THE鑑識官とかTHE推理とか

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1名無しさん@ピンキー
需要はともかく立ててみた。
シンプルシリーズから発売されている「推理」「裁判」「鑑識官」シリーズのエロパロ専門スレです。

攻略質問は攻略スレへ
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/handygover/1180631987/

ちょっとしたネタや雑談は総合スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1180809769/
または萌えてみるスレへ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1148716481/

荒らし、煽りは完全無視が有効です。
2名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 00:05:22 ID:msVICGCo
THEシンプルシリーズでエロパロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1181498578/
31:2007/06/21(木) 00:07:59 ID:uKT0s1+u
>>2
知ってる。でも、なんか違うと思うんだ、そこは。
4名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 00:10:05 ID:1KDMiOxD
>>1乙……と思ったらもうあったのかYO
あまり人いなそうなら>>2に移るか?
51:2007/06/21(木) 00:20:17 ID:uKT0s1+u
>>4
あっちに人はいなさそうだが、個人的にはこのシリーズはこのシリーズで、
他のシンプルシリーズとは別口の需要があるんじゃないかと思う。

鑑識官は好きだが姉チャン系は苦手ってヤツもいるだろう(操作性とかな)
地球防衛軍は好きだが鑑識官は嫌いってやつもいるだろう(ゲームジャンルの問題か)

携帯ゲーソフト板にだって

【NDS】SIMPLE シンプル DSシリーズ総合
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1177758642/

ってのがある。
でもやっぱ、違う。そういうことだと思う。
6名無しさん@ピンキー:2007/06/21(木) 10:19:22 ID:vRz1MDRU
「メイド服と機関銃」をお忘れか。
7名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 19:30:34 ID:beH/2JMv
8名無しさん@ピンキー:2007/06/24(日) 23:04:43 ID:ZQg85p8/
シンプルシリーズのギャルゲーはここと>>2どっちになるの?
9名無しさん@ピンキー:2007/06/25(月) 01:57:54 ID:MtY3jZFN
シンプルのギャルゲは2じゃね?
10名無しさん@ピンキー:2007/07/06(金) 18:40:20 ID:SgCHl29Y
>>2 落ちておるな。なら、とりあえずトムADVはこっちで展開か?
11名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 13:48:50 ID:YP/RKeq/
見事に過疎ってるな
12名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 21:01:36 ID:XL1zgIYD
さすがにネタもないのにスレたてってのはな。
13名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 21:03:57 ID:262vbZ7Y
キチガイ隔離のつもりだったんだろうが
荒らすのが目的なのにこっちに来るわけがない
14名無しさん@ピンキー:2007/07/13(金) 23:47:46 ID:APFIFL6r
あのエロネタ大好きちゃんwはいつまでいるんだろうなー
開発に私怨でもあるのか?まあスレ保守ってくれて嬉しいからどうだっていいが

おじさん連中×識子を思いつく俺末期。でも物部さんは加わらない
15名無しさん@ピンキー:2007/07/14(土) 00:36:50 ID:pn5DFf7F
>>14
加わらないのか?
参加し損ねたあげく監視カメラに残った映像を見て頭抱えてそうではあるが。
どうやって擬人連中をごまかそうか、とか。

個人的にはそこに参加しないのは所長だな。



あっちのエロネタは正直、飽きた。
荒らしたいならせめてもう一ひねりくらいしてほしいもんだ。
もうすぐ夏だからな。また、いろいろ湧くのだろうか。

それまでに何か投下するとしても、需要あると思うか?
1614:2007/07/14(土) 10:53:01 ID:jx8n/6H+
>>15
物部さんは(ウホッ的な意味でなく)色事に関しちゃ受け身っぽいなーと思ったんで
あー、確かに所長はいなそうだ、なんとなく

投下の需要少なくとも一人はあると言っておくぜ
1715 ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/14(土) 23:09:57 ID:3uzwTxZW
OK、なら頑張ってみよう。
自分が逃げないように投下宣言だー。
明日中。
自分で首を絞めてるな。
がんがる。
18名無しさん@ピンキー:2007/07/15(日) 23:42:28 ID:2AjQC+/K
後、20分程だな
1915 ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 00:24:17 ID:v94hWmuT
悔しい……っ!
こんな、こんなことって、ああ、いや、嫌なのに……!

すまん 吊ってくる orz

日付変わっちまった上に結局ぜんぜん書けなかった…
とりあえず途中までだが投下。
途中放棄だけはしないとゲイシャニンジャに誓う。

街の明かりも通る車のライトさえも少ない深夜。
時計を見てみれば、もうAM2:00を回っている。
面倒なことは溜め込みがち、そんな識子には書類仕事は向いていない。
ようやくひと段落つけたのはこんな時間になってからのことだ。
(もうバスもないよね……ホント、原付の免許くらい取ろうかしら……)
移動手段が徒歩しかない状態で、深夜の街を歩くのはいくらなんでもごめんだった。
屋上で一人、深いため息をつくと手すりに凭れ掛かり、自嘲気味の笑顔を浮かべた。
「ため息をつくと、幸せが逃げる……か。」
そんなこと誰が言い出したんだろう。
25にもなってそんな子供っぽいことを思い浮かべた自分に笑えてくる。
今日はもう、眠ってしまおう。
いろんなことを考えすぎてしまう日には、ろくなことがない…
憂鬱な気分を吹き飛ばすためにも、識子は大きく伸びをした。

そのとき、屋上の扉のガチャリと開く音がした。
振り向いた識子の、視線の先には。
21分岐 ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 00:30:39 ID:v94hWmuT
1:古畑博士!?なんでこんな時間に…
2:芦茂さん…こんな時間に、どうしたんです?
3:あ、物部さん。今日も泊り込みですか?
4:植木さん…?どうしたんですか!?

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

あと南東京科研の男って誰がいたっけ。
あ、所長はナシね。
多分今頃警視正と一緒にいるから。

あと、書き忘れたけど激ネタバレ注意。
221:博士の異常な愛情 1  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 00:35:21 ID:v94hWmuT
ロマンスグレーの髪が夜風に僅かになびく。
「おや?江波君じゃないか。うら若き乙女がどうしたんだね、こんな時間に」
屋上に現れたのは、古畑博士だった。
いつもの白衣ではなく、ダークグレーのストライプのジャケットを羽織り、腕には書類が入っていると思しき白色の大判封筒を抱えていた。
「博士こそ、なんでこんな時間に?検死だった……ってわけでもないようですし」
古畑の顔には若干、疲労の色が濃いようだった。
もし検死解剖だったとすれば、生き生きとした表情で颯爽と風を切りながら現れたことだろう。
「うむ。……実は、明日、小鷹の公判が控えていてね。その書類を纏めていた」
検察側から出廷を要請されたのだという。何がしかの証言をすることになる、そう呟きながら、古畑は識子の隣で夜空を眺めた。
「本人が罪を認めたのだから、話がややこしくなることはないだろうが、それでもね」
そう言って眉間を揉み解す古畑の様子に、識子はなんとなく理解した。
「……どうにかして、真実は真実のままに、それでも、罪が軽くなる術を。探してたんですね?」
「そんなに買い被らんでくれ。私に出来るのはせいぜい、死者が苦しまなかったかどうか、どんな思いで最期を迎えたか……それを推し量ることだけなのだから」
そう言って古畑はゆっくりと目を閉じる。
「ああ、考えていたら、腹が空いてきたな。こんな時間では、出前もとれないだろう。家にまだステーキ肉があったかな」
何を考えていたのか、一瞬推測しそうになって識子は苦笑した。
231:博士の異常な愛情 2  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:31:22 ID:v94hWmuT
そして、初めて、古畑の『腹が空く』という意味に気がついた。
それはつまり、徹底して死者を代弁しているのだということ。
自分が関わった、もう何をすることも出来ない彼らに代わって人生を謳歌するということ。
……彼らの分まで、まるでそれがひとつの供養の形であるかのごとく。
悠々と屋上扉まで向かっていた古畑は、不意に振り返り、少々悪戯っぽい笑顔を向けた。
「江波君。君も来るかね?一人で食べるよりは、誰かと食べた方がいい」

  ◎   ◎   ◎

アメリカンバイクに二人乗りなんてのは、識子にとって初めての経験だった。
体で風を切る速さ。うなるような低い音が体中に響く。
慣れない感覚に生じる恐怖。思わず古畑に強くしがみついた。
「怖いのかね、江波君」
「い、いえ、そんなことは」
赤信号で停車した時、古畑が識子を気遣うように声をかけた。
慌てて否定した識子だったが、その声は僅かに震えてしまっていた。
それを感じ取ったのか、古畑は、安全運転で行くから安心してくれ……と声をかけ、信号へと目を向けた。
241:博士の異常な愛情 3  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:33:32 ID:v94hWmuT

  ◎   ◎   ◎

「ふぅー、美味しかった!」
「喜んでもらえて光栄だ。一人の食卓とはなかなか寂しいものでね」
古畑は腕の揮い甲斐があったというものだ、と嬉しそうに言いながら食器洗い機に皿を並べていく。
肉好きなだけあってか、つい先までその皿に盛られていたのはただ焼いただけの厚い肉ではなく、『ステーキ』と呼ぶに相応しい物だった。
味付けも盛り付けも完璧な一品に、識子は思わず「博士ってば、乙女の天敵だわ!」と口に出してしまったほどだ。
室内の時計はもう3時を指そうとしている。
ちらりと食器洗い機を見れば、中ではなかなか美味なワインを供してくれたグラスが2つ、水流に晒されている。
バイクで送ってもらうというわけにもいかない。なんとも中途半端な時間に識子は戸惑う。ここからなら、いっそ歩いて南東京署に向かうのが一番安全かもしれない。
古畑の自宅は、市街地にある分譲マンション、その最上階の一室だった。
バイクから降りた時には、新築というわけでこそないがそれでもいっそ優雅ともいえる落ち着いたたたずまいに圧倒されたものだったが、古畑いわく「若気の至りで購入してしまった」のだそうだ。
思わず呆れた識子は、それっていつのことなんですか、とだけは口にせずにすんだ。
通されたDLKも、家具はセンス良くまとまっていて、同時に単身者故の希薄な生活感と清潔感があり、上京以前から識子が抱いていた、こんな部屋に住んでみたかったという想像を掻き立てられた。
ただ、自分ではあっという間に散らかすだろうという情けない結論に陥ってしまったのだが。
251:博士の異常な愛情 4  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:34:16 ID:v94hWmuT
「おや、3時か……江波君、今日は泊まっていくといい。何、私はそこのソファでも大丈夫だ」
古畑はそういうと、手際よくソファに毛布を敷いてしまった。
「え!?いや、博士、いくらなんでもそんなわけには」
「うん、それがいい。こんな時間に女性に外出させるなんて、紳士としては許可できないことだ。パジャマもないだろう。寝室に私のシャツがかかっているから、どれでも好きなのを着るといい」
慌てる識子を余所目に、古畑はどんどん自分で決めていってしまう。この男が一度言い出したら聞かないことは、識子には今までの、仕事上でしかない付き合いの中でもよくわかっている。
せめて出せるのは、妥協案くらいだ。
「あの、博士!じゃあ、私がソファで寝ます。私のほうが、背もずっと低いですし。博士がソファでは、窮屈でしょう?」
お邪魔してるのも私ですし。そこまで言って、渋る古畑を納得させた識子は、しかし制服の皺を嫌がって服だけは古畑の黒いシャツを借りたのだった。

時間がどれくらい経ったのかはわからなかったが、まだ外が暗いことから、そんなに時間は経っていないのかもしれなかった。違和感によって識子は、眠りの海から引き上げられた。
261:博士の異常な愛情 4  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:35:30 ID:v94hWmuT
目の前には、寝室に行ったはずの古畑の顔がある。上半身は裸で、歳の割にはしっかりとした筋肉が見て取れる。おなかの辺りは、年齢による宿命から逃れ切れていないようだったが。
「……起きてしまったか」
低い、囁くような甘い声が、そっと耳を打つ。
鎖骨の僅か上に、ひやりとした感触を感じた。古畑はいつから持っていたのか、小さなステーキナイフをその手に隠していた。
「……メスで肌を切る感触と、このナイフで肉を切る感触というのは、あまりにも違う。
 ただ、肉を切るということに特化させるために、ステーキナイフにはノコギリ状のぎざぎざとした刃がついている。
 ……江波君。もし今、私が、君の首をこれで掻き切ったら、その場で君は遺体になってしまうのだろうね」
そう言いながら、静かにナイフへと力を込める、古畑。
識子の首に、ちりりとした痛みが走り、じわりとわずかな熱を感じた。少し切れたのだ。
ぷつりと浮かぶ、赤い珠。
識子はその間中、古畑の目から、一度も視線を逸らさなかった。
271:博士の異常な愛情 6  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:36:23 ID:v94hWmuT
……先に視線を逸らせたのは、古畑だった。
識子の首筋に顔を寄せ、赤い液体を吸い付くように舐め取った。
ナイフを放り投げる。毛足の長い絨毯はその金属が耳障りな音を立てることを許さなかった。
「冗談だ。……君の遺体など、見たくない」
「……わかってます」
識子の言葉に嘘は無かった。
ナイフを当てる古畑の目には、動揺と恐怖が浮かんでいた……傷つけることを恐れるが故の。
どれだけ歳を経ようとも、男は男なのだな、と識子は微笑ましさを感じた。
強がりで、偉そうで、怖がりで、まるで子供のよう。
あやすようにそっと髪を撫で、背中に腕を回す。識子はそのまま、古畑に身を委ねた。
281:博士の異常な愛情 7  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:37:08 ID:v94hWmuT

古畑は自分が借したシャツのボタンをはずし、識子の胸元をはだけさせる。
たっぷりとした脂肪質の存在感は、古畑にはある種見慣れたものではあったが、それが熱を持ち脈を打ち、呼吸とともに上下するのはそれだけで違った意味があった。
てのひらですくい上げるようにして包み込む。
識子は切なそうな表情を浮かべ、古畑の頬へと両手を伸ばし、顔を上げさせる。
額にくちづけられて古畑は笑った。心の底から嬉しそうに。

識子には、その瞬間は初めてではなかった。結果として、あまりいいレンアイとは言えなかった相手とのその行為を、わずかばかり恥じいる。
だからだろうか。以前は痛みしか感じなかったその行為に違う感覚が混入し始めたことに、識子はすぐには気がつけなかった。
291:博士の異常な愛情 8  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:37:52 ID:v94hWmuT
「ん、う……あ、はぁっ。……あ、あ。ぅうんっ…」
慣れない感覚に生じる恐怖。思わず古畑に強くしがみついた。
「怖いのかね、江波君」
「い、いえ、そんなことは」
怯えるような様子に、動きを止めて、古畑が識子を気遣うように声をかけた。
慌てて否定した識子だったが、その声は僅かに震えてしまっていた。
それを感じ取ったのか、古畑は、怖いことなどなにもない、安心してくれ……と声をかけ、それから急に、笑い出した。
識子は怪訝そうな表情を浮かべ少しぼやけた視線で、古畑を睨む。
「なにか、おかしいことでも……」
「いや、そういえば、さっきもこんな会話をしたと思ってね。そのときには、まさかこうして、君を抱くとは思っていなかった」
301:博士の異常な愛情 9  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:38:27 ID:v94hWmuT
識子の長い髪を、大きな手で優しく撫で、その一房に口付ける。
「きちんと言えていなかった。こんなオジサンだが、私は今、君をどうしようもなく愛しているよ」
今までの行為で赤く染まっていた顔が更に熱くなることを自覚しながら、識子は呟いた。
「……年齢の差なんて、関係あるんですか?」
「江波君、君は……嬉しいことを言うね」
優しい笑顔を浮かべ、古畑は動くのを再開した。
識子の胸のうちには、もう恐怖はなかった。
穏やかな感情。
優しい感覚に導かれ、昇り詰めていく……
「あ、あ、ぁあ、ん、んぁ、ぁああああああっっっ!!!」
最後の瞬間、一際強く抱き締められたのを感じながら、識子の意識は白く弾けた。
311:博士の異常な愛情 10  ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/16(月) 03:40:11 ID:v94hWmuT
  ◎   ◎   ◎

日本家屋である江波家では感じ得なかった、カーテン越し特有の柔らかな日差しに、意識が覚醒する。識子は身を起こし、あたりを見回した。
ふかふかのベッド。見覚えのない部屋。壁にかかっているの見覚えのあるシャツ。
そして、着込んでいるだぶだぶの紳士物の黒いシャツ。
古畑の寝室であることには間違いがないようだ。
昨晩のアレは、夢だったのだろうか?
識子はほとんど無意識に首筋に手をやる。
そこには、小さなかさぶたがあった。
識子は誰か見ている人があれば艶っぽいといわれただろう笑顔を浮かべ、立ち上がるとひとつ大きな伸びをし、コーヒーの匂いが漂ってくるキッチンへ続くドアを、音を立てないようにそっと開いた。



1:END

こんなに長くなるとは思っていなかった。むしゃくしゃしてやった。反省していない。
32名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 04:03:41 ID:viuHWX6u
GJ
よくやった、その調子で続けてくれ
33名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 11:28:42 ID:EdmBtXIw
GJGJ!!!
他の分岐も期待して待ってるよ〜
34名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 18:18:32 ID:rh6I7/qh
>>20-
うひょうGJ!つか案外人がいてびびった
男はもう一人いた気もするけど気にすんなww
35名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 22:04:27 ID:9NuI07mX
GJ
古畑さん、年上の余裕ってやつが感じられて格好いいなぁ。
しかし、車さん・・・(つД`)
いや、きっと彼なら上手に識子の身体に乗ってくれる筈。
36名無しさん@ピンキー:2007/07/16(月) 22:40:26 ID:tN3U8cEv
寒識でヨロ
37 ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/19(木) 00:50:48 ID:KysSnTQ7
芦茂で行き詰っている。
古畑ほどのものはかけないかも知れない。
いや、それを言えば物部なんてどうなるか予想もつかないが。
とりあえず2は20日までに書き上げて落としたい所存。

百合物は俺個人に同性愛物全般に対する耐性がないので難しいかもしれない。

とりあえず行為の描写が薄いことは許してください。
エロ物なんて書いたこと無かったんだ、と言い訳してみる。

……車さん?どこの寅さんですか。
38名無しさん@ピンキー:2007/07/19(木) 02:26:17 ID:aFL+sRmg
まってるよー!
紳士物の香水の匂いが、厭味でない程度にふわりと漂う。
屋上扉に背を預けて、芦茂が識子を見ていた。
「どうしたんですか?こんな時間に……」
少し驚きながら、識子はその人影へと声をかける。
急に、風が強くなった。髪が乱れるのを片手で抑える。
「識子ちゃんのラボを見たら、灯りがついてたからね」
識子ちゃんこそ、何をしてたの?そう言いながら歩み寄る芦茂に、識子は背を向けた。
「いえ、ちょっと……」
まさか書類仕事を溜め込んでました、なんて正直には言えない。
識子の少し後ろで、足音が止まる。
「ひょっとして、何か悩み事でも?」
「ああ……それは近い、かも」
学生の頃には、25だなんてずっと遠くのように感じていた。
今の自分よりも、はるかにオトナで、格好いい姿を想像したりして。
それが、どうだろう。
こうして碌な化粧もせずに、現場を走り回る日々だ。
望んで手にしたものとはいえ、たまに会う同期の友人たちの洒脱な服装、綺麗なアクセサリーには僅かな嫉妬を禁じえない。
ちょっとだけ、昔のこと考えてました。識子はそう言って笑った。
その笑顔に、芦茂は僅かに動揺し、そして、意を決したように口を開いた。
「昔の……恋人のこと?」
「え?」
何を言ってるんだろう。その思いが口をついて出た驚きは、しかし芦茂には違って受け止められた。
「遠山さんから聞いたんだ。その……有望な、役者さんだったんだよね?」
そこまで聞いて初めて、識子はいつかの嘘を思い出した。
「どんな人、だったの?」
嘘なんて吐くもんじゃない。回りまわって、いつかは自分が苦しくなる。
識子はうつむき加減に夜の街を見下ろした。
「ご、ごめん、変なこと聞いちゃったね。でも、その……もしかして、ずっと、その人のことを、忘れられてないのかなって思ったんだ」
芦茂は慌てて言葉を繋げる。
詳しいことを追求されずに済んで、識子はほっとした。
「いえ、いいんです。昔のことですから……」
言いながら、識子の胸に一抹の寂しさが抜けた。
昔のこと。
子犬のような目をして笑う男のことを思い出してしまったのだ。
そう、そんなのは、昔のことだ。
あのときの銃声が、今もまだ耳の奥で響いているような気がして、識子は身をすくめた。
その瞬間、その体を強く抱き締める腕があった。
芦茂だった。
芦茂は泣きそうな声で叫ぶように言った。
「ごめん!識子ちゃん……もう泣かないで!」
芦茂さんこそ。そう言おうとして初めて、識子は自分が涙を流していたことに気がついた。
寂しさを感じた身に、人の温もりが心地よい。識子はしばらくその腕に体重を預けていた。
「識子ちゃん……」
声が耳元、すぐ近くで聞こえた。そのことに識子ははっとする。
キスできるほどの距離感。慌てて、芦茂の胸を押した。
「これ以上は、ダメです」
「え。」
今まさに唇を狙っていた男の口から、間の抜けた声が漏れた。
「芦茂さん、今、キス、しようとしてましたね?昔の恋を思い出して感傷に浸ってる相手に。それって失礼じゃないですか?」
そう言って唇を尖らせた識子の前で、芦茂は大袈裟にしょげ返って見せた。
「ああもう、識子ちゃんってば、ガードが堅いんだから。
 それじゃあ今からご飯でも一緒にどう?」
何がどうそれじゃあに繋がるのか判らない。そう言おうと口を開いた識子の動きが止まる。
……ぐぅう、きゅるー。
体は、正直だ。
芦茂は真っ赤になった識子に笑いかけて、イタリア車のキーを月光の下に晒した。

駐車場までの雑談、へらーりとかいう会社がひあっととかいう会社の傘下でどーのこーのとか同じエンジンを積んだませらちとかいう会社がやっぱりひあっとの傘下でどーのとか。
そういう話にはさっぱり着いていけなかった……というより正直、そんな話には興味がなかった識子だが、芦茂の指し示すその車が高級車であることだけは一目で理解していた。
少しだけ情けない気持ちで足元を見つめる。
泥だらけのローファー。
「靴、脱いで乗った方がいいですか……?」
おろおろした表情で見上げる識子に、芦茂は左ハンドルの助手席ドアを大きく開け放ち、恭しく頭を垂れる。それから少し顔を上げ、少し不器用なウインクをしてみせた。
「そのままでどうぞ、識子ちゃん。君が僕の助手席に乗ってくれるなら、それだけで光栄だよ」

  ◎   ◎   ◎

こんな深夜でも、帝都ホテルは営業しているのかと驚いた。
生活の多様化や世界で一層進むグローバル化への対応として、数年前から、ホテル内で営業している料理店は24時間かならずどこかが開いているようになったのだ、とフロントマネージャーの高鳥が説明しているのを聞き流す。
識子の関心はそれよりも自分の服装が場違いなことに対して向いていたから。
その時間にオープンしていたのはイタリア料理店。
美味としか形容の仕様がない料理の数々に舌鼓を打ち、大切に使い込まれた一流品だけが持つ、贅沢な質素さで飾られた店内を見回す。
おのぼりさん状態の識子に、芦茂は僅かに苦笑した。
「識子ちゃんは、こういう店、初めてなんだね」
「ええ、まあ……」
一瞬真面目に受け答えてから、むっとする。
「そりゃあ、芦茂さんみたいに、遊び慣れてるわけじゃないですから」
言ってから、言い過ぎたかと慌てて芦茂の顔を見た。
芦茂は怒るでも動揺するでもなく、少し黄昏た様子でゆっくりとグラスワインを飲み干した。
「文壇に混じるようになってからは、僕にもいろんなことがあった。それだけだよ」
芦茂の作家としての顔を、識子は知らない。アイザック・アシモフを意図したようなその名前が、本名なのか筆名なのかすらも。
急に感じた居心地の悪さをごまかすように、識子はいい過ぎた言葉をジョークにしようとした。
「またまたァ。時々女の子とか、連れてきてたりしたりするんじゃないですかぁ?」
「……ここに初めて来たのは、まだ若い頃だったかな。論文と同時に発表した小説が認められて、選考委員だったベテラン作家に連れてきてもらったことがあるんだけど。そのときに、こう釘を刺されたんだ」
芦茂は識子の目を見据えた。
「本気で好きな女じゃなければ、この店には誘うな……って、ね」

  ◎   ◎   ◎

スイートには空室があった。それとも芦茂がもともと取っていたものなのか、識子は知らない。
少なくとも、気がつけばこの部屋で、キングサイズのベッドに腰掛けているということだけが真実だろう。
流されて、しまった。甘い言葉には気をつけていたつもりだったのに、つい、ほだされてしまった。
それは口説く芦茂の表情がいつも以上に真剣だったから、とか、ワインが美味しかったから、とか、幾らでも言い訳できることかもしれない。
ベッドを見れば、熟睡する男のいびきが響いている。
はずし忘れた腕時計が傷む。見ると、もうすぐ5時になろうとしていた。
体中が痛む。
先刻のことを思い返して、覚えていることに少し傷つく。
いっそ忘れてしまいたかった。

『ああ、識子ちゃん、識子ちゃん……!!』
フラッシュバックする、記憶。
識子の上で、芦茂は何度識子の名前を叫び続けただろう。
『ごめん、ごめんね、止まらないんだ……』
謝罪しながら、どれだけの間、識子の体に己の楔を打ち込み続けたのだろう。
痛いとか、苦しいとか、それを訴えるだけの酸素も足りなくて、識子は金魚より哀れに口を開き続けた。
『……、……っ、……!…………っ!!』
何も考えられなくなる、嵐のような時間は、それでも、決して永遠ではなかった。
突き上げられるような感覚の中に、別のものが混じりだす。
『こわいっ……なにか、なにか、くるっ!』
シーツを握り締める手に、更に力が篭る。
識子の様子に、芦茂は一層動きを強く、早くする。
『はぁっ…あ、ひゃぁあああああんんうううう!!?』
『ああ、あー、識子ちゃんッ!』
最後の瞬間に、芦茂は楔を外に放ち、熱情の塊を識子の下腹部に撒き散らした。
芦茂はそのまましばらくじっとしていたが、やがて荒い息を吐き、識子の隣へ転がった。
そして、即座に睡魔に負けてしまったようだった。

「本気で好きな女じゃなければ……、か」
そんなの、男が女を口説く時の、常套句でしかない。
女好きで知られる男の、気障な言葉の一つ一つ。
それらが、冷静になった今では全て裏目に聞こえてしまう。
知らず、涙がこぼれた。
今までだって、ずっと、そう考えて突き放してきたというのに。何故、突然受け入れてしまったのか。
本当に、いろんなことを考えすぎてしまう日には、ろくなことがない……
嗚咽を押し殺しながら、識子はシャワーを浴び、身支度を整えた。

識子自身は、徹夜仕事そのものには、割と慣れてしまっている。
だが、今日はそれどころで済む様子ではなかった。ぼーっとして、スーツスタイルの制服のまま現場に向かおうとしたり、かんこさんが誤認しそうになるほどキータッチの様子がうつろだったり。余りにも調子が悪そうだ、と報告書の不備を叱る所長さえも心配しだす始末。
少しでも目を覚まそうと休憩室でブラックコーヒーを飲み、識子は再びラボへと戻った。
ドアを開ける。
「た……」
ただいま。そう言おうとした口が、【あ】の形のまま止まる。
ラボの中は、なんだこれはと叫びたくなるほど大量の赤い薔薇で絢爛豪華に埋め尽くされ、視覚的には綺麗だが嗅覚的にはかなりごちゃ混ぜの臭いで、さながら花屋と化していた。
中にいたのは、芦茂だった。
真剣な表情は、今朝見たよりも、若干疲れているようだった。
「そのまま仕事に行ってしまったんだね。その……僕を、置いて。」
決して責める口調ではなく、ただ、どうしてそんなことをしたのか知りたいような口ぶりだった。
識子は、顔を逸らす。
申し訳ないとは思っている、それでも。正面から見返すことは、できそうにない。
芦茂は大きくため息を吐いた。
「識子ちゃんがどう思ってるのか、知らないし、今は……ちょっと。知りたくない。
でも、僕は本気なんだ」
そう言って、小さな箱をポケットから取り出し、識子に差し出した。
「サイズ……は、多分間違ってないと思うし、その。デザインも悪くないんじゃないかな。
識子ちゃん。……これ、受け取って欲しいんだ」
芦茂は箱を開けた。中には、指輪がひとつ。
識子はその箱を、芦茂の手を握り締めて、その掌に包ませた。
首を横に振る。
芦茂は傷ついた表情を浮かべまいと、唇をかみ締めた。
「ちゃんと……」
小さく呟いた声。識子の声だと気がつく前に、芦茂は聞き返していた。
「え?」
「芦茂さん。ちゃんと言ってください。誤魔化したり、飾ったりせずに。」
そう言って、顔を上げた識子は、泣き笑いのような表情で芦茂の顔をまっすぐ見上げた。
一瞬あっけに取られた後、芦茂は識子と同じような表情を浮かべ、力強く頷くと彼女の唇に己のそれを重ねた。



2:END

帝○ホテルを調べてたらなんかすんごい遠い世界だと思った。
何その金額。桁間違ってない?

個人的に他の人の書いたのも読みたぁい。誰か書こうよー。
47名無しさん@ピンキー:2007/07/21(土) 16:31:36 ID:bLkgENYS
>>39-
GJ!

書きたい気もするが、どうなるかわからんので明言はしないでおく
48名無しさん@ピンキー:2007/07/23(月) 17:30:38 ID:feC5tmLd
ストーカー×識子まだ?
49名無しさん@ピンキー:2007/07/27(金) 13:14:46 ID:Y0FFi72f
50名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 09:16:18 ID:KT7aHhL/
51名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 00:26:25 ID:ytw8IVrh
52 ◆/YXR97Y6Ho :2007/07/29(日) 20:34:36 ID:9lpUOOEh
あああああ。
ちょっとネットが不安定な間に…保守ありがとう。
今携帯なんだ。
パソコン帰ってきたらまた頑張る。
53名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 00:00:57 ID:L7eW++tU
がんばれ
54 ◆/YXR97Y6Ho :2007/08/07(火) 01:59:18 ID:QgjGSijU
PC復帰。
キャラ萌えスレの

>>・眼鏡のイケメン→幽霊
・法医課のナイスミドル→死体萌え
・交通課、物理課のナイスミドル→多分既婚
・ツンデレナイスミドル所長→同じく多分既婚
・生物課のイケメン→昆虫萌え
・まあイケメンの巡査1→/(^o^)\
・同じく巡査2→婚約中

これだけ男がいて恋愛フラグが立ってるの芦茂タンだけってのが凄いよ! すごいよ!>>

に大笑いした。
55名無しさん@ピンキー:2007/08/07(火) 23:03:25 ID:0ivf+57s
>>54
おかえり

それ俺もワロタw恋愛フラグなー。物部たんはやっぱ既婚だろうか……
56名無しさん@ピンキー:2007/08/10(金) 22:21:28 ID:Mvi7hGbX
57名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 03:44:17 ID:CwOOBVjx
この位置でいつまで生き残れるのか少し興味があるんだぜ??
58名無しさん@ピンキー:2007/08/12(日) 12:01:58 ID:/g64Fsb1
華麗にage
59 ◆4xLZ.gsETk :2007/08/16(木) 08:36:16 ID:QdtIjwz0
やっと規制から抜けられた〜
保守代りに


『熱は時を越えない』



体が…熱い。目が冴えている。
理由は分かっているけど今までずっと鑑太とか・・・査乃介がいてできなかった。

鑑太も今ははとてもよく寝てる。
あれだけお魚を食べてれば当然だけど。
問題は…

「…査乃介?」

返事はない。幽霊って眠るのだろうか。
もう一度呼ぶ。…やはり返事はない。
体の火照りが意識せずとも感じられる。

「んっ」
そっと…パジャマの中に手を伸ばした。
キャミソールをずらし手のひらほどの胸を包む。
先端をつまむと甘い刺激が走る。

「ふっ…ん……はぁ…っ」

そのまま胸をいじりつつもう片方の手を自分の秘所に伸ばした。
じっとりと湿ったそこは恥ずかしくなるくらい熱く、軽くさするだけで声が漏れてしまう。

「んっ…くはぁ…あ…やっ…査乃介…」

なんでだろう。査乃介のことが頭に浮かぶ。
私は現代に生きてる人間で…彼は江戸時代に死んでしまった……幽霊なのに。
ただ見守ってくれるご先祖様。それだけなのに。こんな事は不毛だと分かっているのに。

「査乃介っ…」

結ばれないと分かっているのに。心が熱くなっていく。
秘部で動く指は蜜に汚れ、体の熱は行き場を探す。

「ぁ…っ、あ、ひぁ…ん、…ぁ…ふぁ、ああああっ!!!」

目の裏が真っ白に塗りつぶされて頭の中が弾けた。
ぼんやりと、そしてゆっくりと私は意識を手放していった。



「識子殿…」

ドアから覗く、かなわぬ思いとやり切れなさに染まった赤い瞳に気づかぬまま。



終。
60 ◆4xLZ.gsETk :2007/08/16(木) 08:37:13 ID:QdtIjwz0
無理やり幽霊とフラグ立て。
死んでたっていいじゃないか。
61 ◆/YXR97Y6Ho :2007/08/16(木) 10:59:49 ID:KcIm8y3k
おお、遂に俺以外の人の投下が!
確かにあの環境じゃ溜まってそうだ。GJ。
俺も自分の続きがんばる。
62名無しさん@ピンキー:2007/08/19(日) 04:05:30 ID:5GO+BSVq
63名無しさん@ピンキー:2007/08/25(土) 20:55:03 ID:tEEPcN2F
64名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 04:49:56 ID:HOvQR97p
<ハイ、植木さんお願いね
⊃★
65名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 04:55:06 ID:g209WAg9
「うん、これは肛門だね。
 色素の沈着は少ないな。
 お風呂あがりなのか、ボディシャンプーの香りがするね。
 ペロ・・・」

「ひゃうっ!
 ちょ、ちょっと植木さん、
 舐めて大丈夫なんですか!?」

「うーん。ここまで丁寧に洗ってあると、
 汗の味くらいしか分からないなあ。
 識子ちゃん、奥まで舌を挿し込んでみるから、
 ちょっと力を抜いていてね」

「えっ・・・あっ・・・ほわ・・・あああ・・・あ・・・
 くううぅん・・・っ!」
66名無しさん@ピンキー:2007/08/30(木) 14:40:30 ID:Hn/wZw1d
きめえ
67名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 14:08:26 ID:/k5+XeoG
エロパロスレとしては非常に正しいネタだな
俺は好きだぜ
68名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 02:25:52 ID:pj4Vaghj
「ふ、古畑先生・・・
 私、撃たれてしまって・・・」

「だ、大丈夫かね識子くん! これは大変だ!
 ・・・解剖かね? 検死かね?」

「い、いえ・・・。まだ死んでません。
 せめて応急処置だけでもお願いできませんか」

「よし、分かった。事は一刻を争うな。
 概観。江波識子、20代女性。腹部に銃創あり。
 他に目立った外傷なし。致命傷となりうるのは腹部の銃創痕だが、
 死因の断定は検死を進めてからにしよう。
 さて問題だ、識子くん。死体の体温を測るには・・・」

「肛門です、肛門。
 あー、もう意識が・・・」
69名無しさん@ピンキー:2007/09/01(土) 21:50:19 ID:vuh9or8r
>>68
古畑博士、さすが気が早いw
70名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 20:15:32 ID:4MxpBiBn
肛門です、肛門。 あー、もう意識が・・・


このやる気の無い識子さん好きだwwww
71ほしゅのための、いみのないぶんしょう:2007/09/06(木) 02:10:01 ID:amJB23yN
こっちのまったりムードは凄いな
72名無しさん@ピンキー:2007/09/13(木) 16:44:25 ID:FWSKzFX1
そういえば推理ネタないのね
73名無しさん@ピンキー:2007/09/18(火) 03:33:31 ID:bTlhp72n
保守。
物部が独身だとは思えなかったので、キャラ追加してます。
 こういった改変に不快感を持つ方はあぼんするなり該当部を読み飛ばすなりの形で注意してください。
753:センセイの鞄 1  ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/19(水) 02:30:05 ID:FS/cT0Mz
物部の表情には、疲労が色濃く浮き出ていた。
識子に気がつくと、物部は普段の仏頂面をそれでも僅かに和らげた様だった。
「ああ、江波くんか……」
「お疲れ様です。今日も、泊り込みですか?」
「うむ。新兵器を開発中だ」
近いうちにお見せできるだろう。そう言いながら不敵な笑みを浮かべる物部。そういえば、こうして直に顔を合わせるのは随分と久しぶりだと気がつき、識子は目を細めた。
「物部さんとは、いつもお話してるような気がしてましたけど……」
「うん?そういえば、いつもはモニター越しだったか」
そう言って、眉間を揉み解す物部。その左手薬指に指輪があるのに気づき、識子は怪訝な顔をした。
「物部さんって、奥様いらっしゃるんですか?」
「ああ、まあな」
自分でも、まるで忘れていたといわんばかりの表情で左手を見る。その表情が陰ったのを見て、話題にすべきでなかったかと識子は自戒した。
それでも、一度出してしまった話を止めることは、難しいものだ。
黙してしまった識子が話の続きを待っているのだと思ったのか、物部は静かに続けた。
「そういえばまた、長く自宅には帰っていないな。
 ここか、大学か。いつも、どこかに泊り込んでいるような気がするよ。
 なに、帰ったところで誰もおらん。どこにいようと、違いはない」
「え、でも、今……」
奥様がいらっしゃると。識子がそう続けたいのを察したのだろう。物部はゆっくりと空を仰いだ。
「まだ若い頃に。癌だ。
……もっと早く気がついてやれていたら。今でもそう思うよ」
物部の横顔を見つめながら、せめて今だけでも星が輝いていほしいと、識子はそう祈った。
この不器用な男を、今、見守っている存在が、せめて自分のほかにもあってほしいと。
南東京市の空はどこまで行っても闇にはならない。
明日は雨になるのだろうか、低く垂れ込めた雲を地上の光が照らしている。
一番憂鬱な色の空。
「江波君、君にも、誰か大切な人がいるのなら、その人との時間を大切にな」
763:センセイの鞄 2  ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/19(水) 02:31:05 ID:FS/cT0Mz
どこかはにかんだような笑顔。照れ屋なその横顔の主の胸に、識子はその身を寄せた。
「……!?え、江波君?」
「奥様のこと、今だけでも。忘れてもらえませんか?」
顔を上げ、戸惑う物部の瞳を見据え、識子はしっかりとした口調で告げた。
困惑した表情で識子を伺い見ていた物部だったが、識子の表情はひどく真剣なままで。
本気なのだと、強い意志を持った瞳が訴えかけていた。
それでも、肩に手を置いて、物部は識子の体と距離を置いた。
「それは……できない。早く部屋に戻ったほうがいい」
背を向け、足早に階段へと向かう。その物部の背中に、識子の声が届く。
「好きです、私。物部さんのこと。物部さんの時間を、私に分けてください」
革靴の足が、止まる。
物部はなぜか、振り返り方を忘れたような気がした。
無邪気な振る舞いにも見える、無鉄砲な女だと思う。嫌いかと言われれば、寧ろその逆だと思う。
気丈に振舞っても、弱弱しいところのある女だと。
物部の背中に、再度の拒絶を恐れるかのようにぎこちなく、識子の腕が触れた。
「……ずいぶん、年上趣味だな」
「若い女は嫌いですか?」
「……長いこと独り身だった」
「一途な人だって、知ってます」
「君は……」
「……」
「男に身を任せるというのが、どういうことか。わかっているのか?」
細い腕は、何も言わずに物部の体を抱きしめた。


明かりを落とした物部のラボの、几帳面に片付いたデスク。白衣をシーツ代わりにひいても、その冷たさは誤魔化せない。薄明かりの中で、うっすらと汗ばんだ識子の肢体が、物部の体を受け止めるように包んでいる。
長く女に触れていなかった男には、彼女を気遣う余裕などなかった。
「あ、あっ……ん、ん、あ、もの、べ、さぁ、あん……!」
肉が肉を貫く快楽。
ぬめり絡みつく腔と、穿つような肉の牙。
貪っているのは男なのか、女なのか。
「ぐ……くっ!」
それすらわからなくなる果てに、お互いの身勝手さをぶつけ合う。
「あ、ん、んぁ、ぁはああ……!」
どこか獣のような悲鳴をあげ、強くしがみつく女の、反らされた首筋。
物部は噛み付くように強く吸い上げ、赤い痕を残した。
773:センセイの鞄 3  ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/19(水) 02:31:54 ID:FS/cT0Mz
そして、物部は夢を見ていた。
自分で夢だとわかるくらい、鮮明で、曖昧な夢だった。

「理太郎さんは、私のことを、忘れてしまったのですか?」
物部はその声に、首を横に振る。
「忘れていない。忘れたくもない。
 だが、どうしてだろうな。
 お前の声を、笑顔を。……肌を、髪の感触を。
 あれほど焼き付けた物が、どうして今、こんなに曖昧で、思い出せないのか」
それは、懺悔だった。
若い頃、この先ずっと隣にいるものと信じて疑わなかった相手への、不器用な謝罪だった。

着物姿の似合う女だった。

看取った後、その棺には、彼女に一番似合っていた赤の着物を入れた。
葬儀も何もかもが済んだある日、玄関先で何気なく「ただいま」と口にした。
何もかえってこなかった。
思えば、それからだ。
自分が家に帰る日が少なくなったのは。

赤い着物の女は、そっと物部の胸に寄り沿った。
そっと、白い腕を物部の左胸、ちょうど心臓の上に這わせる。
「私は、ここにいます。あなたが憶えている限り」
そう言って微笑む女の、肩で切りそろえられた柔らかな黒髪。
しなだれかかる、華奢な重さ。
覚えていたのだと思い知る痛みに、物部は唇を噛み締めた。
「すまなかった。おまえを、幸せにしてやれなかった」
女は微笑み、僅かに身を引き、右袖の袂を翻した。
ぱぁん。
乾いた音が物部の頬を打つ。
「馬鹿にしないでください。哀れまないでください。
あなたに幸せにして欲しいなんて思っていません。
私はあなたの妻として生を終えました。それでも。
幸せだったのかどうか、決めるのは、私です」
ああ、そうだった。物部の胸に、奇妙な懐かしさが燈る。
「幸せでした。私はあなたと居たから幸せだったんです。
 ……だからといって、あなたに、私の夫として死んで欲しいなんて」
強気な女だった。気丈な心根の女だった。
「……本当は、少し、想います。でもね、理太郎さん」
そのくせ、酷く優しかった。
「私は、あなたの幸せを、誰よりも願ってる。」
だからこそ、愛した。
「それだけは、忘れないでください。
 あなたが幸せになることだけを、今でも願っています」
女の笑顔は、とても優しくて、悲しげで、美しかった。
思わず抱き寄せようとした赤い着物が、すっと掻き消える。
目の前には、からっぽの、何もない空間が、広がっている。ただ儚々とした空間ばかりが、広がっているのである。
もうこの世界のどこにもない姿を、物部は探そうとしなかった。
そして、理解した。
これが訣別なのだと。
「……ありがとう、ツキコ」
783:センセイの鞄 4  ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/19(水) 02:33:48 ID:FS/cT0Mz
眠ってしまっていたのは、わずかな時間だったのだろう。
目を開けた物部が最初に見たのは、不安げな表情で毛布をかけなおそうとする識子だった。
「うん……?江波君……」
「あ。……起こしちゃいましたか?」
「いや……そんなことはない。……今何時だ?」
自分はどれくらい寝ていたのか?そう聞く物部に、識子は少しだけ寂しげな顔を浮かべ、無理に笑顔を作ってみせた。
「やだなあ、物部さん。ずっと寝てたじゃないですか」
その目がうっすらと赤くなっていることに気が付き、物部は識子の頭を撫でた。
「嘘はつかんでいい。確かに、私の時間を君に分けたんだから」
すっと、識子の頬を一滴の涙が伝う。
「ごめんなさい……」
「なぜ謝る?」
「物部さん、寝言で……。ツキコって、奥様の名前でしょう?」
ああ、なるほど。何かがすとんと腑に落ちたような心持で、物部は識子の涙を拭った。
「いつか、きちんと話すよ。……そうだな。すまないが、頼みがある」
識子は不思議そうな顔で、物部の顔を見つめた。
物部は、穏やかに笑って言った。
「恋愛を前提に、付き合ってはくれないか?」
識子は、泣き顔のような笑顔を浮かべて、強く頷いた。



3:END
79名無しさん@ピンキー:2007/09/19(水) 15:25:45 ID:BIEE/Z4Q
キタァァァーーー!
GJ!
なんか投下を重ねるごとにエロスが増してるよ!
80名無しさん@ピンキー:2007/09/20(木) 00:53:03 ID:K3YcIAt0
あ、あれ、目からなんか汁が……

ばっかお前GJすぎだっての!!

ぐす…
81名無しさん@ピンキー:2007/09/24(月) 02:09:17 ID:zmpyI1iC
次回 急展開
ツンデレ物部 vs 素直クール古畑 〜南海の大決戦〜
お楽しみに!
82 ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/25(火) 03:35:10 ID:SqPPWvjN
感想有り難うございます。なんかかなり嬉しい…


>>81
俺が読みたい
83名無しさん@ピンキー:2007/09/28(金) 02:27:40 ID:os71qWMJ
選択肢の続きの、識子×植木って、
他人が書いてもいいですか?

84 ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/28(金) 02:36:01 ID:zzz2KnXH
どうぞ。
俺自身も書いてるし、このまま闇に葬る気もないが、どうも俺は遅筆にすぎる。
書いてた別板も、圧縮で消えたし…

鑑識官は、凄い隙だし、いまさらの後出しなんだが、実は俺、このスレの1だ。
他の人のも読みたいんだ、本気で。
発想補助になれたのなら嬉しい。
85 ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/28(金) 02:36:33 ID:zzz2KnXH
隙ってなんだ。好き。
86名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 19:03:51 ID:314gMa2l
植木本命なのでwktk
榎×植もいい

物部も植木も恋愛受け身キャラだよな
物部は消極的だがエチでは主導権を握るタイプっぽいが
植木はむしろ最後まで受け身
積極的なヤツに押し倒されて、騎乗位で襲われればいい
8783:2007/09/29(土) 23:11:12 ID:a9siTS4O
>>86
>植木はむしろ最後まで受け身
>積極的なヤツに押し倒されて、騎乗位で襲われればいい

うは。
さっき書き終わったやつそのままw

推敲するんで、あとちょっと時間下さい
88名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:17:23 ID:314gMa2l
ちょwマジかww
俺テラ予言者ww

なんか『交尾』とか知ってても、SEXとか快楽には無知っぽいよな

…いや、逆にやたらと詳しくても萌えるものがあるw
89名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:28:58 ID:8qBb/gQC
植木さん、体格いいよな。
90名無しさん@ピンキー:2007/09/29(土) 23:33:18 ID:ASyJ98gJ
>>89
昆虫採集で普段から身体動かしてそうだからね。
ぜったい芦茂より腹とか引っ込んでる。

91虫と交尾と虫介と 前文:2007/09/30(日) 00:52:43 ID:WJmpRaAL
選択肢に続く、識子×植木の話を投下します

快く創作を許してくれた◆/YXR97Y6Hoさんに感謝します。
識子さんがバージンじゃないという設定はかなりイイと思います。まぁ、もう25だしね……。

というわけで、非処女の識子さんが植木の童貞を奪う話になりました。そういうのが苦手な方は、すいません、読まないでください。

あとれから、かなり長いです。ごめんなさい。

しかし全然エロくならなかったな……。なぜだ?

注意:ゲーム本編(特にDS版鑑識官の第5話)のネタバレを含みます。
92虫と交尾と虫介と 1:2007/09/30(日) 00:53:28 ID:WJmpRaAL
    4:植木さん…?どうしたんですか!?


「あれ、江波さんだ」
 夜の屋上に現れたのは植木だった。白衣が夜闇にぼんやりと浮かび上がっている。
「あ……植木さん……」
 が、識子は違和感をおぼえて首を傾げる。
 すぐに原因は分かった。
 優しそうに微笑む彼は、白衣ではあるものの、トレードマークになっているいつものヘッドセットをしていない。暗くてよく分からないが、肩にヒラタくんも乗せていない。
 識子の不思議そうな視線に気付いたのだろう、植木はにっこりと笑った。
「夜だしね。あのルーペ、どうしても視野が狭くなるから。暗いと危ないんだよ」
「ヒラタくんは?」
「よい子は寝る時間」
 植木は歩いてきて識子の隣りに立った。
 両腕を大きく振り上げて……深夜の空に伸びをする。
 ふぁー、とその口から盛大な欠伸が漏れる。
「あー疲れた。こんな遅くまで残業なんてするもんじゃないねー」
 こんな遅くまで残業することなどざらな識子にはグサッとくる台詞である。
「……そーですね、あはは」
 カラ笑いをするのがやっとだ。
「あー。それにしても」
 顔の引きつった識子に、植木が笑いかけてくる。
「静かだね。せめて虫の音でもあったらいいのに」
93虫と交尾と虫介と 2:2007/09/30(日) 00:53:58 ID:WJmpRaAL
「あ……はい」
 思わず返答の言葉を探してしまったのは――植木の素の顔がそこにあったからだった。
 南東京科研の男たちのなかで、顔の造りはこの植木虫介が一番いいと思う。ヘッドセットで隠れていないせいでそれを再認識してしまった。
(これで異常なほどの虫好きじゃなければね……)
 つまりはそれがネックである。
 冬月……、いや榎田か。彼女のラブレターは、植木には届かなかった。
 芦茂クラスは望むべくもないが、彼にあと少しでも『人間』への興味があったなら。植木は、日本のどこかの山中で待つ榎田に会いに行くことになったのだろうか。
 ――というか、そもそも。
「植木さんって、女性とお付き合いしたことってあるんですか?」
 ふと思ったことが口に出てしまい、識子は慌てて手で口を押さえた。
「すみません、あの」
 ごめんなさい深い意味はないんです――その言葉を言い終わるよりもはやく植木は答えた。
「ないよ」
 感情が欠落しているのではないかと思えるほど、彼は見事に笑顔だった。
「人間の女性に、興味ないから」
 そうだろうなぁ、と識子は妙に納得してしまう。
 女性のヌードと虫の産卵シーンの写真、どちらを取るかときかれれば、彼は100パーセント虫の産卵シーンを取る。そういう人なのだ。
94虫と交尾と虫介と 3:2007/09/30(日) 00:54:34 ID:WJmpRaAL
「人間って、そういうとこ面倒くさいよね」
 彼は手すりに手を置き、遠くを見ながら話している。夜風が色素の薄い髪をふわりと持ち上げたが、植木は直そうともしない。
「虫なら交尾に迷いなんかないんだ。本能に突き動かされて雄と雌が交尾して、受精して卵産んで、卵が孵って……。その繰り返し。そっちのほういいよね、何も考えなくていいし、何より崇高だ。そう思わない、江波さん?」
「え……」
 珍しく露出した両目で間近から微笑まれ、識子の胸は高鳴る。繰り返しいうが、彼は顔だけはいい。
「自然の摂理。そうやって命は受け継がれていくんだよ。けど人間は……」
 優しそうな顔に影が落ちる。溜息混じりに、彼は言葉を続ける。
「交尾に快楽を求めるでしょ。愛とか、束縛とかも。いろんなものが付随しすぎなんだよね。虫みたいに純粋じゃない」
「はぁ……」
 人間の交尾が――セックスが虫みたいに純粋じゃないと嘆く日本でも有数の虫学者。やっぱり植木さんは植木さんだ、と識子はなぜか嬉しい。
「だったら、私としてみます?」
 ほんの冗談のつもりだった。
「そのう、植木さんってしたことないんでしょ? 検証していないことを論拠にするのはよくないですよ、科学者として」
「……あっ」
 植木は目を見開き、識子の肩を掴んだ。
「そうだね。どうかしてたよ。ボク、科学者なのに!」
95虫と交尾と虫介と 4:2007/09/30(日) 00:55:31 ID:WJmpRaAL
「え……あの」
 植木に掴まれた肩は、痛くない。植木の手はあくまでも優しく識子の肩を捕獲している。
「場所は……、江波さんのラボでいいかな? ボクのラボ、ちょっと散らかってて……」
 苦笑いする植木に女を誘う下心を見ることはできない。
 まるで、これから珍しい虫の交尾を観察する研究者のような目の輝きをしていた。

 断ることもできた。いやだなー冗談ですよ、と笑うこともできた。
 そうしなかったのは――認めたくはないが、識子はやっぱり、彼のことが好きなのだ。
 今日が安全日なのも、なにか運命のような気がする。
 常夜灯が照らし出す、薄暗い識子のラボ。
 植木に椅子に座ってもらうと、識子はのしかかるようにキスをした。
 なんといっても識子は経験者であり、植木は未経験者である。教えるのは識子であり、植木はただ識子の教えを享受しているのみ。
 いつもと立場が逆ね。こういうのも面白い――。
 そんな余裕も、何度か舌を合わせ唾液を交換するうちに薄れてくる。
「植木さん……」
 囁く声が、自分でも驚くくらい甘い。
「ねえ、植木さん……触って……」
 植木のしなやかな手を胸に導く。
「うん……こう?」
 おずおずと、大きな手が識子の胸を撫でる。
96虫と交尾と虫介と 5:2007/09/30(日) 00:56:08 ID:WJmpRaAL
「ん……」
 久しぶりの感覚だった。他人の手がゆっくりと乳房の周囲を触る。植木の手は、決して無理強いしない。もどかしいが、それ故の快楽もある。
「植木さんのもしてあげる……」
 胸を触られながら、識子は植木の白衣のボタンを外した。それからネクタイを解き、ブルーのシャツをはだけさせる。
 植木の胸板や腹筋は引き締まっていた。仕事をほっぽりだしてフィールドワーク(捕虫網を持って野山に虫を追いかけること)に明け暮れているだけのことはある。
 胸板に鼻をくっつけると、微かに男の汗の匂いがした。識子は植木の匂いに包まれながら、そっと薄紅色の乳首に舌を伸ばす。
「あっ」
 植木の声があがる。胸を触る植木の手が止まるが、識子は構わず舌先を硬くして、ちろちろと左右に乳首を転がしてやる。
「えっ……江波さんっ……」
 識子は顔を上げ、植木に微笑みかけた。
「えへへ。どうですか? 男の人でもここって感じるんでしょ?」
「あ……うん、いいよ……。なんか、冷たい感じがして……」
 植木の反応に満足し、識子は再び胸板へと顔を戻した。こんどは逆の乳首を刺激する。つついたり転がしたりしていると、小さな乳首は一丁前に充血し、しこってきた。
 さすがに植木も声を我慢するようになったが、苦しそうなうめき声が時たま漏れるのが、たまらなく識子の身体を熱くする。
97虫と交尾と虫介と 6:2007/09/30(日) 00:56:57 ID:WJmpRaAL
「こっち、窮屈なんじゃないですか」
 乳首への愛撫を十分してから、識子は植木の股間を軽く指でなぞった。植木の股間は、まるで骨そのものであるかのように硬くなっていた。
「うっ……」
 ほんの少しの刺激でも、植木は辛そうに眉をひそめる。
(植木さん、かわいい……)
 内側の膨張により張ってしまったチャックを、識子はゆっくりと下ろす。
 できた隙間から、トランクスに包まれたモノが垣間見えた。
「あ、これ」
 識子が目を引かれたのは植木のモノではなく、トランクスの柄だった。数年前に流行った子供向けの虫のカードゲーム、あれのイラストが描かれたものだった。
「あ……うん」
 喘ぐように植木が言う。その頬は度重なる羞恥ですっかり赤くなっている。
「ほら……、やっぱり、ヘラクレスオオカブトって格好いいからさ……」
 潤んだ瞳で識子を見上げる。
98虫と交尾と虫介と 7:2007/09/30(日) 00:58:31 ID:WJmpRaAL
(う)
 思わず生唾を飲み込んでしまった。
 識子は、よく植木の母親みたいだといわれる。では、これは母性本能だろうか? 母性本能で合っているのか? とにかくたまらなく植木が可愛い。
 本当はもう少し手順を踏みたかったのだが……。
 識子は植木のベルトに手を掛け、外しはじめた。

 半脱ぎになったズボンとトランクスが、植木の膝でとまっている。座ったままの彼の股間には屹立したモノ。使い込まれていないソレはまだ白くすべすべで、完全に先端部分を露出させている。すでにたっぷりと先走りの液が出ていた。
 いっぽうの識子は、紺色に黄色のラインが通る地味な制服の、上だけを着用していた。下はなにもはいていない。
(見られてる……)
 普段は隠れている植木の左目が自分を見ている。しかも、仕事着である制服をこんなふうに着崩している自分を。
 その思いだけで識子の身体は火照ってしまう。
 識子は座る植木に背を向けると、彼の腰に座るように尻を落としていった。手はしっかりと植木のモノを捕捉している。
 つん、と識子の女性自身に植木の先端が当たる。識子の準備は万端だった。なにもしていないのに、識子のそこは恥ずかしいほど潤っていた。
99虫と交尾と虫介と 8:2007/09/30(日) 00:59:09 ID:WJmpRaAL
「その……じゃ……、入れますね」
 背後の植木を振り返り、識子は最後の確認をとった。
「……うん」
 押し殺したような、低い声だった。
 識子は腰をさらに落としていく。入り口がちゅぷりと植木の先端をはんだ。
「あ……」
 識子の口から声が漏れる。
 大きな悦びへの一歩め――。
 そのまま、識子は植木を胎内に招き入れる。
 ぬるっと――愛液に促された熱いカタマリが、識子の狭い器官を蹂躙しながら押し入ってくる。
「……んぅ」
 すべてを受け入れたとき、識子は自然と息をついていた。
「江波さん……。江波さんのなか、あったかい……」
 識子の耳元で、植木の声がとろけそうに囁く。背を植木の胸に守られた識子は、不思議なほどの安心感を得ていた。――彼の手は所在なさげに椅子の手すりにかけられている。
「ん……植木さぁん……」
 識子は唇をとがらせキスをねだった。くすっと笑って、植木は唇を寄せる。最初は唇だけのキス――それでは物足りないというように舌が入ってくる。識子は植木の舌を迎え入れ、ざらざらとした舌の上の部分を擦り合わせた。
 植木の舌……。いつもはモニタ越しにしか顔を合わせない、有能な虫学者。その彼が、いま識子のなかにいる。いちばん深い場所に……。
100虫と交尾と虫介と 9:2007/09/30(日) 01:01:05 ID:WJmpRaAL
「あんっ」
 突然植木が腰を動かしたので、びっくりした識子は顔を離してしまった。
「あ……ごめん。なんか、急になかが締まって……」
「え……」
 もちろん意識してやったことではない。頬が熱くなる。
「あ、ほらまた。きゅって締まったよ」
 植木の声は、いつも通りやさしい。
「だ、だめ。動かしちゃだめ……」
「うん? こう?」
「あんっ、だめって言ってるのにぃ」
 下からの連続した突き上げが識子の快感を揺さぶる。
「あっ、やっ、……だめ、だめなのぉ」
 子供のように頭をいやいやと左右に振る。せっかくリードしていたのに……またいつものように、植木がリードする側になってしまった。
「ん……植木さん、植木さぁん……」
「なに?」
 識子の下で腰を動かしながら、植木は波打つ識子の髪を片側に寄せた。さらされた頬に植木の熱い息がかかる。それがぞくりと背筋に電気を走らせる。それにつられて、植木がまた力強く突き上げてくる。
「あんっ、植木、さん……」
101虫と交尾と虫介と 10:2007/09/30(日) 01:01:51 ID:WJmpRaAL
 あなたのこと好きなんです、と言いたかった。
 顔じゃなくて――あなたの、虫に対する純粋な好奇心とか、生き物全体へ向ける優しい眼差しとか、共用冷蔵庫にウジ虫つき腐肉を入れてしまう常識のなさとか。そういうの全部ひっくるめて、あなたのことがすごく気になるんです、と。
 だが……。
 識子の脳裏に榎田の顔がちらつく。
 彼女は植木を愛した。そして植木に、私を愛してくれとラブレターを送った。結果は――。
 宝探しゲームに託した彼女の思いは。植木には、届かなかった。
(好きになっちゃいけないんだ)
 植木の太股に手を置き、識子は彼の動き合わせて自分から腰を振る。
 好きになっても、植木は答えてはくれない。好きだとか嫌いだとか、そういう情熱のすべてが彼の場合虫にまわされているのだ。それが植木を第一級の虫学者たらしめている主な要因なのである。
 切ない思いを胸から押し出すためにも、識子は行為に没頭する。
102虫と交尾と虫介と 11:2007/09/30(日) 01:02:50 ID:WJmpRaAL
「あっ……ん……」
「え、江波さん」
 後ろからせっぱ詰まった声がした。
「ごめん、ボク、もう……」
「あっ、いいですよ、なかっ、なかに出してくださいっ」
 膝に置かれた識子の手首を強く握りしめたのが、彼の答えだった。
「ごめ、イく……!」
 植木の動きが激しさを増す。
「あっ、やぁっ」
 なかのモノが膨張するのを感じ、識子のなかにも空白がうまれてくる。まるで圧縮された快感が魂をどこかに押しやろうとしているような、不思議な浮遊感。
 喉奥からしぼり出すようなうめき声と同時に、植木が識子の最奥まで自らを突き入れた。
 植木の命が、ほとばしる。
「あぁぁ!」
 そのとき識子の頬に涙が一筋流れたのは――。きっと快楽のためなのだと、識子は自分に言い聞かせた。

 後始末を終え服をなおした植木が、うーんと腕を組んで識子を見下ろしていた。腰かけているのは識子の机。お行儀が悪い、と注意するべきだろうか。だが――そんな気が起きない。注意するにも体力がいるのだ。識子はいま、とにかく疲れていた。
「ヒトの交尾を検証する、ということだったけど……」
「あ……はい」
103虫と交尾と虫介と 12:2007/09/30(日) 01:03:47 ID:WJmpRaAL
 識子は椅子に座ってぼんやりと植木を見上げている。こちらも、いつもの鑑識の制服を上から下まで着込んでいる。
「……科学では、検証実験を何回もやって、それではじめて発表するんだけど」
「え……」
 発表、という言葉に、識子の意識が覚める。
「ちょ、ちょっと植木さん。これはその……、私たちがしたってことは、内緒ですからね内緒!」
 特に芦茂さんには――と、口の中でもごもごと付け足す。あの人に知られると、いろいろと面倒なことになる気がする。
「分かってるよ。ボクだって大人なんだから」
「それならいいんですけど」
「それで、これからも定期的にこういうことをしたいんだけど」
「へ?」
「だから、ヒトの交尾を。相手は君で」
 顎を引いた植木の両目が、上目遣いに識子を見ている。
「どうかな」
「え……、えっと」
 それは、付き合って下さいという告白ですか? ――そう心に思いながら植木を見上げれば、植木の顔にはやはり下心がない。
104虫と交尾と虫介と 13:2007/09/30(日) 01:04:25 ID:WJmpRaAL
 これは、植木にとって本気の提案なのだ。
「う……」
 かえって識子のほうがどぎまぎしてしまう。
 少しだけ胸が痛いが――。いつまで経っても植木はこの調子で識子に接してくるだろう。『交尾の検証』が『愛の証』にかわることは、まずない。
 指と指をつんつん合わせながら、植木をまともに見ることができずに視線をさまよわせる。
「私でよければ、その。いいですよ……」
「ほんと? ありがとう、江波さん!」
「あ……あははははは……」
 ――泣きたい。
 が、その思いは植木の次の言葉でひっくり返ってしまった。
「ボク、江波さんのこと、前から好きだったんだ」
105虫と交尾と虫介と 14:2007/09/30(日) 01:05:37 ID:WJmpRaAL
「……へ?」
 ああ、榎田さんにいったのと同じように友達として好きなのね……。
「だってこれ、ヒトの交尾の……『セックス』の検証だからね。愛とか束縛とかも含めての検証だよ。だから江波さんなら適任でしょ、ボクの相手に」
「……はい?」
「虫くらい愛してるよ、江波さん」
 虫かよ!
「でも、あの。人間の女性に興味ないんじゃ……」
 そりゃ、確かに幽霊と喋るし猫又も飼ってるけど。しかもあの人たちに事件の捜査手伝ってもらったりしてるけど。でも、私は一応人間です。
「やだな。ボクだって、恥ずかしかったら嘘くらいつくよ」
 ――こんなふうににっこり笑われては、識子はもう何も言えない。
「そういえばさっき、何か言いかけてたけど……。あれはなんだったの?」
「へ?」
「ほら、交尾してるとき。なんか、ボクの名前呼んでたでしょ。あれってなんだったの?」
「あ……」
 植木に『好き』と言おうとして……でもためらって……。
「なんでも……、なんでもないんです、植木さん。ただ、私も――あなたのことが大好きってだけですから」
 言いながら、識子は指で目を擦った。じわりと熱い涙がにじみ出てくるのが、なんとなく恥ずかしかったからだった。



     終わり
106虫と交尾と虫介と 投下後のいいわけ。:2007/09/30(日) 01:06:22 ID:WJmpRaAL
ん〜。◆/YXR97Y6Hoさんみたいにグッと来るものがない〜。なぜだ?

魂に訴えかける文章力が欲しいです。
107 ◆/YXR97Y6Ho :2007/09/30(日) 01:23:16 ID:n76R9/4a
や、やられたー!
やはり、やはり彼のトランクスは『ソレ』だよな!それしかない!!
GJ〜!
「虫かよ!」ってとこ凄い好きだ。
識子かわいいよ識子。
108名無しさん@ピンキー:2007/09/30(日) 02:27:25 ID:lpwsiF9H
>>107
ありがとうございます。
まさか、GJの文字がこれほどありがたいものだとは思いませんでした。

>「虫かよ!」ってとこ凄い好きだ。

虫くらい好きっていうのは、植木にとっての最大級の愛情表現w
常人には分からぬ世界。
109名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 10:41:30 ID:9725ZXcx
GJGJGJ!!!

識子もかわいいが、植木もかわいいwww
かわいすぎて読んでるこっちが恥ずかしくなったわw

本当にGJ!
◆/YXR97Y6Ho氏のも楽しみに待ってるよ
110名無しさん@ピンキー:2007/10/01(月) 20:15:51 ID:lt8JMU7J
テラグッジョブ!!
植木可愛いww

これで、無邪気に乳首いじったら最強www
11183:2007/10/01(月) 21:07:06 ID:ECffmEvv
感想ありがとうございます!

>>109
GJ大盤振る舞い感謝。
とても救われますw
ありがとう!

俺も◆/YXR97Y6Hoさんの書く識子×植木が読みたいー。
やっぱ、他の人が書いたの読みたくなるもんですね。楽しみですw

>>110
ギガ超えGJありがとうございます!

植木は童貞だから、初っ端からあんまりいろいろしないよなー?
とか思って受け身一辺倒になりました。
でも実験と称していろいろ弄らせても面白かったかも……。

かわいいといってもらえて何よりです。
気に入っていただけたようで、ほっとしております。
112名無しさん@ピンキー:2007/10/08(月) 04:32:58 ID:KhRhhLYL
age
彼は寝惚けた顔で大あくびをひとつした。
子供がよくやるような仕草で目元を手でぐしぐしとこする。そして、ようやく先客がいることに気付いた。
「おはよー、江波さん」
いつも通り笑顔を浮かべた植木が、明らかなまでの寝起きの顔でそこにいた。
「何言ってるんですか。まだ深夜ですよ。というか、おはようって」
識子は心底呆れた顔を浮かべて見せた。
とは言え、この男を相手に本気で呆れることはない。
虫の研究が関われば幾番の徹夜だろうと早朝出勤だろうと超過勤務だろうとまったく苦にしないというのに、
関わらなければルーズの極み。出勤してこない彼の所在を聞かれるのは、いつだって、なぜか。
識子は思考をそこで振り切って、植木の顔を見て。
「……っぷ。あ、あははははは!」
腹を抱えて笑い出してしまった。
「え、なになに?なんかあったの?」
きょとんとする植木の顔を指差し、笑いを堪えて、ポケットから手鏡を差し出す。
「あー!?なにこれ、誰の字!?」
植木の、白い蓬髪の下。額には、はっきり『肉』と落書きされていた。
「もー。江波さんのイジワル。筆跡鑑定くらいやってよー」
休憩室に設置された小さな洗面スペースで、顔を洗いながら植木がぶつくさとごちる。
識子は貸していたクレンジングをポーチにしまいながら、「証拠の写真は取っておきましたから、シモーヌさんに見てもらいます?」と、くすくすと笑った。水を受け止める手が止まり、逡巡を見せる。
「でもそれって。僕の顔、なさけなーいことになっちゃってる写真なんだよね?」
「そうですね」
「……かなり、情けない?」
「……そうですね。かなり」
「じゃ、いいや」
植木は執着なくそう言って、顔にざばざばと水をかける作業を再開した。
少しの間、部屋に響く音は水と、時計の秒針と、二人分の呼吸の音だけになる。
識子の落ち着いた呼吸音と、植木の息継ぎの荒い音。
預かったゴーグルを手持ち無沙汰に弄り、何気なく植木を見ていた識子は、自分の洗顔と比べて随分と飛び散る水飛沫の量が多いことに気が付いた。
大きな手のひら。ごつごつとした指の節。濡らさない為に捲っている袖からは意外と日に焼けた腕が伸びる。
まるで植木と自分とが違う生き物のように感じて、思わず自分の手に視線を落とす。
ソフトボールをしていた頃、日に日に手指の皮が硬くなっていくのを少しだけ寂しく感じたことがある。
それだけ練習してきたということだと自分に胸を張り、周りに認められ、そんなことは忘れてしまっていた。
「江波さーん、タオル持ってない?」
じっと回想に耽っていた識子の意識は、急に現在へと引き戻された。
「はいはい。手、出してください」
識子は机にゴーグルを置き、ふらふらとあたりを探るように舞う腕を掴んだ。
がっしりとした筋肉の硬さが指に伝わる。
僅かに動揺しながら、その手に自分の鞄から出したタオルを握らせた。
「ありがとう」
植木の、男性にしては高めの声に温かな柔らかさがあった。ただの感謝だろう、素直な人だから……そう考え、識子はこれ以上意識しないことに努めた。
「ん……?」
顔を拭き終え、『肉』の字が目を凝らしても『人』ぐらいしか判別できなくさせることに成功した植木が、突然鼻を鳴らし始めた。
「なんかこれ、いい匂いする」
くんかくんか。
「え?何か付いてました?」
識子はしきりにタオルを嗅ぎまわす植木から、ソレを取り戻そうと手を伸ばした。
その手を植木に捉まれ、ぐいと引き寄せられる。
とっさのことに驚いてしまい動けない識子の、耳の後ろ。丁度うなじの辺りに顔を埋めて、植木は得心したという声を出した。
「ああ、この匂いだ。江波さん、香水か何か付けてる?」
「あ、え。お……!?」
首筋で匂いを嗅ぐ植木の、その吐息がさわりと耳を撫でる。その感触に、肌が粟立つ。
「え、ちょ、植木さ……!?」
植木は自分が掛けた問いの答えを待たず、識子の長い髪を掻き分け、露出させた耳の後ろを舐めた。
「……!」
識子は目を硬く閉じ、息を止めてその感触に耐える。
ぬるりとした温み。それが数度、普段は髪に隠れ外気にさえほとんど触れない箇所を這う。
突き飛ばして、拒否して、拒絶すればいいのに。識子の心のどこか、冷静な部分から、そう声がする。
「香水の味は、しないね。何の匂いだろう……」
植木は真剣に匂いの元を突き止めようと考えていた。
甘い、瑞々しい匂い。今にも開こうとする華のような、熟す直前の果実のような、心を惑わす強い匂い。
本当にそれだけなら、どうして彼女の肌を舐める必要があった?植木の心のどこか、熱でうなされたような場所からそんな言葉が聞こえる。
識子の足元から力が抜けていく。植木の白衣の胸元を掴んで、それでも突き飛ばすことなくしがみつく。
自分の心の声に、識子は静かな熱で反論を返した。突き飛ばしたいのか、拒絶したいのかと。
植木の両手は識子の肩を掴んでいる。まるでお互い、正面から抱き寄せ合うような形で。
そしてようやく、植木は匂いの元に思い至った。思わず、呟く。
「そうか。これは、江波さんの匂いだ。女性特有のいい匂いとかじゃなくて、多分……」
僕が、この人を。
華のように。果実のように。
口付けは、目が合った瞬間互いに求め合った。
それだけでも満たされるように感じた。
それなのに、すぐに足りなくなった。
口内を探りあい、舌を絡めあい、互いの息を分かち合う。
あまりにも強い飢餓感。もっと触れていたい。少しでも多く触れていたい。
先に机に押し倒したのは、植木だった。
服を脱がせ始めたのは識子だった。
「んんぅ、あぅっ、あ、あ、あ……! おく、おくまで、あ、ぅ、きてる……!」
ひとつになることを望んだのは、ヒトの本能。
「ココ?ココが、奥?もっと、もっと、もっと あぁ、もっと奥まで、イクよ、イけるよ、ほら、ほら!」
相手の何もかもが欲しくて、自分の全てを捧げ合う。
「ふぁっ、あああ、おく、あたって、あたって……っあ!あ!あ、あああああアアーっ!!」
奪い合うような行為の後に、自分たちは、何を望むのだろう?



「好き、大好きだよ、江波さん……っくぁ!」
強く抱きしめあう腕の中、最後に望んだのは未来を分け合うこと。
この先の時間を、可能な限り、ともに歩んでいくこと。
識子は自分の中で放たれた熱を感じながら、涙を零して頷いた。
「私も、です……」
その涙を、植木は自分の唇で拭う。しょっぱいね。そう言って笑いながら。
後始末を終え、簡単に身なりを整え、二人は植木のラボで横になっていた。
片付いているわけではないが、仮眠の為に持ち込んだ毛布がある。そう植木が主張したのだ。
植木は識子の横顔を見つめながら、困った顔で声をかけた。
「ねえ、江波さん。目が覚めたら、どこにもいなかったり、しないよね?」
識子は答えられなかった。きっと朝になれば、誰かが出勤するより前に識子は自分のラボへと戻るだろう。そのとき、植木が目覚めているだろうか。
視線を逸らし、背を向けた識子を抱きしめ、植木は呟く。怯えるように。
「胡蝶の夢……
ねぇ、僕がこんなにも幸せなこと、全部夢だったりしたら、どうしよう。そう思うと、怖くて寝られない」
識子は自分を抱きしめる腕に、そっと手を這わせる。
「……じゃあ、明日。朝起きて、私を見かけたら。『僕は夢を見てたの?』って、聞いてください。
夢じゃなかった、その証拠を見せてあげます」

植木が目覚めたのは、ちょうど正午だった。
彼の体内時計が正確だったのではない。あえて言うなら、所長の腕時計が正確だったのだ。
「うぅうううえぇえぇええええきぃいいいいいいいぃい!!?」
そう叫びながら、本当なら殴り飛ばしでもしたいのを抑えた選択なのだろう、ヒラタに鼻を摘ませたのだ。
「あああああ!?ヒラタが、ヒラタが僕を裏切ったー!?」
思わず自分でもわけのわからないことを叫んで飛び起きた植木の視界に、心底呆れたという顔で頭を抱えている識子の姿が映る。説教モードに入ろうとしている所長を押しのけ、植木は叫んだ。
「江波さん!僕は、夢を見てたの!?」
状況がつかめるわけもなく、所長は植木と識子を代わる代わる、不審そうに見た。
識子は、いたずらっぽい笑顔を浮かべて顎に指を当て、反対の手で携帯電話を開いて見せた。

待受けは、額に『肉』と書かれた植木の、情けない顔の写真だった。
119 ◆/YXR97Y6Ho :2007/10/10(水) 06:56:14 ID:9d34BDsb
あ、4−6、END書くの忘れた。 まあいいや。

とりあえずひと夏まるまる使ってしまいましたがこれにて4話終了です。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
12083:2007/10/11(木) 19:15:11 ID:MBinEoXM
やっぱり ◆/YXR97Y6Hoさんのはエロいですねw
積極的な植木も可愛いです。
 ◆/YXR97Y6Hoさん、4部作お疲れ様でした。
121名無しさん@ピンキー:2007/10/11(木) 20:55:29 ID:Lp0HvQNd
視点がころころ変わって見づらいのが難点かな
122 ◆/YXR97Y6Ho :2007/10/12(金) 09:42:54 ID:1BRlfF80
>>120
ありがとう。エロって難しいな。
読んでる奴が男だろうが女だろうが感じる話を書きたいものだ。

>>121

ちょ、それ、もっと早くorz
123名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 00:22:53 ID:0Ihj3Ynk
今週末だな、THE同人誌即売会
124名無しさん@ピンキー:2007/11/06(火) 23:44:43 ID:R5/VxzUI
ほしゅ
125名無しさん@ピンキー:2007/11/12(月) 02:33:31 ID:sldNSleR
こんなスレあったのか
恐ろしいトコだな、ここは
126名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 18:58:55 ID:mbNktmoB
推理のことも思い出してあげてください
127名無しさん@ピンキー:2007/11/16(金) 20:33:10 ID:BZ5QLkqK
ちょっと考えてはいるんだがにゃー
ボスに名前無いの地味に痛え
128名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 02:41:05 ID:iI32VnVE
とりあえず推理は、PSPも持ってないし番外編待ちかなーと思ってる。
ネタはあるんだけど…
あと、お嬢が今いくつなのかはっきりわからんので困るでござるよ。
ゴル子と同年齢なのだろうか。
129名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 05:18:29 ID:M90UcqtS
個人的には江波警視正とボス
130128:2007/11/18(日) 03:00:01 ID:P79/cfVu
【Mr.private eye】
彼はただ空を眺め、紫煙を燻らせる。
時刻はAM11:25。
昼も近いからか、近くのラーメン屋から良い匂いが漂ってきている。
「これは……イラクラーメンかな?」
小さく呟いた声に、女性の声が反応した。
「え?何か言いましたか、ボス?」
「いや、何でもないんだ」
男は小さく手を振り、忘れてくれと彼女に告げる。
そうですかと返した彼女は、それでもしばし考えるそぶりを見せた。
「ボス、最近なんだか変ですよ?」
「え?」
「ほら、脈拍数が上がった。何か心当たりがあるんでしょう?」
彼女はずい、と身を乗り出すような仕草を見せた。
物理的な距離は一切変わらないのに、それでも一瞬身体を引いて、男は言葉に詰まる。
「……そうかな。誰だっていきなり追及されたら、後ろめたいことがなくてもびっくりすると思うけど」
旧型の、分厚さがあるデスクトップパソコンの画面に軽く触れた。
そこに映る『彼女』の頬に指を滑らせる。
冷たい。
「……本当に、それだけですか?」
少しだけ頬を染めた彼女に、液晶越しのキスを。
「もう!そうやってごまかそうとする!」
彼女も慣れたもので、男に答える気がないと知った上で追求するような真似はしない。
「……出かけるよ、ジニー。
 何かあったら、携帯を鳴らしてくれ」
そう言って、着古したジャケットを羽織った男に、極端に省略された顔文字に切り替わった彼女のアイコンは不満げな誤操作音を鳴らした。
それはある探偵事務所の日常。
ほんの、数日前までは。

「は、ぁ……あふっ、ぅん……」
甘い声が、少女の口から漏れ出している。
何時からこんなことになったのかわからない。気が付けば、少女は女になっていたということだろうか。
少女は外務大臣の娘。時代が時代なら、得体の知れない私立探偵との情事などゴシップ誌の格好の獲物だっただろう。
簡素だが質の良い椅子に座った男が、ぼんやりとした思考のまま、長くなった灰をアッシュトレイへ落とす。もう一度銜えようか一瞬だけ逡巡し、そのまま押し潰した。
それはいつもの合図。
チャックだけを開けたズボンの前に座り込み男のモノを咥えていた少女には、待ち焦がれていたサインだった。
すっかり屹立したモノから名残惜しげに唇を離すと、紅潮した頬を隠すでもなく潤んだ瞳で男の顔を見上げた。
いつから彼女は、こんな欲情を顕にするようになったのだろう。最初はもっと、恋する乙女の瞳だったと思う。
硬い質感の髪を撫で、リボンを外してその顔を引き寄せた。
温かい。
さっきまでの行為の余韻だろうか。少女は僅かな苦味がする舌を男のそれへと絡ませる。
必死にさえ感じられるその行為に唇への甘噛みで応えてやると、嬉しそうな呻きをあげた。




ダメだ 筆が進まねえ… だれか、だれか俺にどこでも推理をorz
131一夜の夢(1/8):2007/11/18(日) 23:26:41 ID:9Dic6rm3
「おはよう、ジニー。……ジニー?」
 いつもなら「おはようございます、ボス」と軽やかに答えてくれる秘書の応えが無いこ
とに、僕は戸惑った。コンピュータのモニタには彼女のウィンドウが開いてはいない。い
つもなら僕の声を起動コマンドにして起動するはずなのに。
 はて。警察窓口のアルバイトにでも行っているのか?
 そんなことを考え、僕は椅子の背もたれに体重を預けた。
「……おおい、賢作ー」
 ジニーの時と同じく、応えは無い。
 コンピュータは、ただファンの音を立てているだけだ。
 まあ、賢作の場合は、ふらりと居なくなる事が当たり前だから、心配では無いのだけれ
ど。ジニーが何も言わずに居なくなるのは珍しかった。
「いや、それとも」
 僕が覚えていないだけなのかも知れない。
 まあ、ジニーのことなら心配はいらないだろう。彼女は賢作と違ってウィルスではない
し、たとえ何処かのブロックに引っかかったとしても何とかできるはずだ。……さらに言
えば、電脳の中でジニーが危機に陥ったとしても僕に出来ることはほぼ無いという現実も
ある。
 出来ることといえば、彼女の無事を信じることだけか。
「情けない」
「なにが? あなたの顔が?」
 不意に響いた聞きなれた声に、僕は顔を上げてモニタを見る。
 だがそこにウィンドウは開いていない。ただモニタの向こう側。事務所の扉を開けたそ
こに、見知った顔が立っていた。
「バージニア!?」
「ハイ。久しぶりね、探偵さん」
 気安く笑い、事務所の中へと足を踏み入れたのはバージニア・ローズ。ローズ財閥の後
継者の一人であり、世界各地で色々と物騒な事業を行っている張本人だ。そして、何より
も。
「ジニーは?」
「留守だ」
「そう。久しぶりだから話したかったのに」
 ジニーのオリジナル。ジニーのブレインコピーの元となった女性。それがバージニアだ
った。
「どうしたんだい、バージニア。ああ、お茶の一つも出さずにすまない。座ってくれ」
 安物の紅茶を出して怒らないかとも思ったが、彼女が割合にそこら辺はサバイバル慣れ
していることを思い出してカップを差し出した。来客用のソファに偉そうに座っている
バージニアは、それでも礼を言ってカップを受け取ってくれた。
「安物ね」
「フォートナムメイソンなんて、うちじゃ取り扱っていなくてね」
「フン。まあ、期待なんかしてないから安心なさい」
 そう言いつつ、バージニアは躊躇いもせずカップに口をつけた。
「それで、今日はどんな用件で? まさか世間話をしに来たわけじゃなかろう?」
 僕が向かいのソファに座ると、バージニアは僅かに眉根を寄せた。
 そういう顔をすると、怒る間際のジニーにそっくりだ。外見データが元々バージニアの
物なのだから当然なのだが。
「お茶を飲みに来ただけ、と言ったら信じてくれる?」
「あのバージニア・ローズでなければ信じたかもな」
 フン、ともう一度鼻を鳴らしたバージニアは、優美な長い足を組みなおした。タイトな
スカートから伸びたストッキングに包まれた足は躍動感に満ちている。彼女の本質が大金
持ちの深窓の御嬢様などではなく、バイタリティに溢れた戦士と呼ぶのが相応しいことを
示している。実際、ローズ財閥では若輩でありながら既にかなりの地位に上り詰めている
ことからもそれは示されている。
132一夜の夢(2/8):2007/11/18(日) 23:27:12 ID:9Dic6rm3
「半分本当よ。この国で仕事があって、時間が空いたから顔を出したの」
「C国で? ……きな臭い商売じゃないだろうな」
「あら。この国自体が十分にきな臭いじゃないの。私が何したって大した差は無いわよ」
 あっさりと切り返すバージニアは、やはりジニーのオリジナルだった。
 僕自身、彼女のことを気に入っていた。ジニー云々という事を抜きにしても、バージニ
アという女性は魅力的なのだ。辛辣なことを述べる薔薇色の唇も、険の強い光を宿す瞳も。
多分に僕より腕力があったりしそうな、張り詰めたバネのような体も。
「――まあ、良いだろう。それで?」
「言ったでしょ。ただ茶のみ話をしに来た。それだけよ。……ああ、それともお邪魔だっ
たかしら?」
「いいや。ローズ財閥が絡まなければ、君のことは大歓迎だ」
「――ッ。そ、そう」
 顔を逸らしたバージニアが、頷く。
「そうだ。ねえ、探偵さん。あなた、ここに来て長いんでしょう? 街を案内してくれな
い?」
「街を? なんでまた」
「下手な観光ガイドを雇うより、楽しそうだからよ」
 ニコリと笑ったバージニアに、僕は少しだけ考えて、結局は頷いた。

†  †  †

 夕方までかかって街を歩き回った。
 わりと文化遺産なんかもある街なので、歩いているだけで結構な時間がかかったのだ。
 バージニアは、こういう文化遺産の類には興味なさそうな気がしていたが、行ってみれ
ば目を輝かせて見入っていた。
「ねえ、探偵さん。今日の夕食は私が奢るわ。案内してくれたお礼に」
 だから、頬を火照らせてそう言った言葉も、ただ興奮していたのだと思って頷いたのだ
った。
 バージニアがタクシーの運転手に告げた行き先は、巨大な超高級ホテルだった。多分、
シングルの一番安い部屋でも僕の事務所の一ヶ月の家賃くらいはするだろう。
 バージニアはここに泊まっているらしい。フロントで恭しく迎え入れられた彼女の背中
を眺めつつ、こんな場所に来るには随分だらしない格好をしている自分をどうしようかと
悩んでいた。
「なあ、バージニア。やっぱり遠慮しておくよ。こんなよれよれの格好じゃ、入れてくれ
ないだろうし」
「大丈夫よ。なんなら一着仕立てると良いわ」
「……いや、バージニア。残念ながら、僕の懐にそんな余裕は無いんだ」
「前の依頼の報酬代わりよ。あの後、ジニーに散々言われたんだから」
 肩を竦めたバージニアに、僕はなるほど、と頷いた。
 たまにバージニアは事件の相談を僕のところに持ってくるが、まっとうに報酬を支払っ
てくれたことは少ない。ほとんど、勝手にやってきて勝手に推理をさせて勝手に帰ってい
くのだ。ジニーはよくそれを怒っていたが、どうやら言ってくれていたらしい。
「君がジニーとそんなことを話していたとは思わなかったな。ジニーも、君にはあまり近
づいていないとばかり思った」
「……そうね。そんなことでも無いと、私も……ジニーも、きっと話し合えないわ」
 バージニアは暗い顔をして呟く。
 その横顔は、ジニーにそっくりだった。
133一夜の夢(3/8):2007/11/18(日) 23:27:45 ID:9Dic6rm3
「バージニア。できれば笑ってくれ。さもなくば怒っているか」
「なにそれ」
「君の悲しい顔を見たくない。ジニーが悲しんでいるみたいで、気分が悪い」
 息を呑んで僕を見たバージニアは、見る見る間に赤くなった。
「な……っ、ば、バッカじゃないの!?」
 踵を返してぷりぷりと怒りながら歩いていく。
 肩をいからせて歩くその後ろ姿は、僕の唇を綻ばせるには十分な魅力を持っていた。
「早く来なさい! あなたの服を見繕いに行くんだから!」
「はいはい」
 頷いて、彼女のあとを追った。
 そのままホテルの中にあったブティックに連れ込まれた。
 スーツ一式を、まあレディメイドだが揃えられ、そのまま着替えさせられた。髪も撫で
付けて押し出された僕の前には、やはりドレス姿に着替えたバージニアが立っている。
「へえ。良いじゃない。ちゃんとしてれば格好良いわよ」
「そりゃどうも。こういう格好はどうにも息苦しくてね。……君はさすがだな。綺麗だ。
こんな台詞は陳腐かな?」
「そうね。でも褒め言葉は嬉しいわ。特に、あなたみたいな捻くれ者からなら」
 微笑んだバージニアが僕の腕を取る。
「行きましょ。レストランの予約は取ってあるわ」
「ふむ。お付き合いしましょう、お姫様」
 改めて彼女の腕を取り、肘に彼女の手をかけさせる。エセ紳士だが、それでもドレス姿
のお姫様をエスコートするくらいの気概はあるのだ。
 そうしてレストランでは、多分僕の稼ぎでは一生自分の金では食べられないだろうフル
コースを堪能した。
 ワインを飲みながら、バージニアと話す。
 彼女は陽気に笑い、仕事で遭遇したトラブルやら何やらを話してくれた。
 正直、中には笑っちゃマズそうな事も混じっていたのだが。
 そうして、不意に話題が途切れて沈黙する。だがその沈黙も心地よい沈黙だった。
「不思議ね。あなたのこと、最初はダサいヘボ探偵って思ってたんだけど」
「最初に会った時は酷いこと言われたなぁ、そういや」
「フフ。そうね。……でも、見直したのよ?」
「そう言ってくれると有り難いよ。今後の事務所の宣伝文句に使えるかな。『あのバージ
ニア・ローズが推薦!』とか」
 二人で顔を見合わせて笑う。
「そういえば、探偵さん。あなた結婚は?」
「僕? 結婚してるように見えるかい?」
「いいえ。してたら、もうちょっと身だしなみがしっかりしてるでしょうね」
「手厳しいな。まあ事実だけど」
「じゃあ、恋人は?」
 僕はワインを傾け、香りを嗅ぐ。ブドウの香りと重みが鼻をくすぐるのを楽しみながら、
愚痴っぽくならないよう気をつけて答えた。
「どうにも、そういう機会がなくてね。こんなおじさんじゃあ、もう相手もいないんだろ
うさ」
「あら。私、あなたのこと魅力的だと思ってるわよ?」
 バージニアは、わざと胸元を見せ付けるようにこちらに身を乗り出した。
134一夜の夢(4/8):2007/11/18(日) 23:28:20 ID:9Dic6rm3
「最初は、酷い言われようだったけど?」
「最初は最初よ。見直したって言ったでしょう? 知性のある男って、好きよ」
「ありがとう。これで、これから先を生きていく活力が湧いたよ」
「あら、言葉だけで良いの?」
 胡乱な目でバージニアを見る。彼女は魅力的な笑みを浮かべて、僕を見ていた。
「男をからかうもんじゃないな。勘違いしたらどうするんだ」
「勘違いなんかじゃないわよ、きっと。あなたは探偵なんでしょう? 私の言いたいこと
の真意を推理できるんじゃなくて?」
「推理は、真実とは限らない。特に人の心はね」
「でもあなたは、優秀な探偵よ」
「……バージニア。酔っているのか?」
「ええ、酔っているわ。でも、酔っているからじゃない」
「からかうのは止めてくれ」
「あなたのそれは、誰かへ……ええと、操を立てているの? それとも、女に性的魅力を
感じない性癖の持ち主?」
「安心してくれ。操を立てているような相手はいないし、女性が好きな一般的な男だよ」
「じゃあ、どうして?」
 バージニアが食い下がるのを、僕は訝しく思い始めていた。
 彼女は、本気で言っているのだろうか。
「バージニア。僕は」
「年上で、低収入で、二流免許しか持っていない探偵だ? でもそれと、あなたの魅力は
無関係だわ。ああ、誰とでも寝るなんて思わないでね。私、これでも好みはうるさい方な
の。それに今は恋人はいないわ。でもあなたを恋人にしたいわけでもないから安心なさ
い」
 言い切られ、僕はそれ以上なにも言えなくなった。
「ただ、あなたに興味があった。それだけじゃ駄目かしら。愛が無くちゃ勃たない?」
「バージニア」
 窘めて、僕はグラスの中身を一息に呷る。
「……本気なのか?」
「部屋は上よ」
 微笑んだバージニアが差し出した手を、僕はおずおずと受け止めたのだった。

†  †  †

135一夜の夢(5/8):2007/11/18(日) 23:29:46 ID:9Dic6rm3
 バージニアがシャワーを浴びている間に、僕もシャワーを浴びてスポーツドリンクを飲
んでいた。超高級ホテルのロイヤルスイートは、これまたバカみたいに広い。正直、僕の
事務所が丸々入っても、まだ余裕があるだろう。バスルームとトイレも二つずつあるとい
うのは、どういう事なのか。
 ベッドルームは広々としていて、あちこちがキラキラしている。
 多分、あの装飾品の一つでも傷つければ、僕には補償しきれないだろうなあ、なんて情
け無いことを考える。
「あら、待たせちゃったかしら?」
 振り返れば、そこにはバスローブに身を包んだバージニアが立っていた。髪はわずかに
濡れている。火照った肌が艶かしい。
「――いや。そんなことは無いよ」
 バージニアは軽やかに僕に歩み寄り、そしてゆっくりと僕の前に立った。
「……髭、生えてるわね」
「剃ったほうが良かったかい?」
「いいえ。構わないわ」
 彼女は女性にしては背が高いが、それでも僕とキスをするには背伸びしなくては駄目ら
しい。腰をかがめ、彼女にキスをした。最初は触れるだけのキス。そしてすぐに情熱的な
キスに変わる。
「――っはぁ」
 堪能して唇を離すと、バージニアはぼうっとした顔で僕を見上げていた。
「キス、上手いのね」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
 バスローブの上から彼女の背中を抱きしめる。
 華奢な体は、こればかりは細く柔らかい。
「いいのか、バージニア」
「良いわ」
 うっとりとした声。頬を薔薇色に染め、嬉しそうに目を細めている彼女は、確かに酔っ
ているようには見えない。
「――これは、バージニアの許可を取っているのかい?」
 だから、僕はそこから先に進むために、これまで見ない振りをしていたことについて触
れた。
「もしもバージニアの許可が無いなら、これ以上はできないよ。ジニー」
 バージニアの顔が一瞬で青褪めるのを、僕はただ見つめることしかできなかった。
「……な、何を言っているの? 私はバージニアよ。バージニア・ローズ」
「そうかい? だが、僕には君がバージニアには見えない。いや、確かに君はバージニア
でもあったのだろうが……僕にはそれ以外の君が見え隠れしていた」
 例えば文化遺産で。
 例えば僕と君の下らない話の掛け合いで。
 例えばこうして僕とキスをしていた時の君の表情で。
 そこには、僕といつも一緒にいた、誰よりも信頼している、誰よりも大切な秘書の顔が
あった。
「ジニー。……どうして君が、バージニアの体にいるんだ」
 バージニアは身動ぎをして、僕の腕から離れた。
 そのままベッドに腰掛ける。
「……どうして分かっちゃうんですか、ボス」
 そうして上げられた顔には、哀しそうなジニーの微笑みが浮かんでいた。
「どうしても何も。君のことを分からないはずがない。そうだろう? ジニー」
「……そう、ですね。そうなんですね」
 俯いたジニーの肩に手を置いて、僕はさらに気になったことを尋ねた。
136一夜の夢(6/8):2007/11/18(日) 23:31:08 ID:9Dic6rm3
「ジニー。バージニアの体に君が居るという事は……」
「いいえ。バージニアと私は完全に別人格として存在しています。今は彼女は眠っている
ような状態で……私に身体を貸してくれているんです」
「身体を貸す?」
「はい。……彼女が私に言ったんです。私と融合する事は諦めた。でも、一度くらい肉体
に帰って来ても良いんじゃない?って」
 そして、その時にボスにアプローチなさい、と。
 バージニアがそう言ったのだと続けたジニーに、僕は唖然としていた。
「いや、しかしだな。……彼女は、僕がその、肉体関係を結ぶなんて事は考えてなかった
んじゃないのか? 後で知られたら、僕が殺されそうだ」
「あら、それはありませんよ。ボス、気づいて無いんですか? バージニアは、ボスのこ
とを気に入っているんですよ。それこそ、ベッドを共にしても良いと思ってるくらい」
「……信じ難いな」
「ボス。バージニアと私は、結局は同じ人間だったんですよ。好みだって同じです。ただ
表現方法が違うだけで」
 ふむ、と頷いた僕にジニーは笑う。
「でも、ばれちゃいましたね。すいませんでした、ボス」
「……ジニー?」
「いや、ですよね。私となんて」
「そんなことは無い」
「え?」
 ジニーがキョトンとした顔をする。
 ああ、こういう顔をしていると、バージニアの体でありながら、ジニーだと確信できる。
「僕が恋人を作らない理由は、簡単だよ。君が居るのに、恋人を作る理由は無いだろ
う?」
「……ボス?」
「プラトニックな関係だけどね。……僕はそれで良いと思っていた」
 ジニーの手がおずおずと僕の胸に触れる。
 心臓の鼓動が、その手に伝わっているだろう。少し速まった鼓動が。
「それって」
「君は擬人で、僕は人間だ。でも、それはあまり関係が無い。そうだろう? 君には心が
ある。僕はそれを知っている。そして僕は、そんな君に惹かれたんだから」
 大きく目を見開いたジニーは、頬にポロポロと涙を零しはじめた。
 そっと、彼女の肩を抱く。
「ジニー。……良いのかい?」
「あ……」
 ジニーの顔が羞恥に赤らむ。伏せられた睫毛。彼女の顔にキスを落とす。
「はい、ボス」
 そして、幸せそうに頷いてくれた。


137一夜の夢(7/8):2007/11/18(日) 23:32:18 ID:9Dic6rm3
 ジニーの体は山猫のように俊敏で、力強く跳ね回った。
 貫くたびに体をわななかせ、その足を絡めてくる。
「……ジニーっ」
「ボス……ボスっ!」
 抱きしめあい、これ以上ないほど深くつながりあう。
 心だけで十分だと思っていた。だが、こうして体もまたつながりあうのなら。
 それはさらに、僕を深みにはめる行為だ。
「愛してる、ジニーッ!」
「ああ……愛してます、ボス」
 ジニーもまた、それに答えてくれる。うっとりとした微笑みで、愛しそうな眼差しで。
 そして、ジニーの中に放った。
 ビクンと痙攣するように震えたジニーが、荒い息を吐いてぐったりと体の力を抜いてい
る。僕はその上に覆いかぶさったまま、彼女の柔らかさと体温を実感していた。
 バージニアはピルを飲んでいるらしい。だから、僕は何もつけずに彼女の中に放ってし
まった。
 知られたら怒られるだろうか。そんな考えがチラリと頭の隅を掠める。
 見ればジニーは、幸せそうな微笑みを浮かべたまま目を閉じている。眠りに落ちたのか、
スウスウと寝息を立てていた。
「……」
 愛しくて、彼女の髪を撫で、頬にキスをする。
 腕の中にジニーがいる。これまで幾度となく夢想した彼女が。
 けれどもこれは夢のようなものだ。
 バージニアの肉体は、バージニアのものだ。ジニーも、これがほんのひと時の夢だと理
解していた。だから、これはバージニアが目覚めるまでの夢なのだ。
「……愛してる」
 眠っている彼女に、そう囁く。一回でも多く、彼女にそう言いたくて仕方なかった。
 不意に、ジニーの目が開いた。
 その目が周囲をきょろきょろと見回し、隣に横になっている僕を見る。
「――ジニー?」
 その目が僕を認め、細まった。
「バージニア?」
「ええ、そうよ。探偵さん」
 情事の名残もなく、バージニアはいつもの自信に満ちた声で、首肯した。


138一夜の夢(8/8):2007/11/18(日) 23:33:23 ID:9Dic6rm3
「……そう。この状況って事は、ジニーは本懐を遂げたってことなのね」
「すまない。君の体なのに」
「ジニーの体でもあるわ。というか、私とジニーは同じ人間なんだから、そう大したこと
じゃないわよ。……まあ、私があなたを気に入っているから、っていうのもあるけど」
 バージニアが僅かに照れたように顔を背ける。
「バージニア?」
「いくら私だって、気に入らない男とベッドに入る趣味は無いわよ。……相手があなただ
って知ってたから、ジニーの気持ちを汲んだだけ」
「ジニーはどうなる?」
「この後、もう一度ブレインコピーをするわ。彼女はまた擬人としてネットに戻る」
「……君は?」
「変わらないわ。バージニア・ローズとして生きるだけ」
「……そうか」
 でも、とバージニアは笑った。
「たまに、あなたとベッドを共にするのも良いかも知れないわね。結構相性は良かったよ
うだし」
 そう微笑んだバージニアは目を閉じる。
「ジニーが起きるわ。じゃあ、また今度」
「ああ、また今度。ありがとう、バージニア」
 ふん、と鼻を鳴らしたバージニアは目を閉じた。


†  †  †

「おはよう、ジニー」
「おはようございます、ボス」
 ジニーは翌日にはコンピュータの中に戻っていた。
 ブレインコピーの逆コピーの実験を兼ねていた、とは後でバージニアから聞かされたこ
とだ。そう何度も出来ることではないし、出たり入ったりが恒常的に可能なわけではない。
そうも聞かされた。
 つまるところ、あれはバージニアからジニーへの一度だけの贈り物だった、という事か。
「今日も良い天気だよ、ジニー」
「そうですね。外気温23度。湿度40%。過ごしやすい一日ですね」
「はは、そうだな」
 こうして他愛の無い話をしながら、けれどジニーは幸せそうに僕に微笑みかける。
「今日こそ、依頼があると良いですね」
 まあ、ジニーらしい辛辣な意見も、一緒なのだけれど。

139名無しさん@ピンキー:2007/11/18(日) 23:35:48 ID:9Dic6rm3
といった感じで、THE どこでも推理クリア記念。

……肝心のエロが淡白を通り越して、申し訳程度なのは本当に申し訳ない。
ホントはもっと情熱的にねっちりとしたのを……ごめんなさい嘘つきました。
そんなエロは書けません。

ジニーかわいいよジニー、という気持ちだけで書きました。
140名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 22:27:48 ID:buvfv5FB
マイナーあげ。
しかしニッチだな、このスレ。
141名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 22:46:06 ID:zToWSn7U
>>139
GJ!ジニー可愛いよジニー

>>140
だがそこがいい
142名無しさん@ピンキー:2007/11/22(木) 22:43:55 ID:B5lPEW0Q
マイナーでもイインダヨー
143名無しさん@ピンキー:2007/11/27(火) 00:30:57 ID:eWC2RZYB
保守
144名無しさん@ピンキー:2007/12/12(水) 03:14:11 ID:CBRWFViX
脱出で興味持った俺が保守
145名無しさん@ピンキー:2007/12/14(金) 05:10:51 ID:K2lmr9su
逆に犯人にやられちゃう寒川や識子誰か書いて
146名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 03:23:37 ID:49f70YiM
ストーカーに襲われる識子とかか
俺はもっと植木×識子が見たいわ
147 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/16(日) 13:51:32 ID:tmGXLJir
>>146
あなたが落としたのは『攻め植木』ですか?
それとも『受け植木』ですか?


現在、ここ向きのネタがあるにはあるんだが…冬コミ後にさせてください
148名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 16:45:34 ID:h8SlzzAW
>>147
146じゃないけど、どっちもw
しかしそうか、植木ってそういう区分になるのか
149 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/16(日) 19:58:24 ID:tmGXLJir
や、言葉は適当。
なんなら黒植木・白植木でも。
いっそキレイなジャイ(違)
150名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 02:54:03 ID:031JIw2p
黒植木見てみたいな
151名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 03:40:50 ID:POLqxDhR
擬人絡みネタきb
152名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 14:16:43 ID:mkXpLacN
>>151
かんこ×秘書かとオモタ
153名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 20:46:36 ID:yrpEYcnq
かんこさんが保守りますよー
154名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 01:51:21 ID:va8EiAoO
保守しますよー
155 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:38:26 ID:4w9AnEKw
犯人というわけではないのだから、彼――いや、彼女か――を取り逃がしたことに、何を悔やむことがあるだろうか。だというのに、識子の心は重く、晴れなかった。
やっとの思いで戻ってきた蝶ヶ島にはもう彼女の姿はなく。
一度はつながった通信も、二度とその周波数に繋がることはなかった。振り払えないやるせなさと、胸の中にわだかまるもやもやとした感情を持て余したまま、識子は激しい雷雨となった嵐を居住棟の窓から眺めていた。
本来なら夕方くらいのはずなのだが、売店以外には灯りひとつないこの島で、強い雨の叩きつける窓からはまるで外が見えない。この分では、もう一晩この島に泊り込むことになりそうだ。
科研に戻ってから、待ち受けているのだろう芦茂の追求をどうかわそうか。考えるだけでも憂鬱になる。
遺品整理、とでも言うべきなのだろうか。彼女が【冬月】として過ごしていた部屋には様々な生活用品がそのまま残されていた。
その中に残された資料がないか、忘れられたデータがないか。念のためにと検分している植木のガラスに映る背中を指でなぞりながら、空に光る青白い筋を見つける度に識子はこの荒れ模様の下をモーターボートで進んでいるのだろう彼女のことを思う。
こんなにも手の込んだことを仕組んで、そこまでしても会いたかったのか。
会うだけで、よかったのか。
ピシャッ。
一際強い落雷が何もかもを青白く照らし出す。
識子は体の底から揺さぶられるような衝撃を覚悟し、思わず身構え目を閉じた。
「ねえ、江波さ――」
 ドドン、ガラガラガラン。



「ううん……今のは、凄かった……」
「大丈夫、江波さん?」
「ええ、私は大丈夫です。でも、電気が……」
「うん、真っ暗だね。外の発電施設にでも落ちたかな」
「困りましたね……」
「非常用電源があるから大丈夫。研究棟を優先してるはずだから、こっちまで電気が来るのは後回しだけど。江波さん、いつもの鑑識セット持ってたよね?」
「ええ、まあ、その中だったら小型ライトは入ってますけど……でも、今ので取り落としちゃったみたいで」
「えー!それは大変。探さなきゃ」
 ごそごそごそ。
「ん、これかな……って、柔らかい……?」
「ちょ、植木さん、どこ触って……ひゃ!?」
 閑話休題。



ようやく見つかったペンライトを頼りに、識子は壁際の椅子に腰掛けた。植木は躊躇なくベッドの縁に腰を下ろし、その行動は識子の中に、ある想像を呼び起こさせた。
やはり、会うだけではなくて。
不安が胸を締め付ける痛みに、思わず鋭い呼気を洩らす。それを聞いていたのか、植木が気遣わしげな声を出した。
「本当に大丈夫?どこか怪我でもした?」
「あ……大丈夫です。なんでもないですよ」
「それなら、いいんだけど。ほら、僕も足挫いちゃってるしさ。」
 そう言って笑う声に、識子は自分の下世話な想像を恥じた。この人が誰とそういう関係になっていようと、自分が気にすることではないはずだ。
 そうだ。たとえそれが、自分よりもずっと色っぽい女性だったとしても――
「あの、植木さん」
 関係ない、はずなのに。
「冬月さんのこと、なんですけど」
 どうして、こんなにも気にかかるのだろう。
「な〜に?どうかした?」
 自分の顔に、顎の下から灯り当てて、変な顔をしてこっちを見る。その子供っぽい行動に少しだけいらつきを覚えるのは、八つ当たりだとわかっているけれど。
「もしかして植木さん。あなた、彼女が【榎田】さんだったこと、知ってたんじゃ……?」
 植木は、弄んでいたライトを消した。
 突然の暗闇に、視界が完全に奪われる。
「どうして?」
 闇に響いたその声が。全てを物語っていた。

植木さんは。

A:全てわかっていたんだ、この人。
B:何もわかってなかったんだ……。
156注意書き忘れてた ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:40:23 ID:4w9AnEKw
ということで 黒白植木です。
Aが黒ルート、Bが白ルート。
とりあえずAだけ書けたので投下。
157A:WONDER TRIP LOVER 1  ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:43:21 ID:4w9AnEKw
 ぎしり。
 ベッドのスプリングが軋む音が聞こえた。
 不意に恐怖を覚え、識子の喉は引き攣ったように、声を発することを拒んだ。
 近づく足音が聞こえ、ようやく目が慣れてきた薄闇の中、白衣がすぐ傍で翻るのが見えた。
 識子の顔の傍らを通って伸びた腕が、壁に体重を預ける。気が付けば、識子は植木という檻の中に捉えられていた。
 稲光が一瞬、二人だけの室内を照らす。
「どうしてそう思う?」
 柔らかい声は、ほぼ頭上から聞こえてくる。
 なぜかそちらを直視することができず、識子はうつむいた。
「ねえ、江波さん?」
 声の調子は変わらない。それなのに有無を言わせない雰囲気があり、識子はやむなくそれに従う。
「最初にもしかしたらって思ったのは、標本を渡された時。冬月さんに持ち出す許可を求めたのは……私じゃなくて。植木さん、あなたでした」
 植木は黙って聞いている。識子はたどたどしく続けた。
「だって、そうでしょう?
 ……植木さん、本当はわかってたでしょう、与戸さんの死因がなんだったのか。これだけじゃわからない……って、有名なキノコなんでしょう?吐瀉物まで、的確に拾っておいて」
 やっと上を向いた識子の目に映ったのは、困ったように微笑む植木の顔だった。
「やっぱり、バレてた?」
 植木はそう言うと、識子の額に、自分の額をこつんと当てた。
「……もし、あのキノコが。与戸さん自身が持ち込んだものじゃなくて、彼女が渡したものだとしたら。そう考えるとね。
 ……怖かった。
 キミも、食べたって言うし。
 ……もし、強行軍で科研に戻るとか言い出さなかったら、どうにかして今日一晩、僕の部屋に引き止めようと思ってた」
 植木の右手が壁から離れ、識子のうなじを包み込む。
「榎田さんは優秀な研究家だ。僕も好きだよ、同じ研究者として、ね。……彼女も、それには気が付いてたみたいだったね。
 その意味じゃ、江波さんを呼んだのは失敗だったかなと、思わなくもないんだけど。足を挫いた時には忘れちゃってたよ」
 あはは、と軽く続ける植木に、どこから突っ込めばいいのか、とか、この右手は何のつもりですか、とか。
言いたいことがいろいろありすぎて、とにかく思考を落ち着かせようと識子は右に――植木の左手は、まだ壁にあった――顔を背ける。
 不意に、識子の首筋を離れた右手が椅子の背もたれと背中の間に差し込まれた。
空いた首筋に植木が顔を埋めるのを、壁から離れた左手が自分の腰を抱くのを、識子は何故か、他人事のような気持ちで見つめていた。
「ねえ、江波さん」
「……なんですか?」
「来てくれて、ありがとう」
「……今更ですよ」
「うん。……江波さん」
「なんですか」
「……生きててくれて、ありがとう」
「……はい」
 ジジッと小さな音を立て、蛍光灯が点く。
 しばらくの間、植木は抱擁を解かなかった。
158A:WONDER TRIP LOVER 2 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:44:45 ID:4w9AnEKw
「植木さん、あの……恥ずかしい、です。そろそろ放してください」
「ん〜……あと5分〜」
「私は冬の布団ですか」
「あー、それいいね。そしたら僕、絶対一日中放さないな」
「意味わかりませんよ」
「……もっと恥ずかしいことしたいんだけど。いい?」
「へ!?」
「反論は聞かないよ〜」
そう言うと植木は左手を識子の膝裏へと回し、軽々と持ち上げてしまった。慌てて落ちないための支えを探した識子がしがみ付いたのは植木の首筋で。
(これって、お姫様だっこじゃない!)
そのまま、植木はさっきまで自分が腰掛けていたベッドへと識子を運んでしまった。決して投げ出すことなどないよう、ゆっくりと識子を降ろす。体を起こそうとする識子の肩を掴む植木の目は、欲望を燃やす男の目だった。
「あの、どうしても、するんですか?」
当然の疑問でありながら、口にした識子自身も間の抜けた質問だと感じる。それを聞いた植木はにっこりと確信犯の笑顔を浮かべながら、「するって、何を?」と言ってのけた。
その間も片手は識子を押さえ込み、もう片方の手は自分のネクタイをするりと緩めている。だが、少し考えるような素振りを見せるとネクタイを放し、ほとんど無意識に植木の肩を押し、突き放そうとしていた識子の腕を掴んだ。
「ねえ。そんなに、イヤ?」
「そ……そういう問題じゃ、ないと思います」
 識子自身、自分の抵抗がほとんど形だけのものであるという自覚はあった。だからこそ、こうして正面切って聞かれてしまえば、イヤだと答えることはできない。
 それでも。
「私たち、こんな関係じゃないです」
 流されるのは、嫌だった。
159A:WONDER TRIP LOVER 3 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:45:35 ID:4w9AnEKw
 識子はじっと、植木の顔を見つめていた。時折思い出したように轟く雷鳴も、いつの間にか随分と遠くなっていた。明日には、何の問題もなく南東京市に帰れるだろう。
 そうすれば、日常が待っている。
 識子はいつも通り現場を駆け回って、時々、植木や他の専門課の助言を仰ぐだろう。
 植木はいつも通り遅刻したりしながら、ヒラタや他の虫たちの世話をしたりするのだろう。
 特別な関係なんて何もない、ただの同僚の顔をして。
 目を逸らさないまま、植木はいつも着けたままでいるあのゴーグル――寧ろ、謎眼鏡――を外した。
「江波さんが欲しいのは、言葉?」
 植木は呟きながら、識子の耳元へと唇を寄せる。
「いいえ」
 識子は目を閉じ、聴覚から犯されていくような感覚を堪能する。
「僕に、どうして欲しい?」
 識子の耳朶に舌を這わせながら、ネクタイを解く、植木。
「私が欲しいのは、言葉じゃありません。態度でも、ありません。
 ……これがひと時の遊びなら、それでも構いません。ひとつだけ、約束が欲しいんです」
 既に囁くような声しか、識子の喉からは出てこない。それでも、互いの鼓動すら聞き漏らすことのないこの距離で。
「それは僕にできること?」
 植木は、識子の言葉をただのひとつも逃すまいと頬を寄せる。識子は己の腕を掴んだままの手に、指を絡める。
「やめないで。私が嫌がっても、今だけは」
 植木は識子の唇から零れ落ちたその言葉を味わうかの如く、深く自分の唇を重ねた。
160A:WONDER TRIP LOVER 4 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:46:48 ID:4w9AnEKw
「は……ん、う」
 全ての息を分け合うような、執拗なまでのキスに呼吸は苦しい。それでも、止まらない。
 唇の端々を余すところなく堪能した舌が互いの口腔を行き交う。生温い快楽は、優しい麻薬。歯列をなぞり上顎に触れ、絡み合い、どこからどこまでが自分なのか、わからなくなる。
 ようやく開放された唇に、ひりつくような僅かな痛みを感じて識子は、ああ、後でリップを塗らなきゃな、などとどこか冷めた自分が考えているのを自覚する。
すっかり上気し、欲情の色を宿した瞳が、同じ色をした植木の眼差しの向こうに見える。
「江波さん……」
 喘ぐような声でその名を抱いて、植木の腕が識子の肩を包みこむ。一塊になって倒れこんだベッドの上、布団には僅かな湿気が残っていた。不意に、識子の目端に涙が浮かぶ。
(もしかしたら、一昨日や昨日も、この人はここにいたのかも知れない。ここで、あの人と)
「いや……そんなことは、ないよ」
 小さく返す声で、識子は自分が、想像を口にしていたことを知る。
「昨日は確かに、誘われた。
 でも僕には、彼女は抱けない。
 信じなくても、いいよ。
 僕は好きな女しか、抱きたいと思わない」
熱に浮かされた男の言葉を、識子は今だけ信じることにした。明日になれば忘れる戯言だとしても、今だけは騙されていたかった。
熱を持った指が、識子の耳に触れる。ピアスの痕に触れ、耳の付け根をたどり、顎に触れ、顔の輪郭を確かめるようになぞる。
されるがままに首筋をさらけ出した識子の喉に植木は強く吸い付き、そこに紅く記された跡に、満足したように目を細めた。
違和感に、喉へと手を伸ばす識子。植木はその指を捕まえて、愛おしそうに甲へとキスを落とした。
そうしてふとその手首に視線を落とすと、ベッドへと投げ出したままの識子の、もう片方の手も掬い上げ、その両手首を握り締めた。
「何を……?」
 識子の訝しげな視線に、ウインク――普段から片目を隠しているというのに、妙に器用なウインクだった――を返し、先程外したばかりのネクタイでさっと縛り上げてしまった。
「え。え、えええ!」
「これで良し♪」
「いやそんな嬉しそうに言われても!?」
161A:WONDER TRIP LOVER 5 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:48:43 ID:4w9AnEKw
識子が手首の戒めに気を取られている間に、植木は嬉々として識子の上着を脱がしにかかり、はたと手を止める。
「あれ。このままじゃ、脱がせられない?」
「当たり前です!」
「まあいいか」
「いいんですか!?」
そのままいつもの作業着のボタンを外しにかかる植木に、識子はとりあえず全身をばたつかせて抵抗を試みる。
しかし縛られた手首はいつの間にかベッドの桟にくくり付けられてしまっていて、さらに腰から下には植木が圧し掛かっている。結果として。
「……あのね。江波さん。それ、僕のが擦れてキモチイイんだけど。もしかして、誘ってる?」
 妙に荒い息をつきながら、植木はようやく露出させた識子の素肌を舐め上げる。臍の少し上から、ベージュ色した(気合も何も入っていない、ウニクロで買った)スポーツブラの辺りまでを、丹念に、丹念に。
「そ、そんなつもりじゃ……」
 識子は恥ずかしさとくすぐったさで、顔を赤らめて身を捩る。その動きに、植木はまた、ん、と小さく息を洩らした。「……本当に可愛いな、江波さん」小さくそう呟き、身を乗り出してキスをする。
 識子は半開きにした唇で植木の舌を待ち焦がれていたが、植木はそっと重ねただけだった。呻き声にも似た溜息を零し、待ちきれなくなった識子から舌を伸ばして植木の唇に触れる。
「ん、んぅ……」
 識子は植木の下唇をなぞり、上唇を咬み、僅かなスキマを捜して潜り込もうとする。やがて、植木の唇に綻びを見つけたと思ったときだった。
 植木の両手が、識子のスポーツブラをたくし上げて、豊かな胸を包み込む。それまでにすっかり、痛いほどに硬くしこっていた識子の先端を摘みあげると強く揉みしだいた。
「んはあっ……っ!」
 急な刺激に、痛みよりも強い快楽を覚え、識子は背を仰け反らせる。
植木は焦らしていた唇を逃がさず、全身で覆いかぶさるように識子に触れると、服の上からでもわかりそうなほどに湿り気を帯び始めた識子の両足の間、女の子の場所に太腿を擦りつけた。
「っ、ん……!!
あ、あ、はあっ……っ」
識子の体が植木の下で二、三度強く跳ね回り、やがて激しい息をつきながら、小さな喘ぎ声を洩らす。軽く達したその様子を満足そうに見つめながら、植木は自分の服を脱ぎ捨てた。
162A:WONDER TRIP LOVER 6 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:49:55 ID:4w9AnEKw
ぬちゅ。くちゃ。
両足から脹脛の辺りまでズボンやショーツを引き抜かれた識子(ちなみに、この中途半端な状態に識子は一度拒絶を示したのだが、「着衣エロって知ってる?」との一言で軽く受け流されてしまった)の、潤みきった場所へと植木の指が出入りする。
最初は人差し指。その次は中指だけ。それだけでもキュウキュウと締め付けてくるその場所が、今まで誰も受け入れたことがないのだと知って植木は子供のようにはしゃぎ、丁寧にほぐす事に決めたようだ。
くちゅ、ぬぷ。
随分と粘着質な音をたてるようになって、識子の焦点が合わなくなってからでも随分な時間になる。徐々にその場所を往復する指はスムーズになり、その数を増やした。
くぷり。ちゅぷ。
胎内に余裕ができだしてからは、植木もただ出し入れさせるだけでなく、内部を探るように蠢かし始めた。時折、識子の体が強く跳ねる場所を見つけては、丁寧にそこを刺激する。
ぬちゃ、くちゅ、くぷ。
識子の口からは、殆ど意味のある言葉は出てこない。時折「あ、そこぉ……、やぁ、やだぁ」などというのを「イヤ?いやじゃないよね?」となだめてみる。その自分の声こそ、意味がない言葉のように感じて、植木は苦笑する。
くちゅ、くちゃ、ぬぷ、ちゅく。
やがて、親指と小指を残して3本。僅かな抵抗がありながらも、出入りが出来るようになったのを確認して、植木は指に残った粘液を、自分のモノに擦り付けた。避妊具ならば、持っている。それでも、わざと身に着けなかった。
明日になれば、お互い今夜のことなどなかったように振舞うのだろう。日常に帰れば、仕事や、周囲との人間関係もある。恋人という関係になるには、障害は多い。何より植木自身が、そういう鎖のようなものを嫌った。
それでも。彼女にとって、忘れられない出来事にしたいと強く願った。もしも、彼女との間に、今日を残す何かが残れば。その結果が幸福な物語であれ、悲劇であれ。彼女に強く自分が刻み込まれるのであれば。
子供じみた狂気を抱えたまま、植木は識子の脚の間へと身を沈める。

植木虫介は、本気で江波識子を愛していた。
163A:WONDER TRIP LOVER 7 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:51:18 ID:4w9AnEKw
強い圧迫感と違和感、そして苦痛に、恍惚に漂っていた識子の意識が覚醒する。
「か、はっ……!?」
「ああ、大丈夫?江波さん……っ」
ぎちっ、と音を立てそうなほどにきつく、繋がった場所からは一筋の鮮血が流れる。
生理的な涙が、後から後からぽろぽろと識子の目から溢れ、髪を濡らす。腕は識子の感じた衝撃を表すかのように強くネクタイを引いており、強く握り締められた拳ともども蒼白になっていた。
苦しそうな識子のその様子を、僅かに申し訳なさそうな顔で見つめながら、それでも植木の侵攻は止まない。
ず、ぬぷぷ、ずちゅ。
深く、深くまで押し入って、ようやく植木は腰を止めた。識子の痛みが退くまで、軽いキスを降らせ、髪を撫でる。拳をそっと握り締め、爪が識子自身の手に食い込まないように自分の指を滑り込ませる。
同時に、少し桟の方へと押しやって、血が止まるのを和らげさせた。
やがて痛みが治まり始め、識子は出来る限り大きく深呼吸をして、呟いた。
「痛いです」
なんとなく間の抜けた発言に、植木は思わず笑ってしまった。
「笑いごとじゃないですよ……っ、うう、ジンジンします」
「うん、初めてなんだよね。嬉しいなあ」
「こんな痛いものなんですか……」
「まあ、猫よりはいいんじゃないかな」
「は?……意味がわかりませんよ」
 いろいろとぼやき始めたのを植木はにこにこと見守りながら、識子の白い下腹部を撫でた。
 今、ここに自分がいるのだ。
 そして、彼女とひとつになっている。
164A:WONDER TRIP LOVER 8 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:52:17 ID:4w9AnEKw
識子の痛みが薄れたころ、それを確認してから植木は腰を動かし始めた。
胎内を擦られる違和感にも慣れてくると、識子の呼吸も徐々に変化し始める。小さな喘ぎ声が漏れ出すのを聞いて、植木は識子に声を掛けた。
「ねえ、江波さん?」
「ぁ……はい?」
「っ、ん……僕さ。避妊具、つけるの。忘れちゃってたよ」
「え……」
 植木の言葉の意味を理解すると共に、識子の顔色がゆっくりと変わっていく。
「まあ、そもそも、っ、持ってきて、ないんだけどね……っ」
 腰を突き入れるように動かしながら、その胸に口付ける。逆の胸には優しく触れながら、軽く噛み付いた。識子の膣は、さっきの告白からこっち、強く植木を締め付けて、離そうとしない。
それはもちろん、意識してのことではないだろう。
「ちょ、アッ、植木、さんっ!?」
「ああ、凄いよ、江波さんってば、僕のこと、離さないよ、締め付けて、絡み付いてくる……っ!」
 今の状態を素直に口にして、植木は一気に身勝手な頂点へと駆け上がる。
「あ、ああぅっ、ん、あっ、あくぅ……っ」
 識子の声が、快楽を噛み殺した辛そうなものへと変わる。それを聞いてしまえばもう、植木には自分を抑えられなかった。彼女の華奢な腰を押さえつけ、自分の体ごと叩きつける。
 くぷっ、ぷちゅっ、ぱちゅっ。
「どうする、ん、ですかっ」
 識子の声に、笑顔を向ける。
「どうしたい?ねえ、江波さん、……っ!!」
呼びかけながら、白濁した欲を識子の中に放ち、植木はただ、自分の顔が泣き笑いになっていないことを祈った。
165A:WONDER TRIP LOVER 9 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:54:04 ID:4w9AnEKw
翌日、識子が起き出した時には植木の姿はどこにもなかった。
あの緑のネクタイはベッドから外されていたが、右手首に蝶結びでくくり付けられていた。
のろのろと服に着替え、島中を探しても、見つからない。それどころか、島にいる誰に聞いても、見かけなかったという。
科研に帰っても、所長に「植木はどうした」と、逆に聞きたいことを聞かれる始末。

芦茂には予想通り質問攻めにあったが、殆ど上の空で聞き流しており、何を答えたかは識子自身、後からどれだけ考えても思い出せなかった。
戻ってきたラボにはこの数日分の仕事が溜まっている。今考えてもどうにもならないことより、目の前の山を片付けなければならない。
そうすれば、今まで通りの日常に戻れるのではないか。何もなかったかのような、日常に。識子はそんな思いで、仕事を片付ける日々に舞い戻った。

緑のネクタイは、机の引き出しに綺麗に選択してアイロンかけて畳んで、入れてある。
植木が帰ってきたら、とりあえず投げつけてやろうと識子は考えている。
『この間は大丈夫でしたけど、次にあんなことしたら、本当に怒りますからねっ!』
そう、怒鳴りつけてやろうと。


A:END
166 ◆/YXR97Y6Ho :2007/12/31(月) 03:54:59 ID:4w9AnEKw
全然黒くねえよ!?
三人称での視点移動癖は今後の研究課題。
とりあえず白はまた年始に。

皆様良いお年をー
167名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 04:44:58 ID:TvssLMAe
GJ&よいお年を
168名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 14:37:53 ID:NOi6uXTg
GJです!
黒植木もいい。白植木も期待してますw

植木と識子のエロSSはエロに持っていく課程が難しいですよね。
この人たちって基本的に性的なことに興味ない感じだし。ゲーム内では。
白い方をどうやって持っていくか、wktkです。

それでは、よいお年を……。
169名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 07:07:09 ID:8juJ1Om8
明けましておめでとうございます
白植木が楽しみです
170名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 19:31:05 ID:VCfWEODT
ほしゅ
171名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 19:42:23 ID:wJJH9jWT
鑑識官っていいよね
172名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 01:50:49 ID:+ghINBQ6
植木の法則
173名無しさん@ピンキー:2008/01/06(日) 16:04:31 ID:CpGV0Sad
>>172
木をゴミにかえる力!!
174名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 00:14:50 ID:NCD5sFO4
誰か格闘少女でエロいの書いてくれ
シチュは思い浮かばんが
175 ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/12(土) 02:32:37 ID:LVBW5Q/X
あけました。おめでとうございました。
年始って言ってたのに。バカバカ、俺のバカ。

か、書いても書いても終わらない、しかも迷走してる…
とりあえず目処はついたので、この土日に投下する、と保守ついでに自分を追い詰めてみる。
176名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 10:00:51 ID:/dLpiaG9
>>175
頑張れ!
177Ballet Mecanique 1  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:37:52 ID:JYhxrLmt
 きょとん。
 まさにそう表現されるような声色だった。
 識子は思わず脱力する。
「あ、いえ。なんでもないんです」
「そう?」
 植木は特に気にした様子もなく、再びライトを点けては消し、点けては消しと繰り返した。
「なんかこうやってると、面白いよ」
 こ、このがきんちょ。
 識子は思わずそう唸りそうになるのをぐっと堪えた。窓を叩く強い雨音が、室内に響く。
「もう一泊、することになりそうですね。
 ……鑑太、お腹空かせてなきゃいいんだけど」
 識子の独り言に、しかし退屈を持て余していた植木は耳を傾けていたようだった。
「かんた……って、前に連れてた、猫のこと?ほら、ツツガムシに咬まれてた」
「え?……ああ、よく覚えてますね」
「うん、まあね」
 随分と痒そうだった。そう言って笑う。
 その時、私も咬まれて痒かったんですけど。
 識子はそう言おうとして、やめた。その事件の時、植木は自分のことなどまるで気にしていなかったのを覚えている。
 ごろごろと空を鳴らし、雷が雲を渡る。
 榎田のことにもまた、植木は興味を持たなかったのだろうか。
 そうであれば良いのだけれど。
 識子はそんなことを思う自分の思考に驚き、頭を振ってその考えを追い出した。
「ん?どうしたの、江波さん」
 ライトを消したままの暗闇に慣れた目が、植木がベッドの上に大の字になっているのをうっすらと認識する。
 胸の中にちくりとした痛みが走るのを自覚し、識子は戸惑った。
「あ……その、喉が渇いたなーって。あはは」
 自分の声がぎこちなくなっていないか、識子は無意識に細心の注意を払っていた。
「そっか。んー、たしかこの部屋に紅茶があったよ。えーっと……窓際の棚だったかな」
 あー、と間延びした、欠伸交じりの声で答える植木に、識子はぎょっとした。
 慌てて部屋の中を見回す。
 いまだ灯りの戻らない室内。暗く、一瞥しただけでは何がどこにあるのかなんて、さっぱり判らない。識子は口を開こうとして、上手く声が出ないことに気が付いた。
 まるで喉の奥に何か塊があって、それがつかえているようで。
「植木さん、そんなのいつの間に見つけてたんですか?」
 自分の声が、ちゃんと音になっているのかどうか、識子にはわからなかった。
「一昨日かなあ。冬月……榎田さんが、淹れてくれたんだ。すごく美味しかったよ」
 布団の上でまどろむ植木の、普段は優しいその声が。今は何故こんなにも憎らしいのか。
 どうしてこんなにも、泣きたくなるのか。
 識子の心は叫び声を上げていた。
 その叫びに耳を塞いでいたのは、理性。
 今までずっと、わかっていた。
 わかっていて、それでも、見ないふりをしていた。

(私、この人のことが、好きだ。)

 きっと、昨日も植木はこの部屋にいたのだろう。そして、冬月と。
 はらはらと零れ落ちる涙に、識子は今が闇の中にあることを心から感謝した。
 植木に異変を気取られる前に、慌てて立ち上がる。
「電気、なかなか戻らない、ですねっ。
 私、ちょっと見てきてみます」
 今は、とにかく今は。この人と同じ場所にいたいと思えなかった。
 自覚した時には既に叶わぬ恋。なんて残酷。
 慌てて小走りに部屋を出ようとした識子はその思いに捕らわれていて、だから。
「あ、江波さん!」
「――!?」
 自分が向かっていた扉の、その足元にあった障害物の存在に。足を取られるその瞬間まで、気が付かなかった。
 ごん!
 識子は意識が暗転する直前、そんな音を聞いたと思った。
178B:Ballet Mecanique 2  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:40:40 ID:JYhxrLmt
  ◆   ◆   ◆   ◆

 ――大丈夫?
 なに?え、なに? なに?
 ――うーん……脳震盪かな。
 ノウシントウ?
 ――見せてみて。ん、痛む?
 イタイ。いたいよう。
 ――大丈夫?
 おでこいたい。
 ――……痛いの痛いの、とんでいけー。
 とんでけー。

  ◆   ◆   ◆   ◆

 ゆらゆらとした意識と視界の中、識子は自分の手が眼前、灯りを遮るように振られていることに気が付いた。
「あれ……電気……」
「気が付いた?」
「わっ!?」
 識子の頭上から、白い塊が覗き込み、あまつさえ何か言葉を発してくる。
 一瞬の混乱の後、それが後ろから頭越しに顔を出した植木の心配そうな顔だと理解し、識子は大きく安堵の溜息をつく。
 そして今度は、自分の置かれた状況を認識して、顔が熱くなるのを自覚した。
 ベッドの上に座らされていることはすぐに理解できたが、問題は上半身だ。
 意識の曖昧な識子をここまで運んできたのだろう、また縁に座っている植木の、その胸に寄りかかるようにして肩を抱かれている。
 頭は植木の肩にだらしなく預けられ、痛む額をさすられていた。
 何故か高々と掲げられた自分のてのひら――とんでいけー、と呟きながら空へ投げ出したのだが、識子には思い出せなかった――が、重力に引かれ植木の髪へ、ぽてりと落ちる。
 いつものゴーグルを外した植木の、穏やかな笑顔。その瞳に吸い込まれるような気がして、もっと良く見たいと思って、その髪ごと引き寄せた。
 ぐい、と。
 近づきすぎた唇を重ねるには、十分な距離。不意打ちに植木の目は丸く見開かれたが、それでも白い髪に絡められた細い指の、優しい拘束を振り払おうとはしなかった。
 まるで、それが自然なことであるかのように。ただ重ね合わせるだけの口づけを、二人はしばらく楽しんでいた。
179B:Ballet Mecanique 3  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:41:51 ID:JYhxrLmt
自分の行動を理解して赤くなり、飛び起きて距離をとる。そんな識子の様子を、植木は少しだけ残念そうな顔で眺めた。
「もういいの?」
「〜〜〜〜っ!?」
 植木はいたずらっぽくそう言って、慌てて唇を押さえそっぽを向く識子の髪をくすくす笑いながら撫でる。
「江波さんがキス魔だったなんてね。思わなかった」
 気楽にそう言ってのける、間延びした植木の声に識子はがっくりと肩を落とした。
「ええ、実はそうなんですよ。恥ずかしいところをお見せしちゃって、あは、あははは……」
 間抜けな嘘と虚ろな笑い声が、識子自身にも情けなく感じられた。
 識子は大きく息をついて、気分を変えるつもりで周囲を見回した。部屋の中は灯りが消える前とそう変わらない。変わるわけがない。一部の床が盛大に散らかってるのは……
そこまで考えて、ふと識子は自分の額に違和感を覚えた。手をやると、濡れたハンカチが張り付いている。男物、というより少年用の。
「昆虫王子、ムシプリンス……」
 プリントされている文字を読み上げると、植木が慌てた声を出した。
「あ!それ、綺麗だからね!全然使ってないし」
 それもどうかと思い軽くにらみつけた識子の視線に、植木はさらに慌てる。
「手は洗ってるよ!?」
 追求しても意味はない。そう思い、識子はもう一度ハンカチを見た。やたらリアルなポリゴンで描かれたカブトムシと目が合う。
「それ、よくできてるでしょ?映画館で買ったんだ」
 ええ、とても良く出来てます。小さい子供が思わず泣きだすんじゃないかってほど。
「同時上映が女の子向けだったから、泣き出す子とかいたなあ……」
 本当にいたのかよ。いやむしろ。
「見に行ったんですか……」
「うん」
 即答する。
「なかなか面白かったよ。またやってくれないかなー。そうだ、その時には江波さんも一緒に行こ!」
「遠慮しときます……」
 子供向け映画を植木と観ている様を想像してしまい、識子は軽い頭痛を覚えて頭を抱える。
 その様子に、植木は今度こそ本気で慌てて識子の傍に寄った。
「大丈夫!?まだ痛むの?」
 ハンカチを当てていた額にそっと手を当て、心配そうに覗き込むその顔に、さっきのキスを思い出して識子は思わずうつむいた。
「こぶになっちゃってるね。しばらくは痛むかもしれないな」
 植木は識子の額をまじまじと見つめ、呟く。そして、うつむいて視線を逸らす識子に気が付くと、小さく微笑んだ。
「痛いの痛いの、とんでいけー……」
 そう言って、赤く腫れたこぶに優しくキスをした。
 口付けを受けた識子の目に、再び涙が浮かぶ。
「なに、するんですか。植木さん」
180B:Ballet Mecanique 4  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:43:14 ID:JYhxrLmt
「なにって。おまじない」
 非難がましい視線で睨まれ、植木は僅かにひるんだ。
「植木さん、誰にでもそういうことするんですか」
「……キス魔の江波さんに、言われたくないな」
 行き交う言葉がとげとげしさを増す。
「誰がキス魔ですか」
「自分で言ったでしょ」
 真正面から、にらみ合う。
「嘘に決まってるじゃないですか!」
「じゃあなんであんなことするのさ!」
 眉根を寄せて、怒鳴りあって。
「そっちこそ!『もういいの?』なんて!」
「あー!ちゃんと覚えてるじゃない!」
 植木、1ポイント先取。
「う。それは……。けど、植木さんだって」
「ボクが何なの」
「嫌がらなかったじゃないですか!」
「あ……」
 ドロー。
 互いに少しだけ冷静さを取り戻し、すぐに気まずくなって視線を逸らす。
 先に沈黙に耐えられなくなったのは、識子だった。ベッドの上でひざを抱えこんで、ポツリと呟く。
「植木さんの、せいです」
「……。」
 植木はまだヘソを曲げているようだった。
「植木さんが、榎田さんのこと。好きとか言うから」
「そりゃ、好きなんだから……」
 むすっとした様子で、それでも返事はする男。
「綺麗な人、ですもんね」
「なんなのさ、もー」
 植木はまたベッドにごろんと横になってしまった。
「ああいう人が好みなんですか」
 識子の発言に、横になったばかりの植木が飛び起きる。
「なんでそうなるの!?」
「どこの欽ちゃんですか」
 識子は直前まで植木が寝転んでいたスペースに、いまだとばかりに飛び込んだ。
 すっきりとしない湿気を含んだ布団に、植木の体温が移っている。
 ちらりと植木を盗み見れば、呆気に取られた顔をしている。識子は「べー」と、声に出して舌を突き出す。
「布団、とっちゃいました」
「……いいけどさ」
 植木は突然、明後日の方を向いて、毒気を抜かれたような顔で頭をぽりぽりとかいた。その態度の変化に識子は戸惑ったが、小首を傾げただけで、気にしないことにした。
 横に転がっていた枕を抱えて、ごろごろとまどろむ。
 それにつれ、識子の髪が布団の中で広がっていく。髪留めは場所を奪った拍子に外れていた。
「江波さんってさ。無防備すぎるって言われたことない……?」
 そっぽを向いたままの植木の耳元が赤いのを見つけ、その言葉を聞き、識子は理解した。
この男は、今。欲情している。
「……わかってるんでしょ」
 泣くことなら、いつでもできる。
「誘ってるんです」
 後悔も、懺悔も、今は必要ない。
「ねえ、植木さん」
 身を起こし、その首に絡みつく。子供のように。蛇のように。
首筋を指でたどり、青いシャツのスキマから鎖骨に触れる。
 識子には確信があった。
 今は、拒絶されないという確信。
 処女だとしても、それは生命のすべからく持つ本能。
「抱いてください。今、ここで」
 僅かな恐怖を押し殺して識子はそう囁き、弾かれたようにこっちを見た植木の頬に指を沿えて再度その唇を奪った。
 植木は、それでも抵抗しなかった。
181B:Ballet Mecanique 5  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:44:29 ID:JYhxrLmt
 唇を擦り合わせ、軽く食んで、舌先で触れる。識子の動作に迷いはなかった。戸惑うばかりの植木の唇も、やがて識子のそれに応え始める。
 ぎこちなく、優しく、怯えるような、それでいて決して拒絶しない唇。
 それを堪能しながら、識子は植木の手を取り、己の左胸にそっと重ねた。触れた瞬間、熱い物に触れたかのように跳ねる植木の掌を押さえつけて。
 はしたないと思う。
 それよりも、触れて欲しいとも。
 掌の下で刻まれている早すぎる鼓動がその思いを伝えたのか、識子が手を下ろした時、その手は植木自身の意思でその場所を離れなかった。
 識子はキスをやめないまま、植木のネクタイに手をかける。
「ぐえ」
 慌てて手を離し、距離を取ると、絞まりすぎたネクタイを緩める植木と目が合った。
「ご、ごめんなさい。他の人のネクタイなんて、解いたことなくて」
「いや、解きなれてるって言われても困るけどさ……えっと……自分で脱いで、良いかな」
 一瞬識子の思考が停止する。何故だろうか、コトを仕掛けておきながら、脱ぐということに考えが至っていなかった。沈黙を肯定と受け取ったのか、植木は片手でネクタイを解く。
 しゅる、と音を立てて緑の布がベッドへと落とされる。白衣を脱ぎ、床へと投げた。青のシャツに濃紺のスラックスという出で立ちはいつものとおりだというのに、白衣がないというだけで何故こうも印象が変わるのだろうか。
「……もっと脱ぐ?」
 いつの間にか凝視するようなものになっていた識子の視線に苦笑し、自分でシャツのボタンに手をかける。何故だか息を詰めて見つめている識子によく見えるように、片手で、ひとつずつ。
 手の動きにつられて下腹部まで視線を持っていってから、識子は慌てて目を逸らした。
 下腹部より更に下、スラックスの一部は、随分とこう、盛り上がっていて。女性と男性の身体的違い(性的な意味で)をこうも意識したのは、識子には初めてかもしれない。
 識子が目を逸らしたことにも、その理由にも気が付いた植木は、ベルトのバックルを緩めながら唇を尖らせた。
「そりゃ、ボクだって男の子なんだから……」
「え、あ、や、お!?」
 識子が目を逸らしている間に、植木はトランクス(やはり、某子供向け映画のだった)だけの姿になってしまっていた。靴下はどーした。そう思って一瞬視線を走らせると、スラックスの中に丸まっているのがちらりと見えた。一緒に脱いでしまったらしい。
「さて。江波さんは?ボクが脱がす?」
「じ、自分で脱ぎます!」
 慌てて上着から袖を抜き、脱ぎ捨てようとして。ふと、識子は自分をじーっと見ている視線に気が付いた。植木が凄く楽しそうに識子を見ている。今更に、顔が赤くなる。
「み、見ないでください……」
「えー。江波さんはすっごい見てたのに?」
「それでもダメ!」
 識子は植木の目を慌てて両手で覆い、何かないかと辺りを見る。すぐにベッドの上でさっき植木が脱ぎ捨てたネクタイを見つけて、ぱっと取り上げた。
「あ。なんか、ヤな予感」
「そういうのは得てして当たるものです」
182B:Ballet Mecanique 6  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:46:13 ID:JYhxrLmt
 植木はさて、どうやったらこのネクタイのしわがとれるだろうかと考えていた。
 自分の視界を覆い隠す、いつものネクタイ。識子が変な結び方をしたのか、頭の後ろの結び目は軽く引っ張った程度ではほどけそうになかった。ただ待っているだけもつまらない。
 そう思うと耳を澄まして、識子の立てる衣擦れの音が奇妙に自分を高揚させるのを感じていた。
 識子は思い切って下着も何もかもを脱ぎ捨てると、急に感じた肌寒さに身を震わせた。植木の白衣を肌の上に直に羽織ると、植木の匂いがする。僅かに混じる土の匂いは、多分ヒラタのニオイなのだろう。
 衣擦れの音が止んだのを理解して、植木が識子の方へと顔を向けた。
「……識子ちゃん?」
 そういえば、以前はそう呼ばれていたような気がする。そんなことを考えながら、植木の目前まで来て。識子は植木のネクタイ越しの瞼に軽くキスをして、そっと上半身を撫でた。
  普段はひょろりとした印象を受ける男なのに、胸板や腹筋は、はっきり言って似つかわしくないくらいにがっしりしている。鎖骨に口付けたり、腕の筋肉に掌を這わせたりしていると、時折、植木の体が小さく震える。
「寒いんですか?」
 識子がそう声をかけると、小さく首を横に振った。
「いや……そうじゃないよ」
 何かを押し殺した、低く震えるような声は、今の識子には酷く、心地よいものだった。
 今は、自分のことだけを。
 心からそう願い、植木の指へと口づける。汗ばんだ掌に舌を這わせると、植木が小さく声を洩らした。
「あ……識子、ちゃん……?」
「どうしました?」
「ん……いや、なんでもない」
 見え透いた嘘をつく男を見つめながら、識子は小さく笑った。そのままぱくりと指を咥える。甘く噛みつき、舌を絡めるように指に沿わせれば、植木は大きく息を飲み込んだ。
 植木の自由な方の手が何かを求めて虚空をさまよう。視界の端にそれを見つけて、識子はその手を捕まえようと腕を伸ばした。
 触れた手の感触をたどり、腕を、肩を経由して、識子の首筋まで――途中、白衣に気づいて怪訝な表情を浮かべたものの、照れたような声で識子が呟いた、寒かったから、という理由に僅かな苦笑を零した――
 植木の指がつたって行く。それが乳房に触れたとき、識子は何故か深く安心するような心地よさを覚えた。
「ん、ぁふ……」
ようやく開放された指先、絡みついた識子の唾液を、植木は識子に見せ付けるような仕草で舐め取る。
「……仕返し、するよ」
 そう言うと、識子の胸に唇を寄せた。
「あ……」
 視界の奪われた植木の触れた場所は、見当違いな脇腹から、やがて触感を頼りにしてか、精確さを増していく。
 やがて見つけた頂に、すぐさま吸い付くようなことはせずに、舌先で軽くつついて見せた。反対の胸は、柔らかく揉みしだかれて、硬く張り詰めている。
「や、ぅ……うえき、さぁん……」
 焦らされている。それは解かるのに。
 どうすれば、この甘い責め苦から抜け出せるのだろうか。
 喉を逸らして喘ぐ声は、もう、自分でも聞いたことのないほどの高さで響いていた。
 思考回路は焼け爛れてしまったかのように、ひとつのことを考え続けている。
 もっと。もっと欲しい。
 触れて欲しい、そんなんじゃない。
 自分のナカ、奥底、中心に。
 このヒトが、欲しい。
183B:Ballet Mecanique 7  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:47:14 ID:JYhxrLmt
 識子はベッドの上で、植木の肩を押さえつける。されるがままの植木だったが、識子がトランクスに手をかけた時には、無理に降ろされるのを嫌ってか手だけで識子を制止し、自分でそれを脱いだ。
「あのさ。もうコレ、外してもいい?」
「ダメです、ダメ!」
 そう言って、目隠しのネクタイに手をかけようとするのを識子は押しとどめる。
 そうでなくても恥ずかしくてたまらないのに。
 見られていないという思いが自分を大胆にしていることに、識子は自覚を持っていた。
 植木の、肉親意外では初めて見た男のヒトの、ソレ。硬くなって脈打っている、反り返ったソレに恐る恐る触れると、植木が呻いた。その様子を見て、識子はそっと自分自身を確認する。
 そこは、自分でも驚くほどに濡れていた。
(これなら、自分でも……難しくないかも、しれない)
 意を決して、深呼吸。植木のモノを掴み、自分の入り口へと宛がう。
 僅かに、心残りがあるとすれば。
「あの、植木さん……」
「どうしたの……?」
「なんでも、ないです」
 見え透いた嘘に、識子の目から涙が溢れそうになる。
 想いが通じ合えていたら、幸せだったのに。
 涙を痛みのせいにしたくて、識子はゆっくりと腰を落とした。楔の食い込む感触は徐々に、植木に快楽を、識子に痛みをもたらし始める。
 植木は識子の腰に手をやる。それは介添えにも、ためらいにも感じられた。その手を握り締めて、識子は腰を進めた。
「ん――ッ!」
 そして全てが収まった時、二人同時に、理由は違えど同じような息を洩らす。
 識子は植木の胸板に、崩折れる様に身を預けた。涙はもう、痛みなのか、悲しみなのかわからない。ただひたすらに嗚咽を堪えて、繋がる男の胸にすがりついた。
 植木は識子の様子に驚いたのか、肩を抱いて、背中をさする。
「識子ちゃん?大丈夫、大丈夫だよ……?」
あやすようなその仕草に、いつもと逆だ、と識子は思った。痛みを堪えて、呟く。
「……植木さんの、せいです」
「……ボク?」
「そうです。植木さんの、せい」
 顔を近づけてキスをねだる識子に、植木は応える。そうしてようやく、これが初めての、おまじないでも『奪われる』形でもないキスだと、植木自身が気がついた。
 上体を起こし、識子の背筋を正し、何度も何度も擦りながら、今度は自分から口付ける。
 髪を撫で、落ち着いてきた様子を見せる識子の肩を抱く。識子の中で熱く包まれた自分がケモノのような、我慢ならないほどの衝動を脳髄に突きつけてくるのを抑え込んで、優しい男のフリをした。
184B:Ballet Mecanique 8  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:48:24 ID:JYhxrLmt
「教えて?どうして、ボクなの」
「榎田さんのこと、好き、なんでしょう?」
「…………」
 識子の返答に、全てを――物理的に――投げ出して、植木はばたりとベッドに倒れこんだ。
「何ソレ!?
ボク、江波さんにどう思われてたの?」
 脱力した声が、エクトプラズムでも吐いてそうな植木の口から漏れる。
「どうって……」
 識子の中から、まだ植木自身は抜け出ていない。倒れこんだ拍子に、さらに深く突き入れられたようにすら感じるその存在感に、植木が『萎えた』わけではないことだけは解かっていた。
「つまり、ボクは。女のヒトなら誰でもいいような男なんだーと」
「え、いや、なんで」
「江波さんに。そう思われてたんだ?」
「そんなこと言ってないじゃないですか!」
「あー、ショックだー。選りにも選って、江波さんにそんなふうに思われてたなんてー」
 植木は両手足を投げ出し、ばたばたと暴れる。
「ちょっと、植木さん!?」
 その体にしがみつく様にして、識子は声を張り上げた。
「その、まだ、中に……」
「あ。ごめん」
 恥ずかしそうに言う識子の言葉に駄々をこねるのをぴたりとやめて、植木は素直に謝る。そのまま、大きく溜息をついてぼそりと零した。
「でも本当に、ちょっとショックだよ。好きな女の子にだけは、言われたくない言葉だよね、ソレ」
「……はい?」
 今度は識子が、聞き返す番だった。
「だってそうだよね?江波さんはボクが、女のヒトとして榎田さんを好きだと思ってたのに、誘ったりしたんでしょ?初めてだってのに無理しちゃってさ」
「え、なんで判っ……」
「いくらボクも初めてでも、わかるよ、さすがに」
「い!?」
 識子としては、とにかく植木の返す言葉のいちいちに驚くしかない。
 そんなこと初めてなのにわからないでくださいとか、いやそもそもあなた初めてってとか、じゃあ榎田さんへのコメントってどういう意味ですかとか、好きな女の子って誰のことですかとか。
(さてどれを聞こう?選択肢は4つです……とかやってる場合じゃなくて)
 とりあえず一番重要な質問を消化するべきだろうと判断し、識子は植木の鼻先に指を突きつける。
 目隠しはしたままでも、触れるか触れないかの位置に何かが突きつけられたことはわかったようで、植木が一瞬ひるむ。
「……好きな、女の子って。誰のことですか」
「……え。ボクそんなこと言った?」
 最初から視線なんて合っていないのに、その上でそっぽを向いても、何の意味もない。識子は犯人を追い詰めるときのような気分だった。
「じゃあ、植木さんは。好きでもなんでもない女のヒトに誘われただけでも、ほいほいついていっちゃうようなヒトなんですね?」
「……う〜。江波さんのイジワル」
 実に消極的ながらも肯定を見せた植木に、識子はそのまま続ける。
「次。榎田さんのこと、好きなんじゃないんですか」
「待って、榎田さんのこと好きだって言ったのは確かだけど、なんか誤解あると思う」
 植木は少し唸るような口調で返す。
「ボク、榎田さんが女性だって今日初めて知ったんだよ?」
「あ……」
 まったくもってそのとおりである。考えてみれば、植木は識子に食って掛かった『冬月』にもまったく普通の対応を見せていた。
 逆に言えば、この男にとって、興味を示す対象ではなかったということだ。『榎田』のことを、恋愛感情的な意味で好きだと言っていたのであれば。
「それは、ちょっと怖い……」
「やめてお願い想像しないでー!?」
 植木はまたじたばたと暴れた。
185B:Ballet Mecanique 9  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:49:32 ID:JYhxrLmt
 植木が暴れるたびに、識子の中で主張しているモノがのた打ち回る。もう痛みはなかったが、違和感が消えたわけではなかった。
 識子は再び、植木の胸にしがみつくような形で大きく溜息をついた。
「……なんか、こんな状況で話すことじゃなかったような気がします」
「あ、ボクも。そう思ってた」
 植木が、下から腰を突き上げる。
「きゃう!?」
「……まだ、ひとつだけ。解消できてない疑問があるんだけど」
 時折腰を突き上げながら、植木は識子に声をかける。
「なぁ……んっ、なんですか……っ」
「江波さんは、ボクのこと好きなの?」
「あ……」
 一度も明確な言葉に出来ていない想いを指摘されて、答えに詰まる、識子。
「う、うえきさん、こそ……」
 時折揺さぶられる身体で、なんとか言い逃れる術を探そうとしても。
「……好き、だよ。人間の中で、一番好き」
 すぐに返されてしまうのは、もう、どうしようもないことなのかも知れなかった。
「目を、見ないで、なんて。誰でも、言えます……っ」
「じゃあ、外してもいいよね?」
 植木はそう言うと、識子の答えを待たずに目隠しにしていたネクタイをむしりとった。
 慌てて、識子は自分の身体を両腕で隠し、腕の中に顔を隠さんばかりに俯いてしまった。
「あ、やだっ……」
「……どうして隠すの?」
 識子の両腕を掴んでゆっくりと開かせる植木の目は、露になり行く識子の裸体を見ていない。じっと、ただその顔を見つめていた。
それなのに。
「あ……なんか、大きく……?」
「うん。ボク、すごくドキドキしてる。識子ちゃんの、顔が、見たいから」
 そういう植木の声は酷く真剣だった。識子が緩慢な動作で顔を上げると、じっと、真摯な目つきで見つめていた植木と目が合う。
「愛してる」
 目を見て言われたその言葉に、識子は顔だけでなく全身が熱くなるのを感じた。
 胸の奥に宿る痛みは、片思いだと思っていたときよりも鋭く、そのくせ、ひどく愛おしい。
「愛して、います……」
 言葉は、一粒の涙と共に滑り落ちた。
 植木は識子にキスをした。
「ありがとう、識子ちゃん」
 そのまま植木は腰を突き上げ、欲望のままに動き出した。識子もまた、それに応えようと植木の首にしがみつき、何度も何度も、くちづけを繰り返す。
 同じリズムの律動の中、彼我の境界が薄れていくような錯覚に目が眩む。
 そこにいるのは最早、江波識子と植木虫介ではなく、男の背中に爪を立てて高い声を上げる女と、女の一番深いところを目指す余りに縋りつくような姿の男、ただ一組のつがい。
 互いが互いのために存在するかのような行為の中で、初めて互いの生まれた意味を、出会った意味を知るような感覚の中で。
 そして二人は、固く手足を絡ませたまま、同時に快楽の頂点を迎えた。
186B:Ballet Mecanique 10  ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:50:06 ID:JYhxrLmt
「ねえ、植木さん?」
「ん?どしたの」
「どうして、急に『識子ちゃん』なんですか?」
「あー……、うん。前に、そう呼んでたこと、あったよね」
「えっと……そうですね、新人のときとか」
「そのころはね。サナギだなーって思ってたんだ」
「さなぎ……」
「でもね、羽化したら、凄く綺麗な蝶だった」
「えーっと……つまり」
「んー……好きになった子のことを、名前で呼ぶのが照れくさくなった、だけなんだけどね」

「……この、がきんちょ。」
187 ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/13(日) 03:53:18 ID:JYhxrLmt
Bは以上! ああもう長いー。ラストはヒヨッタんじゃない、ピロートークなんだと言い訳してみる。
でもごめん行為描写はひよった。
あと1は投下時にタイトルミスってるけど、修正する意味はないので放置。
188名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 10:47:51 ID:UsfGLkY3
GJ!!
あんたほんまにべっぴんさんやぁ…
189名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 12:00:05 ID:celCb1AP
>>187
乙です
190名無しさん@ピンキー:2008/01/15(火) 20:11:45 ID:WQ6lysGe
保守
191名無しさん@ピンキー:2008/01/24(木) 22:56:15 ID:aeSkt3Ct
ほしゅ
192名無しさん@ピンキー:2008/01/25(金) 01:36:11 ID:XXC7F2A3
GJすぎる!
黒も白もいいなぁ
植木もかわいいが、識子の可愛さは異常
193 ◆/YXR97Y6Ho :2008/01/31(木) 23:08:10 ID:P2er0wFx
429 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/31(木) 19:14:09 ID:sPBX980a
「うわっ・・・ここってこんな風になってるんだ・・・へえーっ
「人体の神秘だわ」
「おい、そんな風に触んなって!」
「やだ、怖いの?男のくせに」
「そんなんじゃねーよ・・・うっ」
「やっぱ生で見ると違うわねー」
「なんか汁でてきたよ」
「も、もう駄目俺・・・限界・・・」
「え、ちょっと出るの?マジで?」















「おや、今年のリタイア学生は彼か」
「毎年一人は耐えきれなくなって部屋から出ますな」
「早く解剖実習に慣れて貰わんと
立派な医者になるために無くてはならんもんだからな」

194名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 23:10:53 ID:P2er0wFx
がが。投稿ミス。しかもトリまで。ぬぬう。
まあいいや。
このコピペがどのスレのかはあえて言わない。言わないけど。

このスレなら。このスレの住人ならきっと笑ってくれる……!



ってことで古畑×識子の投下予告。バレンタイン狙いでー。
逃げないよ、ゲイシャニンジャに誓ったから!
195名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:38:45 ID:OqT2/lHp
ほす
196名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 17:29:52 ID:rUucApL2
wktk
197名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:50:50 ID:fOlKyc+6
これは?携帯だけだけど
ttp://courseagain.com
198名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 20:45:41 ID:vJFuUqmY
あがってると思ったら業者のコピペかよ
199 ◆/YXR97Y6Ho :2008/02/14(木) 06:25:19 ID:V4cnUQRe
相変わらずギリギリ…むしろOVER?
次レスから投下します。
投下したら寝るっ!

今回作業BGMのせいか、テンションおかしいです。
ヤラナイカとか塊魂とか聞きながら書くんじゃなかった…
200一万円と八千円前から 1 ◆/YXR97Y6Ho :2008/02/14(木) 06:27:18 ID:V4cnUQRe
2/13 pm:18:28

チョコレート色の下着は、ピンクのリボンがあしらわれていてとても可愛らしく見えた。
おねだん:いちまんはっせんえん(上下セット)。
江波識子は人知れず、財布と相談を始める。
今日、帰宅した識子が最初に見たのは玄関から寝室から散らかりまくる下着だった物の残骸たち。どれもコレも、鋭いナニカで引き裂かれたものだった。
一瞬いつかのストーカー騒ぎを思い出し、小さく身震いするものの、現場に居合わせた第一発見者、月島のおばさんの証言はこうだ。
『あのねぇ、識子ちゃん。おばさん、肉ジャガ作ったから持ってきたんだけど、その時にね。お台所で黒光りするアレを見かけたのよー。
びっくりするでしょ?それで、新聞持って追いかけたんだけど。タンスの裏に入り込んじゃってね?それで、タンスを動かしたら、おばさん、うっかりタンスを倒しちゃって。あ、黒光りするアレはその時退治できたのよ?
ああ、そういえばその後、部屋に猫が入るのを見たわねぇ』
以上、捜査終了。か・ん・ぺ・き!
識子は頭を抱えながら、まだ一度も目を通してない今日の新聞、お気に入りだったがもう着れそうにない下着等をゴミ箱に突っ込んだ。ついでに猫又も放り込んで漬物石で蓋に重石。どうせ自分で出てこれるだろう。
そのまま制服を着替えもせずにふらふらと近くの百貨店まで出かけ、今に至っている。

同日 pm:19:00

財布との交渉終了。
結論:無理。

こんなのどこからどう見てもバレンタイン専用装備、いわゆる勝負下着というやつだ。コレを着て、恋人の前で優しく言うのだろう。
『私を食・べ・て(はーとまーく)』
識子は想像だけで身震いした。しかもストーカーへの恐怖より大きく。
可愛いのは確かに可愛い。だがしかし、こんな年一回限定、滑ったら目も当てられないギャグのためにいちまんはっせんえんはない。しかも。
(相手もいないよ……)
 なんだかトホホな気分に包まれて識子はその場を立ち去ろうとして、振り返ったはずみに何かにぶつかった。
「いたた……」
「おや、すまない」
 識子は痛む鼻を押さえながら、謝罪を返してきた障害物に目をやる。そこにいたのは古畑だった。
「ふ……古畑博士。なんでこんなところに?」
「いや、シャツを買いに来たんだが」
「紳士服売り場はこの階じゃなかったと思うんですが……」
「その通り。この上のフロアだ。とはいえ、エスカレーターから見覚えのある姿が見えたものでね。ここはひとつ、うら若き女性の貴重な意見に耳を傾けようと思ったんだ」
 自分で選ぶといつも同じ服になってしまうものだからね。そう言ってからからと笑う古畑を見て、識子は妙に脱力した。
(つまり、私を見かけたというだけの理由で、平気な顔して婦人服フロア、それも下着がメインのフロアをうろついていたのか、このオジサマは)
 古畑は識子の様子に気づいたのか気づいていないのか、なおも言葉を続ける。
「ああ、そんな顔をしないでくれ。このフロアをうろついていたわけじゃない。ただ、10分くらい君の後ろにいただけで」
 識子はめまいがするのを感じた。
「ところで江波くん、さっきからずっとこのマネキンの前で何を唸っていたんだ?」
 古畑はそう言うと、答えを待たずにひょいと識子の前を覗きこんだ。
「あ、ちょっと博士!」
「ほう、可愛らしいじゃないか」
 慌てた識子の制止は間に合わず、古畑はチョコレート色の上下をまじまじと観察する。と、不意に識子を――寧ろその体型部分を――しげしげと見つめた。
「ふ、古畑博士。なんというかその視線は、『せくはら』っぽいです」
 視線に気が付いた識子が慌てて腕で体を隠す。古畑は顎鬚を撫でるような仕草をしながら、それでも動じずにいたかと思うと突然、悪戯を思いついた子供のように晴れやかな笑顔を浮かべた。
201一万円と八千円前から 2 ◆/YXR97Y6Ho :2008/02/14(木) 06:28:25 ID:V4cnUQRe
同日 pm:19:15

 識子は盛大な溜息を吐いた。
 腕に下げた紙袋には例の下着(いちまんはっせんえん)が入っている。
 識子としてもさすがに断ろうとしたのだが、古畑は「なに、これはお礼の前払いだ」と言ってにっこりと笑って見せ、そのまま引きずる様にして識子を4階紳士服売り場へと連れて来た。
 今、識子の眼前には様々な色柄の生地がずらりと並んでいる。
(シャツを買う……って、オーダーメイド!?もっと気楽な既製品かと思ったのに……)
「仕事用のものではないから、適当に選んでくれたまえ」
 古畑は、サイズが変わったかもしれないからと採寸を受けながら、実に気楽に言ってのける。識子の苦悩など、知る由もない。
 布地を前に頭を抱える識子に、若い男性店員が小さく声をかけた。
「お悩みですか?旦那様でしたら、体格もわりとがっしりされてますし、はっきりした色の方がお似合いかと思いますが」
「だ、だ……っ!?」
 思わず声が裏返る。店員は少し不思議そうな顔をしたが、識子と古畑の年齢差をふと思い浮かべたのか、訳知り顔で頷いて見せた。その顔は、父娘と思ったわけでもなく、援助交際的な何かと思ったわけでもなく。強いて言うなら、そう。
 新妻、かつ若奥様。初々しいなあ。
識子にはもう、訂正する気力もなかった。
「あは、あはははは……」
 乾いた笑いを浮かべる識子の視界の端に、どこか見覚えのある色が飛び込んできた。
 バックヤードに持って行こうとしていたさっきの店員(寧ろ、その途中で識子に声をかけたらしかった)を捕まえ、聞いてみる。
「あ……その生地は?」
「これですか?バレンタイン向けの商品だったんですが……今からでは、明日には間に合いませんよ?」
 識子は一瞬だけ逡巡し、すぐに思い直した。
「かまいません」
 柔らかい笑顔を浮かべていたことに、識子自身は気が付いていただろうか。
 残念ながらその笑顔も、さらに細かいステッチの指定やらボタンの縫い付け方やらの指定を考えているうち、秒速で曇っていったわけだが。

同日 pm:20:05

 識子と古畑はショッピングフロアが閉まるのに併せ百貨店を出た。
 古畑は何故か不機嫌そうな表情をしていたが、識子はあまり気にしないことにしたそれより気がかりなことがあったからだ。
(あああああ。殆どボロボロにされてたのに、結局これ一着……明日から、どうしよう)
 いっそのこと、今日着ているのを明日もそのまま着けようかとすら考え始めた識子に、古畑が声をかけた。
「さて、江波くんの自宅はどこだったかな」
「え?」
「自宅まで送ろう」
 識子は慌てて首を振る。
「そんな、大丈夫ですよ。この時間ならまだバスもありますし」
「安全やバスの問題ではないよ。私にエスコートさせてくれないか?」
 妙に気障に言う古畑に、識子は思わず「芦茂さんみたいなこと、言いますね」と吹き出してしまった。
それを聞いた古畑が憮然とするのがなんだか少し可笑しく見えて、一層笑いがこみ上げたが、それを笑えば今度はヘソを曲げかねない。そう思い、識子はわざと偉そうな咳払いをひとつして答えた。
「わかりました、博士。エスコート、お願いしますね」
202一万円と八千円前から 2 ◆/YXR97Y6Ho :2008/02/14(木) 06:29:46 ID:V4cnUQRe
同日 pm:20:30

識子の自宅を見て、古畑は感心した様な声を上げた。
「懐かしいな。私が子供の頃は、こんな家屋が随分残っていたものだが」
「あはは……古臭い家で。お恥ずかしい」
 識子は背後で『識子どの、古臭いとは何事ですか!』と喚いている幽霊を黙殺した。
「安心したまえ、褒めているんだよ」
『ほら見たこと、やはり古畑どのは物を見る目があられる』
 小さく苦笑し(そうでもして誤魔化さないと、どちらに対して答えたものか自分でもわからなくなりそうだったのだ)、識子は引き戸に手をかける。
小さく隙間を開けてみた所、中には猫又も含め誰もいないようだった。
「博士。今日、は……?」
古畑に礼を言おうと、くるりと振り返ろうとした識子を、後ろからふわりと回された腕が留めた。
「……江波くん。君はまさか、家に鍵をかけていないのか!?」
 身長差のある頭上から古畑の強張った声が降って来るのを、識子は不思議な気持ちで聞いていた。
「ええ、そうですけど……」
 抱き締める腕の力が強くなる。それを識子は心地よく感じた。
 嫌だと思わない自分が不思議だった。
「無用心な……。あんな騒ぎもあったというのに。危険だと思わないのか?」
 危険といえば、今の状況の方が、いろんな意味で危険な気がするんですけど。識子は胸の中でそう呟く。どこかで、信号が黄色く明滅しているような気がした。
 識子は自分を抱き寄せる大きな掌に、自分の掌を重ねる。その腕が小さく震えていたが、それが、今にも雪がちらつきそうな夜の寒さに寄るものなのかどうか、そしてどちらの震えなのかどうかも、誰にも判りそうになかった。
「……私は、君のことが心配でならないよ」
 長く伸びた識子の髪に顔を埋め、古畑が呟く。
 それが少しだけこそばゆくて、識子は目を閉じ、小さく息を洩らした。
 その息が白さを失う頃、古畑は識子の肩を抱くようにして、自分の方へと向き直させる。
 識子が目を開けると、古畑と目が合った。
 ああ、赤信号だ。
 識子はそんなことを思った。
「江波くん。君は、誰に対しても、もう少し警戒心を持ったほうがいい」
「……博士にもですか?」
「……そうだ」
 何かを堪えるような表情をして、肯定する古畑。識子は小さく背伸びをして、その頬に唇を寄せた。
「まったく、君は……いとおしい……」
 古畑は目を閉じて唸るように呟くと、識子を力強く抱き締めてキスをした。
 その後ろでは幽霊が、顔を赤くして慌てていた。

同日 pm:20:35

 キスを交わし、コタツになっている卓袱台を足でどかせながら、二人して倒れ込むように居間へと縺れこんだ。
 識子の服を肌蹴させ、少しずつ露になる肌に何度となく吸い付きながら、古畑は小さく謝る。
「すまない。年甲斐もない話だと思う。許してくれとは言わない。
 ……君が欲しい。欲しくて、たまらない」
 識子は何も答えず、古畑の髪を指で梳く。言葉が必要だとは思わなかった。
 やがて、古畑が識子に押し入ろうとしたときに初めて、識子は声を上げた。
「あ、ぅくっ……」
 それが苦痛によるものだと気が付いた古畑は、識子の髪を撫でて、困ったような笑顔を浮かべた。
「悪いが、止められそうにない」
 堪えてくれ――古畑はそう呟くと識子の唇を塞ぎ、一息に貫いた。
「〜〜〜〜っ!!!」
 古畑の背に識子の爪が食い込む。
 識子の痛みが治まるまで、古畑はキスをやめなかった。
203一万円と八千円前から 4 ◆/YXR97Y6Ho :2008/02/14(木) 06:31:28 ID:V4cnUQRe
2/13 pm:23:12

「識子くん。識子くん?」
 身支度を済ませ、古畑は識子の頬を撫でた。
 識子はうとうとしながら、その掌に顔を摺り寄せる。
 小さく笑うと、古畑はその額にくちづけを落とした。
「明日は朝から他所で、抜けられない会議だ。残念だが、お暇させてもらうよ」
「……?」
 識子は目を擦りながら、何を言われたのかもう一度反芻していたが、やがて思考がはっきりしてきたのか、慌てたように裸の胸を隠そうとコタツに深く潜り込む。
その様子はさながらつつかれたカタツムリのようだった。古畑は笑いながら識子の頭を撫でると、思い出したように識子の耳に囁いた。
「君はチョコより甘いようだ。
できれば、明日のバレンタインは今日買ったアレを着ていてくれないか?
 帰ってきたらいの一番に確認しに来るから」
 識子は顔を真っ赤にしてコタツの中に頭まですっぽり隠れてしまった。
 それを見て古畑は、声を上げて笑った。

2/20 pm:18:15

 例の紳士服売り場に、古畑と識子は二人して訪れた。
「お預かりした商品はこちらです」
 先週と同じ男性店員がにこやかに紙袋を差し出してくる。
 受け取ろうとする識子を押し留めて、古畑はにっと笑って見せた。
「今、袖を通させてもらってもかまわないかな?」
「え!?あの、ほら、それは帰ってからゆっくり見ればいいじゃないですか!」
 妙に慌てる識子を無視して、古畑はひょいと試着室に滑り込むと、ややあってから満面の笑みを浮かべて現れた。
「道理で、頑としてチョコをくれなかったわけだ!」
「そんなこと大声で言わなくていいじゃないですか!」
 照れてしまった自分の方がよほど大きな声を出していることに気づいて、識子は恥ずかしさのあまり顔を両手で覆ってそっぽを向いてしまう。
 古畑は、傍にいる男性店員(ああ、若いって良いなあ、みたいな表情を浮かべていた)に上機嫌で話しかけた。
「いいだろう。私の嫁だ」
 その声が耳に入って初めて、識子は古畑が先週の帰り際に見せた不機嫌の理由に思い当たった。その袖を小さく引っ張って、確認してみる。
「……もしかして。あの店員さんに嫉妬してたんですか?」
「その通りだ。君があんなに嬉しそうに微笑んでいたからね」
 子供のように思いっきり肯定して見せた男のシャツは、ビターチョコレートの色だった。



【END】

ナンバリング…2が2つ…orz
204名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 17:15:34 ID:7+OMrcpf
GJ!

いい作品だ
205名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 00:32:01 ID:DgwVYCKJ
おお、GJ!
206名無しさん@ピンキー:2008/02/16(土) 02:31:05 ID:45OQofFQ
朝から乙です、GJ!

あれか、今度はそのシャツを着た博士が「私を食b
……じょうだんですごめんなさい。
207名無しさん@ピンキー:2008/02/22(金) 02:06:01 ID:LUKs9u9J
次はホワイトディか?
208名無しさん@ピンキー:2008/03/03(月) 23:15:13 ID:cXZcPBVt
シモーヌは?
209名無しさん@ピンキー:2008/03/06(木) 23:50:31 ID:ehVFag9F
age
210名無しさん@ピンキー:2008/03/08(土) 01:01:07 ID:Ivw+/1zd
芦茂かキモオタデブによる全女性キャラコンプリートレイプが読みてえ
211名無しさん@ピンキー:2008/03/15(土) 07:48:31 ID:VQDJQj7U
保守。
212名無しさん@ピンキー:2008/03/22(土) 15:52:57 ID:9iLTyQnZ
ほしゅ
213名無しさん@ピンキー:2008/03/27(木) 22:15:00 ID:ewC4JGtc
保守ー
214名無しさん@ピンキー:2008/04/02(水) 21:40:22 ID:FabCx/WF
 
215名無しさん@ピンキー:2008/04/11(金) 00:22:12 ID:jrWhDsuA
過疎ってるな保守しとく
216きみのために:2008/04/13(日) 17:24:12 ID:ZuXL4ewd
エロ無しの二次創作だけど投下します。
識子×植木です。

****************

「江波さーん」
 深夜二時過ぎ。
 植木虫介はついさきほどできあがった書類を持って識子のラボの扉を開けた。いつもならメールに添付して送ってしまうのだが、今回は体を動かしがてら自分のラボからここまで歩いてきたのだった。
 女性らしく整理整頓された――とはほど遠い江波識子捜査官のラボ内。虫介はひょいと足下の寝袋をまたぎ、書類戸棚の向こうのデスクへと向かう。またいだ股の下で寝袋がごそっと動いた気がしたのは、識子がよく連れてきている猫がくるまっているのだろうか。
「夏の白川郷あたりで用水溝に挟まった場合の死体の蠅の孵化のサイクルの書類、できたよー。……って、あれ」
 いつもの紺色の制服を着た識子が、デスクに突っ伏していた。
 くぅくぅという寝息が聞こえる。
「寝ちゃってる……。まあ、しょうがないか。もうこんな時間だもんね。女の子には辛い職業だよねえ……ってもう『子』ってトシでもないけど」
 識子本人が聞いていたら顔を真っ赤にして文句を言うであろうことを独りつぶやく虫介。
「それじゃ、書類ここに置いとくからね。ボクはこれで上がらせてもらうねー」
 軽い調子で置こうとし――虫介は彼女の腕の下に写真が挟まっているのに気づいた。
 人の腐乱死体である。おびただしい数の黒い蠅が皮膚のすべてをおおいつくし、点々と見える小さく白な点はウジ虫。普通の人が見れば吐き気をもよおす写真だ。
 少なくとも、普通の年頃の娘さんなら、こんな写真を頭の下に敷いたまま寝ることなどできない。
 ――普通、じゃないよね。
 日常的に死体に接し、分析し、犯人を追う手がかりを得る――たまに直接犯人を捕まえる。それが彼女の仕事なのだ。
(それに、江波さんって江戸時代から続く警察一族だしね……)
 時代劇の小道具ではない、本物の、古い十手をいつも携帯しているのはその矜持なのだろう。
 たまには憧れたりしないのだろうか。
 同世代の女性の華やいだ美しさに。若さをめいっぱい楽しむ若者たちに。
 虫だって……、そう虫だって異性を誘うために美しく進化していくのに。
 だが、まあ。
 数百年続いている警察一族の女性にとっては、ブランドものでちゃらちゃらと着飾ることよりも、犯人をつきとめる瞬間のほうが華やげるのだろう。江波警視正にしてもそうだ。あれほどブレスレットより手錠のほうが似合う女性というのも珍しい。
 ひょっとしたらそれは、DNAに刻まれた因果なのかもしれない。……それでも彼女たちの一族が江戸時代から続いているということは、そんな江波家の人間を好きになる一族以外の『誰か』が常にいた、という動かぬ証拠でもある。
(……職場結婚かな?)
 恋愛より仕事をとる一族のものとうまくいくには、やはり同じ価値観が必要である。
(ボクは……)
 犯人を捕まえようという、識子のような強い意志はない。生物のことで聞かれるから調べて答えているだけ。専門外のことはその専門家にまわしてしまえばいい。好きなことをしているという自覚はある。遊びの延長というより、ほとんど遊びである。
 とはいえ、それでも識子は自分を頼りにしてくれている。
 だから、せめて。
 この子の努力を応援したい――。
「もうちょっとだけ、残業しよっと」
 識子の穏やかな寝顔の横にそっと資料を置くと、虫介はそうっと部屋から出て行った。
(もしボクと識子ちゃんが結婚して子供ができたら、虫好きのうえに捜査好きな警察関係者になるのかな)
 ――そんなことを考えながら。



217きみのために:2008/04/13(日) 17:42:58 ID:ZuXL4ewd
終わりって書き忘れた。
218名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 21:37:33 ID:S7u8cQk+
おお投下がきている!
植木いいなぁ。
219名無しさん@ピンキー:2008/04/13(日) 21:39:42 ID:uVY+eYkx
おお、ほのぼのいいな!GJ!
220名無しさん@ピンキー:2008/04/21(月) 23:26:03 ID:FKc0Z6iX
保守age
221名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 17:33:51 ID:Np69lpwi
ちょっと質問。
夏川ナナ(ポロリ星の姫)って男性経験あると思う?
222名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 21:00:46 ID:jPwKDzPi
>>221
あのキャラで「ない」は想像できない…
223名無しさん@ピンキー:2008/04/22(火) 23:37:44 ID:Np69lpwi
>>222
う〜ん、やっぱり?
査之介とナナのSS書こうと思ったんだけど、そこで迷ってさ・・・。
うん。「あり」で書くわ、ありがとう。
224名無しさん@ピンキー:2008/04/25(金) 16:46:16 ID:NIqxHBYR
ho
225名無しさん@ピンキー:2008/04/26(土) 01:12:58 ID:V/kHpHBC
なんか子猫が尻尾立ててるように見えた
226名無しさん@ピンキー:2008/05/09(金) 06:27:35 ID:jDEmgoIQ
ho orz
227名無しさん@ピンキー:2008/05/22(木) 02:53:34 ID:A+15KIYd
保守
228名無しさん@ピンキー:2008/05/25(日) 20:23:00 ID:+07DzWan
age
229名無しさん@ピンキー:2008/05/31(土) 23:13:31 ID:79ASEwPo
続編が出るまでは…
230名無しさん@ピンキー:2008/06/01(日) 18:51:27 ID:JtpgWTks
保守
231名無しさん@ピンキー:2008/06/03(火) 02:42:00 ID:7HZXX0EJ
保守雑談。

来月は爆弾処理班か…
舞台が南東京市じゃないあたりに驚愕
日本じゃない…ってのは、オートマンを出さない為の布石なのかな
232名無しさん@ピンキー:2008/06/07(土) 00:35:40 ID:VDvy73sk
ごめん、鑑識官しかやったことないからわからない……





遅ればせながら最近2をプレイしたんだが、
査之介が「興奮すると」人魂を出せるって
台詞に性的な意味合いを連想してしまった

……末期か……
233名無しさん@ピンキー:2008/06/12(木) 20:00:56 ID:IlPbakKH
>>232ナカーマ
大丈夫このスレなら末期じゃないさあその妄想をここにだね
234 ◆/YXR97Y6Ho :2008/06/20(金) 00:48:41 ID:U0wG36h5
なんだかんだでこのスレも祝1年。
爆弾処理班まであと20日ですね〜。
発売までに何か書く。
235名無しさん@ピンキー:2008/06/20(金) 23:31:25 ID:Ma+ejR6N
>>234
   +
+  ∧_∧ +
 +(0゚・∀・)wktk
  (0゚つと) +
+ と_)_)
236名無しさん@ピンキー:2008/06/29(日) 19:17:26 ID:w/NOmx+L
ワクテカ保守
237 ◆/YXR97Y6Ho :2008/06/30(月) 00:31:04 ID:BdFJ1Cjh
なんか無駄に書くのに時間がかかってる(いつものこと、とか言わないでー)
その上、なんか愛のない話になりそうな悪寒。

発売までには必ずっ・・・!

でも、ただwktkさせるだけなのも申し訳ないので、前に出した同人誌から一個投下しておくです。
238夢の続き 1/3:2008/06/30(月) 00:40:48 ID:BdFJ1Cjh
 所長×署長注意


 時計は二十七時を指していた。
 部屋の中には澱んだ微熱が充満している。
 男と女、二人分に過ぎないそれは、しかし二人にとって今、世界の全てにも等しい。
 女は警察の制服を半分肌蹴ながらも身に纏っており、本来ならばきっちりと後ろにまとめているのだろう後ろ髪が、情事にほつれている。
「く、ふぅ……っ、ん!」
 その首には痛々しい包帯が巻かれており、激しい呼吸の邪魔をしている。
 背後から覆いかぶさる男は、その様子を気遣うように項に唇を寄せるが、それでも寛げたスラックスから露出させた自分の欲望を叩きつけるのをやめない。
 普段滅多なことでは外さない銀縁の眼鏡は、今は嬌声と同じリズムで揺れる机の上にある。
 南東京市科学捜査研究所の所長である岩原にとって、この所長室で彼女を抱くのは決して初めてではない。
 警視正である江波徹子にしても、初めは随分と怒りを見せたものの、いつの頃からか慣れてしまっていた。
 科研の風紀に良くない、そう苦言を呈しそうないつもの秘書ソフトは現在、深夜メンテナンスの最中だ。少なくともあと一時間は停止している予定だと、デスクトップの表示が告げている。
 強く抉る様な動きで打ち付ける男の身体が、自分よりも細い身体を木製のデスクに磔にする。
 その細い身体は自分よりも大柄な重みを感じる度にデスクにしがみつく腕の力を増し、軽く吹き飛ばされてしまわれぬよう繋ぎ止めている。
 顔は見えない。それでも、わかる。
 彼女は今、『鉄の女』と呼び表される無表情などではなく、朱の差した頬、感じすぎると唇を噛み締める悪癖でもって、誰にも見せたがらない、美しく、蟲惑的で、魅力的な表情をしている。
 あと少しだ。
 あと少しで、いつもの高みへと彼女を連れて行ける。
 己の限界もまた近いことを知り、一際強く打ち付け始めた。ここからペースを早めることを、彼女は好まない。
 それよりは、強すぎる快楽を本能的に嫌がって身を捩るのを押さえつけ、胎内深くでひくつき始める肉莢のような場所を刺激してやる方が、悦ぶ。
「あくっ、くはぅっ、うっ、ふ、んむっ」
 少しだけ血を滲ませた唇を開いて啼こうとするのを、慌てて顔を上げさせ、口付けで塞ぐ。
 そんな喘ぎ方は、まだ喉の傷に障るだろう。
 不意に自分たちの姿を窓ガラスに見つけ、僅かに、奇妙な気分に陥る。……そうか。
(長いこと、キスなどしていなかった。情や言葉より、こうして身体を交わすことが、当たり前になっていたのか)
 柔らかさと温かさ。絡めた舌に感じるとろりとした唾液の中に微かに混ざる血の味。一度は失ったと絶望したその感触を愛しく思い、女の身体を強く抱きしめた。そのまま最奥で熱を吐き出す。
 一瞬目を見開いた彼女の息が塞いだ口腔の中で弾けるのと、子宮が、胎内に受けたものと同じ程に熱い液体を、果てたばかりの肉棒へ吹きかけたのは、まったくの同時だった。
 ――このまま、彼女が孕めば良い。
 岩原は本気でそう思った。
239夢の続き 2/3:2008/06/30(月) 00:41:16 ID:BdFJ1Cjh
 腕を通した制服が肩のラインにきちんと沿う様、襟を一度だけ強く引き、身なりを整えた江波徹子はソファーに腰を下ろす。
 逆に、ジャケットを椅子へと放り投げた岩原は、先刻に淹れたインスタントコーヒーを江波に差し出しながら自分の分を一息に呷った。
 黒く、熱く、甘い。芳しさを売りにしている商品だけあって、香りはなかなか、悪くない。独特の酸味が、事後の気だるさを和らげてくれる。
 江波は一口含んだだけで、カップをソーサーに置いてしまった。その様子に、呆れてしまう。
「また強く噛んだな。いい加減その癖は直したらどうだ」
 彼女はむっとした様子で再びカップを手にし、なんでもないことだとでも言いたげに再度コーヒーを喉に流し込んだ。
 僅かに顔を顰める。荒れた唇に、熱い杯は痛むのだろう。
 こくりと上下する喉。
 岩原は、眉根を寄せてそれを見つめた。そこはまだ、痛々しい包帯に包まれている。
 現場の惨状を思い返してしまえば、今こうして彼女が生きているのが不思議だと思う。
 いつ、何が起きるかわからない。
 そこが、彼女が望んで身を置いた場所だとわかってはいる。だが、しかし。
「もう、いいんじゃないか」
 自分が、耐えられそうにない。

 彼女には、その一言で通じたようだった。
 屹と眦を吊り上げ睨む様な視線を向けてくる。
「所長。何を弱気になっているの?この怪我は私のミスよ。
 警察内部の不正を正す為に行動していたのに、油断してしまった」
 『鉄の女』の称号は、伊達ではない。今までだって何度も危ない橋を渡ってきた。それでも。
「だがな、江波警視正。その傷は、『命を狙われた』んじゃない。実際に『死にかけた』んだ。生きていたのは偶然だ。また今度、その強運が発揮されるかどうかは、わからんぞ」
 そう言っていつものように中指で眼鏡を直そうとして、眼鏡を外したままだったことに気が付いた。
 微妙な気恥ずかしさを感じながら、そのまま指で眉間を揉み解す。
「……俺は。……お前に、死んで欲しくない」
「……岩原ちゃん」
 困ったような声が聞こえたことに、なぜか安堵する。そのせいか、言葉は口を突いて出た。
「本当を言えば、お前が江波の家を継がないと聞いたときも、ほっとしたんだ。これでようやく、お前も少しは安全に過ごせるようになるかもしれんとな」
 その結果。やってきたのは江波識子で。
 江波徹子は、それまで以上に危険になった。
 自分の分だけでなく、姪の分まで気を付けなければならなくなったのだから。
 深く息を吐き、静かに目を閉じる。
「……笑っていて欲しいんだ。お前には」
 自分の傍で。ずっと。

 岩原の脳裏に、不意に先刻まで腕の中にいた彼女の姿が浮かぶ。
 脚の付け根から垂れ落ちそうになったものを慌てて抑え、赤い顔で上目遣いに睨んできたその表情。
 ああ、頼むから、俺の遺伝子たちよ。
 彼女の遺伝子と溶け合ってくれないか。
 彼女のココロは彼女だけのものだ。
 だからせめて、それ以外の全てが欲しい。
 ――どうしようもない独占欲。
240夢の続き 3/3:2008/06/30(月) 00:41:50 ID:BdFJ1Cjh
 残っていたコーヒーは、手の中ですっかり冷たくなってしまっていた。飲み干すのも億劫だ。
 灯りの着いたままの天井を仰ぎ見る。
 夜明けはまだ遠いだろう。
 行為後の汗も拭かずにいた身体は冷え切って。
「腹が減ったな」
 自分でも意図しない呟きを、それでも彼女は耳聡く聞いていた様だった。
「そうね、私もよ」
 江波は髪を解き、結わえていた髪留めを軽く口にくわえながら、「でも、こんな時間に何か食べるのは、太る元ね」とどこか悔しそうに付け加えた。
 今更気にすることでもあるまいに。お互い、若くないのだから。口にしたら間違いなく睨まれることなので、岩原はそれ以上考えないことにした。代わりに、違うことを口にする。
「作ってくれないか」
「は?」
 結わえなおすために髪を纏めて持ち上げていた彼女の細い指から絹糸の如く黒が滑り落ちていくのを、呆けたように眺める。何も考えていなかった。考えるより先に言葉が滑り落ちる。
「味噌汁だ。それと米。沢庵は朝から食いたいものじゃないな。だが、漬物はあったほうがいい。あとは焼き魚か。塩焼きなんかは最高だ。身をほぐして、ワタを白米に乗せて……」
 目の前の女が、小さく笑った。
「随分と、塩分の多い食事ね?」
「うるさいな。腹が減っていると、味が濃いのが食いたくなるだろうが」
 ムッとしながらも、自分が何を口走っていたのかにようやく気が付いて、何故だか顔がむず痒くなる。そっぽを向いて、それでも。
「……お前の作る朝飯が、食いたいんだ」

「そうね、じゃあ、今日は泊まりにでも行こうかしら?」
 そう言い無邪気に微笑む江波の顔に見惚れて、岩原は核心を口に出来なかった。
 今日とか明日だけじゃなくて、毎日だったらありがたいんだが。
 やたら上機嫌で帰り支度を始める彼女の姿を見ながら、岩原は苦笑するしかなかった。

 終
241名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 00:59:09 ID:kTFsteLo
GJ!
所長×署長って何か新鮮でいいなぁと思ったさね。
242名無しさん@ピンキー:2008/07/08(火) 21:10:57 ID:Kc7fmZEA
う、うおお。別板のスレだが爆弾処理班のフラゲ報告とかきてる!
243名無しさん@ピンキー:2008/07/09(水) 21:13:01 ID:wHrszRS1
火曜日にフラゲって早いな。
244 ◆/YXR97Y6Ho :2008/07/09(水) 22:31:05 ID:wMRsBge/
火曜にはラー油氏もフラゲしてたようだしな。

さて、明日が発売日という、相変わらずというか…ぎりぎりになった。
その上、結局、エロ無しにさせてもらった。
この二人でエロがどうしても納得いかなかったというか…

言い訳だな。

なんにしても、ごめんなさい。
今度ガチエロ書くんで許してください。

識子+ボス
245地上の星 1/3  ◆/YXR97Y6Ho :2008/07/09(水) 22:32:41 ID:wMRsBge/
※作中では7月7日だと思っておくんなせい




 今日は、現場での仕事がまた多かった。
 湿気の強い、すっきりしないのにじめじめとして、ひたすら蒸し暑い日。
 何箇所もの現場を回り、ようやく一息吐けた頃には既に20:00。
 これから書かなければならない報告書の概要を頭の中でまとめながら、識子は思う。
 充実している、なのに。
 なんだろう。この孤独感は。
 パソコンの駆動音は、BGMにするには無機質すぎる。
 鼻歌でも歌おうかと思って、やめた。
 最近の歌なんて、知らない。
 それに。

「そんな時に誰か入ってきたら、恥ずかしいわよ」

 声にしてみる。
 反響した自分の声の残滓が、僅かに耳に届く。
 孤独が、識子の心に強く染み渡っていく。
 最初の一年に比べれば、報告書の内容で怒られることも随分減った。
 カタカタとキーボードに指を走らせながら、思い出に耽る。
 最初の頃は何を書いて怒られたのか、何を書かずに怒鳴られたのかがわからなかった。
 よく、かんこさんに目を通してもらったりしたものだ……そこまで思い、ふと気付く。

「かんこさん」

 ぴろり、と軽快な音を立て、画面内に極端にディフォルメされた女性像が現れた。

『どうかされましたか〜?』

 識子はそのアイコンを見て僅かに絶句する。
 かんこさんは、織姫の扮装をしていた。

「かんこさん、どうしたの?その服……」
『今日は7月7日、七夕を意識して見ました〜』
「な、なるほど……」

 考えてみれば、かんこさんの通常業務には来訪した部外者の案内なども含まれている。
 中には依頼しにきた一般人も少なくないだろう。
 そうした人たちに安心感を与えるためのサービスだと思えば、そこまでおかしくはない。
 ……だが。

「もう、来客とかないんじゃないの?」
『そうですね〜。ついでに、現在科研内にいるのも、ごく僅かな関係者のみです』
「じゃあ、今日一日はその格好で?」
『もう戻してもいいかとは思っていますが、江波さんにお見せできていなかったもので』

 ディスプレイの文字に、微かに苦笑する。

「似合ってるわ、すごく」
『そう言っていただけると、トテモトテーモ、嬉しいですね〜』

 かんこさんは警察関係の擬人内で流行っているのだ、と、嬉しそうにそう言った。
246地上の星 2/3  ◆/YXR97Y6Ho :2008/07/09(水) 22:33:10 ID:wMRsBge/
 書き上げた報告書に目を通す。とりあえず問題があるようには思わない。
 それでも、一度気持ちを切り替えてもう一度見直そうと思い、識子は席を立った。
 いつもの癖で、足は自然に屋上へと向かう。
 識子は休憩室よりも、屋上の方が好きだ。
 煙草の臭いは好きじゃないし、いつでも誰かがいるような気がする。
 誰とも会わない場所の方が、不思議と落ち着くのだ。
 屋上の扉を開く。
 そこには、見知らぬ背中があった。

「……誰?」

 識子の喉から、思わず剣呑な声が出る。
 少しよれたシャツの男はゆっくりと振り向くと、銜えていた煙草を手にした。

「やあ。キミこそ」
「私はここの所員よ」

 やけに落ち着いた様子の男に苛立つ。
 煙草を吸っていることにも苛立つし、何よりこの場所に居たことが気に食わない。

「そうか……ぼくは、そうだなあ。牽牛とでも名乗っておこうか。
 キミは江波さん、だろう?よく警視正からキミの話を聞いているよ」

 眉を顰めた識子に、軽く笑って男は続けた。
 織るとかいてシキコ、だから、ぼくは牽牛でもいいんじゃないかと思ってね。
 識子は心底呆れた視線を投げる。

「知識のシキ、です」

 慌てて目を逸らした男の背中を、識子はよほど蹴ってやりたくなった。
 自分のことを探偵だ、という男には初めて会ったが、なんて胡散臭い職種だろう。
 識子はそう鼻白む。
 ライセンス制のことも知っているし、その男のことも確かにおばから聞いたことがあった。
 擬人の秘書と所員(所猫?)を抱えて、滅多に事務所から出ないとまで言われる探偵。
 腕は立つ。
 探偵事務所の近くにあるラーメン屋の店主ピラニア仮面からもそう聞いていたが。

「……胡散臭い……」
「え。おっさん臭い?」

 慌ててシャツの臭いを嗅ぐ姿からは、とてもそうは見えなかった。

「で、その探偵さんが、科研に何の用事ですか」
「七夕の牽牛って言ったら、決まってるじゃないか」
「織女でも探してるんですか」
「そんなところかな」

 じり、と後ろに下がり距離を取った識子に、慌てて、あ、キミのことじゃないから、と続ける探偵。
 識子としては睨むほかない。

「まあ、変な話をしたことはぼくが全面的に悪かった。
 だから、そこまで警戒しないでくれるかな」

 男は苦笑いをしながら、残り少なくなった煙草を携帯灰皿に捨てる。

「長年、実らない片思いをしてるせいかな。女性との会話ってのが得意じゃなくてね」
247地上の星 3/3  ◆/YXR97Y6Ho :2008/07/09(水) 22:33:45 ID:wMRsBge/
 彦星がうらやましい。一年に一度でも、愛する女に会うことが出来るのだから。
 そう言って空を見る男の顔は、嘘を言っているようには見えなかった。
 識子は少し距離を取って、手すりにもたれかかる。
 夏を迎える街の灯は、どこか滲んでいるようにも見える。
 男は新しい煙草に火を点けた。
 紫煙が風に乗る。
 車のライトが流れる町並みを漂うそれは、薄曇の空に掛かるきざはしのようにも見えた。

「片思いなら、いいんじゃないですか?いつか実るかも」
「まあ、そう思いたいものだよね」

 そう言って軽く笑う男の目は、柔らかい。
 何故だかその瞳の奥に吸い込まれるような気がして、識子は顔を背ける。
 こんな男は、好みじゃない。

「雨が降りそうだな……」

 呟いた男の声に、つられて空を見上げる。天の川は見えなかった。
 不意に識子は、空を見上げたのは随分久しぶりのように感じた。
 いつも、屋上に来ては街並みを見下ろし、この街の治安に自分も貢献しているのだと感じていた。
 それだけでも、自分の仕事に誇りが持てていた。
 それなのに。
 なぜ、こんなにも空は広いのか。
 まだまだ、自分の力が及ばない世界があるのだと突きつけられたような気がして。
 識子の目から、涙が溢れた。

「泣いてるの?」

 男の、戸惑った声が聞こえて。
 いいえ、雨ですよ。識子はそう答えた。
 どこからか、賑やかな音楽が流れ聞こえてくる。
 ――ささのは さらさら のきばに ゆれる――

「お星さま きらきら、金銀砂子……」

 節をつけて口ずさみ、男は手を伸ばす。地上の灯りへと。
 柔らかい声をしていると、識子はそう思った。

「今の世の中じゃ、人の暮らしが、これだけ明るくなってしまったからね。
 星はあんまり見えないけれど。
 こうして灯りを見てると、その灯りの数だけ人が居るんだと思うと。
 ぼくたちもこうして、多くの人の中で生きてるんだって思える」

 手の届かない灯りに触れようと宙をかいていた手を引き戻すと、男は識子へと視線を向けた。
 心配するでもなく、無理に媚びたものでもない、自然な笑顔で。

「だからまあ、キミも、あまり肩肘張らないで。
 悩み事があるなら、相談に乗るよ。
 こんなオジサンで良ければ、だけどね」

 識子は男の顔を、しっかりと見つめ返した。
 さっきまでは、そんな勇気も持てなかったというのに。
 些細なことで、こんなにもこころが軽くなるものなのかと実感する。

「ありがとう、彦星さん。
 心配してくれて、私、トテモトテーモ、嬉しいです」

 探偵はそれを聞いて、何故か盛大にむせかえった。

 END
248名無しさん@ピンキー:2008/07/10(木) 21:32:24 ID:0HiY9KSm
>>244-
GJ!識子はもちろんボスとかんこさん萌えー

爆弾がkonozamaでこねえorz
249 ◆/YXR97Y6Ho :2008/07/10(木) 22:15:52 ID:upWPDFy2
お疲れ・・・>>248
俺はkonozamaは明日着払いで届く予定。
でも、それは布教用。
爆弾もクリアしたぜ!
250名無しさん@ピンキー
あげ