パイレーツ・オブ・カリビアン

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56名無しさん@ピンキー:2007/08/03(金) 10:35:01 ID:iF0QFdRF
ジャクエリまだー?
57名無しさん@ピンキー:2007/08/15(水) 22:27:38 ID:KXFM/rFf
ほっしゅ
58名無しさん@ピンキー:2007/08/29(水) 19:45:52 ID:EYN4fH9h
人気映画なのに
59名無しさん@ピンキー:2007/08/31(金) 23:43:57 ID:6ZPrSyXd
このスレあげちゃマズイのかな

誰か投下してくれ
でないと夏が終わってしまう
60名無しさん@ピンキー:2007/09/21(金) 06:47:36 ID:icH4etB7
1のハイクオリティー
最低レベル2のクオリティーだったら少しは書く気になったんだけど
3のうざいエリザベスで萎えました。
61名無しさん@ピンキー:2007/09/23(日) 23:05:05 ID:03gt7+ow
カリブトの海賊
62名無しさん@ピンキー:2007/10/05(金) 14:13:11 ID:HeMB6PyN
ベケット顔は穏やかそうだが鬼畜ぽいよな
63名無しさん@ピンキー:2007/10/15(月) 19:50:09 ID:RUnXi6pA
age
64名無しさん@ピンキー:2007/10/29(月) 03:21:02 ID:vJ+EXiYt
もしかして、ジャックとエリザベスの組み合わせが一番人気なのか?
つべにSparrabethなんて造語があった。
65名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 01:41:29 ID:pkhdogau
その手の造語はホモのカップルでもやることだよ。
こっちでジャクエリとかいうのと同じ。norribethとかもある。
人気的にはジャックとエリザベス人気っぽいけどな。
66名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 02:34:42 ID:/Q17ALwf
やっぱりそうなのか・・・
ウィル好きとしては切ないぜ
67名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 16:58:52 ID:hf3UsZmS
エリザベスよりアナマリアの方が好きだ。>>46に一票。
68名無しさん@ピンキー:2007/10/30(火) 17:57:12 ID:3RQZ2EEr
パイオーツ
69名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 13:27:37 ID:Oayjt+1s
70名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:04:07 ID:QpzEYemp
「悩みなんか全部忘れさせてやるよ」
その言葉は甘いものだった。
「でも、でも…」
ウィルは、

「俺が忘れさせてやる」

あっという間に押し倒され唇を重ね合っていた。
男の人の匂い。それと一緒に、ほんのりと香るラム酒の香り。

嫌悪していたはずの香りだったのに、嫌な気持ちにならない自分が不思議だった。

「んっ、んふ」
深くなっていく口づけにどんどん酔っていく。
酒の香りにか、それともこの男、ジャックスパロウにか。
ドレスはいつの間にか脱がされていた。

「やっ、やあ」
荒々しく、なのにどこかゆったりとした手つきで胸の膨らみを触られ思わず声があがる。
火照ってきた顔を隠そうと、顔をそむけると押し殺した笑い声が聞こえてくる。
この男は楽しんでいるのだ。
今まで抱いてきた女と比べているのか、という考えが浮かび、睨み付けてやろうと男の顔を見ると驚いた。

色気のある微笑みだった。
体まで火照るのがわかった。
その瞬間にちにちと先端をこねられて、今まで以上の快感がはしった。
「やあ、あぁっ」

「お前の胸は陶器のように美しい。」
ぼそりとつぶやかれた言葉。
「…え?」
そしてまた激しく膨らみを揉まれる。
「なのに触るとこの世のものとは思えないほど柔らかで手に吸い付くようだな。」

落とされる口づけ。
「そしてこんなにも突起はあまい。」
「っあっん!」
ぴりっとはしる快感。

「エリザベス、お前がいてくれたら忠誠を誓ったラム酒と縁を切ることができるかもしれない。」
71名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 22:14:09 ID:QpzEYemp
酔っているのはお互い様なのか。

「私はっ、そんな安酒じゃないわ。」
とぎれとぎれながれも言葉を吐き、睨み付けてやると、ジャックは転がるように笑った。

「それはとんだ失言を。」
そして急に足の間に指をすべらされた。
「あぁあっ」
「これはこれは、お待たせしてしまったかな。随分と濡れぼそってらっしゃる。」
おどけたように言われ、どうしようもなく顔が赤くなるのがはっきりとわかる。
くちゅり、
静かに入れられた指に体が震える。
濡れてしまっているのは自分でもはっきりとわかっていた。
「あぁっ、やぁあっ、んっ」
コリコリと濡れた突起を転がされ涙がこぼれる。
「ではお味見といこうかエリザベス嬢。」
目を開けた時には、ジャックの顔はは吸い込まれるように私の足の間へと近づいていた。
「だっ、だめっ あぁあああっ」
今までで1番大きな声をあげてしまった。
火照った部分を舐められ、吸われ、舌で転がされ、
そんな快感に耐えられるわけもなかった。
「あぁあああああんっ」

体中がビクビクと震え絶頂を味わった。

荒い息を吐きながら瞳をあけると、口のまわりをぬぐいながら、ジャックが笑っているのが見えた。
何をぬぐっているかは考えたくもない。

「素晴しいお味でした。エリベザス嬢。」
72名無しさん@ピンキー:2007/11/24(土) 23:32:47 ID:CvZYUKuJ
ワッフルワッフル
73名無しさん@ピンキー:2007/11/25(日) 00:15:53 ID:Lz6hkUqE
GJ!!

自分も今ジャクエリで書いてる途中です。
完成次第、投下しようと思いますので待ってて下さい。
74名無しさん@ピンキー:2007/11/26(月) 03:19:44 ID:EjjFLWGQ
過疎ってるかと思いきや覗いてよかった。2作とも待ってます。
75名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 18:09:31 ID:CC78+UgR
73です。
とりあえず途中まで投下します。

ジャック×エリザベス、エロは次回以降。

場面としては、2作目でジャックとエリザベスがトルトゥーガで
再会した夜から翌朝までの船内での出来事。
7601:2007/11/30(金) 18:19:05 ID:CC78+UgR
まだ日は昇っていないが、うっすらと水平線が浮かび上がってきた。
さっぱりとした潮風が妙に肌に心地良い。

エリザベス・スワンはひとり、デッキの手摺りに凭れていた。
表情は堅い。
エリザベスは考えていた。
まさかまたこの船−ブラックパール号−に乗ることになるなんて…
結婚式を奪われたあげく自らの命まで危ぶまれ、ウィルとも離れ離れになってしまった。
男装までして船に乗り込み、やっとトルトゥーガまで辿り着いた。
そして、見つけた。

そう、ジャック・スパロウ。

事の原因は全てこの男にある。

不安定で安易に信用できない、何を考えているか分かるようで分からない男。
人を簡単に利用しては騙す、口のうまい「ただ」のラム漬けの海賊。
…でも、確かに私はあの男に憧れを抱いていた。
それが、彼の生き様なのか何なのかは、よくわからないけれど。

そして3年ぶりに彼の顔を見た時、何故か内心どきまぎしてしまったのも事実だった。
あの時、二人して砂浜で呑んだ暮れて、思い切り歌った時の清々しさだって、一度も忘れてない。

徐々に月が沈んでゆくのを、エリザベスはじっと見つめていた。
その時だった。
背後に人の気配を感じた直後、「エリザベス?」と声をかけられた。
びっくりして振り向くと、そこにはジャックがコートを羽織りながら船長室から出てきたところだった。
7702:2007/11/30(金) 18:21:17 ID:CC78+UgR
「そんなとこで何してる?まだ明け方前だぜ」
「…別に……、ただ眠れなかっただけよ。あなたこそ…、」
「昨日の晩は、ようやく航路が決まった祝いに呑みすぎてね。
今頃の風は二日酔いに効くもんなんだ」

いつだってラムを口にしてる癖に…とエリザベスは心の中で呟いた。

ジャックもエリザベスの隣に立ち、軽い溜息を吐きながらまだ暗い海を見つめた。


「ウィリアムが心配かい?」
「え?…それは、そうよ。
 デイヴィ・ジョーンズとかいう魔物の船にいるんだもの。
…あなたのお陰で」
「…まぁね」
ジャックは自分の考えが見透かされそうになり、少しひやりとした。
が、今の彼女の様子からは大丈夫そうだ。
「…それにあなたのお陰で、結婚まで棒に振ったわ」

それは初耳だった。
ジャックはてっきりこの数年の間に、二人は結婚でもなんでもしていたと思っていた。
そしてそれを聞いて、自然と嬉しさを覚えてしまったことに多少なりとも驚いた。

闇に映える金色の長い髪が、風でこちらに靡いているのを目の端に捉えると、
ジャックは彼女の方に顔を向けた。

「…それは悪いことをしてしまったな」

エリザベスは軽く睨むような瞳で、彼に顔を向けた。

彼女の端正な美しい顔をまじまじと見ると、ジャックはじっと彼女を見つめられずには居られなかった。
今まで付き合ったどの女よりも価値の高い、そして強気な娘。
そんな彼女の魅力が、余計ジャックの心に火を付けていたのかもしれない。
今まで抑えていた強い気持ちが、じわりと溢れてくるのを彼は感じた。

「…エリザベス、俺達がこうしてまた会った事と、
君の結婚式が無くなってしまった事に…何か運命を感じないか?」

「…運命?」
この男は…一体何を言っているの?口説いているつもりなのだろうか。
こんな軽い男なんか…、

「あの生真面目な鍛冶屋の青年じゃ、さぞかし退屈しただろ?」

ジャックはエリザベスをじっと見つめたまま、口許をニヤリと緩めた。
7803:2007/11/30(金) 18:23:22 ID:CC78+UgR
「私をそこらの女と一緒にするつもり?」
「いいや、」
ジャックはエリザベスにじりじりと近付く。
と同時に、エリザベスも後ずさりするが、ジャックが
彼女の背後のロープに腕を伸ばし、その動きを阻止した。

「君は自由に憧れている。窮屈な自分の生活に嫌気がさしているはずだ。
きついコルセットより、緩い海賊暮らしの方が合っているんだろ?」
「…そんなこと」
「そのうち気付くはずだ。きっとこの潮の匂いが忘れられなくなる」
エリザベスはもはやジャックの熱い視線に弱り、言い返す術を忘れていた。
「……俺も忘れられない。この香りを」
ジャックは、すっとエリザベスの柔らかい髪に指を絡め、唇に押し当てた。
「そして気付いたのさ。この俺に見合う女は、君しかいないことにね…」

エリザベスはこんなに真剣な彼の眼差しを、初めて見た気がした。
その眼差しには愛が込められていて、決して逸らすことなどできない。
そして、ひどくゆっくりと近付いてきた唇が自分のそれに触れたとき、
エリザベスはジャックからの口付けを受け入れていた。


ジャックはエリザベスの白いうなじに手をかけながら、徐々に口付けを深くする。
エリザベスは今も恐怖に怯えているに違いない遠い恋人を忘れ、
うっとりと瞳を閉じて口付けに酔った。
優しい口付けは、だんだん深いものに変わり、ジャックの舌が咥内を愛撫する。
何度も何度も、二人は夢中で舌を絡め合わせた。
「…ん、ふ、んんっ……」
エリザベスの呼吸が荒くなってくる。
頭がぼうっとしたと思ったら、ちゅっと唇を吸われ、やっと長い口付けが解かれた。
銀色の透明な糸が二人を繋いでいた。

ジャックはエリザベスの官能に彩られた大きな瞳を見た瞬間、
遂に我慢できず、彼女を抱き抱えるようにして船長室へ歩を進めた。
79名無しさん@ピンキー:2007/11/30(金) 18:26:03 ID:CC78+UgR
とりあえず今日はここまでです。

予定としては1週間以内に続きを最後まで投下しますので。
80名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 14:34:12 ID:eESrD6P3
GJ!
81名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 20:58:35 ID:TI1ZUjvY
GJ
70です
ジャクエリたまらん
82名無しさん@ピンキー:2007/12/01(土) 22:31:36 ID:H69OM7Se
GJ!
続き待ってます!
83名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 03:54:54 ID:d43X1H7k
船長室での二人にwktkしながら待ってる
84名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 18:03:30 ID:SMs2DVlK
早く見たいよ〜
85名無しさん@ピンキー:2007/12/02(日) 23:37:44 ID:REZGXuXu
GJ!
続きにwktk
86名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 13:05:41 ID:GaTNZesx

DVDの発売でいきなりファンになった私が通りますよ。

ちょっと、たまらずに書いてしまいました。
余りに性急に書きすぎて、破綻してたらごめんなさい。

あらかじめ注意です。
オリジナルストーリーなので、映画世界を愛している方はスルーしてください。
若い日のジャックの話ですので、若いジャックが嫌な人もスルーしてください。

それから、まだファンになって一週間なので、設定自体に無理があったら、本当にゴメンナサイ。
871/7:2007/12/13(木) 13:10:35 ID:GaTNZesx
題 「誓いは裏切られるためにある」

 鬱陶しい密林の湿気。
 こうベタベタしてるんじゃ、甲板で日射しに炙られてるほうがマシ。
 四方から、いろんな動物の鳴き声やら、何やら、単身で乗り込んで来たはいいが、
あまり気持ちのいいもんじゃない。
 パンタノ川の河口までは、密輸業者が便乗させてくれた。
帰路にまた通りがかったときに、狼煙が上がっていたら拾ってくれる約束だが、
あまりあてにはしていない。
 今から会うティア・ダルマは、運を占うばかりじゃなく、まともにはとても売り
さばけない、オカルト絡みの怪しい品やら、骨董やらの来歴や値打ちを鑑定し、
望めばとりあえず現金に換えてくれるので、訪ねて来る者もそれなりに居るだろう。
そして、いざとなったら同業の下働きにでもありつけばいい。

 親父の船よりは少なくともマシ。
 あの頃のオレ。
 来る日も来る日も、甲板磨きと、便桶洗い。
 新入りにさえもあざ笑われて、その度に海に向かって叫んだものだ。
 (でも、声には出さない)
 オレは誰だ?
 あのキャプテン・ディーグの息子だぞ!!
 生まれた瞬間から船乗りやってんだ!!!
 親父はオレを一切庇護しなかった。
 苛められた、しごかれた、どつかれた。
 たぶん、それは正しかったのだと思う。
 そして、それは父親の愛情ゆえというよりは、ジャック・スパロウに取り入る輩によって、
船員達の規律が乱される事を危惧しての事だろう。
 一方で、ディーグは息子を信じていた。船員達のイジメの中で終わるような男なら、
最初から船には乗せていない。むしろ、不遇を戦う力に変えて、ディーグ自身の寝首を
掻くような貪欲さを身につけるであろう事を。
 キャプテン・ディーグはそういう男であったし、
ジャックはそれでもまだまだ自分に隙がある若者だった。

882/7:2007/12/13(木) 13:12:36 ID:GaTNZesx
 「まあ、ボーイ。ディーグは元気かい。
 ずいぶん立派になったもんだ」
 女は、嬉しげに彼を迎えた。
 以前会った時は、ディーグの後にくっついて来た。
 アステカの宝か何かの話をしていた事は覚えている。
 「や、や、やぁ、ティア」
 ジャックは少しばかり緊張して挨拶した。
 「親父には、ここ三年ばかり会ってないんだ。こっちが消息を聞きたいくらいで。
 …その、避けて通るために」
 伸ばしはじめたばかりのフワフワの髪にバンダナを巻き付けて、
リネンのシャツの胸ははだけられていた。
 「東インド会社に入ったとは聞いていたけど……、そのナリじゃ追い出されたわね」
 ティアダルマは、奥からトレイを持ってきて、ジャックにカップを差し出した。
 「よしてくれよ、ラムにしてくれ」
 少し馴れてきたようだが、ゆとりのあるフリを取り繕うとして肩に力が入っているのが愛らしい。
 「おや、威勢のいい事。でもまだ坊やは飲んだくれるには早すぎないかい?」
 ティアダルマは、誘うような笑みをジャックに向けた。
 「まず、お茶を。大事な話があるんだろう。しらふのうちに聞いてあげる」
 「そうそう、ティア。この海図を見てくれ」
 ジャックは、懐から羊皮紙を取り出し、テーブルに広げた。
 海図の隅には、東インド会社のマークがある。
 「オレは、東インド会社にいる時、海図係の助手だった。
 最初は、親父の船を追い回す海軍に行こうと思ったんだけど、海図技士の爺さんに出会って、
すっかり考えが変わった。
 ここは、もしかしたら、すごい宝の山なんじゃないかとね。最新の海図が見放題。
 で、オレは、海図を写したりして暫く勉強していたら、この海図を見つけた。
 この岩礁あたりの船、パールって書いてあるんだが、この船、
なんと無傷で沈んでいるらしいんだ」
 「それで、潜って見物にでも行く気なの? サメの餌になるにはちょうどいいかも」
 「いや、これを引き上げたいんだ。そして、オレはキャプテン・ジャック・スパロウになる」
 「おやおや、沈んだ船を引き上げるなんて正気じゃないね。
 同じ年頃のならず者集めて、海軍襲ったほうがよっぽど早くないかい?」
 「失敗したら縛り首だ」
 「自信の無い海賊だこと」
 女は、鼻で笑った。
 「だから、オレは、これを引き上げたいんだ。
 それで、…方法を探している。なんかいい知恵ないかと思って」
 
893/7:2007/12/13(木) 13:15:12 ID:GaTNZesx
 「それで、機嫌良く私が教えてくれるとでも?
 もし方法があったとして、あなたに教えることで、なにか私にメリットが?」
 「もちろん、タダとは云ってない。
 引き上げられた暁には、海賊としての稼ぎの20パーセント、いや、
半分を向こう2年届けるから」
 まっすぐ向けられたジャックの瞳には、好奇心と生気、そして、まだ濁ってない
若い真摯な輝きがある。その輝きが、ティアダルマの記憶の奥の、消えかけたあの瞳を思わせた。
 「そう。悪くない相談だけど、それは首尾が上手くいって、難破船が引き上げられてからの話。
 実績のない相手の夢物語に付き合うなら、それなりの保障がないと。
 何か、あなたの持ち物を担保にさせてもらおうかしら」
 ジャックは、しばし言葉を選ぶように考え、そして云った。
 「あいにく、オレはまだ何も持ってない。
 この身体ひとつがオレの財産の全て」
 ティアダルマはその若い身体を舐めるように見定めた。
 「そう。これを担保にするのね?」
 耳元で囁いた。
 「いいわ。査定してあげる。
 査定して、担保にするのに申し分なければ、教えてあげるわ」
904/7:2007/12/13(木) 13:17:04 ID:GaTNZesx
 ティアダルマは、ジャックを寝室に招き入れた。
 「どうしたの?
 早くお入りよ」
 ジャックは、状況を把握できていなかった。
 「査定って何?」
 「決まってるじゃない。いっぱしの男かどうか、確かめるのよ。
 そして、私が気持ちよく話したい気分にさせてくれたらいいの。
 簡単なコト。
 ね、ヒヨッコのジャック」
 立ちつくすジャックを、ティアダルマの唇が塞いだ。
 ジャックはようやく自分の要求されているコトを理解し、女と舌を絡めながら、ベッドの上にダイブした。
 「年上は…嫌いじゃない」
 「生意気は云わないの。年上じゃないと、まだまだ上手く運ばないんじゃないの?」
 「そんなことは……多分、無い」
 ジャックは、ティアダルマのつけている異形のアクセサリーやベルトに少々手こずりながら、ダルマの胸を露わにした。
 「コルセットよりはずっと簡単」
 ジャックは若者らしい強引さで、ティアダルマに愛撫を始めた。
 女の匂いには乾いている。
 最初のうちは、まるでコップの水をがぶ飲みするように、性急に突き進む。
 「待って、ジャック。
 商売女はそれでもいいの、お金が大事だから。
 でも、だめよ。今日は私が悦ばなくちゃ」
 ティアダルマは、ジャックの愛撫を止めさせた。
 「まず、唇。そして耳から首筋へ。
 優しく、優しくするのよ」
 ジャックは、あらためてティアダルマに口づけした。
 イヤらしく舌が絡み合い、頭の中に砂が鳴る音がした。
 耳たぶにも舌を絡め、ピアスを舌先で転がし、首筋から鎖骨に至るラインに丹念に舌を這わせた。浜辺にうち寄せる、潮騒の音がした。
 「ジャック……スパロウ……。
 そう、上手。女は、少しづつ開いていかないといけないの」
 愛撫が胸に至り、乳首を吸い上げる。
 舌先でねじるように絡め、転がし、また吸い上げる。
 海の匂いがした。
 「ほら、ジャック、ここ触って」
 女は、ジャックの手をスカートの奥に導いた。
 「ほら、トロトロになってるでしょう?
 指で…して…」
 云われるままに、指先に愛液をたっぷり絡め、穴の上の突起に触れる。
 「ジャ…ック、ああっ…ディ…」
 その声が漏れた時、女は少し狼狽し、そして取り繕うように云った。
 「坊やも我慢できないでしょう。
 そろそろ、許してあげる……」
 潮風に似た声だった。
915/7:2007/12/13(木) 13:21:16 ID:GaTNZesx
 お互いに服を脱がせあい、露わになった肌と肌を合わせながらティアダルマは云った。
 「あなたは、私の思い出を呼び起こす。
 もし、私の口から、他の男の名が出てきても口外してはいけないわ」
 女の足がジャックに絡みつく。
 「誓う。絶対云わない」
 「なら、いらっしゃい」
 ジャックは、女の中に入った。
 女を突き上げながら、ジャックは、波の上で揺られているような錯覚に陥った。
 全身を、カリブの温かい海水に包まれ、その中を泳いでいるような。
 「おまえは、私をただの男好きと思うだろうね……」
 交わりながら口づけを交わす。
 その耳元で女は囁く。
 「私が愛したのは、ただ一人……。
 十年で、たった……一日……。
 たった一日のために、十年生きる。
 私の愛は、そんなものだった」
 上になった女の乳房をもみ上げると、ジャックの胸元に冷たい滴が落ちてきた。
 「耐えられるかい、ジャック。
 十年もの間、一日も休まず思い続けた男を、膝の中に挟んで、睦みあって、離せると思うかい?
 怖くないかい、会えば離したくなくなる。
 だが、掟を私自身が破ればどうなる。
 この海の秩序は、どうなると思う……」
 「……いや、多分大したことには…」
 と出任せで返事したジャックだったが、ディーグがかつて一度だけ、
ディアダルマを「カリプソ」と呼んだ事があったことを思い出した。
 「私は、裏切りたかったわけじゃない。
 掟を守れぬ事が怖かった。
 ならばいっそ、あの人を傷つけても、会うわけにはいかなかった」
 ティアダルマの足がジャックの腰にしがみつき、ジャックをきつく締め付けた。
 ジャックは快楽の海に身を躍らせ、女の求めるように動きを早めた。
 モンスーンのただ中に居るようだと思った。
 ああ、オレは、きっと海がよっぽど好きなんだなと思った。
 女を抱いていてさえも、海の揺らぎと煌めきと、匂いと、音と、そして嵐がこんなにも恋しいなんて。
926/7:2007/12/13(木) 13:24:09 ID:GaTNZesx
 そして何度か楽しんで、ベッドから起きたときには、とっぷりと陽がおちていた。
 とびっきりのラムと、スパイスの効いた料理。
 ティアダルマの機嫌はすこぶる良さそうだった。
 「それで、例の話は?」
 ラムのグラスを煽ろうとして、ふと手を止めて聞いた。
 「ディーグ船長が、ここ2ヶ月ばかり難破船砦に詰めっぱなしらしいわ。
 掟の番人シルバー船長が良くないらしくてね。
 そろそろ、勤めの終わる時期なんだろうね、ディーグ船長を後継者として指名したと聞いたわ」
 「聞きたいのは、親父の消息じゃない。
 それで?
 例の件の方法は? あるの? ないの?」
 ティアダルマは、答えを急ぐジャックの口を、指先で押しとどめた。
 「おそらく、近いうちに、シルバー船長の葬儀が執り行われるでしょう。
 そして、掟に従い、棺は海に流される。
 その棺を追っていけば、シルバー船長の亡骸を受け取るために、海底から
<フライング・ダッチマン>という船が現れるはず。
 その船の船長に無事会うことが出来たら、あとは交渉次第。
 海に沈んだものは、すべて彼が管理している。
 上手くいけば、引き上げてもらえるでしょう。
 それでは、首尾を祈って、乾杯ってところかしら」
 ジャックは、ティアダルマに男として認められたらしい事が嬉しく、グイグイとグラスを煽った。
 飲んでは食べて、無邪気で可愛い。
 ティアダルマは、つい心配になり、忠告が口に出た。
 「いい、ジャック。
 誰からも自由で居たいなら、愛にはとらわれぬこと」
 「大丈夫。オレの恋人は海さ。
 愛して止まない、ヒクッ」
 だが、ジャックはすっかり出来上がっており、ろくに呂律も回らない。
 「そう、誰よりも、海を愛していると誓える?」
 「ああ、誓いますとも。
 オレは、海の男であり、海に生き、他の何よりも海を愛し続けるのであります」
 ジャックは大げさな仕草で答えた。
 「そう、……面白い。
 お前に呪いをかけてやろう。
 お前がその誓いを違え、より愛しい女が現れたとき、おまえはその女に殺される…」
 だが、そんなティアダルマの声が耳に入ったのかどうか、ジャックは床の上に大
の字になって転がり、寝息の中で海原への夢を馳せていた。
 
93ラスト/7:2007/12/13(木) 13:26:52 ID:GaTNZesx
 翌朝、ティアダルマは無造作に置かれた真鍮のトレイに輝くたくさんのトンボ玉の中から、2個ばかり選び出して、ジャックの髪に飾り付けた。
 「この赤いのはアレキサンドリアの古代ガラス。こっちの花の入ったのはチェコビーズ。
駆け出しの海賊にも、それくらいのお洒落は必要ね」
 「悪くない、うん、お洒落」
 鏡を見ながら、ジャックは頷いた。
 「でも、その船長には、どうやって会えばいいんだ。人間じゃないんだろう」
 「これを持って行けばいいわ。忘れ物ですってね」
 ティアダルマは、二つ置かれたペンダントの一つをジャックに手渡した。
 「これ、もしかしてオルゴール?」
 「それで、必ずあって貰えるはず。
 場合によっては、願いの一つも聞いてくれるでしょう」
 ジャックは、嬉々としてそれを受け取り、はやる心を抑えつつ、ティアダルマに挨拶した。
 「いろいろ有り難う、ティアダルマ」
 「どういたしまして、キャプテン・ジャック・スパロウ」
 「無事を祈ってくれよ!!」
 小舟がティアダルマの家を離れた。
 「あなたが誓いを破らないかぎり、あなたは海に守られる」

 誓い?
 と言われて、何の誓いだか問いただそうと思ったが、気持ちがもう海原の果てに飛んでいきそうだった。
 「ああ、あの事か。
 云わない。云わない。誰にも云わないから〜〜〜」
 オールを漕ぐ。
 早く行きたい、水平線の向こう。


−−おわり−−
9493:2007/12/13(木) 23:48:30 ID:GaTNZesx

さて、誰も来ないうちのもう一個できたから落とす。

さっきの続きで。

エロ少な目なのに、出しゃばってゴメンね。
アナマリア出ます。
951/9:2007/12/13(木) 23:50:56 ID:GaTNZesx
題 小娘なんぞ拾うもんじゃない

 波に漂う。
 木の葉のように。
 ひらひらと、小さな船が。
 どうにか五人ぐらいなら乗れそうな漁船の帆柱に立ち、ジャックは水平線に眼差しを向ける。
 「キャプテン・ジャックスパロウ!!」
 苛立ちのこもった少女の声。
 「ごはん、まだ?」

 ジャックは面倒臭そうに飛び降りた。
 「アナマリア、この船の食料は、このひからびたパンが三つと、リンゴが五つ。
 俺達は、二人。
 いいか、公平に分けても、パンが1個半、リンゴはオレが3個でお前が2個。
 今日、昼飯にどれかを食べてしまったら、明日の食料はさらに減る。
 おわかり?」
 「リンゴは4個、もらうわ。
 だって、この船のオーナーは、私なのよ?」
 この十才にもならない少女が、今のジャックのただ一人の手下。
 父親と漁の最中、急な嵐にあったらしく、父親は海に転落、彼女は波間を漂っていた。
 ジャックはたまたま、そこを通りかかった。
 水樽をつないだ急ごしらえの筏に乗って。
962/9:2007/12/13(木) 23:53:23 ID:GaTNZesx
 ティアダルマの元から、とりあえずトルトゥーガに行こうと思い立ち、たまたま水夫の欠けた東インド会社傘下のスパイス船を見つけ、
トルトゥーガまで代わりの水夫として働く約束で便乗できたのはひとまず幸運だった。
 だが、その三日後、船は海賊に襲われた。
 海賊旗は、キャプテン・ディーグのもの。
 「親父は、難破船砦に居るんじゃ……」
 ふと、思い出した。
 その船は、キャプテン・ディーグの腹心、キャプテン・ミリアムの持ち物だった。
 どう見ても勝ち目のない相手に、ジャックは戦う素振りもみせず、あらかじめ結わえておいた樽二つを海面に落とすと、自分も飛び込み、
大砲の撃ち込まれる前にさっさと逃げ出した。
 樽の中には、ラム酒の瓶と、当座の食料が隠してある。
 海賊だとバレた時のための用心だ。
 ジャックは、あわてふためく甲板の船員たちを後目に、樽の影に隠れながら、その場を離れるべく水を掻いた。
 砲弾が撃ち込まれる音。漂ってくる煙と火薬の匂い。
 見慣れた一連の出来事に今さら、振り返る必要もない。
 ミリアムの手管は知り尽くしてる。
 間もなく、海賊船が横付けされ、無法者たちが殺し、略奪し、そして破壊するだろう。
 もし、この場に姿を現すなら、父親の仕事に協力しないわけにはいかないし、でも、そうなると、便乗させてくれたスパイス船の
船長に申し訳ない。
 少なくとも、ミリアムを手伝うなら、ミリアムはジャックをトルトゥーガまで、最悪、海賊船砦まで連れていってくれるのは確かだ。
 (なぜ最悪かって、そりゃ、親父に見つかれば一番下っ端からやり直しだからさ)
 だから、このまま消えてしまう。
 それが最善。
 だいぶ離れたと思い、後を振り返る。
 値打ちのない、樽だとか、空き箱だとかが海上を漂う。
 その間には、死体も漂う。
 船のほうに目を凝らす。
 誰かが甲板から、ジャックを見ていた。
 バルバロッサ? あ、いや、バルボッサ。
 子供のジャックをいじめ抜いたイヤな奴。
 見つかったか?
 いや、きっと大丈夫。
 だって、追って来ない。
 もし見つかったのだとしたら、またジャックを支配していびり倒す、そんな機会を逃すわけがない。
973/9:2007/12/13(木) 23:55:44 ID:GaTNZesx
 それにしても小生意気なガキだ。
 アナマリアは。
 ちょっとは不憫だとは思った。
 だが、このまだまだション便臭い小娘をどうこうする趣味はジャックにはないし、
トルトゥーガまでたどり着いたら、あとは解放するつもりでいた。

 だが、待て、オレは海賊だぞ。
 こんな時、海賊としてはどう行動する。
 目の前のガキ、ジャックの事を海賊として怖れるどころか、男としてすら警戒していない。
 この尊大な態度。
 ジャックはラムを煽った。
 その時、気づいた。
 ラムが空だ。
 ふと横を見ると、アナマリアが、いつの間にか捕まえた魚を火で炙っている。
 ……ラムを燃料にして。
 「このバカガキが〜〜〜!!
 ええい、許せん。
 お前なんか、売り飛ばしてやる。
 絶対に、売春宿に叩き込んで、とっとと一人前のあばずれになりやがれ」
 と叫んだ。声を出さずに。
 そして、気持ちを静めてから、云った。
 「アナマリア、魚を捕るのは上手なんだね」
 コロッと態度が変わった。
 「それは、…漁師だからね」
 「それじゃ、オレにも教えてくれよ、その、魚の取り方」
 信じさせる事。
 娘を売った金があれば、なんとかその、<フライング・ダッチマン>とかいう船の出るあたりに行けるだろう。こんな小船でも。
984/9:2007/12/13(木) 23:57:04 ID:GaTNZesx
 トルトゥーガの港の、漁船桟橋の端に船を付けると、ジャックは云った。
 「船に乗せてくれたお礼だ。何かおいしい物を食べに行こう」
 アナマリアは微笑んだ。
 「結構。
 市場のお店に、三年前、従姉妹の姉さんが嫁いでるの。
 とりあえず、そこに行くから、あんたとはここでおさらば」
 警戒心が無いわけではなかった。
 アナマリアとしては、天然を装い、ジャックの下心を利用して、それなりに自分の思惑通りに事を運んでいたのだ。
 逃がすものか。
 ジャックは、自分が海賊らしく邪悪な笑みを浮かべているのに少し酔っていた。
 「なあ、ちょっと待てよ、えっと、アンヌマリ、アンメアリ…」
 自分に酔いすぎて、その糞ガキの名をど忘れしていた。
 「アナマリアよ」
 「市場までも危険だ。
 このジャック・スパロウ船長が、そこまで送ってやるからさ」

 しかし、アナマリアはまだ子供。
 しかも、トルトゥーガの地理には不案内なので、ジャックはたやすく計画を実行する事ができた。
 売春宿の裏口は、船宿街に面しており、その向こうが市場街。
 裏通りなので、少女は自分がどこを歩いているのか皆目見当もつかない。
 ジャックはその通りの扉の一つを叩いた。
 「誰だい?」
 小窓が開いて、女が顔を出した。
 アナマリアは、状況を察して駆け出そうとした。
 ……だが、ジャックはあらかじめ予測していたのか、少女が駆け出そうとした方向に立ち、飛び込んできた小さな身体を抱き上げた。
 「コレなんだけど、買ってくれる?」
 ジャックの腕の中で、少女の身体がガタガタと震えた。
 ジャックの口の中に、苦いものがこみ上げた。
 だが、オレは海賊だし、これで当たり前なんだから……
 自分に言い聞かせ、暴れる少女を女将に引き渡した。
 
995/9:2007/12/13(木) 23:59:42 ID:GaTNZesx
 小さな銀貨が一枚。
 漁師の娘であれば、これくらいが妥当な値段。
 まあ、器量良しだから、これでも少しは色がついているんだろう。
 「ちょうど良かったよ、ジャック。
 出入りの海軍の将校さんが、生娘をお望みでさ。
 さっき軍艦が着いただろう?
 今夜あたりいらしたら、早速店に出してみようと思うんだよ。
 ほら、はやくその子に阿片でも吸わせて大人しくさせなよ。
 垢を落として、綺麗に着飾らせて、それなりに身支度させとくれ」
 女将の声が、店に響く。
 「まあ、彼女の値打ちとしちゃ、そんなもんだけどね、店としちゃ、とても助かった。 今夜は、
看板以外の子なら誰でも好きな子と寝ていいよ。
 あんたの馴染みは、ルイーズだったね」
 女将は、いつもお茶を引いている、少し陰気な娘をジャックにあてがった。
 まあ、特に好みというわけでもないが、今のジャックには、売れっ子など抱けるわけもなく、
愛想のいい子はそれなりの羽振りの色男に。
 タダでやれるのなら、全然文句はない。
 ルイーズは良く見りゃ可愛い。
 ただ、無口で、愛想のないだけだ。それに、ちょっと受け答えもトンチンカンな事はあるが……。
 <い……イヤだよ……>
 アナマリアの声が、いつの間にか力無く淀んでいく。
 ルイーズは、ジャックの手を引くと、自分の部屋に導いた。
 ジャックは、少し立ち止まり、眉をひそめた。
 「どうするの?ジャック。
 綺麗な服着て、化粧して、お腹一杯食べて、飲んで歌って、
 この暮らしも、それほど悪いものじゃない……」
 ルイーズは、ジャックに耳打ちした。
1006/9:2007/12/14(金) 00:02:48 ID:LLE7jTfi
 女将から出された料理は、コリアンダーの香りがした。
 ラムもあるし、女も居る。
 もっと楽しく気分良くなるはず。
 「……それで、な、ルイーズ、親父、その時、どうやって島から抜け出したと思う?
 ウミガメを二匹捕まえて、並べて結わえつけて、それに乗って船までたどり着いたんだと」
 昔、父親に聞いた昔話を大げさに脚色して喋る。
 ジャックは無理に笑おうとする。
 だが、目の前のルイーズはクスリともせず、ただ口の端に張り付いた微笑みを浮かべるだけだ。
 盛り上がらない。
 全然。
 気分が。
 もっと悪い。
 喋ろうとすればするほど、どんどん落ち込んでくる。
 外がにわかに賑やかになった。
 英国海軍の男達が、街に繰り出したのだ。
 「まあまあ、ノリントンさん」
 開け放した窓から、玄関で上客を迎える女将の声がする。
 「いい子が入ったんですよ。
 ちょっとまだ子供なんですけどね、旦那の好みにはピッタリじゃないかと」
 ジャックの背筋が寒くなる。
 罪悪感という奴か?
 「顔が青いわよ、ジャック」
 ルイーズは、こういう事だけは的確である。
 「なあ、ルイーズ」
 ジャックは突然女を抱き寄せた。
 「なんか肌寒くないか?
 オレを温めてくれよ」
 戸惑う自分を取り繕うように、唐突にジャックはルイーズをベッドに押し倒し、唇を重ねた。
 ティアダルマの手ほどきに従い、手順を踏んで優しく優しく……
 没頭しようとするが、イライラする。
 ええい、面倒臭い。
 ジャックはルイーズのスカートをまくり上げると、そこを露わにして口づけ、自分の唾液で濡らすといきなりぶち込んだ。
 逃げるように。
 耳を塞ぐように。
 ああ、オレにはもう何も聞こえない。
 <ほら、アナマリア、お客様にご挨拶を…>
 運が悪いのか、例の上客はこの部屋の上らしい。
 「ジャ、ジャック……」
 ルイーズが型どおりに喘いでいるようだが、そんなのもう見えも聞こえもしない。
 見上げるルイーズはとても優しく微笑んで、逃げまどうジャックを抱きしめた。
 「ジャック……あなたが海賊なんてね……」
 甘く微笑んで口づけて、両手でジャックの耳を塞いだ。
1017/9:2007/12/14(金) 00:05:59 ID:LLE7jTfi
 ルイーズの中で、無理矢理果てたジャックは、彼女の胸に頭を乗せ、荒い息をしていた。
 事後のけだるさが、全てを忘れさせるさ。
 ルイーズの指が、ジャックの髪を梳いた。
 「ねえ、ジャック、あなたは絶望を知っている?」
 唐突に女は云った。
 「絶望する奴はとっとと逝っちまえ」
 ジャックは、船乗り仲間の誰かの口癖を真似た。
 「絶望する事しか、できない事もあるのよ…」
 空気に消えるような声だった。
 「わたしはね、ジャック。
 さらわれて、売られたの。
 ………海賊に……」
 ジャックの瞳が、初めてまともにルイーズを見た。
 蝋燭の明かりに翳る女の顔。
 「珍しい事じゃない。
 この店にも何人も居る。でも、親に売られるよりはましなのかもね。
 海賊を恨む気力さえ失って、彼らの金で着飾り、食べている。
 出入りの商人が持ち込む生地やら、ビーズやら、白粉やらにときめく気持ちに、ふと我に返る。
 男の腕の中で、いつの間にか本当に声を上げている。
 ならば、心を決めて、その事を楽しめばいい。
 なのに、楽しむことが出来ない私がいる。
 笑顔が凍り付き、言葉が凍り付き、いつか私は絶望を恋人にしてしまった……」
 ルイーズの囁きが、ジャックの魂をも凍らせた。
 「ねえ、ジャック、キスして。お願い」
 ルイーズが唇を重ねてきた。
 <それじゃ、旦那〜〜、ごゆっくり〜〜>
 接待していた女将が部屋を出ていったようだ。
 ルイーズは、ナイトガウンを羽織り、起きあがると、ジャックに服を着せた。
 「ちょっとした騒ぎを起こしてあげる。あなたが、あなたで居続ける為には、何をすべきか判るわね」
 ルイーズが微笑んだ。
 心の底から、微笑んだ。
 その瞳には、絶望の色は消え、ジャックに、煌めいた瞳を向けた。
 「大好きよ、ジャック。そのあなたは、消してはいけない」
 女は果物籠に添えられたナイフを抱えると、廊下に飛び出した。
 
 
1028/9:2007/12/14(金) 00:09:05 ID:LLE7jTfi
 ルイーズは廊下から、ホールの吹き抜けに走り出した。
 叫び声を上げ、泣きわめきながら。
 「いやーーーーー、もういやーーーーー!!!!」
 その女の絶叫に、客も娼婦もドアを開け、様子を伺いに顔を覗かせた。
 ジャックは、窓づたいに上の階に上りはじめた。
 その窓から、中を覗くと、まだアナマリアは服を着たままで、
海軍士官は何やら夢を語っていた。
 アナマリアを何かの練習台にしているのか?
 さて、どうしよう。
 士官は、廊下の騒ぎにも、全然興味がなさそうである。
 ここに飛び込んで、一戦交えるか?
 だが、アナマリアを抱えて、この男の従える部下がわんさかいるこの宿から無事で逃げられるのか?
 「キャー、ルイーズが!!!!」
 聞いたような娼婦の声だ。
 ドスッと、嫌な音がした。
 「ルイーズが落ちた!!!」
 ジャックは唇を噛み、蒼白になるのを感じた。
 だが、オレはどうすればいい。
 ルイーズが、
 でも、今やらなければ、せっかくのルイーズの気持ちが。
 ジャックの心臓の音が、嫌な感じに耳につく。
 息苦しい。
 「まったく、何だというのだ」
 さすがの士官も、舌打ちしながら廊下に出て行った。
 ジャックは覚悟を決めて、部屋に入った。
 美しく着飾ったアナマリア。
 浅黒い肌が美しい。
 ジャックは震える彼女の先ほどの感触を思い出した。
 ジャックは少女を背負うと、ルイーズが飾りベルトを繋いで作ったロープを使って、まんまと窓から逃げ出した。

103ラスト/9:2007/12/14(金) 00:14:04 ID:LLE7jTfi
 ジャックは、アナマリアが正気づいてから、彼女の従姉妹の家まで彼女を送っていった。
 一発殴られたが、アナマリアは、自分の従姉妹には、海の上で助けられ、
ここまで送ってくれたのだが、従姉妹の家を探している間に、悪い男に売春宿に売られたのを、助けてくれたのだと話した。
 そして、いそいで行かないといけない場所があるので、お礼代わりに、しばらくアナマリアの船を貸すのだとも云った。
 アナマリアの従姉妹は、幾度も、幾度もジャックに礼をいい、そして港では、船に積みきれるだけ一杯の食料を持たせて、見送ってくれた。

 太陽が西に傾き、紫と赤の美しい空の色をしている。
 帆柱の上に立つジャックの目に、白いレースの布が浮かんでいるのが目に止まった。
 飛び降りて、引き寄せて見る。
 見たことのあるナイトガウンだ。
 絶望の瞳を思い出す。
 亡骸は、深い海の底か、それとももうサメに食われたか。
 悔しさを噛みしめる。
 「ルイーズ、オレ、寒いよ。
 もっと、おまえの事、ちゃんと見ておけば良かった」
 声にならなかった。
 喉につかえる塊が痛い。
 潮風が髪を撫でる。
 唐突に、ティアダルマの託したオルゴールが鳴り出した。

−−おわり−−
104訂正:2007/12/14(金) 00:31:46 ID:LLE7jTfi
>101

>  その瞳には、絶望の色は消え、ジャックに、煌めいた瞳を向けた。

     ↓下記に訂正



 その瞳には、絶望の色は消え、ジャックに向けた、煌めいた輝きがあった。
105名無しさん@ピンキー
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