がっくりと肩を落として、二人は家路についていた。
珍しいことに、兄妹が二人きりで会話をしている。
「はあ……私たち、これからどうしたらいいんだろ……」
「ああ。俺もどうしたらいいのか……わからない。
まさか、俺が二つに分かれちまう……なんてな」
「本当にお互いがわからなくなっちゃってるね。私たち」
横を歩く啓一の顔を珍しそうに見つめ、恵がつぶやく。
啓一と恵。
今まで一つだった人格が、あの時から二つに分裂してしまった。
もうお互いの見たもの、聞いたものは直接わからないし
相手が何を考えているかも勝手に想像するしかない。
啓一も恵も、一つだったときの記憶が残っているため
どちらも一人の人間として違和感なくいられるけれども、
今の二人はどこにでもいる、ただの双子の兄妹でしかなかった。
「――啓一」
名前を呼ぶのももどかしげに、セーラー服の少女が言った。
「私……誰? 私、もう啓一じゃないよね?」
「恵……お前は恵だ。ボクは……俺は啓一だ。
俺たちは分裂してしまった。一人から二人になったんだ。
もう俺はお前じゃないし、お前は俺じゃない」
恵の白い手を取り、啓一が夕陽に頬を染める。
そのまま腕を伸ばして少女の腰に回すと、
恵もまた同じように啓一に抱きついてきた。
誰もいない道の真ん中で少年と少女がじっと抱き合う。
十秒、二十秒、もっと。時間が止まっていた。
「これが、俺だけの感覚……」
「私、一人だけなんだ……」
密着して伝わってくる相手の体温も。背中に回された手の感触も。
かすかに漂ってくるお互いの匂いも。
これまでとは違い、共有することはなかった。
――トクン、トクン……。
静かな世界で聞こえてくる心臓の音だけが二つ感じられた。
「……啓一」
「なに?」
いちいち聞き返さなければ、恵の言うことがわからない。
それは啓一にとって初めての不自由だった。
「私たち、分かれちゃったけど……」
「――ああ、うん。わかってる」
わからないけど、何となくわかる。
人間が逃れられない、不自由で不完全な理解。
それを啓一は今、我がこととして実感していた。
「分かれちゃったけど……私、すごくドキドキしてる。
変、だよね……こんなの……」
「変じゃない。俺も……すごいドキドキしてる」
恵は見上げ、啓一は見下ろす。以前はその両方の視覚があった。
今はお互いが相手の顔を見つめ、頬を赤く染めるだけ。
恵のかかとが上がり、つま先立ちで背伸びをした。
自分のものでもあった顔が、見慣れた少女の顔が近づいてくるのを
啓一は緊張して見とれていた。
――ちゅ……。
触れ合った瞬間、啓一は目を閉じた。
口づけの感触を余さないよう、全感覚を動員して感じ取る。
啓一も、恵も。二人はそのまま動かなかった。
舌を動かすこともなく、抱き合う腕をきつく締めるでもなく。
二つの体が一つの彫刻となって、西からの赤い光を浴び続けていた。
それは欠けた体、欠けた心を取り戻そうとする行為。
分かれた人格が再び一つになろうともがいていた。
やがて影が離れ、二人はまた二つになった。
「えへ……キスってすごいね。私たち、一つだったときは
フェラもセックスもあんなにしてたのにね」
「なんか……感覚は半分になっちまったけど、
興奮は三倍にも四倍にもなってる気がする……」
「ねえ、家に帰って……続き、しよっか?」
夕陽のせいでなく真っ赤になって、啓一はうなずいた。
もう日が暮れる。
荷物を置いて着替えをしようと啓一が部屋に入ると、
後ろから恵がぴったりついてきた。
「あれ、ここで着替えるのか?」
「うん……自分が半分になっちゃって不安なの。
着替え見せてあげるから、啓一も見せて……」
なぜいちいち赤くなるのだろう。
互いに同じ人格を持っているはずなのに、
恵のソワソワした仕草や恥ずかしげな表情は
啓一にとって不可解で、だが嫌いにはなれなかった。
――スル……。
啓一の目の前で、恵がいつものように制服を脱ぐ。
彼自身も今までずっとやってきた当たり前の行動だったが、
なぜか啓一は妹から目を離せないでいた。
自分も脱いで着替えないといけないのだが。
「や、やっぱり気になる……?」
「え……」
頬を染めて恵がこちらを見上げてくる。
「私もそうだから……見られてると変な気分になってくるの……」
「――恵……」
「そっちも……見せて……?」
啓一も自分の制服に手をかけ、慣れた手つきでスルスルと脱いでゆく。
そして、兄妹は下着と靴下だけの姿になって向かい合った。
顔は赤く心臓は跳ね、熱っぽい視線を交換し合っている。
いつも見ていた自分の体。
もはや自分のものではない互いの体を見ながら、
啓一と恵は自分の半身に向かって口を開いた。
「とりあえず、服着てご飯作ろっか……」
「あ、ああ……そうだな」
二人の両親は今でも夫婦仲が良く、
今日も子供たちを置いて映画と夕食に出かけていた。
啓一も恵も、自分たちのことは何でもこなせるように
なっているため、こうしたことは珍しくない。
小遣いが入るチャンスなので二人としても歓迎だった。
どちらも食欲はあまりなかった。
オムレツとサラダで簡単に済まそうとしたのだが、
今までと違い完璧な連係が取れなくなっていたので
何度もぶつかってしまい、二人の調理は少なからず混乱した。
そうして彼らは、自分が不完全な二つの半身に
分かれてしまったことを改めて思い知らされたのだった。
「一緒に一つのことをやらずに、分担した方がいいかも……」
「そうだな……何てこった……」
沈んだ顔で返事をする兄を、恵は笑顔で慰めた。
「でも、いつもより楽しかったよ?
いつも私たち、何するにも一人だったんだもん……」
「恵……」
啓一はそんな妹の嬉しそうな顔を見てニッコリ笑うと、
ケチャップのついたオムレツの切れ端を口の中の放り込んだ。
夕食後、恵が食器の片付けを、啓一が風呂の用意をすることになった。
――ジャアアアア……。
洗剤のついた皿を洗う水音がキッチンに響く。
恵は馴れた手つきでどんどん洗い物を済ませていった。
軽く微笑んだ少女が考えているのは双子の兄のことだ。
(啓一、今何してるんだろ……)
兄が風呂掃除をまだしているのか。もう終わったのか。
啓一の感覚がない恵にはそれを知ることができない。
失われた半身の感覚。分裂した自我。
生まれて初めての事態に混乱も戸惑いもあったが、
しかし一番大きな感情が興奮であることに恵は驚いた。
(生まれてから今まで、自分が異常だってずっと思ってて……。
いきなりその原因の人が現れて……暇つぶしだなんて言われて……
突然私が二つに分けられちゃって……何がなんだかわからないけど……)
それでも、心のどこかでそれを喜んでいる自分がいる。
自分は恵だと。彼は啓一だと。二人は別人なのだと。
啓一の顔。啓一の体。啓一の声。
それを「他人」のものとして見るのは素晴らしく新鮮だった。
「恵、終わったぞ。湯入れといたから」
「あ、ああ――うん、わかった」
戻ってきた啓一の声に、恵の思考が中断させられた。
こうして不意にかけられる兄の声も心地よい。
恵は片付けを終わらせると、
そのまま後ろに立ってこちらを見ている啓一に笑いかけた。
「どうしたの、啓一? そんなに見つめちゃって」
「あ、ああ……」
恵の片割れの少年は、ぼうっとした表情で妹の顔を見つめていた。
それがおかしくて、少女はつい笑ってしまう。
「あはは……わかってる。わかってるよ、啓一」
兄にとっては、自分を笑う妹の態度が気に入らなかったようだ。
「な、何がわかってるんだよ」
「何って、私のことが気になって仕方ないんでしょ?」
「そ、そんなこと……」
ムキになって否定しかけた啓一に、恵が頬を朱に染めて言う。
「……私たち、ついさっきまで一つだったんだよ?
わからない訳ないよ。啓一が考えてることなんて」
穏やかな笑みをたたえ、少女は少年の前に立つ。
手を伸ばせば触れ合うほどの距離。
啓一は赤くなった顔をそらすように横に向けた。
「……でも、俺はもうお前じゃない。別人なんだ」
辛い、本当に辛そうな声を絞り出して啓一が言った。
戸惑いと不安、喪失感の混ざった感情に顔がかげる。
恵はそんな兄に手を伸ばし、そっと抱きついてやった。
再びの抱擁。
自分のものではない柔らかな感触と暖かな体温が伝わってくる。
「恵……」
啓一も腕を回して、少女の華奢な体を締めつけた。
あったかい……。
自分で自分を暖めるのではなく、他人の体に暖められている
という実感が、啓一の心を溶かしていく。
「ん……啓一、痛いよ……」
「え? あ、ああ……ごめん」
知らない間に、つい力を入れすぎてしまったらしい。
彼は力を緩め、腕の輪の中に恵を包み込んだ。
「そうか……そっちの体、細いもんな……」
「そうだよ、よく知ってるでしょ?」
「うん、わかってる」
共に笑顔を浮かべ、二人は見つめあった。
うるんだ瞳の少女が言う。
「あーあ、私が啓一だったら良かったのに……」
「なんで?」
恵は少しだけ頬を膨らませて続けた。
「だって、君のことを見上げないといけないもん」
その表情が、啓一にはとても可愛く感じられた。
ふふふ、と思わず笑い声をあげて少年が答える。
「それは勘弁してほしいな。お前の顔、すっげー可愛いから」
「――馬鹿……自分の顔でしょ?」
「今は別人――だろ?」
「……ん……」
今度は目を開けたまま、兄は妹の唇を奪った。
触れ合った口から舌を伸ばし、啓一が恵に侵入する。
彼女もそれはわかっていたようで、
こちらも舌を出して兄のものに絡め始めた。
――ちゅ、ちゅる……。
二人だけの静かな部屋に唾液を交換する音が響く。
人格が分かれていても、二人の動きはぴったりだった。
舌を絡め口内を舐め、互いの唾を吸いあう。
「はあ……ん……」
恵はトロンとした目で啓一を見上げている。
啓一もまた、荒い吐息を妹の中に送り込んで体を火照らせた。
奏でられる水音のワルツの下、一組の舌が踊り続ける。
「――ぷはぁっ……」
三十秒か一分か。呼吸が苦しくなってきたので一旦首を引く。
兄妹の混ざった唾液が、二人の唇を淫靡な架け橋でつないだ。
「……け、啓一ぃ……」
心はすっかり兄の虜になったと、恵の目がそう言っている。
きっと自分もそうなのだろう。啓一は残った理性で分析した。
「恵……」
一つになっていたときから知ってることだが、
同じ人格でも性感は恵の体の方が上だった。
自分の方がまだ衝動を抑えていられる。
それを自覚して、啓一は妹に言ってやった。
「……お前、よだれ垂れてるぞ」
ピンク色の唇の端から、一筋の雫が落ちかけていた。
その指摘に恵はハッと我に返り、怒った顔で言った。
「啓一ぃ……空気読んでよ」
「ふん、さっきのお返しさ」
啓一の舌が伸び、恵の唇をよだれごとペロリと舐める。
「………… !!」
兄の不意打ちに彼女は返す言葉を失い、
耐えかねたように熱い息を一つ吐いた。
啓一はしてやったりといった表情で妹を見下ろした。
「続きは……上で、しよう」
今すぐ彼女に襲いかかりそうな欲望を必死で抑え、
彼はこくりとうなずいた恵を連れ、ゆっくり二階へ向かった。
自分の部屋に着くなり、啓一はベッドの上の妹に飛びかかり
荒々しく衣服を剥ぎ取った。
「あ、やだ……啓一、落ち着いて…… !!」
白いブラを取ると、恵の形のいい豊かな双丘が丸見えになった。
桃色のパンティと黒のニーソックスだけの裸体は
今まで散々見てきたはずなのに、ひどく啓一を刺激した。
ほぼ全裸の妹に覆いかぶさり、そっと頬ずりをする。
露になった少女の肌が啓一の顎にこすられて熱を持った。
「ダメだ……可愛い。恵、可愛いよ」
「そ、そんなこと……啓一に、言われるなんて……」
彼は上から恵の体をきつく抱きしめ、耳元で囁いた。
「ホントだよ。恵もこっちに入ってたら、絶対そう思うって」
「……じゃあ代わってよ」
「それはできないな……もしできても、したくない」
兄の意地悪な言葉に、恵は眉をつり上げた。
「もう……私、こんなにされて、ドキドキしてるんだよ?
私ばっかりこれじゃ、不公平じゃない……」
「でも、やっぱりこういうのは男がリードしないとな」
そう言って啓一は、顔を下ろして妹の大きな乳房にかぶりついた。
見慣れた白い肉の塊は、今はとても美味そうに見えた。
「あ……! ……ず、ずるい……」
じらすように舌を這わせ唾を塗りこむと、恵が切なげな声をあげた。
綺麗な乳輪を口に含み、舌でコロコロと乳首を転がす。
一つだったときの記憶から、そこが感じるのを啓一はよく知っていた。
「はぁん……いやぁ……!」
甘い声で自分を咎めだてる妹にたまらない愛情を感じ、
彼はそのまま恵の乳房を慰め続けた。
左右の塊をかわるがわる愛撫し、恵の顔から理性が乏しくなった頃、
啓一は妹の秘部を隠していた最後の布地に手をかけた。
スルスルと太ももから足首にずらし、ついに外してしまう。
「綺麗だ……恵……」
少女の裸体を見つめ、啓一はそう囁いた。
恵の肉壷は我慢できずにとろりと汁を垂らし、
今か今かと啓一を待ちかねていた。
「はぁ……はあ……」
二つの口から吐かれる熱い吐息。
それがシンクロしていくのを感じながら、啓一はズボンの中から
はちきれんばかりに膨れ上がった自分の肉棒を取り出した。
これだけ濡れていれば充分だ。
「あ……はあ、けーいちぃ……?」
啓一は、呆けた顔で焦点の合わぬ目をした恵に覆いかぶさり、
パンパンにそそり立った自分のをそっとあてがった。
「恵……いくよ……」
返事もできない妹の腰を両手で押さえ、彼はゆっくりと
少女の中を突き進んでいった。
「――あっ…… !?」
濡れそぼった膣をかき分けられる感触に、恵の目に光が戻る。
啓一は侵入を停止し、上から妹の顔を見下ろした。
気がつけば貫かれていた恵の驚きの表情は、
彼にかすかな優越感をもたらしたようだ。
「恵……どう?」
「やん……入れちゃ……!」
腰をひねって逃げようとした恵だったが、兄にがっしりと
押さえ込まれているこの状況では無駄な抵抗でしかなかった。
「嫌なはずないだろ……? こんなの、いつものことじゃないか」
「ん……でもぉ……!」
自分でない自分と繋がるという初めての感覚。
違和感と快感と、そしてわずかばかりの恐怖に恵の顔が染まるのが
啓一の目にはっきりと映った。
「大丈夫……大丈夫だよ」
体を伸ばし、笑顔を浮かべて彼は妹の唇にそっと口づけした。
大きく見開かれた恵の瞳が、啓一のそれと至近で向かい合う。
二人はそのまま時を止めていたが、そうしているうちに少女の目に
だんだんと安堵と情愛の色が浮かんでくるのがわかった。
「――ふう……」
啓一は口を離し、わずかな距離を隔てて妹と見つめあった。
「……落ち着いた? 恵」
「うん、もう大丈夫だけど……」
心なしか、恵の表情は少しばかり悔しそうに見えた。
「なんで……私と啓一、こんなに違うの? 元は同じじゃない……」
「ん、そうだな……同じはずなのにな……」
彼は恵を見下ろし、挿入したまま腰を動かし始めた。
「んっ……あぁ……動かないで……!」
優しい兄の動きに、恵の目が細められる。
「とりあえず言えるのは、俺が恵を好きってこと。
……だって、こんなに可愛いんだもん」
「好き……? 啓一、わ、私が好き……?」
聞き返してくる少女に笑いかけ、啓一が繰り返した。
「ああ、好き……恵、好きだ。愛してる」
だんだんと啓一の動きが激しくなってくる。
自分も腰を使い始めていることには気づかず、恵は喘いで言った。
「ば、馬鹿ぁ……私たち、お、同じだった……はんっ、だよ?」
互いに自分。分かたれた二つの人格同士が愛し合うなど――。
襲いかかる快感に必死に歯を食いしばり、啓一が答える。
「でも、俺は恵が好きだ……今まで誰も好きに……なれなかったけど、
俺はお前が大好きだ……。こうやって一緒に……なりたい」
「啓一……!」
それは分裂した人格が再び一つに戻ろうとしているだけかもしれない。
だが啓一も恵も、繋がった相手のことが愛しくてたまらなかった。
こうして一つになって快感に身を任せていると、
欠けた部分が満たされていく気がしてくるのだった。
「う、あ……はあ……!」
啓一は陰茎を激しく前後させ、恵の中をかき回した。
いつもの半分、貫く感覚しか彼は感じなかったが、
愛しい自分の半身の少女を抱いているという実感に
普段の何倍もの興奮が啓一の脳を刺激してくる。
それは恵も同じようだ。
「――はん……あっ……ああんっ !!」
細めた目から涙を、喘ぎ声の漏れる口からよだれを垂らし、
彼女は快楽のおもむくままに腰を振り続けていた。
肉棒を受け入れた女陰は汁まみれで、
互いの腰が動くたびにジュポジュポと水音を響かせる。
啓一のたくましい男の体も、恵のか細い女の体も、
興奮と快感の汗で全身がじっとりと濡れていた。
思春期に入って何度も経験した自分同士の交わり。
確かに性交の感覚は常人の倍はあったはずだが、
いくらやっても心は満たされなかったように思う。
それが今、一つだった人格が分かたれ、啓一も恵も
お互いを求めて心を満たし合っていた。
結局ベッドの上で三回、その後風呂場で二回。
二人は初めての他者との交わりにのめりこみ、
思う存分お互いを貪り合った。
部屋にカギをかけ、二人は恵のベッドで抱き合って眠った。
さすがにもう性交はしなかったが、狭いベッドの中でくっついて
相手の温もりを感じているだけで言い知れぬ安らぎを感じるのだった。
「恵……」
「何? 啓一」
そっと囁く声で、双子の兄が妹に言う。
「明日、一緒に起きよう。一緒に着替えして、
一緒に身だしなみを整えよう。それで一緒に弁当作って、
一緒に登校して、学校で一緒に栄太や由紀の相手をしよう」
「あはは、何それ。そんなの今までもやってきたじゃない」
「もう俺たち、二人だからさ……あらかじめ言っておこうと思って」
恵がクスッと微笑んだ。
「でも、もう前みたいな連係できないよ? 君と私はもう違うんだもん」
「違うからこそ、面白いかなって思ったんだ」
「ん、そうだね……」
暗い部屋の中で彼女は兄の顔を見つめた。
「でも、啓一は元に戻りたくないの?
私たち、今までずっと一つだったのに分かれちゃってさ」
「どうだろうな……俺にはわからない」
「私も……わからないよ」
啓一は、こちらを見ている妹に向かって微笑みかけた。
「俺たち、もう一つじゃないけど……でも、もしずっと
一つのままだったら、こんな気持ちにはならなかったろうな……」
「啓一……」
「とにかく寝ようか。あんまり騒いでると怒られちまうし」
「……うん」
うなずいた妹に、啓一はそっとキスをした。
以上となります。
今度は分裂させてみましたが、平凡な兄妹モノになりそうだったので
そこのところが結構苦戦。難しいですね。
続きそうな展開の割には、続きを何も考えてないのも困ったものです。
>>476 読んだことがないので何とも言えません。
基本は多重人格の逆パターンなので、皆無なシチュでもないのかも?
ただ、なかなか普通のスレには投下しにくい気はしてます。
ではこれにて失礼します。
またどこかでお会いできたらいいですね。
GJ!
離れてしまった相手を求めて以前よりもエロくなる辺りが、何か神話っぽくて素敵っす
ところでハサミと糊みたいに人の心をくっつけて切り離した諸悪の根源は、
一体どう落とし前を付けるんだろうか
敢えてスルーというのも、神話の理不尽さが出てて良いとは思うけど
面白いからいいけど、
なんかシリーズ物の一部に見える
すごい!面白い!!
>499
本当に読んだ事無いの?第1話から第2話前半までそのまんまだったよ?
いや、あっちはそこまでで終わってるけど。
TS界の住人として言わせてもらえば、確かに一風変わった話ではあるが
全く新しい訳でもないな
例えば藤子不二夫のバケルくんは人形に乗り移る話だが、
一人で同時に複数の体を操る場面があった気がする
あとコピーロボットとか憑依だとか、これ系の話はいつの時代も隠れて存在している
名前まで同じだとかじゃない限り、普通にオリジナルの創作でいいと思うよ
かなり面白かったし俺としては充分アリだな
>>503 面白そうなんで読んでみたいんだけど、題名教えて。
保守しておく
保守です
保守
>>503 陽気婢 にも同じ趣向の作品があった気がするな。
この作品はこの作品として面白いし、それでいいんじゃね。
こんばんは
>>439です。
一つと二つの双子話の続編を投下です。
青空の下、グラウンドを疾走する影があった。
「――水野ぉぉ! いいぞ、上がれぇえ !!」
コートの右側を、ボールを持った少年が駆け抜けてゆく。
勢いに乗った彼は、半ば怯えた敵チームの選手二人を
瞬く間に抜き去り、さらに外側にオーバーラップしてきた
もう一人の少年の前方へとパスを送る。
「…………!」
相手チームの表情が引きつった。オフサイドはない。
一人目が敵を引きつけていたためノーマークだった二人目は、
余裕の表情で深い位置へと流されたボールを受け取ると、
そのままゴールラインの近くからセンタリングを上げた。
「……うぉおおおぉっ !!」
歓声が上がる。観客もチームメイトも、そして敵の選手でさえも
高く跳び上がった彼のヘディングシュートが、
次の瞬間にはネットに突き刺さるだろうと予測していた。
そして、その通りになる。
「――ゴォォォォォルッ !!」
ゴールの隅に落ちてゆくボールはキーパーの手をすり抜け、
改めてコートの周囲の生徒たちを盛り上がらせた。
「はぁ、はぁ……」
ゴールを決めた少年は、仲間の賞賛を浴びつつ呼吸を整えている。
「ハットトリックだぜ」「さすが啓一だ」という声が
彼にとってはやけに遠くから聞こえてくる気がした。
ゴールを決めた時から、彼の目はある一点に注がれている。
グラウンドの隅にたたずんでこちらを見つめている少女。
美人、と言うべきだろう。
よく手入れされたストレートの黒髪を背中まで垂らし、
唇は薄く瞳は大きく、清楚そのものといった女の子だ。
(――恵……)
彼は声には出さず、心の中で呼びかけた。
以前はそれで通じるはずだった。いや、その必要すらなかった。
しかし今、啓一の心は恵には届かずこうして見つめ合っている。
彼女は学年でも評判の美少女だし、成績も良ければ性格も優しく
恋人にしたい女ランキングでは一、二を争うほどだった。
しかしいまだかつて、この少女に寄り添う立場になった男はいない。
その原因が自分にあることは、啓一にはよくわかっていた。
いや、自分たちに、と言うべきか。
水野啓一、そして水野恵。
引き裂かれた彼らはまだ元に戻っていなかった。
無事に勝利を収め、観客たちは自分たちの学校の代表を祝福した。
啓一もまた笑顔を浮かべ、仲間と勝利の余韻を分かち合う。
「――祐介、助かったよ」
彼は隣にいた、三点目のアシストを決めたDFの少年に笑いかけた。
中川祐介。本来はサッカー部員ではないのだが、
数の少ないこの学校のサッカー部員に怪我人や欠席者が出ると
こうして助っ人に駆り出される。
「いや、こっちこそDFの癖にあんなに前に出て悪かった。
一点取られちまったのは俺のせいだな」
気まずそうに頬をかいて祐介が答える。
目つきの鋭い少年だが、実は気のいい男で啓一とも仲がいい。
「そんなことないって。アシスト二回も決めてくれたし充分だよ。
あんなにやる気あるんだったら、本気でうちに入らないか?」
「悪ぃが遠慮しとく」
ニヤリと笑っていつもの返事をする。
祐介が指差した先には、黒髪をツインテールにした
中学生でも通りそうな小柄な少女が彼を待っていた。
「……祐ちゃ〜ん」
「おう、待たせたな。瑞希」
飛びついてきた彼女を汗ばんだ体で抱きとめ、髪を撫でてやると
周囲から羨望と嫉妬の眼差しが向けられた。
「……祐ちゃんってやっぱりすごいんだね。
見てたよ? なんかびゅーんって走ってたの」
「んなこたないさ。啓一に比べれば大したことないって」
こちらを見ながらそう言ってくる、嬉しそうな顔を見ていると
祐介が部活をやらない理由が誰にでもわかってしまう。
啓一はため息を一つつき、祐介の肩をポンと叩いた。
「じゃ、お疲れ。また試合のときは頼むよ」
「都合がつけばな。あと曽根崎先生に助っ人料忘れるなって
ちゃんと言っといてくれよ?」
「――ああ、わかった」
他校との試合に勝ったときの顧問は実に機嫌がいい。
部員でなくともあれだけ活躍した祐介には何でも奢ってくれるだろう。
彼は祐介と少女に別れを告げ、自分の相方のところへ向かった。
恵は遠慮がちに校舎のそばで待っていたが、
興味津々で迫ってくる部員たちに取り囲まれていた。
「水野さん、俺見ててくれた?」
「啓一を見に来たの? 珍しいね」
「俺たち、これから打ち上げするんだけど一緒に来ない?」
美少女に群がる汗臭い男たちに愛想笑いを振りまく恵。
その内心は、一風変わった嘆きで埋め尽くされている。
(……江崎も奥田も、私の髪に触るんじゃない! 汚いだろっ!
キャプテンも、こないだ彼女にフラれたからって
馴れ馴れしくしすぎだと思うんです! やめてください!)
分裂する前、彼女は恵であり啓一でもあった。
サッカー部員としての啓一の記憶は今でもしっかり残っている。
女としての意識と男の記憶の双方に照らし合わせてみても、
今の状況は決して愉快なものではなかった。
救いの主がやってきたのはそのときだ。
「……あ、啓一ぃ!」
彼女は啓一が近づいてくるのに気づいて手を振った。
――なんだ、やっぱり啓一か。期待させやがって……。
周囲の部員たちが顔に失望の色を浮かべ離れてゆく。
キャプテンなどは露骨に彼への怒りを表しつつ
「お前も早くフラれてしまえ!」
と謎の言葉を発した。
近くでは、顧問の曽根崎が笑みを浮かべて部員を集めていた。
「帰りたい者はー、帰っていいがー、それ以外の者はー、
私と晩飯をー、食いに行くぞー」
「おおおぅっ!」
定年間近のやせた体に大勢の高校生を連れて居酒屋に行く元気があるとは
あまり思えなかったが、それがあるのだから周囲には驚きだ。
「それとー、今日は機嫌がいいのでー、ついでにー、
試合見てた子らもー、飯を食わせてやるぞー」
「やった、先生太っ腹ぁ!」
どちらかと言えば弱小なのだが、サッカー部の試合には
女の子のファンが少しながらいる。
ほとんどは啓一目当てではあるが、中には啓一を諦め
他の部員とくっつく女子もいないではない。
祐介と瑞希は帰ってしまったが、残りの部員とマネージャー、
数人の女生徒が打ち上げに参加することになった。
「――という訳で水野さんも! ぜひ!」
「ええ?」
調子のいい誘いに恵は少し考え込んだ。
本音を言えば啓一と二人で帰りたいのだが、
あんなに勝利に貢献した啓一がこの場を去る訳にもいくまい。
「先生もいいって言ってるし、恵も行こうぜ」
「んー、啓一がそう言うならいいよ」
「ぃやったぁああぁ!」
半ば渋々だったが、こうして恵も一行に加わった。
駅前の居酒屋、奥の座敷部屋に彼らは押しかけた。
この辺りには店も多く、こうした大部屋もよく空いている。
コーラやファンタが運び込まれ、顧問の音頭で祝杯をあげた。
皆が虎視眈々と狙っている恵は四隅の席、
彼女を守るように座る啓一の隣でウーロン茶をあおっている。
向かいには部長の特権でキャプテンが座り、恵に話しかけていた。
「恵ちゃん、今日の試合どうだった?」
「あ、はい、すごかったです」
恵が当たり障りのない答えを返す。
座敷の反対側では顧問がビールを片手に
肩をすくめる部員をバンバンと叩いていた。
「はははー、あの御堂のやつのマヌケ面がー、良かったわいー」
どうやら、相手の学校の顧問のことを言っているらしいが
まともに取り合う者は誰一人としていなかった。
キャプテンは嬉しそうに恵と話し、自分の活躍をアピールしている。
「中盤の要をMFと言ってね。特に俺みたいなボランチは
目立たないけどすっごい重要なポジションなんだ」
「そうですね。同じMFでも、攻めの啓一と守りのキャプテンは
役割が全然違いますもんね」
「そう、俺たちが支えているからFWも啓一も攻撃できるんだ。
何たってサッカーはチームワークが大事だからね」
「でも、やっぱり今日の啓一すごかったです。さすが1.5列目」
「ぐ……」
キャプテンの顔が少し下を向いた。
「あとリベロの中川君も素敵でした。DFなのにあんなに上がって、
すごい距離を走ってましたよ。スタミナが違いますね」
「ああ、彼はお手伝いだからね。無理に目立たない方がいいんだ。
彼が上がりすぎたせいで、一点取られたようなもんだし」
「でも、二回もアシスト決めてましたよ? 守りでも敵のFWを
ちゃんと止めてましたし。もしかしてレギュラーより優秀かも」
「うぐ……」
キャプテンの顔がもう少し下を向いた。
焼きそばをちゅるちゅると食べる恵を愛しげに見つめながら、
キャプテンは諦めずに話を続けた。
「し、しかし恵ちゃんは意外とサッカーに詳しいなあ。
もし良かったらうちのマネージャーをやらないか?」
「え、もう三人もいるじゃありませんか」
「グラウンドから水野さんが励ましてくれたら、
きっと皆ももっと頑張れると思うんだ。――もちろん俺だって」
「でもキャプテンってこの間、一年のマネージャーの福島さんに
手を出そうとして逃げられたって言ってませんでした?
結構見境がない人なんですね」
「……な、なぜそれを……! ――啓一ィ!」
「俺は何も言ってませんよ、キャプテン」
そもそもあんたが泣きながらフラれたとか俺に言ったんじゃなかったか。
それを「俺たち」が聞いていただけだ。
啓一は澄ました顔でオレンジジュースを口に運んだ。
その後も大いに盛り上がり、解散した頃には
もう日が暮れ、夕方が過ぎて夜になっていた。
名残惜しそうな男子たちに手を振って別れ、
恵は啓一と二人で夜道を歩いている。
「……ホントにキャプテンしつこかったよ、啓一。
前からあんな人だったかなぁ……?」
不機嫌な顔でそう口にする妹に、兄が微笑む。
「ま、仕方ないさ。あの人、C組の加藤と
付き合ってたらしいけど、こないだフラれたってさ。
加藤は可愛いけど、付き合う相手がすぐ替わるからな……」
「いいように遊ばれちゃったのかな?」
「さあ、どうだろう」
大して興味がなさそうに啓一がつぶやいた。
こんな風に二人きりで言葉を交わすのも、啓一と恵が
一つではなく、二人になったからである。
あれからしばらくこうやって暮らしているが、特に不自由はない。
ただ、いつでもお互いを求め合うようになった。
見つめあい、話し合い、抱き合わないと満たされない。
かつて一つだった頃、彼らが恵であり啓一でもあったときは
こんな飢えと乾きを感じたことはなかった。
兄と並んで歩きながら、恵が口を開く。
「……祐介と瑞希ちゃん、見たでしょ」
「ああ。仲良さそうだったな」
試合が終わった後の二人の様子は明らかに以前とは変わっていた。
「――あの二人、付き合ってるんだって」
「別にいいじゃないか、お似合いだろ」
啓一が平静そのものの声で答える。
彼らは幼馴染の仲だという。きっとうまくいくだろう。
「…………」
恵は落ち着いた兄の表情を眺め、目を伏せてぽつりと言った。
「ちょっと……うらやましいな……」
「――そうか」
腕をそっと出してやると、少女が自分の腕を絡めてくる。
啓一と恵は、街灯に照らされた夜道をゆっくり歩いていった。
深夜、かすかな物音を感じて啓一は目を開けた。
試合で肉体は疲労していたが、今夜は何となく来ると思っていたので
何とか意識を失うギリギリのラインで起きていた。
とはいえ、彼女がもう少し遅かったら眠ってしまったかもしれない。
ベッドから身を起こし、暗い部屋の中でドアを見つめる。
――キィィィ……。
そっとドアが開き、薄い水色のパジャマを着た少女が姿を現した。
こちらをうかがうような視線を真っ直ぐ見つめ返し、手招きしてやると
彼女は慌てた様子でドアを閉め、彼に近寄ってきた。
「……啓一、起きてたの?」
「ああ。何となくな」
恵は長い黒髪を揺らし驚きの表情を見せたが、見た目ほど驚いてはいなかった。
啓一が「何となく」彼女を待っていたように、
恵もまた「何となく」彼が待っていると思っていたのだ。
切り離されてもまだ通じているような気になって、
兄妹は揃って顔をフッとほころばせた。
ベッドの上、啓一の下半身の辺りに腰を下ろして恵は兄と向かい合う。
月は雲に隠され、外は街灯の明かりしかなかったが
この部屋にもささやかな電灯がともっていて、互いの顔をのぞき合える。
「……啓一」
大きな黒い瞳は細められ、うるんだ目が彼に向けられている。
自分を求めてやまない、彼しか知らない恵の表情だった。
子供のように手を伸ばし、緑の寝巻きに包まれた啓一の体を抱きしめると
兄の体の温かさが伝わってきて、恵は身を震わせた。
「恵……」
そんな妹を、啓一は微笑んで抱き返してやる。
二つに分かれてからしばしば繰り返されてきた抱擁だが
兄妹は飽きることもなく、こうして抱き合うのが大好きだった。
「ん……啓一ぃ……」
何度も何度も、少女は少年の名を呼んだ。
元は一つのはずなのに、恵の方がこうしてよく甘えてくる。
今も幸せそうに兄の体に密着し、ぎゅうぎゅう啓一を締めつけた。
啓一も気持ちよさげに妹の体を抱いていたが、
ふと思いついたように恵に小さく囁いた。
「……今日は、しなくていいのか?」
「う、ううん……して……」
頬を染め、羞恥心をむき出しにして少女が言う。
少年は笑うと、声に出さずにつぶやいた。
――やれやれ、これじゃどっちの性処理かわかりゃしない。
二人はパジャマと下着を脱ぎ、ベッドの上で裸になった。
「啓一は寝転んでて……」
恵に言われた通り彼が仰向けに転がると、その上に
一糸まとわぬ彼女がうつ伏せになり、互いの陰部がさわれる体勢にする。
「へえ……エロいな……」
「えー、初めてじゃないでしょ?」
兄の両手で膣口を広げられながら、恵が手を陰茎に伸ばす。
経験はあったが、二つに分かれてからは初めてだった。
たっぷり手淫で性欲をかき立て合い、相手の性器に口をつける。
――じゅぷっ、ちゅぱっ……じゅるるうっ……!
「はあ……恵の――やべ、止まらな……」
陰茎と女陰に唾を塗りつけ、溢れてくる汁を飲み込む。
「んんっ……駄目、吸わないでぇぇっ…… !!」
責め合いは啓一の方が若干優勢なようだった。
「……あぁあっ…… !!!」
――プシャアァッ……。
手と口を使った熾烈な争いは、少女の嬌声と潮吹きによって決着を迎えた。
顔をべたべたに汚した啓一がにやりと笑って勝利を宣言する。
「へへっ……やった」
啓一は体勢を入れ替え、肩で息をしている恵をベッドに押し倒すと
大きく実った乳房を両手で揉みしだきながら少女の唇を奪った。
「んっ……んんっ……!」
彼の腹の下では恵の膣口がよだれを垂らして啓一を待っていた。
――そろそろ、入れてやらないとな。
妹の胸と口とを犯しつつ、啓一は猛りきった肉棒に劣情をみなぎらせた。
「はあ、はあ……はぁあ……?」
白いベッドの上に、恵の長い黒髪が扇のように広がっている。
肉欲に支配された目でこちらを見つめてくる彼女の腰をつかみ、
彼はギンギンに張り詰めた自分自身を恵の中に突きこんだ。
「――はぁ……くるぅ……♪」
開いた口から下品に舌を覗かせ、少女が息を吐く。
欠けていたものが満たされる思いが、性器を中心に
全身へと広がっていくのを恵は感じていた。
満ち足りていたのは啓一も同じである。
「う……恵ぃ……!」
自分の陰茎を包み込んでくる熱すぎる膣の肉に頭を焼かれながらも
彼はグショグショになっている恵の中を往復した。
――ズチュッ、プチャッ! ジュプジュプッ……!
次から次へと溢れ出してくる妹の汁の音を聞きつつ、
何度も何度もかき回した彼女の肉壷をえぐる。
あまり騒ぐと、親にバレてしまう。
兄妹揃って理想の優等生二人が深夜に近親相姦にふけっているなどと
教師や両親が知ったら腰を抜かすかもしれない。
二人は喘ぎ声を必死でかみ殺しながら交わり続けたが、
啓一が上から恵の薄い唇に噛みつき口を封じてしまった。
体の上下で汁の合奏を奏で、どちらも激しく腰を振る。
やはり、こうしているときが一番幸せだ。
二人の体も心も一つになって、満たされた気分になる。
(――恵ぃ……ボクは……)
(け、啓一ぃ……ボ、ボク……)
少年と少女は、理性も恥じらいも捨てて貪欲に互いを求め合った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二人の家の近くに、市内一の高層マンションがあった。
地上三十階、百メートルを超える高さの屋上に一つの人影が立って
豆粒のように小さな彼らの家をじっと見下ろしていた。
「――うーん……」
一見するとただの少年にしか見えない。
だが普通の少年は、こんなマンションの屋上に立って
強風の中を平然と百メートル下を見下ろしはしないだろう。
「やっぱり普通の人間に戻りつつあるね……困った困った。
せっかく十数年かけて育てた『世界』が台無しじゃないか」
彫刻のように端正な顔が冷静にそうつぶやく。
彼はポケットからカードの束を取り出し、
常人ならバランスの取っていられない危険な場所でシャッフルを始めた。
しなやかな長い指が閃き、裏返しの束から一枚を選ぶ。
「――ふむ、『太陽』か」
カードの表には、大地を照らす明るい太陽の顔と
その下で立っている二人の子供が描かれていた。
「太陽は究極の力、あらゆる社会で輝く生の象徴とされている。
僕の本体だって夜明けに主たる太陽を導くのが役目だった。
――でも、このカードは終着点じゃない。
究極の力たる太陽の導きによって男と女、陰と陽の
対立する二つの要素が接触し、終局たる『世界』へと向かう……」
少年は整った唇をつり上げて微笑んだ。
まるで、楽しくて仕方がないというように。
「二つにしたら、一歩下がっちゃったよ……どうしたものかな?
もう一度あの子たちを一つにしたらうまくいくんだろうか」
白い指が虚空に躍り、22枚のカードを再びポケットにしまい込んだ。
彼は悪魔。
神と共に人に生み出され、神に逆らうべく定められた者。
地獄の底で灼熱の業火に焼かれているとも、永劫の氷の中に閉じ込められているとも
言われている古代の堕天使の、小さな小さなひと欠片。
やがて来るべき破滅の時を前に、嵐の前の静けさをこの東洋の島国で過ごしている。
だがその活動は多忙という言葉とはほど遠く、
日々人間たちをもてあそんで暇を潰しているというのが実態だった。
その悪戯の一つとして、双子の赤子の精神をいじってみたのだが――。
思った以上の興味をそそられ、ついこうやって彼らを見に来てしまう。
二つのものを一つに混ぜて。
一つのものを二つに分けて。
それをまた一つに戻したら、どうなるのだろうか。
人の心、人の生。それを観察するのは今や長い時を生きてきた彼の、一番の楽しみになっていた。
夜風に乗って、透き通るような彼の声が流れてゆく。
「いやあ、面白い……人間は面白いよ、本当に」
雲が流れ、今まで隠れていた月が露になった。
南西の空に半分だけの黄金色の球体が浮かび、夜の街と大地を少年と共に見下ろしている。
次に引くべきカードは何か。
「僕としてはやっぱり、世界を引きたいところだけど――。
まあ別のカードでも、構わない……かな」
星か塔か。月かもしくは死神か。それとも運命なのか。
少年にもそれはわからない。わからぬからこそ、面白い。
「――やっぱり、彼らに決めてもらおうか……」
その声も凍りつくような笑顔も、誰にも届かなかった。
―――――――――――――――――――――――
以上となります。
まだ終わってませんが、おそらく次回で完結させると思います。
それでは今日はこの辺で失礼します。
乙〜
そろそろ次スレじゃね?
テンプレは
>>1で
【ターゲット属性】から『実在人物』を削除すればおk?
保管庫のこと忘れてた
…と思って見ようとしたら消えてるみたいだが…
>>521 乙
悪魔かあぁ・・・どうせなら天にまします神の忠実な御使いの方が好みかも
でも続き期待
528 :
次スレ天麩羅:2009/04/22(水) 22:37:14 ID:FZbav+KM
細かいが、「シチュエーション」と直しておくといいかもね
あとURLのh抜きとか
いっそ色々テンプレを弄ってもいいのかもしれないが、現状特に困ってるわけでもないし
そのままでいいんじゃないかな
必要性が出てくれば、自然に話し合うことにもなるだろうしね
531 :
528:2009/04/23(木) 18:07:04 ID:K8+54+qI
>>530 自分では何もしないで、建設的な意見も言えないタイプ。
>>531 以前使わせていただいた身としては、感謝の一言です。
新スレありがとうございます。
535 :
名無しさん@ピンキー:2009/04/23(木) 21:43:54 ID:I317+6AO