからだろうか。ふと思ってしまう。
 俺は、いつまでこの美しい人の近くに居る事ができるのだろうかと。

「着いたわ。ここね」

 そんな、絢華さんの声でふと現実に引き戻される。
 着いた場所にある遺跡と言うのは。斜面に穴が空いているだけのお粗末な物だった。

「あの、コレはまた防空壕ってオチじゃ無いですか?」
「うーん、そうかも。正直望み薄ね、でも大学で私たちが作ったこの山の地図には、ここに防空壕があったって言う印は無い。
見落としかもしれないけどそうだったとしても地図に書き加える事ができるし。取りあえず調査しましょう」
「はい」

 そうして、俺たちは穴に入っていった。
472魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:15:45 ID:CL87sYTN

 蛍光灯タイプのランタンで中を照らして調査する。あまり広くない空間だったが、特に珍しい物は無い。
 
「どうですか?」
「う……ん、そうね。何か妙な感じはするけど、普通の防空壕のような感じね。少し調べてみましょ」
 そう言って軍手をして壁を擦ったりしている絢華さん。
 俺も軍手をして、色々と調べてみる。が、特におかしな所は無いようだ。

「どうですか? 特に何も無いですけど」
「そうね……って、ちょっと待って!」

 突然大声を上げる絢華さん。

「ちょっときて、ここを見て」
「なんですか……ってなっ、コレはっ!」

 土一面の壁のそのある角。土のえぐれたその奥が石の壁にになっている。
 それだけなら奥に大きな岩でも埋まってるのかとか説明も出来るのだが、
 問題はそれがただの岩ではなく、規則正し石作りの壁、むしろ精緻な石垣のようにになっていると言うことだ。

「なんなんですかコレは!」
「ええ、ちょっと気になって壁の土を軽く手で掘ってみたの。そしたら硬い物にぶつかって。
何かと思ってそこを中心に回りも掘り続けたんだけどまさかこんな物が出てくるなんて」
「そうですね、コレは……」
「ええ、にわか作りの防空壕とは訳が違う。れっきとした遺跡ね、って、あれ……?」

 そうして絢華さんは話しながらも掘っていた手を止めて足元を見る。
 そうしてそのままその場所で軽くトントンと足踏みをする。

「う〜ん、変ね」
「何がですか?」
「いや、ちょっとね、ここだけ妙に足場が柔らかいって言うか……なんか足踏みすると妙に響くのよね。空洞の上に立っているよ

うな感じって言うか」
「はぁ、どんな感じですか?」
「う……ん。ちょっと見てくれる?」
「はい」

 そうして、絢華さんが立っていた場所から離れたので、その「変な場所」へと歩いてみる。
 と、その場所へと踏み出したその瞬間……!

「へっ! へぅうわああああああっ!!」

 ズボリと踏み出した地面に穴が空き、大きくバランスを崩した俺はその穴へと吸い込まれるように墜ちて行ったのだった。
 
473魔窟の伝説:2007/11/23(金) 03:17:49 ID:CL87sYTN

「クッ、うううううぅぅぅぅぅっ!」
「へ? あ、絢華さん!?」

 そう、その穴へと墜ちたはず……だったのだがその一歩手前で俺を引き止めている人が居た。

「ま、間に合ってよかった……」
「間に合ってって、あ、ああ、絢華さんが掴んでくれて……」

 そう。絢華さんは穴に墜ちる瞬間の俺の右手を、驚異的な反射神経で掴んでくれていたのだ。

「ええ、引き上げるわよ。少し待ってて……って、クッ!」 
 
 と、そうは言ったものの、ただでさえ重いうえに装備と資料を持った男の俺を、女の絢華さんの細腕で持ち上げれるとは思えな

い。
 だがそんなことは構わずに離すまいと必死で俺の手を掴む絢華さん。だが、見上げるその顔には脂汗が浮かんでいる。
 
「んっ、んんんんんっ!」
「む、無理ですよ絢華さん。冷静に考えたら持ち上げれるわけ無いです!」
「でもっ、ここで諦める訳にはいかないでしょっ!」
「そうですけど……」

 だが、そう言っている傍から俺だけではなく、俺を持つ絢華さんまで少しずつ穴に引き込まれていく。

「んっ、んんんんんっ! 手が、手が滑るわ、明良君、軍手取れないっ!?」
「無理言わんでください! やっぱり無理ですって、うっ、くっ、このままだと絢華さんも落ちますっ」
「でも、諦めるわけには行かないって言ってるでしょ!」
「そうですけど、二人とも落ちたら元も子もありませんし、ここはいったん俺を落として絢華さんが救援を呼んだほうが」
「くっ、馬鹿なこと言うんじゃないわよっ! そもそも深さがどれだけある穴なのかも解からないのに!
もしも深さが10メートル以上あったら骨折じゃすまないわよ!」
「で、でも……」


 そう言っているそばからズリズリと絢華さんと俺は穴の中へと滑っていく。

「もう無理ですっ、離して下さい!」
「駄目よっ、私がこんなところで君を諦める事ができるわけ……って、きゃああああああああぁぁぁぁっ!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 そう、そこまでが限界だった。
 結局、俺と絢華さんは仲良く底の知れぬ暗い穴へと落ちて行ったのだった。


♯今回はここまで。何箇所か改行ミスってすみません。次回から二人きりです。
474名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 04:32:04 ID:xXknPnSm
>>473
考古学ものを考えていた俺からすればしてやられた感じ
しかも同じようなネタだしw
まあとにかくがんばってくれい。2回くらいの音読でなかなかいい校正にはなる

あと、一応考古学をやってる者なんで、踏査の際に持つべきものを少々
・地図…住宅地図が理想
・方位磁石…地図とセットで揃えたいところ
・携帯電話…まあ、誰でも持ってるよね。最近はGPS機能付きのがあるから、それを使うのもあり
・野帳…その場所の特徴や、地層の変化などをメモするための帳面
・カメラ…うちの研究室ではデジカメが3台ある。やっぱり画像が無いとイメージしにくいし
・帽子…考古学だけでなく、あらゆる踏査・フィールドワークには必要不可欠なアイテム。頭を守るのは重要な事なのです
・巻尺…最低5メートルのものは欲しいところ
・シャベル…土を掘るために1人1つ持つべき。地質を調べるときとか、何か土に半分埋まってる気になったものを拾うためにも便利
・刷毛…黒板用の箒でも代用できる。拾った、もしくは発掘した遺物から土を払うために使う。手で払ったら、例えばアスファルトが異物に付着していた場合ぽろっととってしまう事がある
・竹串…異物に出来るだけ傷をつけないように採集するために道具。これで遺物周辺の土を払いのける
・タオル…土を掘ると、土中の蒸気で顔がとんでもなく汗だくになるので、必要。そうじゃなくても踏査には必要不可欠。特に夏場
・懐中電灯…作中のように防空壕や廃墟などの歴史時代の遺構や建造物を見て回るためには必要なもの。予備の電池も忘れずに
・蝋燭…非常用の明かり。ガスランプもアリ
・軍手…作中にあるから特に取り上げる事も無いかなとは思ったけど一応。二重にすると手が比較的汚れない
・食料…昼飯は持っていったほうが無難。飲み物も、水筒とかで持って行きましょう
・救難用具…万が一のため、応急セットとホッカイロは持ったらいいと思う。あとは熊よけの笛。
・鉈…もしくは十得ナイフ。この手の刃物は持っていけば重宝する

こんなもんかな。服装は、
・長袖…基本中の基本。こういう踏査をやるときは、蜂とか虻に注意。あと枝とかも実は危険
・長靴…登山用の靴でもいいけど、汚れる事を考えると長靴の方がいい。土を掘るなら地下足袋がおススメ
・チノパン…踏査の際、ジーンズはご法度。動きやすく軽いチノパンは作業着としても優秀
要は、ゲームセンターCXの有野課長withoutネクタイみたいなのがいいかも

あと、これは必ずしも必要というわけではないけど、測量用の道具はあって損は無いと思う。
ただ、実際に発掘をやるときくらいしか使う機会も無いと思うから、持たなきゃ別に持たなくてもいい
長々ととすまんかった
475名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:30:43 ID:q2sP22ok
>>474
>・地図…住宅地図が理想

日本の話ですね。

町中だけで、山の中とか人が行かないところは当てにならないけどいいのかなぁ。
全国カバーしている五万分の一をミウラ折りで持ち歩くのかと思ってた。
476名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 10:36:55 ID:lY/s7Hrq
wktk-

俺ミステリもの好きだなー
477魔窟の伝説書いてる人:2007/11/23(金) 13:27:00 ID:TNEf1Hdl
>>474
凄い役に立って現実的なアドバイスありがとうございます。
何個かの物は想定していたんですが、竹串とか剛毛とかタオルとかカメラとかはうっかりしてました。
でもいいですよね考古学って。
音楽屋なんで引きこもってしか研究しないから憧れちゃいます。
でも私のは考古学の皮を被ったオカルトだから、専門的な考古学の二人きり小説、読みたいなー
478476:2007/11/23(金) 14:26:54 ID:lY/s7Hrq
音ゲ厨なんで>>477さんの音楽が聴いてみたかったり〜
47981 ◆DlPgAmm21I :2007/11/23(金) 15:29:13 ID:6oxCmL0g
>477 >478
初音ミクであそんでたりハードMIDIであそんだりしてるので興味あったり。
480名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 15:31:06 ID:6oxCmL0g
名前消し忘れたああああorz
ごめんなさい
481名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 16:22:35 ID:Qqt1ewUB
>>477
>竹串とか剛毛とかタオルとかカメラとかは
剛毛てお前ww
482neu ◆yKZvp5gS1A :2007/11/23(金) 16:25:30 ID:lY/s7Hrq
ありますよね。パソだと。。
いろんなスレにこの名前があったかとorz

普段はケータイで投下してるのでいいんですが。
483名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 20:15:32 ID:XDokHU5K
似た畑で古生物やってるもんですけど、ちょっと補足。
最近の考古学は他の分野との連携も結構進んでるんで、そっちの方の知識やアイテムいくつか持ってても良いかと。
堆積学とかクリノメーターとか。
ウィキペディア使えば何とかなるかもしれませんが。
流石に人類化石どうのこうのの話にはなりそうにないのでそんなに深くなくても大丈夫だとは思います。
新聞紙とかビニール袋とかの採集物を保護するものもあったほうが良いかと。
蛍光塗料つきの時計なんかも便利です。
時期が時期ならカイロなんかも凄いありがたいことに。結構冷えるもんですよ、フィールドは。ライターもあればいいですね。
後、洞窟の内部は酸素の有無も考えなくちゃいけないので、ボンベがあってもいいと思います。
冒険小説なんかでは蝋燭を入れて内部の酸素の有無を調べたりする描写は結構ありますよね。
484剛毛な魔窟の人:2007/11/26(月) 02:19:38 ID:TSGHVqDs
ふおっ、48時間耐久アルコール摂取の限界に挑戦している間に、何か色々剛毛ことになってる。
音楽については、私はがクラシックな男でして。皆さんのご期待に添えないと思います。
コンシューマーゲームとかの音楽創ってる友人は居たんですけど、お亡くなりになってしまいましたし。

いや、まあ、本題に戻りましょう。
本格的にアドバイスありがとうございます。
凄く参考になりますし嬉しいんですけど、ちょっとご期待に添えないかもって申し訳ない気分になります。

ホントファンタジーっつうか適当な話なんで、考古学とか知らないし。
すべて、映画と漫画と世界不思議発見となんでも鑑定団から得た知識で書いてます。
本当に詳しい人から見るとアレだと思います。
ちなみにタイトルは、インディ・ジョーンズの魔宮の伝説が大好きなんで、それを捩っただけです。
実際それほど魔窟でも無いです。すみません。
じゃあ、貼りますね。
485魔窟の伝説:2007/11/26(月) 02:20:46 ID:TSGHVqDs

 夢を、夢を見ている。

 今ではもう潰れてしまった駄菓子屋で買った60円のアイスを舐めながら、俺は小学校から帰っていた。
 ああ、そうだったんだよな。俺は毎日買い食いするような悪ガキでさ、
 よく高校帰りのセーラー服を着た絢華さんにはたしなめられたりしたんだよな。
 でもそれだけでも、例え注意されるだけの事しか起きなくても、絢華さんと話せるだけでも幸せだった。

 そう、そう言えばこの日も絢華さんにあった日だったよな。
 アイスを舐めながらり家の前まで来たとき俺の目に留まったのは、
 向かいの豪邸、ああ、絢華さんの自宅のことなんだけど、そこから出てくる私服を着た絢華さんだったんだ。
 いつもなら会えば声を掛けてくれる絢華さんが、俺のことも目に留まらないほどに俯いて、そして暗い表情で歩いていた。
 当時の俺は単純なバカだったけど、それでもそれが簡単に話しかけて良い状態じゃないことはわかった。
 だけど、気になるものはなっったんだ。だから、その時の、夢の中の俺は……。

 そのまま絢華さんをストーキングしていた。

 絢華さんはまるで魂が抜けたかのようにフラフラと歩いていた。
 そしてそのままフラフラと商店街や住宅地を抜けて、そして東明城山(ひがしあけしろやま)の散歩用の遊歩道を登り、
 そして街が一望できる展望台まで来ていた。

 そして、そこに生えた木に寄りかかり、ボーっとした表情で街を見下ろしていた。
 その絢華さんが余りに寂しそうで、そのままだとどこかへ消えてしまいそうで、気づいた時に俺は……。

「絢華お姉ちゃん!」

 声を掛けていた。
486魔窟の伝説:2007/11/26(月) 02:22:05 ID:TSGHVqDs
「あきよし……くん?」
「うん、そうだよ!」

 木によっかかったままの絢華さんに不審がられない様に、そして少しでも絢華さんに元気を出して欲しくて出来るだけ明るい声で話す俺。

「どうして……ここに?」
「いや、それは……あの、その、な、なんとなくだよ!」
「なんとなく?」
「うんっ! だってさ……」

 そう言い切って、絢華さんの隣まで来る。

「だってほら、ここからの眺めって良いよね。僕大好き! これを見るためならここまでの上り坂なんて何の苦にもならによ!」

 まあ、眺めが好きなのは本当だった。
 と、そんな俺を見て、絢華さんは寂しげに微笑んだ。

「そうね。ここからの眺めは……本当に素敵よね」
「うん!」

 そうして二人で街を見る。夕方が近く、少し西日が目に痛い。

「ここって、この街で一番夕日が綺麗に見える所なのよね。いつ来ても誰も居ないから私だけしか気づいていないと思っていたんだけど……」
「あ……そうなんだ。ごめん」
「うふふ、何で謝るの? ほら、もうすぐ夕暮れよ、一緒に見ましょ」
「うん!」

 そうして待ちに待ったその時を迎える。

 するすると幕を下ろすように夕陽が落ちて行く。
 これが、終日を表す証明。まるでもう今日のお芝居は終わりだとでも言うように落ちていく夕日。
 そうしてその最高に美しい一瞬が来る。
 稜線へ消えて行く夕陽に美しく照らし出される自分の住んでいるこの街。
487魔窟の伝説:2007/11/26(月) 02:22:36 ID:TSGHVqDs
「私ね」

 突然絢華さんが口を開いた。

「うん?」
「私ね、私っ、この景色が何よりも好きなの。本当に……何よりも」
「そうなんだ」
「うん……。確かに、圧倒的な自然の絶景も好きだけど、私は人を近くに感じさせてくれるこの風景が最も好き。
 ほら、見て。夕日に照らされたビルの隙間。大きく伸びる影と、その影でも動き続ける人々の営みがわかるでしょ。
 そして、遠くに見える夕日を受けて黄金色に輝く海。
 人間も、生活も、すべて自然の一部。そんな営みを魅せてくれるこの最高に美しい一瞬が何よりも好きなの……」

 ふと、その声が僅かに涙声に思えて絢華さんの顔を見上げる。
 でも、夕日に照らされた絢華さんの顔は何かを耐えるような顔でありながらも、涙は流していなかった。

 そうして夕映えに照らされていた街は影の底に沈み、残るは薄明の時間になった。

 薄明とは夕陽が沈んだ後の約三十分間、完全に暗くなるまでの時間。
 そうして家の灯りがひとつ、またひとつと点いていき真っ暗になる頃には、一面星の海のような人のぬくもりが光っている。

「ねぇ、綺麗よね。本当に。
空にはまだ一番星が光り始めたくらいだけど、街には人の生活の光が、星のように輝いていて……」
「うん」

 それは、本当に綺麗だった。
 絢華さんにはああ言ったけど、本当はこの展望台に来たことは数えるほどにしかない。
 でも、それがもったいなく思えるほどに、その人の温もりを持った星の海は美しかった。

「本当に……綺麗」
「うん」
「だから……だから好きなの……」
「う……ん?」

 ふと気づく。絢華さんの声が、完全な涙声になっていることに。
 そして、絢華さんの顔を確認しようと顔を上げたした瞬間。

「だから……だからっ、離れたくないよっ!」

 そう、確認する隙も無く、絢華さんに抱きしめられていた。
488魔窟の伝説:2007/11/26(月) 02:23:09 ID:TSGHVqDs
「あ、ああああ絢華お姉ちゃんっ!?」
「嫌だよぉ……この街から離れたく無いよぉ……」
「ちょっ、ちょっと落ち着いてお姉ちゃん!」

 俺は完全にてんぱって居た。良い匂いだとか柔らかいとか全て超越してただただてんぱってた。
 何しろ、絶賛片思い中の高嶺の花が突然抱きついてきて泣いているのだから。

 だが、そんな片思い小学生の思惑にも構わず絢華さんは抱きついたままポツリポツリと話し始める。

「私ね、この街を離れなくちゃいけないかもしれないの」
「こっ、この街をっ! 何でさっ!?」
「今日お父さんに言われたの。私来年大学受験なんだけどね……成績が良いから、この街には私の行く価値のある大学は無いって。
お父さんのツテで海外に優秀な大学があるから、そこの理工学部に行きなさいって……」
「かっ、海外ぃ?」
「うん……」
「でも、お姉ちゃんが嫌なら……」
「ううん、ダメだって。どうしてもこの街に残りたいのならちゃんとした理由が無きゃ認めないって……」
「理由って……お姉ちゃんこの街が好きなんでしょ?」
「うん、大好き……生まれ育ったこの街が、この街のみんなが、そしてこの街での生活が何よりも大好き」

 この街のみんな、それは自分も含まれるのだろうかなどとアホな事を考えながらも俺は話を続ける。

「ならそれが十分理由になるじゃんかさ。お父さんにそれを話せば……」
「話したわ。でも、ダメだったの。この街で、この街でなくちゃ学べないことがあるのなら兎も角、
そうじゃないなら世界を広げるためにも、必ず海外に行けって」
「なんでそんな……」
「私を思って言ってくれてるのは解かるの。でも、きっとお父さんは私と同じ道を辿って欲しいんだと思う」
「同じ道?」
「お父さんも若いうちから海外に出て見聞を広めて、そしてあれだけの財を築いた人だから……
私にも若いうちに色々な経験をさせたいんだと思うの」
「そうなんだ。そこまで考えてくれてるんなら……」

 仕方ないかもね、と言いかけて、ある一つの考えが頭をよぎり止まる。
 自分は片思いの人に、そんな普通の言葉しかかける事ができないのかと。
 きっと、何らかのアドヴァイスをしたほうがこの人の為になることが出来るだろうと。
 それは、恋を巧く進めたい小学生なりの知恵でもあり、そして、持っていた誓いでもあった。
489魔窟の伝説:2007/11/26(月) 02:24:55 ID:TSGHVqDs
「ねぇ、逆に考えればこの街でしか学べない事があればいいんでしょ?」
「ん?」

 気づけばそんなことを口走っている。
 膝まづいたままの体勢で俺を抱きしめていた絢華さんが俺のほうを見る。
 その綺麗な顔が涙に濡れていたのを見て、使命感に駆られ自分なりに思いついたことを話す。

「ならさ、この街を、東明城について調べるような分野に行けばいいじゃん」
「どういう、こと?」
「あのさ、社会の先生が行ってんだけどね、この山、東明城山」

 そう言って、そのまま後ろを振り向く。
 既に日が暮れた山は、真っ黒く、そして相変わらずも大きく聳え立っている。

「何でも三十年位前に遺跡が見つったんだって」
「ああ、白鳥断部残(しらとりだんべざん)古墳の事ね。一応街の名所旧跡の一つの」
「うん。それのこと。でね、この山の奥地にはまだ人の手の入ってないような場所もあるから
他にもそう言うものが見つかる可能性はゼロじゃないんだって」
「それは、そうだけど……」
「だからさ、そう言う遺跡の見つかって無いものを探したり、今在るこの町の遺跡についての勉強をすればいいんじゃないの?」

 それは、本当に小学生の浅知恵だった。
 何しろ受験まであと一年の時期に、今までの方向性とは全く違う勉強をして、新しい遺跡を発掘したり、
 または新たに勉強を始めてそれに順ずるような部門へと進めとか言っているのだから。
 いくら優秀とは言え、一介の女子高生が方向転換するには遅すぎる、茨の道だ。
 だから、そのまま罵倒されても、笑い飛ばされてもおかしく無い話だった。
 だが……。

「それも……そうね」
「へ?」
「なんで、何で気づかなかったんだろう……」
「絢華……お姉ちゃん?」
「私、吹っ切れるかも……ううん、考えてる暇は無いわ。吹っ切るのよ」

 そう言うと、抱きついていた絢華さんは離れ、スックと立ち上がった。
 温もりが離れていくのが少し寂しい

「あの、絢華……おねえ」
「ありがとう。明良君のお陰で自分の進む道がわかったわ。小学生に道しるべを立てられるとは思ってなかったけど……
ううん、それだけ君の発想が柔軟で私が未熟だったって事ね」
「な、何が?」
「私、頑張ってみるわね。あぁ、もう余り時間が無い。じゃあ、私は帰るわ。少しでも沢山勉強しないと」
「へ? あの、あや」
「じゃあ、またね。本当に……ありがとう!」

 そのまま振り返ることなく真っ暗な遊歩道を走っていく絢華さん。と、蝉の大合唱に囲まれたまま取り残される俺。

 後に東明城大学歴史学科に入学し、白鳥断部残古墳についての画期的な見地の論文発表や東明城山に眠る未知の遺跡の発見などで、
 上園絢華の名が考古学界中に知れ渡る事になる、そのホンの数年前の、ある暑い夏の日の話である。
490魔窟の伝説の人:2007/11/26(月) 02:28:54 ID:TSGHVqDs
#今回はここまでです。我ながら長すぎる回想シーンに……。反省はしてます。
#次回こそ、次回からこそ本当に二人っきりになります。

#でも、掲示板上で小説って難しいですね。改行の感じもいつもと違う風になりますし。
#あと、ストーリーじゃなくてシュチュエーション重視って言うのも難しいです。面白いですけどね。
#しかし今更になって今まで書かれていた方々の苦労を知ることになるとは……。
#精進していくので、今後も目を通して貰えたなら嬉しいです。
491名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 07:41:25 ID:ugY9t98f
回想シーンはいいと思いますよ
次回もwktk−
492名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 14:14:58 ID:ugY9t98f
保管庫更新してたのですが、間違って「自殺者」の作品ページのタイトルに未完と入れてしまった。
新しいのを作ったけど、古い方の削除をログインしている方、してくれないだろうか?
493名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 01:18:13 ID:G2gya/9Q
圧縮回避保守
494A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/11/29(木) 02:30:56 ID:aEF47F/+
おひさしぶりです。結局完結しなかったしorz
A/B。>>261の続き。

  *  *  *

「山小屋があってよかったな」
 アズマは急作りの寝台に寝転がった。乙部山の中腹にある山小屋で、2人は休んでいる。入り口の前には、雨に晒されている状態でビーコンが置かれている。傘は無かった。
 道中、彼らは自分たちの上着を先程までいた神社に置いたままだったという事を思い出していた。しかし時既に遅し、それらを回収する事も無く、彼らは進んだ。
「あるだけ、だけどな。ストーヴはあるか?」
 ザパドノポリェワはため息混じりに身を縮込める。
 辺りは暗い。風を伴う雨は、その暗さと相俟って2人の体温を奪っていった。救命保温具は確かに保温に一役買っているが、しかしそれも極めて局所的なものだ。
「ねえよ。っていうか、ここで火なんて使ってみろ。あっという間に丸焼き人間が2体出来上がる」
「……やめてくれ」
「そうだな。気が滅入るだけだ」
 不意に、アズマが震える。
「うう、耐水耐寒服なのに寒いってのは、詐欺だな」
「あるだけマシだ。私のフライト・スーツは耐水性が無いから、雨が染み込んで重い」
 ザパドノポリェワのフライト・スーツは、既にバケツで水を被ったといっても信じられるほどに濡れていた。気化熱が体温を奪う。
「そいつは……、体力を必要以上に奪う代物だな。寒いか?」
「大丈夫だ。耐えられる」
「もう少し自分の体を労われよ?」
「私を何処の出身だと思ってるんだ」
「知らんね」
「ヤクーツクだ。年間通してここより寒い」
「だからって、そのまま、ってわけにもいかねえだろ」
 アズマは濡れ細っているシャツを脱ぎ、それを絞った。まるで濡れ雑巾のように水が出る。
「私についていろいろ言うお前は、そもそも平気なのか?」
「俺は少なくとも負傷者のあんたより健康なつもりだよ。寒いけど」
「そうか。まあ、何でもいいがとりあえず服を着ろ。仮にも私は女だぞ」
「絞りきってからな」
 部分部分を絞ってくしゃくしゃになったシャツを広げ、アズマはそれを着る。
「後悔先に立たずだな。より気化しやすくなって、結構寒いわ」
 言って、レスキュー・シートに包まる。
「相変わらず後先考えない奴だな。ほれ、保温具だ」
 ザパドノポリェワは保温具をアズマに投げる。
「やっべ、生き返るわ。でもこれ無いと、お前が寒いんじゃね?」
「私の耐寒性を嘗めるな」
「その割に腕摩りまくりだな」
 アズマはレスキュー・シートの前部分を広げる。
「お前、ここに入るか?」
「なっ……! アホな事訊くな! 私のもある!」
 言って、ザパドノポリェワは自らの鞄をあさりにかかる。
495A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/11/29(木) 02:32:22 ID:aEF47F/+
「……無い……」
「あん?」
「私のシートが、無い」
 その顔は、絶望に満ち満ちていた。それはそうだ。何も無い中で、夜間の平均気温が10度を切るような場所で寝ろというのだ。最悪凍死、よくて凍傷か。
「……お前、向こうで自分の入れたよな?」
「そのはずだが……、待て、記憶に無い……?」
 彼女は腕を上下させて、その時の事を思い出そうとする。そしてある点で止まった。
「入れてないかもしれない」
「……おい、俺、『忘れ物無いな』って、訊いたよな」
「そうだな……」
「ま、責めても仕方ねえか。ありゃ一刻を争う事態だし、ここに無い事に変わりは無いしな」
 目に見えて、彼女は落ち込んでいた。
「ほれ、入れ。これはある意味、緊急事態だ」
「そう、か。そうだな。緊急事態だ」
 彼女は唐突に、アズマに拳銃を向けた。一瞬遅れ、アズマは自らの自動拳銃に手を触れる。発砲。暗闇の中なので、マズル・フラッシュが2人を幻惑する。
「動くな!」
 ザパドノポリェワは叫ぶ。目の前がちかちかする。これでは正確な照準など出来ないが、彼に傷を負わせる事は出来る。
 銃弾はアズマの背後の壁を貫通していた。彼は無事だ。
「毛布の取り合いで殺し合いなんてしたくないんだが……」
 アズマは言う。
「お前、俺を殺したら、その後どうするんだ?」
「決まってる。お前のシートを奪う」
「……じゃあ、何で俺を殺そうとする?」
「それは……」
「毛布が欲しいから、だと思うんだけど、なんか下らなくね? その理由」
「下らないわけあるか! 命に関わる事だろ!」
 激昂。幻惑は引いていく。
「いや、分かるんだけどさ、なんか食い物に比べて、微妙じゃん、その存在が」
「お前、私たちが遭難したら何をまず確保するのか、知らないな?」
「知らんね。お前の軍じゃ、なんて言われてるんだ?」
「体温だ。それが低ければ、次の行動を起こせなくなる。私の国の中ではな」
「そこらじゅうタイガだもんな。俺もそう教えられた。でも、こうも言われなかった? 『複数の遭難者がいれば、互いに体温を保ち合え』って」
「それは、まあそうだが」
「だろ? ちなみに俺らの場合この出撃前にこう言われたんだけどね。別に、『味方』っては言ってないし、あんたと毛布に包まる事だって選択枝のひとつだ」
「……お前に銃を向けてるんだぞ?」
「おしくら饅頭はメリットばかりじゃねえか。それを手放すのか?」
「だって男女だぞ! 他に誰もいないし、2人っきりだ! 何があるか……」
「なんだよ、俺がケダモノだって言いたいのか? 今はそんな事より、生き残る事が大事だろうが。お前が言った事だぜ?」
「う……」
 ザパドノポリェワは銃を下ろす。
「まあ、自制はするけど。お前襲うと、その次の瞬間には風穴開けられてそうだしな」
「……ご明察だな。変な事したら殺してやる」
「へいへい」
 渋々、という言葉がぴったり来るほどに彼女は表情を作り、彼の隣に座った。レスキュー・シートがかかる。彼女はそのまま、彼に寄りかかるようにして、縮こまった。
496A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/11/29(木) 02:35:31 ID:aEF47F/+
以上、4話前編

なんか小出しに終わっちまったなあ・・・
ま、例によって用語解説行きます――って、無いし

次の投下が中編でなく後編である事を願いつつ、これにて退散つかまつる
497名無しさん@ピンキー:2007/11/29(木) 03:49:58 ID:zUQ51KBB
おやまあ、これはなんともいい二人っきりですね。
オリガさんかわいいよオリガさん

私も負傷・遭難中の美人ツンデレときどきドジっ娘ロシアンエースパイロットに巡り会わないかなー
498名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 00:25:03 ID:v/p+mGzS
>>496
A/Bの続きキテターーーーーーーーーー!!! GJ! 待ってたんだぜ
あと、別に中編があってもいいんだぜ? 更に言えば5話とか6話…中略…10話とかあっても(ry
まぁ、続き待ってる。

>>497
つ[航空自衛隊入隊案内]
つ[外国人部隊入隊契約書]
499名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 00:36:00 ID:8zeI8S1U
>>497
下心丸出しだと頭に風穴開けられちまうぞw
500名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 07:11:07 ID:5MyPMl2K
>>497
つ【航空学生募集要項】
空自のサイトからどうぞ
501名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 13:40:20 ID:l0Ds+Xeu
>>498
A-88に配属決定コースだな
502名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 20:19:37 ID:THFfJbxz
風間によろしく言っといてくれ
503名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 23:54:17 ID:v/p+mGzS
>>501-502
ネタに気付いてくれてありがとうw
504名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 02:52:29 ID:zNrpJbar
>>496


GJ!
>>498も言ってるけど、中編どころか5話6話へ続いたって大丈夫です。
むしろ続いて欲s(ry
505名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 14:09:03 ID:ZfR3c2kK
エロがむずかしいorz ボキャブラリー足りなさ杉自分…
506名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 21:50:09 ID:fll2pFoz
書き手スレか誤爆スレに書こうぜ
507名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 00:22:47 ID:zFwE0tV2
>>505
上手い人のを真似てみろ。
模倣して昇華するのが俺達日本人の生きてきた道だろ?
508名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 04:06:59 ID:xIrHSG4h
509A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/12/03(月) 11:48:48 ID:70Bw32LQ
物語の終わらせ方に関してちょいアンケートしたい

1、ハッピーエンド(オリガとアズマがアズマ方の軍に救出される)
2、トゥルーエンド(互いに互いの軍に救出される。原作の終わり方)
3、バッドエンド(どっちか、もしくはどっちも死ぬ。より残酷にすることも可能)

どれがいい?
510名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 12:01:33 ID:+NUqelbl
二人で逃げるに一票
511名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 17:43:35 ID:8pLZniTw
ハッピーな1で
512名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 17:44:34 ID:qNS5jhee
ハッピーなエンディングをチョイスするぜ
513名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 19:16:32 ID:/I27L086
1でよろしく。
514名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 21:24:29 ID:mSWpXUoY
とりあえず2→また空中戦やって墜落→劇的?な再会
とか希望してみる
515名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 22:34:21 ID:70Bw32LQ
一応>>525までで一番多いのにするわ
516名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 23:12:42 ID:7jUL+9cp
2で和平の成立後に再会を希望します
517名無しさん@ピンキー:2007/12/03(月) 23:57:12 ID:xAITnHA5
>>516の案に一票
518名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 00:38:01 ID:h3l9xuh/
>>516にもう一票


1でもいいんだけど、敵対勢力の『美人ツンデレときどきドジっ娘ロシアンエースパイロット』って言ったら……色々と……ねぇ…
とりあえず、最終的に良い関係に落ち着いてくれれば、それでいい
519名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 19:48:28 ID:841+R7vI
>>516
一票
520名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 20:51:11 ID:t7FnnA+x
>>516
521名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 10:12:29 ID:p8vY5ibh
2が良いです。でも>>516のほうがもっと良いです
522名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 21:13:51 ID:Rd915yCL
敢えて流れに反逆しよう
1
523名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 23:56:27 ID:yMUOTa20
あえて3
524名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 00:10:00 ID:9skTEj6L
2
525名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 04:28:15 ID:bXxnRr+m
2が妥当かな
そして>>516の人気に嫉妬wwww
526A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/12/07(金) 07:14:10 ID:sC+Ho14B
けっかはっぴょー

1、ハッピーエンド…5票
2、トゥルーエンド…9票
3、バッドエンド…1票

つーことで、2の「互いの軍に救出される」に決定と相成りました
そして>>516の人気に俺も嫉妬。反映させていただきます

では、回答者各位のご協力に感謝しつつ、なるたけ早めにでかすよう精進します
527名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 14:22:12 ID:wIt9aIKi
>>526
答えが出る前に3パターン全部用意しておけばよかったんじゃないか?
528名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 21:10:32 ID:GuYJ8Q6G
>>527
ちょw マルチエンディングてww       鬼がいるwww
529A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/12/08(土) 00:06:30 ID:teSluPfV
>>527
んな時間ねーwww
執筆が仕事の合間なんで、そこんとこ察してくださいorz

でもまあ、そうしといた方が楽っちゃ楽だけどね
530名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 12:20:00 ID:WWQp5A8x
そしてゆくゆくはビジュアルノベル化…
(仕事が忙しくて投票できなかったなんて、言わないんだからねっっっ!)
531名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 07:28:18 ID:SuKJPEit
あげてみる
532名無しさん@ピンキー:2007/12/10(月) 22:34:01 ID:fvZPJ+S6
絢華さんは何処へ消えた!?
533名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 21:11:34 ID:JLC515/7
保守
534名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 19:49:54 ID:/67kObgJ
保管庫の連載中や未完のものの続きはどうなったんだ?
読み直して思ったんだか…
535名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 20:03:13 ID:wySQJByF
書かれてないんだろ。
536A/B ◆iok1mOe6Pg :2007/12/13(木) 20:46:35 ID:UjG8ljSE
一応A/Bはここに投下した分まで保管庫に入れときました

ちなみに気付いた方もいるかもしれないけど、前スレ初期に『《Rainbow》』なるものを書いたのは俺です
人物名なんかはそこから持ってきてます。(アズマ<アズマくん、ザパドノポリェワ<「西原」を「西」と「原」でそれぞれロシア語訳して苗字っぽくした)
あのあとPCの不具合によってデータの回収が出来ずにそのまま消去したんで、今手元に続きがありません。
これは前スレにて報告しておくべきでした。すまんですorz
かなり中途半端なところで途切れてますが、続きは書かれる事は多分無いでしょう
というのも、一応覚えている話の展開がかなり無理なものである事が脳内会議の結果判明した事にもよります。
ただ、仮に『《Rainbow》』の続きが所望され、且つこちらの時間が合えば、「リメイクする」という事が恐らく可能かと思います
「続きを書く」というのは、今現在の文体や書き方、思考方法を考慮すると極めて難しいので敢えて封印します
前スレで続きを待たれていた方々には、今更ですがここで通知する事をお許しいただければ幸いです。そしてすみませんでした
537名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 00:14:25 ID:j5HpssUp
ね…年末進行で休みすらなく…
同僚は36時間勤務(休憩15分だけ)でぶったおれ…

ああああ…
538名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 00:26:34 ID:jp6BvDiY
>>537
ぶったおれて運ばれた先の病院で、ひょんなことから看護婦さんと2人きりに・・・(無理)
539名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 10:06:04 ID:Rd+br2jD
捕手
540名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 18:48:17 ID:KYzqMuIn
>>297
楽しませて貰いました。長編の執筆、お疲れ様でした。

しかしシステム概要といい、題名のホワイトボックスやブラックボックス・・・
作者はSEですか?と質問したくなるな・・・。
541名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 02:29:28 ID:H2J7GVT3
マリーはどこだ
542名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 00:34:53 ID:2YpdM94C
ふたりは
543名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 00:42:44 ID:dA4M7Ne8
現在規制中
ああああorz
544総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/12/22(土) 05:45:05 ID:gHNOzt4c
「いたたた…」
俺はバランスを崩したマリーから、当て身をもらうカタチで浴室の壁にぶつかり、意識を失っていた。
意識はすぐ回復したと思っているが… 今の状況に頭がパニックになっていた。
浴槽の中で、その…、マリーが俺の息子をいぢっているのだ。
彼女の手は小さく、繊細でシルクのような…だが大胆に握ったりつついたり摺ったり…
それが、「んっ、んしょっ、これがこうなってて、やだっ、熱いよここ…」と赤面しながらつぶやいている。
くっ、心地良い というか、ヤバイ。息子はすでにいっぱいいっぱいな状態だ。
このままだと年端もいかない少女に逝かされてしまうので、話し掛けることにした。
「あの、マリーさん?」
熱心に弄っていたマリーが手を止め、俺と目が合う。
すると、彼女は慌てた様子で、怒られる前に言い訳する子供のように話す。
「あ、ああああ、あのこっこれは違うのっっっ」
剛直したモノを握ったまま、言ってることとやっていることがちぐはぐになっている。
そしてマリーの手に力がこもる
「なにが違っ、んっ、違うんだ?」
俺はあまりの気持ちよさに言葉を詰まらせてしまった。
「だ、だだだ、だって、本で読んだのと違うから、ちょっと興味でちゃってっ!」
なんの本だよ。
「クラスメイトの子たちがすでに経験したとか男のアレは同級生の比じゃないとか…」
…彼女の言い訳を聞いていたらなんとなく理解できた。
なるほど、こういうことに興味を持つお年頃というわけか。
しかし…
「だからってだな、いきなり行きがかり上知り合ったばかっ・・・りのぉっ」
マリーが息子の裏側を摺りあげた。
息子がすごいビクビクしているのを感じた。つーか逝く。間違いなくこれは逝く。
「えっ?! なになに?! あたしなんかした?!」
む、無自覚でやってるのかっ!?!
「くっ!!!」
が、がんばれ息子! 耐っ、耐えるんだっっっ!
「ひ、ひとのからだで遊ぶんじゃないっ!」
耐えたっ! がっ、がんばった! 息子よくがんばったっっ!!
しかしマリーは俺のがんばりなどまったく理解せず、容赦ない攻撃を与えてくる。
「えー? こういう機会ってめったにないんだから、いいじゃない。
 減るものなんてないからどんどんやっちゃえってクラスメイトの子が声高々に自慢してたわよ」
なんの自慢だああああっっっ!!!!
俺の心の叫びは彼女には届かなかった。そして行為自体は加速する。
「ん、そ、そうよ! これは責任よっ」
「なんの責任だっ」
なにかに気がついたように身をのりだそうとする彼女。
俺は行為を止めてもらうために全力で理由を考える。
「悠太くんを追いかけさせてくれなかったばかヘーに責任、とってもらうんだからっ!」
だからなんの責任なんだーっ!?
悠太君を忘れさせてとかで俺を襲うつもりかーっ!? それなんてエロゲだあああああ!!!
「今日のことを私がわすれないようにしてほしいの…」
「な、なにをいって…」
「ねぇ、康平…おねがい…」
言葉の終わりにマリーが息子を”ぎゅ”っと絞りあげた。
545総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2007/12/22(土) 05:45:38 ID:gHNOzt4c
だめ、もうだめです。限界です。
自分の手が自由なんだからマリーの行為を止めさせればいいと気がついたときには遅かった。
「んっ!ふぁあっ!」「きゃあ!!」
俺の白く濁った液が彼女の手や髪や顔にほとばしった。
「やぁ! あつっ! なにっ これぇ・・・!」
マリーは俺の精液を受け止め、なにが起こったのかわからず悲鳴をあげる。
俺は”やっちまった感”と心地よい脱力感に浴槽から起き上がることができない。
「んっ・・・なんかくさい・・・栗? なにこれ・・・」
そういうと彼女は手についた液をなめる。
「っ!? 苦い! ・・・にがぁ・・・」
「ばっばかっ、舐めるなっ」
俺は心地よい感覚から急速に覚醒する。
「なによばかへー。こ、こんなに苦いならはじめから言いなさいよ!」
(むりだろっっ!)
心の悲鳴は言葉にならなかった。
「みんなは病みつきになるほど美味しいって言ってたのに… 想像と全然違うじゃない!」
「あ、あたりまえだっっっ! お前の舐めたものは精子だ! 赤ちゃんの素だよ!」
「え!?・・・・」
彼女の顔がみるみる蒼ざめていく。
「あ、安心しろ、舐めて妊娠することはない」
何いってるんだ俺は… ちがうだろ、こう、彼女に言うべきことが…
「じゃあ、どうやったらできるの・・・?」
俺は考えが一気にどこかへ飛んでいった。
その言葉でマリーと気持ちいいことをしていることを想像したためだ。
「ば、ばばば、ばかやろうっ、おまえとできるかぁっ!」
・・・失言した。すごい失言だ。言ってはならない部類を”言い間違え”で言ってしまった。
「・・・・それ、どーいう意味?」
言ってしまって後悔した。今度は俺がマリーにたじたじだ。
マリーは服を着たまま浴槽(兼シャワー)に入ってきた。
「ばか、服が濡れるぞ…」「かまわない」
いかん、彼女は目が据わってる… やばい…
「い、いいい、今のお前を大事に思うからこそ、出来るか!っていいたいんだよ!」
「じゃあ、私が許せば、できるの?」
「そういう問題でもないだろっ!!!」
「ふーん・・・・・」
彼女がおもむろに手を俺の口につけた。なんか濡れている。
それが気になってつい、舐め…
「くぁwせdrftgyふじこlp;@!?!?!?!?」
(にがっ! にがぁっ! じ、自分の精液舐めちまっ ひぃ!)
その様子を見ていたマリーは、くすくすと笑い出した。
「あははっ♪ ばかヘー変な顔〜♪」
(くっ、このっ・・・)
俺はシャワーを全開にしてマリーにかけた。
「わきゃあ!!」
ふん、どうだっ。
「ふ、ふふふ、風呂はいれ。マリー、お前もう一回風呂はいれっ。精子は洗い流さないと後がひどいぞ。匂いとかな」
「えっ?!」

結局、なんだかんだといいながら浴槽内に腰掛け、マリーを背中から抱きしめつつシャワーを浴び、
湯が張られていくのをじっとまったのだった。

#ああん、もう辛抱たまらなかった。
#ラスト描写が足りないのは、規制かかったせいにしとこう。うん、そうしよう。
#ったく、FF11系で光回線使って荒らしてるの(=業者のマルチポスト)勘弁してくれ。
#めちゃくちゃ巻き添え食ってます。(代わりにOCNが全解除らしいですが)
#夜勤上がりの土曜に仕事先近くの漫喫からなのですが… さっき店員に見られました。ああああorz
54681 ◆DlPgAmm21I :2007/12/22(土) 05:48:05 ID:gHNOzt4c
#あ、あとで書き直しを要求する・・・いやまじで・・・
547名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 07:44:50 ID:GgNi3Cax
店員が読者なら……ww
お次もwktk
548名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 16:20:08 ID:ICXrkOwk
どんまいwww
あとマリーエロイよ
549名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 00:28:30 ID:aGRTkUH8
総武の続きキテターーーーーーーーーーーーーーーー!!!

乙。 …そしてイキロw
550名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 15:13:03 ID:8comQ1YT
がむばれ。

そういえば、戦後、映画の「ローマの休日」が流行った頃に
国鉄が房総半島行きの臨時列車に「房総の休日」号と名付けて運転してたなあ……

このSSの方が暴走しているが
551名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 20:31:04 ID:2SVhrxHJ
今日たまたま文化祭の話をyahooで見つけてしまい、こんなスレを発見してしまった…。

いいスレだなー sageます。
552名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 03:38:20 ID:Msdi/l8p
553名無しさん@ピンキー:2007/12/25(火) 14:21:52 ID:JTgUa2Fd
総武の休日キタコレwwwwwwww
554名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 12:37:39 ID:KS0+p6nD
age
555名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 14:24:26 ID:hqJkxkuE
ほしゅ
556名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 14:25:39 ID:hqJkxkuE
ほしゅあげ
557名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 15:46:44 ID:lzc+JqYt
ここは大丈夫か?
558名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 16:03:45 ID:DHO5NH7M
ここは死守してみせる……!
559名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 16:09:36 ID:lzc+JqYt
臨時自治スレ6 (葉鍵板)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1198644498/より転載

15 名前:名無しさんだよもん[] 投稿日:2007/12/26(水) 13:59:24 ID:KAgLgq4j0
vipから甜菜

・壊滅
葉鍵、ニー速pink

・被害大
半角ニ次元、ぴんく難民、女神、801

・被害中
ピンクニュース、スレH・エロ会話、エロゲー、大人の実況、AV女優

・被害小
大人の飾り、お絵描き・創作 、半角文字列

・被害微小
アイドル画像
560名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 20:57:36 ID:ABBn93f2
なんかあちこちのスレでageられてるけど何かあったのかな?
561名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 21:49:45 ID:5yywBgoV
562名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 00:27:12 ID:JAVOlwiI
>>560
スクリプトでスレ乱立されてな。
運営が規制全解除とかトチ狂った判断したから。
で、多数のスレが落とされたと。
563名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 01:34:02 ID:JLd66tEY
>>562
>>560じゃないけど分かりやすくてありがとう
564名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 02:14:38 ID:oLKoD8gX
125 名無しさん@ピンキー 2007/12/26(水) 17:17:23 ID:oj9h7n7Z
ピンクの運営が2chの運営と揉めました。
そんでもって、現在Pinkちゃんねるは一切の規制がかかっていない状態にあります。

(以前の危機のように)いきなりピンクが消えるという心配はありませんが、
スクリプト爆撃で現行スレが流される可能性はあります。
(既に葉鍵板は壊滅しました)

そうゆうことか
565名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 13:53:20 ID:hFxAYj+c
落ちてないようで安心した
エロパロ板は全体的に損害は軽微みたい
566名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 17:52:39 ID:dm5/g3oO
ここはsage進行なのかage進行なのかだれか
567名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 18:36:10 ID:rZ14Ue2I
>>566
スレなんざ特別な事情が無い限りsageがデフォと相場が決まってる。
dat落ち判定だって、最終書き込みが何時行われたかが肝心なんであって、
スレの位置は無関係だし。
568名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 20:05:00 ID:JAVOlwiI
>>567
でも下のスレほど優先して落とされるんじゃないか?
569名無しさん@ピンキー:2007/12/29(土) 10:50:42 ID:PpSS1xMD
保守
570名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 22:14:39 ID:RD0AGrmj
さて、がんばるか
571名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 23:56:05 ID:rkJxUBG+
>>568
それは都市伝説。
最終書き込み時間が古いものから優先的に落ちる。
まあ、上にあるスレはageで書き込みされたスレだから、下の方のスレが目に付きにくいってことだろうがな。
とにかく最終書き込み時間が新しい方が圧縮で生き残りやすいってことだ。


ところで、狙撃手って二人一組だよな?
……フム。
572名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 22:26:16 ID:UyK4A3qu
ネタの提供(支援)

「あのさ…私達いつまでここにいればいいの?」
「俺が知るかよ」

 休み時間、俺は風に当たりたくて屋上へ行った。
既に先客がいたのは驚きだけだれども、別に気にすることではなかった。

…現在は2時間目辺りだろうか。
いつの間にか屋上の鍵が掛けられていたようだ。
グラウンドには数十人の生徒と教師。
屋上は同学年の女子と俺の二人だけ。

外の風が身を震えさせる。
573名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 22:10:54 ID:/2Q/2fWS
>>572
抱きつきながら暖を取るところまで受信した
574名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 01:46:16 ID:2o9Jieop
ほs
575名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 12:23:26 ID:Ar6qnDv7
>>573
抱きつくとか早くね?ww
俺の予想では、いつもは思いつかないような臭い会話を軽くした後に
肩を寄せ合うor手を繋ぐ で一旦EDだと思う
576名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 19:55:02 ID:Pp0+48AG
age
577名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 21:53:36 ID:OL8ITRMa
保守
578名無しさん@ピンキー:2008/01/09(水) 23:13:14 ID:dXn5ab8R
総武の休日はまだか・・・
579名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 04:50:25 ID:O7iLfmMO
なんだかんだ言って過疎なのかなあ
580名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 10:58:39 ID:/f6adHQt
ああ、問題無い。スレタイ通りだ。
581名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 12:29:38 ID:gQAa0gEI
まて 俺もいるぞ
582名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 12:39:39 ID:O+849jt6
このスレは俺も大好きだ。一緒に行くよ
583名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 17:11:52 ID:30ngX74+
男と二人きりになっても何も嬉しくないんだが…
 
 
 
俺も連れてって
584名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 19:20:48 ID:rGZ1VBGp
>582を読んで。

pixy
<<サァ行くか!>>

を思い出s…
585名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 22:34:20 ID:ajMaaZWi
むしろ
女の子が誰もいなくなってしまった


状態だと思うこのスレであった。
586名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 11:58:16 ID:8kkv8iyy
>>584
あれも最後は空に二人きりだったな。野郎同士だが。
587名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 01:42:41 ID:6oV+jkSJ
 
「…なぁ。」
「…何?」
「…腹…減ったな。」
「…私はそれほど。」
 
「…なぁ。」
「……何?」
「いつまで…こうしてればいいんだ?」
「……救助隊が来たら助かるわよ。」
 
「…なぁ。」
「………何?」
「…好きだ。」
「…………バカ。」
 
 
ほっしゅほっしゅ
588名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 09:36:02 ID:E0/scvBL
age
589名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 03:45:27 ID:cUPpaAtV
保守
590名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 22:19:24 ID:F/hhjw4C
女の子と遭難して二人きりになってもいいようにサバイバルについて書かれた本を読んでいるんだが、
それによると低温症の処置として体を温めるには、暖めた寝袋の中にすでに体が暖まっている者とともに
患者を入れてやるとのこと。
この場合「両者とも裸でなくてはいけない」らしい。
あと、温水浣腸のほうが効果が高いらしい。浣腸は勘弁だが。
591名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 00:02:52 ID:C8oz7lMu
>>590
「ごめーん、浣腸してあげるつもりが間違えて僕のおっきいのを前の方に入れちゃったよー」
「やっ、どんな間違いよバカァッ! 早く抜いてよ!」
「寝袋狭くてなかなか抜けないよ。なんだか締め付けてくるし」
「やんっ、動かないでぇ」
「動かなきゃ抜けないよ? 別の意味で抜けそうだけど」
「も、もうっ……」


こうですか?わかりません!
592名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 13:51:30 ID:/fiQ3HMY
>>590
な、何の本だ!?
kwsk
593名無しさん@ピンキー:2008/01/20(日) 21:56:29 ID:oKWQQ+BL
>>591
「・・・しょうがないんだから♪」
「えっ?」
「男君ので私を・・・温めて?」


594名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 18:42:04 ID:yEzaLLny
積極的な女の子もいいかも…
595名無しさん@ピンキー:2008/01/21(月) 21:03:33 ID:s8GRkN0e
規制喰らってたorz

>>592
古本屋で手に入れた「アメリカ陸軍サバイバルマニュアル」という本。
名前の通り米軍のサバイバル教本を翻訳したもので、食料の得かたから砂漠での過ごし方まで載ってる。
軍向けなので仕方ないが、一々敵の存在を意識した行動が書かれてるので
そっちの知識に乏しい自分には少々読みづらいです。
596名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 10:33:10 ID:6DFCz/De
アッー!
597名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 13:14:09 ID:oJAU6NgN
保守
598名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 14:17:15 ID:AUtTVo9N
ほしゅー
599名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 01:43:03 ID:olVoKXm+
援護
600名無しさん@ピンキー:2008/01/29(火) 22:13:12 ID:rXis4pcQ
用語
601名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 12:59:58 ID:LXAiYQHq
いったいいつになったら規制が解除されるのかな…
といっても保管庫にちょっとしか更新できてないけど…
忙しくてもちょこちょこ作ってアップしたいのに…これじゃね…

…書き込めたら、どうしよう…
602名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 13:00:34 ID:LXAiYQHq
あれ… さらばっ!(まて
603名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 23:04:54 ID:XghM2O2R
>>602
待って…ひとりにしないで…
604名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 23:48:21 ID:p05qa2Hd
>>603
俺と一緒じゃイヤか?
605総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2008/01/31(木) 10:12:07 ID:OkT5O3On
>545 の続き
(ああ…服は洗濯だな…)
俺はマリーを浴槽内に腰掛けさせ、自分は浴槽のふちに腰掛ける。
俺に背を向けたまま正座するような感じだ。
マリーの髪は長い。手入れが大変なうえ、洗うのも一苦労だ。
「もうちょっと後ろに下がれ」
マリーに言う。彼女は言われるまま俺に背を向けたまま下がる。
そして俺は業務用のシャンプーを使い、彼女の髪を洗い始めた。

俺は髪を洗う。ときどき
「お嬢様、かゆいところはありませんか?」
とふざけながらいうと、
「あははっ ないわよっ ばかへ〜♪」
と返事が返ってくる。
声が弾んでいるのがわかる。たぶん顔は笑っているのだろう。
これが普通の格好でなら微笑ましいのだが、今は風呂場。かつ二人とも裸なのだ。
シャワーから湯気が立ち昇り、寒さなどは感じない。
手には絹糸と見間違うくらいの金髪が、シャンプーと混じり幻想的なコントラストを映し出す。
それを自由にできている自分… ふと目を逸らせば、彼女の珠肌に水滴が踊る。
これが… ”はっ、いかんいかん”と、慌てて彼女にシャワーを掛ける。
「わ! きゃぁ!」
マリーから軽い悲鳴があがる。
「シャワー掛けるなら掛けるっていいなさいよっ!!!」
マリーが立ち上がってこっちを向く。
両手は目にあてられ、ゴシゴシと目をこすっている。
「シャンプーが目にはいったぁ〜…」
一糸纏わぬその姿… その… まるみえである。
「わっ、ば、ばばば、ばかっ、こっち向くなっ!」
「う〜〜〜〜 そんなこと言ったって、シャンプーが目に入って痛いんだってばっ!!」
しきりに目をこする彼女。
俺は、手に持ったシャワーの向きを天に向け、マリーに促す。
「マリー、プールのときのようにとりあえず目を洗え」
シャワーの描く放物線の頂点に顔をつける彼女。
「ううううううう」
唸る声が聞こえる。まるで猫のような。
そして顔を上げ、目を閉じたまま俺に訴えた。
「ば、ばかへ〜…」
「ん、なんだ?」
「こんどは まつげ が目に入ったー」
「どれどれ…」
俺は彼女の蒼い瞳を凝視する。
「んー…」
「………」
たしかに、まつげが一本、白目の部分にある。
彼女がほんのり上気した顔になっていることは、気がつかなかったことにしよう。
俺は、彼女の吸い込まれそうな瞳に歯止めがきかなくなりそうだった。
「…あー、もう一回シャワーで目をしぱしぱしろ」
「うん…」
言われるままもう一度顔をシャワーにつける彼女。
「…もう、取れた…かな?」
「どれ、もう一回みせてみろ」
「うん」
そういうと彼女はいつもよりすこし目を開き(大きくし)、俺の瞳を覗む。
目をこすりすぎたせいか、若干白目部分が紅い。しかし、異物は取れていたようだ…?
「−−っ」
606総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2008/01/31(木) 10:18:41 ID:OkT5O3On
不意に彼女が顔をそらす。
「おい。まだ完全に確認できてないぞ」
「いい」
いきなり異物の確認は終わった。
「いいって… よくないと思うぞ?」
「も、もも、もう痛くないから、大丈夫…たぶん」
「いいからもうちょっと見せろ」
「いいってばっ!」
顔を背けるマリー。頬が紅いのは、たぶん風呂のせいだ。
「よくないっ」
俺は彼女の顔(両頬)をがっちりとつかみ向き合わせた。
「やっ!」
「こら、目を閉じるな ちゃんと見せろ」
「いやっ!」
マリーが俺の手首を握って、逃れようとする。
「なんでだよ」
「だって、ばかへ〜がまじめ過ぎるんだもん!」、
手首に力がこもる。でも、痛くはない程度だ。
「どういう意味だそりゃ?」
「だ、だって… だって… キ、キスさ…れちゃうか…とお…思って……」
最後は聞き取れなかった。が、抵抗しだした理由は理解できた。
俺は彼女に問いかける。
「…し、してみる…か?」
「え?」
マリーは目を開いて俺を見つめる。
彼女の潤んだ蒼く透きとおる瞳が俺の思考を鈍らせる。
「そ、その、………キス」
「………」
少しの間の後、マリーはうなずいた。
俺は、そのまま彼女の顔に近づいて…


#ビバ! ナチュラルハイテンション〜♪ ぶっぶっぶー!(意味不明)
#すみません、>601は私です…
#拙い文で申し訳ない。でも夜勤明けだから恥ずかしさなんてないっ!あるのは暴走のみっ!!
#長い間の規制に巻き込まれ、モチベ下がってしまって申し訳ない…
#が、がんばるよー?!(゜□゜ )ノシシ
607名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 13:45:32 ID:h0j3RpbH
>>606
なんと・・・!!!
いやもう、ね、身悶えだぜ。GJ
608名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 13:48:49 ID:psRZ+HU0
久々にキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

キスか、キスなのか?しちゃうのか?
つ・づ・き!つ・づ・き!
609名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:56:13 ID:toomXUM+
仰け反ったwwwGJ

ニヤニヤもwktkも止まらない。誰か助けて
610名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 01:19:41 ID:jBydLTHJ
>>609
そのもやもやを文章にするんだ
611名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 02:28:26 ID:kM1lS6nT
総武の休日キテタ-----!!! 待ってたぜー
GJ!!!

続きも早めに頼むw
612名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 12:10:19 ID:waWQDeQy
鉄コミュニケイションのことかーー!!!
613名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 20:57:24 ID:zY2nEBgQ
誰か・・・誰かいないのかー!
614名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 21:08:46 ID:MTS1DycW
私で良ければいるが?
615名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 23:54:50 ID:MTS1DycW
そうか、私ではダメなのだな…では帰らせてもらう。
616名無しさん@ピンキー:2008/02/07(木) 01:55:19 ID:6InheST1
「女の子と」だからなあ・・
617名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 02:52:56 ID:xREuxca4
なんつーか繰り返しだな
618名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 17:57:53 ID:EFaYr9yd
書き手が減ったからだろ
619名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 12:40:08 ID:ROIHftXk
ネタはある……んだけど、正直ここまで手が回らない……。
某所のリレー小説が終わったら書くとは思うんだけど、終わる見通しはまだまだつかない。
620名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:55:42 ID:N5XVi2BE
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
621名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 09:06:36 ID:CI0J1hOt
>>619
リレーは多少強引でもさっさと完結させた方が良い。
622名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 18:48:07 ID:dCxb1Tl2
>>619には悪いがリレーはあまりよくない。いろんなところで愚痴が多数
623名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 22:06:44 ID:sKurJJky
>>619
リレーは正直やめといた方がいいと思う
624名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 22:27:36 ID:iRMKgMiX
あ、いや、エロパロのじゃなくて某企画での二次創作多作品クロスオーバーなやつなんですわ。
結構規模も大きいんで自分の意志で終わらせられないのもあるという訳で。
暇できたら書くつもりではあるんで……
625名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 01:09:23 ID:6ituznSu
この板でやるとヤバいよな……
取り敢えず>>624ガンバ
626名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 19:03:23 ID:uHgmcMAL
案外盛り上がるかも。いや…ないなw
627名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 20:39:40 ID:rmGkH6Zw
書き手がある程度たくさんいて、盛り上げなんかがうまくいけばかなり低確率だが成功することもある・・・がそんなの片手で数えられるくらいしか見たことない・・・。
628名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 11:09:04 ID:tcHeTUmO
保守
629名無しさん@ピンキー:2008/02/19(火) 21:32:32 ID:7DC5klDX
「リレー小説!?」
「うん、やってみたいなって」
「ここには俺とお前しかいないんだぞ?」
「そうだけど…ダメかな?」「いや二人だとリレー小説っていうより交換日記(ry
63081 ◆DlPgAmm21I :2008/02/21(木) 06:40:41 ID:HUGt7DV9
#だめだ エロくできないいいい!!!
マリーの顔に近づいて、そして…
「うぐっ!」「いたぁい!」
俺とマリーの小さく悲痛な叫びが風呂場に響いた。
唇の辺りがちょっとジンジンする。
どうやら勢いをつけてしまったのか、歯まで当たってしまったらしい。
俺はすぐに彼女の顔をみる…が、外見上は血がでたり怪我はしてない様子だった。
「だ、大丈夫か?」
俺は声をかける。マリーは唇に左手を当て、恨みがましく鋭くなった碧眼が俺を睨み、言う。
「いっ、たいじゃない!」
「す、すまない… 俺も初めてで…な」
俺は言っていて悲しくなった。この年になってもファーストキスどころか、彼女すら作ったことがないことに。
「え…?」
鋭くしていた目を今度は大きく見開き、彼女の顔が驚きに変わる。
「は、初めて…だったの?」
「ああそうさ…笑えるだろ?」
俺の自嘲めいた言葉に、彼女は首を振る。
「う、ううん! だ、だれだって初めてはあるもん… ただ、ばかへ〜なら、経験あるかなって…そう思ってただけで…」
(つまりあれか…?)
「け、経験豊富な俺が自分をリードしてくれると、そう思ってたのか…?」
”こくん”
黙ったままハッキリと頷くマリー。
”…ふー…”
俺は思わずため息がもれた。

俺は…2chに精通している職場の上司にからかわれる位、あと数年で魔法使いになれる童貞…
実際は空想話(魔法使い)だが、童貞であることには変わらず、後輩への語り草になってしまっている。
そんな男をマリーは”経験豊富”と勘違いしてしまっている…どこで間違うのか…
ん? ”経験豊富”…?
「マリー… まさか君も初めてなのか?」
「え?、う、…うん」
俺の滑稽な問いに対して、肯定で返答がきた。
は…はは、まいったな… はじめて同志なのに息子を握られて逝ってしまったか…
先ほどの情景に内心笑ってしまった。
631総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2008/02/21(木) 06:41:25 ID:HUGt7DV9
自嘲気味に考えていると、唐突にマリーが話し出す。
「ね、ねぇっ! さ、ささ、さっきのはノーカウントってことで、も、もう一回、やってみない?」
「え…」
俺は驚いた。まさかリトライを申し込まれるとは思わなかった。
「さっきのがファーストキスなんて、あんな思い出はイヤ… ちゃんとした、キス…しようよ…」
風呂場の熱気か定かではないが、彼女は頬を染め、伏せ目がちに言った。
俺は彼女のそのしぐさ、一糸纏わぬその姿、風呂場の熱気にあてられて、答えを返さずに行動でそれを示した。

マリーの口を控えめに抑えた彼女の左手を、手首をつかんで口から遠ざけた。
彼女はゆっくりと目をつむる…。
そして空いた片方の手で彼女のアゴに手を添え、彼女の顔が軽くには動かない程度に固定して、
”そっ”とキスをした。
「んっ、んぅっ!」
彼女の若干の身じろぎと呻きが聞こえた。
すると、彼女の右手が俺の頭に回され、顔がもっと密着する。
俺は離れられなくなり、そのままキスを続けた。
(ち、小さっ… やわらかっ… んっ、き、気持ちいい…)
俺は物心ついてからの生まれてはじめてのキスの感触に、酔いしれた。

しばらくすると、唇に蠢くモノが当たる感触があった。
俺は驚いて口をあけてしまう。すかさずそのモノは俺の口腔にすべりこんできた。

 彼女の舌だった。

「んっ!? んぅっ!!」
今度は俺がうめき声をあげる。
「んんっ、ん〜〜〜っ、はっ、はっんちゅっ」
彼女も同様に声を漏らし、”ぴちゃぴちゃ”淫靡な音が風呂場に響く。

俺の舌は彼女の舌から逃げる。それを追う彼女の舌…時折正面からぶつかり、
お互いに引っ込んで、また彼女の追撃が始まる。
”ぴちゃっ、ぴちゅっ、じゅるっ、じゅるるっ、あむっ、ふぁっ!”
マリーの息遣いや「あえぎ」が、風呂場にとけていく…
そして、俺はその行動に脳がしびれて、さらにとろけていく。
(もっと… もっと… 彼女が愛しい…)
なにも考えられない。この快感をむさぼりつくしたい… そんな感情が俺を次へを押しやっていく…
632総武の休日 ◆DlPgAmm21I :2008/02/21(木) 06:49:21 ID:HUGt7DV9
俺は、彼女と顔が密着しているだけでは満足できなくなり、濃厚なキスを続けたまま、彼女の手首をつかんでいた手を離し、
彼女の背に手を回してさらに抱き寄せた。
「んあっ! んふぅ!」
彼女の喘ぎ声が一段、高くなった。キスはとまらない。
彼女は手首を離された手を、俺の背中に回し、身体をより密着させてきた。
お互い、からだが熱く感じる。それほど情熱的にだきあっている。
体格は違えど互いの鼓動が確認できるほどに…

”トクンッ トクンッ”
普段よりも鼓動が早いのがわかる。でも、今の状態を解くことは考えられない。
互いに密着し、貪るようなキスは、とどまるところを知らなかった。

#ここまで。
#謝辞:遅筆でごめんなさいいいいい!!!
#エロシーンがうまくなりたいいい
#文才たんねぇぇぇぇぇ!!!
#つか 自分で挿絵かけるほど絵心もほしいいい
#
#まってくれている人、本当にごめんなさい…
#ストーリー関係なしに、時節ネタ盛り込みたいとか思ってしまってるっ!
#
#今日も今日とて夜勤なので仕事中にわぁい♪(こらこら
#ナチュラルハイテンションばんざいっ(?
#(↓↓一FANによる宣伝↓↓)
#作成時BGM@無限ループ
#ニコ動 loos オモイヨシノ(多分高画質ver)
#http://www.nicovideo.jp/watch/sm2142013
#これ聞くと、なんか胸がキュンキュンするのですよ?
#”とら”とかで525円で売ってますです
633名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 20:46:41 ID:Yy9llZET
>>632
GなJなのです!
マリーはなんかヤりたい相手というより
抱き締めたい相手って感じに見えるなぁ
しかしエロに期待
マリーかわいいよマリー
634名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 23:38:44 ID:qjYGCUUy
>>632
総武の休日キテターーーーーーー!!! GJ!
マリー… (*´Д`)
635名無しさん@ピンキー:2008/02/21(木) 23:54:15 ID:kmv7hOnK
おっほほい!GJ!
相変わらずマリー可愛いなぁ
636名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 01:29:03 ID:j5p591iA
顔がニヤけるのを止められません
637名無しさん@ピンキー:2008/02/25(月) 12:46:00 ID:Ke7QqAYS
hoshu
638名無しさん@ピンキー:2008/02/27(水) 10:52:37 ID:2x4R4S6e
あげ
639たった42円でAV丸ごとダウンロード:2008/02/27(水) 11:03:33 ID:F1cY9rAu
外の店でまず42円でアダルトDVD売ってないよね?
しかも、外にでむくまでもなく、自宅でパソコンですぐに
アダルト作品が落とせ、すぐ見られるよ!

http://blog.myspace.com./1001150884
640名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 03:37:13 ID:8Y5l/Xf+
三月は二人きりの季節(イミフ
641名無しさん@ピンキー:2008/03/01(土) 18:29:37 ID:75Zg7ZW1
そうむ・・・orz
642名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 20:29:21 ID:106EiCop
小ネタ投下します。
1、2、3!の番組で電波を受信。
643オバケ屋敷:2008/03/02(日) 20:31:28 ID:106EiCop
売り言葉に買い言葉とは、こういうことを指すのだろう。
今度からは、嫌なものは嫌だ、怖いものは怖いと言えるようになろう。
それができないから、こんなくら〜い偽病院の片隅で、涙を浮かべて荒い呼吸を整える羽目になるのだ。

事の発端は一人のダチ。
「オバケ屋敷なんぞ怖くないよなあ?」という話でうっかり盛り上がり、「よし、今から行こーぜ!」と言われ、引っ込みがつかなくなって「よっしゃあ!」と応えたことが運の尽き。
野郎二人で入ったはいいが、薄暗い病院のそこら中に転がる手術器具や血痕はやたら生々しく、
「がおー」とか言って腕をバタバタさせるのがせいぜいだと思っていたオバケ役の方々は、
襟首と背中をひっつかんで手術台に固定しようとする迫真の演技でもってして、オレの頭の中の理性という理性をすべてブチ壊してくださった。
当のダチはその間、唯一の光明となるペンライトを握りしめ、元陸上部のすばらしい健脚を披露し、雄叫びだけ残して消えやがった。
…あいつ、あとでコロス…

大丈夫、もう大丈夫と自分に言い聞かす。
オバケどもを振り切って飛び込んだ病室。その端っこに縮こまって繰り返す。大丈夫、もう大丈夫…。
突然、腕をガッと掴まれた。
644オバケ屋敷:2008/03/02(日) 20:39:05 ID:106EiCop
文字通り飛び上がって腕を振り回し、四つん這いで逃げようとしたら足を掴まれ、床に体をしたたか打ちつけた。
「待って、待ってください…」
声を聞いてから動きを止めるまで二秒かけ、それでも信用できずに逃げる姿勢のまま、おそるおそる声のする方を見た。
ペンライトすら失い、ほとんど真っ暗闇の病室の中に…女性がいた。涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。
「あた、し、…置いて、かぇ…、…っ」
言葉が詰まって涙をぽろぽろこぼす。オレと同じ境遇の人らしい。
短めにカットした黒髪で、シルバーのリングやネックレスが目に付く。泣いていなければ、きりっとした印象をうける人だ……って同類のニオイがする。



とりあえずここまで。
中途半端でごめんなさい。続きは書くつもりです…。orz
645名無しさん@ピンキー:2008/03/02(日) 22:48:07 ID:EYZQCmL0
おお、GJ!続きwktk
アレか?アレだな?かの富士急ハイ〇ンドにあるという制覇率10%未満の世界最高峰のお化け屋敷だな?
646名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 01:17:32 ID:hJx+8pJH
GJwktkー
再び賑わえばいいなぁ

ネタは二つ思いついてるが、双方とも状況が説明しにくい
647名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 03:46:12 ID:swZeUdpU
乙。
これは今までにありそでなかったシチュエーションだな!
続きを楽しみにしてるゼ!
648名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 00:04:37 ID:opkUvqBv
期待age
649名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 14:52:53 ID:FHPnqTTg
保守るぜ
650名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:15:07 ID:G8z8vwqX
強制二人きりではないけど保守代わりに
651華舞:2008/03/10(月) 02:18:24 ID:G8z8vwqX
「先輩、この本はどこに並べますか」
「分類番号は何番かしら? 背表紙の下にステッカーを貼ってあるでしょう?
ジャンル毎に番号を割りふってあるから、本棚と参照して並べていってね」
「へー、今まで気にしたことなかったですよ」
「大島君も図書委員なんだから、少しずつ覚えてね」
「はい。ずっとサボってすみませんでした」
 肩をすくめる僕に、くすっと微笑んでみせる仕草は、年上なのに可愛いと思わずにはいられない。
「たまに全然違う番号が振ってることもあるけれどね。打つのは人手だからきっとうっかり間違えちゃうのよね」
 言いながら手にした本を差していくたびに、胸の位置で切りそろえたストレートの黒髪が袖を流れる。
さらさらと音がしているように錯覚する。すぐ傍なら、聞こえるかも知れない……
 僕がそんなことを考えてどきどきしているなど露知らず、滝先輩は慣れた手つきで整理していく。
 ありきたりだけど、清楚なお嬢様の形容がぴったりとはまる。先輩の家は旧家で、本物のお嬢様らしい。
 烏の濡れ葉色のような艶やかな黒髪も、整えられた爪先も、化粧っ気はないのにほんのり色づいた頬も、
カモシカのようにすらりと伸びた悩ましい脚も、触れてはいけないガラスケースの中の存在だ。

「ほら、この本なんてまるで合ってないの、……あら、これ私が打ったんだったわ」
 自分の周囲への印象なんてまるで気にせずに、ひょいひょいと天然な顔を見せるのがまた魅力的で、
好意を寄せる男は学年問わず当然多かったけれど、皆牽制し合って前に進めず、
たまに特攻すればかわされる有様だった。
 後輩の身分からすれば狙うなど大げさで、運良く同じ図書委員に決まったときは、
一ヶ月分の運を使ったと思った。
 そして今日、図書倉庫での整理を司書の先生から言い渡されて、げんなりしつつもやって来ると、
『あら、お手伝いは大島君? よろしくね』
 初めて僕だけに向けられた屈託のない柔らかな笑みに、卒業までの運を使い果たしたと確信したのだった。
652華舞:2008/03/10(月) 02:20:26 ID:G8z8vwqX
「ん……、一番上の段なのだけど、私は届かないし、……大島君も、ダメみたいね」
「……椅子か脚立を借りてきます」
 僕は2年になっても、まだ160センチを越えない身丈を今ほど後悔したことはない。
 颯爽と手を伸ばして余裕で本をしまう格好いい自分。
『ありがとう。やっぱり背の高い男の子は素敵ね』
『これくらい当たり前です。何なりと言って下さい』
 きらりと光る口元。頬を染める先輩。
「――君、大島君?」
「……はっはいっ。すみません! すぐ行ってきます」
 しまった。つい妄想に走ってしまった。ごまかすために顔を引き締めて、深々と頭を下げる。
「いいのよ。そんな手間かけちゃ申し訳ないわ。ちょっと抱えてくれるかしら、私を」
「…………抱える……、かか、え……?」
 とっさに言われて頭が付いてかなくて想像できない。えーと、僕が先輩を、抱える?
「私の腰あたりを持って、……こう、持ち上げてみてくれる?」
 大きな何かにつかまる真似をして両手を上下に動かすと、じゃあお願いと本を抱えて棚の前に立つ。
 持ち上げるということは、触らなくては駄目ということで、触るということは今ここには
僕と先輩しかいない訳で、僕が先輩に触るということになる訳で……
 え、……ええ? ……えええええっ!!

「大島君?早くして、ね」
 パニックになる僕を、先輩は何の疑問も抱かずに急かしてくる。
 そう言われても…………でも、ここで僕が狼狽えたままなら先輩も変に思う。
 文字通り意識されていないってことだけど、初めから妙な期待をしてしまった僕が悪いんだ。
 今、僕は図書委員として、先輩の手伝いをしなければいけないんだ。
 自分に言い聞かせ言い聞かせ、先輩の後ろに回る。
653華舞:2008/03/10(月) 02:22:15 ID:G8z8vwqX
「失礼します」
 すれすれまで近寄ると先輩の髪から石鹸の匂いがして、それだけで目眩がして倒れそうだ。
 しかも自分の方がちょっぴり背が低いことが解ってしまって軽く鬱になる。
「重いだろうけど、ごめんなさいね」
「い、いいえ、そんなことありません!」
「転ばないように気をつけて、しっかり持って一気に上げてね」
 勝手なことを考えている僕を心配してくれる。しっかりしろ。
 少ししゃがんで、震える腕をそっと先輩の腰に回す。後ろ向きで良かったと本当に思う。
心臓は破裂するくらい早く打っていて、顔も火を噴きそうに熱くなっている。
「いきますっ!」
 覚悟を決めて抱きつき、力をこめて一息に持ち上げた。


「もう少し右ね、……はい。うん、そこよ」
 多分十秒もかからなかったと思う。それでも僕には一分にも二分にも長く感じられた一瞬だった。
 先輩の体が僕に密着する。スカート越しの腰は細いのに当たってしまうお尻は柔らかくて、
薄い夏服のブラウスからもいい匂いがして、背中からでも先輩の鼓動が聞こえそうで温かくて、
頬に当たる黒髪は想像通りさらさらのつるつるで気持ちよくて、ああ、女の子の体って……
――――駄目だ駄目だ考えちゃ駄目だ。息を止めて目をつぶって、何も感じない、何も見えない……
 頭の中にもう一つ心臓が出来たかと思うくらい目の奥が熱くてがんがんして、必死に足を踏ん張った。
「ありがとう。下ろしてくれる?」
 先輩の声が聞こえて、ふっと力が抜けた。
 途端に――

「きゃっ――?!」
 するりと手が滑って慌てて掴み直すと、もにゅっとした柔らかなものを握り締めた。
「いやっ!」
 先輩が真っ赤になって振り向く。今のは、お、お、おっぱい?! 僕は何てことをっっ!
 焦りまくって脚がもつれたらしい。目の前がぐらりと揺れて、先輩を抱きかかえたまま
僕は後ろ向きに転んだ。一瞬星空が見えた。
654華舞:2008/03/10(月) 02:24:05 ID:G8z8vwqX
「大島君? おおしま、くん? 大丈夫?」
 すぐ目の前で、キスしそうな程近くで先輩が僕を覗き込んでいる。
「はっ、はいぃぃぃっ!!」
 びっくりして飛び起きると一緒に先輩も起き上がる。
 そこでやっと、ずっと先輩を抱き締めていたのに気が付いて手を離した。
「すみません! すみません!」
 とにかく平謝りする。謝ったくらいじゃすまないけれど、ひたすら謝る。土下座する。
「いいのよ。わざとじゃないんだから、ね。気にしていないから、大島君も気にしないで」
 さすがに頬を赤くして、でもここで本の整理を始めた時と変わらない優しい微笑みで、
先輩は僕の肩に手を置いた。

「倒れる時も私をかばってくれたでしょう? やっぱり男の子なのね、ありがとう」
「そんなことはないと、思います。僕は緊張してしまって、何も考えられなかったんです。
先輩は普通なのに、僕が変に意識してしまって……本当にすみません!」
「正直なのね、大島君。元はと言えば上にあがる物を探さずに用を済まそうとした私が悪いんだから。
ふふ……実はとてもせっかちなのよ。私。家では粗相ばかりでいつも叱られているわ」
「意外です。全然見えません」
「外では猫をかぶっているの。だいぶ上手くなったのよ。知っているのは親しい何人かだけ。
男の子では、大島君が初めてかしら」
「そう、なんですか」
「だから内緒にしていてね。私も、胸を触られたことは秘密にしておいてあげる」
 ちょん、とその細い指を僕の唇に当てると、先輩は小首を傾げて少し意地悪そうに笑った。
 全身の血が沸騰しそうな勢いで一気に駆け巡る。
「ももも、もちろんです!」
 思わず姿勢を正して宣言すると、先輩はひらりと立ち上がって、早く残りを片付けてしまいましょ、と、
段ボールの中の本に手を伸ばした。
「はい!」

 翻ったスカートの中が、まだ座り込んでいた自分からばっちり見えてしまったことも、
…………絶対内緒だ。
 今夜は眠れそうにないなんてことは、絶対絶対死んでも内緒だ。
 僕は一生分の運を今日一日で使い果たしたのかもしれない。
655名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 02:26:23 ID:G8z8vwqX
以上です
失礼しました
656名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 05:19:17 ID:wrfTbDsr
俺もこんな青春してー
GJ
657A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/03/12(水) 09:44:42 ID:8rw9l0dB
>>495の続きです。なんかもう、中編になってしまったorz

 南から北に向かう爆音と、連続する爆発音が重なって聞こえてくる。空対地攻撃の最中なのだろうとアズマは推測する。使用しているのはALGCB(アクティヴ・レーザ誘導クラスタ爆弾)だろうか。
 不意に、彼は考える。何故、ザパソノポリェワらはこの国に侵攻を始めたのか。
 戦争とは、政治の手段の一つである。国家間の問題が話し合いで解決出来ない場合、戦争になる。通常、戦争というものは、目的たり得ないのだ。
 また、戦争とは国の大事である。あらゆる戦は大量消費のもとにあり、それが戦争ともなると当事国の経済状況を左右する。消費されるものは「資源」であり、「資源」は原料やエネルギー、そして人間をいう。
 侵略戦争は、侵略の対象となる土地に優良な「資源」がある事が期待される、若しくはある場合が多い。また、敵対する他国に対する橋頭堡という役割も忘れてはならない。
 嘗て植民地の拡大を行った国々は、そこに様々な鉱産資源や農産物になり得る植物、農地に使用出来る肥沃な土地、そして労働力としての人間があったからこそその土地を自らのものにしようと躍起になったのだ。
 あの国は、その領域を拡大する事で何を得ようというのか? 植民地の拡大に各国が奔走した大昔と現代は違う。あの国の意図が、アズマには測り兼ねた。
「なあ、ザパドノポリェワ」
 だから、アズマは訊く。
「お前の国は、何で建国以来周りを侵略し続けてるんだ?」
 ザパドノポリェワはアズマのすぐ隣で、息を短く吐いた。
「パーソナル・ネイムでいい」
「そうか。オリガ、だったな。愛称は『オーリャ』か?」
「そうだが、あまりそれで呼ばないでくれ」
「オーケイ、オリガ。で、だ、何で――」
「侵略し続けてるのか、か」
 アズマは肯定する。
 彼女は深呼吸をし、少し上をぼんやりと見る。そして口を開いた。
「軍人はな、そんな質問に答える必要は無いんだ」
 その回答に、彼は面食らった。しかしそれはある程度予想し得た答えである事も確かだ。彼女は尚も続ける。
「軍人に伝えられるのは、命令だけだ。それを遵守すればそれでいい」
「政府の意向は伝えられない、と。まあ、当然だな」
 命令は、手段を行使するための手段である。それがどんな内容であろうと、軍人はその命令に従わなければならない。そこに、命令者の意図を推し量る余裕など存在しない。
「敢えて個人的に答えるとするならば、『分からない』だな。そんな事、考えられないほどに多忙だった。それを考えるのは、後方に行ってからだ」
 もし推し量りたいのであれば、生き残るしかない。勝とうが負けようが、終戦まで生き残っていれば、その余裕は自ずと生まれる。彼女はそう言いたいのだ。
「状況から思考を巡らせる事は可能だが、残念な事に私は総合的な戦略というものを考え出す方法を知らない。政府の目的など、推測しか出来ない」
 それは本当に無知から来る言葉だったのか。彼には測りかねた。
「じゃあ、推測だけでいい。教えてくれ」
「……少なくともお前の国への侵略は、太平洋に出るためと、あと土地が目的なんだと思う。私の国から太平洋に出るルートは、カムチャッカ半島から出る以外の全てがお前の国の領海を通らざるを得ない」
「そういやそうだな。衛星写真で見たんだけど、釧路にアドミラル・マソリン級空母とキーロフ級フリゲイトがいたし、根室にエクラノプランっぽいのがあってびっくりしたぜ」
「エクラノプランだと? それに空母もいたのか。やはり本国は本気で太平洋進出を目論んでいたみたいだな」
 太平洋に進出すれば、その対岸、北米大陸に広範囲に亘って睨みを利かせる事が出来る。
 更に、津軽海峡以南の列島全域を支配下に治める事が出来たのなら、東アジアは完全にあの国の勢力圏に治まるわけだ。
「ただ、太平洋に出るためだけならクリル(千島)列島とサハリン(樺太)を制圧するだけで足りるだろう。そこで次に土地だが、『ある程度インフラの整備された土地』だからここが狙われたんだと思う」
 それでも、北海道の主要な都市や交通の要衝はかなり被害を受けていた。北海道で行われた戦闘の殆どが市街戦だったのだ。加えて、札幌への核攻撃だ。
 この核攻撃は、潜水艦搭載のIRBM(中距離弾道弾)によってなされた。IRBMから切り離された核弾頭は札幌市上空300メートルで炸裂し、同市中心部は壊滅。10万人ほどが犠牲になったと推測されている。
 IRBMは3発がオホーツク海公海上から発射された。1発ずつ、札幌、江戸、京都を狙っており、札幌を狙った1発の迎撃が間に合わなかったのである。残り2発は迎撃されている。
658A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/03/12(水) 09:46:38 ID:8rw9l0dB
「核に関しては、……私は何も言えない」
「お前が気にする事じゃない。そういうのは、軍の上層と元首がやってればいい話だ。尉官が何言ったって、変えられるものでもない。それにもう、死んだ奴らは戻ってこない」
「そう、なのかな。……お前、サッポロには友人がいたのか?」
「いた。思いつく限り、4人ほど。多分、全滅してる」
 雨の音がただただ小屋の中を湿らせていく。ザパドノポリェワは更に縮こまった。左腕を掴む右手に、ありったけの力を込めて。
「結局、私たちは何をやっているのだろうな。ただ無闇に殺し合いをしているだけじゃないか。国の、上の連中に踊らされるままに」
「そうだな。何かを守るために戦ってたはずなのに、いつから狂っちまったのか」
「……お前は、何故軍人に?」
「『なんとなく』さ。友人が空軍に行くってんで、俺もそうする事にしたってわけだ。結局そいつは海軍に転向して、今は空母『陸奥』の航空隊員さ。落とされてなきゃいいが」
「そいつは何に乗っているんだ?」
「Type 33 F/A-21C(33式21号ハ戦闘攻撃機)『剛雷』さ。機体番号は、確か42-8203だったはずだ。機首には203って書いてある。垂直尾翼には烏賊のエンブレムだ」
「こちらで『ビチェヴァニイェ』と呼ばれてるやつかな。何機か落としたはずだが……、お前の友人じゃない事を祈る」
「そうじゃない連中には悪いが、そう祈るよ。さて、次はお前だ。お前は、何で軍人になったんだ?」
 その質問に、ザパドノポリェワは1つため息を間に置いて答えた。
「私の出身がヤクーツクである事は、話したか?」
「ああ。聞いた」
「そのヤクーツクはな、今の首都になってるんだ。革命勢力の本拠地があった場所だからな。私は8年前の11月3日、19歳の誕生日までそこにいた」
 11月3日。かの国の革命記念日に当たる日だ。その日が誕生日とは。アズマは彼女を凝視する。
「革命はヤクーツク大学からはじまった。当時、私はそこの学生で、私の父は公務員だった。革命勢力の格好の的だったんだ。結局私は、革命勢力に命乞いした。私は助かり、家族は友人に殺された。命を助ける代わりに、軍属を強要された」
 ザパドノポリェワは眉間を寄せる。指先が彼女の服に、肌に食い込む。彼にはしかし、その表情を窺い知る事は出来ない。
「友人の情けによって、所属する軍を選択する余地は残された。当時私は航空力学を専攻していて、それが理由で空軍への所属を選択したんだ。適正云々は分からんが、結果的に私は航空学生になった」
 軍用機の操縦をするためには一定以上の技量が必要になる。その技術を習得するために、パイロット志願の者は航空学生になるのだ。航空学生らはそこで適正ごとに操縦に足る機種に振り分けられ、また操縦に足りない者は地上勤務員に配属される。
「戦闘機のパイロットになれば、例え敵国でも民間人を直接殺す事は無いと踏んだ。それを予感したとき、私はパイロット予備生に志願していたよ。そして3年間の訓練を経て、私は実戦に投入されるわけだ」
 口調は尚も穏やかで、しかし自虐のニュアンスは湛えたままだ。
「こんな理由さ。あとは、5年間でスコアを稼いできた。お前を落とせば、丁度50機めの戦闘機だったんだがな」
「……酷いな」
「私もそう思う。よく8年も軍人続けられたと、今更ながらに思うよ」
「確かに。8年続けてこられた理由って何だ? 何かを守りたいとか、そんなか?」
「いや。ただ多忙だっただけだ。5年間、色々な最前線を転々としてきた。私の初陣は、ウランバートル占領作戦だ。それ以来、大規模作戦が行われるたびにそこに向かわされた」
「北海道侵攻にも?」
「いや。その時は別の作戦に参加していた。私がこっちに来たのは今年に入ってからだ」
 なるほど、とアズマは呟く。
659A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/03/12(水) 09:47:15 ID:8rw9l0dB
「お前は?」ザパドノポリェワが訊く。
「何が?」
「軍人をやっている理由だ」
 ああ、と言いつつ彼は体勢を少し変える。
「軍人始めた理由は話したよな。まあ、理由になってないんだけど、『なんとなく』って事だった。航空学校に入ってからは、やる気も出てきたんだけどさ」
 ザパドノポリェワは黙って聞いている。アズマは遠い目を、小屋の入り口に向けた。
「話は変わるけど、俺の親は、在アスタナの大使館駐在員だった」
 アスタナ――5年前の年末、彼女の国に占領されたとある国の首都だ。アスタナを占領された彼の国は総崩れとなり、結局2ヶ月でその全域を占領されてしまったのだった。
「まあ、もう死んじまったんだけどさ」
「アスタナでか?」
「そうだ」
「爆撃か?」
「いや。お前ンとこが攻めて来る、ってんで、脱出しようとしたら、お前ンとこの戦闘機に落とされたらしい」
 そこで彼女は言葉を発する事無く息を呑む。
「軍人を続けようって決めたのは、その時かな。それでも、実際大学の仕事もあったし、結局は攻められるまで即応予備役だったわけだけど。まあ、当時は憎くて憎くて仕方無かったなあ」
「やっぱり、憎かったか」
 その言葉に、少しの違和感を彼は覚える。「やっぱり」?
「お前、何か知ってるのか?」
「……知ってるも何も、私はアスタナ侵攻に参加したパイロットの1人だ。そして――」
 彼女はそこで言葉を切る。逡巡。見て分かるそれは、アズマに重大な告白に対する身構えをさせる。
「アスタナから発った輸送機を落としたのは、私だ」
 両者、押し黙る。一方は落ち着き無く、そして他方は極めて平静だった。
「その……、済まない」
「……いや、そうか、そうだったのか」
 彼は身を捩り、そして視線を二転三転させる。結局、彼がその落ち着きを取り戻したのは発言から30秒は経った時だった。
「……アズマ?」
「ん、だいじょぶ、把握した。……別に謝らなくてもいい。戦争なんだし、そこらへんは割り切れる」
「でも……」
「今更それ嘆いたって、仕方無いだろ。それより今は優先事項がある。気には留めるけど、それ以上の事を今はしないのが吉だ。生き残りたいんならな」
 あくまでも、彼は冷静だ。
「先送りした方が、お互い幸せだ。でも、そうだな」
 彼は笑顔を彼女に向け、言う。
「捕虜になったら確実に基地の外には出られないだろうから、戦争が終わってからだな。一度、一緒に俺の親の墓参りをしてくれ。あとは爺ちゃんたちに挨拶かな。母方のがどっちも健在なんだ」
「墓参り? ……いいのか?」
「いいに決まってんだろ。それとも何だ、自分に墓参する資格は無いとかってわけ分かんない思考に囚われてるんじゃねえだろうな?」
「なっ、なんで分かった」
「思いつめ方見れば簡単だよ。っつーかお前はどんだけ頑固なんだよ」
「頑固って……、いや、確かにそうだが、私はお前の親を殺したんだぞ?」
「だから墓参りしろってんだよ。それがお前に出来る唯一の供養なんだからさ」
 ザパドノポリェワは口を噤む。
 少しの沈黙を挟み、アズマが思い出したかのように言い出した。
「っていうか『供養』って分かるよな? Reading Mass for dead onesだぞ?」
 死んだ誰かのためにミサを読む。それをやれ、と?
「私は聖書の内容なんて知らないぞ?」
 それは司教のする事である。寧ろ教えを貰う立場にある彼女が出来る事ではない。
「じゃなくて。あー、どう説明しようか……、praying for the repose of one's soulかな」
「死者の安らぎを祈ればいいのか?」
「そう。メソッドは俺の国のそれになるけど」
「なるほど。でも……それだけしか、出来る事は無いのか」
「そうとも限らんさ。生きてれば、何でも出来る。ただ、この場では生き残る事が最優先だってだけの話だ。死者を悼むのはそれからでも遅くない」
「……そういうものなのか?」
「そうさ」
 ザパドノポリェワは釈然としない表情で、しかし無理やり納得したようだった。そんな彼女を見ながら、アズマは言う。
660A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/03/12(水) 09:47:51 ID:8rw9l0dB
「お前には感謝してるよ」
「何故?」
「本気で、親の事を悼んでくれてるからさ」
「……私が殺したからな。あの輸送機には、民間人も乗っていたと聞いた。だとしたら、私は初めて直接的に軍人以外の人を殺してしまったんだ。やはり、そうしなければならないと感じている。要するに、義務感からだ」
「そういう自分の思いを言葉にして伝えてくれるだけでも、俺はお前と話せてよかったと思うよ。それにその思いが仮令義務感から来てるんであっても、悼んでくれたのは事実だろ」
「それは……」
「もう、許しちゃえよ」
 その言葉に、彼女はアズマの顔を見る。それに気付き、彼は微笑みかけた。
「もっと自分を許してやりな。そうすれば、お前はもう苦しまなくていい」
 彼女は慌てて視線を外す。少しの逡巡の後、言う。
「こういう苦しみは、甘んじて受けるのが私なんだ。でも……そうだな。お前が示した選択枝も、受け入れたいな」
「そうか。スパスィーバ、オリガ」
「(どういたしまして)」
 沈黙が訪れる。雨脚が強くなった。山の天気は変わりやすいと、改めて彼らは実感する。
「それにしても、お前と敵国軍人同士だっていう事がなんとももどかしいな」
「なんだよ。俺もそれ思ってたぜ」
「そうなのか? ふふっ、私たちは案外、似たもの同士なのかもな」
「気が合うってのは、いいもんだな」
 2人、控えめにひとしきり笑ったところでふと、互いを見合って押し黙った。ザパドノポリェワがゆっくりと瞼を閉じる。アズマはその顔に自らのそれを近付け、そして――軽く唇を重ねた。
661A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/03/12(水) 10:19:12 ID:8rw9l0dB
以上、4話中編

つぎはいよいよ濡れ場ですねえ。長かった…
さて、恒例の用語解説

アクティヴ・レーザ誘導クラスタ爆弾:レーザ誘導爆弾とクラスタ爆弾を足した感じ。ちなみにレーザ誘導爆弾は雨の日に使うと誤爆の虞あり。まあ、クラスタ爆弾だから誤爆の虞もへったくれもないわけだが。
キーロフ級:作中ではフリゲイトだが、現実では原子力ミサイル巡洋艦。ちなみにフリゲイトとは、「対潜・対空作戦能力を有し、揚陸部隊、補給部隊、商船団等の護衛を任務とする艦(Wikipediaより)」の事。キーロフは人名。
エクラノプラン:表面効果という現象を利用した、航空機と船の相の子のようなもの。形は航空機だが、どちらかといえば船に近い。大量輸送や強襲に使えるとされる。波が荒いと運用は困難。
アスタナ:作中での国の名前は不明。現実ではカザフスタンの首都。
(どういたしまして):ロシア語にするの忘れてたorz ロシア語では「パジャールスタ」、「ニェー・ザ・シュタ」、「ニ・ストーイト」、「ヌー、シュト・ヴィ」がこれにあたる。最後のは少し砕けた表現。

完結はいつになるのかな……。あ、多分濡れ場はかなりあっさりするかも。それ期待の人はすみません。
では。ノシ
662名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 12:25:23 ID:apG6Eo8A
663名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 16:02:58 ID:MRBDp49R
>>661
久しぶりすぎてびっくりしましたw
GJ!いいですな。オリガさんデレ期に入りましたか
濡れ場もいいけど、二人がちゃんと生き残ってくれることを期待
微妙に死亡フラ…い、いや、なんでもないっす
664名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 17:12:08 ID:olij+O4I
オリガさんキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
とりあえず懐かしいと思った俺は逝ってよし
さて、今回でオリガさんを親に紹介する段取りが出来たから、後は二人そろって生き延びるだけだ
んで、ここから甘々な空間が創られていくのだな!
そして次回最大の見せ場が来るんだな!
スレをチェックする回数を増やさなければ……
あと、オリガさんがけっこう年取ってて驚いt(キノコ雲が上りました
665名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 01:42:07 ID:oN7g6pDo
某国が侵略などと言う真似をしでかしたのは、
新たな革命が起こって過激な新政権が拡張主義に走っているから、なのな
札幌はこの話では壊滅してるのか……
現実に北海道を取られたら、俺、現地での軍属業務志願するかもな

オリガ姐さんのプロフィール、スターリンエイジの30年代末期に無茶苦茶な状況に翻弄された人たちそのものだな

イカ戦闘機ワロタ
このお話は全体の雰囲気がいいが、こういう小ネタもいい
666名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 02:20:38 ID:J0m0spV1
A/Bの続きキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

お待ちしてました。 いろいろ判ってきましたなぁ。
さ、札幌が……。・゚・(ノД`)・゚・。

そして何というタイミング。
リアルではもう一つ手前のお隣の国が”本気で太平洋進出を目論んで”るそうで。
ttp://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080312-OYT1T00600.htm
笑…えない冗談だよなぁ。

それはともかく、次回はいよいよ… (*´Д`)はぁーん
なるべく早めにお願いしますw
667名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 15:58:23 ID:OxNGgt0b
オバケ屋敷書き上がったので投下します。
668オバケ屋敷:2008/03/15(土) 15:59:12 ID:OxNGgt0b
真っ暗に近い病室の中も、今は静かだ。
オバケ役の方々も近くにはいないらしく、うめき声も壁タックルの音もない。
聞こえる音といえば、バクバク騒ぐ自分の心臓と、
「ぐすっ……、ひっ…、ひっく…」
目の前の女性の泣き声くらい。
「…あ、あn」
「あたしっ!あ、あた、し、…ふたりでっ、きて、友、達…と、来て…」
「あ、はい」
つっかえつっかえ、涙を拭いながら話す。空いている手で、オレの腕をしっかり掴んで。
「は、入っていき、いきな、…り、へん、へんなのに、つか…ま、…って、ひき、引きずって、友達が、先、あのペンの、あの明かり、の、持って、逃…、て…」
うん、うん、なんかだいたいわかった。ちゃんと筋道をあれしてるかわからんが、だいたい来た。
「じゃあ、結局明かりh」
ドン!!!
病室が震えた。
壁タックル。来てる。あっち。すぐ近く。来てる。
「来…」くいくいと袖が揺れる。
「行こ、行こ、行こう?ね?」
「う、うん、うん」
腕を引っぱられて走る。病室の扉、音と反対の方向――
「ガア」
「キャーーーーーーッ!!!!!」
飛び上がった。
悲鳴で耳がいっぱいてか二匹かよオバケが陽動で待ち伏せとか汚いだろがこら…
669オバケ屋敷:2008/03/15(土) 16:00:34 ID:OxNGgt0b
後ろにも一人いた。逃げるなら前。とっさにそう考えた。
掴まれてた彼女の腕を掴み返し、オバケの脇を走る。
抜けた!
あとはひたすら逃げれば――
ぐんと腕を引かれた。彼女の悲鳴。オバケが肩を掴んでいる。
「払え!振り払え!」
一層強く腕を引っ張りながら叫んだ。
彼女が肩を振って、オバケの手が外れた。反動で彼女がぶつかってくる。受け止めたかったが、よろめいてしまった。
そのままの勢いで彼女は走っていく。まだ腕を掴んでいたオレも、つられてよろめきながら走った。


「あ゙〜〜〜〜…」
疲れた。ほんともう疲れた。バクバクし過ぎて心臓の筋肉とかだるくなってるの分かるもん。
階段の踊場にへたり込んで、大きく溜め息をつく。彼女も少し間を開けて座った。
「…あ、あの、腕…」
「あっ?あ、ごめん…」
まだ腕を掴んだままだった。
「あ、でもあたしもさっきぶつかっちゃったし…」
「あ、うん…」
そのまま黙ってしまった。
「…疲れたね」
「…つかれたね…」
どちらからともなく言って、また溜め息。
「……もうやだ…」
ぽつりと彼女が呟いた。
670オバケ屋敷:2008/03/15(土) 16:01:04 ID:OxNGgt0b
「もうやだ……いつまでこんななんだろ……」
声が震え始めている。
…ある種の勇気を振り絞って、オレは聞いてみた。
「あのさ」
「…、なに?」
彼女が顔を上げた。目に溜まった涙が非常階段の明かりできらきらしている。
「…リタイア、しない?」
このオバケ屋敷はかなり広く、見てきたようにオバケ役の人や小物に至るまで、かなり気合いの入った仕様だ。当然最後まで進めない人も出るので、リタイア用の出口が用意されている。
ダチと入る前は先にリタイアしたら昼飯代出せよーとか言い合っていたが、たかが昼飯代、この際だ。
しかし彼女は悲しげに微笑んで、首を振った。
「…できないよ」
「……なんで?」
「………あきらめたら、そこで試合終ry」
「いやいやいや」
最初に会った時点で試合終了ムードだったし。
「…」
彼女はうつむいてしばらく押し黙っていたが、やがてぽつぽつと話し始めた。
「一緒にいた…、先に行かれちゃった友達とね、二人で住んでるの」
ルームシェアをしているらしい。
「ホラーとか好きな子で…、このオバケ屋敷も、面白そうだから来てみようって」
彼女自身は、ホラー系はあまり得意じゃないそうだ。
671オバケ屋敷:2008/03/15(土) 16:01:49 ID:OxNGgt0b
だったらなおのこと、リタイアしないのは何故か。
「リタイアのこと、入口で聞いたんだけど…。友達が『リタイアなんてダメだよね』って言って…」
…アレ、なんだこれ。
「『先にリタイアしたら、なに賭ける?』って、なっちゃって…」
あぁ…。
「…なんか賭けちゃったんだ」
「うん…」
まさしく同類…。
「…なに賭けたの」
「やちん……」
「やちん……、え、家賃!!?」
「来月分……」
「マジで!!?」
「…そうなの…」
膝をかかえて小さくなる。
「ちなみに…普段いくらなの」
「平等に…半分ずつで4万円…」
「…てことは、リタイアしたら…」
「はちまんえん…」
頭を抱えたくなった。昼飯代なんぞ可愛いもんじゃないか。
「ばかだよね、あたし」
自嘲するように笑って、彼女は立ち上がった。目元をごしごしこすりながら。
「素直に怖いって言えばいいのにさ、変に意地張ってこうなるんだもん。自業自得だよね」
正面からオレと向き直り、だからさと彼女は続ける。
「……ここから先は、さ…、……一人で、行くから」
「え…」
「いいのっ!」
なにか言おうとするオレを制して、彼女は気丈に笑う。
672オバケ屋敷:2008/03/15(土) 16:02:35 ID:OxNGgt0b
「ごめんねっ?あたしの勝手な都合でここまで突き合わせちゃって」
一歩、二歩。彼女が離れていく。
「一緒にいて、すごく心強かったけど、あんまり頼ってばっかりじゃだめだし…」
三歩。ぐいと涙をぬぐった。
「…ばいばい。ありがとね」
振り返って階段を下り、走るように廊下を通って見えなくなった。
「…あ……」
なんて引き止めたらよかったんだろう。
一人取り残されたオレは、今更になって考える。
どんな言葉で?どんな態度で?どうすれば彼女を引き止められただろう。
彼女の手をとって、そんなこと気にしないで一緒に行こうと言えたらよかったのに。
もう彼女はいない。オレが引き止めもせずに棒立ちで、見送ってしまったかr
「ガアァ」
「グゲェア」
「キャ――――ッ!!!!」
ドタドタと荒々しい足音をさせて、階段をほとんど這うようにして彼女が戻ってきた。
がっしと服を掴んで早口でまくしたてる。
「ねぇやっぱり今のなし!今のなし!一人じゃやっぱり無理!!!無理だって絶対!!!!!」
「う…うんわかった。わーかったから!」
673オバケ屋敷:2008/03/15(土) 16:03:32 ID:OxNGgt0b
小一時間後。

「あー!やっと出て来たぁ!」
やや甲高い声がオバケ屋敷を出たオレ達を迎える。ウェーブヘアの女の子と見覚えのある野郎が近づいてきた。
「…置いてかないでよー…」
彼女がウェーブヘアに言う。
「ごめんね、ごめんね。気がついたら一人になっててリタイアしちゃったの。約束ちゃんと守るから!ごめんね〜」
「やいコラちょっと来い…」
ダチの首をひっつかんで引きずっていく。
「お前リタイアしたわけ…?」
「スマン…。お前とはぐれてすぐに。テヘ」
「上等だコノヤロウ昼飯よこせ…」
「それなんだが…、別の時でいいかな?」
「あにぃ?」
「いや、待ってる間にその…」
ちらとウェーブヘアを見やる。
「…ちょっと。テヘ」
もう、怒る気すら出ない。
「…好きにしてくれ…」
「ありがとう!やっほう!」
いそいそとウェーブヘアに駆け寄るダチを見てたらものすごく疲れてきた。もう帰っちまおうかな…。
誰かにくいと腕を引っ張られた。そのままオバケ屋敷と反対方向にどんどん引っ張っていく。
674オバケ屋敷:2008/03/15(土) 16:04:04 ID:OxNGgt0b
「あーー疲れておなかすいた…。なんか食べようよ、家賃浮いたしー…」
彼女だった。
「あ、あれっ?友達は?」
「なんかねー待ってる間に声かけられたおにーさんと二人でごはん食べるってー」
振り返って見ると、ダチとウェーブヘアが楽しそうに話している。
「…あのナンパ野郎…」
「だからさーこっちはこっちで楽しもーよ。一人じゃつまんないし」
「…そうだね」
「ふふっ、それじゃあさ…」
初めて心から楽しそうに笑うと、彼女は立ち止まって引っ張っていた腕を離し、すっと手を突き出した。
「ちゃんと手繋いで」
「…うん」
女の子と手を繋ぐのは、実は初めてだ。
「どこで食べよっか」
「…近いとこがいいなぁ、疲れたから」
「あはは」
並んで歩くのも、実はこれが初めてだ。
…こういうことがあるなら、オバケ屋敷も嫌じゃないかも…。


「…先輩」
「なんだ」
「オレ……オバケ役のバイトなんて罰当たりだと思ってたけど…」
「けど何だ」
「こういうことするなら、ちょっといいかもしれないッス」
「だろ。オレ達はな、ただれた顔のキューピッドなのさ」
「………………………………」

終わり。
675あとがき:2008/03/15(土) 16:07:27 ID:OxNGgt0b
序盤はオバケ屋敷の余裕の無い感じを表現したつもりです。
読みづらかったらごめんなさい。
あと実際には行ったことがないので本物のオバケ屋敷とは多分違っています。
(実際オバケが掴みかかってきたら色々問題が起きそうだし)
それでは、失礼しました。
676名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 16:55:30 ID:r//zB2GM
おおGJ!はちまんえんは確かにキツイ…
しかし友人即リタイヤしてて笑ったw
こういう形の馴れ初めもいいね
677名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 17:00:26 ID:Yzl385qr
GJ!面白かったよ!
気丈にも一人で行った彼女が速攻で戻ってくるなんてリアルで笑った。
リタイアした友達組が出来てるのもいいね。
そして、ただれた顔のキューピッド達にGJだ!
678名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 18:25:52 ID:gVEZGac2
おお、コレ待ってた
GJ!
そしてラストのキューピット吹いたw
679名無しさん@ピンキー:2008/03/16(日) 00:58:06 ID:PDvRI7pN
いいね、GJだね
680名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 13:34:34 ID:5Y2C6VGD
いまさらだが、A/Bの人の話って
二人っきりになるっていうより
なんで二人っきりになったかって解説のほうに
力入っててない?もう少し自分以外の人を意識して欲しい。
一々解説入れるくらいなら単語省くとか。
「僕の考えた架空戦記」分なんていらないよマジで。
こういうのに反応するのは>>666みたいな突然リアル話や
兵器についての薀蓄垂れ流すキチガイみたいやつだけだし。
こういうのはほっとくとスレ腐らせるから…
681名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 17:42:41 ID:PGQv7xS7
>>680
頷ける部分もあるけど、
>>こういうのに反応するのは>>666みたいな突然リアル話や
>>兵器についての薀蓄垂れ流すキチガイみたいやつだけだし。
こういう喧嘩上等!みたいなレスは遠慮したら?
スレの雰囲気を悪くするのが目的じゃなかったら。
682前スレ678:2008/03/18(火) 13:21:46 ID:7V6UxXUb
GJです。
何とかとれた有給に久しぶりにパソコンをいじっていたらスレタイを発見し、見る見るうちに鮮明に蘇える、半年前の「来週投下します」の一言。
ぎゃあああああっ、半年も放置してしまったっ!ごめんなさーーーーい!急に仕事は入るわ親父が死にかけるわでごたごたしているうちに長い間忘れてしまい・・・ご希望があれば、早めに書き上げます・・・
683名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 07:33:28 ID:G4z15nFG
w-kt-k-
684名無しさん@ピンキー:2008/03/20(木) 21:21:15 ID:2brhyKts
投下おねがいします!
685名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 22:02:00 ID:0bF2hJ5v
保守
686名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 22:47:16 ID:gZSrVjn0
そろそろ次スレか・・・。
最後はまた二人っきりなりそうだな>>687
687名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 12:26:47 ID:WjZf8pDK
ごめん俺は無理そうだから代わりに>>689頼む・・・
688名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 13:14:45 ID:4pcJ2kWq
>>680
後半の煽りはともかく、
確かに架空戦記っぽい文法で長々書くのは
空気読めてないね。

最後のもレスの半分以上使って年表とか或いはいきなり司令官視点にでも変わって
延々戦争終わるまでやらかしそうだ
689A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/03/25(火) 17:41:40 ID:Pn9vtJdf
厳しいご意見ありがとうございます。確かに、前半は蛇足・・っていうか頭に別な体が付いてる感じですね。申し訳ない限りです
最後は蛇足にならないように気をつけますorz
690名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 20:34:07 ID:Vi3ZL85Z
俺はこういうの好きだけどね。
691名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 21:21:37 ID:98GJ48IR
読み応えがあっていいと思うんだが。まあ好みは人それぞれか
692名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 22:26:36 ID:Nkk9KSth
俺も嫌いじゃない、スレとしてはちょっと違うと思うが。
架空戦記でエロパロスレってないんだっけ?
693名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 23:38:18 ID:R0QYj0zY
>>689
楽しみに待ってるよ
694名無しさん@ピンキー:2008/03/26(水) 16:15:09 ID:JvRe/Ct+
>>692
戦火スレが一応ある。
695名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 12:06:50 ID:7M7kNT6k
俺も嫌いではないがなあ。

つーか、感情的には680のレスの方が嫌いなんだが。
主張の内容はさておいても言い方が最悪だ。お前の言い草放置しておく方がスレが腐るわ。
696名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 12:08:40 ID:SKJuVMXP
触れた時点で同類
697名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 01:25:47 ID:QCRU3SGL
>>695
同意
698名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 10:46:40 ID:lYhJNg1f
699A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/02(水) 15:20:06 ID:UghIGqhB
>>660の続きです。ようやく完結。長かった

 重ねた唇を互いに離し、ふと2人はどちらともなく笑い始める。
「変な事したら、殺すんじゃなかったのか?」
 アズマは言いつつザパドノポリェワの左肩を抱く。それを拒みもせず、彼女は柔らかい口調で言った。
「……あれは現刻を以て解除、だ。中尉、復唱せよ」
「りょーかい。現刻を以て当該宣言を解除」
「復唱は正しい」
「どうも、大尉殿」
 再び唇を重ねる。互いに互いの口腔を吸い合い、舌を絡め合う。唾液は口から零れ、服に、レスキュー・シートに滴っていく。互いの味に、次第に表情が惚けていく。
 呼吸のために口吸いを中断し、ザパドノポリェワは大きく息を吸った。そのタイミングを見て、アズマは彼女の口の周りを舐め始める。
「あ……アズマ……?」
「すげーべとべとだぜ。涎で」
 萎縮する彼女の肩。暗がりで顔まで見えにくいが、しかし鼓動だけは誤魔化す事が出来ずにその羞恥を彼に明白に伝えてしまう。舌は口の周りから首筋に移る。
「ひゃんっ!?」
 首筋が収縮し、肩と首に挟まれた彼の顎が悲鳴を上げる。感覚の上ではあるがやっとの事で脱出した彼は呟いた。
「可愛い声だな」
「……い、言うな」
「何でだよ。いいじゃん、もうこんな事やってるんだし、恥ずかしがる事もあるまいて」
「うう……」
 彼女は潤んだ目で彼を睨む。迫力は無いが、その表情は訴える。色々と。
「……何だその、売られていく子牛みたいな目は」
「どんなのか分からんが、お前が変な所を舐めるからだ」
「……あーもう、可愛いなおい」
 アズマは彼女を抱きしめる。そしてそのまま、首筋に舌を這わせた。
「ひゃわああああぅぁああ……」
 体中を羽ブラシで撫でられる。まるでそんな感触。自分でも情けない悲鳴を上げつつ、しかし反面では酷く心地良い。
 アズマの右手が胸元に来る。探るように触っていき、襟元を確認するとそこからファスナの摘みを持ち、引き下げた。フライトスーツの胸元が開いていく。
 鳩尾の当たりまでファスナは下げられた。耐熱服の代わりに、毛糸の薄手のセータが現れる。それは湿っており、体温である程度温まっていた。気化熱が彼女の背筋を震えさせる。
 彼は何も言わず、首筋から唇に位置を移す。再び、吸い付く接吻。彼らは貪るように、いや、正に互いに貪り合っている。
「寒いか?」
 アズマは唇を離して訊く。息が白くなった気がした。
「少し」
「暖めてやるよ」
「ふふ、期待していいのかな」
「いいとも」
 セータを、下のシャツを巻き込みつつ捲り上げる。飾り気の無い下着。だがそれが彼女をそのまま言い表しているように感じて、彼は興奮する。
「ちょっと背中上げてくれ」
「……取るのか?」
「ああ」
「……思うんだが、何故男は乳房を求めるんだ?」
「知らね。あれじゃね? 男は母性を求めるとかって。母性の象徴であるおっぱいでその欲求を満たすとか」
「そうなのか。待ってろ。上げる」
 彼女は腹筋に力を入れ、背中を少し上げる。すかさずそこに手を滑り込ませ、彼はホックを少し詰まりながらも外した。
「お前、誰かのブラジャを外した経験は?」彼女は問う。
「無いよ。お前のが初めてだ」
「その割には、早いな」
「構造が分かれば外すのは簡単だろ? そうじゃないと、下着として成立しない」
 言いつつ、彼はブラジャをずらす。重力に従ってその形を変えるそこそこの大きさの乳房は、寒さか羞恥か、小刻みに震えていた。その震えを収めるように、彼は左手で右の乳房に触れる。
 彼女にとって、その感触は未知ではないが既知のものでもなかった。自分で弄った事はあれども、他人にここまで濃厚に触れられた事は未だかつて無いと彼女自身記憶している。
 乳房は身体の他の箇所よりも皮膚が薄く、よく静脈血管が透けて見える。それは同時に、神経が集中していなくとも敏感な場所である事を示している。
 下から上に這うように揉む彼の左手の感触に、体中が緊張した。それを解すかのように、彼は口付け、そして乳房を執拗とも言える手付きで揉み始める。
 乳房の先端、乳頭が、刺激によって次第に勃起する。本来授乳のために起こるこの現象は、血流の集中を伴って性的な刺激として脳は解釈する。息が荒くなる。
 アズマは口から顎、首筋、鎖骨と順に舌で這いずり回り、彼女の左の乳房に到達した。彼の舌は乳輪の周りを1周し、そして乳頭に着陸する。息が強く吐かれる。
 皮膚特有の柔らかさを維持し、しかし形を容易に変えようとしない乳頭は、それが授乳のためという事もあり吸い付きやすい。彼は更に刺激を与えていく。甘噛み、舌で転がし、口全体で吸い上げる。
700A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/02(水) 15:20:50 ID:UghIGqhB
「ア……ズマぁ……」
 切なげな、やもすればうわ言のようにも聞こえる声は乳房への刺激によるものだろう。彼はその求めに応じ、乳頭から口を離すと何度目かの口付けをする。呼吸のため両者が口を離すと、唾液がつり橋を形作った。
「お前、経験者か?」
 ザパドノポリェワは熱っぽく帯気した声で訊く。
「いや、お前が初めて。……どうした?」
「いや。……なんて言えばいいのか、分からない」
「何が?」
「この……、胸の感触が……」
「胸の感触? こんなんか?」
 アズマは左手を少し激しく動かし、間髪入れずに舌を乳房に這わせた。
「ひゃうん!」
 油断していたのだろう、大きい声で悲鳴を上げる。アズマにとってそれは悲鳴というより嬌声ではあったが。声は、彼を更に興奮させるのに一役買う。口つきは更に激しさを増した。
 音は水分をしたたかに湛えている。乳房は形を変え、戻り、震え、揺れる。素早い思考が出来るように訓練されているはずの戦闘機パイロットはしかし、考えが纏まる事は無い。
 不意に、口を離した彼が問う。
「自慰は、した事あるか?」
「一応、ある」
 想像出来ない。しかしそれを顔に出さず、彼は続けた。
「胸の感触がそれに似てるんなら、『気持ちいい』だと思うぞ」
 言い放つや否や、彼は反論もさせぬ勢いで彼女の唇を奪う。そして彼女を抱きかかえ、地面に倒した。まさか。彼女は思う。
「……暖めるのか?」
 恐る恐るといった口調。それがたまらなく愛おしい。彼は肯定しつつ、下半身に手をかけた。ズボンのホックを外し、ファスナも開け、下着ごとずり下げる。
 顕わになる秘所。しっとりと湿っているのは、雨のためかはたまた。彼は今一度彼女に唇を合わせ、片手で乳房を、他方で秘所に触れた。
「うんっ、ん、はぁん……」
 喘ぎ、快感に身を捩る彼女。唇を離し、体位を変える。彼女は乳房の向こうに、彼の顔を見る。
「……何を」
 訊くか訊かないかのタイミングで、彼は彼女の秘所に唇を這わせる。陰唇を啄ばみ、舐め、陰核を噛む。その度に、彼女は昂ぶり体を震わせ、そして大声で啼いた。
「このくらい、かな」
 彼が母語で呟く。その意味を解する事無く、彼女は声の方を見る。
 彼の軍のフライト・スーツはつなぎである。その下着として、上下に分かれた耐寒服を着るのである。
 彼はフライト・スーツを上半身のみ脱ぎそれを、下半身を覆う耐寒服とトランクスと一緒にずり下ろして自らの陰茎を露出させた。
 明度の低い事が、彼女にとって幸いした。彼女は勃起した陰茎を見た事が無い。見たら怖気づくかもしれなかったからだ。
 反り立つ怒脹が彼女の秘所に触れる。両者、身震い。それも一瞬の事だったが、しかし両者の覚悟はそれで決まった。
「痛かったら、どこでもいい、俺のどこかを噛んでればいい」
「……わかった」
 彼は怒脹を腟口にあてがい、少し前進した。
「んぃ……っ!」
 こらえる声。予想外だったのだろう。彼は進入を止め、陰核を弄り始める。
「大丈夫じゃないっぽいな。でも、オリガ、引き返せないからな。もう」
「……そんな、つもり、こっちにだって、っ、ない……」
 少し動くだけでも辛い。闇の中に微かに見える表情がそう物語っていた。彼は何度カの口付けを彼女にする。彼女は抱き付き、彼の右肩に歯を立てた。
「よし。痛みに備えろよ?」
「ふあー」
 「Да」とでも言ったのだろうか? 返事を確認し、彼は怒脹で腟を一気に貫く。
「ふぐんっ!」
 くぐもった声と共に、右肩に鋭い痛み。必死で絶えるザパドノポリェワ。食い千切られそうなほど強い顎の力と陰茎を締め付ける万力のような圧力、そして快感に彼は顔を顰めた。
 彼女が感じる痛みは如何程か。彼は思う。それを少しでも共有せんがために、彼は彼女に自らを噛ませたのであった。
701A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/02(水) 15:21:16 ID:UghIGqhB
 どれくらいその状態でいただろうか。緊張が解かれ、口が肩から離れた。犬歯のあったところから血が滲む。2人は見詰め合い、互いに口付ける。
「……動けるか?」
 彼女が苦しそうに訊く。
「なんとか、な。お前は?」
「もう、少し、猶予をくれ」
 彼女は深呼吸を何度かすると、頷いた。それが合図。彼は埋めた自身を引きずり出す。挿入れた時とは異なる快感だ。先程まで射精を意識していなかったが、動かすとその感触に全身が集中する。
 他方でオリガは未だに痛覚の方が勝っているように彼は見た。無理も無い。処女の証を削ぎ取ったのだから。
 しかし、彼は止まらない。確かに小刻みとも言える動きだが、上り詰める快感は耐え難いものだ。
「んっ、あぅっ、くぅ、ふ、ふあ、あっ、あん」
 リズミカルな運動をしていく。次第に腰が止まらなくなっていく。動きも大きくなっていく。理性が快感に負ける。溶けていく。ずん、ずんと突く動きに、彼女もつられていく。
 V1。これ以上速度を上げたら、滑走路内で止まる事は出来ない。そんな速度。
 まるで滑走。全力で腰を前後する彼は、幾何か残っている理性の中でそう思う。早く空に昇りたい。その思いでスロットルを「A/B」の表示にまで押し込む。そんな状態だ。
 彼女の声に鋭さが無くなる。艶を帯びて吐息しつつ、こちらもテイク・オフ。
 VR。操縦桿を引くのに最も適した速度だ。機種が上を向き。ギアが大地を離れる。
 腰の動きは更に速くなる。既にそこに止まる余地など無い。動きに合わせて揺れる乳房に食いつく。乳頭に歯を立て、そして舌で転がす。腟の力が強くなる。
 彼女ももう止まらない。こちらも急速に空に向かう。
 V2。安定して飛べる速度。しかしスロットルは戻さない。
 彼らはどちらとも無く口を付け、吸い合う。喘ぐ声はくぐもり、酸欠に深く息を吸い、互いに互いへと溶け合うかのように動きを、鼓動を、呼吸をひとつにする。暴走。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ……」
「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ……」
 腰が震える。陰茎に収縮していた快感のみの感覚がその外へと出ようとする。それはまるでビッグバン。全ての光が全てを白く染め上げていく。
 彼は残存の理性を総動員し、右手で彼女の陰核を抓った。
「は――――――――」
 高度制限解除。
 声を出す事すらも覚束無い、意識の一点集中。全身の筋肉が縮まり、見開いていたはずの目は何も捉えない。性器に集中した意識が、全身を飛び抜けていく。
 腟の動きに陰茎が押し戻される。腰を引く運動の最中に起こったそれは、彼の怒脹を容易に腟外に押し出す。暴れる怒張が白濁を吐き出し、白濁は放物線を描いて飛んでいく。
 収縮が開放される。意識を白が埋め尽くし、熱が陰茎を貫いていく。その現象に幾度と無く経験した快感を見出し、彼は腰を崩した。
「――っあああああああ――――――!」
 一瞬の間を起き、全身を流れる電流に体を反らせる彼女に白濁が降り注ぐ。
 陰唇、陰毛、下腹部、腹部、乳房に着弾した白濁は、彼女の敏感になった体に如実に熱を伝えた。これが、彼の熱なのだ、と。
 ふら、と彼が脱力し、彼女の隣に倒れ込んだ。両者、肩で息をする。いち早く理性を取り戻したアズマは、ザパドノポリェワに口付ける。彼女も口付けを返し、自らが噛んだ彼の右肩を舐めた。
 そこで、彼らは意識を手放した。
702A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/02(水) 15:24:07 ID:UghIGqhB
  *  *  *

 朝、アズマは未だに疲労が溜まっている体に鞭打ってのそのそと起き上がると、横にいたはずのザパドノポリェワがいなくなっていた。
 何事か、と瞬時に目を覚ます。彼は彼女の持ち物一式が全て無くなっている事に気付いた。
「オリガ!? おい、オリガ!」
 ふらつく足に叱咤しながら彼は小屋の隅々と周辺を見て回った。しかしどこにも彼女はおらず、ただ雨だった名残として陽光に輝く草木と水を湛えた落葉のみがあるだけだった。
 再び小屋の中に戻る。自分が寝ていた位置を隈無く調べる。すると、見慣れない紙が落ちている事に気付いた。彼はそれを拾う。どうやらチェック項目を書く紙のようだった。
 戦闘機のパイロットは機体のチェックやその他必要事項を確認する際に使用する紙を右太ももの辺りに装備するように義務付けられている。
 その紙にはキリル文字の文字列が印字されており、その裏に手書きでラテン文字が書かれていた。
 「アズマへ
 この手紙を見ているという事は、もう私はお前の隣にはいない。2、3言いたい事を書き連ねる。
 服を着せておいた。私は事情があってとある部隊に保護される運びとなったが、心配しないで欲しい。戦争を終わらせるため、私は本国へと帰る。
 そして、いつか必ずお前の前に生きて戻るつもりだ。
 生き残れるのかどうか、確実に言う事は出来ない事は分かるだろう。だが、私は希望を捨てない。初めて私を愛してくれたお前の元に戻る日が来る事を切に願う。
 万が一私が死んだら、お前にその一報が行くようになっているが、それを聞く事が無いように祈っていてくれ。
 そちらからの連絡は不可能だと思う。言葉を伝え合う事が出来ないのはもどかしいが、互いに我慢しよう。それと、お前も生き残ってくれ。頼む。
 何ら声をかけずに出掛ける私をどうか許して欲しい。最後に、そういえば私から言っていなかった言葉を送る。
 Я ЛЮБЛЮ ТЕБЯ
 Орига Николаиевна Западнополева」
 彼は手紙を読み終える。声が出なかった。しかし、理解はした。不本意ではあったが。自分の目の前から彼女がいなくなる事を納得してしまうのは、彼自身癪でもあった。
 最後の一文。「Я」は「私」、それ以外の単語は分からなかった。しかし――
「……俺だって言ってねえよ。……馬鹿」
 おもむろに彼は小屋の外に出る。そして北に向かって立ち、大きく息を吸った。
「この馬鹿オリガ――! 俺だってお前に言ってない言葉が沢山あんだよ――!」
 そこで彼は目じりに熱を感じる。しかしそれを敢えて無視して叫ぶ。
「ぜってー死ぬんじゃねーぞ――! 俺だって何やったって生き残ってやるからな――! 覚悟しとけ馬鹿――! 愛してるぞオリガ――!」
 彼は少し噎せ、しかし清清しい顔で小屋へと戻っていった。さあ、生き残らなければ。
703A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/02(水) 15:24:33 ID:UghIGqhB
  *  *  *

 戦争は北海道侵攻から4年で終結した。かの国の軍は補給路の寸断や軍用船舶の不足により北海道に足止めとなり、降伏。北海道の復興が終わり次第、帰還する事になっている。
 かの国は周辺各国による共同戦線と、北海道で鹵獲された戦略ミサイル潜水艦から発射された弾道ミサイルによる攻撃で戦力と領土を次々に失っていった。
 結局、北海道侵攻から5年後には軍部の一部が先導したクーデター軍が政権を打倒、新たな元首が立ち、かの国の領土拡大政策は終焉を迎え、戦争は終結した。
 現在、両国は講和会議の準備に追われている。

 ある日、かの国から奇妙なフライト・プランが提出された。ハバロフスク発三沢基地着というそれは物議をかもしたが、最終的には許可された。
 ハバロフスクからまっすぐ三沢基地に来るという機種は、J-27A「ジュラーヴリ」戦闘機。コールサインは「ナデズダ」だという。
 同機は既に領空に入っており、あとは陸奥県上陸の前にこの国の戦闘機によって機種の確認、警戒、そして護衛をする手筈になっている。
 東遼介空軍大尉は40式22号イ戦闘機の機上の人になっている。間も無く、ターゲット・イン・サイト。
「レインボウ1よりヘッドワーク、ターゲット・イン・サイト。機種、J-27A。国籍確認。1機。ヘディング・100、スピード・240、アルティトゥード・15」
『機種、J-27A、1機、方位100、速度240、高度1500。共通周波数で交信せよ』
「了解」
 彼は無線のスイッチを「警告」に入れ、その周波数である事を確認して話しかけた。
「J-27Aパイロット、『ナデズダ』、この無線が聞こえるか」
『ナデズダ、感度良好。聞こえる』
 女性の声が聞こえる。不意に、アズマの声が上ずった。
「周波数を268.2に合わせよ」
『了解』
 彼も周波数を合わせ、そして再び交信する。
『ナデズダより、周波数268.2で交信中』
「リーディング・ユー・5(感度良好)。こちらは三沢基地所属の航空隊である。自分のコールサインはレインボウ1。貴官の所属と階級、名前を報じられたし」
『こちらは元ヤクーツク航空基地所属、オリガ・ザパドノポリェワ大尉だ』
 暫く、声を出せなかった。
『おい、アズマ?』
 僚機からの声で我に帰る。
「あっ、ああ。ザパドノポリェワ大尉、入国を歓迎する。エシュロン隊形にて三沢まで誘導する」
『了解。入国許可、感謝する』
 彼女の機には増槽が付いているだけで、ミサイルや爆弾は取り付けられていない。その様子を見て、彼は安堵する。
『ナデズダよりレインボウ1、1つ質問がある』
 不意に入った通信に、彼はどぎまぎしてしまう。
「なっ、ホワット?」
『そちらの隊に、アズマという者はいるだろうか?』
 鼻の奥に、つんと来る感覚を覚える。彼は出そうになる涙をこらえ、鼻をすする。そして、意を決して答えた。
「俺だ」
『え?』
「俺がそうだ、オリガ」
 今度は向こうが絶句する番だ。彼は彼女の機を見る。ヴァイザを上げ、呼吸用マスクを取った。目が合う。そんな気がする。
『……お前、なのか? アズマ』
「そうだ。3年ぶり、かな?」
 向こうでもヴァイザを上げ、マスクを取ったようだった。距離があるから見えにくいが、彼女だった。
『……幻じゃ、ないよな?』
「当たり前だ。……ウェルカム・バック、オリガ」
 その言葉に、彼女は息を呑み、そして返答した。
『バーグ! アズマ、ヤー・リュブリュー・ティービャ、アズマ! こんな所で会えるなんて!』
「なんてこった! オリガ、お前だよな!? 本当に帰ってきやがった!」
『なんだよ、何が起こってるんだ?』
 僚機がわけも分からず回線に割り込んでくる。上機嫌にアズマは返した。
「再会だよ! 俺とオリガの! イヤッホ――――――!」
 アズマの乗る機が曲芸飛行を始める。それに合わせてザパドノポリェワの機も曲芸飛行を始めた。
『なっ、おいお前ら! 何やってんだよ、作戦中だぞ!?』
「うるせえ! この嬉しい曲芸をやらないでいつやるんだよ!?」
『ちょっ、……あーもう、怒られても知らねーぞ!』
 3機の編隊飛行が東の空に向かっていく。2機は上昇と下降、ロールとストールを組み合わせて、その軌跡を空に描く。陽光を反射して機体がきらきら輝く。
 空はますます高く、太陽は燦燦と照らし出す。陽気な曲芸飛行はさながら妖精のようで、2人は高らかに笑い合った。
 2機は空気を切り裂いて進んでいく。2人の未来へと。それを目指し、天翔けていく。アフタ・バーナを焚いて。空へ。
704A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/02(水) 15:42:13 ID:UghIGqhB
ご拝読ありがとうございます。やっと完結いたしました、A/B。
冒頭の蛇足が物議をかもしていますが、それに関しては素直にスレ違いであると認めます。なにやってんだ俺
フォローくださった皆々様、ありがとうございます。しかしやはりスレ違い、自重し切れなかった事をお許しいただきたい
あとエロ薄いのは仕様です。むずいし

最後の用語解説になります
・レインボウ1よりヘッドワーク、ターゲット・イン・サイト。機種、J-27A。国籍確認。1機。ヘディング・100、スピード・240、アルティトゥード・15
 これを分かりやすく言うと、「レインボウ1より三沢司令部、目標目視。機種はJ-27A。国籍確認。1機。目標の方位は真北から100度、速度は240ノット、高度は1500フィート」という事
・Я ЛЮБЛЮ ТЕБЯ:「ヤー・リュブリュー・ティービャ」。意味は、推して知るべし
・Орига Николаиевна Западнополева:ザパドノポリェワの名前をキリル文字で書くとこうなる。因みに「大尉」は「Капитан」
・エシュロン隊形:斜めに並んで飛行する編隊。図にすると↓
     ▲
   ▲
 ▲
こんな感じ。逆もあり

それでは改めて、お読みいただきありがとうございました。また2人きりの話を書きたいと思います。今度は色々と自重して
705名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 16:24:14 ID:DB7et5vP
GJ!
でもセクースシーンの軍事用語の比喩になんか吹いてしまったwww
706名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 17:52:25 ID:IG8CQErr
>>704
本編楽しませてもらったよ、GJ。

しかしながら解説が一つ間違ってるので指摘させてもらう。
アルティトゥード(altitude)はアルティトゥード1で高度1000ftだから、アルティトゥード15は高度15000ftだよ。
ちなみに1ftはだいたい30cmだから、高度1500ftは高度450mくらい。飛行機ってのはだいたい高度10000ft(3000m)飛ぶから、結構な低空飛行だね。
707名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 02:15:50 ID:+KP8pvzQ
>>704
GJ! ハッピーエンドで良かった!
ちゃんと”離陸”(性的な意味で)できて良かったw
708名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 10:04:37 ID:SLyP+Qoh
A/Bさんお疲れさまでした。
次回作期待してます

しかしV1吹いた。
なまじかじって知ってるだけに
そういう表現もアリだと・・・あぁんもう脱帽だ!

また規制で書きこみできなくて
モチベーション下がってたけど
みなぎってきた。

頑張って続き書いてみる
当初よりえらい長編になっててびっくりだけど頑張る
A/Bさんありがとう。




僚機が口笛を通信に入れてちゃちゃいれなかったのは
ベースが米じゃなく日だからかと納得。

基地に着いたらいろいろあるんだなぁとか
お墓参りとか
妄想が止まらないです

ありがとう。
709A/B ◆iok1mOe6Pg :2008/04/03(木) 14:58:26 ID:9czNn4bx
感想感謝です

っあー、やっちまったorz
ALT15は>>706氏の指摘の通り15000ftです。ゼロ一個足らなかったとかw
保管庫に入れるとき修正しときます
710名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 14:40:50 ID:aQYh4Bq4
A/B氏GJ!!
再開して文字通り舞い上がった二人の曲芸が目に浮かぶぜ
エロシーンは確かに薄い、でもこれまでの過程があるから無問題!
次回作も期待しつつ、その後のイチャラブも希望します!
とりあえず、お疲れ様でした


それと、もう495kbだから次スレ立てないと
711名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 14:46:32 ID:aQYh4Bq4
立てられなかったorz
誰か建てて
712名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 14:53:59 ID:M9WeYqxv
たててきました

女の子と二人きりになってしまった 3回目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1207288396/
713名無しさん@ピンキー:2008/04/04(金) 19:36:59 ID:tGtDzU62
>>712
714名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 11:06:25 ID:SiHBDz9C
うめようか
715名無しさん@ピンキー:2008/04/05(土) 13:19:31 ID:iKYA1MsQ
チョーヤ梅酒紀州
716名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 00:10:12 ID:DtSxr4tM
「女の子と二人きりになってしまった」というのは、果たしていかなる状況なのか?
「なってしまった」とあるとおり、その状況は偶発的に発生しなければならない。
また、「女の子」という語を使っていることから、互いに面識がないか、あっても名前を知っている程度とみて間違いないだろう。
では、「互いに面識のない女の子と偶発的に二人きりになってしまう」状況とは何なのか。
一番身近にある例としては、エレベータに男女一人ずつで乗り合わせた場合だろう。
しかしそれだけでは、物語は発生しない。
その状態を少なくとも一時間以上保てば物語は発生しうるし、状態保持の時間が長ければ長いほどその確率は高まる。
エレベータで一時間以上二人きりという状態を保つためには、エレベータは扉が開かないまま止まらなければならない。
さらにいえば、電気系統の故障で外部と連絡が取れない場合、より急速に二人の距離は縮まるだろう。

「面識のない女の子と二人きりになる」ためには、このように何らかの事故を起こすという手法がある。
717名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 04:09:53 ID:YNlMTdRP
>>716
「命の危険」もある程度関わるな。
吹雪の雪山の横穴、
地震発生直後のガレキの下のわずかな隙間、
ビル火災、
鉱山の採掘坑や廃坑での落盤事故、
大海原のド真ん中で推進力を失い漂流する船舶、
セスナが砂漠に墜落、
宇宙船の小型救命脱出艇、
事故で封鎖された海底基地や宇宙基地、
沈みゆく潜水艦、
漂着した無人島、
戦場で敵陣深くに取り残された、
etc etc...

命の危険が伴わないならば、
閉館間際の図書館の片隅、
雨宿りした掘っ建て小屋、
etc etc...

たぶんまだまだある。
718名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 16:52:05 ID:QNzIPUEi
二人きりってのはまだまだ可能性を秘めてるってことか……なんだかワクワクしてきた^^
719名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 16:56:03 ID:uLGAfLRZ
とりあえず埋め
720名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 16:57:57 ID:ufCSVEUn
まだ>>1にある大地震ネタがないことに気付かされた
誰かかいてくれ
俺まだ執筆中だから
721名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 01:04:52 ID:/YBE416c
>>717
少し前に地球に残された最後の一人、みたいな洋画があったけど、
地球に残された最後の”二人”ってネタもありだよな。
他にもローカル線とかで車両に二人きり、とか
学校や建物でまだいるのにカギかけられて二人きりっていう王道も。
まだまだネタはありそうだw

> 宇宙船の小型救命脱出艇
この関連で、救助されるまで光速or亜光速航行を使ったので、
ウラシマ効果で地球に帰ってきたら既に家族や友人達は…
「本当に二人きりになっちゃったね…」
なんてネタ提供を考えたが、発生する時差がどれ位になるかがわからんかったw
722名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 02:29:56 ID:4CI0pDkg
「静かだね…」
「ああ」
夏休みのため一時的に戻ってきた俺は、地元のお祭りの最中、幼なじみの菜々子に出逢った。
高校までは腐れ縁だった俺たちだったが、俺が都市の大学に進学したため、地元の短大に入った菜々子とは離れ離れになってしまっていた。
「大学、どう?友達とか…出来た?」
「ま、それなりだな」
「そっかぁ…」
自分でいうのもアレだが、持ち前の才能なのか、入ってすぐに数人は出来た。サークルや自治委員など、上級生とも触れ合え、色々と役立っている。割と充実した大学ライフなのかもしれない。





浴衣の女の子と二人きり……いいなあ。
相手がツンデレっぽくてもおもしろいかも。

それでは次スレの発展を祈って。
決して二人きり、もしくは独りにならないように……。
723名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 02:42:44 ID:4CI0pDkg
こんぐらいじゃ埋まらないか。
早く寝たいのでAAで。


  ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
     ̄ ̄ ̄

  ( ゚д゚)
_(__つ r ,⌒⌒^ヽ
  \ ,r(  ⌒  ヾ )、ドガァァァン...
    (、 r   ' ィ ゙ )




  ( ゚д゚ )
_(__つ_つ





ってこれで埋まらなかったらどうしよう。



  ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
     ̄ ̄ ̄

  ( ゚д゚)
_(__つ r ,⌒⌒^ヽ
  \ ,r(  ⌒  ヾ )、ドガァァァン...
    (、 r   ' ィ ゙ )




  ( ゚д゚ )
_(__つ_つ
724名無しさん@ピンキー:2008/04/07(月) 03:28:07 ID:Jl60xe/o
まだ埋まってないようだな
( ゚д゚ )<こっちみんな
725名無しさん@ピンキー
>>721

そっちに行くと、方程式が冷たくなったり
トップを狙わなければいけなくなったりする。