【俺の】結婚&新婚萌えスレッド第2夜【嫁!】

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1名無しさん@ピンキー
「あなたの色に染めてください」という意味が秘められた
純白のドレス・・・そんな姿の花嫁さんたちにハァハァするスレです。
愛し合う2人の世界を描くもよし、
式場で花嫁を奪い去る黄金パターンを想像したり、
逆に花嫁を奪われるといった流行りの寝取られ展開を入れてもよし、
政略結婚で好きでもない男に嫁がされる薄幸の美少女に興奮するもよし、

とにかく花嫁が出ていれば何でもOKです!
もちろん2次元キャラ同士のカップリング&新婚生活なんかも大歓迎!!

前スレ
【俺の】結婚&新婚萌えスレッド【嫁!】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149503791/

保管庫
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/
「オリジナル・シチュエーションの部屋その7」に収蔵されています。
2名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:21:31 ID:4N+AX9kO
立てたばっかだけど保守。
3名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:24:11 ID:H1o/blrY
あれー??
このスレで801スレ目なんだけれど、圧縮が来ないぞー??
4名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:27:37 ID:4N+AX9kO
>>3
30分の執行猶予があるらしい。
5名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 23:30:01 ID:H1o/blrY
ああ、サンクス。
800じゃなくて、801スレ目から30分だったんだな。
6名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 02:24:53 ID:IjKeTL98
乙です
7名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 20:43:16 ID:Sdk0dD4s
8名無しさん@ピンキー:2007/07/30(月) 22:57:36 ID:ysvHHquC
乙です。
9名無しさん@ピンキー:2007/08/01(水) 11:15:05 ID:rEbKcOiM
ホシュです
10名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 02:11:03 ID:HqfLSQnJ
上げる。
11名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 08:25:40 ID:+NEt8NBK
乙カレーです
12名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 14:40:01 ID:yZmDNs7D
前スレ埋め立て完了。
13781:2007/08/07(火) 21:27:51 ID:gV0Za1BJ
前スレ781です。
GJしてくれた方ありがとうございました。
なんとなく書き始めたんですが、妙にキャラクターが気に入ったので
続編を書いてる最中です。
完成したらまたUPさせてもらいます。
14名無しさん@ピンキー:2007/08/08(水) 00:57:13 ID:eOUa5PwV
>>13
wktkして待ってます(*´Д`)ハァハァ
15ヘタレ@13号:2007/08/09(木) 01:57:50 ID:jh48MCFT
前のスレでとっては「通りすぎれば」書いて者です。


友人から聞いた話でインスピレーションを受けて勢いで書きました。



展開が無理矢理な上にあんまりエチくない。




まぁ暇潰し程度に読んでいただけたら幸いです。スレの繁栄を願って投下。
16通りすぎれば〜Nos formes heureuses〜:2007/08/09(木) 02:01:14 ID:jh48MCFT
幸せとは様々な形を持つ。


僕にとっては幸せすぎる夏姫との結婚からそろそろ三ヶ月になる。

毎日愛しい人が家に居るだけで帰るのが楽しみでしょうがない。


しかも今まで生きた人生の大半をこの愛しい人を恋焦がれて生きてきたのだ。これで幸せじゃないなんていったらおお嘘吐きだ。




二人が愛し合いそれが幸せと感じる事が幸せだ。
でも今回はそれが彼女の怒りを増幅させたのは間違いないし、僕に過ちがあるのもたしかだ。幸せはマイナスになるとそれはとても大きな感情になるのだ。
でも分かってほしい。
それは独身のころの若気のいたりってやつで男だからしょうがない。




・・・はずだ。


ちょっと言い訳っぽいなかな・・・・・・
17通りすぎれば〜Nos formes heureuses〜:2007/08/09(木) 02:02:08 ID:jh48MCFT
家に帰ると夏姫が玄関に立っていた。
わざわざ迎えてくれた新妻にハグで返そうと思ったら夏姫が
「雅之、話があるの。」
「何?重要な話?」
「とっても。とりあえずリビングで話しましょう?」


で、リビングに置いてある結婚してから二人で決めて買ったソファーに腰かけると夏姫が僕の部屋から何やら運んできた。


目の前に置かれたモノを僕が目にしたとき僕は今日の話題が決して明るいものでは無いことに気付いた。



夏姫が持ってきたのはDVDだった。ただのDVDではない。
結婚する前にお世話になっていた、まぁいわゆるAVというやつだ。
ちょっとした懐かしさすら覚えた。



認識したとたん冷や汗が止まらなくなる。
夏姫は超がつくほどの嫉妬やきなのだ。
18通りすぎれば〜Nos formes heureuses〜:2007/08/09(木) 02:04:03 ID:jh48MCFT
かれこれ2時間は同じ事を言葉を変えながら怒っている。
まぁ要約するとAVを隠していたことが気に食わないらしい。夏姫の怒りは相当なものだった。
まぁ目に見えた結果ではあったがさすがにここまでとは思わなかった。




「何で私がいるのに、こんなものを持ってるの!私とは一週間もしてないのに自分で処理しちゃうんだ?知らない女がセックスしてるビデオで!・・・私に飽きたの!?」

・・・何でそうなる。

「そんなわけあるかよ。僕が夏姫に飽きることなんて有り得ないね。」
「じゃあ何で隠してたの!?」
「隠してたもなにも・・・まぁ結果的に隠していた事になるけど結婚前に買ったやつで単なる捨て忘れ。大体それの存在すら忘れてたよ。何なら今捨てに行ってもいい。」
「・・・言ったわね?男に二言は無いわね?じゃあ今これ以外にも隠しているのが有るならそれも捨てて!もし、出来ないなら実家に帰るから。」
・・・どうしてまぁそうも疑り深いのか・・・。まぁ愛されているが故の嫉妬だから怒る気も反発する気も起きないけど。



10分後。
結局、僕は僕の部屋にある全ての(全て婚前に買った)AVやそれらの類の本を全てごみ捨て場に捨ててきた。


と言ってもそんなに数があるわけではなく、AVに関して言えば夏姫が見付けた三本だけ。
本は四冊だけだ。


さて、問題は我が愛しの君の機嫌をどう直すかだ・・・。
今日一番時間がかかりそうだ。
19通りすぎれば〜Nos formes heureuses〜:2007/08/09(木) 02:05:37 ID:jh48MCFT
ごみ捨て場から帰ると夏姫はシャワーに入っているのか風呂場から水の流れる音がした。




・・・・・・・・・。
良いこと思い付いた。
案外早く機嫌を直せそうだ。



「夏姫ちゃあん。一緒に入ろぅ。」
「ちょっ雅之、やめなさいよ。私まだ怒ってるのよ。」
「ウンウン。夏樹ちゃんとは一週間もしてないもんね?夏姫ちゃんは寂しがり屋さんだからなぁ。」
かぁっと夏姫の顔が赤らめていく。
風呂の温度が高すぎるわけでわない。
「そっそんなことないもん。」

「・・・夏姫、真面目な話ごめんな。本当にごめん。今週は特に忙しかったんだ。その上あんなビデオで見付けたんじゃ怒るの無理ないよな。ごめんな、酷い夫で・・・。」
「そっ、そんなこととないよ。私にとっては最高の旦那様よ?雅之以外の男の人なんて興味ないわ。」
うん。なんとかなりそうだ。今日一日じゃ無理かと思ったけど大金星だ。

「それに・・・」
「それに?なにさ?」
「それに毎日私のご飯おいしいって言いながら食べてくれるじゃない?私、あんまり料理得意じゃないから美味しくないのに美味しいって言って食べてくれるじゃない。それだけでも十分幸せ、うむっ。」
話を遮るように口をふさいだ。
軽いキスだが、僕たちのわだかまりを取り払うにはそれで十分だ。
それに夏姫は勘違いしてる。夏姫のご飯はおいしいんだ。贔屓目にみなくても十分美味しい。
どこまでもコンプレックスが多い子だ。まぁそれが可愛いのだけど。
ちゅっ
「っもう、話してる途中なんですけど?」
「夏姫、ベット行こうよ?僕我慢できそうにないよ。」僕の愚息ははち切れんばかりにいきり立っていたが、さすがに固いタイルの上で夏姫とするのは夏姫に負担が大きすぎるし、風邪を引きそうだ。

「う〜。なんか誤魔化されてる気がするけど解った。先に出てるから。」
そう言うと夏姫は風呂場から出て行った。
20通りすぎれば〜Nos formes heureuses〜:2007/08/09(木) 02:12:55 ID:jh48MCFT
今日はお互い燃えそうだ。

急いで風呂から出ると夏姫はバスタオルを胸を隠すように体に巻いたまま、ベットにいた。
ヤバいな。もう我慢できないや。
「夏姫。」
彼女を隠していた一枚きりの布を剥がすとぷるん、Eカップの胸が揺れた。
胸にしゃぶりつくように愛撫する。
同時に下の口も忘れず愛撫する。
クチュクチュクチュ。
「あっあっあっ、ひうぅぅ。」
僕の指が動くのとシンクロして出る夏姫の艶やかな声
夏姫の声は僕にとって一番強烈な催淫剤だ。
もっと、もっと、もっと!もっと聞きたい。

夏姫の中にある襞の集中しているところを強く擦る。「ひゃうぅぅ、イッちゃうぅ。」
「いいよ。イッテるところ見せて。」

瞬間。夏姫は盛大に潮を吹いて果てた。

夏姫が感じやすいのは前からだが、潮を吹いたのは初めてだ。
いやはや、セックスは奥が深い。

21通りすぎれば〜Nos formes heureuses〜:2007/08/09(木) 02:20:22 ID:jh48MCFT
イッたばかりで息も絶えだえな夏姫には申し訳ないが僕もそろそろ限界だ。
くてっとなっている夏姫の耳元で
「夏姫、我慢できないや。入れるよ?」
「・・・むりぃ、イッたばかりでそんなの入れられたら死んじゃうぅ」
「そんなものってなにかな?」
「雅之のオチ○チン。」
あれま、今日はずいぶんあっさりしてるな。
余裕ないのか。


「じゃあなおのことオチ○チン入れなきゃ。もっと夏姫の可愛いところみたいし。」
「無理ぃ、いやっ、あっあっ、はうぅ、あひぃぃ」


僕が出入りするたびに彼女はあえぎ鳴く。


ヤバいな。僕も余裕ないや。
彼女にたたき付けるように自分の腰をぶつける。

僕たちのベットルームには彼女のあえぎ声と運動不足気味で息が上がった僕の息、そして二人の腰が当たるパンパンという音。


それらが混じりあい二人の音楽を創る。



段々ペースは速くなり最後に彼女の叫び声と僕の息を停める音で僕らの音楽は幕引きとなった。


第一楽章は。


その晩は第六楽章までが演奏されたのだが。



僕らは抱き合って眠り次の日の朝は少し照れたようにキスをして一日の始まりを迎えるのだ。


これが二人の幸せの形で僕の幸の形せだ。


それは間違いない。



そして僕の愛しい人は僕の幸せそのものということも。
22ヘタレ@13号:2007/08/09(木) 02:22:31 ID:jh48MCFT
なんかすんません。
勢いでやりました。
後悔はして・・・・・・・・・ないわけないべ。



もっと精進します。
23名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 07:11:26 ID:DuuEUNQh
>>22
いえいえ、GJです。
ちょっと改行が多くて専ブラでも見にくかったのと、
「ベッド(bed)」じゃなくて「ベット(bet)」と書いてるのが
若干気になったくらいです。
24名無しさん@ピンキー:2007/08/09(木) 22:06:27 ID:T1daWnAR
GJだが
AVくらいで実家に帰ると言い出すのはちょっとヒステリックすぎだと思うんだ
25名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 21:53:58 ID:xr8d2M4X
>>24
女は独占欲が強いって事だろう。
文中から引用するが、「愛されているが故の嫉妬」って事。
26名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 16:56:01 ID:lWIa8Fja
グッジョブ
27名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 19:53:08 ID:rViCmGUf
せっかくAVという小道具が出たんだから、二人で一緒に見るとかしてほしかった。 
という訳で次回作はバイブを使ってイチャイチャするのを読ませてくださいww
GJですた!
28名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 08:26:38 ID:nWKqrpIg
age
29名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 22:45:34 ID:bImBxc7g
保守
30名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 22:32:26 ID:EFYO5qaP
大正政略結婚ものの続きが読みたい…
31名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 16:44:07 ID:Bk3i3E+N
職人さんが来ると信じて…
32名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 08:08:07 ID:rDSrmBZi
浮上
33名無しさん@ピンキー:2007/09/06(木) 15:36:39 ID:w4Ldb97Z
age
34名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 15:07:19 ID:hMobhEoY
ほしゅ
35名無しさん@ピンキー:2007/09/15(土) 22:30:45 ID:g+mrKCfE
そろそろ圧縮保守
36名無しさん@ピンキー:2007/09/17(月) 11:58:47 ID:zlmnleF1
昼休み保守
37名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 06:56:33 ID:EAcmhyCm
age
38名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 03:53:15 ID:i/3GVq/D
>>13
実は待っているんだ…

保守
39名無しさん@ピンキー:2007/09/22(土) 08:47:27 ID:pBWeT3+d
ほしゅ
40名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 01:51:34 ID:AcJhxCVg
>>13
雪子と貴巳、カムバックほしゅ
41名無しさん@ピンキー:2007/09/27(木) 13:15:37 ID:7yQHdJJC
保守しておくね。答えは聞いてない。
42名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 07:14:18 ID:tw83tB9A
age
43名無しさん@ピンキー:2007/10/03(水) 20:18:52 ID:biVRgebz
>>41
桜井と愛理の新婚の夜をのぞくなよw
44名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 10:20:01 ID:lpSb7fxx
age
45名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 10:02:46 ID:6VcA/xqH
>>43
のぞかないよ!おまえ、倒していい?
46名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 21:52:03 ID:fCz5o/IV
前スレ781です。
続編を書いたのでupさせてもらいます。
長いので今日は取り合えず前半までで。
あと、なんかまだ続きそうなのでタイトルを決めてみました。
雪子と貴巳改め「鉄仮面と子猫」です。
47鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:53:07 ID:fCz5o/IV
「こんにちは〜、お久しぶりです!」
雪子は市役所の企画部企画課のブースに笑顔で現れた。
2年前に結婚退職したかつての自分の職場であり、
現在彼女の夫である中嶋貴巳氏の職場でもある。
「あ〜雪子ちゃんだ、久しぶり!」
「どうしたの?課長に届け物?」
比較的小さな市の市役所ゆえにアットホームな雰囲気のここは、、
退職してからも雪子を暖かく迎えてくれる。
「そうなんです。お弁当届けに…朝ちょっと間に合わなくて」
きょろきょろと夫の姿を探すが見当たらない。席を外しているらしい。
「毎日愛妻弁当か…うちなんて毎日職員食堂だよ。羨ましい」
「いいですよね〜。雪子さん、ついでに僕にも作ってくれません?材料費払うし」
と、雪子と同期の沢木がやや本気の面持ちで言う。
「ダメ!一つでも毎朝だと結構大変なんですよ?
沢木さんは彼女に作ってもらって下さい」
「雪子さんみたいに料理上手な彼女がいたらこんな事言わないっす」
「褒めても何も出ませんよ…って言いたいとこですけど、これ」
差し入れに持ってきた重箱を、ブース中央の広いデスクに広げる。
「おおっ美味しそう!これ手作り?」
「昨日から仕込んでたんですけど、思ったよりいっぱいできちゃったので…
皆さんで食後のおやつにどうぞ」
重箱の中には、小ぶりのおはぎが並んでいる。
漉し餡、つぶ餡、キナコ、抹茶の四色が見た目にも美しい。
「雪子ちゃんホントに料理上手だねぇ…私、今度教えてもらいに行こう」
「まだ若いのにおはぎなんてよく作れるねぇ」
「洋菓子のほうが難しいですよ、それに私おばあちゃんっ子だったので」
雪子が料理上手なのは、家庭の事情で高校生のころから家事を一手に引き受けていた
せいなのだが、それを知っている同僚達はあえてそのことには触れないでいてくれる。
それが雪子にはありがたかった。
48鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:53:51 ID:fCz5o/IV
「美味い!最高!」
「って沢木さん早すぎ!まだお昼ご飯前でしょ」
「いや〜雪子さんはいいお嫁さんになるね!」
「もうとっくにお嫁さんですから…」
沢木と交わす漫才じみた会話も、久しぶりで雪子には楽しかった。
しかし沢木は本気か嘘かわからないような冗談が好きで、少し反応に困ることもある。
「係長と喧嘩したら僕のとこ来ていいすよ?ダブルベッドだから広いし」
「沢木さんのお部屋は汚そうだからイヤです」
「ひどいなぁ〜僕本気なのんごふぅっ?」
「あ〜喋りながら食べるから。大丈夫ですか?」
沢木がむせ返ったのは、横に立つ同僚からこっそり脇腹にひじ打ちを喰らったから
なのだが、おはぎを喉につまらせたと思い込んでいる雪子は、沢木の背中を
ぽんぽんと叩いて、湯のみを持たせてやる。
「ゆっ雪子ちゃん、ほら課長帰ってきたよ?」
と、慌てて別の同僚が強引に雪子を沢木から引き離し、ブースの入り口を指差す。
そこには、泣く子も黙る無表情・無愛想の鉄仮面が、
どす黒いオーラを漂わせながら沢木と雪子を凝視していた。
中嶋貴巳(36)、雪子の12歳年上の夫であり、企画部企画課の課長である。
30代という若さの課長は異例ではあるが、その有能さを知る誰もが納得している。
彼の銀縁の眼鏡がキラリと冷たく光るのを、雪子以外のその場にいた全員が
背筋の凍る思いで見た。
(…沢木、殺されるぞ…)
(沢木君かわいそうに…ご愁傷様です)
当の沢木も、背中に鋭く突き刺さる貴巳の視線に、冷や汗をダラダラ流している。
凍りついた場の雰囲気に気づいていないのは雪子ばかりだった。
「あ、お帰りなさい。お弁当遅くなってごめんね」
「…いつ来たんだ?」
「今さっきだよ。おはぎも持ってきたから皆さんで食べてね」
「わかった。…じゃあもう帰りなさい」
「…え?でもまだ来たばっかりだし」
「仕事中だ」
「……はい。」
「それから沢木」
「は、はいぃっ!」
貴巳に呼ばれた沢木が直立不動の体勢になり、裏返った声で返事をする。
「16時からの会議の資料は?」
「え〜っと、もう少しでできます」
「具体的に」
「…七割くらいっす」
「七割できてるということか?」
「いや…えっと、あと七割っていいますか…」
「ほう」
「…すいません、すぐやりますっっっ」

同僚たちの哀れみに満ちた視線を浴びながら、沢木はそそくさと自分のデスクに
戻っていった。
彼のワイシャツは、秋だというのに背中まで汗でびっしょりと濡れていた…

「えーと、じゃあ私帰ります。皆さん、お邪魔してごめんなさい」
「いやいや、差し入れありがとうね」
「雪子ちゃんまた遊びに来てね」
「はい、ありがとうございます。それじゃ」

(…なんか、貴巳さん怒ってる…)
叱られた子供のようにしょんぼりとして、雪子は元職場を後にした。

49鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:54:46 ID:fCz5o/IV
(大体、雪子は少し鈍すぎる)
家路につく車の中で、ハンドルを握りながら貴巳は考えた。
雪子は自分のことを男性受けするタイプではないと思っているようだが、
それは大きな間違いだ。
確かに、誰もが眼を奪われるような美人ではないかもしれないが、
バランスのよい上品な目鼻立ちと、色白できめ細かい肌、
それに柔らかく優しげな表情。
雪子が同じ職場に勤めていた当時も、男性職員からかなりの人気だったのだ。
もっとも雪子自身はそんなことは露知らず、だったのだが…。
今日のことにしても、沢木が雪子に好意をもっているのは、同僚の誰が見ても
明らかなのに、雪子自身はまったく気づいていないようだ。
ただの冗談とでも思っているのだろうか?
だいたい沢木も、相手にされないのをいいことに調子に乗りすぎである。
貴巳は私情を仕事にもちこまないことをモットーとしているが、
午後の会議で案の定、急ごしらえの資料の内容に出席者から質問が集中し、
しどろもどろで答える沢木を見て、少々いい気味だと思ったのは事実である。

雨がぱらついてきたのでワイパーを動かす。このところ日没後はめっきり寒くなってきた。
貴巳の好みで、車内には余計な装飾物は一切置いていない。今時珍しいマニュアル車である。
完璧主義である彼は、オートマ車の変速が、自分の思うタイミングと微妙にずれるのが
我慢できないのだ。
ひんやりとしたシフトレバーを握りながら、車内の時計をちらりと見て時間を確認する。
雪子にメールで知らせた帰宅予定時間まであと4分。ぴったり到着できるはずだ。
昼間、邪険にされて寂しそうだった雪子が、
どんな表情で自分を出迎えるのか…そんなことを考えながら、
駐車場に向かうべくハンドルを切った。
50鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:55:20 ID:fCz5o/IV
一方そのころの雪子は時計をこまめに確認しながら、
夕食の最後の仕上げにおおわらわだった。
夫は、メールで予告した時間から1分と違わずに正確に帰宅する。
そのタイミングに合わせて、出来立ての夕食を用意するのが雪子の一日のうち
一番大事かつ大変な仕事である。
(お魚はさっき裏返したし、あとは煮物を盛り付けて…
あ、おみそ汁に味噌入れなきゃ!あ〜あと3分しかない…)
くるくると動き回って料理を作る様は、懐かしの「料理の鉄人」さながらである。
(箸置きとお箸並べて…よし、これでOKかな)
ようやく夕食がテーブルにセッティングされた。とほぼ同時に玄関のドアの開く音がする。
「貴巳さんおかえりなさい、お疲れ様でした」
「………」
夫の無表情で無愛想な態度はいつものことだったが、
昼間のことがあったため、雪子は少しびくっとした。
まだ怒っているんだろうか…?
しかし貴巳の表情からそれは伺い知れない。というか、
彼の表情から何か窺い知れることのほうが圧倒的に少ないのだ。
よく知らない人が見たら、貴巳は四六時中不機嫌な人間だと思われるだろう。
コートと鞄を受け取りハンガーに掛けると、雨が降ってきたのか僅かに水滴がついている。
それをタオルでぬぐいながら、
どのタイミングで今日のことについて話すべきか、雪子は迷っていた。

食卓についた二人だったが、気まずい沈黙が続いている。
テーブルの上には、新鮮なアジの塩焼きと筑前煮、揚げたジャコと水菜のサラダに
大根と油揚げのみそ汁が並んでいる。
貴巳の好みに合わせて和食中心のメニューである。
いつもなら、口数の少ない夫も、この煮物は美味いとか、その程度の会話はあるのだが、
今日に限ってそれもない。
黙ったまま夕食の箸を置くと、沈黙に耐え切れなくなった雪子が切り出した。

「貴巳さん、今日はごめんなさい」
妻が、思い切ったようにぺこりと頭を下げる。
「…何のことについて?」
わかっているくせにそんなことを聞く自分も少し意地が悪い、と思ったが、
雪子が困っているときの顔はなんとも可愛らしいのだから仕方ない。
少し困らせて、その表情を楽しみながら、今夜は身体のほうもじっくり可愛がってやろう。
案の定、雪子は頬を少し赤くしてうつむいて、口ごもる。
しかしその口から出た言葉は、貴巳の予想外のものだった。
51鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:56:33 ID:fCz5o/IV
「えっとね、お仕事の邪魔、しちゃったなぁって」
「…え?」
「あのあと考えたんだけど、貴巳さんやっぱり、私が職場に行くのが嫌なんでしょう?
私情持ち込むの嫌いだし。私も、元自分の職場だからって、遊びに行くみたいな気分で
おやつとか持って行って、いけなかったなって反省したの。
やっぱり職場は男の戦場だもんね?」

「…………違う」
「え?」
何ということだ。───に気づいていないとは。
瞬間的に、怒りに似た激しい感情が湧き上がる。
自分でもなぜそんな気分になるのかわからない。
きょとんとした雪子の表情には、憎らしいほど邪気が無くて。
それが更に貴巳の劣情をかりたてた。
おもむろに雪子をダイニングセットの椅子から抱き上げると、
乱暴にソファに押し倒す。
「ちょっ、貴巳さん、なにするの?!やめて!」
突然のことに驚いて抵抗する雪子にかまわず、無理やりスカートとセーターを捲りあげる。
眼に染み入るように白い肌が、急に外気にさらされて震えている。
「い、やぁ…違うって、なに…?私、悪かったらちゃんと謝るから、乱暴にしないでよぉ…」
目尻に涙を浮かべて雪子が懇願する。
付き合い初めてから今まで、そんな乱暴な扱いを受けたことがなかったし、
怯えるのも無理からぬことではある。
しかし今の貴巳には、そんな態度さえ神経を逆撫でする原因になった。
ブラジャーを強引にずり下げて、いきなり強く乳首を吸い上げた。
「あああああんんっっっ!やだぁ、貴巳さん、なんで…?」

何故だろう。おかしい。
元々自分はこんな人間ではなかったはずだ。
常に冷静沈着に、理性的に判断することが一番だと思ってずっと生きてきたのに。
雪子が気づかないというだけの理由で…
気づかない?
───何に?
52鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:58:03 ID:fCz5o/IV
「久しぶりに沢木と話して、楽しかったか?」
貴巳は自分の口から出た台詞に驚き、そして悟った。
雪子が気づかなかったこと──自分が、沢木に嫉妬しているという事実。
今、貴巳の中に渦巻く感情は、雪子への怒りではなく、
嫉妬などという、これまでの自分がもっとも軽蔑し遠ざけていた感情に支配されている、
自分への戸惑いと苛立ちだということ。

「沢木さん?何で今そんなこと…」
雪子の口から他の男の名前が呼ばれるだけで、無性に苛立ってしまう。
冷静にならなければ、と自分に言い聞かせるが、
一度暴走を始めた感情はとどまるところを知らない。
乱暴に雪子の唇をむさぼり、舌を強く吸い上げる。
息が苦しくなるまで存分にやわらかな口内を味わい、ようやく離した。

そして雪子も、ようやく貴巳の秘めた感情に思い至った。
おずおずと口を開く。
「貴巳さん…もしかして、やきもち?」
信じられない事実。
あの貴巳が。陰で鉄仮面とあだ名され、無表情無愛想正確無比のロボットのような貴巳が?
ちょっと親しく話しただけの元同僚に、嫉妬しているなんて。
「信じられない…もしかして、沢木さんと私が何かある、とか疑ってる?」
だとしたら殴ってやろうか、と半ば本気で雪子は思った。無性に腹が立ってきた。
「いや、それはない」
即答されて少し安心したが、じゃあ何故そんなに貴巳が怒っているのか理解できない。
「だったら、やきもちなんて妬く必要ないじゃない?」
「……雪子が、他の男と楽しそうにしているのが非常に不快なんだと、
今さっき気づいたところだ」
「そんな!貴巳さん以外の男の人と、これから一生楽しく喋っちゃいけないってこと?」

そうだ、
と喉から出そうになった言葉を、貴巳は必死で飲み込んだ。
なんていう醜態だろう。
理性的に考えれば、雪子に無理な要求をしているのは自分のほうだ。
浮気をしているわけじゃなし、知り合いの男性と会話することまで禁止する権利は
自分には無い。当たり前のことだ。
しかし暴走する感情は、それでは納得してくれない。
雪子を自分だけのものにしておきたい。
できれば、誰の眼にもふれさせたくない。
その眼も声も肌も胸も手足も、全て自分だけのために存在していて欲しい。
自分はこんなに浅ましい人間だったのか。
今まで理性で押し隠していた醜いエゴが、一気に噴出するようだ。
53鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 21:58:59 ID:fCz5o/IV
ぶつけるような勢いで再び雪子の唇を吸い、胸をめちゃめちゃにもみしだく。
「やだっ…貴巳さん、やめて!やめてってばっっ!」
抵抗する雪子を無理やり押さえつけ、下着を引きちぎらんばかりに剥ぎ取った。
電気のついた明るい室内で、夫の目の前に性器をむき出しにされた羞恥で、
雪子の肌がさぁっと紅く染まり震えている。
いつもなら丹念に時間をかけて愛撫し、十分に潤してから事に及ぶのだが、
今日の貴巳にはそんな余裕はなかった。
雪子の膝を割り広げ、まだ口を閉じたままのピンク色の秘部に、舌を這わせ吸い上げる。
唾液をたっぷりとまぶしつけた舌で、強引に秘口をこじ開けて潤す。
同時に、クリトリスを指の腹でぐりぐりと強めに刺激すると、悲鳴のような嬌声が漏れた。
「ひゃ、あ、ああああああああっっっ!だめ!ダメえぇぇぇぇぇっっ!」
敏感な部分への激しすぎる責めに耐え切れず、意に反して雪子が絶頂に達する。
膣口がびくんびくんと痙攣し、貴巳の舌を締め付け、
いやらしい味のする液体がじわりと奥深くから滲み出てきた。 
それを確認すると、貴巳は痛いほどたぎる自分自身のものを取り出し、
前戯らしい前戯もなしに強引に挿入した。
ズプゥゥゥゥッッッ!
「や、あっやだあぁぁぁ!ひっ…んうぅ…」
やはりいつもよりも潤いが足りないのか、ぎちぎちと引っかかり、
ただでさえ狭い雪子のオマ○コが、容赦なく貴巳自身を締め付ける。
たまらず強引に抜き差しをすると、雪子が泣き声をあげた。
「いた、いたあい…貴巳さん、たかみさんっ…」

貴巳は、なんてひどいことをしているのかと冷静に頭の片隅で思う一方で、
雪子をめちゃくちゃに壊してやりたい──
オマ○コに精液撒き散らして、自分だけのものだという印をつけてやりたいと思う、
手に負えない激しい衝動に突き動かされていた。
自分の快楽と支配欲のためだけに激しく腰を使い、そして絶頂に達する。
ドクン、ドクンと濃厚な精液を胎内に噴出し、荒く息をしながら、改めて雪子の様子を見て、
貴巳はようやく我に返った。

雪子が、自分の身体の下で、顔を手でおおいながらすすり泣いていた。
今更ながら、貴巳は激しい後悔に襲われる。
自分はなんということをしてしまったのか。これではまるでレイプではないか。
「うえっ…ひっ…ぐ…」雪子が嗚咽を漏らす。
「すまない…雪子、本当に悪かった」
萎えた自分のものをあわてて抜き去り、雪子を抱き上げようとしたが、
その腕は雪子に振り払われた。
「イヤだって…言ったのに…痛いって言ったのに、貴巳さんやめてくれなかった…」
「…悪かった…」
謝る以外に返す言葉もない。自分が心底情けなかった。


夕食の時とは比較にならない、ひどく重い沈黙が続く。
じっとしていたら窒息するのではないかと錯覚するほど、重苦しい静寂。
おもむろに雪子が震える膝で立ち上がり、剥ぎ取られた下着をつけ身づくろいをはじめた。
貴巳と眼を合わさずに、無言でリビングから出て行き、
そして、貴巳の耳に、玄関のドアが閉まる音が響いた。

すぐに追いかけるべきだと思ったが、あまりの虚脱感に、
貴巳はしばし呆然と立ち尽くしていた。
そんな自分も、先ほどまでの獣じみた行動も。
貴巳が36年間生きてきて、初めて経験したものだった。
54鉄仮面と子猫 2:2007/10/18(木) 22:00:56 ID:fCz5o/IV
本日は以上です。
また明日でも続きをupさせてもらいます。
よろしくお願いします。
55名無しさん@ピンキー:2007/10/18(木) 23:12:05 ID:5aYTNZe3
GJ!
夫やっちゃったなw
56名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 00:00:54 ID:846cuJMV
寒いから靴下だけ履いて待ってる!
57名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 00:48:05 ID:scy+VgJk
待ってた…ずっと待ってたんだ…!

寒くても全裸に正座でお待ちしております。
58名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 04:45:06 ID:2NXYcCH+
暖房すれば良いのではないか?

寒風吹きすさぶ中、屋外で一人座して待つのも、読者の心意気を示すものであるが。
59鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:54:52 ID:dQweD1Hz
昨日の続き投下します。
長くてすいません。
60鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:56:04 ID:dQweD1Hz
タクシーから降りると、雨は本降りになっていた。
(やっぱり傘、持ってくればよかった…)
雪子は小走りに、母の家の玄関に向かう。
自宅を出るとき、とっさに財布だけは持ってきたものの、
雨は小降りだったし、傘のことまで考える余裕がなかったのだ。
考えなしに家を出たものの、夜中に友達の家に押しかけるわけにはいかない。
かといってこんな時間に開いているのは、駅前の居酒屋やクラブくらいだ。
女性が一人で行くのはかなり勇気がいる。だいたい雪子は酒がほとんど飲めない。
迷った末、近くの商店街まで出てタクシーを拾い、同じ市内にある母の家の住所を告げた。

3度目のチャイムを鳴らしたが、応答は無かった。
カーテンの隙間からも灯りはもれてこない。
周りの家と比べても大きく立派な作りのこの一戸建ては、
雪子の母が住んではいるが、雪子の実家というわけではない。
実の父は雪子が高校生のときに事故で亡くなり、
この家は母の再婚相手の家なのだ。
母と再婚相手の義父、それに義父の連れ子の圭一という高校生の男の子が3人で住んでいる。
母が再婚したのは、雪子が結婚する半年あまり前なので、雪子がこの家に住んでいたのも
わずか半年ほどである。合鍵も返してしまって雪子の手元にはない。
義父は雪子をとても可愛がってくれているが、
やはり自分の実家のように振舞うわけにはいかない。
夜中に押しかけるのは気がひけたが、他に行くあてもなかった。

(留守なのかなぁ…圭一くんもいないってことは旅行とか…?困ったな)
もう幾度目かのチャイムにも、家の中はひっそりと静まりかえっている。
雨が激しさを増してきた。気温もどんどん下がってきて、びしょ濡れの雪子の身体は
がたがたと震えだした。
雪子を乗せてきたタクシーはとっくに走り去ってしまったし、
電話でタクシーを呼ぼうにも、携帯はリビングの机に置いてきてしまった。
この辺りは住宅街で夜は人気もなく、バスも最終便の時刻を過ぎている。うかつだった。
ひどく心細くて、子供のように大声で泣き出したい気分だった。
(とにかく…コンビニで傘とタオル買おう)
コンビニまでは歩いて10分ほど。公衆電話があればタクシーが呼べるのだが、
生憎そこには無かったはずだ。傘を買って、その後はどうするべきか…
家には戻りたくない。夫のことをあんなに怖いと思ったのは初めてだった。
自分は貴巳を信用できなくなっている、そのことが何よりも悲しい。
土砂降りの中をうなだれて歩きながら、雪子は寒さと、寂しさに震えていた。
61鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:56:41 ID:dQweD1Hz
(煙草と…あと明日の朝のパンでも買ってくか…しかし寒みーな…あれ?)
沢木勇治は、自分の眼を疑った。
夜中にコンビニの前で、傘もささずびしょ濡れの女性が、スカートの水滴をしぼっている。
そのひとの顔を認めて、思わず大声を上げた。
「雪子さんじゃないっすか!こんなところで何してるんですか?」
びっくりして顔を上げたのは、まさしく中嶋雪子であった。
「うわぁびしょ濡れ!風邪ひきますよそんなんじゃ」
「沢木さん、なんでこんなとこに?!」
「俺のアパートこのすぐ先なんですって。雪子さんこそどうしたんですか?」
「あ………いや、ちょっと…母の家に来たんですけど、留守みたいで…」
夜中に一人で傘もささずにいることの説明にはなっていない。
しかもよく見ると、雪子の瞳は真っ赤に充血している。
「もしかして…課長と喧嘩したんすか?」
「………」
「あーいや、変なこと聞いてすんません!とりあえずそれじゃ絶対風邪引くんで、
タオル貸しますから俺の部屋に来てください!」
「え…でも…」
「いや、絶対、神に誓って、変なことしないっすから!身体あったまったら、
車で送っていくんで」
「でも、そんな迷惑かけられないですし」
夜中に男性の家に上がりこむなんて経験はなかったし、ましてや相手は
喧嘩の原因の沢木その人である。
しかし、ここで意地を張って断っても、他にどうすることができるだろうか?
有難い申し出なのは確かである。
雪子が迷っていると、
「雪子さんこのままにしとくほうがよっぽど気になります!とりあえず来てください」
沢木はやや強引に雪子の腕をとり、自宅へと引っ張っていった。
(しょうがない…お言葉に甘えさせてもらおう。沢木さん何もしないって言ってるし…)

男の「何もしないから」という言葉を鵜呑みにする24歳の女性。天然記念物並みである。

62鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:57:31 ID:dQweD1Hz
洗面所からバスタオルをありったけ持って部屋に戻ってくると、雪子がソファの前で
暖かい缶コーヒーを手に立っていた。
座っていてくれと言ったのだが、ソファが濡れるので遠慮しているようだ。
「これ使ってください。エアコンもっと強めましょうか?」
「ありがとうございます…沢木さん、ほんとに迷惑かけてごめんなさい」
バスタオルを敷いてその上に腰を下ろした雪子が、深々と頭を下げる。
「いや、全然気にしないで下さい…っていうか、もしかして、
喧嘩の原因って俺の昼間のアレっすか…?」
恐る恐る聞くと、雪子は困ったような表情になる。図星のようだ。
「だったら謝るのは俺のほうですよ…ホントすいません」
「いや、そんな、沢木さんは悪くないです!なんていうか、私達の問題で…」
うつむいた雪子の前髪から雫がつたって落ちる。
蒼ざめた雪子の横顔に、沢木は思わず見とれた。
決して華やかな美人というわけではない。服装も雰囲気も地味だし、
むしろ目立たない部類に入るほうだと思う。
だが沢木は、いつからか自分でもわからないうちに、雪子に恋をしていた。
雪子のやわらかそうな唇や真っ白な頬、落ち着いた優しい声やおっとりした物腰…
そんなことばかり考えている自分に気づいたのは、雪子が結婚退職する3ヶ月ほど前の
ことだった。
恋愛に関しては積極派だと自負していたが、雪子に対しては何故か勝手が違い、
想いを伝えようかどうしようか、まるで中学生のように迷っているうちに、
相手の結婚というこれ以上ない失恋をしたわけである。
まして相手は、恋愛などという浮ついたことから軽く50光年は隔たっているイメージの
”鉄仮面”中嶋貴巳氏だという。
あまりのショックに、沢木はその後1週間というもの、毎晩飲み歩き自棄酒を喰らった。

その恋焦がれた雪子が今、自分の部屋で、手を伸ばせば触れられるほどの距離にいる。
濡れた服がぴったりと身体に張り付いて、日ごろ隠されている柔らかな曲線があらわになり、
うっすらと下着のラインも透けている。
そして…
まさかとは思ったが、エアコンの温風にあたっている雪子の身体から、
かすかにいやらしい匂いがするような気がする。
嗅ぎ覚えのある、男の精液と、女性の…
そこまで考えたところで、自分の鼻息が荒くなっていることを自覚し、
沢木は慌てて雪子から眼をそらした。
(いやいやいやいや!何考えてるんだ俺は!)
ここで雪子に手を出したりしたら、後はどんなことになるのか想像するのも恐ろしい。
幸いなことに公務員なので、クビにされたりはしないだろうが、
しかし毎日職場で中嶋貴巳氏と顔をつきあわせるのだから、
ばれるにせよばれないにせよ、寿命が縮みまくるのは間違いない。
(そんなことになったら、絶対早死にするぞ、俺…)
就職氷河期を勝ち抜いてやっと手に入れた安定職である。つつがなく定年まで勤めたい。
落ち着け自分、鎮まれ息子…と自らに言い聞かせていると、雪子が口を開いた。
63鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:58:12 ID:dQweD1Hz
「貴巳さん…どうしてあんなことで怒ったりするんでしょう…沢木さんも、とばっちりで、
嫌な思いさせて本当にごめんなさい」
心の底から自分に申し訳ないと思っているのだろう。雪子には何も責任は無いのに…
自分を見上げる雪子のうるんだ眼差しに、沢木の心臓は高鳴った。
さっきから雪子は謝ってばかりだ。涙を必死でこらえている姿が何とも可憐で、
つい先ほどの硬い決意もよそに、上司に対する怒りがこみ上げてくる。
こんなに健気で可愛らしい妻を泣かせるなんて、男として失格ではないだろうか。
大体、あの鉄仮面のどこが良いのだ?
家でもあんなふうで、ろくに甘い言葉もかけてやらないんじゃないのか。
「俺だったらもっと雪子さん幸せにしますよ」
思っていることがぽろっと口から出てしまい、沢木は慌てた。
「…え?」
雪子は、きょとんとした顔で自分を見つめている。
本当に自分の気持ちに気づいていなかったとは…奥手にも程がある。
こうなったらヤケクソだ、と腹を決めた。
「俺だったら、そんなふうに泣かせたりしません。俺じゃダメっすか」
「そんな、沢木さん冗談やめて」
「冗談だと思いますか?本当に?」
そう言って、沢木は雪子を、力強く抱き寄せた。
「沢木さん!?止めてください、お願い!」
雪子は最初のうち抵抗していたが、男の力にかなう筈も無い。

(離れなきゃ、貴巳さんに悪い…)そう思う一方、
ずっと雨のなか心細い思いをしていたせいか、人肌のぬくもりがひどく心地いい。
貴巳に対する怒りも未だ収まってはいないが、かといって沢木の想いを受け入れられる
はずもなく、雪子はただ混乱し、呆然としていた。
(確かに、もし沢木さんが旦那さんだったら、明るくて楽しい家庭だろうな…)
ふとそんなことを考えてしまう。
貴巳との生活にはない賑やかさ。憧れないといったら嘘になる。
そんな雪子の逡巡を見透かしたかのように、沢木の唇が雪子の首筋に寄せられた。
暖かい息のかかる感触に、肌がぞくりと粟立つ。不快なのか、快感なのか、
それすらも今の雪子には判断できない。
しかし、
そこはさっき、貴巳さんが唇でなぞったのと同じ場所だ───
そう思った瞬間、雪子は自分でも信じられないほどの力で
沢木の身体を突き飛ばし、離れていた。
「あ………」
「……ダメですか」
「………ごめんなさい…」
拒絶され、沢木は唇を噛み締める。
「…課長のどこがいいんだよ?本当に雪子さん課長が好きなんですか!」
そう問われて、改めて雪子は先ほどの貴巳の変貌ぶりを思い出していた。

───雪子が、他の男と楽しそうにしているのが不快なんだ───

今までに見たことの無い夫の姿は、裏を返せば、夫が必死で隠してきた姿ではなかったか。
嫉妬や、戸惑いや、甘えを…
誰もが当たり前に持っている感情を、貴巳は表に出すことが恥ずかしいのだ。
だからこそあんなにも頑なに、無表情と無愛想を通してきたんだろう。
なんて頑固で、そして不器用な人なのだろうか。
貴巳だって、嫉妬もすれば理性を失うこともある、普通の人間だったのだ──

「…好きです。貴巳さんが…好きです」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、それでもはっきりとした口調で言う。
そうして沢木は、自分が完全に、完膚なきまでに失恋したことを悟った。
64鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:58:51 ID:dQweD1Hz
一方、中嶋貴巳氏はようやく自分を取り戻し、必死で雪子を探しているところだった。
携帯は家に置きっぱなしだったし、心当たりといえば何箇所かの友人の家と
雪子の母親の家、それに可能性は少ないが自分の実家くらいだ。
考えられる限りの場所に連絡をし、どこにも雪子が行っていないと知ると、
家を飛び出し車で探しに出た。
まず初めに目指したのは雪子の母親の家だ。
電話が留守電になっており、不在であるらしいが、雪子がそれを知らずに
向かった可能性もあると思ったのだ。
しかし空振りだったようだ。
駅前まで戻り、飲食店なども探したが、
開いている店を全て廻っても雪子の姿はなかった。
終電も終バスも既に無かった筈だ。傘も持っていった様子はないし、
どこへ行ってしまったのか…今更ながらに自分の愚かな行為が悔やまれて、
ハンドルに拳を力いっぱい叩き付けた。
と、自分の携帯の着信音が鳴る。
慌てて表示を見ると、沢木からである。
なぜこんな夜中に…と嫌な予感がした。
「…はい中嶋です」
「課長?沢木です。」
「…どうした?」
「どうしたじゃないっすよ…今どこですか?雪子さんうちにいますから、
心配だったらさっさと迎えに来てください!
あ、変な想像しないで下さいよね?びしょ濡れで泣いてたからタオル貸しただけなんで!
中央1条通りのセブンの前で待ってますから。何分で来れます?」
「…あ、そうだな…10分だ」
「10分ですね?早く来てくださいよ」
ブツッ。ツーツーツー…
いつもちゃらんぽらんな沢木とも思えない態度である。何をそんなに怒っているのか?
そして何故雪子は沢木の家にいるのか?まさか本当に浮気しているわけでもないだろうが…
しかし取り合えず雪子の所在が知れたことで、貴巳は安堵の溜息をつき、車を発進させた。

指定されたコンビニの前に車を停めて降りると、
あれだけ大降りだった雨がいつの間にか上がっていた。
店の入り口の横に、雪子と沢木が並んで立っている。
雪子は、沢木から借りたらしいぶかぶかの男物のロングコートにくるまっている。
二人は貴巳が近づいても無言のままで、雪子は地面をじっと見つめているし、沢木は何故か
ふてくされた表情をしている。
雪子に話しかけるのが怖いと思うのは初めてだ。
「………雪子、本当に、悪かった。許してくれないか」
パーン!という大きな音と共に、自分の頬に熱い衝撃が走った。
雪子に平手打ちされたのだ、と理解するまでにたっぷり2秒ほどかかった。
呆然として目の前の可憐な妻を見る。
雪子が腰に手を当て、自分の顔を見つめて、高らかに言い放った。
「許します!」
「………え?」
自分は今、これまでの人生で一番、間の抜けた顔をしているに違いない。
65鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 21:59:31 ID:dQweD1Hz
「さ、帰ろ。沢木さん本当にごめんなさい。コート、クリーニングして返します」
「いや安物だしそのままでいっすよ。風邪引くといけないんで家まで着てって下さい」
「そうですか…ほんとに色々ありがとうございました」
雪子は沢木に深々と頭を下げる。沢木も雪子に対しては穏やかな表情で応えている。
「沢木、本当に迷惑かけて悪かった」
貴巳がそう言うと、沢木は苦虫を噛み潰したような顔で、
「ホントですよ。結局ラブラブじゃないすか…」と投げやりに言うと、
小声でこう付け足した。
「あ、俺が雪子さんけしかけたんで。許すにしても一発殴ってやれって。
だから雪子さん怒らないであげて下さい」
「…ありがとう。あ、それから沢木」
「何すか」
「この間の会議の議事録、明日10時の提出期限、厳守だからな」
「えええええ〜〜〜!それ今の話の流れで言うことっすか!」
「仕事に私情は挟まないことにしている」
「へいへい…んじゃ気をつけて愛の巣へお帰りくださいね〜」
精一杯の嫌味をこめて二人を送り出し、沢木は溜息をついた。
(喰えない上司だよ…さすが鉄仮面)


帰り道の車の中で、雪子は安堵からか、いつの間にかうとうとしていた。
そっと揺り動かされ、名前を呼ばれて、目が覚めた。
「着いたよ」
夫の顔が目の前にある。心なしか、いつもよりも優しい表情をしている気がする。
さっき自分が殴った左頬が赤くなっている。いくら怒っていたとはいえ、
随分思い切ったことをしてしまった。
そっとそこを指でなぞって、謝ろうとした。
「貴巳さん、さっきはごふぇくしゅんっっ!!!」
ものすごく派手なくしゃみであった。しかも、貴巳の顔のまん前で。
「ご、ごめん…ううん、くしゃみのことじゃなくて、いや、くしゃみもなんだけど…」
ハンカチで顔を拭いながら、「とにかく風呂だな」と貴巳が言った。
66鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 22:00:15 ID:dQweD1Hz
雪子は貴巳に抱えられるようにして風呂場へ連れていかれた。
まだ湿っている服を脱ぐのに四苦八苦しているうちに、
貴巳は浴槽に湯をはり、風呂の準備をしてくれた。
「ねえ貴巳さん」
入浴剤を、容器のふたで計っている夫に話しかける。
「何だ?」
「私が出て行って、心配だった?」
「………準備できたぞ。よく温まっておいで」
質問には答えずにそそくさと風呂場を出て行こうとする夫の腕をつかんで引き止める。
自分は既に全裸になっていて、ちょっと恥ずかしいが、このままごまかされるのは悔しい。
「答えきいてないよ?」
「……知ってるはずだ」
この人は本当に、ずるい。
首筋に腕を回して抱きつきながら眼を覗き込んでみた。目を逸らすところをみると、
やっぱり照れてるみたいだ。
「ね、貴巳さんも脱いで?」
貴巳の服を脱がせにかかった。夫は特に抵抗せず、されるがままになっている。
(貴巳さんって、細身に見えるけど意外と筋肉質だよなぁ…)
いたずら心を起こして、引き締まった脇腹にそっと指を滑らせると、ぴくんと貴巳の身体が
揺れた。そのまま背中に手を回し、ぎゅっと抱きつく。
「…ちゃんと風呂に入りなさい」
「いいよ…このままで十分暖かいから…」
夫の肌の温もりと匂いに包まれて、うっとりとして雪子は言う。
「駄目だ、身体が冷え切ってる」
「じゃあ、貴巳さんも一緒に入ろ?」

雪子は貴巳の上に仰向けになるようにして浴槽につかった。
湯の温かさと、肌と肌が触れ合う感触が心地いい。
貴巳の肩に頭をもたせかけて、うっとりと夫の顔を見つめる。
自然に二人の唇が重なりあい、やがて深く濃厚なキスになる…
(貴巳さんの…硬くなってる)
尻に当たる貴巳自身の感触に、雪子の身体の内側に火が灯る。
「あ…んっ」
向かい合わせに抱き合うように身体の位置を変えると、敏感な乳首と秘部がこすれて、
思わず声が漏れてしまった。
雪子は耐え切れず、お互いの熱を帯びる性器を擦り合わせるように動かす。
ぞくぞくする快感が背筋を這い登り、ますます激しく腰が動いてしまう。
「ああああああんっっっ!やぁ…きもち、いっ…」
(なんか…私、今日、すごいえっちかも…)
今までにないほど大胆になっている自分を自覚して、雪子は耳まで真っ赤になった。
自分の秘裂から、お湯とは違うぬるぬるしたものが分泌されているのがわかる。
貴巳のモノもますます硬さを増し、入り口が擦られるたびに今にも膣内に這入ってきそうだ。
(もう…欲しい…貴巳さんのが…)
耐え切れずに自分の胎内に、貴巳の肉棒を導き入れようとする。
しかし挿入の直前に、貴巳に腰を掴まれて阻止されてしまった。
「やだぁ…貴巳さん、なんで?このまま…」
「駄目だ。風邪ひくだろう?」
「さっきからそればっかり…じゃあ、ベッド行こうよ…」
貴巳は、先程無理やりのように犯してしまったこともあり、今日は雪子の身体を気遣って
ゆっくり休ませなければと思っていたが、
普段からは考えられないほど積極的な雪子の痴態に、その決心も風前の灯だった。
67鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 22:01:25 ID:dQweD1Hz
エアコンを効かせた寝室のベッドに、雪子をそっと横たわらせる。
上気した肌は風呂で温まったせいばかりではない。
絹のようにすべすべとした、柔らかい雪子の肌の感触を楽しむように、体中を優しく
愛撫すると、雪子の身体がいちいち敏感に跳ね上がる。
首筋から胸元、へそ、腰骨のあたり…
肝心な部分をわざと避けて舌を這わせると、
「ふうぅんっ…くふうっ」と鼻にかかった声をあげて抱きついてくる。
柔らかな唇をついばみ、覗いた舌先をちろちろと焦らすように愛撫すると、
必死で吸い付こうとしてくるようすが何ともいえず可愛らしい。
まるで、毛並みのよい真っ白な子猫のようだ。
唇を離すと、じっと雪子が貴巳の目を見つめている。
「さっき…痛かっただろう?大丈夫か?」
「痛かったし…怖かったんだから…」
拗ねたように雪子が言う。
「悪かったよ、本当に…」
「ほんとに、悪かったと思ってる?」
「ああ………?!」
突然雪子ががばっと身体を起こし、逆に自分がベッドに仰向けに押し付けられた。
「じゃあ、ちょっと仕返しされちゃっても、怒らないよね?」
「………仕返し?」
雪子は貴巳の上にまたがり、昂ぶるモノに秘部を密着させて前後に動かしはじめた。
「はああんっっっ…あっ、ああっ」
溢れんばかりの蜜を分泌している雪子のマ○コが、くちゅくちゅといやらしい音を立てる。
「仕返しって…」
「そう…今度は、あんっ、私が貴巳さんを…っっ、犯しちゃうんだからっ…」
そう言って雪子は、クリトリスを陰茎にこすり付ける。
本当に、いつもの雪子からは想像もつかないほど積極的でいやらしい姿だ。
先程自分を殴ったのがきっかけになったのか、何かのリミッターが外れてしまったようだ。
自分の腹の上で快感に眉根を寄せ、口を半開きにして喘いでいる表情が何とも扇情的で、
貴巳自身も痛いほどに張り詰めている。
耐え切れず雪子の腰を掴んで、挿入しようとすると、         
「だぁめ!今は、私が貴巳さんのこと苛める番なのっ」
と言って手を外されてしまった。
雪子の細い指が自分のそそり立つ肉棒に添えられ、滴りおちそうなほど濡れた陰部に
導かれる。
先っぽの部分で入り口をくちょくちょと弄びながら、荒い息で雪子が言う。
「貴巳さん…私のここに…入れたい?」
形の良い白い胸が揺れる。今まで見たことの無い、雪子の挑発的な表情。
貴巳の我慢の限界だった。
「ああ、入れたい…雪子のマ○コに、思いっきり突っ込みたいよ」
「…嬉しい」
雪子が、ゆっくりと腰を落とす。
カリの部分だけを出し入れするようにして焦らされる。入り口を出たり這入ったりするたび、
カリの段差がこすれて、何ともいえない快感だ。
「ふぅっ…あ、あんっあ、これ、きもち、いい…」
雪子は小刻みに腰を上下させながら、とんでもなく色っぽい声を上げる。
68鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 22:02:50 ID:dQweD1Hz
(私…きょうはなんか、おかしくなっちゃってる…)
入り口を擦られる感触に、自分の膣奥から愛液がどんどんと溢れてくるのがわかる。
上になるのなんて初めてなのに、すごく恥ずかしいのに…
あまりの快感に、自分を止めることができない。
入り口だけでは我慢できなくなって、もう少し奥まで導こうと腰を落とす。
が、快感のあまり震える足には力が入らず、一気に貴巳の上に腰を下ろすような形に
なってしまった。
「ああああああああっっっっ!!!あん、奥っ、おくぅぅぅ」
いきなり膣の最奥まで貫かれ、亀頭がぐりっと押し付けられる。
激しすぎる快感に身体を揺らすと、その動きが更に、敏感な子宮口を刺激する。
「ひゃっやぁぁぁぁんいくぅぅ!も、おっ…いっちゃうよおぉぉぉ」
びくびくと雪子の膣肉が痙攣し、張り詰めた貴巳自身をリズミカルに締め付ける。
貴巳も耐え切れずに、雪子のマ○コを下から激しく突き上げた。
「やぁぁぁぁだめぇぇぇ!また、いくのぉ…っあああああああああああああ」
のけぞった雪子のマ○コから、大量の水のような液体が分泌され噴き出して、
貴巳の腹から胸を濡らす。自分の身体を支えていられず後ろに倒れこもうとする雪子を
慌てて抱きとめ、繋がったまま正常位の体勢にすると、貴巳は最後の仕上げにかかった。
雪子の両足を肩に担ぎ上げ、子宮の中までねじ込もうとするかのように突き上げ、
また入り口ぎりぎりまで引き出すのを繰り返し、激しくストロークする。
「きゃ、あああああうぅぅんっあんっ!!すごいぃぃもぉっ助けてぇぇぇあんんっ」
ほとんど意識を手放している様子の雪子だが、すがる様に貴巳に腕を伸ばしてくる。
その身体を思い切り抱きしめた。もう、泣かせたりしない───
「中に出すよ…下の口で全部飲め」そう囁いて、雪子の身体の一番奥へと精を放った。
ドクンドクンッ………!!!
「あああああっ!!!」精液が膣内に流れ込む感触に、
たまらず雪子も最後の絶頂に上り詰めた…
69鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 22:03:26 ID:dQweD1Hz
「なんか…途中から、やっぱり私が犯されてたような…」
二人でベッドに横たわり、荒い息を整えている雪子が悔しそうに言う。
気を抜くとすぐにでも眠ってしまいそうだ。
一方貴巳は疲れも見せず、平然としている。
「……俺を犯すのは十年早い、ということかな」
そう言ってからかうと、雪子はふくれた。
「十年経ったら、私34歳だよ?」
「そうだな。俺は46だ」
「…………」
返事が無いので雪子の顔を見ると、既にうとうととしている。
そっと頭を撫でて、布団をかけてやった。
もう東の空が明るくなってきている。
自分も少しでも寝ようと布団にもぐると、
「たかみさん…」と雪子の声。眠っていなかったのだろうか。
「…長生きしてね」
まじまじと雪子の顔を見つめたが、やはり眠っているようだ。
「最大限、努力するよ」そう囁くと、
無邪気な寝顔に引き込まれるように、貴巳も穏やかな眠りに落ちた。
70鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 22:03:59 ID:dQweD1Hz
翌朝。
いつもなら必ず雪子の手作りの弁当があるのだが、
前日の経緯もあるので、起きて弁当を作れとはさすがに貴巳も言えない。
一日くらい昼飯を抜いてもかまわないという心積もりだった。
職員食堂の冷えた揚げ物ばかりの定食や、コンビニの脂っこく塩辛い弁当を食べるくらいなら
何も食べないほうがまだマシだと思っているのだ。
が、雪子は健気にも起き出して、弁当を作って持たせてくれた。
しみじみとわが身の幸せをかみ締めながら、昼休みにデスクで弁当を開いた貴巳は、
絶句した。
平べったい四角形の弁当箱一面に、みっちりとおはぎが詰まっているのだ。
恐る恐る箸でおはぎを一つ摘み上げると、その下にもまたおはぎが見える。
(………二段だ………)
身体の力が抜けるのを感じて頭を抱えていると、後ろから沢木の声がした。
「それ、いらないなら俺が食いますけど?」
「…誰もいらないとは言っていない」
「そっすか。い〜な〜愛妻弁当は」
「…沢木、昨日はうちの雪子に随分優しくしてくれたようだね?」
「へ?あ、いや〜その」
「必要以上に」
「あはは、いや、結局仲直りしたんすよね?だったら俺はダシにされたようなもんで」
「さっき提出された議事録、形式が違うからもう一度作り直し。指示書をよく読め」
「えええ?!…仕事に私情は挟まないんじゃなかったんすか?」
「当たり前だ。どこが私情を挟んでるっていうんだ?」
「議事録の形式なんて違ってても誰も困らないんじゃ…」
ぶつくさ言う沢木を自分のデスクに追いやると、
あまりにも甘い弁当に挑みかかることにした。
(これも”仕返し”の一環なんだろうか…だとしたら中々効果的だな)
その日は一日中、胸焼けに苦しんだ中嶋貴巳氏であった。
71鉄仮面と子猫 2:2007/10/19(金) 22:15:18 ID:dQweD1Hz
以上でした。長いのに読んでくれた方、ありがとうございます。
期待に沿う出来だったら嬉しいです。
72名無しさん@ピンキー:2007/10/19(金) 23:59:44 ID:ZWeg1cM/
お疲れさーん
ちょっと途中ドロドロするかと思ってはらはらしたよ
またお願いね
73名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 17:29:08 ID:1x5CbOuF
GJ!!
雪子さんは、そういう人じゃないと思ってたけど、
スレ内にも、浮気や寝取られダメと書かれてなかったので、一瞬沢木と
どうにかなったらどうしようと、ドキドキしました
2人の絆も深くなって、良かったです

次回作楽しみにしてます
74名無しさん@ピンキー:2007/10/22(月) 08:43:17 ID:v8HqDQNj
ヒント:おはぎを作るのは割と手間がかかる
75名無しさん@ピンキー:2007/10/23(火) 01:00:31 ID:R3JrlsUk
久しぶりにスレのぞいたら…なんたるGJッ!!
でも沢木にも幸せになって欲しい俺ガイル…
7646:2007/10/23(火) 22:22:45 ID:IevGhtu5
読んでくれたかた有難うございます。
感想もらえてすげぇ励みになります。
続編書いたらまた投下させてもらいます。

>>74
おはぎは前日の残り物でした。解りづらくてすいません。

>>75
沢木は二人を送りだした後泣きながらオナニーしたという設定ですw
実は作者も沢木が気に入ってるので、いつか幸せになってもらいたいと
思ってますw
77名無しさん@ピンキー:2007/10/26(金) 11:53:58 ID:p/fkhc0y
先生と元女子生徒の続きを期待してるのも私だ。
78名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 00:19:03 ID:xvM+kdN2
あげ
79名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 09:10:04 ID:btK+MpJR
雪子タンと沢木が一線を越えるんじゃないかとドキがムネムネだったぜ!
沢木は沢木でいい人見つけてほしいけどね。
何はともあれGJでした!
80名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 07:13:22 ID:yZTrlARr
スピンオフ沢木 希望
81名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 02:04:55 ID:7nuRyws6
保守
82名無しさん@ピンキー:2007/11/11(日) 23:16:53 ID:3Veu7MUv
鉄仮面のクセしてこのこのこのー!
83名無しさん@ピンキー:2007/11/14(水) 23:21:23 ID:XEm7VMrv
保守
84名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 13:57:16 ID:N3nuvjyl
保守
85名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 09:04:05 ID:lbSfSjHJ
こんな時間にお邪魔します。
前に先生と女子学生を書いたものです。
たいしてエロくない小ネタですみません。
保守になれば幸いです。では。
86名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 09:04:45 ID:lbSfSjHJ
「お・は・よ、せんせv」
目が覚めたら、愛する妻が自分の上に乗っていた。
今日も朝から妻は激しい。とはいえ別に羨ましがられるような意味ではない。
目覚まし代わりに、体の上に思いっきりダイビングをかまされたのである。
妻は小さい。そして、軽い。しかしそんな妻にも助走とジャンプが加われば、加速がついて結構な衝撃となる。
「今朝のご機嫌は、い・か・が?」
「……痛い……」
思わずむせながら涙目で抗議したら、馬乗りになったままの妻に、左右の頬を手加減無しでむにーっと引っ張られた。
「朝のご挨拶は、まず『おはようハニー』でしょ?」
「おふぁよふふぁふぃぃ……」
無理矢理口を開きながら、数時間前にも同じ体勢になっていたような記憶が脳内を走馬灯のように駆け抜けた。
だが、同じ体勢でも着衣の有無や状況等で、随分意味が変わるものである。
「起・き・て?ご飯、できてるよ♪」
変わり過ぎた意味にある種の感慨にふけっていたら、妻はようやく馬乗り状態を止めてくれた。
鈍痛が残る頬をさすりながら食卓に向かい、その上を見て、唖然とした。
「何これ……」
テーブルを埋め尽くす皿、皿、皿。夕食でもこんな品数が出たことは無い。
その大半がコメパンパスタ、という炭水化物で占められているのは彼女の趣味で有るから仕方ないとして、これは一応ご馳走と言える状態であろう。朝っぱらからどういう事だ。
「ふっふー。驚いた?でも、記念日だもんねっ」
……記念日?と声に出そうになって、慌てて口をつぐんだ。

記念日。何の。覚えが無い。

しかし、それを言ったらどんな目に遭うか予測もつかない。今日仕事にいけなくなるかもしれない。今日は予備日だから行けなくなっても構わないのだが、下手をすると明日も。
思い出さないと、職業人生が危うい。
促されて上の空でテーブルに着き、妻が栄養バランスを全く無視して取り分けてくれた皿を受け取る。
食事の前のご挨拶だけは忘れないように唱えて、もくもくと食べる。視線を感じたら美味しいと褒めるのも忘れてはならない。
けれど、その間、脳内ではずっと。
今日が何の日か、考え続けていた。

出会った日だろうか。いや、あれはもっと早かった。
再会した(らしい)のは年があけた後で、正式に再開したのは春だ。
キスしたのは。プロポーズは。結婚式は。
以下、家に来たのは手料理を頂いたのは妻を頂いちゃったのは初めてのデートは手を繋いだのは抱き締めたのはプレゼントを渡したのは赤点をつけたのは再試にしたのは履修放棄届けを出されたのは面接をしたのは。
全部、違う。違う筈だ、憶えている限りでは。

「どーしたの?」

「……っ!」
87名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 09:05:49 ID:lbSfSjHJ
突然話しかけられて、何故かピラフが乗っているという、掟破りに水分が少ないブルスケッタが喉につまった。
「きゃ!やだ、先生、死なないでー!!」
やめてくれ。新妻の手料理で死んだりしたら、一生の恥である。
「これ飲んで、これー!」
引き続き苦しんでいたら妻がなにやらグラスを手渡してくれたので、飲んだ。飲んでしまった。
「だいじょうぶっ!?」
「……これ、酒……?」
「うん。飲むつもりじゃなくて、雰囲気で……ごめんなさい!」
雰囲気で置いてあった酒を、結局朝から飲んでしまいました。
飲んでしまったからには仕方ない。今日の仕事は諦めよう。
それから、今日の身の安全も。
「ごめん」
涙目でごめんなさいを繰り返している妻に言うと、不思議そうな顔をした。
「なんで?先生、悪くないよ」
「悪いよ。実は、思い出せない」
「ふぇ?」
目を丸くする妻。可哀想に、真実を知ったらどんなに悲しむだろう。
オレの馬鹿。何故憶えていないんだ。この際だ、全て告白しよう。そして、彼女が望む罰は何でも甘んじて受けよう。
「ごめんね、今日、何の日だったっけ?ほんとごめん、二人の大事な記念日を忘れて」
そこまで言って目をつぶる。そろそろ拳が飛んでくるかと思った頃、椅子に据わっている膝の上が重くなり、柔らかくて暖かいものが体に触れた。驚いて目を開けると、妻の笑顔が目の前に有った。
「忘れてないよ」
「え?」
首に手が回る。どうやら痛い目には遭わないらしい。
「今日は今まであった記念日とかじゃなくてー、これから記念日になる日だもん」
「は?」
話が見えない。ついでに、近くなりすぎて妻の顔も見えない。
「……今日はねー」
諦めて目を閉じたら、軽く触れ合った唇が、甘えるように囁いた。

「11月の22日は、『いい夫婦の日』ってゆーんだよv」

                      
88名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 09:07:26 ID:lbSfSjHJ
以上です。先生はこの日結局学校を休n(ry)

どうも大変お邪魔いたしました;
89名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 17:08:57 ID:/h0nhdjQ
GJ!!
これはい新婚さん(*´Д`*)ハァハァ
90名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 00:45:29 ID:e8LMiFUN
>>88
学校を休んだ理由kwsk
91名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 03:00:02 ID:CumBBwpV
保守&全裸待機
92名無しさん@ピンキー:2007/11/28(水) 01:17:26 ID:G2gya/9Q
保守&靴下一丁待機
93名無しさん@ピンキー:2007/12/05(水) 22:43:52 ID:6j0AKRHN
雪子と貴巳続編希望
保守
94ファミリア:2007/12/06(木) 10:58:37 ID:4t6Y6wU7
保守がてらに。

25歳の童貞と処女カップルの、実は新婦には秘密があって…
という話です。


95ファミリア:2007/12/06(木) 11:00:43 ID:4t6Y6wU7
 「お腹、痛い。…気持ち悪いよぉ」

 ヒクっとしゃくりあげて、カスミは便座に、もう30分近く座り込んでいる。
 小学校で習っていたし、生前に母が教えてくれていたため、生理に関する知識はあった。
 しかし実際、突然に下腹部を激痛が襲い、太ももをつたう血を見ると、誰もいない家の
中、カスミは軽くパニックに陥った。
 カスミの母は、半年前に交通事故で亡くなってしまった。
 今は父と2人きりで、小学5年生のカスミが家事を拙いながらも頑張って、家を切り盛り
していた。
 トイレに入る前につけていたアニメ番組は、5時のものだったから、父が帰ってくる
までは時間が有る。
 そろそろトイレから出て、夕飯の準備をしなくてはいけないけれど、腹痛と頭痛と
吐き気と、細く流れる血に心が萎えて動けない。
 「どうしよう…お母さん…―」
 電話をして、父に助けを求めるのは、恥ずかしくてできない。
 トイレの窓ガラスを、秋に入り急激に暗く寒くなっていった夕方の風が、ガタガタと
揺らして、カスミは一人ぼっちの寂しさを強く感じた。
 「…痛いよ。だれか」

 『泣かないで。どうすればいいか、教えてあげるから』

 トイレの中は、自分一人のはずなのに、幼い女の子の声がした。
 「だ、れ…お、おばけ?」
 しっかりしようと常に心がけているが、根は甘えたで小心者のカスミは、小さく震えて
きょろきょろと周りを見回しながら怯えた。
 『大丈夫、落ち着いて。洗面台の下に、生理用ナブキンがあるから、使ってみてね。
それから…』
 幼い声は、的確な指示をテキパキと出し、カスミを落ち着かせようとした。
 聞き覚えのない声なのに、何故か懐かしくて安心できるような気がする。
 「…痛み止めは、なにか食べてから飲んで、それで」
 「あなた、誰?」
 声に従いながらも、カスミの胸を様々な疑問が埋めていく。
 (お母さんなの?)
 幼い高い女の子の声が、朗らかに答える。
 『私は、貴方の…―』



 ――14年後

 披露宴は、こじんまりとしたイタリアンレストランで、少人数ながらもアットホームな
雰囲気で行われた。
 新婦の北里カスミは、新郎の斉藤直人と共に、手にしたキャンドルで、各テーブルに
火を灯していった。暖かな火と共に、席に着く親族や、友人や、同僚や、上司の笑顔が、
身寄りの縁に恵まれなかった二人を優しく包む。
 やっと壇上に戻ったカスミと直人は、皆に心から感謝のお辞儀をして、席に着いた。
96ファミリア:2007/12/06(木) 11:03:09 ID:4t6Y6wU7
 白いレースのヴェールが、カスミの艶のあるボブの黒髪をふちどり、白い肌と、
ピンク色の唇に、大きな目の彼女の顔は、清純な美しさに満ちていた。
 身長155センチと小柄ながら、豊かな胸と、きゅっと締まったウェストが、
シンプルな純白のウェディングドレスに引き立ち、まるで人形のようだった。
 対して直人は、身長は175センチと、まあ少し高めで、体つきもごく普通。
 顔はボサッとした眉毛と垂れた目が、眉毛犬っぽいと昔から皆に言われるくらいだ。
 直人は、姿形だけでなく心も優しく美しいカスミを、平凡な自分がライバルを跳ね
除けて、妻にすることが出来て、直人の胸は喜びで一杯だった。
 
 (今日から2人で、新しく家族を作るんだ…)

 小学一年生の時に、両親を交通事故で亡くし、祖父母に育てられてきた。
 祖父母の下、子どもの頃は世話をされ、そして今は自分が世話をしながら、寂しさを
胸に秘めながらも、心穏やかに生きてきた。

 (やっと君と今日、結ばれることができる)

 同じ年の25歳の2人は、今時の若者には珍しく、色々とあった為か、いまだに互いに
異性の身体を知らない。
 テーブルの下で、直人がそっと手を伸ばし、カスミの手に触れると、カスミは前の
招待客たちに視線を向けたまま、その手を握り返し、指輪をはめた2人の手は、けして
離れることの無いようにと、強く握り合わされた。



 「お疲れ様。」

 カスミがねぎらいの言葉をかけながら、てきぱきと翌日の新婚旅行に向け、荷物を
まとめていく。
 「そんなに頑張らなくても大丈夫だから。…こっちにおいでよ」
空港に近い為とったホテルの一室で、直人はベッドに腰掛けてカスミに手招きをした。
 「…うん」
 かすかに頬を赤らめたカスミが、直人の隣に腰掛ける。
 直人はカスミを抱きしめて、彼女の耳まで赤くなった頬に口付けた。
 「あっ。…あの、私…シャワー浴びてきてもいいかな?…汗かいちゃって、 ――緊張
しちゃって」
 カスミが身をよじり、直人の腕の中から逃げ出す。
 「…まだ、ダメかな?」
 初心者の直人が、緊張の面持ちで告げると、カスミは首を振った。
 「嫌じゃない。…わ、私、初めてだから、綺麗な身体で直人さんと、結ばれたいの。」
 こんな風に、けなげに今まで処女を守ってきてくれたカスミが、とても愛しくて、
直人は思わず、そのまま彼女に襲い掛かりたくなったけれど、なんとか我慢した。
 「じゃあ、俺も綺麗な身体だから、カスミが気に入ってくれるように、次にシャワー
浴びよう」
 にっこりとカスミが笑うと、恥ずかしそうに浴室へと姿を消す。
 「…あ〜もう、可愛いすぎる!!」
 直人は一人、ベッドでごろごろと転がり、のたうちまわった。
 
97ファミリア:2007/12/06(木) 11:05:03 ID:4t6Y6wU7
 直人が浴室から出てくると、部屋の明かりはすべて消され、真っ暗だった。
 「ちょっ、電気、電気…」
 「つ、点けないで!ごめんなさい。…恥ずかしいの」
 カスミの姿が見られないのは残念だけど、これから幾らでも機会はあると思い、直人は
彼女の希望通りに、電気を点けずに、あちこちに身体をぶつけながら、手探りで
ベッドまでたどり着いた。
 そっと気配のする方に身を寄せて手を伸ばすと、触れたのは生身の肌で…

 (は、ハダカだ!)

 もっと直人が触れようとすると、カスミがみの虫のように、シーツを巻きつける。
 大胆な自分を恥じているのか、掴んだカスミの肩は体温が上がって、汗ばんでいた。
 「わ、私…直人さんが大好き。―優しくしてね」
 直人の鼻先にあるカスミの髪から、洗い立てのシャンプーの花の香りがする。
 カスミが直人に強くしがみつくと、ボリュームのある大きな胸が直人の胸に
押し付けられて、股間の熱が高まり、いっそうペニスは硬くなった。
 「カスミ…―大事にするから」
 直人がシーツを剥ぎ取り、カスミの裸身が露わになる 
 ――が、暗すぎて、カスミの足の間が今ひとつよく分からない。
 直人自身初心者の為、どうしようかと迷っていると…

 『カスミ。電気点けないと、直人さんも真っ暗で、困っちゃうよ。』

 子供の声が、暗い部屋の中に響く。

 「えっ?」
 『2人とも、初心者だから、ちゃんと相手を見ながらした方がいいいと思う』
 「あっ!なんでもない。なんでもないから。」
 『ほら、早く電気点けて』
 直人がベッドサイドにあるはずのスイッチに手をやると、部屋はほのかにオレンジ色の
ライトが点いて、明るくなった。
 カスミが青ざめた顔で、急いでシーツに隠れようとする。
 「さっきの声、何?」
 「あ、あれは……」
 『初めまして、直人さん。私カスミの…』
 「だめぇえええ!」
 カスミが股間を両手でしっかりと押さえて、懸命に身悶えする。
 『…カ、スミ。自己紹介…できな、い、よぉ。くっ、苦しいってば』
 「しなくていいから、黙っててよ!直人さんに嫌われちゃう!!」
 「…カスミ、一体その声なんなんだ?隠さなくていいから、もう俺たち夫婦なんだから、
話してくれよ。」
 「嫌いになる!私のこと…ヘンだって、嫌いになっちゃう…」
 何度も嫌われるとつぶやきながら、カスミはシーツに潜り込んで、震えながらすすり
泣いた。
98ファミリア:2007/12/06(木) 11:07:02 ID:4t6Y6wU7
 『カスミ。チェンジ。』

 もう一度、子供の声が聞こえると、シーツの中のカスミは、震えが止まり動かなく
なった。
 「ちょっ、なんだ!なんなんだ一体!」
 シーツを剥ぎ取ると、カスミの閉じられていた目が、ぱちりと開かれた。
 子供のような澄んだ瞳で、初めて直人を見たような不思議な表情をして、じっと彼を
見つめる。
 (顔も身体も同じだけど、これは違う。カスミじゃない!)
 直人は戸惑いながらも、このカスミから目が離せなかった。
 「そんなに見つめられると、恥ずかしいなぁ。…私、カスミのアソコなの。よろしくね」
 「へ?」
 「ここ。ここだよ。」
 カスミが、白い柔らかな巨乳を丸出しにした全裸のままで、直人の腕を掴み、自分の
うっすらと毛の生えたあそこへと導いていく。
 初めて触れるカスミの、女性のソコは、熱く湿っていて、花びらのような肉襞が、大事な
穴を隠していた。
 「……。って、ここって。」

 「だから、私はカスミのここなの。よろしくお願いします」
 にっこりと『アソコの』カスミが笑って、ぺこりと頭を下げた。

 「カスミ、恥ずかしくてふざけてる?」
 「違うよ。私はカスミのアソコだもん!最近ずっと眠ってて、カスミとお話して
なかったから久しぶりに目が覚めて、私も驚いてるの」
 大きな胸をプルプルと揺らしながら、拗ねたように唇を尖らせて、『あそこの』
カスミが犬のように四つん這いになって、直人に詰め寄る。
 (ちょっと、いや、かなりエッチなポーズなんだけど…)
 驚きに萎えていた直人のペニスが、力を取り戻す。
 「カスミを大事にして上げてね。とってもイイコなの!」
 天真爛漫な笑顔で、直人の両手をとり『あそこの』カスミが、カスミの良さを延々と
語る。
 「…でね。カスミがお友達と一緒に、迷子の猫を探してあげてね、壁の隙間に嵌って
動けなくなってたそのコを、見つけてあげたの」
 「いや、え〜と、その話はカスミから聞いたことがあるけど、…カスミに代わって
もらえないかな。彼女の口から、君のこと聞きたいんだけど。」
 「…カスミ、今私が急に出てきちゃったせいで、貴方に嫌われちゃうって、ションボリ
してるの。お願い!約束して、カスミのこと嫌いにならないで!」
 真剣な眼差しで『アソコの』カスミが、直人の手をぎゅっと強く握る。
 「…まず話がしたいんだ。カスミ、出てきて話してくれないか――驚いてるけど、そんな
簡単に嫌いにならないよ」
 直人からもカスミの手を強く握り返すと、彼女の目は一旦閉じられ、再び不安げに
開かれた。
99ファミリア:2007/12/06(木) 11:09:07 ID:4t6Y6wU7
 「…―ごめんなさい。直人さんに、隠し事してて。直人さんと付き合い始めてからは、
アソコが話をすることなんて、無くなってたの。だから…」
 「いつから、アソコが話をするようになったんだ?」
 「…私が小学5年生で、初めて生理が来た日に…母を亡くしたばかりで、家に一人で
パニックになって泣いていたら、大丈夫って話しかけてきたの」
 「カスミのお母さんが、亡くなってから…」
 「一人じゃないよ。どうすればいいか教えてあげるから、泣かないでって」
 「……」
 「それから、私が困ってる時や、大変な時に声が聞こえるようになったの。最初は、
母の死が悲しすぎて、自分がおかしくなったのかと思ったけど。でも、私以外に
アソコの声を聞いたのは、貴方が初めてよ。」

 「カスミのお父さんは、知ってたの?」

 カスミは、俯いたまま力なく首を振る。
 今日の結婚式の喜びは、吹き飛んでしまったように、カスミは悄然としていた。
 「言えなかった。不安だったけど、父は男手一つで、頑張って私を育ててくれたし、
心配をかけたくなかった。…それに、誰かに話して気持ち悪いって言われたら、
どうしようって怖くて。――あそこはいつも話をするわけじゃなかったし。」
 「それで、最近は話をしなくなっていたんだね。」
 「うん。…あの、…実は、直人さんとお付き合いするか迷ってたら、直人さんはいい人
だから、カスミは信じなさいって言われて、お付き合いを始めたの。でも、それから急に
あまり話さなくなったから、消えたのかと思っていたんだけど――」
 直人は、どうして自分がオススメされたのか謎だったが、あそこの一言がきっかけで、
社内でも人気のあったカスミと、恋人になれたのかと思うと複雑だった。
 「…亡くなったお母さんが、君を心配してあそこになったとか…」
 「私もそうだったら、いいなってずっと思ってるけど……聞いても、違うよって言うの」
 直人自身、小学生の時に両親を亡くしていた。いつも寂しくて、幽霊でいいから両親が
出てきてくれないかと、思っていたこともあった。
 今は、さすがに大人になったし、老いた祖父母に悪い気がして、それほど両親を慕う
気持ちも薄れたが…

 『もお。2人ともお喋りの時間は、おしまいにしようよ。さっきの続き、続き!』

 『アソコ』のカスミがまた話し出すが、こんな状況下ではとても初夜は迎えづらい。
 もしセックスしている時に、直人のペニスのサイズに注文をつけたり、右の胸を揉み、
愛撫すべしとか指導されるのは、ごめんだった。
 たとえ童貞でなくとも、介添え人付のセックスは、露出趣味のない直人には、厳しい
ものがある。カスミも顔が引きつって、とても甘いムードとはいかなかった。

 『ねぇねぇ、しようよ、しようよ。それで、2人で家族を作るの』

 2人の気も知らず、『アソコ』のカスミは、2人を何とか結び付けようとしている。
 「あのさ、そんなに喋られると、こう……いい感じになれないんだ」
 『……ごめんね。私、お喋りしすぎちゃったね。――うん。静かにするから、さっきの
続きをしてね!』
 「あ〜。……うん。お願いするよ」
 直人は、なんとか気を取り直して、カスミの肩を掴むが、いつまた『アソコ』の
カスミがお喋りを始めるのか、気が気じゃなかった。
 
100ファミリア:2007/12/06(木) 11:11:20 ID:4t6Y6wU7
 カスミは顔が強張っていたが、このままではいけないと思ったのか、直人に意を決した
様子で話しかけてきた。

 「…私、違う部屋を取るから。それで、…それで、明日これからの事、話しましょう。」

 「そんな!俺は、俺、気にしないよ。ここで、一緒に眠ろう!…何もしないから、
せっかく今日一緒になれたんだから。」
 「何かしても、いいの。直人さんが、気持ち悪くなければ…」
 「カスミ…」
 オレンジ色の室内灯のぼんやりとした光に照らされ、カスミのシーツに隠された身体の
ラインがくっきりと見える。

 「気持ち悪くなかったら…―わ、私を抱いて下さい。」

 カスミが身に着けていたシーツをはがし、直人の眼前にまぶしいばかりに美しい裸身が、
晒される。カスミの白い身体は再び汗ばみながらも、緊張で震えていた。
 アソコは約束どおり口を開かず、新婚の二人の部屋は、底に熱い興奮や緊張や恐れを
秘めながらも、沈黙がおちていた。
 「カスミ。無理をしなくていいんだ。」
 「無理なんて!私、心から好きになった人に処女をあげたくて、今日まで大事にしてきたの。」
 カスミは、今日という日まで、25年の間、大事に貞操を守ってきたのだ。
 愛する人と1つになりたいという気持ちは、秘密がばれて嫌われるかもしれないという恐れ
と共に、強く彼女の胸のうちにあった。
 (…直人さんに、嫌われたくない。――好きだから、大好きだから。)
 カスミの目から、涙がこぼれ落ちた。

 「…カスミ!」

 直人がしっかりと、カスミを抱きしめる。
 カスミは、直人の背中に腕を回し、力一杯抱き返した。
 「こんなヘンな身体で、ごめんなさい。今まで言えなくて……ごめんなさい。」
 「大丈夫だから。俺は君が好きだ。それに、アソコは俺たちを結びつけてくれたんだろ?
じゃあきっと、悪者なんかじゃない。今もこうして静かにしてくれているし…」
 震えて小さい声になるカスミの髪を、直人は優しく撫でた。
 直人の胸に、頭をもたせかけていたカスミが、上を向く。
 2人の唇が自然に重なり合い、柔らかい唇の感触に互いに陶酔する。
おずおずと伸ばした舌を絡め合い、互いの口の中を探っていった。息が止まりそうに
なるまで、カスミと直人は深く口づけをかわす。


 唇が離れた時は、互いにせわしなく息を乱していた。
 カスミの紅く濡れた唇が、小さく動く。

 「…来て」
 
 向き合って抱き合い、再び軽く唇を重ねる。
 直人の手が、そっとカスミの胸元へとすすみ、その柔らかい乳房に優しく触れ、
手の平で包み込んだ。
101ファミリア:2007/12/06(木) 11:12:54 ID:4t6Y6wU7
連投規制にかかりそうなので、夜にまた続きを投下させていただきます。
102名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 13:53:43 ID:IDRVVGOG
wktk
103ファミリア:2007/12/06(木) 18:53:06 ID:2mkkLlHe
 「っ!……ぁあ」

 カスミが息を呑み、細い喉をのけぞらせて喘ぐ。
 直人の指先が、ピンク色の乳首を軽く押すと、期待と緊張に尖ったソレは、乳輪を
せばめて、愛撫をせがむようにますます堅くしこった。
 「…ふ、…ん―あっ!……ん」
 直人の両手が大きな胸を、タプタプと揺らして、乳首を指先でさすりあげる。
 甘い鳴き声をあげて、カスミがだらりと下ろした手に、直人の固いモノが当たった。
 「!!」
 おっかなびっくりで伸ばしたカスミの手の平が、直人のペニスを握り締める。
 「……。」
 俯いて顔を赤くしたカスミは、そのまま手でペニスを上下にしごいた。
 「っ、ほ、本で読んで…、きもち、いい?」
 荒い息を吐きながらも、カスミは手の動きを止めない。
 カスミ自身が胸への愛撫で感じすぎるたびに、細い指で作った輪が、ペニスをぎゅっと
強く握り締めて、身体を震わせる。
 「カスミ、カスミ好きだ…大好きだ」
 「私、も、…あ!…そんなにしたら」
 直人の指が、きゅっと乳首を引っ張る。乳首は濃いピンク色へと変化して、いやらしく
形を変えて伸びた。
 「もぅ、も…」
 カスミがしきりに内股を擦り合わせて、もじもじとする。
 直人が片方の手を伸ばして、カスミの股間に触れた。
 薄い茂みを掻き分けて割れ目に指を這わせると、直人の指先に膨らんだ豆のような
コリッとしたものが当たった。

 「んっ!」

 一瞬、カスミの呼吸が止まり、強張らせた身体をビクビクと震わせる。
 肉の花弁に触れた指を、じわりじわりと染み出てきた、ヌルヌルとした液体が汚す。
 慎ましやかに膣口を閉じながらも、花弁は男を受け入れる蜜を更に吐き出した。
 カスミの身体から、急激に力が抜けていく。
 「カスミ、イったの?」
 「……」
 伏せた睫毛を上げ、カスミの潤んだ目が、その問いに答える。
 心も身体も愛しくて、直人が再びぎゅっと抱きしめると、カスミは嬉しそうに、
微笑んだ。

 「カスミ。…アソコを舐めさせて」

 直人が顔を、カスミの下半身に寄せながら囁く。
 「そ、それは…」
 カスミが迷うように、足をぴったりと閉じ合わせる。
 「約束したよ。もう隠し事は無しだって。大丈夫。アソコもお喋りしてないだろ?」
 「う…ん」
 直人がカスミの太ももに手をかけ、ゆっくりと両足を開いて、足の付け根を晒させる。
 …クチュ。
 先ほどの余韻のためか、カスミの蜜が開かれた足の間で滴り落ちる。
 「や!やっぱり、見ちゃ…」
 羞恥で身体を紅く染めたカスミが、急いで足を閉じようとした。
104ファミリア:2007/12/06(木) 18:55:51 ID:2mkkLlHe
 直人が力を入れて、そうはさせまいと、カスミのアソコに顔を近づけ、そっとキスを
した。
 「可愛い。こんな事するの、俺が初めてだね。…大丈夫。アソコに顔とかついてないよ」
 「ゃあ、…ば、ばか…」
 消え入るような小さな声で、カスミが悪態をつく。
 そんなカスミが、とても…
 (愛しい。全部、俺の、俺だけのものにしてしまいたい。)
 直人の心の中に、例えこれから何があろうとも、カスミを絶対に守ってやろうという
決意が、今までになく溢れる。
 こんな風に誰かを大事に思えば、ただの平凡な一人の男である自分でも、無限に力が
湧き上がってくるようだった。

 「…カスミ、全部好きだ。ずっとこれからは、一緒だ」

 何度も何度も、カスミのアソコにキスをして、舐めまわした。
 小指を一本だけ濡れた膣の入口に這わせると、ぬるりと飲み込まれていく。
 その指をゆっくりと動かし、中の強張りをほぐす。
 次に、人差し指、中指。
増やされる指を、キュウキュウと締付けながら、カスミの膣の中は滑りを増して、
直人と一つになる瞬間を迎えようとしていた。

 「…っ!わ、たし、…直人さん、すき…―だ、から、わたし…を、全部、みて」

 「カスミ!」

 「…もう、1つに、…なりたい…」

 直人はもうそれ以上我慢できずに、カスミの入口に亀頭をあてがう。
 …ぬちゅ。
 反った亀頭が滑り、カスミのクリトリスに触れて、彼女の身体が電気が走ったように、
ビクビクと震え、挿入を促すように腰を直人に押し付けてきた。
 ゆっくりとペニスが狭い道を穿ち、自分の形に馴染ませるように、推し進めていく。

 「は!…ぁ…―っ!」

 カスミが苦しげに、口だけで息をする。
 眉間にしわがより、きつく閉じた目尻にうっすらと涙が浮かんだ。
 (い、痛い…アソコが、拡がって、お腹が痛い…)  
 そっとカスミが目を開けると、直人は目を閉じ、アソコの狭さが苦しいのか、先程の
自分のように眉間にしわをよせていた。
 (あ、…直人さんも、苦しい…の?身体が緊張してるから?)
 「カスミ、もう少し力抜いて、深呼吸してみよう。ちょっと…きつくて。」
 「う、うん。」
 直人を身体の中に収めたまま、カスミはゆっくりと何度か深呼吸をする。
 再び上を向くと、重なる直人まで、目を閉じたまま深呼吸を繰り返していた。
何だかソレがおかしくて、カスミの身体から力がすっと抜け、直人を根元まで迎え
入れる事がやっと出来た。

 「―全部、入ったね。」
 「うん。直人さんが、全部私の中に、入っちゃった。」
 2人とも頬を紅潮させ、うっすらと汗ばんでいる。

 額をこつんと当てて、笑顔で1つになった感触をじっくりと2人で味わう。
 それは苦痛を伴っているけれど、カスミにも直人にとっても、なにより幸福な時間だった。

105ファミリア:2007/12/06(木) 18:57:33 ID:2mkkLlHe
 「動くとすぐに出そうだな。…あっ!ごめん!俺、ゴムつけるの忘れた」
 「いいの。…記念すべき最初なんだもん。―大好き」
 カスミの言葉を合図にするように、ゆっくりと直人が腰を動かし始める。
 緊張で滑りが少ないためか、ヒダヒダがペニスを全体的にきつく締め上げる。
 少しでもカスミが楽になればと、揺れるカスミの大きな胸を優しく掴んで、乳首を
ペロペロと嘗め回し、甘噛みした。
 「あ!…ふ…―ん、んっ」
 まだ痛むのか、苦しげに眉を寄せながらも、胸の愛撫に感じて、甘い泣き声が漏れ始める。
 「ん、ん…そんなに、吸っちゃ、や…あ」
 懸命にカスミが背中に縋りつき、直人の腰の動きが激しくなる。
 「や、や、…たっ。もう、拡がっちゃうっ」
 生理的な現象で、カスミの苦痛に係わらず、アソコからは出し入れの度にクチュクチュ
と水音がする。

 「ごめん。もう!」

 直人がこれでもかと、カスミの奥にペニスを突き上げる。
 カスミの襞が、痛みと、強い恥骨が当たる衝撃に、ペニスをぎゅっと絞った。
 熱い精液が、処女地をビュクビュクと汚していき、カスミが悲鳴をあげる。
 「痛、…―っ!」
 「うっ!」 
 直人は腰を深くすりつけ、たっぷりとカスミの膣の中に、吐き出した。

 ぐったりとしたカスミの上で、更に精根尽きたように直人がぐったりとしていた。
 「重いよな。…最後、痛がってたのに、ごめん。」
 横に転がると、背後からカスミを裸で汗まみれのまま、抱きしめた。
 「へ、平気。私、…直人さんと1つになっちゃった」
 抱きしめる直人の腕を、下からほっそりとしたカスミの腕が抱く。
 カスミの項に、汗で髪が張り付く。
 「汗でべたべたして、気持ち悪い?」
 「ううん。もう少し、こうしていたい。」
 どちらかといえば、潔癖な傾向のある2人だったけれど、愛し合った後の互いの
身体の熱や吐息がくすぐったくて、気持ちよかった。

 力を失ったペニスが、カスミの中から抜け落ちる。
 「んっ…」
 カスミが身体を震わせ、互いの腕を解いて下を見ると、シーツを精液と処女の証の
赤い血が、うっすらと汚していた。
 「血が…染み抜きしたほうが、いいかな?」
 「俺も手伝うよ。でも、もう少しだけ」
 向き合ってカスミと直人は、再び飽きずに抱き合う。
 軽く唇を重ね、そのまま……力尽きて2人、眠りについてしまった。
106ファミリア:2007/12/06(木) 18:59:10 ID:2mkkLlHe
 夢の中なのか、世界が白い霧に包まれている。
 直人がぼんやり目を開けると、隣のカスミの髪を誰かが撫でているようだった。
 「だ、れだ?」
 次第に直人の視界が、はっきりとしてくる。
 目に映ったのは、カスミに少し似た長い黒髪の美しい女性と、アルバムで昔見せて
もらった幼い頃のカスミによく似た可愛い少女だった。

 「誰…おばけ」
 『もう!違うよ!私たちは…』
 『カスミ。直人さん、驚かせてごめんなさい。』
 「あの…彼女は俺の大切な人です。貴方たちは誰なんですか?もし、彼女に何かしよう
っていうんなら…俺が許しません。彼女を守ります!」
 直人は早口でまくし立てると、眠ったままのカスミを引き寄せて、守るように
抱きしめた。

 『私は、北里 薫。カスミの母です。…そして、この子は、カスミの押さえつけていた
カスミ自身の子供の心です。』

 「へっ?」
 毒気を抜かれたように、直人がポカンとしていると、彼女は更に驚くことを告げた。

 『私たちが、あの、カスミのしゃべるアソコです。本当に、貴方とあの子には、…
ごめんなさい!』

 深く彼女が頭を下げると、小さなカスミもぴょこんと頭を下げる。
 『自分を押さえつけて頑張っていた、小さなあの子が心配で、どうしても見守って
いたくて…』
 カスミの母の大きな目が、涙に曇る。
 『あの子の悩みの種になって、本当に貴方たちに悪いことをしてしまった』

 「でも。でもカスミは、貴方たちがいて、助けになったって言ってました!」

 悲しげな二人が見ていられなくて、直人は口走ってしまう。
 (カスミが悩んでたのも、事実だけど、でも!)
 『…ありがとう。』
 『お兄ちゃん、ありがとう。』
 2人が再び、深く頭を下げた。
 「だって、今日俺たち家族になったんだから。貴方たちも大事な家族です。だから、
彼女にも言ってあげて下さい。いつも見ていたって。」 
 『ありがとう。でも…』
 「カスミ、起きろ。お母さんだぞ。『アソコ』は小さい君と、お母さんだったんだ」
 カスミの頭がグラグラ揺れる。しかし、不思議とカスミは目覚めなかった。

 『ありがとう。カスミは本当に、素敵な男の人と結ばれることが出来て幸せね。でも
もう、私は行かなくちゃいけないんです』
 
107ファミリア:2007/12/06(木) 19:00:45 ID:2mkkLlHe
 カスミの母は、にっこりと微笑むと、両手を上に差し伸べた。
 ゆっくりと、2人が淡い光に包まれる。
その身体は徐々にうっすらと透けてきて、突然消えた。

 優しい声が、部屋の中に漂う。

 『直人さんには、本当にどんなにお礼を言っても足りないくらい。…直人さん、姿は
見えないけど、いつも貴方のご両親は、貴方を見守っているわ。』
 『お兄ちゃんのお父さんとお母さんは、すごく優しい人たちだね。だから私、カスミを
任せられるって、思ったの!』

 「…父さんと母さんが…」
 『さようなら。2人の幸せをいつも、祈っているわ』
 『元気でね〜バイバ〜イ!』

 そして、部屋には…―カスミと直人だけになった。


 「う、ん…」
 どんなに揺らしても目覚めなかったカスミが、目を開けてニッコリと微笑む。
 「なんだか、いい夢を見た気がする…」
 直人はたまらず、カスミをぎゅっと力強く抱きしめた。

 「君のお母さんが、…」

 「何?不思議ね。夢でお母さんが出てきて、直人さんと仲良くねって言ったの」
 「それは…―うん。俺の今見たこと、話すよ。おかしいって思わないでくれよ」
 「何でも話してね。私も何でも話すから。」
 うっとりと瞼を閉じて、カスミが囁く。
 彼女を抱きしめる直人の腕の力は強くなり、声は感情の昂ぶりに震えた。

 「君は一人じゃない。いつも見守っている人達がいるよ。」

 「うん。貴方もね。」

 (そう。俺も、…―)
 (俺も、父さんと母さんが見守っていてくれる…)

 カスミの細い腕が、自分を抱き返す。
 そんな事がとても嬉しくて、閉じた直人の目に涙がにじんだ。



(おしまい)
108ファミリア:2007/12/06(木) 19:01:30 ID:2mkkLlHe
以上です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
109名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 01:09:17 ID:v8cijZWq
76GJ進呈ですよ
110名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 21:22:35 ID:3QswYVhV
保守保守。

111名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 22:05:54 ID:0i47Tfkt
これはまことによい初夜
112名無しさん@ピンキー:2007/12/15(土) 20:45:48 ID:nA8GmfCw
保守
113名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 00:13:38 ID:6Z9bVmau
久々に来てみた。
GJだった。
114名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 14:25:37 ID:kiKvC1KZ
保守
115名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 16:45:20 ID:CSnWs40E
age
116鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:25:06 ID:AF6/3672
鉄仮面と子猫を書いてる者です。
第3弾を投下させてもらいます。
例によってちょっと長いですが、読んでもらえたら嬉しいです。
117鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:26:14 ID:AF6/3672
「貴巳さん、あのね、お願いがあるんだけど…」
夕食の乗ったテーブルの向かい側で、雪子がおずおずと切り出した。

夫婦二人だけの夕食だが、品数も多く手の込んだ料理が並ぶ。
別に今日に限ったことではない。
妻の雪子は24歳という若さに不似合いなほど料理上手であり、
また感心なことに、三度三度の食事の支度を手抜きしようという気が全く無いらしい。
もっとも、彼女の夫である貴巳が、スーパーの惣菜やコンビニ弁当を
ほとんど憎悪といってよいほどに嫌い、
そんなものを食べるくらいなら何も食べないほうがまだマシだと公言して憚らないので、
専業主婦である雪子としては手抜きをするわけにはいかない、という事情もある。
とにかくその日の食卓に並んでいるのも、
ぶり大根、きゅうりと菊花の酢の物、笹身の梅肉あえにひじきと油揚げの煮物、それに
水菜の卵とじ汁という目にも鮮やかなメニューであった。
中嶋貴巳(36)は、黙々とそれらを口に運ぶ。
旨い。というか雪子の料理が不味かったことなど殆どない。
芯まで味のしみた大根をじっくり堪能し、貴巳はいつものように上機嫌だった。
但し、他人からは決してそうは見えないだろう。
何せ中嶋貴巳氏は、無表情・無愛想・無口と完璧に三拍子揃った、
泣く子も黙る「鉄仮面」なのである。
鉄仮面とは、彼が勤める市役所の同僚たちによるネーミングである。
彼ほどそのあだ名が似合う男は、日本中探しても滅多にいないと思われる。
というわけで、はた目には葬儀に出席でもしているかのような仏頂面で
箸を運んでいたときのことだ。

「…何だ?」
元より慎ましい性格の妻は、何かをねだるということが殆ど無い。
夫である貴巳のほうが物足りなく感じるくらいに、わがままを言うということがないのだ。
毎日一生懸命に自分のために家事をこなしてくれているのだから、
雪子の願いなら何でも聞いてやるつもりで尋ねた。
「えっとね…今度の土曜…明後日に、お鍋してもいいかな?」
オナベシテモイイカナ、とはどういう意味か、貴巳は一瞬考えた。
わざわざ夫に許可を求めるような事柄とは思えない。
何か隠しているような、少しうしろめたそうな雪子の表情から推察して、
ただ明後日の夕食のメニューの相談をしているわけではあるまい。
「鍋料理をする際は俺の許可を得るように、なんて言った覚えは無いが?」
少々意地悪な言い回しをすると、雪子は肩をすくめ、観念したように話しだした。
118鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:27:07 ID:AF6/3672
「あのね、あやさんが鶏つみれ鍋の作り方を教えて欲しいんだって」
「…橋本が?」
橋本あや。
貴巳の同僚で、市役所の企画部企画課の主任である。
貴巳の直属の部下であり、優秀な右腕と言ってもよい。
東京丸の内の一部上場企業で、いわゆるキャリアウーマンとして働いていたが、
5年前に退職して、この市の地方公務員の社会人採用枠に応募してきたという
異色の経歴の持ち主である。
目鼻立ちのはっきりとしたなかなかの美人なのだが、
30を越えて浮いた話の一つもないのは、仕事が出来てその上美人だから敬遠されている、
などと言う理由ではなく、ひとえに彼女の性格のせいであろう。
一言で言えばがさつなのである。
限りなく好意的に言えば「男前」だろうか。
上等なスーツに身を包み、長い髪をアップに纏め上げてハイヒールで闊歩する姿は
周りの男達が皆、目を奪われるほど優雅なのだが、
仕事が忙しくなってくるとその仮面はいとも簡単に剥がれ落ちる。
残業中に夜食として、焼き鳥片手にパソコンで作業し、
食べ終わったらその串を爪楊枝代わりにしてシーハーシーハーとやっている。
デスクの周りは食べ終わった弁当のパックや空のペットボトルなどが山積みで、
少しでも手を触れたら雪崩が起きそうな惨状と化している。
また酒豪でもあり、一緒に飲みに行った同僚15人を一人残らず潰したなどという
エピソードには事欠かない。
一昨年の部署の忘年会で、遅れてきたと思ったら
「万馬券当てたぜぇぇぇ!今日はアタシの奢りなんで遠慮なく飲みたまえわはははは」
と高笑いしながら現れ、万札をばら撒いたのは役所内で既に伝説となっている。
とにかくそういう人物である。
雪子とは正反対なタイプだが、そこが却って馬が合うのか、二人は仲が良い。
雪子がまだ市役所に勤めており、二人が同僚だったころから、
あやは雪子を妹のようにかわいがり、また雪子もあやのことを慕っていた。
雪子が結婚退職したあとも、月に一度くらいは家にやってきて、
妻の手料理をさんざ飲み食いし、管をまいては帰っていく。
「雪子ちゃんみたいなお嫁さんが欲しい〜」というのが口癖で、
彼女自身は料理などは絶対にしそうにない。
実際に、常日頃、自分のお抱えシェフはコンビニと弁当屋と宅配ピザ屋であると公言して
はばからなかったはずだが。


「どういう風の吹き回しだ?」
「さぁ…私もよくわかんない。でもこれから料理いろいろ教えて欲しいんだって」
「…不気味だな」
「やる気になってるんだから、いいことじゃない」
まぁ、確かに料理は出来るに越したことはないだろう。
雪子の作る鶏つみれ鍋は絶品だ。薄味の上品なダシに、
鶏肉をすり鉢ですって作るつみれには柚子の香りと黒胡椒がきいている。
そういえば昨年、橋本は我が家でそれを食べ、余りの美味さに涙目になっていた。
その作り方を習いたいというなら納得できないでもないが、
雪子の表情を観察していると、どうもまだ何か言いにくいことがありそうだ。
大体、橋本が遊びに来るのはよくあることで、別に自分に伺いを立てるまでもない。
「…それで?」
「え?それでって?」
「ただ橋本がうちに来て料理教室するだけじゃないんだろう?」
「な、なんで貴巳さんはそんなに何でもわかるのかな…」
雪子が隠し事が下手すぎるだけなのだ。
とは言わず、無言でじっと顔を見つめてやった。
いたずらをして母親に問い詰められる子供のような表情で雪子は説明を始める。
119鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:28:20 ID:AF6/3672
「えーと、土曜日に一緒にお鍋作ろうねって、あやさんと昼休みに電話で話してたら、
それを沢木さんが聞きつけたみたいで」
「…それで?」
沢木勇治。最近どうも生意気な、貴巳の部下である。
貴巳の胸に、何となく嫌な予感がきざす。
「沢木さんも食べてみたいって言うから、どうせだったら企画課の皆さんで一緒に、
忘年会がてらにお鍋パーティーしようって話に…なっちゃった…」
「なっちゃった?」
「今日、あやさんから、全員出席できるってメールが届いたの…」
企画課の職員は貴巳を含め5人。あやを筆頭に酒と宴会を愛する賑やかなメンバーである。
雪子と夫婦水入らずの静かで穏やかなこの家に、あの連中が乱入してくると
想像しただけで頭痛がしてくる。
「俺は何も聞いていないが」
「ご、ごめんね?相談してからって思ったんだけど、なんか皆さんノリノリみたいで…
課長に相談したら絶対反対されるから、間近になるまで内緒にしとこうって
沢木さんが」
かつて雪子に想いをよせていた(そして多分今でも)、ちゃらんぽらんな部下が、
雪子の家に来て手料理を食べられる、と有頂天になっている様子が目に浮かび、
貴巳は深い深いため息をついた。
「ごめんね…。貴巳さんきっと嫌がるだろうと思ったんだけど。
でも、たまには賑やかなごはんも楽しいかなって…」
ばつが悪そうに雪子が呟く。
確かに、夫婦二人だけの生活は単調で静かである。
静寂と秩序をこよなく愛する貴巳にとっては、非常に居心地が良い環境だが、
もともと人好きのする性格の雪子は、寂しさを感じることもあるだろう。
それを思うと、鍋パーティーとやらを中止させるのも可哀想な気がする。
「…まぁ、今まで橋本以外にうちに同僚を呼んだこともなかったし、たまにはいいだろう」
自分の持てる最大限の寛容さでそう言うと、
「ほんとに?嬉しい!ありがとう貴巳さん」
はじけるような笑顔で雪子が抱きついてきた。
(やっぱり、いつもは寂しい思いをさせていたのかもしれない)
妻のはしゃぐ様子を見て、僅かに罪悪感を感じる。
首に回した腕から頭を優しく撫でてやると、絹糸のような髪がさらさらと
指の間を零れ落ちた。
雪子は、愛撫される子猫のようにうっとりと目を閉じて、貴巳の肩に頭を預けている。
間近にある雪子の顔をじっくりと眺めながら、その造形の繊細さに、貴巳は改めて
驚きに近い感動を覚える。
女優やモデルのような派手なつくりの美人ではないが、
優しく気品のある目鼻立ちに加え、真っ白できめ細かな肌の触り心地の良さはこの上ない。
そこに桜色をした薄い唇と、ほのかに紅をさしたような柔らかな頬が色を添えている。
最高の腕を持つ職人の作った日本人形はこんなふうではないだろうか、と思った。
少しいたずら心を起こして、閉じたまぶたを彩る睫毛にふっと息を吹きかけると、
驚いて雪子は目を開け、ふふっ、と蕩けそうな微笑を浮かべる。
可愛いとか綺麗だなんて言葉では言い足りない。あまりの愛しさに息が詰まりそうになる。
結婚して丸二年以上が経つが、そのころから変わらず、いや、それ以上に
雪子の表情や仕草、発する言葉のいちいちが貴巳を虜にするのだ。
そっと唇を重ね、やわらかな感触を存分に堪能すると、果物のように瑞々しく甘い舌を
むさぼる。
服の上から、胸を包み込むように優しく愛撫すると、口付けの合間に熱い吐息が漏れてきた。
唇を離し、今度は耳朶をねぶりながら、背後から抱きしめてブラウスの下に手を伸ばす。
120鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:29:45 ID:AF6/3672
「やっ…だめ」
雪子が慌てて貴巳の手を押さえて止める。
目顔で聞き返すと、真っ赤な顔で、
「…駄目だよ…まだ生理ちゃんと終わってないもん」
と消え入りそうな声で言う。
そんなことは貴巳も先刻承知だ。
「別に、最後までしなければいいだろう?」
「そんなの…無理」
「どうして?」
「だ、だって…無理なものはムリなのっ」
これ以上されると我慢できなくなるから、とは恥ずかしがり屋の雪子はとても言えない。
子供がいやいやをするように首を振り、一生懸命にもがいて貴巳の腕から逃れようとする。
そんな仕草が小動物のようで、いちいち可愛らしい。
小柄な雪子がいかに必死で抵抗したところで、腕力で貴巳にかなうわけもなく、
あっさりと抱き上げられ、リビングの大きなソファに下ろされてしまった。
だけではなく、ついでにブラウスも捲りあげられ、目に染み入るほどに真っ白な胸元が
あらわになっている。
貴巳の器用な指先が巧みにブラジャーのホックを外し、
唇と同じ桜色の乳首を、指の腹で、つつ、となで上げる。
「た、貴巳さんっ!駄目だってばぁぁ!」
「どうして駄目なのか説明してくれないと解らないな」
「い…いじわる…なんで貴巳さんは、そうやってわざと…」
「わざと…何だ?」
「わ、わざと、私に恥ずかしいことさせようとするの…?」
真っ赤な顔を隠すように腕を交差させ、弾む息の合間に雪子が囁く。
「何故って…」
答えは一つしかないではないか。
「楽しいからだ」
これ以上ないほど真剣な面持ちで貴巳が断言すると、
雪子は絶句し、あっけにとられた顔をしている。
そして次に困ったような、嬉しいような、泣きそうな複雑な表情を浮かべた。
「…た、楽しいの…?」
「もちろん」
「だって…最後まで、えっちできなくてもいいの…?
私ばっかり、その…気持ちよくなって…それでも、貴巳さん楽しいの?」
121鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:30:47 ID:AF6/3672

答えるかわりに雪子の胸元に唇を寄せ、乳首をそっと含んで吸い上げた。
「ひゃ、あんっ…」
徐々にこりこりと硬くなってくる感触を舌で味わいながら、
両手もぬかりなく、背中や脇腹、耳など、雪子の敏感な部分を責める。
雪子は最初のうち眉根を寄せて快感に耐えていたが、
だんだんと息が荒く熱くなり、唇を半開きにし、熱に浮かされたような表情になる。
ぞくぞくする快感が背筋を這い降り、体の中心の一点が熱を帯びていく。
そこに触れられないもどかしさもいつしか快感となり、雪子は奔放に声を上げはじめていた。
「や、あああああんっっ!きもち、いいよぉぉっ…」
唇を重ね、歯列を舌先で嬲るようになぞられたかと思うと、
両方の乳首を指でつままれ、優しく擦り合わせるように刺激される。
あまりの快感に、びくびくと腰が跳ねた。
露出している肌のあらゆる部分を貴巳の舌と指先が舞い、掌で撫で上げられる度に、
いちいち身体が痙攣するように反応してしまう。
「だ…め…あっあっ…あ、もう、もう…」
雪子がついに、限界を告げる声を上げた。
「ああああああ!うそぉ…触って、ないのにっ…いくっ……やぁぁぁぁんっっっ!」
ひときわ大きく雪子の身体が跳ね、力の限り貴巳のシャツを握り締めていた指が解かれた。
肝心の部分に触れられもせずに達してしまったことが信じられない様子で、
半ば呆然としながら荒い息を整えている雪子の頬を、貴巳は優しく撫でる。
「…ほんとに、楽しい?」
未だ半信半疑な様子の雪子に、貴巳の口元がほんの少しだけほころびた。
わずかな筋肉の痙攣というほどの動きだが、どうやらそれは微笑らしい。
と、雪子が、貴巳の顔を両手ではさんで、きらきら輝く目で顔を覗きこんできた。
「…何だ」
「今、もしかして、笑った…?ねぇ、もう一回見せて?」
「無理だ」
にべもなく断る顔は、既にいつもの微動だにしない鉄仮面である。
「…もう」
なんだか自分達のやりとりが可笑しくて、雪子がくすくすと笑う。
(雪子の生理が終わるまであと2日か…それまで本当のお楽しみは取っておくことにしよう。
届いたアレを試すにも、じっくり時間をかけたほうがいいだろうし…)
夫が自分の生理周期の計算をして何やら企んでいることなど露知らず、
雪子は貴巳の腕に抱かれて上機嫌だった。

122鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:31:18 ID:AF6/3672
そして土曜日。
日ごろ静かな中嶋邸は、貴巳が二日前に予想した以上の惨状を呈しはじめていた。
昼過ぎに橋本あやがやって来て、雪子の料理教室が始まったのだが、
台所から漏れ聞こえてくる物音がいちいち凄まじい。
鍋かボウルを高いところから落としたらしい派手な金属質の音が響き渡り、
ガラスや瀬戸物の割れる音は既に四度を数える。
そこに雪子の悲鳴のような声がしょっちゅう混じるのだから、
貴巳もいい加減、妻の身が心配になって台所を覗いてみた。
どうも、つみれの具のにんじんやネギをみじん切りにするだけで小一時間を費やしたらしい。
「えーとじゃあ、鶏肉をこまかく切るね」
「わかった。こう?」
「うわぁぁ包丁は突き刺すんじゃなくて、手前に引いてっっ」
「え?」
「あやさん、指!それじゃ指が危ないぃぃ!」
「えーじゃあどうやって」
「ほ、包丁持ったまま振り返らないでえっっっ!!」
驚いて後ろに飛びのいた雪子の背中を支えてやると、
貴巳が来たことでほっとしたのか、雪子が腕にすがりついてくる。
「…橋本、うちの妻に危害を加えないでくれるか」
「あーら、う・ち・の・妻ですか?ふぅ〜ん?」
貴巳は、にやにやと意味ありげに笑うあやの顔を睨み付けた。
「何が可笑しい。大体、なぜ突然料理を習おうなんて思ったんだ?」
「何でってそれは…あいにく私は誰かさんみたいに、可愛くて料理上手な女の子を
上手いこと騙くらかして、お嫁さんに貰ったりできなさそうなんで」
「人聞きの悪いことを言うな。というか嫁がもらえないって今更気づいたのか」
「はいはいそうですよだから自分で作るしかないじゃないですか?ええ?」
「…頼むから包丁を持って俺のほうを向くな」
「っていうか、なんであやさん逆切れしてるの…?」
貴巳の背後から恐る恐る雪子が覗く。
「…雪子ちゃん」
「な、なに?あやさん…なんか目が据わってない…?」
「サクっとやろうサクっと!次はどうすんの?」
「え〜っと、お肉を細かく切れたら、すり鉢で擂るんだけど…」
「あ、知ってる!すり鉢ってこれでしょ?」
「あやさん…それは、おろしがねです…」
付き合っていられないので立ち去ろうとする貴巳を、
一人にされたくないのか、雪子がすがるような目つきで引き止めようとする。
が、そもそもこの事態を引き起こすきっかけを作ったのは雪子である。
可愛い妻だが甘やかすのは良くない。自己責任、というのも貴巳のモットーの一つである。
「酒を買出しに行ってくる。怪我だけはしないように」
貴巳は心を鬼にしてキッチンを立ち去り、今夜の客(この上認めたくはないが客は来るのであ

る)のためのビールや焼酎を買いに行くため家を出た。
車のドアを閉める刹那、キッチンの窓から雪子の
「卵割るときはそんな力いっぱい叩きつけないでえぇぇ!」
という泣き声が聞こえたが、とりあえず聞かなかったつもりでエンジンをかけ発車した。
123鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:32:37 ID:AF6/3672
一時間半ほどして貴巳が家に戻ると、台所は今まで見たことのないほど散らかってはいたが、
肝心のつみれのほうは、何とかかんとか用意できたようである。
「貴巳さん、お帰りなさい…」
気苦労でよれよれに疲れている様子の雪子が出迎えた。
「橋本は?」
「今、白菜とか切ってもらってるの」
「一人にして大丈夫なのか?」
「うん大丈夫そう。あやさんね、今日一日でずいぶん上手になったよ」
さんざん迷惑をかけられたであろうに、それでも嬉しそうな顔で笑う雪子を見て、
我が妻ながらどれだけお人よしなのか、と貴巳は軽く呆れた。
「酒買ってきたぞ。これだけあれば足りるだろう」
「うわぁ、結構いっぱいあるね」
「8割は橋本と沢木の分だな」
「あはは、係長と高田さんはあんまり飲まないもんね」
「そろそろ来る時間か。独身連中はともかく、係長も土曜日なのに来られるんだな」
「うん、あのね…奥さんと娘さんが二人で温泉旅行に行っちゃって、
飼い犬に餌あげといてって言われてるから、係長はお留守番だって。
家でひとりでカップラーメン食べるつもりだったから、誘ってくれて嬉しいって」
「………」
「…かわいそうだよね…」
二人が今、しみじみとその不遇に同情しているのは、
中年の悲哀を背中に負う富岡係長(56)である。
貴巳の20も年上の部下であり、今後昇進する見込みも全くない、いわゆる万年係長である。
当然のごとくに、仕事上は有能とは言いがたい。が、年下の上司を妬んだりすることもなく、
その鉄仮面ゆえに特に年上の職員達から誤解されやすい貴巳の、数少ない理解者の一人だ。
それに今夜のメンバーはもう一人、高田諒(26)。
企画課のなかでは一番若いのだが、いつもにこにことしていて人当たりが良く、
かつ凧のように飄々としていて、どうもつかみ所のない男だ。
貴巳の鉄仮面とは対照的にいつ見ても笑顔なのだが、本心が窺い知れないという点では
どっちもどっちである。
このアクの強い顔ぶれを迎えて、もう間もなく我が家で繰り広げられる騒動を想像し、
貴巳は本日何度目かの溜息をつくと、それと呼応するように玄関のチャイムが鳴った。
124鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:33:32 ID:AF6/3672
「お邪魔しまーす!」
の大合唱と共に玄関からなだれ込んできた喧騒の塊は、
家のあちこちを歩き回っては、やれ広いの日当たりがどうの生活感が無いのと
口々にわめきたて、新築披露パーティーにでも来つもりのようである。
鉄仮面・中嶋貴巳氏の私生活はどんなものなのか、企画課の職員はそれぞれ非常に
興味を持っていたらしい。
「生活感は、これでもまだ出てきたほうなんです。私が結婚してここに住む前は、
ビジネスホテルより殺風景だったんですよ」
雪子は律儀に質問に答えている。それがまた彼らの好奇心を更にあおるらしく、
クローゼットやトイレまでくまなく見物を終わり、ようやく全員が酒宴の席につくまでに、
優に一時間は要したのである。
それからの時間がまた、輪をかけて賑やかなものだった。
「いやぁ、この鍋ホントに美味いっすよね!さすが雪子さん」
「沢木、それ私も一緒に作ったんだけど?!」
「わかるっす。野菜とか絶対あや先輩が切ったでしょ?一目瞭然」
「どういう意味だぁ!」
「いや、ほんとに雪子ちゃんは料理上手だねぇ」
「係長までそういうこと言う?!」
「まぁまぁ先輩、飲んで下さい」
「高田、あんた飲ませるばっかりで自分は全然飲んでないじゃん!」
「僕、人に飲ませるほうが好きなんですよ」
「ごたごた言ってないで口開けろ!ほれ飲め飲めぇぇ!」
「うごぁっ!ごふっ!」
「あやちゃん、焼酎ボトルから直接はさすがに止めたほうがいいんじゃない?
高田君お酒あんまり強くないし」
「でも飲まなきゃ強くなんないっすよね〜」
「沢木、お前いい事言う!つうわけでお前がまず手本として飲め!」
「おっし、沢木いきまーす!ごきゅごきゅ…げふんっ!ごほごほごほっ」
「沢木先輩、勿体無いんで、吐かないで飲み込んで下さいね」
「うるせぇ高田!いっつも笑顔で誤魔化しやがってお前絶対腹黒だろ!
大体お前が飲めないから俺が先輩としてだなぁ!」
「ほらほら皆、春菊煮えすぎちゃうから食べなさい」
「あ〜すいません係長!」
延々と続くやりとりを、隣に座る雪子はにこにこしながら楽しそうに眺めている。
雪子自身は酒がほとんど飲めない。今日もコップにはオレンジジュースが入っているが、
自分が飲まずとも、酒の席の雰囲気は好きなため苦にならない。
一方貴巳はというと、不機嫌の絶頂でむっつりと座り、早くこの馬鹿騒ぎがお開きに
なることばかりを祈って水割りをなめていた。が、
貴巳が無愛想なのも無口なのもいつものことであるため、座は一向に白けることなく
更に盛り上がっていくのであった。
そうして大量に用意したアルコール類の三分の二ほどが消費され、
酒に強いあやと沢木も、いい加減酔いが回ってきたころのことである。
125鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:34:19 ID:AF6/3672
「お鍋の具、全部取ってもらえました?最後の野菜とつみれ入れますね」
「あー雪子さんすいません。」
「やっぱ冬は鍋だねぇ。白菜最高!つみれ万歳!」
「あたしマロニーが好きー!」
「あぁ、ごめんねあやさん、マロニー探したんだけど、お店に置いてなかったの」
「え?品切れだったんすか?」
「はい。いつも置いてある場所に一つもなかったんです。お鍋の季節なのにどうしたのかな」
「え、雪子さん知らないんですか?」
おもむろに高田が口を開く。ちなみに彼のあだなは「スマイリー」である。
「え?何をですか?」
「今、世界的にマロニーが不作で、品薄状態なんですよ」
「不作って…え?マロニーって植物なんですか?」
「海草です。知らなかったんですか?」
「ええ?本当に?!あれがそのままの形で海に生えてるんですか?」
「そうですよ。」”スマイリー”高田はいつものようににこやかな顔でよどみなく話す。
他の企画課メンバーは笑いをかみ殺すのに必死だ。
貴巳はちょっと眉をひそめたが、この際雪子がどこまで素直なのか見てみたい、という
興味もあり、少しの間高田のホラを黙って聞くことにした。
「えええ!てっきり、デンプンか何かから出来てるんだと思ってました…」
「元々はノルウェー沿岸のごく限られた地域に自生している海草だったんですよ。
その養殖法が確立されて、全世界的に広まったんです」
「マロニーって、日本だけのものじゃなかったんですか!」
「だって雪子さん、マロニーって日本語だと思いますか?」
「え、そう言われてみれば…
(マロニー。まろにー。確かに日本語だと意味が通じないなぁ…)」
「マロニーというのは、ノルウェー語で(海の中でゆらめくもの)という意味なんです」
「はぁー。高田さん、物知りですねぇ」
「今年は近年まれに見る不作でしたから、世界各地でマロニー不足が深刻なんです。
イタリアではパスタ代わりにマロニーというのが大流行ですから、不足によって
デモが起きて警官隊が出動する騒ぎになっているとか」
「こんなにひどい状況は、1970年の第二次マロニーショック以来だって言われてるよね」
あやも加担する。
「そうですね。やっぱりこれも地球温暖化の影響なんでしょうかね。海水温が上昇して」
「あぁ、年々収穫量が減ってるって話だもんね」
「そうなんですか…全然知りませんでした。テレビとかあんまり見ないからいけないのかな」
雪子は本気で信じ込んでいる様子である。まさかこんなに簡単に騙されるとは、
話し始めた高田も予想していなかったに違いない。
「貴巳さんは知ってた?もちろん知ってるよね?あー、恥ずかしい…」
(頼むから俺に振るな…)
そう思って黙っていたが、自分の無知を心底恥じ入っている様子の雪子が
可哀想になってきた。
そろそろ潮時だろう、と高田に目線をやると目顔でうなずく。
「雪子、嘘だ」
「………え?何が?」
「今の話、全部だ」
「全部って…えええ?マロニーが不作だってことが?」
「いや、そもそも海草じゃないんですよねすいません」高田が嬉しそうに笑いながら謝る。
「ええっ?!じゃあマロニーは何でできてるんですか?」
「さぁ、デンプンか何かじゃないですか?」
「高田さんひどいです!っていうか皆で騙してたんですね?もぉぉぉぉ!」
「まぁまぁ雪子さん、飲んで飲んで」沢木が雪子のグラスにジュースを注ぐ。
それを半分ほど一息で飲み、涙目になった雪子があやを問い詰める。
「あやさんも知ってて黙ってたの?酷い、もうお料理教えてあげないから!」
「ごめんごめん、雪子ちゃんがあんまり可愛いからつい苛めたくなっちゃうっていうか」
隣で沢木が深くうなずいているのは気に喰わないが、貴巳も何となく納得できる意見である。
126鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:35:13 ID:AF6/3672
「もぉ…信じられない…」
雪子が顔を手で覆って、テーブルの上にくずれてしまったので一同は慌てた。
泣かせるほど苛めるつもりはなかったのだが、と慌ててあやが抱き起こすと、
雪子は泣いているわけではなかった。
ただ顔が急速に真っ赤になり、目がとろんと宙をさまよっている。
「雪子、どうした?」
「…なんか、くらくらする…」
貴巳はちょっと考え、雪子の前に置かれたジュースを一口含んだ。
「…誰だ、雪子に酒を飲ませたのは」
グラスに入っていたのはオレンジジュースのはずだが、いつの間にか焼酎が混じっている。
これまでのやり取りと、雪子が潰れたタイミングから、瞬時に犯人は知れた。
「…沢木」
名前を呼ばれた部下は明らかに動揺し、貴巳と目線を合わせないようにしていたが、
鉄仮面の眼力に敵うわけもない。
「いや、ちょっと、雪子さんの気持ちをなだめよっかな〜と…」
「…………」
「そ、そんな沢山入れてないですよ?ちょっとほろ酔いになるくらいいいかなと…」
「…………」
「あ、あと課長も見たくないっすか?雪子さんが酔ったらどうなるのかな〜とか…」
「…………単にそれが見たかっただけだな?」
アルコールで真っ赤になっていたはずの沢木の顔は、いつの間にかすっかり蒼ざめている。
「いや決してそういうわけじゃ!ただちょっと出来心っていうかですね」
「上司の妻を勝手に酔い潰すとは、実にいい心がけだな」
(沢木先輩…今度こそ消されるな)
(沢木君…君の事は忘れないよ)
(………バカ沢木…命を粗末にしやがって…)
すっかり傍観者となっている三人が、心の中で沢木へ今生の別れを告げているとき、
あやの膝の上につっぷしていた雪子が突然、むっくりと起き上がった。
「ゆ、雪子ちゃん大丈夫?」
「ごめんなさい、俺ちょっと悪ノリしすぎたっす」
「僕も、変な事言ってからかってすいませんでした」
「気持ち悪くない?お水あげようか?」
口々に気を遣う周りの四人には目もくれず、雪子はまっすぐに自分の夫を見詰めている。
「雪子、大丈夫か?」
「…………………マロニー」
127鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:35:55 ID:AF6/3672
「は?」
「マロニーって結局、何語らのっ?」
貴巳を糾弾するようにびしっ、と指差して、雪子はろれつの回らない舌で言う。
目が完全に据わっている。
日ごろおっとりとした性格だけに、貴巳でさえ思わずたじろぐほど、妙な迫力がある。
「…俺は知らないが」
「じゃあ、不作じゃないんなら、なんれマロニーがすーぱーに置いてなかったんですかっ?」
「何で敬語なんだ」
「答えてくらさい!」
「俺が知るわけないだろう。スーパーの店員に聞いてくれ」
「かちょーがそんな無責任なことでよいのですかっっっ!?」
(………手に負えない…)貴巳は溜息をつく。
「雪子ちゃん、絡み酒なんだね…」
「意外ですよね…もうちょっと可愛い感じに酔うのかと思ってました」
「眠くなっちゃった〜、とかね」
「でもこれはこれで可愛くないっすか。面白いし」
「確かに面白いわね…課長見てると」
「ええ、課長見てると」
「確かに中嶋君見てるほうが面白いね」
「課長はホント面白いっすよね」
常に冷静沈着、役所内で知らない人はない”鉄仮面”が頭を抱えて困惑している姿など
滅多に見られるものではない。
もちろん、貴巳も他人には絶対に見せたくない姿である。
「誰が面白いって?」
外野でお気楽なことを言っている4人をぎろり、と凍てつくような視線で黙らせ、
カセットコンロに乗っている土鍋の中身を無理やり4人の取り皿に全て取り分けた。
残っている酒類も、残らずめいめいのグラスに注ぐ。
早く食べて早く帰れ、という意思表示である。
雪子はというと、テーブルの上の、猫の形の箸置きに何やら人生相談をしている。
その内容もお気楽四人衆の大いに気になるところであったが、
さすがにこれ以上貴巳を怒らせると来週からの業務に差し支えると悟り、
割り当てられた酒と鍋をそそくさと片付け、タクシーを呼び、
「またお邪魔しますね〜!」と、来たとき以上に賑やかに帰っていったのだった。
玄関で見送る貴巳は、当然、返事をしなかった。

(…やっと帰ったか…)
酒瓶だのおつまみの空袋だので酷い散らかりようのリビングを眺め、
貴巳はようやく訪れた静寂の有難さを、しみじみと味わっていた。
雪子はいつの間にか、ソファの上で眠ってしまっている。
急性アルコール中毒を心配して様子をつぶさに観察したが、
顔色もよく、至って気持ち良さそうに眠っているので心配は要らないようだ。
シャツの首元が苦しそうだったので、ボタンを二つ外し、胸元をくつろげてやると、
「ん…んぅ」
と、眠ったままの雪子が身をよじる。その仕草が妙に色っぽい。
貴巳の頭に、ついよからぬ考えが浮かぶ。
(…もう生理は終わっているはずだ。少しだけ、あれを試してみるか…)
128鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:36:53 ID:AF6/3672
雪子は、自分の身体を這い回る、痺れるような不思議な感触に気づいた。
が、何故かひどくまぶたが重く、身体も思うように動かない。
(すっごく眠い…どうしちゃったんだろう、私…)
意識がはっきりとしないまま、その痺れるような感覚はだんだんと雪子の身体を
侵しはじめる。
(……なに?この感じ…ぶるぶるしてる…くすぐったいよぉ…)
それは身体のあちこちを触れるか触れないかの距離を保って移動している。
その振動が、或る1点―胸の先端に触れたとたん、
雪子の身体は、意思とは関係なくびくん、と痙攣した。
「あっっ!な、何?」
ようやく声が出て、同時に目も開けることができた。
夫が何やら自分に覆いかぶさっているが、何が起こっているのか全く理解できない。
振動する塊が、間断なく痺れるような刺激を乳首に与えている。
貴巳が何か下の方でごそごそと弄ると、その振動がさらに強さを増した。
「ひゃ、あああ!やっ、いやぁっ何これぇっっっ?!」
「…何だと思う?」
貴巳は顔を上げると、雪子の胸にあてがっていたものを、目の前に揺らして見せた。
雪子が初めて実物を目にするもの―ピンクローターである。
目の前の白いプラスチックの物体と、雪子の乏しい性知識が結びつくまでに少々の
時間がかかった。
「こ、これ…貴巳さん、なんでこんなの持ってるのっ?」
「買ったからに決まっているだろう。作ったり貰ったりするのは難しい」
それはそうだろうが、そういうことを聞いているわけではない。
「買ったって…な、なんで?しかもいつの間に私、裸になってるのっ?それに皆は?」
それ以上雪子に喋らせまいとするかのように、貴巳は雪子にくちづける。
雪子が生理の間じゅう禁欲生活を送っていたのだ。のんびりお喋りをする気はない。
まだアルコールの香りの残る舌が雪子の口内を縦横無尽に嬲り、
ただでさえ酔っている雪子をさらに陶酔させた。
再びローターが唸りをあげ、雪子の耳や肩甲骨のあたりをすべり、その度にびくびくと
未知の感覚が雪子の身体を這い登る。
「あああ、っやぁぁ…変な…感じ…やめてよぉ…」
「その割には気持ち良さそうじゃないか?」
「…っん…そんなことないもんっ…」
本当に、快感なのかどうかすらわからないほどに、初めてのローターの刺激は雪子にとって
強烈なものだった。
皮膚の表面をすべるようになぞられただけで体に電流が走ったような感覚である。
あまりの刺激の強さに耐え切れず、雪子は泣き声をあげた。
129鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:37:59 ID:AF6/3672
「だめ…たかみさん…ほんとに、だめぇっ…!」
「…じゃあ、少し弱くしよう」
貴巳がコントローラーを調節して振動が弱まり、ようやく一息つけたと思った途端、
夫は思わぬ行動に出た。
雪子の両足を掴んで拡げさせ、いきなり秘所にローターを押し当てたのである。
「…!?いっ、あ…」
目の前で火花がはじけ、あまりにも強すぎる刺激にほとんど声もなく、
全身の筋肉を極限まで張り詰めさせて雪子は最初の絶頂に達した。
ものの数秒のことである。
雪子の花芯はひくひくと痙攣しながら、白いぬめりをアナルのほうにまで滴らせている。
それをすくうようにして、貴巳は雪子の内部へ中指をゆっくりと進入させた。
「あ、あぁぁぁぁぁぁ!」
指一本だけで、まるで挿入されたような激しい反応だ。
絶頂の余韻で、内部はまだひくひくと収縮を繰り返し、指を動かすのも
ままならないほどの締め付けである。
膣の上壁を、ゆっくりと指の腹でこすり上げながら、再びローターを
クリトリスに軽く触れさせると、雪子の全身が面白いようにのたうつ。
「やぁぁぁだめぇ!あ、ひぃぃやぁっいくうぅぅぅぅぅ」
絶叫に近い声を上げて再び快感の頂点にのぼりつめた雪子は、
既にもう何を口走っているのかわからない様子である。
何か掴んでいないと不安なのか、のけぞった自分の胸元にぎゅっと爪を立てている様子が、
ひどく扇情的だ。
真っ白な乳房に紅い爪跡がついているのを認めた貴巳はそっと雪子の手を外し、
自らの背中に腕を回させた。貴巳自身、もう我慢の限界を超えている。
昂ぶった自身を取り出し、雪子のひくつくマ○コの入り口にあてがって、
くちゅくちゅと音を立てて愛液を馴染ませた。ローターで刺激を続けられている雪子は、
それだけの行為がもう我慢できない。
「あああああんんっっっ!いっちゃうぅ先にいぃ」
「いいよ、ほら、雪子がイッた瞬間に俺のを入れてやるから」
「…ごめん…なさいっ…!ひあぁぁんっっいくぅぅぅぅぅぅっ!」
達した瞬間の激しく収縮する雪子の秘口に、貴巳の猛る肉棒が飲み込まれていく。
これ以上ないほどの強い締め付けをリズミカルに繰り返しつつ、雪子の肉壁は
貴巳自身を奥へ奥へと引きずりこむようにうごめく。
想像以上の快感に、瞬間的に達してしまいそうになるのを貴巳は必死で耐えた。
ゆっくりと抜き差しを繰り返しながら、ついに雪子の最奥へと挿入を完了すると、
先端が、何かこりこりとした硬い壁のようなものに、こつんと当たった。
その刹那に雪子がより一層激しく反応する。
先端でぐりぐりとそこを抉るように動かすと、悲鳴のような声が漏れた。
「あっあっあっ、そこ、っ…いいいいいい!!!」
「雪子はここが好きだな…この上ローターで弄られたらどうなると思う?」
「だ、だめっ………!それ、だめぇぇぇぇぇぇ!!!!」
膣の奥で、貴巳自身の先端が小刻みに動かされ、カリの段差が雪子の一番感じるスポットを
こすり立てる。それだけでも雪子は快感で目の前が霞みそうなほどなのに、
貴巳は容赦なくローターを最大出力にし、クリトリスに圧し当てた。
130鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:38:31 ID:AF6/3672
「…………………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、っ………」
目の前が白くなり、自分の声すらもう聞こえない。
心臓が胸を突き破って出てきそうなほど暴れている。
「た、か、みさ…んっ、たかみ…さんっ…」
無意識のうちに愛しいひとの名前を呼ぶことで、
遠のきそうになる意識を、雪子は必死につなぎとめた。
ローターの刺激は相変わらず、激しく身体を跳ねさせるが、
最後に欲しいのはそんな暴力的なまでの快感ではないと、雪子は掠れた声で夫の名を呼ぶ。
「たかみさん…はぁっ…ローター、やめて…」
「どうした…痛かったか?」
「ううん…すっごく、気持ちいい…。でも最後は、無理やりいかされちゃうんじゃなくて…、
ちゃんと、貴巳さんのこと感じながらがいい…」
「………わかった。一緒にいこう、雪子…」
「…うん」
そして二人は深く深く唇を重ねあい、お互いの舌を愛撫しながらゆっくりと律動を始めた。
繋がった部分が激しく水音をたて、二人の唾液と愛液が交じりあい伝い落ちる。
唇と秘所、二箇所で深く繋がっているという意識が、二人をさらに高みへと上りつめさせる。
「あっ、ああああっっ、もう…」
「雪子…出すぞ」
「んっ、いいよぉ…っっああああああんっったかみさん…好きっ…あん、いくぅ、っっ…!」
子宮口に亀頭をめり込ませるようにして、貴巳が濃い精液を放つ。
熱いものが最奥に勢い良く当たり、流れ込んでくるのを感じながら、
雪子は暗闇に飲み込まれるように意識を手放した。
131鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:39:15 ID:AF6/3672
そして日曜の朝。
雪子は微かに聞こえる掃除機の音で目を覚ました。
(あれ…?なんで私ベッドで寝てるんだっけ?昨日は皆さんが来て、お鍋して…)
ぼんやりとしたまま上半身を起こすと、鋭い頭痛がこめかみを突き抜けた。
「い、いったぁい…何これ…?」
昨日のことがうまく思い出せない。
(なんか…マロニー?マロニーがどうしたんだっけ…)
痛む頭を押さえながらリビングに向かうと、貴巳が掃除機をかけているところだった。
「あっ、ごめんね貴巳さん、寝坊しちゃって…」
散らかり放題だったリビングは、既にきれいに片付けられていた。
「昨日は疲れただろう?もう少し寝ていてもいいんだぞ」
貴巳がいつになく優しげな物言いなのは、昨夜の妻に対する所業を、
少々後ろめたく思っているからである。
性的な知識に乏しい妻には、随分刺激が強かったに違いない。
「うん、なんか、頭がすごく痛くて…」
「二日酔いだな」
「え?二日酔い?私、お酒飲んだの?」
「………覚えてないのか?」
「うん、なんか、マロニーがどうとかお話してなかったっけ?夢かなぁ?」
「………それはきっと夢だな」
企画課が総出で雪子をからかって遊んだことなど、忘れているに越したことは無い。
なによりも自分が(消極的にとはいえ)加担していたことは是非忘れていて欲しい。
「そっか…なんで私お酒なんか飲んだんだろう?」
「沢木が”間違って”雪子のグラスに入れたらしいぞ。申し訳ないと謝っていた」
思わず沢木をかばってしまった自分が忌々しい。
「そっか…じゃあ仕方ないね。私、二日酔いって初めて…こういうものなんだ。
頭が痛くなるのは知ってたけど、なんか体中が、筋肉痛みたいに痛いし…」
「………それも、二日酔いの一種だな」
「へぇそうなんだ。お酒飲むと色々大変なんだね」
「そうだな。…あとは食器洗うだけだから休んでいなさい」
「大丈夫だよ、私洗うから」
「いや、沢山あるからな…じゃあ手伝おう」
「ありがとう!…なんか、貴巳さん今日すごく優しいね?」
「…気のせいだろう」
「そうかなぁ?でも私は嬉しいからいいや」
筋肉痛は間違いなく自分のせいである、とはもちろん言えない。
132鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:40:06 ID:AF6/3672
キッチンに二人並んで洗い物をしていると、夫婦二人だけの静かな時間のありがたみが
身にしみた。二日酔いの雪子ではないが、昨日の騒動は悪い夢だったのではないか、
というような気さえしてくる。
隣に立つ雪子の横顔を、気づかれないようにそっと見つめる。
寝起きでぼうっとしていても、寝癖がはねていても、やはり妻は綺麗で可愛らしい。
飽かず見ていると、視線を感じたのか、雪子が突然貴巳のほうを向いた。
「なに?」
「いや…」
今日も綺麗だよ、などという台詞は、自分は一生口が裂けても言えないだろう。
咳払いでごまかして作業を続けようとすると、雪子がふんわりとした笑みを浮かべて言う。
「昨日は楽しかったね!またやりたいなぁ」
「………何を?」
「え?飲み会だけど…」
「…そうだよな」
「ええっ、いいの?嬉しい!貴巳さんきっと駄目って言うと思ってた」
「…………」しまった。

雪子が本当に昨夜のことを覚えていないのだと思うと、
ほっとするような、少し寂しいような、妙な気分だ。
が、本人さえ覚えていない雪子の痴態を自分は知っているという事実が、
雪子に対する独占欲をささやかながら満たしてくれるような気がして、
悪い気はしない。
日曜の朝のキッチンには暖かな陽が射し、微かに小鳥の鳴き声がする。
こよなく愛する秩序と静寂の中で、貴巳は、
雪子にも気づかれないほど微かに微笑んだ。

今後中嶋邸で、企画課の新年会と称するバカ騒ぎが年明けに開催され、
それが親睦会と名を変えて、月一回のペースで催されるハメになるとは、
さすがの中嶋貴巳氏も知る由がないのであった。
133鉄仮面と子猫 3:2007/12/21(金) 02:41:01 ID:AF6/3672
以上です。
読んで下さった方、どうもありがとうございます。
134名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 09:18:17 ID:aOJf6n+H
>>133
GJ!!!
是非また続きをお願いします!
135名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 14:55:53 ID:gzn2BoDU
こらまたGJ!!!
136名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 18:27:54 ID:F1TFwast
すごく…GJです…!
萌え尽きた…!!
137名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 18:53:16 ID:pI6iF2rM
GJ!GJ!
鉄仮面のくせして萌えるぜ。

しかし俺も鶏つみれ鍋食いてえ!
毎回出てくる食べ物が美味そうで、池波正太郎の小説を思い出すw
138名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 08:21:10 ID:dT2Jm3gR
いやー、丁寧な描写がほんと好ましいです。良い仕事でした。
139名無しさん@ピンキー:2007/12/23(日) 11:08:48 ID:qkjFkEE4
これはイイ!!
鉄仮面に萌えた俺はもうだめも試練…
140133:2007/12/24(月) 11:20:39 ID:DbGsLv62
作者です。
感想下さった方、ほんと有難うございます。
鉄仮面に萌えてくれた方が何人かいらっしゃるようで、
嬉しい反面、エロ小説書きとしてはそれってどうなのか?と複雑ですww
次回からは雪子と貴巳の過去&馴れ初め編を書きたいと思っています。
かなりのボリュームになるので、今までのような一話完結で投下は
できなさそうですが、
読んでもらえたら嬉しいです。

あと、先生と女子生徒の新婚さんの話、続編楽しみにしてます(w
141名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 08:48:41 ID:p/Ar2L8a
>>144
wktkして待ってる!
142名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 09:47:44 ID:LE4/sZ2U
>>144
 頑張れ(w
143141:2007/12/26(水) 14:56:07 ID:p/Ar2L8a
しまった安価ミスったヽ(`Д´)ノウワァァン!!
>>144 ごめん頑張ってくれw
144名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:43:16 ID:kQV6dP0z
ごめん無理w
スクリプト嵐がきているっちゅーんでageにきただけ。すまんwww
145名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 08:00:45 ID:VwMn5eW5
agero
146名無しさん@ピンキー:2007/12/30(日) 20:29:22 ID:k2DkzFiO
えっちな事に興味があるんだけれど、奥手なキャリアウーマン風の年上の嫁が欲しいなぁ…
147名無しさん@ピンキー:2008/01/02(水) 08:19:36 ID:TJXWW6fD
age
148人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/02(水) 23:47:00 ID:b0XoZg5Y
バージンロードの花道を、真っ白なウェディングドレスを身に纏った美しい花嫁が、ゆっくりと歩いてくる。
リヒャルト・ワーグナーの歌劇『ローエングリン』第3幕の優雅な調べが、彼女の生涯でもっとも晴れやかな行進を秀麗に彩る。
そして今、彼女が腕を組んでいるのは、禿げ上がった頭をした、初老の男性。
「いよいよだな、亜季。」
初老の男性は、何ともいえない表情をしている。緊張なのか、それとも感極まっているのかはわからない。おそらく両方だろう。
「パパ・・・・・・今まで、ありがとう・・・・・・」
父と娘。その二人がやがて進むと、花道の途中に一人の青年が待っている。
「さあ亜季、健太郎くんの手を取りなさい。」
「うん・・・・・・健ちゃん・・・・・・」
「亜季ちゃん・・・・・・行こうか。」
そして亜季は、父の腕を離れ、健太郎の腕に寄りかかる。それと同時に、父の顔が涙でくしゃくしゃになった。
父の脳裏によみがえる、愛しい愛娘との思い出。
ちょっとお猿さんみたいだったけど、可愛かった出産直後。妻と結婚して、初めての子供だった。
あの時は、自分よりも、おじいちゃんとおばあちゃんのほうがおおはしゃぎしていた。自分の父と母にとっては、初孫である。
子育ては大変だった。ミルクを飲ませたり、おしめを換えてやったり。顔面におもいっきりおしっこをかけられたのも、今ではいい思い出だ。
そして弟が生まれ、亜季はお姉ちゃんになった。お母さんの関心は、弟の方に移っちゃったけど、自分はちゃんと、お前のことを大事にしていたよ。
「亜季はいい子だから、ちゃんとママの言うことを聞けるよね?」
「うん!」
「よしよし、いい子だな、亜季は。」
「えへへへへ。」
ほめると照れたようにえへへと笑う亜季。そんな亜季が、可愛くて仕方がなかった。
そして隣に住む健太郎くんと知り合ったのも、この頃だ。二人は幼馴染。だから、彼はよく家に遊びに来たし、自分が面倒を見たこともある。
一緒にお風呂に入れたこともあったっけ。あのときは、健太郎くんも亜季も、ちょっとだけ恥ずかしがっていたっけ。
そして二人とも、そのまますくすくと大きく育ち、幼稚園、小学校と進学していった。
運動会にもよく応援に駆けつけた。亜季は頑張り屋さんで、運動神経もよかった。だから、いつも一等賞だった。
それに比べて、健太郎くんはあまり運動神経はよくなかった。でも、一生懸命頑張ってはいたから、ビリになることはあまりなかった・・・・・・ということにしておこう。
その代わり、健太郎くんはお勉強はよくできた。だから、一緒に宿題をしたときは、いつも娘が教わる方だった。
149人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/02(水) 23:47:52 ID:b0XoZg5Y
そして・・・・・・思春期。
ずっと一緒に大きくなってきた二人だが、この頃から、二人はやや距離を置くようになってしまった。
二人の身体に性差ができ始め、お互いを異性として意識してしまう。だから、二人の距離は、次第に広がってしまう。
だが、娘は、健太郎くんのことが嫌いになったわけではないらしい。むしろ、ずっとずっと彼のことを想っていたようだ。
この頃からかな。娘が、急におしゃれに気を遣うようになったのは。
娘も年頃の女の子。こうなると父親としては気持ちが落ち着かなくなってくる。
変な男に引っかからないだろうか?悪い男に引っかからないだろうか?
日曜日に嬉々として出かける娘。後から聞いたのだが、デートの相手は健太郎くんだったらしい。
健太郎くんは悪い子ではないから心配はないけれど、急に色気づいた娘を相手に、間違った行為をしてしまわないだろうか?
父は心配で仕方がなかった。健太郎くんなら他の男よりはマシだとは思うが、それでも心配だった。
これも、娘が美人だからだろう。父親が言うのも何だが、亜季は美人だ。
そんな高校二年のクリスマス、娘は一晩帰ってこなかった。
あのときはひどく叱った。娘の身にもしものことがあったら・・・と、一晩中心配で眠れなかったのだ。
「パパ、ごめんなさい。お友達と一緒にいたの。」
「お友達って、誰だ!」
「あの、その・・・・・・」
「だ・れ・だっ!?」
「・・・・・・。」
「健太郎くんだな?」
「そ、その・・・大丈夫だからね!べ、別に変なことはしてないから!コンドームだってちゃんと使ったし!」
「こらっ!亜季っ!!!コンドーム使ったって、どういうことだ!!!」
娘はロストバージンしたらしい。このあと、健太郎くんも呼び出して、こっぴどく叱った。
健太郎くんは平謝りだった。だが、ちゃんと避妊はしていたそうだし、彼も誠実で、娘のことを想ってくれているようだから、その場は許した。
だが、父は半分泣きそうになっていた。
(娘も、もうそんな年頃になったのか・・・・・・)
手塩にかけて育てた愛しい娘が、男を知る年齢になったのだ。
そんなこんなで慌しい思春期が過ぎ・・・・・・健太郎くんは大学を卒業、就職し、娘も就職した。
そしてある日、健太郎くんが娘と一緒に挨拶に来た。
遂に、来る時が来た。
健太郎くんのプロポーズを、娘がOKしたのだ。
誠実で、実直な男。そして、娘を心から愛している。だが、娘を嫁にやるのは、正直辛い。
「娘を、大切にしろよ。」
父は健太郎くんにそう答えた。そして、今日、このよき日に、娘の晴れ姿を見ている。
150人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/02(水) 23:49:10 ID:b0XoZg5Y
亜季と健太郎くんは、腕を組んで祭壇の前に進んだ。祭壇の上には、神父様がいる。
「それでは・・・・・・始めます。」
厳粛な空気の中、神父は結婚式の開始を告げた。そして。いよいよ二人の誓いへと進む。
「汝、健太郎よ・・・・・・」
「誓います。」
「汝、亜季よ・・・・・・」
「誓います。」
ずっと一緒に育ってきて、そして愛を育んできた二人。反対などするわけがない。
「それでは・・・・・・誓いの・・・・・・」
そう言うと神父は、パチンと指を鳴らした。すると、教会の奥から、10人ほどのマッチョな男が一斉に入ってきた。
そして健太郎と亜季を取り囲むと、一斉に二人の服を引きちぎる。
二人は瞬く間に全裸になった。
「きゃあっ!」
「うわっ!な、何するんだ!!!」
そして二人が来た花道から、大きな台車がすごいスピードで運ばれてきて、二人の目の前で止まった。
台車の上は、二人分のベッドになっている。二人はマッチョたちに担がれて、ベッドの上に乗せられた。
「さあ、二人とも、神の御前で、思う存分、愛し合いなさい。」
「ええっ!?」
健太郎と亜季は驚いている。
「い・・・今、ここで・・・・・・ですか?」
今、背後には、二人の親戚一同や、親友たちが並んで、二人を見守っている。そのみんなの見ている前で、愛し合えというのだ。
「おや、先ほどの宣言は、偽りだったのですか?」
「そ、そんなことないです!けど・・・・・・」
「神の御前ですよ。今ここで愛し合えば、あなた方は父なる神の、永遠の祝福を得られるでしょう。」
「・・・・・・。」
「さあ、愛し合うのです。」
二人は呆然としていたが、やがてお互いに向き合った。二人とも、裸である。特に亜季は、スタイルもよくて、美しい。
対する健太郎も、なかなかいい身体をしていて、アソコも立派だ。もちろん包茎ではなく、きちんと剥けている。
「亜季ちゃん・・・・・・その、いいかな?」
健太郎が聞くと、亜季は真っ赤になってうつむいた。
「健ちゃんが・・・・・・望むなら。」
その答えと同時に、健太郎は亜季を抱きしめ、熱い口づけを交わした。
「おおっ!!!」
途端に客席から歓声が上がった。キスと同時に、健太郎のモノが、真上にピンっと大きく反り返ったのだ。
「け、健太郎のやつ、あんなにすごいモノを、亜季ちゃんに・・・」
「ポッ♥ 亜季ちゃん、いいなー」
そのまま、二人は横になり、お互いを抱きしめあう。そして、健太郎は彼女の股間に手を入れて、その場所を弄ってみた。
途端に、健太郎の指が、熱い液に濡れる。
「亜季ちゃん・・・・・・」
亜季は無言で、こくっと頷いた。
「・・・・・・わかった。」
151人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/02(水) 23:49:54 ID:b0XoZg5Y
今、亜季の両足が大きく開かれた。そしてその間に健太郎の身体が滑り込む。
そして、観客たちは一斉にベッドの下半身の方に集まった。もちろん、亜季の父もである。
亜季のちょっぴりエッチなその部分が、みんなの前に剥き出しになっている。そして、健太郎の立派なモノが、その部分に徐々にのめり込んでいく。
「あ・・・あああ・・・」
亜季が思わず声を漏らした。亜季のその場所は、愛液を飛び散らせながら、完全に健太郎のモノをくわえ込んだ。
「健ちゃん・・・・・・」
亜季はじっと、健太郎の顔を見つめた。
「何だい?」
「コンドーム・・・・・・してないね。」
「そうだね。」
「赤ちゃん・・・・・・できちゃうかも。」
「うん。」
「できちゃっても・・・・・・いい?」
「もちろんだよ。」
「健ちゃん・・・・・・愛してる。」
「亜季ちゃん・・・・・・僕も、愛してる。」
その時、教会の鐘が、カランコロンと鳴った。それと同時に、二人の陰部がスライドを開始した。
「ああ・・・はああ・・・ううう・・・」
健太郎の腰の動きに合わせて、亜季の口から喘ぎ声が漏れる。その二人の陰部は、愛液を振りまきながら、激しい動きを披露していた。
「健ちゃん・・・・・・大好き・・・・・・」
いつの間にか、亜季の瞳に涙が光る。
「ずっと、ずっと好きだったんだから・・・」
「亜季ちゃん・・・・・・いつから?」
「初めて出逢った時から。」
「それって・・・・・・幼稚園、いや、もっと前だよね。」
「うん、その時から今まで、ずっとずっと・・・・・・」
「亜季ちゃん・・・・・・」
「健ちゃん・・・・・・これからも、ずっとずっと一緒だよ?」
「うん。亜季ちゃん・・・・・・」
ここで会話は途切れた。ここから先は、二人の身体が情を交わす。もはや言葉は要らない。
152人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/02(水) 23:50:37 ID:b0XoZg5Y
そして亜季の父が、前に進み出た。そして、健太郎の腰を、後ろから押す。
「健太郎くん、頑張れ!」
「お義父さん・・・」
「パパ!」
それは、父が、二人の仲を認めた何よりの証。そして、二人を祝福する、父の想いの証。
「亜季!丈夫な子を産むんだぞ!」
父がそう叫ぶと、亜季は叫び返した。
「うん!パパ、健ちゃん、私、元気な子を産むから!!!」
そして二人の間の空気が、一気に熱くなる。それと同時に、父は健太郎の腰を強く押さえた。これでもう、抜くことはできない。
「いくよ、亜季ちゃん!」
「来て!健ちゃん!」
そして・・・・・・しばらくの沈黙。
「あ・・・・・・いっぱい感じるよ・・・・・・健ちゃんの・・・・・・精子・・・・・・」
そして父が健太郎の腰を離すと、健太郎は陰茎を抜いた。
二人の性器の間には、白く濁った粘液が、糸を引いている。それを見て、神父は天を仰いだ。
「おおっ!父なる神よ、今ここに、一組の夫婦が誕生しました。願わくは、この二人に、永遠の祝福を!ザーメン!」

おしまい
153名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 00:13:04 ID:PX9R+34t
ネタなのかマジなのかw
154名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 00:38:38 ID:FZbZ6w9o
このノリがこの人の作風です
嵌ると癖になります
ちなみに私は嵌った口ですw
155名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 08:28:52 ID:t0bnYv0S
前半が父親の回想で感涙の結婚式、と思ったらマッチョ出現かよ!

ワロカシてもらった
156名無しさん@ピンキー:2008/01/03(木) 13:13:54 ID:KiymYVpU
>>153
大真面目にバカネタを書き上げる、それがこの漢だ!!

>>152
GJ!
157名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 02:36:57 ID:+47kvmc4
唐突なマッチョ登場でコーヒー吹いたww
>>152
GJです!!
158名無しさん@ピンキー:2008/01/04(金) 05:50:13 ID:CwNV87qF
>>152
だみゃ〜ん氏どこに行ったのかなーと思ったらこんなところにw
別スレでも変わらない作風にGJww
159名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 04:18:57 ID:SGtnt7Pa
クリスチャンの人が見たらぜってぇ怒るな。
160名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 22:38:17 ID:U+N1FRt6
アーメンじゃねえのかww
161名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 22:56:51 ID:QHfJ0eTt
久しぶりにきたらスゲーのがきててワロタw
嫁の父が婿の腰を押すとはwww
162人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/12(土) 23:44:38 ID:OIIGQaS2
あいつは、昔から気に入らない奴だった。

どういうわけか、小学校時代はずっと同じクラスになった。
何であんな奴とずっと一緒にいなければならないのかわからなかった。
とにかく気に入らない。どうして?と言われても困るが、とにかく虫が好かない奴だ。
本当に嫌なのに、毎日(日曜日を除く)面を合わせなければならない。このことの、何と不愉快なことか。
そして、中学校に進学しても、三年間ずっと同じクラスになった。
俺の家は裕福ではなかったし、あいつの家も裕福ではなかった。だから、私立の中学に行ける金などない。だから、自然と公立中学に進学した。
もううんざりだった。あんな奴の顔など、二度と見たくない。
だから俺は猛勉強した。学力は同じくらいだったから、このままでは高校も同じになってしまうおそれがある。
必死に勉強した末に、俺は県内一の進学校に合格し、そして入学した。
だが・・・・・・あいつも猛勉強していたようだ。奴も、俺のことが大嫌いだから、一緒の高校になど行きたくない。だから、奴も必死だった。
そして・・・・・・またもや、奴と俺は三年間、同じクラスになった。
ここまで来ると、もう腐れ縁としか言いようがない。だが俺は何とか奴と離れたかった。
どうすれば、奴とおさらばできるだろう?もちろん、法的に禁止されている行為は論外だ。
そんなことをしたら、俺の人生まで棒に振ってしまう。奴とは別れたいが、俺の人生まで反故にはしたくない。
そうだ、あいつが手の届かないような一流大学に進学してやろう。そうすれば奴とはきっと別れられる。
そして俺は猛勉強の末、慶應大学に進学した。
奴も猛勉強していたみたいだ。だが、奴は早稲田へと進学した。これでやっと、奴とはおさらばできる。
そして・・・・・・俺とあいつは、ようやく離れた。
ウザい奴だったが、いなくなるとちょっとだけ寂しい・・・・・・そ、そんなことないからなっ!!!

だが・・・・・・
163人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/12(土) 23:45:44 ID:OIIGQaS2
今、俺と奴は、同じ席で、向かい合っている。
奴と別れてから、もう25年も経っている。俺は結婚し、子供もできた。
可愛い、そして美しい娘に育った我が子・千晴。そんな千晴が、この間彼氏を家に連れてきたのだ。
彼の名は隆君。なかなか男前で、しっかりした奴だと思う。
だが、この男の面影に、かつて大嫌いだった男の面影が見え隠れしていた。そういえば、奴と同じ姓だ。
「認めん!」
「どうして、お父さん?私たち、愛し合っているのに!」
「あんな奴の息子など、断じて認めん!」
「あなた、何があったか知らないけど、認めてあげてくださいな。」
「お前は黙っていろ!」
こんな感じで、俺は奴の息子など、認められずにいた。そして今、ここで隆君の父親と対峙している。
やはり、奴だった。昔から気に入らなかった、腐れ縁のあいつ。正直、虫唾が走る。
何でこんなにも、奴のことが嫌いなのだろう?もはや自分でもわからない。生理的に嫌いなのだ。
「お前は変わらんな。俺は、お前の娘であろうと、彼女のことを認めているのに。」
開口一番、奴はそう言った。
「お前の娘は、お前ではない。彼女は、彼女の人生を歩んでいる。どうしてそんなことがわからんのだ?」
奴の方が大人だったようだ。だが、奴の息子というだけで、俺はどうしても気に入らない。
「お願いお父さん!私たちの仲を認めて!」
娘の嘆願。だが、俺は認められない。こんな奴と親戚になるなんて、真っ平御免だ。
「わかったわ父さん。私、父さんとの縁を切ります。長い間、お世話になりました。」
「何だとっ!?お前!育ててやった恩も忘れて!」
俺が千晴を叩こうとすると、隣にいる俺の妻が俺を止めた。
「あなた!」
そして妻は俺の前に一枚の紙を差し出した。
「あなた、これにサインをしてちょうだい。」
俺は驚いて妻を見た。その紙には、『離婚届』と書いてある。
「なっ!?お、お前・・・・・・」
「千晴と隆君の仲を認めないなら、これを役所に提出しますから。」
「お前・・・・・・俺を脅す気か?」
「もちろん、あなたが認めてくださるなら、この紙は今ここで破り捨てます。さあ、返答はいかに!?」
164人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/12(土) 23:46:13 ID:OIIGQaS2
俺と妻は長年連れ添ってきた。妻には随分と苦労をかけたと思う。その苦労の証が、顔のあちこちに刻み込まれた皺に、くっきりと浮き出ていた。
もちろん俺は、妻に対して暴力など振るったことはない。ずっと今まで、仲良くやってきたつもりだった。
そんな妻の、突然の裏切り。
「お前、どうして・・・?」
「あなたが二人の仲を認めないからです。それもつまらない意地で。私は隆君のことを認めているのですよ?千晴、よくこんないい男を捕まえたなあって。」
「それに俺たちも、千晴さんのことを認めているのだ。認めてないのは、お前だけだ。」
気がつくと、俺の周りはすべて敵だった。こんなことは俺の人生の中ではいくらでもあったが、さすがにこれはきつい。
「・・・・・・どうして愛しい娘を、お前の子なんぞに・・・」
「俺にやるよりはマシだろう?」
「くっ・・・・・・勝手にしろっ!」
「よかった!隆君、やっとうちのお父さんが認めてくれたわ!」
「うん。ありがとうございます、お義父さん。」
お義父さん。今日ほど、その言葉が屈辱的だったことはない。
あまりにも悔しいから、その晩、ベッドの中で妻を徹底的にいじめてやった。
「ああん、あなた、どうしてそんな意地悪するのっ!?」
「お前があんなことするからだ!ほら、言わないと挿れてやらないぞ!」
「ああん!意地悪〜♥」
「ほら、言ってみろ。『挿れてください』っとな。」
「い・・・挿れてください・・・」
「よおし、挿れてやろう。今日は特別に、生で挿れてやる!」
「あ、あなた!私まだ、生理上がってないのに!」
「いいじゃないか。千晴に弟か妹でも作ってやれば。」
「だ・・・ダメッ!ああ・・・あああん・・・あ・・・中にいっぱい・・・で・・・できちゃう・・・」
165人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/12(土) 23:46:51 ID:OIIGQaS2
そして・・・・・・いよいよ、この日がやってきた。
空は晴れ渡っている。だが、俺の心は曇り空だ。
いよいよ今日、千晴と隆君の結婚式が執り行われる。よりによって、大嫌いなあいつの息子だ。
隆君自体が誠実でいい男なのはわかっている。だが・・・・・・いかんせん、奴の息子。それだけがネックだ。
そして・・・・・・俺は千晴と腕を組み、バージンロードを歩む。
殊更に、俺は険しい表情をしているのだろう。娘はちらちらと俺の表情を窺っている。
そして、花道の真ん中に、隆君が待っていた。
隆君は千晴に向けて腕を伸ばした。だが、俺は・・・・・・なかなか離せずにいた。
「お父さん、往生際が悪いわよ。」
「・・・・・・勝手に行け。」
「もう、お父さんったら・・・・・・。隆君、行きましょ♥」
そして娘は隆君と腕を組んで、祭壇の前まで進む。途端に俺の目の前が、俺の心のように曇った。
「俺の手塩にかけて育てた娘が・・・・・・あいつの息子と・・・・・・」
本当に、我ながら往生際の悪い父親だと、自分でも思う。だが、それほどに、俺は奴のことを・・・・・・嫌っているのだ。
だが、奴は少し、丸くなったみたいだ。俺の娘のことを、きちんと認めているそうだ。もっとも、俺自身のことは、今でも認めていないそうだが。
もちろん、俺もそうだ。奴と顔を合わせるだけで、虫唾が走る。
千晴と隆君は、大学で知り合ったそうだ。隆君の父親である奴は、結婚して県外に引っ越していたそうだ。そこで隆君が生まれ、ずっとそこで育ってきた。
だから、大学で千晴と彼が知り合ったというのは、まったくの偶然だ。本当に、奴とは腐れ縁なのだなあと思う。
そして俺は席に着いた、隣には妻がいる。そして、反対側の席には奴と、その妻がいる。
余談だが、奴の妻はなかなか美人だ。あんな奴に、どうしてあんな美人がくっついたんだろうか?まったくもって理解できない。
もっとも、向こうも俺たち夫婦のことをそう思っているだろう。俺の妻も美人だからな。
「あなた、どうしたの?そんなにふくれっ面して・・・」
「・・・いや、何でもない。」
「もう・・・往生際が悪いわよ。」
妻と娘が、二人して同じ事を言う。やはり、俺が意地っ張りなのだろう。
そんな中、いよいよ二人が祭壇の前に立った。
「それでは、ただいまより、神谷隆・千晴の結婚式を執り行います。」
そして、いよいよ二人の誓いが始まった。
やはり、二人の答えは「誓います」だった。その言葉に、俺の顔は涙でくしゃくしゃになる。
愛しい愛娘。愛する愛娘。可愛い愛娘。その愛娘との思い出が、走馬灯のように俺の脳裏をよぎる。
愛しい娘が、今、大嫌いな男の息子と、永遠の愛を誓った。
そのとき・・・・・・
166人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/12(土) 23:47:29 ID:OIIGQaS2
「それでは、誓いの・・・・・・」
いよいよ、誓いのキスが行われる。俺は目を閉じた。
奴の息子と我が愛娘との誓いの口づけなど、見たくもない。
だが・・・・・・続いて出てきた神父の言葉に、俺は思わず目を開けてしまった。
「・・・・・・挿入中出し孕ませを。」
「何ッ!?」
突然、神父の背後から10人ほどのマッチョが出てきた。
「な、何をするんだっ!?」
そして隆君と千晴の二人は、たちまち白い衣装を剥ぎ取られ、全裸になる。
パ、パンティーまで脱がされるとはっ!
そしてバージンロードを大きな台車が走ってくる。その上は、二人用のベッドになっている。
隆君と千晴はマッチョたちによって、強引にベッドの上に乗せられた。
「さあ、思う存分、愛し合いなさい!」
マッチョたちは二人が逃げないように、ベッドの周りを取り囲んでいる。まるで・・・・・・筋肉の牢獄だ。
俺は父親として、その牢獄から愛娘を助け出さなければならない。
「千晴っ!!!」
俺は筋肉野郎どもをどかすべく、その筋肉の群れに突っ込んでいった。だが、予想に反して、筋肉どもはあっさりとどいた。
「もう逃げる心配はないと判断いたしましたので。」
筋肉の一人がそう言った。中では・・・・・・千晴と隆君が、繋がっていた。
隆君の陰茎が、もろに千晴の膣の中に入っている。その結合部からは、ちょっとだけ血も出ていた。
「やめろっ!千晴から離れろっ!!!」
千晴は、まだ処女だったのだろう。その清らかな純血が、よりによってあいつの息子に汚されるとは・・・・・・
俺は強引に隆君の腰を掴み、背後に引っ張る。
「抜けっ!」
だがその直後、奴がやってきて、隆君の腰を押し戻した。
「やめろっ!お前はまだわからないのか!二人はもう、夫婦なんだぞ!」
そんな奴に反発するかのごとく、俺は再び隆君の腰を引っ張る。
だがそのたびに、奴は隆君の腰を押し戻した。
「うおっ!」
隆君は、すごい表情をしている。娘の中が、そんなに気持ちいいのだろうか?
167人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/12(土) 23:48:18 ID:OIIGQaS2
「千晴ちゃん、痛くない?」
「ちょっとだけ。でも、私は幸せだよ♥」
「千晴ちゃん・・・・・・」
ベッドの上の二人は、お互いに愛の言葉を交わしている。だが、それは、俺にとっては、到底容認できる事態ではない。
俺は隆君の腰を引っ張り、陰茎を抜こうとする。だが、奴はそれを押し戻す。
次第に俺と奴の意地の張り合いはエスカレートしていった。
凄まじい勢いで俺が引き抜こうとすると、奴がすぐさま押し戻す。
だが、俺は気づいていなかった。俺たち二人の意地の張り合いが、いつしかピストン運動になっているということに。
やがて、千晴の眼が涙に濡れた。
「千晴ちゃん?」
「隆君・・・私、すごく・・・幸せ♥」
やがて、萎びた隆君の陰茎がするりと抜けた。そこで初めて、俺は事態を悟った。
「くっ・・・・・・」
千晴の膣から、白く濁った粘液がとろっと落ちた。
「隆君・・・・・・ずっと、ずっと一緒だからね!」
「うん・・・千晴ちゃん、愛してる。」
二人はずっと抱きしめあっていた。それを見下ろしながら、神父は微笑む。
「おおっ!父なる神よ、今ここに、一組の夫婦が誕生しました。願わくは、この二人に、永遠の祝福を!ザーメン!」

orz

おしまい

PS.千晴に、妹ができました。
そしてもうすぐ、千晴の子供も生まれてきます。
168名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 01:19:49 ID:i0W2PFag
吹いたライチティー返せ!
親父どもに萌えた俺はもうだめかもしれん…
169名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 18:32:44 ID:Q94Rw1iS
なんかデジャヴー
170名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 20:36:23 ID:P+i6hKEp
Monty Python のデジャブ ネタはスレ違いだよな。
171人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/01/13(日) 23:19:23 ID:DFGzHIcK
Monty Python ?何それ?
何か拳銃みたいな名前だけど・・・
172名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 09:38:48 ID:E0/scvBL
age
173名無しさん@ピンキー:2008/01/14(月) 09:51:21 ID:NSochYwP
「花嫁の父」のシリアスドラマで押してきて、
クライマックスでいきなりマッチョ登場・エロコメ落ちというパターンにまたもワロス
(腹いせに妹を作ってしまったオヤジもオヤジだけど)
174名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 22:38:47 ID:xy6drYVi
テリー・ギリアム
175名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 00:24:58 ID:I+Jk0HgV
age
176名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 00:41:43 ID:uqHoIuhr
エロパロ板 過去ログ倉庫
http://ninjax.dreamhosters.com/ascii2d/
177名無しさん@ピンキー:2008/01/28(月) 00:33:24 ID:L114tQ5m
保守
178名無しさん@ピンキー:2008/01/30(水) 02:05:51 ID:/wEA1owd
保守
179名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 07:10:26 ID:6zbZP2sY
age
180名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 19:49:37 ID:28Eh9FXU
保守
181名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 21:30:28 ID:s19nK6zx
保守
182名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 15:21:17 ID:wFi3vHPg
ほす
183人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/02/11(月) 20:04:26 ID:M655mSEr
ちょん。

「んっ?」
誰かが私の頬をつつく感触に、私は目を覚ました。つつかれた方向を見ると、そこにはまだ結婚したばかりの妻が微笑んでいる。
ちょん、ちょん。
「おいおい、言いたいことがあったら、はっきり言いなさい。」
私が微笑むと、妻は恥ずかしそうに頬を染めた。
「もう、着いて早々寝ることないじゃないですか。私たちは、新婚なのですよ?」
「・・・そうだな。」
「だから、私たちは新婚なんですってば!」
「それがどうした?」
妻は少し怒っている。彼女の白い柔肌が、目の前に露になっている。彼女は・・・・・・何も着ていない。
彼女の言いたいことはわかっている。だが、この妻の少しむくれた表情を見ると、少しだけ、意地悪したくなってしまうのだ。

私がこの妻と知り合ったのは、まだ妻が少女の頃だ。
もちろん私も少年だった。同じクラスで、席は隣同士。
クラス一の美少女と隣同士になれて、周りからは随分羨ましがられたものだ。
隣同士だったから、話す機会も多く、それだけ接する機会も多かった。
彼女は可愛い。そして、性格も優しい。こんなにいい子と巡り会えるなんて、私はなんて幸せなんだろう。
そして・・・・・・彼女も、私に好意を持っていたようだ。ある日、私は授業中に、彼女から紙の切れ端を貰った。
そこには、「好き♥」と書いてある。
思えば、彼女がストレートに感情を露にしたのは、これが初めてだ。もちろん、私も彼女に好意を持っていたから、同じように紙の切れ端に返事をした。
「僕も♥」
見つかれば冷やかされるだろう。私と彼女との、秘密のやり取り。
そんな感じで、私と妻は・・・・・・ずっと愛を育んできた。
しかし・・・・・・

彼女の両親の猛反対。
私は何度も頭を下げたが、まったく取り合ってもらえない日々が、ずっと過ぎていく。

今、私と妻は、新婚である。結婚したばかりだ。
思えば、長い道のりだった。だがこれで、ようやく彼女は私の妻になった。
これから一生、妻を大事にしていこうと思う。
184人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/02/11(月) 20:05:22 ID:M655mSEr
そして今、新婚旅行先である、ハワイの熱い夜。
少しだけむくれる妻に、私はそっと囁いた。
「さあ、何がしたいのか、言ってごらん。」
「・・・・・・意地悪。」
妻の恥ずかしがる顔が、可愛くてたまらない。
「女の口から、言わせる気?」
「うん。」
「もうっ!知らない!」
妻はそっぽを向いてしまった。こりゃ本当に怒ったかな?
「ごめんごめん、嘘だよ。」
「・・・・・・。」
妻はまだ、怒った顔をして、私を睨んでいる。
「悪かったから、許して、ねっ?」
「うー・・・・・・」
「いっぱい愛してあげるから、ねっ?」
私は妻をぎゅっと抱きしめた。妻の・・・・・・愛しい身体。
長い間、待ち焦がれた、彼女の身体。
妻の愛しい唇に、私はそっと唇を重ね合わせた。すると、妻は瞳を閉じる。
(好き・・・・・・)
妻の想いが、唇を通して、私の心に伝わってくる。
あの時、初めて恋した少女は・・・・・・大人になった。
外見は随分変わった。もっとも、美しいという事実は変わらない。
そして私も、大人になった。もう、すべての事柄に、責任を持てる年齢。
愛する妻の身体は、本当に綺麗だ。
芳しい香りと、愛情が溢れる熱い身体。彼女の熱が、こちらにも乗り移ってくるような気がして、私の息も荒くなる。
(なんて熱い身体をしているんだ)
私は思う。別に病気というわけじゃない。これが・・・・・・発情というのだろう。
妻の吐息も熱く、そして荒い。
中学校のときに一緒のクラスになった、クラスメート。そして、数多の障害を乗り越えて、遂に結ばれた、夫婦。
だが今の私たちは、そのどちらでもない。事実関係においては、夫婦であることは間違いない。
しかし今、ここにいるのは、発情したオスとメスだ。
やはり人間といっても、動物の一種に過ぎないのだ。
愛する妻の身体は、たおやかに美しく、私を誘っている。
だが妻は、私の肉茎を見て、少しだけ怯えている。
「こ・・・こんなに・・・大きいの?」
妻はまだ、男を知らないらしい。もっとも、私もそれは同じ。今までずっと妻一筋で、他の女になど目がいくわけがない。
それほど、妻は素晴らしい。そして、愛しい。
「大丈夫。お前はきっと、私を迎え入れられる。自分を信じるんだ。」
「はい・・・・・・」
妻は不安そうにこちらを見つめながら、私に向かって大きく股を開いた。妻は・・・・・・一つになることを、許してくれたのだ。
185人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/02/11(月) 20:06:31 ID:M655mSEr
私は己の股間に宿る精子注入棒を、そっと妻の入り口に当てた。その瞬間、私の先端が、妻の熱い液に濡れる。
妻はこんなに濡れている。経験のない私ではあったが、発情すると女性の股間が濡れることぐらいは、知っていた。
「優しく・・・して。」
「それはわからない。」
「・・・・・・もう。」
妻は動かない。じっと私の動向を見つめている。
やがて私の肉茎が、徐々に彼女の女に沈んでいった。
「!!!!!!」
妻は一瞬、苦痛に顔を歪めた。だが、その表情すらも美しく感じてしまう。
「痛かったか?」
「うん・・・・・・でも、大丈夫。思ったほどじゃなかったから。」
もう、肉茎の根元まで、彼女の膣(なか)に埋まっている。ようやく、私と妻は、本当の意味で、一つになれた。
それにしても、膣の中は柔らかい。そして、熱く濡れている。
おそらく、射精を促しているのだろう。それが、女の身体なのだ。
「はああ・・・あああ・・・」
妻の荒い声が響く。
「そんなに痛いのか?」
「ち・・・違います・・・」
「じゃあどうした?」
「その・・・なんていうか・・・」
「気持ちいいのか?」
「わかりません・・・でも、これが・・・気持ちいい?」
妻は語尾を上げた。多分、気持ちいいのだろう。だが、生まれて初めての事だから、よくわからないのだ。
そして・・・・・・私も、気持ちいい。
なぜ、気持ちいいのだろう?多分、これがないと、誰も子孫を残そうと思わないからではないだろうか。
気持ちがいいから、結果として、子孫を残す。人類が今まで増えてきているのも、気持ちがいいからだ。
現に今、私と妻も、気持ちいい。
だが・・・・・・もっと気持ちよくなりたい。
私も妻も、もっともっと気持ちよくなれる。
私は動いた。肉茎を彼女の中でスライドさせる。
「あああっ!ふああっ!ああああっっ!」
私の動きに合わせて、彼女は声を荒げて叫んだ。
「わ・・・私・・変に・・・なっちゃう!!!」
彼女は両足をじたばたさせて悶える。
「苦しいのか?」
「違う!違うのっ!その・・・・・・」
「気持ちいいんだな?」
私の言葉に、妻はこくっと頷いた。
「よし、それじゃ、もっともっと気持ちよくしてやる!!!」
「ふああああっ!あああああっ!ひゃあああああっっっ!!!」
妻のありったけの叫び。その心地よい響きを耳にすると、私もいよいよ・・・・・・頂上に着きそうだ。
そして・・・・・・
186人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/02/11(月) 20:07:27 ID:M655mSEr
私は妻の胎内に、ありったけの想いを注ぎ込んだ。
そしてようやく私と妻の身体が離れると、妻はうつ伏せになりながら、じっと私のことを見つめた。
やがて妻は涙ぐむ。
「どうした?」
「ううん・・・・・・嬉しいの・・・・・・ずっと、ずっと一緒よ?」
妻は私にそう告げた。そんな妻が可愛くて、愛しくて、私は妻を抱きしめた。
「ずっと・・・・・・一生、大切にするからなっ!」

私と妻、86歳の熱い夜。

おしまい
187名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 20:15:32 ID:SDUJhLaO
道のり長すぎるよ!
両親死ぬまで待ってたにしても長すぎるよ!
つーか爺さんまだ現役かよ!

と全力で三村ツッコミしながらGJ
188名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:35:58 ID:Z6FYprae
最後の一行に、ああ、だみゃーんさんだなと納得w
189名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:45:55 ID:scd8gkZH
あやうくチャックを下ろしかけたが、最後見た瞬間、そっと上げたぜ。
190名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:22:45 ID:NPYLFLsY
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
191名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:44:01 ID:0dJNJOi2
チャックではさまなかったか?

気を鎮めてからでないと危ないぞ
192名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 00:34:13 ID:/bzKh0A+
保守
193名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 00:47:17 ID:8r58EIwx
保守
194名無しさん@ピンキー:2008/02/23(土) 19:55:21 ID:trGkM445
保守しておきますね。
職人さん来るかな?
195名無しさん@ピンキー:2008/02/26(火) 13:17:41 ID:mJLXFcO7
揚げ揚げ
196名無しさん@ピンキー:2008/02/29(金) 00:14:29 ID:s/H3PVgT
保守
197名無しさん@ピンキー:2008/03/04(火) 23:58:59 ID:OpjM+UZW
保守
198名無しさん@ピンキー:2008/03/10(月) 21:14:49 ID:bpaAmpui
199名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 01:28:41 ID:vaTouSAX
新婚って需要ないのか??
こんなに萌える要素は無いと思うんだが…
200名無しさん@ピンキー:2008/03/12(水) 15:23:15 ID:1a/InaFK
新婚は素晴らしい題材なんだけれども、いかんせん、文にしにくいな…と。
ネ申様どうぞいらしてくださいorzorz
201名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:37:51 ID:kbvoXviQ
長くてすみません。
23レスお借りします。
202名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:38:36 ID:kbvoXviQ
まさかこいつと結婚することになるとは思わなかった。
大事な友達だけど、そういう対象として見たことは……まあ、想像の中で一回くらいで、
恋愛対象としては見たことはホントになかった。
けど、ノリとか勢いとか色々あって、こいつは今、俺の目の前で晩飯を作ってくれてる。
俺のために。
というか、俺たちのために。
学生の頃は遊びに行くと、どうせ自分の分を作るついでだと、俺の分も作ってくれたけど、これからはそうじゃない。
やべえ、なんか嬉しい。
まあ、片づけるのは俺の仕事なんだけど。
でも、指輪交換した女が飯作ってくれるってのはこんなに嬉しいもんなのか。
「座って待っててよ。なんならお風呂に先入っちゃって」
キャベツを刻む手元をにやにやしながら見てたら、そう言われた。
「んー……。いや、でも、なんか手伝うよ」
「ありがと。でも、大丈夫。これ切り終わったら、コロッケに衣つけて揚げるだけだから。
 お風呂から上がった頃にちょうど出来上がると思うよ」
「でも、そしたら高橋が風呂に入れないじゃん」
「もう高橋じゃありませんー」
どうしても、今までどおりの呼び方で呼んでしまう。
照れくさくて今さら穂波なんて呼べない。
俺がごめんとか何とか慌てていると、彼女はわざと尖らせていた口で今度はにっこり笑って、
「私は大樹がお皿洗ってくれてる間に入るから後でいいよ」
と言った。
高橋はまだ風呂に入ってないのに、俺が風呂上りホカホカの身体で飯食ってるところを想像して、
俺はなんだかつまらない気分になった。
とは言っても、料理してるこいつの傍にまとわりついてても邪魔になるだけだから、俺は、
「いい。待ってる」
と言って、椅子に腰をおろした。
203名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:39:17 ID:kbvoXviQ
テーブルに置いてあった新聞を捲ってみるけど、内容なんて頭に入ってこない。
目がどうしても高橋の方に行ってしまう。
そりゃあ、そうだ。
なにしろ、今日は結婚して初めての週末。
一か月前に引っ越したけど、ここに住んでたのは俺だけで、高橋は荷物をちょくちょく運びに来るだけだった。
結婚式は先週の土曜。
日曜はお互いの親に挨拶に行って、帰ってきたら二人とも疲れ果てて爆睡。
月曜から金曜までは新婚さんに優しくない仕事ラッシュで、あっという間に今日になった。
今日の午前中は日用品の買い物に行って掃除機かけたりもしたけど、大したことはしてない筈だ。
そう。
つまり、初夜ですよ、初・夜!
と、テンションを上げてみたけど、俺にはいまいち現実味がなかった。
頭ではそういうところを想像できるし、そうなったらすごく嬉しいであろうことも予想できる。
なのに、俺は未だに実感が沸かない。
やりたいと思ってる反面、気持ちのどこかではセックスなんかしなくても、
こいつとなら夫婦をやっていけるとか思ってる自分がいる。
理由は多分、高橋とは長い付き合いなのにそういうことになったことが実は一度もないからだ。
お互いの部屋を行き来して、飲んでしゃべって、そのまま泊まったことだってあるのに、
そういうことにはならなかった。
結婚が決まった後もそういうことにはならず……。
なんと、びっくり。
誓いのキスが俺達のファーストキスだった。
しかも写真撮影の都合上ほっぺに、ちゅ。
それでも、俺は十分に緊張したんだけどな。はっはっは。
二次会、三次会でのキスコールでやったキスなんて、酒のせいでまともに覚えてない。
204名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:39:56 ID:kbvoXviQ
もう一度想像してみる。
俺が脱がすと照れる高橋。
照れながらも俺に抱きついてくれて、触ったりしたら「や、えっち」とか言ってくれて……。
だあっ!
ホントにそうなったら嬉しいよ!ああ!嬉しいさ!
多分、めちゃくちゃ興奮するよな、俺。
でも、なんだろう?
なんかピンとこないんだよな。
どうせ、じじばばになったらそんなことしなくなるんだから、最初っからセックスなしの夫婦生活とか、ダメかな。
各種STDの検査まで受けたくせに、往生際が悪い。

昨日の夜あたりから考えてることをまた考えてたら、じゅう、といい音がした。
高橋の方を見ると、ちょうど二個目のコロッケを入れるところだった。
また、じゅう、といい音がする。
高橋の作るコロッケはうまい。
三個目を入れるところを見てたら腹がぐうと鳴った。
「もうすぐできるから待っててね」
高橋はこっちを見ずに言う。
「うん、腹減った」
食べざかりのガキみたいな返事をしてからふと思った。
そう言えば、こいつはどう思ってるんだろう?
こいつも俺とやるのなんて、変だとか違和感があるとか思ってるんじゃないのか?
それとも実はやる気満々だったりして。
子供が好きって言ってたしな。
それならそれで、向こうから押し倒してくれたら楽かもしれない。
一回やったら、その後はきっと気兼ねなくできる。
205名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:40:27 ID:kbvoXviQ
でも、本当にそれでいいのか?
高橋だって一応女なんだし、どっちかと言ったらこういうことには消極的なんだから、
それをこいつに期待するのは間違ってる、というか男としてどうよ?
冷静に考えろ。
まず、やりたいのか、やりたくないのか。
……。
やりたい。
じゃあ、なんでやらない夫婦生活とか考えてるんだ?
「大樹ー。出来たよー。取りに来て」
「あ、うん」
揚げたてのパン粉の匂いが漂ってきた。
学生の頃からよく知ってる匂いだ。
その頃はコロッケが揚がるまで、俺は高橋の部屋のマンガを読んだりCDを漁ったりしてたんだよな。
なるほど、分かった。
俺はこいつとのそういう関係を壊したくないんだ。
やったらそれが崩れそうで、高橋が俺の知ってる高橋じゃなくなりそうで怖いんだ。
今までだって、喧嘩して崩れたことは何度もあったけど、そのたんびに元通りになったんだ。
やったくらいでおかしくなんて……ならないよな?
ダメだ。
まだビビってる。
なんでビビるんだよ、俺のバカ、小心者。
「大樹、どうかした?」
「え?」
「大樹の好きなコロッケなのに、ため息なんかついちゃって」
皿を渡しながら俺を見上げてくる高橋。
こんな構図、今までにだって何回もあった。
あったけど、変なことを考えてたせいか、俺は急にドキドキしてきた。
206名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:41:08 ID:kbvoXviQ
そんで、気がついたら、
「なあ、片付け終わったらいっしょに風呂入んない?」
と言っていた。
本当に何にも考えてなかった。
多分、さっきの「お風呂に先入っちゃって」がどこかに引っかかってたんだとは思うんだけど。
言ってみると意外になんてことはなくて、俺は割と冷静に、
今の俺には一番口にしやすい誘い文句だな、なんて思ってたら、目の前の顔が真っ赤になった。
適当にあしらわれると思っていたから、この反応は予想外だった。
「高橋?」
「は、はいっ!?」
「飯食って、片付けたら」
「あーあーあー!そういうことは、ほら、まず、順序ってものが必要じゃない?
 そうだ!ほら、まずご飯を食べよう!」
俺の横をすり抜けて食器棚の方へと向かいながら、そう言った。
もしかしたら、俺以上に意識してたのかもしれない。
だとすれば、このタイミングで言ったのは良くなかったのか?
けど、それにしては過剰な反応じゃね?
拙かったかも、と思うのに、この反応がもっと見たくて、俺はとりあえず皿をテーブルに置くと、
炊飯釜をあけて米をかき回している高橋の後ろに立った。
「順序ってなんだ?風呂入るって、普通に一番最初にするだろ?」
「でも、一緒に入る必要はないよねえ?」
「なんで?洗いっこって、普通に前戯込みで楽しいじゃん?」
さっきまでのしょぼい悩みはどこへやら。
今の俺はノリノリで、一つにまとめられた背中まである髪を撫でながら、高橋の耳元にわざとらしく囁いてみた。
207名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:41:41 ID:kbvoXviQ
「バカッ!そんなの知らないもん!」
高橋がしゃもじを炊きたての米に突き刺した。
俺はちょっとびっくりして、身体を引いた。
「なんだよ。そんな怒ることじゃないだろ?」
「怒ってない」
「いや、怒ってんじゃん」
「怒ってないってば!」
「お前がそういう言い方するのって、絶対怒ってるときじゃんかよ」
横から顔を覗き込もうとすると、顔を背けられた。
喧嘩と言っても、趣味の違いとか、友達の痴話げんかでどっちの肩を持つかとかの言いあいで、
俺たち自身が痴話げんかをしたことがないから、どうフォローすべきか分からない。
けど、何が怒ってる最大の原因か分からないのは後々のために大変よろしくない。
「なあ、急に言ったのは悪かったかもしんないけどさ、なんで怒ってるのか言ってくんねーと俺、困るじゃん」
「怒ってないもん……」
この言い方は反則だ。
こんな拗ねた高橋見たことないが、かわいい。
思わず後ろから抱き締めると、ひゃっと肩をすくめられた。
「な、俺、悪いこと言った?」
「悪くはないけど……」
自分で自分の指をさすりながら、こいつにしては歯切れの悪い口調でぼそぼそと呟く。
「うん」
「いきなり、お風呂とか……」
「うん」
「……キスだってちゃんとしてないし」
「うん、そうだよな。してないよな」
俺は努めて冷静にそう返したけど、気持ちは高橋のほっぺたやら首やらにキスしまくりたい衝動に駆られていた。
208名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:42:14 ID:kbvoXviQ
「なのに、お風呂とか」
「うん、ごめん」
「ぜっ、ぜん…ぎ、とか言うし」
「うん」
応じてはみたものの、俺の理性は助走を始めていた本能にブレーキをかけた。
ちょ……っと、まて?
もしかして、高橋、
「楽しいとか言うけど」
これはやっぱりあれか?
初心者なのか?
処女?
ヴァージン?
生娘?
「私、そんなの、知らないから……」
俺は高橋の肩を片腕で抱きしめたまま、米に刺さっていたしゃもじを抜き、しゃもじ立てに立てた。
それから、炊飯釜の蓋をゆっくり閉めて、頭の中でアイスやら雪やら南氷洋やら冷たそうなものを思い浮かべて、
必死に冷静さを保つ努力をした。
嬉しい。
そうとう嬉しい。
暴走しそうなぐらい嬉しい。
が、ホントに初めてなら、暴走は厳禁だ。
何をどう聞いても、傷つけそうで怖い。
だけど、確認は必要だ。
だって、高橋にだって少ないけど付き合ってたやつはいる。
ゆっくり身体を離すと、俺は高橋の両肩に手を添えて、さらにゆっくりとこっちを向かせた。
209名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:42:41 ID:kbvoXviQ
俯いてるせいで顔は分からないけど、赤くなった耳は見える。
俺はあまり賢くない頭をフル回転させて、出来るだけ落ち着いた風を装って聞いてみた。
「風呂入るのはいつも別々だった?」
「あの、えっと、あのーね」
ビンゴだ。
風呂どころか、前戯もしたことないんだろう。
嬉しいんだけど、言わせるのがかわいそうな気もしてきた。
でも、俺が「お前って実は処女?」とか聞くのは論外だ。
結局俺はまた、
「うん」
としか言えずに高橋の言葉を待つしかなかった。
「だから、なんて言うか、そういうことを、したことが、……なくて」
高橋の声は消えそうで、俺は気がついたら耳を高橋の顔の傍まで近付けてた。
ほっぺたに触れるかすかに震えた息がくすぐったい。
これだけで昇天しそうだ。
「大樹……」
高橋がこちらを窺うように見てきた。
「ん?」
腰をかがめたまま、その目を見ると、彼女は泣きそうな顔をした。
「あの、ごめん、ごめんね」
「なんで謝るんだよ。全然ごめんじゃないよ」
「だって、処女なんてめんどくさいのにさ」
「バーカ。めんどくさいとか、そんな訳ないだろ?」
確かにちょっとは気を使うけど、でもそんなこと本当にどうでもいい。
そんなことより俺は今、こいつが俺だけのものだっていうことに異常なまでの興奮を覚えていた。
210名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:43:14 ID:kbvoXviQ
「ホントに?」
「ホント。なあ、俺、今すげえ嬉しい」
「嬉しいの?」
怪訝そうな顔をする高橋。
「変な顔すんなよ」
「だって、めんどくさいからやだ、って言われたんだもん」
そういえば、高橋は前のヤツと別れた時、別れた理由を絶対言おうとしなかった。
なるほど。
これは言ってはいかん一言だな。
けど、そのおかげで俺が高橋を独り占めできるので、ある意味グッジョブ!
が、それを言う訳にはいかない。
そのあたりは押し殺しつつ、俺はむくれる高橋の頭を撫でてみた。
「それってさ、そいつが高橋に本気じゃなかったんだよ。
 よかったじゃん。そんな奴とやらないですんでさ」
「それは、そうかもしれないけど……」
「俺が最初の相手じゃ不満か?」
前のヤツの事後処理で慰めの言葉を探す筋合いはない。
高橋はやっと笑うと、俺が彼女にしたように俺の頭をそっと撫でて、
「唯一の相手になってくれる?」
と聞いてきた。
「当たり前。俺の嫁は後も先もお前だけだろ」
俺がさらに顔を寄せると、高橋は、そうだよね、とまた笑ってくれた。
それから俺たちは初めて二人しかいない場所でキスをした。
211名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:43:49 ID:kbvoXviQ
確かファーストキスは高校生の時だって前に言ってた。
唇も初めてだったら、俺はきっと悶え死んでたかもしれない。
残念だとは思うけど、まあ仕方がない。
それを言ったら俺はあっちもこっちも使用済みだ。
余計なことを考えてるのがばれたら、きっと今度こそ怒られる。
けど、キスに集中したら高橋を窒息させそうで怖い。
そのくらい今の俺は暴走寸前なんだ。
ちょっと唇が離れた時に口元にかかる息とか、漏れる声とか、服にしがみついてくる手とか、
良く知ってる高橋の初めて知る部分が俺をこれまで以上に興奮させる。
これから先、こいつを独占できるのかと思うとさらに興奮する。
今まで女だっていう分類のためにしか見てなかった胸が、特別な意味をもったものになって、
強く俺の身体に押しつけられてる。
風呂上りでもないのに、やけにいい匂いがする。
脱がしたい。
脱がして、身体中を撫でて、触って、キスして……。
本当にこいつを窒息させそうな気がしてきて、俺は唇を離して目を開けた。
でも、濡れた唇、火照った顔でこっちを不思議そうに見てくる高橋を見たら、
俺は冷静さを保つために唇を離したことも忘れて、またその唇に食いついてしまった。
性急にエプロンの紐をほどいて、舌を動かす。
どうせなら、少しでも気持ち良くさせなきゃとか、どっかで思うのに、
唇の裏の粘膜の柔らかさを堪能して、甘えたように絡みついてくる舌を貪るのに夢中で
そんな悠長なことしてられない。
極力股間を擦りつけないようにはしてたけど、俺はとても正直で、
あれこれ考える前に手が勝手に高橋の尻を掴んでた。
高橋の身体がびくんと跳ねたけど、構わずに尻を揉む。
ナイロン製のパンツがすれてしゃかしゃかと音を立ててる。
俺の手から逃げたいのか、高橋がもぞもぞと動くたんびに高橋の下っ腹が股間を擦るせいで、
俺のイチモツはしっかり硬くなってきてしまった。
212名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:44:22 ID:kbvoXviQ
「んー!」
苦情の声に俺がようやく、今度こそちゃんと唇を離すと、高橋は荒く喘いで口元を指でぬぐった。
「だいじょぶか?」
「ん……うん」
呼吸が落ち着くと、彼女は俺を見上げて、
「大樹って意外と情熱的なんだ」
と笑った。
「意外ととは失礼な。俺はいつだって情熱に溢れてる人間だぞ?」
口ではおどけてみたけれど、笑った顔がかわいくて、高橋と距離を作るのがもどかしくて、
俺はすぐに顔を近づけて、額やらほっぺたにキスをした。
高橋は嬉しそうにそれを受けてくれたけど、
「でも飽きっぽいよね」
と、痛い一言を言われてしまった。
俺の作りかけのガンプラを二体完成させ、やりかけのRPGをクリアしたのは高橋だ。
「でも、おまえと居るのには飽きなかっただろ?」
「……それもそうだね」
俺はちょっとじれったくなってきて、高橋の手をつかんだ。
「大樹?」
「隣に行こ」
「え、でもご飯冷めちゃう!」
「大丈夫。おまえのコロッケは冷めてもうまい」
「でも……」
「お前……俺の状況、分かってて、わざと言ってる?」
いくら経験なくても、あれだけ密着してたんだからそれくらい分かってほしい。
「あ、あれってやっぱり、そーなんだ……」
「うん、ごめん」
照れる高橋を見てたら、なんだかこっちまで照れてきた。
213名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:44:46 ID:kbvoXviQ
寝室にしてある四畳半――と言っても、キッチンからふすま一枚のところだけど――に入ると、
俺は押し入れから乱暴に布団を引っ張り出して、その勢いのまま布団を敷いた。
埃が立つとかなんとか、文句を言ってる割には高橋もエプロンを外して、
もう一対の布団を敷いてくれている。
高橋が敷き終えたところで、俺は後ろからタックルをかけた。
「わあっ!」
「つぅかあまあえぇたああぁ」
「え?ええっ!?」
「ふっふっふ。脱がしてやる!」
「え、じ、自分で脱げるよっ」
「ダメ。俺が脱がす」
こんなバカみたいなやり取りが楽しくて仕方がない。
俺は高橋を抱えたまま身体を起こして、彼女を胡坐の上に乗せた。
「あ……」
「分かる?俺のちんこが早く高橋に入りたいって、尻つついてんの」
わざと露骨な言葉を使ってみると、高橋は期待通りに耳を真っ赤にして、
「わざわざ言うな!」
と膨れてくれた。
「高橋カワイイ……」
首筋に鼻を擦り付けながら、Tシャツの裾から手を入れる。
「バカ……。もう高橋じゃないってば」
「ん……だな」
俺は誤魔化して、胸の間に見つけたホックをはずした。
「うわっ……」
反応がいちいちかわいいけど、それを言うと拗ねそうだから、俺は首筋や耳に軽くキスしながら手で胸を包んだ。
でかい方だとは思ってたけど、実際に触ってみると手に余る。
慣れたらパイズリに挑戦してもらおう。
あれは俺も試したことがないからな。
214名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:45:16 ID:kbvoXviQ
俺は脱がすのも忘れて、しばらく高橋の胸を堪能した。
硬くなった乳首が時々指に触るから、そっちを弄ってもいいんだけど、もうちょっとこの柔らかさを味わいたい。
「高橋のおっぱい柔らかくて気持ちいいな」
「大樹、……胸、好きなの?」
「好き。高橋のだからもっと好き。でも尻も背中も腹も」
要するに俺は女の身体は全部好きだなあ、とか思いながらしゃべってると、
「大樹……名前で呼ぶの恥ずかしいんでしょ?」
と、痛いところをずばりと言われてしまった。
「呼び慣れてるから呼んじゃうんだよ」
と誤魔化してみたが、誤魔化しきれなかった。
「……でも、穂波、って呼んでほしいな」
ぐはっ、かわいい言い方するんじゃねえ!
「ん〜……てりゃっ!」
俺は苦し紛れにTシャツを思い切りまくりあげた。
「わっ!こら!」
たぷん、と揺れてでかい胸が現れた。
白い肌に薄茶色の乳首が顔を出してる。
「は〜……すげえ」
初めて見た、ってほどすごくでかい訳でもないが、なんでだか俺は異常に感動してしまった。
「バカ!見ないでよ!電気消せー!」
慌てて胸を隠して前かがみになる高橋のTシャツを今度は背中からつかんで引き上げる。
「ダメ。見たい」
「やだ。見せない」
「ふっ、甘いな。じゃあこっちだ」
俺はナイロンパンツのウエストを引っ張って、お尻の方へ思い切り下げた。
215名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:45:40 ID:kbvoXviQ
前かがみになっていたせいで、俺がパンツをひっぱると高橋はころんと転げてしまった。
その反動を利用して、膝までパンツを引き下ろす。
水色のショーツが俺の目の前に現れた。
「やっ!バカ、脱がすな!」
高橋はじたばたと身をよじったが、胸を隠しながらだから、大した抵抗になってない。
俺はあっさりパンツを引き抜くと、勝ち誇ったようにそれを掲げて見せた。
「だって脱がなきゃ出来ないだろ?」
「でも、もうちょっと脱がし方ってものが」
パンツをぽいと放って、身体を丸めて色々隠そうとする高橋の上に覆いかぶさった。
「お前が隠すからだ」
「大樹のエロスケベバカッ!」
「そんなの昔から知ってるだろ?」
「……ホント、よくSTD検査が全部陰性になったと思うよ」
確かに。
俺と結婚しない?と俺が言ったとき、STDが全部マイナスだったらね、と高橋は言った。
俺も実はそれだけは若干ビビってたが、何もなくて本当に良かった。
「俺は色々ラッキーだな」
「色々?ビョーキだけじゃなくて?」
高橋と同じ大学に入れた。
高橋と友達になれた。
高橋が独身でいてくれた。
高橋が処女だった。
でも、こんなことをラッキーだと思ってるなんてきっと俺だけだ。
「うん、色々。……なあ、観念しろよ」
俺が腕の隙間から強引に突っ込んだ手の指先で乳首をつまんでそう言うと、
高橋は本当に観念したらしく、腕から力を抜いてくれた。
216名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:46:13 ID:kbvoXviQ
俺は出来るだけゆっくり腕をどけた。
腕を開くと、高橋は仰向けになってはくれたけど、すぐにその腕で今度は顔を隠してしまった。
「腕どけろよ」
「やだ」
囁くみたいに小さい声で、でもきっぱりとした返事。
「キスできねーじゃん」
「……いいもん」
顔を寄せて顎にキスしてみたけど、高橋は腕をどけてくれなかったから、
「ふーん。じゃ、こっちに」
と言って、両手で乳をつかんで、その白い肌に唇を触れさせた。
小さな反応があったけど、それを無視して唇で柔らかい肌をついばむ。
胸元まで真っ赤になってきた。
ふうふうと息づかいも荒くなってきてる。
「少しは感じてきた?」
「分かんないよ、そんなの」
「ホントに?あそこ、むずむずしてねえ?」
ぴん、と立ってる乳首をつまんだり齧ったりしたいのを堪えて、その周りにキスを繰り返しながら聞いたけど、
返答なし。
ってことは、むずむずしてきてるんだろう。
言わせてやる。
「乳首は立ってんだけどな」
俺は左の乳首を指でつまむと同時に、右側を唇で捕まえた。
「わぅっ!あっ!や、やだ!」
「ん〜?」
舌で乳首を嬲ってやると簡単に身体が跳ねる。
もうひと押しと思って、左手を脇の方に落としていくと、うひゃ!と声が上がって、身体をよじられてしまった。
217名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:46:42 ID:kbvoXviQ
「だっ、だいきっ!や、くす、くすぐった……!ダメっ!」
押さえ込もうとしたけど、本気で身体をよじって這ってでも逃げようとするところを見ると、
本当にくすぐったいらしい。
こりゃダメだ。
開発する楽しみが増えたけど、今はエロエロモードにするスイッチを押し間違えた。
だがしかし、ここでうやむやにする訳にはいかない。
「逃がさん!」
俺は布団の上に這いつくばった高橋の肩を掴むと、もう一度仰向けにさせた。
今度は隠される前にしっかり手首を捕まえる。
「捕まえた」
高橋はあからさまにしまった!という顔をすると、目をぎゅっと瞑った。
なんでこんなに面白いんだ。
面白いんだが、かわいい。
かわいいけど、
「なあ、あんま緊張すんなよ。俺まで緊張しちゃうからさ」
俺がそう言うと、高橋は眼を開けて、俺を見上げてきた。
「じゃあ……電気消してよ」
「えー。見たいのに」
「そ、そのうち見せるから……っていうか、今でも十分見てるのに……」
俺はからかい半分で言ったのに、高橋は真面目に答えてくれた。
ちょっと申し訳ない気持ちになって、俺は手を離して立ち上がった。
「じゃあ、その時は隅から隅まで見せてな」
蛍光灯についてる紐を引っ張って、オレンジ色の薄暗い電球だけにする。
「隅って……」
俺がトレーナーを脱いでると、いぶかしげな声が聞こえてきた。
「あーんなとこや、こーんなとこだよ」
明るいところでそんなことをしたら、こいつは絶対また耳まで赤くしてくれるだろう。
それを想像しながら、俺はトレパンも脱いで放り投げた。
218名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:47:16 ID:kbvoXviQ
改めて布団に膝をつくと、高橋は顔を隠さないで待っててくれてた。
真面目な顔でこっちを見てる。
きっと赤い顔してるんだろう。
この明るさだとそのあたりが分からないのが悔しい。
俺は右肘をついて、出来るだけ身体をくっつけてま隣に横になった。
一目惚れした高橋のおっぱいを撫でながら、ほっぺたにキスをすると、高橋は嬉しそうに笑って
俺の肩に手を添えて顎にキスを返してくれた。
何度かお互いの顔にキスを繰り返して、唇同士がくっつくと、俺は火がついたみたいに高橋の唇を貪り始めた。
乳首を弄っていた左手の指に勝手に力が入って、乱暴に嬲るたびに唇の隙間から掠れた声が聞こえる。
肩に置かれた指先に力が入る。
さっきより積極的に舌を絡めてきてくれる。
荒い息使いや、唾液が混じり合う音が俺を刺激する。
俺は胸から手を離して、下の方へと移した。
うっかり腹に触るとまたやり直しになるから、腹には触らないようにしながら手を伸ばして、
どうにかショーツにたどり着いた。
その上から下っ腹を撫でてやると、僅かに身体をくねらせただけで、逃げる様子はない。
俺は脚の間に手を進めて行った。
予想はしてたけど、脚がしっかり閉じてる。
唇を少しだけ離して、力を抜くように言うと、少しだけ開いてくれた。
219名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:47:51 ID:kbvoXviQ
下着は濡れてるってほどじゃなかったけど結構湿ってて、入口のあたりを押すとじわっと滲んできた。
「んぅ……」
「脱がすぞ」
腰のあたりに手を戻して囁くと、高橋はぎゅっと目を瞑って頷いた。
「腰、上げられるか?」
腰が上がった。
肩に置かれてる手が震えてる。
それだけのことなのに、なんだか高橋がすごく愛おしくて、
俺はここで、多分初めてこいつを大事にしなきゃ、って本気で思った。
ショーツを下ろして足から抜くと、俺は彼女に覆いかぶさって言った。
「もっとちゃんと俺に掴まってろよ」
「ん……」
細い腕が俺の首に巻きつく。
「触るけど、痛かったら言えよ」
「ん……」
ホントは舐めて欲しかったけど、俺は自分で自分の中指の先を舐めて濡らすと、
キスを再開してその手を下へと伸ばした。
軽いキスを繰り返しながら、ワレメの周りの柔らかい肉を揉んでると、耳に届く息にかすかな声が混じってきた。
陰毛もじっとりと濡れてる。
中指をワレメの間にゆっくりと進めて行く。
粘液が指に絡みついて、いい感じに行きたい所に誘導してくれる。
「あ……」
「ん?まだ入れてないぞ?」
「あ、うん、えっと、ちょっとぞくってした」
照れ笑いがかわいすぎる。
もしかして、これが萌えーってやつか?
あーもー!そんなこといちいち教えてくれなくてもいいっつーの!
いや、俺が聞いたんだけど。
220名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:48:21 ID:kbvoXviQ
「ここか?」
「ふ、うわっ」
反応があった場所で指を動かすと、しがみつく腕の力が強くなった。
「よし。まずは一ヵ所発見」
「もー、ホント、バカなんだから」
そうは言ってるけど、声は笑ってる。
肩からも足からも力が抜けてきたみたいで、俺の肩に入ってた力も抜けてきた。
「これからいーっぱい探してやるからな」
唇をついばんで言うと、結構です、と断られてしまった。
「じゃあ、作ろう」
入口を見つけた。
「作らなくて……っ」
少しだけ指を進めると、また身体が固くなる。
「ん?」
「作らなくて、いいっ」
入口をゆっくりほぐしながら指先を進めていく。
中は外とは比べ物にならないくらい濡れていて、めちゃくちゃ熱くて、俺の指を締め付けてきた。
実況したい衝動に駆られたけど、それはまた次回のお楽しみにしておこう。
俺は指を少しずつ進めていきながら、話を続けた。
「やだ。作る。俺の夢はお前をエロエロに開発することなんだ」
「なにっ、そのゆめ……っ」
「だって俺だけがエロいの不公平……つらいか?」
指を動かすと言葉が詰まるから聞いてみたんだけど、
「平気。なんか変な感じがするけど」
返ってきたのは嬉しそうな照れ笑いだった。
221名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:48:51 ID:kbvoXviQ
「もっとやっても平気か?」
「ん……だいじょうぶ……だけど」
「ん?」
「キスしてほしい……」
「うん……」
ヘタでバカな会話も悪くはないんだろうけど、結局これが一番いいらしい。
俺たちはまたお互いの唇を貪り始めた。
指を進めていくと、指はこれまで以上に締め付けられた。
広げるようにゆっくりと動かすと、そのたびに声が上がったり、身体が小さく跳ねたりと反応が返ってくる。
結構感じてくれてるのかもしれない。
もういいか?って聞こうかと思ったけど、やめた。
指を抜いて、離したくなかったけど唇を離した。
名残惜しげに上がった顎にキスをして、ちょっと待っててな、と身体を起こして、トランクスを脱ぎ捨てた。
分かってはいたけど、今日のムスコは張り切りすぎだ。
暴走しないように言い聞かせつつ、高橋の右足を持ち上げて脚の間に身体を入れた。
「大樹……」
差し出された両手に顔を近づけて行くとほっぺたを掴まれて、結構濃厚なキスをされた。
全然放してくれそうにないし、俺も離れたくなかったから、
身体を探って先っぽを高橋の身体の入り口にくっつけた。
肩がびくりとして、俺の唇にまとわりついてた唇の動きが鈍くなった。
俺は高橋の頭を抱え込むと、とりあえず自分が納得するまで顔中にキスしまくった。
「は…んっ……大樹……」
キスするたんびに高橋が名前を呼んでくれる。
気がついたら、俺も夢中で名前を呼んでた。
「穂波……穂波っ……」
先っぽはもう入って行ってたけど、俺はぎりぎりそこで唇をどうにか離した。
「穂波……」
「ふぇ?」
高橋、もとい穂波は我に返ったみたいに、不思議そうな顔でこっちを見上げてきた。
「無理だったら言えよ」
「……うん」
穂波は笑顔で頷くと、腕を俺の首に絡めてきて、俺を抱き締めてくれた。
222名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:49:15 ID:kbvoXviQ
「んっ……ん、くっ」
穂波の中は熱くてとろとろで、ホントに溶けそうだと思った。
「あっ!う……、んうっ」
出来るだけゆっくり沈めてるつもりだけど、一応指よりは太いモノだ。
俺が窮屈に感じてるんだから、入れられてる方はどれだけつらいんだろう?
耳に届く声が苦しそうで、一気に奥まで行きたい衝動を抑えて、
「平気か?」
と聞くと、
「ダメだったら言う……」
と弱々しい声が返ってきた。
もう既にダメなんじゃないのか、って思うけど、本人が言うと言ってるんだから任せよう。
俺は絡みついてくる膣壁の気持ちよさに暴走しないようにだけしながら、また腰を押しつけた。
一瞬、ちょっと抵抗があったような気がした。
その瞬間、
「つッ!」
と、穂波が小さく呻いて、俺にしがみついてきた。
もしやこれが噂の処女膜!?
けど、今はそれより穂波の方が心配だ。
かと言って、また平気?とか聞くのもなあ。
と思ってると、何か囁かれた。
「なに?」
慌てて聞くと、
「全部入った?」
と、聞き返された。
223名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:49:46 ID:kbvoXviQ
「……もうちょっとかな」
どうしようか一瞬迷ったけど正直に答えると、予想通り、
「じゃあ、全部入れて」
と返ってきた。
「お前な、無理すんなよ」
「無理じゃないもん」
「いや、明らかに無理」
その証拠に、俺がきっぱり言うと、むう、と不満げな声を漏らしただけで反論が無かった。
「穂波。何回かすればすぐ慣れるからさ」
「そうかもしれないけど、それじゃ大樹が気持ち良くなれないもん……」
「や、俺、この時点でかなり気持ちいいんだけど……」
「無理すんなよ」
「してねえよ」
口調を真似されて俺は思わず吹いてしまった。
「いや、明らかに」
「やめろ。こんな時に笑わすな」
「だってー」
「だってじゃない。最後まで入れて、それから動いたらきっとめちゃくちゃ痛いぞ」
「平気だもん……」
口を尖らせる穂波を俺はぎゅっと抱きしめた。
「穂波。俺が平気じゃない。我慢してもらっても嬉しくない。
 いいじゃん。この後何千回もやるんだから、最初の何回かくらいさ」
「何千回も?」
穂波が笑った。
「そう、何千回も」
「飽きない?」
「飽きない」
「ホントに?」
「だって、結婚てそういう約束じゃん」
224名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 17:50:57 ID:kbvoXviQ
穂波はちょっと呆れたような感じでくすくす笑ったけど、すぐに俺をぎゅっと抱いて、
「分かった。今日は名前呼んでもらっただけで良しとするよ」
と言ってくれた。
名前のことを言われてちょっと照れたけど、穂波がほっぺたを擦り付けてきたから俺もお返しに頬ずりした。
「ありがと、大樹。でも、もうちょっとこうしてたい」
「うん、俺も」

俺たちは繋がったまんま唇を塞ぎ合った。
音を立てて唇を吸い合って、お互いに唇だの歯茎だの舌だのを舐め合って、
なんとなく身体を揺らしてるうちに、限界が来てた俺はわりとあっけなくいってしまった。

それでもキスすることをやめないでじゃれ合ってると、ぐうと音がした。
「……腹減ったな」
「……うん」
俺たちはもぞもぞと起き上がって、散らかってた服を着るとキッチンに戻った。
テーブルに置かれたままの皿の上のキャベツが心なしかしおれてる。
「コロッケ、冷めちゃったね」
穂波はご飯をよそうと、大きい方の茶碗を俺に渡してくれた。
「大丈夫。おまえのコロッケは冷めてもうまい」
「ありがとう」
穂波が席に着くと、二人で手を合わせていただきますの挨拶をした。
俺は昔からこの瞬間が結構好きだ。
あれこれ悩んでたわりに、いざやってみてもどうということはなくて、
いつもと変わらない『いただきます』だった。
箸を手にしてから、ふと思いついたことを言ってみた。
「なあ、片付けが終わったらさ」
「うん、一緒にお風呂入ろうか」
穂波が赤い顔でコロッケを一口、口に入れた。

(了)
225名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 20:18:42 ID:uI7H2gyO
超GJ!
俺の読みたかった新婚さんSSを具現化してくれてありがとう
続きというか風呂編あったら投下頼むぜ
226名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 21:33:54 ID:nWLaLzTC
やっべ、かわいすぎる…
もうなんていうか狂おしいほどGJ!

風呂編も読みたいです
227名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 22:07:18 ID:UFr9pRt6
うわー!GJ過ぎるっ!!
ニヤケながらじたばたしたよ!

風呂編、是非!
228名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 22:32:50 ID:xvbsClod
こいつあはとんだ甘々新婚さんだぜ…
俺を糖尿にするつもりかい
229名無しさん@ピンキー:2008/03/13(木) 23:52:52 ID:9kZisk/f
俺の虫歯を再発させるSSはここですか?



読者諸兄へ
つ[インシュリン]
230名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 00:20:45 ID:KySy/h5Y
超絶GJ!
嫁がかわいすぎるぅぅぅぅぅぅぅ
231名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 01:38:01 ID:RVC79gyO
甘甘で良いと思うんだけどな

料理をするせいかな?
冷めてもOKのあたりに変にイラッときてしまった。
暖かくて美味いうちに食べてほしいじゃんw
232名無しさん@ピンキー:2008/03/14(金) 02:48:38 ID:8YHkIXRe
どうでもいいところにこまかいお前にイラリ。
233名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 04:41:03 ID:UTsUE+KX
冷めても美味しい=幸せ新婚さんでいいと思うけどな。
そういう生活感が出るのが恋人同士とはまた違った味で良いんでないの?
なんかどっちも可愛くて好きだーGJでした!
お風呂編自分も読みたい。
234名無しさん@ピンキー:2008/03/17(月) 01:06:10 ID:+PPPBYjg
保守
235名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 07:32:12 ID:k0dnBvE2
age
236名無しさん@ピンキー:2008/03/18(火) 11:01:49 ID:Zmh/1/DA
237名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 19:16:45 ID:mJCUWzMl
鉄仮面と子猫を書いてるものです。
今続編書いてるんですが、夫婦二人の馴れ初め編で、
しかもかなり長くなりそうなんで、
このスレの主旨からは外れてるんじゃ?純愛スレにでも投下するか?と迷ってます。
続き物ですし、スレ住人の皆様が許してくれるなら此処に投下したいんですが。
ご意見ヨロっす
238名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 21:19:47 ID:iV/LIS1X
読まないことには判断できないのだが
239名無しさん@ピンキー:2008/03/19(水) 21:24:16 ID:Z93Lltuz
>>237
続き物だからこのスレが一番良いと思うなぁ
馴れ初めっていうのも今現在結婚してるからこそ萌えるしさ!!
別のスレに投下するとややこしくなっちゃうんじゃない?
240237:2008/03/20(木) 22:55:55 ID:YtEWfl5Y
>>238
そりゃそうですな。
完成したらとりあえず投下させてもらうんで、
スレチだったら追い出してやって下さい。
>>239
ありがとう。完成したら投下してみます。
241名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 00:33:20 ID:wKP0R0XQ
保守
242名無しさん@ピンキー:2008/03/25(火) 01:01:23 ID:RcK1Leks
保守
243名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 05:00:06 ID:928d5rz8
大樹と穂波を書いた者です。
読んで下さった方、レスを下さった方、ありがとうございました。
お風呂編を書きましたが、長くなったので、とりあえず前半だけ投下します。
21レスお借りします。
244大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:01:39 ID:928d5rz8
ついに……。
ついに、大樹とエッチをしてしまった。
結婚したんだからいつかはそうなるよね、ってそれなりの覚悟はしてたけど、
こんなに早くそんなことになるとは思ってなかった。
大樹とは大学で知り合った。
今までの男友達の中じゃ一番仲が良かったし、大学ではどの女友達よりも一緒にいて気楽な相手だった。
だから、大樹に、俺と結婚しない?って聞かれた時も、大樹となら生活を送れそうだから、
二つ返事でOKしそうになったんだけど、うん、と言う直前に一つの不安が私の中によぎった。
夫婦という事はエッチもするよね、と。
大樹とはお互いの部屋に入り浸るくらい仲が良かったけど、一度もそういうことになったことがなかったし、
そういう相手として考えたこともなかった。
今考えてみると、なんでそんなことを気にしたんだろうって思うけど、
その時は結婚のお誘いを受けたことより、こいつとエッチをする可能性があるかもという方に動揺してた。
私はついさっきまで未経験な人だったから、余計に動揺したんだと思うけど。
そんな私とは対照的に、合コンキングだった大樹は経験豊富だ。
絶対にどん引きされる。
じゃなかったら、笑われる。
そんな動揺したくせに、私は結婚するなら大樹がいいなあとも思ってしまい、
結果、私のした返事は、STD検査が全部マイナスだったらね、というものだった。
多分、合コンに行くと聞くたびに、ふざけ半分でビョーキには気を付けてねー、とか言っていたのが
頭のどこかにあったんだとは思うけど、我ながら変な返事をしたよね、と今でも思う。
でも、大樹はちゃんと検査を受けに行き、結婚のお誘いから一ヶ月後、検査結果の紙と一緒に婚姻届を持ってきた。
大樹と私の間に色気を求める気はないけど、親への挨拶を先に済ませるくらいのことは考えて欲しかった、
と今でも思う。
245大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:02:20 ID:928d5rz8
「まったくバカなんだから」
ふ、と笑ってから、私は独り言を言ったことに気がついた。
口元が緩んでる。
お風呂の準備をするために開けた引出しをそのままにして、ちょっと過去のことを思い出していたらしい。
キッチンの方からは大樹がお皿を洗う音がするから、聞かれてはいないよね。
ちょっと安心。
私は慌てて、二人分のフェイスタオルとバスタオルを取り出して、引出しを閉めた。
そう、これからお風呂だ。
二人で一緒に。
裸を見られるのは正直まだ恥ずかしい。
だけど、大樹に先に入ってもらって、むこうを向いててもらって、それから入れば大丈夫だよね。
それなら、背中は洗ってあげられるし。
…………。
お風呂でゼンギがどうとか言ってたけど、エッチはさっきしたんだから、
とりあえず今日はそんなことにはもうならないよね。
「よしよし。……あ」
また独り言。
大学に入ってからつい最近までずっと一人暮らしをしてたから、独り言を言う癖は残ってるけど、
今日のは今までのとは何かが違うなあ、と思いながら立ちあがって回れ右をして、
「ああ、そうだ」
と私はため息をついた。
原因は部屋の真ん中に敷かれた二組のお布団の右側。
いつも大樹が寝ているお布団のシーツが汚れてる。
じたばたした割にはシーツは乱れてないけど、真ん中の辺りにはちょっとだけど、
私が初めてだった証拠とそれ以外の、でも”やりました”なものがばっちり露骨に残ってる。
持っていたタオルを私のお布団の上に置いて、大樹のお布団からシーツを剥がした。
洗濯機に入れる前にそこだけ手洗いした方がいいかもしれない、なんて思いながらシーツを丸める。
新しいシーツを出そうと、私は引出しを開けた。
246大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:02:56 ID:928d5rz8
ホントにしちゃったんだなあ……。
改めてそう思う。
奥の方にジンジンとした痛みが残ってるけど、人に聞いていたほど凶悪な痛みはない。
でも、入ってきた時は痛すぎて何が起こったか一瞬分からなかった。
大樹がすごく優しくしてくれたおかげで、痛くても幸せな気持ちになれたから、彼には感謝しなくては。
大樹は私が初めてだって言っても、嫌がったりなんて全然しないで、嬉しいなんて言ってくれた。
昔付き合ってた人に、
「え、処女だったの?……苦手なんだよね、そういう面倒なの」
と言われた身としては信じられなかったけど、大樹の顔を見てたら嘘じゃないんだなあって思えたんだよね。
それでその場で初めてのちゃんとしたキスをして、そしたらその勢いで
揚げたてのコロッケはほったらかし、お風呂にも入らないまま、この部屋に来て……。
そんなことを考えてたら、キスの感触を思い出して来て、舌がうずうずしてきた。
大樹のキスは濃厚だった。
舌を使うキスをしたことがないわけじゃないけど、なんかこう……意識を掬われちゃうような
あんなキスは初めてだった。
あー、もっとしたいなあ。
ちょっとエッチな気分になるけど、すごく気持ち良かったもんなあ。
「穂波」
「へえっ!?」
後ろから急に呼ばれてすごく変な声が上がってしまった。
しかもそれで気づいたけど、指が唇触ってるし……。
エッチな気分になるキスをしたいなんて思ってたのを大樹に悟られたくなくて、
私は慌てて引出しに手を突っ込んでから振り返った。
247大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:03:29 ID:928d5rz8
「な、なに?」
「いや、食器片付いたから」
「あっ、そっか。ありがとう!」
「……どした?」
「どうもしないよ」
大樹が寄ってきた。
そんな訳ないのに、顔を見られたら考えていたことがばれるような気がして、私は慌てて、
「いや、あのねっ、そのシーツを取り換えよう、って思ってたの」
と言った。
言ってみて思い出したけど、そもそも引出しを開けたのはシーツを出すためだった。
なんでそんなことを忘れるんだー!
しかも、言い方がすごく言い訳くさい。
って、私は頭の中で自分を罵ってみたけど、大樹は割とあっさり納得してくれた。
「ああ、そっか。
 んじゃ、手伝うよ」
「ありがとう……」
大樹は私が出したシーツの片端をつまんで、お布団の枕元の方に移動してくれた。
二人で両端を持ってシーツを広げると、洗剤のいい匂いがした。
「今度っからはバスタオル敷いた方がいいかもな。
 やるたんびにシーツ取り換えてたらキリがないもんな」
確かにそうかもしれないけど、なんだか生々しい話に私はうまく応じられなくて、うん、としか言えなかった。

シーツのしわを延ばして、角をお布団の下に折り込む。
大樹も同じようにやってくれる。
今まであんまり意識したことなかったけど、大樹の手はすごく大きい。
指も太い。
うわあ、あの指が入ってきてたんだ……。
エッチってやっぱやらしい……。
248大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:04:04 ID:928d5rz8
「ほーなーみー」
呼ばれて顔を上げると、目の前に大樹の顔があった。
「わっ!」
またびっくりして変な声を上げると、大樹の口が急ににや〜っと歪んだ。
「な、なによぅ……」
「おまえ、今、エロいこと考えてただろ」
「別にぃ?エロいことなんて考えてないよ」
さっきのことは思い出してたけど。
都合の悪いところは心の中で呟いて、出来るだけ平静を装ってみたけど、顔が熱いってことはきっと赤面してるんだろうな。
「そうかー?顔が赤いから、てっきりエロいことを考えてるんだとばかり」
ああ、やっぱり顔に出てた。
「もう。なんでそういうことわざわざ言うかな。
 ……ちょっとさっきのこと思い出しちゃっただけじゃん。
 大樹はこういうこと慣れてるから、どうってことないんだろうね」
大人げないこと言ってるな、とは思ったけど、私だって思い出そうと思って思い出してる訳じゃないから、
それをからかわれるのはとても不本意だ。
大樹がどういう言い訳を返してくるんだろうと思って、顔を上げた瞬間、キスをされた。
誤魔化されたのかな、って思ったけど、何回か唇を吸われてるうちに、我慢できなくなってきて、
お返しに私も大樹の唇をついばんだ。
太い指が私の手に触れてきた。
指の間をくすぐってくる。
別に指に触られるのなんてどうってことないはずなのに、身体がすごくぞくぞくしてくる。
中指がぴくぴくって震えてるのが自分でも分かる。
触られてるのは指だけなのに、首筋までぞくぞくしてきて、
あ……、ダメ、あ、あそこがまた……っ。
それに合わせるみたいにして、中でどろっと何かが伝って落ちてくる感触がした。
多分、大樹の……せいえき。
249大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:04:52 ID:928d5rz8
「……ふあっ」
大樹が与えてくるどこか気持ちいいぞくぞくと、中から落ちてきたものの感触に耐えきれなくなって思わず口を離すと、
大樹は一回大きな深呼吸をして、
「あーもー。なんでそういうかわいいこと言うかな」
と言った。
しかも照れながら。
そんな顔でそんなこと言われたら、どう反応していいか分からないじゃない。
大樹が私にそんなこと言ったことなんて無かったし、嬉しいと言えば嬉しいけど……、
あれ?でも、私、何かかわいいこと言ったっけ?
「……かわいいの?」
「そりゃ、嫁が妬いてくれたら嬉しいし、妬く嫁はかわいいだろ」
嫁だって、嫁だって!
「ふっ……」
妬いたつもりは全くなかったんだけど、嫁と言われて、私はやきもちを否定するより先ににやけてしまった。
そしたら大樹はちょっとムッとした顔になった。
照れた感じは残ってたけど。
「なに、余裕ぶっこいてんだよ」
余裕なんてある訳ないじゃない。
キスされただけで夢中になって、指触られただけで身体の感覚がおかしくなって、
嫁って言われただけでにやけちゃうんだよ?
と言いたいところだけど、でも、せっかく勘違いしてくれたんだから、利用しなくちゃ。
「なんでもないよ。
 もうお湯たまってると思うんだ。
 先にお風呂に入ってて、着替え用意したら行くから」
私は精一杯の余裕の笑みを作って、隣の布団からタオルを取り上げて大樹にそれを渡した。
250大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:05:31 ID:928d5rz8
「えー、一緒に入ろうぜー。
 脱がせちゃるから」
大樹は立ち上がると、またにやにやした顔になってそう言ってきた。
脱がせるだなんて、とんでもない!
ごめんね、大樹。
まだ見せる覚悟も見る覚悟もできてないのよ、実のところ……。
かと言って、脱衣所の電気を消したら真っ暗で大変。
「もー。二人で脱ぐには狭いでしょ?」
我ながらうまく誤魔化せたと思っていると、大樹はわざとらしく口を尖らせて、
「そんなことないだろー。
 ……まあ仕方ない。今日は先に入ってやるよ」
と、部屋から出て行ってくれた。
本当は私が明るい所で裸になるのをまだ嫌だと思ってることを分かってるのかもしれない。
「ふーん。優しいんだ」
また独り言。
恥ずかしいとか照れくさいとかとは違う感情で胸がドキドキしてきた。
何とも言えない甘酸っぱい動悸に、ほっぺたが緩んだのが自分でも分かる。
順序はかなり違うし、今更って感じがするけど、なんというか……大樹に惚れてしまいそうだ。
でも、私がそういう感情を抱いたところで、私たちの関係はきっと変わらない。
実のところ、エッチする前はしたら私たちの関係が今までとは変わっちゃうんじゃないか、って少し怖かった。
それ自体もなんだか得体のしれない行為で不安だったけど、怖いとは思っていなかった。
でも、実際にしてみたら結局は何も変わらずに、昨日までと同じようにテレビを横目で見ながら、
適当に話をしてご飯を食べられた。
だからまあ、私が大樹に恋心を抱くようになったとしても、きっと今まで通りだろう。
久しぶりに誰かを好きになったのに代わり映えがしないなんて少し残念なような気もするけど、今まで通りが一番いい。
大樹が旦那さんになってくれて良かった。
今日はしっかり背中を洗ってあげよう。
そんなことを考えながらそれぞれのお布団の上に掛け布団をかけてから、
下着とパジャマを二人分持って、私はお風呂場へと足を運んだ。
251大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:06:12 ID:928d5rz8
脱衣所に入ると、シャワーの音がザーザーと聞こえてきた。
ガラスに映る影からして、頭を洗っているらしい。
雰囲気というかその場のノリで、一緒にお風呂に入ろう、って言ったのは私だけど、やっぱり緊張してきた。
男の人とお風呂に入るのなんて、小学生の時にお父さんかお爺ちゃんと入って以来だし、
感性も状況も相手もその頃とは全然違う。
大丈夫、ちょっと背中を洗ってあげたら、先にお風呂からあがってもらえばいい訳だし、
何かしたいって言われても、それはまた今度にしてもらえばいい訳だし、
だいたいお風呂じゃ狭くてさっきみたいなことは出来ない出来ない出来ない。
自分を落ち着かせるために頭の中でそう言い聞かせてみたけど、
むしろそうなることを期待してるようにも思えてしまう。
大樹のエロエロ病が伝染し始めてるのかもしれない。
なんて、まじめに思ったらちょっと笑えてしまった。

着替えを入れるための篭に入っていたバスタオルを持ち上げて、その下に今持ってきたパジャマと下着を置いた。
二人分の着替えを並べられるほど大きな篭じゃないから、私のを下にして大樹のを上に乗せる。
その上に改めてバスタオルを置くと、一度大きく深呼吸して、Tシャツをまくりあげた。
脱いだそれを丸めて洗濯物用の篭に入れようとすると、大樹の脱いだものが目に入ってきた。
簡単だけどちゃんと畳んである。
そうだ。
大樹は几帳面とまでは行かないけど、意外ときちんとしてる。
むしろ私の方が大雑把で、二、三日前も靴下が篭の外に落ちていたのを放っておいたら、
だらしがない、って怒られたんだった。
お風呂でさっぱりした後に嫁がだらしなく脱いだものなんて見たくないだろうな。
私はTシャツを広げ直すと、肩をそろえて簡単に畳み直して大樹のトレーナーの上にそれを置いた。
結婚生活って、こういうものなのかもしれない、なんて思いながら。
252大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:06:51 ID:928d5rz8
全部脱いで髪の毛を簡単にお団子状にまとめてしまってから、私はフェイスタオルがないことに気がついた。
少しの間考えてみたけど、さっきちゃんと二枚渡してる。
大樹が持って入ったんだ。
親切心なのか、意図的なのか悩むところだけど、問題はそこじゃない。
隠すものがないじゃない!大樹のバカ!
別のを取りに行こうかとも思ったけど、裸で寝室という名の四畳半に戻るのも、
そのために服を着直すのも間抜けな感じがして、私は覚悟を決めた。
きっと人が聞いたら笑うのかもしれないけど、こういうことに免疫がない私にとっては結構深刻なことだったりする。
ちょうどシャワーの音も止まったから、私はお風呂場の扉をちょっとだけ開けて中を覗き込んだ。
お風呂用の椅子に座ってこっちに背中を向けたまま、頭を拭いてる。
「大樹ー。入るねー」
気のせいじゃなくて、明らかに声が小さくなってる。
「おう、入れ入れ」
「絶対こっち向かないでね!」
「えー」
大樹の頭がこっちに回った瞬間、反射的にバタン!と扉を閉めてしまった。
顔だけしか覗いてなかったんだから、そこまでしなくても良かったのに。
軽く自己嫌悪に陥る私。
「……分かった。前向いてるから」
大樹の声は苦笑交じりだ。
そりゃそうだよね。
することは一応してるんだし。
また少しだけ扉を開けて中を覗くと、大樹は頭を前に向けていてくれた。
なんだか申し訳なくなってくる。
「ご、ごめんね。えっと、出来るだけ早く慣れるようにするから……」
「いいから、早く入れよ。ちょっと寒い」
確かに身体が濡れてる所にお風呂の外からの風が入ったら寒いよね。
私は扉を開けると、お風呂場に入ってすぐに扉を閉めた。
253大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:07:33 ID:928d5rz8
「大樹。あのね、背中洗ってあげるから、これに石鹸つけて」
と、お風呂場のタオル掛けにかけてある身体洗い専用の麻のタオルを大樹の肩越しに渡すと、
「えっ!マジで!?
 マジで洗ってくれんの?」
と、大樹は予想していた以上に喜んでくれた。
なんだかこっちまで嬉しくなる。
大樹がタオルをお湯に浸して、ボディーソープを付けてる間に、私はその場に膝をついた。
足がこすれて、まだ新しいお風呂マットがきゅっと音をたてる。
我が家のお風呂は2DKについてるお風呂にしては広いと思う。
私も大樹も足を伸ばせる湯船がいいと、部屋を探す時に部屋よりお風呂を重視したからだ。
でも、
「やっぱり二人で入るとちょっと狭いね」
「だな。ま、これ以上広い風呂ってなると、マンションじゃ無理だろ。
 ま、二人でもちゃんと入れてるんだから、いいんじゃね?」
「そうだね」
タオルを受け取って、それを揉んで泡をたてる。
目の前にある大樹の背中はいつも見ているよりずっと大きく感じられた。
「じゃあ、洗うね」
「お願いします」
肩にタオルを置いて背中を擦り始める。
変に優しく洗うより、ちゃんと力を入れて洗った方が気持ちがいいから、出来るだけ力を入れて。
「どこか痒い所とかあったら言ってね。
 自分だと届かない所とかあるでしょ?」
そう。
自分だとちゃんと届かなくて、どう洗ってもすっきりしない場所というのはどうしてもあるから、
私はこの年になっても、実家に帰るとお母さんやお姉ちゃんとお風呂に入って背中の洗いっこをしたりする。
だからという訳でもないけど、結婚したら旦那様の背中を洗うのは小さな夢の一つだった。
まさか大樹の背中を洗うことになるとは思ってなかったけど。
254大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:08:16 ID:928d5rz8
「気持ちいい?」
「うん、気持ちいい。お前、洗うの上手いな」
「時々お母さんとかとお風呂入ってるからね」
褒められるとやっぱり嬉しい。
「へえ。だからか」
「大樹はお義父さんと入ったりしないの?」
「ないない」
「温泉とかに行った時に洗ってあげればいいのに」
「今さらなあ」
「きっと喜ぶよ」
「ん〜……考えとく」
肩甲骨の下のあたりとか、届きにくそうなところは特によく洗う。
でも、洗ってるうちに泡が立たなくなってきた。
「大樹。タオル洗って、もう一回石鹸つけて」
「おう」
待ってる間、大樹の背中を見てたらなんだかぎゅっと抱きつきたくなってきた。
してもいいんだけど、地肌を自分からくっつけるのはまだ抵抗があるなあ、とか思ってたら、
「あのさ、腕の付け根のとこやってくれる?」
とタオルを渡された。
確かにここも届くには届くけどしっかり洗うのは面倒な場所だ。
「うん」
大樹の肘に手を添えて、左の腕から洗ってあげる。
腕も太くてがっしりしてる。
フットサルをやってるおかげか、今のところまだ目立った贅肉は見当たらない。
「はい、今度は右ね」
持ち手を変えて、右を洗う。
他愛ない話をしながら、右腕も肘まで洗い終わった。
255大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:08:48 ID:928d5rz8
やっぱり、お母さんやお姉ちゃんを洗うのとは労力が違う。
一仕事終えた感があるのは、緊張のせいだけじゃない筈だ。
達成感を感じて後はシャワーで流せば完了、と思っていたら、大樹が、
「前は?」
と聞いてきた。
「前?」
「そう。胸とか腹とかまだじゃん」
え。
「そっ、そんなのは自分でやってよ」
「だって痒い所とかあったら、って言ってくれたじゃん」
「前は自分で届くでしょ?
 それに、私がやるより絶対自分でやった方がきれいになるよ」
「じゃあ、俺がそっち向くから」
「いいっ!こっち向くな!」
「えー」
「えーじゃなくて。はい!シャワー取って。
 背中流してあげるから」
「…………」
「大樹。シャワー」
「前洗ってくれたら取る」
自分で取ればいいんだけど、取るなら大樹の肩越しに手を伸ばさないといけなくて、
そうすると絶対この邪魔な胸が大樹の視界に入る。
しかも、前かがみになるから……ちょっと垂れた感じで。
うぅ、それは嫌だ。
でも、前洗うって、どうすればいいんだろう。
このまま後ろから前に手を回したら、絶対に身体が密着するよね……。
くっつくのが当たり前みたいな流れが出来てれば平気なんだけど、今はそんな感じじゃない。
256大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:09:24 ID:928d5rz8
「穂波……。洗って」
ずるいっ!
私が名前で呼ばれると喜ぶの分かってて、わざと……。
しかも、そんな甘えた声で言うなんて、
「大樹、ずるい」
「ずるくない。
 むしろここまでやって、放置する穂波は酷い」
「放置って」
「俺、Mじゃないのに放置するのか?
 それともMじゃない俺を放置するほどお前は実はSなのか?」
両手で顔を覆って泣くそぶりなんて、完全にふざけてる。
悪ふざけ半分でやってるのは分かるけど、こういうことに耐性がないせいで、
こういう時、どう返していいか分からないのが私の弱いところだ。
「もう……。分かったよ」
「えっ!マジ?」
「マジ?って、大樹が言ったんでしょ」
「おう!」
なんでこんなに嬉しそうなんだろう……。
左手を大樹の右肩に置いて、右の脇から洗っていく。
及び腰になっているせいか、力が入っていなかったみたいで、くすぐったいからもう少し力を入れてくれ、と言われた。
言われた通りに力を入れて洗っていたら、今度は、
「あのさ、いつまでそこ洗ってんだ?」
と聞かれた。
「あ、うん、そうだね」
確かにそうなんだけど、もうちょっと腕を伸ばせばいいんだけど、でも。
でもでもでも、これ以上前に行こうとすると胸が大樹の背中にくっつくんだよ!
ああもう!こんな贅肉、ホントに要らない。
257大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:09:55 ID:928d5rz8
私が渋って微妙な角度で脇より少し前の方をどうにか洗っていると、大樹に腕を引っ張られた。
当然、胸がぴったり大樹の背中にくっつく。
「うひゃっ!」
「ほぉなぁみぃ。マジで、焦らさないで……ください」
「は、はい」
こうなったらもう諦めるしかない。
私は左手を大樹の左肩に置き直すと、泡だらけの大樹の背中にぴったり抱きついて右手を動かし始めた。
最初は身体が固くなってたけど、くっついてみると大樹の体温を直に感じているせいか、
だんだん落ち着いてきた。
むしろ、離れたくなくなってきた。
ただ、腕を動かすとどうしても身体が動いて、胸が擦れてしまう。
そうすると、つまり、先っぽが擦れてちょっとなんというか、変な気分に……。
「穂波、今、やらしー気分になってるだろ」
「えっ!?」
なんで?なんでばれたの?
「乳首立ってる」
「バカっ!しょ、しょうがないじゃない!」
わざとそういうことを言ってくる、っていうのは分かってるけど、でも言わないでほしい。
自分でも情けなくなるくらい、こういうことに対する抗体が私の身体の中にはないんだから。
逃げたくなって来て身体を離そうとしたら、大樹に手首をつかまれた。
「うん、しょうがない。
 まあ、俺もだから」
大樹はそう言うと、私の手からタオルを取って、代わりになんだか得体のしれない硬くて熱い物体を
手のひらに押し付けてきた。
258大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:10:28 ID:928d5rz8
「分かる?」
ええと、これはあれですか?
「えっと、あの……」
「うん」
大樹の手が私の手を上から包んで、その棒状の物体を上下にさすらせる。
やっぱり、あれですよね。
「ふう……」
気持ちよさそうな大樹の溜息。
「……気持ちいいの?」
「うん。……洗ってほしいんだけど。これも」
「……私、これの洗い方、知らないんだけど」
パニックを通り越して、開き直ってきた。
こういうことは、慣れじゃなくて開き直りで克服していくものなのかもしれない。
でも、だからといって恥ずかしい気持ちに変わりはないんだけどね。
「教えるから、一緒に洗ってー……」
私のパニックとか開き直りとかをよそに、大樹は気持ちよさそうな声を出してる。
でも、さっきした時は私を気遣ってくれて、ちゃんと気持ち良くなってない筈だから、
大樹が気持ちいいなら頑張ろう、って思った。
「ん……あの、じゃあ、教えて、下さい」
「マジかー!すげえ嬉しい!」
なんで、自分でやれと言ったくせに、私がやると言うと異常に喜ぶんだ、この子は。
ホントにバカなのかも、と思ったけど、そんな大樹をちょっとかわいいかも、とも思ってしまった。
「……えーと、じゃあ、ちょっと待ってな」
大樹は私の手を置き去りにして、私から手を離してしまった。
どうしていいか分からないから、例の物体に触ったまま。
どうやら、大樹はボディーソープを取っているらしい。
その後、ぱちゃぱちゃと洗面器で水音がして、大樹の手が戻ってきた。
259大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:11:12 ID:928d5rz8
大樹は一度私の手をそれから離させると、手のひらに泡を乗せてきた。
「ちんこは基本こすり洗いで。あ、でも直に優しーくな」
「……うん」
ホントになんてコメントを返したらいいのか分からない。
「あ、左手も貸して」
「う、うん」
左手も持って行かれて、私は胸どころかほっぺたやお腹まで大樹の背中に押し付けるしかなくなってしまった。
少し苦しい姿勢の私をよそに、大樹のコメント。
「穂波のおっぱい、気持ちいい〜」
「もう!いちいち言わなくていいから!」
「や、なんていうか、勝手に言葉が出てくるんだよな。
 まあ、悪いこと言ってる訳じゃないんだから、言わせて」
そりゃ、気持ちいいと言ってもらえるのは嬉しいけど、恥ずかしいという私の気持ちも少しは分かってほしいな……。
と思ってはみたけど言わないでいたら、大樹は容赦なく具体的な説明を開始してくれた。
「えっとな、左は袋洗って。
 あ、でさ、知ってると思うけど、玉って強い攻撃受けると簡単に死ぬから、
 やわやわやわ〜ってやってくれると嬉しい」
「はい」
もう言われた通りにやるしかない。
左手に触るのはふにゅふにゅしてて、でも中に何かある感じで、確かに袋っぽいかもしれない。
「サオは基本、こう……うん、こっちはもうちょっと強めでもいいや。
 おおうっ!」
右手は大樹の手と一緒に上下するんだけど、こっちは左とは対照的にめちゃくちゃ硬くなってる。
しかもすごく熱い。
始めは言われた通りに触ることに集中してたけど、大樹が時々変な声を出すせいで、
またなんとなく変な気分になってきた。
260大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:11:54 ID:928d5rz8
「穂波、穂波、えっと、もうちょっと上の方、いい?」
「上?」
触るのに慣れてきたあたりで、大樹が次の要求をしてきた。
「うん。カリとか、っていうか頭の辺触って」
頭って言うのは先っぽ辺りのことなんだろうけど……。
思い出せるのは保健体育の教科書に載ってた微妙な断面図と、ダビデ像とレオナルド・ダ・ヴィンチの絵くらいだから、
どこがどういう名称なのかさっぱり分からない。
身体がやらしい感じになってきてるのに、頭は必死にそういうことを考えようとしているせいか、
身体と思考のバランスの悪さに、私は思わずちょっと苛立った声を上げてしまった。
「ね、大樹、分かんない。
 ちゃんと……教えてよ」
「あ、わりぃ……えっとな、この境目の……ッ!」
大樹に動かされるままにたどり着いた場所で指を動かすと、大樹が息を呑んだ。
それだけなのに、すごく嬉しい。
「ここ?……ねえ、大樹、気持ちいいの?」
「すっげ、いい。な、もっと先の方とかもさ、指で弄ってみて」
「ん……うん」
言われた通りさっきの場所より上の方を指で探ると、そこは下の方とは全然違う感触がした。
なんと言ったらいいか分からないけど、ここも皮膚なのかな、っていう感じの不思議な感じがして、色々触ってみる。
触ってみると大樹がくぐもった声を出すから、その声を聞きたくて、また弄る。
弄っているうちにくぼみみたいなところを見つけたから、そこに指を押し付けてみると、
大樹の身体がびくんとした。
指にはねちゃっとした感触。
「……大樹も濡れるの?」
「うん。あれだ、がまん汁」
「がまん汁?」
「そう。出したくなってきたーって証拠。
 いま、俺のちんこの中、精液でいっぱい、ってこと」
261大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:12:23 ID:928d5rz8
大樹の声はつらそうで、私をからかうとか照れさせるとか言うつもりで具体名を言ってる訳じゃないらしい。
「大樹、今、もしかしてつらい?」
「……ちょっと」
「ね、あの、出した方がいいんだよね」
「……まあな」
「あの、そしたら、じゃあ、……する?」
私は思い切って聞いてみた。
声はやっぱり小さくなってたけど。
「マジ?でも、ああ、ダメだ。今やったら、めちゃくちゃなことやりそう」
「いいよ」
「ダメ」
「いいって」
「……あのさ、このまま、手でいかせてくんない?」
「手で平気なの?」
「手コキっつってな」
ああ……、また専門用語。
まあ、この際だから大樹がいいようにしてあげよう。
「良くわかんないけど、いいよ。大樹がいいようにして」
「ん、じゃ、ちょっとだけ強めに握ってみて」
大樹の手が、また私の手を上から包む。
手の中のそれはさっきよりずっと硬くなってる気がして、破裂するんじゃないかと思えるくらいだ。
「うん、そんくらい……っ。
 でな、こうやって……擦って」
262大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:15:12 ID:928d5rz8
大樹に言われるまま、大樹と一緒に手を動かす。
手のひらにどくんどくんと鼓動が伝わってくる。
動かすたんびに大樹の息使いは荒くなっていって、喉から押し殺した声がこぼれてくる。
肩の向こうに見える大樹の顔が赤い。
こんな大樹知らない。
私は行為の内容なんて忘れて、ただそんな大樹の顔を見たくて、声を聞きたくて手を動かしてた。

「あ、も……やべッ!ふっ…うくッ、くううぅっっ!」
手の中にあったものがびくびくんと跳ねて、何度か大きく脈打って、ふんにゃりと固さを失くしていった。
手の甲にどろりとしたものが流れてきた。
大樹は肩を大きく上下させて、肘を膝に乗せて身体からも力が抜けたみたいにぐんにゃりしてた。
「……大樹?だいじょぶ?」
「あと十秒待って……」
掠れた返事が返ってきた。
たった十秒だけど、その間ぼぅっとしているのも間が持たない。
私は立ち上がるとシャワーを手に取った。
蛇口をひねってお湯を出す。
始めに出てくる少し冷たいお湯を自分に掛けてみて、初めて自分の身体が火照っていたことに気がついた。
手にちょっと付いてた大樹の精液や胸やお腹についていた石鹸を洗い流すうちに
お湯が温かくなってきたから、大樹の背中をそれで流すと、大樹は手をひらひらと振ってくれた。
食べてる時とか、口が使えない時のありがとうの合図。
広いと思っていた背中だけど、今は少し力が抜けてる。
「だーいーきっ。さっぱりした?」
大樹は身体を起こすと、大きく深呼吸して私からシャワーを受け取った。
身体の前面を自分で流す大樹に尋ねる。
私の声はきっとちょっと浮かれているだろう。
263大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:15:55 ID:928d5rz8
「……なんで、そんなに嬉しそうなんだよ」
まだどことなくだるそうな声が返ってくる。
「大樹のこと、少しは気持ち良くできたかな、って」
「少しじゃなくて、相当気持ち良かったから安心しろ」
嬉しすぎて、どう答えていいか分からない。
にやけた顔をどうにかしようと、ほっぺたを擦っていたら大樹が右手を肩越しにこっちに出してきた。
「お前の貸せよ。今度は俺が洗ってやるから」
突然の申し出に緩んでいた顔の筋肉が一気に緊張してこわばった。
「いいっ!大丈夫、私自分で洗うから!」
「いいって。ほら、洗いにくい所とか、洗ってやるから」
元気になってきたのか声に張りが出てきた。
明らかに私の反応を面白がってる。
「ホントに大丈夫だからっ」
「遠慮すんなって」
「してませんっ」
大樹がこっちに顔を向けてきたので、思わずほっぺたを押し返してしまった。
「だいたい、まだ髪も洗ってないし、もう大樹は上がってビールでも飲んでなよ」
「じゃあ、浸かってるから頭洗っちゃって」
大樹はそう言うとさっさと立ち上がってお風呂に浸かってしまった。
大樹が肩までざぶんと入るとお湯が少し溢れてきた。
大樹がこっちを向きそうになったので、慌てて背中を向けて壁の方を見ると、
「けちー」
と背中をつつかれた。
「あんなに密着しといて、今さら見せないとかないでしょ」
背中にあった指が脇の方へ滑ってくる。
「ひゃっ!や、やめれっ!」
くすぐったさに身体がびっくりしてぴょん、と跳ねて、やめてと言おうとして噛んでしまった……。
264大樹×穂波(お風呂編):2008/03/28(金) 05:16:51 ID:928d5rz8
「穂波ってホントにくすぐったがりだよな。聞いてはいたけど」
脇とお腹は本当に勘弁してほしい。
笑うのを通り越して、息が止まるから。
「誰から?」
「岩瀬。いっぱい開発してあげてね、って言われたぞ」
大樹は楽しそうに共通の友人の名前を挙げた。
予想はついてたけど、やっぱり。
……明美のバカ。
彼女は私をくすぐるのがなんでか知らないけど、大好きだった。
椅子に腰かけながら私が深い深いため息をつくと、大樹が笑った。
「心配すんなって。ちゃんと感じるようにしてやるから」
「しなくていいです」
「いや、する」
「くすぐったいのが他の感覚に変わる訳ないじゃない」
「そうでもないらしいぞ。
 特にくすぐったい場所は性感帯なことが多いから、ちゃんと開発すればそこを触っただけでそれはもう大変なことに」
なんでこの手の話にはこんなに詳しいんだ。
私は詳しくないから、どう対応していいか分からなすぎて、この話は打ち切ることにした。
「はいはい、じゃあ頑張ってね。
 大樹が触ろうとしたら私は必死に逃げるから」
大樹に極力背中を向けたまま、シャワーを取って頭を濡らす。
大樹が何か文句を言ったようだったけれど、シャワーのおかげでそれは聞こえないですんだ。

(続)
265名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 19:59:04 ID:CXRkWy46
>>264
あなたが神か
266名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 20:05:27 ID:2z5ZPaN1
>>243
神じゃないの?
むしろ神じゃないの?
267名無しさん@ピンキー:2008/03/28(金) 23:08:57 ID:/lWAevoa
ヤバい、GJすぎる。初々しい中に見えるラブラブっぷりに倒れてしまいそうだ…
続きめちゃくちゃ期待してます

体を洗う描写の細かさにちょっと驚いた
268名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 07:37:03 ID:RVO6PhFI
大樹×穂波のお風呂編の続きです。
25レスお借りします。
269大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:37:39 ID:RVO6PhFI
泡が飛び散らないように、一人でお風呂に入っている時よりはおしとやかに頭を洗っていると、
大樹がこんなことを言ってきた。
「なあ、明日薬局行こうぜ」
「なんで?トイレットペーパーもティッシュもまだ買い置きあるでしょ?
 洗剤とかも必要な分はみんな揃えたよね」
薬も風邪薬とか腹痛止めとかくらいはあったはず、と考えてると、
「バカ。ゴムがない、ゴムが」
と言われた。
「輪ゴム?薬局より雑貨屋の方があるんじゃない?」
そう返してから、大樹の言ってるゴムが何だか分かった。
「おまえ、素で言ってる?
 それならそれで面白いからいいけど」
「……うん、ごめん。言ってから意味分かった」
そうかー、そうだよね、エッチするなら避妊とか考えないといけないもんね。
「お前さ、子供好きとか言ってたけど、別にすぐに欲しいとかじゃないだろ?」
偉いな、そういうことちゃんと考えてたんだ。
今言われるまで、私はそんなことほとんど考えてなかった。
確かに将来的には、二人か三人かわいい子供がいたら嬉しいけど、まだしばらくは仕事を続けたい。
「うん……、そうだね。今すぐじゃなくてもいいかな」
「よし、じゃあ、買いに行こう」
大樹の声は心なしかウキウキしてる。
コンドームを買いに行くのがそんなに嬉しいか。
っていうか、
「ねえ、行こう、って一緒に行くの?」
「いやか?」
「い、嫌っていうか……できれば一人で買いに行って欲しいんだけど」
270大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:38:31 ID:RVO6PhFI
「俺が行くの?」
「私が行くの?」
出来れば行ってほしい。
前に彼氏がいた時に友達から、自分でも持っておきなよ、と言われて一個もらったけど、
別れた時に捨てて以来、持ったことないし、当然買ったこともない。
いつかは私だって買いに行くけどさ、言い出したのは大樹なんだし、大樹が買いに行けばいいじゃない。
別に大樹は悪くないんだけど、なんだか不満な気持ちでそう思ってると、
「うーん……。そうか。じゃあ、とりあえず三箱くらい買ってくるな」
と言ってくれた。
もしかしたら、大樹は結構私に気を使ってくれてるのかもしれない。
「うん、ありがとう。えーと、ごめんね」
「何が?」
「押し付けちゃって」
「……。じゃあ、おっぱい見して」
なんでそうなるんだろう。
見たいと思ってくれるのはちょっと嬉しくなりつつあるんだけど、返答に困る。
この会話の流れに、私が言葉を失っていると、大樹は私が無視したんだと思ったらしく、
今日何回目かの、けちー、というコメントをいただいた。
「け、けちじゃないもん」
「お前な、せっかく美しいおっぱいを持ってるのに、それを隠すのは罪だ」
美しいってまで言われると嬉しいけど、だからと言って罪と言われるのは不本意だ。
「さっきちゃんと見たでしょー」
「寝てる乳は見たが、起きてる乳は見ていない!」
なんだか知らないけど、結構本気で言ってるっぽい。
たぶん、これは私が折れるところなんだろうな。
「……じゃあ、シャンプー流しちゃうから、待っててよ」
「はい!待ってます、先生!」
どうやら乗り出していたらしく、ざぶんとお湯に浸かる音がした。
思っていた以上に大樹はスケベで、しかもこの手のことに関しては本格的なバカかもしれない。
271大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:39:00 ID:RVO6PhFI
泡を洗い流しながら、早く髪を切りに行きたいな、とか出来るだけ別のことを考えてみたけど、
大樹に胸を見せるのかと思うとまた緊張してきた。
どうしてこんなに緊張するのか自分でもよく分からない。
ただ、大樹は私の胸を気に入ってくれてるみたいだから、それは嬉しい。
そういえば、大樹は巨乳好きだって前から言ってたっけ。
あんまり好きじゃなかったけど、大樹が喜んでくれたおかげで私は少しだけ自分の胸が好きになれた。
だったら、頑張って見せてあげよう。
髪を拭いて、またまとめ直すと、私はタオルを胸に当てて立ち上がった。
いきなり見せるのは抵抗があるからなんだけど、実のところ、意味なし。
タオルからはみ出してる。
腕も使ってどうにか隠すと、それを待ってたみたいに、大樹がこっち向いて、と言った。
お風呂場はもちろんすごく明るい。
ゆっくり大樹の方に向くと、大樹が神妙な顔でこっちを見上げてた。
ちょっとおかしくなる。
「大樹、顔が真面目になってる」
「俺は常に真面目だ」
「スケベなだけでしょ」
「真面目にスケベやってるから」
「バカ」
堪えきれなくて笑うと、大樹も笑った。
「な、穂波、膝ついて。
 下からのアングルも悪くないけど、今はまっすぐ見たい」
こういう風に言われると、本当に真面目にスケベやってるのかも、と思えてしまうから不思議だ。
272大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:39:40 ID:RVO6PhFI
言われた通りに浴槽の間近に膝をつくと、大樹が乗り出してきた。
お風呂の縁に両腕をついて、私の目の前に顔を持ってくると、にまっと笑って身体を伸ばして、
一回、唇にちゅっとしてくれた。
ちょっと肩から力が抜けて私も笑うと、大樹が私の腕に手を添えた。
「見せてね」
「うん……」
心臓がバクバクしてる。
頭もぐるぐるする。
大樹は私の右腕をゆっくり開くと、手を握ってくれた。
なんでこんなに優しくしてくれるんだろう。
嬉しいのに切なくなってきて、涙が滲んできた。
左手に手を添えられると、せっかく大樹がキスして緊張をほぐしてくれたのに、また緊張してきた。
緊張も手伝って呼吸が荒くなってるのが自分でもすごく良く分かる。
「穂波、硬くなりすぎ」
笑いながら右手の指にキスしてくれる。
「みっ、見せたくない訳じゃないんだよ?」
なんだか見当違いなことを言ってるのは分かるんだけど、どう返していいかが分からない。
「うん、分かってる」
タオルの端を掴んでた左手の指が一本ずつ広げられていく。
目を開けていられなくてぎゅっと目を瞑ると、今度は目の端っこにキスしてくれた。
ちょっとだけ力が抜けた瞬間手を引っ張られて、ぱさっとタオルが落ちる音がした。
「ふっ……!」
思わず息を呑んだ。
感触がある訳じゃないのに、大樹の視線を胸に感じる。
大樹がどこを見てるのか、どんなふうに見てるのか、すごく感じる。
「やっぱ、キレイ。
 俺、穂波のおっぱい、マジ好きだわ」
大樹がそう言ってくれたのは、結構時間が経ってからだった。
273大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:40:11 ID:RVO6PhFI
「本当?」
やっとどうにか目をあけると、大樹がこっちを見てきた。
「バカ、嘘吐いてどうすんだよ」
「ふうぅ……」
肯定も否定もしないで、何甘えた声出してるんだろうって、自分でも思うけど、それしか声が出てきてくれない。
「触らせて」
大樹は視線を胸に戻すと、私の左手を自分の肩に置かせて右手を伸ばしてきた。
またぎゅっと目を閉じる。
指が触れた。
始めは何本かの指のお腹で撫でるだけだったけど、だんだん揉むような動きになってきた。
「ふ…うっ……んっ。
 は……」
恥ずかしいんだけど気持ちが良くて、喉の奥からため息みたいな声が勝手に出てきちゃう。
大樹の手のひら全体が押し付けられた。
「あっ…ん、んんっ……」
さっきより強い触り方をされて、私の声も大きくなる。
声なんて出したくないのに、勝手に出てくる。
触られてるのは胸だけなのに、あそこもきゅうっと熱くなってきて、
大樹の手を握っていた手に力が入ると、唇にキスされた。
さっきみたいな軽いキスじゃない。
大樹の舌が唇を嬲ってくる。
味わってるみたいに唇を吸われて、甘く噛まれて、私はたまらずに自分からも舌を出した。
自分がしてもらったことを大樹にもしてあげる。
大樹の舌が絡まってくる。
胸に触ってる手の動きがちょっと乱暴になってきた。
274大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:40:38 ID:RVO6PhFI
「んっ、うっ……」
口の中を舐め合うたびにくちゅくちゅっていう音がする。
それに声が混ざる。
私の声だけじゃなくて、大樹の声も。
それが嬉しい。
嬉しいのに足りない。
身体全体が大樹に触ってほしくなってるのが自分でよく分かる。
唇や舌だけじゃなくて、胸も先っぽまで、こんな浴槽越しに離れてるんじゃなくて、
ちゃんとぎゅって抱きしめて、……あそこも触ってほしい。
触られたらきっとぬるぬるしてると思うけど、スケベって言われちゃうかもしれないけど、
でもちゃんと触ってほしい。
私が大樹のこと欲しがってるって分かってもらいたい。
口を離して、お風呂から出てきて、って、ぎゅってして、って言えばいいのに、口が離せない。
キスをやめたくない。
息を吸う間でさえ惜しくなってる。
どうしよう、私、大樹にハマった。
本当にどうしていいか分からない。
今の状況じゃ物足りないのに、それを言う間も惜しんでキスしてる。
自分で自分を制御できなくなるなんて今までなかったから、制御の仕方が分からない。
私、ずるい。
自分から離せないからって、大樹が唇離してくれたら、って思ってる。
でも、離されたらきっと、大樹は私のことそれほど欲しくないんだ、って拗ねるんだ。
頭では簡単にそうなった時のことを想像できるのに、じゃあどうしたらいいか、ってなったらさっぱり分からない。
大樹を欲しがってる身体と、めちゃくちゃになってきてる思考の間に挟まれてるうちに、
泣きたい訳でもないのに目頭が熱くなってきて、それを堪えようとしたらちょっとだけ舌の動きが鈍くなった。
275大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:41:07 ID:RVO6PhFI
「はう、ぅんっ!」
その瞬間、胸の先っぽを強く抓られて、私は思わず身体を引いた。
唇も離れてしまい、たっぷりたまっていたらしい唾液がぽとっと胸の上に落ちた。
「穂波、乳首ビンビンだな」
大樹の声に顔を上げると、大樹の得意げな顔が少し滲んで見えた。
「どした?」
さっきまで言いたいと思っていたのに、いざ言える状況になるとどう言っていいか分からない。
「あっ……うっ……」
大樹が胸の先っぽを捏ねるたんびに声が上がるだけ。
「エロい顔……」
エロいことしてるんだから、しょうがないじゃん。
言いたいのに息をするのが精一杯で言葉なんて出てこない。
「お前が乳揉まれただけでそんな顔するなんて思ってなかったな」
繋いでた大樹の左手が離れていって、代わりに左の胸に触った。
「ひぅんっ!」
いきなり抓まれた。
「エロい乳……」
大樹は胸に落ちてた唾液を掬ってそれを先っぽになすりつけた。
唾液のせいでそこでぬちゃぬちゃと音がする。
触られれば触れるほど、もっとっていう風に硬くなっていくのが自分で分かる。
「やあ……」
「何がや?触られるのが嫌ってことはないよな」
素直に頷く。
「俺にしてほしいこと、あるんだろ?」
首がこくん、と前に折れる。
「教えて」
276大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:41:32 ID:RVO6PhFI
「……ぎゅ、って…してほしい……」
まだぐるぐるしてる頭でどうにか絞り出せたのはそれだけだったけど、
大樹は私から手を離すと、すぐにお風呂から上がってくれた。
膝で立ってられなくなった私がその場にぺたりとお尻をつくと、大樹は私の傍にしゃがみ込んだ。
「だいじょぶかー?まさか、乳首だけでイっちゃった訳じゃないよな」
うおう!まともにあれが視界にっ!
しかも、なんか、それはつまり、立ってませんか?
なんで?さっき出したじゃん!その前にも一回してるし!
「そうじゃないけどー」
出来るだけさりげなく目を瞑って顔を横に向けたけど、大樹にはばればれだった。
「穂波ちゃーん、そっぽ向かないで。って俺のちんこが言ってるんだけど」
酸素が頭に戻って来てくれたおかげか、少し落ち着いた思考が出来るようになってきた。
「それはものを言わないでしょ」
「俺のムスコだもの、俺には聞こえる。
 お前には聴こえないかもしれないから、俺が伝達役を買って出たというだけだ」
「バカ」
それ以外にコメントが思いつかないでいると、大樹に腕を引っ張られた。
「はいはい、抱っこしてやるからこっち来いよ」
「えっ、は、はいっ」
大樹はその場に胡坐をかいて座っていて、私はその上にちょっと横向きに乗せられた。
右脚の付け根にあれがまともに当たったけど、大樹は言葉どおりぎゅうっと抱きしめてくれて、
身体全部が満たされてる訳じゃないけど、さっきの不安定な感じは無くなってくれた。
277大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:42:06 ID:RVO6PhFI
すごく気持ちがいい。
「ふへへ〜」
甘えたくなって大樹の肩に頭を擦り付けると、大樹がおでこに頬ずりしてくれた。
「なんだよ、エロ穂波」
おでこにちゅう。
「大樹、大好き」
「…………」
…………。
私、今、なんか言いませんでした?
「あっ、うっ、いや、あのね」
慌てて体勢を立て直して、何か言わなくちゃと口を開くとキスで口を塞がれた。
私好みのりりしい眉毛が至近距離にある。
開いてた大樹の瞼が閉じていく。
そんな大樹を見てたら、今のうっかり発言の言い訳はしなくていいんだ、って思えたから私も瞼を閉じた。

さっきよりは柔らかいキスをする。
大樹がまた胸を弄り始めたけど、今度はもうそんなに恥ずかしくない。
大樹が触ってくれるのが嬉しい。
でもやっぱり触られてキスを続けているうちに身体がうずうずしてきた。
あそこが熱くなってきてる。
ももに当たってる大樹のだって熱い。
したい、って言えばいいだけなんだけど、しよう、って誘えばいいだけなんだけど、
言ってる自分を想像するだけで、顔が熱くなる。
きっとその場になったら、言えなくなる。
そもそも私から誘って引かれないかな、とも思っちゃう。
でも、もう無理、限界。
大樹が触ってくれないなら、自分で触っちゃいそうなくらいになってきてる。
一人エッチだってまともにしたことないくせに。
やっぱり大樹がうつったんだ。
278大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:42:31 ID:RVO6PhFI
また思考がループし始めた。
このままじゃ、またさっきみたいにどうしていいか分からなくなって、泣きたくなってくる。
それは嫌だ。
覚悟を決めよう。
引かれたら、大樹のバカー!って大樹のせいにしちゃえばいいや。
私はさっきから私の胸を弄ってる大樹の手を取った。
ちょっと手が震えてるけど、気にしない。
頑張れ、私。
「……穂波?」
大樹の唇が離れたけど、無視。
自分から大樹の口を塞いだ。
緊張で唇まで震えてきた。
大樹のせいにしちゃえば、って思ったくせに、引かれたらどうしようって思って、次の行動に移れないでいると、
背中を支えてた大樹の手が肩を撫でてくれた。
きっと何がしたいか気が付いてくれたんだと思う。
頑張れ。
もう一度自分を激励して、私は大樹の手を自分のお腹の方へ連れて行った。
おへその下あたりまで来たところで、大樹の手を自分のお腹に触らせると、
大樹はそのまま脚の間に手を入れて来てくれた。
ここに触られるのはやっぱりまだ恥ずかしい。
そのくせ、自分でそこまでやったのかと思うと、今日はもう大樹の顔を見られないような気がしてきた。
大樹の指が私の身体を探りながら下りていく。
お湯じゃなくて濡れてるのがばればれだよね。
大樹が唇を軽く何度もついばんでくる。
手が肩を撫でてくれる。
間に指が入ってきて、ぞくん、と身体に変な感触が走った。
279大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:43:00 ID:RVO6PhFI
「あっ!」
「ぞく、ってした?」
「したぁ……」
しかも、さっきより強く。
「まだ中じゃないのに、熱くなってんな」
「うん……」
しょうがないじゃない、って思うけど、言う余裕がない。
「入れるぞ」
頷くと大樹の指が入ってきた。
「んうぅ……」
大樹の指が中でゆっくり回ってるのが分かる。
回りながら少しずつ入ってくる。
さっきよりはつらくない気がするけど、やっぱりお腹の奥が変。
大樹が支えてくれてるのに、慣れない感覚に身体がどうにかなりそうで怖い。
大樹の腕にすがりつくと大樹はキスをくれた。
少し安心する。
「んっ、んっ」
大樹の指が動くのに合わせて声が出る。
声が出るとまたそこを弄ってくる。
「うーっ、んあっ」
今までより強い痺れみたいな感覚に思わず唇を離すと、大樹がのぼせた感じの顔を近づけてきて、
「ここ、好き?」
と聞いてきた。
280大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:43:25 ID:RVO6PhFI
そう言われても、
「……分かんない」
「つらい?」
されるのが好きなのかどうかは分からなかったけど、つらくはなかったから、首を横に振ると、
大樹はちょっと何か考えてから、
「な、穂波、素股でしよっか」
と言ってきた。
「すまた?」
なんかどこかで聞いたような気がするし、この状況だからまた何か専門用語なんだろうなあ、
と思ってると、大樹が解説してくれた。
「そう。穂波のな、脚の間にちんこ挟んで、こするの」
「……入れないの?」
「だって、まだ痛いだろ?」
確かに奥の方はまだジンジンしてる。
大樹が気を遣ってくれてるのは分かったけど、そんなのは嫌だ。
「なに膨れてんだよ」
「……ちゃんとしよ」
「だって、お前、まだキツイじゃん」
大樹はそれをアピールするみたいに指を大きく動かした。
「うくっ!」
「ほら」
「平気だもん」
「平気じゃない、ってさっきも言ったじゃんか」
気持ちは嬉しいんだけど、今の私は大樹と繋がりたくて、大樹をちゃんと感じたかったから、
大樹の優しさに腹が立ってきて、そんな自分にも腹が立ってきて、また涙が浮かんできてしまった。
281大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:44:00 ID:RVO6PhFI
「世間の噂ほど痛くないもん」
「だってお前、泣いてるじゃん」
「バカー。痛くて泣いてるんじゃないもん!」
「ひへっ!」
大樹のほっぺたを一ひねりして、私は斜めになってた身体を起こそうとした。
大樹の指が身体から抜けて、緊張していた身体からも力が抜けた。
一度深呼吸して大樹の顔を見ると、彼は完全に困っていた。
「泣きそうな顔してるくせに、睨むなよ」
「睨んでないもん」
言ってはみたけど、涙がこぼれないように眉間に力を入れてるから、
きっと睨んでるように見えるんだろうな。
ホント最悪。
今日は自分を全くコントロールできない。
「で?」
今まで私の身体を支えていた手が、頭を撫でてきた。
私はこんなにわがままなのに、なんでこんなに優しくするんだよ、バカ。
「大樹がね、優しいのはね、すごく嬉しいよ」
「……うん」
「でもね、大樹がね、私にね、気を遣うのは嫌なの」
「気なんて遣ってねーよ」
「うそ」
「嘘吐いてどーすんだ、って。
 あのな、俺はお前が痛いのが嫌なの。
 お前が良くても、俺はお前が痛そうな顔すんのが嫌。
 分かるか?」
ちょっと怒ったような口調で言いながらも、大樹はほっぺたとか首筋を優しく撫でてくれた。
282大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:44:31 ID:RVO6PhFI
大樹の言ってることは分かる。
でも、
「でも、私、したいんだもん」
ぶっ、と大樹が横を向いて盛大に吹き出した。
「ちょっ、おま……だって、気持ち良くないだろ、まだ」
ああ、そっか、大樹と私の気持ちの違いが分かった。
「うん、あのね、気持ちいいとか、まだ全然ないよ」
「ほら」
「でも、大樹に触られるのは気持ちいいの。
 キスも好き」
大樹はちょっと照れたみたいだったけど、何にも言わなかったから、私は続けることにした。
「でもね、それだけじゃ物足りないな、って……思っちゃったのね」
大樹の肩に置いた手の指がもぞもぞと動いてる。
「……うん」
「もっと、大樹とくっつきたいな、って、思って……」
「おう」
大樹はちゃんと聞いてくれてるんだけど、自分が言いたいことが言葉になってきたら、
恥ずかしさでまた頭がぐるぐるしてきた。
「だから、あの、気持ち良くなくても、大樹とつっ、つながっ、りたいな、とかって」
「痛くてもいいのか?」
「うん」
大樹は目を瞑って、眉間にしわを寄せて、何秒か真剣に悩んでから、
真顔で私のことをじっと見た。
「あのな、いま、入れたら俺、優しくしてやれないぞ、多分。
 しかも、ここでやるなら座位かバックしかないぞ」
283大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:45:04 ID:RVO6PhFI
真剣に考えた末の言葉だったらしいけど、やっぱり専門用語が出てきて、私は笑ってしまった。
バックはなんとなく分かるけど、ザイがいまいち分からない。
多分、『ザ』は座るの『座』だろうな、と思うけど。
「お前なあ、笑うなよ」
「だって、真面目にエロいんだもん」
「このヤロウ。マジで容赦しねえぞ」
確かに目がマジだ。
「容赦してほしかったらちゃんと言うから」
「俺がマジで出来ないこと分かってて……ずりいなぁ……」
「ごめんね」
口ではそう言ったけど、嬉しくて私は大樹に抱きついた。
大樹の手が背中に回ってきた。
「んで?どっちでする?」
ちょっと考える。
バックって、あれだよね、犬みたいな恰好でするやつ。
慣れればあれはあれで、という話はよく聞くけど、まだその気になれません。
「……バックじゃない方」
「んじゃ、このままだな。……跨れよ」
やっぱり『座』だった、とか思いながら、促されるまま大樹の上に跨って膝をついた。
大樹が両手でお尻を支えてくれてる。
うわっ……。
これはこれですごくなんて言うか、あれがまともに私の方に向いてる状況だよね。
思わず大樹にしがみつくと、力を抜け、と言われてしまった。
284大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:45:33 ID:RVO6PhFI
ゆっくり息を繰り返して力を抜くと、大樹の指が入ってきて、中からとろっとしたものがあふれた。
「あっ……」
「穂波、ちんこ持って」
片腕だけ大樹の首からほどいて、言われた通りあれに手を添える。
やっぱり熱い。
それに、指よりおっきい……。
「ずれないようにして……そう。
 ゆっくり腰落として。支えてるから心配すんな」
大樹の指が身体の中から抜けていく。
「うん……」
なんだかんだ言ってたくせに、やっぱり大樹は優しい。
先っぽが私の身体に触ると、首筋にキスしてくれた。
「自分で合わせられるか?」
身体を前後に動かすとぞくぞくして、飛び上がりそうになったけど、頑張って合わせてみる。
「ん、……うん、ここ、かな」
「自分で入れられるか?ゆっくり身体落として……うん、そう……っ」
「ふっ……ッ、んっ」
大樹のが入ってくる。
指と違って苦しい。
「きっつぅ」
大樹が苦しいんだか気持ちいいんだか微妙な声を出す。
「……平気?」
「バカ。お前が俺に気ぃ遣ってんじゃねえよ」
声がちょっと笑ってる。
「笑わなくたっていいのに」
「俺はヤバいくらいに気持ちいいから心配すんな」
大樹はぽんぽん、と背中を叩いてくれた。
285大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:46:04 ID:RVO6PhFI
「あうつッ!」
少しずつ身体を下ろして行って、もうちょっとで終点かな、っていうところで、激痛が走った。
「やめるか?」
「やめないもん……っ」
ずっとジンジンしてたところ。
多分、さっきは大樹がそこで止めてくれたから大丈夫だったんだ。
でも今さらここでやめたくない。
私は大きく呼吸して息を止めると、一気にぐっと腰を落とした。
「ン――ッ!!」
「ッ!……て、お前、バカ!」
痛い!めちゃくちゃ痛い!
バカとか言うな!
って言いたいけど、声が出ない。
大樹が気遣ったりバカって言ってみたり、何か言ってるのは分かったけど、私はしばらく応答できなかった。

何回か深呼吸を繰り返してると落ち着いてきた。
身体から力が抜けてくれて、大樹にもたれかかると、大樹は子供をあやすみたいに頭を撫で撫でしてくれた。
「えへー」
嬉しくて頬ずりすると、
「えへー、じゃねえっ!」
って怒られてしまった。
「……うん、ごめんね」
素直に謝る。
「でも、嬉しい……」
「……俺も嬉しい」
もっと怒られるかと思っていたのに、そんな言葉が返ってきたから私はちょっとびっくりして身体を起こした。
286大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:47:37 ID:RVO6PhFI
私が大樹の顔を見ると、大樹はムッと眉間にしわを寄せた。
「なんだよ」
「だって、怒ってるかと思った」
「怒ってるけど、……そんなのの百倍くらい嬉しいんだからしょうがねーじゃん。
 お前が痛いの我慢してまで俺としたいと思ってくれてさ、ホントにそうしてくれて、
 そしたら嬉しくない訳ないだろ」
あーもー、かわいいな。
なんで怒った顔のくせに照れてるんだろう。
どうしよう、すごい得した気分。
エロくてもバカでも、大樹みたいな旦那さんはきっといない。
私にとっては旦那さんもエッチの相手も大樹だけ。
なんだか嬉しい感情が一気に押し寄せてきて、私は色々大樹に伝えたい事があったのに、思いっきりキスしてた。
唇を咥えてゆっくり顔を離す。
唇が離れる瞬間ちゅぷん、と音がした。
「なににやにやしてんだよ」
「大樹もにやにやしてる」
「うるせえ」
「大樹って意外と照れ屋さんなんだ、スケベなくせに」
「うっせえなあ」
大樹は本当に照れたらしくてそっぽを向いてしまった。
「ねえ、大樹、こっち向いて」
「あ〜?」
眼だけがこっちを向く。
「ちゃんと」
私は大樹の顔を捕まえてこっちを向かせた。
287大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:48:10 ID:RVO6PhFI
「ね、大樹。あの、あのね……いっぱい、しよ。
 私、知らないことばっかりだけど、……えと」
それ以上どう言ったらいいか分からなくて言葉に詰まってると、今度は大樹がキスしてきた。
「こーのエロっこが!」
「まだエロくないもん」
「だな。まあ、期待しておけ、さっきも言ったように俺がお前を俺好みのエロエロに変えてやるから」
「エロエロにはしなくていいけど」
「いっぱいするんだろ?してるうちにいやでもエロくなるか安心しろって」
「安心て」
「穂波」
急に大樹が優しい顔で笑いかけてくれた。
「はい」
何だろう、ってちょっと緊張する。
「ずっと一緒にいような」
一瞬、頭が真っ白になって、次の瞬間、顔が一気に熱くなった。
あ、まずい、泣きそう。
嬉しくて。
「うん」
泣きそうになりながら、でも、ちゃんと笑ってそう返せたと思う。

それから私たちはまたキスをした。
今日初めてちゃんとキスをしたくせに、もう何回してるんだか分からない。
大樹の頭を抱え込んで、生乾きの短い髪に指を埋めて、私は何度も何度もキスを繰り返した。
288大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:48:36 ID:RVO6PhFI
大樹も同じようにたくさんキスをしてくれたけど、途中で、ごめん、と言われた。
「マジ、ごめん、動くわ」
そう言うと、大樹は両手でお尻をつかむと私をゆすり始めた。
「あッ!くっ、……んあッ!」
やっぱり痛い。
ジンジンなんて優しいもんじゃなくて、痛くて痛くて、私は大樹の頭にしがみついた。
大樹の口が私の左肩に当たってるせいで、大樹はそこにキスをしてくれてる。
でも、今までみたいにキスしてもらっても力が抜けない。
一瞬痛くなくなるんだけど、また痛くなる。
なのにどこかにちょっとだけ良く分からない感覚がある。
「やあっ!あッ…う……んああッ!」
痛くて声が上がってるのか、なんで声が出てるのかよく分からないけど、自分の変な声がお風呂場に反響する。
大樹が名前を呼んでくれるのに答えられない。
痛いのに、早く終わってとか思ってるのに、でも大樹が私の中にいて、抱きしめてくれるのがすごく嬉しい。
急に今まで以上に強く抱きしめられた。
「んっ!んんっ!!」
大樹が呻くような声を出して、身体をびくんとさせた。
次の瞬間、身体の奥がじわっと熱くなって、代わりに中にあったものから力が抜けていくのが分かった。
「ふ…うう……」
大樹の腕からも力が抜けていって、釣られて私の身体からも力が抜けて言った。
289大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:49:10 ID:RVO6PhFI
私たちは呼吸が落ち着いた後も、お互いにもたれ合ったまま、しばらくぼうっとしていた。
キスしたいな、って思ってると、大樹が首筋に鼻をこすりつけてきた。
くすぐったくて笑うと、脇を撫でられた。
「うひゃっ!」
身体が跳ねて、その拍子に私の中に引っかかるみたいにして残っていた大樹のあれが抜けてしまった。
「くすぐるな、ってば」
身体を起こしてぺちんとおでこに手をやると、わざとらしく膨れた顔が返ってきた。
「だって穂波に触りたかったんだもん」
「他にも触る場所はあるでしょ」
「柔らかいお腹に」
「どうせたるんでますー」
「まあ、このくらいは許す」
「大樹こそオジさんになってもたるまないでよね」
私が大樹の脇腹に手を伸ばすと、大樹の身体がよじれた。
「あれ〜?人のこと言うわりに、大樹も弱いんじゃないの?」
「そんなことは」
脇腹への攻撃!
「うおあっ!」
大樹が身体をよじった。
「やっぱり」
大樹の弱点を見つけたのはかなり嬉しい。
「ふふー」
ちょっと勝ち誇ったように笑って見せると、
「覚えてろよ、倍にして返してやる」
と睨まれた。
でも、睨んだその顔はこっちに近づいてきて、たくさんのキスをくれた。
290大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 07:49:47 ID:RVO6PhFI
しばらくキスしたりお互いを撫でたりしてたけど、身体が少し冷えてきた。
大樹の上から降りると、中でまたどろっと落ちてくるのが分かった。
あんまり気持のいいもんじゃないんだけど、大樹が中にいてくれた証拠みたいな気もした。
シャワーを取って、お互いの身体にかけっこする。
裸を見られるのはだいぶ慣れたつもりだったし、大樹の裸も少しは見られるようになったけど、まだ正視できない。
大樹が左肩を指すから何かと思ったら、肩から鎖骨の辺りにかけて赤い痕がたくさん残ってた。
「キスマーク。いっぱいつけちゃったな」
大樹は満足そうだけど、これじゃ、胸元のあいた服が着られない。
首筋にわざとらしいバンドエイド貼るよりはマシかもしれないけど。

シャワーを浴びた後、二人で湯船に入った。
大樹に抱っこしてもらえば、こっちもどうにか二人で入れる。
「ねえ、もしかして、二人で入るの前提でお風呂選んだ?」
「いや。全然。……ていうかな」
「うん」
「俺、なんて言うか」
やけに言いづらそうな大樹の声。
大樹の方に顔を向けると、大樹は髪をかき上げた。
言いづらいことを言う時の大樹の癖だ。
何かあるんだろうけど、この流れで言いにくいことなんて全然思いつかない。
「大樹?」
「あ?ああ……えーっとな」
ホントになんだろう?
大樹がまた髪をかき上げる。
「そんなに言いにくいこと?」
「えっ!?なんで?」
私が聞くと、大樹がびっくりして私の顔を覗き込んできた。
291名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 08:07:03 ID:Hafippp8
携帯から失礼します。
残り3レスですが、規制に引っかかったので、規制が解除されてから投下します。
申し訳ありません。
292名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 09:26:02 ID:99nzkqbR
支援
そして既にGJ
あなたは神だ
293大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 12:54:17 ID:FS1Kv/M5
続き投下します。
294大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 12:54:44 ID:FS1Kv/M5
「だって、普通に言いづらそうだし、髪かきあげるし……」
「あ?あれ?そうなんだ」
「もしかして、その癖、自分で気が付いてないの?」
「癖って、普通、自分で気がつかなくね?」
「まあ、そうだけど……。で、どうしたの?」
言いたくないなら無理して言わなくてもいいよ、と思う反面、かなり気になっていると、
「……俺さ、実は……お前と、するとか、ぜんっぜん考えて、なかったんだよなーあっはっはっは」
と、すごく作った笑い声が返ってきた。
「何を?」
ぶっ!と、大樹が大げさに吹いた。
「なに、っておま……セックスだよ」
私を抱えてる大樹の手を弄ってた手が止まった。
思考も止まった。
お風呂場に流れるしばしの沈黙。
「あー……そうなんだ。
 そうかー、なるほどー」
棒読みなのが自分でもよく分かるけど、はっきり言って、どう反応していいかさっぱり分からない。
私は大樹とエッチしたら、私たちの関係がどうなるか怖くて不安で悩んでたのに、
こいつは考えてもいなかったのかと思うと、なんだかちょっとムカムカする。
でも、結婚を持ちかけたのも、エッチのきっかけになることを言ったのも、大樹だ。
何がしたかったんだ、こいつは。
ムッとしていると、大樹が話し始めた。
295大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 12:55:10 ID:FS1Kv/M5
「あん時さ、お前、友達の結婚話してたじゃん」
あん時というのは大樹が結婚の話を持ちかけた時だろう。
どういう話をしたかは覚えてないけど、結婚式を挙げた友達の話をしていたとは思う。
「うん、してたね」
何が何だか分からないまま、私はただ頷いた。
「それ聞いてたらさ、なんか急にお前と結婚したくなってさ」
「急だったんだ」
もう少し計画性のある発言だと思ってたのに。
「うん。そしたら、そう言ってた」
大樹らしいと言えば大樹らしいけど、呆れてため息しか出てこない。
何を期待していた訳でもないし、私の返答も返答だったから、
大樹を責めるつもりはないけど、もう少しロマンチックでもよかったのに、と思ってしまう。
「俺ね、そん時、そういうこと全然考えてなくてさ、
 お前に検査受けろって言われても、周りに冷やかされても全然実感がなかったのね」
「はあ」
私は他にどういう反応をしたらいいんだろう。
「けど、昨日あたりから」
昨日かよ。
「もしかしてやるのか?とか思い始めて、実感は相変わらずなかったんだけど」
「んー」
「なんつーかさ、今までと違っちゃったらどうしよう、とかバカなこと考え始めちゃって」
あれ?なんか、私が思ったことと似てる?
バカだよなー、と大樹は笑った。
296大樹×穂波(お風呂編):2008/03/29(土) 12:55:44 ID:FS1Kv/M5
「けど、ほら、俺たちってさ、行き来してたくせに、そういうことなかったじゃん」
ああ、やっぱり同じようなこと思ってたんだ。
「だから、俺とお前ってそういうことしない関係、みたいなのがどっかにあったんだよな、多分」
「うん、そうだね。
 ……私もちょっとね、怖かった。
 大樹とするなんて想像したことなかったし、エッチ自体したこと無かったから、余計に色々考えちゃってたかも」
そう言うと、大樹は何にも言わないでぎゅっと抱きしめてくれた。
私はもっと言いたい事があって、いっぱい聞いてほしかったけど、
大樹がそうしてくれたから、もう言うのをやめた。
ずっと一緒にいよう、って言ってくれたんだもん。
聞いてほしくなったらいつでも言える。
そう思ってから、私はさっきの大樹のセリフとその時の大樹の表情を思い出して、また嬉しくなった。
「なに、にやにやしてんだよ」
大樹がそう言いながらおでこにちゅーっとしてきた。
こんなことされたら、いやでもにやける。
「ふふ。ないしょ」
「またくすぐるぞ」
今度は頬ずり。
「もー。……えーっとね、エッチなことではないよ」
「そうか、残念」
真顔で残念がるな。
「そういうことは、また明日以降にしようね。
 今日はもうギブアップです」
大樹に寄りかかって手を繋ぎ直すと、大樹は、俺も、と笑った。

ちょっとぬるくなったお湯は長湯するのにちょうど良くて、うたた寝した大樹が壁に頭をぶつけるまで
私たちはお湯の中でずっと手を繋いでいた。

(了)
297名無しさん@ピンキー:2008/03/29(土) 14:22:24 ID:eEJwl9ET
これはGJ!
ニヤニヤが止まりません。虫歯に染みるくらい甘々だぜこいつは…
298名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 01:06:23 ID:yYADG+QD
ああもうGJ!
おかわり!
299名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 23:10:10 ID:9m4LfFLk
まさに新婚!GJ!
甘いよ甘すぎるよ!だがそれがイイ!
300名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 02:07:31 ID:fliQovFB
読んで下さった方、レス下さった方本当にありがとうございます。
立て続けになりますが、季節ネタを書いたので投下させて下さい。
6レスお借りします。
301大樹×穂波:2008/04/01(火) 02:08:42 ID:fliQovFB
俺は今、モーレツに興奮している。
駅のトイレで一回抜いてこようかと思ったくらい興奮している。
原因はさっき五時十二分に届いた穂波からの一通のメール。
『やった!飲み会回避!
 今日の晩御飯はさわらのホイル焼きカレー味。
 もちろんシメジ入れるね。
 それと何か付け合わせのお野菜。
 何にするかはスーパーに行ってから考えます。
 遅くなるならメールちょうだい。』
いつもだったら、ここで終わる晩飯メニューお知らせメールの後に数行空白があって、
『でも、今日は早く帰ってきてほしいな。
 こないだ、大樹が言ってたエプロンの、しようかなーっていう気になったから』
という追伸がハートマーク付きで打たれてた。
こないだ俺が言ったエプロンの、ってのはまず間違いなく、男なら誰でも一度は憧れるであろう、
裸エプロンだ!
提案した時は、なんでそんな変な格好しなきゃいけないの?って言ってたくせに、なんだよ、もう。
穂波もノリノリじゃん。
ていうか、もしかして俺のために頑張って決意してくれたのか?
あいつ、新しいことに挑戦する時、いっつもすげえ深刻に考えちゃうからなあ。
「ふへっ……」
あ、まずい。
バスん中なのに、にやけた。
うおおお、おばちゃん、そんないぶかしげな眼で見ないでくれ!
新婚なんだよ。
まだ、二ヶ月も経ってないほやほやなんだ。
嫁のこと思い出してにやけたっていいじゃんか。
裸エプロン姿の嫁を想像しただけで、勃起しそうなくらい喜んでる俺だけど、許してくれ……へっへっへ。
302大樹×穂波:2008/04/01(火) 02:09:13 ID:fliQovFB
目の前に座っていたおばちゃんからの痛い視線に耐えつつ、俺はどうにか我がスウィートホームから
徒歩二分のところにあるバス停に降り立った。
急ぎの仕事があったせいで、穂波が希望してくれたように早く帰れなくて十一時過ぎちゃったけど、
そのおかげで新入社員を酒で潰す会への出席は免れた。
あれに出たら、俺も飲まない訳に行かないからな……。
酒は好きだが、せっかくの裸エプロンなんだ。
素面で見なくてはもったいない!
きっとあの赤いエプロン使うだろうな。
正面から見たら、ちょっと太ももとかはみ出しててさ、なのにオイ、乳はモロにはみ出してるっつうの!
お前、それ、あと五ミリずらしたら乳首出るだろ!
ずらしてええええ〜。
エプロンからはみ乳、はみ乳首。
うっは!
おいおいおいおい、ちょっと穂波ちゃん、エロ過ぎですよ。
いや、ちょっと待てよ?
でも、乳首を隠したまま、あの美しいおっぱいの流れをエプロンの隙間から堪能するのもありだよな。
絶対エプロンが浮いて、隙間からへそぐらいは見えるんじゃないのか?
「ぶっ……」
そんな光景を想像して、俺はマンションのエレベーターの前で素で吹いた。
顔が完全ににやけてる。
バス停からここまで多分誰ともすれ違っていない筈だ。
もしすれ違ってたら、変質者として通報されてもうまい言い訳が思いつかない。
ゴホン、とめちゃくちゃわざとらしい咳をして、エレベーターに乗り込んだ。
数字の『6』を押してから、『閉』のボタンを押すまでの指の移動速度が異常に速い。
そりゃあ仕方がないよな、穂波に寒い思いさせちゃまずいもんなあ。
303大樹×穂波:2008/04/01(火) 02:09:39 ID:fliQovFB
むしろ、俺が飯食ってる間そのままで居てもらって、羞恥に耐えつつ、でも俺の視姦には耐えきれず、
真っ赤な顔で乳首が立ってんのばればれな感じになるっつうももありだな。
触ってないのに乳首立ってるだろ、なーんて言ったりしたら真っ赤な顔で、
しょうがないじゃん!とか言うんだぜ、あいつ。
うん、そうだね、しょうがないよね、俺がエロエロな眼で見ちゃってるんだもん、
この後のこと考えたら、乳首が立つくらいじゃ、収まんないよな。
まあ、心配するな。
明日もお互い仕事だからな、軽く一回だけにしておこうな。
まあでも、あれだ。
今日はエプロンつけたままでよろしく!

ドアの前まで来て、速攻でインターフォンを押しそうになったけど、手を止めた。
ちょっと息が荒くなってる。
そりゃあそうだ。
バス停からここまで徒歩三十秒くらいの勢いで歩いてきたからな。
しかも、色々想像しながら。
覚悟はしてるだろうけど、いくらなんでもドア開けた瞬間に鼻息の荒い旦那が入ってきたら、
ちょっとビビるか、ヘタすりゃ穂波のテンションが下がる。
ここは息を整えて、
「すううううう……はあああああ……」
よし。
ピンポーン。
……。
パタパタパタ。
穂波の足音だ。
ちょっと急ぎ足。
かわいい!かわいすぎるっ!
304大樹×穂波:2008/04/01(火) 02:10:24 ID:fliQovFB
「大樹?」
「おう」
「ちょっと待って、鍵開けるから……ドア開けるの、待ってね」
そうだよな、そうだよな、そうだよなー。
いつもみたいに、穂波がドア開けた瞬間に、たまたま同じ階の住民が通ったら、
そいつにまで穂波の裸エプロンを見られちゃうもんな!
うむ。
「はいよー」
カチャリ。
「……いいよ。開けてー」
少しだけ奥の方からの穂波の声。
うおおおおおおお!いよいよかあッ!!!
ガチャッ!
「ただーいっ…………ま?」
あれ?
なんで?
なんで、穂波……服着てんの?
「…………」
「えへ〜。大樹、裸エプロン、て思ってたでしょ」
そりゃな。
だって、俺、エプロンの話題なんて、それでしか出したことないもん。
頭では返事をするのに、いつもとはうって変わって寡黙になった俺は、ただ瞬きするだけ。
「さて。今日は何の日でしょう?」
「……新年度、開始の日」
「うん。何月何日?」
「四月……」
そこで、俺は目の前が真っ暗になった。
「そう。四月一日!エイプリールフールでしたー!」
俺の耳には穂波の嬉しそうな声がどこか遠くから聞こえてきた。
305大樹×穂波:2008/04/01(火) 02:10:54 ID:fliQovFB
「大樹ー。まだ怒ってる?」
「…………」
無言でカレー味の白身魚を米と一緒に口に詰め込む。
怒るを通り越して、悲しい。
悲しすぎる。
俺のあの興奮は一体どこへ行けばいいんだろう?
いや、一体どこへ行ったんだろう?
エプロン、てなんだっけ……。
「ふっ……ふふっ……」
「えっ、ちょっと、大樹、泣かないでよう」
テーブルに手をついて乗り出してきた穂波の姿が、涙で滲む。
こんなに悲しい気持ちになったのは、ガキの頃に買ってたインコが鳥かごから逃げた時以来かもしれない。
「相変わらず、うまいな。穂波の飯は」
「え……。えっと、でも今日のはバター敷いて、塩こしょうして、カレー粉まぶしただけだけど……」
「いいよ。俺は穂波を食えなくても、穂波の飯が食えれば本望さ……」
穂波を困らせるつもりで言ってる訳じゃない。
本気でそういうセリフが出てくるから、我ながら困ったもんだ。
困ったもんだとは思うけど、でもあれはない。
米を飲み込んでから、ティッシュを取って鼻をかむ。
菜の花の胡麻和えをつつく。
「男の純情が、ついこないだまで処女だった、清くて、汚れを知らない乙女だった穂波に踏みにじられた……」
「ちょっ……。もう、ごめん、てばあ。
 そこまで大樹がそういう格好好きだなんて思ってなかったんだもん」
「穂波……。裸エプロンはな、俺だけじゃない。世界の全男子、
 それが大げさだと言うならば、全男子の八割の夢であり、憧れなんだ」
「はあ……」
306大樹×穂波:2008/04/01(火) 02:11:21 ID:fliQovFB
「だが、それを切望する男子の数に比して、実行してくれる女子の数は圧倒的に少ない」
「そりゃだって、変な格好だもん。普通はしたくないよ」
ごめんとか謝っていた割には、俺の夢を簡単に切り捨てる穂波。
「そうか……」
俺はそんな穂波から視線を外すと、飯の続きを口に運んだ。
俺のどこかが、うまい!と叫んでるのに、俺の心は砂を噛んでいるかのような虚しさを味わっている。
とりあえず、今日はもう寝よう。
救いはムスコが立ち上がる前に、気持ちが萎えたことだ。
今日はよく寝られそうだ。
あ、やべえ、また涙が……。
多分、俺は裸エプロンが見られなかったこと自体より、穂波に嘘を吐かれたことがショックだったんだと思う。
そんなたいそうな嘘じゃないし、頭ではろくでもないことだって分かってるんだけどな……。
「ごちそうさま。うまかったよ。
 毎日ありがとな……」
立ち上がって食器を重ねて台所に持って行こうとすると、穂波が俺の肘を引っ張った。
顔を穂波の方に向けると、穂波もちょっと泣きそうな顔になってきてる。
「あの、ホントにごめんね。
 その……そのうち、もうちょっと色々慣れたら、ね」
耳が赤くなってる、ってことは本気で言ってくれてるみたいだ。
ただそれだけのことで、機嫌が良くなる。
元気が出てきた俺はちょっとだけ意地悪を言ってみたい気分になった。
現金な自分に少し呆れるけど、でも、ちょっとくらい困ってもらおう。
「穂波、さすがに今日はもう嘘はおなかいっぱいだ」
脱力しきった声を極力維持してそう言うと、穂波がちょっと膨れた。
「大樹。時計」
首を回して食器棚の上にある時計に目をやると、針は十二時を少しだけ過ぎたところだった。

(了)
307名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 19:38:28 ID:2iMMKNPm
超GJです
あぁ あの頃に戻りたい…
308名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 08:28:51 ID:hKolcGLT
>>307
あの頃…だと…??
309名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 23:24:47 ID:dg4INDXV
GJ!

ところで質問なんだが、スレ的には相手がバツイチっていうのは有り?
310名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 23:50:39 ID:Xt4428lH
新婚やら結婚ならいいんじゃない?
それでも心配なら投下前に注意入れたら?
311名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 23:59:21 ID:rQ4W0Yq8
>>309
問題ないかと
我々は新婚さんを心から愛しているが
過去の出来事や結婚歴などでその美しさが損なわれるとは微塵も思わぬ
我々に必要なのは新婚さんを愛し、慈しみ、祝福し、讃えることだ
故に遠慮など無用。全力で貴殿の作品を投下していただきたい
そしてその内容が私の心を揺さぶるなら、私もその作品に全力で応えよう。GJと


…あ、でも注意書きはした方がいいかもね
312名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 05:34:23 ID:mVFPWw3w
抽象的な話でよくわからん。

まずは読ませてくれ。
それから判断しよう。

・・・させてくれ。

いや、読ませてほしいなぁ、と。










読ませていただけないでしょうか。
313名無しさん@ピンキー:2008/04/03(木) 08:16:49 ID:hdjElLge
>>310-312

ありがとう。
まだ大まかにしか出来てないんだけど、出来たら早速投下させてもらいます。

投下する時も書くけど「妻がバツイチ」っていう設定なんで、アウトな人はスルーしてやって下さい・・・。

314名無しさん@ピンキー:2008/04/06(日) 16:57:43 ID:uLGAfLRZ
>>313
期待してるぜ
315名無しさん@ピンキー:2008/04/08(火) 22:46:35 ID:vHMUrAxd
保守
316名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 11:49:15 ID:tK0TXf6u
317名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 01:15:28 ID:Vs2Gg39Z
鉄仮面と子猫も待ってるよ〜
318名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 22:23:31 ID:WiOqyeLz
フハハ、怖かろう!
319名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 23:25:54 ID:p08hy9sL
機械が言うことか!!

ついでに新婚初夜で妊娠しちゃったとかも見てみたい。

320人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:14:16 ID:Yko+2vaV
可愛い女の子と結婚するのが夢だった。
幸せな家庭を築き上げることが夢だった。
新婚初夜で、妻を妊娠させることが夢だった。
俺のささやかな、子供の頃からの夢だった。

今、俺のすぐ側に、可愛い妻がいる。
顔も性格も良い、素晴らしい妻。
幼き日に夢見た理想の女性が、今俺の隣にいる。
妻は俺の隣に腰掛けて、寝そべっている俺を見て微笑む。
何て、幸せなんだろう。
「私も、幸せです。」
これからきっと、俺と妻は幸せな家庭を築いていけるだろう。そう俺は確信する。
将来産まれてくるであろう俺と妻の子供たちも、きっと可愛いに違いない。
幼き頃の夢。
可愛い女の子と結婚する、そして、幸せな家庭を築き上げる。
この二つの願いは、叶ったのだ。

だが・・・・・・

三つ目の夢は、終に叶わぬものとなった。
321人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:15:00 ID:Yko+2vaV
後に俺の妻となるこの女の子は、素敵過ぎた。
美しく、そして心も綺麗で、優しすぎた。

あの日・・・・・・

楽しいデートの帰り道。
「今日は、すごく楽しかった。」
人気のない暗い夜道を、俺は彼女を家まで送っていた。
「俺も、すごく楽しかった。」
「本当?良かった!」
彼女はそう言っておれの顔を覗き込んで微笑んだ。
「もしかしたら、私だけ楽しんでたんじゃないかなあって、ちょっとだけ心配だったの。」
「そんなことないさ。君と一緒だったし、すごく楽しかったよ。」
君と一緒だったという部分を強調して言ったので、彼女は少しだけ、頬を赤くする。
「もう・・・、そんなに真正面から言われると、照れちゃうよ・・・」
照れた彼女の顔も、すごく可愛い。こんな表情の顔を見せられると、俺の心はもう止まらなくなる。
「いつき・・・」
「!!!」
俺は彼女の肩を抱き寄せ、一気に唇を奪った。
彼女はいきなりな俺の攻撃に身体を強張らせて、じっと俺を見たまま固まってしまう。
やがてその硬直が解けると、彼女は顔を真っ赤にした。
「も、もう!いきなりだったから、びっくりしちゃったじゃない!」
「ご、ごめん・・・でも、俺・・・・・・」
そう言って謝る俺の顔に、彼女は唇を押し付けた。
「お・か・え・し♥」
「あっ、やったなあ〜」
そんな調子で、彼女の家の前に来た。
「ねえザビー。」
「ん?」
俺の親父は宣教師で、そのことから小学校時代に『ザビエル』というあだ名を付けられた。そして、今でも俺はそう呼ばれている。
そして彼女からは、『ザビー』と呼ばれていた。
「あのね、今日、パパとママ、出かけてていないの。ちょっと休んでいかない?」
俺はびっくりして彼女を見た。俺にはまだHの経験はなかったが、その言葉の意味はわかっていた。
ものすごく、ドキドキしている。まさか、こんなにも早く、このような展開になるなんて、思いもしなかった。
「え、ええっと・・・・・・いいの?」
彼女は言葉を返さずに、ただ、首を縦に振っただけだ。それも、顔を赤く染めて。
すると彼女はぎゅっと俺の腕を握ってきた。その潤んだ瞳に見つめられると、もはや拒否はできない。
「わ、わかった。」
「嬉しいな♥」
そして彼女が玄関の鍵穴に鍵を差し込むと、俺はそれだけで勃起してしまう。
(鍵が俺の×××で、鍵穴が彼女の・・・)
そんな下らない妄想をしつつ、俺は玄関に入った。
322人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:16:05 ID:Yko+2vaV
暗い。

彼女の言うとおり、家には誰もいないらしい。
そのまま家の階段を登り、彼女の部屋へと案内される。
「ねえ、シャワーを浴びてくるから、ちょっと待ってて。」
「ええっ?だって、いつき全然汗臭くないし、俺は気にならないよ?」
「私が気にするの!だから、ちょっとだけ、ねっ?」
「うん。でも・・・そんなこと言ったら、俺も相当汗臭いかも。」
「ええっ?そんなことないと思うな。」
そこまで言って、彼女は更に顔を赤くした。
「えっと・・・その・・・一緒に入る?」
「・・・・・・いいの?」
「すごく恥ずかしいけど・・・・・・いいよ。」
俺は耳を疑った。この可愛くて素敵ないつきが、俺と一緒にお風呂に入ると言っている。
もう正常な精神状態にはいられないかもしれない。こんな夢みたいな現実、ありえないと思う。
でも・・・

今、このお風呂場に、俺といつきはいる。
手を伸ばせば、彼女の柔らかい素肌に触れることができる。
彼女は俺と身体を向かい合わせているが、目はまともに俺を見ようとはしない。すごく恥ずかしいのだろう。
今の俺は、何も身に纏ってはいない。文字通りの全裸だ。
だが彼女は・・・タオルを身体に巻いている。
「ずるいなあ。」
「で、でも・・・」
「俺は素っ裸なのに、君はタオルで隠してる。」
「もう、H・・・」
次の瞬間、きた。
彼女の身体から、タオルが消える。後に残ったのは、数多の肌色。
手を伸ばせば届く距離に、彼女のあられもない姿がある。
「あ・・・」
彼女の程よく実った、柔らかいその胸を、俺の手が触る。
「す、すごい・・・・・・」
母ちゃん以外の女の人の胸を触るのなんて、これが初めてだ。想像以上の、そして予想以上の柔らかさ。
俺は欲張りだ。こんなに柔らかい彼女の胸を、彼女の身体を、もっと身近に、思う存分堪能したい。
俺はそんな彼女の裸体をぎゅっと抱きしめる。これで一気に、彼女の柔らかく、そして暖かい身体を、思う存分堪能できる。
すると彼女は俺の耳元に囁きかけてきた。
「ザビーって、思ったよりもたくましいね。」
「思ったよりもって、どういうことだよう。」
「うふふ。だってあなたって、見た目痩せ型だし、何となくひょろっとしてるのかと思ってたから。」
「そんなことないだろう。」
「うん。たくましくてかっこよくて、私の理想の男性。」
そしてここで会話は途切れた。俺の唇が、彼女の唇を塞いだからだ。
その瞬間、彼女の鼓動が、素肌越しに大きく響く。ものすごく、興奮している。
それに釣られるかのように、俺の鼓動も大きく共鳴している。
今までの俺たちの関係は、仲の良いお友達以上恋人未満の関係だった。
でも今、この瞬間に、それは変わる。
恋人、そしてそれ以上の関係に。
323人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:16:33 ID:Yko+2vaV
俺は変わってしまってもいいと思っている。だが、彼女はどうだろう?
「いいかな?」
俺は彼女との関係の変化の受容を彼女に求めた。すると彼女は・・・・・・無言で頷いた。
次の瞬間・・・彼女は瞳を閉じた。
彼女の身体が、お風呂場のマットの上に横になる。そして・・・彼女の両足が大きく開かれた。
再び彼女は目を開けた。その瞳は、真っ直ぐに俺の顔を見ている。
彼女はもはや、身体を隠そうとはしない。ただじっと、不安そうに俺を見ている。
いつき・・・・・・怖いのかな?
いや、違う。彼女の不安は、怖さではない。俺が、彼女の身体を受け入れてくれるかどうかの不安。おそらくそうだろう。
だがその種の不安は、俺にもある。果たして彼女の身体が、俺を受け入れてくれるかどうか。
でも、やってみないことにはわからない。それをしないことには、お互いに相手の身体を受け入れられるかどうかなんてわからないだろう。
でも、予感はする。多分、大丈夫だ。何となく、勘でわかる。
「・・・・・・怖い?」
「ちょっと。でも・・・・・・私・・・・・・」
俺は驚いて彼女を見た。彼女の身体が・・・・・・光り輝いている。
その瞬間、俺は理解した。彼女の髪の毛の先っぽから、足のつま先に至るまで、彼女の身体のすべてが、俺を求めている。
怖いのは確かだろう。だがそれ以上に、俺を求めている。
俺は彼女の身体に覆い被さった。そしてその開かれた両足の間に、俺の腰を滑り込ませる。
そして、俺の先っぽが、彼女の女の証に触れた。
その場所は、紛れもなく、膣だ。
男と女の、生殖器。これを男女がお互いに交わすという行為には、意味がある。
この瞬間、俺と彼女はお友達ではなくなってしまう。それ以上の関係になるかもしれない、歴史的な瞬間。
だが、最悪の場合、俺と彼女は破局を迎えることになってしまうかもしれない。その意味では、まさに俺と彼女の、生涯の分岐点。
でも俺は、このまま止めてしまって、その後もずるずるとお友達でいようなどとは思わないし、彼女もおそらくそれは望んでいないはずだ。
324人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:17:28 ID:Yko+2vaV
運命の一瞬。

それは唐突に訪れた。
俺も、まさか今日この場所で経験するとは思わなかった。
彼女は一瞬だけ、顔を歪めた。
多分、痛いはずだ。その証拠に、血も出ている。だが、俺のいきり立った性欲は、もう抑えが効かない。
一瞬にして、俺の性欲の塊は、彼女の奥深くに滑り込んだ。
「・・・痛かった?」
俺はそう言って彼女の顔を見た。おそらくまだ処女だったのだろう。彼女の瞳は、少しだけ涙に潤んでいる。
「うん。」
「ごめん、今抜くよ。」
俺は彼女を気遣ったつもりでそう言った。だが彼女は、俺の言葉に不快感を示した。
「嫌!」
「いつき?」
「だって、ずっとずっと憧れてたんだもん!本当に好きな人と、こういう関係になるって。」
「いつき・・・」
「だから・・・私、幸せだよ♥」
まだ痛そうだけど、彼女はにこっと微笑んだ。本当に、幸せそうな顔をして。
「いつき・・・・・・俺も、すごい幸せだ。」
幸せだし、気持ちもいい。それに、なぜか安心感もある。彼女の柔らかく暖かい身体が、俺を包み込んでいる。
俺はそのまま、彼女をぎゅっと抱きしめた。もう逃がさない。誰にも、渡すもんか!
まさに、俺のためだけに生まれてきてくれた、唯一の女性。
俺の生涯をかけて愛する、それだけの価値のある女性。
その女性が今、ここにこうしている。
彼女だけ、いてくれればいい。
これが、愛してしまったということなのだろうか。おそらくそうだろう。
今、俺と彼女は一つに結ばれている。
二つの心音が、お互いに共鳴し合っている。
そのハーモニーの、天上の響きが、俺たち二人に祝福を与えてくれる。
そして、俺たちの鼓動に合わせて、二人の魂も共鳴しあう。
その先には、彼女の身体の奥底に眠っている、母性。
それを目覚めさせるべく、俺の身体から、数多の鍵が流れていく。
彼女の今だかつて目覚めたことのない、母の自覚を呼び起こすために。
325人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:18:08 ID:Yko+2vaV
「大好き・・・だよ・・・♥」
行為が終わって横になる俺の顔を覗き込んで、彼女はそうつぶやいた。
彼女の身体も、そして心も、既にお友達を卒業している。
結ばれるか、別れるか。その最大の難関を、俺たち二人は手を取り合って乗り越えた。
この先、俺と彼女には、様々な難関が待っているだろう。
でもきっと、彼女と一緒なら、上手く乗り越えていける。俺にも、そして彼女にも、その自信はある。
だが、乗り越えるには、体力と英気を養わなくてはならない。
さすがに今日は疲れた。彼女もそんな俺の事情はわかっているみたいだ。
「ねえ、一緒に寝よ?」
俺は何も言わずに頷いた。
どんな難関も、彼女と一緒に乗り越えてみせる。

だが、最初の難関は、すぐにやってきた。
俺と彼女は、彼女のベッドに入って、すぐに眠ってしまった。
そして翌朝、彼女の両親が帰ってきて、俺たちの寝ているベッドを見るまで、俺たちは目を覚ますことがなかった。

それから時が過ぎ・・・・・・

今こうして、彼女は俺の側にいる。
あの時結ばれたいつき。彼女はそのまま、俺の妻になった。
一つ目の夢。可愛い女の子と結婚する。この夢は叶った。
二つ目の夢。幸せな家庭を築き上げる。これも、多分大丈夫だ。彼女と一緒なら。
だが、三つ目の夢、新婚初夜に彼女を妊娠させる、それはもはや叶えられぬものとなった。
今、俺の隣で微笑むいつき。
彼女のお腹は今、大きく膨れ上がっている。
俺たちが結婚したその夜、妻のお腹は既に大きくなっていた。
あの日に、彼女は妊娠してしまったのだろう。お腹の子供の成長具合から逆算しても、辻褄が合う。

でも、それでいい。
三つ目の夢など、もうどうでもよくなっていた。
今こうして、俺の隣にいつきがいる。
「あっ、今、赤ちゃんがお腹を蹴ったわ!」

おしまい
326人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/14(月) 23:21:16 ID:Yko+2vaV
よく考えたら、結婚前のHだな。申し訳ないorz
327名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 00:13:05 ID:z3stjQ5F
だみゃ〜んがネタも何も仕込まれてない普通の作品を書けるなんて……

でも良い話だ
328名無しさん@ピンキー:2008/04/15(火) 02:21:54 ID:8cRaT0BF
なぜ名前が戦国バサラw
329名無しさん@ピンキー:2008/04/16(水) 21:37:36 ID:NudcdCle
ちょw
どんなオチがあるんかと構えて読んでいたら。
GJ!
330名無しさん@ピンキー:2008/04/16(水) 21:57:12 ID:JRDsnrPK
にやけながら読んだよ!
超GJ!!
331名無しさん@ピンキー:2008/04/17(木) 19:14:13 ID:0fjgaEqx
バロスwww
洩れも身構えながら読んでたw
GJ
332名無しさん@ピンキー:2008/04/18(金) 16:16:41 ID:MS8DzcvV
俺もどんなネタがくるか覚悟してたのにw
だみゃ〜ん氏GJ!
333人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:00:16 ID:Yh432tHR
昔、他のスレに投下した作品を、このスレ用に書き直してみた。
334人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:00:56 ID:Yh432tHR
とん、とん、とん、とん・・・・・・

まな板を包丁が叩く音が、心地よく響いている。台所の流しの前では、妻が形の整った素晴らしいお尻をフリフリしながら、鼻歌まじりで夕食を作っている。
やや長めのピンクのスカートに、上は薄い茶色のセーター。そして、やはりピンクのフリルの付いたエプロンを身に着けている。
そんな妻の後姿を眺めながら、私は実感する。
(結婚、したんだなぁ)
正直、まだ実感は湧かない。
小さな頃から、女の子とは無縁で、付き合ったことなどなかった。もちろん、ずっと童貞だった。
ここだけの話、妻との初夜が、私の童貞の卒業式だった。
私は元々容姿には自信がなかったし、周囲からもそう見られていたのだろう。
共学の学校に行っていたにもかかわらず、異性から告白されたことは一度もない。
周囲の男友達が次々に彼女を作ったり、そして童貞を卒業したりしていく中で、私一人だけがずっと取り残されていく・・・そんな感じがしていた学生時代。
もしかしたら、このまま一生、女に縁がないままなのかもしれない。私はずっとそう思っていた。
だから、今この目の前の風景が、未だに信じられない。私の目の前で、妻となった女性が、私に夕食を作ってくれている。

妻と初めて出逢ったのは、一年ほど前だった。
25の年になるまで、私は女性と付き合ったことがない。それだけではなく、私は風俗にも行ったことがなかった。
「信じらんねえな。普通、この年だったらとっくに童貞卒業しているだろ。」
周りの友達は揃って、皆そう言う。だが、厳格な警察官だった父の影響を受けたのか、私は風俗に行くことができなかった。
何となく、そういったものに汚らわしさを感じていたのかもしれない。お金を払って性交をすることに、抵抗があったのだろう。

結局、彼女もできず、風俗にも行かないため、私の童貞は永遠に続くかと思われた。
だが・・・・・・
335人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:01:38 ID:Yh432tHR
それから一年。
今私の前に、可愛い妻がいる。私と同い年で、誕生日も近かった。三日ほど、彼女が早いだけだ。
もちろん、性交も経験した。初めての経験。
あんなに気持ちよかったとは、思いもしなかった。周囲の友人が、金を払ってでも風俗にはまるという理由が、わかる気もする。
だが私は、今に至るまで風俗には行っていない。やはり金銭で性交渉をするのには、抵抗がある。
まあ今は、そんなことよりも、目の前の可愛い妻の姿を、存分に堪能しようと思う。
「ふんふんふ〜ん♪」
妻の楽しげな鼻歌が、私の耳を心地よくくすぐる。容姿もさることながら、声も可愛い。
「良実。」
「なあに?」
私が声をかけると、妻は振り返った。その可愛い顔は、さながら芸術品のようだ。
「私のほっぺをつねってみてくれ。」
すると妻は私のところにやってきた。そして・・・・・・

むぎゅ〜っ!!!

「い・・・いててててて!」
「ご、ごめんなさい!だってあなたが・・・」
「いや、いいんだ。」
「でも、いきなりほっぺをつねれって、どうしたの?」
「いや、何でもないんだ。」
「・・・・・・変なの。」
そう言って、彼女はくすっと笑った。
ともかく、これで証明された。これは夢じゃない。現実なんだ。
可愛くて、素晴らしい妻を迎えたという、素敵な現実。
去年の今頃には、思いもしなかった、環境の変化。
「さあ、ご飯ができたわよ〜」
妻の声が響いた。今日のメニューは、肉じゃがだ。
「おっ!おいしそうだな。」
「そう?ちょっとだけ、自信作なの。」
妻はちょっとだけ照れた。やはり褒めると、それなりに気分はいいらしい。
「いただきま〜す!」
そして私と妻は席に着いて、夕ご飯を始める。のどかな日曜日の、ささやかな幸せのひと時。
自信作だけあって、妻の肉じゃがは美味しい。よく、雑誌とかに載っている、夫が妻に作って欲しい料理とかの一位に肉じゃがが入っていることが多いけれど、何となくわかる気がする。
現に今、私はこうして妻に肉じゃがを作ってもらっている。このことの、何と幸せなことか。
336人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:02:17 ID:Yh432tHR
一年前・・・・・・

私たちの出会いは、とある料亭で行われた。
ドラマチックな突然の出会いではなく、意図的に計画して行われたものだった。
親戚のおばさんに、すごく世話好きな人がいて、今回の話もおばさんから紹介されたものだった。
いわゆる『お見合い』。
そして料亭で、彼女との初対面が行われた。
初めて見た彼女の印象は、絶世の美女というわけではないけれど、かなり可愛い人。
そして私は直感的に感じた。
(この人が、私の将来の妻だ)
そう考えた根拠は、今となってはわからない。おそらく、本能的に、相性の良さを感じていたのだろう。
結果的に、その直感は間違っていなかったことになる。
そういえば、彼女も言っていた。
初めて見た瞬間、あなたが私の夫になる人だと感じたと。
よほど相性がいいのだろう。これほど相性のいい人とは、もう二度と出逢えないだろうと思う。
妻とは、一生仲良くやっていきたい。心の底から、そう思う。

「ふう〜食った食った。」
「すご〜い!ご飯三杯も食べちゃうなんて!」
「それだけおかずが美味しかったからだよ。」
「うふふ。ありがとう。おそまつさまでした。」
「おそまつなんて言わないでくれよ。君の料理は絶品なんだから。」
「もう、褒めすぎよ!」
そう言って、妻は恥ずかしがる。だが、私は嘘は言っていない。すごく美味しかったし、妻の愛情もビンビンと伝わってきた。
「じゃあ、お片づけしようか。」
「えっ?い、いいのよ?私の仕事だから。」
「いや、自分だけ食べてごろごろしてたら、怠け者になっちゃうからね。」
「そ、そう?でも・・・・・・」
そう言って戸惑う妻を、私は抱きしめてみた。
「君のために、お手伝いしたいんだ。」
「ありがとう・・・・・・大好き♥」
337人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:03:25 ID:Yh432tHR
そんな感じで台所の後片付けを終えると、妻が待っていた。
「お疲れ様でした。」
「どうしたの?」
「えっとね・・・・・・一緒にお風呂に入ろうかなって・・・♥」
途端に私はドキドキする。そういえば、新婚初夜のときも、こんな展開だったなあ。
あの時、私は思わずのぼせてしまい、鼻血を噴いて倒れた。
無理もない。女の人の裸なんて、母親以外見たことなかったから。
「きゃー!しっかりしてー!」
彼女は私を抱きかかえながら、一生懸命介抱してくれた。
いい年をした男が、みっともない。だが、童貞男、しかも堅物の男にいきなり女性の裸なんて、初期症状の患者にいきなり劇薬を与えるようなものだ。
で、今、妻の裸が目の前にいる。
さすがに鼻血ブーはおこらなくなったけれども、興奮は収まらない。
「まあ!」
私と妻、正面から向かい合っている。そのため、私のモノが、彼女の目の前にあることになる。
私のそれは、ギンギンにいきり立っている。無理もない、可愛い女性の裸が、目の前にあるのだから。
妻はそれを、愛しそうに撫でている。もちろん、私は気持ちいい。
「あの時・・・・・・」
そうつぶやいて、彼女はぽっと顔を赤らめた。
「どうしたの?」
「ううん、何でもないの。ただ、あの時のことを・・・思い出しちゃって♥」
「あの時?」
「うん。」
「あの時・・・・・・初めて、私の中に・・・・・・もうっ!恥ずかしいじゃない!」
そう言って妻はぱしっと私のモノを叩いた。
「い、痛いなあ!」
「ご、ごめんなさい!」
あの時って・・・・・・いつだろう?私との初夜のことだろうか?
それとも・・・・・・
「でも・・・・・・未だに信じられない。こんなに大きなモノが、私のここに入ったなんて・・・・・・」
そう言って妻は、自分の股間を見る。そしてすぐに、私のモノを見た。
「よく入ったなあって思うわ。だって私・・・・・・初めてだったから。」
「えっ?そうなの?」
「うん・・・・・・私、男の人となんて付き合ったことなかったから。」
「そうなんだ。こんなに可愛いのに、ちょっとだけ勿体無い気もするなあ。」
「お父さんもお母さんも、すごくしつけが厳しくて。でも、そのおかげで、こうしてあなたと出逢えたし、私、すごく幸せ。」
「私もだよ。」
妻のあまりの可愛さに、私は妻をぎゅっと抱きしめる。
「あ・・・・・・」
妻の心臓が、すごくドキドキしている。彼女の興奮が、私の身体にも伝わってくる。
「君を、抱きたい。」
「もう抱いてるじゃない。」
「あ、あのね、そういう意味じゃなくて・・・」
「うん。わかってるよ。何となく言ってみたかっただけ。」
そして妻は私のモノをひっきりなしに撫で回してくる。間違いない。妻は私の身体を求めている。
初めての夜から、まだ数日しかたっていないのに、こんなにもお互いの身体を求めている私と妻。
こんなにも相性にいい相手なんて、世界中探し回っても、他には誰もいないだろう。
良くこんな相手を見つけられたものだと、つくづく思う。
338人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:03:51 ID:Yh432tHR
「良実・・・」
「良実さん・・・」
結婚届を提出した際、役所が一時パニックに陥ったことを覚えている。
結婚する夫と妻が、同じ名前だからだ。
但し、読みは違う。妻は良実(よしみ)で、私は良実(よしざね)だ。
まあそれはともかく、今、二人はすごくいい雰囲気になっている。
「良実・・・・・・ここでする?」
私が聞くと、妻は首を左右に振った。
「私は・・・・・・ベッドの上がいいな。」
彼女の返答に、私はこくっと頷いた。

私と妻は、身体を拭いた後、そのままベッドに移った。
妻の柔らかい肌。まさに『柔肌』という表現がぴったりだ。
何でこんなに柔らかいのだろう。生物学的には、お腹の中の子供を守るために、脂肪が付き易くなっているとのこと。
それに対して、男の身体が硬く逞しいのは、大事な家族を守るために、筋肉が付くからだろう。
私も、妻も、その理論に合致した身体になっている。
そんな私の思考を遮るかのように、妻は話しかけてきた。
「あのね、お父さんがね、早く孫の顔が見たいって。」
「そうなんだ。良実はどうしたい?」
「私はね・・・まだちょっと早いかなって思うの。もう少し、二人きりでいたいな♥」
子供か・・・・・・夢のような夫婦の二人きりの空間に突然出現する、現実的な問題。
私たちにとっては夢のような空間であっても、産まれてくるであろう子供たちにとっては、そうではない。
現実的な世界の中で、きちんと教育する義務もあるし、立派な大人に育てていく責任もある。それは大変なことだ。
もうしばらくは二人きりでいたいというのもわかるが、私にとっては、それは面倒なことを先延ばしにしようという、いささか卑怯な考えにも思えた。
「でもね、私はあなたが欲しいっていうなら、かまわない。」
妻は可愛い、しかし真剣な眼で私の顔をじっと見つめた。
その妻の顔を見て、私は答えた。
「子供を、作ろう。」
そう答えた私に、妻はにっこりと微笑んだ。
「はい。」
極上の、妻の微笑み。
可愛くて、そして愛しくて仕方がない。
私はそのまま、彼女に覆い被さるようにして、妻をベッドの上に寝転がせた。
「きゃっ!ああん!」
いささか乱暴だったかもしれない。だがそれほどに、私は・・・・・・妻を求めている。
そして、私と妻は、いよいよ・・・・・・
339人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:04:38 ID:Yh432tHR
ギシギシアンアン
340人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:05:04 ID:Yh432tHR
「はあ、はあ、はあ・・・・・・」
私は、彼女の奥底に精一杯の精を放出した後、彼女の真横にうつ伏せに寝転がった。
まるで、私の全てが、彼女に一気に放出されたみたいだ。
もう力が入らない。肩で荒い息をしながら、私は仰向けに姿勢を変えた。
その横で、妻も荒い息をしている。その瞳は、真っ直ぐに私を見つめていた。
妻の瞳が、潤んでいる。
「はあはあ・・・大好き・・・はあはあ・・・♥」
「・・・・・・これで、赤ちゃんできたかな?」
私は妻に、そう聞いてみた。
「うん。多分。でも・・・・・・」
すると妻は起き上がり、私の顔を覗き込んで言った。
「心配なら、もう一回する?」
341人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/04/20(日) 21:05:37 ID:Yh432tHR
ギシギシアンアン

おしまい
342名無しさん@ピンキー:2008/04/20(日) 21:14:02 ID:apkZ6Nle
GJ!!
GJ!なんだけど、なんだ、その、うん……
ありがとうだみゃ〜ん氏w
343名無しさん@ピンキー:2008/04/20(日) 23:12:53 ID:77y2Zilo
ああ、これがだみゃ〜んなんだよな、と安心してしまった自分がいるw
344名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 00:08:02 ID:izcVAY3h
ああ。
だみゃ〜んだ。
345名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 01:42:34 ID:J2qBwZ0x
>>399
>>341
バロスwww
GJ・・・として置こうか
346名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 14:43:09 ID:622Wq10s
読みながら、どこで笑わせてくれるか期待していた俺がいる
まさかの半角一行レスにフイタ

素晴らしい、GJだ
347名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 02:37:03 ID:pwXXYifB
鉄仮面と子猫の作者です。
夫婦の馴れ初め編を書いてると予告してたんですが、
書いてる途中、あまりにも長い&エロが少ないんで、
投下するのがなんか申し訳なくなりまして。
とりあえず、エロあり短編を勢いで書き上げてみたので
保守がてらに投下させてもらいます。
本編は来週あたり投下できたらと思いますが、
スレチだったら追い出してやって下さい。
348鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:37:48 ID:pwXXYifB
「お帰りなさい、お疲れ様でした」
仕事から帰ってきた夫を、玄関で出迎えた中嶋雪子(24)は、
夫の手に、鞄以外の何やら青い袋のようなものが握られているのを見て、
ひどく嫌な予感を感じた。
雪子の12歳年上の夫、いついかなる時でも恐ろしく無表情・無愛想・無口であり、
同僚からは鉄仮面の異名をとる中嶋貴巳氏(36)は、
いつものように笑顔一つ見せずに鞄を下ろし、着替えをすると食卓に向かう。
ただ1点いつもと違うのは、彼の手に握られている、レンタルビデオ店の袋だった。
恐る恐る、雪子が訊く。
「貴巳さん………何か、DVD借りてきたの?」
リビングに向かう廊下を歩いていた貴巳が、銀縁の眼鏡をキラリと光らせ、
雪子を振り返る。

「今日は…………『子ぎつねヘレン』だ」
349鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:38:27 ID:pwXXYifB
「へ、ヘレン〜〜〜〜!!!!」
テレビの前の床にぺたんと座り、雪子は結局、滝のような涙を流している。
食事が終わり、後片付けをしている間じゅうずっと、
(今日は泣かない!今日は絶対、絶対泣かない!!!)
と自分に言い聞かせていたのにも関わらずである。
貴巳はというと、テレビの画面には目もくれず、ひたすら妻の泣き顔だけを凝視してい

る。
その鉄壁の無表情が、すこしだけ楽しそうな色を帯びていることに気づくものは、
妻である雪子以外にはいないだろう。
映画はクライマックスに向かい、雪子はもう涙で画面がよく見えない。
そもそも雪子は動物だの子供だのが出てくる、いわゆる感動のストーリーというやつに
滅法弱いのだ。
過剰なほどに登場人物に感情移入してしまう。物心ついたころからそうだった。
登場人物と一緒に笑い、泣き、喜び、心配し、嘆き、
映画のエンドロールが終わるころには、
雪子の横に置かれた箱ティッシュは半分ほど消費されていた。
「もう終わったのか」
何事も無かったかのようにDVDの電源を切る夫を、雪子はしゃくりあげながら睨む。
「…貴巳さんっ、人がっ…泣いてるとこ、見て、ふぇっ…そんな、楽しい?」
「楽しいな」ちっとも楽しそうな表情ではないが、真顔できっぱりと断言する夫の顔を


雪子はうらめしそうに見た。
「貴巳さんは、ちょっと…変だと、思うっ」
「どこがだ?妻の顔を見て喜ぶ夫。これ以上健全なものはないだろう」
「喜ぶ顔ならともかくっ、泣き顔見て、よろこぶって、やっぱり変だよう」
「悲しんで泣いている訳じゃないんだからいいだろう」
「悲しんでるってばっ!!!へ、ヘレンがっっ、へレンが〜〜〜」
「大丈夫、あれはただの演技だ」
「そういう問題じゃないっ!」
反論するのも疲れて、雪子はぐったりとソファに沈み込む。
月に一度くらい、夫はわざわざ雪子のツボに嵌るような映画のDVDをレンタルしてき

て、自分はちっとも興味がないくせに二人で見ようとするのだ。
先月は「クイール」、その前は「ベイブ都会へ行く」、それに「フリーウイリー」
「南極物語」「いぬのえいが」と新旧取り混ぜて探し出してくる。
更にその前は、雪子の大の苦手であるホラー映画を見せて楽しそうにしていたのだが、
「SAW」を見せられた後に、雪子が丸3日というもの口をきかなかったのが流石にこ

たえたのか、それ以来は動物モノ一本やりだ。
ホラーと違って、もともと嫌いではないし、つい見てしまう自分も甘いとは思うのだが

350鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:39:04 ID:pwXXYifB
隣に座る夫に目をやると、相変わらず興味深げな視線を自分に向けている。
「…そんなに面白い?」
うらめしげに訊くと、鉄仮面はきっぱりとうなずいて言う。
「ああ、雪子ほど面白いものは無い」
「それって褒めてないでしょ…」
「そんなことはない」
会話に気を取られていて気づかなかったが、いつの間にか夫は、
ソファに座る雪子に半身覆いかぶさるようにして、首筋に唇を寄せている。
暖かい吐息が耳にかかり、思わずぞくりとした雪子は、慌てて貴巳の身体を押しやろう

とした。
「ち、ちょっと貴巳さん、何してるのっ」
「見てわからないか?」
「わかるけどっっ!なんで、今此処でなのっ」
貴巳の手は休むことなく、いつの間にか雪子のブラウスの下に入り込み、
下着の上から乳房をやわやわと揉みはじめている。
「ベッドの方がいいか?」
「…っそうだけど…そうじゃなくてっ!場所の問題じゃない…ん、だって…ばっ…」
そうこうしている間にも、貴巳の手は巧みに下着のホックを外そうとうごめいている。
「やだっ…明るくて、やなの…」
涙目になりながらそう訴えると、突然雪子の体がふわりと持ち上げられた。
「きゃ、やっ…なに?怖いっっ」
「怖いなら暴れるんじゃない。落ちるぞ」
「頼むからっ、やる前にやるって言ってよぉっ!」
いわゆるお姫様抱っこ、という奴だ。
いくら雪子が小柄で軽いとはいっても、そう簡単にできることではないはずだが、
貴巳は大して苦労している様子もなく、平然としている。
しかし、背の高い貴巳の胸の高さまで持ち上げられると、抱かれるほうは結構怖い。
雪子が夢中で貴巳の首にしがみついているうちに、貴巳は細身の見かけによらぬ怪力で
階段を登り、寝室のベッドの上に雪子の身体を横たえた。

雪子が安堵の溜息をつく間もなく、貴巳の手と唇が、先程より激しく雪子の体の隅々を

襲う。
ブラウスのボタンが、目にも留まらぬほどの速さで外される。
スカートは雪子も気づかぬうちに脱がされており、皺にならぬよう簡単に畳まれて
ベッドサイドに置かれている。
恐ろしく手際の良い夫に、雪子は抵抗するのも忘れ、半ば呆れながら感心していた。
(貴巳さんって仕事もできるけど、こんな時にまで無駄に手際いいなぁ…)
ぼんやりそんな事を考えていると、頭を押さえつけられ、力強く唇を奪われた。
「んむっ…ふ、あっ…」
被さるようにして唇を吸われ、舌でなぞられる。
息が苦しくなってきて唇を開くと、喉の奥まで犯そうとするかのように、
貴巳の舌が絶妙な動きで進入してきた。
快感と息苦しさで雪子が身もだえすると、ようやく貴巳は唇を離した。
ぷはぁ、と息をつく雪子の顔は、既に真っ赤に上気している。
「今、他のことを考えていただろう」
「え?」見つめる貴巳の顔は、相変わらずの無表情である。
「集中しなさい」
「そ、そんなこと言われても…」先程から雪子の予想もしない展開の連続なのだから、
それは無理というものだ。
「…無理なら、嫌でも他のことを考えられないようにするぞ」
「…え?」言葉の意味をよく考える間もなく、雪子の意識は快感に霞み、飛んだ。
351鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:40:00 ID:pwXXYifB
貴巳は、雪子の柔らかな桜色の唇を舐めあげ、強引に舌を割り込ませた。
おののくように震える舌を吸い上げ、縦横無尽に口腔を犯す。
そうしている間にも、指はぬかりなく雪子の下着を剥ぎ取っている。
激しいキスを続けながら、既に息が上がっている雪子の、
唇と同じ桜色の乳首を指でつまんで転がす。
「んんんぅっ…ふぁっ、あ、んんっ」
息苦しさから、雪子は唇からのがれようとするが、貴巳はそれを許さない。
交じり合った唾液が、二人の唇の端から伝い落ち、妖しげに糸をひいて光る。
じゅぶじゅぶと濡れた音が、更に二人の官能をかきたてていく。
暗闇の中でさえ、雪子の肌はそれ自体が光っているかのように、白い。
シーツの上で艶かしく震える雪子の身体。
撫でさする乳首は既に硬く勃ちあがっており、細い腰が物欲しげにのたうっている。
雪子が本気で苦しそうな様子なので、ようやく貴巳は唇を離した。
「ぷはぁ………っ…はぁっ…はあっ…」
口の端から涎を垂れ流しながら、肩で息をする雪子の表情が、ひどく艶っぽい。
「…苦しかったか?」
「あ、たりまえ、でしょっ…」涙目で恨めしそうに、雪子が言う。
「ふうん…ならこれはどうしたんだ?」
貴巳が、前触れなく雪子の秘所に指を這わせると、
細い腰がびくん、と痙攣した。
秘裂は既に十分に潤み、割れ目をなぞる貴巳の指に絡み付いてくるようだ。
ひくひくと物欲しげに収縮を繰り返す入り口を、焦らすように指でなぞりあげる。
「や、あうんっ…あああんっ!」
「苦しいとこうなるのか?」
貴巳が意地悪く言うと、雪子の頬がこれ以上ないほど真っ赤に染まる。
「た、貴巳さんの、ばかっ…」
「馬鹿で結構」
きっぱりと言い切ると、貴巳は本格的に雪子の身体を追い込むことに没頭しはじめた。
小ぶりで可愛らしい乳首を、舌のざらざらした部分で激しく舐めあげる。
同時に指は、包皮の上からクリトリスを摘まみ、小刻みに擦るように刺激する。
二箇所を執拗に責め続けると、雪子の口から悲鳴のような嬌声が漏れた。
「あああああんっっ!ダメ!さきに…っ、いっちゃうよぉぉ!!」
「我慢しなくていいぞ」
「そ、んなぁ…っっ…あっあっあっあぁぁぁ!!いくぅ、っっっ!!」
身体を弓のようにのけぞらせ、雪子は最初の絶頂に達した。
「はぁ…はぁ…」快感の余韻に震える体を鎮めようと、雪子が深い息をつくが、
貴巳はその暇を与える気は無い。
間髪いれずに、濡れ光る秘所に唇を寄せ、舌でクリトリスをつつくように愛撫すると、
雪子の身体が面白いように跳ねる。
「ひゃ、ああああ!!だめっ………イッてるのに!イッてるからだめぇっあああ!!!


発情する雌の匂いが、雪子の秘部から湯気のように立ちのぼっている。
溢れる蜜を舌で塗りたくるように、ヒダの隅から隅まで激しく舌を動かし、
舌で包皮をめくり、中の勃起している実に軽く歯を当てるようにして刺激する。
「ああああああ!!!やめ、てぇっ…また………っっっ!!」
達してもなお続けられる激しい愛撫に、二度目の絶頂はすぐにやってきた。
が、貴巳は、なお容赦なく秘所を責め続ける。
「ひ、あぁぁ…あんっああああんっ、も、もぉ…ゆるしてぇっ!!あーーーっ!!」
強すぎる快感から逃れようとする雪子の腰を、力ずくで押さえつけ、
貴巳の舌は更に激しく、雪子の秘裂を上下に行き来する。
「いくっ………またいく!ダメっ…ああああもう、らめぇぇぇぇ!!!」
雪子の瞼の裏で白い光がはじけ、愛液がびゅくびゅくと音を立てて噴出す。
352鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:41:18 ID:pwXXYifB
連続して高みに上り詰めさせられ、快感に蕩けきった身体は、
日ごろの慎ましい雪子が別人であるかのように、歯止めがきかなくなっていた。
「ひっ…ああああん!きもち、いいよぉぉぉ…っ!」
無意識のうちに、雪子は貴巳の腰に自らの秘部をこすりつけるようにする。
(欲しい………なかに、ほしいよぉ………)
理性はすでにどこかに吹き飛んでおり、雪子は一匹の雌として、
ただ目の前の夫の肉棒を貪欲に欲していた。
そんな雪子の痴態を目前にして、貴巳のモノも既に硬くはりつめていた。
が、理性の崩壊寸前の雪子とは違い、彼はまだ冷静さを失ってはいなかった。
熱にうかされたように、必死で貴巳の剛直を求める雪子の腰を両手で掴み、
ぱくぱくと物欲しげに口を開けている秘部を、自らのそそり立つ竿で刺激する。
大量の蜜が潤滑油の代わりとなり、充血しきっているクリトリスを責めさいなまれ、
雪子が悲鳴をあげた。
「やぁぁぁんっ!あふぅっ…それ、だめっ………!!!また、いっちゃうぅぅぅ」
敏感になりすぎた秘部は、僅かな刺激にもあっさりと絶頂を迎えそうになるが、
ぎりぎりのところで、貴巳のモノはぴたりと動くのを止めた。
「や、あん…なんでぇ、っ……?」
中途半端に放り出されてしまった雪子の身体は、貴巳を求めて熱くひくついている。
自分から腰を動かし刺激を続けようとするが、腰を抑えられ、それもままならない。
(……どうして、してくれないの……?)
「……欲しいか?」
意地悪く訊く貴巳は、心なしか楽しそうだ。
しかし、夫の僅かな表情の変化に気づけるほど、雪子には余裕が無い。
「……っ、知ってる、くせにっ……」
「きちんと言ってくれないとわからないな」
「そんなの……うそ……っ」
気が遠くなるほどのもどかしさに、雪子はいやいやをするように首を振り、悶えた。
「……仕方ないな」
待ち望んだ、貴巳自身の先端が、雪子の陰唇をくちゅり、と掻き分ける。
雪子はようやく満たされるという期待に打ち震え、ただ夫の肉棒が自分の内部を
犯すのを、目をつぶって全身で待ちわびていた。
が、いつまで経っても、待ち望む快感は与えられない。
貴巳の先端は、雪子のマ○コの入り口にただあてがわれているだけで、
一向に中に進入してこようとはしないのだった。
「や、やだっ………なんでぇ?」
待ちきれずに目を開けた雪子は、貴巳の目が実に楽しそうな色を帯び、
自分の痴態をつぶさに観察していることに気づいた。
(やだっ………ずっと、見られてたの……?こんな、恥ずかしい顔っっ)
途端に、快感のあまり遠のいていた恥ずかしさが一気に押し寄せ、
雪子は両腕で自分の紅潮した顔を隠そうとした。
が、その両手はいとも簡単に貴巳に捕らえられ、何一つ隠すことのできないよう、
貴巳の両手で枕元に押さえつけられてしまった。
「やだぁ……っ!」
「さっきからそればかりだな。本当に嫌なのか?」
「だ、だってっ……は、はずかしい、よぉ」
触れ合っている貴巳の先端が、ひくりと震える。
貴巳も既に我慢がきかないほど昂ぶっているのだが、
その鉄仮面からは伺い知ることは難しい。特に、今の雪子にとっては。
「好きだろう?恥ずかしいの」
「す、好きじゃないもんっ!!貴巳さんの、ばかぁっ!!!」
「それはさっき聞いた」
「何回言っても足りないのっっ!!貴巳さんの馬鹿っ!変態!エロおやじっっ!!」
「変態は撤回してもらおう」
それ以外は当たってるのか、と突っ込む余裕は、今の雪子にはない。
353鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:41:54 ID:pwXXYifB
真っ白な、きめ細かい肌は全身くまなく朱に染まり、
日ごろ優しげな瞳は快感に蕩け、涙で潤んでいる。
そんな様子をしげしげと眺めている貴巳が、
ぐちゅ、と先端でマ○コの入り口をこすりながら、耳元で囁く。
「言えよ…どうしてほしいか」
「や、やだぁ………っ」
「言わないと、ずっとこのままだぞ?」
「あ………はぁ、っ………」
雪子の秘部は疼き、貴巳自身を求めて、愛液をとめどなく溢れさせている。
「素直になりなさい…楽にしてやるから」
とっくに我慢の限界を迎えた雪子にとって、それは甘い甘い、悪魔の囁きだった。

「やじゃない…はずかしいのも、好きなのぉっっ………
…して………いれて……おねがいっ……」

ずぶり、と音がして、衝撃のあまり、雪子は一瞬意識が遠のいた。
貴巳が、いきなり根元まで剛直を突き立てたのだ。
「ひゃ、あああああぅぅぅん!!あああああああああああーーー!!!」
奥まで打ち付けられた亀頭が、ごりごりと濡れそぼった壁をえぐる。
腰を密着させ、前後に激しく動かされたかと思うと、
Gスポットをこすり立てるように、小刻みにピストンされる。
あまりの快感に、雪子は我を忘れて叫び声をあげた。
結合部からじゅぶ、じゅぶと激しい水音がして、
まるでお漏らしをしたかのように、シーツに大きな染みが広がる。
「ああっ!ああっ!アアアアっ!!!」
壊れたように痙攣を繰り返す雪子の身体を抱きしめ、貴巳は雪子のめいっぱい奥まで
自らの肉棒を押し込み、そこでぴたりと動きを止めた。
亀頭を奥壁に押し付けると、雪子の内部がびくびくと収縮し貴巳を締め付ける。
雪子の淫肉が精を搾り取ろうと生き物のように蠢く。達しそうになるのを堪えて、
貴巳は雪子の様子を伺う。
長い髪は乱れて、汗ばむ頬に張り付いている。
荒い息、熱に浮かされたような瞳、半開きになった唇。
これだけ乱れてもなお、雪子はどこか清楚で、それでいてひどく艶かしい。
「ここ…好きだろう?」ほんの僅かな動きで最奥をつつきながら訊く。
雪子はもう意地を張ることなく、こくこくと頷く。
「すき………そこ、すきなのぉっ……!もっと、うごいて……おねがいっ」
「………………いな」
(………え?)
貴巳が小声で囁いた言葉が雪子の耳に届く刹那。
「………………………っっ?!」
ごりっ、と音がしそうな勢いで、子宮口に亀頭が押し付けられた。
そのまま激しいストロークで、入り口から最奥まで抽送が繰り返される。
子宮から脳髄を焼かれるような快感に、雪子はもう声も出ない。
猛る肉棒を根元まで押し込まれ、限界まで拡げられたマ○コから、
噴水のように潮が吹きだし、更にシーツを汚していく。
「はぁ………っ!!もう、だめなのっ!!!!いく!イクの!いっちゃうぅああああ!


絶頂を迎え、雪子の膣奥は激しく収縮を繰り返す。
たまらず貴巳も眉根を寄せ、どくんどくんと、勢い良く白濁液を吐き出した。
「ああああああ!!ひゃぁぁぁんっっ!」
びゅく、びゅくと子宮にまで流れ込んでこようとする熱を感じ、
雪子は中に放出される精液の感触で、最後の絶頂に押し上げられた。

354鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:42:28 ID:pwXXYifB
暫くは息も絶え絶えで、声を出すことすらできなかった雪子だが、
貴巳がコップに持ってきてくれた水を飲むと、ようやく人心地がついた。
「ねぇ…貴巳さん、さっき何か、変なこと言わなかった?」
(なんか、かわいいな、とか聞こえた気が…まさかね、貴巳さんに限って………)
ベッドの横に寝そべる夫は、今までの行為が無かったかのように平然と、
いつもの無表情に戻っている。
その視線が、雪子の顔にじっと注がれている。
「………な、なに?」
「…雪子は面白いな、と言ったんだ」
「………えええ?」
内心、無いとは思いながらも甘い言葉を期待していただけに、
雪子はがっくりと肩を落とした。
貴巳はそんな妻を、ほんの少しだけ、楽しそうに見つめている。
「………初めて私がこの家に入った時も、貴巳さんそう言ってたよね」
「そうだな。その時からずっと雪子は面白い」
「…それ褒めてないよね?」
「そんなことはない。雪子は観察対象としてとても興味深い」
「だからそれ褒めてないよね?」
いつもの、じゃれあうようなやりとり。雪子は拗ねたように甘い溜息をつく。
二人は眠りにつくべく、寄り添って目を閉じた。
うとうととまどろみながら、雪子は二人が出会ったころのことを思い出していた。
あのころは、貴巳のことが本当に怖くて。近寄りがたくて。
こんな風に二人で眠ることなんて想像もしなかった。
運命とか、偶然とか、必然とかいう単語がぼんやりと浮かんでは消える。
隣の夫の体温を感じながら、雪子はゆっくりと、穏やかな眠りに落ちた。

355鉄仮面と子猫 短編:2008/04/25(金) 02:43:12 ID:pwXXYifB
以上です。
356名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 04:38:07 ID:al2aUO/w
ちょっとトイレ・・・
357名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 18:34:49 ID:PbQV2t9Y
>>355
おお!!
お久し振りですGJ!!
長くても全然構いません
お待ちしてますよ
358名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 21:41:45 ID:wuZ6uvPv
新作キタ━━(゚∀゚)━━!!
359名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 12:51:28 ID:6tlA3R1/
保守
360名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 16:57:35 ID:FfyHmhfq
待ってました!
超GJ!

ところで、氏は携帯投下?
なんか前半改行が見づらいところがあった。
違ったらスマン。
361355:2008/04/27(日) 00:00:22 ID:5tMSCA2O
>>360
いやPCからっす。
眠すぎてやっつけで投下してしまいましたorz
見苦しくてすみませんです
362名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 01:04:04 ID:m426M/Ji
363名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 12:37:00 ID:49zr9yqw
誤爆スレ吹いたw
あんた和み系だ
364名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 20:04:03 ID:JAXPfK/E
>>356 のことかい?
365名無しさん@ピンキー:2008/04/28(月) 22:25:57 ID:op7PRGId
違うけどまあ気にしなさんな
言い忘れたが作者GJ!
366名無しさん@ピンキー:2008/05/01(木) 10:53:32 ID:j3/9mw9G
保守
367名無しさん@ピンキー:2008/05/03(土) 21:19:45 ID:xYjM7rLE
368名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 23:16:40 ID:NRiAIJ1d
鉄仮面と子猫、夫婦二人の馴れ初め編です。
余りにも長いので、分割して投下させてもらいます。

注意
・長いです
・本日投下分はエロ無しです
苦手な方はスルーして下さい。
369鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:17:19 ID:NRiAIJ1d
プロローグ

「料理を教えてくれないか」
「………………へ?」
思わず自分の耳を疑って、目の前の、これ以上無表情にも無愛想にもなれないであろう顔を見つめた。
仮にこの人に、「結婚してくれ」とか言われても、こんなに驚かないかもしれない。
いや、それは物の例えで。付き合ってもいないどころか、恋愛対象として考えたこともないのだから、プロポーズとかされたらそりゃ、やっぱり驚くのだろうけど。
でもでも。よりによって料理って。
「駄目か?」
「い、いえ、駄目ってことは…ないんですけど…」
「じゃあ頼む。都合のいい日はあるか?」
「えっと…土日でしたら、いつでも」
「なら、今週の土曜、朝10時に迎えに行こう。それでいいか?」
「……………………はい」
こうして私は、さっぱり事情が飲み込めないまま、
週末に、課長の家で料理教室をすることになってしまったのでした。
370鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:19:07 ID:NRiAIJ1d
1 橋本あや

忙しい。
忙しいったら忙しい。
市役所職員なんてもっとのんびりした仕事だと思ったのに、
特に今年度に入ってからの忙しさといったらない。
前市長が汚職にからんで失職し、大混乱の選挙戦の末当選したのが、
旧弊を排して市政一新・実力主義の人材登用を公約とした、
おめーどこのアメリカ人だよ?ってくらいわざとらしく爽やかなキャラクターの
まだ若い新市長。そやつのふるった大ナタは、
私、橋本あや(30)が転職してまだ一年の市役所の隅々にまで及び、
年功序列のぬるま湯に首まで漬かっていた職員達の横面を張り飛ばした。
その大胆な人事の代表格として、職員の誰もが思い浮かべるであろう人物。
私の所属する企画部企画課の課長として、33歳という若さで大抜擢されたのは、
今私の目の前のデスクに座り、黙々とキーボードを叩いている、
鉄仮面だった。

鉄仮面、というアダ名がいつから付けられているものか私は知らない。
が、その二つ名は、これ以上無いほど彼自身をうまく表現している。
企画課課長、中嶋貴巳(なかじまたかみ)氏33歳は、

無表情選手権日本代表に召集され、
無愛想オリンピックでメダルを獲り、
オスカー無口部門で最優秀男優賞受賞ぐらいのことは軽く狙える人物だ。
無いけどな、そんな賞。
しかし冗談抜きに、「世界一笑顔を見せる回数が少ない男」なんて項目で、
ギネスに申請したら通るんじゃないか?ってくらいの鉄仮面っぷり。
しかも謹厳実直で曖昧なことは大嫌い。仕事はめちゃくちゃ速いし正確で、
効率の悪い仕事をしている同僚を見ると、上司でも歯に衣着せずに意見する。
そんな仕事っぷりが新市長の目に留まり、前例のない若い課長が誕生したのが先々月。

結果、部下からは恐れられ、同期からは煙たがられ、
先輩職員たちからは妬まれているのだ。
あおりを食らうことになる部下…つまり私達はたまったもんじゃないけど、
そんな四面楚歌な状況もどこ吹く風で、今日も鉄仮面は無表情で仕事をこなしている。

だけど、この新しい上司と職場は、私自身、結構気に入っていたりする。
中嶋貴巳氏は確かに無愛想でとっつきにくいんだけど、
部下に自分の責任を押し付けたりすることは絶対ない。
仕事についても厳しいけど、理不尽に怒ったりはしない。
人の私生活に口出しすることも、
新人だからって理由だけで部下の提案を軽んじることもない。
別に友達として付き合うわけじゃなし、無愛想すぎてムカつくことを除けば、
私が以前勤めていた民間企業のくそオヤジ達と比べても、よっぽどいい上司だと思う。
まぁそれにしても、もうちょっとだけでも愛想がよければ、
こんなに敵を作ることもないのに…と、
溜息のひとつもつきたくなる現在の状況なんだこれが。
371鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:19:41 ID:NRiAIJ1d
今春、職員わずか4名の小さな部署だった企画課に、
不足人員補充の名目で2人が増員されることになった。
それは本来なら大歓迎すべきことだったんだけど。
配属された2人というのが、1人は採用されたてほやほやの社会人一年生。
もう1人は、今私の隣のデスクに座って、
涙目でエクセルのマニュアル本とにらめっこしている、
事務経験ほぼゼロの可憐な女の子。
ちなみに二人とも、さっきから全くと言って良いほど仕事は進んでいない。

只でさえ組織改変で仕事量が増えて、クソ忙しい我が課に配属された新人二人。
これが嫌がらせ人事でなくて何だろうか。
鉄仮面を快く思っていないものは、人事課にも多いということだな。

私だって、こんなに自分の仕事が立て込んでなければ、
もっといろいろ丁寧に仕事を教えてやりたい。
でも、何せ余裕がなさ過ぎる。質問されても、ついつい場当たり的な教え方になり、
結果的に新人二人の実力はなかなかつかず、イライラしてつい口調がきつくなる。
そして教えられる側は萎縮し、益々質問しづらい雰囲気になっていく。
あぁ…悪循環だ。基本的にポジティブな自分だが、こう何もかもうまくいかないと、
自己嫌悪に陥ってしまう。
「………最悪だ…」
つい口から零れた愚痴。声になるかならないかの音量のはずなのに、
向かいの鉄仮面が、僅かに眉だけ動かして反応する。地獄耳だなぁ。

「橋本」名を呼ばれたので椅子ごと課長のデスクににじりよる。
「新人の研修のことなんだが提案がある」
「何ですか?」
「現状では効率が悪すぎる。橋本は、これから2ヶ月、
高田の研修係としての仕事に重点を置いてくれないか。
今橋本が抱えてる仕事は俺に回してかまわない」
「え…私はいいですけど、課長、この上まだ仕事増やす気ですか?」
「その通りだ。あいにく他に頼りにできそうな者もいないしな」
凍りつくような声音に、頼りにならない二人――沢木・富田両氏がビクリと固まった。
確かに、あの二人は気はいいのだけど、人並み以上の仕事を期待しちゃいかんのだ。
「―で、高田はいいとして、雪子ちゃんはどうするんですか?」
橘雪子(たちばなゆきこ)。
長いストレートの黒髪と、真っ白い肌が日本人形のような、可憐な女の子だ。
見た目はまるで高校生のようだが、これでも21歳、社会人3年目。
採用されてからは庶務課で窓口業務を担当していたので、
事務仕事の経験は少ない。っていうか、ほぼ無い。
それに、おっとりした性格が災いしてか、仕事の飲み込みも良いとは言えない。
でも本人はこれ以上無いほど一生懸命で、子猫のように思わずぐりぐりと頭撫でてあげた

くなるような可愛らしさなのだ。
特に今のように、自分の名前が出たことに気づき、緊張で強張っている横顔なんて、
思わずもっと苛めたくなるくらい可愛い…って私はSでもレズでもないんだけど。
レズではないんだけど、雪子ちゃんなら嫁にもらってもいい。っていうか是非欲しい。
地味な制服と控えめな性格があいまって、目立つことはないものの、
密かに狙っている男性職員も多いし。その雪子ちゃんの研修なんて、
頼めばいくらでもやりたがる輩は多いだろうに。うちの課の沢木とか。

「橘の指導も俺が担当する。俺の残業のアシスタントを兼ねて研修してもらう」
………うわぁ。それって、鉄仮面と二人きりで、残業しながら特訓ってことか。
これ以上過酷な新人研修のシチュエーションって、とても思いつかないんですけど。
雪子ちゃんの、只でさえ色白の頬から、
さーっと血の気がひいていくのが目に見えてわかった。
涙目の横顔が、祭壇に捧げられた生贄のそれに見える。
「…わかりました。じゃあそういうことで頑張って、雪子ちゃん」
…頼むからそんな、市場へ売られていく子牛のような目で見るのをやめてくれ。
372鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:20:25 ID:NRiAIJ1d
2  沢木勇治

「…………雪子さんっっっ!!!」
ふぅ、と溜息をついて、自ら慰めた残骸をティッシュで処理し、ゴミ箱へ放りこむと、
沢木勇治はいつものように、自己嫌悪に襲われるのだった。

「まーたやっちまった…ありえねぇ」
少し前までの自分なら、ろくなオカズもなく達することなんてできなかったが、
いつごろからだろう。
脳裏に写る、同僚の笑顔(と、もちろん見たことのない下着姿だの裸だの)を思い浮かべ

ながら、夜毎自分を慰めるようになったのは。

笑顔が可愛い。声が優しい。くるくると変わる表情も、きょとんと目を丸くした顔や、
俺やあや先輩にからかわれて、少しむくれている顔さえ可愛い。
何事も一生懸命なのがいい。料理上手で家庭的なところも。
サラサラした黒くて長い髪も、真っ白で透き通るみたいな肌も。

要するに全部だ。全部いい。

恋愛に関しては、自分は積極派だと思っていた。
事実、今までの恋愛は全て、ちょっといいな、と思った時点で相手に接近し、
押しに押したりたまに引いてみたりして、結構な確率でモノにしていた。
合コンでお持ち帰りしたりも何度かはあったし、それなりに経験を積んでいる、
つもりだった。

なのに今の、この惨状。
アプローチしたくとも、雪子さんはあまりにも、鈍い。
最初は気づかないふりをしてるのか?なんて勘ぐったこともあったけど、
どうやら本気で、俺の気持ちに気づいていないみたいだ。
断られるのが怖くて、いつも冗談で誤魔化してしまう、
ヘタレな俺にも原因があるのかもしれないが。
何だか今までの恋愛とは勝手が違う。
告白しようかどうしようか…なんて、うじうじ悩むのは中学生の時以来だ。
373鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:20:52 ID:NRiAIJ1d
すっかりぬるくなった缶ビールの残りをあおって、テレビの上の時計に目をやると、
21時を過ぎていた。
今頃はまだ、鉄仮面と二人で残業してるんだろうか。
鉄仮面と二人で。
鉄仮面と二人で。

「………くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
思わず悪態が口をつく。
自分がもう少し仕事が出来さえすれば、雪子さんの研修係を任されて、
手取り足取り仕事を教えてあげられたかもしれないのに!!
今のところ、社会人三年目の自分はまだまだひよっ子で、
仕事では課長の足元にも及ばないのが我ながら情け無い。
それにしたって、鉄仮面と二人きりなんて、
今頃雪子さんは恐怖に怯えながら研修してるに違いない。
大体あの上司は誰に対しても容赦がなさすぎる。
仕事上必要なことしか喋らないし、笑顔一つ見せないもんだから、
雪子さんや新人の高田なんてすっかり萎縮している。
まぁ課長は恋愛なんか絶っっっ対に縁がないだろう性格だから、
同僚に手を出すような心配はないのだけが救いだけど、
か弱い女性に対してもう少し、ものの言いようがあるんじゃないか?
でもまぁ、研修が始まってもう一月以上になるのに、
雪子さんはよく耐えている。見かけによらず芯が強いのかもしれない。
そんなところもいい。
照れるとすぐ顔が真っ赤になるところも。
化粧をほとんどしないところも。
昼休みに中庭で日向ぼっこしてるときの幸せそうな顔も。
細そうに見えて適度に胸があるところもいい。
真っ白なうなじとか、胸とかフトモモとか耳たぶとかお尻とかほっぺとか!!

とにかく、今俺は。
「触りたい!あの柔らかそうなほっぺたをプニプニ触りたいんだぁぁぁぁぁ!!!!」

絶叫がワンルームのマンションに響き渡り、
沢木勇治の不毛な夜は、いつものように更けていくのだった。
374鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:21:52 ID:NRiAIJ1d
3 橘雪子

どくどくどくどく、と自分の心臓の音が聞こえてくる。
口から心臓が飛び出そう、ってこういうことなのかもしれない。
何度目でも慣れない、この瞬間は。

「………できました。チェックお願いします」
課長が近づいてくる。背後から、じっと私の前のディスプレイを眺めている気配がする。
気配が、っていうのは怖くて振り向けないからだ。
後ろからにゅっと手が伸びてきて、マウスで画面をスクロールする。
沈黙。汗が背中を流れる。まだそんなに暑い季節じゃないのに。
「…いいだろう」
「えっ、大丈夫ですか?」ようやく振り向いて課長の顔を見ることができた。
「大丈夫だと思ったから俺に報告したんだろう」
相変わらずにべもない答え。だけど、研修が始まって1ヶ月半、
私は少しだけ、この個性的な課長に慣れてきている。

最初は怖かった。ううん、今でも怖い。特に仕上がりのチェックをお願いするときは。
でも課長は、褒めることもないかわりに、理不尽に怒ることもない。
窓口業務しか経験が無い、企画課ではほんとに何もできない私にもだ。
課長は誰にでも同じように接するんだ、ってわかってからは、
むやみに怖がることもなく、たまには私から話しかけたりもできるようになっていた。
答えはいつも味もそっけもないけど、気にしないことにしている。
「資料室に行ってくる」
そう言って課長がブースを出て行き、
緊張が解けた私はほっと溜息をついた。
(もうすぐ研修も終わりかぁ…随分たくさん書類作ったな)
何気なく、今までの残業中に作ったデータファイルを開いて眺める。
(……ん?)
何かがひっかかり、もう一度丁寧に、最初からファイルを開いて読んでいく。
と、あることに気がついた。
この一ヶ月半の間、課長に頼まれて作った書類を順に見ていくと、
まるで資格試験のテキストのように、ゆっくりとレベルが上がっている。
作業している最中は夢中で全然気づかなかったし、
課長もいつもの無表情で、そんなに気を遣っていることを全然感じさせなかったけど。
殆ど知識のない私にも、自然にスキルが付くように、
山積みの仕事の中から私のために選んでくれた、
それは計算し尽された順序だったんだ。

(………すごい、課長って)
仕事はただでさえ山積みなところに、あやさんの分の仕事まで引き受けて、
ものすごく大変なのに。
それで私の研修のことまで、こんなにしっかりと考えてくれていたんだ。
何だか涙が出そうになるくらい感激してしまった。
375鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:22:35 ID:NRiAIJ1d
「橘、どうした?」
ブースに戻ってきた課長が、手で口を押さえて涙目になっている私を見て聞く。
「…課長、ありがとうございます」
「………何がだ?」
「私、ただでさえ忙しいのに研修なんて余計なお手間かけちゃって、
それに、課長がこんなにしっかり、研修のこと考えて下さってるなんて、
全然気が付かなくて…ありがとうございます」
「上司が部下の指導をするのは当たり前だ」
返ってきたのは味も素っ気も無い答。でも何とかして、感謝の気持ちを伝えたかった。
「あの、何か…お礼をさせて下さい」
「必要ないだろう。業務上必要なことをしただけだ」
「でもあの…」
「大体、お礼って何をするんだ?俺の仕事を代わりにやってくれるのか?」
「…いえ、絶対無理です…ごめんなさい」
そういえばそうだ。私が課長にしてあげられることなんて、無いに等しい。
私が課長より優っていることなんて、どう考えても思いつかない。
何だか落ち込んでしまって、がっくりとうなだれていると、課長が言う。
「不用意に男性にそういう事を言うと、肉体関係を要求されかねないぞ」
「…へ?に、にく…」
何を言われたか理解するまで、数秒かかってしまった。
かぁっ、と自分の頬が熱くなるのを感じる。鉄仮面の口から出たとは思えない単語。
その鉄仮面はというと、これ以上ないくらいの真顔でじっと私を見ている。
えっと、それって、まさか。
「…冗談に決まっているだろう」
「…あ…そうですよね当然ですよねあはははは」
(課長って冗談言うんだ…なんかものすごい珍しいものを見たかも)
わざとらしい笑いでごまかしたけど、心臓はドキドキと音を立てていて。
鉄仮面の珍しい一面を見られた気がして、何だか気分は浮き足立っていた。

「橘、休憩にしよう」
時計を見ると、20時を回っている。
緊張が解けると、急にお腹がすいてきた。
毎日22時ごろまで残業するようになってから、食事を買いにいく時間もないし、
昼食と夕食の二食分のお弁当を、自分で作って持ってくることにしている。
今日のメニューは手作りコロッケと、ほうれんそうの胡麻あえに、玉子焼き。
冷凍食品などはほとんど使わず手作りである。
雪子が料理上手なのには訳がある。もともと料理好きというのもあるが、
父を亡くし、働きに出た母に代わって、
高校生のころから、そしてこの市役所に勤めはじめてからも、
一手に家事を引き受けてきたのだ。
ずっと、自分と母の二人三脚で助け合ってきたのだ、という自負があった。
だが。

ちょうど今頃家族が囲んでいるであろう食卓を想像し、雪子はそっと溜息をついた。
残業は確かに体力的にはきついが、正直言って都合よくもあった。
家に帰っても、居たたまれないのである。

現在雪子が住んでいる家は、もともと彼女の実家ではない。母親の再婚相手の家である。
母の再婚と同時に、広く立派なその家に移り住んで、もうすぐ3ヶ月になる。
義父とその連れ子の義弟は、雪子にとても優しく、気さくに接してくれるが、
やっぱりどうしても、自分の家という実感は持てなかった。
掃除洗濯食事の支度、と今までどおり忙しくしていれば却って気も休まるのだが、
母は再婚して、あれだけ頑張っていた勤めをすっぱりと辞め、
新しい家で家事に専念するようになった。
古いアパートの一室で、ずっと気を張って続けてきた食事の支度。
それはもう雪子の仕事ではないのだ。
376鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:23:18 ID:NRiAIJ1d
(………いいことのはずなのに。楽になったはずなのに)
そんなことを考えながら、一階にある自販機で飲み物を買って帰ってくると、
課長の座る椅子の後ろをすり抜けて、自分のデスクに向かう。
企画課のブースは只でさえ狭いのに、キャビネットが壁一面に据え付けられていて、
身体を横にしないと、椅子と棚の間さえ通り抜けられない。
後ろを通る時に課長の手元を覗き込むと、
彼は器用にも、おにぎり片手にキーボードを叩いている。
研修を始めたばかりのころは、片手でもタイピングできるって凄いなぁと驚いたけど、
今ではすっかり見慣れた光景だ。
(でも課長、毎日おにぎりだけだなぁ…手作りっぽいけど誰が作ってるんだろう?
独身のはずだから…お母さん?でも、少しくらいおかず付けてあげてもいいのに。
片手で食べられないからいらない、とかかなぁ)

背後からなのをいいことに、遠慮なく課長の手元を観察しながら通り過ぎようとすると、

うっかり椅子のキャスターに足をとられてしまった。
「わ、うわわわわっ」
とっさに課長の机に積んであるファイルの上に手をついたけど、
それも雪崩を起こしてどさどさと滑り落ち、結局バランスを崩した私は、
どたーん、と派手に転んでしまった。
「大丈夫か?」
「……だ、大丈夫です………あーーーーっっっっ!!」
「何だ、怪我したのか」
「いえっ、ああ…すみません課長!」
床に崩れ落ちたファイルをのけると、
ぺしゃんこに潰れたおにぎりが哀れな姿をさらしている。
「ご、ごめんなさい、晩ご飯を…」
「別に構わない」
「そんなわけにいきませんっっ!」
(どうしよう…代わりのご飯、買いに行ってたら時間かかっちゃうし…そうだ)
「あのっ、課長、良かったら代わりにこれ、どうぞっ」
軽くパニックになった私は、よく考えもせず、自分のお弁当の蓋を開いて差し出した。

「……………………」
申し訳なくて顔を伏せていたけど、何だか長い沈黙が続くので不安になってしまった。
よく考えたら、他人が作ったお弁当なんて食べたくないかもしれない。
課長、潔癖そうだし。
恐る恐る顔を上げると、課長がもの凄い真剣な顔で見ている。
私を、ではなく、私の差し出しているお弁当を。
「…あ、あの、課長………?」
沈黙に耐え切れなくて声をかけたが、反応はない。
と、おもむろに、私の手からお弁当箱が奪われ、
鉄仮面は、無駄のない流れるような動きで、デスクの引き出しから割り箸を取り出し、
袋から出して、割って。

(………食べてる!!!………)

黙々とお弁当を食べ始めたのだった。
377鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:23:41 ID:NRiAIJ1d
(ど、どうしよう…何だろうこの状況…)
良く考えれば、勧めたのは自分なのだから、別に困ることはないはずなんだけど。
でも課長が余りにも真剣に食べているので、何だかどうしていいのかわからない。

身のやり場に困って立ち尽くしていると、
「…橘」と呼ばれた。
「はっはい…何ですか?」
「これは…誰が作ったんだ?」
「え?あの、私ですけど」
課長は私のほうを見ようともせずに、箸でつまんだコロッケを凝視している。
「あの…課長?」
「橘、前言撤回する」
「…は?」
「礼をしたいと言っていただろう。一つ頼みたいことがある」
「は、はい、あの、どうぞ」
急に何だろう。課長が前言撤回するって、並大抵のことじゃない気がする。
というか、さっきから頭が真っ白で、状況が全然把握できてない。
あぁ課長、その沈黙が怖いんですけど。

「料理を教えてくれないか」
「………………へ?」

神様、私は今日、中嶋貴巳氏33歳、完全無欠の鉄仮面に、
はじめて頼みごとをされました。

そんな事を頭の片隅で呟きながら、、私は完全に、考えることを放棄したのでした。
378鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:24:39 ID:NRiAIJ1d
4 戸惑う土曜日

6月某日、土曜日。
窓の外は雨が音も無く降り続き、空はどんよりと曇っている。
事情がさっぱり飲み込めないまま、橘雪子は物珍しげに、まだ新しい一戸建ての玄関を眺めていた。
「課長のおうちって、一戸建てだったんですね」
「ああ」
「まだ新しいんですね」
「建てたのは一昨年だ」車を駐車場に停めてきた課長が、傘を閉じながら言う。
「は〜…凄いですね」
中嶋は、何が凄いのかよくわからないというような顔をして玄関の鍵を開け、
雪子を招き入れた。
30歳そこそこで独身なのに、一戸建てを買うという決断力が凄い、
という意味だったのだが、それを言葉に出す前に、室内の様子に雪子は目を奪われた。
さぞかし整理整頓の行き届いた部屋なんだろうと想像はしていたが、
中嶋貴巳氏の自宅の様子は、雪子の想像を軽く上回るものだったのだ。

お邪魔しまーす、と呟きながら足を踏み入れたリビングルームには、
普通の家庭に当然あるべき細々とした生活用品が、全くと言っていいほど無かった。
広いフローリングの部屋にあるのは、ごくシンプルなソファとテーブルのみ。
驚いたことに、テレビすらない。広いリビングだけに、どうにも寒々しい。
ビジネスホテルのほうが、よっぽど飾り気があるくらいである。
(………うわぁ、生活感ゼロだなぁ)
「とりあえず座ってくれ」と言われ、雪子は荷物を床に置き、ソファに腰を下ろした。
黒い皮張りのソファは、ほどよくスプリングがきいて座り心地がいい。
(大体…思わず引き受けちゃったけど、上司と二人っきりで料理教えるって、
いいんだろうか…しかも独身だし、家にまで上がりこんで、実はかなり問題なんじゃ)
ここに来てようやく実感がわいてきた。鉄仮面の願いがあまりにも唐突すぎて、
当然考えるべきそのことまで、雪子は今まで思いもしなかったのだった。
大体、仕事中の中嶋は、休みの予定なんかで声をかけるのは憚られる雰囲気だし、
同僚にも聞かれたくはなかった。
今朝迎えに来た車の中でも、会話らしい会話もなく、
新たに雪子が得た情報といったら、中嶋が1人暮らしだということと、
私服もスーツ姿と同じく、隙が無くそれでいて味も素っ気もないシンプルなものだ、
ということくらいだった。
諾々とここまで付いてきてしまったことを少しだけ雪子が後悔しはじめたころ、
キッチンから、課長がマグカップを二つ持って出てきた。
「あ、ありがとうございます」
無言で自分の前に差し出されたコーヒーを受け取る。
「わぁいい匂いですね」
カップから立ち上る湯気はとても芳しく、それが上等なコーヒー豆を使って
丁寧に淹れられたものであることを示していた。
少しの間うっとりとその香りを楽しんでから横に目をやると、
中嶋が、自分の分のカップを持ったままソファの横に立ち尽くしている。
「…?課長座らないんですか?」
言ってから気づいた。
ソファには雪子が座っているし、そのほかに座れるようなものは部屋に見当たらない。
フローリングの床に直接座るというのも妙だ。
ソファは3人は座れそうな大きさなのだが、二人並んでソファに座るというのは、
ただの上司と部下としては、どうも距離が近すぎるんじゃないだろうか。
そしてどうやら同じことを、横に立つ仏頂面の男性も考えていたらしい。
雪子は慌てて、自分のお尻をソファの目一杯端っこにずらした。
「あのっ、課長、良かったらどうぞ…ってここ課長のおうちだし、
私が言うのも変ですよね。すみませんっ」
379鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:25:00 ID:NRiAIJ1d
「いや…俺が悪かった」
「え?」
「よく考えもせず橘に頼んでしまったが、軽率だったな。済まない」
あまりにも真剣に謝られて、雪子は慌てた。
「いやっ…そんなことないです!そもそもお礼がしたいって言い出したの私ですし、
料理教えるくらいお安い御用です!…でも、なんでお料理なんですか?」
気まずい空気を何とか打破するため、話題を変えようとしたのだが、
中嶋はそれには答えず、雪子が座っているのと反対側の、
ソファの肘掛の部分に腰を下ろした。
それがぎりぎり許容できる距離感だということだろうか。
しばらく二人とも無言でコーヒーを飲んだ。
かぐわしい香りだけが殺風景な部屋に漂っていた。
(なんか…面白い。課長も良く考えずに行動したりするんだ。
全部計算済みなのかと思ってた)
自宅に招きいれられるまで、それがただの上司と部下の関係としては行きすぎだ、と
気づかなかった自分も自分だが、それは中嶋も同じことだったのだと思うと、
鉄仮面の思いがけず人間らしい部分を垣間見たような気がして、
雪子の口の端が自然にほころぶ。
そんな雪子の顔を、珍しいものでも見るかのように眺めて、中嶋がぼそっと呟く。
「この家に他人が入ったのは、初めてだ」
「そうなんですか?」
「違うものだな」
「…え?何がですか?」
聞き返したが、鉄仮面はそれ以上説明する気は無いらしい。
(もう…結局、何考えてるのかよくわかんない人だなぁ。
なんで料理なんて習いたいのかも解んないままだし。でも、課長の頭の中なんて、
想像したって絶対解りそうにないし。…まぁ、いいか)
随分と緊張がほぐれ、空になったカップをテーブルに置くと、
雪子は勢い良く立ち上がった。
「さて、始めましょうか!お料理教室!」
380鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:25:33 ID:NRiAIJ1d
5 鉄仮面の煩悶

おそろしく綺麗に整頓されているキッチンだった。
およそ料理に必要と思われるものは、きっちりと並べられ、整頓され、磨きこまれて
キッチンの収納スペースに整然と収納されていた。
食材も、冷蔵庫の中に万全に揃っている。
「何か足りないものはあるか?」
奥の部屋に何やら取りに行っていたらしい中嶋が戻ってきた。
「大丈夫です、全部そろって………」
振り向きざまに中嶋の姿を見た雪子は絶句した。
「どうかしたか?」
「………いえ、あの…エプロン…なんでもないです」
(エプロン!!!エプロンって!!!課長のエプロン姿って!!!)
戻ってきた鉄仮面は、当然のようにエプロンを身に付けていた。
それも、その辺の衣料スーパーで売っていそうな、何の変哲もないチェック柄の。
余りにも衝撃的な眺めに、雪子は笑いを必死で堪え、小刻みに震えている。
「どうした?」
「か…いえ、あの、似合いますね意外と」
(か、かわいいとか思っちゃった…)
「似合うも似合わないもないだろう。まずは何から始める?」
鉄仮面があまりにも平然としているので、雪子も笑うに笑えず、
腹筋が痙攣しそうになるのを必死で堪えた。
「あ、そうですよねっ。じゃあ野菜の皮をむいて切っていきます」
ちなみに本日の献立は、中嶋の希望により、肉じゃがと、きゅうりとわかめの酢の物だ。
といっても別に二人で相談したわけではなく、
残業が終わって帰り際に、希望のメニューと、材料は中嶋が揃える旨を
一方的に伝えられただけだったが。
中嶋は手際よく、ジャガイモの皮をむき、一口大に切っていく。
「課長、上手じゃないですか!料理教わる必要なんてないみたいですけど…」
「切るところまでは特に問題ないんだ」
「はぁ…じゃあ味付けがうまくいかないとかですか?」
「そんなところだ」
「そこまでできたら簡単だと思いますけどねぇ」
腑に落ちないながらも作業は順調に進み、いよいよ問題であるらしい味付けだ。
381鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:26:19 ID:NRiAIJ1d
「えーとじゃあ、みりんとお酒・お砂糖とおしょうゆで味付けしていきますね」
(な、なんかものすごい真剣に見られてる気がする…)
調味料を注ぎいれようとする自分の手元に、これまでになく真剣な、
突き刺さらんばかりの中嶋の視線を感じてどうもやりにくいが、
プレッシャーを振り払うように、鍋に砂糖を入れようとすると、
「待て」
「へ」途端に切羽詰ったような声で止められ、
思わず鍋のほうにつんのめりそうになってしまう。

「砂糖は何グラムだ?」
「え?作る量にもよりますけど、適当です。ざばざば〜っと、わりと多めに」
「…………適当?」
「で、みりんとお酒ですね。どば〜っと入れてください。このくらい」
「どばーっと………量ったりはしないのか」
「しません。面倒ですし、今まで量ったことってないですよきっと」
「味が毎回変わらないか」
「そんなに変わらないと思いますけど…薄かったら煮詰めればいいし」
「…………」
「あ、おしょうゆは後で味調えられるように、最初は薄めにしといたほうがいいですよ。
だばだばっと、このくらい」
調味料のボトルから豪快に醤油を鍋に流し込むと、雪子はほっと一息ついた。
「…で、このまま火が通るまで落し蓋して、しばらくおきますね。
その間に、酢の物の合わせ酢を作ります。お酢をだーっ、とこのくらい。
それにお塩とお砂糖と………って、課長?どうしたんですか?!」

後ろを見やると、目を疑うような光景であった。
完全無欠の必殺仕事人、正確無比の鉄仮面が、
無表情のまま、シンクの縁に手をつき、うなだれていたのだ。
「か、課長…?」
「…………俺には無理だ」
「へ?いや、そんなことないですって。私ができるくらいなんだから…」
「ざばっとだの、だばだばだの、どばっとだの。
何グラムで何ミリリットルで何分煮ればいいんだ?
せめて大さじとか小さじとか言ってくれないか?それだって正確には量れないだろう。
全てにおいて、料理というのは曖昧すぎる」
「そ、そう言われましても……量ったことないし、すみません」
どう考えても雪子が悪いわけではないのだが、とりあえず謝っておいた。
自信喪失した鉄仮面など、職場の誰一人として見たことがないに違いない。
驚天動地の事態というべきである。
同僚の橋本あやあたりが見たら喜んで写メでもとりかねないが、
雪子は、余りにも気落ちしている様子の鉄仮面が、何だか可哀想になってしまった。
なんとか慰めてあげたいと思うのだが、うまく言葉が見つからない。

「…………俺には向いていないんだろうな、料理が」
「そんなこと…ない、と…思いますよ、たぶん…」
言いながら自信が無くなってくる。
確かに、料理はある程度大ざっぱでないとやってられないだろう。
何事もきっちり正確でなくては気がすまないという中嶋の性格は、
料理に向いているか向いてないかといえば、それは。
しかし今の中嶋に「向いてないですね」などと言えるほど、
雪子は勇気も無いし残酷でもない。
暫くの間、雪子が胡瓜を薄切りにする包丁の音だけが、広いキッチンに響いていた。
382鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:26:41 ID:NRiAIJ1d
(………課長、そんなにショックだったのか…でもなんでそんなに料理したいんだろ)
相変わらず気落ちしている様子の中嶋は、食器棚にもたれて自分の足元を見ている。
気まずい沈黙に耐え切れなくなった雪子が、胡瓜の薄切りの入ったザルを持ち上げ、
ぎゅっと水気をしぼった。
二人で落ち込んでいても陰気なだけである。
「とにかく、今はご飯作っちゃいましょう!食べればやる気が出てきます!多分!」


そして約30分後、二人はソファのぎりぎり両端という不自然な位置に座り、
出来立ての肉じゃがと酢の物、ご飯とみそ汁を前にしていた。
みそ汁の具はアサリ。肉じゃがには色よくゆでられた絹さやが彩りを添えている。
湯気と、ジャガイモの煮える甘い匂いが、6月の湿度の高い室内にたちこめる。

いただきます、と呟いて、暫くは無言のまま二人は食事を続けた。
いい加減沈黙には慣れたつもりの雪子だったが、
やはり打ち沈んだ様子の中嶋が気になって仕方が無い。
「お昼ご飯にしては豪華なメニューですねぇ」
「………………」
「酢の物のお酢加減どうですか?私はこのくらい酸っぱいほうが好きなんですけど」
「………………」
「雨やみませんね」
「………………」
「肉じゃが甘すぎませんでした?」
「………………」
雪子は、ふぅ、と思わず溜息をついた。信じられないことだが、
鉄仮面に対して、僅かだが腹を立てている自分がいる。
今までの雪子なら、とても畏れ多くてそんな感情は抱き得なかっただろう。
雪子は中嶋のほうへ向き直り、やや強い口調で尋ねた。
「課長、お味はどうですか?」
「美味い」
「え?…そ、それは良かったです」
余りにもあっさりと答えられてしまい、却って気勢を削がれてしまった。
「…俺はそもそも、方向性を間違っていたのかもしれない」
「…ほ、方向性?」
「ずっと、記憶に残っている味を再現しようとしてきたんだ。
色々なレシピを参考にして試作を続けたが、納得のいくものにはならなかった」
「…はぁ」
「だが今回橘の作った料理は美味い」
「あ、ありがとうございます。課長のその、記憶に残ってる味と似てましたか?」
「似ていない」
「へ?」
「似ていないが美味い。俺はずっと、味を似せることだけに拘泥してきたが、
それが間違いだったのかもしれない」
「似せるって…昔一度だけ食べた絶品の肉じゃがとかにですか?」
「いや」
「じゃあ…お母さんの味付けですか」
「いや…まぁ似たようなものか。祖母のだ」
「おばあ様?」
「ああ」
「おばあ様が毎日お料理されてたんですか?」
何だか会話が思わぬ方向に向いてきた。
鉄仮面の生い立ちなんて、職場の誰も知らないに違いない。
好奇心をくすぐられるというのももちろんあるが、
仕事中に中嶋に対して抱いていた怖れは、今や嘘のように消え去り、
雪子はこの一筋縄ではいかない、常識では計り知れない鉄仮面の素顔を見てみたい、
という衝動にかられはじめていた。
が、その安易な好奇心は、中嶋の重すぎる過去の前に、
すぐに後悔に変わることになる。
383鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:27:04 ID:NRiAIJ1d
「母親は俺が6歳の時に亡くなってるからな」
「え…じゃあ、お父様と、おじい様おばあ様と暮らされてたんですか?」
「父と母は俺が生まれる前に離婚している。父親とは会ったこともない。
俺は祖父母に育てられたんだ」
何でもないことのように、いつもの無表情で語ってはいるが、
その内容はとても「そうですか」の一言で済ませられるものではない。
「すみません…私、余計なこと聞いちゃって…」
「なぜ謝る?別に隠していることじゃない」
「だって…じゃあその、お料理のことだって」
「ああ。祖母は料理だけはマメだったからな。俺は実家を出るまで、
ほとんど外食だの売ってる弁当だのを食べたことがなかったんだ。
お陰で今でも、惣菜だのコンビニ弁当だのは全く食べる気がしない」
「だから…自分で料理を?」
「ああ。だがどんなに料理の本を読んでその通り作ってみても納得できない。
慣れ親しんだ祖母の味にはならないんだ。
どうにか米を炊くことだけは満足いくようになったんだが。
それ以上はどうしても、自己流では無理なのかと思っていたんだ」
「それで毎日、おにぎりだったんですね…」
雪子は、職場での中嶋の食事風景を思い出していた。
つやつやとしたお米に、海苔を巻いたおにぎりだけのシンプルすぎる食事。

「ワンパターンで、いい加減に嫌気がさしていたんだが…橘の作った弁当を貰った時、
祖母の料理以外で美味いと思ったのは初めてだったからな。
教えて貰おうと思いついたんだ」
「でも、おばあ様の味には似てないって…」
「だが美味かった。…恐らく、祖母の味も橘の料理も、
俺が小手先で真似しようと思うこと自体が、間違っていたんだな」
語っている内容と、いつもと同じ事務的な口調が似合っていないが、
雪子はようやく、本当にようやく、
不可思議だった鉄仮面の行動のわけが理解できる気がした。
「課長…おばあ様に愛されてたんですね」
そう言うと、中嶋の無表情が少しだけ崩れた。
今までなら見過ごしていたに違いない、中嶋のほんの僅かな表情の変化が、
今の雪子には敏感に感じられる。
それは多分、懐かしい人のことを想っている表情だ。
「口を開けば愚痴と小言ばかりで、陰険な婆だったがな」
「………だった」
「俺が大学に入って、家を出た後すぐガンで亡くなった。あっけなかったよ。
爺はまだ元気なんだが、いい歳のくせに、頑固にも未だに古い家で1人暮らしだ。
………どうした、橘?」
中嶋は雪子の顔を見て、―鉄仮面には珍しいことに―驚いた。
384鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:28:13 ID:NRiAIJ1d
雪子は、目を見開いたまま、大粒の涙をぽろぽろと流していたのだった。
「橘…どうかしたのか?」
雪子は無言でふるふる、と首を横に振った。
涙はとめどなく流れ、漆黒の睫毛を濡らし、白い頬へと流れ落ちている。
予想もしなかった展開に戸惑いを感じながらも、
中嶋は雪子の真珠のようなその涙に、瞬間、見蕩れていた。
潤み溢れる大きな瞳は、それでもまっすぐに、中嶋を見つめている。
桜色の、花の蕾のような唇がわななき、言葉を紡ぐ。
「………………さみしかったでしょう?………」
中嶋が言葉の意味を理解するのに、少しの時間が必要だった。
寂しいなんて、考えたこともなかった。そんな感情が自分にあるということすら、
今まで想像したこともなかった。
同情だろうか。だとしたらそれは、普段の自分ならば屈辱と取るだろう。だが。
目の前の少女のような部下の涙は、屈辱を感じるには余りにもまっすぐで純粋だった。
(真っ白な子猫が涙を流して泣いたら、こんなふうかもしれないな)
中嶋は柄にもなく、そんなことを思った。

雪子は、自分でも何故泣いているのか解らなかった。
ただ、家族を亡くした喪失感が、自分のことのように感じられて。
雪子の家族。いなくなってしまった人。変わってしまった人。
1人取り残されて、迷子の子供のような寂しさ。
無意識に、子供のころの中嶋と、自分を重ね合わせていた。

ふと、中嶋の手が動く。
伸ばされた手は、まるで子供をあやすように、雪子の頭をぐりぐりと撫ではじめた。
それが何とも言えず心地よくて、
雪子は、不思議なほど安心してされるがままになっていた。

中嶋は、ようやく泣き止んだ雪子の、さらさらした髪を指で梳きながら、
力任せにしたら壊れてしまいそうだ―と頭の片隅で思った。

どれくらいの時間そうしていただろうか。
庭の植木から、カラスか鳩か、大きな鳥が飛び立つ音がして、
雪子はようやく我に返り、慌てて中嶋から離れた。
「あ、あのっ、すみませんでしたっ」
恥ずかしさのあまり、意味もなく両手をばたばたと顔の前で振り回す。
(何やってるんだろう…私)恥ずかしくて頬が赤くなるのが自分でもよく解った。
中嶋は、そんな雪子を興味深そうに眺めて言う。
「橘は面白い生き物だな」
「え?い、生き物ってなんですかっ」
中嶋はそれには答えず、ただじっと雪子の顔を凝視している。
(な、なんか私、観察されてる……?生き物って……わたし動物扱いなの?)
余りにも繁々と見られ、いたたまれなくなった雪子は、慌ててソファから立ち上がった。
「…あの、私、帰ります、ね」
「…ああ、それじゃ送ろう」
「はい…すみません、お願いします」
雪子はそそくさと身支度をすると、中嶋と目を合わせることもできずに家を出て、
車に乗り込んだ。
先程の自分が恥ずかしくて仕方が無い。
車内でも、どちらも言葉を発することなく、ほどなく車は雪子の家の前に停められた。
385鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:28:42 ID:NRiAIJ1d
「ありがとうございます」
「ああ、今日はありがとう」
「………あの」
「何だ?」
車を降りると思っていた雪子は、そのまま助手席に座って、何か言いたそうに言葉を
選んでいる。
「課長………その、来週からは」
「ああ………さっきも言ったが、俺は料理には」
向いていない、と言おうとしたが、その言葉は慌てたように雪子に遮られた。
「いえ、来週のメニューは、何にしますか?」
「いや…しかし」
「ダメですよ、諦めちゃ。カンがつかめるまで頑張りましょう!」
(ここで放り出したら、後味悪いし、課長が可哀想だし!)
そう思いつめた雪子は、こぶしを握り締めて中嶋に詰め寄る。
思わぬ雪子の勢いに気おされてか、中嶋もつい、答えた。
「…そうだな、じゃあ来週は…ハンバーグだな」
「焼きますか?煮込みますか?」
「………煮込みだ」
「わかりました!それじゃまた月曜に」
何やら吹っ切ったような微笑みを浮かべて、
雪子はドアを開け、中嶋に手を振ってさっさと歩いていってしまった。
(あれは本当に…ずいぶん面白い生物だな)
自分が珍種中の珍種である鉄仮面であることなど棚に上げ、
中嶋貴巳氏は、感慨深げに雪子の後姿を見送ったのだった。

家に帰った雪子を、母が出迎えた。
上司に料理を教えるのだということは伝えてあるが、帰ってきた雪子の顔を見た途端、
母は意味深な表情を浮かべた。
「今日会った上司って、いくつ?」
「え?確か33歳だけど?」
「少し年が離れすぎてない?」
「やだ、別にお付き合いするわけじゃないんだよ?何言ってるのお母さん」
「ふうん…本当に?」
「本当に、研修のお礼に料理教えるだけだってば」
(そう…今日はちょっと思わぬ展開だったけど、よく考えたら課長と私が恋愛とか、
どう考えてもあり得ないし!
でもちょっとびっくりした……まだ心臓ドキドキいってる)
心拍数が無闇に上がっているのは、決して驚いたためだけではないのだが、
純情かつ鈍感な橘雪子は、まだそれに気づかない。

一方そのころ鉄仮面は、自宅に戻りリビングの扉を開けて考えていた。
彼が大変気に入っている、余計なものなど何一つ無いリビングであるが、
今日は何故か、いつもよりもひどく寒々しく感じる。
(おかしいな…気温がいつもより低いのか?
やはり保温のためには絨毯くらい敷いたほうがいいだろうか…しかし埃が気になるな)
その「寒さ」が、一般的には「寂しさ」と呼ばれる感情であることに、
鉄仮面たる中嶋貴巳氏は当然、気づかない。
386鉄仮面と子猫 4:2008/05/04(日) 23:30:18 ID:NRiAIJ1d
本日分は以上です。
387名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 00:05:29 ID:jNq8DvBC
GJ
料理は出来なくもないが量をきちんと量りたい俺は鉄仮面氏の気持ちがよくわかるw
俺には教えてくれる小動物部下などおらんがなorz
388名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 00:08:14 ID:fXC79btl
良い!
389名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 08:43:25 ID:wQ0B8zsF
こーの幸せもんがっ
390名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 09:56:43 ID:+HaUHtcT
33で5人も部下がいて、そのうち一人は真白な子猫だと・・・

許せん!

どこの市役所だ、採用試験を受けてやる!


GJ!
391名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 15:56:51 ID:EnpIuoDb
GJだな

>>390
いや、多分その33歳に使われる側になると思うよ
とりあえず生活は安定するかも知れないが
392名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 18:27:46 ID:a4QqQTG/
GJ!これはいい馴れ初め
393名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 18:59:14 ID:gL0rkf08
うちの会社では33歳は若造だwww

どう転んでも使う立場にはなれない。

つーかうちに居る33歳が課長になると潰れる・・・www

とまあ全然関係ない話スマソ

なにはともあれ>>386GJ!

お続き待っております。
394名無しさん@ピンキー:2008/05/05(月) 22:32:14 ID:AWxJW9V1
無敵の鉄仮面が子猫によろめくのを早く見たい。
395名無しさん@ピンキー:2008/05/06(火) 16:13:13 ID:8M1fGO7e
禿同!!次投下期待して待つ。
396鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:50:10 ID:qVrifaZv
続き投下します。

注意
・長いです
・本日投下分もエロ無しです。すいません次回はきっと。

397鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:50:50 ID:qVrifaZv
6 子猫の涙

煮込みハンバーグ、ポテトサラダ、わけぎのぬた、大根の浅漬け、
あじの南蛮漬け、五目ちらし、あさりの酒蒸し、、
ひじき煮、天ぷら、澄まし汁、大根サラダ、鳥わさ、豚角煮、
豆ご飯、鰻ざく、揚げ出し豆腐。

7月に入ったばかりの土曜日、
薄暗い市役所の資料室の中で、リストアップされたファイルを探しながら、
雪子は、今までに鉄仮面と二人で作ったメニューを心の中で数えていた。
毎週休みの日に二人で会うなんて、
普通に考えれば付き合っているとしか思えないのだが、
実際、中嶋と雪子の間には何もないのだから仕方がない。
料理を作り、それを昼食にして、次回のメニューを決めて、車で送られる。
毎回毎回、その繰り返しである。
今日もその予定だったのだが、中嶋が休日出勤することになり、
それならばと雪子は作業の手伝いを買って出た。
二人でやればそれほど手間のかかる仕事ではない。終わり次第、
中嶋宅で料理教室をするということになったのだった。
(…ようやくここまで終わったなぁ…疲れた)
雪子は、足元に積み上げられたファイルを見やり、溜息をつく。
資料室はそれなりに広いのだが、いかんせん膨大な過去の資料が収まっているため、
天井まである巨大なラックが何十個も等間隔で並べられ、
まるで図書館のような眺めである。
中嶋も隣の書架で、持ち出したファイルを戻しているはずだが、
その姿はラックと積み上げられたダンボールに隠れて見えない。
ただ、微かな気配がするだけである。
(もう少しだし………がんばろう)
気合を入れなおしたその時、資料室の扉が開き、誰かが入ってくる気配がした。
「も〜土曜なのに出勤ってうざいし」
「ホント〜!土日くらい休ませろって感じだよね」
聞き覚えのある声。闖入者は、雪子が昨年度まで所属していた市民課の女性二人だった。
窓を開ける音に続いて、ライターの着火音らしきものが聞こえ、雪子は事情を把握した。
市役所窓口は、昨年度から土曜日も開いているようになっている。
彼女達はその休日出勤組で、館内は禁煙であるから、上司の目を盗んで
人目につきにくい資料室で煙草を吸おうというのだ。
雪子と中嶋がいることなど、全く気づいていないようだ。
(なんか出づらいなぁ…どうしよう)
少し離れた場所で雪子が戸惑っていることなど露知らず、
二人は無遠慮な大声で、上司の悪口など喋っている。
「あ、そういえばさぁ、橘さんっていたじゃん?」
「あぁ、鉄仮面のとこに異動になった子だっけ?」
突然自分のことが話題になり、雪子は思わずびくりと固まった。
「この間合コンで一緒だった子がさ、なんか橘さんと小学校の同級生だったんだって」
「へ〜偶然だね」
「でさぁ、橘さんて中学高校と聖稜女子なんだって」
「え!超お嬢様学校じゃん?なんで市役所なんか勤めてんの?」
「それがさぁ、なんかあの子のお父さんが、不注意で事故起こして死んじゃって〜、
そんで事故った相手もすごい大怪我させちゃったんだって」
「え、かわいそ〜」
「だから大学とか行けなかったんじゃない?お金なくて」
「それで高卒で公務員?聖稜ってほとんど皆、付属の大学行くんでしょ?うわ最悪」
398鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:51:33 ID:qVrifaZv
全身から、血の気がひいていくのがはっきりとわかった。
つま先からどんどん体温が奪われ、冷たくなっていく感覚。
雪子は二人の闖入者の顔を思い出す。噂好きで口さがないことで有名で、
あの二人に知られたら、それはもう役所全体にアナウンスされたことと変わりない。
指先が震え、目の前が暗くなる。
父のことは事実だけれど、できれば職場の誰にも知られたくはなかった。
どうしていいか解らずに、今にも倒れこみそうになる雪子の肩を、
力強い手が掴み、支えた。
「………ぁ」
課長、と口から出そうになるのを、雪子はようやく抑えた。
いつの間にか雪子の背後にいた中嶋は、黙っていろ、と目だけで雪子に合図をし、
すたすたと入り口のほうへ向かい歩いて行ってしまった。
「ここは全館禁煙だが?」
中嶋のよく通る声が響く。ひゃ、とかうわ、とか驚く声が聞こえる。
「しかも資料室は特に火気厳禁だ。火事になったら責任を取れるのか?」
氷のような声音は、陰で聞いている雪子さえ思わず背筋が寒くなるほどだ。
「す、すみませんでした」
役所内で知らぬものはない鉄仮面の突然の登場に、
二人は肝を潰しているに違いない。声が裏返っている。
そそくさと出て行こうとする二人に、中嶋が更に追い討ちをかける。
「坂崎君と林君。窓口職員は名札を着けるように通達が出てるはずだが?」
(名札無くても解ってるし…っていうか課長、職員全員の名前覚えてるの?)
喫煙現場を押さえられ、名前まで知られているとあっては、
日ごろふてぶてしい二人も、さすがに顔色を失くしている。
「すみません、気をつけます!」
「し、失礼しまーす」
ばたばたと二人が出て行く音。後には、煙草の煙ときつい香水の匂いだけが漂っていた。
閉じられた扉を、まるで眼光で鋳溶かそうとするかのように睨み付けると、
中嶋は雪子のいる書棚の前へ踵を返し、足元に僅かに残っていたファイルを、
目にも留まらぬほどの速さで片付けた。
「………………あの、課長」
「作業は終了だ。荷物は持っていくから駐車場で待て」
有無を言わせぬ口調でそう告げると、中嶋は足早に資料室を出て行ってしまった。
(知られちゃった………課長にも)
雪子は、背後から何かひどく重いものがのしかかってくるような錯覚を覚え、
少しの間、壁にもたれかからないと立っていられなかった。

土曜の道路は空いていて、中嶋の車も、いつもよりもすいすいと気持ちよく走る。
一方、車内には気まずい沈黙が満ちていた。
「………あれ?」
いつも左折する交差点を右折したので、雪子は中嶋に怪訝な顔を向けた。
車は雪子の家の方角へと向かっているようだ。
「今日は帰ったほうがいい」
「え?いえ、大丈夫です」
「顔色が悪い」
「そ、そんなこと…」
否定はしたももの、自分の顔から血の気がひいているのは雪子も自覚していた。
再び、重い沈黙が車内を支配する。
二人とも無言のまま、車が雪子の家の庭先にさしかかった時。
塀の向こうで、何やら楽しそうに庭仕事をしている、中年夫婦の姿が見えた。

車を停めようとすると、雪子が突然、隠れるように上半身をがばっと伏せたので、
中嶋はやや面食らった。
「…橘?」
「このまま行って下さい!お願いしますっ!」
「………」
今まで聞いたことのない、切羽詰った雪子の声。
中嶋は、緩めていたアクセルを再び踏み込み、目的地を素通りした。
家の前を通り過ぎてもずっと、雪子はうずくまるように顔を伏せたままだ。
その肩が微かに震えているのを見て、中嶋は思案に暮れた。
399鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:52:32 ID:qVrifaZv
「………着いたぞ」
雪子がおずおずと顔を上げると、そこは中嶋宅の駐車場だった。
「他にどこに連れていけばいいのか解らなかったからな」
中嶋は珍しく弁解めいたことを呟き、すたすたと家の中へ入っていってしまった。

殺風景な部屋の中、コーヒーの香りだけが漂っている。
相変わらず、ソファの端と端という不自然な位置に座って、
寒いはずもないのに、雪子は身体の震えが止まらなかった。

ことり、とカップをテーブルに置く音が響く。
そんな僅かな物音にすら、怯えたようにびくっと反応する雪子を見て、
中嶋は眉をひそめた。
「…橘が悪いわけではないだろう。気にすることは無い」
「………え?」
さっきの噂話のことを言われているのだ、と雪子が気づくまで、少しの時間がかかった。
「………そうですね、でも」
「でも…何だ?」
「私には大事な父でも、他人から見たら、無責任な加害者ですから………」
どれだけ自分を励ましても、父のことを喋るときは声が震えるのを抑えられない。
「さっきの話、全部本当なんです。父が、居眠り運転で対向車にぶつかったんです。
相手の方、まだ若くて………後遺症が残って、今もリハビリされてるんです。
お仕事も続けられなくなっちゃって……だから、だから…」
限界まで水の入ったコップのように、感情がゆらゆらと揺らいでいる。
零れてしまわないように、雪子はきつく唇を噛み締めた。
「橘のせいじゃない」
「わかってます!………わかってる、ん、です、けど……でも、私」
両手で自分の身体を抱きしめる。そうしていないと崩れ落ちてしまいそうだった。
(泣いちゃいけない。私は被害者じゃないんだから。
泣いていいのは怪我をしたあの人と、あの人の家族。)
何度も心の中で繰り返してきた台詞を、また自分に言い聞かせる。
「………優しい、父だったんです」
ぽつりぽつりと、雪子は話しはじめた。

「父は小さな設計事務所をやっていました。社員も父を入れて3人だけの。
でも父は腕が良かったみたいで、不自由な思いをしたことはありませんでした。
それでも、聖稜女子なんて、ほんとは経済的には無理してたんですけど、
父がどうしても私を聖稜に入れたいって………母の母校なんです。
父は隣にある高校に通ってて、高校生の母に一目惚れしたそうなんです」
「………そうか」
聖稜女子学園は私立の中高一貫校で、県内、いやこの地方でも随一の、
いわゆるお嬢様学校として有名だ。
「入学式の時、父はすごく嬉しそうで…
『お母さんの若いときにそっくりだ』ってはしゃいで。私と母は全然似てないのに」
雪子は、父の面影を懐かしく思い出す。
雪子は母よりもむしろ父親に似ていると言われることが多かった。
声を荒げることなど滅多に無く、目元がいつも笑っているようだった父。
雪子が高校一年生の秋に、その父は事故を起こし亡くなった。
事務所を拡大しようと必死で働いており、過労のための居眠り運転と思われた。
保険には当然入っていたので、賠償金などは賄えたものの、
小さな設計事務所は、父がいなくなっては結局立ち行かずに事務所を畳み、
母の名義で親戚から借りていた資金を返済し、長年勤めた社員二人に退職金を払ったら、
残った保険金は、雪子の学費さえままならぬ金額だった。
悪いことは重なるもので、資産家だった母の実家も、不景気のあおりを喰らって
経済的に逼迫しており、援助を望むどころの話ではなかった。
「公立校に転入するから、って言ったんですけど、母がどうしても、それはダメだって。
『あの学校に雪子を入れるのはお父さんの夢だったんだから』って。それで、
どうしようもなくなって、家を売って古いアパートに引っ越したんです」
400鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:53:14 ID:qVrifaZv
母と二人、二人三脚の生活が始まった。
お嬢様育ちで、それまで働いた経験もなかった母は、それでも勝気な性格を活かして、
朝から晩まで保険の営業をして必死に食い扶持を稼いでくれた。
雪子も母を助けるため、家事の一切を引き受けた。
母と二人で戦っているのだと、ずっと思ってきた。

忘れられない光景がある。
父が亡くなって何日かして、母が出かける支度をしていた。
「お父さんが怪我させちゃった人のところに、謝りに行ってくるね」
そう言って母は、鏡に向かい、やつれた顔に久しぶりの化粧をしていた。
「お母さんが何で謝るの?!お父さんもう、いないのに!お母さんが謝るなら、
私も一緒に行く!一緒に謝るから連れてって!!」
そう母にすがったが、母は今まで見たこともないような厳しい表情で雪子を突き放し、
1人で出て行ってしまった。
その時ほど、自分が子供で悔しかったことはない。
母を支えたい、大人になりたい、と、あの時の母の後姿を思い出すたびにそう思った。

中嶋は、いつもと違う雪子の様子に、どう接していいのか戸惑いを感じていた。
戸惑うなどという感情は、久しく忘れていたものだ。
(…どうも、今日は調子が狂う)
「………それで公務員試験を受けたわけか」
「はい。同級生は殆ど付属の大学に行ったり留学しちゃったりして、
就職希望だったのって学年で私1人だったんですよ。
でも先生方もすごく親身になって協力してくれて、何とか合格できました」
本当に、その時は安心した。
ようやく母に負担をかけずに済む。家にお金を入れられる。
贅沢を望むわけではないけど、お金の心配をせずに済むようになるのは嬉しかった。
相変わらず忙しい毎日だったけど、充実しているんだと思っていた。
あの日までは。

「……それなら、自分を責めることはないだろう。橘は親孝行だ」
「親孝行…」
「そうだろう。お父さんもきっと喜んでいると思うが」
「課長…なんか棒読みなんですけど」
「仕方ないだろう。こういうことを言いなれていない」
ようやく、雪子がくすりと笑ったので、中嶋は柄にもなく安堵した。
慣れない慰めが、雪子の傷を更に広げたのだと気づくまでの僅かな間だったが。

「親孝行なんかじゃないです」
口元に笑みを浮かべながら雪子が言う。
それはいつもの、蕾が花開くような微笑ではなく、自嘲の入り混じった苦い笑みだった。
「いい娘さんだとか、素直で優しい子だねとか言ってくれる人は沢山いましたけど、
でも違うんです。ほんとに素直なら………ほんとにいい子なら、
母の幸せを喜べるはずだと思いませんか?」
そう問われて、中嶋は思い出す。
大きく立派な家の庭で、楽しそうに笑いあっていた中年の夫婦。
「3月になったばかりの頃に、母がアパートに、いきなり男の人を連れてきたんです。
『お母さんこの人と再婚するから』って。
そんなの無いです!何の前触れもなかったんですよ?
付き合ってる人がいることさえ、私全然知らなかったんです。
それに………それに………」
喋れば喋るほど、雪子は自分自身の言葉によって更に逆上していく。
声を荒げることなんて、父が亡くなった時以来かもしれない。
自分の心臓の音がうるさいほど耳に響く。
「お父さんが死んじゃって、まだ5年なのに!!!!」
401鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:54:41 ID:qVrifaZv
ずっと言いたかったのに、口に出せなかった。
せっかく幸せそうにしている母を傷つけるのが怖くて。そして何よりも、
もし母が、本当に父を忘れて幸せになろうとしていると認めたらどうしよう、
そう思うと、確かめるのがあまりに怖くて。
涙が、堰を切って流れ、頬を伝う。
今まで、自分できつく押さえ込んでいた感情は、一度流れ出すととめどもない。
だだをこねる幼い子供のように、かぶりを振りながら声を上げて泣いた。
「新しい、相手のひとだって、お父さんとは…ふえっ、全然っ、似てないし…
おじさんだしっ、お腹も出てるしぃっ………良い人ですよ?私のこと、
すごく、可愛がってくれるし……ひぐっ…すっごく、いい人なんですけどっ…でもっ」
「………そうか」
中嶋は子供をあやすように、雪子の頭を優しく撫でた。
髪を撫でる手の感触がひどく心地よくて。
重荷を吐き出した雪子は、ようやく暴走する感情の手綱を取り戻した。
「…あんなに仕事頑張ってた母が、結婚決まった途端に、あっさり退職しちゃって…
それで父が生きてた頃みたいに、専業主婦になっちゃって…
私、料理も掃除も、何にもすることなくって。
新しい家で、自分の部屋まで用意してもらって、義理の父も弟もすごく優しくて……
それなのに、どうして素直に喜べないんだろうって思うと、苦しくて」
母が再婚相手を連れてきたときから、ずっと苦しかった。
でも言えなかった。再婚に反対すらできなかった。
母が、幸せそうだったから。

「………当たり前だ」
「……え?」
「母親の再婚を素直に喜べないのは当たり前だ」
鉄仮面が、いつもの無表情で事もなげに断言したので、雪子は驚いた。
「………でもっ」
「義理の父親が気に入らないのも当たり前だ。それがどんなに善良な人間でもだ」
「だって………母が、せっかく幸せになろうと………っ」
「だから、人間の中身はそんなに綺麗事だけじゃないだろう」
「綺麗事……言ってますか、私?」
「自覚がないのか?」
中嶋にそう真顔で問われて、雪子はぽかんとしてしまった。
(母親の幸せを願いたいって……綺麗事なの?)
くっくっくっ、と押し殺したような声が聞こえて、その声の発生源を目で辿り、
雪子は信じられないものを目の当たりにした。
あの、完全無欠に冷酷無比の、ロボット顔負けの無表情の、
鉄仮面・中嶋貴巳氏が、

実に可笑しそうに笑っていたのだ。

402鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:55:12 ID:qVrifaZv
「橘は、本当に素直だな」
「……へ?」
余りにも衝撃的な眺めを前にして、雪子の思考は完全に停止している。
中嶋は、尚も楽しそうに微笑している。
但しあくまで眼光は鋭いので、何やら悪巧みしているような凶悪な笑顔である。
「少しは親に甘えてもいいだろう。母親に、義理の父親になる人がこんな
デブでハゲのしょぼくれたオヤジじゃ嫌だと言えば良かったんじゃないか」
「ハゲとは言ってません!」
「事実だろう」
「…一瞬なのにそこまで見てたんですか…」
ようやく、雪子の肩から力が抜け、くすくすと自然に笑い声が漏れた。
ささくれだっていた心が、いつの間にか、不思議なほど穏やかに落ち着いている。
「課長の笑った顔、はじめて見ました」
「面白い時に笑うのは当たり前だ」
「え……面白かったですか、私」
「ああ。ついでに今の顔も面白い」
「え」
「洗面所で顔を洗ってきなさい」
言われて雪子は、自分の顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっているとようやく気づいた。
「すみませんっ、お借りします」
雪子は恥ずかしさの余り、慌てて両手で顔を覆い、立ち上がった。
「目隠ししたまま歩くと転ぶぞ」
「うわわっ」
「あと洗面所は反対側だ」
「もっと早く教えて下さい!」

反応が面白すぎる部下を洗面所に案内し、タオルを傍らに用意してやると、
中嶋は、洗面台にかがみこむ雪子の真っ白いうなじに、ふと目を奪われた。
日頃は長い髪で隠されているが、
今、その真っ黒な髪は、顔を洗うため高い位置でまとめられている。
中嶋は、見るからに肌理の細かい、柔らかそうな肌に手を伸ばしかけ、
ふと我に返ってその手を引っ込めた。
「………?課長、どうかしましたか?」
タオルで顔をぬぐっている雪子が怪訝な顔をしている。
「いや、何でもない。明日は日曜だな」
言ってから、しまったと思った。
今日が土曜である以上、明日が日曜なのは当たり前だ。実に間の抜けた誤魔化し方だ。
しかし雪子は、そんなことに気づいた様子もない。
「課長は、日曜はいつも何をしてるんですか?」
「……これといって特別なことはしないな」
「……そうですか……あの」
「何だ?」
「いえ……何でもないです」
「明日も来るか?」

自分の口から出た台詞に、一番驚いたのは中嶋自身だった。
雪子をからかうつもりだったのか、それとも半ば本気だったのか、
自分でもよくわからない。
目の前の部下も、さぞかし面食らっているだろうと思ったのだが、
雪子の反応は、中嶋の予想に反したものだった。
「…はい、来ます」
「……そうか」
(本当に………今日は調子が狂う)

雪子を家の前まで送り届け、車内で一人になった中嶋は溜息をつく。
さっきから、雪子の泣き顔や驚いた顔、笑顔や細い肩などが、
かわるがわる目の前にちらついて離れない。
振り払おうと目をつぶり頭を振ってみたが、瞼の裏に白いうなじの幻影が見える。
(………………これは、何だ?)
403鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:55:55 ID:qVrifaZv
7 恋愛指南

「それは恋ね」

「こ、こここ、ここっ恋?」
「何こっここっこ言ってるの。鶏じゃないんだから」
「だ、だって恋って!!そんな!」
隣に座る女の子の、真っ白い頬が朱に染まる。バーの雰囲気にはどうも不似合いな子だ。
私は目の前のグラスをマドラーでかき混ぜ、残り半分ほどを一息に飲み干した。
この店のジントニックはちょっと薄い気がする。
「だからぁ、週一回ペースで会ってて、そんで相手が自分をどう思ってるか
気になってしょうがないんでしょ?それが恋でなくて何なのよ?
っていうかもう、付き合ってるっていうんじゃないの、それは。
あ、すいません焼酎ロックで」
相談がある、と土曜の夜に突然呼び出されて来たはいいものの、
聞かされたのは、相談というほどの問題ではなく、しかもジントニックは薄い。
これが可愛い可愛い雪子ちゃんの頼みでなかったら、とっくにあほらしくなって
家に帰って飲みなおすところだ。
「あやさん、付き合ってるわけじゃないんです、絶対」
「週一回、休みの日に男女が会ってるわけでしょ?んで明日も会う約束したんでしょ?
それ付き合ってるよ絶対」
「いや、だって……何にもないんですよ?」
「………は?」
「だからその………お付き合いしてる男女にあるべき事っていうんですか?
そういうのが、全然無いんですっ」
「え?何それ?ヤッてないってこと?」
「や、や………」
雪子ちゃんの顔が、これ以上ないくらい真っ赤に染まる。
この子はこれだから面白い。
「そっそのっ、例えば、キスとかっ………そういうのも無いんです。
っていうかそういう雰囲気がそもそも無いっていいますか…」
冗談だろう。この可憐な女の子と二人きりで、しかも週一ペースで会っておきながら、
手を出さない男なんているのか本当に。
初めて、相談される内容に興味がわいてきたぞ私は。
「………んじゃ、何やってるの?会ってる間は」
「お料理教室です」
「………………………は?」
「お料理教えて欲しいって頼まれて、毎週メニュー決めて一緒に料理してるんです」
「………はぁ。何だそれ………」
普通なら、料理を教えて欲しいなんて、どう考えたって男の口実だろう。
二人きりになって、あわよくば…ってやつだ。
でも話を聞いてる限り、一ヶ月以上も手すら握らないとか…あり得ないだろうそれは。
「そいつゲイなんじゃないの?」
「………え?」
びきっ、と雪子ちゃんが固まる。まずい、失言だ。
「いや、だからそいつが何考えてるのか全然わかんないな〜っとね」
「………はい、私も全然わかりません………」
「だから、雪子ちゃんはどうしたいわけ?これからそいつと」
「………わかんないんですけど、でもその人のこと、もっと知りたいなって………」
消え入りそうな声で言う雪子ちゃんは、めっさ可愛い。
女の私でも思わず押し倒したくなるくらい可愛い。
つか、誰か知らんがお料理野郎、ぐずぐずしてると私がもらうぞほんとに。
「じゃあさ、デートにでも誘ってみればいいんじゃない?」
「………え?」
404鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:56:22 ID:qVrifaZv
「だからぁ、そいつが雪子ちゃんのことどう思ってるか、
家でお料理教室してるだけじゃわかんないんでしょ?
なら他の場所に誘ってみれば。それで乗ってくれば脈あるんじゃない?」
「で、でもデートって、どこに誘えばいいんですかっ?」
「いや、色々あるでしょ定番が。映画とか遊園地とか。
いっそディズニーにでも誘ってみれば?」
「映画………遊園地………ディズニーランド………ですか」
なんだか雪子ちゃんの顔が、急に暗くなったような。
「勇気が出ないんなら酒の勢いでも借りてみれば?」
「ええ?私全然飲めないんですけど…」
「あぁ、そういやそっか。歓迎会でも飲んでなかったもんね」
今日も雪子ちゃんの前にはウーロン茶のグラスがある。
酒の無い人生なんて、私には想像もつかないんだけど。
「ま、明日会うなら頑張って誘ってみなよ」
「そ、そうですね………」
「で、だ」
「…はい?」
「相手が誰かは、やっぱり教えてくれないわけね?」
「………は、はい…こっちから相談しといて、ごめんなさい………」
「いいけどね〜。内緒にするってことは役所内の同僚ってことよね?」
「いや…えっと………はい」
「そんな心配しないでも、無理に詮索したりしないって。
まぁ妻子持ちとかじゃないんなら、いいんじゃない?」
「はぁ………それは心配ないです」
ほんとに、そのラッキーな奴はどこのどいつだ。
年代とか接点を考えると、総務課の紺野とか山口あたりか。
それとも雪子ちゃんが前にいた、市民課の誰かだろうか。
態度を見るに、うちの沢木ってことは100%無いな。可哀想な沢木。
「ま、頑張りなさいな純情少女!」
ばしん、と雪子ちゃんの背中を叩いて、私は最後の焼酎を飲み干した。


雪子は、帰りのタクシーの中で、先程のあやのアドバイスを反芻し、溜息をついた。
鉄仮面とのデートなど、どこに誘えばいいのか見当もつかない。
(課長が気に入るような映画なんてわかんないよ…とりあえずラブストーリーとかは
絶対見ないだろうな………遊園地も、ジェットコースターに乗ってる課長とか…
想像すると面白いけど、絶対行かないって言うだろうし。
ましてディズニーランドで遊ぶ課長なんて想像もつかない…うわぁダメだぁぁ)
煩悶し、懊悩し、その日雪子が眠りについたのは、
東の空が白々と明るくなってきたころのことだった。

405鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:57:01 ID:qVrifaZv
7 胡乱な日曜日

そして無情にも時間は流れ、次の日は日曜。

雪子と中嶋は、昨日作りそびれたメニュー、ミートソーススパゲティと
サラダ、コンソメ野菜スープの夕食を囲んでいた。
今日に限って夕食なのは、雪子がばっちり寝坊をしたからである。
これまでの時間、雪子は何度も何度も、中嶋を誘うタイミングを計っていたのだが、
残念ながらそんな都合のいいタイミングは訪れず、いつものように料理教室が
始まり、終わり、そしてこの食事が終わればもう帰らなければならない。
「………あのっ!」
「何だ?」
「…………スープしょっぱくないですか?」
「その質問は3度目だな」
「そっそうでしたっけ?あははははは」
「………橘、今日は何だか様子がおかしくないか?」
「そんなことないですってばっっ!!!」
「そんなに力いっぱい否定する必要は無いと思うが」
「………はい………」(無理だ………私には無理だよう、あやさん………)
既に、まともに中嶋の顔を見る気力すらなく、雪子はうなだれて、
手元の野菜スープを見つめていた。
中嶋が、何やら液体をコップに注いでいるらしい音がする。
「橘も飲むか?」
「はい………頂きます」
何なのか確認もせず、半ば無意識にそう答えて、雪子は茶色い液体の入ったグラスを
受け取り、喉に流し込んだ。
途端に喉が焼け付くような感覚に襲われる。
「けほっ……げほげほっっうわあっ」
「大丈夫か?」
「これ……お酒ですか?」
「見れば解ると思うが」
確かに中嶋の目の前に置かれているのは酒瓶であった。
急に目の前がくらくらとして、雪子はテーブルに突っ伏してしまう。
「橘、もしかして酒が飲めないのか?」
(そっか……課長、飲み会とか絶対来ないから…知らなかったんだ)
頭の芯が霞んだようになり、思考回路がうまくつながらない。
406鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 01:57:30 ID:qVrifaZv
気がつくと、中嶋の真面目くさった顔が目の前にあった。
「橘、水だ。気分は悪くないか?」
中嶋の腕に抱きかかえられ、仰向けで水の入ったグラスを口元に近づけられているのだ、
とわかるまで、少し時間がかかった。
喉を流れる冷たい水の感触は心地よかったが、ぼおっとした頭はその位では覚めない。
かつてないほど近くにある中嶋の顔。いつもの無表情が、心なしか、
心配そうな色を帯びているような気がする。
気がつくと、雪子は自分を抱く男の頬に指を伸ばし、くすぐるように撫ぜていた。
「………橘?」
と、その指が、鉄仮面のトレードマークとも言える銀縁の眼鏡を奪い取った。
「…返しなさい」
「いやです」
「………橘、なんか目が据わってないか………?」
じっと中嶋を見つめる雪子の眼差しは、日ごろのおっとりした様子とは打って変わって、
鉄仮面でさえたじろぐほどに、妙な迫力と色気がある。
「返して欲しかったら、私のお願いを聞いてくださいっ」
「………何だ」
「一緒にディズニーに行きましょう」
「………………何だそれは」
「東京ディズニーランドというでっかい遊園地のようなものですっ」
「そのくらいは知っている」
「じゃあなんですかっ!?お願いきいてくれないと、眼鏡の命はありませんよ?!」
「………勘弁してくれ」
「行くんですか?行かないんですかっっ?」
(………こういうのも絡み酒というんだろうか………)
中嶋は深い深い溜息をつくと、
「わかった、行こう」
と、決闘の申し出を受ける武士のような悲壮な面持ちで答えた。

とりあえずソファに雪子を寝かせると、
「………橘、本気なんだろうな?」
最後の駄目押しのつもりで声をかけたが、雪子は既に、
実に気持ち良さそうな寝息をたてていた。
ほんのりと上気した頬が妙に色っぽい。
(全く無防備すぎるな………襲うぞ)
そんな衝動を、類まれなる理性の力技で抑えつけた中嶋は、
「橘、送っていくから起きなさい」
と、雪子の柔らかな頬を、むにっと抓みあげたのだった。

407鉄仮面と子猫 4:2008/05/07(水) 02:03:48 ID:qVrifaZv
本日投下分は以上です。
続きの投下は早くても来週末あたりです。
読んでくれた皆様ありがとうございます。
408名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 03:32:06 ID:qbat4x/y
まってました、ってことで一番槍っ!!
409名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 06:34:32 ID:C2H1xJZf
雪子ちゃんかわいすぎてヤバいです、うひひひひひ
410名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 11:30:19 ID:HUFQSR0J
ははは、もうごちそーさんっすねw
411名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 13:10:50 ID:b8+cVm8j
むむ、飲酒運転はいかんぞ。
なによりイメージに合わない。
412名無しさん@ピンキー:2008/05/07(水) 13:24:20 ID:KNrhuR/+
>>411
いや、鉄仮面のことだから、タクシーか何かで家まで送ってるかもしれない。

子猫かわいいよ子猫。
413407:2008/05/07(水) 19:57:27 ID:qVrifaZv
>>411
>>412
飲んだのでタクシー呼んで雪子一人で帰そうとする

雪子酔いつぶれる

1人で帰すのも心配なのでタクシーで送る

と補完して読んで下さい。
色々詰め込みすぎて、そこんとこ描写するの忘れた……
鉄仮面は法令順守。ほんとすみません。
414名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 01:10:23 ID:Xb1Uv09e
酔っ払った雪子に萌えましたGJ!!


そして恋人候補から真っ先に外されてる沢木カワイソスw
415名無しさん@ピンキー:2008/05/08(木) 02:34:27 ID:LFc+8rA1
>>407
続き楽しみにしています。
416名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 02:51:19 ID:WODgsXrO
>>413
>飲んだのでタクシー呼んで雪子一人で帰そうとする
>↓
>雪子酔いつぶれる
>↓
>1人で帰すのも心配なのでタクシーで送る

そしていつの間にか送り狼になるんですね、分かります。

続きが早く読みたくなったのは久しぶりだ!何という良スレ
417名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 04:54:11 ID:hrr4OVOP
沢木がやりたくてもできず悶絶してた事をあっさりやってるな鉄仮面ww
>ほっぺたをむにっと

GJ!!
ほんと続きが楽しみです。
418名無しさん@ピンキー:2008/05/12(月) 00:24:08 ID:1LtA5S5+
来週末っつか今週末か・・・。
がんばって保守するぜい。
419名無しさん@ピンキー:2008/05/14(水) 22:38:32 ID:IqyPSAPl
>「じゃあなんですかっ!?お願いきいてくれないと、眼鏡の命はありませんよ?!」

子猫かわいすぐるwww
420名無しさん@ピンキー:2008/05/15(木) 00:59:11 ID:u7ErLAYu
(*・∀・)wktkwktk
421鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:14:44 ID:lG9UqCIo
続き投下します。

注意
・長いです
・本日投下分もエロなしです……
ほんとにすみません。明日投下分で完結&もちろんエロありです。
422鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:15:09 ID:lG9UqCIo
9 夢の国へ 

七月某日。
東京行きの新幹線の車内は、夏休み前ということもあってか、
思ったほど混んではいなかった。
天気は快晴。窓の外には長閑な田園風景が広がっている。
行楽客らしき姿が目立ち、乗客達の雰囲気は心なしか浮き立っている。
ごく一部、やけに緊張感溢れる一角を除いては。

(ど、どどどどどどーしよう………ほんとに行くんだよね?
っていうかもう、向かってるんだよね…夢じゃないよね?)
この一週間というもの、何度も繰り返してきた独り言をまた心の中で呟き、
雪子はそっと隣の席に座る男の様子を伺った。
親類縁者と隣近所と可愛がっていたペットが一度に亡くなったかのような仏頂面で
新聞を読んでいるのはもちろん、鉄仮面・中嶋貴巳氏である。
彼がわき目もふらず紙面を凝視しているのをいいことに、雪子はそっと様子を伺うが、
やはりその鉄壁の無表情からは、この思わぬ小旅行のことをどう思っているのか、
全く伺い知ることはできない。
その中嶋氏が、顔も視線も全く動かさないまま出し抜けに「何だ?」と声を掛けてきて、
雪子は危うく椅子から飛び上がるところだった。
「いえっ、あのっ………お天気になってよかったですね」
「そうだな」
ふう、と溜息をついて、雪子はこの珍道中に至る経緯を思い出していた。

先週の日曜日の夜、雪子は気がつくと自宅の、母の寝室に寝かされていた。
慌てて飛び起きると、同じダブルベッドで寝ていた母が「ん〜?何よぉ」と目を覚ます。
「おっお母さん?!何で私ここで寝てるのっ?」
「覚えてないの?あんた酔っ払って、中嶋さんにタクシーで送られてきたんだから」
「………え?えええええ???」
「いくら雪子が軽くても二階までは運べないでしょ。義之さん出張だし、
圭ちゃんも合宿でいないし。仕方ないからこっちに寝かせたの」
「ご、ごめんね………えっと、お母さん、課長と話したの………?」
恐る恐る雪子が聞くと、母は意味深な笑みを浮かべ言った。
「まあね。ちょっと面白そうな人じゃない?なかなかいい男だし」
「えっ……いやっ、えーと」
「雪子はああいう変わった人が好きだったのね。道理で浮いた話の一つも無いと思った」
「おっ、お母さん違うのっっそういうわけじゃ」
「楽しみねぇ……ディズニーランド」
「………え?」
途端に、先程の中嶋宅での自分の振る舞いが、フラッシュバックするように一気に
思い出されて、雪子は声にならない声を上げ、じたばたと悶えた。
「………っっっっ!!!!」
「何よ、ホコリたつから暴れないでよ」
「お母さんっっ!!!そのっ、課長に聞いたの?デ、ディズニー行くって…」
「雪子が帰ってきたときに言ってたんじゃない。
課長とディズニーランド行ってきます!いえーい!って妙なテンションで。
あんた誰に似たんだか酒癖悪いわね。明日仕事なんだから早く寝なさいよ」
「うわぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」
余りの恥ずかしさにじたばたと暴れる雪子だったが、
どうしても一つだけ確認しておきたいことがあった。
「………お母さん…課長と、何話したの…?」
心臓が口から飛び出しそうなほど緊張して答えを待っていたが、
雪子の耳に届いたのは、母の穏やかな寝息だけであった。
423鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:15:43 ID:lG9UqCIo
翌月曜日、当然のように雪子の体調は最悪だった。
ガンガンと痛む頭を抱えながら、それでも何とか就業時間まで持ちこたえた。
気がつけば職員は皆帰っており、只1人残っていた鉄仮面も帰り支度を始めている。
慌てて彼を呼び止め、周りに誰もいないのを念入りに確かめた後、
雪子はあらん限りの勇気を振り絞って尋ねた。
「課長、昨日は色々すみませんでしたっ!
それでその…昨日話してたことなんですけど…」
(酔った勢いで誘ったなんて…絶対断られるよなぁ…私の馬鹿っ)
「あれから調べたんだが、ランドとシーの二種類あるらしいな。どちらがいいんだ?」
「………へ?…えっと、あの…一緒に行って頂けるんですか…?」
余りにも意外な展開に雪子は戸惑った。嬉しいのは当然嬉しいのだが、
てっきり断られると思っていたので、どうも頭がついていかない。
加えて、ランドだのシーだのという単語が鉄仮面の口から出ると、
自分から誘っておいてなんだが、ものすごい違和感があるのである。
「質問を質問で返すんじゃない。俺は約束は必ず守ることにしている」
「は、はいっ!じゃあえっと…ランドがいいです!………でも課長、ホントに…?」
「くどいな。但し、行くからにはきっちり下調べをして、計画を立てさせてもらう。
園内は飲食物の持ち込み禁止らしいが、前に言った通り、俺は外食が好きではない」
(課長…昨日わざわざ調べたんだ…さすが)
ただ感心するばかりの雪子の顔に、中嶋の何か物言いたげな視線が突き刺さる。
(………な、なんか見られてる………?)
「ちなみに一旦園内から出ると、持ち込みの物でも食べられるスペースがあるそうだ。
再入園ももちろん可能だ」
中嶋の視線はますます強く、雪子を射抜かんとするばかりである。
「………………………………お弁当、作ってこいということでしょうか?」
おずおずとそう言うと、中嶋は満足気に深く頷いた。
「夏場だし、当日の昼の分だけだな。夕食や翌日の朝食は諦めることにしよう」
(そうだよね、夜の分は作っても腐っちゃうもんね、って……
今、なんか不思議な単語を聞いた気が………えっと…)
「………翌日?」
不思議そうに聞き返した雪子に、
「移動時間を考えると、日帰りは厳しいだろう」
鉄仮面は、当然のことのように無表情で答えた。

「………………………え???」
「考えてなかったのか?嫌ならやめるが」
「いっ嫌じゃない!嫌じゃないですけどっっ!!!」
(でも泊まりって!!!泊まりってつまり、そ、そういうことですかっっ???)
「泊まる場所と新幹線の切符は適当に手配する。決まったらまた連絡する」
出張の打ち合わせをするかのような事務的な口調でそう告げると、
鉄仮面はさっさと踵を返し去っていった。
残された雪子は、余りの衝撃に言葉も出ず、しばらくその場に立ち尽くしていた。
(嫌じゃないって、言っちゃった………どうしようっっ?)

それからの一週間、雪子は正に上の空だった。
何とか仕事はこなしていたものの、気を抜くとすぐに週末の予定のことで
心は一杯になってしまう。特に「泊まり」という一点において。
424鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:21:13 ID:lG9UqCIo
悩んだ挙句、雪子は再びあやに相談を持ちかけることにした。
しばらく酒の匂いのする場所には近づきたくなかったせいもあって、
仕事が終わった後、食事がてらに自室に招いた。
いざその時を迎えるにあたり、女性としての心構えを教えてもらう…というより、
単に誰かに話を聞いて欲しかったというのが本音ではある。

「まあねぇ、いいんじゃないのお幸せそうで」
「あやさん、そんな事言わないで、話聞いて下さいよ」
「聞いてるってば。で、何が不安なの?雪子ちゃんもしかして処女?」
「しょ、しょ………」
「あぁ、わかったってば。そんな赤くならなくていいから。
多分そうだろうとは思ってたんだけどさ。大丈夫だよ、いざそういう事になったら、
男に任せとけばいいんだって。年上なんでしょ?
まさか経験無いってことないでしょ、男のほうは」
「えーっと………それは大丈夫、と思いますけどっ、なんか想像つかないっていうか…」
「そんな心配しなくても、皆通る道なんだから大丈夫だって」
「や、やっぱり痛いんですか………?」
「う〜ん…人によると思うけどねぇ。私はそんな痛くなかったけど、
友達はもう二度としたくないって位痛かったって言ってたな」
「………………そんなにですか…」
「やる前から心配したって仕方ないでしょうが。それより下着とかどうすんの?」
「へ」
「勝負下着」
「勝負………やっぱり勝負しなきゃいけないんでしょうか」
雪子の脳裏に、黒だの紫だのアダルトな感じの下着が浮かぶ。
「いや、そんな握りこぶし固めて気合入れなくても。雪子ちゃんのキャラだったら、
セクシー下着系は却って引かれるかもよ?普通のでいいと思うけど」
「普通…ってどんなのでしょう?」
「今どんなのしてんの?」
「ひゃぁっ!!あやさんっやめて下さい!恥ずかしいっ」
あやが出し抜けにTシャツを捲り上げたので、雪子は思わず悲鳴を上げた。
「ピンクのレースねぇ。いいんじゃないの、そういうので」
「そ、そうですか………」涙目になりながら雪子が恨めしそうに言う。
「あと、服はどうしようかなって…」
「服ねぇ。どんなの持ってるか見せてよ」
そう言ってあやは、雪子が止める間もなくクローゼットの扉を開いて、しばし絶句した。
そこには、フリルやらレースやらリボンやら、
考え付く限りの、ごてごてした少女趣味な装飾が施されたワンピースが、
何着も吊るされていたのだ。
そういった方面にまるで興味のないあやでさえ、何故か知っているそのブランドの名は。
425鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:21:37 ID:lG9UqCIo
「………これが有名なピンクハウスってやつですか………」
「ちっ違うんですあやさん!!これ、私が買ったんじゃないんです!お義父さんが…」
「は?」
「義父が、母と結婚が決まってから、すごく私のこと可愛がってくれて…
男の子しかいなかったから、ずっと娘が欲しかったって。
で、娘がいたら是非こういうのを着せたかったって、いっぱい買ってきてくれて…」
「はぁ…随分な趣味のおじさんだねぇ。確かに雪子ちゃんなら似合うか。
着せたくなる気持ちもわからんでもないわ」
あやは、先程雪子の部屋に入る前に挨拶だけ交わした、
やたらと愛想のいい、気の良さそうな中年男性の顔を思い出して言った。
「いや…私は、正直あんまり好きじゃないんですけど…せっかくだから夕食の時とか、
なるべく着るようにはしてます」
「家でご飯食べる時にこれ着んの?!」
「…こぼさないようにするのが大変なんです、クリーニング代高いし」
僅か数ヶ月前に雪子の義父となったばかりの、坂井義之(46歳・会社経営)は、
寂しい頭頂部とメタボな体型に似合わず、実にロマンチストな中年である。
『いやぁ、娘ってこんなに可愛いものだって知らなかったよ!
圭一は全然まったくちっとも可愛げがないしねぇ。美紀子さんと結婚できた上、
こんな可愛い娘までできて、僕ほんとに嬉しいよ!』
そう言って満面の笑顔で手渡された服や、ぬいぐるみやその他こまごました小物類は、
既に雪子の私室から溢れんばかりである。
どれもこれも少女趣味の、過度に可愛らしい物ばかりだ。
実の娘でないにも関わらず、それはもう猫可愛がりに可愛がってくれる義父の好意を
むげに断ることもできず、雪子は内心困り果てているのである。
「ねぇ、ちょっと着て見せてよ」沢山のワンピースの中でも、ことさら乙女な印象の
一着を取り出し、あやが言う。
「いやですっ」
「お人形さんみたいで可愛いって絶対!ほらほらジーンズなんて脱いで」
「あやさんっやめて下さいっっ!脱がせないで〜!!」
「いっそディズニーにこれ着てけば?」
「絶っっっ対イヤですっ」
そんなこんなで着ていく服はなかなか決まらずに、時間だけが過ぎていった。
結局あやの「普段会ってる時ジーンズなら、スカートにするだけでも違うんじゃない?」
というごく適当なアドバイスのもと、義父の買ってくれた服の中で唯一シンプルな
デザインの、淡い水色のワンピースを着ていくことに決まったのだった。

(………なんかこの一週間、色々考えすぎて疲れた…結局、私の服の違いなんて
課長は全然気づいてないみたいだし………悩んで損したかも)
雪子は、上の空でただひたすら中嶋の後をついていったのだが、
いつの間にか宿泊予定のホテルのロビーに到着していることに気づき、
やおら心拍数が上がるのを感じた。
(こ、ここに二人で泊まるんだ…ほんとに…うわぁどうしようっ!
私達、ちゃんとそういう関係に見えてるんだろうか…うわぁぁぁ)
雪子は1人で悶えているが、もちろん回りの人間は、それほど他人に注目している
はずもないのだから、それは勘違いというものである。
フロントでチェックインの手続きを終えたらしい中嶋が、
ベルボーイを伴って、すたすたとエレベーターへ向かってしまったのに気づき、
雪子は慌てて後を追った。
426鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:22:04 ID:lG9UqCIo
部屋の前に辿りついた時、雪子の緊張はピークに達していた。
ベルボーイが部屋の説明を終えて戻っていったのにも全く気づかずに、
「………橘。おい橘」
という中嶋の声に、ようやく自分がまだホテルの廊下に突っ立っているということを
認識したのだった。
(い、いよいよお部屋に入るのかぁ…うわぁ変な汗かいてきたっ)
が、
「これが橘の分だ。30分後に出発しよう」
いつもの事務的な口調でそう言い残し、鉄仮面がさっさと目の前のドアの中に
消えてしまったので、雪子の頭は一瞬、真っ白になった。
手渡されたものは、どうやらカードキーである。
(部屋番号………2885)
中嶋が消えた部屋のドアのプレートを見ると、そこには『2886』の文字が。

(………………………………部屋、別なんだーーーー!!!!)

激しく予想外の事態に、膝の力が抜け、雪子はへなへなとその場に座りこんでしまった。
(………甘かった…私、鉄仮面を甘く見すぎてた…さすが課長。
今まで悩んだの、全部無駄だったってことですか、そうですか………)

いつまでも廊下に座り込んでいるわけにいかないので、雪子は自分の部屋のドアを開け、
ベッドに仰向けに倒れこむと、思い切り背伸びをした。
落胆したような、それでいてどこか安堵したような、妙な脱力感が雪子を襲う。
空回りしていた自分と、必要以上に生真面目な中嶋が、なんだか滑稽で。
雪子はようやく、肩の力を抜いて笑えた気がした。
(………余計なことで悩む必要無くなったし、
これはもう、開き直って思いっきり楽しむしかないなっ!)
427鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:24:24 ID:lG9UqCIo
週末のディズニーランドは、人波でごったがえし、普通の人間ならまっすぐ歩くことさえ
ままらなない状況だった。
が、夢の国にはあまりにも不似合いな、眼光鋭い鉄仮面の前には、
十戒のモーセのように自然と人波が分かれて道ができ、
二人が歩くのに苦労はいらないのだった。
色々心配したり脱力したりしたものの、やはり園内に入ると、
雪子は自然と気分が浮き立つのを感じていた。
「ディズニーランドなんて中学生の時以来ですよ!課長は来たことあるんですか?」
「いや、初めてだ」
「そうなんですか。来てみてどうですか?ちょっとは面白いですか?」
それが雪子は一番心配だったのだ。どう考えても、鉄仮面とディズニーランドは
異質な組み合わせである。
「うん、なかなか興味深い」
「…興味深い、ですか…?」
「ああ、年間通じてこれだけ集客力があるというのは何故か、ということを
考えていくと、自分達の仕事にも通じる部分がある」
「………はぁ………」(なんか…観光っていうより視察?視察なの…?)
「それにあの耳」「みみ?」
「子供はともかく、いい年をした大人まであの耳をつけているだろう。
此処以外の場所では考えづらい現象だ」
中嶋の指差す先には、様々なキャラクターの耳がついた帽子やヘアバンドを着けている
中年の団体ツアー客がいる。
確かに、一歩このテーマパークを出れば、彼らは決してそんなものは被らないだろう。
「う〜ん、…ここはきっと特別なんですよ。一歩入ればここは夢の国なんだから、
大人も子供に返って楽しんでいいですよっていう…」
「暗黙の了解があるわけか」「ですねぇ」
「成る程な…これだけ園内の細部に亘って、予算をかけて作りこんであるのは、
或いはその不文律をより強固なものにするための仕掛けなのかもしれないな。
現実世界との区別を明確にすることで、園内にしかないルールを自然と演出するという」
「………はぁ、私にはよくわかりませんが………」
(…ディズニーに来てそんな事考えてるのって、今、園内に課長1人だけだ絶対…)
428鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:25:01 ID:lG9UqCIo
呆れたり感心したりしていると、前を歩く中嶋がふと立ち止まったので、
危うくその背中にぶつかりそうになった雪子は慌てた。
中嶋はというと、グッズ販売をしているワゴンの前で、何やらじっと商品を眺めている。
「課長、どうしたんですか?」そう声をかけると、
中嶋は怖いほど真剣な表情で、雪子の顔と、ワゴンの中身を交互に見つめた。
と、おもむろにワゴンの棚から、白い猫の耳のついたヘアバンドを手に取り、
雪子の頭に素早く装着したのだった。
「ななな何ですかっっ」
「試着だ」
「………へ?」
猫耳をつけたままぽかんとしている部下を見て、鉄仮面は無表情で満足げに頷き、
雪子の頭からヘアバンドを取ると、会計を済ませた。
再び頭に白い猫の耳をつけられた雪子が慌てる。
「えっと………これは………買っていただけたんですか?」
「そうだ」
「あ、ありがとうございます………でも、あの、結構恥ずかしいんですが…」
「心配することはない。似合っている」
「……はぁ…」
「むしろ耳が無いほうが不自然なくらいだ」
「そ、それは………」
褒められたのかそうでないのかさっぱりわからない。
「でもやっぱり1人じゃ恥ずかしいですし…じゃあ、お返しに課長に」「断る」
雪子がみなまで言う前に、鉄仮面はさっさと歩いて行ってしまった。
(考えてみたら、初めてのプレゼントだ…でも、よりによって猫耳って…)
嬉しいような悲しいような複雑な思いを抱きながらも、雪子は結局一日中、
ヘアバンドを着けたまま過ごしたのだった。
小柄で少女のような風貌の雪子が、水色のワンピースを着て猫耳を着けている姿は、
まるでメルヘンの世界の住人のようで、嫌でも周りの客達の注目を浴びることになる。
(…不思議の国のアリスがいる…)
(……猫耳アリス萌え!!!)
熱い視線があちこちから送られていたが、極めて鈍い性質の雪子は気づく由もなかった。
429鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:25:37 ID:lG9UqCIo
それからの半日はあっという間に過ぎた。
パークの外の広場で、雪子が気合を入れて作ってきた弁当を食べ、
アトラクションに並び、パレードを見て、道端のベンチで並んで休憩する。
(私達、なんか普通のカップルみたい…うわぁ奇跡的だぁっ)
雪子が心の中でガッツポーズをした刹那、ベンチのすぐ後ろにある扉から、
世界一有名な、耳の大きな黒いネズミが、係員を伴って姿を現した。
いち早く気づいた客達から歓声が上がる。
「うわぁっ、課長、ミッキーですよ!!!本物ですよ!!」
「本物というのは何をもってそう言うんだ」
「いいから行きましょう!!」
興奮して駆け寄る雪子の後ろに、中嶋は溜息をついて続いた。
サービス精神溢れる巨大なネズミが、愛嬌を振りまきながら振り返った先に、
無表情と無愛想の見本のような眼光鋭い鉄仮面がいたのは、
実に不幸な事故だったと言わざるを得ない。
二人の異質な存在の視線がかち合った瞬間、雪子は、
世界一有名なネズミが、凍りついた笑顔のまま、びくりと身体を引いたのを見た。
(………………今、ミッキー怯えてた………………………)
あってはならぬものを見てしまい、雪子は先程の「自分達は普通のカップル」という
幸福な勘違いを、自ら速攻で否定することになったのであった。

それでも二人の時間は、比較的穏やかに過ぎた。
あっという間に夕暮れが迫り、レストランで夕食を摂りながら、
中嶋は雪子の表情を飽かず観察していた。
デザートのシャーベットが運ばれてきて、雪子はそれはもう幸せそうな笑顔である。
その顔が見られただけでも、苦手な外食に耐える甲斐はあったかもしれない。
そう中嶋に思わせるほどに、彼女の笑顔は破壊的に可愛らしい。
これだけ本音が解り易いと、日常生活に支障が出るのではないかと心配になるほど
表情豊かな雪子だが、それでいて若い女性にありがちなキャンキャンと煩い所は無い。
彼女の周りにはいつも、常春の陽気のような穏やかさが満ちている。
「………?何ですか?やっぱり課長もデザート欲しかったですか?」
「いや、いい」
「食べ終わったら最後のパレードですね…あっという間だったなぁ」
月曜からの仕事のことを考え、明日はどこにも寄らずに帰る予定である。
名残惜しそうに外を眺めている、雪子の横顔は心なしか寂しげだ。
窓の外には、色とりどりに光る玩具を持った子供たちが、疲れも知らず走り回っている。
夕闇の中で明滅する赤や青の光は、綺麗だがどこか物悲しい。
430鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:26:03 ID:lG9UqCIo
「………お祭りみたいですね」
ぽつりと雪子が呟く。
「…夏祭りか」
「子供のころに、父がよく連れていってくれました。賑やかですごく楽しいんですけど、
ちょっとだけ怖くて、何となく寂しい感じもして。特別ですよね、お祭りの雰囲気って」
中嶋は、遠い記憶を手繰り寄せる。可愛げのない子供だった自分だが、
それでも祖父に手を引かれ、祭りに行ったことはあった。
屋台の裸電球の明かりや、大人たちのどこか猥雑な雰囲気。絡みつくような熱気。
そんなものを断片的に思い出す。
人込みは大嫌いなのだが、雪子とならもう一度、祭りに行ってもいいかもしれない。
そんなことを思う自分に驚き、中嶋は、胸の裡で決意していたあることを、
改めて確認し直したのだった。
431鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:26:32 ID:lG9UqCIo
10 鉄仮面の決意


ホテルに戻り、シャワーを浴びて、バスローブ姿で濡れた髪を拭きながら、
雪子は今日一日の出来事を反芻していた。
中嶋の反応はいちいち独特で、驚いたり戸惑ったりもしたけれど、
家族や友人達と遊びに来るよりも、ずっと楽しかった気がする。
(でも私ばっかり楽しんでたような……課長はつまんなかったかもしれないな…)
ベッドに座り、もたれかかった壁の向こうは中嶋の部屋である。
耳を澄ましても、隣の部屋からは物音一つ聞こえない。
(課長、何してるんだろう………もう寝ちゃったのかな)
ふと、ベッドサイドテーブルに置かれた電話が雪子の目に入った。
(これって、部屋番号押したらそこにかかるのかな?)
深く考えもせず、隣の部屋番号をプッシュすると、呼び出し音が鳴った。
そこで初めて雪子は慌てた。何を話そうか全く考えていなかったからだ。
呼び出し音が三回ほど鳴った後、受話器からいつもの不機嫌そうな声が響いた。
「はい」
「………あ、あの、課長ですか?」
「橘?どうしたんだ?」
「いえ、あの、特に用事はないんですけど…」
「…そうか」
用事が無いなら切るぞ、などと言われるかと思ったが、
中嶋はそのまま沈黙を続けているので、雪子は少し安心した。
「………あの、課長、今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「そうだな、俺も楽しかった」
「…え?…本当ですか?」
予想外の答えに、雪子は目を丸くした。
「ああ。色々と珍しいものが見られたし、それに橘を見ていると面白かったしな」
「またですか?課長はそればっかり…」
むくれてみせたが、本当に腹を立てているわけではない。
むしろ、中嶋が今日という日を楽しめたらしいことが、雪子にはとても嬉しかった。
暫しの沈黙が流れ、微かな息遣いだけが受話器から聞こえる。
出会った当初は気重なだけだった沈黙が、今はちっとも苦にならず、
却って穏やかな安心感さえ感じている自分に、雪子は気づいた。
432鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:27:18 ID:lG9UqCIo
「………お弁当美味しかったですか?」
「ああ」
「…良かった」
他愛のないやり取りが、不思議なほど心を暖かくする。
ぽつりぽつりと、断続的に続く会話だが、それが何故かとても居心地が良かった。
くすくす、と雪子の唇から笑い声が漏れる。
「………何だ?」
「いえ、なんか、可笑しいなぁって………隣の部屋にいるのに、電話で話してるなんて」
「そういえばそうだな」
もたれかかった壁の向こう側に、中嶋の体温を感じるような錯覚を覚えて、
雪子はそっと目を閉じた。
「………会いたいです」
ふと、思ったことがそのまま、唇からぽろりと零れた。
「…橘」
名を呼ばれ、我に返る。
「え、えっとその………ち、ちょっと待って下さいっ」
咄嗟にがちゃり、と電話を切り、狼狽のあまり、
意味も無く部屋の中をうろうろと歩き回った。
(私………なんてこと言ったんだろう…どうしよう、とりあえず着替えて…)
慌ててバスローブを脱いで洋服に着替え、
濡れた髪もそのままに部屋を出て、雪子は隣の部屋のドアの前に立った。
やたらに騒ぐ心臓を何とかなだめ、意を決してノックしようとした刹那。

ドアは内側から開き、中嶋がそこに立っていた。
433鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:27:56 ID:lG9UqCIo
「………あ、あの」
戸惑いを言葉にする前に、雪子は中嶋に腕をとられ、
部屋の中へと引き込まれた。背後でドアが閉まる音がする。
そして思いがけず強い力で引き寄せられ、中嶋の胸の中に抱きしめられた。
骨ばった大きな手が雪子の頬をくすぐり、冷たく濡れた髪を気遣わしげに撫でる。
これ以上ないほどに緊張しながらも、シャツ越しに感じる中嶋の体温が心地よくて、
雪子は思わず、うっとりと目を閉じた。
その細い顎が、男の長い指でくいっと持ち上げられたかと思うと、
真面目腐った無表情の顔が、これまでにないほど接近してきて視界を奪う。
「………ぁ」
雪子が驚きの声を上げる間もなく、二人の唇がそっと重ねられた。
(………しちゃった…キス…うそみたい)
触れ合っているだけのキスだが、
中嶋に聞こえるのではないかと心配になるほどに、心臓の音が耳に響く。
唇をそっとついばまれると、頬が熱く火照り、身体の力が抜けてしまう。
重なった唇の隙間から、熱い吐息が漏れる。
立っていられなくなりそうで、中嶋の胸に必死でしがみつくと、
唇の間から、何か熱くぬめるものが入り込んできた。
(うそっ………舌…やぁっ恥ずかしい………)
緊張の余り強張る雪子の咥内を、優しく解きほぐそうとするかのように、
中嶋の舌があちこちを擽る。歯列をくすぐり、深く差し込まれたかと思うと、
ふいに離れて唇を舐められる。
(ひゃっ恥ずかしい………キスって、こんなにすごいんだ………)
少しずつ緊張がほぐれた雪子が、おずおずと自らの舌を伸ばす。
その途端に中嶋の舌に絡め取られ、きつく吸われて息もできなくなる。
めまいのような陶酔が、頭の芯を痺れさせている。
お互いの舌が激しく絡みあい、混じりあった唾液が顎を伝った。
雪子の膝はがくがくとして力が入らず、いつの間にか、ドアに押し付けられるような
体勢になって、必死で中嶋の背に手を回していた。
中嶋の舌の動きが激しさを増し、まるで貪られるように咥内を犯される。
あまりの刺激の強さに、ついに雪子が音をあげた。
「か、課長…っ………待って……」
ぺたりと床に座り込んでしまった雪子を、中嶋は軽々と抱き上げ、ベッドに座らせた。
雪子はただ、潤んだ瞳で目の前の男を見つめている。
見慣れた無表情なのだが、鉄仮面らしくもなく瞳にはどこか不安定な色が浮かんでいる。
と、中嶋がやおら、居住まいを正した。
434鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:28:23 ID:lG9UqCIo
「橘、話がある」
「………はい?」
「これまで、俺と橘の関係をはっきりさせずにきて、悪かった」
「は、はい」
「これからの二人の関係について、成り行き任せにするのではなく、
きちんと橘の了解を得たいと思う」
(って………もしかして、これって告白?なんかものすごく事務的な口調だけど、
でもそうだよね多分…どっどうしよう)
確かに、一緒に旅行にまで来ておきながら、二人の関係を口に出して確認したことは
一度も無いのだ。
(…付き合ってくれ、とか好きだ、とか言われるのかなぁ。…課長の口から?!
ぜんっぜん想像つかない…沈黙が怖いよぉっ)
しかし中嶋の口から出た台詞は、雪子の想像の遥か斜め上をいくものであった。


「俺と結婚してくれないか」


「……………………………………………………………え?………ええええええ???」
「返事は急がないから、ゆっくり考えてくれて構わない。話はそれだけだ。
明日の朝食は7時だから遅刻しないように」

プロポーズされたのだ、と雪子がようやく冷静に考えられるようになったのは、
いつの間にか自分の部屋に戻って、床に座り込んだまま暫く経ってからのことだった。
頭が真っ白になる。思考が停止する。一つのフレーズだけが、
壊れたように頭の中をぐるぐると回る。

(………結婚。結婚って…結婚って………大体、付き合ってさえいなかったのに?
しかも出会ってまだ4ヶ月なのに!!そんな簡単に決められることっ?)
夜明け近くなっても眠れずに、雪子はベッドの中で数十回目の寝返りをうった。
大体、さっきのキスだって、まるで無かったかのように流されてしまったが、
雪子にとっては一大事だったのである。
そっと唇を指でなぞり、先程の感触を思い出す。
(………ファーストキスだったのにな…結局言えなかったし)
こうして、生まれて初めてのキスとプロポーズを同時にされるという、
橘雪子の激動の一日は幕を閉じたのだった。
435鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:29:19 ID:lG9UqCIo
11 停滞


「もしもし、雪子ちゃん?」
「………あやさん?」

あやから電話がかかってきたのは、ディズニーランドから帰ってきて、
二週間が経った土曜日の夜のことだった。
自室に閉じこもり、一日中考え事をしていた雪子は、
随分久しぶりに人と話すような錯覚を覚えていた。

「どうしたんですか?あやさんから電話くれるなんて珍しいですね」
「ん〜、いや、最近雪子ちゃん元気ないから、どうしたかなっとね」
あやには、例の相手とディズニーランドに行って来た、とだけしか伝えていない。
色々と聞きたそうな様子だったが、雪子の顔色が冴えないのを見て、
詮索したい気持ちを抑えていたらしい。
振る舞いはがさつだが、何だかんだ言って後輩から慕われるのはこういう所である。
「………ありがとうございます、心配かけてすみません」
「…ディズニーで何かあったの?言いたくなかったら無理には聞かないけど」
「ううん…大丈夫です。ちょっと予想外のことがあって、混乱しちゃってて」
「混乱…?何か、相手に嫌なことでもされたの?」
「いやっ、そういうわけではなくてですね………あの…うまく言えないんですが」
どうにも説明しづらくて、口ごもってしまう。
「いいから、とにかく話してみなって。ちょっとは楽になるかもよ?」
「ありがとうございます………えっと、あの、つまりその………
………プロポーズされました」
「………………………………………………………………はぁぁぁぁぁ?!」
あやの声があまりに大きくて、雪子は思わず受話器から耳を離した。
「それは告白されたってことじゃなくて?!」
「付き合ってくれとか好きだとかは一切無かったです…」
「………何だそれ…」
「私、びっくりして…どうしていいのかわかんなくて。その人のこと、
………好きなんですけど、でも、結婚ってそんなにすぐ決められないんです」
「そりゃそうだ」
「でも、これでプロポーズ断ったら、もう二人で会えなくなるのかなって…」
この二週間、雪子がずっと悩んできたことだった。
職場でも、どんな顔をして話せばいいのかわからない。
先週末は久しぶりで1人きりの週末だった。
何をしても手につかない。中嶋と過ごすようになる前に、
自分が週末に何をして過ごしていたのか思い出せなかった。
たった2週間空いただけなのに、中嶋宅の静かで殺風景なリビングが、
不思議なほど懐かしくてたまらないのだ。
結婚したくないわけではない。本音では、プロポーズされて嬉しかった。
今では、あの家が自分の唯一の居場所のように感じてもいる。
中嶋が、無表情の奥に深い優しさを秘めていることも、今では疑う余地もない。
それなのに、何故か決断できない自分がわからない。
唐突すぎるということも、もちろんあるだろう。だがそれ以外に、
雪子の心の中で、何か得体の知れない不安が渦巻いているのだ。
436鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:29:50 ID:lG9UqCIo
「その後、電話とかメールとかしてみた?」
「………………………」
「…雪子ちゃん?どうしたの?」
「………知らないんです、電話番号も、メールアドレスも」
そうなのだ。自分でも信じられないことに、
雪子は中嶋の個人的な連絡先を、一切知らないのだった。
今までは職場での伝言で事足りたし、鉄仮面たる中嶋は、待ち合わせの時間に
遅れて来ることなど一度も無かったため、特に不自由を感じたことはなかった。
職場で中嶋と話せなくなる日が来ることなど、想像もしていなかったのだ。
職場で鉄仮面と恐れられる男の、他人は知りえない色々な顔を見ているつもりだったが、それまで錯覚だったような気がして、雪子の瞳から涙が零れる。
声が震えてしまうのを抑えられない。

「ゆ、雪子ちゃん、泣かないでよ」
電話の向こうで雪子が涙を流しているらしい気配を察して、あやは慌てた。
と同時に、ひどく嫌な予感が胸にきざす。
雪子の語る”相手”の人物像はどうも理解不能なのだが、
あやは1人だけ、そういう行動をとりそうな人物に思い当たってしまったのだ。
(うわぁぁっぁあっ!!!やめろ私!!その想像は危険だぁぁぁ!!!)
自らの想像が余りにも恐ろしくて、あやは気を落ち着けるため、
何度も深呼吸しなければならなかった。
しかし、自らの心の平穏のためにも、ここはやはり確かめねばなるまい。
幸いにも相手は、人を疑うことを知らないような純真な女の子である。
カマをかけるのも造作はない。
「あのさ…結婚は、やっぱりすぐには考えられないってことだよね?」
「すぐにはっていうか…嫌じゃないんですけど、自分の中で、何かひっかかってて………
それが何なのか、ずっとわからなくて」
「まぁ確かにね。雪子ちゃんまだ若いし、職場恋愛となると色々難しいし。
………それに、同じ課内で結婚するとどっちかが異動しなきゃいけないしね」
「やっぱり異動することになるんですか?」

ビンゴ。
437鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:31:01 ID:lG9UqCIo
自分の想像がただの妄想であって欲しいという、あやの切なる願いはあえなく散った。
企画課の男性職員は4名。
五十代で妻子持ちの富岡係長は論外として、
新人の高田は、大学時代から付き合ってる彼女がいると聞いたし、
人物像から察するに、どう考えても沢木ではないと断言できる。
残る1人。
可愛い女の子と二人きりになっても手すら握らず、
いざデートとなっても、深い関係になろうとはしない。どころか、
告白代わりにプロポーズをするような、一種異常なほど理性的で生真面目な人物。
(嘘だ………誰か嘘だと言ってえぇぇぇ!!!!)
「………あやさん?どうしたんですか?」
不審げな雪子の声に、あやは我に返り、適当にごまかしたり慰めたりして
ようやく電話を切り、深い苦悩の溜息をついた。
(………………………よりによって鉄仮面…どうすればいいんだ、この事態…)


そして翌月曜日。
終業後の、他に誰もいない企画課ブースで、橋本あやは鉄仮面と対峙していた。
「…橋本、話とは何だ」
「私の可愛いかわいい雪子ちゃんが、最近元気がないのはどうしてかな〜と思いまして」
「……何故俺に聞く?知るはずがないだろう」
さすがに鉄仮面。そのくらいの揺さぶりでは、鉄壁の無表情はぴくりともしない。
だが、あやは何としても中嶋の口から事実を聞き出すつもりだった。
「ディズニーランドは楽しかったですか?」
鉄仮面の眉がぴくりと動く。凶悪に鋭い目線で睨み付けられるが、
あやは一歩も退かなかった。ここで怯んだら負けである。
暫くの間、まるで水墨画の竜虎の睨み合いのような緊張感が続く。
先に根負けしたのは、中嶋のほうだった。
438鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:31:26 ID:lG9UqCIo
「………どこまで知っている」
「課長が据え膳食わずにしかも告白さえせずに雪子ちゃんにプロポー」
「もういい」
「………どういうつもりですか?いきなり結婚しろとか言われて、
雪子ちゃんがどんだけ戸惑ってると思ってるんですか」
「…九割九分、断られるだろうとは思っている」
「そんな事聞いてないです」
あやは、目の前の無表情な男に対して、ふつふつと怒りが湧いてくるのを感じていた。
「自分がどんだけ残酷なことしてるのか解ってます?
………雪子ちゃん、泣いてましたよ」
「……………」
「大体、何でいきなり結婚なんて………」
あやは溜息をついて髪をかき上げ、デスクに腰掛けた。
「………仕事に私情を持ち込むわけにはいかない。
同じ課内で部下と恋愛関係になるというのは好ましくない。それに、橘はまだ若い。」
「まぁ、確かに建前は、職場恋愛禁止なんでしょうけど。
そんなの今時誰も守ってませんって。どんだけ生真面目なんですか課長は…
それに、雪子ちゃんが若いからどうだっていうんですか?」
「……いつまでも、30過ぎの男にかかずらうよりも、もっと他に相手もいるだろう。
ずるずると関係を続けるのは…橘には良くない」
はぁ、とあやは何度目かの深い溜息をついた。
この男にしろ雪子ちゃんにしろ、どうしてこう不器用なんだか。
特に鉄仮面の場合、思考回路が常人とかけ離れている上に、
雪子に妙な気の遣いかたをしているものだから、その結果として行動が
ものすごく不可思議なものになってしまっていたというわけだ。
ようやく納得することができて、あやはにやりと口元で笑った。
「………でも課長、やっぱり好きなんでしょ、雪子ちゃんのこと」
「ノーコメントだ」
「駄目ですよ、顔に書いてありますから」
そういい捨てると、あやはさっさとブースを後にした。
後に残された鉄仮面は、憮然として自分の顔をさすっているのだった。
439鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:31:51 ID:lG9UqCIo
(………他にどうしろと言うんだ)
中嶋貴巳は、胸のうちでひとりごちた。
幼いころから、論理的でないことや、非合理的なことが大嫌いだった。
目の前に未解決の問題があることが我慢できないのだ。
その性分のせいで、学校での成績は常にトップクラスだったが、
別に教師に褒められたからといって嬉しくもなかった。
地方公務員として就職してからは、役所内にはびこる無駄の多さに呆れかえり、
手当たり次第に効率のアップを図っていった。
別に仕事が好きなわけではないが、市役所であるから、経費も給料も税金である。
税金泥棒と言われるのは我慢がならなかっただけだ。
結果として、いつの間にか同期の出世頭などと呼ばれる立場になっていたが、
それについて、別に何の感想も持てなかった。
このまま仕事ばかりして1人で老いていくのだと、当然のように思っていた。

そんなつまらない人生の設計図に、突如として予測不可能な事件が訪れた。
理性と集中力にだけは自信があった自分が、あろうことか仕事中にも、
雪子の白い頬や、豊かな表情、優しい声音と可愛らしい仕草がちらついて集中できない。
学生の頃から、自分に近づいてくる物好きな女性は幾人かいた。だがどの女性とも、
お互いに割り切ったドライな間柄だったし、関係を持つことにも、やめることにも、
罪悪感を感じたことなどなかった。
なのに、今回の自分は、情けないほどにうろたえている。
雪子に触れたい、その身体を抱きたいと、思わないはずはない。
だが、恐らくまだ純潔なのであろう彼女にとって、
自分との関係が汚点になってしまうことだけは、どうしても避けたかった。
職場で噂にでもなったら、雪子のこれからにとって取り返しのつかないことになる。
深みにはまる前に、この関係を無かったことにするつもりだった。
が、それだけならば、何も結婚を申し込むことはなかったのだ。
未練がある。もし雪子を自分だけのものにできたら、と考えたからこそ、
そんな悪あがきのようなことをして、結果、雪子のことを苦しめてしまっている。
(………………何をしているんだ、俺は)
今日の雪子の、明るく振舞ってはいるが陰のある表情を思い浮かべ、、
ここ数週間自分を苛んでいる自己嫌悪に、再び襲われる鉄仮面であった。

440鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:32:27 ID:lG9UqCIo
12 開放

事態が進展を見せることなく、更に数日が過ぎた。
金曜の朝、出勤してきた雪子に、朝からハイテンションな沢木が話しかけてきた。
「雪子さん、なんか最近元気なくないっすか?良かったら明日、
みんなでカラオケでも行きませんか?」
「………明日ですか」
「あ、何か用事ありました?」
「………いえ、無いです、土日は何にも」
「良かった!んじゃ明日の夜6時から大丈夫ですか?」
雪子は無理やり笑顔を浮かべて頷いた。
「んじゃ、あや先輩と高田と一緒に…」
「………あれ?課長どうしたんでしょう?」
ブースを見渡すと、いつも誰よりも早く出勤している中嶋の姿がない。
出勤時刻が過ぎても彼は姿を見せず、部下たちは騒ぎ始めた。
(………課長…何かあったのかな…)
雪子の顔が、不安に暗くくもる。と、あやのデスクの電話が鳴り響いた。
「はい企画課、橋本です………あ、課長どうしたんですか?!」
部下たちがどよめく。あやは、電話の向こうの鉄仮面と二言三言話し、電話を切った。
「………はい。はいわかりました。それでは」
「あやさん、課長どうしたんですか?」
勢い込んで聞く雪子の顔を、一瞬物言いたげに見つめ、あやが言う。
「………課長がさ、珍しいことに体調悪くて休みだって」
「「「「えええええ!!!」」」」
部下達は一斉にどよめく。何せ、就職して以来10年以上というもの、
無遅刻無欠勤を誇る鉄仮面のことである。
「課長も病気することあるんすねぇ………」
「中嶋君に限って、病欠なんてあり得ないと思ってたけどね。大丈夫かな」
「課長が休むなんてよっぽどのことじゃないですか。救急車呼んだほうがいいんじゃ」
「え………き、救急車って」
顔面蒼白になってうろたえる雪子の背中を、あやはなだめるようにぽんぽんと叩いた。
「あ〜そんなひどくは無さそうだったから大丈夫よ。さぁ仕事仕事」
そう言ってあやが手を叩き、職員達がそれぞれ自分のデスクに散る。
「んじゃ雪子さん、明日よろしく!」
雪子の隣にいた沢木が、浮かれた様子で自分の席に戻る。
441鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:32:52 ID:lG9UqCIo
雪子も不承不承仕事を始めたが、何をしても、とてもじゃないが手につかない。
じりじりするほどの焦燥感に何とか耐えながら、雪子はその日一日中、上の空だった。
時計の針は苛苛するほどゆっくりと進み、昼休みが過ぎ、真夏の陽が翳りはじめる。
そしてようやく、終業時間を告げるベルが鳴った。
(………どうしよう…様子見に行きたいけど、勝手に行っちゃ迷惑かな。
まだ仕事あるし…それに、課長に何て話したらいいんだろう………どうしよう)
「雪子ちゃん、雪子ちゃん」
悩むあまり憔悴しきった様子の雪子を、あやが物陰から手招きして呼んだ。

「はい、あやさん何ですか?」
あやは雪子の耳元に、唇を寄せて言う。
「あのさ、今日もう帰っていいから、課長のとこ行ってあげなよ」
「え、でも………」
「朝はああ言ったけどさ、結構具合悪そうだったし。家で1人だし、
もういい年だから体力落ちてるし。心配でしょ?」
鉄仮面と同年代のはずの自分のことは棚にあげ、あやはしれっと言い放つ。
「………はい、ありがとうございます!!」

「…あれ?雪子さんもう帰ったんすか?いつの間に?」
小動物のように一目散に走っていった雪子の後姿を見送ってから、
あやは沢木に気の毒そうな、哀れみの目線を送った。
「………あや先輩、何すか」
「沢木、雪子ちゃんきっと明日、カラオケ来ないよ」
「………え?何でですかっ?!」
442鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:33:20 ID:lG9UqCIo
タクシーがなかなか捕まらず、市役所から少し離れたバス停まで全力疾走した雪子は、
20分待ってようやく来たバスの座席にすわり、きつく拳を握り締めていた。
目的のバス停はそれほど遠くないはずなのに、
もう一時間も乗っているかのような錯覚を覚え、逸る気持ちを抑えきれない。
ようやく目的地に到着したバスから飛び降りるようにして、
雪子は中嶋宅を目指して走りはじめた。

この数週間というもの抱き続けた、えたいの知れない不安が、
胸のうちではっきりと形となっていく。
あえぐように息をつき、必死で走りながら、
雪子は今にも叫びだしそうになる自分の口を押さえた。
病気。歳の差。自分を置いていってしまった父。平均寿命。
駆けつけた病室の、白い布をかけられた父の姿。
断片的な記憶が、頭の中をぐるぐると回る。

ようやく中嶋宅に着いた雪子は、突然の訪問に驚いた様子の鉄仮面を見て、
安堵のあまり膝から崩れ落ちたのだった。

「橘…大丈夫か?どうしたんだ?」
「はぁっ…あのっ………バス停から、走って………きたのでっ………」
荒い息を整えるまでに少しの時間が必要だった。
「それより………課長、大丈夫ですか」
「何がだ?」「………え?」
見れば、中嶋は今帰ってきたばかりのように、いつものスーツ姿である。
「………だって、あの…課長、今日体調が悪くて休むって…」
「体調不良なのは部長だ。○○市で、3市合同会議に出席する予定だったんだが、
急遽俺が代わりに出席してきたんだ。直帰すると橋本に電話で伝えたはずだが」
「………あやさん!!!!」
「………………橋本か………」
してやったり、とほくそえむ女傑の顔を思い浮かべて、雪子と中嶋は脱力した。
443鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:33:52 ID:lG9UqCIo
「………橘?」
玄関の上がり框に手をついたまま、雪子がうなだれている。
その肩が、細く震えていた。
「橘?大丈夫か?」
気遣って差し出された中嶋の手が、雪子の肩に触れる。
その手が、雪子の小さな白い両手で、強く握り返された。
雪子が顔を上げ、中嶋の顔を見つめる。
今まで見たことのないほどに真剣な、思いつめたような表情だ。
「………………課長、約束してください」
「………え?」
「私より、先に死んだりしないって、約束して下さい!」
雪子はずっと、それが怖かったのだ。
12歳という歳の差。加えて男と女では平均寿命も違う。
亡くなった父と、残された母のことを思った。
自分だけが残されるのは、絶対に耐えられない。

中嶋は、ただ、雪子に見蕩れていた。
今にも涙がこぼれそうな瞳は、まっすぐに自分を見つめている。
自分の手を必死で握り締めている、ちいさな掌。
普段の自分なら、できない約束はしない、と言うだろう。
無責任に請け負えるようなことではない。
どれだけ守るつもりでも、結果として嘘をつくことになるかもしれない。
だが。

目の前で、真っ白な子猫が、自分の腕にしがみついている。
甘い唇。優しい眉。誰よりも愛しい、自分だけの。

「………わかった、約束しよう」
今までの自分を全て否定してでも。

それを聞いて、雪子が、まるで泣き顔のような笑顔を浮かべて中嶋に抱きついてきた。
「……………ありがとうございます。………私を、課長のお嫁さんにして下さい」
444鉄仮面と子猫 4:2008/05/16(金) 21:35:12 ID:lG9UqCIo
本日投下分は以上です。次こそはと言いながらエロ無しですみません。
読んでくださった方、ありがとうございます。
445名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 00:30:41 ID:+XtGgvsG
GJ!
446名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 00:34:40 ID:lqJBrzrv
萌えええええええええええ!!!!!
GJ!!
447名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 00:36:27 ID:DKQSpKox
つ、続きを…
448名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 03:11:00 ID:4+kJF+gf
エロ無しでもかなり萌えたよ。
続き楽しみにしています。
449名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 15:32:19 ID:rsfkzfqE
猫耳アリスがかわいすぎて死ぬ!
完結編正座して待ってます。もちろん全裸で。
450名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 22:49:58 ID:sl/FRkuR
あの〜連番が「7」から「9」に飛んでるようなんですが、自分の
見落としでしょうか・・・。どうでもいいことなんですが。

とにかく待ってます最終回。
451名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 23:07:14 ID:uicdsPAW
>>450
7 恋愛指南 と 7 胡乱な日曜日 が被ってからじゃない?
正しくは、7 恋愛指南 と 8 胡乱な日曜日 だと思うよ
452名無しさん@ピンキー:2008/05/17(土) 23:59:55 ID:Nf++5HA9
つ‥‥続き読みたい。
453名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 02:50:05 ID:HeqdnjWk
毎度クオリティ高杉ですよ
超GJ!!
454鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 02:59:52 ID:O71zUMSE
予告しときながら遅くなって申し訳ありません。
完結編投下させてもらいます。

>>450
すいません自分の凡ミスです。
>>451
おっしゃるとおりです。どうもすみませんでした。
455鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:00:33 ID:O71zUMSE
13 辿りつくところ

静まり返った部屋に、二人の息遣いだけが響く。
幾度目かの長い口づけの後に、雪子がはぁ、と息をついた。
無我夢中できつく抱き合い、唇を重ねて、気づけばいつの間にか
抱きかかえられるようにして、リビングのソファに座らされていた。
以前と全く変わらない殺風景な部屋に、ようやく戻ってこれたのだ、と思うと、
懐かしくて嬉しくてたまらなかった。
「………何だ?」
雪子が微笑むのを見て、中嶋が聞く。
「嬉しいです…ずっと、課長のおうちに帰ってきたかったから」
「…そうか。……………ところで、呼び方のことなんだが」
改まった面持ちでそう言われ、雪子は面食らった。
「呼び方、ですか」
「役職名で呼ぶのは、もう止めて欲しい」
「え?………だって、課長」
「それを止めろと言っている」
「ええええ?だ、だってずっとそう呼んできましたし、今更変えられないですよっ」
「これから一生、俺のことを役職で呼ぶつもりか?………………何をにやけてるんだ」
「ご、ごめんなさい………だって課長の口から、これから一生…なんて言葉がっっ」
嬉しさと恥ずかしさのあまり、雪子は手足をばたばたと動かして身もだえする。
「自分で言ったことだろう。何をじたばたしてるんだ。それより呼び方の話だ」
確かに「自分よりも先に死なないで」などと言ったのは事実なのだが、
改めて鉄仮面の口から言われるとどうにも照れてしまい、挙動不審になる雪子であった
456鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:01:12 ID:O71zUMSE
「………何て呼べばいいんですか?」
「好きにすればいい」
「えっと、じゃあ………中嶋さん?」
「近い将来自分も同じ苗字になると忘れてないか?
……………だから暴れるなと言っているだろう」
「だ、だってっ!だってっ!同じ苗字って!!」
「別姓のほうがいいのか?」
「そういうことじゃありませんっっ!!!」
「とにかく苗字は駄目だ」
「………はい………じゃあ、えっと………………」
「何だ?もしかして俺の下の名前を知らなかったか」
「いや知ってます!知らないわけないじゃないですかっっ!
貴巳さん!たかみさん………………です………」
そう言って、雪子の頬は急激に真っ赤に染まった。
「さん、は別にいらない。あと敬語も二人の時はやめなさい」
「そんな、いきなり色々言われてもできませんっ!!それに、さん付けしたほうが、
違和感ないし………」
先程まで課長、と呼んでいた人物を、いきなり名前で呼び捨てにするのは抵抗がある。
というより、畏れ多くてとても呼び捨てになんてできない雰囲気なのだ。
「まぁ、好きにしなさい」
「………た、貴巳さんっ、は、どうするんですかっっ」
「何がだ」
ものすごく緊張しながら、初めて名前を呼んだのに、貴巳の反応はそっけない。
「呼び名です。私だって………橘じゃなくなるんですよ?」
「…そうだな。どう呼ばれたいんだ?」
「何でもいいんですか?例えばマイハニーとか」
「断る」
「じゃあ聞かないで下さい…」
「雪子」
「………え?………………は、はいっ」
初めて下の名前を呼ばれ、雪子の心拍数が跳ね上がる。
先程から、自分は赤面してばかりだ。
「後悔しないか」
「………え?」
一瞬、何を聞かれたのかわからなかった。
が、真っ直ぐに雪子を捕らえる貴巳の視線が、雄弁に物語る。
結婚のこと。そして、これから始まるであろう、二人の儀式のこと。
雪子はそっと小さく息を吐き、貴巳の目を真っ直ぐに見つめて答えた。
「………後悔なんてしません。ずっと、貴巳さんのそばにいさせて下さい」
457鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:02:09 ID:O71zUMSE
答える代わりに貴巳は、雪子のやわらかな桜色の唇に口づける。
もう幾度目かわからないほどの激しいキス。
その貴巳の唇が、首筋をなぞるように胸元まで降りてきたので、
雪子は慌てた。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ」
「敬語はやめろと言っただろう」
「ま…待って!」
「断る」
「ええええ!!!だ、だって私、汗かいてますしっっ」
「構わない」
「私が構うんです!!それにここ明るくて嫌ですっ」
「注文が多いな」
「………最低限のことだと思いますけど」
いじけたような雪子の言葉に、貴巳は口元を僅かに緩ませた。
「仕方ない。初心者に免じて、妥協することにしよう。行こう」

シャワーを浴び、貴巳のパジャマを借りた雪子は、
貴巳の寝室に初めて足を踏み入れ、興味深く室内を見回していた。
リビングと同様に殺風景で、セミダブルのベッド以外には大きな書棚が一つあるだけだ。
中にぎっしりと詰まっている、何やら難しげな本のタイトルを追っていると、
後からシャワーを浴びた貴巳が、室内に入ってくる気配がした。
(………うわぁっ、いよいよだ………どうしようどうしようどうしよう)

緊張のあまり振り向くこともできない雪子の身体を、
貴巳は背後から抱きすくめた。
濡れたままの長い髪が頬をくすぐる。パジャマの薄い布地ごしからも、
雪子の肌の熱と、肩が微かに震えているのが伝わってくる。
「………初めてなのか」
聞くと、途端に雪子の顔が耳までさぁっと赤くなり、こくり、と頷いた。
予想はしていたが、貴巳は改めて、自分が雪子の初めての男となる幸運に感謝した。
性急にことを進めるつもりは毛頭なかったが、
貴巳自身、処女との行為は初めてである。慎重すぎるほどに進めなければいけない。
雪子に、初めての記憶が痛みだけとなることはどうしても避けたい。
458鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:02:47 ID:O71zUMSE
ゆっくりと、雪子の身体をベッドに倒し、上に覆いかぶさった。
潤んだ瞳が、不安そうに自分を見上げている。
安心させるようにやわらかく口づけて、徐々に深く、咥内の隅々を貪ってゆく。
同時に、パジャマの上からゆっくりと、身体全体を撫でさするように愛撫すると、
雪子の吐息がだんだんと熱く、細かくなっていく。
頃合いを見計らって、そっとパジャマのボタンを外しはじめると、
雪子がはっと息をつめ、身体を強張らせるのを感じた。
「………そんなに力を入れなくてもいいぞ」
「だ、だって………っ、恥ずかしいです!あんまり、見ないでくださいっ」
「無理を言うな」
徐々にあらわになる雪子の胸元は、絹のようになめらかで白い。
「や………は、ずか、し、い………」
白い乳房が、常夜灯の僅かな灯りの下に晒され、
貴巳は感嘆の溜息をついた。
それほど大きくはないが、形のいい丸みが、息をつくたびに微かに揺れる。
頂点はあくまでひかえめに、唇と同じ、淡い桜色をしている。
そっと両手で揉みしだくと、雪子の悲鳴のような声が漏れた。
「ひゃ、や、やぁっ」
こんなに触り心地がいいものがこの世にあったのか、と思うほどの柔らかさである。
握れば指が埋まっていくような錯覚さえ覚える。
そっと頂点を口に含み、舌先でくすぐるようにすると、
雪子の背筋がびくんと痙攣した。
「や、やだっ………だめ、だめですっ」
「どうしてだ?」
「な、なんかっ………くすぐったい………」
「我慢しなさい。そのうち良くなる」
「そんなぁ………………あああっ?」
乳首を指先でつまみ、こりこりと擦りあわせる。
合間に口づけをし、首筋を舌先で舐め上げると、雪子の反応が明らかに今までと違う、
艶を帯びたものになってゆくのがわかった。
「やぁっ………あ………っっっ!!!」
漏れそうになる嬌声を、必死でこらえようと唇を噛む雪子の表情が、余りにも可愛い。
が、そのままでは唇を噛み切ってしまいそうだ。
引き結ばれた雪子の唇に指を差込むと、瑞々しい舌が指先をくすぐる。
その柔らかな濡れた感触で、思わず理性を失いそうになるのを貴巳は辛うじて耐えた。
「我慢しないでいい」
「や………だって…なんか、変な声でちゃうんですもん………」
「それが自然だ」
そう断言されても、雪子は涙目で首を振っていたが、
貴巳の舌と指で、執拗に乳首を責められ続けるうち、徐々に甘い声をあげはじめた。
459鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:03:19 ID:O71zUMSE
「あ、あっあっ………あうんっ………はぁぁっっ!」
いい加減、雪子の表情が快感で蕩け始めているのを確認し、
貴巳はいよいよ雪子のパジャマと下着に手をかけた。
下手にじらしても恥ずかしがるだけだろうと、不意をついて一気に下までずり下ろす。
「きゃ、やぁぁっっっ!!貴巳さんっやだっっ」
慌てて秘所を隠そうとする雪子の手を難なくのけて、貴巳は余りにも無垢な雪子の
そこに見蕩れた。
腰から尻に続く、絶妙な曲線。まだ少女の未熟さを残しつつも、
柔らかな丸みは、大人の女の色香を漂わせはじめてもいる。
雪子は必死で膝を擦りあわせ、容赦ない目線からその部分を隠そうとしているが、
貴巳はいとも簡単にその膝を割り、最後に隠された部分までをあらわにした。
雪子のその部分は、貴巳が今までに見たどんな女性の秘所よりも清楚で、
そして美しいものだった。
薄い陰毛が、僅かに前の部分のみを覆い、割れ目の周りはほぼ無毛で、
秘所はスリットのようにぴったりと閉じ、わずかに桃色の粘膜が覗いている。
そっとそこを二本の指で押し開くと、透明な露がじわりと滲みでてきた。
「やだやだやだああっっっ!恥ずかしい!恥ずかしいよぉぉ」
じたばたと暴れる雪子の身体を押さえ、割れ目にそっと指を這わせながら聞く。
「………自分でしたことはあるのか?」
「じ、自分で………?」
「ここを、自分で弄るときはどうしている?」
「や、そんなの………してない…」
雪子はこれ以上は無理というほどに赤面し、ぶんぶんと頭を振った。
「本当にか?指くらい入れたことがあるだろう」
くちゅくちゅと音を立てながら指を前後させると、雪子の全身がびくんと震える。
「な、ないですっ!なんか、こ、怖くて…」
つまり、雪子の秘所は、生まれてから今まで、全く何も受け入れたことのない、
完全に無垢の状態だということだ。
眩暈がするほどの興奮を感じ、貴巳はまじまじとそこに見入った。
閉じられた花弁が、時折ひくりと震え、蜜を滲ませる。
そのスリットの上部の突起も、まだ包皮に包まれたままだ。
そっと指で皮をむくと、それだけで雪子は激しく反応した。
粘膜と同じ桃色をしたそこは、あくまでも清楚に、しかし時折淫らに蠢き、
貴巳を誘っている。
ゆっくりと指の腹で擦るように刺激すると、雪子が泣き声をあげた。
「やぁあああああ!!やっ!な、なにっ…これ、なに??」
暫く、指先で円を描くように刺激を続けると、白い腰がびくびくと跳ねだした。
突起は紅く充血し、激しく自己主張をはじめている。
「ひゃ、や、ああああ!!なに、これっ………こわい、たかみさんっ、怖いよぉぉ」
「心配いらない。我慢しなくていいぞ」
「やっぁぁぁんっっ!!どうなっちゃうの?どうなっちゃうのぉぉっ?
貴巳さん!!たかみさんっっ!たかみさんっっ!!」
未だ知らぬ高みに押し上げられる恐怖と、初めての絶頂の予感に、
雪子はただ必死に貴巳の背にしがみつき、その名を呼んだ。
頼るべきものはそれだけだというように。
そして、貴巳が一層強く突起を押しつぶした刹那。
「ああ!!!!ひゃ、やぁぁうっっっっあーーーー!!!」
膣口がびくんびくんと痙攣し、雪子の全身を電流が走る。
生まれて初めて味わう女の悦びに、雪子は自分の声が聞こえないほどに
高く、高く昇りつめた。
460鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:03:50 ID:O71zUMSE
荒い息がおさまるまでの間、雪子は一言も喋ることができないほどに脱力していた。
が、貴巳は、そこで終わりにするつもりは毛頭ない。
雪子が少し落ち着いたのを見計らって、
まだ何も受け入れたことのない秘裂に、そっと指を押し込む。
「や、やぁっ………ゆび………うそぉっ、入っちゃうのぉっ………?!」
はじめて異物を受け入れる感触に、雪子が眉根を寄せる。
無垢の恥部は、指一本でさえなかなか入らないほどに狭い。
ぎちぎちと締め付けられる中指を半分ほど挿れたところで、泣き声が聞こえた。
「だめ………だめですっ………きついよぅ………」
「少し力を抜きなさい」
「む、無理ぃっ………ひゃ、あああんっ?!」
指を挿入されたまま、いきなり貴巳が秘所に顔を近づけた。
と思ったら、何か暖かくてぬめるものが、先程絶頂を迎えたばかりの
クリトリスを蹂躙する。それが貴巳の舌だと気づいて、雪子は狼狽した。
「や、だめ、そんなとこっ汚いですっだめだめだめー!!!」
貴巳は雪子の制止など気にも留めず、一層激しくそこを吸い上げ、舐めしゃぶる。
秘所からじわり、とぬめるものが分泌され、きつく締めつけられていた指が、
ようやく滑らかに動くようになった。
指先で、膣壁の上部をピンポイントで刺激しながら、クリトリスをざらつく舌で
嘗め回す。
掻き出すような指の動きに、膣口からは白い粘液がどんどんとあふれ出してきた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!やぁだめっ!!また!またびくんってなっちゃうぅぅ」
再び絶頂へと駆け上がろうとする雪子の様子を伺い、
貴巳はしかし、意地悪く指と舌の動きをぴたりと止めた。
「あ、や、だぁ………何で………?」
雪子の膣が、物欲しげに指を更に奥へと飲み込もうと動くのを認めて、
貴巳は巧みに、もう一本の指を滑りこませた。
「!!!ああ!!あぅぅんっっ!はぁ………っっ!」
一本目のときよりも内部が潤っており、また先程の動きで解きほぐされたせいもあって、
二本目の指は比較的スムーズに内部に納まった。
押し広げられた入り口が、真っ赤に充血し、内部の紅い肉をのぞかせてひくついている。
ゆっくりと指を動かし始めると、雪子の、まぎれもない快感を告げる声が響いた。
「やぁうんっ!あうんっ!!!んっああああ!!」
柔らかくほぐされた膣壁が、貴巳の指にからみついてくる。
「………雪子、いくときはいく、と言えよ」
「んっ………うんっ………あああああ!!いく!いきますっ!やだぁぁいくのぉっ!!」
雪子の瞼の裏に火花が散り、二度目の絶頂へと押し上げられる。
指二本をくわえ込んだ秘所は、いやらしく蠢いて愛液を噴出した。
461鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:04:17 ID:O71zUMSE
日ごろ清楚な雪子からは想像もつかない痴態を目の当たりにし、
貴巳も既に、我慢の限界を迎えていた。
頬をそっと叩いて、どこか違う世界をさ迷っている雪子の意識を呼び戻す。
「雪子…そろそろいいか?」
肩で息をついている雪子は、貴巳の言葉の意味を理解して、ほんの僅か躊躇し、
………そして微かに、しかしはっきりと頷いた。
潤んだ目が、僅かな灯りを反射して光っている。
今自分は、この世で一番純粋で綺麗なものを、自分だけのものにしようとしている。
そんな思いが脳裏をよぎる。
貴巳は用意しておいたゴムを素早く装着すると、昂ぶった自身を、
雪子の濡れそぼる秘所に押し当てた。

「………………………っっっっ!!!」
「………痛いか?」
指より随分太いものを入れるには、さすがに雪子のそこは狭すぎた。
ゴムが滑りを悪くしているせいもあってか、なかなか入り口に入っていかない。
ぎちぎちと押し広げられた雪子の秘所は、今にも裂けてしまいそうだ。
「………だ、いじょう、ぶ………ですっ」
雪子は必死に痛みに耐えている様子で、けなげに首を振るのだが、
何度試みても、どうしても挿入することができない。
「………やはり、いきなりというのは無理だな。すまなかった」
「………え?いやですっ……わたし、大丈夫ですから!!」
「いや、これ以上無理はさせたくないんだ」
真摯な表情でそう言われ、雪子の表情が曇る。
と、貴巳の未だそそり立つものに被せられたコンドームに、雪子がおずおずと
手を伸ばしてきた。
「………何だ?」
「あのっ………これが、引っかかってるような気がして………
取ったら、うまくいくんじゃないかなって…」
「………雪子、自分が何を言ってるかわかってるか」
真っ赤になって照れながらそう言う雪子を、貴巳は真剣な表情で問い詰めた。
「………………本気です」
「しかし」
「だって………私、貴巳さんのお嫁さんになるんですよね?
だったら……いいんです。わたし、もう全部、貴巳さんのものだから…」

あどけない唇から零れる言葉に、貴巳の鉄壁の理性は、脆くも崩れ去ったのだった。
462鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:04:58 ID:O71zUMSE
ゆっくりと、生身の先端が雪子の中に飲み込まれてゆく。
「…………………ふうっ…っっ!!」
雪子が苦しそうな息をつく。
限界まで拡げられた雪子の秘所は、敏感になっている亀頭を容赦なく締め付ける。
衝動のままに抜き差ししたいのを堪え、貴巳は動きを止めた。
「雪子、大丈夫か」
苦しさに眉根を寄せた雪子は、それでも健気にうなずいた。
「だいじょうぶ、ですっ…さっきより………痛くない、からっ………あ、あんっ」
少しでも雪子の苦痛を和らげようと、貴巳がクリトリスを指で、
乳首を舌で愛撫する。
なだめるような甘い刺激に、雪子の強張っていた身体から力が抜け、
膣奥からじわり、と潤滑液が滲み出してきた。
「あーー!!あんっ!やぁぁっ、どうしよう………きもち、いい……
………来てえっ………ちゃんと、奥まで…っっっっ!!!」
少しずつ、決して無理をさせないようにじわじわと、貴巳の肉棒が
雪子のまだ何も知らない深みへと入り込んでいく。
そしていよいよ、根元までしっかりと貴巳のものが納められたとき、
雪子は、まるで喉もとまでせり上がってくるような異物感に混じり、
今まで意識したことのない場所―膣の一番奥、子宮の入り口のあたりに、
奇妙なうずきを感じて、戸惑いの声をあげた。
「や………なに、これぇっ…?変、へんなのぉっ…!!」
「…どうした?」
「な、なんかっ…奥が………おくがっ、くすぐったいのっ……あ!ひゃぅっ!」
貴巳の先端で、うずきの源を、僅かに円を描くように刺激されると、
全く未知の感覚がそこから生まれてくる。
貴巳が、ゆっくりとピストンをはじめると、引き攣れるような痛みに混じり、
甘い痺れが背筋を這い登ってきた。
痛いのに、痛いはずなのに、気が遠くなるほどもどかしくて。
「たかみさんっ!!!たかみ、さんっ!だいじょ、ぶ………だから、おねがいっ………」
「………雪子」
「うごいて、うごいてぇぇぇ!!!」
ずぐん、と、熱くて硬いものが、最奥に叩きつけられた。
463鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:05:31 ID:O71zUMSE
「あ、きゃぁうっっ!!あああああああ!!!」
ぐりぐりと奥を抉るように刺激したかと思うと、ゆっくりとピストンされる。
ずるりと内壁を引きずり出されそうな感触に、雪子は悲鳴をあげた。
「あ!!!ああああああっ!!んんぅぅんっひゃぁぁぁ!!!」
快感の海に、意識が飲み込まれる。身体がばらばらになってしまいそうなほどの衝撃。
自分の内部が、無意識のうちに貴巳を求め、激しく蠢いているのがはっきりとわかる。
「………っっ!雪子………いくぞ」
吸い付くような締め付けに、貴巳も既に我慢の限界だった。
遠くなる意識の中で、それでも雪子は必死で貴巳にしがみつく。
「た、かみ、さんっっっ!!!すき………すきぃぃ!!!」
「………………………………っっっっ!!!」
身体の中で何かが弾けたような衝撃があり、熱いものが最奥に注ぎ込まれる。
びゅく、びゅくと数度に分けて注ぎ込まれるその圧力を感じて、
雪子はうっとりと恍惚の表情を浮かべた。
「………………大丈夫か?すまない、結局痛い思いをさせてしまったな」
自分の上に覆いかぶさる貴巳に、しっかりと抱きしめられて、
雪子はひどく安心した。
シーツには、破瓜の証が点々と紅く残っている。
「ううん…嬉しかったです、すごく」
「………戻っている」
「え?」
「敬語だ」
「え?ずっと敬語ですよ?」
「いや、ついさっきまで言っていただろう。来て、とかおねがい、とか」
ぼすっ、と貴巳の顔に枕を投げつけ、
破瓜の痛みと、甘い痺れの余韻に浸りながら、雪子は目を閉じたのだった。
464鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:05:59 ID:O71zUMSE
14 はじまりのおわり

どすん、とホテルのベッドに身を投げて、雪子はうんと伸びをした。
バスルームからは、貴巳がシャワーを浴びる音が響いている。
慌しくも楽しかった今日と、
そして今日に至るまでの紆余曲折のことを、雪子は思い浮かべた。

「………というわけで、結婚することになった」
「えっと…家事に専念するため、結婚退職させて頂きます。
短い間でしたが、お世話になりました」
企画課の職員に、二人揃ってそう告げた時、雪子は、
人はあんまり驚くと声が出ないのだ、ということを目の当たりにしたのだった。
橋本あやだけは、したり顔で頷いていたけれど、他のメンバーは総じて、
目が点で、絶句しつつ、頭上に?マークと!マークがそれぞれ20個ほど浮いていた。
あやが「おら飲みにいくぞぉぉ!」と、石化した沢木を引っ張っていき、
その後雪子はあやから散々「アフターケアが大変だったんだから」
という愚痴をこぼされたのだが、今もってその意味はよくわからない。
「まぁいいけどさ雪子ちゃんが幸せなら。………で、結婚式はどうするの?」
「それが………しないつもり、だったんですけどね…」

結婚を決めたものの、二人は結婚式をする気は全く無かった。
貴巳は人前で見世物のようにされるのは真っ平だという理由から、
そして雪子も、それほど貯金があるわけでもないし贅沢はできないという理由と、
それに加え、父が事故を起こした相手が、まだちゃんと回復してもいないのに、
娘である自分が祝い事など華々しくするべきではない、という思いもあった。
かくして、二人の意見は一致し、三ヶ月後に入籍だけ済ませると決定したのだが。
思わぬ伏兵がいたのである。
雪子の母、美紀子の再婚相手であり、ロマンチストメタボ中年である義父、
坂井義之氏である。
465鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:06:35 ID:O71zUMSE
「駄目だよ雪子ちゃん!!!結婚式は女の子の夢なんだから!!!
遠慮なんてすることないから、式だけは絶対あげなきゃ駄目だよ!!
せっかく可愛い娘ができたと思ったらお嫁にいっちゃうなんて、僕ほんとは悲しいけど、
だからせめて花嫁姿だけは見せて欲しいんだよ。
お母さんだって天国のお父さんだって、雪子ちゃんの花嫁姿を見たいと思ってるよ?」
この調子で毎日毎日責め立てられ、
挙句の果てに母までも、
「折角なんだからやりなさいよ、結婚式。雪子がお父さんのことで遠慮することないわ。
私と義之さんはさすがに式あげなかったけど、あんたまで倣うことないのよ」
「いや、でも僕見たかったなぁ、美紀子さんのウエディングドレス姿」
「じゃあ今から、写真だけでも撮る?」
「ほんとにぃぃ!?じゃあ美紀子さんのドレスは僕に選ばせてくれる?」
「嫌」
「みっ美紀子さんそんな事言わないで!とにかく雪子ちゃん、
お金のことは心配しないで、絶対式あげるんだよ?いいね?」

と、この調子で結局押し切られてしまい。
ゴンドラだのシャボン玉だの高さ15メートルのケーキだの言い出す義父を必死に抑え、
あくまで質素に、親しい知人のみをまねいて式を挙げることに落ち着いたのだった。

両家への挨拶も、無事に済んだ。
貴巳の実家は築50年は経っているという古い日本家屋で、
庭には見事な桜の大木が植わっていた。
貴巳の1人きりの肉親である祖父は、貴巳そっくりの無表情・無愛想で、
雪子は随分緊張して挙動不審になってしまい、ばつの悪い思いをしたのだが、
後日貴巳から、雪子は祖父に随分気に入られたようだと聞き、
複雑な思いがしたものである。
雪子の家に貴巳が挨拶に来たときは、別の意味で大変だった。
勝気な母と、鉄仮面の目線がかち合った途端、火花が飛んだ。
お互いに目で威嚇しあいながら、それでも表面上はなごやかに話をしているものだから、
雪子と義父は、ハブとマングースに囲まれた野ネズミのように、
終始縮こまっていなければならなかった。
帰り際に母が貴巳に話しかけた。
「………結局、前にお会いした時におっしゃってた通りになりましたことね?」
「………計画性を持って行動するのがモットーですから」
「でもまさか、可愛い可愛い娘をこんなに早く、連れてっちゃう人が現れるなんてね」
「婿には不足ですか」
「まさか!…でも子供ができたらどっちに似るか楽しみですわ」
「…………」
お会いした時、というのは、酔っ払った雪子を貴巳が家まで送ってきたときのことだ。
何を話したのか、雪子は怖くて結局聞けずじまいなのだった。
とにかく、母と貴巳を二人にしないほうが良さそうだ、と義父と雪子は溜息をついた。

そして今日。
あまりにも短い準備期間にもかかわらず、何とか無事にこの日を迎えられたのは、
ひとえに貴巳の仕切りの的確さと、義父の情熱のおかげである。
お色直し、その他結婚式にありがちな演出は一切無し。
ドレスは、母と亡き父が結婚した時のものを着ることにした。
少し古びてはいたが、そうすることが何より父への供養になると思ったからだった。
着付けとメイクが終わり、新郎である貴巳が部屋に入ってきた時。
周りのスタッフが「ほら花嫁さんですよ!きれいですよね〜」とお決まりの文句で
貴巳を促したのだが、言われた当の本人は雪子のドレス姿になぞ目もくれず、
「読み上げる祝電を選んで欲しいそうだ」と電報の束を雪子に渡し、
さっさと出て行ってしまった。
目を点にするスタッフ達に、「………いいんです、慣れてますから…」と呟き、
同情と好奇の目を浴びる羽目になったのはかなり恥ずかしかった。
466鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:07:08 ID:O71zUMSE
いよいよ式本番で、雪子と一緒にバージンロードを歩いたのは、
突き出たお腹をタキシードで無理やり包んだ義父だった。
入場の時には既に号泣していた義父は、雪子の家庭の事情を知らない人が見たら、
どう考えても実の父(それもかなり過保護の)だと思ったであろう。
式が終わっても目を真っ赤にしている義父を見て、母が雪子に囁いた。
「義之さんね、うちではああだけど、仕事してる時はすごくびしっとしてるのよ」
「えええ?想像つかない……」
「だって、小さいなりにも建設会社の社長だもの。やる時はやるのよ、あの人は」
「…そうなんだ。見てみたいな」
「………私、やっぱり、モノを作ってる人が好きなのね」
「………………そうだね」
設計士だった亡き父は、今頃天国で、母の幸せを喜んでいるかもしれない。
ちょっとだけ嫉妬したりしたりもしてるかな?
大丈夫だよ、お母さん、お父さんのこともまだちゃんと好きだから。
母へのわだかまりが、少しずつ溶けていくのを感じながら、
雪子は空に向かって話しかけた。

式は滞りなく済み、親しい人たちの祝福の声に包まれて、
雪子はあらためて、幸せを噛み締めていた。
特に嬉しかったのは、父の会社に勤めていた二人の社員が、近況を知らせがてらに
お祝いに駆けつけてくれたことと、
それからもう一つ。
雪子は、ベッドサイドのテーブルに置いた、一通の祝電を手に取る。
手書きの文章をそのまま印刷してあるその文字は、ひどく震えて、少し読みづらい。

「橘雪子様
ご結婚されるとのこと、風の便りに耳にしまして、大変嬉しく思います。
あの事故以来、自分と同様にあなたも大変な思いをされてきたことと思います。
お母様と二人、一生懸命に暮らしてこられた貴方が、ようやく掴まれた幸せを、
心よりお祝い申し上げます。
私事ですが、リハビリは順調に進み、後遺症も日に日に良くなっており、
この冬には職場に復帰する予定でおります。
雪子さんもどうか、末永くお幸せに。」

今日、式が終わってから何度も何度も読み返したその電報を、
雪子は胸にしっかりと抱いた。
(………………………ありがとう)
467鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:08:59 ID:O71zUMSE
貴巳がシャワーを浴び終え、タオルで髪を拭きながら戻ってくる。
結婚式の間でさえ徹底した無表情は、当然新婚初夜でも変わりは無い。
隣に座った貴巳に、雪子は少しすねたような目線を送った。
「………何だ」
「…ドレス、見てなかったでしょ…」
「見たぞ。見えないはずはないだろう」
「そういうことじゃなくってですねっ!」
「敬語」
「どーーーでもいいじゃないですかそれはっっ!!」
握りこぶしを固める雪子の頭を、貴巳がぽんぽんとあやすように撫でる。
何だか妙なツボでも刺激されてるんじゃないかと思うくらいに心地よくて、
結局いつも、こうやってほだされてしまうのだ。
髪を撫でる貴巳の手が、いつの間にか雪子のバスローブの裾を割って、
怪しげな動きをしているのに気づき、雪子が貴巳を睨む。
「………何してるんですかっ」
「…また敬語を使えないようにしてやろうかな、と」
ぼすっ、と鉄仮面の顔に枕を投げつけ、
『中嶋雪子』はさっさとベッドにもぐりこんだのであった。
                               <了>
468鉄仮面と子猫 4:2008/05/18(日) 03:10:20 ID:O71zUMSE
なれ初め編完結です。
長期間スレを占領してしまって申し訳ないです。

最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
469名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 03:15:32 ID:VpOH/XFM
GJ!
この時間まで全裸で待機していた甲斐がありました。
……電報の所で涙ボロボロ出たのは内緒です……。
いい作品を本当にありがとう御座いました。
470名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 05:20:44 ID:LRoWDy4x
うp主。
泣かせたいのか抜かせたいのかどっちかにしてくれ。
身体がもたないよ・・・。

goooooooooooooooodjob!!!!!
471名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 07:05:43 ID:fiu/RcCl
鉄仮面かわいいよ鉄仮面

GJ過ぎる
雪子が可愛く嫉妬する話とか読みたいと思った。
472名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 07:07:57 ID:TpHmHJv8
朝からいいもん読めたぜ!GJ!
473名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 11:44:29 ID:AoQllI1p
メタボもGJ!
474名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 14:51:10 ID:Dl6UxMrq
萌えて抜けて泣けて萌えた。最高だ。GJ!!!!!!
475名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 19:12:49 ID:kARmD9q/
>>468
完結GJ!
でっ!聞きたいんだが
馴れ初め編と言う事は、他にもまだ続くんだよな?な?

頼むからゼヒ続けてくれ!
476名無しさん@ピンキー:2008/05/18(日) 23:15:52 ID:sMOPLb7c
鉄仮面は童貞だと思っていた俺は負け組日本代表。
何はともあれGJ!
477名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 00:13:11 ID:RU5rzDqW
ムッツリスケベと子猫か
478468:2008/05/19(月) 13:59:06 ID:m0jyETcO
>>475
嬉しいですありがとう。
何本かネタがあるんで、そのうち書く!

>>477
それいいな もらった
479名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 22:35:57 ID:lDWpC3TK
規制で遅くなったがGJ!

やっぱり、橋本あやにもGJしておかねばならないなw
石化沢木のお守りも安心して任せることができる。
480名無しさん@ピンキー:2008/05/19(月) 22:58:25 ID:d3PCjCKu
>>478
変なもん貰うなよwww
481名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 02:43:19 ID:s+mRk3a/
大正政略結婚もの の続きが読みたくて読みたくて読み(ry

作者様カムバーーーーーーック!!(夕日を背景に)
482名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 04:05:31 ID:pJTtoBd4
>>481
禿同だが
>夕日を背景に は
夕日に向かってじゃね?

隅つつきサーセンwww
483人造人間だみゃ〜ん ◆1aM01Oi/FM :2008/05/20(火) 05:24:39 ID:aAokxzbp
あったらいやな結婚式

とある高校の体育館はざわめいている。
今朝、学校に登校したら、いきなり臨時の緊急朝礼を行うという。
「一体、何があったんだ?」
そして、今、全校生徒がこの体育館に集合した。
何が起こったのか、またこれから一体何が起こるのかはわからない。
生徒たちはお互いに顔を見合わせてざわついている。そんな中、ステージの脇に、先生の一人が立ち、マイクで話す。
「それではただいまより、緊急の全校朝礼を行います。気をつけ!礼!」
そして生徒全員が礼をすると、司会の先生は「着席!」と言った。
生徒全員が座り、教壇の上に校長先生が進み出る。
「それではただいまより、校長先生のお話があります。」
そして校長先生の話が始まった。
「えー、まずは3年2組の塚崎真央子さん、ご起立願います。」
「えっ?は、はい!」
いきなり名前を呼ばれて驚いている塚崎さん。
「前の方へ出てきてください。」
私、何かやったのだろうか?まるで身に覚えのない塚崎さんは、困惑しながら前に進み出た。
「次に、2年5組の安達太郎君。ご起立願います。」
「ええっ!?は、はい!」
安達君も困惑の表情で立ち上がった。塚崎さんと共に何かをやったとかいう記憶はない。
第一、塚崎さんとはほとんど面識もないし、塚崎さんにとっての安達君もそうである。廊下ですれ違う程度でしかない。
その二人がこうして前に呼び出される、その理由がわからない。
もっとも、塚崎さんはわりと美人で、美少女タイプ。対する安達君も、わりとイケメンなほうだ。
そして二人が前に進み出ると、校長先生ははっきりとした口調で全校生徒に告げた。
「それではただいまより、安達太郎、塚崎真央子、両名の結婚式を執り行います!」
「えええええっ!!!」
いきなりな宣言に、二人はもちろんのこと、他の生徒たちも皆、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして驚いた。
「せ、先生!私たち、何にも聞いてないわ!」
「当然です。これは、昨日の教育委員会で決定したことですから。それに、あなたたち二人には、拒否権はありません。」
「そ、そんな!俺には付き合ってる彼女が・・・」
「別れなさい。」
「そんな横暴な!」
「婚姻届も、既に受理されています。もう既に、あなたたちは法的にも道義的にも、れっきとした夫婦なのです。」
「そ、そんな!いつの間に!?」
そして安達君の前に同じクラスの大前由紀さんが立ち塞がった。彼女は校長先生を睨んで叫んだ。
「やだっ!やだもん!!!安達君は、私と付き合ってるんだからっ!!!」
「大前さん!わがままを言ってはいけません!!!」
「やだあっ!やだあああっ!!!」
すると校長先生の後ろから、屈強な若槻学園大学ラグビー部の皆さんが颯爽と登場して、大前さんを力づくで引き離した。
「いやあああああっ!!!」
「ごめんね。校長先生の命令だから。」
そして大前さんは舞台袖へと消えていった。すると校長先生は何事もなかったかのように淡々と喋り続けた。
「それでは改めて、安達太郎、塚崎真央子、両名の結婚式を執り行います!」

おしまい
484名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 06:46:02 ID:wWTWCmC/
>>483
出たなだみゃ〜ん氏ww

って本当にいやな結婚式だな
。・゚・(ノД`)・゚・。大前さん…
485名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 10:15:22 ID:69URoyLR
なんで大学ラグビー部の皆さんがいるんだよwww
486名無しさん@ピンキー:2008/05/20(火) 23:05:37 ID:UnTp+HCM
鉄仮面と子猫読ませていただきました。
最高に面白かったです。

個人的に貴巳が雪子に嫉妬したみたいに
雪子が貴巳に嫉妬するところを見たいです。

実はずっと前から貴巳のことが好きだった橋本とか・・・・
487名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 18:59:39 ID:Rc+bYGkZ
>>486
あやさんだけはダメです
488名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 22:23:53 ID:Q4CEazk7
あやさんは鉄仮面と雪子のセックスがどんなのか気になって
見学→3Pってことでw
489名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 23:43:17 ID:KNb4QNBz
あやは雪子を「嫁にほしい」とまで思っていたぐらいだから、
酔っ払った拍子に雪子にちょっかいを出し、それを見て鉄仮面激怒。
あやを身動きできないようにして、目の前で雪子と・・・。

というのを妄想した。
490名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 14:19:48 ID:2NoPzOOx
>>486
雪子→貴巳に嫉妬 (・∀・)イイ!!

貴巳のテクに過去の女を意識してしまい
モヤモヤする雪子なんて読みたいなー
491名無しさん@ピンキー:2008/05/26(月) 00:55:00 ID:KD7gm8Uc
492名無しさん@ピンキー:2008/05/26(月) 02:09:36 ID:/ujOpMOZ
だみゃ〜ん氏!!!!
493名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 00:15:31 ID:kDcTKyiW
>>491
ググってもまだヒットしないのにどうやって見つけたんだそのブログ
494名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 08:47:18 ID:7Y6np8+F
大樹と穂波シリーズが好きな俺が通り過ぎますよ。
裸エプを全裸で待ってる。
495名無しさん@ピンキー:2008/05/27(火) 23:24:12 ID:jhlkXWWE
>>494 はげどう
496名無しさん@ピンキー:2008/05/30(金) 21:30:11 ID:nP3ZT71G
鉄仮面と子猫で雪子→貴巳に嫉妬なら
いっそのこと、自分のときと同じように、
企画部に新人が入ってきて
貴巳が既婚者なのを知ってもアプローチする子とか・・・
ベタかな・・・
497名無しさん@ピンキー:2008/05/30(金) 22:42:59 ID:l9Rv08uo
>>496
それで雪子がやきもちやくんですね。わかります><
498名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 13:38:47 ID:GPkl5tAq
保管庫の「大樹と穂波」シリーズ1作目が、だみゃ〜ん氏作品になってしまっている件について。
499SS保管人:2008/06/02(月) 05:53:37 ID:XRbGDqCZ
>>498
修正しました。
500名無しさん@ピンキー:2008/06/03(火) 13:00:57 ID:akgfLoq1
>>499 乙!
501名無しさん@ピンキー:2008/06/06(金) 22:44:30 ID:IMtq0K3j
502お嫁さんへ:2008/06/07(土) 11:39:45 ID:bfWEsWp5
あなたのだんなさんは童貞でしたか?もしも違うのなら想像してみてください。
だんなさんの上を通り過ぎて行った幾人もの女たちのことを。
真っ黒な大○唇にチ○ポをくわえ込まれ、胸や太ももに両手をつかれて、
騎乗されて腰を振りまくられていた。そうは思いませんか?
あなたがキスをしただんなさんの口唇・舌は他のま○こを舐め回していた汚れた口唇。
だんなさんにセックスを仕込んだ女たちのことを考えると胸が熱くなりませんか?
怒りを感じませんか?

あなたのだんなさんは、あなたと出会った時に既に中古品でした。
これは、あなたのだんなさんの童貞を奪った女のみならず、
あなたがだんなさんに出会う前にあなたのだんなさんに騎乗した他の女たちのすべてが
あなたと出会う前の、若く状態の良い肉体を幾人もの女達が弄んでいたのです。
あなたは、その何人もの女たちに調教され、その女たちの唾液や汗や膣分泌液を体細胞に浸透させられ、
しかも老化が既に進行してしまっていた中古男に妻として嫁いだのです。
ひょっとしたら、だんなさんはほかの女の未婚の父かもしれません。
あなたのだんなさんは、他の女をはらませていたのかもしれないのです。
あなたは、一人の女として、一生の伴侶である夫が中古男であった事が悔しくありませんか?
悔しさで胸が張り裂けそうになりませんか?

あなたは、それでも、今のだんなさんを愛せますか?
503名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 03:33:49 ID:12nSVvxc
保守兼ねて投下。
4レスお借りします。
504翔とユキ:2008/06/08(日) 03:35:36 ID:12nSVvxc
「うっ、く……う…あっ……」
ユキねえの舌がさっきからオレのにまとわりついてくる。
あれを伝って落ちてくるよだれの感触とか、ユキねえの熱い口の中とか、もうたまんない。
髪を撫でるとユキねえの目がこっちを向いて、うれしそうに笑った。
「ふぃふぉひい?」
ユキねえはいじわるだ。
分かってるくせにいつも聞く。
「うん、気持ちいい……」
オレが答えると、ユキねえはまたうれしそうな顔をして、今度は強く吸い始めた。
顔も上下して、手も根っこのトコをしごき始める。
「あっ!たっ、たんまっ!」
「はふぇ……」
ユキねえの口とオレの間からじゅぶっ、ちゅぶってすげーやらしい音がする。
先っぽがのどの奥に当たってるのが分かる。
「やばい、それ以上やったら、出っ……出るって!」
でも、ユキねえはやめてくれない。
むしろもっと強くこすって、吸って。
やばい。
ホントにやばい。
いや、気持ちいいし、出したいし、ユキねえは飲んでくれるけど、でもなんていうか、
「ッッ!あ、うあっ!」
ケツから背中を伝わって頭に上ってくる快感のせいで、ちゃんと考えられない。
もう、無理。
「ユキっ……ユキねえっ!!」
505翔とユキ:2008/06/08(日) 03:38:10 ID:12nSVvxc
「翔くん、いっぱい出したねえ。昨日もしたのに」
二回、という意味なのか、ユキねえは唇をティッシュで拭きながら、反対の手でVサインを作った。
勝ち誇ったような顔で言われると、素直に喜べない。
「誘ったのはユキねえだろ」
「だって、新婚早々浮気されたくないもーん」
「しねえっていつも言ってんじゃん」
ユキねえはふざけた口調で言ってるけど、元彼に浮気されて別れた時、すごく泣いてた。
だからこんなことするんだろうけど、別にほぼ毎日しなくたって、オレは浮気なんかしないのに……。
「まあまあ、やりたい盛りなんだから遠慮しないの。
 四ヶ月過ぎたらエッチしようね」
ふてくされるオレのほっぺたにちゅ、ってしてユキねえは俺の腕に抱きついてきた。
506翔とユキ:2008/06/08(日) 03:42:21 ID:12nSVvxc
ユキねえのお腹には赤ちゃんがいる。
もちろんオレの子。
三ヶ月くらい前、オレはユキねえの家で、ユキねえの弟でいわゆる幼馴染の孝介と飲んでた。
そこにユキねえも参加して三人で飲んでたら、孝介の彼女から電話がかかってきて、
孝介はオレたち二人を置いて、彼女の元へ。
飲み足りなかったオレとユキねえは、友人と姉を大事にしない孝介の悪口を言いながら
飲み続けてたんだけど、気がついたらそういうことになってた。
何をやらかしたか、なんとなくは覚えてるんだけど、正直ちゃんとは覚えてない。
ユキねえ曰く、翔くんに抱っこされたらキュンときた、だそうだ。
朝起きた時は二人で苦笑いして、こういうことはこれっきり、って約束したんだけど、
一ヶ月くらい前、ユキねえは青い顔で妊娠しちゃった、って言いにきた。
ホントはきっとすごく不安だったはずなのに、俺を心配させないように、無理して笑いながら、
でも翔くんの子でもあるから勝手に堕ろすのもよくないかと思って、って言ったんだ。
親父とお袋には丸一日説教食らったけど、家族ぐるみで付き合いがあったりなんだりしたおかげで、
式はともかく、籍はさっさと入れることになった。
507翔とユキ:2008/06/08(日) 03:45:30 ID:12nSVvxc
でも、あの時のユキねえの顔を思い出したら、胸が痛くなってきて、オレはユキねえを抱きしめた。
「翔くん?」
「あのさ、オレ、初恋の人って、ユキねえだから」
……って、オレ何言ってんだ!?
うお!は、恥ずかしいっ!
待った!待った!今の待った!ナシナシナシ!
「へ?」
さすがに驚いてる。
当たり前だ。
だって、そんなのすごく前の、ホントにガキの頃の話だし、今の流れでそんな話題、意味分かんねえ……。
あああああ、何かもっとちゃんとしたことを言うつもりだったハズなのに、全部すっ飛んだし。
「翔くん?」
「あ、だからな、心配すんなって言ってんの。
 責任とか、そういうんだけで結婚したんじゃないから。
 だから、エッチ出来ないくらい、どってことないし。
 ユキねえとだったら、しないくても一緒にいられると思ったから、嫁に来てもらったし。
 オレ、バカだし、年下だし、金もなくて、苦労させちゃうけど、でも、えーっと」
508翔とユキ:2008/06/08(日) 03:49:24 ID:12nSVvxc
この後なんて続けたらいいか分からない。
ユキねえがこっち見てるおかげですごく緊張する。
いつもはおしゃべりなユキねえが何も言ってこない。
急にこんな意味不明なコトを言い出したから、引いてんのかもしれない。
引いてはいなくても、頭大丈夫かな、くらいは思われてる気がする。
けど、ここまで来て、やっぱいいや、とか言えん!
ここはかっこ悪くても、男らしくビシッとユキねえの不安をぬぐう一言を言わなくては!
「えーっとね、だから、オレは島村由貴子を生涯愛し続けることを誓いますよ!」





うおー!反応がねえ!
やばい!
引いた?引いた?
いや、引くだろ、普通。
ちんちんしゃぶられた後にこんな夜景も見えないような所で、指輪を用意した訳でもなく、花束すらねえ。
つうか、マジなんでこのタイミングかな、オレ。
せめて役所行った時に言えよ、オレ。
509翔とユキ:2008/06/08(日) 03:51:49 ID:12nSVvxc
ぎゅ、っと身体を抱きしめられて、オレはパニック状態から立ち直った。
ユキねえがちっちゃい身体でオレのことを抱きしめて、オレの腕に顔を押し付けて、ちょっと震えてる。
「ユキね……」
「もう。翔くんてば、いつの間にか男前になっちゃったなあ。
 そんなこと言われたら、ユキねえ返上したくなっちゃうじゃない」
「……どういうこと?」
ユキねえが顔を上げて膨れっ面を作った。
心なしか顔が赤い。
「バカ。もう翔くんのお姉ちゃんじゃ居たくない、って言ってるの」
「あ……うん、はい」
オレは一回キスをして、ユキねえを抱きしめ直した。
ユキねえをこんなに愛おしい気持ちで抱きしめるのは初めてかもしれない。
なんだか、ユキねえがすごく可愛く思えて、幸せな気持ちになってたら、
「翔くん」
て、呼ばれた。
「なに?」
ユキねえは顔を伏せて、俺の肩に頭を押しつけると、いつもと違う小さな声でこう言った。
「あのね、私もね、……島村翔を生涯ずっと愛し続けることを誓います」

(了)
510名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 03:53:55 ID:12nSVvxc
6レスになってしまいました。
すみません。
511名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 09:32:32 ID:krH1uiAO
10スレぐらいでもよかったんだがな
GJ!
512名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 12:48:30 ID:3so87pLn
いや、さすがに10スレ消費するような大作を一度に投下されたら読むほうも大変なんだが…
513名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 13:12:29 ID:cIQIgT4r
いやいや10レスくらいなら軽く読めますよ

それにしてもGJ!2人ともかわええなあ
514名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 13:14:15 ID:cIQIgT4r
間違えた!10スレだったのな!
10レスでなくてwww
そいつは超大作だぜ
515名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 14:43:58 ID:ALvmhs55
>>514
いや、だから逆だ
516名無しさん@ピンキー:2008/06/08(日) 14:55:07 ID:ngSnAuAO
まぁ,なんにせよGJ!!
可愛いよ嫁!かっこいいよヘタレ亭主!!
517名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 00:32:39 ID:PYuEPXyu
GJ
518名無しさん@ピンキー:2008/06/10(火) 03:09:05 ID:Dxtd8+O4
GJ!!


関係のない話だが、鉄仮面さんの顔のイメージが
仮面つながりで「仮面のメイドガイ」のコガラシに…orz

作者さんホントすいませんorz
519志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:30:49 ID:Lh4q5BkJ
短編投下します。

注意:女性が未亡人で再婚です(男性は初婚)
苦手な方はスルーしてください。

時代設定は明治〜大正あたりです。
520志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:31:29 ID:Lh4q5BkJ
熱気を孕んだ風が、汗ばんだ首筋を吹き抜ける。
傍らを流れる小川の水面が、強い日差しをきらきらと反射している。
大小の無数の石が転がる足元の悪い道を、前を歩くひとは、まるで氷の上をすべるように
すいすいと早足で進む。絽綴の小紋は目にも涼しい薄水色。
その裾から、真っ白い足袋がちらり覗く。開いて肩にもたせかけられた日傘が、
いたずらにくるくると回っている。

見とれていると、大きな石に草履履きのつま先をしたたかぶつけてしまい、
顔をしかめて思わずしゃがみこんだ。
「志乃さん…しのさん!待ってください」
日傘がゆっくりと振り向く。細面の、白粉をはたかずともまっ白い顔には汗も見えない。
切れ長の瞳が驚いて見開かれた。
「まあ多一郎さん、どうなさったのです」
「いえ、ちょっと蹴つまづいただけです」
「この石にですね?まぁ、随分強くぶつけられたのですね。
ちょっと足袋を脱いで見せてごらんなさいまし」
「大丈夫ですよ」
「骨でも折れていたら大事でございますよ。そう、丁度その憎い石に腰掛けなさって」
言われるままにすると、志乃さんの細い指が足袋のこはぜにかかり、するりと素足に
むかれてしまった。すべすべした指が、気遣わしげに足の指を撫ぜる。
「汚いですよ、触ってはいけません」
「なんの汚いことがあるものですか。…まぁ、少し赤くなっておりますけれど、
こう曲げても痛くはございませんか?」
「ええ、大丈夫です。骨が折れたりしていれば、僕は痛がりですから、
とても我慢など出来ませんでしょう」
「そうですわね。多一郎ぼっちゃまときたら、よくうちの庭の柿を取りに来ては、
塀から落ちてわんわん泣いておられましたものね。
わたくしがどれだけ慰めても、痛い痛いといって泣き止んでくれませんでしたもの」
足袋をはかせてくれながら、志乃さんが楽しそうに笑う。
「もう、そんな昔のことは忘れてください。それに坊ちゃまというのも
もう勘弁してくださいよ」
「まぁ御免なさいまし。どれだけ気をつけてもこの軽口は治りませんの。
お気を悪くされまして?」
志乃さんが、わざと大げさに謝りながら、いたずらっぽく僕を見上げた。
紅い唇が濡れたように光る。
なぜかそれを見ていられなくて目線を逸らした僕の頬に、白い指がかかり、
そっとくすぐるように撫で上げられた。
521志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:31:58 ID:Lh4q5BkJ
「…っ、いけません、人に見られたら…」
慌ててそう言うと、志乃さんが可笑しそうに声をたてた。
「まぁ、どうせ明後日には祝言を挙げるのですよ。今更誰に見られたって、
なんの不都合がありましょう」
「しかし、未婚の男女というのに違いはありません」
「あら、後家の私を、生娘のように扱ってくださらずともよいのですよ、
多一郎さん。誰に見られて何を言われようと、噂されるのは慣れておりますもの」
微笑みを浮かべ、強がって見せてはいるものの、志乃さんの表情は少し陰がある。
「無責任な口さがない連中のいうことなど、気にすることはありません。
ご主人を亡くした方が再婚するなんて、よくあることではありませんか」
「それは、私はこれでもまだ若後家でございますからね。
奥さんに先立たれた中百姓の後妻の口くらいは、望めばありましょうけれども。
近在一の商家の総領息子の、それも初婚の相手としては、
誰に何と噂されても仕方ありませんわ」
風に吹かれてほつれた前髪が、白い頬にかかる。
伏目がちにつぶやいて、立ち上がろうとする志乃さんの手をつかんで引き止めた。
「…多一郎さん?」
「心無い輩が何と言おうと、僕はあなたを妻にしようと心に決めたのです」

子供のころからずっと、妻にするならこの人しかいないと思っていた。
だから5年前、志乃さんが隣町の旧家に嫁いでしまったときは、本当に悔しかった。
志乃さんより二つ年下の自分は、商家の跡取りとはいえまだ17歳の駆け出しの商人で、
妻を娶ることなど、とても許されることではなかった。
未練を何とか断ち切ろうと家業に精を出したが、忘れられるはずもない。
噂好きな連中から、志乃さんが嫁いだ経緯を聞いてからは、毎日毎日、
腸が煮えくりかえるような思いでいたのだ。
二軒隣に住んでいた志乃さんは、医家の一人娘だった。
まだ幼子のころから、末は玉の輿に乗るに違いないよ、と人の噂にのぼるほどの
小町娘は、それでも19の歳まで、由緒はあるものの決して裕福ではない家と両親を支え、
かいがいしく家業の手伝いをして過ごしていた。
それをある日、隣町の旧家の長男坊が、無理やり手篭めにしてしまったのである。
傷物になったのを言いふらされたくなければ黙って嫁によこせ、という、
あまりに卑劣な要求に、しかし娘の将来を思えばこそ、
温厚な両親も涙を呑んで娘を嫁がせたのだという。

しかしそれから4年というもの、志乃さんには子ができなかった。
嫁して3年子なきは去れ、の言葉通り、志乃さんに対する親類からの風当たりは
日に日に強くなっていった。
当の相手の長男坊が、どうしても彼女を手放したがらなかった為、
かろうじて婚家にとどまってはいたが、その夫とて、呑む打つ買うの放蕩亭主。
酔って志乃さんに手をあげることも、一度や二度ではなかったらしい。
その亭主が、昨年の春、風邪をこじらせたかと思うと、ころりと死んだ。
跡取りに納まったのが弟である次男坊で、
その夫人というのが悋気の鬼のような女だったらしい。
志乃さんと自分の夫との間にあらぬ疑いをかけ、狂ったようにいびり倒したという。
そして、もともと立場の悪かった志乃さんは、とうとう婚家を放逐された。
522志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:32:25 ID:Lh4q5BkJ
志乃さんが出戻ってきた、と聞いたとき、とほうもない怒りとやるせなさと共に、
不謹慎なことだが、僕がかすかな希望を見出したのもまた事実である。
その日からというもの、自分は今まで以上に粉骨砕身、家業に精を出すようになった。
町内の世話役さんや親戚の小母さんたちから、
縁談めいたものも、ちらほらと舞い込んでくるようになっていた。
もちろん、全て丁重に断らせてもらい、自分は更に仕事に打ち込んだ。
そして機を見て両親に打ち明けたのだ。志乃さんを嫁に貰いたい、
志乃さん以外には考えられない、と。
当然のごとく、両親は大反対だった。
生まれたときからご近所の志乃さんだ、人柄には文句のつけようもないけれど、
やはり世間様に対してみっともない、というのがその理由だ。
それからほぼ一年間というもの、我が家には口論が絶えなかったが、
ついに自分が、許されないならどうぞ勘当して下さいと言い出すに至り、
苦労して仕事を仕込んだ跡取りに出て行かれるよりはと、
ようよう両親も折れたのであった。

「あなた以外の誰も、妻にしようなどと思ったことはありません。
僕の両親も最後には許してくれました。
もう誰にも、志乃さんのことを悪く言わせたりはしません」
目の前の美しいひとは、僕に手をとられたまま、
戸惑うような表情を浮かべ、顔を背けてしまった。
頬が微かに赤く染まっている。
しばらく無言のまま、目も合わせてくれないことに焦れて、愛しい人の名前を呼ぶ。
「志乃さん」
「…志乃、と呼んで下さいまし」
顔を背けたままの志乃さんの真意はわからない。
「でも…今までずっと、志乃さんと呼んでいましたからね…どうも呼びづらいな。
今までどおりでは、どうしてもいけませんか」
頭をかいてそう言うと、志乃さんが、きっ、と強い目線を僕に向ける。
「いけません。只でさえ、丸川屋の若旦那は年増の後家にいいようにほだされている、
などと言われているのですよ。この上、新婚早々に嫁の尻に敷かれている、などという
噂が立ちでもしたら、私はお義父様お義母様に申し訳がたちません」
「…わかっています、すみません」
不承不承頷くと、志乃さんはふと、目線をゆるめた。
「私も、明日を限りに、多一郎さんなどと気軽に呼ぶこともできなくなりますわね」
「…これからは、僕は何と呼ばれるのですか」
「ええ…明後日からは、旦那さま、とお呼びいたします」

真っ直ぐに自分を見つめる志乃さんの口から零れた台詞に、
ふと目の前が真っ赤に染まるほどの興奮を覚えて、
気がつくと自分は、志乃さんをきつく抱きすくめていた。
うなじから香りたつほのかな香と、そして志乃さんの肌の匂い。
「…た、いちろう、さん……」
掠れた声で名を呼ばれ、ふと我に返って、慌てて腕をゆるめた。
「も、申し訳ありません、僕は何てことを…人に見られたら」
赤面してしどろもどろになる自分をおもしろそうに見つめて、志乃さんが耳元で囁く。
「ですから…今更誰に見られようとかまいませんでしょう。それに、
日傘で隠れておりますわ」
「いや、しかし」
「そんなにご心配でしたら…あちらへ参りましょうか」
志乃さんの細い指が示したのは、今まで忘れかけていた、懐かしい場所だった。
523志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:32:54 ID:Lh4q5BkJ
「ここは…よく覚えていらっしゃいましたね」
川べりの土手に、貯蔵庫にでも使われていたものか、横穴が掘られ、
丸太で柱まで組まれている。
入り口は葦が生い茂り、ちょっと見ただけでは孔があることさえ気づかれない。
その中に、何年ぶりかに踏み入ると、しげしげと黒い土肌を眺めた。
「覚えておりますとも。多一郎さんがまだ小さなころに、
お父様に叱られては、よくここへ隠れて泣いていらしたでしょう。
その度、お母様に頼まれておむすびを届けに来たのをお忘れですか?」
「忘れるものですか。あの時、慰めに来てくれた志乃さんは、まったく菩薩様のように、
後光が射して見えたものです」
「まあお上手ですこと」
鈴が転がるような声で、志乃さんが笑う。
強い日差しは徐々に翳り始め、只でさえ薄暗い孔の中は、もうほとんど真っ暗である。
視界が遮られると、それ以外の感覚が鋭敏になるものらしい。
志乃さんの、香り袋の控えめな香りに混じる肌の匂いまで、再び感じられるようで、
どうにも鼓動がはやってしまう。
そんな動揺を見透かしたように、志乃さんがそっと、僕の背に身を寄せる気配がする。
暖かな体温が、着物を隔てても感じられるような錯覚を覚え、身震いした。
耳の後ろに湿った吐息がかかる。
「し、志乃さん…っ」
「じっとして下さいまし」
白魚のような指が、背後から着物の合せをまさぐり、からかうように胸元をくすぐる。
息のつまるような未知の感覚に耐えていると、その指がそっと下のほうへと降りてきた。
「志乃さん…っ!そんな、いけません、僕達はまだ…」
慌てて細い指を押さえようとするが、その手はやんわりと振り払われてしまった。
「多一郎さんの生真面目なのは、よく承知しておりますわ…明後日の婚礼が終わるまで、

最後までは致しませんからご安心くださいませ。
ただ、今は、ほらこんなに…」
そう言って志乃さんの指が、とうとう下穿きの合せ目に進入し、
先程からとっくに、はしたなく猛りきっていたものを、つい、と撫で上げた。
「…っくぅっ…」
「多一郎さんが、こんなに苦しそうなんですもの…」
そう囁いた志乃さんの手が、たぎる熱の塊をそっとしごき上げる。
それだけで眩暈のするような快楽が、背筋を這い登ってきた。
同じ年頃の商家のぼんぼん達と一緒に、品川だの吉原だの悪所通いでもしておれば、
こんな時にも少しは余裕も持てたかもしれないが、
どうしても志乃さん以外の女性を抱く気になれず、今までとうとう縁が無かった。
今、夢にまで見た志乃さんの白い手に、そこを弄られているなんて信じがたい。
志乃さんが手を上下にうごめかす度、くちっくちっと湿った音がする。
「ほら…あの時と同じですわ、多一郎ぼっちゃまが、涙を流して泣いているんですもの」
「うう…あうっ」
先走りの滲む先端を、指先でくりくりとほじくられ、情けない声が出てしまう。
「志乃が慰めて差し上げましょうね…さあ、どうか我慢なさらないで」
より一層激しく、志乃さんが肉棒を扱きあげる。先端の段差の部分を、
小刻みに強く擦られると、玉の部分から、きゅっと射精感がこみあげてきた。
「あ、ああ…志乃さん、っ…!!!」
びゅくっ、びゅく、と音がするのではないかと錯覚するほどの勢いで吹き上げた液体を、
志乃さんは器用に、零さぬよう手のひらで受け止めてくれた。
「……はぁ、はぁ…」
「まぁ…すごい、こんなに…」
うっとりと自分の手のひらを見つめて呟く志乃さんの頬は、暗がりの中でもはっきり
わかるほどに上気していた。
524志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:33:15 ID:Lh4q5BkJ
「す、すみません、お手を…」
慌ててふところから手ぬぐいを出し、志乃さんの汚れてしまった手をぬぐう。
「まぁ…そんなに慌ててなさらなくっても」
「いや、その、何というか…まったく恥ずかしいです。……何ですか?」
志乃さんがくすくすとおかしそうに笑うのをいぶかしんで、その目線を辿る。
と、志乃さんの目は、下穿きからはみ出し、あまつさえ隆々と立ち上がったままの、
先程の白い残滓をしたたらせた自身に向けられていたのである。
「わ、うわっ、これは、その」
慌てて手ぬぐいで隠そうとしたが、一瞬早く志乃さんの手がそこに伸びる。
「お若いんですもの…当然ですわ」
「いけません、手がまた汚れて…」
「あら、後始末は、手だけでするものではございませんのよ」
「…え?」
何を言われたのかわからずにいると、志乃さんはいたずらっぽい笑みを浮かべて、
地面に膝をつくと、おもむろにそこに顔を近づけた。
次の瞬間、脈打つ自身が、暖かいぬめるものに包まれた。
「…お、おお…っ」
ちゅぶ、ちゅぶっ、と、いやらしい水音が、暗いあなぐらに響き渡る。
「志乃さん…いけませんっ、そんな、汚いところを…」
「どうして汚いことがありましょう…はぁっ、ほら、こんなに…素直で、いとおしい…」
志乃さんが舌を這わすたび、快感のあまり、肉棒がびくびくと跳ね上がる。
唇をすぼめるようにして強く吸われると、腰が砕けるのではないかと思うほどの
快感がそこを焼き尽くす。
志乃さんの、品の良い薄い唇の端から、淫らな汁が糸をひいて流れ落ち、
土に黒い染みを作る。
やわらかな熱い舌が、裏筋をくすぐるように刺激し、先端の段差のまわりを
ぐるぐると舐めまわした。
細い指は、ぶら下がる二つのものをやわやわと揉みしだき、何とも言えない
もどかしい快感を与えられる。
上目づかいに僕の顔を見る志乃さんの表情は、今まで見たこともないほど、
淫らでそれでいて美しい。
「はぁ…ふぁっ…志乃さん、口を…離して下さい、もう…」
こみ上げてくる精をこらえきれずにそう言うが、
志乃さんは一物をほおばったまま、首を横に振った。
「んふぅ…いいんですのよ…そのまま、出してくださいませ、志乃に、
多一郎さんの…みんな、飲ませてくださいませ」
「そんな…!!ああ!!志乃さん、もう…出る!!あああ!!!」
根元から搾り取られるように強く吸われた刹那、
白濁が、二度目とは思えないほどの勢いで噴出し、志乃さんの喉の奥をびしゃり、と
叩きつけた。
「ん…んくっ………ああ…」
白い喉首を上向きにのぞかせて、志乃さんは、
雫を一滴たりともこぼさずに、ごくりと飲み干してしまった。
「……し、志乃さん…」
恥ずかしさのあまり、何を言っていいのか解らなくなる僕を尻目に、
志乃さんはさっさと身づくろいを済ませ、
僕の着物の合わせ目をきちんと調えてくれると、開いたまま放ってあった日傘を畳んで
すいと立ち上がった。
「さ、参りましょう」
「…あ、あの、志乃さん…待って下さいよ」
すたすたと先に行ってしまう志乃さんを慌てて追いかけて、
土手の道に戻る。
いつの間にか太陽は傾き、真っ赤な夕焼けが空を染めていた。
525志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:34:03 ID:Lh4q5BkJ
足の速い志乃さんにようやく追いつくと、気の早い蜻蛉が一匹、
川面へ向かって弧を描いて飛んでいった。
志乃さんは前を向いたまま、先程の痴態など無かったかのように、
いつもの涼しげな微笑を浮かべている。

「あの、志乃さん」
「はい」
「やはり、二人だけの時は、今まで通り、志乃さんと呼んではいけませんか」
「………」
「あの、決して、二人以外のものがいる時には呼びません。約束します」
そう言い募ると、志乃さんが心底可笑しそうに、くすくすと笑った。
「ええ…では私も、二人きりの時は、多一郎さん、と呼ばせて頂きますわ。
二人だけの秘密ですわね」
「ええ…その、先程のことも」
どもりながらそう言うと、志乃さんは僕のほうを振り返り、言った。
「…え?先程、何かありまして?」
…この人には、どうも敵わない。
志乃さんがどれだけ気を遣おうと、尻に敷かれる若旦那の噂が町内を賑わすのも、
時間の問題であるだろう。
「さぁ、急ぎませんと、家のものが心配しますわ」
「ええ?もっと急ぐのですか?…待ってくださいよ、志乃さん」
夕暮れに滲む細い背中を、慌てて追いかけて、僕は走りだした。
526志乃さん ◆mshHIZI6VI :2008/06/11(水) 00:34:31 ID:Lh4q5BkJ
以上です。
527名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 00:41:50 ID:GXI8DSh1
gj
528名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 07:56:02 ID:1GfHs99k
こういう和物も好物なものでたいそう美味しく頂きました
GJです

設定や言葉遣いなどにその時代らしさもあり丁寧でいてわかり易いので感心しました
つきましては明後日の初夜の話もぜひ
前夫に仕込まれた技の数々を披露する志乃さん&いいように翻弄され続ける多一郎さんが見たいですw
529名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 10:57:33 ID:nEw1+pVX
ふいんき(何故か変換ry)がいいなぁ
GJ!!
530名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 17:59:21 ID:qnG87Dfk
べただけど「ふんいき」だろ?
531名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 19:50:20 ID:uiXYhhC2
(゚д゚)
532名無しさん@ピンキー:2008/06/11(水) 22:02:21 ID:8ASFWf9/
和服美女でエロ清楚な未亡人姉さん女房だと…!
どれだけ俺のツボを抑えれば気が済むんだ!
GJ!!  
533名無しさん@ピンキー:2008/06/15(日) 23:45:08 ID:v05yOJic
534名無しさん@ピンキー:2008/06/16(月) 21:12:34 ID:WYWOzK4P
535名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 09:38:20 ID:ET+fbUCE
536名無しさん@ピンキー:2008/06/17(火) 10:39:05 ID:4r7SmoJj
537名無しさん@ピンキー:2008/06/18(水) 00:29:48 ID:Iou+lGke
538名無しさん@ピンキー:2008/06/21(土) 02:09:24 ID:jCKsP51Q
保守
539名無しさん@ピンキー:2008/06/22(日) 23:36:41 ID:JgzlW2A3
540氷の温度1:2008/06/24(火) 06:09:50 ID:ntY08BLF
保守がてら少し。
初めて書くので微妙でもお許し下さい。
歴史物です。WW1中の帝政ロシアが舞台です。



婚礼の宴は終わった。
明日、アレクサンドルは一路モスクワに向かう。
今朝到着し、彼と久しぶりに言葉を交わしたばかりの花嫁、ナターシャは、寝室の窓から外を見てため息をついた。アレクサンドルはまだ階下にいる。
予定では婚礼は来年のはずであった。ナターシャが女学校を卒業し、アレクサンドルが正式に家督を継いでから、というのが当初の予定であった。
予定が変わったのは、折からの戦争の状況がどうにも芳しいものではなく、見習いの下士官でしかないアレクサンドルも前線に赴くことが決定したからである。
結局ナターシャはこれまでアレクサンドルと三度会ったきりだ。最初に出会った時から婚約者としてナターシャの前現れた背の高い赤毛の青年、
どうも喋り方がのんびりしていて、酒に弱くて涙もろい、頼りないアレクサンドル・ウラジミルヴィチ。
婚礼の宴の最中、ワイン一杯で顔を赤くしたアレクサンドルは大きな声で何度もナターシャを呼び、キスをして抱きしめた。
「美しいナターシャ!俺はお前のために絶対帰ってくる!」
それは広間一杯に響く大声である。
酔っ払っているアレクサンドルは力の加減がきいていない。
日頃よく体を鍛えた大男に力一杯抱きしめられ、ナターシャは小さく非難の意味を込めて呻くと、キッとアレクサンドルをにらみつけた。
「あまり浮かれないように」
「浮かれてるかな」
「ええ」
「そうか、ごめん」
ナターシャはアレクサンドルの腕から離れると、そのまま人気の少ないテラスに出てそこでワインを飲んだ。
ナターシャは酒に強い。一瓶空にした。
すっかり酔って上機嫌のアレクサンドルは、親戚や友人達から祝福の言葉を受けてすっかり浮かれている。
541氷の温度2:2008/06/24(火) 06:12:04 ID:ntY08BLF
ケタケタと大きな声で笑い、赤い鼻を擦って、また笑う。
滑稽なものだ。
ナターシャはため息をつく。
――あの人はわかっているのだろうか。
戦況は本当に悪くなっているのだ。こんな貴族階級の宴であってすら満足に酒も食事も集まらない。農奴は飢えている。兵士はみな帰ってこない。
「ナターシャ!ナターシャ!」
バンっと大きな音をたてて扉を開いたアレクサンドルが、転がるようにして寝室に入ってきた。
「ナターシャ、いいものを貰った!ベルギーのチョコレートだ。さっき一個食べた。これは素晴らしく美味いぞ、君も一つ食べなさい」
「……あとで頂きます」
「そうか、絶対食べるべきだ、これは美味い」
「……」
「甘いものは嫌いかい?」
「……いいえ」
「じゃあきっと食べなさい。ちょっと寂しい時や元気が出ない時に食べるといい」
にんまりとしまりのない顔で笑うと、アレクサンドルはチョコレートの入った箱をずいっとナターシャに差し出した。
受け取ったナターシャはそれを窓際のテーブルの上に置くと再びため息をついた。
「今日は楽しかったなあ……久しぶりにイヴァンやフェリックスにも会えたし……君も元気そうでなによりだった……」
ベッドに腰掛け、水を飲みながらアレクサンドルはうっとりとした口調で言う。
「みんな君の花嫁姿をすごく誉めてくれた。本当に俺にはもったいないくらいの花嫁だって言われてしまったが、俺も正直そう思う。俺には君はもったいない」
そう言うとそのままアレクサンドルはベッドにバタリと横になった。
じっと天井を見つめるアレクサンドルの濃い茶色の目は、奇妙な深さを持っていて瞳孔の底がしれない。
ナターシャはベッドに腰をかけてアレクサンドルの瞳を覗き込んだ。
「ひどく酔っているようですね」
「……うん」
「まだ大丈夫ですか?」
「なにがだい?」
542氷の温度3:2008/06/24(火) 06:14:08 ID:ntY08BLF
アレクサンドルの無神経な一言にナターシャは顔をしかめた。
「私を抱くのでしょう」
言って再びアレクサンドルの瞳を覗き込む。茶色の目は今度はジッとナターシャの目を見つめた。
それはひどく澄んでいて、謎めいていて、ナターシャはなぜか背筋が寒くなった。
「俺は……」
ポツリ、アレクサンドルが言う。
「俺は、俺はね、ナターシャ」
アレクサンドルが申し訳なさそうに微笑んだ。
「この結婚を成立させたくないんだ」
ナターシャが息を飲む。アレクサンドルはいつものようなのんびりとした喋り方で続ける。
「正直な所、ちゃんと五体満足で帰ってこられるかわからない。
うーん、多少怪我してようと、生きて帰ってこられたらまだマシかもしれないな。
まず帰ってこられるか、そこがまず怪しい。これで俺が帰ってこなかったら、
君はたった一晩の婚礼のためにあまりにもたくさんの大切なものを犠牲にしてしまうだろう」
俺はそんなこと望んでないよ。
そう言ってケタケタとアレクサンドルは笑った。
「君は美しい。幸福になるべきだ。負ければロシアはろくなことにならないだろう。
結婚するなら外国の金持ちとかがいいね。きっと君なら幸せになれると俺は信じている」
ナターシャは開いた口が塞がらないまま、黙ってアレクサンドルを見つめていた。
酔って赤くなった鼻を擦りながら、アレクサンドルは目をつぶる。
どうしてこの男はいつだって検討違いの事ばかり言うのだろうか。
「……どうして」
そう、初めて会った時から検討違いの事ばかり言う男だった。
「どうしてあなたは、いつも……いつもいつもいつも」
アレクサンドルの出征の知らせを受けてからずっとナターシャはこみ上げてくる感情を抑え続けていた。
「いつも勝手に……勝手に決めてしまって……勝手に納得して……どうして私の幸せまで勝手に決めてしまうんですか!」
半分叫ぶようにしてそう吐き捨てると、堪えきれない涙をポロポロこぼしながらナターシャはアレクサンドルの襟首を掴んだ。
543氷の温度4:2008/06/24(火) 06:17:00 ID:ntY08BLF
「ナターシャ?」
驚いて目を見開いたアレクサンドルにナターシャは何も言わずにキスをした。
初めて会った時、アレクサンドルはナターシャに望遠鏡をプレゼントしてくれた。
しかしそれを知った周りの人間が、アレクサンドルの趣味の悪さを揶揄するものだから、彼はすっかり後悔したらしく、バツが悪そうにすまないとナターシャに謝った。
2度目に会った時、アレクサンドルはナターシャと芝居を見に出かけた。
アレクサンドルがナターシャと似ているとしきりに誉めた女優はひどい悪女の役で、芝居の後半二人は黙り込んでしまった。
アレクサンドルはこの時もすっかり恐縮してしまいすまないとナターシャに謝った。
「望遠鏡、私は嬉しかったのに……芝居だって、面白い芝居でした……」
アレクサンドルを抱きしめながらナターシャは嗚咽まじりにとにかくしゃべった。
「いつも、勝手に結論づけてしまって…私に聞いてくれないじゃない。
私は嬉しかったのに。ずっとずっと言いたかった。
あの時のお礼、私は言いたかったし、もっとあなたとお話したかった。
今日はずっと泣いてしまいたかったのよ。明日になったら……行ってしまうんだって、知らせを聞いてから今日まで、とにかく悲しくて…」
悲しくて、と言いながらナターシャは子供のように泣き続けた。しゃっくりあげて声をあげて、体を震わせて。
これまでこらえてきた涙を全て流してしまうくらいに泣いた。
「はやく……言えば良かった。もっとはやく、アレクサンドル。愛していますアレクサンドル」
アレクサンドルに再びキスを落とし、そう何度も告げた。アレクサンドルは黙ったままだ。ナターシャ纏う寝間着の中が暑くて苦しくなってきたことに気がついた。
こんなに取り乱してしまうなんて、もしかしたら自分もひどく酔っ払っているのかもしれない。
「なあ、ナターシャ」
「なんですか」
「俺は、君に謝るべきなのかな」
「この期に及んでっまだっ……まだっ」
「ごめんっごめんってば、そうじゃなくて……あーその、ごめんナターシャ。えーと」
「もう何もおっしゃらないで!帰ってくるのこないの?私を抱くの抱かないの!?それだけおっしゃい!!」
「…帰ってくるよ」
「よろしい、で?」
アレクサンドルはそのままナターシャを強く抱き寄せ、唇で口を塞いだ。
544氷の温度5:2008/06/24(火) 06:21:40 ID:ntY08BLF
「悪魔に魂を売っても帰ってくる。待っていてくれよ」
抱き寄せた腕がナターシャの寝間着の中へ侵入する。
火照った体をアレクサンドルの冷たい指がわさわさと撫でるのが心地よくて、ナターシャは小さく悲鳴をあげた。
「君、酔ってるんだなあ」
「あなた、ほどじゃ……ひゃんっ」
尻をギュッと掴まれてナターシャは全身を震わせた。
「見た目より手応えがある。いい子が産めそうだな」
こんな時までおっとりと話すアレクサンドルをナターシャは不平不満を込めた目で睨んだ。
「どうして欲しい?」
「……だからお黙りになって!」
小さく笑うと、言われた通りに黙ったアレクサンドルはナターシャの乳房にキスを落とした。
白い乳房は少し火照り、汗ばみ、ナターシャが動くのに合わせてゆさゆさと揺れる。
アレクサンドルはナターシャをベッドの上に横たえると、左手で左の乳房を掴み、右の乳房に丹念にキスの雨を降らせた。
巧妙に乳房の頂上を避けて降る快感にナターシャは息を乱して声をあげる。
やがてそろそろと突起部分をアレクサンドルの指が撫で始めると、ナターシャの本能は必死でそれを求めた。
立ち上がった乳首をアレクサンドルが優しく甘噛みする。
「あ……ふぅ、ぅうあ、あ、あぁ……アレク…あぁん…」
ナターシャの頬はすっかり上気して湯気が出そうに赤い。
目を潤ませ震えをこらえるナターシャをアレクサンドルは愛しく思った。
ナターシャは先ほどからずっと太ももを擦り合わせ、尻をゆらゆらと動かしている。
快感が、ナターシャの女としての最奥まできているのだろう。
アレクサンドルはナターシャの足を持つとそれをぐいっと広げた。
擦り合わせていた足を開かれたナターシャは「きゃっ」と短く声をあげた。
ナターシャの茂みの中には真っ赤な花がチロチロと燃えていて、
その花に触れるとトロリとした
545氷の温度6(最後):2008/06/24(火) 06:25:38 ID:ntY08BLF
濃い蜜が待っていたかのように溢れ出してくる。
「ナターシャ」
「な、なに……うぅ…」
「愛してる」
言いながら指を花の中心に指し入れる。
全身を震わせるナターシャに、アレクサンドルはなおも言った。
「愛してる。君は美しい」
「ひゃ……あぁ……」
花弁を指先で丁寧にそっと撫でて、トロトロとした愛液を塗りたくる。
侵入したナターシャの中は普段の彼女の様子と違い子猫の様に熱かった。
「アレクぅっ……あ、アレク…サンドル…ねぇ、すき……あ、ふぁ…」
「俺も愛してる」
ナターシャの体から指を引き抜く。いかにも切なく蠢動する彼女の体をもう一度アレクサンドルは抱きしめた。
「君は俺のものだ」


夜が明けた。
ナターシャは泣き止まぬままにアレクサンドルを求め、その行為の最後に果てたまま眠り込んでいる。
アレクサンドルはその寝顔をしばらく見つめていた。
内心驚いている。ナターシャは非常に自尊心の強い女性だ。
あんなに感情を表にして男性を求めるとは思わなかった。
あの冷徹な無感動の中に、彼女があれほどの情熱を秘めていたのだ。
その奇妙なほど幼く見える少女のような寝顔にキスをして、アレクサンドルは立ち上がった。

彼は今日、モスクワに向かう。


fin


胃痛が酷くて眠れない勢いのまま書いてしまいました。
未熟者の駄文でスレを6つも消費してしまい申し訳ありません。
ありがとうございました。
546名無しさん@ピンキー:2008/06/24(火) 12:13:15 ID:4t51tpLp
GJ!
547名無しさん@ピンキー:2008/06/24(火) 17:46:09 ID:NnP0dPdk
帝政ロシアの場合、貴族なら最低でも少尉のはずなんだが。
あと、表記はウラジーミ「ロ」ヴィチが正確だと思うぞ。
父称の末尾が子音の場合は"o"の発音が追加される。

何度も読み返してにやにやしたくなるくらいにいい話なだけに、
そういう細かい部分が気になって仕方がない。
ケチつけてすまん。

次も頑張ってくれ。
548540:2008/06/24(火) 20:20:28 ID:ntY08BLF
>>547
指摘ありがとうございました。
慌てて調べて確認しました。初歩的なミスですみません。
あまり詳しくないのですが、なんとなく生存フラグへの道が
厳しそうなものを選んだらロシアだったのでそれで書いてしまいました。
勢いのままにアップしてしまったので今となっては後悔しきりです。
いい話だと言って頂きありがとうございました。
また機会がありましたら投下させて頂きます。
549名無しさん@ピンキー:2008/06/27(金) 20:50:47 ID:2OE5hUkI
550名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 03:31:01 ID:xbZApfsE
GJ
551名無しさん@ピンキー:2008/07/02(水) 00:44:46 ID:pPgOumDw
鉄仮面と子猫マダー?
552名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 22:58:13 ID:trLucY0C
穂波と大樹の裸エプロン編はー?
553名無しさん@ピンキー:2008/07/03(木) 23:40:13 ID:PrNXTeHn
神父様とラグビー部の皆さんの大活躍はー?
554名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 00:16:37 ID:EM6BTIQp
(゚听)イラネ
555名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 20:50:45 ID:Wo+sorlc
そろそろ次スレか?
556名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 01:35:49 ID:RjwXdrmb
1スレの容量って512KBだっけ?
557名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 02:25:18 ID:BwV1uk0s
512が限界だが500超えた時点で書けなくなる。
558名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 23:42:40 ID:68rc36Jf
新スレ

【俺の】結婚&新婚萌えスレッド第3夜【嫁!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1215355199/
559名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 00:32:19 ID:lTgHizpr
やはりwktkすべきは子猫と鉄仮面か‥‥保守
560名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 00:26:36 ID:+/tLjvmT
埋めネタ待ち
561埋めネタ:2008/07/15(火) 01:43:53 ID:9VpsNmy8
「お前なぁ、いい加減ここ埋めろって」
「やだ」
「何でだよ?」
「いいじゃん、別に今じゃなくっても」
女は、ぶっきらぼうにそう言い放ち、わざとらしく伸びをした。
「そういうわけにはいかないんだって」
「やだ。なんかもう、色々めんどくさいし」
「面倒くさいって…お前なぁ」
男は溜息をつき、女に非難がましい目をむける。
一方の女はふて腐れた表情で、男から目を逸らしている。
が、本心から面倒だと思っているわけではなさそうだ。
そっぽを向いた横顔の頬が、微かに緊張している。
そのくらいの変化に気づけるほどには、男は女を知っている。
562埋めネタ:2008/07/15(火) 01:44:56 ID:9VpsNmy8


「なぁ…どうしたんだよ、今になって」
ことさら優しい声音でそう問いかけると、女は案外素直に本音を漏らした。
「………この一年、楽しかったじゃない?」
「そうだなぁ…色々あったけど、まぁ大きな喧嘩もしなかったし、
いい一年だったよな」
「でも、ここ埋めちゃっても、これからまた楽しい保証なんてないし」
「そりゃそうだけど…」
「なんか…寂しいっていうか、不安ていうか………さ」
「お前…そんなこと心配してたのかよ」
「そんな事って!あたしには大事なことなの!!」

「………馬鹿」
女の真剣さがおかしくて、男は笑いながら言う。
「バカって言うな!」
「馬鹿じゃなきゃ阿呆だ!お前、新婚は人類の永遠の夢だぞ?
涸れることなき妄想力の泉だぞ?バージンロードでウエディングドレスで
新婦で神父で裸エプロンだぞ!?
なんか慣れてなくて炭水化物ばっかりの手料理だったり、部屋にAVがあったぐらいで
可愛く痴話喧嘩しちゃったりするんだぞ?!
たまには本格的な喧嘩したりもするけど結局モトザヤで夜は燃え上がったりとかだな、
あとは新婚じゃなくてもあれだ、娘とか息子が結婚する年頃になっても
「妹か弟作っちゃうぞ〜」とかだな!ビバ結婚!!!
次の1年どころか…あと50年はいける!!」

「鼻息荒くてキモイんですが…っていうか、50年は無理だろぉよ…」
今度は女が呆れて溜息をつく。
「いや、いけるね俺なら。とにかくそんな薔薇色ライフを送るためには、
ここ埋めてとっとと次に行くしかないだろ?
そんでまた、初夜とか初夜とか初夜とか熱い日々をだなぁ!」

スパーン、と小気味のいい音を立てて、男の頭が丸めた書類でしばかれる。
「ああっ!お前、これで殴るなよぉ!これ大事な…!!!」
「他に言うことないんかいっっ!!!」
重ねてげしげしげし、と3発ほど殴られ、男は床の上に平伏する。
「も、申し訳ありませんでした…」
「で?結局何が言いたいわけっっ?!」
563埋めネタ:2008/07/15(火) 01:46:11 ID:9VpsNmy8
刺々しい声音に、男は恐る恐る頭を上げ、
女の手に握られた書類をそっと取り上げて広げる。
そして再び、女の前に土下座した。




「一生、幸せにします…頼むから、ここ、埋めて下さい」



テーブルの上に広げられた婚姻届には、一箇所の空白。



「………………………もぉ、しょうがないなぁ!」



怒った表情のまま、頬だけを真っ赤に染めて、
女はペンを握り、自分の名前で、空白を埋めたのだった。

564埋めネタ:2008/07/15(火) 01:47:09 ID:9VpsNmy8
終わり。力不足にて結局埋まってなくてスマソ
後は誰か頼む。


次スレの繁栄と、全ての新婚さんに幸あらんことを願って。
565名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 02:34:09 ID:JdML+6fz
ぐっじょぶ


「ああああーっ!イイ!イイのおっ!
気持ちよすぎるよぉ!!…あっ?ダメ!
抜いちゃだめぇぇ!!
まだ、まだ足りないのっ!
ここに…ここに、おっきいの、埋めてえぇ!!」

こうですか?わかりません(>_<)
566名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 07:01:55 ID:vRGmwy9D
梅なんてもったいないGJな作品だ!





新婚ネタ


新婚寝た




新婚寝た?!




いきなり初夜っすか?!





近くに一組とても気になる天然夫婦漫才新婚夫婦がいる。
当然嫁がボケ。
まだ新婚旅行まもない。





グホっ!
この想像を文字にできたらなぁとマジ思う。
567名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:40:35 ID:o1Qtf6mx
埋めネタ

3レスお借りします。
568名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:40:59 ID:o1Qtf6mx
「やっぱり今日は疲れたな」
ここは誰でも一度は名前を聞いたことがあるであろう都内某ホテルのスイートルーム。
そのスイートルームの中にある、どう見てもキングサイズのダブルベッドの上に寝転がった先輩は、
大きな伸びをしながらそう言った。
「はい。聞いてはいたけど、疲れました」
「おまえの方が疲れたろ」
「んー……。疲れたのも疲れたけど、お腹が空いて空いて」
お義姉さんに、花嫁さんは披露宴で食べてる暇なんかないよ、って聞いてたから、
朝はしっかり食べてきたし、式の間もお色直しで控室に戻った時にサンドイッチを食べはしたけど、
二次会でほとんど食べられなかったおかげで、ホテルに帰りついた時は空腹でフラフラしてた。
「確かになあ。おまえ、さっき軽食来たとたんにがっつがつ食べてたもんな」
先輩は自分の腕に頭を乗せて、こっちを見ると楽しそうに笑った。
「がっつがつ……って、しょうがないじゃないですか。
 昼にサンドイッチつまんでからさっきまで、ほとんど何にも食べてなかったんですよ?
 食べようとすると、誰かが写真撮りに来るから……」
「ま、花嫁さんはみんなのアイドルだからな。
 俺なんて、二次会の後半、放置されてた」
先輩は両手で空中に箱の形を描くと、それをぽいっと脇に放った。
「でも、絶対二次会の写真て、顔が疲れてると思うんです。
 嫌だなあ。そんな写真もらいたくなーい!」
髪を梳かし終えて、私は先輩の隣にダイブした。
スイートだけあって、すごくふかふかなベッド。
こんな時でもなかったら、スイートなんて絶対泊まれないよね。
私がしばらくベッドの心地よさを堪能してると、先輩が背中に毛布をかけてくれた。
「今日はもう寝ようか。明日からオーストラリアだしな」
569名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:41:22 ID:o1Qtf6mx
先輩は優しく言ってくれたけど、私はがばっと上半身を起して先輩を見た。
「寝ちゃうんですか?」
「だって、疲れてるだろ?」
「それはそうですけど」
「旅行先でもできるって」
そういうことじゃない。
だって、今日は一生に一度の初夜。
そりゃ、えっち自体は初めてじゃないけど、結婚式の夜なのに、同じベッドっていうだけで、
離れて寝るなんて寂しすぎ。
「あのっ、でも、しょ……初夜ですよ?」
「別に結婚式の当日にしなきゃいけないってもんでもないだろ?」
「それはそうなのかもだけど……」
「したいの?」
うう……なんで真顔でこういうことを聞くんだろう。
なんだか私が一人で勝手にえっちな子みたいじゃない。
「先輩は、……したくないんですか?」
「そうだなあ。
 奥さんとはしたいと思うけど、後輩とはしたくないなあ」
なぞなぞみたいな言葉に私は先輩の顔を覗き込んだ。
「あの、結婚届けも出したし、式もしたし……でも、私、まだ先輩の奥さんじゃないんですか?」
「……なんだか、まだ後輩みたいな感じだよな。
 先輩、って言われてると」
「あ……」
先輩がにっこり笑った。
570名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 00:41:53 ID:o1Qtf6mx
「あの、えっと……」
高校で先輩と会ってからついさっきまで苗字プラス先輩で呼んでたから、先輩を名前で呼ぶのなんて初めてだ。
先輩は楽しそうな笑顔で、私の方を見てる。
「な、直久……せんっ」
「んー?」
「なおっ、ひさ、さん……」
「はい、なんでしょう」
あーもう、意地悪!
「あのっ、直久さんは、えっと、今日はもう寝ちゃい、ますか……?」
先輩はやっと身体を起こすと私の真隣に来て、
「こんな近くに奥さんが居たら、寝てられませんね」
と言ってキスをくれた。

(了)
571名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 01:43:55 ID:4njAW5HV
なんという甘々新婚さん…!!
GJ!
572名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 20:57:09 ID:M5QLq1+J
甘すぎるぜ・・・GJ!
573名無しさん@ピンキー:2008/07/17(木) 22:49:20 ID:c0iYavU7
ありがとう職人さんたち。
できれば新スレでこの続きを。
574名無しさん@ピンキー:2008/07/21(月) 23:04:23 ID:rTWdPPc2
もっと甘い話をっ
575名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 20:35:48 ID:udhUgwtY
まだ埋まってないじゃないか
576鉄仮面と子猫 埋めネタ:2008/07/24(木) 23:35:05 ID:Gjvam7x5
新スレで予告されてた方が投下されないようなんで、
ちょっと前に書いた小ネタで埋めさせてもらいます。
577鉄仮面と子猫 埋めネタ:2008/07/24(木) 23:35:55 ID:Gjvam7x5
お買い物して帰ろうとしたら、いきなりレポーターにマイク向けられて、
インタビューされちゃったの。明日のお昼の情報番組で放送されるんだって」
「…どんな内容だったんだ?」
中嶋貴巳氏の胸中に、そこはかとなく嫌な予感が兆す。
雪子の口から出たのは、案の定、背筋が寒くなるほど恐ろしい内容であった。
「んとね、『貴方の旦那さんに点数を付けるなら何点?その理由は?』っていう質問で、
あとは、『旦那さんに日ごろ言いたいけど言えないこと』っていうのも。
テレビ出たことなんて無いから緊張しちゃった。テレビカメラって案外小さいね。
地元ローカルの局だからかなぁ?レポーターの人はね、よく夕方の番組に出てる…」
「待て」
「へ?」
報告を途中で遮られ、雪子がきょとんとした表情を浮かべて、
眉間に深い皺を刻んだ夫の、凄みのある無表情を見つめた。
「…役所内にあるテレビは、ずっと○○テレビが映っているんだが?」
そう、彼の勤める市役所の建物内には、窓口の待合室をはじめ、
部署ごとにテレビが設置され、チャンネルは常に地元ケーブル局に固定されている。
つまり、明日、彼の出勤中に、雪子のインタビューが放送されるということである。
「あ、そっか…大丈夫だよ、別に変なこと喋ってないから」
無邪気に笑う妻に、貴巳は思わず溜息をついた。
雪子には悪気がないのだから、却ってタチが悪いのである。
怒ったとしても、今更番組の内容が変わるわけではないから無意味であるし、
無意味なことはしないというのが中嶋貴巳氏のモットーである。
「…一つだけ確認したいんだが」
「ん、何?」
「質問には、どう答えたんだ?」
「……………んー、えっと、ね…」
目の前の、未だ少女のような風貌の妻が、頬を微かに染めて口ごもる。
そして、犯罪レベルに可愛らしい笑顔を浮かべて、甘い声で言った。
「…………ないしょ♪」
578鉄仮面と子猫 埋めネタ:2008/07/24(木) 23:41:35 ID:Gjvam7x5
思わずその笑顔に見とれながらも、鉄仮面たるもの、それを表情に出したりはしない。
貴巳は、何やら少し考えてから、雪子に告げた。
「…明日は少し早く出勤する」
「え?どのくらい?」
「そうだな…いつもより1時間早めで充分だろう」
579鉄仮面と子猫 埋めネタ
翌日、市役所の職員たちが、待合室にあるテレビの前で首をひねっていた。
「…ダメですねぇ。映りませんよ、ケーブルテレビだけ」
「あれ、待合室のも映らないのか。うちの課のテレビもダメなんだ」
「故障ですかね。それとも受信機の設定を誰かいじったとか…?」
「どっちにしてもよくわからんなぁ…あっ、おーい、中嶋君」
呼び止められて、通りすがりの鉄仮面が足を止める。
「ケーブル放送が映らないんだが、君んとこのはどうだ?」
「企画課のテレビも駄目ですね。今日は市議会の中継もないし、一日くらいはNHKでも映しておけばいいと思いますが」
「それもそうだな。しかしずっと映らないのは困るよなぁ。
中嶋君、機械強いだろ?設定がおかしくなってないか、調べてみてくれないか」
「わかりました。…夕方には少し手が空きますので、そのころに」

こうして市役所内の全てのテレビは、「機械に強い」中嶋企画課長の手によって、
夕方4時には何事も無かったかのように復旧したのであった。

そして貴巳が帰宅し、時刻は既に深夜1時。
「え?故障で見られなかったの?そっか。私もね、見ようと思ってたんだけど、
お母さんと長電話してるうちに、ついつい忘れちゃったんだ。テレビに出ることなんて滅多にないのにねー」
大して残念そうでもなしに、あっけらかんとそう言っていた雪子も、既に寝室のベッドの中である。
隣に寝そべる雪子が熟睡しているのを確認し、貴巳はそっと寝室を抜け出し、真っ暗なリビングルームに向かった。
テレビの音量を、ぎりぎり聞き取れるくらいまで絞り、HDDレコーダの電源を入れる。
録画予約をしてあった番組を、しばらく早送りをしながら見ていると、それと思しきコーナーが始まった。

レポーターの若い男性が、オーバーアクションで喋りだす。
見慣れた白い顔が、画面に大写しになる。戸惑ったような表情が可愛らしい。
「はい…えっと、今日ですか?買い物です…え?えええ!採点ですか?」
聞きなれたはずの声だが、テレビのスピーカー越しに聞くと、何だか妙な感じだ。
渡されたフリップに、何やら一生懸命にマジックで書いている妻の表情は、
撮影用ライトのせいなのか、不思議なほどいつもと違って見える。
有体にいえば、いつもよりも一層、綺麗に見えるのである。
「さっ!若奥様の採点結果です!…おおっ、何と99点!これは高得点ですねぇ〜!あと1点で満点、ということですが、奥様、どうして99点なんですか?」
マイクを向けられた雪子は、困ったような、恥じらうような、蕩けるような微笑を浮かべた。
「えーと…すごくいい旦那様なんですけど、一つだけ、たまに私が嫌がることを、わざとするような時があるので、1点減点しました」
「奥様の嫌がることですか?それはどんなこと?」
「そうですね…無理やりホラー映画を見せて、怖がらせたりとか…あと、嫌がるのをわかってて、私のことをからかったりとか、です」
「ほうほう…いや〜、なんだか小学生男子のような旦那様ですねぇ!奥様のこと好きで好きでたまらないから、わざと苛めちゃう!みたいな感じですかね?いや、もう、ごちそうさまです!」
レポーターに大仰に頭を下げられて、慌てながら赤面している雪子の表情を眺めて、貴巳は思わず頭を抱えた。
(…これが全県に放送されたのか…)
今後、雪子には、こういうインタビューには絶対に応じないよう、きつく言っておかねばなるまい。
リモコンの『録画内容を削除』ボタンに指をかけながら、
そう決意を新たにした貴巳であった。
画面の中では、再び妻の顔が大写しになっている。
「さて、それでは旦那様に、日ごろ言えない一言をどうぞ!」
そう促された雪子は、ちょっと照れたような表情を浮かべながら、
真っ直ぐこちらを見つめて、口を開いた。
「…いつも、お仕事お疲れ様です。身体にだけは気をつけて、ずっと元気でいて下さい。
えっと…それから…あの……………
……………毎日、幸せです。ありがとう」

何やら雪子を茶化すレポーターの声を、上の空で聞きながら、
貴巳の指はいつの間にか、リモコンの『録画内容を保存』ボタンを押していた。

テレビの電源を落とし、真っ暗なリビングから二階の寝室へ向かう途中、
中嶋貴巳氏の口元が、への字に結ばれていたのは、
鉄壁の無表情を誇る鉄仮面にあるまじく、口の端が吊り上りそうになるのを
必死で抑えた結果であった。