1 :
名無しさん@ピンキー:
2 :
プリニーとぽこん:2007/06/19(火) 16:12:00 ID:1yALCsxU
ある魔界に一匹の悪魔がいました。
悪魔は天性の盗みの腕でみるみるのし上がり、いつしか強盗団の頭領になりました。
そんな彼がいつものように魔界を徘徊していると、一人の子供が目に付きました。
彼はいつものように気まぐれに子供を攫うか殺すかしようと子供に近づきます。
しかし、彼は知らなかったのです。
その子供が自称・『ちょうまおうのらはーるさま』だということを。
彼は見事なまでの返り討ちにあい、極悪非道の人生を歩んでいたために
この世の理に従いプリニーに転生させられてしまいました。
そんな彼を見て、子分たちはスタコラサッサと彼を置いて行ってしまいました。
3 :
プリニーとぽこん:2007/06/19(火) 16:14:59 ID:1yALCsxU
広大な魔界に一人、取り残された彼。
「これからどうするッスか…」
ついつい弱気な発言をしてしまいます。
そんな彼に近づく影がひとつ。
「あのぅ…」
「!?」
呆然としていた彼はいきなり背後でした声に内心ビビりながら振り返ります。
そこには、気弱げにたつ一人の魔法使いの格好をした少女が立っていました。
「はぁん!? 誰だお前、ッス!」
彼は自分の発言を誰かに聞かれてしまったのではないかという気恥ずかしさと
自分より弱そうな外見の少女だったという安心感からついチンピラ口調で尋ねます。
魔法使いの少女は彼の大声に萎縮したようすでビクビクとした様子で喋り出しました。
「あの…、わ、わたし、赤ちゃんの時にあなたに攫われて…」
一瞬、何のことかよくわからなかった彼ですが、おぼろげな記憶がよみがえってきました。
「(あぁ、そんなこともあったッスかねぇ…)」
確かに、彼の記憶は、かの少女の幼かったころを覚えているような気がしないでもありません。
そんな少女がこんなところで何をしているのでしょう。
「で、お前、何なんスか? 俺をあざ笑いにでも来たんスか?」
彼は自嘲気味に尋ねます。
「い、いえ…、あのわたしも取り残されて、しまって……」
「……へぇ、そうッスか」
なんだかマヌケな返答ですが、それ以外に答えようがありません。
なにしろ自分も取り残された身なのですから。
「ま、よかったんじゃねえッスか? 晴れて自由になれたんスから」
などと言いながら、彼は彼女が速く何処かに消えてくれないかなと考えます。
子供に喧嘩を売った挙句返り討ちにあい、プリニーなんかにされてしまった今の自分を、
記憶がおぼろげとはいえ、かつての身内に晒したくはなかったのです。
「さ、面白いものが見れてよかったッスね。さっさと何処へとなり行くがいいッス」
彼は少女に向かってシッシと手を振ります。
しかし、彼女はその場から動こうとしません。
彼は少女に背を向け、彼女が立ち去るのを待ちます。
しばらくそのまま時間が流れます。
少女は一向に立ち去る気配を見せません。
4 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/20(水) 13:21:37 ID:gWeE9dx+
age
ほしゅ
保守
がんばってくれぃ。保守
8 :
プリニーとぽこん:2007/06/22(金) 14:01:35 ID:YyMTsHHO
いいかげん少女の存在がうっとおしくなった彼は、もう一度彼女のほうを振り返り言います。
「何ッスか? 正直、消えてほしいんだがッス」
少女は伏せていた顔をパッと上げ、意を決したように彼に言い放ちます。
「あの! い、行くあてが無いんでしたら、わたしと一緒に……、一緒に生活しませんか?!」
「はぁ?」
『何を言ってるんだコイツは』という表情を作ろうとしましたが、プリニーなのでうまくいきません。
少女は畳み掛けるように喋ります。
「えっと! プリニーになったということは何処かに行って奉仕活動をしなければならないと
いうことでありまして、じゅ、重労働しないといけないみたいな、で、で、あの、ええっと、
つまりわたしが雇うという形にすれば、そんなに重労働させませんし、か、顔見知りだから
あなたも安心して働けたりなんかしちゃったしなんかして……、ダメです、か?」
はじめは勢いのよかった彼女も、だんだん口調が弱くなり、最後のほうは消え入るような声になってしまいました。
彼は呆気にとられ、何もいえません。
二人の間を気まずい沈黙が流れます。
そして彼は、ハタと思いつきます。
「(あぁ。もしかしてコイツは…、自分を攫って人生をめちゃくちゃにした俺をこきつかって
密かに楽しみたいんスね。復讐ってやつッスか)」
なにしろ悪事ばかり働いてきた彼です。
世の中を穿った目で見ることしか知りません。
だから当然の如く。
「お前の手には乗らないッス」
彼女の打診を蹴りました。
少女はものすごく驚いた顔をして、彼との距離をつめます。
「ど、どうしてですか!? 二人とも丸儲けのいい考えだと思ったんですけど…」
「…俺に復讐したい気持ちも分からなくもないッス。でも、お前の計略には乗らないッスよ」
彼女の言った『丸儲け』の意味が分かりませんでしたが、それはとりあえず放っておきました。
少女は怪訝な顔で彼を見ます。
「ふくしゅう……? けいりゃく……? どういう意味ですか? わたしは――」
「いい加減うるさいッス。俺は一人でやっていくッス。消えるッスよ」
彼は冷たく言い放ちます。
一瞬、少女はひどく傷ついた顔をしましたが、一拍おいて、決然とした表情で彼に詰め寄ります。
「いいえ! いやです!」
「はぁ?」
「わたしと一緒に生活するというまで、テコでも核でも動きません!」
「はぁ!?」
そして、彼女は真剣なまなざしで彼の顔を睨みつけるように見つめます。
少女とプリニーのにらめっこは、そのまましばらくして、彼がうんざりし、顔を背けるまで続きました。
「じゃあ、もういいッス。俺が移動するッスよ」
彼はそのまま少女に背を向け、歩き始めました。
すると、さも当然のように、後ろから足音がついてきます。
彼は前を向いたまま、怒鳴ります。
「ついてくるなッス!」
「イヤです!」
「イヤです、じゃないッス! ついてくるなったら、ついてくるなッス!」
「う〜!」
少女はベソをかいたような声でうなります。そして、そのままの声で叫びます。
「イヤですイヤですイヤです! あなたがわたしと一緒に生活するって言うまで、
ず〜と、ずぅ〜とついていきます!」
彼もとうとう頭にきました。
「じゃ、もう勝手にするッス!」
「うぅ〜、か、勝手にします!」
こうして、プリニーと少女は町まで黙りこくって足を進めました。
9 :
プリニーとぽこん:2007/06/22(金) 14:04:21 ID:YyMTsHHO
町でプリニーの職探しが始まります。
しかし、色よい返事はもらえません。
どこの屋敷の主人も口をそろえて彼に言います。
「最近、人間界が人口増加でプリニーの手は余ってるんだよ。悪いけど、他を当たってくれ」
最初の一軒、二軒は彼もくじけませんでしたが、それがやがて増えていくうちに、彼のやる気がうせてきました。
もともと、悪事で身を立てていた彼です。
まともな労働をしなければならない自分の身が恨めしく思えてきました。
それに屋敷でも仕事を断られるごとに後ろから聞こえてくる
「わたしと一緒に生活するんでしたら三食昼寝つきですよ〜」やら
「わたしと一緒に生活するんでしたら賃金もそれなりに出しますよ〜」
だのといった声がうっとおしくて仕方ありません。
おまけにおなかも減ってきました。
手持ちはまったくありません。
ついでに、やる気もまったくなくなりました。
そしてとうとう
「わたしと一緒に生活するんでしたら、あそこの定食屋でご馳走しますよ〜」
その一言で、彼のプライドは陥落しました。
「うぅ…、分かった、分かったッスよ」
彼の言葉を聞いた彼女は、目を輝かせます。
「えっ! ということは…!」
「一緒に生活、するッスかぁ…」
絶望的な彼の声色とは対照的に、彼女の表情が華やぎます。
「わたしと一緒に暮らすんですね…! うぅ…」
彼女は顔を伏せてうなります。
「? どうしたッスか?」
再び顔を上げた彼女は、目から大粒の涙を流し出しました。
彼はギョッとします。
「な、な、なにを泣いてるんスか!? わけわかんねぇッス」
「うわ〜ん! うわ〜ん! だって、いっしょに、ヒグ、せ、せいかつ! うわ〜ん!!」
「あぁ、もうウザいッス! ハッ! 周囲の注目の的に! な、泣き止むッスよ! ホラ!」
「うわ〜ん! うわ〜ん!」
結局、彼女が泣き止むまでしばらくの時間が必要でした。
彼は彼女のことを放って置こうとしてどこかへ行こうとします。
が、少女は大声で泣きながらついてきます。
彼はしょうがなく、建物と建物の間の路地裏に彼女を誘導しました。
そして、その人気の無い場所で彼女が泣き止むのを待った彼。
ようやく落ち着いてきたのか、少女は泣き止みだしました。
そして、彼女はおもむろにポケットからちり紙を取り出すと、ちーん、と鼻をかみ、
ゴミ箱にそれを捨てます。
「で、いい加減、泣き止んだッスか?」
「はいぃ〜…。す、すみません。突然泣き出したりして」
「(全くッス。いい迷惑だったッス)」
と言いたい彼でしたが、また泣かれると面倒だったったので口には出しません。
代わりに口をついたのはこんな台詞。
「……で、お前、先立つものは持っているんスか?」
「さきだつもの?」
「金、金ッス。俺を雇うつもりなんだったら必要ッスよ」
そう言いながら彼女が本当にお金を持っているのか不安になってきました。
何しろ、彼と同じように仲間に取り残された彼女です。
彼と同様、無一文でも不思議ではありません。
しかし、彼の言葉を聞いた彼女は、いかにも得意げな顔をします。
「ふふ。だぁ〜いじょうぶです。ちゃ〜んとここにそれ相応の――」
彼女は懐から何かを取り出します。
「――って、あれ? あっ! いつのまに!」
少女が取り出した何かを目にも留まらない速さで彼はスっていました。
少女は動揺し、彼に泣きつきます。
「か、返してください! それはわたしが子供のころからコツコツとためたお小遣い…」
プリニーが天性の盗みの能力でスったもの。
それは古式ゆかしいガマ口の財布でした。
彼は少女の泣き言など一切気にせず、中身を確かめます。
そして気づきます。
「お前……、コレ」
「な、何ですか?」
「穴、開いてるッスよ……」
少女の表情が固まります。
「…………またまたぁ。そんなハズは――」
「見てみるッス。ほら」
彼は彼女に財布を手渡します。
彼女は動揺のために微かに震えながらそれを受け取ります。そして中身をのぞいて
「あ」
そう呟いた彼女の目からまたも大粒の涙が流れ出しました。
「――で。落ち着いたッスか?」
「……うぅ、すみません。何度も」
大通りの定食屋の片隅、座敷席。
いつまでも泣き止まない少女に手を焼いた彼は、ガマ口に僅かに残った金で定食屋に行くことを提案し、強引に彼女を連れて行きました。
彼は定食屋で、一番安い『すうどん』を二つ注文。
最初は食事に手をつけなかった彼女ですが、彼が放った「のびるぞ」という一言に
反応し、ノロノロと食べだしました。
そして、食べ終わるころには、お腹が落ち着いたからか、彼女はヒグヒグ言いながらも
どうにか泣き止んだのでした。
「さて、これからどうするッスかね。このすうどんで手持ちも無くなったッスし」
「あうぅ。ど、どうしましょう」
沈黙が重く二人にのしかかります。
その沈黙を嫌うように、少女は話し出します。
「そ、そう言えば、今度はわたしを置いていこうとしませんでしたね。あ、あの、うれし――」
「勘違いするなッス」
ほほを心持赤くしながら言う彼女の言葉を、彼は冷たく遮ります。
「え?」
「俺はただ単に、お前に飯をたかっただけッス。お前のことを考えたわけじゃないッス」
それは彼の本心でした。
実際、彼女のお金を再度スって、そのまま逃げることも考えましたし、プリニーの足では素早く逃げられない現実がなければそうしていたでしょう。
「そ、そうですか…」
少女は残念そうに俯きます。
しかし、すぐに顔を上げ、彼に向き直ります。
「それでも、わたしを置いて行かなかったのは事実ですし、わたしはそれがうれしかったんです
だからありがとうございました、って言わせてください」
「………………」
「ありがとうございました」
真剣な眼差しでそういう彼女に彼は絶句します。
ですが、年端も行かない少女に絶句させられた現実を認めたくない彼は、無理やり言葉を紡ぎます。
「へっ、馬鹿みたいッスよ。お前」
「そうですか? ……ん〜、そうですか」
そして無理やりに彼は話題をそらします。
「そんなことより、これからどうするかッス」
「あうぅ、ど、どうしましょうね?」
再び、沈黙が流れます。
二人の耳に、定食屋の人々が発する威勢のよい声が聞こえます。
そんな中、おもむろに彼は食事をしながら考えていたことを口にします。
「俺はまた、盗みでもして生計を立てるッスか。それが一番手っ取り早いッス」
彼のその言葉に彼女は目をむいて反論します。
「ダ、ダメですよ! そんなことしてたらいつまでたってもプリニーのままですよ!」
「………………」
そうなのです。
あくまでプリニーとして奉仕活動をしなければ、いつまでも赤い月には行けません。
しかし、彼にはそれ以外の方法は思いつきませんでした。
そのたった一つの方法を否定された彼は、機嫌を害し、ややぶっきらぼうに少女に言います。
「じゃ、どうするッスか。どこもプリニーの手は余ってるッスし、お前は一文無しッスし」
「……わたし、考えたんですけど、いいですか?」
「なにをッス?」
少女は決然とした眼で彼を見て、そして言います。
「わたし、働きます」
「はぁ」
「そして働いて頂けるお金で、あなたを雇います」
「はぁ!? イヤっすよ! そんな主夫みたいなマネは! だいたいなんでいつまでも
お前と一緒にいなくちゃならな――」
結局、彼女の案が採用されました。
最初は猛反発していた彼でしたが、定食屋を出た後に働き口を探しては断られるうちに
心が折れたようです。
こうして魔法使いの少女とプリニーの奇妙な同居生活は始まりました。
二人は魔界のボロアパートの一室を借り、そこで毎日、朝を迎えます。
「おはようございます。ムニャムニャ…、おとうさん」
「さっさと飯を食うッス。……あと、『おとうさん』って呼ぶなッス。『親分』と呼ぶッス」
「えへへ。スミマセン、親分♪ ふふ」
少女は彼の作った手料理を食べ、朝早くから働きに出ます。
ちなみに魔法使いの手は何処も足りないようで彼女の働き口はすぐに見つかりました。
でも、彼は彼女が何処で何をしているのか知りません。
少女もなぜか、自分の働き口について口を割りません。
いつまでも。
彼は自分に給料が振り込まれれば後はどうでもいいので、深くは追求しません。
少女が働きに出た後、彼は掃除やら買い物やらの家事にいそしみます。
最初はものすごく雑な仕事ぶりでしたが、やっているうちにだんだんと楽しくなってきた彼は
いまでは立派な主夫の仕事ぶりを発揮しています。
ですが、彼はそんな自分を自覚するごとに、たいそうな自己嫌悪に陥ります。
なにしろプリニーになる前は札付きのワルだったのですから、それも当然です。
そうこうしている内に、昼を適当に済ませ、夜ご飯の支度をします。
そして夕方と夜の境目あたりに少女が帰ってきて、お風呂を済ませた後、二人でご飯を食べます。
初めのころはわざと先にご飯を済ませていた彼ですが、彼女が駄々をこねるので、
しょうがなく一緒に食べるようになり、いまでは当然のようにそれをするようになりました。
そして、TVを適当に流して、そして二人で後片付けをし、そして一緒の時間に就寝します
(もちろん寝床は別ですが)。
少女のたまの休暇には二人で何処かに出かけたりもします。
たいていの場合、少女がねだり、うんざりした彼がつき合わされるという形でしたが。
そんな毎日を、平凡に、平坦に続けます。
彼の脳裏に、ふと疑問が浮かぶことがあります。
「(どうして、こいつは俺と生活することにあんなに拘ったんスかね?)」
やはり彼の穿ったとおり、復讐のためだったのでしょうか。
でも、一緒に生活している少女の態度を見ているとそれも違うような気がします。
「(っていうか、今までの態度、全部演技だとしたらたいした役者っす……)」
ではどういう理由で彼に拘ったのでしょう。
彼には皆目見当がつきません。
「(ま、今は安定して金がもらえればそれでいいッス、かねぇ)」
もともと、物事には拘らない気質の彼です。
そうやっていつまでも彼はその疑問に答えを見出せませんでした。
……そのときは。
それは少女とプリニーが一緒の生活を始めて幾月かたったある日のこと。
プリニーはいつものように家事をこなし、いつものように日が暮れます。
しかし、いつもの時間に少女は帰ってきません。
彼はおとなしく彼女の帰りを待ちます。
……一時間が経過しました。
「(まぁ、仕事が遅くなるってこともあるんスかねぇ)」
……二時間が経過しました。
「(はぁ、腹減ったッス。先に食うッスか? でもあとがうるさいかも――)」
……四時間が経過しました
「(さすがにおかしいッス。でも――)」
いいかげん心配になってきた彼。
しかし少女の奉公先を知らない彼には打つ手がありません。
とりあえず彼は家を出て近所を探してみます。
暗くなった住宅街は何処までも静かで、道行くものは彼しかいません。
「(まさかアイツ、強盗だかなんだかにあったんじゃ…ッス)」
彼の頭の中に強盗に襲われる少女の姿が浮かびます。
彼はそれを必死に振り払おうとします。
しかし、暗闇の中から生まれたネガティブな想像は彼から離れません。
それどころかビジョンは悪いほうへ、より悪いほうへ向かっていきます。
歩き出して数十分。
彼は歩みを止めます。
すると静謐な夜の空気が彼を包み、静寂が耳に痛いほどこだまします。
彼は大きく息を吸い、そして、これ以上ないほど吐き出しました。
そして方向転換。
来た道を引き返していきます。
「(そうッス。なんでこの俺が、アイツなんかの心配をしなきゃならないんスか)」
彼はごく自然に少女を心配している事にだんだん腹が立ってきたのです。
「(だいたいアイツが強引に誘ったから一緒に生活しているだけの仲ッス。心配なんて必要ないッス)」
彼はだんだんと歩調を速めます。
徒歩は競歩に、競歩はやがて疾走に変わります。
「(どうせ家に帰ったら、鍵を持ってないから玄関に締め出されて半ベソかいてる
アイツがいるに決まってるッス。速く帰らないと泣かれてうるさいッスね)」
プリニーはいつしか全力で住宅街を走っていました。
少女の泣き顔を玄関先で拝まなければならないだろうという予想、否、願望をもって。
しかし、たどり着いた彼を待っていたのは、人気の無いボロアパートの愛想の無い玄関だけでした。
翌日。
結局、日の光が再び顔を出す時間になっても帰ってこなかった少女。
昨夜、複雑な表情で夕飯を一人で平らげ床に就いた彼。
少女の分の夕食はラップして冷蔵庫の中に入れることを忘れません。
そして朝、あまり眠れなかった彼は、いつもより早い時間に起きだすと、一応少女の寝床を確認します。
彼女の寝床には、冷たいままの布団が一つあるだけでした。
冷蔵庫の中を見て、彼女の分の夕食が手付かずのままあるのを確認し、彼は軽く嘆息します。
まるで火が消えたような部屋の中。
それでも、日々の雑事を彼はこなさなくてはなりません。
彼は無心でそれらの家事を処理します。
そしてハタと気づきます。
「(そうッス。もしかしてアイツ『イイヒト』でもできてソイツのところにいるんじゃ…)」
そう考えるのは彼女が危険な目にあっていないと信じたいからでしょうか。
それでも彼には、その思考が一番しっくりくるような気がします。
「(なんだッス。そんなことッスか…。)」
なんとなく頭の中に能天気な彼女の顔が浮かびます。
それは幾月かの時間を一緒に生活した贔屓目にもただただ単純に『かわいらしい』と
感じられる、魅力的な容姿でした。
「(そうッスよねぇ。アイツも年頃の娘ッス。浮いた話の一つや二つあっても――)」
そこまで考えた彼の胸になんだか空しさのようなものと焼き付くような感覚が湧いてきます。
まるで娘が遠くに行くような感覚と妻が誰かに取られてしまったような感覚が同時に
襲い掛かってきたような奇妙な感情です(彼には娘がいたことも、妻を娶ったことも
ありませんが)。
彼は掃除機を取り落とし、胸を押さえます。
そして大きな声で笑い出しました。
それは虚しく、熱く、それでいて安堵したような複雑で猥雑な笑いでした。
彼は近所迷惑を考えることなくゲラゲラと笑います。
可笑しくて、可笑しくて。
苛苛して、苛苛して。
安心して、安心して。
彼はのどがいい加減痛むのではないかと思うほど、笑い続けました。
そんな彼の笑いを止めたのは、息切れでも隣人の苦情でもありませんでした。
突如、部屋の中に大音量の異音が木霊します。
部屋の中に投げ込まれた何かによって、窓ガラスが盛大な音を立て、粉々に砕け散ったのです。
それはあまりにも突然のことで、彼は驚き、身動き一つ取れません。
そして、いつしか静かな空気が部屋の中を制圧します。
しばらく呆然としていた彼は、ようやく自分を取り戻し、恐る恐る部屋の中に投げ込まれた
何かを、ガラスを踏まないように慎重に移動しながら見に行きます。
「……もしかして爆弾ッスか? いや、単なるイタズラ…ッスかね?」
割れて飛び散ったガラスの中心に鎮座していたソレは拳大の大きさの丸い何かでした。
彼は心底ビビりながらそれを取り上げます。
よく見るとそれは、紙に包まれた石のようです。
彼はガラスに気をつけて丁寧に石から紙を取り除きます。
石のほうはどこにでもあるようなありきたりなただの石です。
彼は紙のほうをよく見てみます。
そこには丁寧な文字が書かれていました。
『オメーの大切なモノは預かった。返して欲しくば、×××区△△番地の廃倉庫まで来い』
15 :
プリニーとぽこん:2007/06/22(金) 14:18:29 ID:YyMTsHHO
「俺の大切なモノ……ッスか? 金のことッスかねぇ?」
そういいながらも彼は手持ちの金の確認などしません。
この文が指し示しているものが分かっているからです。
この紙に書かれた丁寧な文字。
彼には見覚えがあったのです。
それは間違いなく、昨日からいなくなっているあの少女の字。
たぶん彼女を攫った何者かが、彼女に書かせたに違いありません。
それはたぶん証拠。
かの少女を拉致しているんだぞ、という証明のつもりなのでしょう。
「…………さあて、どうするッスかねぇ」
強盗団の頭領だったころの勘が『これは罠だ』と告げています。
彼をおびき出すための罠。
……しかし、どういうことなのでしょう。
かつてはたしかに強盗団の頭領で、札付きのワルだった彼です。
でも、いまでは少女の稼ぎに糧を依存する単なる薄給の一プリニーに過ぎません。
そんな彼をおびき出してどうしようというのでしょう?
「………………………」
彼は目を瞑り沈思します。
冷静にあくまでも主観を入れないように。
「………………チッ。どうにもうまく――」
しかし、少女の能天気な顔が脳裏に浮かびうまくいきません。
「(ハッ! 俺も落ちぶれたもんッスね。たかだかこの程度の事態で……)」
彼はもう一度、文面に目を落とします。
『――大切なモノは――』
「……大切なモノ、ねぇ…ッス。……フン」
彼にとってたしかに少女の稼ぎは大切なものです。
そして少女自体は――。
「……はぁ〜あ、馬鹿馬鹿しいッスね。いいかげん」
彼は考えるのに飽きたように手の中にある石と紙を投げ捨てます。
そして、ガラス片が飛び散る部屋に背を向け、玄関へと歩き出しました。
出した答えは非合理的なもの。
それでも彼は一歩を踏み出しました。
『大切なモノ』を取り返しに。
すみません。
えらく長い駄文ですが、まだ続きます。
( ^ω^)続きマダー!!?
どことなくしっとりとした雰囲気が好きな作品。期待。
即死回避兼GJ
GJですよb
指定された場所は人気の無い廃倉庫街でした。
そこにプリニーを待ち受けるように一人のチンピラが座り込んでいました。
事実、チンピラは彼を待っていたようで、彼が近づくと立ち上がり彼を案内するように倉庫街の奥へと歩いてゆきます。
そして、道案内された先は、一際大きく、一際ボロい薄暗い倉庫でした。
彼はチンピラに続き、ゆっくりと倉庫の中に足を踏み入れます。
すると、その瞬間、暗かった倉庫の内部に明かりが灯されました。
オレンジ色に浮かび上がる倉庫の中。
そこには何十人もの人相の悪い連中と、その中心には。
「………………! ……お、お、おとうさ…ん」
かの魔法使いの少女が柱に縛り付けられ立っていました。
彼女はかなり衰弱しているようで、弱弱しく第一声をあげた後は、力なく俯いてしまいました。
彼女のそばに立っていたスーツを着込んだ筋骨隆々の大男が彼に近寄ってきます。
それはプリニーもよく知った男でした。
「久しぶりだな。元・頭領。覚えているかな? アンタに昔こき使われた元・副頭領のアゴールだよ」
スーツの男は、そう自己紹介しました。
よく見てみると、周りを取り囲んでいるガラの悪そうな連中、すべてに見覚えがあります。
そう、彼らは、昔、プリニーがまだプリニーになる前の強盗団の仲間たちだったのです。
しかし、再会を喜ぶ顔は何処にもなく、みなゴツイ顔をニヤニヤと並べています。
もちろん、プリニーも再会を喜ぶつもりはありません。
できるだけ冷たい表情を作りながら、目の前にいるアゴールに喋りかけます。
「フン。またお前らの馬鹿面を拝むことになるとは…ッス。こっちも忙しい身ッス。
用件をサッサとお伺いできるかな?ッス」
アゴールは口の両端を吊り上げ、嘲るように言います。
「忙しい〜? ガハハ、たかだか専業主夫が何言ってるんだ」
「家事をしたことも無いようなガサツな男には判らんだろうなッス。それとも
愚鈍すぎてできないのかな?ッス」
自分もプリニーになるまでは家事など一度もしなかったことを棚に上げて、彼はアゴールを挑発します。
アゴールは一瞬、眉根を寄せましたが、ソレもすぐに打ち消し、さらにプリニーに近寄ります。
「ハッ、家事なんてする必要はねぇ。俺たちには力がある。なんでもぶんどれる力がな。
そう元・頭領……アンタの残した、この『テスタメント』があればな! ガハハハ!」
アゴールはそういって、自慢げに装備品を取り出します。
『テスタメント』
高貴な貴族のみがその着用を許される装飾品。
全ての能力値が大幅にあがり、こと戦闘では絶対的なステータスになるそれは、
プリニーが強盗団を立ち上げる前に独力で手に入れたものでした。
彼はその力を使い、強盗団を統率していたのです。
しかし、『ちょうまおう・らはーるさま』との戦闘で行方知れずになっていたソレ。
元・副頭領がこっそり戦闘のどさくさに紛れて持ち出していたようです。
「やれやれ、コソドロッスか。よくやるッス」
あきれたようにプリニーは呟きます。
「ハッ、この魔界では盗みもれっきとした技術。とやかく言われる筋合いは無い」
プリニーは心底馬鹿にしたように肩をすくめます。
「ハイハイッス。ま、ご高説賜るのはまたいつか、ということにして、サッサと本題に入るッス」
アゴールの神経を逆なでしたのか、大男はブルリと身を震わせます。
「オイ。言葉には気をつけろよ。あのガキがどうなってもいいのか?」
「はぁ、お前、頭悪いんスか? よくないからわざわざこんな所まで来たんスよ」
プリニーのその言葉に、アゴールは唇をゆがめます。
「ハッ! あの冷酷無比な元・頭領が、たかだかガキの命の一つや二つでガタガタ言うようになったとは。なげかわしいなぁ!」
「………………」
プリニーは何も答えません。
「まぁ、忙しいのはお互い様。……では、単刀直入に聞く。お前の隠し財産は何処にある?」
「?」
プリニーには意味がわかりません。
しかし、アゴール以下全ての強盗団の面々の目は本気です。
「はぁ?ッス。 隠し財産?ッス」
「そうだ。お前がまだ頭領だったとき、俺たちに内緒で隠していた財宝があるだろう?
それは何処にあるのか、と聞いているんだ」
そんなもの彼には身に覚えがありません。
そして彼は、自分のおかれた状況を完全に忘れて、しみじみ言ってしまいます。
「お前たちって、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたッスが、本当に真性の馬鹿だったんスねぇ」
さすがの彼の言葉に、場の空気がさらに殺伐としてきます。
そんなことにはお構いなしに彼は言います。
「お前らみたいなの多数抱えてたからアガリはあんまりよくなかったし、日々、生活
するだけでも結構な出費だったッス。財宝なんてためる余裕なんか無い。だいいち、
そんな金があったらとっくの昔に、赤い月に行けてるッスよ」
「「あ」」
その場を取り囲んでいたガラの悪い連中が口を揃えてそう言いました。
アゴールも例外ではありません。
「で、そんな調子じゃ、どうせ生活が苦しくなったんスね。で、誰かがそんな妄想を
生み出した。それで、わざわざ俺をこんなところにまでおびき出したっと」
アゴールは俯き、肩を震わせます。
「やれやれ、とんだ茶番だったッスね」
余計なプリニーの一言でアゴールの怒りは頂点に達してしまったようです。
「言わせておけば! このプリニーごときが!!」
アゴールは力任せにプリニーを殴りつけます。
プリニーにはその暴力を真正面から受け、地面にたたきつけられてしまいました。
アゴールはプリニーを踏みつけ、大声で怒鳴ります。
「こうなったら! こいつを! 八つ裂きして! バラバラにして! 粉々にしてやる!!」
そして、まるでボールを弄ぶように、足元のプリニーを壁に叩きつけます。
アゴールは背後を振り返り、少女の周りにいる男たちに命令を下します。
「おい! もうかまわねぇ! そのガキ、まわしちまえ!!」
ガラの悪い男たちは、その言葉を待っていたように下卑た笑いを口に貼り付け、少女に近寄ります。
少女は怯えたように周囲を見渡し、身を硬くして叫びます。
「……イヤッ!! …こ、こないで、ください…!!」
しかし、周囲の男たちはそんな少女の様子を楽しむように、彼女を取り囲み、そして。
「きゃぁああ!! さ、さわらないで! さわら――」
「うるせぇガキだ。 ちょっと、だまりましょうねぇ〜」
男の一人が、少女の口に汚い布切れを押し込みます。
少女は抵抗し、布を吐き出すと切れ切れに声をだします。
「た、たすけて……!! おと、おとうさん……!!」
少女の悲痛な叫び声が倉庫に響き渡ります。
「そのガキから、薄汚い手を退けろ馬鹿共、ッス」
アゴールが振り返り、そして見ます。
壁伝いに立ち上がり、少女のほうに歩いて行こうとするプリニーの姿を。
「フン! まだ生きてやがったか。 さっさとおねんねしな!」
アゴールは大柄な体格を生かして圧倒的な速度で殴りつけます。
否、殴りつけるつもりでした。
しかし、拳は空を切り、明後日の方向にそらされ、そのまま、曲がってはいけない角度に折れてしまいます。
「ギィヤアァァ!!! なん、なん、なんだぁあ!?」
倉庫内の視線がアゴールに集中します。
思わぬプリニーの反撃にアゴールはパニックになってしまいます。
そんなアゴールを諭すようにプリニーは語りかけます。
「アゴール。お前は本当に馬鹿ッスね。俺を誰だと思ってるんスか?」
そう言って、アゴールが確かにつけていたはずの『テスタメント』をプリニーは見せ付けました。
そう、彼は実力主義のこの魔界で、天性の盗みの腕だけでのし上がった男です。
そんな彼に、能力の大半を依存していた『テスタメント』を見せたのがアゴールの誤まりでした。
そんなものを自慢げに見せつけ、不用意に接近し、あまつさえ感情まかせに暴力を振るなど、決して見せてはいけない隙。
プリニーはその隙を突いてアゴールの『テスタメント』を盗んでいたのです。
大口を開け、全身を震わせるアゴールにプリニーは惜しむように言います。
「お前は、俺がいなくても強盗団をやっていける人材だと思ってたんスけどねぇ。残念ッスよ、色々と」
プリニーは『テスタメント』で強化された腕力でアゴールの鳩尾を思いっきり殴りつけました。
それはとても、とても鈍い音を倉庫内に響かせました。
腹を押さえ、崩れ落ちるアゴール。
プリニーはそんな彼を一瞥したあと、倉庫の中心、少女が括りつけられているほうに歩いていきます。
静かになった倉庫の中、アゴールを沈めた今、彼を止めるものは誰一人いません。
子分たちは彼の前から遠ざかり道を開け、彼は難なく、少女の元にたどり着きます。
そして、彼女を捕らえていた縄を優しく解きます。
「フン。やれやれッス。ほら、もう大丈夫ッスよ」
少女は全ての力が抜けたように彼に力なく抱きつきます。
「……お、おとう、さん! おとうさん……!」
「暑苦しいッスよ。それにおとうさんはよせと――」
その時。
「こ、この化け物め!! 頭領の仇だぁ!!」
少女を取り囲んでいた強盗団の一人が猛烈な勢いで彼に駆け寄ってきました。
そして、その勢いのまま
「――か、は…!!」
男は懐に構えた短刀を彼の腹に差し込んだのです。
プリニーはその男を振り払い、力ずくでたたき伏せます。ですが、プリニーはそのままひざを突いてしまいました。
「!! お、おとうさん!? おとうさん!!」
少女が彼に抱きつき、耳元で叫びます。
ですが、彼の耳にはよく届きません。
どうやら男の短刀はよほどいい所に刺さってしまったようです。
手足がしびれ、全身から力が抜け、意識が霞がかってきます。
それでも彼は冷静でした。
「(あーあ、ここまで、か……。どうやら俺には正義の味方は向いてないようッスね)」
どうにか息を吸い込み、プリニーは切れ切れに少女に言います。
「……お、おまえ。…この、『テスタメント』を、そう、びしてここから、逃げろ……!」
少女は大きく首を振ります。
「イヤ……! おとうさん、おとうさん!!」
少女の目から流れ落ちた涙が、彼の顔を濡らします。
周りを取り囲んでいた男たちが一斉に寄ってきます。
動けなくなった彼の止めでも刺すつもりなのでしょう。
「い、言うこと、を……、聞け!! 速く! 速く!!」
少女は決然とした表情で涙をぬぐうと、おもむろに立ち上がります。
「な、に…を。馬鹿が……」
「おとうさんはわたしが守ります」
「……は」
強盗団がプリニーと少女を取り囲みます。
少女は彼らを見やると、震える声で言い放ちました。
「おとうさんをこれ以上、イジメさせません……!!」
倉庫の中にドッと笑いが木霊します。
「おいおいお嬢ちゃん。おままごとはよそでやってくれ――」
「馬鹿なガキだ! この人数相手に何ができ――」
「だいたいお前、いままで人質だっただろう。そんなお前が――」
強盗団は口々に少女を嘲り、罵ります。
「おとうさんはわたしが守ります!!
――テラファイア!!!」
「はぁ!?」
「な、な――」
プリニーのいよいよ朦朧としてきた意識に天上を揺らす轟音が、地を震わせる衝撃が
伝わってきます。
そして爆音。
プリニーの白い視界の中で、たしかに古倉庫が消し飛ぶ様が見て取れました。
ほ、保守
ゼタ×サロメキボンヌ
悪い、保管庫の場所がわからなくなったから教えてもらえないかな?
アデル×ロザリー?がまだ出てない事に驚愕
>>28 今は”日本一ソフトウェア作品の部屋”になってるよ。
「大方、その短刀に痺れ薬でも塗ってあったんだろうよ。だから力が抜けちまった。間違いないよ」
病院でそう診断された後、入院などを拒否され、1HL払されたあと、外に放り出されたプリニー。
そして3日が経過しました。
プリニーは少女の強制的な決め付けにより、ずっと床についており、少女はその間、家事やら看病やらをこなす毎日を送っていました。
その間、二人は古倉庫の出来事など無かったように振舞います。
プリニーには少女に聞きたいことがありました。
どうして少女はあんなに強かったのに、連中に簡単につかまったのか。
それが気になりました。
それでも、ソレを口にすることはしません。
少女が懸命に家事をし、看病をこなすその姿を見ていると、何故か口が動かなくなるのです。
今日も言い出せないまま、朝が来て、昼が過ぎ、夜が訪れました。
プリニーは夕食の片づけをする少女を、自分の寝床に呼び出します。
「なんですか? お話って?」
エプロンで手を拭きながら、少女は寝床に入ってきます。
「うん。まぁ、座るッスよ。……なんだ、ッス。あの、ね。……うん。古倉庫の出来事についてなんスが」
『古倉庫』という単語が出たとたん、少女は身を固めます。
「あれについて、なんスが……。いいッスか?」
少女は深呼吸をして、プリニーの目をまっすぐに見つめます。
プリニーも、視線をそらしたりはしません。
「……はい」
「では聞くッスが……。どうしてお前、あんなに強いのに、簡単に捕まったりしたんスか?」
「……『テスタメント』です。あれを副頭領がもっていたから抵抗できなかったんです」
「『テスタメント』……ッスか。ふん」
たしかに『テスタメント』の威力は絶大です。
ですが、古倉庫を簡単に崩壊させられる魔力を持っていた少女に、そんなものが通用するのでしょうか?
それにしても、少しでも抵抗はできたでしょうし、騒ぎを大きくし、魔界自治の連中を
呼び寄せることも可能だったのではないでしょうか?
そう考えたプリニーはさらに言い募ろうと口を開きます。
しかし、それをかき消すように、少女は言います。
「そんなことより――、不思議じゃないですか? わたしがこんなに強いの」
「――ん? ああ、たしかに謎ッスねぇ」
あれだけ強ければプリニーがプリニーになる前の強盗団でも相当目立っていたはずです。
しかし、そんな少女の記憶はありませんし、取り残されたあとのファーストインプレッションでも
強そうな感じは一切しませんでした。
ということは――。
「実は今働いているところに関係しているんです。何処だと思いますか?」
「ん〜? 働いているだけで能力が上がるような場所ッスか……」
少女は彼の答えを待たずに正解を言います。
「……『超魔王ラハール様』の私設軍で働いているんです。弟子として。そこでLVを相当に上げられてしまいました」
「――!!!」
『超魔王ラハール様』。
それは彼を殺し、プリニーにした張本人。
彼の胸に複雑な感情が去来します。
自分から売った喧嘩とはいえ、プリニーにさせられた屈辱、恨み。
風化してしまっていた怒り、憎しみ。
ですが。
「――だから言い出せなかったんです。…………ごめんなさい」
「……そうッスか」
「? 怒らないんですね。てっきり、わたし――」
プリニーは苦笑します。
プリニーとして少女と生活しているうちに、相当、性格が丸くなってしまっていた自分。
そのことを自覚すると、可笑しくて仕方がありません。
かつての自分だったら、どういう反応をしていたのでしょう。
もう、想像することすらできません。
「………何を笑っているんですか?」
少女がこわごわ聞いてきます。
彼にはその様子すら可笑しくて、ゲラゲラと笑ってしまいます。
「アイツらのこと、馬鹿だ馬鹿だといってしまったッスが、俺もいい加減、大馬鹿ッスねぇ! 本当に!」
傍にあった少女の頭を強引に撫で回します。
少女はされるがままです。
そのまま、しばらくプリニーの笑いは収まりませんでした。
そして、ようやくプリニーの笑いが収まるころ、プリニーはようやく気づきます。
少女の頭に載せた自分の手を、包み込むように少女が両手で押さえていることを。
「なに、してるッスか?」
「馬鹿じゃありません」
「はぁ?」
「おとうさんは大馬鹿なんかじゃありません!!」
そして、少女はプリニーを布団に押し倒しました。
「な、なにをするんスか?」
プリニーは寝転がったまま、少女を見上げます。
少女は真剣な表情でプリニーを見つめ返します。
「…………大馬鹿なのはわたしの方です」
その声はあまりにも小さく、プリニーの耳まで届きません。
「な、なにか言ったッスか?」
少女は小さく首を振り、そして言いました。
「……おとうさん、そういえば、倉庫まで助けに来てくれたことのに、まだお礼
してませんでしたね」
「はぁ」
「じゃあ、おとうさん。わたし、一生懸命、ご奉仕させてもらいますね」
「はぁ!?」
「――で、何でこんなことになってるんスかね」
「ん、ぷはぁ、き、気持ちよくないですか?」
少女はプリニーの股下から顔を覗かせます。
ご奉仕。
それは文字通りの体を使った奉仕行為でした。
少女は怪しげな魔法を使い、プリニーの生殖器を取り出す(作り出す?)と、それを
まるでアイスキャンディのようにしゃぶりだしたのです。
その技術は、少女の幼い外見とは完全に乖離した卓越したものでした。
「お、お前。どこでこんなこと覚えたんッスか?」
少女は、彼のモノを口にくわえたまま喋ります。
「ははひ、おはないほろはら、ほほはへひ――」
彼女が何かを口にするたびに、彼は敏感になってしまいます。
「くぅっ! しゃ、喋るときは口を、離すッスよ!」
「はぁ、はひ」
ようやく、彼のモノを彼女は解放します。
「ど、どうでしたか? ちゃんとご奉仕できてますか?」
「あ、ああ。……っていうか、こんなことどこで覚えたんスか?」
ふ、と少女の顔が翳ります。
「まだおとうさんとわたしが強盗団にいたころ、『それなりの礼儀作法だ』っていわれて
副、頭領とか、……仲間の、方々に、い、いろいろと教わって…………」
言い募るたびに少女の体が小刻みに震えます。
プリニーは身を起こすと、少女をしっかりと抱きしめました。
「……ごめんなさい、わたし。その時、はじめてを――」
「もういいんス。もう思い出さなくていいんスよ。それに元を正せば、俺がお前の
ことを攫わなければそんなことには……。本当にすまないッス」
「いいえ! ちがいます!」
少女は確固とした声で否定します。
「おとうさんがわたしのこと攫ってくれたから、おとうさんに会えたんです!一緒に
暮らせたんです。これからも暮らせるんです。だから――、だからそんなこと言わないで下さい。
そんな悲しいこと、言わないでください……」
少女は彼に力いっぱい抱きつき、静かに泣き出しました。
彼は彼女の背中を優しく撫でます。
「判ったッス。もう、言わないッス」
「……本当に、もう、言わない、で、下さい、ね」
しゃくりあげながら、少女は彼から離れません。
しばらく二人はそのまま、月夜の下、抱きあうのでした。
「じゃあ……、いくッスよ。いいッスか?」
「は、はい」
暗い部屋の中、服を脱いだ魔法使いの少女の白い体が、プリニーの寝床にぼんやりと光っています。
少女はプリニーに自分の体を使ってくれと頼みました。
プリニーは初め、彼女の心の傷を抉ってしまうのではないかと思い、拒否しましたが、
少女は一歩も譲らず、結局、肌を合わせることに。
「あの……」
「ん? なんスか?」
少女の頼りない顔が薄闇にうっすらと浮かんでいます。
「フ、フツツカモノですが、何卒、よ、よろしくお願いいたしま、す」
少女のたどたどしい言葉を聞いて、プリニーは吹き出してしまいます。
「な、なんで笑うんですかぁ、わ、わたし、真剣なのに……」
「悪い悪いッス。なんか、これからするっていうのに、なんともなぁ、ッス」
「ぶー」
少女はむくれ、そっぽを向いてしまいました。
プリニーはそんな彼女を真剣に見つめ、言います。
「もし、どっか痛くなったり、怖くなったりしたら、言うんスよ」
「だ、大丈夫です。おとうさんですから」
プリニーは頭をかき、困ったように言います。
「信じてくれるのはいいんスけど。おとうさん、っていうのはやめるッス」
「じゃあ、親分、ですか?」
「……いや。こういう時は、お互い、名前で呼び合うのが礼儀ってもんッス」
そういって、ハタと気づきます。
「……お前、なんていう名前ッスか?」
「……わたしも、おとうさんの名前、知りません」
しばらく沈黙が室内に木霊します。
そして二人して、吹き出し、大笑いしだしてしまいました。
笑いの中、息も絶え絶えに、自己紹介します。
「うふふふ! わ、わたし、エリーゼっていいます!」
「ハハハハハ!! お、俺はテイルっていうんスよ!」
そのまま、二人は薄暗い部屋の中で笑っていました。
長らく垂れ流しを許容していただいたSSですが
次回で終了です。
今しばらく、駄文にお付き合いください。
俺はいつもは完結するまでは言わない主義だが、あえて言わせて貰う。
・・・GJ!
「で、えーと、なんだか締まらないッスけど……」
「はい、始めましょう」
ようやく笑いが収まり、微妙な空気の中で、二人は再び向かい合いました。
少女は小さなプリニー用の布団に寝そべり、プリニーは少女を上から覆うような体勢をとります。
まずは、プリニーは少女に口付けします。
それは小鳥がつついている様な軽いキス。
プリニーはくちばしを離します。
「っ! はぁ、テイルさん。……なんか、うれしいです」
耳まで真っ赤にした少女の顔を見て、彼は皮肉気に言います。
「ハッ、プリニーとキスするなんて魔界中探してもお前一人だけだろうッス」
「はぅう、そうかもしれませんね。……もう一度いいですか?」
「何度でも、お姫様」
彼はくちばしを少女の柔らかい唇に触れさせます。
そして――。
「んんっ!!」
そのままくちばしを少女の口内に侵入させ、舌を出すと、そこを優しく舐ります。
最初は驚き、目を見開いた彼女ですが、両腕でプリニーの頭を抱きしめ、少女からも
プリニーの内部に舌を絡めていきます。
「んっ! んん…………れる、んじゅ、……ているさぁん」
二人は貪るように互いの口を冒していきます。
そして、ようやく口を離したプリニーに、少女は上気した表情で囁きます。
「ているさん。からだ、あつい、です。すいっち、入っちゃいましたぁ、んっ」
再び、プリニーは彼女の口をふさぎます。
舌で舌を愛撫しながら、プリニーの不器用そうな手を少女の胸に当てます。
「んんぅっ………………」
少女はわずかに身を捩じらせますが、プリニーはかまわず、うっすらと膨らんだ双丘を
撫で、その頂点をクリクリといじります。
「や…………、や、ん…………」
嫌がるような口ぶりとは対照的に、少女は自ら胸を寄せ、より刺激を求めます。
「う、ん………。うっ……うっ」
プリニーが胸を弄るたびに少女は甘い声を上げ、いつのまにか乳首は自己を主張するように
ピンと屹立していました。
プリニーは乳首を中心に、乳房全体を押し上げるようになで、緩やかに愛撫します。
「て、ている、ん、さぁん……。せ、せつないで、す。もっと、もっと」
答えはわかっていましたが、意地悪するように彼は言います。
「ん? もっと、なんスか?」
「んぅ……、もっと。もっとぉ、ら、らんぼうに、うんっ、して、くだぁ、……さい」
少女は息を荒げながら、ようやく口にします。
「こういうのが、いいんスか、ねぇ!」
プリニーはいままでとは調子を変えて、乱暴に少女の胸を蹂躙します。
「ん!! んっ!! あうっうぅぅ! はぁ、そ、そんな、いきなりぃ!」
「乱暴にしていい、って言ったのは、お前、ッスよ!」
「でもぉ、でもぉ! あんっ。そ、そこまでするな、ん! てぇぇ。ダメっ、ですよぉ。あぁん!」
握り。揉みしだき。摘む。
それらの動作を複雑に連動させ、少女の胸を犯します。
「お前、胸の感度よすぎ、ッスよ」
「あうっ! んんっ!! そんな、はぁん………こと、んぅ!」
しだいに喋る余裕がなくなったのか、少女は嬌声しか発さなくなってしまいます。
少女の額に汗が光り、肌がピンク色に染まっていきます。
そろそろ頃合かと、プリニーは片手を少女の秘所にあてがいます。
「んん!! やぁあ! ソコ、弄っちゃあ!」
少女は電撃に打たれたかのように痙攣します。
そして少女の性器から透明な露が少量吹き出してしまいます。
「あれ? お前、もしかして、これだけでッスか……?」
少女は肩で息をして、両手で顔を覆います。
「イっちゃった、んスか……?」
泣きそうな声で、力なく少女は反論します。
「……だって。だってだってだって! テイルさん、らんぼうにしすぎるから、ですよぉ!」
「イヤ、それにしたってお前――」
ソコまで言いかけて、プリニーは口をつぐみました。代わりに
「ん。イヤ。すこし急すぎたッスね。すまんッス」
プリニーは謝りました。
「い、いえ。元はといえば、わたしが言い出したことですから……」
「じゃあ、次は優しくするッスよ」
少女は顔を隠したまま言います。
「あの〜、できれば適度に乱暴に……」
正直な少女の言葉に苦笑しながら
「はいはい。承りましたッス。お姫様」
了承しました。
「うん。これだけ濡れてたら、もう大丈夫ッスかね」
プリニーは横になっている少女の秘所に手をあて、濡れ具合を確かめました。
「はぁ、はい。じゃ……あの」
「入れるッスよ」
そして、少女の足の間に腰を進めていきます。
「は、はい。テイルさん。よろし……く!」
少女が言い終わらないうちに、プリニーは少女の内部に侵入しました。
ソコは極めて狭く、用意には奥に進めません。
「ぐっ、き、きついッスね……。ん!」
「はぁ! あうん!! す、少し痛い、です」
半分ほど入ったところで、プリニーは息をつきます。
「ちょっと力を抜けないッスか? これ以上いったら、よけい痛くなるッスよ」
「そ、そんな、こと、を言われて……も! け、けっこう、せい、いっぱ…いです」
プリニーは頭を掻くと、言いました。
「今日は、もう、これくらいにしとくッスか?」
「え!?」
唐突なプリニーの発言に、少女は驚きます。
プリニーは優しく、諭すように言います。
「ま、別に、今日しかできないってわけじゃないッスからね。無理に痛い思いをして――」
「ダメです!! せっかくココまできたんですから! あぅ……。お、大声を出すと、
お腹に響きますぅ」
「な。もう今日はやめるッスよ」
少女は唇をかみ締めると、状態を起こし、プリニーを押し倒します。
もちろん、一部がつながったままです。
そして、少女はプリニーの性器に両手を添えると、そのまま、強引に腰を落としました。
プリニーの性器は少女の奥深くまで埋まり、少女の最奥を感じられるほどです。
「あうぅ!! い、いたい、で……すぅ!」
驚いたのは、いきなり騎乗位をとられたプリニーです。
彼は大声で叫びます。
「ば、馬鹿!! そんないきなりやったら……!!」
苦悶の表情を浮かべながら、ゆっくりと腰を動かし、少女は囁きます。
「テ、テイルさん……。優しすぎます、よ。適度に、ん、らんぼうにぃぃ、んあぅ!
して下さい、ってぇ、言ったじゃ、ない、ですか……」
「でも、お前、これは負担が――」
「いいん、です。……これはお礼、でも……、あるん、ですから。あん! テイルさんがぁ、
気持ちよくないと、ダメ………んん!! なん、です……!!」
「………………」
「もしかし、てぇ……。はぁ、きもちよく、ありません、か? わたしの中」
「……気持ちいいッスよ。すごく」
お世辞ではありませんでした。
少女の中はとても熱く、狭く、繊細なひだで埋まっていました。
それを敏感な部分で感じているのです。
気持ちよくないはずがありません。
それに、少女が少しだけ動くたびに、プリニーの胸には暖かい何かが溢れてきました。
それはプリニーが、まだプリニーでないときにさえ味わったことのない特別な感覚。
その感情を、プリニーはなんと呼べばいいのかわかりませんでした。
「きもち、いいんです、ね。……ん! うれし――」
「じゃあ、もう知らねぇッスよ。俺からも動くッス」
プリニーは胸の温かさをごまかすように、わざとぶっきらぼうに言います。
そして、少女の僅かな動きに合わせるように下から腰を突き上げていきました。
「あう! ん! す、ごい、です!! テイ、ルさん!」
「………………まだ、痛い、ッスよね」
「はあ! は、い。でも、痛いけど! ん、痛く、ない、です、ぅ!!」
「………………」
無心で腰を振るプリニー。
「あああぁんうう………んん、くふ、奥まで、奥のほうまで入ってぇ……きてま、す」
少女は吐息を混じらせ声を上げました。
「すご、い……です。ほんとうに、ている、はん! つながってぇえ……!!」
「そうッスよ。つながってるッス」
プリニーのモノが少女の内部をするたびに、少女は彼を放さないように複雑にうごめきます。
キツキツのそれは、プリニーの全てを受け止め、入れるときは精を搾り取るように締まり、
抜くときは名残惜しむかのように絡まります。
「こ、こんな……かんじ、で! ど、どうでしょう……」
「ああ、すごく気持ちいいッス。このまま、続けるッスよ」
少女の性器はプリニーの声を聞くたびに震え、蜜を吐き出します。
プリニーはそれに気づくと意地悪く尋ねます。
「どうしたッスか? 俺の声を聞くだけでこんなに濡れてるッスよ?」
「ス、スミマ、セン。てーるさんのぉ、こえをきくと。恥ずかしいけど、で、でちゃうんですぅ。てーるさんにぃ、だ、だかれてると思う! とぉ……」
狭苦しい少女の中で、プリニーの性器は動き回ります。
ピストン運動だけではなく、左右に動かしたり、奥のほうを書くように動かすと、
性器と性器がグチュグチュといやらしい音を立てます。
「あぅ、あっ、そ、そんなにおとぉ、ならさないでくだ、さい………!」
「ハッ! お、お前が、そんなに締め付けたりするから、ッスよ!」
「あぅぅ。あんっ、し、しめつけ、て、なんかぁ、いま、っせん、よぉ………!!」
「ウソ、つけッス……! て、いうか本当、キツ……い!」
結合部から泡立った蜜があふれ出し、シーツを濡らしていきます。
やがて、少女とプリニーから流れ出した汗で、二人はずぶ濡れになっていました。
暗闇の中で、二人の濡れた腰が打ちつけられる音がリズムのように響きます。
少女もプリニーも息が上がり、ヘトヘトになりながら、それでも運動をやめません。
「わ、わた……し! あっ、ずっと、ずぅっと、こう………んん! なりたかった……んで、すぅ!」
「恥ずかしいことを、言うなッス! くぅ、この……!」
それでも、とうとう終わりが見えてきました。
「も、もう限界ッス! 出るッスよ!!」
「あん! は、はい! いっぱい、いっぱい、出してぇ、くだ、さい……!」
夢中になっている少女は自分がどんなにいやらしいことを喋っているのか気づきません。
「じゃ、あ! 出すッス、よ!」
「はい! 来て……! あ、あっ、んん! 来てください!!」
そして、プリニーは精を叩きつけるように少女のなかに射出します。
「んん!! ………なかに、わたしのぉ、なかに、出てるの、わかりますぅ……」
長い長い射精も、やがて終わります。
それを待っていたように、少女はプリニーの上に倒れこみます。
「だ、大丈夫ッス、か?」
「はぁ、い。だいじょう、ぶ、ですぅ……」
少女はそう言うと、ゴロリと寝転がり、プリニーの横に寝そべります。
「でも、ちょっと、張り切り、すぎちゃいました……」
そして、息も絶え絶えに微かに笑います。
「無茶しすぎッスよ」
「あはは………。そう、ですね」
「後片付けは、俺がするッスから、もう自分のベッドで寝るッスよ」
「そう、ですか……。でも、わたし……、テイルさんと、一緒に、寝たい……」
「ん?」
プリニーが聞き返したとき、少女はもう夢の世界へと旅立っていました。
「やれやれ……。お疲れ様ッス」
プリニーはタオルで少女の全身を拭くと、器用に少女を寝たまま、寝室着に着替えさせます。
そして、少女を抱え、昨日使われなかった少女の寝床に横たえさせ、布団をかけてやります。
プリニーは、自分の寝床の後片付けをして、少女の布団にもぐりこみます。
「……これで、ご満足、ッスか? エリーゼ?」
初めて呼んだ少女の名前は、なんだかくすぐったくて、少し微笑んだあと、プリニーはすぐに寝付きました。
「なぁんで、起こしてくれなかったんですか!?」
「起こしたッスよ! それでも『あと、五分』とか言って、寝てたのは誰ッスか!?」
「ふぇ〜ん! ち、遅刻ですよぅ!」
「ほら! ちゃんと寝癖直して! しゃんとするッスよ!!」
「はい〜! あ、朝ごはん……!」
「食べてる暇はないッス! ほら! おにぎり包んでおいたから、行く途中で食べるッス」
「はぅ〜! す、すみません! あ! あの、恒例の……!」
「えっ? やるんスか? 時間無いのに……」
「はい! 行って来ますの“ちゅ〜”! “ちゅ〜”!」
「はいはい……! わかったっすよ、………。ほら」
「わーい! テイルさん、行ってきまぁ〜す!!」
「行ってらっしゃい! 気を付けるんスよ、エリーゼ!!」
少女が強盗団に攫われるという事件から、もう幾月も経ちました。
そのあいだ、少女は何とか立ち直り、いまではまた『超魔王ラハール様』のところに働きに出ています。
プリニーは考えます。
あの時、強盗団に少女が攫われたことを。
たぶん、少女はわざと捕まったのではないのかと。
それは恐らく、テスト。
少女のことを彼がどう思っているのか確かめるための危険なテスト。
彼は少女のテストに合格したのでしょうか?
今となっては、それを尋ねることに意味はありません。
そして、プリニーは前と同様、専業主夫の仕事に撲殺されています。
変わらない日常。
変わらない毎日。
もう、強盗団だったときのことはもう、あまり思い出せません。
そんなことよりも、ゴミだし日のほうが、スーパーの割引日のほうが重要なのです。
プリニーは思います。
何でこんなことになったのかを。
「どうしてお前、あんなに俺と生活することに拘ったんスか?」
「………笑わないで下さいよ?」
「答え次第ッス」
「う〜ん。じゃあ言いますけど。わたしにとって、テイルさんは物心ついたときからの
初恋の人なんです。だから――」
そして、こんな日常に慣れてしまった自分を苦笑しもします。
それでも。
もういまさら、後悔も何もありません。
今はただ。
少女と一緒に生活するだけ。
赤い月に還るまで。
ただただ、日々を生きていく。
今日も魔界は暑そうです。
今晩は冷やし中華にしよう。
少女は喜んでくれるだろうか?
そう思いながら、プリニーは掃除機のスイッチを入れました。
以上です。
稚拙なSSをここまで読んでくださった方々。
あまつさえ感想まで書き込んでくださった方々。
皆様のおかげで何とか完結させることができました。
では、改めて、お付き合いアリガトウございました。
また機会があれば、お会いいたしましょう。
そのときまで、ごきげんよう。
42 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 18:49:46 ID:ob1u8R3h
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GGGGGJJJJJ!!!1
44 :
名無しさん@ピンキー:2007/06/29(金) 20:58:51 ID:gNCO8RUu
神だ GJ
いいねぇ。ほのぼのしてながらもエロイ。
胸だけでイっちゃうぽこん萌え。
GJですた(゚∀゚)b
絵本風の地の文が特に素敵でした。
GJGJGJGJGJGJ
もうね、これ以外ね、言えません
書きたいけど他のスレでも書きたいので手出す暇が
すごく面白かった!GJ!
・・・。
私は以前彼の父親に仕えていた。
彼の父親は魔王の中の魔王。
私は彼の父親・・・クリチェフスコイ王を尊敬していた。
しかし、クリチェフスコイ王は死んでしまった。
・・・まんじゅうを喉に詰まらせて。
最初は彼のことが嫌いだった。
本当にクリチェフスコイ王の子なのかと思うくらいにアホで馬鹿でどうしようも
ないからだ。
・・・けれど。
実際に彼に仕えてみて、それは間違っていることに気がついた。
彼は・・・ただのくそがきじゃないことに気がついた。
そしてあの日・・・私と彼の関係は一変することとなる。
「おいエトナ、こんなところに俺様を呼び出してなんのつもりだ」
私は彼を・・・私の秘密の部屋に呼び出した。
「しっかし・・・この魔王城にこんな場所があったとはな・・・」
この部屋は秘密の部屋だ・・・知られていては困る。
「おい、エトナなんとか言ったらどうだ」
すっかり忘れていた。彼に言うことがあって呼び出したのだ。
「殿下・・・あのですね」
「なんだ、はっきりと言え!」
「殿下のことを今まで誤解していました」
「なんのことだ・・・」
さあ、言おう。私の気持ちを。
「殿下・・・好きです」
「・・・・・・・は?もう一度言ってみろよく聞こえんかった」
何度でも言おう。
「殿下、愛しています」
「ぐふっ・・・貴様ぁ、殺すつもりか!」
「いえ、私の気持ちです」
「やめろ・・・うっ・・・」
私はおもむろにかがむと彼のズボンを下ろし、彼のものを外に出した。
「おい!エトナ!何をしている!やめんか!」
「殿下・・・」
本当ならパイズリでもしてあげたいところだが、私には無理だ。
だから・・・・舐めてご奉仕することにする。
「こっこら!やめろと言っているんだ!おい!・・・っ」
やめろと言われてもやめるものか。
「ふぇんは、ひほひひいへふは」
殿下、きもちいいですか
「や・・っめろ」
舐めるだけではなく、口の中に彼のものを入れていく。
「っぁ・・・やめろと言って・・・るんだ・・・っ」
硬くなってきているのがわかる。
彼のものは外見とはうらはらに・・・大きい。
「はむ・・・」
「こっこらっ・・・おいっ・・・エトナっ!」
ぎりぎりまで硬くなったところでペースを上げていく。
「はっ・・・ぅっ・・・やめっ・・」
ドクンと彼のものが脈打つ・・・そして大量の精子が口に注がれていく。
「っくっ・・・エト・・・ナ・・・」
コクリとそれを飲み干す。
「おっおい!そんなもんを飲むんじゃない!」
「そんなもんって殿下のご子息ですよ」
「貴様な・・・」
私は笑いながらそう言った・・・。
「ま・・・まあいい!」
「よくないですよ、返事を聞いてません」
「なんのだ!」
「私のこくは・・・」
「やめろ!死んでしまう・・・」
本当に苦しそうだ。
・・・しかたない今日はここまでにしておこう・・・。
けれど私はあきらめていない。
プラムとキングダークの獣姦強姦近親相姦まだー?
保守
アデルがエレノアに食われる話キボン。
幼少姫さまがマセガキなティンクに騙されてお医者さんごっこ話キボン。
就寝中、ママが人面相(パパは熟睡中)に悪戯される話キボン。
保守
56 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/24(火) 21:29:32 ID:OOeJDRNd
保守
ほしゅ
保守
保守ッス。
プリニーッス。
さあ!保守で勝負ッス
保守ッス!
ほしゆ
女帝フロンをいまだ待っております。
65 :
名無しさん@ピンキー:2007/08/27(月) 17:24:37 ID:zbCpTb0S
すまん超誤爆
マオラズに超期待。
あのジッパーを下げたいのは、おれだけではあるまい。
久々に来たけど、女帝フロンは結局来なかったのか…。
でもまぁ、待ってるけどな。
一年過ぎたっけ…
待ち過ぎてもう忘れてたよ・・・
まあ、しょうがないよ。
もう一年かー
つかお前ら夏休み終わったからってスレ止めんなw
未成年だからじゃないよな?大学生だよな?
保守
保守
75 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:37:59 ID:Qhee7W4b
何スレ前かは忘れたけれど、星魔とローニンと青魔妄想した人に捧ぐ。以下注意書き。
・百合です。
・ローニン(侍)×青魔です。
・苦手な人はスルーお願いします。
・石を投げないで。
では。
76 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:40:49 ID:Qhee7W4b
「溺楽の舞花」
広々とした平原に、魔物達の群れと、魔物と人が混在した軍勢が対峙していた。魔物
達の方は支配者が変わり居なくなったと思われている、魔界で暮らしている者。混在し
た方はとんと忘れ去られ、いまだにいまいちな知名度を誇る魔王、ラハールの軍勢だ。
その中で先頭を切った侍が手を振る。どうやら続けという合図らしく、後ろに数人の戦
士と一人の小柄な青魔法使いが駆ける。
青魔法使いのサフィールの前方を侍が走る。軍の中でも最高の実力を持ち切り込み役
を務める、リンだ。先輩で魔法の師匠である星魔法使い、リズと同期になる。
リンがゆっくりと刀を構える。歩くような、違和感の無い動き。そのまま口を開いた。
「凛、参る! 続けっ!」
よく通る声で叫ぶと共に刀を横に振りかぶり、魔物達へ突進していく。
――銀光一閃。
大きく踏み込みながら一文字に斬りつける、すべてが一挙動で完成された動き。数体
を残して魔物達が消滅する。続いて、優しい、まるで包み込むような声が響く。
「たゆたう水の力よ……」
斬りつけた動きを補うように、サフィールが魔法を解き放つ。弱った残りの魔物達に、
地面から追い討ちの巨大な氷が突き出た。氷は正確に直撃し、魔物達は完全に消滅した。
軍勢の皆が歓声を上げる中、リンが一人立ち尽くす。怜悧な視線をサフィールに向け、
ゆっくりと歩み寄っていく。
「サフィール、後で私の部屋に寄ってくれない? 大事な用事があるの。――そう、大
事な」
「はい、別にいいですけど。どうしたんですか?」
サフィールの問いに、リンの目が細められる。まだ戦地にいるせいか、表情は険しく
て鋭い。体から無駄な力は抜けているが、双眸からは強い意志の力が見受けられる。し
かしサフィールには、その顔が戦地に居るのに柔らかいものに思えた。
77 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:41:50 ID:Qhee7W4b
「二人きりで、誰も居ない場所で話したいの。駄目かしら?」
「了解です」
別段断る理由も無く、素直に頷き、そのまま魔王城へと帰還する列に加わった。
祝い代わりのラハールさまの賛美歌が鳴り響く魔王城内。戦闘を終えた者達がぞろぞ
ろと時空ゲートから現れる。出迎えに来た者達に、一際目立つ人物が居た。美しい金髪
に、つり眼がちな表情。ぴんと伸びた背筋に、きっちりと正面を見据えた顔。星魔法使
い、リズだった。リズは、帰還してきた者達に見知った人物がいたので声を掛けた。澄
ました声が響く。
「あら、サフィールお帰り。きちんと役目は果たせたのかしら?」
それに、柔和な笑顔を浮かべながらサフィールが答えた。
「あ、先輩。ばっちりですよ。相変わらずリンさんが凄い勢いで斬りこんでいくので、
とっても楽ちんでした」
「彼女は強いから。相手が宇宙魔族でもお構い無しよ。一対一ならアルゴスとかでも狩
れるじゃないかしら」
リズが、これであの癖さえなければね、と小声で呟いた。
「え?何がですか?」
内容が聞き取れなかった様子のサフィールが問い返してくるが、リズは何でもない、
と押し返した。そのまま話題を切り替える。
「そういえば貴女、この後に何か予定は無いの?無かったら一緒にお茶でもしない?」
言われたサフィールはそうそう、と言った表情で応じる。
「あ、先ほどリンさんに呼ばれてたんですよー。まだ時間が有りますけど、遅れたら嫌
なので、お先に失礼します」
78 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:44:20 ID:Qhee7W4b
そのままゆっくり歩み去るサフィールを見やりながら、リズの心に不安が浮かぶ。
「リンの呼び出しって……まさかとは思うけど……」
魔王軍兵舎女子寮の中に、その場所はあった。
その部屋は散らかっていた。と言っても、ごみ等が落ちている訳ではなく、床などを
見れば、目立つ埃等は落ちていない。代わりに散見されるのは、おそらく脱ぎ捨てたで
あろう緋の袴や、動きやすく限りなく軽量に切り詰められた千早。各種日用雑貨と合わ
さって、見事な混沌を形成している。その中で、布団の周りと、窓際に置かれた対面す
る形で椅子が置かれているテーブルだけは美しさを保っている。
布団の上に、浴衣姿の一人の女性が寝転がっていた。魔王軍の切り込み隊長である、
侍のリンだ。すらりとした長身を横たえたまま、寝ぼけ眼で何処を見るとも無しに欠伸
をする。流れるような黒髪は、乱れるもいいところのくしゃくしゃっぷりだ。顔が怜悧
なため、惚けたと言うより、瞑想をしているかのようだ。
ドアをノックする音がする。
「リンさん? サフィールですけど」
その声を聞いたリンは立ち上がり、軽く伸びをする。その動きも一つ一つが洗練され
ていて、その分寝癖の黒髪に、寝ぼけ眼が相乗効果で不揃いな印象を与える。
「いらっしゃい。鍵は開いているわ」
「はい、失礼します」
鉄扉を開けて、穏やかな花に良く似た少女が入ってきた。少女は入ってくるなり、呆
気に取られた顔をする。
「ぷっ。リンさん、その髪、どうしたんですか? 折角の美人が台無しですよ」
綺麗に乱れた髪を見やってサフィールが鈴のように笑う。つられてリンの顔も緩んだ。
「一応、気を付けるようにはしているのだけど、どうしても関心が薄れてしまうの。部
屋もこの有様だしね。座って。特に見るものは無いけれど、歓迎するわ」
そう言ってついと視線を向けた先には、先ほど戦闘で使っていた衣服や雑貨が所狭し
と放置されている。テーブルの窓際側に座りながらサフィールが又笑う。豊かな髪が少
し揺れた。
「だってリンさん、この部屋あんまり使わないでしょ? いつも修錬場やアイテム界に
一人で潜ってるから、使う暇なさそうだし。余り使わないなら、散らかりぎみになるの
は仕方ないかと」
「……それ、フォローのつもり? まぁ、貴女みたいな客人が来たときに少し困るけれ
ど」
リンも対面側に座りながら話を続ける。
「掃除はやってるから綺麗なんですけど、どうして片付けはやらないんですか?」
「休むのに使う場所だから、清潔な必要はあれど整頓されている必要は無いのよ」
「そんなもんですか?」
「そんなものよ。貴女達みたいに食後のティータイムを楽しむ人たちとは感覚が違うと
思うわ」
79 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:47:52 ID:Qhee7W4b
それを聞いたサフィールは、少しだけ真面目、といった顔で説明を付け加える。
「でもあれも重要なんですよ〜。男性の精神鍛錬みたいなもので、女性の場合は心を凪
に保たないと巧く魔法が使えなくなるんです。……知ってると思いますけど」
「……ええ、リズから聞いたわ。軍に入りたての頃は、どうやったら一番効率的にリラ
ックスできるか考え続けて、挙句の果てに寝不足になって魔物にボロ負けしてたわ。…
…本人はそんなことおくびにも出さないけど」
興味深い話を聞いた、という顔をするサフィール。何かに気付いて、斜め後ろの窓際
を注視する。リンに背中を見せたまま、話を続ける。
「へぇ〜、そうなんですかぁ。ところで、この黄睡蓮は? リンさん、余りこの部屋使
わないのに。お花は手入れが大変ですよ?」
「それはね……」
リンは穏やかに口を開きながらサフィールに近づく。そのまま、ゆっくりと後ろから
抱きすくめた。長身のリンの手は、緩やかに腰に周り右耳へと顔を近づける。
「リンさっ……」
サフィールが花を見つめたまま、後ろからの手の感触と、耳元の暖かい息に驚く。
「貴女の為に今日、生けたの。貴女にとてもよく似合うと思って」
よく通る声がいつもとは違う、艶のある響きを含んでサフィールに届く。戦場で見せ
る姿と違うけれど、根幹に流れるものは同じ、芯の強さを感じさせる。リンの顔が直ぐ
脇まで来ていて、少し振り向けば頬と頬が密着してしまいそうだった。リンのきりりと
した唇が、優しく動いた。
「私がどうして今日、この場所に貴女を呼び出したか、解る?」
「……えーっと……今なんとなーく実感してます」
「嫌?」
問いと共に、右手が喉に伸びてきてくすぐる。左手は髪を梳いていて、まるであやす
ような語調だ。蟻が這うように喉から顎、顎から耳へと手繰っていく。サフィールは陶
然とした表情でそれを受け取っている。
「リンさんには前から憧れていたから、平気です……」
「じゃあ、これも?」
耳から滑る様に戻り落ちながら、指が肌を引っ掻いていく。強くも弱くも無いその程
度が、ささやかに少女の官能を刺激する。こそばゆさは次第に蕩ける刺激に変わる。
「……ぁっ」
僅かに甘い声が出て、サフィールは身を震わせた。右手の愛撫は強くなるのに、左手
は優しく髪を梳き、頭を撫でる。じわじわと、安らいだまま快楽が増していく。右手は
鎖骨へと伸び、首までのラインを強弱をつけて優しく弄ぶ。甘えたような声を出して喘
ぐサフィールに、リンがそっと囁く。
「ここは兵舎よ。余り騒ぐと、隣に聴こえるかもしれないわ。隣に住んでいるのは……
エメロードだったわね。彼女、神経質だから、何か言われるかもしれない」
80 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:48:26 ID:Qhee7W4b
「エメロードさんが……?」
サフィールは不安そうに問い返す。けれどその顔は火照ったままだ。時々息が途切れ
て体を震わせる。リンの手は、喋りながらも巧みに動く。変化に富んで、少女の官能を
捕らえて離さない。
「そう。でも彼女、神経質なのと同時にとっても優しいの。そして私の事をとても良く
知っている。だから、貴女との秘め事が終わって、貴女がこつこつと足音を響かせて帰
った後、きっとすぐにドアがノックされる」
リンは、段々と手を大胆に動かす。初めは柔らかな愛撫から、鋭くなっていく。耳元
で囁き続けながら。
「そして彼女は言うの。――「リン、また!? また女の子連れ込んで、その……いや
らしい行為に及んだって言うの!?」って」
サフィールの顔が羞恥に染まる。しかしすぐに快楽に押し流されて、艶やかに歪む。
「いやぁっ……リンさんのいじわる……」
リンの右手は鎖骨で遊ぶのを止めて、胸元へと滑り落ちる。僅かに膨らんだ下着と、
周囲のきめこまやかな肌を巡る。下着の縁をたっぷりと、焦らすようになぞると、肌と
下着の境界線をこじ開けるように指先を這わせた。指先は膨らみの頂きに、そっと触れ
る。
「はぁっ……」
「いい声よ、サフィール。もっと響かせて……。貴女の声、とても綺麗だからすぐに誰
か判るわ。貴女とエメロードは知り合いよね? 確か、色々面倒を見てくれたんじゃな
かったかしら」
辿り着いたリンの指が、滑らかに弄ぶ。撫でる動きを基本に、周囲を押し込むように
ほぐす。左手は額から髪をかきあげ、耳を通って顎まで触れて、また額に戻ったりして
いる。度合いを増す右手と、変わらない左手の落差がサフィールの理性を押し込めてい
く。やがて両手は滑らかに左右の脇腹を通って、臍の辺りで組み合わさる。互い違いに
なった指が、たっぷりと時間をかけながら解けて、サフィールの肌を動く。再び組み合
わさって、優しく抱擁する。耳と唇が触れそうな距離で、リンが囁く。
「ねぇ……キス、していいかしら」
「……」
サフィールは無言でこくりと頷いた。後ろから抱かれているためにリンに表情は見え
なくても、口から漏れ出る熱い吐息は、彼女の高ぶりを示していた。リンが、うなじに
唇を近づける。緩やかに息を吹きかけ、サフィールにこれから始まる行為を予感させる。
びくりと震えた体に、少し強く両腕で腰を包むと、慌てた様にサフィールが喋った。
「あの……別に、怖かったわけじゃないんです……その、ちょっとびっくりしちゃって
……」
「わかってるわ」
そのまま、首筋に唇を触れさせた。
「……っ!」
最初は、唇で叩くように口づけする。何度も場所を変えて、その度に間隔も変わる。
髪とうなじの境界や、鎖骨の窪みに唇を散らせていく。少し唇を尖らせただけの慎まし
やかなキスが、じりじりとサフィールの胸を熱くさせる。リンの引き締まった口元が、
少し開いて近づいて、触れては離れる。
繰り返すたびにリンの口元が開いていく。最初は突っついていたのに、段々押し付け
る風になる。一度の間隔が長くなった。やがて、サフィールの肌に押し付けられた唇の
間から赤い苺を思わせる舌が伸びて、口付けの度に細やかな肌を撫でていく。リンは軽
く耳たぶに唇を押し付けて、そのまま喋った。
81 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:49:00 ID:Qhee7W4b
「ねぇ……」
「ひゃっ!?」
「貴女の顔、見たいわ。いいかしら」
「……あっ、はい……」
リンは答えを確認すると、サフィールの腹部や臀部を撫でながら、体を一回転させる。
くるりと回ったその後に、二人の視線が交じり合う。サフィールは、頬を染め、見上げ
、リンは、目を細め、見下ろしていた。
「可愛いわ、サフィール」
その言葉にサフィールはさらに頬を染める。
「リンさん、わたし、わたし……!」
「こ……こらっ」
サフィールがリンに顔を近づけ、この場で一度も触れ合っていない唇同士を合わせる。
正面同士で少し撫でると、サフィールは顔を傾けて、深く唇を繋ぎ合わせた。
怒りというよりは困惑した声でリンが抗議するも、サフィールは聞かずに、唇で触れ
ながら、ゆっくりとリンの後ろに手を回し、強く強く抱き寄せる。唇を離すと、体全体
で抱きしめた。
「リンさんっ……リンさんっ……」
「サフィール……あっ」
サフィールの力に想いに応えるように、リンが体を震わせた。
「リンさん……どうしたんですか?」
「抱きしめられるの……弱いのよ」
「気持ちいいんですか?」
「…………ええ」
リンが恥ずかしそうに言う。それを聞いたサフィールは、穏やかに笑った。赤みが差
した頬と熱い息遣いの上に乗ればその顔はたちまち艶っぽさへと変わる。蕩けた瞳と火
照った身体は、今目の前の、黒髪の麗人に向けられていた。
「もっと、ぎゅーっとぎゅーっとしちゃいますね」
「貴女だって、こんなにくすぶっているわ」
リンがサフィールと顔を近づけ、キスをする。大胆に開かれた口から伸びた紅い舌は、
容易にサフィールの口内へと辿り着き、欲情を掻き立てようとする。舌の先で歯をノッ
クしたり、口腔の天井を突く。緩急鋭鈍、快楽に繋がらない様な動きも全てを火種にし
て、サフィールの身体を焦がそうとする。舌同士をなぞり、口の中を隅々まで染めよう
とする。サフィールも応えて、互いの口腔内を、違う人物の舌が踊る。先端同士で押し
付けては、側面同士で絡める。サフィールがさらに強く強く抱きしめるせいで、リンは
何度も力が抜けて、舌が留守になる。その隙を突いて、サフィールの舌が暴れる。お返
しとばかりに伸びたリンの腕が、時折痺れた様に震えながらも、足の間のサフィールの
秘裂へと服を縫う。
「ふあっ……!」
リンの指がサフィールの秘所に触れる。快感でびくりとした身体が口付けを断った。
開いた口から漏れ出るのは官能の響き。リンの指が怪しく蠢いて、蜜が漏れ出す中を掻
き回し、興奮で強く主張する丸い芽を押し潰した。再び声を上げようとするサフィール
の小さな唇を、リンの鋭い唇が埋める。快楽の証の声をさらに快楽を生む口で塞いで、
リンは愛撫を続ける。空いた手は抱きしめたり、耳をくすぐったりした。
不意に、サフィールが笑った。リンが怪訝に思ったのも束の間、
「きゃっ!?」
今度はリンが快楽に襲われた。震える肢体がキスを止める。ほとんどしがみ付くよう
な状態でリンを抱きすくめているサフィールが、膝をリンの秘所へと押し付ける。硬い
膝で秘所を抉られ、抱きしめる力を強くされ、可愛い声が漏れた。一旦離れて二人は顔
を見合わせる。
82 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:50:48 ID:Qhee7W4b
「可愛いわ、サフィール」
リンが笑った。美しくも鋭い、怜悧な笑みで。妖艶な雰囲気を宿らせながら。
「綺麗です、リンさん」
サフィールが笑った。穏やかで柔らかな、花のように。優艶さを身に纏いながら。
二人は共に、ついばむように、頬や額にキスをする。幾度か繰り返すと、どちらとも
なく目を閉じる。深い口付けと同時に、先程までの続きを始める。けれど、さっきまで
とは違った。リンは、抱きしめられて、膝で秘裂を抉られながらもサフィールを口付け
を続け、サフィールはリンの手がどんなに艶かしく動いてもリンを抱きしめ続ける。快
感に何度身体が震えても、互いにその快楽を押し合うように愛撫を続ける。
次第に愛撫が激しくなる。サフィールの膝はまるで打ち上げるようになり、リンの指
はもう三本ほどがサフィールに埋まっている。唇は感覚がぼやけ、ふやけた間から、混
ざり合った唾液が糸を引いて、二人の浮かされた肌にしなだれ落ちる。舌の動きは荒々
しくなって、相手を貪るようだった。リンのもう片方の手も色々な場所を引っ掻いてい
き、サフィールの丸みを帯びた臀部を掴み、撫で、突付く。キスの時折息を継ぐ度に二
人は上り詰めていった。
「リ……リンさっ……わたし、おかしくなっちゃう……」
「私もだからぁっ……一緒に……キス……」
快楽の頂へ上り詰める直前に、二人は深く口付けをする。ただ結ばれるのが目的のキ
スが、最後だった。
不意に、二人が同時に大きく震える。駆け巡る快感が、より一層二人の唇を繋ぐ。そ
れと共に口付けも離れて、一緒に座り込んだ。そのまま肩を寄せて、相手に寄りかかる。
リンが強く抱き寄せた。
「もう少しこのままで、いいかしら」
「はいっ、もちろん」
――数時間後。
長身のリンにまるでエスコートされるかのように現れたサフィールに、リズは頭を抱
えて、
「またね、またなのね!?」
「そういきり立たないでよリズ。無理強いはしてないわ」
「はいっ♪」
「はぁ……」
リズのため息が、虚空に消えるのだった。
83 :
テレーセトス:2007/09/19(水) 23:53:58 ID:Qhee7W4b
以上で終わりです。
なんというローニン…
間違いなく俺のキャラと同じ名前…
GJだぜ!
まぁ俺のキャラは「蒼月 凛」だが…
GJ!!
86 :
テレーセトス:2007/09/22(土) 17:07:51 ID:kb58t10I
>>84 自分で書くときに、これは脳内妄想だから二次創作と言えるのだろうかとはたと悩みました。
>>85 ありがとうございます。このスレがにぎわうといいなぁ。
どこかで妄想した人の妄想は星魔ほ手篭めにするかもしれないところまでなのでその辺書くかも知れません。ですがとんでもなく遅筆なので、期待しないで進行していてくださいね。
皆さんに幸あれ、執筆に戻ります。では。
>>86 次の作品もwktkして待ってるぜ!
俺も妄想しますかね
ほしゅ
大変だ!
エトナ様のスレが落ちた…
お邪魔致します、投下に参りました。
ディスガイア2で、アクターレ×フロン(ラハフロ前提)です。
全8レス分あります。
・カプが好みに合わない方、どうかスルー願います。
・ラハール殿下の好きな方は、不快に感じる場面があります。ご注意下さい。
・1のネタバレを含みます。ED未到達の方は、避け下さるよう、お願いします。
・アクターレの女性に対する二人称「あんた」は、ゲーム内に存在します。
…以上です。楽しんでいただけたら、幸いです。
「悪と愛の領域」(ラハフロ前提、アクターレ×フロン)1
空。
たなびく雲が柔らかな黄金色に包まれ、静かに通り過ぎていくのを、フロンは見詰める。
見えるのは、それしかなかった。
背に回る腕は、力が込められ苦しいほどで。肩を握る手は熱く、時折震えた。
抱き締めてくる男の呼吸と胸の上下が、貼りついた布ごしに伝わる。
夕日が最後のきらめきを放つと、醸し出された赤紫が辺りを緩やかに暗色へと深めていく。
緑野の匂いを帯びた風が重く流れ、長い金の髪を滑らせた。
少女の眼に、男のきつく結ばれた唇が映る。それが解けて紡がれた言葉に、フロンは息が出来なくなった。
「なんで、そんなことを言うんだ!?あんた四日前、オレ様をフッたじゃないか……!」
血さえにじんでいるかのような問いに、自分がいかに残酷なことを告げたかを悟る。
「役目?使命!?知るかよ、天界も魔界も!償わなければならない罪も!それは、あんたの望んだことじゃない!!」
「でも私はカギなんです。二つの世界を、つなぐ――」
だが、開いた唇にアクターレの唇が重なり、一切の否定が封じられた。
――ラハールさんの訪れはいつも唐突。夜の静寂に、短く叩きつけるように――
――日が続いたと思えば、半月以上も間が開いて――
フロンの髪は、頭の横に緩くまとめられ、身体の下には男のコートが敷かれていた。
細かな気遣いを当然のように行うアクターレに、少女は戸惑う。
翼や尾も気にしてくれる優しさに、彼の女性に対する慣れを感じ、どうしてか落ち着かなかった。
胸部に、じわじわ染み出すような悦が続く。
首のリボンは紐解かれ、露わになった乳房に男の舌があった。
弾かれ続けるそこは甘く痺れ、反対側は指が丁寧に擦り上げている。左右の入れ替わる空白さえ暖かみに満ちていて。
こんな優しい愛撫を、フロンは知らなかった。
――ラハールさんがジッパーを下ろしたら、顔を埋める――
――零れ出てきたら、それを飲む――
彼女が学んだのは、男の舐め方、吸い方、触り方。
脚のふるえが止まらず、反射的に膝頭を強く擦り合わせたことに、フロンは困惑した。
下肢に、耐えられないほどの興奮を覚えているのに気付いたからだ。
体とショーツの境に現れた蜜の存在も、彼女をひどく驚かせる。
自らの変化が信じられなかった。感覚を疑う間も、続けざまに吸われ「あっ」と発した声とともに、溢れた雫がシルクの紗布を重くした。
腹部へと、舌先が想いを綴るように下りていく。何気ない場所すら、唇があたると心地良さに、肌が応える。
遠くばかりを探るようなもどかしい刺激かと思うと、不意に指が、鋭く高い波を胸にかえしてきて。
かろうじて声を堪える間に、また服はゆるみ、身体が夜気に晒される。
男は、柔らかな金の飾り毛に指を絡め、大切に梳いた。
「なぁ、これ解いてくれよ」
足の間からしっぽを手にしながら、フロンに願う。
彼女の尾とレオタードは、意思によって一体化しているからだ。
だが、フロンが頭を左右に振った。自ら解いて見せるなど、恥ずかしくて、とても出来なかった。
そんな彼女にアクターレは、怒るでもなく尾に触れる。ピンクのリボンは、微かな衣擦れをたてて形を失った。
フロンの体が、大きく揺れる。
「な…何してるんですか!?」
「何って……。まさか、触ってもらったことないのか?」
質問の意味が汲み取れず、少女の表情は不安げなままだ。
男が眉を、きゅっと顰める。明らかに苛立つ気配。だが眼はすぐに和らぎ、愛撫が再開された。
両手で大事に尾を持ち、先を口内に含んだのだ。
「…あっ!」
熱が伝わり、ぞくりとフロンの背を興奮が突き抜ける。
それは、巧みな舌戯だった。
裏も表も曲線も縁も、ゆるゆると這っていく舌に意識がさらわれた。皮膚に昇るのは細かく強い、あわだち。
「ん、ん…あぁ、ん…」
堕天して三年。突然生えたしっぽを、少女は振る以外に使い道を知らず、まして感度があるなど考えもしなかった。
それが今、尾は触れられた刺激を簡単に悦に変え、呼吸を乱れさせてしまう。
細長いラインを辿るように、何本もの指が行き来する。長く、まっすぐ流れるように指の間をくぐらせ、軽く微かに捻りながら遡る。
バラバラに絡んだ指…吸い付くように包み込んでくる、手の平の厚み。
どこか馴染むのは、髪の毛の一房を弄ぶ感覚に似ているからと気付く。
「悪と愛の領域」2
蠢く舌が、指の戯れに続いていく。フロンは、ハッと眼を見開いた。
ついばむ唇が、根元へ向かってきているのだ。
女性器に顔を近づけられる羞恥に、慌てて一体化を解いた。
なのに。
「きゃ!?…だ、駄目です!」
茂みを掻き分け、口付けてくるではないか。
「…ここにキスされるのも、初めてか…」
息が充血した陰核にあたる。
「待っ!ふ、あぁっ」
身を捩って後退る少女に、男は。
「逃げないでくれ!あんたを…連れてってやりたいんだ、最後まで」
女の体の、行き着くところまで。
彼は、口に出さずに手を握り、懇願するよう彼女を見つめた。
俯く少女を前にアクターレは数ヶ月前、出会った当初の頃を思い返していた。
久々に出会った、熱く語れるヒーローマニア。
それが可愛い女の子なことに、男の心は少しばかり浮き立った。
大人しげな印象は最初だけ。話が高じると、たちまち顔は紅潮させ、ひたむきなまでにヒーローを論じる。
彼女の素直な姿に好感を覚えていたが、間近で見るうち、その魅力に心くすぐられた。
アクターレは己の内側で、急に食指が蠢くのが分かった。
ファンなら、少しばかり“構って”も平気だろう…と計算が働きだす。邪な心が、密かに欲望をたぎらせた。
少女の紅く澄んだ瞳が細くなり、そこにふわりと光が弾むのを眺める。
さらさらと揺れる淡いピンクの上着を脱がせる算段は、すでに組みあがってた。
男は大きい手振りで視線を逸らせ、半歩進めて距離を縮める。
案の定、フロンは接近に気付かない。
「ですから、戦隊全員がピッタリ揃えてキメるには、出だしに工夫が必要なんですよー!」
彼女の耳に、微かに息が当たるように。
「…そうだね」
と呟くと、フロンの体が弾かれるように反応した。
感度の良さに感心しながら、スッと身を引く。
訝しげに少女は、何か…変?と思いながらも、気のせいですよね、と心のなかで払い消す。
アクターレはその時間を計ってから、ゆっくり微笑んだ。
女の子を安心させる笑みを、男は心得ていた。優しい顔と口調と態度で振る舞えば良い。
今まで失敗したことなど無いのだ。
「おや、疲れちゃったかな?」
囁きに含まれる声の艶を、フロンの心臓はダイレクトに受け取った。しかし、彼の変わらぬ表情に、自分は自意識過剰なのかもと恥ずかしくなる。
意識しだすと、途端に頬が熱くなった。
誰かに赤面した顔を見られはしないかと、周囲に目を走らせる。人の気配の無さを確認した途端、男と二人きりだと気付く。
離れようとした少女の膝が、カクッと揺れた。
「大丈夫かい?」
好機と手を差し出す。押しつけぎみにならぬよう、しかし避けにくい位置に。
案の定、フロンはそれを断ろうと体を引いた。
「…きゃぁ!」
ヒールが災いし、不安定な体が後方へと転ぶ。
予想外のことにアクターレも慌てるが、フロンは自発的に男の手を握るのが躊躇われ、結果、助けを拒むことになった。
ならばと、男も思考を変える。
「立ちたくないのかい?でもそこじゃ痛いだろ。だったら…」
アクターレは真横に足を伸ばして座り、少女を自分の膝に引っ張り上げた。
「こっちにするんだな」
驚いて声も出ないフロンに、先手を打って諭しにかかる。
「変なことされないか、心配かな?」
「い、いえ、そんな…!」
「キミが上に乗っている状態で、悪さなんて出来ないさ」
乗り方次第だけどな? と、それは聞こえぬように。
「悪と愛の領域」3
羽を思わせる軽さと、弾力のある肉感。
座っているせいか、フロンのほっそりした体は、先程よりも小さく見える。
だがその時、アクターレは彼女の胸に秘められた不安定さを、感じ取っていた。
けれど、彼に内面まで踏み込むつもりはない。いま楽しめればそれでいいのだ。
「…可愛いな。天使っていうのは、みんな キミみたいに優美で華奢なのかい?」
アクターレのストレートな言葉にどきりとするフロン。口説きに、ではない。天界での記憶に心が痛んだのだ。
だがその隙に、髪の毛へ口付けされ、戻り掛けた顔色がまた赤くなる。
「堕天使と言うけど、ぼくはキミのどこが『堕』ちてるのか、わからないよ…」
考えを打ち切り、アクターレは現実に立ち返った。
「余裕を持たせて…そうだ」
フロンは言われるまま、彼の熱した楔に、しっぽを巻き付ける。
奉仕や従うといったものではない。彼の求めた行為が、二人で気持ち良くなるためのプロセスと信じられたから。
これまでだって、そうだったから。
事実、男性器を巻くことに精神は高揚し、溶けるような感触を拾い上げる。
――ラハールさんが離れていくのは、満足させてあげられないから――
――エトナさんを追ったラハールさん。二人を仲直りさせてしまった私――
自分達はカギ、天界と魔界をつなぐカギ。
背負ったものへの責任、守りながら変えていく使命、重責を…強く感じた。
その日以来、二つの世界を愛で包もうと色んな努力を行ってきた。
けれど同時に育っていったのは、責務を果たさないラハールに対する、焦れ。
――大丈夫、ラハールさんには愛があります――
――愛があれば、どんな困難も乗り越えられるはずです――
しかし、いくらそう信じても。フロンは常に、どこか苦しかった。
その時だ。
『何でも愛の範疇にしていたら、それこそ真の愛を逃してしまうぜ?』
それを口にしたのは、肩で風切るダークヒーロー。
二人で居たのに、一瞬誰が喋っているのか判らなかった。
悪魔の彼が、愛を語るなんて。
愛の見解を示してくれるなんて。
呪縛が自縛で、まやかしだと彼が諭してくれるなんて。
……周囲の誰も乗ってくれないヒーロー談義。
冷めた目、頬に汗。
貼りついた笑い、肩をすくめて。
なのに彼は最初からヒーローで、自分の心を沸かせてくれた。
楽しくて、魅せられて。いくら夢中になっても許される。
それどころか、熱するほどに喜んでくれる。こんな心が満たされることなんて無かった。
だから。以前の自分なら考えもしない卑怯な方法を選び、これまで続けてきたのだ。
好きだと言われて。…断るしかないのに。
拒んでおいて、それを今日。
『こうしてアクターレさんと会えたのも、カギの役目を授かったからこそです。使命に感謝ですね!』
なんて…酷いことを。
アクターレの目に映った芯芽は、彼女と同じくらい慎ましやかで、愛らしく見えた。
この小さく、傷つきやすい一点に触れる男が自分だけと聞いたのを思い起こし、何もかも忘れて食らい付きそうな衝動を無理に抑える。
そっと優しく、いたわるよう舌をあてた。紙一重の刺激で痛みに変わる敏感な場所だけに、慎重に。
「あ…ん、ああっ…あ!」
声に苦痛の響きは無い。それどころか、しっぽは別の生き物のように、忙しなく絡み出してきて男を煽った。
一定のリズムで吸い付かれ、うねる悦にフロンの体が傾ぐ。
吸い付く…そう。秘部に当たるのは、人の唇と舌。
今更と思うけれど、恥ずかしくてたまらない。
そんな所の味まで知られてしまった。
もう愛撫なんてしないでと思うのに、絶え間なく駆け上がるぞくぞく感に振り回され、言葉にならない。
「…くっ…あんん…っ」
焦りも苦悩も惑いすら、瞬くような愉悦に洗い流された。
「悪と愛の領域」4
じくじく重くなる波に、絶頂を意識するフロン。
乱れた息の下、淡い期待と不安が入り交じる。
しかし、急にかさの増した濁流に、恐れが勝った。
「やっ…!」
止めようと身じろぎ、強張った手でフロンは必死に男を押さえる。
「ごめんなさい、止めてください!」
「どうしてだ?」
「こ、恐いんです。アクターレさん…私、イクの恐い…っ」
か細い声をのどで詰まらせ、おののき震える。
「大丈夫だ、恐くなんかない。ほら掴まってな」
「でも!」
「ごめんな…けどあんたがイクまで、止めるつもりはない」
「え…あっ、嫌!?」
先程とは打って変わって強引に。泉に舌が、浸された。
アクターレは知る限りの知識を動員して、頂上への道を探った。
彼女の反応は、さっきよりいい。声もしどけない。僅かではあるが花芯も膨らんでいる。
けれど、すぐなはずの目的地に辿り着ける気配が無かった。
つのる恐怖と緊張が、まだ覆せないのだ。
これでは続けたところで、苦しい思いをさせるだけ。
アクターレは身を起こし、避妊具を取り出した。
内側から高める必要があると感じたからだ。
未発達の性感では、内と外は繋がりが薄いことがある。そのため外で無理な場合、中でイクのはもっと難しい。
しかし、体の緊張を解くため、あえて内側を刺激することにした。
静かに深く、息を吐く。
胸に悔恨がわだかまる。
“諦めると決めただろう、引き返せ”と咎める声に背を向けた。
ゴムの袋を噛み、指で端をピッと裂く。唇で少し押し、摘みだした中身を性器にあてるまでに、先端を潰して。
するりと取り付け、ピチピチッと引っ張り、装着を終えた。
男の慣れた手付きに、唖然とするフロン。
こんなところでモタつくなど有り得ない、としてきた彼の常識が、少女の心に波紋を呼んだ。
――いつも持ち歩いてるんですか?――
――随分早く、付けられるんですね…――
熟れすぎた果実に爪をたてたように、何かが溢れて滴り落ちる。
底から、ぐうっと迫り上がるものの正体が、フロンにはまだ分からなかった。
少女は、堕天の理由を聞かれた日の記憶を手繰る。
相手はラハール一人だったが、男の肌をくぐり、フロンは性というものを理解するようになっていた。
容姿こそ幼さの抜けぬものの、その奥に、しっかりと、知識も理解も携えて。
魔界という土壌で、現れては荒れ狂う生々しい欲を過敏に察知し、自衛するようになっていた。
だから、判ったのだ。
「どこが『堕』ちてるのか、わからないよ…」
問われた時に、男の意図とするものが。
少しためらった後、気持ちを整え彼に告げた。
「あの、アクターレさん!私、聞きたいことがあるんです。質問にお答えしたら、教えていただけますか…」
そんな自分を意外そうに見た彼を、フロンは忘れられないでいた。
嬉しいけれど、肩透かしされたような、複雑な顔。
真剣な瞳で正面から向かっていると、いいよ、と涼やかな声がした。
「悪と愛の領域」5
「えっ、愛?」
思わずフロンは聞き返していた。
「あるんだろう?あんたには、燃え上がる真の愛が!」
軽薄だった風情が抜けていた。
時間をかけて打ち明けた事情と悩みに、本気で答えてくれたのだ。
しかも、愛という単語を中央に据えて。
喜ぶのは早計と、彼女は自戒した。思いこみの激しさを以前から自覚していたから。
二、三の遣り取りの後、アクターレは首を傾げた。
「何で、そんな卑下するんだ?」
「だって私、男性を満足させられないんです…」
口調が責めるものになるのを感じ、抑えようと語尾を濁す。
「違うな。あんたが方法を知らないだけさ」
否定の言葉が、フロンには闇夜に灯った明かりのように道を示して見えた。
それから十数分後。
アクターレはフロンの目線を確認してから、指を彼女の内側に潜り込ませた。
「ほら、締めてみな。…そうか。あんたは、右のここから盛り上がっていくんだな。なら、上手くすると、こっちの粒々に当てられるぜ」
口では普通に説明を続けていたが、アクターレは彼女が判らなくなっていた。
身持ちの堅い子なのに、どうして触らせてくれるんだと。
男として見られてないのかと疑い、そんなはずはないと考え直す。自暴自棄か、それとも好意か。
転んだ彼女が、男の手だからと自分を拒んだのは、ほんの少し前。
それが今、自分の膝の上に脚を広げて座り、体をいじらせている。
レオタードの局部をめくる手を除けもせず、露わにされた女唇に指を飲ませて。
アクターレの背筋に、ひたひたと後悔が這う。
暗殺命令、人間勇者、天界、堕天、カギと使命…最後は促して聞いてしまった。
内面まで踏み入る気など無かったはずなのに。
「力抜かずに、少し動いてみな」
「…はいっ」
性技を覚えようと努める姿が、いじましかった。
心の離れた恋人を取り戻したい、その為なら多少のことは厭わない。
こんな女の子もいるのかと、少し心がざわついた。
「…そう、上手いじゃないか」
純粋な想いを見守りたくなったり、刈り取りたく思ったり…矛盾を感じながら、彼女に男を喜ばせるすべを教えて、日を終えた。
彼とフロンは、話をするだけのほうが多かった。
“方法”を教えて貰ったのは、片手で余るぐらい。
欲望があるのは分かるのに、彼は行為に移ろうとはしなかった。フロンも移そうとしなかった。
あの日も、話だけで。帰ろうと歩き出した時、足元で金属音が鳴った。
「あっ、ペンダントが…!」
堕天使となったフロンに、首飾りは必要のないものだった。
今は、魔界にいても、力を吸われて死ぬ危険は無い。それでも、思い出の多いペンダントを、身から離すことはなかった。
そっと拾い上げた鎖に、いつもの手触りは無くて。
それはロケットで、開いた内側には、見知らぬ子供達と女性の写真が入っていた。
「か、返してくれ!」
一瞬掴み損ねるほどの慌てぶりに、意表をつかれる。
「奥さんとお子さん…ですか?」
「違うっ!それは、母ちゃんと……」
スターのイメージに似合わない呼び方に、バツが悪く感じたのだろう。ふて腐れた表情で口元を押さえ、あらぬ方向を見やる。
フロンの頬に笑みが零れた。それも、とびきりの笑顔。
「家族愛ですね!!」
さっきまでの空気を吹き飛ばす勢いだった。軽やかに語尾が弾む。
悪魔の家族が幸せそうに寄り添い、手を繋いでいる写真など初めて見たため、フロンは興奮していた。
やはり愛を語る人は、愛を教わって育ったのだと。
この写真の人達も、愛を知っている。彼が自分に語ったように、この人達もどこかで愛を広めている。
「悪と愛の領域」6
フロンは嬉しくて仕方がなかった。
「呆れないのか?」
おずおずと聞く彼が、不思議だった。
「呆れる?どうしてですか?」
「仮にも、ダークヒーローが…悪の伝道師が、家族を大事になんか…」
「いいえ、これは愛です!愛に悪魔も天使も関係ありません!」
胸に手を添え、喜んでいる彼女が、男には信じられなかった。
紅い瞳が熱を持って見つめるから、呼吸も出来なくて。
近すぎて逃げ場が無い。邪な心が醜く思え、恥ずかしくてならなかった…。
写真を見ても笑顔でいてくれたフロンに、心惹かれた。
いや、初めから惹かれていたのだ。
ただ覚悟を決めるところまで来ただけのこと。
他の男のものと抱かずにいたのも、見守りたいわけじゃない。
…わかっていたのだ。
けして、手放せなくなると。
二人は互いに同じ記憶を辿っていたとも知らず、目線を重ね、また逸らした。
アクターレが局部を合わせた瞬間、彼女に硬い緊張がはしる。
張り出したエラに、入口の粘膜がひくつくのがわかる。
ゴムの潤滑効果を見込みつつ、苦痛をあたえぬよう、時間を費やして埋めようとした。
ぐっと狭まっては、招き入れようと蠢く秘腔。
半分飲み込んだ花のいやらしさに、陰茎が更にいきりたつ。
「あ、ぁ…ふ…っ」
上ずる声は、いつしか涙を含んでいた。
楚々とした彼女の奥が、これほど淫らに溶け崩れ、男を絡めて離さないと知るのは自分と…――ラハールだけ。
力ばかりが突出した威圧的な少年の陰に、心が灼けつく。
振り払うように腰の動きを強め、深く貫いた。
情欲に駆られるまま、穿つ。
彼女の内側が自分のかたちに拓いているのを思うと、そこでも興奮した。
「んっ!あ…あぁ!」
揺り動かす度に手のなかで踊る乳房は、透きとおるように白く、膨らみは少し幼い。
しかし、すべらかな手触りは例えようもなく、弾力は指を押し返すほどだった。
上に乗せたら、キレイだろうと思う。肢体のラインを愛で、揺れを楽しんでみたかった。
だけどまずは、彼女を天上に連れて行かなくては。
行き過ぎる前に動きを止め、フロンの体を休ませた。苦しげな呼吸が収まるのを待って、行動を開始する。
淫唇を広げ、芯芽を擦った。
「えっ、アクター…は、ぁあ…んっ」
声はほどけ、体に力が入らないようだ。
睫毛から涙滴が零れる。
内側は燃えるように火照り、ぐうっと締めてくる。締め上げられたところに波打たれ、声が出そうになった。
本気で意識を持っていかれそうだ。やばいな教え過ぎたぜ、と自嘲する。
打ち付けたいが、彼女の集中が途切れてしまう。それでは意味がない。
気持ちをこらえ、迫り来る衝動を耐えた。
「…っあ、…は、あっ…っ」
次第に強張っていく彼女の体に、手応えを覚えた。
角度とリズムと強さを変えぬよう、指を擦り続ける。
アクターレの手が震え、汗が髪にほつれた。
彼女の体は、今やどこもかしこも力が込められ、熱く浮き上がっていた。
「っ…ぅ…っ…はっ」
脚に筋が見えた、次の瞬間だった。
「――あ、あッ、ああ――あっ!!」
フロンの体が、がくがく大きく震え、手足の先まで跳ね上がり、揺れた。
「んっ!んうぅっ、っ――!」
全身に広がった歓びが、乱反射を繰り返す。
一、二分経っただろうか。緩やかに意識の戻ってきたフロンが男を見る。
「…ぁ、何……わ、私…?」
アクターレは微笑むと、彼女の頬に唇を触れ、涙を吸った。
「悪と愛の領域」7
彼女の余韻のなかに、突き入れる。
夢見心地だった表情が、また悩ましげに変わった。
先程、かろうじて切り抜けた以上の悦。内側のあらゆる場所が蠢き、こらえきれない快美の連続が生まれ、圧倒された。
しなる裸身の奥に、突くと締まる場所を見つけた。反応の良さから、感じる力が伸びているのを覚り、ひどく嬉しくなる。
フロンもまた自分の変化を感じ取っていた。
暖かな湯が染み出るような。それでいて、じくんじくんと疼くものに驚く。
「ん…んっ、は…はぁっ…ん」
腹腔からの喘ぎは、男の体に低く響いた。
「声、変わってきてる。…可愛いな。感じてるのが分かるぜ」
「そんな…やっ!あ、ああ…」
彼はもう一度「可愛いよ」と繰り返した。
耳に語りかける言葉の優しさに、仰け反るフロン。男は、そんな彼女の額の汗をそっと拭い、はりついた髪を整える。
ふと、アクターレに疑問が湧いた。
今まで、こんなに相手を愛おしく思いながら、可愛いと告げたことがあったろうか?
腕の中の柔らかな存在に、こんな胸苦しくキスをしたことも。
言葉自体はどれだけの女性に囁いたか、分からない。
そのうちの何度か…女の指を飾ろうとしたことがあった。
だが、脳裏をよぎるのは、ぐしゃぐしゃの雑誌記事。
ファン、あるいは共演した女優の名とともに、曲解されたものを事実と突き付けられ、責められた。
開き直って、相手を次々変えて…それで楽になるはずもなく。
痛みだけを繰り返して、アクターレは自分に求められているのが、富と人気、知名度だけと知った。
そして最後…数十年前。
大事にしてきた家族を、悪し様に言われた日。
女性と連れ添う未来を、バカげたことと打ち棄てたのだ。
フロンを想うだけで、意識に熱が混じり込む。本気がどういうものか、今更教わった気がした。
甘い香りに胸を満たす。打つ度に雫の零れる潤んだ場所に、早さを変えて奥へ。
「あっあっ、はっ、は…んんっ」
閉じられた瞳、涙の伝う頬、震える唇、耳まで赤くして懸命に。
弾む胸、しがみつく手、広がり波打つ髪、膝に絡む尾。あまりに綺麗で目が奪われた。
再び彼女の体の燃える気配があった。発汗から、ひょっとすると二度目の波を越えさせれるかと思ったが、開発には時が必要で。
急に男の目が眩んだ。勝手に体が昇りつめていく。意識は飛ぶ寸前だった。
いくら自分を抑えても、保ちそうにないと諦めた時。
「はっ、あっあんっ、ア…クターレさん…!」
「!…フロンッ」
がむしゃらに、スパートを掛けた。
彼女が望むなら、形の保つ限り応えようと。
意地や計算なんか、どうでも良くなった。汗が飛び、髪が散る。
立て続けに、深い場所を狙う。きつく、激しく、獰猛な抽送。
背に小さな軽い痛み――爪?
驚いたことに、彼女の震えが痙攣に変わったではないか。
フロンが最奥で、自分の性器で絶頂を得ている――!
「…っ……ぅ、っ…」
すすり泣きに似た喘ぎと同時に、強烈なうねりが襲い来る。陰嚢もろとも吸い取られてしまいかねない衝撃。
一瞬の空白ののち、男は噴き上げるように白液を迸らせていた。
少女をアクターレは大切に、抱き締めた。
「綺麗だ、フロン」
彼女の瞳が惑い伏せられる。しかし、その寸前、小さく熱が宿るのを、男は見逃さない。
「駄目だ、そんな顔しても。もっと夢中になるだけだ」
アクターレはロケットを握り締めた。
ずっと隠さなければならかった、自分の大切な部分…家族。
悪魔の家族は、たいがいが放任主義だ。親のを倒して跡を継ぐのが普通で、憎みあいも当然のこと。
親を気遣い、弟妹を思い、いつも会いたいという気持ちは、蔑まれるものだから。
それをフロンは、優しく扱ってくれたのだ。自分が思うのと同じように、大事に。
そして、今度は自分がフロンを大切にする番だと。
「悪と愛の領域」8
「教えてやりたいんだ。あんたがどれだけ、いい女かって」
双方が服を身に付けた後、囁くように始まった男の告白は長かった。
アクターレの口から溢れた想いは、フロンにも響いていく。その真摯さは疑いようもなく、経緯も納得のいくものだった。
その終わりは早口で、しかしまっすぐ向けられていた。
「好きになってくれるだろ。オレ様のこと」
積み重なった気持ちが、かえって少女の口を閉ざしていた。
決断も保留も、出来ない。
だが心を推し量る間、耳に届いた男の声に、フロンは動けなくなった。
「天使なら、オレ様を救ってくれよ…」
天使という名称に、救うという願いに。
一気に体が冷えていくのに手の平にだけ、汗が浮く。自分がどんな顔をしているのか、見当もつかなかった。
アクターレの眼が紫色に陰る。
「…そうだったな。あんたは、ラハールのために…」
言わなくてはいけなかった。自分は堕天使、天使とはもう役割が違うのだと。
そしてあれは彼のためじゃない。
…あなたを誘っていたの、と。
けれど、心の奥底で自分を嗤う者がいた。
ラハールさんを繋ぎ止めれもしないのに、この人に愛し続けて貰えると思ってるの、と。
フロンは、にわかに立ち上がった。
わからなかった。
私には、使命が、カギが…思考はループするばかりで。
立ち上がったはいいが、やはり口が開かない。
「もう、悩まないでくれ…悪いことしたな」
ぐらりと世界が傾いた気がした。
弾かれるように、少女は走り出していた。
足は止まらなかった。何度も転びかけ、途中からはヒールを手にして駆けた。
えづくような息にむせ、喘ぐ。
悪いことをしたのは…本当に悪いことをしたのは。
漆黒の塊じみた後悔に圧される苦しさで、心が叫んでいた。
――どうして私、ラハールさんのところに向かってるの。どうして――
――好きな人から、走って遠ざかってるの――
行き着いた答えに、嗚咽が漏れた。
耳元で、男の声が甦る。
『それこそ、真の愛を逃してしまうぜ?』
――愛を騙って、悪いことしたのは、私――
拭っても拭っても。手はいつまでも、濡れ続けた。
まだ深い夜のなか、男はゆっくり息を吐いた。
薄い膜のように張った雲の隙間に滲む光が、去ったばかりの少女にも降っているはずだった。
来週から約束の時間を、ここ以外の何処で過ごせばいいのか。
考えることさえ、出来そうになかった。
【終わり】
99 :
名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 00:58:49 ID:ebhg3rEC
誰かゼタとサロメで書いて
エトナさまなら何でもいいよ
じゃあ、雪丸で!!
てかさ。空気くらい読んでくれよ、頼むから
ただでさえ好き嫌い激しいんだぞ。
荒れるだろうが。
その程度で書かれたら、投下しづらくなるじゃないか。
は〜〜、そろそろレベル低い奴は、撤退して欲しいわ。
>>99-101 誰か書くまで待ってるのか
不毛だな
>>102 何こいつ偉そうに
俺も書くかなって思ってたけどこんな糞野郎の居るスレに投下するだけムダだなこりゃ
荒らしはスルーしる
>90
GJ。俺は好きだぞこの話。
確かに思いもよらないカプで驚いたがかなりエロス
荒らしに負けずにまた読ませてくれ。
保守
>>90 良かったよーGJ!!切ないぜ…。
てかこういう思いもよらないカプが見られるのがエロパロスレの醍醐味じゃないのか?
好みじゃなけりゃスルーしようぜ、大人なんだから。
108 :
847:2007/10/09(火) 10:40:57 ID:Rl8L9uyY
しかし需要のないもんを出すと荒れる
いくら自由だろうが大人だってんならそこは
スマンが頼むわ過疎に拍車かかんだよ………
>>90 GJ!面白かったよ。
ちゃんと避妊具装着するエロパロ小説なんて
初めて読んだw
>>108 んーそうかー、難しいな…。
でも需要ないからって何も出さなきゃそれはそれで過疎になるよーな。
まぁ、まったりいこうぜ。まったりまったり。
111ゲトー
久しぶりに「あなた、怒ったら可愛いのね」発言を見て、トレニア×プラムが書きたくなった漏れはどうすればいい?
とりあえず書け、話はそれからだ
保守
>>90 遅ればせながら読ませてもらった。
まさに「甘美」という言葉がピッタリの素晴らしいストーリーだったよ。
切なさも上手く表現出来ていて、良い感じだ。
保守
保守
虹ドクロ×銀河魔法使いでも書こうかな…。
保守
つるぺた魔神保守
マールとかリトプリって需要ある?
ゲームアーカイブスで目についてダウンロードしたらハマったよ。
全盛期は過ぎているようで…
>>123 俺の中では常に全盛期。
ネタがあるんだったら是非、投下を。
ところで、ディスガイア3を買ったやからはいらっしゃられますかね?
ラブレター渡してる女侍が異常に可愛かった……!!
え、発売日来年じゃねえの? 未来人?
予約ってことだろ。したよ。ベリルいいよな!
あと、サファイアが悪魔化したアルマースの玩具になるってのもいい。
バラすな!!
_ _ .' , .. ∧_∧
∧ _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ ' ( ) ←
>>127 , -'' ̄ __――=', ・,‘ r⌒> _/ /
/ -―  ̄ ̄  ̄"'" . ’ | y'⌒ ⌒i
/ ノ | / ノ |
/ , イ ) , ー' /´ヾ_ノ
/ _, \ / , ノ
| / \ `、 / / /
j / ヽ | / / ,'
/ ノ { | / /| |
/ / | (_ !、_/ / 〉
`、_〉 ー‐‐` |_/
ボランティアと騙され、恵まれない男を救う行為を強要されるベリルタソ。
条件を満たすとフロンタソが追加。
予約もしたし、後はPS3がドリキャスばりに値段が下がるのを待つだけだな
いきなりそこまで下がるのは無理ってなもんだろう
どうしても欲しいのなら中古を買うとかヤフオクで落とすとか
俺もソフトだけ確保しておこうかな、ソフト有ればPS3買う理由に・・・いまいちならないけど
すぐにやりたいってほどじゃないし、俺はベストまで待とうかな
その頃にはPS3ももっと安くなってるだろうし。
なんか書こうと思って始めてみたけど難しいなこれ
読むのはあんな簡単だったのに!
全能力8桁
あるぇ?
特価版のほうがやりやすい法則
全能力8桁は……楽しいぞ
ダメージの桁が4桁ほどずれるからな
コツコツステータス(装備)上げて、
初めてダメージに「万」がついた時の感動といったら・・・
そのうち見慣れるけどナーw
3では「億」のケタきぼん
敵から億桁食らう超絶難易度きぼん
140 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 17:30:06 ID:Y2VfD8Rx
保守
保守
142 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/20(木) 08:47:51 ID:u5z17meC
エトナ編に入ってしばらくしたらエトナが主力になっていた
魔界ではよくあること