【ドラマ】花ざかりの君たちへでエロパロ

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545佐野泉×芦屋瑞稀 別れの夜@
噴水広場を吹きぬける風が秋の気配を告げている。
いよいよアメリカへ帰る前日。瑞稀は一人桜咲学園に別れを告げていた。

2年C組の教室に入ると、緊張で胸が破裂しそうだった初日を思い出す。
サッカーボールやテニスボールが頭に降ってきたっけ。・・・最後は靴まで。

瑞稀はククッと喉で笑うと、自分の机に手を触れ言った。 「・・・さようなら」
佐野の机にも同じ仕草をして、瑞稀は教室を出て行った。

夏の名残りのバラが咲く哲学の林。
中津と肩を組んで歩いたコンコース。
裏庭のベンチ・・・佐野と二人で座ったあのベンチ・・・。

・・・ さようなら・・・さようなら。 みんな・・・サヨウナラ・・・。

午後の陽光に、学園はどこも金色に輝いていた。

が、瑞稀は首をかしげた。 ――生徒の姿がない。

レイ・ブラットベリの小説に出てくる街の様に、気配を残したまま人の姿が消えていた。

その不思議に首をかしげたまま、瑞稀は食堂に向かった。

やはり誰もいない。静かな食堂は見知らぬ場所の様だ。
食堂の真ん中に立つと、瑞稀はゆっくりと周囲を見渡した。

ドリス式の太い円柱。色ガラスの嵌ったアーチウインドウ。壁のアクセントの白いタイル。
この美しい食堂で行われた沢山の 『愛すべき馬鹿騒ぎ』を、瑞稀は懐かしく思い出した。
タイル張りの床についた特徴のある傷。 原秋葉に集合写真を撮ってもらった時についたものだ。

・・・・・・ 右肩と右足は佐野に触れている。

あの写真をずっと持っていよう。結婚をしても、子供が産まれても。おばあちゃんになっても・・・。


瑞稀は床の傷に触れようと腰をかがめた。その時――。