689 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 04:14:46 ID:aFAbIXOq
エロ━━━━(゚∀゚)━━━━イ !!!!!
流石道萬さん!
しかもフミエ、腕って… おっかねえ娘だなぁw
毎回素晴らしいです。次回作も楽しみにしております。
非常にエロい作品の後で申し訳ありませんが、
恒例の寸止め劇場投下させて頂きます。
今回はちょっとフミエ視点で書いてみました。が、まだエロシーンに到達しません…
ヤサコを巻き込んだ続編激しくキボン
691 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 04:31:33 ID:aFAbIXOq
四話の2【ダイ×フミ】1/3
ダイチを見据えるフミエに、先程の様な仁王像の威圧感は無かった。
ただ、無表情を装っているその実、顔は上気し鼓動は自分でも聞こえる程高鳴っている。
それを悟られぬよう顔を背け、矢継ぎ早にダイチを責め続けた。
機微に疎い上、打ちひしがれた今のダイチは気付きもしないが、
端から見ればフミエは真逆の意味の言葉を駆使して
大好き!大好き!と連呼しているに等しかった。
すれ違い、食い違っていたのはフミエもまた同様だった。
お互いが良く似ているが故に、惹かれ合い、反発する。
自分の嫌な部分を相手の中に見る時がある。
自分に無いものを相手の中に見付ける時もある。
お互い勝負にこだわるのも、そんなギクシャクとした隙間を埋める応急処置でしかなかった。
勝っても負けても常に二人は敗者だった。
ただ、罵り合っている間だけ、心が安らいだ。
メガネを初めて手に入れ、追いかける様にダイチがメガネを買った時は正直嬉しかった。
共通の話題で語り合えるかもしれない。学校の授業よりも熱心に、メガネについて勉強した。
何故だかダイチは常にヘソを出している。その為に体操服すら改造している程だ。
流石に真似はできないが、服を買う時は自然と小さめの、タイトなものに手が伸びる。
低学年の頃、母親が洗濯に失敗して縮みまくったお気に入りの服を、
我慢して学校に着て行った日のダイチの言葉をフミエは忘れない。
「お、カッコいいじゃんか。ヘソ出せよヘソ。」
何でこんなに好きなんだろう?
ひと際騒々しくなった蝉の鳴き声に我に帰る。
ダイチを見ていたつもりがいつの間にか自分の内側の何かをじっと凝視していた。
まさかぼぉっとしている間にダイチが返事をくれたのではないかと心配になったが、
そんな素振りを見せぬ様、努めて冷淡に問いかける。
「別に良いのよ、何も言う事が無ければ。今まで通り何も変わらないわ」
良い訳は無かった。何もかもを変えてしまいたかった。
これは自分に対する挑発でもあったのだろう。
そしてその挑発に対するダイチの反発を期待した。
692 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 04:32:04 ID:aFAbIXOq
四話の2【ダイ×フミ】2/3
「いや、このままじゃダメなのは俺でも分かる」
思った通り、挑まれれば嫌でも逆の選択をする。
なんて分かり易い。なんて単純。なんてー… 自分そっくり。
フミエの胸がほんの少し痛んだ。こんな、相手を追い込んで答えを引き出す様な真似をして良いのか?
それで好きと言われたとして、自分は納得出来るのか?
自分から好きと言えない臆病さを心底呪った。
こんな卑怯な自分を好きになって、本当にいいの? ダイチ
それとは別に、長い間フミエの心をちくちくと苛み続ける問題があった。
そもそもダイチは本当に自分を好きなのだろうか?
自分が好きで居て欲しいと思うあまりに、勝手に思い違えたフミエの願望に過ぎないのではないか?
次にダイチが口を開いた時、そこから発せられるのはまた、あの恐ろしい言葉なのではないか?
この前の夏祭りで、ダイチと共に夜店を巡った。
今更好きだと言われるはずも無いと思っていたし、ダイチもどこか上の空だったが
それでも祭りは心が躍る。昔を思い出して久しぶりにウキウキした気分に浸っていた。
だが、そこで浴びせられた言葉はフミエを恐怖のどん底へまで蹴り落とした、
言葉の持つ恐ろしいまでの威力を初めて知った。
その時は涙は出なかった。傍目にはきょとんとしている様に見えただろう。
高揚した気分から一気に奈落の底へ落とされたショックの大きさに、空っぽになってしまったのだ。
その後、帰宅して就寝する迄の間、何をしたか良く覚えていない。
ベッドでタオルケットに包まり、そこでやっと涙が溢れ出して今度は止まらなくなった。
冗談でも恐ろしかった。あの時は明らかにダイチの様子が変だったし、
罵声を浴びせる様に告げられたので、本心からの言葉では無いと知れた。それでも泣けた。
もし、あの時「ごめん、実は…」と、謝りながら告げられていたら、立ち直れなかったかもしれない。
「好きだ」
何の前触れもなくダイチが放った言葉を、フミエは一瞬理解出来なかった。
ダイチはダイチでフミエを真っ直ぐに見れず、真っ赤な顔できょろきょろと視線を周囲に泳がせている。
693 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 04:32:27 ID:aFAbIXOq
四話の2【ダイ×フミ】3/3
「いや、その…昔からずっと好きで、今も好きで、これからも…」
だんだんと弱まる語気にシンクロする様にダイチの頭は俯き、
遂には床を見つめ指先で床板の木目をなぞり始めた。
「だから…今までの事は、謝る。スマン。胸を触ろうとしたのもー…」
ぎしりと床板が鳴る。顔を上げると視界が真っ暗になった。
吃驚すると同時に、何か温かい柔らかな物に包まれる感覚を覚える。
フミエの胸に抱きしめられていると気付く迄に数秒かかった。
「ほんっと馬鹿ね。それだけの事言うのに何年かかってるのよ」
フミエは膝で立つ格好でダイチの顔を抱え込み、
それでも足りないという様に自分の頬をダイチの頭に押し付けている。
胸の辺りでがもがもがと呻くダイチの吐息が胸に当たり熱い。
次第にダイチのうめき声が荒くなり手をバタバタし始めて、
フミエはやっとダイチの呼吸が出来ない事に気が付いた。
「ぶっはぁっ!こ、殺す気か!」
抱きしめられた所為か、息が出来なかった所為か、茹でたみたいに真っ赤な顔でダイチは訴えた。
頭は胸から解放されたが、フミエの両の掌はまだダイチの頬に置かれている。
それを引き寄せる様にフミエの顔がダイチの眼前まで近づいて来た。
「ダイチ、アタシも好きよ。ずっと」
言い終わるか終わらないうちにフミエの唇がダイチのそれに重なる。
ヤケドするかと思う程熱く、そして柔らかかった。
有無を言わせぬ早業でお互いのファーストキスを交換すると、
フミエは元居た場所へさっさと戻る。
今度はダイチに向き合わず、鳥居の方を向いて階段に座ると両手で頭を抱えて俯いた。
「うー!アタシってば何やってんのよぉー!」
ダイチの位置からはからはその表情は見えなかったが、
髪の隙間から覗くフミエの耳はダイチの顔に劣らず真っ赤だった。
━つづく━
694 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 04:48:41 ID:aFAbIXOq
もっと読みたいお><
>勝っても負けても常に二人は敗者だった。
>こんな卑怯な自分を好きになって、本当にいいの? ダイチ
>「ほんっと馬鹿ね。それだけの事言うのに何年かかってるのよ」
素晴らしい。
さあ、俺と一緒に出版社を回ろうか。
697 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 05:30:42 ID:aFAbIXOq
>>696 フミエスレにも居ませんでしたか?w
あの時誘われてた方と自分は別人ですが、
そこで読んだSSが今回自分が書くきっかけとなりました。
あれを書いた方がこれを読んでくれていれば良いなぁと思います。
>>696 ちょw
ここも覗いてたのかw
>>697 これは何たる偶然。
自分はまずフミエスレで素晴らしい画に出会い、
その後ここを覗いてみたら…
…いや、実は俺も(会話劇の者ですが)夏祭りと初代フミエスレに投下されたSSに感化されて、
何か長編書いてみるか、と思ってたんだが…
氏の投下したSSを見たら、見事なまでにストーリーが被っててw
俺は夏祭りの「大っ嫌いだ」直前にダイチがフミエを連れて逃げて告白、みたいな感じだったんだけど…
ネ申の出現に若輩の妄想は吹っ飛びましたw
引き続き、投下心待ちにしております。
な、なんだよ、フミエスレ見に行かなきゃなんねえじゃねえか
701 :
寸止め刑事:2007/07/27(金) 12:35:02 ID:8zNYpCxa
寸止め氏GJ
なんか切なくて涙でた
この話読んでると、ようつべで見た「こんなに近くで…」ダイ×フミver.が脳内で再生される。
寸止めさん、続き気になるから一気に書き切ってください
じゃないとウンコします
705 :
寸止め刑事:2007/07/28(土) 07:54:39 ID:7mip94SO
ごめんなさい、投下出来ませんでした。
なんか今日の放送が気になって気になって…
予告見てダイチのファーストキスがあれじゃあんまりだと思って
フミエとキスするところまで書きましたが、
いつも予告の斜め上を行く本編に(良い意味で)裏切られて来たので
今回も何かあるんじゃないかと思うと筆が進まなくなってしまいました。
今日の放送見ればまたテンション上がると思いますので少々お待ち下さい。
あとウンコは勘弁して…
コイルの予告のミスリードには散々騙されているので
気持ちはとても良く分かる
707 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/28(土) 19:01:46 ID:Rlqm3Niz
ファーストキスが…
今回、新天地へと旅立ったひげたちとは別の一派がヤサコの○○に移動して……
とかいう下品な妄想でハァハァ
>>707 ダイチ×キョウコって年齢差が犯罪っぽいよなぁ
七年くらい経過したら大学生と中学生なるし
小此木姉妹はおませさんなのですよ
逆に考えるんだ
今なら犯罪じゃない
そう考えるんだ
※食事中の人注意
『社会言語学者によると、日本語は罵倒や悪態に関する語彙が貧弱で、ただ例外的に多いのは“糞”のような排泄物を用いた表現だそうです』
昼食はカレーライスだった。
ダイニングには小此木家の女たちが集まって、夏のランチを楽しんでいる。
小此木家の大黒柱にして大黒市の空間管理室長のヤサコ父はもちろんいない。今日も市の平和のために、身を粉にして働いているはずだ。たとえそうでなくても、彼は数日後“事後処理”に追われて残業三昧の日々を送ることになる。
だが、そんな一中年管理職のささやかな悲哀といえど、未来は神より他に知るものなく、小此木家には平和な時間が流れている。ヤサコ母が皿洗いなぞしつつ、人参をせっせとトレイに取り分けている京子をたしなめていた。
「好き嫌いをいってると大きくなれないわよ」
「なれるもん!」
京子が膨れ面をする。
「絶対なれないわ。ずーっとそのままよ」
隣からヤサコが嫌味をいった。京子の頬がますます膨らんで、リスみたいになっている。
テレビからは昼のニュースが流れている。
『……××教授は脳波を測定した結果、電脳メガネが人間の脳に与える悪影響を指摘し……』
かんかんかん、と皿にスプーンの当たる音がする。
「そんな勢いでかきこんでいたらお腹こわすわよ」
がつがつと猛烈なスピードでカレーライスを頬張る京子を、呆れたような顔でヤサコが見ている。
皿洗いを終えたヤサコ母が布巾で手を拭きながら、椅子に腰掛けテレビの方に顔を向ける。
『……認知症患者と同じような波形を示し、教授はメガネの常習が若年層の凶悪犯罪につながる可能性も示唆して……』
「いやねぇ、メガネ脳だって」
ヤサコ母がコップに水を注ぎながらつぶやいた。
「そんなこといっても、いまさらメガネなしじゃねえ」
ヤサコはおでこにかけたメガネに何気なく指をやってから、カレーをはくはくと口に運ぶ。
「でも、ほらユウコちゃんが話してた原川…君だっけ。あの子、通院してるみたいじゃない」
「えっと、ハラケンは、ちょっと違うのよ」
スプーンをくわえて、ヤサコはどこか遠くを見た。
「ふうん…? ともかく、ユウコちゃんたちも気をつけなさい」
テレビから目を離しヤサコ母が振り向いた。
物思いにふけっていたヤサコが横を見た。
そこには。
「あら?」
「あれ?」
いつのまにか、京子の姿がなかった。
「京子ってば……また勝手に出歩いてるのね。
車とか変質者とか、いろいろ危ないのに!」
ヤサコが眉を吊り上げた。ヤサコ母も困ったような顔をしていたが、水を一口すすってぽそりと一言。
「ま、メガネがあるから平気よね。GPSとかついてるし」
「お母さん……さっきといってること逆」
ヤサコが肩を落として突っ込んでから、食事を再開する。
ヤサコ母もワイドショーにチャンネルを切り替えて、実に主婦的な昼下がりを満喫している。
京子がいた席には空になった皿だけが残されていた。
人参は、やはりトレイの上に放置されたままだった。
太陽は中天にあった。陽炎立つアスファルトの上を元気よく京子が走っていく。
大黒市は基本的にのどかな町だが、最近ではストーカーとか少年少女の写真を撮っている不審なカメラマンの姿が目撃されている。少しは警戒心を持ってもいいのかもしれない。
「?」
ぴたり。駆けてた京子の足が止まった。
放蕩幼女が悔い改め、防犯意識に目覚めた。わけではない、もちろん。
「ウンチーっ!」
京子が指した指の先に、ゴミの収集ボックスに半身をつっこんでいる少年がいた。ダイチである。隣にはデンパがぼーっと立っていた。
京子はにぃーっと笑って、先ほどまでとは正反対に忍び足で、音も無くダイチの背後へと近づいていく。そして。
どん。
容赦なく尻を突き飛ばした。ダイチの半身が完全にゴミの山に埋まる。
あまりにも前後の脈絡のない行動だったので、横で見ていたデンパも止めることができなかった。
なぜ京子がこのような凶行にいたったかは不明である。幼児とはしばしば理解不能な行動をとるものだ。大して意味のない行動なのだろう、たぶん。
「なにすんだ! この…」
「ウンチ!」
「俺はウンチじゃねぇっ、ダイチだっ!」
ダイチは体についたゴミを払いながら、怒鳴る。
京子は首をひねった。少し間があってから、もう一度。
「ウンチ!」
「それでいい」
腕を組みながら、偉そうにダイチはうなづいた。
「え?」
幼児とダイチのなにか不自然な会話の流れに、傍観していたデンパが疑問の声をあげた。
「デンパ! ここはイリーガルいないみたいだから、神社の方行ってみるぞ」
「あ、うん」
どかどかとダイチは歩き出す。
のろのろとデンパも後に続く。
とてとてと、なぜか京子もついていく。
神社での捜索が空振りに終わり、ダイチは大して期待もせずに、金魚のふんのようにくっついてきた京子にイリーガルを見たかどうか聞いてみた。
……予想に反して、答えはYESだった。
そういえばコイツ、ヤサコの妹だったな。
ダイチは納得し、さっさと駆け出した京子についていく。道中、何度か会話を交わして、道順を確認する。
ただ京子が発する言葉は“ウンチ”だけだったのに、ダイチは真面目な顔をして相槌を打って、時には突っ込んでいたりする。
後ろから見ているデンパの首をひねる回数が多くなっていく。
工事現場についた。
ミキサー車が停まり、今まさに古い空間が現実的な意味で更新している最中だった。
京子の歩みが止まり、ダイチたちの方に振り向いた。
「ウンチウンチ!」
「ここだ、っていってる」
「でも、ここは新しい空間だよ」
本当に、なんでわかるんだろう。
デンパは疑問に思いながらも、メガネで空間のヴァージョンを確認する。
「すでにサッチーにフォーマットされてしまったんだ……」
ダイチが難しそうな顔でうなると、京子が元気よく叫んだ。
「ウンチ、ウンチっ!」
デンパにはやはり理解できなかったが、ダイチにはこう聞こえていた。
『おねえちゃんの話だと、黒いの、つりざおでつかまえたって』
「なにっ、釣りざおで?!」
ダイチが聞き返す。
「ウンチ、ウンチウンチっ!」
例の調子で、京子が答える。そして、ダイチにはこう聞こえていた。
『うん。板にスプレーで、しゅーっ、ってやって、へんなのにカンセンしたデンスケをつったの』
「黒穴から釣り上げた?! イリーガルに感染したペットをかっ!」
「ダイチ、よくわかるね? その娘の言葉……」
デンパが感心と呆気が半々の顔で呟く。ちなみに、ダイチにはこう聞こえていた。
『ウンチ、うんちウンチ? その娘のウンチ……』
なにいってんだ、こいつ。悪い電波でも拾ったのか。
不審そうに、ダイチは聞き返した。
「んあ? デンパ、いまなんてった?」
「いや、なんでもない……」
デンパも気まずい顔をしている。
まあいいか、とダイチはとりあえず当座の懸案事項に思いをめぐらす。
「しかし…すでにフォーマットされてたら手遅れに……」
一方、横では京子がきょろきょろと、ダイチとデンパの顔を見比べていた。
そして、考え込むダイチの腕を突っついた。いつものような子供特有の力加減の利かないやり方ではない。ごく普通の、そして京子にしては珍しい、大人しい仕草だった。これも幼児の気まぐれで、深い意味はないのだろう、たぶん。
「ん」
京子はあさっての方向を指さした。
わけのわからないダイチとデンパは、ただ顔を見合わせるだけだった。
京子のナビゲートは正確だった。
取り壊された家屋を前にして、ダイチは京子に質問攻めをしていた。デンパは電脳釣りざおをメガシ屋まで調達しにいっていて、ここにはいない。
「なんで、おまえ古い空間がここにあるってわかったんだよ」
『なんとなく』
「なんとなく、ってなぁ……デンパだってわかんないだぞ? おまえも誘電波体質かなんかなのか?」
『なにそれ』
京子の答えは要領をえない。小学校に上がる前の少女なので仕方がないのかもしれない。
さらにいえば、『』でくくられた京子の台詞は、他の人間にしたら“ウンチ”といっているようにしか聞こえない。デンパがここにいたら、またその太い首をひねっていたことだろう。
少し経って、デンパが戻ってきた。
そのときには京子も普通の言葉で会話するようになっていた。
「ダイチ!」
「俺はダイチじゃねぇっ、ウンチだ!
……なーんてな。すっげーおもしろいだろ、お兄ちゃんのギャグ」
「すっげーつまんない」
「ぐあ」
まあ、微笑ましい光景ではあった。
その後、キュウちゃんに追っかけられたり、イリーガルの魚を釣り上げたりと色々あった。
「んじゃ、おまえ。もう夕方だし帰れよ。一応、マップ書いてやるから住所教えろ」
『なんでー!
わたしも、おさかな見るっ!』
「うるせぇ。ここからは黒客のキギョーヒミツってやつだ。ヤサコにはいうなよ!」
『ぶーっ』
「ぶーぶー、いってもむだだ。ほら、マップできたぞ」
ダイチは、“ぶーぶー”というか、“うんちうんち”と連呼している京子の背中を押して、門の外へと追いやる。
追い出されたあとも、京子はしばらくのあいだ沢口家をのぞきこんでいた。やがて家の中からデンパが出てきて、ケースの上に乗っかっている彼女の横にしゃがみこんだ。
「ダイチ、すっかり育てる気だなぁ……。嫌な予感がするなぁ……」
彼の不安は的中していた。色々な意味で。
〈兆候その一〉
自室でダイチが魚型イリーガル、愛称“金魚”を法悦の笑みで見ていると、下からダイチチの大声がした。
「おい、ダイチ! 呼んどるのが聞こえんのか!
ダイチ、ご飯だぞーっ!!」
別に聞こえなかったわけではない。
先ほどより、階下から“ウンチ”だの“おしっこ”だの、そんな言葉は確かに聞こえてはいた。
だが、いい歳して園児まがいのギャグを連発する両親たちより、目の前の“金魚”の方が今のダイチにはよっぽど価値のあるものだった。
それにしても、本当に親はどうかしてしまったのだろうか。
上のダイチチの怒鳴る声も、ダイチにはこう聞こえていた。
『おしっこ、ウンチ! 小便が切れんのか!
ウンチ、ぶりぶりーっ!!』
本当、息子として恥ずかしい。
ダイチはその後、部屋に乱入したダイチチに拳骨で殴られるまで、金魚をうっとりと眺めていた。
〈兆候その二〉
“イリーガルを太らせてメタバグどっさり大作戦”のため、町中から餌っぽいものをかき集めることにした。
とりあえず空間のテクスチャを剥がしていると、後ろからとんとんと肩を叩かれた。
マイコ先生だった。
町中だというのにジャージ姿である。
「マイコ先生……? 何やってんの」
どう贔屓目に見ても、男のできる格好ではない。隈のできた目で、じとーっ、と見つめる。
生徒が向けてくる険のある瞳に、少し頬を引きつらせたマイコ先生は二の腕をぐっと見せ付けた。そこには腕章がはめられ、『PTA 見回り中』と書いてある。
暑いのにご苦労なことだ。
先生も自分も。
「見回りごくろーさまー……俺はだいじな用事があるんで……」
とりたてて悪いことはやってないが、空間荒しには違いない。さっさと立ち去るほうが吉である。
逃げようとするダイチに、マイコ先生は注意をうながした。
「ダイチ君。元気なのはいいけど……。
宿題とかちゃんとやってる?
橋本さんたちとも仲良くやってる?」
すると、ダイチはますます胡散臭そうな目で、マイコ先生を見つめだした。
(な、なんなの、この目……! お正月に冷蔵庫を空けたらまだ残っていたクリスマスケーキでも見るかのような冷たい目っ……!)
いまさらながら、教師である以前に一人の女性であることを自覚すると、急にジャージ姿が恥ずかしくなってくる。
母親の顔が脳裏に浮かんだ。この頃では“見合い”の“み”の字すらいわなくなってきた。
父親の声が耳に蘇ってきた。“娘に男が寄りつかないのも、それはそれで父として悲しいな”などと、水虫の薬など塗りつつ、ほざいていた。
マイコ先生の体が震える。
「なぜかはわからない……。なぜかはわからないけど……、なんか切ないわぁぁぁっ!!」
くるりと背を向け、ダッシュで駆け去っていく。きらきらと、涙の粒が夏の日差しに輝いて光の軌跡をつくる。
ダイチはしばらくマイコ先生が走っていった方を見ていたが、やがてまたテクスチャ剥がしに精を出し始めた。
別に、ダイチは彼女の服装について何か物申したかったわけではない。いや、それも突っ込みたかったが、彼女の狂気に満ちた台詞について問いただしたかったのが本当のところだった。
マイコ先生の訓戒は、ダイチにはこう聞こえていた。
『ウンチくんくん。便秘なのはいいけど……。
宿便とかちゃんとやってる?
スカトロさんたちとも仲良くやってる?』
ここんとこ暑いからなあ。
ダイチは額の汗を拭って、結論づけた。
〈兆候その三〉
道行く人が交わす会話は下の話ばかりだった。
『うんちうんち?』『しょんべん、だっぷんっ!』
けらけらと、近所の主婦連が談笑していた。
最近の日本はどうかしている。いつ頃から、こうなってしまったのだろう。
ダイチは考える。
けっこう最近だった気もする。
しかし、寝不足の頭ではそれ以上の思考がまとまらない。
最近、彼は妙な夢を見るようになっていた。その夢に悩まされ、睡眠不足なのである。
舞台や状況は毎度異なれども、必ず登場する人物がひとりいた。
そう親しい間柄でもないはずなのに、毎夜毎夜、夢に現れては彼を悩ます。それは。
『ダイチ!』
とつぜん、後ろから尻を叩かれた。
京子だった。
「最近、なんかおかしいんだよなあ……。皆、ウンコとか小便の話しかしないんだよ。
親父とかデンパとかは、まだ会話できるんだけど、それでも語尾に必ずウンコ的な言葉を付けてくるし……」
はあ、と神社の石畳にあぐらをかいたダイチがため息をついた。
『きっとブームなんだよ』
神社の階段に腰かけ足をぶらぶらさせながら、京子はあっさりそういった。手には買ってやったラムネを持っている。
「……そうかぁ? そんなの、兆しすらなかったけど……。
でも、皆いってるってことは、やっぱりそうなのかぁ……?」
隈のできかけた目を細め、ダイチは首をひねる。
『ダイチ、目の下がパンダみたい』
「寝不足なんだよ、最近」
『なんで?』
ちょこん、と京子も首を傾げた。
ダイチの言葉に興味をひかれたのか、京子がじーっと見つめてくる。
ふたりの位置関係は、神社の階段の脇に座った京子が地面の上のダイチを見下ろすような形になっている。
「いや……それは……」
ダイチが決まり悪そうに、もにょもにょと口のなかでつぶやいた。
『? へんなの』
京子はラムネに口をつけた。
飲み方がまるでなっていない。ビー玉が飲み口を塞いでいる。それでも駄菓子屋の娘かと問いたい。
「そうやって飲むんじゃねーよ」
『じゃあ、どうやって飲むの』
京子が口をとがらせ、足をぶんぶん振る。
短めのワンピースの裾から、目にも鮮やかな、白いショーツがのぞいた。
ダイチは顔を赤くして、目をそらす。
「んなの、見りゃわかるだろっ」
少し上ずった声が出た。
手に汗が滲んでいた。
毎晩夢にでる彼女はいつも、なぜかあられもない格好で、いけないことをしようと誘ってくるのだ。
そして朝目覚めると、必ず夢精していた。
……2026年。メガネの個人認証機能の発達により、ネットや空間にあふれる暴力表現や性表現の遮断が可能になっていた。
20世紀後半から導入された“Vチップ”などのコンテンツ・コントロールの発想である。
“黒客”を自称するダイチにとっては、別のアカウントを作って、R指定の情報に触れることは難しいことではない。だが、色々と手続きがあって煩わしい。それに意外と純情な彼は、そのようなサイトにアクセスしたことはあまりない。
しかし、少年の恥じらいを持ちつつも、青い衝動にも目覚めつつあった。
彼の作った大黒黒客倶楽部の入団儀式のひとつに、18禁サイトから1G相当の情報を抜いてくるという奇怪な条項があるのも、屈折した少年の心理の発露なのであろう。
ちなみに、本当にどうでもいい話だが、アキラが入団した際のこと、彼が持参したエロ動画を見てメンバー全員がひっくり返った。
興味津々といった表情で見守る六年生たちのメガネに、妙齢のブロンドの女性が映った。すでに彼女は全裸だった。海外のサイトは特に規制がきつい。アキラの腕に舌を巻きつつ、ダイチたちは動画の続きを逃すまいと目をかっと見開いた。
カメラがズームアップして、モザイク無しの女性の股間が画面いっぱいに広がる。
ごくり、と誰かが喉を鳴らした。
すると、女性はカメラに尻を向け、しゃがみこむ。日本語では俗に“ヤンキー座り”という姿勢である。“うんこ座り”……ともいう。
なぜか尻の下には、皿のようなものが敷かれていた。
そして、肛門がぴくぴくと動いて、そこから……。
しばらくして、精神的ブラクラから立ち直ったメンバーたちが、アキラを袋叩きにしたのはいうまでもない。
果たして、アキラが単に腕を見せたかっただけなのか、それとも彼の性癖だったのか。今でもそれは不明である。
……それは、さておき。
後ろめたい感情を持ちながらも、ダイチはそういった方面の知識を持っていないわけではなかった。
最近覚えたばかりのオナニーをするとき、クラスメートの女子生徒を想像してすることもあった。
同じ生物部部員だったアイコでしたこともある。
イサコにパシリとしてこき使われた晩など、彼女でも試したことがある。
フミエは……オカズにしたことはなかった。理由は特にない、はずだ。
だが、京子を性の対象として捉えたことなど、ダイチが意識している内では一度もないはずだった。ないはずだったが……。
『ダイチ?』
「うわぁっっ?!!!」
いつのまにか、京子がダイチの前に回りこみ、しゃがみこんで見上げていた。
『ん』
後ろに飛びのき尻餅をついたダイチに、京子はラムネを突きつけた。
「な、なんだよ」
『飲み方、おしえて』
「は?」
緑色のラムネの瓶が、太陽光を反射してキラキラ光る。
表面は水滴でいっぱいで、飲み口の部分もまた濡れていて、微かに光をためていた。
続く。寸止めさんがなかなか書ききらないのでウンコ投下。反省はしている。
今週の録画分をまだ見ていない。そのため先週の話に準拠しているので、鮮度がなくてごめんなさい。
722 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:39:24 ID:bxAcEGHE
ホントにウンコ投下されるとは思いませんでした…
いやウンコどころか素晴らしい。
なんですかこの文才は。一緒に出版社(ry
今日の放送見ました。
斜め上どころか異次元の展開で、びっくりするやら笑うやら。
やっぱり予告はアテにならねぇー!orz
一気に書き切る事が出来ずやっぱり寸止めですが投下します。
723 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:56:42 ID:bxAcEGHE
四話の3【ダイ×フミ】1/6
「好きだ」
そのたった3文字を喉から絞り出すのには膨大なエネルギーを必要とした。
耳がヒリヒリする程頭に血が登っていたが、
胸を触ろうとした時の様に葛藤と逡巡に演算能力を費やす事もなく
思考はむしろ澄んでいて冷静だった。熱く冷えた状態とでも言おうか
もごもごと口ごもる自分を、もう一人の落ち着いた自分が後方から眺めている様な心持ちだった。
もうちょっとマシな言い様があるだろう。ちゃんと相手の目を見てしゃべれ。
目の前のだらしない自分に対して色々と言ってやりたいが、きっと無駄だ。
冷静な部分は全部ここにある。
本体と乖離した冷静さなど屁の突っ張りにもならず、
ただグダグダの告白に後ろからツッコミを入れつつ応援するほか無い。
幸いな事に、しどろもどろながらも口にしているのは嘘偽りない本心だ。
意味さえ伝わればそれでいい。相手に無事届けばそれでー…
突然襲われた不思議な感触と、今まで嗅いだ事の無い甘酸っぱい香りに
一瞬で冷静な自分は霧散した。
同時に息苦しくなり、それが解消されると新たな攻撃が襲って来る。
アタシモスキヨとはどういう意味だ?
この熱くて柔らかいモノは一体何だ?
なんだ、全然冷静じゃないじゃん。俺。
724 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:57:22 ID:bxAcEGHE
四話の3【ダイ×フミ】2/6
思考が同じ場所を廻る事何巡目か、
フミエに突然呼びかけられダイチははっと我に帰った。
「ちょ、ちょっと!アンタ大丈夫!?」
ダイチの鼻から赤い線が一筋、アゴからダイブして胸元に黒いシミを作っていた。
頑丈さを誇った鼻粘膜も幾度もの加減圧に遂に限界を超えた様だ。
ダイチの顔を仰向けさせると、フミエはポシェットから出したハンカチで血を拭った。
真っ赤に染まったハンカチを見てダイチはやっと事態を呑み込んだ。
「おわぁ!ち、血だ!」
「今頃何言ってんのよ。こんなになるまで気付かないで」
「な、何で鼻血が…」
「ダイチ君はウブでちゅねー。キスしたぐらいで鼻血でちゅかー?」
「ば、バカ!そんなんじゃー…」
赤錆の濃い臭いに混じって、ハンカチから先程の甘酸っぱい香りがした。
「やだ、また出て来た。これじゃ止まんないわ」
ウエットティッシュを取り出し小さく縒るとダイチの鼻にねじ込む。
「スースーするだろうけど我慢しなさいよ」
「むぐ…ふまん…」
血染めのハンカチを洗おうと、立ち上がったフミエの右掌も真っ赤に濡れていた。
「わぁ!おまへ、て、手が!」
「あぁ、コレぐらい平気よ。女だから」
「?そーいうもんらのか?」
チンプンカンプン状態のダイチを尻目に、フミエはさっさと手水舎へ駆け寄ると、
勢い良く蛇口を捻り水しぶきをモノともせずにジャブジャブと洗った。
725 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:57:54 ID:bxAcEGHE
四話の3【ダイ×フミ】3/6
「アタシも好きよ」
こんなにツルリと言葉が口から出て行くとは思っても見なかった。
口が滑るという事は本当にあるのだと実感した。
ただし口を突いた言葉は嘘偽りない本心からのもので、
その意味では滑ったというよりは溢れ出たというべきか。
あまりの嬉しさから勢いがついたとはいえ、自分もつられて告白して、その上キスまで…
ダイチには悪いが鼻血を出してくれて助かった。
恥ずかしくて恥ずかしくてダイチの側から逃げ出したい衝動に駆られていたのだ。
キス…と呼ぶには突発的であり接触時間も一瞬の出来事だったが
間違いなく産まれて初めての恋愛感情を伴ったキスだった。
幼い頃に家族や親戚から一方的に見舞われるモノとは全く異質の、
それは何とも形容し難い複雑な後味を残した。
甘い様な酸っぱい様な、塩っぱいような苦い様な。それでいて嬉しい味ちょっぴり切ない風味。
ファーストキスはレモンの味? そんなバカな事言ったのは何処の味覚音痴だろう?
ハンカチを洗い終えると、ついでに顔も洗った。火照った顔に水が心地良い。
これで冷静になれる。落ち着いてダイチの所へ戻れる。
すっかり血の色が抜けたハンカチを固く絞ると、ちょっと嗅いでみる。
まだ微かにだが血の臭いが感じられた。
血の臭いには慣れていたが、これがダイチの血だと思うと一瞬頭がクラっとした。
ぜ、全然冷静になってないじゃん。アタシ。
726 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:58:28 ID:bxAcEGHE
四話の3【ダイ×フミ】4/6
随分と時間をかけてハンカチを洗い終えたフミエが社に戻ると、ダイチは後ろ手を付いて空を見上げていた。
胸のシミはほぼ乾きかけていたが、なんだかワンポイントのロゴの様で可笑しい。
「ダイチ、平気?」
「あ? あぁひろひろわるふぁったな」
「何言ってるか分かんないわよ」
フミエは拡げたハンカチを陽の当たる階段の手すりに張り付けると、ダイチの横に座った。
先程よりずっと近く、手を伸ばさなくても届く距離だ。
「なぁ、はんばえたんだへど」
「分かんないってば」
フミエがティッシュを摘んで引き抜く。
乾いた血がベリッと音を立てた。
「ふぅ、血が抜けて頭がすっきりしたみたいだ。で、考えたんだ」
「何をよ?」
「このまま負けっぱなしじゃイカンと」
「はぁ?」
「元々俺が悪いんだが、きちんと謝った。そして、こ、ここ…」
「告白?」
「そ、そう、告白もした」
「ふん、それで?」
「なのにお前は俺に抱きついて…
俺が必死の思いで告白したのに、お前はアッサリ好きよって…」
「え? 駄目なのそれ?」
「その上俺の唇を…」
そこまで言ってダイチは再び俯く。
もう床板の木目パターンを暗記してしまうのではないかと思えた。
「…ごめん…キス嫌だった?」
フミエの胸中に再び不穏な暗雲がたれ込め始める。
好きだ。この一言でそれまでのもやもやしたモノが一瞬にして払拭され、
一点の曇りもなく透き通った気持ちになれた。それが嬉して嬉しくて。
思わず重ねた唇が、ダイチを不快な気持ちにさせてしまったのだとしたら
自分はなんて勝手な人間のだろう。
次の言葉が恐ろしくて嫌な予感がして聞きたく無くて。
耳を塞ぐ代わりに胸の前で服をぎゅっと握りしめた。
727 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:58:46 ID:bxAcEGHE
四話の3【ダイ×フミ】5/6
「嫌じゃない!」
強く否定されてフミエはほっと胸を撫で下ろす。
危なかった。今怒られて平気で居られる自信は全く無い。
「好きって言われたのも、キスされたのも…嫌じゃなくて…その…」
「はっきり言いなさいよ」
ほっとして気が緩んだのか、思っている事とは逆の言葉が口を突く。
今度は文字通り口が滑った。しまったと思ったがもう遅い。
「嬉しかった…」
だめだ、否定されても肯定されても平気では居られないらしい。
フミエは危うく泣きそうになるのを必死で堪え、ぷいっと顔を背けると強がる様に言った。
「だったら何が気に食わないのよ。アタシのファーストキスまで貰っといて」
「次は俺の番だ!」
ダイチが何を言っているのか分からず、涙も引っ込んでしまったフミエは
ゆっくりと首を巡らしダイチに向き直る。
「番?何の?」
「あんな不意打ちで唇を奪われたとあっては男が廃る。
今度は俺が正々堂々とお前の唇を奪う番だ!」
728 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 03:59:04 ID:bxAcEGHE
四話の3【ダイ×フミ】6/6
ぽかーんとした表情でフミエはダイチの顔を見た。
何でこんな馬鹿好きになっちゃったんだろう…
いくら頑張ったところでファーストキスを覆す事は出来ず、
二度目は二度目でしかない。どう勝つというのか?
「攻守交代で次は1回の裏だ」
「そ、そう来る訳ね… いいわ、受けて立つわ」
知らず二人とも立ち上がる。
向かい合ってお互いにファイティングポーズをとる。
ダイチはポケットの違法電脳グッズにいつでも手が届く様、西部のガンマンにも似たポーズで、
フミエは二本の指だけ伸ばした右手をメガビー発射位置寸前にかざし。
一触即発の体勢で向き合っている。
神社の賽銭箱前という場所もあってか、遥か昔に流行った格闘ゲームの偽物の様な風情だ。
「だがココは場所が悪い」
じりじりと間合いを量りながらダイチが呟く。
「なによ、コートチェンジ?野球の次はテニスのつもり?」
「阿呆ぅ!こんな神聖な場所でそんな破廉恥な事が出来るか!」
「…胸触ろうとしたり鼻血垂れ流してた奴に言われたかないけど、一理あるわね」
見上げると紅白の布を綯った紐が風に揺れ、
その付け根で赤ん坊の頭程もある鈴が真鍮の肌を鈍く光らせ嗤っていた。
一気に力が抜けてフミエは戦闘態勢を解く。合わせてダイチも素の体勢に戻る。
「馬鹿馬鹿しい。いいわよアンタの好きな場所で受けて立ってやろうじゃないの」
「よし、ではとりあえずこの裏手の林の中まで移動だ」
━つづく━
729 :
寸止め刑事:2007/07/29(日) 04:01:22 ID:bxAcEGHE
長い事かかりましたが、やっとここまで来ました。
次回エロエロ編に突入です。
>知らず二人とも立ち上がる。
>向かい合ってお互いにファイティングポーズをとる。
思わずニヤついてしまったw
・・エロエロ待ってます'`ァ(´д`*)
>>638-645のハラヤサがなんかの呪いのよーに頭から離れません
ヤサコ視点バージョンも読みたいんですが…だめですか…?
林に連れ込んでいったい何をヤルつもりなんだダイチ……。
毛も生えてない奴にはまだ早すぎるぞ!
733 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 16:02:54 ID:Jcy2KHL/
しかも外でかッ!
まったくけしからん奴だぜw
エロエロまで待てない
735 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 17:27:29 ID:SWSVDIsl
<<731
の方に同感(´ー`)ノヤサ視点も見たーい。
736 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 17:44:47 ID:SWSVDIsl
またしても連デスο
ダイХフミも面白くなってきたねェ。。
期待しまくって、続きをまってます。=^ェ^=
737 :
名無しさん@ピンキー:2007/07/29(日) 22:04:23 ID:SWSVDIsl
どうやら自分は暇人らしく。。
さっきから何回もここに来て増えてない書に涙ο
調子こいて初投下。
気分を悪くさせたらスンマセン。。
ハラХヤサにしるっもり
738 :
名無しさん@ピンキー:
子どもにとって、夏休の前半は終ることないパラダイスのようなものだ。
そんな中、破棄のない表情を浮かべてハラケンが独りで歩いていた。
とりわけて落ち込んいる訳ではない。彼の場合は、いつもそうなのだ。
今年の夏休みは自由研究をヤサコとフミエと共同でしている。
自由研究は予想以上に難しいく、先が見えない。それでも、題材を変更する気はない。
今年だけは、
何があっても諦める訳にはいかない。
―カンナ。
ハラケンは心の中で呟く。カンナが生きていたら今ごろは一緒に自由研究をやっていたのだろうか。
それとも
今年もカンナは独りで…
そういえば、悩んだ時は、良くカンナが現れて励ましてくれったけ。
いきなり後から肩を叩いたりするから驚いて、文句を言うことが多かった。
今なら…文句を言うことは有り得ない。本当は不安な時に側に来てくれて嬉しかったのだから。
そう、今なら…
見上げた空は小さい雲が一つだけ浮いている。
太陽から離れた所にあるその雲は寂しそうに見える。
まるで、居場所の判らない僕みたいだ。