1乙!
1乙
新スレ最初の投下が誰になるのか楽しみです
10 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/20(金) 17:30:39 ID:7MAdpuYf
そーですね!^^
1乙!!
1お疲れ
どもども。
一時間遅刻しちゃいましたね…ホントすいません。
もう少しで投下できます。
主人公は影沼。
彼の視点で物語は進みます。
今日のような暑い夏の夜長に……読んで頂けると嬉しいです。
― EpisodeU 影沼×乾
“Darkness” and Shadow ―
先程まで僕の横で観月さんが何やら喋っていたが、僕は聴いてはいなかった。
それから二人が何時の間にか去ったのも今気づいた。
僕は正面に座る乾さんを見た。
グラスを両手に持ち、その透明な液体を眺めている。
何時もの様な寡黙な表情だが、頬はほんのりと赤い。
―――僕は以前から乾さんの事が気になっていた。
乾さんの私服を見るのは初めてだった僕は、普段とは雰囲気の違う乾さんに心を奪われていた。
……好きとは…違うのだろうか。
こんな気持ちになるのは初めてだから……上手く表現できないんだ。
だから…乾さんの中の僕は……如何映っているのかが気になる。
僕はグラスに注がれている酒を飲みながら考えてみる。
とりあえず……ツッコんだほうがいいのか?
さっきからずっと黙って酒を飲んでる。
恐らく六杯目だ。
軽い酒とはいえ…未成年がそんなに飲んだらマズイ…って冷静にツッコンだほうがいいのか………?
いや…そうじゃない。
折角二人きりになったんだ。積極的にアプローチすることが僕の命題。
まだ僕は乾さんがどんなヒトでどんな男が好きかなんて全然知らない。
彼女も俺の事は知らない……はずだ。
さり気無く彼女から少しでも多くの情報を聞き出す…寧ろ一言でも多く彼女と会話をする事。
不快感を与えないように…。
自然体でいくんだ。
大丈夫。僕になら…できる。
――――大分飲んだみたいだから…少なからずも酔いが廻ってるはず。やはりまずはそっちの心配か……。
影沼は漸く切り出す。
「乾さ…」
「影沼くん。」
被せられた。出鼻をくじかれる。
「なっなんだい?乾さん」
動揺は顔や声には出さない。
さり気無く名前を語尾に付ける。
「二人きりになっちゃったね。」
――――二人きり…イイ響きだ。
もう此処には僕たち二人しかいない。
「そうだね…乾さん。お酒は強いの?ずっと飲んでるから…」
「お酒は初めてなんだけど……これ、すごくおいしいから…」
「僕も初めてだけど、おいしいね。甘党だからかな…でも飲みすぎはだめだよ」
「うん…おいしいから…つい……」
乾さんはそういいながらグラスをテーブルに置く。
……普段の喋り方より少しゆっくりで抑揚がない。
やはり酔いが廻っている証拠だろう。
今が………好機。
「乾さん……隣、いいかな」
………乾さんは小さく頷く。
僕は彼女の隣の席に座った。
―――――其れから僕らは様々な話題で会話をした。
自分でも不思議だった。
こんなにも自分から話を振る事なんて今までなかったからだ。
お互いの波長が合うからだろうか…。
どれだけの時間こうしてたんだろう。
あとどれだけの時間こうしていられるんだろう………。
「――――――――影沼くん…?」
乾さんが僕の方を見つめている。
瞬きせず…じっと小動物のように。
トロンとした垂れ目が僕を捉える。
黙ってしまった僕を心配しているのかな……?
僕は彼女の瞳を見返す。
―――其処に何かが映る。
乾さんの深い黒の瞳に映っているのは――――“僕”だ。
“僕”が嗤う。
『君には無理だよ』
――――――何かに触れる。
僕は“僕”に手を伸ばしたはずだったが………。
僕は乾さんの頬に触れていた。
……熱い。火傷してしまうくらいに。
さっきのは幻聴…か??………僕も相当酔っているのか。
だが…掌に感じる熱は…頬の感触は…偽物じゃない。
「…影沼くん………」
乾さんの言葉で掌に熱が宿る。
僕はそっと乾さんに顔を近づける。
彼女がビクッと後退りしたが…ゆっくりと瞳を閉じる。
僕は感情が暴走しないよう、もう一方の手で乾さんの手を握る。
細くて…小さくて…白くて温かい。
愛おしくなって更に強く握る。
自分と彼女とを紡ぐために。
僕は乾さんの唇に触れる。
初めてだから少しぎこちない。
でも…感触は解る。
……女性の唇はこんなにも小さくて柔らかいとは…。
息を止めていたのでほんの十秒の出来事だった。
僕は唇を離し、頬に触れている手で乾さんの頭を撫でた。
ペットを可愛がるように……よしよしと撫でる。
そうすると乾さんも子猫のように僕に寄り添う。
乾さんをそっと此方側へ抱き寄せ、僕の膝の上に座らせる。
……彼女が僕の胸に寄り掛かる。
きっと僕の心臓の鼓動は聴こえてる……。
もう一度僕は乾さんに口付けをした。
………今度は舌を入れてみる事に。
洋画の見様見真似しかできないが………。
「………ふぅあ…んぅっっ………ンぅう…」
乾さんの口から声が漏れる。
……喜んでるのか苦しいのか解らず、一端離れようとする。
「……ふぁめぇ………おねがい…つじゅけて………」
乾さんの唇が僕の唇に擦れながら誘惑する。
其の言葉に導かれ、僕は再び舌を入れる。
口の中は酒の為か、彼女の唾液の為か酷く甘かった。
乾さんの口の中を這いながら……漸くの邂逅。
ザラリとした触感。
触れると奥に引っ込んでしまう…可愛い。
捕まえるためにあとを追い―――そして捉える。
「!!!んアっ……ふうぅ……アンぁっ……」
嗚咽とともに互いの口端から垂れる唾液。
僕の物か乾さんの物か……恐らく混合液だろう。
その混合液は舌の上で絡まり――――。
――――そっと離れる。
互いの口から糸が引いている。
僕が指で取ってあげる。
乾さんの唇がプクっと動く。
………恥じらう彼女が愛おしい。
乾さんを抱き上げ、後ろのフロアにある大きなソファーに寝かせる。
此のフロアは小さい燭台が一つ備えてあるだけで明かりはほとんどない。
広間の明かりは途中で闇に呑まれ消え失せている……。
さて…此処からだ。
鼓動の高鳴りを必死で抑えながら服を脱がす。
乾さんは抵抗しない。
ブラジャーも取る…………………ホックが……上手くっ………。
焦ってはダメだ……漸く取れた。
乾さんの胸が露になる。
白くて形の整った小ぶりな乳房。
その二つの小山の谷でロザリオが妖しく輝く。
其の小山を指で擦る。
「…んンっ……あっ………んぅ…」
焦らすように優しく。
僕はもう片方の山の頭頂部に口付けをする。
ビクッと反応する。
反応が楽しくて何度も何度も――――。
「イやぁっ………アンっ!……んあぅ……」
ほんのり甘い。
口に含みチュウっと吸ってみる。
プックリと勃起する乳首を味わう。
「…ふうン!……はアゥ!んああァアっ!!」
漏れる声が甘美な色に染まっていく。
目の前の少女から洩れる懇願が成熟へと加速する。
「だめぇ……影沼く…ン!!イヤアァああ!!!」
乾さんの肢体が激しく脈打つ。
予想外に早い…乾さんは感じ易いみたいだ。
僕はスカートの中を探る………。
シルク地の上からソレに触れる。
クチュうっギュッっ……。
「そっソコっ!……ふぅあぅ!!」
………やはり。
スカートを捲る…酷く汚れている。
――――――――折角だからもっと汚そうか。
僕はスカートの中に頭を潜らす…。
驚いた――――濃厚な愛液の香りにだ。
局部にぴったりと貼り付いた下着の上から縦スジをなぞる。
秘部の輪郭がくっきりと下着に浮かぶ。
指に乾さんの……考えただけでも可笑しくなりそうだが…。
事実、僕の指に絡んでいる。
其処から次第に溢れ出す。
其れを求め…吸い上げる。
「はひっ!!!ひゃめっッ、、ふあぃ………」
秘部から垂れる愛液を掻き集める。
太腿に流れるモノも例外じゃない。
舌を這わせる。
すべすべした柔肌の上を泳ぐ。
……何かに触れる。
ソックスかな……?
手で探る。ソックスの縫い目のようだ。
彼女の……乾さんの匂いがする。
乾さんの純粋な体臭。
手で細い脹脛を擦る。
…………やばいな……急がないと…我慢できそうにない。
僕は再び暗闇へ。深い闇の中へ…。
―――――花に接吻を、栗に愛撫を。
「ふゅあぁ!!!っひっ、、ぁあ!あぅ……、…」
下着越しで膣に指を埋める。
プチュ…ジュプッ……ジュププッ…。
闇から響く卑猥な音。
乾さんの喘ぎ声に呼応しているようだ。
下着を脱がし、直に感部に触れる。
「ンああアァ!!くぅう……かげぬ…まく…ンっ…モウ…ダメェエ……」
……そろそろかな。
指に力を籠める……。
―――――掻き回す。
―――――――――クリトリスを吸う。咬む。
「ふゃわっダメっ…!!!!くうぅっ!!ンアアィぁああ!!」
……大量の飛沫を浴びる。
温かくて濃厚な香りのする愛液。
唇の周りに付いた液を舐めながら僕は言った。
「乾さん……苦しいよ」
そうなんだ。
乾さんがイキそうになってからずっと彼女は脚を閉じようとしていた。
「……はあはぁ…ごめん………キモチ…よかったから…」
初めてにしては…僕はよくやったほう……だよな?
スカートから頭を出す………。
数十分前とは明らかに表情の違う乾さんが其処にいた。
だらしなく涎を垂らし眼は虚ろだ。
それでも…ロザリオの輝きは褪せてはいない。
衰弱した乾さんを見て…僕はもう……限界だった。
―――――――僕の心にリンクするように……次第に辺りの明かりが消えていく。
ズボンを下ろし乾さんの肢体を手繰り寄せる。
張裂けそうな亀頭を肥大化した栗に擦り付ける。
………やばい。それだけで果ててしまいそうだ。
乾さんもイッた直後なので感度が向上しているようだ。
「くぅうっ………いい……ふあぁうあ………」
僕の亀頭を栗に擦り付け喘ぐ乾さん。
想像や推測じゃあこんな快感は得られない。
十分に愛液を塗りたくった亀頭を……本来在るべき場所へ。
………ゆっくり……ゲートをくぐる。
其れだけで気を抜いたら放出してしまいそうなくらい気持ちいい。
「んァぁあ!!そこおっ……いいのぉ、、……、…」
どうやら乾さんは入り口が性感帯の様だ。
指で犯した時も此処が一番良い反応だったな…。
カリまでの部分を出し入れする。
それでも締りがきつい。
「あっ…アンっ…ふあっ…ああぅ…」
膣壁・ゲート部分で激しく擦れ…快感を共有する。
何時もは表情を崩さない僕と乾さん……。
だが。恥部で触れ合えばこんなにも露になる。
―――――僕は腰を素人なりに振りながら乾さんに倒れこみ…抱きつく。
乾さんが愛しくて強く抱く。
彼女も僕の腰に手を回し必死でしがみ付く。
「か…げ…ぬまくんっ……ふふぇあ…ダメえぇ…」
……くっ……くそ…出そうだ…。
頭の中で今の状況とは関係のない事象を並べ無作為に繋げようとする。
少しでも乾さんの声を…匂いを…表情を浮かべたら爆発する…。
………。
………………。
………よし……いいぞ………なんとかなるかな…………………………………。
「かげぬ…、、…く……!!!ンあぁ!!…ワタ…シ……もう…ダメだよ…オカシク…、……なっちゃうよ…」
―――――こっちが可笑しくなるって……そんな事言ったら。
僕は意を決して奥まで竿を差し込む……。
――――ブプッ…じュポ……ぬププ…。
膣壁の圧が尋常じゃなく愛液の漏れる音が動くたびに響く。
――――脳に奔る洗脳の電光。
僕までもが肢体に力が入らず、肘をソファーに宛がって必死で我慢する。
「はひぁ!!奥で…!擦れてるぅ……アンっ……ンあァアっ!!」
――――魂まで放出したような感覚だった。
「んああぁ…、……ひゃめぇっ!!!!やぁあァああア!!」
――――――――――蝋燭が溶けきり、暗闇が空間を覆う。
急激に僕を襲う睡魔。
重たすぎる瞼を押し返しつつ乾さんを見る。
………彼女は眠りに就いている。
――――そして……僕も。
シャッターが閉じ、漆黒が視界を埋める。
愛しき女性を抱いて。
幸福のベールに包まれて。
―――眼が醒める。
乾さんから出る甘い香り、柔らかな肌がある。
暗闇に眼を慣らすには数十秒必要。
………大分眼が慣れてきた。
時計に眼をやる。
脆弱に光る蛍光の針。
………もう直ぐ日付が変わる。
「…ンん…んっ……」
乾さんが起きたようだ。
「いぬ…」
「影沼…くん……汚れちゃったね」
何時もの彼女だ。
少しか細いが透き通る声。
不思議な魔力を持っている。
其の少女の魔法に…僕は魅了されている。
―――――勿論、本人に『少女』なんて口が裂けても言えない。
僕達は服を着て広間を後にする。
……先程までの賑やかな親睦会が嘘の様に辺りは静まっている。
みんなは何処に言ったんだろう。
……まさか、先程までの行為を視られてはいないだろうか。
眠っていたんだ。二時間程。
有り得る…よな。
考えれば考えるほど気が滅入る。
乾さんの方に眼をやる。
彼女は僕にトコトコとついて来ている。
…俯いている。
僕と同じコトを考えているのだろうか………それとも…。
僕は確かめたくなった。
歩みを止め、乾さんの方を向く。
彼女はピタッと立ち止まり、僕の方を向く。
視線は……交差しなかった。
「乾さん……さっきは…ごめん…」
「…………………」
沈黙。
さっきまでの空気が凍りつく。
謝るしかない。
「あんなに乾さんに注意してたのに……自分の方が酔ってたなんて…情けないよ」
「私も酔ってたから…呑みすぎたし。……影沼くん」
乾さんが顔を上げて僕の瞳を見返す。
彼女の瞳に……“僕”が映る。
「さっきのは……ただ酔ってたからしたの?それとも…そういうことしたくて……したの…?」
「そっそんなこと!………」
強い口調で言い返すが………次の言葉が…出てこない。
「僕は………キミのことが好きだ。やっと解ったんだ」
そう言いたいが…彼女に指摘されたことが本当にそうなんじゃないか?と考えてしまう。
多分―――――さっきの情事に後ろめたさを感じたからだと思う。
口籠っていたら乾さんは先に歩き出した。
………僕は黙ってついて行くしか無かった。情けなかった。
沈黙を引きずったまま僕達はシャワールームに入った。
実はココに辿り着くまで色々と迷っていたが……其の間も沈黙は続いていた。
学校に備え付けられていたようにシャワールームは男女別にあった。
乾さんが其の中へ消えていく後ろ姿を僕は観ていた。
……早くシャワーが浴びたくなった。
少しでも早く……僕の中に巣食うこの感情を…。
僕の体躯を纏う悪しきモノを洗い流したかった。
彼女も……。
乾さんも…そう思いながら浴びるのだろうか。
僕と触れ合った肢体。
其の感触が…匂いが消えるまで。
其の刻の記憶が溶けて逝くまで……。
…………。酷い被害妄想だな。
僕もシャワールームに入った。
十分後。
僕はシャワールームから出る。
時間はあまりかけなかった。
彼女より先に出て……其処までの計算での事ではない…。
でも…そう思うと僕は乾さんが出てくるのを待つのが怖くて……でも期待をしていた。
最後のチャンスだと思ったからだ。
彼女が出てくるまでに弁明を必死で頭に浮かべる。
単語を装飾し言葉に…言葉を繋げて文章に…。
多くの文章を束にし、紡いで…今の自分ソノモノを一つの簡潔な擬人論文を生み出す。
そして其れを頭の中で何度も復唱する。
でも……そんな物は役に立たないんだ。
其れでも……そうするしかなかった。
気休めで充分だった。
乾さんが出てきた。
驚いた……何時もとは全く異なった彼女が其処にいた。
シャワー上がりの彼女の肌が火照っている。
そして普段結っている髪を下ろし、濡れた髪をタオルで乾かしている。
未だ高校一年生だとは思えないほどの魅力的な姿。
僕と同じ高さの目線であれば……大人の女性に見得ただろうか。
僕は乾さんを外に誘った。
一応シャワー上がりで髪と身体を乾かそうという事を彼女に言った。
だが本音は…外の空気を吸いたかった。
そしてこの館は…何処かヒトを狂わす魔法が施されている様に感じたから。
大きな庭園に出る。
館から漏れる照明が僕らを淡く照らした。
様々な花が綺麗に装飾された場所だ。
高台の縁の傍だから、崖下が一望できる。
避暑地だから都会のようなネオンは無い。
……由緒有る伝統家屋、長い年月を経て育った自然のミドリ。
津川の言っていた浜辺も此処からなら良く見える。
其の景色を見ただけで身震いするほどだった。
そして……何処か寂しい。
僕達はベンチに座る。
「……キモチイイね…」
乾さんが言った。
清涼な風が僕と乾さんの間を駆け抜ける。
……乾さんの髪がなびく。
シャンプーの香りがする。
「そうだね…今日は涼しいな。昼間はあんなに暑かったのに」
「うん……少し寒い……」
乾さんは薄着だった。
身を縮ませる姿が印象的だった。
僕は黙って乾さんに上着をかけてあげる。
「……ありがとう」
自然と距離が近くなる。
さっきのように沈黙が続かぬよう、僕は勇気を振り絞る。
「さっきの事なんだけど……」
「…………」
「何度も…こんな事言ってしつこいかも知れないけど…如何しても乾さんには謝りたいんだ」
「………影沼くん」
僕は乾さんを見る。
彼女も僕を見返す。
「……わたし…うれしかった。……影沼くんっていつも喋らなくて…どんなヒトか解らなかった。
でも…わたしといっぱいお話してくれたでしょ?……楽しくて、うれしかった」
………僕が馬鹿だった。
僕もそう感じていたんだ。
好きとか嫌いとかじゃなくて……。
ほんのハジマリだったんだ。
僕達の関係。
言葉を交わし…同じ時間・空間を共有する。
互いの内面を知り、其れによってもっと相手に惹かれる。
其れこそが総てだったんだ。
―――――どうやら自己批判だけが先行していたようだ。
そして……乾さんの其の言葉を待っていたんだ。
「僕も…乾さんとあんな風に面と向かって会話をしたのは初めてだったけど……すごく楽しかった。
でも……今日は何処か雰囲気が何時もと違った」
「えっ……、、、そうかな……」
「なんか……大人しかった。普段も落ち着いた印象だったけど…」
「………、、、たぶん……影沼くんのせい」
「………??」
「たのしかったのは……うれしかったのは………きみのせい」
声色が急に変わった。
「影沼くんのせいで……上手く…しゃべれなかった」
乾さんが顔を赤くして話す。
凄く可愛かった。
其の姿を見れば、恋愛経験の無い僕にでも解る。
彼女は………。
「二人きりになったとき……すごくドキドキしてた………」
―――――段々と其れは確信に変わる。
「お酒で誤魔化してたら……色々喋って…」
―――――段々と彼女の口調が変わる。
「……それから……、、、、……」
「あの時の乾さん、可愛かった」
「っっ〜〜〜!!!!!!………」
乾さんが照れて動揺する姿…。
初めて乾さんの言葉に彼女の感情が色づいたように思う。
急にこみ上げてくる彼女への愛しさ。
耐え兼ねず僕は乾さんを抱く。
「!!……かげぬま……くん…」
上着を羽織っていても彼女の体温は解った。
………冷たかった。
顔は赤く染まっているのに…身体はひんやり冷たい。
僕はもっと強く乾さんを抱いた。
少しでも…僕の体温を乾さんに分け与えたかった。
「………んンっ…、、…いたいよ……」
「!!ゴメンっ……」
乾さんの言葉に反応して咄嗟に離れる。
――――………本当に痛そうだったから。
でも其れは違った。
乾さんは直ぐさま僕に抱きつく。
………???
当然のように僕は愕く。
「さっき……痛いって……」
「………そばにいたい」
「………………えっ……」
「……あなたの……そばに……居させて………」
彼女の瞳にはもう……“僕”はいない。
黒円から溢れる涙を優しく拭う。
「大丈夫。僕は此処にいるから……ずっと………ずっと―――」
頭上を見上げる。
其処に在るのは無限の煌めく星斗。
激しく燃え、僕らを照らす三つの一等星。
そして――――堕ちてくる虚空。
僕らは寄り添って見ていたんだ――――。
瞬き飛び交う星団の舞踊。
………其の神々しく耀く様を。
互いに重ねた手の温もりを添えて………。
以上でエピソード2はおしまいです。
既に完成していたものをかなり書き直しました。
+投下しつつテキスト大分いじってましたので時間がかかってしまいました。
作ってる当方としては今回の試みはかなりキツイです。
でも最後までやりますので…温かい目で見てやってください。
感想戴けると本当に嬉しいです。
些細な事でいいです。
次回も一週間後に。ではでは。
リアルタイム影沼キタァ──────(゚∀゚)──────!!
GGGGGGGGGGGGGGGGJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ!!!!!!
乙乙乙乙乙!
九澄&愛花をここまで焦らすとは…
来週が楽しみだぜ…
GJ!!!
甘ぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!!
GJ!!!!!!!!!
最高だ!
まじ乙!!!
そして九澄と愛花に期待!!!
36 :
ZEH:2007/07/22(日) 16:34:12 ID:kPa7SbO6
>>1 乙。有難うございます。
>>31 GJ!さすがです……もうなんか自分の作品がちっぽけに…
まぁ…忘れられない限り頑張ります。
今週は忙しかったんで11時までに投下がなかったら来週です。すんません。
一応予定として
三国ENDタイトル変更『Triangular tree』 季節はずれに冬の続きです。
乾END『タイトル未定』大体出来上がってきてます。季節は夏にする予定。
愛花END2『Indefinitely with you(仮)』観月の補完で。九澄メイン。
GJ!!
影沼×乾はガチでイイな!!!しかしパロ板で人気が高くてワロスwww
うん 影沼×みっちょんはGJ
でもみっちょんに相手がいると考えると悲しくなる俺がいる...
スレ違いスマソ
39 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:53:14 ID:kPa7SbO6
―――― その記憶は永遠に……
――― 直ぐに変わるモノだってある……永遠に変わらないモノもある……
――――― 私たちの関係に永遠は………
外は既に真っ暗。雪ははらリはらりと降り積もり、ところどころ灯りが燈されている。
雪がその灯りを反射し、夜の街を明るく照らす。その光景が幻想的だった。
「映画おもしろかったね愛花」
「見てなかったくせに……」
九澄は小声で呟くが私はそれを見逃さない。
すかさずボディに一発……しないで腕に抱きついてみた。
顔は灯りに照らされても分かるくらい赤だった。でも決して腕を振り解こうとはしない。
愛花はきっと剥れているだろう。そう思った。
でも……その顔は………
―――― 空には月明かりが照らし出され、街の灯りが少女の顔を映し出す。
――― その顔は何を映すでもなく"無"だった……
―――― その表情からは何も読み取れない。 "可"でもなく"否"でもなく……
――――― それは目の前の行為を怒ってはいない。もちろん優しい眼で見てもいない。
――― まるで人形のようなその顔は灯りのせいでより幻想的。
―――― そして不覚にも見とれてしまうほど……魅力的だった。
「…愛花?」
「……ぁ…ごめん…聞いてなかった…なんだっけ?」
その時の愛花は妙に上の空だったけど暫くしていつもの明るい愛花に戻った。
考えすぎ……か?
40 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:54:04 ID:kPa7SbO6
心配させちゃったかな……ごめんね久美。
でも……やっぱり私は……『…』………だと思う。
「なぁ九澄、愛花」
「何だ?」
後悔しない?― ううん…絶対する。
じゃあなんで?― このままだといけないから。
それは…あなたが望んでいること?― ………
それはあなたがしないといけないこと?― ……うん。だから……
「はぁ!?でも……」
「良いだろ別に。なぁ愛花」
「……へ?何が?」
また上の空だった。こんなんじゃいけない。分かってるのに。
でも九澄君慌ててる。何の話だろう?
「なんかもう遅いしさぁ。今日家に誰もいないから泊まりに来なって話だよ」
「あぁ…何だ。私はいいよ」
久しぶりの久美の家だし。何よりいろいろ話したいことがある。
九澄君と久美の会話をまた聞き流し、九澄君は顔を傾けている。心成しか赤い…かも。
「んじゃ決まったし行こっか二人とも」
…………………聞き間違い…かな?そうだよね。
「えと……久美?今なんて?」
「だ・か・ら。二人とも行こうって!」
『二人とも』?……二人とも……ふたりとも……フタリトモ……二人?私と…え?
それって…?え?でも…だって…え?え?
「『一つの』ベッドに3人寝る?」
「え〜〜〜〜〜〜!!?!??」
私の声は周囲がヒクくらい反響して一面に広がった……
41 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:54:59 ID:kPa7SbO6
とんでもない事になっちまった……まさか三国の家に泊まる事になるなんて…
いや!それは別に嬉しいからいいんだけど!……ひ・柊と三人って……
まさか寝床まで一緒ってことはないよな…?うん!だよな!さすがにそこまで……
「ほら、入んなよ。二人とも何そこで突っ立ってんの?」
いや……だれだってこうなるって……
中は綺麗だった。なかなか広く、片付いていてぬいぐるみとか飾ってある。
……『ぬいぐるみ』?不穏なモノがあったような……
「それみっちょんのだから」
「な!?何で分かったんだ!?」
「誰だってぬいぐるみ凝視してたらそう思うって…」
三国は支度があるからといって俺と柊を部屋に入れてどこかへ行ってしまった。
……話し辛い…場所が違うだけでこんなにも雰囲気が変わるものだろうか?
いや。雰囲気が違うのは私服と言うのもあるかもしれない。新鮮で魅力的だった。
って!?俺は何を!?柊は友達だぞ?俺は三国と付き合ってて!だから……
「九澄君!?ど・どうしたの?」
「何でもない!何でもないんだ!」
我ながら…馬鹿だな……柊のことまだ引っぱってんのかよ…!俺はもう…!
「九澄〜外で冷えただろ?風呂沸かしたから入んなよ〜」
ん…そうだな。三国の家っていう抵抗はあるけど…汚いままってのも悪いし…
何よりこの雰囲気に耐えられない…本当情けねぇな…
とりあえず行くか……三国に場所を聞いて脱衣所へつく。それと同時に柊の悲鳴が聞こえたような…?
42 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:56:03 ID:kPa7SbO6
「ほら!愛花行こ!」
「い・行くってそっちは……!」
そこは今九澄君がいるお風呂場……!
「元気になったな愛花〜ちょうど九澄もいるんだ行かないと損だって」
久美言ってる事がむちゃくちゃ!!?損てなに!?九澄君がいるのに入るって…ムグ!!?
口を押さえられて脱衣所に入る。久美はその場で服を脱いで……てぇ!?
「な…ング!?」
「静かにしろって愛花。窓から逃げられたらアイツ風ひくぞ?」
「で・でも久美…それって…ほらやっぱりいけないんじゃ……」
久美は何も言わないでバスタオルを巻いている。
ほ・本当に?入んのって……キ…ふぅぐ!?
「静かにしなって……ほら…愛花も入るよ…」
「フゥ!?ふぅうウィ!?ふぃや!?プは!…ぬ・脱がさないで……」
「九澄喜ぶかもよ…?」
ピクッと反応して考える。
そうなの?そうかな……そうかも……?もし…拒絶されても…やっぱり…
私は自分から服に手をかける。久美だって分かってるけど恥ずかしくてタオルを巻きながら脱ぐ。
「うぅぅ〜〜……恥ずかしいぃ……」
「大丈夫。綺麗だって。私もちょっと惜しいことしたかなって思ってるもん」
久美は息を整えてお風呂場の戸を開ける。九澄君の悲鳴はお風呂場に木霊した……
「どうだ九澄。感想をどうぞ?」
「ぅ…あぁあう…こ…こここれって?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
九澄は動揺している。愛花は何も言わず恥かしがって俯いている。そうだな…分かりやすく説明すると、
「九澄を真ん中にして私と愛花がバスタオル(着用中)を泡立たせてサンドイッチにしてる…でわかるかな?」
九澄と愛花は顔を赤くしてじっとその行為の役回りを実行している。
愛花は何も言わずただバスタオルを九澄に押し付けて体を動かしている。
心成しか愛花の声に変化がおとずれている様だ。でもまだ何も言わないどこう。
「九澄…感想は?気持ちいか…?」
「………気持ち…いい」
よく出来ました。ご褒美に愛花に合図して同時に強く抱きしめる。
愛花はもう限界といわんばかりに体中真っ赤になって……声を漏らす。
「んはぁぅ……やだ……声…でちゃうよぉ……」
相変わらず破壊力抜群の発言に九澄は元気になったようだ。想ったよりデカイな…
私は少し意地悪に九澄の耳元で囁く。
「九澄ぃ……あんたは私の彼氏だろう…?私を差し置いて…こんなにしてさぁ!」
「…グ!み…くに…ちょ…ヤメ…」
私は九澄のそれをタオル越しにつかんで擦る。愛花はそんな光景を半分涙目で見ている。
時々顔をそらしてはまた視線を戻す。可愛いなぁ愛花は。
愛花にもっと強く抱きつけと合図して、愛花はそれに従順に応える。
「ん……ん……はぁぅ……くみぃ…こ…擦れて…」
「なら脱ぐ?」
愛花はそれを聞くと顔を伏せてまた体を擦りあわせる。
私は私で九澄のモノを擦る。九澄は顔を上に上げてその行為に耐える。
「おい…三国…そろそろ…やばいんだけど?」
「ん〜?じゃあ出せば?」
私は愛花に最初に反応した事をネタにして九澄をいじめる。
九澄は我慢できないと言わんばかりの顔をして自分の液体を出す。九澄のタオルが落ちて目の前には裸体の九澄。
愛花は顔をそらすが私がそれを許さない。私は愛花に耳打ちする。
43 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:56:59 ID:kPa7SbO6
「ほら愛花〜愛花が抱きつくから九澄が気持ちよくなって出しちゃったじゃないか。」
「え…え?」
「愛花には責任として罰ゲームだな」
とりあえず横になれといって愛花はバスタオルをしっかり持って横になる。
上と下は完全にギュッと握り締めているがその姿は男であれば誰もが欲情するであろう程の完璧なものだった。
私は少し調子にのって愛花の腕を解き大事な所にある物をもって手を伸ばす。
持ってるものはシャワー。少し離して蛇口を捻ると勢いよくお湯が吹き出る。
「ッッッッ!!!ひゃ…クあぁぁぁぁああ!!!!」
バスタオル越しにはしている。だけど経験不足の愛花には十分すぎるほどの苦痛と快楽を与えた。
「アァァ…あ!く!みぃい!だめ!だめぇぇぇええええ!!!!」
少しずつ当てる場所を動かして反応を楽しむ。愛花は悶え体が避けようとするが私が押さえつけて許さない。
直後愛花が足を閉じ当てられなくした。愛花は息を整えようとしている。
唾液の零れ落ちる呆けた口をパクパク動く。体は半分痙攣していた。でも良い考えが思いついてしまった。
「ッ!!??いやぁぁぁぁアアアア!!」
私は『直接』シャワーを当ててみた。これなら避けられない。愛花は息も出来ないほど声をあげ悶え叫ぶ。
愛花の痙攣は激しくなり腰が浮く。瞬間愛花は壊れてしまったように崩れた。
愛花のバスタオルにしみが出来たような気がした。もしかして?
「愛花。イッちゃいながらお漏らし?エロいな〜」
「ひぃ…が…ゥ……ヒッ…ひが…ゥう……」
やりすぎた。汚れの知らない愛花が悶える姿に欲情して私は愛花を傷つけてしまった。
私は愛花の耳元で囁く。これが最後だ。「九澄を一緒に気持ちよくしてやろう」
愛花は涙目になりながら傾く。九澄はさっきの愛花を見てもう一度元気になっていた。
私と愛花は九澄に近づいて九澄のモノに口付けをする。
時折舌を這わせ側面から先端へ口を運ぶ。愛花はギュッと眼を閉じ先端を口にふくむ。
九澄は必死で我慢をしている顔で応えるが、眼を閉じる愛花にはその心情がつかめていない。
私も負けないように九澄のモノを舐っていく。愛花と口が近づきキスが出来る距離になり、私は愛花と舌を絡める。
愛花は驚くがそれに応え、舌を絡める。それと同時に九澄の先端を舐った瞬間。
「キャ……」「わ…」
白く濁った液が吹き出て私たちの顔を汚す。愛花は指で救い舐め上げる。
私は愛花の顔についた液を舐めとり、愛花も私の顔の液を舐めとる。
「す…まん……がまん…出来なかった……」
「ふふ…やっと素直になってきたね二人とも。んじゃ…本番初めよっか」
44 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:57:53 ID:kPa7SbO6
そういった瞬間私は愛花と自分のバスタオルを取る。
愛花はもう素直にこの行為に応じた。じゃあまずは……
「最初は久美からだよ…?彼女なんだから……」
愛花がそういった。私も九澄も驚いたけど九澄は私を後ろから抱きしめる。
「ちょ…九澄…」
「柊……その…初めてだから…苦しくないように手伝ってくれ」
なんてことを九澄は言いやがる。私は恥かしくなって顔が多分真っ赤だ。
愛花は私の秘所に舌を這わし九澄は私の膨らみを愛でる。
私は九澄と愛花に弄られているという現実に興奮し、余計に感度が上がった。
「あ!ヒャぁ……あう…ひあぁあ!」
愛花が私の敏感な蕾を口にふくむ。九澄は私の先端を摘む。
二つの刺激にいっそう高い声が出て私は悶える。
「ク…あぁあ…あ・んぁああ!!!」
愛花の舌の動きは繊細だった。ただ吸うだけではなく舌で奥の蜜も舐めとる。
そして中をかき回し、恥丘に指を這わせた。
暫くして波が押し寄せてきそうな瞬間九澄が「止めてくれ」といってきた。
九澄は私の前に立ってソレを突き立てる。遠慮がちに私は九澄を受け入れた。
「痛くしないでくれよ…?」
ズチュ!グ!グ!
「ぐ…ク…あっぁああアア………」
九澄が一気に私を貫く。痛い。でもこれは我慢しないといけない。
九澄の動きは入った直後は動かず、暫くして動かす。
それにあわせ少しずつ快感に目覚める私がいた。私はさっきイケなかった分の快感が大きく出た。
「く…ひゃあ!あ…ぁあ!」
思ったより早い。この瞬間は出来るだけ長くと思っていたのに……
自分の体は自由を利かなかった。九澄のモノが脈を打った瞬間。
「あ!ヒィ!あぁっぁあああああ!!!!!」
九澄は私の膣へ全てを注ぎ込んだ。
私は崩れこんで愛花を見た。愛花もなぜか倒れこんでいる。ふと愛花の手は自分の大切な場所に伸びていた…
45 :
ZEH:2007/07/22(日) 21:58:51 ID:kPa7SbO6
「のぼせちゃったね」
私たちは私の部屋で冷たいジュースを飲んでいる。
「愛花。その…愛花は…いいのか?」
「うん。だって九澄君の彼女さんは久美だもん」
そう…私の考えは浅はかだった。愛花はまだ九澄を思っている。
だから私は二人で恋人になろうと考えていた。でも実際は駄目だった。
愛花が優しすぎたから……
「ジュース切れちゃったから買いにいってくる」
私はそういって逃げるように立ち去った……
「九澄君。行かなくていいの?」
「後で行く。それより…柊…ごめん」
九澄君が謝ることはない。実際九澄君は私に何もしていない。
「俺、三国を選んだのに…柊を汚してしまうところだった…!」
私は九澄君をギュッと抱き寄せる。最後だから…許してね。
「九澄君は優しいから…心配しなくていいよ…誰も…怒ってない…」
九澄君は私の腕の中で泣いている。こんな素直な九澄君が私は好きだった。
この時間は短かった。でも私の中でとても長く感じた時間。
私の最後の、好きでいさせてくれた男の子との最後の時間。
「九澄君…私…九澄君のことが好きだった…私のこと嫌いにならないでね…でも……」
それは最初で最後の大好きな人へ打明ける気持ち。
―――――――― 好きにならないで……
「三国。迎えに来たぞ」
「ん。ありがと……九澄……愛花」
本当はついてこない方がよかったのかもしれない。でも最後の時間に私は耐えられなかった。
この時間の終わりに私はただ泣くことしかできないことを選べなかった。
「大きな木だね。これって花が咲くんだよな」
「でも今は咲かない…咲いたら一緒に来よう。3人で」
―――――― それは友達としての誘い。 関係は永遠。思いは永遠ではない……
―――― 咲いた 花 咲かなかった 花
(叶った)(恋) (叶わなかった)(恋)
――――― 実った 実は 色鮮やかに……
(願った) (想い)
―――― 今日も雪が降っていた……
――――――― それは…今夜限りの…3人の叶った願い
――――――― 最初で最後の願った想い………
あとがき
なんか書いてて愛花の出番ばっか多くなってしまったことに反省。
愛花はいつか書くEND2で幸せにするんで今回はすいません。
謝ってばっかですが、
乾はさわやかに、明るくを目指すんで。暗い話しかけないくせに暗い話書いてすいませんでした…
46 :
ZEH:2007/07/22(日) 22:01:19 ID:kPa7SbO6
行…間違えた…
GJ!!!
愛花切ねーー!
END2に期待
乙でした!!!!!!
GJ!最高っすよ!
いい… いいんだが……愛花はやっぱり九澄をくっついた方が個人的には大好きなんだな…
女九澄に萌える今日この頃orz
>>51 おお感涙、同志が居た……っ!
安心しろ、おまいは独りではないぞっ
>>51 何で乳が胸筋なんだよ! 柔らかくないんだよ!orz
伊勢か誰かが好みって言ってたし、面はいいんだろうな
>>46 GJ!!
引き出しの少ない自分とは違ってやっぱりすごいです。
みっちょん楽しみにしてます!
ココで質問なんですが、当方の作品のエロパートはどうですか?
自分の作品には全く興奮なんてしないので……コレばかりは聞いてみたいんです。
自分の作品は台詞よりも動作・心象描写が多いので、楽しんでもらってるか不安です。
>>56 いやいや全然いけますよ!
伊勢×出雲や三国×桜庭とかはまじよかった!
58 :
横槍の将軍:2007/07/26(木) 10:32:11 ID:fJSAuMHY
空気を読まず投稿也……今度こそ我が『横槍爆弾』が最も輝く時!
「大賀ー、見て見てー♪」
「なんだよルーシー……ってお前また!?」
相変わらず薬品部部室に潜んでいる九澄の前に、やけにアダルトな色気を匂わせたルーシーが現れた。
その妖精のごとく小さな体で、奇妙な色彩の液体のたまった霧吹きを抱えている。
「それ……何だったか、確かレで始まる何かの薬? またお前無断で作ってきたな!?」
「えへへ……この間のは『レディーゴー』って魔法薬だよ。そしてこれはその強化版……えいっ」
九澄の目の前で霧吹きのトリガーを引くルーシー。
「ばっ!? や、やめっ!?」
避けるのも防ぐのもままならず、九澄はその液体を全身に浴びる。
すると、液体が全身に染み渡る感触と共に、体内を虫がうごめくような気味の悪い感触が全身を走り抜ける。
(へっ……?)
その不思議な感覚が消えると……。
そこには九澄の面影を残した少女が一人。
「わぁーっ! 成功したよ大賀、女の子みたいー!」
「またあのエセ女体化かよ! 冗談じゃねえ今日は速攻で水……」
前回のプール騒動の件に懲りていた女体化九澄は、すぐに水を被って元に戻ろうとするが……
「……え?」
ピク、と蛇口に伸びていた手が止まる。
その原因は、見かけ倒しで胸筋であったはずの胸が、体の動きに合わせてぷるんと揺れたように見えたからだ。
「……」
ゴク、と生唾を飲むと、九澄はおそるおそる自分のシャツの中に手を入れ、片方の乳に触れてみる。
ミルク色に近い真新しい色の乳房は、手が触れる強さに合わせてふにゃっと形を変え……
「な、なんじゃこりゃあああああああああっ!?」
今の自分が隠れている身であることも忘れて絶叫する。
大慌てする九澄をルーシーは嬉々とした様子で笑って眺めていた。
「アハハ、驚いたでしょ? 今のはね、男でも完全に女の体になっちゃう『レディーファイト』っていう魔法薬。ちなみに言い忘れてたけどこれは水掛けても戻らないよ?」
「そ、そんな……嘘だろ!?」
蛇口を捻って出た水を体に浴びてみるが、Tシャツが濡れただけでその比較的豊満と言える胸は健在だった。
そして、服に染み渡る水が下半身に到達した感触で、九澄は更に恐ろしい事態に気付いた。
「……し、下が…………!」
『レディーゴー』の時は極小化であり、まだ感覚があったはずの男の股間。
その場所を伝った水が、有り得ない感触を九澄の触覚に伝えてきたのだ。
今度は比較的焦った調子で、九澄はズボンの中に手を突っ込んで確かめる。
そこに確かにある裂け目の存在は……
「こ、これってまさか、俺の体に俗に言う……おまん……」
そこまで考えて九澄の頭は急沸騰。魂がちょっとの間外の散歩に出て行った。
ルーシーの言ったことは嘘じゃなかった。
俺……マジで、マジで女の子になっちゃってんのオ!?
「おいルーシー! お前これ治し方知ってるんだろうなあ!?」
血相を変えて詰め寄る九澄だが、ルーシーは笑っているだけだ。
「大丈夫だよー、これ、24時間経ったら自動的に元に戻るんだって」
元に戻る。
九澄はホッと息をついた。このまま体が治らなかったら男だった『九澄大賀』は死んでしまうところだった。
……ん?
24……時間?
…………24時間!?
「それじゃ俺、今から丸一日どう足掻いても女で居なきゃなんねーのかよ!」
「んー、まあそういうことになるよね。自然に治るからってことで元に戻す薬品は作られてないみたいだし……」
「だっはーマジかよーっ!」
こうして、精神は九澄大賀のまま、ひょんなことで女になって過ごすハメになった九澄は……
59 :
横槍の将軍:2007/07/26(木) 10:32:57 ID:fJSAuMHY
この先はご想像にお任せしよう……クク。
…クックック。先程の黒歴史に残る駄文を描いたのは私だが、これは後書きではない。挨拶だ。
私の名は『横槍の将軍』也!
説明しよう! この私『横槍の将軍』とは、様々な盛り上がったエロパロスレに特攻し、ロクに空気を読まずネタ被ってるかも考えず作った駄文を投下しては逃走するヘッポコ将軍!
ちなみに今回の標的である『エム×ゼロ』は週刊少年ジャンプ34号の情報とウィキペのみを参考に書いた! 厨房に水をさされたと憤慨するなら本望だ何故ならそれこそ私の『横槍爆弾』の効いた証!
おおっと、カエレ&イタイコールに襲われる前に一刻も早く撤退しなくては! ではエロパロを愛する諸君よ、さらば私に二度と会わぬことを祈れ! フハーッハッハッハッハッ!!
・・・・・。
どう反応しようか・・・ちょっとGJと思ってしまった自分
なんとも言えんな…
ノーコメント
乙
夏ですね
>>56 このスレこの前見つけて一気に読みました。
すごかったです。これからもお願いしますね
夏厨なのに・・・GJと思わせるなんて・・・・・・悔しいっ!(ビクンビクン
お次は晴れてくっついた津川×委員長の初体験話だね
過激で
元気な
ぬれぬれ
〇〇〇
夏厨でも乳が柔らかい女体化はいいな
完全女体の九澄でエロパロやるなら相手は誰がいいと思う?
前スレ無事にdat落ち
>>57 ありがとうございます。
その二つのシナリオはかなりエロ特化させたものなので、喜んでもらえてうれしいです!
>>66 ありがとうございます。
今続いてるシリーズはちゃんと最後まで描きますので、ほんのちょっとだけ期待してて下さい。
もっと多くの人の感想が聞きたかったんですが…この流れでは無理でしたね。
さて…突っ込まれる前に謝っておく事があります。
現在続いている企画モノに誤りが多々あります。
大賀が何故か偽愛花の記憶を持っている事、そして『虐殺』のスペルが違うことです。
チェックが甘かったです。申し訳ありません。
多少のミスは出てしまうものでしょう。僕もあなたの書くSSをいつも楽しみにさせてもらってます。これからもよろしくお願いしますね
74 :
ZEH:2007/07/27(金) 20:39:43 ID:PEqZFlFD
え〜…GJや感想をくれた方々とてもありがとうございます。精進します。
>>72 多少と言うものでない俺の凡ミスに比べれば全然いいです。
俺もチェックいれてはいるんだがなぁ…
乾は…少々普通の話になりそうなんでそこのとこ先にすいません。
>>72 第一試験終了直後の伊勢とか第二試験の愛花と移動中の九澄を見ると微妙に記憶が残ってるから無問題!
これからも頑張って下さい!
>>74 凡ミスなんか
誰にでもあるさ
人間だもの…
か の を
こんばんは。
いきなりですがエピソード3の予告です。
今回の主人公は九澄。
相手は……もちろんあの子。
自身の持ち味である、難しい漢字や表現を一切排除して、
感情移入しやすく、楽しく読みやすいシナリオを心がけました。
今しばらくのお待ちを。度々申し訳ないです。
77 :
ZEH:2007/07/28(土) 21:39:33 ID:mIFHsFD4
待ってます!んじゃ俺は明日までに頑張ろう。
二人の職人さんに期待しまくりんぐ!
お二人とも頑張ってくださいね
― EpisodeV 大賀×愛花
相初相愛 ―
目の前に柊がいる。
いつも……見てる顔なんだけどな……。
そのときの表情は……今までで一番可愛かった。
入学試験の時のような感情の高鳴りがあった。
最初のころは嫌われてて絶望してたっけな。
それが………今では普通に顔を会わして会話する関係になった。
当たり前になってきたけど……今でも変わらない。
柊の声、仕草、そして笑顔。
それだけで俺は癒される。
柊にとっては……何気ないコトでも、俺にとっては幸せな事なんだ。
―――――俺は想いをめぐらせていた。
「―――――…九澄………くん……?」
柊の呼びかけで俺はもう一度柊を見つめる。
………やっぱカワイイ。
だけどこの状況……マズイよなぁ。
これじゃあ完全にヤツラの思うつぼだ。
津川と伊勢のヤツ、余計な事を……!!!!
「ひっ……柊!?」
柊が俺のTシャツをくいっくいっと引っ張る。
ぼーっとしてたから、気にしてくれて…なのか?
一つ一つの仕草がカワイイ。
「ごめん柊。ぼーっとしてた。……酔いは醒めたか?」
「……うん。だいじょうぶ…だよ……」
あんまり大丈夫そうに見えない。
でもそれは……俺もだった。
「もうすこし……いっしょに……いてくれる……?」
断る理由なんてない。
「ああ。柊が……」
そこで言葉が詰まった。
「…………うれしい……ありがとう…」
Tシャツをたぐり寄せ、柊が俺に抱きつく。
「〜〜〜〜!!!!ひっっひいらぎっ!!?」
柊の胸が俺に当たる。
薄いワンピース越しだから……感触がわかる。
………感触?
何度か味わった感触とは少し違った。
ブラをしてる……はずだよな。
―――ふと視界に何かが入った。
柊の後ろにポツンと置いてあった。
「えっと……柊。もしかしてあれ……」
「やあぁ!見ないで!……胸が苦しかったから…さっき外したの……」
マジかよ。
じゃあ……今、俺に当たってるのって……………。
恐る恐る視線を柊の胸に……。
大きな胸の谷間が見える。
薄い布地の向こうに………柊の……。
「だっは〜!!ナニやってんだ俺は!」
俺は頭をブンブン振って煩悩を取り払おうとする。
「???……九澄くん?」
柊が心配そうに上目で俺を見る。
………ううぅ。
頭がおかしくなりそうだ……。
「……これ…なに………?」
柊は俺の急所を触る。
………どうやらコッチもおかしくなってたみたいだ。
「〜〜〜!!!何してんだ柊っ!」
「だって……身体につんつん当たってるから……」
柊は細い指でズボンの上から俺のパンパンに腫れたソレを擦る。
「ダメだって!!そんな事したらっ……」
「……!!九澄くんっ……」
柊の手から離れようとしたら、姿勢が悪かったせいで俺は前につんのめり……柊を押し倒していた。
柊は驚いた顔をしたが、ゆっくり眼を閉じる。
俺は生唾をゴクンと飲み込み……。
俺は柊の唇に触れる。
………柔らかい。
カサカサだった自分の唇とは大違いだった。
プルンとしていて、小さくて……。
「……ぷはぁ!!」
息が続かなくなって離れる。
俺は顔がかあっとなる。
柊も……さっきにも増して赤くなる。
「えへへっ……九澄くんと………ちゅうしちゃった…」
恥らいながら嬉しそうに話す柊を見て、俺はもうかなりヤバかった。
念願だった……柊との……。
「九澄くん………さっきみたいに…―――ぎゅってして……?」
チクショウ。カワイスギル。
俺は黙って柊を抱きしめる。
胸がまた俺にムギュ〜って当たる。
腰は細くて……強くしたら折れてしまいそう。
それに……柊の甘い匂い。
たはー………なんかもう……俺、もう天に召されそうな勢い。
『カミサマ!ホントアリガト!!!』
俺はいつものウルトラマンみたいなウルウルした眼で神様に感謝した。
「九澄くん……あったかぁい…」
「ははっ、、柊だって…」
「そう……?お酒のせいで体が火照っちゃったのかな……」
「そ、そうだってきっと」
「……心臓がドクドクいってる」
「ひっひいらぎだって……」
「やだっ聞こえる??……恥ずかしいよう…」
柊は俺の胸に顔を埋めて、更に赤くなった顔を隠す。
その顔を見たくて……もう一度、柊の唇に触れたくて俺は柊の顔をたぐり寄せる。
「!!!……く…じゅ……みくんっ…、、……はぅぅ…」
やっぱり……柔らかくてキモチイイ。
微かに柊から言葉が漏れる。
甘えた声で自分の名前を呼ばれると興奮する。
それも……俺とキスしながらだから余計に。
俺はそのまま胸に手を伸ばす。
何度か…触った事はあった気がするけど(モチロン事故だけど……)。
……この流れだったら柊に拒否られないよな?
何せこのシチュエーションには慣れてない、というか初めて。
前みたいに抱きついたらブッ飛ばされるなんてことはっ……。
俺は意を決して胸に手を伸ばし………触れる。
「……ふあぅん………んン…ひぁっ……」
ポヨンポヨンとキモチイイ感触。
「ひゃっ…アンん、、……はうぅ……」
パンクしそうな頭に鞭打って……柊のワンピースの肩ひもを下ろそうとする。
「待って……恥ずかしいよ……明かり………消して?」
「そっそうだな」
柊の希望どうり、明かりを消す。
――――――真っ暗闇。
でも…ほんの少しだけ光が差し込んでいる。
廊下の明かりだろうか?
だが……俺には確認している余裕はなかった。
……ん?
柊の肩に触れる。
その勢いでワンピースの肩ひもを……。
柊はビクッと反応するが……肩ひもはストンと落ちる。
今……柊の上半身は裸。
だは〜!!想像しただけで鼻血が……。
恐る恐る俺は柊に手を伸ばす。
………ムニュ。
「ムニュ???…………!!!!」
コレが柊のっ……。
さっきよりも何倍もすげえ。めちゃくちゃ柔らけえ。
俺は我を忘れて夢中で揉む。
モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ……。
「ひゃやぁ……んあアぁ…、、……九澄くんっもっと……やさし…んんぅ…」
「ごっごめん!!夢中になっててつい……痛かったか?」
「うん…だいじょうぶ……九澄くん…」
手のひらに柊の……乳首があたってる。
そ〜っと手を滑らせ、親指と人差し指で摘んでみる。
「!!!だっだめぇ……、、そこわっ……んあ、、、あっん……」
喘ぎ声が強くなる。
柊は……ココが弱いのか?
「ココが……いいのか?」
「うん……頭が…ふわふわするよ…!!!アァっ、、……ひゃめぇェ……」
柊の喘ぎ声で俺の下半身がギンギンになる。
指先で柊の乳首をムニムニする。
ムニムニするたびに柊が喘いで……どんどん硬く立って来た。
俺は硬くなった柊の乳首を口に含む。
ちゅうっと吸って……舌でペロペロと舐める。
「んんウ!!!くずみく……ダメ、、、キモチイッ……ふアアぁっ!!!」
柊の匂いがする。
さっきよりも……強くて、甘く濃い。
俺は段々と興奮していく。
両方の乳首を口と指で虐める。
「柊、きもちいいか?」
「はぅう…、、キモチイイよぅ…九澄くん……」
「そうか……よかった」
ここで……柊は僕の手を取り、僕の手を下の下着に持っていく。
「えっ………なんか…ぬれてるぞ……柊」
「……ココがね…ジンジンするの……よく…わからないんだけど……すごく……あついの…」
!!!!……なんかドンドン柊がエロくなってるような。
だがそんな心配は俺の頭の中で即消去された。
柊の甘えた言葉に……頭は洗脳されてた。
柊の下着の上から『ココ』をそっとなぞる。
「!!ひゃぁっ……はんぅ……」
……ジットリとした感触があった。
これって……柊が感じてるから……だよな?
何もかもが初めてだから……戸惑っている俺。
でも……柊が待ってる。
薄暗闇の中でぼんやり見える柊の顔。
俺を見ている。そして―――――。
『おねがい…………早く……して……』
あァ〜〜〜!!!!!
ダメダメダメ!!!
柊はそんな卑猥なコト言わないってえの!!
それにこんな安易に……やったらダメだっ!!
あいつらの思い通りになっちまうじゃねえか。
いつもは机とか地面とか壁に頭突きして何とかなった。
でも…さっきから俺が柊にやってきた事は……。
キスしたり胸揉んだりして……。
それでも耐えてきたんだが………。
俺はポケットを探る。
津川から譲り受けたゴムのリングがある。
俺の初めてが……柊。
AもBも終えた。
アトは………ココだけだ。
俺は柊の湿った所をさする。
さする度に柊は苦しそうにもがく。
………俺は腹をくくった。
テクニックなんて持ってないから、AVでやってるような指を入れてあんな事やこんな事なんて俺にはできない。
でも……俺は柊のこと………。
このまえ無理やり伊勢が俺に渡したAVを思い出しながら、俺はゆっくり柊の下着を脱がす。
……もう、柊は何も身につけていない。
俺は柊の言ってた『ココ』に触る。
指に液体がまとわりつく。
………これが……柊の……。
でも暗くて……解らないな。
柊のリアクションを頼りに俺は色々と指で触っていった。
「ふぅぁあ!!!……あぁゥ…ふア……」
「!!ここか?ここがいいのか?」
「ソコぉっ…、、…キモチイいい……いい、、よぅ……」
ソコは楕円形の突起物だった。
そういえば……男優もココを触ったり吸ったりしてたな。
俺は思い切って顔を近づける。
………すごい匂いだ。
一言で言えば……イヤらしい匂い。
興奮して癖になる……そんな匂い。
そしてそれは柊の……柊のココから………。
――――――ヤバイ。マジで……入れたくなる。
衝動を必死に抑えながら俺は突起物をくわえ、乳首のときと同様ちゅうっと吸ってみる。
「〜〜〜〜!!!ひゃめええぇっ!!……、、、んぅんぁあっ!!!……」
……必死で我慢してたから、手加減できない。
俺は何度も何度も繰り返した。
「〜〜〜〜っ!!!!イやああっ……ふあぃ…、…はう…、、」
何度も何度も柊の喘ぎ声を聞く。
柊は何度も何度も俺の名前を呼ぶ。
『九澄…くん……くずみ………くん……』
突起物の下のほうの匂いが濃くなる。
長い事その匂いを近距離で浴びていた俺は……もう限界だった。
ズボンを下ろし、ゴムを着ける。
地肌に締りのきついゴムは痛かったが……そんなことはどうでもいい。
柊の身体をこちらにたぐり寄せ、匂いと愛液の源へ――――――
『ダアあああjhあddァqあアhあwあslgs!!!!!』
俺は心の中で大声で無茶苦茶に叫んだ。
……もう少しで……もう少しで柊を傷つけるところだった。
俺は唇を噛み締めて正気を保つ。
痛い。強く噛みすぎて出血してる。
でもこんなの……柊の痛みと比べたら……クソだ。
「柊……しても……いいのか?」
「………うん」
「…………するのは……はじめてなのか?」
「…………うん……」
「ごめん。先走ってさ……俺、柊を傷つけそうになった」
「………そんなことないよ……私は……」
「…………?」
「わたしは……はじめてのヒトは…九澄くんがいい」
「………柊」
「…………こわいけど………痛そうだけど……九澄くんとなら………ガマン出来るよ」
俺は答えれなかった。
でも……ココで退くわけにはいかない。柊のために。
「私の想いがあるうちに………おねがい…………早く……きて……」
――――――俺と柊は交わった。
彼女は……痛そうな素振りを見せなかった。
我慢してたのか、痛くなかったのかは解らなかった。
それでも俺は柊を強く抱きしめた。
それしか……できなかった。
………柊は……泣いていた。
俺は……気持ちよかった。幸せだった。
柊と………大好きな柊と……できたんだから。
本当に……幸せだった。
俺は柊が眠りにつくまで手をとって側にいてあげた。
せめてもの罪滅ぼしだ。
それでも……今回の件での俺と柊は釣り合ってない。
俺はじっと柊の顔を眺めていた。
柊は十分後、ぐっすりと眠りに着いた。
俺は静かに部屋を出る。
「大好きだよ」
振り返る。
………柊は眠ったままだ。
俺は首をかしげたまま外に出る。
とりあえずシャワーを浴びて、自分の部屋に戻ることに。
そういえば……順番がめちゃくちゃだな。
まだ俺は柊に想いを告げてはいない。
――――――明日告げよう!
自分の想いを柊に……伝えるんだ。
でも…………。
たは〜!!やっぱり恥ずかしいなあ。
つうか明日……どんな顔して柊に会えば………。
そんなことを考えながら、俺はシャワールームへと向かった。
以上でエピソード3はおしまい。
テキスト量は短めでした、主人公とヒロインなのに……。
さてさて………オマケのサイドストーリーを明日投下しようと思いましたが、
ZEH氏の作品が来るみたいなので、月曜か火曜の予定にします。
感想をいただければホントに嬉しいです!
住民の皆様の意見・感想が何よりも重要な評価になります。
ではでは、また次回お会いしましょう。
王道きたこれ!乙乙乙!
無理矢理貸されたAVを、しっかり見てる九澄萌え!
凡ミスが見える気がするのは、多分酒のせい!
たとえミスがあっても文才で十二分にカバーされてあるから無問題!
これからもよろしくお願いします!職人さん!
91 :
ZEH:2007/07/29(日) 00:12:41 ID:6Y9AT75Z
気にしなくてもいいのですよ。
そして今の素直な感想を述べる。それは当然であり必然。
GっっっっっっっっJ!!!です!俺の存在が消えてしまわないような作品をつくらないとなぁ・・・
正直乾は前のようないつもの作品。愛花END2はタイトルそのままで気合入れます。
間に合わなかったらEND系終了後に考えているパラレル系王道の序章もしくは設定を書きます。
92 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:43:49 ID:6Y9AT75Z
――――― 空は蒼く透きとおっている
―――――― その色はまるで形無く存在する水のように・・・・・・
―――― 水と思い出はよく似ている・・・・・・
―――――― それは悠久に忘れることなく心に残る夏の記憶・・・・・・
「みっちょ〜ん!早く〜」
「ま…待って……」
「相変わらず体力無いな〜」
それは記憶の断片 そこにいたのは3人の仲睦まじい少女たち・・・・・・
炎天のなか3人は公園で遊んでいる。それはその中の一人の少女の記憶。
運命といえた出会いの記憶・・・・・・
――――― 季節は夏
――― 蒸暑いというよりは風が吹き抜けて心地のよい日だった・・・
―――― 3人とも卒園したばかりの小学生ぐらいの年だった。
――― 一人は明るく陽だまりのような少女
――― 一人は活発で意志の強そうな少女
――― そして白いぬいぐるみを抱いた大人しげな少女の3人
「楽しいね〜」
「ん。半分はみっちょんの世話だったけどな。って・・・みっちょん?」
ぬいぐるみの少女はそれを抱きかかえたまま公園のベンチで寝ている。
それは幼くとも人形のような寝顔だった。
木陰でそこは涼しく心地よかったらしい。二人の少女は少し考えて・・・
「どうする?そのままでも良さそうだけど・・・のど渇いたからジュース買いに行きたいし・・・」
「大丈夫だとは思うけど・・・?なんか起すのもなんかかわいそうだし」
二人はなるべく時間をかけずに戻ってくるという答えを出して急ぎ足で駈けて行った。
暫くして……
「あれ?私・・・寝て・・・・・・あれ?愛花ちゃんと久美ちゃんは?」
目の前には誰もいない。寝ているのに気づかれずおいていかれたのだろうか?
困った。普段あまり出かけたりしない分このあたりの道を知らない。
今日だって二人に必死でついて行っただけだった。
白いぬいぐるみをギュッと抱きしめ涙目になる。通りすがりの人に道を尋ねる勇気も無い。
「ッ…どう・・・ヒッ・・・どうしよう・・・・・・」
「何で泣いてんだ?」
そこには――――――
93 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:45:04 ID:6Y9AT75Z
ピリリリリリリ!!
ガバッと起きて目覚ましの音を止める。
「ん・・・・・・ん〜・・・夢?」
背伸びをしながら呟く。懐かしい夢を見たものだ。
でも今でもそのことは覚えている。ただ記憶の中の人物が思い出せない。
また同じ夢を見れたら思い出せるだろうか?
なぜ覚えているかといえばこの思い出は形に残っているから・・・・・・
「おはよう、みっちょん」
「おはよう愛花」
今朝の夢を思い出すと愛花もずいぶんと大人しげな可愛い女の子に成長したものだ。
久美も自分が羨むほど驚きの成長をしている。私って・・・・・・
「みっちょん?どうしたの、大丈夫・・・?」
大丈夫・・・・・・痛いのは現実「が」だから。
「おはよう乾」
「え・・・?あ・・・おはよう」
今日は珍しく九澄が深千夜に対して挨拶をしてきた。
この人はよく分からない。愛花をいじめたりしてるかと思ったら必死で違うと否定する。
時々ちゃらちゃらしてるかと思ったら真面目になったりする。
困ってる人は大抵助けるけど大半が空回り・・・・・・・・・
「乾?どうした、大丈夫か・・・?」
この人も愛花と対応が同じ・・・・・・
今日の私は周りから見てそんなに不自然だろうか?
・・・・・・・不自然だから反応が一緒・・・・・か。当然の事。
昼休み。皆それぞれ行動して一部が騒がしい。
「・・・・・あれ?まち針がない・・・・・・?」
どこかで落としたのだろうか?一本足りない。普段は別にいいことだけど今日は探す事にする。
今日行った道を思い出しながらそこを手当たりしだい探し歩く。
見つからない。探しているうちに九澄にあった・・・・・・
「どうした乾、探し物か?」
まぁ話すぐらい問題ないだろう。私は正直に針が無くなったといったらあろう事かその人は・・・・・・
「な…何してるの・・・?」
「何って・・・困ってんだろ?一緒に探してやるよ」
いや、それはさすがに問題があるだろう。仮にも相手はゴールドクラスという少年。
さらに私たち全体を取締まる一年生徒会の責任者だ。
そんな「とんでも人物」に『針を探させる』なんてアイコン選択させる事自体とんでもない事だ。
でもそのとんでも人物はお構いなしに探してくれている・・・・・
「ねぇ・・・生徒会はいいの?一応仕事中でしょ・・・?」
私は半ば引け目で言ってみた。嬉しいけどさすがに気まずい。
「ん?別に収集の放送ないし暇だから俺はいいぞ?」
『俺は』か・・・・・・それは私に対する質問。『俺は』という事は私が嫌なら別にやめるということだろう。
「・・・あなたがいいなら私は別に・・・・・・」
九澄はそれを聞くと「そうか、じゃあ勝手に探すぞ」なんて事言ってくる。
何度も言うけど嬉しい事に変わりはない。それになぜか悪い気がどんどん薄れて九澄と一緒にいる時間が私を満たしていく気がした。
昼休み中探したけど針は見つからなかった・・・・・・
94 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:46:33 ID:6Y9AT75Z
放課後になって私は教室をもう一度探す。なんでこんなに必死なんだろう?
たかが針一本だ。本当は昼休み見つからなかったらあきらめるつもりだった。
でも・・・それでも『教室』を探す。日が落ちて景色が紅くなっていく。
暫くすると教室の戸が開く音。
入って来たのは?決まってる。こんな時間に来るのは一人だけ。
「乾?まだ探してたのか?んじゃついでだ。俺ももう一度手伝うよ」
その言葉を予想していた。だからこんなに必死で探していたのかもしれない。
少しでも会う機会のある教室を。
自分の予想通りの応え。自分の信じていた事が実は違っていたというのは怖いものだ。
でも九澄は思った言葉をくれた。それはよく言えば『素直』悪く言えば『単純』
すこし安堵の息が漏れる。
もし九澄が教室に来なかったら?
もし九澄が探してくれなかったら?
そんな心配必要なかった。九澄は九澄だったから。
そんな九澄が・・・・・・・・・九澄が?・・・・何?
私は・・・・・・・?もしかすると・・・・?
でも今はそんなことより九澄といる時間が何より嬉しくて満たされていた。
「乾。だいぶ暗くなってきたし・・・帰り道危険になるからそろそろ帰ろう。明日・・・また探すから」
私は首を傾けて反応して九澄と帰る事にした。
本当はもっと長くいたかった。その感情が嘘じゃないって気づいたからこそ・・・私は九澄のことを・・・
帰り道はまだ夕日に照らされ紅い。あれ・・・・・?あそこで光ってるのって・・・
針だ。いくら探しても見つからないわけだ。帰り道にあったから。
「・・・・・・あ。・・・・」
「どうした?」
ここで黙っていれば多分明日も九澄は針を探してくれただろう。
でも嘘はつきたくなかった。だって自分のワガママで見つからない針を九澄に探させるわけにはいかないから。
私は針を見つけて。九澄に報告した。九澄は「よかったな」といってくれた。
明日も九澄は私に挨拶してくれるのだろうか・・・・?
「何で泣いてんだ?」
そこには――――――男の子がいた。
「ヒッ・・・友達が・・・」
「あ〜いなくなったわけね。」
すると男の子は公園の周りを見渡している。そして木に登って遠くを見ている。
「な…何してるの・・・?」
「何って・・・困ってんだろ?一緒に捜してやるよ」
男の子はそういってくれた。でも男の子もいろいろあるんじゃないだろうか?
そうだとしたら私はひょっとして迷惑なんじゃ・・・?
そう思って言ってみた。すると男の子は・・・・・
「別に用事ないし、暇だから俺はいいぞ?」
「で・・・でも・・・・」
「それとも嫌か?」
少女はブンブンと首を振って応える。男の子はじゃあ一緒に捜そうと言った。
どこか不思議な雰囲気の男の子。戻ってくるかもしれないからと言う理由で男の子は公園をあまり離れないで捜している。
95 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:47:49 ID:6Y9AT75Z
暫くして「ポツッポツッ」と・・・・
「雨?おい!その木の下に行こうぜ」
木に近づいた瞬間「ザーッ」と雨が降ってきた。
男の子が引っ張ってくれたから濡れなかったけどこんなに降ってたら帰れない・・・
男の子はそんな表情を察してか「多分すぐやむ」と言ってくれた。
ベンチに座って雨がやむのを待つ。置き場所がよくベンチは端の方しか濡れない。
雨が降ってる中、今日初めて会った男の子をまじまじと見つめる。
どこまでも落ち着いた表情で真っ直ぐとした眼で前を見ている。視線に気づくと笑いかけてくれた。
私は「カーッ」と顔が赤くなった気がして下を向いた。
そうやってるうちに本当に雨がやんで男の子はまた愛花ちゃん達を見つけようと言う。
「はぁはぁ…」
「大丈夫か?水筒ならあるけど飲む?」
男の子は水筒を差し出すと私は手にとって「コクッ」と飲んだ瞬間。
「あ。さっき飲んだんだけど・・・・気にしなくていいぞ?」
それを聞いた瞬間ふいてしまった。慌てて水筒を落として泥のついた水筒を拾おうとしたら・・・・
「ドサッ」と白いぬいぐるみが落ちてしまった・・・・・
「あ・・・あ〜〜〜〜・・・・」
「茶色・・・・・」
変わり果てたぬいぐるみを拾って泣き崩れる私。男の子は「俺が悪かった!」って謝る。
多分洗っても取れないことをつげたら男の子はぬいぐるみをとって「ごめんな」と言いながら・・・・
「ビリッビリリッ」とぬいぐるみの服をやぶりだした。
「えぇ!?な・・・何するのぉ・・・・やめてよぉ・・・」
男の子がやぶいたのは服の白い部分。その部分だけやぶると私の後ろに立って髪の両端を結んだ。
「え?え?」
「いや・・・どうせ汚れたままなら大丈夫な部分だけでも身につけられれば寂しくないんじゃないかと思ってさ」
男の子は半分不安そうに言う。たしかにこうすればずっと一緒だけど・・・・・・
「や・・・やっぱまずかった・・・か?でもさ・・・ほら・・・え〜と・・・そっちの方が似合ってるぞ?」
ぬいぐるみは駄目になったけど・・・それでも似合ってるって言葉は嬉しかった。
可愛いかなと訊くと男の子はテレながら「うん」と言ってくれた・・・・・・
「そういえば・・・お名前聞いてなかったよね。私は深千夜。あなたは?」
「俺?俺は ――――――――」
「あ・・・・・またあの夢・・・」
今日も同じ夢を見てしまった。いろいろ思いながらもたしかに残る感覚。
多分これが初恋だったのだろう。今は・・・・・・
あれ?そういえば・・・あの男の子の名前はなんだったっけ?
96 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:48:55 ID:6Y9AT75Z
「ねぇ・・・話したいことがあるんだけど・・・今日いい?」
「ん?いいけど・・・遅くなってもいいなら・・・どこか行くのか?」
私は承諾の言葉を聞くと「教室で待ってる」と言って逃げるように駈けて行った。
ちょっと大胆だけど・・・それでも聞いて欲しい。私の気持ちを・・・・
放課後・・・・・・私は教室で待っていた。
昨日のように日がかたむき、水のような空が紅く染まる。
正直に言おう。自分の気持ちを・・・伝えよう・・・この思いを・・・・・・
「乾?来たぞ、言いたいことってなんだ?」
「ん。正直に言うと私あなたが好き」
率直すぎた・・・・・・かな?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気まずい沈黙。まだやり直しできるかな?
「好きです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめ?
「付き合ってください」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九澄はいまだ沈黙している。口はあんぐり。
「え〜と・・・乾?それ俺に?・・・・マジ?」
「もちろん。マジ」
・・・・・・・九澄は暫し頭の中を整理するように考えている。
理解し終わったのか九澄は少し赤くなり口を開いた。少し私も緊張している。
もし断られたら?ショックはある。でも本音を言ったことに悔いはない・・・多分。
「俺で・・・・・いいのか?」
「!・・・・・(コクッ)」
嬉しかった。嬉しくて九澄をギュッと抱きしめる。
抱きしめると言っても九澄が大きいから体をくっつけるに近い。
九澄はいっそう赤くなって慌てだす。本当は私も鼓動が聞こえそうで恥ずかしい。
表には出てない事を祈ってるけど、やっぱり私も嬉しくて恥ずかしくて、真っ赤だった。
「ねぇ・・・公園いかない?」
「?・・・・いいけど。俺もちょっと行きたかったし」
公園へ二人で並んで歩く。途中九澄は先に行っててくれと言って商店街へ走っていった。
なんだろう?不安に思いながらも期待を抱いて公園のベンチに座る。
このベンチに座るのも久しぶりだ。私は髪を結っていたゴムをはずしてリボンに変える。
白い形も大きさも違うリボン。待っていると九澄が来て、紙袋を持っていた。
「なに・・・それ?」
「ん?プレゼント・・・かな?何も無くても送りたい気分だったんだ気にしなくていいぞ」
そういって差し出された袋の中を見る。見覚えのあるぬいぐるみだった。
白い色で白い服を着た昔大切にしていたぬいぐるみ。
「これ・・・・・なんで?」
「ん〜・・・・・なんとなく昔を思い出したんだ。本当にさっきだったんだけど・・・」
予測しなかったわけでもない。でもこんな偶然があるとも思ってなかった。
でも・・・それでも嬉しかった。
心も体も成長してずっと前から知ってたのに二人とも思い出すのに時間をかけて・・・・・
九澄が隣に座る。私はそれに寄りかかって腕を絡める。
そうやってるうちに私はもう一つステップを上げることにした。
「九澄・・・私九澄としたい・・・」
「!!? しししたいって!?」
この反応は分かってる。断って欲しくはない。私はただ今日を残したいだけ。
恥ずかしくないわけがない。体は熱いし顔だって真っ赤だ。
でも九澄になら・・・・・そう思ったから・・・・・・・
「ホテルとか・・・・行く?」
「ここが・・・・・いい」
九澄はさらに驚いた顔だ。それはそうだろう。初めてで外だ。
誰だって抵抗する。一歩間違えれば犯罪なうえに最も恥ずかしい。
でも九澄は何も言わずゆっくりと耳元で・・・・・
「まだ明るいから・・・・しばらく待とう」
九澄はそれ以上何も言わずに私を抱き寄せた・・・・・・
97 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:50:20 ID:6Y9AT75Z
「俺?俺は大賀だ」
「虎?」
「いや違うって・・・・」
会って結構時間がたつのに今更自己紹介をした自分たちが恥ずかしかった。
そういえばまだ愛花ちゃんたちが見つからない。
心配になっていると「雨も降ってたし、気にする事ないって。多分来るんじゃないかな?」と励ましてくれた。
二人で会話しているうちに足音が近づいてくる。
「みっちょん、ごめ〜〜ん!」
「あ。愛花ちゃん達だ!」
二人とも元気に近づいてくる。それを見てて大賀くんを紹介しようとしたら・・・
「んじゃ、見つかったし俺帰るな」
「えぇ!?一緒に遊ぼうよぉ・・・・」
大賀くんは「せっかく見つかったんだから遊んで来い」と言う。せっかく仲良くなったのに・・・
大賀くんは走りながらどんどん遠くへ駈けて行く。最後に・・・え〜と・・・
「と・・・・友達になってください!」
『・・・・・・・・・・・・・・』
よく聞こえなかった。でもそれが嬉しくて私は手を振った。
「みっちょん。今のひと誰?って・・・わ〜みっちょん!その髪可愛い〜!」
「本当だ・・・・って・・みっちょん!ぬいぐるみ汚れてるじゃないか!まさかアイツか!?」
久美ちゃんがそんなこと言うから私がちゃんと説明しないと
・・・あの男の子はとってもいい人で・・・私の友達だって!
「ん・・・んん・・・・・あれ?夜?」
「おぉ起きたか?んで・・・・本当にいいのか・・・?」
その質問はもちろんさっきのことだろう。いいに決まってる。
それが望みだから。
「ん・・・・んん・・・・ちゅ・・・ふ・・はぁ・・・・」
九澄からのキス。それは優しいけど激しい濃厚なキス。
九澄の舌が私の舌を絡めとリ口と口の隙間からは二人の唾液が混ざり垂れ落ちる。
それは長く、とてもじゃないが息が続かない。余韻に浸りつつ口を離す。
「ん・・・はぁう・・・・・・はぁ・・」
私の心情を察してか九澄はキスをしながら続きを始める。
手つきはぎこちないがしっかりと双方の膨らみを揉みしごく。
下着越しでもその感覚はたしかなもので声が出てしまう。
「ひゃむ・・・ふぇ・・・・んぁぅ・・・・」
手つきは少し荒々しいものがあったが徐々に私の反応から感じる位置と力加減が分かってきたのか体の反応が激しくなる。
確実に私の体は九澄にいいように動かされている気がした。
それこそがまるで人形遊びのように・・・・・・・
「んひゃあぁぁ・・・ヒャ・・んむぅ・・・・・・ふぁ!はぁぅ・・・」
キスから解放されても逃れられない体の快感にただただ悶えている。
場所が外だと言う事もあって大きな声が出せない。
でも見つかるのではないかと言う不安と期待に体の感度は上がっている。
体が反応するという自分では抑えられない事がよりいっそう声を出させる。
「んはぁ!ふぅ!んう・・・・」
98 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:51:10 ID:6Y9AT75Z
自分の服を噛んで声を抑えようとする。胸からの刺激にも押し負けそうなのに九澄は・・・・
「!! んひゃぁう!ひゃ!こえがぁ・・・こ・・え・・・」
九澄はいきなり胸の先端を摘み取り、誰も触れたことないところも同時に攻め立てられた。
その快感に言葉を失い九澄の体にギュッとしがみつく。
口からは唾液が止め処なく垂れ落ち指が小刻みに震える。
「ひゃ・・・!あぁぁ・・・かふっ!ぁあ!」
九澄は私を横にして下着を脱がす。暗くて見えてないと思うけどやはり恥ずかしい。
外気にさらされた秘所はヒクヒクと痙攣していた。
次の瞬間、指をゆっくりと挿入される。
「ッイッ!ふぁむ!ん!ん〜!」
自分の服のすそを噛み声を抑える。だが指の抜き差しを始められ体は言うことをきかない。
それは拷問に近かった。声が出そうなのに出せない。出すことすら許されない。
なのに体は否が応でも反応する。
「くる・・・ひぃ・・・・よぉ!くず・・・みぃあ!」
九澄は指を抜き、膨れ上がったその敏感な蕾を優しく摘んだ。
「〜〜!!!」
蕾をいじりながら九澄は秘所に舌を這わせ始める。
既に十分濡れていたそこは舌を這わすと「グチュ」と言う音が鳴った。
ッチュ・・グチュ・・チュル・・・ピチャ・・・・チュルルルル〜〜〜〜!!
「ッ!!ん!んん〜〜〜〜〜〜!!!!」
体が反り、いっそう痙攣したあと蜜が大量に吹き出て九澄の口を汚す。
「はぁ・・・ぁぅ・・・ぃやぁ・・・・・ぁ・・・ぅぅ・・・・」
「乾・・・・いいか?」
分かってるくせに・・・でも気遣ってくれたことに嬉しい。
九澄は自分のモノを出すとゆっくりと押し入れようとする。
グッ!グッ!ズチュ・・・グチュ!!
「ぃ〜〜〜〜〜〜!!!」
体を貫くような痛み。体が一瞬で反り返る。だけど九澄はそんな私をギュッと抱き寄せる。
「あ〜〜〜!ぁ〜〜〜〜!!」
声が出るのを抑えようとする。でもそうしようとすればするほど声はいっそう出てしまう気がした。
このまま誰かに見つかるのはすごく恥ずかしい。
でもそれでもいいと思った。今九澄と繋がってる事が何より嬉しかったから。
「〜〜!!〜〜〜〜!」
ズチュ!ズチュ!グチュ!
「〜!〜!〜!・・・・・ぁぁあう!」
もう声すら出すことを許されない快感に体が反りそうだった。
「〜〜!!〜〜〜〜!ッ〜!」
九澄は限界そうな顔つきで最後の一突きで私を貫いた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
ビュルルルルルル〜〜〜!!!!!!!!!!!!
九澄の全てを私は体の中へ受け止める。どうしようもないぬくもりと心地よさに全て奪われた気がした。
99 :
ZEH:2007/07/29(日) 18:56:20 ID:6Y9AT75Z
「み・・深千夜」
え・・・?今・・・・九澄名前で・・・・
「だってさ・・・前は結局呼んだ気がしないし、いつまでも乾じゃ・・・・さぁ・・・」
九澄のそんな気遣いに思わず笑ってしまう。
九澄は頭にはてなを浮べなんで笑われてるのか不思議そうだ。
「じゃあ聞いてもいい?私は九澄の彼女でいい?さっき言ってくれてない」
―――― と・友達になってください!
応えは一緒。私の大切な人の言葉
『あ・あたりまえだろ!ていうか・・・もうなってるじゃないか』
予想してたけどやっぱり同じだった。だから好きだった。
「じゃあ名前でいいよ。大賀」
――― 九澄の頬にキスをする。それは背伸びしないと届かない距離
――――― 背伸び分遠いけど・・・それは背伸びだけで届く距離
―――― だったら何度も私は背伸びをする
―――――― その温もりと優しさを感じる為に・・・・何度でも・・・・・
あとがき
今回のタイトルは『Felt distance』です。普通・・・ぽい。
愛花は絶対に自分が納得いくように頑張ります。
観月の補完と言っても大まかにこんなのという感じで試行錯誤を繰り返し新しく見せるを心がけてます。
その後はパラレル(?)『ありきたりの普通の恋愛』をテーマにしてます。ヒロイン誰にしようか迷ってます。
現段階では愛花ですが愛花は嫌というなら別の人も考えて見ます。では。次会えることを・・・
100 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 22:15:17 ID:u9Y3TuC9
GJ!!!!!!
GJでした!!
みっちょんと九澄ってのは新鮮でよかったです!
愛花期待してまってます!
聞こうと思いつつも聞けなかった事を今聞きます
草かんむりに雷ってよく使ってるけどなんて読むの?
お前さんは検索サイトの使い方も漢和辞書の引き方も知らんのか
105 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/31(火) 20:19:47 ID:SsUCLrsg
委員長と津川ネタキボンヌ
― Interlude 4.75 大門編
smile. ―
僕は街道を歩いていた。
周りは緑で覆われていて、少し獣道の様相を呈してきている。
街灯は等間隔でポツンと立っている。
其のボンヤリ照らす光を求め、夜光虫が群がる。
僕は眺め、歩く。
歩きながら、先程観月との会話を思い出していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
九澄、津川、観月が柊を運びに行って………しばらくして。
………観月が帰って来た。
足早に席に着く。
「九澄はどうしたんだい?」
僕は観月に問う。
「水を取りに行ったわ」
「そうか…」
僕には解っていた。
観月の様子が変化した事。
ただ敢えて口にはしなかった。
「ねえ大門………男って……なんなの!!?」
「……なんだい、いきなり」
「なんで男って自分勝手なの?女の発言とか無視して突っ走って。
置いてかれる私のことはどうも想ってないわけ!?ほんっと頭にくるわ」
「……………」
観月は鬱憤をぶちまけた。
酒の後押しもあったんだろう。
さっき九澄が柊をお姫様抱っこしただの、何だの。
………取り敢えず聞かされる側の身にもなってくれないか。
観月は………。僕に溜まりに溜まった鬱憤を吐露した。
僕は………。それでも黙って彼女の言葉に耳を傾けた。
――――――……二十分後。
「―――――――……もうお終いかい?」
「えっ??………ええ……」
「どうだい。気分は晴れたかな?」
「……なんか……すっきりした…」
「フン。ならいいけどね…もうこういう役は嫌だから、次は九澄相手にやってくれ」
「!!どうしてアイツがでてくんのよ!」
「解り易すぎだな。……さあ、九澄の処へ行ったらどうだい」
「…………」
「さっき言った台詞をぶつける相手は九澄だ。僕じゃない」
「………ありがとう」
観月はそう言い残して広間を後にした。
「……さて、夜風にでもあたりに行こうかな。ここは君達二人に任せたからね」
そう言って僕もその場を離れた。
「まあ……僕には関係の無い事だ。恋愛なんて……ね」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
先程の観月とのやり取りを思い出し――――思慮に耽る。
彼女を突き動かすモノ……。
僕にはソレが無い。
異性への愛―――――其れだけじゃない。
………仲間。
タク、観月、そしてクラスメイト。
付き合いは深くても……浅くても、あくまで戦うのは一人だ。
強さってなんだろうか。
単に魔法の威力、性能、術者のスキル……そう思っていた。
そして僕は其れを得て、一年トップの実力を得た………九澄を除いて。
奴のプレートは既にゴールド。
だが……僕に対して使ったのは防御魔法の一回のみ。
タクに対しては一切魔法を使っていない。
単なるプレートの色が違うだけで……此処までの実力差が出るんだろうか。
確かに奴はゴールド、対して僕はホワイトアイアン。
誰が見ても無謀だった。
其れでも……僕は九澄に挑戦した。
結果は………惨敗だ。
何処かに……自分に酔っていたんだ。
魔法試験をトップ通過したために出た驕り。
もちろん勝つつもりで戦った。
………それが……あのザマか。
傍から見ればどんなにマヌケだったんだろう。
今のようなやり方では……どうだろうな。
観月のように支えてくれるヒトがいるのも……悪くないのかもな。
強さって……そんな物なのかも知れないな―――――
「ははっ!!」
僕は嗤った。
僕らしくなかった。
声に出して嗤うのも……そんな考え方も。
だが……。
僕は九澄を追う。
心を燃やすなら、中途半端な燃料よりも上質な方がイイ。
―――――そんなことを色々考えながら、僕は暫くの間辺りをブラブラ散歩をした。
何時もは一貫した思考しか出ないんだが……今日は沢山の言葉が溢れた。
少し変な気分だったが………何処か心地良さがあった。
「おう、大門か!!」
呼び止められる。
振り返ると津川がいた。
「なんだい?見た感じ、気の済むまで走ってきたようだけど」
「………何か侮辱してないか?」
「思った事を言ったまでさ」
「相変わらず口の減らないヤツだな。
お前はこんな処で何やってんだ?どうせ黄昏てたんだろ!?キザなヤツだな」
「散歩がキザなら君も当てはまる事になるよ。
まあ流石の僕でも、そんな髪型にしてる君には負けるけどね。髪の立ち具合とナルシスト度だけね」
「おまっ馬鹿にしてんのか!!?………やっぱり口の減らないやつだなぁ。可愛くないヤツ」
そんなやり取りをしながら館に戻った。
汗をかいたから、シャワーを浴びて……自分の部屋に入り、ベッドに横になる。
時刻は…もう日付が変わっていた。
今日一日を振り返ってみる。
………楽しかった。純粋に。
くだらない事でも笑えた。
最初は柊に対する社交辞令で参加したんだけどな。
幹事の伊勢と三国には感謝しないとな。
………ほんの少しだけだが。ほんの……少し。
眼を瞑ると、直ぐに眠りに堕ちた。―――――心地良かった。
さっきからこみ上げる不思議な感覚。こういうのも……悪くないな―――。
― Interlude 3.37 津川編
スケボー君とメガネちゃんの約束 ―
―――ふう。
あの館から見たら眼と鼻の先なのに……遠いな。
―――よっと。
それにしても風がキモチイイな!
参加して正解だったな。
俺は石の階段をテンポ良く降りていた。
両脇には木造建築が並んでいる。
俺のじいちゃん家も……こんなカンジの所にあったな。
何処か懐かしい。
空気。風。虫の鳴き声。
小さい頃に……感じた自然。
いつもはこういう……哀愁じみたカンジは苦手なんだけどな……。
ようやく海岸に着く。
意外に時間がかかった。
携帯の液晶を眺めたら、時刻は十時チョット。
あそこを出たのは九時半くらいだったから……四十分もかかったのか。
まあのんびり歩いてきたからな。
俺は潮風を胸いっぱいに吸い込む。
――――潮の香り。
……やっぱ夏は海だよな!
明日の昼には……みんなで海水浴とかいいかもな。
「水着は持ってきてなかったな……まあ桜庭が何とかしてくれるかな」
砂の上じゃスケボーは走らせることはできないから、海岸線の道路で走る。
「ははっ!!やっぱキモチいいわ!」
俺は海岸線を気が済むまでかっ飛ばしていた。
魔法が使えたら……もっと良かったんだろうなぁ……。
砂浜に戻って一息つく。
身体を大の字に投げ出す。
空を見上げたら…驚くほどに星が眩しい。
――――――しばらく俺は空を眺めていた………。
ピリリリリリリリリリ!!!!
着信音がする。
俺はポケットを探って携帯をとる。
……メール?
差出人は…………委員長だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2007/ 8/4 22:46
From 委員長
Subject こんばんは☆
今日はお泊りだって聞いたよΣ川〇∀〇*川
実はね……私も出雲と桃と氷川と四人でお泊りしてるの♪
でも…それが私の家でなんだよ!?
みんな一番私の家が綺麗だからって言って…ヒドいよ(っω;`。)
そっちはどんな感じなの?
三人が気になってるみたいで……私も少し気になってメールしたの(*・ω・*)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだ。委員長達も同じ事やってんのか!」
俺は委員長に返信した。
そういや……委員長とメールなんてあまりしなかったから……なんかヘンな感じだな。
学校ではよく話したりしてるんだけどな……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2007/ 8/4 22:52
To 委員長
Subject Re:
そっちもお泊り会やってんのか!
仲良い奴らばっかで羨ましいな。
コッチは中々大変だったんだぜ?
一応……決勝で戦った奴らだし…。
まあ俺が上手く間を取り持ったけどな!/ ゚ー゚)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
………五分後。
委員長からの返信だ。
俺は画面を見る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2007/ 8/4 22:57
From 委員長
Subject Re:Re:
いきなりなんだけど……電話しても良いかな?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
直球過ぎてビックリした。
突然の短い文章。
俺は『いいよ』と返信する。
「……なんだろ。なんかドキドキするな………」
もう直ぐしたら電話が……そう思うと少しドキドキした。
―――――携帯が鳴った。
直ぐに出るのは……待ってたみたいで恥ずかしいから三回コールしてから取った。
「……もしもし、津川くん?」
「ああ。どうしたんだ?いきなり電話したいなんて……」
「桃が……どうしても電話しろっていうから………ゴメンね」
「そうなん?相変わらず仲いいよなぁ」
「あっ…ありがと。(そう来るかぁ〜!!)」
『ちょっと委員長!私がやれなんて、そんな事言っちゃダメじゃん!!つうか相変わらず津川のやつ鈍すぎ』
【そうよ!さっきリハーサルしたでしょ!?】
「んっ?出雲と桃瀬か?」
「えっ!!?あ〜っ…もう。ゴメンね。みんなテンション上がっちゃって……」
「まあそうだよな!夜に友達の家で遊んでたらなんか楽しくなるよなぁ」
「うん。そうだね……えっとぉ………その……」
「???……」
「津川くん。このまえ、インストールに手こずってたよね」
「あぁ……見られてたのか。恥ずいなぁ……」
「だから………月曜日にね、コーチしてあげようかなぁって………いいかな……」
「マジ!!?手伝ってくれんの?そりゃ助かるよ」
『やったあ!!チャンスだよ委員長!』
[月曜日かぁ……グロスとかチークとかバッチリキメないとね]
「??なんであいつらが喜ぶんだ?」
「あアっ!!も〜っ……えっと……それじゃあ……月曜日にね」
「ああ。わかった。―――――おやすみ。委員長」
「――――うん。おやすみ、津川くん」
……………。
電話が切れ……風の音が辺りを包む。
「なんか後ろが騒がしかったけど…まあいいか。
早く韋駄天号を使った新魔法、習得したいし……。
つうかなんか俺、委員長に魔法とか勉強とか助けてもらってばっかだな……もっと頑張らんとなァ。
……それに委員長には何かお返ししないとな……」
俺は真っ黒な海に浮かぶ月を眺めて―――――。
「うおお!!なんか俺らしくねえ!!……よっしゃ、もういっちょイクか!」
俺は再び風を切り裂く。
その時は、委員長とあんな事になるなんて思わなかった。
今思えば……それが俺とアイツとの初めての約束だったな。
―――――This love story continues to M:59
(゚∀゚)神キテルー!
大門は独りでカワイソスだけど、観月はヤパーリ九澄とだなぁ
携帯から失礼
大門よかたです
昨日の敵は今日の友
以上でオマケはおしまい。
津川はこの企画が投下され始めてから、
原作で委員長と結ばれたのでエピソードに組み込まなくてラッキーでした。
エロはありませんでした。すいません。おつまみ程度です。
ですが全員のストーリーは書きたかったので描きました。
次でエピソードは最後。
流れで解ると思いますが、主人公は………ではでは。
乙です!
エロがなくても楽しく読めれたから無問題です!
やっぱ 最後は観月かな?
>>115-116に限らず投下途中で遮らないで欲しいわ
乙でした!
まあ
>>115-116はほぼ投下終わりだったからいいじゃないか
話の途中で入られるのは確かに嫌だがな
>>115-
>>116、
>>118-119 ありがとうございます!
当方の投下は、テキストをいじりながら、再度推敲しながら投下します。
ですのでレスの時間間隔が長いです。
自分のせいですので、115さん、116さん、気にしないでください。
投下が完了いたしましたら「おしまい」のレスをしますので、目印にしてください。
>>ZEH氏
遅くなりましたがGJです!
おお!リクエストしたらすぐにお答えしてくれるなんてありがとう。
>>106すまない・・・
122 :
ZEH:2007/08/01(水) 21:03:35 ID:q0lD8DZv
やはり文句なしでGJです。
俺には文才はないのか・・・・・・・?
神とは〜民がその存在を時に憂い、時に崇拝し、謳われる存在・・・・・・
なれずともこれからも頑張りたいですのでよろしくお願いします。
続きが楽しみで仕方無いよ
>>122 自分を卑下し過ぎると、ウザいだけ
もっと自信を持て!
125 :
ZEH:2007/08/02(木) 09:18:47 ID:MvseqmHJ
>>124 分かりましたありがとうございます!これから自分に自信を持っていきます。
という訳で愛花END2は近々完成するのでよろしくお願いします。
ここってモブキャラでもいいかな?
すげーマイナーなのにもんもんとしてるんだが
>>128 是非お願いしたい。
と言うかこのスレ、いい人多いな。
>>129 ありがとう
ふたなり子の予定だけど本気で文才ないうえに初めてだから期待はしないでくれw
かなり遅くなるかも…
131 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:28:14 ID:/D/dkUTy
―――――― 遙か遠くへ凪がれる願い
――――― 凪いだ想いは悠久に消える事はない
―――― でもそれはそこで途絶えてしまった記憶
―――――― 夢が褪めてもそれは確かにそこにあった大切な願い・・・・
――――― 願ったはずの想いは消えてはいない
――――― 思い出せないままそこにあるだけの想い・・・・・・
まだ心残りに肌寒い季節。
俺と・・・俺の大切な人はそこにいた。
今日で・・・・今日でこの道を、この思い出の道を歩む事はない。
――――― 今日は・・・いい天気だな・・・
――――― うん
何気ない会話・・・・でもそれに長い会話や、思い出はほとんどない。
でも前より確実に・・・確実に繋がりは大きい。
二人の会話は続く。このなんでもない会話が二人をつなぐモノだったから・・・
一つの決断。一つの願いが今の自分である証。
二人の思いは繋がっていた・・・・繋がっていたからこそ今が悲しかった。
そう・・・一度欠けてしまった想いをもう一度最初から組みなおす様にやり直して・・・・
132 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:29:10 ID:/D/dkUTy
――――― 俺と付き合ってください
そう言ったのは1年の冬ぐらい・・・あの日も伊勢や周りの人間から唆されたんだった。
「クリパしようぜ!」
そんな突拍子も無い伊勢の台詞。いつものように苦労しながらも何とか関係を保てると思ってた自分。
「いいぞ」
その台詞が俺の運命を・・・俺の大切な人との関係を変えた・・・・
ただ・・・・それは俺にとっても嬉しい事だったけど・・・
―――― 『運命の車輪が廻りだした・・・ほんの始まりの記憶・・・』
「柊?柊もパーティー行くのか?」
柊に話しかける。別に深い意味は無い。
「うん。久美に誘われちゃった。九澄君も行くの?楽しくなりそうだね」
柊がやんわりと微笑む。その笑顔に思わず見とれてしまった。
何やってんだ俺?いつもの事だろうが。別に意識する事ないのに・・・
柊が顔を近づけて心配そうに「大丈夫?」と聞いてくる。
俺は慌てながら「へ・平気だ!心配しなくていいぞ!」と叫びながら教室を出た。
教室の戸に体重をかけて凭れる。「すぅーッ」と息を吸い高鳴る鼓動を静めさせる。
「九澄?何をしているもう授業だぞ。早く席に着け」
いつのまにか柊父が目の前にいた。「わかった」と言い席に着く。
今日は何か特別な事がおきそうな気がした。
「おう、きたか!でも遅刻な。罰としてジュース買って来い!」
チクショウ・・・そうきたか。まぁ遅れたのは事実か・・・・仕方ない。
え〜と近くにコンビ二は・・・・
「あ。私も一緒に行っていいかな?」
突然の柊の言葉。俺は「え?」と聞き返したが「いいぞ」といった。
外はまだ明るい。執行部の仕事が長引いたせいで遅刻する羽目になったとはいえ・・・
時計を見て思った。
学校が終わったのは早めの1時。クリパの予定は3時。んで、俺が来たのは5時。
何をしてたかというと、いろいろだ。とはいえ・・・・遅すぎだろう・・・
「そういえば柊はどうして、ついて来たんだ?」
「えぇ!?え・・・え〜と・・・・そう!九澄君は執行部で疲れてるでしょ!?だから荷物もちを手伝いに・・・・」
なぜか柊はかなり動揺してそういった。
俺は訳がわからなかったがとりあえず「あぁそうか。でも別に手伝わなくていいぞ」
と、そう言ってコンビニへ着きジュースを買っていく。
会計を済ますと柊と一緒に戻る。もちろん柊は手ぶらにして。
柊は不服そうな顔でこっちを見てくるが俺は視線に気づかないふりをしてそのまま、つかつかと歩く。
「じとーっ」とした視線がいたいが、こればかりはさせるわけにはいかない。
そのまま戻った頃には皆が「なんかあったの?」って顔で見てきた。
「別に何でもねーよ。いい加減いたいから止めろって」
133 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:30:33 ID:/D/dkUTy
時計を確認する。時刻は7時だが皆ゲームとかしてる。
どうやら門限とかそういうのはなさそうだ・・・・柊以外。
「柊は門限とか無いのか?親バカだし・・・」
「え〜ともうすぎてるけど・・・一応連絡したから大丈夫だよ」
ならいいけど・・・・俺は素直にそう思ってコップを口に運ぶ。瞬間・・・・
「ぶフゥーーーッ!!けほっ・・なッ・・・んだこりゃ!?酒じゃねぇか!」
のどが渇いてたぶん結構な量を体に摂取してしまった。
めちゃくちゃ体が熱くなり、本当に酔ってしまったようだ。
「く・・九澄君・・・大丈夫?」
う・・・・マジでやべぇ・・・柊がたくさんいる・・・・俺こんなに酒弱かったっけ?
意識が半分ぶっ飛びそうだ・・・柊が心配そうにしてる。
「すまん柊・・・大丈夫だからちょっと・・・・」
「ど・・どこ行くの?私も・・・」
いや・・・・マジでいいって・・・ちょっと『出し』にいくんだから・・・
ふと三国が気をつかってか柊に説明してくれてる(?)様だった。
「あ・・・・ごめん九澄君・・・・」
「いや・・・分かれば・・・・・」
「でも背中さするぐらいは・・・!」
分かってねぇ・・・・
「あぁ・・・・だいぶ好くなったかな・・・?」
時間は9時。途中いろいろあったみたいだけど俺としては気持ち悪かっただけで覚えてない。
ん・・・?柊がいつの間にか寝てる・・・疲れちまったんだろうな。
「さて・・・そろそろお開きとすっか!九澄、お前柊を家まで送ってやれよな」
まぁ・・まだ違和感はあるけど別に嫌って訳じゃないし、それぐらい普通だよな。
「ま・・・外に出たらよいも醒めるだろ」
俺は柊をおんぶする形で送る事にした。
外は涼しかった・・・・いや普通は寒いんだろうが今はちょうど体が熱かった。
酔いだけじゃ・・・ねぇよな・・・これは。
背中に感じる柊の感触。別に疚しい事があるわけじゃないが、やはり嬉しい。
厚着な分感触はうすい。まぁそっちの方がかえって良いのだが・・・熱いし。
柊は寝息が耳にかかる。やばい・・・たとえ感触がうすくてもこっちは天然兵器だ。
寝て様が変わりはない。疚しい気持ちを振り払うように空を見上げる。
ふと、はらりはらりと雪が降ってきた。柊が寒くないかと心配する・・・・て、あ!
歩きながら気づいた。俺どこに向かってんだ・・・柊の家知らねぇ・・・・・
134 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:31:23 ID:/D/dkUTy
仕方無しに柊を起こす事にした。
「柊、柊!起きろ!」
「ん・・・んぅ〜?」
柊は起きてくれたが少し「ボーッ」としてる。しばらくして。
「あぁ〜・・・九澄君〜?夢?」
「柊。家どこだ?送っていこうと思ったんだけど俺知らないし・・・」
柊は教えるといってもう一度背中に乗ってきた。
「ひひひ・・柊!?」
「あったか〜い・・・」
まだ寝ぼけているんだろう。俺はされるままに柊をおんぶして帰った。
帰るといっても柊の家だが・・・柊はなぜか上機嫌に鼻歌を歌っている。しばらくすると・・・
「あれ・・・?私・・・・え?」
「目、覚めたか?こっちでいいんだよな?」
「くくく・・九澄君!?なんで私九澄君に!?」
さっき自分から乗ってきたろ?と言うと柊はそのまま黙ってしまった。
はぁ・・はぁ・・喉・・・渇いたな・・・悪いけどコンビニは・・・・・
「九澄君大丈夫・・・?コンビニならこの先にあるけど・・・」
柊は俺の心情を察し、そう言ってくれた。
俺は言われるままコンビニへ、柊はそこの公園で待っている。
水を買って公園へ、柊はそこにいた・・・・・・
ベンチに座り街灯の灯りに照らされ白い息を吐きながら空を見上げる柊は綺麗だった・・・・
一生懸命で皆からも慕われてるいつもの可愛い柊・・・・
空を見上げ、俺を待ってくれている今の綺麗な柊・・・・
やっぱ俺って・・・・柊が好きなんだな・・・
俺は柊の座っている隣に座る。柊は俺をじっと見てきた。
仄かに赤く染まっている頬・・・潤んだ眼・・・・
俺もいつの間にか・・・・柊の顔を見つめてしまっていた・・・・
・・・・・まだ酔いがさめてないんだろうか・・・体が熱い・・・・
このまま勢いで全てを無くしてしまう気がした・・・・でも・・・
その時の勇気が・・・・・全ての始まりだった。
――――――― 柊・・・俺は・・・・柊の事が好きだ・・・・
――――― 俺と付き合ってください
言えた・・・気持ちを打明けた時・・・・柊は俺の胸の中にいた。
俺が抱き寄せたのか・・・柊からなのか・・・・覚えてはいない・・・・でも。
それでも・・・・今・・・俺は幸せだった・・・・・・・・・
135 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:33:16 ID:/D/dkUTy
「柊・・・・・・もうすぐ・・・だな」
「九澄君は・・・九澄君の願いって何?」
決まってる。俺の願いはそれしかない・・・・・でも
「もうすぐ分かるさ」
俺は最後の確認に・・・・・行く所があった。
そう・・・・最後に聞くべき場所が・・・・・
「おや?どうかされたのですか?」
「最後に校長先生に聞きたいことがあるんです」
「いいでしょう。なんですか?」
それは―――――――――
「・・・・・・です。分かりましたか?」
俺は首を縦に振った。全てを理解して、いや・・・『つもり』でも理解した。
「ありがとうございました」
校長室を出ようとしたとき・・・・・最後に校長は言葉を付け足した・・・・
「最後までよく考えてください。・・・・・それだけです」
校長に礼をして俺はその場を立ち去った・・・・・
―――― 『運命の車輪は廻り続ける・・・ それは一つの終わり・・・』
―― 柊!
四散と舞う塵・・・・・・・・閃光は一陣のように速く
俺の目の前に現れた。次の光景は覚えていない。
ただ・・・・・部長の声と・・・柊の声が聞こえた・・・・そんな気がした・・・・・・
136 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:34:02 ID:/D/dkUTy
気づいたときには俺は保健室で横になっていた。
何があった?俺は記憶を思い返す。
そう・・・・・あれはどこの誰かが魔法の入力ミスで危険なものが・・・とんで来た様な・・
いや・・・・なんか生き物だったか・・・?とにかく俺は・・・・柊を・・・
「そういや・・・柊・・・」
声が聞こえた・・・・そう・・・柊の・・・悲鳴に近い声・・・
走った。傷は完治していた。でもそれは表面上のこと。
体は軋みを上げ自分で自分の体を疑うくらい思うように動かない・・・・
「やべぇな・・・・おい」
「九澄?お前もう大丈夫なのか?」
伊勢・・・・?渡りに舟だ。こいつなら・・・・・!
俺はグッと伊勢の胸倉を掴む。少々手荒だ・・・・でも形振り構ってられない・・・
「伊勢・・・・柊はどこだ?」
「いや・・・・でも・・・・」
「どこだ!!!」
グッと力をこめる。伊勢は怯え気味に言う。
――――― 校長室だ・・・
俺は力を緩め校長室へ向かう。その前に言わないと・・・・
「悪ぃな・・・・ありがとう」
校長室へ着く。中では声が聞こえる。多分柊父だ。
「失礼します」
俺はそれを無視して校長室へ入る。目の前には校長と柊と柊父がいた。
柊は見た目大丈夫そうだった。それを確認すると力が抜ける。
「九澄?何故・・・?」
「まぁ・・・別にいいだろ?死んだわけじゃねえ。それより・・・・柊が無事でよかったぜ」
俺は柊の肩に手を置く。次の場面では・・・・耳に残る信じがたい言葉が来た・・・
――――― えと・・・だれですか?
「は?」
ふざけてる?違う。柊はそんな奴じゃない。
じゃあど忘れ?そんなわけ・・・・・無いだろ。
「どうなってんだ?」
「見てのとおりだ」
全てを大まかにした説明。でもそれで全て分かってしまった事が嫌だった。
目の前で血まみれになった俺を見てしまったショック。
目の前で自分をかばって傷ついた人間を見てのショック。
その全てが『柊愛花』の重荷になった・・・・・・
「つまり・・・柊は記憶喪失だと?」
「まぁ・・・大きく言えばそうだ」
柊父は冷静だった。いや・・・冷静に見せているだけ。
ムカつくけどこいつと俺は似てるんだ。たとえ大切なものに危険が迫っても・・・必ず助ける方向で決して取り乱さない。
俺は取り乱すだろう。でも・・・こいつはそれを少なくとも誰にも見せない。
それだけの事・・・・・
「柊・・・俺のことも覚えてないんだな・・・」
「ごめん・・・なさい」
「いや・・・いいんだ。また覚えてもらえれば」
本当はかなりショックだ。ただ見て時々支える事しかできない関係から恋人になれたのに・・・
それでも・・・・俺は・・・・柊といたい。
「柊・・・・・一緒に学校まわるか?」
「あ・・・・うん」
137 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:35:06 ID:/D/dkUTy
柊と学校を歩く。
周りには誰もいない。一応俺と柊は早退扱いだから授業を受けなくていい。
「ひょっとして今授業中?」
「えと・・・・そうなのかな?」
柊はなんでもない話に頑張ってついてこようとする。
本当は違う・・・・初対面ではない。でも初対面と同じ・・・・
そんな相手にも柊は優しかった・・・・
季節は流れた・・・・・・・・誰の願いも聞こうとはせず・・・・
ただ無情に過ぎ行く日々。
皆が帰って・・・教室は誰もいない・・・
今日・・・俺は柊と二人きりだった・・・・・・・・
外は暗くなって・・・・どんどん人気がなくなっていた。
「柊・・・・時間・・いいのか?」
「うん。今日はお父さん帰ってこないから・・・」
そうか・・・・俺はそんな会話で今まで済ませてた・・・でも・・・・時がすぎれば過ぎるほど。
その思いはそれだけじゃ済まなくなってた!なんども!何度も柊を求めたかった!
俺は柊と・・・前みたいに向き合いたかった!話したかった!
柊はそんな俺をじっと見つめる。どこか懐かしい眼で・・・・俺を・・・・・・
「柊・・・・・覚えている・・・わけないか。でも昔話がしたい」
――― うん。
「前はさぁ・・・柊は俺のことめっちゃ避けてた時期があったよな・・・」
――― ごめん・・・・でも・・・なんで?
「・・・・俺が・・・・幻と間違えて柊を抱きしめたから・・・・・」
――― ・・・・ぷっ・・・あはは!九澄君ってドジなんだね。
「悪いかよ・・・・でも俺だって・・・誰でも良いて訳じゃないんだからな」
――― え・・・・?あ・・・・ぁぅ・・
「・・・・・は・話変えよう!え〜と・・・・あぁ・・俺がプレートなくしたとき・・柊、手伝ってくれたよな」
――― そうなんだ?えと・・・役に立ってたかな?
「ああ・・・・すごく嬉しかった」
――― 答えになってないね・・・でもよかったよ・・・・あ・・・・
「どうした?」
――― えと・・・洞窟とかに行ったよね?
「柊!?思い出したのか?」
――― あ!ううん・・・なんかそんなことがあった気がしたの。
「・・・・・そうか。うん、でも行ったよ。洞窟に」
――― えと・・・もう一人いたような・・・?
「観月だな・・・アレがきっかけでアイツとも仲良くなったんだよな」
――― 九澄君が私を追いてっちゃった気がするよ
「・・・・嫌な事覚えてるな・・・ごめん」
――― でも・・・なんかこう前のこと・・・思い出すのも悪い気しないよ?
「そうか・・・・じゃあさ。クラスマッチ覚えてるか?」
――― え〜と・・・・九澄君が頑張ってた・・・かな?
「覚えてないならいいよ。そうだな…優勝できたのは柊のおかげだった」
――― えぇ!?わ・・私が?
「ああ。グッジョブだったぞ」
――― そ・・・そうなんだ・・・なんか照れるな・・・・
「はは・・・柊は柊が思ってる以上に強くて頼りになるんだぞ」
――― あ・・ありがとう・・・あ!そういえば・・・・九澄君て・・・前は・・・私とどんなだった?
「・・・・・どんなって?」
――― 私の部屋・・・いろんな所に思い出がたくさんあった・・・写真とか・・日記とか・・・
「・・・・・・・」
――― く・・九澄君の名前がたくさんあって・・九澄君のこと考えると・・・なんか落ち着くの・・・
「柊・・・・・・?」
――― 私・・・私・・・何も覚えてない・・・思い出せないのに!でも・・・九澄君と一緒にいられるだけで幸せなの・・・
「ッ・・・・・・」
――― く・・・・九澄君・・・・私・・・私・・・・
138 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:35:54 ID:/D/dkUTy
抱きしめた。本当はいけない・・・・・・・でも・・もう駄目だった。
柊の体温は温かく・・・・このままずっと・・・いたいと思った・・瞬間。
「ん!?・・・んぅむ!?」
突然の柊からのキス。俺は動揺しながらも徐々にその感触にのまれていく。
俺は・・・・このまましていいのか?このまま本能で柊を・・・・
「九澄君・・・・私・・・いいよ?」
柊の言葉が・・・・俺の抑えていた気持ちを溢れ出させた。
俺は柊にキスをしながら腰のほうへ手をのばす。
「んちゅ・・・ふぁ・・・あ・・・・ッ」
柊の腰回りから下へと手をのばし、持ち上げるようになで上げる。
徐々に柊の口から荒がる息と共にリズムのいい吐息がもれる。
「くぅ・・・ずみぃ・・・くん!あったぁ・・・かいよぉ・・・!」
俺が今できることは九澄大賀として柊愛花を支える事・・・・
最初から・・・最初から何も変わっていなかったんだ・・・・柊は柊で・・・何も変わっていなかった!
逃げていたのは・・・俺だ!だったら・・・遅くても・・・・それでも・・・・
「柊・・・・・俺は柊が好きだ・・・・」
2度目の告白。柊は涙を浮べ腕に力をこめる。
それがただ嬉しくて・・・・
「ひゃ・・・あぁん・・・あぅ・・・・」
柊の耳に口付け甘く噛んだ。その際手は柊の形のいい膨らみに添える。
柊はそれなりに敏感らしい。手の動きに合わせ可愛い喘ぎをもらしている。
そのまま・・・・柊の首まで舌を這わせ制服の上をはだけさせる。
「あ・・・・・あぅ・・・・・恥ずか・・・・しぃ」
あたりは暗い。でも月明かりに照らされ柊の姿ははっきり見える。
それはとても綺麗だった。柊は顔だけでなく体まで赤く染まり行為に身を預ける。
胸の感触を手で直接味わう。吸い付くような心地よさ、やわらかいのに弾力があり、それでいて柊の声が聞こえる。
横からキュッと押し上げるように掴むと柊の声が大きくなる。
強弱のステップをつけ優しく揉むと柊の声はまたテンポのよいあえぎになり柊はどこか切なげな声をあげる。
「んん・・・・んはぁああ・・・・あ!・・・・あぅ・・・・ひゃん!」
先端で反る柊の蕾を口にふくむ。コリコリした感触を口の中で味わい徐々に大きくなる感覚を感じていた。
味は無いけど柊はどんどん高ぶっている気がした。呼吸のテンポが速くなり、そのたびに胸が揺れる
柊の体温が、声が、鼓動が俺を同時に高ぶらせた。
柊の乳首を味わいながら軽く噛んでみる。
「きゃん!あ・・・あぁ!・・・ん・・・・んあぁぁ・・・・!ひゃん!あぅ・・・ひぃう!ひゃめ・・・てぇ・・・・りゃめ・・・やぁぁあ・・・・・」
柊はうなされるように呟く。
軽い絶頂が近いのだろうか?柊の声に焦りと戸惑いの色が見え隠れする。
139 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:37:30 ID:/D/dkUTy
柊は悲願するように話してくる。
「くず・・・みぃ・・・・くんん・・・!苦しい・・・よぉ!・・・ヤメ・・ひゃぁめ・・・・てぇぇ!・・・お願い・・・・許して・・・・く・・・ずぅぁあああ!!」
柊の痙攣が大きくなる。軽くだが達したのだろう。
柊は虚ろな眼でどこかを見つめている。
口からは唾液が垂れだらしない顔ともいえる。だがそれ以上に可愛く、自虐心をかき立てられる。
俺は本能のまま柊を壊してしまいそうな自分を抑え、そのまま優しく続きを行う。
柊を抱きかかえ体勢を横にさせる。
そして柊の腰を持ち上げ下着が目と鼻の先にある状態にする。
「やぁ・・・・・やぁぁあ・・・・恥ずかしい・・・・九澄くぅん・・・・」
柊は口では抵抗するが体は抵抗しない。それともさっきの感覚で出来ない・・・・のだろうか?
そのまま柊の下着越しに舌を這わせる。
柊の声が艶かしい、悲願の声になる。
「んやぁぁああ・・・・!あ!・・・・あぁぁあ!んあ!くず・・・・みぃ・・・・くんぁ!」
下着を脱がし柊のそこに直接口をつける。
柊はもはや声にならない声で喘ぐ。
「〜〜〜!〜〜〜!!」
そのまま達してしまいそうな柊への責めをやめる。
「〜〜っはぁ!・・・・え・・・?ん・・・・んん・・・・あぅ・・・・九澄・・・君・・・・?」
柊は腰をもじもじと動かし「どうして?」といいたげな顔で見上げる。
俺はあまりすると柊の苦になるのではないかと思って次をしようと思ったのだが・・・
柊には意外と好評だったらしい。俺はもう少し次を後にし、耳元で囁く。
「よかった?して欲しい?だったら・・・・言ってくれないと分からない」
自分でも意地が悪いと思った。でも今の何をしても感じてそれに必死で耐える柊を見ているとどうしてもそう言ってしまう。
柊は顔を真っ赤にし涙を浮べ不安げな顔でじっと俺の眼を見て・・・
「あ・・・して・・・・欲しい・・・・よ・・・もっと・・・して・・・・・」
「何を?」
「!・・・・く・・・九澄君のお口で・・・・わた・・・しの・・・・お・・・お・・・・ッぅ・・・・」
さすがに可愛そうになってきた。俺は謝罪の意味を含め柊を愛でる。
「冗談だよ・・・・ごめんな」
俺は柊の秘所に思いっきり口をつけ舌を中へ押し入れるようにのばす。
するとあふれ出る蜜が必然的に俺の口を汚した。
無論。俺は全て舐めるように口で受け止める。
「んぁぁぁ!!!・・・・・やぁぁ・・・・・ひゃあ!・・・・んあ!・・・・きも・・・・ち・・・いぃい!おかしく・・・なっちゃう・・・・」
俺の責めをそのまま受け止める柊が愛おしくて、俺は目の前で膨れ上がる敏感な豆を吸い上げた。
「〜〜〜〜〜〜!!?!!!??」
そのまま柊は達しビクンと体が跳ね上がる。
俺はそれでもしばらく柊を離さなかったが、柊の声が消え入りそうになって慌ててやめる。
「柊・・・・いれるぞ?」
柊はこくんと頷き、俺は確認すると息を吸って服を脱ぐ。
グッと柊のモノに俺は先端をつける。
なかなか入らない・・・・でも焦っちゃ駄目だ・・・・そのまま・・・・
グッ!ズチュ!!
ようやく入ったそこはあまりにも気持ちよく我慢しなければ一気に果ててしまいそうだった。
一方の柊は苦しそうに声を必死でこらえている。その姿を見た瞬間俺にブレーキがかかる。
「ごめんな・・・もうしばらく・・・・ゆっくりいこう」
柊は苦しそうに耐えていく。どのくらい・・・経っただろう?
少しずつ・・・・少しずつだが潤いが戻り、柊の声に湿っぽさが戻ってきた。
「ッ!ッ!あ・・・・ぐぅ・・・・ッは!」
柊は泣きじゃくった顔で唾液をたらし『自分ではなのも出来ない』という顔だった。
ズチュ!ニチュ!!ズッッ!!!」
「!・・・・・〜〜!〜〜〜!!!」
限界・・・・・か・・・もう我慢するのも限界だった。
お互い限界を向かえ柊は声をあげずに痙攣が激しくなる。
一気に締め付けられ俺も対応しきれない。そのまま柊の中へ俺を注いでしまった。
140 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:38:10 ID:/D/dkUTy
・・・・・・・・・長い静寂。その中で俺たちは二人だった。
「まさか・・・・・教室でやっちまうとは・・・・」
「九澄君・・・・」
「ん・・・?」
「九澄君は・・・・・ずっと・・・ずっと一緒にいてくれる?」
「・・・・・ああ」
「ホント?」
「・・・・・ああ」
「ッ・・・・・嬉しい・・・!」
柊はギュッと俺にしがみつく。でも・・・・俺の決断は決まっていた。
長い年月の中で・・・本物のゴールドプレートになった俺の願いは・・・・
今の柊が嫌いって訳じゃない。でも・・・・俺の願いはそれしかなかったんだ。
もう一度・・・・柊に・・・・・
『運命の車輪は廻る・・・それは・・・決断の時』
――――― それでは・・・・・願いを言ってもらいましょうか九澄大賀君。
「はい・・・・俺の願いは・・・・」
そんなこと決まってる。俺は柊に・・・・
「願いは・・・・・柊の・・・・」
静寂の中で柊が俺を見つめてくる。
「柊の・・・・母親が見たい」
ザワッ・・・・と周りが話し出す。
「柊に・・・・・柊の母親を見せてやってくれないか?」
「それで・・・・いいんですね?」
何を迷っていた?「柊の記憶を戻してくれ」?そんな願いが無くても俺と柊は結ばれた。
なら願わなくてもいい。俺はたとえどうであろうと柊が・・・・大好きだったから!
「ああ!頼むよ!」
周りが光る・・・・・その中で俺はどこか懐かしく・・・どこかに見覚えのある人影を見た・・・・
でも・・・・顔を確認することなく俺はそこを去った・・・・・
141 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:39:08 ID:/D/dkUTy
「柊先生」
「わかってます」
プレートを取り出しそれを投げる。あたりではまだ蕾でしかなかった桜が花を開き始めた。
「すげぇ・・・・」
生徒の誰もがそんなことを呟く。
「お母さん・・・・?ッ・・・お母さん!」
光の中で母の影と娘の影は一つになった。
―――― いい人・・・・見つけたね
そういった気がした・・・・私は・・・・そうだった・・・・九澄君は・・・私の・・・!
「お母さんにあえて良かったよ!」
お母さんは言った。全て理解したように・・・優しく。
――――― いってらっしゃい
私は全て含めて・・・・大きく言う。
「うん!」
たく・・・・なんだよこの桜は・・・・別れの花ってか?
「はぁ・・・・これでよかったんだよな・・・・?俺の存在は柊にとって過去の重荷にしかならないんだよな」
タッタッと音が聞こえた気がした。
振り向けば柊でもいるのかな?なんて・・・・まさかな。
「九澄君!」
え・・・?マジかよ・・・・?
「九澄君!大好きだよ!昔も・・・・今も・・・これからも・・・・!」
「柊・・・・?まさか・・・・」
柊は俺に抱きつき泣いている。
俺は・・・・嬉しかった・・・・でも・・・・な。柊。
「柊・・・・よかったな。でもさ・・・・・ッ・・・・ちょっと・・・後ろ向いてくれ」
柊は不思議そうにするが後ろを向いてくれる。
俺はそんな柊を後ろから抱きしめた。
「く・・九澄君!?」
俺は・・・・しばらくそのままでいた。柊もそんな俺を受け入れてくれた。
だから・・・・・俺は柊から離れて言う。
――――― ごめんな。
風が吹き抜ける。消え入る声は届いただろうか?
「え・・・・・?」
約束・・・・守れなくて。
142 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:41:22 ID:/D/dkUTy
『運命の車輪は音を立て廻る・・・・それは・・・・これからを継げる一つの終わり』
「え・・・・・?」
九澄君が変なことを言った気がした。
後ろを振り向くとそこには九澄君は倒れていた。
「九澄君!!」
何があったのだろう。九澄君は倒れたまま動かない・・・まさか・・・
九澄君を確認する。呼吸はしている・・・・よかった。
「でも・・・・なんか変・・・嫌な気がする・・・・九澄君」
――――― ごめんな。
その言葉がよぎる。まさか起きないなんて事ないよね?
寝不足なだけだよね?それとも疲れたの?
そう言い聞かせているのに涙があふれ出る。
九澄君・・・・・起きてよ・・・・起きてよ・・・・・
「やはり・・・・か」
バッと振り返る。そこにはお父さんがいた。
「お父さん!やはり・・・・てどういう事!?」
私はすがるようにお父さんに聞く。
お父さんは分かりやすく・・・・でも簡潔に言った。
「もともと・・・・一人で死人を呼び戻す事はできん。たとえ・・・ゴールドでもだ」
お父さんは話を続ける。
「ゴールドでもこの世の理を害する事はできん。ひとりでは・・・だが。
しかしそいつはやってのけた。なぜか分かるか?そいつは・・・・他のものも使ったんだ。」
他のもの・・・・?それが・・・・九澄君が寝ている理由?
「プレートのポイントとはある意味人間で言う行動する為の肥しだ。得たエネルギー以上の行動は出来ない。
つまりこの男は足りないエネルギーを自分で払ったんだ。そうでなければ寝ることは無い。
命をつかえば既にこいつはいなくなる。だが寝ているならば答えは一つ。エネルギーの消費による持続行動だ」
「じゃあ九澄君は起きるの?」
お父さんは黙って・・・続けた。
「わからん。起きるのは確かだ。今は減った分を取り戻しているのだからな・・・問題は・・・」
いつ起きるか分からない・・・・・・?そんな・・・・せっかく・・・せっかく九澄君の事思い出したのに・・・・
これじゃあ・・・・意味無いよ!
私はその場で泣き崩れる。お父さんは何も言わずじっと見つめている・・・・
そしてお父さんは最後に・・・・言ってくれた。
「・・・・・そういえば愛花。願いはどうした?」
「え・・・・・?」
「願いだ。皆もう終わってる頃だろう。まさか自分の願いはないとでも言うまい?」
「あ・・・・!」
「九澄のような無理な願いは望むなよ?」
私は走った。全力で・・・・願いをかなえるために!
後でお父さんにお礼言わないと・・・・でもお父さん・・・・ありがとう!
「ふぅ・・・らしくないな・・・・・」
桜の木の下で呟く男が一人。寝ている少年を見下ろしながら言った。
「勘違いするなよ?これはアイツに会わせてくれた礼だ。決して愛花のことを認めたわけではない」
男は見るさきを変え空を見た。
天を仰ぐように拳を上にのばす。
「まったく・・・アイツも愛花も男を見る目がない・・・・こんなどうしようもない男のどこが良いんだ?」
向こう先が光った。同時に少年に生気が戻っていく。
「早いな・・・・そろそろいくか・・・・あぁそうだ・・・・もう一度言う。
たとえまた私の目の前に現れてもただで愛花は渡さんぞ?絶対に貴様のような奴に大事な娘はやらんからな!」
吐き捨てるように男はいった。
でもその顔は何を思うでもなく嫌な顔はせず・・・
無論先を祝うような顔ではない。そして最後に続ける・・・・今の本音を・・・・
―――― 覚悟しておけよ
143 :
ZEH:2007/08/04(土) 12:42:04 ID:/D/dkUTy
「ん・・・・・?あれ?何で俺・・・・」
俺は目が覚めたあと状況が理解できなかった。確か俺は・・・・
「起きた?九澄君」
「ひいら・・・・イテッ」
柊は俺の頭をポカポカたたく。
「ばか・・・・ばか・・・・約束したのに!」
「ごめん・・・・でも・・・・・ありがとな・・・」
何があったかはすぐ理解できた。だからこそ満ち溢れていたのかもしれない。
「ひいら・・・・愛花・・・・」
「・・・・・何?」
『これからは・・・・ずっと一緒だ』
――――― 季節はすぎて・・・・忘れていくものもある・・・・
――――― でも・・・それでも俺は・・・この人を守っていく
――――― この世で一番大切で・・・・大好きな人を・・・・
――――― それが・・・俺の『願い』だから・・・・・・・・
あとがき
本当は昨日投下予定だったのに遅れてしまいました。少し長い話になりましたがどうだったでしょうか?
自信は持つといってもやはり住民から見ればつまらんという感想もあるでしょう・・・・
でも頑張って書いてみました。呼んでくださったかた。ありがとうございました!
次にまた投下するときはよろしくお願いします。
GJ!!!!!!
やっぱ王道はいいな!
乙!!!!
>>143 GJ!!GJなんだけれども最後の方がよくわからんかった…
おおおGJ!!来てて良かった!
ところでふたなり子ってどの子?揉まれ子みたいなもん?
ふたなり でググれ
ふたなりなんかは嫌いな人もいるからな
いらん難癖をつけられんためにも
作者は投下前に作品の傾向を明記するなどして注意を促した方が良い
>>146 モザイクパニックで久美といる黒髪の子
なんかまとめでそういうあだ名みたいだから書いただけで普通の性別で書いてる
ややこしかった、ごめん
150 :
ZEH:2007/08/05(日) 12:11:55 ID:1jZAOcVd
>>145 すいません。以後気をつけます。
>>149 あのモザイクが股から上に反ってる人ですか?ちょっとおもしろそうですね。
今週のエムゼロを見て3人娘×大賀を書いてくれるスレはここですか?
どもども。こんばんわ。
現在連載作品の完結に向け頑張ってますので、もう少しお待ちを。
それとこのまえ投下した大賀×愛花がかなり不満だったので、
このペアで一つ作ります。ストーリー自体はもう考えてます。
それも完成したら、自分は御役御免かな……と思ってます。
投下の前日辺りに予告を入れますので目印にしてください。ではでは。
154 :
ZEH:2007/08/08(水) 19:05:12 ID:dWx2zea6
え〜と・・・・・なんか言いずらいっすけど・・・・
突然ですが俺、筆を折っていいですか?なんか頭も体も・・・・なんで。
また創作意欲が復活した時まだここが存在してたら筆を・・・・なんで・・・・そんな時が来たらまた厄介になります。では。
偽者乙
保守
157 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/11(土) 23:05:45 ID:ztcUSJPC
過疎ってきた・・・。
誰か援軍を!
こんにちは。
なんか過疎ってますね……。
私の投下が遅れてるせいかな。お盆を満喫されてるから……と前向きに考えます。
もう少しかかりそうです。本当に申し訳ありません。
(゚∀゚)キニスンナー
みんなのんびり待ってるから
エロパロなんて一部除けばどこも基本はマターリ
>>159-160さん、ありがとう!
頑張っていい作品作りますので、待っててください。
それと、
>>154はマジなんですか?
ホントなら……早く帰ってきてください。お待ちしてます。
162 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/13(月) 11:15:32 ID:/4geo+R4
>>161 私も楽しみにしてるのでお願いしますね
のんびり待たせてもらいます
保守
捕手
こんにちは〜。
ようやくエピソード4、投下できそうです。
今日中に公開できるよう頑張ってます。
それでは…気休めの予告を。
最後の主人公は観月。
冒頭の時間軸はエピソード3と同時期になります。
観月視点での進行ですので、九澄フィルターをかけて御覧下さい。
ではでは、もうしばらくお待ちを。
待ってま〜す。
待ったかいがあったぜ
楽しみにしてますよ〜
私は広間を出る。
ジッとしてられなかった。
アイツは……九澄は………。
九澄は好きなヒト……いるのかな。
……いるよね……やっぱり。
聞きたいけどっ……ううぅ…。
さっき大門に言った台詞も。
アイツに会ったら…なんて言ったらいいの……?
……ってなんでそんな心配をしなきゃいけないの!?
それになんで私がアイツの好きなヒトなんか気にしなきゃならないのよ!!
言ってやらなきゃアイツが変わらないじゃない!
………ちがうわ!変わってもらわないと!!私が困るの!九澄に…私のこと………
それに……なんて誘えばいいんだろう。
普通に「ちょっといい?」かな…
言い方がきついかな?「九澄と…お話したいなぁ…」
…………………………………。
なにこれっ!!なんで私がこんな媚び売った言い方してんのよ!
……うーん。
そうか!夏休みの自主練習、一緒にしようっていう流れで行けば………!!
私は頭の中で想像してみた。
モワモワモワ………。
段々と想像が膨らんでく。
その時の理想は――――現実よりも甘く……幸福だった。
― EpisodeW 観月×大賀
翼を持たぬ少女、翼と為る少年 ―
「あっあのさ。九澄」
「観月か。どうした?」
「あのさ…次の月曜日、魔法の練習手伝ってくれない?」
「ああ、いいぜ。俺も月曜日は用事があって学校に行くし」
「(よかったぁ…でも……)こっちは練習っていっても真剣なんだからね!手を抜くような事はしないでよ!」
「おいおい、どうしたんだ?いきなり」
「女だからって手加減はいらないってことよ!そんなこと何度も言わせないでよ!話の流れでわかるでしょ!?まったく……」
「男ってやつは……だろ?」
「えっなんで言っちゃうのよ!」
「おまえの口癖だろ。毎回聞けば覚えるって」
「そんなこと覚えないでよ!……もう恥ずかしくて言えないじゃない……」
「そうか?俺はそういうの平気で言う観月が好きだけどな」
「えっ……九澄……いま…なんて……」
「!!!!(いったーっ!!!!)」
私は辺りを見回す…壁に頭をぶつけていた。
どうも自分の世界に入ると周りが見えなくなるわね。
うずくまってた私は顔を上げる……すぐそこに休憩室が見える。
少し扉が開いていた。
痛みも癒えて来たので、私はススッと其処へ足を運ぶ。
部屋からは光は漏れてこない。
電気は消えている。
………静かだ。
柊さんが眠っているから……当然よね。
でも、九澄は?
アイツは……何処にいるんだろう。
自分の部屋に戻ったのかな。
………………。
やっぱり……シャワーとか…浴びた方が……いいのかな。
!!!!ちょっと!いきなりなんてコトっ……/////
そりゃあ……もしかしたら……アイツと『何か』あってからじゃ……うん。
まだ心も揺らいでるから……胸が熱いから。
私は静かにその場を去り、着替えとパジャマを取りに自分の部屋へ……。
着替えを取り、シャワールームに行き……私は冷たい雨を全身に浴びる。
心を落ち着かせないと。
火照った顔を冷やさないと。
アイツに……もしかしたら……この肌に。
私の肌に…九澄の手が触れるの…かな……?
――――――恥ずかしい。想像しただけでも。
私はボディソープをスポンジにつけ、身体を洗う。
たくさんの泡が私を包む。
………ふわふわした柔らかい雲。
九澄にギュって………されたら……もっと……。
私はスポンジを肌の上で滑らせる―――首。肩。背中。そして、胸。
胸の先にスポンジが当たる。
身体がピクッと反応する。
スポンジが肌を滑る。
後ろから、九澄が私を……触ってるように。
片手は自分の手で胸を弄る。
スポンジは下へ。もっとも敏感な処へ。
「だめっ……抑えないと……でも……、、、」
止まらない。
ほんとに……九澄にされてるみたいに。
「やっ……いやあぁ………なにこれっ……おかしくっ…んアっ!!……なりそぅ…」
擦ると痺れが全身に満ちる。
意識の何処かにあった……願望。
男とそんな事……絶対無いと思ってたケド…。
アイツになら……わたしの……。
「ひゃぃっ!!!…、、、あぁあぅ……はぅんっ!!」
冷まそうとしたのに、逆に熱くなる。
乳首が硬くなる。下が……疼く。
入り口の上の突起物に触れたら………すごくキモチイイ。
「どうし……こんなっ……キモ……ち…」
全身の筋肉が快感に耐えかねず、私は身体を丸くしてうずくまる。
床のタイルに伏しても……手は止まらない。
止めたいのに……止まらない。
抑える自制心。駆り立てる本能。
「オカし………、、く!!?ひゃやぁあ!!!………、、、!!、んああぁっ、、、」
抑揚の無い声を出しながら……私の身体はビクビクと振動する。
九澄大賀。
アイツの事考えたら……胸が熱く、苦しくなる。
男なんてみんな……同じだって。
自分に言い聞かせてた。
実際、いい思い出なんて……なかった。
だから……男なんて。恋愛なんて。男を好きになるなんて―――――
九澄大賀。
不器用で、キザで、カッコつけで………。
でも。
でも………そんなアイツが………好きになったの。
わっ私だって、、、不思議で仕方なかったのよ!?
あんなに断固たる決意だったのに……。
最初は……私に抱きついた変態としか思ってなかったから。
でも洞窟では……身を挺して私たちを助けてくれた。
GPをもってるからって天狗になってるんじゃないかって思ってたけど、魔法は一切使わない。
柊さんに聞いた――――『魔法に頼りたくない』
クラスマッチでもそうだった。
今思うと……疑心暗鬼でアイツを疑ってた自分が……恥ずかしい。
もっと素直に……なれたら……。
「……ううん……??!わたし…なんで……」
眼が醒める。
……やだ!こんなとこで寝てたの!?
私は急いでその場を後にし、脱衣所へ。
身体を拭いて、パジャマに着替える。
時間は……11時半。
「一時間近くあそこで――――……くしゅん!!」
風邪ひいちゃったかな……?
でも……こんなとこで引き下がるなんてっ!
私は九澄の部屋に向かう。
いつものようにたくさん言葉が溢れて……。
気がついたら、もう目の前に目的地。
――――――私は大きく深呼吸して、扉をノックする。
………ガチャ。
直ぐに扉が開く。
「ん?観月か?どうした」
「あっあのさ。九澄……ちょっと…いい?」
「ああ。ちょっと待ってろ」
九澄は一端部屋に戻る。
………部屋を綺麗にしてるのかな。
そんな些細な事でも……私は嬉しかった。
「よし!入っていいぞ」
「それじゃあ……入るわよ」
あくまで客室だから九澄の部屋じゃないんだけど、九澄の匂いがする。
私はクマのスリッパをパタパタと音を立てながら部屋に入った。
部屋は自分のものとあまり変わらない大きさだった。
一人用だから、シングルベッドが一つあるだけ。
……って、なんですぐベッドを確認してるのよ……。
一人で色々な事を考えてたら……。
「どうした?観月。座れよ」
九澄はベッドに腰かけ、隣に手招きする。
「わ……わかってるわよ!」
私は恐る恐る九澄の隣に座る。
……やばい。
………………………………。
………会話が……言葉が出てこない。
「んで、話って?」
九澄が振ってくれた。
………そうだ。月曜の約束。
でも…約束なんて……恥ずかしくて……。
――――――こうなったらヤケよ!!!
「あのさ…次の月曜日、魔法のれんし…くしゅん!!」
私はとっさに手で口元を隠す。
「おい…大丈夫か?」
「だっ…大丈夫よ……ちょっとシャワー浴びすぎて………くしゅん!!」
「つうか、よくみたら髪まだ乾いてないじゃんか!!ちょっと待ってろ」
そう言って九澄は鞄から大きなスポーツタオルを取り出す。
「タオル取りに行ってる暇ないし、早く乾かさないと」
九澄はそのタオルで私の頭を包む。
自然とお互いの距離が近くなる。
「ちょっちょっと!!私は大丈夫だって……」
「いいから黙ってじっとしてろって。俺が乾かしてやるから」
九澄は優しく私の髪を撫でる。
タオル越しだけど……すごく温かかった。
そして……九澄の匂いも。
……九澄は黙って私の髪を乾かす。
「なあ…顔真っ赤だぞ?ホントに大丈夫か?」
「うっうるさいっ!!やるなら黙ってやりなさいよ!!」
アンタのせいなんだから……。
そんなに近くで頭撫でられたら……。
恥ずかしさで九澄を見れず、私は終始俯いていた。
「……でさ。観月はさっき言いかけてたのってなんだ?」
「えっ……それは………ほら…もうっわかるでしょ!?」
「いやいや、わかんねえから」
「だから……魔法の練習手伝ってくれないって言ったの!」
「………いいけど……どうすりゃいいんだ」
「(やった!!)えっと……とりあえずいま習得してる魔法を観て、色々とアドバイスでも……」
「………それ、別に俺じゃなくてもいんじゃね?」
「!!ちょっとなに言ってんの!!?私は…アンタじゃなきゃ……」
「へっ?」
「……私に恥かかせないでっ!!」
「怒ったりお願いしたり、忙しいヤツだな観月は」
「そうじゃなくて!!!」
もう…いつもこんな感じ…。
折角二人きりで居るのに……。
「――――よし!できたぞ」
九澄は丁寧に私の髪を乾かしてくれた。
「ちゃんと乾いてるかな……確認するぞ」
私の髪に直に触る。
よしよしと……撫でるように。
思いがけないたて続きの展開で私の鼓動は速くなる。
再び胸を指す痛みと熱。
知らぬ間に私の右手はパジャマの裾を握り締め、左手を胸に当てていた。
何度も深呼吸して九澄を……見る。
――――わたし。ドキドキしてる。
いつもキザで強気な九澄とは違った表情。
優しくて…本気で私の事を心配してる九澄の顔。
掌から伝わる九澄の温もり。
その温もりに同調して私の身体も熱を帯びる。
胸が…苦しい……。
次第に呼吸も荒くなってる。
………もう…ダメ……耐えられない……。
――――――ごめん神様。ほんの一瞬だから………。
私は眼を瞑っていた。
私の唇は九澄の唇に重なっていた。
強引でとても恋人同士がするようなものではなかったけど…それでもよかった。
私はぱっと離れる。
上目でゆっくり九澄を観つめる。
肝心の相手はポカーンとしている……。
「????………ええとっ……これって…」
「………そうゆうこと」
私は必死で強気な態度をとった。
内心は恥ずかしくて逃げ出したいのに……。
九澄の瞳をじっと捉える…離したらダメ…。
伝えなきゃ…その時は今しかない。
私は意を決してその言葉を放つ――
「九澄。あなたが好き」
―――――……漸く出た台詞。
「…観月…泣いてんのか……?」
九澄の言葉でやっと気づいた。
段々と視界が霞んでいた………やだ……私泣いてる?
「ちっちがうの!眼にゴミが―――……えっ」
呼吸が………止まる。
何故か。
其れは簡単だった。
私の傍に九澄がいたからだ。
私は九澄に抱かれている。
私の顔の直ぐ横に九澄の顔。
私の身体に触れる九澄の身体。
一番望んでたコト。それをしてくれた九澄。
私は嬉しくて涙を流した。
「……ううぅ…ひっく………ひぅあぅ…くずみぃ………」
一度声に出したら止まらなかった。
それと一緒に身体の緊張が解れた。
九澄にしがみ付く。
九澄は何も言わず私を抱きかかえててくれた。
私が泣き止むまで。ずっと。
「もう…大丈夫か」
「……うん。大丈夫」
ひとしきり泣いたからスッキリした。
でも……やっぱりこの密着感は恥ずかしい。
それは九澄も同じだったみたい。
「なあ……そろそろいいか?」
そう言って九澄は私から離れようとする。
ダメ。離れちゃダメ。
離れたくない。
もっと…強く抱いてよ。
ぎゅっと強く。強く抱いて。
―――――そう正直に伝えていれば……良かったのかな。
九澄はゆっくりと私から離れた。
………嫌な予感は何故か当たるもの。
「………観月」
九澄が重い口を開いた。
私は黙って答を待つしかない。
ほんの数秒の沈黙が悠久に思えた…
「俺は………観月とは付き合えない。ゴメン」
「……謝るなら………断らないでよ……」
「……ゴメン」
「………また謝ってる」
「それしかできない」
「断ったのは……好きな人がいるから?」
「いやっ……そういうわけじゃ…ほんとに悪い…」
やっぱりいるんだ…好きなヒト。
嘘が下手なヤツ。
「もうやめなさいよ……卑怯よ!謝ってばっかで、自分のせいにして」
「………」
「好きでもないのにさっき抱きついたの!?やっぱりヘンタイじゃない!」
「…………」
「サイテーね。絶対許さないから」
「だからただ俺は断ったことに対して謝ってるんだ」
「だからそれをやめてよ!何度言ったらわかるの!?」
「俺は観月にすまないと思ってるから謝ったんだ!なんで怒るんだよ!?」
「怒ってなんかないわよっ!!!」
「怒ってるじゃねえか!!」
「…………………………」
「…………………………………………」
それからお互い黙ってしまった。
気まずい。どうしよう。
でも…とても切り出せるような空気じゃないし…。
私はずっと下を向いていた。
「どうしたら許してくれるんだ?」
「えっ!??……」
私は言葉に詰まった。
さっきは許さないって言ったけど…
「さっき言いたいこと言ってスッキリしたから……もういい」
「よくねえよ!これからずっと気まずい関係は……イヤだし…」
「それは…そうだけど…」
「お前の好きにしろよ。殴るなり蹴るなり。抱いたのは俺からだしな」
「私は…………たい…」
「???いま……なんて…」
「エッチしたいって言ってるでしょっ!!!何度も言わせないでよ!こんな恥ずかしいこと…」
私は顔を真っ赤にして怒鳴った。
また泣きそう――――――……って。
ええええぇぇえええ!!???
「ちょっちょっと……何言ってんのよわたし!今の無し!忘れて!!」
「観月………」
「だから違うのっ!!あくまでそれは私の頭の中で行われる事であって……ってまた私ナニ言ってんだか……」
「………観月」
「!!はっはひっ」
九澄の声に思わず素っ頓狂な返事をしてしまった…。
………九澄は私の肩を持っていた。
私をじっと見つめる九澄。
……恥ずかしくて眼をそらしたいけど…ダメ。
九澄の瞳を見返す。
………九澄が私を手繰り寄せる。
黙って其れに従う。
そして―――――私は九澄に抱きつく。
九澄は私の腰に腕を回す。
「………アっアンタみたいなゴーマンな男に限って初めてだなんてコトは……」
「!!!……いや、、、なんつうか…………」
「……なんで黙るのよ」
「俺の事はいいんだって!!それよりも…観月………初めてなのか…?」
「なっ!!何言ってんの!私を誰だと思ってるの!?」
恥ずかしくて…自分が処女なんて言えなかった。
やっぱり…しなきゃだめよね…?
「――――………観月……?」
「……!!なっなによ!」
「いや…ずっと硬直してるから」
「なっなにもないわよっ!アンタは大人しくしてればいいの!」
…………マズイ。
もうやるしかないわね。
私は九澄に回していた手をズボンへ。
ベルトを緩め、チャックを下ろす……。
「っておいおい…いきなりそっちかよ」
緊張で九澄の言葉は耳に入らない。
私は勢いよく九澄のズボンをおろした………。
…………………………………………。
………………………………………………………………!!!!?!?
「きゃあアあァあshdjjうぇfd!!!!」
「だァー!!なんでパンツも脱がすんだよおまえは!!」
…パンツまで一緒におろしたみたい。
九澄のいきり立った……アレが私の視界を支配した。
男のって…こんなのなの??
初めて観たそのグロテスクなモノに私は思わず叫んでしまった。
「コントみたいに綺麗に脱がしやがって……」
九澄は急いでパンツを履こうとする。
「ちょ…ちょっとまって!」
私はモノから眼を逸らしながら九澄を呼び止めた。
「私は……大丈夫だから!大人しくしてて!」
そう言って九澄のモノに触る。
すごく……大きくて、硬くて熱い。
まだ直視はできないケド、次は……。
「観月…やっぱり………初めてか?」
「違うったら!アンタは観てればいいの!」
……こういうときのために勉強してきてよかった。
色んな本を読んできたから……多分大丈夫。
右手で掴み上下に……。
………なかなか難しいわね…コレ。
「どう?………」
「…どうって……きもちいいに………きまってるって……」
握って擦ってるだけなのに……そんなにキモチイイの?
次は………確か口でするのよね―――――
口!!?こんな汚いモノを……できるわけ……。
え〜っと……味のないソフトクリームって思えばだいじょうぶ……だと思う。
「………観月……」
九澄は切なそうにこっちを観てる。
もう!わかったわよ!!……やればいいんでしょ………。
ソフトクリーム…ソフトクリーム………。
私はソフトクリームを舐めるようにやってみることに。
先端を舐めてみる。
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ。
「うぅ……くはぁっ!………やべえ……」
よかった!喜んでくれてる!
でも…この皮が邪魔かな…。
こいつのせいで舐めるとこが少ないし…。
私は皮の下に舌を滑らせて下にずらそうとした。
唾液のおかげで上手くいきそう…。
「うおぃ!!なにやってん……!!うわあぁ…くああァアっ…」
……九澄の声が大きくなってきた…。
私ってマズイことしたのかしら…?皮はズルリと剥けた。
これで舐める面積が増えたわ。
現れた剥き出しの部分を舐める。
―――ペロペロペロペロペロペロ。
裏の筋の所も舐めてあげる。
―――――チロチロペロペロチロチロチロ。
「うぅうぅ……やべえっ……すげぇキモチいい…」
今度は出っ張ったところにある溝のところ。
舌を溝に這わせる。吸ってみる。
ペロペロペロ…チュウゥウチュパチュパチュチュ……。
「うはぁあ!!ちょっとストップ!!出しちまうって!!」
私はビクッとして口を離す。
「何よ!アンタがキモチよさそうにしてたから……」
「……いや…マジでやばかったからさ………!!観月!!?」
私は咥えてみることに。
…………ちょっと。
アンタの大きすぎだって。
「くふぃに…ふぁいりきなふぁい…」
口をめいいっぱい開けて九澄のモノを押し込める。
「やばっ……すげえあったけぇ……観月っ……」
「ふぉお?」
確か……こうだっけ?
私は咥えたまま前後に動かしてみる。
いっぱい舐めたおかげで唾液と九澄の体液で滑らかに動く。
九澄の……大きくて顎が外れそう…それでも動かす。
ギュチュ……ピチャ……ジュプっ……。
動く度に何か……厭らしい音がする。
…ジュプ………ププゥ……グチュ……。
「うはぁあァっ……観月っもういい!離せっ……」
「??……ふぇっ?」
口を離すと同時に、九澄のモノから白い液体が放たれた。
口の中に。顔に。派手に飛び散る。
「ぐああぁ……ぐうぅ…」
「!!!んううぅっ!……ううぅうァア………ううぅ」
なにこの味…マズイってもんじゃないわよ!!!
ネバネバして…熱くて生臭い。
「悪い……気持ちよすぎて……つうか離れろて言ったのに……」
「アンタが出したモノでしょ!!?もう少しガマンしたらどうなの!?」
「コレだけは……男にしかわかんないって」
「また男……都合が悪かったらすぐそれなんだから!だから“男”っていうのは……」
「お前こそまたそうやって……マジで大変なんだぞ?!」
「ちょっと馬鹿にしてんの!?知らないわよそんなの!!っていうか知りたくないから!」
……なんかムードぶち壊し。
でも……最初が………九澄なら……わたし―――――
「……わかったよ。観月が言い出したんだからな。どうなっても知らないからな」
「!!!……くじゅ………みゅ…」
突然の邂逅。
九澄の唇が触れる。
私の唇を覆う九澄。
じゅんとした熱さに…感触に……私の心は奪われた。
「……ふあ……九…ず……m…i…んあ…」
私の小振りの舌に九澄の舌が絡まる。
熱くて柔らかな九澄の舌……。
絡まって……時折息を吸い込むと九澄の吐息も感じる。
私は九澄の腰に手を回し、強くしがみ付く。
力が入らないから……ずっとこのままでいたいから。
チャプ……チュプっと互いの唾液が擦れる音。
「はあぅ……もっと………九澄…」
私は九澄の唾液を……熱を欲しがる。
喉が渇いてる。ソレが欲しい。
腕に力が籠もる。
九澄のガッチリした胸板が私の胸を押し返す。
―――――私たちは……ずっと互いを紡いでいた。
どれくらい絡まってたんだろう。
実を言うと……私が九澄を放さなかったからなんだろうけど……。
気がつくと私はベッドに横になっている。
九澄がゆっくりと私の着ているパジャマを脱がす。
「あっ…明かり……」
「ああ…消した方がいいか?」
「……いいわよ、消さなくて」
「……そうか。わかった」
九澄は私に反論しなかった。
……急に男らしくなる。
さっきまではしゃいでたと思ったら……これだもの。
………卑怯なんだから。
「私は!!……アンタが償いたいって言う理由でこうされてるわけで……そのお……」
私がもじもじしてたら……。
「ひゃあぁっ!!!」
パジャマがはらりと脱がされる。
………一応、勝負下着は用意したんだけど……。
お気に入りの花柄のピンク。
「ねえ九澄……この下着、お気に入りのやつなんだけど……どう?」
「どうって………俺、男だからどれがイイかなんてわかんね」
「なにそれ?!もうちょっとないの?『可愛い』とか『似合ってる』とか……一応……勝負下着なんだからねっ!」
「そうか……悪かった。でも、観月なら何着ても似合うと思うけどな」
「もう……またそうやって上手いこと…前にも聞いたことあるんだけど……」
「観月のお気に入りなら大事に扱わないとな……つうか大きいな…」
九澄は優しく胸に触る。
ブラの上から……そ〜っと花柄をなぞる。
「……んっ…あっ……んあ……」
男はすぐに胸を掴んでくると思ってたから……私は身構えてたんだけど……九澄は違った。
優しく……丁寧に……胸に触れる。
やっぱり。九澄になら……私のはじめて………。
「……んンっ!……はぁ……ひゃぁ…」
なぞっていた指が私の胸全体を覆い、九澄の掌がゆっくりと私の胸に圧を加える。
……ゆっくりと指がブラ越しに食い込む。
「……下着越しでも柔らかい。綺麗だ。観月」
「やめて……よ……んあ!、、、はぅ……」
九澄の大きな掌が強弱を繰り返す。
ブラ越しなのに……感じちゃう。
さっきシャワールームで……しちゃったからかも。
………九澄は楽しむようにずっと同じテンポで揉んでる。
「……ねえっ……下着…取らないの……」
「わかってるって……」
九澄は腰に手を回す。
そしてブラのホックに手をかけて…………………。
…………………………………………………………………………。
……………………………………………………????
「ちょっと。何してるの?」
「……上手く…取れない」
「……………」
「お前……苦手というか…こんなの触った事ないっつうの!!」
「えええぇ!!なにそれ!」
「なんだよ!俺まだ高1だぞ!?当たり前だろ」
「………じゃあ…九澄……はじめてなの?」
「それは………なあ?」
「わかんないから!さっきもはぐらかしてたし、ホントは……」
「………初めてだ」
「……そうなんだ………じつは……わたしも……なんだけど…」
「……いや…観月は言わなくて良かったんじゃ」
「………………」
私は黙る。
カミングアウトした恥ずかしさじゃない。
私の中に埋もれた不満が……感情が溢れる。
凄く辛くて……我慢しきれずに破裂する。
「………観月?」
「…………怖いの」
「…………怖い……」
「男にはわかんないでしょうけど……こういうコトして傷つくのって……私たちなんだよ?」
「……ああ」
「男って……自分がキモチよくて……それだけっていう生き物だと思ってたから」
「そんなの……考えすぎだって…」
「じゃあ九澄は!?したいからするんでしょ!!?元々私を振っといてこんなこと……」
「……………好きだのしたいだの言ったのは観月だろ」
「!!!……だって……だってぇ……」
……私は泣いてた。
お互い矛盾した言葉をぶつけてて……虚しかった。
「好きだから……じゃダメなの……?」
「………観月……」
「九澄なら……九澄じゃなきゃダメなの………」
そう。九澄じゃなきゃ……貴方しかいない。
私のコンプレックスを………一番奥の痛みを獲ってくれるのは……。
九澄は私に覆いかぶさり……―――――「もう何も喋るな」
「…………九澄……」
私は九澄に身を委ねた。
ブラが取れ……胸が露になる。
もう恥ずかしさはない。
九澄は臆することなく胸に顔を埋める。
………舌が胸の先に触れる。
「………ンんう!!、、ひゃあ……いやぁ!、、……」
さっき自分で触ってた時よりも……キモチイイ。
九澄が……触れてる。舐めてる。
そう思うと………お腹の下の処が疼く。
「!!……はぅん……ひゃあ!…あんっ……」
犬のスキンシップのようにペロペロと九澄は舐める。
そんな姿を見ると……かわいくて愛おしい。
「九澄……!!!ひゃめっ!!……吸っちゃぁ……らめ…」
チュウ……っと乳首を吸われる。
快感が脳を揺さぶる。
歯を食い縛っても……口から声が漏れる。
「だめぇ……んんぅ!!、、、アアん!!……ひゃ……」
下の疼きが……強くなる。
痒くて……熱くて………。
触って欲しい。
この疼きを……奪って欲しい……貴方に。
私は九澄の手を患部に誘導する。
多分、私の顔は真っ赤になってたと思う。
九澄の指がパジャマの上から強引にソコに当たる。
……脚を閉じてしまう。
九澄も熱は感じ取ってくれたの……かな。
九澄の指が動く。
不器用に……それでも確かに探るように。
「く……じゅ……ここ……」
「………ああ。わかってる」
九澄は下のパジャマもすうっと剥ぎ取る。
最後の着衣。
其の上から九澄の指が触れる。
……湿った生地。
其のぬくもりはきっと九澄に伝わってるはず。
「観月……凄い濡れてる……それに…熱い」
「………うん……」
「じゃあ……イクぞ…?」
九澄は顔を感部に……。
………!!!
「ひゃぅ……んはあ!……」
何かが奔る。
………九澄の……舌…。
生地の湿り具合が激しさを増す。
私の愛液と九澄の唾液が混ざるから……。
私は痛みと快感に耐える。
「…はぁんっ!……ああん…ふあ……」
隅々を舌が跳ねる。
時折、出っ張ったつぼみを吸われ……痺れる。
「!!!ひゃめぇっ、、、そこぉ……」
「……ココが………いいのか」
私は小さく頷く。
………身体が思うように動かない所為もあった。
九澄はそれを聞くと、ゆっくりと下着を脱がす。
互いの糸が絡む下着を取り……九澄はつぼみを中心に攻め始めた。
「ああぁア!ううッ……もうぅ……やっ…ダめェ……」
声が次第に大きくなる。
それに呼応し、指が患部に……差し込まれる。
グいっと二本の指が滑らかに侵入する。
グッショリと酷く濡れた壁は、九澄の指を拒みはしなかった。
「……おかしく……オカシ、、……、ク……なっ!!……ちゃ…」
指が踊る。
私の傷口の中で……九澄の意思で踊る。
ジュワッと溢れる愛液。
指に絡まり……出口で九澄自身に捕らえられ……味わわれる。
「ひゃあ!!!んふぁ…、、…あはぁ…。……」
漏れても漏れても……止まらない。
私はイきそうになり、壁をギュウ!!……っと強く締める。
……壁に九澄の指が食い込む。
「!!!ひゃああん!……く…ずみのゆび……あったかいよぅ…」
「……観月だって…火傷しそうだ」
食い込んだ指が動き出す。
ジュプっ!!……ズチュ!!……パチュ!!……。
先程よりもずっと深い感度……生れる快感。
そして―――――……絶頂は突然訪れた。
「んんんあぅァアア!!!!…、、、…、、!!!…!…っ……っ…」
身体が何度も痙攣する。
呼吸が出来なくて……喘ぎ声さえ出ず、パクパクと口を泳がす。
「……じゃあ……入れるぞ」
「!!……は…く……み…っ……」
間髪入れずにクズミが患部に……押し込まれる。
ガチガチのクズミをワタシが包む。
……皮膚に浮き出る血管さえも感じ取れる。
激しく脈打つ血管をワタシが圧で押さえ込む。
「!!!……くあぁっ…すげえ締め付け……」
クズミはゆっくり前後する。
それを赦すまいとワタシがしがみ付く。
「やばい……すげえキモチイイよ……観月…」
「……はぅ!…アン!……ひゃぁ!……、、、」
クズミが押し込む度に抑揚のない喘ぎ声。
私は九澄に手を伸ばす。
互いの指が絡まる。
後は……唇。
自然にそれも交わる。
投げ出したように私の顔の横に絡まる指。
目の前に霞んで見える九澄。
……涙の所為で九澄がはっきり見えない。
「くぅうっ……観月……出すぞ……」
「ふぅぁあ………ふア…ふじゅ……むみ…!!!ンアアっああ!!!」
クズミが大量に吐き出す乳白色の麻酔。
焼け付く患部を満たし……染み込む。
私とワタシの意識は薄れ―――――熱が癒える。
私は笑ってた。
笑いながら泣いてた。
泣き顔は誰にも見せたくなかった……ましてや男なんかに。
「アンタの前だったから……流したんだからね」
この台詞……その後何度も言った気がする。
私は……九澄が好き。
「このままでいてね。私も貴方も」
この言葉は、幸せな今がずっと続くよう願ったモノ。
それでもまだ……素直になれないのは………。
きっと来るよね?もう一度ちゃんと想いを告げれる刻。
それまで……待っててね。
…………ちがうわ。待ってなさいね!!
―――――この様子じゃ…まだまだそれは難しそうね……。
以上でおしまいです。
今回の作品は少し前に言っていた大賀×観月を改良したものです。
さて……今回ですが。
ツン成分入れすぎたでしょうか?
一貫性がない……でしょうか?
感想をかいてくださると嬉しいです。
複雑な三角関係になってしまいましたね…。
残すはエピローグです。まったりしながらお待ち下さい。ではでは。
191 :
ZEH:2007/08/17(金) 23:48:56 ID:V+Rlaq84
GJですね!こういう作品は大好きです。前半から後半への進み方が良いですね。
こうしていると他の人の作品を見るとなかなかに創作意欲が湧いてきますね。
また完全になるまでしばらくは名無しとして他の方々の作品を見させて頂きます。
また筆を持つなら・・・・・自分の書きたかった作品を投下させていただきます。ではでは。
観月め…俺の九澄を奪いやがって…
(´;ω;`)ウッ
GJGJGJGJGJ!!!
ヨカタヨー
GGGGGGGGJJJJJJJ!!!!!!!!!
これはなんというGJ!!!!
196 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/21(火) 13:08:06 ID:GjrQnLQ2
GJ!!!
もう最高です!!
観月の純粋な気持ちがついに九澄に伝わった瞬間でした
今現在の停滞期を過ぎればきっと…!!
いくつかアンケート(質問)していいですか?(特に応えて欲しいのは●で)
●放尿ってスカですか?また嫌いですか?(放尿かスカ、もしくは両方で)
・組み合わせはありえない方が好きですか?そうじゃない方が良いですか?
・パラレルネタは嫌いですか?(キャラの性格が違う、設定が奇抜なども含んで)
●オチは基本的に気にしない(明るい、暗い、後味悪いetc...でもOK)
●エロはどちらかといえばあった方がいい。
一方的ですいません・・・・・でも気になるんでお願いします。
放尿はないわ
>>199 ・スカはちょっと勘弁して欲しい
・組み合わせは多少の接点持ちがいい
・パラレルは許容できるが改悪はやめてくれ
・オチは気にしない
・やっぱりエロパロ板なんでエロをwktkしてるがR-15くらいでも嬉しい
否定意見ばかりでスマン
でも199が何を書くのか今から楽しみにしてる
自分も一住民として答えてみます。
・二つとも好きじゃないです。
・出来れば接点もちがいいです。
・キャラはできるだけそのままが嬉しいです。
・バッドエンドでも大丈夫です。
・無くてもいいです。
個人的意見を書きました。
組み合わせの件はいくらか自身で接点の無い組み合わせを書きましたが、
喜んでくれた住民さんはいました。あの時はありがとうございました。
もっと言うと、フラグのある組み合わせは限りがあって、組み合わせが飽和してしまうんじゃないかと思い、
私は敢えて最近出番の少ない、余り無い組み合わせをやってきました。
もちろん、そのキャラが好きという前提で書いてます。
王道は他の職人さんに任せようかな……と思ってやってきました。
>>199氏、頑張ってください!待ってます!
もっと職人さんが増えて欲しいな。
203 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/26(日) 17:48:33 ID:OgLYYVAr
age
>>199 超個人的意見です。
・スカ、放尿モノはぶっちゃけ嫌い。
・接点はなくても萌える。
珍しいカプを発見すると嬉しい。
カップリングが広がるし、接点はなければつくれば良い!
漫画の中で接点はなくても似合いそうだなーって思う人達って結構いる。
・キャラは原作沿いの方が萌える。
奇抜な設定は凝っててグッド。
・バッドエンドもハッピーエンドも美味しくいただける。
・エロはあってもなくても良い。
パラレル以外はおk
206 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 17:16:54 ID:Yn+o7Y6q
ほす
個人的な好みでつ。
・放尿は許容(てか程度によっては萌える)。スカはNG。
・組み合わせはありえなくてもオk。
・キャラクタの性格とかは原作どおりがいいなあ。設定はパラレルもOK(エムゼロ使えるのが別の人とか)。
・オチはハッピーエンドのが嬉しい。
・エロは欲しい。でもせっくるでなくてもおk。
それどころかsageで保守できるからな
こんにちは〜。
今日の夜に投下できそうです。
まったりとお待ちください。ではでは。
211 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 20:33:13 ID:Z0zjoFCc
第一回聖凪高校一学年 C組×F組親睦会 二日目
― EpilogueT good morning, we rechain from the day before ―
ようやく月が沈み、陽が顔を出す。
それぞれのストーリーが一区切り、再び収束する。
ゆっくりと確実に絡まっていく十の意志。
「あっおはよう!久美、桜庭さん」
午前7時。
夏の朝日がキッチンに差し込む。
愛花は何時ものように朝ごはんの支度をしていた。
乾は愛花の側でお手伝い。
「おはよう御座います。柊さん、乾さん」
この家の主である桜庭と久美が共に現れる。
「くぅ〜〜〜っ………もうちょっと寝てたかったんだけどな〜」
「昨日決まったじゃない、朝ごはんは私たちで作るって。執事達は休みでいませんから」
「ん〜、まあそうだけどさ」
「柊さん、もうこんなに……皆さんが起きてからでもよろしかったのに」
「いつも朝ごはん作ってるから大丈夫だよ」
「そうですか……ヘンな事聴いてしまいましたね」
「そんなことないよ。なんか桜庭さん……昨日と雰囲気が違う?」
「!!!そっ、そんなことはありませんわ。柊さんはお客様なんですから」
「そうだよな〜なんか桜庭変わったよな〜〜(ニヤニヤ)」
「(………見てなさい………必ずや私が主導権を……)」
「………愛花。できたよ」
「ありがとうミッチョン!」
「ふああ〜〜〜ねみい〜〜]
津川と大門が現れる。
「ん?未だ四人しか起きてねえの?」
「じゃあ二人で残りの奴らを呼んで来て」
「おい三国!なに座ってくつろいでんだ!お前も来いよ」
「私は皿だしたり味見したりテーブルクロス敷いたり……」
「わ〜ったよ!!」
「僕に指図するなんて、三国は相変わらす強情だな」
「………何か言ったか?」
「いや。君のパートナーはさぞ苦労するだろうな…と思ってね」
「………あら。なんで私を見るの?」
「なんでもないよ、桜庭。じゃ、行こうか」
「……大門。少しは嫌がれって」
ということで津川と大門で残りのメンバーを起こしに。
「ここは効率良く、二手に分かれて行こう」
「たかが起こしに行くのに効率って……まあお前らしいけど」
「じゃあ僕は観月と影沼、津川は九澄と伊勢を頼む。それぞれ部屋が近いもの同士だ」
「そうだな。九澄には色々と聞きたいことがあるし」
「……じゃあ、頼んだよ」
まずは津川サイド。
津川は伊勢の部屋に向かう。
「つーかあいつ幹事だろ!?なにのんびり寝てんだか……」
ノックもせずに突入。
「オラァ!朝だぞ〜………って、起きてんのかよ」
「おう、津川か」
「……何やってんだ?」
「いや。昨日の記憶が……トイレに行ってから無いんだ」
「何だそりゃ?自前酒の飲みすぎなんじゃないのか?」
「そうなんかな……なんか物凄い脱力感と幸福感があるんだが」
「夢でも見たんじゃね?」
「夢……確かにそうカモ。思い出せないが凄くイイ夢だった気がする」
「とりあえず九澄を起こしに行くぞ」
津川は伊勢を連れて九澄の部屋へ。
「九澄〜朝だぞ〜」
津川と伊勢は九澄の部屋へ突入。
「zzzzzzzzz……」
「ククク……良く寝ていらっしゃるようですよ津川殿」
「昨夜は大層御盛んでしたんでしょうねぇ……伊勢殿」
二人はゆっくりと近づき……九澄を羽交い絞めに。
「!!!!!」
「おやおや旦那、眼が醒めましたか」
「だあ〜〜!!何だお前ら!!」
「さあて……話してもらいましょうかねえ。九澄殿?」
「お前らに話すことなんて……」
「まあまあ。朝メシ食った後にタップリ聞いてやりますか」
「……………」
九澄は黙って二人についていく。
言葉が少ないのは昨日の所為。
揺らいでいた。
自分の感情と彼女へのシンパシー。
そして大門サイド。
「……何だ起きてたのか」
影沼は二階のトイレで顔を洗っていた。
「おはよう大門くん。朝食でしょ?すぐに降りるから、先に行ってて」
「………ああ。」
大門は二つ返事でその場を去る。
「(……此方の意図を読み取るなんてな。なかなかやるな)」
大門が去った後、影沼は携帯を開く。
「起きたら乾さんからメールが来てて……。
『おはよう。先に起きて愛花と朝御飯作ってるから……早く降りてきて』って……」
さりげないメールに照れる影沼であった。
次は観月。
「(女子の部屋にいきなり入るのはマズイな。後で因縁付けられるのは嫌だし)」
ドア越しで大門は観月に声をかける。
「観月。起きてるか?」
「………………」
返事が無い。
「……入るぞ」
大門は断りを入れて部屋に入る。
観月はベッドでうつ伏せになって眠っている。
「観月、起きろ。朝御飯だ」
「…………う〜〜ん……」
大門は肩を揺する。
「………ふぇ?……!!!大門!?」
「そんなに驚くなよ」
「驚くわよ!!男に寝起きなんてっ……」
「……わかった」
大門は観月にすぐさま背を向け、部屋を出ようとする。
「………待って」
「……??」
「………その……」
「昨日の事か?後で聞くから。早く支度してくれ」
「……わかったわよ!」
「先に言ってるからな。寝癖、とってから来いよ」
大門はそう言って一階に向かう。
「……大門は何時も余計な一言を……」
観月は急いで支度をする――――――。
午前7時半。
ようやく全員が揃う。
夕食と同じ広間。同じ席順。
「こんな朝飯まともに食べるの久しぶりだわ、誰が作ったんだ?」
「柊さんと乾さんよ」
「普通の朝御飯のメニューだけど、人数が多いからいっぱい作っちゃった」
「そゆこと。男子は感謝して食べる事!」
「……久美。作ったのは私と愛花」
「………そうだっけ?」
「………………」
「もう久美!ミッチョン、すごい手伝ってくれたんだから!」
「わかってるって……そんな眼で見ないでよ、悪かったよ」
「さあ。折角の料理が冷めてしまいますわ。早く戴きましょう」
「「「「いただきま〜す!」」」」
何気ない挨拶も、みんなですると不思議と心弾む。
「ねえ九澄、こんなおいしい朝飯を毎日食べれたら幸せじゃないか?」
「なんだよいきなり」
「ちょっと久美っ!!なに言ってんの!?」
「ああ……幸せかもな」
「なにそれ。アンタらしくないわね……」
「……九澄くん。口に合わなかった?」
「いやっ!!おいしいよ柊、おかわり!!」
「あっうん、ちょっと待っててね……」
「……怪しいな」
「うん。怪しい」
「九澄〜、昨日は……」
「津川!後で言うから今は黙って食え!」
「(ビクっ!!)………」
「観月さん?どうしたんですか?」
「なっなんでもないわよ……」
「……顔が赤いですけど」
「さっき顔を洗ったからよきっと!」
そんなこんなで朝食は終わり……。
「なあ、折角だから海に行かねえ?」
津川が提案する。
昨日、散歩に行った時に思いついた案だ。
「海って、其処の海岸のこと?……いいですわね」
「えっでも私達、水着持って来てないよ」
「私のでよければ使ってください。毎年シーズンごとに買ってますから数は問題ないです」
「さすが桜庭だな……なんか全部用意してもらってすまないな」
「……主ですから当然ですわ」
「じゃあ早速あわせてみようよ!」
「え〜っと……俺達は?」
「……近所に売ってあるから飼って来てください」
「まあ…そうだよな」
という事で男性陣は水着を買いに、女性陣は試着へと向かった。
集合場所は海岸。
さて………どうなるんでしょうか……。
時刻は10時。
男性陣は入手した海パンを穿き、臨戦態勢であった。
「さて……いよいよ女性陣の登場ですよ、津川殿」
「そうですな伊勢殿。まあ九澄殿は……あの姫にしか興味は無いようですが……」
「お前らなに言ってんだ!!別に俺は……」
「君達楽しそうだね」
「大門……お前は俺達とこの心の高鳴りを共有できない男なのか!?」
「止めてくれ、そんな醜いモノを押し付けないでくれ」
「相変わらずのナルシストだなぁ。折角ブーメランパンツ勧めてやったのに」
「……(魔法が使えたら、狭視野の射手座を乱射してたな……)」
「お!キタキタァ!!」
ようやく女性陣が現れる。
「みんな遅れてごめんね!お昼作ってたから遅くなって」
「!!!ちょっ……三国!」
「どうした?」
「どうしたって……お前その水着………」
※女性陣の水着は原作で着用していたものを各自補完してお楽しみください……。
「桜庭のだからな。派手なのしかなかったんだ」
「ぶはっ!!!三国凄すぎ……」
少なくとも三人が同時に言った。
「ていうか他に人ほとんどいないじゃん」
「ココは避暑地にある小さな海岸ですから……家族連れの人達ぐらいですね」
桜庭は手際よくパラソルを差す。
「桜庭もかなりヤバイな……横からだと見えるんじゃないか?」
「さすが伊勢殿……恐ろしいほどの洞察力をお持ちで」
「……お前ら楽しそうだな」
「久美、運ぶの手伝って」
「!!!乾、それは…」
「おいおい……乾、スクール水着とは……またマニアックな…」
「ミッチョンに合ったサイズの水着が無くて……」
「私の幼少の頃のモノはこれしか持ち合わせが無かったものですから……すいません、乾さん」
「……………」
「(桜庭さん……あまり身長の事は……)」
「……すいません乾さん」
「久美に散々言われてるから……」
「似合ってるって!なあ津川?」
「ああ。可愛いよ!」
「さて……九澄大先生。柊姫君、いかがですか?」
「だぁー!!うるせえ!!」
「……九澄」
「!!………観月」
「似合ってる…かな?」
「………ああ、似合ってる」
「……あっありがと………じっ…ジロジロ観たら殴るわよ!」
「観ないと評価できないじゃんか」
「そうだけど……そうじゃなくて…」
「………観月…」
「ちょっと伊勢」
「なんだ?」
「なんか当初の趣旨から大分外れた展開になってないか?」
「まあいいじゃん!楽しまないとそんだ……グハぁ!!!」
「ジロジロ見るな!!」
「観るだろ…そんな水着着てたら……胸がこぼれそ…ギャアー!!!」
「アンタはココに埋めるから」
それから彼らはビーチバレーに砂の城を作ったりで二日目を満喫した。
校外で会うことのなかった彼らが、魔法を持たずに純粋に笑い楽しんだ時間。
そして………落陽。
沈む夕日に誘われるように、九澄はひとり海に浮かぶ真っ赤な球体を眺めていた。
― EpilogueU 二十分 ―
「九澄」
九澄の側に観月が声をかける。
「ん?どうした?」
「もうみんな館に戻るって……この後花火大会が対岸であるらしくて、
浴衣に着替えて観ようってなって……そのぉ………」
「行こう。みんなが待ってる」
「えっ……うん」
九澄は観月の背中を押す。
他のメンバーは少し先を騒ぎながら歩いている。
片道二十分の二人旅。
………愛花がふと振り返り、九澄と観月を見る。
不安の色に夕日の朱がゆっくりと溶け込んだ。
観月は手を繋ぎたくて手を伸ばす。
でも他の人の前ではそんな事出来ない。
二人は付き合ってるわけじゃない。
ほんの少しの勇気。
ほんの少しの距離。
観月のほんの……ささやかな願い。
「昨日はごめん」
「今更なに言ってんのよ…私の台詞、聞いてなかったの?」
「ははっ。また観月に怒られるな」
「私は………嬉しかったんだから………」
「…………」
「……九澄は?」
「えっ?」
「九澄は……?」
「俺も……嬉しかった。好きって言われて喜ばないわけ無いだろ」
「なにそれ!好きって言ってくれるヒトは誰でも良かったってコト!?」
「違うって……」
「……まただね。わたしたち」
「……ああ」
「わかってるわよ。………好きなヒト」
「!!なんで……」
「私を誰だと思ってるの!?アンタ観てたらわかるから!」
「マジか……じゃあ昨日の事は…」
「言わないわよ!……いい!?昨日の事はアンタとわたしだけの思い出ってこと!!……わかった!?」
「おう……わかった」
「わ、解れば……いいの……」
二人は石の階段を登る。
遊び疲れた二人には少し堪えた。
九澄は後ろを観る。
観月が辛そうにとぼとぼ歩いていた。
「大丈夫か?おんぶしてやろうか」
「誰がアンタなんかに!……こんな石段…平気…よ……」
「無理すんなって」
九澄はそう言って先を指差す。
そこには石段を登りきった一行がいた。
「だあ〜!!くっそー、負けたぁ〜!」
「津川さん、よろしく御願いしますね」
じゃんけんに負けた津川が、勝った桜庭を抱きかかえスケボーに乗る。
館に向かう並木道を一行は歩く。
「なんか津川が物凄く羨ましいんだが……殺意が沸くんだが……」
「伊勢は荷物持ち。男なんだから、さっさと持って!」
「頑張ってね、伊勢くん」
「僕は手伝わないからな」
「……よろしく」
「くそっ…俺ってこういう役回りなのね……」
九澄と観月はその様子を観ていた。
「な?もう少しなんだし、少しは男を頼れって」
「………わかったわよ…」
「九澄〜!!何やってんだ〜!?早く来いって!」
久美が九澄に声をかける。
「!!………やっぱりいい」
「何でだよ!」
「うるさい!………バカ」
観月は走りだし、九澄を置いて一行について行く。
「九澄く〜ん!」
愛花が九澄を呼ぶ。
九澄の想いは既に決まっていたが、観月とのやり取りで揺らいでいた。
自分を好きといってくれた観月。
自分が好きなのは愛花。
だから、昨夜の出来事が悔やまれた。
観月は言わないと明言した。
観月は俺の好きなヒトを知ってると言った。
それでも。
それでも九澄の答は一つだった。
今日、想いは伝える。
「……柊」
「どうしたの?九澄くん」
「後でさ……言いたい事があるんだ」
「言いたい……事?」
「ああ。大事な話だ」
「うん。わかった」
「じゃあ、行こうか」
九澄と愛花は並んで並木道を歩いた。
虫の鳴き声。
葉を揺らす風。
葉が擦れ、音色を奏でる。
二人は自然と手を取り合っていた。
九澄は愛花の顔を見る。
愛花は笑って答える。
――――もうすぐ空に大きな花が咲く。
― EpilogueV ふたり ―
全員の着替えが終わり、再び海岸へ。
夕日の朱が段々と深い蒼に侵食されていく。
海の向こうに見える花火を求め、八人は心躍らせながら向かった。
そう………八人。
「ヒヒヒ……九澄のやつ、まさか自分から愛花と二人きりになるなんてな」
「三国、確かに九澄の件はOKなんだが……」
「大丈夫だって。私は桜庭と。観月は大門と。ミッチョンは……」
「……おい。俺は?」
「伊勢は津川と一緒に焼きそばでも食べてれば?」
「うお〜い!なんじゃそら!」
「………あっ!!あそこに綺麗なお姉さんがいる」
「なに!!よし行くぞ津川!!!」
「伊勢!おいこらひっぱんな〜!!」
伊勢は津川を連れて三国の指差した方へ。
「………よし」
「三国さん。早く行かないと始まってしまいますわよ」
「そうだな。じゃあ行こうか!」
三国は桜庭の手を取って走る。
「ちょっと三国さ……そんなに…強く握らないで……」
「ははっ!桜庭はほんとに身体が弱いな」
ふらりと風が吹く。
「桜庭ってイイ匂いがするよな。どんな香水使ってるんだ?」
「私はそんな強いものは使ってません」
「そうか……じゃあ桜庭の匂いか」
「そんな言い方っ……恥ずかしいから止めてください……それに、三国さんだって…」
「そうか?そういうのって自分じゃ解らないからな」
「………綺麗です」
「桜庭も……な」
「…………乾さん」
「影沼くん?」
「……一緒に…いこう」
「………うん」
「…………」
観月は辺りをきょろきょろ。
「(アイツ……『先に行ってろ』って言ってたけど…何処行ったのよ…)」
「観月、何突っ立ってるんだ」
「だっ大門!?」
「毎度毎度大げさなリアクションだな」
「な、何か用?」
「今日の観月、普段と違うからね。昨日もだけど……今日はもっと」
「………本当、大門って魔法使いみたいね」
「実際、学校で魔法使ってるからね」
「…………あはは!!」
「………??」
「大門ってそんな事言う人だったんだ!なんか意外」
「皮肉で言ったんだけど」
「それでも面白かったから……大門も変わったよね、クラスマッチから」
「……気のせいだよ」
「無理しないでいいって。なんか丸くなったって感じがする。
あなたがこの会に参加するなんて思わなかったわよ」
「いいんだ。柊との約束があったからね」
「柊さん?どうして大門が柊さんと………へぇ〜。そうなんだ」
「僕が彼女に酷い事を言って、今回はその埋め合わせだよ」
「ほんとにそれだけ?」
「……ほら。花火が上がるから早く行こう」
「ちょっと!答えになってないから!それに私は……」
「すげえな……一望できるじゃん」
九澄と愛花は桜庭邸の庭園にいた。
昨夜、影沼と乾がいた場所だ。
「綺麗だね、九澄くん」
愛花の浴衣姿。
九澄の鼓動は高鳴る。
結った愛花の髪の下。
白く細い首筋、うなじ。
綺麗で……九澄は見惚れてしまう。
「どうしたの?」
「えっ?いやっ……こうやってお互い浴衣なんて初めてだから」
「そうだね。わたし、似合ってるかな?」
「似合ってるよ!すごく……」
「ありがと。九澄くんも似合ってるよ。色がちょっとオジサンっぽいけど」
「桜庭のおじさんのやつだからな……」
「……九澄くん」
愛花の声色が変化した。
「今日の九澄くん……なんかへん」
「………へん?」
「いつもは楽しくて、笑ってて……でも今日は元気ないよ」
愛花は九澄の変化に気づいていた。
「そうかな……昨日色々あったから疲れたのかな」
「ううん。疲れたときの九澄くんじゃなかった。悩んでた……辛そうだった」
「………なんで解るんだ?」
「九澄くんのいろんな顔……見てきたから」
「笑ってる顔。疲れてる顔。真剣な顔。嬉しそうな顔……いろんな顔を見てきたよ。
九澄くん、リアクションが大きいから……どうしても悩んでる時の顔は印象に残るの」
「……恥ずかしいな。そんなふうに見られてたんだ」
「意識してみてたんじゃないよ。でも、九澄くんがね……笑ったり喜んでる顔を見たら、わたしも嬉しくなるの」
「俺もそうだ。柊の喜ぶ顔を見たら、すごくうれしい」
九澄は自然と愛花の肩を抱く。
以前だったら触れるだけで意識が飛びそうだった九澄。
今でも、顔が赤くなってる。
呼吸が乱れ、手に汗が滲む。
愛花は九澄の方を向き、じっと九澄を見つめる。
「だから……九澄くんが辛そうな顔をしてたら、わたしも辛くなるの」
愛花の表情に影が差す。
「……わたし………このままでいたい」
「……このまま?」
「覚えてる?わたしが昨日、最後に言った台詞」
九澄は思い出そうとするが、どの台詞かわからなかった。
「その言葉と矛盾してるかもしれないんだけど……わたしは今のままで幸せなの」
「………柊」
九澄は思い出した。
最後に聞こえた言葉。
「このままって……」
「いつもの九澄くんでいてくれたら……それだけでいいの」
「俺はいつもの俺だよ」
「これ以上望んだら……もっと欲しくなるから。九澄くんにもっといろんなこと要求するかもしれないから」
「それでもいい。俺は柊と……」
「………九澄くん」
「俺は柊じゃなきゃダメなんだ。柊が……好きだから」
「!!……、……、、…、、…」
「大好きだから……柊が俺に言ってくれた台詞。ホントは俺が先に言いたかったんだけどな」
「…………うん」
「要求してくれよ。俺は柊に答える。だから……」
「そんなの……ダメだよ…わがままばっかりで……わたし……」
九澄は愛花を抱く。
「……九澄……くん…」
「ほら。言ってくれ。柊の御願いならなんでも聞くから」
「……じゃあ………ちゅう…して…」
九澄は愛花にキスをする。
出来るだけ永く。
そっと。優しく。
愛花の唇はとても甘く、柔らかい。
九澄の唇は愛花の唇を包みこむ。
――――空に響く炸裂音で互いの繋がりが解ける。
「……花火だ」
「……綺麗だね」
降り注ぐ虹色の花の雨。
その雨が水平線に沈んで溶ける。
― EpilogueW 砂の城 ―
「…………」
「九澄と柊、いないな」
「……………」
「なんで黙ってるんだ?」
「……九澄の好きなヒトって………まさか…」
「まだ二人がいないだけで決め付けるのはどうかと思うけどね……」
「!!えっ…ちょっと聞いてたの!?」
「……いや。観月にフォローをしてあげただけだよ」
「…………九澄……」
「……………」
「観月さ〜ん!大門く〜ん!!」
二人は声の方を振り返る。
「柊さん!………それと……九澄…」
九澄と愛花は二人に近づく。
「まったく。何処行ってたんだ?」
「ああ。遅れてすまん……他のみんなは?」
「個人行動の好きな奴等だな。まあ集合場所は決めて在るんだけどね」
「それってどこ?」
「今日作ったアレさ」
大門が指差した先。
砂で出来た大きな城がそびえている。
「じゃあ先にあそこで待ってようか」
四人はオブジェに向かって歩き出す。
観月が九澄の浴衣の裾を掴む。
「さっきまで……何処行ってたの?」
「何処って……着替えとか少し遅れたし、ゆっくり散歩しながら来たんだ」
「……柊さんも一緒だったの?」
「ああ。外に出るとき一緒になってな」
「………ウソ…ついてないわよね」
「…………ああ」
「そう………ってなんでアンタにそんなこと!アンタみたいな女ったらしが真面目な柊さんとなんて……」
「観月さん?呼んだ?」
「いや!!なんでもないの!……わたしの…妄想……よね…」
「………観月……さん?」
「はやく!いきましょ柊さん!」
「きゃあ!!ちょっと観月さん!?」
観月は愛花の腕を取り走っていく。
「観月、九澄のこと気にかけてたみたいだったけど」
大門が九澄に話す。
「まあ僕には関係ないんだけどね。こんな話」
「相変わらずだなお前は」
「観月はすぐに表情や態度に出る。観てればわかるよ、九澄」
「……なんだよ」
「九澄もそういう眼を持てってことだよ」
「悪かったな、ニブくて」
「二人とも〜!」
「ああ。いこうぜ大門」
九澄は二人の方へ。
「……僕はどっちの味方なんだか」
大門は三人の背を見ながら呟く。
「僕なのかもな……一番曖昧なのは」
「……曖昧ねえ」
「三国!?いきなり背後に立ってるなんて、嫌な趣味してるな」
「へへへ……アンタには頑張ってもらわないと困るからね」
「何を頑張るんだ?……まあ大体読めてきたけどね。元々この会自体疑問があったからね……幹事さん」
「さあ?何のことだか…」
「柊と僕の借りをネタに使ったのか?」
「飛躍しすぎ!……相変わらず嫌な性格してるわね」
「………まあいいよ。他のみんなは」
「ほら、あそこに」
三国の後ろに残りのメンバーが集まっていた。
「ちくしょ〜!避暑地だから女がいねえ!ファミリーばっかじゃねえか!」
「貴方みたいな下品な男性はどの女性も御断りでしょうけどね」
「伊勢!お前のせいで全身汗だらけだっつうの!つうかスイカ重いな……俺は桜庭の荷物持ちじゃないんだけどな…」
「…………夏のスイカは……なつかしい」
「………36点」
砂の城に十人が集まる。
みんなで建てた城のそばで花火を眺める。
それぞれの眼には、果たして如何映ったのだろうか。
その花火の色彩がどう輝いたのだろうか。
どの色に……染まったのだろうか。
―――月曜日。
観月は一枚の写真を見つめていた。
デジカメで撮った九澄との2ショット写真。
写真に写る自分の表情に変えて。
傍に写る九澄を胸に焼きつけて。
気づくと九澄が目の前に。
「九澄。約束……覚えてるわよね」
「ああ、覚えてる。それじゃあ初めようか」
貴方への愛しさが私を変える。
あなたへの想いが私を動かす。
アナタがいないと私は……ワタシは……………。
九澄……。
アイシテル………九澄……。
以上で御終いです。
また時間がかかってしまいました。
今見てくれている住民のみなさん、すいませんでした。
長く続いた企画モノ、何とか完了です。
なにやら続きがありそうな無さそうな感じで終わりましたね…微妙だったかな……。
全体を通して前半はサブキャラ、後半は九澄・愛花・観月がメインでした。
一番言いたいのは九澄のキャラ。
愛花と観月の二人と関わらせるため、強引に優柔不断な性格にいたしました。
そのため観月編はかなり試行錯誤してしまい、投下が遅れたのは内緒です。
反省がたくさん残りました。まだまだです。
最後まで読んでくれた住民のみなさん、ありがとうございました!
読み返してくださると嬉しいです!
よければ感想も御願いいたします。戴けると凄くうれしいので……。
ではでは、このへんで(*・ω・)ノ
230 :
ZEH:2007/09/02(日) 00:32:26 ID:HFSKw1es
長編乙です。
最初から最後まで楽しく読ませていただきました。俺も立ち直り早くて馬鹿みたいですが
近からず遠からず復帰したいです。
貴方の作品を読ませてもらった側として敬意の気持ちと心からの感謝を・・・・・・・・・そしてGJという言葉を。
個人としてちょっとしたハッピーエンドも見たいです。次回も期待をして・・・・・・いいですよね?
いいなぁ、楽しく遊べた高校生に還りたいよ…
乙です
ラストがちょっとよくわからなかった‥かな
強いて言えばですが
読ませてもらいましたよ。
観月せつね〜〜ですな。幸あれ。
もう少し場面説明、状況説明があるといいかな。
次回作期待しています
感服しました
235 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/04(火) 01:24:57 ID:NWLj1OFD
乙!!
次回作も期待してますよ
>>230-235 ありがとうございます!凄く嬉しいです。
エピローグは後半・ラストは端折った印象を受けるかと思いますが、
色々と故意に描写していない所、最小限の表現の所が幾つか在ります。
会話がほとんどだったので、口調や状況だけで人物を判断してもらったりしてます。
場面・状況説明の無さは其処だと思ってます。すいません。
観月にとってハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは、読者の解釈次第という事で……御願いいたします。
続編は………需要あるのかな。
胡玖葉作品が少ないみたいなのでやってみてもいいかも……とか思ってます。
仕事は遅くなりますが、完成度をもっと上げて住民のみなさんに観て貰おうと思います!
保守
久美かわいいよ久美
240 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 01:50:10 ID:jojskeW5
出雲出てくれ出雲
次号は玲たん登場のヨカーン
ジャンプ本誌に宇和井さんが出て来たので宇和井さんの作品に期待sage
ここってエロ無しの話は投下しちゃいけないのか?
>>244 ありがとう
今晩には投下できると思う。ちなみに九澄×観月の話
>>245 仕事関係無しに全裸になって待ってるよ。
「み、観月ー!!」
「――きゃっ!! やだ! もう……離しなさいよ、九澄ぃ……」
倒れ込むように自分の身体へと抱きついてきた九澄を観月が受け止める。口でこそ否定の言葉を吐いてはいるものの、その語尾は甘く溶けていた。
九澄と観月、二人きりの薬品部の調合室はほの薄く桃色の空気が漂っていた。
ある日の放課後、観月は開けばいつも本心とは裏腹の気持ちを喋ってしまう口を苦心の末に押さえ込み、想い人である九澄を薬品部まで呼び出すことに成功した。
調合室に連れ入った観月と九澄をテーブルの上で出迎えたのは、この日のために観月が一週間寝かせたホーレンゲ草の袋だった。
大きな袋の中いっぱいに詰め込まれているホーレンゲ草の鉢の数はおよそ10株。ビニール袋は充満したガスで膨張し、今にも張り裂けんばかりだ。
「なあ観月、俺に見せたい物って何なんだ?」
「えーと、それは……――九澄、ごめんっ!!」
「へ?」
ぷしゅっ!
観月が手の中に隠し持っていた針をホーレンゲ草の入った袋に突き立てた。すると勢いよく萎んでゆく袋から薄いピンク色のガスが溢れ、瞬く間に室内を包んでゆく。
10株のホーレンゲ草を通常の7倍の期間寝かせたガスは量も濃度も強烈だ。
しかし観月自身はすでに抑制薬を飲んでいるのでガスの効果に振り回されることはない。
効果が表れるのはこの場に居合わせた……もう一人だけだ。
「好きだ、好きだ、大好きだっ!」
数分後、調合室にはホーレンゲ草ガスの作用によってすっかり観月に骨抜きとなった九澄の姿があった。
熱烈に愛の言葉を叫び、身体全体で観月を抱きしめる。勢い余って床に倒れこんでしまったことも今の観月にとっては些細な事でしかない。
「うん……本当はね、私も九澄のことがずっと……」
九澄の胸に埋まった観月がうっとりと言葉を紡ぐ。通常であれば望んでも手に入らない、観月が願うままに情熱的な九澄が目の前に居るのだ。
加えて場の空気も後押しし、普段のように歪曲されることのない心情を口に出せていた。
「――やっ!? ちょっと、ドコに手を入れて……」
言葉の途中で夢心地の観月の身体が跳ねる。
いつの間にか観月の背に回していた九澄の手が離れ、制服の下へと滑り込んでいた。
もう一方の手は観月の胸に触れながらネクタイを緩めている。
「あっ!? や、やめなさいよ! ――んっ……むっ!」
流石にそこまでの行動は予想の範囲外だったのか、観月が強い口調で抗議する。
すると、九澄がその言葉を飲み込むように観月に口づけた。
「ん……観月、好きだ」
(く、くくく九澄とキス――!!?)
息をつくために一旦唇を離した九澄が観月に絶えぬ愛をささやく。
その間も九澄の手は少しずつ制服の守りを崩して行っているのだが、熱を帯びた瞳と吐息が観月の頭を甘く痺れ、蕩けさせていた。
「ふぁ……九澄……?」
心も身体も溶かすような九澄のキスに翻弄されていた観月と九澄の瞳が合う。
情欲の熱はあっても自我を失った両眼に光はなく、人形にはめ込まれたガラス玉のようにただ観月を写しているだけだった。
(好きだって言ってもらえたのも、キス出来たのも嬉しい……。けど……この九澄は薬のチカラで見境が無くなってるだけなのよね……)
「――やめてよ! やっぱりこんなのイヤ!」
手を突っ張り、身を捩って九澄の腕の中から逃れる。観月からの抵抗など微塵も考えてもいなかったらしい九澄は呆気に取られていた。
そんな九澄を尻目に立ち上がり、観月が壁にある換気扇のスイッチを入れた。
「な、なんで逃げんだよ観月!?」
「来ないで!! だって、今の九澄はやっぱり……私の……きな九澄じゃないのよ!」
心気と体勢を立て直して迫る九澄に、観月は身体を固くしつつもはっきりと拒絶の意を明らかにする。
フォオオオオ…………
その最中にも、換気扇のファンは音を立て、淀んだ部屋の空気を盛んに吸い込んでいた。
「そんなん関係ねーだ……ろ! 俺はこんなにも……お前の事が……すき……なの……に……?」
だんだんと言葉尻も弱まり、力を失った九澄が床にへたりこむ。
「九澄、正気に戻ったの!?」
「観月……? アレ……俺さっきまで何してたっけ。なんか頭がぼーっとすんだけど……」
目の前の観月に対し、頭に手を当てながら何度も目を瞬かせる。
「……その事なんだけど、ごめんなさい……実は私が、九澄に……」
「って!? なんつー格好してんだよ観月!」
セーラー服の前は大きく開き、ちらりと控えめなフリルの付いた水色の下着が覗いていた。
指摘され、自らの格好に気付いた観月が白い胸元を手で覆う。
「こ、これは……なんでもないわよ!」
「嘘つけ! こんな有様で何もなかったワケがねーだろ!」
「なんでもないって言ってるでしょ!」
(本当の事なんて言えないわよ……!)
「おい、ちゃんと本当の事言えって――……ん?」
まだわずかに漂うホーレンゲ草の残り香にひくひくと九澄が鼻を鳴らす。
「この香り……どっかで嗅いだ事あんな……。わかった! ――ホーレンゲ草のガスだな!」
(〜っなんでこんな時だけカンが良いのよ!!)
「――すまねえ!」
「え……?」
九澄が目にも止まらぬ速さで床に頭を伏した。
「記憶は全くねえんだけど、たぶん俺がガスを吸って、部活勧誘の時にみたいにまた観月を襲っちまったんだろ……?」
「そ、そんな、謝らないでよ……」
土下座の体勢で謝罪の言葉を述べる九澄を観月が起こそうとするが、九澄は余計に床へと頭を擦り付ける。
「なんて詫びたらいいのかわかんねえけど、お前に嫌な思いをさせちまって本当にすまねぇ! 許してくれ――」
「ち……ちが――違うのよ!! 謝らなきゃいけないのは私の方なの……!」
観月が強い口調で九澄の言葉を遮った。
「……どうして観月が俺に謝らなきゃいけねーんだ?」
その声の悲痛さに九澄もおもわず頭を上げる。
「私が、九澄にわざとホーレンゲ草のガスを吸わせたの! 黙って九澄に抱きつかれてたのも……九澄に身体を触らせたのも……」
「私……九澄の事が好きだったから!!!」
「!?」
「……だから……ひっく、謝らないで……これ以上私をミジメにさせないでよ……ぐす」
これまで積もりに積もらせてきた九澄への思いの丈を直接的な形で口にした瞬間、観月の心の堰堤は完全に決壊した。溢れる涙は観月を飲み込まんばかりに止め処ない。
「観月……」
「……うぅ、ひぅ……っく……」
「あー……その、観月、話したいことは色々あんだけどよ、まずは制服の前を直してくれねーかな……」
「……ぅっくっ……ふええぇぇん……」
「俺にとっちゃかなり目の毒で……って聞こえてねーな……」
しゃくり上げるだけで、外からの声が全く耳に入っていない相手に困り果てた九澄が頬を掻く。
「悪いけど勝手に手ぇ出させてもらうぜ……め、目は瞑ってるからよ!」
肌蹴た制服に九澄が手を出すが、目を閉じた上に正面の観月から首を90°以上逸らしているため、そうスムースに事が進むはずがなかった。
「――ふゃっ!?」
タイを結ぼうとして伸ばした手がダイレクトに観月のバストを掴んでしまう。
「わわわ、悪い!」
「な、何してんのよー……」
袖を絞り咽ぶ観月も、この刺激には流石にうつつに返った。
「だってよ……気になる女子の胸がチラチラ見えてたら落ち着いて話しも出来ねーだろ……」
「え? 九澄、気になるって……」
「そりゃ……あー、くそ、やっぱ――言葉なんかよりもこっちの方が早い!」
――!!
「観月……これでわかっただろ」
「……今のって……」
いまだ近く、九澄の吐息がかかる自身の唇に観月が触れる。確かめるように当てられた2本の指は小さく震えていた。
「恥ずかしいから聞き返すなよ。……俺の……気持ちだっつーの」
「……わ、わかる訳……ないでしょ!」
耳まで赤く染まった顔を九澄の視界から隠すように俯く。
「な!? そんじゃどうすりゃ……」
「だから! その、ね……もう一回し……」
「観月……」
そうして二人の顔が引き寄せ合い、再び重なろうとしたその時、――外からドアのノブが回された。
ガチャ
「おう、誰か居んのか?」
「――きゃああああっ!?」
「はがっ!!」
室内へと投げかけられた声に、動揺した観月はあとわずかな距離まで近づいていた九澄を張り倒した。
「観月に九澄じゃねーか。来てたんなら油売ってねーで店の方手伝えよな。忙しーんだから……ってなんかこの部屋の空気、薬品クセーな……?」
無遠慮な人影の正体は薬品部部長の及川だった。九澄と同じく、調合室の空気にピクリと鼻を鳴らす。
「そ、そんな事ありません!!」
(鍵閉めるの忘れてた〜!)
「そうか? まあお前らが何作ってようと俺には関係ねーけどよ。とりあえずそこで伸びてる九澄をどうにかしてやったらどうだ?」
そう言い放ち、及川の太い指が観月の背後を示す。
「九澄!? なんで倒れてるのよアンタ!!?」
「……少なくとも俺の目にはさっきお前が掌底喰らわしたように見えたけどな」
「いやーっ!! ちょっと、ねぇ、しっかりしてってば!!!?」
甘いムードは流され、騒々しくなった調合室内に、開かれたままのドアから薬品部売店の賑やかな声が流れてくる。
「え? 好きな女の子を射止めたいって? それならホーレンゲ草なんかどうです? コレ自体の効果は短いけど、
これをきっかけに数々のカップルが成立したって実績もありますよ。信じるかどうかはお客さんに任せますけど、物は試しに……」
一鉢いかがです?
終わり
これにて終了です
改行忘れててスマン
たしかIEだと文章が自動改行されなかったような
全裸で待ってくれてた
>>246の人、期待外れでごめん
GJ!
久しぶりの作品投下乙
素晴らしい。
そう言わせてもらおうか。
いい話だな
あとでじっくり読む
滑塚さんは、エロパロむきだよな
>>255 乙!!いいですな。次もよろしく。
宇和井さん絡みの話が読みたいな。
職人さん、お願いしますm(__)m
最強エロ魔法キタ!!
262 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 00:28:05 ID:rwwebjlB
GJ!!
良かったです!
出雲と宇和井さん各々のお話を希望
264 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 21:49:15 ID:AjqosMXF
伊勢兄や永井の話を書いてもらえれば嬉しいです
(BLではなく)
滑塚さんの魔法を使ったェロパロが無性に見たい
相手は誰でもいい
三科映美理を主役にしたSSキボン
神の復活、もしくは他の強者に期待
269 :
名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 17:14:05 ID:OLfcxomZ
滑塚期待あげ
>>255氏遅くなりましたがGJ!
お久しぶりです。
あまり状況を報告するのは媚を売ってるみたいで良くないですが、燃料にでもなればと思ってレスしました。
今はゆっくりと作品作ってます。二作品同時進行中です。
テキスト量・世界観共に全く異なる両者ですので、短い方から行こうかと思ってます。
連投して飽きられるのが怖いので頃合いを見て…と思ってます。
マッタリマッタリして待っていてください。
過去レス・まとめサイトを見ると、かなりの量を投下してきましたね……。
最近は色々なキャラが出てきてるので、職人さんが増えてくれる事を願ってます。
痛すぎるので鎮痛剤を処方してください
275 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/02(火) 00:02:11 ID:07lki2w2
ついに影沼スレ2スレ目突入
276 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/04(木) 19:41:58 ID:cIcXYlzw
誰か影沼×桜庭様をお願いします
BIコンビか
278 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/06(土) 02:03:03 ID:UjkbqjEm
また出雲×伊勢頼みます!!
前の出雲伊勢は中々良かったな
伊勢×出雲じゃなくて出雲×伊勢なのか?
何か新しいな…
誰か過去作品のログもってない?
最初から読んで見ろ
確かみてみろ
九澄を逆レイプする百草先生を頼む。
懐かしいな百草先生
あるいは、ミッチョンと久美は既にできている
という設定でもいい。
九澄を調教するコクハ…(;´Д`)
いつもふられてばかりなので
弟で性欲処理するコクハ・・・・!
職人さんまだかな…
すいません。どこかにプリフェの過去ログかなんかありますか?
293 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 13:20:56 ID:1a43m3ez
ごめんageちゃった
295 :
292:2007/10/11(木) 19:32:36 ID:Wk30TVX+
いや、エロパロスレのことなんだけど・・・・
胡玖葉と大賀のが読みたい
初めは胡玖葉が誘って、次第に大賀が攻めにまわる
みたいのが
M25の最初のとこの九澄と百草先生がたまらない・・・・誰か・・・・
>>298-299さん
もう少しまったりしていて戴けると助かります。すいません。
>>271で書いた、小物の方は長編に進化させるかどうか模索しています。
ですので合間に作った別作品をまず投下します。
これは住民さんのリクエストを採用した作品です、今迄好き勝手作ってきたので……。
投下前には作品予告入れますので、詳細は其処で。
ではでは。
職人さん、楽しみにしてるよ。
>>300 すぐ反応してくれてありがd
期待してます
俺のリクエストでありますように!
どの組み合わせだ?
こんばんわ。
明日の夜、投下しますので早めの予告と注意点を。
組み合わせは、桜庭×影沼。
>>276さんのリクエストですが、桜庭が主人公と攻めです。
キャラに自分なりのアレンジを加えています。
ですので少々違和感を感じるかもしれません。
本編では全く絡みの無い二人ですので、苦手な方は「こういうのもありかな」と思ってくれれば助かります。
個人的勧めとして、本編で桜庭の出るコマやラフ画を眼に焼き付けてから読んで貰うと良いかも……。
皆さんが満足のいくカップル、そして作品になるよう頑張りました。
ではでは、もうしばらくのお待ちを……。
おお、楽しみにしています
>>306 おお!その組み合わせですか!
楽しみに待ってます
こんばんは。
これから投下いたします。よろしく御願いいたします。
余談ですが此処に来る前に影沼スレを覗くと、このスレの話題が出ててビックリしました!
影沼スレの方に評価されるのは少し怖いですね……御手柔らかに御願いいたします。
「ちょっと!ちゃんと言ってくれないと解らないわ!」
何で私はこんな男の事が……気になるのかしら。
単純に雰囲気?
顔は…悪くない。寧ろ整ってる。
髪も黒で、色白の所為でその色は映える。
問題は……性格。
無口で、なに言ってるか聞こえないし、なに考えてるかも……。
その男は文字通り「影」だった。
見えてはいるけど、実態は掴めない。
どんなに求めても私とは重ならない。
そんな処に私は惹かれたのかも知れない。
きっかけは夏休み。
自主練習中に、C組の人達が何やら盛り上がっていた。
男子が二人ほど彼方に飛んで行くのが確認できた。
それとスケートボードが走り廻っているのを、私と三科さんで見ていた。
ヘアバンドの男子が大声で眼鏡をかけた女子に何かを言っていた。
C組はのんびりしてていいわね。
そんな会話を三科さんと交わした。
気になったのはその後ろ。
何やら文字の入ったTシャツを着ている男子がいた。
なんて書いてるんだろう。
その文字が見えるまでこっそりと覗いていると………。
「影沼」
…………どういう意味かしら?
三科さんは知らないらしい。
何かの故事かしら。
達筆な筆遣いは、著名人の作品の模写かもしれない。
その二文字だけ憶えて、私は其の場を後にした。
帰り際に、下駄箱で既視感に襲われる。
周りを見ると……さっきの二文字。
ちょっと待って。
――――――――――“影沼”って……苗字!?
苗字をTシャツにプリントするなんて。
芸能人でそんな人、居たかしら。
まさか……自分の苗字なんて入れたTシャツを着るなんて……。
何やら辺りが賑やかになる。
先程のC組の男子達だわ。
いいことがあったのかしら、皆とても楽しそうにしていた。
――――――「あっ!!!」
私より先に三科さんが声を出した。
私らしくない大声を出してしまう処だった。
先程のTシャツを着た男子が最後尾にいた。
再び隠れて其の男の指先を追う。
………あそこは、まさか。
彼らが去った後、私は確認する。
……やはり彼が影沼だった。
「どうだった?」
「違いました」
三科さんが返すが、私は嘘をついた。
何処か私に似た雰囲気。
単に押し殺してはいるが、気配の刹那に漂う闇の匂い。
単純に彼が何者かが……知りたくなった。
――――人はそれを一目惚れと言うらしい。
私から言わせて貰うと、全くもってそんなことは無いわ。
オーラとか、雰囲気とか。
多分それは精確に表現できないから使ってる言葉。
……心がときめくのは……本当にこんなモノなのかしら。
呆気なくて、疑うしかなかった。
時は過ぎて、二学期に入る。
あれから時折彼を探す目配りをするが、彼はいなかった。
でも今日から授業が始まるから問題無い。
始業式が終わって早速、私は一先ずC組の教室前に向かう。
廊下では男子が床に這いつくばっていた。
女子達が迷惑そうに避けながら歩いている。
まったく男って言う人種は。
C組を覗いてみる。
……覗いてもそれらしき人はいない。
もう帰ってしまったのだろうか。
「桜庭か?なにしてるんだ?」
呼ばれると、三国さんと乾さんだった。
「いいえ、なんでもないわ」
「何でも無さそうだから声をかけたんだけどなあ、誰か探してるのか?」
相変わらずこの人は鋭い。
「だから何も用なんて……」
言葉に詰まっていた私の前を、彼は通った。
「あっ!!」
「ちょっと、どうしたのいきなり」
三国さん達を何とか言い包めないと……。
「ちょっと貴方!なにジロジロと観てるんですか?言いたい事があるなら言って頂けますか」
彼はビクッと立ち止まり、此方を見た。
「ん?影沼と知り合いなのか?」
「いえ、この方が此方を何度も観ていたので、つい」
言い掛かりはこんな処かしら。
私は無理矢理その男を“黒髪の女王様”で引っ張っていった。
全身を纏ったら魔法を使ってるのがバレるから鞭だけ。
部分魔法は夏休みに憶えた新技。
まさかこんな事に使うなんて……思わなかったわ。
「はあっ……はあっ………」
体育館の倉庫まで走り、彼を中へ。
“黒髪の女王様”を使っても腕力は上がらないから、とても疲れる。
肩で息をして、必死で空気を取り込む。
「………あの…」
彼はぼそりと言葉を漏らす。
「貴方、影沼って言うの?」
彼は頷く。
「私は桜庭紫紀。普段は貴方なんかとは会話なんてするような事はないんですけども」
先ずは挨拶、これはマナーとして。
そして二言目に互いの立場を明確にする一言。
「……なら、どうして」
私は当然のように言った。
「私は、貴方の事が気になるから呼び出したのよ。在り難く想いなさい」
彼は眼をパチパチさせて此方を見ていた。
何かヘンな事を言ったかしら。
想ってる事を言っただけなんだけれど。
「何か言ったらどうなの?」
「……影沼次郎」
「………え?」
「…………僕の名前。紹介、まだだったよね」
「普通は最初に名乗るものよ。全く礼儀というものが無い男なのね」
彼はぽりぽりと頭をかく。
今までに無い、掴めない男。
駆け引きの無い、一方が突っ張り一方が流す会話。
私は常に肩透かしを受けていた。
最初はそれで苛々したものだけど。
それでも、初めてのことだったからだろうか。
常に立場が上で無いと気がすまない私には少し新鮮だった。
「……桜庭さんは髪を洗うのが大変そうだね」
「あら?身だしなみに時間をかけるのは、女としては当然の事よ。
毎日のケアは怠らないから。無造作に伸ばしただけの貴方の髪と一緒にして欲しくないわね」
自慢の髪を指摘されたので、私は自信を持って言った。
元々女性の髪と、男性のソレとは肌理細やかさから違う。
男には……解らないわよね。
だけど、彼はそんな女の事情など知らないようだった。
「………触ってみてもいいかな」
「ダメに決まってるでしょ!!貴方が私の髪に触れるなんて何十年も早いわ!」
当然の如く私は声を張り上げて怒る。
髪が物に触れるだけで神経質になるくらいなのに。
男に触られるなんて……不可能だわ。
「……桜庭さんの髪、どれくらい手入れしてるか気になるから…」
彼が褒めてくれてる。
そんな御世辞じゃ、無理ですけど……。
「自分で言い出したのですから……仕方ないですわね。ほんの毛先だけよ」
そう言って私は後ろを向く。
初対面なのに、変な展開になったわね。
「………さっきの魔法…」
「もう解除してあるから気になさらずに……変な事したら使うわよ」
暫時の沈黙の後、彼はそっと髪に触れた。
……思ったほど不快な感じはなかった。
彼は優しく、櫛で整えるように撫でた。
如何してかしら。
胸が……熱い。
心臓の呼吸が耳に響く。
……………。
段々と彼の手が上へと上がってくる。
最初の踝から……腰…背中…………そして。
頭の天辺に……彼の掌が触れる。
「ひゃあっ!!」
私は情けない声をあげてしまう。
「ちょっと!毛先だけだってさっき……」
振り返ると、彼は右手に何かを持っていた。
「それって…もしかして櫛?」
彼は頷く。
よく観ると、梅の刺繍が美しい木製の櫛だった。
髪に感じた感触が当たってたなんて……。
それにしても、その櫛は彼のような男が持っているのが不釣合いなくらいの一品だった。
「……これ、桜庭さんにあげるよ」
彼はその櫛を差し出す。
「もしかして、さっきのはそれを使ってたの?」
またしても頷く。
だけど、無理矢理連れてきた私にこんな高価な品…如何して。
「貴方が使ってた物でしょ?そんなもの受け取れないわ」
「……僕のは……こっち」
彼は左ポケットを探り、小さな黒の箱を取り出す。
中身は、漆器のような黒に桜の木が彫られた櫛が入っていた。
「……気にしないで……大したものじゃないし…未使用だから…」
何でこんな物を二つも持っているのだろう。
でも其処は敢えて突っ込まなかった。
そして、出来るなら………。
「そっちの黒の方がいいです」
「……僕が使ってたものだけど…」
「構いませんわ。寧ろ宜しいんですか?貴方の使っていたものを」
「……桜庭さんなら構わないよ」
「どういう意味ですか?」
「……そのままだけど…」
噛み合わない会話。
彼が先導している感じを受ける。
私は彼の意図が全く解らないまま、声を張り上げる。
「ちょっと!ちゃんと言ってくれないと解らないわ!」
このような感じで……初めての会話は終わった。
単に挨拶するつもりが、結構な長話に櫛まで戴いてしまった。
でも、はっきりと生まれた想いがあった。
もう一度、二人きりで逢いたい。
不覚にもそう想ってしまう自分が不思議で、胸が痛みで張裂けそうだった。
それからは、C組を通る時はこっそりと教室の中を覗く事が多くなった。
時折、何故か観月さんが執拗にドアの小窓から覗いていた。
「何をしているの?」
「ひゃあ!!!?……桜庭さん!?どうしてこんな所に…」
飛び上がるほどの反応と、真っ赤な頬が印象的だった。
「何かあったんですか?顔が真っ赤ですけど」
私の指摘を聞いた途端、観月さんは両手を頬に当てる。
「!!?わたし、また顔が……カヒ〜!!」
観月さんは、顔を抑えながら物凄い速さで走り去っていった。
……髪を切ってから変わったわね、彼女。
昼休みなのに彼は探してもいなかった。
電話番号、聞いておけばよかったわね。
そうすれば此方から赴く手間は省けたんだけど。
大体わざわざ私がこうやって遠路はるばるC組に来る事自体………。
「桜庭さん?」
彼はまた後ろに立っていた。
「……貴方、背後を取るのが特技なようね」
彼はぽりぽりと頭をかく。
「はっ早く来なさい!こんな処、見られたくないんだから」
私は彼をこの前の場所へ。
彼は表情変えずに私について来る。
魔法を使ったら疲れるから、此方としては好都合なんだけど。
倉庫に着く。
ふと気づくと、彼の手を握っていた。
男の癖に細くて白い指が私の指に絡む。
「ちょっと!何勝手に私の手に触ってるの!?」
「………桜庭さんから手を取って引っ張ったんじゃ…」
「知らないわ。変な言い掛かりは止して貰いたいわ」
「………………」
彼は何時ものように黙ってしまう。
私は業を煮やして、彼に話し出す。
「これ。この前の櫛の御返し」
私が出したのは簪。
彼はじっとそれを眺める。
「………こんな高価な物、貰えないよ」
「貴方にじゃないわ、貴方の御母さんに。特別に創ってもらった品ですから、貴方が気にする事ではないわ」
如何してこんな事務的な口調で話してしまうんだろう。
また他人行儀の空気が漂ってしまう。
もっと……そうじゃなくて………。
「わかった。渡しておくよ」
彼は私の掌に優しく触れながら、簪を受け取る。
――――胸が私を締め付ける。
変な表現になるのかしら。
でもそんな言葉しか見つからない。
掌の中央を彼の爪が、ほんの一瞬掻き去る。
それが痒くて……切なくて……堪らなくなる。
如何してこんな感情を彼に持つのだろう。
違う。
それじゃ駄目。
一時的な感情に流されるほど“桜庭紫紀”は軟な名前じゃないわ。
「話はそれだけ。もう貴方には会わないから。サヨウナラ」
私は其の場を去ろうとする。
出来るだけ強い言葉で締めて、其の場を去りたかった。
そうじゃないと、断ち切れそうに無かったから。
私は倉庫のドアの前で立ち尽くす。
………おかしい。
身体が動かない。
原因は、彼の魔法だった。
拘束は大嫌い。
誰かに縛られるのは大嫌い。
「何してるの!?貴方の魔法の所為でしょ?早く魔法を解いて」
彼は返事をしない。
そうこうしている間にも苦痛が積み重なり、可虐衝動が私を呼び覚まそうとする。
「……早くしないと………ツカウわよ」
段々と瞳の黒色は濃く染まり拡がる。
そして、魔法が解けたのと同時に私は魔法を発動する。
私のスイッチは容易に切り替わった。
「“黒髪の女王様”!!!」
全身に漆黒の鎧を纏い、私は彼を捕獲する。
彼はマットの上で鞭に絡み取られ鎮座する。
まるで蜘蛛の繭に絡まる餌。
ただ殴ったり蹴ったりは詰まらない。
そうね……彼に『恥』という傷を与えようかしら。
一生モノの大きな風穴を開けようかしら。
胸に溜まってきた不定愁訴の塊を晴らす。
今の私にはそれしか無い。
彼はこの状況でも鉄面皮を脱ごうとはしない。
ならばその仮面を壊すだけ。
私は一端魔法を解き、マットに倒れている彼の髪に触れる。
彼は鞭で殴られると思ってたのだろうか、少しだけたじろいだ。
男の髪にしては綺麗。
黒く長い前髪をそっと掻き分ける。
此方を見返す細い眼の中は、少し怯えたような瞳がこっそりと覗く。
「ふふっ……その整った顔…汚したいわ」
すうっと頬を擦る。
微細に身震いする彼を歪めたくなる。
私の秘める加虐心が膨れ上がっていった。
彼の顔に近づく。
怯えた瞳は其の色をより濃くする。
私はフフっと笑い……接吻。
閉ざしていた彼の唇を舌で抉じ開け、熱を確かめる。
彼は抵抗しなかった。
私の舌が這うのを唯傍観し、攻められていた。
歯向かって来ないと燃えないんだけど……為すがままの男を責めるのも悪くない。
私は一度離れ、熱を帯びた彼の唇を確認する。
「舌……出しなさい」
耳元で囁く。
彼は言いなり通りに、口を開けて舌を出した。
其の舌に喰らいつく。
強く噛んだら血が出るから甘噛み。
彼の舌が私の口の中でヒクヒクしている。
含んだ舌を私の舌で弄る。
互いの舌が表面の凹凸で擦れ、其の感触がジンワリと脳に快感を与える。
「ふぁはあッ……いいわぁ………この感触…」
もっと痺れが欲しくて何度も擦り付ける。
噛んでは擦り……接吻。
何度も繰り返す。
だらしなく繋ぎ目から垂れる唾液がどんどん溢れる。
空いている手は彼の首筋に。
摩っていた手にゆっくりと力が籠る。
喉仏辺りに親指が掛かり、ネイルが徐々に喰い込む。
首を絞めれば呼吸が難しくなり、酸素を求め呼吸が荒くなる。
鯉のように口をパクパクする姿を……私に観せて。
……おかしい。
彼はそのような兆候は無い。
全く微動だにせず、私を見返す。
「……苦しくないの?」
彼は頷く。
でもこれ以上絞めたら危ないし…。
「……もうキスはしないの?」
「して欲しいならそう言わないと……!!」
彼の唇が突然私の唇に触れる。
私が行った強引なモノとは違う……優しくて温かな接吻。
何度も唇を絡める。
表面の紋を確かめるように、探るように。
ひんやりとした頬や瞳からは想像もつかない様な、彼のぬくもり。
「……んうぅ………んあぅ……」
心の棘がゆっくりと和らいでいく感覚。
もっと味わいたかったが、彼はゆっくりと離れる。
「……続きは?」
彼は子供のように首を傾げる。
私は……ぼ〜っとしていた。
もう一度、してほしかった。
こんなの……初めてだから。
だがプライドが赦さない。
男にリードされる事なんて在り得ない。
「ふん、余り私を嘗めないで貰いたいわ」
彼を平伏し、服を剥ぐ。
白く細身で無駄の無い体躯。
先程の彼のくちづけを真似て、乳首に舌を這わす。
そして輪の外周を舌先を尖らせ這う。
彼は少し反応し、突起物は確実に腫れてくる。
もう片方は爪で引っ掻く。
弄っても弄っても跳ね返る彼の乳首が愉しい。
腫れ上がっていくのを口の中で……舌で感じる。
私は弄っていた右手を下半身へ。
股間に触れると、堅くなった竿が容易に確認できた。
「此方はもう膨れ上がってるわよ?痩せ我慢してたのね……。
無理しなくていいのよ……如何して欲しいの?素直に言ったら……してあげる」
耳元で囁く。
息を耳介に響かせるように吐く。
……漸く彼は反応する。
明確な反応は下半身。
太腿は攣った様にピンと張り、膨らみは痛々しく盛り上がる。
そして快活筋に力が入っている……歯を喰い縛っている証拠だ。
普段は高圧的だが、こういう攻めも悪くない。
次第に型に嵌ってイク自分に逝きそうになる。
制服の上からも輪郭はくっきりと浮かぶ。
焦らすように……催促するように。
でも彼の言葉が出るまでは実行しない。
勝つのは私。
「………してほしい」
注意深く聴いていないと逃してしまいそうな小声。
「聞こえないわ」
吐き捨てるように言う。
此処は敢えて強く。
若干の催促も含む。
じれったさが私にあったから。
口では余裕……でも心では一刻も早く絶頂を求めている。
彼には看えないだろうが、私は笑みを浮かべていた。
背部を奔るゾクゾクっとした高揚感が暴走しないよう、注意する。
「…………握って」
「何処を」
「………熱い……張裂けそうなんだ」
「知ってるわ」
「………御願い……我慢できない」
「……何処を」
そして……彼は折れ、私に懇願した。
其れを私は承諾する。
敢えて省いたのは……私だけの秘密だから。
彼の羞恥心は、私だけのモノだから。
そして、裏切りの呪文だから。
ゆっくりとチャックを下ろすと、反り返った竿が顔を出す。
下着を裂くように張り出すソレは、優男にしては立派な物だった。
最後の布地を下ろすと竿はピクピクと上下する。
風を浴びて靡く花のように。
……だが花のような美しさは微塵も無い。
私からしたら、男の醜さを昇華したようなオブジェでしかない。
此れを鎮める為に必死になる男を……私は見下している。
道端に落ちる塵屑と同等として。
彼もその矮小な塵の一粒だった。
何処かに在った……彼だけは違うという想い。
彼の懇願は、気高い私への背信行為だった。
―――だから赦さない。貴方だけは絶対赦さない。
竿に爪の先で刺激を与える。
竿の裏筋を沿って、何度も上下に往復する。
傘の部分には吐息と舌先。
「フフっ……欲しがってるわね」
身体は正直だ。
竿は痙攣したように震え、血管が禍々しく浮き出る。
此方としても、堅い方がヤり易い。
傘の先を重点に攻める。
……そういえば彼の傘はとても綺麗な桃色だ。
まさか使ったことが無い……そうなのだろうか。
そんなこと、今の私には関係無い事。
ガチガチに堅くなった彼の竿を握る。
滑らせるために、唾液を竿に吐き掛ける。
上下させて擦るが……まだ足りないわね。
口でするのはまだ早い。
私は彼と再び接吻をする。
彼の唇を弄ると、彼も私も唾液が溢れてくる。
其れを纏めて口に含み、竿に垂らす。
そう……この臭い。
私のキメ細かな指に絡むのは、こんなにも下劣な蜜。
その蜜を私が……私の指が竿に塗りたくる。
こんな行為で興奮する男は、やはり醜い。
だから今、物凄く愉しいの。
頭を必死で垂れて、下半身を震わせながら射精する男の余りにも間抜けな光景を、上から哄笑しながら眺めるのは。
指は竿の裏筋から袋へ。
熱い。
今、中では必死になって精液を製造してるのよね。
証拠に、袋は膨れてパンパンになっている。
醜い表皮のしわもくっきりと確認できる。
その波打った皮膚を、五本の指で下から摩り上げる。
「………!!……うぅ」
彼が初めてリアクションを取る。
眼を瞑り、呼吸は荒い。
吐く息の量が増えているみたいね、鼓動が早くなっている。
「まだ触っただけよ?……頑張らないと使い切っちゃうわよ、ココの中身」
そう言って、精液を溜める袋を指で犯す。
舌で傘を弄ると、傘から雨露が下へ零れ落ちる。
アイスが溶けて逝く様に……。
でも肉は融けない。
寧ろ、酷く腫れ上がる。
毒を吐き尽くすまで私は虐め続ける。
「…で…る…くうっ……」
彼の言葉は空虚だが、放たれた欲物は暴動だった。
竿が痙攣しながら、リズム好く精液が先から吐き出される。
醜い土台から飛び出す噴水。
逝く末は彼の太腿や腹部。
私は竿を手で包み、上下して射精を煽る。
下半身は強張り、脚をピンと伸ばす。
そうよ……此れが看たかったの。
男が魅せる最も間抜けで下劣な行為。
今、彼は興奮の絶頂にいる。
私は追い討ちをかける。
もっと沢山の毒を吐き出させるため。
「……キモチイイ?たくさんでたわね。まだココ、いっぱいあるわよね……次は足で逝こうかしら」
怯えたような彼の表情と瞳。
恐怖かしら……更なる興奮の感化に恐れて?
それとも……。
何処かに悲哀が混じる瞳。
そんなものに私のプライドは揺るがない。
下半身に眼を戻すと、壊れたスプリンクラーが果てていた。
散々に撒いた精液が虚しい。
私は再びその肉の塔を修復するため、舌で内太腿の零れた雫の上を滑る。
身体が反応し、萎縮して内股になるのが……また間抜けだわ。
……一通り舐め回すと、再び竿へ。
こんな醜い肉棒を舐めて触っただけでも感謝して欲しいものだわ。
数十秒で修復は終わる。
私は立ち上がり、靴を脱いで足の裏で竿の裏筋を表にし、抱え込む。
そして足の親指と人差し指の間を開き、竿の裏筋を挟む。
大きすぎでフィットはしないが、足の指とソックスの生地で擦れれば問題ない。
ソックスは汚れてしまうが、生地の感触や素足が汚れるよりかはマシ。
挟んだ状態からゆっくり圧をかける。
傍から見れば、踏み付けてるように見えるだろうけど。
「こんなのでココ膨らませるなんてね……どう?足で扱かれてる気分は……」
足の指と浮き出る血管が擦れる。
彼の吐息が再び荒くなる。
竿の先から透明な液が溢れる。
ローション代わりになって足の指が好く滑る。
一度イッた所為か、二度目も噴水の再発は容易かった。
精液が足に……脚に飛び散る。
ソックスに散り、繊維を縫って肌に感じる粘着質の精液。
真っ赤に腫らして再び壊れる肉棒。
彼の下半身全体を今、最高の幸福が血管を駆け巡り、筋肉を介して弛緩する。
表情は最早放心した病人のよう。
普段の整った眼が今は宙を彷徨い、それでも私を見つめる。
そんな彼を看て、私も脳が痺れ…首筋に麻酔が打たれ……蕩ける。
「……はぁっ………ああ……イイわ……スゴク……」
暫く私は脳から発している快感に酔いしれる。
……同時に、私の下半身反応し始める。
じわじわと伝播し、其の核は下腹部に収束する。
初めての感覚に襲われ、私は咄嗟に其処を抑えてしまう。
指で摩ると……快感が脳に跳ね返る。
「……ふあぁ………んんっ……なに…これぇ……」
私はぺたりと座り込み、ソコを何度も触る。
下着越しに触れる度に……引っ掻く度に喘ぎ声が漏れ、身動きがとれなくなる。
顔を歪め、抵抗するけど抑えられない。
其の突起物が熱くなって来る、膨れて来る。
「はぁっ……んあっ……」
彼の前で私は何をしてるんだろう。
身体の自由が乱れ、蹲る。
前方に眼を向けると、彼は傍にいた。
不思議そうに此方を覗いてくる。
「なっ……んでもな…いわ………早く離れ……て…」
私の必死の台詞に動じない彼は、私を抱く。
立場が一気に逆転する。
彼が私に寄り添い、囁く。
何をしてるの……私は………。
もっと貴方に………貴方をこわすと……。
「……我慢してる」
「どういう…意味……よ…」
「………桜庭さんは今、必死で耐えてる。僕を攻める事で必死なのに……ね」
さっきまでの彼とは明らかに違った。
「………怖がってるね」
……図星だった。
如何して解るの?
読心術の心得でもあるのだろうか。
何度も言い当てる彼が恐ろしくなる。
「そんなことっ……無いわ」
私は精一杯の強がりをする。
それも、彼には御見通しなのだろうか。
私は言い返せない。
次第に血の気が引いていくのが解る。
沸騰しかけていた血液は一気に冷め、変わりに脳から全身に送られる“恐怖”。
「貴方……何者…なの……?」
彼は一息吸って答える。
「……桜庭さんの“恐怖”は影に写っている」
「影……?」
「……対象者の影に、対象者自身の“影”を写す魔法」
…………???
「感情を影の色で識別する魔法“影塗り”……貴女は灰色だった」
どうやら彼は私を色で判断していたようだ。
「灰色……どんな感情なの?」
「……一つでは存在できない色」
「存在できないって……」
「……黒と白が混ざらないと生れない。黒は恐怖、全ての感情を塗りつぶす。
白は自尊、全ての感情を脆くする。……二色とも絵の具と同じだから、今の貴女は不安定な二面性を持ってるはず」
淡々と語る彼には、以前のような毒気の無い内気な青年の面影は無かった。
寧ろ……未熟だが知識には長けた少年のような……。
「もしかして……他の人達にも使ってるの?」
彼は首を縦に振る。
表情に少し翳りが見えた。
「……最初は興味本位だった。だけど他人の会話の中で、笑いながら影が赤に染まっていったり、
女子を見ながら桃に染める男子達を見たり………気がつくと、自分の心を読まれないよう、外に出さないようにって……」
「それで……人間不信になったの?」
彼は急に黙る。
いけない事を聞いてしまったかしら……。
「……さっき、桜庭さんに影縛りを使ったのは……」
少しした後、彼は口を開く。
「嫌なんだ。貴女だけは、汚れないでいてほしかった」
本当の彼の言葉。
表情や口調で私はそうだと確信する。
悪戯をして、怒られて謝る時の子供のような……。
大人びたクールな彼が、若干若返った印象を受けた。
「それに……嬉しかった。桜庭さんは近寄り難い人だったけど、
話してみたら楽しいし、一緒にいると心が安らぐ人だって感じたんだ」
「私といると安らぐなんて……変わった人ね」
「……僕の初恋のヒトだから……かな」
………いま。なんていったの。
「初恋の人の為なら……痛くなんて無い。でも、貴方を傷つけるのは……痛い」
彼は服を着ながら照れくさそうに俯いて言った。
“初恋”
彼は確かに言った。
私が好き……てこと?
そう捉えていいの?
―――――こういうとき……なんて答えればいいの?
「……ごめん。赦してなんていっても無理なんだろうけど……」
私は即答した。
「ええ。赦さないわ」
彼への答えは後回しにする。
取り敢えず今は………。
「貴方の所為で熱くなってた身体が冷めてしまったじゃない。続き、やるわよ」
彼は当然の如くビックリした表情を見せる。
私自身も、勢いで言ってしまったが……後には引けない。
そして初めての感情が生れる。
彼になら……触られても良いって。
「今度は貴方から触って」
そう言うと、彼はゆっくりと私の制服に手をかける。
ネクタイを緩め……制服を下から捲る。
不器用にブラを取り、胸に手を這わせる。
彼の指が登頂を摘む。
優しく丁寧に。
次第に堅くなるのを私は自覚できた。
快感が襲い、不快は無い。
男に触られるのが初めてだから、怖くて恥ずかしい。
「………桜庭さん…どきどきしてる」
胸の鼓動は彼の掌に伝わってる。
意識したら益々早く、強くなる。
「………舐めるよ…」
「!!ダメ……!んああぁっ……」
彼の舌が敏感な先に触れ、絡まる。
赤ちゃんが母乳を求めるように、彼の唇が愛撫しながら吸う。
「……はぅ……はぁん……」
必死で我慢しても漏れてしまう。
苦しくて……彼を掴む手に力が籠る。
「……………初めてなんだね」
「ち…違うわ!!わたくしは………」
彼の思いがけない言葉に動揺してしまう。
必死になればどんどん疑わしい。
解ってても今の状況じゃ、取り乱して――!?
「キャアぁっ!?」
彼は私を抱きかかえたまま、マットに倒れこむ。
―――私が上で、彼が下になる。
彼は私を引き寄せ、自分から倒れていた。
身体が彼に重なり胸が彼の胸板を押し返す。
「ちょっと、いきなり何を…」
問いかけには応じず、彼は手を私の太腿に手を伸ばす。
すうっと太腿を摩る彼の手は、やはり優しい。
「……細くて綺麗」
彼の手はお尻へと進む。
下着の裾に指が掛かる。
其の指は……段々、熱の活泉に迫る。
「……ココが……疼いてる」
指が核に触れ……弄られる。
「やめっ……んアアっ……ん…はぅ……」
彼の耳元で喘いでしまう。
呼吸が早くなり、息を何度も彼に吐きかける。
腰が何度も上下し、意識が遠くなっていく。
「……大きくなってる」
摘んだり…押したり…弄ってみたり。
玩具で遊ぶ様に無邪気に彼の指が、私の最も敏感な処で蠢く。
「ひゃぁめぇ……なにぃ……これっ……クル……」
ふわふわと柔らかな毛布に包まれたような……酩酊感。
呼吸が出来なくて肩で息をする。
それを邪魔するように、彼が口を塞ぐ。
「はぁっぅ……っふぁあ……」
もう呂律すら廻らない。
そして。
彼が強く弄ったのが―――最期だった
「ふぁア!!!!……っ!!!……、、、!!っ……!…………」
四度、身体が痙攣する。
核で破裂した快感は全身に派生し、熱と電気を帯びて流れていく。
血管が押し広げられ、大きく波打ってそれを送り出す。
収まるまで私は意識を見失う。
飛び立つ寸前で、彼の声に助けられる。
「……最後は………桜庭さんだよ」
下着を脱がされる。
スカートの下は……何も無い。
彼の竿が入り口の扉を叩く。
「……さあ。好きにしていいよ」
私は渾身の力を振り絞り、身体を起こす。
彼に馬乗りになった姿勢だが、腰だけ浮かして挿入を免れている。
でも―――手足の踏ん張りも……もう無理みたい。
私は決意し、堕ち逝く身体に身を任せる。
腰は徐々に堕ち……反り返った彼の竿がゆっくりと侵入してくる。
「!!!!ひゃあっ……あぁっ…ふぁアっ……」
傘の部分が中の壁をゆっくり押し広げながら進む。
敏感になった表面の肉壁は、擦れる度に私を高揚させる。
………ゆっくりと竿が納まっていく。
根元まで加えこんだ時の快感は、今までに味わった事の無いほどのモノだった。
私の身体が自動で上下に跳ねる。
反復する度に髪が舞い、卑猥な音が接続部位から漏れる。
漏れるのは音だけじゃない。
互いの体液が混ざり、擦れ、零れ落ちる。
根元まで咥え込んでは……ズプリと抜ける。
膣壁の波を掻い潜り、彼の竿が突き上げる。
「んんっ!……くうぅっ……あアン!……」
再び私は彼に倒れ掛かる。
彼は何故か冷静だった。
よく見れば……腰を動かしているのは私だけ。
でも其の時……私の中には彼がいた。
上下の口を塞ぎながら私は彼に委ねていた。
彼の瞳に私の黒く肥大化した瞳が反射する。
鋭く、それでいて温かな彼の眼。
「………出すよ…桜庭っ……さん……」
応える間も無く、私の中で精液が飛び散る。
「!!!!いやあァア………あぅっ……ふわあぁ…」
反射的に肉壁が竿を強く咥え込み、敏感な互いの表皮が強く擦れる。
噴水が終るまで……私は繋がった橋をずっと抱きしめていた。
―――事が終わり、私は制服を着る。
しかし残念な事にソックスが酷く汚れている。
「……ごめん。汚してしまって」
「本当、如何してくれるの?午後から授業は在るのに」
数分でお互い服を着終わる。
時計を見ると、もうすぐ午後の授業が始まる。
彼が此方をじっと見ている。
「………桜庭さん……さっきの事だけど…」
彼は先程の告白の答えを待っているようだ。
私は溜息を吐きながら彼に寄り添い――――――。
「…………桜庭……さん?」
「貴方だけにするのよ……時には言葉より大切なモノもあるの。憶えておきなさい」
そう言って、彼の唇に重なる。
傷を舐める様に丁寧に……。
“私”にとっては初めてのキス。
そっと離れると、彼は答える。
「……瞳が揺れてる…泣いてるの?」
零れそうになる雫を振り切り、私は其の場を去った。
教室に戻る。
何とか時間には間に合ったみたい。
胸を必死で押さえる。
苦しいのは……必死で走っただけじゃない。
「桜庭!アンタ裸足じゃない……ソックスは?」
三科さんに気づかれる。
「……ああ、先程水溜りに落ちてしまいまして…」
「そう……あれ?最近雨なんて降ったっけ??」
「違うわ!……これは………つまり…」
「何やってるんだ?早く席につきなさい」
助けてくれたのは柊先生だった。
私はほっとしながら席についた。
――――其れからの事は良く憶えていない。
ただぼ〜っと時間が過ぎるのを待っていた。
今日の授業が終わり、直ぐに下校し、そのまま家路に着く。
家に帰って、制服のままベッドに身体を預ける。
髪が無造作に四方に舞う。
ポケットに入っている櫛を取り出す。
彼はきっと……これを渡したくてずっと持ってたのかしら。
まだ……あの時の感触は残っている。
自我を忘れて舌を這わせて触れたモノより……ずっとずっと鮮明に。
もう一度逢いたい。
もう一度キスがしたい。
彼の瞳が、言葉が……私の中で何度も繰り返し再生される。
再生されるたび、思い出を記憶したテープが胸に撒きついて締め付ける。
瞳の黒色が溶け出しそうなのは、彼への愛情だけじゃない。
口を瞑って深呼吸するのは、寂しさだけじゃない。
眠りに就くまでずっと……彼を想っていた。
こんな気持ち、生まれて初めてだったから。
次の日、私は再び倉庫へ。
其処に……彼は居なかった。
跳び箱に座り、昨日を想う。
此処だと賑やかな校舎の歓談がほんの微かに聴こえ、何処か黄昏を含む雰囲気を醸し出す。
窓の隙間から風が侵入し、私の髪を靡く。
あたたかくて少し強い風。
長い髪は黒のカーテンのようにそよぐ。
其の髪にそっと手が触れる。
そしてゆっくりと頭頂部へ。
その手は優しく撫でる……壊れないようにそっと。
私は後ろを振り向かずに言った。
「五分の遅刻よ。罰として……」
私は彼に見えるよう、プレートをちらつかせる。
「………痛いのは……いやだけど」
大丈夫。
そんなことじゃないわ。
「昨日使った魔法を使って」
そう、彼の識別魔法。
彼は直ぐに魔法を詠唱し、影を確認する。
「………………紫紀」
いきなり下の名前を彼に呼ばれ、私は驚き照れる。
「ちょっと…何?貴方が呼び捨てなんて」
「………紫色。其れも綺麗なスミレのような」
……少しでもときめいた自分が恥ずかしい。
「……紫は赤と青の中間色。赤は時に情熱と生命、青は時に高尚や貴族を表す」
「それって……いいの?」
「……桜庭さんしか持たない色だから、誇りに思っていいよ」
そう言われると嬉しいけど……。
「答えになってないわ。背反した色同士なら、余り良い様に聞こえないんだけど」
「……色だけじゃ人の心は解らないって言ったのは……桜庭さんだよ」
「あっあれは……勢いで言っただけで…」
今日は顔が赤くなる事が多い。
「……もう此の魔法はアンインストールするよ」
彼はプレートを眺めながら言った。
「如何して?」
「この魔法を使ってから、人に関わるのが億劫になった。
魔法を使わなくたって……お互いの交わす会話や表情が大切なんだって解ったから……」
彼は……変わった。
前よりも喋るようになった。
表情は未だ堅いけど、話題を振ると答えてくれる。
時折見せる、少年のような態度。
自覚は無いんだけど、私も変わったみたいね。
彼といる時は、感情の起伏が強くなる。
勿論……彼への思いも。
私は密かに魔法を発動させ、彼を引き寄せる。
彼は私に跨る体勢になる。
髪のカーテンが二人を覆う。
………桜庭さんは やっぱり変わってないみたいだね
私を誰だと思ってるの? それじゃあ……この前の続き、始めるわよ
以上で終わりです。
作品の軸は“二面性”と“初恋”。
雰囲気・個性共に強烈な二人を扱うのは、かなり大変でした。
相変わらす投下するギリギリまで修正してました。
長時間の投下に御付き合いしてくれた方々、ありがとうございました。
感想をくださると凄くありがたいです。
今後の参考・モチベーションにいたしますので……。
個人的に二人とも大好きなキャラです。
桜庭・影沼ファンが増えてくれたら嬉しいです。
ではでは。
乙です。エロに磨きがかかってますな。
影沼も桜庭様もよく味が出てたと思う。
次の作品楽しみにしています。
>>337 GJ!!
桜庭と影沼にドキドキした。
エロにもっていきかたが意外で新鮮だった。もっと読みたいです。
三国書いてください
乙乙です
やっぱりエロがさらに進化してるというか、新鮮な感じがしました
桜庭様にかなりドキドキさせていただきました!
桜庭×影沼、意外な組み合わせだけどふいんき(ry出てたね
本編のネタが入ってたのも良かった
343 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/20(土) 22:01:56 ID:PIE8BXRP
伊勢兄×ハルカ嬢書いてください
なぜか九澄でないと読む気が起きない…
>>337 ふごうががががががあああ!
ありがとうございます!リクエストしたのは私なんですけれども
桜庭様に激しく萌えました。
ありがとうございますありがとうございます。
本編では接点がありませんが、この二人はおいしいカップリングだと思っていたので
リク答えてくれて嬉しいです。
これからも執筆頑張って下さいー
逆に九澄だと読む気が起きない。
原作の九澄のイメージだと自分から積極的にやらなさそうで・・・
ルーシーか年上女性から襲われるならOK。
まあ単なる個人的な好みだから聞き流して。
347 :
ZEH:2007/10/21(日) 02:24:54 ID:bg0ZEzcM
じゃあ俺でよければ今度九澄もので(エロがあるかはさておき)復帰しますけど・・・・・・
あくまで『俺』でよければです。そろそろ新しい筆でも持ちたい頃合なんで・・・(勝手でスミマセン)
>>337 乙です。腕上がりましたね〜・・・・・
個人的に責められる男はあまり好きじゃないんですがとても良かったです。又期待してますね。
>>347 ZEH氏もキター
職人さん、期待してますよ
>>346 年上女性に襲われるなら宇和井さんが適任ですな!
最近出番多いから是非書いてもらいたい…
宇和井さん(*´д`*)ハァハァ
今は宇和井さんかハルカ嬢が旬だと思う
年上女性なら宇和井さんだな
感想・批評を下さったみなさん、本当にありがとうございます。
具体的な感想が多くて嬉しいです。参考になりました。
キャラスレで評判になったのも驚きましたし、嬉しかったです。
このスレは書き手の作品投下以外のレスに嫌がる感じではないので、助かります。
ですが……余り多くの事を語ると荒れる元ですので、最低限のレスだけにします。
ではでは、次の作品で。
待ってまーす!
宇和井さんの作品が投下された日にゃ俺の中で革命が起きる
そろそろ禁断症状が・・・・
微エロで幼なじみ設定の影×桜様……という発想が。
そういえば桜庭相手の影沼攻めは今まで無かったな
宇和井さん×九澄が見たいですね
保管庫には最初の頃に2、3投下されてるだけだったし
ずっと滑塚のターン!!みたいなのが見たい。
360 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/02(金) 18:21:21 ID:/pWWYaNJ
このスレを落とすわけにはいかん。
主要メンバーのスレが殆んど落ちてしまったな。
影沼のスレは元気ですよw
六巻のおまけに注目
買うべきかな…?
6巻のおまけを見てきますた
保守
滑塚さんの痴漢行為を誰かお願いします。
文化祭で五メートル離れてデートする桜庭様と影沼を誰かお願いします
あげ
影沼厨がいい加減ウザい
影沼×桜庭とか言ってるやつ明らかに一人しかいないし
>>370 まぁ落ち着け。
周りも分かってる事だ。
あいつら基本的にKYだからな
結構同志がいて安心した
374 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/15(木) 01:09:36 ID:mYKGomK4
軽曽根さんマダー?
あれどうなのww
「お母さん、わたしにもちょうだい」
胡玖葉の母は料理を作り終え、椅子に座って牛乳をコップに注ぐ。
「姉ちゃん最近よく牛乳飲んでるな。そんなに飲んでも身長はのび……」
胡玖葉は大賀を睨みつける。
「さっきの無し!! 頑張ってればいつか……な?」
「あんたに励まされても嬉しくないわよ」
「もう! あんたたちって何時もそうなんだから。仲良くしなさいよ」
胡玖葉はリモコンを取り、昨日深夜録画した音楽番組を再生する。最近お気に入りのインディーズバンド“GYAK SATU”の新譜情報のためだ。
早送りすると、お目当ての場面が映る。
「今回の新曲はバラード……はあ〜……」
「姉ちゃんバラード嫌いなん?」
「大賀……今日のこと忘れたの?」
「あっ!! 悪い、でも柊父に逢いに学校に来るとは思ってなかったからさ」
「大賀ってあの先生と仲良いの?なんか親しげなんだけど」
「いやっ……まあ色々世話になってるからな」
「ふ〜ん。いいなあ、わたしも聖凪の学生になりたいな」
胡玖葉は自分の高校時代を思い出す。
始業式に三年の不良っぽい男子にチビって弄られて早速蹴り飛ばしたら、それ以降……男子は誰も相手にしてくれなくなってしまった。
一部の武闘派の男子にはファンクラブがあったと友達が言っていたが、胡玖葉はそんなムサい男には興味が無い。
弟の大賀は、聖凪高校という学校に通っていて、実は今日その聖凪高校に赴いていた。
赴いたきっかけは、大賀の忘れ物を届けに行った二月、ある教師に一目惚れしたからだ。
そして半年後の今日、漸く行動に移すことになった。
夏休みだから時間も充分あったし、親族として学校に入ることが簡単そうな時期だったからというのもあった。
結果は……惨敗。
お母さんやお父さんを責めたくないけど、この身長じゃあやはり厳しい。
でも、もう一度ちゃんと会ってお話したいという想いが胡玖葉にはあった。
今日見た感じだと、聖凪高校は独特の雰囲気。
あの大賀が必死に勉強して入った学校だと思えば、大賀の気持ちもよく分かる。そして段々と聖凪高校に興味を持ってしまう。
「魔法で身長を大きくできればなあ……ねえ大賀、あんたって学校の生徒会に入ってるって言ってたわよね?」
「ああ。正確には生徒会まほ……じゃなくて生徒会執行部」
「えっ? 執行部?」
「そう! それ。まあ校則違反者を取り締まる役職。要するに風紀委員みたいなもん」
「ふ〜ん、あんたそんなことやってるんだ……ねえ、聞いてもいい?」
「ん? なに」
「今日は夏休みだから学校に入れるかな〜って思ったけど、やっぱり無理だったのよ。どうすれば学校に入れるかな〜って思って」
「マジ!? 姉ちゃんそんなに柊父のこと気にいってんのか」
「まあ……それもだけど、大賀の通ってる学校に興味あるからね」
「でも入るっていってもなあ……」
「制服とか余ってないの?」
「なに言い出すんだよいきなり!」
「制服とプレートだっけ、それがあれば入れるんでしょ?」
「簡単に言うなって。大体、姉ちゃんが制服着て学校入ったら、すぐにバレるんじゃ……」
「……それって、わたしの背が小さいからってこと?」
「違うって! そうじゃなくてさ、今日俺のクラスメイトに思いっきり見られてただろ? それに完全に不法侵入じゃねえかよ」
「あっ……そうだったわ」
「学校には入れないけど、今日みたいな待ち伏せしてれば会えるじゃん」
「うん、そうなんだけど……」
やっぱり無理だと判断し、胡玖葉は食器を洗い場に運んで自分の部屋に戻り、音楽をかけて横になる。
それでも諦めきれない想いがあった。
―――やっぱりもう一回、学校に行ってみよう。
another side of M:67
九月。大賀は今日が二学期の始業式だった。
胡玖葉は生徒が登校を終える九時前に聖凪高校の校門前に着く。校門は閉じられ、高い塀がその周りをぐるっと囲っている。
「前みたいに来客用の受付じゃあ、通してくれないよね。やっぱり」
胡玖葉は出来るだけ校門から離れた塀に回り込み、よじ登って中の様子を確認しようとする。
だが塀が高すぎて届かない。胡玖葉の身長の所為もあるが、やけに高く作られているような印象を受ける。
「もうっ! でも壁を蹴って跳んだら、塀を飛び越えそうだし……仕方ないわ!」
胡玖葉は意を決して塀を蹴り、その勢いでジャンプしてみるが。
「きゃあっ!!!」
胡玖葉は見えない壁に弾かれ、尻餅をついてしまう。何度眼を凝らしても何も無い塀の上の空間に、確かにバリアのような壁があった。
「どういうことよ……もういっかい!」
考えても分からない胡玖葉は、もう一度挑戦する。だが塀を越えようとすると、またしても見えない壁が邪魔をし、再び尻餅をつく。
「も〜!! 通してよ〜!!!」
胡玖葉は後ろに下がり、助走をつけて全力でジャンプする。そして跳躍した状態から、塀の上にある見えない壁に向かってキックする。
「やった!!」
パリンという割れる音と同時に脚は壁を貫き、学校内の領域の侵入に成功する。
胡玖葉は高飛びの選手のように塀を飛び越え、地面に着地する。
「ふう……これが大賀の通う学校ね。でもどうしよう。とりあえず大賀に連絡しないと」
訳のわからない壁を突破し、うきうきしたい所だったが、勢いで不法侵入をしてしまったことに罪悪感を憶えてしまう。
胡玖葉は大賀の携帯にメールを送る。もう少しで始業式が始まるはず。
「大賀の返信が来るまでは隠れていないとね」
胡玖葉は隠れる場所を探して学校内の周囲を周る。
少し行くと、少し走ると、隠れるのに絶好な茂みを見つける。
そこは静かな場所で人気も全く無く、校舎の離れ的位置だから生徒には見つかることは無さそうだ。
「ここなら大丈夫かな。さすがに私服でぶらぶらしてたら怪しすぎるし」
胡玖葉はしゃがみこんで大賀の返信を待つ。
十分後。
大賀からの返信は未だ来ない。始業式が遅れているのだろうか。
胡玖葉は一応、もう一度大賀にメールを送信しようと携帯を開いた時だった。
「(えっ? どうして生徒がここに……)」
一人の生徒がこちらに向かってやってくる。始業式が始まっている時間の筈だ。
「(あの人カッコイイっ!! でも年下よね、う〜ん……)」
年下は無視してきたため、どうも認めれない所がある。でも素直に胡玖葉のタイプのルックス。
その男は胡玖葉の前を通り過ぎて、向こうに生えている木に寄りかかる。
「(声かけたいけど……我慢しなきゃ)」
さらに十分後。またしても生徒が現れる。今度の生徒は帽子を被っている。
「またカッコイイ男……あっ!! あの帽子欲しい!)」
胡玖葉は髑髏の刺繍に凄く惹かれるが、我慢しないといけない。
腕時計を見ると、もう二十分経つ。始業式は終わったんじゃないかという疑問がどんどん大きくなる。
「滑塚さん、どこです?」
帽子を被った生徒は誰かと待ち合わせだろうか、辺りをきょろきょろと見回している……すると。
「滑塚さん!!」
帽子の男が後ろを振り向く。胡玖葉もその先に視線を向けると、また生徒が現れている。
額に猫の引っ掻き傷のような傷跡がある男。胡玖葉はどうしても生え際の後退が気になってしまう。
帽子の男と、胡玖葉的にオデコが気になる生徒が会話をしていると、またしても新展開が起こる。
いきなり帽子の男が宙に浮いた。
「(えっ!? なにコレ! どうなってるの!?)」
なにかの手品でも見ているのだろうか。帽子の彼が宙でもがいている。
見た感じだとオデコ男が持ち上げてる姿勢だが、どう見ても三メートル以上は浮いている。
another side of M:68
『っぐぁあああああ! 何しやがんだー!! このデコ!』
「ちょっと誰!? 誰が喋ったの? あの帽子の人から聞こえたけどあの人の声じゃないし……」
何かマズそうな雰囲気になるが、胡玖葉の横を最初にここを訪れた金髪の男が何時の間にか現れる。
その手には何時の間にか巨大な鎖を持っていた。
「(でかすぎっ!! 今度は何よ、あの鎖……)」
「魔法執行部同士で内輪モメですか。こんなトコでやられると迷惑なんですけどね」
「伊勢!」
金髪の彼は巨大な鎖を駆使し、帽子の彼を助ける。
「(迷惑なのはわたしもなんだけど。それに今“魔法執行部”って言ってなかった?)」
大賀も執行部と言っていたが、魔法執行部という単語を聞くのは初めてだった。
だがさっきの浮遊と今の巨大な鎖を見ると、魔法の存在を肯定しないといけないのかもしれない。
そして。大賀と同じ執行部なら、大賀の先輩だろうか。
胡玖葉が色々と考えてるうちに何時の間にかあっさりと戦闘は終わり、三人は仲良く話をしていた。
「さっきまでの緊迫感が全くもって無くなってるわね……単なる喧嘩?」
こっそりと茂みをかき分けて側に近寄り、会話を聞いてみる。
だが胡玖葉にとっては学校の話題には着いていけず、唯一分かったのは帽子の男が永井という名前だと言う事だけだった。
三人の話が終わったらしく、三人はそれぞれの方へ去っていく。
胡玖葉はバレずにいてほっとしていたが、どうやら始業式が終わったらしく体育館の方から生徒達の声がする。
「やばいじゃない。校舎の空き部屋に隠れたほうがいいのかな……たぶん一端教室にみんな戻るから、それまでに隠れてやり過ごせればいいわ」
段々と生徒の騒ぎ声と足音が少なくなってくる。
そして再び静まり返るのを見計らって、茂みから姿を出して校舎に入って極力声のしない方を選んで校舎内を進む。
興味本位で飛び込んだために、見つかったら終わりのかくれんぼに変わってしまった。
胸に嫌な緊張感を常に持ちながら、胡玖葉は隠れる場所を探す。
「ここの制服があったら、こんな風にこそこそせずに聖凪を探検できたのに〜……」
―――ねえ。アナタだれ?
側で声がする。胡玖葉は辺りを見回すが、誰もいない。
―――探してもわたしは見えないよ。アナタ制服着てないから、部外者なの?
「なにこれ……幻聴?」
―――大丈夫。アナタだけにしか聞こえないように話してるから。ねえ、誰か教えてよ。
「えっと……わたしコクハ。九澄胡玖葉っていうの」
―――えっ!?九澄?じゃあ、九澄大賀っていう人知ってる?
「知ってるも何も、わたしと姉弟だけど」
―――え〜〜!!大賀の妹さん!?
「…………姉なんだけど」
―――ええ〜〜!!お姉さんなの!?
胡玖葉は怒りを天の声にぶつけたいが、相手が見えないために半泣きになる。それよりも折角だから天の声に質問してみることに。
「ねえあなた。ここに詳しいの?」
―――うん!夏休みにマンドレイクの芽を植えたから大丈夫。
「マンドレイク?……よく分からないけど、どこかに制服とかないかな? 制服さえあれば隠れる必要無さそうだから」
―――制服?……あっ! 購買部の裏に一つ余ってるみたい。サイズを間違えてSSSを注文しちゃったみたいよ。
「わたしそんなに小さくないのにぃ……」
―――まあそう言わずに!とりあえず、姿を見せようかな。
天の声が消え、胡玖葉の前に妖精が現れる。掌に乗るくらいの大きさで、髪が長いのが印象的の可愛い妖精だった。
「わたしはルーシー。大賀のパートナーよ♪」
「大賀の知り合いなの? じゃあ大賀の居場所もわかる?」
「……今は教室でホームルーム中みたい。だから先に制服手に入れようよ、購買部は今誰もいないから」
妖精のルーシーが先導して胡玖葉を購買部へ導く。
生徒のいるクラスの横をしゃがんで通ったりして、結構危ない所を縫って進んで……あっという間に購買部に着く。
「コクハ〜! 早くしないとホームルームが終わっちゃうよ〜!」
ルーシーが制服の眠る倉庫に飛んでいく。
この学校について聞きたいことがたくさんあったが、一先ず後回しで急いで倉庫に入って制服を探す。
「……あった! これね」
色んなダンボールを漁った後に、漸く聖凪の制服を見つける。裏地にあるサイズ表記はSSS。
そんな制服が手配違いとはいえ何故存在するのかツッコみたい胡玖葉だが、今は疑問に思ってても仕方ない。
「はやく着替えて!」
「わかってるわよ。よいしょっと……」
身体にジャストフィットするのは嬉しいが……どこか悲しい。
胡玖葉の体型だと、このサイズが丁度なのかと思うと切ない。夏服だったのが幸いで、着替えはすんなり完了する。
「似合ってるよコクハ! 可愛い〜!」
「そう? 鏡が無いから分からないわ」
「ネクタイ見せて……ラインが二本だから二年生の物ね」
「とりあえず、わたしの私服を女子ロッカーに置きに行きましょう」
女子ロッカーの場所はさっき通り過ぎたから分かる。二人はロッカーを目指した。
胡玖葉とルーシーがロッカーに向かう途中で、生徒達が再び廊下に現れる。
一応隠れながらロッカールームに入って、開いているロッカーに私服を隠す。
「ふう。なんとか間に合ったわね」
「じゃあ大賀のところに行く? 大賀のクラスも終わったみたいだよ」
「でもあいつのクラスメイトには顔を見せるわけにはいかないのよ。一度見られてて、大賀の姉ってことも知ってるから」
「そっかぁ……あっ! ごめんコクハ、わたし一端校長室に帰らないと」
「えっ!? 帰っちゃうの!?」
「うん……のどが渇いちゃったし、校長先生の言いつけだから。ごめんね」
ここからはルーシー抜きで何とかしないといけない。制服を手に入れてある程度のごまかしは利くが、バレない保証は無い。
「じゃあ二年生の教室に行くのは? 制服は二年生用だし、ここにも生徒が来るだろうから、今のうちに紛れて誤魔化した方がいいよきっと」
「二年生か……う〜ん」
「でも執行部には気をつけてね。多分不信者だってすぐにバレる可能性あるから……特に黒髪でツンツンで縛ってる人! すぐ大賀に抱きつくから苦手なの」
「わかった、そうするわ。あと大賀にはわたしのことは言わないで」
「どうして?」
「なんでもよ。それじゃあ、ありがとねルーシー」
「将来のお姉さんになるかもしれない人だもん♪じゃあね〜」
ルーシーは胡玖葉の元から去ってしまう。心強い味方がいなくなるのは寂しい。
「この学校についての疑問は聞きそびちゃったけど、それは大賀を捕まえてから聞けばいいわ」
胡玖葉はロッカーをこっそり出て辺りを見る。懐かしい高校生活を味わいたい所だが、そんな余裕は無い。
「こそこそしてたら逆に怪しいよね。制服着てるんだから、堂々と二年生の教室に行こっと」
胡玖葉は駆け足で階段を駆け上がった。二年生の教室前の廊下も、一年生のそれと同じだった。
身長の低い胡玖葉は、廊下で立っているよりも教室に入って席についているほうがバレにくい。
身長の関係で目立ってしまうのは胡玖葉としては悔しいが、これも我慢しないといけない。
胡玖葉はなるべく人混みの少ない教室に入って、空いた席に座る。
「でも、人混みに紛れた方がバレないのかも」
そう思いながら、廊下を眺めて辺りを窺っていると……。
「ちょっと誰? わたしの席なんだけどな〜」
振り返ると、黒髪で後ろ髪を縛った片目の女子だった。ルーシーの言ってた子だろうか。だとしたら執行部の人になる。
「あっ……えっと……」
急に生徒に話しかけられたのが予想以上にビックリし、胡玖葉はパニックになってあたふたしてしまう。
そこに追い討ちで、もう一人の生徒がやってくる。
「どうしたの玲、はやく部室に行こうよ」
「ねえハルカ……この子うちの学年にいたっけ?」
「いっ!!? (この子鋭すぎ!やばいよ〜)」
「ちょっと失礼じゃない、ちゃんとネクタイ見て」
ハルカと呼ばれた女の子は落ち着いた雰囲気で、黒髪の子をなだめている。胡玖葉は、この子の話に合わせた方がいいと感じる。
「……まあ確かに二年生の制服だけど」
「ごめんなさい。玲ったら最近執行部が忙しくてイライラしてるみたいで」
「いっいえ……気にしないで」
「だってハルカ、九澄が未だに魔法使わないのよ!? 今日は言ってやるんだから!」
ここで胡玖葉は考えた。
玲と呼ばれた黒髪の子は大賀の知り合いだろうか。同じ執行部なら先輩のはず。
それよりも、この子の言葉からまた“魔法”という単語が出たことが気になる。
先ほどの出来事やルーシーを見ると、それが当然に感じてしまう胡玖葉。
そして同時に、少し前に見たカッコイイ生徒も執行部って言ってたのを思い出す。滑塚に、永井に、伊勢……。
このハルカっていう人は信用できそうだが、胡玖葉は誰の名前を聞けばいいか悩む。
二人が世間話している間に胡玖葉が選んだのは、永井と言われた帽子の男。
あの人のネクタイだけは二本ラインだったのを微かに覚えていたからだ。
上手く話を切り出せるだろうか心配をしてる間も無く、胡玖葉は行き当たりばったりで聞いてみる。
「あの、執行部に永井っていう人はいる?」
「支部長のこと? なになに、支部長に何の用?」
「永井くんなら執行部の部室にいると思うけど……何かトラブルでもあったの?」
「そんなんじゃなくて……えっと……帽子がカッコよかったから、見せてもらおうかな〜って」
「な〜んだ帽子の方か。でも“あいつ”、いっつもわたしをブスって言うのよ!? どこがブスなのよ〜!」
「わたしも仕事をミスしたら『ブス!』って言われるけど……」
「(……帽子の彼って、女に口が悪いみたいね。玲って子はなんか冗談っぽくても、ハルカって子にまでそんなこと言うなんて。なんか誠実そうだったのに残念だな〜)」
「はやく行こうよハルカ。また“あいつ”に怒鳴られるわ」
二人は部室に向かうようだ。
「(もしかして……部室にいれば大賀に会えるし、道中も二人といれば怪しまれずに済むんじゃないかな)」
胡玖葉は勝負に出る。友達としてこの二人と一緒に行動すれば一人より危なくない……そう考えた。
「あの……わたしも部室に行ってもいい? 帽子が見たくて」
「いいわよ。どれだけ忙しいかを生徒に見せるのも大事だし。そんなに支部長の帽子が気に入ったんだ……変わった子ね」
「(んも〜!! 玲って子、わたしを完全に子供扱いじゃない!!)」
玲が胡玖葉の頭をぽんぽんと撫でる。胡玖葉はまたしても泣きたくなるが涙は瞳に溜めて我慢する。
「それじゃあ三人で行きましょ! えっと…………」
ハルカが此方を見て戸惑っている。胡玖葉は名前を聞きたがっているように見えたので、自己紹介をする。
「コクハよ。苗字は……」
「ごめんなさい。それじゃあ行きましょ、コクハさん」
胡玖葉は執行部員の玲とハルカについていくことに。苗字を何にするか迷っていたが、追求されずに済む。
とりあえず味方がいると堂々と廊下を歩けるのは助かる。
「でもコクハって、背が小さいよね。わたしも結構小さい方だけど、それでもなんか……」
玲には早速呼び捨てだった。彼女らしかったが、言われた年上の本人にはかなりきつい。
「玲ったらすぐに余計なこと言うんだから。気にしなくていいよ、コクハさん」
「ありがとう、ハルカ」
ハルカは玲のお母さん役のような印象だった。胡玖葉にとっては、今の所ちゃんと敬語で返してくれる貴重な生徒である。
だがそんな和やかな雰囲気も一気に消え去る。
「きゃあっ!!!」
胡玖葉の脚に何かが掴まる。誰かに握られたような感覚だが、側の二人には何も変化は無い。
「どうしたの?」
「なんでもない……ひゃあっ!!」
今度は胸。元々掴むほどのモノは無いが、中央の蕾に触れると鳥肌が立ってしまう。
胡玖葉は胸を押さえるが、腕の中で何者かの掌が胸を触っている。
「ごめん!! 二人とも先に行ってて!」
胡玖葉は近くのトイレに駆け込む。
個室に入って身体に纏わりつく意味不明な手を振り払おうとするが、今度は下に手が伸びる。
「ひゃぁっ……やめてよ……」
個室に入った理由はただ一つ。
感触があるが実体が無いから、魔法で姿を消した透明人間の仕業だと胡玖葉は確信したからだ。
胡玖葉は目の前の空間を思いっきり蹴り上げる……が、空振り。それでも手はスカートの中に侵入し、中を強引に漁る。
「ふあっ……もう……どこよぉ……」
トイレの個室という小さな空間は全て手探りで探したが、相手の感触は全く無い。
正反対に、胡玖葉の下半身には常に不快な感触が纏わりつく。
時折感触が脚に下がったと思ったら今度は肩。
肩を握られたと思ったら今度は腰……変態の遊びにしては狂った攻め方に感じる。
「相手がいないんじゃあ……どうしようもないじゃない……ふああっ……」
胡玖葉は便座の上に座って体育座りするが、為すすべなくこの魔法の手に遊ばれる。
見えない恐怖に襲われて、オマケに誰かに身体のいたるところを触られて、胡玖葉は我慢できずに泣いてしまう。
今までは目の前の敵を倒してきた彼女だが、相手のいないトイレの個室で必死に謎の触手からの攻撃で恐怖に苛まれる。
小さな身体を丸めて便座の上で必死に耐える胡玖葉。だが、謎の魔の手は強引に股の付け根に這って来る。
「そこはっ……いやぁあッ……あうぁあ……」
薄い下着の生地に指が這う。愛撫ではない。陵辱に近い。
指が痴丘に埋まり、口の周りを掻き乱す。胡玖葉はどんなに脚を閉じても指は離れない。
下着の上から指が口の中に強引に侵入したと思うと……上の栗に他の指が擦れる。
胡玖葉は喘ぎ声を抑えながらも泣き声を漏らしてしまう。
「だめっ……もう……ひぐぅっ……」
コンコン。
誰かがノックしている。胡玖葉は、この魔法の使用者と踏んで扉を睨む。
「誰か……いるの?」
聞こえてきたのは女の子の声だった。
オドオドした声で此方に呼びかける。普通の生徒なら、泣き声や喘ぎ声を聴いて不審に思って尋ねているのだろうか。
「ねえ……誰かいるの?」
「……なんですか?」
「大丈夫? なんか変な声とか音とかしてたから怖くて声をかけたんだけど……」
扉の向こうの生徒は本当に心配している様子だった。確かに罠かも知れないが、胡玖葉にとっては話せる相手がいるだけで安心できた。
「周りに他の人………いる?」
「いないよ。わたし一人」
「……名前とか聞いてもいい?」
「わたしは時田マコ。一年生。貴女は?」
「胡玖葉っていうの。一応……二年生」
「コクハさん? 可愛い名前だけど、本当に大丈……わあっ!!」
このまま無視するにも悪かったから、少しだけ扉を開けて顔だけでも確認しようと、胡玖葉は扉を開け……硬直した。
便座に座ったまま扉を開けると、時田は驚いて飛び上がり、おかげで大きな胸が何度も上下に暴れていた。
時田の胸がいきなり眼に飛び込んできて、肝心の顔が見えない。
彼女はそれほど大きな身長ではないが、角度的に下から見上げる体勢だったのもある。
最大の原因が彼女の胸の大きさにあるのは言うまでも無い。
そして……時田は天然なのか運動オンチなのか、飛び上がった勢いで胡玖葉に倒れ掛かり、その巨大な胸を胡玖葉の顔に被せてしまう。
息が出来ずに胡玖葉は胸をどかそうと持ち上げるが、掌からプルンと零れるほどの大きさの胸のせいで四苦八苦。
「むぐぅ〜〜〜! むぐぐぅ〜〜〜!!」
「大丈夫!? よいしょっと……ひゃ!?」
時田はゆっくりと体勢を立て直そうとするが、再び胡玖葉に倒れこむ。
「んぐぅ〜〜。今度は何よ!?」
「誰かに触られてる……」
そういえばさっきまであった不快な感触が無い。どうやら標的が時田に変わったようだ。
「どこを触られてるの?」
「お尻……」
何とか顔を胸から出して時田のスカートを見てみると見事に捲れていて、手の形が下着の上から確認できる。
「なにコレ……コクハさん、怖いよ……」
「ちょっと待ってて」
時田のお尻に喰いこむ指の跡に触れるが、またしても実体は無い。
その指跡がどんどん上半身に滑っていく。制服の上を舐めるように波打ちながら。
「今度は背中……ひゃあっ!……」
手が背中から横胸に廻る。
人差し指だろうか、一本の指でツンツンと横胸を突いて確認しているのが、胸に埋まる指の輪郭で分かる。
「わたしの目の前でそんな卑猥なコトしないでよ!」
「ごめんなさい……」
「ごめん、マコに言ったんじゃないの。とにかくこいつをどうにかしないと」
時田を襲う手がゆっくりと胸に圧し掛かり、大きくて柔らかな胸に指が埋まり咀嚼している。
豊満な胸が胡玖葉の目の前で揉まれている光景は、異様でしかなかった。
時田は苦しそうに喘いでいるが、胡玖葉は動けずにその吐息と声を耳にすることしか出来ない。
「これじゃあわたしがやってるみたいじゃない! そんな趣味ないのに〜!」
「ううぅ……でもコクハさんにヤられてるって無理に想像したら……何とかなるかも……」
「ちょっと! どんだけ天然なのあんた! んも〜!!」
胡玖葉は何とか時田の身体から抜け出す。時田は蹲って必死に手の蹂躙から我慢している。
「犯人はどこよ! 出てきなさい!」
大声で叫んでも反応は無い。時田の喘ぎ声だけが聞こえる。
「コクハさんっ……」
「待っててマコ。絶対見つけてボコボコにしてあげる。わたしも犯人に本気で怒ってるから」
時田はさっき会ったばっかりの子で天然巨乳だが、迷惑掛けてしまったことを胡玖葉は思っていた。
「(でもどうすればいいのよ……遠隔操作で遊んでるのかな。でもそれならいきなり胸とか、アッチの方を触ってくるよね……あっ、執行部!)」
胡玖葉は玲とハルカを思い出す。彼女たちに連絡すれば助けてくれるかもしれない。
「ごめんマコ、個室に隠れてそのままで我慢してて!」
「待って! 行かないでください……怖いよ……」
時田は胡玖葉にしがみ付き、小さな胸に顔を埋めて泣きながら恐怖に怯えている。
年上の胡玖葉はなんとか落ち着かせようと時田の頭を撫でる。
少しだけ御姉さんらしい振る舞いが出来たのは彼女自身嬉しかったが、状況からして素直に喜べずにいる。
「すぐ帰ってくるから! 個室に隠れてて!」
胡玖葉は廊下に出て、執行部の部室を探す。さっき部室の手前まで行ったので、其処まで行ければと辺りを捜索する。
another side of M:69
玲・ハルカと別れた場所を探していると、胡玖葉は道に迷ってしまった。明らかに周りには誰もいない。
「方向オンチだからな〜わたしって……あれ?」
何やら物音がする。胡玖葉は不審に思って、物音の方へ向かう。
『行け〜〜〜! ホッチャー!!』
そこには、何かが胡玖葉の前を横切る。
「何あれオバケ!? 何でこんな所に……それにさっきの声、大賀っぽかったのは気のせい?」
胡玖葉はオバケの向かう先を見てみる。すると、そこに立っていたのはさっき見た男。
「今度はオデコの人? オバケ対オデコ……」
オデコ男は机やロッカーを操ってぽんぽんオバケに投げていた。
「あれって投げてるんじゃなくて、遠隔操作してる! じゃあさっきの魔法は……あっ!!」
胡玖葉は肝心なことを忘れていた。この学校に来てから最初に驚いたこと。
「帽子の彼を持ち上げたのもあの魔法ね」
胡玖葉は頃合いを見計らって飛び出したいが、再び掴まれる危険性があると同時に、不可避の魔法だと既に推測しているために飛び出せないでいた。
そして気づくと、あのオバケが机を喰らって飛び散り、オバケの破片が此方に飛んでくる。
「けほけほっ……なにこの煙幕、お香のような匂い。でも前が見えないわよ!」
オバケの煙が辺りを包んで前が見えなくなってしまう。胡玖葉は必死になって煙を追い払う。
だが折角煙幕を追い払ったと思ったら、目の前には誰もいない。
「もう! あのデコ男どこに行ったの!?」
胡玖葉は辺りを探すと、驚くことに校舎の至る所にボコボコの穴が開いていた。鉄筋の基礎が剥き出しになってる校舎の柱が生々しい。
「ちょっとまた魔法? もうなんでもありね……この学校って」
最早魔法という概念を否定はしないが、スケールの大きさに改めて呆然とする。
「こういうのを取り締まるのが玲やハルカ達の仕事なのね。じゃあ大賀も取り締まってるのかな。あいつが違反者の取締りなんて……」
胡玖葉はぶつぶつ言いながら、校舎の傷跡が続く先へと向かう。そしてその傷跡は屋上への階段のそば、家庭科室の前で終わっているみたいだ。
another side of M:70
「屋上にデコ男がいるの?」
胡玖葉は家庭科室に近づく。するといきなり傷跡が瞬時に修復される。
「あれ? 元に戻っちゃった。これも魔法?」
胡玖葉が不思議そうに校舎の柱を触っていると、家庭科室の前に誰かがいた。
憧れの先生と、背中しか見えなくて顔が確認できない生徒、あとルーシーもいる。
「あの先生がいるじゃない! でも今会ったらバレるから我慢しなきゃ……」
恐らく屋上に逃げた犯人のデコ男を追いたいが、二人とルーシーが邪魔で通れない。胡玖葉は彼らがその場を去るまでじっと待つ。
そして……漸く二人とルーシーは動き出す。
頃合いを見計らって胡玖葉は屋上への階段を駆け上がると、屋上の扉付近で声がする。
―――『んも〜メンドイな〜〜〜。んじゃ、赤の7貼って』
「あれ? 女の声だ。どうして……」
胡玖葉はこっそりと覗いてみる。するとデコ男が扉を開いて外に出る所だった。
「ちょっと待ってよ!!」
胡玖葉は急いで追いかけ、扉を開けて外へ……だが何故か男の姿は無い。
「何でいないのよ!! さっきここから屋上に出たじゃない……んも〜〜っ!!!」
もう何が何やらで訳がわからず、胡玖葉の怒りが頂点に達してしまう。その怒りの矛先は。
「大賀が返信してくれないからこうなったのよ!! あいつどこ行ったのよ!」
胡玖葉は再び校舎に戻り、大賀を探すことに。顔は頬を膨らませて、眼は血走っていた。
「どこよ……大賀は……どこよ……」
胡玖葉は延々と呪文を唱え続ける。携帯が常にマナーになっているようで、電話しても繋がらない。
今の彼女には大賀のクラスメイトにバレたらいけないことを忘れ、彷徨いながら大賀を探す。
記憶を頼りに執行部の部室へと向かうが……不思議な香りが辺りを包む。胡玖葉が先ほど嗅いだ、お香に似た匂いだ。
「これって……さっきのオバケの匂いじゃない」
香りに釣られて行って見ると、ある売店に辿り着いた。
「ドラッグメーカー? 薬屋さんかな」
先ほどまでの憤怒の感情を癒してくれる香りが胡玖葉を包む。色々な薬草が置いてあり、全てが初めて見たものに眼をまじまじとして観察する。
「いらっしゃいませ。なにか探し物ですか?」
薬草を物色していると、店員に声をかけられる。内巻きもみあげが特徴の子だった。折角なので、胡玖葉は辿ってきたオバケの香りについて聞くことに。
「この店の側でお香の匂いがして来て見たんだけど、これって何?」
「これはわたしが今作っている魔法薬の匂い。九澄に頼まれて作ってるんだけど……あいつったら、わたしが薬品部だからって扱き使って。あんたのために薬品部に入ったわけじゃないんだから!」
「九澄? あなたも九澄の知り合い?」
「えっ……そうだけど」
彼女は大賀の知り合いのようだ。ネクタイを見ると一年生のようだが、夏休みに来た時には姿は見ていない。
「その魔法薬ってどんな物なの? たしかホッチャー、って言うんだっけ」
「そう、それでなんかオバケみたいなのが出て来るのよ。九澄は執行部の備品として必要って言ってたわ。部室の荷物運びにさっき使ったし」
どうやらここは薬品部の出す売店のようだ。彼女の話を聞くと、この部にとって執行部はお得意さんといった所か。
「柊さんが大変そうだから、わたしがちゃんと九澄をサポートしないと……あいつの事だから、柊さんを扱き使うかもしれないし……わたしが柊さんに変わって犠牲に……」
「(この子、さっきから大賀のことばっかりね)」
「ダメよ! そうじゃなくて九澄がもっと執行部らしく真面目にやってるか随時見張ってないと!」
「(この子……大賀のこと好きなのかな)」
接客を無視して“九澄”を何度も連呼するのを見て、胡玖葉は気になって聞いてみる。
「あなた、大賀のこと好きなの?」
「えっ!? 何言ってんのよいきなり!! それに大賀って……どういう……」
「あっ! なんでもないから、気にしないで。それじゃ!」
胡玖葉はあたふたしながら薬品部を後にする。
「ふう……あんまり興味本位で聞くことじゃなかったわね。大賀って意外にモテてるんだ。わたしとは大違いね……」
もうほとんど生徒は下校か部活に向かっていて、行き交う生徒は少なくなっていた。
「もう生徒は少なくなってきたし、今のうちに学校から出ましょうか。大賀は家で制裁を加えるとして」
胡玖葉は大賀の捜索を諦めて、自力で学校から出ることにする。入ることが出来たなら、出るのも大丈夫と踏んでの事だ。
一先ず、私服のあるロッカーへ向かう。
ロッカールームに入り、私服を一緒にあった商品袋に入れ終わる。だがそれと同時にいきなり誰かに抱きつかれる。
「コクハさ〜ん!!」
「えっ!? 誰よ〜!!」
この感触は間違いない。この無駄にデカい胸は間違いない。
「マコ!? ちょっと離れてよ! 苦しい〜!!」
時田の胸でわたしはジタバタしたが、柔らかくて大きな胸が胡玖葉を離さない。
「コクハさんがトイレから出ていってからすぐに魔法が止まったの! 辺りを探してもいなかったから……コクハさんが犯人を退治してくれたのよね?」
「ちが……うの……に……」
「ありがとうコクハさん!」
「……うううぅ…………」
胡玖葉は息絶えてしまう。
伝説のちびっ子ファイターとして恐れられた空手の達人は、巨胸に挟まれ圧死という間抜けな最期を迎えることに……。
気がつくと、胡玖葉は救急車の中にいた。
「大丈夫ですか?」
救急隊員に呼ばれ、胡玖葉は頷いて返事をする。
「わたし……どうして……」
「学校で倒れたと通報があったので」
時田の巨乳による呼吸困難での酸欠とは、恥ずかしくて言えなかった。
「貧血だと思いますが、通報者が心配して呼んだみたいですね」
「通報者って……」
「えっと……時田マコさんですね」
どこまで天然なんだろうあの子、と突っ込みたくなる胡玖葉。
だがあの学校から出られたのは幸運だった。横を見ると私服の入った袋もちゃんとある。
「あとは……玲とハルカとマコ、それにルーシーや薬品部の子……」
彼女たちは胡玖葉のことを知っている。だがもうあの学校に行かなければ問題無い。
「(制服はそのまま持ってきちゃったけど、まあいいか。コスプレ趣味は無いけど、わたしの着ていた高校の制服より可愛いし♪)」
胡玖葉を乗せた救急車が走っていく。
魔法学園での一日間の冒険……勿論、魔法なんて一般人は誰も信じない。
だが彼女は知ってしまった。魔法の存在。それを操る生徒達。
「大賀も魔法使えるのかな。でも一応執行部員だから黙っておいた方がよさそうね。あの先生が見れたし、伊勢っていうカッコイイ人もいたし……楽しかったな〜♪」
このまま終われば“くずみこくはのぼうけん”という単発シナリオで終わるはずだったのだが。
「校長センセ〜!今日ね、学校で大賀のお姉さんに会ったよ!」
……彼女のぼうけんは残念ながらまだまだ続きそうだ。
これでおしまいです。
67〜70話を使っての胡玖葉編でした。胡玖葉を色んなキャラと絡めたくて作りました。
少々エロパートが強引なのは、滑塚の天然ということで……。ではでは。
うおおおGJ!
是非続きは大賀×胡玖葉でお願いしたいです
しまったsage忘れた
GJ!!GJ!!久しぶりにSS見れて良かった!
ず っ と 滑 塚 の タ ー ン ! !
うおー、GJ!普通に面白かった
>>389 乙でした。
コクハとルーシーの二人は何気にいいな。
面白かったです。次も期待しています
396 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 02:12:14 ID:00TYp/jB
滑塚の魔法って、対象を目視しないとできないんじゃなかったっけ?
どうしても気になったので
>>397 そう。
でもすごい良かった。
滑塚x時田というのは、今まで考えたことなかったけど
一度言われてみればまさに王道に思えてくる。
滑塚さんの今後の活躍にも期待。
399 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/21(水) 22:22:46 ID:eHON3fGD
保守age
保守
401 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 01:03:15 ID:pgRcjWn3
軽曽根さんが男を喰いまくる話はまだですか?
どっちの意味でだ。
カニバリズム自重
こんばんは。
作品を投下しますが、長いので分割させて戴きます。
内容は“二年執行部の行方”、序章と聡史×玲の前半です。
シナリオは現行の文化祭以前に作ったものですので、
それを踏まえた上で読んで頂けると助かります。
「今日の仕事は此処までだ。みんな、お疲れ様」
永井の一言で執行部の業務が終わる。組織のトップに立つ男の一声は、以前よりも聡明だった。
一年の終わり。
永井は正式に魔法執行部の次期支部長に任命された。
買われたのはやはり実力。圧倒的な力を有する実力者がトップに立つのは、違反生徒からすればこれ以上の抑止力は無い。
人柄も真面目で誠実な男……唯一の心残りは統率力だった。
実力はある。性格も実直。唯、表現する事が出来なかった。
彼は魔力を帽子に宿し、髑髏の刺繍は自我を持ち独裁を始める。それで彼は威風堂々と渡り歩いた。
時折、彼の口から漏れる本性・本音は、髑髏の立振舞いによって掻き消される。
そして……事件は起きた。
伊勢聡史。彼との衝突……永井は無二の親友を失った。
それでも髑髏を脱ぐことは出来なかった。生活には特に支障をきたす事は無い。
最早定着しつつある人格をわざわざ戻す事も無い。好都合の要因もある。
支部長というポストの重責に彼は苦しんでいた。
永井の異変に真っ先に気づいた女性がいた。名は沼田ハルカ。
執行部の事務担当の女子。彼女が執行部に入ったきっかけは、道徳を守り、健全な学校生活を望んでいた為だ。
彼女は暴力を憎み、違反を嫌った。魔法の実力・運動能力は他の部員には劣る所はあるが、執行部一の働き者だった。
少ない部員数で切り盛りしていた入学式以降の新体制では、彼女の頑張り無くしては語れないほどに。
ハルカは永井と会話する事が度々あった。支部長と事務責任者という関係でしか交わされなかった会話。
その時見せる永井の本音。ハルカは彼の事が気になった。
世話焼きな性格が災いしたのかもしれない。それとも……別の何か。
脳裏から離れない、永井の影を落とす表情。其れさえもがハルカにとっては改善すべき問題になってしまった。
そんな執行部に転機が訪れた。九澄大賀。彼の出現で、執行部は活気付く事になる。
一年生ながら一学期にしてGPを持つ男。
副部長の宇和井のスカウトもあり、彼を執行部に招き入れる事ができた。
何故か魔法を一切使わない独特なスタイルを貫く彼を、宇和井は良く弄る場面が見られた。
そして彼の一番の功績は……永井と聡史の一時の和解。校舎内で一・二の実力者同士の対決に彼は割って入った。
身を挺して聡史の攻撃を受けながらも、二人の凍っていた壁を壊す事に成功した。
聡史は去ったが、行き違いの理解は修復できた。
そして……永井の髑髏の真相も。
二学期に入り、九澄は柊先生の娘、愛花を連れて執行部の分室を活動の拠点にする事となる。
彼はあくまで一年責任担当者としての仕事がある為だ。再び多忙な毎日が執行部を襲った。
特に二学期は、夏休みの自主練習で鍛えた魔法を披露する生徒が増える。加えて文化祭等の行事も多い。
宇和井は考えた。
伊勢聡史を復帰させるのはどうか。もう永井との和解も完全ではないが、以前よりは大分改善した。
あと少しの歩み寄りさえあれば。彼女は人手の足りない今、彼の力が必要だと思った。
お節介とわかっていても。
十月中旬。宇和井の提案。
其処には単なる執行部の再生という意味だけではなく、四人の行き違う感情のベクトルが収束する為の命題でもあった。
Day 2 10/12 Friday
今日も授業は軽く流して、何時もの場所へ。
最近は仲間ともつるまないな。試験前だし、落ちたらマズイしな。まあ俺には問題無い。
今日はちょうどいい気候だ。体育館裏にそびえる大きな木にもたれかかって、空を眺める。
雲が流れるのが恐ろしくゆっくりだったが、黄昏を掻き消す声が俺を現実へと呼び戻す。
「待ちなさい!!」
俺は声のする方に眼をやると、一人の生徒が必死で此方に向かって走って来る。
その後ろにいるのは、宇和井だった。
「伊勢! そいつを捕まえて!」
―――捕まえろ?まあいい、五月蝿いのは嫌だ。
俺は魔法を発動する。鎖が生徒に絡みつき、あっという間に拘束する。
後を追っていた宇和井が息を切らしながら漸く此方に着く。
「何やってんだお前」
「はあっ……だってそいつ、足速くてさ……はあっ……」
「魔法はどうした。ポケットに入ってるのは玩具か?」
「だって私の魔法、屋外じゃあ……広すぎて効力が半減するから……」
宇和井は深呼吸して息を整えている。まあ魔法が使えなきゃ、普通の女子だから仕方ないか。
「ありがとう、伊勢」
「別にお前に礼を言われるほどの事はして無い。騒ぎが嫌いなだけだ。解ったらとっとと連行しろ」
そう言うと同時に、後ろから八条が此方に駆けつけてきた。
「あっ! ちょうど良かった。こいつの連行よろしくね」
「またこき使いやがって。どうせ部室に用事あるからいいんだけどな」
そう言って八条は生徒を連れて去っていった。
「相変わらずの扱き使いっぷりだな、副部長さんよ」
「アンタが執行部に居てくれたら、私の仕事も少なくて済むのになぁ〜」
皮肉タップリで宇和井に言ってやるが、宇和井はニヤニヤしながら此方を振り向き、厭味な台詞で切り返す。
俺は木の幹に身体を預ける。
「執行部にいたころは、アンタが一番率先してこうやって取締りしてたわよね」
「昔の事だ。もう俺は執行部の人間じゃない」
「……そうだったわね。じゃあアナタも魔法の無許可使用として連行しようかしら」
「喧嘩売ってんのかお前」
「たまには執行部に顔出してもいいんじゃない? 支部長、喜ぶわよきっと♪」
「アイツの話はするな」
「なんで? もう仲直りしたじゃない」
「いいから行け! 此処にもう用は無いだろうが」
「はいはい……アンタが助けてくれた事、支部長には内緒にしといてあげる」
「当たり前だ。喋ったらぶっ飛ばすぞ」
宇和井の会話に言葉を合わせるが、こいつの発言は何時も本音かどうかが解らない。
宇和井はハイハイっと手で合図しながら去った。
あいつが余計なこと言ってくれたおかげで、思い出したくもない事が脳裏に浮かんだ。
毎日走り回っていた頃と、こうやって高みの見物している今を照らし合わせては、懐古に向かってしまう。
毎日違反行為を起こす奴等を取り締まるのは重労働だったが、それなりの達成感もあった。
運動部での部活動が終った時のように、永井と良く今日の事を話しながら帰ってた……
今じゃあ、ありえねえけどな。
やりがいのあった仕事を辞めて、魔法が一般生徒と同じ規則下でしか使えないのは窮屈な学校生活だった。
それに今は共に同じシルバープレートだが、このままだと永井が俺より先にゴールドになってしまう。
永井だけじゃない、宇和井や他の執行部員もそうだ。
毎日執行部員がチクチクポイント集めしてる。
一方で、俺にとってのポイント取得は試験での高評価か、何時あるか分からない学校貢献での臨時ボーナスしか望めない。
宇和井の言葉は本音なのだろうか。
九澄が分室に行ったのは知り合いから聞いた。実質今の部室は五人、執行組織としては少ない。
九澄が入る前の執行部は忙しそうに毎日走り回っているのを何度も遠めで眼にしていた。
いや。あそこに俺の居場所なんて無い。永井がいるし、宇和井の相手は疲れる。
今のままでいいのか……なんて言われたら言い返せない自分に無性に腹が立つ。
気を紛らわす為に空を見上げたら、雲が流れるのが早くなった気がする。俺は早めに教室に戻ることにした。
放課後。
退屈な授業が終わり、俺はさっさと教室を出て下駄箱に向かう。
「伊勢!」
呼び止めたのは宇和井だった。
「ちゃんとお礼、言ってなかったでしょ?」
「そんなの要らないってさっき言っただろ」
「でも取り逃がしちゃったのは……私の所為だったから……」
「“一般生徒”に手伝ってもらうなんてな。執行部副部長の名が泣いてるぞ」
「……そうね。私としたことが迂闊だったわ」
宇和井の反応はあまり良くなかった。何時もは言い返して来る所だ。
―――本当にへこんでるのか?こういう空気は嫌いだ。今のこいつを見るのも。
「もう手は貸さないからな」
俺はその場を去ろうとする。
「ちょっと待って! 話があるの。長くなるから……今日あった所! いいでしょ?」
俺と宇和井は体育館裏へ。部活動の外練習の場所に使われているか心配だったが、誰も居ない。
「いいところよね。ここ」
「で、何だよ話って」
「勝負しましょ。私と」
急かすように言った。急ぎの用は無かったが、宇和井の言葉を俺は待っていた。だがその言葉は意外なものだった。
「……いきなり何言ってるんだ? 執行部が生徒と決闘かよ。いいのかそんなことして」
「そうね、何か賭けましょうか。伊勢、勝ったら何がいい?」
サクサクと話が進む。気に食わないが、余裕な態度が鼻についたから宇和井に合わせる。
「勝ったら考える……どうせ負けないけどな。お前はどうするんだ?」
「……執行部に戻って」
「今更何言ってんだ、戻るわけ無いだろ」
「負けないんでしょ? だったらいいじゃない」
「挑発してんのか!? 女だからって手加減しねえぞ」
「いらないわよそんなの。早く始めましょ」
どっから来るんだ、その余裕は。俺の実力を知らないわけじゃないだろ。大体、話が急すぎる。
――――まあいい。売られた喧嘩に負けるつもりは毛頭無い。
俺は大き目のリングで繋がれているウォレットチェーンを巨大化させる。
対して宇和井は髪ゴムを外し、魔法を発動させる。ゴムが一気に変化していき、大きな手毬のような物体が掌に現れる。
そして、宇和井はその黒い手毬で網目の巨大な壁を作った。
「いいわよ、何処から来ても」
「そんな穴開きガードじゃ防げねえだろうが!」
宇和井が何時も使用する捕獲用の魔法とは違う。初めて見る魔法だったが、そんなものに躊躇している場合ではない。
俺は宇和井目掛けて鎖を打ち込んだ。蜘蛛の壁を貫いて宇和井へ……とは、やはりいかなかった。
宇和井の眼の目で鎖が止まる。網目を鎖が通った瞬間に黒の網目は四方に飛び散り、俺の鎖を構成するリングの穴に蜘蛛の糸が絡まっていた。
その先は地面、校舎、木。あらゆる所に繋がれている。黒糸と、それらとを繋ぎ止めるファクターは……。
「……なるほどな。磁場に反応してるのか」
「流石の洞察眼ね。でも少し違うわよ」
宇和井は掌を此方に見せる。其処にはもう一つの手毬が在った。
「さあどう防ぐのかしら?」
宇和井は此方に手毬を投げる。手毬は飛び散り、蛇のように四方八方に飛び掛る。
ちょっと待て。
如何して二つも同時に魔法が発動してるんだ?いや、それよりも防御しないとマズい。だが今プレートは鎖にある。
―――大丈夫。急いで魔法を解除してプレートを戻し、予備の鎖を再発動させれば……俺なら間に合う。
俺はポケットにある予備の鎖を取り出し、魔法を解除する。
「はい。おしまい」
宇和井にプレートを奪われる。二つ目の手毬の仕業だ。
飛び散った二つ目の手毬は、俺の目前で一つ目の手毬同様に網目状の壁へと変形し、プレートを絡め取った。
宇和井は魔法を解除し、プレートごと蜘蛛の黒糸は奴の掌に収まる。
宇和井の掌に残ったのは、俺のプレートと二つの髪留めゴムだった。
「初めからプレート狙いだったのか」
「そうよ。術者の魔法解除時が一番の隙。執行部の鉄則よ」
宇和井は髪留めゴムで髪を結いながら言う。
「どうやってお前は二つも同時に魔法を使ったんだ?」
「あれは元々一つの球よ。一つ目と二つ目、大きさが違ってたでしょ」
最初に見た手毬を思い出す……一つ目の手毬はバスケットボールほどの大きさで、二つ目の手毬はソフトボールほどの大きさだった。
「一つ目が七割の糸で鎖を、二つ目が残り三割の糸で威嚇と壁……か」
「相変わらずセンスはいいわね。新技なのに直ぐに分析されちゃった」
宇和井は俺のプレートを日光にかざす。
「この魔法を使ったのは伊勢が初めて。戦法も初めて。試し打ちになったけど、悪くなかったわ」
宇和井はそう言ってこの場を去ろうとする。
「おい待てよ!」
「プレートなら、部室で管理するわ。返して欲しかったら部室に来て」
俺は宇和井に詰め寄り、腕を掴む。
「……放して」
「プレート、返せよ」
「約束よ。それに魔法の無許可使用で連行してもいいのよ。それとも、その手で無理矢理私から奪う?」
宇和井が正論だった。俺は掴んだ手を放す。
「要らねえからさっさと帰れ」
「ホントに要らないの? これ無いと学校に入れないのに」
「いいから帰れって言ってんだろうが!!」
俺はキレた。
負けた悔しさと、宇和井の発言が一々気に入らなかった。
「……もう。今日中に取りに来なかったら学校に出入り出来ないわよ。どんなに遅くなってもいいから、部室に来て」
宇和井はその場を去る。
不貞腐れる訳でもなく、怒りに任せてでもなく、俺はいつもの大木の幹に寄り掛かる。
部室行きは死ぬほど嫌だが、我慢するしかない。永井に会わなければいい。
どうせ宇和井がプレートを持って俺を待ち伏せしてるはずだ。もし永井に渡してたら……最悪だ。
「フフっ、来ると思ってたわ。よかったわね〜……今日は私一人の当番よ」
部室に向かうと、幸いにも宇和井一人だけだった。俺の心配を先読みしてたようで、何処までもむかつく奴だ。
俺の読み通り、放課後のシフトは従来のままの少人数だったみたいだ。
放課後のトラブルは大体部活の顧問が解決するからというのもある。
それに賭けではあったが、宇和井一人だったのは助かった。
「はい。伊勢のプレート」
宇和井はあっさりと俺のプレートを差し出す。
「再入部との取引じゃなかったのか?」
「そんなこと言ってないわよ。プレートは単なる遺失物として処理しておいたから、始末書も書かなくていいわ」
すんなりと手元にプレートが帰って来る。肩透かしの展開が、俺は少し気に入らない。
「豪くすんなりと返してくれるんだな」
「だって、私も始末書書かないといけなくなるんだから」
宇和井は頬を膨らましている。
「お前から喧嘩売ってきたんだろうが。なに俺の所為にしてんだ」
「あ〜……そこまで! 言い合ってたらキリ無いから終わり!」
宇和井は何時もの調子で空気を変える。何時もコイツといると、調子が狂う。
「ところで、どう? 久しぶりの部室は」
俺は辺りを見渡す。多少棚や机の配置は変わっているところはあったが、昔とほとんど変わらない風景が広がっている。
「少しでも戻りたくなったら言いなさいよ。まあ今日見てみた感じだと、結構鈍ってる感じだったけど」
「勝ったからって偉そうに言ってるが、別に負けた訳じゃないからな」
「あら、プレート奪われたのに?」
「魔法が無くても戦えるだろ」
「負けず嫌いねぇ、素直に負けを認めればカッコイイのに……ん、携帯が鳴ってる。もしもし………は〜い。今から行く」
執行部の仕事のようだ。俺には此処にも用は無い。
「一人の時に限ってこうも仕事……ついてないわ」
「俺は帰るぞ。もう用は無いからな」
「伊勢。また来たくなったら、来てもいいのよ?」
嬉しそうな宇和井の顔にイラつく。
「もう来ねえよ。じゃあな」
俺は宇和井に背を向け、部室を後にした。
下駄箱に向かう。運動部の掛け声や、吹奏楽の演奏が校舎に響く。
俺の手には、永井と競いながら手に入れた銀の証があった。だが今はそれだけしかない。
このままだと、永井や宇和井に後れを取る。あいつ等は三年も執行部だろうから、抜けた俺が奴等に対抗するのは厳しい。
宇和井は、そんな俺の焦りさえも見透かしていたのだろうか。
「伊勢!!」
俺の昔の連れがいきなり声をかけてきた。雰囲気で慌しさが見て取れる。
「うるせえよ。他の奴等はどうした」
「山根のグループに……やられたんだ」
「山根? 少し前プレートの窃盗して捕まったパーマ頭か」
「ああ。それで奴のグループと決闘になったんだが、あいつら魔法試験場で魔力練って待ち伏せしてやがったんだ」
魔法試験場。あそこは進入禁止区域の筈だ。
「今もそいつらは其処にいるのか」
「ああ。今執行部とヤリ合ってる。奴等、魔力を高めてるからかなりヤバイぞ」
「執行部……お前は先公に連絡しろ、俺が其処に行く」
「おいおい! 一人じゃあ無理だろ……」
「アぁ!? 俺を誰だと思ってんだ。あいつ等最近調子乗ってたから丁度いい機会だ。それに」
「……それに?」
「いいから早く行け!」
俺は魔法試験場へ。
執行部。間違いなく宇和井だ。アイツがやられる事は無いだろうが心配してしまう自分の感情が鬱陶しい。
試験場のある特別区域の校舎に入る。段々と辺りは静かになり、照明も点いていない薄暗闇の中を走る。
自分の足音だけが校舎に響き、俺は息を切らしながらも走り回る。
宇和井の顔が浮かぶ。今日は何度もアイツと絡んだ。
俺は……昔の仲間がやられたから向かってる。宇和井はオマケだ。大体、宇和井は執行部だ。
心配するだけ無駄。今日戦ったのを思い出せば解る。だが、アイツ一人だから心配してしまう。
騒ぎのある場所を探すが、静まり返っていて場所が特定できない。探査魔法でも持ってたら使うんだが、生憎インストールはしていない。
この施設はやたらと部屋が多い。……魔力を練ってたなら、地下か。
「いやあああああああああ!!!!」
声が聞こえる。俺は階段を降りて地下に向かう。
降りて正面の扉を開けると、空間が蜘蛛の巣で張り巡らされていた。三人の連れが床に倒れていた。
「おい、あれ……伊勢じゃねえか!」
空間の中央に陣取っている連中。確かに山根とつるんでた奴等だ、相手は四人。
だが宇和井がいない。俺は空中を観ると……空間を支配する蜘蛛の巣の中央に、宇和井は居た。
全身を黒の蜘蛛の糸で絡み獲られている。
「お前ら、宇和井に何した」
俺は宇和井の下に居る連中に詰め寄る。
「コイツが勝手に暴走したんだよ、四対一じゃあ無理だろうってさ。魔力練ったら、自分の魔法に取り込まれて自爆しやがった」
「ちょっとからかっただけなのにな」
全く悪びれた様子は無い。宇和井を見上げると、手や膝の所々に傷や痣があった。
俺は俯いて項垂れる宇和井を見つめていた。
「ちょっとちょっかい出しただけなのに剥きになってくるからさぁ」
「捕まるの嫌だしな」
「つうかさっきからこの角度、パンツ見放題じゃん」
「おいおい、とりあえずこの状況を考えろよお前ら」
それは今の俺には充分な燃料だった。
「……そうか。じゃあとりあえずお前ら全員ぶっ飛ばす」
「もしかして伊勢の女か? そりゃ悪いことしたな〜」
「カッコイイなあ。女の前じゃあ強気になれるもんな」
連中は俺を嗤う。
「全力で来いよ。じゃないとお前ら死ぬぞ」
「死ぬのはお前だよ伊勢」
屑共が喋り終わる前に俺は魔法を発動させる。
装備していた鎖と予備の鎖を繋げた後に、ありったけの魔力を練ってその一繋ぎの鎖を巨大化させる。
ただし、その鎖は三個の予備を繋げた恐ろしく長いものだ。蜘蛛の巣を縫って、巨大な龍のような鎖が現れる。
「なんだ……これ……!!」
「魔力を練っただけでこんなのが作れるのか。すげえドーピングだな」
連中が驚き狼狽する姿が手に取るように解り、俺は銀龍を連中目掛けて打ち込む。
連中は蜘蛛の巣の隙間を縫って走り回り、走りながら魔法を使って龍に攻撃してくるが、痛くも痒くも無い。
「さっきの威勢はどうしたんだ? さっさとケリつけるぞ」
俺は鎖を四分割して、連中を中央へ上手く追い込む。宇和井の魔法がヒントだった。
物質変換魔法。
魔法の媒体となった複数の同物質を融合させたり分解したりする、三年生で習うスキルだ。
宇和井は恐らく独学で見につけた。俺は一年の時、永井と図書館に入り浸ってた頃に文献で読んだだけだ。
付加魔法だから余計に魔力は使うし、何より操るのが困難だ。
滑塚さんのように何年も使って身体に感覚を刻むならまだしも、俺も宇和井もド素人だ。
そして宇和井は魔力増大もあって、制御できず暴走した。
俺が昼休みの時点で気づいて、忠告してれば良かったんだ。
四人を同時に追尾するのに加えて、コントロールが滅茶苦茶難しい。
蜘蛛の巣にぶつかって、宇和井が振り落とされないよう気を配る。
上手くいかずに途中で暴れだす四龍。
「クソが!! 黙ってろ!!!」
俺は抑える為に左手を右手の手首に添えて、力尽くで手元で抑える。
鎖に血が滲む。痛みで頭が可笑しくなりそうだ。
それでも鎖を離さない。蜘蛛の巣に捕えられた宇和井を見る。
アイツは絶対俺が護る。護って……一言、言ってやらないと気が済まないからな。
神経を研ぎ澄ませて四匹の龍を支配下に置くと、四龍は障害物を縫って連中を追いかけ、上手く中央に固める事に成功する。
四方を囲む銀龍に怯える連中。奴等の前に俺は歩み寄る。
「もうお前ら魔法打てないだろ。走りながら神経集中して魔力練るなんて出来ねえし、俺の鎖にガンガン魔法打ってたし、尚且つバテるまで走らしたからな」
勿論、誰が何回、どんな魔法を、何発打ったかは全て記憶し計算してある。
魔力が増大しても、容量が増えるわけじゃないからな。
「さて…俺のさっきの台詞、覚えてるか」
俺と四匹の銀龍が連中に迫る。行うのは勿論、一つだ。
宇和井は気絶している。
それが救いだった。
今のアイツにだけは――――こんな俺の姿は見せたくないからな。
後ろで女の声がした。先公が来たようだ、偉く早い。
空間に入ってきた誰もが驚いていた。
そりゃそうだ。巨大な蜘蛛の巣の中を、龍が這ってるんだから。
俺は先公に取り押さえられる。連中は、再起不能とまではいかないが皆床に突っ伏して倒れていた。
俺は魔法の打ち過ぎで抵抗できなかった。右手は血だらけだった。
掌は鎖に削られた傷。手の甲は連中を殴った時に出来た傷。
そして宇和井の安否すら確認できなかった。俺が宇和井を降ろしてやりたかった。
完全に頭に血が上っていて、宇和井を無視して殴り続けていた。
未然に防げた暴走、宇和井の傷……それだけが悔しかった。
俺が執行部に居ても、連中を暴行したのは処分されるだろう。
だが、宇和井をあんな目に会わす事は無かった。
俺が傍にいてやれば……俺がアイツを護ってれば、こんな事には――――。
――――伊勢聡史。貴方の処分は一週間の謹慎処分とします。
校長室。
俺は校長に処分を下される。事情はそれなりに説明した。
だが自分の行った行為を弁護はしなかった。連中は無断での禁止区域侵入と使用、及び執行部への暴行等で退学処分だった。
「お前も奴等と同様の退学処分でも可笑しくなかったぞ」
柊が言った。俺は一礼し、校長室を後にした。
Day 5 10/20 Saturday
あれから一週間経った。俺以外誰もいない。
一人暮らしだったが、処分の所為で実家での生活を余儀無くされた。
以前は俺の家で連れが集まって遊んだりしてたが、元々あいつ等とつるみ出したのは執行部を抜けてから。
今は前みたいにつるむ事は無くなった。きっかけは……九澄と対峙してからだ。
「伊勢くん。貴方は以前は執行部に所属し、学校の治安を護ってきた立場の人間です。今回の処分は今迄の自分を見直す良い機会……そう捉えてください」
校長の言葉。言われなくても解ってる。俺の所為で宇和井だけじゃない。執行部に迷惑がかかってる。
あくまで“休部”だ。席は残っているが、生徒は“元”執行部の伊勢として認識されている。
その俺が問題を大きくした。実際に処分まで喰らってる。
執行部のイメージ・評価は下がることくらい、言われなくても解ってる。
宇和井が気になった。
アイツは病院に運ばれた、と柊が言っていた。『大した怪我じゃないから心配するな』と後に付け加えて。
だが気になって仕方ない。アイツの事が気になって仕方ない。
笑ってたアイツの顔。神経に障るアイツの態度。何処か寂しげなアイツの声。
何故か焼きついて離れない。ウザいだけだったアイツが……気になって眠れない。
玄関でノックをする音。
「……誰だ」
時間は気づくと朝の十時だ。俺は寝転がっていたベッドから降り、玄関に向かう。
扉を開けると、宇和井が立っていた。
「元気してる?」
普段の調子で話す宇和井。フリースにショートパンツに黒のニーハイ……格好が制服じゃない。
突然の宇和井の訪問で、俺は少し動揺していた。
「お前、そのカッコは?」
「どう? 可愛いでしょ♪」
「そうじゃねえよ。学校はどうしたんだよ」
「何言ってんの?今日は土曜日よ」
曜日感覚が薄れていた所為で、呆けた発言をしてしまう。
そうか……昨日で処分期間は終わりだった。イエローカードの期間は一応切れたことになる。
俺は宇和井の怪我が気になって身体を見渡すが、膝はソックスに隠れて確認できない。
「なによ、わたしの身体ジロジロ見て……いやらしい奴」
「お前の怪我が気になったからな」
素直に心情を言った。余りこういう台詞は言いたくは無いが、あの事件後だからな。
「へー、心配してくれてんだ」
「原因はてめえの魔法を上手く扱えずに暴走だからな」
「ちょっと、いきなり厭味? 一人で頑張ったな、とか……そういうの無いの?」
やっぱり何時もの宇和井だ。今の俺にはそれが一番安心する。
少なくともそんなこと、コイツには死んでも言わないが。
「で、何の用だ」
「この前のお礼と、何してるかな〜と思って」
「また礼か。そんなのいらねえよ」
「じゃあその右手の傷はなにかな〜」
やっぱり調子が狂う。常にズレる互いの言葉。素直になれないのはお互い様か。
俺は包帯を巻いている右手をポケットに突っ込む。
「ありがとう」
宇和井は真剣な表情になる。
顔でわかる。コイツがこの表情を見せたら、本音しか話さない。
「だからいいって言ったろうが」
「部屋、入っていいかな」
宇和井の言葉に少し躊躇する。雰囲気も重なり、嫌な緊張感が生れる。だが断る理由も無い。
「好きにしろ」
「やった! お邪魔しま〜す」
宇和井は靴を脱いで家に上がるなり、トコトコ歩いて辺りを見回した。
台所やトイレ、冷蔵庫の中まで確認し出す。
「へー、綺麗にしてるんだ」
「お前何してんだ」
「他人の家に初めて来たら、やっぱり気になるじゃない」
宇和井が辺りを見終わり漸く俺についてくる。
俺の部屋に入ると、宇和井はベッドに腰かける。
「ここ座って」
宇和井が手招きする。大きな溜息を吐きながら、俺は宇和井の横に座る。
「へぇ〜。男の部屋って、もっと汚れてるものだと思ってた」
「お前の男の部屋と一緒にすんなよ」
「男なんていないわよ、残念だけど」
「お前の彼氏になった男は苦労しそうだからな」
「それどういう意味よ! 大体わたしと付き合えるなんて、どんなに幸せなことか伊勢には分かんないでしょうけど」
「自分で何言ってやがる。キモいな」
「じゃあアンタはいないの? 彼女」
「いねえよ。つうか要らねえ」
「カッコつけちゃって。どうせ“めんどくさいから”でしょ?」
「誰も言ってねえだろそんなこと」
事件の事は何処かに飛んで行ってしまった。俺は宇和井と暫くくだらない雑談をしていた。
何処か新鮮で、何処かくすぐったい会話。
何処かに本音を織り交ぜ、相手を牽制しては自分の本音を再び織り交ぜる。
その会話の何処かに。相手に気づいてもらいたい“気持ち”がある。
発信する側は見つからないように。受け取る側は気づいたと相手に思われないように。
心理戦じゃないが、俺たちの会話はそんな感じだった。
どちらが先に伝えるか。何気ない台詞から、何気ない仕草から、時折見つめる瞳から。
だが、つい俺は宇和井の罠にかかる。
俺は宇和井を見る。宇和井は直ぐ傍で座ってる。右目は正面に飾るポスターを眺めている。
手を伸ばせば届く距離。女と意識すれば宇和井の匂いがする。俺の空間に女が入ったんだから、尚更に。
俺は宇和井の肩に触れた時。
「ねえ。デートしない?」
宇和井がポスターを眺めながら言った。俺は手を離す。
「おい、俺の処分知らないのか」
「知ってるわよ」
「じゃあ何でだよ」
「行きたいから行くの! さあ早く着替えて。そんな部屋着の男と一緒に歩きたくないんだから」
宇和井は立ち上がり、勝手にクローゼットを開けて適当に服を取り、俺にポイポイ投げつける。
「クソっ! やめろ馬鹿!」
「早く着替えて! 外で待ってるから」
宇和井は適当に服を投げると、さっさと靴を履いて外に出る。一気に静けさを取り戻す空間。
俺は不満ながらも顔を洗い、髪を整え、服を着る。
「早くしてよ〜!」
宇和井が外から催促する。いきなり来たくせにわがままな奴だ。完全にアイツに振り回されてる。
まあ……今日くらいは赦してやるか。事件の後だしな。
外は晴れ渡っていた。時間は十一時頃。
俺達は隣街へ向かった。ローカル線は土曜の午前中だったが、年寄りと子供ばかりだった。
「なんかワクワクするよね、電車で遠くに行くって」
宇和井は嬉しそうに座席から外を眺める。最初は近所の見慣れた町並みが、一気に田畑と山に変化する。
遠くに連なる山々は、秋の紅葉で赤と黄に綺麗に色づく。
毎日、魔法が飛び交う学校から離れると、こうも違った世界が広がるんだろうか。
まあ学校の方が異常なのが、今の俺には見に沁みて解る。
「……ちょっと、聞いてるの!?」
「……なんだ?」
「やっぱり聞いてない……紅葉がキレイね、って言ったの」
俺はハイハイといった態度で返す。宇和井はふくれっ面を作りながらも窓の外を眺めている。
窓から流れる風がとても気持ちよかった。
段々と田畑から住宅が増えていき、コンクリートの溢れる街へ。
「長かったわね。じゃあ何処行く?」
「別に。適当にぶらぶらすればいいだろ」
「あらそう。じゃ、わたしに付き合ってもらうわよ!」
電車を降りると、宇和井は鼻歌混じりで改札へ向かう。
久々に来た大きな街。まあ此処なら誰にも合わずに済むだろう。
駅を出ると、やたらでかいビルが其処彼処に建っている。
「なにしてんの? 置いてくわよ〜」
宇和井は俺の先を歩いていく。俺は溜息を吐きながら渋々ついて行く。
宇和井の用事は洋服だった。色んなショップを巡っては、試着して俺に感想を求める。
そして俺は適当に流すと宇和井がほっぺたを抓って来る。
……そんなやり取りを、どのショップでもやった。
「何着ても変わんねえだろうが」
その後、宇和井に再び抓られた。強く強く抓られた。
どうやらこの台詞は、女に使ってはいけない魔法らしい。宇和井との買い物で唯一の収穫だった。
三時頃に遅めの昼食の後も、雑貨屋で色々玩具漁りしたり、宇和井が俺の部屋に合う家具を勝手に選んだりしていた。
「ねえ、これ凄いわね。伊勢の部屋にピッタリじゃない!」
宇和井は楽しそうにはしゃぐ。
最初は、この前の事件で魔法が暴走して怪我したから、俺は宇和井の仕草を観察していた。
色眼鏡で勘繰ると無理矢理笑ってるように見えるが、客観視すればそんな素振りは全く無かった。
アイツを見てると……なんだろう。そんなことはどうでもよく感じる。
無邪気に笑って、時折腕を引っ張ってくる宇和井を俺はじっと眺めていた。
気がつくと外には暗闇が迫っていた。時間は午後七時。
「おい、帰らなくていいのかよ」
宇和井は怪我人だから、身体に無理を掛けたくない。
「心配ど〜も。親には病院に行ったことになってるから、問題ないわよ。まあ友達の家に遊びに行ったって後でメール入れとくから」
辺りを高速で暗闇が迫る。この時期は夜は冷える。日中暑かったために薄着で出てきたのが迂闊だった。
「寒くねえか?」
「ん、大丈夫よ。妬けに優しいじゃない、気持ち悪いわよ」
「じゃあ、とりあえずこの腕をどけろ」
宇和井は俺の腕に自分の腕を絡めていた。
「なんか彼氏彼女みたいでいいじゃない♪」
俺は宇和井の腕を解き、さっき買ったジャケットを渡す。
「これ着てろ」
「何よ、結局わたしは小物だけで、伊勢はちゃっかり服買ってるんだから……ブカブカ〜、やっぱ男物は造りが大きいわね」
「とりあえず帰るまではそれ着てろよ」
宇和井が俺の買ったジャケットを羽織る。何気に気に入っているようで―――それでも宇和井は俺に腕を絡める。
「だからさっき言っただろうが」
「今日だけ……ね?」
そんな顔で言われたら、無理矢理腕を解けない。俺は何度目か分からないくらいの舌打ちをする。
勿論、宇和井には聞こえる大きさで。
最後に二人でプリクラを取ることになった。
「最後に一枚だけいいでしょ?」
「俺こういうの嫌いなんだよ」
「一枚だけ取ったら終わりだから……ね?」
俺は断固として拒否していたが、宇和井の説得にあっさり屈してしまう。
嫌々機械の前に立ち、俺は画面を睨んでいた。
「そんな怖い写真ほしくないからちゃんと笑ってよ!」
「画面に向かって笑えるかよ」
「もう……じゃあこうしちゃえ」
フラッシュが俺達を襲い、機械が写真を現像を始める。
先ほど取った画像が画面に現れると、何故か宇和井の唇は俺の頬にあった。
「ふふっ♪伊勢の驚いた顔、面白いわね」
宇和井は楽しそうにプリクラに装飾を施していた。
こんなにも早く家に帰りたいと思ったのは久しぶりだ。
中途半端な感触が未だ頬に残っていた。
電車が来た道を逆走する。外のネオンが段々と少なくなり、やがて暗闇が支配する。
宇和井ははしゃぎ疲れたのか、少し大人しくなった。
窓の鏡に映る俺と宇和井。唯それだけを見つめながら、俺は目的地への到着を待っていた。
漸く地元に到着する。時間は午後八時。
「家までどうするんだ?」
「う〜ん。どうしよっかな」
宇和井は携帯を取り出し、家に電話をかける。
「…………もしもしお母さん? 今、友達の家。………うん、……そうなるかも………わかった。じゃあね」
電話を切ると、何事もなかった様に歩き出す。
「おい。何処行くんだ」
「聞いてなかったの? “友達の家”」
「友達の家……俺ん家か」
宇和井はウンウンと頷き、俺の家に向かう。
駅からの距離はそれほど無いが、薄暗い空色で夜道が気になる。
「!! いっ……たた……」
宇和井が膝を押さえている。
「お前まだ完治してねえじゃねえか」
「歩き疲れちゃっただけよ……」
「そんな歩き辛い靴履いてるからだろ」
「デートなんだからオシャレしてもいいじゃない!」
俺は宇和井の前で前屈みになり、手招きする。
「ほら、乗れよ」
「ちょっと……そんなのいいわよ」
「どうせ誰もいないんだから気にすんな、早くしろ」
「もう……」
宇和井がゆっくり俺の背中に身を委ねた。俺は慎重に立ち上がり、買い物袋を手首に掛ける。
「さっさと行くぞ。お前の言う“友達の家”に」
今回はここまでです。
文字を少し詰めているので見辛いかもしれません、すいません。
続きは明後日に投下します。ではでは。
420 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 23:24:39 ID:a9cvw5Yq
>>419 GJ!
聡史×玲 良いですね。
続き楽しみに待ってます
>>419 GJ!!!!!!!!!!
待ちに待った宇和井さんだ!!続きが楽しみでしょうがないぜ!!!
俺達は帰路に就いた。
俺の肩に置かれた宇和井の手が離れ、代わりに腕がゆっくりと鎖骨を包む。
背中を二つの膨らみが強く押す。首元がムズムズする。
髪が当たっているからだ。宇和井は顔を肩の上に乗せる。
耳元にかかる吐息。むず痒くて、鼓動が高鳴る。
「いまエッチなコト考えてたでしょ」
「何言ってんだ。お前のぺチャパイじゃあ無理だ」
「何それ!? くっそ〜……学校なら今すぐにでも魔法使うのに〜」
宇和井は口では色々言ってたが、身体は本当に歩きつかれたのか、微動だにしなかった。
俺がおんぶする時もそうだった。抵抗なんて全くなかった。俺に身を委ね眠る赤ん坊のよう。
「伊勢の背中、あったか〜い」
宇和井が俺に強く抱きつく。宇和井の身体は小刻みに震えていた。
……やっぱ寒いんだな。そう直ぐに感じ取れた。
「ねえ」
「なんだ?」
「今日の事、もしかして迷惑だったかな」
急にトーンの落ちた声。何時ものらしさは無い。
「どうした、いきなり」
「今日の伊勢……気を使ってくれてた気がして」
罪滅ぼしとばかりに私に付き合ってる。
宇和井は、そう思ってるのだろうか。突然の来訪は驚いたが、正直嬉しかった。
宇和井の怪我の状態が気になっていたからだが、コイツは怪我の後遺症のあるような素振りを見せなかった。
隠してたのか?
膝は未だ完治していないようだ。痛みが再発したのかもしれないが、宇和井の膝を直接見たわけじゃない。
宇和井が何度もソックスを直して隠す素振りも、思い出せば目に付いた。
まあコイツの事だ、聞いても答えないだろう。ソックスを無理矢理脱がすなんて変態行為もしたくない。
「使ってねえよ、普段の俺だ」
「こんな事してくれるのも、普段の伊勢?」
「サービスだ」
「女には甘いのね〜」
「怪我人連れて歩くのが嫌なんだよ」
「……どれが本音?」
宇和井は見透かしている。俺の本音を知りたがっている。
「気を使ってないけど、怪我人を連れて歩くのが嫌だから、サービスで……ってこと?」
「……もうそれでいい」
「ふ〜ん……」
それからは、俺達は声をかけることはしなくなった。会話の無い帰路は、空気が重く厭な時間だった。
俺の一人暮らし用の家に着き、宇和井を降ろしてキーケースから鍵を取り出す。
自宅謹慎喰らって実家に帰っていたから、ここに帰ってくるのは少し懐かしい。
「高校生が一人暮らし……いいな〜」
「晩飯まだだったな、どうするかな」
「伊勢って料理できるの?」
「一人暮らししてるからな。自炊くらい出来る」
「じゃあ……何か美味しいもの食べたいな」
宇和井は俺に眼をパチパチさせていた。分かりやすいサインだった。
「ニヤニヤしやがって……何か作れって言いたそうな顔するな」
「でもその手じゃ無理なんじゃないの?」
「こんなの大した傷じゃねえよ」
実際はかなり痛いが、こいつの前で弱音は吐かない。
意地と言うよりも、それが宇和井との当然の掛け合いになってきていたからだ。
鍵の開く心地いい音の後、俺達は中に入る。家に入るなり宇和井はベッドに飛び込む。
「ふああぁ〜〜やわらかい〜〜キモチイイ〜〜」
「そこでのんびりしてろ」
宇和井がベッドでゴロゴロしてるのを確認し、俺は冷蔵庫を漁る。二人分の材料は何とかありそうだ。
俺は食材を取り出し、台所へ向かう。
「お〜っ、いい匂い!」
漸く料理を作り終える頃には、宇和井が匂いに釣られてベッドから出てきた。
炒めたライスにケチャップを垂らすと、おいしそうな香りが部屋全体に拡がる。
そして俺は出来上がった料理を皿に盛り付け、テーブルに並べる。
「すごいじゃん! 伊勢ってこんなに料理上手いんだ」
「まだ食ってないのに上手いとか言うなよ」
「見た目で分かるわよ。すごくおいしそう」
目の前にはオムライスと付け合わせのサラダ。
手早く作ったが、宇和井のは希望通り卵を多く使って作ってやった。
「ねえ、ケチャップで何か書こうよ」
宇和井はケチャップを取り、俺のオムライスの上に文字を書く。
「おい、変なこと書いたら……」
ゆっくり丁寧に赤い筆で文字が生まれる。文章が長いのか、小さく何文字も書かれる。
宇和井が書き終わるまで……胸が何故か高鳴る。
気にしなければ良い事だが、今日の俺は嫌に敏感だった。
漸く書き終わり、宇和井は無言で俺にオムライスを返す。俺は小さい声で呼んでしまった。
「たのしかった……だいすきよ……」
所々ケチャップのコントロールが上手くいかずに潰れているが、そう読める。
宇和井を見ると、“わたしにもやって”と伝える視線を送ってくる。
俺は宇和井のオムライスを取り、ケチャップで文字を書く。やってみると、思った以上に書き辛い。
なんとか書き終わり、宇和井に返す。宇和井は書かれた文字をゆっくり読もうとする。
「……いただきます」
俺は宇和井の言葉を遮り、オムライスを食べる。
宇和井はそれ以上何も言うことなく、笑みを浮かべてスプーンを口に運ぶ。
「んっ!! やっぱり上手いじゃない! いいお父さんになれるわね」
「そりゃどうも」
「褒めてるんだからもっと喜んでよ!」
「喜んでるだろ。そーいや、お前は料理できるのか?」
「まっ……まあまあかな」
「じゃあ今度はお前の番だな」
「うっ…それは…………それにしてもおいし〜わね〜オムライス♪」
宇和井は笑みを浮かべて俺の作った料理を食べていた。今日一番の笑顔だった。
そしてお互い文字には触れなかった。
初めての想いの交換だった。お互い、面と向かってじゃあ言えない事を綴った。
その文字ごと食べてしまうから、証拠は残らない。
二人の心に刻んだままでいたかった。それ以上の蛇足の台詞は要らなかった。
「ごちそうさま! もうおなかいっぱい〜」
少し遅い夕食が終り、時間は午後九時過ぎ。俺は食器を集め、台所へ向かい食器を洗う。
「もう九時だぞ。どうするんだ?」
俺はテーブルで満足げに座っている宇和井に言う。
「帰るのめんどくさいな」
「何言ってんだ。親呼べよ」
「さっきメールしたら、二人とも残業だから家閉まってるって来たから」
俺は食器を置き、宇和井に振り向く。
「鍵ぐらい持ってるだろ」
「……持ってない」
「さっきの電話は何だったんだ」
「だって泊まるかもって言ったから、“じゃあ家は閉めてても大丈夫ね”って」
泊まる。その言葉に俺は反応する。
「お前……泊まるって」
「うん、言っちゃった。明日日曜で休みだからそうするって」
悪びれる素振りを見せない宇和井に、返す言葉は無かった。俺は黙って作業に戻る。
「……怒ってる?」
「……別に」
「じゃあハルカの家に泊めてもらおうかな〜」
宇和井は語尾を業とらしく延ばして言った。正面の窓に微かに映る宇和井が俺の背中をじっと見ている。
呼び止めて欲しいのが見え見えだったが、俺は答える。
「泊まっていけよ」
「……いいの?」
「ああ。こんな部屋でいいならな」
食器を洗いながら俺は言う。顔見ながらそんなことは言えない。
宇和井は腕を組んで考えているが、それは演技だと直ぐに解る。宇和井はそういう女だ。
「……仕方ないなあ! そこまで言うなら泊まってあげる」
言葉とは裏腹に嬉しそうなのはどういうことだ……とは、言い返さないでおいた。
食器を洗い終え部屋に戻ると、宇和井はソファーに座ってテレビを見ていた。
「風呂はどうすんだ?」
「そりゃ使いたいけど、いいの?」
「ああ。好きに使えよ」
聴いた瞬間に変な事を考えてしまう。そういうつもりで聞いたわけではないが、変に解釈されないだろうか。
「一緒に入る?」
「バカか!? んなわけないだろ」
「照れちゃって♪ じゃあ早速使わせてもらおうかな〜」
宇和井が立ち上がり風呂場へと向かう。先程湯を出しておいたのは正解だったようだ。
俺はクローゼットから部屋着を幾つか取り出す。
「ほら、これ使えよ。あとタオルはそこな」
「……覗かないでよ」
「覗かねえから早く入れ」
宇和井はピシャっとドアを閉める。俺は大きな溜息の後、部屋に戻ってテレビを見ることに。
今日は長い一日だった。改めて振り返ると、今日は常に宇和井と行動を共にしていた。
女に一日中振り回される一日を思いつつ、俺はソファーに身体を預けてぼ〜っとしていた。
向こうで風呂場のドアが開く音がし、俺はハッと眼が覚める。
宇和井が俺のTシャツとジャージを着て出て来ていた。
「ふ〜、スッキリした! アリガトね」
宇和井はソファーに腰掛け、髪をタオルで乾かす。シャンプーの香りが鼻腔を擽る。
火照った頬や肌や唇が艶かしい。日中見た、メイクをした宇和井と今の宇和井では又印象ががらりと変わる。
女として意識するには充分な演出だった。
「伊勢も入ってきたら? スッキリするわよ」
「……ああ。そうだな」
俺は立ち上がり、風呂場へ向かう。中へ入ると、まだ宇和井が使った直後で湯煙が未だ残っている。
湯船に手を入れると、予想外の熱湯が俺を襲った。設定していた温度よりも遥かに熱い。
「アイツ……こんな熱いのに入ったのか?」
そういえば帰りは凄く寒がっていた。自分が入るときに湯を足したみたいだ。
先に俺が入るべきだったな……そう思った。
「頭洗ってあげようか〜?」
多少エコーのかかる声が脱衣所から聞こえた。入ってくるなと言い返す前に、宇和井は間髪入れずに入ってくる。
「お前!? 何入ってきてんだ!」
「その手じゃ無理でしょ? そのまま湯船に浸かりながら、頭だけ外に出してて」
裸じゃなかっただけ良しなんだろうか。まあ普通男なら変な期待をしてしまうものではある。
俺は渋々浴槽から頭を出すと、宇和井は手際良くシャンプーを手に取り俺の頭に触れる。
他人にされるシャンプーは、美容院でもそうだが気持ちいい。
状況的に恥ずかしさは確かにあったが、もう俺は宇和井のしたい様にさせていた。
宇和井自身の言った罪滅ぼしの念が、今でも強く残っているからだろう。
「お客様……かゆい所はありませんか?」
「ないから、もっと優しくしてくれ」
「痛かった? ちょっと強かったのか……これくらい?」
「……それでいい」
「ホント、わがままなお客様ね」
浴槽から首を出す姿勢は少し苦しいが、宇和井の指捌きが様になってくると心地よさで忘れてしまう。
「わたしって……好きな人に尽くすタイプなのかな」
「振り回すタイプの間違いだろ」
「やっぱりそう? 自覚無いんだけどな〜。じゃあ伊勢は振り回されるタイプよね」
「されてる方は迷惑なんだけどな」
こういう時の婉曲的な描写は助かる。だが、お互いの主語はもうはっきりしていた。
「じゃあ……これも迷惑?」
「ああ。ありがた迷惑」
「素直じゃないな〜、うれしいくせに」
宇和井の前では素直になれない。プライドや気恥ずかしさが先行してしまう。
そんな所だけは、宇和井を羨ましく思ったりもする。
「……よし! 完璧ね。残念だろうけどサービスはここまでよ。じゃあ身体は自分で洗ってね」
濯ぎも終わった宇和井は用が終わり風呂場から出る。
一人になると少し寂しくなる。喧しい女が居ると居ないとではこうも違うのか……そう感じる。
俺は眼を瞑って適当に回想する。
慌しかった一日だが、こんな感覚になったのは、あの頃以来だった。
身体を適当に流して脱衣所に出ると、また風呂場に戻りたくなるような寒さが肌に刺さる。
急いで服を着て俺は部屋に戻ると、宇和井は先程の俺のようにソファーでくつろいでいた。
乾かした髪は潤いを得た為か、綺麗なストレートになっていた。
普段のツンツンした髪を見慣れていた俺からすると、かなり印象が変わる。
とりあえずここで、何度も宇和井が診せていた兆候に、俺は触れる。
「お前、風邪引いてないか?」
「……そうかも。さっきお風呂入ったからね」
勿論分かってる。それを加味しても宇和井は風邪気味だと思った。寒気は初期症状だ。
だが咳をしていないから、まだ大した事は無いとは思う。
「もう十時か。早めに寝るか? 今日は疲れただろ」
「そうね……そうする。伊勢はどこで寝るの?」
「俺はソファーで寝る。お前はベッド使えよ」
俺は押入れから掛け布団を出す。ベッドの布団と比べると薄いが、病人の宇和井を優先する。
「最近の夜は寒いよ?」
「厚着すりゃいいだろ」
「……なんか伊勢に悪いわよ」
「怪我が治ってなくて、更に風邪引いてる病人はベッドで寝ろって言ってんだ」
つい強い口調で言ってしまう。だが宇和井は黙って立ち上がり、ベッドへ向かった。
俺は宇和井が布団に入ったのを見届けてから、部屋の電気を全て消す。少し早めの消灯だった。
「ねえ伊勢」
暗闇から宇和井の声がする。微かに部屋に入る外を走る車のライトが、一瞬ぼんやりとベッドを照らす。
「……寒いよ」
宇和井の声色で一々気になってしまう。俺に如何して欲しいんだ。
「じっとしてろ」
「一人より二人の方があったかい……かなぁって」
……やっぱりその流れか。
「冗談よせ。病人は早く寝ろって」
「……かなり本気なんだけどな」
その言葉に心が揺らぐ。暗闇だから表情は読めない。声だけが俺に届く。
俺は立ち上がり、ベッドに静かに近づく。
いくら暗闇で静かに歩いても、俺がベッドに近づいてるのは流石に宇和井にも分かる。
ベッドの傍に着くと、月明かりでぼんやりと宇和井の顔は見える。宇和井も俺の顔は微かに確認できる筈。
もう一度宇和井の額に手を当てると、熱は先程よりもあった。頬や耳に手を滑らす。どちらも焼けるように熱い。
「冷たい。やっぱり寒いんでしょ?」
宇和井が身体をずらしてスペースを作ってくれる。
「俺は……いいって」
俺は純粋に宇和井にゆっくり休んでもらいたかった。だが、宇和井は違った。
「早く入って……あっためてあげるから」
断れるわけ無い。
「……わかったよ」
嫌そうに返すのが精一杯なくらい、俺は既に可笑しくなっていた。
俺は渋々布団を巻くって、宇和井の隣に横になる。
シングルベッドだから距離なんて保てないから、肩がこつんと当たる。
何処かにあった願望が、宇和井の言葉で呼び起こされて覚醒する。
俺は天井をずっと見つめていた。ぼんやりと部屋を照らす満月。
宇和井の指がある。触れると俺の指に絡んでくる。
宇和井を護ろうと必死になって傷ついた右手が、痛みと疼きで焼けそうになる。
すぐ側に宇和井がいる……その意識が俺の理性をゆっくりと奪っていく。
いっそ。宇和井を抱きしめれば、楽になれるのだろうか。
そんな俺の麻痺する脳回路に電気を流すのは何時もコイツだった。
突然。天井への視線がオンナの影で遮られる……そして唇も、二人を隔てていた数センチの壁さえ。
――――――――――……………。
宇和井は俺にキスをした。触れるだけの普通のキス。
柔らかなぬくもりを感じた。同時に甘い香りと二つの膨らみを感じた。
腰に巻かれる二つの腕。いきなりの事で、俺は硬直してしまう。
「今日、ずっと一緒にいてくれたわよね。無理してたの?」
「そうじゃない。少し身体が鈍ってただけだ」
「じゃあ、ちゃんと今日のデートの御返し……してあげる」
宇和井は唇から離れ、俺の胸に耳を当てていた。
「ドキドキしてる。伊勢の鼓動が聞こえる」
「風邪が移るだろ」
宇和井は顔を耳元に近づけ――――囁く。
「……移してあげる」
すぐに風邪を移されたわけではないが、頭がぼ〜っとしている。風呂でのぼせたわけでもない。
だが、目の前が暗いのも相まって、脳の熱が響く。
普段の宇和井の口調に戻ったように感じたが、それは上辺だけだった。
ゆっくりと上半身を包み込む宇和井の抱擁。俺の首筋に宇和井がキスをする。
「くすぐったい?」
「……いや」
「じゃあもっと舐めてあげる」
宇和井の舌が喉仏を突く。それに合わせて唇も這う。小さな舌をぺろぺろと舐めるのが可愛らしい。
「キスマークついちゃうね」
「もうつけただろ……お前」
「フフっ。今からよ♪」
宇和井は嬉しそうに首筋に齧り付く。
ちゅう〜っと皮膚の上から血液を頚動脈ごと吸い込まれそうになる。
吸血鬼に血を吸われる被害者も……こんな感じなのだろうか。
何故か描写されてしまう被害者の俺と吸血鬼の宇和井。鋭い牙が無かったのが唯一の救い。
くっきりとキスマークが刻まれると、宇和井は調子が出てきたようで、首から耳へ舌を這わせる。
「伊勢の耳って小さいね。かわいい」
他愛も無い宇和井の台詞だが、耳元で囁かれると悪寒が奔り意識が遠くなる。
そして、その声の主は手を静かに胸にそえて、唇を右腕に。
腕を下っていく舌が目指していたのは、さっきまで宇和井を虐めていた右手の指。
包帯がゆっくり解かれる。
「こんなになるまで魔法使ってたんでしょ?」
「お前が……気にすることじゃねえよ」
「わたしを護ってくれた右手じゃない。お礼に舐めてあげる」
宇和井は中指を咥えてペロペロ舐め始める。所謂指フェラという行為。掌にある傷口も丁寧に……丁寧に。
理屈は良く解らないが、素直じゃない時は何時もの宇和井だった。
そして傷口は時に性感帯へと変わるようだ。追加して温かな舌の感触で生きている心地を味わう。
月明かりが宇和井の右目を差し、その眼は俺を掴んで離さない。
宇和井は指の股も丁寧に舐め、俺の指は唾液だらけになってしまう。
そんな攻め方をされたことの無い俺は、呆然とただ為す統べなく受ける宇和井の玩具だった。
宇和井の舌は首に戻り、下へと向かう。
子供がふざけて遊んでるようで……痴女が犯しているようで、俺は解らない。
この際どちらでもよかった。
早く楽になりたかった。下半身に集約されつつある性欲が宇和井を待っていた。
宇和井の指が妖しく股間に触れる。こいつはこんなにエロかったか?
「伊勢だから……するのよ」
俺の意志を読み取ったのか、宇和井が念を押す。
暗闇だから、直接見なくて済むから強気でいられるのかもしれない。
あっさりと下の着衣を脱がされ、俺も衣服は全て脱いだことになる。
そして露わになった竿を宇和井は握る。螺旋に巻きつく宇和井の指は、細く小さい。
「伊勢の……大きいわね。んしょ……んしょ」
宇和井は慣れない手つきで竿を擦り始める。素人の手つきだが一生懸命に慰める宇和井が可愛い。
そしてそんな宇和井に興奮してしまう俺は、指舐めの時で既に限界だったのを自覚する。
「もうこんなに硬くなってる……伊勢ってムッツリだったのね」
誰だって硬くなる、そんな風にされたら。
言い返さないのは、宇和井の手の感触に脳が支配されているからだ。つまり……言い返せない。
おかげで嫌でも下半身に力が籠る。傘に強引に押し付けてくる宇和井の指で、時折呻いてしまう。
「もっと……大事に扱え…よ」
「痛かったの? 爪が刺さったら危ないわよね、確かに」
折角気持ちいいところで、不安を煽る所が宇和井らしい。
「口でやらないのか……?」
「汚いじゃない」
「手ならいいのか?」
「触ったこと無いから……興味本位と勢いで」
「じゃあその勢いで……やってくれ」
「焦らないで。今はわたしのモノよ」
宇和井は俺の言葉を遮ってストロークを続けるが、埒があかないのか……。
「もう……伊勢がそこまで言うなら……舌だけね」
宇和井の舌が傘に触れる。感度が一気に上がり、籠る力が増大する。
舌で舐めるのと同時に、指は何時の間にか垂れ下がっている袋へ。
「コロコロしてて可愛いわ」
宇和井の玩具と化した袋は為す統べなく弄られる。
単に指先で遊ばれているだけだが、舌との相乗効果で頭が可笑しくなりそうだ。
舌が傘を攻め、出そうになるのを抑えているが何時出るかはもう制御できそうに無い。
「だ〜め。ここ抑えとくから」
宇和井が裏筋の根元を親指で強く抑えて管を封じる。行き場の無い精液が管を圧迫する。
宇和井の顔に出すのは躊躇いがあったからある意味助かった。だが苦痛が募ってしまう。
「まだ舐めただけよ?……口でして欲しいんでしょ」
調子の出てきた宇和井は恐ろしい。
口はかなりのサディストだが、素人技量とのギャップが面白いから普段のように苛々しない。
結っている普段の宇和井と比べると、下ろしてストレートになった宇和井のほうが狂気性が増している。
傘に宇和井の唾液が纏った所で、傘と口が漸くの抱擁。
何故か宇和井はフェラだけは異常に上手く、宇和井の口の中が異常に熱くて溶けそうな位だ。
宇和井の口蓋に擦れるたびに奔る快感で、指で塞き止められる精液が暴れだす。
舌の蹂躙と唇の吸いつきを巧み操り、俺の前頭部が狂う。
即ざに傘をなぶる舌が今どはうらすじの上をじょうげする。きもちちよすぎておかしくなりそうになる。
このまま出したら、宇和井の喉に吐き出すことになるが……。
「いいわよ……口にだしても」
その言葉の淫靡な色と宇和井の口調が、決壊の決定打だった。
宇和井の指を押しのけ、精液が管を流れ逝く。
沸騰するくらいの高熱を帯びた白濁液が管を焼きながら宇和井の喉へと飛び上がり……放たれる。
「ふぁあぅ!!……んんうっ!!……」
風邪を引いてる女の喉に打ち込んでよかったのだろうか―――そんな悠長なことを考える余裕は無かった。
一度動き出すと射精は止まらず、俺は快感に実を任せ宇和井の口に全て吐き出す。
「くうぁ……宇和井、無理すんな……」
「んんぅぅうう……」
宇和井は飲み込んでいるが、喉に絡む高熱の粘液が邪魔をして苦労しているようだ。
宇和井の口から引き抜きたいが、宇和井自身が抱きついて離さない。
「ううっ……ふはあ。苦しかった」
「無理すんなって言ったろ。風邪ひいてんのに」
「……伊勢のだから零せないわよ」
「どこまで自分勝手なオンナだな、お前」
「うん。よく言われる……」
それまでも宇和井に奪われたら俺の立場が無い。
宇和井に犯されるのは悪くないが、それ以上に俺が宇和井を犯したい。
何時だって単純な理由が俺を突き動かすんだと思うと、何処か寂しい。
衝動で宇和井を押し倒すと、両手を広げて俺を待っている。
「……来て」
言われなくてもそのつもりだが、一々先を取る宇和井。
下半身もあっさり復活し、俺は宇和井の柔肌を抱く。
裸同士が抱き合って触れ合うと、言葉以上に愛おしさがこみあげてくる。
絡まる互いの舌と唇。前戯はそれだけでいい。
宇和井の小さな身体が益々小さく感じる。でも今までで一番近くに感じる。
互いの性器の表皮は、互いの放つ体液で既に塗り固められていた。濡れた両者を俺が腰を動かして邂逅させる。
一度盛大に吐き出した俺の方は、再隆起して顔を覗かせる。
抱き合うのは胴や肢体だけではなかった。結ばれるのは簡単ではなかった。
だから……酷く疲れる前に、俺はその作業に入る。
宇和井の言葉は、耳元で囁かれると淫靡に聞こえてくる。
「……なんだかエッチね」
「嫌いか?」
「ううん……伊勢ならいい」
宇和井が俺に委ねるサインだった。
「熱でおかしくなっちゃったのかな……わたし」
宇和井を横へ寝かせると、熱が吐息と声に乗せて俺まで届く。
そして今度は俺から宇和井へ。熱を帯びた宇和井の唇を優しく包む。
「んっ……ふぅん……」
重なる口端から漏れる声。普段の強気な声とは違う、小さくて可愛い声。
優しく触れた後、下唇を咥える。軽くて繊細な唇の感触を味わう。
最初は強張ってた宇和井の唇は、段々と順応して俺の唇に唯従う。
宇和井の唇が少しずつ開く。嬉しさからだろうか、気持ちよさからだろうか。
少なくとも俺は、受け入れてもいいと言う意思表示に感じた。漏れる声も回数が少しずつ増えていく。
舌をゆっくりと入れると、熱で舌先がヒリヒリする。
体温を測った時には既に熱かったが、中はそれ以上の熱を帯びていた。
そして渇いていた。宇和井が水分を余り取ってなかった所為だろう。
俺の唾液が宇和井の口腔を満たしていくのが感じ取れる。
「……はぁ……はぅ…い…せぇ……」
乾いた口腔の奥から俺を求める言霊。甘く蕩ける様な波長の波が聴覚に、感触が舌に。
宇和井の舌に絡まると、その刺激は増幅する。暗闇に響く卑猥な舌と、舌の抱擁の擦れる音。
俺は宇和井を求める。宇和井はそれを受け止める。
互いの指が交差し、紡いで離れない様に強く握る。絶対に離れない様に。
ゆっくり離れると、唾液が糸となって互いの口を繋ぐ。月明かりに浮かぶ宇和井の表情は愛おしい。
俺はTシャツをゆっくりと捲る。細く白いくびれが月明かりで照らされ、艶かしい。
上まで捲ると膨らみが顔を出す……下着は着けていなかった。
「着けないほうが楽だからさ……」
くっついた時に感じた柔らかさはその所為だった。
俺はその膨らみを手で包むと、綺麗な形の胸は触れる度に肌が窪み、グミのような柔らかな感触が掌に拡がる。
「……んうっ!……うふぅ……」
胸に触れると宇和井の反応が大きくなる。
「此処、弱いのか」
「……そう…かも」
中央の蕾が綺麗な半円に弧を描く。躊躇わずに口に含むと、宇和井が少し身体を撓らせる。
「ふぁあ!!……ひゃぁっ…………」
宇和井の言った通り、胸は弱いようだ。少し愛撫しただけで蕾は早くも勃起し始める。
感部と口が絡み合う側で、手を土台に沿え張りのある乳房を丁寧に揉む。
半円の円周を優しく包みながら唇で熱を与え、熱を惜しまず加える度に、宇和井の背中が弓のように撓る。
喘ぎ声は必死に我慢してるようだ。
俺の前だからだろうが、俺からすると必死に口を瞑って我慢している宇和井で余計興奮する。
そして―――必死で口を紡いで我慢してるのが可愛いな。
……そう言うと、宇和井が顔を赤くしながら喘ぎ声を漏らすから余計昂揚する。
胸の柔らかさが心地いい。
風呂上りで肌がすべすべしていたのもあるが、宇和井の肌自体がきめ細かいのもあった。
五指全てで下乳を覆い丁寧に撫でる。上から無理矢理じゃなく、御椀に下弦を書くようにそっと。
片方の胸は快感、もう片方は心地よさと安心―――宇和井も俺と同じ感覚を味わってるはず……だが快感だけは俺の何倍も上だろう。
ボディソープのほのかな香りに宇和井の発する媚香が混ざり、段々と五感が支配され始める。
投げ出していた宇和井の手が俺の頭に伸びて、まだ乾き切ってない髪の毛に指を絡め、母親のように優しく撫でる。
差し詰め今の俺は、母乳を吸う赤ん坊か。
―――大きな赤ん坊ね……フフっ、可愛いわ。
そんな風に思われてたら嫌だが、宇和井はそれどころじゃ無さそうだから大丈夫か。
神経が既に乳首の方に逝ってるみたいだ。どんどん硬くなり、宇和井の反応も大きくなるのが良く分かる。
ここで左右の攻めを交代する。吸っていた乳首は指で、乳房を撫でていた方は愛撫。
指は唾液の所為で、勃起した乳首を上手く摘めず引っ掻いてしまう。
だが宇和井にとってはそっちの方がイイようだ。
もう一方は、未だ触れてなかった御かわりの実。
汚されていない未熟な果実を口に含むと、宇和井の身体がまた一つ大きく跳ねる。
そして未だ熟れない小さな実に俺の舌と唇で熱処理を加えると、熟れた果実に肥大化する。
その成長の過程は、口の中でじっくりと味わえば手に取るように分かる。
根元を攻め、先に触れ、全体を包む。
宇和井の喘ぎ声が可愛い。もっと聞きたくて、俺はずっとその工程を続けていた……熟れても熟れても。
気が済むまで戯れていたら、俺の髪に絡まる手が何時の間にか投げ出され、シーツを掴む事さえ出来ずにいた。
気力無き声が宇和井から漏れる。
其処まで気持ちよかったのか……しおらしい宇和井の姿と、普段の振る舞いとのギャップが強くて興奮せざるを得ない。
その証拠に、俺の下半身は既に挿入したがっている。
弛緩している今の宇和井の両脚をあげて……果肉に傘を押し付け……捩じ込んで……。
俺の本能が空転する。俺の下半身は、今か今かと媚薬入り果実との抱擁の刻を待っている。
だが安易にぶち込んで終わるなんて愛の無い、芸の無いセックスはしない。
意志さえ持てば耐えれる。今は宇和井が悦ぶことをしてから……。
完全に、俺の意思決定の優先順位が、自分自身よりも宇和井のほうが上になっている。
宇和井は荒げた心拍と呼吸を整えるのに必死だった。
女が感じた時に漏れる独特の呼吸……息を吸い込んだときの喘ぎ声と、吐く時の唇を舐めて擦れる音。
宇和井の顔に近づけば、その声と吐息が顔にかかる。
俺は宇和井の前髪を優しく掻き揚げる。
月明かりは都合良く右眼しか照らさないが、その右眼は此方を見つめている。
薄暗闇で確認できない左眼も、俺を捉えてるに違いない。
掌が熱い。宇和井の額の熱が皮膚をじりじりと焼く。小さな顔が微細に動き、唇を此方に向ける。
「もういっかいして……」
俺は上着を脱ぎ、再び唇を重ねる。唇を重ねるのが当然になっている。
それでも感触は何度やっても変わらす、心地いい。
舐めるように宇和井を包む……唇も身体も。抱きしめると、細い腰が俺の身体に纏わりつく。
胸板に宇和井の胸が触れると、痛々しく勃起した乳首が肌を突く。
柔らかな乳房がクッションになって熟れた実を包んで、俺を攻める。
腕に力を籠めると、宇和井の身体が俺にしがみ付く。上の口を塞ぎ、俺は下の方に手を伸ばす。
俺の貸した部屋着のパンツの中に手を入れ下着に手を掛けると、俺を掴む指に力が籠る。
指をそっと潜らせ、微量に生えた恥毛を横切る。
指の関節を曲げた先に、熟した果肉が露になって俺を待っていた。
其処は既に蜜が溢れていた。指に絡む宇和井の蜜の量は、前戯する必要は無いのかと思わせるくらいだった。
胸を攻めただけでこんなに濡れるのか……確かにキスや抱擁を何度もしたが、それでも異常だ。
「そんなに良かったのか?」
「だって……キモチよかったんだもん」
「……どこが?」
「チューとか胸とか……伊勢が触れたところぜんぶ」
素直でストレートな答えだった。宇和井らしくて、俺は嬉しかった。
指が窪みの縁を沿って行く。そして少し盛り上がった丘の上を、俺の指が這う。
這わせている間の宇和井の反応を見るのも悪くない。
焦らされているのが苦痛に感じているはず、俺は宇和井自身から懇願はしないと思ってるからだ。
喘ぎ声さえ漏らすのを抑えていた為だ。
ただ……俺が其処まで我慢できない。下半身は其の刻を待って、硬度を増している。
焦らしたいが、蜜は充分に恥丘に塗りたくった……もういい。次に移らないと暴走する。
俺は指を入り口に埋めると同時に、宇和井の反応が変わってくる。
指の第一関節を起点にし、指をぐるっと中で泳がしてみる。
「はぁぅ……ふひゃ……」
露骨なまでに反応が変わっている。此処も弱いようだ。
二本目は入るだろうか……大丈夫だった。中指と薬指が宇和井の蜜壷に吸い込まれる。
今度は第二関節まで入れてみると、既に肉壁は、侵入者を拿捕しようと圧を加えてくる。
そして宇和井は自衛のつもりが、自分をより快感に堕とす行為だとその後気づく。
密着度が増すと、摩擦も大きくなる。指に食い込むヒダが常に擦れる感覚が俺にはある。
「んあぁ…!!……くううぅ……」
押し返すと、宇和井の喘ぎ声が強くなるのが顕著に見て取れた。
指に絡む蜜の音が本当に厭らしく、卑猥な音だ。
捏ね繰り回せば蜜が溢れ、宇和井の声も内側から捻り出される。
最初の切なそうな声は既に枯れ、艶やかさで染まる喘ぎに変わる。
入り口が圧で締まり、身動きが取れなくなり、指の平だけを巧みに使って肉壁を攻め立てる。
「ひゃめっ……」
ヒクヒクと波打つ肉壁を、指でマッサージして解す。指圧で滲み出る蜜がその空間に押し留まり、水溜りが出来る。
プールごと押し返せば、肉壁は蠢き入り口が耐えかねて口を開く。壷から溢れる蜜が俺の腕をつたってシーツを汚す。
「はぅう……んんぅ……」
右手に力を籠め過ぎた作業を繰り返した為に、俺は酸欠になってしまう。
宇和井の秘部を一心不乱に攻めていて、緊張の糸が切れたのもあるが、傷ついた右手を酷使したためだ。
行為の最中は脳の興奮物質である程度抑えていたが、ここに来て痛みが脳に廻り響く。
だがその痛みは、宇和井の右膝に較べれば屁でもない。
宇和井の喘ぎ声をもっと聞きたい。もっと。もっと。
宇和井の絶頂の瞬間に俺は意識が崩れる。対して宇和井にあった恥じらいの体勢が今は欠片も無い。
快感が全身に廻るのを俺は眺めていた。こんなに可愛いと思ったのは初めてだった。
「……ひゃぁ……い…せ……」
俺の側に撒いた蜜は酷くシーツを汚す。俺の右手の傷を如何してくれるんだろう。
その前に抑えないといけない。鎮めないといけない。衝動は愛情と興奮を生む。
「だァめ……イったのに…いれたら……」
そっちの方が気持ちいい。宇和井も俺も……そして容赦は出来ない。しない方がいいし制御出来ない。
「……入れるぞ」
俺は傘を口に添える。表皮に蜜がこびり付き焼き付いてくる。これだけで満足していたら身体が持たない。
「……伊…勢………」
宇和井が最後に言ったまともな言葉だった。後は普段のこいつに全くそぐわない喘ぎ声を出していた。
中を突き進むと、指で触れた時とは状況が違っていた。
根元まで全力で締め付けてくる宇和井。時折ヒクヒクと波打つと竿にリンクして吐き出しそうになる。
歯を喰い縛って耐えるが、宇和井の喘ぎ声で違う方に慢心してしまう。
黙らせようと俺は宇和井の身体を持ち上げ、抱き寄せて口を塞ぐ。
狂ったように舌を絡めてくる宇和井に、狂気が俺にも次第に移されていく。
「く……るふぃいよ……ひぃもちい……」
下から何度も突き上げ、身動きの取れない竿を奥に捩じ込む。融けるように熱くてねっとりした宇和井の中。
その抱擁は竿が壊死してしまうくらいにきつく締め付ける。この体勢で無いと奥に捩じ込めない。
小さな宇和井の身体が跳ねる度にもう射精したような位、快楽が舞う。
そうなると俺は何度吐き出したことになる……数え切れない。
脳内擬似では何度も絶頂に向かったのを、実際に吐き出したら……余裕の無い俺が考えただけでもヤバいことになりそうだった。
互いには隔たりは無い筈だったが、互いの粘膜が間に入って俺を奥へ送り込む助けをくれる。
ドロドロに絡まる俺と宇和井の体液に……もうすぐ新たな仲間が加わることになる。
それは宇和井の中を侵食し、全身に伝播し満たしていく。
吐き出した俺は蛻の殻になるが、宇和井になら構わない。お前になら構わない。
呆気無い幕切れと狂気の終焉は、背反してはいるが同時に起こる。
「!!!!……っ!!!……ぁあぁあ……!!……イっく……」
全てを吐き出した俺は宇和井を抱きしめ眠る。
こんなにも温かな布団は初めてだった……体躯も竿も宇和井の温もりで満たされる。
俺を呼ぶ声はきっと宇和井だったんだな。宇和井の指が俺の頬を掠める所までは憶えていたから。
朝日が部屋に差し込む。適度に空に散りばめられた雲が橙色の光線を和らげてくれるから、そこまで刺激的じゃない。
この時期の朝は冷たい。外に出るのが億劫になる。俺は宇和井に奪われた布団を奪い返す。
「う〜ん……返さないんだからぁ……」
寝ぼけている宇和井の言葉が的確で、俺は起きてるのかと疑う。
だが……寝息を再び立ててスヤスヤ眠る宇和井を確認し、俺は宇和井ごと此方に抱き寄せる。
「どこまでも無邪気な奴だ」
痛みの無い朝日のおかげで、再び眠りに就くのも容易かった。
眼を覚ますと、宇和井は居なかった。
ベッドの側に昨日貸してやった俺の服が置いてあった。その上に書置きが置いてあった。
昨日は楽しかったわ
わたしのわがままに付き合わせちゃったわね
寝顔が可愛かったわ♪ わたしとヘンな事する夢でも見てたのかしら?
次に会うときは執行部の部室よ! ちゃんと来なさいよ!
アナタだけの魔法執行部次期部長より
「お前には部長なんて無理だろ」
書置きの突っ込んでも虚しい。俺は洗面所に向かった。
宇和井と重なった夜。
あれは夢……そんなことは無い。シーツの染みがそれを物語る。
それに、俺は宇和井の感触を憶えている。ぬくもりも、匂いも、触れたときの温度も。
記憶が途切れたのは、あいつが俺を呼んでいる声だ。
初めて聞いた宇和井の懇願。夢なら確かに納得する。
俺は顔を洗って、朝食を作ることにする。
明日は学校だ。部室には行かない。たとえあいつの願いでも。
聡史×玲編はこれでお終いです。
分割投下でストレスを感じさせてすいませんでした。
ではまた次回に。
>>437 G!!!!J!!!!すごいよすごすぎるよ
あんたは俺の唯一絶対ネ申だよ
440 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 23:03:05 ID:Sv6y2nND
あんたの文才すご杉
GJ!聡玲イイよ聡玲!!乙です!
443 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/09(日) 18:47:52 ID:xpj1G2+H
ほす
ルーシーで誰か頼む
そろそろ時田が見たい。
永井のを誰かやってくれ
聡玲ときて次が支部長ならお相手はハルカ先輩ですな
永井が攻めてるところが想像できない。
喋り方は初期のへタレの方ではなく
今のような強気(?)
でよろ
こんにちは。
前回の聡史編に続いて今回はハルカ編です。
再度テキスト量が多くなったので、分割投下にさせて頂きます。
Day 1 5/XX Unknown
入部当初の頃は、伊勢くんは誰よりも率先して仕事をこなしていた。見た目とのギャップもあって……わたしは憧れていた。
あんな風に強くなれたら。魔法じゃなく、使う者の強さ。前に出て率先して活動するのが苦手だったわたしには、伊勢くんが輝いて見えた。
彼が慕っていた同学年の生徒は、永井龍堂という長髪の男子だった。
執行部に入る以前からも親しくしていたようで、入部も二人で決めたそうだ。
だけど彼は他人と距離を常に置いていた。わたしは話しかけたくても、話すことは出来なかった。
そんな彼に気さくに玲は話しかけていた。当時一年で女子はわたしと玲しかいなかったから、玲とは直ぐに友達になった。
そんな彼女が、憧れの人と話している。羨ましくて……複雑だった。二人の中に割って入るなんて出来なかった。
―――二人は付き合ってるの?玲は伊勢くんのことが好きなの?
そんなことを考え悩んでいたら、日毎に伊勢くんに対する不満が先輩達から漏れるようになった。
そして……伊勢くんの休部。
あんなに活躍していたのに、どうしてなの。先輩に話を聞くと、執行時に加える暴行が問題になっていた。
伊勢くんはそんなことはしない―――そう自分に言い聞かせていた。
わたしの願いは崩れ去った。彼は永井くんと衝突し、それ以来部室に顔を出す事は無くなった。
原因を玲に聞いた。でもわたしが聞いたことと同じで、伊勢くんの暴走、という事になっている。
わたしは本当のことが知りたかった……永井くんなら。伊勢くんと唯一知り合いだった永井くんなら知ってるのだろうか。
わたしは永井くんに話を聞いた。
「永井くん。この前のことなんだけど……」
「…ごめん……いそがしいから……」
彼は何処か影を落としていた。親友と喧嘩したんだから、当然なのは分かってる。
でも、何時もの腹黒い方の永井くんは、わたしの前では見せなかった。眼を合わせることなく、会話はいつも終わってしまう。
永井くんは支部長として一生懸命頑張っていた。でも帽子が喋るときは、口がすごく悪くていい印象を持っていない。
玲に何度もブスって言ってたのには、内心腹が立っていた。
……本当はこの人の所為なんじゃないのか。伊勢くんを追いやったのは、この人じゃないのか。
そして彼への疑念は次第に募り―――現在に至る。
執行部に連絡が入る。何時ものようにわたしはアラームが三度鳴る前に素早く受話器を取った。
「はい、こちら魔法執行部」
「なんか、屋上で騒ぎがあるみたいなんですけど」
「屋上ですね……人数は分かりますか?」
「執行部の人は何人か見ました。支部長とGPの人、あと伊勢さんらしき人も」
伊勢くん?どうして……嫌な予感がした。組み合わせの時点で既に不吉な予感は充分漂っている。
「わかりました。すぐに部員を向かわせます」
「な〜に? ハルカ、また仕事?」
玲になんて言えばいいんだろうか。余計な事は言わない方がいいのかな……そういう風に仕事に私情を挟んでしまう自分が嫌だった。
「屋上で騒ぎが発生したそうよ」
「おっけー。八条、行くわよ!」
「はいはい」
玲と八条くんは屋上に向かった。里谷くんは別の仕事で出ていて、部室にはわたし一人だけが残された。
それから玲たちが帰ってくるまでの時間は、とても長く感じた。
事務の仕事が一区切りしていたために、じっと壁に掛けてある時計の秒針が一定の間隔で刻むのを眺めていた。
興味や好奇心よりもずっと不安や心配の方が圧倒的に大きくて、わたしは胸が苦しい。
一人で何も出来ずに待っているのが……苦痛で堪らなかった。
下校時間に近づいた頃、漸く玲たちが帰ってきた。九澄くんや永井くんも一緒だった。
「九澄! アンタ魔法使ったんですって!? なんでわたしに見せなかったのよ!」
「だァー!! だから抱きつくのやめろって!」
玲は何事も無かった様に振舞っていた。雰囲気も刺々しいものではなく、何時もの空気が流れている。
わたしは永井くんに事情を尋ねる。そういえば、永井くんは帽子を被っていない。手に持ったままだ。
「屋上での騒動は、なんだったの?」
「ああ……伊勢と色々あって……九澄に…助けてもらったよ」
「色々って?」
「それはわたしが答えるわ。ハルカ」
わたしが気になって追求しそうになった時、玲が話し出した。
玲に事情を聞いた。わたしは永井くんを誤解していた。
今すぐにでも謝りたかった。あの時の表情は、そんな簡単な理由じゃなかった。
それでも謝罪することが出来なかったのは、このまま流れてしまえばいいな……そう思っていたから。
だから、わたしだけ笑ってはいなかった。誰にも気づかれない様、必死で涙を堪えながら書類に眼を通していた。
その日まとめた書類の中に……字が滲んでいる書類があることは誰にも言ってはいない。
「永井くん」
わたしは永井くんに話しかけた。二人しかいない、放課後の下駄箱。夕焼けは落ち、蒼黒く空が沈んでいくのが確認できた。
「まだ……残ってたんだ。どうか…した?」
「一緒に帰らない?」
「僕が……沼田さん……と?」
「うん。ダメかな? 話したいこととかあるから」
永井くんは動揺していた。部室以外では話さないのにいきなり二人で帰るなんて……驚くはず。
「沼田さんって……帰る方向……一緒だっけ」
「うん。途中まで一緒ね」
「わかった……もう外も暗いから……一人じゃ…危ないから」
何度も心の中で復唱した言葉は、形を変えながらも相手に伝わった。
そして永井くんの言葉が嬉しかった。その場凌ぎでも、本当の想いでも。
校門をくぐる頃には、辺りはすっかり暗くなる。街灯の照らす歩道を二人並んで歩く。
風が吹くと、互いの髪が靡いて揺れる。脇に眼をやれば、家々の明かりで溢れる。
まだ白い息は出ないけど、肌を刺す寒さと乾いた空気が好き。雲の無い蒼の空に星が輝く。
わたしと永井くんの間に流れる空気だけが、停まっている様に感じた。
「ごめんね、いきなり誘っちゃって」
「…女の子一人じゃ……心配だからね」
歯切れの悪かった今までの話し方が、少しずつだけど優しく、強くなった気がする。
やっぱり、玲の言ってた事は本当だったんだ。
疑ってはいなかったけど、改めて聴くと……少し吹っ切れたのかな、永井くん。
「その帽子、永井くんじゃなかったんだね」
「ああ……さっきも皆の前で謝ったけど、執行部の皆を騙すような事をして…すまなかった……」
永井くんは立ち止まり、わたしに向かって頭を下げる。わたしは永井くんの両腕を掴んでいた。
「もういいの! 怒ってないよ。それに謝らなきゃいけないのは………」
永井くんの顔が側にあった。身長差で見上げる形になるけど、凄く近くにある。
かあっと顔が赤くなったわたしは、急いで掴んでいた両手を離す。
「……ごめん」
「いや、いいんだ」
永井くんは歩き出す。わたしは遅れないようについて行った。
それからは特に何も話さなかった。
今日一日、たくさんのことがありすぎて、永井くんもわたしも疲れてたからだと思う。
ホントは永井くん……ひとりになりたかったのだろうか。わたしが側にいるのが、迷惑になってるのかな。
そう考えていたら、あっという間に時間は過ぎる。
「じゃあ、此処で」
「あっ……永井くん」
わたしは精一杯の笑顔で言った。
「また明日ね! バイバイ」
「ああ……気をつけて」
永井くんは背を向けて去っていく。わたしはその背中が見えなくなるまで見護っていた。
わたしはただ“謝罪”という口実で度々彼に逢っていた。永井くんは嫌な顔一つせず一緒に帰ってくれた。
口数の少なかったお互いの話題も増えた。いつも執行部のことばかりで、お互いの事なんて全然知らなかったから嬉しい。
一回、一緒に帰ったら一つ。新しい永井くんに逢えた。わたしもたくさん伝えたくて、聞かれた事はなんでも答えた。
だから、わたしの当初の命題は言えずにいた。
もし言ったら、もうこうやって話せなくなるかもしれない……それが怖かった。
もう多くは望まない。一緒に執行部で活動し、終わったら一緒に帰って、色んな事話して。
そんな毎日が楽しかった。そんな日常を壊したくなかった。
Day 2 10/12 Friday
春、夏と季節は過ぎて十月。特に執行部が忙しい時期。
「ハルカ、ちょっといい?」
「どうしたの?」
「……伊勢のことなんだけど」
昼休みにわたしは玲に呼ばれる。執行部の部室には、わたしたち二人しかいない。
実は玲からは前々から話は聞いていた。
最初は玲のお節介だと思ってたけど、二人の為なら悪くないのかな……そう思った。
二人には仲良くなって貰いたかった。それなら……いいのかなって。
「玲、あんまり無茶したらダメだよ?」
「大丈夫! さっき逢ってきたから」
「えっ? でもさっきは違反者を捕まえに行ってたじゃない」
「……アイツに助けてもらったのよ。だからお礼ついでにね。あとこれ、支部長には絶対内緒ね。伊勢にバレたら面倒だから」
そう言って玲は出て行き……数分後、永井くんが部室にやってきた。
「沼田一人だけか」
「うん。もう授業始まっちゃうよ? どうかした?」
「いや、此処を通りかかっただけだ。今日の放課後担当は?」
「今日は……玲とわたしね」
「そうか。最近シフトが変則的になってしまったな。九澄達は分室で頑張ってるみたいだから、二年生五人で上手く廻して行きたいんだが……」
「二人でも大丈夫。ほとんどの生徒は部活動で忙しいし」
「でも君には事務に加えて執行補佐まで……」
「それがわたしの仕事だから、心配しないで」
「……わかった。じゃあ放課後、よろしく頼む」
永井くんは以前あった人見知りは改善され、帽子で話すことは殆ど無くなった。
支部長として半年間、色々あったけど頑張ってきたと思う。
心配してくれるのは嬉しい。わたしに気を使ってくれてるんだなって思う。
その日の放課後、部室に連絡が入る。
「はい、こちら魔法執行部」
「なんか二年生の奴等が進入禁止区域に入ってったのを見たんだけど」
「進入禁止区域……修練棟のことですか?」
「そこそこ。一人しか居なかったけど、いかにもって感じだったから」
「……わかりました」
わたしは電話を切って、玲に伝える。
「修練棟に生徒が侵入したって、人数は一人」
「また? 先生達はちゃんと鍵してないのかしら」
「どうする? わたしも行こうか?」
「大丈夫、わたし一人で。部室を空けるわけにはいかないでしょ?」
「……そうね。一応何かあるといけないから、永井くん呼ぶね」
「おっけー、それじゃあ行って来ます」
玲は部室を後にする。報告には一人と言っていたから大丈夫だと思う。玲に敵う人はこの校舎には……。
わたしは一人の男子を思い出した。
「伊勢……くん?」
彼はそんな所に用なんて無い筈。でも彼は学校には来ているようだけど、いつも姿を見せない。
じゃあ……もし伊勢くんは、あそこをいつも出入りしているんだろうか。伊勢くんなら修練棟の施錠を突破するのは難しくない。
わたしは玲の報告を待っていた。でも中々携帯は鳴らない。部室でじっと椅子に座り、携帯画面を眺めていた。
携帯が鳴る。わたしは瞬時に反応し画面を見ると、着信は玲からだ。
「もしもし、玲?」
「ハルカ!! マズイことになったわ……先生に連絡して、修練棟の磁場を抑……―――――」
電話は其処で切れた。どうして嫌な予感はいつも当たってしまうんだろう。何度返信しても繋がらない。
わたしは急いで部室を後にした。すると目の前を先生数人が走っているのを目撃する。
只事じゃない雰囲気に、わたしは確信する。
「すいません! もしかして……」
「沼田か、ちょうどいい。さっき生徒から連絡があって、修練棟で騒ぎがあると聞いたんだが」
「はい。此方も執行部員も一人向かったんですが……」
「あそこはまだ磁場を解除していない。それにさっき調べたら微量ながら磁場漏れを起こしている。遊び半分で魔力を放出したら大変なことになるぞ」
先生達は修練棟へと向かう。
「わたしも行きます!」
わたしは先生達の後を追った。考えよりも先に脚が動いた。
校舎の廊下を走り抜け、修練棟への渡し廊下を進む。棟の玄関口は開いていた。
中に入ると、明かりは点いていなかったから暗く、空気は磁場漏れの所為か澱んでいた。
漂う空気に身を任せると……可笑しくなりそうなくらいの緊迫感が込み上げてくる。
「地下で誰かが魔法を使用してるな、相当でかい」
先生達の指摘を聞いた後すぐ、わたしは真っ先に地下に走る。
「まて沼田!」
先生達の声を無視し、階段を駆け下りる。地下二階に下りると……正面の扉が開いている。わたしはそっと中に入る。
すると、中は蜘蛛の巣のように全方位に糸が張り巡らされていた。
この魔法は玲のものだろうか。中央に収束する糸を眼で辿ると、中央に玲が絡まっている。
そしてその下。必死で何かに向かって何度も殴り続ける男。その後ろ姿は……。
「なんだこりゃ……」
後から来た先生達が驚くのは無理もない。わたしも訳がわからなく、恐怖で其の場に座り込んでいた。
……腰が上がらなかったのはそれだけではなかった。不安が文字通り的中してしまい、呆然としていた。
眼は大きく見開き、手は胸の前で強く握ったまま硬直し、時折悪寒で微細に震えていた。
先生達は彼の側に詰め寄り、彼を捕まえる。そして連行する彼をわたしはじっと見ていた。
彼は抵抗しなかった。部屋の出口で彼とすれ違う時、手錠の拘束魔法に縛られた右手は傷だらけで血が滲んでいた。
声なんて、掛けれなかった。
後から来た百草先生が玲を救出し、抱きかかえて此方に戻って来る。玲の膝には痣があった。
「宇和井さんは大丈夫よ。沼田さん、貴女も手伝って」
百草先生の声で、漸く眼が覚めたような感覚を憶える。部屋で倒れていた生徒達は、後で駆けつけた先生達が運んだそうだ。
一方わたしと百草先生は、玲を保健室に運び治療する。百草先生が治癒魔法を使えたのが幸いし、玲の怪我は快報に向かった。
百草先生が去った後、玲が目覚めるまでわたしはずっと側にいた。手を握り目覚めを待つ。
色々な事を考えないといけない所だったけど、上手く頭が廻らない。だから、今は玲の無事だけを願っていたかった。
無理矢理にでも塗り潰したい人物画があった。でもどんなに黒い絵の具で塗りたくっても消えない。
だから、せめて……今だけは…………。
―――そう祈っていたら、わたしまでも眠りに落ちていた。
「沼田!!」
わたしは起こされる。呼んだのは永井くんだった。
「大丈夫か?」
わたしは身体を起こす。目の前を確認すると、まだ玲は眠っている。
「……うん。わたしは大丈夫」
「そうか。宇和井の容体は?」
「百草先生が治療してくれたから大丈夫だと思う。でもまだ眠ったままで……」
「私なら大丈夫よ」
玲が答える。眼は瞑ったままだったけど、声は以前と変わらない。
「玲! 大丈夫!?」
「ちょっと脚が痛いけどね。支部長の声が大きかったから起きちゃった」
無事で何よりだった。保健室の空気が急に明るくなる。玲の才能……かな。そんな玲が羨ましく思う。
「お邪魔するが、宇和井の様子はどうだ?」
柊先生が訪ねて来た。玲は先生に答える。
「大丈夫です。さっき眼が覚めました」
「そうか。眼が覚めて突然だが、今回の件についての詳しい状況説明が聞きたい」
「柊先生。もう少し後でも……」
「処分は即時行わないと、二次被害の恐れがある。永井、お前ならわかる筈だ」
「……はい」
「じゃあ、二人きりにさせてくれないか」
わたしと永井くんは外に出て部室に戻る。此処に戻ってくると、急に事件の記憶が蘇ってくる。
わたしは疲れていた。よほどさっきの光景に驚いて、衝撃を受けたからだった。
嫌な記憶は何時までも消えないでいた……せめて今だけは現れないで。
「すまない。電源を切っていて連絡に気づかなかった」
「うん……」
「犯人……見たのか?」
わたしは知っている。でも永井くんに言っていいのだろうか。言ったら……永井くんはどう思うんだろう。
そんなことは解ってた。答えも出ていた。そしてわたしは臆病者だった。
「……見てないの」
わたしは嘘をついた。もう一つ増えた。永井くんに謝らないといけないこと。
「そうか。ならいいんだ」
永井くんはそれ以上は詮索しなかった。処分が決まれば、永井くんは事件の犯人を知る。
それをわたしが伝えるなんて出来なかった。
玲の事情聴取が終わったみたいなので、わたし一人で保健室へ向かう。永井くんは柊先生のいる職員室へ向かった。
保健室に入ると、玲はベッドから出て上着を着ていた。白いソックスの上から覗く右膝に残る痣が痛々しい。
「ハルカは見たの?」
第一声が直球な質問だったけど、わたしはゆっくりと言葉を選ぶ。
「……うん」
「柊先生から聞いたわ。アイツ……」
「やっぱり伊勢くんが犯人なの?」
「違うわ。犯人はわたしの側に倒れてた奴等。伊勢は……伊勢の知り合いも倒れてたから、知り合いに教えてもらって来たんだと思う」
伊勢くんが犯人じゃない……良かった。
「まだ支部長に言ってない?」
「うん。言ってないよ」
「良かったわ、誤解が伝わってたら、取り返しつかなかったかもしれないから。その様子じゃ、ハルカは伊勢が犯人だと思ってたんでしょ」
わたしは頷く事しか出来なかった。誤解したのは、犯人が彼なんじゃないかと言う先入観と、眼に入った光景が一致したからだ。
「ハルカの報告は一人だったから、それは多分後を追った伊勢の知り合いね。一人だけ部屋の中央で倒れていたわ。連中を追った最初の数人は扉を開けた直後に狙い撃ちされてる」
「確かに、扉付近に三人ほど倒れていたわ」
「柊先生に聞いても、連中の動きはそんな感じだって言ってた」
わたしは記憶を辿る。あまり思い出したくない記憶だったけれど、仕方ない。
わたしが思慮に耽っていたら、玲は既に帰宅する準備を終えていた。
「もう…大丈夫なの?」
「一応病院に寄ってく。百草先生の魔法で外傷は完治したけど、骨の異常とかは検査しないと分からないから」
「そう……」
「そんな顔しないの! 可愛い顔が台無しよ」
「もう。こんな時に……」
玲はそっとわたしを抱く。あったかくて優しい玲の抱擁は何時もわたしの味方だった。
「私はいいから。心配なのはハルカ、アンタよ」
玲に心配されると頑張らないと、って思える。でも伊勢くんのことを悪者だと思ってた自分が今でも嫌。
わたしの憧れだった人。玲には言って無いけど、やっぱり分かってたのかな。
玲は両親の車に乗って、病院へ向かった。わたしはそれを校門で見送っていた。
普段の玲の振る舞いが、逆に無理してるんじゃないかと心配になってきた。でも当の玲はわたしを心配してくれる。
擦れ違ってばかり。
伊勢くんを疑ってしまった自分が嫌。玲の笑顔に素直に喜べない自分が嫌。
永井くんに伝えられない……嫌、イヤ。もう……やだ。
もう陽は沈みきって暗闇がわたしを覆う。深呼吸すると乾いた空気が、肺に取り込まれわたしは少し息吹を得る。
「沼田」
永井くんに呼ばれる。心配してたのは、ぼ〜っとしてて反応が遅かったからだったみたいだ。
「大丈夫か?」
「―――行こう、永井くん」
必死で作った笑顔には、翳りが滲んでいた。自分でも分かるから、永井くんはきっと気づいている。
わたしは永井くんの手を取る。自然に手が伸び、同時に必死で走った。
誰もいない歩道。等間隔でそれを照らす街灯。車は一台も走らない。
辺りに二人の駆ける音が響く。そしてわたしの吐息。
運動オンチな二人は、目標も無く走った。
秋空に無尽蔵に舞う乾いた空気を追って……頬を駆け抜ける風は冷たく痛い。
その痛みで走れなくなるまで、わたし達は走った。
「はあっ……はあっ……」
「はっ……はあっ……どうしたんだ、いきなり……」
膝をついてわたしは息をする。永井くんはガードレールに手を掛けて、かなり参ってる表情だった。
「……ごめん…なんか……我慢……できなくて…」
如何してかはわからなかった。走ることに意味なんてなかった。思いっきり大声で叫んでも良かった。
ただ、膨れ上がっていた。それを解放しないと可笑しくなりそうだったからだと思う。
わたしは未だ立ち上がることが出来ない。永井くんは呼吸を整え終え、わたしの側に膝をつける。
わたしはじっと見つめる。彼の瞳に囚われ、未だ乱れる呼吸が回復せず胸が苦しい。
「………わたしがこんなこと……いきなり……びっくりしたかな」
「そんなこと無い。俺だって走って、すっきりした」
「伊勢くんのこと……?」
「伊勢のことは柊先生から聞いた。もう暴力には使わないと言ったんだが、今回は仕方ないと思ってる」
「……怒りに任せてなの?……玲を護ろうとしてなの?」
「それは……伊勢しか知らない。その伊勢は何も言わなかったそうだ。ただ連中を魔法で追い込み、暴行を加えたと証言した」
わたしは真っ先に彼の処分が気になった。
「伊勢くんの……処分は」
「一週間の謹慎処分だそうだ。淡々と聞き入れ、一礼して後にしたそうだ」
退学には為らずに済む事を聞いて、ほっとする。
「……伊勢くんと話、したい?」
「伊勢が赦さないだろう」
「…………」
危うく話してしまいそうだった。でもどの道、玲の計画なんて成功しない。こんな事件が起きたんだから。
玲は怪我、伊勢くんは謹慎。残されたわたしたちは……どうすれば。
永井くんがわたしを立たせてくれた。まだ脚が棒になっていてふらつく。
「暫くは宇和井は治療に専念してもらうと思う。三日ほど大事をとって休むそうだ。執行部の仕事が忙しくなるが、俺達が何とかしないとな」
「うん。そうだね……きゃあっ!!」
永井くんに倒れこんでしまう。
ふとしたきっかけだった。糸が解ける。
感情の波が臨界点から溢れ、止まらなくなる。抑えても抑えても流れ逝く。
「………わたし………みんなに…支えられてばっかりだね………………ごめんな…さいっ………………ごめんね……永井……く…ん……」
泣いていた。抑えられなかった。亀裂の入った器の破裂は、沈静も制御も効かなかった。
わたしに出来たのは……彼にしがみ付くことだけだった。
Day 3 10/15 Monday
月曜日から仕事は予想通り忙しかったけど、玲の穴を九澄くんや柊さんに手伝ってもらう事になった。
九澄くんには特に詳しいことは言っていない。柊さんは『事務作業の練習になるので平気です!』と言ってくれた。感謝しないといけない。
そして普段は前線に出ないわたしも、前線に出る機会が多くなった。大変だったけど、電話で交わす玲の声が支えだった。
「はやく帰ってきてね。みんな待ってるよ!」
「も〜う、仕方ないなあ。月曜まで待っててよ〜」
「宇和井さんがいねえから俺走りっぱなしなんですけど」
「九澄!? わたしがいない所でサボってたら赦さないわよ!」
いつもどおりの玲で安心した。玲は帰ってくるのは、丁度一週間後。
怪我は外傷は大した事無いけど、骨へのダメージがあるそうで暫くは安静にしておきなさい……だそうだ。
ホントは昨日玲の家に行って様子を見に行ったけど、その時はぐっすり眠ってたから、寝顔だけ見て帰った。
「玲って……いつもはすぐ怒ったりするけど、寝顔は凄く可愛いんだよ」
そう言ったら執行部のみんなは玲の寝顔想像して笑い、わたしは思い出してくすっと笑った。
大丈夫よ、玲……こっちは大丈夫。いっぱい泣いて、すっきりしたから。
永井くんがずっと頭を撫でてくれてた。だから次の日、眼を合わせるのが妙に恥ずかしくて。
仕事の時、二人で違反者を捕まえることになって、この前のことを謝った方がいいのかなって思っている。
永井くんを見ると、この前抱きついた時の感触とかぬくもりが思い出された。
「たは〜〜! やっと終わった〜!」
「ハルカ先輩、これで最後です」
九澄くんと柊さんには臨時の助っ人として、放課後の書類整理に手伝ってもらった。
「二人とも本当にありがとう。助かったわ」
「そんなこと無いですよ! また何かあったら言ってください」
「くぅ〜〜……デスクワークは苦手だなーやっぱり」
「後はわたしがまとめるわ。おつかれさま」
九澄くんと柊さんは部屋を後にする。
「二人にはきつい作業をさせてしまったな」
「うん……そうだね」
永井くんの言葉にわたしは相槌を打ち、書類を整理する。
膨大な量の始末書や関連資料をファイルにまとめる作業は、溜まれば溜まるほど困難になる。
その為、逐一行わないといけない休日前の定期作業だった。
何時もは残ってる部員でわたし中心に進める作業だったけど、柊さんの申し出で手伝ってもらった。
途中から九澄くんも手伝ってくれた。二人のおかげで暗くなる前に作業が終わり、とても感謝している。
今日はテスト期間に入ったので、生徒達はもうみんな下校している。最後の下校の生徒は、わたしと永井くんだった。
わたし達は校舎を見回り、生徒が残ってないか確認に向かう。先生達はテスト作業に追われているので、この期間での見回りはわたしたちの仕事。
静まり返った廊下を二人で歩く。日中、執行で走り回っていた所とは思えないような静寂が拡がっていた。
「静かだな」
「そうね。テスト期間だけの特典だから」
忙しかった作業が終わり、解放された執行部員に与えられるほんの少しの幸福。
早めの落陽から漏れ出す暖かな橙の光。窓を衝き抜け、わたしたちを照らす。
「異常は無い様だな。いつもこんなに静かだったらいいんだが……」
「問題さえなければね。賑やかなのは好きなんだけどな」
「ああ。勿論そうだ」
校舎をぐるっと廻って異常が無いことを確認した後、わたし達は部室に戻り、下校の支度をする。
「永井くん、やっぱり真面目だね」
「そうかな……沼田は如何して執行部に?」
「わたし? わたしは……―――」
思い掛けない質問だった。わたしは執行部に入ったのは……。答えは明快だけど、伝える言葉が、共に籠める感情が難しかった。
「……わたしは……弱いからかな」
「弱い? そうは見えないけど」
「そんなこと無いよ。魔法だけじゃなくて、身体的にも精神的にも強くなりたいの。ダメな事はダメって言って、それでも聞いてくれない人には魔法で……事故は仕方が無いんだけど、みんながみんな、規則守って使ってくれたらいいのに……」
本音が出てしまった。余計なことを言ってしまっただろうか。でもわたしは続けた。
「理想が高すぎて、無理なのは分かってるよ。魔法で魔法を使う人を抑え付ける様なことは、最初は抵抗あったの……でも、もうそんなことは言ってられない。入部した頃のわたし……幼かったかな。理想ばっかりで、綺麗事ばっかりで」
永井は黙ってわたしの言葉を聴いていた。誰かに愚痴を言うのは嫌だった。
玲にも弱い所は殆ど見せてはいない。見せたくないのは、自分の為でもあり、執行部の為でもあったから。
でも、永井くんに言ってしまった。そんなに深くまで話すつもりは無かったんだけど、流れでつい零してしまった。
「沼田は……其処まで考えていたのか。沼田のほうがよっぽど執行部員の鑑だな……なんて俺が言うのは、良くないんだろうな。それが当然だと思う」
「そうなのかな。どんなに頑張っても違反は減らないから……神経質になってたね。変なこと言って……ごめんね」
「いや…嬉しい。自分の甘さを再確認できた。ありがとう」
わたしの会話で少し空気が変わる。気まずくなったから、今度はわたしが永井くんに同じ質問をすることに。
「永井くんはどうして執行部に?」
「俺は……伊勢と約束したんだ、どっちが先にシルバープレートを得るかっていう約束。そして入部してから、沼田と同じように規律を第一に働いた。加えて今は支部長としての役割を全うする義務がある立場だ。気の休まる時は無いが、充実はしてる」
……伊勢くんとの約束。永井くんの言葉に反応してしまう。
結果的には二人ともシルバープレートを手に入れることが出来たけど、伊勢くんはいない。
永井くんは、どんな気持ちで今日まで支部長として頑張ってきたんだろう。そんな風に考えると、わたしは無視できなかった。
「……気の休まることが無いんだったら、わたしに話して」
わたしの口から自然に出た台詞。永井くんは静かに聴いていて、少し無言が続いた。
「……沼田」
「ごめん! “わたし達”…だったね」
「そんなことは無い。沼田には言えない事も言える。ただ、一緒にいるのが当たり前になってるからなのか……わからないんだ」
「わたしに……?」
「ああ。上手く言葉に出来ないが……一緒にいてほしい」
―――これって……もしかして。
「そっ……それって……えっ……」
「一緒に執行部を支えていこう。後半年でこの校舎から去ってしまう。それまでは俺達が、この校舎の治安を守っていかないとな」
その事を後でこっそり玲に電話で話したら、玲は怒った口調で話した。
「わたしに任せて!! 空気の読めない支部長に一発言ってあげるから!」
それからハッキリしない気持ちがずっと続いた。でも永井くんはわたしのこと、そんな風には見てないと思う。
そういうのって慣れて無いし、如何表現すればいいか解らない。でも、永井くんからそんな言葉が出て来たら……何て答えよう。
「ううん。玲の期待してるようにはならないよ」
玲にはそう言っておいたけど、相手を意識すると変な気持ちになる。男の人と付き合ったことなんて無いから、少し憧れがある。
“憧れ”……其の単語は、何時も彼を指す言葉だった。心の内で密かに馳せていた想いも憧れだった。
そして、都合の良い言葉でもあった。求めるものは総てその言葉で表していたから。
Day 4 10/19 Friday
今日も放課後遅くまで残って資料整理をしていた。ほっと休憩を入れたときに、玲からわたしにメールがあった。
『伊勢連れてくから、九時にファミレスで! もちろん支部長には内緒でね♪』
先に帰った玲からのメールに、わたしは少しドキドキする。二人を逢わせていいのかな……って。
伊勢くんの処分期間は一応今日で終わりだった。事情はもう柊先生から聞いていた。
彼が玲を護ったこと、わたしからも逢ってちゃんと感謝したい。
ただ、永井くんと逢わせるのだけは怖かった。
学校外だから魔法を使っての問題は無くても、再び不仲になるのは嫌……でも玲は遊びでやっているわけではない。
わたしは玲を信じて、永井くんに連絡のメールを送った。
永井くんは今、三年生の校舎にいる。先輩の呼び出し……つまり執行部本部の呼び出しだった。
この前の滑塚さんのような顔出しじゃなく、支部の近況報告等の目的で呼ばれたみたい。
漸く事務処理が終わり、わたしは学校を出て一人で待ち合わせのファミレスに向かう。其処には一度だけ行ったことがあった。
それは今の三年生、つまりわたしたちの先輩がA校舎を離れることになった時だった。
今から七ヶ月前。正式に永井くんが支部長、玲が副支部長に任命された後に執行部員みんなで集まった場所だった。
其処には伊勢くんはいなかった。誰もが彼の名前を伏せていた。
少しでも其の場の楽しみを壊したくなかったからだと思う……わたしも黙っていた。
―――みんなが揃っての執行部……最後まで一緒でいたいよ。
誰に言うでもなく、自分にそう言い聞かせてる。だからすごいドキドキしてる。
本当は決意なんて出来てないから、もう少し待って欲しい気持ちがある。
出来れば偶然を装って……もしかして玲はそういう段取りで連れてくるのだろうか。
永井くんには玲のことは言ったが、当然伊勢くんのことは言ってない。
……ダメ。色々考えてたら疲れてしまう。ファミレスに着いたら何を注文するか考えて、気を紛らわせよう。
時計の長針は、約束よりも90度進んでいた。わたしは外から中を窺う。どうやら永井くんだけしかいない……よかった。
三人が揃ってから中に入るのが一番気まずいかっただろうから、わたしはほっとする。
店内に入ると、中は暖房が利いてて暖かい。コートを脱いで永井くんの元へ。
「ごめん! 遅くなっちゃって」
「沼田も制服か……事務の仕事、遅くまでやってたみたいだな」
永井くんも制服だった。わたしより先に帰ったはずなのに。
「家に一回帰らなかったの?」
「ああ。さっきまで学校にいたんだ。先輩に色々と言われて来たよ」
永井くんはくたびれた様子で話してくれた。わたしは席について永井くんの話に耳を傾ける。
「『もう少ししたら此処を締める立場になるんだからしっかりしろよ』とか、『後輩の跡継ぎは大丈夫か』とか……部長や滑塚さんに厳しく言われたよ」
「口下手だけど心配性だからね、特に滑塚先輩」
永井くんの話に耳を傾けていたら、十時を廻っていた。さっきまで晴れていた夜空から雨が降る。
その音は次第に強くなり、窓ガラスに雫が大量に滴る。
「……それで、宇和井はどうした?」
「遅いね。ちょっと電話してみる」
わたしは玲の携帯に電話をかける。ほんの数回のコールで玲は出た。
「玲? 何してるのよ。永井くんと二人で待ってるのに」
「ごめ〜ん、行けそうにないのよね」
「えっ?? どういうことよ」
『折角の週末だから二人きりにしてあげようかなって♪ 今日がチャンスよハルカ!』
「……えっ? ちょっと……どういう……」
『支部長は鈍くてシャイなんだから、ハルカがリードしないと始まらないわよ? それじゃあね〜』
電話が一方的に切られる。わたしは呆然としていた、あっさりと騙されたからだ。
「で、どうだった?」
永井くんは騙された事を知らない。でも伝えたら……此処で解散になるかもしれない。
「玲は…………」
わたしは次の言葉が出ない。実は、永井くんに謝る機会を窺っていた。
今更な所もあるかもしれないけど、このままだと黙ったままで二年生が終わってしまう。
「……来れないみたいだな」
永井くんは察してくれたみたい。わたしは心の中で彼に感謝する。
「そうみたい。ごめんね永井くん……」
「謝らなくていいよ。沼田と二人でこうやって話するなんて、久しぶりだから」
さらっと言ってしまう永井くんは、わたしのことを意識しているんだろうか。玲の牽制で如何してもわたしが意識してしまう。
「それじゃあ、これからどうしようか……」
永井くんは強くなってきた雨を見つめながら言った。外を見ると、雨脚は段々と強くなる。
わたしは玲の言葉が本当か聞いてみた。
「永井くんの家って、此処の近所なの?」
「ああ。此処から十分くらいかな……どうかした?」
「ううん。なんでもないの」
「……じゃあ、とりあえず俺の家に行かないか」
「…………えっ!!?」
「今の内なら雨の量も少ない。それに此処はガラの悪い連中の溜り場になりやすいから。両親を呼ぶのもその時でいいんじゃないか?」
何処か展開が急な気がする。永井くんらしくない。
男の子が女の子をこんな夜に家に誘うのって……如何なんだろう。
なにか引っ掛かる…普段と違う。でも……特に断る理由は無かった。
わたし達は永井くんの家に向かうことになる。外の雨が、何処か悲しげで何時もより冷たく感じた。
今回の投下はここまでです。
前回と同じような終わり方でしたが、キリがいいので此処までとさせて下さい。すいません。
では、続きは次回です。
おっ
職人氏ガンガレ!
いいねいいね
執行部ネタいいね
永井×ハルカ
サイコーだぜ☆
続き楽しみにしてるぜ!
続きはまだか
こんばんは。
ハルカ編の後編です。イヴ投下もあって甘めにしました。
最後まで読んで頂けると嬉しいです。それでは行きます。
家の軒先で雨宿りしながら目的地に向かう。
冷たい雨が空気を冷やし、冷たい空気が雨を冷やし、吐く息が白くなる季節だったから繋いだ手が暖かい。
照れた表情も無く、強く握ってくれる永井くんが頼もしく見える。
雨の中を走ったけど、雨宿りもあってか結局目的地まで十分以上かかってしまった。
「ただいま」
先に中に入る永井くんを見ていたわたしは、緊張しっぱなしだった。
変な妄想はしてないけど、男の子の部屋に入るのは初めてだからだった。未だ家にすら入ってないのに、これで大丈夫だろうか。
御両親に上がる時に挨拶した方がよさそう。
「ごめん待たせて。どうぞ」
永井くんの手招きにわたしは答える。玄関で永井くんがスリッパを用意してくれていた。
「両親に挨拶したいんだけど……」
「気にしなくていいよ。早めに眠ってるみたいだし、女の子をこんな時間に上げたら変な詮索されるから。先に二階に上がってて、バスタオル取ってくるから」
永井くんはそう言って奥に消える。わたしは小声で“お邪魔します”と言い、音を立てないようにそっと二階に上がることに。
永井くんの部屋は直ぐにわかった。扉が開いていて、中が見えていた。
どうして開いていたかは特に気にならなかったのは、部屋の窓も開いていて換気の為だと直ぐに解ったから。
わたしは雨が部屋に入らないよう急いで窓を閉める。ひんやりと冷たい永井くんの部屋は、綺麗に整頓されていた。
学校の教材は外に持ち出せないけど、魔法関連以外の辞書や教材が綺麗に棚に整理されている。
わたしの部屋より綺麗に収納されていて驚く。
「なにやってるんだ?」
「ひゃあ!!!」
わたしは物凄い勢いで飛び上がる。変な事はしてないけど、急に声をかけられるのは苦手。
「……なにかあったか?」
「えっ…えっと……ボールペン落としちゃって」
わたしらしくない、あたふたした態度がよほど変だったんみたい。永井くんの頭の上には大きなクエスチョンマークが見えた。
「このバスタオルを使ってくれ。髪が濡れてるみたいだから」
永井くんがバスタオルを渡してくれる。真っ赤になった顔を隠すように、わたしはそれを頭に被せた。
家庭の匂いが洗濯物にも付いていて、永井くんの匂いがした。
部屋に入った時点で感じていたけど、直に物に触れるとより一層際立つ。
女の子の部屋とは違う空気や匂いは、全然気にはならなかった。
「暖房が入ってないな……これでいい。何か温かい飲み物を持ってくるよ」
そう言って再び永井くんは去る。すごく気を使ってもらってる感じがあって、申し訳なく思ってしまう。
わたしは髪の毛の雨露をバスタオルでふき取り、ポケットに入れていた櫛で整える。
―――脚はほんのちょっと濡れただけだけど、一応拭いておこうかな。
わたしはベッドに腰かけ、右膝を胸まで上げて脚をタオルで拭く。スリッパの根元の踝から丁寧に水分を取っていく。
聖凪のソックスは生地が薄いから、水分があると肌に少し不快感が残る。踝が一番濡れていた。走った所為でココが一番濡れやすい。
しっかりと拭き取った後は、すっと上がってふくらはぎ。
―――女の子の脚はみんな細くていいなぁ……玲が羨ましいよ。
そう言ったら玲が怒ってわたしの脚を触って『ハルカの方が細くて綺麗じゃない!!』って言うやり取りを最近したような気がする。
「……そうなのかな」
わたしは脹脛を摩ってみる。あまりそう思わないのは、寒さで少し浮腫んでいるからかもしれない。
クラスの友達にも良く言われるけど、中々自身が持てない。
「永井くんに聞くのは……やっぱりマズいよね」
拭き終わった脹脛の次は膝裏。リンパ腺が走ってるから強くしないほうがいい。
そして最後はソックスの付け根の太腿。わたしは何時もこの部分が気になっている。最近はむくみで特に敏感だった。
拭くついでに、執行部での事務の合間にこっそりやっているマッサージをすることにした。
指に力を入れずに、太腿とふくらはぎの上を縦に滑らせて血管の流れを良くする。
ソックスの締め付けは無いけど、裸足では無い分負担はどうしてもあるし、単純に気持ちいいのもあった。
わたしの最近のマイブーム……実はこっそり授業中もマッサージしてる。席が一番後ろっていうのが大きいけど、さすがにふくらはぎだけ。
イヤらしいことをしてるつもりは無いんだけど、男子にはそう見えちゃうのかもしれないから太腿は……ね。
階段の軋む音がする。
「やだ、こんな所永井くんに見られたら……」
咄嗟に手に持ったタオルを握り、膝の上において脚を揃える。
自分の部屋のようにくつろいでしまってた自分が恥ずかしいけど、永井くんに見られなくて良かった。
「ココアしかなかった、すまない」
永井くんがお盆を持って部屋に入り、マグカップを差し出す。
「ううん。ありがとう」
出来立てのココアは熱々だったから、わたしはふうふうしながら戴いた。
思ってた以上に身体が冷えてたみたいで、ココアの甘さと温かさが身体の内側からじんわりと満たしてくれる。
「あったかくて……おいしい」
「沼田は美味しそうに飲むんだな」
永井くんは向かいの机の椅子に座る。帽子を脱いで、彼もタオルで乾かしている。
わたしはさっきの疑問を引きずっていた。男性の部屋に入るのが初めてだからかも知れない。
永井くんを不信には思ってないけど……永井くんはそんなことしない。そう思ってるから気になる。
「両親にはもう連絡はしたのか?」
「うん。さっきメールしたよ。友達の家に泊まる事があるなら相手の家の迷惑にならないようにって……」
言った瞬間に後悔した。“友達の家に泊まる事”―――馬鹿なお母さんの所為で恥ずかしいけど、言った自分がもっと恥ずかしい。
「そうか……まあ泊まるなら俺がリビングのソファーで寝ればいい」
「えっ!?……泊まる?」
何故か永井くんが話を強引に進めている。流石に不信に思い、わたしは反論する。
「永井くん、何かヘンだよ」
「いや、俺は沼田のことを思って……」
「わたしが泊まるなんて言ってないよ。それなのに……ファミレスの時もそう。理由は納得できるけど、少し強引な気がしたよ」
つい本音が出る。我慢してた疑問がついに不信になって言葉になってしまった。部屋に嫌な空気が流れる。
険悪で恐ろしく乾いた空気を切り裂いたのは、永井くんだった。
「……沼田がストーカーに困ってるって、宇和井から聞いたんだ」
玲の名前が出た所で、わたしの疑問が晴れる。
「永井くん、それっていつ?」
永井くんは携帯を取り出し、玲からの受信メールを見せてくれた。
『ハルカ、最近ストーカーに怯えてて困ってるみたいだから安心させてあげて。ハルカにはこのことは言わないように。わたしのこともね』
「今日の放課後、沼田のメールの後に来て、最初はそのことについての相談で呼ばれたのかと思ってたんだ」
「玲ったら、永井くんにまで……」
「じゃあ沼田も?」
「うん。玲のついた嘘よ」
永井くんはがっくりと項垂れてしまう。緊張していたのだろうか、それとも馬鹿馬鹿しくて疲れたのだろうか。
わたしはメールを見せて証明しようと思ったけど、“伊勢”の二文字を見せるわけにはいかない。
「良かったよ。ストーカーの話は嘘だったんだな……よかった」
永井くんの安堵の表情にわたしは胸が苦しくなった。―――永井くんって、こんな表情見せるんだ……。
今迄執行部の支部長としてみんなをまとめて来た彼の表情は、いつも眉間にしわが寄っていて大変そうだった。
それでも最近は人見知りも無くなって表情も柔らかくなってきていた。時折見せる彼の優しい表情が、わたしは好きだった。
そして、その優しい表情とは違った、心からほっとした時に出る色。
じゃあ……さっきまでのわたしへの気遣いも。
周りの視線や環境に気を配っていたのも。
雨の中、雨宿りした時の険しい表情も。
今なら謝れると思う。嘘をついたままなのは……苦しい。わたしは口を開く。
「……永井くん。謝りたいの」
「ん? なんだ」
「…………わたし、永井くんに嘘ついたの」
何から話そう。どうやって話を組み立てよう。何度考えても、台詞を思い出しても真っ白になってしまう。
「…………伊勢くんを見たの。あの時」
永井くんは表情を変化させること無く、わたしをじっと見ている。
「その時は……伊勢くんが暴れてたと思ってたの。通報には侵入者は一人ってあったから。でも、後で玲に聞いたらそうじゃなくて……」
永井くんは後で柊先生に状況は聞いている。だから、本当は言わなくていいような嘘だった。
でも、永井くんに嘘なんてつきたくない。
「……内心はね、嬉しかったの。伊勢くんは悪くないんだって。玲を守ってくれたんだって。それに、永井くんについた嘘も、これでよかったのかな……って」
「………ごめんなさい」
わたしは深々と頭を下げ続けた。思ったことを言葉にする。想いを言葉に乗せる。素直で、醜いわたしを。
泣きたい気持ちは、死ぬ思いで堪える。そんな物で煽りたくない。台無しにしたくない。
「……ありがとう」
永井くんの声はすぐ側で生まれる。驚きで少し上擦った声を出してしまう。
「宇和井に聞いた。その事も黙っておけ……と」
永井くんは再び携帯を取り出すと、先ほど見せてくれた玲からの受信メールが出て来る。
『あと、ハルカが多分支部長になんか謝ったりすると思うけど、ちゃんと聞いてあげてね! すごく心配だから……お願いね』
カーソルを動かすと、その受信メールは現れた。
「……知ってたの?」
「すまない。知ってて謝るのを黙って聞くなんて卑怯なことをしてしまった。騙すつもりは無かったんだ」
「もう……そんなの本当に卑怯だよ……もう………」
永井くんは妙な所で空気が読めない所があった。今思えば、それはもうわたしも同じなのかなって感じた。
何処か間抜けだったから泣かなくて済んだ……でも悲しい。
永井くんは俯いたままのわたしの両肩に手を添える。少し濡れた大きな手が小さな肩を包み込む。
さっきまでの複雑な想いや感情が吹き飛ぶほどに、わたしは胸の鼓動を抑えるのに必死になる。
顔を上げれない……みるみる赤くなるわたしの顔を見せる勇気は無いし、彼の眼を見つめるなんてことも出来ない。
耐えられなかったわたしは、咄嗟に口が動いていた。
「マッサージ!! そうそう。マッサージしたいの」
「どうした? いきなり……」
「えっと……最近ハマってるの。心配かけちゃったお返しに……ダメかな?」
咄嗟に出た言葉を何とか、きっかけに繋げようとする。表情を見るに、永井くんは変な風に思ってはいないようで助かった。
「わかった。じゃあ横になったほうがいいのか?」
「うん。できれば上着は脱いでくれれば……寒いかな?」
「大丈夫だ、もう暖房が充分効いてきた」
気がつくと身体はファミレスにいた頃のようにあったかい。暖房とココアのおかげだと思う。
永井くんは最後の一口を口に流し込んで、上着を脱いでベッドに横になる。とは言っても、ちゃんとシャツは着ている。
変な意味は無いんだけど……どうしても気になるから一応。そして、わたしもココアを飲み終え永井くんの背中に手を伸ばす。
底に溜まったココアの甘さと濃さが、何時までも口に残ってわたしをあっためてくれる。
そのぬくもりは……もうすぐ触れ合うことになる。
実は他人の、しかも男性の身体をマッサージするのは初めてだった。
もっと言うと触れることもほとんど無い。こんなにずっと触ったことは記憶に無い。
女子同士なら、体育の着替えの時とかで遊び半分で見たり触ったりなんて良くあったけど、今回は違う。
大きくて、堅くて、あったかい永井くんの背中は、素肌に直に触れてなくてもわたしに強く印象付けていた。
「……なんか、変な気分だ」
「気にせずリラックスしてね……今、筋肉を解してるから」
わたしは優しく永井くんの背中の筋肉を指で解す。背骨に負担はかけれないし、変に触るとくすぐったいので慎重に。
どうしても永井くんの背中とわたしの手の大きさを較べてしまう。
「もっと強くても大丈夫だ」
「そうなの? けっこう力入れてるんだけど……」
「痛くないと効いてる気がしないんだが、それは違うのか?」
「背中は痛めたら危険だから、ほんのちょっとでいいのよ。じゃあ少しだけね」
永井くんの希望通りに少し力を入れてみることにする。体重をかけて掌を患部に当ててマッサージすると、少し整体師になった気分になれた。
だけど、自分の脚や指をマッサージしてるのとは勝手が違うし、力を使うからすぐに疲れてしまうのが難点だった。
「……もういいかな。ずっとしてたら疲れちゃって……」
数分後、わたしはくたくたになっていた。頑張って押し続けて疲れてしまった。
自分で言い出した提案なのに恥ずかしさで顔が赤くなってしまう……元々顔は赤くなってはいたけど。
「ああ。ありがとう、おかげですっきりしたよ」
永井くんは起き上がり、わたしの方を向く。お互いがベッドの上で座って話をしているのが……何処か不思議な感じだった。
わたしはあひる座り、永井くんは胡坐を組んでいた。
近くて、下は柔らかくて……どうしても変なことを想ってしまうのは、わたしがヘンだからだろうか。
口腔内を支配するココアの強い甘味は、まだ溶け切ってはいなかった。
―――あれ。何時の間にだろう。
永井くんがわたしを抱いていた。シャツ越しに触れる永井くんの身体は大きい。さっきのマッサージの時よりも……もっと。
両手を広げて背中に回し、わたしは永井くんの両腕に包み込まれる。だけど肝心のわたしは、彫刻のように固まっていた。
「……永井くん?」
わたしは為す統べなく永井くんの抱擁に動けないでいた。抱き寄せられると、お互いの胸が強くぶつかって少し苦しい。
「すまん沼田。勢いで……」
顔を見上げてじっと見つめると、永井くんは少し照れた表情を見せる。
よく玲が前に出て率先してる時に見せる苦笑いにも見えなくは無いけど、少し可愛いと思ってしまう。
何時も悩んだように眉を顰めている永井くんとのギャップでそう感じてしまう。
そして、お互いの体温が手に取るようにわかる。その熱は次第に高まってくる。
あったかくて大きくて優しい永井くんを拒否はしなかった。ぬくもりがただ愛おしくて、いいなぁ……って。
好きって、こんな感じなのかな。素朴な疑問が間抜けな状況なのは解ってるけど、それでも。
永井くんはすっと離れた時、わたしは眼を瞑る。永井くんと意思疎通は出来ているのだろうか、それだけが心配だった。
でもその心配は、彼の手が肩に触れたときに緊張に変わる。緊張で少し引いてしまった唇に、それは触れる。
――――――――――……………。
緊張しすぎて……触れた感触さえ分からぬまま行為が終わってしまう。
眼を開けると、永井くんは再び照れた表情でわたしを見ていた。わたしは答える。
「……もっと……しよ?」
不可解な愛おしさは、想いから行動へとわたしを駆り立てた。無いもの強請りだった昔のワタシを、如何にかして壊したかった。
もう壊れていたはずのものが脳裏に浮かんだのは、自分自身の所為だ。ハッキリと答えていないから。
それに今は永井くんがいる。わたしのことをじっと見つめてくれている。身体を伸ばしたら、すぐ其処にある。
今度はわたしから永井くんにキスをする。恥ずかしさを越えて唇が触れると、微かに漂うココアの香りが優しく迎えてくれた。
その甘美な芳香に身を任せ、わたし達は大胆に絡まった。
少し拒否感のあったディープキスは、前述のアイテムの所為で和らいだ。寧ろ煽ってくれている。
少しでも欲しくなればもっと……もっと相手に求める。意識的じゃなく、本能。
でも経験の無いわたしは、洋画の観真似で舌を絡めようとするが、舌が上手く永井くんの中に入っていかない。
永井くんもしたことが無いのか、わたしの舌をどうしようか躊躇しているようだった。
「……おねぇふぁい……にゃふぁいふん…」
―――御願い永井くん。
キスをしながら、舌を出しながら発すると恐ろしく間抜けな発音で顔が真っ赤になる。
すると意志が伝わったのか、永井くんはわたしの中に舌を入れてきた。
恐る恐る入ってくるそれは、わたしの中で静かに辺りを窺っている。
そうか。
わたしが永井くんに気にかかるのはこういうことだったんだ。
尽くしてあげたい……不器用だけど頑張っている彼に。
癒してあげたい……様々な理由で疲れている彼を。
此処数ヶ月で激変した彼の言動や振る舞い。その理由を、乗り越えてきた坂の距離も傾斜もある程度は知っている。
だから……そんな彼を見捨てることは出来なかった。今まではそれを自分の感情として上手く表現できなかった。
その想いに駆られ続けて……壊れそうだったよね、あの刻のわたし。
お互いのぎこちなさが、少しずつではあったが滑らかに絡み出す様になる。
波に乗れれば、感情に任せて求めるだけで快感は得られた。
わたしは手の置き場に困り、永井くんの脚の上にそっと手を置く。胡坐を組んでいた名残で、掌は内太腿に当たる。
永井くんの部屋で、永井くんのベッドの上で、永井くんとのキス……少しずつ素白で処女の身体を犯していく。
何もかもが初めてで、無駄に誇張した緊張が興奮を助長する。意識は無くとも、舌が絡まるだけで唾液は溢れていく。
零さないようにしても、互いの口の中に溜めたまま続けるのは辛い。飲み込むしかなかった。
終始唇の方に神経を尖らせていると、不意打ちを喰らってしまうハメになる。
求めている相手に触れられると、想像したよりもずっと感度は上がっている。それが胸や脚だったら……尚更に。
永井くんの掌が胸に当たっている。やっぱり触りたいのかな……男だもんね。
わたしは抵抗しない。けれど未体験と緊張でビクッと反応してしまう。
未だ当たっただけで強引さは無いから不快感は無い。ただ、するならもっと……なんて言えないけど、心の片隅で思ったりする。
本当は、そんなことを考えている余裕は無かった。疲れと癒しでわたしの脳は出来上がっていた。
永井くんも同類になったみたいで、掌の圧が段々と強くながらわたしの胸を咀嚼し出す。
制服の生地越しに感じる永井くんのあったかい掌は心地良い。彼自身も気持ちよく感じてくれてたら、わたしも嬉しい。
―――じゃあ下着が邪魔になってるのかな。
何時ものように背中に手を回し、ホックを外すと下着は下にストンと落ちる。
制服だけがわたしの肌を護る薄い巻くと成り、堅い防護は掃い去った。
永井くんの掌の感触がより直に伝わり、形を変えて掌に馴染む胸を肌身に感じる。
「……気持ちいいの?」
「ああ……それに温かくて柔らかい」
「よかった…良く分からないから」
勿論わたしも永井くんと同じ気持ちだった。そして何処かで母性本能が疼いている。
胸を触られるとそれは次第に強くなってくる。もっと……癒してあげたい。
数々の表情を見せてきた永井くんを知ってるからこそ、想いが増大する。
そして想いは行為に変わり、行為で快感が生まれていく。わたしも永井くんも。
「んぅ……んんっ………」
突起に触れると反応してしまう。制服で擦れて心地良さが昂進されていくと声を漏らさずにはいられない。
最初はくすぐったかっただけの咀嚼は、繰り返す度に胸の高鳴りに呼応して熱を吐き出す。
その熱は顔に波及し、喉を焦がし、擦れた声を零す。その声を必死で我慢しようと唇を噛むが、永井くんの唇がそれを赦さない。
瞼が少しずつ下がり始め、視界に移る永井くんの表情がゆっくり途絶えていく。
永井くんから見たわたしは、如何移ってるのだろう。目尻の下がった両眼がゆっくりと閉じていくのを……。
動作は数分経っても変わってはいない。ずっとこのままでいい。
わたしは既に虜になっていた。それだけ病んでいたのかもしれない。
安心と快感を何時までも共有していたかった。
既に永井くんにされるがままになったわたしは、意識まで彼に委ねてしまいそうな位までになっていた。
「……沼田?」
永井くんの声は、離れた後すぐに放たれる。無抵抗に受け続けていたわたしを心配してくれたみたいだった。
「……嫌…だったか?」
「そっ……そんなことないよ。ぼ〜っとしちゃって……」
「まあ、俺も少し疲れてて……なんか変な感じだった。沼田とキスしてた時はずっと、眠たいのとは違うが……意識が薄れていた」
永井くんもわたしに似た感想を抱いていた。それにより親近感がより一層増す。
無意識に互いを求めてるから、そうなるのだろうか。だけど少なくとも、そんな言葉を聴いてわたしは嬉しくなっている。
もっと……その感覚を共有したい。永井くんと。
「沼田は平気か? 疲れてるようにも見えたから」
「ううん……もっと…してもいいよ」
上目遣いで彼を見るわたしは、それ以上のモノを既に求めていた。理屈じゃなく、そうしないと駄目な気がするから。
誰かに言われた行為じゃない。わたしが望む結末。
「わかった……だが、怖くないのか?」
「……永井くんは?」
「俺なんて沼田に比べたら……この先損をするのは女性の方だ」
「そんな言い方しないで。わたしは嬉しいから……きっと終わった後にも、そう想ってる筈よ」
言い切れる自信があった。気を使ってくれるのは嬉しいけど、もうそれに依存するのは嫌。
純粋に愛し合いたい。これ以上気を使われると、中途半端に終わりそうだから。それだけは嫌。
わたしは永井くんのエスコートで、ゆっくりとベッドの上に仰向けになる。簡素な天井を一瞬眺めた後、わたしは眼を瞑る。
勿論緊張している。言葉には出せないくらいの膨大な不透明な空気が、胸を内側から押し返す感覚。
その巨大な高揚体は、心臓の鼓動に合わせてわたしを攻める。未だ始まってもいないこれからの情事を外野から煽っている。
その圧力に押され、このまま消えてしまいたい……わたしの意識を掬うのは、永井くんの大きな手だった。
ぐっと瞑っていた眼を少し開くと、暗闇で何も見えない。永井くんは電気を消してくれていたみたい。
突然の暗闇の空間の中で瞳を晒すと、視力は極端に低下する。
わたしの眼の色素が必死に錯乱する光を吸収し始め……漸くぼんやり映る永井くんを捕らえることが出来た。
目の前に映る虚ろな影は何も語りはしないけど、石膏の様に冷たく無機質な塊ではなく……単なる有機物の塊じゃない。
だから、わたしを掬うことが出来る。掬って、心も身体も救ってくれる。
わたしの両腕は小さく万歳をした体勢になっていた。永井くんの指がその上肢の先に生える五本の枝に絡まる。
力を入れたら簡単に折れそうなくらい細い枝は、大きな同属と幹に絡み取られて護られる。
もう視力は回復したが、わたしは再び眼を瞑っている。愛おしさと温かさが涙腺を攻めて、必死で我慢していた。
そこに永井くんの唇が触れ……呼吸すら赦されない身体になる。
「……ふう…ぅん……うう……」
永井くんは震えてる唇と指先は間違い無く感じ取っていて、わたしも永井くんの鼓動が伝わってくる。
わたしの胸を押し返しながら強引に、わたしの鼓動に同調したがっているように感じる。
勿論わたしはそれに応え、彼の鼓動をもう少し速めてあげる。
具体的には何もしてはいないけど……永井くんはキスだけでも応じてくれる。
繋がれていたわたしの左手が離れ、わたしのお尻を彷徨っている。
その大きな迷子は母親を見つけ、強く抱擁する。形が少し歪むのは、その子が元気な証拠と母親は喜ぶ。
安心感と彼の手という事実が、その抱擁にほのかな快感を与えてくれる。
わたしは安心のほうが比率は高くて、きっと永井くんは快感の比率が高い。
下着の上からもそのぬくもりははっきりと解る。わたしは解放された右手を永井くんの腰に回す。
舌は絡まったまま。喘ぎ声は鼓動でもきっと伝わってる。
ほんの数十秒で永井くんの手が、お尻から左脚へ向かっていた。少し怯えたような、躊躇っているような歩き方が何処か可愛い。
太腿をゆっくり這っていく手には、わたしにも少し躊躇いがあった。
普段マッサージしている脚に、男性の手が触れる事なんて想像してなかったから。
「……細くて綺麗だ」
唇が離れ、永井くんが話す。
「ありがとう……」
素直に嬉しい。暗闇で見えないのが幸いして、はっきりとわたしの照れた顔を見せれなくなる。
それに……すごくきもちいい。永井くんの手で内股を優しく摩られると、胸を触られた時よりも、キスの時よりも快感だった。
「……あぁっ………あぅっ……」
浮遊するように、身体が軽くなる。口の蓋が取れた今、喘ぎ声がどうしても漏れてしまう。
焦らされている感覚じゃなく、もっと触って欲しいという想いが生まれる。褒めてくれたから……わたしのコンプレックス。
永井くんの手はわたしの意志を感じ取ったのか、今度は脹脛に向かって静かに歩く。
「……永井く…ン……マッサージするように……触って…」
少し変な要求だったかもしれない。だけど、永井くんはわたしの要求に応えてくれた。
ソックスに包まれた脹脛部分に手が到着すると、胸を揉んだようにゆっくりと咀嚼を始める。
わたしのような非力でマニュアル通りのマッサージよりも、何倍も快感が溢れていく。
時折上下に摩り、生地と指紋が擦れて背筋にソワソワした快感が侵食してくる。
「ふぅぁあ……んンっ…ふあぁ……」
少しずつ永井くんの顔が、窓に差し込む微かな光の助けもあって確認できるようになってきた。
それでも、彼は胸に顔を埋め、其処の先端を咥えていた。
何時の間にか右手も解放されていて、永井くんは自由になった左手でわたしの制服を捲くっていた。
当然、下着を外した制服の下は素肌が露わになり、永井くんの立場なら薄暗闇でもその形が確認できるのかも知れない。
先程攻められた箇所なだけに、胸の性感帯は未だ興奮を抑え切ってはいない。
休憩する余裕もインターバルも無い所に、永井くんのキス……。わたしは抱きしめることしか出来なくなってしまっていた。
胸はまだしも、脚でこんなに感じるのは変なのかな……でも何処を触られても、揉まれても、此処が一番気持ちいい。
勿論其処だけじゃない。脹脛の次は足の裏。永井くんの親指が肌に喰い込んで、性感帯を強引に突かれてわたしの身体が歪んで撓る。
その行為をずっと……ずっと繰り返していた。永井くんは少し苦しい体勢だったみたいだけど、休む事無くわたしに愛撫し続けてくれた。
丁度背筋に奔っていた快感が、腰を飛び越えて下半身に集まり出している所だった。
何かが迫っている。その自覚があった。事実、両脚を閉じないと我慢出来なくなっている。
「……大丈夫か? 痛かったか?」
摩ってくれていた永井くんの手を内股で挟んでしまい、永井くんはわたしに尋ねる。
「……ちが……う…の………」
上手く喋れないわたしは擦れた小声で必死に想いを永井くんに伝えようと努力すると、永井くんは少し躊躇していたが……漸く理解してくれる。
両脚の隅々をマッサージし尽した右手が、その箇所へと内股を沿って向かっていくのを、わたしはじっと我慢していた。
情け無い喘ぎ声をこれ以上漏らさない様、必死で喰い縛って。
永井くんは直ぐに異変に気づき、わたしもそれは瞬時に理解出来た。箇所に触れる指の感触が異質だった。
唯でさえ薄い生地が、余剰の雨に晒された為に単なる粘膜になっていた。
力を入れなくとも指が埋まり、貼り付いた生地が栗に擦り付く。
「ひゃっ……ぁあ……」
顎の筋肉が容易に弛んでいた。そして、一度弛むと修復出来ずにいる。不器用に再び彷徨う迷子が、エントランスを往ったり来たりしている。
無駄に入り口で擦れる粘膜が快感を煽り、煽った分だけ呼応して湿度が上がり、空気が籠って行く。
永井くんは既に服を脱いでいて、わたしはゆっくりと下着が脱がされ、制服も一緒に総て脱がされる。
それでも肌寒さは全く無く、寧ろ熱くて堪らない。それなのに脳は、睡魔に似た快感に襲われたような酩酊感に晒されている。
ジワリジワリと毒素を吐きながら……わたしに迫る誘惑の影に対して、わたしは永井くんに身を任せるしかない。
既に全身を包む永井くんの匂いや感触にわたしは染まっていた。
わたしは心の奥底で汚らわしく思っていた。
その行為をすることは考えてもいなかった。
言葉を交わして。
笑顔で返して。
手を繋いで。
……そんな恋愛を求めていた。
安易に一線を越えるのは、軽くて汚いイメージがどうしてもあった。
もっとお互いのことを知って、認め合って、支え合った上での行為だとわたしは理解していた。
わたしは永井くんずっと見ていた。
疑惑の目を向けていた直線の視線。
それは一転して配慮の意味合いに変わり、段々と複雑な曲線になって収束していた。
好意、心配、信頼、味方、組織、補佐……。
彼を目掛けて放つそれらの曲線が捕えたのは、わたし自身だった。
コンプレックスやストレスが軌道を改竄して、わたしを絡み獲った。
救ってくれたのは、想いを向けていた対象の彼だった。
慎重に、少し鈍臭くさくわたしに纏わりつく概念を取り去ってくれた。
もう少し遅かったら。
わたしの首を締め付けていたかも知れないくらい……追い込まれていた。
尽くしたいと想っていた彼から尽くされるのは、凄く幸せだけど少し物足りない。
自分が彼を癒したい、護りたい。
母性に似た感情は此処で生まれていた。
一線は今なら越えられる。
今じゃないと越えられない。
目先の快感じゃない。
理屈じゃない。
わたしは漸く恋を知り、そして愛を求める。
永井くんが中に入ってくる。入り口がとても窮屈で、彼は入るのに悪戦苦闘していた。
わたしは勇気を振り絞って力を緩める。緊張を緩めるのには、かなりの勇気が必要だった。
痛いのは嫌だけど、永井くんを拒む方がもっと嫌だったから……永井くんはわたしの気持ちを読み取ってくれて、心配の言葉を掛けてくれる。
わたしは笑顔で返す。月明かりで暗闇は既に晴れ、お互いの表情を確認できる。
わたしが笑うと、永井くんも微笑む―――そう。そんな二人でいたいの。わたしはそんな永井くんをこれからも観ていたいの。
ゆっくりと入ってくるのを、わたしはじっと噛み締めて感じ取っていた。
互いの敏感な肌を少し強引に擦りながらの抱擁は、同時に嬉しさと快感に満ちる。
それは、単なる行為では無くなっていた。もう一つの抱擁だった。
ただ少し痛くて、簡単じゃなくて、中々言い出せないような工程だから。貴方とだけなら……誰よりも愛してる貴方となら。
絡み合う指と指は決して離れないでいた。中へと進んでいくのを、互いに感じ取り共有していた。
手に籠る力と汗の量でそれは解る。どんなに非力なわたしの握力でも、永井くんは優しく包んで抑えてくれる。
でも、予想以上に深くまで進んでいき、わたしは急に恐怖に駆られる。その恐怖を必死で手を握って抑える。
「……ふぅんっ……はぅ……あアっ…」
「……全部入ったよ。大丈夫か?」
永井くんの手を振り切り、わたしは抱きつく。急な展開で、永井くんも戸惑っていた。
「沼田? 本当に……」
「このまま……ずっと抱き合っていたいよ……」
わたしの声は震えていた。泣いていた。一つになった嬉しさと達成感で、わたしは我慢出来なくなってしまっていた。
「……ゴメンね……もう……永井くんの前では泣かないって……決めてたのに…」
「……いいんだ。沼田はそれでいい。弱い所は見せていいんだ」
永井くんは、わたしは泣き止むまで声をかけ続けてくれた。優しく諭してくれた。
―――好きな人とキスして、手を繋いで、抱き合って……愛し合うのって、こんなに幸せなんだね。
わたしは治まるまでずっと泣き声で永井くんの言葉に頷いていた。
漸く心が落ち着いたわたしは、永井くんに伝える。
「もう大丈夫……御願い」
永井くんはゆっくりと身体を起こし、腰を静かに動かし始める。
何分も抱き合った互いの性器の表皮は、粘膜で貼り付いていて動くだけで快感が生まれる。
「ひゃあぅ!……んうっ……!!……んンっ!……」
思い掛けない刺激が突然攻め立て、わたしは思わず声をあげてしまう。永井くんはゆっくりと、それでいて確実にわたしの奥に入ってくる。
規則正しく軋むベッドの音を背に、わたし達は交わり融けて逝く。
そして……融け出した永井くんの体液がわたしの中までも染めて逝ったのは……ほんの直ぐだった。
その後は何度もキスをした。焼け堕ちそうなくらいの熱を二人で確かめ合い、交換していた。
眠りに就くまで、わたしは永井くんの腕枕に身を任せ、些細な日常会話をしていた。
執行部での些細な失敗でも笑えたことはあっただろうか。
過ちを笑い話として捉える事は今まで無かったわたしにとって、その総てが新鮮で開放的だった。
どの会話も執行部の話題で、何処かにお互いの存在意義で装飾したストーリーを秘めている。
だから笑顔で返す反面、何処かに違った意思疎通している感覚に陥る。
―――わたしが最後望むのは、その輪に入っていない彼を仲間に入れたい。
此処で眠って、眼が覚めて、休日が過ぎたら月曜日。彼が学校に帰ってくる。
本当に喜ぶのは……それからだよね………玲。
必死で塗り潰していた人物画の無意味な塗装が霞んできた処で………わたしはついに睡魔に侵される。
でも数時間で再び掬ってくれる人がいる。だから痛みはもう居ない。
居るとしたら、それは玲との約束が成功するかどうかの不安。
それさえも、わたしは振り払ってみせる―――必ず。
以上でハルカ編はおしまいです。
保管庫の管理人様に分割で保存して戴いたので、今回も再度分割投下を採用しました。
次回がエピローグになります。良ければ最後まで御付き合い下さい。ではでは。
乙!
一体なんなんだ君達は。何故そんな文章が書ける。すごすぎる!
485 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 16:10:41 ID:UuLzUpT7
age
保守
487 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 23:17:32 ID:UuLzUpT7
保守
やっぱりあんたは
ネ申だ
489 :
妖:2007/12/27(木) 21:46:51 ID:269aPsTm
保守
490 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/28(金) 13:29:14 ID:uTKGJMoa
保守
491 :
【】:2008/01/01(火) 02:40:25 ID:K4m7PNiD
ほしゅ
さぁ新年一発目の作品はどんな組み合わせだ?
愛花×ルーシー×観月
九澄×玲×ハルカ
495 :
◆En/elxukv2 :2008/01/05(土) 17:25:08 ID:Wst5phiu
こんばんは。“二年執行部の行方”エピローグを投下します。
496 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:26:07 ID:Wst5phiu
Day 6 10/22 Monday
俺は執行部の部室で沼田の書類整理を手伝っていた。今日は未だトラブルの報告は無い。
毎日がそうであれば……そう考えるのは無意味だが、どうしても願ってしまうのは何時もの事だ。
だが、今は過去とは違う。単なる問題処理の役職という言葉では済ませるわけにはいかない。
プライドがある。信念がある。そして、信頼出来る仲間が居る。
それだけでいい、そう教えてくれた人がいる。その人を大切にしたいと強く想っている自分がいる。
今は無理でも…何時かは平穏な学校生活を迎えることが出来る、そう願い精進するだけしか出来ないが、その行為や意志に嘘偽りは無い。
「永井くん、ありがとう。今日は早めに終われそうね」
「ああ。週末明けだったが、すんなり終われそうだ」
騒ぎの無い時間が多ければ多い程、学校の規律は守られている。
そう思うと安心できるし、沼田もそう思ってくれているみたいだった。
彼女はもう、あの時のような泣き顔は見せてはいない。寧ろ笑顔が増え、交わす会話も増えた。
ほんの数日での大きな変化は、目に見えて分かる。それが俺の言葉で強くなってくれたなら、凄く嬉しい。
そしてその事に安心感を持っている気がする。彼女の笑顔は、俺を癒してくれている……執行部全体を包んでいる。
一歩距離を置いて客観的に観ると、その空気は容易に感じ取ることが出来た。
だから……もう壊させはしない。
今まで多くの仲間に助けられて此処まで来た。支部長としてやるべきことはやって来たつもりだ。
ロッキーに頼っていた昔のような威厳を自分が出すのは大変だった。威厳というよりも脅迫に近いかもしれない。
それでも、上に立つ者としての立ち回りや統率が組織には最重要だった。
他の部員には、そんなことは愚痴ったりは出来ない。態度と行動で示す。そうあるべきだと思っていた。
そして、あれから半年。人見知りは無くなり、特に気を止めることなく気兼ね無く話せるようになった。
相変わらず滑塚さんにはダメ出しを食らうが、「お前は良い意味で変わったよ」と言ってくれた。
他人から指摘されて初めて気づいた……変化や成長は意外と気づかないものだ。
表面上での組織としての理解と秩序ばかりで、俺は他人を何も理解してはいなかった。沼田のことも、伊勢のことも。
497 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:27:58 ID:Wst5phiu
俺達は全員、強い志を持って執行部に入部した。ただ、当時は伊勢だけが突出してその意志を行動に示していた。
未だ入部して間もない俺は、生徒に権利を振るう方法も、態度も、その行為を際限無く執行する精神力も持ち合わせては居なかった。
それが当時二年生の違反した先輩達に行使することにさえ未だ実感さえ、躊躇いさえ少なくは感じていた。
だから誰よりも、先輩達よりも前線に出て執行する伊勢の後ろ姿を俺は必死で追っていた。
伊勢と二人で公務をやり遂げる毎日が続き、漸く俺達の世代の活動も軌道に乗り出していく刻……部長からある議題が持ち上がった。
俺は伊勢に配慮し、伊勢の代理として休部届けを提出した。
余計な御世話だったのは分かっている。それがきっかけで事態を悪化させたことも分かっている。
軽率だった。だが俺は制裁が下る前に、伊勢自身に気づいて欲しかった。そう……伝えるだけで良かった。
でも今は違う。強く何かを護りたいと思ったことは初めてだった。だから、今なら……やり直す事が出来る。
今日。もう一度謝罪しよう。
もう伊勢には必要ない事かもしれないが、居場所を奪ったのは俺だ。
俺は話せることは全て話したが、伊勢は未だちゃんと腹を割ってくれてはいない。
もし…未だその意志が少しでもあるなら……。
「はい。魔法執行部」
沼田の声が部室に響く。問題発生か、平穏は何時も急に崩される。
だがその静寂を再び取り戻すのが俺達の仕事だ。
「……トラブルか」
「うん。美術室側の廊下で魔法を使用しているそうよ」
俺はすぐさま部室を後にしようとする。その当たり前の行動が、今日は何故か印象に残っている。
緊張感が足りない所為だろうか。だとしたらマズイ、こういう時こそ気を引き締めないと。
「もしかしたら玲が近くに居るかもしれないから、合流できたら一緒に向かってね」
「ああ。わかった」
「支部長! こっちこっち!」
わたしは支部長と合流し現場に向かう。やっと都合良く二人になれた。
「ねえねえ、ハルカとはどこまでイッたの?」
「なっ!!……何言ってるんだ……」
「フフっ、分かりやすいわね〜。もうハルカから聞いてるわよ?」
「……あれは……お前の嘘の所為だ」
「いいアシストだったでしょ? ニブイからね、支部長って」
「いや、俺はそんな不純な……」
「不純なことしたんだ〜……」
「沼田から聞いたんじゃないのか?」
「ほらまた嘘にひっかかってる! 支部長ったら、かわいい♪」
支部長はわたしを無視して前を行く。怒ると無口になるみたい……ハルカに言っておかないとね。
心配していたハルカの精神は安定していて良かった。支部長にたくさん気を使ってもらったみたい。
支部長にしてはやるじゃない。
少し似た物同士の二人だから、上手く相手の気持ちを引き出してあげているか心配だったけど…もう大丈夫みたいで良かったわ。
498 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:29:44 ID:Wst5phiu
さて……あいつはなにやってんのよ。
ちゃんと来なさいって書いたのに……どうせ無視したんでしょうけど、なんかむかつく。
別に復帰してなんて無理は言わないのに、顔出すくらいいいじゃない。誰もアンタのこと手嫌いなんてして無いわよ。
でも、良かれと思ってやってきたことだけど、そんな簡単なものじゃなかったわね。でも支部長も待っていると思う。
一人欠けたままでこのままこの校舎を去りたくないってみんなが思っている。
わたしの想いが多分一番大きいのもあるけどさ……なにしてんのよ。早く来て……。
「さあ、もうすぐ現場だ」
支部長の声が聞こえ、わたしは支部長に追いつき現場に到着する。現場には生徒が二人。
よくある攻撃魔法の試射を行っている最中だった。アクシデントなら仕方ないけど、遊びで魔法を使う連中には容赦はしない。
「は〜い、執行部の支部長と副支部長のお出ましよ! 観念なさい!」
わたしを助けてくれた伊勢の姿がすぐ側にあったあの頃。
私より先に現場に駆けつけて、美味しい所を全部持っていく伊勢が居たあの頃。
……慣れることが一番苦痛だった。伊勢のいない執行部が当たり前になって、その人物が皆の中から消えていくのをじっと見守るしか出来なかった事。わたしはそれを悔いている。
そして、帰ってきて欲しいと心から願っている。
本人の前じゃそんな事は言えないけど……「あんたの居た頃をふと思い出すと、相当精神的に来るのよ?」って、あいつに言ってやりたい。
「あんたの所為で苦しんでいる人がいるのよ!」って、あいつに問い詰めたい。
事件の所為でそれは出来なかったし、あんな焦燥としたあいつにそんなこと言えなかった。
あいつなりの悩みや痛みがあるし、それは触れて理解した。傷口に触れて。体温を感じ取って。言葉を何度も交わして。
499 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:33:58 ID:Wst5phiu
―――……もっとわたし達を信じて。貴方が思っているほど、私たち執行部は脆くないわ。
わたしは、目の前に移る伊勢の影にそう伝えながら生徒を捕獲する。わたしは何時までも待っている。もう直接伝えはしない。
あいつ自身の脚で帰ってくることに意味があるから……きっとそれまではずっと辛いのかな…。
それでも、あいつや支部長やハルカに比べたら、わたしなんて大した事ないわ。
だから……わたしは何時までも待っている。ふっと現れて……そしたらキツく抱きついてやるんだから。
相変わらず校内は賑やかだった。久しぶりの此処の空気は悪くない。深呼吸すると心が休まる……それが嬉しい。
俺は修練棟の側にいた。此処には結構色々な思い出がある。一年の時の魔法試験は此処で一日を過ごした。
俺の記憶の中には、毎日魔法の上達しか興味の無かった俺と永井が常に主役だった。
魔法試験は、シルバープレートを競っていた俺達なら難なく解けるレベルだった。だが、俺は永井には成績では上に行こうと必死だった。
結局永井がそれからずっと学年トップだったけどな。何時も俺は二番だった。今だったら……当時よりももっと悔しいだろうな。
だがその分、以前よりも色々な物が見えてきた。自分のこと、執行部のこと、宇和井のこと……宇和井については、まあいい。
執行部に関しては大きい。これだけ異常な学校だ、それなりの組織が必要なのも人材の選出の厳しさも今なら納得できる。
滑塚さんに入部当初から扱かれたのも懐かしいな、執行部の振る舞いとか態度はあの人が一番風格あった。執行部の鑑のような人だ。
俺はすぐに慣れたが、永井は何処か加減した執行でいつも厳しく対応しろと注意されていた。
あの人は厳しいが、俺と永井にはいつも良くしてくれた。感謝している。
ただ滑塚さんはどう思っているのだろうか……俺が執行部を休部したこと。
二学期の始業式の日に久しぶりに会った時はネタで喋っていたが、まあもう校舎も組織も別だからな。
それに……もう少しで三年生。今更戻っても仕方無い。これは、執行部を思ってやっていることだ。
500 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:36:02 ID:Wst5phiu
「ここは立ち入り禁止区域よ」
後ろで声がした。振り返ると、一人の執行部員が立っていた。その姿に俺は見覚えがある。
「沼田か……」
「一応、この前に事件のあった場所だから……気になって」
沼田と話したことは殆ど無い。だが宇和井と仲が良いのは知っている。
そして……この前の事件の時にいたことも憶えている。
偶然だった。伊勢くんがいるとは思ってもいなかった。
わたしはふと試練棟のことを思い出し、心配になって脚を運んだ。
突然の出会いだけど、以前よりは気持ちの整理も一区切り出来ているから、変に緊張せずに居られそう。
それに、実際の伊勢くんを見ると雰囲気は大分柔らかくなっている気がする。言葉では上手く言えないけど……それでも表情や態度で感じ取れる。
「玲に逢ってくれたみたいで…良かった」
「ああ。ウザかったけどな」
言葉とは裏腹の表情を見る限りは、迷惑はしてない様で一先ず安心する。
「とりあえず施錠が甘いんじゃないか? もっと強固な魔法で鍵をかけないと、俺なら難なく壊せるぞ」
「うん。それを見に来たの……ちょっと見せて」
修練棟の入り口は磁場漏れの事故以来閉鎖されていたけど、伊勢くんの指摘通り、施錠魔法は緩んでいた。
先生の施錠魔法は決して低クラスの物では無かったけど、磁場が未だ不安定な為に解除されている。
わたしは応急処置で施錠魔法唱え、ロックを上書きしておく。
後で先生に報告はしておくけど、未だ磁場は完全じゃないようで定期的な確認が必要な様だった。
「そんな魔法も持ってんのか」
伊勢くんはわたしの魔法を感慨深げに見ていた。少し恥ずかしくて手元が狂いそうになったのは……内緒。
「誰もこんな魔法、率先して覚えようなんて思わないからね」
「そんなこと言ってねえけど」
「いいの。わたしが覚えたくてインストールしたから」
施錠が終わり、わたしはプレートをポケットに入れる。伊勢くんは良く分からない、といった表情だった。
「座りましょうよ。色々……お話とかしたいから」
わたしは伊勢くんと修練棟の入り口にある階段に座る。
こんな風景を……わたしは過去に憧れていた。でも今はもう好きな人が居る。他の執行部員の皆とは違った感情がある。
それでも、そんな過去の自分を今なら取り戻せると思う。勿論、今でも彼を尊敬している。
玲を助けてくれたことは、今でも感謝しているから。
501 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:39:10 ID:Wst5phiu
「何でわざわざこんな実用性の無い魔法を、って思うかな……やっぱり」
「何をインストールしても使用者の勝手だが、まあ確かにそう思う」
「伊勢くんはいつも鎖だよね……やっぱり愛着があるから?」
「別に……使いやすいから使ってる」
伊勢くんはウォレットチェーンを触っていた。ゴツゴツした装飾がカッコイイ。
触ると傷つきそうで……初めて見たときはその装飾がナイフのように鋭利で怖かった。
でも、率先して活動する彼にわたしは素直に驚いていた。自分の彼への価値観が大きく変化したきっかけだった。
わたしの使った施錠魔法も、その頃には既にインストールしていた。
「ふつう、魔法って自分の趣向にあった物をインストールするでしょ? でも、わたしには無かったの」
「一つくらいはあるだろ? 使いたいっていう魔法は無かったのか?」
「……自分がどうしたいかなんて考えてなくて。でも執行部を目指す為に、執行部に必要な魔法は憶えたの」
―――記憶を辿れば、当時図書室で一生懸命勉強している姿が思い出される。
其処には……若かりし頃の自分と、既にエリートだった永井くんと伊勢くんがいた。
二人の実力はクラスマッチで既に立証済みだった。執行部に入ることになったら……この二人と一緒の部になるんだなぁ、って当時は思っていた。
「執行部の入部対策に色々な魔法をインストールしたし、入ってからも覚えていったの。出来るだけ、他の部員には無い魔法を中心にね」
「……なんつうか、それでいいのか?」
「いいの。わたしの仕事だから」
「自分の実力も、役割も分かっているつもりよ。腐ってやってきたわけじゃないの」
「…………」
「わたしにはわたしの役割があるから。永井くんみたいな部長でも、玲みたいな副部長でもない……事務としてのわたしの役割」
わたしは伊勢くんに笑って見せた。伊勢くんは少し複雑な表情だったから。
自分自身でも、自分を犠牲にしている感覚はあった。それでも、執行部を思ってやっていることと思えば気にはならなかった。
多分、伊勢くんが一番嫌いなタイプの性格かもしれない。でも、少しでも伊勢くんにはわたし達の気持ちや考えを分かってほしくて……。
玲だったらどう伝えているのかな。わたしの言葉で、彼の想いに近づけることができるだろうか。
わたしは少しでも伊勢くんの役に立ちたい。もう玲との約束という口実じゃなく、自分がそうしたいと強く想っている。
お節介なのかもしれない。どうしても無理なら、それでもいい。
それでも。彼がもし何かしらの悩みや翳を胸に秘めているなら、その痛みを取ってあげたい。
これ以上……辛い表情を見せる人を…伊勢くんを観たくないから……。
沼田の台詞にはどうしても納得出来なかった。自分自身を殺しているように感じるのは……俺だからか?
幾ら執行部の為だって言っても、自己犠牲が過ぎる。今はどうか分からないが、そんなので……いいのか?
「わたしの魔法で喜んでくれる人が居る。必要としている人が居る。だから苦じゃないの、わたしも強さをみんなに分けて貰っているから……変だと思うかな」
「ああ。沼田は他人が第一義になってるのが、良く分からないんだ」
「今は伊勢くんと同じだよ、そんなの間違ってるってわたしも思う。だから、極力自分自身の力で頑張って……どうしても無理な時は、みんなで力を合わせて解決していく。それが正しいんだなって、漸く気づいたの」
そんな事は分かっている。沼田が当たり前の事をこの場で言うのは……言葉通り、何か心境の変化があったのだろう。
彼女の表情と瞳の輝きは、俺に直接訴えかけている。彼女の言葉は、一つひとつが俺に問いかけている。
宇和井とは違ったぬくもりと安心感がある。俺自身がその続きを求め、沼田にかける言葉を頭の中で必死に推敲する。
502 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:40:58 ID:Wst5phiu
「……伊勢くんに戻ってきて欲しいの」
俺は驚く。自分の台詞と同時に考えていた、沼田の真意には当たるが……彼女の口から出ると、今の俺がどうしても反応してしまう台詞だった。
「ちょっと待てって。俺はもうあそこには帰らねえよ」
「……伊勢くんには伊勢くんの役割がちゃんとあるよ」
「なんだよ、役割って」
「わたしの知っている伊勢くんは……誰よりも率先して現場に向かって、誰よりも真面目に執行部で頑張っていたよ」
沼田のこんな真剣な表情を見るのは初めてだった。そして、沼田がこんな風に考えていたなんて思ってもいなかった。
静かで真面目で……漫画やTVドラマに出て来る通りの優等生のように思っていた沼田は、誰よりも執行部を想っていてくれていた。
俺がふと感じた組織への未練なんて比較にならないくらいに大きく、重い。当時も今も、生半可な気持ちではなかったが……甘かった。
「わたしが憧れたのは……そんな伊勢くんだったの」
「俺なんかが憧れかよ。沼田のほうが理想の執行部員じゃねえか」
「伊勢くんは、わたしに無いもの、たくさん持っているから……」
「持っても自慢できるものなんて何一つ無いけどな」
「…そうじゃなくて…………」
宇和井に接して散々知った事だ。何処か意固地になっている所があって、どうしても決断は下せなかった。
突き放して、一人でいるのが当たり前になったら……空虚だけが残った。
後悔や自責の前に帰属意識が芽生えるかと思ってはいたが、そうでもなかった。
その所為で心に残る有耶無耶は未だ残っている。そして吐き出す場所を何時も求めていた。
制御できなかったのは、俺自身だ。組織じゃない。永井の所為じゃない。
沼田には、それが伝えられそうだ。そんな気がする。そうしたい自分がいる。
「……来いよ」
俺は沼田に声をかけ、校舎の方へ歩く。其の場所は、此処のすぐ側だった。
其の場所に近づく一歩一歩で、記憶が悲鳴を上げて蘇る。
鳴き声は次第に大きくなり、相乗してゆっくりと胸の鼓動が速くなっていく。
鳴き声が叫び声になったときには、既に現場に到着していた。其の声の主は……俺だ。
「ここって……」
俺が人生で一番、狂ったように暴れた場所だ。もう二度と来ないだろうと思っていた場所だったが、今日はそうでもなかった。
一人で着ても嫌な思い出しか出てこないだろうが、今は沼田と二人だ。
「もう結構前になるか。嫌な記憶しか無いけどな」
「……まだ永井くんのこと怒ってる?」
「もう、そういうのじゃねえよ」
「それなら……」
「その事と俺の休部とは関係無い。それ以前に俺のさじ加減でコロコロ入退出来る組織じゃねえだろ」
「……そういう所は本当に真面目なのね」
沼田は嬉しそうな、そして寂しそうな表情を交互に見せた。俺はそんな表情が一番苦手だ。
宇和井のように何時も突っかかってくる奴は言い返すが、沼田のようなタイプは調子が狂う。
どう返せばいいのか分からなくなる。思ったことをただ告げることが出来ないでいるのは少し辛い。
宇和井といた時もそんなことを言っていたような気がするが……あいつとは違う。唯今は……そんな会話が新鮮で嬉しい。
503 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:44:34 ID:Wst5phiu
「伊勢くん」
「……何だ」
「遅くなったけど、玲を助けてくれてありがとう」
沼田は深く頭を下げる。其処までされると少し照れてしまう。
「……俺は気に食わない奴等を殴っただけだ」
「聞いたよ、伊勢くんの友達から。指示をした後、修練棟に真っ先に走っていったって。執行部員が一人って言ったら目の色変えていたって」
余計な事を言いやがって。あの野郎。
「……ありがとう。玲は伊勢くんに未だ言って無いかもしれないけど、本当に感謝してるよ。わたしなんて……」
「座り込んでたよな、入り口で」
「えっ!? わたしが居たこと…知ってたんだ……」
「沼田以外全員教員だったからな。まあ俺より後に来てよかったな」
―――…………?
その言葉に沼田は少し反応する。俯いて身体が小刻みに震えているように見える。俺の言葉に何処か不備があったのか。
「おい……大丈夫か?」
「……うん。少し思い出して…ごめんなさい」
思い出す……そうか。此処に着いた頃には既に沼田の様子は変化していた。強くて温かい眼差しは、怯えた弱々しいそれに弱体化していった。
俺は沼田に近づくが、少しでも強い言葉を今かけたら、寒気を助長させるだけじゃないだろうか。
「……ね? ほら、大丈夫!」
沼田はふっと笑顔を俺に見せる。身体で大きく表現する彼女の仕草は、少し滑稽で俺は不謹慎にも笑いそうになってしまう。
「なんだよそれ……宇和井の真似か?」
「うん! 『疲れたり、元気が無いときはこうやって……自分に活を入れてみたら?』って教わったから。伊勢くんもやってみてよ!」
無理矢理沼田に後ろ手で両腕を掴まれ、大の字に広げる。傍から見ると物凄く間抜けだ。
「いつも両手をポケットに入れてたら駄目だよ」
「余計なお世話だ。つうか、もういいって」
沼田は残念そうに両腕を解放する。ほんの一瞬で、先程までの悲壮感が払拭された沼田を見ると、夢を見ていたかのような感覚に陥る。
「……なんか、沼田のイメージが変わった」
「そうかな…でも、伊勢くんの中のわたしのイメージってどんなの?」
「いや、俺がいた頃は大人しくて、先輩が付きっ切りだったからさ」
「そうだったね。前に出て執行するのには、少し抵抗があったから……だから、わたしは伊勢くんに憧れてたの」
「俺は当たり前のことをやってただけだ。別に気に食わない奴を指導する為にやってたわけじゃねえよ」
「……うん。そうだね」
再びの笑顔と悲哀。交互に入れ替えては、はっきりと普段の表情に戻っている。
未だ…沼田自身も上手くコントロール出来て無いみたいだった―――違う。無理矢理変えようと努力している印象を受けた。
宇和井の入れ知恵で空気を換えたり、俺の事を心配したりしてくれる沼田。
既に想像していた俺の中の沼田の像は無くなっていたが、それでも未だ軸がぶれていて、俺は少し心配になる。
だが、当人は俺を心配してくれている。
……ああ、そうか。これが沼田の言った真意か。
誰だって悩みはあるし、辛いことなんて日常に溢れている。俺は確かにそれを力で抑え、振る舞いで発散していた。
意識は全く無くとも、部活動でそれは表面化した。恐らく、滑塚さんや部長は直ぐに気づいたんだろう。
俺は良かれと思って厳しく取締りを続けた。
公務に私情は挟んではいない……俺はそのつもりでも、組織や生徒から観れば職権乱用に見えた筈だ。
気に食わないが、それが事実だ。
沼田は、それを気づかせようとしているだけじゃない。
沼田自身、誰かに自分の考えを表現するのは苦手な性格だ。俺は端的に伝え過ぎて、相手にはその言葉だけが残っている。
沼田は俺に似ている。表現の仕方は真逆でも、内に秘めた思想や感情を噛み砕けずにいた。
「わたし、無理してた。誰にも言えずに…そうやって振舞うのが当然と思ってた。もしね、伊勢くんも何か悩んだり、辛かったりしたら、話して欲しいの」
何処かでその歓迎を待っていた俺がいる。そして、先日部室に入ったことを思い出す。
あいつらは此処で必死に仕事して、校舎を走り回っているんだな……過去の自分がそうであったように。
そうであった過去の自分のいない今。
それでも宇和井は、そして沼田は俺を待っていると言ってくれている。そして、永井もあの時そう言ってくれた。
504 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:46:14 ID:Wst5phiu
「……伊勢くん?」
「ありがとう、沼田」
「…………えっ?」
「もう時間だろ?」
「そっ…そうだね。そろそろ帰らないと」
沼田は少し不思議そうな表情で俺を見ている。胸の前で絡まった両手の指が解ける時……。
「先に行っててくれ」
俺が去り際に放った言葉。ほんの少しして……俺の背中に、沼田の声が投げかけられる。
誰よりも眩しい彼女の声が聞こえた。
その声は、笑顔で見なくても判る程に悦びに満ちたものだった。
一番癒されるのは、こんな風にペンキをぶちまけた様に広がる天井を眺めている時だ。
その天井の手前で行き交う雲の数を、形を、流れる速度を、其の行方をぼんやりと眺める。
俺は沼田と別れて屋上に来ていた。
普段は何時もの校舎隅の木に寄りかかっているが、あそこじゃこんな一面に空の景色が広がらない。
どうしても校舎や木で額縁が小さくなるからだ。
先程沼田から教えてもらったリラックス法は、こんな青空の下でならしてもいい。大きく伸びをすれば、少しだけ重荷が軽くなる。
ほんの……少しだけ。そのほんの少しの負荷が無くなるだけで、俺は違った世界が少しずつ見えるようになる。
そして此処に来たのは、ほんの少しだけ、心境整理がしたくてやって来た。沼田の姿が今でも印象に残っている。
彼女の台詞が胸の病みを削り落としてくれている。
厭味には聴こえなかった本音は、俺を少し勇気付けている。痛みはそれぞれが持っている。
沼田だけじゃない。宇和井も…俺には意地でも診せたりはしないだろうが、未だ膝の怪我は完治していない。
笑って振舞っていたあの日。あいつに触れて感じた記憶とぬくもりは、じりじりと脳と右手に蘇る。
その笑顔にも様々な色や形が在った。
心から喜んでいたデート中の笑顔、その日逢った最初に見せた痛々しい笑顔。
抱いた時、月明かりで写った泣き顔のような笑顔。
その全てが、宇和井が俺に見せた真意なら……恐らく俺も宇和井に読み取られているんだろう。
俺の言動や声色、そして表情を読み取った上で、あいつは俺に書置きをした。敢えて何時もの口調で。
505 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:49:08 ID:Wst5phiu
そして、永井。屋上で言った台詞は……忘れてはいない。
俺はあいつから謝罪ばかりを耳にした。単純に気に入らない。何時から俺たちはそんな関係になった?
俺は未だ永井に何一つ恩を返してはいない。
お互いを認め、好敵手として切磋琢磨して来た相手に……何度も謝罪され、頭を下げる仕草を観るのは良い気分ではない。
言ってやりたいことはたくさんある。執行部の関する事、事務的な事。
私情が殆どだが、それでも伝えないといけない事がたくさん在り過ぎる。
都合が良過ぎるだろうか。あんなに否定していたんだ。
返って帰還が困難にしたのは俺の所為だが……それも謝罪の許容範囲。
俺は魔法を発動していた。鎖の感覚は上々だ。
反射的に対象を捉える鎖を手繰り寄せる。そしてそれをクイックで切り替える一連の動作。
酷似する。まるで過去の自分の真似をしているように感じる。
永井と共に競い合い、切磋琢磨していたあの頃の自分と目の前の光景が重なる。
当然だったあの頃の日常が蘇り、失った忌わしき過去の末端記憶と今が漸く繋がる。
俺は宇和井と違反者を部室に連行する。部室に帰るまでは、宇和井の質問攻めを避けるのに精一杯だった。
だが、そんな宇和井の空気は今の執行部には欠かせない存在だ。
主に執行部は堅苦しいメンバーだが、彼女のような賑やかさで今の執行部の活気が維持されていると思う。
だから、宇和井の振る舞いには苦笑いばかりではあるが、内心では嬉しい。そう。沼田の台詞だった。俺には俺のすべきことがある。
部員の誰もが、互いの不足したものを補い、庇い、執行部をより強固な組織にしていく。
実力だけじゃなく、組織としての連携だけじゃなく……互いの絆や意志を紡ぐ。単なる執行組織には囚われないように。
重責とプレッシャー、そして伊勢のことでそれどころじゃなかった当時の自分には、その台詞は良く解らなかった。
だが、その支部長に任命された時に送ってくれた滑塚さんと部長の言葉は、今なら理解できる。
部室に入ると、何時もよりも人数が多い。
俺、宇和井、沼田、八条、里谷、俺達が連行した生徒……そしてあと二人。
「……永井くん!」
沼田の声は何処か嬉しそうで、俺はこんな沼田の笑顔を仕事中に見たことは初めてだった。
「よう……違反者、連行してやったぞ。屋上で練習なんて真面目な奴だが、違反は違反だからな。落ち零れの弟に見せてやりたかったな」
声の主は瞬時に解った。まさか此処に現れるなんて思っても見なかったから、反応できずにいる。
「な〜んだ、ちゃんと来てくれたんだ。よしよし」
「触るな。お前のために来たんじゃねえよ」
宇和井の台詞からして、みんなは知っていたのか? 誰も驚きや抵抗は無いように感じる。
「魔法を無断で使用したから、これ。始末書な」
書類を渡される。丁寧に書かれた始末書の字体は、何度も見た記憶のあるものだった。
そう。良く二人で勉強していた時に何度も見た筆記体。
字はその人物を表すとされているようだが、細く鋭いその筆先は確かに瓜二つだった。
真似したくなるほどに綺麗な字体だが、何度もシャーペンの芯を折る仕草も同時に見せていた。
それが……俺が感じ取れる唯一の警告だったのだろうか。
いや、悪いのは俺だ。だから何度も謝った。だから今の状況は、嫌でも期待してしまう自分がいる。
506 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:51:54 ID:Wst5phiu
「……じゃあな、永井」
「……!! 待て! 伊勢!」
俺は部室を去る伊勢に咄嗟に声をかけた。過去の記憶や時間を回想するような余裕はもう無い。
外に出ると、伊勢は既に廊下を歩いている。過ぎ去っていく親友の背中は……どんどん小さくなる。
「また……来てくれるか?」
伊勢に問う。俺の都合ばかりが頭の中で交錯していたが、そうじゃない。
これから……ゆっくりでいい。でも、いつかはきっと戻ってくる。俺はそう信じている。
「また執行部がヘマしたら来るかもな。嫌なら、しっかり活動するんだな」
伊勢は背を向けたまま話し、歩みを止めることは無かった。
包帯に包まれた右手が微かに揺れている。その仕草は、俺があの頃何時も見ていた伊勢の癖。
そのハンドサインは“心配するな”という意思表示。
そして……“また明日”という挨拶だった。
Day 7 4/XX the Opening Ceremony
今日は一学期の始業式。
新一年生が緊張と興奮を胸いっぱいに秘めて此処、聖凪高校にやってくる。
代わりに二年間この学び舎で育った二年生達は進級し、新たな校舎へと巣立っていった。
魔法執行部A校舎の支部長だった永井は、そのポストを後輩の九澄大賀へと譲ることとなった。
GPとしての実力も然ることながら、判断力や統率力もトップの資質には充分だと全部員一致の結果だった。
当の本人は何故か嫌がっていたが、最後は素直に支部長のポストを受け継ぎ、歴代の支部長に恥じないよう頑張ると誓った。
副部長は柊愛花。玲とハルカの推薦で決まる。
彼女も最初は困惑気味だったが、九澄との相性や魔法の実力、補佐からの下積みと長期経験を考えてのことだった。
勿論、支部長だった永井は執行部部長に任命され、前よりも責任感の大きい役職に就くことになった。
副部長も宇和井が務めることでメンバーもそのまま繰り上がりの形となり、大きな変革は何一つ無く新たな一年が始まろうとしていた。
唯一。挙げるとするなら。
「九澄くん!」
愛花は九澄を呼んだ。まだ始業式前だが、二人は執行部の部室に足を運び新学期の準備をする。
準備といっても、新一年生用と新二年生の名簿や学年毎のファイルの整理ぐらいだった。
其の為、一仕事終える頃には、未だ始業式には充分間に合う頃合いとなる。
「ふう……ったく、他の部員の奴らは何してんだよ」
「ごめんね。急遽だったから、わたしだけでも良かったんだけど……」
「柊一人でそんなの駄目だ! 一応支部長として、俺が頑張らないといけねえし」
「ありがとう。九澄くん」
九澄は少しあわてた様子だったのは、未だ支部長として過ごす学校生活に慣れていない事があったためだ。
だが半年以上の期間、一年生の担当責任者として活動した経験で、執行部は今の所波乱も無く平穏を保っている。
「先輩達、元気にしてるかな……」
愛花は扉の側にある掲示板に飾られている写真に目をやりながら呟く。九澄は愛花の視線の先を一緒にじっと眺める。
掲示板には、名残のある宇和井の殴り書きの部室ルールや、ハルカの作った執行部マニュアルの資料。
そしてその片隅に……三学期の終業式に撮った様々な写真が飾ってあった。当時二年生の執行部員全員が写っている。
集合写真。一人ひとりが大きく映る写真。どの写真の主役も笑顔で笑い、嫌そうに顔を隠すものと個性溢れる照像達。
その写真の中に、男女四人の写真があった。
集合写真とは別に撮ったその写真に写るのは……左から永井、ハルカ、聡史、そして宇和井。
聡史に自然に腕を回す宇和井と、笑顔で写るハルカ。
永井は此方を整った表情で見据え、聡史は宇和井の腕もあってか少し照れた表情だった――――。
507 :
二年執行部の行方 ― 終章:2008/01/05(土) 17:53:30 ID:Wst5phiu
「あの刻、どうして遅れて来たの」
「少し整理してたからな。ほんの少しだけ」
「すごくうれしかったよ……あの刻の伊勢くんの台詞」
「……宇和井には言うなよ。調子に乗るからな」
「玲とは順調?」
「沼田からも言ってくれ。襟を掴んで俺を振るのはやめてくれって」
「なにしてるの〜!? 早く写真撮ろうよ〜!」
「早く行きましょ! 玲が呼んでるわ」
「写真は嫌いなんだよ」
「玲とのプリクラなら大丈夫なのにね!」
「……なんか宇和井に似てきたな」
「それじゃあ、とりあえず全員で撮ります! 此処に並んでください!」
「九澄! 大事な一枚なんだからちゃんと撮りなさいよ!」
「わかってるって! 変にプレッシャーかけるなって!」
「九澄くん大丈夫? わたしがやろうか?」
「……照れるな。少し緊張する」
「執行部部長が何言ってんだよ。示しがつかねえぞ」
「ああ。そうだな」
「お前は今迄通りでいい。まあ下らないプレッシャーに圧されて、俺達の仕事を増やさなきゃ俺は構わないんだけどな」
「そんな事にはならない。大丈夫だ」
「……それならいい」
「それじゃ、撮りますよ…………はい! チーズ!」
その瞬間まで……多くの時間と苦悩を費やした。
単に校舎を離れるだけだと言えば、それまでの一日だった。其れ故の始まりが其処にあった。
一人は失った過去を、一人は秩序と規律を、一人は慈愛と組織を、そして一人は感情と活気を。
彼等の物語は未だ終わらない。再び新たなる一年間が始まる。
そして、その物語は後輩達に受け継がれていく。
「もう時間だよ! 行こうよ、九澄くん!」
「ああ。今日から気合入れて頑張らないとな」
そして。
生徒会魔法執行部の物語は、彼等しか知らない。
508 :
◆En/elxukv2 :2008/01/05(土) 17:57:19 ID:Wst5phiu
以上で“二年執行部の行方”は終了です。
長編となりましたが、最後まで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございました。
sageるのを忘れて投下してしまいました。申し訳ありません。
GJ!!!!!1!!!
とりあえず完結乙です!
あとでじっくり読ませてもらいます。
待ってた、GJ!
GJ!!
ハルカに玲たんかわいいよ
514 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 16:26:01 ID:ZH+d/1D0
次の書き手さんが来るまでキャラの処女非処女談義でもしよう
515 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 15:37:20 ID:V+X5I1hO
関係ない話だが影沼を見て
BUMP OF CHICKENの藤原を連想するのは俺だけか?
>>515 sageるのを忘れてしまった。本当に申し訳ない。
保守
全く人気の無い所で魔法植物の触手にプレートを奪われ、されるがままなハルカ。
九澄姉を期待しつつ保守
スレが落ちてしまった久美に日の目を
出雲っちの話がよみたいな
522 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/22(火) 22:30:08 ID:ReMdRlyy
保守
新作まだ?
>>525 ハルカさん好きとはなんと奇遇
エロなしでよければ挑戦してみる
ハルカさんがレイプされる話が読みたい。
職人氏ガンガレ!
>>528 なるほど、鏡教頭がハルカを調教するわけですな
532 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 02:43:18 ID:fRCG9fna
ラストのページもヤヴァイ
クミ×カタツムリに勃起した俺は異端
今週のエロ杉だろw
なんだよあのハァハァ言ってるロリ姉はwww
風邪引いたロリ姉に襲われて
無理矢理手を引っ張られて姉のあそこにカードを入れさせられる久澄のSSマダー?
三年前くらいに
バレンタインの日にチョコとともに告白するも振られちゃった胡玖葉姉ちゃん
自棄になって受け取ってもらえなかったチョコを一気喰いする
そのチョコには割合多めなアルコールが含まれていて酔っ払う胡玖葉
そこに大賀が帰宅
いつものように慰めてもらいに行くのだが酔った勢いなのかつい押し倒してしまい――
って電波が飛んできた
時期的にリミットは明日だよ!無理だよ!間に合わないよ!
540 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 00:58:27 ID:HVjlojzI
ナイス電波
541 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/15(金) 13:12:33 ID:dgpetVMF
GJ電波
萌えなSSにリミットなど存在しないのだ。
職人さん忙しいのかな
SSにリミットなど無要っ!!
パワーでもテクニックでも上回る姉に抵抗できず「されるがまま」(この表現は
そこはかとなく淫靡な妄想を引き起こした)な主人公を書いてください
お願いします
てめーで書けよ
しつこすぎ
それ別人だし
子供がいない21禁板なんだから落ち着いた対応してよ
職人さんサイト開いてたよ
kwsk
個人サイトだから、頑張って探せとしか……。
ヒント:サーチ、最近
見つけられなかった俺は素直にここに投下されるのを待つことにする
……寝よ
大賀×胡玖葉姉ちゃんwktk
552 :
名無しさん@ピンキー:2008/02/20(水) 17:21:24 ID:9UREhcVK
>>551 もしゃろぐ見たらやべぇぇっぇえ
俺も見たいなwktk
こんばんは。
昔作った小ネタ作品ですが、良ければ御覧下さい。
554 :
◆En/elxukv2 :2008/02/23(土) 16:06:32 ID:wnxvW9Hz
すみません。規制喰らいました。
解除されてからまた来ます。申し訳ありません。
と思ったら書けるみたいですね。すみません、無視してください。
それでは行きます。
俺は何故かハルカさんに呼び出された。宇和井さんではなく。
確かに最近顔を出していないとは、自分でも感じていたが……何かミスしたっけ。
俺は少し不安になりながらも執行部の部室に向かった。
時間指定も疑問だった。「下校時間に来て」……どういうことだろう。
「九澄くん、来てくれたのね」
部室に入ると、ハルカさんの明るい声が俺に向けられる。他の先輩達の姿は無い。
「何の用ですか? こんな遅くに呼び出さなくても言ってくれればいいのに」
俺はハルカさんに聞く。だが様子が変だ。
「九澄くんって……柊さんのこと好きだよね?」
「えっ!? 何言ってるんすか! 俺は……」
突然切り出された内容が内容だけに、如何しても慌ててしまう。
「見てたらわかるわよ、ずっと柊さんのことばかり考えてるんでしょ」
少しおだけた雰囲気だが、眼は笑っていない。
「俺はそんな……柊だって俺のことは」
「柊さんも九澄くんのこと、好きだと思うよ」
気づけば、ハルカさんが直ぐ近くに居る。
さっきまで席に座っていた筈の彼女が、自分がテンパっていた所為もあるが何時の間にか……目の前に。
「こうやって……くっつくのを待ってると思うよ……柊さん」
ハルカさんがすっと俺に抱きつく。
甘い香りと柔らかな胸が俺に飛びつき、嫌でも意識してしまう。
この状況が全く理解できないが、突き飛ばす事も出来ない。
「女の子ってね……男の子にこうやって抱かれるのが好きなんだよ?」
「せっ……先輩、いきなりで意味が全くわかんねえんだけど……」
俺は其処で自分自身を呪った。
下半身がハルカさんのお腹の辺りをノックしている。
制服越しだが、確実に相手には伝わっている。
「そして……こうやってキスすると……」
動きが止まる。だが彼女だけは俺を支配し始める。
先ずは唇。顔や雰囲気にそれなりに適合した唇同士の抱擁。
優しくて……温かくて……気持ちいい。
それだけで、俺の疑問は脳の片隅に置き去りにされた。
「んっ……ふぅん…」
ハルカさんの指が俺の腰でそよぎ、脚へ。
呪ってやりたい下半身が、意に反して硬化し続ける。
絶対気づいてる筈だ……だって……指が何時の間にか其処に触れているんだから。
「……男の子って……女の子とキスしたらこんな風になるんだ」
興味心身に触れるハルカさんが、普段とのギャップで現実がどちらか分からなくなる。
表情は普段の温厚で優しいハルカさん。じゃあこの抱擁は……キスは……指の感触は……。
「こうしたら……気持ちいいの?」
ハルカさんの指が膨張した中身の型をズボン越しでなぞる。
立ったままの体勢の所為で、時折耳元で囁く声が欲を助長させる。
妙に色っぽくて温かな吐息が俺の背筋を強張らせ、更に機能不全へと向かう。
「大きいのね……九澄くん」
再び呼吸が禁止され、指が何時の間にか直接触れている。
チャックを下ろす音すら聞こえないくらい、俺の聴覚は既にハルカさんの声しか拾えなくなっている。
情けない事に……俺はあっという間に吐き出しそうになっていた。
この状況で我慢出来るやつがいるなら……変わって欲しいくらいだ。
この不条理な展開で脳は制御不能。もう本能に身を任せるしか……このままじゃ……。
「今日は終わり」
ハルカさんの声で眼を開くと、俺はポツンと部室で一人立っていた。
肝心のハルカさんは目の前で何時もの様に優しい笑顔で迎えてくれる。
「……あれ……さっきまで俺……」
身体を確認するが、何も変化は無い。チャックも閉まったままだ。
さっきのは夢か?だとしたら偉く長くてリアルな夢だ。
だが、興奮は冷めてはいない。
下半身が膨らんだままの事を俺は察知し、急いでハルカさんに背を向ける。
やばい……こんな姿を見られたら大恥だ。
「どうしたの? 九澄くん」
「いっいや! 少し調子が悪くて……」
俺は必死に先程まで行われた淫行の記憶を消し去ろうとする。
だが一端火のついた本能は、火消しするには吐き出すしか方法は無い。
必死に理性で抑える。ハルカさんにそんな姿は見せたくない。
だが、彼女は俺のすぐ側に迫っていた。
「……また明日。この時間に……ね。家で出したりしたら駄目よ」
そう言ってハルカさんは部室を後にした。
結局、意味不明な呼び出しは翌日から続いた。
ハルカさんの言いつけ通りに家では手をつけずに必死に我慢して学校生活を過ごした。
少しでも気を抜くと欲に負けて吐き出しそうになる。
それでも、俺は何処かに我慢することに対して必死になっていた。
一度その習慣が付くと、止められなくなる。
我慢する苦痛に耐えながら行われる、ハルカさんの“指導”に……。
その“指導”のレベルは日を追うごとに厳しくなる。
ハルカさん自身もキスや愛撫が上手くなった様子で、段々と凄さの増す展開になる。
その度に俺は必死で耐えた。指でなぞられるくらいなら、何とか耐えられる所まで来た。
だが溜まりに溜まった液体が袋で張裂けそうに貯蓄されている。
苦痛は増える一方で、四日目の“指導”が終わる頃は正直ギブアップしようと思っていた。
もういい。明日終わらせよう。というか……何の意味があるんだ。
夢から醒めたように普段通りに振舞うハルカさんを見ると、俺だけが単に妄想癖なだけかと思ってしまう。
だが確かにハルカさんと俺はキスをした。何度も。
舌を絡めて、何度も、何度も。
三日目には直に触れられ、歯を食い縛って耐えた。
気が狂いそうになるくらいの快感はを思い出すと、慰めたい衝動に駆られる。どうしようもなく。
だからもう限界だった。もう……明日で終わりだ。
俺は部室に入る。すると何故か何時もとは違った女子が立っていた。
「遅いわよ九澄! 早くこっち来て!」
ハルカさんではなく、宇和井さんだった。
既に構築された俺とハルカさんとの放課後の情事が……今日は彼女と!?
俺は恐る恐る様子を見ながら近づく。
「来ないならこっちから行くわよ、もう」
宇和井さんは普段のように俺に飛びつく。
ハルカさんとは違った甘い香りと胸や肌の感触が新鮮に感じる。
今迄散々ハルカさんの色に身体が染まってしまったからだろう。
その新鮮さが興奮を駆り立てる。
「ふふ……今日はわたしが指導してあげる」
……やっぱりそうか。
もう理不尽でも何でもいい。早く俺の欲を吐き出してくれ、宇和井さん。
宇和井さんは予想通り、ハルカさんとは違って強引でストレートだった。
キスも愛撫も握る指も……全てが官能で卑猥。
為すがままの玩具になった俺が覚醒したのは、彼女がズボンを下ろして口に含んだ時だ。
俺は自分自身の情けない声に驚いた。
いや……普段からそんな声は事ある毎に何度も出してるんだけど、それはもう姉ちゃんに締め上げられた時よりも情けない声だった。
「九澄ってすごいね……上手く入らないわよ」
何が。何処に入らないんだ、そう突っ込みたいが無理だ。
もういいんだ。俺はここで終わるんだ。宇和井さん、我慢してくれ。
「……くうっ……うああぁ……」
馬鹿みたいに溜め込んだ液体を宇和井さんに吐き出す。
あっけない。そして果てしなく心地良い。
何度も上下し、筋が収縮して宇和井さんへと送り込む。
その全てを宇和井さんが受け止める。
漸く開放されたわけだ。
視界が即効で暗闇に覆われ……。
「九澄! しっかりしなさい!!」
眼を醒ますと、宇和井さんとハルカさんが目の前で俺を心配そうに見ている。
もう五日目だから慣れた展開だが、一応衣服や身体確認。
……相変わらず変化無し。
「こんな所で寝てたら心配するじゃない」
「調子でも悪いの?」
二人の様子は何時も通り。これも夢明けだと何時もの事。
だが二人居るのは初めての展開だ。
「じゃあ……俺はこれで……」
すんなり立ち上がれない。おかしい。
「何言ってんの? これからわたしとハルカで九澄に“指導”しないといけないのに」
……?
何言ってるんだよ、それはさっき……。
「わたしだけだと恥ずかしいから、玲にも手伝って貰おうかなって……」
駄目だ。全く展開が読めない。
「それじゃあ、始めるわよ……覚悟しなさい」
理不尽すぎる。どの現実がリアルなんだ?
まあいいか。またここで我慢したら……俺はこの部室から開放されるんだから。
以上で終わりです。本当に小ネタで短くてすみません。
どうやら改行規制でしたので細かくレス分けしました。ゴタゴタしてすみませんでした。
ハルカ先輩を“さん”に変えたのは仕様ですので、気にしないで下さい。ではでは。
乙
先輩に調教される九澄ウラヤマシス
このまま今度は鏡教頭に調教されるハルカをよろ
『 ケンジロウ・極 』
愛花が九澄と肉体関係に及んだことを知ってしまった柊賢二郎。
だが、それは愛花の巧妙な罠だった。
「お父さんの親バカは 九澄くんに崩される為に築いてきたんですものね」
「特区外でも魔法が使えれば… 九澄なんかに…!」
「よかったじゃないですか 魔法のせいにできて」
「んんんんんんんっ!」
「へへへ おい、ハメ撮りビデオを用意しろ。お父さんに観賞させてやる」
(見なきゃ…!!今は見るしかない…!!)
「お父さんのマジ涙ゲ〜ット」
(いけない…!俺のゴールドプレートが発動していることを悟られたら…!)
「生お父様の生先走り汁を拝見してもよろしいでしょうか?」
「実の娘に…くやしい…! でも…感じちゃう!」(ビクッビクッ
「おっと、意識を失ってしまったか。空虚感がいつまでもとれないだろう?」
ほす
ホッシュー
☆ゅ
571 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/09(日) 17:44:32 ID:D/xy96R3
グッジョブGJ
「見えてる!?」の後のコマの大賀が赤面してればなお良し
574 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/11(火) 07:58:11 ID:2cxE/VfJ
等身大草
あれ?保管庫移転した?
保守
月一くらいで良いから職人降臨してほしいなぁ…
欲を言うなら九澄姉弟で
同意
ハルカ先輩受けの話が読みたい
純愛物でもレイプ物でも
九澄姉弟まだー
保守
>>526です。
聡史×ハルカのエロなしが完成したので投下します。
>>525の人、もう忘れてるかもしれないけど遅くなってごめん。
基本的に事務作業の方が得意な私は、それほど忙しい時でなければ取り締まりには出かけない。だからいつも、みんなが取り締まりに出かけると私はひとり留守番をすることが多い。
「じゃ、ちょっと行ってくるわね〜!」
「うん。頑張ってね、みんな」
今日の放課後も立て続けに通報が入り、すぐさまみんなが出動して部室には私だけが残された。
一人残された部室はいつもよりも広く感じる。みんなが揃っているときは天井まで届きそうな資料棚や、ごちゃごちゃと色んなものを詰め込んで無造作に床に置いてあるダンボール箱が邪魔なくらいなのに。
気付けば、「みんな早く帰ってこないかな……」と、じっと出口の扉を見つめてしまう自分がいた。
最近どうも寂しがりになったような気がする。この前なんかは玲にも指摘されて、「もうっ、ちょっと一人にするくらいで捨てられた子犬みたいな目で見てくるのやめてよねーハルカ。なんか私が罪悪感覚えちゃうじゃない……」と、呆れたように言われてしまった。
そんなに寂しそうな目をしていたのだろうか?
たしかに心細い気持ちには自覚があった。ただ、その原因が何なのかわからない。
どうして?いつから?
心の中にぽっかりと大きな、でもキレイな丸形の空洞が空いてしまった感覚の原因が掴めない。
2年生に上がって、九澄くんも入部してきて……――永井君と伊勢君が仲直りして、そのお陰でぎくしゃくしていた部室の雰囲気も明るくなったのに。
……理由がわからないままでも、心の空洞は容赦なく冷たい風を通す。それがあまりにも寒くて、吹き荒ぶ理由もわからないのにとても心細くてたまらない。今日みたいに広い部室で一人になったときは、特に。
握っていたペンを取り落としてはっとした。
……何を考えていたのだろう。
大丈夫。今は一人きりでも、すぐにみんなが帰ってきてくれる。今日みたいに一人になる日なんて、執行部に入部した日からよくあった。慣れてるはず……なのに。
――ダメ、しっかりしなきゃ! 取り締まりに出かけたみんなは今ごろ危険と隣り合わせの仕事をしているんだから、留守番をしているだけの自分がさぼっていてはいけない。それに書類を書いていたらすぐに時間なんて忘れてしまうから。
自分に言い聞かせるようにして気を取り直し、再び書きかけの書類に向かった。
すると――
ピリリ ピリリ……
「あ……」
机の上に置いていた私のプレートが震えて鳴っている。
まだみんなが帰ってきていないのに、と頭の中を不安がよぎってわずかに逡巡したが、結局はプレートを手にとった。通話機能を呼び出して、耳に当てると向こうから切羽詰ったような声が聞こえてきた。
玲たちは帰ってこないし、通報相手は焦っていた。
それに魔法を使った喧嘩ではなくて、魔法の暴走という通報だったから、それくらいなら私一人でも治められると思った。玲たちには及ばないが、これでも執行部に所属して長いのでそれなりに場数も踏んでいる。
だから――……一人でも大丈夫だと、自分に言い聞かせるようにして、私は部室を後にした。
『魔法執行部よ!』
現場に行って声高に告げると、狭い廊下には天井に届かんばかりのロボットにも似た机と椅子の集合体が暴れまわっていた。
『こ……この魔法の使用者は誰なの!?』
あたり構わず壁や窓をその鈍重な身体で破壊している対象に一歩引きながら、周りの生徒たちに向かって尋ねた。通報者らしい人物が『それが、使った奴のびてて……』と廊下の隅で倒れている生徒を指した。
使用者の意識があればまだ何か対策が打てたかもしれないが、その道は潰えてしまった。
ZIP-LOCKで動きを封じるには対象が大きすぎる。
玲たちに助けを呼ぼうにも、みんなが向かった場所からは遠い。それにあっちもまだ片付いていないかもしれない。不用意に連絡して取り締まりの邪魔をしてしまってはいけない。
一般生徒たちの不安そうな視線を背中に感じながら、必死で対策を考えていると頭上を影が覆った。
「――――っ!!」
ガラガラと大きな音を立てて、巨体から1脚の椅子が零れ、私のすぐ横に落下した。
魔法の効力が弱まっているんだ――
もしここで魔法の効果が一斉に切れようものなら、沢山の椅子や机がこの狭い廊下で雪崩を起こすことになる。
まず周りの生徒を避難させなきゃ――でも倒れている人はどうすれば……!?
考えることの多さに心が焦らされる。頭の中はもう真っ白で、名案どころか何も思い浮かばない。指先が震えてプレートすらも危うく取り落としそうになる。
立ちすくんでいると、ガチャガチャと耳障りな大音響を鳴らしながら木と鉄パイプで構成された巨体が不安定に大きく左右に揺れ始めた。
どうしよう、どうすればいいの、誰か――!!
「うわっ!? 崩れるぞ――」
背後から何人もの声が重なった悲鳴が聞こえた。それでも私の足はすくんで動かない。
瞼をぎゅっと閉じてプレートを胸に抱きしめる。そしてこの後に襲い掛かるであろう衝撃を、身を固くして待った。
――が、いつまで待っても身体に衝撃がくることはなかった。
恐る恐る目を開けて床を窺うと、廊下は静かなもので机の一つすら散乱していない。
その代わり、ぎちぎち、という金属が固く擦れている音が頭上から聞こえてきて、顔を上げる。
「――おい、俺が押さえてる間に早くソイツを起こして魔法解除させろ」
懐かしい、ぶっきらぼうな口調と金の髪が、私の上に降ってきた。
「……ごめんなさい。伊勢君に迷惑かけちゃって……」
伊勢君のお陰で無事、先ほどの魔法暴走事件は解決した。
その後、黙って去ろうとする伊勢君にお礼をしようと呼び止めてからは、自分でも驚くくらいの行動力だった。
誘った先は執行部室。それを聞いた途端、顔をしかめた伊勢君に「け、怪我してるかもしれないから手当てさせて欲しいの!」と言って無理矢理押し切ったなんて、今から思えば信じられない。
上手い言葉が見つからずに焦っていたのはわかるが、思い返すと顔から火が出そうになる。
そして部室に戻ってみると、まだ誰も帰ってきてはいなかったことに安堵した。その事実に肩の力を抜いた伊勢君に席を勧めて、お茶とお茶菓子を出す。
怪我の手当てを口実にしたが、伊勢君は当然のようにかすり傷ひとつ負っていなかったので、ちょっとでも長く執行部室に居てもらうために普段よりもゆっくりと時間を掛けてお茶を淹れたりしてみた。
伊勢君が部室を敬遠しているのは私も知っていた。もちろんお礼の気持ちが先にあったのだけど、もしかしたらこれをきっかけに戻ってきてくれるかも……という小さな期待が心の隅にあったことは否めない。
だからたとえ少しの時間だけでも、執行部との繋がりを持って欲しかった。 一緒の時間を過ごして欲しかった。
半年と数ヶ月前、私たちがまだ1年生で、伊勢君が居たころのことを思い出すと、いつも胸が温かいもので満たされる。きっと私はあの頃の空気が大好きだったのだろう。
けして今のみんなが好きじゃないという訳ではないのだけど、伊勢君がいてくれたときの方が今日みたいに心細い気持ちになったりなんて――……あれ?
それって、つまり……?
「別にこのくらいの事で気にするな。どうせ元同僚だしな」
空になった湯のみを机に置きながら、伊勢君が言った。
元、という単語がさっきまで温かいものでいっぱいになりかけていた胸にちくりと刺さる。
「伊勢君は……もう、執行部に戻るつもりはないの?」
刺された所に穴が空き、そこから温かい気持ちが急速にしぼんでゆく。あの空洞がまただんだんと形を表してきた。
いま、胸から出て行っているのは、冷たい風を通しているのは――いったい、何?
「……確かに永井との誤解は解けたけどな。もうここは俺の居る場所じゃねえ」
伊勢君が椅子から立ち上がった。目を細めて感情なく部室を一瞥する。
けれど追想か離愁か、どこか隠しきれていないその表情に胸がぎゅっと握られたみたいに苦しくなった。
「そ……そんなことない! だって、私は……!」
伊勢君がいてくれたらって思うと――……
「――宇和井さんヒデェ! 二人で行ったのになんで俺ばっか働かせるんだよ」
「アンタの方が私よりプレートランクが上だからに決まってるじゃない! せっかくの執行部員なんだからどんどん魔法使っていきなさいよねー」
遠くから玲と九澄君の声が聞こえてきた。玲のよく通る声が、どんどん部室へと近づいてくる。
「! あ、玲と九澄君が……」
「……帰ってきたか。じゃあな」
玲たちと鉢合わせるのがやっぱり嫌なのか、伊勢くんが窓の方へと近づく。窓の鍵を開けて窓枠に手を掛けた。そこから出て行くつもりらしい。
「ま、待って伊勢君!!」
私は咄嗟にその手を――掴んでしまった。
「沼田!? おい放せ!」
「ダメ――『ZIP-LOCK』!」
空いた片方の手でポケットからプレートを取り出して、繋がれている伊勢君と私の手に魔法を掛ける。この手が外れないように。
――伊勢くんを放してはいけない。
チャンスは今しかない――そんな気がした。さっきまで心の隅にしかなかったものが、今では大部分を占めて私を突き動かす。
さっき言いかけたけれど、途切れてしまった言葉。
今度はちゃんと言わせて欲しい。伊勢君に届いて欲しい。
「私は……伊勢君に戻ってきて欲しい!」
伊勢君は呆然と私の方を見ていた。
驚いて見開かれている瞳を見つめて、言葉を続ける。
「私、ずっと寂しくて、その理由が今までわからなくて……!」
私の勝手な告白を聞いてどう思っているのだろう。伊勢君の都合も聞かずにこっちの都合を押し付けるなんて、自分勝手なやつだって思われてるかもしれない。でも、止められない。
だって――自覚してしまったから。
「でも……さっき伊勢君が出て行こうとしたときにわかったの!私……私は、伊勢君に――そばにいて欲しかったんだって!」
ZIP-LOCKに囲まれた中で、伊勢君の手をぎゅっと握り締める。今はこんなにも近くに伊勢君が居るけど、この手なんかじゃ足りないくらい、もっと、ずっとそばに居て欲しい。
窓枠に掛けていた手を外し、伊勢君が困っているような表情で頭を掻いた。
「沼田、俺は……」
口の中で続きにあぐねているのか言葉を途中で沈黙に代えて、伊勢君が私の方を見つめる。私は後に続く言葉を……待っていた。
「――いやー、結構やるわねぇハルカも」
「ハルカ先輩って大人しいと思ってたけど意外と度胸あるんだなー」
「沼田の意外な側面を見たな」
「ああ、……こんな……公衆の面前で……」
「ここまでされちゃ伊勢も覚悟するべきだよな」
いつの間にか、出掛けていたはずの他の5人が扉の付近に揃っていた。みんな一様ににやにやと笑いながら私たちを眺めている。
そんな中、永井君がすっと一歩踏み出して部室内に入る。支部長専用の席に近づき、ごそごそと何かを探っている。そんなに時間が掛かりもせず探し物が見つかったのか、丁寧に折りたたまれた白い紙を手にして嬉しそうに顔を上げた。
「それで……伊勢、休部届けはもう……破棄してもいいだろう?」
そう言ってこちらにかざす永井君の手には、ずっと前に自ら書いた伊勢君の休部届けがあった。
それは――部員全員が知っていた。それを永井君が机の引き出しの、一番上にずっと入れていたことを。たまに取り出しては、寂しそうに眺めていたことを。
「あの、伊勢君……?」
ずっと押し黙ったままの伊勢君に心配になり、声を掛けた。
もしかしたら、伊勢君は本気で戻ってきたくないのかもしれない。だとしたら私たちのわがままを押し付ける訳には……いかない。
ちら、と窺うと伊勢君と目が合った。すると迷っているような、照れているような色を浮かべた瞳が伏せられ、小さく溜め息が聞こえた。
「……チッ……仕方ねえか」
伊勢君が絞り出した一言はとても小さいものだったけど、部室にいるみんなに届いたらしい。沸き立つ執行部室の空気は、これまで経験したことがないくらい揺れていた。
――そういえば、ZIP-LOCKを解除していなかった。
みんなの前でずっと伊勢君の手を握っていたという事実に、今更だけど恥ずかしさが込み上げてくる。
小さく魔法解除と唱えると、私と伊勢君の手を覆っていた正方形のエリアが消滅した。それを確認してからそっと手を外そうとすると、強い力でぎゅっと握りこまれた。
伊勢君の方を見ると、これまで待ちわびてきた大ニュースに歓喜するみんなに向けて、照れ隠しに悪態をついている横顔がわずかに赤くなっていた。
……もう今更かもしれないけど、もう少しだけみんなに気付かれないようにと願いながら、男子らしい大きな手に私からもそっと指を絡ませた。
最初は6人、次は5人。
1人増えて6人。そして今、7人の執行部。
足りなかったものはたったの1ピースだったけど、私の心を占めるとても大きくて、とても重要なもの。
終わり
これにて終了です。
途中で改行規制の罠にはまって焦った(ノД`)
乙!!いい出来ですな
エロはない方がスッキリして読みやすいな。
今回はハルカ視点だったけど、伊勢視点の話もあるといいね。
一つの組み合わせで、男視点のストーリーと女からの視点のストーリーが
あると面白そうなんだが・・・
乙!!
>>593 ふたつの視点から見たいその気持ち、わかるぞ!
593,594の人ありがとう。
そして
>>593いい勘してる。
最初は伊勢兄視点も書く予定だったんだけど、兄視点は難しすぎるので断念。
エロパロ板にエロなしの話を何度も投下するのも気が引けるんだが、今はルーシーと大賀の話を書いているのでまた完成したら投下します。
エロパロ板だってわかってんのなら空気嫁
もう来なくてもいいよ
まぁ
>>596に一言言うなら
帰れ
さらに言うなら、
お前が来るな
もっと言うなら
この職人が過疎ってるスレに投下してくれてるだけありがたいと思え
文も書けない分際でよく言う。
598 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:06:16 ID:KHvVmgai
変わらない一日
胡玖葉「大賀ーちょっと来てー」
九澄「(まさか…)い、いやちょっと用事でよ 今すぐ出なきゃなんねーんだ」
胡玖葉「すぐ…終わるからっ!!!」
九澄「あがががががががが!!!!!!」
胡玖葉「あースッキリした?」
九澄「姉ちゃん…いい加減俺を実験台にするのやめてくんねーかな・・・
またパンチ重くなってるぜ… (背はのびねぇくせに)」
胡玖葉「なんか言った?」
九澄「今日もお美しい限りです胡玖葉お姉様」
胡玖葉「後で買い物行くから着いてきて どうせ用事も嘘なんでしょ?」
九澄「(バレてやがる)わーったわーった
んで?場所は?」
胡玖葉「CD屋さん!GYAKUSATUのファーストアルバムが出るのよ〜
初回限定版にはしおりつきだし!!」
九澄「しおり・・・CDにしおり・・・」
胡玖葉「後はアンタの学校かな・・・」
九澄「また柊父か!!やめとけって!」
胡玖葉「あはは この前は勢いあまってボコちゃったけど今回はダイジョブだよ
私が19だってのも教えたしね」
九澄「(不憫だなアイツも)」
599 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:07:02 ID:KHvVmgai
〜CD屋〜
店長らしきオッサン「はいこくはちゃん!頼まれてた奴!よかったね〜取っといて
もう完売しちゃったよ」
胡玖葉「ありがと〜店長さん!きゃ〜!!しおりKYOのアップ!!シビレルぅううう!!」
九澄「(なんかこのグループいやな思い出があるような気がすんだが…)」
胡玖葉「あ、お金おか…」
九澄「? 姉ちゃん?」
胡玖葉「財布忘れちゃった…」
九澄「いっ!?俺も金ねぇぞ!」
胡玖葉「そんな…グス…」
?「あっ あれ?九澄じゃない?」
九澄「ひっ柊!?それにお前ら!」
愛花「あー九澄くんだ 学校以外で会うなんて珍しいね!」
久美「やっほ なにしてんだ?」
みっちょん「いつかのお姉さんもいる」
久美「あ、ほんとだ こくはさんお久し振りです!」
胡玖葉「…ふえ?」
600 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:07:32 ID:KHvVmgai
胡玖葉「ちょうどよかった!大賀!」
九澄「なんだよ …まさか柊達に金借りれとか言うんじゃないだろうな!」
胡玖葉「そのまさかよ お金はちゃんと返せばいいんだし ね!オ・ネ・ガ・イ」
九澄はその時胡玖葉の右手拳が固められていることを見逃さなかった
九澄「しょうがねぇなぁ… ちっと悪いんだけどさ…」
久美「なんだそんなコトか いいよ 私が貸したげる」
愛花「いいよ久美 九澄くん私でよかったら貸すよ」
みっちょん「…私は貸さない」
九澄「ほんっとーにゴメン!!絶対に返すから!!(姉ちゃんが)」
久美「しょうがないなぁ愛花は…にひひ」
愛花「な、なによ久美 別にやましい気持ちなんかじゃないってば///」
胡玖葉「ありがとね!はい店長さん!」
九澄「この女は…」
胡玖葉「あ?」
九澄「空は心が洗われますねお姉様」
601 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:08:09 ID:KHvVmgai
愛花「九澄くんとお姉さんはこの後どうするの?私たち今から学校行こうかなって思ってるんだケド」
九澄「お、マジ?ちょうどよかった 俺らも行くとこだったんだよ」
久美「ほんとか〜九澄〜?愛花がいたからじゃないのか〜?ひひひ」
みっちょん「下心くらい隠したほうがいいよ」
愛花「もう久美もみっちょんも!九澄くんはそんなこと考える人じゃないよ ね?」
九澄「お、おお 当たり前じゃんか!!(ちょっとあったりして…)」
胡玖葉「私は柊先生に会いに行くの!」
愛花「え?お父さんに?」
胡玖葉「お…父さん?」
愛花「そうダヨ 私のお父さんの柊賢二郎」
胡玖葉「なん・・・だと…?」
愛花「へ?」
胡玖葉「い、いやこっちの話 気にしないで!
(あの人が子持ちだったなんて…でもそこにシビれるわぁ…
愛は障害があればあるほど燃え上がるのよ!!!)」
久美「なんか燃えてんな〜お姉さん 今日なら手合わせ願えるかも!」
みっちょん「…がんばって久美」
九澄「(行ったらソッコーでルーシー呼んで柊父に身の危険教えなきゃな…)
学校には誰かいるのか?」
久美「C組は大体いるらしいよ 委員長と津川はいないけどね 全くあの二人もお熱いよ」
愛花「ラブラブだもんねー」
みっちょん「…」←ちょっとうらやましい
602 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:08:39 ID:KHvVmgai
〜〜〜学校〜〜〜
久美「おお!いるいる!おーい」
伊勢「会いたかったよ三国〜〜」
みっちょん「ワンヘアーパペット」
伊勢「あいだだだだ!!!!!首が!首が!!」
久美「久しぶりにあったっていうのにお前も変わんないねぇ 学習ってもんがないのかお前」
伊勢「フ…女の体の学習になら体張れるぜ…」
久美「深千夜」
みっちょん「はい」
伊勢「いででででで!!折れる!!ギブギブ!!」
九澄「馬鹿やってんなよ伊勢」
伊勢「九澄〜お前も男だろうがよ〜一緒に死のうぜ〜」
九澄「わ!バカやめろ!!」
全員「あはははははははは」
胡玖葉「今…何が起きたの・・・?」
全員「あ」
胡玖葉「人の首が勝手に折れたり…ヘアピンがデカくなったり・・・
まさか!まほふぐぐぐ!!!」
九澄「ワハハハ!!姉ちゃん違うんだ!!これ文化祭の出し物の練習でよ!な!」
全員「そ、そうそう」
胡玖葉「そうなの…?ならいいんだけど…」
その頃九澄達がいるところが見える2階の校舎には
柊父「な、なななんであの女が来てるんだ!九澄か!?九澄のせいか!?
とりあえず隠れなければ…」
柊父がおびえていた
603 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:09:12 ID:KHvVmgai
九澄「さて・・・と姉ちゃんは柊達に任せたし大丈夫かな
ルーシーは…校長の部屋か」
ダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!
柊父「くずみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
九澄「うおおおおおお!!!なんだよ急に!!」
柊父「黙れ!ちょっと来い!!!!」
九澄「引っ張るなー!!!」
キィ…
ルーシー「今タイガの声が聞こえたような…来てるのカナ? タイガーどこー?」
604 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:09:33 ID:KHvVmgai
柊父「なんであの女がこの学校に来てるんだ!!!」
九澄「ぜー…ぜー…ちょっと…待てよ・・・」
柊父「うるさい!あの女のせいで俺は3日間入院しなくちゃならなかったんだ!!
一応記憶は消しといたが二度と連れてくるなと言ったろう!!」
九澄「ふぅ… 知るかよ!断ったら俺が殺されちまうっつーの!!」
柊父「そんなことは知るか!!お前なぞどうでもいい!」
九澄「なんだぁ!?」
柊父「ああ!?」
九澄「言い争ってても仕方ねぇ…どうする?」
柊父「早くあの女を送り返せ さもないと殺す」
九澄「言ってくれるじゃねぇーか親バカ」
柊父「だ、誰が親バカだ!」
九澄「お前だよお前 んじゃ姉ちゃんに行ってくるわ」
柊父「た、頼んだぞ…(ふぅ…これで一安心・・・)」
ちょんちょん
柊父「ん?」
605 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:10:17 ID:KHvVmgai
一方ルーシーは
ルーシー「あーんもぉー タイガー!!どこー!!」
及川「クッソ誰もこねーのに店番かよ・・・自分で決めたって言ってもダリィぜ」
ドラッグメーカー部は週に三日だけ当番を決めて店を任されるのだが今日は部長の及川が店番なのだ
ルーシー「ターイガー!!ど…きゃぁ!!」
及川「うお!急にスライムの原液の瓶が!!」←もちろんルーシーは見えていない
ルーシー「なによこれぇー!!もータイガー!!」
堤本「伊勢 ちょっとそこに立ってくれ」
伊勢「ここか?」
堤本「おうそこそこ よし 永遠走(ランナーズハイ)!!」
伊勢「うおおおおおおおおお!!足が止まらねぇええええええ!!」
堤本「いよっし成功!校舎走り回ってこい!!」
伊勢「つつみもとおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…」
久美「エグいマネするねー堤本」
伊勢「ちょうどいいんじゃね?走り回って性欲抜いたほうがアイツのためだろ」
みっちょん「…ワンヘアーマペット」
伊勢「あいででででで!!!!首ががががが!足もいてええええええええええええええ」
ルーシー「もぉーいやぁー!ベトベトだしなんか変なにおいするし…」
伊勢「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ルーシー「え!?なに!?ってきゃあああああああああああああああああああ!!!!!!」
そのまま伊勢の体に張り付いていったルーシー
606 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:11:00 ID:KHvVmgai
ダダダダダダダダダダダダダダダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ ダ!!!!!!
久美「お、エロガッパが帰ってた」
堤本「よーしよし マジックアウト!!伊勢お疲れー」
伊勢「ゼッ ゼッ づづみもどぉ…デメェ…ゼッ ゼッ」
堤本「うはは やりすぎちまったか すまんすまん ん?なんか伊勢にくっついて…うおなんだこれ!!」
久美「ちょっとこっちに投げないでよ!!ってきゃああああああああああああああ!!!」
スライムの原液には布を溶かす成分がある そして久美のシャツが溶け
伊勢「が、眼福じゃぁ…甘露じゃぁ…」
堤本「伊勢ーーー!!死ぬなーーー!!」
そして混乱したルーシーが暴れ回り次々と女性徒達のシャツが溶けていく
桃瀬「きゃーー!!なによこれぇ!!ちょっと伊勢見ないでよぉ!!」
出雲「書家の魂!うわよけられた!いやああああああああああああん!!!」
氷川「チェンジシール!!すべって効かない!?きゃ!」
伊勢「堤本…俺さ…たぶんこの日のために生まれてきたと思うんだよな…
はは…お前もそう思うだろパトラッシュ・・・」
田島「うぉおおおおおおおおおい!!トリップすんなぁーーーーー!!!死ぬな!死ぬならもっとこの光景を目に焼き付けてから死ね!!」
みっちょん「わ…ワンヘアーマペット!」
伊勢「グゲ」
堤本&他の男子数名「伊勢ーーーーーーーッ!!!」
607 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:11:43 ID:KHvVmgai
愛花「もう… なんなのよー!!(ボイスワープ!)」
ルーシー「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
愛花「みんな大丈夫!?」
久美「もうサイアクー服どうしよコレお気に入りだったのに」
みっちょん「私は別に」←指揮紙EXで体を守っていた
出雲「なんだったのよ結局・・・」
桃瀬「わかんないけど職員室に体操着借りに行こうよ 百草先生いたから」
ゾロゾロと移動を始めその場に男子しか居なくなった
堤本「伊勢・・・お前の意思は受け継いだぜ…」
畑「おうよ・・・グス…お前は男の中の漢だ…!」
田島「みんな!コイツの犠牲を無駄にするな!!ちゃんとあの素晴らしいヘヴンは頭に焼き付けたか!!」
堤本「おうよ!!でもちょっとトイレ…」
畑「お、俺も急にクソしたくなってさ」
田島「な、なななんだお前らもかよ」
伊勢「お前…ら…ガク」
608 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:12:12 ID:KHvVmgai
九澄「姉ちゃんいねぇなぁ… 職員室で聞いてみっか…」
愛花「すいませーん 体操着貸してくださーい」
九澄「ん?柊…?なんかいっぱいいるし」
愛花「え?九澄く…きゃあああああああああああああああ!!!」
九澄「ひ・・・柊の胸・・・胸・・・おっぱいが…いっぱい」
愛花「く、九澄くん!
久美「九澄?何してんだコイツ鼻血吹いて気絶してやがる」
みっちょん「…変態」
百草先生「これでいいかしら…ってあらあら 気絶しちゃってるわ
私は今手が離せないし 誰か保健室連れて言ってくれないかしら」
久美「ん?それならアタ…」
愛花「私が連れて行きます!!」
一同「おーおーお熱いこって」
愛花「そ、そんなんじゃないよぉもう!んしょっと!」
久美「ちゃんと肌であっためてあげるんだよ〜」
愛花「久美っ!もう!」
久美「にはは」
みっちょん「久美親父臭い…」
久美「いいじゃんか あの子も案外大胆だねぇ〜
んじゃま男子の息の根止めに行くか」
全員「あははははは…」
609 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:13:01 ID:KHvVmgai
時間は少し戻り…
ちょんちょん
柊父「ん?」
胡玖葉「あ、あの・・・」
柊父「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
全力で廊下をあとずさりする柊父 愛花がこの姿を見たらどう思うだろうか
胡玖葉「だ、大丈夫ですか!?」
柊父「あっ…ああ… 大丈夫だ…
(なんという事だ 一番恐れていたケースが起きてしまった!!
魔法を使うか…!?いやしかし外部の人間なんだ・・・使うわけには…)」
胡玖葉「柊さん!!」
柊父「ビクゥッ!!な、なんだね…」
610 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:13:22 ID:KHvVmgai
胡玖葉「私…一目ぼれなんです!!お付き合いしてくれませんか!!」
柊父「…(ほぅ)」
胡玖葉「お願いします!」
柊父「まぁ要件はわかった だが私には娘もいるし家内もいる
だから君と付き合う事は出来ないんだ
それに私じゃなくても、いい男なら沢山いるだろう」
胡玖葉「そんな!私…」
柊父「それがいけないんだよ 俺は家内を愛してるし娘も愛している(溺愛)
俺なんかよりはいい男はごまんといるんだ それが世界だよ」
胡玖葉「…グスッ」
柊父「ほら泣くな 相談相手にならいくらでもなってやる
久澄にもずいぶん手間をかけさせられているからな 今さらどうということはない な?だからすまないが…」
胡玖葉「…わかりました 柊さんよりいい男を探します!でも…
相談はちゃんと受けてよね・・?」
柊父「うっ…わっわかった…だから今日のところは帰りなさい 久澄は後で私が送っていこう」
胡玖葉「はい 大賀のコト・・お願いしますね」
ルーシー「クッサ!!クッサアアアアアアアアアアアアア!!!!!!なにかどっかで臭いセリフ吐いてる奴がいるわ!!!
…私も臭いけど…」
611 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:14:07 ID:KHvVmgai
校長「あらルーシーちゃん」
ルーシー「音芽ちゃああああん」
校長「あらあら これは…スライムの原液ね…またやらかしたのね」
ルーシー「だってえええぇえ…タイガ探してたら瓶にぶつかっちゃって…」
校長「はいはい 今からそれとるから浴槽の中に入りなさいな」
ルーシー「はーい…」
久澄「ん…?ココは…」
愛花「あ!久澄くん気がついた?」
久澄「柊?そういや俺は…はああああああああああああ!!!!!!!
ス 、すまねぇ柊!!お前の・・・その…見ちまって…本当にゴメン!!」
愛花「あ、あはは いいよ別に 久澄くんは悪くないし…それに久澄くんなら別に…」
久澄「(それに久澄くんなら別に…それに久澄くんなら別に…それに久澄くんなら別に…
それに久澄くんなら別に…それに久澄くんなら別に…それに久澄くんなら別に…)」
久澄「(駄目だ…!幸せすぎて死にそうだ…!!)」
愛花「もう皆帰ったよ 残ってるの私達だけだって」
久澄「お、おおそうか (ってことは…柊と学校で二人っきりぃぃぃぃ!?!?!?)」
愛花「どうしたの久澄くん?顔真っ赤だよ?熱でもあるのかな・・・ ちょっとゴメン」
ぴと
愛「んーちょっと熱っぽいカナ」
久澄「(ひ、柊のデコがおおおおおお俺のデコにいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!)」
612 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:14:44 ID:KHvVmgai
愛花「まだ横になってた方がいいかもね お薬いる?」
久澄「い、いや別にいいよ(柊が最高の薬だってーの!)
ってアレ?柊制服じゃ…」
愛花「あ コレ?ちょっと色々あってね着替え貰いに職員室に行ったら久澄くんがいたってわけ」
久澄「なるほど(それで全員パンツやらブラだったのか…
まさかルーシーか…? 後で聞いとくか)」
愛花「でも今日は面白かったな 久澄くんのお姉さんにも久しぶり会えたし」
久澄「はは あんな強暴姉貴だったらいくらでも見せてやるよ」
愛花「いいよね久澄くんは 姉弟がいて」
613 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:16:52 ID:KHvVmgai
久澄「うるせぇだけだぜ?あんな姉貴」
愛花「ううん 全然そうは見えない だってとても楽しそうにするんだもん」
久澄「(そうか…柊は家族親父だけだもんな 一人っ子だし…)」
愛花「私も姉妹欲しかったけど…お母さんはいないし
たまに一人で家にいるとね すごくさびしいんだ・・・」
久澄「バカ」
愛花「へ?」
久澄「柊には俺らがいるじゃねーか 三国もいるし乾もいる
なんなら一人で寂しい時メールの一つでもくれたら飛んでくぜ?」
愛花「久澄くん・・・」
久澄「寂しい時は寂しいって言え 頭に来た時は悪態をつけ
んで楽しい時は思いっきり笑え それが人生楽しく生きるコツだよ
まぁこんな俺が言ってもなんも説得力ねーけどな ははは」
愛花「ううん…ありがとう とっても嬉しい」
久澄「柊…」
愛花「じゃあ今度ウチに来てよ!私の料理ごちそうするから!」
久澄「ま、マジか!!よっしゃあああああああああ!!!!(生まれてきてよかった!!俺!!ビバ!俺!)」
愛花「もぉゲンキンだな久澄くん」
久澄「ははは」
ルーシー「はあああああああああ!!!!クッサアアアアアアアアアアアア!!!!
なんで今日はこんなにクサいのおおおおおおおおおおおおおおお!?
今日はタイガにも会えなかったし…もぉ寝よ」
校長「はいはい おやすみなさい」
614 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:17:13 ID:KHvVmgai
久澄「んじゃそろそろ帰るか うわもう夕方じゃんか」
愛花「うわ ホントだ お父さん心配して…」
柊父「愛花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!どこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
ドッグロープ!!さっさと見つけ出せ!!」「ワン!!」
久澄「馬鹿親発見」
愛花「クスクス…もぉ久澄くんったら」
柊父「ここかああああああああああああああああああああ!!!!!!!」「ワン!!」
「大丈夫だったか愛花!!変なことはされなかっただろうな!!」
愛花「ダイジョブだよもぅ…いつもありがとうねお父さん」
柊父「ん?あ、あぁ…」
久澄「カッカッカ 照れてやがんぜあの馬鹿親」
柊父「さぁ時間が時間だ 帰るぞ 久澄 お前も来い」
久澄「? 俺も? いいよ別に」
柊父「お前の姉から頼まれたんだ 約束破るわけにはいかん」
久澄「ほぉ…殺されなかったか まぁいいやサンキュ」
615 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:17:34 ID:KHvVmgai
〜〜〜久澄宅前〜〜〜
愛花「今日はありがとうね 久澄くん」
久澄「いやこっちこそ 介抱してもらった上に話し相手になってもらったし」
柊父「(久澄めぇぇぇ!!愛花に妙なこと吹き込んでないだろうな!!)」
久澄「柊父のいい親バカっぷりも見れたしな」
愛花「もぉ!お父さん!」
柊父「(くおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!)」
久澄「んじゃまた学校でな」
愛花「うん バイバイ」
柊父「用事は済んだな!行くぞ愛花!!」
愛花「ちょ、ちょっとお父さん!!」
ブォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!
久澄「おーおー飛ばす飛ばす 事故ってもしらねぇぞ
かあさーん腹減ったぜー 飯ー!」
いつもと変わらない日常 いつもと変わらない生活
でも今日は一歩前進…かな?
END
616 :
名無しさん@ピンキー:2008/03/30(日) 21:21:17 ID:KHvVmgai
以上で終わりです
何分初めてなもんで全然小説とも言えない文章でしたが…
楽しんでいただければな、と思って書きました
でも正直ごめんなさい
乙
乙!
だが主人公の名前はちゃんと覚えといてくれw
619 :
名無しさん@ピンキー:2008/04/01(火) 02:45:51 ID:M6Pg3XXq
>>618 九澄ですよねwwwwwww
すいません なんか間違ってて…
次からは気をつけます^^;
乙です!
ほのぼのしてて良かった
最近愛花にデレる大賀を見てないから面白かったよ
遅くなったけど
>>582の人ありがとう
楽しく読ませて頂いたよ
保守
亀だけど二人とも乙でした、次回作期待してます
残り13KBか…次の投下がこのスレ最後になるのかな?
保守
>>582エロなしでも俺は全然おkです、エムゼロss自体あんまないですし
次の作品も楽しみに待ってます
しかし過疎ってるのに、容量オーバーで次スレなんて、なかなかの良スレだな。
本当書き手さんいつもお疲れです
626 :
598:2008/04/11(金) 20:17:29 ID:4b17JK/0
誰も書く人がいないなら…
でも思いつくカップリングは大体書かれているから希望のカップリングとか言ってくれたら書きます( ^ω^)
出雲っちの話読みたいです。
>>626 話題はあるのに一つも作品がない
九澄姉弟をお願いしたいです
629 :
598:2008/04/14(月) 08:32:54 ID:xoAYkDcM
では出雲の話考えてきますね
容量が大丈夫だったらこくはさんも書きます!
がんがれ!
あと名前入れるならトリップ入れたほうがわかり易いしまとめの管理人さんも仕分けし易いと思う
今週のおっぱい祭りどう思う?
>>631スレ違いだろうけど、まあいっか。
書き手さんのネタにはなるかな。
例えば、あそこに入ってきた先生がそのまま助けを呼ばず・・・くぁwせdrftgyふじこ
そういえば、あの服がめくれて半乳してるの誰だ?
あれは時田さんじゃないかな
書き手初めてっつーかこの板自体経験薄いんだけど今週の神回の影響で書いてみるわー。
よかったら期待しててくだしあ。
>>634おお、ありがとう
やっぱり時田さんか・・・ハア・・ハア・はあ・・はあ・・時田さんのππ・・・くぁwせdrftgyふじこlp
>>635まさか今週の回で書きてさんがが出てくれるとは、wktkで待ってますよ〜〜
637 :
635:2008/04/16(水) 01:14:26 ID:iBrs08/k
とりあえず思いつくまま本番シーンを挿入の直前まで書いて4kバイト。
いよいよ本番ですがとりあえず寝ます。背景やらも書いて出来たころに持ってくるよ。
凌辱だけどいいよね。
638 :
プリン:2008/04/16(水) 01:39:39 ID:d0wWa/cj
甘い香り漂う被服室、人気の無いこの周辺は生徒が駄弁る際に使用するものである。
「!!!」
二人の友人と駄弁る場所を求め、歩く彼――堤本が異変に気付き、津川と伊勢を呼び止める。
扉を開けたときに、既に匂いは感知しない。そんなことより彼らは六人、否 五人に目が留まる。
倒れているのはGの旋律の異名を持つB組の時田、クラスメイトの三国、F組の桜庭・三科、A組初貝だったからだ。
いずれも究極のバストの持ち主、『美乳特選隊』だったからだ。
正常な判断が出来ず先生を呼びにいこうとする津川、落ち着くために『素数を数える』伊勢。
だが一人、堤本は考える。
委員長の下田と恋愛関係にある津川、柊愛花を除く全女子にセクハラを決めた伊勢に較べ
自分だけが『未だに女子とは触れ合っていない』。
女子に触りたい、それがどんなに法で触れることになろうが、構わない。
プリンは眺めるものではない、食すものなのだ。
喰わず、ただ体操座りで観賞するなど、プリンに対して失礼である。
「魔法しかない…」
堤本は決意する。そして大きな問題に気付く。
伊勢の魔法、津川の魔法、そして自分の魔法。そこにプリンを食べる手段となる魔法が無いのである。
ならば他にメンバーはいないのか、田島・畑・次原……。
名前が浮かぶも全て没、このオアシスに邪魔は不要なのだ。
そこで彼の頭に妙案が浮かぶ。
「九澄を呼ぼう」
食欲をそそるプリン、それを食すにも素手では申し訳が無い。
それには一等品のスプーン、GPの九澄の強大な魔力が必要。彼はそう確信した。
639 :
プリン:2008/04/16(水) 02:02:12 ID:d0wWa/cj
堤本の意見に二人は難色を示す。
・彼は観月と交友関係にあること
・どちらかというと硬派寄りである彼は覗きなど好まないであろう。
・三人だけの秘密にすべき
・そもそも誰が呼びに行くのか、ということ。
この四つが原因となっていた。
「俺が呼びに行く、二人はここで待っててくれ」
「五分経ったら先生呼びに行くからな」
堤本は伊勢のように眺めるだけで満足できる男ではなかった。
小石川に陵辱され、飲茶と化したクラスマッチ決勝。
アイアンレベルである氷川に邪魔されたあの日。
九澄に似た顔の女生徒に見惚れてしまったこと。
彼は忘れない。自分の立場を理解する為に。そしてその上で、極上のプリンを喰らう為に。
「九澄ー!柊が被服室で襲われてんぞー」
「なにー!!柊今行くぞ!」
奴が柊に恋心を抱いていることぐらい周知の事実。それを知れば非常に動かしやすい男だった。
青筋を浮かべる九澄。廊下で柊が乾と話していることにも気付かず突っ走る。
一見するとただの男子高生。だが九澄は1年生ながら教師クラスである『ゴールドプレート』を持っている。
魔力に至っては2年の伊勢先輩はおろか、柊先生にも勝ると言われている。
コイツの魔力でプリンを食べよう。堤本は全力疾走に加え過度の期待で頭がイカれていた。
640 :
プリン:2008/04/16(水) 02:14:26 ID:d0wWa/cj
「テメーら!柊に何すんだ!」
感情のままに、九澄はドアを蹴り破る。驚いてこちらを向く津川と伊勢。
何も知らない九澄に堤本は訳を話す。
「アホらし…」
呆れて声もあまり出ない九澄は帰ろうと回れ右をするが、そこに二人が立ちはだかる。
「九澄、俺達マブダチじゃねーか。観月には手は出さないようにするから。な?」
土下座する伊勢。それに続き土下座する堤本。津川は九澄の意見で動くようだが。
一方の九澄も苦戦していた。彼は実のところGPなど全くの嘘で魔法など使えないのだ。
ストックとして一つだけブラックプレート機能で保存しているが、これでどうしろというのだ。
暫くして、伊勢は何も言わず携帯電話のデータフォルダを開く。
そこに映っているのは放課後に柊の席で居眠りをする九澄の姿。
「だっはー」
「これを柊に見せたらどうなるか…」
――きたねー。
九澄は歯軋りをするがどうにもならず、使うしかなかった。あの魔法を。
「オープン!『不可視の霧(ブラックカーテン)』」
>>641 わっふるされたからとりあえず1話書いてる。
今週の最後に出てきた教師って名前ないよね?
とりあえずモブキャラが何人か必要なんでオリキャラやオリジナル名前入るけど見逃してくれ。
GJ!
堤本ww人間やめる気かwww
>>642 おお、ありがとう。
名前はないはず。楽しみにしてるよ。
保守
保守
打ち切りってマジ?
嘘だよ
打ち切りじゃないよ
打ち切りの話題で持ち切り?
>>651 くそ、ちょっと笑ってしまってくやしい……ビクッビクッ
もし観月が九澄に告白しないまま終わったら、観月ラヴラヴエンド書くわ
655 :
名無しさん@ピンキー:2008/05/04(日) 02:04:11 ID:nmM1ELg8
保守
魔法で透明になって校庭のど真ん中でヤりまくると電波を受信した
保守
保守