ぼくらのでエロパロ

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855カンジ×マキ2:2007/09/02(日) 23:11:47 ID:6k1Xrog4
『マキ、電話よ。吉川君って人から』
お母さんから渡された受話器を受け取る。
『もしもし。カンジ君から電話なんて珍しいね、どうしたの?』
『この間のお出かけは、本当にダブルデートだったみたいね。お父さん』
あたしの後ろでお母さんがからかい口調でそう言ったら、一拍置いてガシャンと音がなった。
きっとプラモデルが悲惨なことになってるんだと思う。
『なんか変な音しなかったか。……そっか、まぁいいや。
 なあマキ、今度の休み暇ならオレと二人で会って話しをしないか。……コエムシには、あまり聞かれたくない話だ』

と、まあこんなカンジのやり取りがあって今日に至るわけなんだけど……。
カンジ君が家に迎えに来てくれた時にお母さんが『彼氏とデート』とか言ってくれちゃったもんだから、変に意識してしまう。
そんな自分がいかにも『オンナノコ』みたいで、ちょっとだけ嫌になる。
ちらりと隣を歩く背の高い男の子を見る。
「手、繋ぐか」
思わず断ってしまった。ひょっとして失礼だったのかな。
特定の男の子と、二人きりで、という今のような状況は、生まれて初めてだ。最初で最後かも。
暫くの沈黙。
あー、なんか変なカンジがする。カンジくん、何か喋ろうよ。話があるんじゃなかったっけ?
あたしは一度は逸らした目線を再びカンジ君に向ける。
いつものふざけた様子は無く、真剣な眼差しでどこか遠くを見つめている、大人びた横顔があった。
「……これからどこ行くの?話って、何?」
マキはこのすばらしく気まずい空気を早く払拭したかった。カンジが答えた。
「オレんち。……死んじまう前に、やりたいことがあるんだ。詳しいことは、着いてから言う」
それならはじめからあたしをカンジ君のとこに呼べばいいのに。そう言ってみたら、カンジ君、
「マキとコモの地元、一度見てみたかったから」って。あぁ、そういえばあたしはもうすぐ死んじゃうんだ。
そう考えるとなんだか気まずさがスーッと抜けてった。
ただ黙って二人で歩いた。
あたしの見ているもの、見ていたもの、見てみたいもの、あたしの代わりにカンジ君に見てもらおう。弟が、生まれるまで。
電車に揺られながら、あたしはそこからは見えないあたしの家の方向に目を向けた。だんだん遠ざかっていく。
856カンジ×マキ3:2007/09/02(日) 23:12:49 ID:6k1Xrog4
「今更ってか、こんなタイミングで言うのもアレだけど、オレ、マキの事好きになった。
 少しだけ、なんなら今日だけでいい。マキの時間をオレに分けてほしい」
改札を抜けてカンジ君にそう言われた時、頭を殴られたような気分になった。
「えー……ソレってあたしを女として見て、ってこと?」
「普通そうだろ。あんまり言わせるなよ」
否定してほしかった!
人から好かれるのは、もちろん嬉しい。でも、この告白は嬉しくない。
そりゃあ、このまえはコモと出かけて女の子らしくなろうと半ばコスプレみたいな格好して写真までとったケドさ。
今のあたしは人から、男の子から「好き」なんて言われて素直に言葉を受け入れて喜べるほど『オンナノコ』ではない。
「どうして、あたしなのかなー?」
「ウシロから話を聞いた。オレも男に……正確には大人に、だけど。成りたくなかった」
え?どういうコト?
あたし、ウシロには『カナちゃんを守りなさい』って言ったはずだけど。
「気にしてたんだろ、自分を生んだ親のこと」
カンジ君はそう言って一息ついた。あたしは歩きながら黙って隣で聞いてた。
「オレも、似たようなモンだから。でもマキはオレと違って……」
「何が違うの?」
「いや、なんでもない。とにかく偉いと思う。とにかく、これだけ素直に特定の他人を好きになれたのは初めてだ。
 今までそういうの避けてたし」
前言撤回だ。
真剣に語ってくれるカンジ君の言葉はやっぱり嬉しい。……ちょっと照れくさいんだけど、でも。
「ありがとう。でもそんなコト言われるとこっちまでカンジ君のこと好きになっちゃうよ!」
「それ、オーケーって意味?」
「普通そうでしょ。あんまり言わせないでよね!」
あたしはきっと真っ赤な顔をして答えた。そうしたところで、ちょうどカンジ君の家に到着。
でも、ちょっと待って。付き合うって、それでいきなり彼氏の家って!!
流石に二人きりってことは無いよね?だよね?一様確認してみる。
「あー、カンジ君。お家の人とかは?あたし今からでも手土産買ってこようか」
「父さんは家にめったに帰ってこない人だし、要らないよ。そんな気を使うなって」
「そ、そっか」
何キョドってんの?いつもアンコをからかう時のアノ顔でカンジ君が。
ドキドキしながら、合わせてあたしもいつもの調子で、うるさいなーと返す。
二人で笑う。
このカンジ。あたしはあと何回こうして人と笑いあえるのかな。
857名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 01:35:08 ID:0Wyo9aeV
>>856
も だ え ま し た
カンジじゃなきゃ駄目ってこういう事か…!
確かに同性の親に強烈な反発心がある者同士だからこその繋がりがすごく面白い。
原作と同じくらい、キャラの取り合わせと繋がりにはっとさせられた。
この上エロもあるのかと思うと期待で眠れなくなりそうw GJ!
858名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 10:00:23 ID:LkeyOBpJ
>>853
職人さんキターーー!!!催促しちゃってすみませんorz
これは予想以上にドキドキなカップル…続きwktkして待ってます!GJ!
859名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 11:59:25 ID:QZcz4cfb
>>853
GJ!流れがすごく好きだ…。続き待ってる。
それから冒頭のウシロへのツッコミにワロタwww
860名無しさん@ピンキー:2007/09/03(月) 15:30:11 ID:JjAG0MAE
カンマキ甘酸っぺーなage!

続き期待してる
861カンジ×マキ4:2007/09/04(火) 23:22:48 ID:6xRV8iMy
今頃最速だとアニメ版カンジが頑張ってる頃でしょうか。
コメくれた方々、どうもありがとう!


「喉渇いたろ。何か飲むかー?」
「何でも、あるのでいいよっ」
居間に案内されたあたしは、そこで正座をして背後からの声に応えた。
コモん家程じゃないけど、ところどころにかなり高そうな家具が置かれてる。
「お待たせしました!このようなお飲みものは如何でしょう?」
畏まった言い方で、でもふざけてカンジ君が差し出したものは、ワイン。ラベルには見たことの無いアルファベットが並ぶ。
「沖天楼落成の記念でうちの親の勤める会社が両親に用意したらしい。オレも飲んだことはない」
そ、そんなのいきなり開けないでよ。普通お茶かジュース出すでしょ!
「あたしそういうの飲んだことないんだけど。ていうか、カンジ君のお父さんが大事にとっといたんじゃ?」
キュルキュルと回るコルクを横目で見ながら質問するマキ。
「これはオレの分だからいいんだって。ほら」
差し出されたグラスの中に注がれた濃い赤紫の液体を見つめて、マキは尚食い下がる。
「で、でもあたし達未成年だし、コレって見るからに高そう……」
己の分を注いでボトルに栓をした少年が目に前に座って下を向く少女に説明をしはじめた。
余談だし、こう言うと失礼かも知れないのだが、この少年、ワイングラスを持たせるともう完全に中学生には見えない。
「これは、母さんがオレの為に残してくれたんだ。『大人になったら好きな女の人と飲みなさい』って。
 でもオレ達は大人に成れないから。……いつ戦闘が始まるか判らないし、飲めるのは今しかないと思って。
 あ、別にコレが飲みたいからって、相手は誰でも良かったわけじゃなくて」
まだ口をつけていない赤い液体が波を立てる。なんだかおかしくって思わず笑った。

「ははははは。あー、そっか。ごめん、笑ったりして。カンジ君って意外とロマンチストっていうか。
 うん、今日行き成り告白されて家に連れてかれて、あたしかなりびっくりしてさ、
 もうそのままベッドに直行させられるものかと思ってた!」
カンジ君が一瞬固まったように見えた。なんとなく顔も赤いような気がする。あたし、何かおかしなこと言ったっけ?
「……流石に、告白したその日にってのはナシだと思ってたけど。付き合うって決めた訳じゃねえし。マキはいいのか?」
「うん?」
急に居ずまいを正して問うカンジ君に思わず頷いて返す。
するとカンジ君はグラスのワインをイッキの要領であっという間に飲み干した。
お酒の事とか詳しくは分からないけど、ワインってそういう飲み方をするんじゃないと思うんだけど。
それにしても、『好きな女の人』か。正直に言ってそんな風に言われるのはまだ慣れないけど、やっぱり嬉しいな。
手にしたグラスを傾けて中の液体に口をつけた時、カンジ君に名前を呼ばれた。
頭を上げると目の前にカンジ君の顔があって、戦闘中敵を睨むみたくそれ位必死な目つきであたしを見ていて。
ちょっと怖かった。だから首を動かしてそっぽを向こうと思ったんだけど、なんとなくそうする事は間違ってる気がして。
その代わりにあたしはまぶたを閉じた。
862カンジ×マキ5:2007/09/04(火) 23:23:38 ID:6xRV8iMy
友達から借りたマンガだったかな。初めてのキスはレモンの味とかなんとか書いてあったケド。
あれは完全に間違い。実際は二人が直前に口にした食べ物とか飲み物にかなり影響される。
この場合は、ぶどう酒の味。
ワインで濡れた唇は想像以上に柔らかくってドキドキしてしまう。
そろそろ目を開けたいと思ったそのタイミングで、ゆっくりカンジ君が遠ざかっていった。
唇が離れる時に、ちゅっ、と小さな音がなった。
すごく小さな音だったけど、ソレを聞いてなんだかいやらしい気持ちになってしまった。
「部屋行こうか」
立ち上がったカンジ君にそのままついていく。
俯いた顔をわざわざ覗こうとは思わなかった。きっと、あたし自身も同じような顔してるから。
ワインは結局、飲んでない。

カンジ君の部屋に着いてまず目に留まったのが、ジアースのコクピットで見慣れたあのヘンな椅子。
聞くと姿勢を正す椅子だとか。カンジ君、小学生の頃は一時期かなり猫背だったらしい。
「マキには必要ないよな。姿勢いいし。そこ座りな」
「うん。だってあたしカンジ君みたいに背高くないからさ。これで猫背だったらみっともないよ」
ベッドの端に腰掛けながら返事をする。
……カンジ君はここで毎晩寝てるのか。家では布団敷いて寝てるからよく分からないけど、なんか大きい気がする。
うん、人が二人並んで寛げそう。
……。
…………。想像しちゃった。あたしとカンジ君でここで寝そべってて、見つめあってて……。
「どうする?これから」
カンジ君がそう聞いたとき、あたしはカンジ君のベッドに座って手をついてて、じっと掛け布団とシーツを見つめていて。
多分、他の人から見たら心ここに在らずな状態だっただろうから。それでも、カンジ君の言葉に応えようとしていて、
「……キスの続きを、何回も」
思わず口から出てきたのは、妄想に近い想像の続き。
「マキ?」
上ずったような声に呼ばれて振り返って赤い顔を見て、やっと気づいた。
「あ」と声を上げ、恥ずかしさから手にした毛布を顔に寄せ、『オトコノヒト』のにおいに驚き、慌てて手で顔を覆う。
この前国語で習った”墓穴を掘る”って、まさにこういう事だって実感した。
”穴があれば入りたい”心のそこから、そう思った。

ドキドキがとまらない。カンジ君があたしの隣に座った。
心臓よ、お願い、止まれ。……いや、止まっちゃ駄目だよ。落ち着いて。
「オレ、今すげぇ緊張してる。マキも?」
「あ、あたりまえでしょ!こんな恥ずかしい思いしたの初めてかも」
「オレもだよ」
二人で照れて笑って、今度はどちらからということもなく、自然に唇を寄せ合った。
ただ、一度は繋ぐことを拒否した手を伸ばし、しっかりと相手の指に絡めたのは、マキの方だった。
863カンジ×マキ6:2007/09/04(火) 23:24:39 ID:6xRV8iMy
口と鼻に広がるにおいは、やっぱりワインの香りで、カンジ君の唇の動きに合わせてあたしも舌を動かす。
上手いキスの仕方なんてもちろん知らないし、カンジ君の方も『そういうコト』を避けていた風なことを言ってた。
ただ、先輩から聞いたり小学生の頃友達と一緒にエロ本を見たりして、なんとなく頭の片隅に入ってただけの知識
(二人とも興味が全く無かったわけじゃないわけで)を総動員して、お互いを求め合った。
そういえば、ワインを飲んでないあたしのキスを、カンジ君はどんな味だと思うのかな?
……恥ずかしいから聞かないケドさ。

息が苦しくなって唇を離すとそこからつぅ、と唾液の糸が伸びて、それを見てもう一度恥ずかしくなる。
はあはあと息を切らせながら口をぬぐって、カンジ君があたしの服に手をかけた。
「やっ、あ、あたし自分で脱ぐからさ、その……カンジ君も、脱いで!」
あたしは慌てて飛びのいて、ベッドの奥、壁に背中をつけて自分の足元を見ながら段々と声が小さくなってしまいつつも主張して。
「こっち見ないでよ?」
「どうせ後で向かい合わなきゃだろ」
そりゃあそうなんだけど、でも、心の準備ってのがあるでしょ。
あたしは脱いだパンツにいつの間にか出来ていた染みを見て、悟られまいと畳んだ洋服の間に挟みこんだ。
そしたらタイミングを計ったように背中に体重がかかってきて、「遅い」と声がした。
背中と腕を回されたわき腹、それに息のかかる肩から肩甲骨にかけてが異様に熱く感じる。
カンジ君は優しく圧し掛かっていて、その体の重さはむしろ心地よくも思えたけど、なんだかそれが恐ろしく感じられて、
畳んだ服の、奥に隠した湿った下着を思い出して。
あたしは重力の方向に沿って壁に体をつけた。
頬に、肩に、胸に壁の冷たい感触が。背中にはカンジ君の暖かい体が。
頭に浮かんだのはあたしを生んだ本当の母親のコト。
あたしの本当のお母さんは、こんな風に、男の人と―あたしはそれが誰かなんて知る由もないんだけど―セックスして、
あたしを生んだ訳で。今こんな風にドキドキしてるのは、『そういうコト』を求めてしまうのは、
あたし自身がそういう『女』って事で、それはあたしにとって絶対に、嫌なこと。
相手のオトコノヒトを、今のあたしの場合だとカンジ君を好きかどうかとか、関係なくて、『そういうコト』は怖くてたまらない。
いや、ちょっと違う。『そういうコト』に焦がれるあたしと、あたしの中に流れてあたしにそうさせる血が、怖い。
……カンジ君相手じゃなくても、こんな風にドキドキしてしまいそうな自分が。ただセックスだけを求めそうになってしまう自分が。
「怖い。カンジ君、あたし、あたしが怖いよ」
他人に、特に男の人には絶対に言いたくないって思ってた言葉が、口からこぼれてきた。
あたしはあたしであって本当のお母さんは関係ない、本当のお母さんの子供はあたしが小さい頃に死んでいて、
今のあたしは「阿野」万記なんだって、そう思ったのに、思ってたのに、思いたかったのに!
サンドイッチ状態の心は、それでもバランスを保っていたんだけど、壁は寄りかかるあたしの体温で暖かくなってしまっていて、
熱を、カンジ君の体を求める思いが勝ってしまって、どうしようもなくなってしまった。
「カンジ君」
これはあたしの、すごく個人的な問題なんだけど、人に、特に男の人には頼っちゃいけないんだと思ったけど、
とにかく今は助けがほしくて。思わず名前を呼んでいた。
「マキが今悩んでることは、何となくだけど分かる。オレも、オレが怖い。いいか、こっち向いて?」
恥ずかしさよりも自己嫌悪のため、人に醜態を見せたくなくて、でも頭の中には少しでもカンジ君に触れていたいって思いもあって、
それがまたあたしを自己嫌悪に陥れる。首を動かして壁にくっつけた額をずらし、横目でカンジ君の様子を伺う。
あのへらっとした笑顔があった。その笑顔はなぜかあたしを切なくさせて。
「さっきキスした時、マキはどんな感じだった?オレは、もっとマキの体を触りたい、キスしたいと思った。だから脱がそうとした。
 それはマキの事が好きで、少なからずマキをオレの思い通りにしたいって思ったからで、それは何でかって、ずっと問い詰めたら
 行き着く先がマキは女でオレは男だから、っつう結論になって。でも、その結果はオレにとっては不服なわけ。その結論は
 他の人たち、例えばオレとかマキの、あ、マキのってのは生みの親の方のな。両親でも通用しそうでさ。納得いかねぇ、って」
そこまで言って、またちょっと笑った。
あたしもつられて少し笑う。話を聞くうちにに体は自然とカンジ君の方に向いていた。
「でさ、オレは今まで女の子を好きになりそうになる度に、全力でその考えを否定しにかかってた。オレの中の、
 オレの父親と同じ部分を否定したくて。おかしいよな?……って、ナンか自分で話してて恥ずかしくなってきたぜ」
「その気持ちすごく分かる。続けて」って、催促したらカンジ君頷いて、
「マキは凄いよ、ホント。オレに似て、って言ったら失礼だよな。女の子は背負うものが大きいから。でも、それなのに
 そういう考えを表に出さずに、オレとか本当に気づかなかったし、振舞っててさ、何か……うん、オレ、マキの事なら
 父親がどうとか関係ナシに、心から好きになれそうな気がして、それで今こうやってて。
 オレは、マキが女に生まれて来てくれて嬉しいと思う。マキが嫌だって言うなら止めるけど、オレは続きをしたい」

嫌じゃないし。分かってたんだよね。最初から、頭の中だと。
でもカンジ君の話を聞いて。本当のお母さんへの恐怖が完全に消えたわけじゃないけど、すごく気分が楽になって、
「ありがとう、カンジ君。女に生まれてきた甲斐があったよ」
笑いながら言って抱きついた。支えてくれる体の暖かい体温、触れ合う肌ににじむ汗の感触が気持ちいい。
むずむずする、快感を求める感覚は確かにある。あるんだけど、それ以上にカンジ君を好きっていう思いが強くて、
そう思えるように成った自分のこと、少し好きになれた気がした。


ラノベ発売前には完結させます。
865名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 07:28:12 ID:5HuzEiy5
GJ!!
沖天楼落成記念のワインとか、カンジが実は猫背だったとか、小道具や設定にカンジへの愛を感じたぜ
続きwktkして待ってるよ
866名無しさん@ピンキー:2007/09/05(水) 21:15:28 ID:sGHoFVA7
こんなにwktkしたの久しぶりだ グッゾブ!
867名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 01:50:10 ID:cLG9GVrp
マキはやっぱ明るいとこが、かわえぇよな
続きも期待しております!

で、只今ナカマネタ発酵中なんだけど、アニメでのナカマの呼ばれ方って
田中→半井さん 関→摩子ちゃん で合ってるっけ?
今、会社に拉致られてるから確認できないんだ
868名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 03:08:50 ID:mp+fWw2P
誰かコダマ×カニのSMモノ書いてくれ
869名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 08:50:52 ID:A0fYsTJt
コダマ×カニのドSものなら
コエムシの力でカニを儚い美少女化して嬲り殺しを
870名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 09:59:20 ID:5ZRZJTlL
いいなそれ
871即席コダマ×カニ1:2007/09/08(土) 15:50:16 ID:DwqQbaiE

ぴぴるぴるぴる〜


「コエムシ、ありがと」
 口だけで笑って、コダマはそれを見下ろした。砂浜にうずくまる白い四肢。艶やかな長い黒髪はべっとりと濡れていて、小刻みに震えている。寒さのためというわけではなさそうだった。俯けている顔は見えない。体格からして少女だった。
「いいってことよ。ま、せいぜい楽しめ。どーせおめーは……」
「もうあっちに行っていいよ」
「ちっ。人使い荒いんだからよー」
 コエムシは人じゃないだろ。そんな突っ込みを口にするのは面倒だった。コダマはただじっと、小さく動かない少女を見つめた。
 じり、と少女が横に動いた。コダマが足を一回、踏み鳴らす。
「おい、カニ」
 びくり。初めて、カニと呼ばれた――カニであった少女は顔を上げた。真っ黒い瞳は丸くて、鼻も、唇も小さい。驚くほど首が細かった。砂にまみれた裸の肌が、コダマと目があってほんの少し赤くなる。
「な、なんですか……」
「へえ。しゃべれるんだ。面白いな」
 か細く高い声だった。へたり込んだ格好で、折れそうな指で体を隠そうとしている。まだ未発達の乳房の前で、カニの手の平から砂がぽろぽろこぼれた。
「本当に人みたいだな」
「ひ、ひとでじゃないです、わたしカニです」
「聴力はカニ並み、と……」
 カニを人間にすることだってできるぜ。コエムシがそんなことを言い出したときは思わず笑ってしまった。何だその無駄な能力。嘲る言葉を口に出す前に、コダマは気づいた。
 カニなら、殺せる。元がカニの人間なら殺しても何ら面倒な問題は起きない。人を殺める経験ができるのだ。
 思って、すぐに頼んだ。どんな奴にしてやろーか、とコエムシが尋ねたので(案外至れり尽くせりな奴である)、殺しやすそうなヤツ、と答えた。
 コダマは一歩カニに近づいた。ひ、と漏らして、カニは右方向に逃げた。少しだけだ。コダマがとまると、カニもそれ以上動かない。
 なるほど。確かに殺しやすそうだ。脆そうな体、きっと骨は細い。悲鳴だって上げるなといえば上げなさそうで、そもそも声が小さい。横方向にしか逃げられないし、肌だってものすごく柔らかそうだ――
「おい、動くなよカニ」
「え、は、はい」
 思い立ち、コダマは膝をかがめた。カニと同じ目線で、至近距離で彼女を眺める。また僅か、カニの肌が染まった。コダマは薄笑いを浮かべた。
「コダマさん……?」
「俺の名前、知ってるんだ」
 どうでもいいけど。
 今から殺す相手のこと、何を知っても意味などない。ただ相手が生きている人間でさえあれば。
 そして今から、何をしても問題ない。
「…………全部、人間?」
「で、でん部? ですか? おしり?」
 コダマは素で驚いた。
「お前、ばかだな」
「おしり……多分、はい……あ、あの、コダマさん」
「なんだ」
「わ、わたしなんで、ひとにされちゃったんですか……?」
「いまさらか」
 さすが、元はカニだ。いい感じに頭が弱く作られているらしい。もしこれが元から人間でも、確実に選ばれなかった側の人間だ。また殺してもいい動機が増えた。コダマは笑った。
「確かめてやるよ」
「なに、なにですか」
「お尻。でん部だよ」
「ぜ、全部?」
「お前わざとか。まあいいや。全部確認してやるから。ほら、あっち向け。海の方」
 言われたとおり、カニは右回転で海の方を向いて正座をした。体に貼り付いた砂をぽろぽろこぼしながら、所在無さそうにコダマをちらちらと振り返る。うん、とコダマは頷いた。
「次、四つんばい」
「よ、よつ……?」
「両手足つく。それから、お尻、突き上げろ」
「はい、え、えっと……でも」
「いいから早く」
「何だか、恥ずかしいことのような気がするのですが」
「早く」
「……はい……」
872即席コダマ×カニ2:2007/09/08(土) 15:52:07 ID:DwqQbaiE
 空は快晴だった。雲ひとつ無い青じゅうたんの下、岩場の日陰でもじりじりと熱気は迫る。打ち寄せる波の音だけは涼しかったが、コダマは首筋に汗をかいていた。
 けれど服は脱がない。カニが裸で、自分が着衣で――動きたいのを我慢して、目の前の光景をじっと堪能する。健康的な海の風景をバックに、突き上げられた少女の尻。白い。
 菊門と、そのさらに奥の方にも影が見えた。他人の肛門なんてはじめて見たなと、そんな冷静なことを考えながら、その実、コダマの視線は尻に釘付けで、少しの間しゃべることができなかった。
「……カニのお尻、人間さん、ですか?」
「……どうだろ」
 コダマは指を伸ばした。一切不潔な感じを受けないのは、そこが話に聞くよりもずっと綺麗だからかもしれない。元がカニだという意識が都合よく頭に住み込んでいて、菊門に触れるのも躊躇わなかった。
「ひゃっ」
「動くなよ」
 やや硬い感触。ぐにぐに押しつぶして見る。
「コダマさん、そ、そこ、多分……」
「分かってるよ。確かめてるんだ」
 指を入れようと押し広げてみた。入り口は弾力ですぐに戻ろうとする。
「ま、まだです、か」
「指図するなって。カニのくせに」
 結局、指の第一関節まで入れて、それ以上は進めなかった。花火でも突っ込んでみようかと思ったけれど、花火はもっと別の遊びで使ってみたい気もする。
 なんとも言えずざらざらした感触の穴から指を引き抜き、コダマはカニの尻の砂を払った。払った、というよりも、叩き落した。
 ぱんと鳴った音は鈍い。ウシロみたいに鳴らないかなと一瞬思ったが、続けざまの悲鳴で気が晴れた。
「いたい! い、あい、いたいです!」
「痛い? なら多分、ここは人間だと思うな」
「そ、そうです――いたい!」
 話す途中でもう一度はたいた。小さな尻がぷるんと震える。カニが振り返った。小さな造作の顔は痛みで歪められている。反比例してコダマは笑う。何だろうこれ。すごく、楽しい。
「カニ、もっと足広げろ」
 頷いて、カニはまた前を向いた。暴力が止んでほっとしたらしい。真っ白だった尻には手の平のあとがくっきりといくつも重なって浮かび上がってくる。にやにやしながらコダマは、カニの股の間に腕を差し入れた。
 これは好奇心だ。女なんてどうでもいいけど、別に経験して損はない。殺す相手を犯すのも、この先の人生の糧になるかもしれない。相手の悲壮感や危機感がいまいちで、それは物足りないけれど、それは贅沢というものだろう。
「このへんかな」
 適当な部分を撫でてみる。
「ひえ!」
「変な声を出すなよ」
「コダマさん、そこも……」
「人だといいな。……ああ」
 ここか。きっちり閉じた線のような入り口を何とか探し当てる。濡れてないなと思い、どうせなら泡でも吹けば便利なのに、などと思う。
 見失わないように何度も撫でた。微妙な感触だ。ただやわらかい肉、のような気がする。ここにペニスを突っ込んで、気持ちいいのか怪しいところだ。カニだし。
「ひゃあ、あの、あんまり、撫でたり、あぅっ」
 少し苦しい。右手でカニの局部に指を突っ込みながら(別に見失わないように必死なわけじゃないぞ、と言い聞かせて)、コダマはズボンのジッパーをおろした。
 いつのまにかずいぶん硬くなったペニスを取り出すとちょっとほっとする。潮風に触れたとたん、それはまた大きくなった。
「コダマさん、まだ、ですか。わたしのからだに、なにか、どんどん……おかしい気がするんですが」
 実際にはもっと途切れ途切れに、カニが言う。
「具体的には?」
「何か、お腹に入ってます。え……餌じゃないみたいです」
「俺の指だよ。ばかだな」
「ゆ、指!? 大丈夫なんですか、コダマさん!」
「俺のことかよ」
 なるほど、こういう知識は皆無らしい。つまらない。最初に胸を隠そうとしていたから、知っていると思ったのに。
「もういいか」
 入り口は依然硬いままである。指を抜くとあっさり閉じて、その指もわずかに湿っていただけだ。このままでは入らないかもしれない。
 コダマはちょっと焦った。殺すことが目的なわけだけれど、それ以前につまづくのはどうも縁起が悪い気がする。というか、そんな小さな失敗をするような人間になりたくない。
 カニをいじめて遊ぼう、という思いつきは、今は遠くに行ってしまっていた。とりあえず気分を沈めて、それからいろいろしよう。とにかく入れたい。出したい。
873即席コダマ×カニ3:2007/09/08(土) 15:55:10 ID:DwqQbaiE
「……そうだ」
 一瞬躊躇ってから、コダマはカニの後ろを離れた。
「コダマさん……?」
 無視して磯の水溜りに向かう。生ぬるい海水を救って、手の平と、ペニスを濡らしてみる。
「これでいいかな……」
 格好がつかないような気もするが――四つんばいのまま、不安そうにこちらをうかがうあのカニの姿よりはマシというものだろう。(『指がちぎれたんですか!』などとカニは叫んでいる。無視した)
 焦る気持ちを抑えて、コダマはカニを再び押さえつけた。さらに足を開かせ、念のためにもう一度、カニの穴に濡れた指を入れる。すぐに乾きそうに思えたので、急いで自分のペニスを掴んで、あてがう。
「いいいっいい、いた、いたた、たい!」
 くじけそうなくらいきつかった。むしろ痛かった。
「うるさいな!」
 こっちだって痛い!
「で、でも」
「我慢しろ!」
 俺もな!
「カニのくせに……」
 涙が滲むのを我慢して、腰を推し進める。表情を見られないバックで本当に良かった。セックスは涙目で行うものだとカニに思われたときには、どれだけ残酷に殺しても殺したりない。
 一番引っかかる先端をすっかり飲み込ませて、じりじり前に進む。押されて一緒に前に動くカニ(前にも動けたらしい)を叱り飛ばす。額を汗が流れた。
「なに、して、るんですか? え、コダマさ」
「陵辱のはずなんだけど……」
「漁術!? ひ、ひどい!」
「お前もうしゃべるな」
 折れそうなくらい細い首を必死に動かし、カニはコダマの行為を確認しようとする。彼女は汗をかいていなかった。その代わりぐちゃぐちゃに泣いていて、濡れた髪が背中にべっとりと張り付いている。
 痛ましさを感じられないのは、コダマが残酷だからというより、相手がカニだからのような気がした。ウミガメの涙も生理的なものなんだよな、と思い出すと、なんだか無性に腹が立つ。
 まっすぐ細い、カニの背骨をきしませるイメージをコダマは頭に描いた。それから思い切り、突き刺す。
「きゃあ!」
 僅か、溜飲が下がった。割って入った先の穴は、コダマの移動に合わせて吸い付くように閉じようとする。亀頭の先端が常に肉ひだに包まれていて、壁をこそげおとしているような気分でコダマはペニスを引いた。
「……う」
「いたい、いたい、いたいです!」
 そこで初めて快感を感じることができた。耳からの悲鳴と、ようやく、おそらくはこれも生理的なカニの体液によって。きついのは変わらないけれど、入れたときよりは滑らかな体温を感じることができる。
「動くな、って……」
 ずれるカニの腰を両手で押さえつけ、コダマは思い切り腰を打ちつけた。
「やめ、て、く、だ……っ」
 小刻みの振動は全て、真っ白い砂に吸い込まれる。砂と同じくらい白かったカニの肌は既に火照りきって赤い。腕を伸ばして、コダマはカニの乳首を摘んだ。
「柔らかいんだ、これ」
「いたぁっ!」
「痛い、の? 軽くしかひねってないのに」
 少しでも射精の時間を遅らせるため、ただの気まぐれ、カニをいじめるため。どれが本当か分からない。
 小さい、けれども重力に従うほどには実のある乳房を下から包み込む。砂を掬って塗りつけた。ひゃぁ、だか、うゃぁ、だか、とにかく変な声がカニの真っ赤な唇から漏れた。丹念に揉みしごき、思い切りわしづかみにする。
「いたい、いたい、です! やめてください! そこ、ちゃんとにんげんです!」
「どっちがいたいんだ?」
「どっちも……!」
 半開きになったカニの口から涎が垂れ、コダマの腕に着地した。汚い。後で綺麗に洗おう。
「お前、この程度で痛がってたらこれからどうなるんだろうな」
「え……?」
 返事を待たず、コダマはコダマは腰を思い切り引いた。ぎりぎりまで塞がった膣の感触に眉をしかめながら、勢い良く貫く。
「あぅ!」
 わざと、カニの体に爪を立てて支えていた。血が滲み出すのを眺めながら、コダマは必死で腰を振る。
 何度も何度も、擦り上げ、締め付ける肉は、最終目的を忘れてしまいそうなほど気持ちよかった。じゅぶじゅぶ音を鳴らす正体が海水なのか、カニの体液なのか、コダマの体液なのか、混ざった全部なのか。
「あっ、あっ、コ、だめ、あっ、コダっ、……――ぁあっ!」
「……出る、……っ、」
 息苦しそうにつぶやいて、コダマは結合部分を凝視した。
 どくん、と一度大きく、蠢く膣に促されるようにして、残滓を。陶酔感は目を瞑ってしまいそうなほどだったが我慢した。動物のように限界まで突き上げられた尻の、グロテスクに開いた性器をじっと眺める。体毛のないそれは痛々しい。
874即席コダマ×カニ5(おしまい):2007/09/08(土) 15:55:53 ID:DwqQbaiE

「コダマさん……!」
 全部出し切るまでコダマは口を聞かなかった。短い間だったけれど、カニの不安そうな声には何の心も動かされない。急速に小さくなっていくペニスを自覚してから、コダマはカニから抜け出した。同時にしゃがむ。
「まだ動くなよ」
 顔を近づけて、カニの膣を観察する。生臭い匂いが鼻についたけれど、磯の香がすぐに払ってくれた。
「血だ……」
 やっぱり無理があったらしい。ぴくん、ぴくんと、それ自体が生き物のように動く入り口の僅かな襞は、血と精液の混じったピンク色の液体を零していた。やっぱり愛液も出ていたらしい。粘性のそれはゆっくり下に落ちて、砂浜を汚す。途中の糸に指で触れてみた。
「気持ち悪いな……」
 言いながらも、すぐには拭わない。カニのふくらはぎにこすり付け、カニの表情を見てみたりする。
「ええと……」
 泣きながらもカニは、おかしな顔をしていた。腑に落ちない、何をされたのか分からない。そんな風な。
「交尾……でしょうか……?」
 何と答えようか少し悩んだ。『お前みたいな低脳に、俺の種をやるわけないだろう』『その顔やめろ』『くっつくんじゃない。袖を掴むな』
「だから、検査だよ。検査」
 目を逸らして、コダマは砂浜に腰を下ろした。首を傾げていたカニが、あいまいに頷いた。
「人かどうか、しらべたんですか?」
「……そうだよ」
「どうでしたか?」
 なぜ不安そうに聞く。不快すぎる。
「人だったけど」
「良かったです!」
 痛かったけど、我慢した甲斐がありました! ……低脳は幸せだ。コダマはため息を漏らした。顔を覗き込む少女の視線から逃げた。
「でもまだだ」
「え?」
「もう二三日、検査してみないと分からないな」
「ええー!!」
 こんな大きなカニ、どこに隠そうか。花火はどうやって使おう。殺してしまうまで、どうやってこいつで遊ぼう。

875名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 15:57:34 ID:DwqQbaiE
分割バランスが悪くて申し訳ない。
SM予定のはずがコダマへたれた。
このあとカニはコダマがずっとおいしくいただき続けましたとさ。純愛物語だな
876名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 18:34:24 ID:t+hp3aLQ
カニってそういうことかYO!!いやん、甲殻類モエす…GJ!!!
まったくこのスレの神ときたら幅広いにも程がある

Sっぽいの苦手だけど>>871は文章上手いなー
877名無しさん@ピンキー:2007/09/08(土) 22:20:28 ID:J9hfOak2
コダカニ凄いなー!
まさか、そんな展開とは…心の底からGJ!
間違ってたら申し訳無いんだけど、コダカニ職人さんは大人ダイナカ書いた方?
878関 × ナカマ『お客さん』1:2007/09/09(日) 02:57:39 ID:EDoHfwi4
ここで空気読まずにまさかの関×ナカマ投下
アニメ版10話分岐で設定はアニメ準拠です。どっちかが
ねーよwwwという方はタイトルNGワードでスルーよろしく
長くなったので分けて投下させてもらいます
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関の常識で計るに。
中学生を性愛対象にする人間、ましてやそれを「買う」人間などというのは
犯罪者であり、合意の上であっても変質者あるいはその予備軍に含まれる。
またそんな連中は異常性愛嗜好者であり、何らかのキャリアーの可能性も高い。
その点においてのみ、自分はまだマシだろう。
性癖はいたってノーマル(だと思う)だし、生体的な正常度は認知研のお墨
付きだ。脳波から神経に至るまで徹底的なチェックを受け、クリアした健康
状態だけは自信がある。

ナカマに案内されて玄関を上がるまでの間にとりあえずそこまで理論武装
しておく。今からする行為によっては自分もその「変質者」に入るのだが
それは無いと判断した。
いざとなったらナカマの気も変わるだろう。
さっきは興奮状態で、ああでも言わなければ本当に夜の街へと飛び出して
行きかねなかった。が、折を見て諭してやれば話を聞けない子じゃないはずだ。
それに。
先に立って部屋に入るナカマの後ろ姿を見ながら思う。
高い位置で結った髪、細い首。
しかしそのどれもが頼りない、歳相応の幼さにしか見えない。
哀しいかな関の守備範囲はものすごくノーマルだった。
ついでに、どっちかと言えば巨乳派である。男の浪漫で仕方ない。
妙なことになるとは思えないが、監視役にしては深入りしすぎかもしれない。
まだそんなことを考えていた。この時は。

「お邪魔します」
一言で言ってしまえばその印象は『仕事部屋』だった。
ミシンが2台。裁縫用の人形に、飾り気のない大きな鏡。
壁にかかった制服がかろうじて部屋の主が女子であることを示す他には
この年頃なら興味を持つだろう化粧品などの類も見当たらない。
女の子の部屋がどういうものか関にはすぐに実例は引けないが、もう少し
ぬいぐるみやら、よくわからない小物が飾られているものと想像していた。
かわりにあるのは小さなタンスの上の一輪挿しがひとつ。生花だ。
和室のせいもあるのだろうが、きちんと整えられすぎたこの部屋はとても
女子中学生のものには見えない。色が無い。落ち着きすぎているのだ。
だけど、ここは。
「ここが、摩子ちゃんの部屋?」
「はい。あ、すぐ片付けますから」
ナカマらしい、と言えばこの上なくナカマらしい部屋だった。

片付ける、と言っても物は少ない。
裁縫に使うのだろう生地を丁寧にたたみ、関にはよくわからない細々とした
道具や色とりどりの糸が入った籠を隅にどけてしまうと、すぐにする事は
なくなった。ちらりと関を見ると座るわけにいかないのだろう、物珍しそうに
ミシン台を眺めた姿勢で立ちつくしている。
879関 × ナカマ『お客さん』2:2007/09/09(日) 02:59:29 ID:EDoHfwi4
自分の部屋が急に狭くなったような気がして、ようやくナカマはそのことに
思い至った。そうか、この部屋に男の人が来るなんて初めてなんだ。
というよりお母さんとナベさん、仕事を頼みに来る人以外で家に入った
人なんて関が初めてじゃないだろうか。
友達が来たことは、ない。
一度くらい、皆を呼んでおしゃべりしても良かったかな。
はじめて、そんな事を思った。
マキも来てくれるかな。でもやっぱりここじゃ駄目だ、ウシロくんのところ
くらい広ければ呼べたかもしれないのに。今まで一度だって考えたことは
なかったけど。もう少し皆のことも知りたかった、そして───

「摩子ちゃん、とりあえず話をしよう」
このままでは埒があかないと思ったのか、関が口を切る。
確かに、いつまでもこうしている場合ではない。今この瞬間にだって
『呼ばれる』かもしれない。時間がないのだ。
関は厳しい表情でこちらを見ている。彼ならばナカマの複雑でまとまらない
話も聞いてくれるだろう。
でも大人の男の人だ。友達でも仲間でも彼氏でもない。
結局、そういうものは持てなかった。
私が初めて部屋に招いた人は『お客さん』だ。
「あの、それじゃ、お布団敷きますので。その間、出てもらえますか」
「布団って、摩子ちゃんそれは…!」
「部屋、狭いし。押し入れの中とか見られたくないんです」

廊下に出されてしまった。
まだろくに話も出来ていない。どうしてこうまで極端なことをナカマが
思いついたのか、関にはいくら考えてもわからなかった。
残り少ない彼女の日常がこんなことでいいはずがない。なのに。
─── 何、してるんだろうな自分は。
これが田中ならばもっとうまく彼女の気持ちを引き出すだろうに。
そう、元はと言えば田中の一言でこんな事態になっているのだ。


半井 摩子の様子がおかしい。
その異常は保護という名の監視を続ける田中と関にもすぐに知れた。
操縦者に決まってからのナカマは、何か言いたそうに彼らの車に近づくが
その度に思い直したようにただ頭を下げて去って行く。
ここ数日、そんなことを繰り返していた。

「子供たちの方から、駆け込める場所が必要なのよ」
という田中の提案で、あえて隠れずに車を停めているのだが───
これでは逆効果なのではないだろうか。
ナカマはこちらに気付くと迷ったように目をそらすものの、いつも一礼して
から去って行く。性格的に無視もできないのだろう。
「やはり、露骨に監視されるのは辛いんじゃないでしょうか」
細い後ろ姿を見送りながら関が問う。
跡を追うべきかとも思ったが結局エンジンはかけなかった。
あの大荷物だ、いつもの店に仕立て仕事を納めに行くのだろう。
無意味な追跡はしたくない。
880関 × ナカマ『お客さん』3:2007/09/09(日) 03:00:51 ID:EDoHfwi4
田中も特にそれを咎めようとはせず、ナカマの消えた角に視線を留めた。
「気持ちがいいことではないでしょうね。特にあの子は、人一倍責任感が
 強いから。疑われているように感じれば負担になってしまうでしょう」
「結局、我々に出来ることって何なんでしょう」
関は力なく言うと、ハンドルに体を預けた。答えはわかっている。
こうしてただ『呼ばれる』までの間、彼女を見守ることだけだ。

様子がおかしい?報告書を書きながら、幾度憤りを感じたことか。
わずか14歳の少女が、死を予告されて異常でない方が異常だ。
「でもまだ私達に出来る事だってあるはずよ」
田中の言葉が、沈みかけた関の思考を呼び戻す。
「関くん、ここはしばらくあなた一人に任せます」
「は?」
どうしてそうなるのか。田中はいつものように淀みなく説明を始める。
そしてこうなるとまず反論は出来ない。
「一対一の方が話しやすい事ってあるでしょう?
 半井さん、きっと何か話があるのに言い出せずにいるのよ」
「ちょっと待って下さい!」
それは、本気で待ってほしい。関は慌てた。
「摩子ちゃんは女の子です。そういうことならカナタさんの方が相談しやすいでしょう」
契約者である子供達には多いに同情しているし、軍人として彼らを守って
やりたい気持ちに嘘はない。だが、そもそも中学生女子など関からすれば
最も縁遠い存在なのだ。あの年頃の女の子が何を考えているのか、まして
うまく話を聞いてやる方法など見当もつかない。

「それに自分は…カナタさんほど、子供たちに信用されていません」
これも、本心だった。
田中は時に必要以上に彼らに踏み込み、姉とも母ともとれるような言動で
子供達に確実に受け入れられていた。それが関にはできない。
立ち入れば、それだけ自身も傷つく。近づいた分だけ冷静さを失う。
その危ういバランスの上で職務をこなす。そんな器用な真似は出来そうにない。
「関くん、もっと自信を持って」
どこか悔しそうな若い同期の姿に、田中は表情を和ませる。
関は少しだけ田中のこの顔が苦手だ。この女性にはかなわない、と思う。
「あの子たちはちゃんと見ているわ。私達が思うより、ずっと周りが見えているもの」

頑張ってね、最後にそれだけ言うと田中は本当に帰ってしまった。
駅まで送るという申し出も「ここで彼女を待っててあげて」という一言に
やんわりと拒否された。
単独行動はどうということはない、ないのだが。
シートに深く寄りかかり、関は子供達のことを考えた。男子はいい。
あの感情の振れは自身にも経験があることで、自分の言葉も通じるだろう。
だが女の子たちとなると話は別だ。
これがカナちゃんだったらまだ気は楽だ。あの子は子供だ、それに頭もいい。
マチだったら、アンコだったら。
一人一人の姿を思い浮かべて関は思考を打ち切る。不毛だったからだ。

夕暮れになってもナカマは戻らなかった。そろそろ探しに行った方が、と
関が思い始めたちょうどその頃、彼女の細いシルエットが曲がり角に見え  
安堵する。ナカマは少し疲れたような様子で(ここ数日はいつもそうだ)
夕暮れの落とす自分の影と向かい合うように地面を見つめて歩いていた。
表情がわかるくらいに近づいた時、ふと顔を上げたナカマと目が合う。
こちらに気付いたのだろう。
881関 × ナカマ『お客さん』4:2007/09/09(日) 03:02:31 ID:EDoHfwi4
だがやはり様子がおかしい。気付かぬふりをして通り過ぎてしまおうか、
迷っているようにも見える。もっとも、無視を決め込むにはナカマの
挙動は不自然に過ぎた。
その様は実に歳相応に見え、かわいいものだと関は思い直す。
これはこちらからきっかけを作ってやるべきだろう。話もしなければ。
窓越しに手を振ると、ナカマはすぐにこちらへ駆け寄って来る。
トレードマークのポニーテールが揺れていた。
そんなに急がなくてもいいのに。そんな事を思いながら関はルーフを下げ
彼女が来るのをしばし待つ。細い子だ。
全体的に体が薄いのだ。まさか栄養失調ということはあるまいが、本当に
ちゃんと食べているのだろうか。ダイエットなどで体を作る期間を無駄にして
しまったら今後の成長にも影響するのに。
そこまで考え、思考が暗転する。この子に「今後」は無い。

半井 摩子。彼女に関する調書は頭に入っていた。
裕福とは言えないが中流ではあるはずだ。そのデータには彼女には父親が
いないこと、あまり表に出したくない稼業に母親が就いていることも含まれて
いたがそれは無闇に触れるべきことではない。

走り寄って来たナカマは一礼はしたものの、予想に反して無言のままだ。
今日も飾り気のないシャツにジーンズという服装で、それが余計に彼女を細く
見せている。
やっぱり何か相談事だろうか。それも余程言いにくいことなのだろう。
何か言いたげに関を見るのだが、いざ口を開こうとしてはその度に弾かれた
ように目をそらしてしまう。いったいどうやって水を向けたものか。
考えあぐねた関が発したのは
「お帰り、遅かったんだね今日は。お疲れさま」
そんなごくあたりまえの会話だった。

それでもきっかけにはなったらしい。
「今日はいつものところじゃなくて、一つ先のお店に納品してきたんです」
普段通りの落ち着いた声でナカマが答える。
「慣れない道を通ったら帰りに迷ってしまったので」
「なんだ、言ってくれればついでに送ったのに」
何ということはない一言のつもりだった。が、にわかに表情を固くする
ナカマを見て関は後悔した。
「いいえ、これは私の仕事ですから。他人の手を借りる訳にはいきません」
きっぱりと言う。
そうだ、この子はそういう子なんだ。
しばし居心地の悪い沈黙が下りる。このままナカマが帰ってくれればと関が
気弱な思いに駆られ始めた頃、次に言葉を繋いだのはナカマだった。
車内を覗き込むように見回し、物問いたげに関を見る。
「…田中さん、いないんですね」
──── だから、言ったじゃないですか。
ここにはいない人にそう言ってやりたい。居たら言えないが。
「うん、田中さんもいろいろ忙しくてね」
やはり自分では駄目か。そうだろうな。
落胆を隠しつつなるべく優しく聞こえるように答える。せめて話くらいは
聞いてやりたかったが、どのみちこの調子では力になれそうにもない。
882関 × ナカマ『お客さん』5:2007/09/09(日) 03:04:04 ID:EDoHfwi4
しかしナカマは立ち去るでもなく、上目使いで車窓に屈みこむように身を
寄せるとじっとこちらを見ている。話してくれる気になったのか。
頬を紅潮させ意を決したナカマの言葉、それは。
「あの、関さんは…彼女は、いないんですか?」
「え?!」
予想外だ。想定外にも程がある。なぜそういう話になる?
「どうなんですか」
重ねてナカマが問う。
真剣を通りこして必死な表情、それを見て思い出す。
この子は冗談でそんなことを訊く子じゃない。
「いや、残念だけど」
だから正直に答えた。見栄を張っても仕方がない。

口にしてからああ、と関は納得し同時にこれは荷が重いとも思った。
それなりに年長者としてあるいは軍人として、子供に聞かせられる良い話の
一つや二つは探せばあるが、こと恋愛相談なら自分にアドバイスできること
など多くはない。というよりほとんど無い。
だが意外だった。
この年頃で恋心を抱く相手がいるのは不思議ではないが、調書を読む限り
ナカマは学校に馴染んでいるようには思えない。むしろそういった甘やかな
ものをあえて遠ざけている節を感じていたのだが。
好きな子でもいるのだろうか。応援してあげたいが、役には立ちそうもない。
しかし続くナカマの発言は、関の予想をはるかに裏切っていた。

「じゃあ、私を…私を、買って下さい」

「何…を、だって?」何を言っているのか。
聞こえているはずなのに意味が、わからない。
一度吐き出したからだろう、ナカマの言葉は今度はとまらなかった。
「私を、です。私を買って下さい」
「摩子ちゃん…それ、どういう意味か」
「わかっています」
「なっ…」
「私とセックスして、その換わりにお金を下さいって言っているんです」
間違いようのない言葉できっぱりと言うナカマの姿は絶望的だった。
「なんで!そんな、君は」
思考がまとまらない。目の前にいるこの痩せっぽちな少女が。
「お金が、要るんです」
こんなにも簡単に、その体を売ろうとしている。
「どうして」
「それは、言えません」
ナカマはぎゅっと手を握りしめ、まっすぐにこちらを見ている。
何か言わなくては。こんなこと絶対に間違っている。そう思うのに、少女の
固い表情ときっぱりとした口調に関は気圧されていた。
「お金なら、僕がなんとかするよ。だから」
「駄目なんです。だって私には…もう返せないから」
そんな、そんな理由で自分を投げ出すのか。
「関係ない、なんなら国防省にかけあってもいい」
そうだ。軍人である関や田中にもしもの事があった時には、国防省を通して
国から何らかの補償がなされるだろう。だが子供達はどうだ。秘匿性を理由に
家族はおろか本人にすら何ら提供されていないではないか。
883関 × ナカマ『お客さん』6:2007/09/09(日) 03:06:01 ID:EDoHfwi4
望みもしない道を追わされ、未来を失い、人知れず戦い、死んでゆく。その
子供達を前にどんな金額だろうと見合うものはない。
しかし、ナカマは揺るがなかった。
「それじゃあ自分が許せないんです。自分で稼いだお金しか、使えない」
絶句する。関の言葉など通じない。放心したように少女を見つめる。
ナカマは挑むような眼差しでその様子を眺めていたが、ふと視線を外す。
諦めにも似たそれは彼女が今まで見せた中でもっとも寂しげな表情だった。
「関さんが買ってくれないのなら、他の人に頼みます」
その言葉に一度は押しやった記録が関の頭をよぎる。
いるのだろう、彼女の周囲には。彼女を「売る」ことができる人間が。
そしてこの少女が。死を前にして何を思い、どんな想いでそうしたかも
知らず、ただ一時の愉しみのために弄ぶのだろう。
「駄目だ、摩子ちゃん!」
目が眩むほど一気に沸き上がる感情。それが怒りだと気付く前に関は車の
ドアを開けて飛び出していた。去りかけていた少女の腕を掴む。
あ、と短く叫ぶナカマを捉える。先ほどまでの固い眼ではない。ナカマは
腕を掴まれたまま、それでも関を見ようとはせず小さな声で言う。
「もう、時間がないんです」
「だからって、他にも方法はあるはずだ!こんな、こんなやり方は、最低だろ?!」
取り返しのつかない言葉。ナカマは腕を振りほどくと、関を見つめ
「でも私のお母さんはっ…!」
顔をゆがませ、崩れた。
関は思い出す。この子は操縦者になどならなくても、この年齢になるまで
充分に耐えてきたんだ。そうやって積み重ねて、これからやっとその意味を
知るはずだった。なのに。
「大きな声を出して、すまなかったね」
静かに声をかける。顔をあげたナカマは泣いてはいない。だがそれは、ただ
涙を意思でこらえているだけだ。
「お願いします。私の…私のお客さんになってください」
「摩子ちゃんは、本当にそれでいいの」
「はい、よろしくお願いします」
こんな時だと言うのに、ナカマはきちんと頭を下げる。それが、関には
たまらなく哀しく見えた。

「今日、お母さん帰らないって」
そう言うとナカマは自宅へ関を招いた。彼女の母親がなぜ帰らないのかは
聞かなかった。とにかく今、彼女を止められるのは自分だけのようだ。
操縦者のメンタルケアには軍も科学者も興味が無いのか、おざなりなのが
現状だ。だから、せめて近くにいる者が彼らを支えるべきだと関は思う。
それが些細なことであっても望みは叶えてやりたい。だが今求められている
ものは何だ?叱りつけてでも考え直させるべきか。話を引き出すべきか。
部屋に通されてからも、関はいまだ態度に迷っていた。
そして今「布団を敷くから」という衝撃的な理由で廊下に立たされている。
襖越しにナカマの気配が伝わってくる。本当に布団を敷いているようだ。
状況は不利になったと思っていい。

─── 何、してるんだろう私。
布団を敷く。
必要以上にシーツの皺を丹念に伸ばす作業に没頭していたナカマは、ふと
きりがないと気付き、手をとめた。他にすることがあるはずだ。
髪をほどいて軽く頭を振ってみる。ブラシを入れようとして、思い直す。
こういうのはもっと前にやっておくべきだった。
服もいつもの普段着だし、下着だって格別なものじゃない。
884関 × ナカマ『お客さん』7:2007/09/09(日) 03:07:06 ID:EDoHfwi4
その、初めて、なのに。
いまさらながらナカマは少し後悔する。今からでも着替えるべきだろうか?
襖を見る。その向こうに居る、この部屋に馴染まぬ男性の姿を思う。
こんな格好じゃガッカリされてしまうかもしれない。
「どうして、関さんにこんなこと言っちゃったんだろう…」
誰でも良かった。むしろ全然知らない誰かの方が良かったはずなのに。
服は脱いでおくべきなんだろうか。
よくわからなかったが、何となく人に脱がされるのは厭だなと思った。
「あの、なんなら僕はここで話を聞くけど」
襖越しに遠慮がちな関の声を聞き、ナカマは飛び上がりそうになる。
思ったより長く待たせていたのかもしれない。
「やっぱりこんなことが正しいとは思えない。摩子ちゃんの気が変わったのなら」
「だ、だめです!」
自分でも驚くほど大きな声で関の言葉を遮る。
今この機会を逃せば、もう望みはかなわないかもしれない。
ナカマは一瞬だけ躊躇し、それから一気にジーンズを下ろした。
「…あ」
どうして今まで忘れていたのか。
身体中に冷たい液体を流し込まれるような錯覚。自分の体なのにうまく力が
入らない。立っていられなくなってナカマはその場へしゃがみこむ。
「摩子ちゃん?大丈夫?」
物音に異常を感じたのだろう、襖越しの声が緊急のそれへと変わる。
「関、さん」
すぐそこにいる人へ呼びかけているのに、喉がかすれてうまく声が出ない。
それでも彼の耳には届いたらしい。

襖を開けたことを関は後悔した。

日は落ちかけていたがナカマが望むほどあたりは暗くない。
それでもいつのまにか室内と廊下の明るさは逆転していて、襖に手をかけた
関の影と四角い形をトリミングしたまま長い明りを差し入れる。
夕闇の寄せる部屋の中央、シャツ一枚という不自然な格好で布団の上に少女は
座していた。髪を下ろした姿は、いっそう幼い。
だがそんなものに気がついたのは後だ。真っ先に関の目に飛び込んできたのは
少女の白い両腿に印された死の宣告だった。
ナカマはわずかに顔を上げ、すがるような眼で関を見る。
「…って」
「摩子ちゃん」
「怖くて」
窓から見えていた街頭に明りが灯る。
「怖くて、たまらないんです。一人でいると、叫びだしそうになる」
当たり前だ。けれどそんなことすら誰にも言えなかった。
「おかしいですよね。今までさんざん義務を果たせって言ってきたのに」
初めて告白するのだろうそれは半井摩子の嗚咽だった。
ああ、やっぱり。この子は声をあげずに泣くのか。そう思いながら、関は
部屋に足を踏み入れる。布団の感触で足もとは柔らかい。
「もっと皆のこと知りたかった。私のことも知っててほしかった」
ナカマの前に膝をつく。目の前にいるのは、どこにも逃られずに怯える女の子だ。
「私、私…やらなくちゃいけないことだって、わかっているのに」
これ以上は聞いていられなかった。今必要なのは言葉ではない。
不意に温かいものに包まれ、ナカマは言葉を失った。それが関の腕だと気が
ついた時、鮮明に思い出す。今まで何度も反芻したその光景を。
885関 × ナカマ『お客さん』8:2007/09/09(日) 03:08:50 ID:EDoHfwi4
あの時、ジアースの中で私が『選ばれた』瞬間に ───
皆が振り返り、そしてうつむき視線をそらした。
そうだろう、どんな表情をすればいいのか。私もそうしてきた、多分。
そのくせ何人もの搭乗者を追い込んでいたんだ。
─── 一番、近くにいた人の表情を私は覚えている。
厳しい顔だった。
安堵でもない、憐れみでもない、むしろ怒っているみたいだった。
『私は、私の義務を果たします』
そう自分に言い聞かせる私をまっすぐに立つその人は見ていた。
それを、私は覚えている。
「…関さん」
「うん」
関は短く答え、片腕に収まるような少女の細い身体を抱きしめる。ナカマの
腕が遠慮がちに背中に回るのを感じる。それが、望みなら。他に出来る事が
ないのなら。関は自身の倫理や常識といったものに最後の蓋をした。

とはいうものの。
ナカマの細い体をどう扱ったらよいのか。肩に手をかけたまま、関は今さらの
ように戸惑い彼女の顔を見た。視線を受けたナカマは、そっと関の手を
振りほどくと立ち上がり、壁にかかっていたハンガーをとる。
「上着、脱いでください」
これではどちらが相手を気遣っているのかわからない。
「ありがとう。でも、いいよ」
それでもそんな日常的な仕草は部屋の空気をなごませてくれた。
ショルダータイプのホルスターは着脱に時間がかかる。体に馴染んだベルト
から解放されてしまうと妙に身は軽く、心細いような気持ちになる。
通常、関は室内でも上着をとることはしない。
その理由がこれだ。ジアース対策委員に編入されてから、彼には銃の携行が
許可されている。ジアースをめぐる子供達の周りは常に危険だった。ほどんと
条件反射で安全装置を視認し、折り畳んだ上着の中にそれを押し込む。
見てはいけないような気がしてナカマは目をそらす。どうしてそう思ったか
自分でもよくわからなかったが仕事を惹起させるものは厭だった。

「気が変わったら、すぐにやめるから」
あらためて向き合うと再び正座した格好のナカマは目に見えて体を固くする。
本当に体が薄い子だと関は思う。女性と呼ぶには幼すぎる。だがもう考えまい。
小さな顔、細い首。薄水色のシャツから覗く手首もどこまでも細い。その下に
伸びる脚にはあの不吉な印がくっきりと刻まれている。そのせいで余計に色が
白いのだと感じる。
手を伸ばし頬に触れると、びくりと肩を震わせた。
「…あ」
キスをするのも初めてなんだろう。
出来るだけゆっくり進めよう。いつでも止まれるように。
最初は、唇に軽く触れるだけの接吻を。
唇が離れるのをナカマはぼんやりと見上げていた。人の唇って柔らかいんだ、
と思う。
「外すよ」
関は彼女のシャツに手をかけこちらを見ていた。意識を戻されナカマは
にわかに全身を強張らせる。それがよほど不安そうに見えたのだろう。
「やっぱり、やめておく?」
少女はかすかに首を振ると小さく答えた。
「つ、続けてください…」
よほど恥ずかしいのだろう、語尾は消え入りそうだったが意思は固い。
その姿はじわり、と関の心に黒いものを残した。それが見る者に加虐的な
気持ちを抱かせるものだと彼女は気付いてもいない。
886関 × ナカマ『お客さん』9:2007/09/09(日) 03:10:14 ID:EDoHfwi4
上から順番にボタンを外していく。一つ、二つ。三つめのボタンを外した時
シャツの下につつましく覆われた胸が覗く。
予想した通り、白い飾り気のない下着がナカマの肌を隠していた。健康的と
言って良いデザインのそれは欲情を誘うものではなかったが、彼女らしい
ものだった。
最初に部屋に入った時にも感じたのだが、どうもナカマはあえて女らしさや
色気を遠ざけているように関は思う。この年頃ならばそれなりに興味を持ち
自身を装うのが普通だろうに。
見ると、ナカマは視線に耐えるようにうつむいている。ほんのりと目元を染め
恥ずかしさに震えだしそうなのをじっと押さえていた。
「あの、そんなに見ないでください」
ナカマにそう言われてはじめて関はずいぶんの間、彼女を無遠慮に眺め回して
いたことに気付く。品定めされているように思ったのだろう、ナカマは視線を
落とすと
「変、ですか、やっぱり」
申し訳なさそうに呟く。
それがたまらなく可愛らしく、関は思わず微笑んだ。
「いや、そんなことはないよ」
いくら厳しく模範的に振る舞おうとしてもナカマは自分が思うよりはずっと
整った容姿なのだ。自然に女らしさを身にまとう頃にはさぞ色香のある美人に
成長していただろう。
その時に彼女を抱く男が癪だな。あり得ない仮定に下らぬ嫉妬まで覚える。
「いいんです、そんな」
関はまだ何か言いたそうなナカマの言葉を遮って首筋に顔を埋めた。
「…っん」
不意を衝かれたのだろう、ナカマは身をよじって反射的に逃れようとするが
腕を押さえられてどうにもならない。関は構わずに首筋から耳元へ、唇で
その形をなぞりあげていく。その課程で邪魔になった彼女のシャツを少しずつ
剥ぎながら、あらわになった肩にも唇を這わせる。
「…あっ…く、くすぐった…」
何、これ。すっかり混乱したナカマは知らずに声をあげていた。
くすぐったいのに、ぞくぞくと背筋が粟立つ。
「摩子ちゃん、気持ち悪くない?」
耳元で関が訊く。こんなに近くに他人の息使いを聞いたことはない。
音が空気の振動で伝わるのは知っているけど、きっとこういう事なんだ。
「は、はい…気持ち悪くは…ないです」
「じゃあ続けるけど…厭になったら言うんだよ」
いつでもやめるから、という言葉を省略して関はナカマの髪を撫でた。
その心遣いは彼女にとってなぜか切なく感じられた。

二人の間に言葉がなくなると微かな金属音が耳について、ナカマはなんとなく
今まで訊くのがためわられていた疑問を口にする。
「関さん、その、手はなんともないんですか」
関は動きを止め、体を起こすとナカマを見て困ったように言う。
「ああ、これ…気になるかい?」
「くっついたんですか」
その子供らしい問いに、関は思わず笑いそうになる。
「いや、そうじゃないけど。全部を修復するのはさすがに無理でね。
 大丈夫、日常生活には支障ないよ」
887関 × ナカマ『お客さん』10:2007/09/09(日) 03:12:08 ID:EDoHfwi4
「あの時はびっくりしました。だって」
それは関にとっても同じだ。あんなものが存在し、なおそれを上回る事態など
誰も予想しえなかった。馬鹿げている。
考えないようにしていた事を思い出す。コエムシは今も「視て」いるのだろう。
追いつめられた末に、こうして身を寄せる少女とただそれを受け止めるしか
できない自分を。

構うものか。見えぬ相手に毒づく。
巨大な影に追い立てられるような焦燥はいつでもそこにあった。そこから
逃れるように関は再び少女の唇を求める。今度は少し強く。
ナカマは大人しく目を閉じたが、唇を軽く噛まれると驚いたように口を引き
結んでしまう。無理もない。
「摩子ちゃん…すこし、口を開けてくれるかな」
「…はい」
小さな顎を引き、促すとナカマは素直に唇を開いた。その素直さに関は一瞬
胸を衝かれる。自分は、何をしているのだ。けれどここで熱を失えば二度と
再びこんな真似は出来ないだろう。関は自身の想いをねじ伏せるように強引に
ナカマの唇をふさいだ。
あきらかな異物の挿入にナカマは大きく目を見開く。
「んぅ…んっ…!」
挿しいれた舌で口腔を犯す。片手で収まるような小さな頭を支えて逃げようと
する舌に深く絡める。
「ふっ…あ」
苦しげに胸にすがりつく手の頼りなさに一度は唇を離した。ごく近い距離に
互いの目を見合ったまま、ようやく解放されたナカマは大きく息をつく。
呼吸を整えようとなだらかな胸が上下する。
わずかに瞳を潤ませ、見上げるその顔に戸惑いはあるが嫌悪はない。それでも
関は聞かずにはいられなかった。
「続けても…?」
再び手を伸ばし頬に触れる。ナカマはもう身を引こうとはせず、小さく頷いた。
二度、三度と次第に長く深く少女の唇を奪う。受け入れ方を覚えたのだろう、
拙いながらもナカマは精一杯応えようとする。
「ん…ふ…」
向かい合い座したまま、互いに溶けるように何度も舌を絡め合う。背中に
回された関の手がふつりとナカマの胸を解放する。またひとつ身を剥がされて
いくのを感じながらもナカマは唇を離そうとはせず、関もまたそれを許さない。
直に空気に触れるのを嫌うかのように身を寄せた少女の身体を引き寄せる。
「は…」
名残惜しく唇を舐めて離す関の体へしがみつくように、ナカマはその背に手を
伸ばし、何気なくその先に視線を送ってどきりとした。
関の肩の向こう、そこにはこちらを向くように鏡があった。関の背中に隠れて
自分の姿はほどんと見えない。
やっぱり、男の人って大きいんだ。そんな事を回らない頭で考えた時
「あっ…!」
首筋に押し当てていた唇で、関がかるく耳を噛んだ。
そして、ナカマは見てしまった。今まで見たこともない表情で声をあげる
自分の姿を。
あれが…私…?
忘れかけた羞恥心が一気に体を支配する。何年も過ごして来たこの部屋で
乱れて声をあげる自分が、たまらなくいやらしい存在に思えた。
目を逸らす。見たくなかった。なのに、見てしまう。
888関 × ナカマ『お客さん』11:2007/09/09(日) 03:14:22 ID:EDoHfwi4
「ひゃっ…!」
背中に回されていた関の手がゆっくりとウエストをなぞって降りてゆく。
くすぐったい、でもそれだけじゃない。もっと触ってほしい。ナカマはただ
それだけを思い広すぎて回しきれない背中に精一杯腕を伸ばす。鏡の中の
それも同じように関を抱く。その女はとても嬉しそう、だった。
触れられているところだけに熱が灯るような錯覚と虚像の中の自分。
ナカマの身体を確かめるように添わせていく関の指にうまく頭が回らない。
「あ…っん」
どうしようもなく追いつめられて、ナカマは関を見上げた。

「…摩子、ちゃん?」
腕の中、間近に見つめられ関は息を呑む。
小さく開いた唇、とろりとした瞳。僅かに汗をにじませ、すがるように自分を
見る少女はこの上も無く侵しがたいものに見えると同時に、滅茶苦茶に壊して
しまいたくなるような、そんな危ういバランスを関に突きつけていた。
白い肌、薄い胸が乱れた呼吸に揺れている。
「関さん」
「…焦らなくて、いいよ」
半分は自戒のための言葉。このまま続ければ、自分はどこかでナカマを壊して
しまうだろう。関は意識したことのない凶暴な欲求が、頭をもたげるのを
自覚していた。その扉は永久に閉ざしておきたい。
しかしそんな思惑は、どこまでもまっすぐな少女の前に無力だ。
「お願いですから、優しくしないでください」
いつでも引き返せるという鍵をナカマに委ねることで逃げ道を用意している。
それを指摘されたようで。
「どうして」
「それは…」
それはナカマにもわからなかった。ただ、関がナカマを気遣う発言をする度に
寂しさを感じている。そして、虚像を見せつけられてわかったことがある。
私は嬉しいんだ。こんな状態でも。この人に、抱かれることが。
「あ…」
ぽたり、と涙がこぼれた。今までずっと我慢できたのに。
気付いてしまうと簡単だった。
怖いんだ。本当に求められている訳じゃないことを思い知らされるのが。
誰でも良かった、なんて嘘だ。今頃気がつくなんて。

「摩子ちゃん」
厭だ。聞きたくない。
飛び込むようにナカマは関の首に手を回し、つい先ほど覚えたように唇を
寄せてそれをふさいだ。溢れる涙もそのままに滑り込ませた舌で相手を求める。
「…んっ」
驚いた関が応えるより早く、夢中になってそれを吸う。ぽろぽろと、もう
止められなくなった涙をこぼしながら。それは、あまりにも無心で一途な
求愛だった。
「っは…あ…」
だがナカマの知識はそこまでだ。ここから先のやり方なんて知らない。
鼻先が触れるほど近い場所で瞳を合わせ互いに息を交わした一瞬の後。
ぐるり、とナカマの視界が一転した。
見慣れた天井。それが自分よりずっと大きな影で隠れている。
今まで見せたことのない表情。押し殺したような低い声。
「もう、訊かないよ。…いい?」
両肩を痛いほどに押さえつけ、関が見下ろしていた。
その肩の痛みが今は嬉しい。涙を瞳に溜めたまま、ナカマはこくりと頷く。

「はい。関さんは私の…最初で最後の ─── お客さん、だから」
889名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 03:17:00 ID:EDoHfwi4
とりあえず、ここまで。長くてすまん、残りは明日
コダカニ>>871氏、投稿直後に重ねてしまって申し訳ない
自分もカニ欲しい。。。
890名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 14:11:49 ID:VfgklwWN
関ナカマの続きwktk!


カニ良いよカニ少女〜〜〜GJ!!!
嬲り殺しまで書かないの?
891871:2007/09/09(日) 17:29:52 ID:kPkxPXvd
関ナカマいいなー!関さん誠実でナカマ健気でめちゃくちゃ萌えた。新しい萌えを発見したよ!
続きwktkお待ちしてます。
投下は混ざらなければ別に問題ないですよ。ルールとかあるわけじゃなし。
どんどん投下されて盛り上がれば嬉しい。ぼくらの好きだ!

>>890
you書いちゃいなyo!
892名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 17:59:59 ID:fuxkaPpN
書くのは良いけど容量ヤバいぜ?
俺は携帯からなんで無理だが次スレ立てした方が良いぞ
893名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:02:12 ID:vUVKBLS5
じゃあちょっくら立ててくる。なるたるも統合でおk?
894名無しさん@ピンキー:2007/09/09(日) 23:31:10 ID:vUVKBLS5
誘導できるか心配だったので立ててしまった。
次スレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189348018/
895関 × ナカマの:2007/09/10(月) 10:01:49 ID:1f1dUTqe
スレ立て誘導ありがとうございました。
後半戦は保守がてら向こうに投下させて頂きましたよ、と

レス読めてないので夜また来ます遅刻する
896名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 21:08:45 ID:+N8uOQ/S
うめうめー
897名無しさん@ピンキー:2007/09/10(月) 22:43:03 ID:PbC7Yh6S
////
898名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 01:45:42 ID:hlq8F+TU
埋めてみるよ
神絵師のダイナカが次スレで投下されますように
899名無しさん@ピンキー:2007/09/11(火) 12:50:33 ID:3aVXbKlM
俺も密かにダイナカ絵を期待して待ってる
wktkだ〜
900名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 00:34:29 ID:/lFD8iJA
埋めー
ジャベリンはゴンタとドラムの愛の結晶。
901名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 20:54:18 ID:MWxB3kbO
>>894
乙ー!

ダイナカもうちょい待ってくれぇ
繋ぎでこちら投下!

マキ×ナカマ
ttp://www7.uploader.jp/user/nikita/images/nikita_uljp00006.jpg
真夏に描いたんでもう季節外れ??
エロではないぞ
902名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 21:04:02 ID:ZXpz5EGm
キタァァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)ァァ(  ゚)ァァ(  )ァァ(`  )ァァ(Д`)ァァ(´Д`)ァァ゜(゚´Д`゚)゜。ウァァ・゜・(ノД`;)・゜・ァァァァン!!!

ありがとう!ありがとう即保存した!!
めっちゃくちゃ可愛いよ二人とも……たまらんです。眼福過ぎる神ありがとう
ところでわがままだけど、これまでの絵も再うpしてくれたらうれしいな……
903名無しさん@ピンキー:2007/09/12(水) 21:04:30 ID:MWxB3kbO
ぐあ…間違えた
マキ×ナカマ て何かのカプみたいじゃないかwww

「マキ&ナカマ」が正解です
904名無しさん@ピンキー
>>901
ナカマとマキキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
ありがたく保存した
浴衣いいよ浴衣