ツンデレのエロパロ6

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491名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 14:25:26 ID:Yw059DdE
ツンデレ、素クール、姉、人外娘、フタナリ、百合、身長差、孕ませ、甘えん坊に対応した俺参上。でも全部ラブラブ前提な。
492名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 14:41:37 ID:J+xa6RvC
自分の属性を披露するスレはここですか?
493名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 00:15:33 ID:XrnaARgO
このスレを見た女の子がツンデレになる確率があがるじゃないか

リアルツンデレってどんな感じでどのくらいいるの?

俺の周りは天然かツン100%しかいない…
494名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 03:28:46 ID:TmlCmI+6
そもそもリアルツンデレのデレの部分を見るためには相手に好感を持ってもらわないといけないわけで・・・
495名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 14:03:20 ID:7swPuRX9
ツン100%を惚れさせれば立派なツンデレに!

そこが難しいとかいわない(´・ω・)
496名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 18:08:07 ID:SjBwouH/
ツン100%って完全に無視されてない?笑
どんなに第一印象が悪くても、嫌われてる=気にはされてる と解釈できるから希望はあると前向きになれるかもしれんが…100はちょっと…(´Д`)

とりあえず褒めれば引っ掛かる所が出来るか?w
497名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 18:51:02 ID:YioDLPbs
>>493
>ツン100%
それは嫌われてるだけじゃ・・・
498名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 23:22:34 ID:iBDuew/M
ツン100%を好むってかなりのドMじゃないかwww
ただのMじゃ苦痛で耐えられないだろw
499名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 06:50:12 ID:aV43IrXM
500名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 11:53:13 ID:ofA93lNb
ツン100%=嫌われている?
逆に考えるんだ。まだフラグの立て方が足りないだけだと
501名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 12:45:54 ID:RvqbzcIp
ツン100%に言うこと聞かせるところがミソ・・・あれ?なんか違うか
502名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 12:48:05 ID:Fnb6+dti
>>501
それはツン堕ちとか調教とか言われる類のものでは。
503でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2008/01/13(日) 22:21:25 ID:IS9z2/tp
SS第7話投下します。
504Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:22:01 ID:IS9z2/tp
 「飯できたぞーっ」
 凍夜お手製のハンバーグが出来上がり夕食の時間となった。
 克行と観月がホクホクじゃがいもとハンバーグが盛り付けられた皿をテーブルに運ぶなか、玲奈と緋莉に
菜月はイスに腰掛けている。
 買い物班だった2人は何が起こったかは知らないが、雰囲気で悟り声をかけるのを止めた。話しかけたら
それが追い詰めることになってしまいそうだから。
 「いいかみんな?存分にこの超絶品ハンバーグを噛み締めるんだ。そして俺を崇めるんだ。せーの、いた
だきます!」
 調理班の班長であり副班長でただの班員、ようするに1人で全て作った凍夜が号令をかけて皆が飯にあり
ついた。凍夜ら3人はいつものごとく食べるが玲奈と緋莉は小さくハンバーグを口に運ぶ。
 若者が好きな濃厚ソースが掛かったハンバーグは噛むほどに黄金色の玉ねぎの甘味と、肉汁が口いっぱい
に広がり
 「おいしい!」(観月)
 「うまっ」(克行)
 「うん、もはやプロ級だな」(緋莉)
 「あー、おいしい〜っ」(玲奈)
 「さっすが凍夜君だわ!うまいし、最高だよ!」(菜月)
 と叫んでしまう。
 先ほどまでの憂鬱はどこへやら、3人の表情には笑顔が戻り食べるペースも普段通りになった。
 心の奥底でやってやったぜ感に浸りながら特製ソースを付けた白飯を食べる凍夜。こんなんで良いならず
っと作ってもいいかなぁなんて思ったり思わなかったり。
 「もうね、言うことないよ!完璧!最強!だからおかわり!!」
 「早っ!?あ〜、少し待ってろ。よそって来るから」
 菜月の大皿と茶碗を受け取りキッチンに向かおうと立ち上がった凍夜に
 「凍夜くん、私もおかわりちょーだい?」
 「あっ俺も」
 「私も頂こうか」
 「残したら勿体無いから私も食べてあげるわよっ。は、早く頂戴!」
 と、追い討ちをかける。
 「お前ら少しは自分でやれよ!つーか、俺にも飯喰わせろ!」
 などと言いつつ実は内心喜んでいる凍夜。その証拠に唇の両端は上に曲がっている。仕方ねえな、そんな
に俺の特製ハンバーグが食べたいか。そっかそっか、だったら腹一杯に食わせてやるよ。
 調子に乗って目を瞑りうんうんと頷いていたのが悪かったのか
 「ちょっと!ノロノロしてないで早くしてよ………せっかくアンタの料理食べられるんだから……」
 怒られた。本心は聞かれなかったが。
 「はいはい、サーセン。まっ、俺の特製ハンバーグでも食って大きくしろよ」
 「……何をよ?」
 「そんな残酷なこと言わせんなよ。なぁ菜月?」
 「えっ?……ああ」
 菜月の視線が自分の胸に向かっているのに気付いた玲奈は、凍夜が何を言いたいのか理解した。
505Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:22:36 ID:IS9z2/tp
 「こ、こ…殺す!ぶっ殺す!!」
 玲奈は少女に似つかわしくない暴言を吐きナイフを手にした。隣の菜月が羽交い絞めし何とか加害者にな
らないでいる玲奈。
 「あ、あああアア、アンタ、人の胸をおおおおお、大きくしろって……!!!!」
 「いやいや胸なんて言ってないぞ。俺はそのちっさい身長を大きくしろって言ってるんだ。すっげー親切
じゃね?」
 「嘘付けっ!それに凍夜私の胸見ながら言ってるじゃない!身長のことでも大きなお世話よっ。ああもう
離してよ菜月!私はアイツを殺(ヤ)らなきゃいけないの!!」
 玲奈は菜月の腕の中ジタバタ動くが身長差があるため自由になれない。また足が若干浮いているのでこの
まま持ち運ぶことも可能だ。
 「ダメでちゅよ玲奈ちゃん。ご飯の時間は静かにお行儀良くするんでちゅよ?あと誰かを殺すのもメだか
らね。わかりまちたか?」
 「はあーっ!?何言ってんのよ菜月!菜月まで馬鹿にする気!?ちょっと凍夜!アンタのせいで皆に笑わ
れるはめになったじゃないっ!ねえ聞いてるの!?あっ、ちょっと待ちなさいよ!!」
 笑い声を上げながらキッチンに向かう凍夜を見ることしかできない玲奈は、むぅーっと頬を膨らませ特製
ハンバーグを待つことにした。
 (なんか凍夜のくせに調子に乗ってない?人が気にしている胸を言うだなんて最低。それともなに?やっ
ぱり男は小さい胸より大きい胸の方がいいってわけ?私だってなりたくてなったわけじゃないのに!菜月と
同じくらいになったら私のこと見てくれるかな……?って何考えてんのよ、私!?)
 「……さっきから何してんの?宇宙人とでも交信か?」
 両腕に大皿を持った凍夜が頭を横に振ったり挙動不審な玲奈を呼びかけた。
 「えっ!?あ、ちょ、ちょっといきなり話しかけないでよ、びっくりするじゃない!」
 「ふっ、話しかけるのにいきなりも何もないだろ」
 「河原さんは黙ってて!」
 「図星をつかれたからってキレないキレない」
 「元はと言えばのせアンタのせいじゃないっ」
 「俺かよ……」
 「そうよアンタのせいよ!凍夜のせいでどうやって自分の胸を……って何言わせてんのよ!!」
 マグマのように憤怒した玲奈は凍夜に責めよる。
 「むね?」
 「誰も胸なんて言ってないわよ!これ以上変なこと言うと、その使えない脳みそ引きずり出すからね!」
 バン!と玲奈がテーブルを叩いたため食器が2〜3cm宙に舞い、汁一滴も零さずに着地。これはテーブ
ルクロス引きよりも高等な大道芸に見える。
 「酷い!玲奈が僕のこと虐めるよパパン!」
 凍夜は克行に抱きつき玲奈を指差しおいおいと泣いた振りをするが、克行は嫌っそうな顔をして凍夜の頭
を掴んで思いっきり引き剥がした。
 そしてたった一言―――
 「……ウザイ」
 「ヒデーーーーーーー!」
 「ひで?中田?」
506Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:23:14 ID:IS9z2/tp
 「観月先輩。一応ツッコんでおきますがヒデ違いですしベタ過ぎです」
 「……ん〜?」
 「いや、ですから。サッカー選手の方じゃなくて酷いを言ったんですよ、凍夜は」
 「………おっ!」
 菜月のツッコミで観月は頭上にあった?マークがなくなり代わりに電球マークがピカピカと光っている。
だが次は菜月の頭に?が浮かび某建築CMよろしく、「なぜ中田の方なんだ……?」と呟く。
 「ママン聞いて!パパンがボクちんのこと虐めるんだ」
 めげずにボケを噛まそうとしたのが間違いだった。
 克行にしたように観月の体に縋り付こうと接近した瞬間、襟首が何者かに掴まれ「うげぇ」とカエルの鳴
き声を出してしまった。
 恐る恐る後ろを振り返ると――

 「それ以上観月に近づいたら……」
 「それ以上他の女にいくなら……」

 そこには――

 「「殺す!!」」

 ――禍々しいオーラを身に纏い仁王立ちする少年と少女がいた。
 「お、おう!?」
 「お前他人の彼女に手出さないよな……?」
 「アンタ尻尾を振って女の子に近づくなんて……まして観月先輩を……」
 「いやいや冗談だよ、冗談……何もそこまでキレなくてもいいじゃんか。いやだなぁ〜アハハ」
 凍夜の力無い乾いた笑い声が響く。
 「冗談で他人の彼女を使うのか……?」
 「そうよそうよ!何で観月先輩なのよ!?あっ、いやこれは別に私でも良いじゃないっていう意味じゃな
くて、克行君の目の前で観月先輩に手を出すのはどうなのかなっていう意味なんだからねっ。変な勘違いし
ないでよ」
 早口で捲くし立てる玲奈に対して克行は(……何かが違う)などと呆れながら横目をつかう。
 緋莉たちも克行と同様に違和感を感じ玲奈に視線を送った。それに気付いた玲奈はあれ?あれ?とキョロ
キョロ周りを見る。この場の異様な空気を作り出した張本人は何がなんだか解らないようだ。
 「えっ?なによこの雰囲気は?」
 いえいえ、あなたが作り出したものですよ。カッコよく言うならば創造主ですよ。など言いづらいので
 「いや別に……それよかハンバーグ冷めるぞ」
 逃げてみた。
 「そうだな。折角の料理が台無しになってしまうからな」
 「……?まあいいわ」
 玲奈の頭の中を簡単に説明すると凍夜の料理>>>>>>>>今の空気といった感じだろう。
 「だけど凍夜、また女の子にセクハラしたり身体のこと言ったら殺すからね」
 16年間も悩み続ける身体的コンプレックス>>>>>>>>凍夜の料理なのは仕方がない。この胸のせ
いで何回ネタにされたか思い出したくないし、記憶から消し去りたいものだ。
507Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:23:48 ID:IS9z2/tp
 *   *   *   *
 夕食が終わり緋莉と菜月が各自の食器を流し台に持っていく。夕食を手伝うことができなかったことに責
任を感じたのか、2人は自ら皿洗いを進み出た。玲奈もやりたかったのだが、また地獄絵図を見せられてし
まいそうなので菜月が私らで充分だからと言って止めた。
 凍夜の方は2人の申し出を断らず克行たちと同様に、テレビを見ながら満腹感に酔いしれている。ソファ
の座り心地と程よい満腹感や疲労などが合わさり、睡魔と言う手強い怪物に進化して凍夜を襲う。
 頭をカクンと船を焦がしながらも心の中で戦うが
 (……ダメだ、今寝たら……確実に後悔する……目覚めろ俺!睡魔を打ち倒すんだ!ぬぅおおおおお!)
 「……スー」
 睡眠大好きな凍夜がこんな強敵に勝てるわけがなく、すぐに白旗を振ってしまった。だって人間の基本的
な欲求じゃん?仕方ないさ、アハハハ。
 「ちょっと起きなさいよ凍夜」
 凍夜の体がゆさゆさと揺れる。のではなく玲奈に揺らされている。あと数秒で向こうの世界ではなく心地
良い夢の世界に行けたのだが強制帰還が命じられた。
 「んあ……なんだ〜」
 体を起こして眠い瞳を擦りながら目の前にいる玲奈をジッと見る。意識も玲奈の輪郭もぼやけてしまって
いるので、頭をトントンと叩き眠らないよう努力するが一向に睡魔は去ってくれない。
 「あのさ折角遊びに来てるんだから寝ないの。それにすぐ寝たら牛になるわよ」
 「ん〜?……やることねーじゃん。見たいテレビだってないし……ふぁあ……克行だってのんびりしてん
だし別にいーじゃん」
 「あ、私がつまんない……」
 「えっ、今なんか言ったか?ゴメン聞こえなかった」
 「だから!えーと……あのー……」
 玲奈は口に右手を当て上目遣いの視線を凍夜から逸らして言葉を探す。頬を微かに赤く染めて。
 「一緒に遊んであげなくもないよ……?」
 「はい?」
 「あーもう!だから暇だから付き合いなさいって言ってるの!」
 微かに染められていた頬は真っ赤になっている。言い方もどこか投げやりになってしまい心が少しチクッ
とした。もう少し優しく言えないのか、と。
 「……ダメ?」
 「いいよ。眠気が無くなってくれそうだし」
 「ホ、ホント!?あ、いや凍夜が私に付き合うのは当然よね」
 誰にも気付かれないほどの小さな小さなガッツポーズを作ってホッと安堵する。
 ここで断られたら玲奈に大きな傷跡ができてしまう。自分は凍夜にとっては睡眠に劣る存在なんだと確証
になる。これは地味にショックだ。
 「で、なにすんの?」
 「え〜っと……」
 「……」
 「あ〜……」
508Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:24:21 ID:IS9z2/tp
 「おやすみ〜」
 「ちょ、ちょっと待って!こら、寝ないの!」
 横になってもう一度夢の世界に行こうとしたら襟首を持たれ、前後に揺らされて息ができない凍夜はあち
らの世界に逝ってしまいそうになる。白目を剥いたのに気付いた玲奈は手を離し、凍夜はソファに倒れてゲ
ホゲホとむせてしまう。凍夜は呼吸を整えてから抗議した。
 「決まってないじゃんか……」
 「そ、それは凍夜が決めるの」
 「俺かよ」
 「そうよ、大体デートとかも男が決めるじゃない。それと同じよ」
 玲奈は外人のように肩をすくめてハァとため息。当然でしょ?なに言わせてんの?と言いたいような表情
に冷たい視線を凍夜に与える。
 「なるほど、これはデートなのか」
 「ち、違うわよ!なに言ってるの!?」
 「だって玲奈が……」
 「他人のせいにしないの!まあ……凍夜がそう言うなら……デートってことにしても……いいけど……」
 頬を桜色に染め体を恥ずかしながらモジモジさせる様はとても女の子らしい。
 「じゃあ散歩でもするか。そうすりゃ目も覚めるだろうし」
 「そ、そう。じゃあ行こう」
 *   *   *   *

 観月に出かけることを伝えた凍夜はぶらぶらと外を歩く。
 悲しみや喜びなどのあらゆるものを包み吸収してしまう黒い空の下、凍夜と玲奈は別荘の近くにある海辺
に向かって歩いていた。この前まではすぐに落ちていた太陽も最近になっては少しずつ頑張っているようだ
が、まだ夏のように明るさを保つことはできないようだ。
 ――今は5月。仲の良い家族や友人にカップルはこのゴールデンウィークを楽しんでいるのだろう。ここ
にいる玲奈たちもその中に当てはまる。
 本当は凍夜と一緒に過ごしたいという願いは叶ったのは事実。ただおまけが要らなかった。できれば2人
っきりが良かったのだがこればかりはもうしょうがない。今を楽しもう。この場には2人以外だれもいない。
天敵の緋莉もいない2人だけの世界。
 そんなことを考えていたら心も身体も熱くなってきたが、海の近くのおかげで冷たい夜風が火照った身を
冷ましてくれる。
 別荘を出てから数分、石段を下った先に月光を受けて煌く海が広がる。無人の砂浜には凍夜と玲奈のジャ
リ、ジャリという足音と、勢いが全く無い静かに打ち寄せる波の音しかなく、それはまるで映画の1シーン
のようだ。
 「少し座るか」
 「うん……」
 別荘を背にし海を眺めるかたちで浜辺に座る。夜空を見ると星が点々とあり凍夜たちが住む住宅街では見
ることができないものだった。
 「すごいよなー、観月先輩の家って」
509Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:25:17 ID:IS9z2/tp
 「そうだね」
 「……」
 「……」
 お互い何を話せばよいのか解らず無言になってしまう。向こうではどんな暮らしていたのか聞きたいこと
は山のように多く、凍夜がいなくなったときの寂しさを愚痴にして困らせたかったはずの玲奈は、言葉に表
さない。話題が多ければ多いほど何を掴めば良いのか迷ってしまう。
 寄せては返す波の音はBGMのように2人の頭の中に入り込み、玲奈は自然が織り成す音楽を聞くことに
した。静かな波音が玲奈の心をクラシック以上に癒してくれる。海面にも広がる星は絵画を思わせどこか現
実離れしていた。
 「……ごめんな」
 凍夜の寂しい一言が先ほどまでの空気を掻き消す。凍夜の言葉は何に対しての謝罪かすぐに解った。
 「……もういいの。詳しい理由は知らないけど家の事情かなんかだったんでしょ?」
 湿った声が凍夜を困らせたいという玲奈の悪戯心を壊す。
 「まあ、そんなところかな」
 ふぅと一息。そして諦めたような声で言う。
 「それなら仕方ないよね……」
 玲奈も高校生だから子供の力の無さなんて嫌というほど知っているし、自分よりも長く生きている大人た
ちと衝突しては挫けた経験だってある。残酷なことに子供は親の言うことを従って生きていくしかない。ど
んなに抵抗しても結局は自分の力の無さに涙を流すのだ。
 だから過去のことは諦める。あのときはお互い小学生でカッコイイことを言ってもそれを実現することは
できないから。
 「でも、お願いだから……」
 声を震わせ懇願する。顔を俯かせ前髪で瞳を隠しているので凍夜からは表情を窺うことはできない。だか
ら玲奈が怒っているのか泣いているのか寂しがっているのか解らなかった。
 「もう2度と勝手にいなくなるのはやめてっ!!!なんであのとき何も言わないで消えちゃったの!?待
つ方の身になってよ!寂しかったんだよ?悲しかったんだよ?」
 凍夜の方を向いた玲奈の表情は涙でグシャグシャだった。大きく綺麗な瞳から溢れ出る大粒の滴は彼女の
思いを乗せて、頬を伝い、砂に混ざって消えていく。

 ――玲奈の顔はとても悲しそうで
 ――とても寂しそうで
 ――どこか怒っていて
 ――目を逸らしたくても逸らしてはいけない気がして

 「私たち幼馴染でしょ!?一言、たった一言で良かったのになんで何も言わなかったの?そんな関係だっ
た!?簡単に壊れちゃうほどの絆だったの!?」

 ――彼女の叫びは俺の心を壊しそうで
 ――でも彼女を追い込んだのは紛れもなく俺であって

 「凍夜のバカーーーーーーッ!!!!」

 ――気付いたら俺は彼女を強く強く抱きしめていた
 
510Slowly×Slowly:2008/01/13(日) 22:25:57 ID:IS9z2/tp
 *   *   *   *
 長年溜めていた玲奈の心の叫びを吸い取ったのは星が煌く空でも月光を反射する海でもなく、1人の幼馴
染だった。そのおかげか玲奈もすぐに落ち着きを取り戻すが顔はまだ赤い。それは多くの涙を流したためか
凍夜の腕の中にいるためか。自分の顔が耳まで赤くなっていることぐらい玲奈も気付いている。その理由も
考える必要すらない。
 「凍夜……もう大丈夫。ありがと」
 正直まだ味わっていたかったが甘えていられない。玲奈は名残惜しそうに凍夜の身体から静かに離れた。
 「勘違いしないでね。泣いたのはアレよ、アレ。ほら……目にゴミが入っただけなんだから。それに悲し
いってのは私がなんか除け者っていうか、惨めな立場にされてイヤだったっていう意味だからね」
 「そっか」
 静かな海辺に凍夜の右ポケットの携帯電話から軽快な音楽が流れる。ディスプレイには『Eメール受信 
緋莉』と表示されていた。メールの内容は『散歩にしてはいくらなんでも遅くないか?しかも有澄と一緒に
行ったと聞いたが……いいか?もし不純なことをしたら怒るからな。あと有澄ばっかり構うんじゃなく他の
人とも接したらどうだ?すぐ近くにいるんだから。……少し話しが脱線したな。とにかく夜遅いから早く帰
って来るように』と、玲奈に対して嫉妬が混じったものだった。
 「そろそろ帰って来いだって」
 「ん〜っ、じゃあ帰ろっか」
 立ち上がり伸びをする玲奈は吹っ切れた表情でいた。とても可愛い笑顔でそれを見た凍夜は驚いて頬を赤
く染める。
 (今の玲奈……すっげぇかわいい)
 「いつまで座ってんの?はやく帰ろ」
 「ん、そうだな」
 凍夜も腰を上げズボンに付着した砂をパンパンと落とす。そして玲奈を見つめて静かに口を開いた。とて
も真剣な眼差しで。
 「玲奈……俺さ」
 (この目つき……も、もしかしてこここここ告白!?ちょ、ちょっと待ってまだ心の準備がああああ!)
 玲奈の心はそよ風に吹かれるタンポポのように舞い上がり
 「――転校とかもうしないよ」
 (わ、私も凍夜のこといいかなっていうか、まあそこまで言うなら付き合ってあげるって、え?なに?て
んこう?)
 「親の都合とかでまたどこかに行くことはもう無いから安心して。まあぶっちゃけ英語なんて話せねーか
らアメリカに行く気がないのもあるけどな、ハハハ」
 大きく墜落した。
 「……えじゃない」
 「え?」
 「当たり前じゃない!なにをえらそぉぉ〜に言ってるの?私にあんな思いをさせたのは死に値すると言っ
ても過言じゃないのよ?それなのにいきなり真剣な顔してこくは……じゃない、今のはなしっ!」
 「は?なに?コクハ?」
 玲奈は真っ赤になって凍夜をにらむ。
 「ばっ、今のなしって言ってるじゃない!それ以上言うならその使えない脳みそを鼻から引きずり出すか
らね!」
 文句を垂らしながらも笑う玲奈。先ほどまで泣いていた顔とは思えない女神のような美しい笑顔を知って
いるのは、世界中でただ1人。

 66億5051万人の中のたった一人である幼馴染だけだった。
511でぃすぱ ◆g5uZET9koI :2008/01/13(日) 22:28:54 ID:IS9z2/tp
だいぶ遅くなってしまいましたが明けましておめでとうございます。
また読んでいただきありがとうございます。今年もたくさん喜んで頂けたら幸いです。
それではSlowly×Slowly第8話でまたお会いしましょう。ノシ
512名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 22:59:31 ID:iHDjJS9j
一番槍GJッ!
玲奈かわいいよ玲奈。
513名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 23:30:31 ID:g+32+n/V
SS更新キター。
玲奈の可愛らしさに万歳。
514名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 01:55:17 ID:EHTO0pdF
まだ7話だっけ?乙
515名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 02:04:00 ID:Nq9HpMB/
GJです
8話を心待ちにしています
516名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 22:27:56 ID:nluCxXnR
いつの間にかSS新しいの来てる! 第八話も楽しみにしてます
517名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 23:07:09 ID:bCye9kK9
>>516

ばかぁ!下げなさいよ!
え、スレが下がりすぎで危険だったから保守で上げた?

あんたはそんな事を気にしなくていいのよ。

私がちゃんと見てるし…

だから頑張って、すっごくいいSS書いて住人を驚かせてみなさいよ!!
518名無しさん@ピンキー:2008/01/17(木) 21:33:30 ID:Ro/+Ltvs
519名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 06:14:04 ID:q6ZhXnmH
520名無しさん@ピンキー:2008/01/19(土) 21:35:54 ID:X5SD02li
そろそろ次スレが必要だな
521名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 15:45:26 ID:SNYxG9ma
522名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 02:19:40 ID:TSgfRSKY
523名無しさん@ピンキー:2008/01/26(土) 08:52:30 ID:tcoKKt7p
 
524名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 07:23:16 ID:eX5wajti
525名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 16:51:45 ID:b5cN1Cp9
次スレ

ツンデレのエロパロ7
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1201418764/
526名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 20:35:11 ID:mHFfm4hJ
すいません
次スレを立てた者です
スレ立てやってるときに急に仕事が入ってしまい、
二レス目がgdgdになってしまいました。
申し訳ありませんでしたm(_ _)m
527グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:41:09 ID:w2ex1h7L
投下します。
今回で九回目になります。
528グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:41:56 ID:w2ex1h7L
「……邪魔するぞ、はじめ」
 ドアを開けて部屋に入ってきたのは、千夏だった。 
 やよいと一戦交えた後でも顔に傷ができていないのは、顔面を狙われなかったからか、全て躱していたからなのか。
 しかし、外から見ただけでは怪我らしい怪我を負っていないにしても、動きはどこかぎこちない。
 部屋に入るときに出した声も、ドアを開ける手にも勢いがない。
 それでも瞳に気が籠もっているところは変わらない。
 隙を見せないよう、相手の機先を制することができるよう、前を見据えている。
 はじめがマナの背中と脚を持ちベッドへと運び、今まさに横たえようとしている様が、千夏の目にははっきりと映っていた。
「あ、その……本当に、邪魔だった、か……?」
 気まずい顔で、言葉を詰まらせる。
 はじめも困惑を声に出したい気分だったが、出さなかった。
 マナを抱えた状態でそんな声を出すことはできない。それはマナに対する見栄のようなもの。
 なにせ、ついさっきまで自分はマナと唇を重ねていたのだ。その直後に呻いたらかっこ悪く思われそうだ。
 はじめは気づかない。千夏が闖入してきた時点で良い雰囲気が台無しになっていることを。
 千夏の方向を向いているから、マナが不機嫌なオーラを放っていることにも気づかない。

 そうして、はじめと千夏が向かい合い、マナがしかめっ面をしたまま時が過ぎる。
 部屋の壁に掛けてある時計が、動き続ける。一秒ずつ律儀に、等間隔で小さな音を立てる。
 静けさに包まれた部屋がため息をついた――ような錯覚を、はじめは覚えた。
 実際にためいきをついたのは部屋ではなく、だっこされ続けていたマナだった。
「はじめ」
「うん、なに?」
「そろそろ下ろしてくれない? ていうか、下ろしなさい」
 吐き捨てるようなマナの声に従い、はじめはベッドに小さな体を横たえた。
 続けてその体の上に乗ったりはしない。数分前まではそうしようと考えていたが、今はできない状態にある。
 千夏の視線を浴びながら行為に及ぶほどはじめは愚かではない。
 だから、とりあえず問題のなさそうな動きをとることにする。
「千夏さん、起きたんだね」
「う……うん。実際は結構ふらふらな状態だがな。目が覚めてしまって、眠ることもできないから、
 誰か居そうな部屋を探して歩いていたんだ。そうしたら、この部屋の灯りがついていたから……入ってしまった」
「そう、なんだ」
「うん、そう。あ、ははは、ははははは……」
 間を持たせることができないはじめは苦笑い。千夏は乾いた笑い声を漏らす。
 そのまましばらく同じ行動が繰り返された。
529グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:43:07 ID:w2ex1h7L
「はあぁ…………」
 あからさまな落胆のため息を吐いたのはマナだった。
 ベッドに腰掛けながら床を見つめている。
 はじめと千夏には目を向けない。
 足をぶらぶらさせながら、退屈そうにしている。
「あんたたち二人とも、何やってんのよ」
「何、と言われても」
 どうやってこの気まずい空気を振り払おうか、とはじめは考えている最中だった。
 それはそうだ。さっきのはじめとマナが作り出していた空間は恋人たちだけに作ることのできる甘いもの。
 いきなり千夏が部屋に入り込んできたせいでその空気が一気に台無しになった。
 湯煎をかけているチョコレートに水が入り込んで台無しになったようなものだ。
 こうなったせいでマナがどう思うのか、考えるだけで気分が落ち込む。
 しかし、その事実を千夏を前にして言うのもなんだか悪い気がする。千夏に悪気はなかったのだ。
 もう一度、今度は肩をすくませながらマナがため息を吐く。
「はじめの考えてることなんかわかってるわよ。
 私にもその人にも気を遣って、なんて言って場を取り繕おうか、悩んでるんでしょ」
 少しだけ救われた気持ちになったはじめは頷いた。
「それは無駄なことよ」
「へ? 無駄って、どういうことだ?」
「無理をして取り繕おうとしなくてもいいってこと。だいたい、はじめが今更格好つけたって遅いわよ。
 そんなことしたって、私にとってのはじめのイメージはずっと固定化されたまま」
 面と向かって、あんたは格好良くない、ともとれる台詞言われてしまったはじめは、当然ながらショックを受けた。
 これでもマナややよいの前ではしっかりした姿を見せようと努力していたのだ。
 気分が落ち込んでいく。僕って、マナにとってはずっと昔から変わっていないのか。

 その時はじめは、マナが自分の顔をまっすぐに見つめていることに気がついた。
 マナの瞳に映っているのは憧れではない。しかし失望でもない。
 出逢った頃からずっと変わらない親愛の情だった。
「私ははじめがいいの。
 同じ家に住んで、同じ釜のご飯を食べるっていうことの繰り返しを一緒にしたい相手ははじめだけ。
 いくらあんたが間抜けなことやヘマをやらかしたって私は見捨てないわ。
 だから、そんな落ち込んだ顔しないの。泣く二歩手前ぐらいの顔つきになってるわよ、今」
「……え、あ…………」
 はじめは、あんたは格好良くない発言ではなく、マナの大胆な告白のせいで涙腺が緩みそうだった。
 これほどまでにマナが自分のことを想ってくれているとは、今まで気づかなかった。
 歯を噛みしめて溢れ出そうなものをこらえる。
 喉の奥にじんわりとした、けれど心地いい、そんな痺れが拡がった。
530グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:44:02 ID:w2ex1h7L
「ま、そんなわけだから私に悪いなんて気持ちは持たなくてもいいわよ」
「ああ。ああ…………ありがと、マナ」
「どういたしまして。
 それで話は戻るけど、私はこうなったのが嫌だってわけじゃないのよ。……実を言うと、ね」
 言葉を一旦切ったマナは、千夏の方を見た。
 千夏は口を脱力しきったように開け、呆然としていた。
「酉島、千夏さんだったかしら? 名前」
「え、あ! あ……ああ。うん、そうだ」
 そして不意に声をかけられ、慌てて平静な表情を作った。
「歳はいくつ?」
「今、十八だ」
「じゃ、私より年下なのね。年下だからってわけじゃないけど、千夏って呼んでもいいかしら?」
「構わない。私もマナと呼ぶことにする」
「そう。私もその方が気楽でいいわ。
 実を言うと、千夏に話を聞いてみたかったのよね。今回の件に関しては」
「今回の、件?」
 疑問に思った千夏が首を傾げる。
 しかし、すぐに思い当たったようで、小さな声を漏らした。
「さっき、庭ではじめを押し倒していたことについてか」
「あ、それはいいわ。どうせはじめのことだから喜劇みたいな出来事があってああなったんでしょうし」
 どうせ、というところにひっかかるものはあったが、はじめは口を挟まない。
 マナの言うとおり、コメディーのような展開を経て二人は庭でくっついたのだ。
 千夏をはじめの方へ向けて押したのは卓也なのだが、狙い通りに事が運んでしまったのは、はじめだからこそだろう。
「そのことではない、ということか?」
 千夏は腕を組んで眉をひそめた。
「わかんない?」
「わからないな。私はただはじめと仲直りしただけで」
「あ、それよそれ。いや、それそのものじゃないんだけどね。
 仲直りしなければいけなかったってことは、つまり友達にはなっていたってこと、でしょ?」
「う……うん。そうだ。なあ、はじめ」
 はじめは無言で頷いた。
 仲直りしたおかげで、以前よりも千夏に親しみを覚えるようになっている。
 今では卓也の次ぐらいに仲のいい友達だ。

「そこに、私は疑問を覚えるのよねぇ……」
「どういう意味だ?」
「ねえ、千夏。しょーー……じきに、答えてよ」
 わかった、と言ってから千夏は首肯した。
 マナの目が真剣味を帯びる。その変化ははじめにはもちろん、会って間もない千夏にも分かるもの。
 声の調子を抑え、マナが口を開く。
「本当に、はじめはただの友達?」
「さっきもそれには答えたぞ」
「よく聞きなさい。ただの友達なのか、って言ってるの。
 はじめはただの友達で、親しみ以外に何か他の感情を抱いていないの?」
「他の……? たとえば?」
「だいたいわかってるんじゃないの? 
 親しみに近い方向で、他のって言えば、恋愛感情ぐらいでしょ」
531グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:44:50 ID:w2ex1h7L
 マナ以外の二人が絶句した。おそらくこの場に卓也がいれば同じ反応をしただろう。
 はじめは驚愕のせいで、千夏は言葉が見つからなかったせいで、卓也は大笑いしそうな口を押さえているせいで。
「わ、わ…………」
 最初に立ち直ったのは千夏だった。
 唇が震えているせいで、声までもが震えていた。
「私が、はじめを、好きだと。そう言いたいのか、マナ」
「そうじゃないかな、と疑ってる。あ、好きって言っても友達として、とかナシだから。
 ちゃんとはじめのことを男として意識して、モノにしたいと思っているかどうか、それが知りたいの」
「モノ……はじめは人間だが……」
「モノにするっていうのは、独占するって意味。
 毎日片時も離れず傍に居て、他の女には目を向けさせない。そうしたい欲求が独占欲」
「ど、どどど……独占、欲……」
 初めて聞いた単語であるかのようにどもる。
 千夏の顔は紅くなっていない。
 だが、目がはじめとマナと部屋のインテリアの間を行ったり来たりしていて、落ち着いていない。
 まるで頭の中に強い負荷がかかっているようだ。もう少しで処理落ちしかねない。
「武道家たるもの、煩悩は振り払うべし。……と父は言っていた。だから私は……」
「やよいが言うには、その人の歩む道には大きな通りはあっても、それ一つで成り立っているわけじゃない。
 小道や、荒れた泥だらけの道や、大通りと見間違えそうな整った道があって、ようやく形になる。
 だから私は全身全霊ではじめくんを愛します、だって。
 やよいの言うことにならえって言うつもりはないわよ。
 でも、自分をごまかすっていうのは道を無理矢理壊しちゃうようなもんじゃない?」
「うむ…………うぅ……」
 千夏が手近にあった壁に手をつけた。目の焦点が合っていない。
 やよいを前にしてもひるむことなく立ち続けていた勇姿は見る影もない。
「どうしろというんだ、私に」
「正直に答えればいいのよ。
 はじめとは友達のままでいたい、それか、恋人の関係がいい。どっちか」
「私、には……」
 ようやく、千夏の目に意志の光が灯った。そこに映ったのは、力強いものではなかったが。
532グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:46:14 ID:w2ex1h7L
「――わからない。私は誰かを好きになったという経験が一度もない。
 一人で今まで生きてきたわけではない。父と道場の門下生と、卓也と。あと……母と。
 いろんな人の助けがあって今の私がある。そう思う」
「本当に誰も好きになれなかったの?」
「嫌、なんじゃないな。怖いんだ。
 誰かを好きになっても、いつか嫌われるか、去られるかもしれないと思うと。
 私には父がいる。道場の師範を務めている。はじめも知っているだろう?」
 はじめが頷くのを見てから、千夏は言葉を続ける。
「母もいた。優しくて暖かくて、厳しくて怒りっぽくて、でも真っ直ぐな人だった。
 私は、母のことが大好きだった。小さな頃は母にずっとくっついていた。
 でも、母はある日、病気で亡くなった」
 マナもはじめもじっとしたまま、込められた感情を聞き逃すまいと耳を傾けている。
「私がどれだけ落ち込んだのか、今では覚えていない。卓也が言うには相当なものだったらしいが。
 母が亡くなって、父は厳しくなった。それが過保護ゆえのものだとは知っている。
 しかしそれはここ数年で気づいたこと。
 母が亡くなって間もない頃の私にとっては、世界が闇に包まれたほどの変化だった。
 子供心に思ったことは……もう誰も好きなるまい、というもの。
 誰かを好きになっても、いつかはいなくなってしまう。いつかは嫌われてしまう。
 ならば最初から誰にも深く関わらなければいい。
 誰に対してもとりつく島もないほどに厳しく接すれば、近づいてこないだろう、と」
「それで、残った友達が卓也一人なの?」
「あいつは、なんだろうな……そう、お節介焼きなんだ。
 おちゃらけているように見えて、実は他人のことを考えている。
 私だけでなく、身近にいた人に対してはいつもそうだったよ。
 卓也のことは人間として好きだ。男としては見られない。
 はじめ。私が、卓也は私のものだ、と叫んだときのことを覚えているか?」
「うん」
 忘れるはずもない。
 千夏の告白もインパクトが強すぎたし、その次に卓也へ向けて放たれた正拳突きも衝撃的だった。
「あの言葉、自分でもどうして言ってしまったのかわからなかったのが、今になってわかった。
 ずっと私と仲良くして欲しい。これからも世話を焼いてくれ。それが変じてあの言葉になった」
「そう、なんだ……。でも、それなら」
 遮るかのように、千夏は手を伸ばした。手のひらがはじめの顔へ向けられている。
 二三度首を振ってから、千夏が口を開く。
「それは恋愛感情とは違うものなんだ。無理だ。もう卓也は友達としてしか見られない。
 でもずっと近くにいて欲しい。ふふ、これも独占欲かな、マナ?」
「ん…………かも、ね」
 自信なさげにマナは頷いた。

「話が逸れたな。私が、はじめのことをどう思っているか。言うよ、今から」
 千夏がはじめへ向けて一歩踏み出す。
 真正面から見据え、目と目を合わせる。
 二人とも瞬きをすることはあっても、視線を逸らすことはない。
 はじめは何を言われても聞くつもりだった。
 おそらく、最初は友達の友達だった、今では直接の友達だ、と言われるだろうと予測を立てた。
 それは思いつきで閃いた、浅すぎる予測だった。
 はじめの深刻度は、決意を固めた表情を浮かべる千夏に対してレベルが低すぎた。
533グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo :2008/01/30(水) 01:47:48 ID:w2ex1h7L
「さっきも言ったように、私は自分から誰かを好きになろうとも、好かれようとも思わない」
 言葉を聞き、はじめの心が軽く痛んだ。
 自分に対しても同じように考えていたのだろうか、と思ったのだ。
 しかし、千夏の言葉には続きがあった。
「だけど、この間の模型の展示会が行われていた会場に行った日、例外が起こった。
 はじめの作った模型がきっかけだ。テーマは家族、季節ごとに分けて作られていたな」
「うん」
「父親と母親と子供の三人家族だった。それを見て、自分の家族の姿と重ねてしまった。
 こんな風に父と母と手を繋いで、日々を過ごしたいという夢を浮かべた。
 模型を見ているうちに、久しぶりに、いや初めてかも知れないが、
 これを作った人に会ってみたい、と思った。
 感動したことをその人に伝えたい。あなたは私の恩人だと伝えたかった。
 そんな時に現れたのが、卓也と一緒にやってきたはじめだった。
 本当にありがとう。もう一度礼を言わせてもらう」
 千夏が頭を下げる。想いのこもった礼をされて、はじめは戸惑った。
 コンテスト会場で千夏に礼を言われたときもだったが、自分の作ったものがここまで人に影響を与える。
 それははじめにとってまだ慣れないことなのだ。
 慌てて言葉を探しているうちに、千夏が頭を上げた。
「……それから、はじめと会話するようになり、今まで味わったことのない楽しさを知った。
 私と仲良くしたいとはっきり言ったのははじめぐらいのものだ。
 理由も告げずに絶交宣言しても、私を見捨てず、捜し回ってくれた。
 本当に嬉しかった。同年代の人と触れ合うのがここまで楽しいと思ったのは初めてだった。
 これからもはじめと仲良くしたい。だけど――卓也とは違う意味で」

 ――え?
 思考をさっぱりと洗い流された。頭がクリアになり、千夏の言葉が頭の中で跳ね回る。
 スーパーボールのようにそれはひとところに落ち着かない。
 そして、さらにはじめの思考を混乱に陥れる言葉が投げかけられる。
「今、はじめを想う心が恋心なのかは、私にはわからない。
 ただ、はじめのことをもっとよく知りたい。
 ……この願いだけは、何度自分に問いかけても変わらない」
 はじめが千夏の言葉を理解するまで、十回以上の反芻が必要だった。
534名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 01:48:52 ID:w2ex1h7L
今回はここまでです。
次回、えろシーンの予定。
535名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 19:55:50 ID:Wzoqz9Pj
GJ!!
536名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 01:16:18 ID:9MxWxpRy
次回が楽しみすぐる。
537名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 08:59:37 ID:oCFa4pmA
埋め
538名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 16:39:23 ID:PxJq3hbT
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539埋めネタ:2008/02/05(火) 18:45:36 ID:oJHiY2iJ
「はい、これが修学旅行の班分けが書かれているプリントです。
 みなさん、自分がどの班にいるのかちゃんと確認しておいてくださいね」
 新年になって一ヶ月少々経った今日、僕の所属する二年A組では修学旅行の準備に突入していた。
 別の学校に通っている友達が言うには、二年の秋頃に修学旅行を行うものなんだそうだけど、
どういうわけか僕の通う高校では二月の末になってから行うのが慣例らしい。
 正直に言うと、こんな時期に修学旅行に行かせようとする学校はおかしい。
 だって、秋ならともかく二月のうちはまだまだ冬だから寒いのだ。
 ジャンパーかコートを着なければ外を出歩くのも億劫になる時期だ。
 とてもじゃないけど、乗り気にはなれない。修学旅行をさぼりたいぐらい。
 でも、僕一人だけ修学旅行に行かなかったら、なんだか空気を読めていないみたいな感じに思われる。
 卒業アルバムの集合写真に僕の姿がなく、右上に顔写真だけぽつりとあったりするのは寂しい。
 というわけで、僕も修学旅行には行く。

 行き先は華の都京都だ。海外旅行に行ったことがないくせに海外に行きたくない僕にとっては嬉しい。
 周りはオーストラリアがいい、いやアメリカだろう、イタリアのバイクをこの目でみたい、なんて不満を垂らしている。
 僕が思うに、こんな機会だからこそ国内に行くべきだ。
 普通は逆の意見が多いんだろう。だけど、僕は持論をねじ曲げたりはしない。
 友達の数人と行くならまだしも、二年生全員で海外旅行に行っても楽しくないはずだ。
 まず修学旅行だから予定を個人の自由で立てられない。行き先が絞られている旅行なんておもしろくない。
 僕はなるべく人の集まらないところへ行って、そこで過ごす人たちを観察したい。
 都会に行っても気忙しいだけで、気が滅入るだけだ。そう、田舎なんかベスト。
 でも海外の田舎はどんな風習があるかわかったものじゃないので、あんまり行きたくない。
 安全な日本で、そこに暮らす人々を見ていたい。僕はその方がいい。
 まあ、今回は修学旅行。思った通りに振る舞うのはこれから先に一人旅をする時のためにとっておくとしよう。

 配られたプリントを見て、班分けを確認する。
 班分けはあらかじめ数人グループで希望を出し合って決めているらしい。
 らしい、というのは僕が班分けを決める日に風邪で欠席していたから。
 だから、僕が誰と班を組まされているのかは知らない。
 まさか一人ということはないだろうけど、あまりものみたいには扱われているかも。
 そんなことを考えながらプリントを見る。
 僕の名前があるのは八班。で、総員――――二名。
540埋めネタ
「なんだこれ……」
 目を丸くするしか、今の僕にすることはできない。
 他の班は五人で組んでいるのに、僕のいる班だけはペア。別の言い方をすれば二人一組。
 三十七人のクラスだから、五人ずつ組まれていったら二人余るけど……どこかの班に入れてくれてもいいじゃないか。
 そりゃ、休んでいた僕が悪いんだろう。けど、友人たちの情の薄さにはほとほと呆れる。
 やれやれ、いったい誰と組まされて居るんだか。
 プリントを見て、同じ班になったかわいそうな相棒の名前を確認する。
                                                                  
「げ……」
 まさかこいつと? 明らかにいやがらせだろう。こりゃあ、修学旅行は悪い思い出しかできそうにないな。
 ため息もつきたくなる。そして実際に、馬鹿でかいため息が勝手に漏れでた。
「なによ! そのため息!」
 背後から大声を上げられ、僕は肩を震わせた。
 振り向く。後ろに立っていたのは――かわいそうな相棒だった。
「やあ、菜々美」
「やあ、じゃないわよ。何、今のため息は。プリントを見ていたわね? そんなに私と班が一緒になったのが嫌?」
「嫌じゃないよ。別に」
 嫌だよ。当たり前じゃないか。
 だって、お前と一緒になったらこき使われることになる。
 なんでこんなイベントの時まで一緒にならなきゃ行けないんだ。
「あんたね、友達の誘いを断ってまで一緒に班を組んで挙げた私の優しさがわからないの?」
 お前はあえてそうしたんだろう。自分勝手なルートをとりたいから。
「そうじゃないよ。ただ、二人っきりっていうのが、どうもな」
「仕方ないでしょ。五人一組で班を作るのが普通なんだから」
「でもなあ……」
「むむむ…………」
 おや、菜々美の顔が赤くなっている。
 照れている訳じゃなさそうだ。ストーブの上に乗ったやかん的な熱され方だ。
「あんたなんか……」
「ん?」
「あんたなんか! ピアノの角に頭ぶつけて死ねばいいのよ! ばかーーーーーっ!」
 それを言うなら豆腐の角じゃないのか、というツッコミを入れるまもなく、僕は菜々美に殴られた。
 もっともあまり痛くない。だって菜々美は女の子だから。
 菜々美はまずった、とでも言いたげな顔で自分の拳と僕の顔を見ている。
「あ……ごめん。つい、その……さ、さよなら!」
 そしてきびすを返して教室のドアを開けて廊下へ飛び出した。ドドドドド、という足音が聞こえる。 
                                                               
 またため息をついて、僕は立ち上がった。
 菜々美はまた屋上ですねているだろう。迎えに行ってやらないといつまで経っても戻ってこないはず。
 修学旅行の計画をどうせ立てなきゃ行けないんだ。屋上でそうすることも悪くない。
 プリントとノートと、シャープペンを二本持って僕は屋上へ向かうことにした。
                                                   
                                                     
                                                    
                                                  
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